衆議院

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第19号 令和5年6月9日(金曜日)

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令和五年六月九日(金曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 大西 英男君

   理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君

   理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君

   理事 阿部  司君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    東  国幹君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      尾崎 正直君    大野敬太郎君

      柿沢 未途君    岸 信千世君

      工藤 彰三君    小寺 裕雄君

      新谷 正義君    新藤 義孝君

      杉田 水脈君    鈴木 英敬君

      田野瀬太道君    平  将明君

      津島  淳君    中野 英幸君

      中山 展宏君    平井 卓也君

      平沼正二郎君    穂坂  泰君

      細野 豪志君    牧島かれん君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      中谷 一馬君    西村智奈美君

      太  栄志君    馬淵 澄夫君

      山岸 一生君    吉田はるみ君

      岩谷 良平君    浦野 靖人君

      堀場 幸子君    河西 宏一君

      福重 隆浩君  斎藤アレックス君

      塩川 鉄也君    緒方林太郎君

      大石あきこ君

    …………………………………

   議員           新藤 義孝君

   議員           高階恵美子君

   議員           牧島かれん君

   議員           山下 貴司君

   議員           國重  徹君

   議員           鰐淵 洋子君

   議員           西村智奈美君

   議員           山岸 一生君

   議員           宮本 岳志君

   議員           阿部  司君

   議員           岩谷 良平君

   議員           浅野  哲君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   内閣府大臣政務官     尾崎 正直君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  廣瀬 健司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 小山 定明君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月九日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     新谷 正義君

  池田 佳隆君     稲田 朋美君

  杉田 水脈君     三谷 英弘君

  鈴木 英敬君     岸 信千世君

  田野瀬太道君     新藤 義孝君

  中野 英幸君     東  国幹君

  平沼正二郎君     細野 豪志君

  牧島かれん君     柿沢 未途君

  松本  尚君     穂坂  泰君

  太  栄志君     西村智奈美君

  本庄 知史君     吉田はるみ君

  浅野  哲君     斎藤アレックス君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     中野 英幸君

  稲田 朋美君     池田 佳隆君

  柿沢 未途君     牧島かれん君

  岸 信千世君     津島  淳君

  新谷 正義君     赤澤 亮正君

  新藤 義孝君     田野瀬太道君

  穂坂  泰君     松本  尚君

  細野 豪志君     平沼正二郎君

  三谷 英弘君     杉田 水脈君

  西村智奈美君     太  栄志君

  吉田はるみ君     本庄 知史君

  斎藤アレックス君   浅野  哲君

同日

 辞任         補欠選任

  津島  淳君     鈴木 英敬君

    ―――――――――――――

五月二十六日

 性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案(西村智奈美君外十三名提出、衆法第一四号)

六月七日

 性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案(新藤義孝君外五名提出、衆法第一三号)

 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案(阿部司君外四名提出、衆法第一六号)

五月二十九日

 日本軍慰安婦問題の解決に関する請願(大河原まさこ君紹介)(第一三二一号)

六月五日

 日本軍慰安婦問題の解決に関する請願(新垣邦男君紹介)(第一四九五号)

同月七日

 日本軍慰安婦問題の真の解決に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一六一五号)

 同(笠井亮君紹介)(第一六一六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一六一七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一六一八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六一九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一六二〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六二一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一六二二号)

 同(宮本徹君紹介)(第一六二三号)

 同(本村伸子君紹介)(第一六二四号)

 日本軍慰安婦問題の解決に関する請願(近藤昭一君紹介)(第一六二五号)

 同(大石あきこ君紹介)(第一七〇七号)

 公務・公共サービスの拡充に関する請願(岡本あき子君紹介)(第一六九九号)

 同(金子恵美君紹介)(第一七〇〇号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第一七〇一号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一七〇二号)

 同(源馬謙太郎君紹介)(第一七〇三号)

 同(篠原豪君紹介)(第一七〇四号)

 同(牧義夫君紹介)(第一七〇五号)

 同(笠浩史君紹介)(第一七〇六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案(新藤義孝君外五名提出、衆法第一三号)

 性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案(西村智奈美君外十三名提出、衆法第一四号)

 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案(阿部司君外四名提出、衆法第一六号)


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     ――――◇―――――

大西委員長 これより会議を開きます。

 新藤義孝君外五名提出、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案、西村智奈美君外十三名提出、性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案及び阿部司君外四名提出、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。新藤義孝君。

    ―――――――――――――

 性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

新藤議員 ただいま議題となりました性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。

 性的指向及び性同一性の多様性につきまして、国民の理解が進んでいるとは必ずしも言えない現状に鑑みますと、全ての国民が、性的指向及び性同一性の多様な在り方を互いに自然に受け入れられるような共生社会、すなわち、性的マイノリティーはもちろんのこと、マジョリティーの人も含めた全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できるような社会の実現を目指して、性的指向及び性同一性の多様性に関する理解の増進を目的とした諸施策を講ずることが必要であると考え、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、目的でございますが、性的指向及び性同一性の多様性を受け入れる精神を涵養し、もって性的指向及び性同一性の多様性に寛容な社会の実現に資することを目的としております。

 第二に、性的指向及び性同一性の定義でございます。この法律において、性的指向とは、恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向をいい、性同一性とは、自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無又は程度に係る意識をいうこととしております。

 第三に、基本理念としまして、国民の理解の増進に関する施策は、全ての国民が、その性的指向又は性同一性にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及び性同一性を理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行われなければならないと定めております。

 第四に、性的指向及び性同一性の多様性に関する理解の増進に関し、国及び地方公共団体の役割、事業主等の努力について定めることとしております。

 第五に、政府は、毎年一回、施策の実施状況を公表するとともに、基本計画を策定し、おおむね三年ごとに見直しを行うこととしております。

 第六に、基本的な施策として、学術研究等を推進するものとし、また、知識の着実な普及、相談体制の整備、民間団体等の活動の促進等について定めております。

 第七に、内閣府等の関係行政機関の職員をもって構成する性的指向・性同一性理解増進連絡会議を設け、連絡調整を行うこととしております。

 最後に、この法律は、公布の日から施行することとしております。なお、この法律につきましては、施行後三年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられることとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

大西委員長 次に、西村智奈美君。

    ―――――――――――――

 性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

西村(智)議員 ただいま議題となりました性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。

 性的指向及び性自認の多様性につきまして、国民の理解が進んでいるとは必ずしも言えず、それがいじめや差別などの原因となっているという現状に鑑み、全ての国民が、その性的指向又は性自認にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるべきものであるとの理念にのっとり、性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識の下に、性的指向及び性自認の多様性を受け入れる精神を涵養し、もって性的指向及び性自認の多様性に寛容な社会の実現を目指して、性的指向及び性自認の多様性に関する理解の増進を目的とした諸施策を講ずることが必要であると考え、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、目的でございますが、性的指向及び性自認の多様性を受け入れる精神を涵養し、もって性的指向及び性自認の多様性に寛容な社会の実現に資することを目的としております。

 第二に、性的指向及び性自認の定義についてでございます。この法律において、性的指向とは、恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向をいい、性自認とは、自己の属する性別についての認識に関する性同一性の有無又は程度に係る意識をいうこととしております。

 第三に、基本理念といたしまして、国民の理解の増進に関する施策は、全ての国民が、その性的指向又は性自認にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行われなければならないと定めております。

 第四に、性的指向及び性自認の多様性に関する理解の増進に関し、国及び地方公共団体の役割並びに事業主及び学校の設置者の努力について定めることとしております。

 第五に、政府は、毎年一回、施策の実施状況を公表するとともに、基本計画を策定し、おおむね三年ごとに見直しを行うこととしております。

 第六に、基本的な施策として、調査研究を推進するものとし、また、知識の着実な普及、相談体制の整備、民間団体等の活動の促進等について定めております。

 第七に、内閣府等の関係行政機関の職員をもって構成する性的指向・性自認理解増進連絡会議を設け、連絡調整を行うこととしております。

 最後に、この法律は、公布の日から施行することとしております。なお、この法律につきましては、施行後三年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられることとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

大西委員長 次に、阿部司君。

    ―――――――――――――

 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

阿部(司)議員 ただいま議題となりました性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。

 性的指向及びジェンダーアイデンティティーの多様性につきまして、提出者としては、国民の理解が進んでいるとは必ずしも言えない現状に鑑み、全ての国民が、性的指向及びジェンダーアイデンティティーの多様な在り方を互いに自然に受け入れられるような共生社会、すなわち、性的マイノリティーはもちろんのこと、マジョリティーの人も含めた全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できるような社会の実現を目指して、性的指向及びジェンダーアイデンティティーの多様性に関する理解の増進を目的とした諸施策を講ずることが必要であると考え、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、目的でございますが、性的指向及びジェンダーアイデンティティーの多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状に鑑み、性的指向及びジェンダーアイデンティティーの多様性を受け入れる精神を涵養し、もって性的指向及びジェンダーアイデンティティーの多様性に寛容な社会の実現に資することを目的としております。

 第二に、性的指向及びジェンダーアイデンティティーの定義でございます。この法律において、性的指向とは、恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向をいい、ジェンダーアイデンティティーとは、自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無又は程度に係る意識をいうこととしております。

 第三に、基本理念としまして、国民の理解の増進に関する施策は、全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティーにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティーを理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行わなければならないと定めております。

 第四に、性的指向及びジェンダーアイデンティティーの多様性に関する理解の増進に関し、国及び地方公共団体の役割、事業主等の努力について定めることとしております。

 第五に、政府は、毎年一回、施策の実施状況を公表するとともに、基本計画を策定し、おおむね三年ごとに見直しを行うこととしております。

 第六に、基本的な施策として、学術研究等を推進するものとし、また、知識の着実な普及、相談体制の整備、保護者の理解と協力を得て行う心身の発達に応じた教育等について定めております。

 第七に、内閣府等の関係行政機関の職員をもって構成する性的指向・ジェンダーアイデンティティ理解増進連絡会議を設け、連絡調整を行うこととしております。

 第八に、留意事項として、この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティーにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意することとしております。

 最後に、この法律は、公布の日から施行することとしております。なお、この法律につきましては、施行後三年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられることとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

大西委員長 これにて各案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

大西委員長 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官小山定明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。

 本日は、自民党、公明党案について質問をさせていただきます。

 この法案については、世論の中に強い不安や反発が見られます。実際にLGBTの皆様が求めているわけではないと承知していますし、決してあってはならないことと考えますが、この法案が成立したら、外形は男性だが自身は女性であると称する人は女湯や女性用手洗いに入れるようになるというのは本当ですか。

新藤議員 まず、大前提として、この法案は理念法でありますので、個々の人々の行動を制限したり、それから何か新しい権利を加える、こういったものではありません。

 この法案は、基本理念に掲げさせていただきましたが、全ての国民が、性的マイノリティーの方、またマジョリティーの方、その方々がお互いに理解をし合いながら、そしてそれを深め、共生社会をつくっていくべきだ、それを実現を図るために、政府にそれを促す、こういう理念法でございます。

 今御懸念がございました、お風呂ですとか、それから女性用のトイレに外見が男の方が自分は女性だと称して入る、これは許されません。そして、マジョリティーの女性の権利や女性用スペースの侵害は認められない、私たちはそう思っていますが、それはこの法案で規定することではなくて、そもそも、憲法に基づいて、この管理区分も含めて、そういったことは認められない、このように思っているわけでございます。

 しかし、LGBTの、性的なマイノリティーの皆さんが生きづらさを感じてはいけない、これもまたございます。

 ですから、それぞれの方々がきちんとお互いを理解し、認め合って、そして穏やかに暮らしていく社会、共生社会をつくろうじゃないか、そのための、それを政府に、きちんと指針を示してくれ、これを促す法案だと御理解をいただきたいと思います。

赤澤委員 懸念は当たらないという趣旨のお答えでしたが、強い不安や反発を覚えておられる皆様のお気持ちはなかなか収まらないと思うので、更にお伺いをしますが、それでは、本法案が成立した場合、もし特定の個人が、外形は男性だが自身は女性であるから女湯や女性用お手洗いに入れろと主張したら、制止できますか。もし制止を振り切ったらどうなりますか。

新藤議員 これにつきましては、そもそも、この法案で、それがいいか悪いか、そういったことを規定するものではないということは前提にしてください。

 その上で、仮に今の御質問のようなことがあったとするならば、それは、体は男性なのに女湯や女性用のお手洗いをのぞく、また、そこに入っていく、そうしたこと、また、施設管理者の制止を振り切って侵入した、これはいわゆる建造物の侵入罪、それから公然わいせつ罪などの犯罪に当たり得るというふうに考えております。

 しかし、それは、いわゆるマイノリティーの、LGBTの皆さんが果たしてそんなことを望んでいるかというと、それも余り聞くわけではありません。ただ、心配があることは事実であります。

 そして、公衆浴場法の三条におきまして、そもそも、営業者は風紀に必要な措置を講じなければならない、こういう法律がございます、現状で。そして、加えて、条例において、おおむね七歳以上の男女を混浴させないというのが定められているわけであります。

 ここで言う男女というのは、身体的な特徴の性をもって判断するとされておりますので、公衆浴場の営業者は、体は男性、心は女性という方が女湯に入らないようにする必要がある、このようになっているわけで、この取扱いは風紀の観点からも合理的な区別であるということが政府として答弁されております。憲法十四条に照らしても差別に当たらない、この侵入を阻止しても。これは四月の二十八日の内閣委員会で、そこにお座りの國重委員が委員会で質問をして、明確に政府から答弁がなされている。

 ですから、そうした心配のないように、丁寧な説明が必要だと思いますが、元々、現状において、そうした女性の方々やいわゆるそのスペースの侵害があってはならない、これは許されないことなんだというふうに私たちは整理をしているわけです。

赤澤委員 重ねて、懸念は当たらないというただいまの御説明でありました。

 ただ、現状において、世論の中に強い不安や反発が見られることは間違いないので、引き続き、与党として説明責任を果たしていくことが必要だというふうに思っております。

 そして、世論の中に強い不安や反発が見られる中、それでもこの法案を成立させなければならない。その意味を分かりやすく御説明をいただきたいと思います。

新藤議員 私ども自民党は、平成二十八年に、性的マイノリティーに関する特命委員会、これを設けました。そこにお座りの稲田さんが委員長になられて、初代は古屋圭司先生です。

 そして、そうした性的マイノリティーの皆さんの生きづらさ、これはやはりあってはならないと思っています。そして、憲法に基づいて、誰しもが個人の尊厳を享有できるわけであります。ですから、そうした問題にきちんと何らかの研究を行って、指針を作っていかなければならないんじゃないかということで、既に現行法でやっている、各省庁が行っている取組についてもチェックリストを作りまして、いろいろなところでそうした生きづらさはないかということもやってまいりました。

 しかし、近年とみに、LGBTの問題、そして、それは性的マイノリティーの方とマジョリティーの方双方に様々な心配が出ている。であるならば、この機会にきちんと、国は、今個別に、それぞれ憲法に基づいて、各法律に基づいて、会社だとかそれから学校の場所だとか様々な場所で個別の対処はしているんですが、これを、今あるものを一つにまとめて計画を作って、そして、その中でどういうふうにこれは対応していけばいいのか、そういう指針も含めて、これは国がまずそういったことをきちんと研究すべきである、それを促すための法案を出させていただきました。

 その結果として、今ある様々な不安はまずは解消しながら、何度も申しますけれども、皆お互いが理解をして、そして性的多様性の理解を深めながら、穏やかな共生社会をつくる、これは誰しもが望んでいることだと思いますので、そういったことを政府に促すための私たちは法案を出させていただいた。これによって、そうした不安は少しでも解消されることを期待をしたいと思います。

赤澤委員 LGBTの皆様が生きづらさを抱えておられることは間違いないというふうに思っております。LGBTの皆様がいろいろな御要望とかがあることに対して、全国で千七百以上ある市町村あるいは都道府県が対応に迷うような場面がかなりあるということも承知をしております。

 今、新藤代表がお話しになったように、各自治体が、今後、LGBTの皆様の生きづらさをなくしていく上で、少しでも迷いがないようにやっていけるよう、国としても、基本計画に加えて、指針のようなものも必要に応じて作っていくということについては、私は大いに意味があるかなというふうに思います。

 その上で、大変大きな不安や反発が見られる中ですので、マジョリティーの女性の権利や女性用スペースの侵害は当然あってはならないということは前提にした上で、LGBTの皆様の生きづらさが軽減されていくような、理解増進が深まればいいなというふうに思ってございます。

 ということで、現在、進行中と承知しております与野党間の修正協議も相まって、国民の皆様、そして同僚議員の皆様の御理解を得て、本法案が法目的を達成することを期待して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、河西宏一君。

河西委員 公明党の河西宏一でございます。

 本日審議入りをいたしました、いわゆる性の多様性に関する相互理解、これを増進する法律案につきまして、議連を始め、各党また各党間における積年の議論があったわけでございます。とりわけ実務者の皆様に敬意を表させていただきます。

 また、公明党といたしましても、二〇一二年にプロジェクトチームを立ち上げまして以来十一年間、性の多様性に寛容な社会を目指して取り組んでまいったところでございます。

 そうした中で、法制局の皆様、また、委員長を始め理事の皆様に御尽力をいただきまして、本日の審議を迎えるに至りました。関係する全ての皆様に感謝を申し上げまして、今般提出をされました自公案につきまして、いずれも提出者の國重徹議員に質疑をさせていただきます。

 まず、今回提出をいたしました自公案は、令和三年に超党派で取りまとめをいただいた議連案から文言が幾つか修正をされております。

 例えば、第二条二項の性自認を性同一性に、また、第三条の差別は許されないを不当な差別はあってはならないに、また、第九条の、理解増進に必要な調査研究の推進、これを学術研究の推進等々の、こういった修正、これは内容を維持する形で行われたというふうに伺っております。

 この修正に関しましては、公明党としては、まず、この法案を議員立法で成立をさせまして、性の多様性に関する相互理解、これを右でもなく左でもなく前に進めていく、これが政治の果たすべき責任であるというふうにも思いますし、その意味で、大局観、また、より幅広い合意形成を図る見地から合意をしたものというふうに考えております。

 ただ、一方で、この修正に対しまして、内容が後退したのではないかと一部御懸念の声もあることも事実でございまして、そうした後退があってはならないとも思うわけでございます。

 そこで確認ですが、議連案から自公案への修正、法制的な意味は変わっていないのか、明確に御答弁をいただきたいと思っております。

國重議員 河西委員が今おっしゃったとおり、法律を成立させて、性の多様性に関する相互理解を進めて、多様性が尊重される社会を実現していく、このことは政治の重要な責務であると考えております。

 その上で、御指摘の文言修正につきましては、法案の法制的な意味内容は議連案と変わっておりません。いずれも、内容は維持しつつ、法制的な意味は変わらない範囲で、表現の面で工夫を施したものであります。

 具体的に申し上げますと、性自認を性同一性に改めましたのは、両者はいずれも英語で言うジェンダーアイデンティティーの訳語でありまして、法制的にはいずれも同じ意味であると考えられる一方で、性自認に関しては、その字面だけを見ますと、言葉の本来の意味と異なる、勝手な主張として、今は女性ですなどと称して、女性用の施設等を悪意を持って利用しようとするような行為を許してしまうと誤解されかねないとの懸念の声も一部上がっていたこと。

 翻って、性自認又は性同一性とは、自身の性についてのある程度の一貫性を持った認識のことであって、アイデンティティーというニュアンスをより明確に出すには、性同一性の方が適当と考えられたこと、性同一性障害特例法のほかにも、政府の文書で性同一性の使用例があることなどを踏まえたものであります。

 次に、差別は許されないを不当な差別はあってはならないに修正したのは、安倍総理、菅総理、岸田総理を含めた累次の政府答弁と表現をそろえることで、答弁と法律の条文では趣旨が異なるのではないかといった無用な誤解を招くことを避けること。差別という用語に意味的に含まれていた不当なを付すことによりまして、ここに言う差別とは、まさに不当な、客観的に見ても差別と言えるようなものを指しているとの趣旨を確認、強調することとしたもの。二点が理由であります。

 そして、調査研究を学術研究に修正したのは、調査研究の内容としては、当初より、医学的、心理学的な知見の深化などの学術研究が想定されていたところでありまして、この趣旨が明らかになるようにしたものであります。

 以上です。

河西委員 御答弁ありがとうございます。

 昨今、先ほども議員の方からありましたけれども、本法案に対する様々な御意見があります。例えば、これは、性的マイノリティーの人々に対する理解を性的マジョリティーの側だけが増進をする、促される、一方通行の法案なのではないか、むしろ分断や混乱を生むのではないか、こういった御懸念があるわけでありますが、これは明らかに誤解であるというふうに私は思っております。第三条の基本理念、これがこの法案の根幹であるにもかかわらず、この趣旨が正確に伝わっていない面があるというふうに思うわけでございます。

 すなわち、この第三条をきちっと読みますと、このようにあります。「相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」とあるように、決して一方通行の法案ではなくて、この世の中には一人として同じ人間はいないわけでありますが、ありとあらゆる性的指向あるいは性同一性、ジェンダーアイデンティティーを持つ人々がありのままに対話できる、いわばラウンドテーブルを社会に用意して、そこに皆さんが着座をしていただいて、一方通行ならぬ双方向の相互理解の増進を図る法案だと私は解しております。

 そこで、本法案の目的、そして、その達成のための理念法であります本法案がどのような取組を社会に期待をしているのか、確認をさせていただきたいと思います。

國重議員 今、河西委員の方から一方通行ならぬ双方向の相互理解と表現していただいたように、本法案は、性的マイノリティーのみに関する理解の増進を目的とする法案ではなくて、性的指向、性同一性の多様性に関する理解の増進を目的とするものであります。

 提出者としては、本法案の基本理念にあるとおり、共生社会、すなわち、性的マイノリティーの人も生きづらさを抱えてしまうようなことがあってはなりませんけれども、同時に、性別に基づいて区分されてきた施設等が安心して使えなくなるような事態があってはならず、マジョリティーの人もこれまでどおり平穏に暮らしていけるような社会の実現を目指していくことが必要であるとの認識を持っております。

 このような認識の下、政府に対し、研究を行わせるとともに、それに基づいて基本計画を策定させる中で、こうした既存の取組を全体的に整理をして、政府の政策としてしっかりとした位置づけを与えることによって、これらの取組をよりよい形で充実させていきたいと期待をしております。

河西委員 ありがとうございます。

 今御答弁ありましたように、本法案の目的です。これは、相互理解の先に、実生活において、いずれの性的指向や性同一性であっても平穏に暮らせる実生活、この実現があるわけであります。

 そこで、より具体的な御懸念、先ほどもございましたけれども、誤解を解いていきたいというふうに思いますけれども、例えば、本法案が成立をすると、トイレがいずれもジェンダーフリーになって、女性トイレがなくなってしまうのではないかとか、あるいは、公衆浴場の女湯に外形が男性のトランスジェンダーの方が入浴するようになってしまうのではないか、あるいはスポーツ大会等への参加ルール、これも変わってしまうのではないか、様々御懸念の声があるわけでありますが、そこで確認です。

 本法案の成立によって、トイレや銭湯、またスポーツをめぐるルールが変わることがあるのか、ないのか、その理由を含めて御見解をいただきたいと思っております。

國重議員 まず、本法案は理念法であります。理念法でありますので、個々の人の行動を制限したり、また、何か新しい権利を与えたりするようなものではありません。したがいまして、女性トイレや公衆浴場の女湯のような女性用の施設等の利用やスポーツ大会等への参加ルールについて、現状の在り方を変えるものではありません。

 例えば、公衆浴場に関して言えば、公衆浴場法第三条で、営業者は風紀に必要な措置を講じなければならないとされておりまして、これを受けて、条例において、おおむね七歳以上の男女を混浴させないと定められ、また、ここに言う男女とは、身体的な特徴の性をもって判断することとされているため、公衆浴場の営業者は、体は男性、心は女性という方が女湯に入らないようにする必要があるとされています。

 また、スポーツ大会等においてどのような競技区分を設けるかなどについては、法律によって規律されるような事柄というよりは、むしろ、基本的には、スポーツ大会等の主催者や、それぞれの競技団体において定められるべきものと考えられます。

 いずれにしましても、本法案の下でも、マジョリティーの女性の権利や女性用スペースの侵害は許されないことは当然のことであります。

 以上です。

河西委員 御答弁ありがとうございました。

 当事者の方からも、この問題というのは命の問題なんだという言葉もいただいております。そういったことに真剣に向き合いながら、今御答弁いただいたラウンドテーブルの共生社会、その実現に向けてしっかりと尽力をしていくことをお誓い申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 立憲民主党の吉田はるみです。

 この法案の審議、冒頭、私、これだけ大事な法案が数時間で、かつ、審議入りしたらすぐ採決まで行ってしまうのかというような報道もありますけれども、ちょっとその点、違和感を感じていることを申し上げます。

 今、理解を増進するという、理念法であると伺ったんですけれども、私は様々な混乱が増幅しているのではないかというふうに感じます。

 まず、ちょっと、職場における混乱も、私はお声を伺っています。

 自公案の方ですと、性自認から性同一性という文言に変わっています。これまで、各職場で様々な取組を行っているところがあるんですけれども、こうした文言が変わってしまうと、今までの取組も変えなきゃいけないんじゃないか、こんな混乱が生じると思うんですが、立憲民主党の方では性自認を使っています。いかがでしょうか。

    〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕

山岸議員 結論から申し上げますと、混乱が生じる懸念があると考えております。

 まず、性同一性と性自認というのは、いずれもジェンダーアイデンティティーの訳語でございまして、その意味内容は同一でございます。

 その上で、我々の方の第二条の定義規定においては、性同一性障害学会などの見解や当事者団体からの御意見を踏まえ、政府の答弁や文書、また、委員からも御指摘があった各地の地方自治体、地方公共団体の条例などでも用いられている一般的な慣用表現である性自認との訳語、用語を用いるのが適切との判断に至りました。

 それにもかかわらず、今回、自民党、公明党案において、あえて性自認という言葉を用いず、これと同じ意味の別の用語である性同一性の語を用いることによりまして、あたかもこの両者が違う意味、概念ではないのかなどといった疑問を生じさせたり、あるいは、性自認という言葉の誤った理解を広げたりするなど、社会に混乱を招くおそれがあると考えております。

吉田(は)委員 では、混乱しないようにということで、自公案の方にお伺いしたいと思います。

 性同一性という新たな文言が用いられるようになった場合、こうした企業や働く方々の職場において、今までと何か違う取組をしなければなりませんか。

高階議員 お答えいたします。

 ただいま御指摘いただきましたように、自公案と立共案の違い、用語の違いにすぎませんで、定義の内容も同じ、意味に違いはないということであります。

 その上で、性自認とするか同一性とするかで事業主に求められる取組、それが違ってくるということはないと想定をしております。

吉田(は)委員 今までの取組は変えなくていいです、文言は違うけれども定義は同じです、内容は同じですということなんですけれども、やはり、じゃ、何で性同一性と変えるんですかというふうに思ってしまいます。ちょっと納得がいかないんですけれども。

 そもそも、総理答弁の中でも性自認を使っています。これまで性自認という言葉が使われたところ、最高裁の判決もあります。また、パワハラ防止法について厚生労働省が出した指針の中でも、性自認、役所も使っています。そして、先ほど新藤委員もおっしゃっていただいたように、自民党の平成二十八年の中でも、性自認の多様な在り方、性自認が使われています。極めつけはG7の共同声明です。こちらの方のジェンダーアイデンティティー、その和訳も性自認になっています。これは直近のことです。そして、総理もこの訳に対して理解を示されていると私は報道で見ています。なぜ、ここで変えるんでしょうか。

 ちょっと私の感想で大変恐縮なんですが、今、永田町では解散風が吹いてきました。これまでずうっと、こうして性自認を使って、超党派議連で議論を重ねてきて、そして深い議論をしてきた中で、がっとこういうふうに変えてくるというのは、何か解散前に浮き足立っているんでしょうか。旧統一教会の何かお達しでもあったんだろうかと、私なんかはちょっと不安になってしまいます。

 一言でお伺いしたいんですが、性同一性そして性自認、全く同じ内容だということでよろしいですね。

新藤議員 今お話を聞いて、私、びっくりしたんですけれども、そういうよこしまな、選挙があるから何か言葉を変えたのかというようなお考えがあるということを、そういうことを考えているというのが、私、びっくりしました。

 これは理念法であって、性自認という方を認めたらそれで何かをやりましょうとか、性同一性ということでそれを定義をして、そこに当てはまる方について、では、何かの行動、アクションを起こしましょう、一切ございません。性同一性であろうが、性自認であろうが、ジェンダーアイデンティティーであろうが、いわゆる性の多様性について理解を深めましょうということで、全ての国民の方々を対象に、性の多様性の理解を深めましょうという理念法ですから。

 今先生がおっしゃっているのは、実定法として、何か、この言葉にしたらば、それに対して、そこに活動が伴っていくので、言葉を変えると、その今までの方とは違う、対象が変わってしまうのではないかという御心配なんですけれども、それは実定法を作るときのお考えなんです。

 理念法は、あくまで、いずれにしても、性の多様性という全体的な問題を、全ての国民にとってという、そこの理念法であるということは、私、何度も冒頭から申し上げていますけれども、どうもそこのやり取りがいつも違う方向に行ってしまうので、是非ここは理念法としての議論をしていただきたい、このように思います。

吉田(は)委員 理念法であるからこそ、なぜ変えたというところは、やはりなかなか納得のいかないところではないかと思います。

 実際、今、新藤委員おっしゃっていただいたように、みんなで本当に理解を深めていこう、これは何かを制限したり、何か規定していくというものではないというふうに今おっしゃっていただいたと思うんですけれども、一つ確認させてください。

 ということは、もう一つ、今、自治体の方で不安になっているところがあります。というのは、例えば文京区の方では、これまで条例の中で性自認という言葉を使っています。そして、差別をしてはいけないというふうに規定しているんですね。そのほかたくさんの自治体がこういった先進的な取組をされているんですが、今回、こうして文言を変えることによって、法律、条例、その位置づけがあるかと思うんですが、職場や今までの取組には影響ありませんというふうにおっしゃっていただきました。

 こうした、既に成立した条例、また自治体の取組に影響を与えるものでもないということでよろしいでしょうか。

新藤議員 もとより、条例は法律の範囲で定められます。そして、条例制定権に基づいて、国がその条例の内容について、法律の範囲であれば影響を及ぼすことはありません。そして、今、既に地方自治体で条例がしかれている、差別禁止条例のようなものがしかれていることも承知をしております。ですから、私たちがこの法律に基づいてまず何かを起こすことはありません、理念法ですから。

 そして、その上で、この法律に基づいて、国が、基本計画、今行われていることを一つにまとめて整理をする。そして、その基本計画を実効性あらしめるために、指針を作るべきだということを私たちは提案をしたいと思っています。この指針に基づいて、国が、そういうことが定められると、この法律の中で、地方自治体は国と連携してその事務を行ってくださいということをお願いしております。

 ですから、条例の取扱いをどうするかは、これは自治体がそれぞれ適切に対応をなされる、このように考えているわけです。

吉田(は)委員 ここで言うところの、私、なぜこんな不安を感じたかというと、まさに、古屋議員のブログにあった中で、今回のこの法律は、言葉をそのまま読みます、多くの皆様から御指摘いただいた懸念を払拭しており、かつ、この法案はむしろ自治体による行き過ぎた条例を制限する抑止力が働くこと等を強調したい、このように書いてあるんですよ。

 なので、この理念法によって、自治体が今まで取り組んできたことを押さえつけたり、これから、そういった性自認を使って、また、差別を許さないというような条例を縛るものではないということでよろしいでしょうか。改めてお伺いします。

新藤議員 差別があってはならないのは、条例ではなくて、本来、憲法の下で差別はない、このようになっているわけであります。ですから、その範囲で自治体が条例を定めています。その表現についても、どのような表現をなすべきかは、国が条例制定権に介入することはない、これは何度も申し上げます。

 その上で、しかし、国の指針なり国の形が、今はそこがはっきりとしたものがないものですから、それを研究して、きちんとした形を、皆さんがよりどころになるようなものを作るべきだということを私たちはこの法案で促しています。ですから、それに基づいて、地方自治体の事務は国との連携の中で行われていく、そして、判断は地方自治体が行っていく。文言をどのように使ったらいいか、これも自治体が国の指針に基づいて適切に判断をされる。こういうことになるわけです。

 そして、この法案ができたから何かの制限をする、介入するためのきっかけになることではないというのは、理念法ですから、何度も申し上げたいと思います。

吉田(は)委員 今、新藤委員からはっきりとおっしゃっていただいて、ありがとうございます。これは、自治体の条例制定に、言ってみれば、口出しするものじゃないよ、自治体が忖度しなくてもいいよ、条例制定権は自治体にあるということをはっきりおっしゃっていただいて、ありがとうございます。

 今、質疑の時間が来てしまったんですけれども、大丈夫ですか、もう終わりですか。

藤井委員長代理 時間が来ておりますので。

吉田(は)委員 はい。

 では、この問題、指針に関してはまだこの中には入っておりませんので、引き続き、こちらの方は議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

藤井委員長代理 次に、堀場幸子さん。

堀場委員 日本維新の会、堀場幸子です。

 このLGBTQの皆様に対する法律案ですけれども、様々、いろいろなところで国民の皆様に議論を巻き起こしているところだと承知しております。質疑時間が十分しかないので、こんなに短いのでちょっとどうなのかなということも思っているんですが、早速始めさせていただきたいと思います。

 そもそも、憲法十四条の下、全ての差別が禁止されているにもかかわらず、それを特出ししてLGBTQの皆様に対するこの法案が出されているのは、その皆様に対する理解が余りにも進んでいないからだということは承知をしております。ただただ好きな人と一緒にいたいとか生活を一緒にしたいという気持ちを否定する、そして、そこから社会的な評価が変わってしまうというようなことはあってはならないと強く思っています。

 しかし、一方で、懸念点が幾つかあるということも思っています。

 それは、先ほども質疑が何度もありましたけれども、一つ目は、合理的な区別と非合理的な差別の境界線が曖昧で、多くの国民が不安に思っている点です。娘を持つ母親なんですけれども、私自身も女性ですし、様々な方と接してきたところで、やはり怖いなと思っている方々がいらっしゃる。それに対して、この法案がそういった安全を脅かすものではないということをやはり質疑していかなければならない。それは私たちはこの委員会での責任だと思っております。この点について懸念を持っているということが一つ目。

 そして、今回この法案が出されるというのは、既に多くの自治体で、先ほども質疑がありましたが、LGBT関連の条例が制定されておりますが、ここで国の標準的な、基準的な法を制定することの意味というのは理解しています。そして、特に子供たちへの教育、これには、今世界中でいろいろなことも起こっていますけれども、保護者の理解とか子供たちへの特別な配慮が必要ではないか、こういったことも考えており、懸念だなと思っているところでございます。

 こういった質疑をしていきたいと思います。

 まず、私、三月二十九日に内閣委員会の一般質疑にて質問させていただきましたけれども、この法案が成立した場合、公衆浴場における衛生管理要領より上位になるんですけれども、対応に何か変化が起こるか、教えてください。

牧島議員 お答えいたします。

 本法案は、まず、理念法であるということ、そして、公衆浴場などの個別の女性用の施設等の利用の在り方について影響を与えるようなものではないと考えています。

堀場委員 次に、日本では公共トイレの問題というものを私どもは考えなければならないと思っているんですが、公共トイレで、様々な、子供とか女性も含めてですが、同性でもあるというふうに聞いていますけれども、性被害を訴えられている方が多いんですよね。そういった課題が指摘されていると思っています。

 性被害者への配慮というものは必要だと思います。例えば、痴漢によく遭うからということで女性用の車両がつくられた、これは私は被害者に対する配慮だと思っているんですけれども、そういった配慮と、性同一性での性のトイレの利用やジェンダーレストイレといったものの両立は可能だとお考えでしょうか。また、この場合、合理的な区別と非合理的な差別をどのように分けるのか、お答えください。

    〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕

牧島議員 まず、本法案の基本理念は憲法十一条を踏まえて定められています。なので、全ての国民が、その性的指向又は性同一性にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるということが重要であります。今委員から御指摘があったように、性被害があってはならないということは、当然、憲法上も要請されているものであるというふうに考えております。

 この理念法においては、個々の具体的な事柄について定めるものではございません。ですから、具体的な規定の内容を見ても、誰かに法的な権利を与えたり、権利を制限したりするようなものは含まれておりません。ただ、不安につながるようなものであってはならないということはそうですし、施設の利用の在り方に影響を与えて不安につながるようなものにならないようにしなければならないということだというふうに理解をしております。

堀場委員 ありがとうございます。

 やはり、LGBT、私はQももっと含めていくべきだとは思っているんですけれども、その中で、性自認、先ほどもずっと性自認の話と性同一性の話と、我が党は国民さんと協議の上でジェンダーアイデンティティーという言葉を使っておりますが、こういったものと、性を自称して犯罪行為を行う方がいらっしゃる。これは分けて考えなければならない、それがトランスの皆様に対する差別につながってしまうということも懸念もしているんですけれども。そもそも性自称というものは、性自称することはいいんですが、性自称で何かをするということは犯罪に当たる、それがトランスの方とは特に大きな、トランスの方がイコールではないということも、ここでしっかりとお話をさせていただきたいと思います。

 次に、この法案で、LGBTの教育や啓発に努めると規定されています。学校教育の現場では性教育もしていない現状で、誰がどの程度啓発するのか、そして、海外では保護者による強い抗議運動も起きているんですけれども、配慮規定というのはどのようになっているか、教えてください。

阿部(司)議員 お答え申し上げます。

 まず、教育、啓発については、学校の役割は非常に重要であると認識しております。他方で、学校でこうした教育、啓発を円滑に行いまして共生社会の実現という理解増進法本来の目的を達成するためには、保護者の皆様の理解、協力が不可欠であると考えております。

 そのため、こちらの案では、保護者の理解と協力を得て心身の発達に応じて行うという修正を加えた次第でございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 やはり、学校の現場の先生たちにこれをやっていただくというのは非常に難しいので、設置者の皆さんによく考えていただきたいなというふうに思っています。

 ダイバーシティーとか共生社会、これは、学校で今やっているのはインクルーシブ教育システムですよね。これをやるために、今、日々頑張っていると思うんですけれども、許容して、違いを受け入れて、そして合理的配慮をしていくというのが大前提になっておりますので、そういったことも含めて、この法案で定められている理念がしっかりと伝わっていくようにしていかなければならないなというふうに思っております。

 最後に、維新、国民案では、原案から、民間団体等の自発的な活動を促進するという文言を削除されたと聞いておりますが、その経緯を教えてください。

阿部(司)議員 お答え申し上げます。

 国、地方公共団体が民間団体等と連携協力することが必要な場面も数多くあると考えておりますけれども、これは数多くの民間団体がある中での施策の例示であると考えておりまして、あえて明記をしなかったことでございます。

 まずは、国、地方公共団体やその職員の理解を増進していくことが必要であると考え、削除をいたしました。

堀場委員 やはり、責任の所在ということから考えても、国であったり地方自治体に責任があるものでありますよね。なので、民間団体の皆さんはすごく頑張っていただいているし、イデオロギー的なものもあるかもしれないですが、それ以上に受容という形で頑張ってくださっている民間団体の皆様もいらっしゃいますので、そういった皆様、ただ、一義的な、こういった理解促進の責任というか、やっていく主体としては、やはり、国であり地方自治体であり、そういった皆さんなんだろうというふうに思っています。

 私たちはこの法案をどのように考えるべきなのかという、これを機に、本当にたくさんの議論が巻き起こったと思っています。短い時間で、本当はもっともっと質疑をしていかなければならないことはたくさんあると思います。けれども、やはりこれが今必要だという状況にあるのかないのかも含めて、これは私たち、本当に厳しい判断だったと思うんです。でも、本当にしんどいと思っている人たちもいるんだということも私たちはしっかりと念頭に置いて、ダイバーシティーであったり共生社会を目指して一緒に頑張っていきたいなと思っております。

 私、このLGBTの話、女性の話もそうなんですが、何度もこの内閣委員会で質疑をさせていただいてきました。本来であれば、本当の共生社会は、恐らく、例えば同性婚が認められる、若しくはパートナーの人たちが様々なパートナーシップとして一緒にいられて、あそこのお父さんとお母さん、若しくはお母さんお母さんかもしれないし、お父さんお父さんかもしれない、ああ、そうなんだと子供たちが普通に、ああ、あそこはそうなんだね、ふうんぐらいになるのがきっと共生社会であって、そこを目指していくためには、まだまだ大人側の、私たちの理解が必要なんだということ。

 そして、変わっていく、子供たちはまだ純真で、何も分からない状態の子供たち、生まれたときにはそういったものに対する差別心は持っていないわけですから、そこから成長していく過程の中で彼らはいろいろな気持ちを持ってくる、これがおかしいだとか変じゃないかと思うのは、周りの大人の影響が非常に強いと思っておりますし、そういった環境がどんどん整備されていくこと、これを願いまして、私の質疑を終わらせていただきます。

大西委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスでございます。

 本日は、各提案者の皆様、大変お疲れさまでございます。

 時間がありませんので、早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 我々国民民主党といたしましても、ジェンダーアイデンティティーや、そして性指向にかかわらず、誰もが安心して生活ができる、そして、望む人と結婚をしたり一緒に暮らしたりすることができる、そういった社会を当たり前にしていくことがとても重要だと考えております。そういった中で、この法案がそれに一つでも近づくものになるということがとても大切だと考えております。

 これまでは、ともすれば、体の性とそして自分の本当の心の性が違う人というのが奇異の目で見られてしまったり、また、自分が望む相手と結婚をして生活をすることができなくて、不幸せな生活を送ることを余儀なくされてきたのがこれまでの日本の姿、世界の姿だと思いますので、しっかりとそれを変えて、先ほど堀場委員のお話の中にもありましたけれども、同性婚も含めて、しっかりと皆様が安心して自分のパートナーと生活を送れる、そして差別することがない、されることがない社会を築いていかなければならないというふうに考えております。

 この法案の審議の中、また様々な議論の中で、とても私が不安に思ってしまったことが、自公の提案の案で、性自認という言葉が性同一性という言葉に置き換えられてしまったということでございます。

 法的な意味、枠組みは変わらないんだということを法制局から私たちも説明を受けましたけれども、私が初めて性同一性という言葉に触れたのが、性同一性障害という障害が世の中に広く知れ渡るタイミングでございました。ともすれば、性同一性という言葉は、性同一性障害と一緒になって使われてきた、心の性とそして体の性が一緒ではない状態が障害だとみなされてきた時代に広まった言葉であるというふうな認識を持っております。そういった意味で、今、政府の方でも、そして様々な団体でも性自認を使っていた、法案でも、議連の法案では性自認という言葉を使っていたのに、わざわざこのタイミングで昔の性同一性というイメージを想起させるような言葉を使うということには、私は一定の懸念を持って当然だというふうに思うんですね。

 今回のこの質疑の中でも、性自認、性同一性の言い換え、これは意味は変わらないんだということを、常々、何回も御答弁されていますけれども、では、なぜ言い換えたのかということにやはりなってしまうと思います。

 繰り返しの質問になって恐縮ですけれども、自公の提出者の方に伺いたいんですが、性自認を性同一性と言い換えた理由、法的な枠組みは一緒だというのならなぜ言い換えたのか、そこら辺も含めて、是非御答弁をいただきたいと思います。

新藤議員 まず、法的な効果は同じだ、そして、性同一性も性自認も、元の言葉は英語で言うとジェンダーアイデンティティーで同じである。ですから、この三つはそれぞれ使い方が違います。慣用的に使われているのはどうかということもあると思います。

 まず第一に、私ども自民党が一番最初に出した案は、性同一性という形でやっておりました。それを超党派の中でいろいろ御議論があって、政府の方でも、当時は、よく使われている言葉だということで、性自認というものになりました。しかし、中身は同じなんですが、最近、この性自認ということに対して不安の声も聞かれるようになりました。ですから、それを想起してはならないということが一つ。

 一方で、性同一性は、性同一性障害法、だから性同一性障害に認められないと今回の対象にならないのか、だから後退だという御心配もあります。これは、全て、その心配には及ばないと思っています。

 私は何度も申し上げていますけれども、性同一性、性自認、ジェンダーアイデンティティー、いずれも、性の多様性に関わることについて、性的マイノリティーの方もマジョリティーの方も、みんなで理解を深めて、そして共に穏やかに暮らしていける、個人の尊重し合える共生社会をつくろう、それを国として、それはどういうことなんだという計画を作りなさい、計画を作った中で、それをどのように取り扱っていくかという指針を決めていこう、私はこれを提案しているんですね。それに基づいて、どんな対処をしていくかということがこれから進んでいくということになるので。

 現時点で言葉がどう変わっても性の多様性という対象は何ら変わらないんだということを、逆に御心配いただいているので、そこは私たちは国会審議の中できちんと丁寧に説明しながら、あたかもこれによって新しく加わった人がいるとか、それから外されてしまった人がいるとか、そういったことがくれぐれもないようにしなければならない。

 これは御質問いただいてありがたいと思いますが、丁寧な説明、そして、それは国民の皆様にもきちんと伝わるようにしていきたい、このように考えています。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 言葉をめぐる議論で、大分議論の本質からずれてしまったような意見もネットを中心に散見をされていて、その部分の懸念を払拭していくことはとても重要だと考えております。

 こういった混乱が起きている中で、我々国民民主党会派も維新の皆様と一緒に提出させていただいた案では、ジェンダーアイデンティティーという言葉も、英訳では一緒なんだという説明ばかりなので、では、もうジェンダーアイデンティティーのままにしようということで、性自認、性同一性のところを変えさせていただいたんですけれども、その意図について、改めて提出者の方から御説明いただきたいと思います。

岩谷議員 自公案の性同一性と、それから立共案の性自認、これはいずれもジェンダーアイデンティティーの訳語ですから同じだということは、繰り返し、先ほどから答弁でも出ています。ただ、これまでの経緯の中で政治的な意味合いを持ってしまって、対立軸になってしまっている、ここが問題だと思っています。

 そこで、そうであるならば、この際、原語であるジェンダーアイデンティティーをそのまま訳さずに使うことで、多くの方々から賛同と御理解を得られると考えたところであります。

 それと、このジェンダーアイデンティティーという言葉は国際共通語でありまして、G7サミット等でも公式に日本語訳としてそのまま使われておりますことから、用語としてしっかり定着しているものだというふうに考えられるところであります。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 要らぬ誤解を解いて、しっかりと性同一性、性自認、そして性指向、そこの理解を促進していくという中で、一つの判断として、是非皆様にも御賛同いただきたいというふうに考えております。

 少し時間がありませんので、最後に一問質問させていただきたいと思います。

 この法律、理解増進法が成立することは、まさに入口だと思っております。先ほどから理念法であるという説明が繰り返されていますけれども、しっかりとその先をこれからも追求していかなければならないと考えております。

 こういった理解増進法、今回成立をした、成立できるかどうかはこれからですけれども、成立した暁には、性別に基づく差別の禁止という部分には、ジェンダーアイデンティティーや、あるいは性指向に基づく差別も行ってはならないんだということを、しっかりと明確に各省庁での取扱いの中でしていくことが必要だというふうに思います。

 男性、女性に基づく差別だけではない、そこにはやはり性同一性、ジェンダーアイデンティティー、性的指向、こういったものが異なる方々というのも含まれるんだということをしっかりと明確にするように検討を行っていくべきだと思いますけれども、我々の国民会派、そして維新会派の方から、提出をいただいた提出者の方から御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

岩谷議員 現行法上も、憲法十四条などから、不当に差別はあってはならないということになっているわけであります。

 それを前提に、今御質問の御趣旨というのは、性的指向とかジェンダーアイデンティティーを理由とする差別を法律で禁止して、その違反に対して何らかの措置を行う、何かそういうイメージかと思いますが、しかし、現時点では、何が差別に該当するかということについて必ずしも社会的合意が形成されるに至っていないと考えております。仮に、そのような状況下で拙速に差別の禁止や差別の解消のための措置を規定し、それを実施するということになれば、かえって混乱を招くようなおそれもあると考えております。

 また、当事者の皆さんの御意見としても、差別禁止を求めるような声もある一方で、性的マイノリティーを特別なカテゴリーとして扱うのではなくて、ごく自然に受け入れてもらえればよい、差別禁止と大ごとにしてほしくない、そういった声も寄せられているところでありますので、こうした多様な声を踏まえる必要がございました。

 このような考え方から、本法案では、まずは理解の増進を目的とした法律として作りまして、差別禁止規定は設けなかったところでありますが、また今後、差別の禁止の法制化を検討することがあったとしても、今申し上げたような観点というのはしっかり踏まえた上で検討されていくべきものと考えております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 以上で質問を終わらせていただきますけれども、やはり一番大切なことは、ジェンダーアイデンティティー、そして性的指向にかかわらず、どのような方でも安心してパートナーと一緒に暮らせる、そして、男性、女性の性別の、異性のパートナーと同じ保護を受けられるような、そうした環境をつくっていくことが最も重要かと思っておりますので、しっかりと引き続き取り組んでいきたい、政府・与党の方にも、是非皆様に呼びかけて取り組んでいきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 LGBT理解増進法案三案について質問いたしますが、そもそも、今回の審議で、三案それぞれ重要な論点がある、そういった時間をかけるべき議論をこんな短時間で行うこと自身が納得のいかないものであります。更に加えて、第四案というべき修正案が出されるということであれば、今日の審議で終わりにするような話ではありません。十分な徹底した議論こそ行えと。今日の質疑終局、採決というのは全く納得いかない、このことを強く申し上げておくものであります。

 そういう点でいえば、今回、修正案が出されるということで、その方向で四党が一致するということであれば、基本的にこの中身というのは維新、国民案をほぼ丸のみするような中身となっているということで、そういう点でも、維新、国民案の提出者にまずお尋ねをいたします。

 全ての国民が安心して生活することができるよう留意するとの条文を新設している点についてでありますけれども、維国案は、シスジェンダーの権利を尊重する視点から、全ての国民が安心して生活することができるよう留意するとの条文を新設していることが最大のポイントとしております。シスジェンダーとは、生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致している方、トランスジェンダーではない多数派のことであります。

 この背景に、シスジェンダーの女性がトイレや浴場、更衣室で不快な思いをすると問題だ、行き過ぎた人権の主張若しくは性的マジョリティーに対する人権侵害を阻止しないといけないとの主張があります。

 トランスジェンダー排除の問題にとどまらず、性的マイノリティー以外の権利擁護も必要との発想は、多数派が認める範囲でしかマイノリティーの人権、尊厳は認められないとのメッセージにもつながりかねません。マイノリティーに対する差別をなくそうという流れに逆行するものではありませんか。

阿部(司)議員 お答え申し上げます。

 もとより本法案は理念法でありまして、具体的な規定の内容を見ても、誰かに法的な権利を与えたり権利を制限したりするようなものは含んでおりません。

 したがって、女性用の施設の利用の在り方を変えるようなものではなくて、施設等の利用、男女別スポーツなどの身体的な区別が必要な場合は引き続きあると考えておりますし、本法案が成立した場合、直ちに施設等が安心して利用できなくなってしまうとも考えておりませんし、一定の方々の権利を制限するものではないと考えております。

塩川委員 マイノリティーの人権、尊厳は認められないという方向でのメッセージにつながりかねないという、その点での懸念を訴えているわけで、差別や偏見が根強い中で、性的マイノリティーにとって安心して生活できるようにするための理解増進にそもそも逆行するものだと言わざるを得ません。

 あわせて、維新、国民案の提出者にお尋ねします。

 議連合意案にありました、民間の団体等の自発的な活動の促進を削除しているのはなぜか。理解増進法という法律の趣旨に反するのではありませんか。

阿部(司)議員 お答え申し上げます。

 国、地方公共団体が民間団体等と連携協力することが必要な場面も多く存在すると考えております。ただ、これは施策の例示ということで、あえて明示をいたしませんでした。

 国、地方公共団体やその職員の理解を増進することがまず必要であると考えております。

塩川委員 この例示というのは三つしかないんですよ。知識の着実な普及と、相談体制の整備等、民間の団体等の自発的な活動の促進。そういう点では、重要な三つを記載しているのに、その一つをばっさり削るということになれば、民間団体の方々がこれまで居場所づくり事業や各種相談事業などを積極的に担ってきており、民間団体と連携して啓発活動を行っている自治体もあります。その中で、民間団体の自発的活動の促進の項目を削るということは、現状からの後退を招きかねず、理解を増進させようとする法の趣旨に反するということを言わざるを得ません。

 次に、自民、公明案の提出者にお尋ねいたします。

 自公案の立法作業に関与した幹部は、この法案は自治体による行き過ぎた条例を制限する抑止力が働くなどと述べております。自治体による先進的な条例を抑え込むようなことにつながるのではありませんか。

新藤議員 私はそういうことを発したことはございませんし、誰が言っているのかは私は承知をしておりません。

 そもそもがこの法案は理念法であって、先ほどから先生は何かこれによって事態が変わるかのようなことを御心配いただいているわけなので、御心配いただくのは結構だと思うんですけれども、この法案によって何かが定義づけられたり、それから対象が固まったりということはないわけです。そういう問題にどう対処するかを考えるべきだということを我々は政府に促しているものであって、この法案によって新たなものが生まれるわけではないと何度も申し上げております。

 そして、自治体に対しては、これは先ほども申し上げましたように、条例制定権の範囲で、法令の範囲で適切な条例がなされていることと思いますが、その条例の運用については、今後、これから定められる性の多様性に関する基本計画や指針に沿って、これもまた自治体がそれぞれの判断で適切に対応していくもの、このように考えているわけです。

塩川委員 マイナンバーのように、自治体に次から次へと余計な仕事を押しつけているような国ですから、そういう点での重大な懸念というのは当然浮かぶわけで、理念法だから事態が変わるものではないといったら、じゃ、何のための法案なんだという話でもあります。

 そういう点でも、この後聞きますけれども、修正案においては、この部分について、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意する」、その文言も変えた上で、国の指針を作成するということが挙げられているわけですから、そういう点では、国が方向づけをするということに当然なってくるわけで、この問題というのは看過することができないということを申し上げておきます。

 次に、立憲、共産案の提出者の宮本岳志議員にお尋ねをいたします。

 この間、トランスジェンダーは女性トイレや女風呂などの安全を脅かす存在だという主張がありますが、この点についてどのようにお考えか、宮本議員の見解を伺いたいと思います。

宮本(岳)議員 御質問ありがとうございます。

 私、立民、共産提出者としてこの場におりますけれども、あえて私の見解をということでございますので、答弁を申し上げたいと思います。

 一部に、体は男性だが心は女性と自称する人が女性トイレや浴場に入るおそれがある、そのためにも性自認という言葉は使わないとの主張があることは承知をしております。これは、極論を言うことで差別と偏見をあおる暴言であり、個人の尊厳と運動や世論を敵視するものだと考えます。トランスジェンダー、体の性別と自分の認識する性別に違和がある人、そういう方々の排除をあおる主張は決して許してはならないと考えます。

 また、この法律ができると女性の安全が脅かされるのではないかといった不安の声も出されております。そもそも、今回の理解増進法案は、三案とも、女性専用スペースや男女別施設の利用基準やルールを変更するものではありません。先ほどから三案とも全ての答弁者は繰り返しております。

 安全と安心は全ての性の視点で保障されなければなりません。女性の人権、安全を守ることと、トランスジェンダーの方々の人権、安全を守ることは、決して対立するものではありません。

 トランスジェンダーの方たちの現実の苦悩を軽視せず、排除することなく、性の多様性を認め合い、誰もが個人の尊厳を尊重される社会をつくることが求められております。その一歩として、私ども立共案、議連合意案の成立が必要であると考えております。

塩川委員 引き続き、立憲、共産案の提出者にお尋ねいたします。

 自民、公明案、維新、国民案においては、学校設置者の努力として独立させていた議連合意案の条文を削除し、事業主等の努力の条文に落とし込み、格下げするような形にしております。この点についての評価をお答えいただきたいと思います。

宮本(岳)議員 ありがとうございます。

 私、二年前の議論から加わっておりますけれども、本法案の基になった二年前の超党派議連合意案では、特に、子供たちの間での差別やいじめをなくす努力がひときわ大切であることから、議論を重ねた結果、学校設置者の努力として独立した条文とすることで合意したわけであります。

 これが、自民、公明案及び維新、国民案では、事業者の努力と同一の条に規定し、見出しからも削除されておりまして、学校設置者の努力を軽視する意図を有するものであり、我々立共案の提出者としては、適切ではない、こう考えております。

 ありがとうございました。

塩川委員 徹底した審議が必要だということを申し上げて、質問を終わります。

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 よろしくお願いいたします。

 今回、性自認、性同一性、ジェンダーアイデンティティーという言葉がそれぞれ使われておりますが、定義規定に変更がないんですよね。その定義規定はどういうふうにまとめられているかというと、最後、意識という言葉でまとめられています。

 全提出者にお伺いをいたしたいと思います。これは、主観を意味するものだということでよろしいですか。提出会派を代表して答弁いただければと思います。

高階議員 私どもの提出しております性同一性についてでありますけれども、性別に関する同一性の有無又は程度に係る意識が、本人の主観的な意識を指すということはそのとおりなのでありますが、一方で、この言葉は、その時々の本人の情緒的な動き、それから勝手な主張のことを指すということではないわけでありまして、自分自身の性についてのある程度の一貫性のある受け止め、認識、このことを指すということで、アイデンティティーを指すものとして定義をさせていただいております。

西村(智)議員 性自認については、性別に関する同一性の有無又は程度に係る意識が、本人の主観的な意識を指すことはそのとおりでありますが、一方で、この言葉は、その時々の本人の勝手な主張のことを指すものではございません。性自認とは、自身の性についてのある程度の一貫性を持った認識のことであり、私自身の性別とはこういうものだという、その人らしさ、アイデンティティーのことを指すものでございます。

浅野議員 お答え申し上げます。

 さきの答弁者と同様な内容になりますけれども、ジェンダーアイデンティティーについても、同一性の有無又は程度に係る意識が、本人の主観的な意識を指すことはそのとおりでありますが、本人のその時々の主張を指すものではございません。ある程度の一貫性を持った認識のことでありまして、私自身の性別とはこういうものだという、その人らしさ、アイデンティティーのことを指すものだというふうに理解しております。

緒方委員 ありがとうございました。私も基本的にそういう考えなんです。

 そして、そういう中で、今回の法律というのは、LGBTの方々が静かな環境で暮らすことができるようにということが前提に置かれていることはもうそのとおりなんですが、ただ、世界の事例を見ておりますと、結構過激な、過激というか特殊なケースがありまして、先般、私、イギリスのジ・エコノミストという雑誌を読んでおりましたら、スコットランドの事例がありまして、性自認について、極めて主観を重視した制度運用がなされています。

 一時期、レイプ犯が、犯行後に女性を自認し、有罪宣告後に女性刑務所に入っていたことすらあるということでありました。その後、それはさすがに問題だということで改められたんですが、裁判においては、普通、男性の陰茎の部分はヒズペニスと形容するはずですが、裁判の書類でハーペニスというふうに形容されるぐらい、個人の主観に重きを置いた制度がつくられているわけです。

 法務省にお伺いしたいと思います。日本の刑務所での運用はいかがでしょうか。

小山政府参考人 お答えいたします。

 我が国の法律、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律では、被収容者は性別により互いに分離することとされております。

 私どもといたしましては、戸籍上の性別に応じた刑事施設又は区域に収容してございます。

緒方委員 ありがとうございました。

 こういう女性刑務所のようなケースですね。こういうところでどういうふうに扱うかということ。特に、これは公権力の行使ですので、公権力の行使のところで、どうしても私は、どういうやり方がいいのか分かりませんが、先ほど維新の堀場さんからもありましたが、合理的な区別というものを一定程度設けざるを得ないということなんだろう、そういうふうに理解をいたしております。

 もちろん、この合理的な区別というのは、何でもかんでも区別すればいいということではなくて、必要最小限だけれども合理的な区別というのを設けた上で、その上で、静かに、カミングアウトなんかしなくてもいいような世の中をつくっていくということだと思うんですね。

 そうすると、この法律の成立後作成する基本計画等において、最小限の合理的な区別というのが、これは差別じゃないですね、不当な差別ではなくて、最小限の合理的な区別というものが基本計画等において明確にされる必要があるのではないかというふうに思いますが、全提案者にお伺いしたいと思います。

山下議員 お答えいたします。

 そもそも、前提として、本法案については、誰かに個別的に具体的な権利を与えるものでもありませんし、個別具体的な事案について何が差別かということを判断するものではないということを踏まえた上で、御指摘のとおり、憲法上も、合理的な理由に基づく区別なり別異の取扱いはもう既に認められているというところでありまして、それをあえて本法の存在ゆえに変えるものではないということであります。

 その上で、本法で定められております基本計画、指針というのは、今後行われます学術研究であるとか様々な施策の整理に基づいて、適切な対応というものが定められていくんだろうというふうに思っております。本法はそういった理念を大切にしようというものでございます。

山岸議員 私たちは、今回の法案とは別に差別解消法案を提出しておりまして、性的指向又は性自認を理由とする差別の解消を目指す立場であります。

 今委員から、今後の話でございましたから、今後、こういった法案も目指している中にあって、その中でも、合理的な区別というものは差別解消法案で禁止される差別には当たらず、合理的な区別が必要になる事柄があるというのは、これはまさに委員御指摘のとおりだと考えております。

浅野議員 お答え申し上げます。

 合理的な区別というものを検討する必要があるかということなんですけれども、そもそも、先ほどからありますように理念法でありまして、国としては基本理念に基づいて各種施策の方針を策定するという作業が行われますが、その中で、合理的な区別についてというものは、現状、この法案の対象とするところではないというふうに理解をしてございます。

緒方委員 何か結構意見が違ったなという気がいたしましたが、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 今朝六時に、この法案で、元々自公、与党の出していたLGBT理解増進法が、維新の出している修正案にほぼ乗っかるような形での与党案の修正案が来た。それで、この流れで今日、この勢いで採決するという。これは熟議もへったくれもないですし、これで議会民主主義にのっとって法律を決めましたとはならないです。

 何より、LGBTの方のための法案であるはずが、今この社会で何が起きているか。自称トランスの人が女湯に入ってくるという、そのようなデマで、すごく分断があおられているじゃないですか。それで、国内でも既にヘイトクライムまで起きていますよね。大阪の弁護士で、トランスジェンダーの弁護士なんですけれども、殺害予告まで来ました。それで、六月六日に大阪の弁護士会でもこれに対する抗議声明、非難声明が出されているというのが、今、この日本の現状です。

 でも、一方で、今日この質疑で、そういったこと、ヘイトクライム、激しい差別に対して、これは駄目なんだ、この国はそういうことは認めないんだということの質疑も答弁もなかった。逆にそのような流れに譲っていくばかりの、このような政局で行われている法案の審議というのは最悪だなと思います。今日採決するべきではない。誰のための何を解決するべき法案なのかというところに、皆さん是非一度立ち返るべきだと考えます。

 そもそも、今回、三つの議員立法が、朝で四つ目となるんですかね、与野党から提出された直接のきっかけなんですけれども、総理秘書官がLGBTなどの性的少数者、性的マイノリティーに対して、見るのも嫌だ、隣に住んでいるのもちょっと嫌だという問題発言、そして、それに関連する岸田総理自らの不適切な発言でした。政権がそんなことを言うたらあかんやろ、差別やろ、そういうところから始まっているんですよ。

 これまでも、二〇一六年から野党側はLGBT差別解消法案を提案し続け、れいわ新選組としても、二〇二二年の差別解消法提出に参加しています。だから、れいわ新選組は差別解消法の成立を求める立場です。

 同性同士で結婚ができない、トランスジェンダーであるということを理由として就業が断られるなど、性的指向や性自認に基づく差別に苦しむ当事者が実際に存在して、法律的な保護を求め、多くの当事者が長年にわたり声を上げてきました。

 誰もが自分らしく生きられる社会の方が、それは国民全体にとっても生きやすい社会です。実際に、世界でも、目を向けてみれば、二〇二三年二月現在、三十四の国、地域で同性婚が認められ、アジアでも台湾が二〇一九年に導入しています。差別を禁止する法律も続々導入されています。

 しかし、日本では、同性婚も法律での差別禁止も認めないという現状。日本の性的少数者に関する法整備は、OECDの調査では三十五か国中三十四位と、ほぼワーストの状況だ。この国は、重い腰を全く上げようとしなかった。その理由は、後でまた時間があれば述べますが。

 代わりに、自治体が先んじて条例などの各種制度を整備してきた。だから、この国でトランスジェンダーの方がむちゃくちゃ差別されている、理解が全く進んでいないというわけではないんです。時計の針はこの国でも前に進んできたんです、自治体という足下によって。当然ですよね。住民がいて、自分の仲間がいて、家族がいて、そこに身近に性的少数者がいたときに、自分の仲間じゃないかと。この人たちは恐ろしい人じゃない、むしろ差別、偏見に苦しんでいるじゃないか。だから、差別が問題やないか、そういう足下での理解や必要性が深まって、各自治体で条例、制度が進んできました。

 自治体の条例で同性カップルを夫婦に準ずる扱いとするパートナーシップ制度は、三月二十三日時点で少なくとも二百七十一自治体です。市町村のみならず、都道府県も含んで、人口カバー率は六五%を超えています。さらに、性的指向や性自認に基づく差別を禁止する規定を盛り込んだ条例も、やはり都道府県なども含めて六十九自治体になっています。

 この国や国会議員がリアルの生活の場のそういった意識、当事者意識が低いのは仕方がないとしても、このようなボトムアップの、日本社会が前進しているという流れを受けて、真摯に今求めるべきは、差別解消の法制度ではないんでしょうか。むしろ、与党案の理解増進法案では、それが全くできないどころか、時計の針を戻しかねない。今日の質疑を聞いて、そういう意図を持っている可能性は極めて高いなと考えております。

 次から伺っていきます。

 まず、ヘイトクライムについてなんですけれども、冒頭申し上げました、六月六日に大阪弁護士会でも殺害予告に対する非難声明を出しています。与党案の説明者の新藤さん、ヘイトクライムに関しては絶対駄目だ、そういうメッセージを発せられますか。

新藤議員 理解増進法案によってそうしたものが評価されるわけではない、そして、ヘイトクライム、それは中身の程度によって現行法においてきちんと対応されるべきものだ、このように考えています。

大石委員 差別があって、ヘイトクライムが起きる。だから、差別はなくさなきゃいけない。そのためにも、政府として、ヘイトクライムは駄目なんだ、我々はそういう立場だというメッセージが絶対に必要だと思っています。

 続きまして、与党案の理解増進法案が成立することによって、地方において既に進んでいる差別解消条例、差別禁止条例についての妨げになるのではないかというのが、本日の質疑でも複数行われました。

 ちょっと納得がいかないというか、答えられていないんじゃないかということで、新藤さんに引き続きお伺いしたいんですけれども、古屋圭司、衆議院の方ですよね、ブログを出されていて、もう出されているんですよ、これなんですけれども。何か、そんなものは知らないようにおっしゃっていたので、これ、よかったらお渡しするので、見てほしいんですよね。

 これは、主語が、我が党は、自民党は、我々はと、全て主語は自民党にされています。その上で、「我々が目指すのは理解増進であって、一部急進的野党等が主張する差別禁止とは基本的に全く異なる別物なのだ。」と。そして、何度か出された、「かつこの法案はむしろ自治体による行き過ぎた条例を制限する抑止力が働くこと等強調したい。」と。

 この方は自民党の立場でおっしゃっているんですけれども、この法案を提出された方にお伺いしますが、この考えと同じですか。

新藤議員 先ほどから何度も申し上げておりますように、個々の議員が言論の自由の範囲で何を発言しているか、私は今のその話は承知しておりません。それから、自民党の会議の中でそうしたものをみんなで共有したこともございません。

 それから、大石さんは何か唐突に話が出たようにおっしゃいますけれども、これは、私たちも、もう七年前からこの問題に取り組んでいます。そして、二年前には超党派で工夫をして法案も出されました。ですから、何か今日突然審議が始まるようなことをおっしゃっていますけれども、既に国会の中では各党において様々議論がなされたものであります。そして、社会的関心が高まった中で、この法案をきちんと審議しようじゃないかということ、これは各党が合意をしてこの審議になっているわけでありますので、何かほかの政治的作為があるかのように言われるのは、私にすれば驚きでございます。

 国会の審議というのは、委員会の中できちんと皆さんが協議をされて、今日も理事会においてこの議事が決められているわけですから、国会のルール、その中で当てはめられたものを、何かほかの政治的作為があるというふうに言われるのは、私はそこは共有できないわけであります。

大石委員 私が言っているんじゃなくて、古屋圭司さんが言っているんですよ。私が突然言い出したんじゃなくて、古屋圭司さんが五月十六日に言っているんですよ。この考えがあなたと同じですかと聞いたんですけれども、もう答えなくて結構です。

 通告している質問だったんですけれども、私はこのように聞こうとしたんですね。今既に差別条例などがあるが、これ以降、制定を妨げたりグレードダウンさせないかというふうに聞いたら、答弁の要旨がこんなものだったんですよ。地方自治体は法令の範囲内で条例を定めることができると言っているんですよ。この答えは何かというと、やはり上乗せ条例は許さないということなんですよ。そして、これは古屋圭司さんの考えとも合っていくんですね。

 理念法だからとおっしゃっているけれども、理念法だと称して通して、後で指針で実際に縛っていくということができるように設計されているじゃないですか。全ての答弁に関しても、これは我々の考えと全然違うよ、むしろこれは時代を後退させる考えだねとおっしゃってくださったら、まだそうでもないのかなと思えるんですけれども、どう考えてもそうじゃないですか。

新藤議員 私は、条例に関して、先ほどから何度も申し上げておりますけれども、自治体が条例制定権の範囲で、国が定める指針、またそれは、この理念法の前に、そもそも憲法に基づいて、様々な分野で差別はあってはならないということで規制なりルールがあるわけです。それに照らして条例が適正であるかどうかは、これは自治体が判断をして行っていくわけなので、この問題でこの法案ができたから何かを縛ることではありません。

 しかし、問題は、今、性の多様性に関しては、明確な、統一された、全体を俯瞰したための計画もなければ指針もないので、結局、自治体単位や様々な現場で、それぞれの独自の見解で進んでしまっている部分も、対応している部分も否めません。ですから、そこをきちんと、全体的な、国としては縛るわけじゃないんです。自治体を縛れるんですか、あなた。自治体を縛るつもりでおっしゃっているんですか。そんなことはあり得ないんです。

大石委員 地方自治法でも、法律は……

大西委員長 大石委員、申合せの時間が経過しております。

大石委員 法律の範囲を超える条例を定めてはならないという規定があるんですよ。そのことをおっしゃっているんです、答弁で。

 時間がないので終わります。

    ―――――――――――――

大西委員長 この際、新藤義孝君外五名提出、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案に対し、新藤義孝君外三名から、自由民主党・無所属の会、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブの共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。阿部司君。

    ―――――――――――――

 性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

阿部(司)委員 ただいま議題となりました性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 第一に、この法律の目的に、性的指向及びジェンダーアイデンティティーの多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状について明記することといたしました。

 第二に、定義語である「性同一性」の文言を、「ジェンダーアイデンティティ」に修正することといたしました。なお、これに伴い、題名を含め、法案中の「性同一性」は、いずれも「ジェンダーアイデンティティ」に修正されます。

 第三に、学校の設置者が行う教育又は啓発等について、家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ行うものといたしました。

 第四に、国及び地方公共団体が講ずべき施策の例示から、「民間団体等の自発的な活動の促進」を削ることといたしました。

 第五に、本則の末尾に、「この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする。」との規定を追加することといたしました。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

大西委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

大西委員長 この際、お諮りいたします。

 各案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官廣瀬健司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより、特に、ただいま提出された修正案について質疑を行います。西村智奈美君。

西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。

 まず冒頭、この委員会の運び、極めて異例だということは申し上げなければなりません。修正案が出てきたのが今朝、私も今、手元にありましたのをたった今見ました。これで質問させていただくということになるわけですけれども、本来であれば、もっとしっかり中身を議論して、その上で採決にかけるべきだというふうに強く思います。これが前例になってはいかぬというふうに思います。強く申し上げておきます。

 さて、時間がありませんので、早速質問をさせていただきます。

 定義の問題です。性同一性がジェンダーアイデンティティーということに変わったと。

 これはいろいろな指摘がもう既にされておりますけれども、最高裁判決、これが性自認を使っているんですね。既にある行政文書なども性自認が使われております。先般まとまったG7の岸田総理が議長を務めたコミュニケでも、ここは性自認が使われております。

 こういった中で、私たちは、用語の一貫性が必要だということで、性自認ということで提案をさせていただいたんですけれども、今現にあるいろいろな行政文書、例えば指針とかいろいろあるわけですけれども、提出者に伺いますが、こういった用語が、仮にこの理念法の中でジェンダーアイデンティティーということになったとしても、他の行政文書の文言は変える必要がないということは確認したいと思います。

新藤委員 それは、それぞれの法令を所管する、また御議論をされる国会の中で検討がなされると思いますが、この法案の要請によって他の法律に何かが及ぶ、そういったことをこの法案の中には何にも定めはしておりません。

西村(智)委員 次に、条例です。

 自治体には条例制定権がある、新藤提案者おっしゃるとおりだと思いますが、その条例では、もう既に各地で、性自認による差別を禁止するような条例を制定しているというところが結構あるんですよね。もしかしたら、新藤提出者のお地元でもそういったことがあるかもしれません。

 これについても同様に、これは変える必要がない、提出者としてはそのように考えるということでよろしいですか。

新藤委員 これも何度も申し上げましたが、変える必要があるとか変える必要がないとか、そういったことはこの法令の要請するところではありません。あくまで自治体が判断をすることです、条例制定権の範囲で。

 そして、自治体の事務というのは、国の様々な法令や指針、こういったものを参考にしながら連携をして進められる、これが国と地方の関係でありますから、その中で適切な対応がなされていく、そういうふうに私は考えておりますし、先ほどから何度も申し上げております。

西村(智)委員 行政もそれから自治体も、言ってみれば継続性とか連続性とかいうものがあるわけです。仮に、これがジェンダーアイデンティティーに変わったということで、またそれを変えるとかいうような議論が惹起されるようであれば、私はこれは保守とは言えないというふうに思うんですよね。やはり、保守であれば、行政の継続性あるいは自治体のこれまで作ってきた条例、それを尊重されるべきだというふうに思います。

 今日は内閣府から急いで来ていただいて申し訳ありません。

 変える必要はないというふうに先ほど新藤提出者からも答弁いただいたんですけれども、そのことを、この法律が成立しました際に内閣府の方から各自治体などに周知をするべきではないか。これで、国会で法律が、文言が変わったから、自分たちも変えなきゃいけないのかなというふうに迷うことがないように、周知をするということをやるべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 一般に、条例は、国の法令の範囲内で、それぞれ自治体において御議論をなされ、適切に定められているものと承知しております。

 政府としては、法案が成立した後、国会での法案審議の内容を踏まえ、その法案を適切に施行してまいりたいと考えております。

新藤委員 今、私の発言を引用されましたので、ちょっとこれは正確に言っていただきたいんですが、必要ないなんて私申し上げていないですよね。

 これは、条例制定権の範囲で、自分たちが定めた条例をどのように取り扱っていくかは、自治体が独自の判断をされる。その判断の大本には、国との連携の範囲において、国の指針や様々な状況を勘案して適切な運用がなされていくだろうと。

 この法案が、条例を変えなさいとか変えなくていいとか、そういったことはこの法案の要請の中には入っていないと言っていることでありまして、条例を変えていいか悪いかというところに私は一切コメントしていない、そのことは明確にして、また共有していただきたいと思います。

 それから、先生から保守と言っていただけると、とてもうれしいです。ありがとうございます。

西村(智)委員 とはいえ、やはり自治体は国の方針を見るわけです。国の法律に従って、国が作ったテンプレ、こういう言い方はあれですけれども、それを見て条例なんかも作ったりすることが間々あるわけなので、私はそこはしっかりと周知をしてもらいたいということは申し上げておきます。

新藤委員 今のところはとても重要なポイントだと思うんですね。

 やはり、条例を定めるに当たって、どういう判断をしていいのか、その指針がない中で、いわゆる通念上、差別はあってはならない、これはもう憲法で定められていますから、性別、門地。LGBTだけじゃありませんよ。だけれども、性の多様性に関しては理解が進んでいないので、残念ながらいろいろなところで、理解の足りないところによって生きづらさを感じたり、それから心配をされている人たちがいる。だから、自治体においても判断に迷うところが出てきてしまっている。

 だからこそ、私たちは、個別に、それぞれは憲法に基づいて各法があるんだけれども、性の多様性に基づいてこうした一つの理念法を作って、政府において、これを研究し、何をやるべきかという計画を作り、その計画を遂行していく際の指針として、いわばガイドラインでございますけれども、こういったものを作ることで、自治体と連携が、また、学校現場や仕事場で、様々なところで皆さんが安心して暮らせる、そういうものの一助にしたいということで、今の御指摘はとても重要なところなんです。

西村(智)委員 私が質問を申し上げた趣旨はそういうことではないのですが、次に進みます。

 今回、十二条ですか、これが加わって、措置の実施等に当たっての留意ということなんですけれども、この措置というのはどれを指すんでしょうか。

新藤委員 この措置というのは、ここの法律で、努力義務だとか、様々なものをやりましょう、こういうもの全てに係っております。

西村(智)委員 ということは、法律第十条の第二項、第三項も含めてということでよろしいですか。

新藤委員 そうでございます。

西村(智)委員 そうしますと、つまり、維国案にもなかった指針を作るというのが、この後、新たにつけ加わったんです。これは初めて。初めてなので、この内容や作り方についても私は本当に時間をかけて審議したいところなんですけれども、これはどういうふうに作るおつもりなのか、その基本的な考え方を伺いたいと思います。

 つまり、既にもう指針はあるんですよ、パワハラ防止に関する指針ですとか、いじめ防止基本方針ですとか、指針がある。それを何か変えるとか、本当に当事者に寄り添ったものということで、まだ十分ではありませんよ、十分ではないけれども、職場それから学校、こういったところで困っている子供たちや労働者に寄り添った、そういったものにしようということで作っている指針を、これを上書きするものにはならないということでよろしいんでしょうか。また、これはどうやって作るんですか。

新藤委員 既にきちんと作られていて、それが正しく運用されているものについて、それを上書きするような必要はないと思いますし、そもそも、所管所管で必要な指針がある、ガイドラインがある、それはその所管に基づいて、その所管の法令に基づいてあるわけじゃないですか。

 ここの、政府は運用に必要な指針を策定するというのは、私どもの方から提案させていただきました。ですから、維新、国民が提案しているものと、それから私ども自公が提案したもの、これを合体させて修正案として四党が合意した、このように御理解いただきたいんです。

 ですから、何か維新案を丸のみしたというようなことをどなたかさっきおっしゃっていましたけれども、そうではなくて、維新、国民のものを取り入れたところもあります。それから、私どもの方で提案をしてやったところ、これは、最後の留意のところと、それから、その手前の、保護者の理解を得て教育、啓発活動を行おう、ここは家庭と地域の協力を得てという形に私どもで提案させていただきました。その方がより安定性が高まると思ったからですが。

 そのように、私ども、四党において、様々、よりよくするための修正をなされた。済みません、ちょっと余計な話になっちゃったんですが。

 ここの、今あるものに何か波及するものではありませんが、これから作るべき基本計画、どういうものにすべきかもこれから検討しなきゃなりません。それに基づいて、今、指針、何かがないがために迷っているようなものがまだ幾つもあると思います、性の多様性に関する問題で。そういうことについての、それはどうやって対応していくかという指針が今後できるのではないか。

 私は、答弁でこれまでも何度か、元々、党内においても、こういった議論をするときに、基本計画を定めるということは、その基本計画を実効性あらしめるための指針が必ず必要になってくる、だから、それはここに書いていないが、政府としてはそういったものが恐らくできることになるだろうということで私たちは自民党の中で議論してきたんです。

 でも、せっかくの修正の機会がありましたので、この際、しかもこれは留意事項ですから、そういったことをしたらどうかという提案も含めて、指針を定めてみてはどうか、こういう御提案を入れさせていただいたということでございます。

大西委員長 西村君、申合せの時間が経過しております。御協力お願いします。

西村(智)委員 大変残念です。

 学校教育法の文言に合わせたこの三項の修正は……(新藤委員「教育基本法」と呼ぶ)教育基本法、ごめんなさい。教育基本法に合わせたということでは、それは私はよかったというふうには思ってはいるんですよ。ただ、指針ですね、これは、さっきの御答弁ですと、基本計画を作ってから指針を作るということなんでしょうか。やはりそのときには寄り添うということですね、困っている方々に。

 是非、そのことは強く申し上げ、それは新藤提出者、うなずいていただいておりますが、やはりまだまだ聞かなければいけないことはたくさんありますが、大変残念ですが、時間になりましたので、これで終わらせていただきます。

大西委員長 次に、堀場幸子君。

堀場委員 日本維新の会の堀場幸子です。

 本当に、ずっと自民党さん、公明党さん御協力いただいて、我々日本維新の会と国民民主党さんでずっと協議をしてきて、様々議論をしてきた。そして、やはり、私もそういうときにいろいろ発言しているのは、常に、私は女性だからという意味ではなくて、たくさんの子供たちも怖い思いをするんじゃないかなと、これは前に内閣委員会でも言いました。その怖いという思いは否定しないでほしい、これを差別だと言わないでほしいということを何度も主張してきました。そういったことも含めて非常に有意義な議論をしていただいて、今回修正案が提出されるということは本当に喜ばしいことだとは思っています。

 確かに、質疑時間が短いですし、やはりもっと議論するべきこと、論点はたくさんあるんだろうとは思うんですけれども、我が党が主張させていただいていたことは、一番最初、ジェンダーアイデンティティーという横文字が入るということに対して、非常に話題にもなりましたけれども、これは本当にいろいろな方に受け入れていただける、それで、ジェンダーという言葉もアイデンティティーという言葉も社会的に結構認知されている言葉だと私は承知しておりますので、ジェンダーアイデンティティーという横文字を使っていく、こういったことも必要なことなのではないかというふうに思っております。

 そして、第二に、性的及びジェンダーアイデンティティーの多様性が本当に理解が十分じゃないという文言は、これは入れたいと思っておりました。こういった、やはり皆さん苦しい思いをされているという現状、だから、憲法ではなく、特出しでこの法令を作るんだというような思いというものも明記させていただく。そして、これも修正案の中でしっかりと入れ込んでいただくことができました。

 第三に、学校のこと、これは私もずっと言わせていただいておりますので、ちょっとこの後質疑をさせていただきますが、LGBTという教育はどういうふうになっていくのかということも含めて御議論をさせていただいていたと思っています。

 そして、第四に、民間団体等の自発的な活動の促進、ここが例示されるところなんですけれども、これの削除ということもさせていただいております。

 そして、やはり全ての国民が安心できるような法にしてほしいということも、これも皆さん同じ意見なんだなということをしっかりと考えさせていただきました。

 これは、私たちが言ったからというよりかも、先ほどおっしゃっていたとおり、世論もそうですし、自民党さんの中でも、そして公明党さんの中でも、こういった御議論は絶対あったと思うんですね。そういったものを、修正するならば書いていこうというふうに前向きに捉えていただいたこと。

 そして、やはり性的被害に遭っている人たちに寄り添ってほしい。ここも寄り添ってほしい。当然、LGBTQ、特にQ、さっきも言いましたQの皆さんというのは、子供では、やはり自分はどっちなのかなと悩んでいる、そしてそれを相談する相手がいないということはあると思います。これをどういうふうに捉えていくのかということも含めて、理解を深めなければならないという最初の一歩だというふうに思っております。

 この法案、私たちが出させていただいたものとちょっと変更している点について、少し質問をさせていただきたいと思います。

 保護者の理解と協力を得て行う心身の発達に応じた教育又は啓発というような表現で提案をさせていただいておりましたけれども、家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ行うという表現になったと思います。心身の発達に応じたという文言と、そして保護者の理解、協力というふうに定めなかった理由を教えてください。

阿部(司)委員 お答え申し上げます。

 既に原案十条一項で「心身の発達に応じた教育及び学習の振興」という表現がありまして、また、教育基本法六条二項で「学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。」とも定められております。

 維新、国民案の表現の趣旨は既に原案に盛り込まれているということで、この修正案となりました。

 さらに、同様の趣旨の表現として、教育基本法十三条に、学校、家庭及び地域住民その他の関係者は相互の連携及び協力に努めるという定めがあるとのことで、同様の定めをすることが法律としての安定性を高めるということで、この案となりました。

堀場委員 ありがとうございます。

 学校現場で更にLGBT教育というのをやるというのは、非常に私としては厳しいんじゃないかなという思いも持っています。それは、先生たちの理解促進というものが先に必要だということ、そして、今ある新学習指導要領の中にないものですから、ではこれをどうやってやっていくのかということは、先ほどから出ている、やはり研究を待たなければいけないんだろうなというふうに思っております。

 そして、もっと言うと、先生たちは今本当に大変で、○○教育というのに縛られて、非常に、自分がやっている教科教育以上にやらなければならないというのが課題となっておりますので、そういった先生たちの負担等々も考慮していただいて、是非、子供たちが理解をしていくというのは、本当に、発達段階に応じてやっていく必要性というものを我々自身がすごく認識する必要があるんじゃないかなということも申させていただきます。

 そして、全ての国民が安心して生活することができるようになるようにという文言を、私たち、さっきも言いました、いろいろな人がいるので、それに寄り添ってほしいということでこの文言を入れさせていただいたんですけれども、留意事項規定で、「この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定する」というふうにあるんですが、その趣旨を教えてください。

阿部(司)委員 お答え申し上げます。

 元々、この法案の眼目は、性的指向及び性同一性、ジェンダーアイデンティティーの多様性に関する理解の増進に関する研究を推進しまして、その成果を踏まえて、基本計画をもって国の方針を明確に示すことができれば、それがより適切な対応につながるというところがございます。

 マイノリティーの方、マジョリティーの方、全ての人の安全、安心につなげていくことができるように、これが大前提としてありまして、基本計画だけでなく、必要に応じてガイドライン、すなわち指針も定めることによって、更に理解の増進のための取組を後押ししていくことに資するということで、この文言があるといった理解をしております。

堀場委員 先ほどから、条例との関係性というのが議論になってきたと思います。

 当然、今もう既に、条例として、男女共同参画とかそういったもののカテゴライズの中でやられているところであったりとか、特出しされている、いろいろなところがあると思うんですけれども、やはり問題意識としてはみんなが持っている、LGBTQの皆様が非常に苦しい立場にある人が多い、そして社会的な差別を受けているということは、私たちとしては現状として認識していて、それをどのように進めていくかというところで少し差異があるのかなというふうに思っています。

 まずは、理解をしていくための必要な一歩目の法案として、今回、修正案が作られたというふうに理解をしています。

 やはり、これから宿題として残っていっているところというのは、社会的な合意形成が十分に進んでいないということが、今回、この法案を質疑していく前の前段階で、マスコミさんを含めいろいろなところで議論がされたと思います。SNSも、かなりたくさんの方からメッセージも頂戴しました。こんなにすぐに、質疑だったり、もう少しゆっくり作った方がいいんじゃないですかという御意見もたくさん頂戴しましたし、この短い質疑時間の中で作っていくということも一つ課題としてあったのかなというふうには思います。

 でも、やはりこの一歩を踏み出さなければ次に行けないんだろうなというふうに思っています。

 私としては、次には、やはり合理的な区別、非合理的な差別についてしっかりと研究がなされ、ガイドラインの中でしっかりと明示されていく必要性はあると思っています。でなければ、いつもここで、課題を生むというか、問題を、ここはどうなんだ、ここはどうなんだという細かい事例を挙げて、これはどうなりますか、どうなりますかというような議論というものが後を絶たなくなってくるというふうに考えています。

 理念法なので、そこまで言及はしていない、現状を変えるものではないというふうな理解はしているんですけれども、今後これを極端に利用されていく可能性というものもなきにしもあらずなのであれば、しっかりと今後も議論を続けていく必要性があるんだろうと思います。

 ここからがスタートです。しっかりと運用を見て、必要なことがあれば修正をしていく、そして、皆さんの幸せにとって必要な運用を今後もされていくことをお願い申し上げまして、私からの質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 それでは、修正案に関連して、何点かお尋ねします。

 修正案の最大の問題は、性的マイノリティー以外の権利擁護のためなどといって留意事項を新設していることであります。全ての国民が安心して生活できるというワードを用いていますが、多数派の権利擁護も必要として設けられているものです。この発想は、多数派が認める範囲内でしかマイノリティーの人権、尊厳は認められないとのメッセージになりかねません。これでは性的マイノリティーの方々の現実の苦悩を軽視するものではないのか。この点について修正案提出者に伺いたい。

 あわせて、学校における教育、啓発は家庭、地域住民その他の関係者の協力を得つつ行うと追加をしています。これも、多数派が認める範囲内での教育、啓発しか認めないという発想であり、あえて法律に盛り込むことで教育現場が萎縮しかねないのではないのか。

 こういった懸念についてはどのようにお考えでしょうか。

新藤委員 まず第一に、十二条は留意事項であります。義務ではなくて、そうしたことを気に留めながらやってくださいという、促しているわけでありますけれども、十二条に書かれていることは、全て三条の基本理念の中に既に定義されているわけです。ですから、私どもは最初、ここの部分は作っておりませんでした。

 三条の基本理念、これが立法動機でございますけれども、これに基づいて、全ての国民が、性の多様性、性的指向、今そこをジェンダーアイデンティティーという一つの言葉にするわけでありますけれども、そうしたものにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるとここにうたわれておりますので、今、塩川さんが御心配されるようなことは、それはこの法案が意図することではありませんし、そうしたことのないようにきちんと運用していくべきではないかというふうに思います。

 それから、学校が、指針がない中で、そこの学校単位若しくはクラス単位で様々な活動が行われる、これは子供たちにとっていい場合とそうでない場合が出てくると思いますよ。先生の自主性、すばらしい教師の皆さんが熱意を持って教育されているわけでありますけれども、やはり一定の、どういうような教え方をするかというのは、これは既に指針が作られております。

 そして、私どもの法案においても、まずは年齢的に幼稚園は除こう、それから、心身の発達に応じて教育また啓発活動してください、これは既に入っています。ですから、今後は、知識の普及、学校における啓発活動を行う場合には、家庭、これは保護者ですね、そして地域の協力を得ながらやっていきましょうということになりました。

 そして、保護者の理解ということになりますと、では、どなたかが理解しないと言ったらば、そこでそれは拒否権が生まれるのか、それから、保護者の理解は、要は、全国の全ての保護者なのか、クラス単位の保護者の同意なのか、学年単位なのか、学校単位なのか、地域単位なのか、様々なまたそういった懸念が出てくるわけであります。

 ですから、総括して家庭及び地域という、これは教育基本法の十三条に定められたこういった法的安定性のある文言を用いて、趣旨をここで明確にした、こういうことで御理解いただきたいと思います。

塩川委員 いずれの場合でも、多数派が認める範囲内でしかマイノリティーの人権、尊厳が認められないのではないのかといった危惧に応えるものではありません。指針も作るわけであります。

 今回の法案は、LGBTの方々に対する理解を増進することが目的のはずですが、こういった規定では、このようなマイノリティーに対する差別をなくそうという流れに逆行するものと言わざるを得ません。

 それで、指針ですけれども、例えば、今回の条文の中で、修正では、自治体の施策について、民間団体の自発的な活動の促進というのを削っているわけですよ。そうなれば、指針においてもこれを反映したものにならざるを得ないんじゃないですか。

新藤委員 これは、維新、国民の皆さんからも御説明をいただきましたけれども、例示なんですね。ですから、この文言が削られたことによって、団体の活動が、私たちが理解増進を進めてくださいという対象から外れることでは全くないわけであります。必要なことを、知識の普及と啓発をしましょうということで、しかし、団体という中に、ではどの団体なんだという、そこにやや不安定さがあるということも、私たち、党内でも議論がございました。

 様々な団体がございますから、そういったことも含めて、学校現場、職場、そして市民団体、いろいろな方々が多様性の普及に向けての活動をされるならば、それを私たちは支援をしていく、そういう指針を国としては定めていったらどうかということをここで提案しているのであって、ここから外れたことによって対象から除外される、また制約される、そういったことでは一切ない。ほかのことも含めてですよ。

 あくまでこれは理念法ですから、どんな対象で、どんな指針を作るかはこれから国が定めることで、この法律の中で定めることは何一つないということは是非共有していただきたいと思います。

塩川委員 例示で三つしか挙げていないんですよ。そのうちの一つの民間団体の自発的な活動の促進を削っているんですから、それを大きく引き下げるものになるというのは目に見えて明らかじゃありませんか。

 そういった点での指針の問題がありますし、大体、基本計画、指針の策定で、LGBTの当事者の方の参画というのは行われるんですか。会議体とか、LGBTの関係者、当事者が参画をする、そういう担保というのはあるんですか。

大西委員長 申合せの時間が経過しておりますので。

新藤委員 それは、この法律ではなくて、既に、そもそも、何かを定めるときには当事者のお話を聞くのはどこの場面においても行われることであって、そういったことも含めた検討がなされるのではないか。

 ただ、ここの中に、あらかじめ何かを決めるということではありません。なぜならば、理念法ですから、そういったものも含めて検討してください、国はそれを研究してくださいと申し上げて、促しているわけであります。

塩川委員 であれば、この法案審議のときに、LGBTの当事者の方に参考人でおいでいただいて、しっかり聞くべきじゃありませんか。まさに、理念法というんだったら、LGBTの当事者の方に当委員会に来てもらって、しっかりと意見も聞いた上で議論を重ねていく、こういうことこそ行うべきであって、今日のように、この後、質疑終局、採決なんてとんでもない。

 引き続き、審議を徹底して行って、LGBTの当事者の方、こういった差別の解消にしっかりと応えられるような取組を行っていくことを強く求めて、質問を終わります。

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 私から、一問だけ、全政党の方にお伺いをしたいと思います、六政党。

 今回の法律というのは、性自認という人の内心の最も深いところに関わるものであって、そういう法律で、しかも、用語は基本的に同じものを使って、同じ意味である。そして、私は、議論を聞いていても、では法案の相違が解消できなかったのかというと、そうでもないだろうというふうに思うんですね。

 そういう中、この法案が対立法案っぽくなっていることというのは、当事者の方に対して私は失礼だと思うんですよね。反省の念を求めたいと思います。まず新藤さんから。

新藤委員 私は、この法案が対立法案だと思っておりません。

 そもそも、この法案の様々な規定におきましては、それは私ども自民党が作らせていただいたものが九九%です。そして、文言や最後の修正部分について、それは、立憲さんも実は、立憲案というのも、その中身は全て自民党が提案したものでございます。維国案についても同じです。

 ただ、この法案の安定性、それから、やはりいろいろな懸念の声があることについて表現の差が出てきている。だから、ここの委員会できちんとそれを審議しようじゃないかと。むしろ、何か取りまとめるのではなくて、審議をした方がいいと私は思ったわけであります。

 そして、この法案は、先ほどの共産党の話は、常にそういうふうにすり替わっていくので、ここは言わなきゃいけないんですけれども、実定法ではないのに、あたかもこの法案で何かを決めていくんだ、そこに、少数者が削られるじゃないかというふうに、前提をすり替えていってしまうのはとてもよくないことだと私は思っておりますので、そこを是非、御理解を皆さんにしていただくためにも、丁寧な質疑が必要だと私は思っているわけです。

西村(智)議員 今回の法案審議で当事者の皆さんが激しく分断されているのではないかということを考えましたときに、私は、もっと別の道があったのではないかと、法案の提出者としても深く反省をしているところです。

 遡れば、二年前に超党派の議員連盟で全党が合意して法案がまとまりました。ですけれども、これは自民党の中のごたごたで提出することができませんでした。あのときに提出できていれば、ここまでこの分断は大きくはならなかったのではないかというふうに思います。

 それをこういったような形で、修正案を昨日の夜、ちょちょっとまとめて提出され、私たちには何の話もなく、本来であれば、自民党さんが修正案を出したのであれば、議連にもう一回戻していただいて、そこで議論するのが筋だったと思っております。

 そういったことも含めて、非常に残念な経緯をたどってしまったというふうに思っております。

岩谷議員 おっしゃるとおり、対立するような法案ではないはずです。各党が出されている案も、大部分は一緒なわけです。ところが、性同一性とか性自認という文言で対立をしていたわけです。

 ですから、我々は、ジェンダーアイデンティティーという言葉を提案させていただいた。そして、それに対し、自民党、公明党さんが修正案として受け入れてくださったというふうに思いますので、これは、私は是非多くの党の皆さんに御理解をいただいて賛成をしていただきたいというふうに思います。

國重委員 先ほどの答弁の中でも言いましたけれども、多様な性の在り方、これについて相互理解を進めて、多様性が尊重される社会を実現していく、そのために各党が協力をして法律を作っていくというのは、私は政治としての極めて重要な責務であると思っております。

 こういった観点に立ちまして、私ども公明党、今、各党ということで言われていますので、公明党としても、できる限り幅広い合意形成をして法律の成立を目指すという大局的な見地に立って取り組んでいかねばならないという思いで、今回の修正協議、これで修正案に作らせていただきました。

 また、様々な各党の思いはあると思いますけれども、今後の質疑、また参議院での質疑も含めて、できる限り多くの各党の御理解、また、不安を払拭できるような法案にしていきたいと思っております。

大西委員長 答弁者の皆さんに申し上げます。

 約束の時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

浅野議員 今回の法案は、対立すべき法案ではなく、しっかりと真摯な環境の中で熟議を尽くされるべきものであると考えております。

 国民民主党としても、この間、委員会の場に限らず、他党と真摯な協議を続けてまいりましたし、また、今後の当委員会においても、そのような冷静な議論、熟議が重ね続けられていくことを望んでおります。

宮本(岳)議員 立民の西村さんがおっしゃったとおり、二年前には私たちは性自認という用語で一致したわけなんですね。それをその後、様々な形で言い換えた。同じ意味だという説明なんですけれども、言い換えることによって、やはり、では性自認ではなぜ駄目なのかというまた意味合いが出てきてしまう。そういう意味で、私は、この間のいきさつによって、性自認という言葉は随分弄ばれたというふうに思っております。

緒方委員 終わります。

大西委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 法案の修正案に関連してお伺いします。

 先ほどの質疑で、最後の方に私が質問していた内容は、新しい修正案にも丸まま引き継がれますので、古屋議員、自民党の議員が、この法案は自治体の行き過ぎた条例の抑止力になるとおっしゃっていたということがこの法案の理念にも埋め込まれている可能性については、また改めて整理して指摘しておきたいと思います。

 というのも、この元々の法案の質疑の質問通告はこうだったんですよ、私が質問通告したものは。この法案によって地方自治体独自の条例を拘束しないという理解でよいですか。拘束しないという理解でよいですかと聞いたんです。それに対して、事前に答弁の要旨が出てきて、それが、地方自治体は法令の範囲内で条例を定めることができるという回答だったんですね。これは、縛るものじゃないとおっしゃっても、地方自治法の第十四条の一で書いてあることそのままなんですね。すなわち、これは条例の範囲を縛るものなんです。

 ただ、自治体各現場では、そのような縛りを、工夫して、横出しの規制にする、この法律とはまた別目的の条例なんです、そういう工夫のしようはあるので。だから、新藤さんのおっしゃったような、各自治体が頑張れば、国のあしき理念法とはまた違う条例の制定も可能かもしれません。

 しかしながら、やはり、この理念法に基づいて作られた指針によって条例を拘束する、自治体の行き過ぎた条例を抑止するという力にもなり得るのだということは指摘しておきたいと思います。これは質問はしません。

 続いて、質問なんですけれども、自民党、公明党の修正案と維新の案についてお伺いしたいと思います。

 削除された項目について。民間団体等の自発的な活動の促進という記述が削除されております。これについて、お二人に、説明者にお伺いしたいんですけれども、この文言自体を問題にした有識者と呼ばれる方がいらっしゃるんですね。高橋史朗さんなんですけれども、この方は、この文言が駄目だと。なぜ駄目なのかというのは、こういうふうにおっしゃっています。この記述があるが、これにより、性道徳を全面否定する過激な性教育を行う団体や活動家が行政や学校と癒着して研修を担い、継続的に補助金を受け取れるおそれがあるから問題だとおっしゃっているんですけれども、削除したコンセプトにそのようなものは含まれているか、教えてください。

新藤委員 先ほどから、何か悪いことが起きて、それを助長したりとかと、そういうふうに聞こえるので、すごく、私、答弁が困るんですね。

 この問題は、民間の活動は自由に行っているわけですよ。様々な啓発活動をする中で、例示として挙げましたけれども、逆に、民間の団体といっても様々な団体があって、その規定も何もない。

 ですから、例示からは削りましたけれども、活動の内容そのものは、基本指針を含めて、何ら対象から外れるものではなく、全般にわたって……(大石委員「そういう意図ではないというお答えに聞こえますが、それでよろしいですか」と呼ぶ)先生が、大石さんが質問していることに、そういう意図と言われると、あなたの質問を認めることにと聞かれると、私は、それはちょっと危なくて答えられないんだよね。

阿部(司)委員 お答え申し上げます。

 国とか地方公共団体が民間団体と連携をしていくことというのはもちろんあろうかと思いますけれども、先ほどから繰り返し申し上げているとおり、あくまで例示の一つですので、まず理解増進を進めるといった点で、国、地方公共団体、公のところがまずはしっかりとやっていくことが重要だということで、あえて明記をしなかった、このように考えております。

大石委員 意図があったかないかにはお答えいただけなかったけれども、結構です。

 ただ、様々、こういった子供手当ですとかいろいろなところで、このような、一部の過激な活動家が云々ということが出てくるので。実際にこれまで、統一教会にも見られるような、この高橋史朗さんは親学の推進で知られる、それの有識者の方なんですけれども、そういった宗教右派に見られる、何でもかんでも赤だ、左翼だとして、社会の発展を阻害する危険な考え、より多くの人が豊かに、自由に、科学的に生きられるという人類の当たり前の前進を否定する危険な考え方、その核心は優生思想であり、これが分からないように、毒々しいので分からないように理念に潜り込ませるやり方というのが数々の政策でも見られ、そしてこの国の政策がゆがまされてきましたから、だから、そのようなことがないようにと申し上げておきます。

 終わります。

大西委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより各案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。中谷一馬君。

中谷(一)委員 立憲民主党・無所属の中谷一馬でございます。

 会派を代表し、議題となりました我が党及び共産党、社民党が共同提出した法案に賛成、その他の法案に反対の立場から討論します。

 我が党が共同提出したLGBTなど性的少数者への理解を深める法案は、自民党を含む超党派議連で全党が合意した法案です。性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないとの文言を目的、理念にしっかりと明記した上で、性的指向及び性自認の多様性に関する理解増進のために関係者の責務を定めるものです。

 当時、我が党は、この合意案が成立すれば、性的指向、性自認について定める初めての法律となることなどから、賛成を決めました。ただ、残念ながら、自民党の差別的とも言える対応により、この議連合意案は提出すらされませんでした。

 それでも、私たち立憲民主党は、LGBTに関する法制が我が国にも必要だという高い世論の支持を受け、当事者の皆様が納得できる法案にするという強い思いから、早期審議入りを求め続けてまいりました。しかしながら、与党内では、議員立法を提出しておきながら、党議拘束を外すべきという声が公然として聞こえるなど、極めて不可解な状態です。

 さらに、昨晩、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党が急遽修正合意し、今朝まで委員会へ修正案の提案も行われないなど、真面目な議員立法と真摯な委員会運営をも冒涜する行為は言語道断と言わざるを得ません。

 しかも、今回の四党修正案は、差別は許されないという文言を不当な差別はあってはならないに変え、性自認という言葉をジェンダーアイデンティティーに変えていますが、修正案は、当事者の意見を聞いた形跡もなく、当事者に寄り添うという本来の趣旨をないがしろにする法案に姿形を変え、まさしく趣旨を後退させた法案そのものです。

 多様性が人権を守り、イノベーションを創出する。私たち立憲民主党は、LGBT差別解消法案と婚姻平等法案を提出しています。この法案を成立させるために尽力し、今回我が党が共同提出したLGBT理解増進法案がそのための新たな一歩になることを強く願い、誰もが尊重される社会の早期実現を目指して取り組むことをお約束をして、討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。

 会派を代表して、自由民主党、日本維新の会、公明党、国民民主党による修正案に賛成、他の提出法案には反対の立場から討論します。

 第一に、この修正案は、性の多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状について第一条に明記をし、この法案目的が理解増進であることを明確化したことは大きな意義があります。

 第二に、法律の定義語につき、政治的な意味合いを持ち、対立軸になってしまっていた性同一性、性自認の文言を、国際的にも幅広く受け入れられている共通語のジェンダーアイデンティティーにすることで、多くの方々から理解、賛同を得られるものとなっております。

 第三と第四の修正点として、性多様性への普及啓発、教育や、民間団体との連携は重要ではあるものの、他の先進国ではそのタイミングや内容について摩擦が起きる事例も報告されています。教育や地方公共団体の施策の部分で修正を加えた我が党の提案は、最新の事例を踏まえて、多くの懸念を払拭できるものとなっています。

 そして、第五の修正点が重要です。

 この法案が議論されるようになった二年前と比べて、特に男女別トイレや男女別スポーツにおける性多様性の在り方について、不安の声が多く上がっています。二年前に合意した超党派案の意義は大きいものの、残念ながら、そうした懸念に必ずしも応えられる内容となってはおりません。

 その点、我が党の新しい提案では、この法律の措置の実施等に当たっては、全ての国民が安心して生活できるよう留意する条文を新設して追加することにより、トイレやスポーツといった場面で身体的区別を超えることを容認する内容ではないことが一定程度明確化されたと考えます。加えて、政府による運用に必要な指針の策定が加筆されたことにより、より懸念や不安の声に応えられる内容となりました。

 最後に、人権などの根幹に関わるものについては、できる限り多くの国民の理解を得て立法する必要があり、当初三つの案が出された状況から、四党派が前向きな修正案で合意できたことにつき、関係者の努力と誠意に感謝を申し上げます。

 我々の提出した案は、超党派で重ねてきた議論をより深く深化させ、当事者を含む多くの方に納得していただけるものになっていることを改めて申し上げ、私からの討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党を代表し、LGBT理解増進法案の立憲、共産案に賛成、自民、公明、維新、国民四党の修正案、自民、公明の原案、維新、国民案に反対の討論を行います。

 今回の立憲、共産案は、二〇二一年に超党派のLGBT議連で合意した内容をそのまま提出したものです。当事者との話合いを重ね、差別を許さないために最低限必要な措置を定めたこの議連合意、立憲、共産案の成立を強く求めるものです。

 議連にも加わっている自民、公明、維新、国民が合意を無視してそれぞれ別の法案を提出したことは、合意した法案を壊すもので、許されません。

 さらに、昨晩二十二時過ぎ、突然、四党の修正案の概要が示されました。今日の朝提出をされた。当事者の声も聞かず、たった一時間二十分の質疑で今日採決しようなど、許されるものではありません。強く抗議するものであります。

 修正案は、自民、公明が維新、国民案をほぼ丸のみしたものです。修正案の最大の問題は、性的マイノリティー以外の権利擁護のためなどといって留意事項を新設していることです。全ての国民が安心して生活できるというワードを用いていますが、多数派の権利擁護も必要として設けられているものです。この発想は、多数派が認める範囲内でしかマイノリティーの人権、尊厳は認められないとのメッセージになりかねません。これは、性的マイノリティーの方々の現実の苦悩を軽視するものです。

 また、学校における教育、啓発は家庭、地域住民その他の関係者の協力を得つつ行うと追加しています。これも、多数派が認める範囲内での教育、啓発しか認めないという発想です。あえて法律に盛り込むことで、教育現場が萎縮しかねません。

 自公原案では、議連合意の差別は許されないを不当な差別はあってはならないに変更しています。これでは、正当な差別が存在するかのようなメッセージとなり、差別を温存することになりかねません。

 今回の法案は、LGBTの方々に対する理解を増進させることが目的のはずです。このような規定は、理解増進を阻み、マイノリティーに対する差別をなくそうという流れに逆行するもので、容認できません。

 また、自公原案は、議連合意で国に対して義務づけた調査研究を学術研究に置き換え、調査を削除しています。理解増進のためには、性の多様性の実態や差別の現状を明らかにすることが重要であり、公的調査を行う国の責務を弱めるものです。

 修正案は、民間団体などの自発的な活動の促進を削除しており、民間団体が担っている居場所づくり事業や各種相談事業などの後退を招きかねません。

 さらに、修正案では、多数派の権利擁護のための留意事項を政府が指針を策定するとしていることは、自治体による先進的な条例や民間団体の自発的な活動など、この法律全体を多数派が認める範囲内での施策に抑え込もうとするものです。このような後退は認められません。

 最後に、修正案では、日本でも差別的文脈があるとして最高裁判決や自治体条例などで使われなくなった同一性を持ち込まなかったとはいえ、ジェンダーアイデンティティーに置き換えています。なぜ、性自認を用いなかったのでしょうか。

 性自認を用いないことに固執する背景に、一定の連続性、一貫性、持続性を伴った性自認と自称や成り済ましを混同させ、差別と偏見をあおり、運動や世論を敵視する勢力がいます。

 性的マイノリティーの方々を排除することなく、性の多様性を認め合い、誰もが個人の尊厳を尊重される社会をつくることが世界の流れであり、今求められていることです。LGBT当事者の方々が求めているのは、現実に起きている差別の解消、基本的人権と個人の尊重の保障です。

 本来必要なのは、我が党を含む野党が提出しているLGBT差別解消法案の成立であると申し述べ、討論を終わります。

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 採決に際し、討論いたします。

 今回、立憲、共産案、修正案、修正部分を除く自民、公明案、いずれも賛成いたします。

 極めてイレギュラーなことはよく承知しています。ただ、性同一性、性自認、ジェンダーアイデンティティーのいずれの用語も、定義規定に変更がない以上、意味は変わりません。それを持ってきて、どれかを選べと言われる方が途方に暮れることになります。

 このような形で、ほぼ同じ内容のものが三つも並ぶというのは、ただただ政党間の調整不足でしかありません。そもそもこれは、人権、ひいては人の内心の奥深いところに関わる法律です。それが国会で対立法案のように扱われること自体が不適切であり、この審議を見ておられる全ての関係者に失礼です。今、眼前におられる各法案の提案者には、健全な議会の在り方について猛省を促したいと思います。

 このLGBTに関する法律は、騒ぎ立て、対象者の方を際立たせることが目的ではありません。誰もがその性自認を相互に気にすることなく、自由で静かに暮らせる世の中を志向しています。新藤先生が当会派に説明に来られたとき、カミングアウトなんてことが必要ない世の中ということを言われました。まさにそのとおりだと思います。

 一方、この法律の作成過程において議論がかみ合わなかった原因として、私は、差別と合理的な区別の違いが明確にならなかったことがあると思っています。差別は常に不当なものであり、絶対に許されてはならず、あってはなりません。一方、私が質疑で女性刑務所の事例を挙げながら指摘した、公権力行使における最小限の合理的な区別を設けないとおかしなことになるのも事実です。

 私がいろいろな方と話をしてみて、左派、右派問わずイデオロギーの強い方ほど、この合理的区別という言葉に強く反応し、逆に、当事者又は当事者に近い方ほど、当然そのような区別はありますよねという返事が来ました。このような違いを明確にすることなく、イデオロギーを前面に出して議論を進めたことが、このような混乱につながったのだと思います。この合理的な区別は、法成立後に、基本計画レベルで是非取り組んでいただきたいと思います。

 全て賛成というのは、小異を捨てて大同につくということです。どの法律案もそれほどの差があるわけではないわけですから、私は、いずれの案でもいいので、法というツールを通じてLGBTに対する理解が進めばいいのだというふうに思っています。そして、将来的には、このような法律が存在しなくとも全く問題ないような世の中が来ることを願って、私の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 会派を代表して、三種類、そして今朝急浮上した修正案、四種類のLGBT理解増進法、全てに反対の立場から討論いたします。

 過去何度も、LGBTの方への差別的な取扱いをなくすための法整備の必要性が求められてきました。今回、複数の議員立法が与野党から提出された直接のきっかけは、総理秘書官の、見るのも嫌だ、隣に住んでいるのもちょっと嫌だという問題発言と、それに関連する岸田総理自らの不適切な発言でした。先ほどの反対討論で言われたような、差別のない社会、早く来ればいいですけれども、総理秘書官や総理がこの状態ですから、やはり取組というものが必要なんです。

 これまで、二〇一六年から野党側はLGBT差別解消法案を提案し続け、二〇二二年の差別解消法提出にはれいわ新選組も提案に参加しました。私たちは、差別解消法の成立を求める立場です。

 続けて、反対の理由を三つ述べます。

 第一は、議員立法という手法が、充実した審議をさせない手段として利用されたことです。

 今回は、理解増進の意味づけだけをめぐっても与野党の調整がつかず、結果的に四法案が並ぶ異例の状況になってしまいました。そして、最終的には自公が維新、国民と握って、宗教右派の意向を酌んだ修正案を提案。議員立法でやることが駄目とは申しません。しかし、現在、国会の慣例上、議員立法は審議時間が十分に取れず、参考人質疑など充実した審議は期待できないのが実情です。その慣例を変えて徹底審議をするか、あるいは、政府が責任を持って差別解消のための法案を閣法で提出し、じっくり審議するべきでした。

 第二は、理解増進法自体の内容です。

 自民、公明案、維新、国民民主党案については、超党派合意案からの後退が著しい、統一教会や宗教右派の考えを強く忖度した法案になっています。それらの主張が反映されている法案には賛成できません。本日出てきた修正案は、性教育全体に歯止めをかけかねず、元の自公案よりも悪手、差別促進法案になりかねません。

 最後に、三番目。理解増進だけでは駄目で、差別解消のための法整備が必要であることです。

 私たちは、LGBT当事者に対する差別がこの社会において存在し、それを解消するための法整備が必要と考えます。差別の解消にとって重要なのは、本法が掲げるような理解増進だけではなく、差別的取扱いをなくすための合理的配慮の仕組みを整備することです。理解増進と差別解消は車の両輪です。時の歯車を後ろに進めようとする流れに対して、差別解消の仕組みの整備を譲り渡したという点で、立憲案にも反対します。

 以上の三点の理由で四法案全てに反対し、差別解消法の成立を引き続き求めていきます。

 以上で討論を終わります。

大西委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより採決に入ります。

 まず、西村智奈美君外十三名提出、性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、新藤義孝君外五名提出、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、新藤義孝君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 この際、阿部司君外四名提出、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案は議決を要しないものとなりましたので、御報告いたします。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

大西委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十四分散会


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