第8号 令和6年4月5日(金曜日)
令和六年四月五日(金曜日)午前八時五十四分開議
出席委員
委員長 星野 剛士君
理事 上野賢一郎君 理事 高木 啓君
理事 冨樫 博之君 理事 中山 展宏君
理事 太 栄志君 理事 森山 浩行君
理事 堀場 幸子君 理事 庄子 賢一君
青山 周平君 泉田 裕彦君
上田 英俊君 英利アルフィヤ君
大西 英男君 大野敬太郎君
神田 潤一君 小森 卓郎君
杉田 水脈君 鈴木 英敬君
土田 慎君 西野 太亮君
鳩山 二郎君 平井 卓也君
平沼正二郎君 牧島かれん君
宮澤 博行君 簗 和生君
山田 美樹君 山本 左近君
山本ともひろ君 逢坂 誠二君
神谷 裕君 中谷 一馬君
本庄 知史君 山岸 一生君
山崎 誠君 阿部 司君
金村 龍那君 住吉 寛紀君
河西 宏一君 山崎 正恭君
吉田久美子君 塩川 鉄也君
浅野 哲君 緒方林太郎君
大石あきこ君
…………………………………
内閣総理大臣 岸田 文雄君
国務大臣
(経済安全保障担当) 高市 早苗君
内閣府副大臣 古賀 篤君
内閣府大臣政務官 神田 潤一君
内閣府大臣政務官 平沼正二郎君
内閣府大臣政務官 土田 慎君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 小柳 誠二君
政府参考人
(内閣官房経済安全保障法制準備室長)
(内閣府政策統括官) 飯田 陽一君
政府参考人
(内閣官房経済安全保障法制準備室次長)
(内閣府大臣官房審議官) 彦谷 直克君
政府参考人
(内閣官房経済安全保障法制準備室次長)
(内閣府大臣官房審議官) 品川 高浩君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 岡 素彦君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 中溝 和孝君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 矢作 修己君
政府参考人
(内閣府大臣官房総合政策推進室室長) 笹川 武君
政府参考人
(内閣府規制改革推進室次長) 稲熊 克紀君
政府参考人
(警察庁警備局長) 迫田 裕治君
政府参考人
(総務省大臣官房政策立案総括審議官) 武藤 真郷君
政府参考人
(総務省行政管理局長) 松本 敦司君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 松林健一郎君
政府参考人
(外務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化参事官) 松尾 裕敬君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 濱本 幸也君
政府参考人
(経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長) 猪狩 克朗君
政府参考人
(防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君
政府参考人
(防衛装備庁長官官房審議官) 西脇 修君
政府参考人
(防衛装備庁技術戦略部長) 松本 恭典君
内閣委員会専門員 尾本 高広君
―――――――――――――
委員の異動
四月五日
辞任 補欠選任
井野 俊郎君 山田 美樹君
神田 潤一君 英利アルフィヤ君
土田 慎君 西野 太亮君
牧島かれん君 山本 左近君
山崎 誠君 神谷 裕君
河西 宏一君 山崎 正恭君
同日
辞任 補欠選任
英利アルフィヤ君 神田 潤一君
西野 太亮君 土田 慎君
山田 美樹君 上田 英俊君
山本 左近君 牧島かれん君
神谷 裕君 山崎 誠君
山崎 正恭君 河西 宏一君
同日
辞任 補欠選任
上田 英俊君 井野 俊郎君
―――――――――――――
四月五日
公務・公共サービスの拡充に関する請願(近藤昭一君紹介)(第九四四号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案(内閣提出第二四号)
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)
――――◇―――――
○星野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官小柳誠二君外十八名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○星野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○星野委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。本庄知史君。
○本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。
中一日で三回目の質疑となりましたけれども、本日もよろしくお願いいたします。
前回の経済安保推進法案のときは、小林大臣と四回質疑をいたしました。まだまだ論点はあると思いますので、よろしくお願いします。
まず、前回の質疑の続きから入りたいと思います。トップシークレット、シークレット級の重要経済安保情報あるいは重要経済基盤保護情報と、政府が保有する秘密文書の関係ということです。
またお手元に資料を配付いたしておりますが、一ページ目、重要経済安保情報と特定秘密の比較、関係ということでマトリックスがありますが、この右上の箱についての話だということであります。
資料の二ページを御覧をいただきたいと思います。これは、前回、四月三日の内閣委員会における関連の答弁を整理をしたものでございます。
私の、トップシークレットやシークレット級の重要経済安保情報あるいは重要経済基盤保護情報で特定秘密に該当しないものについて高市大臣が想定されないというふうにおっしゃっている理由ということでお尋ねをしたものであります。
大臣からは、以前の答弁の紹介がありまして、実際にある又は今後直ちに想定されるということはない、その理由としては、経済官庁が経済安全保障上重要と考えている情報の保有の現状に照らして内閣官房において検討した結果、そのような情報が実際にある又は今後直ちに想定されるということはないという判断に至った、こういう説明が改めてありました。これを踏まえて経産省の政府参考人にお伺いをしたところ、経産省からは、今後の国会審議や法案成立後に策定される運用基準などを含めた具体的な制度設計を踏まえて明らかになっていくという答弁がありまして、存在することを頭から否定をされている大臣と、今後の精査次第だという経産省の答弁に食い違いがあるのではないか、私はこういう指摘をさせていただきました。
そこで、大臣にお伺いをしたいと思いますが、四月三日の本委員会における大臣そして準備室長の御答弁と、経産省の答弁は明らかに不一致である、政府としての統一の見解をお示しをいただきたいと思います。
○高市国務大臣 まず、内閣官房におきましては、本法案の検討過程におきまして、特定秘密及び極秘についてはトップシークレット及びシークレット相当とし、秘についてはコンフィデンシャル相当と整理して、政府部内の秘密文書の保有状況を把握するために、各省と意見交換を行ってまいりました。
そうした意見交換の中で、内閣官房と経済産業省の間では、経済産業省が令和四年に保有する秘の文書は六十四件である一方、極秘の文書はゼロ件であり、その実績に基づき、今後を見通した場合、経済産業省において、重要経済基盤保護情報であってトップシークレット及びシークレットに相当するものは直ちに想定されない、この認識を共有いたしました。その認識の下で、私から、漏えいした場合に我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある重要経済基盤保護情報であって特定秘密保護法における別表に該当しないものが実際にある又は今後直ちに想定されることはない、政府としてそういう判断に至ったという答弁を申し上げました。
一方、経済産業省の政府参考人による答弁は、極秘文書を保有していないということを前提に、あくまでも現在保有する秘文書に関して、本法案に基づき今後精査が必要である、それが重要経済基盤保護情報あるいは重要経済安保情報に該当するか否かということについて精査も必要であるという一般論を述べたものだと理解をいたしております。
経済産業省の方を呼んでいただいているのでしたら、改めてお尋ねいただければ大変助かりますが、私の見解は同じでございます。
○本庄委員 私は、今の大臣の御答弁で、一点理解できない部分があるんですね。
お配りしている配付資料の二ページをもう一回見ていただきたいんですが、(二)現在の公文書管理ルールとの関係というところで、飯田政府参考人は、トップシークレットやシークレット、コンフィデンシャルといった区分との関係については整理を行っていない、こうおっしゃっているんですね。今の行政文書、極秘文書である文書それから秘の文書と、トップシークレット、シークレット、コンフィデンシャルとの関係については整理していないという答弁をされているんですね、前回。書き出しているのはその部分なんです。
飯田室長がおっしゃったのは、国際的には、トップシークレットとシークレットが極秘に相当し、そしてコンフィデンシャルが秘に相当する、こういう答弁はありました。ただ、国内の文書管理は必ずしもそういう整理はできていないというのが、ここに書いてある飯田室長の答弁なんですね。
そこで、経済産業省に確認をしたいと思います。
経済産業省、今保有されている極秘文書はゼロ件、そして秘文書が、何件でしたか、ありましたよね。この秘文書は全て、今議論となっているコンフィデンシャルに相当するものである、その中にシークレットやトップシークレットは混じっていない、この確認はされているという理解でよろしいですか。いかがですか。
○猪狩政府参考人 お答えいたします。
本法案の検討過程におきまして、内閣官房との間で、特定秘密及び極秘についてはトップシークレット及びシークレット相当、秘についてはコンフィデンシャル相当との理解の下で意見交換を行ってまいりました。その際には、当省が保有する秘文書は全てコンフィデンシャル級であるとの認識の下で議論を行っております。
○本庄委員 質問に正確に答えていただきたいんですが、理解という、秘文書がコンフィデンシャルだという前提で話をしてきましたということと、現実に、秘文書がコンフィデンシャルのみであって、シークレットは含まれていないということも確認をして議論をされているのか、これはまた別物だと思うんですね。
いかがですか、経産省。確認されて、理解をして議論をしたということですか。
○猪狩政府参考人 お答えいたします。
経済産業省といたしましては、内閣官房との間で、先ほどの、当省が保有する秘文書は全てコンフィデンシャル級であるとの認識の下で確認を行いまして、検証を行っております。
○本庄委員 では、その上で、もう一度確認しますが、現在、経済産業省が保有をしている秘密文書、今は秘文書しかないということですが、その中には、今回の法案で言うところの重要経済安保情報あるいは重要経済基盤保護情報に該当するものであって特定秘密には該当しないもの、これは、高市大臣は想定されないとおっしゃっていますが、経済産業省、保有はないということでよろしいですか。
○猪狩政府参考人 お答えいたします。
令和四年度末におきまして経済産業省が保有しております極秘文書がゼロ件であることを考えますれば、経済産業省において、トップシークレット及びシークレットに相当する重要経済安保情報であって特定秘密保護法における別表に該当しない文書を保有していることは想定しておらず、現時点で該当するものはないと認識しております。
○本庄委員 分かりました。
では、同じ質問を内閣府にもしたいと思います。
内閣府は極秘文書も保有をされているということでありますが、今申し上げた、重要経済安保情報であって、そしてコンフィデンシャル以上、つまり、トップシークレットやシークレット級のものであって特定秘密ではないもの、これは内閣府は保有していない、こういうことでよろしいですか。
○矢作政府参考人 お答えいたします。
内閣府が現在保有している秘密情報のうち、本法案における重要経済基盤保護情報あるいは重要経済安保情報に該当し得るものがあるか否かについては、今後策定される運用基準などを含めた具体的な制度設計を踏まえなければ確定的なことを申し上げることは困難でございますけれども、現時点では該当するものはないと認識しております。
○本庄委員 そうすると、またちょっと次の疑問が浮かんでくるんですね。主要な経済官庁である経済産業省、内閣府、いずれも、重要経済安保情報に該当する極秘文書、これは今の段階ではありませんということなんですね。そうすると、大臣が想定されませんと言うことは、整合性が取れてきたと思います。
でも他方で、じゃ、何で特定秘密の運用見直しをしなきゃいけないのかという疑問が湧いてくるんですね。これだけ存在しないとおっしゃっているのに、なぜ特定秘密の運用基準を見直して、もう一回探そうということになっているのか。特定秘密の方であれば想定がされるという何か根拠はあるのか。その点について教えてください。
○飯田政府参考人 お答えをいたします。
この法案を提案している際にも申し上げていることですけれども、安全保障の分野が経済、技術へとますます拡大する中で、私ども、厳しい安全保障環境の中で対応しなければいけないこの経済安全保障の政策は今後ますます重要になってくるというふうに考えております。
そうしたことの中で、私どもが考えております、特定秘密保護法の別表の中に経済安全保障に関連したトップシークレット、シークレットが今後の国際協力も含めてどういう形で関係してくるのか、そして、その一部については、特定秘密保護法では従前考慮していないわけですけれども、民間との連携も含めてどのようなことを考えたらいいのかということを考えますと、政府部内の経済安全保障担当部局それから民間事業者にとっても、別表の中に経済安保がどのように位置づけられているかということを明確にする必要があるかということでございまして、そのために、運用基準について補足すべき部分があるか追記するべき部分があるかを含めまして精査をさせていただいて、その上で、必要があれば見直しをしたいということで申し上げているところでございます。
○本庄委員 経産省も内閣府も、今の段階で重要経済安保情報に相当するような極秘文書は存在しない、こういうふうに言っているわけですよね。そうすると、恐らく現時点では、特定秘密の運用基準を見直しても、そこにひっかかってくるのはないんじゃないかと想定するのがまず普通だというふうに思うんですが、なぜ、特定秘密については存在し得ると想定して、そしてそれ以外については想定しない、できないというふうにはっきりと今区分けがなされているのか、私はよく理解できないんですね。
岡政府参考人が、四月二日の山岸委員との質疑の中でこういう答弁をしています。お配りしている資料の二ページの一番下ですが、この運用基準の見直しが実際に必要かどうかについて、新法の運用基準において、新法の秘密の具体像が明らかになってから結論を得る、こういう答弁をしているので、これからじゃないんですか、その見直しによって新たな特定秘密が出てくるかどうか、基準も含めて。
だから、今の段階で、特定秘密以外のトップシークレットはない、でも特定秘密にひっかかるトップシークレットはあるかもしれない、そういう結論になっていることが私はちょっと、早とちり過ぎるというか、前のめり過ぎるんじゃないかと思うんですが、飯田参考人、いかがですか。
○飯田政府参考人 お答えいたします。
私ども、非常に厳しい国際環境の中にございますし、それからまた、経済安全保障の関連でいいますと、特定秘密保護法の別表の中にもう既に、貨物の輸出入の制限ですとかあるいはサイバー攻撃の防止ですとか、様々、経済安保に関する事項で掲げられている事項もあるわけでございますけれども、今後の国際状況の進展の中で、どのような形で外部からの行為が行われ、それが我が国のインフラあるいはサプライチェーンにどういう形で影響を及ぼすことになるのかということについて一定の想定を置かなければいけないのではないかというふうに考えておりまして、そういったことを、サプライチェーンやインフラのリスクの点検をしながら、今後、特定秘密保護法の運用基準の見直しにつながり得るものがあるかどうかも含めて政府部内で検討をさせていただきたいというふうに考えております。
○本庄委員 答えていただいておりませんが。
お配りした一ページのマトリックスの右上の箱、ここについて、経産省も内閣府も、現時点では文書を保有していない、こういうふうに言っている。これからあるかもしれないということで、様々な検討が必要だ、これは私、分かるんですね。この箱に入っている情報が特定秘密で読めるものであって、特定秘密で読めないものは想定されないという線引きが今の段階でなぜできているのかが私はいまだに理解ができないんですね。
特定秘密の法律の下、その運用基準で読める重要経済安保情報、基盤情報もあれば、読めないものも出てくる可能性だってあるというふうに私は思いますし、論理的に考えればそうじゃないかと思います。
恐らく平行線だと思いますので、答弁は求めません。
時間も限られておりますので、次のテーマに行きたいと思いますが、適性評価に関する個人情報の目的外利用の禁止についてであります。
本法第十六条第一項なんですが、この間の委員会の質疑でも、適合事業者が従業員に対して個人情報の目的外利用をさせないという議論は様々ありました。ただ、私が余り議論されていないなと思うのは、この一項の方ですね。つまり、内閣総理大臣や行政機関の長による適性評価、これに関する個人情報の目的外利用についてなんですが、これはなぜ罰則がないのか。政府参考人、お答えください。
○飯田政府参考人 お答えをいたします。
目的外利用の禁止の規定の実効性を担保するための方策として、各行政機関が適合事業者と締結をいたします秘密保持契約において、事業者側の義務として、本規定の違反があった場合には契約を解消することがあり得ることを明確にすることを想定しております。
また……(本庄委員「そっちじゃないです、総理と行政機関の長に対して罰則がないということ」と呼ぶ)
○星野委員長 直接やらないでください。委員長を通してください。
○飯田政府参考人 済みません、失礼いたしました。
行政機関の職員が、評価対象者の適性評価の結果や適性評価に同意しなかったこと、適性評価に当たって収集した個人情報を重要経済安保情報の保護以外の目的に利用した場合には、本法案十六条第一項に違反する違法な行為を行ったと評価することになります。
この場合には、まず、職務上の義務に違反した場合として、これは懲戒処分になり得るというふうに考えられます。
さらに、その目的外利用の一環として個人情報を故意に漏えいした場合には、国家公務員法百条の守秘義務に違反する行為として、同法百九条十二号により、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処せられると考えられます。
また、適性評価に当たって収集した個人情報には個人情報保護法に基づく規律も及ぶため、検索可能な形に体系的に構成された個人情報の集合体、個人情報ファイルを正当な理由がないのに提供した場合には、先ほど申し上げたよりも重い二年以下の懲役又は百万円以下の罰金の対象になり得ると考えております。
いずれにしろ、適性評価において収集した個人情報を目的外利用したり漏えいしたりすることがないよう厳格に管理することは当然のことでございまして、内閣府及び各行政機関において必要な保護措置を講じることを徹底してまいりたいと考えております。
○本庄委員 ここの部分については、罰則がないことで実効性がないという批判がありまして、多くの方が心配をされている部分の一つだというふうに思いますが、今の参考人のお話であれば、法律そのものには罰則がないものの、国家公務員法あるいは個人情報保護法の罰則規定を適用することによって一定の抑止力が利くんだ、こういうふうに私は理解しましたが、それでよろしいですか、大臣。
○高市国務大臣 今、政府参考人が申し上げたとおりでございます。
○本庄委員 はい、分かりました。
それでは、次のテーマに移りたいと思います。
重要経済安保情報に指定された民間提供情報についてまず確認をした上で、独法の話に行きたいと思うんですが、お配りしている資料の三ページを御覧いただきたいと思います。これは政府の資料ですね。
政府から重要経済安保情報の提供を受けるB社、C社、これは契約を結んで受けるということです。ここに書かれているA社というのは、逆に政府に対して情報を提供する社、情報のオリジナルを持っている社ということであります。ここについては、今回、法の網は当然かからないわけですね。政府保有ではないし、そもそもこのA社の情報ですから。ところが、このA社から直接情報を入手したD社、これもある意味第三者なんですが、ここには今回の法律の網がかからないんですね。他方で、政府から直接もらってしまったB社とC社は、これは法律の網がかかって罰則もかかってくる。こうなると、どこの社もA社から直接もらいたいという話になってくるわけです。
是非は分かります、網のかけ方が難しいのは分かりますが、この部分がこの法律の情報漏えいに対する規制の一つの穴になっているということについて、大臣はどのように考えますか。
○高市国務大臣 委員がお示しいただいた資料は法案概要資料を使っていただいたものだと思いますが、この資料は、指定の効果が及ぶ範囲をイメージしていただくことに焦点を当てて、民間企業、資料の中のA社が提供した情報がそのまま重要経済安保情報に指定されたという、ある意味極端な場合をモデルとして示したものであることは御理解いただきたいと思います。
こうした民間企業が保有する情報に関しては、有識者会議の最終取りまとめにおいても、諸外国でもセキュリティークリアランスの対象ではないため、今回のセキュリティークリアランス制度の検討の射程からは外れるとされておりました。政府としましても、今御審議いただいている本法案のような政府の情報保全制度ではなく、不正競争防止法や外為法による保護、管理を含めて、別途検討していくべき課題だと考えております。
○本庄委員 ここまで網をかけると、際限なく網が広がって、逆にこの法律の副作用の方が大きくなってしまうということは私も理解をいたします。
問題は、次の話と絡みますが、このA社が独法だとか国立研究開発法人だったときに何が起きるかということなんですね。
そこで、質問していきたいと思います。
まず、今のこの法案では、独立行政法人や国立研究開発法人、あるいはその保有情報というものは、一義的には対象外、適合事業者にならない限りは対象外というふうになっていて、当然に、この法人の役職員にも適性評価は求められていません。
その理由について、政府は、独立行政法人というものは、自ら主体となって直接に実施する必要のない事務を実施する機関であるという位置づけであるから、本法案の行政機関には含めていないんだ、したがって、独立行政法人が保有する情報は民間事業者が保有する情報と同様の位置づけ、こういう答弁がこの国会でもなされています。
ただ、公的な機関、立場そして職務、情報とも言える独法や研究開発法人の機微な情報が、本当に民間が保有する情報と同じ位置づけでいいのかどうかですね。私は、ここはよくよく検討が必要な部分ではないかと思います。
そこで、私は三つの観点から確認をしたいと思いますが、まず総務省です。
独立行政法人は、その多くが、各法人の設置法の中にみなし公務員の規定が置かれています。あるいは役職員に守秘義務も課されています。その理由について教えてください。
○武藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘いただいた独立行政法人の役職員に対します刑法その他の罰則の適用についてのいわゆるみなし公務員規定、また、秘密保持義務規定については、業務の性質等に応じて、個別の法人設置法において規定されているところでございます。
その上で、一般論として申し上げれば、いわゆるみなし公務員規定、こちらについては、役職員の職務の内容が公務に準ずる公益性や公共性を有しており、公正な業務執行のため必要がある場合に、また、秘密保持義務規定につきましては、業務の公共性の高さのほか、他の研究機関等の研究や発明の内容、また営利企業の営業上の秘密等に接する機会等を踏まえまして必要がある場合ということなどにおきまして、それぞれ個別の法人設置法において規定されているものでございます。
○本庄委員 そのとおりだと思いますね。公務に準ずる公益性、公共性。やはり民間企業とは違うというふうに我が国の法律においても位置づけられている存在だと私は思うんですね。
もう一点、政府参考人にお伺いをしますが、独立行政法人は公文書管理法の対象ともなっていると思います。行政機関に準じて公文書の適正な管理を行うこととされているわけですが、独法にも公文書管理法が適用される、その理由について教えてください。
○笹川政府参考人 お答え申し上げます。
独立行政法人に公文書管理法が適用されている理由ということでございます。
独立行政法人は、行政機関と同様に、公的性格の強い業務を行っております。その諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務があるということが公文書管理法を独法に適用している理由でございます。
○本庄委員 公文書管理法に基づくガイドライン、これも参考にするようにとなっていますよね。このガイドラインには、秘密文書や秘文書の規定も書かれているということであります。
今、総務省と内閣府から聞いただけでも、いかに独立法人の組織あるいは職員が公務員に準ずるような立場であるか、公共性や公益性を有しているかということが分かったと思います。
そこで、大臣にお伺いしますけれども、今回、独立行政法人あるいはその役職員というのは法案の対象外になっていますが、ここをきちっと法案の対象にしていかなければ一つの大きな穴になってしまうんじゃないかと私は思いますけれども、どのように考えますか。
○高市国務大臣 本法案は、あくまで国が保有する情報を対象にしたものでございます。ただ、委員の御指摘のとおり、独立行政法人、特に国立研究開発法人が行っている研究の中には、非常に重要な、経済安全保障上も重要なものも含まれております。
ですから、独立行政法人を所管する行政機関においては、まず、我が国の技術的優位性を確保する、維持をする、そして情報の流出を防ぐという観点から、不正競争防止法や外為法といった既存の制度をしっかりと活用するとともに、研究インテグリティーの確保によって情報保全の徹底を図っていくということを本当に徹底していただきたいと思っております。
私自身は、現在、国立研究開発法人全体を見ながら、これは科学技術政策担当大臣としての立場でもございますが、情報管理の徹底について、新しいひな形も作って、その浸透を図っております。
また、独立行政法人によって罰金の額なんかは違うんですけれども、その設置法において守秘義務は定められており、退職した後もそうであり、そして職務上知り得た情報を漏らした場合に一年以下の懲役というものも定められております。
独立行政法人、特に国立研究開発法人の場合は、外国人研究者の知見を活用することも当然研究活動として必要になってまいりますので、それらを全て排除するということではなく、むしろ、日本人であれ外国人であれ、そこに入ってこられた職員の方々に、そのような設置法の趣旨、それから不正競争防止法の趣旨などを徹底して啓発、教育をしていただくということも重要だと考えております。
○本庄委員 今の優秀な外国人のお話は今回のセキュリティークリアランス全体についても言えることで、私はちょっとトーンが昨日と違うんじゃないかなと思ってお聞きをしましたが。
不正競争防止法や外為法に基づいて規制できるんだという議論をすれば、セキュリティークリアランスの必要性が問われてくるわけですよね。今回の法律の肝は、単なる罰則部分で規制をしていくのではなくて、入口のセキュリティークリアランスを受けた人でしか触れないという、入口のところで規制をかけていくというところにやはり重要なポイントがあるわけで、今回、研究開発法人なんかは、どれだけ重要な機微な情報を持っていてもこの対象にはなっていないということであります。
実際、二年前に成立した経済安全保障推進法、これを見ても、例えばNEDOやJOGMEC、あるいはJST、これは補助金の分配あるいは指定基金の執行、こういうことを担うわけで、様々な法人やあるいは物資の情報を有する可能性はあるというふうに思います。さらに、もっと言えば、今大臣も御指摘あった宇宙、サイバー、AI、量子、海洋、バイオ、こういった分野を所管している国立研究開発法人、産総研だとか理化研だとかJAXAだとかありますが、ここはどれだけ先端な機微情報を持っていても、今回の法案では一切規制がかけられないということになっているわけです。
産総研では先般、情報漏えい事件もありました。外為法や不正競争防止法だけで本当にカバーしていけるのかどうかは、是非、政府の中でもこれから検討を続けてもらいたいというふうに思います。
私は、決して規制強化ということを求めるわけでありません。ただ、情報漏えいを本当に防いでいくということであれば、私は、行政機関だけに絞っているというのはかなり狭いのではないかというふうに理解をしているところであります。
最後、残された時間で、今後の検討課題ということで少しお伺いしたいと思います。
これはいろいろなことが宿題になっている法案だと私は理解をしておりますが、大臣も、制度を運用するために必要となる関係政令、運用基準、実施体制を速やかに整備し、制度の実効的な運用を確保するという答弁もありました。
そこで伺います。今後のスケジュールということで、これから、仮に法案が成立すれば、夏の概算要求あるいは年末の予算編成、そして来年の施行ということになっていって、一年以内ということですから、こういうことになるわけです。その間に、政令を閣議決定する、運用基準を閣議決定する、そして特定秘密保護法の運用基準を見直す、こういうことをやっていかなきゃいけないんですが、どういう順番、段取り、タイミングでこのプロセスを進めていくのか、ちょっとスケジュール感を最後に教えていただきたいと思います。
○高市国務大臣 本法案は、民間事業者との共有による重要安保情報の活用を目的としており、民間事業者の方々の予見可能性を確保して、法施行に向けた準備を行っていただくためにも、本法案をお認めいただきましたら、政令、運用基準の策定に直ちに着手をしてまいります。
具体的なスケジュールについて現時点で明確に申し上げることはできないのですが、今御指摘いただいた予算編成プロセスに留意する必要があるのは当然でございます。ですから、早い段階から有識者の御意見を伺うというのも当然のことだと思っております。また、適合事業者となることが想定される民間事業者や団体からの御意見も伺う必要があると考えております。
これらを行いながら、政府として方針を固めて、これに基づいて政令案、また運用基準を作成して、可能な限り早いタイミングで順次公表してまいります。
○本庄委員 時間が来ましたので終わりますが、だからこそ、民間事業者の皆さんが関わるからこそ、早めの、そして明確なスケジュールを是非示していただきたいと思います。
以上です。
○星野委員長 次に、森山浩行君。
○森山(浩)委員 森山浩行です。おはようございます。
特定秘密保護法の成立から十年です。この法案には我々は大きく反対をしました。というのは、個人情報の保護、あるいは国民の知る権利、そういったものが大きく侵されるのではないのか、あるいは、国が秘密情報を持つ、ちゃんと管理ができるのか、こういった部分についても、この十年間、運用をしてくるという中で、有識者会議、あるいは独立公文書管理監、そして国会への報告と情報監視審査会というような形で、二重三重にチェック体制を設けてきた中で、もちろん、運用に問題なしとは言いません。漏えいも出てきています。あるいは、当初想定をしていた、紙にもなっていない、電子媒体にもなっていない、脳内情報を指定をするというようなものについては、実際そのようなものがなかったということで廃止をしている。若しくは、一つ一つの紙を指定をするのではなくて、ファイルを指定するという形でありますので、ファイル名を指定したけれども中身がない、いわゆる空箱指定というようなものもございました。これも廃止をされたということで、この間の特定秘密保護法、これの運用において多くの改善がなされてきたという部分でもあります。
そういった意味で、経済安保推進法、これと特定秘密保護法、両方から影響を受けた法律、セキュリティークリアランスでありますので、もちろん、これまでの運用の中で、特定秘密保護法、この運用で改善をしてきた点、あるいは問題を指摘をされてきた点、こういったものは改善をしたところから今回の運用はスタートすると考えてよろしいですね。
○高市国務大臣 特定秘密保護法につきましては、平成二十六年十二月の施行以降、情報監視審査会ですとか、あと有識者の方々の御指摘、御意見も踏まえて運用の改善がなされてまいりました。今委員がおっしゃっていただいたようなこと、特に国会から御指摘をいただいたことなども改善を続けてまいりました。
本法案につきましても、国会でお認めをいただきました暁には、まずは有識者の方の御意見をいただいて運用基準を策定して、これに基づいて適切な施行に努めてまいります。
また、国会の関与につきましても、今後、その受皿等、国会で御議論いただくことになるかと存じますが、国会から賜る御指摘に真摯に対応して、不断の運用改善を図っていく、その決意でございます。
○森山(浩)委員 十年前に遡るのではないのだということをいただきました。
さて、中の表現でありますけれども、本法の二十二条一項、罰則に関するところですが、「知り得た」という表現があります。特定秘密保護法二十三条では、「知得した」という表現になっています。「知り得た」という言葉になりますと、漏らした情報が、重要経済安保情報であると現実に知っていた場合だけでなく、重要経済安保情報であることを知る可能性があった場合も含まれるというような日本語としての読み方があるんじゃないかと思いますけれども、その場合にも漏えい罪が成立するのではないですか。
○高市国務大臣 まず、「知り得た」と、それから特定秘密保護法の「知得した」、これはいずれも情報を知っている状態を表しており、同じ意味であるということです。少し表現の仕方が国民の皆様に分かりやすくなったかなと思います。
その上で、今の委員の御懸念ですけれども、そもそも、故意犯においては、重要経済安保情報を漏らすことの故意が必要でございます。その故意の内容として、重要経済安保情報であることの認識も必要でございます。
ですから、重要経済安保情報とは知らずに外部に流出された場合には、二十二条一項及び二項の故意犯としての漏えい罪は成立いたしません。
○森山(浩)委員 まあ、当然ですよね。知らぬうちに捕まっていたというわけにはいきません。
だから、その場合はやはり、前の法律で「知得した」と書いてあるものをわざわざ「知り得た」と書いてしまうと誤解を生むというふうに思いますから、変えた方がよかったんじゃないかなと思います。
不利益処分についてです。
これも本会議での代表質問でも触れましたけれども、クリアランスが出るまでの期間、その間というのは宙ぶらりんになるわけですね。この人はクリアランスが出るのか出ないのか分からない、そのうちに半年たった、一年たった、二年たったとなってくると、その仕事ができないという状況で異動あるいは退職というような形にもつながってしまいかねないという意味で、クリアランスを受けようといった人の不利益につながるのではないかと考えます。
例えば、一か月あるいは三か月、六か月、一定の期間をもって事前に、このぐらいにはお返しできますよ、あるいは、その期間を過ぎるようであれば、こういう理由でこのように調査が遅れていますということを本人に伝えるということは必須であろうと思います。でないと、周りから見ても、あの人はクリアランスが受けられなかった人だと言われる上に、バツがついた場合よりも、これは行政はバツをつけていないわけですから、訴えられるわけにもいきません。
全く救済ができない状況になりますが、期間を事前に示すということについてはどうお考えですか。
○高市国務大臣 適性評価におきましては、重要経済安保情報を漏らすおそれがないことを確認するために必要十分な調査を実施する必要がございます。そのため必要な調査期間はやはり評価対象者の個々の事情などによって異なりますので、あらかじめ期間を区切って途中経過を報告するということは困難でございます。
ただ、本法案では、適性調査のための調査の一元化の仕組みを構築することとしておりますので、調査の効率化、短縮化に努めていくということはできるかと存じます。
また、内閣府やまた各行政機関に相談窓口を設置するということを前回申し上げました。ですから、そのような、なかなか結果が出ないんだけれどもというような御相談があった場合には、丁寧に事情をお伺いして、その旨を内閣府の調査担当に伝達をします。具体的な状況によっては、迅速な対応を要請するといった対応をすることは可能だと考えております。
○森山(浩)委員 企業の方もそれだけの余裕があればいいですけれども、この人、ここで使えなかったらほかの部署にやって、そこで働いてもらうわけにはいかないというような状況になっちゃうかもしれません。そういった意味でも、相談というのも大事だと思います。
一方、大臣、先日の、三月二十七日の、不利益取扱いをめぐっては、不合格となった従業員が不利な扱いを受けるというのに対して、契約も当然打ち切るというような発言をされています。これも話題になっていますけれども。
そういう打ち切られるということになったら、従業員自身が、うちの会社の仕事がなくなる、そこまでの大きな損害を出して自分が訴えるかどうかというような、非常にアンビバレントな、二律背反の状況に追い込まれる、なかなか訴えにくいというような状況になるかもしれませんけれども、それはどうお考えでしょう。
○高市国務大臣 やはり、目的外利用ということについては、しっかりと対応しなければならないと思っております。
民間企業の従業者の方が、適性評価の結果ですとか、また適性評価を受けることを拒んだようなことを理由として雇用主から不当な扱いを受けることがないように、十六条二項の目的外利用の禁止の実効性を担保しようと考えております。そのための方策としても、今後、有識者の御意見を伺った上で閣議決定する運用基準において、各行政機関がこの規定の遵守を適合事業者との契約などで求めることとしたいと考えています。
契約を解除するという私の発言ですが、こうした担保措置をより実効性あるものにする観点から、違反行為があった事業者に対する政府が取り得る最も厳しい対応の一つとして申し上げております。実際には、個別の事案、経緯、内容に即して、直ちに解除するには至らない場合もあるかとは考えます。
ただ、十六条二項に違反する不利益な取扱いに対しては、やはり、従業員の方々の権利を守るためにもしっかりと対処していく必要はあると思っております。
○森山(浩)委員 高市大臣は、大変発信力が強い。総務大臣時代には、テレビ局、停波するぞと言ったら、震え上がったというような時代もありました。
スタートをしてから途中でこういう話になってくると非常に大きなマイナスの影響を与えますけれども、始まる前の部分については、こういうことにならないように皆さん気をつけてくださいよということをしっかり伝えることは大事だと思います。
そういった意味で、ここから先の、運用内容を定めていくに当たっては、しっかりとメッセージを伝えていくという役割も担っていただきたいと思っております。
ありますか。
○高市国務大臣 政令、運用基準など定まりましたら、できるだけ分かりやすく説明をする、発信をしていく、これは十分に心がけてまいります。
○森山(浩)委員 労使協定についてです。
これも本会議で取り上げたのですが、労使協定は義務づけないという、木で鼻をくくったような総理答弁だけでありました。
義務づけというのが今回できていないということでありますけれども、企業の大きさにもよる、また体制にもよるにしても、やはり、労使協定を結べる状況にあるという企業については、その中にしっかり入れておくということが必要なのではないか、望ましいのではないかと思いますが、これについては、従業員との関係、いかがでしょうか。
○高市国務大臣 労使協定につきましては、有識者会議でも話題となりました。
労働者にも大きな影響が及ぶので、事前の労使協議と協定締結を義務づけるという御意見もございました。
一方で、慎重意見としては、企業による労使関係が様々でありますので、一律の義務づけには違和感があるといった御趣旨の御意見もありました。それから、セキュリティークリアランスを取得する人が企業内にどれだけいるのかとか、その事業が企業経営の中でどれぐらいの位置づけを占めるのかによるんじゃないかという御意見もいただきました。
さらに、強く反対する御意見としては、セキュリティークリアランスが必要な事業への参画というのは明らかに経営判断に属するものであり、法律での義務づけは絶対にやるべきではないといったお話もございました。
他方で、不利益取扱いを防止する観点からも、また従業者の方の懸念に対応するためにも、労働組合に一定の役割を期待する声があるということも十分に承知をいたしております。
ですから、義務づけまではしないとしても、運用基準などを検討する中で、労働組合の関与についてもお示しできないかということを考えてまいりたいと存じます。
○森山(浩)委員 やはり、書類に書き込んでおくというのは非常に大事だと思います。
適性評価の対象数、これも繰り返し議論をしてまいりました。組織の人員は増やすんだけれども、それが足りるのかどうか。一人なのか、十人なのか、一万人なのか、百万人なのかということで全く変わってくると思うんですね。
そういった意味で、適性評価の対象数というのは何らかの形で示していただけませんか。
○高市国務大臣 件数や人数について具体的な見通しを現時点で申し上げるのは難しいということに変わりはございませんが、これまで本委員会の審議の中で度々御指摘をいただきました。これを踏まえて、公表されている秘密文書ファイルの統計数値を基点に、かなり大胆な仮定を重ねながら試算をさせていただきました。
情報指定の件数は、指定が集中すると思われる初年度でも数十件程度、多くても三桁の件数だろうと見積もられます。この数値を前提に、適性評価を受ける方の数も、これも大ざっぱな推計なんですけれども、多く見積もって数千人程度で、数万人という単位にはならないと見積もっております。
○森山(浩)委員 何千人というようなレベルでスタートだということでございます。
ここから先、状況がどんどん進展していく中で、閣議決定等、あるいは運用基準等の議論にもなってくるかと思います。その中で、具体的なもの、特定秘密の人数が秘密だということではなくて、人数についても試算を重ねながらしっかりオープンにしていっていただきたいと思います。
さて、参考人の質疑の中で、英仏ではもうコンフィデンシャル級についてはやめるんだ、あるいはアメリカでもぐんと減ってきているんだというようなことの訴えもありました。
海外との平仄を合わせるという部分については、いかがお考えですか。
○高市国務大臣 他国の制度について政府として責任を持ってお答えする立場にはないのですが、それぞれの政府が公表しておられる資料によりましたら、英国では二〇一四年にコンフィデンシャルの廃止を含む見直しが行われております。その理由は、紙ベースの情報管理が念頭に置かれた複雑な仕組みを改める一環として、簡素化の観点から変更されたと承知しております。フランスにおいても、同様の見直しが二〇一九年に決定されて、二〇二一年から実施をされております。
ただし、両国とも、コンフィデンシャル級としていた情報をシークレット級として保護することなどによって、秘密情報を二段階で保護する形に整理し直したと承知をいたしております。
○森山(浩)委員 海外で不要となっているわけではないのだという御答弁だったと思います。
このセキュリティークリアランスの法案自体が全体の枠を決めるというような話でありますから、具体的な事例とか人数とか、いろいろなものを含めて、まだまだ具体性に乏しいと思います。運用の基準であるとか閣議決定していく内容であるとか、これからどんどん具体的な話がこの後出てくるのだということで、本来的にはこれは望ましくない。本当は、法律を出すときに大体こんなものだというのを出していただくべきでありますけれども、これができていない中でスタートをしていった場合、この運用基準等については、国会、とりわけ我々内閣委員会にしっかり報告をしながら議論をしていくということをお約束をいただけますか。
○高市国務大臣 運用基準は、パブリックコメントにも付しますし、閣議決定もしなければならない、大変重いものでございますし、これから、この法案をお認めいただいた後、迅速にその作業に取りかかって、また、それを基準にして、今度、予算要求等にも間に合わせなければいけない。大変迅速な作業が求められますが、非常に重要なものでございますので、委員の先生方の御指摘も踏まえながら、しっかりと対応してまいりたいと思っております。
もしも、でき上がってパブリックコメントに付すぐらいの段階になりましょうか、閣議決定より前に、本委員会で御質問などいただけましたら、しっかりとお答えさせていただきます。
○森山(浩)委員 そもそも、このセキュリティークリアランス、経済安保推進法案の審議に際して、我々も賛成をいたしました附帯決議に書き込んだものです。その看板が欲しいということは、経済界やあるいは労働界も含めて要請があったものと承知をしています。
ただ、今回の法案については、これまで二十時間余りの審議時間ということになってきましたけれども、具体性がまだまだ乏しい。運用の基準を作る、あるいは、そのための議論をスタートをするというような段階だということです。運用をスタートしてからのチェックが何よりも大事であると感じていますので、政府内のチェック、第三者機関、また、国会のチェックについての修正が必要であると考えております。
ありがとうございました。
○星野委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
今日は、同盟国、同志国による防衛装備品の国際共同開発と今回の法案の関係についてお尋ねをいたします。
日本とイギリス、イタリアによる次期戦闘機の共同開発に係るグローバル戦闘航空プログラム、GCAPに関連し、昨年十二月、日米両政府は、次期戦闘機と連動する無人機をめぐりAI技術に関する共同研究を実施することで合意したといいますが、これはどのような内容でしょうか。
○松本(恭)政府参考人 失礼します。
委員御指摘のとおり、昨年十二月に、防衛省及び米国防省は、日米防衛当局間で、無人機へ適用するAI技術に係る日米共同研究に関する事業取決めに署名したところです。
本研究は、一昨年十二月に公表した次期戦闘機に係る協力に関する防衛省と米国防省による共同発表を踏まえて実施するものであり、無人機の行動判断に適用されるAI技術について防衛装備庁と米空軍研究所が共同研究を実施するものです。本共同研究の成果として得られるAI技術については、我が方においては次期戦闘機と連携する無人機等に適用することを念頭に置いています。
無人機と有人機の連携は今後の航空領域における活動のために極めて重要な要素であり、その実現に必要な技術として、特に進展の著しいAI技術の分野における日米の協力は、日米同盟の相互運用性や技術的優位性を確保するものであると期待しているところです。
○塩川委員 無人機の行動判断に適用されるAI技術を研究するということで、日本においては次期戦闘機と連動する無人機をめぐるAI技術ということであります。次期戦闘機に連動する無人機の開発をめぐってAI技術に関する共同研究を日米で実施するということであります。
次に、バイデン米国大統領は、昨年十月、オーストラリアのアルバニージー首相と会談をし、日本を交えた三か国で無人機分野の協力を検討すると合意したということですけれども、その内容について承知しているでしょうか。
○松本(恭)政府参考人 お答え申し上げます。
米国、豪州間の合意の内容につきましては我々も承知しておるところでございますけれども、具体的な詳細については、我々、詳細に承知しておるわけではございませんので、引き続き、三か国とも連携して、協議を重ねてまいりたいと思います。
○塩川委員 アメリカとオーストラリアの首脳共同声明は、戦闘機とそれに連動して活動する無人機の連携が重要になるとの認識を示し、我々の協力は相互運用性の向上と技術移転の加速を狙っていると記しているそうであります。
これは、GCAPの次期戦闘機と連動する無人機の開発に係るAI技術の共同開発について、日米豪三か国での協力を目指すものではないのかと考えられます。
あわせて、オーストラリアのリチャード・マールズ国防相は、共同のインタビューに、AUKUSの第二の柱である極超音速兵器やAIなどの共同開発について、将来的な日本の参画に期待と述べていますが、どのような期待をオーストラリア側はしているということなんでしょうか。
○安藤政府参考人 お答え申し上げます。
AUKUSは、一義的には米英豪三か国の協力の枠組みでございますが、先進能力分野につきましては、同盟国及び緊密なパートナーに関与する機会を模索することと承知をしておりまして、防衛省として、関心を持ってこの取組の進展を注視しているところでございます。
その上で、今先生御指摘の報道につきましては承知をしておりますが、豪副首相兼国防相のコメントの趣旨につきまして確定的にお答えすることが困難であることにつきましては御理解を賜りたいと存じます。
○塩川委員 そういう話があるということであります。
日米の間で、極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾、GPIの共同開発で合意をしておりますが、リチャード・マールズ・オーストラリア副首相・国防相の、極超音速兵器の共同開発について日本の参画に期待するという発言は、それを受けてのものということであります。
いわば、GCAPにおける次期戦闘機に係る、連動する無人機のAI技術の開発とともに、GPIに関しても日米豪三か国での共同開発が想定をされているということであります。これにはイギリスも入るということもあるかもしれません。
そこで、米国のカート・キャンベル国務副長官は、この十日に行われます日米首脳会談で、AUKUSと日本との技術協力について議論すると明らかにしておられます。
また、キャンベル国務副長官は、三日のワシントンでのAUKUSをテーマにした講演において、極めて重要な防衛装備品の共同開発、共同生産について日米首脳会談で協議をすると述べておりますが、これはどのような内容のものでしょうか。
○濱本政府参考人 お答え申し上げます。
キャンベル国務副長官は、記者団等に対しまして、日米首脳会談でAUKUSと日本との技術協力についても協議が行われる見通しだとの趣旨の発言をした、具体的には、安全保障や技術の面で日本が大きな能力を発揮できる分野がある等ということを言ったと報じられていると承知しております。
○塩川委員 実際に首脳会談でどういうことを議論するんでしょうか。
○濱本政府参考人 お答え申し上げます。
日米首脳会談における議論の内容等につきましては決まっていないところでございまして、予断を持ってお答えすることは困難であることは御理解いただけないかと思います。
その上で、AUKUSにつきましては、現時点におきまして日本とAUKUSとの協力について決まっていることはございませんが、我が国としては、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、安全保障、防衛面で重要なパートナーである米国、豪州、英国との間で引き続き様々な形での連携を強化し、我が国の防衛力強化に資する取組を今後とも進めてまいりたいと考えております。
○塩川委員 キャンベル国務副長官は、極めて重要な防衛装備品の共同開発、共同生産について日米首脳会談で協議するということを述べた。その中身について、今やり取りしましたように、やはり、GCAPに係る次期戦闘機と連動する無人機のAI技術の共同開発の面、それから、GPIの共同開発についても、日本、アメリカ、オーストラリア、さらに、イギリスも視野に入っているかもしれません、こういった共同開発の可能性ということも指摘をされるところであります。
このように、次期戦闘機に連動する無人機に関するAI技術の共同開発及び極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾、GPIの共同開発について、日米豪、さらにはイギリスも含め進めることになれば、日本の民間企業の参入も踏まえ、セキュリティークリアランスが必要となるのではないでしょうか。
○品川政府参考人 お答えいたします。
今御指摘のありました防衛装備品等についての開発につきましては、本法案が成立する前からあります既存の制度に基づくセキュリティークリアランスを活用していくものと理解をしております。
○塩川委員 そうなんでしょうか。
大臣にお尋ねします。
米国防総省は、今年一月、同盟国の軍需産業をアメリカの戦略に統合することを掲げた国家防衛産業戦略を発表しました。この国家防衛産業戦略は、同盟国や同志国の強固な防衛産業は米国国防総省の統合抑止の礎石であり続けると指摘をし、地球規模の兵器のサプライチェーンや整備拠点の確保が死活的だとして、同盟国との二国間、多国間の防衛産業の協力が掲げられております。
このようなアメリカの国家防衛産業戦略の下、日本に対して民間企業へのセキュリティークリアランスの導入強化が求められているのではありませんか。
○高市国務大臣 アメリカの国防省が国家防衛産業戦略を公表したのは今年、二〇二四年の一月十一日でございます。
そもそも、この法律案の検討について私が意欲を表明したのは二〇二二年の八月十日、そして、その後、総理から御指示をいただいて、有識者会議も設置して、本格的にこの法律案の準備に向けて対応を始めたのは昨年、二〇二三年の二月でございます。
ですから、アメリカの国防省から何か言われて制度の導入を求められたという事実は全くございません。そもそも、この法律案が保護の対象とするのは、我が国の国民生活や経済活動にとって重要なインフラや重要物資のサプライチェーンの保護に関する情報でございます。
○塩川委員 防衛産業というのは重要経済基盤に当たるということでよろしいですか。
○高市国務大臣 重要経済基盤、つまり、重要な、サプライチェーンですとか重要な物資に係るものでございますけれども、デュアルユースという概念からいいますと、防衛関連企業がこれまで培ってきた知見というものを、政府が持っている情報を提供して共に研究をしていくということはあるかと思いますが、直接的に国防の用に供する装備品ということになりますと、これは特定秘密の世界に入っていくと考えております。
本法案でそのような形のことは想定しておりません。
○塩川委員 サプライチェーンにおける防衛産業も重要経済基盤、これは否定されないわけであります。
そういった点でも、今回の動きについて、防衛省のシンクタンクである防衛研究所の「「米国国家防衛産業戦略」を読み解く」というレポートでも、「米国との安全保障分野の連携に我が国の民間企業を参画させる際に無視できないのが、セキュリティークリアランス制度の問題である。本稿執筆中の二〇二四年一月末現在、同制度の実現に向けて法案の提出が目指されているが、防衛産業連携のいわば「共通言語」である同制度の確立と確実な普及は依然急務である。」と述べております。防衛省が、今回の法案がアメリカの国家防衛産業戦略と符合する、そういうものとしてこの確立と普及が急務だと述べているというのが、まさにこの本質を示しているのではないでしょうか。
今回の法案は、同盟国、同志国の多国間連携で兵器開発を推進するものであります。殺傷能力のある兵器を他国に売りさばくような、死の商人国家を目指すことは断じて認められないということを申し上げて、質問を終わります。
○星野委員長 次に、浅野哲君。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。
これから十分間、よろしくお願いいたします。
本日は、国際共同研究を一つテーマに質問したいと思います。
二〇二一年の日米首脳会談の際、日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップに合意し、AIや量子技術などの研究開発で合意していくことを確認しました。アメリカ国防省は、同省が保持する機密情報を開示する際、相手国の法制度を含む機密保全制度を検証するとともに、個人に対してもセキュリティークリアランスの保有を求めています。これに先立つ二〇二〇年には、日本政府は、国際共同研究の推進を目的として、AI等の技術を扱う技術者の信用度を保証する資格制度の新設について検討を開始していることも報じられております。
そこで質問なんですけれども、国際共同研究に当たる研究者は、セキュリティークリアランスを保有していなければその研究に参加できない仕組みとなることがこれらの動きから想定されますが、適性評価には現状かなりの時間を要している状態にあります。国内でも、一年たっても回答が来ないという特定秘密保護法上の今の実態もありますし、アメリカにおいても、トップシークレットのクリアランスには平均百五十八日、シークレットでも平均八十一日を要しているというデータもあります。
このことを踏まえれば、必要性が発生する前からあらかじめ適性評価を受けられる仕組みも整備しないと、今後、円滑な国際共同研究の実施が難しくなるのではないかということを懸念しておりますが、この時間を要している部分について何らかの対策を講じるべきではないでしょうか。
○高市国務大臣 前提として、国際共同研究の中でセキュリティークリアランスが求められるというのは、我が国の特定秘密又は重要経済安保情報や外国政府の機密情報を取り扱うということになる機微な研究に限られると考えております。
その上で、本法案による新規の適性評価は、十二条一項一号で規定しているとおり、重要経済安保情報の取扱いの業務を行うことが見込まれる者が対象です。これは、主要国におけるセキュリティークリアランス制度や先行している制度である特定秘密制度とも同様でございます。諸外国に通用する制度という観点も踏まえてこういう仕組みにいたしております。
ただし、重要経済安保情報を取り扱うことが見込まれない時点で適性評価を行うということは想定しておりません。
ただ、期間の短縮という御指摘も当然のことだと思いますので、今回は、調査機能の一元化によりまして手続の効率化を図ることとしております。適性評価に要する期間の短縮化にいろいろ工夫しながら努めてまいりたいと存じます。
○浅野委員 見込まれる段階から適性評価を受けることができるような運用にこれからしていく意思はあるというふうに理解をしました。
例えば、先日も総理が、今度、十一日、訪米した際に日、米、フィリピンの首脳会談を行う、そのときに、この三か国で、今後、半導体やデジタル、エネルギーなどの分野で三か国共同のプロジェクトを進めることを確認したいという意思も表明されています。
首脳間の合意から実際にそういった国際共同研究が始まるまで、どのくらいの期間を要するかは今の時点で見込まれておりませんけれども、やはりこういった機会を逸することのないように、我が国の研究者の皆様にもしかるべき資格を保有しておいていただいて、いざこの研究がスタートできる段階になったら、他国に遅れることなくしっかり我が国の研究者もそこに参画をする、そういった環境をつくっておくことは非常に大事だと思いますので、どのような要件が整えばセキュリティークリアランスを求められる立場になると見込まれるというふうに判断できるのか、この辺りの要件の明確化というのは是非今後検討していただきたいというふうに思います。
次の質問ですが、以前、経済安保推進法が成立をした際、特許の非公開制度についてもスタートをいたしました。非公開になる特許というのはあらかじめある程度分野が限定をされておりまして、まさに経済安全保障上重要な技術であったり、これが外部に公表されることで我が国の競争力に影響が与えられたり、あるいは経済安全保障上の問題を引き起こす可能性があるものについて非公開指定を行う、このような考え方だというふうに理解をしております。
非公開となった特許と重要経済安保情報の関係性について少し整理をしたいんですが、単刀直入に聞きますと、非公開制度の対象となった発明技術というのは重要経済安保情報に該当するのかどうか、この辺りの整理を是非教えてください。
○高市国務大臣 経済安全保障推進法の特許出願非公開制度におきましては、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が保全指定の対象となります。
このため、本法案の三条一項で定める重要経済安全情報の指定の三要件のうち、公になっていない、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるという二要件については、基本的には満たすと考えております。よって、保全指定を受けた発明が本法案の重要経済基盤保護情報、一つ目の要件ですね、重要経済基盤保護情報に該当するものであれば重要経済安保情報として指定されることになると考えられます。
ただし、特許出願非公開制度の特定技術分野というのは、主に武器等に用いられた場合のリスクを考慮して選定されていますので、重要経済基盤保護情報に該当しないものも多いと考えられます。
基本的に、特許出願された発明の内容を国が知ることになるのは出願後でございますので、仮に保全対象発明が重要経済安保情報に指定されたとしても、その指定の効果というのは現保有者である出願人には及びません。ですから、その出願人が適性評価の対象となることはないということでございます。
○浅野委員 ありがとうございました。
時間の関係で最後の質問になるかと思います。
米国では、経済安全保障分野のセキュリティークリアランス制度がスタートしてからしばらく時間がたっておりますが、これまでの運用の中で、過剰な秘密指定によって本当の秘密が何なのかというのが不明確になり、政府の説明責任が損なわれているという指摘が国内から出ているというふうに聞き及んでおります。機密の管理に必要なコストの増大を招くという指摘もあります。
重要経済安保情報の指定に当たっては必要最小限度の範囲とすべきと考えますが、この範囲の考え方について、最後に大臣のお考えを伺います。
○高市国務大臣 重要経済安保情報として指定するのは、重要経済基盤保護情報であって、公になっておらず、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるという三つの要件に該当する場合でございますので、この要件に該当しない情報は指定することはできません。
また、情報の指定及び解除につきましても、有識者の御意見を聞いた上で案を作成して、閣議決定によって統一的な運用基準を定めます。制度を所管する内閣府において、それが運用基準に従って適切に行われているかどうかをチェックをして、必要があれば内閣総理大臣が勧告などを行うことにしております。
また、独立公文書管理監が、独立した立場で検証、監察することにもなります。これは、指定が適切になされているかどうかということもその対象になります。
重層的なチェック体制を取りますので、法の要件を満たさないような過剰な指定がなされるようなことがないように、しっかりと徹底してまいります。
○浅野委員 是非、参考人の皆様もおっしゃっておりましたが、本当に必要最小限度、例えば文書全体を一括で指定してしまうような場合も懸念がされておりましたので、この点、十分に今後検討を重ねることを望んで、質問を終わります。
以上です。
○星野委員長 次に、阿部司君。
○阿部(司)委員 日本維新の会の阿部司です。
日本維新の会そして教育無償化を実現する会の会派を代表しまして、質問させていただきたいと思います。
この法案は、重要経済安保情報として想定される重要分野はサイバーであると考えます。中間報告でも、サイバー分野における脅威情報ですとか、サイバー、宇宙分野での国際共同研究などが挙げられておりますが、本法案におけるサイバーの位置づけについて、まず大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
○高市国務大臣 重要経済安保情報として指定される情報の三要件につきましては、先ほど来申し上げておりますので、貴重なお時間ですから割愛いたします。
重要経済安保情報に該当し得る情報として、今、阿部委員が御指摘くださったサイバー脅威対策に関する情報は考えられます。
本法案によって、例えば、重要インフラのサイバー脅威への対処について、政府が保有する機微な情報を民間に共有することで、サイバーセキュリティー対策をより円滑に効果的に推進することが可能となります。
また、この法案や関係する国際的な枠組みと相まって、経済安全保障推進法の基幹インフラ制度の運用も含めたサイバー脅威事案への同盟国などとの連携した対処ですとか、重要インフラの脆弱性の解消などに関する国際的な調査や研究が進展することも期待いたしております。
〔委員長退席、中山委員長代理着席〕
○阿部(司)委員 ありがとうございます。
いわゆる脆弱性情報ですとか攻撃情報といった機微な情報の一部が民間に共有されることができれば、日本全体のサイバーセキュリティーにとっても、対策が強化されて、ひいては安全保障の能力が向上するものだと私も考えております。
ここで、政府に対するサイバー攻撃の実態についてお伺いをしてまいりたいんですけれども、昨年一年間でサイバー攻撃は何件あったのか、そして、近年のサイバー攻撃による情報流出、代表的なケースについて幾つか御紹介をいただきたいと思います。
○中溝政府参考人 お答え申し上げます。
内閣サイバーセキュリティセンターにおきましては、政府機関へのサイバー攻撃等について、二十四時間体制による横断的な監視を行ってございます。そこにおきまして、不審な通信等を検知し対応が必要と判断された場合には、当該政府機関へ通報を行っているということでございまして、その件数をお答えさせていただきます。
令和五年四月から令和六年三月までの一年間に政府機関に通報を行った件数は、速報値で二百十件でございます。
また、情報漏えいの代表的な事例といたしましては、内閣サイバーセキュリティセンターあるいは気象庁におきまして、電子メール関連システムに対し不正通信があり、メールデータの一部が外部に漏えいした可能性がある旨を両組織が令和五年八月に公表したものが挙げられるところでございます。
○阿部(司)委員 今御案内いただきましたけれども、サイバー攻撃の脅威というのは依然として高まっているわけであります。
セキュリティークリアランスを実施しまして情報保全の体制を取ったとしても、万全のサイバー防御を講じていかなければ、サイバーセキュリティーのリスク、情報漏えいのリスクは存在し続けるわけであります。我が会派の前原議員も、セキュリティークリアランスがあっても、アクティブサイバーディフェンスの穴があると指摘をしておりますけれども、経済安保担当のお立場から、サイバー防御の必要性について御認識をお伺いしたいと思います。
○高市国務大臣 まさに阿部委員御指摘のとおりでございます。昨今は、サイバー攻撃の巧妙化によりましてサイバー空間における脅威が高まっていて、我が国全体のサイバーセキュリティー対策を一層強化していく必要があると思っております。
政府では、サイバーセキュリティ戦略を策定して、情報漏えいの防止、情報システムや情報通信ネットワークの安全性確保のための様々な対策を講じてきたということは承知しております。
私の所管といたしましては、一部改正案を御審議いただいております経済安全保障推進法の基幹インフラ制度も、サイバー攻撃などの特定妨害行為を防止することによって基幹インフラ役務の安定的な提供を確保する重要な施策でございますので、この制度の運用をしっかりと行ってまいります。
○阿部(司)委員 ありがとうございました。
私も高市大臣と同じ認識であります。
また、この後でアクティブサイバーディフェンスについて質問させていただきたいと思いますが、次は少し違った角度から質問させていただきたいと思います。
セキュリティークリアランスで情報保全を図ることで我が国のサイバー防御力というのは上がっていくと思いますけれども、例えば、クリアランス保有者へのサイバー攻撃によって情報漏えいが起こった場合、罰則が適用されるんでしょうか。また、この場合、過失によって漏えいしたケースとなるのか。また、企業がサイバー攻撃によって情報が漏えいしてしまった場合にも罰則は適用されるのか。高市大臣にお伺いいたします。
○高市国務大臣 サイバー攻撃による情報漏えいのようなケースは、まずは、サイバー攻撃を行った者が、本法案第二十三条の不正取得の罪に問われるか否かという場面だと思います。
それに加えて、サイバー攻撃を受けた適合事業者の従業者が、本法案第二十二条四項に規定する過失による漏えいの罪に問われるか否かというお尋ねだと存じます。
サイバー攻撃を受けた適合事業者の従業者の過失が認定されるかどうかということについては、個別具体の状況に基づいて判断されることとなります。
その上で、本法案の運用に当たっては、特定秘密保護法の運用も参考に、重要経済安保情報を取り扱う従業者について、行政機関と適合事業者との契約で、取扱い時におけるコンピューターの使用の制限に関する事項を遵守していただくよう義務づけることを想定しております。例えば、これに基づいて適合事業者が従業者に対して適切な指導、教育などを行っていたにもかかわらず、従業者が当該事項を遵守することなく、その結果として漏えいが発生したような場合には、従業者の過失が問われる場合もあり得ると考えられます。
なお、この法案第二十七条にはいわゆる両罰規定を置いておりますが、過失による漏えいの罪についてはこの両罰規定の対象とはしておりません。従業者が第二十二条第四項の罪を犯した場合でも、適合事業者が処罰の対象となることはございません。
○阿部(司)委員 重要なことなので、もう一度確認でお伺いしたいんですけれども、適合事業者が政府の指導に従ってコンピューターのいわゆる使用ですとか対策をしっかりと施していれば、サイバー攻撃を受けて情報を漏えいしたとしてもいわゆる処罰の対象には当たらない、こういう理解でいいですか。
〔中山委員長代理退席、委員長着席〕
○高市国務大臣 事業者の方が、契約に基づいて、コンピューター使用の制限ですとか、施設、場所への出入りの制限ですとか、それからクリアランスホルダーとなった従業者の方への教育、こういったものもしっかりとやっておられるということでしたら、これは、適合事業者はやるべきことをやっているわけでございますので、従業者による過失ということにはなる可能性がございますけれども、適合事業者に対して何か罰則が及ぶというようなものではございません。
○阿部(司)委員 ありがとうございました。
こちらは民間の方も御心配されている点だと思いますので、確認をさせていただきました。
それでは、特定秘密保護法で、先ほど少し触れていただきましたけれども、同じようなケース、いわゆるサイバー攻撃を受けて情報が漏えいしてしまった場合、これは特定秘密保護法についてはどのような対象になっているか、これも確認でお伺いをしたいんです。
○岡政府参考人 まず、特定秘密保護法におきましても同旨の過失漏えい罪の規定がございます。何者かによるサイバー攻撃により漏えいが発生した場合に過失が認定されるかどうかにつきましては、個別具体な状況に基づき判断されるものであり、ただ、一般論として申し上げますと、取扱事業者は、適合事業者の従業者も含めまして、特定秘密を取り扱う電子計算機の使用の制限に関するルールを遵守する義務がございます。もし当該ルールを遵守せずに漏えいが発生したときは、過失が問われる場合もあり得ると考えられます。
なお、各行政機関は、スタンドアローンの電子計算機又はインターネットに接続していない電子計算機であって、なおかつ、特定秘密の取扱いの業務を行う職員のみがアクセスできるものを用いることを定めておりまして、そもそも外部からのサイバー攻撃による窃取が行われにくいようにしておりますけれども、引き続き、サイバー攻撃対策を含む秘密保護措置を徹底してまいります。
○阿部(司)委員 それでは、更にお伺いをいたします。政府参考人にお伺いします。
今お答えいただいた、特定秘密保護法の、そうしたサイバー攻撃のいわゆる過失の判断については今のようなお答えだったんですけれども、今般のセキュリティークリアランスの法案についても同じような基準になってくる、そういう理解でよろしいですか。
○飯田政府参考人 まず、判断について、先ほど大臣がお答えしたラインがあるわけでございますけれども、今特定秘密保護法の担当からも申し上げたとおりでございますので、両者について、よくすり合わせをさせていただきたいというふうに考えております。
○阿部(司)委員 ありがとうございました。
こちらは、特定秘密保護法と今般のセキュリティークリアランス法案、基準をしっかり合わせて、考慮してルールを決めていただく必要があるかなと思います。
次の質問に参ります。
関連の質問になりますが、近年、メッセージングアプリを通じた大規模な情報流出ですとか、例えば動画アプリを使用した際、スマホから個人情報を盗み取られるといったケースが発生しているとメディアでは報じられております。
適性評価に合格した際、特定のアプリケーションそしてデバイスへのアクセスを制限されることがあるのか、高市大臣にお伺いしたいと思います。
○高市国務大臣 適性評価を受けて情報を取り扱うことになった方に対して、例えば、外国の情報機関などから重要経済安保情報の漏えいの働きかけを事前に防止する観点から、SNSの安全な利用方法などに関しての注意喚起をすることはあり得ます。しかし、本法案の制度によって、私生活において特定のアプリケーションやデバイスへのアクセスを制限するといったことは考えておりません。
ただ、先ほど申し上げた注意喚起の具体的な内容としては、掲示板やSNSなど不特定の方が閲覧できる環境で、自らがクリアランス保有者であることを掲載しないよう求めることなどを想定しております。
○阿部(司)委員 ありがとうございます。
特定のアプリケーション、政府関係者も使用を控えるといった例を聞いております、高市大臣もそうだと思いますけれども。この点、クリアランスホルダーの方々にも十分御注意をいただけるように、教育、研修、実施をいただければと思います。
セキュリティークリアランスで重要経済安保情報の保全を図った次のステップのお話なんですけれども、さらに、サイバー攻撃による穴を塞いでいくために、今後、アクティブサイバーディフェンス、こちらについても法制化が必要だと思いますし、検討も進んでいると承知をしておりますが、サイバーセキュリティーの知見が深い高市大臣の思いを是非語っていただきたいと思います。
○高市国務大臣 令和四年十二月に閣議決定した国家安全保障戦略では、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させるという目標が掲げられております。政府としては、サイバー安全保障分野における新たな取組の実現のための法制度の整備、運用の強化を図ることとしていると承知をしております。
ただ、その法制度の整備については、残念ながら、私の担当ではなく河野大臣の担当となっておりますので、詳細についてお答えすることはできないのですが、でも、我が国のサイバー対応能力を向上させるということは、現在の安全保障環境に鑑みると急を要する課題だと思っております。
○阿部(司)委員 急を要する課題だという御答弁をいただきました。
是非、問題意識を持つ政府関係者の皆さん、そして議員の皆さんと力を合わせてこの件を進めてまいることができればと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
次の質問に入ります。
先日、本会議で我が会派の堀場議員が代表質問したところ、総理から、我が国において外国情報機関による情報収集活動が講じられているとの総理答弁がありました。
現在、我が国において活動している外国情報機関の工作員は何名ほどと推計しておられるのか、お伺いをいたします。
○迫田政府参考人 警察におきましては、諸外国の情報機関などによる違法な情報収集などの対日有害活動について、平素からその動向に注目し、必要な情報の収集及び分析を行うとともに、厳正な取締りを行っているところでありますが、お尋ねの件につきましては、事柄の性質上、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
なお、その関連で申し上げますと、最近の我が国に対する有害活動の検挙事例といたしましては、例えば、令和二年十月、大手化学メーカー元社員が、在職当時に勤務先の営業秘密である技術情報を不正に得た上で、SNSを通じて接触を受けた中国企業の社員にこれを提供したとして、同人を不正競争防止法違反で検挙した事件があります。また、これは令和二年一月の検挙になりますけれども、大手通信関連会社の元社員が、ロシアの情報機関員と見られる在日ロシア通商代表部の代表代理という肩書の者でありましたが、そうした者に唆されて、同社の営業秘密である機密情報を不正に領得したとして、同人を不正競争防止法違反で検挙した事件などのケースがございます。
○阿部(司)委員 外国の情報機関の工作員、スパイが何人いるのかというところはちょっとお答えいただけなかったんですが。
今の事例からしても、実際にそういったスパイが活動していて、日本の、我が国の重要な情報が盗み取られていると。この事案自体、氷山の一角であると思います。相当数まだまだ存在していると言われておりますけれども、この脅威が高まっている中、セキュリティークリアランスの法案が成立したとして、保有者が標的になる可能性もあると思うんです。
他国において、既にセキュリティークリアランスのルール、制度が施行されている国において、保有者ですとか企業を標的とした情報詐取の事案があるかどうか、あれば是非御紹介をいただきたいんですが、政府参考人、お願いします。
○飯田政府参考人 お答えいたします。
御指摘のような、セキュリティークリアランスを保有していることを起点として情報漏えいが発生した事案であるかどうかは十分承知をしておりませんけれども、例えば、他国の機密情報の漏えい、クリアランスの保有者に関わる漏えいとして一つ事例を申し上げれば、米国におきまして、米国国務省と契約していた事業者の従業者が、トップシークレットの文書を外国に不正に提供し、スパイ容疑で起訴された事案があったと承知しております。
また、これは直接のお答えとは関連しないかもしれませんけれども、トップシークレットのクリアランスを保有していた米空軍の州兵が、トップシークレットの文書をSNSに投稿し、逮捕された事案があるというふうに承知をしております。
○阿部(司)委員 ありがとうございます。
先ほども触れましたが、今回の法案が成立した場合、重要経済安保情報にアクセスできる人間が当然増えてくるわけであります。もちろん、適性評価を受けているわけですから、信頼の置ける人材であるわけなんですけれども、逆に外国情報機関のターゲットにされかねない、こういう危険性をはらんでいると思います。
そこでお伺いしたいんですけれども、現行の我が国のカウンターインテリジェンス体制において、セキュリティークリアランス保有者が標的にされた際の課題認識を高市大臣にお伺いをしたいと思います。
○高市国務大臣 確かに、政府としての認識は、我が国において外国情報機関による情報収集活動などが行われているという認識でございます。ですから、カウンターインテリジェンスに関する取組を強化するなど、情報保全に係る必要な対策を講じているということでございます。
ただ、本法案の適性評価を受けて、情報漏えいのおそれが御本人からはないと認められた者であっても、やはり外国政府などによる諜報活動の標的となることは考えられます。その対策として、行政機関の職員であれ、適合事業者の従業員の方であれ、意識喚起、教育、研修が重要だと考えています。例えば、行政機関の長から適性評価の結果通知をするときに、そのタイミングであらかじめ注意を促すという方法もありますし、あと、行政機関と適合事業者の契約において定めることとなる従業者に対する重要経済安保情報の保護に関する教育に基づいて、適合事業者の社内で定期的に教育、研修の機会を設けることなどが考えられます。
いずれにしましても、今の委員からの御指摘というのは非常に重要な問題だと認識しておりますので、必要な対策を講じてまいります。
○阿部(司)委員 ありがとうございます。
しっかり教育を行っていく、注意喚起を行っていく、これは非常に重要だと思うんですけれども、とはいえ、スパイの皆さん、皆さんというのも変かもしれませんが、彼らもプロなわけであります。あの手この手でアプローチしてくることは当然考えられるわけであります。
そこで、やはり、かねてから我が党の議員も何人も指摘をしておりますが、我が国のインテリジェンス組織の強化とともに、そもそものスパイ活動を抑止していく、抑止力を高めていくために、外国情報機関の工作員によるスパイ活動を防止する、抑止していくための法整備、こちらを整えていくべきだと考えます。
こちらは高市大臣も賛成のお立場だと認識をしておるんですけれども、そういったお立場から、ちょっと所管外かもしれませんが、スパイ活動を防止する法律の整備に関する御見解、思いを是非お伺いしたいと思います。
○高市国務大臣 思い切り所管外でございますが、重要な情報の海外流出というものを阻止する、それは非常に大切なことだと思っております。今私にできることは、先ほど申し上げておりましたような、独立行政法人、国立の研究機関からの情報流出をいかに少なくしていくか、これは科学技術政策担当大臣として取り組んでおりますし、本法案におきましても一定の抑止効果というのはあると思います。
といいますのは、セキュリティークリアランスの対象が日本人に限られたものではないということだからでございます。それから、やはり、クリアランスホルダーになった方には相当な注意をしていただくことになります。適合事業者にも秘密を流出させない対応を取っていただくことになりますから、一定の効果というのはあると思います。
委員がおっしゃるのはスパイ防止法ということだと思います。この必要性については様々な議論がありますし、過去にそのような名称の法律案が提出されたということも承知はしておりますけれども、じゃ、何がスパイ防止法なのかというような定義も含めて様々な議論を重ねなければならないと思うんですね。これは不正競争防止法では絶対に防げないのかとか、外為法では防げないのかとか、今回のような、御提案している法律案では防げないのかとか、じゃ、それらの今ある法律を全て駆使しても防げないものがどれほどあって、それに対してどういう対応をするのかというのは、慎重に、多くの方々の御意見を聞きながら検討されるべきものだと私は考えます。
○阿部(司)委員 ありがとうございました。
まず、セキュリティークリアランス法案、この法律によって重要な情報が保全されていく、これは本当に第一歩、第一歩でしかないと思うんですよね。ですから、その先、次のステップ、こちらの議論というのがまさにこれから重要になってくると思いますので、高市大臣始め、ここにおられる議員の皆様とも是非闊達な議論をして、我が国を守るための環境整備をしっかりと進めていきたいと思っております。
次の質問に参ります。
適性評価と実務に関する質問になるんですけれども、バックグラウンドチェック項目の国籍についてお伺いをしたいと思います。
国籍なんですけれども、私、こんな話を聞いたんですね。防衛大学校から、いわゆる自衛隊に、幹部候補を養成して自衛隊の幹部になっていく、そういった機関ですけれども、防衛大学校に入る際の入校資格、こちらは受験申請時現在に日本国籍であることとなっているそうです。つまり、将来的に自衛隊のいろいろな機密に触れる幹部の方、幹部になる可能性のある学生になりますが、受験申請の直前まで外国籍だったとしても、申請時点で日本国籍であれば受験可能である、こういうふうに理解をしておるんですけれども。
これはちょっとドラマとか映画のような話になってきますけれども、仮に、直前まで外国人であった、外国人のそういった情報機関のスパイの方が、国籍を変えて防大に入学をして、将来的に自衛隊の幹部になって、いろいろな機密に触れて、それを漏えいしていく、こうしたリスクも考えられるわけであります。
ですので、配偶者の国籍は当然として、当人、配偶者、あとはもう少し遡って国籍のチェックをするべきなのではないか、こちらを高市大臣にお伺いしたいと思います。
○高市国務大臣 今委員がおっしゃったようなケースですと、これは御本人ということになりますね。防衛大学校に入校される御本人の過去持っておられた国籍についてのチェックがないということなのでございますけれども、そうであれ、もしも、その後、任官されて、そして自衛隊員として知り得た秘密を漏らした場合には、これは当然法律違反となり、罰則も規定をされております。
今御審議いただいております法案の、適性評価を行うための御家族、御親族などへの調査については、重要経済基盤毀損活動との関係についての調査の一部として、特に、評価対象者や、評価対象者との関わりが深い直近の家族及び同居人、すなわち父母、子及び兄弟姉妹らと同居人の国籍、これは過去に有していた国籍も含めて調査することとしております。それ以上、おじいちゃん、おばあちゃんとか、広げていくということは考えておりません。
これは、評価対象者が重要経済基盤毀損活動を行っている組織からの働きかけを受けていないかどうかについて端緒を得るための必要最小限の範囲としているものでございます。
○阿部(司)委員 ありがとうございました。
それでは、最後の質問になりますが、適性評価の実務はこれから検討されるということですけれども、この内容、結局、先ほども委員が指摘しておりましたが、具体的なことがまだまだ分からない、どれぐらい時間がかかるのかも分からないという中で、特定秘密保護法においては既に運用されているわけであります。
御答弁では、特定秘密保護法を参考にしながらこれから考えていくということでありましたが、申請してから許可されるまで特定秘密保護法の場合はどれぐらいの期間を要しているのか、こちらを大臣にお伺いをしたいと思います。
○岡政府参考人 失礼します。
特定秘密保護法の適性評価、この調査や評価に要する期間は個々の事情に応じて異なっております。それから、また、これが知られることで適正な調査や評価の実施に支障を及ぼすおそれもございます。
このため、一般的にどれくらいの期間を要するかをお答えするのはちょっと難しいというふうに考えております。
○阿部(司)委員 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。
○星野委員長 次に、大石あきこ君。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
セキュリティークリアランス法案について、高市大臣にお伺いします。
主権者である国民が国の秘密を安心して政権に預けるためには、その政権が国民に十分信頼されている状態でなければならない、そのように思われますよね。
○高市国務大臣 本法案に関して申し上げますと、調査機関そしてまた適性評価を行う行政機関共に、これも政権の一部でございます、信頼が必要だと考えております。
○大石委員 裏金が発覚した自民党の政権が、秘密を預けるに足る、信頼できる政権だと国民は思っていません。ですから、この法案をそもそも審議するべきではなかったと改めて申し上げます。
この法案は、実質的には、米中対立の中で、アメリカ側の安全保障戦略に日本が組み込まれていくものであり、それは具体的には、軍事的な、経済的な対中包囲網のことです。日本が、対中包囲網の一員に入るプロセスで、中国のスパイを排除し、アメリカを始めとする同盟国、同志国との武器の研究開発等でビジネスチャンスがある。それに参加できる国民の適性審査をしようとするものです。
この法案の国民の適性基準の中に家族が外国籍かどうかが設けられており、それが差別や人権侵害につながるのではないかと、少なくない国民の皆さんにも不安を持って受け止められているんですけれども、それは当然の感覚なんです。
現在大きな話題になっている中国のロゴの件、内閣府の自然エネのシンポジウムのスライドの一部に中国の国営電力会社のロゴが入っているとして、スライドを使用したパネリストであるNGOの事務局長が国会の中で大バッシングを受けています。この委員会でも何度となく取り上げられています。
日本の政策立案過程に海外勢力の介入を許したとして批判されているんですけれども、これは単なる作業ミスであったことはレポートされております。この単なる作業ミスをここまででか写しにして、この委員会でも、こういう人を排除する仕組みが必要ではと、このセキュリティークリアランスの文脈で何度も批判されている。この排除の大合唱は異常です。これに冷静になれよと言わない時点でそれに加担しているのと同じなので、私は言わせていただきます。
この空気が社会に蔓延すれば、私たちは冷静さを失い、いじめはおろかヘイト犯罪など、大きな過ちまで犯しかねません。
アメリカで二〇一八年、チャイナ・イニシアチブとして、中国のスパイ活動を取り締まるとして導入されたプログラムがあり、中国研究者狩りとも言われました。二十数名の大学に所属する研究者が起訴されましたが、結果は執行猶予や司法省側で起訴取下げとなった事例が多かった。捜査がずさんだったと言われたこのプログラムに疑問の声が上がり、結局、二年前、二〇二二年二月に中止しています。日本においても大川原化工機の冤罪がまだ晴らされていません。
また、セキュリティークリアランス法案の成立、運用を通じて、中国のスパイというレッテル、その大合唱によって中国との緊張が更に高まった場合の危険性を自覚されているんでしょうか。
経済産業研究所が関わって二〇二二年に発表した論文では、何らかの外生的な理由で、中国からの部品などの輸入の八割が二か月間、金額にして約一兆四千億が途絶した場合に、企業の生産総額で見て約五十三兆円減少すると推計されています。
戦争にならずとも緊張が高まって、その経済的打撃で日本人が死にます。だからこそ、中国以外のサプライチェーンの確保をするんじゃないかとおっしゃるかもしれませんけれども、それは、現実的なめどを立てて、人権侵害やヘイトが起こらない、国際的緊張が高まらない形でやりませんか。
それから、国民の安全を守るというなら、おかしな政策をやめることを優先していただきたい。大阪万博、一刻も早くやめなければいけません。
パネルですと言いたかったんですけれども、本日、自民党の反対で検閲により落とされましたので、言葉で読み上げます。
三月二十八日、大阪万博で、メタンガス爆発の、工事における事故が起きましたが、たまたまその地点だけではなく、広範なエリアで起きるんだ、どこでも起きるんだという危険性が指摘されています。
また、この大阪万博に関して、三月二十九日にイスラエル政府が万博に参加表明していますが、さすがにあり得ないでしょう。国際法を守らず、パレスチナで虐殺を続けているイスラエルの参加は、一刻も早く国際社会の責任として断ってください。(発言する者あり)そっちがヘイトと言うのが自民党ですよね。
○星野委員長 御静粛に願います。
○大石委員 国民を守ると言いながら守っていない、違うことをやっている。国民の皆様に、このままでは駄目だと立ち上がっていただきたい。
終わります。
○星野委員長 これより内閣総理大臣出席の下、質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。山岸一生君。
○山岸委員 立憲民主党の山岸一生です。
総理にお伺いしてまいります。
昨日、総理は、裏金議員を処分をされ、来週からは訪米でおられないということでございます。したがって、この質疑がこの国会において総理に対して直接伺える唯一の機会ということになります。ですから、今日は、国民の疑問に率直にお答えいただきたいというふうに思います。
まず、この処分について、基準がさっぱり分からない。今、法案に関係がないという御意見が盛んに出ておりますけれども……(発言する者あり)
○星野委員長 御静粛に願います。
○山岸委員 関係、大ありなんですね。政治家への信頼が、この制度の、セキュリティークリアランスの根幹です。だって、政治家は信頼できるという前提で、政務三役をセキュリティークリアランスの適性評価から外しているわけです。それでいいのかという議論を、僕ら、この委員会でずっとやってきました。
政府は、二つの理由があって必要ないと強硬に言っています。一つは、選挙を通っていますから、二つ目は、総理が任命していますからと。でも、選挙といっても、裏金をもらって、お金の力でげたを履いて受かってきた選挙じゃないですか。そして、総理の任命といったって、昨日の処分で明らかになったように、情実で決まっている人事じゃないですか。何ら、機密情報の扱いの観点からクリアランスになっていないわけであります。
片や民間企業には厳しいクリアランスを求めながら、片や政治家はノーチェックだ、これは、市民は増税、自民は脱税と言ってきたダブルスタンダードと全く同じ構図であって、政治家への信頼はこの制度の根幹に関わる、この件は後で聞きますから、それで、元に戻りまして、なので、裏金問題は大事だということでございまして、まず、処分の基準がさっぱり分かりません。
総理、この法案でも、我々は、罰則を規定するからには対象や要件の明確化は必要だよね、基準が大事だよね、こういう議論をしてまいりました。ところが、今回、五百万円未満は処分の対象から外されております。五年間で五百万ですから、年間百万円まではおとがめなしということになります。
総理、自民党はこれからも年間百万円までは裏金オーケー、こういうことなんでしょうか。お答えください。
○岸田内閣総理大臣 既に党の方から発表させていただいておりますように、昨日、外部の有識者を含めた党紀委員会において議論を行い、党所属国会議員三十九名、処分をいたしました。
その判断基準等が分かりにくいという御質問でありますが、その議論の中で、長年にわたり集団として不記載が行われていたとされる派閥について、派閥の幹部等の立場にありながら適切な対応を取らないことによって、結果として、長年にわたって不記載という慣行を放置することになった、こういった大きな政治不信を招いた、この責任を党として厳正に処分したわけでありますが、今回の事案を見たときに、長年続いてきた不記載の慣行を是正する立場にあった者、その一方で、そうではない、そういった立場になかった者、こういった者の差、これは否定することはできません。また、不記載金額の多寡、これについても無視することはできない、こういったことで処分を判断したわけであります。
その中で、五百万円以下については処分をしないということについてどう考えているのかという御質問でありますが、今言ったように、立場あるいは不記載の額、こういったものは無視することはできないわけでありますが、派閥の幹部でなかった議員について、不記載が一定金額以下であった議員については党紀委員会での議論は求めなかった、こうした判断をした次第であります。
ただ、こうした議員についても、不記載の責任、これを免れているというものではないと考えています。党の組織として、幹事長による厳重注意等、こういった議員に対しても、この責任について党としての判断をしていきたいと考えております。
○山岸委員 国民からしたら、年間百万円までは所得の申告漏れオーケーなのかと、またこれは不公平感を広げることになってしまいますよ。
そして、裏金議員八十五名のうち、党紀委員会の処分、今総理は注意と処分を分けておられましたけれども、党紀委員会の処分を受けたのは三十九人、半数以上が党紀委員会による処分を免れたわけです。二階元幹事長もそのお一人です。
総理、二階議員を今回党紀委員会の処分の対象から外した理由を教えてください。
○岸田内閣総理大臣 まず、党紀委員会の議論に付すかどうかということについて、先ほど申し上げました様々な観点から判断をしたということであります。
御指摘の二階元幹事長については、これまでの本人のこの問題に対する対応、責任の取り方、そして説明の在り方等、そもそも、その内容も含めて党として判断をし、党紀委員会の議論には付さなかった、こうした判断をしたと承知しています。
○山岸委員 説明の仕方とおっしゃいましたけれども、ばかやろう記者会見が十分な説明ということなんですか。総理、それは余りに内向きの論理であると言わざるを得ません。
派閥会長であった二階さんを処分しないことで、同じく派閥会長であった岸田総理御自身も処分しないことの理由にしているとしか思えないわけで、このことは後でお聞きしますけれども、いろいろな基準の不明確さがある中で、最大のミステリーが、私は萩生田議員の取扱いだと考えます。
下から三番目、役職停止という処分にとどまりました。事務総長ではなかったからだということなんだけれども、金額は突出をして三位でございますし、政調会長をお務めでしたし、誰もが認める実力者でした。まさに、この法案を審議していく政調会の中での議論においても当然関わっておられたわけでございます。役職停止なんですけれども、既に政調会長をお辞めになっていますから、役に就いておられません。
総理に確認したいんですけれども、萩生田議員は、今後、東京都連合会の会長、いわゆる東京都連の会長、あるいは東京都第二十四選挙区支部の支部長、こうした役職も停止の対象になるんでしょうか。いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 党規約に定めております党役職停止というのは、党本部における役職であると承知をしています。
○山岸委員 実質おとがめなしということですね。
○岸田内閣総理大臣 いえ、一年間、党の役職停止、これは党規約の中で定められた厳正な処分のうちの一つであります。これを一年間にわたって適用する、こういった判断であると承知をしています。
○山岸委員 萩生田氏は、なぜこんなに処分が甘かったんですか。
○岸田内閣総理大臣 政治責任の判断について、そして党紀委員会のこの結論について、個々の議員に関して様々な意見がある、これは承知しております。
しかしながら、先ほど申し上げました考え方に基づいて、自民党として、その党則、党規約に基づいて、しかるべき手続を踏んだ上で判断を定めた次第であります。
自民党として、組織として、党の規則に、ルールに従っての判断ということであり、様々な指摘はしっかり受け止めますが、党としては、この判断、大変重いものであるということを改めて強調しておきたいと思います。
○山岸委員 手続を取ったという御説明でしたので、その手続に関してお伺いしたいと思います。
総理は、森元総理と、電話で聞き取りをされたそうでございます。そこで、萩生田氏への配慮、萩生田氏の取扱いについては話題になりましたか。そして、その森元総理の意向というのは、総理の萩生田氏の処分に対する判断に影響を与えましたか。教えてください。(発言する者あり)
○星野委員長 御静粛に願います。
○岸田内閣総理大臣 追加の聞き取り調査については内容を明らかにすることはしない、なぜならば、聞き取り調査の実効性を高めるためにという説明をさせていただいております。
ですから、具体的な内容は控えなければなりませんが、委員の今の御質問について、萩生田氏について何かやり取りがあったか、それはありませんでした。
○山岸委員 では、ほかにどういうやり取りをされたんでしょうか。
まず、森元総理とは、総理、いつ、どういった形で連絡を取り合ったんですか。
○岸田内閣総理大臣 まず、追加の聞き取り調査については、聞き取りの実効性を高めるために、誰に対してどのような聞き取りを行ったか、これは明らかにしないとして作業を進めてきました。
しかしながら、国民の皆さんの様々な関心、そして国会における野党の皆さんの質問、そういうことを考えたときに、森元総理に対して聞き取りを行ったかどうか、この点について明らかにすることは自民党の責任として必要なことであると私自身が判断をして、先ほど申し上げました、内容を明らかにしない聞き取り調査の中ではありますが、森元総理に対して聞き取りを行ったということを申し上げました。
いつ、どこでやったのかということでありますが、聞き取り調査の一連の作業が終わった中、ですから、今週の頭の段階で、電話を通じて私が森総理と連絡を取り、話を聞かせていただきました。
○山岸委員 総理が森元総理に聞かなければいけないと判断をされた理由が報道に出ているわけでございます。資料5でお配りをしておりますけれども。その二十六日、二十七日の聞き取り調査の中で、出席者の中から森元総理の関与に関して発言があった、だから、これを聞かなければいけないということで総理は電話をしたと思いますけれども、であるからには、この報道を踏まえて、森元総理の御意向でキックバックが継続したんですかということは当然確認していらっしゃらなければおかしいと思います。
そのことへの森元総理の御説明を教えてもらえませんか。
○岸田内閣総理大臣 まず、追加の聞き取り調査について、行うに当たりまして、先ほど申し上げたように、聞き取りの実効性を高める観点から対象や中身を明らかにしない、こういった中で作業を続けてきました。
しかしながら、なぜか報道を通じて、こういったやり取りがあった等、報道が流れておりました。その中においては、何でこんな話が出るのかというような内容もたくさん含まれている、こういった中でありました。
そして、従来から申し上げておりますように、党として、これまで、森元総理が今回の事案において具体的に関わったという発言については何も把握しておりません。しかし、そういった報道も流れる中でもありますので、改めて、私自身として、森元総理に電話で連絡を取らせていただき、従来の様々な指摘についてお伺いさせていただきましたが、結果として、従来自民党が把握しているように、具体的な森元総理の関与を確認することは何もなかった、内容としてはそういう内容でありました。
○山岸委員 具体的には確認できなかったと。
総理、端的にお伺いしますけれども、この電話の場で、森元総理の御意向ですかと、具体的な指示の文言とか、いつ、どこで、誰にとかというのはともかくとして、森元総理の御意向があったんですかということは聞かれましたか。そして、それへの返答はいかがでしたか。
○岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、追加の聞き取り調査については、内容あるいは対象を明らかにしないという原則で聞き取り調査を行いました。しかし、その中にあって、特に多くの皆さんの関心ということで聞き取り調査を行ったわけですが、その内容については、従来から自民党として把握していた事実以上のことは何も確認されなかった。内容としては、そこまでは申し上げますが、それ以上のことについては、具体的なことについては控えさせていただきます。
○山岸委員 何ら実態に関して御説明いただけない。そして、明らかに均衡を欠いた処分を出している。こうした中で、当然党内にもいろいろな御意見があるわけで、塩谷議員が抗議文を出していらっしゃいました。私は、全く、これは自己弁護ばかりで同情はできませんけれども、不公平だという部分に関しては、その気持ちは分からないでもありません。その中で塩谷議員はこうおっしゃっている、岸田総裁の道義的、政治的責任も問われるべきでありますと。
総理、今回、御自身は処分を受けられなかったわけですけれども、総理御自身はなぜ処分を免れたんですか。
○岸田内閣総理大臣 まず、私自身のことで申し上げるならば、まず、派閥との関係においては、率先して派閥を解消するとともに、人事と金を派閥から分断する、こうした取組を進めました。そして、自分自身の処分ということで申し上げるならば、今回の処分について、私自身は個人的な政治資金の修正はなかったということ、更に言うと、派閥の不記載の内容についても、他の政策集団とは内容が異なるというようなことから、党紀委員会の議論に付されなかった、このように認識をしておりますが、ただ、おっしゃるように、自民党総裁であります。今回の事案を通じて自民党の信頼が大きく損ねられたわけでありますから、自民党総裁として、今回の事案の責任、これは重く受け止めなければならないと考えています。
だからこそ、信頼回復のために、今後とも先頭に立って努力をしていかなければならないと思いますし、その信頼回復の努力については、最後は国民とそして党員の皆さんに御判断いただく、これが自民党総裁としての立場である、このように考えております。
○山岸委員 本法案にも、個人の責任だけではなくて、法人への罰も入っているわけですね。非常に責任が重たいわけでございます。
今総理から御説明があったように、党員、今総理、党員の判断ということをおっしゃいました。私、この間ずっと国民の皆さんの判断という言葉を伺っていましたけれども、一連の文脈の中で、党員の御判断というせりふは総理から初めてお伺いしたように思います。(岸田内閣総理大臣「いや、昨日も言っています」と呼ぶ)ええ、まさに昨日。
なので、お聞きしたいんですけれども、この意図ということの中には、この処分をもって党内のけじめをつけて、秋の総裁選挙に再選を目指して出馬をするということが、この党員ということの中には込められているんですか。教えてください。
○岸田内閣総理大臣 御質問の点については、昨日も、選挙なのかどうかとか様々な御質問を受けましたが、そういった具体的なことは何も考えておりません。総裁として、党の信頼回復のために先頭に立って努力をしなければいけない。信頼回復への道のり、まだ道半ばであります。その責任をしっかり果たしていかなければならない。それを最終的には国民の皆さん、そして党員の皆さんに御評価、御判断いただく、それが自由民主党という政党の総裁の立場であるということを申し上げております。具体的な日程等を念頭に置いたものではありません。
○星野委員長 山岸君に申し上げます。
本日の委員会は、重要経済安保情報の保護活用法案及び経済安保法改正案の両案を議題としております。質疑は議題外にわたらぬようお願い申し上げます。
○山岸委員 ここまでの質疑は全て関連しておりまして、総理は処分でけじめをつけて、来週訪米をされるということでございます。この法案に関しても訪米に間に合うように審議を急いできたわけでございますけれども、この法案に関して、審議状況等について首脳会談で取り上げる御予定というのはあるんでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 首脳会談の内容については、ぎりぎりまで調整が続くものであると承知をしています。ですから、今の段階において内容について明らかにすることは控えますが、その中において幅広い議論を行うことになる。外交安全保障を始め経済安全保障についても議論を行う、これは当然想定されるわけであります。その上で、更に具体的に何をやり取りするのか、これについては今現在定まっておりません。
○山岸委員 つまり、この法案は、総理が外遊の手土産にされるということであれば、是非総理、国会にもしっかりと置き土産を置いてから行っていただきたいんです。
今回、この法案、いわば完成度が低い状況で出てきてしまった。我々は、その穴を埋める努力をこの審議でしてまいりましたけれども、まだまだ不十分な点があります。だからこそ、法案が成立を仮にしたとしても、その後で、しっかり監視をできる仕組みというものが最低限必要になると考えております。それが国会による監視でございます。私たちの提案は、最低限、特定秘密と同様のレベルで国会の情報監視審査会がチェックをする仕組み、これを入れるべきだというふうに修正を提案しております。
総理、この修正案をのんでもらうことが最低限必要ではないかと思いますけれども、総理の見解を求めたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 御指摘のように、国会において監視をいただく、こうした法案の運用状況の監視ということは重要であると認識をします。そのために、本法案においては、九条一項一号イにおいて重要経済安保情報の国会への提供について規定しており、これにより、国会においてこの法案の運用状況について確認いただくことができる、このように認識をしております。
そして一方、その受皿でありますが、受皿については、現在ある常設の情報監視審査会を用いるかどうかを含め、既に国会において御議論いただいていると承知をしています。
政府としては、御提案のような修正について特段の不都合はないと認識をしております。
○山岸委員 不都合はない、マイナスはないということなんですけれども、そこは私は、もう一言踏み込んで、必要性があるということをお認めになるべきじゃないかなと。
今回、九条、おっしゃるように書いてあります。でも、肝腎の特定秘密法十八条、つまり、国会への報告が丸々抜けていたという状況で、本法案は提出をされてまいりました。いわば特定秘密法より監視を緩くして出してきたわけですよね。私はそれはやはり政府の認識不足であって、単にこの修正に不都合がないということではなくて、いや、もうここまで議論してきたからには修正が必要だ、修正に前向きである、これぐらいの意思を総理からもお示し願えませんか。
○岸田内閣総理大臣 今ありましたように、法案は今、国会で御議論いただいているわけであります。修正等は国会で御判断いただかなければなりません。行政府の長として、それをどうするべきだという発言は控えなければなりません。
政府の立場としては、国会でもし修正を合意いただいたとしても不都合はないということ、これが政府の立場でありまして、答弁としてはそれが限界ではないかと思います。
○山岸委員 この間、我々は、セキュリティークリアランス、その必要性と課題に関して議論をしてまいりました。しかし、ここへ至って私が感じますのが、実は、政治家にこそ一番クリアランスが必要なのではないかということでございます。僕は元々新聞記者でしたから、政治家が一番口が軽いと思って見てまいりました。
今回、いろいろな裏金の事件も含めて、政治家こそクリアランスが必要だ、信が問われている、このことを訴えて、終わります。
ありがとうございました。
○星野委員長 次に、阿部司君。
○阿部(司)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部司でございます。
私は、法案を中心に質問させていただきます。
総理、本法案は、重要経済安保情報を適確に保護、活用することで、国家間の互換性を確保して、同盟国、同志国と重要経済安保情報を流通させることによって、国際競争力の向上ですとか安全保障の確保に効果を発揮するものと期待をされております。有識者会議におきましても、新しい国際的枠組みの必要性が指摘をされておりますが、総理、具体的にどのような姿を目指していくのか、御答弁お願いします。
○岸田内閣総理大臣 同盟国、同志国との関係については、有識者会議の最終取りまとめにおいて、同盟国、同志国との間で新たに必要となる国際的な枠組みについても取組を進めていくべきである、このようにされているわけですが、我が国は、例えば、相手国・機関との間で相互に提供される秘密情報をそれぞれの国内法等に従って保護することなどを定める情報保護協定、今現在、九の国・機関との間で締結をしており、さらに、現在、カナダ、ニュージーランドと交渉中、またウクライナとは交渉開始を発表している、こういった状況にあります。
情報保護協定の締結、これは、我が国政府と相手国政府との間の情報協力を向上させる基盤となるものだと考えています。こうした基盤整備の必要性や重要性、また相手国からの要望等を総合的に勘案して、新たな協定締結の要否について今後も不断に検討を続けていきたいと考えています。
○阿部(司)委員 今後不断に検討を続けていくということでありましたが、総理、来週、訪米されてバイデン大統領と会談予定と聞いております。機密情報の共有の枠組みにつきましても、我が国が現在参加できていない枠組み、例えばファイブアイズのような枠組みにもしっかり日本が参加できるよう、アメリカに協力の合意を取り付けていただきたいと考えますが、御所見いかがでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 情報分野における関係国との具体的な連携の在り方、これは現状も詳細までは明らかになっていない、こういったものであると思います。御指摘のファイブアイズについても、存在、これは指摘をされているわけでありますが、どこまで明らかになっているか、こういった点については明らかになっていない点も多い、こういった状況にあります。情報分野における関係国との関係はそういうものだと思います。
ですから、日米首脳会談等において、更にこういった関係を深めるかどうか、こういったことについて、情報分野における関係をどのように深めるかということについて、これをお答えすることは控えなければならないと考えています。
その上で、国際情勢が一層厳しさを増す中で、政府全体の情報収集そして分析能力を向上するとともに、関係国との連携を深めていく、これは重要な取組であると認識をいたします。米国を始め関係国とも緊密に連携しながら、我が国の情報収集、分析能力の充実、及び、情報の保全、これからもしっかりと取り組んでまいりたいと思います。その中で、米国は重要な関係国であると認識をしております。
○阿部(司)委員 よろしくお願いします。
この法案が成立したとしても、情報漏えいのリスクは残ると思います、先ほど高市大臣と御議論させていただいたんですけれども。ますます厳しさを増す国際情勢の中で、安全保障上、これは経済安全保障も含まれますけれども、どのような課題が残されていると認識されているか、総理大臣にお伺いします。
○岸田内閣総理大臣 まずは両法案の成立に向けて全力で取り組んでまいりたいと思いますが、今、安全保障の対象が経済分野までも拡大している、こういったことでこういった法案の議論も行われているわけでありますから、引き続き、法案成立がもし成ったとしても、その後も多岐にわたる課題に取り組んでいく、これは必要であると思っています。
例えば、技術流出対策は、我が国の技術的優位性を確保、維持する観点から、経済安全保障上重要な課題であり、不正競争防止法や外為法などを用いた機微情報の流出防止、こうしたことに取り組んでいるわけですが、今後とも、安全保障を確保するために、政府として、今言った取組も含めてどんな取組を具体的に進めていくのか、これは常に検討し、そして見直していかなければならない課題であると認識をいたします。
○阿部(司)委員 依然として課題は残っているわけであります。
関連して次の質問に参りたいんですけれども、先日、再生可能エネルギーに関する規制見直しを目指す内閣府のタスクフォースで、公益財団法人自然エネルギー財団の事業局長を務める民間構成員が提出した資料に中国国営企業のロゴマークが入っていた問題、エネルギー政策という国家の根幹に関わる議論の場に中国の影響力が及んでいたという疑惑が浮上しております。
我が党の音喜多議員も質問させていただきまして、総理からも、まず事実確認、不適切な内容があると判明すれば厳正に対応していくという御答弁をいただいておりますが、この調査の進捗、お伺いをいたします。
○岸田内閣総理大臣 エネルギーセキュリティー、これは言うまでもなく国の安全保障の中核の一つです。関連政策の検討に当たっては他国から干渉されない体制を確保しなければならない、これは当然のことだと思います。
そして、御指摘の事案については、現在、河野大臣の下、内閣府において厳正に調査を行っている、まさにそのさなかであると承知をしております。その上で、更に詳細が知りたいということであるならば、調査を行っている内閣府から答弁をさせますが、いかがでしょうか。
○阿部(司)委員 では、内閣府政府参考人、お願いします。
○稲熊政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの、内閣府の再エネタスクフォースの構成員が提出した資料に中国企業のロゴの記載があった件の調査につきましては、内閣府におきまして、同資料を提出した大林元構成員及び同氏が所属する自然エネルギー財団等が、その意思決定に当たって、中国政府、企業から不当な影響力を行使され得る関係性があったか否かなどにつきまして、引き続き詳細な事実関係の確認などの調査を行っております。具体的には、聞き取り調査のほか、大林元構成員又は自然エネルギー財団が中国政府、企業から受けた資金提供などの経済的利益の有無及びその程度等につきまして報告を求めているところでございます。
本件につきましては、内閣府といたしまして速やかにしっかりと調査を進めてまいります。
○阿部(司)委員 しっかり調査するという御答弁をいただきました。
調査中ということですが、総理、全省庁で、他国の影響力工作が行われていないか、改めて点検すべきではないでしょうか。いかがでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 政府の審議会等の運営については、閣議決定された審議会等の運営に関する指針において、まず一つは、委員構成が公正かつ均衡の取れたものとなること、そして委員の氏名等について公表すること、透明性の確保を図るため議事録を原則公開すること、こういったことを定めております。
審議会等の適正な運営に当たっては、この指針を徹底することが重要だと思います。改めて関係府省においてこの指針の徹底を図ることによって、政策形成のプロセスを確保していきたいと考えております。
○阿部(司)委員 指針の徹底だけでは私は足りないと思います。実態調査を是非進めていただきますよう、お願いします。
この中国ロゴ問題ですね。
三月三十一日の産経新聞の記事によりますと、財団の主張は再エネを進めると同時に火力発電は駄目というもの、中国やロシアを含めた東アジアで送電網を整備するアジアスーパーグリッド構想を掲げ、日本の電力が足りなくなれば中国やロシアから融通すればいいと提言をしていた、河野大臣は、外務大臣の平成三十年に、気候変動に関する有識者会議にこの民間構成員を登用した、そして、河野大臣は、防衛相時代の令和元年に全ての防衛省そして自衛隊施設の電力調達で再エネ比率一〇〇%を掲げ、基地によっては一〇〇%を達成した、ある基地ではタイ資本のエネルギー小売事業者から再エネ供給されて、その経営者は華僑系でありまして、自衛隊の電力使用状況が把握できる状況にあった、このような記事がありました。
総理、閣僚が他国の影響力工作を受けて、政策決定がゆがめられる、又は機密情報を漏えいするような事態も懸念される事態だと思います。したがって、政務三役のこの法案における適性評価、再度検討すべきだと思いますが、御見解いかがでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の点、そして、少なくとも、政策決定プロセスがゆがめられた、こういった事実については承知はしておりませんが、いずれにせよ、国務大臣、副大臣、政務官などについて、特定秘密保護法においても、あるいは今御審議いただいている法案においても、適性評価を受けることは要しない、このように規定をされています。
そして、これについては、従来、随分議論をいただいたことだと思います。内閣総理大臣がその任命に当たり必要な考慮を行っていることから適性評価の対象外としている、こうしたことであります。こうした任命時の必要な考慮、これを今後とも、より徹底してまいりたいと考えております。
○阿部(司)委員 私、政務三役の適性評価についてはこの法案の穴だと思いますので、指摘をさせていただきたいと思います。
そして、重要経済安保情報の保全を行うための制度をつくること、これ自体は評価いたします。が、しかし、更なるカウンターインテリジェンスの強化が必要だと思います。セキュリティークリアランスの有資格者に対する懸念国からの工作、先ほど高市大臣とも御議論させていただきましたが、こちらが懸念されます。
防諜、カウンターインテリジェンス、懸念国の諜報活動の取締り、こちらは国連憲章の第五十一条に基づく自衛権の一環としても独立国として固有の権利でありまして、各国は、スパイ防止法、そして国家機密法、刑法等の形でスパイの取締りの根拠規定を設けて防諜、カウンターインテリジェンスを行っていますが、我が国には他国のスパイ行為を取り締まる法律そのものが欠落をしております。我が国がスパイ天国とやゆされるゆえんであります。本来的には、長年の課題であったスパイ防止法を設けることで、懸念国からの工作を取り締まるべきだと考えております。
ちなみに、各国では、スパイ行為に対する刑罰は、アメリカ、連邦法典七百九十四条、死刑、イギリス、国家機密法一条、拘禁刑、フランス、刑法七十二条、七十三条、無期懲役などなど、割愛しますが、死刑、無期懲役とすることでスパイ行為の抑止を行っております。
G7でいわゆるスパイ防止法をいまだに設けることができていないのは我が国だけでありますが、セキュリティークリアランスの保有者を懸念国の工作から保護するためにスパイ防止法を是非検討するべきだと思いますが、総理、御見解をお願いします。
○岸田内閣総理大臣 まず、委員御指摘のように、カウンターインテリジェンスの考え方に立って対応を強化していく、これは大変重要な取組だと思います。そして、その議論の中で、御指摘のようにスパイ防止法の必要性についても議論されてきた、従来も議論されてきた、こういったことであると認識をしています。ただ、スパイ防止法そのものについては、議論は行われてきましたが、様々な課題もあるという議論が続けられていると承知をしています。
この議論は大事なことであるとは思いますが、ただ、現実はどんどん動いておりますので、その一方で、政府の立場としては、こうしたカウンターインテリジェンスに関する取組、これを、重要な情報等を保護することが極めて重要であるという観点から取組を充実させていく、具体的に充実努力を強化していきたい、このように考えております。
○阿部(司)委員 最後に、アクティブサイバーディフェンス法制実現のスケジュール、そして総理の意気込みをお伺いしたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 我が国のサイバー対応能力を強化する、これは現在の安全保障環境を考えますとますます重要になっている、こうした現状にあると思います。
そして、我が国の国家安全保障戦略においても、内閣サイバーセキュリティセンター、NISCを発展的に改組し、サイバー安全保障分野の政策を一元的に統合する新たな組織を設置し、能動的サイバー防御を含むサイバー安全保障分野における新たな取組の実現のために法制度整備、そして運用の強化を図る、これを明記しているところであります。本年度は、その第一段階として、NISCの予算や人員を大幅に増額、増員したところであります。
能動的サイバー防御の実現に向けた法案については、現行法令との関係を含め、様々な角度から検討を要する事項が多岐にわたっておりますが、可能な限り早期に法案をお示しできるよう検討を加速するべく、私からも直接指示を出したところであります。
○阿部(司)委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
○星野委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
秘密保護法拡大法案について質問をいたします。
岸田総理は、セキュリティークリアランスは、同盟国、同志国との円滑な協力のために重要と述べております。岸田政権は、イギリス、イタリアと次期戦闘機の共同開発、GCAPを進めておりますが、ジュリア・ロングボトム駐日イギリス大使は、毎日新聞の寄稿で、GCAPに関連して、セキュリティークリアランス制度は機密技術の共同開発を促進するために欠かせないと語っております。
次期戦闘機共同開発のためにも今回の法案が必要ということではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 現在、英国及びイタリアとの共同開発を進めている次期戦闘機の共同開発、ここで取り扱う秘密情報については、トップシークレット、シークレット、こうした二つのランクの情報として、我が国においては特定秘密に指定し、そして管理をしています。
本法案は、コンフィデンシャル級の情報を保護の対象とする制度を創設しようとするものであり、本法案の重要経済安保情報は、その対象から特定秘密を除外しているところ、本法案が次期戦闘機の共同開発のために必要であるという御指摘は当たらないと考えています。
ロングボトム大使の寄稿の趣旨についてお答えする立場にありませんが、本法案では、我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者への重要経済安保情報の提供等について規定しており、一般的にGCAP関連以外の国際的な共同開発が一層円滑に推進されることが期待されるものであると考えています。
○塩川委員 まさに、裾野広く共同開発、共同生産を行えるような防衛産業の国際的な協力機構、その上で、民間企業へのセキュリティークリアランスが必要なのではないのか、こういう立場で、ロングボトム大使が、日本に対して民間企業に係るセキュリティークリアランスを求めてきているのではないか。その一環でこのGCAPの問題も捉える必要があるということを申し上げなければなりません。
あわせて、来週、総理は日米首脳会談に臨まれますけれども、先ほどの質疑でもただしたところですが、アメリカのカート・キャンベル国務副長官が、この日米首脳会談でAUKUSと日本との技術協力について議論すると明らかにしたということであります。
また、キャンベル国務副長官は、防衛装備品の共同開発、共同生産について日米首脳会談で協議すると述べたということですが、防衛装備品の共同開発、共同生産についてどのような協議を行うお考えでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 先ほども答弁させていただきましたが、日米首脳会談については、恐らく、開催ぎりぎりまで、内容について協議、調整が続くものであると認識をしています。
その中において、外交安全保障、経済、経済安全保障を始め、日米の連携について重要な課題が取り上げられるものであると想定はしておりますが、具体的な内容については、関係者、様々な意見や発言がある、これは承知をしておりますが、最終的にどのような会談を行うことになるのか、今の時点では具体的には確定しておりません。
○塩川委員 日本、アメリカ、それからオーストラリアの政府高官、政策担当者の発言を見ますと、例えば、GCAPの、次期戦闘機に連動する無人機に関するAI技術の共同開発、また、GPI、極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾の共同開発、これらについて、日米豪、さらにはイギリスも含め進めるという話が出ております。
そういったことになれば、日本の民間企業の参入も踏まえ、セキュリティークリアランスが必要となってくるのではないのか、そういうことも俎上にのった議論が行われるのではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 今の時点で具体的な内容を申し上げることはできません。
そして、それに向けて、いろいろな関係者が様々な意見を表明している、提案をしている、これは十分承知をしておりますが、それらを会議の中でどう、取り入れるかどうか等も含めて、今はまだ何も決まっていないというのが現状であります。
いずれにせよ、今回の日米首脳会談、国際安全保障環境が複雑化し、そして厳しさを増している中であって、日米同盟、日本とアメリカの関係、今まで以上にその存在の重要性が高まっています。その中で、日米関係の深化を確認し、そしてそれを世界に発信する、そのために重要な会議であると認識をしています。そのために必要な内容を最後までしっかり詰めたいと思います。
○塩川委員 セキュリティークリアランスに関わる法案を国会で審議をしているときに、それにつながるような首脳会談での議論が行われるかもしれない。そういったことについて何ら明らかにされずに、この法案だけ通してくれという話は、それは筋が通らないということを言わざるを得ません。
こういった問題について、更にお尋ねしますけれども、米国防総省は、今年一月に、同盟国の軍需産業をアメリカの戦略に統合することを掲げた国家防衛産業戦略を発表しました。地球規模の武器供給網、サプライチェーンや整備拠点の確保が死活的だとして、同盟国との二国間、多国間の防衛産業の協力が掲げられております。
こういったアメリカの戦略の下、日本に対して民間企業へのセキュリティークリアランスの導入強化が求められているのではないのか。アメリカ政府の国家防衛産業戦略に基づき、日本に対してセキュリティークリアランスの導入強化が求められているのではないのか。この点についてお答えをいただけますか。
○岸田内閣総理大臣 今御審議いただいている法案が対象とする重要経済安保情報とは、国民の生存に不可欠な又は広く我が国の国民生活や経済活動が依拠する重要な物資のサプライチェーンに関する情報であるとされています。
これから明らかなように、本法案は、例えば米国産の武器の日本企業による生産を容易にするとか、そういったことを狙いにするものでは全くないと考えております。
○塩川委員 今年発行されました防衛省のシンクタンクである防衛研究所のレポートにおいても、米国との安全保障分野の連携に我が国の民間企業を参画させる際に無視できないのが、セキュリティークリアランスの制度の問題である、防衛産業連携のいわば共通言語であるセキュリティークリアランス制度の確立と確実な普及は依然急務であると述べているわけであります。
今回の法案は、同盟国、同志国との間の多国間連携で兵器開発を推進するために必要な法案、殺傷能力のある兵器を他国に売りさばくような、死の商人国家を目指すことは断じて認められないということを申し上げておきます。
こういった軍拡を進める法案は、基本的人権も侵害することになります。
セキュリティークリアランス、適性評価の調査についてお尋ねをいたします。
秘密保護法の運用基準を参考に作るというこの法案における適性評価の調査でありますけれども、秘密保護法による適性評価では、対象者が提出する質問票は三十ページにも及びます。海外渡航歴や統合失調症、躁うつ病などの治療歴、国税や社会保険料、家賃の滞納状況、また、家族、同居人の国籍など、機微情報の詳細な調査を行うことになります。
本人に聞くだけでなく上司にも調査票を提出をさせ、これらの調査の内容に疑問が生じたときは、本人とともに上司や同僚、その他知人への質問を行う、それにとどまらず、現在の企業だけでなく過去に働いていた会社も含め調査を行うというものであります。
二重三重に調査を行う仕組みということで、このような適性評価の対象者を継続的に監視するような、こういう仕組みにならざるを得ないのではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 お尋ねのセキュリティークリアランスに関する法案における適性評価の七つの調査項目は、自発的に情報を漏えいするおそれの有無、また、他から働きかけを受けた場合に影響を排除できず漏えいしてしまうおそれの有無、また、意図せず過失により漏えいしてしまうおそれの有無、こういった観点から信頼性を確認するための必要な項目です。
そして、これらは個人のプライバシーに関わるものであるため、適性評価の実施に当たっては、調査項目を七項目に限定しているほか、調査項目や調査の実施方法などをあらかじめ告知した上で本人の同意を得ることとし、収集した個人情報は雇用主には渡さず、また、適性評価の結果や個人情報の目的外利用を禁止するなど、法律上で配慮を行っています。
さらに、二十一条一項には、この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害することはあってはならない、こういった規定も置いています。
これらが運用においても政府全体できちんと担保されるよう、しっかりと対応してまいりたいと考えています。
○塩川委員 基本的な人権を侵害することはあってはならない、そういうことを規定していると言いますけれども、この仕組みの中でも、例えば警察に照会したような個人情報が消去されるんですかということについて、政府としては明言をしていないわけですよ。こういった個人情報に対しての問題、重大な人権侵害の懸念というのは拭えないということであります。
国民に最高五年間の拘禁刑という厳罰を科し、未遂や過失、共謀、教唆、扇動、さらには取材などで秘密を取得する行為まで処罰の対象となります。
経済安保の名の下で政府がでっち上げた冤罪事件が大川原化工機事件であります。検察が公訴を取り消したこの事件を政府はそもそも反省しているんですか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の点については、裁判においてまだ係争中であると承知をしております。政府の立場から、今の段階でこの事案について評価を申し上げることは控えなければなりません。
○塩川委員 裁判で現役捜査員が捏造と証言した事件ですよ。こういった問題が、経済分野全般への秘密指定の拡大によって更に同じような事件を引き起こすことになるのではないのか、こういう懸念を拭えると言えるんでしょうか。
○高市国務大臣 今回、何が対象であるかということを明確にした上で事業者に共有して、共有を受けた事業者の方々にも公務員と同様に守秘義務を負っていただく、それが今回提案している法案でございます。外為法の話とはまた別でございます。
○塩川委員 経済安保の名の下にこういった問題が生じてくるわけですから、今回の法案はそうならないということについて、しっかりとした答えというのは受け取ることができませんでした。
基本的人権、国民主権、平和主義という日本国憲法の基本原理を根底から覆す秘密保護法を拡大するものであり、断固反対をし、廃案にすることを求めます。
そもそも、裏金問題について、自民党ぐるみの組織的犯罪行為であるにもかかわらず、真相解明を棚上げしたまま、森元首相へ電話した中身も答えない、これでは国民に対して説明責任を果たしたと言えないのは明らかではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 自民党としては、今日まで、今回の事案について、検察における捜査が行われ、刑事責任が明らかにされた後も、国会あるいは党において、政倫審での弁明、また党の聞き取り調査等も行われた、その中で、できる限りの事実を把握した上で、政治責任について判断をいたしました。
しかし、信頼回復のためにはまだ道半ばであり、政治資金規正法を始めとする法改正、国会においてもしっかりとこの国会で実現することなど、引き続き政治改革について努力を続けていきたいと思います。
自民党の信頼ということについては、強い危機感を持って、引き続き最善の努力を続けてまいります。
○塩川委員 岸田派会長、自民党総裁の処分も行わない、こんな政党、政治家に日本の政治は任せられないと申し上げて、質問を終わります。
○星野委員長 次に、浅野哲君。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲です。
時間がありませんので早速質問に入りますが、この間の質問の内容を鑑みて、質問の順番を入れ替えて質問させていただきたいと思います。
まずは、人材の海外流出対策です。
我が国の適性評価を受けた人材の知識や経験は、競合他社や海外企業からも魅力的に映ることになろうと思います。過去、在職中あるいは退職した日本の技術者が海外に流出し、日本国内では人材不足が悪化していることが指摘され続けてきました。適性評価を受けた人材の海外流出をできる限り抑制するためには、本法案の枠を超えた包括的な議論が必要だと考えております。
岸田総理に伺いますが、我が国の経済安全保障を継続的に確保していくためにも、この人材の海外流出への対応について、省庁の壁を越えて包括的に検討を深め、方針を政府としてより明確にしていただきたいと思いますが、総理のお考えを伺います。
○岸田内閣総理大臣 まず、海外への転職を含めて、職業選択の自由は尊重されなければなりません。
このため、本法案においても、適性評価を受けた方に対して海外への転職等を制限する、こうしたことはしてはおりません。他方で、委員御指摘のように、我が国の発展のためにも、また我が国の技術的優位性を確保するためにも、優秀な人材の海外流出への対応はもとより、外国人も含めて優秀な人材が日本に集まってくるような環境整備が重要であると考えます。
優秀な人材が心置きなく研究開発等の業務に没頭できるような魅力的な研究環境あるいは処遇、これを日本においてしっかり実現していくことが政府としてはまず重要であると考えます。そうした取組を政府として進めていきたいと考えています。
○浅野委員 時間がありませんので、最後の質問になろうかと思います。
先ほど阿部委員も指摘しておりましたが、政府の審議会等の構成員については、昨今、直近でも少し疑念が発生をしております。ただ、これは構成員の問題にするのではなく、政府がしっかり事前に信頼性評価を行っておけば、政府の説明責任の下にこの事態を早期に収束できたのではないかとも考えます。
やはり、政府の政策決定に外国勢力等の不当な影響が及ぶことのないように、政府の審議会等の構成員についても信頼性を確認する体制や運営方針を改めて検証し、その結果を是非公表していただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 政府の審議会等の運営については、閣議決定された審議会等の運営に関する指針において、一つは、委員構成が公正かつ均衡の取れたものとなること、二つ目として、委員の氏名等について公表すること、三つ目として、透明性の確保を図るため議事録を原則公開すること、このことを定めているわけですが、先ほども答弁で、この指針を徹底することによって適正な運営を実現したいと申し上げましたが、今申し上げた中で、特に最初の、委員構成が公正かつ均衡の取れたものとなること、この部分において具体的に政府としてしっかり判断を行うことによって、この指針の実効性、これを高めていくことは重要であると考えています。
○浅野委員 終わります。ありがとうございました。
○星野委員長 次に、大石あきこ君。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
総理に質問します。
この委員会では、セキュリティークリアランス法は、英語圏の諜報ネットワーク、ファイブアイズ入りの必要条件だとの意見が参考人からも委員からもありました。
それで、この法案の狙いかどうかはさておき、岸田総理としてはファイブアイズに入るべきだと思いますか。
○岸田内閣総理大臣 先ほども答弁の中で触れましたが、情報分野において関係国がどのような連携をしているのか、これは現状においても明らかにされない部分があります。政府として、ファイブアイズとの関係について具体的に申し上げることは控えなければなりません。
○大石委員 ファイブアイズ入りというのは、日本がCIAのようなスパイ組織を公然とつくることになって、危険過ぎるからやるべきではないんですが、ファイブアイズ参加を推進する委員とのやり取りでは、この委員会でも、政府側でも、まんざらではない受け答えで審議が進んでいくさまは異常でした。この国会の流れを止めなければいけません。
終わります。
○星野委員長 これにて内閣総理大臣出席の下の質疑は終了いたしました。
内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。
これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○星野委員長 この際、内閣提出、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に対し、上野賢一郎君外八名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の共同提案による修正案が、また、浅野哲君から、国民民主党・無所属クラブ提案による修正案がそれぞれ提出されております。
提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。森山浩行君。
―――――――――――――
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○森山(浩)委員 ただいま議題となりました重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に対する修正案につきまして、六会派の提出者を代表して、その趣旨を説明申し上げます。
第一に、重要経済安保情報の指定等の運用状況の報告等についてであります。
内閣総理大臣は、毎年、重要経済安保情報の指定等の実施の状況を有識者に報告をし、その意見を聞かなければならないものとすることとしております。
第二に、国会への報告等についてであります。
政府は、毎年、有識者の意見を付して、重要経済安保情報の指定等の実施の状況について国会に報告するとともに、公表するものとすることとしております。
第三に、指定及び解除の適正の確保についてであります。
政府は、重要経済安保情報の指定及びその解除を適正に確保するために必要な方策について検討し、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすることとしております。
第四に、国会に対する重要経済安保情報の提供及び国会におけるその保護措置の在り方についてであります。
国会に対する重要経済安保情報の提供については、政府は、国会が国権の最高機関であり各議院がその会議その他手続及び内部の規律に関する規則を定める権能を有することを定める日本国憲法及びこれに基づく国会法等の精神にのっとり、この法律を運用するものとし、重要経済安保情報の提供を受ける国会におけるその保護に関する方策については、国会において、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることとしております。
その他所要の規定を整理することとしております。
以上が、本修正案の趣旨であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○星野委員長 次に、浅野哲君。
―――――――――――――
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○浅野委員 ただいま議題となりました重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
そもそも我が党は、令和四年に総合経済安全保障法案を提出し、かねてより適性評価制度を導入する必要性を主張してまいりました。経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大している中、重要経済安保情報の取扱者を制限することによりその漏えいの防止を図ることはもとより当然のことであります。
しかしながら、政府原案は、制度の実効性の観点からは、十分なものではないと言わざるを得ません。
政府原案では、適性評価について、性的行動についての節度がその調査項目に含まれておらず、ほかの項目の評価に当たって考慮されるにとどまっております。しかし、性的行動についての節度は情報漏えいの危険性としてその評価の必要性が指摘されているところであり、この点を評価項目として明記していない政府原案は不十分なものであります。
加えて、政府原案は行政機関の長、政務三役などについて、適性評価を受けなくとも重要経済安保情報を取り扱うことができるとしております。これらの人物が重要経済安保情報を漏らした場合、罰則が適用されることとなっておりますが、我が国の安全保障を確保するためには、これらの人物による重要経済安保情報の取扱いの業務の適正が確保されるための措置を講ずる必要があります。
これらの問題点は特定秘密保護法について、かねてから指摘されてきたにもかかわらず放置されてきたものであり、この際、対策を講ずべきと考えます。
以上のことから、重要経済安保情報、特定秘密の両方について、それらの漏えいの防止を図る観点から、本修正案を提出する次第であります。
次に、本修正案の内容を御説明申し上げます。
第一に、重要経済安保情報の取扱者に係る適性評価について、その調査事項として、性的行動についての節度に関する事項を追加することとしております。
第二に、特定秘密の取扱者に係る適性評価についても、その調査事項として、性的行動についての節度に関する事項を追加することとしております。
第三に、国は、行政機関の長などによる重要経済安保情報及び特定秘密の取扱いの業務の適正が確保されるよう、必要な方策を講ずることとしております。
このほか、所要の規定を整理することとしております。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○星野委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○星野委員長 これより両案及び両修正案を一括して討論に入ります。
討論の申出がありますので、順次これを許します。高木啓君。
○高木(啓)委員 私は、自由民主党を代表して、両法律案及び我が会派を含む六会派提出の修正案について、賛成の立場から討論をいたします。
まず、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案は、近年、安全保障の裾野が経済、技術分野にも拡大する中、同分野においても情報管理に万全を期す必要性が増していることによるものであります。
本法律案は、重要経済基盤保護情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを重要経済安保情報として指定し、その保全を行うこととしたほか、重要経済安保情報を取り扱える者は、原則として適性評価によって認められた者のみとし、仮に重要経済安保情報を漏らした者等には罰則を科すことといたしております。また、適合事業者として認められた事業者に重要経済安保情報を提供等することにより、情報の活用も図ることができるものとしております。
審議においては、本法律の運用に当たっては適切に国会が関与すべきといった観点からの質問もございました。この点については、制度の運用状況を有識者に報告し、その意見を聞くこと、また、毎年、有識者の意見を付して、制度の運用状況を国会に報告し、公表すること等を盛り込んだ修正案が提出されました。
このように、本法律案は、必要な措置を盛り込みつつ、重要経済安保情報の保護及び民間を含めた活用を図っていくもので、我が国が置かれた状況に鑑みれば必要不可欠であるとともに、六会派提出の修正案により、国会による適切な関与も確保できるものとなったと考えております。
また、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案は、昨年七月のサイバー攻撃により名古屋港コンテナターミナルにおいてシステム障害が発生したこと等を踏まえ、基幹インフラに一般港湾運送事業を追加するものであります。
港湾の物流機能の安定的な提供は、四方を海に囲まれた我が国にとって極めて重要であり、本法律案の取組は必要不可欠であります。
以上のとおり、両法律案及び六会派提出の修正案については、戦後最も厳しい安全保障環境にある中、経済面から安全保障を確保し、国益を守るという観点から非常に重要であり、その必要性は明らかと考えます。
委員各位の賛同をお願い申し上げ、私の賛成討論といたします。(拍手)
○星野委員長 次に、本庄知史君。
○本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました両案及び両修正案について、立憲民主党外五会派の提出の修正案に賛成、国民民主党提出の修正案に反対、そして政府提出の両案に賛成の立場から討論をいたします。
厳しさを増す安全保障環境、激しい国際競争の中で、我が国にとっても経済安全保障の重要性は日に日に高まっています。こうした認識の下、二年前、立憲民主党も賛成して、経済安全保障推進法が成立しました。その際、我が党主導で附帯決議に盛り込まれたのが、セキュリティークリアランス制度の導入でした。
こうした経緯を踏まえ、今国会に政府が提出した法案は、重要物資のサプライチェーンや重要インフラの提供体制など我が国の重要経済基盤に関する機微情報を一定の要件の下で重要経済安保情報と位置づけて保護するとともに、クリアランスを取得した民間企業やその従業員がこれを利活用することで、我が国の経済安全保障の確保と経済活性化の両立を図るというものです。
セキュリティークリアランス制度は、G7各国始め多くの先進諸国で導入されています。我が国においても、経済界を中心に、国際標準の制度創設を求める声が寄せられてきました。経済安全保障の核心部分は安全保障と経済のバランスであり、今回の法案では、重要経済安保情報の保護と利活用のバランスが肝です。その観点からは一定の評価ができるものと言えます。
他方で、法案の問題点や課題も審議を通じて明らかとなりました。例えば、制度設計の詳細が今後整備される政令や運用基準に委ねられていることや、罰則の整合性、重要経済安保情報の指定件数やクリアランス対象者数の見込み、新設される一元的な調査の実施体制などは、なお不明点が残ります。
また、特定秘密保護法とシームレスな運用を目指すとしながら、実際には継ぎはぎ、凸凹の制度となっていることも否めません。特定秘密保護法の施行十年間の検証や総括含め、秘密保全制度全体の今後の検討、改善が求められます。
以上のような評価と問題意識の上で、立憲民主党は他の五会派と共同で、政府案に対する修正案を提出しました。その内容は、国会による監視と政府部内の監視をダブルチェックで機能させることで、ブラックボックス化しがちな秘密保全制度の適正な運用を担保しつつ、民間企業による経済安保情報の利活用を後押ししていくものです。
是非、委員各位の御賛同をお願い申し上げるとともに、政府にはその趣旨を十分御理解いただきたい旨申し上げ、私の討論を終わります。
ありがとうございます。(拍手)
○星野委員長 次に、住吉寛紀君。
○住吉委員 日本維新の会の住吉寛紀です。
私は、日本維新の会・教育無償化を実現する会の会派を代表し、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案、また、六会派共同提出の修正案及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対して、賛成の立場から討論いたします。
我が会派は、セキュリティークリアランス制度の必要性を認識し、国会においても馬場代表の本会議代表質問を始め、本制度の創設を強く求めてまいりました。G7で唯一未整備であることを鑑みると遅きに失した感はありますが、本法律案に対し慎重かつ前向きに議論を重ねてまいりました。委員会質疑を通して、よりよい法案となるように願い、幾つかの懸念点も指摘してまいりました。
まず、情報の指定や管理、適性評価の在り方等、重要なことについては法律制定後の政令や運用基準等で定めることとなっております。政府が密室で機密情報指定を運用し続ければ、モラル維持に必要な透明性を損ない、国民の知る権利も阻害するリスクがあります。
修正案では、重要経済安保情報に係る運用状況を有識者に報告し、その運用状況を国会へ報告するとともに、公表することとしております。これにより、恣意的な運用に一定の歯止めがかかるものと期待いたします。また、特定秘密保護法に基づく制度では、国会の情報監視審査会の仕組みがあり、新体制においても同様の体制整備を構築することを我が会派は強く主張してまいりました。この点も修正案に盛り込めたことは高く評価いたします。
一方で、アメリカで問題となっているオーバークラシフィケーション対策について議論が不足しております。また、昨今不祥事が続き交代が相次ぐ政務三役等について適性評価の例外となっていることも理解できません。運用状況を見極めながら、今後しっかりと対応いただくことを強く求めます。
経済安全保障推進法改正案については、一昨年に港湾を加えることも検討されたにもかかわらず、基幹インフラ制度の対象に追加されなかったことは残念です。今後、医療DXや地方公共団体もサイバー攻撃を受けた場合に影響が広範囲に及ぶ可能性もあることから、基幹インフラ制度に速やかに加えるべきだと考えます。
なお、国民民主党単独提出の修正案は、趣旨には賛同いたしますが、性的行動の定義も節度の範囲も分からず、実効性が見込めないため反対いたします。
資源の乏しい日本において、科学技術、産業技術はまさに日本の宝です。多くの日本の研究者、技術者は、それぞれの研究分野の発展のために、失敗を恐れず、試行錯誤しながら研究に明け暮れております。私もそのような方々をたくさん見てまいりました。重要経済安保情報が適切に保護されるとともに、そのような技術、情報が活用されることによって、日本を守り、未来を開いていくことにつながることを切に願い、私の討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○星野委員長 次に、庄子賢一君。
○庄子委員 私は、公明党を代表して、両法律案並びに六会派提出の重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に関する修正案に賛成の立場から討論いたします。
まず、基本的な課題の認識として、安全保障という概念が、防衛や外交という領域から、今や経済、技術分野に急速に拡大していること、そして、軍事、非軍事の境界線が曖昧となっている中で、経済分野の機微な情報の保全の仕組みを整備、強化する必要性が高まっていること、そして、その情報を同盟国、同志国と共有し、国際社会の安定と発展に寄与する必要があることを認めなければならないと思っております。
こうした現状認識を踏まえ、本法案が果たす役割は極めて重要であり、今国会での成立を期すべきものと考えます。
この重要経済安保情報に関する法律案は、政府が保有する経済安保上重要な情報を管理、活用するルールを定め、民間事業者による国際ビジネス機会を確保、先進技術開発に関し、他国、他地域に対する優位性を得る機会を創出し、相手国が決定的に重要と考える技術分野で代替困難なポジションを獲得する、いわゆる戦略的不可欠性を高めることになると考えるものであり、かつ、中長期的には国際社会における不可欠性を獲得し得る意味で、本法案の意義は大きいと言えます。
また、セキュリティークリアランス制度が整備されていないことによるビジネスチャンスの逸失を指摘する声に加え、今後、AI、量子といった次世代技術の国際共同開発の機会を獲得すべきとの指摘もあり、機密情報の取扱資格者を政府が認定し、国として他国と同等の情報保全の仕組みを速やかに導入すべしとの意見は、経済活動の現場に身を置く当事者の正当な主張であり、政府として正面から受け止めるべきではないでしょうか。
また、六会派提出の修正案において、国会への報告、公表を定めるとしており、妥当なものと考えます。
ともあれ、経済安保分野における情報管理の必要性が高まっていることは明白です。価値観を共有する国々と経済安全保障上の連携を深め、共同研究、共同開発を通じて、我が国がそれぞれの地域の発展に寄与するとともに、国際社会が抱える様々な問題の解決に貢献することは、先進国日本としての重要な役割であり、責務であることを申し上げ、私の賛成討論といたします。(拍手)
○星野委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、重要経済安保情報法案に反対の討論を行います。
本案は、国民には何が秘密かも知らされないまま、政府が勝手に秘密に指定し、その秘密に触れただけで拘禁刑という厳罰で処罰する秘密保護法を拡大する法案にほかなりません。秘密の範囲を経済分野まで拡大することで、政府が指定できる秘密を大幅に増やし、広範な民間労働者、技術者、研究者を政府の秘密保全体制に組み込むものです。
本案がなぜ必要なのか。
米国の国家防衛産業戦略は、同盟国、同志国の強固な防衛産業は、米国国防総省の統合抑止の礎石であり続けると掲げています。
岸田政権が進める日米の極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾、GPI、米英豪のAUKUSとの極超音速兵器や無人機、日英伊の次期戦闘機、GCAP、こうした共同開発を進めるために、本案は、同盟国、同志国と同等の秘密保全法制を整備しようというものです。イギリスの駐日大使が、機密技術の共同開発にはセキュリティークリアランス制度が欠かせないと述べているとおりです。
日本の財界も、国防省関係のビジネスで更なる業務獲得、円滑化のためにはクリアランスが必要と推進しています。
米国などの同盟国、同志国と財界の要求に応えて、兵器の共同開発、輸出を進め、日本を死の商人国家にしようというのが本案です。十日に開かれる日米首脳会談に間に合わせるために衆議院を通過させようなど、断じて許されません。
軍事兵器の共同開発推進の下で、国民には罰則、身辺調査を押しつけます。本案が規定する秘密を扱う人への適性評価は、政治的思想、海外渡航歴、精神疾患などの治療歴、借金や家賃の滞納、家族や同居人の過去の国籍まで、機微な個人情報を根こそぎ調べ上げるものです。事情に変更があった際には報告させる誓約まで迫ります。
本人だけでなく、上司からも回答を提出させ、警察、公安調査庁や医療機関などにも本人への通知なく照会をかけます。適性評価後も、事業者に対象者を継続的に監視させる二重三重の監視体制であることが質疑でも明らかになりました。本人の同意が前提と言いますが、労働者が調査を拒否しても不利益を被らないという保証はなく、事実上の強制です。思想、良心の自由、プライバシー権を踏みにじる、憲法違反そのものです。
重大なのは、政府が、これまで防衛、外交、スパイ活動、テロ活動の四分野に限定されていた特定秘密の範囲を、運用の見直しによって拡大しようとしていることです。十年前、国民の大反対を押し切って強行した憲法違反の秘密保護法を、法改正なしに拡大するなど断じて認められません。
このような拡大は、政府が経済安保の名の下ででっち上げた大川原化工機事件のような冤罪事件を引き起こすのは明白であります。
以上、基本的人権、国民主権、平和主義という日本国憲法の基本原理を根底から覆す秘密保護法の拡大であり、経済安保推進法案と併せ断固反対です。
両修正案にも反対であると申し述べ、討論を終わります。(拍手)
○星野委員長 次に、浅野哲君。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲です。
私は、今般提出された二修正案並びに修正部分を除く原案に賛成、経済安保推進法改正案に賛成の立場から討論を行います。
近年、国際社会においては、エコノミック・ステートクラフト、すなわち、特定の国家が政治的な目的を達成するために、軍事的な手段ではなく、経済的な手段によって他国に影響力を行使する方法への警戒感が急速に高まっております。
同時に、国際紛争もマルチ領域化が進んでおり、直接的な武力行為に及ぶことなく、例えば、サイバー領域などを通じて相手国に甚大な影響を与えることが可能となる中、我が国が総体として情報管理機能を高め、同盟国、同志国とも連携しつつ、これらの脅威に対応する力を高めることは大変重要であると認識しています。
そのような観点から、国民民主党は、令和四年に行われた経済安全保障推進法の審議当時から、経済安全保障分野にセキュリティークリアランス制度を導入すべきであると主張してまいりました。
今般、政府が提出した重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案は、これまで述べてきたような観点から、その必要性については賛同しているところです。
しかしながら、適性評価の過程で多くの個人情報を扱う必要が新たに発生することに加え、秘匿情報を指定する中で国の説明責任の行使が一層難しくなることなどの懸念があることなども踏まえ、特定秘密保護法と同様に、国会への定期的な報告を義務づけ、国会の監視機能を確保しようとする与野党提出の修正案には賛成いたします。
他方、国民民主党としては、性的行動についての節度が適性評価の調査項目に明示されておらず、考慮事項にとどまっていることは、制度の実効性確保の観点から不十分と考えます。また、昨年、政務三役に就いていた複数の人物が、法令違反を含む不適切な行為、疑惑により辞任に至りました。これらの経過を踏まえれば、政務三役など適性評価の対象外となっている者についても任命前後で業務の適正が確保されるための措置を講ずべきと考え、独自の修正案を提案したところであります。委員各位の御賛同をお願いを申し上げます。
修正部分を除く原案、経済安保推進法改正案については、既に述べた理由から賛成いたします。
以上で討論を終わります。(拍手)
○星野委員長 次に、緒方林太郎君。
○緒方委員 採決に際し、セキュリティークリアランス法に反対、経済安保推進法改正に賛成、修正案全てに賛成の立場から討論いたします。
セキュリティークリアランスの必要性は大いに同意していますが、この法案を最初に聴取した際、我が会派の全議員が幾つかの違和感を持ちました。そして、審議を経て、その違和感はかなり具体的なものとなりました。法案の出来栄えがよくないというのが感想です。本来であれば詰めておくべきポイントが詰め切れていません。私の官僚経験からして、優秀な霞が関の諸姉諸兄が見逃すはずのない部分が放置されています。推察するに、この法律は何らかの理由で急いで作成したのだろうと思います。
立法事実、重要経済安保情報の定義、特定秘密保護法との関係等、本委員会での審議を聞いていても得心できないことがかなり残りました。例えば、特定秘密保護法とのシームレスを強調していましたが、実際にはシームが目につきます。要するに、シームレスでないことを覆い隠す方便ではないかと疑っています。また、一昨日の私の質疑については、きちんと質問通告したにもかかわらず、その答弁はほとんど意味不明なものでした。
国会をなめてはいけない、この点は明確にお伝えしておきたい。この場は単なる通過儀礼ではありません。一定の質問時間を経れば、与党賛成で通過していくというものでもありません。また、この程度の審議内容で採決の条件が整っていると判断した理事各位には警句を鳴らしておきます。総理訪米前の採決を前提に動いていたようでありますが、出来の悪いものを持ってきてそのような前提を置かれても困ります。逆に言うと、非常に本質的な問題を指摘していた野党の方々が、大した答弁を得ていないのに賛成に回っているのが不思議でなりません。私の見立てでは、今回の六会派提出修正案の部分は、野党取り込みのためにあらかじめ用意していた譲歩用だと思っています。
この十年、この種の安保関係の法案に反対すると、政権担当能力がないという言葉が投げつけられるのが常態化しました。安保関係で威勢のいいことを言えば愛国心があるという発想そのものが安っぽいものであり、国家にとって有害です。我々の会派は、しっかりとした国家観を持ち、反対が自己目的化するようなことはしていません。その一方で、条文をきちんと議論して納得しないのであれば、他の全会派が賛成しても単独で反対する気概を持っています。内閣官房、内閣府の方々は、今後も出来の悪い法律を持ち込んだら、国会答弁がいいかげんだったら、反対される、この当たり前の理屈を理解し、緊張感を持って臨んでほしいと思います。
以上、私の思いを述べた上で討論といたします。(拍手)
○星野委員長 次に、大石あきこ君。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
れいわ新選組を代表して、反対討論とします。修正案いずれも反対、法案は二法案共に反対です。
セキュリティークリアランス法案は、既に導入されている特定秘密保護法との一体運用によって、安全保障に係る国家秘密を経済安全保障の分野に拡大し、大幅に民間に拡大、活用させていくというものです。
この法案は、適正に審議できたと言えません。なぜならば、懲役五年の重い罰則が絡む法案であるにもかかわらず、適用範囲の詳しくは、法案成立後に政府が運用基準で決めていくことになる。労働者の身元調査、適性評価の詳細は、法案成立後に閣議決定で決めていくことになる。
セキュリティークリアランス法の立憲修正案は、不備の一つである国会監視の機能について特定秘密保護法並みになっただけで、元々特定秘密保護法が大きな反対の中で強行採決されたのに、反対の立場であった方々は、もうそれでよくなったのでしょうか。国会の外では、この法案は絶対に止めてくれという大きな声がありました。その声が聞こえているんでしょうか。附帯決議に入れたでは駄目です。法的拘束力がありません。国会の危機を感じます。
二〇一三年成立の特定秘密保護法で、既に民間で三万人がトップシークレットやシークレット情報を身元調査などを進めて扱っていますが、それでは足りないのだというのがこの法案です。今度は、何十万人か百万人かも、政府自身も分からない。本日、初年度は小さめの数千人の試算かもしれないということを大臣が言っていましたけれども、分からないんです。大勢の国民、労働者に、守らせるべき国家の秘密を膨大に指定していくことは、この国の在り方を全く変えてしまうものです。対象人数も不明、対象分野も詳細をつくろうとしない。全て運用基準で、閣議決定でやる、つまり、時の政権に委ねてしまうことになります。時の政権とは、裏金議員が四分の一を構成する自民党が与党の政権です。
この法案の安全保障とは、実質的には、米中対立の中で、アメリカ側の安全保障戦略に日本が組み込まれるものであり、軍事的、経済的な対中包囲網のことです。日本が、対中包囲網の一員に入るプロセスで、中国のスパイを排除し、アメリカを始めとする同盟国、同志国との武器の研究開発等でビジネスチャンスがあると考えている。それに参加できる国民の適性基準を決めようというものです。
果てには、本法案が、英語圏の諜報ネットワーク、ファイブアイズ入りの必要条件だとする有識者や意見も相次ぎ、ファイブアイズ参加を推進する委員とのやり取りには政府側もまんざらではない受け答えで審議が進んでいくさまは異常でした。
本法案では、軍事ビジネスに企業が手を挙げて、そこで働く労働者に対して、国が定めた適性基準でもって、国がその人を審査していく。適性基準には国籍が入っており、中国のスパイ、外国籍は疑わしいというレッテルで国民が二分され、更にこの流れが進めば、国際的緊張は高まります。戦争にならずとも緊張が高まって、仮に中国から一・四兆円の部材が二か月入ってこないだけで五十三兆円の経済損失で、この国に生きる人々が死にます。
真の安全保障は、これまでのアメリカの介入や日本政府の失策によって破壊された国民経済を責任を持って回復させることです。まず、賃上げや減税で所得向上を行い、必要な供給力に、日本人の労働者と外国人の労働者とを低賃金の労働力として競わせるのではなくて、国の責任で大幅賃上げを行い、供給力を徐々に回復させていく、そのような真面目な取組を今すぐに全力で始めるしかありません。
世界が国際的緊張という課題を抱えているのは事実ですが、平和外交を……
○星野委員長 大石委員にお伝え申し上げます。
申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。
○大石委員 分かりました。まとめます。
平和外交を徹底する以外に道はなく、この法案の方向性は逆方向を行くものであり、反対します。
終わります。
○星野委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○星野委員長 これより採決に入ります。
初めに、内閣提出、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。
まず、浅野哲君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○星野委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、上野賢一郎君外八名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○星野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○星野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○星野委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、冨樫博之君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。太栄志君。
○太委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。
一 重要経済安保情報の運用に当たっては、衆議院及び参議院の情報監視審査会からなされた指摘や改善事項を含め、特定秘密の運用の蓄積を踏まえ、情報保全の必要性と国民の知る権利のバランスに立った運用を行うこと。
二 本法の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならないこと。
三 本法に基づく重要経済安保情報の指定・解除、適性評価の実施、適合事業者の認定等を行うに当たっては、指定される重要経済安保情報の総量及びその取扱い業務の最適な規模をできるだけ具体化するとともに、制度の着実な実施を行うため、適性評価調査を行う内閣府や適性評価を行う行政機関における実効的な体制整備を速やかに進めるとともに所要の予算を確保すること。
四 適性評価調査への不同意や評価結果を理由とする不合理な配置転換・解雇など労働者への不利益な取扱いの防止のためには、事業者と重要経済安保情報の取扱いの業務に当たることが予定されている労働者との間の意思疎通が重要であることに鑑み、事業者の実情や事業の実態に応じた、労使間の協議も含めた適切な意思疎通が行われるようガイドライン等を作成することなどを検討すること。
五 中小企業等が事業を継続するために適合事業者の基準を満たす必要が生じた際に、中小企業にとっては必要な施設整備等にかかる負担が大きくなることが考えられるため、政府からの協力要請に応じて重要経済安保情報に触れることとなる場合など、経緯や実態も踏まえて、支援の在り方について合理的な範囲内で検討すること。
六 特定秘密保護制度を始めとする既存の情報保全の仕組みとの整合性、とりわけ、法人に対する両罰規定について見直すべき箇所がないか検討を行うこと。
七 重要経済安保情報を含む政府の政策決定プロセスに外国勢力等の不当な影響が及ぶことのないよう留意すること。
八 重要経済安保情報の指定は、本法の規定に従い、合理的で最小の範囲において行わなければならないこと。
九 重要経済基盤、重要経済安保情報の範囲を明確にするとともに、恣意的な指定がなされないよう、指定の具体的な基準等を公開すること。
十 重要経済安保情報に指定される前から民間事業者が保有していた情報については、その取扱いについて民間事業者が責任を問われないことを明確にし、広く周知すること。
十一 適性評価を実施するに当たっては、対象者のプライバシー権が侵害されることのないよう十分に留意するとともに、収集した情報は厳重に管理し、目的外利用されることがないようあらかじめ対策を講ずること。
十二 適性評価を行うに当たっては、対象者の弱みを握り情報を引き出す活動との関係についても十分留意しつつ、本法が定めた調査事項に基づき公正で実質的な調査を行うよう努めること。
十三 新たな技術開発の進展など経済安全保障分野における変化の速さ等に鑑み、情報の指定・解除を柔軟かつ機動的に行うため、重要経済安保情報に指定された事項については、指定要件の充足性について随時見直しを行い、国民の知る権利が侵害されないよう留意すること。
十四 民間事業者や適性評価対象者等への配慮として、適性評価における本人の真の同意、適性評価結果や同意拒否・取下げの目的外利用の禁止、評価結果と理由の速やかな通知と苦情の申出の適切な処理を確保するための方策(契約への明記、十分な情報提供、通報・相談窓口の設置等)を検討し、運用基準等において必要な措置を講ずること。
十五 適合事業者が重要経済安保情報を適切に保全できるよう、施設設備の基準等を作成・公表すること。また、「外国による所有、管理又は影響」(FOCI)を管理する制度の整備について検討した上で、適切な措置を講ずること。
十六 重要経済安保情報の指定の対象となる情報の範囲や制度の適用を受ける民間事業者の範囲等、本制度に関する正確な情報の周知徹底を図ること。
十七 民間事業者等が保有している情報であって国として経済安全保障の観点から保護が必要と考えられる最先端技術情報等について、民間事業者が必要となる対応をとれるような環境整備を検討すること。
十八 技術は我が国の自律性・不可欠性の重要な一部を構成するものであり、その流出防止は経済安全保障上喫緊の課題であることを念頭に置き、我が国の国際競争力の維持に支障を及ぼすこととなる国外流出を防ぐため、早急かつ徹底的に技術流出・技術管理対策の強化に取り組むこと。
十九 本法の適用に当たっては、産業分野の公正な競争環境が毀損されることのないよう十分留意すること。
二十 同盟国・同志国との間で重要経済安保情報を含む機密情報の共有が円滑に進むよう、必要となる国際的な枠組みの構築の推進に努めること。
二十一 経済安全保障に資するインテリジェンス能力を更に強化するため、政府全体における情報の収集・分析等に必要な体制を整備するとともに、関係省庁間における必要な情報の共有についても強化を図ること。また、本法の趣旨に鑑み、経済安全保障に資する情報について、民間を含む関係者への提供についても配意すること。
二十二 国際的な協力枠組みの中などの必要な場面において、外国政府などに本法に基づくクリアランス保有者であることを確認する仕組みの在り方について検討を行い、必要な措置を講ずること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○星野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○星野委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。高市国務大臣。
○高市国務大臣 ただいま御決議のありました事項につき、御趣旨を十分に尊重してまいります。
ありがとうございました。
―――――――――――――
○星野委員長 次に、内閣提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○星野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○星野委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、冨樫博之君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。金村龍那君。
○金村委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。
一 医療DXの進歩を考慮して、基幹インフラ制度の対象に追加することを検討すること。
二 地方公共団体の基幹業務システムのガバメントクラウドへの統一・標準化が進められていることに鑑み、地方公共団体による情報システムの調達の在り方について、基幹インフラ制度の対象に追加することも含め、経済安全保障の観点から必要な検討を行うこと。
三 中小規模の事業者にとっては、規制への対応が大きな負担となり得ることから、特定社会基盤事業者に指定しようとする場合には一層配慮して慎重に行うこと。
四 基幹インフラ制度に基づき、特定社会基盤事業者に対し、特定妨害行為を防止するため必要な措置をとるべきこと等を勧告及び命令した場合の中小企業を含めた事業者の負担に配慮し、事前に政府より十分な情報提供を行うなど、対応に万全を期すこと。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○星野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○星野委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。高市国務大臣。
○高市国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その趣旨を十分に尊重させていただきます。
―――――――――――――
○星野委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○星野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○星野委員長 次回は、来る十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時四十六分散会