衆議院

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第3号 平成28年10月21日(金曜日)

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平成二十八年十月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    安藤  裕君

      井野 俊郎君    尾身 朝子君

      大野敬太郎君    奥野 信亮君

      門  博文君    工藤 彰三君

      古賀  篤君    鈴木 貴子君

      田畑  毅君    辻  清人君

      野中  厚君    藤原  崇君

      古田 圭一君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    吉野 正芳君

      枝野 幸男君    階   猛君

      山尾志桜里君    大口 善徳君

      吉田 宣弘君    畑野 君枝君

      藤野 保史君    木下 智彦君

      上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         金田 勝年君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   防衛大臣政務官      小林 鷹之君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 鈴木 三男君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 白川 靖浩君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     巻口 英司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 菊池  浩君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小山 太士君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    富山  聡君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  萩本  修君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    定塚  誠君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    森  健良君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           藤澤 勝博君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          宮野 甚一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           土田 浩史君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 岡  真臣君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  深山 延暁君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十一日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     尾身 朝子君

  城内  実君     大野敬太郎君

  辻  清人君     古賀  篤君

  山田 賢司君     工藤 彰三君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     菅家 一郎君

  大野敬太郎君     城内  実君

  工藤 彰三君     山田 賢司君

  古賀  篤君     辻  清人君

    ―――――――――――――

十月二十日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(荒井聰君紹介)(第一八五号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(近藤昭一君紹介)(第一八六号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(荒井聰君紹介)(第一八七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三〇号)

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三一号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 第百八十九回国会、内閣提出、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案につきましては、それぞれ第百八十九回国会及び第百九十回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案に対し、吉野正芳君外三名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。逢坂誠二君。

    ―――――――――――――

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

逢坂委員 民進党の逢坂誠二でございます。

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案に対する修正案、ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 これまで、当委員会においては、政府提出の法律案について、数次にわたる参考人質疑や視察を含め、丁寧かつ熱心な審査を行ってまいりました。委員会における議論を踏まえ、次のような内容の修正案を提出することに至ったものであります。

 以下、この修正案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、技能実習計画に記載すべき技能実習生の待遇の内容として、報酬、労働時間、休日、休暇、宿泊施設、技能実習生が負担する食費及び居住費を明記するとともに、主務大臣が技能実習計画を認定する際の基準として、技能実習生に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることを明記することとしております。

 第二に、外国人技能実習機構の業務として、技能実習を行うことが困難となった技能実習生であって引き続き技能実習を行うことを希望する者が技能実習を行うことができるよう、技能実習生からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うとともに、実習実施者、監理団体その他関係者に対する必要な指導及び助言を行う業務を明記することとしております。

 第三に、施行日を「平成二十八年三月三十一日までの間において政令で定める日」から「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」に改めるとともに、その他所要の規定を整理することとしております。

 以上が、この修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 以上です。

鈴木委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 両案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として法務省入国管理局長井上宏君、厚生労働省大臣官房審議官藤澤勝博君、厚生労働省職業能力開発局長宮野甚一君及び経済産業省大臣官房審議官土田浩史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより両案及び修正案に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。畑野君枝君。

畑野委員 おはようございます。日本共産党の畑野君枝です。

 外国人技能実習法案、入管法改正案について質問いたします。

 これまで、この法務委員会、あるいは厚生労働委員会との連合審査、さらに二度にわたる参考人質疑を経て、技能実習制度の制度そのものに問題があるということが当委員会で多く指摘されてまいりました。法案で技能実習生の人権が守られるのか、法案が外国人技能実習生の問題を解決できるのか、疑問を抱かざるを得ません。

 二〇一六年十月十六日付の朝日新聞で、フィリピン人男性に技能実習生の過労死認定がなされたと報道されました。お手元の資料、一枚目につけております。

 「ジョーイ・トクナンさんは、ルソン島北部の山岳地帯で生活する少数民族の出身。妻レミーさん(二十八)と、娘グワイネットちゃん(五)ら家族を養うために一一年に来日した。岐阜県の鋳造会社で、鉄を切断したり、金属を流し込む型に薬品を塗ったりする作業を担当していた。一四年四月、従業員寮で心疾患のため、二十七歳で亡くなった。帰国まで残り三カ月のことだった。」「岐阜労働基準監督署によると、一カ月に七十八時間半〜百二十二時間半の時間外労働をしていたとされる。労基署は過労死の可能性が高いと判断。昨年、遺族に労災申請手続きの書類を送った。」と報道ではあります。

 二十七歳の若さで過労死に追い込まれた、痛ましい事件です。過労死する労働が技能実習なんですか。まさに奴隷労働と言わざるを得ません。

 この間の技能実習生の過労死認定の事件を受けて、金田法務大臣に思いをお伺いします。

金田国務大臣 委員がただいま御指摘されました件、技能実習生が長時間に及ぶ時間外労働があったとして労災認定を受けたことは承知しておりますし、そのような状況で技能実習生が亡くなられましたことには大変に心が痛む思いであります。

 本件のような事案が発生することのないように、現在御審議をいただいております法案に基づく方策によりまして、管理監督体制を強化して技能実習制度の一層の適正化に努めていきたい、このように考えておる次第であります。

畑野委員 大臣がおっしゃられた、それでは、こういった事件を本当になくすことができるのか、この点について続いて伺いたいと思います。

 岐阜県は、愛知県に次いで全国二位の実習生受け入れ、中でも縫製業は全国一の三千人以上が働いています。その岐阜県で、桁違いの実習生受け入れ企業の労基法違反が続いております。労働局資料によれば、二〇一〇年の制度改正後も変わっておりません。最低賃金違反、割り増し違反、長時間残業、さらに証拠隠滅などを含めて、一層悪化しているというふうにも聞いております。

 先ほどの報道のように、先日はフィリピン実習生の過労死が認定されました。その中で、岐阜の縫製業は、いつ過労死が発生してもおかしくない状況が続いております。毎日四時間、五時間の残業、一日も休みなし、一時間四百円の残業の契約書。労基法の三十七条、割り増し違反というのが岐阜県の最低賃金七百五十四円に対して行われております。これは、割り増し違反どころか割引残業代になっている。関係者からは、三千人の実習生の大半がこのような状態だというふうにも伺っております。

 資料に、二枚目につけました。ごらんください。これが契約書になっております。

 一番下のところ、時間外労働賃金額、一年目四百円、二年目四百五十円、三年目五百円。割り増しですから割り増さなくちゃいけないのが、減っているという状況です。

 そして、同じ二枚目の右側の数字が並んでいるもの、少し見づらいんですけれども、その日の残業時間が書かれているんです、四時間とか五時間とか。日曜日は八時間と書いてあるので、何かと思ったら、休みの日に朝から残業しているというので八時間。こういう実態が技能実習生からの訴えで明らかになっているんです。

 厚生労働省に伺いますが、このような実態は把握されていらっしゃいますか。

藤澤政府参考人 お答えいたします。

 外国人技能実習生につきまして、長時間労働が行われている事案や、時間外手当が法定額未満で支払われている事案、賃金が法定額未満で支払われている事案があることは把握しているところでございます。

畑野委員 労働局の資料を三枚目につけさせていただいております。

 岐阜県と岐阜の労働局と名古屋入管らが構成する技能実習生等受入適正化推進会議というのがあるんです。これが毎年、業界団体に、適正な工賃、長時間労働による健康障害等を防止するための計画的、合理的な発注を要請している。これが三枚目の、代表者殿というものです。

 しかし、要請しても全く変わっていない。この文書によれば、厚生労働省、法務省は、岐阜の縫製業に対して、重大な不正が続いていることを承知して、一地方の問題じゃないという認識も示しております。しかし、とても事後規制の監督指導では追いつかないというのは現場の共通認識になっているわけです。

 問題は、業界の工賃設定にあるという指摘があります。なぜならば、この推進会議は、十年間に五回、業界団体に対して発注工賃の適正化を要請しているんです。ところが、監督指導された業者は何と言っているか。この十年間、工賃は上がっていない、工賃の是正をお願いしてきたというふうに聞いております。十年間で五回、毎回同じ、一番最後のはそれをさらに強く求めているという内容になっております。

 五回も発注工賃の適正化を求めた根拠は何か、厚生労働省に伺います。

藤澤政府参考人 お答えいたします。

 岐阜労働局では、広く県民や技能実習の監理団体あるいは実習の実施機関に外国人技能実習生等の受け入れ適正化のためのコンセンサスの形成を図ることが重要であるとの観点から、御指摘の技能実習生等受入適正化推進会議を設立し、開催しているところでございます。

 今申し上げました趣旨に沿いまして、御指摘のとおり、平成二十年から平成二十八年までの間に五回にわたりまして、岐阜県の縫製業の団体に対し、発注契約においては適正な工賃を設定していただくことについて要請を行っていると承知しております。

畑野委員 本当に重大な、本当に深刻な実態です。私も、これを読んで、伺って驚きました。五回も言っても言うことを聞かない、放置されている。

 私は、経済産業省に、この実態を認識していらっしゃるのか伺いたいと思いますが、いかがですか。

土田政府参考人 岐阜の技能実習生受入適正化推進会議の提言の件でございますけれども、足元の経済状況のもと、下請産業でございます縫製業を取り巻く状況は厳しいものであるというふうに認識しております。

 経済産業省におきましては適正取引に関する普及啓発などに努めておりまして、毎年、業界団体等を通じて、取引対価の決定に当たりましては下請事業者と協議の上、適切な労務費を含めるように要請しておりますし、本年度もそのような要請を行う予定としております。

 こういった縫製業の状況でございますけれども、当省といたしましては、生産工程における物づくり技術の高度化や地域資源を活用したブランド化等への支援を通じまして、繊維業界全体の振興に取り組んでまいりたいというふうに思っておりますし、適正取引ということにつきましては、法令遵守につきまして普及啓発等を実施するとともに、法令違反行為が疑われる情報を得た場合には厳正に対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

畑野委員 経済産業省に伺いますけれども、それで、実態はつかまれたんですか。

土田政府参考人 これから関係省庁等とも連携いたしまして、そういった状況をつかんでまいりたいというふうに考えております。

畑野委員 それぞれ聞けばいいと思うんです。上がってくるのを待つんじゃなくて、それぞれのところを全部、苦しんでいる中小企業、業者の皆さん、あるいは本当に苦しんでいる実習生の皆さん、きちっとやってほしいと思いますが、全数調査を直接やっていただきたいと思いますが、それぞれの省庁、いかがですか。

宮野政府参考人 お答えいたします。

 今後、また新たな今回の法律を成立させていただくということも踏まえまして、いずれにしても、新制度におきましてきちんと、その施行の中で、先生から御指摘のあったような実態についても把握して適切な対応をとってまいりたいというふうに考えております。

土田政府参考人 関係省庁や地元岐阜県等とも連携いたしまして、そういった情報収集に努めてまいりたいというふうに思っております。

畑野委員 岐阜県の方も、そういうふうに国が動けば一緒にやれると思うんですね。だから、ぜひきちっとやっていただきたい。

 それで、工賃が上がらない状況で賃金を上げるというのは本当に大変なわけです。もちろんこういう事実をきちっと調査して、実習生の抱えた問題を解決していくということもやらないといけないということです。

 それで、今ちょっと紹介しただけでも本当に衝撃的な実態なんですが、では、このような状況を法案が解決できるのかという観点から次に質問いたします。

 まず、法案の、監理団体が今回許可制になるということが提案されておりますので伺います。

 現行制度では、技能実習生が不正を告発して、監理団体が処分された場合に、その不正が原因で告発された事業所が別の名前で営業しているという事例も聞いているんです。

 法務省に伺いますが、法案では、組合名あるいは代表者がかわれば、これまでと実体は同じ事業所だったという場合、許可するのかどうか、この点いかがですか。

井上政府参考人 監理団体の事業の許可に関するお尋ねでございました。

 今回の法案におきましては、監理団体の許可につきまして欠格事由の制度を整備してございます。その中で、過去に許可を取り消されるなど欠格事由に該当する事情がある場合には、法人の名前を変えようと代表者をかえようと、法人としての同一性が認められる限り許可を受けることはできません。

 若干詳しく申し上げさせていただきたいと思いますが、さらに、許可を取り消された法人とは別の法人になったといたしましても、許可の取り消しの原因となった不正行為がございますが、その当時役員であった者が新たに許可を申請する法人の役員を務めている場合には、同様に欠格事由に当たることにしております。さらに、役員という概念ですが、名義上の役員ではなくて、形式上役員として登記されているかどうかではなくて、役員と同等以上の支配力を有しているかという実質的な概念で考えることとしてございます。

 新制度ではこのように、いわゆる看板のかけかえのような行為には適切に対処できる仕組みとなっておりますので、過去に不正を行った団体につきましては的確に排除できるようにしてございます。

畑野委員 あわせてちょっと伺いたいんですけれども、例えば家族が代表になるという場合ならどうなのかというのと、もう一つ、県を越えた実習先の監理の状況というのは実態調査はするんですか。県をまたいで、あるいは遠くに、米子から宮城なんて話もこの間させていただきました。どうでしょうか。

井上政府参考人 まず、家族の問題といいましょうか、そちらでございますが、それはケース・バイ・ケースで、従来の役員、不正を行っていた役員が実質的に支配力を持っていると認定されるような場合であれば当然排除される、そういう、実質どうなっているかというところの問題になります。

 それから、遠隔地の方の受け入れ先の問題をどうするかということでございますが、これは監理団体として遠隔地の方の実習実施者を監理できるか、適正な監理の体制が組めているかどうかというところで、遠隔地であっても、もちろん適切な監査等をできる体制を組んでおれば問題ございませんが、それに十分なものがないということであれば、許可の段階で十分なチェックをしていくということになります。

畑野委員 遠いところを一つ一つ見に行くということはなかなかできない、文書上で確認し切れるのかということが、本当に不正を根絶できるのかという点で疑問があるわけです。

 それから次に、申告権の問題です。

 不正を告発するための制度ということで、技能実習生が申告権をきちんと使えるかどうかということが問題になります。

 それで、前回、私がその体制があるのかと質問をいたしまして、新しい制度で申告、相談の窓口を外国人技能実習機構に設置する、実習生の利便性を考慮し、直接来所という形に加えて電話でも受け付けることを検討している、本人確認のための氏名、在留カード番号等を聴取するとともに法令違反の事実の申告を受け付けるというふうに答弁をいただきました。その他いろいろあるんですが、では本当に申告権が機能するのか。

 対応できる言語、この間も幾つかの外国語を紹介しましたけれども、技能実習生の比較的多い、中国語、ベトナム語、フィリピン語、インドネシア語だけでは十分だとは思えません。

 ことし上期の入国で一番多いのがベトナム人だということですが、ベトナム人の実習生が全国の労基署で当日申告した、今、それを受理できるところは何カ所あるんでしょうか。

 新法によってどういうふうに対応するのか、あわせて伺います。

宮野政府参考人 お答えいたします。

 まず、全国の労働基準監督署におきましては、ベトナム人技能実習生につきまして、ベトナム語で作成した外国人労働者向けパンフレットを活用することによりまして申告の受け付けを行っているところでございます。

 また、新法施行後におきましては、新たに設立する外国人技能実習機構の相談窓口におきまして、ベトナム語での相談を受け付けることができるようにし、適切に申告につなげてまいりたいというふうに考えております。

畑野委員 そうすると、これは全国で何カ所、今、現時点で、労基署でいろいろ文書があっても言葉の関係がありますから、具体的に何カ所でできているんでしょうか。その実態を知りたいんです。

宮野政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますが、現在、全国の全ての労働基準監督署におきまして、ベトナム語で作成したパンフレットというものを用意しております。それによりまして申告の受け付けを行っているということでございます。

畑野委員 全然不十分ですよ、それは。もう駆け込んでいって、どうしたらいいかわからないところでただ紙だけ出されても、具体的に対応できる、言葉がしゃべれる人を含めて配置しなくちゃいけない。そこのところ、本当に、具体的な御回答が今ありませんでした。

 さらに伺いたいんですが、岐阜県労連の事務局長から伺いましたら、実習生の住まいに行くと、六畳一間に二段ベッドが三つあって、クーラーもなく、女性でも防犯上必要な窓を閉めることはとてもできない、窓をあけて扇風機で風を送っている状態である、国際貢献のはずだが、本来の姿から実態はかけ離れているというふうに伺いました。

 申告権は機能するんでしょうか。現行の制度上、岐阜の監督指導件数、指導に従って是正したというところはありますか、わかりますか。

藤澤政府参考人 お答えいたします。

 岐阜県内の監督指導などに対してどのように指導をし、是正されたかというお尋ねだろうと思います。

 平成二十七年の四月から十二月までの間に、岐阜県内の労働基準監督署において、外国人技能実習生を雇用する八十三の事業場に対して監督指導を実施し、その九二・八%に当たる七十七の事業場で労働基準関係法令の違反が認められております。

 一般に、労働基準関係法令の違反が認められたことにより是正勧告を行った事業場については、その後報告を求めるといったこと等により是正を確認しているところでございまして、是正勧告を受けた事業場においては適正に是正が図られているものというふうに認識をしているところでございます。

畑野委員 あわせて伺います。司法処分に回したのは何件ですか。

藤澤政府参考人 平成二十七年におきまして、岐阜労働局では、六件の外国人技能実習生受け入れ事業場について書類送検を行っているところでございます。

畑野委員 本当に深刻な事態ですよ。これだけの違反が出ているということです。

 それで、資料の四枚目につけましたけれども、左が岐阜県の実態、右側が全国のこの間の監督指導、送検の状況です。

 左の方の岐阜県の状況でいいますと、先ほど言った割り増し賃金の問題、これは、繊維製品製造業のところは二十一件あるんですね、五五・三%。最低賃金の問題でいうと五〇%、十九件。これは本当に、こういう状況は続いているということ、多くは泣き寝入りしているということだと思います。

 こういう状況がありながら放置されて、しかも、法案で申告権に本当に実効性があるのかということが、疑問を持たざるを得ない実態だと思います。

 このような実習生からの申告に対してのその後の対応が重要です。出入国管理法、労働関係法令違反が認められた場合に、実習生の法的救済、そのための関係機関と連携しての法的支援が必要な場合は弁護士や労働組合などに引き継ぐなどの実習生の法的救済の支援、これはすべきじゃないかと思いますが、いかがですか。

井上政府参考人 技能実習生の保護のための相談対応とか援助、第一次的にはこれは外国人技能実習機構を中心に行うこととしてございますが、民間の機関の方々のお力をおかりすべき場面もあろうかと考えてございます。

 例えば、暴行傷害等の重大な権利侵害を受けた場合にシェルターで一時保護というようなこともあろうかと思いますが、そのようなときも民間の団体、機関の方々にお願いすることが考えられますし、また、御指摘の弁護士会に関しましては、技能実習生からの法律相談でございますとか訴えの提起、成立した示談の履行確保等、技能実習生の委任を受けての法律事務の遂行といった形での協力をいただくことが考えられます。

 このように、必要に応じまして、適当な民間の機関の方々との連携を図ってまいりたいと考えております。

畑野委員 時間が残り少なくなりましたので急ぎます。

 岐阜の縫製業者さんからは、実習生に対して、監理費三万円と、そのほか月当たり五万円の費用がかかっている、技能実習生に特有な監理費など必要経費を出さなくちゃいけない、それがなければ、日本のパートだったら十分給料が払える、それでも日本人が来てくれないので、技能実習生を頼りにしているんだという事情も伺います。

 もちろん、地方の中小企業や主要産業を守らなくちゃいけません。だからといって、これを理由に技能実習生だけに奴隷労働を押しつけてはならないわけです。

 法案で、技能実習生が働く岐阜の縫製業の監理費、受検料など、重い負担は一体どうなんでしょうか。

宮野政府参考人 お答えいたします。

 新制度におきましては、監理費、受検料それから手数料は、過度な負担とならないように配慮をすることといたしております。

 具体的には、監理費につきましては、監理団体は、監理事業に必要となる経費等を勘案して、用途や金額を明示した上で徴収することができることとしております。

 受検料につきましては、現行制度においても、営利を目的として試験業務を行うものでないことを試験実施機関の要件としており、これを踏襲いたします。具体的には、試験の実施に必要な経費を勘案して各試験の実施団体において適切な額が設定されることとなります。

 また、認定申請の手数料につきましては、実費を勘案して主務省令で定めることといたしております。

畑野委員 受検料が六万円とか、それから、前は各県でできたのが、今度は遠くに行かなくちゃいけない、交通費もかかる、その上、新しい機構に手数料まで払わなくちゃいけない、これは負担がふえるというふうに私は言わざるを得ないんです。

 それで、最後に修正案について確認だけ。大臣に、もう時間がありませんから、確認をさせていただきます。

 修正案の中で幾つか書かれているんですけれども、例えば、技能実習を行うことが困難になった実習生の支援をいろいろ書かれておりますけれども、やはり国の責任できちっと行うべきではないかと思うんです。金田大臣、いかがでしょうか。

金田国務大臣 委員御指摘のように、技能実習を行うことが困難になった技能実習生への支援は、例えば、新制度では、技能実習を継続して行うために実習先を変更することについては、やむを得ない事情が認められる技能実習生に対しては監理団体において移籍先を探す、そういうことはもちろん、それから、主務大臣と外国人技能実習機構において必要な支援を行っていくというふうになっておりまして、この点をも含めて、政府として、技能実習制度の適正化をして、技能実習生の保護に力を尽くしていきたい、このように考えております。

畑野委員 時間が参りました。

 予定した質問が終わらないほど、まだまだたくさんの問題点があると思います。引き続きこの問題を追及していくことを申し上げまして、私の質問を終わります。

鈴木委員長 これにて両案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。畑野君枝君。

畑野委員 私は、日本共産党を代表して、外国人技能実習法案及び入管法改正案に反対、自民、民進、公明各党提出の修正案に賛成の討論を行います。

 外国人技能実習制度は、技能移転による国際貢献を名目とし、技能実習生を保護するとしながら、その実態は、労使対等を前提とせず、低賃金、非熟練労働力の受け入れをするものであり、安価な労働力として使われてきました。労働関係法令の違反や人権侵害が引き起こされ、内外から厳しい批判を受けてきたのであります。

 本法案は、こうした外国人技能実習制度を適正化するとしていますが、制度の持つ構造的矛盾を何ら解決するものではありません。

 最大の問題は、技能実習生が、母国でブローカーなどを経由し、送り出し機関に保証金を取られ、我が国の受け入れ先の企業を特定して送り込まれていることです。

 実習生は、送り出し機関や受け入れ先との間で対等な関係を持てず、支配従属的な関係を受け入れざるを得ません。このもとで、低賃金、ピンはね、強制労働、セクハラと性的暴行、パスポート取り上げなど数々の人権侵害が続発し、実習生の失踪が多発してきたのであります。私が質疑で取り上げたベトナム人などの実例が示すとおりです。多くの人権侵害を生み出す根源である支配従属関係にメスを入れない限り問題は解決しません。

 ところが、法案は、受け入れ機関の管理監督をするとしていますが、技能実習生は、受け入れ機関を特定した上で在留資格が与えられる仕組みです。例外的な場合を除いて職場移転の自由はありません。現行の構造的な問題はそのままです。労働者として保護するというのなら、実習先選択の自由を保障すべきです。

 また、悪質なブローカーや法外な保証金を排除するための二国間取り決めの規定もありません。質疑の中で、政府は、送り出し国政府の協力を得て不適正な送り出し機関を排除する枠組みをつくっていく考えだと答弁しましたが、強制力のある二国間取り決めなしに、どうして実効性が担保できるでしょうか。

 もう一つの問題は、入管法改正で介護の在留資格を新設し、介護分野にも技能実習制度を拡大しようとしていることです。

 介護分野では、労働条件と低賃金が放置されていることが問題となっています。技能実習に介護を追加することによって、実習生の日本語でのコミュニケーション能力の問題だけでなく、介護サービスの質の低下や新たなトラブルを生み出すことが懸念され、容認できません。

 さらに、入管法の難民認定の問題です。

 難民認定申請者に対する、不明確、曖昧な規定による刑罰及び在留資格の取り消し事由の拡大は、その濫用によって、外国人やその支援者に対し、不当な人権侵害を拡大するおそれがあります。

 以上が、二法案に反対する理由です。

 なお、自民、民進、公明各党共同提出の修正案は、技能実習生の待遇改善に資するものであり、賛成します。

 以上、討論を終わります。(拍手)

鈴木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより採決に入ります。

 初めに、第百八十九回国会、内閣提出、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、吉野正芳君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、平口洋君外三名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。井出庸生君。

井出委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び外国人技能実習機構は、本法の施行に当たり、次の事項について万全を期すべきである。

 一 技能実習生の待遇について、本法の基本理念の実現及び実習実施者による出入国又は労働に関する法令遵守の確保のため、以下の取組を行うこと。

  1 外国人技能実習機構は、技能実習計画の認定に当たり、実習実施者に対し、技能実習生の報酬の額が、日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることの説明責任を課すとともに、技能実習生の技能等の修得等に応じてその処遇も向上するよう、第二号技能実習生及び第三号技能実習生の予定賃金の定めが、それぞれ当該技能実習生の第一号技能実習及び第二号技能実習における賃金を上回るように留意すること。

  2 政府は、技能実習生の報酬にとどまらず、報酬からの控除の把握にも努めるとともに、本法第七条第二項の基本方針において、技能実習生に支払われる報酬から、不当な控除が行われることにより技能実習生の生活に支障が生じることがないよう留意すべき旨を定めること。

  3 外国人技能実習機構は、実習実施者及び監理団体の実地検査を、適時、予告をしない検査も含めて行うこととし、その際、1を含む法令の規定及び2を含む基本方針にのっとった割増賃金等の報酬の支払いを、帳簿類の点検のほか、技能実習生及び日本人従業員からの聴取など、実態を的確に把握できる方法により確認すること。

  4 外国人技能実習機構は、本法を含め、出入国又は労働に関する法令に違反する事実を把握した場合には、地方入国管理局、都道府県労働局等に対し、通報、情報提供等を行うとともに、事案の重大性に応じ、告発を行うことも視野に、厳格な指導監督に努めること。

 二 技能実習生の実習先の変更について、本法の目的の達成及び技能実習生の人権保障の観点から、以下の取組を行うこと。

  1 外国人技能実習機構は、実習先の変更を求める技能実習生からの相談に丁寧に応じ、2の基本方針の内容を踏まえ、適切な支援により円滑な実習先の変更を図り、技能実習生がその意向に反して帰国を余儀なくされる事態が生じることのないように努めること。

  2 政府は、基本方針において、技能実習生が実習先の変更を求めることについてやむを得ない事情があると認めるときは、実習先の変更を認めることとする旨を定めること。

 三 二国間取決めについて、送出機関の適正化に向けた送出国政府との連携の必要性に鑑み、以下の措置を講ずること。

  1 政府は、送出国との二国間取決めを速やかに作成し、その内容を公表するよう努めること。

  2 二国間取決めにおいて、送出国が送出機関に対し本法第四十七条と同様の規制を行うこと及び規制に違反した送出機関に対し送出国政府当局が迅速かつ厳正な対処を行うべきことを定めるよう努めること。

  3 二国間取決めに違反する行為が認められた場合、当該送出機関に係る技能実習計画について、新たな申請に対する認定をしないことや、事案によっては、既に認定された技能実習計画の認定の取消しを行うことも含め、厳格な対応を行うこと。

 四 帰国後の技能実習生に対するフォローアップ調査について、今後も毎年行うとともに、回答の回収率の目標を定め、二国間取決めにおいて送出国及び送出機関の調査への協力に関する規定を設けるなど、回収率向上に向けた方策を講ずること。

 五 技能実習制度の対象職種への介護の追加について、技能実習生の適切な処遇を確保するとともに介護サービスの質を担保するため、以下の措置を講ずること。

  1 対象職種への介護の追加は、基本方針における、特定の職種に係る施策(本法第七条第三項)等において、「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめ」の中で、日本語能力などの必要なコミュニケーション能力の確保等、検討を要する事項として掲げられた七点につき、同中間まとめで示された具体的な対応の在り方に沿った適切な対応策を定めた上で行うこと。その際、利用者や他の介護職員等と適切にコミュニケーションを図るためには、例えば、会話の内容をほぼ理解できる程度の日本語能力が求められることを踏まえ、技能実習生の入国時に必要な日本語能力については、指示の下であれば、決められた手順等に従って、基本的な介護を実践するために必要となる日本語レベルを望ましい水準とし、二年目の業務への円滑な移行を図ること。

  2 追加後三年を目途として、その実施状況を勘案して、必要があると認めるときは、検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、第百八十九回国会、内閣提出、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、平口洋君外三名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。井出庸生君。

井出委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 「正当な理由」を限定的に解釈するなど、恣意的な判断に基づき改正後の出入国管理及び難民認定法第二十二条の四第一項第五号が不当に適用されることがないよう、十分に留意すること。特に、実習実施者の人権侵害行為等により、やむを得ず一時的に実習を行うことができない技能実習生に対して、同号が不当に適用されることがないよう、技能実習の実情等を十分に調査するなど慎重な運用を行うこと。

 二 同号に基づき在留資格を取り消した件数及びその事例の概要を公表すること。

 三 同法第七十条第一項第二号の二が難民その他の庇護を要する者に影響を与える可能性に鑑み、難民該当性に関する判断の要素及び人道配慮による保護対象の明確化など難民認定に係る制度の一層の透明性の向上を図ること。

 四 同法第七十四条の六の運用に当たっては、入国・在留手続の適正な支援業務に不当な介入が行われることがないよう、十分に留意すること。

 五 本法の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を踏まえ、必要があると認めるときは、検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。

 六 今後の外国人労働者の受入れの在り方について、国内人材の確保を前提としつつ、国民的コンセンサスを踏まえ、政府全体での総合的な検討を速やかに進めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、両附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金田法務大臣。

金田国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえまして、適切に対処をしてまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官鈴木三男君、警察庁長官官房審議官白川靖浩君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長巻口英司君、法務省大臣官房審議官菊池浩君、法務省大臣官房司法法制部長小山太士君、法務省民事局長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長富山聡君、法務省人権擁護局長萩本修君、法務省訟務局長定塚誠君、法務省入国管理局長井上宏君、外務省北米局長森健良君、防衛省防衛政策局次長岡真臣君及び防衛省地方協力局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎(政)委員 おはようございます。自由民主党の宮崎政久です。

 今国会では、この法務委員会の理事として仕事をさせていただきます。円滑な委員会運営に努めてまいりたいと思いますので、金田大臣初め、どうぞよろしくお願いいたします。また、鈴木委員長のもと、与党は古川筆頭理事そして野党は逢坂筆頭理事初め理事、委員の皆様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 早速、質疑に入らせていただきます。

 きょうは、私の地元沖縄に所在する米軍基地をめぐる問題について、法律の視点から少し議論をさせていただきたいと思っています。

 沖縄に所在する米軍基地において、我々、軍雇用員というふうにお呼びしているんですけれども、駐留軍等労働者と、正式な名前はそうなっておりますが、軍雇用員でお仕事をしていただいている方の中で警備員の仕事をしていただいている方が、ゲートで、立哨といってゲート警備をされるときに、拳銃を所持して警備をしていただいている。この方は当然民間人なわけであります。

 まず、防衛省にお聞きいたしますが、沖縄での駐留軍等労働者の中での警備員で仕事をされている方の勤務、業務の実態などについてどのように把握されているか、御説明ください。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄に所在する米軍施設・区域において勤務する駐留軍等労働者は全体で約九千名いらっしゃいますが、このうち警備員の人数は本年八月末時点で約四百名でございます。

 警備員の方は、例えば、施設・区域の出入り口で立哨をし、出入りする軍人、民間人及び車両の交通を整理するなどの任務についておられます。

 この施設・区域の出入りにおいて立哨する際などに警備員が銃を携帯する場合があることについては、米側から説明を受け、日本側としても確認しているところでございます。警備員が携帯している銃の種類には、連発拳銃、散弾銃、カービン銃といったものがあると承知いたしております。

宮崎(政)委員 ちなみに、当然、米軍基地というのは沖縄だけにあるわけではありません、日本じゅうにあるわけでありますが、沖縄県以外の実態、警備に関する業務の実態も把握されていると思いますが、説明してください。

深山政府参考人 お答えいたします。

 本土におきましても駐留軍等労働者の方々が働いていらっしゃいますが、本土では全体で約一万七千名でございます。このうち警備員の人数は、同様に本年八月末時点で約六百名です。

 業務は、先ほど沖縄の駐留軍等労働者である警備員の方について申し上げたとおりの業務をしておりまして、また、銃を携行する場合があるということについても同様に確認をしておるところでございます。

宮崎(政)委員 我が国で拳銃を合法に所持できるのはどういう根拠に基づくのか御説明ください。これは、警察庁、お願いします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきましては、拳銃の所持は銃砲刀剣類所持等取締法に基づき、原則として禁止されており、「法令に基づき職務のため所持する場合」等、同法で定める限られた場合にのみ認められております。

 具体的には、法令に基づき、警察官、海上保安官、自衛官等に所持が認められているところであります。

宮崎(政)委員 今の御説明の「法令に基づき」という場合の、基地の労働をされておられる方の拳銃の所持の根拠法令は何になるんでしょうか。外務省、お願いします。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 地位協定上の根拠についてまず申し上げますと、在日米軍は、日米地位協定第三条の一に基づき、施設・区域内において、それらの警護等のため必要な措置をとることができる、こういうことになってございます。

 そのため、米軍が必要と判断する場合に、警護のために必要な措置の一つとして、日本人警備員に鉄砲等を携帯の上施設・区域内において警護に当たらせることは、日米地位協定上認められているところというように解してございます。

宮崎(政)委員 ちょっと質問を先に進めたいと思います。

 これは防衛省にお聞きしたいんですが、自衛隊員が在日米軍基地の警備業務の一部を担っているというような事実がありますでしょうか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 米軍専用施設・区域におきましては、在日米軍は、日米地位協定第三条一に基づきまして、施設・区域内において、それらの警護等のために必要な措置をとることができることとなっております。

 他方、米軍と自衛隊が施設・区域を共同で使用する場合には、当該施設・区域の警備に自衛隊員が従事する場合があります。日米地位協定第二条第四項(a)に基づきまして自衛隊が共同使用している米軍専用施設・区域のうち、例えば三沢飛行場、岩国飛行場では米軍と自衛隊員が正門で立哨するなど、共同で警備に当たっておるところでございます。

 さらに、同協定第二条第四項(b)に基づき、米軍が一定期間を限って自衛隊の施設を用いる場合がございますが、この場合においては、このような施設の警備は一般的には自衛隊員が実施しているところでございます。

宮崎(政)委員 沖縄に所在する米軍基地でも、今のような形で自衛隊員が警備業務の一部を分担しているという場所もありますか。簡潔で結構です。

深山政府参考人 沖縄におきましては、地位協定第二条四項(a)に基づいて自衛隊が共同使用しております米軍の施設・区域のうち、ホワイトビーチ地区におきましては米軍と自衛隊員が共同で警備を実施しているものと承知しております。

宮崎(政)委員 そうしますと、自衛官が警備の業務を担当している根拠は、今御説明があったように、基地の共同使用をしている、地位協定の二4(a)とか二4(b)という話が今ありましたけれども、これは底地がどちらかというところで違いが出る決まりでありますけれども、端的に言えば、基地の共同使用をしているということが警備業務を分担している根拠になっているという理解でよろしいでしょうか。

深山政府参考人 先生御指摘のように、いわゆる二4(a)というのは、米軍施設を自衛隊が、自衛隊に限りませんが、日本国政府側が使うという件でありますけれども、こちらにおいて共同で警備をしているということにつきましては、こうした協定に基づいて共同使用しておるということが根拠であろうと考えておるところでございます。

宮崎(政)委員 もう一点、現状の確認をしたいんですが、さっき御説明いただいた、駐留軍等労働者、軍雇用員の方の警備業務の実態のようなものを把握しているのか。つまり、政府が、こういう実態にあるということを報告を受けているという事実があるかどうかを確認したいんです。

 例えば、先ほどもちょっと御説明ありましたけれども、どういう拳銃があるのか、予備の弾倉を所持しているのか、防弾チョッキの装備はこういうものになっているとか、現状こういう扱いをしているのでこういった業務をしているとか、こういったことを報告を受けたり協議をしたりというようなことをする場があるのかないのか、教えてください。

深山政府参考人 在日米軍施設・区域内で働く駐留軍等労働者の方々につきましては、日米間で労務提供契約を締結しておりまして、この中で、雇用主を日本政府としながら、同施設・区域内における当該労働者の管理等については米軍が責任を持つものとされております。

 したがいまして、日本側としては、労働者が従事することとなる職種やその内容については把握しておりますが、個々の労働者について、個別にその職務分担の一々を米側と協議しているものではございません。

 労働者の管理等については米軍において適切な配慮がなされているものと認識いたしておりますけれども、雇用主である日本政府といたしましても、労働者の職種、その内容が適切であるかといった観点から雇用状況を注視いたしておりまして、必要に応じて米側と協議してきておりますし、これからも協議してまいりたいと思っております。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。このような現状であるということは確認できたわけであります。

 私は、端的に言えば、拳銃を所持してするべき警備業務というのは自衛官の人に担っていただくのが適切ではないかというふうに思っているんです。

 アメリカという国と我が国では、やはり国柄も国民性も、それに基づいた法制度のあり方も違うんですね。アメリカという国は、憲法の修正第二条で武器の所持が原則自由という国であります。私たちの国は、先ほど御説明があったように銃刀法で所持が原則禁止されるという国であって、それは当然、その国民性みたいなものに基づいて法ができているわけであります。

 ただ、誤解のないように申し上げたいんですが、私の友人にも米軍基地で働いている、その警備を担ってくれている友達がいます。彼らは誇りを持って仕事をしておりますし、日々体の鍛錬などもしております。自分の業務や日々やっている仕事に誇りを持って毎日一生懸命業務をしている。だからもちろん、彼らが職を失うようなことをしたいと言っているわけでもないし、そういうことをしようと思っているわけでもない。

 ゲートの立哨活動というのは、実はやる仕事がいっぱいあるんですね。IDチェックをしたり書類を見たり書類を書いたり、ゲートでやること、だから拳銃を持たないでやる仕事もたくさんあるんです。だから、実はそこは分担していいんじゃないかと私は思っています。

 今御説明があったように、地位協定の三条があるので、それが根拠になっている。そして、地位協定の三条に基づいて、今、日米両政府間で適切な協議をしているという説明があったけれども、私は、一歩進んで、日本側としては、これは、拳銃が必要な部分に関しての業務については自衛官が担当するから、自衛官に担当させてくれということを申し入れしてもいいんじゃないかと思っているところであります。

 こういった申し入れをしたとかという事実はありますでしょうか。

深山政府参考人 御質問の趣旨は、要するに、米軍専用地域においての警備について自衛官が担うという申し入れをしたことがあるかということであるとすれば、私の知る限りそのような申し入れをしたことはございません。

宮崎(政)委員 今お答えの中にあった、要するに米軍専用施設なんですね。

 先ほど来、共同で自衛官も警備業務を分担しているところがある、三沢、岩国で。その根拠は、共同使用しているからだというふうな御説明があったわけであります。

 専用施設の話で、よく、沖縄は国土面積の〇・六%しかないのに、日本全体の七四%の米軍専用施設があって過重な負担になっている。これはそのとおりなんです。では、残りの二六%はどこにあるのか。

 沖縄には、例えば嘉手納とか普天間という、私の地元嘉手納も普天間も、例えばキャンプ・キンザー、みんな丸ごと専用施設なんです。ところが、では、本土にも同じように丸ごと専用施設があるのか、残りの二六%はどこにあるんだと探してみると、それはそういうものがあるわけではなくて、共同で使用している基地施設の中で米軍が専用している部分をかき集めてくると全部で二六%になる、これが実態なんですね。

 ですから、沖縄も、丸ごと専用というのを終えて、共同の時代に入っていくべきじゃないかと私は思うんです。

 防衛省も、この点、大綱や中期防などで定めがあると思いますけれども、共同使用に関してはどういうふうに政府は考えているのか、御説明いただけますでしょうか。簡潔に。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の点につきましては、例えば平成二十六年度以降に係る防衛計画の大綱におきましては、日米同盟の抑止力及び対処力の強化という観点から「米軍・自衛隊の施設・区域の共同使用の拡大を引き続き推進する」と記載されているところでございます。

宮崎(政)委員 きょうは、小林政務官に御出席いただいております。

 このように、大綱、中期防でも進めるというふうに取り扱っているわけです。これは、日本の安全保障を進めるという意味でも、また、沖縄にたくさんあるものを返還という形で負担軽減を進めることは大切で、これもぜひやらないといけないんだけれども、今あるものについてどうやって負担軽減をしていくかといったときに、丸ごと専用を終わって共同使用の段階に入っていくということも大きな負担軽減になると私は思っているんです。こういう取り組みをぜひやってほしい。

 三沢だって岩国だって、戦争が終わった後米軍が進駐してきて専用施設であったところを、その後、自衛隊が日本の安全保障のために必要だと言って入っていって共同になっているという歴史をたどっている。沖縄はその歴史をたどっていないんです。

 だから、小林政務官、ぜひ政府としての決意を語ってもらいたいと思います。

小林大臣政務官 これまでの質疑を伺っておりまして、まずは、沖縄県選出議員としての宮崎委員の思いを伝えてくださったことに、政治家として感謝を申し上げたいと思います。

 その上で申し上げますと、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していく中で、委員御指摘のように、米軍専用施設・区域を自衛隊が管理する形態で日米の共同使用にするということは、日米安保体制の中核的要素である在日米軍の駐留のあり方を根本的に見直すことを意味します。

 したがいまして、施設・区域を共同使用する場合の管理権につきましては、日米同盟が十分に機能していくのか否かという点を十分に踏まえた上で検討されるべきであるというふうに考えております。

 いずれにしましても、防衛省といたしましては、防衛計画の大綱におきましても、日米同盟の抑止力及び対処力の強化という観点から「共同使用の拡大を引き続き推進する」とされておりますことを踏まえまして、米軍専用施設・区域の共同使用に関する具体的な協力につきまして日米間で真摯に検討してまいりますし、また、宮崎委員を含め地元の皆様の思いや声をしっかりと受けとめながら、引き続き沖縄の負担軽減に全力を尽くしてまいりたいと考えます。

宮崎(政)委員 小林政務官、ありがとうございました。

 沖縄の基地負担の軽減というのは、実は法律の世界の問題にもかかわることが多々ありますので、どうかこの委員会の委員の先生方の御理解もいただいて、一つ一つ課題の解決を進めてまいりたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 質問に立たせていただきます鈴木貴子です。

 この質問の時間をいただきましたことに、理事の皆様そして委員長初め各委員の先生方にも心から感謝を申し上げさせていただきます。

 まず、大臣所信で、再犯防止対策について大臣も触れられておりました。政府としても、世界一安全な国づくり、日本ということも掲げていらっしゃいます。

 来月、十一月から、東日本・西日本就労支援情報センターというものが新しく設置をされるということも決まっております。その中で、この就労支援の中では、特に労働力不足分野、もしくは社会の各種ニーズに応じた職業訓練の実施ということも掲げてありまして、それは私は非常に大切なことだと思っております。

 しかしながら、これは、とある建設業界紙、新聞なんですけれども、「法務省によると、センターを新設する最大の目的の一つが、刑期中に出所後の建設業への就職内定者を増やすこと。」である、これは私は間違ってはいないと思うんです。ただ、気になるのが、「法務省は、二〇二〇年東京五輪までに一時的に急増する建設需要に対する担い手不足をにらみ、」と書かれております。

 ここで、きょうは矯正局長も来ていただいておりますが、質問というよりは、あくまでもここは確認と提言をさせていただきたいんですけれども、再犯防止、就労の取り組みというのは一時的であってはならない、持続的、継続性というものがあって初めて再犯防止に資する。こういう意味でも、ぜひとも、来月からセンターも新設、オープンされるということで、法務省の方からも、関係各所、もちろんセンターも含めて、お世話になる業界の皆さんにも、これは一時的な担い手確保の分野ではないんだ、当人にとっても、また社会にとっても持続可能な安全性のためのものなんだということを改めて広報、周知していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

富山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、受刑者あるいは少年院の在院者が出所して仕事につくということは、今後の人生を歩む上で非常に重要なことでございまして、それがいっときの、終わってしまうという臨時の措置であってはならないということは、まさにおっしゃるとおりでございます。

 その報道につきましては、多分、取材なさった方の問題意識等もあってそのような書き方になったかと思いますが、私どもといたしましては、決して腰かけ的な意味での就職先を探すのではなく、その人が生涯働ける道を見つける、そういった一助としての就労支援を実施していきたいと思っておりますし、関係省庁とも連携をとらせていただいて、そういった方向でこの就労支援の業務をより充実させていきたい、そのように考えております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 再犯防止、特に、出所者だけの利益ではなくて、再犯を未然に防ぐということが社会全体の利益にも資するんだという全体の意識づくりというものも非常に必要なのではないのかなと思っております。

 続いて、金田大臣、御就任おめでとうございます。そして、前回の大臣所信の質疑の中でも、やはり死刑制度についての質問も出てまいりました。私自身、この問題また冤罪対策の問題にもライフワークとして取り組んでいる者としても、ぜひ金田大臣とも考えの共有をさせていただきたいと思っております。

 まず、確認を、これは事務方で結構であります。刑罰の目的、意義という基本的なところでありますが、刑罰というものは、当人の過ちを認識させ、自責の念を持たせ、さらには矯正施設において更生をさせ、教育をさせ、最終的には社会復帰をさせるということが目的でよろしいでしょうか。

林政府参考人 刑罰の目的の意義というものについては、さまざまな考え方がございます。

 一般に、今委員言われたような部分といいますのは、犯罪を予防するためにある、こういった考え方がある一方で、それにあわせまして、応報、すなわち犯罪を行ったことに対する報いとして科すものということの考え方がございます。このいずれかどちらかであるという考えもありますし、その両方であるという考え方もございます。

鈴木(貴)委員 この死刑、世間一般には極刑とされるものでありますが、もちろん、死刑ということは命を奪うということでありますから、社会復帰を目的としたものではないことは明確であります。となると、やはり残ってくるものは、今ほど林局長がおっしゃられた応報という部分になってくると思うんです。

 しかしながら、死刑確定囚の命をもってして、果たして本当にそれが応報に値するのかというのは、これは永遠のテーマだと思うんですね。

 そういった中で、過去に政府答弁では、「死刑の犯罪抑止力を科学的、統計的に証明することは困難であるものの、一般に死刑を含む刑罰は犯罪に対する抑止力を有するものと認識」されています、このように答弁されておりますが、今でもこの見解、同様の見解でしょうか。端的にお願いします。

林政府参考人 死刑につきましての抑止力に関しましては、死刑制度は凶悪犯罪の抑止のために一定の効果を有しているという見解でございます。

鈴木(貴)委員 そこで、最近、例えば、二〇〇一年、覚えていらっしゃいますでしょうか、大阪で男性が小学校に乱入をし、突如切りつけて八人の児童の命を奪った事件もありました。二〇〇八年、秋葉原通り魔事件、二〇一二年、大阪ミナミ通り魔事件、二〇一六年には、私の地元釧路でも、ショッピングスーパーで白昼堂々、男性が刃物を振りかざし四人の方を無差別に殺傷するという事件も起こりました。

 これらの事件に共通するのは何かといいますと、それぞれの実際に事件を起こした方々がおっしゃるのは、死刑になりたかった、これが動機であります。中には、自殺する勇気がなかったので殺してほしかった、こういった動機をもとに生まれる事件というものが二〇〇一年、二〇〇八年、二〇一二年、二〇一六年、二〇〇〇年に入ってからだけでもこれだけあるんです。

 ということは、果たして死刑というのは極刑なんでしょうか。死刑になりたいと言った者に対して死刑確定の判断を科し、そして国がその死刑を執行する。その当人の望みをかなえているということは果たして応報刑の考え方に見合っているのか。

 その点、金田大臣、どのようにお考えでしょうか。

金田国務大臣 ただいま委員御指摘の、死刑は、やはり、犯行の罪責、動機、態様、結果の重大性、それに遺族の被害感情その他各般の情状をあわせ考慮したときに、その罪責がまことに重大である、そして、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合に科されるものと承知しております。

鈴木(貴)委員 死刑になりたかった、もしくは、特に、過去の例なんかでは、過去の事件で通り魔が四人殺したから、自分も四人以上殺せば死刑になれると思った、だから四人以上殺した、こういった、取り調べの中で動機を話されている方もいる。であるならば、死刑制度というものについてはしっかりと考えていく必要があるのではないか。

 また、例えば、ついこの間、日弁連の皆さんが死刑廃止に対する宣言をされたという報道もありました。日弁連の皆さんの中でも相当な議論があったそうであります。当日の採択でも、もう断固反対と言いながら採決に応じられた方、もしくは、棄権をされ、その場から出ていかれた方もいらっしゃるそうであります。

 この死刑の問題が非常に難しい理由の一つに、もちろん被害者、御遺族の思いに対してもそうでありますが、同時に、忘れてならないのはやはり冤罪問題であると思います。

 金田大臣にもぜひ御認識を伺いたいところであるんです。

 例えば、二〇一四年、逮捕から実に四十八年ぶりに釈放された袴田巌さん、死刑確定囚であります。再審開始と同時に、袴田さんの場合は拘置の停止も決定がなされました。

 その際の静岡地裁の決定では、捏造された疑いのある証拠で死刑の恐怖のもとで身柄を拘束されたと、捜査の全否定ともとれる表現で検察、警察の批判もありました。また、正義という言葉を使って、約四十八年間自由を奪われた袴田さんの身体拘束を解くという、これは前代未聞の例であります。

 同時に、決定では、死刑確定の決め手となった証拠、いわゆる五点の衣類というものでありますが、捏造と考えるのが合理的、また、捏造をする必要と能力を有するのは警察をおいてほかにないとまで地裁が踏み込んだ発言をされております。あと、近年でいえば東電OL事件もそうでありました。

 このように、日本においては、実に、免田事件だとか財田川事件、島田事件、松山事件など、死刑が確定した後に再審によって無罪になった事件というのはこれだけ現在進行形である中で、金田大臣にお尋ねさせていただきます。現在の刑事司法制度において、誤判による死刑確定もしくは死刑執行は一〇〇%ないと言い切れるでしょうか。

金田国務大臣 ただいまお話しされました中で、個別事件については所見は差し控えさせていただきたいと思います。

 御指摘のように、例えば、誤判のおそれを理由として死刑制度を考えていくという考え方もあることは承知をいたしております。

 しかしながら、我が国の刑事手続においては、令状主義、厳格な証拠法則等の被疑者、被告人の人権保障に資する諸原則が採用されておるということ、そして、公判手続上も死刑が問題となる事件には必ず弁護人が付され、裁判所における極めて慎重な審理を尽くした上で判決が言い渡されているということなので、非常に厳格な手続により有罪が認定されているということがあります。そして、加えて、三審制が保障されて、確定した裁判に対しても再審、非常上告といった救済制度が設けられている。

 これらは誤判を防止するために有効に機能しているということを考えて、また、厳格な制度の上において極めて慎重に運用されていくべきものであるというふうに考えておりますので、私は、そういう思いを持ってこの死刑制度は考えさせていただきたい、こう思っております。

鈴木(貴)委員 やはり、今の答弁でも、一〇〇%間違いはないと断言できないところに、今の答えの全てがぎゅっと詰まっているのではないのかなと思っております。それだけでも実に成果を得た答弁をいただいたと思っております。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 民進党の枝野でございます。

 先日の大臣のいわゆる所信、法務大臣挨拶について何点かお尋ねしたいと思います。

 ちょっと通告の順番と違うんですが、最初に、訟務機能の充実という項目で大臣所信を述べられました。そこについてお尋ねいたします。

 大臣所信では「国の利害に関係する訴訟に対する指揮権限の強化を一層推進する」としておりますが、この指揮権限とは何を意味しているのか、これは政府参考人でいいので、お伺いいたします。

定塚政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの指揮権限とは、いわゆる法務大臣権限法、すなわち、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律の二条二項それから六条一項に基づくものでございまして、国を当事者等とする民事訴訟及び行政訴訟の遂行に当たり、法務大臣が当該訴訟に係る所管行政庁またはその職員に対して指示、命令等を発する権限でございます。

 以上です。

枝野委員 その権限を今、強化しなきゃならないんですか。その権限に基づく機能を充実させなきゃいけないというのはわかるんだけれども、権限をどう強化するんですか。

定塚政府参考人 まさに枝野委員がおっしゃるとおりで、機能を強化するということでございます。権限自体を法的に法律改正等をして改正するということではございません。

枝野委員 ちょっと揚げ足取りみたいな話になるんですが、この後のものもそうなんですが、別に法務委員会で揚げ足をとって、とめようとは思っていないので。

 ちょっと、全体に、今回の大臣所信を見ると、今のようにラフだと思います。法をつかさどる法務省の大臣所信のところで「権限の強化」と書いてあったら、普通、法令に基づいて権限そのものを何か強くするのかと受け取られても仕方がないと思います。

 でも、おっしゃるとおり、権限そのものを強くするんじゃなくて、今持っている権限を有効に活用して機能を強化させようという意味だとすれば、それはそうきちっと書かないと、大臣が国会で議事録に残してしゃべるわけですから、そこはしっかりとしていただきたいと思います。これは別に訟務局だけの話ではないんですが、済みません、訟務局、お答えいただけますか。

定塚政府参考人 御指摘のとおりだと思いますので、今後、気をつけさせていただきます。どうもありがとうございました。

枝野委員 もう一つ、今のような点で気になったのは、法教育の重要性の話です。文部科学省の所掌の事務として各学校において法教育がなされているのはわかるんですが、法務大臣の所信で「法教育の充実に努めてまいります。」ということは、法務省の所掌事務の中で、何か、法教育に関して何をこれまでやってきているんでしょうか。

小山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、ちょっとさかのぼって御説明させていただきます。

 平成十四年の閣議決定でございます司法制度改革推進計画におきまして、法務省及び文部科学省におきまして、学校教育等における司法に関する学習機会を充実させるための方策を検討し、所要の措置を講ずるとされた経緯がございます。まずこれがございまして、これを踏まえまして、法務省としては、法教育の現状や課題を調査、検討する研究会をまず立ち上げまして、平成十六年には、法教育においては自由で公正な社会を支える法的な物の考え方を育てることを目指すことなどを内容とする報告書を取りまとめました。

 さらに、法務省では、こういうことを踏まえまして、平成十七年に法律関係者や教育関係者に入っていただきました法教育推進協議会を立ち上げまして、これまでに法教育の推進、普及のために必要な取り組みを進めてまいりました。

 具体的には、調査結果を踏まえまして、小学生及び中学生向けの法教育教材を順次作成いたしまして、全国の小学校、中学校のほか、教育機関に配付した。また、全国の小学校、中学校、高等学校に法務省職員等を講師として派遣して、法教育授業を実施した。あるいは、法教育に関する取り組みを促すためのリーフレットを教育委員会等に配付するなど、こういう法教育の普及、推進に向けました各種方策を進めてきたところでございます。

枝野委員 二つ問題があるんですが、まあ三つかな。一つは、リーフレットみたいなものをつくって配っているのはいいんですが、配ったものをどれぐらい教育の現場で生かされているのかなというのが一つですね。

 それから、法務省の職員の方を派遣されているといっても、そもそも法務省は、検察庁まで含めてもそんなに人数の多い役所だと思いませんので、要するに、サンプル的に行っているような世界にすぎないですよね。

 それで、これをさらに充実するとおっしゃっているんだけれども、今二つ指摘をしたこと、そして、その充実というのは、何をどうしようとしているんですか。

小山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、リーフレットでございます。これは広報用のものでございますので、その効果というのはなかなか難しゅうございます。

 ただ、出前授業というもの等もございまして、学校や地域の集まりに法務省職員等を講師として派遣して、法教育授業を実施するということでございます。これは数値がございまして、平成二十七年度の実施回数でございますが、二千九百四十七回、参加人数が十一万七千七百六十四人という人数の数値が出てございます。

 それから、今後どうするのかというお尋ねがあったと思います。これは、今、学校現場で、こういう法教育をやっていて、その効果がどうなのかというようなアンケートなどもしておりまして、確かにいろいろ難しい部分があるという御指摘も受けております。

 そこで、学校現場における法教育授業の実践拡大のためには、授業を担う教職員の負担を軽減する必要があるだろうと考えておりまして、法務省といたしましては、今後さらに、小中学生向けの視聴覚教材、ペーパーの教材ではなくて視聴覚教材をつくるということをまず考えております。

 それから、高校生向けの法教育教材はまだできておりませんでしたので、これをつくろうかなと思っておりまして、法教育推進協議会のもとに、実際に学校現場で教鞭をとっておられる教職員あるいは弁護士の先生などを構成員とする教材作成の部会を設置いたしまして、この教材の構成や内容等について鋭意検討を行っているところでございます。

枝野委員 二千何回というのが多いと見るのか少ないと見るかということはあると思うんですが、私も別に全国の小中学校を全部統計をとって見ているわけではないんですが、例えば交通安全の教育はちゃんとやらなきゃいけないからということで、近くの警察の方とかそういう方が小学校の低学年の皆さんのために恐らく相当な小学校でやっているというようなことは、大体社会常識としてもみんな共有をしていると思うんですが、そういうレベル、あるいは防災訓練、避難訓練みたいなことはどの学校でもやっていますよねという話と比べたときに、二千何件というのはちょっと桁が違うんじゃないのかなというふうに思います。

 これは別に批判をしようとしているんじゃなくて、法務省が自力で法教育の充実を頑張りたいと幾ら思っても、人的な資源自体も数が限られているわけです。

 なおかつ、法教育は、小学校の先生は社会科まで全教科やっているかもしれないけれども、例えば中学、高校の理科系の先生は、大学の一般教養では勉強したかもしれないけれども、それを子供に教えるといったって、自分の専攻とは全然遠いところだし、なかなか簡単じゃないというのは間違いないわけですよ。

 そうすると、これはお答えは要らないけれども、提案ですけれども、例えば弁護士とか、あるいは司法書士さんは数がかなりいるわけですよ。弁護士さんをふやし過ぎちゃって問題になっているわけです。前回のところで申し上げた法曹教育、法曹養成のところとも絡むけれども、私の時代も税金で司法修習生で訓練をさせていただいた。そのかわり、例えば裁判官や検事になる場合はもちろんだけれども、弁護士の場合でもやはり社会貢献をしなきゃならないということが、ある意味ではほぼ共通の認識だったわけですね。

 今でもやはりそういう側面は残っていると思うので、例えば弁護士会とか、あるいは司法書士さんとか、そういう皆さんのところに協力をお願いすれば、教えに行ってくれる人の数は多分二桁ぐらいふえる、人材はいるんじゃないだろうか。それぐらいのことをやらないと、本当に法教育の充実とか法教育の重要性といっても、何か裏づけにならないんじゃないのかなと私は思います。

 法教育の重要性というのは本当に重要だと思うので、それぐらいのことまで含めて、ちょっと踏み込んだ検討をしていただきたいというふうに思うんですが、これは何か大臣に感想を言っていただけるなら、感想を言っていただければと思います。

金田国務大臣 ただいまの御指摘は非常に参考になる御意見でございまして、先ほど私どもの部長の方から、政府参考人の方からお答えを申し上げたこれまでの努力、そういうものは、やはり法務省として一生懸命に頑張ってきた。しかし、それをさらに効果のあるものにしていくためにどういう手法が、法務省以外の関係省庁やあるいは団体、いろいろなお立場の皆様のお力をおかりするとして、そういうものを含めてどういうふうに積極的に法教育の普及推進を進めていくのかということについてのアドバイスとして非常にありがたいお話であった、このように思っております。

枝野委員 ぜひ前向きに検討をしていただきたいというふうに思います。

 そして、では、きょう取り上げる最後に、先ほども入管法等の採決が行われましたが、これに絡んで、まず最初に、ちょっとこれはまた書き方がどうかなと思うんですが、外国人材の受け入れということで大臣所信に項目が立てられているわけですね。外国人材の受け入れについては、「日本経済の活性化に資する外国人の受け入れの促進に努めてまいります。」とおっしゃっているんです。

 それ以外のことを言っていなくて具体的な技能実習制度とかに入っていて、これだと、要するに、日本経済の活性化に資する場合だけ外国人材を受け入れると受け取れるんですが、そういう趣旨なんですか。それ以外の場合、外国人材を受け入れないんですか。

井上政府参考人 書き方の表現の問題の御指摘も含めてと思いますが、ここの真意につきましては、外国人材の受け入れが日本経済の活性化に資する場合に限るものではなくて、その所信の真意は、特に重点的に取り組むべき施策について述べたところでございます。

 少し敷衍させていただきますと、これまでも、経済社会の活性化に資するという意味では、専門的、技術的分野の外国人の受け入れ、これはずっと積極的に行ってきたところでございます。

 さらに、本年六月に閣議決定された日本再興戦略二〇一六におきましては、例えば高度外国人材の受け入れ等の施策が盛り込まれておりますので、これらを踏まえて所信として申し上げたところでございます。

枝野委員 だから、日本経済の活性化のために外国人材を受け入れることがあることは全然あっていいと思うんですが、何か、それ以外は受け入れないんだととられても仕方がないような大臣所信になっていると思います。

 それから、まさに先ほど採決された技能実習なんですが、その後何の接続詞もなしに、「技能実習制度について、」と大臣所信で述べられているんですよ。

 確認になりますが、技能実習制度とは、日本経済の活性化に資する外国人材の受け入れとして受け入れるんですか。違いますよね。

井上政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、技能実習制度は、日本経済の活性化に資することを直接目的とするものではございません。

 ただ、技能実習生の受け入れも外国人材受け入れの一形態でございますので、その項目には書かせていただいております。

 法案にも明記しておりますように、技能実習制度は、開発途上地域等への技能移転を通じた国際貢献のための制度でございます。そして、基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。」と明記したことからも明らかなように、外国人労働者の受け入れによる日本経済の活性化を目的とするものではございません。

枝野委員 そうなんだろうなと、読もうと思えば読めないことはないかもしれないけれども、先ほどの訟務機能の充実の話のところにしても、法務省、これは別に大臣が鉛筆をなめて書いたわけじゃないでしょう。やはり、事務方がつくったものをベースに、大臣が御自分の御意向を入れてというのが大臣所信でしょう。自分で原稿をつくったものじゃないものは基本的に読まない派である私も、大臣所信は、当時役所の皆さんがつくったものに筆を入れましたよ。

 それを、法務省の文章がこういうラフなことでいいのか。まさに、法務関連の日本語というのは、論理的にきちっと説明がついて、読めば、誰が読んでも違った意味でとられることがないようにして、そのために接続詞の使い方とかなんとかということを、自分がやれているかどうかは別として、私も三十年ぐらい前、さんざん言われましたよ。

 それを、法務省でこういうのが出てくるというのは、ちょっと大丈夫かな、日本の霞が関。霞が関が優秀なのは僕は物すごく認めているし、頑張っていただいたことは評価するので、そこがこういうラフな日本語を使っている、しかも法務省の方、ちょっと心配になります。

 百歩譲って言えば、先ほどの「日本経済活性化に資する外国人の受け入れの促進に努めてまいります。」で、これとは別にとか、これとともにとか、やはり接続詞が入らないと、これは日本経済の活性化のための技能実習制度だととられても仕方がないんじゃないかと思います。

 ここが本質的な問題ともつながってくるんですが、ここから先は多分、法務省の政府参考人には答えられないと思います、大臣か、政務にお答えいただきたいんです。

 外国人材を受け入れることが日本経済の活性化にどうつながると考えておられるのか。因果関係を具体的に説明していただきたいと思います。

金田国務大臣 ただいまの、因果関係いかんという御質問でございます。

 我が国経済の活性化によって経済が成長することが我が国の幸せにつながる、そういうことが期待できるものではないかということを、将来の国民の幸福につながるということが期待できるのではないかと考えてのものである、こういうふうに考えております。現在の状況に加えて、将来の幸せにつながる、我が国経済の活性化によって経済が成長していくことが将来に向けての国民の幸せにつながるということが期待できるのではないかと考えております。

枝野委員 経済成長することが幸福につながる、それは結構なんですよ。どうして外国人材を受け入れたら経済成長につながるんですかと聞いているんです。

金田国務大臣 外国人材を受け入れることは、専門的あるいは技術的分野の外国人、世界で通用する専門知識あるいはハイレベルな技術といったようなものを有している部分があるわけですから、その受け入れは日本経済の活性化に資するものである。そして、高度外国人材を受け入れた場合には我が国の産業にイノベーションをもたらす部分もある。したがって、経済成長、あるいは新たな需要の創出、あるいは雇用の創出というものにつながることが期待できる。それが先ほど申し上げました将来に向けての我が国の国民の幸せにつながる、このように考えております。

枝野委員 それをお答えいただきたかったので、私は、そこまでは全く同意見です。

 高度な人材、特別な技術、技能を持っている、知識を持っている、そういう方が日本で研究する、日本にある日本企業の研究所で研究していただく、そこで何か新たなものを生み出して、新たな付加価値を生み出していただく、それは日本経済の成長につながるだろうと思います。

 ということは、ここで言っている外国人の受け入れは、そういう高度技術、技能を持っている外国人に限られた話だと思っていいですか。

金田国務大臣 やはり、我が国の経済にインパクトを与える、質的な面でもインパクトを与える、そういう御指摘のようなケースを私は想定しております。

枝野委員 では、裏返して聞きましょう。低賃金労働者が国内で不足をしている、それを補うための外国人材の受け入れということをここで意味しているわけではない、これでいいですね。

金田国務大臣 私は、そこまでを想定して申し上げたわけではありません。

枝野委員 大変いい御答弁をいただけたというふうに思っています。

 更問いをしようと思っていましたが、国内での人手不足とか、特に中間から低賃金の人たちが人手不足であるというところを補うために外国から労働者を受け入れるということをすれば、日本のもともと国内に住んでいらっしゃる方の職を奪うことにもなるし、あるいは、そういうことで労働市場の需給関係が緩むと、賃金が低く抑えられる方向になる。本来上がっていくべき、需給がタイトになれば賃金が上がっていくわけですから、それがむしろ下振れをする要因になる。結果的に、日本人あるいは今日本に住んでいる人たちの幸福につながらない。

 したがって、労働者不足であるとか、あるいは特に低賃金労働者の不足のために外国人を受け入れるということは、これは理念的には、リベラルな政策の方向性からいえば、理想論からすればありかもしれないけれども、今日本に住んでいる方の経済の状況、社会の状況を考えたら私はすべきでないと思っていますが、いいですね。

井上政府参考人 お答えいたします。

 我が国における外国人労働者の受け入れの基本的な方針は、専門的、技術的分野のものについては積極的に受け入れる、そうでない分野のものについては、さまざまな要素を検討しながら、特に国民的なコンセンサスの形成でありますとかも意識しながら、政府全体で検討していくべき課題だ、そのように考えております。

金田国務大臣 ただいま政府参考人から答弁したとおりであります。

枝野委員 技能実習の制度のところでも、私はこの国会から法務委員会に戻ってきたので、前国会での議論でも多分こういったところは大分議論になったと思うんですけれども、とにかく、低賃金の労働者が不足をしているから、それを補うために外国から入ってもらう、それを、今局長がおっしゃったような建前だから、その抜け道として技能実習制度を使う。こんなことはあっちゃいけないし、最初に大臣がおっしゃられたとおり、日本経済の成長に資するとすれば、高度人材、それについては資することの因果関係は私も納得できるけれども、一般の労働者あるいは低賃金労働者については、それが今日本に住んでいる人たちの幸せにつながるかどうかということからいえば、私は甚だ疑問ですから、法務省が入管行政の観点から相当頑張って、変に、人手不足だからどんどん外国人、安いのを入れて何とかさせてくれよという、必ずこういうニーズはありますから、それに対してしっかりと抵抗していただきたいと申し上げて、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 山尾志桜里です。

 少しだけ久しぶりに法務委員会に戻ってまいりました。そして金田大臣、先日の予算委員会では、残りあと一分というところで議論におつき合いをいただきまして、ありがとうございました。きょうはこの委員会で三十分少しの時間をいただいていますので、あそこでちょっとお互い消化不良だった部分を、しっかりと丁寧に議論におつき合いをいただければというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 まず、復習からですけれども、お手元の資料一をごらんください。平成十九年の新司法試験短答式、マル・バツ、記号式ですね、この公法系科目第十三問でございます。上から二つ目の片仮名のウという文章を見ていただきたいと思います。「憲法第九条についての政府の解釈によれば、同条によって集団的自衛権の行使が禁じられており、」というふうで、後に文章が続いています。

 このウの文章ですけれども、大臣、お尋ねいたします。平成十九年当時の答えとして、このウの文章の正解はマルでしょうか、バツでしょうか。

金田国務大臣 ただいま委員御指摘のウの記述については、試験を実施しました平成十九年当時の正解として、ウの記載は正しい旨を公表していると認識しております。

山尾委員 では、来年の司法試験で全く同じ問題が出たら、これは正解はマルですか、バツですか。

金田国務大臣 お答えいたします。

 司法試験の問題作成と採点につきましては司法試験考査委員に委ねられておりまして、法務大臣として、公表されている問題そして正解の範囲を超えて司法試験の個々の問題、内容等について言及することは差し控えさせていただきたいと思います。

山尾委員 なぜ差し控えることが適切だと考えているのですか。

金田国務大臣 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、司法試験の問題作成、採点につきましては司法試験考査委員に委ねられております。法務大臣としては、問題及び正解の公表をされております範囲を超えて司法試験の個々の問題、内容等については差し控えさせていただきます。

山尾委員 委ねているのは大臣だと思いますが、法務大臣、では、なぜ委ねているのですか。

金田国務大臣 お答えいたします。

 法務大臣において、司法試験の個々の問題、内容等について所見を述べることになれば、司法試験考査委員が独立的、中立的な立場で問題作成を行うという趣旨を損なうおそれがあるわけであります。

 したがいまして、法務大臣としては、公表されている問題、正解、そうした範囲を超えて司法試験の個々の問題、内容等について所見を申し上げることは差し控えさせていただきます。

山尾委員 そのように独立性、中立性を重要だと考えるならば、なぜ、平成十六年に、三条委員会であった司法試験管理委員会をいわゆる八条委員会である司法試験委員会に変えて、独立性を薄めてしまったのですか。

金田国務大臣 委員御指摘のとおり、司法試験法の改正によりまして、平成十六年の一月一日をもって司法試験管理委員会が司法試験委員会に改組をされております。

 法科大学院を中核的な教育機関といたします新たな法曹養成制度を整備することに伴いまして、法科大学院における教育と司法試験との有機的連携を確保するという観点から、それまでは法曹三者だけであった委員の構成を見直して学識経験者を加えることとしましたほか、所掌事務として、司法試験等の実施に関する重要事項についての調査審議及び大臣への意見具申を、いわゆるこれは審議会機能とでも言えるわけですが、これを加えることとしたものであります。

 そこで、新たに設置する司法試験委員会につきましては、このような審議会機能に着目して、国家行政組織法第八条の審議会として設置されたものであります。

山尾委員 私が申し上げたいのは、司法試験管理委員会の独立性を弱めて、法務大臣のいわゆる指揮監督下に置きながら、こういった質問を受けたときに答弁を避ける方便として独立性あるいは中立性ということを使うのはいかがなものかなというふうに思うわけです。

 そして、改めて、大臣、もう一回このウの文章を見ていただきたいんです。

 この文章を見ていただくと、よろしいですか、「憲法第九条についての政府の解釈によれば、」とありますね。これがもし政府に限らず一般論としての憲法解釈を問うている問題であれば、大臣の答弁は、もしかしたら通用する余地があるかもしれません。憲法解釈において、政府たる大臣の解釈を押しつけるのではなくて、司法試験考査委員、裁判官とか検察官とか弁護士さん、学識経験者から成る民間も含めた考査委員の憲法解釈、独立性、中立性を確保する、彼ら、彼女たちの判断を尊重する、こういう答弁は成り立ち得る余地が私もあると思います。

 でも、この文章は、政府の解釈を聞いているんですね。憲法九条が集団的自衛権の行使を禁じているか否かという大論点についての政府の解釈を聞いています。

 政府の解釈についてなので、政府の責任ある一員に聞かなければなりません。政府の一員としてこの司法試験を所管しているのは、まさに法務大臣たる金田大臣であります。したがって、答えていただきたいと思います。

 来年の司法試験で同じ問題が出たら、この文章はマルですか、バツですか。

金田国務大臣 ただいまの御指摘に対しましては、司法試験の問題作成、採点、これは司法試験考査委員に委ねられておるところであります。

 法務大臣としては、公表されている問題、正解の範囲を超えて司法試験の個々の問題、内容について言及することは差し控えたいと思います。

山尾委員 だんだん繰り返し、壊れたラジオのようになってくるわけなんですけれども、よく法務委員会で起きる現象なので、さらに頑張りたいと思いますが。

 そうしたら、受験生の立場に立ってみましょう。

 法務大臣は、これは司法試験委員会、あるいは考査委員の独立性に反するから答えられないと言う。では、受験生、国民、そして国民の代表たる私たちは、どこで、誰に、この質問についての答えをいただけるんでしょうか。司法試験委員会あるいは考査委員の方に、きちっとしたこういう公の場で答えていただく機会、どこにあるんでしょうか。

金田国務大臣 先ほども申し上げましたが、司法試験の問題作成、採点、これは司法試験考査委員に委ねられておりまして、法務大臣としては、公表されている問題、正解の範囲を超えて司法試験の個々の問題の内容等について言及することは差し控えさせていただきたいと思います。(発言する者あり)

山尾委員 質問に答えていません。(発言する者あり)

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 もう一度、山尾さん。

山尾委員 もう一度質問いたします。

 これは、過去問を公表しているわけですよね。受験生の皆さんは、その過去問を見て、やはり、自分が司法試験を受けるに当たって、参考にもし、勉強にもし、よすがにもするわけです。

 そこで、お尋ねします。

 平成十九年のこの問題について、当時はマルであったと。今これが出たら、あるいは来年これが出たら、マルですか、バツですかということについて、法務大臣は答えません。そうしたらば、受験生、国民は、いつ、誰に、どのようにお尋ねすればよろしいのですか。

金田国務大臣 先ほどの答えでは不十分だというお話がございましたので申し上げますと、司法試験の正解について、疑義が後に生じたりした場合というのがあろうかと思います。そういう場合には、司法試験委員会において司法試験考査委員に検討を依頼することになります。その結果、仮に司法試験考査委員が試験実施当時の正解として誤りであったと判断した場合には、正解を訂正することになるということもあり得る、こういうふうに承知をしております。

 したがって、司法試験委員会において司法試験考査委員に検討を依頼することとなると思います。

山尾委員 そうすると、今大臣は、当時の答えとして疑義が生じたらという答弁をされましたけれども、今私が問題にしているのは、来年同じ問題が出たら、これからと言ってもいいです、答えが変わっているんじゃないですか。それについて、この疑義について、これも司法試験委員会に検討を命じていただける、検討を要請していただける、そういうふうに承ってよろしいんですか。

金田国務大臣 お答えします。

 将来の問題につきましては、みずからその時点で考えていただく問題になろうかと思います。

山尾委員 ちょっと私、今のをそしゃくできないんですけれども。当時はマルだったと。そして法務大臣は、今度出たらマルかバツかは答えられないと。これだけ政府の責任で不安定な状態に置かれているリスクを、なぜ受験生が自分のリスクで引き受けなきゃいけないんですか。そのときに自分で考えろと。それはちょっと承服できないと私は思いますよ。

 大臣、言ったらいいんですよ。これは変わったんだから、政府の解釈。これは政府の統一見解だと思いますよ、変わったと。今の政府の見解では、この憲法九条について、集団的自衛権の行使が禁じられているというこの文章についての評価は変わったんですよ。当時は禁じられている、マルでした。今は、少なくとも一部禁じられていない、バツなんですよ。これは政府の統一見解だと思いますよ。大臣、これはおっしゃったらいかがですか。

金田国務大臣 先ほど御指摘のありました質問といいますか当時の試験問題につきまして、その中身につきましては、この法務委員会で私どもの方からお答えする話であるかどうか、私は、ほかの内容まで含めて、それはほかの委員会での……(山尾委員「どこでやるの」と呼ぶ)いや、内容について申し上げております。

 私は、その質問に出てくる九条の扱いについては、法務大臣は憲法の解釈を内閣を代表して申し上げる立場にないというのは御存じのとおりだというふうに思っております。そういう中で、先ほど申し上げております司法試験委員会の考査委員に、将来のことについては、その段階でお感じになるその部分を御相談いただくということを先ほど申し上げたんですが、その中身について申し上げれば、そういうふうに私は申し上げたいと思います。

山尾委員 大臣、憲法というのは法務省の所管でしょう。法務省のホームページに憲法の意義が書いてあるじゃないですか。日本国憲法は、自由で公正な社会を築き、支えていく上で重要な国家と個人あるいは個人相互の基本的なあり方を国民自身が定めたものであり、私たちにとっては身近でなければならないものですとか、法務省はいっぱい、憲法についてその意義を語っているじゃないですか。それは法務大臣が語っているということじゃないんですか。これは越権行為ですか。

金田国務大臣 私たちは、公務員として憲法を守る立場にあります。そして、憲法を遵守します。その中で、憲法の行政府としての一般的解釈、これについては内閣がお答えすることになりますが、その場合に、法務大臣は内閣を代表する立場にはないものであるということは御理解をいただきたい。

 そして、お尋ねの、法務省の所管事項と関係なく、法務省の所管を離れて憲法の意義とか規定のあり方を一般的に問う場合には、法務大臣としてはお答えをする立場にはない、このように考えております。

山尾委員 法務大臣しか答えられる立場にないのです。司法試験の問題の話をしています。

 そして、この司法試験の問題は、憲法九条が集団的自衛権の行使を禁じているか否かという、憲法の基本の大論点です。それを今問われたら、政府の見解として、マルなんですか、バツなんですか。これに答えられるのは法務大臣しかいないのです。だから聞いております。答えてください。

金田国務大臣 将来の質問の件について私から答弁することは不適切だと思います。

山尾委員 これまで、安保法制の議論の中で、岸田外務大臣も、安倍総理も、横畠法制局長官も、全員が口をそろえて、今回の安保法制には集団的自衛権の行使が含まれる、こういう答弁をしているわけです。その中で、法務大臣はそのことに答えないわけですね。

 では、この答えが変わった可能性があるのかないのか、これについて答えていただけませんか。

金田国務大臣 平和安全法制につきましては、内閣提出法案として成立をしたものであります。内閣の一員である法務大臣といたしまして、当然に合憲の法律であるという立場にあることは申し上げるまでもないところであります。

 もっとも、平和安全法制につきましては、法務省が所管するものではありません。その内容に立ち入って、憲法との適合性についてこれ以上の答弁をする立場にはないことを御理解いただきたいと思います。

山尾委員 結局、以前に出した正しい答えが変わった可能性があるやなしやについても答えない。でも、今の大臣の答弁を前提とすれば、あの成立した安保法制は当然合憲である、九条にも反していないと。その安保法制の中に集団的自衛権の行使が一部含まれていることは明白であります。

 したがって、大臣の答弁を前提とすれば、これは、現在の政府の見解によれば、まさに、集団的自衛権の行使は、現在、憲法の九条では禁じられていない、したがって、答えは変わったということを言っているのではないんですか。

金田国務大臣 先ほど私の方から答弁したとおりでありまして、それ以上ではありません。

山尾委員 これは答えるべきだと思いますよ。来年の司法試験に向けて勉強している受験生はどうしたらいいんでしょうか。誰に聞いたらいいんでしょうか。大臣以外に答える適格者がどこにいるんでしょうか。

 もう一つお話し申し上げます。今大臣は、将来のことには答えられないとおっしゃっておられます。それでは、もう一つ、私の方から疑義を提起したいと思います。実はこの第十三問、現在の政府答弁を前提にしたら、平成十九年時点でも正解はバツだった余地があるのではないですか。

 今から申し上げます。

 例えば、中谷大臣は、我が党の小西洋之議員からの質問に対してこのように答えています。

 小西さんがこのように質問している。「限定的な集団的自衛権を行使するということは、昭和四十七年政府見解のいわゆる基本的な論理一、二に現に含まれていると、法理として含まれている」、「昭和四十七年政府見解を作ったときに、作った当時から法理として含まれている、こういう理解でよろしいですか。」と中谷大臣に尋ねています。

 それに対して、中谷大臣は極めてシンプルに、明確にこう答えている。「これは、」「まさに基本的論理でございますので、含まれているということでございます。」と。昭和四十七年当時から集団的自衛権の行使を認める論理が九条に含まれている、こういうことを中谷大臣はおっしゃっております。

 つい最近、十月五日の予算委員会、我が党の舟山議員が同様のことを安倍総理に尋ねています。「基本的な論理として同盟国に対する外国からの武力攻撃も読める」んだと、四十七年解釈ですね、「そういった理解でよろしいですか。」と。総理もこれに対して同じく、「この基本論理の中にはこれは含まれているということでございます。」こう答弁なされています。

 もう一つ申し上げましょう。我が党の小西議員が、横畠法制局長官にこのように質問しています。ごめんなさい、これは紙をコピーすればよかったけれども。小西さんはこういうふうに質問しています。「同盟国、我が国でない他国に対する外国の武力攻撃ということもここに概念的に含まれるというふうに考え出したのは、横畠長官、あなたが初めての法制局長官ということでよろしいですね。」と。

 これに対して、横畠長官は大変おもしろい答弁をされている。「同様に考えていた者がいたかどうかは存じませんが、この昭和四十七年の政府見解そのものの組立てから、そのような解釈、理解ができるということでございます。」と。

 昭和四十七年の政府見解そのものからそのような解釈、理解ができる、集団的自衛権の一部行使が含まれていたと解釈、理解ができる、そして自分はそれに気づいた、同様に気づいていた者、考えていた者がいたかどうかは自分は存じない、こういう答弁であります。

 大臣、伺います。

 横畠長官の言う同様に考えていた者、同様に気づいていた者、実は四十七年見解の中に既に集団的自衛権の行使が一部含まれているんだと気づいていた者が受験生の中にいたら、この文章に対しての答えはバツになるんじゃありませんか。

金田国務大臣 先ほども申し上げたかと思うんですが、試験を実施しました平成十九年当時の正解として、御指摘の第十三問ウの記載は正しい旨を公表しております。それ以上の集団的自衛権の解釈につきましては、私としては答える立場にはありません。

山尾委員 これは大臣、安保法制のときの現政権のへ理屈を前提とすると、平成十九年の答えを撤回し、合格者を見直すしかないんですよ。この問題は二点なんですね。二点で人生が変わるんです。もう一回言いますけれども、六回落ちている私が言うんだから間違いありません。一生をかけているんです。

 もしこの答えを撤回しないというなら、あの安保法制の議論のときの政府のへ理屈を撤回するしかないんです。どっちかです。私は、もちろん求めるのは後者ですよ。平成十九年当時、あの四十七年見解の中に集団的自衛権の行使が一部含まれる、そんな解釈はなかったんだから、そして、今も真理としてはないのです。

 大臣、どっちか撤回しなきゃならない。どっちを撤回されますか。

金田国務大臣 先ほども申し上げましたが、平和安全法制については内閣提出法案として成立したものでございまして、内閣の一員である法務大臣として、法務省が所管するものでないことについて当然に答弁をする立場にはないことを御理解願いたいと思います。

 そして、試験を実施した平成十九年当時の正解として、御指摘の第十三問ウの記載は正しい旨を公表しております。それ以上の集団的自衛権の解釈につきましては、私は答える立場にないものと考えております。

山尾委員 最初に伺いました。平成十九年当時の正解として、マルだと考えていると。それに対して、私は今、疑義を提示いたしました。

 もしこれから先、何もしないというのであれば、今この場で大臣が、その疑義に対して論理的にそれを払拭できなければなりません。

 今この時点で、大臣の答弁で、実はあの時点から、今の政府の見解を前提とすれば、当時からバツだった余地があるのではないか、この疑義は誰がどう見ても払拭されておりません。したがって、大臣、残りの時間でこの疑義を払拭していただくか、あるいは、さっき大臣自身がおっしゃったように、疑義が生じたときは考査委員に検討を依頼すると。

 この問題について、大臣、検討を依頼するべきではありませんか。司法試験法の第十二条二項の中に、法務大臣の諮問に応じ、司法試験の実施に関する重要事項について調査審議をすること、委員会はこういう権能を有しております。大臣、委員会に諮問してください。いかがですか。

金田国務大臣 先ほども申し上げましたが、平成十九年当時の正解については答弁したとおりであります。(山尾委員「だめだ、だめだ、質問に答えていません。質問できません」と呼ぶ)

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 先ほど申し上げましたように、平成十九年当時の正解については答弁したとおりであって、疑義が生じているとは考えておりません。

 そして、一般論としてなんですが、司法試験の正解について後に疑義が生じた場合には、司法試験委員会において司法試験考査委員に検討を依頼することとなり、その結果、仮に司法試験考査委員が試験当時の正解として誤りであったと判断した場合には正解を訂正することになる、こういうふうに受けとめております。

山尾委員 大臣、今のは余りに不誠実だ。疑義が生じていないとよく言い切れますね。

 今まで大臣は、確かに、そんな疑いを考えたこともなかったと思いますよ。でも、それなりに私この場で、疑義が生じるに値するぐらいの質問内容はしたつもりです。疑義が生じていないとおっしゃるなら、払拭してください。

金田国務大臣 御指摘があります第十三問のウについては、疑義が生じていないというのは、これまで受験者等から公表した正解が誤っているなどの申し出はなかったものと承知をいたしております。

山尾委員 だから、今、私がこの場で、相当の根拠を持って疑義を申し上げています。それを受けて、今、疑義が生じたんだから、検討を命じてくださいと、当たり前のことを私はお願いをしているだけです。

 検討を命じてください。どうですか。

 とめてください、もうあと少ししかないんです。

鈴木委員長 今、準備していますから。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 委員会の中立性、公正性から、試験内容については法務大臣が意見を申し上げるべきものではない。そして、一般論として、疑義があるときは訂正を検討することになると思います。

山尾委員 今、伺います。

 私が今、疑義を訴えました。現時点で、法務大臣、疑義はあるんですか、ないんですか。後で検討させてくれ、そういうことなんですか。

 もしここで疑義が生じていないと突っぱねるんだったら、政府の統一見解と大臣の見解が違うことになりますよ。政府の統一見解は、もうあの当時から、昭和四十七年見解の中に既に集団的自衛権の行使を一部認めるというその考え方が含まれていたんだ、そういうことですから。

 政府統一見解を求めたいと思います。いかがですか、大臣。(発言する者あり)

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 疑義があるか否かについても、司法試験委員会が判断するものというふうに考えております。(山尾委員「いや、変わったじゃないですか」と呼ぶ)

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 お答えいたしますが、現時点では、司法試験委員会が疑義を抱いているとは承知をしておりません。

山尾委員 余りにも不誠実な答弁だと思います。私がこの場で、それなりの根拠をもって疑義を申し上げました。それに対して、大臣、委員会に検討を命じればよいではありませんか。

 そしてもう一つ。これは委員会と関係なく大臣にしか答えられないと思いますけれども、平成十九年当時、政府の見解としては、憲法九条の中に集団的自衛権の行使が既に一部認められていた、これが、今の安保法制の議論の前提とする、現政権の見解ではないですか。それに対して、大臣は違う内容の答弁をされています。だって疑義がないというんだから。当時にさかのぼって、今もマルだとおっしゃるんだから。しっかりこの点について、私は政府統一見解を求めたいと思います。大事なことです。

 平成十九年当時、集団的自衛権の一部行使が憲法九条の中に既に基本的な論理として認める余地があったのか、なかったのか。それについて政府統一見解を求めます。

 そして、これに連動する形で、平成十九年当時のこの問題の解答として、マルだったという解答に疑義が生じていますので、それに対してきちっと司法試験委員会に検討を命じることを強く求めます。

 理事会で協議していただきたいと思います。

鈴木委員長 この件につきましては、後日理事会で協議します。

金田国務大臣 先ほどから申し上げておるんですけれども、現時点では、司法試験委員会が疑義を抱いているとは承知しておりません。

 それから、もう一点。平和安全法制については、法務省が所管するものではありません。中身について申し上げております。その内容に立ち入って、この議論についてこれ以上の答弁をする立場にないことは御理解をいただきたい、このように思っております。

山尾委員 法務大臣も閣僚の一員ですから。そしてこれは、憲法九条が集団的自衛権の行使を認めているのかどうかという、まさに基本的かつ重要な事項ですから。

 そして、最後に伺いますけれども、現時点で疑義があるというふうに理解していない、司法試験委員会がそのように把握していない、そんなことをおっしゃいましたけれども、それを、しっかり疑義が生じたということを把握して委員会に命じるのは、まさに大臣の仕事です。委員会に伝えてください。いかがですか。

金田国務大臣 疑義につきましては、委員会において判断されるべきものと考えております。私が検討を直接命ずることは、委員会の中立性、公正性に影響を及ぼすおそれがあると思います。

 加えて、平和安全法制につきましては、内閣提出法案として成立をしたものであり、内閣の一員である法務大臣としては、当然に合憲の法律であるという立場にあることは以前申し上げたとおりでありますし、法務省は、その中身、平和安全法制について所管するものではなくて、その内容に立ち入ってこれ以上の答弁をする立場にないことを御理解いただきたいと思います。

山尾委員 これで終わりにします。きょうは時間が来ております。

 全く理解できないというか、私はこれを理解してはいけないと思うんですね。大臣、やはり、無理が通れば道理が引っ込むような、そういうことが起きる世の中で、法務大臣はしっかりと道理を体を張って守る立場にあると思います。そういう役割を果たしていただきたいというふうに思うんです。

 したがって、やはりこの憲法九条の問題について、今大臣がおっしゃることを前提にすると、疑義が生じていないとはっきりおっしゃったから、疑義が生じていないというんだったら、当時からそんなものは、集団的自衛権の一部行使は基本的な論理の中に含まれていないのだと、そうであれば、それは私はすばらしい答弁だと思う。今の政府のへ理屈から独立した、法務大臣の見識ある答弁だと思います。そういう趣旨だと受けとめてよろしいんですか。

金田国務大臣 私が申し上げてまいりましたのは、あくまで現時点で司法試験委員会が疑義を把握していないということを申し上げてきたのであります。

山尾委員 理事会でのしっかりとした検討と、大臣、続きをやっていきましょう。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 信州長野の井出庸生です。

 大臣、今の山尾委員の質疑なんですが、司法試験を受けたことのない私でも極めて明確な質疑だったと思います。

 内閣の一員、閣僚として、政府がこれまで答弁したことについてどうお考えになるのか。そしてまた、司法試験の中立性ということもあるかと思いますが、何よりも司法試験の問題の疑義、これは、その当時の司法試験受験生だけでなく、司法試験の過去の問題に疑義があって、それを現時点で把握していない、そうかわし続けることは、これから司法試験を受ける、今勉強している皆さんも、これが国会で議論になって、憲法解釈、政府解釈が変われば問題の答えは変わるのかなと。では、そのときにどこに問い合わせたらいいんだろうなと。

 総理大臣や横畠さんは政府見解だけを述べて、司法試験のことについては、恐らくお二方は語られることはないと思います、所管外だと思います。内閣の一員として、それから司法試験、大事な法務行政に係る、その両方を負っている金田法務大臣にしか解決できないから再三申し上げていることだと思いますが、大臣、それでもまだかわし続けるんですか。ちょっと答弁を求めます。

金田国務大臣 委員の御質問にお答えします。

 仮に法務大臣が司法試験の個々の問題内容等について所見を述べることになれば、司法試験考査委員が独立的、中立的な立場で問題作成等を行うという趣旨を損なうおそれがあります。

 したがって、法務大臣としては、公表されている問題及び正解の範囲を超えて司法試験の個々の問題内容等について所見を申し上げることは差し控えさせていただきます。

井出委員 山尾委員がここまで四十分近くにわたってしてきた議論というのは、大臣として司法試験について所見を述べることは今おっしゃられた、でも法務大臣、政府の一員としては少なくとも政府見解に答える義務はあると思いますし、そういうやりとりをずっとやってきて、山尾委員は、だったらその司法試験の委員会にきちっと検討するように申し上げたらどうかと、その大臣のお立場も十分に酌み取った上での御提案なんですけれども、そこまでまたかわされるとなると、そもそもそのいずれにも答えていないと言わざるを得ませんが、いかがですか。

金田国務大臣 私は先ほどから申し上げております。平和安全法制の内容について、この平和安全法制は法務省が所管するものではありません。その内容に立ち入って、憲法との適合性についてこれ以上の答弁をする立場にはないことを御理解願いたいと思います。

井出委員 所管ではないとはいえ、内閣の一員で、閣議にもお出になっていると思いますし。政府の理屈を言えば、昭和四十七年の政府見解から今の見解で来ているんだ、そういうことであります。だから、大臣が言いたくても言えない胸のうちもわからぬでもないんですけれども、でも、我々はそこも十分理解をして、山尾委員はそこも理解をして、解決の場として司法試験委員会に検討をしていただくのがよいのではないかと。これは極めて現実的なものだと思いますよ。

 違う答えをしないで、そのことについて検討が必要かどうか、きちっと答えていただきたいと思います。

金田国務大臣 現時点では、先ほども申し上げました、司法試験委員会が疑義を抱いているとは聞いておりません。そして、司法試験委員会において疑義を認めたら検討されることと思います。

 法務大臣としては、検討を命じることは委員会の独立性を損なうおそれがあると考えております。

井出委員 山尾委員のきょうの法務委員会の質問、それからさきの予算委員会の最後の一分間、あれがなければ、現時点で疑義は生じていないと言われても、それはそうだなと私も思いますが、十分な疑義を提示されたと思いますし、山尾委員の質疑を司法試験の委員の方が見ているかどうかわかりませんが、恐らく、きょうの質疑を受ければ何かしら間接的には伝わると思いますが。

 これは、当時の司法試験受験者だけの問題には決してとどまらないと思います。政府が大きく政府解釈を変える、変えておきながら変えたとは言わない、そういうことが出てきたときに、ではどうしたらいいんだろうと。ここで所管外だ何だとやりとりが平行線をたどることは、それは政府と野党の立場もあると思いますが、この問題はやはり受験生に対する影響、何よりも司法試験のあり方そのものが問われる大きな問題だと思います。その認識はおありですか。

金田国務大臣 御指摘の第十三問ウについて、当時のウについて、これまで受験者等から、公表した正解が誤っているという申し出はなかったものと聞いております。

井出委員 これまで受験者等からそういう申し出はなかったと。きょうの十一時以降からの質問で、その受験者等の等に山尾委員と私が入るかどうかわかりませんが、十分その申し出に近い疑義を提示させていただいております。

 これは、私が司法試験を受けたことのない人間のレベルに落とし込んで心配したとしても、やはり、将来、政府の政策決定、これまでの解釈変更があったときに、では、受験生は一体どこで勉強したらいいんだ。受験生だから、それは正解をとりたいですよ、きちっと、あらかじめ正解をとれるように勉強したいですよ。それに対してやはりきちっと応えていくために、これは象徴的な事例だと思いますよ。これをそのまま放置していたら、司法試験というのも何だか白だか黒だかはっきりしないんだな、そう思われてしまいますよ。大臣、いかがですか。

金田国務大臣 何度も申し上げているんですが、疑義については委員会において、委員会というのは先ほどから申し上げております司法試験委員会において判断されるべきものであります。

 私がこの委員会の場でその司法試験委員会の判断にかわって疑義を認めたり、論じたりするべきものではない、このように考えております。

井出委員 大臣が、旧大蔵省ですか、いらっしゃって、お若いときに司法試験を志すお気持ちが一瞬たりとも、もしかしたら司法試験にするか官僚になるかというような思いも、何と言ったって公のためにですから、あると思うんですけれども。

 きょうの議論で、山尾委員の指摘というものは、大臣のお立場で答弁書をいろいろ御検討いただいているのはわかるんですけれども、私はこれは、山尾委員と私、政党が違っても、山尾先生の言っていることは一定の筋が通っていると思いますけれども、そうじゃありませんか。

金田国務大臣 ただいまのお尋ねについては、山尾委員のお話に加えて、私の答弁もぜひ加味して御質問いただければありがたい、このように思っております。

井出委員 大変残念というか申しわけないんですが、やはり大臣の答弁が山尾委員の質問に正面からお答えをいただいていないと私は思わざるを得ないので、重ねてのお願いをしているんですが。

 では、政府の政策と司法試験と、これからどうしていくんですか。政府の政策、大きな変更があった、解釈が変わった、そういうときに、司法試験との整合性を一体どうやってとっていったらいいのか、受験生は何を頼りに勉強したらいいのか。これは本当に司法試験の根幹にかかわりますよ。

 法務大臣のお立場でいろいろ述べられておりますけれども、司法試験の根幹に対して責任をとれるのは法務大臣なんじゃないでしょうか、どうでしょうか。

金田国務大臣 試験の性質上、事後の事情の変更によって試験実施当時の正解が変更されるものではない、このように考えております。よろしいですね。

井出委員 今、当時の正解が事後の事情の変更によって変わることはないとおっしゃったんですが、事後の事情の変更というものがあったとお認めになったということでよろしいんでしょうか。

金田国務大臣 一般論として申し上げているのであって、試験というものはそういうものではないでしょうか。その時点での、試験実施当時の正解、そういうものを問題にするものであろうかと私は思います。

井出委員 当時の正解を大事にするというのは、確かに司法試験に限らず検討されるべきことだと思うんですが、きょう問われているのは、まず、金田大臣が今おっしゃった事後の事情の変更なんですけれども、この問題について、事後の事情の変更、つまり政府が政府見解を変えた、そのことをお認めになった上で、では当時の問題、疑義があるかさかのぼるか、今大臣おっしゃるように、いや、でも当時のことだから正解とすべきだとおっしゃるか、その議論が一つです。

 あと、そもそも山尾先生が申し上げてきたのは、この政府見解は昭和四十七年からのものなんでしょう、事後の変更などないのでしょうと。ですから、事後の事情の変更のあったなしや、そもそもないんじゃないかと。そのことについていずれもお答えをいただいておりませんが、改めてお答えいただきたいと思います。

金田国務大臣 ただいまの第一点目は、そこまで私は申し上げておりません。

 そして、第二点目については、何度も申し上げておりますが、平和安全法制の議論、中身の議論、そういうものについては法務省が所管するものではなく、その内容に立ち入って、憲法との整合性、適合性について、これ以上の答弁をする立場にはないということを申し上げております。

 以上です。

井出委員 山尾委員の方からは、理事会での協議ということも最後にお話がありましたし、これ以上答弁はというお話でございますが、私からは、司法試験の今後のあり方、司法試験……(発言する者あり)質問の問題の出し方ですか。

 でも、やはり受験生に対してどう応えていくかという大きい、平和安全法制が国会の中で与党、野党で意見が異なってきた、それは世の中を巻き込んで広がってきたところも多くあろうかと思いますけれども、この問題は司法試験の受験生という特定個別の皆さんにかかわる重大な問題でありますので、このことはしっかりと今後の議論を続けて、きちっとした整理、見解というものを求めていきたいと思います。

 では、私の質問の方に入りたいんですが、ちょっと、あと五分ぐらいしかないのかな。

 まず、きょうお配りした資料を紹介するところにとどめたいと思いますが、先日に続いて、結婚された方の旧姓の使用でございます。

 前回の議論で、裁判官も旧姓の使用が認められているけれども判決文の起草はできない、果たしてこれで裁判官の旧姓使用は認めていると言っていいのかという問題を提起し、きょうは地方公務員についてちょっと伺いたいのですが。

 先日総務省が来てくれまして、国家公務員の旧姓使用については平成十三年に通知を出していると。その後、総務省に聞いたら、その通知は各都道府県には伝わって、都道府県から各市町村に伝えていただくようお願いをしてありますというのがお答えでした。

 私の地元選挙区、十七の市町村がありまして、そこにいろいろと聞いてみたんですが、それがきょうお配りしている結果でございまして、ずらっと、読んでいただければわかるんですが、結構、旧姓使用の明文規定がないですとか、旧姓で働くという発想がなかったですとか、半数以上の市町村は、発想がない、明文規定がないというようなことを、私が電話でいろいろお話を聞いたときに答えておりました。

 きょう特に私が問題にしたいのは、この中ほどにR町というところ。ここは、「旧姓で働くという発想がなかった」「申し出が実際に起こった場合に検討したい。」これは役場の職員の話。その下、教育委員会に、では、学校の先生はどうですかと。ここで、職員の旧姓使用について、取り扱っているというところまでは答えたんですけれども、「本人の申請にて期限付きで認めている。」と。「(年度内)」と書いてあるんです。

 これはどういうことかと申しますと、先生が結婚されて名字が変わる、ただ、その先生は例えば学校の何か、担任をやっている、そういうときにちょっと生徒が困っちゃう、困惑したらいけないから年度内は旧姓でいてくれ、しかるべきことが済んだら戸籍名に変えてくれと。

 旧姓使用というのは、私の地元長野県においては、個人の尊重と働きやすい職場環境のためにということで、長野県が通知をつくって取り組んでいる。それは政府も大いに結構だと言っていただけると思うんですけれども、学校の先生が、期限つきは旧姓でいいよ、だけれども年度がかわったらやめてよと。そうすると、では、例えば、私は結婚した人と同じ姓を名乗りたいということがあっても、ちょっと待ってくれ、年度内は旧姓にしておいてくれ、そんなことも起こりかねない。

 これは本当に、旧姓使用が広く認められるようになってきた、実情としてそう認められていて、旧姓使用というものはいいものだと受けとめていいのかなと、大変疑問を持つ一つの事例なんですが、大臣から見解をいただきたいと思います。

金田国務大臣 まず、地方公務員についてでございますが、これは法務省の所管外でございます。したがって、お答えは差し控えたいと思います。

 一方で、一般論として、旧姓の使用が認められないために女性が強いられる社会生活上の不便というものを解消していく上で、旧姓の通称使用が認められる場面というのが広がっていくことは望ましいことではないかなというふうには考えております。

井出委員 私も最近までは大臣と同じ考えで、広がっていくことが望ましいと思っていたんですが、旧姓の使用というのは、前にも申し上げましたとおり御本人の選択によるものですから、広がっていって使用者がふえればいいかというと、そうでもないと思うんですね、希望しない人がいると思いますので。逆に、数は少ないんだけれども、選択をしたいという人が妨げられるような旧姓使用の広がり方であっては、それは逆にまた大きな問題があるのではないか。

 ですから、きょうお尋ねしたいのはやはりこの委員会で議論すべきと我々がお願いしてきている選択的夫婦別氏の問題なんですけれども、反対している方は今までどおりやっていただければいいし、賛成している方だって、一つの氏を名乗りたいという人は多数いるかもしれないんですけれども。使う人は本当に少ないかもしれない。今、女性のうち九五%は夫の氏を名乗るというような状況があると聞いています。選択的夫婦別氏が法制化されたらもっと減るかもしれないんですけれども、それでもその制度が担保されているということが、一つこの問題については大事なんじゃないかな。

 旧姓使用で何とか耐えしのいでいくのか、人数は少なくなっても構わないけれどもきちっとそうした個人のための制度をするのか、そういう論点から見解をいただければと思います。

金田国務大臣 ただいまのようなお話を伺っておりまして、貴重な委員の御意見をいただいておるなという思いで聞いておりました。旧姓使用についてこういう議論をさせていただくのも大事なことである、このように考えております。

 そして、選択的夫婦別氏制度の法制化についての考え方であれば、これは長い間さまざまな御意見が国民の間でも出てきておると思うんです。単に婚姻時の氏の選択にとどまらず、夫婦の間に生まれてきます子の氏の問題を含めて、やはり我が国の家族のあり方に深くかかわる問題である、このように受けとめておりまして、この問題につきましては、国民的な議論の動向を踏まえながら、慎重に対応していく必要があるのではないか、このように考えております。

井出委員 次回は、これにかかわるさまざまな判決文を検討しながら、私も慎重に議論を続けたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民進党の逢坂誠二でございます。

 きょうの法務委員会の質疑、やりとりは非常に緊張感のあるやりとりで、特に、枝野委員が大臣の所信を読んで、法律的な用語、文言の使い方というのはいかに厳格にせねばならないかということを非常に強く勉強させてもらいました。あるいは、法制度というものも、しっかり過去も将来も見据えてきちっとした対応をしておかないと、思わぬほころびが出てしまい、それが取り繕うことができないようなことになるおそれもあるということも感じさせてもらいました。

 私は残念ながら法律を大学で専門的に勉強した人間ではありません。しかしながら、理科系の学生で、いわゆる科学的思考といいましょうか、これについては随分と自分なりにも勉強したつもりでおりますけれども、法律の立場を離れて科学的思考という観点から見ても、きょうの先ほどの山尾委員とのやりとりは完全に議論が食い違っている、論理が破綻しているというふうに思わざるを得ないのであります。

 それで、大臣に、私からも先ほどのことを受けて御質問させていただきますけれども、この間の国会議論によって、昭和四十七年以降、我が国においては一部といえども集団的自衛権の行使というものは認められていたんだということでよろしいですよね。

金田国務大臣 委員の御質問にお答えしますが、通告のない話題に入りましたので、先ほどの議論も思い起こしながら答弁させていただきます。

 平和安全法制の中身の議論を今御指摘になりました。前もお話し申し上げましたが、法務省が所管しているものではありません。その内容に立ち入って、そして憲法との適合性等についてこれ以上の答弁をする立場にはありませんので、その点は御理解を願いたいと思います。

逢坂委員 大臣、私は、平和安全法制の話を聞いているのではありません。そのことは一言も申し上げておりません。

 ただ、この間の国会議論の中で、昭和四十七年以降、日本においては今の現行憲法九条のもとにおいても集団的自衛権が一部認められている、そう読み取れるんだ、それに気づいた者がいたかいないかはわからないけれどもというようなことも法制局長官が言っている、そのことを問うていて、それは政府の見解としてこの間出されているというふうに私は認識をしておりますので、大臣もそのように認識しておられますねという確認の質問であります。平和安全法制がどうこうという問題ではありません。

金田国務大臣 その点を前提にしますと、平和安全法制と先ほど申し上げましたが、集団的自衛権の話になってきますと、これも法務省が所管するものではありません。その内容に立ち入ってこれ以上の答弁をする立場にないことをぜひ御理解いただきたいと思います。

逢坂委員 集団的自衛権は法務省の所管ではない、法務省の所管ではないから答えられないんだという答弁も、それはこの場しのぎとしては私はあり得ると思います。そこで私も矛をおさめるということもあり得るかと思いますが、少なくとも大臣は、憲法も所管し、内閣の一員であります。そして、この間、日本じゅうを巻き込んで大きな議論が起こった問題であります。それについて、まさに法の元締めである大臣が答えられない、これは法治国家の法務大臣としてあり得べき姿なんでしょうか。

金田国務大臣 集団的自衛権の件についても憲法の件についても、法務大臣は内閣の一員として内閣の立場と同一であります。したがいまして、内閣を代表する立場で法務大臣がお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

逢坂委員 私が問うているのは、内閣を代表して答えてくれと言っているのではありません。法務大臣として、もしこの間の内閣の見解と同じであるというのであれば、同じであるというふうに言っていただければ、それで済むことなんです。

 昭和四十七年以降、集団的自衛権は現行の憲法九条下においても、一部といえども読み取れるものであるんだというのが、多分、私の理解する政府の見解であります。それと同じなのですかということを聞いているだけです。

金田国務大臣 ただいまの問いに対しましては、内閣と同一の立場であります。

逢坂委員 私は、多分そう言わざるを得ないのだろうと思います、内閣ではこの間そう言い続けたわけですから。ただし、そうなってくると疑義が生ずるものがあるというのが先ほど来の議論なんですね。先ほど来の議論です。

 そうなると、先ほど山尾委員が指摘をした平成十九年の司法試験、この問題というのは一体どうなるんでしょうか。先ほど大臣は、これも明確に答弁されました。平成十九年の司法試験の問いの十三問のウ、これについては正解であるというふうにおっしゃったわけですね。それではそごが生ずるのではないですか、だから疑義がありますよということを山尾委員は繰り返し繰り返し言っているわけであります。

 もう一回読ませていただきますと、「憲法第九条についての政府の解釈によれば、同条によって集団的自衛権の行使が禁じられており、」こういう設問になっていて、これはマルですか、バツですかということを聞いたわけです。そうしたら、大臣は、これについては明らかにマルですというふうにおっしゃったわけです。

 ところが、政府の見解では、昭和四十七年以降、現行憲法九条下において集団的自衛権の行使容認は読み取れるんだというのが、四十七年以降のずっとの見解であるというふうに言っているわけです。これは、法律を知らない私が聞いても、あれ、これはおかしくないですかと。だから疑義があるということを言っているわけです。

 この二つに、大臣、疑義はないんでしょうか。

金田国務大臣 試験を実施しました平成十九年、当時の正解として、今おっしゃられたように、御指摘の第十三問、ウの記載は正しい旨を公表しておるところであります。

 それ以上の集団的自衛権の解釈につきましては、先ほどから申し上げておりますとおり、答える立場にはありません。

逢坂委員 大臣がそういう答弁をされるので、疑義があるんですよ。

 私は、先ほど大臣が答弁されたように、平成十九年の司法試験以降、事後の事情の変更によって何らかの変更があるのだとするならば、十九年の答えというのは変わらないと言ってもいいと思うんですよ。

 だけれども、四十七年以降、解釈は変わっていないというのが政府の統一見解でありますから、であるにもかかわらず、それでは、十九年のこの司法試験の問いが正解、マルということでいいんですか、ここに疑義は生じないんですかということなんです。

 四十七年以降ずっと、集団的自衛権の行使容認は一部といえども読み取れるんだ、これが政府の統一見解。ところが、十九年の司法試験は、政府の解釈によれば同条によって集団的自衛権の行使が禁じられている、これは大臣は正解だとおっしゃっている。単純な話なんですよ。

 これは、なぜ疑義が生じないんでしょうかね、これで。

金田国務大臣 先ほども申し上げましたが、疑義につきましては司法試験委員会が判断をすることであります。そして、この司法試験委員会は中立であるべきであります。したがって、法務大臣が試験内容につきまして委員会に検討を命じるなど意見を述べることは、中立性、公平性から適切ではないと考えております。

逢坂委員 疑義をどうするかということを司法試験委員会が決めるんだ、認めるんだということについては、私も承知いたします。最終的にはそこが公平中立な立場で判断をしなければならないというふうに思います。

 私が聞いているのはそうではないんです。単純な話なんです。

 四十七年から日本においては、平たく言うならば、一部といえども集団的自衛権なるものは認められていたんだという政府の統一見解。ところが、十九年の司法試験では、現行憲法下では政府の解釈によれば集団的自衛権は認められないといっている。単純にこの二つを比較したら不整合、不突合になるんではないですか、そのことについて大臣はいかがお考えですかと聞いているだけなんです。これは法の解釈でも何でもないんです。法の解釈でも何でもない。ただ私が今言ったことを聞いて、この二つにはそごがございませんかと言っているんです。

 それについてもお答えいただけないんだったら、これは議論になりませんよ。

金田国務大臣 先ほども申し上げました。

 法務大臣としては、試験の内容とその試験については、司法試験委員会に中立の立場であることを前提に委ねてあるわけであります。そういう中で委員会に検討を命じるということは、意見を述べることは、中立性、公平性の観点から適切でないと考えております。

逢坂委員 大臣、私の話をよく聞いていただきたいんです。私は委員会に意見を述べてくれとかということは一言も申しておりません。事実を二つ並べただけなんです。

 昭和四十七年以降、日本の国においては憲法九条下においても一部といえども集団的自衛権を読み取ることができたんだ、だから、この間解釈の変更はないんだという事実。片や一方で、大臣もおっしゃった、平成十九年の司法試験において、集団的自衛権の行使は認められないんだというふうに言っているのが正解であるという事実。この二つの事実は不突合ではありませんかと私は聞いているだけなんです。司法試験委員会がどうとか、そういうことではないんです。

金田国務大臣 何度もお答えいたしております。

 平和安全法制あるいは集団的自衛権につきましては、平和安全法制の方を申し上げれば、これは集団的自衛権の考え方についても当然にあるわけですが、内閣の提出法案として成立したものであって、私、法務大臣は内閣の一員として、当然に合憲の法律であるという立場にあることは申し上げるまでもないわけであります。

 そして、平和安全法制も集団的自衛権も法務省が所管する事項ではありませんので、その内容に立ち入ってこれ以上の答弁をする立場にはないことを御理解願いたいと思います。

逢坂委員 大臣、本当にその答弁でよろしいですか。これから先、法務委員会で議論するときに、平和安全法制そのものを直接は扱わないということは場合によってはあるかもしれません。だがしかし、自分の所管以外の事項で、集団的自衛権についても今後答えられない、そんなことでこの委員会が回ると思いますか。集団的自衛権について所管以外だから答えられない、それで本当に日本の法律をつかさどるトップとして役目が果たせると思いますか。

金田国務大臣 先ほどから申し上げております。

 内閣提出法案として成立した法制については、内閣の一員である法務大臣として当然に合憲の法律であるという立場にあることは申し上げるまでもないところであります。

 加えて、法務省が所管するものでない点については、その内容に立ち入ってこれ以上の答弁をする立場に私がないことを御理解願いたいと思います。

逢坂委員 非常に残念なんですね。私は平和安全法制のことを聞いているわけでもありません。司法試験の中身に立ち入って、司法試験委員会に何だかんだと言ってくれということを言っているわけでもありません。

 二つの事実を並べただけです。昭和四十七年以降、現行憲法九条下において、一部といえども集団的自衛権の行使は読み取れるんだという政府の統一見解という事実。そして、平成十九年の司法試験において、集団的自衛権の行使容認は、現行憲法下において、政府の見解によればそれは認められないんだということは正しいとする事実。この二つの事実にそご、食い違いはございませんかということを聞いているだけなんですよ。

 それなのに、平和安全法制がどうとか所管外であるとか、これぐらいも答えられないんだったら、こんなもの議論になんかなりませんよ。

 この二つに食い違いがないかどうかだけお答えいただければ十分です。

金田国務大臣 何度もお答えして恐縮でございますが、集団的自衛権そして平和安全法制については、内閣の一員である法務大臣として、当然に内閣と同一の立場にあることは申し上げるまでもありません。

 そして、しかしながら、法務省が所管でない内容についてはこれ以上の答弁をする立場にないことを、今まで申し上げたこと以上のことを答弁することは、私としては申し上げることはできないことを、ぜひとも理解していただきたいと思います。

逢坂委員 大臣、それでは、これからも所管でないことについては答えない、そういう姿勢をお持ちになるという理解でよろしいでしょうか。

金田国務大臣 私が申し上げたいのは、法務大臣として所管事項についてはきちっと答えてまいりたい、このように思っております。

逢坂委員 集団的自衛権の行使、これは憲法にかかわる問題であります。大臣の所管の中に憲法も入っているかというふうに認識はしておりますけれども、集団的自衛権の行使、憲法に関連して一言も答えられない根拠を述べてください。

金田国務大臣 今まで申し上げてまいりましたことからおわかりのように、憲法の一般的解釈については私の所管事項ではありません。

逢坂委員 きょうの法務委員会、私は非常に重要な転機になると思います。私どももこれまでずっと疑問に思っていたことが一気に噴き出したような感じがいたします。無理をして後づけで、解釈が変わっていないとか、本当は解釈を変えたのにそういうふうに言っているほころびが一気に噴き出たような気がします。

 きょうは、ほかの質問もする予定でしたけれども、残念ながらできませんでした。お集まりいただいた事務方の皆さんにはおわび申し上げたいと思いますけれども、法治国家日本として、この問題は私は大変重要な問題だと思いますので、これからも丁寧に、激高することなく、優しく質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

鈴木委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 さきの通常国会において成立したヘイトスピーチ解消法について、まず質問をいたします。

 こちらの本は、「ヘイトスピーチ解消法 成立の経緯と基本的な考え方」というものでございまして、参議院法務委員会の皆さんの御尽力で出版をされました。もちろん、衆議院でも当委員会で質疑が行われまして、それぞれの委員の皆さんの質疑も紹介をされております。この一冊で本当にしっかりとわかることのできる、大事な本だと思います。

 十月十四日の所信表明におきまして、金田法務大臣は、「さきの通常国会で成立しました本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律の趣旨を踏まえ、関係機関とも連携しながら、人権啓発活動等の施策に適切に取り組んでまいります。」とおっしゃいました。

 ヘイトスピーチを根絶していくために、金田法務大臣の御決意を伺いたいと思います。

金田国務大臣 委員ただいま御指摘になりましたヘイトスピーチの解消についてお答えを申し上げます。

 特定の民族や国籍の人々を排斥するような差別的言動はあってはならないもの、このように受けとめております。その重みを込めたヘイトスピーチの解消に向けた法律が六月三日に施行されたわけであります。

 これを踏まえまして、法務省の人権擁護機関では、ヘイトスピーチは許されないこと、そして、このできました法律が施行されたことをあわせて国民一般に向けて周知、広報をしておりますし、このほか、相談体制の整備、啓発活動など、その解消に向けた取り組みをより一層推進していきたい、このように考えております。

    〔委員長退席、古川(禎)委員長代理着席〕

畑野委員 金田大臣からもお話がございました。

 これまでヘイトデモを繰り返してきた排外主義的団体が法案成立に挑戦するかのように告知した六月五日の川崎市川崎区での日本の浄化デモに対して、ヘイトスピーチ解消法の趣旨を踏まえて、川崎市が公園使用許可を認めず、横浜地裁川崎支部が、人格権の侵害として、在日コリアンの集住地区、川崎区桜本に向かうヘイトデモを禁ずる仮処分決定を行いました。それでも、排外主義的団体は、川崎市内で場所を変えて、次は中原区で強行しようとしていたところ、多くの市民が抗議する中で、ヘイトデモは中止になりました。

 警察は、デモを許可はしましたが、抗議に集まった市民に対して排除することはありませんでしたし、法務省も、「ヘイトスピーチ、許さない。」と広告宣伝車も用いてヘイトデモ現場周辺で啓発活動を行いました。

 きょうのお手元の資料、これは、その当日、六月五日に法務省が出された大型街頭ビジョン、JR川崎駅、そして、川崎市平和館前の広告宣伝車ということでございます。費用の関係で一日だけだったということでありますけれども、そういう取り組みもしていただいたんです。

 私も、ヘイトデモ告知日が法施行直後だったということで、法の趣旨を伝えてヘイトデモを何とかとめさせたいと、川崎警察署、中原警察署にも申し入れに伺いました。当日も、現地に行きまして、ヘイトデモ中止の呼びかけを市民の皆さんと一緒に行いました。ヘイトスピーチ解消法が成立して、それが根拠となって、司法、行政、地方自治体が動いたわけです。

 ヘイトデモ中止直後には、参議院法務委員会で参考人として勇気を持って被害の実情を訴え、共生社会実現の先頭に立ってこられた在日三世の崔江以子さんが、十一月、一月のヘイトデモで受けた絶望がきょう皆さんと一緒に希望で上書きされましたと報告されました。ヘイトデモ主催者に連絡先を記した手紙を手渡したと述べて、対話をもって和解の地平に立って、ヘイトスピーチをとめていただきたいと呼びかけたことに本当に私は涙が出る思いでした。

 本法は大きな一歩ですが、終着点ではありません。ヘイトスピーチを根絶するために、一層国会でも力を尽くす必要があります。

 お配りしている資料の二枚目をごらんください。

 そうやって勇気を持って訴えておられる崔江以子さんに対して、ユーチューブやツイッターなどインターネットでの被害が後を絶たず、けさの検索数では、ヤフーで五十四万三千件、動画は一万四千四百件にも上っております。

 ごらんいただきますと、顔写真入りで、「嫌なら即刻出てけ」、名前を書いて、「「私たちは、朝鮮人が一人残らず出て行くまで、じわじわと真綿で首を絞めてやる」と言われている!わかってるじゃないか」、こういう卑劣な書き込みが行われております。それだけではありません。崔さんの子供さんにも被害が及んでいるわけです。

 卑劣な書き込みは、インターネットを通じて今世界じゅうに発信されるわけですから、どんなに傷つき被害を受けているのか、そのことを思うと私も胸が苦しくなります。

 伺いたいんですけれども、きょう崔江以子さんも傍聴に来られております。法が施行され、ヘイトデモも中止になり、希望を持ったのもつかの間、また被害に遭ってどん底に突き落とされる、こういう事態に対して、どう対処していくんですか。このようなことを放置していいわけがないではありませんか。いかがですか。

    〔古川(禎)委員長代理退席、委員長着席〕

萩本政府参考人 個別の事案についてはお答えを差し控えますけれども、委員御指摘のとおり、インターネットでは情報が容易に拡散すること、一旦拡散しますとその消去は極めて困難であることなどから、インターネット上における個人のプライバシー侵害、名誉毀損などは被害が重大となるおそれが高く、人権擁護上看過できない問題と認識しております。

 法務省の人権擁護機関におきましては、個人に対するインターネット上の誹謗中傷などで被害を受けたという御相談を受けた場合には、人権侵犯事件として立件して調査を行い、その結果、プライバシー侵害や名誉毀損といった人権侵害に該当すると認められるときは法務局がその情報の削除をプロバイダー等に要請するなど、適切な対応に努めているところでございます。

畑野委員 実は、このヘイトスピーチ解消法に係る本の中で、日本から出ていけという言動が、第二条で言っている「地域社会から排除すること」に該当するかどうかというクエスチョンがありまして、それに対して、法案の提案者、発議者は、当然それも入ってくると答弁しているんですね。嫌なら即刻出ていけ、これは明白なヘイトスピーチですね。どうですか。

萩本政府参考人 個別の書き込みなどがいわゆるヘイトスピーチに当たるかどうかにつきましては、その書き込みあるいは発言がされました状況、前後の文脈などによって当然判断されるべきことになりますので、ちょっと一概に、お答えは差し控えたいと思います。

畑野委員 立法の趣旨はそういうことですから、一般的な人権侵害ではなくて、ヘイトスピーチを解消するという法律をつくったわけですから、その立場でしっかりやっていくことが必要だと思うんです。

 それで、伺いますけれども、この崔さんのインターネットでの被害に関して、本当に苦しい、助けてほしいという訴えなんです。附帯決議の中で、「インターネットを通じて行われる本邦外出身者等に対する不当な差別的言動を助長し、又は誘発する行為の解消に向けた取組に関する施策を実施すること。」が盛り込まれております。

 法務省、少しお話しになりましたが、法務省にももう少し詳しく伺いたいのと、あわせて総務省に伺います。どのような施策や対策を附帯決議に基づいて行われているんでしょうか。

巻口政府参考人 ヘイトスピーチを含むインターネット上の違法有害情報への対応といたしましては、民間事業者による自主的な対応を促進することを基本として取り組んできたところでございます。

 総務省としましては、本年六月に施行されましたヘイトスピーチ対策法の趣旨を踏まえ、法務省などと連携しながら普及啓発を行うなどを通じまして、プロバイダー等によるインターネット上のヘイトスピーチの解消に向けた取り組みを促してまいりたいと思っております。

畑野委員 大臣にもう一回お尋ねしたいんですけれども、本当に苦しんでいる方の訴えを、資料を含めて御紹介させていただきました。現実に被害がある、そして、そこに希望としてヘイトスピーチ解消法が施行された。ですから、本当にこれを解消するという立場で具体的に進めていただきたいと思うんです。そのことを、被害に遭われている方に、大丈夫だよ、国がしっかりやりますよ、法務大臣がその先頭に立って積極的に行動を起こしますよという御決意をぜひお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

金田国務大臣 ただいま畑野委員から具体的に説得力を持って御指摘があったことは、本当に私たちも重く受けとめて、このヘイトスピーチの解消に向けた法律が施行されたことを踏まえて、しっかりとその取り組みを、相談体制の整備とかあるいは啓発活動など、一層頑張っていきたいな、こういう思いを持ちました。

畑野委員 金田大臣、ぜひお願いいたします。

 ヘイトスピーチ解消法を根拠にしてできることは、まだまだこれからたくさん出てくるわけです。ですので、ヘイトスピーチを根絶するという法の趣旨に基づいて、国としても確固とした姿勢を示しながら、より実効性のあるものにしていただきたいということを重ねて要望してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

 続きまして、司法修習生のことについて質問いたします。

 司法修習手当の創設についての御要望が出されております。経済的な支援ということがこの間議論されてきたと思います。

 何よりも、二〇一五年の六月三十日に、法曹養成制度改革推進会議において、法務省は、最高裁判所等との連携協力のもと、司法修習生に対する経済的支援のあり方を検討するという方針を決定いたしました。

 そして、ことしの二〇一六年六月二日には、閣議決定、いわゆる骨太の方針で、司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実強化を推進すると言われ、さらに、八月二日の閣議決定、未来への投資を実現する経済対策では、「司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等の推進」と、この問題に取り組むことを決定しております。

 推進会議決定から既に一年以上たっているわけでして、司法修習生への経済的支援についてどのような検討がなされているのか、金田法務大臣に伺います。具体的にどのように推進していくのか、その時期は一体どうなのか、あわせて大臣の御認識を伺います。

金田国務大臣 法務省といたしましては、法曹の経済状況調査といったさまざまな調査を実施しております。と同時に、法曹養成制度改革連絡協議会といった場を通じて、必要な連絡や御相談をしておるわけであります。

 ただいま御指摘のありました、例えば骨太の方針、あるいは経済対策、あるいは法曹養成制度改革推進会議決定に基づきまして、そしてまた言及されてきたことを踏まえて、最高裁とも連携協力をしながら引き続き検討をしていきたい、このように考えている次第であります。

 ただ、司法修習生に対します経済的な支援のあり方というものは、制度改革推進会議決定に掲げられた事情を踏まえながら検討すべきというところがございますので、現時点において、一定の結論を出す時期についてお答えを申し上げることは極めて困難であるという状況も御理解をいただきたい、こう思っております。

畑野委員 本当に、一刻も早くという声が上がっているんです。ですからこういう質問をさせていただいたんです。

 十月十一日に、院内で、修習手当の創設を求める院内意見交換会が開催されました。代理出席を含めて、国会議員百人以上も参加をしております。私も出席して、発言をさせていただきました。

 その中で、司法修習生に対する給費制の復活を求めるビギナーズ・ネットの若者から、次のような発言がありました。それにつきましては、お手元の資料の中に、三枚目は緑のカラーのですが、先ほど言った、国のこの間の経緯ですが、その次の四枚目です、ごらんください。

 左の方、今年度司法試験に合格した男性は、八年かけて勉強し、司法試験に受かったものの、大学、法科大学院と奨学金を借り、七百万円近くの借金があります、さらに貸与金を加えると、借金は一千万円近くになります、一千万円という借金を返済できるのか、頭の中では既に借金の返済でいっぱいですと述べました。

 また、右側の方ですが、法学部三年生の女性は、朝四時に起きてアルバイトをしながら勉強していたが、精神的に余裕をなくし、勉強に集中できなくなってしまいました、今ある借金ですら返済できるのかが正直不安です、私を初め法律家を目指す大学生はさまざまな不安を抱えていますと述べました。

 このように、法曹志望者が経済的な不安を抱えざるを得ない制度では法曹界に有為な人材が集まらない、国としても大きな損失であると考えるわけです。

 金田法務大臣に伺いたいのですが、このような集会が開催されている、そして、経済的不安を訴える当事者の方がいらっしゃる、きょうはビギナーズ・ネットの方は水色のTシャツを着てこられて、大臣もいろいろとお会いになられていると思いますけれども、こうした当事者の声、どのように受けとめられていらっしゃいますでしょうか。

金田国務大臣 委員御指摘のように、司法修習生の経済的負担について、さまざまな御意見、そして具体的な御意見があることは承知をしております。そうした意見を、ただいまも御披露いただきましたが、真摯に受けとめているところでありますし、そういう状況を御理解いただきたいと思います。

畑野委員 意見を聞いていらっしゃる、そして、真摯に受けとめて対応していこうというふうな御答弁だったと思います。

 最後に伺いたいのは、司法試験の志願者が年々減少している、それから、実際に司法試験に合格したのに司法修習生を断念する若者がふえているということです。

 そもそも、日本国憲法施行と同時に給費制を導入したというのはなぜかというと、基本的人権の擁護、正義の実現の役割を担う法曹養成のために必要不可欠な制度であると判断をされて、だから法曹を国家が養成し、給与を支払うということだったわけです。

 修習手当の創設ということを皆さん求めていらっしゃいます。これは喫緊の課題だと思います。この修習手当を直ちに実現して、次の修習生から行うべきではないか、皆さんはそのことを強く求めていらっしゃるわけですけれども、金田大臣、いかがでしょうか。

金田国務大臣 畑野先生は非常に熱いお心を持って、司法修習生の経済的支援を直ちにという御指摘でございます。

 司法修習生の経済的支援のあり方を、現在、法曹養成制度改革推進会議決定に掲げられたさまざまな事情を踏まえながら検討していくことが大事だと思っておりますので、そのあり方についても種々の意見もございますし、そうした内容が考えられると思いますので、現時点で特定の方向性を示すということは困難である。

 しかしながら、法務省としては、その会議決定に基づいて、先ほど御指摘の骨太の方針や経済対策も踏まえて、最高裁判所などの組織とも連携協力をしながら、引き続き検討を重ねていきたいとは思っております。

畑野委員 大臣がおっしゃったように、会議決定からもう一年以上経過しているということで、もうそろそろ結論を出していただきたいということだと思います。

 先ほど御紹介した修習生の話なんですけれども、十二月から司法修習が始まるんです、現在も司法修習を辞退しようかどうか真剣に悩んでいるんですというふうにおっしゃっているんです。ですから、これは本当に待ったなしです。国の大きな予算から比べればこれは直ちにできるというふうにも言われているわけですから、司法修習手当の創設を、本当に若い、これからの日本を担う、そういう方たちのために一刻も早く実現していただきたい、そのことを強く重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 本日もお時間をいただきまして、ありがとうございます。といいましても、きょうはもう二十分この委員会はおくれているということなので、皆様お昼の時間ですので、なるべくさっと終わらせたいなというふうに思っておるんですけれども、私の方からは、大臣の所管であります法務に限らせていただきまして質問をさせていただきたいと思います。

 それでは、きょうのお話なんですけれども、先ごろの法制審議会等々でも話題になっておりまして、また、マスコミなどでも最近いろいろな事件等々があって話題になっております強姦罪もしくは強姦致死傷罪といったものについて少し掘り下げていきたいというふうに思っております。

 今回、報道等でよく言われているのが、強姦罪、今まで親告罪だったというのを非親告罪にしていこうじゃないか、そういったところが結構大きくマスコミ報道等々であるんですけれども、それはそれとして、強姦致死傷罪と強姦罪、これは、強姦罪の方は今まで親告罪であって、強姦致死傷罪は非親告罪だというふうなことだったんです。

 まず、ちょっと事務方の方に教えていただきたいんですけれども、現行の法制上、量刑をそれぞれ教えていただきたいんです。そして、これは差があるというふうに認識しているんですけれども、この差がなぜあるのかといったところについても教えていただければと思います。

林政府参考人 まず、強姦罪と強姦致死傷罪の法定刑について申し上げますと、強姦罪は三年以上の有期懲役となっておりまして、強姦致死傷罪については無期または五年以上の懲役、このようになっております。もちろん、このような形で、強姦致死傷罪の方が強姦罪よりも重いものとなっております。

 この理由でございますけれども、そもそも性犯罪は、被害者の心身に多大な苦痛を与えるばかりか、その人格、尊厳を著しく侵害する悪質な、重大な犯罪でございます。その上で、強姦致死傷罪となりますと、強姦というそれ自体として重大な法益侵害を伴う犯罪であるということに加えまして、さらに、人の生命身体という重大な法益をも侵害している、このようなことから、その法定刑につきましては、法定刑の上限についても、また下限につきましても、基本犯であるところの強姦罪のそれをさらに加重している、このように考えております。

木下委員 ここは議論が多いところだと思うんです。

 先ほど言われたとおりに、人の生命身体に重大な影響を与えるかどうかというところなんですけれども、そうはいいながら、先ほど、その前の部分で言われたかと思うんですけれども、そもそもこの性犯罪自体が、実質的にいわば人の心を相当傷つける、これは言いかえると、言葉でよく言われているのが、魂の殺人だというふうに言われている。

 その中で、物理的に実際に身体生命に係る、致死というものと致傷というものがあるかと思うんですけれども、そこと実際の行為自体で量刑が変わるというのが、まだまだ、これはもう少し議論をするべきところなのかなというふうに私は思っているんです。

 ただ、これを言い出すと相当時間をかけてお話をしていかなければならないので、そうはいいながら、今回、法制審議会の方で出てきているものでは、この量刑も、強姦罪も含めてもう少し厳罰化していこうという流れになっていると聞いているので、ぜひとも、こういったところも考えながらこの議論を進めていくべきではないかなという意見を皆さんに提起させていただきたいと思います。

 では次に、時間がないのでどんどん行きます。強姦罪の加害者と被害者、この定義が知りたいんです。

 ちょっとこちらの方で見てみると、行為の対象、十三歳以上の女子を暴行または脅迫を用いて姦淫した場合、もしくは十三歳未満の女子の場合は手段を問わず姦淫をしたことというのが行為の対象になっているというふうに認識しているんですけれども、現行法で、これは私の認識で正しいでしょうか。

林政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、現行法は、女子に対する姦淫という形で構成要件を規定しておりますので、被害者は女子という形になります。

木下委員 そうなんですね、女子。しかも、この言葉の中にある姦淫という言葉自体が、私の解釈では、どうやらそれを定義しているようだと。

 なぜかというと、ここで詳しいことを余り言うとあれなのかもしれませんが、姦淫というのが、女性器に男性器を挿入した時点で成立するというふうになっているから。そこの言葉が姦淫となっているから。

 今回、そういう形ではないにしても、この今の法律の中で言うと、考えていただきたいんですけれども、特に、特にというのか、全てを通してそうなんでしょうけれども、特に私はちょっと、どうしても心にひっかかりがある。それは、十三歳未満の女子の場合は手段を問わず姦淫した場合、これはやはりおかしいと思うんです。十三歳未満の男子に同じようなことが行われたとしても、これは強姦罪に当たらない、強制わいせつ罪だということなんです。

 では、この強制わいせつ罪とそれから強姦罪、量刑の差はどれぐらいあるんでしょうか。この辺、教えていただけますでしょうか。

林政府参考人 まず、強制わいせつ罪につきましては、六月以上十年以下の懲役となっております。強姦罪となりますと、三年以上の有期懲役ということになっております。

木下委員 そうなんですね。この百七十六条、強制わいせつ罪の方、六カ月以上十年以下。百七十七条ですか、これは三年以上二十年以下というふうに定義されている。ここは違うんです。女子にやられた場合、男子にやった場合、この違いというのが出てくるということ、しかも罪状も違う。これはやはり見直していくべきだと思うんです。

 今回、九月の十二日ですか、法制審議会で答申があって、大臣の方にもその内容は行っているかと思うんですけれども、これはぜひ、こういったところもよく見て改正の手続をどんどん進めていっていただきたいんです。そうなれば、こういったところで審議する。恐らく、ここの中にいらっしゃる方々は、皆さん、今聞いていて、いや、ちょっとそれはおかしいよね、改正すべきだよねと少しでも思っていただいたと思うんですね。

 もう少し時間があるので、その辺を突っ込んで話をしたいんですけれども、今回の法制審議会の答申の中に、もう一つあるんですね、さっきの姦淫というところなんです。

 姦淫というところの定義を見てみると、先ほどちらっと言いました、女性器に対して男性器が挿入された場合に行為が発するというふうになっているんですけれども、ということは、今の法律では、例えば女性器ではなく肛門に挿入されたといった場合には、強姦罪は適用されるんでしょうか、どうでしょうか。

林政府参考人 現行法の姦淫ということでありますと、そういった、いわゆる肛門性交というような形は、これは姦淫には含まれておりません。

木下委員 そうなんです。

 私、ちょっと調べてみると、実際に、一般的に言うレイプ犯で捕まった人がいるんです。その人は、連続して何回もそういった行為を行っているんですけれども、必ず、女性に対して、女性器に対して挿入しないらしいんです。肛門に挿入しようとする。捕まって何というふうに供述したかというと、この法律の差を知っていたと言うんですよね。捕まっても量刑が軽いから、狙って肛門に挿入するということを繰り返していた、こういうことがまかり通ってしまう。これはやはり防ぐべきだと思うんです。

 ここまでお話をさせていただいて、まだ時間があるのでもう少し話をさせていただきますが、大臣によくよく考えていただきたい。これも、やはりすぐ法律改正という形に手を打っていただきたいなと思うんですけれども、もう一つだけあるんです。

 それは何かというと、今回の法制審の中に、肛門とあわせて、口腔内に対して陰茎を挿入した場合というふうな形になっているんですね。ここは、陰茎がどうたらこうたらということによってまた、行為者が男性なのか、それとも被害者は女性なのかというふうな話も出てくると思います。

 ただ、陰茎をというふうにした場合は、これは行為者は男性だというふうに限定されてしまうんじゃないかなと思っているんです。口腔もしくは肛門というふうになれば、被害者は恐らく女性だけになると思うんですけれども、ここは本当にこれでいいのかなと。確かに、男性がそういう犯罪を起こす可能性が高いというのはあるんですけれども、ここはもう少し私は踏み込むべきなのではないかということが一つ。

 それから、もう一つは、今ちょっと定義を聞きましたが、姦淫という言葉を、この法制審の内容では性交という言葉で書いてあるんですね。ただ、この性交という言葉にしても、その定義は何なのかということは、今の話を聞いていてもわかるかと思うんですけれども、非常にこれは曖昧になりかねないと思っているんです。

 法制審の答申ですから、内容がどうこうというのではなく、ちょっと大臣に最後聞きたいんです。

 今後、やはりこういった問題を解消していかなければならない。ですから、まずは法制審の答申を真摯に受けとめていただいて、速やかにこの改正をしていただきたい。その改正の内容についても、今私が言いましたが、実際にその定義等々によって相当対象が変わってくると思いますので、その辺を含めて、大臣、どういうふうにこれは変えていくべきだと思っていらっしゃるかということをお話しいただきたいと思うんですけれども、ぜひよろしくお願いいたします。

 もしあれでしたら、事務方、先に一言。

林政府参考人 今委員御指摘の中で、法制審の答申自体の中で明確になっていることがございまして、一つは、まず、性交という場合には、これまでの膣性交のみならず、肛門性交及び口腔性交を含む、こういう形で犯罪化することを答申しております。したがいまして、これに沿った形で現在立法作業をしているところでございます。

 それから、もう一つ、仮に姦淫という言葉を使った場合に、その場合に必ずその被害者が女子であるということ、これはそうではなくて、今回の答申も、女子に対するという部分について、これを外すことを答申しておりますので、いずれにしても、性交等、先ほど申し上げた膣性交と肛門性交、口腔性交、これを含むところの性交等を犯罪とする、その場合に、女子に対するというものは外すということになっております。

金田国務大臣 ただいま木下委員からさまざまな御指摘を賜りましたが、法制審議会においては、やはり性犯罪罰則に関する各方面からの指摘、そういうものや、性犯罪被害の実態というものを十分に踏まえて、熱心に議論をいただいてきた、こういうふうに受けとめております。

 そういう中で、いただきました今回の答申というのは、やはり近年における性犯罪の実情を十分に踏まえたものであるというふうに受けとめておるわけであります。

 何点かございましたが、御指摘のありましたこうしたことも含めて、いずれにしましても、明治四十年に現行刑法が制定されて以来、初めて性犯罪の罰則のあり方を大幅に見直す改正ということになりますので、大変に大きな意義があるのではないかな、こういうふうに受けとめておるところであります。

 今後は、この答申を踏まえて、適切な時期に法案ができるように準備を進めてまいりたいと思いますが、さまざまな御指摘を十分その際に踏まえながら進めていきたい、こういうふうに思っております。

木下委員 ありがとうございます。

 最後に、もう少しお話しさせていただきます。

 というのは、今言っていたところで、事務方の方から言われていました性交の定義については口腔もしくは肛門なんかについてもですねということだったんですけれども、これは被害者側の方は女子というふうにはならないというふうなことだったんですけれども、今の状況では、口腔もしくは肛門等々にも何を挿入するかというところで陰茎となると、行為者、犯罪を犯す人はまだ男性に限られているというふうになるんじゃないかなと思うんですね。実際、そういうものでいいのかどうか。

 これは海外で、レイプというのは男性であっても女性であっても同じようにアメリカなんかは裁かれていたりとかするということがあるので、またおいおい教えていただければいいかなと思うんですけれども、そういった部分ももう少しカバーできるような、そういった法制にしていただきたいなということ。

 それからもう一つは、きょう、なぜこの話をしたかというと、やはりテレビ、マスコミ等々では親告罪か非親告罪か、こういったものについてのみクローズアップされているんだけれども、実際にはもっと深い話があるんだということをやはり世の中にしっかりと知らせていく、知らしめていくということが重要なんだろう、何でもちょっと話題性のあるところにばかり飛びつくのではなく、そういったこともしっかりやっていきたいという思いがありまして、きょう、こういうことをお話しさせていただきました。

 以上でございます。どうもありがとうございます。

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時一分散会


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