衆議院

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第2号 平成29年3月7日(火曜日)

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平成二十九年三月七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      青山 周平君    赤澤 亮正君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      尾身 朝子君    奥野 信亮君

      門  博文君    神谷  昇君

      菅家 一郎君    木村 弥生君

      城内  実君    助田 重義君

      鈴木 貴子君    辻  清人君

      野中  厚君    橋本 英教君

      福山  守君    藤原  崇君

      古田 圭一君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    山田 賢司君

      吉野 正芳君    若狭  勝君

      枝野 幸男君    階   猛君

      山尾志桜里君    大口 善徳君

      角田 秀穂君    真山 祐一君

      畑野 君枝君    藤野 保史君

      松浪 健太君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         金田 勝年君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    富山  聡君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    畝本 直美君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月七日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     青山 周平君

  藤原  崇君     橋本 英教君

  宮川 典子君     助田 重義君

  若狭  勝君     神谷  昇君

  吉田 宣弘君     真山 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     尾身 朝子君

  神谷  昇君     福山  守君

  助田 重義君     宮川 典子君

  橋本 英教君     藤原  崇君

  真山 祐一君     角田 秀穂君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     菅家 一郎君

  福山  守君     木村 弥生君

  角田 秀穂君     吉田 宣弘君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     若狭  勝君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長富山聡君及び法務省保護局長畝本直美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎(政)委員 自由民主党の宮崎政久であります。

 この通常国会が始まりまして、きょうよりいよいよ法務委員会での質疑が始まるわけであります。

 今日に至るまで、理事会での協議等に御協力いただきました野党筆頭の逢坂理事を初めといたします理事の皆様、そして委員の皆様の御協力に感謝を申し上げまして、これより質問をさせていただきます。

 さて、きょうの朝刊各紙にも報じられておりますが、弁護士有志の方々が、テロ等準備罪の創設を含む組織犯罪処罰法改正案について賛成をして、その必要性を訴える提言を発表したということであります。

 全国で百三十名の弁護士が賛同されているということで、この中で、日弁連さんは法案反対の意見書を出されておるわけですけれども、この日弁連の意見書に対して、日弁連は法律家なら到底納得できない解釈で法案に反対をしている、現実には考えられない濫用の危険を抽象的に述べて法案に反対をするのは国民の生命身体に対する危険をなおざりにするものだとか、法案の必要性を広く社会に提言するべきだ、こういった提言を述べられて、昨日、記者会見もされておられるということが報道で出ております。

 日弁連という組織は、しばしば政府のやることに対して反対の姿勢を示すということが多いわけでありますけれども、弁護士の中には、しっかりと現実を直視して冷静に議論する弁護士がいる。私も弁護士の一人でありますけれども、大変心強い意見が表明されたことに対して敬意を表して、歓迎をしたいと私は思っております。

 金田大臣の所信におかれても、冒頭、法務大臣としての職務に臨む基本的な姿勢として、国内外における国民生活を取り巻く状況の変化に起因する課題を的確に捉えて、適切かつ迅速に対処すべきだと述べられております。そして、国内外における国民生活を取り巻く状況の変化として、世界各地で凄惨なテロ事件が発生しており、我が国を取り巻くテロ情勢が非常に厳しい状況にあるということと、その中で、二〇二〇年、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることも指摘されておられます。

 そこで、テロを含む国際的な組織犯罪を一層効果的に防止して、これと闘うために協力を促進する国際組織犯罪防止条約の締結に必要となる、テロ等準備罪の創設を含む組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の改正案をできる限り早期に国会に提出できるように目指すと述べておられるわけであります。

 今、政府では、テロ等準備罪を新設するための法案提出の準備を進めているわけでありまして、また、私ども自由民主党においても、法務部会を中心に議論をし、検討を進めているところであります。

 まずお聞きをしたいのは、このテロ等準備罪を新設する理由、目的であります。いかなる法案にも肝というか魂が必要でありまして、この法案によって何を実現するとお考えになっているのか、まず入り口として金田大臣にお伺いしたいと思います。

金田国務大臣 おはようございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 宮崎委員からの御質問でございます。私どもが現在検討しておりますテロ等準備罪、これを新設する趣旨というものをお聞きになっている、このように受けとめました。

 近年、世界各地で大規模なテロが続発する一方、我が国におきましても、暴力団による組織的な殺傷事犯、違法薬物事犯などの各種の組織犯罪が多発をしておりまして、安全、安心な市民生活が脅かされる状況にございます。

 一方で、世界百八十七の国と地域が締結しております、テロ組織による犯罪を含む国内外の組織犯罪と闘うための協力を促進いたします国際組織犯罪防止条約、TOC条約の締結は急務であると考えております。国内担保法を整備してTOC条約を締結することによって、我が国が犯罪の抜け穴となることを防ぎ、そして、国際的な逃亡犯罪人引き渡しや捜査共助が可能ないしはさらに充実するということを考えているわけであります。

 TOC条約は、重大な犯罪を行うことの合意または組織的な犯罪集団への参加の少なくとも一方の犯罪化を義務づけております。しかし一方で、現行法上、参加罪は存在しない上、共謀罪、陰謀罪が設けられているのはごく一部の犯罪にすぎないわけであります。これに加え、予備罪は予備行為を処罰するものであって合意を処罰するものではない上に、客観的に相当の危険性がなければ処罰の対象とならない。したがいまして、条約上の義務を果たして条約を締結するためにテロ等準備罪の整備が必要である、このように考えるわけであります。

 国内担保法を整備いたしましてTOC条約を締結し、国際社会と協調してテロ等を含む組織犯罪と闘うことは非常に重要な課題である、このように考えてのことであります。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 まさにテロ等組織犯罪を未然に防止するための大きな一助として、これが全てということではないでしょうけれども、大きな一助としてTOC条約に加盟することが急務であるということであるかと思います。

 TOC条約に加盟するためという点でありますけれども、この法案がなくてもいいんだという意見も見受けられるわけであります。担保となる国内法としては、現在のままでもよいとか、現在限定的な犯罪について定められている予備罪をより多くの罪に定めれば足りるのではないか、個別具体的に立法を検討すればTOC条約の締結に新たなテロ等準備罪のような法形式は必要でないという見解もあるわけでありますが、この点については大臣はいかにお考えでしょうか。

金田国務大臣 ただいま宮崎委員から御指摘ございました、個別の罪について予備罪等を設ければ足りるのであって、包括的なテロ等準備罪を設ける必要はないという見解もある、その点についての考えでございますが、まさにTOC条約の締結には新たな立法措置が必要であると考えております。

 個別に予備罪を設けることにより担保することにつきましては、予備罪は予備行為を処罰するものであって合意を処罰するものではない上に、客観的に相当の危険性がなければ処罰の対象とならず、条約の趣旨に合致しないおそれがあるために、予備罪を設けただけでは条約を締結できない、このように考えておるわけであります。

宮崎(政)委員 今のTOC条約五条のところの御説明でありますけれども、合意を犯罪化する必要があるわけであります。そのための法形式を今政府の中で検討していただいていると承知をしておりますけれども、合意を犯罪化するというところを捉えて、一般の市民の方々や市民運動、労働組合活動などが監視の対象になるではないか、こういう批判もあるわけでありますけれども、大臣、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

金田国務大臣 一般の方は対象とならないということを申し上げたいと思います。

 テロ等準備罪の具体的内容については検討中でありますけれども、対象となる団体を、テロ組織、暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺組織といった重大な犯罪を行うことを目的とする組織的犯罪集団に限定することを検討中であります。具体的には、構成員の結合の目的が一定の重大な犯罪を実行することにある団体とすることを考えております。

 いずれにしましても、厳格な要件を定めることにより、一般の方々がテロ等準備罪の適用対象とならないような法案を検討しておるところであります。

 テロ等準備罪の新設によりまして、捜査機関が常時国民の動静を監視するといったような監視社会となることはありませんし、テロ等準備罪が対象としているのは組織的犯罪集団だけなのでありますから、そのようなことにはなりようがない、このように考えている次第であります。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 繰り返し御説明いただいているところでありますが、テロ等準備罪は、条約を受けて、組織的犯罪集団が主体となる。これは、今御説明がありましたように、構成員の結合の目的が一定の重大な犯罪を実行することにある団体ということになりまして、まさにテロ組織、暴力団、薬物の密売組織、振り込め詐欺組織というような、重大な犯罪を行うことを目的とする団体が組織的犯罪集団であるわけであります。

 そこで、実は衆議院の予算委員会での審議を受けて、普通の団体や一般市民もテロ等準備罪の処罰の対象になるのではないかという報道が、まだこれはあるわけでありまして、こういう懸念も表明されておる。

 これはどういったことなのかというと、法務省の方で、この予算委員会の審議を受けて、二月十六日に見解を出している。これは、組織的犯罪集団については、「もともと正当な活動を行っていた団体についても、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められる場合には、組織的犯罪集団に当たり得ることとするのが適当である」という見解が出されているわけであります。

 新聞の見出しなどを見ますと、この翌日の東京新聞の見出しなどは、「政府「普通の団体」も処罰」というふうな見出しになって躍ったりしているわけですね。私は、これを全部きちっと読めば、「「普通の団体」も処罰」、こう言い切ってしまうというこの見出しがミスリードである、そして何か不安をかき立てるだけだというふうに思いますけれども、まず、この二月十六日の法務省の見解について、その意味するところを、御説明をしっかりしていただきたいと思います。

林政府参考人 委員御指摘の法務省の見解でございますが、これは、テロ等準備罪の具体的な内容は検討中であるという中で、この組織的犯罪集団の概念につきまして、もともと正当な活動を行っていた団体につきましても、「団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められる場合には、組織的犯罪集団に当たり得ることとするのが適当である」、こういった見解を示したものでございます。

 その上で、正当な活動を行っていた団体について、どのような場合にこの団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められるのかという形でよくお尋ねいただくことがございます。

 これにつきまして、もちろん、これは事実認定の問題がございますので、具体的な事案の中で認定されるものでございますけれども、一般論として申し上げれば、具体的な事案において、ある団体が組織的犯罪集団に該当するか否かという点につきましては、まず、当該事案の時点において構成員の結合の目的が犯罪を実行することにあるか否かということによって判断することとなります。

 その上で申し上げれば、もともと正当な活動を行っていた団体というものがあると仮定すれば、通常、その団体が、その後、団体の意思決定に基づきまして犯罪行為を反復継続するようになるなどの状態にならない限り、組織的犯罪集団に該当すると認められることは想定しがたいと考えられます。

 法務省が一変という形で申し上げてきましたのは、もともと正当な活動を行っていた団体が一瞬にしてその団体の性格を変えるようなことを想定していたものではございませんで、その性格の変化に相当の時間を要するのが通常であることを前提といたしまして、その性格がすっかり変わって、結合の目的が犯罪の実行をすることにあると認められない限り、テロ等準備罪の対象となることはないことを申し上げてきたわけでございます。一変することがテロ等準備罪の要件となるものではございませんし、また、その変化の前後やその過程において特定の要素がなければ組織的犯罪集団に当たらないということを申し上げてきたものではございません。

 あくまで、具体的な事案におきまして、ある団体が組織的犯罪集団に該当するか否かは、その当該事案の時点において構成員の結合の目的が犯罪を実行することにあるか否かにより判断することとなるものでございまして、犯罪の立証のためにはその点を立証しなければならないということになると考えております。

宮崎(政)委員 これは要するに、変じたかどうかということではなくて、当該の事案における当該時点において組織的犯罪集団であるかどうかが問題となる。つまり、その集団が以前どういう集団であったかということではなくて、具体的事案によるわけですけれども、その事案の問題とされる時点において、当該団体、当該集団が組織的犯罪集団であるかどうかということが問題になるということだと思いますが、そういう理解でよろしいわけですか。

林政府参考人 今回、組織的犯罪集団というのは、犯罪の立証をする対象としての組織的犯罪集団でございますので、当該事案が問題とされているときにその組織犯罪集団が存在していることが犯罪の立証の対象となります。

 そういった意味で、裁判所におかれても、実際にこの処罰、罰則が適用されるためには、その時点において組織的犯罪集団というものが認定されなければならないという趣旨でございます。

宮崎(政)委員 この関連で、よく報道などを見ていると、それではということで、一般の同窓会やサークルなどの団体という例を持ち出して、同窓会でもその性質を一変させたら組織的犯罪集団に該当するんじゃないか、こういう指摘をする例を見ますけれども、これについてはどのように考えたらよろしいでしょうか。

林政府参考人 そもそも、この組織的犯罪集団というものを現在検討中でございますが、これは、現行法上の組織的犯罪処罰法における「団体」という概念を前提としております。そして、そもそもこの組織的犯罪処罰法における「団体」というものは、その構成員が指揮命令に基づき行動するものというものが求められているわけでございます。

 一般の意味で言いますところの一般の同窓会とかサークルというようなものについては、そもそもその構成員が指揮命令に基づき行動する団体とは言えませんので、この団体性、いわゆる組織的犯罪処罰法における「団体」というものには当たらない、通常当たらないと考えられます。加えて、一般の同窓会やサークルの目的、これらは懇親等が目的でございまして、一定の重大な犯罪を実行することを構成員の結合の目的としているということは考えられないわけでございます。

 したがいまして、現在検討中のものを前提に考えても、一般の同窓会、サークルといったことでの御質問、御指摘であれば、テロ等準備罪における組織的犯罪集団には該当しないこととなるものと考えております。(発言する者あり)

宮崎(政)委員 それはそうだよなという声が上がっておりますけれども、一般的な同窓会やサークル、これは、平穏無事に存在しているものを一つの例として出して、転じてというふうな言葉はつくんですけれども、組織的犯罪集団になるのかというふうなことを言うということ自体が、前後がつながっていないと私は思うんです。

 例えば、それ以外にも、いろいろなネット上の見解の発信なんかを見ていると、最近見たら、コミケがピンチみたいな発信もあるんですね。これは、著作権侵害というのが対象犯罪になるという前提で書かれているんですけれども、同人誌をつくろうといって二人以上で二次創作を計画して、そのための準備行為に入ったらもうテロ等準備罪の対象になるんだ、そういう可能性があるんだという書き込み、記事なんかも散見されている。

 もちろん、この対象犯罪については絞り込みを含めて現在検討中ということでありますので、きょうはこれは触れませんけれども、ちょっと今ここで幾つか例で出てきたのは、組織的犯罪集団というのは、先ほど御説明を大臣からいただきましたけれども、テロ組織、暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団などといったものであって、重大な犯罪を行うことを結合の目的とするものであることを、これは法文を作成する際に、今検討中だということでありますけれども、組織的犯罪集団を定義する中で例えば例示するとかして、しっかり限定していることを明示する必要が私はあると思います。こういったことによって国民の皆さんの懸念を払拭して、所期の肝であり魂であるテロ対策の大きな一助を今この時点でつくっていくということを進めないといけないと思っています。

 法務省は、この法案作成の方向性みたいなところでどう考えているのか、お答えできる範囲で答えていただきたいと思います。

林政府参考人 今回の立案に当たりましては、やはり、一般の方が対象とならないということが明確になるように、これを立案の方針として現在検討しているところでございます。その中で、今回、組織的犯罪集団というものを法律上の要件といたしまして、それを定義することによって、今回そのような立案の方針に沿った検討をしているところでございます。

 あくまでも、この組織的犯罪集団というものの意味としては、もちろんテロ組織でありますとかその他の組織犯罪集団といったものを意味するものとして考えておるわけでございます。そういったことが明確になるように、所期の目的であります、一般の方が犯罪の処罰の対象とならないということの立案方針にも沿って、しっかりと検討してまいりたいと思います。

宮崎(政)委員 次に、条約では、犯罪が成立するのが合意ということになっておりますが、合意をするというその方法や手段は限定されるものではないわけであります。

 この合意も、最終的には事実認定の問題となるわけでありますけれども、合意が成立する意思表示の方法としては、面前の会話によるということはもちろんでありますけれども、電話ですとかメールとか、今はLINEみたいなものが非常にはやっているわけですが、LINEのようなものでも成立するわけでありますし、例えばLINEですとスタンプみたいなものがあるわけですけれども、スタンプによるものはだめだと言って除外をするということも、その必要もないわけでありまして、合意をどうやって事実認定していくかということになっていくわけであります。

 ただ、そうなると、この点についても、今度は、「LINEでも共謀成立恐れ」という新聞の見出しのもとに、その下の方まで読んでいくと、あたかも、一般的なLINEだとかメーリングリストグループも組織的犯罪集団に該当して犯罪が成立するかのような流れの報道も散見されるわけでありますけれども、この点について法務省はどのようにお考えでしょうか。

林政府参考人 今回のテロ等準備罪におきまして、合意に至る、そのコミュニケーションツールが何であるかという質問がございます。それを前提にして、メーリングリストグループやLINEグループにおけるさまざまな、いろいろな合意過程というようなものがこの処罰の対象になるのではないかという御質問につながっていくんだろうと思いますけれども、あくまでも、この合意といいますのは、今回、テロ等準備罪が成立するためには、まずは組織的犯罪集団であるということが認定されなければなりませんし、それがまた、団体の意思決定に基づきまして、団体の活動として、指揮命令に基づいて、その過程で一定の重大犯罪を合意するということ、さらにその実行準備行為が必要である、こういった全体の構成要件というものがあるわけでございます。

 その中で、メーリングリストとかLINEのグループというものにつきましては、まず、犯罪の主体という点で組織的犯罪集団に該当するのかどうかということが問われてくるわけでございます。

 一般的に、メーリングリストグループなどは、そもそもその構成員が指揮命令に基づき行動する団体でございません。組織的犯罪処罰法における団体には通常当たらないと考えます。加えて、このメーリングリストグループなどが、一定の重大な犯罪を実行することがその構成員の結合の目的になっているのか、ここが問われるわけでございまして、それは通常想定されないだろうと考えます。

 したがいまして、現在検討中のものとして、一般的なメーリングリストグループなどにつきましても、このテロ等準備罪における組織的犯罪集団には該当しないことになると考えております。

宮崎(政)委員 この合意の方法、意思表示の事実認定の方法の議論を受けてからですけれども、テロ等準備罪が成立すると、捜査というのは犯罪の嫌疑があるときに行われるという、もちろんこれは法律に基づく大原則があるわけですけれども、ちょっとそれも横に置いておいているかのような形で、メールやLINEなどのコミュニケーション手段やネット空間に網をかけて監視社会がつくり上げられることになるとか、一般市民のネット上のコミュニケーションが捜査機関に捜査されて丸裸になってしまうというような批判ももう出てきているわけであります。

 私はちょっとミスリードも過ぎるなと思っていますけれども、こういった批判に対しては、金田大臣はどうお考えでしょうか。

金田国務大臣 宮崎委員のただいまの御質問に対しましては、捜査は犯罪の嫌疑がなければ行われないということはもちろんであります。テロ等準備罪は通信傍受の対象犯罪ではありませんし、テロ等準備罪の新設に伴って通信傍受の対象犯罪とすることも全く予定されていないのでありますから、組織的犯罪集団に該当しないメーリングリストグループなどについて、そのメールのやりとりなどが常時捜査機関の監視の対象となるようなことはおよそ現実的ではなく、考えられないものと考えております。

 いずれにしましても、テロ等準備罪につきましては、厳格な要件を定めることによりまして、一般の方々がその適用対象となるなどということの不安や懸念を持たれることがないように立案を進めていきたい、このように考えております。

宮崎(政)委員 テロ等準備罪につきましては、まだまだ議論もたくさんあるわけでありまして、法案が固まってから改めて細かい点も議論する必要がありますが、一点だけ、その他の点について質問させていただきたいと思います。

 昨年成立した再犯防止推進法について、一点お伺いしたいと思います。

 大臣所信の中でも、この法律の趣旨を踏まえて一層取り組みを推進すると述べられております。私も、政治の世界に入る前から、地元の沖縄で民間人として更生保護に携わってきましたけれども、この分野は、常に最前線に立っている保護司の先生方、更生保護施設や協力雇用主さんなど、民間の活動の支えによって成立をしている分野であります。地方との協力も大変必要だという分野であります。

 この再犯防止推進法では、大臣が再犯防止推進計画案を作成することとなっております。さまざまな人の協力が必要であるということについて、この計画策定に向けての大臣の御決意を聞かせていただきたいと思います。

金田国務大臣 宮崎先生におかれましては、たしか平成二十年から沖縄県の更生保護協会の理事長に御就任をいただいておる、このように認識をしております。日ごろからの再犯防止施策に対します御理解、御尽力につきましては、この場をかりて厚くお礼を申し上げたいと思います。

 その上で、昨年成立しましたいわゆる再犯防止推進法におきましては、法務大臣は再犯防止推進計画案を作成して閣議決定を求めることとされているわけであります。

 再犯防止推進法は、不起訴処分となるなどした者を対象とするいわゆる入り口支援、あるいは、満期出所者を含む刑務所出所者などを対象としますいわゆる出口支援など、刑事司法のあらゆる段階におきまして再犯防止に関する施策を講じることを求めるとともに、国、地方公共団体、民間協力者のより一層緊密な連携を求めて、国だけではなく、地方公共団体においても地方再犯防止推進計画を定めるべき努力義務を設けるなどしておりますので、再犯防止推進計画案の作成に当たりましては、こうした点を意識する必要を持って努力をしていかなければいけないと認識をしております。

 したがいまして、決意でございますが、再犯防止推進法に基づいて、今後、法務大臣である私が再犯防止推進計画案を作成していくことになりますので、その過程において、再犯防止推進法の趣旨を踏まえて、厚生労働省といった関係省庁とも連携協力をしながら、しっかりと検討を進めてまいりたい、このように考えております。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 きょうは、テロ等準備罪を中心にお聞きをいたしました。行き過ぎる懸念というか報道に対して、しっかりと説明していただきたいという思いでありました。

 もちろん、人権に配慮した上で法案をしっかりと仕上げていくということは当然のことでありますので、国民の皆様にこの法案の内容をしっかりと説明して、広く理解をいただくことが必要です。そのための審議が、きょうから始まるこの法務委員会での質疑で行われていくものと思っておりますので、これからの議論と、速やかに法改正が実現することに向けて尽力することのお誓いを申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 本日は、法務委員会でことし初めての質問となります。大臣、副大臣、政務官、またよろしくお願いいたします。

 平成二十九年度の予算案、法務省予算は、前年比で八十三億七千百万円の増額、裁判所予算は、前年比二十四億三百万円の増額となっておりますが、この予算案の中に、司法修習生に対する修習給付金、これも十一・五億円計上がされております。多くの皆さんの熱い思い、献身的な活動の結果であるというふうに思います。今後の法案審議の際に、これについては改めて触れていきたいと思いますが、本当に私もこれについてはうれしく思っております。

 また、宮崎委員が先ほど、テロ等準備罪、これについて質疑をされましたが、このテロ等準備罪につきましては今我が党でも精力的な議論をしているところでございます。しかるべきときが来れば、しっかりとこれについても議論をしてまいりたいと思います。

 きょうは、少年院における修学支援、それと更生保護施設における人的体制の強化、大きくこの二点についてお伺いいたします。

 まず一点目の、少年院における修学支援、これについてお伺いしてまいります。

 私は、議員になる前、弁護士をしておりました。弁護士としていろいろなジャンルの案件を担当してまいりましたけれども、その中でも特にやりがいがあったのが少年事件でございます。

 少年事件というのは、ほかの一般の民事事件等と比べて、受任してから解決するまでの期間というのは非常に短いのでありますけれども、この短い期間の中で、密度の濃い、人生ドラマまた家族の再統合のドラマということに私自身も触れさせていただきました。

 そして、少年というのは、こちらが熱意を持って取り組めば、今、政務官もちょっとうなずいていましたけれども、熱意を持って取り組めば、少年というのは本当にどんどん変わってきます。目をみはるように変わってきます。一般の成人事件の大人とはまた違う変わりようで、少年の可塑性ということが言われますけれども、私も、経験上これは肌実感として実感をしてまいりました。

 今でも、少年院また少年刑務所から出てきた元少年から近況報告をもらう場合もあるわけですけれども、今、真面目に社会に出て仕事をしている、こういった元少年の姿に触れて、私もまた改めて頑張ろうという気にさせられることもあります。

 こういった少年の改善更生また再非行防止、再犯防止というものは、少年本人のためのみならず少年の家族、また周囲の人たち、ひいては社会、将来の日本のためにもなります。罪は罪として償っていくこと、これは当然のことでありますけれども、それとともに、再チャレンジできる社会の土壌をしっかりとつくっていくことも、これもまた重要でございます。

 本日お配りした資料、これは、ことしの一月二十日付の朝日新聞の記事です。「生き直すため少年院で受験指導」というタイトルがつけられておりますが、この記事では、二〇一五年度から全国でただ一つ、法務省の、高校卒業程度認定試験、旧大検ですね、受験指導モデル施設に指定されている少年院、新潟少年学院の取り組みがここに書かれてあります。

 そこでまず、この新潟少年学院における具体的な取り組み、そしてその成果について伺います。

富山政府参考人 お答えいたします。

 矯正施設におけましての高等学校卒業程度認定試験につきましては、平成十九年度から、文部科学省の御配慮をいただきまして、少年院の中でこの試験を受けることができるという体制がとられております。

 そういった体制をとっていただいたことから、最近の数字を見ますと、例えば平成二十三年度では約四百人の少年がこの試験を受験しております。平成二十八年度になりますと五百五十人というように、着実に受験生の数がふえてきております。やはり、少年院在院者の中にはこういった試験に対するニーズが相当程度あるというふうに考えております。

 また、この受験の結果、全科目合格という成果をおさめる少年も受験者の約三〇%おりまして、社会一般では四〇%程度がその合格率ということですから、若干それよりは下回るのですが、皆頑張って勉強して、それなりの成果を上げているということがわかります。

 こういった卒業程度認定試験に向けて学習に取り組んで合格していくということは、少年の自己肯定感を増していきますし、社会復帰のためにもとても必要なことであると考えております。

 そうしたことが、今回お尋ねのように、新潟少年院をモデル庁といたしまして、平成二十七年度から、この試験のための勉強をより効果的に教えるためのノウハウ等を得るということで、教材の整備、部外教科指導員による指導など、集中的かつ計画的に受験指導を行う体制を整備いたしました。

 その結果、先ほど申し上げました全科目合格率が、新潟少年院においては、二十七年度には四二%、二十八年度には五三%ということで、着実にその効果があらわれているという状況でございます。

國重委員 この新潟少年学院、今、受験コースがスタートしてまだ二年弱ですけれども、徐々に、着実に成果があらわれつつあるということでした。

 先ほどの記事の中には、この受験コースの授業を受けて高卒認定試験に全科目合格した生徒の思いがつづられております。「安心して失敗できた。わかる部分は「点」だったけど、どんどんつながって「線」になっていった」「お前は駄目だ、駄目だとずっと言われてきたけど、人より劣っているわけじゃない、と思えるようになった」「不安や心配が消えたわけじゃない。でも、大学や短大、専門学校へのスタートラインには立てた」、こういった思いがつづられております。

 また、先ほど局長の方からもありましたけれども、ここに教えに行っている外部講師の方の「やればできるという経験が自己肯定感につながり、生きることに前向きになれる」という言葉も紹介されております。

 こういった取り組み、少年の改善更生、再非行、再犯防止の観点からも非常に重要だというふうに思います。

 それでは、こういった高卒認定試験の受験に向けた取り組み以外の少年院におけるその他の修学支援、これについての取り組みはどうなっているのか、お伺いいたします。

富山政府参考人 お答えいたします。

 修学支援につきましては、少年院の在院少年、大きく分けまして、出院した後、自分で仕事を得て働いて自活していきたいという少年と、学校に行って勉強していきたいという少年がおります。割合的に申し上げますと、仕事を希望する者が四分の三程度、勉強したいという子が四分の一程度ということになっております。やはり、一定程度、そういった勉強を続けたいという少年がおりますので、この修学支援は大変大事なものであると考えております。

 具体的には、まず、義務教育をまだ終わっていない者、この者については、当然中学校への復学あるいは転入学、こういったことの支援を行っております。また、高等学校への進学を目指す者につきましては、必要に応じて在院中に受験の機会を与えるといった配慮もしております。

 そのほか、昨年の九月、平成二十八年九月からなんですが、修学に対する少年の動機づけを高めるために、修学支援ハンドブックというものを全国の少年院に配付いたしまして、在院者の復学等の希望に合致する、また、情報も民間企業に依頼をして収集して、各在院者のニーズに合わせた情報提供をするといった試みも行っております。

 少年院では、自分の地元の都道府県以外の学校の情報というものがなかなか手に入りにくいものですから、民間の企業の力もおかりしまして、その少年が進学したい地域の学校の情報ですとか、さらには奨学金の制度ですとか、そういったことについても情報の提供を受けて、進学に対してしっかりした心構えを持たせて準備をさせるといったことも心がけているところでございます。

國重委員 さまざまな取り組みをしていることがわかりました。ぜひ、これからもしっかりと前に推し進めていっていただきたいというふうに思います。

 大臣、大臣は優秀な大学も卒業されて、また旧大蔵省の方に入られて、非常に、いわゆるエリートコースを進んでこられたと思いますけれども、こういった少年院に入る子供たちは、もちろん、余り勉強できる子供たちが多くあるわけではありません。

 少年院に入った少年の中には、十六歳なんだけれども分数の計算がほとんどできないという少年もいます。分数のテストをすれば、大体一桁の点数か、よくて十点台という少年がいました。そんな少年が、教官とか周りの少年に教えてもらって、分数のテストをして、それでついに目標の六十点をとったんですね。

 そのときに、その少年いわくなんですけれども、絶対これは五十点以下やと思っていたんですが、僕、六十点だったんです、自分で自分をすごいと思いましたと。物すごく彼は勉強をしましたので。こんだけしんどいことができたんやから、分数のテストで六十点とれたことは、自分がこれから生きていく中で、死ぬまで自分の誇りというかプライドになると思いました、これからどれだけ途中でつまずいても、自分は起き上がれると思いました、ここに来るまで悪いことをいっぱいしてきたけど、そういうのも自分の努力が足りないからだとよくわかった、僕は自分のことをどうせやってもできないと諦めていたけど、それは違う、僕だってやればできると、目から大粒の涙をぽたぽたとこぼしながら彼はそう言いました。

 大臣、不安定な家庭環境の中で育った子供たちは、家で勉強する環境にないこともあります。勉強がわからないから、学校でも居場所がなくて非行に走る場合もあります。人それぞれ進む道というのは違いますけれども、学は光という言葉があるように、学ぶことで視野が広がり、選択肢が広がり、未来が広がります。これが人生を生きていく上での土台の力になります。

 大臣は、先日の所信表明において、「犯罪や非行をした者の立ち直りに必要な指導、支援を適切に実施するとともに、関係省庁と連携した取り組みをより一層推進」していく、このようにおっしゃいました。先ほど取り上げました高卒程度認定試験のモデル施設、また、それ以外の修学支援、いずれも大事な取り組みだと思いますけれども、これに関する大臣の所見、今後の取り組みに向けた決意をお伺いいたします。

金田国務大臣 國重委員の方から、本当に心のこもった、少年の皆さんの生き方をずっと仕事の上で見てこられた、そういう経験を踏まえての御指摘であったかな、こういうふうに思います。

 私も、少年や青年の皆さんというのは常に自分探しの旅に出ている、そういう状況にあるんだと思います。したがって、自分探しの旅ではさまざまなことにぶつかったり体験をしたりする。だから、そういう少年や青年の皆さんのために、その立ち直りも含めて、しっかりと手を差し伸べてあげたいというのは本当にすばらしいことだというふうに思っております。

 そういう私の思いが常に原点にあるものですから、國重委員のこれまでのお話を聞いていて、本当に熱いものを感じた次第であります。

 ところで、少年院におきます修学支援の充実という点につきましては、再犯、再非行防止の観点からも極めて重要である、これは申し上げるまでもない。みずからの力と自信、そういうものを取り戻す、そして、それを身につける、再犯、再非行防止につなげていくというすばらしい試みが、平成二十九年度におきましては、新潟少年学院、そして新たに多摩少年院もモデル庁に指定をいたしまして、集中的かつ計画的な受験指導、そういうものも行っていきたいな、こういうふうに現在予定をいたしております。

 引き続き、少年院在院者に対しまして学び直しの機会を与えていく、これは非常に重要なことでございますから、修学支援の取り組みを一層推進していきたいと思っておりますし、円滑な社会復帰の実現に努めていきたい、このように考えている次第であります。

國重委員 ぜひよろしくお願いします。

 今、大臣自身の言葉で御答弁いただいたことを私はうれしく思います。きょうは細かい法律論を私は聞くつもりはありませんので、思いに対して思いで、大臣の言葉で、ぜひ答えていただければというふうに思います。

 次に、少年非行を犯す少年の中には、学習障害、LDに似た症状を持つ少年を初め、発達障害に似た症状を持つ子供たちが少なからずいます。発達上の課題とか問題そのものが直接非行に結びつくわけではありません。ただ、発達に何らかの問題や障害があって、それが原因で生きづらさにつながっているというのであれば、単に非行に焦点を当てるんじゃなくて、その特性に応じた支援をしていくことが必要でございます。

 そこでまず、少年院において、発達障害やそれに似た症状がある子供たちがどの程度いると把握されているのか、お伺いします。

富山政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年に当局におきまして調査を実施したことがございまして、少年院に在院しております少年二千六百十一名のうち、医師により発達障害という診断があった者の数が三百二十七名という結果が出ております。約一二%、一二・五%程度の者がそういった診断を受けているという結果が出ております。

國重委員 決して少ないと言える数字ではないと思います。

 そうしますと、その少年それぞれの特性に応じた支援、処遇をしていくために、矯正局、少年院としてはどのような取り組みをしてきたのか、またしているのか、これについてお伺いします。

富山政府参考人 お答えいたします。

 少年院におきましては、こういった発達障害を有する子供たちに教育を施すために、特に専門的な医療措置が必要な子供たちについては、医療措置課程というものを関東医療少年院と京都医療少年院に設けております。また、それ以外の全国二十数庁の少年院には支援教育課程と呼ぶ課程を設けておりまして、こういった障害やその疑いのある者に対して、障害特性に配慮した処遇を実施しようということで体制を整えております。それぞれの少年の具体的な特性に応じ、矯正教育の目標、内容、実施方法、期間などを定め、個人別矯正教育計画というものをつくって処遇をするということにしております。

 また、こういった処遇を展開する上では、当然のことながら、職員が専門的な知識を身につけていなければいけませんので、そういった情報を職員の方が持てるように、私どもの方では、少年院、少年鑑別所の職員とも協力し、また外部アドバイザーの専門的な助言も受けながら、発達上の課題を有する在院者に対する処遇プログラム実施ガイドラインというものを、平成二十八年度、全国に配付したところでございます。

 また、新たに法務教官、少年院の職員として採用された者に対しては、こういった発達障害を持つ人の人権や、課題を有する者に対する処遇技術を扱う科目なども設け、研修を行っております。そのほか、先ほど申し上げました支援教育課程といった、発達障害の方のためのカリキュラムを行う少年院の職員に対しては、順次研修を行って、そのスキルをより高いものにしていくといった試みもしております。

 なお、支援教育課程、医療措置課程が指定されております少年院の多くには社会福祉士あるいは精神保健福祉士の配置もなされておりまして、こうした方の専門的な知見を活用し、より一層適切な処遇が行えるように配慮をしております。

國重委員 ありがとうございました。

 発達障害の障害の出方、特性の出方も一人一人違うので、発達障害を一くくりとして、それに対する万能なプログラムというのはないとは思いますけれども、より充実した取り組みをして、きめ細やかな処遇ができるように、ぜひよろしくお願いいたします。

 では次に、発達障害やそれに似た症状を持つ少年たちが社会復帰をすることというのはそうそう簡単なことではないと思います。この社会復帰に当たってどのような課題があると認識されているのか、お伺いいたします。

富山政府参考人 お答えいたします。

 発達障害あるいはその疑いのある少年を円滑に社会復帰させるためには、何よりも、少年院にいる間から、出院後の受け皿となります福祉機関などと連携して、本人を支える体制をつくっていくということが大切であると認識をしております。

 出院後も切れ目のない支援を行っていくためには、活用できる社会資源の開拓に努めるとともに、在院中から、保護観察所などの更生保護官署やあるいは地域生活定着支援センターといった外部の機関と協働しながら、福祉機関と連携し、帰住先の確保、あるいは帰住後の生活設計の実現に必要な就労支援、修学支援、また引受人を含めました出院後のサポート体制の充実強化、こういった、在院中から、社会に戻ったときにいかにつながる、つなげるかということを図っていくことが一番重要であるというふうに認識しております。

國重委員 いかに社会に、また福祉につなげていくか、ここが重要ということで、今後、引き続きしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 大臣、ある自立援助ホームで寮母をされてきた方がこのように話されていたそうです。

 非行少年の心の中は糸が複雑に絡み合っている状態、生きる力を備えた少年なら、周りの大人がその糸を振り回してあげれば、時間がかかっても彼らは自力でその糸をほどける、でも、被虐待や発達障害の子供たちには、周りの大人がその糸をほどいてあげなければならない、そして、そのほどけた糸の一本をこちらと結びつけるように丁寧にかかわる、一本結べたら二本、三本とふやしていけるとよい、ただ、発達障害の子供たちはこちらと結びついた糸を突然切ることもある、そこが支援の難しいところ、でも、一度糸を結びつけた体験があると、その後何かの拍子にまたこちらと糸を結べるかもしれない、このように話されております。

 大臣、少年院における発達障害やそれに似た症状のある子供たちに対する社会復帰を含む支援、これも極めて重要なことだと思いますけれども、これに関する大臣の見解、今後の取り組みに向けた決意、これをお伺いいたします。

金田国務大臣 ただいまの國重委員の御指摘、まことにそのとおりだというふうに考えております。

 少年院において発達上の課題を有する在院者に対します理解を深めていくということは非常に重要でありますし、その処遇や社会復帰支援の充実強化を図っていくことは、少年の再犯、再非行防止の観点からも極めて重要である、このように認識をいたしております。

 引き続き、職員の理解の促進と、まあ周りですよね、福祉機関等との連携強化に努めて、発達上の課題を有する在院者に対しまして、個々の課題や必要性に応じて矯正教育及び社会復帰支援の取り組みを一層推進していきたい、このように考えております。

國重委員 大臣、私もこの分野は引き続き力を入れて取り組んでまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

 次に、大きな二点目の、更生保護施設の人的体制の強化、これについてお伺いします。

 再犯防止の鍵になる二つの大きなポイント、これは住居と仕事の確保でございます。そして、行き場のない出所者たちの住居確保のかなめ中のかなめ、再犯防止の最前線の施設が更生保護施設でございます。

 現在、更生保護施設は過酷な労働状況にあります。この職員体制を強化すること、これが喫緊の課題でございます。

 そこで、我が党の再犯防止対策強化プロジェクトチームが昨年五月三十日に政府に申し入れた提言の中でも、この職員体制の強化を真っ先に掲げました。そして、昨年十月十九日の金田大臣の所信に対する質疑、実はこのとき、大臣はTPPの特別委員会の対応で不在でありましたけれども、私は、その場におきましても更生保護施設の現状を踏まえた人的体制の強化について訴えまして、盛山副大臣が、金田大臣の思いも受けて、この充実にしっかり取り組んでいくという旨の答弁をされました。

 政治は結果でございます。こういったことを受けて、平成二十九年度政府予算案において更生保護施設の人的体制強化がどのように図られたのか、お伺いいたします。

畝本政府参考人 平成二十九年度政府予算案における更生保護施設関係の予算でございますが、百三あります全ての更生保護施設において職員体制の強化を中心とした経費が盛り込まれております。

 具体的には、定員二十名以上そして女子を保護する更生保護施設につきまして、予算上の職員配置基準を一施設当たり四名から五名に増員するための経費、そして、定員十九名以下の男子を保護する更生保護施設につきましては、週五日勤務の非常勤職員を配置するための経費がそれぞれ計上されているところでございます。

國重委員 大きな前進だというふうに思います。

 ただ、常勤職員がふえた施設と非常勤職員しか増員できなかった施設があるということで、やはり、常勤と非常勤では、業務の内容も、また賃金も、また身分の安定性、こういったことも違ってまいります。そうしますと、今、更生保護施設のマンパワーが足りない中で、どれだけの条件を提示して人を募集できるかというのも重要な中で、やはり非常勤職員しかふやせないというのはなかなかまた大変なことだというふうに思います。

 全国の施設が今精いっぱいの役割を果たすべく、本当に皆さん、最大限の努力をしている中で、ある施設では常勤職員の増員、ある施設では非常勤職員の増員ということであれば、こういったことが続けば、職員全体の士気が低下しかねないということにもなります。

 また、仮に受け入れが進んでいない更生保護施設であったとしても、職員体制が改善されることによって、例えば、在所者に対する処遇業務とは別業務である、矯正施設に行って受刑者とかと面接回数をふやすといったことが可能になって、新たな受け入れを進めることができるようにもなります。

 そこで、金田大臣、大臣は、先日の所信の中で、更生保護施設に対する支援についても着実に取り組んでいく、このようにおっしゃいましたけれども、今回の支援を第一歩として、残りの二十二施設の常勤職員の一名増員を初め、更生保護施設のさらなる支援に取り組んでいただきたいと思いますけれども、大臣の決意をお伺いいたします。

金田国務大臣 ただいまの御指摘のとおりであります。

 二十九年度予算、先ほど局長から申し上げましたが、この中では、大きな前進であったと思うんですが、全ての更生保護施設の中で、職員配置基準を一施設当たり四名から五名に増員するということ、職員体制の強化を中心とした経費が盛り込まれたこと、これは非常に大きな前進であったと思っております。

 ところで、ただいまの御質問に対しましては、再犯防止のかなめとしては更生保護施設は非常に重要な施設であるということであります。帰るべき場所のない刑務所出所者等を受け入れて、施設の職員が昼夜を分かたず社会復帰に向けたきめ細かい指導を行っていくという意味において、非常に重要な施設であるというふうに思っておりますので、法務省としては、更生保護施設の職員の活動を支える必要があると認識をいたしておりますし、これからも更生保護施設のさらなる体制の強化が図れるように頑張っていきたい、このように考えております。

 以上です。

國重委員 大臣、さらなる支援、ぜひよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十九分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山尾志桜里君。

山尾委員 民進党の山尾志桜里です。

 私たち民進党は、予算委員会における法務大臣の答弁姿勢、内容、これを踏まえて、残念ながら大臣の辞任を要求しましたし、今もそれは変わっておりません。

 なぜなら、予算委員会の議論の中核、この新共謀罪ですけれども、大臣みずからが、成案を得る前から声高らかに、従来の共謀罪とは全く違う、一般人が対象となることはないとメディアや国民に対して発信してきたわけです。その大臣みずからの発信の正当性に疑義があったので、私たちとしては、事実に基づかない言葉で国民に誤解を与えてはならない、国民に正確な判断材料を提供しなければならない、こういうことで成案前から予算委員会で質問してきました。

 しかし、質問をすればするほど、従来の共謀罪と今回の新しい共謀罪、その主体である組織的犯罪集団、その中核的な行為である共謀、これらの定義において全く変わりがない。準備行為が付加されたといっても、それがそもそも構成要件であるかどうかという根本的な問いにもお答えがない、共謀との線引きもお答えがない、質問すればするほど、従来の共謀罪との同質性が明らかになってくる、こういう状況でありました。

 また、もう一点、大臣は一般人が対象となることはないと言いながら、そもそも正当な活動をしていた団体は組織的犯罪集団に当たり得るのかという十二年前から存在していた基本的論点について、イエス、ノーと、政府、法務省の答弁は迷走し、最終的には、性質一変したと判断すれば当たり得る、こういう回答が出てきました。

 私たちは、何も乱暴に、では一般人も当たるじゃないか、こう決めつけているわけじゃないんです。ただ、私たちは大臣に聞いてまいりました。性質が一変したことを知らない構成員については例えば対象となるんですか、ならないと言うなら、知っているのか知らないのかをどのように捜査機関が判断するんですか、まさに捜査をして知っているのか知らないのかを判断せざるを得ないのであって、その意味で、少なくとも、一般人が捜査の対象となる範囲は、数百と言われる包括的共謀罪をつくることによってかなり拡大をするということ自体は率直に認めるべきだ、こう申し上げているんです。

 しかし、大臣は、こういった私たちの根本的な問いかけに対しても、一般人は当たらないのだと根拠なく繰り返す以外に反論材料を持っていない。そもそも、テロ対策としての立法事実について、三事案以外に多数頭の中にあると明言されながら、それを一つでも示さない理由についても一切説明ができていない。だから、なかなかこれでは真面目な議論をするのが難しい、建設的な積み上げがなかなかに困難だということで、申しわけないけれども、辞任すべきではないかというふうに申し上げております。

 それを前提に、きょうのこの法務委員会の質疑の中で、引き続き、この新共謀罪について、大臣は私たちと本当に建設的な議論をしていただけるのだろうか、こういう観点で幾つか御質問をしたいと思います。

 まず、きょう、一部の報道によりますと、与党に新しい共謀罪の修正した案のようなものが示されるのではないか、最初の案にはテロという言葉がなかったけれども、本日にも示される案には、テロという言葉が、五カ所なのかわかりませんけれども、ちりばめたものが提示されるのではないか、こんな報道がございましたので、最初にこのことを御質問させていただきます。

 大臣、与党に最初に提示された法案、これは当然、事前に法務大臣としてしっかり目を通して、そしてチェックをされたということでよろしいんですか。

金田国務大臣 山尾委員にお答えをいたします。

 与党に示すような案につきましては、私も事前にチェックをしていたはずであります。

山尾委員 していたのですか、していないのですか。していたはずではわかりません。どうぞ、もう一度お答えください。

金田国務大臣 していたと思います。

山尾委員 大変心もとないですね。していたはずですと、びっくりしました。本当にしたんですか。

 では、どういう観点からチェックをされたんですか。お答えください。

金田国務大臣 以前から、いろいろと御質問いただいた際に申し上げてまいりましたが、成案を得るまでの段階では、正式なことを私どもの方から、検討中でございますので申し上げることは難しい、このように思っております。

山尾委員 全く質問に答えておりません。

 もう一度だけはっきりと申し上げます。

 与党に示した法案、大臣はチェックをしたはずですとおっしゃいました。どのような観点からチェックをされたんですか。(発言する者あり)官僚に聞くところじゃないと思いますよ。委員長、時間をとめてください。

鈴木委員長 答弁準備中です。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 基本的な方向に沿うかどうかという視点でお話は伺っております。

山尾委員 基本的な方向とは一体どういうものですか。

金田国務大臣 時間がかかりますのは御理解いただきたいと思います。いろいろな御質問をいただいたこれまでのこともございます。そして、資料をたくさん持っていますが、御通告の中で、突然お示しをいただく質問でございますので、そういう意味では、自分自身が用意しております答弁を用意するのが時間がかかって、申しわけありません。

 基本的な方向というスタンスで、私どもは、現在検討中の方向はしっかり、間違っていないかということをチェックしながら進めているつもりであります。

 一般の方々が処罰されるおそれがないということをしっかりと、かつての議論の中で国民の皆さんの不安あるいは懸念というものがあったとすれば、それが国会でのどういう議論につながったのか、そういうことも踏まえて、このたびはテロ等準備罪の検討をしているわけであります。

 そういう意味におきまして、その基本的な方向がしっかりと正しくあるように、自分としてはそれを判断しているつもりであります。

山尾委員 大臣が最もこの法案に当たって大事な基本的な方向というのは、一般の方々が処罰されるおそれがないことだ、こういう御答弁だったと思います。そういうことなんですよね、基本的な方向とはという御質問にそういうことですから。そのことについては、後でしっかり質問をさらにしていきたいと思いますけれども。

 では、大臣、そういった御自身の考える基本的な方向を踏まえて、与党に提示する案を事前にチェックをされたということですけれども、その中にテロという文言は入っていましたか、入っていませんか。

金田国務大臣 ただいまの質問に対しましては、テロ等準備罪に関する法案の具体的な内容のお尋ねと受けとめております。いまだ成案に至っておりませんので、現在もぎりぎりの最終的な検討を行っております。法案の具体的な内容等に関する御質問でございますので、政府としては、責任を持ってお示しできる成案を得た段階で十分に説明を尽くさせていただきたい、このように考えております。

山尾委員 全然よくないんですね。成案の具体的な内容を聞いているのではありません。与党に提示をした法案の中にテロという言葉が入っていましたか、入っていませんか、こういう基本的な事項を尋ねています。お答えください。

金田国務大臣 成案を得る前の検討中、ぎりぎりの検討中と申し上げました。その検討中の法案に関します与党との個別のやりとりについては、御説明をすることは差し控えさせていただきたいと思います。

山尾委員 なぜ差し控えるべきだと考えるのですか。

金田国務大臣 法案につきましては、いまだ成案に至ったものではありません。現在もその内容について、先ほどから申し上げましたが、ぎりぎりの最終的な検討を行っているものであります。その過程において、その進捗状況を踏まえながら、必要に応じて適時適切に与党と相談をさせていただいているというところであることを御理解いただきたいと思います。

山尾委員 全く理解ができないのですけれども。

 立法過程というのは、国民、国会にとって非常に重要な判断材料の一つであります。いざ成案が出たときに、報道を見ますと、テロという言葉が入っている可能性は高いというふうに私自身は見ております。そういう中で、もし、当初、最初に与党に提示した法案にはテロという言葉が入っていなかったのに、国民に成案として提示するときだけテロという言葉が入っていたら、当然国民は素朴な疑問を持ちます。

 最初に提示した法案、法務大臣のチェックをしっかりと受けて提示された法案、最初のこの法案にそもそもテロという言葉が入っていなかったんだったら、本当にこの法案はテロ対策なんだろうか。だとしたら、では、なぜ法務大臣がチェックをして提示をした最初の法案にはテロという言葉を入れなかったのだろうか。後から私たち国民に示されたこの法案にはテロが入っているけれども、後から言葉をちりばめただけなら、本来は不要だと大臣は判断したのではないか。なぜ、言葉を入れる入れないの判断を変えたのか。国民を言葉でだますためではないとおっしゃるのなら、その経過説明をきちんとしてもらう必要がある。

 国民は当然そのように思うと思いますし、私も当然そのような疑問を生じます。だから、聞いております。

 成案の中身を今聞いているのではありません。与党に最初に提示した法案の中にテロという文字は入っていたのですか、入っていないのですか。

金田国務大臣 先ほどもお答えをいたしました。

 成案をまだ得ておるわけではございません。テロ等準備罪に関する法案の具体的な内容は、いまだ成案に至っておりません。現在もぎりぎりの最終的な検討を行っている段階であります。

 法案の具体的な内容等に関する御質問について、政府として責任を持ってお示しをできる、成案を得た段階で十分に説明を尽くさせていただきたい、このように考えております。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 山尾志桜里君、再度質問をお願いします。

山尾委員 大臣からは、成案の具体的な内容等についてお答えできないという答弁が続いているんですけれども、私は、成案の具体的な内容は今何も聞いておりません。与党に示した法案の中にテロという言葉が入っていましたか、いませんかということを聞いております。

 そして、この議論が成案を得てからやるべきなのかそうじゃないのかということは、大臣、予算委員会で、御自身の記憶の中で、これは大きな問題提起があったはずですよ。

 私は、この紙、いまだにずっと持っております。大臣が御自身の判断で出した紙ですね。成案を得た後に充実した議論を行うことが、審議の実を高め、国民の利益にもかなうものである、法案について成案を得て国会に提出した後、所管の法務委員会においてしっかりと議論を重ねていくべきものと考える。

 撤回したけれども、今だってずっと、理由にならない、成案を得た後。撤回したけれども、態度は変わっていないじゃないですか。だから、私は申し上げている。成案を得た後じゃないと答えられないことは、今聞いておりません。

 与党に提出した法案の中にテロという言葉があったのかなかったのか、お答えください。

金田国務大臣 ただいまの質問にお答えをいたします。

 先ほども答弁を申し上げましたが、国会においては、政府として責任を持ってお示しできる成案を得た段階で、その具体的な内容に基づいて説明を行う予定であります。

 いまだ成案に至っておらず、検討中の段階で、すなわち、まだ内容が流動的である状況において責任あるお答えをすることは困難でありまして、現在は、必要に応じて適宜適切に与党と政府の間で相談もさせていただいているのはそのとおりでありますが、そういう状況の中で、責任あるお答えをすることは成案が出るまではお待ちいただいて、そしてお答えを申し上げていくという対応が適切ではないか、このように考えているわけであります。

山尾委員 それでは、なぜ、今よりもより内容が流動的で成案が固まっていないこの一カ月、二カ月、大臣は、中身も固まっていないにもかかわらず、前の共謀罪とは全く違う、あるいは、本当かどうか知りませんけれども、正当な活動を行っていた団体がたまたま一回だけ犯罪を行ったことで犯罪集団と認められるようなことはあり得ないと、かなり、全く違うというような大きな話から、あるいはこの組織的犯罪集団の当てはめの細かい部分まで、御自身の都合のいいところは答弁を続けながら、なぜ私たちの質問に対してはそれを避けるんですか。合理的な理由を説明してください。

金田国務大臣 これまで、予算委員会で多くの質問を賜りました。そして、私も答弁できるところは答弁をさせていただいたつもりであります。そのときに、やはり立案の基本的方向を示すことが適切であると考えていたところを答弁させていただいたというのが私の思いであります。

山尾委員 要するに、大臣自身が恣意的に選んでいる、何について答えるか答えないか、それは自分自身の思いの中で選んでいる。合理的じゃないじゃないですか。

 このことについてさらに質問を続けますけれども、与党に最初に示した法案、これは公文書ですか、公文書じゃありませんか。

金田国務大臣 私の方からお答えいたしますが、検討中の政策の内容にかかわる部分でございまして、公文書であるとは考えていません。

山尾委員 本当に今の確定した答えでいいんですか。与党に提出した……(金田国務大臣「私の思い」と呼ぶ)思いを聞いているんじゃありません。法務省として与党に提出したこの法案というのは公文書なのか、イエスかノーか。

 よろしいんですか。公文書ではないと明快に答弁されました。よろしいんですか。公文書でないなら、その理由をお答えください。

 時計とめてください。相談するなら時計とめて。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 ただいまの御質問についてですが、通告をいただいておりません。そういう状況も踏まえて、よく整理した上でお答えをさせていただきたいと思います。

山尾委員 ということは、先ほど公文書ではないと明言されましたけれども、これを一旦撤回されるということですか。

金田国務大臣 ただいま申し上げましたように、よく整理した上でお答えをさせていただきたいと思います。

山尾委員 予算委員会の質問のときにも幾たびも感じたんですけれども、大臣は、思いをお話しになるのは、気持ちはわかるときはあるんだけれども、その後、結局、それも含めて検討するというふうに、事実上撤回されることが散見されたんですね。やはり、こういう答弁のあり方を少し修正していただきたいと思います。どの言葉を信じていいのか。私たちはやはり、大臣の言葉あるいは刑事局長の言葉、一つ一つの言葉を前提として議論を進めていくわけですから、しっかりと検討をしていただきたいというふうに思います。

 そして、この公文書のことにつきましては、やはり、名前をテロ等準備罪と変えたけれども、本当にテロ対策なのか。そもそも、この前提となっている条約は、テロを取り締まることが主目的ではなくて、お金もうけの組織犯罪を取り締まることが目的の条約である。そういう中で、突然衣がえをしてテロ等準備罪となっているけれども、本当にテロ対策なのかということが、今回、最初の大きな論点になっているわけです。

 この論点について、一つの判断材料として、大臣がチェックをして最初に与党に提示をしたその法案の中にテロという言葉が入っていたのか入っていなかったのか。これは、私たち、そして国民にとっても、この法案を是とするのか非とするのか、必要不可欠な大きな判断要素です。これを、きょうは絶対にお答えをしないというように、答えを避けました。私から言わせれば、大臣、チェックしたんだからお答えは知っているんでしょう、テロという言葉が入っているのか入っていないのか。

 では、確認のために聞きますけれども、大臣、この最初に提示した法案の中にテロという言葉があったのかなかったのか、それは大臣、御存じなんですか。

金田国務大臣 まず、ただいまの御指摘に対しましては、テロ等準備罪に関する法案の具体的な内容は、いまだ成案に至っておりません。現在もぎりぎりの最終的な検討を行っております。法案の具体的な内容等に関する御質問でございますので、政府として責任を持ってお示しできる成案を得た段階で十分に説明を尽くさせていただきたいと思います。

 それから、もう一点申し上げたいと思います。できるだけ、自分の考えではなくて、しっかりと努力をしたいと思います。先ほどの質問です、御指摘に対して。しかし、私の方からは、ぜひ前日のうちに通告をしていただければ、その準備もできるということもあわせて御指摘をさせていただきたいと思います。(発言する者あり)

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 先ほど申し上げましたが、条文案の内容につきましては認識はしております。その内容については、検討中の法案ですので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

山尾委員 きょうの私の質問は、大変恐縮ながら、大臣の資質を問う質問です。

 そして、与党に提示した法案をチェックされたとおっしゃるので、あれだけテロ等準備罪とおっしゃってテロ対策だというふうに説明をされてきたので、その法案の中にテロという言葉が入っていますか、入っていませんか、そして、それについては答えられないとおっしゃるので、では、そもそも入っているかどうか、そのことについて大臣御自身御存じですかという質問を先ほどからしております。御存じですか。

金田国務大臣 先ほども申し上げましたが、条文案の内容につきましては認識はしておりますが、その内容については、検討中の法案でありますので、お答えは差し控えさせていただきます。

山尾委員 はっきりしたことは、好意的に受け取れば、大臣は、最初に示した法案の中にテロという言葉が入っているのか入っていないのか、私は知っている、認識している、でも答えない、こういうことでありました。答えない理由の説明が検討中だからということで終わらせるのでは、この紙を出したときの大臣の姿勢と変わらないんですよ。

 では、成案を出されたら、最初に提示したものの中にテロという言葉が入っていたかいなかったか、お答えされるんですか。どうですか。

金田国務大臣 政府提出法案につきましては、法務省による法案に限らず、成案を得る過程において、その進捗状況も踏まえて、必要に応じて適宜適切に与党とも相談させていただいているものと承知をしております。

 国会におきましては、政府として責任を持ってお示しできる成案を得た段階で、その具体的な内容に基づいて説明を行う予定と考えておるわけであります。いまだ成案に至っておらず検討中の段階で、すなわち、まだ内容が流動的である状況において責任あるお答えをすることは困難でありまして、かつ適切ではない、このように考えております。

山尾委員 全く質問にお答えになっていません。

 成案を得たら、最初に提示した法案の中にテロという言葉が入っていたのかいなかったのか、きちっとお答えいただけるんですかという質問です。

金田国務大臣 成案を得た段階で必要に応じて説明をさせていただきたい、このように考えております。

山尾委員 必要に応じてという言葉が入りました。ということは、大臣が、もう成案がこのとおりなのだから、自民党に最初に提示した法案の内容について説明をする必要がないと判断された場合には説明されない、そういうことですか。

金田国務大臣 必要に応じて丁寧に説明をしていきたい、そのように申し上げる思いです。

山尾委員 結局、今の段階でも、何ら隠す必要がない、もう既に報道も多数されている与党に提示した法案、テロ対策と言っていたのにテロの言葉がなくておかしいんじゃないの、ちまたでこう言われているにもかかわらず、今この段階でわかっていても、その言葉が入っていないとは言わない。そして、成案を得てからとおっしゃるから、では、成案を得たら、実際その言葉、その答えをいただけるんですかというふうに御質問しても、お答えをするとは言われない。

 なぜ隠すんですか。(金田国務大臣「隠していない」と呼ぶ)このように最初の経緯を隠したまま突然成案の中にテロという言葉がちりばめられたとき、私たちは、これは何なんだと言いますよ。大臣、なぜ隠すんですか。(発言する者あり)いや、隠す理由を合理的に説明していただいていないから私は申し上げているんです。

 何かこれまでの答弁以上につけ加えることがあるなら御答弁いただきたいですし、ほかにないなら時間の無駄ですので結構ですが、大臣、いかがですか。(発言する者あり)

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 山尾志桜里君、質問を続けてください。

山尾委員 もう一度質問せよということなので質問しますけれども。

 最初に自民党に提示した法案の中にテロという言葉があるのかないのか、それについて大臣はお答えにならないということですので、なぜお答えにならないのか。御存じなのになぜお答えにならないのか、合理的な理由があれば、どうぞお答えください。もし今までのと重複であれば、時間ももったいないので結構です。

金田国務大臣 ただいまの御質問、テロ等準備罪の中に、条文の中にテロやテロ組織等の文言が入るかという趣旨である、このように受けとめております。その点は、その必要性等も含めてまさに現在検討中でありますことから、その必要性等も含めて現在検討中であることから、現時点でこれ以上お答えすることは、責任ある答弁を行うとの観点から困難でありまして、かつ適切ではないと考えるわけであります。もちろん、成案を得た後に必要に応じて丁寧に説明をする、このように先ほどから申し上げているつもりであります。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 まず、金田法務大臣。

金田国務大臣 テロ等準備罪については、まだ成案を得ていない。したがって、その内容等について、与党との相談を継続して行っている現状にあります。そのような検討中の段階で、そのため、条文の内容についても変わり得る状況において、国会の場で具体的な条文の内容を踏まえなければならない答弁をすることは、責任ある答弁を行うことの観点から困難である、かつ適切ではないと考えているということが今まで申し上げてきた理由になります。

山尾委員 予算委員会のときも、私が全く質問していないほかのことを長く答弁された上で、それを御認識になっていたからこそ、さて山尾さんの質問は何だったでしょうか、こういうことがあったんですね。

 そして今も、私は、成案の中にテロという言葉が入りますか、入りませんかと一度も聞いていないんですよ。にもかかわらず、二個前の答弁のときに、それに対する説明をるるされていたようですけれども、なかなか議論の積み上げが難しいんですよ、こういうやりとりだと。それを予算委員会で私たちはずっと感じてきて、そして、きょうもこうじゃないですか。

 私、時間ももう足りなくなってきているので、もう一つお伺いしますけれども、先ほど自民党の宮崎議員とのやりとりで、なぜ個別の予備罪を創設するのでは足りないのですか、こういうことを聞かれたときに、大臣はこのようにお答えになっていました。予備罪は予備行為を処罰するものであって合意を処罰するものではないからだ、こういうお答えでした。つまり、条約締結をするためには合意を処罰することが必要だ、こういう御認識と伺ってよろしいんですか。

金田国務大臣 それでよろしいと思います。

山尾委員 そうすると、今検討中の新しい共謀罪の中身というのは、合意を処罰するものということなんですね。

金田国務大臣 合意に加えて実行準備行為が行われたときに処罰をするものであるということであります。

山尾委員 もう一つ。同じ質問者とのやりとりの中で、大臣はこういうふうにおっしゃっていました。予備では客観的に相当の危険性がなければ処罰できない、こうおっしゃっておられたのは覚えておられますよね。よろしいですか。そういうふうにおっしゃっておられましたが、そうすると、新しい共謀罪というのは、つまり、客観的に相当の危険性がないにもかかわらず処罰するものなんですか。

金田国務大臣 実行準備行為のあり方については、成案を得た段階でしっかりと御説明をしたい、このように考えております。

山尾委員 もう一度聞きます。

 実行準備行為の定義を聞いているのではありません。大臣が御自身で、きょう、このようにおっしゃった、予備では客観的に相当の危険性がなければ処罰できないんだと。要するに、予備では足りない理由を聞かれて、予備では客観的に相当の危険性がなければ処罰できないからだめなんだ、こうおっしゃったから、これは確認ですよ、つまり、客観的に相当の危険性がないにもかかわらず処罰することが必要だ、こうおっしゃっているんですねというごく基本的な質問です。どうぞ。

金田国務大臣 テロ等準備罪の具体的な内容は検討中とは申し上げてきました。確定的なことは成案を得てから御説明をいたしますが、実行準備行為が現行法の予備行為以前の行為である場合があり得ることを申し上げておるつもりであります。

山尾委員 つまり、実行準備行為というのは客観的に相当の危険性がない段階でも当たり得る、そういうことですよね。

金田国務大臣 御指摘のようなものとして検討をしているところであります。

山尾委員 だんだんはっきりしてまいりました。今回検討されている新しい共謀罪、共謀プラス実行準備行為とおっしゃっていますけれども、この実行準備行為に関しては客観的に相当の危険性を必要としない、客観的に相当の危険性を必要としない、こういう初めての法務大臣の答弁だったと思います。

 そこで、私は、ここで最も基本的な質問をしたいと思います。客観的に相当の危険性を必ずしも必要としない段階で処罰をする包括的共謀罪をつくること、これは憲法に違反しないんでしょうか。

 最初に伺いたいと思います。この新しい包括的な共謀罪、これによって、憲法上の人権はいろいろありますけれども、どういう人権に触れる可能性があるか、どういう人権にきちっと着目して、合憲だということで検討しなきゃならないのか、もう既にされていると思いますので、それをおっしゃっていただければと思います。

金田国務大臣 テロ等準備罪、これにつきましては、重大な犯罪の合意に加えて実行準備行為が行われたときに初めて処罰できるものとして検討をしているところであります。もちろん、憲法には違反しないものとして立案を、検討をしているところであります。

山尾委員 全く質問に答えていないので、もう一度だけ質問します。

 この法案の検討に当たって、憲法上の人権全て挙げよとは申しません。幾つか、どの人権との関係をきちっと検討したのですか。

金田国務大臣 思想の自由、内心の自由、そうしたものを対象として検討はもちろんしております。

山尾委員 最初に思想、内心の自由、十九条、これが出てきたので、私自身は、法務省の方々、今回は内心を処罰するものではないんです、あくまでも行為を処罰するものなんですと相当私たちにおっしゃってきたので、まさか最初にこれが出ると思わなかった。思想、内心の自由、まずやはりこの人権制約があり得るということを今法務大臣はおっしゃったんですけれども、それでよろしいんですか。

金田国務大臣 委員も御承知だと思いますが、過去にそういう批判がなされたということを踏まえておるわけであります。

山尾委員 過去の、そういう内心を罰するものではないかという批判を踏まえて検討したということでした。

 そうしますと、この十九条、思想、内心の自由、そしてもちろん、これは刑罰権ですので、内心の自由や表現の自由の前提となる人身の自由、三十一条、こういったものも問題になる、それを検討されたんでしょうね。

 ということであればお伺いしたいんですけれども、こういった人身の自由、あるいは思想、内心の自由、最も人間にとって大事な重要な権利、こういったものとの調整が必要だと。これを大臣がおっしゃったのは、私はすばらしいことだと思います。では、こういったものとの憲法適合性が問題になるときに、合憲だということを立証する責任は、権利を制約する側にあるんですか、される側にあるんですか。

金田国務大臣 刑罰を科す側にその立証責任というか、違反ではないことを示していく必要があると思います。

山尾委員 私も同感です。

 そうであれば、この包括的な共謀罪、さっきのお話によれば、客観的に相当の危険性を必ずしも要しない段階で共謀を処罰する法律を包括的につくる、こういうものと、内心の自由、思想の自由、あるいは人身の自由、これを考量するときに、どういう判断基準を用いてこれが合憲だというふうに判断をされているんですか。

金田国務大臣 憲法との具体的適合性につきましては、成案を得た段階で、必要に応じて御説明をさせていただきたいと思います。

山尾委員 どういった判断基準を用いてこれを判断するべきかということは、成案を得る前でも成案を得た後でもお答えは変わらないはずです。

 最後の質問になります、時間が来ましたので。どういう判断基準でこの憲法適合性を判断されるべきだと法務大臣はお考えですか。

金田国務大臣 その判断基準というお話でございました。

 刑罰を科すことに、その必要性なり合理性なりがあるかどうかを判断していく、そういうふうに考えております。

山尾委員 きょうはこれで終わりにします。でも、必要性、合理性の基準というのは、合憲性判定基準の中では、厳格な基準ではなくて緩やかな基準です。大臣は、内心、思想の自由と考量しなきゃいけない、最も重要な自由と考量しなきゃいけないとおっしゃりながら、用いる基準は必要性、合理性ということで、私はLRAとか、やはり厳しい基準が出てこなきゃおかしいんですね、具体的な名前は出ないにしても。引き続き議論しましょう。

 ただ、今おっしゃった判断基準は緩やかな基準です。今回のこの包括的共謀罪の憲法適合性を判断するのに適切な基準ではないと私は思います。ぜひ御検討し直していただきたいと思います。

 以上です。

鈴木委員長 次に、階猛君。

階委員 民進党の階猛です。

 金田大臣、予算委員会以来何度も質問させていただいております。昨年の秋からこうしてやりとりをさせていただいていますけれども、私、当初は、隣の秋田、私は岩手なので、親近感も覚えて、そして比較的建設的な意見を私も述べさせていただきました。

 ただし、先ほど山尾さんも辞任要求しているんだということをおっしゃっていましたけれども、私もやはり、一番私は問題だと思ったのは、例の二月の六日の文書です。撤回されると言いましたけれども、私は、何が何でもあれは法務大臣としていかがなものかなということで、二月八日の質疑でも私このことを取り上げて、身を引くべきではないかというふうに申し上げました。

 もう一回、そのときに何を理由として辞任を求めたかということを申し上げます。三点、私は理由を言いました。一つ目は、国会の行政府への監視機能を奪い、国会の存在意義を失わしめる内容の文書を出したという意味において、国会に対する、いわば事実上のテロ等準備行為を行ったに等しいということ。それから二つ目は、国会で説明責任を果たすという法務大臣の資質を欠くことを自白したということ。そして三点目は、人権を守る立場でありながら報道の自由に介入しようとした。以上三点において法務大臣として失格ではないかということで、潔く辞任すべきではないかというふうに申し上げました。

 この大臣の資質の問題、今も変わっていないと思っています。ですので、きょうも、大臣の資質を問う質問を少し厳しくさせていただきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いします。

 そこでまず、先回のこの委員会での大臣の所信表明、聞かせていただきました。

 まず、冒頭で言われていたのは、国会の場における答弁等について、「常にこの基本的な姿勢のもとで臨んでまいりましたつもり」だというくだりがありまして、しからば、その基本的な姿勢というのはどんなものかということがその前の部分に書かれておりました。

 一つは、「法務省は、国民の皆様の安全、安心な生活を守る基盤を支える重要な任務を負っておりまして、職務を着実に遂行すべき」ということ、それからもう一つは、「法務行政が身近で頼りがいのあるものであると国民の皆様に思っていただけるよう努めること」ということを大臣はみずからの基本姿勢だというふうに言われていたわけです。

 しかしながら、職務を着実に遂行するとか、あるいは身近で頼りがいのあるように思っていただける、この部分について、残念ながら、これまでの答弁を見る限り、到底そうは言えないんじゃないかと思っております。

 この大臣の基本的な姿勢、これは揺るぎないということを自信を持って言えるんでしょうか。大臣、お答えください。

金田国務大臣 階委員は、同じ東北におられて、非常に頼もしい、そういう思いを持って、昨年、今の仕事を始めたときからの御縁には非常に感謝をしているつもりであります。

 そういう中で、私は、先日、三月三日でございましたか、所信表明をさせていただきましたが、本当にあそこで申し上げたことは私の思いそのものでありまして、その思いが通じるとき、通じないときというのはあろうかとは思います。でも、あの思いは一貫しているものでありますから、そこをぜひ御理解いただいて、これからも御指導を賜りながら、そしてまた私も、一生懸命、法務行政に対しましては、自分の職責を全うすべく誠心誠意頑張っていきたい、このように考えておる次第であります。

階委員 別に私も個人的な恨みはないんですけれども、法務省の仕事を、職務を着実に遂行できるのか、それから、法務行政が身近で頼りがいのあるものであると国民に思っていただけるのか、私は、ここ、甚だ疑問なんですね。それは国会の答弁を聞く限り、そう言わざるを得ません。

 きょうも山尾さんの質問に対して、私は、一々役所の人に御指示をいただかなくても、自分の言葉で答えればいいと思うんですよ。その方が議論も前に進みますし、そんなに厳しいやりとりにもならないと思うんですね。ですから、法務省のトップとして、やはり、今の大臣の姿勢、今の大臣の仕事のやり方では務めるのは厳しいのではないかなと思いますよ。

 大臣、本当に今のままでこの先、たくさん重要な法案、この共謀罪だけじゃなくてありますけれども、やっていけると思いますか。

金田国務大臣 皆様の御協力もいただいてやっていきたい、このように考えております。

 しかし、一言だけお願いをさせていただけるとするならば、ぜひとも階先生にもお願いをしたいことがあります。

 私は、確かに、二月六日の件につきましては反省をいたしております。しかしながら、予算委員会の中で、議論の中で、私どもは成案を得なければお答えすることが難しい、そういう御質問もあるんですね。ということもお踏まえいただいて、まだ成案にどういうふうにたどり着くかわからない状況の中で、議論をして検討をして、私の部下の職員の皆さんが頑張っている、そういう中で、お答えできることはお答えしたいんですが、それができる場合、できない場合がある。そういうことに対して、私に常にいろいろと教えてくれる部下もいます。その皆さんに確認をしなければ話ができないこともあるんです。

 それはどういうことかといえば、前の晩からここに着くまでの間にそういうことをやってもいいのかもしれません。でも、それは通告のあり方にもかかわってくるんだと思います。私は、通告の中で、どうか、先生方のその温かいお心、法務行政を思う心をしっかりと踏まえて、私たちに質問をしっかりと、あしたはこういうことを聞くぞということを投げかけていただければ幸いだな、そういう思いを持っております。

 ここにたどり着くまで、共謀罪について聞くぞと言われれば、ああ、そうですかとなります。でも、それがわからないと、やはりその都度、お話をいただいたことに対して、行政としての判断、そういうものを、参考意見を私の同僚から、部下から聞かなきゃいけないときも出てくるんだということを御理解いただいて、やはり私は、実りある議論に持っていきたいなという思いは、いまだにそれは持っているわけであります。でも、そこのところは、通告の仕方はいろいろだろうと思います。

 ですから、私が思っている一端を申し上げましたが、そこのところはぜひお願いをできれば、お互いにプラスになるのではないのかな、この委員会が活性化してくるのではないのかなという思いは持っております。

階委員 今の点については二つ申し上げますけれども、まず、大臣の資質を問うということを私は事前に申し上げておりますが、資質について疑念が生じたのは、二月六日の文書、大臣が指示をして出された、ここに原因があるわけですから、これはみずからまいた種だということを御理解いただきたい。そして、資質を問うと言っている以上、何も細かい専門的なことを聞くつもりはありません。成案を得てからでないと答えられないことも聞くつもりはありません。だからこそ、自分の言葉で答えていただきたいと思います。

 そこで、お尋ねします。

 さきの大臣所信の中で、二枚目でしたか、「テロ等準備罪の創設等を含む組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案をできる限り早期に国会に提出」というくだりがありました。

 ここで明確にテロ等準備罪の創設とおっしゃっています。テロ等準備罪という罪名はもう確定したものなんでしょうか、お答えください。

金田国務大臣 そのテロ等準備罪というのは呼称であります。

階委員 これはどういう意味なんですか、呼称というのは。正式な罪名ではないということを言われたんですか。どちらですか、お答えください。

金田国務大臣 テロ等準備罪の具体的内容につきましては現在検討中でありますが、基本的な考え方として、対象を組織的犯罪集団、つまり重大な犯罪等を行うことを目的とする集団に限定することを検討しております。国内外の犯罪の実態を考慮すると、そうした犯罪組織による犯罪の中で重大なものの典型がテロ組織によるテロである、このように受けとめております。

 また、テロ等準備罪は、重大な犯罪の合意に加えまして実行準備行為が行われたときに初めて処罰されるものとすることを検討いたしております。

 したがって、テロ等準備罪という呼称は、このような罰則の実態を反映したものとして、呼称として適切である、このように考えておる次第であります。

階委員 端的に答えてください。正式な罪名ですか、違いますか。

金田国務大臣 呼称であるというふうに考えております。(階委員「だから、答えていない。正式な罪名かどうかと聞いているんですよ。イエスかノーで答えてくれればいいんです。とめてください」と呼ぶ)

鈴木委員長 今準備しています。待ってください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 全ての罪について正式な名称がついているわけではないのであります。その中で、あくまで呼称と呼んでおります。

階委員 正式な罪名かどうかということを聞いております。真正面から答えてください。呼称かどうかということは聞いていません。正式な罪名かどうか、イエスかノーでお答えください。

金田国務大臣 階委員の御質問についても、成案が出た段階で、その呼称についてはどういうふうに判断をしていくのかということを御説明できるかと思います。

階委員 なぜ質問に対して明確に答えられないんですか。

 今の段階で正式な罪名は決まっていないということを今言われたいんでしょうか。未定だということを言われたいんですか。それならそれで答えてください。正式な罪名は未定ですと今答えてください。

金田国務大臣 成案の時点で正式にお話しできると思いますが、そのような問いであれば、今の段階では未定ということになろうかと思います。

階委員 これぞまさに印象操作ですよ。未定なのに、テロ等準備罪という言葉をしきりに使って、大臣の所信でも使っている。おかしいじゃないですか。なぜテロ等準備罪という言葉を使うんですか。

 これは誰が名前を考えたんですか。名づけ親は誰ですか。お答えください。

金田国務大臣 テロ等準備罪という呼称は、法務省内部において、TOC条約の担保法案の内容を検討していく過程で、法案の実態を踏まえた呼称として徐々に使われ始めました。そして、やがて収れんして用いられるようになった呼称であります。いつ、誰が使用し始めた呼称であるかは不明であります。

 いずれにしても、テロ等準備罪という呼称は、本罪を新設する趣旨や本罪が対象とする犯罪を端的にあらわすものとして適切である、このように考えている次第であります。

階委員 いずれにしても、正式な罪名とはまだ決まっていないものを、あたかも、「テロ等準備罪の創設等を含む」ということで、大臣の所信の中では呼称とも仮称とも全く書いていないわけですよ。そうやって世論を誘導しようとする。これこそまさに、安倍首相がよく言われる印象操作だと思います。

 それで、このテロ等準備罪について、いわゆる準備罪というのは現行法もありますよね。予備罪との並びで準備罪という犯罪類型があります。ところが、これは、準備罪といいながら合意を処罰する、先ほど言われていましたよね。合意を処罰するのに準備罪、これは今までの刑法の言葉遣いとは明らかに違います。これもまた錯覚を招くものです。

 また、テロ等と言っていますけれども、等という方が実は、この四年以上の罪という、TOC条約に言う「重大な犯罪」の中では、等の方が大きいわけです。普通は、テロ等といったら、テロに関する犯罪が圧倒的多数で、その他が少数な場合にテロ等というんじゃないですか。

 何か呼称としてふさわしいようなことも言っていましたけれども、仮にこれが正式な罪名じゃなくて呼称、仮の名前だとしても、私は全く適切ではないと思いますよ。

 テロ等準備罪、なぜこの言い方が適切だと考えるのか、わかりやすく説明してください。先ほどと同じことを繰り返されるなら答弁は要りません。同じことを何度も言われていますから、同じことの繰り返しでしたら言わなくて結構です。しかも、原稿を見ながらだったら答えなくてもいいです。今、私の問題意識に応えられる言葉があるのでしたら、お答えいただきたいんですが、いかがでしょうか。

金田国務大臣 ただいまの御質問にお答えをいたします。

 国内外の犯罪の実態を考えてみるときに、そうした犯罪の実態を踏まえると、組織による犯罪の中で重大なものの典型がテロである、テロ組織によるテロであるというふうに考えております。

 したがいまして、このテロ等準備罪の呼称というのは、現在検討をしております中においては、呼称としては非常に妥当な呼称ではないかなというふうに考えております。

階委員 ちょっと私はよく理解できませんでしたね、なぜこの呼称が適切なのか。

 準備罪というのであれば、現行法だと、予備罪、準備罪というのは、まさに具体的な危険がある行為を準備罪と呼んでいますし、テロ等というのであれば、テロがメーンで、等という部分に含まれるのは少ない数、付従的なものということになると思いますよ。

 このテロ等準備罪という呼称、今後も、これは呼称だから使われるということになるんでしょうか。私はやはり、今までの議論を踏まえますと、まだ正式な罪名も決まっていないということであり、また現行の準備罪とも違う、あるいは、テロ等という割には、等が付従的でテロがメーンなのかということも決まっていないということであれば、こうした言葉は誤解を招くので、国民を誤導するものであるので、共謀罪という従来どおりの言葉でいいんじゃないかと思うんですが、大臣、これの呼び方、呼称テロ等準備罪は改めて、従来どおり共謀罪という言葉を使われるべきではないかと思うんですが、いかがですか。

金田国務大臣 いずれにいたしましても、テロ等準備罪という呼称は、本罪を新設する趣旨あるいは本罪が対象とする犯罪を端的にあらわすものとして適切であると考えておる次第であります。

階委員 それは皆様方が言っているだけであって、根拠はやはり乏しいと思いますよ。まして、法案の中にテロという言葉が入らなかったりしたら、まさしくテロ等準備罪というのは印象操作のための方便にすぎなかったということになりますので、そこは肝に銘じていただきたいと思います。

 大臣所信に戻りますけれども、復興のことについても触れていただきました。昨年の秋も復興のことについて触れていただいて、もうすぐ三・一一も近づいている中で、これは私、被災地の議員としては非常にありがたいことだと思っています。

 ところで、この所信、あるいは昨年の秋の臨時国会での、これは所信と言わずに挨拶というんでしょうか、この両方で復興について触れられていますけれども、特に今回新しく加わった部分、従来と変わった部分というのはあるんでしょうか、ないんでしょうか。お答えください。

 すぐ答えられなければすぐ答えられないで、結構です、時間がもったいない。

 ちょっととめてください。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 今回入ったものの中に、相続登記の促進という事項があったのではなかったかなというふうに思います。

階委員 この相続登記の促進というのは、被災地でも重要ですけれども、これは全国的な話ですよね。なぜ復興のところにあえて入れているのか。

 予算に関する資料、私、きょう持ってまいりましたけれども、この中で、相続登記のことについて、ポンチ絵があります、相続登記の促進ということで。これは、当然大臣もわかった上で所信に入れられていると思ったんですけれども、相続登記の促進というのは全国的な問題だと思います。所有者不明の土地あるいは空き家がふえている中で、これは全国的な話だと思うんですけれども、あえて復興のところにだけ入れたということはどういう意味を持つんでしょうか。

 大臣、お答えください。所信で言われたことですので、大臣、答えられると思いますので、教えてください。

金田国務大臣 今委員がまさに御指摘なさったと思うんですが、所有者不明土地問題それから空き家問題、こうした問題が全国的に取り上げられる中、これら問題の要因の一つとしては、相続登記が未了のまま放置されていることが指摘されておったと思います。

 これらの問題の拡大を防ぐためには相続登記の促進が重要だということが被災地の復興を機にクローズアップされたものだ、こういうふうに私は認識をしておる次第であります。

階委員 これも明確な答えをいただいていないんですけれども、全国的な問題ではありますよ。

 それで、相続登記の促進という目的はいいでしょう。問題は、目的に即した手段になっているかどうか。これは、大臣、この手段について御存じなのかどうか、本当にこの手段でいいと考えていらっしゃるのかどうか、お答えいただけますか。

金田国務大臣 法務省としては、相続登記の必要性についてまず理解が進むように、平成二十七年、おととしの二月から、相続登記の促進に関する記事を法務省のホームページに掲載をして、広報を開始いたしております。昨年五月、二十八年五月には、法務省では関係資格者団体と共同してリーフレットを作成して、そして各地の法務局において、そのリーフレットを、市区町村の協力のもと、死亡届を受理する窓口等へ備えつけたり、相続登記を促すポスターを掲示したりしているところであります。

 このような広報活動に加えまして、昨年三月には、相続登記の添付書面に関する通達の一部見直しを行いまして、手続を簡素化しまして申請手続の負担を軽減するということを行っているわけであります。

 法務省としましては、こうした各種の取り組みを通じまして、関係省庁とも連携をしながら、引き続き相続登記の促進に向けて取り組んでいく必要がある、このように考えている次第であります。

階委員 大臣、よくこの件、調べた方がいいですよ。

 これは東日本大震災の復興の文脈で書かれていますけれども、そもそも、自分が相続人だということであらわれていないから問題であって、手続をしたいと思って登記所に来る人の手続が今までよりも簡単になりましたということで解決できる問題じゃないんですよ。そもそも、そういう人が手続に来てくれないのが問題なんですよ。手続を簡単にしたからといって登記の促進にはならないですよ。復興の中で論じているのは全く的外れです。

 今後、相続が全国あちこちで発生するときに、この相続登記の促進策というのが功を奏すかどうか。これもまたよくわからないところがあります。相続登記を促進するための新たな証明制度を導入と言いますけれども、この新たな証明制度を導入したところで、最初に登記所に持っていく書類は従来と変わらないわけです。だから、別に、手続が相続登記ということに関して言えば簡便になるわけでもない。震災の復興にもプラスにならないし、また、今後の相続登記の促進という意味でも私は必ずしも効果的ではないと思っています。

 こういうことを、私は、大臣、国民の代表で大臣になっていらっしゃるわけですから、本当に国民の目線で、官僚の言われたことをそのままうのみにするのではなくて、厳しくチェックしていただきたい。そうじゃないと大臣でいる意味がないですよ。だから、私は、これは大臣の資質というところで重視しますよ。

 大臣、今の私の見解を受けて、何かお答えございますか。

金田国務大臣 階委員からの相続登記の促進についての貴重な御意見をしっかりと受けとめて、これからの法務行政にどのような形で努力を続けていくかをまた考えてみたい、このように思っております。

階委員 それから、訟務局というのが最近法務省に置かれましたよね。所信の中で、訟務機能の充実ということについても触れられていました。その中で、「法的紛争を未然に防止するための予防司法機能の充実」ということも書かれております。

 ところで、昨今話題となっている森友学園の問題、あれは同僚議員も予算委員会で毎日のように追及していますので、大臣も仄聞しているかと思います。あれは、なぜ簡便な手続で八億円のディスカウントをしたかということを私たちも追及しているんですが、その中で、財務省側の答弁は、急がないと三月の期限に間に合わなくなって訴えられるリスクがある、損害賠償を求められるリスクがあるから急ぐためにやったんだということで、急ぐために簡便な手続でああいう八億円のディスカウントをやったんだという話をされるんです。

 訟務機能の充実という中で、法的紛争を未然に防止するのであれば、そのようなやり方、これは当然訟務局に相談があってしかるべきだと思うんですけれども、これは大臣の方に、お耳に届いていますか。いかがですか。

金田国務大臣 私の所信の内容に関連をして、訟務局の事務にかかわるものとして、ただいま、またアドバイスをいただいております。非常に貴重なアドバイスを数々いただいてありがたいのですが、個別の案件についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

階委員 では、一般論としてお聞きしますけれども、例えば、原局、それぞれの担当部局で、これは訴訟リスクがある案件だというふうにその当該部局が判断したという場合に、訟務局に事前に相談される仕組みにはなっているんでしょうか。当然なっているものだろうなというふうに推測するんですが、その点、いかがなんでしょうか。基本的なことなので、大臣、お答えください。

金田国務大臣 訟務局におきましては、我が国の行政の法の適合性、これをより高めていく、そしてまた、法の支配が貫徹された国家として我が国の国際社会における地位をより高めていく、そうしたためにも予防司法の強化というものに取り組んでおるわけであります。

 その一環として、各府省庁から寄せられます行政施策に関します照会事案に対しては、具体的な法的な紛争が生じる前であっても、これまでの訴訟対応等によって得た知見を提供するといったような形で、法的問題について助言をしたりしているところであります。

階委員 幾ら専門的な知見が法務省にあったとしても、相談がなされなければそれを発揮することができないわけですよね。相談がなされる体制になっているのかどうか。

 もともと問題が生じた部局でこれは訴訟リスクのある案件だというふうに判断したときに、相談を受ける体制になっているのか、相談が来る仕組みになっているのかどうか、これをお答えください。

金田国務大臣 訟務局の相談体制として、関係省庁ごとに窓口を設置いたしております。そして、関係省庁において必要に応じて相談がなされて、法的問題について、その必要に応じて回答をするというやり方をとっているというふうに承知しております。

階委員 これも一般論としてお尋ねしますけれども、私の、この法務省が作成した予算関係の資料でも、「「国が訴えられる」防ぐ法律相談」ということで、「活用三百三十件」という新聞記事のコピーがここに載っていますね。それで相談を受けると思うんですよ、いろいろと。

 訴訟リスクがある場合に、私も一応弁護士なので、まず最初に申し上げるのは、相手との交渉経緯というものはちゃんと記録にとっておきましょうということはイの一番で申し上げます。

 皆さん法務省も、相談を受けたらそういうことをまず言われますよね、当然のこととして。一般論ですけれども、どうでしょうか。

金田国務大臣 事案に応じまして、記録も含めて適切に処理をしている、このように承知をしております。

階委員 訴訟リスクがあるのに、その相手方との交渉記録などをすぐ廃棄するということは、法務省がもし相談を受けたらあり得ないですよね。相談を受けて、これは廃棄していいですよ、そんなことはあり得ないと思うんですよ。

 そもそも、ここで個別具体的な話になりますけれども、こうした森友学園のような問題について、法務省は質問を、相談を受けているのかどうかということはお答えいただけますか。

金田国務大臣 個別案件につきましては、相談の有無も含めまして差し控えさせていただきたいと思います。

階委員 訴訟リスクを低減しているというふうに言いますけれども、具体的にどのような活動をしているのかというのは全くわかりません。

 私が一般論で今申し上げましたけれども、相談はどのような場合になされるのか、そして、相談を受けた場合に一般的にどのような指導をされるのか、このことについて後で文書で提出していただけませんでしょうか、大臣。

鈴木委員長 後刻理事会で協議します。

階委員 では、委員長によろしくお取り計らいをお願いいたします。

 さて、だんだん時間も限られてきましたので、所信の中で述べられていることの中に、これは昨年の秋にも述べられていました、北朝鮮に対する対応です。

 北朝鮮がきのうもミサイルを、まさに大臣の地元の秋田県のすぐ近くにミサイルを撃ち込んだわけですよ。とんでもないことですね。この北朝鮮のミサイルに関して、昨年の秋もそうですけれども、「核・ミサイル開発に関連をいたしました情報の収集をさらに強化」ということを所信の中で述べられている。昨年の秋にも述べられていたわけです。

 私は、昨年の秋の文言を見て、当然、今回の発射前に情報はきちんと入手されていたんだろうなというふうにも思いますけれども、他方で、ちょっと今回の件については、この事件が起こった後も余りにも今までと同じような対応で、私は、本当に対応が十分だったのか、極めて疑問に思っています。

 情報収集をさらに強化と昨年来言っていますけれども、何を今までやってきたんでしょうか。

金田国務大臣 委員がただいまお話しされましたように、我が国のEEZ、排他的経済水域内に落下、着水したというふうに見られます弾道ミサイルの発射を強行したことについては、我が国を含む地域、国際社会の平和と安全を損なうという意味において、安全保障上の重大な挑発行為であると認識をいたしております。

 本件については、御指摘の点も含めて、公安調査庁におきまして、総理指示を踏まえて、既に設置されております北朝鮮による核実験・ミサイル発射事案に関する緊急調査本部から各公安調査局、公安調査事務所に調査指示を出すなど、国内外の諸動向に関連します情報の収集と分析をさらに強化しているものと承知をいたしております。

 今後とも、関係機関と連絡を密にしながら事案には適切に対処をしていきたい、このように考えておる次第であります。

階委員 同じことを昨年の秋の臨時国会でも言われて、「情報の収集をさらに強化」と言っていたわけですけれども、今回このようなことになっているわけですね。私は、本当に何を今までやってきたのかなと、これは素朴な疑問ですよ。

 大臣として、この分野についてしっかり、担当の公安調査庁ですか、監督してきたのかどうか、お答えいただけますか。具体的にどのような監督をしてきたのか、お答えください。

金田国務大臣 委員の御指摘は、私も着水した地域が近い秋田が地元でございますので、非常にいろいろな思いを持って委員のお話を伺っておりました。まさにできるだけのことをしなければいけない、こういう思いを持っております。

 しかしながら、これ以上具体的な内容につきまして明らかにすることは、今後の業務遂行に支障を来すという面もあることも御理解をいただきたいものと思っております。

階委員 事前にどういうような監督を大臣としてしてこられたのかと言っておりますので、別に、具体的にこういうことをやれと指示したとまでは言わなくてもいいですけれども、何か特別にこの部分について大臣として取り組んできたことはあるんでしょうか。

金田国務大臣 もちろん、必要に応じまして適宜適切に必要な指示は行っておりますけれども、具体的な内容については、事柄の性格上差し控えさせていただきたいと思っております。

階委員 適宜適切にとおっしゃいましたけれども、ちょっと何か、今の質問に対する答えを見ていると、やや対応が後手ではないかなという感はあります。

 そこで、きょうはもうこれで質問を終わりますけれども、テロ等準備罪だけではなくて、法務省の所管する分野というのは、きょう指摘をしました法務局の相続登記の問題、あるいは霞が関の予防法務の機能、そして北朝鮮の核、ミサイルへの対処、さまざまな分野がありまして、まさにテロ等準備罪だけで四苦八苦しているような大臣では到底、我が国の法務行政、身近で頼りがいのあるものにもできません、そしてしっかりと業務を遂行しているとも言えません。

 もう、きょうの質疑も通じて、私、申しわけないですけれども、やはり、その責務の重大性を鑑みれば、御自身で進退は潔く判断していただいた方がいいのではないかということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。

 私も、二月の予算委員会で大臣に辞職を求めました。その後、衆参の予算委員会をずっと拝聴してまいりましたが、残念ながら、大臣たる答弁をいただいているとは、いまだ現時点ではそう感じることができず、きょうも引き続き辞職を求めるという前提に立って質問をさせていただきます。

 まず、この共謀罪、テロ等準備罪、呼び方はいろいろあると思いますが、私は、これから提出される法案の審議の入り方、一番最初に一月の本会議、予算委員会のあたりから議論に入ったのですが、その最初の政府の答弁のあり方というものに物すごく大きな問題があったと考えております。

 一月二十三日、衆議院本会議で安倍総理は、この共謀罪について、質問に答えた後に、「なお、現在政府が検討しているテロ等準備罪は、テロ等の実行の準備行為があって初めて処罰の対象となるものであり、これを共謀罪と呼ぶのは全くの間違いです。」と。全くの間違いだということを、「なお、」という言葉をつないで、あえて付言をされている。その後、二十四日、衆議院の本会議でも同様の答弁、二十五日、参議院の本会議では二回同じ発言を付言されております。

 金田大臣も、今国会初めてこの問題について議論に立たれた一月二十六日の衆議院予算委員会で、「従前の共謀罪とは全く別物でございます。これを共謀罪と呼ぶのは誤りである、この点は申し上げておきたい」と、総理と同じように、全くの別物、今までと一緒にするのは間違いだということをあえて付言をされております。

 しかし、ここまでの政府の主張を聞いておりますと、当初は六百を超える対象犯罪があった、過去の共謀罪ですね。それが三度廃案になった、国民の理解を得ることができなかった。そして、その不安を払拭するために、今回、条約のオプションを行使する。きょうは踏み込みませんが、条約をよく読んだら、組織集団を限定したりですとか、実行準備行為というものを加えたり、そうした条約のオプションを使って、今度、報道によれば二百七十七。大臣も実際、絞り込み、少なくなると思いますということは答弁をされております。

 こうした一連の政府の答弁を聞いておりますと、私が問題だと申し上げた冒頭の発言、ここをもしあえて付言をされるというのであれば、過去の法案が国民の理解を得ることができなかった、したがって、もう一度よく条約を精査して、分析をして、改めて、対象の犯罪、対象団体、これを限定して出直すから、国民に理解をいただきたい、そういうスタンスで入られるべきではなかったかとずっと思ってまいりましたが、その点についてコメントをいただきたいと思います。

金田国務大臣 御指摘に関連しましては、私どもも、かつての共謀罪と違う、何が違うのかということについていろいろと御説明をしながら進んではきたものというふうに思っておるわけであります。

 主体を組織的犯罪集団に限定し、実行準備行為があって初めて処罰できるものとするものであって、共謀したことのみで処罰されるかつての共謀罪とは別物と言えるんだというふうに申し上げてきたことを御指摘だったと思うんですが、そういうことを指摘してきたことも事実であります。

 過去の共謀罪を含む法案審議の過程において、やはり国民の皆様の不安や懸念を払拭できなかったことについては重く受けとめておるわけであります。新たな法案の提出に当たりましては、国民の皆様に対する丁寧な御説明が必要であることは十分に認識をしておるつもりであります。

 そのため、法案については、成案を得ていない現段階においても、その検討の方向性等につきましては可能な限り御説明を行っていきたい、このように思っているわけでありますが、ただ、法案について成案を得ておらないという現時点で、説明のできる内容にはおのずと限界があることにもどうぞ御理解をいただきたいな、このように思っておるわけであります。

 今後、成案を得た後には具体的な法案の内容に基づいて御説明を尽くしてまいりたい、このように思っています。

井出委員 今お話があった、その中の部分にきょう入るつもりはございません。

 今、国民の理解が得られなかったことを重く受けとめていると。そういう話をやはり最初から言っていただくべきだったと私は思います。

 安倍総理大臣は、一月二十六日、衆議院の予算委員会で、これまでの過去の法案から今回の法案に至る間のことについて、反省という言葉を一度使われております。しかし、必ずしもその趣旨は明確ではございません。

 私が一番問題としたいのは、これまでの過去の法案が理解を得られなかった、それを踏まえて、条約を見直して、解釈を見直して、大きく変えようとしているのは皆さんなんですよ。ですから、理解を求めなければいけないし、過去の法案が理解を得られなかったことに、もっときちっと率直に反省と言っていいと思うんですよね。そういう姿勢が冒頭お話しをした答弁では一切なくて、むしろ、過去強い反対があって、この法案を不安に思っている人がいる、そういう人たちを上から、これは間違いなんだ、そう言っている人たちが何かおかしいと。国民の理解が得られなかったということを重く受けとめているんだったら、なぜそういう上からの視線の答弁になったのか。申し上げていることはわかっていただいていますか。

 この法案がこれからどうなるのかわかりませんが、この法務委員会、それから、恐らく審議入りするとなれば本会議でも趣旨説明が行われるでしょう。そこの文言に今私が申し上げたような趣旨を必ず取り入れていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

金田国務大臣 井出委員からの非常に貴重なアドバイスだというふうに思っております。

 先ほど申し上げたとおり、過去の組織的な犯罪の共謀罪を含む、いわゆる共謀罪を含む法案審議の過程において国民の皆様の不安や懸念を払拭できなかったことについては重く受けとめておりまして、新たな法案の提出に当たりましては国民の皆様に対する丁寧な御説明が必要であるということは認識をいたしました。

井出委員 冒頭紹介した政府の発言というものはこれまでになされておりますので、それがなければなという思いは本当にあるのですが、重く受けとめていただきたいですし、できれば、この国会の冒頭で付言してきたものについての反省についてもきちっと言及をしていただきたいと思います。そのことについてはいかがでしょうか。

金田国務大臣 委員の御指摘も踏まえまして、今後、対応を検討していく過程でそのアドバイスを生かしていきたいなと思っております。

井出委員 今度出る法案が過去の法案と別のものであるかどうかは、お互い、現時点ですと主張は違っていると思うんですね。ただ、その説明の仕方というもの、国民の理解の得方というものがあると思うということは申し上げておきたいと思います。

 次に、この法案がこれから世の中にどういう影響を与えていくのかということを少し考えていただきたい。

 二月八日、衆議院予算委員会、私の質問に対しまして、大臣は次のようにおっしゃっております。ですから、委員がおっしゃるように、さまざまな立場の皆さんの連携で、安心と安全、そして個々人の自由、幸せをしっかりと守るという気持ちを持つことが最も大事であると。それから、少し飛ばしますが、似たような話がもう一度出てきております。その先を思う、先生と同じ、まあ、私は先生じゃないんですが、我々はやはり国民の幸せと安心と安全を守りたい、その一心で議論をしていると。

 私、この大臣の答弁を引き出すに当たって、安全と安心という言葉は使いました。この安全というものは、大臣のおっしゃるテロ対策です。安心というものは、私が質問させていただいた刑法の謙抑主義、それから大臣がお答えになった罪刑法定主義の重要さを、その意味を込めて安心と安全という言葉を使いました。

 これに対して大臣は、その二語に加えて自由と幸せという言葉を使われた。個々人の自由ということについては、恐らく、刑法の謙抑主義、罪刑法定主義の大切さについて含意されたのだと思います。

 そこで、幸せというものについて伺ってまいりたい。

 共謀罪がフルスペックである国、アメリカ、イギリス。例えば、アメリカの現状が今どうなっているのか。九・一一という大きなテロ事件がありました。その後、治安対策の強化が急激に主張、推進をされております。もともとアメリカでは、一九七八年、外国情報監視法、FISAによって外国人の通信傍受というものが認められました。九・一一の一カ月後にその権限を強化するパトリオット法という法が成立をしまして、政府の監視活動を強化する条項が入りました。

 以下、ある論文を御紹介します。

 このパトリオット法においては、FISA、外国情報監視法に対して広範な通信傍受活動を認め、特定の電話回線、コンピューター及びその他の通信手段を個別具体に指定せずとも、対象者に対するまたは対象者によるあらゆる通信の傍受が可能となった。また、これまでは、監視活動遂行のためのサポートは、裁判所による指定を受けた第三者機関(有力な通信事業者等)によるものであることが必要だったが、パトリオット法においてその限りではなくなった。この修正は、善良な利用者、特に、公共施設(図書館、大学、インターネット喫茶等)においてインターネットにアクセスする者のプライバシーに大きな影響を与えることとなった。例えば、そのような施設において監視対象者が通信の実施をした場合には、FBIは当該施設の全ての通信をモニターすることができる。また、モニターに関する協力要請を受けた者(図書館等)は、モニタリングが実施されていることを口外してはいけない。また、この広範な通信傍受活動は、合衆国憲法修正第四条が要求する捜索令状において捜索場所の特定に合致をせず、合憲性に係る問題を生じさせた。

 この論文は、平成二十七年九月から翌二十八年の二月までアメリカに留学をした法務省公安調査庁の若手の職員が、「米国におけるテロ対策の現状及び課題」として公にしているものであります。

 この共謀罪という法律は、まあ、テロ等準備罪という名前でもいいですが、犯罪の実行着手から見て、現行法と比較した場合、予備罪、準備罪と比較した場合、時間的にかなり前の段階で、計画の段階で検挙をしていくということは、名前がどうであっても変わらないかと思います。

 通信傍受について、金田大臣は予定をしていないということを何度も答弁をされておりますが、その一方で、将来は検討の可能性がある旨の答弁をされております。この通信傍受の、使わない使わないと繰り返されている答弁の理由と、そしてまた、将来検討の可能性があるというこれまでの答弁は維持されるかどうか、改めて確認をしておきたいと思います。

金田国務大臣 テロ等準備罪の創設に伴って通信傍受の対象犯罪とする予定かどうかというお話であると受けとめました。テロ等準備罪を新たに設けることに伴いましてテロ等準備罪を通信傍受の対象犯罪とするかということは、全く予定をしておりません。

 そして、将来にわたって通信傍受の対象犯罪にしないと明言できるのかというふうに言われました。まあ、明言するのかということですね。それに対しましては、テロ等準備罪を含めて、通信傍受の対象犯罪を追加する法改正を行うことは予定はしておりません。

井出委員 ここはまたいずれ深掘りをしたいと思っておりますが、現在の通信傍受捜査というものは、きちっとその令状が要る、さまざまな限定がある。そうした中で実際に、共謀、合意という、これまでの刑法では一般的には取り締まってこなかった、まあ、限定で共謀罪というものもありますが、そうした段階のものに適用できるかというところはやはり議論があると思います。

 その一方で、警察庁は、これまで、今後の刑事司法のあり方などをめぐって、会話傍受と新たな捜査手法の必要性を繰り返し述べております。

 警察庁のホームページを見ますと、こんな文章があります。

 警察においては、警察捜査を取り巻く環境の変化に適切に対応していくため、会話傍受制度や仮装身分捜査、証人保護プログラム等のさまざまな捜査手法について不断に検討を進めていく必要があると、会話傍受のことはしっかりと出てきております。今読み上げました文章は、警察庁の採用情報サイト、新たに警察官になりたいという人が見るサイトです。ですから、警察の捜査の今後をしっかりと明示しているのかなと思います。

 通信傍受の拡大、それから会話傍受の導入、そうしたものが、今、法改正は予定されていないと。その一連の、会話傍受、通信傍受の拡大が、今検討されているこの共謀罪の新設、大幅な拡大によって、そうしたものの導入の議論が私は加速されるだろうと思って見ておりますが、その点についてはいかがでしょうか。

金田国務大臣 捜査手法のあり方、捜査のあり方については、個別具体的な事案に応じてさまざまでありまして、一概にはお答えをしかねるのでありますが、テロ等準備罪の捜査についても、現在行われている他の犯罪の場合と同様の方法で、刑事訴訟法の規定に従って必要かつ適正な捜査を行うこととなるものと考えております。

井出委員 このテロ等準備罪、共謀罪、私は、前段に少しアメリカの事例を取り上げましたが、日本はそういう大きいテロというものが幸いにしてないわけですね。ですが、アメリカの事情が理解できないわけではございません。

 実際、この共謀罪、テロ等準備罪の世論調査を見ますと、その必要性を容認する数字というものが高い、そういうものが新聞等で出ております。テロ対策の必要性を何となく皆さん、国民が感じているかもしれない。この点について、この法案でテロ対策が万全になるということはないということは、また機会を改めて徹底的に明らかにしていきたいと思いますが。

 一昨年、衆議院の法務委員会で通信傍受捜査の拡大について議論をしたときに似たような思いを、この共謀罪についてなぜ世論は容認をするのか、通信傍受捜査の拡大についてなぜ通信傍受捜査導入時のような大きな反対がないのかということを同じ思いで考えたのです。

 一つには、治安、犯罪対策というものへの要請があると思います。それともう一つは、インターネットでこれだけ今情報が氾濫をしている。インターネットに積極的に自分自身も書き込んでいる。メールやメッセージだって、さすがに自分のものは人には見られていないだろうけれども、アメリカの話とかを聞いていれば、見ようと思えば見られるものになっているのではないか。私は、これは一つの諦めのような心境の容認の仕方なのではないかなという思いを、通信傍受の捜査の拡大のときの議論そしてまた今回の世論調査の数字を見ていて思うのです。

 大臣の答弁でおっしゃった幸せというものは、日本が今、すばらしい治安を誇っている、その安全を守る、それから刑法、刑罰に謙抑的な、安心できる社会である。これは、世界の先進国ほど犯罪情勢は多様になってきますから、そういうバランスをとるということはなかなか難しい。そのバランスをとることこそが幸せな社会であって、どうせもう、インターネットというものは自由にやれるけれども、みんな見ているんだ、悪いやつは監視されるんだ、そういう気持ちで日々過ごしていく社会というものが本当に幸せと言えるのか。そのことについて伺いたいと思います。

金田国務大臣 幸せという意味をどの範囲で捉えるかというのはあろうかと思います。幸せは非常にさまざまな内容を持つものだと思います。

 今委員が御指摘になられた、監視のないという表現をされましたが、それも非常に重要な要素ではないかな、こういうふうに考えておる次第であります。

井出委員 刑法の謙抑主義というものを、言葉は前回の予算委員会でも紹介をしたんですが、それを日本で一番最初に言った方は宮本英脩さんといいまして、京都帝国大学の教授の提唱であると言われております。一九二六、昭和元年に、刑法学綱要第一分冊というものの中で初めて紹介したと言われております。

 この方の論文を読んだのですが、この宮本さんは、人間の風邪や病気に社会と犯罪との関係を例えられて、社会も時を経ていくといろいろな犯罪要因が出てくる、それに対して手を打っていかなきゃいけない、人間も年をとってくればいろいろ対処をしなきゃいけないところがある、いろいろ薬を飲まなければいけなくもなってくると。

 果たして、この共謀罪、テロ等準備罪というものが、私は、まだ健常で、風邪を引いたり、ちょっとお酒に弱くなったとか、いろいろあるかもしれないですけれども、例えば健常でしっかりと歩ける人に松葉づえを持たせるようなことになるのではないか。

 宮本さんの言葉をかりれば、犯罪というものは根絶することはできない、人間に、風邪一つ引かないで生涯壮健に生きろと言われたら、恐らくその人間は部屋から一歩も出ることができなくなるだろう、風邪とか病気とかけがというものは防ぐことができないんだ、だからこそ、そういうものがどうしてもあるということを認めて、それをどう予防していくか、犯罪の予防の意義を説かれているんですね。

 人間の体、病気、そういうもので例えれば、私はやはり、必要以上に刑法をふやしていく、まあ、条約で入らなければいけないという理由は一つあります、しかし、日本は治安がいい、国内的な治安情勢を見れば、今、共謀罪を幅広く設定するという意味合いはないのではないか。

 私は、幸せなのは、どちらかといえば、できるだけ刑法の謙抑主義を守っていくということだと考えますが、大臣のコメントをいただきたいと思います。

金田国務大臣 委員御指摘のとおり、もちろん刑法の謙抑主義というのは重要である、このように思っておりますが、一方で、三年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控えておる現状の中で、昨今の国内、国外のテロ組織による犯罪を含む組織犯罪情勢等に鑑みますと、テロを含む組織犯罪を未然に防止して、これと闘うための国際協力を可能とするようなTOC条約を締結することは不可欠であろう、このように考える次第なのであります。

 現行法は、TOC条約が定める重大な犯罪を行うことの合意または参加の犯罪化義務を果たしておりませんので、そのこと自体が十分な立法事実に当たりまして、繰り返し御説明をしてきたところであります。

 具体的に、犯罪化義務を果たしていないということに関しましては、現行法上、参加罪は存在せず、そして、共謀罪、陰謀罪が設けられているのはごく一部の犯罪にすぎません。また、予備罪は予備行為を処罰するものであって合意を処罰するものではない上に、裁判例上、相当の危険性がなければ処罰の対象とはならないという状況にあるわけであります。

 したがいまして、TOC条約の犯罪化義務が果たされていないということが明らかなわけであります。

井出委員 条約の話が出ましたので少し私からも申し上げたいのですが、尾崎久仁子さんという方がおりまして、この方は、もともと外務省、それから法務省刑事局にも出向して、今、国際刑事裁判所裁判官、裁判所第二次長に選出をされている方であります。

 この方が二〇〇七年に「刑事法ジャーナル」というところに文章を寄せているのですが、当時の尾崎久仁子さんの肩書は、国際連合薬物・犯罪事務所、まさに条約関係を扱うところの条約局長のお立場でありました。

 その主張を見れば、国連のお立場、外務省、法務省と行かれての御発言ですので、日本の国内法を整備すべしだ、そういうことを一貫しておっしゃっているんですが、その最後のところで御紹介したいところがございます。

 国際社会においては、国際刑事法の発展は国際人権法の発展といわば対になって、あるいは一体化して進められてきた、この条約が求める措置が国際社会の害悪と闘うために必要であるとするならば、求められるべきものは、国内の刑事法を強化しないことではないと。この方は国内法を整備しろというお立場なんですね。そうはっきりと述べられているんですが、最後の結びとして、その後、国内刑事法と人権保障の双方の強化をする発展的バランスの確立であると思われると。そのことが重要だと述べられております。

 これまでの法案の審議、細かいことは成案が出てからやると思いますが、少なくとも、大きなところを議論した限りでは、今回、共謀罪をたくさんの犯罪に対象を広げることで、それに対して、人権を擁護するようなものがあるのか。

 二〇一三年の特定秘密保護法、あれも大変評判が悪く、私も反対をしました。しかし、あれは、すったもんだあったおかげで、今、曲がりなりにも国会にチェック機能ができた。

 昨年、一昨年の通信傍受捜査の大幅拡大はどうだったのか。立会人は要らなくなる、いずれ警察の施設内でやることができるということに対して、我々はくどいほどそのチェックを求めた。チェックを求めた、その実現には必ずしも至りませんでしたが、あれだけ本当に、私は何度も何度も、どの回にもそのことを言ってきておりますから、何かあったときは、あれだけ言ったじゃないかと、それを言うことのできるぐらいの資格が私にはあると思います。

 今回のテロ等準備罪、共謀罪の新設については、そうした人権に対する配慮、チェックのところ、そうしたものの議論はこれまで一切なかったと思いますが、何かおっしゃっていただけるようなことはあるのでしょうか。

金田国務大臣 ただいまの委員の御指摘でございます。

 申し上げるまでもなく、テロ等準備罪に限らずに、罰則を立案するに当たりましては、人々の安全、安心を守るという要請を、人権保障の要請をないがしろにすることなく実現をしていくということが常に課題になるんだ、このように思っている次第であります。

 この課題をどのように克服していくのかということをしっかりと検討して、そして国民の皆様に御理解をいただけるように御説明するのが政府の責務ではないかな、このように考える次第であります。

井出委員 まだ成案を得ていないというのであれば、今、与党の中で部会が開かれているとも聞いておりますが、この部分についてもしっかりと議論をしていただきたいと思います。

 それから、最後に、罪刑法定主義がいかに重要であるかというところについて、少しお話をさせていただきたい。

 私がさきの予算委員会で質問したときに、大臣の方から罪刑法定主義というお話を挙げていただきました。私は刑法の謙抑主義というものを挙げましたが、いずれも根底は同じ、刑罰を行使していく上で非常に重要な概念であると思います。

 この罪刑法定主義の考え方というものが一体どれだけ日本に長く根づいているのか、それがいかにして守られてきているのか、そのことについて何か感じていらっしゃることがあったら、まずお話をいただきたいと思います。

金田国務大臣 罪刑法定主義というのは、一定の行為を犯罪として行為者を処罰するためには、あらかじめ成文の刑罰法規によって犯罪と刑罰とが規定されていることを要するという原則をいうものと承知しております。

 その趣旨は、国家の刑罰権を法律の定める限度に制限することによって、個人の権利と自由を擁護しようとするところにあるのではないか、このように考える次第であります。

井出委員 罪刑法定主義というものがいかに大切にされてきたかというところをお話しさせていただきますと、現行の刑法は明治四十年に始まっております。しかし、罪刑法定主義というものは、その一つ前、今から百三十五年前の旧刑法に明記をされております。旧刑法の二条に、「法律ニ正条ナキ者ハ何等ノ所為ト雖モ之ヲ罰スルコトヲ得ス」と。旧刑法に大きな力を果たしたと言われているのは、ほかの日本の法律の近代化にも貢献をしてくださったフランスのボアソナードであります。

 ただ、そうはいっても、日本の刑法というもの、それまでの江戸時代それから幕末、王政復古、大政奉還の直後は、まだ、はりつけですとか首をはねるとか流刑というものが認められていた。それを大きく法典的に変えたのがこの旧刑法なんですが、そうはいっても、まだ日本には、むしろ罰を厳しくしようという考え方が残っておりました。

 それから、当初フランスのものを参考に刑法が整備され、すぐにほかの法律と同様に、ドイツの考え方、フランスのような共和制ではなくてドイツに見習おうということで、ドイツにあらずば法にあらずということで、刑法もいじられることになるんです。そのときは、ボアソナードの師に当たる方にオルトランという方がいて、その方に学んだ宮城浩蔵さんという方が、旧刑法から今度、現行法の刑法の制定に一定の力を果たすことになる。

 明治四十年にできました刑法の一番の特徴と言われているのは、刑の執行猶予制度を設けたこと、それから正当防衛を殺傷罪だけではなくて広く一般化したこと、そうしたさまざまなものがあって、参考にしたドイツの刑法よりも進んでいる、そういう評価をされている論文を幾つか見ております。

 それが、例えば自由民権運動を取り締まる、済みません、名前はちょっと定かではありませんけれども、新聞何とか条例というものができたり治安維持法というものができて、戦争に近づくにつれて、やはりそうした罪刑法定主義、そういうものの大切さというものがだんだん失われていく。

 では、戦後はどうだったのか。戦争が終わったからといって、必ずしも刑法が大きく変わったわけではありません。刑事訴訟法は確かに大きく変わりましたが、刑法そのものは、不敬罪であるとか姦通罪であるとか、そうしたものがなくなったにとどまった。大枠を維持したというのが主な刑法学者の言い方であります。

 しかし、先ほどの議論とも重なるんですが、それから絶えず、社会の高度化によって、やはり犯罪に対して厳しく処罰をしなければいけないんだ、そういうことがいつの時代も言われてきたと言っても決して過言ではありません。

 戦後で申し上げれば、一番端的なのは改正刑法草案の議論があったときです。そのことについても、最終的には、口語化に絞った、書き方を変える改正へと縮小していくことになって、日本は、やはり罪刑法定主義ですとか謙抑主義の原則というものに対しては極めて厳格であった。

 その一方で、犯罪は高度化をしておりますから、今では当たり前ですけれども、著作権法や証券取引法の改正は一九八六年、私が生まれてからのことであります。独禁法への刑事制裁の強化、それから、国際的なものでいえば、八〇年に国際捜査の共助法などというものもできておりますが、日本の刑法にかかわるものをふやすということは、そうして目的に応じて個別に対応してきているんですね。

 共謀罪、今回、二百七十七だと思いますが、広く包括的なものを一気に刑法にふやすということは、私はその意味においては、恐らく、戦前戦後を見ても、これは本当に大きな転換点ではないか。テロ対策は確かに非常に大事だと思うんです。でも、私は、できるんだったら個別に手当てをした方がいいと。

 今までの刑法の改正の中で一生懸命守ってきた大事な謙抑主義、罪刑法定主義の原則というものを、ここで一気にぐわっとふやしてしまって本当にいいのか、それだけの危機感はあるのか。このことは国民にも考えていただきたいことでありますが、それだけの大きなことに着手をしようとしている、そこに、金田大臣がその任に当たっている、その危機感、緊張感というものがどれだけあるのかということを伺っておきたいと思います。

金田国務大臣 井出委員からは、非常にいいアドバイスといいますか、本来の、刑法に対する考え方、罪刑法定主義から始まって、御指摘をいただいたと思っております。

 現行法との整合性が確保されるということが非常に、私、御指摘をいただいたとして考えた場合に、既遂犯の処罰というのが原則である。実行着手にとどまる未遂よりもさらに手前の段階となる予備、共謀の処罰というのは、犯罪の未然防止を図る上で必要性の高い重大なものについて例外的に設けられているものと認識をしております。

 この点、テロ組織を含む組織的な犯罪集団が計画をして実行する犯罪というのは、国民生活に重大な結果をもたらすんだ、したがってその未然防止を図る必要性は高いんだ、こういう考え方だと思うんですね。したがいまして、そのような犯罪について、合意に加えて実行準備行為が行われた段階で処罰するものとするということは、重大な結果、重大な犯罪ということとの視点からまいりまして、現行法の規定との整合性を欠くものではないのではないかというふうに考える次第であります。

井出委員 穏やかにお話をされましたが、法案の必要性というものを今お話しになったと思うんですが、きょう知っていただきたいのは、刑法を大きく変えかねないような、そういう話であるという緊張感を持っていただきたい。

 立法事実として、一つ、条約に入るということはあると思います。それから、それが結果としてテロにも資金が回るんじゃ、そういう話も私は理解をします。だけれども、最近の予算委員会で言われている、百八十七の国がこの条約に入っていて十一だけ加盟できていない、それは恥ずかしいという、私はそれは数の問題ではないと思うんですね。むしろ、日本が謙抑主義、罪刑法定主義を守ってきたことの方が誇るべきことであって、何か国連の会議に行ったら第三列でオブザーバーだみたいな話よりも、私は、今の日本はよっぽどとうといものを持っていると。

 民進党は条約の参加というものについては肯定的に捉えているんですが、私の問題意識は、きょうお話をしたように、この条約に入ることの必要性で刑法の一番大事なところが失われるようであってはならない、その視点でこれからもまた議論をしていきたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、明八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十二分散会


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