衆議院

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第9号 平成29年4月12日(水曜日)

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平成二十九年四月十二日(水曜日)

    午後一時五分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    安藤  裕君

      井野 俊郎君    奥野 信亮君

      鬼木  誠君    門  博文君

      菅家 一郎君    城内  実君

      鈴木 貴子君    辻  清人君

      野中  厚君    福山  守君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮路 拓馬君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      吉野 正芳君    枝野 幸男君

      階   猛君    升田世喜男君

      大口 善徳君    吉田 宣弘君

      畑野 君枝君    藤野 保史君

      松浪 健太君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         金田 勝年君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            栗田 照久君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     山下 貴司君

  野中  厚君     鬼木  誠君

  若狭  勝君     福山  守君

  山尾志桜里君     升田世喜男君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     野中  厚君

  福山  守君     若狭  勝君

  山下 貴司君     安藤  裕君

  升田世喜男君     山尾志桜里君

    ―――――――――――――

四月六日

 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六三号)

 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六四号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 第百八十九回国会、内閣提出、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、民法の一部を改正する法律案に対し、階猛君から、民進党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。階猛君。

    ―――――――――――――

 民法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

階委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、民進党・無所属クラブを代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 政府提出の民法の一部を改正する法律案は、制定以来約百二十年間の社会、経済の変化への対応を図り、国民一般にわかりやすいものとする観点から、民法の債権法関係の規定を改正しようとするものであります。

 しかし、今日の社会経済状況に照らせば、消費者や個人の第三者保証人といった弱者の保護を図っていくことが重要であるにもかかわらず、政府案では、私法の一般法という民法の性質を差し引いたとしても、弱者保護が必ずしも十分に図られていないものと考えます。そこで、消費者契約法などの個別法による対応にとどまらず、私法の一般法である民法においても、より充実した弱者保護を図るため、この修正案を提出した次第であります。

 以下、この修正案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、現在も判例で認められている暴利行為の無効について、明文の規定を設けることとしております。

 第二に、個人が債務者となる、書面によらない契約により生じた少額の債権について、権利を行使することができるときから二年間行使しないときは時効によって消滅する特例を設けることとしております。

 第三に、中間利息の控除を行う場合について、利息相当額の算定に用いる利率を年三%の法定利率から年二%の中間利息控除利率に改めた上で、中間利息控除利率について、政府案の法定利率と同様に、市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入することとしております。

 第四に、事業のために負担した貸し金等債務に係る保証契約等について、その保証人となる者が法人の理事、取締役、執行役等、個人事業主の共同事業者などの主たる債務者と深い経済的、人的関係にある者である場合を除き、効力を生じないものとするとともに、経営者の配偶者による全ての保証契約等について保証意思宣明公正証書の作成を効力要件とするなど、個人の第三者保証人の一層の保護を図ることとしております。

 第五に、定型約款の変更における合理性の要件の考慮要素として、変更の程度、相手方の受ける不利益の程度及びその不利益の程度に応じた措置の有無を加えることとしております。

 以上が、この修正案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、各委員の御賛同をお願い申し上げます。

鈴木委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 両案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局参事官栗田照久君及び法務省民事局長小川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより両案及び修正案に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 少し間があきましたが、さきの本会議、共謀罪の趣旨説明を拝聴しておりました。この委員会で、私の質疑の中で申し上げたことについて、この委員会では、いいアドバイスをいただいたと言っていただいたのですが、残念ながら、そうした私が期待する内容ではなかったということは申し上げておきたいと思いますし、また、先日の決算行政監視委員会の分科会、逢坂先生との質疑も拝聴いたしましたが、なかなか質問と答弁とかみ合うところが難しい。これまでも申し上げてきておりますが、大臣の資質、辞任を求めていくということは、引き続きスタンスは変わらないということは、冒頭お伝えしておきたいと思います。

 きょうは民法の質疑ということで、大変多くの論点を議論してまいった中で、もう少し議論を続けて成案を得たいという思いもございました。その終局、採決という話も、これまた共謀罪の審議の絡みである、そういう点からも、きょうという日を迎えるのは大変不本意でありますが、修正案も提出されておりますので、きょうはまずその修正案について伺ってまいりたいと考えております。

 修正案提出者に順に伺ってまいりますが、まず、お手元に、提出者の階議員がさきの法務委員会でお示しをした資料をきょうつけさせていただいております。

 第三者保証の枠組みの決め方というところ、その一枚目は政府案。政府案は、さまざま保証人となる方がいますが、それを、公証人による意思確認が必要なものと不要なものとで分けている。公証人の意思確認というものを必要とするのは今回の法改正の大きな目玉である。

 それに対しまして二枚目、これは修正案の内容を図で明確にさせていただいているものですが、特に左側、赤線を引いてあります、赤線から左側の部分、経営者、事業者との経済的それから人間的なつながりが浅い、そしてまた、こうした部分の方々の保証というものも少数にとどまっているとの指摘も委員会でなされました。

 そこで、修正案は、親族や知人、友人、そうした人たちの保証を禁止する、それから個人事業主の配偶者、大変ここも大きな論点になったのですが、ここは公証人による意思確認が必要、そういう枠組みを提示されていると考えております。

 提出者から、改めて、修正案の第三者保証の部分、修正の趣旨について伺います。

階委員 井出委員の質問にお答えします。

 今委員から御指摘がありましたとおり、私どもの修正案は、大きく政府案と二つの面で違います。一つは、いわゆる第三者保証のうち、経営者、事業との経済的なつながりが浅い者については全面的に禁止にしようというものです。そして、もう一つは、個人事業主の配偶者、政府案では無条件で個人保証を認めることになっておりますが、これは法人の代表取締役等の配偶者と同じように公証人による意思確認が必要ということにしたものです。

 その理由でございますけれども、まず、保証契約は個人的な情義に基づいて行われることが多いこと、そのリスクを十分に自覚せずに締結される場合が少なくないこと、とりわけ個人による事業用融資の保証による過大な保証債務の負担により保証人の生活の破綻等を招く事例が多く生じています。

 私も、二十年前、金融危機のときに銀行員でした。当時は、銀行が貸し渋りということで、取引先が多く破綻しました。そういった中で、中小企業の経営者同士がお互いに保証し合って、そしてお互いに資金繰りが詰まってしまって、一番悲惨な例ですと、そういう保証した者同士がホテルの一室で心中するといったような事例も私は見聞きしております。

 こうしたことを踏まえて、先ほど申し上げたとおり、第三者保証の中でも、取引先の経営者といった、経営者や事業者との経済のつながりが薄い者については全面禁止にしたらどうかというのが一点目です。

 それから、配偶者の点について御説明をさせていただきますけれども、個人事業主の配偶者による保証については、当該配偶者が事業に従事しているといないとにかかわらず、必ずしも事業の内容を詳細に説明されず、保証リスクを真剣に認識しないまま、情義性により保証人になるという、第三者保証がもたらす問題が発生する可能性が高いということで、保護の必要性が高いものと考えております。

 そこで、先ほど申し上げましたとおり、配偶者につきましては、全て、保証意思宣明公正証書の作成を要件とすることとしたものであります。

 以上です。

井出委員 もう一つ保証の関係で伺いますが、金融庁のガイドラインの議論もここでさせていただきましたが、今提出者からお話があったように、第三者保証のあり方というものに対して一定程度やはり問題があって、それに対して、政府の方も一定の取り組み、運用をされてきているということもこれまでの議論で明らかになったのかなと思います。

 ただ、その一方で、私などは、第三者保証というものはまず認められてしかるべきなのか、原則、まずこれをきちっと禁止して、その中でごく例外的な事例を認めていく。それが、政府案は、原則として認めて、そこに今回、公証人を一部にくっつけるというようなたてつけであって、これは決めの問題なのかなと思うんですが、修正案の提出者に重ねて伺いたいのは、今回、保証禁止というものが一部にとどまっている、やはり原則的に禁止をしていく、そういう大きな転換といいますか、そういうところまで私の思いとしてはやっていただきたいというものがあったんですが、なぜここは一部にとどまったのか、そのことについて提出者に伺います。

階委員 井出委員の主張に私も全く同感です。

 個人保証、特に第三者保証の全面禁止は理想的であります。先ほども地元の経営者と電話でお話ししたんですが、株式公開をして保証を外せるということが、株を公開して創業者利得を得ることよりも、より経営者としてはメリットを感じることなんだというようなお話も伺いました。

 そういう中で、今回、御指摘のとおり、第三者保証は全面禁止にはなっていないわけですけれども、この理由は、委員会の質疑の中で、中小企業の円滑な資金調達に支障を生じさせ、金融閉塞を招くおそれがあるという指摘がありまして、そういったことから、現実的な対応として、まずは、保証人が主債務者が行う事業と特につながりが深くない部分、先ほどの図で示した左側の部分でございますけれども、それは、個人保証全体で見るとわずか一・五%にすぎないわけですけれども、この一・五%については金融閉塞を招くおそれも全くないだろうということで、まずはここから第三者保証を禁止しようというふうにしております。

 ただし、全面禁止が理想的なことは変わりないわけでございまして、まずは、これを契機として第三者保証のあり方を適宜見直して、徐々に禁止の範囲を拡大していければいいと考えております。

井出委員 この問題に限らずいろいろなテーマについてさまざまな議論がありまして、そういう中で、現実的にどう進めていくのかなというところの御説明をいただいたと思いますが、ただ、その中で、第三者保証の禁止というものを明確な一歩として打ち出されたというところは政府案との大きな違いである、私もそのように感じております。

 それと、もう一点、配偶者の件です。公正証書を個人事業主の配偶者にも求めていくと、政府案との違いを御提案されております。

 この問題は特に、これは野党もそうですし、参考人もそうですし、また与党の先生からもそういう御懸念の声があったかと思います。配偶者とは何ぞやという議論もありましたし、配偶者といえば、法律上は男性でも女性でもどちらでも配偶者になり得るんですが、現実としてはほとんど女性じゃないか、そういう議論もあったかと思いますが、個人事業主の配偶者を公証人による意思確認を必要とした修正について、ここまでの議論、さまざまな懸念の声、そうしたものをどのように踏まえられたのか、提出者に伺います。

階委員 先ほども少し御説明させていただいたんですが、個人事業主の配偶者による保証については、当該配偶者が事業に従事しているといないとにかかわらず、必ずしも当該事業の内容を詳細に説明されず、保証リスクを真剣に認識しないまま、情義性により保証人になるという、第三者保証がもたらす問題が発生する可能性が高く、保護の必要性が高いと考えております。

 そこで、本修正案では、委員会質疑で指摘されたこのような懸念を踏まえて、個人事業主であれ、法人の代表者であれ、経営者の配偶者が第三者保証を行う場合については、その配偶者が事業に従事していると否とにかかわらず、保証意思宣明公正証書の作成を要件とすることにいたしました。

井出委員 次に、修正案の、定型約款部分の修正の趣旨について、ここも審議の中で、事業者側に都合のいい改正に偏り過ぎていないか、一方で、事業者が円滑な業務というか営業を進めていく上での観点も必要だというところで議論があったところでありますが、この定型約款部分の修正の趣旨について改めて御説明をお願いいたします。

階委員 定型約款については、特に変更の事由というところが重要であると考えておりまして、一方の当事者、すなわち通常は企業側になるわけですけれども、企業側が一方の消費者、一般人を相手にして定款契約を結んでいる場合に一方的な変更によって、不利益をこうむるということが間々あるわけです。

 こうしたことが懸念されるということで、定型約款の変更について合理性を判断する基準といいますか考慮要素として、一番として、変更の程度、すなわち、変更が契約の本質にかかわるものか否か、二番として、相手方の受ける不利益の程度、その不利益の程度に応じた措置の有無、すなわち、相手方に対する解除権の付与や損失補填等の措置の有無を明記するということにしたものです。

 これらの点を条文で明記することで、今回の改正の趣旨であります国民にわかりやすい民法というものにもよりよく合致するのではないかと考えております。

井出委員 そのほか、暴利行為の件ですとか少額債権の消滅時効、中間利息の問題ですとか、いずれも、参考人の御意見ですとか、委員の先生からもいろいろ質疑のあったところの修正がされておりますが、第三者保証に関して言えば、やはりその一歩を踏み出すか踏み出さないかの大きな隔たりというものもありますが、議論をさらに深めていくことの重要性はあるんじゃないか。それから、定型約款に関しても、やはりもう少し議論を深めていけば、これはなかなか百点満点の書きぶりというものはないと思うんですが、七十五点のものを八十点、八十五点にできるのではないかと思います。

 今回、百二十年ぶりの改正と言われておりますが、そういう意味では、引き続きこうした問題は議論を続けていかなければいけないと私は考えておりますが、提出者はそのあたりをどのようにお考えか、最後に伺います。

階委員 私も、今回、百二十年ぶりの改正ということで、相当議論すべき点はあるなということで審議に臨んでまいりました。しかし、審議の深さという面でも、また審議の幅といいますか広さという面でも、まだまだ足りない部分があったのではないかと思っております。

 したがって、今回で民法の改正は一段落ということで、また次は百二十年後といったことがないように、今後も継続的に、足らざる部分は補う、間違っている部分は改めるということで、改正の姿勢をとり続けるべきだと考えます。

井出委員 最後に大臣にも少し感想を求めておきたいと思いますが、この民法の審議、大変、民事局長の小川さんに獅子奮迅の御活躍をいただきまして、いろいろな議論が深まってきたと思います。

 その一方で、共謀罪というものが念頭にあり、きょう終局を迎え、もう少し、七十五点、八十点のものをもう五点、十点と、大臣の言葉をかりれば、歩み寄る、そういうところも尽くしたかったという思いがあるんですが、大臣のこの民法審議における感想、またもし反省点などがあれば、一言コメントをいただきたいと思います。

金田国務大臣 井出委員の御質問にお答えをいたします。

 ただいま、修正案の提出者としての階委員とのお話を伺っておりました。

 この民法の改正法案につきましては、先般の第百九十二回国会それから今国会におきまして、二回にわたる参考人質疑を含めまして既に三十二時間を超える審議が前回まで行われてきている、このように承知をしております。多岐にわたる論点について大変に充実した審議が行われたものと認識をしております。

 ただいま階委員の方から、足らざる部分は補うという意味において、審議の深さ、広さを考えると、百二十年ぶりの改正である以上は今後も引き続き対応していく必要があるというお話がございました。

 民法改正案については、今後とも充実した国会審議が行われますように、この後ここできょう御賛同いただく段取りかとは思いますが、そういう中で、参議院での審議も控えております、国会審議が今後とも充実した形で行われるという中でも引き続き尽力をしてまいりたい、このように考える次第であります。

井出委員 私の、いろいろ、審議時間をもう少しという思いもあるんですが、一つの反省点に、今回は少し、私自身、民事局長に議論を頼み過ぎたのかなというところがございます。引き続きまた民法の見直しの議論もと思っておりますが、まず参議院でも審議があるというお話が今ありました。大臣が積極的に審議にかかわっていくということを最後にお願いしたいと思います。

 コメントがなければ終わりますが。

 では、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、階猛君。

階委員 今度は、質問をさせていただきます。

 大臣に伺います。今回の民法改正案、この法案の作成の責任者はどなたですか。

金田国務大臣 階委員の御質問にお答えをいたします。

 民法改正法案は、内閣提出法案として、法務省の所管する法律であります民法を改正するものでございますから、その責任者は法務大臣である私ということになろう、このように考えております。

階委員 民事局長ではないということを確認しましたので、お尋ねしますが、法案の作成の責任者ということであれば、この法案を修正する権限も当然おありになるということでよろしいですか。

金田国務大臣 民法改正法案は、内閣提出法案で、法務省の所管する法律である民法を改正する。その責任者は私であります。

 修正については、国会でお決めになる、そういうお話であろう、このように考えております。

 加えて、民法を改正する、その責務を果たすに当たりましては、先ほどの答弁で申し添えなきゃいけなかったなというふうに思った部分を今申し上げるんですが、副大臣や政務官の協力も得ておりますし、また、法案作成に関する事務作業の責任者という意味におきましては、民事局長にも重要な役割を果たしてもらったものと認識をいたしております。

階委員 修正については国会でお決めになる、これは正しいお話だと思います。

 ただ、私、実はこの修正案、きょう提出しましたけれども、ここに至るまでに法務省の御担当の方々とずっと議論を重ねてきました。その中で、結局、法務省の人は修正に御同意いただけなかったので、今ここで我々の修正案を出さざるを得なくなっているわけです。

 私は思うんですけれども、法務省の皆さんは、法制審議会の議論を大切にしなくてはいけないということを言うんですが、大切なことは、やはり法制審議会よりも国会での議論だと思うんですね。なぜ、法制審議会が国会に優先するような考え方が法務省の中ではびこってしまうんでしょうか。

 大臣は、法制審議会と国会との関係についてどのように考えていらっしゃいますか。

金田国務大臣 ただいまの質問にお答えをいたします。

 法制審議会というのは、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議することなどを目的とする諮問機関であります。法務大臣の諮問に応じまして、これらの事項についての調査審議を行いました上、答申をいただいているわけであります。

 法制審議会の答申は、多数の専門家による総会または部会での審議を尽くした上で行われるものでありまして、このような法制審議会の性格から、政府におきましては、その答申を尊重いたして法案を提出しているところであります。

 国会におきましては、このようにして提出されました法案について御審議をいただいているものと承知をいたしております。

 ただいま申し上げました法制審議会と国会との関係というのは、この民法改正法案においても異なるものではない、このように考えている次第であります。

階委員 冒頭で法案作成の責任者は法務大臣だとお答えになったんですが、今の話を聞いていると、何だか法制審議会が作成の責任者のように聞こえるんですが、もし大臣が責任者と言うのであれば、部下である官僚に対して、法制審議会の議論を金科玉条とするような、そういう話しぶりをやめさせていただけませんか。お願いします。

盛山副大臣 今の階先生の御指摘でございますが、我々法務省としましても、法制審議会の答申、これを金科玉条として、それに拘泥している、あるいはとらわれて、法制審議会の答申の内容を変更することができない、そんなふうに認識しているわけではございません。

 しかしながら、法制審議会の答申、この審議の過程というんでしょうか、多数の専門家によって構成されております総会や部会で審議を尽くしております。そして、そのメンバーの中には、あるいはその審議の過程では、現に法改正の影響を受ける経済界あるいは法曹関係者、こういう方々の意見も含んで、踏まえたものでございますので、その法制審の答申を尊重するということには合理性があると考えております。

 しかしながら、これまで、今大臣がお話ししましたように、審議の過程で得られたさまざまな意見を考慮して修正の当否を最終的には法務省の方で判断しているというふうに我々は考えているところでございますので、先生の御指摘、我々として反省すべき点があれば部下にも伝えたい、そんなふうに考えております。

階委員 大臣の考えはどうですか。

金田国務大臣 ただいま副大臣から申し上げた思いと同じであります。

階委員 どういう思いですか。

金田国務大臣 繰り返しになりますが、法制審議会の答申に形式的に拘泥をしたり、その内容を変更することができないと認識をしているわけではありません。

 副大臣も申し上げましたとおり、法制審議会の答申は、多数の専門家による総会または部会での審議を尽くした上で行われるものである、その中には、現に法改正の影響を受ける法曹界や経済界の意見も含まれている、そのように考えておりますし、その答申を尊重することには合理性があるというふうにも考えております。

 そしてまた、審議の過程で得られたさまざまな意見を考慮して修正の当否を判断していくということにも合理性がある、このように考えておるわけでございまして、法務省としては、その上で最終的に判断をしていくということであろう、このように考えております。

階委員 答申を尊重しつつも、判断の余地はなお大臣にあるということなので、私も答申の重要性は認めますけれども、ただ一点、この保証の点については私はどうしても納得できないので、これから、その納得できない理由を論証させていただきます。政治家として責任のある答弁をお願いします。

 まず、資料の一ページをごらんになってください。

 先ほど井出委員が資料でお配りしていましたけれども、私どもの修正案は、経営者、事業との経済的なつながりが希薄な保証というものについて全面禁止にしようというものであります。この中には、親族であるとか知人、友人、取引先の経営者、投資家等といったものが含まれておりまして、個人保証全体に占める割合は、先ほども申し上げましたが、わずか一・五%です。そもそも一・五%という低い割合ですが、これもさらに分析していくと、より必要性、合理性は乏しいのではないかということがわかってまいります。

 この資料の一ページ目をごらんになってください。四つのパターンに私は類型化しました。

 まず、保証人の意思です。

 保証人が積極的に合理的な判断で保証しようといった場合、保証人の資力との関係で、まず、資力が十分だという場合、これは、この委員会でも指摘したとおり、物上保証、担保提供、あるいは主債務者へその保証人候補者が出資するとか融資するといったことで代替可能だと考えます。

 一方、保証人の資力が不十分という場合には、幾ら保証人が積極的、合理的意思を有していたとしても、こんな保証は無用なわけでございまして、わざわざこのような保証を認める必要がないということがまず一点です。

 そしてもう一つ、保証人の意思が消極的であったり、あるいは情義的、情にほだされて保証する、そういう意思の場合、これも二つのパターンに分かれます。

 保証人の資力が十分な場合、これは、いざという場合には保証人は自分の財産を失ってしまう。消極的、情義的という、合理的な意思がないにもかかわらず、保証人にこうしたリスクを負わせるのは私は有害だと考えます。

 そして、保証人の資力が不十分な場合、これは言うまでもなく、有害だけではなくて無用だということになります。

 こうした四つのパターンに分けますと、より経営者、事業との経済的なつながりが希薄な保証人、これをとる必要性も合理性もないというふうに私は考えますが、いかがでしょうか、大臣。

盛山副大臣 階先生からのこの資料、今、ここで初めて拝見したわけでございますけれども、我々の方といたしましては、御指摘のような主債務者と経済的なつながりが希薄な第三者が保証人となるケースは、やはり現に存在するものと考えております。

 仮に、このような第三者を保証人とすることを禁止するといたしますと、現状において、第三者の保証つきで融資を得ているケースについては、そもそも融資を受けることができないとか、貸出金利が上昇してしまうといったことが生じ、円滑な資金調達が阻害されるおそれがあることは否定できないと我々は考えております。このため、このような第三者による保証も認めることには必要性があると考えております。

 また、主債務者と経済的なつながりが希薄な者であっても、保証意思が真に認められる場合には、保証という形式で第三者の信用を補完することを認めることは、私的自治の原則に照らしても合理的ではないかと思います。

 そこで、改正法案におきましては、第三者保証を全面的に禁止する必要は講じないこととする一方で、保証人がその不利益を十分に自覚せず安易に保証契約を締結する事態を防止するための措置として、事業のために負担した貸し金等債務を保証する際には、原則として、公的機関による、公証人による意思確認の手続を経ることとしたものでございます。

 このような改正法案における改正内容を超えて、たとえその一部であるとはいえ、保証意思を有する者の保証契約についてまで民法で禁止することについては、慎重な検討を要するものと考えております。

階委員 副大臣の答弁が、指名していないのに長過ぎますし、また、副大臣は、以前、この委員会で、自分はこの分野は明るくないということも言われていたわけですから、大臣が答えてください。先ほど言ったとおり、責任者なんですから、ちゃんと答えてください。

 それで、お尋ねしますけれども、今の副大臣の答弁によると、四類型の保証を禁止してしまったならば、金融の円滑化に支障を来す、あるいは金利が上昇するといったようなことをおっしゃっていました。それについて反証します。

 資料の二ページ目、ごらんになってください。

 これは、昨今話題の、森友学園の土地購入のときの国との契約書です。二ページ目の第五条、土地を買うときに、国は分割払いを認めております。しかも、金利は一・〇%です。

 我々、土地を買うときは、自分で金融機関からお金を借りて、そのお金で売り主には一括払いをするというのが普通だと思っています。ところが、この件につきましては、何と国が分割払いを認めている、しかも一・〇%で。

 先ほど、保証を禁止すると金融が得られなくなる、金利が上昇すると言っていますが、現に国が売却するケースで、分割払いで、融資を受けなくていい、また、一・〇%、金利も低くていい、こういうふうになっているじゃないですか。

 先ほどの説明は、私は事実にそぐわないと思いますよ。どうですか、大臣。答えてください。

金田国務大臣 ただいまの階委員の御指摘でございますが、個別の契約書の具体的な契約条項の解釈あるいは位置づけといったものにわたる事項につきましては、お答えは差し控えさせていただきます。

階委員 個別の事例というよりも、こういったケースが現にある中で、保証を認めなければ金融に支障を来すとか金利上昇が起きるというのは、本当に根拠があるんですか。何を根拠にそんなことを言っているんですか。大臣にお尋ねします。大臣にお尋ねします。

鈴木委員長 まず、井野法務大臣政務官。

井野大臣政務官 先ほど階先生も御指摘になられたとおり、第三者保証は、もう既に一・五%ですが、行われております。そういった事情であったり、法制審の議論等を通じて、第三者保証は必要だというふうに考えているところであります。

金田国務大臣 例えば、新たに事業を創業しようとする際に、保証がなければ融資を受けることができない創業者のために、その両親や祖父母といった親族が保証をするケース、あるいは、個人投資家が出資ではなくて保証をするという形で援助を行うケースといったものがあるのではないか、このように承知をしておる次第であります。

階委員 政府も、私もこの委員会とかで指摘しましたけれども、保証に頼らない融資を進めていこうという大方針があるわけじゃないですか。

 私の資料の一ページ目の、この下の米印にも書いていますけれども、主債務者は保証が得られなくてもファイナンスリースや分割払い契約、売り掛け債権担保借り入れなどで資金繰りは可能だということを指摘しております。

 実際に、国も分割払いで土地を売っているじゃないですか。森友学園も、新しい事業で小学校をつくるというときに、お金を借りていないじゃないですか。分割払いでやっているじゃないですか。どうしてそういう方向に国の制度を変更していかないのか、お答えください。

金田国務大臣 御指摘のように、事業のための資金を確保するという観点からいきますと、第三者が保証をするほか、第三者が物上保証を行う、あるいは第三者から直接融資を受けるといった、他の手段を講ずることもあり得ないではないと考えられます。

 もっとも、物上保証を付すといっても、これにふさわしい財産を有していないこともあり得ますし、仮に、例えば不動産を有しており、抵当権を設定することが可能であるとしても、抵当権設定に費用を要することを嫌ったり、居住用である自己の不動産に抵当権が設定されること自体を回避したいと考えることもあり得るわけであります。

 また、担保設定にふさわしい自己の資産がないのであれば、そもそも保証を得て融資を受けさせるべきでないとの……(階委員「全然、答えがずれていますよ。聞かれたことに答えていませんよ」と呼ぶ)

鈴木委員長 続けてください。

金田国務大臣 指摘もあり得ないではないですが、新たに事業を創業する際の創業費用の融資の事案などにおきましては、親が子の保証人となって信用を補完しようと考えるケースも現にあると指摘されておりますし、仮にそれが真に保証意思に基づくものであるならば、そのようなニーズを無視することは適当ではない、このように考えられる次第であります。

階委員 全然答えになっていませんし、私の質問を理解していないと思うんですね。

 今お尋ねしているのは、一枚目の資料でいいますと、大臣は、この「物上保証、主債務者への出資・融資で代替可能」ということについての反論を言われたんだと思いますが、私が聞いているのはそこではありません。

 私が言っているのは、それ以外の三つの箱の部分、こういった部分については、保証が得られなくても、ファイナンスリース、分割払い契約、まさに森友学園は分割払い契約でした、あるいは、主債務者が、事業がちゃんと回転するのであれば、売り掛け債権を、将来分を担保にして借り入れということもあり得るわけです。こうしたことをやっていけば、保証なんか必要ないじゃないですか。

 実際に、国も分割払いで資金繰りをつけてあげているじゃないですか。なぜそういう方向に制度を持っていかないんですか。繰り返しですが、しっかり答弁してください。大臣に聞いています。

井野大臣政務官 済みません、まず、私の方からお答えを申し上げさせていただきます。

 先ほど来、先生が国のとおっしゃる、まあ、森友学園の問題は個別の具体的な状況でございまして、契約事案ごとにいろいろな状況があったと思います。我々としては、その契約状況、背景事情等は全く把握しておりませんので、そのことのみを捉えて、もう第三者保証が必要ないんだということは、それは軽々には言えないんだというふうに思っております。

 その上で、先ほども申し上げましたが、現実問題として、銀行だったり、さまざまな、法制審、そしてまた実務界といいましょうか、経済団体等からの状況を調査した結果、第三者保証はまだまだ活用というか、全面禁止は適当でないという意見が大半だったものですから、今回、こういう法案を作成し提出させていただいたということでございます。

階委員 では、森友学園のケースは極めて特殊なケースであって、こういったケースがあることをもって保証は禁止ということにはならないということですか。特殊なケースだから、これは参考にできないということなんでしょうか。大臣がお答えください。大臣にお尋ねしています。

鈴木委員長 まずは、井野法務大臣政務官。

井野大臣政務官 済みません、私が森友学園についてコメントした点ですけれども、あくまでも個別具体的な状況ですので、この背景事情等を我々は把握しておりませんので、これが特殊事情なのかどうなのかということすらも我々は把握をしていないということで御理解いただければと思います。

金田国務大臣 先ほども申し上げましたが、個別のケースに関してお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

階委員 では、一般論として大臣にお尋ねしますけれども、保証が得られない場合であっても、例えば、土地を購入する資金が必要だという場合に、融資を受けるだけではなくて、分割払いにすればいいのではないか、そうすれば資金繰り的にはちゃんと回るのではないか。また、分割払いだからといって、必ずしもそれで金利がたくさんかかるというふうにも言えないのではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木委員長 まず、盛山法務副大臣。

盛山副大臣 階委員がおっしゃったように、いろいろなケースがあると思うんですね。必ずしも階先生がおっしゃっているような形だけではなく、なかなか分割払いができない、あるいはいろいろな人に資金繰り、御援助をしてもらわなければならない、そういうケースがあろうかと思います。

 我々としては、法制審での議論を踏まえて、こういった形がベストであると考えて御提案をしたという次第であります。

階委員 大臣にお尋ねしています。

金田国務大臣 副大臣から申し上げましたように、いろいろなケースがあるという中で、契約の相手方の判断もありますから、一概にはお答えはできないものと考えております。

階委員 問題は、保証が、必要性があるか、それから合理性があるかということなんですが、必要性という観点から、今私は、他に代替手段がある、ほかの手段があるということを申し上げました。そして、合理性という意味でいっても、先ほどの表にあるとおり、特に保証人の意思が消極的で情義的である場合、これは合理的とは言えないし、また、保証人の資力が不十分の場合は無用であるというふうに考えられます。

 こういう類型で考えていった場合に、そもそも一・五%の部分を残す、しかも、さらに加えて言えば、政府の大方針として、保証に頼らない融資慣行を確立するというのがあるわけですよ。だから、私は、真面目に考えれば、これは廃止してもいいんじゃないかと思うんですけれども、大臣、そういうふうに考えられないですか。

金田国務大臣 ほかの手段で必ず代替できるかどうかということにつきましては、その事情によるわけでありまして、必要があることもあるのではないか、このように考えます。

 こうした中で、改正法案における改正内容を超えて、たとえその一部であるとはいっても、保証意思を有する者の保証契約についてまで民法で禁止することについては慎重な検討を要するものと考えられるわけであります。

階委員 その意思が、保証意思なるものが情義的であったり消極的なものであっても、その意思は尊重するというのが大臣のお考えでよろしいですか。

金田国務大臣 保証人の意思が消極的、情義的な場合につきましては、公証人によります意思確認で対応をしようと考えているわけであります。

階委員 私は対応できないと思いますね。

 なぜならば、そもそも情義的に保証しようとする者が、公証人の前で本当はどうなんですかと言われても、もう保証せざるを得ないというふうに覚悟して来ているわけだから、保証をしない方向で何か公証人にお話しするということは想定できないんじゃないかと思うんですが、そうではないんですか、大臣。

井野大臣政務官 公証人の場所での状況ですけれども、それは本当にいろいろな状況でありまして、階先生がおっしゃるような状況もなくはないかもしれませんし、もちろん、公証人からいろいろ説明を受けて、こういうリスクがあるよという話になれば、じゃ、やめましょうという状況になるというふうに考えられますので、我々はその点で公証人の宣明証書が必要だということで今回の法案という形になっているということでございます。

階委員 例えば、私、先ほど答弁者の席でお話ししましたけれども、昔あった、貸し渋りに遭う経営者が仲間同士で保証し合って何とか資金繰りをつけたというようなケース、今回、公証人の前でお話しするとしても、やはり、資金繰りをつけるために、本意ではないけれども保証しますというふうに言わざるを得ないんじゃないですか。

 こういう過去にあった悲劇を繰り返すことになるかもしれません。そういう自覚、大臣にありますか。本当に情義的な保証はこの制度で全部廃絶できると思っていますか、大臣。

金田国務大臣 御指摘の点につきましては、限界があるかもしれませんが、公証人は、保証人になろうとする者が保証しようとしている主債務の具体的内容を認識していることや、保証契約を締結すれば、保証人は保証債務を負担して、主債務が履行されなければみずからが保証債務を履行しなければならなくなるということを理解しているかなどを検証して、保証人になろうとする者が相当の考慮をして保証契約を締結しようとしているか否かを見きわめて、仮に、保証意思を確認することができない場合には、公正証書の作成を拒絶しなければならないということになります。

 そのため、改正法案のもとでは、公的機関であります公証人が保証人となろうとする者の保証意思を確認することによりまして、保証人が保証のリスクを十分に認識することなく安易に保証契約を締結し、生活の破綻に追い込まれるという事態を抑止することができるものと考えている次第であります。

階委員 ここは大事なところなので、大臣の言葉でお答えください。

 私がさっき言ったような実際にあったケース、経営者同士で保証して、資金繰りに詰まって双方とも自殺したようなケース、こういった悲劇がこの制度で起こらないと言えるんですか。

金田国務大臣 ただいまの質問にお答えしますが、確かに、御指摘のとおり、現在自分の債務の保証人となってもらっているといった事情がある場合には、幾らリスクを認識しても、保証人となることを断りがたいということも予想されるわけでありますが、そういったケースは、改正法案が施行されて、その効果が浸透するに従って減っていくことも期待できるのではないか、このように考えられます。

 法務省としては、引き続き、第三者保証を初めとする個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けて、改正法案の施行後の状況を注視してまいりたい、このように考えている次第であります。

階委員 驚く答弁でしたね。そうすると、今現在はそういう経営者同士の保証で自殺するケースはあってもしようがないという前提に立っているわけですよね。今後減っていくだろうから、それでいいんだというお話に聞こえましたよ。

 本当にそれでいいんですか、大臣。せっかく百二十年ぶりの改正をやろうとしているんですから、この問題については、ここでけりをつけるべきではないですか。

金田国務大臣 完全ではないかもしれませんが、この改正で、保証被害の抑止に効果を発揮するものと考えております。

階委員 法制審議会の議論を尊重するからそういう結論になると思いますよ。大臣、やはり、法案作成の責任者なんですから、この法案について責任を持ってほしいんですね。もし、これからまた金融貸し渋りなどが起きて、この保証の悲劇が繰り返されるようなことがあったら、大臣、本当に法案作成の責任者として責任をとれるんでしょうか。そういう思いで答弁していますか。

 私は、もし大臣の立場だったら、とてもそんなことは言えない。やはり、ここについては、悲劇を繰り返さないために、たった一・五%です、他に金融の手段もあり得ます、だから、ここで見直すべきだと言っているんです。

 大臣、今後もしそういう悲劇が起きたとしても、責任とれますか。

金田国務大臣 この改正によりまして、完全ではないかもしれませんが、保証被害の抑止に効果を発揮するものと考えておりまして、引き続き、第三者保証を初めとする個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けて、改正法案の施行後の状況を注視してまいりたい、このように考えております。

階委員 公証人という人たちが本当にこのような悲劇を抑止するような仕事をしてくれるのかどうか、私は、そこも心もとないと思っています。

 この委員会で、たしか井出委員が質問したことだったと思いますけれども、公証人は実際、法曹資格者しかほぼなっていないということだったと思います。私は、一応弁護士資格もありますけれども、もともと銀行員でした。金融のあり方については、むしろ法曹資格者よりもわかっているつもりではあります。法曹資格者しか公証人に実際上なれない、そういった仕組みのもとで、本当にこのような悲劇が防げるのかと思っていますけれども、今の公証人のあり方で本当にいいんですか、大臣。

井野大臣政務官 先生が御指摘いただいた点を踏まえて、我々としては、この改正案が成立した暁には、公証人に、こういう国会議論があり、かつ、懸念が表明されたことを含めて、しっかりと通知というか、そういうものを通じて、被害防止に役立つというか、公証人に役割を果たしていただきたいというふうに考えております。

階委員 なぜ、公証人の試験というのは司法試験と同程度のものでなくてはいけないんですか。そういう答弁があったと思うんですけれども、大臣、本当にそれが必要不可欠なんでしょうか。むしろ、先ほど言ったような金融の知識とか、そうしたものがあった方が、これからの公証人の仕事を考えたときに望ましいのではないかと思いますが、大臣、違いますか。

盛山副大臣 公証人の資格付与のあり方について、こういうことではないかと思います。

 我々の方で、資格要件、法務大臣が、専門的な法的知識、経験を有するなどの一定の任命資格を有する者の中から適任と認める者を任命しているわけでございます。

 階委員がおっしゃるとおり、その法的な能力ということに加えてさまざまな能力が公証人には必要とされるということを我々も承知しているわけでありますが、現在のところ、法的能力を担保するに足る資格要件と公募手続のもと、人格、識見を兼ね備えた者を公証人に任命しているつもりでございますし、今後とも努力していきたいと考えております。

階委員 本当に、まだまだ議論がし足りないところもありまして、きょうお配りしている資料の最終ページを見てください。三十二時間審議をしてきたと言いますけれども、網かけになっている項目、この一―六の「条件」とか二―四の「受領遅滞」とか数々ありますけれども、この網かけになっている改正項目については、まだこの委員会で一度も質問として取り上げられていません。

 ですから、私は、まだまだ審議不十分だと思います。先ほども言いましたとおり、深さの面でも広さの面でも不十分だ。こういう中途半端な審議で、法案が数の論理で通ってしまう、私は、これは国会のあり方として問題ではないかと思いますよ。

 これからいよいよ、いわゆる共謀罪法案の審議が始まると思いますが、こうした、時間だけある程度かければ幾ら論点が積み残っていても審議を終えていいという考え方、大臣はとられるんでしょうか。お答えください。

金田国務大臣 階委員のただいまの御指摘に対しましては、国会審議のあり方についてのお尋ねと受けとめますので、国会においてお決めいただくべき事柄でありまして、法務大臣としては申し上げるべきことではない、このように考えておる次第であります。

階委員 大臣御自身がおっしゃったじゃないですか、もう三十二時間も審議を尽くしたと。先ほどおっしゃったから私が聞いているんですよ。

 時間ではない、中身だと思いますが、大臣、違いますか。

金田国務大臣 私が申し上げましたのは、事実を申し上げただけであります。

 久しぶりに再開をさせていただいた、この法務委員会での債権法の審議、階委員からは非常にさまざまな御指摘を、昨年ではありますが、いただいたと思っております。そういう中で、振り返ってみれば三十二時間を超える審議をやったのだなと。そういう中で、やはり多岐にわたる論点について大変に充実した審議が行われてきたなという思いを持っておりますことを申し上げたのが、先ほどの私の思いであります。

階委員 肝心なところについては曖昧な答え、そして、まだまだたくさんの論点が残されている。こうした審議のあり方、今後の法案についてはあってはならない、特に共謀罪法案についてはあってはならないということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 民法債権関係改正案について質問をいたします。

 この民法の審議を終局させて共謀罪の委員会審議入りを行おうとすることなどは、断じて許されません。引き続く民法の審議、続いて刑法の審議入りを行うべきだということを申し上げまして、質問に入ります。

 損害賠償請求権について伺います。

 私は、当委員会で、米兵犯罪に関して損害賠償請求権について伺いました。裁判所の確定判決の額には弁護士費用、遅延損害金が含まれるという法務省の答弁がありました。

 そこで、きょうは、中間利息の控除について伺います。

 不法行為を受けた被害者の中には、重大な後遺症を発症された方もおられます。中間利息控除に用いる法定利率は、その損害賠償の請求権が生じた時点だとされています。今回の法案にも、第四百十七条の二に中間利息の控除の規定が新設されています。

 そこで伺いますが、後遺障害に係る損害賠償について、中間利息控除を算定する基準となるときは症状固定時とするのが実務の例としては一般的だと聞いております。

 この点について、今回の改正が今までの実務に影響を与えるということはないのでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 中間利息の控除といいますのは、交通事故などの不法行為などの損害賠償の額の算定に当たりまして、将来の逸失利益などを現在価値に換算するために、損害賠償算定の基準時から将来利益を得られたであろう時点までの利息相当額、これを中間利息というわけですが、その中間利息を控除することをいいます。

 御指摘の中間利息控除の算定の始期でございますが、この点につきましては、具体的には、後遺障害に係る逸失利益の発生期間の始期をいうものと認識しておりまして、それがいつであるのかについては、御指摘がございましたとおり、症状固定時とするのが実務の大勢であります。ただ、なお異なる見解もあるものと承知をしております。

 改正法案四百十七条の二と、これを準用いたします不法行為に関する七百二十二条の第一項では、この中間利息控除に関して新たなルールを設けておりますが、これは、中間利息を控除する際には法定利率によるという判例の法理を明文化いたしますとともに、法定利率の変動制を今回導入いたしましたので、そのことに伴いまして、どの時点の法定利率を中間利息控除に用いるのかについて、新たにその基準時を定めておく必要があるということで、交通事故があった時点などの損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率を適用することとしたものでございます。

 したがいまして、御指摘いただきましたような、中間利息控除の算定の始期を含めました現在の実務における解釈には影響を及ぼすものではないというふうに認識しております。

畑野委員 次に、定型約款について伺います。

 当委員会では、UR賃貸住宅契約など大規模住宅の賃貸は定型約款に当たるかどうかという私の質問に対して、法務省は、個別事情により、例外的にひな形が定型約款に該当することがあり得ると答弁いたしました。

 定型約款に当たるか否かは、消費者、事業者にとって重大な問題です。法務省として、この国会審議の場で何らかの具体例を示すことが必要ではないかと思いますが、いかがですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ありましたように、改正法案では、「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」、これを定型取引と定義しました上で、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」、これを定型約款と呼んでおります。

 この定型取引に該当する取引は、画一的な内容であることが合理的であると客観的にも評価することができるものであるため、取引の相手方であります顧客は契約の細かな内容には関心を持つことがなく、その内容を認識しないままに契約を締結するのが通常であるものと想定されます。

 したがいまして、一般的に言えば、事業者が極めて多数の顧客を相手に契約を締結するような取引であり、かつ、取引を円滑に行う観点から契約条項を事前に事業者が作成しておくような取引が該当するものと考えられます。これが一般論でございます。

 そこで、このような定型約款の、できる限り身近な具体例を申し上げたいと思いますが、典型的には、例えば鉄道の運送取引における運送約款、あるいは宅配便契約における契約約款、パソコンのワープロソフトの購入契約に附帯する購入約款、電気供給契約における電気供給約款、それから保険取引における保険約款など、あるいはインターネットを通じました物品売買なども最近多うございますが、そういったものに関する購入約款など、これらが広く該当すると考えられるところでございます。

畑野委員 少し具体的な話をしていただいたんですが、こういったことの該当性について具体的に議論を尽くしていくことが私は必要だと思います。

 次に、保証問題について伺います。

 第三者保証については、公証人による意思確認をすれば保証契約を締結できる点で、なお断ることができないという情義に基づく保証を排除することはできないという指摘があります。

 きょうは、資料として、金融庁の「個人連帯保証に関する監督指針の改正について」、二〇一一年七月十四日施行を配らせていただきました。

 金融庁に伺いますが、金融庁が監督指針、ガイドラインでなぜ経営者以外の第三者保証を求めないことを原則とするのか、具体例を示して御説明ください。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁におきましては、平成二十三年七月に監督指針を改正いたしまして、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立」を明記したところでございます。

 この監督指針の改正の経緯につきましては、個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれるような事例が後を絶たないというような状況の中で、直接的に経営責任のない第三者に対しまして債務者と同等の保証債務を負わせることが適当なのかという御指摘、あるいは、保証債務の履行時における保証人に対する対応いかんによっては、経営者としての再起を図るチャンスを失わせたり、あるいは、社会生活を営む基盤すら失わせられるといった問題を生じさせているのではないかという御指摘がございまして、そういう点なども踏まえまして、監督指針の改定を行ったところでございます。

畑野委員 金融庁からの御説明でしたが、そうであれば、保証人の意思確認は本当に丁寧に行う必要があります。公証人による第三者保証の意思確認については、それが形式的なものになれば公正証書作成による強制執行のリスクが高まり、保証人保護に反することになる、このような公正証書の乱用による保証人に対する取り立て、被害を防止することが必要だと思うんです。

 公証人の面前で保証意思の確認を行い、さらに公正証書をもって保証契約を締結する場合、保証契約の締結に先立ち、保証の意思確認と、数日の期間を置き熟慮する機会を与えるべきではないかと思いますが、いかがですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、事業のために負担した貸し金等債務に関しまして、保証人になろうとする者は、保証契約を締結する前に、公証役場に赴いて保証意思宣明公正証書の作成を嘱託することとしておりまして、保証意思宣明公正証書は、保証契約締結日前一カ月以内に作成される必要がございます。

 他方、保証意思宣明公正証書の作成後でありますと、その公正証書が作成された当日でありましても、執行認諾文言つきの保証契約公正証書などが作成されることは否定されておりません。

 しかし、保証意思確認のための公正証書は、保証人本人がみずから公証人に直接口頭で必要な事項について述べることなどが法律上要求されるため、公証役場への出頭が必要でございます。したがいまして、保証人の意思確認のための公正証書を作成する際には、公証人が直接保証人本人に対してその意思を確認するということになります。このように、法の改正後は、公証人において保証人になろうとする者の意思確認を厳密に行うことによりまして、これまで以上の保証人の保護を可能とするものと考えられます。

 これに加え、さらに委員御指摘の熟慮期間を設けることにつきましては、保証人になろうとする者が要する手間の点なども考慮いたしますと、相当ではないものと考えられます。

 もっとも、今後また、実務の運用などについていろいろと検討した上で、適切な時期に公証事務に関する通達を発出するなどして、万全の体制で施行を迎えられるよう準備を整えたいというふうに考えております。

畑野委員 今お話がありましたが、熟慮期間というのは、保証意思の確認にとって必要な制度で、これを、具体的に進めるときにきちっととれるようにするべきだというふうに申し上げておきます。

 配偶者保証について伺います。

 委員会で議論になりました。最も保証を断ることができないという情義的な保証がなされると指摘されているのが配偶者保証の問題です。

 個人事業者の事業に従事する配偶者について公正証書の作成が必要ないとされている規定があります。

 配偶者の保証は、断ることができない情義的な保証の典型例であるという御認識はありますか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の主債務者の配偶者につきましては、法制審議会の審議などにおきましても、個人的情義などから保証人となることが多いという指摘がされておりまして、そういった類型のものというふうに認識しているところでございます。

畑野委員 そこで、金融庁に伺います。

 先ほどお配りした資料には、中ほどに「経営者に準ずる者」というのがございまして、そこには、「事業に従事する配偶者」の例が記載されています。

 事業に従事する配偶者とはどのようなものをいうのか、具体的に説明をしてください。現場ではどのような対応がされているのか、この点も伺います。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 監督指針におきましては、個人連帯保証を求めないこととする原則の例外の一つといたしまして、「事業に従事する配偶者」というものを規定しております。これは、事業に従事しておられる配偶者であれば、その事業の状況等を把握することは十分に可能であるという考えに基づくものでございます。

 具体的に、事業に従事する配偶者とは、保証契約の締結時におきまして実際に事業に従事している配偶者のことを指しておりまして、例えば夫が経営する事務所において経理を担当されている奥様などがこれに該当し得るというふうに考えております。

 他方で、逆に言えば、単に書類上事業に従事していることになっている配偶者ですとか、保証契約の締結の際に一時的に従事していたというような配偶者は該当しないというふうに考えてございます。

畑野委員 ですから、ただ単に配偶者たる地位というのを要件として意思確認を不要とするのは合理性に欠けていると言わなくてはなりません。「事業に現に従事している」という要件だけでは不十分だということです。

 伺いますけれども、個人事業者の事業に従事する配偶者について公正証書の作成が必要ないという規定を適用するに当たって、「事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」というのは、具体的にはどういうものをいうのか、法務省に伺いたいと思います。適用するに当たっては、実際には事業を共同経営しているとか、実態などを考慮すべきではないかと思いますが、いかがですか。

小川政府参考人 比較的零細でありますことが多い個人事業主の事業を前提といたしますと、現に事業に従事している配偶者であれば、その事業の状況などを把握することは十分に可能であると考えられるということ、まさにそうであるからこそ保証意思確認の手続の例外とすることが許容されるものだというふうに考えております。

 そして、このような趣旨に照らしますと、現に事業に従事しているとは、文字どおり、保証契約の締結時においてその個人事業主が行う事業に実際に従事していると言えることが必要であると考えられます。先ほどもお話がございましたが、単に書類上事業に従事しているとされるだけでは足りず、あるいは保証契約の締結に際して一時的に従事していたというのでは足りないということになります。

 その意味におきましては、現に事業に従事しているかどうかということの該当性は、御指摘がありましたように、個々のケースにおける事業などの実態を踏まえて判断されることになるものと考えております。

畑野委員 配偶者保証の問題は、なお慎重な審議が必要だと思います。

 保証人の責任制限について伺います。

 現在の民法第四百四十八条に今回第二項を追加して、主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重された場合にあっても保証人の負担は加重されないことを明示することとした趣旨はどのようなものですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 現行法には明文の規定はございませんが、一般に保証人の関与のないところでその負担が加重されるのは相当ではないというふうに考えられますので、主債務の目的または態様が保証契約を締結した後に加重されたときでありましても、保証人の負担は加重されないというふうに解されております。

 例えば、弁済期を平成二十九年四月一日とする百万円の売買代金債務を主債務とする保証契約が締結された、こういう場合には、その後、買い主と売り主が弁済期を同年三月一日と前倒ししたり、あるいは代金債務の額を百五十万円まで増額変更したとしても、保証人との関係では、あくまで弁済期は当初定めた四月一日であり、百万円の限度での保証債務ということになります。

 これは、改正法案におきまして、民法を国民一般にわかりやすいものとするという趣旨がございますので、その旨を明文化したことでございます。

畑野委員 保証人の責任制限については引き続き検討をする必要があると思うんです。

 法制審議会では、個人保証人が過大な保証債務を負い、破綻に追い込まれることを防ぐために、保証人の責任制限規定の導入について議論がされました。当委員会でも議論がされました。保証は主債務者との情義に基づき行われることが多くて、保証を拒むことが困難な現状に照らせば、主たる債務の内容や保証人の資力次第では保証人の責任を制限することを民法において明文化して保証人を保護することは必要不可欠だという意見も根強くございます。

 第三者保証、配偶者保証の制度を残すのであれば、保証人の責任を制限することを解釈、運用において検討すべきだということを申し上げておきます。

 最後に、金田法務大臣に伺います。

 まだ積み残された論点がございます。公序良俗違反の具体化としての暴利行為、契約締結過程における情報提供義務、契約の付随義務や安全配慮義務、複数契約の解除などのように、法制審部会で時間をかけて議論され多数の賛成が得られたにもかかわらず、一部の反対により明文化されなかった重要論点も少なくありません。約二十年を経て現行民法を改正し、現代の社会、経済への対応を図るというのであれば、今後も検討を続けるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

金田国務大臣 畑野委員からの御指摘をいただきまして、お答えをいたします。

 民法制定以降百二十年、これまでの間におけます我が国の社会経済情勢は、取引量が劇的に増大しますとともに、取引の内容が複雑化、高度化する一方で、情報伝達の手段が飛躍的に発展したといったようなことなど、さまざまな面において著しく変化をしております。今回の改正法案は、このような社会、経済の変化に対応することを目的としておるわけであります。今後も、民法を社会、経済の変化に対応させていくことは重要である、このように認識をいたしております。

 他方で、民法の債権関係の規定というのは取引社会を支える最も基本的な法的インフラであるということが言えるわけでございます。その規定内容を変更することに伴う社会的なコストというものにも留意が必要であると考えております。

 そこで、法務省といたしましては、社会、経済の変化への対応の必要性と、改正に要する社会的なコストを勘案しつつ、改正法案の施行後の状況を注視した上で、今後の民法改正の必要性については検討してまいることになるであろう、このように考えておる次第であります。

畑野委員 約百二十年ぶりの民法改正の議論が尽くされたとは到底言えません。

 引き続く審議を求めて、質問を終わります。

鈴木委員長 これにて両案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、両案に対し、平口洋君外一名から、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。平口洋君。

    ―――――――――――――

 民法の一部を改正する法律案に対する修正案

 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

平口委員 ただいま議題となりました両修正案につきまして、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、民法の一部を改正する法律及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の法律番号中の年号を「平成二十九年」に改めること等であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

鈴木委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより両案及び各修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。井出庸生君。

井出委員 私は、民進党・無所属クラブを代表して、民進党提出の民法の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成の立場から討論をいたします。

 政府提出の民法の一部を改正する法律案は、民法、債権法が一八九六年に制定されて以来初の大改正となるものであり、およそ二百条にも及ぶ大型改正であります。

 民法が制定された明治から、大正、昭和を経て平成の世となり、制定当時とは社会経済情勢も大きく変わりました。一方で、法律条文が変えられず、制定後に積み重ねられた判例、解釈論が実務の中に定着をしたため、条文だけを理解しているのでは実務に対応できない状況になっているということが今回の改正議論の出発点でした。今回の法改正は、この問題を解決することを目的とし、法制審議会においても長期間にわたり多角的な検討を行った上の答申が行われ、本改正案につながったものと承知をしております。

 本委員会では、三十時間を超える審議、参考人質疑を行ってまいりましたが、百二十年間積み重なってきた課題を解決しようとする改正案であるがゆえ、さらなる審議時間が欲しかったという思いは捨て切れません。

 また、共謀罪の審議入りを背景に終局を迎えたことには、強く抗議をいたします。

 現時点におきましても、政府提出法案では十分な改正と言えない点が明らかであり、その手当てを行うために民進党は修正案を提出いたしました。

 以下、民進党修正案に賛成する主な理由を申し上げます。

 第一、国民一般にわかりやすいものとする改正の観点から考えれば、判例で認められている暴利行為の無効について条文化を見送ることは不合理であり、明文化をするべきです。

 第二、職業別消滅時効を廃止することで、対象債権の時効期間は長期化することになりますが、その多くは少額債権であり、弁済後に受領した領収書等の証拠を保存しないことが多いため、弁済後の二重請求の危険性が生じます。これを排除するため、短期消滅時効を導入することに合理性があります。

 第三、損害賠償における損害額の算定に使用される中間利息控除の利率は、運用金利を参照して決められるべきであり、法定利率よりも低い割合とすることが被害者保護に資すると考えます。

 第四、最重要ポイントですが、保証契約は個人的な間柄に基づいて行われることが多く、そのリスクを十分自覚せず締結される場合が少なくありません。とりわけ、個人による事業用融資の保証による過大な保証債務の負担により、自己破産、夜逃げ、さらには自殺という保証人の生活の破綻を招く事例が数多く生じていることは周知の事実です。公正証書があれば第三者保証を可能とする政府案規定は、金融庁監督指針及び中小企業庁ガイドラインによって、第三者保証に頼らない事業融資を促進してきた流れに沿ったものとは言えず、修正が必要です。

 第五、今回の法改正で定型約款が新たに設けられるに当たり、変更の合理性の考慮要素はできる限り具体的に規定すべきと考えます。

 以上五点に鑑みれば、修正案は、本法の立法目的を達成するために必要不可欠の項目を盛り込んでおります。本修正を加え、こうした論点に成案を得てこそ、民法、債権法制定後百二十年を経た改正に値するものになると確信をしております。ここに修正案を明示し、今後の国会審議の中でさらに議論を深めていくことを強く望みます。

 なお、政府案につきましては、第三者保証を減少させようとする流れをせきとめるものであり、民進党の修正案のように第三者保証の禁止の第一歩を踏み出すか、そうではない政府案と、大きな開きがあることから、意義のある改正とは到底言いがたく、政府案並びに暦年の修正案については反対をいたします。

 以上です。(拍手)

鈴木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより採決に入ります。

 初めに、第百八十九回国会、内閣提出、民法の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、階猛君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、平口洋君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、第百八十九回国会、内閣提出、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、平口洋君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、ただいま議決いたしました民法の一部を改正する法律案に対し、平口洋君外三名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。逢坂誠二君。

逢坂委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 他人の窮迫、軽率又は無経験を利用し、著しく過当な利益を獲得することを目的とする法律行為、いわゆる「暴利行為」は公序良俗に反し無効であると明示することについて、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。

 二 職業別の短期消滅時効等を廃止することに伴い、書面によらない契約により生じた少額債権に係る消滅時効について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。

 三 中間利息控除に用いる利率の在り方について、本法施行後の市中金利の動向等を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。

 四 個人保証人の保護の観点から、以下の事項について留意すること。

  1 いわゆる経営者等以外の第三者による保証契約について、公証人による保証人になろうとする者の意思確認の手続を求めることとした趣旨を踏まえ、保証契約における軽率性や情義性を排除することができるよう、公証人に対しその趣旨の周知徹底を図るとともに、契約締結時の情報提供義務を実効的なものとする観点から、保証意思宣明公正証書に記載すること等が適切な事項についての実務上の対応について検討すること。

  2 保証意思宣明公正証書に執行認諾文言を付し、執行証書とすることはできないことについて、公証人に対し十分に注意するよう周知徹底するよう努めること。

  3 個人保証の制限に関する規定の適用が除外されるいわゆる経営者等のうち、代表権のない取締役等及び「主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」については、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。

  4 我が国社会において、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立は極めて重要なものであることを踏まえ、事業用融資に係る保証の在り方について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。

 五 定型約款について、以下の事項について留意すること。

  1 定型約款に関する規定のうち、いわゆる不当条項及び不意打ち条項の規制の在り方について、本法施行後の取引の実情を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、必要に応じ対応を検討すること。

  2 定型約款準備者が定型約款における契約条項を変更することができる場合の合理性の要件について、取引の実情を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、適切に解釈、運用されるよう努めること。

 六 消滅時効制度の見直し、法定利率の引下げ、定型約款規定の創設、また、個人保証契約に係る実務の大幅な変更など、今回の改正が、国民各層のあらゆる場面と密接に関連し、重大な影響を及ぼすものであることから、国民全般に早期に浸透するよう、積極的かつ細やかな広報活動を行い、その周知徹底に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金田法務大臣。

金田国務大臣 ただいま可決されました民法の一部を改正する法律案に対します附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処をしてまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十五分散会


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