衆議院

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第5号 平成30年3月30日(金曜日)

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平成三十年三月三十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 大塚  拓君 理事 門  博文君

   理事 田所 嘉徳君 理事 藤原  崇君

   理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 國重  徹君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      石崎  徹君    岩田 和親君

      上野 宏史君    鬼木  誠君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      菅家 一郎君    城内  実君

      黄川田仁志君    小林 茂樹君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      古川  康君    本田 太郎君

      山下 貴司君    和田 義明君

      逢坂 誠二君    松田  功君

      松平 浩一君    源馬謙太郎君

      階   猛君    森田 俊和君

      柚木 道義君    大口 善徳君

      黒岩 宇洋君    藤野 保史君

      串田 誠一君    重徳 和彦君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      山下 貴司君

   文部科学大臣政務官    宮川 典子君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   最高裁判所事務総局経理局長            笠井 之彦君

   最高裁判所事務総局民事局長兼最高裁判所事務総局行政局長           平田  豊君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長)            福田 紀夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    舘内比佐志君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           成田 裕紀君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     本田 太郎君

  鬼木  誠君     岩田 和親君

  源馬謙太郎君     森田 俊和君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     鬼木  誠君

  本田 太郎君     石崎  徹君

  森田 俊和君     源馬謙太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     安藤  裕君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局人材局長福田紀夫君、法務省大臣官房審議官金子修君、法務省大臣官房司法法制部長小出邦夫君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省訟務局長舘内比佐志君及び厚生労働省大臣官房審議官成田裕紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長中村愼君、人事局長堀田眞哉君、経理局長笠井之彦君及び民事局長兼行政局長平田豊君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。松田功君。

松田委員 おはようございます。立憲民主党の松田功でございます。

 本日、朝一番で、トップバッターでさせていただきます。元気よくいきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 本日は、裁判所定員法の一部を改正する法律案の審議でございますが、裁判所の人的体制は今十分なのでしょうか。特に、成年後見人制度や労働裁判との関係で裁判所の体制整備をどう進めていくのかを中心に議論いたしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、諸外国に比べて日本の裁判官の数がどのようになっているのでしょうか。現状をお伺いいたしたいと思います。また、日本の裁判官の手持ち数の現状と最近の推移はどうなっているのか、御説明を願いたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 諸外国と我が国では制度や手続等が大きく異なりますし、またアメリカ、イギリスといった国では相当数の非常勤の裁判官というのがおられますので、我が国の裁判官と同等の権限を有する諸外国の裁判官を特定、抽出して、その数を比較することは甚だ困難なところではございますが、それを前提に、日本につきまして、平成二十九年の簡易裁判所判事を除いた裁判官の数であります三千三十五人を、人口十万人当たりということで裁判官数で見て、諸外国については、裁判所において把握している直近の裁判官数で計算してみたところ、日本におきましては十万人当たり二・三九人ということでございます。アメリカは九・九〇人、イギリスが五・五三人となっているところでございます。

 また、手持ち件数についての御質問がございました。一人の裁判官が複数の種類の事件を取り扱うということが通常でございますので、なかなか平均的な手持ち事件数を割り出すのは容易ではございませんが、民事訴訟事件のみを担当しております東京地裁の民事通常部における裁判官一人当たりの手持ち件数は、平成二十九年末で約百九十件ということでございまして、平成二十五年末から二十八年末までおおむね百七十件から百九十件の間で推移しているところでございます。

松田委員 手持ち件数でありますけれども、平成二十五年が百七十、二十九年が百九十ということで高どまりで、日本の裁判官が他の先進国に比べても高どまりで、減っていないという現状があらわれているところであります。

 大きく見たとき、今の日本の裁判所の人的体制は十分と言いにくい状況であるようにも思われます。国民からすると、裁判に時間がかかるのに、丁寧な裁判を受けられないというような状況であるようにも思われます。

 日弁連なども要望はされておりますけれども、国民がよい裁判を受けられるように、裁判官を増員して、裁判官の手持ち件数を減らして、裁判官の多忙を改善し、裁判の質を高めるべきではないかと思われますが、いかがでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほど答弁いたしましたとおり、裁判官一人当たりの手持ち件数というのはなお高水準なところでございます。

 委員御指摘のとおり、裁判所にとりましては、一件一件の事件を適正迅速に審理、判断し、質の高い裁判を提供することがその役割を果たしていくことだと考えております。そのためには、裁判事務に従事する裁判官を中心に人的体制の充実というのが最も重要な課題の一つというふうに考えているところでございます。

 裁判所といたしましては、これまでも、事件動向等を踏まえまして、毎年、裁判官の増員を図ってきたところでございまして、平成三十年度につきましても、事件動向や事件処理状況等を踏まえて、民事訴訟事件及び家庭事件の適正迅速な処理を図るため、判事五十人の増員が必要と考えているところでございます。

 裁判所といたしましては、適正迅速な裁判、質の高い裁判の実現のために、事件動向等さまざまな要因を踏まえまして、引き続き必要な人的体制の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

松田委員 本当に質のいい裁判をすることが国民にとって非常にいいことで、皆さん努力はされていることは重々感じておるところでありますが、やはりそういったことで、多忙でなかなか受けられにくいような状況を少しでも減らしていくことが重要と考えておりますので、ぜひ進めていただければというふうに思っております。

 次に、成年後見人制度利用促進と家庭裁判所の体制整備について取り上げさせていただきたいと思います。

 超高齢化社会の進行と認知症の増加のもと、成年後見人事件数はどのようにふえているのでしょうか。また、それらを含め家庭裁判所で扱う家事事件はどのようにふえているのでしょうか。御説明をいただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 成年後見関係事件につきましては、近年増加を続けています。成年後見等の開始事件につきましては、平成十九年に約三万件だったものが平成二十九年には約五万件と、過去最高を記録しているところでございます。

 後見等監督処分事件、また実質的に専門職後見人等に対します監督として機能しております報酬付与事件の合計につきましても、平成十九年には約六万四千件だったものが平成二十九年には約二十九万一千件と、こちらも過去最高を記録しているところでございます。

 こうした後見関係事件を含みます家事審判事件は、近年ほぼ一貫して増加しておりまして、平成十九年には約五十八万三千件だったものが平成二十九年には約八十六万四千件と、これも過去最高を記録しております。

 家事調停事件につきましても、従前から増加傾向にございまして、平成二十四年には約十四万二千件と過去最高を記録しました。平成二十五年以降やや減少したものの、平成二十九年にも約十三万九千件となっているところでございます。

松田委員 楽しい話題やうれしい話題が過去最高というとうれしいところでありますが、事件が本当は少ない方がいいとは思うんですけれども、いろいろ事案で悩まれている方とかいろいろな問題が各所でありますので、そういったことを適切に行っていただいている中でありますけれども、やはり数字としては非常に大きく伸びている状況であることがうかがえます。

 そんな中、家庭裁判所における成年後見人関係事件、それを含む家事事件も大きくふえている中でありますが、一昨年に成立した成年後見人制度利用促進法では、成年後見人などの事務の監督並びに成年後見人などに対する相談の実施及び助言その他の支援にかかわる機能を強化するため、家庭裁判所などにおける必要な人的体制の整備その他の必要な措置を講ずるとされております。

 昨年閣議決定された成年後見人制度利用促進基本計画では、国の役割として、成年後見人制度の利用促進による事件数の増加に対応できるよう、裁判所の必要な体制整備が望まれるとされております。

 成年後見のために家庭裁判所の人的体制の整備をどのように進めておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 成年後見事件に関しましては、委員御指摘のとおり、その事件に関与いたします、特に判断を行う裁判官、そして裁判官を補佐して各手続段階におけます後見人等の提出書類の審査あるいは事件関係者に制度を理解してもらうための説明を行うことを職責といたします書記官につきまして、その人的体制の充実を図ってきたところでございます。

 御指摘のとおり、今後、成年後見制度利用促進に関する法律及び利用促進基本計画を受けて、さらなる事件数の増加も予想されるところでございまして、これらの増加に適切に対応し、後見人等の事務に対する監督を充実させていく必要があるというふうに考えておりまして、今回の増員の中でも、家庭事件処理の充実強化ということで、判事及び裁判所書記官の増員をお願いしているところでございます。

 裁判所といたしましては、今後とも必要に応じて家庭事件について適正迅速に処理することができるよう、引き続き体制整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

松田委員 家庭裁判所で扱う事件がふえている中でありますが、家裁の支部、出張所が少ないという声も全国的にお聞きをいたしております。

 全国各地の中で、例えば一つ例を挙げさせていただこうと思いますが、神奈川県の藤沢簡易裁判所管内の人口が百十七万人と、十三の県よりも多いんですが、家庭裁判所の支部、出張所もないため、地元の市議会や弁護士会から設置を求める要望が出されております。また、千葉県の市川家庭裁判所出張所では、管内人口が百二十五万人ありますが、出張所にとどまっております。

 全国的なバランスを見ても、家庭裁判所の支部、出張所をふやしていくべきではないかと思われますが、最高裁の方のお考えを聞かせていただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所の支部、家裁出張所の配置につきましては、裁判所へのアクセス、提供する司法サービス等を総合した国民の利便性を確保するという観点から、人口動態、交通事情の変化、裁判所で取り扱う事件数の動向等を考慮して、また、IT技術の進展等も視野に入れながら、委員御指摘のとおりの全国的バランスも見つつ、総合的な利便性の向上の見地から検討していく必要があるというふうに認識しているところでございます。

 現時点で直ちに新設しなければならないという状況には考えておりませんが、今後とも、人口動態、交通事情の変化、事件動向、IT技術の進展等のさまざまな観点を注視して、適正迅速な事件処理に支障がないようしていきたいというふうに考えているところでございます。

松田委員 続きまして、労働審判について取り上げさせていただきたいと思います。

 労働審判は、解雇や給料未払いなど職場の争い事を訴訟よりも素早く解決する紛争解決手続で、裁判官が務める審判官と専門家である労働審判員によって地方裁判所において行われるもので、働く人々にとって重要な手段の一つであります。

 働き方改革や雇用問題が重要となる中、労働裁判の件数はどのようにふえているのでしょうか。お聞かせをください。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 平成十八年四月に労働審判法施行以降、全国の裁判所における申立て件数は年々増加しておりまして、制度発足当初は約千五百件というところでございましたが、平成二十一年以降、約三千五百件の水準で推移しているところでございまして、平成二十九年には約三千四百件というふうになっているところでございます。

松田委員 それでは、労働審判事件を扱う地方裁判所やその支部は幾つあるのでしょうか。教えていただきたいと思います。

 また、各地方裁判所や支部における労働審判事件数はどのようになっているか、例として一番多い地裁と少ない地裁、それとまた、昨年四月から新たに労働審判を扱うようになった三支部についてお答えをいただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 労働審判事件は、全国全ての地方裁判所の本庁ほか東京地裁の立川支部、福岡地裁小倉支部において取り扱っておりましたが、二十九年四月から、静岡地裁浜松支部、長野地裁松本支部及び広島地裁福山支部において労働審判事件の取扱いを開始いたしまして、現在合計五十五庁で取り扱っているところでございます。

 新受事件についてのお尋ねですが、事件数の一番多い本庁、これは東京地裁でございまして、平成二十九年一月から十二月末ということで九百七十六件ということでございます。一番少ない庁は高知地方裁判所で、これは同じ期間で五件ということでございます。

 二十九年四月から取扱いを開始いたしました、先ほど御答弁申し上げました三庁につきましては、四月から十二月までの事件数という数字ですが、浜松支部は二十三件、松本支部が十四件、福山支部が八件となっているところでございます。

松田委員 御説明いただいたように、労働審判は五十の地方裁判所と五つの支部のみで行われているのですが、地方裁判所まで行くのは大変なので、あるいは地裁が非常に混み合うので、労働審判を扱う支部をふやしてほしいという声が出ております。

 どこにふやすか検討するためには、都道府県単位より細かい地域別数字が必要だと思います。その際、労働相談、助言、指導、あっせんなどの個別労働紛争解決制度のうち、労働条件などについて労働者と事業主との間の民事上の個別労働紛争の相談件数がベースになると考えられます。

 これらの数字は厚生労働省のホームページで都道府県単位の数字でしか公表をされておりませんが、各県の労働局には各地の労働相談コーナーの数字があるとお聞きいたします。議論のベースとして数字を出していただくことに厚生労働省にもぜひ御協力をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

成田政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、都道府県労働局及び各労働基準監督署などに設置している総合労働相談コーナーに寄せられた総合労働相談の状況について毎年公表しているところでございます。

 総合労働相談のうち、御指摘の民事上の個別労働紛争の相談件数につきましては、現在、都道府県別の件数を公表しているところでございますが、労働審判制度の検討の際に、より詳細な地域別の件数のお求めがあった場合には、情報提供について検討してまいりたいと考えております。

松田委員 前向きのお答えをいただきましてありがとうございます。

 そのような数字を見ながら、働く人たちのために、労働審判を扱う地方裁判所の支部をぜひふやしていってほしいと思います。

 最高裁のお考えを最後にお伺いいたします。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 支部において労働審判事件を取り扱うかどうかを判断するに当たりましては、予想される事件数が一つの考慮要素になります。この観点からは、委員御指摘の相談件数のようなデータも考慮に入れることが考えられるところでございまして、厚生労働省さんに対しましても、必要に応じて協力を求めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 ただ、支部において労働審判事件を取り扱うかどうかということは、予想される事件数のほか、本庁に移動するための所要時間等の利便性、また事件処理体制、労働審判事件の運用状況、また労働審判員の安定的な確保といったさまざまな事情、地域的事情を総合的に勘案しながら検討していかなければならないというふうに考えております。

 先ほどの三支部については、新たに取扱いを開始いたしましてほぼ一年が経過するところでございますが、支部において労働審判事件を取り扱うかどうかに関しましては、これらの三支部の運用状況も注視し、さきに御答弁申し上げました諸要素を総合的に勘案して、引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。

松田委員 ありがとうございました。ぜひ、国民のためにしっかりと御検討して進めていっていただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 きょうは、裁判官の定員法の質疑でありますが、私の方からは、裁判官が、いわゆる永田町に勤務をし官僚としての経験を積んだ後に、また裁判官に戻っていくというシステムの現状について、少し問題提起をするような二十分にしたいと思います。

 きょうは法務省の小野瀬民事局長においでをいただきました。

 小野瀬局長、法曹としてのスタートは、法務省あるいは検察庁でいらっしゃいますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 私は、昭和六十一年四月に東京地方裁判所の判事補に任官いたしまして、それが法曹としてのスタートでございます。

山尾委員 ありがとうございます。

 お手元の資料に、小野瀬局長のキャリアパスを配付させていただきました。昭和六十一年四月に裁判官として任官されて、判事補ですね、現在四月ですから、三十二年という長いキャリアを積まれておられます。

 このキャリアを見ますと、昭和六十三年四月ですね、判事補となられて二年して間もなく法務省の民事局付になられて、裁判所と法務省をかなり頻繁に行ったり来たりされていて、裁判官として実務に当たられていたのは、釧路の二年、東京家裁での三年、東京高裁での一年二カ月と、またその後、部総括を含めた東京高裁の二年三カ月で、合わせて八年五カ月ぐらいになろうかと思います。済みません、ちょっと手元で私が概算したものです。

 そうすると、キャリアの約四分の一程度を裁判官として、そしてまた別に司法研修所の教官として三年、最も長いのは法務省の勤務で二十年余りというふうになられるかと思うんですけれども、局長にお伺いしたいんですが、最初に判事補としてこのキャリアをスタートされたとき、こういったキャリアパスというのは予定されておられましたか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 最初任官したときは、当然、最初のみずからの仕事を一生懸命やるということでございますので、なかなか、その先の異動といいますか、そういうことがどうなるかということにつきましては、余り具体的には考えておりませんでした。

山尾委員 それでは、今、去年からですね、民事局長、真摯に取り組んでおられて、その局長の役職を全うされた後なんですけれども、裁判所の裁判官に戻る可能性というのはあるんでしょうか、ないんでしょうか。

金子政府参考人 特定個人の将来の具体的な人事ですので、お答えしかねるところでございます。そういうことで御了承いただければと思います。

山尾委員 可能性の有無ですから、お答えいただいていいと思うんですけれども、それでは、私の方から、小野瀬局長の前三代の民事局長のキャリアについて、事務総局からいただいた資料に基づいて申し上げると、その前の小川元局長ですか、その後、東京高裁の判事の部総括、そして今は千葉地方裁判所長をやっておられますね。そして、その前の深山卓也さんですけれども、民事局長になられた後、東京高裁の判事、部総括として戻られて、最高裁の判事、ことしの一月からやっておられますね。その前の原優さんですけれども、民事局長をされた後、やはり東京高裁の判事、部総括として戻られて、千葉地方裁判所長、そして名古屋の高等裁判所長官というふうになっておられますので、民事局長を終えられた後は裁判所の裁判官として戻る可能性があるかないかと言われればあるんでしょうし、この過去三代を見るとかなり濃厚ということになるんだろうと思いますね、客観的に。

 これは一般論で結構ですけれども、例えば、今、小野瀬局長、今国会にも内閣の方が出したいと言っていらっしゃる民法改正ですか、深く携わってこられていると思うんですが、一般論として、仮に、裁判官として裁判所に戻ったときに、御自身の携わった例えば民事関係法令、改正民法、こういったものが違憲審査にかかったようなときというのは、携わることというのは制度上あり得るんですか、それとも一切ないんですか。

金子政府参考人 もちろん、裁判官として戻られた後、そのときに、立案に担当した法律の違憲性が問題となる事件に当たるということは抽象的にはあり得ることでございます。

 ただ、それを担当するか、実際にそれを避けるかという問題は別の問題としてございます。

山尾委員 制度上、必ずしもそういったことが起こらないというふうにはなっていないというお答えですし、私もそのとおりだと思います。

 ただ、後でちょっと話に出ますが、裁判官として忌避をされたりあるいは回避をされたりという可能性があるかないかということは、またその時々になってくるんだろうということだと思うんですね。

 ちょっと、ちなみになんですけれども、きょうは舘内訟務局長にも来ていただいておりますが、舘内訟務局長は、もともと法曹としてのスタートはどこからなんでしょうか。

舘内政府参考人 突然での質問でございますので用意したものはございませんけれども、昭和六十三年に判事補で任官してございます。

山尾委員 済みません、今、舘内局長にはこの内容で通告はしておりませんでしたが、舘内訟務局長も東京地方裁判所の判事補として法曹としてのキャリアをスタートされておられます。

 私の手元にいただいたものによりますと、舘内局長は、どちらかというと裁判所の裁判官としてのキャリアが長く積まれていく中で、外に出ておられるのは、大蔵省、そしてまた内閣の法制局、そして昨年の七月に法務省訟務局長、こういう御経歴と伺っております。

 きょうは、別に舘内局長や小野瀬局長に、本当にそれぞれの、御自身のお仕事の仕事ぶりについて何か問題視をしているわけでは全くないということをつけ加えさせていただきます。

 ただ、いろいろな役所に裁判官の方がいて、むしろ役所のキャリアの方がメーンになるようなキャリアを積まれる方もいらっしゃる。でも、最終的には裁判官に戻って、公正中立な立場で、役所が当事者となる訴訟の裁判を担当することもまた制度上十二分にあり得る。

 役所と言っていますけれども、いわゆる内閣の一員ですので、ちょっときょう問題提起をしたいのは、三権分立の中で、内閣と、そしてこの内閣とかなり緊張関係にあるべき少数者のとりでとしての司法、この内閣と司法の間の人事交流というのは、多分、一般の国民の皆さんや、もしかしたら私たち国会議員が思っている以上に深く、強く、長いものがある。こういう制度自体に問題があるのではないか、課題があるのではないかということをまずこの法務委員会に御提起させていただいて、そしてまた、皆さんのお手元の資料の二枚目を見ていただきたいというふうに思います。

 今は、裁判官であった方が民事局長になられる、訟務局長になられるということでお話をしてきたわけですけれども、もちろん限りませんね。お手元の資料は、行政省庁等に勤務する者のうち、裁判官出身者の官職一覧表ということであります。去年十二月一日現在のものです。

 私の手元には平成二十一年のものもあるんですけれども、ほとんど構成は変わっておりません。例えば、法務省が最も多くて百前後、そして内閣官房、一番上ですね、一名、内閣法制局に二名、公正取引委員会に二名ということで、これも、二十九年と二十一年とほとんど変わっておりません。

 きょう、この後は、法務省の中に訟務局という三文字がついている官職が幾つかあるんですけれども、今も残るいわゆる判検交流について、残り、御質問したいと思います。裁判官が検事として訴訟を担当し、裁判官に戻る、こういった人事交流ですけれども、質問です。

 現在、今申し上げたような判検交流というのは、刑事訴訟あるいは行政訴訟、どういった分野で残っているんでしょうか。

金子政府参考人 訟務部局に配置されている検事、いわゆる訟務検事のうち、裁判官出身者については、平成二十八年四月一日時点で五十三名、訟務検事全体に占める割合は四六・一%だったものが、平成二十九年四月一日時点で五十四名、訟務検事全体に占める割合は四五%となっております。

 いわゆる訟務検事である裁判官出身者のうち、国の指定代理人として活動する者の訟務検事の数については、平成二十八年四月一日と平成二十九年四月一日いずれも四十二名ということで変化はございませんけれども、訟務検事全体に占める割合は、二十八年四月一日時点では三六・五%であったものが、二十九年四月一日時点では三五%ということになっております。

山尾委員 今、ちょっと質問の先取りをしていただいたように思いますけれども、今の図は、お手元の資料の四ページの裁判官出身の訟務検事のこの約十年の数の推移を言っていただいたんですが、ちょっとその前提として、今の質問は、正しいかどうか確認です。

 刑事分野、いわゆる刑事訴訟の判検交流というのは民主党政権時代に廃止をされまして、今残っているのは、いわゆる訟務分野、国が訴訟の一方当事者となる裁判で、国の側に立って、国の代理人として、国には責任ありませんとか国の行為は違法ではありませんとか、そういった訴訟活動をする仕事ですね、刑事分野ではない分野、そういう分野については、訟務検事として裁判官出身者が働く。この分野について残っているということでよろしいですか。うなずいていただきましたので、そうだと思います。

 ちょっとこれは上川大臣にお伺いをしたいんですけれども、上川大臣も、おととしですね、訟務分野における判検交流について、訟務分野における判検交流を縮小していくという方針は、趣旨については、その方向性のもとで進めていきたいと答弁をされています。滝法務大臣のとき、民主党政権のときに、この訟務分野の判検交流も縮小していくという方針が出され、そして上川大臣も、この方針は、その方向性のもとで進めていきたいと平成二十七年にこの法務委員会で答弁をされました。

 私が大臣に伺いたいのは、現在も同様の方針かということと、縮小する必要があるというその理由については、大臣はどのように受けとめていらっしゃるかということをお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 前回の私の大臣職のときに、判検交流につきまして、それを縮小していく方針ということについて申し上げたことを、この御質問をいただきながら、改めて確認されたということでございますが、そのような方向性の部分が非常に大事であるというふうに思っております。

 法曹につきまして、法という客観的な規律に基づいて活動するということでございまして、基本的には、裁判官、あるいは弁護士、また検事、それぞれのお立場についてその職務を全うしていくということが大変大事であるというふうに思っております。

 裁判官の職にあった者を訟務検事に任命するなどの法曹間の人的交流、これにつきましては、基本的には、裁判の公正中立性を害するものではないと私は思っております。そして、国民の期待と信頼に応え得る多様で豊かな知識経験等を備えた法曹を養成する、またそれを確保するためにも意義があるものというふうにも思っているところでございます。

 もっとも、訟務検事ということでありますが、先ほどのように、国側の訴訟代理人としての、当事者としての立場を持つということでございますので、裁判官の配置先として余り多くなるということにつきましては、御指摘があったことも踏まえて前の御答弁をさせていただいたところでございますが、その割合を徐々に少なくしていくということが大事かというふうに思っております。

山尾委員 裁判の公正中立を害する制度ではないとおっしゃいましたけれども、少なくとも、よく裁判官の方が大事にされる、国民から見た裁判の公正中立らしさはやはり毀損する制度になっているのではないかというふうに思います。その点があるからこそ縮小という方針を維持されて、これからも縮小していくということだと思うんです。

 お手元の資料四なんですけれども、これを見ていただくと、裁判官出身者の訟務検事数は、この縮小方針が出された二十四年には四十九名、二十九年は五十四名と、むしろふえてしまっているんですね。縮小されていないんですね。この点についてどういったお答えをされますか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の方針につきましてですけれども、これは、平成二十四年五月十一日、質問主意書に対する政府の答弁書という形で出されておりますけれども、その中に、「国の利害に関係のある争訟において国の代理人として活動する検察官の数に占める裁判官の職にあった者の数の割合があまり多くなるのは問題ではないかとの指摘がなされたことなどから、この割合を次第に少なくする見直しを行うこととした」というふうに述べられております。

 その上で、平成二十七年四月に訟務局が設置されまして、予防司法支援や国際訴訟等への対応など新たな業務が加わり、原則としてこれらの業務に従事するために配置された訟務検事につきましては、その人数が増加したとしても、この方針とは矛盾するものではないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、裁判官出身者を訟務検事に任命するということにつきましては、こういった御指摘を踏まえながら、このように訟務検事の担当する業務が変化したことなどを踏まえまして、その必要性に応じ、今後とも適切に行ってまいりたいというふうに考えております。

山尾委員 国の指定代理人として活動する者という定義が、ちょっとこれは抜け穴があるんですよね。

 訟務検事のうち裁判官出身者は、平成二十九年で五十四名となっています。うち、国の指定代理人として活動する者は四十二名となっています。そうすると、差の十二名についてはいわゆる国の指定代理人としては活動しないので、そこはカウントから除いて割合を出せばいいのだ、こういうお答えなんだと思うんですけれども、最後に御質問しますね。

 この十二名、国の指定代理人として活動する者とカウントされていない方でも、忙しいときは応援として国の指定代理人として活動している場合があるのかないのか、お答えください。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 国の指定代理人になることが予定されておらない予防司法業務や国際訴訟等への対応などの業務を担当している者、これをカウントしているということが今の先生の御指摘のところでございますけれども、国の利害に関係のある訴訟につきましては、量的にも質的にも複雑困難化しているなどの状況のもとで、各訟務検事の知識経験等を踏まえまして、適材適所の観点から事件を担当させるということが必要でございます。

 そのため、裁判官出身者の訟務検事のうち国の指定代理人として活動する者ではないというものにつきましても、個別の事案に応じて、例外的にではありますが、指定代理人となって活動させることがあり得るところでありまして、この点についてはどうか御理解いただきたいと思っております。

山尾委員 質疑時間が終わりましたので、要するに、あるということなんですね。カウントから除いている人も結局訟務検事として訴訟に立つことはあるという中で、このカウントの仕方が本当に正しいのか、裁判官の人事がどうあるべきかということを引き続き御質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、階猛君。

階委員 希望の党の階猛です。

 最初に、先日の佐川氏の証人喚問についてなんですが、補佐人を務めた熊田弁護士は元検事ということなので、御確認したいんですが、補佐人の選任に当たって法務省が関与したということはありますか。法務大臣、お答えください。

上川国務大臣 御指摘の補佐人につきまして、佐川氏御自身の判断で選任したものというふうに承知をしております。

 その上で、このたび、委員からの御質問があったということで念のために官房秘書課において各部局に確認をしたところ、御指摘のような事実はなかったところでございます。

階委員 念のために確認しておきたいのが、大臣所信の中で、訟務機能の充実というくだりがございました。我が国の利害に重大な影響を及ぼす国内外における法的紛争に適切かつ迅速に対応するということで、国内外の法的紛争を未然に防止するための予防司法機能の充実などに取り組むというくだりがございました。

 この予防司法機能の充実という中で、例えば、行政組織の中で問題が起きて、それが法的紛争になりそうだ、刑事、民事含めてですね、そういった場合に、この訟務機能という中で、法務省が他の省庁を手助けする、支援する、こういったことは想定されているのかどうか。

 この点について、私は想定していないのが当然だと思うんですけれども、そういうことでいいのかどうか、念のため確認させてください。

上川国務大臣 予防司法の分野ということで、訟務局の機能の中に、これから取り組んでいく大変大きな可能性として広げていきたいというふうに思っているところでございますが、今、委員の御質問については、通告がなかったということで、適切なお答えができるかどうか、ちょっと持ち合わせをしておりません。ただ、さまざまな紛争処理に対しまして、訟務局の役割、さらにこれから予防司法としての役割、こうしたことにつきまして、一つずつこの可能性について広げていくべく取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 ちょっと今の御質問の趣旨が余り十全わからないことと、通告がなかったということで、的確なお答えができないことをお許しいただきたいと思います。

階委員 制度的なことなので、後で法務省の事務方からでもいいんですが、訟務機能の充実ということで、どこまでが所管というかターゲットになるのかということを御説明いただければと思います。

 その上で、本題に入ります。

 昨年のこの法案の改正のときの附帯決議の二番ということで、きょうお配りしている資料の中にあります、一ページ目ですけれども、定員法の改正を行う場合には、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにすることという点が挙げられておりますけれども、この数字を教えてください。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 平成二十九年十二月から平成三十一年一月までの判事任官見込み数は、判事補からの任官者数が百六十人程度、その他の弁護士任官や行政官庁等からの復帰による増加が二十五から五十人程度である一方で、同じ期間の判事の減少見込み数は、定年退官が三十人程度、その他の退官や行政官庁等での勤務等による減少、こういったものが五十から七十人程度と見込んでおります。

 これらの増減を前提といたしますと、平成三十一年一月には、判事の人数は二千三十人から二千八十人程度の幅となると予想しておりまして、今回、判事五十人の増員を認めていただいた場合の欠員といたしましては、五人から五十五人の幅となるものと予想しているところでございます。

階委員 今回、増員五十をしたとすれば、何とかその定員の枠内で皆さん判事補から判事に上がることができるということで、裁判官の身分保障の観点からは、そのような、定員が足りないという理由で昇格できないということは避けるべきだと私も思います。

 ただ一方で、定員をふやして判事をふやすということであれば、国民が納得できるような成果も上げていただかなくてはいけないと思っています。

 今回の法案の目的、これは例年同じかと思うんですが、下級裁判所における事件の適正かつ迅速な処理を図ることということが挙げられています。近年は、この資料の二ページ目を見ていただくとわかるんですが、上の方に平均審理期間の表があります。平成十二年から始まって、飛んで二十八年、二十九年ということで、三段目の人証調べあり判決終局事件ということなんですが、この部分を見ますと、むしろ平均審理期間は短縮するどころか長くなっている、こういう数字が見てとれるわけです。

 私は、こうしたことが生じている理由は、よく複雑困難事件の増加ということを最高裁は説明されていますけれども、それだけではないのではないかと思っておりますが、この点について最高裁の見解を教えてください。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所としましては、これまで、裁判官の増員をお認めいただいて、審理の充実強化に加えて審理期間の短縮にも取り組んでいるところでございますけれども、増員にもかかわらず平均審理期間が短縮されていない要因の一つとして、委員御指摘のとおり、複雑困難事件の増加があると考えております。

 もっとも、そのような事件に限らず、適正かつ迅速な審理を実現するためには、裁判所と当事者との間で主要な争点などについての認識を共有することにより、攻撃防御を当該争点に集中させ、必要な人証を集中して調べることが必要であるところ、この認識共有が円滑に行われていない場合があるという御指摘もあり、これも平均審理期間が短縮されていない理由であると考えられるところでございます。

階委員 裁判所と当事者との争点に関する認識共有が十分図られていないということも理由として挙げられました。その背景には、裁判官であるとか、あるいは当事者の代理人たる弁護士、この方たちの能力がどうなのかということも改めて検証してみる必要があるのではないかと思っています。

 その上で、平均審理期間を短縮するために、今までは毎年恒例の判事の員数の増加というのをやってきたわけですけれども、それだけじゃなくて、ほかにもやるべきことがあるのではないかと私は思っていますが、何かその辺について、最高裁、考えていることがあればお伺いしたいんですが。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほどお答えいたしましたとおり、裁判所と当事者との間で争点などについての認識共有が円滑に行われていない場合があるということが平均審理期間が短縮されていない理由の一つと考えられることからすれば、このような認識共有が円滑に行われるようにするためという施策を考える必要があるということで、まずは、裁判所におきまして、裁判官同士が研修などさまざまな機会を通じて民事訴訟の審理運営のあり方を不断に検討、議論することが重要であると考えております。

 また、これに加えまして、裁判所と弁護士が、協議会などのさまざまな機会を通じて、御指摘のとおり、審理運営のあり方について意見交換することが重要ではないかと考えているところでございます。

階委員 本来であれば、法曹養成制度改革を進めることによって、質、量ともに充実した法曹が幅広い分野から参入してくるということで、まさにこの複雑困難な事件に対応できる体制が整ってくるというふうに想定していたわけですけれども、実態は裁判官になってからも研修をやらなくちゃいけないような今お話でしたけれども、本当にこの法曹養成制度は今のままでいいのだろうかということは、私もこの場でかねがね申し上げてきました。

 判事がふえても期間が短縮されないという問題を今言いましたけれども、もう一つの問題として、判事補は去年から定員を減らしているにもかかわらず、むしろ欠員がふえているということを挙げたいと思います。

 先ほどの一枚目の附帯決議の三番目において、最高裁判所において引き続き判事補の定員の充足に努めるということをこの委員会で決議しているわけです。

 他方で、今どういう欠員の状況になっているかというのを見ていただきたいんですが、資料の三枚目です。この三枚目に、左側は判事、右側は判事補ということで、参考までに五大弁護士事務所の採用者数というのも右の方に挙げております。過去十年ぐらい挙げております。

 判事補の欠員というのはどこを見ればいいかといいますと、右から二つ目、A引くBというところをごらんになっていただきたいんですが、平成二十一年度は欠員が、新任判事補任官後で十八名にすぎなかったものが、どんどんどんどんふえてきている。平成二十八年度では百二十七人でした。昨年この委員会で、二十数人減らしましたということなんですが、ここに至っても、その下、九十九という数字があるんですが、実はこれはまだ実態を反映しているものではなくて、ちょっと見づらくて恐縮なんですが、その斜め下に百五十八という数字があると思います。これが今現在の欠員の数字なので、要すれば、平成二十八年度百二十七だったのが、定員を減らしたにもかかわらず百五十八人、逆にふえている、こういう悲惨な状況になっている。

 なぜ、こういう、定員を減らしても欠員がむしろふえてしまっているのか。ここを、最高裁、御説明ください。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所といたしましては、できる限りの充員に努めているところではございますが、判事補の給源となります司法修習終了者の人数が減少しておりますことに加えまして、弁護士として活躍する分野が広がっているだけではなく、渉外事務所等を中心といたします法律事務所の大規模化、それに伴う弁護士の採用増といったことに伴いまして、採用における競合が激化しているところでございます。

 また、裁判官の場合、全国に均質な司法サービスを提供するなどのため全国的な異動が避けられないところでございますけれども、大都市志向の強まりですとか、配偶者が有職であるということが一般化してきている、そういったことに伴いまして転勤への不安を持つ司法修習生がふえているということにつきましても、判事補の任官につながらない理由となっているものというふうに考えております。

 こういった原因に対してはさまざまな対策をとって、今後とも、裁判官にふさわしい人を採用し、裁判の運営に必要な体制を確保できるように努力してまいりたいと考えているところでございます。

階委員 修習生の採用人数が減ったということについて言えば、減ったといってもまだ千五百人以上いるわけですね。昔は、五百人ぐらい、修習生がいなかったときでも、裁判官に百人ぐらいなったというときもあるわけでして、修習生の人数が減ったということは言いわけにならない。

 あと、採用環境の厳しさとか、全国的な異動があって大変だということは、私は検事でも同じことは言えると思うんですね。

 ところが、その次のページ、四枚目を見ていただくと、検事の方は、むしろ欠員は、一番最後のA引くBのところを見ていただくと、近年は減ってきておりますね。直近だと三十三人にとどまっています。また、任官者は六十七人ですが、この数字は何と、裁判官の判事補を上回っているということで、私は、普通は判事補の方が検察官よりも新人は多いというふうな常識でこれまでいたので、こういう逆転現象が生じているということもまことに驚きなんです。

 そういう中で、私は、最高裁の採用の努力が足りないのではないかということをまず指摘させていただきます。質問はしませんけれども、指摘はさせていただきます。

 その上で、私は、最高裁の採用努力の問題だけではなくて、法曹養成の問題、これも大きいのではないかということを考えております。法曹養成制度改革によって、志願者の数も減って、数が減れば質も低下するということで、裁判官にふさわしいような人材のプールが少なくなってきたのではないかということが、近年の任官者の減少、それから欠員の増大につながっているのではないかというふうに考えますが、最高裁、いかがでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 判事補の任官者が減少しております原因につきましては、先ほど御説明申し上げたとおりというふうに考えておりまして、司法修習終了段階における司法修習生の質が低下しているといったことが原因というふうには考えておらないところでございます。

階委員 では、もう一つだけ、最高裁にこの点で確認しますけれども、五百人のときには百人採れた。千五百人になれば、比例的に裁判官になれる人材もふえると考えれば、三百人ぐらいプールはあると思うんですよね。ところが、実際には六十五人ですということで、幾ら何でも減り過ぎだろうと思うわけですよね。

 やはり素直に考えれば、千五百人にふやしたけれども、ふやした割にはレベルは上がっていないよというのが素直な見方ではないかと思うんですが、最高裁はそのようには全く考えないということでよろしいですか。

堀田最高裁判所長官代理者 以前の修習生の少なかった時期と比べても任官者がなかなか少なくなっているという点も含めまして、判事補の任官者の減少している原因については、先ほど申し上げたように考えているところでございます。

 司法修習生の質が変化しているのかどうかということを比較するのは難しい面があるわけでございますけれども、例えば、法曹に必要な資質、能力を備えているかどうかを判定する目的で行われております二回試験の不合格者数を見ましても、近年、大きく増加するような状況にはないといったことからいたしますと、司法修習生の質が低下しているというふうに見られる事情はなかなか見当たらないというふうに思っております。

階委員 私の質問は、裁判官にふさわしい人材が不足しているのではないか、人数がふえた割にはそういう人材はふえていないんじゃないかということを指摘したわけで、二回試験というのは裁判官に限らず法曹三者になる人全員が受けるものですので、ちょっと違うと思うんですよね。

 どうなんですか、率直なところ、裁判官として採用したい人材の母集団、これは千五百人になったから、私は本来だったらふえるべきだと思うんですけれども、ふえているんですか。

堀田最高裁判所長官代理者 修習生の質的な状況というのを量的に把握をするというのはなかなか難しいところがございまして、その中で、先ほど申し上げたような指標というのを一つの徴憑ということで御説明させていただいたということでございます。

階委員 なかなか質の低下というのを認めたがらないんですけれども、私もいろいろな弁護士さんに会うと、やはり今の制度に変わってから基本的な知識が欠けている方がふえていて、弁護士であるにもかかわらず、刑事事件で接見禁止処分がかかっていたら接見に行けないんだというふうに思って、接見しないで弁護活動をしていたというような事例も聞きました。

 裁判官についても、当事者が欠席して、欠席しているにもかかわらず、勝手に意見をしんしゃくして、正式な答弁書とかが出ていないにもかかわらず請求を棄却したといったような話も聞きました。

 というようなことで、定性的な面に着目してもそういう問題があるということなので、ぜひその辺は最高裁についてもちゃんと考えてみていただきたいと思います。

 それと、きょうは文科省にも来ていただいていますけれども、法科大学院の問題はますます深刻になっていると思います。ことしの法科大学院の入学者数、まだ予想段階だと思いますけれども、前年に比べてどうなりそうですか。お答えください。

宮川大臣政務官 平成三十年度の入学者数につきましては、三月の末日あたりに辞退をされる方もいらっしゃるということですので、例年どおり、四月の一日現在の人数を回答するよう三月十六日付で各法科大学院に調査を依頼したところであります。ですので、現時点では把握していないのが現状でございます。

階委員 正確な数字でなくて結構なので、適性試験の志願者とか受験者から容易に推測できると思うんですが、減るんでしょうかふえるんでしょうか。お答えください。

宮川大臣政務官 平成三十年度に法科大学院に入学する者は、二十九年度法科大学院適性試験の受験が必要であり、その受験者数は三千八十六人と、前年度の三千二百八十六人から二百名減少しております。これは事実でございます。

 来年度の入学者数については、先ほど申し上げましたように調査中でありますので、現時点では把握できないということでございます。先生から予測をということでありますけれども、今データとして出ているのは、この適性試験を受けたのがマイナス二百名だったということでございます。

 以上です。

階委員 過去も、適性試験の受験者が減るのに合わせて入学者数もきれいに減ってきているということなので、まず間違いなく入学者数も減ると思います。昨年の入学者数が千七百四人ぐらいで、そこから更に減るということになりますと、ほぼ合格者数と近接してしまうということです。これで果たして有為な人材を選抜できるのだろうかということが懸念されるわけですね。

 他方で、予備試験の方がありますので、そこでかなりの競争をかいくぐってきて受かっている人がいるので、まだレベルは一定程度に保たれていると思うんですが、何といっても、法科大学院というのはこれまでの法曹養成の柱という位置づけだったわけですが、法曹養成制度の柱がこういう状況では、質の低下ということは大変心配なものがあります。

 実際に、幾つかその質の低下を裏づけるようなデータもあると思っていまして、例えば、合格者数に占める予備試験の割合がふえているということで、六ページ目を見ていただきますと、司法試験受験資格別受験・合格状況ということで、右側の方に、各年の司法試験合格者数のうち、法科大学院を修了して受かった人、それから予備試験を経て受かった人ということで数字が並んでおります。

 それぞれの合格者が全体でどれぐらいの割合を占めているかという比率の数字、ここには出ていませんけれども、私が計算したところ、予備試験の合格者が司法試験を受かっている割合、これが年々ふえてきている。平成二十四年では予備試験で司法試験を受かった人は全体の二・八%にすぎなかったものが、平成二十九年では一八・八%ぐらいになっているということで、予備試験のシェアがどんどん上がってきているわけですね。ということは、逆に言うと、法科大学院の方の受験生の質がやはり低下してきているのではないかというふうに推測されるわけです。

 また、七ページ目を見ていただきたいんですが、これは司法試験予備試験の結果についてということで、上の段がいろいろ数字が出ております。注目していただきたいのは、予備試験の合格率という上から三つ目の項目ですけれども、大学生で予備試験を受けた人の合格率と法科大学院生で予備試験を受けた人の合格率というのが並んでおります。

 普通に考えると、大学生で予備試験を受けるよりは、大学を経て法科大学院に入って、そこで何年か学んだ上で、法科大学院を修了する前ですけれども予備試験を受けているわけですから、当然のことながら、法科大学院生の方が予備試験に合格する割合は高いのだろうなというふうに推測できるんですけれども、近年その差はどんどん縮まってきております。見ていただきますと、平成二十九年では、大学生が七・一二%であるのに対して、法科大学院生は七・六〇%ということでほとんど変わりない。何のためにお金をかけて、時間をかけて法科大学院に通っているのかということが言えるかと思います。

 お伺いしますけれども、こういう数字を見ると、法科大学院入学が、志願者が減ってだんだん簡単になってくる中で、入学者の質的水準も低下しているのではないかと思うんですが、文科省、いかがでしょうか。

宮川大臣政務官 法科大学院入学者の質の確保は大変重要でありまして、その観点から入学者選抜の競争性の確保ということを私たちも今求めているところであります。

 そのため、平成二十七年度以降、定員規模の適正化を図ります組織の見直しであるとか、あとは入学者選抜の競争性の確保を推進してきた結果、平成二十九年度の入学者選抜においては、競争倍率が前年度より〇・一五上昇いたしまして、二・〇一となりました。競争性の確保の目安である二・〇倍を確保したところでございます。

 しかし、階委員が司法試験を受けられた時代の倍率や、また、今の七ページのデータにありますような、大学を卒業している人と法科大学院を卒業している人の予備試験の合格率なんかを見ますと、データとして競争性が低いという認識は私どもも持っております。

 ですので、競争性にかわるような法科大学院における教育内容の充実が大変必要だと考えております。実務能力の向上と多様で多角的な人材の法曹界での活躍などを目標として設立されたのが法科大学院でございますので、教育内容の充実をもって力をつけられるような取組を今後も推進してまいりたいと考えております。

階委員 上川法務大臣が前回法務大臣をされていたころに、法曹養成制度改革について関係者の会議で決定がされたはずですね。

 そのときに、法科大学院については平成三十年度までを集中改革期間ということで、競争性を高めたり志願者の回復を図ったりとか、あるいは質の向上を図ったりということに取り組んできたと思うんですが、現実には、先ほど言ったとおり、志願者は、もう改革の最終年度である平成三十年度が始まるわけですけれども、まさにその平成三十年度もなお下がり続けている、また質についてもますます低下を裏づけるような数字が出てきているということでして、率直に伺いますけれども、法科大学院の改革はこれまでのところ成果を上げていないという評価にならざるを得ないと思うんですが、いかがでしょうか。

宮川大臣政務官 平成二十七年六月の政府の法曹養成改革推進会議決定を踏まえまして、文部科学省においては、各法科大学院に対するめり張りある予算配分、いわゆる加算プログラムなどを通じまして、法科大学院の組織の見直しの推進や教育の質の向上、また早期卒業であるとか飛び入学の活用による時間的負担の軽減などに取り組んでいるところであります。

 その結果、法学既修者コース修了生は修了後三年目までに約七割の者が司法試験に合格していることなど、法科大学院の改革については一定の成果を上げていると認識しております。

階委員 私は現状の数字をもっと直視すべきだと思っていまして、司法試験合格者の質的向上をもっと図っていかないと裁判官の人員確保にも支障を来してくるんだと思っております。

 法務大臣にもお伺いしますけれども、現行の法科大学院の修了か予備試験の合格を受験要件とする司法試験の仕組みを改めるべきではないかと思いますが、大臣の御見解をお願いします。

上川国務大臣 確かに、法科大学院を中核とする現行の法曹養成制度、これにつきましては、先ほど来の委員の御指摘にもございましたとおり、法曹志願者の大幅な減少を招来する、また質的な面についても幾つかの指標の中にその問題点も提起されているということで、多くの課題が今なおあるというふうに思っているところでございます。

 先ほどの三十年度までの法科大学院集中改革期間、これは大変重要な取組を、文部科学省を中心に、また法務省でも実施しているところでございまして、三十年度までの集中改革期間のこの成果につきましては、もう一年ということでございますし、その先についてのデータ、エビデンスベースでしっかりと検証していく必要があろうかというふうに思っております。

 その意味で、今の司法試験受験資格については、法科大学院課程を修了した者及び予備試験に合格した者に与えられることとしているところでございますが、今委員御指摘のような方向性につきましては、それを廃止するということにつきましては、今の現状ではなかなか難しいというふうに思っております。

 いずれにしても、司法試験合格者の質的向上と裁判官の人員確保、このような問題につきましては非常に重要な課題であるというふうに認識しておりまして、このような取組を、三十年度、改革期間の中でも更に推進してまいりたいというふうに思っておりますし、また、その暁には必ず質的にもまた量的にも確保できるものというふうに思っているところでございます。

階委員 上川法務大臣は、前回法務大臣をされていたころからこういった問題を指摘されてきたんですけれども、なかなかこの問題は改善されないということで、私はそろそろ一歩踏み出すべきだというふうに思っています。

 それで、事実関係をちょっと確認していきたいんですけれども、最高裁に、通告の番号でいうと十二と十三をまとめてちょっとお聞きしたいんですね。

 先ほどの欠員の数字です。直近では百五十八で、今回、二十五定員を減らすので百三十三になると思います。ここで、平成三十年度には、判事補から抜けて判事に上がる人が出てきますよね。それはまた欠員をふやす要因になるわけです。

 他方で、欠員が百五十八というのは余りに多いので、例えば検事並みの三十三とか、裁判官においても平成二十二年度は三十三でした、こういったところまで欠員数を減らしていくとするならば、大体何人程度、平成三十年度に判事補を採用する必要があるのかということを、数字だけ簡単に教えてください。

堀田最高裁判所長官代理者 今後、平成三十一年一月までの判事への任官見込み数は百人程度でございまして、次回の新任判事補の採用数を加えなければ欠員数は二百三十人程度ということになります。その欠員数を三十三人程度とするためには、概算でございますが、二百人程度の判事補を採用する必要があるということになります。

階委員 事実として、二百人程度採用しなければ欠員数を今の検事並みの水準に持っていくことはできないということなんですね。

 そこで、二百人採用できるのかということなんですが、現実的には無理ですね。現に、司法修習の採用時に、裁判官を志願する方、アンケートをとっているそうですが、これは百三十人ぐらいというふうに伺っています。どうあがいても二百人は無理です。

 ということは、判事補の定員、二十五減だけでは全く足りない、予算の適正な管理という意味からしても、私は、二十五減らすだけでは不十分であって、実態からかけ離れたこの判事補の定員を大幅に削減すべきだと思います。

 最後に、大臣、この点について、一番最後の質問ですが、お答えいただけますか。

上川国務大臣 判事補の定員のあり方につきましては、先ほど来の答弁のとおり、司法を担う裁判所におきまして、事件の動向、また処理件数の推移、判事補の任官状況、欠員状況等を踏まえた上で慎重に検討を行う、その上で決定されているものと承知をしているところでございます。

 法務省といたしましては、このような裁判所の判断を尊重すべきものというふうに考えておりまして、委員御指摘のように、現時点で判事補の定員を更に大幅に削減することは相当ではないというふうに考えているところでございます。

階委員 全く私の問題意識に答えられていないわけでして、私も毎年この問題について取り上げて、政府も、PDCAとかエビデンスベースとかKPIとかいう言葉を駆使している割には、全くこの問題についてはそういうことが意識されていないなということを改めて指摘させていただき、質問を終わります。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、藤原崇君。

藤原委員 自由民主党衆議院議員の藤原崇でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして大変光栄でございます。理事、委員各先生方に感謝をしながら質問をさせていただきたいと思います。

 私の方の質問も、先ほど直近の階委員の質問と基本的には同じ流れで、なかなかちょっと、ほとんど質問されて重複ばかりかなとも思うんですが、さはさりとて、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の法律、下級審における事件の適正かつ迅速な処理を図るため判事の員数を増加しということでありますが、今後の裁判の主力になる判事の卵である判事補、この人数が採用数が減っているということは先ほどの質疑のとおりでございます。

 直近の七十期は千五百人の修習生で六十五名、四十期台では、採用者数、修習生が五百人いる中でも、私の見た期では六十五人ぐらいは五百人のときにも採っている、四十期台では。今は千五百人もいても六十五人ということで、この判事補の採用数が低迷していることの理由と、それから六十五人という採用人数についての現状についての認識を最高裁にお伺いします。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 判事補の採用人数が伸び悩んでおりますことにつきましては遺憾であると考えているところでございますが、その理由といたしましては、判事補の給源となる司法修習終了者の人数が減少しておりますことに加えまして、大規模法律事務所との競合が激化していることがあるというふうに考えているところでございます。また、大都市志向の強まり、あるいは配偶者が有職であるということが一般化しているということに伴いまして、転勤への不安がふえているものと考えております。

 今後とも、実務修習庁の担当者や司法研修所の教官等から、司法修習生の進路希望の実情等をきめ細かく聴取するなどいたしまして、任官希望者が伸び悩んでいる理由について具体的に把握するように努めてまいりたいと考えております。

藤原委員 先ほどの階委員に対する答弁と同じようなことで、当然、質問者が違って理由が変わったというわけにはいきませんので、それは当然のことだろうと思います。

 それで、私の方でやはり最高裁に今後お願いをしたいのは、全国転勤があるであるとか大手事務所との採用が激化しているということなんですけれども、今後は、では実際、それの裏づけになる資料はあるのかということはやはり考えていただきたいと思うんですね。では、修習生にアンケートをとって、全国転勤があるから裁判官になりませんという方が実際にいるのかというと、恐らくそういう形ではないんだろうと思うんですね。担当教官が話していて、まあそういう修習生も多いんじゃないかなとか、それも一つ空気感として大事ではあるんですが、実際の数字としてどれくらいのものがあるのか、では、大手事務所と悩んで結局大手事務所に行った方がどれくらいいるのか、そういうところを今後はやはり数字として詰めていただくというのが、まず一つお願いだろうと思っております。

 そういう意味で、ちょっと三つ目の質問を最初にさせていただきたいと思うんですが、先ほど階委員からも御紹介ありましたけれども、私も、修習生になるときに、任官、任検、弁護士希望で、アンケートで数字を、丸を書いたような覚えがあるんですよね。

 伺ったところによると、これはその後のフォローアップをしていない、つまり、最初に任官希望した方のうちどれくらいの方が実際に任官したのか、逆に、任官を希望していなかったけれども任官したという方もいらっしゃると思うんですが、こういうフォローアップで活用されていない状況であると伺っているんです。個別の修習生にアンケートで希望をとったのであれば、やはりその内容を活用して、最終的に、一年後には希望者のうちどれくらい任官をしてどれくらいが任官しなかったのか、希望者以外の任官者数、まずそれを把握していくことが最初のスタートかなと思うんですが、その点についての認識を伺いたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のアンケートでございますが、これは、司法修習生の採用に当たりまして、その時点でとっておりますアンケートの中で、その時点の進路希望についてもチェック方式で答えさせているというものでございます。そういう性質のものでございますので、その回答はあくまでも司法修習生採用時の志望にとどまるものでございまして、志望については司法修習が進むにつれて変わり得る流動的なものであるというふうに考えてきたところでございます。

 もっとも、このアンケートを通じまして進路希望を一定程度把握することはできるものと考えておりますので、このアンケートの結果を活用するということは検討してまいりたい、このように考えております。

 具体的には、採用時に進路希望として裁判官を選択していた者のうち、どれぐらいが結果的に任官をし、どれぐらいが任官をしなかったのか、あるいは任官しなかった理由は何かということを把握できるのかどうか、そういったことについても検討してまいりたいと考えております。

藤原委員 ありがとうございます。ぜひそれはお願いをしたいと思います。

 数字で見ていけば、実は意外と、最初に任官希望している人の方がほとんど任官せず、逆に、希望していなかったけれども実務修習で見ていく中で希望する方がふえるというような傾向があるのかもしれませんし、逆に、そういうような修習で裁判官の実態を見ても余り弁護士とか検察官から希望が変わらないということもあるかもしれないんですが、まず大事なことというのはそこの数字を把握することだろうと思っております。そこの数字を把握しないと、何となくの空気感、雰囲気というところでやっていくわけにはいきませんので、やはり少しでも客観的な数字のところをとっていただきたいなと思います。

 そして、今、合格者数、千五百名程度います。これは、仮に二千とかにふやしたとしても、裁判官というのは、ある程度以上の成績の方の中から基本的には採用の選考というか採用しているというふうに理解をしています。そういう意味では、千五百人を二千人にふやしたとしても、採用適格者数がそこまで大きくふえるわけではないと考えています。

 そういう中で、今後どうやって最高裁として判事補の採用数を確保していくつもりか、その点について最高裁の認識を伺いたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 先ほど採用者数が伸び悩んでいる原因について二点申し上げたわけでございますが、そのうちの大規模法律事務所との競合に関しましては、裁判官の具体的な仕事のイメージというものがつかみにくい面がありますことから、修習生が、早い段階で弁護士に進路を決めてしまう者も少なくないというふうに聞いているところでございます。

 そこで、実務修習におきましては、裁判官の職務や働きぶりを間近に見て、そのやりがいや魅力を実感してもらうほか、司法研修所におきましても、折に触れて司法研修所教官が裁判官のやりがいや魅力を司法修習生に伝えるようにするなどしてきているところでございます。

 また、これまでも、裁判官を含む法曹希望者を増加させる地道な取組といたしまして、各裁判所に依頼をして、裁判官が大学等で講演をするといった機会を設けてきたところでございます。

 また、転勤への不安がふえているという点に関しましては、これまでも、裁判官の異動については、異動の希望や異動の負担の軽減といったことについてできる限り配慮してきていることなどを伝えまして、過度な不安感を持つことのないよう努めてきているところでございます。

 裁判所といたしましては、これまでもこのような取組を行ってきたところでございますが、今回の御指摘も踏まえて、これらの取組をより一層進めていくように努めてまいりたいと考えているところでございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 やはり大きな要因がわからないことには対策も打てないんだろうと思うんですね。実際、任官適格があって、希望もあったけれどもやめてしまうという方は、転勤への不安が大きい方が多いのか、あるいは最終的には大きな大規模事務所に引っ張られてやめてしまう方が多いのか、そのどちらかにもよって、やはり対策の仕方も変わってくると思っております。

 そういう意味では、そもそも対策を打つには、結局、何が本当のところの原因なのというところをやらないと、何となくふわっとした対策で終わってしまうんだと思っております。

 私の方から、一つは、現場の裁判官とか研修所の教官もそうなんですけれども、やはりもっと上の裁判官の方、非常に人格的にも魅力ある方も多いので、そういう方に出ていっていただくというのはありがたいなと思っております。

 私はこれは質問はしませんけれども、ぜひ、東京地裁で修習をする方、最初でいいので、最高裁で、選択修習ではないですけれども、半日でもいいので、最高裁判事十五人、それぞれ忙しいと思うんですけれども、そういうところについての修習をしてみるというのも、私は、それぞれの裁判官室とはまた違うよさがあるのではないかなと思うので、すぐにやってくれとはなかなか言えないんですけれども、やはりそういう新しいアイデアもどんどん使っていただければなと思っております。

 それでは次の質問に参りたいと思いますが、裁判官、検察官、弁護士の卵、修習生、そしてその修習生の卵になる法曹養成の問題について御質問をしたいと思っております。

 今、これも階委員のお話とかぶるのでありますが、集中改革期間ということで、平成二十七年六月三十日の法曹養成制度改革推進会議決定ということで、「法曹養成制度改革の更なる推進について」ということで出されております。今、集中改革期間として進んでおるんですが、この中に、こういう文言があります。当面、これより規模が縮小するとしても、千五百人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、とどまることなく、最善を尽くし、中略して、目指すべきであると。つまり、当面はこういう方向を目指すべきである、そういうふうに書いてあるんですね。

 二十七年からはもう三年近くがたってまいりました。もちろん、この当面という文言は何年後という一義的なものではないのであると思うんですが、この当面というのはどれくらいの期間を想定しているのかということについて、法務省の見解をお伺いしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の法曹養成制度改革推進会議決定、平成二十七年六月のものでございますが、御指摘のとおり、新たに輩出される法曹の規模につきまして、当面、千五百人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、より多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきであるとされているところでございます。

 今後、あるべき法曹の輩出規模が改めて示される際には、裁判事件数の推移や法曹有資格者の活動領域の拡大を含む法曹に対する社会の法的需要、また司法アクセスの改善状況を含む全国的な法曹等の供給状況といった要因のほか、輩出される法曹の質の確保の観点から、御指摘ございました、文科省において現在進められております法科大学院の集中改革の進捗状況やその結果等の事情が考慮されることになるものと考えております。

 このように、あるべき法曹の輩出規模につきましては、多岐にわたる事情、要因を考慮する必要がございまして、そのためのデータ集積には一定の期間を要するというふうに考えておりまして、現時点において、この千五百人程度という政府方針の見直しを行う時期を明示するのは困難なところがございます。

 ただ、推進会議決定における法科大学院の集中改革期間は平成三十年度までとされていることもありますので、これを踏まえつつ、また、あるべき法曹の輩出規模について適切な時期に的確な検討が行えるよう、改革の推進状況や改革の成果の把握も含めて、必要なデータ等の集積や、法務省が行うべき活動領域の拡大に向けた取組等を引き続きしっかり行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 当面というのはどのときかというのは一義的には難しいということで、それはそうなんだろうと思います。

 ただ、一つのポイントになるのは、平成三十年度までの法科大学院の集中改革期間、これの改革の結果とか成果、どこまでを見るかというのはあるんですが、そういうことを踏まえてということだと思いますので、そろそろ集中改革期間が終わるという意味では、一つの区切りが近くなってきたのかなと思っております。

 その文書、更に下には、法務省は、法曹人口のあり方に関する必要なデータの集積を継続して行い、法曹の輩出規模について引き続き検証を行うこととするとあるが、これはどのような方法でこの検証を行っているのか、そして、検証結果の結論についていつの時点で出せるかどうか、そういう見通しをどう立てているのか、現在の状況についてお伺いをさせていただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 法曹養成制度改革推進会議決定に関しましては、今後の法曹人口のあり方に関しまして、委員御指摘のとおり、「法務省は、文部科学省等関係機関・団体の協力を得ながら、法曹人口の在り方に関する必要なデータ集積を継続して行い、高い質を有し、かつ、国民の法的需要に十分応えることのできる法曹の輩出規模について、引き続き検証を行うこと」とされております。

 法務省におきましては、現在、この推進会議決定に基づきまして、司法試験の受験者数、合格者数の推移、法科大学院志願者数の推移、また弁護士登録者数及び登録取消し者数の推移、また裁判事件数の推移、企業内弁護士数の推移等といった関連するデータの集積を行っているところでございます。

 先ほど申し上げましたけれども、あるべき法曹の輩出規模につきましては、多岐にわたる事情、要因を考慮する必要がありますところ、これまでに集積されたデータのみでは不十分でございまして、また今後何らかの結論を得る時期を明示することもまた困難なところではございますが、法科大学院の集中改革期間が平成三十年までとされていますので、またその成果を踏まえ、また早く検証すべきであるという委員の御指摘も踏まえた上で、あるべき法曹の輩出規模について適切な時期に的確な検討が行えるよう、引き続き必要な取組を進めてまいりたいというふうに考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 ロースクールの方がやはり注目されるんですけれども、当然、集中改革期間、法務省にも宿題が投げられているわけですので、まずは平成三十年度まで見守ってからという御趣旨だと思いますけれども、引き続き、データ、どういうところが足りないのか、しっかり集めていただければと思っております。

 恐らく、データをたくさん集めたとしても、一義的に、ことしは千八百三十五人が適正ですとか、そういう数字が出るわけではないんだろうと思っております。逆に、政策的に、政府の方から、やはりこういう法曹像が望ましいんだ、そういう像に合わせて数字というものを一つ設定していくということも必要なんだろうと思っています。

 今、上川大臣、司法外交ということで、法曹有資格者が外に出て、弁護士、法廷弁護士以外の分野で大きく活躍をすること、これも必要ではないかと日弁連なんかも言っておりますが、例えばこういうことをするには、やはり合格者数、千人とかそういう少ない人数では恐らくだめなんだろうと思っております。極端に言えば三千人とかそれくらいやれば、法廷弁護士としての仕事は厳しい、競争も激しい、だけれども試験の資格を取った人は新しい分野でいろいろ活躍をしていく、そういうような法曹の試験というのもあり得ると思います。

 ただ、そうすれば、当然、司法試験というのは受かれば一生法曹で飯が食える、そういう資格ではなくなるわけでありますから、そういうふうな法曹像をつくるのであれば、ロースクールというものをどうするかというのを考えなければいけない。

 逆に、海外での活躍もいいんだけれども、まずは国内において質の高い法曹のサービスをしっかり提供しようと。なら千人とか千数百人とか、そういう人数にすることによって、そうなれば恐らく外で活躍をするというのはなかなか難しくなるとは思うんですけれども、逆に、国内、少しずつ市場は縮小していますけれども、そういう中で、質の高いリーガルサービスという意味では維持をされていく、ではそういう方向を進むというのも一つあるんだろうと思います。

 ただ、大事なことは、どちらに進むかは、やはり方向性を明示することが必要なのではないかなと思っています。前に進むのか、後ろに下がるのか、右に行くのか、とまるのか、どれでも一つの判断としてあり得るんですけれども、大事なことは、それをしっかり明示することだと思っております。

 そういう意味で、この合格者の問題というのは、そもそも我が国の法律家というものが、国内で基本的には仕事をしていく、そういうものと考えているのか、あるいは海外、多方面で活躍をする、そういうような方向をとるためにはやはりどんどんふやしていかなければいけない。どちらもあると思うんですが、やはりそういうあるべき法曹の活躍の姿、それをそもそも議論をした上で、それを踏まえた人数を設定することが必要と思うんですが、その点についての法務省の認識を伺いたいと思います。

葉梨副大臣 委員御指摘のように、適正な法曹人口のあり方については非常にさまざまな御意見があります。

 先ほど来議論になっております法曹養成制度改革推進会議決定では、新たな法曹を年間千五百人程度は輩出できるよう、必要な取組を進め、さらには、これにとどまることなく、社会の法的需要に応えるため、より多くの質の高い法曹が輩出される状況を目指すべきである、そういうふうにされております。

 今後のあるべき法曹の姿として、高度の法的知識はもとより、幅広い教養と豊かな人間性を基礎に、十分な職業倫理を身につけた法曹が社会の法的需要に応え、さまざまな分野において広く活躍することが期待されているものと認識しています。

 先ほど来、司法法制部長から法務省の具体的な取組、さらには文科省においても現在法科大学院改革が進められているというふうに承知しておりますけれども、今後、必要なデータの一定の集積や法科大学院改革の成果等を踏まえた上で、高い質を有して、かつ国民の法的需要に十分に応えることのできる法曹の輩出規模について必要な検討を進めていきたいと考えています。

藤原委員 ありがとうございます。

 この問題は、ボトムアップで、いろいろな数字を見てもなかなか難しいんだろうと思っております。そういう意味では、トップダウンで、こういうような法曹像だ、競争は激しくてもその中でやっていくんだということであればそちら、あるいは小さくてもクオリティーを維持していくということであればそちら、そういうトップダウンが必要なのかなと思っておりますので、ぜひ検討をよろしくお願いします。

 最後に一問なんですが、今回の法律では、定員合理化計画に協力をするということで、裁判官以外の人員の削減等ありますが、この裁判官以外の職員の事務の省力化に非常に資すると思っている電子化の問題でございます。

 民事裁判、いまだにファクスと郵便と紙という状況で、非常にちょっとおくれているところもございますけれども、民事裁判のウエブ会議や電子申立ての導入など、IT化に向けた検討が進んでおりますが、ちょうど本日、有識者会議が最終方針を取りまとめるという段階に来ていると思っております。

 書記官の方も、分厚い大部な記録の管理、非常に大変だと思いますし、私も一度あるんですけれども、三十冊ぐらいの記録の閲覧をすると、一部は閲覧禁止ということで隠さなければいけないんですけれども、ああいう作業も非常に大変ということで、やはりそういうところは電子化を進めていくことによって非常に省力化が進むんだろうと思っております。

 そういう意味で、IT化の実現に向けて環境整備にしっかり取り組んでほしいと思いますが、それに関する法務省の見解を最後にお伺いしたいと思います。

葉梨副大臣 藤原委員御指摘のとおり、民事裁判手続の効率化や迅速化、さらには利用者に対するサービス向上の観点から、民事裁判手続におけるIT化の推進は極めて重要だと思っています。

 このIT化については、政府の未来投資会議が昨年六月に取りまとめた未来投資戦略二〇一七において、迅速かつ効率的な裁判の実現を図るため、利用者目線で裁判に係る手続などのIT化を推進する方策について速やかに検討し、本年度中に結論を得るというふうにされています。

 昨年十月、内閣官房に、有識者によって構成される裁判手続のIT化検討会が設置されて、藤原委員御指摘のとおり、これまで、民事訴訟におけるオンラインでの申立て、利便性の高いウエブシステムの導入などの課題について幅広く検討され、本日にも最終的な議論の取りまとめが行われる予定というふうに聞いております。

 それから先は、私どもの、更に検討を進める、具体的な検討ということになってくるわけですけれども、法務省としても、司法制度を所管する立場から、この検討会に今までも出席をして、協力を最大限してまいりました。今後は、その検討結果を踏まえた上で、最高裁判所を始めとする関係機関と十分に協議しながら、民事裁判手続のIT化に向けた具体的で必要な取組を進めていきたいと考えています。

藤原委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 本日は、裁判所職員定員法改正案について、私の方から何点か質問させていただきたいと思います。

 最初に、最高裁判所に確認ですけれども、今回、判事の定員五十人増ということなんですけれども、この根拠は、私がお聞きしていることは大体毎年一緒ですけれども、二つありまして、一つは、民事訴訟事件の審理充実、これをなぜ充実しなければいけないかという主な原因が、民事訴訟事件の複雑困難化であるということですね。二番目、家庭事件処理の充実強化、これについての主な原因は、成年後見関係事件の急激な増加ということですね。この二点でよろしいでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今回の判事五十人の増員の理由というのは、今、委員御指摘のとおりでございます。

黒岩委員 そうしますと、五十人増加とくくってありますけれども、これの内訳はどうなっていますか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 増員の内訳ということでございますが、多くの庁では、裁判官が各種事件をあわせて担当するのが通常でございますので、なかなか、どの分野にどれだけ増員すると言うのが難しい事情はございますが、おおむねということで申し上げますと、民事訴訟の関係で判事二十七人、家庭事件処理の充実強化のため二十三人というところでございます。

黒岩委員 わかりました。

 それではお聞きしますけれども、民事訴訟事件の充実、二十七人だということであります。この原因が、先ほど申し上げましたけれども、民事訴訟事件の複雑困難化であるということなんですが、この複雑困難化と二十七人という数字、この積算根拠はどうやって算出しているんですか。

中村最高裁判所長官代理者 毎年の判事の増員のお願いというところにつきましては、計画的に増員していくということでございまして、数につきましては、毎年の充員状況も踏まえつつ、その数を決しているということでございます。

 どういう形でこの二十七人が出てくるかということについてのお尋ねだろうと思うんですけれども、これは正確に、どうして、だから二十七というのはなかなか明確にお答えするのは難しいところでございますが、これまで申し上げていますように、平均審理期間でありますとか合議率の増加ということを達成していくために、ことしにつきましては、民事訴訟でいいますと二十七人ということの増員をお願いしたいというふうに考えているところでございます。

黒岩委員 ですので、再度聞きますけれども、民事訴訟関係で判事を二十七人増員するんだ、そして、その主な根拠は事件の複雑困難化だと。ですから、この事象と二十七人が量的に整合性がとれなければ、これは国民にも説明がつかないわけですよ。ですので、その積算根拠というものを、これは予算を伴う話ですから、きっちりと示していただけませんか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 ことしの二十七人というところにつきましては、平成二十四年の定員法の審議におきまして、当時、司法制度改革におきます最高裁における説明に基づきまして、その二十四年の当時の事件動向を踏まえて、今申し上げました合議率、審理期間というので、合議率でいいますと一〇%、審理期間でいうと一年以内というのを達成するためにどれぐらいの人数が必要かということで、その際、四百人規模の増員が必要だということを申し上げたところでございます。

 その四百人のところについて、計画的に充員状況も踏まえてやっているということで、ことしの二十七はそのうちの二十七人ということで、むしろ、先生の言われる、四百人が、どうしてそういう数が出てくるかというのが一番もとになっているんだろうと思いますが、これは合議をするために、どういうふうな形で単独事件を、手持ち事件を減らし、そういうようなさまざまな事情を考慮して四百人を決めたというところでございます。

黒岩委員 局長、真正面から答えてくださいよ。

 今回の民事訴訟の判事が二十七人、その大きな理由は、複雑困難化している事件がふえているということなんですから、この因果関係をしっかり示してください。

 合議率と審理期間はこの後時間があれば聞きますけれども、結論から言えば、合議率だって上がっちゃいないし、審理期間だって短くなっていないんだから、そんなことをお題目にするんじゃなくて、今回の改正案について何度も何度も、最高裁の方からも複雑困難化だと。ですから、その原因と、結果として増員する二十七人との因果関係、積算根拠というものを示していただきたい。

 これ、実は事前に聞いたら、簡単に言えば積算根拠はないということでした。ないんですよね。

中村最高裁判所長官代理者 積算というのは、先ほど申し上げましたように、目標を達成するために、シミュレーションというか試算をいたしまして、短くするために、当時の事件数を前提にどうするかということを試算した結果、そういう四百人というのを平成二十四年当時に御説明させていただいたということで、厳密に言って、積算がないというのは正確ではないと思いますけれども、厳密に、数字的にこれだけがあるから四百が出てくるというものではないということでございます。

黒岩委員 このぐらいにしておきますけれども、局長、四百を言っているんじゃないんですよ。今回の二十七についてと言っているわけです。それについて、試算があるんだったら、後で私のところに持ってきてください。試算ということは計算式があるということですから、持ってきてください。できますか。いいです、いいです。

 それで、私も、資料で、民事訴訟事件の複雑困難化ということで、複雑困難類型の事件動向ということで数字をいただいております。平成二十年三万五千件ぐらいのものが、平成二十九年で五万五千件ぐらいと二万件上がっているということなんですが、まずは、この複雑困難類型の定義を教えてください。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 最高裁が作成した資料の中の複雑困難類型という定義ということでございますが、複雑困難化の一つの指標といたしまして審理期間の長さというのが想定されますことから、平成二十六年の統計におきまして、地方裁判所が扱う民事一審訴訟事件のうち、統計上抽出が可能な事件類型の中から平均審理期間がおおむね一年以上の事件類型を抽出したものでございます。

黒岩委員 平成二十六年時点ということですけれども、あくまでも十二カ月超の類型ということですよね。

 お聞きしたいんですけれども、この複雑困難類型の五万五千件のうち、実は、全体で類型というのは十一あります、十が具体的な類型で、もう一つがその他の損害賠償という類型がありますね、これが実は六割を占めていて、約三万五千件と六割ですよ。では、このその他の損害賠償の審理期間というのは今どうなっていますか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 その他の損害賠償事件の平均審理期間は、平成二十八年度が十・五カ月、平成二十九年度が九・九カ月ということでございます。

黒岩委員 これは、裁判所の努力によってもう十二カ月を切っているんですよね、九・九カ月ですから。そうすると、審理期間という意味においては、これは複雑困難類型にはもう属さない、こういう理解ができるわけですよ。そうですよね。

中村最高裁判所長官代理者 先ほど、複雑困難類型というものの定義を申し上げました。その他の損害賠償という類型につきましては、確かに平均審理期間は一年を下回っております。

 この類型をどうやってとったかということを御説明申し上げますと、医療、建築といった、先ほど十個の統計上抽出できる特定の類型には整理されない損害賠償という事件名で取り出して集めたものでございます。

 これらは件数が多いわけですけれども、損害賠償という事件名の中にはさまざまな事件の類型が含まれております。その中に、例えば、先端的な経済問題に関する専門的知見が問題となる事件、あるいは、先例に乏しく、法律構成自体から整理が必要となるような、非典型的で審理に長期間を要する事件も広く含まれているというのが、これが実際、損害賠償事件というのを行っている裁判官等の実務の感覚でございます。

 同時に、損害賠償という類型の中には、その法律構成が明らかでなかったり、比較的短期間に審理されている事件も含まれているということで、これらの影響で全体としては平均審理期間が一年を下回るということになっておりますが、そのことのみをもって、その他の損害賠償という類型について複雑困難類型から外すということは相当でないというふうに考えております。

 もっとも、指標として、より精緻な事件類型の抽出の仕方が可能かどうかということについては、引き続き検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

黒岩委員 その他の損害賠償についていろいろな類型があるとるるおっしゃいましたけれども、統計上はこれを全て含んで三万五千件なわけですよ。それが平均して九・九カ月になっている。あくまでも、これは何度も言いますけれども、裁判所の努力によって私は審理期間が短くなった成果だと思っていますよ。

 これをやはり外して考えないと、今回、理由の第一に、この複雑困難類型の事件動向だと、これがふえたからと。全体で民事訴訟の事件は十五万件ですからね。そのうち五万五千件といえば、四割ぐらいになるわけですよ。これがふえたからというと非常にある意味説得力があるようですけれども、そのうち、困難類型からその他類型を外しちゃえば二万件になるわけですよ。そうなると、十五万件のうち約一三%ということになるわけですから、ですから、話がちょっと盛られちゃった説明になっている、このことを私は危惧しているんですよね。

 今申し上げたとおり、では、その他類型、細かく類型ごとに分けて、その分野だけでも審理期間が十二カ月を切ったから複雑困難類型から外すということは、これはこの後検討していただけるんですね。

中村最高裁判所長官代理者 統計上はなかなか処理することが難しいわけでございますが、先ほど答弁申し上げましたとおり、より精緻に複雑困難類型が抽出できるように引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。

黒岩委員 検討ということで、私は前向きだと評価をさせていただきます。

 あくまでも、論理構成は民事訴訟事件の審理充実。これは何で審理充実しなければいけないかといえば、複雑困難化が進んでいる、そしてこの複雑困難化の類型の数がふえている、しかし、その中の六割を占めるのはその他損害賠償だ、これ自体が十二カ月を切っているということになるわけですから、その中から十二カ月を切っているものを省かなかったら、この論理構成が、ある意味土台が揺らいでしまうので、このことがないように、検討をするということですから、来年の少なくとも定員法の改正についてはその数字が出てくるものだと私は理解しておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは今度は、先ほどの家庭事件処理の充実強化という点でお聞きしたいんですけれども、これも同じ質問をします。

 成年後見関係事件の増加、これは十万件から三十五万件ですから三・五倍、二十五万件もふえているわけです。では、この増加に伴って、今回、二十三人の家庭事件の判事の増加ということですけれども、この増加部分の仕事量と、数的な因果関係、積算というのはどういうふうにしているのか、お聞かせください。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほども御答弁申し上げましたように、裁判官の場合、家裁だけやっているという裁判官についてはごく一部の庁に限られておりまして、多くの裁判官というのが民事、家事あわせてやっているということになっています。そういう意味で、その増加分が何人分に当たるかというところについては、なかなか積算が難しいところがございます。

 そういう意味で、この増加分が直ちにこの二十三人で処理が対応できるかということは、それは必ずしもそうは考えておらず、これは計画的に増員する中で、本年につきましては、成年後見事件の増加、それから三十年四月二日から新しい制度が入ってくるという児童福祉法等の改正による制度に対して対応するための二十三人ということで、これはあくまでも数字としては、先ほど申し上げた制限のもとで切り分けたという数字でございます。

黒岩委員 今のお話を聞いておわかりになりますように、これも数的な積算方法というものはとっていないと。先ほど児童福祉法の改正と言いましたけれども、これも数字的には何にも出していませんよね、私のところにもいただいておりませんので。あくまでも数字としていただいているのは、この成年後見関係事件への対応ということですよ。

 ただ、もう一つ、重要な家庭事件の中で、少年保護事件。これは、一時期十九万件あったものが今七万件まで減少している。十二万件減少していますね。

 この点、ちょっとお聞きしたいんですけれども、一般論として、成年後見関係事件の事件処理の時間と少年保護事件の事件処理の時間、これはどちらが長いですか。

中村最高裁判所長官代理者 それぞれの事件類型で裁判官がどれぐらいの時間をかけているかというところにつきましては、事件の種類によっても千差万別ということでございますので、一般論的に言って、少年事件の一件と成年後見事件の一件というその一件というのが、少年事件でいえば最初から例えば最後までのところを言われるのか、成年後見についていえば開始から、それから監督という意味では成年後見がなくなる、選任がなくなるまで、長い期間いろいろな事務をやっていく。一回一回の事務だけを見ますと恐らく成年後見の事件の処理の方が短いと思いますが、トータルでいってどうなっているかというのは、なかなか比較は難しいと思います。

黒岩委員 今の答弁で十分なんですよ。一件一件のそのときにかかる、わかりやすく言えば事務処理という事件処理の時間というのは、成年後見の方が短いですよね。だって、当たり前ですよ。だって、少年事件の場合は対立当事者がいるし、成年後見の場合は対立当事者がいない審判なわけですから、これは圧倒的に少年保護事件の方が時間が長いわけですよね。

 私、事務方に聞いて、実際、実務で成年後見、そして少年事件に当たっていた方に聞いたら、簡単に言うと、少年保護事件の方が時間が五倍ぐらいかかる、こういう話でしたよ。もちろん事件によって千差万別だけれども、大体イメージとしては五倍だと。

 そうすると、今回、成年後見関係の事件は、十万から三十五万ですから二十五万件ふえています。少年保護事件は、十九万から七万で十二万件減っています。少年保護の方が半分ですけれども、でも、少年保護事件の方が、仮にですよ、今の実感で五倍かかると考えれば、わかりますよね、少年保護事件が減ったことによって仕事量が十二万掛ける五、片や成年後見は、ふえた分二十五万掛ける一とすると、全体の仕事量、むしろ半分ぐらいに減っているんですよね、家庭事件全体で見れば。

 これは非常に概括的な、まさに概括的な試算となるわけですけれども、こう考えると、実際に、家庭事件の審理充実強化と言っていますけれども、仕事量が減っているということは、これは否めないんじゃありませんか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 家庭事件の中で成年後見事件を取り上げられましたけれども、成年後見事件だけではなく家事調停事件等もございます。これは全体として、家事部門と少年部門で分けたときに、確かに少年事件の負担というのは感覚として多いというのはわかるわけですけれども、一方で、家庭事件についての全体の仕事量というのは、これは実際上かなりふえているわけです。現実に家裁を利用される当事者の方なんかは、調停の期日がなかなか入りづらいでありますとか、成年後見についても監督について期間が長いといったような、そういういろいろな問題点が出てきております。

 裁判官もそれぞれの事件について真摯に取り組んでいるわけですけれども、必ずしも、少年事件分の浮いた分で、家庭事件が十分に回るだけのものが減っていて、同じ人数でできるというふうには考えていないところでございます。

黒岩委員 私は、あくまでも判事の増員というものは必要だと思っていますよ。ただ、これは最高裁の事務総局からいただいたポンチ絵ですと、何度も言いますけれども、民事訴訟事件の審理充実のためにはといったら複雑困難化、このグラフだけ出てくるわけですよね。家事事件の処理の充実強化というと成年後見事件へのこのグラフ、数字だけ出てくるわけですよ、児童福祉法改正についてなんというのは二行書いてあるだけですから。

 私は、正面から、判事をふやすんだったら、大臣に御所見いただきたいんですけれども、やはり本質論、実質論で、これだけの理由でこれだけの人が必要だからふやしてくださいと。そして、そのふやす積算根拠も示すことによって合理性が生まれます。今のままだと、結局は、判事補が判事になれないことを防ぐために判事の定員をふやしていくというような員数合わせ、ともすれば、機械的、算術的に定員の増の数字が決まっている、このようなうがった見方もされちゃうわけですね。

 だから、こういう見方を私は防ぐためにも、今言った判事の数については、原因とそして結果から導かれる増員の数というものを、きちんと因果関係、積算をはっきりさせていかなければいけない、この方向性を示してほしいんですが、大臣、いかがですか。

上川国務大臣 今、委員から、この積算についてのさまざまな御指摘をいただき、また、最高裁の方からも、その関係の答弁をしたところでございます。私もそれを聞いておりました。

 司法を担う裁判所におきまして、さまざまな事件動向等その諸事情を慎重に検討していく、そしてその上で、定員の問題につきましてもしっかりと説明をしていく、このことは非常に大事なことだというふうに思っております。

 法務省としても、最高裁のそうした検討の上での結果につきまして尊重していくという姿勢でございますが、そうした点につきましても注視してまいりたいというふうに思っております。

黒岩委員 これで終わりますけれども、大臣も、しっかりとした数字的な因果関係、積算をしていくということの重要性も認めていただきましたし、きょうは局長の方からも、少なくとも、複雑困難化類型についてはまた詳細を吟味するという前向きなお言葉もいただきましたので、これは続けていただきたいと思います。

 きょうは、用意した質問、本当に三分の一ぐらいしかできなかったので、この後、裁判官の適正な配置の仕方等、これについてはどこか一般質疑でまた質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 本法案につきましては、昨年の三月二十四日、当委員会に、全司法労働組合の中矢正晴委員長に参考人としてお越しいただきまして、現場の実態をお聞きいたしました。

 きょうも、私は現場の実態との関係で質問したいと思います。

 まず、前提として、最高裁に確認をさせていただきます。

 対前年度比で、定員振りかえを除いた定員というのは、裁判官、書記官等々何人か、二〇一七年度と一八年度、それぞれお答えください。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 数の御質問ですので数だけ申し上げますけれども、平成三十年の増員数につきまして、昨年の増員数と比較して申し上げますと、裁判官については、昨年と同数の五十人、判事補は、昨年、二十三人、振りかえで減らすということでしたが、ことしについては、それから二人ふやした二十五人減ということでございます。

 書記官につきましては、速記官からの振りかえを含めて、昨年二十四人増ということに対しまして、ことしは十九人増ということでございますので、昨年に比べて増員の数が五人減っているというところでございます。

 事務官につきましては、昨年が十七人増であるのに対しましてことしは十八人増ということでございますので、増員の数が一増加しているというところでございます。

藤野委員 今答弁あったように、裁判官も書記官も、増員数は昨年度を下回っているという状況であります。

 書記官につきましては、家裁の調査官などは現状維持ですし、技能労務職員と言われる方々については六十四人の大幅減員となっております。

 職場の実態からしますと、少なくとも、昨年度から比べてまたことしが下回っている、増員が下回っているということでありますし、全体でいいますれば、裁判所の職員は十人純減ということになっております。

 こうした点、全体減っているという点がいろいろな形で、しわ寄せといいますか司法サービスの低下を招いております。

 配付資料の一を見ていただければと思うんですが、これは地域別の書記官の数であります。

 都市部と地方部を分けているんですが、二〇一七年度では、東京で二十人ふえて、中部で三人ふえて、近畿では十一人ふえている。それに対して、二〇一七年度、北海道では七人減って、東北で一人減って、中国で一人減り、四国で二人減っている。二〇一八年度も同じ傾向でして、東京で二十六人増、中部で六人増、近畿で四人増に対しまして、地方では、北海道で一人減り、四国で二人減り、ことしは九州で十人減っているという状況であります。

 地方の書記官を都市部へ置きかえることで対応しているというのが実態であります。地方へのしわ寄せと言わざるを得ない状況であります。

 ほかにもいろいろなことがありまして、例えば、裁判所職員が二人とか三人しかいない、これはいわゆる二人庁とか三人庁と言われるところなんですが、これは、二〇一五年四月から二〇一七年四月までの間で三人庁は九十三カ所あったんですけれども、そのうち四つが、また人員が減ってしまいまして二人庁になってしまった。これに伴って、二人庁が全国で二十八から三十二にふえているという実態でありますし、受け付けしか行わない家庭裁判所というのもあるんです、受け付けだけ。実際には都市部に行かないといけない。この受け付け出張所というのが全国で二十カ所あるわけですが、このうち、新潟が四つ、長野が三つ、富山が一つ、福井が一つで、計九カ所ありまして、実は私のブロック、北陸信越ブロックにこの二十のうち九つが集中しているという状況でございます。

 最高裁にお聞きしたいんですが、こういうやり方、つまり、地方へのしわ寄せによっていわゆる毎年毎年の帳尻を合わせていくといいますか、こういうやり方というのをいつまで続けるおつもりなのか、御答弁ください。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今、裁判官以外の職員の御質問だと思いますけれども、裁判官以外の職員につきましても、先ほど申し上げましたように、ことしにつきましても書記官の増員というのをお願いしているところでございます。

 先ほど、地方と都市部ということでございますが、この増員というのは全体として十九人の増員をお願いしているということでございまして、現実に、ではどう配置するかというようなところにつきましては、実際の事件数等の動向、あるいは事件処理状況等を踏まえてやっていくということになります。

 やはり、事件数を見ますと、先ほど御指摘がありました二人庁、三人庁というのは非常に事件数が少ないということになります。一方、都市部の大規模庁では事件数が集中している。

 そういうところで、やはり有効な人員の活用ということから、事件数の少ないところから配置をかえていく、この方法につきましては、引き続き同様の方法を考えていきたいというふうに考えております。

藤野委員 とんでもない話でありまして、大規模庁にいわゆる事件が多いのは、それは事実であります。しかし、地方に余裕があるわけでは全くなくて、むしろ、人員が少ないもとで大変な労働を強いられているわけであります。

 ちょっと具体的にも見ていきたいんですけれども、家裁の調査官についてお聞きをしたいと思います。

 家庭をめぐる社会情勢、この複雑化というのは先ほども指摘がありました。家裁の役割というのはこれまで以上に大きくなっているわけですね。

 最高裁にこれは確認しますけれども、家裁が扱っている家事事件と少年事件の新規受件数の合計、これは二〇〇九年と二〇一七年、どれだけふえていますでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 直ちに、合計の数というものはちょっと今持ち合わせていませんが……(藤野委員「いやいや、いただいた資料で。こことここで聞くと言ったじゃないですか」と呼ぶ)ちょっと確認させていただきますが、全体としては、少年事件の減った分というのが、先ほどの御質問にありましたように、これですね、済みません。失礼いたしました。家事事件については合計が百万三千幾つということ……(藤野委員「合計で結構です」と呼ぶ)百七万七千件というところでございます。済みません。失礼いたしました。(藤野委員「ちょっと、二〇〇九年」と呼ぶ)わかりました。

 二十八年につきましては、ちょっと正確な計算ができませんが……(藤野委員「平成二十一年です」と呼ぶ)二十八年が百五万件……。

藤野委員 私が聞いたのは、平成二十一年、つまり二〇〇九年と平成二十九年、この比較です。通告してあるんです。

中村最高裁判所長官代理者 平成二十一年につきましては、家事事件が約七十六万件、少年事件が約十七万件でございますので、九十一万件ということでございます。

 平成二十九年でよろしいですかね、二十九年につきましては、合計で約百八万件……(藤野委員「だから、どれぐらいふえたかと聞いているんです)と呼ぶ)ですから、約十五万件ぐらいふえているということになります。

藤野委員 これはしっかり通告しているわけですから、こういうところで時間をとってもらっては大変困ります。

 要するに、家裁をめぐる事件数というのは、十五万件ぐらい二〇〇九年からふえているわけですね。これに対応する家裁の強化というのが求められるわけですけれども、その家裁機能の強化をする上で、専門的能力を持っている家裁調査官というものの増員は欠かせないというふうに現場で指摘されております。

 ところが、本法案で、家裁調査官というのは増員が全くない。二〇〇九年に、家裁調査官は確かに五名増員されております。しかし、それ以降、十年近く全くふえていないわけですね。今確認したように、この十年近くの間に、十四万五千件、家裁が取り扱う事件というのはふえている。私は、増員すべきは当然だというふうに思うんですね。家裁、これは増員すべきじゃありませんか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 家裁で取り扱う事件の全体の合計数は先ほど御答弁申し上げたとおりでございますが、特に家裁調査官が大きな役割を果たします少年事件につきましては、この十年だけでも約三分の一に減少しているところでございます。平成三十年度におきましては、家裁調査官につきましては、現有人員の有効活用を図ることによりまして適正迅速な処理を図ることができると判断したところでございまして、ことしについて、家裁調査官の増員は必要ないと考えているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、今後の事件数や事件処理動向を踏まえまして、制度の趣旨にのっとった運用が行われるよう、必要な体制整備には努めてまいりたいと考えております。

藤野委員 家裁というのは、少年事件だけやっているわけじゃないんですね。少年事件についても、減少していると言いますが、しかし、少年をめぐる社会環境もこれは変化しておりまして、複雑な事案が増加している。一つ一つの事件に手間がかかっていて、事件数にあらわれない忙しさ、難しさというのがあると言われているわけですね。ですから、高どまりしている少年事件を扱っている、そういう支部も幾つもあるということであります。

 さらに、この間でいえば成年後見事件、これは急増しているというお話、先ほども指摘がありました。この成年後見だけでなく、家事調停というのも家裁はやっております。これは、年間十四万件でずっと高どまりしているわけですね。これでも家裁調査官は中核的役割を果たしているわけでありまして、本当に求められているわけですね。現場の裁判官や書記官からも、家裁調査官を利用したいという要望というのは大変強いわけであります。

 配付資料の三枚目を見ていただきますと、これは、「裁判所時報」というのに載りました寺田逸郎最高裁長官当時の「新年のことば」というのを二年続けてちょっと紹介しているんですが、この二〇一七年度の「新年のことば」、こう書いてあります。

 「家事事件の分野でも、成年後見制度の利用促進を図るための立法がされ、制度に対する国民の関心に的確に応えられる事務運用の在り方への検討が求められています。」少し飛びまして、「家庭裁判所調査官による調査の活用等をも視野に入れて、家庭裁判所全体としての紛争解決機能の強化に取り組んでいきたいものです。」こうあります。

 二〇一八年度も、成年後見制度を挙げた上で、「このほかの家事事件においても、子の監護をめぐる当事者間の感情的な対立が激しい事件のように、解決の難しい事案が増加しています。家庭裁判所調査官の適切な活用を図るなどして実情の把握に努め、積極的に解決案を提示するなど、裁判所が主体的に手続を進めていく必要があります。」と。

 最高裁にお聞きしたいんですが、最高裁の長官が、こうやって家裁調査官の役割を高く評価している。今までの十年近く、ずっと現状維持、ふやさないという方針で来たわけですけれども、この方針を変えて増員にかじを切るべきじゃないですか。

中村最高裁判所長官代理者 家庭裁判所の事件処理に家裁調査官というのが大きな役割を果たしているということにつきましては、委員御指摘のとおりでございまして、先ほど御紹介にあった長官の挨拶等にも入っているところでございます。

 家裁調査官について、その職責を十分生かしていただき、的確な事件の処理が図れるよう、これまでも事件処理動向を踏まえて、体制整備には努めてまいったところでございまして、ことしにつきましては、先ほども申し上げましたように、現有人員の有効活用によって増員は必要ないというふうに考えているところですが、これも繰り返しになって恐縮でございますが、今後とも、事件数、事件処理状況を踏まえて、制度の趣旨に沿った運用が行われるよう、必要な体制整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

藤野委員 現状を踏まえてとおっしゃいますけれども、現状を本当に踏まえているのかと。

 冒頭、何か地方は扱っている件数が少ないとか、とんでもないことをおっしゃいましたけれども、地方へしわ寄せがされる中で、大事な、例えば家裁調査官が配置できない、こういう支部も多いわけですね。そういうところでどうやっているかといいますと、本庁から支部に出張したり、あるいは支部の間での出張填補という形で対応している。

 ところが、地方というのは交通の便も悪くて、なかなか効率的な出張というのも難しい。地方の支部はもともと繁忙で忙しいのに、そういう出張なども入って、一日かけて行って、その分、日々の日常業務へのしわ寄せというのも生まれているというのが実態なわけです。

 ですから、地方で何か人が足りているとか、そういうことは全然ないわけであります。実際には、休日出勤とか持ち帰りの仕事をせざるを得ないケースもあるというふうにお聞きをしております。

 そして、この現状に加えまして、間もなく四月、ことしの四月二日から児童福祉法が施行され、スタートするということになります。これに伴って新たな対応、例えば一時保護措置にかかわる家裁調査官の関与というものも始まってくる。現場では、この繁忙状態に更に拍車がかかるのではないかと。大事な仕事なんだけれども、そういう心配があるというふうにお聞きをしております。

 配付資料の四枚目を見ていただければと思うんですが、これは、児童福祉法が改正された際、昨年の六月十三日の参議院厚労委員会での附帯決議であります。その冒頭に、こういうふうに、「家庭裁判所の研修内容に、子どもの権利や児童福祉についてのソーシャルワークの研修を組み込む等、人材育成に努めるとともに、業務量の増加に対応できるよう家庭裁判所の人員を含めた体制強化に努めること。」ということが附帯決議で上がっている。ですから、これはもう与野党を超えた声であります。

 家裁の機能強化、ひいては国民の人権保障、これを図る上で、調査官あるいは裁判所の増員というのは、私は不可欠だと思います。

 そこで、大臣にもお聞きしたいんですが、裁判を受ける権利は憲法三十二条に保障されている大事な権利であります。それを実質的に支えていく、これは大事だと思うんですが、今までの現状をお聞きして、大臣、現状、これはやはり問題があるというふうに思われますか。

上川国務大臣 何よりも、国民に身近で頼りがいのある司法を実現するということ、これが極めて重要な要請でございます。今後とも、司法権を担う裁判所の体制、これが更に充実をし、それによりまして、事件の適正迅速な処理が促進をされ、また国民の司法アクセスが一層向上していくということが重要であると認識をしております。

 裁判所の体制整備のあり方につきましては、裁判所を取り巻くさまざまな状況を踏まえまして、最高裁判所におきまして適切に判断されるべきものというふうに考えておりますけれども、法務省といたしましても、裁判所職員の定員法を始めといたしまして、裁判所関連の法律を主管するという立場でございますので、引き続き、最高裁判所の判断は尊重しつつも、国民に身近で頼りがいのある司法を実現するために適切な対応をしてまいりたいというふうに思っております。

藤野委員 ぜひそうした方向でのイニシアチブを発揮していただきたいと強く求めたいと思います。

 しかし同時に、そもそも何で裁判所の増員が進まないのかということを考えますと、これはやはり根本には、政府の定員合理化計画、これとの関係があるわけであります。

 最高裁に確認しますけれども、政府の定員合理化計画、これは二〇一四年に閣議決定されております。しかし、裁判所は行政機関ではありませんから、この計画に対する協力義務はない、こういうことで間違いありませんね。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所は、行政機関ではございませんので、政府の定員合理化計画に直ちに拘束されるものではございません。

 ただ、国家公務員の定員をめぐる情勢が厳しさを増す中で、引き続き裁判部の充実強化を図っていくためには、政府からの協力依頼を踏まえまして、国家の一機関として、他の行政官庁と同様に事務の効率化等必要な内部努力を行い、定員合理化に協力することは必要であるというふうに考えております。

 こうした考えに基づきまして、事務局部門について、従前から定員の合理化計画に協力しているところでございます。

藤野委員 確認したいんですけれども、要するに協力義務はないということでいいですね。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 御答弁申し上げましたように、この協力に拘束されるものではないというふうに考えております。

藤野委員 要するに、協力義務はないけれども協力するというのが一貫した最高裁の立場であります。そのもとで何が起きているか。

 本法案では、裁判官や書記官などで六十二人増員しているんです。これは私は大事だと思うんです。ただ一方で、この政府の定員合理化計画に協力して七十二人減員する、削減すると。ですから、差引き十人減っているわけですね。こうした状況がもう六年連続で続いております、純減がですね。

 三権分立を規定した日本国憲法のもとで、司法権を担う裁判所には、政府から独立して定員や人件費を定める権限が与えられております。国の機関という話がありましたけれども、国の一機関ではなくて、裁判所というのは、やはり三権分立の一角を担っているわけであり、国民の人権保障の、ある意味、最後のとりでなわけであります。ところが、最高裁が政府にある意味協力をして、職員を減らし続けている、私は、この姿勢は転換すべきだというふうに思います。

 定員合理化計画のしわ寄せを一番受けているのは、速記官やあるいは技能労務職員と言われる方々です。

 しかし、速記官については、岩手弁護士会や福島弁護士会、群馬弁護士会などが、公正で迅速な裁判を実現する、この立場から必要だということで、養成を再開してほしいということで意見書を上げられております。私も、再開すべきだというふうに思います。

 技能労務職員という方々は、運転手とか守衛の方とか電話交換手とかがいるんですけれども、定員の不補充というのが続いている。

 現場でお聞きしますと、裁判所のきめ細かな運営、これを担っているのがこういう技能労務職員の皆さんであって、これを外注して対応しようとか、そういうことではやはり限界があるんだというふうに聞いております。その外注自身も、実際やられているかといいますと、予算の制約があって実際にはやられていない、こういう話も聞きます。

 最高裁にお聞きしたいんですが、例えば守衛の方々が退職した場合、その後、外部委託によって実際に補充されているかどうか、こういう人員数というのは把握されているんでしょうか。

笠井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 守衛が定年等により退職する場合、その職員が行っておりました業務の内容等を踏まえまして、各庁においてその対応を検討しているところでございます。

 外注、外部委託もその対応の一つということであろうということでございますけれども、ただ、外注により後補充された人数というものだけを切り分けて説明するというところはなかなか難しいというところで認識しているところでございます。

藤野委員 いや、難しいって、要するに把握されていないわけです。

 そういう形でどんどんどんどん削減はするんですけれども、その後、実際そういう方々が補充されたかということについては把握もしていない。私は、やはりもうこういう状況はやめるべきだというふうに思うんですね。

 概算要求で見ていただきますと、概算要求段階では、ほかの省庁は軒並み増員要求しているんです。ゼロ要求というのは、復興庁と総務省の公害等調整委員会の二つだけでありまして、つまり、定員合理化計画に協力義務のある省庁でさえ増員要求を概算でしているにもかかわらず、協力義務のない裁判所が増員すら求めない、これはやはり大きな矛盾だと思います。

 三権を担う裁判所として、こうした政府への協力、これをやめて、人的充実、物的拡充に転換することを強く求めて、質問を終わります。

平口委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 本日は、通告の後に私の持ち時間が決まったということもありまして、質問全体、できないかもしれませんので、回答を御用意していただいている方にはその旨御了解をいただきたいと思います。

 まず最初に、今回の法律案の概要というのをいただいているわけでございますけれども、この中に、女性活躍とワーク・ライフ・バランス推進を図るためとなっているわけでございますが、法律案の内容は、裁判官の数を増加し、あわせて技能労務職員等を七十二人減員するということでございます。

 このような内容でどうして女性活躍とワーク・ライフ・バランスが推進されるのか、その理由を説明いただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 全体でマイナス十ということで、技能労務職員の減員でマイナス十ということになっておりますが、一方、書記官、事務官については増員をお願いしているところでございます。

 今回の増員のうち、裁判官以外の書記官、事務官の増員の理由につきましては、国家公務員の女性活躍とワーク・ライフ・バランスの推進というのを理由の一つというふうに挙げているところでございます。平成三十年度につきましては、この取組を継続していくということ、そして、裁判所全体で取組の指針に沿った、趣旨に沿った取組を実現していくためということで、書記官五人及び事務官九人の増員をお願いしているというところでございます。

串田委員 今お答えをいただきましたが、今の答えでなぜ女性活躍の場になるのかというのが、ちょっと私にはわからないわけでございます。

 内閣府の目標として、二〇二〇年までに指導的地位にある女性を三〇%にするというようなことが発表されておりますけれども、皮肉なことに、これは第四次男女共同参画基本計画の中の女性の政策・方針決定参画状況調べ、平成二十九年十二月の表によりますと、いろいろと、三〇%に達している業種、達していない業種、たくさんあるわけですが、国家公務員の室長相当職の女性割合がこの表の中では最も悪い四・四%なわけでございます。ということは、民間のこういう業種も含めた中で国家公務員の中の女性の指導的地位というものが最も悪いということは、やはりこれは政府を挙げて取り組まなければいけないのではないかな。

 そういう中で、今回の法案が女性活躍とワーク・ライフ・バランスというふうになっているわけですけれども、法案との因果関係というのが全くちょっとわからないわけでございまして、むしろ技能労務職員等を減らすということで女性活躍の場がどんどん失われていくのではないかな、そんなような気が私はするわけでございます。

 ところで、女性裁判官の割合は、これも最高裁判所事務総局の調べでいただいているわけでございますけれども、平成二十年度の一六・七%から年々上がってきまして、現在二一・七%というふうに報告をいただいているわけでございますけれども、この三〇%というような部分で女性裁判官を採用枠として広げるというようなことをお考えにはならないんでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判官の採用に当たりましては、男女別に基準を設けるというようなことはしていないところでございますが、近年の状況で申し上げますと、司法修習終了者に占める女性の割合は二〇%台でありますところ、修習生から判事補に採用されるいわゆる新任判事補の女性の割合は三〇%から四〇%程度で推移をしているところでございます。

 これによりまして、裁判官全体に占める女性の割合は、先ほど委員からも御紹介がございましたが、平成二十年度については一六・七%だったものが平成二十九年度については二一・七%となっておりまして、若い層が三〇%ないし四〇%採用されているということで、今後も着実に増加していくものというふうに考えているところでございます。

串田委員 そういう中で、採用というようなものは、もちろん申込みをしないと採用できないわけでございますが、一方で、法曹一元化という観点から、弁護士を裁判官に採用しているというのも行われているわけでございます。

 そういう意味で、家事事件などは、弁護士として女性がいろいろな事件、大変に悲惨な事件も経験している中では、そういう女性の弁護士を家事事件の裁判所に採用していくことによって裁判官の三〇%というのを女性として維持できるのではないかと思いますので、そういったような方向もちょっと検討をしていただきたいなと思っているわけでございます。

 次に、いろいろな、親権者をどちらにするのかということの中で、調査官というのがいらっしゃると思うんですが、この調査官の男女比というのはおわかりでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 平成二十九年の家裁調査官の男女別ということで、女性が五二・四%、男性が四七・六%というところでございます。

串田委員 調査官で女性というのは非常に多いんですけれども、親権者をどちらかにするのかというような争いというのは大変感情的にエスカレートすることがありまして、これは女性が親権をとるということが多いんですけれども、そういったときに、男性の、父親の方ですね、大変感情的になるというようなことがあります。

 そういう中に女性の調査官が、これは家の中に入って調査をするようなこともあるわけでございますので、危害を加えられる、非常に感情的に、何で自分に親権が来ないんだというようなこともあるので、そういうような危険な状況になるということを十分予見して配置をされたりしているんでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 調査を担当する家裁調査官の決め方ということでございますが、これは、事件の内容、各調査官の経歴等を考慮しながら具体的に決めているということでございまして、基本的に、性別によって事件を割り当てるということは行っておりませんが、当事者の特性等から見て、女性調査官が一人で担当するのが相当でないというふうに判断される場合には、複数の調査官による共同調査といたしましたり、また男性調査官の担当にするということもあるというふうに承知しているところでございます。

串田委員 この手の事案というのは、日ごろ非常に穏やかそうに見えながら、親権を争うようなときには激情するというようなこともよくある場合もありますので、そういうときには、調査へ行くときに女性一人で行かせないというような、そういうような対応をしていただきたいと思うんです。

 そういう意味での人員削減というのはやめていただきたい。そういう意味で、安全を確保していただくということはお願いをしておきたいと思います。

 最後に、これは何度も委員会の委員の方から質問がありました、司法修習生の給付を受けられなかったはざまの期間に関して、上川大臣の方からも、平等ではなくなるということで、これに対する対応は難しいということですけれども、この考え方についてはもうこれからも変わらないということでしょうか、ちょっと確認させていただきたいと思うんですが。

上川国務大臣 先回も御答弁をさせていただいたところでございますけれども、現在のところ、国民的理解を得るということがなかなか難しいということでございまして、その意味で、新たな立法措置を設けて、従前の貸与制のもとでの司法修習生に対しましての救済措置ということを設ける、これにつきましては大変困難であるというふうに考えております。

串田委員 そういう答弁を何度もいただいているので、これは、弁護士会の会費を減免とか免除するという方向でできないだろうかと日弁連に私が聞きましたところ、今、大阪弁護士会もそういうような減免というものを始めている、京都弁護士会もそれを始めている、で、日弁連がなぜ始めないのかというと、国の施策があるかもしれない、そういうようなことで始められないということなそうなんですね。

 逆に言うと、こういうようなところで、委員会で何度も何度も質問することによって、国がもしかしたらそこについて何かの施策を打ち出すんじゃないか、これを日弁連が待っているので免除できないというような、そういう何か裏目になってしまっている部分があるので、そこら辺は、私たちも、委員会の方も、この点はちょっと考えていかなければいけないというふうに思いました。

 時間です。ありがとうございました。

平口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 私は、希望の党を代表し、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。

 平成二十七年の改正の際にもこの場で反対討論を行いました。当時も上川法務大臣でしたが、そのときに指摘した問題点の中には、いまだ解決されないどころか、かえって深刻になったものがあります。

 以下、三点申し上げます。

 第一に、平成二十七年から昨年までの三年間で、判事の定員は百十二名、実員は百二十三名も増加しています。実員の増加率は六・五%にも上ります。このような大幅な増加は、過去に大量に採用した判事補の方々が十年を経て判事に昇格する時期を迎えたためであり、裁判官の身分保障の観点からやむを得ない面があります。しかしながら、国民が納める貴重な税金を使って増員する以上、増員に見合った成果を上げる責任があります。

 最高裁は、成果指標として、争いある対席判決の審理期間を十二カ月程度にすることを挙げていましたが、直近の数字を見ると、目標からむしろ遠ざかっており、責任を果たしていません。

 第二に、審理期間の短縮が困難な理由として、最高裁は民事訴訟事件の内容の複雑困難化と専門化を挙げています。しかし、その克服のための取組が不十分です。

 私は、民事訴訟の複雑困難化や専門化に対応しつつ審理期間を短縮するためには、ICTの素養を含めた、あるいは語学の素養を含めた多芸多才の有為な人材が数多く裁判所に集まり、こうした人材が合議体を組んで事件処理に当たる必要があると考えます。

 しかし、量的、質的に充実した法曹を輩出するはずだった法科大学院への入学者は年々減り続け、それに合わせて入学者の質的水準も低下しています。司法試験合格者は何とか千五百人を維持していますが、裁判官にふさわしい人材は不足し、裁判所側の採用努力の不十分さもあって採用数は減り続けています。

 これを打開するには、高い授業料と長い時間をかけても教育効果が乏しい法科大学院の修了を司法試験の受験資格とする制度を廃止すべきです。あわせて、予備試験も廃止して、司法試験を自由に受けられる仕組みに戻すべきです。

 本日もそのような提案を行いましたが、来年三月で法科大学院の集中改革期間は終わろうとしているのに、いまだ政府は消極的です。これでは、審理期間の短縮目標はいつまでたっても達成できないことは明らかであります。下級裁判所における事件の適正かつ迅速な処理を図るという法改正の目的は破綻していると言わざるを得ません。

 第三に、平成二十五年の本法改正以降、当委員会では、判事補の定員の充員に努めることという内容を含む附帯決議をたびたび可決してきました。にもかかわらず、その後、政府と最高裁は、この決議を遵守するどころか、採用の減少と過剰定員の放置により欠員を増大させています。

 検事並みあるいは十年前の判事補並みの欠員数にとどめるためには、今回の審議で明らかになったとおり、法改正で判事補の定員を仮に二十五減らしたとしても、来年度は何と二百人程度採用しなければなりません。これは明らかに不可能です。予算の適正な管理という観点からも、実情に見合った判事補の定員数に改めるべく、もっと大幅な定員削減を行うべきです。

 以上のとおり、成果指標が達成されないのに、目標未達の原因を真摯に分析せず、改善のための方策をおざなりにする最高裁と法務省のあり方は、KPIやPDCAサイクルを重視する与党議員の皆さんとしても看過できないはずです。

 委員各位に対し、本法案への反対をお願い申し上げるとともに、三権分立を担う裁判所の健全な発展のためにも、危機的状況にある法曹養成制度の見直しに向け与野党で真剣に協議する場を設けることを御提案申し上げ、私の反対討論を終わります。(拍手)

平口委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 私は、日本共産党を代表して、裁判所職員定員法改正案に対し、反対の討論を行います。

 本案は、判事五十人、書記官十九人、事務官を十二人増員するとしています。必要な定員を増員することは、国民の裁判を受ける権利の保障と司法サービスの充実を図る上で当然です。

 他方、本案では、現場が強く求めている家裁調査官の増員はなく、技能労務職員等の定員を六十四名削減しています。この結果、全体では、増員数八十七人に対し減員数九十七人、差引き十人の純減であり、裁判所全体の職員数は六年連続の純減が続いています。

 最高裁が、政府の不当な定員合理化計画に協力し、本案でも裁判所職員の減員を行うことは、繁忙な職場の実態を更に悪化させるものです。

 昨年、当委員会で行われた参考人質疑では、全司法労働組合の中矢委員長から、増員が必要になった都市部の人員手当てのために、地方の裁判所の人員が減らされている実態が指摘されました。裁判官、書記官の抜本的な増員がないために、地方から都市部へ人員を回さざるを得なくなり、地方の体制がどんどん貧弱になっています。国民の裁判を受ける権利を担保するためにも、地方へのしわ寄せをこれ以上続けるべきではありません。

 家庭をめぐる社会情勢が複雑化するもとで、専門的な能力を持つ家裁調査官の役割はこれまで以上に大きくなっており、寺田逸郎最高裁長官も家裁調査官の役割を高く評価しています。

 ところが、二〇〇九年に五人が増員されて以降、家裁調査官の増員は十年近く行われていません。家裁が扱う家事事件と少年事件の新規受件数は二〇〇九年から二〇一七年の間に約十四万五千件増加しています。家裁の機能を充実するためにも、現状維持ではなく家裁調査官の増員にかじを切るべきです。

 三権分立を規定した日本国憲法のもと、司法権を担う裁判所には、政府に拘束されることなく独立してその定員や人件費を定める権限が与えられています。最高裁は、国民の権利保障の後退を招いている政府の定員合理化計画にこれ以上協力するべきではありません。

 今、最高裁に求められるのは、全国どこでも利用しやすく、国民の期待に応える裁判を実現するために、予算の拡充とともに、裁判所職員などの人的体制、庁舎、設備などの物的拡充を行うことです。

 このことを強く求めて、反対討論を終わります。

平口委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

平口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十四分散会


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