衆議院

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第8号 平成30年4月13日(金曜日)

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平成三十年四月十三日(金曜日)

    午前九時二十七分開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 大塚  拓君 理事 門  博文君

   理事 田所 嘉徳君 理事 藤原  崇君

   理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 國重  徹君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      上野 宏史君    鬼木  誠君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      菅家 一郎君    木村 弥生君

      城内  実君    黄川田仁志君

      小林 茂樹君    谷川 とむ君

      中曽根康隆君    百武 公親君

      福山  守君    古川  康君

      山下 貴司君    和田 義明君

      逢坂 誠二君    松田  功君

      松平 浩一君    源馬謙太郎君

      階   猛君    柚木 道義君

      大口 善徳君    黒岩 宇洋君

      藤野 保史君    串田 誠一君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      山下 貴司君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   最高裁判所事務総局経理局長            笠井 之彦君

   最高裁判所事務総局民事局長            平田  豊君

   最高裁判所事務総局刑事局長            安東  章君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局次長)         遠山 義和君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 大賀 眞一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       金子  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    辻  裕教君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    富山  聡君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    畝本 直美君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  名執 雅子君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    舘内比佐志君

   政府参考人

   (財務省大臣官房長)   矢野 康治君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    太田  充君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉永 和生君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           成田 裕紀君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           岩本 健吾君

   政府参考人

   (国土交通省航空局交通管制部長)         飯嶋 康弘君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     福山  守君

  神田  裕君     百武 公親君

  和田 義明君     木村 弥生君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     和田 義明君

  百武 公親君     神田  裕君

  福山  守君     鬼木  誠君

    ―――――――――――――

四月十二日

 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局職員福祉局次長遠山義和君、警察庁長官官房審議官大賀眞一君、法務省大臣官房政策立案総括審議官金子修君、法務省大臣官房司法法制部長小出邦夫君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長辻裕教君、法務省矯正局長富山聡君、法務省保護局長畝本直美君、法務省人権擁護局長名執雅子君、法務省訟務局長舘内比佐志君、厚生労働省大臣官房審議官佐原康之君、厚生労働省大臣官房審議官成田裕紀君及び国土交通省航空局交通管制部長飯嶋康弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長中村愼君、人事局長堀田眞哉君、経理局長笠井之彦君、民事局長平田豊君及び刑事局長安東章君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中曽根康隆君。

中曽根委員 自由民主党の中曽根康隆でございます。

 本日は、貴重な質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。法務委員会では初めての質問となりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、再犯防止について包括的に質問をさせていただきたいと思います。

 私、学生時代に法学部法律学科に所属をしておりまして、刑事訴訟法の授業で刑務所の見学に行ったのを覚えております。また、私の地元であります群馬県前橋市、ここには前橋刑務所がありまして、私の住むところから本当にもう徒歩圏内に刑務所があるということで、再犯について又は出所者のその後については、非常に考えることがふだんから多くあります。

 我が国における再犯の現状は、再犯率が四八・七%と、ほぼ二人に一人がまた刑務所に戻る、再び犯行に及んでいるという状況でございます。この再犯の高さ、この原因の一つに、出所者の就労、社会復帰の難しさというものがあると考えております。

 平成二十八年十二月に再犯防止推進法が成立し、今年度から二〇二二年度まで、この五年間の再犯防止推進計画が策定をされました。この計画に対する大臣の意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 おはようございます。

 新たな被害者を生まない、また安全、安心な社会を実現するためには、犯罪をした者等の再犯防止が特に重要であります。法務省におきましても重要施策の一つと認識をしております。

 再犯防止施策を効果的に推進するためには、犯罪をした者等に対しまして、関係機関やまた民間協力者等の皆様と緊密に連携をしつつ、息の長い支援を行うことが必要であります。

 御指摘のとおり、二十八年十二月に成立いたしました再犯防止推進法を受けまして、昨年の十二月に再犯防止推進計画が閣議決定をされたところでございます。

 この閣議決定された再犯防止推進計画におきましては、犯罪をした者等に対しましてまさに息の長い支援を行うために、五つの基本方針のもとで、就労の確保を始めとする七つの重点課題につきまして百十五の施策を盛り込ませていただきました。

 推進計画元年に当たることしは極めて重要な一年でありまして、犯罪をした者等が社会の中で受け入れられ、また再び社会を構成する一員となりまして、孤立することなく生き生きと活躍することができるよう、国、地方、民間が一体となって、推進計画に盛り込んだ一つ一つの施策を着実にかつスピード感を持って実施してまいりたいというふうに考えております。

中曽根委員 今、大臣の方から心強いお言葉をいただきました。初年度が非常に大事だというお話でありますけれども、計画にしっかりと沿って、また時には柔軟性を持って取り組んでいただきたいと思います。

 再入所者のうち再犯時に仕事がなかった者の割合というのは七割と非常に高く、仕事のない者の再犯率というのは再犯時に仕事があった者の約三倍と、非常に高い数字が出ております。この数字にあらわれているように、やはり仕事がないということは再犯に大きく影響しているということは明らかであります。

 そこで、出所者が社会に戻ってからの就労の安定、雇用がある、そういったことが再犯防止の鍵になると考えておりますけれども、それに対する取組の状況を教えていただきたく思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 刑務所出所者等の不安定な就労が再犯リスクとなっており、その再犯防止に当たっては就労の確保が重要であるという認識をしております。

 そこで、法務省におきましては、これまでも、協力雇用主の開拓、拡大など、刑務所出所者等の就労の確保に関するさまざまな施策に取り組んできたところでございます。

 昨年十二月に閣議決定した再犯防止推進計画におきましても、就労の確保を重点課題の一つに掲げるとともに、矯正施設における職業訓練等の充実など、就労支援に関する二十三の施策を盛り込んでございます。

 今後も、地方公共団体や民間協力者等と緊密に連携いたしまして、再犯防止推進計画に盛り込んだ施策を着実に実施することにより刑務所出所者等の就労支援に努めてまいりたいと考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 現在、刑務所内では、刑務作業や指導によって就労に必要最低限な基礎的な能力を身につける訓練を行っている一方で、職業訓練とまた就職先、この連携というのはどういった取組がされているのか。また、今、人材不足が深刻な中で、人が足りない分野がいろいろあります。例えば農業分野だとか介護福祉だとか建設だとか、そういったところへの就労支援なども効果的かなと思いますけれども、そちらについての取組をお答えいただきたいと思います。

富山政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、職業訓練を通じて就労に結びつけるということは大変大切なことだというふうに考えております。

 法務省としては、この職業訓練の種目の選定に当たりましても、有効求人倍率を参考にすることに加えまして、刑務作業の契約企業あるいは協力雇用主を対象としたアンケートや検討会を実施し、また、各矯正施設に協力雇用主や各種業界団体、関係機関の方々などを招聘して職業訓練見学会等を行うなど、社会の雇用ニーズの把握に努め、より就労につながる職業訓練の内容となるよう随時見直しを図っているところでございます。

 委員御指摘のとおり、人材不足が深刻な課題となっていると言われております農業、林業、水産業、介護福祉、建設の分野、私ども大変雇用ニーズの高い業種であると認識しておりまして、現在も農業科としての農業課程及び林業課程、船舶職員科、介護福祉科、建設機械化、建設く体工事科などの職業訓練を実施しているところでございます。

 また、この就労先となる企業と受刑者等とのマッチングが重要であるということも御指摘のとおりでございます。この点、企業と受刑者等のマッチングを促進し、出所後速やかに就労を開始することによって再犯防止への効果を期待する、そのために東京及び大阪の矯正管区に矯正就労情報支援センター、通称コレワークと呼んでいるものを設置いたしまして、六カ月以内に出所する予定の全国の受刑者等の職歴、資格、帰住予定地等の情報を一括管理しまして、企業に対して雇用条件に適合する者がいる矯正施設の紹介を行っております。

 平成二十八年十一月から運営を開始いたしまして、本年の三月末までの間、企業から一千百二十一件の相談を受けております。その過半数は、やはり土木建築関係の企業からの相談でありまして、採用内定につながった件数は百九十一件でございますが、これも土木建築関係が中心となっております。

 法務省といたしまして、引き続き、雇用ニーズに応じた職業訓練の充実に努めるとともに、御指摘のありました人材不足の深刻な業種の事業主あるいは業界団体等に対しまして、コレワークを活用した受刑者等の雇用について周知を強化し、また、業界団体を挙げてコレワークを活用いただくなどの就労支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 雇用ニーズをしっかりと把握した上でマッチングをさせていく、その確率を上げていく、そういうことが非常に大切だと思います。

 職業訓練では専門的な技術や資格を取得するということも重要ですけれども、それ以前に社会人としての知識やマナー、又は最低限の学力、こういったものをしっかりと身につけておく、こういったことも就労に向けて非常に大切だと思いますので、そこら辺の充実もぜひともよろしくお願いいたします。

 次に、先ほど来からお話が出ております、受け入れる側、雇用主の観点から御質問をさせていただきたいと思います。

 現在、協力雇用主の登録者数は二万人ほどありますけれども、実際、出所者を受け入れている企業というのは千社弱にとどまっております。確かに、犯罪者を雇用した場合に、トラブルが発生するリスクであったり、また従業員、取引先からなかなか理解が得られにくい、そういった状況もあると思います。実際に雇用することをちゅうちょしてしまう企業というのが多いと聞いております。

 協力雇用主という存在を国民に広く理解をしてもらうこと、そして、出所者を雇用するということが社会的評価に結びつく、そういった環境の整備など、受け入れる側へのインセンティブというものがないとなかなかこれは難しいと思いますけれども、それに対する施策はどうなっているか、お聞かせ願いたいと思います。

畝本政府参考人 刑務所出所者等の就労を確保するということは、それにおきまして協力雇用主が果たす役割は非常に重要でございますが、委員御指摘のとおり、なかなか実雇用に結びついていかない、これをいかに伸ばすかということが大きな課題になっております。

 法務省におきましては、平成二十七年度から、刑務所出所者等を雇用して指導に当たる雇用主に対して年間最大七十二万円を支給する刑務所出所者等就労支援金支給制度を導入して、これを効果的に活用しながら、出所者等の雇用の拡大あるいは職場定着を図っているところでございます。

 また、雇用主のインセンティブとなりますよう、公共工事等の競争入札において協力雇用主を優遇する制度の導入をしていただけるよう、地方公共団体に働きかけを行っているところでございます。

 このほか、観察所の方では、雇用主が抱える不安や負担を軽減するために、支援、相談体制を手厚くしたり、実際の雇用例を持ちながら、役立つ情報というものを共有するための研修なども行っているところでございます。

 なお、本年度におきましては、雇用主の実情あるいはニーズ等を把握するために、雇用主に対するアンケート調査を実施することを予定しておりまして、この結果をも踏まえまして、より実効性のある雇用主に対する支援策の一層の充実強化、それによりまして出所者等の雇用の促進に努めてまいりたい、このように考えております。

中曽根委員 今御答弁いただきました優遇制度であったり、又は年間七十二万円の支給、こういったものは確実に成果は出しているとは思いますけれども、ただ、それでもこの対象者の離職率というのは半年以内で五割と非常に高い水準であります。

 今後、さらなる雇用主側に対するインセンティブ等必要となる可能性もありますが、状況を見ながら柔軟性を持って取り組んでいただきたいと思います。

 また、雇用をマッチングして終わりではなくて、その後も本人やまた協力雇用主に対して継続的な支援をすることが重要であると思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、保護司について御質問をさせていただきます。

 対象者において非常に重要な役割を果たしているのが保護司であります。

 保護司の仕事として明確に定められているのは、仮釈放後の保護観察期間に月二回程度の面接と報告書の提出等となっておりますけれども、実際には、多くの保護司がそれ以外の、例えば対象者と一緒にハローワークに行くとか、新しい雇用先に一緒に御挨拶に行くとか、又はその対象者に何かトラブルがあったときにすぐに駆けつけるとか、そういった意味で非常に多岐にわたって負担も大きいのが現状であります。

 地域社会とのつながりが希薄なこの現代社会において、このような大きな負担を嫌がって保護司のなり手というのが非常に少なくなっているのは非常に深刻でありますし、また現在、保護司の八割が六十歳を超えているということで非常に高齢化も進んでおりまして、十年後にはこの数が半減するというふうにも言われております。

 この保護司の減少、高齢化が進んでいる中で、本人がやめたくてもやめられないという現状もいろいろありまして、例えば六十五歳を過ぎてもう引退したいと思っても、担当を二人、三人持っていてなかなかやめられない、そういった話もよく聞きます。

 そういう意味で、この保護司の担い手不足、これについての対策をお聞かせください。

畝本政府参考人 保護司のなり手の確保ということでございますけれども、確かに従来型の地元の人脈に頼るというやり方ではなかなか確保が難しくなっております。

 そこで、地方公共団体を始めとした地域の関係機関の方々を構成員とする保護司候補者検討協議会というものを保護司会に設置いたしまして、幅広い人材から保護司候補者の情報収集に努めているところでございます。

 また、保護司会が、地域住民に保護司活動を体験していただけるように保護司活動インターンシップ制度というものを導入いたしまして、新たな担い手を確保するための取組をしております。さらに、地方公共団体の協力を得まして、各市町村が保有する施設などを提供していただくなどして、更生保護サポートセンターというものの設置を進めているところでございます。これによって、保護司の不安感、負担感が減少できるものというふうに考えております。

 また、若年層を含む幅広い年齢層、多様な職業分野から保護司のなり手を確保していくことが非常に重要でありまして、そのためにはどんな環境整備あるいは制度が必要であるのかということを、いろいろな意見を、保護司の皆さんを中心とした意見をしっかり聴取いたしまして、具体的方策を検討してまいりたいというふうに考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 保護司の負担の部分について、もう一点質問をさせていただきます。

 平成二十八年に施行されました刑の一部執行猶予制度というものがあります。これにより保護観察の期間が延びたという話で、保護司の負担も大きくなったという声がございます。

 先ほども申し上げたとおり、現状、既に保護司不足、高齢化が進んでいる中で、この制度の意図はどのようなものなのかをお聞かせください。何から何まで保護司に押しつけてきているというような声も聞く状況でありますけれども、その点も踏まえてお願いいたします。

畝本政府参考人 この刑の一部の執行猶予制度は、施設内処遇の後に十分な期間にわたる社会内処遇を実施することで再犯防止と改善更生を図ることをその趣旨といたしております。

 この制度の対象である者のうち、この制度が施行されてからことしの二月末までの間に保護観察が開始された者は既に五百名おりますけれども、今後も数の増加が見込まれるところでございます。こうした中、保護司の方々が、この数の増加あるいは保護観察期間の長期化について不安あるいは負担感をお持ちだということも承知しているところでございます。

 まず、この制度の対象となっている者はほとんどが薬物事犯者でございまして、これらの者に対しては、保護観察官が薬物再乱用防止プログラムを実施して、その専門性を生かした処遇をしている。その一方で、保護司の皆様は、地域において保護観察対象者の日常生活における助言等を中心に支援していただいているところでございます。

 ただ、こうした依存性のある対象者にどんな指導や助言を行ったらいいのかということでお悩みの保護司さんも多数おられますので、保護観察所では、保護司研修で薬物事犯者に対する保護観察処遇のあり方等をテーマにした研修なども行っているところでございます。さらに、処遇がとても難しいというケースでは、保護観察官のみがこれを担当するという制度もございます。

 引き続き、保護観察官と保護司とが適切な役割分担をしながら、効果的な処遇を展開していきたいと考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 対象者にとってよりよい環境づくりのための優遇制度というものはすばらしいと思いますけれども、一方で、保護観察官であったり又は保護司の方に余りしわ寄せが来ないようなバランスのとれたものにしていただきたいと思います。

 肉体的、精神的にも非常に負荷のかかる保護司という仕事、今おっしゃったとおり、サポートセンターの充実などはすばらしいとは思いますけれども、やはり新たな保護司のなり手、そして絶対的な数をふやすためには、先ほどもお話がありましたけれども、保護司が自分で次の担い手、なり手を探してくるという昔ながらの紹介制ではもう成り立たなくなるのが目に見えております。

 自治体が協力して担い手を探していく。一部の自治体では、自治会長が非常に積極的で、一緒に回って探してくれる、そういったところもありますけれども、やはり地域によって温度差というのがあるのが現状でございます。これに対して国として何か施策というものはあるでしょうか。

畝本政府参考人 今委員御指摘のとおり、自治体の協力の程度というのは、はっきり言って温度差があるであろうというふうに思っております。

 ただ、先ほど来話に出ております、閣議決定された再犯防止推進計画に基づきまして、今、保護観察所などを中心として、各地域において、この法律あるいはこの計画の趣旨についての説明会、あるいは場所によっては勉強会を開催いたしまして、こういった再犯防止の仕事が自治体の責務でもあり、それぞれの地域に応じた有効な施策をとっていただけるように御理解を求めているところでございます。

 そうした中で、保護司に対する活動のサポート、そういったこともお願いしつつ、自治体ともタイアップしながら支援を充実していきたいというふうに思っております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 ちょっと保護司とは別の問題について質問をさせていただきます。

 これまで質問をさせていただきました保護司というのは、保護観察中の受刑者に対しての指導や助言また必要な援助をし、また仮釈放予定者の環境の調査や調整を行うことが役割でありました。

 一方で、身元引受人もいない、そして仮釈放にもならない、そういった形で満期まで所内にいる受刑者は、出所してもすぐに自立更生することは簡単ではないと思います。篤志面接委員制度というのもありまして、これは受刑中の悩みを聞いたりするものですけれども、これはあくまでも相談相手というか悩みを聞く程度にとどまって、具体的に何か出所後のアクションを起こせる立場ではありません。

 保護司のサポートを受けることもなく、刑務所をぽっと満期釈放者として出ても、家族もいない、お金もない、仕事もない、住む場所もない、こういった、ないないのケースが珍しくありません。

 平成二十七年のデータでは、出所した受刑者の二年以内の再入率、これは満期受刑者で二七・二%、一方で、仮釈放の方々は一一・二%と、やはり満期まで刑務所にいてそこからすぐ出た方の再犯率、再入率というのは非常に高いと言われております。

 このような満期釈放者、満期まで刑務所にいてその後に出た、こういった方々に対するサポートというのも更に必要だと思いますけれども、それに対してはいかがお考えでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 満期出所者による再犯が多いという現状につきましては、委員御指摘のとおりでございます。再犯防止を推進する上で、満期出所者に対する取組が重要ということになってまいります。

 そこで、法務省におきましては、これまでも保護観察所が行う更生緊急保護の枠組みを通じた更生保護施設への宿泊保護等の委託など、満期出所者に対する支援を実施してきたところではございます。

 昨年十二月に閣議決定いたしました再犯防止推進計画におきましても、満期出所者など刑事司法手続を離れた者、このような方々につきましても支援対象者に含めまして、その支援のために地方公共団体との連携の強化及び民間協力者との連携の強化といった施策を盛り込んでおります。

 また、法務省の施策としましては、満期出所者となる受刑者に対し更生緊急保護の制度や希望する地域の相談機関に関する情報を提供するなど、満期出所者に対する具体的な施策が盛り込んでございます。

 満期出所者も必要かつ適切な支援を受けられるよう、再犯防止推進計画に盛り込んだ施策を着実に実施してまいりたいと考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 今、更生保護施設のお話もありましたけれども、この更生保護施設も誰でも彼でも受け入れてくれるわけではないのが現状でありますし、また、新しくこういう施設を建てようとすると地域住民の反対が強くあるという現状もあります。こういったところもしっかりと踏まえた上で、この満期出所者に対する対策を打っていただきたいと思います。

 もうすぐ時間ですので、最後の質問とさせていただきます。

 国においては、今、自民党にも再犯防止推進特命委員会が設置され、積極的な支援体制構築に向けて議論が行われておりますけれども、やはり各地方議会が同じような問題意識を共有し、また支援に向けた独自の施策を打ち出すということが非常に大切であると思っております。

 地方の取組としては、鳥取県がついこの四月に全国に先駆けて自分たちの独自の計画を発表いたしましたし、また私の地元群馬県においては、平成三十年度末までには自分たちの計画を出すということになっております。

 現在は努力義務となっているこの各地方議会の再犯防止計画ですけれども、国として各県に計画作成を促すようなお考え、そういったものはあるのでしょうか。お願いいたします。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、本年四月一日に鳥取県で全国初の地方再犯防止推進計画が策定されたということでございます。

 再犯防止推進法におきましては、国のみならず、地方公共団体も再犯防止施策の実施主体と位置づけるとともに、地方公共団体に地方再犯防止推進計画を策定する努力義務を課しているということでございまして、大変重要なスタートを切ったなというふうに思っております。

 地方公共団体におきまして、それぞれの地域の実情に応じまして再犯防止施策の実施をしていくためには、地方の再犯防止推進計画の策定が極めて重要と考えておりまして、法務省におきましては、地域ブロックごとに、地方公共団体の職員を対象といたしました説明会を開催しているほか、全国に所在する地方検察庁、矯正施設及び保護観察所におきまして、関係する地方公共団体に対しまして、再犯の現状やまた動向、推進計画に基づく施策の実施状況等に関する情報をこちらが提供するなどして、地方再犯防止推進計画の策定に向けた支援を行っているところでございます。

 鳥取県で初めての地方の再犯防止推進計画が策定されたことをはずみにいたしまして、他の地方公共団体におきましても地方の再犯防止推進計画が策定されるように引き続き支援をしてまいりたいというふうに考えております。

中曽根委員 ありがとうございました。

 やはり、この問題は、国、地方、民間、雇用主、保護司といった個人、そういった全てのプレーヤーが課題を共有して、同じ方向を向いて包括的に支援できる仕組みというものをつくっていかなくてはいけないと思います。

 今、お話をずっとしてきましたけれども、再犯したくなくてもしてしまう状況、その望まれない再犯というものが非常にありますし、これを減らすためにも国と地方の連携を一層強めていただきまして、また一方で、ボランティアで行っている保護司の皆さんの視点も忘れずに、これから取り組んでいただくことをお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、松田功君。

松田委員 おはようございます。立憲民主党の松田功でございます。

 きょう、また質問に立たせていただきました。

 まず最初に、十一日に大分県中津市で起きた土砂災害でお亡くなりになられた方、また、いまだに安否がわかっておられない方がおみえになります。御家族の方にお見舞いを申し上げたいと思います。

 本当に、ちょっとニュースが暗いニュースも多い中で、何か明るいニュースがないかなと思ってちょっと探していたところ、大リーグで大谷選手が週間MVPをとるという、本当に日本人としてうれしく思う記事がございました。大谷選手に負けないぐらい頑張ってまいりたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、まず初めに、連日国会でも大問題になっております森友学園の交渉記録、加計学園の御意向文書、南スーダンPKO日報、イラクPKO日報の改ざん、隠蔽について質問したいと思います。

 公文書管理についての問題が出始めてから、私、このような本を読まさせていただきました。「日本の公文書」、松岡資明さんが書いた本でありますけれども、この本の中には、上川大臣がアメリカに留学された際、「公文書をはじめとする記録資料がいかにきちんと保存・整理され、利用するための体制が整備されているかを実感した。「資料を探していくと、オリジナルデータとしての公文書に行き着く。さらに公文書を基に解析したリポートも作られていた」」、また、アメリカの知的情報量の驚くべきボリュームと、その情報量をもとにアメリカの政治は動いていると述べられております。

 このように、公文書の重要性を誰よりも知っており、初の公文書管理担当相を務められた上川大臣には、今回の一連の問題に対し、ふんまんやる方ない思いを抱いていらっしゃるかと思います。いかがでしょうか、大臣のお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 公文書の問題につきまして、私の取組の一端のところを文書を通して読み上げていただきまして、また新たな気持ちを持っているところでございます。

 行政文書につきましては、健全な民主主義、この根幹を支える国民共有の知的資源でございます。これは、主権者である国民の皆さんに対して、しっかりとした責任を持って公文書を扱い、また国民の皆さんが主体的に利用し得るものであるというふうに考えます。

 それゆえに、行政機関におきましては、行政文書の適正な作成、そして整理、また保存等を通じまして、行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国の諸課題、諸活動を現在及び将来の国民に説明していく責務があるというふうに考えております。

 公文書のあるべき姿が現在揺らいでいる状況でございます。公文書や行政全体に対して、国民の皆さんの信頼を確保するためにも、各省庁ごとの特性をしっかりと踏まえつつ、絶えず点検を実施し、そして公文書管理の今申し上げたようなあり方そのものに対しましても不断の見直しをしていくこと、そして行政文書の管理を適正に行うということ、これを不断にしていかなければいけないというふうに思っております。改めて、そのような思いで今臨んでいるところでございます。

松田委員 改めて思っていただいているということでございます。

 総理の答弁も、ちょっと何とも言えなく、もっとしっかりやっていただきたい中でああいった答弁ばっかでございますので、ぜひ、私としては、法務大臣の上川大臣にしっかりと言っていただいて、国民の皆さんが、やはり信頼がなくなってしまっている部分はこれからしっかりと変えていかなければならないというふうに思っているんですね。それを誰かがきちっと言っていかなければいけないということであれば、このように述べられております上川大臣、ぜひ率先して進めていただきたいというふうに私自身は思っているところであります。

 また、加計学園の御意向文書は公文書でないとかいろいろなお話もありますが、公文書自体の定義というものをもう一回考え直さなきゃいけない部分が出てきているのであろうかと思います。文書を残す意味では、行政が説明責任を果たすことができるようにすることが必要であるというふうに私自身は思っているところであります。

 今回の件を受けて、広義な意味での公文書管理の問題が出てきていると思います。そういった意味において、大臣やまた過去にも我が党の逢坂議員とも一緒になって進めてきた公文書管理の関係も含めるならば、党を問わずいろいろな方の御意見を聞きながら見直す好機であるかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 行政文書の作成につきましては、日常の行政業務の中で発生するものでございます。とりわけ現場、特に職員一人一人が、その自覚とその意思をしっかり持ってまず作成をするということ、そして、この基本的な一連のプロセスそのものがしっかりと運用できるようにしていくということ、これはそれぞれの省庁におきまして責任を持って果たしていくこと、これが国民に対しての行政責任ではないかというふうにも思っております。

 その意味で、公文書に係る問題につきましては、絶えずこの取組についての不断の検討をしていくということ、このことを追求し続けるということが極めて大事なことだ。これは私、初代で担当させていただき、また現場も見させていただきまして、十九省庁を見させていただきまして強く感じた点であります。

 絶えず検証しつつ前進していくということが大切ではないでしょうか。そのような思いでこれからも取り組んでまいりたいと思っております。

松田委員 大臣の方で、ぜひ各省庁も含め、先頭に立っていただいて公文書管理に当たることを進めていただきたいと思います。

 それでは、続きまして質問に入りたいと思います。

 松山刑務所の件でございます。今、受刑者が逃走した事件を受けまして、我が国の刑事政策についてちょっとお伺いしたいと思います。

 今回の事件は、開放的施設と呼ばれる、塀も鉄格子もない刑務所からの逃走という事件であります。受刑者はまだ見つかっていないということで、住民の方が非常に大きな不安を抱いていることは御存じかと思われます。

 そのようないつでも逃げやすい状況というか、塀がないということも含めますので、そういった形の開放的施設をつくられた意義と経緯をお伺いしたいと思います。

富山政府参考人 御答弁申し上げる前に、一言おわびをすることを許していただきたいと思います。

 本年四月八日、松山刑務所大井造船作業場から受刑者一名が所在不明であるということで、直ちに一一〇番通報しましたが、現在も警察によって身柄が捜索中でございます。

 もちろん、開放的施設であるからといいまして私どもも逃走があっていいと思っているわけではなく、逃走を防ぐための措置を講じてきたわけですが、今回事故が起きてしまったということはまことに遺憾でございまして、申しわけなく思っております。国民の皆様、とりわけ地域住民の皆様には大変な御不安を与え、また御心配、御迷惑をおかけしているということを心からおわび申し上げたいと思います。

 その上で、お答えいたします。

 開放的施設とは、収容を確保するため通常必要とされる設備又は措置の一部を設けず、又は講じない刑事施設の全部又は一部で法務大臣が指定するものと定義をされております。

 現在、網走刑務所の二見ケ岡農場、市原刑務所、これはごく一部だけ閉鎖区間がありまして、その区画を除くことになりますが市原刑務所、広島刑務所尾道刑務支所の有井作業場及び松山刑務所の大井造船作業場の四つの施設が指定をされているところでございます。

 このような開放的施設ということが法律において定義をされましたのは、平成十八年に施行されました刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律においてでございますが、このような開放的施設そのものにつきましては監獄法のもとでも実施されていたところでございます。

 このような開放的施設における処遇は、一般社会の生活にできる限り近い環境を実現することによって受刑者の自発性や自律性を涵養し、ひいては受刑者の社会適応性を向上させる、そういった視点において大きな意義がありまして、受刑者の再犯防止にも有効であると考えまして、設置をし、運用をしているというふうに理解をしております。

松田委員 開放的施設に対しては、それに対する意義をしっかりと持って進めていっていただいているというふうに思ってはいるところでありますが、さりとて、やはり、脱走されてしまうと地域住民の方また市民一人一人が不安に陥って、きのうもニュースでやっていましたが、家族一緒で同じところでも寝て、不安であると島の中の人が言っていたりということもありますから、そういったことに関して言えば、いち早く、早く捕まえていただきたいというふうに思っているところでありますけれども、やはり、この刑務所自体の意義自体もある程度理解をした中でこの件を見詰めていかなければならないというふうにも思っているところであります。

 そういった中での開放的施設がつくられた経緯ということを今御説明もいただきました。その中で、そのような思いでつくられた開放的施設と、また従来型の刑務所の違いについて、少し質問もあわせてしたいと思います。

 国民の皆さんも、今回の事件で初めてそのような種類の刑務所があるんだということを知った方もおみえになるのではないかと思いますので、改めて、従来型の刑務所と開放型刑務所の違い、また、松山刑務所以外の開放的施設のそれぞれの特性をお聞かせいただきたいと思います。

富山政府参考人 お答えいたします。

 開放的施設を一般的な刑事施設と比較した場合の違いといたしましては、外塀を低いフェンスとする、あるいは、居室、食堂、工場等に施錠をせず、施設内での一定の範囲においては移動、行動の自由が認められるといった特徴があると考えております。

 その上で、それぞれの施設の特徴を申し上げますと、網走刑務所二見ケ岡農場につきましては、泊まり込みをして集団生活を行いながら、広い農場がありますその中で農作業あるいは畜産作業などを行うといった処遇を行っております。市原刑務所につきましては、交通事犯の受刑者を集禁しておりまして、施設の外の事業所において、職員の同行なく作業をする外部通勤作業なども行っております。また、広島刑務所尾道刑務支所の有井作業場及び松山刑務所の大井造船作業場は、いずれも民間企業の敷地に整備された寮に泊まり込みをいたしまして、民間企業の社員とともに工場において作業を行うといった処遇を行っているところでございます。

 いずれも先ほど申し上げましたとおり、一般社会で働く形になるべく近いような環境をつくることで、社会適応性の向上を図るということを目指しているものでございます。

松田委員 出所してから社会に適応できるような体制づくりを含めていくということは非常に重要なことでありますから、それで再犯防止も含めていく意味で、非常に重要な施設だということはよくわかります。

 それで、次に質問を移らさせていただきたいと思います。

 犯罪についてもいろいろあります。そんな中、どのような罪を犯した人物が、誰の判断によって開放的施設へと振り分けられるのか。受刑者が、大井造船作業場へと収監される、それぞれの施設に収監されるに至る経緯と基準について、お聞かせをいただきたいと思います。

富山政府参考人 お答えいたします。

 受刑者が、判決が確定し、刑の執行をするに当たりましては、処遇調査というものを行います。その処遇調査の中で、開放的施設における処遇が適当と認められた場合には、その受刑者は開放的施設に送られることになります。

 また、処遇調査の過程ではまだその判別がつかない場合であっても、その後の刑の執行をする過程で、開放的施設における処遇が相当であるとして移送される場合もございます。

 開放的施設に収容する要件といたしましては、まず、改善更生の意欲あるいは社会生活に適応する能力の育成、こういったことを図ることができる見込みが特に高いということがまず判断されなければなりません。その上で、釈放後の保護の状況が良好であること、高齢その他の理由によって就業することが困難なものとは認められないこと、生活態度が良好な状態が継続し、かつ継続する見込みがあること、過去に逃走や自殺を企てたことがないこと、当該開放的施設の近隣の居住歴、土地カンなども考慮し、その施設において開放的処遇を実施する上での特段の支障がないことといったことがまず大枠として定められております。

 また、大井造船作業場や有井作業場といった民間企業と共同した作業を行わせる場合には、更に、かなり厳しい作業をさせることになりますので、そういった作業を行うことへの意欲、また年齢の上限、知能指数、体力など、その作業を実施するために必要となる要件も定めております。

 また、罪名につきましても、凶悪犯罪でない、あるいは性犯罪ではないといった、これは開放施設ごとに若干基準が違うわけでございますが、そういった罪名に関する要件なども定めて判断をし、やっているところでございます。

 また特に、大井造船作業場あるいは有井作業場につきましては、いきなりその開放的な施設に送るのではなく、大井造船作業場の場合で申し上げますと、まずは松山刑務所という、本所と呼ばれている施設ですが、そこに送りまして、かなりの期間、所内で、溶接であるとかそういった造船の作業をするために必要な訓練を受けさせ、また、その間に、この人がそういった開放的な施設で処遇をするのにふさわしいかどうかを更に見きわめるといったこともやっているところでございます。

松田委員 選定理由で、しっかりやる気があるとか、いろいろそういったことできちっとして、重犯罪でなく更生の可能性が高い、働く意欲もある人物を選定していくというお話だと思います。

 そんな中で、今回の逃走事件も含め、逃走事件はこの大井造船所に当たっては何件あったのか、お聞かせいただきたいと思います。

富山政府参考人 平成に入ってからの件数をお答えすることでよろしゅうございましょうか。

 平成に入ってからの大井造船作業場からの逃走につきましては、今回を含めまして六件七名ということになっております。

 また、それ以前で、昭和の三十七年に第一回目の逃走事案が起きておりますが、そのときを含めますと、昭和の時代には全部で十一件の逃走が発生しております。

松田委員 この大井造船所の方で、新聞等々でもう述べられてもおりますが、十七件二十、そして今回で二十一というふうであります。そうやって考えると、平成に入ってからも少し件数も多いということも考えられます。

 そんな中で、やはり一人でも逃走しないようにしていかなければならないということもあります。この造船場等々のいろいろな資料を見させていただいた中では、造船場の中では一般の方の工員と一緒に働いており、女性の工員の人もまじっている。また、その近隣への清掃活動に出かけたり、施設、友愛寮という中で寮内のサークル活動、また、いろいろな自治会があったりとか、いろいろな形で自由であり、また社会に戻っても適応できるような施設に進めているということを伺っております。

 しかし、そんな中であっても逃走してしまうことができる。それについては、やはり個人的な問題なのか、施設的な問題なのか、その辺についてはどうお考えでいらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。

富山政府参考人 お答えいたします。

 確かに大井造船作業場は逃走が多く、これを防ぐために、特に、平成十四年、直近の逃走のときに大分いろいろと検討した経緯がございます。

 物理的な面につきましては、開放的施設である以上は、なかなか、絶対に出られないような建物にしてしまうと、既に開放的施設ではなくなってしまうということがございます。

 その意味では、私どもとしては、まずは人選をしっかりして、先ほど申し上げましたような手続を踏んで、逃走するような者を選ばないことにまず努めているということと、現実に開放的施設に移してからも、心情把握のために職員が頻繁に面接をするといった形で、その者の心根をよく把握するといったような対策をとってきたわけではございます。

 しかしながら、今回、そういった対策をとっている中でまさに逃走が起きてしまったということで、やはりその意味では、まだ本件の逃走者がなぜこういう形で逃走に至ったかということは、もちろん本人の身柄を確保しないとわからないわけなんですが、今まで私どもが考えてきた心情の把握の方法あるいはその内容、そういったものについて至らない点があったのではないか、そういったことも含めて検討しなければいけないとは考えているところでございます。

松田委員 時間も回っておりますので、最後に大臣にちょっとお伺いしたいんですが、刑務所という施設は、罪を犯した者を収容しておしまいということではなくて、どのような犯罪者でも、しっかり刑を全うして、刑務所から出所して、また社会に出て生活を送っていただかなければいけないと思うんですね。

 単に罰だからといって隔離するわけではなくて、社会に不適合な、法を犯す可能性が高まった人間をしっかりと更生させて進めていくという意味では、開放型施設も必要であるということは重々理解はしているところであります。そんな中、しかし、起きてしまった事件に対して、もう早く捕まえていただきたいですし、またそれに対して、今、大井造船作業場に対しては二十一人、今後二十二人にならないように進めていかなければなりませんし、ほかの施設も同じことが言えると思います。

 その意味において、大臣の方としても今後どのように見直しを進めていかれるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

上川国務大臣 今回、逃走事故が起きたことに対しまして、まことに遺憾であるというふうに思っております。いまだ身柄の確保に至っていないということでございます。長い間、地域住民の皆様を始めとして、国民の皆様に対しまして多大な御心配、御迷惑をおかけしているということにつきまして、心から深くおわびを申し上げる次第でございます。

 本月九日でございますが、当省の大臣官房政策立案総括審議官を委員長といたします松山刑務所大井造船作業所からの逃走事故を契機とした開放的施設における保安警備・処遇検討委員会を立ち上げたところでございます。

 今回の逃走事故のみならず、全国の開放的施設において、保安警備また処遇のあり方についても、しっかりと、かつ速やかに検証し、また検討してまいりたい、さらには対応につきましても十全にしてまいりたいというふうに考えます。

松田委員 ありがとうございました。

 ぜひ、そういったことが二度とないように、また、しっかりと各施設において取組をさらなる重点に置いてしていただきますようお願い申し上げまして、私の質問を終わらさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 きょうは、できれば超党派で前進をさせたい、そして法務大臣以下政府の皆様にもぜひ積極的に取り組んでいただきたい二つの政策について御質問したいと思います。

 一つが、いわゆる司法面接、そしてもう一つが、司法修習生の貸与金の返済時期を延期するという御提案であります。

 まず、司法面接であります。先日も質問させていただきました。

 子供が犯罪の被害者、場合によっては目撃者などになったときに、繰り返し厳しい状況を供述させられることによる心理的な負担をできる限り軽減すること、そしてその供述の信用性をしっかりと確保すること、この二つの政策目的を達成するために、法務省、警察庁、そして厚労省、この三者がしっかりと連携をして、最もふさわしい立場の方がその子供さんにできる限り少ない回数で聞き取りを終わらせる、こういう取組のスタートであります。

 このことについては、平成二十七年十月二十八日にこの三者の役所それぞれから通知を出していただいて、二年半余りが経過をいたしました。この期間、私もたびたびこの法務委員会で、核心としては二つのことをお願いしてまいりました。

 一つが、とにかくこの司法面接の試行案件の定義を三者で固めて、きちっと分析できる共通の土台をつくってほしいということが一点。そしてもう一つは、負担を軽減して信用性を確保できているのかどうかという政策目的の達成度合いを検証するために、必要な報告事項を定型化、類型化していただきたいということをずっとお願いしてまいりました。

 ようやく、この二つの課題への応答ということが読み取れるかと思うんですけれども、平成三十年三月二十三日、皆様のお手元の資料ですけれども、法務省刑事局刑事課長から「依頼」という名前でありますけれども書面が発出をされ、新しい取組の第一歩ということになったようです。

 改めて、先回の質問では、辻刑事局長にかなり早口でその冒頭部分を御答弁いただいたわけですけれども、この三十年三月二十三日付の書面を使いながら、どういったことを今後取り組んで、分析、検証しようとしているのか、お尋ねをしたいと思います。

辻政府参考人 ただいま委員からも御紹介いただきましたように、平成二十七年十月から、法務省、警察庁、厚生労働省におきまして、検察、警察、児童相談所が連携いたしまして、児童が被害者あるいは参考人となる事例につきまして、事情聴取に先立って協議を行い、代表者が聴取を行うなどの取組を実施してまいりました。

 この取組を始めました当初から、代表者による聴取の実施件数、関係機関の協議の状況などについて報告を求めてきたところでございますが、連携強化の取組、幸いにして広がりまして、事例が一定程度集積されてきたこともございますし、ただいま委員からも改めて御紹介いただきましたような御指摘もいただいたところでございますので、それも踏まえまして、今般、さらなる連携強化や実施状況の分析のあり方を検討いたしまして、児童が被害者あるいは参考人となる事案について、より適切に対応するため、本年四月以降の事案について、把握すべき事案あるいは三機関で統一して把握すべき項目を整理いたしまして、三省庁で情報を共有して把握することとしたところでございます。

 具体的には、ただいま御紹介あるいは資料となっております平成三十年三月二十三日付の当局刑事課長の依頼文書によって、法務省から検察に対する報告をお願いしたところでございますが、把握すべき事案につきましては、前回も御説明申し上げたところでございますが、従来は、法務省で把握するものは児童が被害者又は参考人である事案でありまして、検察官が警察あるいは児童相談所の双方あるいは一方と協議を行った上で、三者ないし二者のいずれかが代表して事情聴取を行った事例にとどまっていたところでございますけれども、今般、警察及び児童相談所において実施した事情聴取、すなわち、検察官がそこにはかかわっていないという事案につきましても、基本的には、最終的に事件を処理する検察官に情報を集約するという枠組みを三者で整えまして、検察庁から報告を受けました法務省におきまして、三者連携を実施した件数等を把握いたしまして、その情報を三省庁で共有するということにした次第でございます。

 それから、把握すべき情報の内容でございますが、御指摘のその資料をごらんいただきながらということになるわけでございますが、連携をした機関はどこであるのか、いわゆる三者協議なのか二者協議なのか、それから、代表として聴取を行った機関は検察なのか警察なのか児童相談所であるのかという点を把握いたします。そのほか、被聴取者の年齢、性別、聴取をした回数、それから聴取をした事案の処理結果等について、三省庁で情報を共有するということにしてございます。

 そのあたりは報告内容ということで、御指摘の連絡依頼文書に記載してあるとおりでございますが、そのほか、調書が作成されたのかどうか、その事情聴取において録音、録画を実施したのかどうか、検察官以外の者が代表者として聴取を行った場合、検察官が立ち会ったのかどうか、さらには、公判段階の問題といたしまして、公判において児童の供述の信用性が争われたのか否か、録音、録画の記録媒体が公判において証拠請求されたのかどうかといった点について報告を求めることとしてございます。

 今後も、ただいま御指摘いただきましたように、児童の負担をできる限り軽減するとともに、信用性のある供述を得て、児童が被害者あるいは参考人となる事案について適切に対応するように、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

山尾委員 私の方で少し整理をさせていただくと、改めて確認ですが、まず、指摘してきた一点目、どういったものを試行案件として三者で共有するのかということについては、最初から検察庁が関与した案件も、あるいは途中から送致を受けて検察庁が関与した案件も、それをどちらもきちっと試行案件として法務省が一元的に把握をし、それを厚労省そして警察庁としっかり共有をしていく、そういうことをことしの四月一日からやっていくということでまずよろしいわけですね。

辻政府参考人 基本的には、ただいま御指摘のとおりでございます。

山尾委員 そして、もう一点ですけれども、では、そうやって試行したことによって児童の心理的負担がどれぐらい軽減されたのかということをはかる指標として、誰が聞き取りをしたのか、そして何回聞き取りをしたのかということも、今後はきちっと報告をされるということ。

 そして、もう一つの、では、その信用性がどのように確保されたのか、足りなかったのかということを分析する指標として、調書はつくられたのかどうか、録音、録画はされたのかどうか、そういった証拠が公判になったときには採用されたのかどうか、そして信用性は争われたのかどうか、その結果、信用性が判決でどのように判断されたのかというようなことも、しっかりと報告事項として今回確認をされたということでよろしいですか。

辻政府参考人 ただいま御指摘いただいたとおりでございます。

山尾委員 まずは、ここから第一歩だと思います。

 ちょっとだけ苦言を言うと、先ほど辻局長が、通知発出から二年半、事例が一定程度蓄積、集積されてきたということをおっしゃったんですけれども、本当は、一定程度集積されるその事案がきちっと今言ったような指標で報告をされていれば、今、集積された事例を分析して、ある程度評価をして次につなげるということがもう既にスタートできたはずなんですね。

 今言ってきたような指標というのは、もう私も通知を見たときから、少なくともこの点については集積してきちっと報告を上げさせるべきだと言ってきたことですので、本当は、事案が集積されなくても、当然、物差しとして最初から、ここにありましたけれども、報告書のチェック欄をつくってやるべきことであったというふうに正直言って思います。

 ただ、ここからそういったことをようやくスタートされるということですので、しっかりと集積していただいて、分析を進めて、いい制度をみんなでつくっていきたいと思うんですけれども、ここから先なんです。

 例えば、平成二十七年に法務委員会でイスラエルに海外視察に参りました。このとき、まさにこの司法面接のワンストップセンターを視察に行ったわけですけれども、例えばイスラエルでは、対象者は十四歳未満の子供、そして質問者は、警察官などの捜査官ではなくて、イスラエルの福祉省、日本でいえば厚労省の職員、この方たちが特別な研修を受けて、司法面接官として百人規模で体制をつくっています。

 ハードの施設があるわけですね、ワンストップセンター、子供の権利擁護センターということで、当時六カ所。当時、二カ所今建設中ですとおっしゃっていたので、今は八カ所ぐらいになっていると思います。それを、イスラエルの人口規模、約八百万人余りと考えると、人口百万人当たりにつき一カ所。日本に置きかえると、大体、各都道府県で割ると二、三カ所、百二十カ所ぐらい、そういった子供が駆け込むワンストップセンターがあるというイメージです。

 こういったセンターに、司法面接官がいて、警察官がいて、小児科医、ドクターがいて、ソーシャルワーカーがいて、そして、子供の心のケアをするためのお母さん役ですね、ハウスマザー、これだけの方がチームを組んで、そのワンストップセンターで子供を守る、ここに来たらあなたは守られますという状況をつくっているということであります。

 こういったいわゆるワンストップセンター的なものをつくっているのは、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダと、イスラエルのほかにもあるんですけれども、日本にもそういう取組がスタートをしています。

 皆さんのお手元の資料を見ていただきたいんですけれども、大臣にはこれまでも御紹介をしたことがありますので知っていると思いますが、ぜひ改めて、資料の十一ページでございます。NPO法人のチャイルドファーストジャパンというところが子どもの権利擁護センターかながわという場所を運営してくださっています。写真を見てください。

 右上の待合室、子供がリラックスをして待合できるようなお部屋の入り口あるいは待合室になっています。左側、右側のそれぞれ下の写真ですけれども、かたい椅子ではなくて、ソファーですね、机もやわらかい素材のものになっていて、壁には大きな白い紙、これはぺりっと破れてまた次に行くようになっていますけれども、子供との会話、聞き取りの際にはこの大きな白い紙を使って絵や文字で表現できるようになっています。

 めくっていただいて、ビデオカメラ、子供から聞き取る部屋の目立ちにくい場所に二台小さなビデオカメラが設定をされています。そして、このカメラモニターで、右側上の写真ですけれども、二カ所の場所から子供の聞き取りあるいはしゃべっているときの状況が映し出され、それを左下の観察室というところにモニターされるようになっています。

 そして、ここには、聞き取っている面接官だけではなくて、このモニタールームに、場合によってはソーシャルワーカーがいて、こういう方は福祉の観点から聞き取ってほしいことをチェックする、警察官は証拠の採取とか裏づけ捜査の観点からチェックをする、検察官はもちろん起訴するためにはこういうことも聞いてほしいというような観点からチェックをする。場合によってはドクターもここにいて、医学的な観点からちょっと子供に確かめてほしいことをチェックするということで、このモニタールームを使って、それぞれの専門家が専門的な立場で、できるだけ少ない回数で、子供に心理的負担少なく、必要な状況を十分に聞き取れるような体制をこの施設では整えているわけであります。

 もう一枚めくっていただいて、今、法務省で取り組んでいただいている中で、ここから私たちが考えていかなきゃいけないのは、こういったワンストップセンター、とりわけその中に医療施設、診察室が併用されているということです。

 右下に診察室の様子が出ていると思いますし、もう一枚めくっていただくと、上の写真の二つですね、やはり性被害が多いです、こういった中で、診察台に乗る子供の心理的負担ができる限り少ないように、足を開かなくていいとか、診察台が伸びて足台は使わなくていいとか、こういうきちっとした診療施設もここには併用されているわけです。

 やはり、聞き取りの場とこういった診察、全身の系統医療、チェックをする場が同じ場で、同じタイミングでできるということは、子供にとっても証拠化という意味でも非常に重要なことだというのは、大体皆さん御想像がつくと思うんですね。

 傷を見ながら聞き取るべきことを聞き取ることができる、あるいは、聞き取りの中で、この点もちょっと体のチェックをしておくべきだったということがあれば、きちっとその場でやり遂げることができるということであります。

 大臣にお伺いをしたいんですけれども、ようやくこういった協同面接、司法面接というのが三者で始まったわけですが、ここから先、道のりは短期間ではないと思いますが、やはり日本にこういうワンストップセンターがあって、しっかりとNPOや医療機関とハードの面でも連携できる、そういった整備を私はぜひ大臣が先頭に立って進めていただきたいというふうに思うんですね。

 ここから先に、子供が被害に遭ったときにどういう体制を整えていくのかということが、今言ったイスラエルの例や日本で始まっている例で見てとれると思うんですけれども、大臣のこれからの未来像、それを少しお話しいただければと思います。

上川国務大臣 子供がさまざまな厳しい状況に置かれたときに、その直後から傷を抱えながら過ごすわけでありますので、なるべく早い段階において、しかも信頼のある体制の中でその心とそして体についてケアをしていく、そのスタートを切るというのは非常に大事なことだと思います。

 その意味で、この間委員からもさまざまな御指摘をいただいたことを通して、さらに、エビデンスベースも含めて、将来の施策への反映ということについても極めて重要だというふうに思っております。

 海外の取組も、いろいろな考え方の中で取り組んでおりますし、また、日本の中でも、こうした事例も含めましてさまざまな試みをしていただいているということでありますので、そうした取組をしっかりと検討させていただきながら、よりよいものになるようにしてまいりたいというふうに思います。

山尾委員 将来の施策への検討を進めるということなので、ここで私は一つ提案したいんですけれども、この三者連携が、今は、事実上、それぞれの担当実務者の方が、お聞きする限りは、相当程度頻繁に集まって連携をして進めているということではありますが、この三者連携の協議体を少し公的にオーソライズした方がやはり検討の推進力になると思うんです。

 いろいろな器があり得ると思いますけれども、何か新しいものをそのために立ち上げるというよりは、例えば、児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議というものが実際にございまして、この中で紹介されている虐待防止プロジェクトの中の一環で、この司法面接というものもペーパーに上がっております。この会議体の中には、法務省も、民事局長、刑事局長、人権擁護局長が入っておりますし、そしてもちろん厚労省も入っているし警察庁も入っているんですね。

 ここの中に、例えば、一つ、三者連携、司法面接に特化したような何かチームを立ち上げていただくなどして、少し、実務担当者が事実上やりとりをするということよりも、検討協議体をオーソライズするようなことをまず検討して、考えていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

上川国務大臣 今委員から御指摘がございました児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議、この参加メンバーとして、法務省、警察庁、厚生労働省、まさにこの三者が入っているわけでありますが、昨年の六月以降、幹事会、これを二回ほど開催して、その中で、児童の心理的負担等に配慮した代表者による事情聴取の取組状況につきましても情報共有を行っているということであります。

 密に連携をとりながら、現場現場の中でしっかりと対応することができるようにしていくということも大変大事だというふうに思っておりますので、さまざまな取組についてどのようにしたらいいのか、これもあわせて検討してまいりたいと思います。

山尾委員 引き続き、この件、質問を続けていきたいと思います。

 少し、最後にですけれども、司法修習生の貸与金の返還を延期しようという法案を私ども提案したいと思っております。

 改めてですけれども、この貸与制の谷間に落ちた世代というのが全法曹人口の何割に当たるのか、御答弁ください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 従来の貸与制は、平成二十三年十一月に司法修習を開始した新六十五期の司法修習生から、平成二十八年十一月に司法修習を開始した第七十期の司法修習生まで実施されていたところでございます。新六十五期から第七十期までの司法修習生の採用者数の合計は一万一千八十三人であり、また、裁判官、検察官及び弁護士の法曹三者の数の合計は、平成二十九年四月一日現在、四万三千九百二十七人であります。

 したがいまして、従来の貸与制下の司法修習生の人数は、法曹三者の人口と比較いたしますと、その約四分の一に当たるということになります。

山尾委員 やはり、全法曹人口の四分の一に当たる方々がしっかりと、人生を左右される職業につかれる中で、お金に左右されずに仕事を全うしていただきたいというのが私の切なる願いであります。

 そして、私ども、やはり貸与制に移行したときの制度趣旨がもう既に該当しなくなっているということをお話ししたいんですね。

 貸与制に移行した六十五期の司法修習生採用者数と現在の司法修習生採用者数、これは減少しているのではないですか、数をお答えください。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 貸与制が開始されました新六十五期司法修習生の採用数は二千一人でございます。他方、現在、司法修習を行っております七十一期の司法修習生の採用者数は千五百十六人でございます。

山尾委員 そうなんです。もう既に二五%減という状況であります。

 貸与制に移行した理由というのは、財政負担が厳しい、これから修習生が大幅にふえていく、そして公務に従事しない者に国が給与を払うのは異例である、この三つであったわけです。

 ただ、実際は、大幅増加どころか二五%減っている。そういう中で財政負担も減っている。そして、今既に、ある意味、給付金という形で給費制の一部復活のような形で、国が給与的なものを払うことは異例という立場には既に立っていないわけです。

 そういう中で、この谷間の世代をどう救済していくのかということは、やはり私たち立法者の責任でもあるというふうに思うんですね。

 このことについてですけれども、私どもは、五年なり、この返済延期を提案したいと思っています。そして、その中で、先日、ちょっとこの法務委員会の質疑の中で、今後、国が対策をとるのかどうかということが日弁連の対応に影響を与えるというようなお話も少し出ていたかと思うんですけれども、延期している間に日弁連や各単位弁護士会がどのような措置を講じていただくのかということも含めてしっかりと検討をして、やるべきことを考えていく、そういう期間をつくる、こういう提案でありますので、ぜひ、これは政府の側が難しいということであれば、私たち立法者の側でこの国会中に提案をしたいというふうに思っておりますので、法務委員会の皆様の御協力をいただきたいということをお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

平口委員長 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として財務省大臣官房長矢野康治君、財務省理財局長太田充君、厚生労働省大臣官房審議官吉永和生君及び農林水産省大臣官房審議官岩本健吾君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 希望の党、信州長野の井出庸生です。

 いろいろな事柄が今国会はございますが、いろいろなどんなに大きい問題があろうと見過ごしてはいけない問題もあろうかと思いますので、きょうは、セクハラ、女性の人権について、政府の人権意識というものをただしてまいりたいと思います。

 最初に、財務省に伺いますが、資料として用意している週刊誌の報道でございます。

 昨日、参議院の財政金融委員会の方で麻生大臣から少し御発言もあったようですが、この週刊誌報道についての本人に対する聞き取り、事実確認、それからまた、組織としてこの問題をどのように考えているのか、財務省から見解を求めます。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 昨日、四月十二日の参議院の財政金融委員会におきまして麻生大臣が御答弁させていただきましたように、本件は、公的な場での発言に関する記事ではなく、福田次官の私的なやりとりに関する記事ではございますけれども、福田次官本人から麻生大臣に報告をさせていただいておりまして、また、その際、麻生大臣から福田次官に対しましては、財務省が現在置かれている状況も踏まえて緊張感を持って行動するようにという申し渡しがあったものでございます。

 また、次官の方からは、ふだんから私的な場においていろいろな相手といろいろな会話をしており、その一つ一つのやりとりは定かではないが、また、記事において正確な日時や相手方が必ずしも明らかではないので確認のいたしようもないところではございますけれども、いずれにしても、誤解を受けるようなことのないように気をつけてまいりたいという反省の辞があったというところでございます。

井出委員 今お話のあった、誤解を受けるようなことのないというのは、一体誰がどんな誤解をするのか教えてください。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 私的なことでございますので、私がつまびらかに御説明をできる立場にはございませんけれども、週刊誌報道にありますように、あるいはセクハラとか、あるいは不快な思いを相手に与えるというようなことが報じられるということ自体が不適切なことであるという意味で、次官はおっしゃったと思います。

井出委員 報じられること自体とお話がありましたが、今、私的、私的ということをお話をされているんですが、政府の役人と記者が会うことは取材ではないのか、そしてまた、取材の場というものは、セクハラで定義されている職場に含まれるんじゃないですか。その点はいかがですか。

矢野政府参考人 取材の場という言葉の定義もちょっとよくわかりませんけれども、取材の場という飲み会であったんだと思いますけれども、ただ、飲み会とか取材かとかいうことではなくて、相手の方に不快な思いを与えるということはあってはならない、当然慎まなければならないと存じます。

井出委員 法務省が出している、人権擁護局が企画をしている、人権研修シリーズ「セクシュアル・ハラスメント」の中に、今私が申し上げましたが、男女雇用機会均等法及び厚生労働省指針では、職場とは社内だけでないと。業務遂行に際して必要な取引先の事務所、顧客の自宅、出張先、それから取材先、それと、厚生労働省の資料によれば、業務の後の懇親会の場、そういうものも広くセクハラの対象になると。

 そういうものが、政府の方から、今まで、そういうところがセクハラの場になるから注意をしましょうと国民に呼びかけてきているんですよ。違いますか、財務省。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の御指摘のように、セクハラの定義、上司と部下の関係があるなしとか、職場であるとかないとかということに限らず、相手の方に不快な思いを与えるということがあってはならないと存じますので、その意味において誤解を与えるようなことがあってはならないというふうに次官も申し述べたと存じますし、私どももそういうことがあってはならないと思っております。

井出委員 それから、麻生大臣のきのうの御発言、今官房長も御発言しましたが、今、緊張感を持って、置かれている状況、財務省の最近の置かれている状況、このこと等々を考えて、きちんと緊張感を持って対処すると。

 セクハラと森友の文書改ざんの問題、一体何の関係があるんですか、財務省。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣は、現在、財務省が置かれている状況も踏まえてということで、を踏まえてではなくて、も踏まえてと申し述べられたとお聞きしておりまして、もちろん、委員御指摘のように、置かれている状況がどうであろうがなかろうが緊張感を持って行動する必要があるということですし、相手の方に不快な思いをさせることがあってはならないということは当然のことだと思っております。

井出委員 置かれている状況もなんてどこにも書いてないですよ。置かれている状況を考えて緊張感を持てと。大きな問題があるからといってセクハラの問題をうやむやにしていいのか。

 それから、記事で取材に応じている人物が特定できないから定かではないと。セクハラの問題というもの、それから性的な被害に関する被害の訴えというものは実名じゃなきゃいけないんですか。匿名だからといって定かでない、それは匿名につけ込んだ言い逃れだと思いますが、いかがですか、財務省。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 福田次官は、会話が週刊誌に書かれているわけですけれども、その一つ一つについて、そのような会話をしたかどうかということについてつまびらかではないという意味で申し上げたようでありますけれども、そのことと、そもそも、であれば問題がないかといえばそうではなくて、不快な思いを与えたとすれば、それは反省すべきことであるという認識でございます。

井出委員 不快な思いにさせたという認識があるのであれば、これは、取材対象者の官僚、それも財務省のトップと、それから報道記者の話ですよ。このことを、何の処分もなくて、事実の調査もなくてこのままにするということは、女性記者の取材に制限をかけることを黙認するに私は等しいと。

 次官が記者会見を開いて正式に謝罪をすることと、それから事実関係を厳正に調査して処分をすることを強く求めますが、財務省の見解を求めます。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、きのうの別の委員会でも大臣が御答弁されましたけれども、福田次官の方から大臣に御報告及び反省の弁があり、大臣の方から、緊張感を持って行動せないかぬということを、大臣から戒めの言葉があったということでございまして、処分とか調査とかいうことではありませんけれども、大臣の方から戒めの言葉があったということでございます。

井出委員 では、財務省は、これからも、女性の記者が取材に来て、そしてセクハラのような発言をして、それが発覚しても、戒めで済ますつもりなんですか。いかがですか。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 セクハラが許容されるとか、そんな概念はないと思っております。セクハラということであれば、それは応分の処置が必要であると思います。

 今回も、中身は定かではありませんし、日時もよくわからないというところもございますけれども、ただ、このようなことを書かれ、また全く身に覚えがないということでもないということでございますので、その旨、大臣に対して次官が反省の弁を述べ、大臣の方から戒めの言葉があったということでございますので、組織としてセクハラに対する認識が欠けているとは思っておりません。

 これからも、そのようなことがないように厳に戒めてまいりたいと思います。

井出委員 いや、組織としてのセクハラに対する認識の欠けている最たるものだと思いますよ。

 きょうの大臣会見で、麻生大臣は、これが事実だったらアウトだ、そこまできょうお話しになったということを共同通信で報道されていますが、調査もされないんですか。事実ならアウトだと。今、事実であれば大変ゆゆしきことで、あってはならないと官房長自身もおっしゃられていて、それでも調査すらしないんですか。その程度のセクハラに対する取組なんですか、財務省は。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、財務省としては、セクハラに対して、そのようなものを許容するという概念はございません。セクハラがあれば、それに対して応分の処置をしなければならないと考えております。

 以上です。

井出委員 セクハラを許容することはない、そうであるならば応分の処置をしなければいけないと。これだけの報道がありながら、調査はしない。この問題をこれで済まそうとしている。ましてや、匿名の記事であるということをもって定かでないと。

 法務大臣、昨年、性犯罪の法改正をやったんですが、性被害に関する被害者の心情というものは特に配慮しなければいけない、裁判においても、被害者がわからないようにするとかそういう措置は当たり前である。それを、被害者が匿名だからといって、わからないじゃないかと。そして、調査もしないと。

 私は、次官の資質を問うているわけではないんですよ。麻生さんや次官の釈明を許容する財務省の組織の風土、そんなものを、人権擁護の責任者である法務大臣が許容することは到底許されないと思います。厳しく言っていただきたいと思います。

上川国務大臣 男女平等の理念に基づきまして、女性と男性がみずからの個性を発揮して生き生きと充実した生活を送ることができる社会、この実現が重要である。職場におきまして、女性と男性が生き生きと働くことのできる環境づくり、これも重要でございます。

 セクシュアルハラスメント、いわゆるマタニティーハラスメントなどの妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの問題、そのほか、働く女性の心身の健康を害するさまざまな問題は、職場において生き生きと働くことのできる環境を阻害するものでございまして、女性の人権に関する重大な問題というふうに認識をしております。

 一般論ということで申し上げたところでございますが、個別の事案につきましては、法務大臣としてお答えすることにつきまして差し控えさせていただきます。

井出委員 これは、匿名だからうやむやだとか、それから、今、財務省の置かれている状況を考慮して緊張感を持てとか、そういう話では私は決してないと。こんなことがまかり通ったら、女性記者が取材できちっと情報をとる、活躍するなんということができるはずがない。

 「人事院規則一〇―一〇(セクシュアル・ハラスメントの防止等)の運用について」、その四に「懲戒処分」、「セクシュアル・ハラスメントの態様等によっては信用失墜行為、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当して、懲戒処分に付されることがある。」と。

 人事院に伺いますが、今の財務省の答弁が、果たして、セクハラを撲滅しようとする国家公務員全体の取組にふさわしいと言えるんですか。

遠山政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の財務次官に関する週刊誌報道について、現時点で人事院として具体的な内容を承知しておりませんが、職員の服務に関する個別の事案については、所属職員の服務を統督するとともに事実関係を十分に承知し得る立場にある任命権者において適切に判断されるべきものと考えます。

井出委員 この期に及んで報道を承知していないというのは、一体何を考えていらっしゃるのか。

 人事院規則一〇―一〇の「人事院の責務」に、各省庁の長がセクハラ防止等のために実施する措置に関する指導及び助言に当たらなければいけないと。やらないんですか。

遠山政府参考人 お答え申し上げます。

 人事院といたしましては、セクハラの防止、先生御指摘の人事院規則一〇―一〇でございますけれども、これにおきましてその適切な運用を図るとともに、種々の施策を実施しているところでございます。

 ただ、個別の案件につきましては、繰り返しになりまして恐縮でございますが、職員の服務に関する個別の事案ということで、所属職員の服務を統督する任命権者が事実関係を十分把握した上で適切に判断すべきものと考えます。

井出委員 本当に耳を疑うような答弁としか言いようがないんですが。

 上川大臣、私は、セクハラはあってはいけないことだと。その被害者と加害者と、事実関係の調査はきちっとなされるべきだ。それは、それぞれに言い分があるのかもしれません、だから、それはここで殊さら言うつもりはないんですが、私が一番この件で怒っているのは、財務省が置かれている、森友の状況で大変だ、そういう状況の中なんだから、緊張感を持てと。

 それから、もっと許せないのは、その報道が匿名だからといって、いつ誰が言ったことか定かではないと。財務省の言っていることは、性被害に遭った人は全部実名で名乗り出ろと。性被害に対する匿名の相談すらも、そういうものを進めてきたものも冒涜しかねない重大な人権侵害。

 このことを私は感情的に、理屈じゃなくて感情で許すことができない。あなたもそう思いませんか。

上川国務大臣 職場におきましてのセクハラ事案につきまして、先ほど私申し上げたとおり、重要な、女性への人権侵害であるということで、法務省におきましても、こうした認識に基づきまして、さまざまな人権相談に応じまして、また、人権侵害による被害申告を受けた場合には丁寧に調査を行うとともに、国民の皆様に向けての女性の人権問題に対する人権啓発活動を行っている状況でございます。

 きめ細かな、寄り添ってしっかりと対応していくということ、ここにつきましては委員が御指摘のとおりだと思います。

 個別の案件ということでございますので、それに関連したことにつきまして法務大臣として答弁をするということにつきましては差し控えさせていただきます。

井出委員 本当に、今回の財務省の対応には憤り以外の何もないですよ。

 厚生労働省でも似たような事案があって、報道がされて、そちらは厚生労働省の方で報道の前に注意をされたと聞いておりますが、報道がされて、出てきた本人の言うことを聞いて、それで注意して終わり。

 森友の問題とセクハラの問題とどっちが大事だと、優劣つける気なんですか。財務省、最後、答えてください。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 森友問題につきましては、現在、決裁文書の書換えという異常な事態を踏まえまして、誰がどのような指示を受けて、あるいは受けずに判断のもとに行ったのかという調査を行っております。その上で、しかるべき処分をしなければいけないと思っております。

 その話とセクハラ問題の対応と全く別の問題でございまして、セクハラと呼ばれるものが省内外においてあってはならないと思っております。

 今回も、事務次官が、報道されたことについて、過去のことであって一部記憶が定かでない部分もありますけれども、でも、このように書かれること自体不徳のいたすところということで、大臣には謝辞を、反省の弁を述べ、大臣の方から緊張感を持ってやるようにという訓戒がなされたところでございます。

 この先も、森友の問題は森友の問題できちんと対処をいたしまして、セクハラの問題は全く別途、しかるべき、そういうことがあってはならないという意味において、省内外においてそういうことがないように努めてまいりたいと思っております。

井出委員 森友とセクハラは関係ないというのであれば、きのう、きょうの大臣の発言は到底認められるものではないし、セクハラを許容しないというのであれば、ましてや大臣が事実であればアウトだとまでおっしゃっているんだったら、その事実と向き合う調査をやることを強く求めて、私の質問を終わります。

平口委員長 次に、階猛君。

階委員 希望の党の階猛です。

 最初に、きょうの各紙において、愛媛県の担当者が書いたとされる文書と類似する文書が農林水産省で見つかったということが挙げられておりました。この件について、事実関係を農水省にお答えいただければと思います。

岩本政府参考人 お答え申し上げます。

 報道におきまして、愛媛県庁が作成した文書のことが問題になっておりましたが、農林水産省にそれが配られたということに関しまして、事実関係の調査を行いました。

 その結果、該当する文書につきましては、課長補佐級の職員一名が文書を保有していることが判明いたしたところであり、その旨を本日大臣から公表したところでございます。

階委員 既に公表されたということを伺いましたけれども、今までは愛媛県の内部文書という前提で、これが真実なのかどうかということが議論されてきましたけれども、中央省庁である農水省にも出されたということは、この文書の内容の真実性を裏づける重要な事実だと思います。

 というのも、内部の文書よりも一般論としては正確性を期して文書を作成するはずですし、まして、首相秘書官がどんなことを言ったのかという内容ですから、もしそこに愛媛県の担当者が虚偽の事実を書いて、それが事後的に発覚したとなれば、愛媛県が進めようとしていた加計学園の獣医学部の開設にもマイナスの影響が及ぶということで、全く虚偽の事実を書くことは考えられない、そういうことが言えるわけです。

 にもかかわらず、そういう文書を作成して、しかも中央省庁の農水省に出したということは、私はこの文書の真実性が裏づけられたのではないかというふうに思っています。

 農水省さんの方で、ちょっと私もずっと委員会に出ていたので公表したということを今初めて聞きましたけれども、公表したということ以外に、この内容の真実性にかかわるようなコメント、何かございましたでしょうか。

岩本政府参考人 この文書につきましては、体裁等から見まして、恐らく県の内部で状況を報告するための内部での文書が提出されているということでございまして、また、県の方から、県の名前で農林水産省に提出された資料でもないということで、ちょっとその性格がいま一つはっきりしないところでございますが、内容の真偽につきましては、そういう意味におきまして、私ども作成していないものですから、そこは県の方で説明する責任があろうかと思っております。

階委員 ごめんなさい、どういう経緯で農水省が入手するに至ったのか。記事などによりますと、愛媛県の方が農水省にこの件について相談するときに渡したものじゃないかみたいなことをどこかで見ましたけれども、その件についてはどうなんですか。入手経緯ですね。

岩本政府参考人 この獣医師の方の関係の担当の部署の職員によるヒアリングをいたしまして、その際に、例えば、県の方から訪れて文書を渡したようなことはなかったかとか、県から農林水産省に対して、そういう今報道で言われているような文書を持ってきたとか持ってこないというようなことがあったかどうかとか、あるいは文書そのものがあるかということをヒアリングしております。

 ただ、この文書を持っているということが、ヒアリングした結果、当該職員の前任者がこれを受け取っておりまして、その際、その方は、ちょっとその別紙文書を、その文書を見た記憶がない、それから、後任に渡した記憶もないけれども、それが後任の引継ぎの文書の中に入っているのであればそうだったのかもしれないというようなことだったものですから、経緯というところまではわかっておりません。

 以上でございます。

階委員 ちょっとそこら辺も重要な事実なので、農水省は、後で結構ですから、入手した経緯とか入手したときの状況、これについて後で御説明をいただければと思います。よろしいですか。(岩本政府参考人「はい」と呼ぶ)では、結構です。農水省、ありがとうございました。

 それでは、本題の方に入っていきたいと思いますが、この委員会で山尾委員も訟務局の訴訟代理の問題についていろいろ取り上げておりますが、私は、その訟務局のもう一方の機能である予防法務の機能についてきょうは取り上げたいと思います。

 既に予防法務に携わる人が、この間ヒアリングしたところだと、訟務局には十六人ぐらいいらっしゃる、専従でですね。それ以外にも、地方では、その訴訟代理の仕事と兼務するような形で予防法務に当たられている方もいらっしゃる。そういう人たちが、去年、二十九年、暦年ベースですけれども、本省では三百件ぐらい、地方では二千七百件ぐらい、合計三千件もの法律相談に応じているということを伺っております。

 この法律相談というのがどういった事件について受けていらっしゃるのかということを、まず、法務省の参考人からお聞かせください。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 訟務局で実施しております予防司法支援でございますが、各府省庁の施策や業務につきまして、具体的な法的紛争が生じる前であっても、当該府省庁からの照会に対し、訟務局がこれまでの訴訟対応等によって得た知見を提供するなどして法的問題について助言する業務でございます。

 その対象ですけれども、訟務局の業務が国の利害に関係のある民事訴訟及び行政訴訟に関する事務として行う業務であることから、民事事件又は行政事件に至る可能性がある法的問題を有する事案を対象としております。

階委員 民事事件あるいは行政事件に関するものということでした。

 そうすると、例えばですけれども、背任やセクハラの事件などで公務員が刑事訴追を免れるといった目的で皆さんのところに法律相談をした場合というのは、受け付けることはできないという理解でよろしいですか。

舘内政府参考人 先ほど申したとおりで、訟務局で実施しております予防司法支援とは、行政機関からの相談に対し法的問題について助言する制度でありますから、国家公務員個人からの照会には応じておりません。

 また、予防司法支援制度は、民事事件又は行政事件に至る可能性がある法的問題を有する事案を対象としており、刑事事件に関する照会は対象としておりません。したがいまして、各府省庁からの照会でありましても、特定の公務員の行為が犯罪に当たるかどうかといった刑事事件に関する照会は予防司法支援制度の対象にはならないと考えております。

階委員 個人からは受け付けない、刑事事件も受け付けない、こういうお話でしたけれども。

 ところで、公務員からセクハラ被害を受けた方がいらっしゃるとします。この人が国を相手に損害賠償請求を起こそう、国家賠償請求訴訟を起こそうとしている場合、これは、相手方は国でありますし、また国家賠償請求ですから、民事の特則なわけですね。こういったケースでは相談は受け付けられるのかどうか、お答えいただけますか。

舘内政府参考人 仮定の設例についてお答えすることは困難であることは御理解いただきたいと思うんですけれども、予防司法支援制度は行政機関からの相談に対して法的問題について助言する制度ですから、国家公務員個人からの照会には応じていないということは先ほど申したとおりでございます。

 その上で、一般論として申し上げることになりますけれども、予防司法支援制度ですけれども、民事事件又は行政事件に至る可能性がある法的問題を有する事案を対象としておりまして、国が国家賠償法上の責任を負うか否かを問うなどの形で照会を受けた場合、予防司法支援として法的観点から国家賠償法上の要件の該当性等につき回答するということはあり得ますけれども、刑事事件に関する問題を有する事案は対象としていないということでございます。

階委員 微妙な言い回しでしたけれども、事案が、セクハラ、あるいは何でもいいんですけれども、刑事事件にかかわるような場合であっても国賠訴訟が提起されるかもしれないといった場合に法的なアドバイスはできるということをおっしゃられたということでよろしいですよね。

舘内政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げますと、国家賠償法上の違法性の有無の判断と刑罰法規の解釈適用や刑事処罰の見通しなどに関する判断とは異なるものでございますから、府省庁の職員の不祥事などということに関しまして、当該職員が所属する行政機関が国家賠償法上の責任を負うか否かについて相談を受けて、これに回答しましても、当該職員の刑事処罰に関する相談に応じているということにはならないのではないかというふうに認識しております。

階委員 私は、かなり国賠法上の違法性の判断と刑事責任を負うかどうかの判断というのは重なる部分があると思いまして、事実上、刑事訴追の対象となる行為が国家賠償請求の対象となるよということで刑事事件の法律相談も受け付けることが、事実上ですけれども、できるようになると思うんですね。そうすると、対象が無限定になるのではないかというふうに思いますし、ここからは大臣にお聞きしたいんですけれども、仮にそうだとすると、公務員が不祥事を行った場合には、一般の人とは異なって、無料で有能な検事出身あるいは裁判官出身の法律家に法的アドバイスを受けることができるということですから、不公平ではないかというふうに思うんですね。

 これは余り今まで私も考えていなかった論点なんですけれども、ちょっとこの訟務機能、予防法務の機能の限界がどこにあるのかということで、私は、今言ったようなケースでは、やはり不祥事を起こした公務員のために法的アドバイスを授けるというのはおかしいと思うんですが、大臣の御見解をお願いします。

上川国務大臣 刑事訴追の対象となる行為、これが国家賠償請求訴訟の対象となるような場合について、先ほど委員からも幾つかのケースという形で御指摘がございまして、いろいろなケースが想定されるということでございますが、仮定の設例につきましてお答えすることについてはなかなか難しいということでございまして、御理解をいただきたいというふうに思います。

 そこで、御質問をいただきました、訟務局で今実施しております予防司法支援ということでございますが、これは先ほど局長からも答弁のとおり、各府省庁から受けた施策や業務に関する法的な問題の有無についての相談につき助言を行う業務ということでございまして、特定の公務員の個人に関する刑事事件の法律相談とは異なるものであるということでございます。その意味では、御指摘のようなことにはならないのではないかというふうに思っております。

 また、訟務局の実施している支援ということでございますが、実際、先ほど申し上げたとおり、各府省からのさまざまな法的問題の有無についての相談に対する助言業務ということでありまして、特定の公務員の個人から不祥事への対応につき照会を受けて助言するということもしておりません。

 ということで、この予防司法支援制度そのものは、行政のコンプライアンス、これを確保し、そして、ひいては国民の皆様の権利利益に資するものであるということでございまして、公務員個人の利益を守るということを目的とするものではないというふうに理解をしているところでございます。

 したがいまして、不公平との御指摘につきましても、当たらないものと考えております。

階委員 訟務局ができるときに、当時松島さんが法務大臣でいらっしゃったと思うんですけれども、何か、「法務省というのは、もともと法律のプロ、検察官や裁判官を長く経験した者たちを抱えておりますので、いわば政府の顧問弁護士として、」「訴訟や紛争を未然に防止する、そのような法的な支援、アドバイスも行ってまいりたい」、これは予算委員会での平成二十六年十月三日の答弁なんですけれども、そのようなことを言っていまして、かなり幅広く、いろいろなアドバイスができるのではないかというふうにも聞こえるわけですけれども、そうではないんだということで、例えばですけれども、例えばセクハラの問題について、当該省庁から国賠のリスクがあるかもしれないので相談に乗ってほしいと言われたとしても、これは全く訟務局の範疇ではないということで、これははねつけるということで、今の答弁はそういう趣旨だということでよろしいですか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申したとおりで、訟務局の予防司法支援につきましては、これは所掌の範囲で行っているということでございますので、その所掌の範囲を超えて予防司法支援制度を実施するということはないものと考えております。

階委員 それでは、そのように厳正に運用していただきたいと思います。

 きょうは、訟務局というのは、そういう案件ではなくて、本来やるべき案件についてまだ十分カバーしていないのではないかということについてもお尋ねしたいと思います。

 理財局長に来ていただいていますけれども、きょうお配りしている資料に、一枚目には、もうこれは公表されております森友学園事案についての法律相談の文書の一覧が掲げられております。

 一番から二十五番までありまして、一番問題になったのは、新たなごみが発見されたということで、損害賠償リスクがあるから価格算定を迅速にやらなくちゃいけないとか、あるいは自分たちでごみを処理する時間がないということで、あっという間に八億円という値引きが決まっている。そして、当初は貸付契約だったのが売払い契約に変えられているということで、急に方向が変わったわけですね。

 でも、この一覧を見ていただきますと、その前の、ごみが発見される前の貸付けについては一番から二十三番までありまして、ごみが発見された後どうしましょうかというのが二十四番です。

 二十四番の回答では、きょう、二ページ目以降に資料二ということでつけておりますけれども、どうしましょうかということに対して明確な答えがないわけですね、その法律相談に答えている部署は。

 例えば、この四ページ目の左側の、問一に対する回答の冒頭のところ、三行目ぐらいに、「事実関係が本書記載の事実関係のみでは不明であるため、明確な回答は困難である。」と。その下、ラインが引いてありますけれども、「国において撤去すべき義務があるのは、以下の図表における、本件報告書に含まれない廃棄物等であり、」云々かんぬんとありまして、以下の図表というのが、二枚めくっていただいたところにあります。

 六ページ目ですけれども、資料の六ページ目でフローチャートのようなものがあるわけですね。フローチャートの一番左側に行った場合には、損害賠償リスクはあるんだけれども、この段階では何とも言えませんよということになっています。

 そうした回答の最後に、五ページ目にちょっと戻っていただきますけれども、五ページ目の右側、上の方ですけれども、「具体的に、どのような経緯、内容で契約解除、損害賠償の請求をされるか不明な段階では、対処方法について回答することは不可能である。 また、賃借人の請求内容を法的に精査することは考えられるものの、本件を具体的にどのように進めるべきかについては、法令照会の趣旨に反するため、この点においても回答が困難である」といったことで、要は、まだこの段階では何とも言えないよということなんですが、なぜか、その次の法律相談、最後の二十五番目のところでは、売払いを前提として、売払いをした後、更に新たなごみが見つかった場合でも損害賠償を受けないようにしたいということで、そもそも貸付契約で損害賠償を受けるかどうかすら判明していないというのが二十四の結論なのに、なぜ売払いのことがもう決まっちゃっているのか。

 普通に考えれば、二十四を受けて、本当に貸付契約上、損害賠償のリスクが生じるのかどうか、これを精査して、そして最終的に、リスクがあるというのであれば、この貸付契約を維持するのか、あるいは別な契約方法を探るのかというのが通常の流れだと思うんです。

 私、この件、二月二十六日にも予算の分科会で聞きましたが、理財局長の答弁が、趣旨が私にはよくわかりませんでしたので、改めてこの点について御答弁を明確にお願いします。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 先般の予算委員会分科会での私の答弁が不十分であったという御指摘だと思います。まことに申しわけありません。

 その上でお答えを申し上げますが、今委員から丁寧にお話をいただきましたとおり、法律相談の二十四番目の文書の最後にフローチャートのようなものが示してあります。委員お話しいただきましたように、左側の一番下のところであればそういうことになるということなんですが、その二十四日の時点でこれは現場の部門が訪ねていて、それに対して三月三十一日だったか三十日だったかに返事をしている、法曹部門が返事をしているという状況です。

 要すれば、事実関係は、まだ三月二十四日までの時点の事実関係のみをもって相談しているという状況であります。恐らく、紙をつくったのは二十四日よりちょっと前だったのかもしれません。

 そういう状況のもとで、三月十四日の日に初めて現場確認をし、それから三月二十四日の日には実は先方と話をし、先方の弁護士さんから、なかなか航空局の方で全部処理ができないのであれば、時間が切迫しているので、瑕疵担保免除の特約をつけてもいいから買いたいという話があり、更に三月三十日それから四月五日と現場確認をして、その中で、今、事実関係が明らかにならないとわからないと委員おっしゃいました。そのとおりでございます。現場確認をする中で、事実認定をすれば、今のフローチャートでいう一番下の状況、要すれば、左側の一番下、要すれば、貸付合意書の五条で想定していたものを超える状況にあるというふうに現場の統括官の部門として判断をして、売買に至っているということでございます。

 委員のおっしゃっているとおり、本当であれば、その現状認識をもう一回確認をした上で、もう一回法律相談部門に相談をして、それで売買契約に至るということが本来ではないかという御趣旨ではないかと思いながらお尋ねをお聞きしておるんですが、翌年四月に開校が迫っているということも含め、あるいは、現場の状況を見て、現場の統括官とすれば、五条を超えていることは明確だというふうに判断をして、売買契約の方に進んでいったという状況だというふうに認識をしております。

 委員の御指摘はよく承知をした上で、そういうふうに認識をしてやったということだと思っております。

階委員 もう時間が来たので終わりますけれども、その前の段階が丁寧にやっているがゆえに、何かここだけ中間が省略されていきなり結論に行っているのが不自然でしようがないんですね。

 今、事実関係はちゃんと確認したということなんですが、であれば、その関係の文書を出してください。全く、この二十四と二十五の間の、どういう過程を経て売払いに行ったかというのが全くわからないんですね、この文書だけ見ている限り。その過程がわかる文書を提出していただきたいと思います。

 委員長、お取り計らい願えますか。

平口委員長 理事会で協議します。

階委員 ちょっと時間が来ましたので、法務大臣には、訟務局、やはりこういう問題について、もっと利用を促して、未然にそんなおかしなことが起きないように防ぐのが私は訟務局の本来の役割だと思います。

 以上です。ありがとうございました。

平口委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 きょうは、せんだっての裁判所職員定員法の議論にもつながるんですけれども、裁判官の適正配置、適正な人員の数、これについて最高裁を中心に確認をしていきたいと思っております。

 それでは、最高裁にお聞きしますけれども、裁判の充実、迅速化を図るために、合議率の目標というものが平成十三年の司法制度改革審議会で設定されましたね。では、この目標の数値と、そして今の現状についてお答えいただけますか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 平成十三年の司法制度改革審議会におきましては、地方裁判所の民事第一審訴訟事件の全既済事件に占める合議率の割合を一〇%にするという目標を掲げておりました。

 現状の合議率についても申し上げますと、現状、四・八%というところでございます。

黒岩委員 現状というのは平成二十九年ですよね。平成十三年時のこの審議会での議論のたたき台というのは、平成十二年、合議率が四・三%だった。ここから一〇%に上げるということですが、結局、十七年たっても〇・五%しか上がっていない。全く目標に達していないわけですけれども、これは一体何でこれほどまでに進まないんですかね。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 合議体による審理は、三人の裁判官が事件の内容につきまして徹底的に議論する合議の時間を確保する必要がありますし、手続におきましても、法廷での弁論や証拠調べに三人が同時に関与する必要がありますため、単独事件の処理よりも労力がかかるのが実情でございます。

 このような合議事件の割合が目標に達しないのはさまざまな要因があり、一概には申し上げられませんけれども、現状におきましては、裁判長や右陪席裁判官が担当する単独事件等の手持ち事件が多く係属しており、繁忙であることが主たる原因ではないかと考えられます。

黒岩委員 手持ち事件についてはこの後お聞きしますけれども、合議に付するか否か、付合議にするかどうかの判断主体というのは誰で、そしてその基準というものはどうなっているんですか。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 地方裁判所の民事第一審訴訟事件につきましては、裁判所法上、合議体で審理及び裁判をする旨の決定を合議体でした事件を合議体で取り扱うものとされておりますことから、付合議を判断する主体は、この決定をする合議体、具体的には三人の裁判官ということになります。つまり、三人の裁判官が、この事件は自分たちの合議体で審理、判断しましょうということを決定するというわけでございます。

 付合議を判断する基準につきましては、法律上具体的な定めはなく、個々の合議体において判断することとなりますけれども、一般的には、事件の類型、規模、判断が社会に与える影響などが考慮されているものと認識しております。

黒岩委員 要約しますと、判断する主体というのは、その合議体、裁判体であると。ただ、実務上は、A裁判官に配填された訴状を、A裁判官が、単独ではこれは困難だな、このように判断したときに、B、Cの裁判官と相談して、ではこれを合議しましょうか、こういうプロセスですよね。その困難であるということ自体の基準はないとおっしゃいました。そう考えますと、A裁判官、この人の判断、主観によって、付合議にするかどうかが決められるということですよ。

 それで、ちょっと質問をかえますけれども、それぞれの裁判官は、合議率一〇%にしていくというこの目標は御存じなんですかね。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 司法制度改革審議会におきまして裁判所が掲げました、委員御指摘の合議率一〇%の目標につきましては、裁判所が意見表明をした当時、広く公表されているものでありまして、各裁判官にも認識されているものと考えております。

 また、裁判官同士のさまざまな意見交換の場において、複雑困難事件などの合議体で審理すべき事件を適切に合議に付す必要について議論するなどしてきておりまして、これを通じまして合議率の向上を図ってまいりたいと考えているところでございます。

黒岩委員 私も最高裁に聞いたときに、当初は、ほとんどは知っているな、若い人は知らないかもしれないと言っていましたけれども、こんなんじゃ困るんですよ。大目標ですからね。

 それで、私の疑問点は、一〇%に上げるということは誰もが認識していて、なおかつ、先ほど申し上げたとおり、付合議にするか否かというのは、知っている、認識している裁判官の判断で行えるわけですよ。それでもなおかつ、今言った、予算的な制約だとか明確な制約があるとはなかなか思えないんですけれども、それでいて、では付合議にしよう、合議体をつくっていこう、こうはならないんですかね。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、裁判所としましても、これまでも裁判官を増員して人的体制を整え、合議率の向上を図ってきたところでございます。

 ただし、先ほど申し上げたとおりですが、裁判長や右陪席裁判官の担当する単独事件等の手持ち件数が多く、依然として繁忙であることなどのさまざまな要因により、なかなか合議率が大きく向上していないのではないかと考えられます。

黒岩委員 結局、手持ち件数が多いからだと。言いかえれば、一裁判官につき事件数が多い、そういうことを考えれば、裁判官の数が足りないということなのかもしれません。

 そこで、これは平成十三年の司法制度改革審議会で、これも同じく、この手持ち件数についても議論されているわけですよ。そして、当時、最高裁判所の事務総局が、では、どのくらいの手持ち件数を目標にするのかということで、当時の一人当たり百八十件から、大体四分の三に当たる百三十件から百四十件という目標を、これは最高裁の方から回答しているわけですよね。

 では、お聞きしますけれども、この百三十から百四十件へ手持ち件数を減らすという目標は、これは達成されているんですか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判官の一人当たりの手持ち件数、なかなかこれは一人の裁判官が複数の種類の事件を取り扱うということですので、具体的な数値というのは非常に困難なところなんですが、例えば、東京地裁の民事第一審訴訟事件を専門的に扱っている部の裁判官の手持ち事件数は、平成二十九年でいいますと百九十件ぐらいということになっておりまして、全国的に見て、今先生が御指摘になった百三十件から百四十件というところについては、いまだその目標というのは、目標というか、その数字を達成されていないというのが現状だろうというふうに考えております。

黒岩委員 私の問題意識は、もちろん達成されていないこと自体も問題なんですけれども、今おっしゃられたように、東京地裁の、これは全体の事件数の五分の一を占めるということで、確かに非常にウエートが大きいわけですけれども、その東京地裁の民事専門部で百九十件だからと、このような表現なんですけれども、私はこれも不思議でしようがないんです。東京地裁で百九十件とわかるんだったら、全国的にこの手持ち件数の統計をなぜとらないのか。そして、とっていないにもかかわらず、達成していないと言えるのか。この点をお聞かせください。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほどお答えいたしましたとおり、東京地裁の場合には、民事第一審訴訟というのを、もうそれだけをやっている裁判官というのが一定いるわけでございますので、そういう意味で、手持ち事件数を計算するというのは非常に簡単にできるということになります。

 一方、全国の場合でいいますと、裁判官は、民事事件でありますとか家事事件、あるいは刑事事件というのも、いろいろな種類の事件を一度にやっているという形になりますので、そうなってきたときに、民事だけの事件数というのでそれを計算しますと、なかなかそれは正確な実情をあらわすことにはならないということになっています。

 そういう意味で、先生が御指摘になった、なぜ今実現していないとわかるのかということだと思いますけれども、それにつきましては、厳密に今の数字がどれぐらいかというのは裁判所としてもよくわかっているところではないんですが、手持ち事件数というのは、その手持ち事件数を減らすことによって合議率をふやし、またそれぞれの事件の平均審理期間を短くしようという、いわば中間的な数字として取り上げているということで、我々としては、今、目標として置いているのは、まさに合議率であったり、一審の訴訟事件の平均審理期間というか、それを短くする、その目標について今どうなっているのかというのはきちっと統計をとって把握しているというところでございます。

黒岩委員 局長、ですから、私が申し上げているのは、まずはその合議率を高めてくださいよと。でも、ほとんど高まっていない。その理由が、手持ち件数が多いからだとおっしゃった。そして、手持ち件数についても、平成十三年に、四分の三まで減らしましょうという数値目標が出ているわけですよ。逆に言えば、四分の三まで減れば合議率も高まるんだと。これは、合議率を高めるための手持ち件数がどのくらいか、こういうことで最高裁事務総局が答えているわけですから。

 そうなると、この手持ち件数それ自体もしっかりと数値を把握するのは私は至極当然のことだと思うわけですよ。

 その数値が、把握もしていないのに、達成していないと言っているだけでは、ではどうやって。今言ったように、手持ち件数を減らすことは合議率を高めるための手段なんですよ。この手段をしっかりと数値的に把握しなくて、どうしてもともとの目標、目的が達成できるのか、こういう認識を持っていただきたいんですよね。

 聞くところによると、確かに、東京地裁は百九十件だということです。ただ、地域によっては、例えば旭川なんかだと百件ぐらいかなとか、こういう裁判官の実情も届いてくるわけですよ。

 それで、先ほどから統計が難しい難しいと言いますけれども、やはりしっかりとした統計をとらなきゃいけないと思いますよ。

 とり方は、いいんですよ、基準日を決めて、例えば年度末だったら何年の三月三十一日、毎日やれと言っているんじゃない、その時点で各裁判官に、自分の手持ち事件は幾つなのと。これはわかりますからね。今言った民事、刑事、家事と分けて、民事は幾つなのと。それを聞いて、最高裁の方で集約して、その数を裁判官の数で割れば、手持ち件数なんて簡単に出るじゃないですか。何でこういった作業をやらないんですか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今先生御指摘のあったような方法というのは一つのやり方だとは思いますけれども、最後に裁判官の頭数で割るという形になりますけれども、そうなりますと、結局は一人の裁判官がいろいろな事件の種類をやっているということになりますので、実際上、民事事件については、ある裁判官が例えば今百件ということでありますと百件ぐらいということですが、同時に、例えば執行事件であります、破産事件であります、あるいはほかの事件もやっているということになりますと、それが全体としてその人がやっている事件という形になるわけですから、そういう形でとって、一つの数字としては、確かに計算しようと思ったら出るということはそのとおりだと思いますけれども、その数字を出して、では当時の目標の達成率ということがそこでわかってくるかというと、そういうことにはならないのではないか。

 ただ、先生が言われますように、一つの目標というか、目標を達成するための間の中間項としての手持ち事件数、これについては、それだけが合議になっていない、合議率が上がらない理由とは、先ほどからも答弁させていただいているわけではございません。さまざまな理由がある中で、一つの理由としてはそれが大きいだろうと。また、ほかに、事件の複雑困難化といったような事情もあるんだろうと思います。

 いずれにいたしましても、なぜ今まだ目標が十分達成できていないのか、一〇%ということがまだ四・八%ということですし、平均審理期間についてもまだ目標を達成していない、この原因については、引き続き、いろいろな統計数を駆使して検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

黒岩委員 私が申し上げたいのは、裁判所職員の定員法も、これは司法行政の政策ですからね。今、政策というものは、それの立案する、立法事実もそうですし、その後の進捗状況も、なるべく数値目標を立てながら検証していくという、これが非常に求められているわけですよ。その点において、これは先ほどの定員法の議論でも私も申し上げました。先ほどおっしゃる複雑困難化というものだって、なるべく数値にあらわそうということで、審理期間十二カ月以上とか、なるべく数値で出してきているじゃないですか。

 それは、今申し上げた平成十三年に目標値を立てて、それからもう十七年もたとうとしているにもかかわらず、相も変わらず、その統計的なものが、手持ち件数が多い多い多いと言っているけれども、では幾つなのと言われたときに数値が出てこないというのが現状でしょう。私、もう少し、最高裁、司法行政も、この数値というものに神経を使っていただきたい、こういう思いなんですよ。

 先ほど私が提案したような、では一人一人の裁判官の手持ち件数を調べたらと。局長もいろいろな理由はおっしゃっていましたけれども、一つの目算では数字は出てくるはずですよ、東京地裁だけじゃなくて。何で調べないのかと言ったら、最初は、手間がかかるからという事務局の答えでしたけれども、若干手間がかかろうが、これは大きな大きな司法制度改革審議会の目標値なわけですから、それはしっかりと把握をしていただきたい。

 まず、これは、合議率に対してと手持ち件数についての私からの問題提起だということで受けとめていただきたいと思います。

 では、二番目。先ほどもおっしゃられていたこの審理期間の短縮というものも、これも平成十三年の審議会では目標値が立てられている。では、この目標数値と当時の現状、そして今どういう状況になっているか、目標が達成されているのか否かも含めてお答えいただけますか。

中村最高裁判所長官代理者 平成十三年の司法制度改革審議会当時の目標、まずそちらについて申し上げますと、本格的に争われる事件を念頭に、人証調べをした上で判決により終局する事件の審理期間をおおむね十二カ月にするというような目標を考えていたところでございます。(黒岩委員「現状は」と呼ぶ)

平田最高裁判所長官代理者 失礼しました。現状は私の方から申し上げます。

 審理期間の現状につきましては、平成二十九年の地方裁判所の民事第一審訴訟事件の平均審理期間は八・七カ月ということになっておりますが、民事第一審訴訟事件のうち、争いがある事件と言えます人証調べを行って判決で終局した事件の平均審理期間は二十・七カ月となっておりまして、平成十二年から減少していない状況にあります。

 委員から御指摘のあったところには至っていないというふうに言わざるを得ないところでございます。

黒岩委員 言い方もなんですが、局長、その八・七カ月というのは比較の対象の数字じゃありませんからね。そういう惑わすようなことを言ってもらっちゃ困るんですよ。平均十二カ月以内というのは、あくまでも既に判決が終わったものについて比べましょうと。前提条件が違うことを言ってもらったら困りますよ。一言で言えば二十・七カ月とだけ答えてもらえればいいんですよ。

 実際には、平成十二年の時点で二十・三カ月ですから、これはむしろ、十七年間で、減っていないどころか期間が延びているという現状ですよ。

 これは大臣にも聞いていていただきたいですけれども、毎年毎年、定員法のときに、この合議率、審理期間、いつもこれは議論するんですよ。それで、縮まらない、縮まらないと言っている。だったら、どうにかして縮めようということに努力をしなければいけない。

 そこで、これも改めて確認しますけれども、毎年毎年この議論をして、全く審理期間が、これだけ短縮されないのは何でですか。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所としましては、これまで、裁判官の増員をお認めいただき、審理の充実強化に加えまして、審理期間の短縮にも取り組んできているところではございますが、昨今の社会経済情勢の変化や国民の権利意識の高まりなどを背景に、個々の事件が複雑困難化するとともに、専門的知見を要する事件や非典型的で複雑な事件が増加していることが平均審理期間が短縮していない要因の一つであると考えております。

 裁判所としましては、裁判官を増員し、その手持ち件数の減少を図りながら、複雑困難事件等の合議体で審理すべき事件を適切に合議に付して、審理の充実強化を図ることなどによって、合理的期間内での適正な裁判を目指していきたいと考えております。

黒岩委員 毎年毎年、この議論をすると、最後は複雑困難化ですよ。十七年前から複雑困難化、毎年毎年、複雑困難化。今も昔も複雑困難化は進んでいるわけですよ。その中でどうやって対応していくのか、こういう議論を今まで我々もしてきたけれども、結果が全く出せていない。

 では、これも平成十三年の議論で、司法制度改革審議会で、この合議率の一〇%目標と、そして審理期間十二カ月への短縮、この目標を達成するために増員する、必要な裁判官の数は何人だと示されましたか。お答えください。

中村最高裁判所長官代理者 平成十三年当時の説明ということでありますと、四百五十人プラスアルファというところで多分答えさせていただいていると思います。

 その時点は、さまざまな前提条件ということがありましたけれども、平成十三年の当時の司法制度改革審議会のプレゼンテーションにおきましては、先ほど申し上げました目標を達成するためにその人数が必要であるという試算を示させていただいたというところでございます。

黒岩委員 では、その四百五十人の増加というのは実現したんですか。

中村最高裁判所長官代理者 今、正確な数字は覚えておりませんが、平成十三年以降の判事の増員ということであれば、この四百五十人をもはるかに超える増員、六百何十人だったと思います、ちょっと今正確には覚えておりませんが、四百五十人は超えているということであります。

 ただ、その間に、平成二十一年に裁判員制度というようなのも新しく入って、いろいろな制度改革がありましたものですから、その制度改革に対応する人員も必要ということで、増員はし続けていったということでございます。

黒岩委員 端的に答えてください。

 平成二十三年の時点で民事訴訟の裁判官は四百五十人も純増しているわけですよ。達成していますよ。裁判員裁判の制度のことをおっしゃいましたけれども、それの対応のために更に百五十人もふやしているわけですから、それを言いわけにしないでください。純粋な民事訴訟の裁判官で四百五十人は平成二十三年で達成しているわけですよ。でも、審理期間の短縮も合議率の向上も全く達成されていない。

 それで、また改めて仕切り直ししたわけですね。平成二十四年の法改正で、この審議で、また四百五十人達成した、では更に増員の必要は何人だということが示されたのか。そして現状、その平成二十四年から今何人ふえているのか、これもお聞かせください。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、平成二十四年の定員法の審議の際におきまして、当時の事件動向を踏まえますと、更に四百人規模の増員が必要というふうに御説明させていただいたところでございます。

 平成二十四年から二十九年まで、ことしのやつは入っていないということになりますが、それまでの増員数ということでいえば二百八人というところでございます。

黒岩委員 では、逆の聞き方をしますけれども、二百八人ということは、あと百九十二人ふえれば目標を達成できるんですね。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 依然、合議率や審理期間の目標が達成できていないのは事実でございまして、当時御説明した増員が実現すればその目標が確実に達成できるということは断言できないというのは、申しわけありませんが、そういう状況でございます。

黒岩委員 断言できない、それはそれなりに理解しますが、本当に何のための目標なんだか。だって、合議率そして審理期間の短縮、この目標を達成するために必要な人員は四百五十人と言って、それが達成したにもかかわらず、全く本来の目的である合議率も審理期間も達成されていない。ありがたくも、更に四百人をふやそうということになって、そしてもう二百八人もふえている。では、あと百九十二人で到達できるんですかと言うと、そんなことは断言できないと。

 大臣、お聞きしますよ。これはもう逃げ水みたいなものです、逃げ水。追っても追っても追いつかない。いつまでたっても、これだけふやす、これだけふやす、道半ば、道半ば、道半ば。だって、合議率でいうと、十七年で〇・五%しか上がっていないんですよ。これは、あと五%上げるのに、単純計算すると百七十年かかっちゃいますよ。こんな議論を毎年定員法でやっているのかということになるんですよね。

 もちろん増員については司法行政、最高裁がつかさどるわけですけれども、私も、やはり法務大臣としても、それは最高裁の判断を尊重するということになることはわかっていますけれども、一定の方向性というもの、今後の対策も示していただきたいんですよ。この所管委員会で毎年これを議論しているわけですから。こんな逃げ水みたいな政策、どこにもありませんよ。こんなことが許されているのは、司法行政の、この世界だけですよ。

 大臣、ちょっと御見解を聞かせてください、大枠な方針ぐらい、大臣の所見をお答えいただきたいと思います。

上川国務大臣 裁判官を含めまして、裁判所の人的な体制の充実ということについては、司法権を担う裁判所が事件を適正かつ迅速に処理をするという意味で、大変不可欠な要素でございます。

 委員からも先取りして御指摘あったところではございますが、裁判官の定員も含めまして、今後の裁判所の人的体制の整備のあり方につきまして、これは、事件動向等、諸事情を総合的に考慮した上で、まずは最高裁判所において適正に判断されるべき性質のものであるということでございます。

 今、過去の委員からの御指摘も含めまして、きょうもさまざまな御指摘をいただいたということでございますので、そのようなことにつきましても十分に考慮した上で、まずは最高裁判所におきまして適切に判断されるべき性質のものであるということでございます。

 法務省といたしましては、最高裁判所において判断されるところを踏まえまして、裁判所関連の法律を所管する立場から、この裁判所職員定員法を含めまして引き続き適切に対応してまいりたいというふうに思います。

黒岩委員 きのう、法務省とのレクでも、こういう方針にすべきと言えば、これは確かに司法権に対して指示、命令になっちゃうので、こういう方向であるべきと思われるぐらいまで答えてくださいと言ったら、オーケーと言っていたんだけれども、大臣、そこまで余り踏み込まなかったので私は非常に不満なんですが。

 ただ、とにかく最高裁も、これこれこういう理由だからということを綿密に、その要因を挙げて増員を要求すべきだし、増員を要求して、実際増員したのに達成できないなんて言ったら、要求する資格もないと私は思うし、そのぐらいの覚悟で司法行政に当たっていただきたいことをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 上川大臣は、一週間前、四月六日の当委員会一般質疑の際に、公文書に関する問題が相次いでおりましたので、私の質問に対して、初代文書管理担当大臣として、こうおっしゃっていました。国民の皆様から信頼が得られるような丁寧な説明を行っていく必要があると答弁されております。

 そのとおりだと思うんですが、その後も、この一週間でもいろいろな新しい動きがありました。一層丁寧な説明が私は求められているというふうに思うんです。

 ところが、十一日行われました予算委員会集中質疑、先ほど松田委員からも御指摘ありましたけれども、安倍総理は聞かれていないことを長々と答弁し、しかもそれを繰り返す。さらには、総理の秘書官が、質問者にやじを飛ばして厳重注意を受けるということまで起きております。これのどこが丁寧な説明なのかというふうに思います。これでは大臣がおっしゃった国民の信頼は到底得られないと思うんですね。与党の中からも、安倍総理の道義的責任、これを問う声が出ております。

 愛媛県の文書につきまして、先ほど来質疑されておりますが、私的メモとかいう主張もありますけれども、備忘録、いわゆる備忘メモであっても公文書に当たり得る、そういう場合があるということは過去判例でも示されております。

 ちょっと時間の関係で、私の方で紹介させていただきたいんですが、二〇〇七年十二月二十五日、最高裁の第三小法廷で、警察官が作成した備忘メモ、備忘録が公文書に当たる、個人的なメモではないという判示が行われております。

    〔委員長退席、田所委員長代理着席〕

 農水省からも出てきたと先ほど答弁されておりましたけれども、この文書、私たちも独自に入手をいたしました。

 文書の一番左上には「報告・伺」という文字が書かれてあります。つまり、これは単なる備忘録ではなくて、官邸の面談結果の報告であって、そして、国家戦略特区の申請を進めていいでしょうかということを上司にお伺いする、県知事にお伺いするための文書、だから「報告・伺」と書いてあるわけで、個人のメモとは質が違うというふうに思います。しかも、その後、この文書に書いてあるとおりに事態は推移したということであります。

 もう一点だけ、丁寧な説明という点で、私、十一日、集中質疑で驚いたことがありました。先ほどいらっしゃった太田理財局長や麻生財務大臣が、中村総務課長が中身を読まずに決裁印を押したという答弁をした点であります。

 この集中審議というのは、私も予算委員会の理事格をやらせていただいていますので、この経緯も含めて、与野党が大変苦労して行われたものであります。そして、テーマは一点、公文書管理、これに絞った集中質疑でありました。

 そのまさに公文書管理をテーマにした集中質疑の最中に、公文書の中身を見ずに判こを押したと公然と答弁し、それを大臣も擁護する。これは本当に、公文書なんてどうでもいいんだと言わんばかりの姿勢であって、予算委員会の審議、ひいては国会、国民を冒涜するものだというふうに思います。

 大臣にお聞きしたいんですが、何でこういうことが起きているのか。

 考えますと、森友文書というのは、安倍官邸や昭恵夫人の関与にかかわる問題。加計学園の文書というのは、首相案件かどうかにかかわる問題。自衛隊の日報というのは、当時、イラクや南スーダンで戦闘行為があったのかということにかかわります。これは、当時の稲田防衛大臣がいみじくも答弁したように、憲法九条にかかわってくるという問題であります。厚労省の裁量労働制の問題あるいは野村不動産の隠蔽の問題は、安倍総理が目玉と位置づけた働き方改革にかかわる問題。つまり、全てこれらの問題は、安倍総理、安倍政権が根っこにあるという問題であります。

 大臣にお聞きしたいんですけれども、大臣が苦労してつくられた公文書管理法、この運用とか、あるいは公文書のあり方一般という問題をはるかに超えて、政権にとって邪魔な文書というのはもう改ざんしちゃえばいいんだ、あるいはなかったことにすればいい、仮に本物が出てきたら、記憶にないと否定してしまえばいい。こういう、国会も国民も、あるいは憲法も民主主義も軽視し切った安倍政権の姿勢こそが、この問題が相次いで起きているし、しかも、全く収束の気配すら見えない、こういう理由だと、大臣、思われませんか。

    〔田所委員長代理退席、委員長着席〕

上川国務大臣 行政文書、公文書の重要性につきましては、これは大変大事な問題でございます。

 健全な民主主義、この根幹を支える国民共有の知的資源でございますし、これは主権者である国民が主体的に利用し得るものでございます。行政機関が、行政文書の適正な作成、そして整理、保存等を通じまして、行政そのものが適切かつ効率的に運営されるようにするとともに、国の諸活動につきまして現在及び将来の国民に説明していく責務があるというふうに承知をしております。

 公文書のあるべき姿が揺らいでいる現在でございます。公文書や行政全体に対する国民の皆様の信頼を確保すること、これは極めて重要なことであると考えております。

 各省庁ごとの特性を踏まえ、絶えず点検を実施し、そして公文書管理のあり方、そしてその運用の実際、こういったことについて不断の見直しをするなどして、行政文書の管理を適切に行うことが今まさに非常に重要であるというふうに考えております。

藤野委員 公文書をここまでないがしろにした政権というのは、これまでなかったと思います。その政権が、今次々と出てきている公文書によって追い詰められております。私たちは、引き続き、この問題を徹底的に追及したいと思っております。

 そして次に、いわゆる冤罪問題、これについてお聞きしたいんですが、ことしは実は、先日取り上げさせていただいた鹿児島県大崎事件、この冤罪事件のほかにも、熊本県の松橋事件、そして滋賀県の湖東記念病院人工呼吸器事件、この三つの事件が同時に最高裁に係属されている、そういう年であります。三つの再審が同時に最高裁というのは、これは恐らく我が国の刑事司法史上初めての事態ではないか。さらに、これ以外にも、袴田事件、これはこの春にも東京高裁が再審開始の可否を判断する。いずれの事件でも、早急に無罪の司法判断を確定することを強く求めたいと思っております。

 大臣に確認したいんですが、こうした冤罪、これは何としても防がなければならない、これは大臣も同じ認識だということでよろしいでしょうか。

上川国務大臣 犯人でない人を処罰をするということは、あってはならないことだというふうに認識しております。

藤野委員 冤罪というのは、誤って罪に問われた無実の方やその家族が築いてこられた人生、これを根底から破壊するものであります。また、冤罪というのは、真犯人が罪を逃れるというものでもありまして、これは当該犯罪の被害者の方、あるいはその家族、御遺族にとってやり場のない怒りと悲しみを更に深めることにつながっていく問題でもあります。しかも、犯人が捕まっていないわけですから、社会不安も増幅しかねない。

 この間、裁判員裁判制度も始まっておりまして、多くの国民が裁判に直接かかわる状況であります。国民が誤った裁判あるいは冤罪の発生に加担しかねない、こういう状況も生まれている。

 ですから、冤罪を防止するというのは、さまざまな、あらゆる側面から見て、私は憲法上の緊急課題だというふうに思っております。

 ところが、実際はどうかといいますと、配付資料一と二を見ていただきたいんですが、配付資料の一は、日弁連の冤罪究明第三者機関ワーキンググループが作成した冤罪事件の一覧表であります。一九一〇年代から二〇〇〇年代まで百六十件以上あるんですが、これは日弁連自身がまだ氷山の一角と自分たちがピックアップしたもので、これ以外にもあるかもしれないと言っております。配付資料の二は、同じく日弁連の資料で、主な再審無罪がかち取られた事例であります。

 これだけの冤罪、あるいはこれだけの無罪事例が積み上がってきている。この一つ一つが、まさに筆舌に尽くしがたい、痛苦の経験であります。私たちはここから本当に学ばないといけない、このように思っております。

 冤罪を生む要因の一つとして、自白あるいはその自白を生む取調べの問題点というのが指摘されております。

 配付資料の三を見ていただきますと、これは愛媛県警が二〇〇一年当時に使っていた被疑者取調べ要領という資料なんですね。

 線を引いたところだけ紹介しますと、「粘りと執念を持って「絶対に落とす」という気迫が必要」「調べ官の「絶対に落とす」という、自信と執念に満ちた気迫が必要である」「調べ室に入ったら自供させるまで出るな。」「被疑者は、できる限り調べ室に出せ」「否認被疑者は朝から晩まで調べ室に出して調べよ。(被疑者を弱らせる意味もある)」、こういう要領、マニュアルなんですね。

 警察庁にお聞きしますが、これは愛媛県警が作成し、実際に使っていたものですね。

大賀政府参考人 御指摘の資料につきましては、平成十八年に愛媛県警察本部の捜査員のパソコンから外部に流出をした捜査資料の中に含まれていたものだと承知をいたしております。

 当時の愛媛県警察の調査によりますと、御指摘の資料は、平成八年から平成十三年ころまでの間に、県警の一人の捜査員が、警察学校において取調べについて講義をするに当たって、みずからの体験を伝えるために、取調べに対する考え方等の私見を記載したメモとして、みずからの責任で作成し使用をしていたというものであって、この捜査員が退職をする際に、この流出をさせてしまった警察官が参考とするために譲り受けたものであったということでございます。

 愛媛県警においては、作成者に真意を聴取したところ、時間をかけて被疑者のかたくなな心を開かせることの重要性を伝えようとしたということでございまして、長時間にわたる取調べ等、そういった犯罪捜査規範の趣旨に反する取調べ手法を肯定する趣旨ではないということが確認されたと承知をしております。

 ただし、記載内容の一部につきましては、取調べ手法について誤解を招く記述であったということは認識をしておりまして、警察においては、こういった取調べの適正の確保についてはしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

藤野委員 要するに、警察学校で使っていた資料であります。しかも、その捜査員が警察を退官したときに後輩に引き継いだというものなんですね。

 大臣、要するに、こういう中身が警察学校で教えられ、引き継がれていた。ですから、もう個々人の問題じゃないんですね。取調べだけでなくて、警察、検察、司法、つまり刑事司法における各段階に制度的、構造的な問題がある、だから冤罪が後を絶たないわけであります。

 飛行機や鉄道で事故が起きた場合には、いわゆる事故調査委員会が立ち上がって、原因を徹底的に究明するわけですね。東電の福島第一原発事故でも、国会に事故調査委員会が立ち上げられ、当時のわかる範囲で原因を究明し、七つの提言を行っております。

 大臣にお聞きしたいんですが、やはり冤罪についても、なぜそれが生まれるのか、この日本において。先ほど見たような膨大な数の冤罪事件がなぜ起きるのか、この検証はいまだ行われておりません。大臣、しっかりした原因の検証がなければ実効性ある法制度の改善にはつながらないんじゃないでしょうか。

上川国務大臣 犯人でない方を処罰するような事態がどのような原因で生じるのかということについて、いろいろな原因があろうかと思いますので、一概に申し上げることはできないわけでありますが、過去の無罪事件の検討などにおきましては、客観証拠の吟味が不十分であったこと、また自白の信用性に対する吟味、検討が不十分であったことなどの指摘がなされてきたというふうに思っております。

 犯人でない方を処罰しないようにするためには、徹底した客観証拠の収集、分析に努めること、また消極証拠を十分に検討するなどした、基本に忠実な捜査、公判の適正な遂行に努めることが必要でありまして、一つ一つの事案について、警察当局や検察当局がそういった姿勢で捜査、公判に臨むことにより、犯人でない方を処罰するといった事態を生じさせないようにしていかなければならないというふうに思っております。

 検察におきましては、いわゆる厚生労働省の元局長の無罪事件を踏まえまして、検察の基本規程としての「検察の理念」の策定など、検察改革として多くの改革策を講じてきたものと承知をしております。

 犯人でない人を処罰するなどということが生じないよう、今後におきましても、基本に忠実な捜査、公判の適正な遂行を不断に続けていくとともに、国民の皆様の信頼に応える刑事司法の実現のための検察改革の取組を引き続き実施していくことが重要というふうに考えております。

藤野委員 いや、基本に忠実にやっていて、こういう事態が起きているわけであります。

 今、幾つか何か調査がやられているようなお話がありましたけれども、しかし、今まで、例えば志布志事件とか氷見事件、足利事件、こういうのが起きますと、確かに検察が調査をしたり警察が報告書を出したりするんですが、極めて短期間に出したものもありますし、中身も、結局、自白のこともお話しされましたが、なぜ無実の人がやったという自白をしたのかという、この肝心かなめのところには全く答えていないわけですね。

 そういう意味で、やはり当事者がやる調査なり報告というのでは、全く冤罪が起きる原因というのは明らかにならないというのがこの間の経過であります。

 研究者の方や弁護士会が行っている誤判の研究があります。大変貴重な成果であります。最高裁も、ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査を行っておりまして、これは一つ画期的な側面もあった、不十分さも指摘されておりますが。それぞれやられているんですが、しかし、私が御質問しているのは、提起していますのは、日本においてなぜ冤罪が生まれたのか、この検証を組織のまさに使命として、それを中心的に行う公的な機関が必要ではないか、こういう点であります。

 ですから、この点で、私は、それぞれの事件の当事者である警察がやった調査、こういったことでは問題は解決しないわけですから、ぜひここに踏み込んでいただきたい。

 配付資料の四、これは日弁連が二〇一一年一月二十日に出した「えん罪原因調査究明委員会の設置を求める意見書」であります。

 ここでも強調しておりますけれども、「繰り返されるえん罪は、それが捜査担当者や担当裁判官個人の問題というよりも、捜査過程及び刑事裁判のシステムの問題であることを示している。」と。ですから、そのちょっと下の方に、「えん罪を防止するためには、えん罪防止のためのシステムを確立するためには、これまでのような内部検証ではない、えん罪原因を徹底的に究明する、強力な権限を持った第三者機関を設置することが全国民的な課題である。」こういうふうに指摘をされております。

 大臣、私、こうした外部の、内部の検証ではない組織によって冤罪原因を検証する、これが必要ではないかと思うんですが、いかがですか。

上川国務大臣 委員御指摘の、個別の事件につきましていわゆる第三者機関が裁判所による誤判の原因究明等をする制度につきましては、憲法上認められた裁判官の職権行使の独立性の観点から問題がないかどうか、慎重な検討が必要であるというふうに考えます。

 また、刑事事件の記録、証拠には、関係者の名誉、プライバシーにかかわる情報が多々含まれておりまして、誤判原因究明の過程でこれらを第三者が使用することは、関係者の名誉、プライバシーを侵害するおそれもあるということでございまして、御指摘のような誤判の原因究明等のための第三者機関の設置につきましては慎重な考慮を要するものというふうに考えております。

藤野委員 大臣、今大臣がおっしゃられた司法権の独立の問題、あるいは名誉やプライバシーの問題、こういったものは、世界では、まさにそこを踏まえた上でも、なおかつ冤罪の原因を究明しなければならないと。なぜなら、先ほど言ったように、これはあらゆる当事者にとってまさに緊急の大問題だからであります。

 九州の再審弁護団連絡会が出版された「緊急提言!刑事再審法改正と国会の責任」という本があるんですが、この中で、世界の流れというか、世界の各国の動きが紹介されております。

 その特徴としましては、やはりそれぞれの国で起きた重大な冤罪事件を契機にして始まっているということ、そしてもう一つの特徴は、それぞれの国で違いはあるんですよ、いろいろ司法制度も違いますので違いはあるんですが、結局その冤罪がなぜ起きたのかということを徹底的に検証、分析しているということであります。それがその後の法制度などの改善に各国でつながっていると。

 例えば、アメリカでは、アメリカは州ごとに多様な救済制度があるんですけれども、ノースカロライナ州というところでは、一九八四年七月に起きた二つのレイプ事件を一つの契機としまして、改革の動きが進みました。

 二〇〇二年の十一月に、当時の州の最高裁長官だったベバリー・レイク氏が最高裁長官諮問委員会というのを立ち上げて、原因究明に乗り出した。この委員会の構成員、これは判事、検事、弁護士、警察、それに加えまして法学教授、被害者団体、冤罪被害者支援のNPOなど、多様な関係者が参加した。会議は全て公開で実施をされております。

 二年の審議を経て勧告を発表し、その勧告に基づいてその後いろいろな法改正が行われる。例えば、重大事件での検察側の手持ち証拠の全面開示、あるいは冤罪を審査する委員会の創設、あるいは目撃証言の改革法、取調べ録画の義務化の法律、DNAなど科学的生体証拠の保存と被告人からのアクセス保障権、こういう法律などが制定されております。

 法務省にお聞きしたいんですが、こうした誤判の原因を調査する、それだけを使命とした、まさにそれだけをミッションとした委員会や機関というのは全米で幾つ設置されているでしょうか。

辻政府参考人 お尋ねの点につきましては、これを紹介した文献があることは承知してございますけれども、法務当局といたしまして調査をしたことはございませんで、当局としては把握してございません。

藤野委員 法務省として調査したことがないというのは私はけしからぬと思うんですね。

 配付資料の五を見ていただきますと、これは、ノースカロライナ大学に設置されたイノセンスプロジェクトという団体の資料を、成城大学の指宿信教授が補完調査してまとめたものであります。これによりますと、全米十一州で、二〇一四年段階ですが、こうした誤判調査を目的とした委員会が設立されている。

 フランスでは、フランス革命直後は再審制度そのものがなかったそうでありますが、その後も極めて限定的に再審制度というのは運用されてきた。しかし、その後、さまざまな重大な冤罪事件が続いて、二〇一四年、国会議員が動いたわけですね。国会に刑事有罪判決の再審に関する調査議員団がつくられまして、報告書を発表しております。

 法務省にお聞きします。この報告書の概要を説明していただけますか。

辻政府参考人 お尋ねの点につきましては、やはり、これを紹介した文献があることは承知してございますが、法務当局として直接把握はしてございません。

藤野委員 ですから、これは、今、再審やあるいは冤罪をめぐってどこまで世界が悩み、到達しているのかということをやはり踏まえなければならないというふうに思います。

 配付資料の六にはそのフランスの状況を紹介しております。ちょっと時間の関係で資料の御紹介にとどめさせていただきたいと思います。

 カナダもこれは大変悩ましい中で貴重な経験をつくり出しております。カナダでは一九七一年にマーシャル事件という冤罪判決事件が起きました。無実の罪で十一年間投獄された後、真犯人があらわれて無罪になったわけであります。

 カナダでは、その事件が起きた州にドナルド・マーシャル・ジュニア訴追に関する王立委員会という特別委員会が設置をされまして、二年にわたる調査の末、一九八九年に報告書を発表しております。この報告書は千五百ページを超える膨大なものでありまして、九十三日間に及ぶ聴聞、百十三人の証人喚問、これを経て八十を超える立法提案や政策提案を行っております。これを受けて、九三年には、カナダ最高裁が検察官に対して証拠の事前開示を義務化するなどの大きな変化につながってきております。

 大臣に重ねて聞きたいんですけれども、カナダはたった一つの冤罪事件を契機にここまでやっているんですね。他方、日本は先ほど、あれぐらいの冤罪事件が起きているし、死刑に関する再審無罪判決でも四件も起きております。にもかかわらず、本格的な冤罪の調査というのは行われていない。これはやはり必要じゃないでしょうか、この冤罪の調査。

上川国務大臣 冤罪、犯人でない方を処罰するということについては、あってはならないことだというふうに考えております。

 検察当局におきましても、先ほど申し上げましたとおり、検察改革について不断に行っているところでございまして、無罪判決や再審無罪判決があった場合には、当該事件に関しまして、捜査、公判活動の問題点について検討をするほか、捜査、公判に関し反省すべき点について、必要に応じ、検察庁内で勉強会を開催したり、検察官が集まる各種会議の場におきましても事例報告などをいたしまして、検察官の間でこの問題につきましての意識を共有して、反省すべき点につきましては反省し、また、今後の捜査、公判の教訓としているものでございます。

 今後も、そのような方向で、適切な形で捜査、公判上の問題点、その原因、背景等を分析、検討いたしまして、他の事件にもその結果を生かしていくということで努めてまいりたいと思います。

 先ほど、第三者機関の設置ということにつきましての御提言があったところでございますが、ここにつきましては、憲法上認められた裁判官の職権行使の独立性の観点から問題がないかどうか、慎重な検討が必要でございますし、また、刑事事件の記録、証拠には関係者の名誉、プライバシーにかかわる情報が含まれておりまして、誤判原因究明の過程でこれらを第三者が使用することは、関係者の名誉、プライバシーを侵害するおそれもあるということでございますので、御指摘のような誤判の原因究明等のための第三者機関の設置につきましては慎重な考慮を要するものというふうに考えております。

藤野委員 そうした側面は慎重に検討していただいたらいいんですが、しかし一方で、冤罪が日本では繰り返されている、この原因は何なのか。これについてしっかりと研究がないまま個々の制度を幾ら議論しても、それが本当に冤罪をなくすことにつながるのかわからないと思うんですね。

 カナダでは、実はやはり、いろいろそういう、大臣が今おっしゃったようなことも含めて、悩みもあったわけですね。反発もあったそうであります。当時のカナダの司法大臣は、免責特権を盾に聴聞会の出席を拒否した。カナダの上訴裁判所の裁判官たちは、委員会による喚問は違憲だということで最高裁まで争って、結局、最高裁は、その裁判官たちの肩を持ったといいますか、そっちの方で判決を出したんですけれども。

 いずれにしろ、そういう本当に大きな抵抗がある中でこの委員会が行われて、先ほど言ったような提案をし、しかし、その提案をしたときは、実は、その瞬間は、カナダの司法大臣は、いや、現在のカナダの制度は非常にうまく機能していると一蹴したそうであります。しかし、その後の四年、五年たつ中で、先ほど言ったように、最高裁が検察の全面証拠開示を認めるなどの変化をつくり、今や、この同委員会の勧告に基づく制度というのはカナダの刑事司法において欠かせない制度となっている。

 ですから、最後になりますけれども、この世界の経験というのは、冤罪を生まないように制度を改善していく上でやはり原因の究明は必要だということを示唆しているというふうに思います。

 この問題は、刑事司法だけでなく、立法府も問われているというふうに思います。この点で、国会、議員も、冤罪事件の検証、これに向けて知恵と力を尽くす、このことを呼びかけて、質問を終わります。

平口委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 きょうは、ことしの四月八日、松山刑務所から逃走をした事案についてお聞きをしたいと思います。既に、本日、松田委員の方から丁寧な質問がありましたので、重複をしない程度にお聞きをしたいと思っております。

 この開放施設における設立の経緯だとか、またその意義だとかもお話を伺っております。一般社会への適合性だとかあるいは自律、自発、そういったようなことを求めていく、あるいは再犯防止というようなことであったわけですけれども、周辺の住民の方は大変心配されていると思うんですが、この事案が見つかった、逃走した時間と、そして、判明し、その後、警察に通報した、この時間の流れはどのようになっているでしょうか。

富山政府参考人 お答えいたします。

 今回の松山刑務所大井造船作業場からの逃走でございますが、逃走があったのではないかと施設の方でまず認知した時間でございますが、これは四月八日日曜日の午後七時ごろでございます。ちょうどその時間帯に、受刑者たちが収容されています友愛寮と呼ばれる寮なんですが、そこの四階で受刑者のミーティングがあるということで、その日はビデオを鑑賞して話合いをするというようなミーティングの予定だったそうです。その場に、今回逃走した受刑者が時間になってもあらわれなかったということで、職員が、最初は本人の身柄を捜すということで、本人の部屋やトイレなどを見たんですが、見当たらない、これは逃走の可能性があるということで、午後七時六分、一一〇番通報をしております。

 その後、いろいろ検証をした結果なんですが、午後六時過ぎにどうやらこの友愛寮から外へ出るという実態があったことが確認できましたので、そのときから逃走をしていたのではないかということが判明したわけでございます。

 以上でございます。

串田委員 ミーティングが七時ということで、寮内を調べて、そして警察に一一〇番したのが七時六分ということですので、そういう意味では非常に迅速に連絡はされているのかなとは思うんですけれども、その前の、逃走の時間が六時八分、ミーティングが七時という、この時間というのはちょっと長かったのかなというふうに思っているわけでございます。

 きょう配付した地図というのは、一番下、南側の今治市ですね、愛媛県の今治市のところに大井造船所がありまして、これをどんどんと広島の方に向かっていくわけでございます。島を点々と盗んだ車で移動し、聞いているところによりますと、一旦、尾道に入って、そしてまた逆行して向島に今もしかしたら潜伏しているのではないかというようなことでございますけれども、そういう意味では、発見してから警察に一一〇番したというのは非常に短いんですけれども、六時八分に逃走してからミーティングで発見するまでの時間というのがちょっと長かったので、このような逃走というものを許してしまったのではないかなと思うんです。

 先ほど他の委員からの質問の中で、この大井造船所からの逃走というのは多かったというようなお話なんですけれども、昼間、作業中に逃走したらば、周りの人間が気がつくわけでございますので、そういう意味では、一番時間がかかるというのは就寝から起床までの間なんではないかと思うんですけれども、先ほどの回答ですと、六回ほど今まで大井造船所からの逃走があったということなんですが、時間帯については調査されているんでしょうか。

富山政府参考人 記録は全て残っておりますので、調べることは当然可能なんでございますが、済みません、ちょっと今、手元にその資料がございませんで、お答えいたしかねます。申しわけございません。

串田委員 そこをちょっと調べていただいて、逃走の時期が昼間であれば、恐らく発見するのが容易であるので、逃走の距離がもう少し短くなるのかな。就寝から起床までというのは、こういう開放的施設のときには、かなり自由に、トイレに行ったりとか水を飲みに行ったりとか非常に自由に行動するので、お聞きしているところによると、一つの部屋に四つのベッドが置かれている。何で周りの人が気がつかないんですかと質問したら、トイレに行くとか、いろいろなことがあるという。そういう意味では、就寝から起床までの間というのは、周りの人間も非常に気づきにくいのかな。

 今後、私としては、開放的なこういう施設に対して、釈放間際の人をこういったようなところに一度移動して、社会的適合性というものを満たしていくというこの施設自体は、こういうことがあったからといって、やめるとか縮減するとかというのは、それはやめた方がいいんじゃないか。やはりこういう施設があるということは大事だなと思いつつも、逃走というものを避けるための努力というのはいろいろしなきゃいけないという意味では、この時間帯というようなこともちょっと確認をして、一番危険なところは、やはりそこら辺だけはしっかりと何か確認をしていくというようなことが必要なのかなとは思うんです。

 周囲の方々は大変心配していると思うんですが、施設から逃走したということで、今、周辺住民の方は皆さんよく御存じだと思うんですけれども、この施設がつくられているということは周辺住民はわかっているんでしょうか。

富山政府参考人 お答えいたします。

 この大井造船作業場は、昭和の時代にできた施設で、もう五十年以上の歴史を持っているところでございまして、その間、もちろん、地域の方々に理解をしていただくということをしていかなければいけないということで、ずっと努力もしてまいりました。

 例えば、受刑者を地域の清掃活動に出すというようなこともしておりますし、職員も、その地域の行事に顔を出して地域の方に認知をしていただくというようなこともしております。また、地域の自治会の方などに、これは大井造船作業場だけというわけではないんですが、本所である松山刑務所に刑事施設視察委員会というものがございまして、そこには愛媛県在住の方などに委員にもなっていただいたりして、広報にも努めております。

 今回も、逃走で大変な御迷惑をかけておりますので、当然、地域の方々にも謝罪に既に伺ったりもしているんですが、全般的には、昔からある施設でよく知っているよというようなことで、余り非難するような意見ではなく、早く逃走者が捕まってくれるといいですねといった非常に温かいお言葉をいただいたりもしているので、ある程度認知していただいているのではないかというふうには考えているところでございます。

串田委員 すばらしい制度であったとしても、周辺住民に対する気遣いだとか心配をかけてはいけないというようなことは、これは徹底していかなければいけないということだとは思うわけでございますが、一番ちょっと心配しているのは、やはり二次的被害。

 今回は窃盗が繰り広げられているということでありますけれども、先ほど、人選に関しては、重大な犯罪を犯しているとかではないとか、性的犯罪を犯していないというようなことでありました。そういう意味では、この受刑者は、窃盗と建造物侵入、器物損壊というような比較的に軽微な犯罪のようには思うんですけれども、いざ逃走ということになると、見つけられないために非常に重大な犯罪が行われるということ、今まではそういう犯罪ではなかったにしても、見つからないために大変なことをしてしまうというようなことも十分あると思うんですが、その辺については、どのようなお考えの中で選別されていらっしゃるんでしょうか。

富山政府参考人 お答えいたします。

 基本的に、開放的施設に就業させる受刑者というのは、そもそも逃走をするおそれがない者を選ぶということをまず当然やっているわけでございまして、その過程の中でも、既に別の委員の御質問の際にも答弁をさせていただきましたけれども、凶悪犯であるとか性犯罪者であるとか、万が一のことがあったときに社会に大きな影響が出てしまうような者についてはその対象にはしないといった発想で選んでいるところがございます。

 ただ、一番の問題は、やはり本人の心情をしっかりと把握できずに逃走させてしまったということだと思っておりまして、とにかく、おっしゃるとおり、社会に出てしまって、何かもうパニック状態になっているとかそういったことで、本来でしたらその人がやりもしないような分野の犯罪をしてしまう可能性がゼロかと言われれば、そこは私どもとしても言い切ることはできないわけでございまして、やはり逃走をさせてしまったということ自体が大きな間違いであったということを考えております。

 その意味では、もちろん人選の際にも注意をしているんですが、実際に開放的施設に配役をして、その後の本人の動静等をしっかり見切れなかった、今回のような事案になってしまうことをしっかりと予見できなかったというところに大きな問題があるというふうに考えております。

串田委員 いただいた資料でちょっと一つ気になっていることがありまして、この受刑者は二度ほど刑に、裁判にかかっているわけでございます。一回目が窃盗、建造物侵入で、これが執行猶予がついたと聞いておりますが、二度目がまた窃盗、窃盗未遂、器物損壊、建造物侵入で、このときには実刑になって、執行猶予が取り消されて刑が合算し、現在では二年の刑期が残っているということなんです。

 何がちょっと気になったかといいますと、この受刑者は、執行猶予中にまた同じ刑を犯して、前の刑と足されるということをわかっていながら犯罪を行ったというようにお聞きしているんです。

 普通、執行猶予中というのは、何とかその執行猶予を経過して、刑というものがもう科せられないように努力をするということだと思うんですが、この受刑者は、執行猶予中に刑を犯して、前の刑も合算することをわかっていながらまた二度目を犯しているという意味では、今回も、あと二年ぐらいでしたっけね、残刑が二年ということで、あともう少し辛抱すればというようなときに逃走して、恐らくこれでまたすごい重たい刑が科せられると思うんですけれども、前の部分で、執行猶予中にもう一度犯したというようなことは、人選においては問題なかったんでしょうか。

富山政府参考人 お答え申し上げます。

 現実に今回のような逃走事案に至っているということを踏まえますと、こういった、まさに委員御指摘になった、執行猶予ということで、それが取り消されて、二つの刑を持って受刑をしているという者を選んだことが相当であったのかということについて、私の方から、問題はないですということはなかなか申し上げづらいわけでございます。

 ただ、一概に、全ての執行猶予ともう一刑を持っている者について外すべきかということになりますと、やはりそこは個別の事情を勘案して分析をする必要があるんだろうと思います。

 本件についても、もちろん、そういった観点から分析をした上で差し支えないと判断をしたんだと思いますが、その判断が本当によろしかったのかということにつきましてはよく検証してみなければいけないというふうに考えております。

串田委員 今回の件は、一一〇番に対する対応も非常に私は迅速なことであったし、開放的な施設というようなことで、これはなかなか難しいかなとは思いつつも、また周辺住民に大変心配をかけているという部分もあるので、最後に大臣から、この件についての所感があればお聞きしたいと思います。

上川国務大臣 今回の逃走事故につきましては、開放型の処遇を進めている施設の中で起きたということでございまして、まことに遺憾であるというふうに思っております。

 まだ身柄の確保に至っていないということでございまして、地域の住民の皆様におかれましても、また特にお子さんを抱えている親御さんにつきましても、大変御心配が大きい、また不安も大きいというふうに思っております。

 先ほど委員からも、さまざまな二次的被害の懸念等も含めて御指摘がございました。そうしたことについて、これから、今後の取組ということも含めまして、本月九日におきまして、松山刑務所大井造船作業所からの逃走事故を契機とした開放的施設における保安警備・処遇検討委員会を立ち上げたところでございます。

 今回の逃走事故のみならず、全国にもそうした施設がございますので、そうした施設を抱えている地域の皆様におかれましても、その意味での不安はまた大きいものではないかと思っております。保安警備、処遇のあり方につきましてしっかりと検証し、また速やかにその対応策について策定、実施してまいりたいというふうに思っております。

 一日も早くというか、いっときも早く身柄確保に向けて全力で取り組む、そのことにつきまして、不安にならないようにということでございます。

串田委員 二次的被害が起きないように、そして早期に解決できることを祈っております。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

平口委員長 次に、内閣提出、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。上川法務大臣。

    ―――――――――――――

 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上川国務大臣 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、商法制定以来の社会経済情勢の変化や、海商法制に関する世界的な動向への対応を図るとともに、利用者にわかりやすい法制とする観点から、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正しようとするものであります。

 この法律案は、まず、商法の一部を改正して、運送、海商に関する規定を全面的に見直すこととしており、その要点は、次のとおりであります。

 第一に、陸上運送に関する商法第二編第八章の規定を海上運送、航空運送及び複合運送にも妥当する総則的規律として位置づけることとし、これまで規定を欠いていた航空運送及び複合運送についても、商法の規律を及ぼすこととしております。

 第二に、危険物の運送を委託する荷送り人は、運送人に対し、その安全な運送に必要な情報を通知する義務を負うとの規定や、運送品の滅失等についての運送人の責任は、その引渡しの日から一年以内に裁判上の請求がされないときは消滅するとの規定を設けるなど、運送全般に関する規定の整備を行うこととしております。

 第三に、船舶の衝突に基づく不法行為による損害賠償請求権のうち、財産権の侵害を理由とするものは、不法行為のときから二年間で時効により消滅するとの規定や、船舶の運航に直接関連して生じた人の生命身体の侵害による損害賠償請求権を有する者は、船舶について第一順位の先取特権を有するとの規定を設けるなど、海商全般に関する規定の整備を行うこととしております。

 このほか、現行の商法典は、明治三十二年に制定された法律であり、第二編第五章から第九章まで及び第三編については片仮名文語体で表記されているため、これらの規定を全て現代用語化することとしております。

 また、この法律案は、国際海上物品運送法の一部を改正して、同法第十九条の船舶先取特権に関する規定を削るなど、国際的な海上物品運送に関する規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

平口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十七分散会


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