衆議院

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第9号 平成30年4月18日(水曜日)

会議録本文へ
平成三十年四月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 大塚  拓君 理事 門  博文君

   理事 田所 嘉徳君 理事 藤原  崇君

   理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 國重  徹君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      上野 宏史君    鬼木  誠君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      菅家 一郎君    城内  実君

      黄川田仁志君    小林 茂樹君

      高木  啓君    谷川 とむ君

      中曽根康隆君    百武 公親君

      古川  康君    山下 貴司君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      松田  功君    松平 浩一君

      山本和嘉子君    源馬謙太郎君

      階   猛君    西岡 秀子君

      柚木 道義君    大口 善徳君

      黒岩 宇洋君    藤野 保史君

      串田 誠一君    重徳 和彦君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      山下 貴司君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 大賀 眞一君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小島 裕史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       金子  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    辻  裕教君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    富山  聡君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局公共交通政策部長)     松本 年弘君

   政府参考人

   (防衛装備庁調達管理部長)            辻  秀夫君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     高木  啓君

  神田  裕君     百武 公親君

  松平 浩一君     山本和嘉子君

  柚木 道義君     西岡 秀子君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     鬼木  誠君

  百武 公親君     神田  裕君

  山本和嘉子君     松平 浩一君

  西岡 秀子君     柚木 道義君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官大賀眞一君、警察庁長官官房審議官小島裕史君、法務省大臣官房政策立案総括審議官金子修君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長辻裕教君、法務省矯正局長富山聡君、国土交通省総合政策局公共交通政策部長松本年弘君及び防衛装備庁調達管理部長辻秀夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長中村愼君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。和田義明君。

和田委員 皆様、おはようございます。自由民主党、北海道五区の和田義明でございます。

 本日は、法務委員会で初めての質問の機会を賜りまして、まことにありがとうございます。委員長、理事、委員各位、そして上川大臣を始め政府関係者の皆様方に心から感謝申し上げます。まことにありがとうございます。

 それでは、早速、本日の案件であります商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案について質問を進めさせていただきたいと思います。

 まず、一問目でございます。上川大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 改正法案は、約百二十年間にわたって実質的な改正の行われてこなかった商法の運送、海商分野の規定について大きな見直しを行うものであると承知をしてございます。この分野は国民生活に身近なものであるとともに、自由貿易の旗手である日本の企業活動としても重要なものであると考えております。元商社マンとしても大変重要なものだと思っております。

 まず、今回なぜこの分野について改正法案を提出したのか、お伺いできたらと思います。よろしくお願いします。

上川国務大臣 おはようございます。

 商法のうち運送、海商法制に関する部分につきましては、条約の批准に伴い、国際海上物品運送法等の特別法が制定、改正された以外は、明治三十二年の商法制定以来、実質的な見直しがほとんどされてきませんでした。

 また、商法におきましては、片仮名文語体の表記が多く残っている状況でございます。しかし、この間、陸上運送及び海上運送のほかに航空運送も普及をし、国民生活に大きな影響を持つ運送のあり方は一世紀前と比べて一変をしている状況でございます。

 また、船舶の衝突や海難救助などの海商分野につきましては、条約等の世界的な動向を踏まえまして規律のあり方を見直す必要がございます。

 加えて、基本的な法令は、可能な限りわかりやすく、一般にも参照が容易で予測可能性が高いものとすべきであるということでございます。

 そこで、この法律案でございますが、このように商法制定以来の社会経済情勢の変化に対応し、また運送、海商法制の現代化を図るとともに、商法の表記を平仮名口語体に改めるため、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正しようとするものでございます。

 この改正によりまして、運送に関するルールが現代的、合理的なものとなり、かつ予測可能性が高まるものと考えられるところでございます。その結果、幅広い利害関係者におきましても、合理的な企業経営、また法的紛争への対応が容易となり、ひいては日本経済の成長に寄与するものというふうに考えております。

和田委員 大臣、ありがとうございました。

 確かに、明治時代から変わっていない片仮名と文語調の法律というのはもう残り数少ないのかと承知しておりまして、まさに待ったなしの法改定だったというふうに理解をしております。

 二問目に移らせていただきます。

 今の御答弁にありました社会経済情勢の変化そして世界的な動きは、この百二十年間に少しずつ進行してきたものであると思います。この間、運送、海商法制について見直しがされなかったのにはどのような理由があったのか、御教示賜りたいと思います。よろしくお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 商法の分野におきましては、これまで特に、会社関係につきまして、企業を取り巻く環境の変化等に伴う喫緊の課題が多く、幾度も大きな改正が行われてまいりました。また、保険関係につきましては平成二十年に全面的な見直しが行われたところでございます。これに対しまして、運送、海商関係につきましては、条約の批准に伴って特別法の制定等を行ってきたものの、実務におきましては定款等による対応が進んでいたことなどもありまして、見直しの着手がおくれてしまった、こういう面がございます。

 しかしながら、運送のような取引社会の基盤となる分野についてのルールが社会の実情に合わない状態にあるというのは相当ではございませんので、現代社会に適合したルールを明確化する必要があることから、規定の見直しをすることとしたものでございます。

和田委員 率直な御答弁、まことにありがとうございました。

 今回の改正法案でございますけれども、具体的にどのような改正内容となっているか、御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 済みません、ちょっとその前に、先ほど私、定款と申し上げてしまいましたけれども、約款の誤りでございました。申しわけございません。

 今回の改正法案でございますけれども、まず、運送、海商改正の現代化を図る、こういった観点から、主な改正事項といたしましては、まず、陸上運送それから海上運送のほかに、新たに航空運送ですとか、一つの運送契約で陸上、海上等異なる種類の運送を行います複合運送についての規定を設けまして、これらいずれの運送についても妥当する運送契約についての総則的規律をつくることとしております。

 また、危険物についての荷送り人の通知義務に関する規定を新設しております。

 さらに、運送品の滅失等についての運送人の損害賠償責任は、一年以内に裁判上の請求がされないときは消滅するものとし、旅客の生命身体の侵害についての運送人の損害賠償責任について、これを減免する特約を無効としております。

 また、国内海上運送人の堪航能力担保義務、これは、発航の当時、船舶が安全に航海をするのにたえることを担保する義務、こういう義務でございますが、こういった義務の違反による責任を過失責任化することとしております。

 また、船舶の衝突に基づく不法行為による損害賠償請求権、財産権の侵害を理由とするものに限られますが、これにつきましては不法行為時から二年間で時効により消滅するものとしております。

 商法の表記に関しましては、運送、海商法制についての規定のみならず、片仮名文語体である商法第二編第五章以降の規定につきまして、全て平仮名口語体に改めることとしております。

 今回の主な改正点といたしましては、以上のようなものが挙げられます。

和田委員 ありがとうございました。

 確かに、運送にかかわる人たちや旅客の安全、これは何よりも最優先でございますし、今回、必要な点が改正されたというふうなことで、高く評価申し上げたいと思います。

 それでは、四つ目の質問に参ります。

 今御説明いただきましたもののほかに、細かな改正点も少なくないと思います。そのような多くの改正事項について、どのような審議過程を経てきているのか、また、改正法案の提出に至る経緯などについて御教示賜りたいと思います。よろしくお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 平成二十六年の二月に、法務大臣から法制審議会に対しまして、商法等のうち運送、海商関係を中心とした規定の見直しに関する諮問がされまして、法制審議会に商法(運送・海商関係)部会が設置されたものでございます。

 この部会では、平成二十六年の四月から検討を開始いたしまして、並行して、旅客運送に関する事項については、更にそのもとに分科会を設けて検討を進めました。平成二十七年の三月には中間試案が取りまとめられまして、パブリックコメントの手続も実施されております。

 部会での検討を経まして、平成二十八年二月十二日に法制審議会の総会において、全会一致で商法(運送・海商関係)等の改正に関する要綱が採択され、法務大臣に答申されております。

 法務省では、この答申に基づきまして法案作成作業を行いまして、平成二十八年の十月十八日に商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案を国会に提出したわけでございますが、この法律案は、昨年の九月二十八日、衆議院の解散に伴いまして廃案となったものでございます。

 そのため、法務省では、本年二月六日に同じ内容を今国会に提出するに至ったものでございます。

和田委員 ありがとうございました。

 幅広いステークホルダーから細かくヒアリングを行い、また、慎重に審議されたということで承知をいたしました。

 五つ目の質問に移らせていただきます。

 先ほど、世界的な動向への対応というお話がございました。確かに、この分野については世界的な動向を踏まえて対応することも重要であると思いますが、運送、海商法制に関する近時の諸外国の改正状況はどのようになっているか、御教示賜りたいと思います。

 この点は、日本の荷送り人、運送人、そして荷受け人の利益を守る点でも非常に重要だと思いますので、ぜひともよろしくお願い申し上げます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 運送、海商法制に関します近時の諸外国における改正状況でございますけれども、例えばドイツにおきましては、一九九八年に、商法のうち海上運送を除く運送関係の規定が現代的なものに改正されております。その後、二〇一三年に、商法のうち海商法制が全面的に改正されております。

 また、フランスにおきましては、二〇一〇年に、陸上運送、河川運送、海上運送、海商、航空運送に関する規律を一つにまとめました運送法典が制定されております。

 そのほか、英国、中国、韓国などでも運送法あるいは海商法制が制定されておりまして、こういった諸外国におきましては一九九〇年代から二〇一〇年代にかけましてそういったような改正がされている、こういう状況でございます。

和田委員 ありがとうございました。

 六つ目の質問でございますけれども、改正法案における主要な改正事項として、運送契約についての総則的規律の創設という点が挙げられております。このような規律を創設した理由、背景について御教示ください。よろしくお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現行法では陸上運送それから海上運送に関する規律はそれぞれ定められておりますけれども、航空運送、あるいは陸上運送、海上運送又は航空運送のうち二つ以上の運送を一つの契約で引き受ける複合運送、こういうものにつきましては規律が設けられておりません。しかしながら、現代におきましては、これらの航空運送あるいは複合運送は非常に広く普及しております。

 そこで、改正法案では、現行の陸上運送に関する規律を基本といたしまして、これに必要な改正を加えつつ、陸上、海上、航空運送に共通する運送契約についての総則的な規律を設けることとした上で、複合運送契約につきましてもこういった規律を適用することとしたものでございます。

和田委員 ありがとうございました。

 続きまして、次の質問に移りたいと思います。

 ただいまの答弁にありましたとおり、改正法案では航空運送に関する規律の新設を行っていると承知いたしました。航空運送といいますと、近時は、新たな事業としてドローンを運送に利用する試みもあるようでございます。例えば、アメリカのアマゾンが荷物のデリバリーにドローンを使用するというふうな計画が発表されてございます。

 そこで、ドローンによる運送について、商法の規定の適用の有無、これがどうなっているかというようなことについて御教示いただきたいと思いますし、また、その理由につきましても御開陳いただきたいと思います。よろしくお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回のこの改正法案でございますが、商法上の航空運送の対象となる航空機でございますが、これは、航空法第二条第一項に規定する航空機、すなわち、人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船をいいまして、ドローン等の無人航空機を含めないこととしております。

 これは、ドローンによる運送のような新たな運送形態につきましては、輸送の安全の確保や事業の適正かつ合理的な運営等の観点からどのような公法上の規律を設けるかという議論が不可欠でございますけれども、このような議論がないまま商法上に新たな契約類型として規律をすることは相当でないと考えられることが理由の一つとしてございます。

 また、新たな運送契約形態につきましては諸外国における検討及び立法のあり方との調和も考慮する必要があること、こういったこともあわせて考慮したものでございます。

 こういったことから、今回のこの改正法案では、ドローンによる運送につきましては商法の運送営業に関する規律を適用しないこととしております。

和田委員 ありがとうございました。

 確かに、まだドローンは商業ベースには乗っていない、とりわけ運送業におきましては商業ベースには乗っていないというふうなことでございますけれども、既に建設の現場等々では随分と活用され始めてございます。運送に活用されますのも時間の問題だと思いますので、法整備のおくれがこういったドローンの活用のおくれにつながらないように、ぜひとも早目の検討をよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、次の質問に移りたいと思いますけれども、改正法案におけるもう一つの主要な改正事項として、危険物の通知義務に関する規律の新設という点が挙げられると思います。

 この点は、荷送り人と運送人の利害対立が先鋭化する場面の一つであると思われます。現に、通知義務に違反した場合は、荷送り人の責任のあり方をめぐり、法制審議会商法部会でもさまざま意見があったというふうに承知をしてございます。

 まず、危険物に関する通知義務についての改正の概要及びその理由について御教示ください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現行法には、危険物についての荷送り人の通知義務に関する規定はございません。個別の事案におきます具体的な事情のもとで、信義則上、荷送り人がそのような義務を負う場合があるというふうに解されるにとどまっております。

 しかしながら、現代では、危険物の種類が多様化しておりまして、封印されたコンテナによる運送が一般的になるなど危険物の取扱いが困難となる中で、船舶を始めとする運送機関の大型化等に伴いまして、危険物の取扱いを誤った場合の損害は極めて大きなものとなっております。

 そこで、改正法案では、危険物の適切な取扱いによる運送の安全確保を図るために、荷送り人の運送人に対する私法上の通知義務を新設いたしまして、荷送り人は、運送品が危険物であるときは、その引渡しの前に、運送人に対し、危険物の安全な運送に必要な情報を通知しなければならないとしたものでございます。

 今回のこの改正法におきましては、この通知義務違反による荷送り人の責任については特段の規定は設けておりません。これにつきましては債務不履行に関する民法の規定が適用されることとなっております。

 したがいまして、荷送り人は、通知義務違反によって運送人に損害が生じた場合には、原則として債務不履行による損害賠償責任を負うこととなりますが、例外的に、自分に帰責事由がない、こういうことを主張、立証したときはその責任を負わないこととなるというものでございます。

 この点につきまして、法制審議会における議論の過程では、運送の安全確保を強調する観点から、通知義務に違反した荷送り人は、自分に帰責事由がなくても責任を負うべきである、こういった考え方も検討されましたけれども、改正法案では採用はされておりません。これは、物流におきましては、製造業者、商社、利用運送事業者などさまざまな関係者が危険物の荷送り人となりますために、その賠償責任の有無、範囲については、それぞれの知識経験、運送品が危険物であることの認識可能性、こういったことを踏まえまして、各自の帰責性に応じた弾力的な判断ができるようにすべきである、こういったこと等の理由によるものでございます。

和田委員 ありがとうございました。

 運送当事者、そして旅客の安全が何よりも大事でございますが、その一方で、運ばなければいけない危険物の種類、こういったものはどんどん新しいものが出てくるというふうに承知をしてございます。

 次の質問でございますけれども、荷送り人に危険物に関する通知義務を課す場合には、そこで言う危険物の範囲が大変重要になってくると思います。商法上の危険物の定義はどのようなものか、抽象的な定義では運送実務に混乱をもたらすおそれがあると思いますけれども、この点についてのコメントをよろしくお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、危険物につきましては、現行の国際海上物品運送法の規定と同様に、引火性、爆発性その他の危険性を有する物品と定義しております。

 このように危険物の定義を抽象的なものにいたしましたのは、技術革新等によりまして将来新たに危険物として把握されるべきものが生ずることが容易に想定されるために、こういったこれらの危険物にも対応する必要があること等を踏まえたものでございます。

 こういった商法上の危険物の該当性につきましては、基本的に公法的な規制、例えば消防法等の規制でございますが、こういった規制を参考にして判断することができますし、特に、新たに製造された化学薬品等につきましては、安全確保の観点から危険性の有無が慎重に判断されるべきことは当然でございまして、実務に混乱をもたらすことはないものと考えております。

和田委員 ありがとうございました。

 科学や技術の進化とともに新しい危険物がどんどん出てくると思います。また、諸外国でいろいろな法整備が進むと思いますので、そういった科学技術の進歩に合わせて、また諸外国の法律の進化に合わせて、しっかりと日本の法律をアップデートしていただきたいと思います。

 時間の都合上、ちょっと質問を飛ばしまして、十二問目の質問に行かせていただきたいと思います。

 諸外国では、危険物に関する通知義務に違反した場合の責任を無過失責任と定めている国もあるようであり、運送の安全は最大限保護されるべきであります。このような観点から、危険物に関する通知義務に違反した荷送り人は帰責事由がなくとも責任を負うべきであるという考え方もあるのではないでしょうか。御意見を賜りたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、危険物に関する通知義務に違反した荷送り人の責任につきましては、帰責事由がなくとも責任を負うべきである、こういった考え方もあったところでございます。

 しかしながら、この点につきましては、先ほども述べましたけれども、物流におきましては、製造業者、商社、利用運送事業者などさまざまな関係者が危険物の荷送り人となるわけでございまして、その賠償責任の有無及び範囲につきましては、それぞれの知識経験等を踏まえて、各自の帰責性に応じて弾力的な判断ができるようにするのがいいのではないかというふうに考えられました。

 また、荷送り人が帰責事由がなくても責任を負う、仮にこのような規律を設けるとした場合には、その予測可能性を確保しなければいけないということになろうかと思います。そうしますと、商法上の危険物を相当明確に定義づける必要がございますが、技術革新等により将来新たに危険物として把握されるべきものが登場する余地を踏まえますと、なかなかそういった明確な定義づけも困難でございます。

 また、荷送り人が帰責事由がなくても責任を負うといたしますと、中小企業、消費者、利用運送事業者等さまざまな荷送り人が相当額の賠償責任保険を付すということが想定されるわけでございますけれども、そのような状況は社会全体のコストの観点からも適当ではないというふうに考えられました。

 このようなことから、先ほど申し上げましたような考え方はこの改正法案ではとられていないというものでございます。

和田委員 ありがとうございました。

 運送に携わる全ての関係者が危険物に関する厳しいチェックを行う、これが何よりも大事だと思いますので、できるだけ厳しいルール形成をよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、保険に関する質問に移りたいと思います。十三問目でございます。

 運送、海商の分野は、特に保険が発達している分野の一つであり、実務上、保険によって対処されていることも大変多うございます。この分野の保険、海上保険については告知義務に関する改正が実務上重要であると伺っておりますけれども、その内容について承りたいと思います。よろしくお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 海上保険の告知義務につきましては、現行商法には特段の規定がございません。

 一般法であります保険法の規律によりますと、いわゆる質問応答義務という規律がございます。保険契約者又は被保険者になる者は、損害保険契約の締結に際し、危険に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたものについて、事実の告知をしなければならない、こういうふうにされております。

 しかしながら、海上保険につきましては、火災保険などとは異なりまして、危険の個別性が強く、その内容及び程度を一般的に想定することが困難であります。また、契約の申込みをしてから保険期間が開始するまでの期間が短く、質問応答義務による対応が時間的に困難な場合が少なくございません。

 このような事情から、英国の海上保険法を始めとして、いわゆる自発的申告義務の規律が定められまして、保険者になる者が告知を求めることを前提とせず、保険契約者又は被保険者となる者は、みずから危険に関する重要な事項について事実の告知をしなければならないとされることが一般的でございます。

 また、近時の保険実務からは、自発的申告義務に関する明文の規定が存在しないと、国際的な再保険等の関係で支障を来すおそれがあるという懸念も表明されているところでございます。

 そこで、改正法案では、保険法の特則として、海上保険については今申し上げましたような自発的申告義務に関する規律を設けることとしたものでございます。

和田委員 ありがとうございました。

 最初に御指摘申し上げましたとおり、この分野は一般国民にとっても大変身近なものでありますし、また企業活動にとっても重要でございます。その意味では、改正法案の成立後は、しっかりとした周知が何よりも大事だと思います。

 法務大臣始め関係各位にこの周知の徹底をお願い申し上げて、時間になりましたので、私の質問を終えさせていただきます。まことにありがとうございました。

平口委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 本日は、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。二十分という限られた時間でありますので、テンポよくいきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 ここ数年で、一般人によるインターネットショッピングの利用とそれに伴う運送が急激に増加をしております。そこで、その現代的な特徴を捉えて、まずは事例をもとに、改正法案による基本的な法律関係を確認していきたいと思います。

 配付をした資料一をごらんください。

 これは、インターネットショッピングサイトを利用した商品の売買を事例としたモデル図であります。登場人物は、A、B、C、Dの四名。順次、Aは、インターネットショッピングサイトに出店し、商品を販売する出店者、この出店者をAとします。Bは、インターネットショッピングサイトを通じて商品を購入した購入者、この購入者をBとします。Cは、インターネットショッピングサイトを設置、運営するサイト運営者、このサイト運営者をCとします。Dは、売買された商品を実際にトラックなどで運送する運送会社、この運送会社をDとします。

 その上で、時間の関係上、今回事例として挙げるケースは、サイト運営者Cが出店者Aに対して、商品の在庫管理、また購入者への発送、運送業務等を一括して提供するサービスを実施しているケースに絞らせていただいて、質問をさせていただきます。

 では、小野瀬民事局長にお伺いいたします。

 このケースにおいて、商品の売買契約は誰と誰が当事者として締結することになるのか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の事例では、関係者間に特段の約定がない限り、出店者Aと購入者Bとの間で商品の売買契約が締結されたものと考えられます。

國重委員 売り主がA、買い主がBの売買契約が締結することになるということでありました。

 では、商品を配送する運送契約は誰と誰が当事者として締結することになるのか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 もちろん関係者間の約定の内容によって法律関係が異なり得るものでございますが、この事例で申しますと、物流代行サービスを利用しているということでございます。

 そうしますと、まずは、出店者Aとサイト運営者のCとの間に、Aを荷送り人、Cを運送人、購入者のBを荷受け人とする、いわゆる元請の運送契約がございます。また、さらに、サイトの運営者Cと運送会社Dとの間に、Cを荷送り人、Dを運送人、Bを荷受け人とする下請の運送契約がある、こういった法律関係が生ずるものと考えられます。

國重委員 サイト運営者Cは、出店者Aとの関係では運送人になる、ただ、運送会社Dとの関係では荷送り人になるという答弁でした。

 そして、これを全体として見れば、Cは利用運送人、また、Dは実運送人に当たるということになります。

 この基礎的な法律関係を前提として、今回の改正で新設される予定の新商法五百七十二条の危険物通知義務についてお伺いいたします。

 先ほど和田委員の質疑を聞いておりましたら、非常に総論的な、基本的なところをしっかり聞いていただきましたので、私はちょっと基本的なところは飛ばして、事例を通した細かい中身についてお伺いしていきたいと思います。

 まず、ちょっと基本的なことを聞きますね。出店者Aが購入者Bに販売した商品が新商法五百七十二条の危険物に当たる場合、誰が誰に対して危険物通知義務を負うことになるのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この事例ですと、先ほど申し上げましたとおり、運送契約が二つあるということになります。

 まず、元請の運送契約、ここの関係におきましては、出店者Aが荷送り人となりますので、Aが運送人でありますサイト運営者であるCに対しまして危険物の通知義務を負うこととなります。

 次に、下請運送契約、この関係では、サイト運営者Cが荷送り人となりますので、Cが運送人である運送会社Dに対して危険物の通知義務を負うこととなります。

國重委員 危険物に関する情報というのは、まずはAからCに、そしてCからDに順次伝達されていく、こういったことで、実際に運送を行うDに危険物に関する情報が適切に通知されていくことになるということでありました。

 では、次に、危険物に関してお伺いいたします。

 改正案五百七十二条の危険物とは、法文上「引火性、爆発性その他の危険性を有するもの」と定められておりますけれども、旅客運送、貨物運送における危険物の規制にかかわる法令で定められている規制物品は、危険物に当たるのか。

 例えば、旅客自動車運送事業運輸規則において、危険物等の輸送制限として旅客の運送に付随して運送してはならないとされている物品が幾つかあります。この持込み制限されている物品の中には、乾電池を除く電池、こういったものも含まれておりますけれども、これは本改正案五百七十二条の危険物に当たるのかどうか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 危険物に当たるかどうかは、この改正法案で規定しております引火性、爆発性、又はこれに類する危険性を有するかどうか、こういったところで判断されるところでございますけれども、例えば電池の中でも、一定のリチウムイオン電池などは、公法上、危険物として取り扱う場合がありまして、そのようなものは商法上も危険物に該当し得るものと考えられます。

國重委員 今、乾電池を除く電池、例えばリチウムイオン電池なども当たるということでおっしゃいましたけれども、例えばリチウムイオン電池というと、携帯電話とかパソコンとか、あとデジカメとか、こういったものも当たることになります。

 ただ、一般人が、まさかリチウムイオン電池、携帯電話とかに含まれているこういったものが危険物に当たる、だから通知しないといけないというのは、これはなかなか一般の方はわからないんじゃないか。それにもかかわらず、危険物の通知義務を負わせて損害賠償責任を負わせるというのは、これはいかにも酷なんじゃないかというふうに思いますけれども、この点についてはどうなのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 リチウムイオン電池などにつきましても、一定の電力といいますか出力といいますか、そういった大きいものというものが危険物というふうにされているものと理解しておりますけれども、一般人が危険物の荷送り人となるケース、さまざまなものがあると考えられます。

 一般論としましては、荷送り人は運送人よりもそのものの危険性を知り得る地位にあるというふうに考えられますので、まずはできる限り注意を払って通知義務を果たしていただくことが原則となります。

 その上で、改正法案では、危険物の通知義務に違反したことによる荷送り人の責任は、債務不履行に関する民法の規律に従うものと整理しております。したがいまして、荷送り人は、自己に帰責事由がないことを主張、立証したときは、債務不履行による損害賠償責任を負わないこととしております。

 そして、荷送り人が危険物についての詳しい知識を有していない消費者である、こういった場合には、そのような事情は帰責事由がないとの判断において考慮される事情となり得るものと考えられます。

 このように、改正法案は、消費者にとって酷に過ぎる結論とならないように配慮しているものと考えております。

國重委員 要は、危険物の通知義務があるとした上で、個別事情については帰責事由で判断するというような答弁でありました。

 では、この新商法五百七十二条で危険物に関する通知義務を定めた趣旨は何なのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、運送人が危険物を適切に取り扱うことができるようにし、運送の安全を確保する観点から、私法上の危険物通知義務に関する規定を新設することとしたものでございます。

國重委員 では、事例を言います。

 荷送り人が運送人に危険物の通知義務を履行しなかったけれども、運送人が第三者からの情報など何らかの事情で運送品が危険物であることを知っていた、このような場合でも、荷送り人は危険物に関する通知義務違反ということで損害賠償責任を負うことになるのか。運送人は危険物であることを知っていたんだから、先ほど言われた五百七十二条の趣旨である運送の安全確保というのはできたんじゃないかと思えるんですけれども、どうなんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、運送の安全確保を図る観点から、荷送り人は運送人の主観的事情を問わず危険物の通知義務を負っておりまして、この義務に違反した荷送り人は、原則として、これによって生じた損害の賠償責任を負うこととなります。

 このため、運送人が運送品が危険物であると知っていたというだけで荷送り人はその責任を免れることはできないものと考えられます。

國重委員 でも、この場合、運送人は危険物であることを知っていたわけなので、何らかやはり考慮しないと、この趣旨との関係でまた公平とは言えないというふうに思います。

 結局、こういった場合は、運送人が危険物であることを何らかの事情で知っていた、こういった事情は過失相殺で考慮される、こういうことになるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、運送人が危険物であると知っていたという事情は、過失相殺において考慮されるものと考えられます。

國重委員 では次に、改正案、新商法の五百七十二条では、危険物の通知義務の通知時期について、危険物である運送品の引渡前に通知を必要としております。

 では、引渡しと同時に危険物であることの通知をした場合、こういった場合も多いかと思いますけれども、このような場合は「引渡しの前」という文言に当たらず通知義務に違反したことになるのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 基本的に、危険物に関する情報を通知しつつ、あわせて当該危険物を引き渡した場合には、その引渡しの前に安全な運送に必要な情報を通知したものと評価することができる場合が多いものと考えられます。

 もっとも、この引渡時に危険物に関する通知があったとしましても、運送に必要となる設備を直ちに用意することができないなど、運送人において運送の安全確保を図ることができない場合には、荷送り人が危険物通知義務を履行したと評価されないことはあり得るものと考えられます。

國重委員 では、次もちょっと事例を確認させていただきます。

 では、危険物を荷送り人が運送人に引き渡した、その後に荷送り人が運送人に、実はあの配送する物品の中には危険物が入っていると通知した場合、そしてその後に危険物に関して運送人に損害が発生した場合、荷送り人は運送人に対して賠償責任を負うのか。要は、引渡前には危険物の通知義務を履行していない、引渡後に危険物の通知をした、きっちり運送人もそのことを理解している、その後に何らかの事故が発生して運送人に損害が生じた、その場合にも荷送り人は賠償義務を負うのか、お伺いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、委員御指摘のとおり、運送品の引渡前に危険物に関する通知義務を負っておりますので、運送品の引渡後に危険物に関する通知をした場合には、荷送り人はこの義務に違反したことになります。

 したがいまして、通知がおくれたことによって損害が発生したものと認められる場合には、荷送り人はその損害を賠償する責任を負うものと考えられます。

國重委員 その場合でも荷送り人は賠償責任を負い得るということでしたけれども、だがこの場合、運送人は危険物であることを時期はおくれたけれども知っていたということになるわけですので、こういった事情もまた過失相殺で考慮されるということでいいんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の事例でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、荷送り人には危険物に関する通知義務違反が認められます。その通知のタイミングによりまして、例えば運送人が損害を避ける十分な対応をすることができたと認められる場合には、事案によりましては、この荷送り人の義務違反と損害の発生との間の因果関係が否定されて、荷送り人が損害賠償責任を負わない、こういった場合もあり得るものと考えられます。

 また、荷送り人の義務違反と損害の発生との間の因果関係が認められるといたしましても、事後的に荷送り人が運送人に通知したことによって運送人がそのことを知っていた、そして損害の発生及び拡大を回避する手段があったと認められる場合には、運送人にも損害発生について過失があるとして、過失相殺がされることもあり得るというふうに考えられます。

國重委員 ありがとうございました。個別事情で判断するということだったと思います。

 では、最後のテーマとして、荷受け人の件についてお伺いします。

 今般の改正案の新商法五百八十一条一項では、運送品が全部滅失して到達地に到着しなかった場合でも、荷受け人は運送契約によって生じた荷送り人の権利と同一の権利を取得することとしております。

 その上で、同条二項で、荷送り人の権利と荷受け人の権利の優先関係について、荷受け人が損害賠償の請求をしたときは、荷受け人の権利が優先して、荷送り人は権利を行使することができないとしています。

 このことを前提に、レンタル業者から物品をレンタルする事例を挙げてお伺いします。

 便宜上、荷送り人をレンタル業者A、物品を借りるBを荷受け人とします。このようなレンタル品の運送において、運送業者Cが運送品を全部滅失した場合、荷受け人Bの権利はどうなるのか。

 あくまで本事例の場合、物品の所有権はレンタル業者Aにあります。この場合にも、荷受け人Bは運送人Cに損害賠償請求ができて、荷送り人たるレンタル業者Aの損害賠償請求権はそれに劣後するということになるのか。若しくは、荷送り人と荷受け人とでは損害の対象が違うという整理になるのか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の事例ですと、この改正法案のもとでは、運送品の全部が滅失しまして、荷受け人のBがその損害賠償の請求をしたときは、荷送り人Aは運送契約上の損害賠償請求権を行使することができないということとなります。

 これは、運送品の所有権がレンタル業者であるAにあるという場合も同様でございまして、これは、運送人が運送品の所有権の帰属をめぐる争いに巻き込まれることなく、運送契約上の債務を履行することができるようにする、こういった趣旨に基づくものでございます。

國重委員 そうすると、事例によってはBが不当に利得を得る反面、Aに損害が発生するということになります。

 こういった場合には、AがBに対して、後になって民法の不当利得返還請求権、こういったものを行使する、こういう事後処理を想定しているんでしょうか。これを最後の質問にいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、このような事例では、レンタル品の所有権を有しない荷受け人が運送人から受領した賠償金は、その所有者である荷送り人との関係では不当利得となって、荷送り人が不当利得返還請求をすることが可能であると考えられます。

國重委員 ありがとうございました。

 百二十年ぶりの歴史的な法改正ですので、しっかりとした周知徹底もどうかよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、松田功君。

松田委員 おはようございます。立憲民主党の松田功でございます。

 本日、また質問をさせていただきたいと思います。

 本当にいろいろな話題に事欠きませんが、何かいい話題をと思っていろいろ考えて、きょうは実は、世界最高峰のワールド・マラソン・メジャーズのボストン・マラソンで、瀬古利彦選手以来三十一年ぶりに川内優輝選手が優勝したということで、昨日ですけれども、非常にうれしい話題が入ってきておりました。

 いろいろな意味で、世界で活躍する若い方たちがいます。そういった形で、この国会でも元気よくいきたいなというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、質問に入らさせていただきたいと思います。

 本日は、商法改正案の質疑でありますが、法案質疑に入る前に、前回の委員会で質問させていただきました松山刑務所大井造船作業場からの受刑者脱走の件について少しだけ取り上げさせていただきたいと思います。

 まず、十五日日曜日から十六日月曜日にかけて、山下法務政務官の方が現地を視察されたと伺っております。その件について、少し御感想、御見解、また視察の御報告をお願いできればと思いますので、政務官、よろしくお願いいたします。

山下(貴)大臣政務官 今回の逃走事故により、地域の皆様に多大なる御負担をおかけいたしまして、また御不安を感じさせていることについて、心から深くおわびをまず申し上げさせていただきます。

 今回、そういった気持ちをぜひ法務省として伝えてほしいとの大臣の指示を受けまして、十五日そして十六日、大井造船作業場、これは愛媛県今治市にございます、そして広島県尾道市にあります向島を訪れまして、自治体あるいは地域の皆様、受入れ企業、学校の関係者の皆様に直接おわびし、お話をお伺いしたところでございます。

 地域の皆様からは、ここの地域は本当に平和で穏やかな地域であるがゆえに、解決が長引いていることにつきまして不安が募っている、ひとり暮らしの高齢者の方も多くおられます、そういったことであるとか、あるいは、発見のために検問をしているわけでございますが、それによる渋滞が日常生活に支障を来している、あと学校生活も、通学の送り迎えであるとか、あるいは部活動にも影響が出ているなどのお話を伺いました。そしてまた、自治体の皆様がみずから地域の空き家などをパトロールしてくださっている、そういった声も伺ったところでございます。

 この地域は長年温かくこういった施設を受け入れてくださったところであるがゆえに、地域の皆様に多大な御迷惑をかけて、そして御不安を感じさせていることを、改めて、直接伺って実感したところでございます。本当に申しわけなく思ったところでございます。

 そして、法務省としては、身柄の確保に向けてまず警察に最大限の協力をさせていただく、そして、お子さんたちに安心して通園、通学していただけるよう、向島の全ての保育園、幼稚園、小中学校などに刑務官を二十四時間態勢で配置させていただいておりまして、地域の警戒に当たらせることとしております。

 また、法務大臣の指示により立ち上げられた松山刑務所大井造船作業場からの逃走事故を契機とした開放的施設における保安警備・処遇検討委員会におきまして、本件逃走事故の発生原因を調査、分析した上で、全ての開放的施設を対象とした再発防止策を策定するとともに、今後の開放的施設における処遇のあり方を検討することといたしております。

 今回、現地を見た経験も踏まえて、早急に検討してまいりたいと考えております。

松田委員 山下政務官の方に見ていただいて、対応も進めていただいているとは思います。本当に二十四時間態勢で、現地にそんな不安な、緩い感じのところの島だと思うんですよね、そんな中、本当に住民の人が、みんなが監視されているような感じの、何か全然違う世界のように変わってしまったと。

 今もお話もありました、現地は受け入れてくれている地域の一つであるということからすると、余りこれが捕まらないのが長引いてしまうと、本当にその施設のあり方も本末が変わってきてしまう不安も出てきます。あり方も含めた中、それは警察の方にも御協力いただいた中でいろいろ対応も進めているとは思うんですが、そういった地域の方の御協力もいただいた中でありますので、そういったことを踏まえてぜひ進めていただきたいというふうに思っております。

 それでは、現在、今、行方不明中の平尾受刑者の捜索の状況に当たって、どうなっているのか、警察庁の方からちょっと御報告いただきたいと思います。

大賀政府参考人 お尋ねの事案に関しましては、警察では、当該受刑者を逃走罪によって全国に指名手配するとともに、その写真を公開して情報提供を呼びかけるなどしているところでございます。

 また、受刑者によるものと考えられる窃盗被害が発生していることなども踏まえまして、広島県尾道市の向島におきまして、港や橋における検問、それから警察犬も活用した家屋や山林等の捜索、こういったことを重点的に行うとともに、地域住民の安全、安心を確保するため、学校等の警戒活動や必要な注意喚起を行っているところでございます。

 引き続き、地域住民の安全、安心の確保を図りつつ、被疑者を早期に確保できるように努めてまいりたいと考えております。

松田委員 最大限に捜査をして、警察犬とかも導入していろいろしているとは思いますが、なかなか捕まえられない。日本の警察は僕は優秀だと思っているところもありますので、もう捕まってもいいんじゃないか、この質問をするときにはもう捕まっているんじゃないかと思いながら、いつもニュースを、多分皆さんもそう思いながらいられると思うんですが、本当に頼りにしておりますので、住民の皆さんが不安にならないように、できるだけの御協力をお願いいたしたいと思います。

 また、引き続きまして、前回の質問の関連で、法務省に一点、ちょっとお伺いをしたいと思います。

 過去の逃走事例で、逃走した受刑者から事後の聞き取りなどを行ったと思いますが、それはどのような内容で、どう生かされたかをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

富山政府参考人 お答えいたします。

 大井造船作業場につきましては、今回の逃走事件の直近の逃走事案が平成十四年八月二十日に発生しております。この十四年八月二十日の逃走の概要をまず申し上げたいと思いますが、朝七時五十五分ごろ、逃走した受刑者は、同僚の受刑者二人とともに、電気溶接の実習のため、トレーニングハウスと呼ばれる建物に行きまして、そこで同僚受刑者二人がこの建物の窓をあけに行って一人になったすきをついて、この建物から抜け出し、造船場のフェンスを越えて逃走をしたというような事案でございます。

 この身柄につきましては、逃走後約一時間で身柄が確保できております。

 身柄を確保した後、動機等の事情を聴取いたしました。この大井造船作業場では、受刑者の自発性あるいは自律性を高めることを目的に、受刑者による自治会の制度というものを設けておりました。この逃走した受刑者が、友愛寮における寮生活のルールを遵守できなかったことなどについて同僚の受刑者から厳しい指導を受けるようなことがあったようでございます。それによって自信を喪失して、大井造船作業場での生活に耐え切れなくなり、ここから離脱したいという気持ちを募らせて逃走に至ったというようなことが明らかになっております。

 この自治会の制度といいますのは、受刑者自身に各種の役割活動を行わせて、受刑者間における適切な助言指導を通じて、互いに高め合う枠組みということで設けられていたものなんですが、これが受刑者間での厳しい指導につながってしまったという面がありましたので、この逃走事故を契機といたしまして、自治会の制度そのものは維持をいたしましたが、受刑者に任せきりにせずに、職員が適切に関与をして、行き過ぎたことが起きないようにというようなことにしっかりと目配りをしていくということにしたほか、この受刑者はまだ作業場に配属されて間もない時期での逃走でございまして、やはりなじむ期間というのは心情が揺れ動くであろうということで、随時、面接等は行ってはいたのですが、特に、面接を通じての心情把握をより重視しようということで、配属されて間もない時期はより頻繁に面接を行うといった形で心情把握を徹底するというような対策を講じてまいりました。

 この結果、平成十四年から今回の逃走までは逃走事故は発生せずに済んだわけなんですが、しかし、結局、今回また既遂の事故を起こしてしまったということで、今回の受刑者がどんな理由で逃走したかは身柄を確保してからのことにはなるんですが、やはり私どもが立てていた対策のやり方に問題があったのか、あるいは、考えた方策そのものは間違っていなかったけれども何か落ち度があったのか、そういった点についてしっかりと分析して対策を立てなければいけないというふうに思っております。

 このような事故が続いて、現地で大変御迷惑をかけていること、本当に申しわけなく考えている次第でございます。

松田委員 一刻も早く捕まえていただいて、また、なぜ逃走したのかということをしっかり検証していただく中で、再発防止、また住民の皆さんにも理解をいただくということを進めていかなければいけないと思いますので、ぜひ御協力をお願いいたしたいと思います。

 それでは、次の質問に入らさせていただきます。

 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案について質問に入りたいと思います。

 このたびの改正は、商法のうち、主に運送、海商に関する見直しを行うもので、実に、一八九九年の商法制定以来、何と百二十年ぶりの改正とお聞きいたしております。なぜ今、改正することになったのでしょうか。少し前でも、少し先でもなく、なぜ今なのかをお尋ねいたしたいと思います。

上川国務大臣 商法のうちの運送、海商法制に関する部分につきましては、条約の批准に伴いまして国際海上物品運送法等の特別法が制定、改正された以外には、明治三十二年のまさに商法制定以来、実質的な見直しがほとんどなされていない、大変大きな改正でございます。

 また、商法におきましては、片仮名文語体の表記がまだ多く残っているという状況でもございます。しかし、この間、陸上運送及び海上運送のほかに航空運送も普及をいたしました。国民生活に大きな影響を持つ運送のあり方につきましては、一世紀前と比べて一変している状況にございます。

 また、船舶の衝突や海難救助などの海商分野につきましても、条約等の世界的な動向を踏まえ、規律のあり方、これを見直す必要があります。

 加えて、基本的な法令は、可能な限りわかりやすく、一般にも参照が容易で予測可能性が高いものとすべきであることでございます。

 そこで、この法律でございますが、商法制定以来の社会経済情勢の変化に対応し、運送、海商法制の現代化を図るとともに、商法の表記を平仮名口語体に改めるため、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正しようとするものでございます。

 この改正によりまして、運送に関するルールが現代的、合理的なものとなり、かつ予測可能性が高まるものと考えられるわけでございます。

 その結果として、幅広い利害関係者におきまして、合理的な企業経営や、また法的紛争への対応、これが容易になりまして、ひいては日本経済の成長に寄与するものというふうに考えております。

松田委員 経済に寄与するということで、社会経済情勢の変化に鑑みとなっています。この社会経済情勢の変化とはということで質問させていただきたい。具体的にどういったことを指して社会経済情勢の変化というふうにしているのか、お答えいただきたいと思います。

上川国務大臣 委員御指摘の社会経済情勢の変化ということでありますが、具体的には、商法制定時には想定されていなかった航空運送や、また、一つの運送契約で陸上運送や海上運送など異なる種類の運送をする複合運送という新たな運送形態の普及、また運送される危険物の多様化、あるいは情報伝達の手段の飛躍的な成長などを挙げることができると思います。

松田委員 インターネットの普及で個人の契約が多くなり、それが世界から運んで物が来たりとか、そういったことで、本当に近年、社会経済情勢というのは非常に大きく変化をしているということで、今、そういったことで、大臣の方からも複合運送の関係とかというお言葉もいただきましたが、いろいろな形態が確かに大きく変わってきているということもありますので、今回の時期かなというふうに判断されたと思われます。

 引き続いてまた質問させていただきたいと思いますが、一八九九年、商法制定以来の百二十年間、実質的な改正が行われなかったので、もっと早目にしてもよかったのではないかというふうに言われている部分も若干あります。改正しなくても問題なくこれたのかどうかということも含めて、お尋ねしたいと思います。

上川国務大臣 商法分野におきましては、これまで、特に会社関係につきまして、企業を取り巻く環境の変化等に伴う喫緊の課題が多くございました。そのために、幾度も大きな改正がなされてきたわけでございます。また、保険関係につきましては、平成二十年に全面的な改正をされました。

 これに対しまして、運送、海商関係につきましては、条約の批准に伴う特別法の制定等を行ってきたわけでありますが、約款等による実務的な対応が進んでいたことなどもございまして見直しの着手がおくれてしまった面があるということにつきましては、委員御指摘のとおりでございます。

 しかし、運送のような取引社会の基盤となる分野につきましてのルールが社会の実情に合わない状態にあるのは相当ではないということでございまして、現代社会に適合した明確なものとする必要があることなどから、規定の見直しをすることとしたものであります。

松田委員 会社同士はいろいろ、契約、またそれに対して約款等々で今まで来た部分ということ。ただ、先ほども、社会情勢が変わり、変化がありということで、そういったものだけでは追いつかないいろいろなものが起きてきたということの御判断かと思われます。

 そういったことに関して言えば、この法改正において、中小零細の企業の方たちも非常に大きな影響、いい部分の影響もあると思いますし、また、いろいろなシステムを変えていかなければいけないということで、そういった指導も大きく進めていかなければいけないのではないかというふうに思っているところであります。

 それでは、引き続きまして質問を続けさせていただきたいと思います。

 本件に関する法務省法制審議会などによる検討過程はどのように進めてこられたのか、御説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、平成二十六年の二月に、法務大臣から法制審議会に対しまして、商法等のうち運送、海商関係を中心とした規定の見直しに関する諮問がされまして、法制審議会に商法(運送・海商関係)部会が設置されました。

 この部会は、平成二十六年四月から検討を開始しまして、並行して、旅客運送に関する事項につきましては、この部会のもとに設置された旅客運送分科会において検討が行われました。

 平成二十七年三月には中間試案が取りまとめられまして、パブリックコメントの手続が実施されたところでございます。

 そして、平成二十八年の二月十二日、法制審議会の総会におきまして、商法(運送・海商関係)等の改正に関する要綱が採択され、法務大臣に答申されたものでございます。

 なお、この法制審議会の審議におきましては、荷主となります経済団体、運送業界、労働団体、消費者団体、損保団体といった実務界の代表が議論に参画しております。

 法務省では、この答申に基づきまして法案作成作業を行いまして、平成二十八年十月十八日に商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案を第百九十二回国会に提出したわけでございますが、昨年九月二十八日、衆議院の解散に伴い廃案となったものでございます。そのため、法務省では、本年二月六日、同じ内容の法案をこの国会に提出するに至ったというものでございます。

松田委員 御説明をいただきました。

 二十八年十月に百九十二国会に提出されたというふうな形で、昨年の解散で廃案というふうになりました。

 最初の国会提出から現在まで一年半たっているわけですが、そのときから変更はなく、今回の法案は全く同じものであるというふうに理解してよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案でございますが、附則の部分のうち、一部の関係法律を整備している部分がございまして、この部分の施行期日につきまして軽微な時点修正を行っている、こういったことがあるほかは、廃案となった法案と全く同じものでございます。

松田委員 それでは、続きまして、商法の条文の表記を片仮名書きから現代用語化する必要があるのは、今の社会としては当然であると思われます。もう少し実は早く行うことが可能であったような気がいたしますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 商法につきましては、これまで、平成十七年の会社法制定の際に第一編総則の規定や第二編商行為のうち通則的な規定を現代語化したほか、平成二十年の保険法の制定によりまして保険関係の規定を現代語化したところでございます。今回の改正は、これらに続きまして、片仮名文語体で表記されている商法の残りの規定の全てを現代語化するものでございます。

 現代語化の完了までに時間を要したということでございまして、その間、数多くの喫緊の立法課題に優先的に取り組んできたためでございますが、もっと早い時期に現代語化を終わらせるべきであったという御指摘につきましては、重く受けとめたいというふうに思います。

松田委員 続きまして、今回の改正は、商法の運送、海商の分野に関するものになっております。実際に、陸海空輸送、運輸の各事業者を所管しているのは国土交通省であります。

 国交省としては、今回の商法改正にどのように対応をされておりますでしょうか。また、対応していくに当たり、対応の状況や今後の予定、省としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 本改正は、運送、海商分野に関する規定を現代社会に適応したものに改めるものであり、国土交通省としても時宜を得たものと考えております。

 具体的には、航空運送に関する規律の新設、荷主、運送人その他の運送関係者間の合理的な利害の調整、海商法制に関する世界的な動向への対応などが図られることとなり、運送事業がより円滑に行われることを期待しております。

 国土交通省としては、こうした内容が関係者間で確実に共有されるよう、法務省と連携しながら対応を進めてまいります。また、中小の運送事業者等の関係者に周知徹底を図るなど、本改正による時代の要請に合った円滑な運送の実現に努めてまいります。

松田委員 法の改正は法務省でありますが、実際、運送業をされている方の窓口は国交省が行うということで、そういった現場の人たちというのは、問い合わせるときは、必ず、多分、国交省の方に確認をしたりということが多いと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移らさせていただきます。陸海空輸送の定義についてお伺いをしたいと思います。

 現状は、航空運送に関する規定がないとのことですが、どのような問題があったのですか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。また、現在の商法では、陸上運送と海上運送ではどう定義されているのか、御説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現行の商法では、陸上運送に関する規律と海上運送に関する規律は定められておりますが、委員御指摘のとおり、航空運送に関しては規律が存しておりません。

 運送分野につきましては、社会経済の変化に伴って生ずる実務上の不都合を解消するために、約款等による対応が進められてきたものと承知しておりますが、運送のように国民にとって身近な分野のルールが法律の形で存在しないで不明確なままであるというのは相当でないものと考えられます。

 また、例えば、具体的な問題としましては、一部の国内航空運送実務におきまして、最近まで、運送人の責任を旅客一人について二千三百万円に制限する、こういった内容の契約条項も見られたところでございまして、具体的な問題も生じていたものと考えております。

 また、陸上運送と海上運送の定義でございますが、現行の商法では、陸上運送は、陸上又は湖川、港湾における運送であるとされており、海上運送とは、商法の六百八十四条所定の船舶、すなわち商行為をする目的で航海の用に供する船舶による運送であるというふうにされております。

松田委員 この陸上運送、海上運送の定義について、法制審のパブリックコメントにおいて、現状を維持するか、船舶輸送を全て海上運送とするか、二通りの意見があったと聞いております。

 どのような議論を経て法案のような形になったのか、またこれによって現在どう変わるのか、御説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 陸上運送と海上運送の意義につきましては、法制審議会の商法部会で取りまとめました中間試案におきまして二つの案が併記されておりました。

 具体的には、先ほど申し上げました現行法の定義を維持するという案、それからもう一つは、湖川ですとか港湾、こういったような区域を平水区域というふうに呼んでおりますけれども、こういった平水区域における運送を、現在は陸上運送でございますが、これを海上運送とするかという案、この二つの案が併記されまして、パブリックコメントの手続に付されました。

 パブリックコメントの手続では、後者の、平水区域における運送を海上運送とする、こういった案を支持する意見が比較的に多くございました。

 その理由といたしましては、平水区域内の船舶による運送を陸上輸送と評価することは社会通念上相当でないということ、また、船舶安全法が、平水区域を航行する船舶に対しても堪航能力担保義務、こういった義務を課しているということ等が挙げられております。

 商法部会では、パブリックコメントの手続で寄せられました意見も踏まえまして、その後も調査審議を継続して、最終的には、要綱案としては、先ほどの後者の案、湖川、港湾その他の平水区域における運送を海上運送とする案を採用したものでございます。

 改正法案では、この結果、平水区域内の船舶による運送を海上運送として取り扱うこととなりますが、現状と比較しますと、商法上の堪航能力担保義務、先ほど申し上げました義務でございますが、これは、船が出発する、出航する際に、その航海にたえる能力を備えておくようにしなければいけない、こういった義務でございますが、こういった義務が新たにそういった運送人には課される、こういった変化が生ずることにはなります。

松田委員 ありがとうございます。

 次に、現状では、複合運送、つまり陸海空を組み合わせた運送に関する規定はないとのことですが、それによってどのような問題があったのか、またなかったのか、お聞かせをいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 委員御指摘のとおり、現行商法には、複合運送に関する規律は存在しておりません。

 運送分野におきましては、社会経済の変化に伴って生ずる実務上の不都合を解消するため、先ほども申し上げましたとおり、約款等による対応が進められてきたものでございますけれども、こういった運送のような分野のルールが不明確なままであるというのは相当でないと考えられます。

 特に、この複合運送につきましては、異なる運送手段を組み合わせたものでございますが、運送品の滅失等の原因が生じた運送区間が判明した、どの区間で滅失の原因が生じたのかということがわかった場合、あるいは、その滅失等の原因が生じた運送区間がどこなのかがわからない場合、こういったような場合に、運送人がどのような法的な責任を負うかが明らかではなくて、法的な安定性を欠く状況にあったというふうに言うことができます。

松田委員 複合運送の運送人の責任が、運送品の消滅などが生じた区間に適用される規定に従うとのことであります。

 実際にこれがどのような形になるのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、改正法案では、複合運送人は、運送品の滅失等の原因が生じた運送区間の運送に適用されることとなる法令又は条約の規定に従って損害賠償の責任を負うこととしております。

 具体的には、例えば、国内の陸上運送と国際海上物品運送とを組み合わせました複合運送を引き受けた、こういった複合運送人の場合を想定いたしますと、まず、運送品の滅失等の原因が国内陸上運送区間で生じた場合には、陸上運送に適用される法律、すなわち商法の規定に従って責任を負うこととなります。これによりますと、例えば運送品が滅失した場合の損害賠償の額は、運送品の市場価格によって定められることとなりまして、責任限度額による制限などはないということになります。

 これに対しまして、運送品の滅失等の原因が国際海上運送の区間で生じた場合には、国際海上物品運送に適用される法律、すなわち国際海上物品運送法の規定に従って責任を負うこととなります。これによりますと、例えば運送品の滅失の場合の損害賠償の額については、この法律が定めます責任限度額による制限を受けるということになります。

松田委員 それでは、次の質問に移らさせていただきたいと思います。次は、送り状について、送り状の交付義務などについてお尋ねをしたいと思います。

 送り状に関しては、改正法案の五百七十一条のように五項目を列記する形に決まったわけですが、法制審における議論の経緯や決まった理由について御説明をお願いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 改正法案におきます送り状の交付義務に関する規律でございますけれども、法制審議会の商法部会におきまして、現行の実務なども考慮しながら検討が加えられた結果によるものでございます。

 現行の実務におきましては、この送り状、複写式で作成されて運送品に貼付されるものでございまして、そのうち一枚は荷受け人に交付され、ほかの一枚は荷受け人の受領印を求めた上で運送人が保管するなどの取扱いがされております。

 今回の改正法案では、この送り状の記載事項につきまして改正をしております。

 この送り状に関しまして、荷受け人に知らせるべき情報としましては、荷送り人の氏名又は名称、あるいは発送地、すなわち、運送品が誰から、あるいはどこから送られてきたものかといった情報は重要でありまして、これらの情報につきましては現行の実務においても記載されるのが一般的でございます。

 しかしながら、現行法では、こういった事項が送り状の記載事項とはされておりません。そこで、改正法案では、これらの事項を記載事項として追加することとしております。

 他方で、この送り状、現行法では運送状でございますが、作成地ですとか作成の年月日といいますものは契約内容を示すものではありませんので、そういったものにつきましてはこの法律上の記載事項から削りまして、実務の慣行に委ねることとしております。

 また、荷送り人の署名につきましても、実務上の利便性を重視してこれを省略することができるように、法律で義務づけないこととしております。

松田委員 法制審のパブリックコメントでは、現状で契約の書面化が低く、運送契約に明確でない面が少なくないことが、運送業界の経営や労働に厳しい環境が生じる要因になっているということで、契約を明確化するために、送り状に記載する項目をふやしてほしいという意見が出されていましたが、そのような意見はどのように反映されたのか、お伺いしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、このパブリックコメントにおきましては、送り状の記載事項につきまして、具体的な項目を挙げた上で、これをふやすべきであるという意見が寄せられております。

 先ほど申し上げましたとおり、改正法案では、送り状の記載事項として、荷送り人の氏名又は名称を追加することとしておりまして、これはそういった意見を実質的に反映したものでございます。

 ただ、ほかの記載事項の意見につきましては、この送り状でございますが、これは運送人の運送債務の履行に必要な情報を運送人に通知するための書面というものでございまして、例えば、パブリックコメントの中で、記載事項とすべきとの意見の中に、運賃ですとか支払い方法というものもございました。そういった運賃ですとか支払い方法といいますのは、運送債務の履行に必要な情報ということには当たらないというふうに考えられまして、これを記載事項として法定するのは相当でないというふうにいたしました。

 また、改正法案では、送り状の交付義務は、陸上、海上、航空運送、またこれらを組み合わせた複合運送にも妥当する総則的な規律として位置づけられております。したがいまして、この送り状の記載事項につきましても、そういった総則的な規律にふさわしいものとする必要があるわけでございます。

 そこで、例えば、これもパブリックコメントの中にあった意見でございますが、有料道路の利用料といったようなものを記載事項としてはどうかという意見もございました。しかしながら、有料道路の利用料といいますのは、陸上運送という特定の運送形態を前提とするものでございますので、先ほど申し上げました、総則的な規律としての記載事項として法定するのは相当でないと考えられたわけでございます。

 このような観点で、改正法案では、このパブリックコメントで寄せられた意見を全面的に反映させるということはしていないというものでございます。

松田委員 運送業界の経営が、労働者の働き方改革を今やろうとしている中で、非常に厳しい状況であります。そういった中で、明確化することの項目をふやすことで少しでもそういった環境が変わる可能性があります。そういったことを今後、また御理解いただきながら、働き方改革の一つとみなしていただく中で進めていただくことも必要でないかというふうに思われますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 続きまして、次の質問に入ります。

 法務省では、この送り状に関して、政省令で細かい規定を行う予定がありますでしょうか。いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 商法の送り状の交付義務に関する規律は任意規定でございまして、法律の規律と異なる内容の特約をすることも許容されております。したがいまして、それぞれの運送事業におきまして必要な特約を設けることによって適切な対応が可能であると考えられます。

 例えば、法制審議会の審議の過程でも、送り状の作成年月日、これは記載事項として法定されなくても、国内航空運送約款では作成年月日の記載が求められているため、実務上の支障はないといったような指摘もされていたところでございます。

 そのため、現時点において、法務省として、この送り状の記載事項について政省令で詳細な規定を設けるということまでは想定をしていないというものでございます。

松田委員 一方、実際の運送、運輸の各事業者を所管しているのは国交省であります。

 例えば、現在、国土交通省で、平成二十九年八月四日に改訂されたトラック運送業における書面化推進ガイドラインによって、十一項目の必要記載事項を示しています。

 陸、トラック、鉄道など、また海、空といった各輸送モードごとに必要な項目が異なると思っております。実際の業を所管する国交省として、今回の商法改正の送り状の交付義務などの部分についてどのように対応していくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 今回の商法改正では、送り状の記載事項等について改正がなされております。

 トラックや海運といったモードにおいては、各種の標準運送約款等におきまして、送り状等の記載事項を各モードの特性に応じてそれぞれ定めているところでございます。

 各モードの標準運送約款等につきましては、今回の改正内容及び各モードにおける運送事業者の実務等を踏まえ、今後、必要に応じて見直し等の対応を検討してまいります。

松田委員 ぜひ、見直しをして、いろいろ、運送業の皆さんにできるだけ便利になるように、また現場として進めていただきたいと思います。

 続きまして、危険物に関する通知義務についてお尋ねをいたしたいと思います。

 まず、危険物の輸送について、どのような事故やトラブルの事例が過去にあったんでしょうか。危険物の通知に関して、通知した、通知していないなどといったトラブルの事例があれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 危険物に関する通知義務について、実務上著名な事例としましては、最高裁判所の平成五年三月二十五日の判決の事案がございます。

 これは、インド洋上を航行中のリベリア船籍の貨物船内で発生した火災爆発事故の例でございますが、定期傭船契約に基づいて船主に対して船体損傷等の損害を賠償した海運会社が、火災の原因は船底、船倉に積み付けられていた高度さらし粉からの発火にあるとして、その危険性及び取扱い方法に関する適切な通知を怠った、高度さらし粉の製造業者らの不法行為を主張して損害賠償を求めたという事案でございます。

松田委員 この危険物、今、事案も出していただきました火災等々ありまして、結構、法制審のパブリックコメントの方でも多く意見が出たと思います。その意見がたくさん出た中で、どのような経緯また理由でこの要綱案の形になったのか、御説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 危険物の通知義務に違反した荷送り人の責任のあり方について、法制審の部会で調査審議が開始された当初は、三つの案が提示されておりました。一つは、荷送り人が無過失責任を負うという案、二つ目は、荷送り人が危険物の該当性について善意無過失であるときは責任を免れるという案、三番目が、運送人が荷送り人の過失を証明したときに荷送り人が責任を負うという、この三つの案が提示されていたものでございます。

 その後、商法部会における調査審議を経まして、中間試案におきましては、今の三つのうちの上の二つの案、最初の二つの案です、荷送り人が無過失責任を負うという案と、荷送り人において過失がなかったことを証明したときは責任を免れるという案の二案が併記されて、パブリックコメントの手続に付されたものでございます。パブリックコメントの手続では、この二案いずれを支持する意見も多数寄せられました。

 商法部会では、この意見も踏まえまして、その後、調査審議を継続し、最終的に、要綱案としましては、二つ目の案、荷送り人において過失がなかったことを証明したときは責任を免れるという案を採用したものでございます。

 この案を採用した理由でございますけれども、一つは、物流におきましては、製造業者、商社、利用運送事業者など、さまざまな関係者が危険物の荷送り人となるために、その賠償責任の有無及び範囲については、それぞれの知識経験、運送品が危険物であることの認識可能性等を踏まえて、各自の帰責性に応じた弾力的な判断ができるようにすべきであるということ。

 また、荷送り人が帰責事由がなくても責任を負うとするのであれば、そういった荷送り人の予測可能性を確保するために、商法上の危険物を相当明確に定義づけをする、こういう必要が出てくるわけでございますが、技術革新等によって将来新たに危険物として把握されるべきものが登場する余地を踏まえますと、なかなかそういう明確な定義づけも困難でございます。

 また最後に、荷送り人が帰責事由がなくても責任を負うということになりますと、中小企業、消費者、利用運送事業者等、さまざまな荷送り人が相当額の賠償責任保険を付すということが考えられるわけでございますが、そういったような状況は社会全体のコストの観点から適当ではないのではないか。

 こういったような、以上三つの主な理由から、先ほど申し上げました案を採用したというものでございます。

松田委員 法制審の要綱案にあった、後段の、荷送り人の責めに帰することのできない事由、すなわち帰責事由について記されたイの項がなくなりまして、前段のアの項のみとなったというふうで、それはなぜなのかということと、また、イの項があった要綱案と法案が何が違うのか、また違わないのか、少し詳しく御説明いただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、改正法案におきましては、要綱案の御指摘の部分は条文化しておりません。

 これは、改正後の新しい商法の五百七十二条におきましては、荷送り人の危険物に関する通知義務を規定しているものでございますが、この通知義務を規定すれば、これに違反した荷送り人の責任につきましては、一般法であります民法の四百十五条の規定によって要綱案の御指摘の部分と同じ規律となるために、特段、商法に規定を設ける必要はないと考えられたものでございます。

 すなわち、民法の考え方によりますと、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は損害賠償を請求することができるということになりますけれども、ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときはそうではないというのが民法の一般的な規律でございますので、危険物に関する通知義務に違反した場合もこういった規律が適用されることになります。

 したがいまして、改正法案における規律の内容は、要綱案と同じこととなるものでございます。

松田委員 この法案で、荷送り人が通知義務に違反しても運送人が損害の賠償を請求することができないのは具体的にどのような場合になるのか、また、運送人が帰責事由、責めに帰することのできない事由の立証責任を負うという理解でいいのか、また、これらは本法案には書いていませんけれども、どのような形で法律上担保されているのか、御説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、運送人が損害賠償請求をすることができない場合の具体例でございますけれども、例えば、コンテナの運送契約を締結しまして、その運送人がみずから運送するのではなくて、更に、別の運送人との間で、実際の運送をさせるために、みずからが荷送り人の立場で運送契約を締結する、こういったことが行われます。このように間に立った運送人のことを、利用運送人というふうに実務上呼ばれておりますけれども、実務上、この利用運送人は、コンテナの中身をみずから確認することはないというふうに言われております。

 このような場合におきまして、コンテナの内容が危険物であって、これによって実際に運送をした運送人に損害が生じたときは利用運送人の荷送り人としての責任が問題となるわけでございますが、この利用運送人に運送を委託した当初の運送契約の荷送り人、こういった荷送り人が作成した送り状に危険物といった記載がない、そして利用運送人として危険物と認識し得る余地もない、こういったときなどは荷送り人となる利用運送人に帰責事由がないということもあり得るということでございます。

 御指摘のとおり、改正法案のもとでは、危険物に関する通知義務に違反した荷送り人が損害賠償責任を免れるためには、荷送り人の方でみずから帰責事由がないことを主張、立証する必要がございます。このことは、一般法であります民法の第四百十五条の規定が適用されることによるものでございます。

松田委員 続きまして、運送品が延着した場合の損害賠償の額についてちょっとお尋ねをしたいと思います。

 パブリックコメントでは、運送品の価額を上限とする規定を設けるという案と、特段の規定を設けないという案が示されたとお伺いしております。どのような議論を経てまたこの形になったのか、これは現行の五百七十七条とどう変化したのか、また延着の定義というものはあるのでしょうか、お聞かせください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、延着の定義につきましては、一般的には運送品が到達すべき時期に到達しないことをいうと解釈されておりますけれども、この改正法案では延着について定義を置くこととはしておりません。

 現行商法には、運送品の延着を理由として損傷又は一部滅失を伴わない損害が生じた場合の賠償額に関する特則は設けられておりません。したがいまして、運送人は、民法の四百十六条によりまして、相当因果関係の範囲内の損害の賠償責任を負うこととなるものと解されております。

 この点につきまして、御指摘のとおり、改正法案の立案に向けた検討の過程では、運送品の延着の場合にそれが全部滅失した場合よりも多額の損害賠償の責任を負う余地があるのはバランスを欠くのではないか、こういったことを理由として、任意規定としてではありますが、損害賠償の額は運送品の価額を上限とする、こういった内容の規定を設けるという考え方につきましても検討がされたところでございます。

 しかしながら、実務上、運送品の延着の場合には運送賃の総額を損害賠償額の上限とする旨の約款が多く存在しておりまして、そうであるにもかかわらず商法にこれと大きく異なる任意規定を設けるというのは適当ではないし、またそういう必要もないのではないかということ、さらに、諸外国の法制でもそういったような規律は見当たらない、こういったようなことから、この点についての改正は見送ることとされたものでございます。

 したがいまして、延着の場合の損害賠償の額につきましては、現行法と実質的な変わりはないというものでございます。

松田委員 それでは、引き続きまして、運送品の損害による運送人の責任に関する期間規定の合理化についてであります。

 現状は、運送人が損傷を知らなかった場合は一年の消滅時効、知っていた場合は五年の消滅時効となっております。どのような問題が生じたのか説明いただきたいことと、あわせて、今回、引渡しから一年の除斥期間として国際海上物品輸送と同じルールとするということになっておりますが、今後どのような効果が持たれるのか、御説明もあわせていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現行の商法では、運送品の損傷についての運送人の責任は、荷受け人が運送品を受け取った日から一年の消滅時効に服しまして、運送人に悪意がある場合には五年の消滅時効に服するということになっております。判例は、この悪意の意義につきまして、運送品に損傷があることを知っていたことをいうと判示しております。

 そういったことから、運送人としては、一年を経過した後であっても、運送品に損傷があることを知っていたはずだ、こういうふうに主張されると、事実上、訴訟に対応することを余儀なくされるということとなるわけでございます。そのため、大量の貨物を反復継続的に運送する運送人の地位が不安定となっているといったような問題がございました。

 このようなことから、改正法では、引渡しから一年の除斥期間ということで、国際海上物品運送と同じルールにするということとしておりますけれども、このようにすることによりまして、このような運送人の地位が不安定なものとなるといったような状況が解消されて、運送人のリスクについての予見可能性が高まるという効果が期待されるものでございます。

松田委員 ちょっと時間も来ておりますので少し質問を飛ばさせていただいて、海難救助者の権利の見直し、八百五条の件についてお伺いをしたいと思います。

 海難救助者の権利についてですが、海難救助者は、海洋環境の汚染を防止、軽減した場合の費用を請求し得るようにするとの規定によって、現在、何が変わり、どのような効果が生まれていくのか、御説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現行法におきまして海難救助とは、船の座礁等の海難に遭遇した船舶又は積み荷を義務なくして救助することをいうものでございます。

 救助者は、実際に救助が成功した場合に限って、被救助者に対して救助料を請求することができます。そして、救助料の額は、特約がない限り、裁判所が一切の事情を考慮して定めますが、救助された物の価額が上限となります。

 ただ、現代の海難事故におきましては、船舶からの油の排出等によりまして海洋汚染が生ずることも多々ございます。しかし、そのような船舶の救助のために多大な費用を支出しましても、実際に救助が成功しなかったり、救助された物の価額が低かったということになりますと、十分な救助料の支払いを受けないということにもなるわけでございます。

 そこで、改正法案では、海洋汚染の防止、軽減措置をとった者に、船舶所有者に対する特別補償料の支払い請求権を認める旨の規律を設けることとしております。これによりまして、救助者は現に支出した費用の補填を受けることができますので、海洋汚染の防止、軽減措置が促進される、こういうことが期待されるものでございます。

松田委員 今回の改正は、陸海空の輸送、運輸の事業者はもちろんのこと、荷物を送ったり受け取ったりするさまざまな企業や個人、旅客として交通機関を利用する人たちなど幅広い範囲に影響が及びます。

 表記の現代用語化は行われますが、抽象的で難解な条文が多く、具体的にどうなるのかイメージしにくいことが少なくありません。

 その意味において、政府においては、法務省と国交省を中心に連携して、特に中小零細の運送事業者の人や一般の人たちが困ることのないように、わかりやすく周知啓発を行っていくことをお願い申して、質問を終わらさせていただきます。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 きょうは、引き続き、商法及び国際海上物品運送法の一部改正について質問をしてまいりたいと思います。

 まず、前段でも論点になりましたけれども、改正の時期というもの、なぜ今なのか。このことに関して、社会経済の情勢の変化とか世界的動向の変化だ、こういう趣旨の答弁がされましたけれども、ただ、これはこの百二十年来、今に始まったことじゃなくて、ずっと日々刻々、社会経済の変化、世界的動向も変化しているわけですよ。その点において、なぜ今なのかという点については私はちょっと合点がいきません。これについても説明を求めたいと思います。

 そして、では、逆の言い方で言うと、百二十年間も法整備しなかったのはなぜなのか、これも問われましたけれども、それに対して、実際には約款などの実務が先行していたからだと。ただ、実務が先行して、これで対応できるということだったら、そもそも基本法なんて要らないんじゃないの、こんな議論になっちゃいます。

 だから、先ほど小野瀬局長の説明ですと、そうはいいながら、実務で対応し切れない例も出てきたと。これもまさに今始まった話ではなく、恐らく何十年も前から、実務で対応し切れない例があるならば、それもずっとあったはずなんですよ。ですから、それも私は理由にならないと思います。

 さらには、商法においては、会社法のたびたびの改正で、これにある意味、時間と労力も割かれてきたという説明になっていますけれども、これも、確かに近年の法務委員会を見ても、共謀罪とか技能実習生とか債権法の見直しとか刑訴法の一部改正とか、ともすれば一国会その法案でとられるという、こういうタイトなことは私はわかるんですけれども、しかし、現に、百二十年ぶりの商法の大改正といっても、きょう四時間五分の質疑で終わるわけですよ、半日で。

 やろうと思えば、今申し上げた半日で終わる法案審議なわけですから、私は速やかに社会経済の変化に対応する、世界の動向の変化に対応するというなら、それこそ機敏に対応していくべきだと思っております。

 以上、何点か申し上げましたけれども、端的に、今私があえて局長が答弁されたことに対する反論を申したわけなので、このことについて、再度、私たちにわかりやすく、なぜ今なのか、そして百二十年間も整備が進んでいなかった、言葉は悪いかもしれませんけれども、怠ってきたのか、この点について、しかと的確に御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正、こういった身近な基本法でもあるにもかかわらず、見直しに時間がかかってしまった理由は、今委員の方が御指摘いただいたものでございます。そういう点では、繰り返しになってしまいますけれども、会社法について喫緊の課題が多く、また保険法にしても全面的な見直しが行われていた、また実務においては約款等による対応が進んでいたということがございます。

 ただ、それぞれにつきまして、そういったことでは十分な説明にはならないといった面があるのはもう御指摘のとおりかと思います。そういう点では、見直しの着手がおくれてしまったということにつきましては、そういう御指摘については重く受けとめなければならないというふうに考えております。

 ただ、そういった状況の中で、こういった運送のような取引社会の基盤となる分野について、社会の実情に合わない状態にあるというのは相当でないということで、今回、見直しをすることとしたわけでございます。

黒岩委員 もちろんこれは、今ここに至っては問題提起ということで。ただ、この後、逐条を見ていくと、やはりこの改正がなぜこんなにおくれたのか、支障があるんじゃないか、こういう点も指摘させてもらいたいと思いますけれども。

 そこで、現代国家において、航空運送の国内法が全く規定がないというのは、これも大臣、驚くべきことなわけですよね。この説明も、モントリオール条約自体が自力執行力のある条約なので、国際に関するものをそのまま国内に適用していたので国内規定がないというんですが、ただやはりモントリオール条約を批准したのは二〇〇〇年でありますので、私はせめてこのタイミングで、くどいようですけれども、航空運送というものは戦後からもう何十年もあるわけなので、これに対する国内法を整備していない現代国家というのは私はいかがなものかと思いますので、なぜこの二〇〇〇年のタイミングですら国内法の規定が設けられなかったのか、この点についてもお聞かせいただけますか。

小野瀬政府参考人 委員御指摘のとおり、モントリオール条約が採択されたのは平成十一年でございますので、その際に運送、海商法制の見直しをあわせてすべきであったという意見は、現時点から見ますとごもっともな御意見というふうに私どもも受けとめております。

 その上で、そこの時点でも見直しがされなかったというのは、これは商法制定以来見直しがされていないという中の一つでございまして、その理由は先ほど申し上げたとおりでございます。

 そういう点で、モントリオール条約の採択の際にもあわせてすべき見直しがされていなかったという点につきましては、先ほどと同様に、その御指摘は重く受けとめなければいけないものと考えております。

黒岩委員 我が国は非常に運送に頼る貿易立国でもありますし、また海上においては海洋大国でもありますので、その点において、やはりこの商法というものをしっかりと、きちんと国内法も規定をしていくという、このことは重ねてお願いをさせていただきます。

 では、この後のまた質問に移りますけれども、私は、全体的に今回の改正においてやはりちょっとひっかかるのは、運送人の利益保護のウエートが高いんじゃないか。逆に言うと、旅客については生命身体の侵害に係る運送人の責任の減免の特約については無効になるとか、そのほか幾つか利用者保護の観点もありますけれども、全体的にやはり運送人に対する利益保護にウエートがかかって、逆に荷送り人や荷受け人の利益が保護されていないというか酷なケースがある、こういう問題意識を持って何点か聞いていこうかと思います。

 先ほどからも議論になっています危険物についての通知義務なんですけれども、通知義務が規定されること自体はこれはこれでよかろうと思っていますけれども、先ほどの中間試案の中で、ですから、今回の改正は、結果的には無過失責任、帰責事由がないということはなくなりましたけれども、ただ、今回だって、もともとは事実上運送人に通知がないことと荷送り人の帰責事由の立証責任があるものを、今回の改正でこの立証責任の転換が図られたわけですよね。これ自体が運送人から荷送り人に転換された。私、これだけでも結構荷送り人にとっては大変なことだと思っているにもかかわらず、なおかつ、その荷送り人が帰責事由がなくても無過失責任だということが中間試案で議論されたことすらも、私は不思議でなりません。でも、今局長のお話ですと、パブリックコメントだとこれを支持する案も結構あったというんですけれども、本当ですか。

 私は、今後こういった議論は再燃すべきでないというこの観点で、改めてこれについてはやはり酷である、そのように考えますけれども、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 委員御指摘のとおり、危険物の通知義務の違反につきましては、無過失責任とするというような考え方もあったところでございます。これは、やはり危険物というものによる損害といいますものが、非常に現代の運送におきましては損害が大きくなる、こういったことも踏まえた御意見ではなかったかというふうに考えております。

 ただし、今回のこの改正案におきましては、無過失責任というものはとっていないものでございます。それはやはり、現代においては、危険性の度合い、危険物の種類といいますものも多様でございますので、やはり荷送り人といいますものもさまざまな立場の方がおられますので、そういったもののそれぞれの立場に応じた帰責性に応じてその責任を負うということを柔軟に判断できる、こういったことなどの理由によって無過失責任というような立場をとらなかったというものでございまして、荷送り人の方の立場というものも、その限度で、そういった意味では配慮されたものとなっているものと理解しております。

黒岩委員 その趣旨で私も結構だと思っています。納得しています。当然さまざまな関係者がいるわけですから、それぞれの帰責事由について判断していくということは、私は合理性があると思いますし、この視点はずれないように改めて念を押させていただきます。

 では、次に、運送品の損傷による運送人の責任に関する期間制限の合理化ということで、新法の五百八十五条ですけれども、現行では、運送人が損傷を知らなかった場合一年、そして知っていた場合五年の消滅時効、これが改正によってどちらの場合も一年の除斥期間になる。消滅時効か除斥期間かについて議論はしませんけれども、やはり、知っていてもこの五年という消滅時効が一年という除斥期間に短縮されてしまう、これ自身も私は荷主にとっては酷ではないかと思うんですけれども、この点についてはいかがな見解でしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現行商法では、運送品の滅失等についての運送人の責任は、運送人の悪意があるかないかによりまして、その消滅時効の期間が五年か一年かというふうに異なっております。

 他方で、国際海上物品運送法では、運送品を受け取った日から一年以内に裁判上の請求をしなければ運送人の責任は消滅するといったような除斥期間の制度を定めているところでございます。

 この点につきまして、国内運送におきましても、大量の貨物を反復継続的に運送する運送人のリスクの予見性を高めるべきであるといったようなこと、また、運送品の引渡後一年が経過してから運送人の主観的態様、知っていたか知らなかったのか、こういうことが争われるのは、運送人の地位を不安定なものにして適当とは言えないのではないかということ、また、荷主が賠償請求に要する準備期間は運送人の主観的態様によって異ならない、こういったことなどを踏まえて、現行の国際海上物品運送法と同様の一年の除斥期間の制度に改めたものでございます。

 仮に、一年以上経過した後に運送人又はその被用者の主観的態様に加えまして、運送人あるいは被用者の注意義務違反の有無等々が争われるということになりますと、運送人におきましてこれに適切に対応するためには、その対応資料というものをきちんと保存しておかなければいけないということになりまして、そのコストは相当高額なものになってまいります。

 例えば、インターネット取引の普及等によりまして、宅配便の取扱い個数は、昭和五十九年では約四億個でありましたけれども、平成二十八年度には約四十億個になっております。

 このような運送件数の爆発的な増大を踏まえますと、国内の運送人に一年を超えて全ての荷主への対応の準備を強いるということは合理的とは言えないのではないか、こういったことも踏まえて、運送人の主観的な態様にかかわらず、一年の除斥期間の制度に改めることとしたというものでございます。

黒岩委員 事務方の説明ですと、現行においても、引渡しから二週間以内に損傷があることを運送人に通知することになっているので、だから実際には一年でも十分ですよという説明もありました。ただ、これ、裏を返せば、現在でも問題ないんなら、わざわざ五年を一年に短くする必要もないんじゃないの、こういう逆説もまた可となると私は思っています。

 そこで、今の局長の話の中で、資料保存五年間だとコストがかかるという、これは一つの立法事実でありますけれども、じゃ、そのコストというのはどのくらいのものなんですか。逆に言ったら、それを一年に短くすることによってどれだけのコストダウンが図れるのか、この点も可能な限り説明をしていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 実際のこのコストというものを算定するというのはなかなか困難でございますので、ちょっと具体的なそのコストというものを数量的、定量的に申し上げるのは難しゅうございます。

 また、先ほど申し上げましたとおり、かなり宅配便が多くなっているということになりますと、そういった対応をするということになりますと、かなりのコストにはなるというふうには考えております。

黒岩委員 今、段階を踏んで議論をさせてもらっているんですけれども、なぜ五年が一年なんですかと。今の運用上、一年であれば十分だ、だけれども、五年だからといって、正直言って不都合はないと。ならばわざわざ短く法改正する必要はないんじゃないかといったときに、いや、資料保存にコストがかかるとなったわけですから、じゃ、そのコストはどんなものなのと。

 私も、イメージすると、貨物をそれこそ倉庫を借りて保存しているなんていえば、それは一年の賃料が五年の賃料になれば相当コストがかかるなというのは私もイメージできますけれども、これはあくまでもただ資料でしょう、損傷したとかしないとかの。ですから、その資料って、物量的にイメージしても大したことないし、しかも、ましてや、電子媒体に入れ込んでおいたら、はっきり言って、一年保存しようが五年保存しようが、コストは私は全く変わらないと思うんですよね。

 あくまでもこのコストがかかるからという理由で五年を一年に短縮したというなら、私は、常に、法務委員会のみならず、少なくとも、法律というものは、立法事実が明確化していく必要が当然あるわけですので、それを明確化してくださいと。

 そこで、今定量的なものはないとおっしゃったので、ですから、事務方とも事前にも何度もやりとりして、その答弁は承知していましたけれども、今後、あらゆる法改正事項においては、立法事実を、数量的なことを、コストというのはこれは数量的な概念ですから、その概念を用いた限りは、それについて数字を示せる限りは示していただきたいということをお願いしておきます。

 では、次に、新法の五百九十一条ですけれども、これは旅客運送人の責任に関する規定の新設となっていますが、旅客の生命身体の侵害についての運送人の責任、これを減免する特約ですね、これは無効になると。

 例として、妊婦が乗船する場合などにこのような特約があるのはいけないと。乗船中に生じた問題については一切迷惑をかけませんよといったような旨の誓約書、こういったものが今例として挙がっていますので、こういったものは無効ですよと。ここは非常に理解できますし、重要なことだと思っています。

 そこで、まず最初の質問なんですけれども、今回の改正で、現商法の五百九十、二項、損害賠償額を定めるに際し、裁判所は被害者及びその家族の状況をしんしゃくしなければならない、この条項が削除されたんですけれども、なぜ削除されたのか。私は残しておいてもいいのではないかと思うんですけれども、このしんしゃくしなければならないという規定がなぜ削除されたのか、お答えいただけますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現行法の五百九十条の第二項でございますけれども、この規定は、学説上は、債務不履行の損害賠償の範囲に関する民法の規定の特則であって、当事者の予見可能性を問わず、被害者等の状況をしんしゃくすることを要するものと解する見解が有力でございます。

 しかしながら、その後の裁判実務を見ますと、人身損害について損害賠償額の類型化が進められておりまして、旅客運送についてのみ特殊な損害賠償額の算定ルールがあることを前提とした判断がされているわけではないというふうに考えられます。

 他方で、現行の五百九十条第二項の規律を存置することとした場合には、さまざまな人身損害が生ずる場合がありますけれども、そういった中で、旅客運送についてのみ特殊な損害賠償額の算定ルールがあると解釈されるおそれがありますけれども、旅客運送についてのみそのようなルールを設ける必要性及び合理性は認めがたいのではないかというふうに考えられたわけでございます。

 このような理由から、この改正法案ではこの規定を削除することとしたものでございます。

黒岩委員 旅客に関してのみ特殊な判断といったものが合理的に必要ではないということですけれども、逆の言い方をすると、この規定が今まであったことによって裁判の判例上不都合なこと、そういった事例は今まであるんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、裁判実務では、人身損害につきましては、さまざまな場面における人身損害につきまして、その損害賠償額の類型化が進められております。そういった意味では、この商法の五百九十条第二項があるからといって、特段裁判実務において何か支障が生じているということはございません。

黒岩委員 そうなんですね。判例上というものはないと聞いていますので、そうなると先ほどの立法事実ということになるんですけれども、あえて削除するとなると、やはり何らかの不都合があったというような事例がやはり私はあるべきだと思っています。ただ、お話を伺うと、今後、将来の予見において特殊な解釈があり得るだろう、そういったことを防ぐんだということでもありますので、これはこれとして私も合理的だと思います。

 ただ、今申し上げたとおり、事例のないものについて改正するというようなときには、しっかりとしたわかりやすい説明も今後していただきたいと思っております。

 それで、新法の五百九十一条に入りますけれども、この特約禁止を設けたというのは、私、至極当然というか、非常に合理的だと思うんですけれども、逆に言うと、今まで何でこれがなくて、先ほどの事例のような誓約書といったものが、その特約が有効だったのか。私はこちらの方が不思議なんですけれども、この点についてお聞かせください。

小野瀬政府参考人 委員御指摘のとおり、新しい五百九十一条のもとでは、旅客の生命又は身体の侵害による運送人の損害賠償責任について減免する特約について、原則的には無効というふうにしているものでございます。

 ただ、現行法ではそのような規定がないために、最近まで、委員御指摘のような、例えば海上運送実務では、妊婦の方が乗船する場合に、乗船中に生じた問題については一切迷惑をかけないといったような記載がある誓約書を求める例もあったというところでございます。

 このような旅客運送の運送人の損害賠償責任を減免する特約につきましては、現在でも、消費者の利益を一方的に害する条項あるいは公序良俗に反する条項であるとして、消費者契約法ですとか民法の第九十条によって無効とされる余地はありましたけれども、その要件に該当するかどうかなどをめぐって紛争が生じ得るなど、当事者の予測可能性に欠ける状況でございました。

 そういったようなところから、今回、先ほど申し上げましたような規定を設けることとしておりますけれども、そのような規定というものを、本来、そういう問題状況が起きている中で、もっと早い時期に設けるべきではなかったのか、こういう御趣旨の御指摘かと存じますけれども、その点につきましては、先ほど来、今回の見直しがおくれたということと同じ一環の問題として、重く受けとめたいと思っております。

黒岩委員 今局長が最後におっしゃってくださったこと、これが私先ほど申し上げた総括的な私の問題意識、逐条でいったら、この五百九十一条に関しても同じく通底した話なんですよ。こういった不都合が、やはり現実にかなりの期間において起きているわけですから。

 ましてや、もう一つの私の問題意識である、運送人の利益保護も大事ですけれども、今言った利用者、消費者保護の観点というのも大変重要なわけですから、この点における改正というものは、やはりより一層速やかに行うべきだったと。もちろんこれは、翻って、今後こういった不都合が生じれば速やかに法改正をしてくださいということになるわけなので、これは改めて指摘をさせていただきます。

 そこで、その中のまた各論に入りますけれども、今回の特約無効ですけれども、ただ、運送の遅延を主たる原因とするものは除くと、除外されています。何でこれは除外されるんですか。

小野瀬政府参考人 委員御指摘のとおり、この改正法案におきましては、免責特約のうち、運送の遅延を主たる原因とするものは一律無効とはしておりません。

 運送の遅延によりましても人身損害が生じ得ることはそのとおりでございますけれども、例えば、列車等の遅延ということを考えますと、これはしばしば発生しまして、その場合に、運送人の帰責事由の有無の究明も容易ではないというものがございます。そこで、そういった場合に免責特約が有効である。こういった有効となる余地を認めませんと、そういった遅滞の都度、多数の旅客との間で大量の紛争が生じて、運送事業の合理的な運営を阻害して、運送賃の上昇を招くなどの弊害が生じかねないというものでございます。

 そこで、このような事情を踏まえまして、免責特約のうち運送の遅延を主たる原因とするものは例外として、一律無効とはしないこととしたものでございます。

黒岩委員 全てを一律に無効とするわけではないと。そもそも特約というのは原則有効で、ただ、例外として、今回、生命と身体の侵害については無効だと。ただ、遅延はその例外の例外で無効ではないと。ただ、一律ではないと。この説明はわかりました。

 ただ、今おっしゃったような、運賃の上昇につながるというお話がありましたけれども、これも、そういった答弁があったので、あえて私は聞きますけれども、では実際に、今まで、多様な紛争が起きて、それが運賃にはね返った、そういった根拠、そういった事例はあるんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来、こういうコスト的なものを申し上げました場合には、その定量的な検討というものが必要ではないかという指摘、そういうものをいただいているところでございます。

 先ほど申し上げました運送賃の上昇といいますものも、こういったことが、免責特約が有効となる余地を認めない場合にはそういった大量の紛争が生じるであろう、こういうことから推論していく、考えていった場合に、そういう上昇を招くなどの弊害が生じ得るのではないか、こういうことを考えたというものでございます。

黒岩委員 このぐらいにしておきますけれども、理由としておっしゃったことについて、その裏づけとなるものをできる限り示してほしいというのは、これは引き続き、私、常に要求してまいりますので。

 それで、もう時間もなくなってきたんですけれども、この五百九十一条の二項で、災害及び災害のおそれのある、この部分については免責特約も可能だとなっているわけですけれども、では、この災害及び災害のおそれのあるというもの、この文言の、これ自体の定義、法律根拠というようなものはどうなっていますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この改正法案では、大規模な火災、震災その他の災害、あるいはそのおそれというものについての定義は特段設けておりません。一般的な意味に従って解釈されるものでございます。

 改正法におきまして、そのような災害のおそれがある場合に免責特約を一律に無効としていない理由は、免責特約を認めないと、災害地に救援物資を届ける者や報道関係者の運送が拒否される等の事態が生ずるおそれがあるからでございます。

 こういった改正法の趣旨に照らせば、大規模な火災、震災その他の災害のおそれにつきましては、例えば我が国では震災が不定期に発生する危険性がある、こういったような一般的、抽象的な可能性にとどまるものはこれには該当しないで、例えば、ある地方で実際に震災が発生したことから、その地方では近日中にさらなる大きな余震が発生する危険性がある、こういったような具体的なものである必要があると考えております。

黒岩委員 わかりました。抽象的なものは事由に当たらないということで。というのは、それまで含めちゃうと、それこそ、活断層があるというだけ、ないしは、熱帯低気圧が近づいてきた、これは台風のおそれだということで、この事由を濫用されてしまっては非常に不都合なケースが出てくるわけなので、その点について今明確な御答弁をいただきましたので、そこはしっかり運用していただきたいと思います。

 時間が来ました。済みません、また質問をたくさん残しちゃって、またどこかの機会で質問させていただきますけれども、重ね重ね、やはり法務省として、この商法についても、現状にしっかりと逐次合わせて、これからも機敏に対応していただくこと、そして利用者、消費者の保護というこの観点も、これもしっかりウエートを置いていただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

平口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

平口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。井出庸生君。

井出委員 希望の党、信州長野の井出庸生です。

 本日も盛りだくさんですので、よろしくお願いをいたします。

 最初に、昨日の上川法務大臣の閣議後の記者会見なんですが、その中で大臣が、公文書管理と電子決裁推進に関するプロジェクトチームを立ち上げたということを表明されました。きのうの会見で、本日それを立ち上げたと。

 その中で、刑事参考記録を含む刑事裁判記録の保管のあり方等についても具体的な検討を行い、必要に応じて順次運用上の改善を図っていくことにしました、このような御発言があったと聞いておりますが、特に刑事参考記録、裁判記録のところ、大臣の目的意識を少し具体的に教えていただきたいと思います。

上川国務大臣 ただいま御質問がございました四月十七日、昨日でありますけれども、法務大臣の記者会見におきまして、公文書管理、電子決裁推進に関するプロジェクトチームを立ち上げたところでございます。

 まず、行政文書につきましては、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源であるということ、そして主権者である国民が主体的に利用し得るものであるということ。そして、行政機関には、行政文書の適正な管理を通じて、行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国の諸活動を現在及び将来の国民に説明していく責務があるということ。そのために、各省ごとに特性を踏まえて、絶えずその点検を実施し、公文書管理のあり方について不断の見直しをするなどの行政文書の管理を適切に行うことは非常に重要である。そういう問題意識でございます。

 この間も、昨年八月三日、大臣に就任した直後から、この公文書の管理につきましては、不断に、さまざまな取組についての検証、検討、こうしたことについては絶えずやっていく必要がある、こういう考え方で進めてきたところでございます。

 そして、公文書管理に関しましては、今般のさまざまな問題を受けまして、本年の三月二十三日の閣僚懇談会におきまして、安倍総理からも、信頼回復のために、新ガイドラインによる厳格なルールの徹底と確実な運用、あるいは更新等の履歴が厳格に管理できる電子決裁システムへの移行の加速化について指示があったところでございます。

 そして、法務省におきましても、行政文書の管理に関するガイドラインの改正に伴いまして、法務省の行政文書管理規則を改正いたしまして、本年四月から、新規則に基づく厳格な行政文書の管理を開始したところでございます。

 これを機に、私自身、初代公文書管理担当大臣という経験をさせていただきまして、適切な公文書管理のあり方について絶えず検証していく必要があるという問題意識のもとで、法務省の公文書管理にそうしたもろもろのことを反映させることによって、より適切かつ確実な公文書管理や電子決裁システムへの移行の加速化を図るために、今回、公文書管理、電子決裁推進に関するプロジェクトチームを立ち上げたところでございます。

 こうした経緯も踏まえまして、プロジェクトチームにおきましては、まず、新たな法務省行政文書管理規則に基づく適切かつ確実な公文書管理のための運用方法、そして第二に、電子決裁推進のための方策、そのほか、刑事参考記録を含む刑事裁判記録の保管のあり方、こうしたことなどにつきまして検討テーマとすることとしているところでございます。

 今、さらに、刑事参考記録を含む刑事裁判記録の保管のあり方についてという特段の御質問がございましたけれども、現時点におきまして具体的な検討内容やその方向性等を定めているものではございませんが、今後、さまざまな御意見を踏まえて、しっかりと検討を行ってまいりたいというふうに思っております。

井出委員 現時点ではまだその方向性ということまでは決まっていないというお話であったかと思いますが、刑事裁判記録の重要性について何度か伺ってまいりましたので、そのことを検討していただくということは大変結構だと思いますし、たしか三月の内閣府の公文書管理委員会ですか、そこでも、公文書管理の委員の方から、裁判記録が廃棄されている現状が法制史の研究者の間でも議論になっているというような御発言があったやに後に伺っておりますので、やっていって、ぜひ取り組んでいただきたいんです。

 その中で、ぜひ私からの意見として、お願いとして申し上げたいのが、一つ、刑事裁判記録の保管のあり方等についてということで、保管も大変重要でございます、捨てていただいては困るのでやっていただきたいんですが、このあり方等のところ、公文書というものはやはり広く国民のためのものでございますので、やり方はさまざまありますが、その閲覧というものについてもぜひ御検討をいただきたい。

 それと、検討の際に、このプロジェクトチームは、法務大臣と山下政務官、それから政策立案総括審議官、各部局の総務課長等を構成員とするとありますが、できれば、ぜひ外部のそうした法学の研究の方、有識者の御意見も伺ってほしい。

 その閲覧と、それから外部の声をちょっと聞いていただきたい、そのことをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 まず、この検討会は立ち上げたばかりでございまして、三つのテーマということでございますけれども、先ほど申し上げたように、法律あるいは制度そのものは絶えず運用をしてこそ初めて意味があるということでございますので、いろいろな角度から検討をしてまいりたいというふうに思っております。

 外部有識者からの意見聴取ということにつきましても、できるだけ聞いていこうということを今検討しているところでございますので、今のような問題意識につきましても参考にさせていただきたいというふうに思います。

井出委員 ぜひ外部の方の声は聞いていただきたい。

 安倍総理の指示を受けてこうしたプロジェクト、PTが立ち上がる。それは恐らく政府全体としてやらなければいけないことだと思いますが、事この刑事裁判記録につきましては、法務省それから裁判所の特有の持つべき公文書でございますので、この部分をしっかり、保管と閲覧の検討を前進させていただくということは大変意義の深いことであろうかと思います。

 その上で、少し、裁判の記録というものがいかに重要なものであるかというところをお話をしたいんですが、例えば、裁判の記録がどれだけ歴史的なものがあるのか。その一例を、例えば教科書などに出ているものを挙げます。きょう少し調べてきたんですが。

 一つは、大津事件というものがございます。一八九一年に、来日したロシアの皇太子を警備をしていた巡査が襲った。これは、旧刑法では死刑にはならない。ただ、当時の政府は、ロシアの報復を恐れ、不敬罪を適用して死刑にすることを考えた。しかし、当時の大審院の臨時法廷で、謀殺未遂ということで無期徒刑を宣告された。この裁決は、司法権の独立を守ったとして広く知られて、教科書にも出ております。

 それから、これもまた教科書に出ているんですが、大逆事件ですね。余り説明するまでもないのかもしれませんが、幸徳秋水ほか二十五名、死刑判決や無期懲役の判決が出た。この事件性については、相当の議論がこれまでなされてきたことは皆さんも御存じのとおりである。

 それからもう一つは、虎ノ門事件というものも、昔、一九二三年にございまして、帝国議会の開院式に出席をする後の昭和天皇、当時は摂政宮、皇太子様のお立場であったんですが、後の昭和天皇が狙撃された事件、無事だったんですが、当時の山本内閣は責任をとって総辞職、それから警視総監も懲戒免官となった。

 この三つの事件というものは、いずれも昔の大審院というところで判決が出ているんですが、例えば今お話ししたこの三つの事件の記録というものが、今、どういう保存の状況で、そしてまた閲覧がかなうものなのかどうか、これは最高裁の方に伺います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 委員御指摘の、世上、大津事件、大逆事件、虎ノ門事件と言われている三つの事件でございますが、これらは明治、大正の時代に判決された事件でございまして、既にその判決から八十年から百二十年経過している事件でございます。

 これら三件の事件の判決書を含む裁判記録につきましては、一部原本が欠けているところがあるようでございますが、記録の形というか、そういう形で最高裁に保管しているというのが現状でございます。

 なぜそれが最高裁にあるかというところが、また今の保管の状況ということの御質問でございますが、いわゆる大逆罪と言われている犯罪の成否が問われる刑事事件につきましては、三審制が適用されず、大審院が一審裁判所として審理、判決していたようでございます。その訴訟記録は、大審院で保存していたという経緯があるようでございます。ただ、それがなぜ最高裁で保管するに至ったかというところについては、何分古いところでございます、現時点で明確な経緯等はわからないところでございます。また、その保管の根拠についても、根拠規定が明確であるかどうかという観点では、そこもやや不明なところがございます。

 ただ、この三件の事件は、委員が御指摘になりましたように、いずれも特筆すべき重大事件でございまして、我が国裁判史上貴重な資料と言えるものと考えておりまして、最高裁としては永久保存すべきものとして保管しているところでございます。

 最後に、閲覧の関係でございますが、今御答弁申し上げましたように、これらの記録がどのような根拠で保管されているかということについて、現時点で必ずしも判然としないところでございまして、史料的な価値を有するものとして保存期間満了後も保管しているのではないかと考えているところでございます。

 そういう観点からいたしますと、訴訟法等に基づく閲覧の対象にはならないのではないかと考えておりますが、史料的なものというその性質からいたしますと、散逸、破損のおそれなど、適切に保管管理していく上での支障の程度等を慎重に考慮する必要はあるとは考えますが、閲覧の希望がある場合には個別的にその可否を検討するということになろうかというふうに思います。

井出委員 何分古いものなので、なぜ最高裁が持っているとか根拠規定とか、そのあたりを私は殊さら詰めるつもりはないんですが、史料的な価値はあるので、個別の閲覧には少し対応する御意思を今お話をされましたが、八十年から百二十年、やはりもうそれだけでも大変歴史的な価値があるものであると思いますし、ぜひ閲覧の方も前向きに検討をしていっていただきたい。

 できれば、最高裁にあるのであれば、最高裁と内閣総理大臣の申合せで公文書館に移していただきたいなという思いもあるのですが、その点だけ。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 これらの刑事事件の裁判記録、例外的に裁判所が保管しているものですが、現時点では、国立公文書館への移管の対象とはなっておりません。

 さきに答弁いたしましたとおり、この三件の刑事事件は特筆すべき重大事件で、我が国の裁判史上貴重な資料と言えるものと考えておりますので、永久保存を、最高裁で保管するという形を考えておりますが、国立公文書館への移管につきましては、その性質上、裁判所だけでは決められるものではございませんので、関係機関の意見も聞きながら今後検討してまいりたいと考えておるところでございます。

井出委員 持っているだけではなかなか、宝の持ち腐れということにもなりますので、ぜひ閲覧や移管の方も検討していただきたい。

 今、歴史的なものを少しお話をしましたが、次に、将来歴史的なものとなり得る資料で少し話を伺いたいのですが、これまでの質疑の中で、私が問題提起として、死刑や無期懲役とか重罰の下った判決は、保管期間が長いし、保存されているケースが、特に判決書は保存をされていると聞いています。

 その一方で、重罪が求刑をされても無罪だった場合、それは、裁判記録を管理する法律、刑事確定訴訟記録法によると、死刑や無期懲役が求刑されて無罪だった場合の記録というものは十五年の保存だと。有期の懲役刑又は禁錮に当たるもので無罪判決が出ると、五年しかない。私は、その中にも歴史的な、将来歴史的なものになる、残しておかなければいけないものはたくさんあるかなと思うんですね。

 一つ伺いたいのは、村木厚子さんの無罪となった裁判ですね。村木さんには、特に、冤罪事件をなくす、検察改革の取組においても御尽力を、法務省の方で、法務省にアドバイスをしてもらった、あの事件がきっかけでそうしたことにも取り組んでいただいた方なんですが、この村木さんの無罪事件というものは二〇一〇年の九月に判決が確定をしている。法律でいいますと、恐らく保管期間は五年だ。

 それが今、私は、これは検察改革のまさにスタートとなった大事な話でありますから、当然、記録としてとっておく価値はあるのではないのかと思いますが、その記録の所在や保管の現状、また閲覧の可否等について、今度は刑事局長に伺いたいと思います。

辻(裕)政府参考人 御指摘のとおり、無罪事件につきましても、裁判書、それから裁判書以外の保管記録につきましては、法定刑に応じまして、刑事確定訴訟記録法に基づいて保管することとされておりますし、保管期間が経過した後は、無罪の裁判によって終結した被告事件でありましても、確定記録法の九条に言うところの刑事参考記録としての保存の必要性が認められるものにつきましては、刑事参考記録として指定、保存することとされておりますし、現にしているものもあるということでございます。

 ただ、お尋ねのところでございますが、具体的にどのような事件が保管、保存されているかにつきましてこの場でお答えするということは、被告人であった方、その他の関係人の名誉、プライバシーの保護の観点から適当ではないのではないかというふうに考えておりますので、お答えは差し控えさせていただければと存じます。

井出委員 私が伺った村木さんの事件が、無罪事件でも大事なものであれば刑事参考記録となると、冒頭、一般論でお話をいただきましたが、その村木さんの事件が刑事参考記録になっていると考えても差し支えないかどうか、そこだけ伺っておきたいと思います。

辻(裕)政府参考人 具体的なところはなかなかお答えしがたいところでございますけれども、確定訴訟記録法によりますと、刑事参考記録として保管されるものは、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料されるものということでございますので、無罪事件、もちろん有罪の事件もそうでございますが、無罪事件につきましても、そういう要件に当たると考えられるものについては保管しているということでございまして、一般論で申し上げますと、非常に著名な事件、刑事法制の改革の契機となったような事件につきましては、残すことが通常多いのではないかというふうには考えております。

井出委員 歴代の刑事局長と比べますと大分答弁がかたいなと思いますが、力を込めて発言していただいたところを、きょうのところは少し行間を読む形で、また改めてこの問題は聞いていきたいと思います。きょう、ここで続けても、ここまでだと思いますので。

 刑事参考記録の話で、刑事参考記録というものは、裁判の記録で、保管期間が過ぎて、捨ててもいいものをなお重要だからとっておく、一言で言えばそういうことなんですが、それが、現在、八百四十五件ある、それは昨年の十二月にこの委員会で教えていただいたんですが、ただ、それが一体どんなものがあるのかは全く非公開情報であって、イメージが湧かず、少しその辺を具体的に教えていただきたいなと。

 そこで、現在保管されている八百四十五件中の刑事参考記録の中で、例えば、最も古いものとそれから最も新しいものについて、別に年月日まで詳しくとは言いませんが、事件発生や判決確定の時期、またその確定した罪名や刑の内容、それと刑事参考記録に指定した時期、あとは文書が判決なのか記録なのか、少し話せるところでちょっと具体的に教えてください。

辻(裕)政府参考人 ただいまのお尋ねでございますけれども、最も古いものと最も新しいものについて、事件発生時期、裁判確定時期、それから罪名、刑の内容等々ということでございますが、それらにつきまして詳細にお答え申し上げますと、いろいろな情報が相まって、具体的事件が特定されるおそれがあるというふうに考えますので、先ほど申し上げましたとおり、被告人であった方、その他関係人の名誉、プライバシーの保護の観点等からお答えは差し控えさせていただければと存じます。

 なお、ちょっと一点訂正させていただきたい点がございまして、昨年十二月一日にお尋ねがあった際に、刑事参考記録八百四十五件と申し上げてございますが、正確には、刑事参考記録と刑事参考不起訴記録の合計がその日時点で八百四十五件であったということでございます。

 それから、本日現在の刑事参考記録と刑事参考不起訴記録の合計は八百五十七件となってございます。

井出委員 少し、古いやつは百年以上たっているとか、新しいやつは五十年ぐらいだろうとか、そのくらいでもと思ったのですが、また次の課題として引き続きやっていきたいと思います。

 その中で、先般の四月四日でしたか、刑事参考記録を十四件、最近の五年間の中で廃棄をした、刑事参考記録は、立法趣旨は、保管期間が過ぎたものがなお大事だからとっておくという制度、立法趣旨であったと。

 逐条解説、コンメンタールとかを読みますと、押切さんという方でしたかね、書いてあったんですが、基本的には永久保存だと。その押切さんという方は、聞くところによると検事だったんですよね。であるから、やはり、それを捨てるということは、ちょっと早急に何とかしなきゃいけない。

 それで、捨てたものについても、一切その情報というものはなかなか聞けていないんですが、ただ、前回の委員会の中で、検察庁として適正に判断して捨てたんだと。ただ、適正に判断して捨てたと言われても、どんなものかも、一端もわからないようではなかなか適正かどうかも言いようがないので、そこをもう少し、これこれこういうものだからこういう理由で捨てた、そういうことが少しお話しいただけるのかどうか、答弁を求めたいと思います。

辻(裕)政府参考人 お尋ねの刑事参考記録の指定が解除されて廃棄されたものでございますが、逐一申し上げるのはちょっとあれでございますが、例えばでございますが、解除の理由でございますけれども、事実関係に争いがない事件である上、確定から既に相当期間が経過したということなどから、刑事参考記録として保存する必要性がないという判断で指定が解除され、さらに、そういう事案の内容等にも照らしてということであろうかと思いますけれども、歴史資料として重要な公文書等である歴史公文書等にも該当しないというふうに判断されたことから廃棄されたものというふうに承知しております。

井出委員 少し話してくれたような話してくれていないような。でも、前回よりは少しお話をいただいたのかなと思いますが。

 ただ、一点、捨てる判断はやはり検察庁の中で行われているわけでありまして、外部の例えばアーキビストがかかわっているわけでもございませんので、ちょっと、今の答弁でよしとするわけには残念ながら到底いかない。もう少し、これからもちょっとお話を伺っていきたいと思います。

 次に、少し大臣に認識を伺いたいのですが、きょう、資料を用意してきました。

 冒頭の三ページは、最近の報道でございます。

 一枚目は、朝日新聞社の奥山さんという編集委員の方が、司馬遼太郎賞というのを受賞されております。その本は、「秘密解除 ロッキード事件」、岩波書店で出た本なんですが、奥山さんが、アメリカで公開された公文書に基づいてロッキード事件を見直した著作なんですね。その奥山さんが授賞式で述べられたことを私が抜粋してきたものが一枚目なんです。

 アメリカは、記録の保存をして公開をする、そのことが特に外交のパワーの源泉の一つになっていると。それに触れた上で、二段落目。日本はどうなのか、記録や資料があっても、それを捨てたり、個人の私物扱いにするとか。もう言うまでもなく、今国会もいろいろ議論になっておりますが、あるけれども出さないとか。

 その中で、奥山さんは、裁判所も検察庁も訴訟記録をどんどん捨てています、私は心が痛みます、将来紡がれていく歴史に対する冒涜であろうと。

 さらに、三段落目なんですが、朝日新聞の奥山さんは、産経新聞の元記者だった司馬遼太郎さんの名前を冠した賞を読売新聞のホールで、そして岩波書店から出版された本が受賞の対象となったということに、一つの栄誉であると。

 四段落目は、産経、読売、朝日や岩波にも共通する価値観だ、それは、民主主義における、独立したジャーナリズムの重要性ですとかいろいろあるんですが、その中で、最後に、真相に近づくために必要な記録の作成、保存、公開の大切さを改めて確認する契機としたいと述べられております。

 その裏面の二ページ目は、これは、どちらかというと、ふだんは保守的な論陣を書かれている識者の岩田さんという方が、この奥山さんの本について書かれたものなのです。

 下から四段落目。その奥山さんの言うことを、まことに正論である、自国の資料によって自国の歴史が叙述できないという事態は憂うべき事態だと言わざるを得ないと。そして、その憤慨したところは飛ばして、例えば、正しいと信じて行ったことが、結果として誤りであったとするならば、それを明らかにできるのは正確な資料だけである、その資料を改ざんすることは、将来世代を欺くことを意味していると。

 最後に、大変いいことを言っている。日本の公文書が各国と比較して質、量ともに傑出していれば、歴史の真実を知ろうとする人々が日本の資料を求めにも来るだろう。

 私は、この二つの論調というものは、公文書、特に私の場合は裁判記録に特化して質問をしておりますが、こうしたものは思想信条を超えた財産である、そのように私は思うのですが、大臣の見解を伺っておきたいと思います。

上川国務大臣 御指摘の受賞スピーチにつきまして、朝日新聞社のホームページに掲載されているということで委員からも御紹介がございました。私も読ませていただきました。

 個別のスピーチの内容ということでございますので、法務大臣として所感を述べるということについては差し控えさせていただきますけれども、御指摘の受賞スピーチにおきまして、アメリカの国立公文書館につきまして触れておられます。そして、その保管に係る公文書につきましては質、量ともに傑出している、そういうくだりがございました。

 まさにアメリカの国立公文書館は質、量ともに傑出しているということ、このことについては、私は公文書管理担当大臣として初めて任命をされましたが、そのときの総理大臣は福田康夫総理でございます、福田総理も、アメリカの国立公文書館に訪問をされまして、そのことについて大変なる驚きと同時に、大きく突き動かされて、そして、日本におきましての公文書管理法の制定につきまして指示をされたものというふうに承知をしております。

 文章を読みまして、そのことについて強く印象に残った次第でございます。

井出委員 私が補足しようかと思っていたところも、一部、大臣の答弁の方で触れていただきました。問題意識を、近いものを持っていただいているというふうに感じました。

 それと、この刑事裁判記録で一番の、保存はともかく閲覧の障害となっているのが、一つにはプライバシー。それから、検察庁からすれば、検察庁で責任を持って管理していたい、管理にかかわりたい。

 そこを否定するものではないんですが、この間、刑事裁判と民事裁判と、私は両方プライバシーがあると思っている、民事裁判は判決書が全部公文書館に行く、刑事は基本的に行かない、何かプライバシーに違いがあるのか、そういう問いをしたときに、刑事局長は、民事裁判は私人間の争いとか法律の解釈だから、いろいろな人が見れるように閲覧制度も進んでいる、刑事は公権力と個人のことだから、別にそれを多くの人が見る必要性も民事に比べたらないだろうというような、簡単に言えばそんな答弁をされて、プライバシーについては、刑事にはプライバシーがあるということしか述べられなかった。

 私、その答弁について一つ申し上げたいのは、それは確かに、おっしゃっている民事の判決は、見たいという人が、当事者とか関係者とかも含めれば、いるのかもしれません。しかし、では、時間がたてばどっちが歴史性を帯びてくるかといえば、それは少なくとも、公権力が当時いかに、どういう社会情勢、社会背景の中で適正に、それは百年後、時代が全く変わっていたら適正じゃないのかもしれません、だけれども、百年前こういうものだったから、変遷を経て今こうなっている、そういう歴史性を持つのはやはり私は刑事裁判だと思います。

 あと、プライバシーについては、プライバシーがあるからだめだじゃなくて、少しプライバシーを研究していただきたいと思うんですね。

 基本的には人に言いたくないことだと思います、思想信条ですとか宗教とかもあるかもしれません。それから家族関係、その人の生い立ち等いろいろあるかもしれませんが、では、どういうところを整理すれば刑事裁判記録も閲覧が進むのか、そうしたことを少し具体的に検討していただきたいなと思うんですが、いかがでしょうか。

辻(裕)政府参考人 ちょっと難しいお尋ねで、御趣旨を正確に把握できているかどうかわかりませんけれども、私が前回お答えさせていただいた内容も、今も若干触れていただきましたけれども、民事訴訟と刑事訴訟における利害関係者、法律上の利害関係者の多い少ないという点も申し上げたと思いますけれども、やはり刑事被告事件に係る訴訟の記録には、性質上、個人の秘密にわたる事項が民事訴訟に比べても非常に多いといった点も閲覧のあり方に差異が生じている理由と一般的に解されているということを申し上げたつもりでございます。

 その上で、ただいまの御指摘でございますが、歴史性を帯びるのは刑事訴訟の方がということでございますが、私といたしましても、刑事訴訟記録が時の経過とともに歴史性を帯びてくること自体を特段否定するつもりは全くございませんで、大臣から、あるいは私からも累次お答え申し上げておりますとおり、刑事訴訟記録につきましても、刑事裁判記録としての保管期間が経過し、刑事参考記録として保存する必要がない、あるいは保存しないと決めたものにつきましては、歴史公文書等として国立公文書館等への移管等をするというふうに考えておりますので、そういう意味で、一般的に申し上げて、歴史性を帯びることがあるということを否定するつもりもございません。

 ただ一方で、やはり刑事事件については、民事事件よりも人に知られたくない、あるいは当該個人の方あるいは親族の方を含めて人に知られたくないという要素が多いというところも勘案して現在の制度のあり方ができているということでありますし、御指摘も踏まえて、今後どうしていくかということは、大臣からも御答弁申し上げているとおりで、さまざまな御意見を踏まえてまた更に検討させていただければというふうには考えてございます。

井出委員 今、お話の中で、公文書館に移すというお気持ちはよく答弁されて、今もそういった趣旨のことをおっしゃられていたんですね。ただしかし、内閣総理大臣と法務省が過去に歴史的公文書の保存に必要な措置について一体どういう申合せをしているのかと調べてみました。

 その申合せは、資料の四ページになるんですが、特に1のところなんですけれども、法務大臣がその適切な保存のために必要な措置を講ずるものとされている歴史的公文書等は、法務省が保有する刑事事件に係る判決書等の訴訟に関する書類のうち、歴史的資料として重要な公文書その他の文書であるものとすると。

 歴史的公文書は歴史的公文書である、そんなような申合せで、それはそうだろう、もうちょっと具体的に言ってくれよ、もうちょっと具体的に申し合わせてくれよというのが、この資料を見た私からのお願いだと。

 それから、資料を飛ばして七ページに行っていただきたいんですが、これは、民事事件と刑事事件の訴訟記録が国立公文書館に移る流れ。

 民事も刑事も、公文書管理法の十四条で、内閣総理大臣と協議して移しますよという前段があって、上の青の民事事件は、最高裁がつくっている保存規程の十条の中で、まず、国立公文書館に送付するということを明記している。それからさらに、その規程の運用の通達、平成四年に最高裁が出しているんですが、その中でしっかりと、民事については、判決の原本、それから特別保存されている記録、特別保存されている記録とは、重要な憲法判断が示されたもの、世相を反映した歴史的資料の高いものとかいろいろ幾つかあるんですが、そういうことがきちっと書かれているんですね。

 だけれども、刑事記録の方だけは、下のように、保存の法律、訴訟記録法にも規定がない、その下の事務規程の中にも明文はない、通達の中にも何か具体的な記述は一切ない。そこを、例えば、私、法律改正の案も実は既に頭の中でつくっているんですが、ただ、プロジェクトチームができたので、きょうはまだ申し上げません。

 ただ、法務省の規程とかは、刑事局長の御判断で、では、こういうふうにちょっと明文化してみようか、そういうことも十分できるんじゃないか。ぜひ、民事の事例を参考に研究を深めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

辻(裕)政府参考人 御指摘の点でございますけれども、現行法で申し上げますと、累次お答え申し上げておりますとおり、刑事確定訴訟記録としての保管期間が経過しまして、かつ刑事参考記録として保存する必要性がない、あるいは保存しないものにつきましては、保管期間が経過したところで公文書等の管理に関する法律第四章の規定の適用対象ということになりますので、その規定によって国立公文書館等への移管等がされるというふうに承知してございますので、そういう意味では、法律上の規定というものはあるのではないかというふうにも理解しているところでございますけれども、御指摘の点でございますので、またプロジェクトチームの中での検討等々の中で検討させていただければと思います。

井出委員 ぜひ検討をしていただきたいと思います。

 法案の質疑もありますので、この問題はここまでにしますが、一つ、昭和の初めに、当時の司法省調査課というところが、何かイタリアの刑事博物館の文書を翻訳していたものが、法曹会雑誌、昭和八年のものに出てきまして、そこを見ますと、我が司法省において刑事参考館設立計画の進行中なる折と書いてあるんですね。そのために、イタリアの刑事博物館のことがいろいろ書いてある文書を翻訳しました、そういう司法省の文書があります。

 その当時から、犯罪の回顧ないし比較的調査を適当なる専門博物館の犯罪資料によって補うことの有益なることは、今や万人のひとしく認めるところである、それから、その分野のいかんを問わず歴史及び法制の科学的研究とその関係方面の実際的調査とは、両々相まって資料と記録の直接の検討により最も公平かつ確実な示唆と判断を与えると。

 やはり先人もそうした思いを持っているので、ぜひ、刑事記録の保管、それから閲覧、後世につないでいくということを、何とか上川大臣と辻刑事局長のもとで進めていただきたいなと思います。

 そうしましたら、法案質疑の方に入っていきたいのですが、刑事局長、もういいですよ、刑事分野は終わりですので。別に聞いていていただいてもいいですけれども、お忙しいでしょうから、どうぞ。

 それで、法案の方なのですが、大変古い法律を変える、今さら遅いじゃないかという議論があったんですが、きょう、ちょっとおもちゃを持ってきまして、法律ができた当時は、どんなによくてもこの程度の船だった。それがだんだん、ちょっとフェリーのおもちゃも持ってきたんですが、自動で運転できるようになったりですとか、安全性も格段に高まっている。それだけの大きな変化があった中で、法律は変わっていなかった。それは条約やいろいろなことで対応してきたのでよろしいのかなと思いますが、それだけの世の中の変化があったということは、まず考えておきたい。

 少し私の方から、もうちょっと紹介をさせていただきますと、例えば観光客でいえば、世界観光機関によれば、世界各国の外国人旅行客の総数は、日本でもふえていますが、十二億人近い、十一億八千六百万人、平成二十七年に旅行されている。ですから、ますますこの分野というものが大変重要になってくることは言うまでもないかなと思います。

 それから、もう一つ、例えば運送につきましても、現状を見ておりますと、今回いろいろ、陸上運送、海上運送、航空運送の定義は変わりますが、例えば、トン、荷物の重さベースでいえば、現状、車、トラックが九割、それから内航海運、比較的近海だと思いますが、七・八、鉄道はわずかに〇・九。ただ、それが、トンとキロ、重さと距離に換算すれば船が四割になる。

 そういうような数字も、ことしの三月に法律時報の方がこの法案の特集を組んでくれておりまして、そういうことが紹介をされております。ちなみに、日本は島国なので、陸の運送の国際的な対応が極めて感覚としておくれているというような話もあります。

 本当はドローンの話を聞こうと思ったのですが、ドローンの話は、きょう、さきの先生方から出ましたので、少し、いろいろ法による定義について聞いていきたいんですが、一応その改正案によると、陸上運送、海上運送、航空運送と、それぞれ、航空運送であれば、航空法により定められた航空機による物品又はお客さんの運送だ、海上も、六百八十四条に規定する船による荷物や人の運送である。

 ちょっときょう一例で聞きたかったのは、まず、これはどうかなと思うんですが、答えられなかったら結構なんです、遊園地のアトラクション。東京ディズニーランドのウエスタンリバー鉄道、それからビーバーブラザーズのカヌーの探検のカヌー、これは一応人を運びますので、それぞれ陸上と海上の運送になるのじゃないのかなと思うところであるんですが、別に、個別、この二つじゃなくても結構なんですが、遊園地のアトラクションというものについて何か見解が現時点であるかどうか、ちょっと教えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 陸上運送、海上運送の、この改正後の法案の定義といたしましては、陸上運送であれば、陸上における物品又は旅客の運送、海上運送でいいますと、先ほど御指摘いただきました六百八十四条に規定する船舶による物品又は旅客の運送ということでございまして、これが運送に当たるかどうかというのは、まさに運送というサービスを提供するものなのかどうかということによろうかと思います。

 アトラクションといった場合に、それが、いわゆる楽しむというかエンターテインメント、そういうものを提供するサービスとして捉えられるのか、それとも、それは場所の移動というものを主たるサービスとして捉えるのか。ですから、そういったような観点から、それが運送に当たるものと評価されるかどうかという観点ではございますけれども、アトラクションということになりますと、そういった前者のエンターテインメントという要素はかなり強くなるというふうに考えられるのではないかなとは思います。

井出委員 アトラクションは大体行ったら戻ってくるので、今お話があったとおりなのかなというふうに思います。

 もう一つ、今回、陸上運送と海上運送が、陸と水面ですか、だから、これまで陸上運送と位置づけられていた川、湖、それから平水区域というんですかね、波の穏やかな、当委員会のような穏やかなところも、陸上運送だったのが海上運送になる。

 そこで、例えば水陸両用のバス、湖なんかにはあると思うんですね。観光をして、湖も入って、山中湖なんかにあると聞いているんですが、ああいうものは何か位置づけようがこの法律上はあるのかないのか、ちょっと聞いてみたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のものとこのものが全く同じものなのかどうかというのはちょっと確たるものはございませんけれども、いわゆる水陸両用車というものがございまして、水上及び陸上を走ることができる自動車というのはございます。

 これは旅客運送にも用いられているようでございますが、この水陸両用車による運送につきましては、水上を走行する場合はその部分は海上運送、陸上を走行する場合は陸上運送、これにそれぞれ該当するものと整理されるものと思われます。

井出委員 気になるのはいろいろあるんですね。将来的にロケットはどうなるのかとかスカイダイビングはどうなんだとか気になるんですが、そればかりもやっていられないので、一つだけ船でちょっと確認をしておきたいんですが、渡し船ですね。

 人力、櫓かいでこいで動かす船なんですが、海上運送の船というものは、基本的には、何か動力源があって、エンジンみたいなもので、モーターで動く船だと思うんですが、こういった渡し船みたいなものは陸上運送という位置づけになるのか、なっていくのか、そこだけちょっと教えていただけますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる櫓かい船でございますけれども、「端舟その他ろかいのみをもって運転し、又は主としてろかいをもって運転する舟」ということでございますが、手こぎボートなどがこれに当たるわけでございます。

 こういったものにつきましては、先ほど申し上げました海上運送に当たる船舶ということには該当しませんので、それを使った運送というものにつきましては、海上運送には当たらないということになります。

 他方で、陸上運送の陸上という範囲につきましては、先ほど委員も御指摘もありましたとおり、湖川ですとか、そういったようなところの平水区域につきましても、こちらの方は陸上の方の範囲には入りませんので、そういう意味では陸上運送にも当たらない。

 そういう意味では、そういったものにつきましては、この商法の運送の規定の適用はないというふうになるのではないかと考えられます。

井出委員 なるほど、わかりました。

 それと、ちょっと法案の中身のところで、堪航能力、しっかり荷物を船で安全に運べ、その担保義務というものが、今回、堪航能力の義務違反の責任が過失責任になる、今までは無過失責任だったと解されていると聞いたんですが。

 そのときに、この船をちょっと持ってこようと思ったんですが、昔の船だと、例えば帆がちゃんと張ってあるかとか、破れていないかとか、見守る人員はきちっといるのかとか、そういうことをやって、ただ、現在の船と比べたら、多分、昔の船の方がリスクは高かったと思うんですね、航海に出て、それは風の影響もあるでしょうし。現在の船の方が、人はいますけれども、基本的には自動で運転も、技術も進展していると思うんですね。安全性に関して言えばより高まっているんじゃないかなと思うんです。

 ですが、古い船のときは何かあったら無過失責任、今度、性能が上がってきたんだけれども、法律改正で過失責任になる。ちょっとそこの整合性といいますか、理屈はわからぬでも、過失責任だと言われればそのとおりかなとも思うんですが、性能が上がってきているのに、無過失責任から過失責任に改まる、そこのところをちょっと教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、現行の商法では、この堪航能力担保義務違反による責任につきまして、判例上、無過失責任とされているものでございます。しかしながら、外航に適用されます国際海上物品運送法では、この堪航能力担保義務違反による責任は過失責任となっておりまして、内航と外航の責任のあり方が不均衡になっているという状態でございます。

 そこで、現在での船舶ということを考えてみますと、御指摘されましたとおり、非常に今、船舶の技術といいますか、そういうものは高いものがございますが、他方で、それは船舶の構造が非常に複雑化、大型化しているということになっております。

 この堪航能力担保義務違反による責任を無過失責任とするのか過失責任とするのかという点につきましては、運送人においてそういったような船のチェックができるかどうか、ここがやはり一つ大きいポイントでございまして、そうしますと、現在の船舶の構造が複雑化、大型化しているということを踏まえますと、なかなか、相当の注意を尽くしましても船舶の整備等の瑕疵、欠陥というものを発見することができない、こういったケースが非常にあるのではないかというふうに言われております。

 そういった中で、一般的な契約責任と異なって、内航の運送人にのみ結果責任を負わせるということについては合理性が乏しいのではないか、こういったようなことから、今回の改正法案では、内航に関しても堪航能力担保義務違反による責任を過失責任に改めたというものでございます。

井出委員 いろいろな意見、議論はあろうかと思いますが、答弁されていることも一つの理屈だと思います。

 それで、堪航能力の担保義務は過失責任になった、それから、さっきの、これは陸か、これは海かという議論にもなるんですけれども、いわゆる川とか湖とか平穏な海、そこは今回、海上運送になる。

 そうすると、陸上運送ではない海上運送で、今申し上げた堪航能力の担保義務、それから免責特約の禁止、陸上のときになかった規定が新たに、平穏な海で運送をやる人、湖、川で運送をやる人には加わって、新たな規定が適用されて、一つ心配なのは、はしけの運送業者とか、いわゆる下請で、その辺でちょちょちょっと、小さい規模でやっている人たちにとって、そうしたものが少し過大になるのではないかと。その点について、最後、確認しておきたいと思います。

小野瀬政府参考人 委員御指摘のとおり、この改正法案のもとでは、港湾における運送につきましても海上運送としまして、個品運送あるいは航海傭船の規定が準用されます。

 したがいまして、御指摘のはしけ運送事業者、港湾運送事業者も、堪航能力担保義務を負いまして、個品運送の場合には、これを免除する特約は禁止ということになるわけでございます。

 しかしながら、この堪航能力担保義務でございますけれども、船舶の規模ですとか設備、あるいは積み荷の性質等に応じた相対的な義務でございます。運送人としましては、みずからがその責任を尽くしたということを主張、立証すればいいわけでございますけれども、一般的に要求されている検査等を尽くせば、その責任を問われることはないというふうに考えられます。

 また、港湾運送事業者が行う運送の大部分は、船舶の全部又は一部を貸し切って行う、すなわち、個品運送ではなくて航海傭船というものが大部分であると認識しております。そうしますと、この航海傭船の場合には、堪航能力担保義務は基本的に任意規定となりますので、特約によってこの義務を減免することも可能でございます。

 こういったことに鑑みますれば、港湾における運送を海上運送に分類することといたしましても、港湾運送事業者に殊さら重い負担を課すことにはならないものと考えております。

井出委員 基本的には契約の世界でありますので、今回の法改正というものは、そのベースとなる、抽象的というか、基本的な考え方を整理するものだと思いますので大丈夫かとは思いますが、今後の、それぞれの業界の実務の方もしっかり円滑にいくように見ていただきたいと思います。

 では、きょうの質問を終わります。どうもありがとうございました。

平口委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 本法案は、百二十年ぶりの海商法改正であり、この間の社会経済情勢の変化に対応するとともに、世界の海商法制に対する動向にも対応しようとするものだと認識しております。

 私は、このうち、危険物に関する通知義務についてお聞きしたいと思います。

 これまでは、民民の約款で、荷送り人が運送人に対して危険物の情報を通知していたということであります。本法案は、第五百七十二条で危険物に関する通知義務規定を新設するとなっております。

 配付資料の一を見ていただきたいんですが、これは防衛省の資料でありまして、二〇一六年度、南関東防衛局及び新潟防衛事務所管内において、自衛隊が日通などの民間運送会社に武器や弾薬等の輸送役務を契約したリストであります。ちなみに、一番上にある多国間訓練カーンクエスト16というのは、二〇一六年五月から六月にかけて、モンゴルで二十一カ国約千人が参加して行われた大規模訓練のことであります。ここに民間会社がいろいろ運んでいたということであります。

 防衛省にお聞きしますが、現状では、こうした契約に当たって、どのような内容を民間会社に通知をしているんでしょうか。

辻(秀)政府参考人 お答えいたします。

 防衛省におきましては、会計法令等に基づき、公正性を担保しつつ、適正に調達を実施しております。

 銃火器や弾薬、燃料等の危険物資の輸送につきましては、必要に応じて民間事業者に委託を行っており、この際、契約相手方に対して、当該物資の品名等について、発注書等により通知をしているところです。また、こうした契約相手方におかれては、それぞれの物資の輸送を規制する法令に基づき、都道府県の公安委員会に届出を行う等の適切な処置をとっているものと承知しております。

 いずれにいたしましても、防衛省としては、今後も引き続き、関係法令を遵守し、適切に物資の輸送を行ってまいります。

藤野委員 この配付資料の場合は、南関東防衛局と新潟防衛事務所のみなんですね。それでも、ここにあるのは二十三件、民間運送会社との契約があった。全国には、もちろん防衛省本省、そして、そのほかに八つの防衛局、四つの支局、二十九の事務所等があります。これらの防衛省関連組織との契約に基づいて、多くの民間企業が今危険物の運搬に携わっているというのが実態であります。

 法務省にお聞きしたいんですが、本法案で危険物の通知義務が新設される、これはどのような内容を通知することになるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回のこの改正法案では、荷送り人に対しまして危険物の通知義務というものを課しております。

 この場合、この荷送り人が通知すべき事項でございますけれども、まずは、運送品が危険物である旨、それから、当該運送品の品名、性質その他の当該運送品の安全な運送に必要な情報、これを通知する義務を負っているものでございます。

 この通知すべき情報の内容でございますけれども、それはその危険物の性質に応じましてそれぞれさまざまであるということになろうかと思います。

藤野委員 今こういう実態が広がっているわけですけれども、私たちは、やはり民間企業にこうした軍事物資、危険なものを輸送させること自体が大変な問題だと思っております。これはもうやめるべきだ。

 イラク戦争、今問題になっておりますけれども、イラク戦争では、本来軍事利用できないはずの成田空港が使われまして、自衛隊機がそこから離陸してイラクに行くということがたびたび行われた。つまり、成田空港が軍事物資の輸送拠点になってしまったわけであります。

 そして、安倍政権のもとで、海運業者の職員を予備自衛官として登録し、緊急事態においては、民間利用と同じ船舶と船員で軍事物資を輸送する仕組みも新たにつくられております。これは、民間企業の労働者を危険にさらすものであり、到底許されない。

 民間企業にこういう軍事物資を輸送させるべきではないということを重ねて強く主張したいと思います。

 次に、財務省事務次官のセクハラ問題についてお聞きしたいと思います。

 配付資料の二を見ていただきたいと思うんですが、これは、先日、財務省大臣官房長名で発出された、いわゆる調査への協力のお願いという文書であります。

 財務省はこんな協力を呼びかけているわけですが、こんなことは許されるのか。音声データがあるわけですから、被害者が名乗り出なくても、声紋鑑定するなり第三者が調査をするということは可能なんですね。

 麻生財務大臣は、きのうの会見で、被害者が名乗り出てこないと事実認定できないというような趣旨の発言をいたしました。

 しかし、一方当事者からの聞き取りだけでは事実が認定できないとみずからおっしゃっておきながら、何で財務省は一方当事者である福田事務次官の言い分だけを一方的に公開したのか。この文書と同じセットで、聞き取りとして、福田氏の主張がずらずらと並べられている。これは全く筋が通らないと思います。

 法務省にお聞きしたいんですが、法務省は「法務省におけるハラスメントの防止等について」という依命通達を出されていると思います。この依命通達は、不利益取扱いの禁止について何と記載しておりますか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 当省においては、いわゆるセクシュアルハラスメントなどの防止等を図るため、「法務省におけるハラスメントの防止等について」と題する依命通達を発出しているところでございます。

 その「第四 不利益取扱いの禁止について」では、次のような記載があります。「職員は、ハラスメントを行った職員に対する拒否、ハラスメントに対する苦情の申出、当該苦情等に係る調査への協力その他ハラスメントに関し正当な対応をしたことのためにいかなる不利益も受けないこと。」このようになっております。

藤野委員 今答弁されたとおりであります。配付資料の三の下の部分、念のために配付させていただいております。まさに、調査への協力で被害者が不利益を受けることがあってはならない。これは法務省の立場であって、職員だけではなくて、法務省としてセクハラにはこう臨むんだということだと思うんですね。

 昨日、野田総務大臣はこうおっしゃっております。そもそも家族にでもなかなか言いづらい話の中にあって、関係者にその話をするというのはなかなか、私個人に置いたとしても難しいのではないか。福田次官が絶対に否定しているという中にあって、私たちがやるべきことは被害者の保護だ。それをしっかり守るためにも、ややもすれば、こういう事実というのは、女性が名乗り出たことで、セカンドレイプという形でさまざまな被害に遭うことがある。こういうふうにおっしゃっております。

 私、そのとおりだと思うんですね。野田大臣だけでなく、今や与野党を超えて、この財務省のやり方に批判が強まっております。

 大臣にお聞きしたいんですが、財務省がこんな協力を呼びかける、これ自体がセカンドレイプという不利益を被害者に与えている、二次被害を生んでいる。こんな協力を呼びかけること自体、許されないと思いませんか。

上川国務大臣 御指摘の件に関して、今、財務省の方が調査方法等につきまして検討しているということでございますが、詳細につきまして十分把握していない上、本件につきましては財務省において対応する事柄であるということでございますので、法務大臣としてコメントすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論として申し上げるところでございますが、セクハラに関する調査につきましては、その方法や被害者の秘匿につきまして被害者の意向を踏まえるなどの特段の配慮が必要であるというふうに考えております。

藤野委員 いや、法務省として控えるということですが、法務大臣だからこそ、人権をつかさどっている大臣だからこそ、この点について、本当にやはり憤りを私は持たれるべきじゃないかなと思うんですね。

 今回の問題は本当に、容認すれば、政府が先頭に立ってセカンドレイプあるいは二次被害というものにお墨つきを与える、こんなことにつながっていきます。絶対に許されない。国内だけではなく、今、世界じゅうでこのセクハラに関する視線というのは強まっております。当然であります。ピュリッツァー賞の与えられた先も、このセクハラの報道でありました。

 今回の問題は世界じゅうを敵に回しかねない、そういう問題でもある。こういう問題を今省を挙げてかばっている財務省、そしてそれを容認している安倍政権、この政権全体の問題であるというふうに思います。当法務委員会というのは、やはり人権については最も厳しく考えて行動しなければならない、そういう委員会だと思います。私はその一人として、今後もこの問題を厳しく追及したいと思っております。

 次に、官邸前集会や国会前集会における過剰警備問題についてお聞きをしたいと思います。

 言うまでもなく、集会の自由というのは憲法二十一条で保障される重要な国民の権利であります。

 官邸前等での集会、抗議行動というのは二〇一二年から続いております。もう六年以上続いている。私も国会議員になる前から、こうした行動にも参加をさせていただいておりました。二〇一二年当時から、警察による警備、環境整備というのは行われていたんですね。私自身、そうした警察の警備活動あるいは環境整備の必要性、それは私は認めております。

 しかし、とりわけことし三月以降の警備活動というのは、これまでの、二〇一二年以降の警備のレベルをはるかに超える過剰なものになっております。私も三月以降現場に行っておりますけれども、ちょっと異常なんですね。しかも居丈高である。

 警察庁にお聞きしたいんですが、これまで六年間、いろいろな警備の問題がありましたけれども、ここまで異常なことはなかったんです。ことし三月十六日の警備計画、あると思うんですが、これはどういう概要だったんですか。

小島政府参考人 警備計画の中身に関しましては、ここで具体的に言及することは差し控えさせていただきたいと思います。

藤野委員 これは警備計画を事前に要求したんですけれども、頑として出さないんですね。

 しかし、現場では、例えば三月十六日当日は、官邸前の横断歩道を渡ろうとした人とか、あるいは歩道を通ろうとした人に対して、抗議参加者は渡ることができないんですとか、渡らせません、こういうことが何度も確認されております。

 しかも、そこにこの見回り弁護団の方とかが行って、なぜなんだと聞きますと、警官から返ってくるのは、警備計画で決まっているんです、こういう答えなんです。本当にそんなことが、不合理なことが警備計画に書かれているのかと。だから聞いているわけであります。

 では、一般論として聞きますけれども、この警備計画は誰が作成しているんですか。これを聞いても警察活動の支障にならないはずですけれども、誰が作成したんですか。

小島政府参考人 警備計画の作成担当者等につきましては、ここで具体的に申し述べるのは控えさせていただきたいと思います。

藤野委員 いや、これ、私は一般論として聞いているんです。三月十六日とかじゃなくて、警備計画というのは、例えば何々署の警備担当課長とかですね、そういうことを別に答弁しても何の影響もないわけですね。しかし、これも何度聞いても出してこない。

 担当がかわったのかと聞いても答えないですね。方針が変わったのかと言っても答えない。しかし、明確に三月からがらりと警備の中身が変わっております。もうはっきりしている。三月といえば、あの森友文書が大問題になったわけですね。それ以降、十二日、十六日と計画され、取り組まれた。官邸から何かの指示があったのか、こう思わざるを得ないわけです。何も出てこないから、比較もできない、検証もできない。これは本当に、ますます参加者の疑念、怒りというのが高まらざるを得ない。

 具体的に三月十六日に起きたことについて、もうちょっと聞きたいんですね。

 配付資料の四の一を見ていただきたいんですが、これも官邸見守り弁護団の皆さんが資料を自分で調べてつくられたものであります。

 地下鉄の国会議事堂駅、これは三番出口、四番出口、一から四まであるんですが、抗議が始まる直前の十八時ごろから終わる二十二時ごろまで出口そのものが封鎖をされて、全くここはもう完全シャットアウトであります、時間によっては。

 警察庁にお聞きしたいんですが、一番から四番それぞれについてどんな封鎖を行っていたんですか。

小島政府参考人 警察におきましては、デモの参加者の安全を確保するためのさまざまな警備措置を実施してきたところでございます。

 当日、御指摘のような行動に参加された方々につきまして、特定の場所に滞留をして混雑の度が過ぎますと転倒等の事態が発生をするおそれがございますことから、警察におきましては、鉄道事業者等と連携をいたしまして、駅出入り口周辺等において誘導や案内を行い、そのような事態の発生の未然の防止を図るよう指導してございます。

藤野委員 いや、これは完全に出入りを封鎖しているところが一カ所だけではなく何カ所もあるんですね。

 ちょっと飛びますけれども、配付資料の一番後ろの五番の配付資料を見ていただきますと、これは弁護団の方が調べられたものでありまして、例えばですけれども、一番出口については、終始、もう上がることもおりることもできないのがずっと続いておりました。二番は一つだけあけていたんですけれども、三番、四番、これもやはり通さないと。結局、これによって全く上がれないという状況がつくり出される。二番というのは官邸から反対側の一番遠いところなんですけれども、そこだけあけているということなんですね。

 二〇一二年以降、いろいろな警備がありましたけれども、ちょっと記憶にありません、私自身も。しかも、地上に上がったら上がったで、二番とか、いろいろなところ、上がったら上がったでまた問題があったわけであります。

 配付資料の四の二を見ていただきますと、これは上がったところの図なんですが、右の方の青と赤、あると思うんですが、赤い星印が封鎖ポイントなんですね、警察における。これは十カ所も封鎖している。十カ所封鎖して、これでもうまさに通行が制限されるわけですね。

 どんな封鎖かといいますと、歩道に鉄柵バリケードを置く。一列の場合もあるし、時には二列も置く。歩道ですよ。今までの警備だったら車道に置いていたんです。車道なら場合によってはわからなくもないけれども、今回、三月以降、歩道に置いている。しかも、同じ歩道の上で、警官がそれと垂直とか横になって隊列を組んで立ち塞がっているわけですね。歩道に参加者じゃなくて警官と鉄柵が占拠しているという状況であります。こんなことはもう本当になかった。まさに異常であります。

 そのもとで、警察や機動隊員による暴言、暴行というのも多数確認されました。プラカードというのは最近の抗議行動では必須なんですが、そのプラカードをしまえとか、カメラを押さえつけるとか、これはもう表現行為あるいは抗議行為そのものの抑制であります。女性のバッグを後ろから引っ張って転倒させたという例も弁護団によって確認されている。

 参加された皆さんは、ちょっとこれまでにない、こうした、まずその封鎖もそうですし、しかも上がったら上がったで暴言、暴行、高圧的、だから驚くわけですね。驚く、戸惑う、そして当然怒る、抗議もする。そうしたら、抗議に対してまた高圧的に、黙れとかいろいろ言う。これはもう本当に悪循環なんです。

 先ほど安全のためとかおっしゃいましたけれども、全く逆の事態が警察の警備によって起きている。

 配付資料の四の三を見ていただきますと、これは鉄柵もちょっと異様なんです。今までのような結束バンドというすぐ切れるようなものではなくて、これはちょっと見えにくくて恐縮なんですけれども、ほかの日のものによりますと、ロープのときもあるし、下を鉄板でつないでいるものもあるし、あるいは針金で鉄柵同士を結んでいるという日もあると。

 結束バンドなんかであれば、もう飽和状態になって、緊急事態だ、外さないといけないというときには切断するということも可能なんですが、針金などではそうした事態が起きても対応できないということで、そういう不測の事態が起きそうな場合に機敏に行動できないという状態が警備によってつくり出された。もし転倒とか将棋倒しとかいう事態が起きたらと思うと、本当にぞっとする状態であります。

 警察にお聞きしたいんですが、安全を確保するためとおっしゃいましたけれども、むしろ警察の警備の方がトラブルの原因をつくっていたんじゃないですか。

小島政府参考人 警察は、警察法第二条にのっとりまして、個人の生命、身体、財産の保護と公共の安全と秩序の維持という責務を有しております。

 こうした責務を果たすために、御指摘のような取組が行われるに際しましては、警視庁におきまして、車両、人の通行や参加者等の安全を確保するため、その時々の現場の状況に応じて必要な警備上の措置をとっているところであります。

 警視庁におきましては、御指摘の活動に参加をされた方々に対して、車道を開放しました場合、人が車道に出て自動車と接触をするなど、交通の円滑に支障を来し、また安全上の問題があるという判断をいたしまして、御指摘のパイプ柵等の資機材によりまして、仕切りなどの一時的な規制を行っているものと承知をしております。

藤野委員 いや、私が聞いているのは、そういうのはずっと二〇一二年以来行われてきたわけです。一定の経験も蓄積されている。主催者の方との話合いもずっと積み重ねられて、ある意味、一定の信頼関係もできてきていたわけです、この間でいえば。ところが、ことし三月以降、全くそれががらりと異様な状況になってきている、なぜなんだというのが私の質問なんですね。

 それは、かえって、今までの参加者の予測可能性も大幅に上回るような過剰な警備によって、むしろトラブルの原因になっているんじゃないかというのが私の質問なんです。もう一回お答えください。

小島政府参考人 こうした警察の責務を果たすために、御指摘のような取組が行われるに際しましては、警視庁におきまして、車両や人の通行や参加される方々の安全の確保に配慮しつつ、その時々の現場の状況に応じて必要な警備上の措置をとっているものと承知をしておりまして、御指摘のように警備が厳しくなったとは一概には言えないものというふうに認識をしております。

 いずれにいたしましても、警察におきましては、必要な安全上の措置を状況に応じてとってまいりたいというふうに考えております。

藤野委員 いや、厳しくなったと言えないなんて、これはもう全然現場がわかっていない。そういう人が計画をつくっているんですか。これはとんでもない話だと思うんですよ。こんなことを放置していたら、いずれ事故が起きるし、大変な問題になってくると思います。

 私は、これは警察としても、今、簡単に、厳しくなっていないとか言いましたけれども、検証が必要だと思います。何で三月からあんなに変わってしまったのか。

 ちょっと紹介しますけれども、例えば三番出口から出られないから、四番出口からしようがなく上がって三番の方向に向かっていく。しかし、そこに警官が立ち塞がっていて通させない。空間は広がっているんですよ、その警官たちの向こうに。だから、そこに行けば安全なのに入れない。だから、その手前で、先ほどあなたがおっしゃった、滞留せざるを得なくなるわけですね。そこで滞留していって、そこに人がふえていって、押されて、それで鉄柵が不可抗力で動くと、飛んできて、動かすなとか言うわけですね。これはもうとんでもない話であります。

 人混みの中で気分が悪くなって帰宅しようとした参加者の方もいらっしゃいますが、この歩道上の警察官と鉄柵に阻まれて出られない。いつ出られるかわからず、押し込められていたら、心臓がばくばくして貧血状態になった、こういう本当に切実な例もあるわけですね。この方は、救護スタッフに助けられて、ようやく抜け出した。

 子供連れの参加者の方々も、警察と鉄柵があるため、歩道を動けないから、やはり身動きがとれなくなったという例も聞いております。

 やはり、あれだけの警察官がいたわけですね。それらの警察官が本当にそうした参加者の安全を守るためとか、あなたがおっしゃった、安全な場所に誘導するためとか、そういう立場でやっていたのであれば、こんなことは絶対に起こらないというふうに思います。

 警察にお聞きしますが、この間の、とりわけ三月以降の警備についてしっかり検証すべきじゃないですか。

小島政府参考人 御指摘のような取組が行われるに際しましては、警視庁において、車両、人の通行や参加される方々の安全の確保に配慮しつつ、その時々の現場の状況に応じて必要な警備上の措置をとっているものと承知をしております。

 警察におきましては、警備実施ごとに車両、人の通行や参加者等の安全を確保するなどの所期の目的を達したかどうかを確認いたしておりまして、その後の警備実施に生かすよう努めているところでございます。

 いずれにいたしましても、警視庁におきましては、参加者や通行者の安全確保等のため、個別具体の状況に応じて、引き続き適切な警備措置を講じるものと承知をしております。

藤野委員 全く許されないと思います。

 見守り弁護団の皆さんによりますと、まだ全体が改善したわけではないけれども、弁護団の皆さんが警察庁とか警視庁に申し入れられた後、幾つか改善点が見られると伺っているんですね。

 例えば、先ほど言った駅の出口の完全封鎖、あれは、その申出の後、なくなった。あるいは、機動隊員あるいは警察官などによる暴言、暴行、これは少なくなったと伺っております。さらに、歩道内に警察官がいて、まだいるんですけれども、飽和状態になりそうになったときには、その警察官は車道に移動したとか、そういう、今まで頑として車道に動かなかった人たちとか、いろいろなものが改善してきているというふうに私は伺っているんです。これは大事なことだと思うんです。

 こうしたこの今までの規制がこの弁護団の指摘を受けて改善されたということは、逆に言えば、これらの規制は不要だったということだと思うんです。

 弁護団は、まだまだ不十分な点も指摘をしております。ですから、こうした具体的な指摘を重く受けとめて、こうした過剰な警備を絶対にやらないということを強く求めたいと思います。

 最後に大臣にお聞きしたいんですが、集会の自由などは、憲法二十一条で保障される憲法上の重要な権利であるというふうに、大臣、重々御承知だと思うんですね。これを過剰な警備で制約することは許されないというふうに思います。

 最高裁の一九九二年の七月一日の判決は、こう言っております。「集会は、国民が様々な意見や情報等に接することにより自己の思想や人格を形成、発展させ、また、相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、さらに、対外的に意見を表明するための有効な手段であるから、憲法二一条一項の保障する集会の自由は、民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重されなければならない」と。

 大臣にお聞きしますが、こういう特に尊重されなければならない集会、表現の自由に鑑み、やはり最小限の規制にすべき、これは当然だと思うんですが、同じ御認識でよろしいですか。

上川国務大臣 一連の御質問ということで、お尋ねのデモ活動に対しての警備ということでの御質問でございました。法務大臣としてお答えをする立場にはないということでございまして、御理解をいただきたいというふうに思います。

藤野委員 いや、大臣、これは憲法上の重要な権利の侵害にかかわる問題なんです。だから聞いているわけです。

 大臣、これは答弁される立場にあるんじゃないですか。もう一回お願いします。

上川国務大臣 お尋ねの、今、一連のお尋ねでございます、その中での御質問ということでございまして、法務大臣として、このデモ活動に対する警備等につきましてお答えをする立場にないということでございます。御理解をいただきたいというふうに思います。

藤野委員 全く理解できません。

 憲法上の権利を行使しただけで安全が脅かされ、権利行使が妨害される、こうした過剰警備をやめることを強く求めて、質問を終わります。

平口委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 きょうは、最後の七番目ということで、非常にこの法案が細かなところでございましたので、大体質問するところが特定してくるということもありまして、かなり重複をしないように質問させていただきたいと思いますので、多少ちょっと通告していないところもあるかと思います。そのときには答えられる範囲内で結構ですので、お願いをしたいと思います。

 まず、この法案は百二十年ぶりということで、これまで各大臣が達成できなかった改正を行われたということは、これは私は偉業であったということで評価をさせていただきたいと思います。

 特に、片仮名を平仮名にしただけではなくて、見出しがついたというのは大変読みやすいことでございます。

 商法は、それまで、平仮名の部分と、いきなり片仮名で見出しがない、そんな法案でありましたが、それが統一されて見出しがついたということで大変条文を引きやすい形になりまして、これは本当にすばらしいことだなと思ったわけでございます。

 それでは、先ほどちょっと、重複を避けながらということで質問させていただきたいんですが、一番最初に、ほかの委員からドローンの件がございました。まだ熟成されていないということで、法案まで達成できないというのはそのとおりだろうと思います。

 昨今、GPSを利用した自動運転ということが行われております。これによる旅客だとか物品運送、こういったようなことに関しては、この法案で対応していいのか、それとも、やはり人が介在しない運転というのは、例えばオペレーターというかオペレーションの場所から運行を管理していても、それはこの法案では対応しているとは言わないのか、この点について、ちょっと通告はないですけれども、おわかりであれば御説明いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回のこの改正後の商法の規定によりますと、陸上運送といいますのは、「陸上における物品又は旅客の運送をいう。」というのがその定義でございます。

 したがいまして、陸上における運送でありますれば、それは自動運転の車を手段とするものでありましても、改正法案における陸上運送に当たるものと考えられます。

串田委員 なるほど、そうかなと。質問してよかったなと思いました。これからGPSを利用して自動運転とかというようなことが非常にふえてくると思いますので、この規定によって適用されるということがわかったわけでございます。

 今回初めて危険物に関する通知というのがありましたが、別の委員からも、いろいろなインターネットでの販売とかという形の中で、荷送り人が段階的に変わっていくというようなことがあったと思うんですが、この危険物に関する通知という規定、この通知というのはどういう形で行われることを想定しているんでしょうか。口頭で行うのか、書面で行うのか。この点、いかがでしょう。

小野瀬政府参考人 済みません、ちょっとお答えの前に、先ほどの自動運転の件でございますけれども、先ほどの概念によりますと自動運転の場合も入るということでございますが、現在におきましては、まだ自動運転の車による運送といったようなものの、そういったような実用化というものがされておりません。したがいまして、仮にそういったようなものの実用化が見込まれる場合には、そういったものの公法上の規律がどうなるかとか、そういうことも踏まえて、その規律のあり方というものは考えられるべきものだと思っております。これは補足でございます。

 御質問の危険物についての通知でございますが、この改正法によりましても、通知につきまして、特段の方法については規定はございません。したがいまして、この通知につきましては口頭あるいは書面によるということが、それは理論的にはいずれでも構わないということになりますけれども、恐らく実務的には書面とか、きちんとした形に残るようなもので通知されるものが想定されます。

串田委員 前半部分の自動運転に関してなんですが、例えば、飛行場のターミナルのところで行き来をするときに、運転手がたしかいなかったような気がするんですけれども、こういう人が乗っていないものに対する旅客運送というのは、この場合はどうなるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、そういったように、ある一定の特定の分野におきまして現在使われている、そういったものが陸上における運送という先ほどの概念に当たりますれば、それは人が乗っていなくても陸上運送に当たるというのは、先ほど答弁を申し上げたところでございます。

串田委員 はい、大変よくわかりました。

 次に、五百九十二条の「旅客から引渡しを受けた」という文言と、五百九十三条で「旅客から引渡しを受けていない」という、この文言についてちょっとお聞きをしたいんです。

 イメージ的には、例えば、飛行機の場合には、棚に載せてふたを閉めるというようなこともあるでしょうし、電車の場合には、スーツケースを自分の席に持ってくる場合もあれば、スーツケースだけを置く場所が電車の中に用意されている場合、あるいは、バスなんかの場合にも、スーツケースを、例えばスキーなんかに行く場合、バスの下の方にハッチがあってそこに詰め込むというようなこともあると思うんですが、この引渡しを受けたとか受けないというところのメルクマールというか、どこに線引きをしたらいいんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 一般的に引渡しといいますものは、占有の移転、そういう観念でございます。したがいまして、さまざまな場面で、この占有が移転したかどうかというのは問題になり得るわけでございますけれども、そういった占有の移転といったような一般的な概念に従いまして、個別具体的な事情に応じて占有が移転したかどうかというものが判断されるべきものだと考えられます。

串田委員 今のお答えですと、占有というその客観的な要件だけがここではポイントになるのかというところがちょっと問題になると思うんですが、「引渡しを受けた」、受けたというのは引渡しを受ける側が受けたという認識を持つというように文言的には読めるわけで、占有が離れれば受けたということになるのか、それとも、受けたということを認識する必要があるのかというのはどうなんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 これもあくまでも一般論でございますけれども、占有をしているということにつきましては、そういった客観的な支配といったような客観的な事情と、それからあとは、占有意思といったような、そういった主観的要素といったものが必要というふうに考えられるのではないかと思われますので、そういった双方の観点から、占有が移ったかどうか、受け取った者が占有を取得したかどうかといったところが判断されるべきものではないかなというふうに思っております。

串田委員 更に聞くとちょっとマニアックな感じになってしまうんですが、例えば電車の、スーツケースを置く場合に、スーツケースだけを置くようなそういうエリアというのがあるわけで、そこにスーツケースを置いたということが運送業者として占有の意思を持ったというふうに考えていいのか、それとも、スーツケースを置いたということを認識しないと占有の意思を持ったと言わないのか、この点はどうなんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 なかなかちょっと一般論としてしか申し上げることは難しいと思いますし、個別具体的な事案に応じて判断されるべきものとは思いますけれども、一つ一つのものを引き渡すことを認識して受け取るという場合もありますれば、また、そういったようなものを置く場所というものを当然想定してそういう場所を設置している、そういうことをもって、占有の意思といいますか、そういったものがあるというふうに評価できるかどうかということも問題になり得るのではないかなと思いますので、やはりそういったものは個別な事情に応じて判断されるべきものかなと思われます。

串田委員 先ほど飛行場のターミナルの例をお話をさせていただいたんですが、あれは無人なので、そもそも、占有の意思というか、自分が預かったという認識というのは恐らく持てないんだと思うので、今のような解釈というか、想定した場所に置いた以上は引渡しを受けたというような理解になるのかなというふうに思います。

 そういう意味で、手荷物というか、そういうことを想定しない、自分の体に置くとか膝の上に置くとかというようなことの場合には引渡しを受けていない、だけれども、何か品物が置かれるような場所というのが事前に用意されていて、そこに置いたときには引渡しを受けたというふうな解釈にするのかな。

 これは、実際問題として、いろいろな、電車だとか飛行機でがたがた揺れて壊れたときにどちらの責任になるのかというのは、恐らくこれからの現場サイドできっと議論になるところだと思うので、そこの点については要件はきっちりとしておいた方がいいのかなと思います。

 今のような解釈になるのかなというのは一応お伺いしておきますが、通告がないので、正確なことでなかったとしてもこれはちょっとやむを得ないのかなと思うので、検討していただきたいと思っております。

 それと、危険物に関してなんですけれども、先ほどからもお話がありました、爆発とかそんなようなことがありましたけれども、溶解、物を溶かすというような液体、これも危険物という理解でよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この改正法案におきます危険物でございますけれども、引火性、爆発性その他の危険性を有する物品というふうに規定しておりますが、それは、物理的に引火性、爆発性あるいはこれに類する危険性を有する運送品を意味するものでございます。

 したがいまして、液体につきましても、その液体が物理的ないわば危険性がある、こういったような液体ということになりますれば、この危険物には当たり得るものと思われます。

串田委員 飛行機などは、液体で溶解性のあるものは機体を溶かして非常に危険なことになると思うので、その他というのもそういったような観念で判断されるのかなと思うんですが。

 例えば動物。猛獣もありますでしょうし、私は柴犬を飼っているんですが、しっぽを振りながら、近づくと、ほかの人にはかみそうになるという、大変危ないペットなんですけれども、こういったようなものは危険物になるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、この改正法案におきます危険物は、物理的に引火性、爆発性あるいはこれに類する危険性を有する運送品を意味するものでございますので、こういったような物理的な危険性がない場合には、動物であるということのみでこの危険物に当たるということにはならないというふうに考えております。

串田委員 ただ、猛獣とか蛇とか、ちょっと指を突っ込もうとすると大変な、命を奪うような場合というのは、物理的に危険なものという気はするんですけれども、生物の場合には入らないという理解でよろしいんですか。

 それとも、何か、箱に蛇が入っていたとか、そういったようなことの中で、やはりそれは危険物として指定しておいた方が、周りの人もちょっと、音がするので、猫かなと思って、指を入れたら蛇だったとかいうようなこともあるのかなと思うんですけれども、どんなものでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回、改正法案におきましては、危険物の通知義務というものを新たに規定したわけでございますが、この改正法の前、現行法のもとにおきましても、危険物の通知義務につきましては、信義則上、そういったような義務があるというふうに解釈される場合があるというふうにされておりました。

 したがいまして、仮に、物理的な危険性がないということで、この改正法案における通知義務の対象となるような危険物に当たらなくても、事案によっては、信義則上、そういった通知義務が生じるという場合は十分にあり得るものと思われます。

串田委員 危険物ということを指定すると、それなりに対策を考えられると思うんですが、それに対する費用の増加というものが出てくる可能性もあると思うんですけれども、この費用というのは危険物を指定した側に請求をするということは可能なんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 当然、費用、運送賃をどうするかというのは、これは運送人とそれから荷送り人、契約当事者間で決められるべきものでございますので、そういったような、危険物というものを考慮して運送賃、運送料を定めるということは十分当事者間であり得るものでございます。

 ただ、現行法のもとにおきましても、一般に、危険物の運送を委託する荷送り人は、その引渡しの前に、運送人に対して、その品名、性質その他の当該危険物の安全な運送に必要な情報を通知するのが通常であるというふうに言われております。

 したがいまして、改正法案によることとなりましても、実務上の運用自体はさほど変わらないものと考えられるものでございまして、運送人として新たな対応を要したり、運送賃の増減を招いたりするといったような変化を一般的にもたらすものということではないのではないかなというふうに考えております。

串田委員 この危険物に関しては他の委員からも、通知をしないときにはそれだけでは責任が発生しないという一般的な債務不履行責任という話でしたが、例えば、何らかの事故が運送中に起きて、運送人に対しての責任が発生しない、荷送り人も事故に対しては不可抗力といった場合に、危険物であるということを知らせておけば損害の拡大が未然に防げたんじゃないかというようなこともあるんじゃないかなと思うんですけれども、そういう場合でも、不可抗力による事故の場合には、危険物であるということを通知していないということによって損害額がふえるということはないという理解でよろしいんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 ちょっと御質問の趣旨を十分に把握しているかどうかはあれでございますけれども、今回の改正法案におきましては、危険物に関する通知義務違反につきましては、債務不履行に関する民法の規律に従うものと整理しておりますので、通知義務に違反して通知しなかった場合でありましても、自己に帰責事由がないことを主張、立証したときはその責任を負わないということになろうかと思います。

串田委員 次に、特約に関してのことなんですが、荷送り人が中身を知らずに荷受け人だけが危険物を知っていたというような場合というのも結構あると思うんですけれども、そういうような場合というのは通知義務というのは荷受け人に発生するんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この危険物に関する通知義務でございますけれども、客観的にその運送品が危険物に該当する、こういうことでありますれば、これはその荷送り人に対して通知義務が発生するということでございます。

 そこの荷送り人が知らなかったというような場合ですと、そこは帰責事由があるかないかといったような判断に影響する事情かなというふうに思われます。

串田委員 時間になりました。

 本来であれば大臣にもお答えをいただく予定だったんですけれども、ちょっと質問がいろいろ重複をしておりましたので、それ以外の質問をさせていただきました。

 ありがとうございました。

平口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

平口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会


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