第10号 平成30年5月9日(水曜日)
平成三十年五月九日(水曜日)午前九時一分開議
出席委員
委員長 平口 洋君
理事 大塚 拓君 理事 門 博文君
理事 田所 嘉徳君 理事 藤原 崇君
理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君
理事 源馬謙太郎君 理事 國重 徹君
安藤 裕君 井野 俊郎君
上野 宏史君 鬼木 誠君
門山 宏哲君 神田 裕君
菅家 一郎君 木村 弥生君
城内 実君 黄川田仁志君
小林 茂樹君 高村 正大君
中曽根康隆君 鳩山 二郎君
百武 公親君 山下 貴司君
和田 義明君 逢坂 誠二君
松田 功君 松平 浩一君
階 猛君 柚木 道義君
大口 善徳君 藤野 保史君
黒岩 宇洋君 串田 誠一君
井出 庸生君 重徳 和彦君
…………………………………
法務大臣 上川 陽子君
法務副大臣 葉梨 康弘君
法務大臣政務官 山下 貴司君
農林水産大臣政務官 上月 良祐君
最高裁判所事務総局総務局長 中村 愼君
最高裁判所事務総局人事局長 堀田 眞哉君
最高裁判所事務総局民事局長 平田 豊君
最高裁判所事務総局刑事局長 安東 章君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 大賀 眞一君
政府参考人
(法務省大臣官房政策立案総括審議官) 金子 修君
政府参考人
(法務省民事局長) 小野瀬 厚君
政府参考人
(法務省矯正局長) 富山 聡君
政府参考人
(法務省保護局長) 畝本 直美君
政府参考人
(法務省人権擁護局長) 名執 雅子君
政府参考人
(法務省入国管理局長) 和田 雅樹君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 八神 敦雄君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 北村 知久君
法務委員会専門員 齋藤 育子君
―――――――――――――
委員の異動
五月七日
辞任 補欠選任
井出 庸生君 泉 健太君
同日
辞任 補欠選任
泉 健太君 井出 庸生君
同月九日
辞任 補欠選任
谷川 とむ君 木村 弥生君
古川 康君 高村 正大君
同日
辞任 補欠選任
木村 弥生君 鳩山 二郎君
高村 正大君 百武 公親君
同日
辞任 補欠選任
鳩山 二郎君 谷川 とむ君
百武 公親君 古川 康君
同日
理事井出庸生君同月七日委員辞任につき、その補欠として源馬謙太郎君が理事に当選した。
―――――――――――――
四月二十四日
民法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)
同月十九日
共謀罪法の廃止に関する請願(尾辻かな子君紹介)(第九五五号)
同(大河原雅子君紹介)(第九五六号)
同(逢坂誠二君紹介)(第九五七号)
同(岡島一正君紹介)(第九五八号)
同(海江田万里君紹介)(第九五九号)
同(西村智奈美君紹介)(第九六〇号)
同(松平浩一君紹介)(第九六一号)
同(山本和嘉子君紹介)(第九六二号)
同(青柳陽一郎君紹介)(第九六九号)
同(枝野幸男君紹介)(第九七〇号)
同(神谷裕君紹介)(第九七一号)
同(川内博史君紹介)(第九七二号)
同(佐々木隆博君紹介)(第九七三号)
同(高木錬太郎君紹介)(第九七四号)
同(宮川伸君紹介)(第九七五号)
同(村上史好君紹介)(第九七六号)
同(山崎誠君紹介)(第九七七号)
同(櫻井周君紹介)(第九八六号)
同(長尾秀樹君紹介)(第九八七号)
同(長谷川嘉一君紹介)(第九八八号)
同(落合貴之君紹介)(第一〇一五号)
同(近藤昭一君紹介)(第一〇一六号)
同(辻元清美君紹介)(第一〇一七号)
同(高井崇志君紹介)(第一〇三二号)
同(長妻昭君紹介)(第一〇三三号)
同(山花郁夫君紹介)(第一〇三四号)
同(岡本あき子君紹介)(第一〇六二号)
同(道下大樹君紹介)(第一〇六三号)
同(本多平直君紹介)(第一〇七四号)
国籍選択制度の廃止に関する請願(遠山清彦君紹介)(第一〇一八号)
もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(遠山清彦君紹介)(第一〇一九号)
民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正に関する請願(大河原雅子君紹介)(第一〇二〇号)
同(辻元清美君紹介)(第一〇二一号)
裁判所の人的・物的充実に関する請願(藤野保史君紹介)(第一〇七三号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
政府参考人出頭要求に関する件
民法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件
――――◇―――――
○平口委員長 これより会議を開きます。
理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○平口委員長 御異議なしと認めます。
それでは、理事に源馬謙太郎君を指名いたします。
――――◇―――――
○平口委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官大賀眞一君、法務省大臣官房政策立案総括審議官金子修君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省矯正局長富山聡君、法務省保護局長畝本直美君、法務省人権擁護局長名執雅子君、法務省入国管理局長和田雅樹君、厚生労働省大臣官房審議官八神敦雄君及び国土交通省大臣官房審議官北村知久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○平口委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局総務局長中村愼君、人事局長堀田眞哉君、民事局長平田豊君及び刑事局長安東章君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○平口委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。國重徹君。
○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。
ゴールデンウイークも明けまして、国会が正常化をいたしました。国会のこの会期が限られている中で、本会議またそれぞれの委員会で精力的に議論をして、課題を一つ一つ解決をしていく、必要な法案については結論を出していく、これが議会、国会の本来のあり方であるというふうに思います。
その一方で、行政に対する国民の信頼が失墜するような、殊に不祥事に関しては、その真相究明、再発防止等にしっかりと取り組んでいくことは、これは当然のことであります。信なくば立たずでありますから、行政府だけではなくて、立法府に身を置く私どもも一層襟を正していかなければならないと思っております。
そして、国民の信頼の上に成り立っているのは三権の一翼を担う司法府も同様でありまして、裁判所に対する国民の信頼なくして法治国家は成り立ちません。
そこで、きょうは、裁判官に関して何点か質疑をさせていただきたいと思います。
まず、裁判官の衣装について伺います。
裁判官は法廷で黒い法服をまとっております。着用しております。これはなぜ黒い法服をまとっているのか。弁護士とか検察官は別に黒い法服を着ないですけれども、普通のスーツ等で出ておりますけれども、なぜ裁判官が黒い法服を着用しているのか、また、それはいつから始まったのか、お伺いします。
○中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
現在、裁判官が法廷でいわゆる法服というのを着用しておりますのは、裁判官の制服に関する規則という昭和二十四年に定められた最高裁判所規則に基づくものでございます。そこでは、「裁判官は、法廷において、制服を着用するものとする。」とされておりまして、現在、細目を定めた通達におきまして、制服の色は黒色ということで定められているところでございます。
いつ始まったかという御質問でございますが、これは明治憲法下の、明治二十三年制定の裁判所構成法にも制服を着用する旨の規定があったようでございまして、何分古いことで、いつからということの正確なところは確認できませんでしたが、現行の裁判所制度が発足いたしまして、先ほどの最高裁判所規則が制定されて以降は一貫して裁判官の制服は黒色とされているところでございます。
なぜというところでございますが、制服を着用する実質的な理由、これは、法廷というのが厳粛かつ秩序正しく手続が行われなければならない場所であることからいたしまして、一方ではその公正さと人を裁く者の職責の厳しさをあらわすとともに、制服を着用することによりまして、裁判官みずからがそのような立場にあることを自覚させるという意味があるものと承知しているところでございます。
色がなぜ黒かということですが、これはどうも諸説あるようでございますが、黒色が他の色に染まることがないという意味で、公正さを象徴する色として最適なものであると考えられたためと言われていることが多いものと承知しているところでございます。
○國重委員 それでは、裁判員裁判で、裁判員の方というのは黒い法服を着ていません。最高裁のホームページを見ましたら、「裁判員には法服は支給されないのですか。」「裁判員に法服は支給していません。」ということで書いておりまして、また、「裁判員や裁判員候補者として選ばれた場合、どのような服装で裁判所に行けばよいのですか。」、これについては「裁判員や裁判員候補者にどのような服装で来ていただくのか等の具体的な定めはなく、普通の服装でお越しいただければ結構です。」というふうに書いてあります。
裁判員裁判であっても、やはり、人を裁く、またその公正さというのは求められるというふうに思いますけれども、じゃ、なぜ裁判員は黒い法服を着用しなくていいのか、お伺いします。
○安東最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
今委員から御指摘ありましたとおり、裁判員の方々も人を裁く者として責任や公正さが求められるということでは同じところでございますが、裁判員制度は、広く一般の国民の皆様に一国民の立場で裁判に参加していただく制度でございます。そのような制度趣旨を踏まえまして、裁判員に選ばれた方にはおのおのの自由な服装で参加していただくということにしてございまして、法服の着用は求めていないところでございます。
○國重委員 職業裁判官と裁判員の方とでそういう違いがあるということですけれども、裁判官については、冒頭にお答えいただいたとおり、高い公正性が求められている。
一般の国民の方にとって、裁判というのは一生に一度あるかないかの一大事であります。その裁判において国民の皆さんというのは、弁護士は選ぶことができるけれども、裁判官を選ぶことはできません。これは選択の余地はありません。そうであれば、裁判官によって、裁判に必要な質について大きな差があってはならないというふうに思います。
そこで、最高裁として、あるべき裁判官像というのはあるのか、あるのであればそれはどのようなものなのか、お伺いします。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
あるべき裁判官像につきまして一概に述べるのはなかなか難しいところでございますけれども、裁判官の人事評価制度における評価項目等を手がかりに考えてお答え申し上げたいと存じます。
まず、裁判官の基本的な職責は、具体的な事件において、事実を認定し、法令を解釈、運用して、当該事件を適正迅速、公正妥当に解決することにございますので、裁判官には、事件処理能力、すなわち法律知識や法的判断に必要な資質、能力と裁判手続を合理的に運営するのに必要な資質、能力が求められると考えております。
また、裁判官は裁判所職員等と協働して事件処理に当たるものでございますので、部等を適切に運営するのに必要な組織運営能力も求められると考えております。
さらに、裁判官として職務を行う上で必要な一般的資質、能力として、幅広い教養に支えられた視野の広さ、人間性に対する洞察力、社会事象に対する理解力などや、廉直さ、公平さ、寛容さ、決断力、責任感、積極性なども求められると考えているところでございます。
○國重委員 では次に、判事補採用の基準について伺います。
裁判官志望の司法修習生が全て裁判官、判事補になれるわけではありません。司法修習が始まったとき、自分は裁判官になるんだと裁判官志望だったのに、その後の研修所での起案の成績が振るわなかったりして裁判官になるのを諦める修習生もいます。またあるいは、裁判官の任官願を出したけれども採用されなかった人もいたというふうにも聞いております。
では、どのような基準で判事補を採用しているのか。優秀な成績をおさめていなければ判事補として採用されないというイメージがありますけれども、実際のところはどうなのか、お伺いします。
○堀田最高裁判所長官代理者 判事補の採用に当たりましては、外部の有識者等から構成されております下級裁判所指名諮問委員会に判事補としての任命の適否が諮問されますが、指名諮問委員会の判断基準といたしましては、事件処理能力、部等を適切に運営する能力、裁判官としての職務を行う上で必要な一般的資質、能力を審査項目といたしまして、裁判官にふさわしいかどうかが審査され、その審査におきましては、修習中の成績のほか、指導担当者の意見など人柄に関する情報等も総合的に検討されているものと承知しております。
また、採用の基準もこれと同様というふうに考えられるところでございます。
○國重委員 採用の基準というのは、先ほどのあるべき裁判官像とリンクするわけですね。
今、その中で事件処理能力というものも挙げられていました。裁判所においては各裁判官の事件処理数について一覧表が配付されているようでありますけれども、この一覧表は具体的にどのようなものなのか、お伺いします。
○中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、各庁が独自の集計をいたしまして、所属の裁判官ごと、あるいは担当係ごとの未済事件数、既済事件数の一覧表を作成している場合がありまして、これをいわゆる自庁統計というふうに呼んでおりますが、その集計の方法や様式、形態は各庁さまざまでございまして、最高裁として把握しているものではございません。
その作成の目的でございますが、各庁がそのような資料によりまして、事件処理状況に滞りがないかどうかを確認するというところにあります。すなわち、一定期間継続いたしまして特定の裁判官や係に事件が滞留し、その処理が困難になっているような事態が起こっておりますれば、庁といたしましてその原因を分析し、人的体制の不十分さがあるような場合には、応援とか事務分担の変更、あるいは増配置という司法行政上の対応を検討するということのためでございます。人事評価のために作成している資料ではないと承知しております。
○國重委員 今、人事評価に対する資料のために作成しているものではないというような答弁がありました。
ただ、事件処理が遅い裁判官というのは、この一覧表を見ればある程度明らかになるかとは思うんですけれども、こういった事件処理が遅い裁判官は何らかのマイナスの扱いというのは受けることがあるのかどうか、答弁を求めます。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
裁判官の人事評価に当たりましては、事件処理能力の評価項目におきまして、さまざまな視点に基づいて総合的に評価をしているところでございます。その中には、合理的な期間内に調査等を遂げて判断を形成する能力というものも評価の視点としては含まれておりますけれども、単に事件処理が遅いということのみをもって低い人事評価を受けるということはございません。
○國重委員 事件処理のスピードを優先し過ぎて雑な事件処理になってもいけないし、スピードと質のバランスが大事だというようなことだと思います。
この裁判官人事評価に関する規則の運用における評価項目、評価の視点には、事件処理能力、組織運営能力だけではなくて、一般的資質、能力として、識見や人物、性格という点も示されております。そして、平成十二年の司法制度改革審議会では、国民が求める裁判官像として、人間味あふれる、思いやりのある、心の温かい裁判官といったような意見も挙げられております。
この人間味あふれる裁判官とか、多角的で深みのある裁判官になるためには、また社会の実情に合った裁判をするためには、狭い世界だけにとどまるのではなくて、公私ともに外部との接触の機会をつくっていくことが重要と考えますけれども、最高裁の見解を伺います。
○堀田最高裁判所長官代理者 裁判官が職務以外の多様な外部経験を積むことで多様で豊かな知識、経験等を備えることが極めて有用であると考えておりまして、そのための取組として、判事補につきましては、民間企業等への派遣、弁護士職務経験、海外留学、行政官庁等での勤務等の外部経験のプログラムを実施しているところでございます。
また、判事につきましても、短期間、民間企業や報道機関で研修するプログラムを設けますとともに、行政官庁等からの要望を受けまして、行政官庁等での勤務の機会を設けることによりまして、知識、経験を更に豊かなものとし、視野を広げることができるようにしているところでございます。
最高裁といたしましては、今後とも、このような外部経験を更に充実させることを通じまして、裁判官の主体的、自律的成長を支援するように努めてまいりたいと考えているところでございます。
○國重委員 主に仕事の一環としての社会経験を積む、外部との接触の機会をつくっていくことについて今答弁をしていただきました。
それとは別に、私が聞いたのは公私ともにということで、私的な活動についても社会との接点をつくっていくということが重要だと思いますけれども、最高裁の見解を伺います。
○堀田最高裁判所長官代理者 裁判官として職務を行う上で必要な一般的資質、能力として、人間性に対する洞察力、あるいは社会事象に対する理解力等も求められていると考えられるところでございまして、このような観点からいたしますと、裁判に対する国民の信頼を損なうことのないよう留意しながら、私的な活動の面でもさまざまな人的交流を持つということは有意義なものと考えております。
○國重委員 私的な活動においても社会との接点を持つことはさまざまな意味で有意義であるというような答弁でした。人間味あふれる裁判官が社会との接触をつくっていくということは大事だと思います。
その一方で、裁判所法四十九条で、裁判官は、品位を辱める行状があったときは、裁判によって懲戒されるというふうに定められております。
では、裁判官に求められる品位、この品位というのは一体何なのか、お伺いします。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
裁判官に求められる品位につきまして、一般的に述べるのはなかなか難しいところでございますが、裁判官あるいは裁判に対する国民からの信頼を得られることが求められるというところが重要なところかと考えております。
○國重委員 国民の信頼を確保するようなことを今言われたんですかね。
じゃ、なぜ裁判官は国民の信頼を確保することが私的活動においても重要なのか、お伺いします。
○堀田最高裁判所長官代理者 裁判官である以上は、職務上でなくても、職務を離れた私的活動においても、裁判あるいは裁判官に対する国民の信頼、これを損なうことがあってはならないというところでございまして、そういった点で、先ほど申し上げました品位に関しましては、私的な活動も含めてそういった信頼を得ることが重要というふうに考えているところでございます。
○國重委員 団藤重光さんが委員長を務められた法曹倫理研究委員会が出した法曹倫理に関する報告書、これは昭和五十二年に出したものですけれども、この中に、裁判官は一定の品位を保持すべき義務を有する、裁判の権威を基礎づける裁判に対する信頼は、裁判官の人格に対する信頼と敬意の念と深く結びついている、裁判官は、その意味において何ほどかのシンボル的役割を担っている、このことから、裁判官は、右のような信頼と敬意を傷つけることのないよう、裁判上のみならず裁判外における行動や挙措態度において、一定の品位を保つように心がけることを要請されるというふうにここで記載されております。
こういった品位と、先ほどの人間味あふれる裁判官、この人間味というところのバランスのあり方、これをどのように最高裁として考えているのか、お伺いします。
○堀田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の人間味ということとの関係で申し上げますと、裁判官についても私的な活動の自由は尊重されるべきであると考えております。その一方で、品位の観点からは、国民の裁判官ないし裁判に対する信頼を損なうことのないよう、みずから律するということは重要であると考えておりまして、そういった形でのバランスをとっていく必要があろうかと考えております。
○國重委員 では、裁判官の私的活動について、一般人と異なる制約というのはあるのか、内部的な通達等はあるのか、全て裁判官一人一人の自律に委ねられているのか、お伺いします。
○堀田最高裁判所長官代理者 まず、裁判官について一般人と異なる制約があるのかという点でございますけれども、裁判官につきましては、裁判所法五十二条におきまして、「積極的に政治運動をすること。」「最高裁判所の許可のある場合を除いて、報酬のある他の職務に従事すること。」「商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。」が禁止されておりますほか、裁判所法四十九条において、品位を辱める行状があったときは、裁判によって懲戒されるというふうにされているところでございます。
それとの関係で、内部的な通達等があるのかという点でございますけれども、裁判所法五十二条に基づく兼職許可につきましては通達が定められておりますほか、例えば、事件当事者等との関係での倫理の保持につきましては、国家公務員倫理法の倫理規範等を踏まえまして、問題となり得る行為等を取りまとめたものを示したりなどしているところでございますが、そのほかの私的活動について一般的、網羅的に定めた通達等は存在しないところでございます。
裁判官の私的活動につきましては、裁判官の独立性等に鑑みますと、最高裁として一般的、網羅的な通達等を定めることは難しいところがございまして、基本的には、個々の裁判官の自律的な判断に委ねることが相当であると考えているところでございます。
○國重委員 それでは、例えば、現職の裁判官が政治家と酒席で私的な懇談をする、こういったことは特に問題ないというふうに捉えていいんでしょうか。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
御指摘のような事例について一般論としてお答えするのはなかなか難しいところでございますが、例えば、当該政治家と裁判官との関係でありますとか、その酒席が設けられた趣旨、あるいはその酒席の態様等の具体的な事情を踏まえまして、国民からの信頼を損なうようなものではないかといったことについて個別具体的に判断することになろうかと考えております。
○國重委員 私は、原則として自由なのかなというふうに思うんです。
私、候補者になったときにすぐに、修習時代にお世話になった裁判官、今はもうお亡くなりになりましたけれども、大阪地裁第七刑事部で裁判長をやられていた杉田宗久裁判官というのがいらっしゃって、そのときは高等裁判所にいらっしゃいましたけれども、挨拶に行きまして、候補になりましたとかということを、そういうこともありました。
特に何か政治の込み入った話とかをするわけではありませんけれども、私は原則自由でいいのかなというふうには思います。誤解を招くような行動は慎まなければならない、節度を持たないといけないというのはあると思いますけれども、余り萎縮させるようなことがあり過ぎてもいけないんじゃないかなというふうには感じております。
では、例えば、鼻にピアスをつけて、自分の美的感覚として鼻にピアスをつけるのは、すごい、自分としては美的センスも抜群なんだということで例えばつけている場合に、それで裁判官として仕事をしている場合、これは問題ないのか、お伺いします。
○堀田最高裁判所長官代理者 今御指摘のようなケースにつきましては、ますます一般論としてお答えするのはなかなか難しいところでございますけれども、具体的な状況を踏まえて、信頼を損なうようなものではないかというところを判断していかざるを得ないかと考えているところでございます。
○國重委員 これについては、裁判それ自体が的確に正しく行われれば、もうそれで裁判としてはいいんだ、裁判官としてはいいんだというふうに捉えるのか、先ほど団藤さんの報告書でしたか意見書だったか、あの中にもありましたけれども、裁判がそれにふさわしい権威を持ってなされることまで要求されているのか、こういったことも絡んでくることかと思うんですけれども、要は、裁判というのは、それが正しく行われればいいのか、それとも、それにふさわしい権威を持ってされることまで要求されているのか、この点についてはどうでしょうか。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
一般に、裁判につきましては、客観的に公正であるだけではなくて、公正らしさも必要であるというふうに言われてきているところでございまして、そういった点が、先ほど来申し上げております国民の信頼というところにもつながってくるのではないかと考えているところでございます。
○國重委員 いろいろ悩ましい問題もあるかと思います。外見を問題にすることは、もうこれは画一的、全体的な思考なんだとか、また多様性を認めていく、価値観の多様化みたいな中で、これはどうなんだというような意見もあるかもしれませんけれども、これも裁判官の職権行使の独立とか司法の独立というのが認められていますので、しっかりと内部で、また個々人で検討していただければと思います。
その上で、やはり裁判官の方というのは、特に私的な活動について必要以上に萎縮されている方もいるのではないかというふうに思いますので、適切な節度は保ちながらも、できるだけ外部と接触していくこと、こういったことについても萎縮しないような取組を最高裁としてもしっかりと今後取り組んでいっていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○平口委員長 次に、松田功君。
○松田委員 おはようございます。立憲民主党の松田功でございます。
本日も質問させていただきますが、四月の二十九日から五月の六日まで世界卓球選手権が行われまして、残念ながら中国に負けてしまいましたが、日本の女子チームが銀メダルをとって、昨日帰ってまいりました。なかなか世界の壁も厚いなと思いながら、一生懸命頑張っている選手の皆さんに本当に深く敬意を表したいと思います。
それでは、質問に入らさせていただきたいと思います。
松山刑務所の大井造船作業場の方から受刑者脱走について、質問を行わさせていただきたいと思います。
二十三日間にわたる逃走の末、広島で確保されたわけですが、刑務官や受刑者との関係に悩んでいたのが原因とする報道もある一方、松山刑務所の所長の会見では、刑務所内にいじめなどの人間関係のトラブルはなかったとおっしゃっています。しかし、以前にも人間関係のトラブルで受刑者が脱走していることを考えると、もう少し丁寧に問題を掘り下げた方が再発防止にいいと考えております。
いまだ状況がつかめていない部分もございますので、警察庁にお尋ねをさせていただきたいと思います。平尾受刑者の逃走の動機を含め、事件の詳細について、お答えできる範囲でお答えいただきたいと思います。
○大賀政府参考人 お尋ねの事案につきましては、四月の八日に愛媛県今治市の大井造船作業場から逃走した受刑者を、四月三十日、広島県警の警察官が発見をして、逃走罪で逮捕して、現在捜査中のところでございます。
現在捜査中でございますので、その供述等の詳細については差し控えたいと思いますけれども、おおむね人間関係が嫌になって逃走したといったこと、あるいは向島内の空き家に潜伏をしていたといったこと、あるいは向島から本州まで泳いでいったんだというようなことについて供述をしていると報告を受けているところでございます。
今後、関係警察において、逃走の動機やあるいは逃走後の足取りの詳細、こういったことについて、あるいは、逃走中に尾道市内において何件か窃盗事件が発生しておりますけれども、こうした窃盗事件の関与等につきましても捜査を進めて、事案の全容解明に努めていくものと承知をいたしております。
○松田委員 二十三日間、約三週間過ぎですね、超えて逃走していたということで、非常に捜査も大変だったと思いますが、そんな中、ぜひ再発防止に向けては、しっかりと聴取をしていただく中で、起こらない体制をとっていく意味で、取締りの方をきちっと行っていただくことをお願い申し上げたいと思います。
次に、今回、平尾受刑者が逃走したことにより、近隣の皆さん、実際には広島市内まで逃走していたわけですけれども、非常に広範囲な住民の方たちが不安な毎日を送られておりました。平尾受刑者確保後の法務省の対応について、少しお伺いをさせていただきたいと思います。
再発防止に向けた検討委員会が設置をされておりますが、その検討委員会で話し合われた再発防止策についてお答えをいただければと思います。また、その委員会のメンバー構成についてもお伺いをさせていただきたいと思います。
○富山政府参考人 答弁に先立ちまして、本年四月八日、松山刑務所大井造船作業場から受刑者が逃走いたしまして、四月三十日に身柄が確保されたとはいえ、二十三日間にわたりまして、国民の皆様、とりわけ地域住民の皆様に大変な御不安と御心配を与えてしまいました。学校関係者の皆様や企業の皆様にも大変な御迷惑をかけてしまいました。この場をおかりしまして、心からおわび申し上げたいと思います。
その上で、お答えいたします。
御指摘の、松山刑務所大井造船作業場からの逃走事故を契機とした開放的施設における保安警備・処遇検討委員会、これは法務大臣の指示によりまして逃走翌日の四月九日に設置をされまして、現在までに四回会議が行われております。
この委員会におきましては、本件逃走の原因や問題点の検証を行っております。開放的施設において有効な保安警備システムについてどのようなものがあるのか、最先端の技術導入も含むあらゆる手段、方法の検討なども含まれております。
この逃走事故につきましては現在も警察の捜査が続いておりまして、一番肝心なことは、なぜこの事故が起きたのかという原因の究明と問題点を掘り下げるという、まさに委員御指摘のとおりでございまして、その上で、開放的な施設における保安警備のあり方全般、そういったことをしっかりと検討していくことを目的としてやっております。
まだ法務省としては逃走した本人から事情聴取ができておりませんが、警察の捜査に支障を生じない範囲で可能な限り調査を行った上で、そういった結果も踏まえながら、この委員会においてしっかりと、かつ速やかに検証、検討を進めて、再発防止策の策定や徹底に努めてまいりたいと考えているところでございます。
この委員会につきましては、法務大臣官房の政策立案総括審議官を委員長といたしまして、あとは官房秘書課あるいは法務省矯正局の職員らをメンバーとして検討をしているということでございます。
○松田委員 この逃走劇に当たりまして、ちょっと新聞等々の方でありましたが、松山刑務所の作業場の平尾受刑者が逃走して、その後、その作業場の方にほかの受刑者の作業員は入れていないということが報道されました。
検討委員会の方がそういったことでそういう対応を検討されたのか、また、この作業場自体も住民の不安を解消するために作業場の方に行かせないということをされたのかと思われますが、今度、逆に、造船業者の方としては、人材として働いていただいていた部分を思うと、仕事的に非常に不備が生じているのではないかという部分が感じとれるわけですね。
その辺について、御対応などはどういう経過の中でこういったことを行われたのか、もう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
○富山政府参考人 お答えいたします。
本件逃走が発生しました翌日の四月九日には、大井造船作業場の友愛寮に収容しておりました他の十九名の受刑者、いずれも松山刑務所、我々は本所と呼びますが、その松山刑務所本所に移送して収容しております。
これは法務省矯正局において直ちにとった措置でございまして、これは逃走した受刑者を捜索するために数多くの刑務官を張り込みにつけなければいけないといった事情もございまして、まず、友愛寮にいる十九名の受刑者をそのまま置いておくことができないということで、松山刑務所本所にまずは引き揚げたということでございます。
ただ、その後、大変地域の皆様に不安を与えるような状況になっている中で、従来の体制のままでまた友愛寮に戻して大井造船作業場での作業をさせるということになりますと、やはり国民の皆様、地域住民の皆様からの御理解は得られないだろうということで、現在までまだ松山刑務所本所に受刑者を収容しているという状況でございます。
まさに、お尋ねのとおり、大井造船作業場を昭和三十六年から、まさに社会貢献という視点から運営していただいております新来島どっくの皆様は、逃走した受刑者も含めて二十名の受刑者、みんな一生懸命仕事をしてくれていた、本当に民間の作業員と一緒にチームとして活躍をしてくれていて、受刑者の大変礼儀正しい姿勢は自分たちにとってもある意味模範になると感じていた、そこまで言っていただいておりまして、いろいろな不安を取り除いた上で、一日も早く、またもとのように戻していただきたいというお声もいただいているところでございます。
私どもとしては、しかしながら、従来のままというわけにはいきませんので、早急に対策を考えつつ、受刑者を新来島どっくで再び就業させるということを目指していきたいとは思っているところでございます。
○松田委員 非常に悩ましいところかと思われますが、今、そういった体制をされたことは御説明いただいたとおりだというふうに思います。
その意味において、警察庁の方の捜査も進めていただく中、早く連携をとっていただいて対策をとっていただくことがいろいろな意味において重要であるということも改めて確認をさせていただいた形になると思います。ぜひ、そういった形で早く進めていただければというふうに思っております。
また、この間の報道や検討委員会の内容を確認させていただく中で、再発防止策として、受刑者へのGPS装備など、機械、装置の使用も検討材料に上がっているようなお話も聞いておりますが、目に見えない塀をつくるような対処方法などとか、いろいろな形でまだ検討をされていくところのようにも思います。
そういった中、刑務所という施設自体は、罪を犯した者を収容しておしまいというものではないということは御存じのとおりかと思います。どのような犯罪者でも、極刑、死刑にならない限り、刑務所から出所して社会に出て生活をするという前提なわけです。単に、罰だからといって隔離するだけでは、社会に不適合な、法を犯す可能性が高まった人間をまた次々に社会に送り出し続けるという形になってしまいます。それもまた税金を使って行うということになります。
再犯率、再入所率の低さを考えれば、開放的施設のように、受刑者の人権を尊重するやり方が有効なものも否定はできないと思われます。しかし、今回のような事件が起き、近隣住民の生活が脅かされるような事態は絶対に避けなければならないというふうに思っております。
その意味において、今後、どのように見直しをしていっていいのか、法務省の再発防止に向けた今後の施策について大臣の方に少しお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○上川国務大臣 まず冒頭、四月の八日に松山刑務所大井造船作業場から逃走した受刑者が、四月三十日逮捕されました。
大井造船場があります愛媛県の今治市、また、逃走過程の中で長期間潜伏していた広島県尾道市、そして、とりわけ向島の皆様、地域住民の皆様や、また企業、学校関係者を始めとして多くの皆様に、平穏な日常生活が突如として二十三日間にわたりまして脅かされたということで、また、全国の皆様に対しましても大変なる御心配と御迷惑をおかけしたことに対しまして、心から深くおわびを申し上げます。
私、五月一日及び二日におきまして、この逃走事故によって多大な御迷惑をおかけし、また、御不安を感じておられる地域住民の皆様、また企業関係者、学校関係者を始めとして多くの皆様に直接おわびを申し上げるために、また、皆様のお気持ちを率直に伺うために、現地を訪問したところでございます。
大井造船場は、先ほど局長の答弁のとおり、昭和三十六年の開設以降、五十七年の歴史がございまして、企業の全面的な御支援と御協力をいただいて、また、地域の住民の皆様からの大きな御協力、御支援をいただきながら長い間運用されてきた開放型施設でございます。
受刑者が生活していた友愛寮という寮と、そして同時に、企業の従業員の皆様とともにチームとなって作業に当たられていた作業場も視察をいたしましたけれども、いずれも開放的な状況になっておりまして、このような企業の皆様、地域の皆様に支えられている環境の中で、改善更生に向けた受刑生活を送ることが、この大井造船作業場の大変大きな特色であるということを実感した次第でございます。
一方、逃走した受刑者が潜伏しておりました向島の皆様、また大井造船作業場の近隣の地域の皆様から、逃走事故防止に万全を尽くしてほしい、こうしたお声をたくさんいただきました。そうした地域の皆様のお声、企業の皆様のお声を再発防止にしっかりと生かしてまいりたいというふうに強く感じたところでございます。
この開放的施設は、委員御指摘のとおり、一般社会にできる限り近い環境を実現することによって、受刑者の自律性また自発性、こうした気持ちを涵養し、ひいては、受刑者の受刑後の社会適応能力、こうしたものを向上させるという点で大変意義があるというふうに考えております。
そもそも、開放的施設でございますので、客観的には逃走しやすい環境にあるわけでございますが、逃走事故の防止のためには、開放的施設の持っている特色、特性を失わせないように配慮しつつ、しかし、万が一逃走を試みた場合には、直ちに把握ができるような体制というものを構築する必要があるというふうに考えております。
先ほど局長の方から、四月九日に直ちに私が指示をいたしまして、松山刑務所大井造船作業場からの逃走事故を契機とした開放的施設における保安警備・処遇検討委員会を立ち上げ、今回の逃走事故も含めまして、全国にある開放的施設におきましての保安警備や処遇のあり方について検証、検討を進めているところでありまして、その結果を踏まえて、その対策につきましては、短期、中期、長期とわたりまして取り組んでいく必要があろうかと思いますので、しっかりと、また速やかに徹底してまいりたいというふうに思っております。
○松田委員 大臣も現場の方へ行かれて、いろいろ感じるところも多かったと思います。
そういった意味で、やはり、この刑務所の意義も含めた中で、再発防止に向け、また犯罪件数を減らすために、受刑者の更生は大変に重要なこととなってまいります。
また、刑務所の過剰収容なども含めた、受刑者たちの更生に障害となるだけでなく、刑務官たちを精神的にも肉体的にも追い込むことにならないようにしていかなければならないと思います。
このような過剰収容も含めて、合理的に解決する方法は再犯の防止であり、開放的施設がそれに有効であることは先ほど述べたとおりであります。
検討委員会において、これにも外部の方の有識者を入れたりして、いろいろなまた御意見を聞きながら、日本の刑事政策をしっかりと考える新たな機会だというふうに捉えて、ぜひ、この開放的施設の意義を考え、また、どう改善して、どう見直し、また、改革を進めていくことで地域住民の安全とまた地域住民の皆さんの理解を深めていただいて、再発防止の取組をぜひ進めていっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、次の質問に入らさせていただきたいと思います。
五月六日の日曜日に、東京レインボープライド二〇一八のパレードに私は参加してまいりました。
御存じだと思いますが、LGBTの方や、その友人、知人、その運動に賛同される多くの方々、約七千人と発表があったと思いますが、その集会において、また、パレードを行った沿道に並ぶ企業もレインボーの旗を掲げて賛同を示して、外国からも多くの方々が参加されていたように思います。人権に絡むSOGI問題をこんなに多くの方たちが関心を持ち賛同されていることに大変感銘を受けたところであります。
しかしながら、セクハラ問題を含む人権問題についてはなぜか広がりを見せていかないということに対しては、少し腹立たしさも覚えているところであります。それについて、また質問に入らさせていただきたいと思います。
ハッシュタグ・ミー・トゥー運動について、日本で広がりが深まらない理由はどういうふうに思われているのか。
ハッシュタグ・ミー・トゥーは、御存じのとおり、アメリカの女優アリッサ・ミラノさんが、セクハラ被害を受けた後、ある人に向けてミー・トゥーと声を上げてほしいとツイッターに発信したことで、アメリカを始め世界的なセクハラ告発運動となったものであります。しかし、日本はどんな状態であるか。
二〇一七年五月に、ジャーナリストの伊藤詩織さんが準強姦被害を告発。同年十二月には、作家でブロガーの伊藤春香さん、ブロガー名としては、はあちゅうさんでありますが、上司によるセクハラ被害を告発しました。その後も、政治アイドルであります町田彩夏さんや若手実業家の椎木里佳さんらもみずからの被害体験をツイッター上でつぶやいたものの、だんだんと下火になっていったように思います。
かといって、セクハラ被害の女性がこの日本から一人もいなくなったわけではありません。今回の女性記者のことも考えれば、まだ声を上げることができないセクハラ被害者が大勢いることは間違いないと思われます。なのに、なぜ日本では、私もと声を上げる人が少ないのか。いかが思われておりますでしょうか、大臣の方にお伺いをさせていただきたいと思います。
○上川国務大臣 セクハラ問題に関しまして、委員御指摘のとおり、いわゆるミー・トゥー運動、これが世界の中で大きく広がり、また、そうした認識につきましても、昨今、日本の中でも認識されつつあるという状況であるというふうに承知をしております。
セクハラの被害に遭った方々が、その被害につきましてなかなかみずからの声を上げることができにくい、これが問題の一つであるというふうに思っております。みんなで勇気を持って声を上げることができるということは大変重要なことであるというふうに思っております。
法務省といたしましても、セクハラの被害者が声を上げることができる環境、これを整えること、これが重要ではないかというふうに思っておりまして、現在、女性をめぐるさまざまな人権問題に関する相談にしっかりと丁寧に応じること、また、人権を侵害されたという被害を勇気を持って申し出た方々に対しまして救済手続を開始し、事案に応じた適切な措置を講じるなどの取組をしているところでございます。
今後も、こうした人権相談、また人権侵犯の調査、救済に引き続き取り組んでいくとともに、被害者の方々がより声を上げやすいような環境整備として女性の人権ホットラインを始めとする人権相談窓口の周知徹底を図るなどして、女性の気持ちに寄り添った対応にしっかりと努めてまいりたいというふうに考えております。
○松田委員 大臣の方からも、しっかりと取り組んでいきたいというお言葉もいただいております。
そんな中、少し法務省での活動について質問をしたいと思います。
人権擁護局には、先ほど大臣の方からもありましたが、人権相談窓口が複数ある中で、セクハラについて、女性の人権ホットラインが該当すると思われます。少しその中身についてお聞かせをいただきたいと思います。
○名執政府参考人 女性の人権ホットラインは、平成十一年六月に施行されました男女共同参画社会基本法の趣旨を踏まえ、人権を擁護する機関としての立場から、性差別に起因する人権侵害の被害者の救済を推進し、男女共同参画社会の実現に資するために導入した無料の電話相談であります。
女性の人権ホットラインは、ナビダイヤルを利用し、全国統一の電話番号にかけますと最寄りの法務局につながる仕組みとなっておりまして、平日の午前八時三十分から午後五時十五分までの間、相談を受け付けております。
相談の内容の内訳は、主なものとしましては、セクハラのほか、暴行・虐待、強制・強要、ストーカーなどがございます。
女性の人権ホットラインによる相談は、法務局職員又は人権擁護委員が受けておりまして、秘密は厳守することとしております。また、相談担当者としまして、可能な限り女性を配置するよう努めているところです。
なお、平成二十九年における女性の人権ホットラインの利用件数は、全国合計で一万九千六百五十六件でございました。
○松田委員 今御報告いただいたように、利用される方も結構多くいるということも言われる中、個人情報などの保護もされているというお話であります。
そんな中で、一般的なセクハラ事案の対応で、相談者の匿名性の担保や二次被害、三次被害などへの配慮はどうなされているのか、お伺いをしたいと思います。
この人権擁護の冊子の三十六ページの中で、法務省の人権擁護機関の活動において、セクハラを含む人権侵犯事件の調査救済活動を行うとありますが、具体的には、被害に遭われた方から相談を受け、援助、調整、説示、勧告を行う上で、どのように調査し、また被害に遭われた方の個人情報はどのように守られているのか、お答えをいただきたいと思います。
○名執政府参考人 法務省の人権擁護機関で受け付けます人権相談については、相談の内容の秘密は厳守しております。相談自体も、相談者が匿名であっても受け付けることができるようになっております。
もっとも、相談を受けました事案について、これを人権侵犯事件として立件して調査を行うに当たりましては、誰のどのような権利が侵害されたかなど、事実を確定する必要がありますので、匿名での調査を行うということは困難でございますが、委員御指摘のとおり、セクハラ事案への対応におきましては、二次被害、三次被害への配慮も重要でありまして、被害者のプライバシーに最大限配慮いたしまして、かつ、その心情に寄り添って行うよう努めているところでございます。
法務省の人権擁護機関におきましては、今後とも、被害者に寄り添い、プライバシーの保護も含め、その意向に最大限配慮した人権擁護活動に取り組んでまいりたいと思っております。
○松田委員 今お答えいただいた中で重要なポイントが、匿名性をどうしても守ることが最後はちょっと難しくなるみたいなことを言われた、ここが一番重要なんですね。相手方に被害に遭われた方の情報を開示するということは、どれだけ被害者の立場が不安定になるか、ぜひ考えていただきたいと思います。
一般的には、セクハラなどの人権侵害は、人間関係において上下がある場合が多いとも考えられます。その場合、被害者の情報が伝われば、別の形で圧力が加えられるおそれがあります。そのような二次被害を防ぐことを考えなければ、本当の意味において救済とならないのではないかと思われますが、いかがかと思います。
そこで、例えば、国会図書館の方で調べていただいたアメリカの雇用機会均等委員会、EEOCのホームページには、被害者がEEOCに被害を訴え、相談、調査を行うことができるが、その場合、被害者が裁判を起こすまでは被害者の個人情報は守られるということになります。EEOCの監督官とその部下は、被害者の個人情報の匿名を法律で定めてあるということになっておりますので。
また、イギリスで、セクハラに限らず一般的に職場で紛争が起きた場合には、雇用審判の前にACASという助言調停仲裁機関に対して早期あっせんを申し立てなければならないこともあり、ここでも守秘義務が原則となっております。被害者が同意しない限り、ACASは雇用者又は他方の当事者にアプローチをしないこととなっております。
このように、被害者に対して保護が大変厚くなっており、被害者情報を相手に開示しなくても調査は可能だということであります。その点、日本は少し配慮に欠けているように思われます。今後、被害者への配慮を、どのようにこういったことを踏まえていくのか、大臣の方にお伺いをさせていただきたいと思います。
○上川国務大臣 女性と男性がみずからの個性を発揮して生き生きと充実した生活を送ることができる社会の実現、これは大変重要なことでありまして、職場におきましての環境整備、これにつきましても大変大事であるというふうに思っております。
セクハラに関しましては、先ほど来のお話のとおり、働く女性の心身の健康を害するさまざまな問題にかかわるものでございますので、そういったことにつきましては、対応につきまして、しっかりとした配慮をしながら取り組んでまいりたいと思います。
とりわけ、委員御指摘の被害者のプライバシー、これに対しましては最大限配慮をし、その心情に基づいて努めていく、まさに寄り添い型の取組ということが重要であるというふうに考えておりますので、これまで取り組んできた施策につきましても、そうしたことに十分なる配慮をしながら更に取組に力を入れてまいりたいというふうに思っております。
○松田委員 大臣の方からも更に取組をということもありますので、ぜひ、そういった諸外国の実態も踏まえながら、取組を進めていただきたいと思います。
最後に、我々野党議員がハッシュタグ・ミー・トゥー・カードを上げて訴えを起こしたときに、パフォーマンスにすぎないとやゆする向きもありましたが、パフォーマンスでも何でも、被害に遭われた女性若しくは男性たちが、あなたたちは一人じゃない、一人で悩まないでというメッセージを投げかけることが大変重要であると思わないのかなというふうにも思いました。このような問題を声を上げたくても上げられない、上げにくい状況があることが想像ができていないことも残念なところだと思っております。
なぜなら、特に性的な問題は、被害者にも非があるなどと考える人たちがいることも確かで、そして、声を上げた瞬間から、弱い被害女性という立場から、加害者に対して真っ向から対決する怖い女性、やり過ぎな非常識な女性として見られがちということになることなんです。
注目を浴びれば家族に迷惑がかかるし、職場にもいづらくなるのではないかなど、想像するだけでリスクの大きさを感じてしまって泣き寝入りする人が多いと思います。しかし、被害者は何も悪くないのに、まるで悪いことをしたかのように小さくなっていかなければいけないのはおかしい話なんです。
何度も言うようですが、ハッシュタグ・ミー・トゥー運動をやゆしたり非難したりすることは、被害者をより一層黙らせ、孤立させることになったはずです。被害者を守る、寄り添うという意識を私たち国民はもっと持たなければならないと思っております。その意味において、法務省の相談窓口における人権侵犯事案に対しての対処方法の見直しをさせていただいて、質問を終わらさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○平口委員長 次に、松平浩一君。
○松平委員 おはようございます。立憲民主党の松平浩一です。
本日は、法務行政、裁判手続のIT化についてお伺いしたいと思います。
日本の裁判においては、一九九八年に、テレビ会議システムと電話会議システムというものが導入されているというふうに認識しています。導入当時としては国際的にも先進的であったというふうに言われておりました。それが今や、残念ながら、世界銀行が出している資料によると、裁判手続が関係する契約執行分野においては、先進国、OECD三十五カ国中二十三位と非常に低い順位となっております。
民間企業がビジネスにおいてどんどんIT化により効率化を進めていくという中で、司法は相変わらず書面主義で、ファクスでやりとりしています。書面による提訴、書面による審理、書面による次回期日の指定などです。ファクスということに関しては、これは国会でも一緒なんですけれども、ちょっと強く言うと、世の中から取り残されているのではないかという印象も否めないところであります。
この裁判手続の効率化という点について、世界各国の状況を踏まえた日本の現状の認識というものについて、大臣、いかがでございましょうか。
○上川国務大臣 委員御紹介をいただきましたとおり、諸外国におきましては裁判手続のIT化が進められております。アメリカ、シンガポール、韓国におきましては、IT化した裁判手続等の運用が広く普及し、また定着していると言われておりまして、これらの国々では、書面や証拠の提出をオンラインですることができることとされている状況でございます。
一方、我が国におきましては、民事裁判手続のIT化につきましては、先ほど委員御指摘のとおり、平成八年、一九九八年に成立した現行の民事訴訟法によりまして、民事訴訟手続における電話会議システムやテレビ会議システムの利用が始まりました。特に電話会議システムの利用につきましては、実務上も広く普及しているところでございます。
また、その後の一連の司法制度改革における議論におきましても、訴訟手続等におきまして情報通信技術の利用を推進する必要があるとの指摘がなされてきたところでございます。
こうしたことも踏まえまして、平成十六年におきましては民事訴訟法が改正されまして、オンラインによる申立て等を可能とする規定が設けられたところでございます。
これを受けまして、平成十八年には、支払い督促手続におきましてオンラインでの申立て等を可能とする督促手続オンラインシステムが導入されまして、年間五万件以上利用されるなど、利用者の利便性を向上させるためにIT技術の活用が図られてきたものと承知をしております。
もっとも、民事訴訟一般に関しましては、平成十六年以降、一部の手続につきオンラインでの申立て等を可能とする試験的な運用を一部の裁判所で実施したものの、利用実績が乏しかったこともありまして、現在でも、オンラインでの訴え提起や書面提出は認められていない状況にございます。また、電話会議システムやテレビ会議システムの利用につきましても、民事裁判手続の一部の手続に限定されているという状況にございます。
このように、我が国の民事裁判手続におきましては、IT技術が十分に活用されているとは言いがたい状況にあるものと認識をしております。
○松平委員 どうもありがとうございます。
今、IT技術、導入がなかなか言いがたいということで御答弁いただきましたけれども、この点について、日弁連の弁護士に対してのアンケート調査というものがございまして、これによると、ウエブサイト等を通じた裁判所への電子データでの書面提出であるとか訴訟記録のウエブサイト等を通じた閲覧といったものについて、七から八割程度が、あったら利用してみたい、どちらかといえば利用したいという前向きな回答がございました。多くの弁護士が裁判手続のIT化というものに非常に期待しているようなんです。
この裁判手続のIT化について、政府の出している未来投資戦略二〇一七などを見ておりますと、政府として具体的に検討していらっしゃるようにお見受けいたします。具体的な内容としてどのようなことを検討していらっしゃるのか、教えていただければなというふうに思っています。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
今御指摘がありました政府の未来投資会議でございますけれども、そこで昨年六月に取りまとめられました未来投資戦略二〇一七におきましては、迅速かつ効率的な裁判の実現を図るため、裁判に係る手続等のIT化を推進する方策について速やかに検討し、本年度中に結論を得るとされております。
これを受けまして、未来投資会議の事務局を担う内閣官房に裁判手続等のIT化検討会が設置されまして、法務省も関係省庁として同会議に出席してまいりましたが、本年三月三十日に報告書が取りまとめられております。この報告書におきましては、民事裁判手続の基本である民事訴訟一般を念頭に、裁判手続等の全面IT化を目指すとの基本的な方向性が示されております。ここでは、訴訟記録につきましても全面的に電子化することが前提とされております。
目指すべき具体的な方向といたしましては、民事訴訟における三つのeというものが掲げられております。まずは、訴状や準備書面等についてオンラインでの提出を可能にするというe提出、次に、訴訟関係者が裁判所に現実に赴くことなくウエブ会議等を通じて裁判手続に参加することを可能とするe法廷、最後に、訴訟関係者が電子情報である訴訟記録にオンラインでアクセスできるようにするe事件管理の実現を目指して、必要な取組を進めるべきであるとされております。
法務省といたしましては、この取りまとめの結果等を踏まえて、関係機関の協力も得て、司法権の独立にも十分留意しながら、今後、法整備に向けた検討を進めていきたいと考えております。
○松平委員 どうもありがとうございます。
三つのeということですね、非常にキャッチーでわかりやすいと思います。
それでは、この三つのe、どのような形で実現に向けていくのかということで、スケジュールを含めてお教えいただければというふうに思います。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
内閣官房が取りまとめました報告書におきましては、先ほど申し上げました三つのeの実現について、三段階のフェーズに分けて進めていくものとされております。
まず、フェーズワン、フェーズ一でございますが、現行法のもとで、ウエブ会議等のITツールを積極的に利用したより効果的、効率的な争点整理の試行、運用を開始して、その拡大、定着を図ること等が示されております。
次に、フェーズツーといたしまして、関係法令の改正により初めて実現可能となるものについて、所要の法整備を行い、直ちに制度的実現を図っていくことが示されております。例えば、民事訴訟法の見直しを行って、双方当事者の出頭を要しない口頭弁論期日や弁論準備手続等の新たな運用を制度的に位置づけ、その運用を開始することなどが考えられまして、これについては二〇二二年度ごろから開始することを目指すとされております。
最後に、フェーズスリー、三でございますが、フェーズスリーとして、関係法令を改正するだけでなく、システム、ITサポート等の環境整備を実施した上で、オンライン申立てへの移行等を図るとされております。
法務省としましても、この取りまとめ結果等を踏まえて、法制審議会への諮問も視野に入れつつ、今後の検討のスケジュールを検討してまいりたいと考えております。
○松平委員 どうもありがとうございます。
三段階に分けて行われるということで、まずはウエブ会議の方から始めていき、そして法整備をして、それでシステムを構築して、恐らくそのシステム上で、各当事者と裁判所が訴え提起から準備書面の提出それから証拠の提出のやりとりまでできて、管理をする、先ほど全面IT化とおっしゃったので、そのような流れなのかなというふうに認識しています。
じゃ、これが、何でもIT化、IT化といって、やはりメリットがないといけないわけで、どういったメリットがあるか、具体的にお教えいただければと思います。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
先ほど御説明を申し上げましたとおり、報告書では三つのeを目指すこととされております。
まず、一つ目のe提出のメリットでございますが、訴状や準備書面等につきまして、電子情報によるオンラインでの提出を可能とすることなどを内容とするものでございまして、そのメリットとしましては、二十四時間三百六十五日、オンラインで訴えの提起等をすることが可能となることであります。そういうことによりまして、裁判手続の利用者にとって書面提出の負担が軽減し、利便性が向上することなどが指摘されております。
二つ目のe法廷でございますが、訴訟関係者が裁判所に現実に赴くことなくウエブ会議等を通じて裁判手続に参加することができるようにするものでございますが、そのメリットとしては、ウエブ会議等が積極的に活用されれば、遠方の裁判所に出頭する時間的、経済的負担が軽減され、審理の迅速化、効率化が期待されることなどが指摘されております。
三つ目のe事件管理でございますが、訴訟関係者が電子情報である訴訟記録にオンラインでアクセスできるようにするものでございまして、そのメリットとしては、訴訟記録への随時のアクセスにより、期日の進行計画等の確認が容易になり、紙媒体の記録保管のためのコストも削減することができることなどが指摘されております。
○松平委員 どうもありがとうございます。さまざまなメリットがあるようです。
一つつけ加えさせていただきたいと思うのは、裁判官というのは異動が多いので、訴訟記録がIT化されることによって、事件の全体像の把握が容易になることで裁判官の引継ぎが容易になるといったメリットもあるのではないかなというふうに思っています。そういう意味で、ぜひとも積極的に進めていってもらえればなというふうに思います。
ただ、一つ言っておきたいのは、先ほど、フェーズツーで二〇二二年、そしてフェーズスリーでシステムの構築を行うということで、非常に時間がかかっていく印象がしています。やはり、システム改修が伴うということは時間とコストがかかるということで、当然といえば当然だと思うんですけれども、まず、そんな大きなシステム改修が必要とならない方策というのも、すぐに、できるものはすぐに実行していく、そのぐらいの柔軟性があってもいいのかなというふうに思います。
一つは、今、単純に、ファクスで行われているものを、システム構築してオンライン提出というその前の段階として、電子メールにしてもらってもいいのかな、電子メールによる書面の提出とか証拠の提出を認めてはどうなのかなというふうにも思います。
電子メールベースをまずやって、ファイルによる記録管理であるとか利用というものの経験を積んでいって、そして来るべき完全なシステム化に備えていく。メールで提出ができるようになれば、結構なコスト削減であるとか審理の迅速化などといったメリットもあるというふうに思うんです。
裁判官が事件ごとにパスワードを指定していけば、メールの誤送信があっても、直ちに情報が漏えいするということにもならないと思いますし、情報漏えいという点に関しては、今、ファクスでやりとりしていますので、ファクスであっても番号間違いはあると思うんですよね。それで、Eメールも、メールアドレスのスペルミスというのがあるかもしれないんですけれども、スペルミスですとそもそもメールが届かないことも多いので、ファクスは番号間違いをしたら届いてしまうことも多いので、届かないだけ、メールの方が情報漏えいという意味ではましなのかなというふうに思ったりします。
あともう一つ、成り済ましの問題というのもありますけれども、これはファクスでも変わらないと思いますし、仮に成り済ましがあったとしても、当の当事者が実際に陳述をしなければいいだけというふうに思います。なので、そういった点も考えていただければなと思います。
あともう一つ、これは、先ほど言及いただいた裁判手続等のIT化検討会においてもすばらしい御指摘があったというふうに思うんですけれども、送達の問題です。現在は郵便で送達していて、これは物理的な送達なので、非常に時間がかかったり、着いたり着かなかったりといったことが発生しています。
この送達に関しては、お隣の韓国では、事前包括同意制度というものを導入していて、事前に同意していれば電子送達ができるというふうになっているということらしいんです。仮に、同意しなくて、紙で送達せざるを得ないという場合でも、郵便局でウエブレターという制度があって、裁判所で印刷しなくても、最寄りの郵便局で印刷して送るということができるらしいんです。こういったいい事例は、我が国でも積極的に導入していってもいいのではないかというふうに思います。
もう一つ、済みません、つけ加えて言うのであれば、公示送達もあります。
公示送達は、今、裁判所で一定期間掲示ということになっているんですけれども、やはりこれもウエブ上で掲示した方が実際の効果として高いんじゃないかな、目に触れる機会は高いんじゃないかなというふうに思ったりもします。
先ほどのフェーズ一から三ということで、完全なIT化を目指すということで、お金と時間をかけてシステム構築というのも本当にわかるんですけれども、申し上げた電子メールの使用であるとか電子送達であるとかウエブでの公示であるとか、簡単にお金をかけずにできることを早目にやっていくということもちょっと検討していただければいいのかなというふうに思っています。
ところで、eファイリング、先ほどお話しいただいた三つのeのeファイリングに関係するんでしょうけれども、あと、先ほど大臣も言及いただいていましたけれども、二〇〇四年の民事訴訟法改正で、オンライン申立ての根拠規定というものが設けられているということです。
私も、お恥ずかしながら、そういった規定があったのはよく存じ上げなくてちょっと驚いたんですけれども、根拠条文は民事訴訟法百三十二条の十ということになっています。
この既にあるオンライン申立ての規定について、運用状況についてお聞きしたいんです。いかがでしょうか。
○平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
委員御指摘の民事訴訟法百三十二条の十は、民事訴訟に関する手続における申立て等のうち一定のものについては、最高裁判所規則で定めるところによりオンラインですることができると規定されております。
これを受けまして、先ほど法務大臣の御答弁の中にもありましたけれども、支払い督促手続についてオンラインでの申立て等を可能とする督促手続オンラインシステムが導入され、年間九万件以上利用されているところでございます。
もっとも、民事訴訟一般に関しましては、現行の最高裁判所規則等のもとでは同条に基づくオンライン申立てをすることはできず、現在、オンライン申立ては運用されておりません。
なお、民事訴訟規則により書面等によりすることとしている申立て等のうちファクスで提出することができるものにつきましては、最高裁判所の細則で定めるところによりオンライン提出を可能とする最高裁判所規則が平成十五年に定められておりまして、この規則に基づきまして、平成十六年から札幌地方裁判所においてシステムが試行的に導入され、期日指定の申立て等をオンラインで行うことができるようになりましたが、これはほとんど利用されず、平成二十一年にシステムの運用が停止されたということでございます。
○松平委員 ありがとうございます。
今、使われておらず、利用されておらず、平成二十一年にシステムが停止されてしまったということのようなんですけれども、こちらについては、その理由、分析されておりますでしょうか。なぜ使われない制度となってしまったのか、理由についてお伺いできればと思います。
○平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
最高裁判所規則等により、利用できる手続が、今申し上げました期日の指定、変更の申立て、それから本人尋問、証人尋問の申出等に限られておりました上、本人確認のために手間や費用をかけて電子証明書を取得する必要があったことなどの事情がありまして、当事者にとっての利便性が必ずしも高くなかったということが理由として考えられるところでございます。
○松平委員 どうもありがとうございます。
当事者にとっての利便性、非常に重要なものと思います。実際に利用するのは利用者ですので、その部分、今回また完全に電子化するという目標を立ててやっておりますので、前回と同じようなことにならないように、前回とは違うということで、ぜひとも頑張っていただきたいというふうに思っています。
次に、判決の電子化というところについてお伺いいたします。
日本においてデジタルデータ化されている判決は三%から五%にすぎないというふうに言われております。実際、私もウエブを見ておりますと、判決文が公開されている判決と公開されていない判決があるようなんですけれども、どのような場合に判決文がホームページ上で公開されているのか、どのような場合に公開されていないのか、最高裁にお聞きしたいと思います。
○中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
最高裁判所のウエブサイトの裁判例情報というところに、最高裁判所の判例、あるいは下級裁判所の裁判例などのカテゴリーごとに判決等を掲載しているところでございますが、裁判所で言い渡される裁判例、これは極めて多数であります。その内容もまた多岐にわたるということから、ウエブサイトに掲載するに当たりましては、当事者や被害者等のプライバシーや、掲載されたくない心情にも配慮しながら、一定の範囲のものを掲載しているというのが現状でございます。
具体的にどのような範囲の裁判例を掲載しているかという点でございますが、これは、先例としての価値、重要性や、社会的な関心が高い事件であるかどうかというようなところを考慮して決めているところでございます。
先例的な価値が高いという裁判例は、国民生活等に影響を与える可能性が高いと考えられるところでございますし、また、社会的関心の高い事件は、広い意味での広報という意義にも沿うものというふうに考えられるところによるというふうに思っております。
○松平委員 どうもありがとうございます。
私、判例はまさに裁判所の英知の結晶であるというふうに思っています。先例的価値を有し、将来の事件解決への指針となるものだと思いますので、ぜひとも広く共有して、社会全体で活用していった方がいいと思っています。
そういう意味では、裁判の公開という憲法八十二条の規定もあり、閲覧は誰にでもできるようになっていますので、憲法や法の趣旨にもそぐうので、もっと積極的に掲載していっていただければなというふうに思っています。
済みません、ちょっと一問あったんですが、時間の関係で飛ばさせていただきます。
最後に、AIの活用についてお伺いしたいと思います。
AIの活用という点については、米国では結構進んでおりまして、再犯予測アルゴリズム、再犯罪の未来予測を行う人工知能の導入に関してということです。起訴された人物が再び罪を犯すリスクを人工知能が予測して、量刑を選択したり保釈の決定をする際に裁判官の判断をサポートするといったものなんです。
もうちょっと詳しく言いますと、人工知能の再犯予測は、主に裁判前と裁判中の二つのタイミングで使用されているということになっています。それで、裁判中においては、被告人の刑期や出所後の保護観察の期間と内容を決める裁判資料として、裁判官や保護観察官に渡されているようなんです。
これは、データを言いますと、二〇〇二年から利用を始めたバージニア州では、刑務所の人口増加率が、この再犯率を裁判資料とすることによって三一%から五%まで低下したというデータもあるようなんです。
この人工知能の使用については、二〇一六年の七月にウィスコンシン州で最高裁判決も出ていまして、これはCOMPASといった人工知能なんですけれども、この再犯予測アルゴリズムを使うことについて一定の条件を付して認められているということもあります。
日本でも、私的なリーガルサービスの部分ではAIの活用がどんどん進んでいくと思っています。顧客から来る相談ケースを分類したり、類似事件を探したり、それを解析して勝率を出したり、若しくは、その先には、相談において直接AIが回答したりと、だんだんそうなっていく、いかざるを得ないというふうに思っています。
これは、日本でも、法務行政でのAIの活用について検討してみてもいいのではないかと思うんですけれども、大臣、この点はいかがでしょうか。
○上川国務大臣 ちょっとお答えの前に、先ほどの答弁の中で数字について、私、言い間違えましたので、訂正をして、おわびを申し上げます。
平成八年の、一九九六年と申し上げるべきところを九八年と申した点が一点と、督促オンライン申立ての件数を九万件以上とすべきところを五万件とどうも言ったようなので、訂正申し上げて、おわび申し上げます。
AIの活用の検討ということでございますが、民間企業におきましてはAIの活用が進められておりますし、また、御指摘のとおり、海外におきましては、法務行政分野におきましてAI活用の例があるということにつきましては承知をしております。
政府におきましても、AI技術の研究開発の推進につきまして、AI技術の社会実装、これにつきましても推進をしているところでございます。
法務行政におきましてのAIの活用に関しましては、例えば、昨年十二月に閣議決定いたしました再犯防止推進計画において、犯罪をした者等の再犯の防止等を図る上での効果的な処遇のあり方等に関する調査研究の推進、これを盛り込んでおります。そうした調査研究の中でAIの活用を検討するということも考えられるものでございます。
いずれにいたしましても、法務行政におけるAIの活用の検討に関しまして、どのような分野で活用が可能なのかも含めまして、民間企業や海外におけるAIの活用例なども参考としながら、積極的に対応してまいりたいと思っております。
○松平委員 積極的に対応していただけるということで、ありがとうございます。
ただ、一言、AIの活用について私が言っておきたいのは、先ほどの米国の例でも、裁判にまでなったということからわかるように、実際にAIによって判断される人の感情という部分、あとAIの判断のよりどころというものが果たして受け入れられるかという問題もある、ここも考える必要があるというふうに思っています。
AIが出した結論、最適解というものが、ブラックボックスと言われるように、人間には理解ができないという場合もあると思います。AI技術の教師データの設計者の個人的な価値観というものが反映されるようなものであってはならないと思いますし、統計的な判断というものが常に正しいというわけではないというふうに思います。
といいながら、当然、AI技術がどんどん進んでいくというのは自明の理なんです。そこで、AIの進歩に応じた継続的な検討というものをぜひともお願いしたいなというふうに思います。
これにて私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
―――――――――――――
○平口委員長 この際、お諮りいたします。
各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官小田部耕治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○平口委員長 次に、柚木道義君。
○柚木委員 国民民主党の柚木道義と申します。きょうも、質疑、よろしくお願いいたします。
残念ながら、きょうも、警察庁長官をお願いしていたんですが、小田部、大賀両官房審議官にはお越しをいただいておりますが、お越しいただいたことはありがとうございます。
ただ、一般質疑でも、やはり過去に、民主党政権の際にも、長官に御答弁に来ていただいておりますし、予算委員会のやりとりの中でも、長官は、そういう必要があれば質疑にはしっかり出ていきたいという旨のやりとりもこの間させていただいているものですから、ちょっと冒頭、理事の皆さんでの協議の結果とは聞いておりますが、ぜひ今後、別にきょうは、大きく二点で、東京都の迷惑防止条例に関する質疑と、それから、先ほどもあったようですが、広島における脱走受刑者の件に関しての質疑ですから、もちろん法務省にもお願いしていますが、ぜひお出ましをいただくべく、今後について、しっかりと、こういう類似の一般質疑の場合には御検討をしっかりといただけるように、これは委員長、ぜひお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○平口委員長 理事会で協議します。
○柚木委員 それでは、早速質疑に入ります。
まず、東京都の迷惑防止条例改正がされているわけですが、この間、都議会での質疑も行われてきたわけではありますが、ぜひこれは、国会においても、まさに、資料もおつけしておりますが、今、連日のように国会前でのデモも行われておられます。さまざま、もちろん、時の政権、権力というのは、私どもも三年三カ月経験させていただきましたが、常に厳しい批判あるいはメディア等のチェック、こういったものにさらされるのは当然のことでもありまして、このタイミングでの条例がさまざまな波紋も呼んでおる部分もございますので、何点かまとめて確認をさせていただきたいと思います。
まず、この三月に都議会で成立をした条例の中に、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の中の第五条の二第一項六号ですね、そこで、新たに、その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くことが禁止される。
これは、例えば、まさにこの資料にもおつけをしておるような国会前でのデモですね、場合によっては、労働組合が会社前の集会で会社の批判をするとかチラシをまくとか、消費者の方々が企業の不買運動を行うとか、地域で住民の方々が例えばマンションの建設反対の運動を行うとか、いずれも、この名誉を害する事項を告げ、その知り得る状態に置くこととして禁止事項となり得る。そういう見解がある中で、とりわけ、この資料一ページ目には街頭におけるデモの写真もおつけをしておりますが、これらが実際、禁止事項となってしまうのか、いや、そうでないのか。この点についてはぜひ明確に政府としての御見解をお述べをいただきたいと思いますので、御答弁をお願いいたします。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの条例につきましては、東京都がその実情を踏まえて制定したものと承知しておりまして、警察庁としてその内容につきましてお答えする立場にはございませんが、いずれにいたしましても、本条例につきましては、第五条の二第三項に、「本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と規定されていることも踏まえ、本条例の制定や改正の趣旨に沿って、警視庁において適切な運用がなされるものと承知しております。
○柚木委員 まさに今、本来の目的、他の目的という御答弁、お言葉をいただいたわけですが、まさに都議会においても、警視庁の生活安全部長が、これは濫用防止規定があり、政治や組合活動、報道は対象にならないと明確に答弁もされておられますが、まさに、本来の目的、他の目的、この位置づけ自体もしっかりとした運用をしていただかないと、さまざまな今懸念が持たれている中で、しっかりとその懸念を払拭をしていただくことが重要だと考えております。
今、警視庁の生活安全部長の答弁も引用させていただいたわけですが、つまり、この資料の一につけているような、これは国会前デモの写真でもございますが、そういったことも含めて、今私が例示をさせていただいたおのおのの活動というものは禁止事項とはならないということでよろしいですか。一言だけで結構ですから。
○小田部政府参考人 お尋ねの条例につきましては、東京都がその実情を踏まえて制定したものと承知しておりまして、警察庁としてその内容についてお答えする立場にございません。
いずれにいたしましても、本条例につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、第五条の二第三項に、「本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と規定されていることも踏まえ、本条例の制定や改正の趣旨に沿って、警視庁において適切な運用がなされるものと承知しております。
○柚木委員 警視庁の生活安全部長の答弁を、コメントはしないと言いながら、今の答弁を聞くと、それと同様の趣旨の答弁をいただいていると思いますが、これは、今後、本来の目的、他の目的等の運用が違ったようなことにならないように、警察庁の立場ですから、各都道府県警それぞれのさまざまな条例の運用等についても、全体として、全国のさまざまな条例の運用については、実際の今述べられたような御認識の運用とそごを来すようなことがないように、そこはしっかりと御留意をいただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。
まとめて条例の方を先にやっておきますので、ちょっと広島の方は後にしたいと思います。
この条例の中には、五条の二第一項第一号におきまして、住居等に押しかけ、又は住居等の付近をみだりにうろつくことが禁止されるように改正されております。これは、例えば報道機関が取材対象の住居を数回うろつくことで規制対象になってしまうのでは、そういう懸念もあるわけでございまして、それについての見解を確認をしたい。
また、その第二号の方では、その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くことも、これは条例改正で禁止になったということでございます。これは、報道機関が取材対象を取材すること、あるいはオンブズマン活動で行政を監視すること、こういったことも禁止対象となるおそれがあるという懸念がございます。これについても警察庁としての見解を明確にお述べをいただければと思います。
○小田部政府参考人 お尋ねの条例につきましては、東京都がその実情を踏まえて制定したものと承知しており、警察庁としてその内容についてお答えする立場にはございません。
ただ、いずれにいたしましても、本条例につきましては、第五条の二第三項に、「本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と規定されていることも踏まえ、本条例の制定や改正の趣旨に沿って、警視庁において適切な運用がなされるものと承知しております。
○柚木委員 都民の権利ということをおっしゃられるわけで、その中で、これは国民の権利と置きかえても同様だと思いますけれども、報道の自由、そしてもちろんオンブズマン活動等、こういった活動が保障されることというのは、まさに、都民どころか国民の権利、民主主義の根幹であるというふうに思うわけでございまして、今、明確にそういうふうに御答弁をいただいているわけで、先ほども質疑で申し上げたように、実際の運用面においてそごを来すようなことがないようにということを、これは重ねて強くお願いをしておきたいと思います。
もう一点、第三項についてもお尋ねをしておきたいと思います。
それはまさに警察権にかかわる部分でございまして、「本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と答弁でも引用されておりますが、何が警察権力による不当な権利の侵害なのか、あるいは本来の目的を逸脱した濫用なのかが規定されていないということでございまして、このため、現場の警察官によって恣意的に運用される懸念がある。
デモ等においても、さまざま、いろいろな意見が出ていますよね。もちろん、デモ参加者の安全を守るという観点からさまざま対応されている面もあるかもしれませんが、これはもう本当に運用一つで実際にどちらにそれが、つまり、デモの規制の方になっちゃうのか、あるいは本当に安全を守るという形で運用されるのか、そのあたりも含めて、この規定がないことによって、現場の警察官によって恣意的に運用されるおそれがあるということでございますので、ぜひ、本条例による取締り濫用の危険性について懸念がないというふうに皆さんに思っていただけるような見解をお述べをいただければと思います。
○小田部政府参考人 お尋ねの条例につきましては、東京都がその実情を踏まえて制定したものと承知しており、警察庁としてその内容についてお答えする立場にはございませんが、いずれにいたしましても、本条例につきましては、先ほどお話もありましたように、第五条の二第三項に、「本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と規定されていることも踏まえ、本条例の制定や改正の趣旨に沿って、警視庁において適切な運用がなされるものと承知しております。
○柚木委員 重ねてよろしくお願いいたします。
五分しかないので、法務大臣、最後に聞きますので。警察庁に来ていただいているので、ちょっとまとめて聞きますのでまとめて答弁をいただければと思います。
これは資料に、先ほども質疑があったようですけれども、広島の事案について、五ページ目以降ですね、実際に島から泳いで対岸へ行って、一週間ぐらいはそのまま島にまだ潜伏をしているという、そういう見立ての中で捜査も継続されていたことも含めて、ちょっと幾つか問題提起と改善のための提案をしたいと思いますので、まとめて御答弁をいただければと思います。
まず、この捜査手法についてでございますが、この表におつけをしておりますように、四月二十四日夜に本土に泳いで以降は、全く容疑者のいない向島で大人数の捜索、これは、延べ一万五千人、そういう意味では三億円の税金が投入されたというような報道もあるわけですが、検問も続けていたことになるわけでございまして、これは捜査手法そのものに問題があったのかなかったのか、これについて一つ伺いたいと思います。
ちなみに、資料の七ページ目にもつけておきましたが、これは現地の署の幹部が、供述どおりに海を渡っていたのなら反省すべき点があったと思うと。そういうことで、ある意味、その捜査手法の問題点、反省すべき点があったと思うというふうにお認めになっているんですね。
これは警察庁としても、こういう手法自体にやはり反省すべき点があったということであれば、その点をしっかりと述べていただいた上で今後の対応をしていただきたいというのが一点で、御答弁は後ほどまとめてお願いします。
もう一点は、これはまさに、二十四日夜に本土に泳いで向島から離れた後に、何と赤外線カメラで空から捜査をしていてということでございまして、そういう意味では、最初から赤外線カメラなど夜間の捜索が可能な装備を投入しなかったことも、やはり捜査手法の問題点としてこれは検証されるべき点だとも考えます。この点について、二点目、お答えをいただきたい。
もう一点ですね。今回のような状況が今後も起こらないとも言えませんし、今後、東京オリンピックもあって、そういう意味では、テロ対策等も含めて、そういう点についてもさまざまな懸念が今回の事案について示されておりまして、そういうときに、空き家がどんどんどんどん今後もふえてくる、そういったところに容疑者が逃げ込んだ場合、現状では非常に捜査に困難を来すという部分については、例えば警察官職務執行法改正などで、緊急事態には裁判所が出す令状なしに捜索できることも検討すべきではないか。もちろん、これは濫用されてはいけませんよ。ただ、こういう事案が今後も仮に起こるときに、そういったこともぜひ御検討いただくことで同じようなことが起こらないように、ぜひこれは捜査手法という観点からの検証も含めて、三点、ごめんなさい、まとめて御答弁お願いします。
○大賀政府参考人 第一点目と第二点目についてお答え申し上げます。
お尋ねの逃走事案につきましては、広島県警が四月三十日に広島市内において被疑者を発見、確保して、逃走罪で逮捕したものでございます。
関係警察においては、被疑者が尾道市の向島に潜伏している可能性が高いと見て所要の捜索活動等を継続していたところでありますけれども、結果として、当該被疑者は四月二十四日夜の時点で向島から本州側に渡っていたということが判明をしたところでございます。
被疑者の逮捕までの間、地域住民の皆様等には御負担をおかけしたところでありますけれども、捜索活動等に対する御理解と御協力をいただき、深く感謝をしているところでございます。
現在、関係警察におきまして、被疑者の逃走後の足取り等について捜査をしているところであり、まずはその解明を進めることが重要であるものと認識をしております。
それから、三点目の御質問でございますけれども、一般論として、事件の被疑者が逃走をして、空き家やあるいは人が住む家屋の屋根裏に逃げ込んだ場合の対応につきましては、個別の事案の具体的状況に即して対応するものでございまして、一概にお答えすることはなかなか困難でございますけれども、空き家につきましては、委員御指摘のような問題のほか、防災性の低下だとか防犯性の低下、あるいはごみの不法投棄等々の問題も指摘をされているところでございまして、一方で、財産権の保障といったことなどとの調整をいかに図るかという観点も踏まえながら、総合的に検討していくべき課題であるものと承知をいたしております。
○柚木委員 もう時間が来ていますので、一言だけ、法務大臣。
先ほども同様の趣旨の質問があったようなので、私、ぜひ期限を、いつまでをめどに今回の模範受刑者を中心とする開放刑務所のあり方についての再検討を行われるのか。これについては、模範とされる受刑者を収容されている開放刑務所のある住民の皆さんが不安な日々を送られていたと思うんですね。だから、やはり期限を切ってそこは再検討いただきたいんです。その点も含めて、最後、一言御答弁をお願いします。
○上川国務大臣 検討の期限ということでございますが、五月一日、二日と現地に視察に行かせていただきました。その折には、心からの、不安と御迷惑をかけたことに対して、大変平穏な、特に向島の島の皆様については、大変緊張した状態の中で二十三日間が過ぎたということでありまして、大変な御迷惑をおかけいたしました。また、絶対に再発しないようにしてほしいということにつきましても強く要請をいただいてきたところでございまして、検討委員会におきましても、こうした声にしっかりと耳を傾け、丁寧に対応していこう、こういう方針で今臨んでいるところでございます。
また、期限につきましては、今警察で捜査が続いている状況でございまして、動機、具体的な逃走の方法等の事実関係が特定されていない状況でございます。ゆえに、明確な期限を現時点でお答えをするということはなかなか難しいわけでありますが、速やかに検討をし、検証し、そして、安全、安心な開放的施設のあり方、これにつきまして理解をしていただくことができるように努めてまいりたいと思っております。
○柚木委員 終わりますが、捜査は捜査として、過去の事例も踏まえてぜひ早急な検討をおまとめいただくようにお願いをして、質疑を終わります。
ありがとうございました。
○平口委員長 次に、階猛君。
○階委員 国民民主党の階猛です。よろしくお願いいたします。
所有者不明の土地問題については、この委員会でも各委員が取り上げておりますが、私もこの問題については解決の必要があると思っております。
他方で、先ほど柚木委員の質問でも財産権の保障という言葉が出てまいりました。憲法二十九条の財産権の保障のところにも、二十九条三項ですね、きょうお配りした資料の三枚目につけておりますけれども、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」この正当な補償をしっかりやらないと問題になってくるということで、予防法務をつかさどる法務省としても、この二十九条三項を根拠に直接補償を請求できるという判例もありますので、無関心ではいられないということだと思っております。
きょうは、そんな問題意識から、現在、国会で審議が行われる、あるいは行われようとしている所有者不明に関する法案の問題点について議論をさせていただければと思います。
まず、国交省の方にお尋ねしますけれども、資料の一枚目に、法案の中の、「収用手続の合理化・円滑化、所有者探索の合理化による改善」という表題がついておりますが、土地収用法の特例を定めた部分です。ここについてお尋ねします。
所有者不明土地法案のこの特例の適用に当たって、フローチャートの真ん中より下に、利用に反対する所有者、関係権利者がいないといったことなどを要件としているのはなぜなのか、これを御説明ください。
○北村政府参考人 お答え申し上げます。
今国会に提出させていただいております所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別法案におきましては、先生御指摘の、公共事業における収用手続の合理化、円滑化を盛り込んでございます。
これにつきましては、反対する権利者がいない場合に限定することで、実際に意見を述べる者が存在しないことから、高度な中立性を持つ収用委員会による意見聴取手続などを省略し、かわって都道府県知事が裁定を行うこととするなど、土地収用法による収用手続を合理化しているものでございます。
反対する権利者が存在する場合には、通常の土地収用法による収用手続により、収用委員会による意見聴取手続、補償額の裁決を経て収用することになります。
○階委員 反対する所有者がいた場合はなぜ通常の手続にするのかということをお聞きしているんですけれども、もう一回説明してもらえますか。
○北村政府参考人 お答え申し上げます。
今回の法案は、あくまでも、所有者不明土地の利用の円滑化ということに着目しております。通常の収用法であれば、反対者についてはしっかりと意見を聴取して、それを踏まえた上で専門家たる収用委員会の裁決をするということでございますが、今回の特例は、あくまでも、見つかっている地権者の方は全員賛成している、たまたま所有者不明土地があって、それについても収用という手続をとらなければならないときに限って、その人はもう現にいらっしゃらないので反対のしようもないですから、そういった場合に聴聞手続をとるということは事実上無駄なことでございますので、そういった観点から手続を簡素化する。それ以外の場合は、やはり反対する方がいらっしゃいますので、それは通常の手続で、しっかりと意見を聞いて裁決する。そのような考え方でございます。
○階委員 ありがとうございます。
あくまで所有者不明の土地問題を解決するためなので、反対する所有者がいた場合は特例からは外れるんだ、こういうお話なんですね。
ところで、農水省上月政務官、憲法に関しては私も別な場所でも議論をさせていただいたので、きょう質問するのを楽しみにしておったんですが、農水省の、資料二ページ目の経営管理権集積計画作成の流れ、二ページ目を見ていただきたいんですが、このフローチャートの(3)所有者不同意森林の特例というのがありまして、これはまさに、所有者不明だけではなくて反対者がいた場合のフローチャートであるわけですね。
これによりますと、不同意者がいる場合であっても、勧告をして、意見書の提出を求めて、裁定を経れば、みなし同意ということで、しかも、補償も私はないと理解しておりますけれども、補償もない中で、経営管理権を設定して、土地所有者の権利を大きく制限できるということだと思います。
国交省の考え方とも少しそごがあるように思いますし、何よりも憲法二十九条三項との関係で私は問題があるように思いますが、この点について上月政務官の見解を伺います。
○上月大臣政務官 階先生の御質問にお答えいたします。
森林経営管理法案におきます経営管理権とは、森林の所有権は森林所有者に留保したままであるということ、それから森林の立木について伐採、販売、そして、その販売収益を収受して、販売収益から伐採等に要する経費を控除して、なお利益がある場合には、その一部を森林所有者に、これはもちろん不同意の方も含めてでありますけれども、支払いをすることができる権利であるということになっております。
したがいまして、経営管理権を一定の手続を経て市町村が取得することとなる確知所有者不同意の森林に係る特例につきましては、所有権を奪うものでないという点、そして、土地収用と異なりまして、公共の利益となる事業の用に供するものではありませんで、森林について森林所有者が行うべき経営管理を市町村が行うものでありまして、森林所有者に損失が生じるものではないということでありますことから、経営管理権の設定に当たり、土地収用と同様の補償を措置することなく、この権利を設定することにしましても、憲法二十九条三項との関係につきましては違反するものではないというふうに考えております。
○階委員 所有権を奪うかどうかというのが一つのメルクマールという御説明でしたけれども、判例によりますと、三ページ目に、模範六法をコピーしたものですけれども、例えば、細かい字で恐縮なんですが、判例がずらっと並んでいまして、五番目のところなんかを見ますと、「一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超え、財産上特別の犠牲を課した場合には、法令に損失補償に関する規定がなくても、直接本条三項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではない。」という判例が過去、最高裁から出ています。
ここでメルクマールになっているのは財産上特別の犠牲かどうかということでありまして、所有権が奪われるかどうかというのは必ずしも絶対的な基準ではないというふうに私は理解しております。
果たして、では特別の犠牲かどうかといった場合なんですけれども、二ページ目のフローチャートの右側を見てみますと、こういう手続でみなし同意された場合に、やはりこれを取り消したいといった場合に、どういったときに取消しができるかということが書いてありますね。
これも細かい字で恐縮なんですけれども、例えば真ん中あたりに、確知所有者不同意森林、今問題にしているケースです。この場合は、計画公告から五年以降に取消しの申出が可、あるいは、経営管理権が設定されて、更にその先、民間事業者に経営管理実施権が設定された場合になりますと、民間事業者の承諾を得て、やむを得ない事情があって、かつ、その民間事業者に対して逆に損失の補償をして初めて取消しが申出できるといったことで、一回これが認められた後取消しするのはなかなか大変だ。
それから、後から利益の分配があるといったようなお話もあるんですが、この利益の分配というのも確たるものは言えない。例えば、管理権が設定されただけであれば将来的な収益の分配というのはないわけですし、仮に民間事業者に実施権が与えられた場合でも、どれだけ本当に分配があるかどうか、これも将来になってみないとわからないということで、やはり私は、特別犠牲説なんということが二十九条の解釈で言われますけれども、その特別犠牲説に立った場合であっても、ちょっとこれは二十九条三項との関係で問題なのではないかと思うんですが、もう一度、政務官、補足することがあれば御説明をお願いします。
○上月大臣政務官 御指摘は、重たくといいますか、受けとめたいと思いますが、経営管理権は、森林の経営管理に必要な限度においてのみ森林の立木の処分を行うことができるということなのでありまして、例えばキノコを採取するようなことはできないわけであります。
土地収用と比較して権利の侵害の程度がかなり制限されているということ、それから、みずからの権原に属する森林について、経営管理、山をちゃんと管理しなきゃいけないという森林所有者の責務を果たすということに不同意な方であるということ、一定の手続を経てその権利を認める仕組みとしていることに加えまして、森林はやはり国土の保全等の多面的機能を有しており、その維持増進を図ることが大変重要であるということ。
また、今般の措置は、森林を森林として利用を維持すべき区域をまず設定しておりますので、その設定の中にあるにもかかわらず適切な経営管理がなされない森林について、多面的機能の発揮を図るため、やむを得ず公的主体である市町村が確知所有者不同意森林の経営取得権を取得するものであること。
また、森林が適切に経営管理されますことで森林の機能が回復しますと、結果として財産的価値も回復、増大して、経営管理に参画をされない不同意の森林所有者にもそれは裨益するということでもありますので、そういう意味で損失が生じるものではないということに加えて、先ほど先生から御指摘がありましたが、一定の制限はありますけれども取消権も認めておるということなどを総合的に我々としては措置をいたしまして、憲法二十九条三項との関係はクリアしているというような仕組みにしたということでございます。
○階委員 まあ、いろいろなものを総合的に考慮してということなんですけれども、やはりこの憲法の文言を素直に読んだ場合に、本当に正当な補償があると言えるのかということがなおひっかかるわけですね。
他方で、冒頭に国交省の方のスタンスをお尋ねしましたけれども、行方不明者の土地の問題を解決するのに特別な扱いを認めるのはありだけれども、反対者がいる場合は従来どおりなんだということもありました。従来どおりということは、土地収用法に基づいて告知、聴聞の機会を与え、正当な補償もするということなので、私はその国交省のスタンスの方がぴんとくるわけなんですね。
きょうは時間もありませんので、また、ちょっとこれは憲法の重要な条文の考え方にかかわるところなので、整理をさせていただければと思いますけれども、この問題について、冒頭言いました、法務省として、予防法務の観点から無関心ではいられないと思います。
二十九条三項は、これも判例上珍しいことだと思うんですが、憲法の条文に基づいて直接国に対して補償を求めることができるということになっておりますので、予防法務の観点からも、こういった法案が通ることによって訴訟リスクという面で問題ないのかどうかということも考えなくちゃいけないと思いますが、大臣の御見解をお尋ねします。
○上川国務大臣 まず、森林経営管理法案につきましては、農水省が所管する法案でございます。その意味で、法務大臣として答弁をする立場にはございません。
その上で、一般論として申し上げるわけでございますが、私ども法務省の訟務局で実施している予防司法支援というものは、各府省庁の施策につきまして、当該府省庁からの照会に対しまして法的問題について助言をするという業務でありまして、法案の立案につきましては、これを所管する府省庁において諸事情を勘案した上で御判断されるものというふうに考えております。
○階委員 この二十九条三項の問題というのは、法律の内容いかんで、先ほども言いました直接訴訟というリスクも生じ得るということで、予防法務の立場からも、やはり立案段階からいろいろ意見を申し上げていくべきものではないかというふうに思っておりますけれども、そこは大臣は見解が違うということになりますか。確認させてください。
○上川国務大臣 予防司法支援ということで私どもの訟務局が今実施しているわけでございますけれども、これはあくまで当該府省庁からの照会に対しまして法的問題について助言をする業務であるという認識をしているところでございます。
あくまで法案の立案につきましては、所管する府省庁において諸事情を勘案の上、判断されるものというふうに認識をしていることでございます。
○階委員 私がもし上月政務官の立場で、こういった法案を部下が立案してきたといった場合に、これはひょっとしたら正当な補償の問題で訴訟リスクになるんじゃないかなというふうに感じると思うんですね、私であれば。そのときに、もし法務省の訟務局にお尋ねしたら、これは今の話だと何も答えはいただけないということでいいんですか。
○上川国務大臣 私どもの機能というのは、支援機能ということでございます。
お尋ねの今の法案に関しての答弁ということになりますけれども、これにつきまして、現在法案が成立している段階でございます。お尋ねの件について、私のこの立場で、法務大臣としての答弁ということにつきましては、その立場にないということでございます。当該を所掌している農水省の方で答弁をするというものであると考えます。
○階委員 何か前にも松島さんの答弁を引用したことがありますけれども、政府の中の顧問弁護士になるみたいな話が前にあったと思いますけれども、やはりこれだけ、内閣法制局も確かにありますけれども、訟務局には優秀な法律実務家が集まっているわけですね、民事、刑事のプロが。そうした方々の相談の窓口があることによってよりリスクを低減できるし、訟務局をつくったのであれば、もっと積極的に政府内のさまざまな活動に対してかかわっていった方が私はいいのではないかと思っております。
時間が参りましたので、きょうはこの辺で終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
○平口委員長 次に、源馬謙太郎君。
○源馬委員 国民民主党の源馬謙太郎でございます。
先ほどは、理事に選任していただきまして、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
さて、早速質疑に入らせていただきます。
三月の法務委員会においても外国人技能実習生に関する質疑をさせていただきましたけれども、今回は、この技能実習生のうちの介護実習生についてお伺いをしたいと思います。
昨年の十一月から、外国人技能実習制度に初の対人サービスとして新たに介護職が加わりました。日本では介護人材の不足が叫ばれて久しいわけですけれども、外国人技能実習制度にこの介護の分野が加わるということによって、介護人材の不足、これを補う効果があるのではないかということも言われております。
しかし一方で、外国人の実習生がふえることによって指導を担う日本人の負担がふえてしまう、そういった事態も懸念をされております。結果として、日本人の介護職員が外国人の指導を避けるために外国人実習生がいない施設に集中してしまう、こういった可能性もあるのではないかというふうに懸念をしています。
そこで、外国人技能実習制度に介護が加わることに対して、介護業界は、介護人材の不足を補うことができるという期待感と、一方で受入れ側の不安感が入りまじっている、こういった状態だと思いますけれども、現在までにどのぐらいの実習計画の申請があったのか、まずお伺いしたいと思います。
○和田政府参考人 お答えいたします。
本年四月二十日現在、介護職種の技能実習計画の認定申請件数は百二件となっております。
○源馬委員 ありがとうございます。
我が国においては、二〇二五年度には三十七万人以上の介護人材が不足するのではないかというふうに言われております。本来、この技能実習制度の目的は、もちろん言うまでもありませんけれども、途上国への技能の移転や国際貢献ということが主な目的でありますけれども、一方で、人材が不足する介護現場においては、この外国人技能実習生のマンパワーが我が国の介護の貴重な担い手になるというふうに期待もされております。
現在は、この介護現場に外国人を受け入れるルートとして主に三つありまして、それぞれの在留資格はそれぞれ異なっているということでございます。
振り返りますと、一つ目は、二〇〇八年度から開始をされたEPA、経済連携協定、これはインドネシアとフィリピン、ベトナムの若者に限られておりまして、原則、四年就労した後に介護福祉士の資格を取得した場合、永続的に日本で就労することが可能になる、こういったルートが一つ。
それから、二つ目は、昨年の九月に施行されました改正出入国管理難民認定法によりまして、留学生が日本の専門学校など介護養成学校等を卒業して介護福祉士の資格を取得した場合、最長で五年間、そしてさらに、これは更新することもできる、こういった方法が二つ目。
さらに、三つ目には、この技能実習制度でありまして、こちらはこの二つ目の改正出入国管理難民認定法とは異なりまして、最長では五年働くことができるけれども更新はできないという、この三つのスキームがあるというふうに理解をしております。
つまり、現行制度のままですと、外国人技能実習制度を通じてせっかく育ってきた介護人材というのは、そのまま海外にまた流出してしまうということにもつながると思います。
そこで、ことしの一月三日付の日経新聞におきまして、ある記事がありました。介護福祉士の国家試験に合格できたら、技能実習制度を利用した外国人でも日本で働き続けられるように制度を見直す、こういった報道がありました。これは非常にリーズナブルではないかなというふうに思います。
これは、受入れ国を限定しないで、介護福祉士の資格を取得した外国人の方が就労ビザを得て、日本でより長く介護現場でも働いていただくことができるようになりますけれども、この記事どおりであるのかどうか、現在の検討状況などを法務大臣にお伺いしたいと思います。
○上川国務大臣 技能実習生が介護福祉士の資格を取得した後に在留資格「介護」での在留が認められるべきではないか、こうした御要望が介護業界等からも多く寄せられたところでございます。
このような状況を踏まえまして、昨年末に閣議決定されました新しい経済政策パッケージにおきまして、介護分野における技能実習などによる三年以上の実務経験に加え、実務者研修を受講し、介護福祉士の国家試験に合格した外国人にも在留資格「介護」を認めることとされたものでございます。
現在、入国管理局におきまして、当該制度の実現に向けまして、厚生労働省と検討を進めている状況でございます。
○源馬委員 ありがとうございます。
こうした資格を、制度を整備するということと同時に、一つの問題点としては、やはり日本語の問題があるのではないかというふうに思います。
特に、介護の現場では、やはり対人のお仕事ですし、人とコミュニケーションする。仕事の手順さえわかっていれば何でもできるということではもちろんないわけで、日本語能力というのが非常に大事になってくるというふうに思います。
現在は、国際交流基金などが運営をしている日本語能力試験、これを採用しておりまして、ややゆっくりの会話ならほぼ理解できるというN4というラインを合格ラインとしていて、さらに、一年以内に、もう一つ上の段階の、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる、こういった試験に合格をすれば、最長で五年間働き続けることができる、一方で、不合格だったら帰国しなくてはいけないというふうな制度になっていると思います。
これも新聞報道ですけれども、三月八日の朝日新聞の報道によりますと、国際・アジア健康構想協議会が、介護分野の外国人技能実習生が働き続けるのに必要な日本語能力をはかるために、介護に特化した新たな試験をつくって、厚労省もこの新試験を認可する方針だという報道がありました。
これについて、厚労省、現行の日本語試験及びこの新たな試験制度についての現状の認識と受けとめを教えていただきたいと思います。
○八神政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘いただきました介護現場におけるコミュニケーション能力に重点を置いた新たな日本語テストにつきましては、平成三十年内をめどに試験を実施することができるよう、現在、国際・アジア健康構想協議会において検討をしているものというふうに承知をいたしてございます。
一方、現行の日本語能力要件につきましては、介護分野等の有識者から成る外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会におきまして、利用者の心身の状態を適切に把握し、チームで介護を提供するということのためにはコミュニケーション能力の確保が不可欠であるといったことから、入国時に、今先生御指摘ございましたように、日本語能力試験のN4程度、二年目以降時にN3程度を要件とするとされたことを踏まえまして、設定をしているものでございます。
その上で、厚生労働省といたしましては、技能実習生の日本語の学習が円滑に進み、介護現場で適切なサービスが提供できますよう、監理団体が実施する入国後講習で活用ができる介護の日本語の共通テキスト、あるいは、実習開始後の継続的な日本語学習を支援するためのウエブコンテンツ等々、開発を行ったところでございます。
引き続き、技能実習生の日本語学習環境の整備に努めてまいりたいと考えてございます。
○源馬委員 ぜひ、働く人のためにも、また介護を受ける側の人のためにも、適切な制度をつくっていただきたいというふうに思います。
今の御答弁をいただいたのは、技能実習制度でいらっしゃる外国人の方だと思いますけれども、一方で、先ほど申し上げました、経済連携協定を結んでいるインドネシア、フィリピン、ベトナムからの外国人の方にとっては日本語の試験が難し過ぎるというような声も上がっているというふうに聞いております。
その上でお伺いしたいんですけれども、やはり技能実習生だけではなくて、EPAにおいていらっしゃる外国人の方も、コミュニケーションというのは非常に重要であるわけですけれども、このEPAの枠組みで日本に来た、これまでの介護の分野で受け入れた人数と、それから介護福祉士資格を試験を受けて取得をして、日本で永続的に就労が可能になった外国人の方の累計の人数を教えていただきたいと思います。
更に加えて、法務省として、外国人技能実習制度を通じて、日本の介護人材不足、本来の目的は日本の技術を持って帰ってもらうことだけれども、一方で、日本の人材が不足している介護現場においての人材の確保、この解消をどう狙っていくのか、そのあたりの大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○上川国務大臣 まず、EPAについてでありますけれども、二〇〇八年度から二〇一七年度までに、経済連携協定に基づきまして我が国が受け入れた介護福祉士候補者の累計でありますが、三千五百二十九名であります。これらのうち、介護福祉士試験に合格した人数は七百十九人であると承知をしております。
また、技能実習制度でございますが、この制度そのものは、委員御指摘のとおり、開発途上国等への技能移転を通じた国際貢献という重要な意義のある制度でございます。我が国における介護人材不足の解消の手段として介護分野の技能実習生を受け入れるものではないということでございます。
○源馬委員 ありがとうございました。
時間が来ましたので終わらせていただきますが、また今後も取り上げさせていただきたいと思います。
また、さらに、本来であれば大井造船作業場についても質問をする予定だったんですけれども、済みません、時間の配分が悪くてできませんでした。また後日、質問させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○平口委員長 次に、藤野保史君。
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
私は、まず、入管、入国管理に伴う収容をめぐる問題についてお聞きしたいと思います。
法務省に確認したいんですが、現在、外国人などを収容する入管施設は全国に幾つあって、何人の外国人の方々が収容されていますか。
○和田政府参考人 お答えいたします。
収容施設は全国に十七施設ございます。五月八日現在の被収容者数は合わせて千四百六十四名でございます。
○藤野委員 千四百六十四名ということで、非常に多いと思うんですね。
この原因は何かといいますと、政府が今この収容について全件収容主義という運用を行っているからであります。つまり、在留資格がない人や不法滞在、不法入国の人などが、その事実だけで収容できる、原則収容するという運用をしているわけですね。こうした方々の中には、難民申請中であるという事情や、あるいは逃げる可能性が全くないという方々もいるんですが、関係なく、強制的に収容してしまう。そういう意味で全件収容主義と言われております。
確かに、収容が全部だめだというわけではありません。あらゆる手段を尽くしてもどうしても帰国させなければならない、そういう人が断固拒否しているというような場合、まれな場合には、直前に収容するというケースもあるとは思います。しかし、事実上、やはり危険な祖国から逃げざるを得なかった、そういう方々、難民申請中の方とか、帰国させる特別の理由がなくて送還のめども立っていないという方もいらっしゃるわけですね。しかし、こういう方々も、半年とか一年、長期にわたって収容する。これは完全に、収容本来の目的から外れていると思います。
例えば、難民の方が日本に来るにはビザとパスポートが必要なんですが、やむを得ず偽名を使ったり、偽造パスポートをつくらないといけない場合もある。なぜなら、その当事国の政府がそうした方々を迫害している場合もあるわけですね。正規のルートで書類をつくれない。こういうことを配慮して、難民条約の三十一条では、こうした括弧つきの不法行為を理由として不利益取扱いをしてはいけないと規定をしているわけです。ところが、こういう人たちも収容の対象になっている。
この全件収容主義のもとに何が起きているかということなんですが、二〇一八年の四月十三日に、東日本入国管理センターのシャワー室で、インド人被収容者の方が首にビニールタオルを巻き付けて意識を失っている状態で発見され、緊急搬送されましたが、約一時間後に死亡が確認をされました。この方は、自殺される前日に仮放免の却下を知らされていたわけですね、前日に。ですから、収容が解かれないという絶望感から自殺に至ったのではないかと推察されております。二日後からは大規模なハンガーストライキが約一週間続きました。
法務省にお聞きしたいんですが、このことしの四月の案件以外に、二〇〇七年以降発生した死亡事件というのは何件あるんでしょうか。
○和田政府参考人 お答えいたします。
平成十九年以降、これまでに全国の地方入国管理官署の収容施設で発生しました被収容者の死亡事故は合計十三件でございます。うち、病死が七件、自殺が五件、死因不詳が一件でございます。
○藤野委員 配付資料の一を見ていただければ、今回の件は含みませんが、二〇〇七年からの、死亡事件というのは起きている。今答弁で、五件の自死事件、自殺があるということで、極めて重大な事態であります。
配付資料の二以降を見ていただきますと、これは法務省の提出資料でありますが、収容施設における収容期間ごとの人数であります。六カ月以上が何人、一年以上が何人、一年六カ月以上が何人と。これは、時間の関係でちょっと詳しく言えないんですが、この間でいえば長期の収容者というものがふえてきている。こうした長期の収容というのが自殺と関連しているのではないかということなんですね。
先ほど紹介したことし四月のインドの方は九カ月間収容されておりました。それ以上の長期の収容者の方もざらにいらっしゃるわけですね。
一番最後だけ紹介しますけれども、直近の平成二十九年十二月三十一日時点では、東日本入管センター、一番上のところですけれども、これは被収容者数三百四十四人のうち二百八十七人が半年以上の収容というふうになっている。実に八三%を超えているということであります。
日弁連は、二〇一五年一月の会長声明や二〇一七年四月の会長声明などで、これらの死亡事件、これは死亡に至って極めて重大だと、第三者機関による徹底的かつ迅速な調査の実施と、その結果の公表、再発防止策の具体化を求めております。
大臣にお聞きしたいんですが、大臣、一連のこういう自殺事件、自死事件について、長期拘束との関連などを含めて第三者による調査を行うべきじゃないでしょうか。
○和田政府参考人 収容施設内での死亡事件等がございましたときには、その内容につきまして入国管理局においても調査をいたしておるところでございますし、また、その際に必要に応じて第三者の方からも御意見をお伺いすることがございますし、また、収容所につきましては視察委員会の方から御意見をさまざま頂戴いたしておるところでございます。
○藤野委員 いや、私が聞いたのは、入管による内部調査ではなくて、外部の第三者による調査ということなんですね。
実際、確かに知っています。私も調査結果をもらいました。二〇一四年十一月に、相次いだ死亡事故についての内部調査を行っております。しかし、私、びっくりしたんですが、この報告書、本体は三ページだけなんですね。A4三枚です。
次の改善策というのが何かいろいろ書いてあるんですが、しかし、その後も、この二〇一四年以降も死亡事件というのは相次いでいるわけです。自殺はなくなっていないわけであります。
だから、こういう内部調査ではなく、第三者による徹底的な調査と検証が行われなければ、命が失われるという重大な事態がまた繰り返される。とんでもない話だというふうに思います。
死亡事件だけではありません。収容者による自傷事件というのも多数発生しております。
法務省に確認しますが、二〇〇九年以降、自傷事件というのは毎年何件発生していますか。
○和田政府参考人 お答えいたします。
平成二十一年以降、入国管理局の収容施設で発生いたしました自傷事故件数は、平成二十一年が四十四件、平成二十二年が四十五件、平成二十三年が四十件、平成二十四年が四十一件、平成二十五年が四十件、平成二十六年が五十九件、平成二十七年が五十一件、平成二十八年が三十件、平成二十九年が四十四件でございます。
○藤野委員 配付資料の三にはその表も出しておきましたけれども、毎年かなりの数の自傷行為というのが発生している。なぜこの自傷行為が行われるのか。その背景には、なぜ自分が収容されなければならないのか、全く納得できないという思いと、それに加えて、過酷な身柄拘束の実態というのがあるというふうに思うんです。
配付資料の四を見ていただきたいんですが、これは、収容施設を訪問して、収容者と面会されている#FREEUSHIKU有志の皆さんなどの方々からいただいた収容者の生の声の記録であります。
全部紹介できないんですけれども、例えばAさんという方は、クルド人としてトルコで民族的に差別されて、命の危険に直面し、日本に来た。半年の在留許可を得たが、難民としては認められず、一歳、六歳、九歳の子供たち、そして妻と引き離された。期限もなく壁の中に勾留されている。家族が外でどうなるかわからないという耐えがたい不安の中で、いつ出られるかわからない毎日を何とか生きている。同じように半年の在留許可の後に勾留された人で、仮放免されている人もいる。なぜ自分だけそうならないのか、基準の説明もない。入国管理局の恣意的な裁量次第ということがつらい。運命を待つだけで、頭がおかしくなりそうな毎日を、家族との連絡を望みに何とか生き延びている。こういう声であります。
あるいは、入国管理センターから近隣の病院に行く場合は、手錠をかけられた上で腰縄をつけられ、まるで動物のように扱われる。この動物のような扱いが本当に耐えがたく、心身がぼろぼろになっていく。こういう声であります。
時に虫や髪の毛が混入した食べ物、同じ種類の冷凍食品を何カ月も、何年も食べ続けなければならない。
あるいは、刑務所から来た人も収容されている。私は何も犯罪を起こしていない。それなのに同列に並ばされるのはおかしいではないか。
悪夢をいつも見る。二〇一五年にも一年二カ月くらい入っていた。最初、運動場に面した真っ暗な部屋に入れられた。部屋を変えてもらうよう何度も言ったが、聞き入れられずに、首を切った。この方は、面会された方によると、首の傷がまだ生々しかったそうであります。
本当に罪を犯したのであれば、こういう収容施設に入っても仕方がないと納得できると思うんです。しかし、難民の方々など、そうした犯罪を犯してもいない方々というのは、祖国の危険な状況から逃れて助けてもらえると、難民条約に日本は入っているんだから、助けてもらえると思って日本に来たのに、捕まって収容される。納得できないわけですね、自分の状態が。これは非常に大きなストレスになる。
それに加えて、処遇の不適切さが拍車をかけるという状況に陥っております。
特に収容者の皆さんが口をそろえて挙げられているのが、収容所内における医療アクセス、この問題なんです。
法務省にお聞きしますが、先ほどおっしゃった全国十七カ所ある収容施設で常勤の医師がいる施設は幾つありますか。端的にお答えください。
○和田政府参考人 常勤の医師は、現在、東日本入国管理センターに一名勤務しております。
○藤野委員 たった一名なんですね。しかも、去年の四月にようやく配置されたと。
ほかは、いただいた資料、配付資料の五枚目にありますけれども、十七のうち五つ非常勤の医師が配置され、一つだけ、その東日本入管センターだけが常勤。あとの十一というのは、非常勤であれ何であれ医者がいないわけです。医師そのものが配備されていない。これは本当に医療アクセスという点で大変な状況になっているわけです。
ちなみに刑務所では、法務省からいただいた資料では、どこでも、どの刑務所も一人以上は矯正医官というのが配置をされております。
大臣にお聞きしたいんですが、大臣は、二〇一五年四月の、今申し上げました刑務所に配置されている矯正医官、これの兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案の審議の際に、こう答弁されております。被収容者の健康管理そして衛生管理については、強制的に身柄を拘束するということであり、その拘束する国の責任である。
大臣、現在もこの考え、変わりありませんか。
○上川国務大臣 御指摘がございました三年前の私の答弁ということでございまして、矯正施設における医療体制の整備にかかわるものであるところでございますが、矯正施設と入管収容施設との間では行政目的が異なるわけでございますが、いずれにありましても、法令に基づく強制的な措置として身柄を拘束する国の責任におきまして被収容者の健康管理及び衛生管理が適切に行われるものであります。
この考え方は同じであるというふうに考えております。
○藤野委員 これは極めて重要な答弁だというふうに思います。行政目的は確かに違いますけれども、国が法律に基づいて強制的に身柄を拘束するという点では同じだということなんですね。
配付資料の六には、谷垣法務大臣の答弁も御紹介をさせていただいております。これは二〇一四年四月八日の当委員会、衆議院の法務委員会での答弁ですが、こうおっしゃっているんですね。矯正施設は、国家権力でもって収容者をその中に入れておく、閉じ込めるわけでございますので、その中にいる間、社会一般の医療水準から見て適正な医療が受けられるようにするのは、これは国家の責務であると申さなきゃいけないと思います。これは私、当然だ、今も上川大臣もおっしゃったとおりだというふうに思うんですね。
ですから、確認したいんですが、そういう意味でいえば、刑務所であっても入管の収容施設であっても、社会一般の医療水準から見て適正な医療が受けられるようにする、これは同じである、大臣、そういうことでよろしいですね。
○上川国務大臣 入管施設でございますが、入管の収容施設に収容されました方々の処遇のあり方につきましては、被収容者処遇規則という規則によって定められているところでございます。地方入国管理局長等は、新たに収容される者につきましては医師の健康診断を受けさせる、また、被収容者が病気にかかったり、また負傷した場合につきましては医師の診療を受けさせ、病状によりまして適切な措置を講じなければならないものとされているほか、伝染病が流行したり、また流行するおそれがある場合に必要な予防措置を講じることなどが定められているものでございます。
先ほど長期化が進むということをおっしゃったわけでございまして、全体的に見ますと、不法就労問題とともに送還忌避問題が深刻化している状況でございまして、結果として、被収容者全体の収容期間が長期化している傾向があるというところでございます。
こうした問題の根本的な解決につきましてはしっかりと図らなければいけないわけでございますが、同時に、被収容者の心身の健康、これを維持するためには、医療面も含めまして、今後、処遇環境の悪化につながらないような、また所要の体制整備に対しましても万全を期してまいらなければならないものというふうに考えております。
○藤野委員 私がお聞きしましたのは、最後の方でおっしゃられたように、長期化しているもとで、心身の健康、これが悪化につながらないように万全の措置をとっていくと答弁されましたけれども、その大前提としまして、やはり国家が強制的に収容するわけですから、その点では刑務所でも入管でも同じだ、そういう意味でその万全な対策をとるのは国家の責務である、そういうことですねと。その点だけを再度確認したいと思います。
○上川国務大臣 先ほどの御質問に対しても申し上げたところでございまして、行政目的は異なるわけでございますけれども、法令に基づきまして強制的な措置として身柄を拘束する国の責任におきまして被収容者の健康管理及び衛生管理が適切に行われるものという考え方については、矯正施設と同じであるというふうに考えておりますので、その意味では、国の責任のもとでしっかりとした健康管理と衛生管理を尽くしていく必要があると考えております。
○藤野委員 配付資料の七では、日弁連の人権擁護委員会が二〇一四年に発表した調査報告書も紹介しております。「入管収容施設に収容されている外国人は、国によって強制的に収容施設に収容されているという点において、刑事施設に収容されている者らと何ら異なるものではない。」「したがって、入管収容施設に収容されている外国人の医療を受ける権利が、刑事収容施設における被収容者の医療を受ける権利よりも制約されることは許されない。」こういう指摘であります。
しかし、これを実際行っているのかという点が問題になっておりまして、先ほど言ったように、刑事施設においては矯正医官という者が少なくとも一名以上は常置しているわけですね。ところが、入管施設においては、常置しているのは十七の施設のうちたった一つ。あとは、五つの施設で辛うじて非常勤の医師はいますけれども、それ以外の十一の施設では医師がいない。大臣が答弁されたような国の責任というのが全く果たされていないと言わざるを得ないというふうに思うんですね。
二〇一四年の三月に四十代のカメルーン人の方が糖尿病で亡くなられているんですけれども、日本の今の医療水準でいえば、四十代で糖尿病でお亡くなりになるというのはまれだと思います。そういう点で、やはり改善は急務であるというふうに思います。
上川大臣にこれもお聞きしたいんですけれども、配付資料の八なんですが、日弁連は、二〇一四年十一月七日付で、上川大臣及び東京入管、あるいは衆議院議長も含めてですけれども、勧告を行っております。
これは実際に起きた医療上の措置、東京入管で起きたさまざまな処置についての調査した結果の勧告なんですが、これを見ていただきますと、要するに、東京入管は速やかに診療を受ける機会を提供しなかったとか、インフォームド・コンセントを十分に確保しなかったとか、あるいは手錠及び捕縄に関する取扱いについて問題があったとか、入所時における医師による健康診断も全く実施されていなかったとか、いろいろ調査の結果判明したもとで、結局、医療を受けようとするこの方々の意思の尊重という医療上の自己決定権をも損なったものであり、同人らの医療を受ける権利を侵害したものとして、人権侵害行為があったというふうに認定しているんですね。
これは大臣に対する勧告書ですから、指導監督する立場にあった大臣に対して、適切な医療体制の構築を行うなど再発防止の措置を講じるよう勧告している。
大臣にお聞きしたいんですが、この勧告に対する対応というのがなされていないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
○上川国務大臣 入管の収容施設におきまして、国が身柄を拘束するという、国の責任のもとで被収容者の健康管理及び衛生管理が適切に行われなければいけないものというふうに先ほど答弁申し上げたとおりでございます。
先ほど来の御指摘のとおり、実は、入管収容施設における実情といたしまして、常勤医師の確保になかなか苦慮をしているという状況にございます。そして、そうした状況にあっても適切に医療等の提供をするという意味では、幾つかの施設ではございますが、近隣の医療機関の御協力をいただきまして、非常勤の医師の先生方に交代で日々来診していただいているところでございます。
また、規模の大きい収容施設につきましては常勤の看護師を確保するということについて努め、入国警備官につきましても、准看護師資格を取得させるための取組を継続して実施をさせていただいているところでございます。
被収容者に対しまして、医療機会の提供につきましては最大限努めているところでございます。特に常勤の医師の確保につきましても、困難性を深めているところではございますが、この問題についてあらゆる手だてを講じて、体制整備に尽くしてまいりたいと更に思っております。
○藤野委員 医師の確保は本当に重要な課題だとは思いますが、例えば、この矯正医官の法案のときの資料にもこういう指摘があるんですね。国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律、要するに給与を下げるという法律に基づいて、平成二十四年度から二年間、国家公務員給与の一律カット等が行われた結果、一般の医師との給与格差が拡大したことなどにより、こうした矯正医官などの離職者が相次いだ、こう指摘がされているわけです。
ですから、医師の確保という場合にも、いろいろな要因があると思うんですが、やはり国の施策というのは非常に大きくかかわっているという認識をぜひ持っていただきたいというふうに思うんです。
そして、もう一つ、この問題は、国内の日弁連や運動団体の方々だけでなく、世界からも批判を受けております。国連の拷問等禁止委員会あるいは移住者の人権に関する国連特別報告者、いずれも、今の医療アクセスというのは余りにひどいということで改善を求めております。
ですから、この点については、本当に国内外で共通して医療アクセスの劣悪さの問題というのが指摘をされているわけでありますから、これはぜひ法務大臣のイニシアチブで緊急の改善策を行っていただきたい、このことを強く求めたいと思います。
そして、もう一点、根本的にはやはり、今の難民認定制度あるいは外国人の人権に対する考え方、ここで法務省がしっかりと今までの枠を超えて取組をしていくことが必要じゃないか。
イギリスの入管収容施設や制度を研究した方々が現地を視察された報告書というのがありまして、英国視察報告書というんですが、私、読ませていただきまして、本当にびっくりしました。この報告書の最後にも、一言で言って衝撃であるという言い方をされていますが、私も衝撃を受けました。
結局、正門から出る以外はできるだけ自由を保障する、こういう考え方なんですね。要するに、人間として日常生活の自由を保障していくというこの考え方そのものが全く違っている。イギリスの場合、保釈などの認定を行う裁判官向けのガイドラインが公表されているんですが、その冒頭に、人の身体の自由は基本的な権利であって、イギリスの市民であろうが出入国管理の対象となる人であっても同じである、この一文から始まっている。これは全く違う。そういう意味では、やはりそうした考え方全体を今見直していく必要がある。
制度的に重要だと思いますのは、難民認定を行う行政と出入国管理を行う行政を同じところがやっている。分離されていない。イギリスなんかは分離しているんですね。分離というか裁判所も関与する形ができていますが、日本はどちらも法務省入管局が所管していまして、難民調査官も入国審査官から指名される、これが難民認定の抑制につながるというふうに指摘をされている。当然だと思います。制度上の欠陥である。
こういう点も含めて、大臣、お聞きしたいんですが、やはり外国人の人権に対する根本的な考え方、あるいは難民認定のあり方、処遇のあり方を全体として見直していこう、そういう方向に進もう、そういうお考えはありませんか。
○上川国務大臣 難民の認定の申請をされた方々が的確に難民の認定を受けられ、これは条約難民ということで手続がしっかりと決められたものでございますが、そうしたことで迅速に難民の認定ができるようにしていく。そのためにも、この申請の状況につきまして、体制も含めましてしっかりと取り組んでいく必要があると思います。
また、被収容者の問題につきましても、人権、人道上の観点からの取組も含めて、医療へのアクセス、これにつきましてはしっかりと対応していく必要があるということにつきましては先ほど申し上げたとおりでございまして、更に改善が図れるように努力し、また、常勤医師の確保につきましても、医師会ともしっかりと協力をいただくことができるように、更に働きかけを進めてまいりたいというふうに考えております。
○藤野委員 日本の難民の認定率の低さというのは極めて有名でありまして、二〇一四年でいえば、世界的には二五%程度の認定なのに対して日本は〇・二%ということで、こういうことも含めてやはり改善していくということが必要だということを指摘して、質問を終わります。
○平口委員長 次に、串田誠一君。
○串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。
本日の質問に関連をいたしまして、松山刑務所大井造船作業所について一言触れさせていただきたいと思います。
二十三日目にようやく逮捕されるということになりまして、ゆゆしき問題ではありますけれども、殺傷事件というような大きな二次被害がなかったということは唯一の救いというか、ほっとしているところでございます。この期間、一番心を痛めていたのは上川法務大臣だと思っております。謝罪も大変、現地に行かれて回られたということもお聞きしておりまして、そういう意味で一番大変だったんじゃないかなと思うんですけれども。
私は、逃走中にも質問させていただいたんですが、一番危険なのは、就寝から起床、点呼までの部分というのが非常にわかりづらいということもありますので、まずはそういったところを点検していただいて対処をされるということが一つの前進なのではないかなと思っています。
この件に関しましては、再犯率が非常に低い、七日の法務省の発表によりますと、全国平均で再入率が四三%に対して大井造船所は一〇%ということで、非常に効果を上げられています。
また、周辺の住民は大変危険な思いをしたということではありますけれども、しかし、この施設をなくさなきゃいけないというような声は、私の肌感覚で言うと、国民にはまだそんなに多くなかったということで、非常にこの施設についての評価というのは十分されているのかなと思いますので、ぜひ、この点について、このようなことがないような十分な対策をとっていただきたいことをお願いいたしまして、きょうの質問をさせていただきたいと思います。
これは、どうしてこういうことを触れたかといいますと、きょうは刑務官の質問をさせていただきたいと思うんですが、こういう脱走するというようなことに対しても、厳重に、日ごろ大変な、心を注意しながら仕事をされていらっしゃると思うんですけれども、この刑務官の離職率が他の公務員に比べて高いというようなこともお聞きしているんです。これは事実であるのかどうか、ちょっとその点から確認させていただきたいと思います。
○富山政府参考人 お答えいたします。
刑務官の離職率につきまして、平成二十三年度から二十五年度までに採用されました刑務官のうち、採用後三年未満で離職した割合を見ますと、男性については一六・五%ですが、女性につきましては四三・二%と、やはりかなり高い数字になっておりまして、公務員全体から見ても恐らくこれは高い数字であろうというふうに考えているところでございます。
○串田委員 刑務官というのは、何年か勤めることによってスキルも高まっていくでしょうし、そういったようなことも含めますと、今回の逃走犯が出てしまったということも踏まえますと、長く勤めていただいてやはりスキルも高めていただきたいというようなこともあるんですが、今四三%ですか、たった三年間ですよね、どうしてこんなに離職するのかということの分析はされているんでしょうか。
○富山政府参考人 お答えいたします。
離職率が特に高い女性刑務官でございますが、女性刑務官につきましては、結婚や出産、育児を契機として離職する場合も少なくないということが一つございますが、それに加えまして、やはり長期間にわたって女子刑務所は大変高率な収容、一時期は本当に過剰な収容、定員をオーバーするような状態があったというようなこと、また男子の刑務所と比べましても高齢者の比率が高い、それから女性の受刑者特有の、摂食障害を有する者などがいるといったようなことで、大変処遇に特別な配慮が必要な受刑者が多いというようなことで、職員の勤務負担がかなりきついということも言えるかと思います。そういったことも原因になっているのではないか。
退職する刑務官から、なぜやめるのかといったことについて本人が語ってくれれば、それを聞いたりして調査をしているんですが、いわゆる寿退職ももちろんあるんですが、仕事が厳しいとか同僚との人間関係、あと、この仕事が合わないというような、これがやはりかなり多くあるというふうに分析をしております。
○串田委員 今、いろいろと理由というものも調査されていらっしゃると思うんですが、いま一つ具体性がまだちょっと欠けているのかなと思うんです。
私の聞いている限りですと、高齢化というようなお話がありましたが、その収容されている人たちが高齢化して、軽い認知症なのかあるいは認知症なのか、そこら辺はちょっとお聞きしたいところでもあるんですが、刑務官の仕事を越えて介護の仕事までさせられているというような話も聞いているんですけれども、実情はいかがでしょうか。
○富山政府参考人 お答えいたします。
年末の収容人員に占めます六十歳以上の受刑者の割合というものが、平成十八年には約一二%であったものが平成二十八年には約一九%というような形で増加をしております。また、これを七十歳以上の受刑者の割合というふうに見てまいりましても、平成十八年は約三%であったものが二十八年は約六%と、いずれも一貫して上昇の傾向にございます。
刑事施設におきましては、認知能力や身体機能が低下しております高齢の受刑者に対しましては、必要に応じて職員などが食事や入浴などの日常生活の介助を行うといったこともしておりまして、こういった対応も刑務官などの職員の業務負担を増加させる要因になっていると考えております。
こういった事情を踏まえまして、こういった受刑者の介護体制の充実強化を図るために、介護福祉士等の資格を有する職員の全国的な配置も進めてきております。
また、平成二十九年度からは、六十歳以上の受刑者の占める割合が高い刑事施設三十二庁を中心に、介護専門のスタッフの配置をするといったようなこともしております。
さらに、本年度からは、大規模な刑事施設八庁において、介護専門スタッフの増配置あるいは介護用の入浴設備の整備等も行うといった対策も講じておりますが、引き続き、こういった専門スタッフ等の力も活用しながら、高齢受刑者の適切な処遇に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○串田委員 今お話もありましたけれども、やはり刑務官というのは刑務所を管理するというようなことだと思うんですが、今、収容者の介護もしているというようなこともありまして、それはやはりさすがに刑務官がそういったことをするというような想定もしていなかったでしょうし、また、刑務官というのは、中でいろいろな騒ぎが起きない、あるいはまさに脱走してはいけないとか、そういうような非常に気配りをしなければいけない中で、一人の者を介護している間というのは、非常にそういう意味で監視がおろそかになるというのも事実だと思うんですね。
ですから、刑務官が介護をするということ自体、これはやはり刑務官になられる方も想定していなかったと思いますし、こういったような事態は速やかに改善していかなきゃいけないとは思うんですが、聞いたところによりますと、優良受刑者が介護を担当するような話も聞いているんですけれども、そのような対応というのは、実情はどうでしょうか。
○富山政府参考人 お答えいたします。
刑事施設におきましては、日常生活において介護が必要な高齢者等に対する生活援助及び身体介護に必要な知識と技能を習得させるための職業訓練といたしまして、介護職員実務者研修というものを十六庁の施設で、また初任者研修を四庁の施設で、これは平成二十九年度の実績でございますが、実施しております。
こういった研修を修了した受刑者、あるいは、そもそも社会内で既に介護関係の資格を取得しております受刑者もおります。こういった受刑者の中から選抜をいたしまして、介護が必要な受刑者の食事や入浴など、日常生活の介助を行わせるというところもございます。
出所後の円滑な就労につなげるためにも、こうした介護の資格を持った受刑者の養成といった職業訓練にも力を入れてまいりたいと考えておりますし、また、そういった力が応用力をつけるという意味でも、現実に施設の中で高齢の受刑者の介護等に当たらせるということも、適性を見きわめながらではございますが、引き続き続けていきたいというふうに考えております。
○串田委員 昨今、介護者というのが非常に少ないというような話の中で、優良受刑者が介護のスキルを身につけ、また資格を取って、そして出所に対しても対応できるという、本当に一石二鳥だと思うので、刑務官の離職率が非常に高いという部分を、そういったようなところでもっともっと活用していくということはぜひお願いをしたいと思うんです。
一点ちょっとお聞きしたいのは、認知症であるというようなことがはっきりしてしまっているという場合に、受刑をしている、受刑というのは再犯しないようにという教育的な配慮もあると思うんですけれども、もう認知症になってしまった場合には、受刑をするということ、教育的な意味合いというのが非常に薄れてしまうと思うんですけれども、そういったような問題点というのは出てこないんでしょうか。
○富山政府参考人 お答えいたします。
認知症あるいは認知症傾向にある受刑者につきましては、これまでも、可能な限り集団処遇の機会を設けるなどして、その進行をおくらせる、あるいは身体的機能の低下もおくらせるといったようなことにも努めてまいりましたし、また、もちろん、認知症と一言で言いましても、重い、軽い、さまざまでございますので、その症状等に応じて必要な個別の配慮を行うというようなことはやってきております。
また、平成三十年度から、先ほど申し上げました大規模な八庁におきましては、入所時から認知症についてきちんと調べるということをやらなければいけないということで、特に高齢者が多い施設でございますので、認知症を有する受刑者を早期に発見するための検査を行って、その検査の結果、必要があれば医師による診察を実施する、また、刑務官に対して認知症を有する受刑者の処遇についての研修も行う、そのほか、介護専門スタッフの増配置等も先ほど申し上げたとおりでございます。
そういった取組をしまして、認知症を有する受刑者について、その進行を少しでもおくらせていきたいということはまずやっておるところでございます。
認知症の大変重い状態になってしまうと、刑の執行を受けているということがわからなくなるのではないか、確かにそのような御懸念もあるかと思うんですが、刑務所の中にいて、認知症と言われる者も、多くは、やはりそれでも自分は受刑をしているということ自体は意識をしているということで、その中で、出所後に認知症が原因でまた犯罪を犯してしまうというようなことがないように、しっかりと社会に出たときには福祉とつながれるように、そういった福祉の方とつなぐような試みというのもしっかりとやっているというのが現状でございます。
○串田委員 軽い、重いはあると思うんですけれども、時には、奇声を発するとか、意味不明なことを話し出すというようなこともあると思うんですが、そういうような傾向の受刑者と他の受刑者とが同じところに入っているのか、そういう傾向があった場合には分離をするような対処をされていらっしゃるのか、この点はどうでしょうか。
○富山政府参考人 お答えいたします。
認知症を有する受刑者といっても、まさにおっしゃるとおり、いろいろなパターンがございまして、夜中に例えば大きな声を出して奇声を発するというようなことがあれば、当然、周囲の者が眠れなくなってしまいます。その場合には、静穏室と呼んでおりまして、要は防音の効果のある部屋を用意してございますので、そういったところに一時的に収容して周囲の迷惑にならないようにする、そういった対策をとることはございます。
ただ、完全に隔離をしてしまうと、ますます認知症が進行してしまうということもありますので、基本的にはほかの受刑者とも一緒に処遇をする。その意味では、他の受刑者にとっては若干の迷惑になるかもしれませんが、ただやはり、他人に思いやりを持つというような心を持たせるといった意味でも、限度内のものであれば、むしろ協力をして生活をさせるということにも意味があるというふうに考えております。
○串田委員 当然御存じだと思うんですけれども、今聞いていただいても、刑務官の環境というのは非常に大変なんだと思います。奇声を発したりとか、あるいは意味不明な行動をしたりとか、そういった中で介護までしていかなきゃいけないという。
そしてまた、今度触れたいと思うんですけれども、刑務所というのは大変老朽化していまして、そういう意味では、他の公務員と比較しても、非常に環境的にも、そういったところに予算をかけるというのはいろいろ国民の理解が得られないという部分はあるんでしょうけれども、かなり老朽化している建物の中で非常に大変な仕事をしているという意味で、わずか三年間で四三%も離職をしているという部分からすると、ぜひ刑務官のそういう仕事の環境を改善していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○平口委員長 次に、黒岩宇洋君。
○黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。
きょうは、再犯防止についてお聞きします。
私も、海外からも含めて、日本の治安がいいと言われている、このまさに肝心な肝は、再犯者が少ない、こういう認識でおりましたけれども、これは平成十八年までの、あれは何万件でしたかね、百何十万人でしたかね、再犯率でその時点で約三割だったと。これは先進国と比べても低い数字で、このこと自体が私は治安のよさに直結している、このような認識でいたんですが、これが直近の平成二十八年ですと再犯者率が四八・七%と五割近いですし、右肩上がりなんですよね。
まずお聞きしますけれども、何でこんなに再犯率が高くなっちゃったんですか。
○金子政府参考人 再犯率の、再犯者率の増加につきましては、御指摘のとおりでございます。
ただ、全体の刑法犯の検挙人員は減っております。そのうち、初犯者と、それ以外の二犯者以上、これを再犯者、この合計は常に一〇〇になるようになっていますので、相対的には、初犯者の検挙者、検挙される者の減り方に比べて、再犯者で検挙される者の数の減り方が少ない、そのため相対的には増加している、これが最大の原因ではないかというふうに分析しております。
○黒岩委員 金子さんの言う算数の分数だとそういうことになりますよ。分母である検挙人員の数はどんどん減ってきている、ただ、分子である再犯者の犯罪、検挙件数が横ばいだ、だから割ったら再犯率が高い、これは、悪いけれども、多分小学校四年ぐらいでわかる話です。
私が聞きたいのは、更に聞きますけれども、じゃ、何でこの再犯者の数、今言った全体の検挙人員は減ってきているのに、なぜ再犯者の数だけ、これだけは減らないんですか、実数が減らないんですか。ここをお聞かせください。
○金子政府参考人 今ちょっと手元に正確な数字を持っていないんですけれども、再犯者の数も減っていることは間違いないです。
もちろん、初犯の方というのは初めて犯罪に手を染めるという方で、それに比べると、一度犯罪に手を染めた人が更にもう一度犯罪を犯すという率が相対的には高くなっているということがあると思います。
もちろん、その再犯者、再犯に対する対応というのが非常に大きな課題になっているということも間違いないものと認識しております。
○黒岩委員 では、逆の聞き方をしましょうか。
初犯者の数はがんがん減っているわけですよ。初犯者の数は、では何で減っているんですか。
○金子政府参考人 これはまたいろいろな分析が必要だと思いますけれども、治安対策等につきまして、我が国全体としていろいろな対策を講じてきた結果、それも一因であろうと思います。
もちろん、いろいろな社会情勢等もございますので、それだけというふうに申し上げることは、何か特定の原因のみを挙げることは難しいとは思いますが、そういういろいろな対策を講じているということも功を奏しているというふうに思います。
○黒岩委員 きょう、この話は本当に、とどのつまり、再犯率が高くなってしまっている、今申し上げたように再犯者の数が減らない、この原因をしっかり分析しなければその対策が的確にとれないという、ここのところは、法務省とのいろいろな議論の中で、この前、裁判官の数も、何でこれだけいるんですかと言うと、訴訟の、事件の複雑困難化と抽象的なことだけ言って、それとマッチさせる対策というのはとりづらいわけですよ。
多分、法務省は皆さん頭が文系なんだな。こういう抽象的な文章で、だからという結果を導くんだけれども、できれば、今言ったように、数字的にこういった類型があってこういった原因ですというものが示されないと、今申し上げた、再犯者を減らしていくんだ、率を減らしていくんだということに直結しない、こういう視点なんですよ。
それで、今、金子審議官がおっしゃったように、昨今は治安対策をしてきたとか、あと景気も比較的よくなってきたから例えば窃盗犯とかこういったものが少なくなってきている、こういうことは私も想像がつきます。ただ、これはパラレルで、初犯だけじゃなくて再犯者にだって言えるわけですよ。だから、何で初犯は減るのに再犯者が減らないのかという、このことについてお答えいただきたいんですよ。
○金子政府参考人 一度罪を犯した者が再犯を犯さないためのいろいろな政策はとっております。対策を講じているところでありますけれども、もちろんそこを強化していくということが重要だというふうに思っております。
結局、初犯の数の減り方に比べて再犯者が減らないということにつきましては、その対策がなお不十分だという面はあろうかと思います。
○黒岩委員 審議官、やはりいま一歩、正確な答えになっていないと思いますよ。
今申し上げたとおり、検挙人員全体が減っている、しかもその中で初犯は減っている、その理由を明確にして、では初犯と再犯で一体何が違うのか、これについてはしっかり分析してもらいたいと思います。
事前に、私、事務方にはもうお聞きしています、もう二カ月ぐらい前ですけれどもね。もともとこれは大臣所信質疑で聞こうと思っていたんだけれども、それによると、高齢者や障害者というのが再犯者の中では多いから、だから再犯者の数は減らないと、一つは言っていました。あと、薬物事犯とか中毒性のある犯罪に手を染めた人が多いから、これもなかなか、再犯としてもう一回犯罪を犯してしまうから減らないと。ここまではわかりました。私は、これが初犯と再犯との違いだという点では合理的だと思います。
そこでお聞きしたいんですけれども、今度は時系列で聞きたいんですよ。
では、平成十八年までは今言ったように再犯率三割で抑えられていた、でも、近年になって何で再犯率が高くなるのか。これは同じことを言いますけれども、近年になって何で再犯者の数が、全体がこんなに減っているのに減らないのか。今まで、平成十八年以前と、近年近年と言うんだけれども、この近年とで、今言ったようなこの原因。私は以前もそうだと思いますよ。再犯の方は高齢者や障害者が多い、そして薬物事犯で中毒性が多い、これは平成十八年以前もそしていわゆる近年も私は変わらないと思っているんですよ。
だから、近年、なぜこの情勢が変わったのか、そのことについて、これはやはり明確にお答えいただきたいと思います。
○金子政府参考人 御指摘のとおり、再犯者率というのは上昇をずっと続けているところでございます。
ちょっと手元のデータで、私、平成九年以前のものがないので、それ以前の状況を今正確に把握した上で御答弁することができないのですけれども、一旦犯罪を犯した者がもう一度犯罪を犯すということにつきましては、結局、教育なり矯正なりがきちんとできていない、立ち直りがきちんとできていないということかと思います。
それにつきましては、いろいろ政府の方でも累次対策を打ってきておりまして、一定の効果を上げていると思いますが、なお、例えば、先生御指摘のような、犯罪類種別の対応とか、あるいは犯罪を犯した方の属性に応じた対応とか、きめ細やかな対応をとる方向に今政府としても向かっておりますけれども、なおその点に不十分なところがあるというふうには思っております。
○黒岩委員 金子さん、私もわかっていますよ。矯正も保護も、一生懸命、新たな対策、いろいろなものを取り組んでいますよ。薬物対策だってドラッグコートとかいろいろなことも取り組んでいますし、福祉との連携とか地域との連携事業とか、わかっているんです、やっていますよ。
でも、それは結果として、約三割から四八・七%まで上がっちゃっているわけですから、これは後でまた省内でしっかりもんでいただいて、今申し上げた、初犯は減るけれども再犯が数が減っていない、この明確な分析と、あとは、平成十八年までと近年との、この違いは一体何なのか、このことについてももう一回分析してくださいよ。そうじゃないと対策をとれないと思いますよ。これをお願いしておきます。
それで、再犯防止に向けた総合対策では、再犯者を減らすという意味で一つの数値目標を立てていますよね。要は、平成二十四年で、二年以内の刑務所への再入率、これがもともと二〇%だった。これを、平成三十三年までにこの二〇%を二割削減する、ちょっとわかりづらいですけれども、二〇%の二割ですから、四%減らそうと。ですから、二年以内の再入所率を一六%にしようという、これがある意味、唯一、再犯を減らす意味での数値目標なんですけれども、では、この五年間で、総合対策、五年経過したわけですけれども、今時点で、この総合対策五年で、どういった見直しを行って、そして具体的な対応をしてきたのか、この点についてお聞かせいただけますか。
○金子政府参考人 今委員が御指摘された出所受刑者の二年以内再入率の推移の数値ですが、平成二十三年は一九・四%、平成二十四年が一八・六%、平成二十五年が一八・一%、平成二十六年が一八・五%、平成二十七年が一八・〇%ということで、二〇%から一六%まで下げるという目標に対して、今、半分の達成率ということになります。まだ、平成三十三年までということで、この目標を達成すべく、引き続き、これまでの総合的な対応を進めていこうというふうに思っております。
それまでの間も、薬物依存者あるいは高齢犯罪者等の再犯防止緊急対策等の再犯防止施策を実施してきたところでありまして、見直しをしながらも、このような対応を継続していきたいというふうに考えております。
○黒岩委員 再犯防止という言葉は、言葉どおり再犯を防いでいく、それは直結して再犯者の数を減らしていく、これが目標なんですよ。その一歩手前の目安として、再犯率を低めていこう。更にその一歩手前ですよ、再入所率を下げていこう。その更に一歩手前が、再入所率の二年以内に限って、これを数値目標として二〇パーから一六パーにしていくといって、この取っかかりのハードルは、微減とはいいながら、二〇パーから一八パーぐらいまで減ってきている。ただ、残念ながら、今申し上げた最大の目標である再犯者の数は横ばいで、せっかくこの入り口は努力しているんだけれども、減らない。
私は、次に、この二番目の入り口、ゲート、これは、二年以内じゃなくて、全体の再入所率、これを見ると、これは減るどころかぐんぐんふえているわけですよ。ですので、もう時間が限られているので、私は、今言った二年以内という取っかかりの数値目標も大事ですが、これだけでは今言ったように最終ゲートまでたどり着かないわけだから、やはり二年以内に限らず、まずは全体の再入所率の数値目標を立てていただきたいことと、加えて、やはり四番目のゲートである再犯者の数を、今幾らだったものが、五年後にはここまで下げると。実際には、検挙人員はこれだけ減っているわけですから、この二点をやはり掲げていただかないと、取っかかりの数値だけ何とかぎりぎり頑張って達成しても、四番目のゲートまでたどり着かない。
ですから、この二番目と四番目のゲートに対する、私は、もちろん三番目のゲートの全体の再犯率も、四八・七ですから、これを四〇パーにするとか、第三番目のゲートもちゃんと数値目標を入れていただきたいので、この点について、二番、三番、四番、私はここまでしっかり示すことが、くどいようですけれども、二年以内の再入所率を下げることが目的じゃないんですよ、手段なんですよ。目的は、再犯者の数を減らすことがイコール再犯防止なので、今言った、二番目、三番目、四番目のゲートを数値としてしっかり示していただきたい。この点についてお聞かせください。
○金子政府参考人 まず、再犯者率なんですけれども、初犯者七〇%、再犯者三〇%という世界と、初犯者三〇%、再犯者七〇%という世界と、これはどちらが望ましいかということは一概に言えないと思うので、再犯者率というのは、初犯者も合わせて常に一〇〇になるところの再犯者の率ですので、それについて右肩上がりだということは、一概に再犯の防止が功を奏していないということにはつながらないんじゃないかということは一点申し上げたいと思います。
それから、二年以内の再入率というのは、委員御指摘のとおり、全てをはかる指標としては相当でないかもしれませんが、出所した直後に、やはりいろんな、生活が整わない、収入がない、いろんな要因で直ちに再犯、犯罪に改めて手を染めてしまうということが多いと言われている中では、まずここを通らないといけないであろうということで考えられて指標とされたものだというふうに思います。
もちろん、統計としては、五年の入所率もとっておりますし、再犯者の数、率ではなくて数も当然とっておりますので、その辺はきちんと確認しながら対策を進めていきたいというふうに思っております。
○黒岩委員 では、最後、審議官、これは第五ゲートの話で、犯罪を減らすということは第五ゲートなんですよ。その手段として再犯防止だと言っている。なぜ再犯防止ということが切り出せるかというと、これは、矯正局と保護局が、日本の独特のこの制度が影響を与えることができるんですよ。
今言ったように、犯罪全体でいって初犯を減らすというのは、これはむしろ刑事局の仕事になるし、警察の仕事になる。今言った保護局と矯正局ができることというのは再犯防止までなんですよ。だから、この点について、結果として五番目のゲートは減っているからいいじゃなくて、法務省としてできるのは第四ゲートまでが主なんですよ。だから、これについて第二、第三、第四ゲート、しっかりと示していただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
――――◇―――――
○平口委員長 次に、内閣提出、民法の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。上川法務大臣。
―――――――――――――
民法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○上川国務大臣 民法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、公職選挙法の定める選挙権年齢が満二十年以上から満十八年以上に改められたことなどの社会経済情勢の変化に鑑み、民法が定める成年となる年齢の引下げ等を行うものであります。
その要点は、次のとおりであります。
第一に、現在二十歳とされている成年となる年齢を十八歳に引き下げることとしております。
第二に、現在男性が十八歳、女性が十六歳とされている婚姻開始年齢について、男女とも十八歳にそろえることとしております。
第三に、民法が定める成年となる年齢の十八歳への引下げに伴い、関係法律について所要の整備をすることとしております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○平口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時二十七分散会