衆議院

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第19号 平成30年6月8日(金曜日)

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平成三十年六月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 大塚  拓君 理事 門  博文君

   理事 田所 嘉徳君 理事 藤原  崇君

   理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君

   理事 源馬謙太郎君 理事 國重  徹君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      上野 宏史君    鬼木  誠君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      菅家 一郎君    城内  実君

      黄川田仁志君    小林 茂樹君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      古川  康君    宮路 拓馬君

      山下 貴司君    和田 義明君

      逢坂 誠二君    松田  功君

      松平 浩一君    階   猛君

      大口 善徳君    藤野 保史君

      串田 誠一君    重徳 和彦君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   総務大臣政務官      小倉 將信君

   法務大臣政務官      山下 貴司君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    辻  裕教君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 田島 淳志君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 並木  稔君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    山名 規雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 酒光 一章君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  古川  康君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  宮路 拓馬君     古川  康君

    ―――――――――――――

六月八日

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(國重徹君紹介)(第一八六五号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(柚木道義君紹介)(第一八六六号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(池田真紀君紹介)(第一八六七号)

 同(小川淳也君紹介)(第一八六八号)

 同(白石洋一君紹介)(第一八六九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九三九号)

 同(篠原孝君紹介)(第一九四〇号)

 同(長谷川嘉一君紹介)(第一九七二号)

 同(本村伸子君紹介)(第一九七三号)

 共謀罪法の廃止に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一九三七号)

 同(山川百合子君紹介)(第一九三八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)

 法務局における遺言書の保管等に関する法律案(内閣提出第五九号)


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び法務局における遺言書の保管等に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る十三日水曜日午前九時三十分、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長辻裕教君、財務省大臣官房審議官田島淳志君、国税庁長官官房審議官並木稔君、国税庁課税部長山名規雄君及び厚生労働省政策統括官酒光一章君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。源馬謙太郎君。

源馬委員 おはようございます。国民民主党の源馬謙太郎でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、また質問の順番も調整していただきまして、皆様に大変感謝をいたします。ありがとうございます。

 早速質問させていただきたいと思います。

 今回の民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び法務局における遺言書の保管等に関する法律案、いろいろ御説明をいただきまして、主に六つの観点があるというふうに伺いました。

 きょうは、特にそのうちの配偶者の居住権を保護するための方策について主に質問をしていきたいと思うんですけれども、冒頭に、二つ目の遺産分割等について少し伺いたいと思います。

 今、例えば夫婦別姓を実現するために事実婚を選択していたりとか、あるいはLGBTのカップルなんかというのも日本でも広く認知をされるようになってきました。同性のパートナーシップへの理解も進んでいて、例えば渋谷区では同性のパートナー条例が二〇一五年に成立をしたり、世の中が大きく変わっているんだなというふうに思います。

 こうしたLGBT等の理由によって、あるいは夫婦別姓を実現するためという理由によって、いわゆる事実婚であったり内縁状態にある、そういう夫婦がふえている、これは共通の認識だと思いますが、この法律案では同性婚というのが対象の外になっております。法律婚の夫婦だけを優遇すべき妥当な理由があるのかという意見もありますが、本法律案が対象を法律婚のみに限定した理由をまずお伺いしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 相続は、被相続人の権利義務を相続人が包括的に承継することを内容とするものでございまして、被相続人に債権を有していた者や債務を負っていた者にとりましても、被相続人の権利義務がどのように承継されるかについては重大な利害関係を有しております。このようなことから、誰が相続人であるかは、これらの第三者にもできる限り明確かつ画一的に判断することができるようにする必要がございます。

 法律上の婚姻は、届出によってその効力が生ずることとされておりまして、基準が明確でございますが、法律上保護すべき、例えば同性パートナーに該当するか否かは、さまざまな要素を総合的に考慮して判断しなければなりません。また、同性パートナーに当たることを公示する制度もございません。

 このため、同性カップルのパートナー等に相続を認めるといたしますと、相続人の範囲を直ちに判断することができなくなりまして、相続をめぐる紛争が複雑化、長期化して、相続債権者等の利害関係人までもが紛争に巻き込まれて不測の損害を受けるおそれがあるなどの問題が生ずることとなります。

 こういったことから、この法律案におきましては、同性カップルのパートナー等について相続権を認めることとはしておりませんで、法律婚の配偶者にのみ相続権を認めることを前提とした規律としておるものでございます。

 ただ、現行法のもとでも、同性カップルのパートナーに対しましては、遺言を活用することによりまして、自身の財産の全部又は一部を与えることが可能でございます。

 この法律案におきましては、遺言の利用を促進する方策として、自筆証書遺言の方式の緩和、あるいは自筆証書遺言を法務局で保管する制度の創設などがございまして、その意味では、社会の多様化に対しても一定の配慮をしているものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 加えてお聞きしたいんですが、この遺産分割等に関する見直しの部分において、婚姻期間が二十年以上の夫婦に限定しているというふうになっておりますが、この期間が二十年となった背景、理由を教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、婚姻期間が二十年を超える夫婦の一方が他の一方に対して居住用不動産の贈与等をした場合には、その贈与等は、通常、それまでの貢献に報いるとともに、老後の生活保障を厚くする趣旨でされたものと考えられます。そうしますと、被相続人の意思としましても、遺産分割における配偶者の取得額を算定するに当たって、その価額を控除して遺産分割における取り分を減らす意図は有していない場合が多いものと考えられます。

 そういったことから、本法律案におきましては、婚姻期間が二十年を超える夫婦の一方がほかの一方に対して居住用不動産の贈与等をした場合につきましては、いわゆる持ち戻しの免除の意思表示をしたものと推定するということとしたものでございます。

 その二十年という期間でございますけれども、先ほど申し上げました、そういったような意思というものが通常であろうと思われるようなこと、あるいは税制上の特例などが今二十年となっているというようなことなども考慮したものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 続いて、配偶者の居住権に関する点をお伺いしていきたいんですが。

 平成二十七年一月の相続法制検討ワーキングチームの報告書におきまして、夫婦が協力してつくった財産については取り分をふやすという案を示しておりまして、遺産を実質的な夫婦共有財産とそれ以外の財産に分けて、夫婦で協力してつくった財産については配偶者の取り分をふやそうとしたということがあったと思います。

 まずお伺いしたいんですけれども、この夫婦が協力してつくった財産かどうかをどう判断するのか。実質的な夫婦共有、共有財産ならわかる気がしますが、協力してつくった財産かそうでないかというのをどのように判断するのか、教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の、夫婦が協力してつくった財産かどうかということの判断につきましては、その夫婦の婚姻の生活あるいは婚姻の実態といったようなそういう状況、そういったような事実ですとか、あるいは、特に、財産の形成に当たっての資金がどこから出たのか、資金は誰が出したのか、そういったようなさまざまな事情を考慮して判断されるべきこととなろうかと思いますけれども、なかなか、こういったことを判断するという点につきましては、具体的なケースに応じて難しい場合もあるのではないかというふうに考えられるところでございます。

源馬委員 それでは、例えば何年結婚していたら、その婚姻期間に財産になったものについては自動的に協力してつくったものというふうに判断するわけではないというふうに理解をいたしました。

 そこで、こうした夫婦でつくった財産について、配偶者の取り分をふやそうという趣旨の一環だと思いますが、この配偶者の居住権を保護するための方策というのがありました。この制度を創設する趣旨と配偶者にとって居住権を取得するメリットについて、改めて教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 近年におきます高齢化の進展、それから平均寿命の伸長に伴いまして、被相続人の配偶者が相続開始の時点で高齢となっており、かつ、その後も長期間にわたって生活を継続することも多くなっております。そして、高齢の配偶者は、住みなれた居住環境での生活を継続しつつ、その後の生活資金として預貯金債権等の財産についても一定程度確保したい、こういうふうに希望する場合も多いと考えられます。

 ただ、現行の遺産分割の手続におきまして、配偶者が従前の居住環境での生活を継続したいという場合には、その建物の所有権を取得するということが考えられるわけですが、遺産分割で建物の所有権を取得する場合には、その評価額が高額となり、配偶者がそれ以外の財産を十分に確保することができないといった事態が生じ得るわけでございます。

 そこで、本法律案では、配偶者が従前の居住環境での生活を継続しつつ、老後の生活資金も確保することができるようにするために、配偶者居住権という新たな権利を創設することとしたものでございます。

 この居住権といいますものは、建物に住むことはできますけれども、売却したり、あるいは人に自由に賃貸するということができない権利でございますので、所有権と比べて制約がある権利ということになりますので、その分、評価額の圧縮が可能となるということになります。その分、居住建物の所有権を取得する場合よりも低廉な価格で居住権を確保することができ、その分、預貯金債権等の老後の生活資金を確保することができるようになる、こういったメリットがあるわけでございます。

 また、配偶者居住権の活用場面は遺産分割の場合に限られるものではございませんで、被相続人が遺言によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできることとしております。

 これによりますと、例えばそれぞれ子供がいる高齢者同士が再婚した場合にも、自宅建物を所有する者は、遺言によって、その配偶者には配偶者居住権を取得させて居住権を確保する、自宅建物の所有権については自分の子供に取得させる、こういうことができるようになりまして、被相続人の財産処分の選択肢もふやすことができるということになるわけでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 今御提示いただいた例でいうと、遺産である居住建物に対して、配偶者居住権を持つ親、遺族となった親と、それから負担つき所有権を持つその子供というのが生じるということになるんだと理解をいたしました。

 つまり、子供が大家さんみたいな感じになりまして、親が賃借人のような形態に、感じになるような気がしますが、この点について法務省が今想定している生じ得るかもしれない問題点について、どんなことを想定されているのか、教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、配偶者居住権は配偶者がその居住建物を使用することができる権利でありまして、また、配偶者が遺産分割においてこれを取得する場合には、自己の具体的相続分の中で取得することになりますので、配偶者は基本的に、居住建物を使用するに当たりまして、賃貸借契約の借り主とほぼ同様の義務を負うこととしております。

 この制度の創設に当たりましては、法制審議会におきましてさまざまな慎重な検討を経た上での制度設計をしたものでございますので、法務省といたしましては大きな問題点はないものと考えておりますが、その留意点といたしましては、例えば、配偶者居住権は登記をすることによって第三者に対抗すること等できることとしておりますけれども、その登記をする前に居住建物の所有者が第三者に所有権を譲渡して第三者が登記を具備してしまった、こういう場合には、配偶者は第三者に配偶者居住権の取得を対抗することができないこととなります。

 また、配偶者居住権が設定された場合の固定資産税につきましては、通常の必要費に該当するということとなりますので、配偶者と居住建物の所有者との内部関係におきましては、配偶者が負担することとなるということでございます。

 もっとも、固定資産税の納税義務者は固定資産税の所有者とされておりますので、居住建物の所有者が納税義務者となるわけでございます。したがいまして、居住建物の所有者は、固定資産税を納付した場合には配偶者に対して求償することとなる、こういったようなことが生ずるということに留意する必要があると考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 今御答弁にありました登記についてちょっとお伺いしたいんですが、この配偶者居住権を登記するのは、負担つき所有者が登記をするんでしょうか、それとも居住権者も登記をすることができるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 配偶者は、配偶者居住権の設定の登記を備えた場合には、第三者に配偶者居住権を対抗することができるということになります。

 こちらの登記でございますけれども、基本的には共同の申請ということになりますが、配偶者は、遺産分割に関する審判や調停によって配偶者居住権を取得した場合には、その審判書や調停調書には、配偶者が単独で配偶者居住権の登記手続をすることができるように所要の記載がされるのが通常でございます。したがいまして、そのような場合には、その審判書や調停手続に基づき、単独で配偶者居住権の設定の登記を申請することができることとなります。

 このような審判書や調停調書がない場合には、先ほども申し上げましたとおり、配偶者と居住建物の所有者とが共同して申請しなければならないというわけでございますが、居住建物の所有者が登記の申請に協力しない場合には、配偶者は、居住建物の所有者に対して登記義務の履行を求める訴えを提起することができます。したがいまして、この訴えによりまして、これを認容する判決が確定しますれば、配偶者は、その判決に基づいて単独で登記の申請をすることができることとなります。

源馬委員 この配偶者居住権については、事前に御説明をいただいたときに、所有者の承諾があれば賃貸をすることができるという御説明を受けました。

 一方で、譲渡はできないというふうになっていると御説明を受けましたが、法制審の中間試案、平成二十八年の六月の中間試案の際には、配偶者は、所有者の承諾を得なければ、居住権を第三者に譲り渡し、又は第三者に使用又は収益させることはできないものとするというふうに、許可があれば譲渡はできるというようなふうになっていたと思いますが、これが最終的に、今回の改正案では譲渡できないというふうになった理由を教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この配偶者居住権は、配偶者が相続開始後も従前の居住環境での生活を継続することを可能とするために、その選択肢となる手段をふやすことを目的として創設したものでございます。そういうことから、配偶者が第三者に対して配偶者居住権を譲渡することを認めることは、このような制度趣旨と整合的でないことから、配偶者居住権については譲渡することができないこととしております。

 もっとも、配偶者が例えば施設への入居等により居住建物から転居せざるを得なくなったような場合には、配偶者居住権を放棄することを条件として、これによって利益を受ける居住建物の所有者から金銭の支払いを受ける、こういうことが考えられまして、居住建物の所有者との間でこのような合意が成立すれば、配偶者は配偶者居住権を事実上換価することができることとなるわけでございます。

 また、居住建物の所有者にそのような希望がない場合には、配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得た上で、第三者に居住建物を賃貸し、賃料収入も得ることもできることとなっております。

源馬委員 最後に、ちょっと配偶者居住権から離れまして、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策、特別の寄与の部分について、二つお伺いをしたいと思います。

 まず一つは、事前に御説明いただいた、お父様が例えば亡くなって、その息子さんの奥様がいろいろ介護をしていたんだけれども、その息子さん自体も先に亡くなってしまったという場合、生前その奥様、血縁ではない奥様が一生懸命介護をしていた、そういった人たちに対しても特別の寄与の分を請求できるようにしようということだと思いますが、これまた一問目の質問にかかわるわけですけれども、事実婚であったり同性パートナーである場合、それは生かされるのかが一つ。

 それからまた、御主人が生きていて、それでその奥様が一生懸命介護に貢献していた場合は、通常遺産分割するよりも多目にその特別の寄与というのが認められるのかどうか。その二つについてお答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この特別の寄与の制度を新設することにつきましては、法制審議会における調査審議の過程において、相続をめぐる紛争の複雑化、長期化を懸念する指摘がされていたところでございまして、そのような事態をできる限り防止するためには、請求権者の範囲を限定する必要が高いと考えられるところでございます。

 また、この制度は、被相続人と近しい関係にある者が被相続人の療養看護等をした場合には、被相続人との間で報酬の契約を締結するなどの対応が類型的に困難であることに鑑みて、これらの者の利益を保護することを目的とするものでありまして、請求権者の範囲を限定することにも合理性があると考えられたものでございます。

 こういったことから、この特別の寄与に関する請求権者の範囲は被相続人の親族に限定することとしたものでございます。

 なお、御質問の、長男がまだ相続人として生存しているという場合には、例えば、その長男の配偶者の寄与といいますものも長男の寄与分として評価して、長男の具体的相続分をふやすということが可能であるというふうに考えております。

源馬委員 ありがとうございました。

 終わります。

平口委員長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 今般の法改正に関して、専門の部会である法制審議会民法(相続関係)部会で取りまとめた中間試案には入っているものの、法制審の最終的な要綱に盛り込まれていない施策として、配偶者の相続分の引上げがございます。この配偶者の相続分の引上げを採用しなかった理由は何なのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、相続法の見直しについて調査審議を行っておりました法制審議会民法(相続関係)部会におきましては、配偶者の相続分の引上げについても検討を行っておりました。そして、中間試案におきましては、婚姻期間が長期間にわたる場合など、被相続人の財産形成に対する配偶者の貢献が類型的に大きいと考えられる場合に、配偶者の相続分を引き上げるという考え方が提示されておりました。

 しかしながら、配偶者の相続分の引上げにつきましては、昭和五十五年の民法改正においてこれを引き上げたという経緯もありまして、これ以上引き上げることに対しては、法制審議会においても多くの異論や問題点の指摘がございました。特に、高齢者同士の再婚がふえていること等に照らすと、仮に配偶者の相続分を引き上げるとしても、これを一律に引き上げるのは相当でなく、被相続人の財産の維持又は増加に対する貢献が大きい場合に限定する必要があるのではないか、しかしながら、そういった配偶者の貢献の程度を実質的に考慮しようとすると相続をめぐる紛争が過度に複雑化、長期化するとの強い懸念が示されました。

 他方で、配偶者の貢献の程度をある程度形式的に判断するために婚姻期間などによって相続分を変えるという考え方に対しましては、婚姻関係が実質的に破綻している場合にも、長期間これが継続しているときには配偶者の相続分が引き上げられることになって相当ではないという指摘等もされたところでございます。

 パブリックコメントにおきましても同様の問題点が指摘され、これに反対する意見が多数を占めたことから、その採用は見送られたというものでございます。

國重委員 配偶者の相続分の引上げは採用しなかった、そのかわりに、配偶者間の贈与等について持ち戻し免除の意思表示を推定する規定が設けられておりますけれども、この理由について伺います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法制審議会におきましては、配偶者の相続分の引上げは適当ではないものの、少子高齢化の進展等の社会経済情勢の変化等を踏まえると、配偶者保護のための方策を検討することは必要かつ有益であるという意見が相次ぎました。また、配偶者の貢献を相続の場面のみで評価することには限界があるとして、生前贈与や遺贈を促進する方向での検討もすべきであるとの指摘がされました。

 このような検討経緯を経まして、最終的には、婚姻期間が二十年以上の夫婦間において居住用不動産の贈与等がされた場合については、原則としてこれらの贈与等を特別受益として取り扱わないこと、すなわち、持ち戻し免除の意思表示がされたものと法律上推定することとしたものでございます。

 これは、このような要件を満たす場合には、これらの贈与等は、それまでの配偶者の貢献に報いるとともに、その生活保障を図る目的でされた場合が多く、被相続人の意思としても、これらの相続等により遺産分割における配偶者の取り分を減らす意思は有していないのが通常であると考えられること等を考慮したものでございます。

 この方策は、相続税法におきまして、婚姻期間が二十年以上の夫婦間において居住用不動産の生前贈与がされた場合について、高齢配偶者の生活保障等を図る観点から贈与税の特例が認められること等を参考にしたものでございます。

國重委員 相続税法の規定を参考にしたということでありますが、相続税法では、なぜ、婚姻期間が二十年以上の夫婦間において居住用不動産の生前贈与がなされた場合に贈与税の特例が認められているのか、その趣旨と、あわせて二十年以上という期間を定めた趣旨について答弁を求めます。

田島政府参考人 お答えいたします。

 御質問の贈与税の配偶者控除、これは昭和四十一年度改正において創設されたものでございますが、その趣旨としては、長年夫婦としての協力関係が保たれてきた者の間におきまして、残された配偶者の生活の場をまず確保する意味合いで行われる生前贈与を税制上優遇する趣旨で設けられているものでございます。

 また、婚姻期間の定めにつきましては、昭和四十一年度の制度創設当時では、居住用財産の取得ができる程度の財産形成には通常の勤労世帯では相当長時間を要すること、また残された配偶者の老後の生活保障がある程度の年齢に達した後において必要であることなどを勘案いたしまして、長年夫婦として連れ添った期間として二十五年以上としていたところでございます。

 その後、昭和四十六年度改正におきまして、経済の成長に伴って財産形成のテンポが速まっていることなどを反映しまして、この婚姻期間を二十五年以上から二十年以上に短縮し、以後、現在まで継続しているところでございます。

 以上でございます。

國重委員 贈与税の特例というのはどれぐらい使われているのか、直近三年でどの程度なのか、お伺いいたします。

並木政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの贈与税の配偶者控除の特例の適用件数につきまして、直近三年分ということで申し上げますと、平成二十六年分は一万六千六百六十件、平成二十七年分は一万三千九百五十九件、平成二十八年分は一万一千二百六十一件となっているところでございます。

國重委員 先ほど来ありますとおり、今回、婚姻期間二十年以上という要件を設けておりますけれども、同一の当事者間で、結婚、離婚、また結婚を繰り返した場合にはどうなるのか。連続で二十年以上必要なのか、それとも通算二十年以上で足りるのか、いずれを意味するのか。この点、まず、税法ではどのように取り扱われているのか、お伺いいたします。

田島政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の婚姻期間につきましては、法令の規定に照らして申し上げますと、相続税法施行令第四条の六第二項におきまして、婚姻の届出があった日から贈与があった日までの期間により計算し、その期間から贈与を受けた者が贈与者の配偶者でなかった期間を除くこととされてございますので、連続二十年以上ではなく通算二十年以上とされているところでございます。

國重委員 では、そうした趣旨は何なのか、お伺いいたします。

田島政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの趣旨でございますが、この二十年以上という期間が、先ほども御答弁申し上げたとおり、居住用財産の取得に要する期間といった点を踏まえて定められている中で、同一の夫婦が婚姻関係にある間の財産形成については、やはりこれは全て考慮するんだろうという観点もございまして、殊さら連続という要件をつけることなく、通算二十年以上であれば適用可能としているところでございます。

國重委員 では、本法律案の婚姻期間、この二十年以上の要件というのも、通算で二十年以上ということで足りるのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 本制度におきまして期間の通算を認めるかどうかといいますものは、これは解釈問題ではございますけれども、贈与税の特例を認める相続税法の解釈が参考になるものと思われます。

 すなわち、先ほど財務省の方から答弁がありましたとおり、贈与税の特例に当たりましては、離婚中の期間を除いた上で、複数にまたがり婚姻期間を通算することができることとされておりまして、改正後の民法九百三条第四項の解釈につきましても同様の解釈がされることになるものと考えております。

國重委員 では、今回、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定される遺贈又は贈与の対象財産を居住用不動産に限定した理由は何なのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 一般に、婚姻期間が長期間にわたる夫婦間における居住用不動産の贈与等については、相手方配偶者の老後の生活保障のために行われる場合が多いと考えられます。このため、被相続人の意思としても、遺産分割における配偶者の取り分を計算するに当たり、遺産分割における配偶者の取り分から贈与等の価額を差し引いてその取り分を減らすという意図は有していないのが通常であると考えられます。

 その意味で、婚姻期間が長期間にわたる夫婦間における居住用不動産の贈与等については、社会実態としてこれを特別受益としては取り扱わない、すなわち、いわゆる持ち戻し免除の意思表示がされたものと法律上推定する基礎があると考えられます。

 そして、居住用不動産は生活の基盤となるものでありますことから、民法上、成年後見人の処分に関しても特別の取扱いがされているのに対して、それ以外の財産をこの規律の対象とすることにつきましては、その範囲を合理的なものに限定することが困難であると考えられます。すなわち、居住用不動産以外の財産をこの規律の対象としますと、必ずしも相手方配偶者の老後の生活保障を意図して行われたわけではない贈与等についてもこの規律の対象となり、配偶者以外の相続人が受ける不利益が過大なものとなるおそれがございます。

 このため、この法律案では、いわゆる持ち戻し免除の意思表示がされたものと推定される遺贈等の対象財産を居住用不動産に限定することとしたものでございます。

國重委員 この持ち戻し免除もそうでありますが、今回の改正法全体を見ますと、法律婚夫婦の配偶者に限定をされ、内縁夫婦の配偶者は射程に入っていないものが複数ございます。

 多様な価値観が混在する社会において、法律婚の夫婦だけを優遇する必要はないとの意見もありますが、今回の法律案に盛り込まれた各種方策において、保護の対象を法律婚に限定した趣旨は何なのか、理由は何なのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回の法律案に盛り込まれました各種の方策は、いずれも相続法の分野に関するものでございますが、相続につきましては、相続債権者等にとっても被相続人の権利義務がどのように承継されるかについて重大な利害関係を有しております。このため、誰が相続人であるかはこれらの第三者にもできる限り明確かつ画一的に判断することができるようにする必要がございます。

 法律上の婚姻は届出によってその効力が生ずることとされておりまして、基準が明確であるのに対し、事実婚の配偶者に該当するか否かはさまざまな要素を総合的に考慮して判断しなければならず、事実婚の配偶者に当たることを公示する制度も存在いたしません。このため、仮に事実上の配偶者に相続を認めるとしますと、相続人の範囲を直ちに判断することができなくなって、相続をめぐる紛争が複雑化、長期化し、相続債権者等の利害関係人までもが紛争に巻き込まれて不測の損害を受けるおそれがあるなどの問題が生じます。

 この法律案では、これらの点を考慮して、現行法のもとでの取扱いと同様に、事実婚の配偶者には相続権が認められないことを前提としておりますことから、配偶者を保護するための方策の対象が法律婚の配偶者に限定されているものでございます。

 なお、内縁関係におきましては、相互に相続権はございませんが、遺言を活用して一方の死亡に対応することが考えられます。この法律案におきましては、遺言の利用を促進する方策として自筆証書遺言の方式を緩和し、また自筆証書遺言を法務局で保管する制度を創設することとしておりまして、その意味では内縁の配偶者に対しても一定の配慮をしているものと考えております。

國重委員 今般の法改正等で自筆証書遺言の方式を緩和し、また自筆証書遺言を法務局で保管する制度を創設することとしたということであります。

 では、自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度を設けることとした趣旨は何なのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書の保管法案でございますけれども、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑みて相続をめぐる紛争を防止するという観点から、法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度を新たに設けようというものでございます。

 自筆証書遺言は簡易な方式の遺言でございまして、自書能力さえ備わっていれば他人の力をかりることなくみずからの意思に従って作成することができ、特別の費用もかからず、遺言者にとって手軽かつ自由度の高い制度でございます。

 他方で、自筆証書遺言は作成や保管について第三者の関与が不要とされておりますため、遺言者の死亡後、遺言書の真正や遺言内容をめぐって紛争が生ずるリスクや相続人が遺言書の存在に気づかないまま遺産分割を行うリスクなどがございます。

 そこで、遺言書保管法案におきましては、手軽で自由度が高いという自筆証書遺言の利点を損なうことなく、他方で、法務局における遺言書の保管及びその画像情報の記録や、保管申請の際に法務局の事務官が行う自筆証書遺言の方式に関する遺言書の外形的確認などにより、先ほど申し上げました自筆証書遺言に伴うリスクを軽減した制度を新設する、そういうものでございます。

國重委員 この自筆証書遺言というのは、形式上の不備によって無効となるケースが、私の経験上も幾つか、多々とは言いませんけれども、やはり間々あったというふうに思います。

 公正証書遺言については公証人が内容を精査して有効な遺言となることが担保されておりますが、自筆証書遺言に係る遺言書を法務局で保管する場合に、その遺言書について法務局はどこまでのチェックを行うのか、筆跡以外の形式面の不備、これについてはきちんとチェックをするのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この制度におきましては、遺言書保管官が、申請に係る遺言書が自筆証書遺言の方式であります民法第九百六十八条の定める方式に適合するか否かについて、外形的な確認を行うこととしております。具体的には、保管の申請に係る遺言書について、日付及び遺言者の氏名の記載、押印の有無、本文部分が手書きで書かれているか否かなどの形式的な確認をすることとしております。

 また、保管の申請は遺言者がみずから出頭することによりできることとしておりますところ、出頭した遺言者に当該遺言書を自書したことの確認を求めることとする予定でございます。

國重委員 では、事例でお伺いします。

 自筆証書遺言が法務局に保管されていることを知らずに遺産分割がされた、しかし、後になって保管されていることに気づいた場合、既になされた遺産分割の効力はどうなるのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書保管所に遺言書が保管されている事実につきましては、遺言者が遺言書保管官から交付を受けることとなります証書、遺言者の死亡後における相続人等による保管の事実の有無の確認、あるいは、相続人等による閲覧請求等を契機とした、遺言書保管官によるほかの相続人等への通知、さらにはこの法律案の成立後の効果的な広報などにより、相続人が適時適切に把握できるようにし、相続人が遺言書保管所に保管されている遺言書の存在を知らないまま遺産分割協議を行うといったような事態の発生を防止したいと考えております。

 その上で、あくまでも一般論として述べますと、相続人が遺言書の存在を知らないまま遺産分割協議を行った後に遺言書があることが判明し、遺言の内容と遺産分割協議の内容が異なっていたとしましても、一律に遺産分割協議の効力が否定されるものではないと考えられます。

 もっとも、例えば、遺言で遺産分割の方法が定められておって、相続人がその遺言の存在と内容を知っていれば当該遺産分割協議をしなかった蓋然性が高い、こういったようなケースの場合には、錯誤によって遺産分割協議の合意をしたとして、その遺産分割協議が無効となることもあり得ると考えられます。

國重委員 錯誤により遺産分割の効力が否定される、無効になるということもあり得るということでした。

 例えば、平成三十年の一月一日に公正証書遺言をつくった。公正証書遺言の場合は証人が二人いますから、例えば遺言執行者もつけていて、それはわかる。一月一日、仮につくった。それで二月一日に自筆証書遺言を法務局に預けたということになると、後の遺言の方が有効なので、自筆証書遺言、この法務局に預けている方が効力があるわけですね。

 ただ、この法務局に預けている方は、誰も証人がいないのでよくわからない。例えば、公正証書遺言に従って遺言執行者が処理した場合に、後に、え、実は法務局にもあったんだということがわかった場合に、それもひっくり返されることになる。

 こういうことを考えると、遺言者が亡くなった場合には、法務局から遺言者の相続人や受遺者らに対して遺言書を保管している旨を積極的に通知すべきではないかと思いますけれども、これに関する見解を伺います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書保管所に遺言書が保管されている遺言者が死亡したときに、法務局から速やかに遺言者の相続人に対して遺言書が保管されている旨を通知する仕組みを実現することは重要であると考えております。

 そのためには複数の方法があり得ますが、最も確実な方法は、戸籍等により遺言者の死亡の事実を把握し、法務局が速やかに通知を行うということでございます。

 今後、平成三十二年以降に登記簿と戸籍等との連携を目指してシステムを改修することを検討しておりまして、これにあわせて、本制度につきましても、戸籍等と連携するシステムを設けることにより、速やかな通知を可能にすることを目指してまいりたいと考えております。

國重委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、松田功君。

松田委員 おはようございます。立憲民主党の松田功でございます。

 六日の日に梅雨入りになりまして、せっかく五日の日に上野動物園でシャンシャンが整理券なく見られるように先着順になったのに、ちょっと子供たちにかわいそうだなと思います。虐待とかいろいろな暗い事件もありますけれども、ぜひ、子供たちにはパンダとか見てもらって笑顔で暮らしてもらえればというふうに思っているところでございます。

 それでは、質問に入らさせていただきたいと思います。

 本日は、相続関係二法案の質疑でございます。相続については、昭和五十五年以来、約四十年ぶりの大幅見直しとのことであります。

 事前に説明をお聞きいたしましても、言葉も専門的で難しいことが多いこともございますので、ぜひ、一般の皆さんに理解してもらえるように、またわかりやすく周知を図っていただきたいというふうに思っております。

 それでは、質問に入らさせていただきます。

 まず、今回の改正では、残された配偶者の生活への配慮が一つの柱となっております。その中で、遺産分割の選択肢の一つとして、配偶者に使用が認められる法定の権利として配偶者居住権が新設をされます。

 この配偶者居住権を登記する際の登録免許税はどうなるんでしょうか。また、どのように考えているのか、財務省の方にお聞かせをいただきたいと思います。

田島政府参考人 お答えいたします。

 配偶者居住権の登記に係る登録免許税につきましては、他の不動産に係る権利の登記に係る登録免許税を参考としつつ、税率等について検討していく必要があると考えてございます。

 御指摘の点も踏まえまして、今般の民法改正法案が成立した場合の税制面での対応につきましては、今後、与党税制調査会で御議論いただきまして、その結果を踏まえて必要な措置を検討してまいりたいと考えてございます。

松田委員 税制調査会の方で検討に入ってということでありますので、ぜひまた今後その経過をお知らせしていただきたいと思います。

 次に、遺言制度の見直しが一つのまた柱となっております。大きな方向として、より多くの人に遺言を書いてほしいということだと思います。今回の改正も、自筆証書遺言を作成しやすくすることなどが盛り込まれております。

 そこで、遺言の作成を更に促す方策として、例えば、遺言があれば相続税に優遇措置を設けることや、また、この後の質問で触れますけれども、登録免許税を軽減、免除することなどが考えられると思いますが、いかがでしょうか。財務省の方にお伺いします。

田島政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの、遺言の作成を促すために相続税、登録免許税の軽減を行うという御指摘につきましては、特に相続税につきましては、一部の富裕層のみが負担する相続税の減免となりますので、課税の公平性の観点からどのように考えるかという点、また、遺言の作成によっても遺産の分割、配分が確定しない場合もある仕組みであるという中で、遺言を作成した場合に一律に税制優遇を行うことについてどのように考えるかといった点も踏まえまして、丁寧な検討が必要であると考えてございます。

松田委員 それでは、次に、相続不動産の登記についてお尋ねをしたいと思います。

 所有者不明になってしまった土地については、一昨日六日に特別措置法が参議院で可決、成立をいたしました。これから所有者不明土地にならないようにする、また、ふやさないようにすることも重要と思っているところであります。

 そこで、相続不動産の登記を更に促す方策として、例えば、登記を義務づける、登記しなければならない期限を設ける、登記の手続の簡略化、登録免許税の軽減、免除などが考えられると思いますが、いかがでしょうか。法務省のお考えをお聞かせください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、所有者不明土地の解消を図るため、相続登記の促進策として、市町村窓口における広報用リーフレットの配布、法定相続情報証明制度の創設、長期相続登記等未了土地に関する不動産登記法の特例の創設等の取組を行ってきているところでございます。

 委員御指摘の登録免許税に関しましては、平成三十年度の税制改正によりまして、既に発生している相続とこれから発生する相続のそれぞれに対応するために、一定の要件を満たす相続登記に関する登録免許税を免除する特例が設けられております。

 また、委員御指摘の、相続登記の義務化の是非や登記手続の簡略化の可否を含む登記制度、土地所有権のあり方等については、研究会において検討を進めているところでございます。

 この検討会につきましては、今月一日に開催されました所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議で決定された基本方針では、来年二月を目途に具体的方向性や検討課題を幅広く提示するとされたところでございます。

 法務省といたしましては、この基本方針に基づいて、引き続き、相続登記の義務化の是非や登記手続の簡略化を含め、相続登記の促進のための具体的な施策について検討を進めてまいりたいと考えております。

松田委員 所有者不明の土地が少しでもなくなっていくことも重要でありますので、ぜひ、いろいろまた御検討を進めていただきたいと思っているところでございます。

 引き続きまして、事実婚やまた内縁関係、同性婚の方々について、少し質問に入らせていただきます。

 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策として、それに関連して、事実婚、内縁関係や同性婚、同性パートナーの現状についてお尋ねをいたします。

 まず、現在、公的な手続や民法上の取扱いにおいて、事実婚、内縁関係で法律婚と同様にできることにはどのようなことがあるでしょうか。御説明をいただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 内縁ないし事実婚の関係にある者は、婚姻の届出を欠くため法律上の夫婦には該当しませんが、その社会的実態においては法律上の夫婦と同様の関係にあるものでございます。

 民法上、法律上の配偶者に関する規定が内縁等の関係にある者にも準用ないし類推適用されるかにつきましては、最終的にはその規定の趣旨に照らして判断されるべきものでございますが、一般に、婚姻費用の分担義務や財産分与等に関する規定は内縁等の関係にある者にも準用ないし類推適用されるものと解されております。

 また、ほかの法令におきましては、年金受給等の公的手続において、内縁ないし事実婚の関係にある者を法律上の配偶者と同様の取扱いをするものがございます。例えば、厚生年金保険の遺族年金、健康保険の各種給付、労働者災害補償保険の遺族補償給付、配偶者を対象家族とする介護休業の取得、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の適用につきましては、内縁ないし事実婚の関係にある者は法律上の配偶者と同様の取扱いを受けることができることとされております。

松田委員 では、次にお尋ねしたいのは、今、LGBTなど、社会における生き方の多様性が広がりつつあると思います。そういった状況の中で、同性婚、同性パートナーに対しては行政の対応状況はどのようになっていますか。お答えをいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきましては、同性間の婚姻は認められておりませんで、また、法律上、それに準ずる地位を認めるいわゆるパートナーシップ制度も設けられておりません。したがいまして、同性のカップルやパートナーの数等の実態については把握はしておりません。

 他方、地方自治体レベルの対応ではございますけれども、一部の自治体におきましては、同性のカップルに対して証明書を発行して、その証明書を取得したカップルに家族向け区営住宅への申込み等を認めるなどの取組を行っているところがあるものと承知しております。

松田委員 事実婚と内縁関係の場合、現在、住民票の続柄にはどのような記載が可能なのでしょうか。総務省の方から御説明いただきたいと思います。

小倉大臣政務官 お答えいたします。

 住民基本台帳法七条におきまして、住民票の記載事項といたしまして、世帯主との続き柄を記載することとされております。

 世帯主との続き柄の記載方法につきましては、住民基本台帳事務処理要領におきまして、妻、子、父、母を始め、縁故者、同居人などと記載することとされております。

 事実婚の場合の続き柄の記載につきましては、同事務処理要領におきまして、法律上の夫婦ではないが準婚として各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ取扱いを受けておりますため、夫(未届)、妻(未届)と記載することとされております。

松田委員 では、住民票の続柄の今の記載について、同性パートナーについてはどのようになっていますか。

小倉大臣政務官 委員お尋ねの同性パートナーにつきましては、戸籍制度では同性結婚は認められておりませんで、親族関係があると言えないため、世帯主との続き柄につきましては同居人と記載することとしております。

松田委員 事実婚、内縁関係では、遺族、財産分与など法律婚と同じ取扱いのものがあり、住民票に一定の記載も可能とのことでありますが、同性婚、同性パートナーについてはほとんど何もない状態に近いです。相続については、いずれも認められておりません。

 そこで、資料を配らさせていただきましたが、外国においては事実婚や同性婚の制度はどうなっているのでしょうか。また、事実婚のパートナーや同性婚の配偶者、パートナーの相続権はどうなっているのでしょうか、御説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 諸外国の状況につきまして網羅的に調査しているわけではございませんが、国立国会図書館による調査結果によりますと、例えば、オランダ、ベルギー、フランス、スペイン等におきましては同性婚が認められておりまして、これらの国におきましては、その配偶者には相続権が認められております。また、イギリス、オーストリア、スイス等では同性間の登録制のパートナーシップ制度が設けられておりまして、これらの国におきましては同性パートナーに対する相続権も認められていると承知しております。

 また、これはフランスでございますけれども、同性間、異性間を問わず、法律上の婚姻とは異なりますPACSというものでございますが、民事連帯契約と呼ばれておりますパートナー制度が設けられておりまして、これらの者につきましても相続権が認められているものと承知しております。

松田委員 先ほどお答えいただいて、公的な手続などは、できること、できないことがあるわけであります。方向性として、事実婚、内縁関係や同性パートナーでも可能なことをふやす方向で進めているのでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 事実婚や内縁関係にある者にどのような法的保護を与えるべきかにつきましては、それぞれの法律や個別の規定の趣旨、目的等に照らして検討する必要があると考えられます。また、国民意識の動向とも関係する事柄でありますことから、現時点でこれを一概に論ずるのは困難であるというふうに考えております。

松田委員 困難であるということなので、あえて質問をしているところであるので。今、社会が多様化、先ほど言いましたけれども、そういったことでありますから、非常に困難なことは重々、だからこそ論議をして進めていくというのが、やはり国の示す方針だというふうに僕は思っているところであります。ですから、こういったことをまた機会に、どんどん議論をしながら、ぜひ、日本のあり方、世界も含めた中での多様性に向けての努力は進めていくべきだというふうに思っているところであります。

 質問を続けさせていただきたいと思います。

 さて、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策でありますが、ここでの貢献は主に介護が想定されていると理解をいたしております。

 そこで確認したいのですが、現在、介護は主にどのような方が担っているのでしょうか。先ほどの資料の裏面のグラフにも載せましたが、厚生労働省からの御説明をいただきたいと思います。

酒光政府参考人 お答え申し上げます。

 委員がお配りいただいた資料のとおりでございますけれども、私どもが行っております国民生活基礎調査で、これは在宅で介護している場合ということになりますけれども、主に介護を行っている方というのは、同居の配偶者が二五・二%、同居の子供が二一・八%等々というふうになっております。

 なお、この配偶者ですけれども、先ほどから事実婚のお話がありましたけれども、私どもの調査の定義ですと、事実上夫婦として生活しているけれども婚姻届を提出していない場合を含むということなので、一応事実婚を含む概念にはなっておりますけれども、今申し上げた同居の配偶者のうち、どのぐらいが事実婚の方なのかということについては、調査をしていなくてわからないということでございます。

 以上です。

松田委員 現状として、まだそういったことを細かく調べてはいないということであると思います。そういったことも含めて、これから調べていかなければいけない状況。

 つまり、これは法務管轄じゃないですけれども、介護の問題というのは、非常に大きい部分があったときに、在宅介護を進めようと言っているのに、どんな方でも見てもらえる、仲間であったり友達であったり、どういう形でもあればいいんですけれども、そういったことを進める観点からするならば、やはりきちっと調べていただいた中で、今後のこういった相続に含めても、そういったことも含めた形になっていくと思いますので、ぜひそういったことを進めていただければと思っております。

 また、あわせて、このグラフにある不詳の一五・二というのも結構大きい数字だと思うんですね。多様化が進んだ中でもまだ、少し認められない部分やいろいろなことがあって、実際、そういう同性パートナーの方は書きにくくてここに入っているのかもしれないし。項目に当てはまらないというふうに思って遠慮されている方や、同居の中の配偶者と言われている方が、これが必ずしも婚姻の相手なのかどうなのかということも大きく左右されると思います。ぜひ、介護促進の部分の、みんなでそういった助け合うということの観点から、ここら辺もしっかり細かく分析をぜひしていただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 引き続き、質問に入らさせていただきたいと思います。

 今後は、ますます家族は多様化になっていきますし、介護する側の人もどんどん多様になっていくと思います。そこで、今回の改正の、相続人以外の貢献ですが、親族要件を外せば、事実婚、内縁関係や同性パートナー、それに親しい友人や近所の人など、介護などで貢献した多様な人たちをカバーできるのではないでしょうか。大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 委員御指摘のように、親族という要件につきましては、これを外した場合におきまして、介護等で貢献した人であれば誰でもが特別の寄与の制度を利用することができることとなる、これは委員御指摘のとおりでございます。

 本法律案におきましては、この特別の寄与に関する請求権者の範囲につきまして、相続人以外の被相続人の親族に限定をしたところでございます。法制審議会におきましても、審査、そして調査審議の過程におきまして、相続をめぐる紛争の複雑化、長期化を懸念をする、こうした指摘がなされてきたところでございまして、そのような事態をできる限り防止するためには請求権者の範囲を限定する必要性が高い、こうしたことが考えられるわけであります。

 被相続人と近しい関係にある者が被相続人の療養看護等をした場合には、被相続人との間で報酬の契約を締結することなどの対応が類型的に困難であるということを鑑みまして、これらの者の利益を保護するということで今回の制度がつくられたものでございます。特別の寄与の制度に関する請求権の範囲、今回は被相続人の親族ということに限定をしたところでございます。

松田委員 逆に、もし親族要件があるなら、事実婚や同性パートナーの人たちを含めるために、法改正して、夫婦別姓の法律婚を認めるとか、同じく同性婚を認めるとかしないと、介護などでの貢献した人をカバーできないのではないでしょうか。大臣にお尋ねをいたしたいと思います。

上川国務大臣 本法律案におきましては、特別の寄与に関する請求権者の範囲というのを被相続人の親族に限定をしておりまして、その結果として、事実婚の関係にある者や同性カップルのパートナーにつきましては本制度を利用することができないということでございます。

 現行法のもとにおきましても、事実婚の配偶者や、また同性カップルのパートナーに対しましては、遺言を活用することによりまして、自身の財産の全部又は一部を与えることが可能でございます。

 本法律案におきましては、遺言の利用を促進する方策として、自筆証書遺言の方式の緩和をすると同時に、また、自筆証書遺言を法務局で保管するといった制度を創設することとしているところでございます。

 委員御指摘のとおり、我が国におきましては、法律上、同性婚が認められておりませんし、また、選択的夫婦別氏制度も導入されておりません。これらの問題につきましては、いずれも家族のあり方にかかわる大変重要な問題でございまして、国民の皆様の意識をしっかりと踏まえた形での、より幅広い検討が必要になるものというふうに考えております。

松田委員 先ほども出ていましたが、非常に難しい部分もたくさんあると思うんですね。ですから、こういった機会にいろいろな議論もしていかなきゃいけないし、世界的に動いている部分があったり、また、多様化しているということは事実上あるということの中で、先ほども、さっき厚生労働省さんの方にも言いましたけれども、介護の問題で、今大臣もおっしゃったように、遺言書に書いておけばということもあるんですが、例えば、同性婚だけでなくて、男女で高齢者でまた一緒になるという形のときに、財産目当てでもないでしょうから、お互いがお互いにという意味で愛情があって一緒にいるときに、遺言書を書くこと自体もせずに、でも一生懸命お互いを慕うという部分になると非常に、書いておけばということの前提が崩れてしまって、突然亡くなってということもあります。

 ですから、そういったことも含めた中で、やはり、最後まで面倒を見たりとか、きちっとした中で、そういう人たちが救われる、また、それによって助けられる、そういったいい社会状況のことも将来的にはやはり考えていかなければいけないし、それに基づいて、同じように同性の方たちや、そういった多様性を持った方たちも含めた中での議論をしていくということは、法律も改正しなければいけませんけれども、しっかりと今回のこのことも含めてですが、議論をしていければというふうに思っておりますので、ぜひ今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 今回の法案ですけれども、私が懸念をしているのは、やはり最初の動機が少しよこしまだと、いろいろな判断、手続に無理が出て、中身がゆがんでくるということが出ているんじゃないかと懸念しています。

 そもそもこの法案の起こりというのは、これはもうみんながわかっていることですけれども、最高裁で嫡出子と非嫡出子の相続分の不公正を是正すべきという判決が出て、それに対して、例えば、二〇一三年の十月三十一日、これは毎日新聞ですけれども、社説で、「自民党は思い上がるな」、こういう社説が出ております。

 つまり、こういった最高裁判決が出た後に、自民党の法務部会が、伝統的な家族制度を崩壊させるとして法案の提出をなかなか了承しない。そして、この十月二十九日の部会での発言では、自民党の法務部会ですけれども、国権の最高機関が、司法判断が出たからといって、はいはいと従うわけにはいかない、自民党として最高裁の判断はおかしいというメッセージを発するべきではないか、こういう部会での発言が出たということです。それに引き続いて、正妻、法律上の配偶者の相続分の引上げなどを主張する意見も出て、法務省にそれを検討させることを条件に、この嫡出子と非嫡出子の差別を是正する法案を了承しようというバーターのような動きもある、こういう新聞記事がたくさんあります。今、そのうちの一つを御紹介をいたしました。

 こういうふうに、いわゆる多様な家族のあり方を前提として、少なくともその不平等を子供に帰するのはやめようという最高裁判決が出、それに対して、巻き返しのような形でこの法案が出てきたという経過が事実上あるわけですね。

 そういう中で、この動機の問題、そしてそういうきっかけでつくられたワーキングチームや法制審の人選や手続の問題、そしてその中身ですけれども、先ほどから問題に上がっている、なぜ、例えば特別寄与の制度の中に、事実婚のパートナーとか同性婚のパートナーを切り捨てるような選択に至ったのかということを、ちょっときょうは検証してまいりたいと思います。

 ちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、今、この最高裁判決が出たときの自民党の部会の中の様子を御紹介しました。大臣から見て、党内にいらっしゃったと思いますので、どんな状況でありましたか、何か御存じのことございますか。

上川国務大臣 子の権利をしっかりと保護していくということについて、一連のさまざまな議論が今もなおまた行われているところでございます。社会全体の中で、家族のあり方、そして親子の関係、また結婚のあり方、さまざまなことについて、これまでのさまざまな慣例もありましたし、また意識もありました。また、こういうことを新しい時代の中で、先ほど来のお話にある多様性という中でどのように考えていくのか、大変本質的な問題をはらんでいるものというふうに思っております。

 党の中でどのような議論ということになりますと、さまざま、きょうここにいらっしゃる皆さんの中でも、それぞれのよって立つ地域や、また家族の関係とか、それによって一人一人が全く別の考え方があろうかと思いますので、今、マスコミの論評という形で読み上げていただきましたけれども、そうしたことについては、私の方から申し上げるということについては、ちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、こうしたさまざまな新しい制度の策定に際しましては、いろいろな考え方があるということの中で、よりよい方向に向かって議論すべきということでありますので、私は、大いに議論していくということは大切なことであるというふうに思っております。

山尾委員 今、家族の多様性という言葉、そして、いろいろな考え方を議論すべきという大臣の言葉がありましたが、実際、このワーキングチームや法制審では、法務省の誘導は、両方向からのニュートラルな誘導になっていないんですね。

 例えばワーキングチームの報告書の中には、こういった嫡出子関係の是正法案を提出する過程で各方面から、この改正が及ぼす社会的影響に対する懸念や配偶者保護の観点からの見直しの必要性などさまざまな問題提起がなされたとあるんですね。

 そしてまた、その後、ワーキングチームの後に設置された法制審でも、民事法制管理官ですかね、堂薗幹事、司会進行でこの法制審を事実上リードしてきた方が、「取り分け、この規定は法律婚の尊重を趣旨とするものであったことから、これを削除することに伴い、法律婚の尊重を図るための措置を別途検討し、バランスをとるべきであるという指摘がされたところでございます。」と。

 そういう指摘もあったでしょうが、逆に、この判決の趣旨を踏まえて、もっと多様な家族観に基づいて不平等を是正していこうという社説もたくさんあったし、今もあるんですね。なぜ、ワーキングチームや法制審では、むしろ、両方向ではなくて一方の、配偶者の尊重という観点から、法律婚の尊重を図るためにバランスをとるという観点に一方的な誘導がなされているんでしょうか。

 民事局長にお伺いをいたします。この法制審の第一回で堂薗幹事が、「法律婚の尊重を図るための措置を別途検討し、バランスをとるべきであるという指摘がされたところでございます。」と。誰が誰にどういう指摘をしたんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の平成二十五年の九月四日の最高裁の大法廷の決定、違憲決定が出たわけでございますが、こういった決定をめぐりましては、国民の間でさまざまな意見があったということは承知しております。

 それは、例えば、嫡出でない子に何ら帰責性のない理由で相続において不利益を課すのは相当でないとして、最高裁の決定の結論に賛同する意見がございました。他方で、嫡出子と嫡出でない子を同等に扱うことにより、法律婚を尊重する意識が幅広く浸透している我が国の社会に悪影響を及ぼさないかといった懸念を示す意見もございました。また、この最高裁の判断はともかくとして、社会の高齢化が進展していること等を踏まえ、高齢の配偶者を保護すべき要請が高まっているとの指摘もされているものと認識しております。

 委員御指摘のその幹事の発言といいますものは、こういったさまざまな意見の一つの紹介であるというふうに考えますけれども、私どもといたしましては、こういった幅広い意見があったということを踏まえまして、特に高齢の配偶者を保護すべき要請が高まっている、こういうことを受けまして、今回の法案につきまして検討をしていたということでございます。

山尾委員 質問に答えていただきたいんですね。

 パブリックコメントをやられてこういう意見が出たとか、あるいはこういう団体から法務省にこういう申出があったとか、要するに、堂薗さんは、とりわけということで、法律婚の尊重を図るための措置を検討しバランスをとるべきであるという指摘だけ取り上げてこの議論を誘導しているから、おかしいと言っているんです。この指摘は誰が法務省にしたんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました、さまざまな意見がある中で、その一つの意見というものを紹介したわけでございますけれども、私どもとしましては、研究会なり法制審におきまして、一つの方向性にリードしていくということではなくて、先ほど申し上げましたような趣旨で、幅広く審議をお願いしているということでございます。

山尾委員 局長、それはおかしいですよ。さまざまな意見がある中で、これだけ堂薗さんは、とりわけ法律婚尊重の措置を別途検討しバランスをとるべきという指摘がされたというふうに、とりわけこの一つの意見を選択して、この第一回の法制審で、この議論の冒頭の方向性の流れをつくっているわけですよ。それはわかりますよね、議事録を見ていただければ。

 では聞きますけれども、パブリックコメントはやったんですか、この第一回の前に。

小野瀬政府参考人 第一回の前にはパブリックコメントは実施しておりません。

山尾委員 大臣も聞いていていただいて、ぜひ議事録を見ていただきたいですけれども、委員の中には、むしろ、こういう最高裁判決があって、やはり法律婚という枠外の不平等をもっと是正していくべきではないかという委員もたくさんおられたんですね。

 もちろん、このときの社説も、そういう社説がたくさんあったわけですよね。私も随分この当時の社説も検討しました。読売や産経など、あくまで法律婚が大事というところは変えるべきでないというような論調もありましたし、一方で、やはりこの判決をきっかけに、選択的夫婦別姓制度をやるべきだとか、あるいは、やはり嫡出、非嫡出の差別の問題がまだいろいろな制度に残っているから、それをもっとおさらいをしてしっかり直すべきだ、そういう方向の議論も、むしろそっちの方が多かったぐらいですよ、社説を公平に見たときはね。

 にもかかわらず、この法制審の第一回で、誰がどういうふうに法務省に言ったのか、何のお答えもありませんけれども、その一方的な話だけ。そして、その一方的な話の出元というのは、私がつぶさにこれまでの経過を見る限りは、自民党の法務部会ではないかと思わざるを得ないわけですよ。そういう中で、動機にそういうよこしまな点があって困るんだという話をいたしました。

 ただ、私の中で一つの希望は、法務大臣がこの法案の趣旨を説明をされました、最初の二行から三行であります。「この法律案は、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み、」、この次から聞きます、「配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点から、民法及び家事事件手続法の一部を改正しようとするものであります。」と。

 大臣にお伺いをいたします。

 この「他方配偶者の生活への配慮等」という中には、いわゆる法律上の配偶者でない者に対する生活への配慮も省かれていないという理解で正しいですか。

平口委員長 小野瀬民事局長。(山尾委員「委員長、これは大臣の趣旨説明で、基本的な事項であります。民事局長が答えるべき事項ではないと思います。衆議院規則にも反していると思います」と呼ぶ)

 上川法務大臣。

上川国務大臣 その「他方配偶者の生活への配慮」ということで今回の法律において記載されている内容につきましては、この間、法制審議会の中でも、さまざまな関係性の中でのつながりというものについても議論をされたわけでございますが、その上で、この法律案におきましては、法律婚をベースとするということに限定をされているというふうに考えております。

山尾委員 これは大変深刻な答弁なんですけれども、もう一回確認します。

 そうすると、この法律の目的は、あくまでも法律婚あるいは法律上の親族を保護するものであって、それ以外に、さまざまな家族形態や事情の中で、ともに暮らしてきたり、ともに支え合ってきた人の生活の配慮という観点は入っていないと。これは私どもの賛否にも大きくかかわります。入っていないということですか。

上川国務大臣 先ほど申し上げたとおり、この法律案でございますが、このような社会経済情勢の変化に鑑みて、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点から民法及び家事事件手続法の一部を改正しようとするものということで御審議を仰いでいるところでございます。

 今回の法律案につきましては、他方配偶者につきましては、法定婚、法律婚ということを前提にしているということでございます。

 他方、さまざまな関係性の中で、家族のあり方も変わってきているということも一方でございます。こうしたこともございまして、遺言制度についての充実強化を図るということも、今回の御審議に付している内容でございます。自筆証書遺言の制度そのものを拡充をする、また、保管制度につきましてもしっかりと対応していくということによりまして、この遺言制度そのものを社会全体の中でも位置づけていく、更に御利用していただくということについて、この普及促進も含めまして、この制度の拡充に力を入れさせていただいているところでございます。

山尾委員 できるだけ善意に解釈をして共通項をふやしたいと思いますので、あえて私の理解を言いますけれども、もう一度答弁に立っていただきたいと思います。

 今回は、二法案のパッケージ、そして遺言制度の充実も通じて、この法案全体の目的は必ずしも法律上の配偶者あるいは法律上の親族の保護に限らず、その遺言の充実も含めると、さまざまな関係者、残された人々の保護も目的に入っている、こういうふうに私は理解しました。

 なぜなら、先ほどから、そういった事実婚や同性婚の方にとっても、遺言制度が使いやすくなることによって、やはり、その後残された生活の安定にも資するという構成をしているというふうに民事局長はおっしゃっていて、私はそれで足りないというふうにこれから議論しますけれども、この法案自体には、必ずしも配偶者保護、法律上の親族保護だけではない、たくさんの、さまざまな、人生にかかわる関係者の残された生活の保護も入っているというふうに伺いましたけれども、大臣はいかがお考えですか。

上川国務大臣 社会経済構造が変化しておりまして、それに伴って、きのうときょうではまた違う、またきょうとあしたではまた違う、こうした社会の大きな変革の時期にございます。

 そして、家族の関係性につきましても、あるいは介護のあり方についても、かつては長男の嫁が専ら務めるということの中で大変厳しい状況に置かれていたところから、少しずつその関係を変えていくという中でもありますし、また、最近は、ある意味では施設にその分を、負担を家族に全てということにならないようにしていくと、いろいろな仕組みもできております。

 遺言の仕組みは、その意味では多様な社会に非常に重要な位置づけを持つべきものであるというふうに私は強く思っておりまして、この充実は何よりも大変重要であるというふうに考えております。

 そのことを、今回同時に審議をしていただくということの持つ意味を広く考えてみますと、これは委員御指摘のように、さまざまな関係性というものを全体としてそれぞれの目的の中で認めていくということを認めているというか、そういったことを支援をしている制度になっていくものと考えております。

山尾委員 そこまでの答弁を少なくともいただけて、よかったと思います。

 そして、今度、手続なんですけれども。先ほどから、親族要件をかける案、いわゆる甲案と言われてきたもの、そして親族要件をかけない案、いわゆる乙案と言われてきたもの。乙案であれば、幅広く保護ができるわけですね。

 そういう中で、これは民事局長に伺います。法制審の第十四回会議で、法務省の方はこう言っています。「乙案に賛成する意見が比較的多かったものですが、甲案に賛成する意見も相当数ございました。」。何対何だったんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 甲案に賛成する意見を寄せられましたのは、団体として四つの団体と、あとは個人の方が五件でございました。乙案に賛成した団体は十団体と、それから個人が十六件でございました。

山尾委員 そうすると、団体でいうと、甲案が四、乙案が十。個人でいうと、甲案が五、乙案が十六と。賛成する意見が乙案の方が比較的多かったというよりは、相当多かったというのが多分正しいのではないかと思います。これはもう、私、やはり法務省の司会進行のリードがおかしいということを指摘したいというふうに思います。やはり、数字をしっかり言っていただくべきだと思いますね。

 そういう中で、パブリックコメントでは、もう明らかに、顕著に、親族要件の縛りをかけないという案の方が多かった。一方、じゃ、法制審の民法相続関係の部会委員の中で、そもそもこの制度自体が要らないという立場の方、あるいは甲案の方、乙案の方といらっしゃったと思うんですけれども、これも民事局長に尋ねます、私が読み込んだところ、親族要件をかけないというこのパブリックコメントで多かった乙案を否定して、親族に限るんだというこの甲案を積極的に支持した委員は八木秀次さんという委員お一人だったように見えるんですけれども、そのほかにいましたか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 裁判所の委員の方からは、一定の範囲で限定するというようなものの方がある種の使われやすさが期待できるかなという、そういう気がするといった趣旨の御意見をいただいたところはございます。ただ、積極的に、限定しないことに明確に反対されたのは八木委員というふうに理解しております。

山尾委員 そうなんですよね。

 議事録を見ますと、確かに裁判所は、一定の縛りをかけた方がいいんじゃないかという気がするという発言はありましたけれども、必ずしも親族に縛るべきだという意見は言っておられません。むしろ、この部会員の中でも、連合の南部さんとか弁護士の金澄さんとか女性中心に、最後まで、制度を入れるなら親族と縛りをかけるのはいかがなものかと、複数の方が主張されていた。

 なぜ、パブコメでも委員でも、この縛りをかけない案の方がずっとリードしていたのに、突然、最後の終盤で、縛りをかける甲案がこの法制審の結論になったんでしょうかという質問です。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 パブリックコメントの結果におきましても、甲案について賛成する意見もございましたし、そもそもこういった制度をつくること自体に反対という意見も、これも多数出てきたところでございます。

 そういったようなさまざまな意見があったところでございまして、こういった検討過程の中で、請求権者の範囲を被相続人の親族、また、この親族につきましても、当初は親族の中でもかなり限定的な案というものが検討されていたわけでございますけれども、最終的には、親族の中では限定はしない、被相続人の親族であるという考え方が大方の賛同を得ることができるものとして取りまとめられたものでございます。

山尾委員 いや、だって、この制度をつくり、そして親族に縛るという提案は、パブリックコメントでも委員でも少数派だったじゃないですか。なぜこの一番少数派の意見を最後の結論に取り上げて、一番多くの人が賛成できる案だというふうにおっしゃることが可能なんですか。非常に矛盾を感じますね。

 そもそも、この八木さんという方以外は全員、民法、民事手続法、家族法、これは当たり前ですよね、その専門家の皆さんですよ。当たり前ですよね。だって、これは法制審議会の民法の相続部会ですからね。それにもかかわらず、この八木さんという方は、御自身が自己紹介で最初第一回でおっしゃっていますけれども、専攻は憲法なんですが民法、家族法にも多少興味がございますと。

 何で、専門家じゃない、多少興味があるだけの人を入れたんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、パブリックコメント等の結果で、制度自体に反対という意見も御紹介いたしましたけれども、やはり、この制度を創設するに当たりまして、紛争の複雑化といったようなものの懸念というものが示されておるものでございまして、そういったことも考慮したということでございます。

 また、八木委員でございますけれども、法制審議会の部会におきましては、民事法の学者のみならず、法思想史、あるいは社会学者、歴史学者など幅広い分野の有識者のほか、裁判官、弁護士、税理士といった実務家、さらには、連合、銀行、主婦連といったような関係者の委員が指名されております。

 こういったことは、実務家あるいは国民各層の声を反映させるようにする、こういう配慮をするという観点から幅広い分野の方々を委員にお願いした、こういう次第でございます。

山尾委員 最後に御質問します。

 では、この八木さんという方は、国民のどの層の考えを反映する方として選ばれたんですか。最後の質問です。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、さまざまな専門分野もありますので、この八木委員につきましては、法思想史、法哲学、こういった専門家と伺っておりますので、こういった観点からの専門的な知識をお持ちの方ということで委員にお願いしたということでございます。

山尾委員 これからも質疑を続けます。

 以上です。

平口委員長 次に、階猛君。

階委員 国民民主党の階猛です。

 私の方からは、今回新しくつくられる、法務局における遺言書の保管等に関する法律案について御質問をさせていただければと思います。

 お手元に資料を今配らせていただいております。この法案の目的にかかわることがこのポンチ絵の上の方に書かれております。

 私がこれは冗談かなと思ったんですけれども、「問題点」というところの二つ目、「相続人により遺言書の廃棄、隠匿、改ざんが行われるおそれがある。」、そのための立法だということなんですが、それで立法する前に、官僚による決裁書の廃棄、隠匿、改ざんについて、それを防ぐ立法、手だてを講じる方が先決ではないかというふうに思います。

 私は、自筆証書遺言については利用を進めるのは、これは結構なことだと思いますよ。ただ、私の問題意識として、相続人の方が改ざんリスクが高く、公務員の方が改ざんリスクが低いというふうに一概に言えるのかどうか。これは、財務省の例が最近世間をにぎわせておりますけれども、こういうこともしっかりチェックしなくちゃいけないと思います。

 まず最初に聞きます。この法案の三条、遺言書保管官なる者がこの遺言書の保管を担当するようなんですが、これはどういう人が任命されるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法案では、遺言書の保管に関する事務を取り扱う法務局に勤務する法務事務官のうち、法務局又は地方法務局の長が指定する者を遺言書保管官とすることとしております。これは、登記や供託に関する事務と同様に、独立の権限を有する行政官を専門的能力を有する職員の中から任命して、遺言書の保管に関する事務を行わせることとするものでございます。

 そういったことから、この遺言書保管官には、不動産登記事務における登記官や供託手続における供託官と同様に、独任の行政官として、自己の名において完結的に処理することができるだけの高度の専門的知識及び実務経験が必要とされますために、法務省等が実施する各種研修によって民法等の関係法令に関する高度な専門的知識等を涵養し、また登記事務等の実務経験を十分に積んだ法務事務官を指定することを予定しております。

階委員 専門的能力があるからといって改ざんしないという保証がないことは森友事件から明らかなわけでして。

 私は、そういう観点から、次に聞きますけれども、改ざんというリスクでいえば、法案の四条二項に、保管する遺言書は無封のものでなくてはいけない。無封というのは、封をしない。これは、封をしない。普通、自筆証書遺言といえば封をするわけですね。そして、家庭裁判所に行って検認の手続をして、初めてそこで封があけられるということですよね。個人事で恐縮なんですが、私も昨年母が亡くなりまして、実家の金庫から遺言書が出てきて、そして検認をやりました。大変手間がかかりますけれども、それだけに、その開封ということについては厳重な扱いが法的にされてきたというふうに理解もしています。

 今回、無封とした趣旨、これについてお答えください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この遺言書の保管法案では、保管の申請をすることができる遺言書は、法務省令で定める様式に従って作成した無封のものでなければならないこととしております。

 この遺言を無封のものでなければならないこととした趣旨でございますが、まず一つは、保管の申請があった際に、遺言書保管官が、遺言書が民法第九百六十八条の定める方式に適合するか否かについて外形的な確認を行うこと、それから、遺言書の作成名義人と申請人の同一性を確認することを可能にするという趣旨がございます。

 それから二つ目でございますけれども、遺言書保管官が遺言書に係る情報の管理として、遺言書の画像情報等を磁気ディスクをもって調製する遺言書保管ファイルに記録することを可能にする、こういった点にございます。

階委員 そういう理由があることはわかりました。

 ただ、同一性を確認するということでいえば、そもそも今の家庭裁判所の検認の制度は、遺言者が亡くなった後に遺言書をあけて見るわけですから、そういう同一性の確認とかというのはそもそも念頭に置いていないわけですね。電磁ファイルを作成するという意味での無封としたということもありますけれども、これは別に、最初から電磁ファイルを使うことは想定されていないわけでありまして、必要になるのは亡くなった後ですから、その時点で開封されてもいいのではないかという気がします。

 何を言いたいかといいますと、無封とすることによって、保管を申請した遺言書が改ざんされるリスクが高まっているというふうに私は考えます。この改ざんリスクについて、法務大臣、いかがお考えですか。

上川国務大臣 ただいま民事局長が答弁したことと重なるわけでございますが、この制度におきましては、遺言書の保管は遺言書保管官が遺言書保管所の施設内において行うこととしているところでございまして、その保管方法の詳細につきましては、遺言書がプライバシー性の高い情報であることに鑑みまして、施錠可能な書棚等の設備を用いて保管することを予定しているところでございます。

 また、保管する遺言書に係る情報の管理ということで、電磁的な画像情報ということでございますが、遺言書保管ファイルに電磁的に記録することによって行うとしているところでございます。

 遺言書の原本につきましては、遺言書保管官によりまして、先ほど申し上げたとおり、安全性の高い保管設備において保管されるだけではなく、保管開始時の画像データを保存する等の措置を講ずることとされておりまして、委員御指摘の改ざんされるリスクについては極めて低いというふうに考えております。

階委員 例えば、相続人の改ざんを抑止する手段として、民法の八百九十一条という条文があります。相続人の欠格事由として、改ざんしたら、その相続人は相続権を失うという条文があるわけですね。そういう改ざんした遺言書保管官ですか、そこにペナルティーを科すような手だてというのは今回用意されているのかどうか、これは参考人からでも結構ですけれども、お答えいただけますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきまして、遺言書保管官による改ざんに係る、それについての規定は設けておりません。

 当然、遺言書保管官は国家公務員でございますので、国家公務員に関する規律に関するそういったような規定というものは当然適用になってくるかと思います。

階委員 そこで、改ざんといえば、刑法の文書偽造とか変造の罪の成否が問題になると思いますけれども、この遺言書の改ざん、一般論で結構ですけれども、私は刑法でいうと私文書偽造とか変造に当たるのではないかと思いますが、刑事局長、いかがですか。当たり得るかどうか。

辻政府参考人 犯罪の成否につきましては、個別の事案に応じまして、捜査機関が収集した証拠に基づいて判断されるべきものでございますので、お答えは差し控えたいと思いますけれども、あくまで一般論として申し上げますと、公文書偽造ということで申し上げますと、行使の目的で公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造したというような場合にはこれに当たり得る、また、遺言書ということでございますと私文書偽造ということなのかもしれませんけれども、その構成要件に当たる場合には犯罪が成立するということかと存じます。

階委員 この制度が信頼され、利用を促進していくためには、ちゃんと、改ざんとかをした場合には厳しく処罰されるということも必要ではないかと思っていますけれども、私は、今回の森友事件というのはそこに大きくかかわっていると思っていまして、公務員の文書改ざんがこの事件で容易に起こり得るというふうに国民が認識しているというふうに感じます。そうである以上、現時点では、この制度、余り利用されなくなっているのではないかということが一点。

 それから、この制度への信頼を確保するためにも、私は、この森友事件における文書改ざんというのは、何か不起訴という結論が出たやに聞いていますけれども、厳しく処分すべきではないのかというふうに考えます。

 この二点について、大臣からお答えください。

上川国務大臣 委員の問題意識が御質問で二つということでございましたけれども、遺言書につきまして、先ほど答弁したとおりでございますが、遺言書保管官が、安全性の高い保管設備におきまして保管をするだけではなく、保管開始時の画像データを保存する等の措置を講ずることとしておりまして、信頼性の高い制度となっているところでございます。

 当然のことながら、その運用ということが厳しく問われるわけでございますけれども、本法律案の成立後におきましては、業務を担う職員に対して十分な指導、研さんを行うなどして本制度が制度の趣旨にしっかり沿った形で運用をされることを確実にし、先ほど、利用されないのではないかという御心配をしていただいておりますけれども、この制度が幅広く多くの方々に利用していただくことができるように努力をしてまいりたいというふうに思っております。

 二点目の御質問でございますが、具体的な個別の案件ということでございまして、私、法務大臣として所感を述べるということについては差し控えさせていただきたいと存じますが、あくまで一般論ということで申し上げるわけでございますが、検察当局におきまして、法と証拠に基づきまして刑事事件の捜査処理等を適切に行っているものと考えているところでございます。

階委員 法と証拠に基づいて検察官が適正に処分と言っていましたけれども、よくよく振り返ってみますと、過去には検察官自身も虚偽の捜査報告書をつくったという問題もありました。本当にこれで信頼が確保できるのか。画像データがあるから変造、改ざんされにくいというお話もありましたけれども、そもそも画像データをとる前にもとの文書を改ざんしてしまえば、画像データもろともこれは変造されることになって、そこに気づかないわけでありまして、余り、画像データがあるからといって、それで防げるとも思えません。

 ちょっと話がかわりますけれども、今回、大臣はお立場から言葉を余り多く語らないわけですけれども、刑法の公文書の変造については、百五十五条と百五十六条について条文があります。今回の森友事件について、いずれの文書変造罪についても犯罪不成立としたというふうにきのうレクのときに伺いました。その理由を具体的に説明していただけますか。

辻政府参考人 まず、刑法百五十五条の方の変造でございますけれども、この変造は、一般的には、文書の非本質的部分に不法に変更を加え新たな証明力を作出することをいうものと解されていると承知しておりますけれども、今回、大阪地検におきましては、本件における改変により決裁文書について新たな証明力が作出されたかという観点などから検討しましたが、百五十五条で言うところの変造と認めることは困難であると判断したものと承知しております。

 それから、百五十六条の方の変造でございますけれども、こちらの方は、一般に、作成権限者である公務員が、その権限を濫用して既存の公文書に不当に変更を加え、その内容を虚偽のものとすることをいうものと解されているところでありますが、今回、大阪地検におきましては、本件における改変により虚偽の内容の文書となったかという観点などから検討したけれども、これを認めることは困難であると判断したものと承知しております。

階委員 百五十六条の方は権限ある公務員による犯罪ですから、ちょっとここでは捨象して。

 遺言書の変造について言うと、先ほどもちょっと議論しました百五十九条の私文書の変造に当たるということですから、公文書の関係でいうと、刑法で言う百五十五条の変造と百五十九条の変造、これがパラレルに考えられるということで、私、その点についてはコメンタールも見ましたので、同じ解説になっているんですね。なので、そこは所与の前提として捉えていただきたいんですが。

 そういうことを前提に置きますと、今回不起訴とした理由、つまり、百五十五条の変造に当たらないとした理由の中で、非本質的部分に変更を加えて新たな証明力を作出した場合が変造なんだけれども、それに当たらないからという説明でした。

 非本質的部分に変更を加えた、これは客観的に、今回の事案で、森友の事案では明らかなんだろうと思います。

 問題は、新たな証明力を作出したのかどうか。検察はこれを否定したわけですけれども、私は肯定されるのではないかと思っていまして、今回の、特例扱いされたのはなぜかという理由の部分について、これは改ざんをしてごっそり削っているということですから、これがなくなったことによって、まさにその特例扱いした理由がわからなくなって、新たな証明力になっているのではないかというふうに私は考えます。

 ここからちょっと敷衍してといいますか、ここから発展して考えますと、例えば、遺言書の場合、こういうケースを考えてみたいと思います。

 遺言書保管官がたまたま、その遺言書の中で有利な扱いをしている相続人、この人に悪意ないし敵意を抱いているとして、その有利になっている扱いを、なぜ有利に扱うかというような理由を遺言書の中にたまに書いているケースがあるんですね。なぜ、この相続人に対してはたくさん遺産を上げるかということを書いていたりするケースがあるんです。こういった部分をごっそり抜かすということになりますと、有利にされていた人はその根拠を失って、相続人間の紛争につながるということで、そういうことで迷惑をかけようと思って、保管官の人が改ざんするといったようなケースを考えましょう。

 そのケースにおいて、こういう、なぜ有利に扱うかという理由のような部分、ここをそぎ落としたというような場合は、これは私文書変造に当たるのかどうか、こういったことについて見解をお願いします。

辻政府参考人 具体的事案と申しますか、犯罪の成否についてのお尋ねでございますので、ただいま御指摘いただいた範囲でお答えするのはなかなか難しいかなということでございまして、犯罪の成否は、やはりあくまで具体的な事案において、捜査機関が収集した証拠に基づいて、事案の個別の事情を踏まえて判断されるべきものでございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

階委員 そういうふうに曖昧にしておくと、国民としては、今回の森友事件もこれありで、どうせ改ざんしても処分されないんだな、処罰されないんだなということから、制度の利用が進まないと思うんですね。

 さっき民事局長も言ったとおり、この法律で固有の処罰というのはないわけでありまして、処罰されるとすれば刑法で処罰されるしかないわけで、そこがどの程度の改ざんで処罰されるのかどうか明確にしてもらわないと、制度の信頼は確保できないと思いますよ。

 もう少しここを明確にしてほしいんですが、どうですか。

辻政府参考人 御指摘ではございますけれども、犯罪の成否は、やはり個別の事案の具体的事情によって大きく変わってくるという部分がございますので、逆に、この場で何らか申し上げることが国民の皆様への誤解につながるという面もございますので、やはりお答えは差し控えさせていただければと存じます。

階委員 終了しましたのでこれで終わりますけれども、今回の決裁文書改ざんもやはり処罰されなかった。検察当局は刑法の適用を慎重にし過ぎていると思います。

 そこで、私たちの党としては、公文書の改ざんについて処罰する法案を提出しております。

 また、それと同じように、この法案でも制度の信頼を確保するためには、新しく保管する任を担う保管官が改ざんした場合には処罰される、そのための条文上の手当てが必要ではないかということを提案申し上げまして、私からの質問を終わります。

 以上です。

平口委員長 次に、田所嘉徳君。

田所委員 自民党の田所嘉徳でございます。

 早速質問をさせていただきます。

 今般、相続法の広範にわたる見直し案が提起されました。その契機はどのようなものか、立法事実たる背景をどのように捉えているのかをお聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 平成二十五年九月に、最高裁判所の大法廷におきまして、嫡出でない子の相続分を嫡出子の二分の一と定めていた当時の民法の規定が憲法に違反するとの判断が示されました。これを受けまして、この規定を改正する過程で、各方面から、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点から、相続法制を見直すべきではないかとの問題提起がされたところでございます。

 また、相続法制については、昭和五十五年以降、約四十年間大きな見直しはされておりませんでしたが、その間、我が国の平均寿命は延び、社会の少子高齢化が進展する一方で、高齢者間の再婚が増加するなど、相続を取り巻く社会経済情勢には大きな変化が生じております。

 このようなことから、今般、相続法の見直しを行うこととしたものでございます。

田所委員 立法に当たりまして、その立法事実たる背景というものをしっかり捉えるということは、私は大変重要だろうというふうに思っています。

 そういう中で、皆さんの頭の中でもちょっとすぐ思いつくかと思いますけれども、民法出て忠孝滅ぶという言葉、大変有名な言葉をまず我々は習うわけでございます。私はそれを考えてみまして、やはり基礎事実というのをしっかり捉えることが重要なんだなということを強く感じるのであります。

 歴史を見ますと、ボアソナードがその草案をつくったという中で、この「民法出テヽ忠孝亡フ」という論文を出して、穂積八束さんという学者がいろいろと問題を提起してきたということでございます。そういう中にあって、まさに法律をつくるについて重要な、社会を形づくるんだということの意識を非常に強く持った、そういうことだろうというふうに思っております。

 当時の政府は、その中で法典調査会を設置したわけでございます。当初フランス寄りに傾倒していた立法から、ドイツとかあるいはその他、かなり広い範囲の国と我が国の歴史、伝統的な習慣とか慣習、そういったものを徹底して調べて、独特の法律をつくるために努力をしたわけであります。

 まさに立法事実となる背景をしっかりと固めるということが、私は、今回の法務委員会をずっと見てきても、やはり重要だなということを強く感じているわけであります。

 そういう中にあって、今度の一連の見直し案というものについては、これは平成二十五年の、嫡出でない子の相続についての民法九百条の規定が違憲であるということが契機になっているということであります。これが否定されますと法律婚の保護が弱くなるんだ、だからそれを補充するために相続法の見直しをするということ、これも私は間違いではないというふうに思いますけれども、しかし別途のさらなる考察が必要だろうと私は思っています。

 確かに、親が婚姻関係にあったかどうかは子供には関係ありませんから、不平等を強いられるということは、これは本当に差別であって問題であろうというふうに思いますし、現代の価値観からすれば、否定されるものではありません。

 しかし、昭和二十二年の立法時の政府答弁では、正当な婚姻から生まれた子とそうでない子とを区別するのは正当な婚姻を奨励、尊重するための合理的な差別として是認されるというふうに答えているわけであります。

 この法律制定時には、既に日本国憲法が施行されておりました。当然、憲法十四条の平等原則もあったはずであります。しかしながら、あえてここでこのような、言うならば差別的な立法をしたのは、強力に法律婚を守らなければならないということに私はほかならないというふうに思うんです。

 その法律が違憲とされたことは、結局、時代の変遷とともに、守るべき価値観が変化しているということも見なければならないというふうに考えております。離婚がふえている、あるいは事実婚も非常に急増している、そういう社会現象にあって、そういう中で、今後の立法における、この判例をどう捉えて、どのような姿勢でこの立法に当たるのか、上川法務大臣にお尋ねしたいと思います。

上川国務大臣 平成二十五年に、最高裁大法廷の決定によりまして、法律婚の保護等を目的として嫡出でない子の相続分を嫡出子の二分の一としていた民法の規定というものに対しまして、違憲であるという判断がなされたところでございます。

 これは、法律婚の尊重という立法目的につきましては合理性があるとしても、これを達成する手段として嫡出でない子の相続分を嫡出子の二分の一とすることは正当化されない、こういう司法府の判断が示されたものであると考えております。その意味で、子供の権利という形の中で差を設けないという趣旨の判断ということについては、重く受けとめなければならないというふうに思っております。

 また、社会における価値観が多様化する中におきまして親族法や相続法のあり方を検討するということにつきましては、いかなる考え方、価値観を中心に据えて、そして何を立法事実として法改正に取り組んでいくのか、このことについて明確にするということについては非常に重要であるというふうに考えております。

田所委員 続きまして、相続に当たっての特別の寄与についてお尋ねをいたします。これを考慮して、金銭の支払いを請求することができるという制度を設けようとしているわけであります。

 この要件について、相続人以外の親族が被相続人の療養看護等を行った場合というふうにしております。それはどのような人が該当し、どのくらいいるのか、それを示してもらいたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この特別の寄与の制度における請求権者は、被相続人の親族で相続人以外の者ということになっております。この対象者がどの程度いるかにつきましては、なかなか推計することは困難でございますが、参考となる数値といたしまして、主な介護者の属性に関する厚生労働省の調査結果というものがございます。

 これを見ますと、要介護者と同居している者が全体の約六割を占めております。また、その六割の中の内訳を見てみますと、要介護者の配偶者が約二五%と最も多く、次いで要介護者の子が約二二%、要介護者の子の配偶者が約一〇%となっております。

 先ほど申し上げました請求権者は相続人以外の者ですので、今申し上げました介護者の中では、要介護者の子の配偶者がこの対象者に含まれるものでございます。

 その数は、先ほど申し上げましたとおり、主な介護者のうちの約一割を要介護者と同居している子の配偶者が占めている、こういう調査結果がございますので、これに照らしますと、この特別の寄与の制度を利用しようとする者も相当数いるのではないかというふうに推測されるところでございます。

田所委員 私も、この法案の説明を受けたときに、相続人以外の親族で面倒を見る人がどれだけいるんだと思いましたけれども、今の説明も聞いてわかったとおり、やはり、お嫁さんをもらったケースにすれば、息子のお嫁さんが介護するというのが一〇%もあるということでありますから、私は、この部分は非常に重いし、この人が一生懸命親を面倒見るという姿は、まさにいい家庭を形づくるというふうに思っております。そこで、親族要件をかけたことは、そこでは非常に意味があるというふうに私は理解もしたわけであります。

 最初に見たときは、この要件は要らないんじゃないか、そういうふうに思いましたけれども、私は、それが行き着くところは結局は法律婚というものが揺らぐような形になってしまいますので、これこそが大きな検討が必要で、非常に問題なことだろうというふうに思いますので、それは言っておきたいと思います。

 そこで、私がこれから少ししゃべります。

 私は、相続人に対してこそ、寄与分を常に反映するような、そういうあり方を考えるべきだというふうに思っております。

 遺産分割成って親を引き取る者がないという言葉があります。笑う相続人などという言葉もあります。それまで全然家に寄りつきもしなかった子供が、あるいは長年婚姻の実態がない名ばかりの配偶者が、被相続人の死亡とともに突然あらわれて相続分を主張して争いが生じるというようなことはよく耳にすることであります。

 しかし、被相続人と一緒に生活をして面倒を見た人がいた場合にも、その寄与分が積極的に評価されないのでは、私は、これは不平等だし、誰も親を一生懸命面倒見る人がいなくなってしまう、そういう悪循環にもなってしまうんだろうと思います。

 確かに、相続分については、民法九百四条の二で寄与分を認めることとしております。「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」という非常に限局したものでありまして、必ずしも、私が今言ったような積極的な評価をするような形にはなっていないというふうに思います。

 相続人こそが積極的に親孝行するような寄与分評価のあり方というものを私は考えてもらいたいということを申し上げたいと思います。

 次に、遺言制度の見直しについてお伺いいたします。

 我が国において、遺言は現在どのくらい行われているのか、自筆証書遺言と公正証書遺言の件数について述べてもらいたいと思います。また、遺言による相続に対応するメリットをどのように捉えているのか、示してもらいたいと思います。

小野瀬政府参考人 申しわけありません、ちょっと先ほどの答弁でございますが、先ほど要介護者の子の配偶者のパーセンテージを申し上げましたが、厚労省の説明によりますと、事実上の配偶者も入っておりますので、一つその点につきましては、数字につきましては少し留意が必要かということだけは、済みません、補足させていただきます。

 その上で、遺言の件数でございますが、自筆証書遺言につきましては保管者に検認の請求をすべき義務がございますが、平成二十八年にこの検認がなされた件数は一万七千二百五件でございました。もっとも、検認の義務が履行されなくても遺言の効力に影響はないとされておりますために、必ずしも実際の作成件数は明らかではございません。他方、平成二十八年に公正証書遺言が作成された件数は十万五千三百五十件でございました。

 遺言制度は、遺言者の最終意思を尊重し、これを実現するものでございまして、遺言者は、遺言をすることにより、例えば生前にみずからに尽くしてくれた者に報いるなど、みずからの死後の法律関係を定めることができます。また、遺言によって遺言者の最終意思が明らかにされることによって遺産分割が必要なくなる場合があるなど、相続をめぐる紛争を防止することにも資するものでございます。

田所委員 今の数値をお聞きしますと、公正証書遺言が大変多いということであります。これは負担もありますし、なかなか面倒なんですが、それが圧倒的に多いということは必要に迫られてやっているんだろうと思いますし、そういう中では、いわゆる遺言が積極的に活用されている状況ではないというふうに思います。

 しかしながら、被相続人の意思を忠実に反映したり、さらには相続を早期に完了する、あるいはその相続の争いを減少させるということであれば、やはり遺言文化というものをしっかりと根づかせるようにする必要はあるんだろうというふうに思います。

 この遺言というのはなかなか直前になってはお願いできないんですね、早く死ねと言うのか、こう言われそうなところになりますので。やはり、こういったものが理解されるような、そういう風土といいますか状況をつくっていく必要があると思います。

 そこで、自筆証書遺言の方式緩和でありますが、財産目録だけ自筆でなくてもいいということでありますが、パソコン全盛の時代に本文も自筆でなくてもいいんじゃないか、すぐ法改正しなくてはならないんじゃないかというふうな思いも私はいたします。

 それと、あわせて聞きます、自筆証書遺言の保管制度であります。

 保管する公的機関の権能はどのようなものにするのか。保管をするに当たって、例えば、その内容とか自筆であるかどうかについての実質審査、これは形式審査に対する概念でありますが、を行うのかどうかについてもお聞きしたいと思います。

 そういうことで、相続登記の促進にもつながるということも目的というか期待しているわけでありますけれども、形式審査ではそれとの関連性がよく理解できないので、その点もあわせて、ちょっといろいろ聞きましたが、答弁を願いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、自筆証書遺言の様式の緩和でございますけれども、この法律案におきましては、自筆証書に添付します財産目録については自書することを要しないこととしております。

 これは、財産目録は財産の特定に関する形式的な事項が記載されているものでございまして、他方、これを全部自書しなければならないといいますものは、非常に遺言者にとってかなり負担になるということでございます。

 また、財産目録が自書されていなくても、遺言書の本文部分、日付及び氏名の自書を要求すれば、遺言者の真意に反する遺言書を作成することを防止することが可能であるというふうに考えられることを考慮したものでございます。

 これに対しまして、例えば、パソコン等で作成した文書に遺言者の住所を自書して、これに署名押印すれば自筆証書遺言としての要件を満たすことといたしますと、例えば、遺言者の親族等が自己に有利な遺言書の原案をパソコン等で作成して、その書面に遺言者の署名等の記載を求めるということになりまして、遺言者の真意に基づかない遺言書が作成される危険性が高まるものと考えられます。

 また、遺言書の本文部分や日付等につきましては自書を要求いたしましたとしましても、財産目録に関する記載と比較しますと、その負担はそれほど大きくないものと考えられます。

 このようなことから、本法律案では、財産目録に限って自書によらないことを認めることとしたものでございます。

 続きまして、遺言書保管官の審査でございますが、遺言書保管官につきましては、自筆証書遺言の方式であります民法が定める方式に適合するか否か、外形的な確認を行うこととしております。すなわち、日付及び遺言者の氏名の記載、押印の有無、本文部分が手書きで書かれているかどうかを確認するなどの形式的な審査を行うこととしておりまして、そういった審査を超えて、例えば筆跡が遺言者本人のものであるか、あるいは他人のものであるかを見分けるといった実質的な審査までは行わないこととしております。

 また、この制度が相続登記の促進に寄与するのかといったような御趣旨の質問につきましては、こういった、遺言につきましては遺産の分配方法に関する被相続人の最終意思を明らかにするものでございまして、その活用は遺産に関する相続人等の権利義務関係の早期確定に資するものでございます。遺言によって権利関係がより早期に確定しますれば、相続人において相続登記を行おうとするインセンティブが高まるケースが増加する、こういう効果がもたらされるのではないかと考えております。

 さらに、この制度は相続登記の事務を行う法務局が担うこととしておりますので、法務局の職員が、遺言者の死亡後に遺言書情報証明書の交付請求のために窓口を訪れた相続人等に対して相続登記の申請を促す、またその手続案内を行う、こういったような取組をすることも予定をしております。このような運用面での取組によりましても、相続登記が促進されることとなると考えております。

田所委員 新しい保管制度ができて、利便性が高まって、遺言の活用が積極的に行われるようになることは大変いいことだと思います。しかし、私は、その制度がかえって混乱を招くことがないようにしなければならないというふうに、そんな危惧を持つのであります。

 それは、公正証書遺言はちょっと大変でありますが、あれは間違いがありませんし、改ざんももちろんされないということでありますし、さらには、今非常に手軽に公正証書も使うようになっております。不動産の契約や何かでも使われるようになっている中で、別のものができて、公的機関が行うということで信頼を持ってやっても、それが形式的な審査にとどまるわけだから、何らかのそごがあれば一遍にその信頼は失われてしまうわけでありますので、そういうことを含めて、しっかりとこの遺言制度が定着をして、遺言が活用されて紛争のない社会に進むように、そのような運営をしてもらいたい。通知なども今後の検討と言っておりますが、多くの検討課題もしっかりとこなして進めてもらいたいということを言いまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 本法案は、一九八〇年の一部改正以降、約四十年ぶりの民法、相続関係の改正案であります。相続法制は、国民一人一人の人生にも深くかかわるものだと思っております。その意味で、慎重かつ十分な審議が必要だと思います。

 先ほど来ありますけれども、今日、家族のあり方も多様化しております。相続法制がそうした多様化にどう対応していくのかが問われていると思っております。とりわけ大事なのは、個人の尊厳という観点だと思っております。

 法務省に確認しますが、現行の日本国憲法の第二十四条二項はどのように規定しておりますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 憲法第二十四条第二項では、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と規定されております。

藤野委員 今答弁ありましたけれども、日本国憲法というのは、相続ということを具体的に挙げて規定している。本法案は、まさにその相続に関する法律でありまして、憲法上、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して法がつくられることが求められている、憲法上の非常に重い要請だというふうに思っております。

 先ほど来ありました、事実婚、あるいは同性婚、LGBT、多様なあり方が尊重されるということが求められている、まさに個人の尊厳であります。実は私自身も事実婚でありまして、そういう意味では、これは人ごとではない問題だと思っております。

 先ほど本法案は法律婚のみを対象としているとありましたけれども、これはなぜ法律婚のみが対象なんでしょうか、お答えください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回の法律案のさまざまな規律は、相続に関係するものでございます。

 事実婚の配偶者に相続権を認めない理由でございますけれども、相続は、被相続人の権利義務を相続人が包括的に承継することを内容とするものでございまして、被相続人に債権を有していた者や債務を負っていた者にとりましても、被相続人の権利義務がどのように承継されるかについては重大な利害関係がございます。このため、誰が相続人であるかは、これらの第三者にもできる限り明確かつ画一的に判断することができるようにする必要がございます。

 法律上の婚姻は、届出によってその効力が生ずることとされておりまして、基準が明確でございますが、事実婚の配偶者に該当するか否かは、さまざまな要素を総合的に考慮して判断しなければならず、事実婚の配偶者に当たることを公示する制度も存在いたしません。

 このため、仮に事実上の配偶者に相続を認めるとしますと、相続人の範囲を直ちに判断することができなくなって、相続をめぐる紛争が複雑化、長期化し、相続債権者等の利害関係人までもが紛争に巻き込まれて、不測の損害を受けるおそれがあるなどの問題が生じます。

 現行法のもとでは、これらの点を考慮して、事実婚の配偶者に相続権を認めていないものと考えております。

藤野委員 いや、紛争が長期化する、複雑化するとおっしゃったんですが、実際の紛争はどうかといいますと、最高裁の、例えば二〇〇〇年三月十日、有名な最高裁ですけれども、これは、生存されている内縁の配偶者の居住権、今回問題になっている居住権を確保するために、相当詳細に調べて事実を認定されているんですね。

 例えば、贈与が履行済みであるかどうか、この認定、これもなかなか大変です。あるいは、使用貸借について黙示の合意が成立していたんじゃないかとか、これもなかなか大変な認定です。あるいは、権利の濫用に当たるのかどうかとか、いろいろ事案によりますけれども、紛争の複雑化、長期化とおっしゃいますが、既に現実の裁判で大変な認定をしなきゃいけないわけですね。これが実態であります、紛争の。手間がかかっている。

 片や、事実婚かどうかというのはそんなに難しくないんです。こういう、使用貸借の黙示の合意があったかとか、あるいは贈与が履行済みと認定していいかどうかなんということに比べれば、事実婚というのは社会的に認知されているかどうかということが非常に大きいですし、今の日本の社会の到達点では全く難しくない。そういう点では、事実婚に相続を認めていれば逆に短期化し簡素化する、そういうケースも非常に多いというふうに思っております。

 そういう点で、まさに個人を尊重していくという観点からいっても、やはり法律婚だけに限っていくというのは問題があるというふうに思います。

 ほかの制度、先ほどもちょっと幾つか紹介されましたが、私は、体外受精などの不妊治療費用、これについて厚生労働省がこの間さまざまな検討をされてきたと認識をしておりまして、要するに、事実婚のカップルへもそういう助成を拡大していこうということなんですね。

 配付資料の一を見ていただきますと、そのときの審議の際の、当時の塩崎厚生労働大臣の答弁であります。時間の関係で黄色いところだけ紹介しますが、多様化している家族のあり方などを受けとめていかなければならない、社会はどんどん変化をして家族観も変化をしている。あるいは、五月十一日の議事録では、家族のあり方も多様化していることもこれまた事実で、LGBTの問題も含めていろんな変化が起きているわけでありますので、そういう中でこういう問題についてしっかりと考えていくべきではないのか、こういうふうに思っているところでございます、こういう答弁があります。

 大臣にお聞きしたいんですが、やはり多様化している家族のあり方などを受けとめていかなければならないと厚労大臣は言っているんですが、大臣も同じような認識だということでよろしいですか。

上川国務大臣 今、塩崎大臣の答弁を引用されたところでございますけれども、今の現代の社会におきましては、さまざまな考え方、多様化をしている社会であるというふうに認識をしております。

 そのような状況の中で、先生もそのような立場であられるということでございますが、事実婚を選択したり、同性のカップルにおきまして婚姻関係と同様の関係を築いていらっしゃる方々もいらっしゃるということでございます。

 こうした方々について民法上どのように取り扱うかということについて、これは法律婚の場合と同様の取扱いをすべきかどうかということについてということでありますが、家族のあり方にかかわる大変重要な課題であるというふうに思っております。

 このような社会の情勢、また国民の皆様方の意識、さまざまな要素を踏まえつつ慎重に検討していくべきことであるというふうに考えております。

藤野委員 まさに民法上どのように扱うかと今大臣はおっしゃられましたが、そこは本当に大事なところでありまして、これから見ていきますけれども、いろいろなものに波及していくわけですね、民法の考え方というのは。

 その前提としてちょっと法務省に確認していきたいんですが、事実婚のいわゆる基礎的な、基礎資料といいますか、そういうものがあるかどうかということなんですけれども、まず、法務省では事実婚の人数といったようなものは把握されているんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 一般に、事実婚は、法律上の婚姻関係にある夫婦と同様の社会的実態はあるが婚姻届が提出されていない男女の関係をいうものとされておりますので、社会的実態のみによって成立するものでございますので、法務省におきましてはその件数は把握しておりません。

藤野委員 では、厚労省にお聞きしますが、厚労省では把握されているんでしょうか。

酒光政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省におきましても、調査によっては配偶者に事実婚の配偶者を含めることはございますけれども、その場合におきましても、どこまでが事実婚で、どこまでが届けに基づく婚姻関係なのか、そこまでは調査しておりませんので、厚生労働省では事実婚あるいは同性婚については把握をしていないということになります。

藤野委員 要するに、いろいろ調べたんですが、そういう基礎的なデータがないわけですね。国勢調査においては、届出をしていなくても、内縁関係にあるなど事実上結婚していれば夫婦として取り扱うというふうになっているんですが、では、それがどれぐらいなのかというのはわからないというお答えでありました。要するに、実態がよくわからないまま、省くか省かないかというような議論も進められてしまっているということだと思うんです。

 配付資料の二で御紹介していますのは、これは神戸新聞なんですけれども、いわゆる同性カップル、先ほどもちょっと紹介がありましたが、同性カップルをパートナーとして認め公的書類を発行する、パートナーシップ制度と兵庫では言っているんですが、これが、二〇一五年以降、全国七つの市と特別区で導入をされております。このパートナーシップ制度によってこれまで計百八十四組が交付を受けたということで、その内訳といいますか、そういう資料であります。

 LGBT問題に詳しい早稲田大学の棚村教授はこうおっしゃっていまして、百八十四組は人口から見るとまだ少ないが、当事者が勇気を持って申請し、自治体が認めることがLGBTに対する差別解消や理解促進につながっていると。こうした実態、数字が出てくるということがやはり差別解消や理解促進につながっているという御指摘であります。

 日本における多様性の実態というのがどのようなものかというのは本当に大事なことだというふうに思います。当事者にとってもそうですし、我々が理解していく上でも大事だと思うんです。

 大臣にお聞きしたいんですが、プライバシーや本人の同意などにも配慮しながらですけれども、そうした事実婚やあるいはLGBTカップルの実態というのも今後やはり政府として把握していくべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 御指摘の実態把握ということにつきましての考え方ということでございますが、先ほど答弁を申し上げた、当事者の方々のプライバシー等の問題があるということで、そのような調査をすることの相当性やその調査方法等につきまして極めて慎重な検討を要するものであるというふうに考えております。

藤野委員 先ほど言った国勢調査でもかなり詳細なことを聞くわけですね、年収とかなんとかかんとか。ほかにもいろいろな調査を政府はやられております。ですから、そういうノウハウはもうお持ちだと思いますので、ぜひ今後検討していただきたい。

 より具体的にお聞きしたいのは、先ほど遺言のことがありました。今回も、遺言、いわゆるセットなんですね、法律としては。かなり高い位置づけだと思うんですが、しかし、事前にお聞きしましても、遺言のうち、では法律婚でどれぐらいできていて、事実婚でどれぐらい遺言ができているのかというのはわからないわけであります。

 これからいろいろな形で保管等を整備していくんだとおっしゃるんだけれども、研究者の方によりましては、先ほど日本は十万件とかありましたけれども、日本よりも遺言が普及しているドイツにおいても事実婚の当事者間では遺言を期待することが難しい、そういう研究も指摘をされております。

 ですから、実態はどうなのか。遺言を進めるのはいいとは思うんですが、しかし、それもやはり事実に基づいていくべきだと思うんです。ですから、この点、遺言の実態について、大臣、調査していただけないでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど自筆証書遺言と公正証書遺言の件数を申し上げましたけれども、自筆証書遺言については検認の件数を申し上げたわけですが、恐らく検認に至らないで作成される自筆証書の件数というものは非常に多数あるのではないかというふうに思っております。

 そういう意味で、自筆証書遺言の関係者の属性を調べるということはなかなか難しい問題もございますので、ちょっとそういった調査の困難性ということを考えますと、その調査につきましてはやはり慎重な検討が必要になるのではないかなというふうに考えております。

藤野委員 やはり、そうした実態に基づいて、こういう一人一人の人生にかかわっていく問題でありますので、進めていく必要があるという点は指摘しておきたいと思います。

 法案では、相続人以外の者の貢献を考慮するための規定が新設をされます。法務省にお聞きしますが、これはどういう趣旨で新設するんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現行法上は、寄与分は相続人にのみ認められておりますため、相続人ではない者、例えば相続人の配偶者が、被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持又は増加に寄与した場合でありましても、遺産分割手続において、寄与分を主張したり、あるいは何らかの財産の分配を請求することはできず、不公平であるとの指摘がされております。

 現行法のもとでこの問題に対応しようとしますれば、相続人以外の者が被相続人との間で報酬を受ける旨の契約を締結すること、養子縁組をすること、あるいは被相続人が遺贈をすることなどが考えられるところでございますが、被相続人との人的関係等によっては、相続人以外の者がこれらの法的手段をとることを被相続人に依頼することが心情的に困難な場合も多くございます。そういうことで、現行法上の制度によっては十分対応することが困難であると考えられます。

 また、ほかにとり得る法的手段としましては、特別縁故者の制度、準委任契約に基づく請求、事務管理に基づく費用償還請求、不当利得返還請求が考えられますが、特別縁故者の制度は相続人が存在する場合には用いることができませんし、準委任契約、事務管理、不当利得を理由とする請求につきましても、その成立が認められない場合や、あるいは成立するとしてもその証明が困難な場合があり得るといったような問題がございます。

 こういったことから、新たに特別寄与の制度を設けたものでございます。

藤野委員 要するに、不公平だと。実質的な公平を図るという観点から、こうした本改正がやられたということであります。

 大臣、お聞きしたいんですが、これをせっかくやられても、やはり事実婚や同性婚のパートナーは、どれだけ寄与しても、どれだけ寄与しても認められない。実質的公平というのであれば、こうした方々も適用すべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

上川国務大臣 我が国におきましては、多様な価値観、考え方、これを尊重する意識、こうしたことは社会の中で高まっているというふうに思っております。しかし一方で、法律婚を尊重する意識も国民の間に幅広く浸透しているものというふうに考えられるわけでございます。

 事実婚の配偶者にどのような法的保護を与えるべきかにつきましては、このような国民の皆様方の意識、こうしたことをしっかりと踏まえながら、また、それぞれの法律の趣旨、目的等に照らしても検討すべき問題であるということでございまして、一概に論ずることは困難であるというふうに考えております。

 今回は法律婚ということで対象としているところでございますが、今御審議いただいている中に、遺言制度ということで、これを幅広く御利用いただくことができるようにと拡充をしておりますので、こうした利用の促進に向けましてさらなる努力をしてまいりたいというふうに考えております。

藤野委員 いや、ですから、遺言の活用とおっしゃるんですけれども、事実婚の場合はそれが難しい、そういう指摘もあるわけですから、そういう方たちもしっかり踏まえていただきたいと思います。

 高齢化社会における家族の形態というのは本当に多様でありまして、賃貸住宅や施設で暮らしている場合とか、あるいは高齢者の再婚に子供たちが反対したために事実婚にしている場合とか、複数の高齢者ないし親密な者同士で暮らしている場合と、いろいろであります。個人の尊厳という憲法二十四条二項の要請からは、こうした多様性にどう対応していくのかということが問われていると思うんです。

 その点で、ちょっとこれは政治の側として大変問題じゃないかと思いますのは、選択的夫婦別姓の問題、これは非常に関連してくるというふうに思っております。

 法務省に確認したいんですが、一九九六年の法制審議会答申が求めた民法改正案、柱のうち、実現していないものというのはどれでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の平成八年の民法の一部を改正する法律案要綱でございますが、大きな改正項目としては、女性の婚姻開始年齢を十八歳に引き上げること、選択的夫婦別氏制度を導入すること、女性の再婚禁止期間を百日に短縮すること、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分と同等とすることが盛り込まれておりました。

 この四つの改正項目のうち、いまだ実現しておりませんのは、女性の婚姻開始年齢の引上げ、これは今国会に法案を提出させていただいているところでございますが、そのほかには選択的夫婦別氏制度の導入のみということでございます。

藤野委員 今、四つ挙げていただきました。先日、当委員会で、女性の婚姻年齢を十六歳から十八歳に引き上げる改正案、私たちは、この部分については、両性の平等の観点から、当然だというふうに考えております。

 要するに、ただ一つ、選択的夫婦別姓だけが道筋がついていないという状況であります。この結果、現状では、要するに事実婚を選ばざるを得ないカップルがいる。私も、選ばざるを得なかった一人であります。そういう人がたくさんいるんですね、私の周りにも。

 法務省に確認しますけれども、法律婚と事実婚で、配偶者に対してどのような異なる取扱いがされているか、ちょっと簡潔にお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 夫婦に関する規定の多くは事実婚についても準用ないし類推適用されるものと解されておりますが、夫婦の同氏の制度、成年擬制、嫡出推定制度、配偶者の相続権等に関する規定は、一般的に法律上の婚姻に固有の効果であると考えられておりまして、事実婚には準用ないし類推適用されないとされております。

藤野委員 今、法律上のことを言っていただきました。

 実は、これ以外にもさまざまな不利益があります。例えば介護。介護というものはやはり、いつまで続くのか、あるいは幾らお金がこれからかかるのか、先が見えないということが、経済的にもそうですけれども、精神的にも大変大きな負担になる。その負担を少しでも経済的に軽減しようという仕組みとして、国もいろいろ制度をつくっていらっしゃる。医療費控除が介護にも関係してまいるわけであります。自己負担分を医療費控除として引くことができる。しかし、事実婚ではこの介護に関する医療費控除を受けられない。

 国税庁に確認しますけれども、税法では民法上の関係をもとに配偶者が決まる、間違いありませんか。

山名政府参考人 お答え申し上げます。

 所得税法上、医療費控除の対象となる医療費は「自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費」と規定されておりますが、所得税法における配偶者及び親族は民法の借用概念でございまして、これまでの最高裁判決におきましても、所得税法に言う「配偶者」は、納税義務者と法律上の婚姻関係にある者に限られると解するのが相当である旨、また、所得税法に規定する「親族」は、民法上の親族をいうものと解すべきである旨がそれぞれ判示されているところでございます。

 したがいまして、ある個人が事実婚のパートナーの医療費を支払ったとしても、当該医療費はその個人の医療費控除の対象とはならないことになります。

藤野委員 医療費控除だけではなくて、さまざまな控除、配偶者控除、配偶者特別控除、あるいは扶養控除、寡婦控除、雑損控除、これはいずれも民法上の関係がもとになっておりますので、そういう意味では、事実婚の場合、受けられない。震災があって、災害があって、家が壊れたり家具が壊れたりしても、事実婚の場合はこれは控除の対象にならないということになってまいります。

 寡婦控除の場合は、これは日弁連の意見書も出ておりますけれども、同じシングルマザー、同じシングルマザーなのに、法律婚をした上で、法律婚をした後にシングルマザーになった人は寡婦控除を受けられるんです、法律婚ですから。しかし、事実婚でその後シングルマザーになった方は、同じシングルマザーなのに受けられない。同じ保育園に通っていても、保育料が二万円とか三万円とか違ってくる。こういう実態があるわけですね。

 大臣がおっしゃったように、民法上の親族なり家族をどう考えるかというのは極めて重要で、本当に暮らしにかかわってくるというふうに思うんですね。

 今申し上げた寡婦控除に関しては、日弁連が二〇一三年一月に要望書を発表しております。こう書いております。もともと経済的に厳しい母子家庭の中でも、更に非婚母子家庭、要するに事実婚の母子家庭は最も低い経済的状況にあり、その非婚母子世帯に寡婦控除が適用されないことによって、その経済的格差はより拡大している、婚姻歴の有無により、寡婦控除の適用について差別する現行制度は合理性を欠き、憲法十四条の平等原則に反し違憲である。こういう指摘であります。

 大臣、婚姻歴の有無によって合理的な理由のない差別がある、これは憲法十四条に反する、この日弁連の指摘、どのように受けとめられますか。

上川国務大臣 我が国におきまして、多様な価値観を尊重する意識、こうしたことの中で、多様性を尊重しよう、こうした社会状況になっているということでございますが、一方で、法律婚、これを尊重する意識も国民の間に幅広く浸透しているというふうに考えられるわけでございます。

 先ほど来、事実婚の配偶者、またさまざまな立場、どのような法的保護を与えるべきか、こうしたことにつきましては、国民意識も踏まえながら、法律の趣旨、目的等に照らして検討すべき問題であるというふうに考えておりまして、一概に論ずることにつきましては困難であると考えております。

 日弁連の提起に対しましてどのようにということでございますが、日弁連のお考えということで、そのことについても一つの考え方ということで受けとめさせていただきたいと思います。

藤野委員 では、別のでも聞きますけれども、近時、成年後見制度というのが急増しております。この制度を利用するためには要件があるんですが、後見の申立てという、法務省に確認しますけれども、家裁にこの申立てができるのは基本的に四親等までの親族、間違いありませんか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、民法上、後見開始の審判等の申立てをすることができる親族は、四親等内の者に限定されております。

藤野委員 ですから、これは基本的に親族、要するに民法上の関係に限られているわけで、事実婚のパートナーというのは、成年後見制度の活用においても足かせがつけられている。

 今、むちゃくちゃふえているわけです、この成年後見というのは。にもかかわらず、ここでも法律婚か事実婚かによって、スタート段階、申請段階で、あなたは要件を満たしませんよということが起きているわけであります。

 大臣、お聞きしたいんですけれども、今私が言ってきました、例えば寡婦控除、シングルマザー、少子化の中でも頑張っていらっしゃる皆さんですね。成年後見制度、これからますますふえていくと思うんです。まさに少子高齢化、安倍政権は国難とまで言ったわけですけれども、この少子高齢化に関係するさまざまな制度が実際あるわけですが、それが、法律婚か事実婚かというこの民法上の関係によって大きな違いが出てくるということになっているわけです。

 本法案は、それを是正する方向ではなくて、むしろそれを固めていくような、そういう方向になりかねないものでありますが、大臣、この点についての認識はどのような御認識でしょうか。

上川国務大臣 さまざまな社会の中の大きな変化に応じまして、その方々の不利益にしっかりと対応していくということについては、大変重要な課題であるというふうに思っております。

 それぞれの法律につきましては、その趣旨あるいは目的がございまして、それぞれのそうした置かれている状況に応じて、その法律の趣旨や目的に照らして検討していくべき問題であるというふうに存じます。一概に論ずることについては困難であるというふうに考えております。

 今回につきましては法律婚における対象ということでございますが、同時に、遺言の制度ということで、利用をしていただくことができるような、幅を広げていくということでございますので、その充実強化に向けまして更に努力をしてまいりたいというふうに考えております。

藤野委員 全くお答えになっていないと思うんです。

 今、少子高齢化と言われるような、まさに当事者の皆さんが現行の制度を使う場合に、まさに民法上の親族かどうかということで非常に大きく左右されるわけですね。経済的にも左右される、精神的にも左右される。それを、今回の法案というのは更に拍車をかけるようなものではないかというのが私の質問であります。

 ですから、一個一個、個別に対応すればいいということじゃなくて、民法がまさに関係してくる、本法案が関係してくるということですので、この点については引き続き質疑で深めていきたいと思います。

 終わります。

平口委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 今までずっといろいろな質問を私も聞かせていただいている中でございますが、いろいろな制定過程ということを私も承知しているわけでございますけれども、私としては、率直に、今回の法案というのは大変いい法案であるというふうに思っております。

 事実婚、法律婚というのは、いろいろあるわけでございます。その中でも、LGBTもあるわけでございますけれども、先月五月三十一日に参議院の講堂で、LGBTの映画が上映されました。「私はワタシ オーバー・ザ・レインボー」という映画で、私も見させていただきまして大変勉強になりましたし、そういったような状況の方々がたくさんいらっしゃって、本当に自由を満喫していて、そういうような部分もあるわけでございますので、今後、それを法律的に反映していくということもこれからは必要ではないかなとは思うんですけれども、現実の現場としては、やはり事実婚というものを認定していくというのは非常に難しい部分も私はあると思っています。

 特に、今、婚姻関係の多様化というのがあるわけでございます。同居しないで夫婦関係というものももちろん選択があるわけでございますので、一方が亡くなられた後に、相続人がいる中で、残された方が、私は事実婚なんだと言われても、これはなかなか、トラブルが発生するのではないかなというふうに思っているわけです。

 そういう意味では、遺言制度というものを今回拡充するというようなことがありましたので、将来的にそういうトラブルが発生するということであるならば、遺言制度というものを活用していくというようなことで今はやっていくのかな。

 事実婚というものをこれから取り上げていくということであるならば、証明方法というものを充実させるということも今後は考えていく必要もあるのかもしれません。住民票で(未届)というような形での届出はできますけれども、それが事実婚と言えるかどうかというのがあるわけで、現在では、借地借家法の三十六条一項に「事実上夫婦」という記載がありますが、あれには、相続人がいない場合という要件が加えられていて、トラブルが非常に少ない場合なわけです。

 今回の場合、相続人がいる中で、事実婚と相続人ということのトラブルというものが十分発生する中では、法案としてそれをそのままにするということは、それはかなり雑な形になってしまうのではないか、ここではやはり法律婚というものをしっかりとして規定していくということが、今の段階では最善ではないかと私としては思っているわけでございます。

 一番この法案で活用できる場面というのは、恐らく、不動産しか持っていない、現金が余りないような場合。今までは、不動産を法定相続分で分けるとかあるいは配偶者に分けるというような場合には、不動産はあっても生活費がないというそういう状況があるわけですけれども、今回の法案で、子供に不動産の相続をさせて、代償分割、現金で分割をさせて居住できる。これは、そうじゃないと扶養という形になるわけで、ちょっと肩身が狭いというか、兄弟の中で誰が扶養するのかなんという問題が出てくるわけです。

 所有権を取得した人間、相続人が代償金を払うことによって、高齢化された配偶者が、今までの家に住み、なおかつ生活費としての足しとなる代償金を受け取る。そして、不動産を相続した人間も、将来その不動産というものが自分のものであるということで相続税も優遇されるという話も聞いておりますので、そういう意味では、そういう活用というのが今後大いに利用されるのではないかなと思っているわけです。

 さて、質問をさせていただきますが、かなり多く通告をさせていただいたつもりなんですけれども、いつも私は最後なものですから、かなりの重複の部分が出てきてしまいますので、通告を外れるというか、ちょっと敷衍していくような形なんですけれども、おわかりの範囲内でお答えをいただきたいと思うんです。

 まず一つ、これは配偶者だけが住むというような形が想定されているんですけれども、例えば、長男が不動産を相続をして、そして残された、今の寿命から考えるとお母さんが多いのかなとは思うんですけれども、次男がお母さんと同居して住むような場合、この場合には、配偶者居住権としてそのままでいいのか、あるいは、次男が住むということでこの規定の適用というのは変わってくるのか。これはちょっと通告はないんですけれども、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のケース、具体的なケースにおいて、お母さんと次男の方がどういう使い方をするのかということにもよろうかと思いますが、一般的には、お母さんの居住権のもとで次男が住むということになりますと、いわば占有補助者というような扱いになりますれば、次男の方が同居していたとしても、それはやはり配偶者が居住しているということで、配偶者居住権のその成否には影響は与えないということになるのではないかというふうに考えます。

串田委員 次に、例えばお菓子屋さんを経営している店舗、店舗兼居住。例えば、一階がお菓子屋さん、私の親類もそういう親類がいるものですから、一階がお菓子屋さんで二階が居住しているところの場合。この場合も、お菓子屋さんは夫婦でやっていたんですけれども、片方が亡くなられて、もう一方の方はお菓子を売るぐらいはできるわけですけれども、一階がお菓子屋さん、二階が居住している、この場合には、お菓子屋さんの部分もまたこれによって利用できるという理解でよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 配偶者が無償で居住していたのが建物の一部にすぎない場合でも成立するということとしております。したがいまして、配偶者が居住建物において何らかのお店を営んでいたというような場合には、その営業も配偶者の生活の一部になっていたと考えられますので、そういった生活環境の急激な変化を緩和する必要性があることには変わりはございません。

 そのため、配偶者居住権につきましては、その配偶者の居住部分だけではなくて、配偶者が無償で使用していた全ての部分に及ぶ、こういう形で配偶者居住権を設定するということも可能であるというふうに考えております。

串田委員 それでは、家の前の貸し駐車場はどうかとか、それもちょっと聞きたい、問題もあるとは思うんですが、これもちょっと通告がないので、今回はしないことにしたいと思いますが。

 例えば、固定資産税というのは、先ほどちょっとお答えがあったんですけれども、建物が何らかの形で修理をしなければいけない場合、その修理費用というのはどちらが負担することになるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 通常の使用に伴う損耗ですとか損傷ですとか、そういった通常の利用に伴うものについての修理につきましては、これは、配偶者居住権者、居住権を有している者の方が負担するということでございます。

串田委員 例えば、土地収用法による収用とか、大規模開発によって明渡しによる明渡し料が払われる場合に、配偶者居住権を行使している配偶者は、何らかの恩恵というか、補償金の対象者になるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 配偶者居住権を有している者もそういったような対象になるというふうに理解しております。

串田委員 今度、対抗要件について先ほど別の委員の方から質問がありましたが、対抗要件を備えていないことによって第三者が取得をするという場合に、そもそも、遺産分割で相続税も優遇されて所有権を取得したにもかかわらず第三者に処分をするということは、遺産分割による相続人関係での話との間で、ある意味で違反するわけですね。それによって、配偶者居住権というものを本来登記しておけばよかったんでしょうけれども、しないことによって対抗できない場合、この場合には、その配偶者は、所有権を取得して処分をした人間に対して損害賠償を請求することはできるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 配偶者居住権につきましては、これは所有者との間の法定の債権ということになりますので、配偶者が亡くなるまでの間あるいは一定期間、配偶者に使用をさせる、こういった義務があるわけでございますので、そういった義務に違反して第三者に処分して、結果として配偶者が居住することができなくなったという場合には、債務不履行の責任を負い得るということかと思います。

串田委員 次に、例えば、その不動産がローンが設定されていたというような場合、抵当権が設定されていたというような場合に、配偶者居住権で居住をしていても所有者がローンを払わない状況の場合、これは先ほどの話の中では、恐らく、今の前の質問からすると、払わないで競売にかけられた場合は債務不履行ということになるんだと思うんですが、ローンを返済しない場合に、競売を避けようという方法というのは配偶者にはあるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 例えば、配偶者居住権の設定の前にもう既に抵当権が登記されている、こういうようなケースですと、やはり、配偶者としまして競売を防ぐということになりますと、第三者弁済といいますか、ローンをみずからかわって払うということが考えられるかと思います。

串田委員 重複していたものですから、今ずっと通告のない質問をさせていただいたんですけれども、大変わかりやすい回答をいただいたと思います。

 次に、今度、遺言書の保管に関してちょっとお聞きをしたいんですけれども、遺言書の保管方法なんですが、預ける方法ということで、誰が預けることができるのか、あるいは郵送とか、そういう手段もあるのかということをお聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書の保管法におきましては、遺言書の方は、遺言者本人が、遺言書保管官の方、法務局の方にみずから出頭するということが必要でございますので、郵送ですとかあるいは他人に託すということはできないということでございます。

串田委員 一方、今度は、亡くなられて相続が開始したときの原本を受け取りに行く人というのは、どういう要件が必要になってくるでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 その遺言書の写しを交付ということになるわけでございますが、遺言書情報証明書というふうにこの法案では申しております、これにつきましては、例えば当該遺言書の保管を申請した遺言者の相続人ですとか、あるいはこの遺言書に記載された遺言執行者ですとか、あるいはその認知された子ですとか、そういったその遺言書に関係する人たち、そういった方々がこういった遺言書情報証明書の交付を求めることができるという形にしております。

串田委員 そうしますと、ちょっと心配なのは、例えば、今まで、銀行の場合には、相続人全員が実印と印鑑証明をつけないとおろせない、そういうような相続人全員の承諾が必要なわけですけれども、今回の場合というのは、相続人が一人でも、どんな相続分であったとしても、原本を受け取ってこられるということでよろしいんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 相続人の方は原本を受け取ることはできないのでございまして、あくまでも原本の写しでございます。

 相続人の方は、やはり自分の被相続人がどのような遺言をしているのかというのは、これは相続人にとりましては利害関係があることでございますので、そういった写しの方は単独でもとれるということにしているものでございます。

串田委員 そうしますと、今度は、原本というものの書式、どんな大きさなのかというので、法律的にはどうも定めがないみたいなんですけれども、実務では何らかの形で書式というものを決めておかないと、すごい、巻物みたいな遺言書が渡されるということもあるかと思うんですが、その点についてはどういったようなことを取り決めていくのかということをお話し願います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この遺言書の保管法におきましては、保管の申請をすることができる遺言書について、「法務省令で定める様式に従って作成した無封のものでなければならない。」ということにしております。

 そこで、今後、法務省令におきましてこの遺言書の用紙の大きさ等を規定することを予定しております。

 これは、御指摘のとおり、用紙の大きさ等の一定の様式を満たすこと、あるいは無封であることを要件とすることによりまして、遺言書の保管事務あるいはその画像情報を記録する事務を円滑に実施することを可能にするためのものでございます。

串田委員 そうであるなら、例えば、法務省の中にダウンロードできるようなものを用意して、書式というものを、自分で用意できる人もいるでしょうけれども、そういう省令で定めたものを、合致しているかどうかなんて心配するよりは、今、書式なんてすぐにダウンロードできるわけですから、そういうような制度というのを考えていただけないでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この制度の利用者の利便性を図るというのは非常に重要な御指摘でございます。

 この遺言書保管法におきましては、先ほど申し上げましたとおり、法務省令で定める様式に従って作成していただくことになりますが、この様式につきましては、その利用者の利便性等の観点から、遺言者が容易に把握できるようにする、そういったことで、サンプルデータのダウンロードを可能にすることも含めまして、効果的な方策を検討してまいりたいというふうに考えております。

串田委員 最後になりましたが、法務省における今までの法案とかも含めまして、今回、いよいよ閉会に近くなってきているわけですけれども、今までの法案というのは非常に、法務省の法案は、私から見るとすごくいい法案というか、よく行き届いているなというふうに思っているんですが、一方、遺言制度というのを活用するということもひとつ大事だと思うので、その点について、最後、大臣から所感をお願いしたいと思います。

上川国務大臣 この相続に関する一連の手続、またその適正な運用、そして、それは何よりも国民の皆さんのそれぞれの事情に応じてしっかりと利用していただくということが本旨でございます。

 国民の皆様に最大限利用していただくための対応策ということについては、啓蒙啓発も含めまして、また、利用しやすい方法ということもあわせて、しっかりと検討し、そして提供してまいりたいというふうに考えております。

串田委員 せっかくいい法案であっても、それが知られていなければ非常に宝の持ち腐れになってしまいますので、ぜひ周知徹底をお願いをしたいと思います。

 ありがとうございました。

平口委員長 次回は、来る十三日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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