衆議院

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第21号 平成30年6月15日(金曜日)

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平成三十年六月十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 大塚  拓君 理事 門  博文君

   理事 田所 嘉徳君 理事 藤原  崇君

   理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君

   理事 源馬謙太郎君 理事 國重  徹君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      上野 宏史君    鬼木  誠君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      木村 次郎君    城内  実君

      黄川田仁志君    小林 茂樹君

      杉田 水脈君    鈴木 憲和君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      鳩山 二郎君    古川  康君

      古田 圭一君    星野 剛士君

      三浦  靖君    山下 貴司君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      高木錬太郎君    長尾 秀樹君

      松田  功君    松平 浩一君

      階   猛君    柚木 道義君

      大口 善徳君    黒岩 宇洋君

      藤野 保史君    串田 誠一君

      重徳 和彦君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      山下 貴司君

   最高裁判所事務総局刑事局長            安東  章君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    辻  裕教君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 田島 淳志君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    山名 規雄君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     星野 剛士君

  菅家 一郎君     木村 次郎君

  谷川 とむ君     鳩山 二郎君

  中曽根康隆君     三浦  靖君

  古川  康君     杉田 水脈君

  松田  功君     高木錬太郎君

  松平 浩一君     長尾 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     鈴木 憲和君

  杉田 水脈君     古田 圭一君

  鳩山 二郎君     谷川 とむ君

  星野 剛士君     安藤  裕君

  三浦  靖君     中曽根康隆君

  高木錬太郎君     松田  功君

  長尾 秀樹君     松平 浩一君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 憲和君     菅家 一郎君

  古田 圭一君     古川  康君

    ―――――――――――――

六月十四日

 共謀罪(テロ等準備罪)を即時廃止することに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二五〇四号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二五〇五号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二五〇六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二六〇二号)

 同(中島克仁君紹介)(第二六〇三号)

 同(長尾秀樹君紹介)(第二六〇四号)

 同(津村啓介君紹介)(第二六九二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二六九三号)

 同(下条みつ君紹介)(第二七六一号)

 同(森山浩行君紹介)(第二七六二号)

 民法・戸籍法の差別的規定の廃止等に関する請願(畑野君枝君紹介)(第二六〇〇号)

 共謀罪法の廃止に関する請願(畑野君枝君紹介)(第二六〇一号)

 同(末松義規君紹介)(第二七五八号)

 同(中谷一馬君紹介)(第二七五九号)

 民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正を求めることに関する請願(山尾志桜里君紹介)(第二六〇五号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二七六三号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(近藤昭一君紹介)(第二六九〇号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(近藤昭一君紹介)(第二六九一号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(黒岩宇洋君紹介)(第二七六〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)

 法務局における遺言書の保管等に関する法律案(内閣提出第五九号)


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び法務局における遺言書の保管等に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官小田部耕治君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長辻裕教君、財務省大臣官房審議官田島淳志君及び国税庁課税部長山名規雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長安東章君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。門博文君。

門委員 おはようございます。自由民主党の門博文でございます。

 本日は、相続に関係する法律について質問をさせていただきたいと思います。

 人がお亡くなりになりますと相続が発生をいたします。私自身はまだこの相続というものを体験したことがありませんけれども、これは人生においてほとんどの方々が体験することであります。しかし、また、その反面、何度も体験することではないとも思います。

 相続は、故人の、お亡くなりになられた方の債権と債務を引き継いでいくというものでありますけれども、昨今は、この相続、遺産分割に関係して新しい問題も発生をしております。所有者不明土地という問題であります。

 私も、先般、この件に関しまして、国土交通委員会の法案審査で質疑をさせていただきました。この場合は、不動産の相続手続が何らかの理由で行われておらず、現在の所有者がわからないので、さまざまな場面で問題が発生するというものでありますけれども、そもそも、先ほど申し上げたように、人生において何度も体験することがない相続であるからこそ、より多くの方々が正しく理解をし、そして正しく手続をしていくためにも、また、その手続はできるだけ面倒な手続にならないように、本改正も含めて、法務省には今後も努力を続けていただきたいことをまず最初に申し上げたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず最初にですけれども、そもそも、相続をしなければならないという、このことの法的な根拠を改めて御説明をいただけますでしょうか。また、あわせて、全死亡者、全てお亡くなりになる方を分母にした場合に、相続をしなければならないケースはどのくらいの割合になるかも教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 民法八百九十六条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」としておりまして、被相続人が死亡すると同時に、被相続人が有していた権利及び義務は、その相続人がこれを包括的に承継することになります。

 したがいまして、被相続人が権利を一切有しておらず、義務も全く負担していなかったという極めて例外的な場合を除けば、例えば相続人が複数おって遺産分割の手続が必要となるかどうか、こういったことはともかくといたしまして、人が亡くなると相続による承継が生じるものと考えられます。

門委員 ありがとうございます。

 今お答えいただきましたように、遺産分割手続をするかどうかは別として、どなたかがお亡くなりになると、基本的にはほとんどの方が相続をしなければならないということを改めて確認をさせていただきました。

 それでは、次の質問に移ります。

 先ほど申し上げましたように、所有者不明土地の問題が今注目をされております。

 いろいろな事情があって相続手続がなされていない土地や建物の問題でありますが、なぜこういうことが起こるのか。私なりにこの原因を考えましたところ、その原因の一端に、相続の期限ということがあるのではないかということを考えました。

 この相続の期限について、法律ではどのように定められているのか、重ねてお答えをいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました民法の規定によりますと、相続人は被相続人が死亡すると同時に被相続人が有していた権利義務を包括的に承継することとなりまして、このような効果の発生のために相続人に何らかの行為が必要になるわけではございません。このように、相続人による被相続人の権利義務の承継は相続開始と同時に生ずるため、期限というものを観念することができないわけでございます。

 他方で、遺産分割の協議ですとか裁判所に対する遺産分割の請求については、これは理屈の上では、法律上、一定の期限を設けることも考えられますが、現行法のもとでは、これらの点についても期限は設けられておらず、相続人はいつでも遺産分割の協議をすることができますし、その協議が調わない場合には裁判所に遺産分割の請求をすることができるとなっております。

門委員 ありがとうございます。わかりました。

 特に、今御答弁いただきましたように、期限の定めがないということでありますけれども、私はやはり期限を設けた方がよいのではないかというふうにも思います。

 この質問をするに当たりまして、財務省に相続税についてお話を聞かせていただきました。

 お手元に参考資料をお配りをさせていただいておりますけれども、この裏面の下に、申告と納税、「相続税の申告・納税」というところに書いておりますけれども、基礎控除額を超える場合のみ相続税の課税対象になるということで、その申告納税の期限は、通常、被相続人が死亡した日の翌日から十カ月以内に相続税を納めなければならないということで期限が設けられています。

 ちなみに、この相続税が課税されるケースは相続全体の八%ということも伺いました。ということは、逆に、九割の相続に関しては何らの期限も設けられていないということになります。

 現金や預貯金は比較的早く手続をする傾向にあるような気がしますけれども、不動産については、特に地方では、最近、不動産そのものに対する経済的価値の変貌が生じており、これからますます相続に対する認識が変わってくると思われます。

 土地でも建物でも、値打ちがあるものは早く相続しようとしますけれども、その一方、固定資産税を払うだけでほとんど不動産としての価値が認められないものに関しては、ためらうのもこれはまた人情ではないかと思います。

 繰り返しになりますけれども、預貯金は早く相続手続をするけれども、登記などの手続が伴う不動産についてはほったらかし、そんな中で、新たな所有者不明土地を発生させないためにも、相続の期限という考え方は私は必要だと思います。本来、真面目で勤勉と言われている日本人なのですから、期限があれば必ずそれを守ろうとすると思いますので、ぜひ今後、その期限についても御検討いただきたいと思います。

 次に、法律の中身についてお伺いいたします。

 まずは、預貯金債権の仮払い制度について、家庭裁判所の判断を経ずに払戻しが得られる制度が創設されるということについてであります。

 お亡くなりになった方の口座から葬儀の費用などを引き出そうと金融機関の窓口に赴いたが、引き出せずに大変困ったというお話を地元でも何度か伺ったことがあります。当家、当事者としては、親族が亡くなり、大変取り込んでいるさなかに、お葬式の費用を引き出そうにも引き出せない、必要なお金が手元にないということは、不安で、当事者のお気持ちを察すれば、このようなケースは本当に深刻な問題だと思います。

 そこで、今回のこの制度の創設は、まさにこのような困った状況を改善するためには本当にすばらしいことだと思います。

 ただ、そこで改めて確認をさせていただきたいのは、その手続であります。必要な確認事項等はあるにせよ、基本的には簡便なものであるのかどうかという点、そして、果たして金融機関の窓口でスムーズにその対応をしてくれるのかどうか、この点について、金融機関との調整や準備の状況についても、あわせてお聞かせいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年の判例変更によりまして、預貯金債権が遺産分割の対象に含まれることとなりました結果、遺産分割がされるまでは各共同相続人が単独で預貯金債権の払戻しを受けることができないこととなったということでございます。

 そこで、この法律案では、遺産に含まれる預貯金債権のうち一定額については、各共同相続人が裁判所の判断を経ることなく、単独でその払戻しを請求することができる制度を設けたものでございます。

 この制度に基づきまして金融機関に対して払戻しを請求するためには、被相続人が死亡した事実、相続人の範囲、それから払戻しを求める法定相続分がわかる資料を提出していただく必要がございます。具体的には、これらの事実を証します戸籍や法定相続情報証明書がこれに該当することと考えられますが、共同相続人であれば比較的容易に入手することができるものでありまして、その手続は基本的に容易なものであると考えております。

 この制度を立案するに当たりましては、銀行業界との間で十分な意見交換や調整を行っておりますが、この制度が円滑に施行されるためには、金融機関の窓口業務担当者に制度内容が十分に周知されることも必要であると考えております。本法律案の施行までに金融機関の担当者に十分理解していただけるように、関係各方面と協力して制度の周知に努めてまいりたいと考えております。

門委員 ぜひ、その準備を周到にお願いをしたいと思います。

 地域によっては、自宅から金融機関、金融機関も今窓口がどんどんどんどん少なくなってきておりまして、金融機関の窓口までの距離が皆さんの想像を超えるほど遠いところも実際あります。この制度でお金を引き出せるということで窓口に行ったはいいけれども、書類が足りないとか判こが足りないとかということになって、何度も足を運ばなければならないようなことがあったら、まさに取り込んでいる最中ですので、そういうことは大変困窮をきわめると思いますので、ぜひ、その点、よろしくお願いしたいと思います。

 それと、時間がなくなってまいりましたので最後の質問をさせていただくんですけれども、その前に、今の質問に関連して、家庭裁判所でまた手続ができるということも重ねてこの法律の中で織り込んでいただいていますけれども、今申し上げたように、金融機関との距離感もそうですけれども、家庭裁判所へ手続しに行くということになりますと、また地方の人にとったら、一体全体、自分の近くの家庭裁判所ってどこやったんやろうかとか、そういう問題もありますので、その辺もよくしんしゃくをしていただいて準備をしていただいて、せっかく制度が変わるんですから、より多くの方々が正しく理解をして、正しくこれを活用できるようにしていただきたいと思います。

 最後に、大臣にちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回の改正は、時代の変化に伴って発生している問題や、時代の変化によって可能になった新しい方法などを導入することで、非常に時宜を得たものであると思います。ぜひ、このように変化に敏感な対応をしていただいて、引き続きお願いをしたいと思いますけれども、また、これから、御承知のように、私たちのこの国日本では、お亡くなりになる方々が大変多くなる時代を迎えます。冒頭にも確認させていただきましたように、相続はほとんどの方々がしなければならないものでありながら、人生において再三経験するものではありません。そして、その手続をする窓口も、今も申し上げましたように、ふだんの生活にはめったに訪れたことがない家庭裁判所であったり、地方法務局であったり、一般の方からすると特別な感じもいたします。

 これから相続手続がスムーズに行われるようにとの思いで今回の改正もあると思いますが、その延長線上で、身近に相続を知り、そして、できれば、なじみのある窓口、例えば市役所や町村役場、そして区役所などの窓口でも、何らかの役割を果たしてもらってもいいのではないかと私は思っています。また、専門家、いわゆる弁護士さんや司法書士さん、そういう方々にも気軽に依頼できる環境もあわせて整えていただきたいと思います。

 最後に、この相続のあり方、改善という点について大臣から御見解をお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

上川国務大臣 相続制度は、被相続人の財産を誰に、またどのように承継させるかを定めるものでございまして、国民の皆様の権利義務に関する大変重要でかつ基本的な制度でございます。

 本法律案につきましては、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化、これに対応して相続制度を改めようとするものでございまして、大変重要な意義があるというふうに思っております。

 今後も、相続法制につきましては、社会経済情勢の変化、特に、多様な家族のあり方に関する状況等につきましても注視をしつつ、必要に応じて、さらなる対応の要否等につきましても検討してまいりたいというふうに考えております。

門委員 ありがとうございました。

 ぜひ、繰り返しますけれども、人生において何度も体験することではありませんけれども、大切な手続だというふうに思いますので、今後も鋭意お取り組みいただくことをお願いして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹でございます。

 前回、自筆証書遺言に係る保管制度について御質問をさせていただきました。

 私は、遺言書というのは、遺族間の争いを防ぐ意味でも非常に大きな効果があると思っております。今般の法改正を機に、この遺言書の活用というのを更に広げていっていただきたいというふうに思います。

 前回に引き続き、自筆証書遺言に係る保管制度について、この運用について混乱が生じないように、ちょっと実務的な観点から何点か質問をさせていただきたいと思います。

 今回の遺言書保管法案では、相続人の一人が法務局から遺言書情報証明書の交付を受けたり、また遺言書の閲覧をした場合には、法務局は、他の相続人や受遺者、遺言執行者に対して、遺言書を保管している旨通知することとされております。

 もっとも、遺言者が法務局に遺言書の保管を申請する際に遺言書に添える申請書には、受遺者や遺言執行者の氏名や住所が記載されることと法文上なっておりますけれども、相続人の住所については記載することとされておりません。

 このような中で、法務局は他の相続人の住所についてどのように把握するのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書保管法案では、例えば、遺言者の相続人の一人が遺言書情報証明書の交付請求や遺言書の閲覧請求をする際の請求書の記載事項等につきましては、法務省令で定めることとしておりますけれども、この請求書には、ほかの相続人の住所を記載していただくことを想定しております。また、その住所に宛てても通知ができなかったときは、住民票の写しを添付書類として提出していただくことも想定しております。

 このような情報に基づきまして、遺言書保管官が通知すべき者及びその通知先を把握することとしております。

國重委員 場合によっては住民票を添付するということでありました。

 ただ、請求書に他の相続人の住所を請求をした相続人が書くとしても、まず大前提として相続人の範囲を確定する必要があるので、被相続人の生まれてから死ぬまでの連続した戸籍謄本等も添付する必要があると思いますけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

 済みません、これは質問通告していませんでしたけれども、更問いでお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のとおり、戸籍謄本等の書面を添付するということを考えております。

國重委員 そのようなものを添付しないと、本当の相続人に届いたかどうかというのは判断できないと思いますので、やはり必要なんであろうというふうに思います。

 続きまして、ちょっと一問飛ばします。

 遺言書に添える申請書、遺言者が法務局に自筆証書遺言を保管する際の遺言書に添える申請書には、先ほど申し上げましたとおり、受遺者や遺言執行者の氏名又は名称、住所を記載することとされております。そして、この受遺者は、相続人以外の第三者である場合もあり得ます。

 もっとも、申請書に記載をされる住所に誤記があった場合、間違いがあった場合、法務局からの通知が届かないことになりますけれども、この住所の正確性はどのように確保するんでしょうか。

 法文上、遺言者の氏名、出生年月日、住所や本籍については証明書類が必要と明確に定められております。四条五項で書かれております。ただ、一方で、受遺者や遺言執行者の住所に関する証明書類が必要なのかどうか、これは法文上明らかになっておりません。法務省令で定められることになっております。

 確かに、この自筆証書遺言に係る遺言書のメリットというのは、特別の費用もかからない、簡便につくれる、自由度が高い、こういうメリットはありますけれども、他方で、やはり、今回の遺言書の保管制度においては、通知するということも予定をされている以上、私は、受遺者や遺言執行者の住民票の添付を事前に、申請する段階で添付を必要とした方がいいと考えますけれども、これについての見解を伺います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この法律案の第四条の第五項におきましては、「その他法務省令で定める書類を添付しなければならない。」というふうにされております。

 保管の申請に係る遺言書に受遺者又は遺言執行者の記載がある場合には、その特定や住所の把握等の観点から、その添付書類として、これらの者の氏名又は名称及び住所を確認する書類、例えば自然人であれば住民票の提出を求めることを検討しております。

國重委員 これも住民票の添付を予定しているということでありました。

 では、次の質問に移ります。

 遺言書の保管を申請した後に受遺者や遺言執行者が転居をした場合、引っ越しをした場合、法務局からの通知がそれらの者に届かないことになります。この場合、通知をするために転居先の調査は行うことになるんでしょうか。調査するとした場合、その義務は、一体誰が負担するのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書の保管申請がされた後に受遺者や遺言執行者が転居した場合において、法務局がこれらの者に対して通知を行うために、その通知先を把握する仕組みといたしましては、遺言書情報証明書の交付請求や遺言書の閲覧請求をした請求者にその住所を明らかにする書面を提出させること、あるいは、遺言書保管官が職権で住民票上の住所の変更を調査することなどが考えられるところでございます。

 いずれの仕組みとするかにつきましては、今後、下位法令を定める中で検討してまいりたいというふうに考えております。

國重委員 今後考えていくということでありますが、交付請求をした相続人の一人にすぎない人が、場合によっては、相続人が複雑な場合は六十人とか百人とかいる場合もありまして、極端な例ですけれども、そういう場合にまで、単に請求を申請したにすぎない相続人の一人にそこまでの負担を負わせるのもなかなか酷かなとも思いますし、法務局が負うのかどうなのか、ここはしっかりと検討しないといけないことだと思っております。

 次の質問に移ります。

 では、先ほどの、転居した場合、請求人なのか、法務局が職権で請求をして調査をするのか、いずれか今後検討するということでありましたけれども、この調査はどの程度まで行う必要があるんでしょうか。転居したけれども住民票を移さないケースもあります。

 例えば、訴状が届かない場合、公示送達をする、それに際して、私も実務家のときにやったことがありますけれども、現地まで行って、メーターが動いているのか動いていないのかとか、郵便ポストに郵便物が入っているのかとか、近隣からの聞き取りとか、こういうようなことをして調査報告書というのを提出しておりましたけれども、こういうような公示送達の際に行う調査のようなものまで必要なのか。九条五項等との関係で、法務局がどこまでの役割を負うのか。この線引きをある程度明らかにしておかないと、後で国家賠償請求の問題にもなりかねないと思っております。

 この点についてお伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法案の九条五項におきましては、遺言書保管官が速やかに相続人や受遺者等への通知をするものとすることを規定しておりますが、これは、証明書の交付請求者等や法務局に、調査のために特別のコストをかけてまで必ず通知しなければならないことを規定するものではございません。

 したがいまして、受遺者や遺言執行者の住所の移転が住民票に反映されていないような場合にまで法務局にこれらの者の住所を調査する義務を負わせるものではございません。

國重委員 わかりました。

 では、次の質問に移ります。

 自筆証書遺言に係る遺言書の保管を法務局に申請する際には、遺言者がみずから出頭して行わなければならないと四条六項に定められております。

 では、この場合、付添人が一緒についてきても、例えば遺言者が車椅子に乗っていて、付添人が引っ張ってきて、法務局、遺言書保管官ですかね、この方に提出する、同席していて問題ないのかどうか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言者は、付添人の方がおられましても、みずから御出頭されていれば保管の申請をすることは可能でございます。

國重委員 付添人がいても問題がないということでありました。

 では、先ほどのように遺言者と付添人が法務局に出頭したケースで、遺言者の遺言能力に問題なしとはちょっと言い切れないんじゃないか、少し遺言能力が疑わしいんじゃないかと思われるような場合、車椅子で単に連れてこられて、余り意思表示も、少しはできているんだけれども、ちょっとこれは怪しいかなと思うような場合、遺言書保管官というのは遺言者の遺言能力について何らかのチェックは行うことになるんでしょうか、どうなんでしょうか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書保管官は、遺言者の遺言能力を審査することとはされておりません。

 もっとも、遺言者が保管の申請をするときは、遺言書保管所にみずから出頭して行わなければならないこととしておりまして、遺言者は必ず遺言書保管官と本人確認等のやりとりをすることとなりますので、遺言書保管所に遺言書が保管されていれば、少なくとも保管の申請があった時点で、遺言者が一見して意思能力を欠くような状態にはなかったことが事実上推認されるというふうに考えております。

國重委員 ということは、遺言書保管官は、遺言者が遺言能力がないというような場合には、その保管申請を受け付けないということでよろしいんでしょうか。受け付けたということは事実上遺言能力があったと推認されるということであれば、その段階で保管を拒絶するということになるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、遺言書保管官は遺言能力を審査することはいたしませんが、本人確認ができるかどうか、また申請の意思があるかどうかというところはチェックいたしますので、そういった、本人確認もできない、また申請の意思も欠くと認められるような場合には、保管を受け付けることはできないということになろうかと思います。

國重委員 では、公正証書遺言のことについて若干お伺いします。

 自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度と比べた場合の公正証書遺言の遺言書のメリットは何なのかというところで、法律専門家である公証人の関与のもとで、証人二人以上の立会い、口授や読み聞かせなど厳格な方式に従って公正証書遺言は作成されることになっている。そのため、遺言者の死亡後、遺言の内容や有効性について紛争が生ずるおそれがより少ないというメリットがある。また、遺言者は、法律専門家である公証人の助言を受けながら遺言書を作成することができるため、その最終意思を的確に反映した遺言書を作成することができるという利点もある。また、それ以外に、遺言書の内容について事前に相談できるというようなメリットもあるということを、法務省とのやりとりの中でそういうことをお伺いいたしました。

 では、公証役場における遺言内容の相談というのは、これは無償なんでしょうか、有償なんでしょうか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 公証人に対して遺言公正証書の作成を嘱託するに当たりましては、作成する遺言の内容に関する相談は無料で受けることができます。

國重委員 そうすると、今回の自筆証書遺言に係る遺言書は、法務局では形式チェックをする。人によっては、公証役場に行って先に遺言の内容を相談をして、結局そこでは公正証書はつくらない、法務局に後で行って自筆証書遺言の保管を申請するということも、場合によってはあり得るかというふうに思います。またこのあたりについても少し考えていかないといけないなと思うところであります。

 最後に、上川大臣にお伺いいたします。

 今回の自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度が導入されることになりましたら、法務局の業務量は非常にふえてくることが予想されます。これについて、今の公正証書遺言であれば公証役場から何か通知したりする必要はないですけれども、今後、通知が必要になってきて、この通知が例えば過失で届かないとかいろいろなことになれば、後で大きな問題にもなりかねないので、非常に業務量がふえるんじゃないかなというふうにも思います。

 このあたりについて、マンパワーの増加とかいうことについてどのようにお考えか、最後にお伺いいたします。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、この自筆証書遺言の保管制度が導入された場合に、遺言書の保管及び情報の管理に関する業務が新たに発生するということが見込まれるわけでございます。

 法務省といたしましては、業務量をしっかりと踏まえて、この制度実施に当たりましては、適切な体制のもとで対応してまいりたいというふうに考えております。

國重委員 法定相続情報証明制度とかいろいろな業務が法務局にかぶさってくることになりますので、ぜひマンパワーの件もよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、松平浩一君。

松平委員 どうも、おはようございます。立憲民主党の松平浩一です。

 終活ブームという言葉、皆さんも聞いたことがあるのではないかと思います。シュウカツといっても、就職活動の方ではなくて、終わるに活動するという方で、どのように死を迎えたいか、そういうことを元気なうちに考えておこうという意味合いのようです。

 この終活ブームという影響なのかどうか、日本財団が、遺贈に関する調査ということで、二〇一六年の三月に、全国、四十歳以上の個人二千五百二十一人への調査を行っています。

 これは、資料一を御用意させていただきました。これの最初の円グラフなんですけれども、オレンジの部分五八・〇%と、青の部分三・二%、これを足した六一・二%、すなわち約三分の一、三人に一人が遺言書の作成は必要というふうに考えているということがわかるんです。三人に一人が遺言書の作成が必要だとわかっている。それでいて、「既に準備をしている」、この青の部分というのが三・二%、全員のうち三・二%しかいない、実際に作成しているのは。

 これは、実際に作成している率、非常に低い印象がするんですね。遺言書があると、遺産をめぐる争いというものを減らすことができる。したがって、この作成率をもうちょっと上げる必要があるのかなというふうに思います。

 実際、現在使われている遺言書として、大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言というものがあります。ちょっと裏を、資料をめくっていただくと、資料二というのがあります。これは法務省の資料なんですけれども、ここの真ん中のちょっと下に「平成二十七年の統計」とありまして、公正証書遺言の作成件数というのが十一万七十八件となっています。それで、その下に、自筆証書遺言の検認件数が一万六千八百八十八件というふうになっています。これは、自筆証書遺言の場合は作成数というのはカウントできないので、検認申請数になっているんですけれども、この件数の差を見ると、公正証書遺言が圧倒的に多くて、自筆証書遺言の数が六分の一弱しかないわけです。

 この資料のちょっと上を見ると、「自筆証書遺言と公正証書遺言の関係」というところで、自筆証書遺言の利用者のタイプとして三つ書かれていまして、一番下のところ、「手軽に遺言書を作成したい人」と書いてあるんですね。つまり、自筆証書遺言をどういう人が利用するかというと、手軽に作成したい人が利用するということなんですよね。

 とすると、この数字、先ほどの数字、これは本来であれば逆じゃないといけない。つまり、この自筆証書遺言をもっと利用しなければいけないということになるんですけれども、今回の改正、そういった趣旨だと思うんですけれども、ちょっと簡単に内容を御説明していただいてよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案におきましては、自筆証書遺言に関する改正といたしまして、自筆証書遺言の方式を緩和し、自筆証書に財産目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しないこととしております。また、法務局において、自筆証書遺言を保管する制度を創設することとしております。

 遺言は、遺産の分割方法等に関する被相続人の最終意思を明らかにするものでありまして、その利用を促進することは、基本的に、被相続人の最終意思を尊重し、遺産の分割をめぐる紛争を防止する観点から望ましいものと考えておりまして、先ほどの見直しは、いずれもこのような観点から行うものでございます。

松平委員 今のお答えですけれども、もうちょっと具体的に、どういった観点からの自筆証書遺言の利用の促進についての内容か、教えてもらってもいいですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今、社会が高齢化しております。そういうことで、遺言を作成する方、自筆証書をつくろうとする方も高齢化が進んでいるというところがございます。

 現在の現行法では、この自筆証書遺言につきましては、その全文を自書しなければいけないということになっておりますが、例えば不動産がたくさんあるような場合あるいは預金がたくさんあるような場合に、そういったものを特定する財産目録を全て自書するというのは、かなり手間がかかることでございます。そういう点で、そういった財産目録につきましては自書することを要しない。例えば、ワープロで作成するですとか、あるいはそういった何らかのコピーを利用するですとか、そういうことができますと、自筆証書の作成に対する負担が減るということになるわけでございます。

 また、自筆証書遺言につきましては、それを自宅において保管するということが多いかと思いますけれども、そうしますと、その遺言書が紛失してしまったりですとか、あるいは改ざんがされるといったような、紛争が起きる可能性がございます。そういったところで、自筆証書を保管する制度を創設することにして、そのような紛争を防止するということができますれば、より自筆証書遺言が利用しやすくなるのではないか、こういう趣旨の改正でございます。

松平委員 今おっしゃった一つ目の点ですね、自筆証書遺言の目録、パソコンの作成でよくなったということなんですが、やはりあくまでこれは署名押印が要るということになると思うんですね。この両方を必要とする。

 私としては、これは署名だけでもいいのではないかなと思ったりもするんです。今や押印なしで契約もできる時代で、本人認証という方法も時代の流れとともに変わってきている。押印といっても、遺言について利害関係のある人というのは同じ氏を持つ人が多いので、同じ印鑑を持っているんじゃないかなと思うんですね。何でここで押印まで要求する必要があるのかなということを、ちょっと御説明願いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、本法律案では、自筆証書遺言の利用を促進する観点から、財産目録について自書を要求しないこととして要件を緩和しておりますけれども、他方で、自筆証書遺言の方式緩和により偽造や変造の危険性が高まることのないよう、自書にかわる方法を講ずることが必要となってまいります。このような観点から、本法律案では、自筆証書に自書によらない財産目録を添付する場合には、その目録の毎葉に署名及び押印をしなければならないこととしたものでございます。

 確かに、法制審議会におきましても、御指摘のとおり、署名のみでその真正性は確保できるのではないか、こういった観点から、署名のみを要件としてはいかがか、こういった意見も出たところではございます。

 しかしながら、この法律案におきまして押印も要求することといたしましたのは、我が国の社会では、書面が名義人によって真正に作成されたことを証する手段として押印が重要な役割を果たしてきたこと、また、自筆証書遺言の本体については署名及び押印のいずれもが要求されており、これと取扱いを変える必要性に乏しいこと、こういったことを考慮したものでございます。

松平委員 本体と平仄を合わせたということなんでしょうけれども。

 ちょっと時間の関係で次に行きます。

 改正後の九百六十八条三項なんですけれども、こちらは自筆証書遺言を変更する際の手続の話ですけれども、何と書いてあるかといいますと、「加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」というふうになっているんです。

 つまり、これは、訂正して印鑑を押して、余白に訂正した場所を書いて、何文字削除し変更すると書いて、更に署名すると。こういった訂正の仕方というのは、普通の人は知っているのかなというふうに思うんですね。これは、条文を読んでもどういうふうにしたらいいかというのはなかなかわからないと思うんです。

 一般社会で訂正する場合というのは、二重線で訂正場所の上に書いて削除して、そこに訂正印を押して終わりというのが多いと思うんです。ちょっと余りにも厳格に過ぎるのかなというふうな印象がするんです。

 その辺は判例もわかっていて、東京地裁の判例は何と言っているかというと、形式的に要式性の一部に欠陥があるからといって、遺言者の真意に反して遺言訂正の効果を認めないとすると、実質的正義に反するというふうに言っているんですね。最高裁判例もあるんですけれども、つまり、この九百六十八条の改正後三項、現二項なんですが、この変更の仕方について、誤解を恐れずに言うと、厳密に従わなくてもいいというふうに言っているんです。この九百六十八条二項は空文化しているという評価が結構あるんですよね。

 これは、せっかく今回、この九百六十八条二項を、条文をそのまま、内容そのままで九百六十八条三項として、あえて同じ形で残さないでもいいんじゃないかなと思うんです。もう実質上空文化しているし、形式として重過ぎると思うんです。これはいかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この法律案によります改正後の九百六十八条三項は現行の二項と同様の記述でございまして、自筆証書遺言の加除その他の変更は、遺言者において、変更する場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、更にその変更の場所に印を押さなければ効力を生じないこととしております。これは、遺言書の加除その他の変更について厳格な方式を定めて、遺言書が他人によって変造されることを防ぐためでございます。

 御指摘のとおり、裁判例があるということでございますけれども、そこはあくまでも個別具体的なケースに応じて解釈されているものと理解しております。

 現行法の方式が我が国におきます一般的な契約書等の修正方法と比べて厳格なものとなっているということでございますが、これは、遺言書は遺言者の死後にその効力が問題となりますため、遺言書の変更については、その記載自体から遺言者の真意によるものであることを明らかにする必要性が高いこと、あるいは、生前の取引では個々の財産を取引の対象とするのが通常でありますが、遺言においては全財産を対象とする遺贈がされることもあり、類型的に重大な効果を伴うことが多いこと等を考慮したものでございまして、制度として現行法のこの規律を維持することにつきましては相応の合理性があるものと考えております。

松平委員 自筆証書遺言の数が先ほど申し上げたように少ないというところ、ちょっと厳格に過ぎるのかなというところとの関係でもうちょっと考えてもらってもいいのかなというふうに思います。

 自筆証書遺言については、せっかく遺言を書いても、今お話しさせていただいたような形式上の問題だけではなくて、解釈の問題というのも多く生じると聞きます。相続人間で解釈をめぐっての争いというのは多く生じているということで、これに対して、公正証書遺言は、公証人が関与しますので、意味不明な条項ですとか多義的な条項というのはほとんどないというふうに聞きます。したがって、先ほどの資料二の利用者のタイプのところにも書いてありますけれども、複雑な遺言の場合、公正証書遺言を使ってもらった方がいいというふうに思うんです。

 ただ、また資料をちょっと見ていただきたいんですが、裏、めくっていただいて、資料の三、下の部分、これは棒グラフがあるんですけれども、公正証書遺言の件数、平成二十七年まではちゃんと上がってきてはいるんですけれども、よくよく見ると、平成二十六年が十万四千四百九十件、平成二十七年が十一万七百七十八件、平成二十八年が十万五千三百五十件になっているんですね。それで、これは表にはないんですが、新しいアップデートされた数字として平成二十九年があるんですが、こちらが十一万百九十一件となっているんです。つまり、この四年間、横ばいで全然ふえていないんですね。冒頭申しました終活ブームなのにかかわらず、ちょっと伸び悩んでいる。

 これは、私、一つには、公証役場の不便性というものもあると思うんです。心理的な抵抗であるとか、行くことの手間であるとか、あと費用が高いというのがあると思うんです。

 今回の改正で、自筆証書遺言が、写しの証明書を全国の法務局でとれるようになったということで結構便利になったというふうに聞いています。対して、公正証書遺言は、つくった役場じゃないと見れないんですよね。例えば、東京の公証人役場で遺言をつくったとしても、相続人が北海道に住んでいる場合、東京の同じ役場に行かないと謄本がとれないんです。

 今回の改正と同じように、ここを便利にして、謄本交付請求をどこでもできるようにということにならないんでしょうか。いかがでしょう。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、遺言書の保管制度では、遺言書を提出した遺言書保管所に限らず、他の遺言書保管所でも遺言書情報証明書の交付を請求できますが、公正証書遺言につきましては、現状では、遺言者の相続人等は遺言公正証書を作成した公証役場においてのみ公正証書謄本の交付の請求をすることができることとなっております。

 そこで、今後、相続人等が、遺言公正証書を作成した公証役場に行かなくても、全国の最寄りの公証役場に行くことによって遺言公正証書謄本の交付請求をすることができるようにするなどの利便性向上のための新たな方策に関して、その実現の可否及び実現方法について検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

松平委員 ありがとうございます。よろしくお願いしたいと思います。

 あとは費用なんですね。やはり高い印象があります。相続財産にもよるんですが、公正証書遺言をつくる手数料だけで二万円から四万円、五万円とか、かかったりもします。それから、証人も二人必要で、それにもお金がかかる。公証人に出張してもらうと更にお金がかかる。

 こういった手数料については、どういった形でこの金額を決めているんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 公証人の手数料につきましては、公証人が国から給与を受けるものではなく、嘱託人から受ける手数料等のみを収入としていることを踏まえつつ、事務の内容や当事者の受ける利益を基礎として、物価の状況や一般公務員の給与事情等を考慮して政令で定めているものでございます。

 公正証書作成の手数料につきましても、このような考え方により政令で定められているものでございます。

松平委員 なるほど。今の金額は、平成五年に決められたと聞いています。二十五年変わっていないようなので、もうそろそろ、もう一度、今の価格が適正なのかどうかというところを調査してもらってもいいのかなと思います。

 先ほど、決め方として、物価の状況とか何か、いろいろお話しされていたと思うんですが、やはり公正証書遺言をふやすためには、どのくらいの金額だったら人々が使うか、使う人がふえるか、そういう調査もした上で決めてもらえばいいのかなというふうに思います。

 次に、ちょっと遺言から離れて、特別寄与料の親族要件のところに行きたいと思います。特別寄与料の請求者の範囲、こちらが親族に限定されているという件ですね。

 この点について、水曜日の参考人質疑がございました。こちらで、窪田参考人、この親族要件について考え方というものが二つありますということで、どういうふうにおっしゃっていたかというと、審議会で、考え方は明確に対立していて、一つは、清算ということを貫いていこうという考え方、もう一つは、相続の枠組みに持ち込むべきではないという考え方があったというふうにおっしゃっています。

 そういう考え方があるということで、私、じゃ、親族に限定した理由は何なのかなと思って、六月八日の法務委員会の小野瀬参考人からの回答の議事録を読み返しますと、理由として、簡単に言うと、一つ目が、紛争の複雑化、長期化を避けるというもの、二つ目が、被相続人と報酬契約締結をすることが困難な近しい関係にある者を保護するといったものだと認識しました。

 紛争の複雑化、長期化を避けるというものと、近しい関係にある者を保護する、この二つの理由。この理由を見ると、相続の枠組みというのは関係ない理由なんですね。

 実際、水曜日の吉田参考人、今回の制度についてどうおっしゃっていたかというと、相続人以外の者の寄与を問題にするわけですから、相続法のロジックで処理できていない、制度的に位置づけるのが難しい制度というふうにおっしゃっているんです。

 本当にそうなんですね。これは、親族要件、親族という相続人以外の者の寄与を問題にしている時点で、もはや相続の枠組みでなくなってきているんです。相続法の枠組みというロジックは関係ないという、つまり、こちらは政策的規定なんですね。ということであれば、むしろ、家族の多様化を踏まえた制度にするというのが時代に即したもの、時代の流れに合うものだというふうに思うんです。

 鈴木参考人も、婚姻以外の多様な家族への配慮が足りないとおっしゃっています。吉田参考人も、少なくとも民法が多様な家族の尊重に対して阻害的であってはいけないというふうにおっしゃっています。まさにそのとおりだと思うんです。

 紛争の複雑化、長期化を避けたいのであれば、阻害的になる親族要件ではなくて、政策的に別の形で考えるべきではないのかなというふうに思うんですが、この点、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この特別の寄与の制度を新設することにつきましては、御指摘のとおり、法制審議会における調査審議の過程でいろいろと議論がされたところでございます。

 ただ、その調査審議の過程におきましては、一貫して、相続をめぐる紛争の複雑化、長期化を懸念する指摘がされていたところでございます。部会の委員及び幹事におきましても、おおむね、そのような事態をできる限り防止する必要があるとの共通認識が形成されていたものと考えております。

 この法律案では、そういった紛争の複雑化、長期化を避ける観点から、寄与の対象となる行為を無償による労務の提供に限定するとともに、特別寄与料の支払いについて家庭裁判所に申立てをすることができる期間を限定するなどの措置を講じているところではありますが、やはり、この請求者の範囲を限定するかしないかということによりまして、複雑化、長期化の懸念というものがあるということでございます。

 そういった点につきましては、法制審議会における調査審議の過程では、請求権者の範囲を限定しつつ親族以外の者を請求権者に含めるために、同居していることという要件を課すという提案もされたところでございます。

 しかしながら、このような提案につきましては、被相続人と同居していない者が被相続人の住居に通って介護した場合を適用範囲から除外することとなりますけれども、そういった相当性等が問題となり、同居の有無という事実関係によって請求権者の範囲を限定する合理性を説明することが困難であるなどとして、採用されなかったものでございます。

 そういったことで、紛争の複雑化、長期化を避ける観点から、最終的に、被相続人の親族を請求権者とする考え方が採用されたというものでございます。

松平委員 御説明ありがとうございます。

 今おっしゃられたように、政策的に紛争の複雑化、長期化を避けたいのであれば、期間を限定するというのは、私も、そういった対応はそのとおりだと思いますし、あともう一つ、寄与の態様を一定化されている、無償の療養看護、労務の提供という形でそういう限定もされているというふうにも聞いています。

 ですので、既に相続法の枠組みではないのであるので、この家族の尊重に対しての阻害的なやり方というのはどうなのかなと。そういったところで絞るべきではなくて、やはり先ほどおっしゃっていただいたような期間制限であるとか態様の制限であるとか、そういったところで絞っていく方がいいのかな、そこで絞っていった方がいいのかなというふうに意見させていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

平口委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 逢坂誠二でございます。大臣、よろしくお願いします。

 この一年余り、あるいはもっと前から、公文書の改ざん、あるいは隠蔽、廃棄、あるいは土地売却データの捏造まがいのこと、あるいは国会での虚偽答弁、こういうことがあからさまに行われていたということが今判明しております。私、民主主義を考える上で、これはもう本当にとんでもないことだというふうに思います。

 振り返ってみると、一九七〇年代の初め、アメリカでウォーターゲート事件というのがありました。あのとき、ニクソン大統領が自分の持っている公文書を廃棄しようとした、あるいはさまざまな記録、音声データも含めて廃棄しようとした。最終的には、あれは三年以上の年月をかけて、その真相が明らかになった大事件でありました。

 私は、今回の、この日本で行われていることは、あのウォーターゲート事件にも匹敵する、そう感じざるを得ません。いまだに本当の原因が解明されていないわけでありますので、これはとんでもないことだと思っております。

 私と上川大臣は、実は、今回の、この公文書管理法を制定するときに、当時の福田総理からの御指示というか御示唆もあって、二人で修正協議もしながら、公文書管理法を何とか成立させたいということで、一緒に努力をした仲であります。その後、上川大臣も公文書管理担当大臣になられて、この分野については他の誰よりも熱意を持って取り組んでこられた方だと私は承知をしております。

 そういう立場から、法務大臣としてということではなくて、これまでの上川大臣の経験も踏まえて、今のこの異常な状況、公文書がこれほどないがしろに扱われている状況についてどう思われているのか、そして、これについて今後、個人的な考えで構わないんですけれども、どう対処することがよいというふうに、もしお考えがあれば、そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 公文書の重要性について、当時さまざまな御議論をしていきながら一つの成果として公文書管理法が制定されたということについては、当時の思いを持ちながら、今も職務に対しましては誠実に誠意を持ってしっかりと対応しているところでございます。

 当時の公文書管理法の議論の前提になったことについては、行政文書がなかなか、作成していない、できない、いないというところに大変大きな焦点が当たっておりました。作成をしないということになりますと、それをトレースすることができませんので、その意味で、公文書につきましての管理、また記録のあり方につきましては、公文書を作成をするところから、また、これを保管し、利用するところの一連のプロセスというところに一つのルールを設けてしっかりと取り組んでいこう、こうした問題意識のもとでの考え方があったかと思います。

 この公文書管理法が成立いたしまして、次のステージの大切なことは、この公文書管理法の理念にのっとってしっかりと行政文書が作成されて、そして利活用していく、そして、これは国民の皆様にとりましての大変大きな知的資源でありますし、また民主主義の根幹を支えるものであるということでございまして、これの大変大きな考え方、理念、さらにはそのしっかりとした運用というところについては、これは言うまでもないことであります。

 運用につきましても、今さまざまな御指摘がございましたけれども、このことについて、現場の中で、公務員の皆さん、また政務三役も含めて、行政の実務をしっかりと担うためにも、このことの重要性については論をまたないわけでございます。

 今御指摘のような事柄について、個別の案件ということでございまして、所掌の範囲ではないわけでありますが、この公文書をめぐりましての一連の動きについては、ゆゆしき事態であるというふうに私自身は思っているところでございます。

 法律を改正をしたらそれで物事が進むのかということについては、さまざまな意見があろうかと思いますが、私は、運用のところのしっかりとした考え方と、これに基づいて、現場でそのことについて理解をし、そして行動をしていく、このことの繰り返し、その前提には意識が大変大事であるというふうに思っております。法律を変えて罰則規定を設ければそれで意識が変わるということではございませんで、むしろ、その意識のところの部分が問われているのではないかというふうにも思っているところでございます。

 今後、公文書管理のあり方についてはまた一段のさまざまな御議論がなされると思いますが、重ねて申し上げますと、不断の改革をしていく必要性については、どの法律も同じでございますけれども、このことにつきましても、そのような思いをしているところでございます。

逢坂委員 この問題はまた別途、別の場で議論したいと思いますけれども、ぜひ上川大臣、これからも公文書管理が日本の中で適切に行われるように、立場はさまざまありますけれども、これからも御配慮いただきたい、御尽力いただきたいと思います。

 日本の公文書管理の中で、やはり上川大臣を差しおいてこの問題は議論できないというぐらいに私は思っていますので、ぜひよろしくお願いします。

 さて、それでは、きょうテーマになっています民法についてお伺いをしますが、まず最初、先ほどの松平議員の質問にも関係するんですが、今回の特別寄与制度、特別の寄与、これは相続なのかあるいは相続ではないのか、相続でないとすればどういう制度なのか、これについて政府の考え方をお知らせください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 特別の寄与の制度による特別寄与料の支払い請求は、被相続人の療養看護等をした親族の貢献に報いるために、その貢献をした親族、すなわち特別寄与者に対して法定の金銭請求権を付与するものでございます。

 このように、特別寄与料の支払い請求権は、被相続人の死亡後に相続人に対する金銭請求権として初めて発生するものでありまして、被相続人が負っていた債務の履行をその承継人である相続人に請求するものではございません。その意味では、特別の寄与の制度は、被相続人の権利義務を包括的に承継する制度、こういう意味での相続制度に含まれるものではないというふうに考えております。

 もっとも、この支払い請求権は、被相続人の死亡を原因として法律上特別に認められるものでありまして、被相続人の生前には認められないものでありますので、その意味では、相続法上の制度と言うことはできるのではないかというふうに考えております。

逢坂委員 相続法上の制度、形式的にはそうですね、民法の相続のところに入っているわけですから、それはそうなんですが、だがしかし相続ではないということであろうかと思います。まずこれを一つ確認をさせていただきました。

 それから、今回の特別寄与制度の創設の目的、改めて、もう一回言っていただけますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現行法上、寄与分は相続人にのみ認められておりますために、相続人ではない者、例えば相続人の配偶者が被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持又は増加に寄与した場合でありましても、遺産分割手続において寄与分を主張したり、あるいは何らかの財産の分配を請求したりすることはできず、不公平であるとの指摘がされております。

 現行法のもとでこの問題に対応しようとしますれば、療養看護等に努めた者が被相続人との間で報酬を受ける旨の契約を締結することや、両者の間で養子縁組をすること、被相続人が遺贈をすること等の法的手段をとることが考えられます。

 しかしながら、療養看護等に努めた者が被相続人の親族である場合のように、被相続人との人的関係等によっては、療養看護等に努めた者がこれらの法的手段をとることを被相続人に依頼することが心情的に困難な場合も多く、現行法上の制度によっては十分に対応することが困難であると考えられます。

 また、現行法上、ほかにとり得る法的手段といたしましては、特別縁故者の制度、準委任契約に基づく請求、事務管理に基づく費用償還請求、不当利得返還請求が考えられるところでございますけれども、いずれも、こういった方策につきましても、その活用につきましてはさまざまな問題があるものと考えられております。

 このように、本法律案による特別寄与の制度は、現行制度のもとで、相続人以外の親族が被相続人の療養看護をしてきた場合に、それに十分に報いることが困難であることを踏まえて新設することとしたものでございます。

逢坂委員 そこでなんですけれども、介護などによって被相続人に対して貢献をするということは、これは親族だけができるものではなくて、親族以外の方もできるという理解だと私は思うんですけれども、これでよいかどうかということと、それは親族以外の者も介護などによって被相続人に貢献ができるとしたときに、なぜこれは親族だけに限定をしたのかというところ。この理由として、紛争が複雑化、長期化するんだといったようなことが挙げられているわけですが、この点、再度確認をさせてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、改正後の民法千五十条一項に規定します特別の寄与、すなわち、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をすることは、誰もがすることができる行為でございます。

 この特別の寄与の制度を新設することにつきましては、法制審議会における調査審議の過程において、相続をめぐる紛争の複雑化、長期化を懸念する指摘がされ、パブリックコメントにおきましても同様の指摘がされたところでございまして、このような事態が生ずることをできる限り防止するため、請求権者の範囲についてはこれを限定する必要が高いものと考えられたものでございます。

 また、この制度は、先ほど申し上げましたとおり、被相続人と近しい関係にあるそういった親族の方が被相続人の療養看護等をした場合には、被相続人との間で有償契約を締結するなど一定の対応をとることが類型的に困難である、こういったことに鑑みまして、これらの者の利益を保護し、現行制度のもとで指摘されている不公平を是正することを目的とするものでございますので、請求権者の範囲を一定の範囲の者に限定することには合理性があるものと考えております。

 こういったことを考慮いたしまして、この方策におきましては、その請求権者の範囲を被相続人の親族に限定することとしたものでございます。

逢坂委員 大きく理由は二つ、紛争が長期化、複雑化する、それから、近しい関係にある者の利益を保護するというふうに認識をしましたけれども、法制審議会の議論を読むと、例えば内縁関係とか同性婚、それら婚姻関係のあり方にかかわる問題だから親族に限定したといったような議論もあるというふうに承知しているんですが、法務省としては、これが今回、これというのは今私が言った内縁関係、同性婚、婚姻関係のあり方にかかわる問題だから親族に限定したという立場ではないということでよろしいですか。

小野瀬政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、内縁関係というようなことも含むことになりますと、内縁関係であるかどうかということにつきましては、婚姻届出はしていないけれども夫婦と同様の実態があるかどうかということになるわけですけれども、そういったような実態があるかどうかということをめぐって紛争が複雑化することがある、そういうことを考慮して、親族という形に限定したものでございます。

逢坂委員 要するに、婚姻関係のあり方にかかわる問題だから親族に限定したということではないんだ、あくまでも、紛争が長期化、複雑化するから親族に限定した、そういう理解でよろしいですか。

小野瀬政府参考人 この制度の導入に当たっての請求権者の範囲につきましては、委員御指摘のとおり、紛争の複雑化、長期化を防ぐこと、また、先ほど申し上げました、そういった他の方策というものをとることが類型的に期待することができないというのは、やはり一定の、被相続人と近しい関係にある方ではないか、こういったことを理由とするものでございます。

逢坂委員 では、改めて確認しますが、婚姻関係のあり方にかかわる問題だから親族に限定したのではないということでよろしいですね。

小野瀬政府参考人 御指摘のとおりでございます。

逢坂委員 それと、今回、そうはいうものの、事実上、親族以外の人たちも被相続人に貢献するということは、現実に、一般社会、生活の中では行われているわけですね。だから、そういう点でいいますと、親族以外の方が貢献したものに報いていただく、その方法として幾つかのことは御紹介いただきました。

 ただ、本人の請求によってやれる、親族以外で貢献した者が本人の請求によってやれるというものはどの程度ありますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 さまざまな方策が考えられるところでございますけれども、例えば不当利得返還請求、こういうことをしていくということが考えられるわけでございます。

 ただ、これにつきましては、不当利得につきましては法律上の原因なくしてというところが要件でございますけれども、そういった要件に該当するかという点につきましては、なかなか難しい面もあるのではないかというふうに考えているところでございます。

逢坂委員 法律上は、不当利得によって、そういう考え方によって請求できるということはある、だけれども現実にはなかなか難しいという今の法務省の見解だったかと思いますが、過去に、不当利得によって、被相続人に対する貢献度合い、それに報いたという事例はあるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 そのような請求ができるのではないかといったような議論があることは承知しておりますけれども、それを認めた裁判例があるということは、私どもとしては現在承知しておりません。

逢坂委員 ということなんですよね。

 すなわち、親族、親族でないにかかわらず、被相続人には貢献している実態があると。だがしかし、今回の制度で親族に限るというふうにしてしまうと、親族以外の人たちというのは、被相続人の意思で、例えば遺言によって何らかの寄与を認めるとか、あるいは契約によってやるということは、それは、親族以外の貢献した人と被相続人、お互いが納得すればやれるんですけれども、貢献した人みずからの意思で請求をするというのは事実上やれないということ、これが現実ではないかと思います。

 法理論上、不当利得によってやれるという考え方もあるというけれども、現実には、それは一つも行われていないわけであります。

 そういうことからすると、今回の特別寄与制度を親族に限定するというのは、親族であるなしにかかわらず貢献した人に対して十分に報いることにはならない、それは差別を生むのではないかというふうに思うんですが、いかがですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来申し上げておりますとおり、今回、この特別寄与の制度におきまして請求権者を限定したことは、一つは相続をめぐる紛争の複雑化、長期化ということを避けるということ、また、被相続人と近しい関係にある者が報酬の契約を締結するなどの対応をすることは類型的に困難であるということを鑑みたものでございます。

 したがいまして、確かに御指摘のとおり、この法律案におきましては、被相続人の親族とそれ以外との間でこの規律の適用の有無という点で異なる取扱いをしているものでございますが、こういったような取扱いは合理的な理由に基づくものでございますので、御指摘の差別には当たらないものと考えております。

逢坂委員 一方で、法制審でも議論があったとおり、親族以外に広げるべしという声があったのも事実、それから、パブリックコメントではそういった声も多かったのも事実です。

 それでは、これから、仮に今回の法律がこのまま通ったとして、今後、親族以外に広げるための方策、工夫、努力、それはどういうところがクリアされれば親族以外に広げられるというふうに考えているのか。当然、理由として二つ挙げていた、紛争が長期化、複雑化する、では紛争が長期化、複雑化しない方法が講じられれば広げてもよいというふうにも言えるわけですが、この点、どういう工夫があると考えていますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 紛争の複雑化、長期化を防ぐ方策につきましては、法制審議会におきましても、例えば同居していることといったような要件を設けるかどうかという点も含めて議論されたところでございますけれども、やはり、親族以外の者を含むということになりますと、今の段階では紛争の長期化、複雑化につながるというふうに考えておりまして、現在直ちにどのような方策があるとかということはなかなか申し上げることは困難でございます。

 ただ、こういった相続の法制につきましては、今後の社会情勢の変化もあり得ますので、改正法の施行後の状況も注視しながら、必要に応じて見直しの要否等を検討してまいりたいというふうに考えております。

逢坂委員 多分、事実上もう、同居している、内縁関係にあるとか、こういうことは日本の社会の中では認められているというか、認知されていることだと思います。それから、同性婚についても、随分、最近は各自治体レベルでもさまざまな対応が出てきております。

 そういったことを踏まえると、紛争の長期化、複雑化をさせないための条件整備というのは以前に比べると随分と整っているような気もいたしますので、ぜひ、先ほどの同居を条件にするとか、では、同居を条件にしたら通っている人はどうするんだという話ですけれども、通っていることを条件にすればそれはそれで済む話でありまして、通ってきているかどうかは周囲がそれを証言するということで幾らでも事実は証明できるというふうにも思いますので、そういった要件を付すことによって範囲を拡大していく、親族以外にも拡大するという努力を続けていただきたい、そう思います。

 それから、もう一つです。財務省に来ていただいておりますけれども、親族である特別寄与者、これが特別寄与料を受け取ったときは、税法上どういう取扱いになりますでしょうか。

田島政府参考人 お答えいたします。

 特別寄与者が相続人に支払いを請求する特別寄与料に係る税法上の取扱いについてでございます。

 相続に伴ういろいろなケースについての現行法における取扱い、例えば、相続人が特別の寄与に応じて遺産分割を受けた場合の取扱いですとか、特別の寄与を行った方に対して遺贈する場合の取扱い、また、相続後に相続人から特別の寄与を行った方に贈与する場合の取扱いなどを参考としつつ、検討する必要があると考えてございます。

 いずれにいたしましても、御指摘の点を踏まえまして、今般の民法改正法案が成立した場合の税制面での対応につきましては、今後、与党の税制調査会で御議論いただき、その結果を踏まえて必要な措置を講じてまいりたいと考えてございます。

逢坂委員 法案を提出して、新たな特別寄与料というものを創設する。でも、そのときに、法案提出の段階で税法上の扱いは決まっていない、これから検討するんだ、与党の税制調査会で検討してもらうんだ、これはそういう姿勢でいいんですか。

 この政策がよいかどうかを判断をする。相続というのは、一般的には社会の中では税金がどれぐらいになるか。よく言われますよね、相続三回やったら財産なくなるみたいなところもよく言われたりする。だから、税金がどれぐらいかかるかということは、制度を考える上で非常に重要なことだと思うんですよ。

 法務省として、どういう税制が望ましいと思って法案を提出しているのか、その基本的な考え、見通しすらないということですか。法務省、いかがですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、特別寄与料についての税法上の取扱い、これは重要な事項であると考えております。

 ただ、この特別の寄与の制度は、先ほど申し上げましたとおり、相続人以外の方が療養看護等に努めた、そういった方に、現在、報いるという方策がなかなか難しい、そういったところで、この特別寄与料の支払い請求権を認めることで実質的な公平を実現するということを目的とするものでございまして、そういった制度の創設をする必要性は、税法上の取扱いにかかわらず認められるものと考えております。

 また、一般的に、法律上新たな制度を創設した場合の税法上の取扱いにつきましては、制度の具体的な内容が確定したことを前提として検討されているものと承知しております。

 法務省としましては、立案作業を進めている段階におきましても、税務当局との間で議論の状況を共有するなどして連携を図ってきたところでございますが、今後も適切な連携を図っていきたいと考えております。

逢坂委員 税法上の取扱いについて、やはりある程度の見通しを持ってもらわないと、制度を議論する上で私は十分な態勢だとは思えない。制度ができてから、後は財務省に考えてもらいます、与党税調でやるなんというのは、それは責任放棄だと私は指摘をしたいと思います。

 最後に、大臣、私は、特別寄与者、これは親族に限定すべきではないのではないか、確かに、法制審で指摘された紛争の長期化、複雑化ということは、私は必ずしも否定はしないけれども、でもそれを防ぐ方策というのはとり得るというふうにも思います。そういう意味で、将来これを広げていくことも検討すべきではないかと思うんですが、最後に大臣の御見解をお伺いします。

上川国務大臣 今回、特別寄与の制度について新設をいたし、そのことにつきましては、法制審議会でのさまざまな議論、またパブコメも含めまして御意見をいただいた上で、今回のような形で法案を提出させていただきました。

 経済社会の変化というのは大変著しいものがございますし、また家族のあり方についてもさまざまなことが出てきておりますし、そういったことに絶えず向き合いながら検討していくという姿勢については極めて重要だというふうに考えております。

逢坂委員 以上で終わります。ありがとうございます。

平口委員長 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 おはようございます。国民民主党の源馬謙太郎です。

 まず、法案に関する質問に入る前に、少しお伺いしたいことがございます。

 今、ニュースでいろいろと報道されておりますけれども、私の地元の浜松市で、二十九歳の看護師の方が誘拐をされて、遺体が藤枝市で発見されたという事件がありました。この方が連れ去られたというスポーツジムは私が通っているスポーツジムでありまして、ジムの仲間も、本当にみんな、すごく身近な事件ということで衝撃を受けております。

 本当に、治安的にもその地域は全く悪くなくて、パチンコ屋さんと併設しているんですけれども、でも、何か今までおかしな事件が起こったというところでもない。その女性の方も、普通にジムから帰るときに突然知らない人たちに連れ去られたという事件でありました。

 この事件は、いろいろ報道を見ていますと、二〇〇七年に名古屋で起きた闇サイト事件と非常に酷似をしております。

 名古屋で起きたあの事件を受けて、政府は、闇サイトで発生する犯罪の種、これに対してこれまでどのような対策をとってきたのか、また、その対応がしっかりしていれば今回のような事件も防ぐことがあるいはできたのではないかと思いますが、この点について、警察庁の参考人の方、お願いします。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、いわゆる闇サイトなどインターネット上におきまして、さまざまな違法情報や犯罪を誘発するおそれがある有害情報が氾濫している状況を踏まえまして、警察庁におきましては、一般のインターネット利用者等から違法情報等に関しまして通報を受理して、警察への通報やサイト管理者等への削除依頼を行うインターネット・ホットラインセンター業務を民間団体に委託して実施しているところでございます。

 また、警察におきましても、インターネット・ホットラインセンターからの通報を受けるほか、サイバーパトロール等によりまして違法情報、有害情報の把握に努め、違法情報、有害情報を端緒とした取締り等を推進しているところでございます。

 警察庁といたしましては、今後とも、プロバイダー等の関係事業者や関係省庁との連携を図りながら、インターネット上における違法情報、有害情報の削除依頼の推進や、違法情報等を端緒としました取締りを推進してまいりたいと考えております。

源馬委員 サイバーパトロール等で取り締まることもやっているということでしたけれども、実際どのぐらい、これまでサイバーパトロール等でこうした闇サイトを取り締まることができたんでしょうか。

小田部政府参考人 お尋ねのような検挙事件につきまして、件数等については把握はしてございませんけれども、例えば、インターネット上の違法情報、有害情報を端緒とした事件検挙といたしましては、インターネット上の掲示板に掲載された、殺人を直接的かつ明示的に請負等をする有害情報を端緒とした脅迫事件でありますとか、サイバーパトロールにより把握した、SNS上の規制薬物の取引に関する情報を端緒といたしました大麻取締法違反事件等を検挙しているところでございます。

源馬委員 内閣府でこの前、違法サイト、著作権の侵害に当たるサイトのブロッキングというのが打ち出されまして、この問題も非常に大きな問題だと思うんですけれども、そうした違法な海賊版サイトをサイトブロックできるような強い権限で取り締まるのであれば、やはり犯罪に直接つながる闇サイトについてももう少し有効な手段をとるべきじゃないかなというふうに思います。

 確かに、漫画家とか制作者の著作権を侵害するような海賊版サイトというのは大きな問題ですけれども、やはり、実際今回のように、また犯罪、殺人事件につながってしまうサイトがどんどんどんどん闇に埋もれていってしまうという実態は、これは対応が難しいというのもわかりますが、ホットラインに通報してもらって削除依頼をするという、もうちょっと踏み込んだ対応をしていただきたいというふうに思います。

 大臣に、こうした第二、第三の闇サイトがかかわるような事件、二度と起こしてはいけないと思いますけれども、こうした撲滅に対する大臣の御所感を伺えればと思います。

上川国務大臣 痛ましい事件が日常化している状況の中で、今回のような事件によりまして、とうとい命が失われた。その方、また御遺族の方々の悲痛な思いを感じますと、大変胸が潰れる思いでございます。

 こうしたことにつきましては、社会全体として取り組んでいかなければならないという意味で、委員御指摘されました闇サイトの問題でございますが、犯罪行為の勧誘、これが行われるということでございまして、インターネットサイトに違法・有害情報が掲載されまして犯罪の温床になっている、こういう実情があるものというふうに考えております。

 インターネットを通じた犯罪につきましては、関係機関がしっかりと連携をして政府一丸となって取り組んでいくべき課題であるというふうに思っておりますので、警察当局におきましても厳正に対処していくものと承知をしております。

源馬委員 ありがとうございます。ぜひそのようにしていただきたいと思います。

 済みません、法案の質問に入る前にもう一個、これは通告してありませんが、御所見を伺いたいと思います。

 これも私の地元にかかわることですが、いわゆる袴田事件というのがありました。この前、高裁の判決で、静岡地裁で再審開始決定がされてから四年がたったわけですが、これが棄却をされるということになりました。

 そもそも、四年間かかって、やはり地元の人間として、支援者の方からすると、御本人はもちろんですけれども、再審開始が決定してから四年の時間をまた費やして、それで結局その決定が覆された。これは本当にすごく大きな問題だなというふうに思います。

 この点についても、大臣、個別の案件ということで難しいかもしれませんが、一般論で構いませんので、これだけ時間がかかってこういう結果になるということについて、御所見を伺えればと思います。

上川国務大臣 委員から御質問がありましたいわゆる袴田事件ということでございますけれども、平成三十年の六月十一日に東京高等裁判所が再審開始決定を取り消して再審請求を棄却する旨の決定を行ったことにつきましては承知をしているところでございます。

 個別具体的な事件におきましての裁判所の判断にかかわることでございますので、法務大臣として所見を述べることについては差し控えさせていただきます。

源馬委員 もちろん、個別の裁判の決定について法務大臣が意見を述べられるというのは難しいということはよくわかりますが、時間がやはりかかったということと、一方で、再審開始は棄却されたけれども、それでも拘置の執行停止はそのままでいるということはこれまでになかった対応だと思いますし、今後、こういうことも一般論として前例になっていくのかどうか、そのあたりの御所見も、もし伺えればお願いします。

上川国務大臣 今御質問の件につきましては裁判所の判断に係ることでございますので、法務大臣として答弁をするということについては差し控えさせていただきたいというふうに思います。

源馬委員 それでは、法案関係の質問に入らせていただきたいと思います。

 これも、今までいろいろな議員の先生が質問されてきたことと少しかぶることはあると思いますが、今回の特別寄与の部分ですけれども、当初、中間試案においては、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策というのは、請求権者の範囲を親族に限定するという甲案と、それから、貢献の対象となる行為を無償の労務の提供に限定する、つまり親族等に限定されるものではないという乙案、これらがあって、これまでもいろいろ議論がありましたけれども、パブリックコメントも、やはり乙案の方が賛成の意見が多くありました。

 特に、私も、事実婚であるとかLGBTの方、同性パートナーの方、内縁関係の方、こういう方にやはり配慮をすべきではないかという立場ですけれども、改めて、パブリックコメントでも賛成が多かったのに、なぜこういう結果になってしまったのか、もう一回簡単にお願いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、パブリックコメントにおきましては、請求者の範囲を二親等内の親族と限定する甲案と、それから、貢献の対象となる行為を限定する乙案がございましたが、乙案に賛成する意見の方が多かったわけでございます。ただ、甲案に賛成する意見も相当数ございました。

 また、この特別寄与の制度を設けること自体につきまして、このような方策を講ずると相続に関する紛争が複雑化、長期化するおそれがあるなどとして、これ自体に反対するという意見も多く、この制度の創設自体については賛否が拮抗していたという状況でございました。

 このパブリックコメント後に再開された部会におきましては、この寄与行為の態様を無償の労務の提供に限定することを前提とした上で、請求権者の限定をどうするか、あるいは、中間試案では二親等としていた親族の範囲を広げることの当否を含めて調査審議が行われたところでございます。

 さまざまな御意見がございましたけれども、最終的には、紛争の複雑化、長期化に対する懸念等に配慮しつつ、請求権者の範囲を中間試案の考え方よりも広げるものとして、被相続人の親族を請求権者とする考え方が採用されたものでございます。

源馬委員 そういう決定がされた中で、やはり対象を親族に限ったということで、事実婚であったりとか、同性パートナーの方、それから内縁関係の方、こういった方たちがきちんとそうした相続に、ちゃんと自分たちの権利を得るということのために、今まで御説明を伺っていると、やはりこの自筆証書遺言制度をしっかり活用をして、そうした方たちの遺産相続にも権利をしっかり確保してもらうというようなことだというふうに理解をしておりますが、そうすると、やはり、この自筆証書遺言制度をもっとたくさんの人に知ってもらって使ってもらうことが大事になってくるというふうに思います。

 もちろん、全国的な啓蒙活動ということは当然されるものだと思いますが、例えば、同性パートナーシップを認めている渋谷区なんかで、そのパートナーシップの申請があったときに、そのときに遺言のことというのをちょっと、そぐうかどうかわかりませんが、例えばそういう方たちにもしっかりと啓蒙をしていくとか、なかなか、社会でひっそりとしているパターンもあるわけですけれども、そういった方たちに対する啓蒙活動というか、そこら辺、何か考えていることがあるか教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、相続人や受遺者が遺言によって得た権利を確保するためには、この遺言書、今回、遺言書保管制度をつくっているわけでございますし、また自筆証書遺言の方式緩和ということもしております。そういったような遺言を利用していただくということは非常に重要でございます。

 また、この遺言書保管所の遺言保管制度の利用に当たりましては、先ほど申し上げました、相続人や受遺者の方が遺言書保管所に遺言書の有無を確認していただくということも重要でございます。そういう点では、この制度の仕組みについても十分な周知を行うことが必要であると考えております。

 この法律案が成立した後には、今回の相続法の改正、あるいは今回新しく設けられますこの遺言書保管所の遺言書の保管制度、こういった制度についての周知活動を行うことを予定しておりますが、御指摘の趣旨も踏まえまして、多くのさまざまな方々にこういった内容を知っていただけるよう、適切な広報の実施に努めてまいりたいと考えております。

源馬委員 ぜひ徹底的な啓蒙活動をお願いしたいと思います。

 また、知っていただくということと同時に、活用するときに余りに不便だと、これもやはり活用が減ってしまうということがあると思います。これは、今までも議論があるとおり、遺言をつくるというその手続を使いやすくするということもそうですけれども、それを届け出る遺言書保管所がどこにあるかということもやはり重要になってくると思います。

 最後に、今現在どのぐらいの箇所の遺言書保管所をつくろうと計画をしているのか、また、それは段階的に今後利用状況なんかを見ながらふやしていくという計画があるのかどうか、伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 委員御指摘のとおり、この遺言書の保管制度でございますが、利便性の観点から、全国一律でサービスを提供することが期待されております。御指摘のとおり、十分な数の法務局を遺言書保管所として指定する必要があると考えております。

 他方で、遺言書の保管に関する事務は秘匿性の高い情報でありますことから、遺言書保管所として指定される法務局は、個人情報の保護の観点から十分な設備を備える必要もございます。

 今後構築する体制の詳細等によることとなりますので、現段階においてその数を確定的に申し上げることはできませんけれども、利用者の利便性を考慮した上で、支局等におきましても利用者のアクセスを可能にすることを検討してまいりたいと考えておりますし、また、設備の整備状況や制度の利用状況等のさまざまな事情を総合的に考慮した上で、段階的にこれをふやしていくこともあり得るものと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。終わります。

平口委員長 次に、階猛君。

階委員 国民民主党の階猛です。

 先ほどの源馬委員の袴田事件に関する問題意識、私も大変重要な指摘だと思いますし、過去に私は、この袴田事件の再審開始決定が静岡地裁で行われた段階で、再審手続、おかしいんじゃないか、法の不備があるんじゃないかということをこの委員会でも指摘させていただきました。

 当時の記録を振り返ってみますと、再審手続については、四百四十五条に事実の取調べを行うんだということは書いておりますけれども、その具体的な方法とか、どれぐらいの期間で行うかといったことについては全く触れられていませんで、このことは、再審の請求の審理が長引くことにつながったり、当該死刑囚にとって、あるいは被害者にとってもよくないことではないかということで見直しを求めました。検討してほしいと言いましたけれども、一切それがなされないまま、また今回、このような決定に至っているということであります。

 四年たってようやく出てきた、今度は再審開始決定を取り消すという決定なんですが、その決定自体も私はいろいろ問題があるかと思いますが、ここでは、その再審開始決定の取消しと同時になされた拘置の執行の停止、死刑の執行の停止、この判断について法的な根拠があるかどうかということについて、裁判所に尋ねたいと思います。

 そこで、お尋ねします。

 資料をお配りしていますけれども、私、この中で三つのことを言いたいと思います。

 お配りしているのは、決定文の一番最後のところで「第六 刑の執行停止の裁判に関する判断」というくだりがございます。

 まず一点目なんですが、この第六の七、八行目のところを見ますと、「再審請求を棄却する旨の決定をしたとしても、」原決定である「再審開始決定の効力が確定的に失われるわけではなく、」というくだりがございます。その法的根拠は何なのかということが一点目。

 そして二点目は、その下二、三行目ぐらいに、「もっとも、再審請求事件が抗告審に係属することに伴い、当該抗告裁判所は、原裁判所のした刑の執行停止の裁判の変更・取消しをする権限をも併有する」ということになっていますが、その根拠は何なのか。

 ちなみに、この袴田事件では、まさにこの刑の執行停止については、別の異議申立てによって既に棄却という結論が出ております。にもかかわらず、再度、この裁判所が審理して決定をしているということはどういう法的根拠に基づくのか。これが二つ目です。

 そして最後、三つ目ですが、このページの一番下のところ、「再審開始決定の取消決定に伴い原裁判所のした刑の執行停止決定をも職権により取り消すか否かは、」その後いろいろ書いていますが、次のページの二行目、「抗告裁判所の合理的な裁量権に委ねられている」というふうに書いておりますが、そもそも刑訴法四百四十八条二項という条文がありまして、これは第六の見出しのすぐ下に書いています。「再審開始の決定をしたときは、決定で刑の執行を停止することができる。」というのが四百四十八条二項で、再審開始の決定をしたときは刑の執行を停止することができるということであれば、反対解釈として、自然に考えれば、再審開始決定が取り消されたら刑の執行の停止も取り消されなくてはいけないのではないかというふうに思えるわけであります。

 以上三つについて、私は法的な根拠が乏しいのではないかと思うんですが、もし法的な根拠があるというのであれば、何法の何条なのか、これをお答えいただけますか。

安東最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 お尋ねのございました三点でございますが、いずれも判断の前例等が乏しく、最高裁判所の事務当局から御紹介できるような確立した運用等もない問題に関するところでございまして、個々の事件においてそれぞれの裁判体が検討し判断すべき事項、そのように考えられるところでございます。

 したがいまして、恐縮でございますが、最高裁判所の事務当局としましては、お尋ねの三点についてお答えをすることは差し控えさせていただきたい、そのように存じます。

階委員 条文上の根拠は見当たらないということでよろしいですか。

安東最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 個別の裁判に対する所見の表明を差し控えることはもちろんでございますが……(階委員「個別じゃない、一般論で聞いています」と呼ぶ)はい。

 今の一般論としましても、先ほど申し上げたような理由から、事務当局で何らかのお答えをするということになりますと、個別の事件における裁判体の判断に影響を及ぼすことがあるということで危惧されるところでございます。

 ですので、お答えを差し控えさせていただいたということで、文字どおり、何らの評価も示していないということでございます。

階委員 裁判所は、法と証拠に基づいて判断をして、そして法の支配を貫徹するのが職責だと思いますけれども、その根拠となる法文を示せない。いいんですか、それで。それでよろしいんですか、最高裁。

安東最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 重ねてのお答えということで恐縮でございます。

 一般論としてというお尋ねでございましたが、お尋ねの件については、前例に乏しく、確立した運用等もございません。仮に確立した運用あるいは確立した判例等ございましたら御紹介するということはできるわけでございますが、先ほどのような問題について事務当局が何らかのお答えをいたしますと、個別事件の裁判体の判断に影響を及ぼすことがある。そういうことがあってはならないという考えから、お答えを差し控えさせていただきたいということでございます。

階委員 条文上の根拠があるかないかということを聞いているんですから、端的に答えてください。

 条文上の根拠がなければ、立法府として法の不備は手当てしなくちゃいけないから聞いているんですよ。立法府に対する説明責任がありますよ。答えてください。

安東最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げたとおりでございますが、個別の事件の裁判体が判断すべき事項であるというふうに考えておりますので、事務当局として所見を述べることは差し控えさせていただきたい、そのように存じます。

階委員 今、個別の裁判体が決すべきことだというお話ということは、裁判所の構成によって判断が分かれるということなわけですよ。これこそまさに、法の支配ではなくて、人の支配ではないですか。これで本当に司法権と言えるんでしょうか。私はおかしいと思います。

 そもそも、今回の決定の趣旨なんですが、先ほども言いましたとおり、再審開始決定は取り消しつつ、袴田さんの死刑と拘置の執行停止は継続している。非常にわかりづらい。とともに、そんたくすれば、恐らく過去に裁判所が行った判決を誤判と認めたくない、他方で、もう高齢で健康状態も思わしくない袴田さんを再び死刑囚として収監すれば、裁判所が世論から批判を浴びるだろうということで、こうしたことを配慮して、玉虫色の判断、人の支配の判断が、決定が出たのではないかというふうに私は捉えております。きょうの答弁を聞いて、ますますその意を強くしました。

 そこで、大臣にお尋ねします。

 今やりとりしてわかるとおり、個々の裁判所に委ねられて人の生き死に、死刑かどうかが決定してしまうということは、私はあってはならないことだと思います。

 そもそも、憲法三十一条、デュープロセスという条文があります。何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、その他の刑罰を科せられないということであります。

 この観点からしても、今、再審手続に関する刑訴法の規定は、先ほどの源馬委員の指摘にもありました、余りにも不備であるということで、直ちにこの点については法的な手当て、法改正を検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 今回の委員の御質問の内容につきましては、まさに現在再審請求中の事件についての判断、裁判所の判断内容にかかわるものというところに密接に、前提をしているということでございますので、法改正を要するか否かにつきまして、法務大臣として所見を述べるということにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

階委員 では、質問をかえますけれども、現行法上、再審に関する規定は、さっき言った四百四十五条の事実の取調べというのがありますけれども、その内容については全く触れられていないとか、あるいは、今回問題になった四百四十八条二項、「再審開始の決定をしたときは、決定で刑の執行を停止することができる。」と定められているんだけれども、それが、再審開始の決定が取り消された場合どうなるのかといったようなことについても明文の規定がなくて、先ほどの最高裁判所の答弁によれば、個々の裁判体が決すべきことだと言っています。

 こういった状況に鑑みて、刑訴法に不備があるとはお考えではないでしょうか。

山下(貴)大臣政務官 法律事項でございますのでお答えいたしますが、先ほど最高裁からもお話がありましたように、これは個々の事件において各裁判体が検討し判断すべき事項であるということになりますと、これらを前提に法務省が見解をお答えするということは、個々の事件について、裁判所の判断内容について、そこにかかわってコメントするということになります。

 これを前提として法改正を要するか否かについて法務省として所見を述べるということは差し控えさせていただきたいということを御理解いただきたいと思います。

階委員 山下政務官の今の答弁は、個々の裁判所が判断すべきであるということを前提とした答弁でしたが、そもそも、個々の裁判所が判断すること自体が誤りではないかというのが私の問題意識なんですよ。ですから、答えにはなっていないと思います。

山下(貴)大臣政務官 今の答弁につきましては、いずれにしても、東京高裁の判断ということを前提にした、そこからの問いでございます。そして、裁判所の法的判断につきましての見解ということでございまして、そうしたことからしますと、それらについて法務省として所見を述べるということは差し控えさせていただきたいという答弁でございます。

階委員 法務省の問題意識の欠如には驚かされるわけですけれども、袴田さんにとりましては、そもそも、長年にわたって冤罪を主張してきて、ようやく再審開始の決定がおりたと思ったら、四年たって、何だかよくわからない証拠の判断がされて、そしてまた再審開始決定が取り消されて、これからまた死刑の執行という恐怖におびえなくちゃいけないということでもあります。今は執行停止になっていますけれども、これからの動向次第では死刑執行もあり得るということですから、そういう人の生き死ににかかわることについては、やはり憲法三十一条、デュープロセス条項に基づいて法的な手当ては必要ではないかということを強く申し上げたいと思います。

 その上で、もう時間も残り少なくなってきましたけれども、法案について。

 先回から私も主張しておるんですが、この委員会での答弁によりますと、遺言書保管法についてなんですが、平成三十二年以降に、登記簿と戸籍簿を連携させて、遺言者の死後速やかに関係者に遺言の存在を通知するシステムを構築する予定であるかのような答弁がありました。他方で、この法律の施行は、附則において、公布から二年以内というふうになっています。二年というとちょうど平成三十二年ごろということになるわけですけれども、私は、先般来申し上げているとおり、この遺言者の死後速やかに関係者に遺言の存在を通知するシステムを早く稼働させることがトラブル防止に役立つのではないかということで、大臣にお伺いしたいんですが、そのシステムは、この法律の施行前に稼働させるべきではないか、この点についてはどうでしょうか。大臣、お願いします。

上川国務大臣 委員御指摘をいただきました、遺言書の保管所に遺言書が保管されているわけでありますが、その遺言者が死亡したときに、法務局から速やかに遺言者の相続人やまた受遺者等に対しまして遺言書が保管されている旨を通知する仕組み、これを実現するということについては極めて重要であるというふうに考えております。

 そして、そのような通知の仕組みを実現するために最も確実な方法につきましては、戸籍等により遺言者の死亡の事実を把握をし、法務局が速やかに通知を行うこと等を考えております。

 そこで、平成三十二年以降、可及的速やかに戸籍等と電子的な手段により連携するシステムを構築することにより、速やかな通知を可能にするということについて目指してまいりたいというふうに考えております。

階委員 今の答弁は既に聞いたことなので、問題は、この法律が施行する前に今おっしゃったシステムを稼働すれば、法律施行後、遺言書を保管した人も安心できると思うんですね。自分が亡くなったら関係者に全部通知が行くからということで安心できると思うんです。だからこそ、この施行の時期というのは大事なんですね、システムの稼働の時期との関係で。

 私は、システムの方を施行前に稼働させるべきではないかということを提案しているわけですけれども、この点について、大臣、ぜひそのようにしてほしいんですが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 委員御指摘の大変重要な御指摘については私も大変重く受けとめておりまして、制度そのものがしっかりと運用することができるようにしていくための環境整備、施策については万全を期してまいりたいというふうに考えております。

 システムの設計等に係ることでございます。さまざまな要素もございまして、三十二年以降ということで今考えているところでございますが、できるだけ速やかに実施できるように取り組んでまいりたいというふうに思っております。

階委員 ぜひそこはお願いしたいと思います。

 そこで、仮にですけれども、システムの稼働が施行に間に合わなかった場合のことについても私から提案したいんですが、その場合にどういうリスクがあるかというと、遺言書が保管されていたということを知らないで、相続人がその遺言書と異なる遺産分割を行ってしまう、そして、それに基づいて不動産登記を申請してしまう、こういうリスクが考えられるわけです。

 そういったときに、遺言書と全く違うような登記がなされることを避けるために、本法の施行後は、法務局は、遺産分割の登記の申請が来たら、申請者に、遺言する資格のある人、被相続人が遺言したかどうかというのは把握できているわけですから、遺産分割の登記の申請が来たら、常にそこは法務局の方で確認して、トラブルを防ぐために遺言書の存否を知らせるのがいいんじゃないか、そのように思いますけれども、いかがでしょうか。

山下(貴)大臣政務官 お答えいたします。

 確かに、そういった登記の申請者に知らせる仕組みというのは重要かと思いますけれども、一方で、登記の対象となる不動産の所在地がどこにあるのかということにもまたよってまいりますし、また、その登記の仕組み等、これは登記官が行うわけでございますけれども、今回の遺言、自筆証書遺言を管理する管理者というのが必ずしもシステム上まだリンクしていないということを考えますと、まさに平成三十二年以降、可及的速やかにシステムを構築することを目指してはおるんですけれども、その前にやるというのはなかなか困難が伴いますということでございます。

階委員 まず、不動産について、遺産分割、登記をしようとする場合には、誰が被相続人かということがわかります。そして、その被相続人が所有権を持っているということもわかります。なので、遺産分割の登記の申請を受け付けた法務局は、その被相続人の遺言書を保管しているかどうか、これは簡単に確認できることだと思います。そんな難しい話じゃないと思うので、これぐらいはやってもいいんじゃないですかというのが私の提案なんですけれども、大臣、最後、あればお願いします。

上川国務大臣 今回の制度そのものが実質的に国民にとって非常に大事な役割を果たすためには、さまざまな、連結も含めまして工夫が必要であるというふうに思っております。万全を期して、施行日までの間、この対応につきましては、今委員御指摘のようなことも含めまして検討してしっかり対応してまいりたいというふうに思っております。

階委員 二点御提案申し上げました。よろしくお願いいたします。

平口委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 局長、大丈夫ですか。質問しますよ。

 きょうは、特別の寄与について確認をしていきたいと思っております。

 小野瀬局長にお尋ねしますが、この特別の寄与料についての法制審における甲案と乙案とは具体的に一体どういう内容の案であるのか、これをわかりやすく説明していただきたいですし、甲案と乙案は一体どこが異なるのか、この点もつまびらかにしていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法制審議会の部会におきましては、当初から、特別の寄与の制度を設けるといたしましても、その要件を適切に定めないと、相続をめぐる紛争がより一層複雑化、長期化するおそれがあるとの指摘がされておりまして、このような問題意識につきましては、部会の委員及び幹事の中ではおおむね共通の認識となっていたものと考えております。

 このため、中間試案におきましては、その適用範囲を限定する二つの方向性といたしまして、まずは請求権者、人の方を限定するということで、二親等内の親族というように限定する甲案と、それから、寄与行為の態様のそういった面から限定する案として乙案、すなわち具体的には、寄与行為を無償の労務の提供に限定する案、これを併記することとされたものでございます。

黒岩委員 では、そこでお尋ねしますが、今回の改正案はその甲案と乙案を足したもの、ミックスしたものという理解でよろしいですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 基本的には、人の方の限定も付すし、また行為の限定の方も付すということでございますが、行為の方の限定は乙案と同じでございますが、請求権者の方は、先ほど申し上げました甲案では二親等内の親族というふうに、親族の中でもまた更に限定を加えておりましたけれども、最終的な法律案におきましては親族ということで、親族の中での限定はしていない、そういう点では広げたということでございます。

黒岩委員 すなわち、ミックス案ではないということでよろしいですね。

小野瀬政府参考人 御指摘のとおり、単純に合わせた案ではございません。

黒岩委員 そこで、更にお聞きしますが、パブコメでは、甲案を支持する人に比べて、甲案ではないという方が多かった、こう聞いております。その理由は、これは事務方の説明によると、甲案よりももっと絞るべきである、すなわち、請求権者については甲案より絞るべきだということがその理由だと私は説明を受けました。

 では、今回の改正案は、この甲案の請求権者の対象がそのパブコメのように絞られたものになっていると言えるんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この中間試案のパブリックコメントの結果におきましては、先ほど申し上げました甲案、乙案ということになりますと、乙案に賛成する意見の方が多かったということでございます。

 ただ、乙案に賛成する意見の理由でございますけれども、被相続人の療養看護等を行う者は親族に限られないこと、また、乙案によれば、内縁関係にある者等も対象に含めることができること等を理由とするものでございまして、むしろ、乙案に賛成する意見の方は、甲案よりもやはり請求権者の範囲が広くなる、こういうことが妥当ではないか、こういうことを理由とするものと理解しております。

黒岩委員 そうなると、ちょっと事前の説明とは異なってくるんですよ。

 説明では、その甲案と乙案は対立概念ではないと。この前、参考人でも、窪田先生もそうおっしゃっていました。私どもは、甲案と乙案が対立概念という理解を当初しておりましたので、甲案でなければ乙案になるのかと思っていたら、実際そうではなかった。ミックス案でもない、甲案よりは請求権者の対象が広がって、そして行為については乙案をとって労務の提供のみに絞っているとなるわけですよね。

 そうすると、やはりちょっと説明がつかなくて、乙案の方に賛成者が多いとなれば、これは対立概念になりますから、甲案でなければ乙案にするという、私はこれは論理必然的に帰結するものだと思うんですが、なぜこうなっていないんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 甲案、乙案とございまして、済みません、先生の方の事前の御説明の方がちょっと先ほどの趣旨と違った点がございますれば、それはおわび申し上げます。

 このパブリックコメントの結果でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、乙案に賛成する意見が多かったわけでございますが、甲案に賛成する意見も相当数ございました。また、そもそも、こういう制度をつくること自体につきまして、紛争が長期化する、複雑化するおそれがあるのではないかということで、こういった制度創設自体、すなわち、甲案にも乙案にも反対するという方もかなりの数ございました。

 そういうことからいたしますと、やはり新たな制度を設ける際に、紛争の複雑化、長期化するおそれ、これについてはそういった点をきちんと対処しなければいけない、そういったことがこのパブリックコメントにもあらわれているのではないかというふうに私どもとしては考えたところでございます。

黒岩委員 局長、ここはすごくわかりづらいところだけれども、大事なところなんですよ。

 では、今局長のおっしゃった、甲案にも反対、乙案にも反対ということは、事前の説明ですと、甲案の今言った請求権者、二親等以内に絞ったと。これに反対だから、もっと絞るべきだと。乙案に反対の人は、乙案の場合は行為の範囲が労務提供のみになっている。今の寄与制度ですと、財産の給付、すなわち仕送りなども行為に含まれるわけですけれども、乙案だとこれらの対象は絞っている。私の聞いた説明だと、その乙案の絞りももっとその行為の範囲は狭めるべきだということで、どちらにも反対だと聞きました。

 そうなると、改正案は、請求権者の範囲も二親等よりももっと絞るということになるはずですし、行為の対象についても、労務の提供よりももっと絞るということが可能かどうか私にはわかりませんけれども、絞るということならば、これは窪田先生のおっしゃる、窪田先生は三つの考えが対立しているとおっしゃいました。それが、二つ目が甲案であり、三つ目が乙案である。その三つ目の対立概念が、どうもお話を聞いていても私にはなかなか理解ができなかった。

 その三つ目の概念とは、今の改正案を指しているのか、それとも、この改正案ではなくて、甲案よりも請求権者をもっと絞った、そして乙案よりもこの行為をもっと絞ったというものが対立概念として考えられていたのか。結果として、そうであるならば、この窪田先生のおっしゃる第一の対立概念には改正案はなっていないわけですから。そうですね、甲案の二親等以内よりも六親等に広げています。血族で六親等、姻族で三親等にこれは広がっています、請求権者は。そして行為対象については、乙案のままです、労務提供のままです。これが改正案です。

 そうしますと、窪田先生のおっしゃった、最初の甲案でもない、乙案でもない案というのは一体何を指すのか。今の改正案を指すのか、それとも、私が先ほど申し上げた、二つにもっと縛りをかけた案ということを対立概念として指すのか。どちらかをはっきりしていただかないと、これは議論の土台ですので、局長、よろしくお願いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 中間試案のパブリックコメントの結果が、結局、先ほど申し上げましたように、三つの考え方に分かれているというふうに理解されます。

 これは、委員御指摘のとおり、二親等内の親族に限定するのが一つ目の甲案。さらに、その請求権者の限定はせずに行為で限定する乙案。それから、三番目の方は、この制度そのもの、制度を創設すること自体に反対するというのが三つ目の考え方でございます。

 そういう意味では、この三つ目の考え方は、およそこの制度がないわけですので、そういう点では、請求権者がゼロになるということに実質的に近いわけでございます。そういう意味では、甲案のいわば請求権者の範囲を極限的になくすということにも実質的に近いわけでございます。

 ただ、私どもといたしましては、最終的に、乙案につきましても、先ほど申し上げましたとおり、請求権者の範囲を限定しないという案が、甲案と乙案とを比較しますと多かったというところがありますものですので、そういう意味で、甲案は二親等内の限定、さらに、甲案、乙案いずれにも反対という三番目の考え方ですと、これはもう実質的に請求権者がゼロということに近くなってしまう、そういった中で、乙案では請求権者の限定をしない、こういった三つのバランスに立っているのかなと思います。

 そういった中で、最終的には、甲案よりも請求権者が広がる、そういう意味では、乙案の考え方に甲案から近づいて、請求権者が親族というだけの限定になった、このように整理できるのではないかなというふうに考えております。

黒岩委員 これはやはり整理し切れないと思いますね。

 今の局長の説明ですと、その第三の、あえて第三の概念と言いましょう、甲案でも乙案でもない、これが、今言ったように、どちらも特別寄与という制度としては必要ないんだとなれば、たどり着く道は、特別寄与という制度は認めない、すなわち、今までの寄与制度だけだとなれば、請求権者は相続人だけになるわけですから。ですよね。行為対象は、労務の提供に加えて、財産の給付も、仕送り等も入ると。三つ目の概念がそのままのを指すんだったら、それも一つの選択肢ですよ。特別寄与によって請求権者は全くふえないと。でも、今回、そうじゃありませんよね、特別の寄与という制度を設けているわけですから。

 だから、私たちが言いたいのは、だったら、今回の改正案は今の三つ目の概念じゃないわけですから、ある意味、四つ目の概念ですよ。その四つ目の概念を、中途半端に甲案の請求権者をちょっと広げる、そして行為の範囲については乙案の労務の提供のみにするぐらいなら、だったら、乙案そのままで、請求権者については制限なし、すなわち親族以外もオーケーだ、こういう考え方もあるわけですよ。だって、今、三つ目の概念と言いながら、三つ目の概念のとおりになっていないわけだから、今回、四つの目の概念なんですから。

 だから、四つ目の概念については、ある意味、法制審の答申は受けていないわけですよ。反映されていないわけですよ。ここで議論して、四つ目の概念を法務省が持ち出してきたわけですから、だったら私たちは、四つ目の概念として、請求権者については対象範囲は限定しない、これでも法制審の答申とはそごを来さないんじゃないですかと私は申し上げているんです。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、三つの考え方といいますのは、中間試案に対するパブリックコメントの意見として三つの考え方に分かれたということでございます。

 必ずしも、どのような制度を設けるかといいますものは、もちろんこのパブリックコメントの意見も参考にしながら、最終的に法制審議会の議論で固まるわけでございます。法制審議会といたしましては、このような、パブリックコメントでは三つの意見があったということも踏まえて、それぞれの意見の内容なども勘案して、結果的には、この三つの案そのものではない、また別の選択肢をとったということでございます。

 最終的な法制審議会の答申は、現在の法案の中身、すなわち限定がない親族の範囲ということでございますので、現在の法律案が法制審議会の答申に沿ったものということでございます。

黒岩委員 それならわかります。パブコメの段階、中間試案の段階では三つの概念があった、それを受けながら、実際には法制審の答申としては四つ目の概念になったんだと。

 ただ、この前の窪田先生のお話ですとその話がなかったものですから、三つの概念という話を、対立しているという話だけだったものですから、私とすれば一体どういう帰結になったのかというのが非常に、議事録を読み直しても私には理解できなかったので、きのう、あえて民事局の皆さんにお聞きしたということになります。

 それで、もうちょっと平たい話をしますと、私たちの議論は、相続人よりも親族の方が広い概念だという認識に基づいて議論をしていました。今回、特別寄与については、じゃ、請求権者が広がるね、こういうふうに議論をしていました。

 そこで、改めて確認なんですけれども、これは一つ目は簡単ですよ、親族だけれども相続人ではない方、こういう方は一体どういう方がおられますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 親族の定義でございますけれども、親族は、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族ということになっておりますので、例えば三親等内の姻族ということになりますと、配偶者の方は、これは当然相続人となるわけでございますけれども、配偶者の例えば親ですとか、そういった姻族の方は、親族にはなりますけれども相続人にはならないということでございます。

黒岩委員 局長、そこは簡単に私らも理解できるんですよ。相続人からははみ出しているけれども親族になる人がいる。当然、親族の方が広い概念からすれば当たり前なんですが。

 私の聞きたいのは逆なんですよ。相続人だけれども親族ではない人はいるのか、いないのか。いるのか、いないのか、お答えください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 相続人の中には、例えば、被相続人の子供の代襲者ということで、相続人が先に亡くなっていて、その子供の方が代襲者ということになります。極めて例外的に、そういったずっと下の代襲者が六親等内の血族から外れるということが、論理的にあるのかもしれませんけれども、ちょっとおよそ現実的には考えられないところかと思います。

 そういう意味では、現実的に、相続人の対象者であって親族にはならないという範囲というものはちょっと考えづらいというふうに思っております。

黒岩委員 局長、卑属の場合は今の説明で合理性があると思います。私が指摘しているのは尊属の方ですよ。

 尊属は、これは何親等でも相続人になりますよね。ですよね。ということは、実在はしませんけれども、概念的には、七親等以上の尊属、この人は相続人になりますよね。ですけれども、親族じゃありませんよね。これは間違っていますか。

小野瀬政府参考人 御指摘のとおり、理論上はそういうことでございますが、なかなか現実的に七親等の直系尊属がおられるという場合はちょっと想定はしづらいかなとは思います。

黒岩委員 だから、概念としては、今の議論でおわかりいただいたと思いますけれども、相続人なんだけれども親族じゃない人がいるということは、親族はおよそ相続人を含む広い概念ではないわけですね。

 簡単に言うと、集合の論理で言うと、相続人そのものは親族の真部分集合ではないということになりますね。すなわち、相続人という集合と親族という集合で共通項があるけれども、共通項から漏れている人というのは、概念的には、相続人だけれども親族でないという人は、七親等以上の尊属、これは漏れていると。だから、こういうことはやはり一個一個確認していかないと、我々は、親族だから広くなる、なると言うんだけれども、広くはなっていない。

 それで、理論的に言うと、今、人生百年世代ですと、いいところ五親等までですよ。ただ、これは理論上は、百二十八歳まで生きれば七親等の尊属も卑属も現存することになるんですよ。その時代があと何年で来るかわかりません。だから、こういったことも想定して、相続人と親族という、この概念をしっかり整理して、今後も議論をしていっていただきたい。そのことによって、親族だからといって、広がっていると言うけれども、単に広がっているわけではないということも確認をさせていただきたいと思います。

 そして、大臣、お聞きしますけれども、今のややこしいやりとりはおいておいて、そこで、肝の部分ですけれども。

 今回の特別寄与の制度において、今言った第四の概念、改正案においては、結局は、請求権者については親族というところに限りました。ただ、今の議論でわかると思いますけれども、親族という概念も、時代が変われば六親等ではなくなるかもしれない。もっと広い親族も出てきますよ。これは直系の卑属じゃなくたって、またいとことかと広がれば、もっともっと、七親等、八親等まで広がってくるわけですよ。こういう人たちが実際に労務の提供をする場合もあり得ますけれども、しかし、七親等の場合、今回は特別の寄与に入らなくなっちゃっています。

 だから、これから先、今の第四の概念、すなわち改正案の請求権者の対象というのは、私は広がっていく可能性は当然あると思っています。これは、仮に同性婚であれ事実婚であれ、対象が広がるという意味ではこれは一緒でありますので。

 大臣にお答えいただきたいのは、今回の改正案では親族の縛りがかかりましたけれども、今後、将来においては、これが広がっていく可能性ということを私は否定されないと思いますので、この点についてお答えいただけますか。

上川国務大臣 ただいま委員が一連の御質問をされました。まさに請求権者の範囲についての将来の可能性ということに言及していただきました。

 今回は、先ほどのような事情も考慮して、被相続人の親族に限定することとしたところでございますが、その意味で、現時点におきましてはその範囲の中で対応していくということについてはこの法案の中で盛り込んだところでございますので、その意味では、これから先ということについての言及について御質問をされたわけでございますが、施行状況、また、経済的な、社会的な変化もございますし、また、家族のあり方に対しても大きな変化があり得るということでございますので、特にこの問題につきましては、見直しの要否等につきましても、将来、さまざまな可能性について閉ざすことなく検討を進めていくということについて、そのような方針でまいりたいというふうに思っております。

黒岩委員 大事な答弁ありがとうございます。

 我々は附帯のイの一番にこの点を触れておりますので、将来の可能性という意味、将来の効果という意味では、将来効については当然否定はされませんし、今後、見直していく検討余地があるという、結構でございます。ありがとうございました。

平口委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 法務省は、内閣官房に設置されている多重債務者対策本部、これは他の省庁と同じく一員としてこの多重債務問題に取り組んできたというふうに認識しております。貸金業者への取締りの強化あるいは多重債務被害の予防と救済を実施されております。

 大臣に確認したいんですが、法務省にとって、この多重債務の対策や予防、救済というのは重要な課題であるという点、間違いないでしょうか。

上川国務大臣 ただいま委員御指摘の多重債務者対策本部、政府の中でこの本部を設けて、多重債務者対策の円滑かつ効果的な推進を図るため内閣に設置されたものでございますが、私もその構成員の一人ということでございます。

 多重債務の問題につきましては、一時と比べまして落ちつきを見せているというふうに理解しておりますが、依然として重要な課題であるということでございまして、その対策を講じていくことについては必要があるというふうに認識をしております。

藤野委員 今、カジノ実施法案が山場を迎えておりますが、法務省との関係でちょっとお聞きしたいのは、同法案の中にある特定資金貸付業務であります。これは、カジノでお金がなくなってしまったというお客さんにカジノ事業者が金を貸すことができる、こういう業務であります。

 この業務について法務省は、二〇一一年、超党派の国際観光産業振興議員連盟、いわゆるカジノ議員連盟と見解のすり合わせを行っていた。きのう法務省から、特定複合観光施設区域法案に関する質問事項についてという文書を提出してもらったんですが、法務省に確認します。

 これは、その超党派議連からの質問事項に答えた文書だということでよろしいですね。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の文書は、法務省が、御指摘の国際観光産業推進議員連盟に対して提出したものでございます。

藤野委員 この中で、ちょっと二点だけ確認したいんですが、時間の関係であわせて答弁いただきたいんですけれども、この中の五番目と六番目ですね。五番目は、要するに、そういう貸付け、お金を貸すことが民法九十条の公序良俗違反として無効になるのかどうかという質問、六番目は、債権者が債務者に強制執行できるのかという質問ですが、これについて、それぞれどのように回答していますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 個々の貸付けが民法九十条の定める公序良俗に反して無効とされるかどうかは、個別具体的な状況に応じた司法判断に委ねられることとなります。

 その上で、一般論として申し上げますと、判例上、貸与される金銭が賭博の用に供されることを知りつつ行われた金銭消費貸借契約は公序良俗に反して無効であると解されておりますが、これは、消費貸借契約の目的である金銭が犯罪に供されるものであることを当事者が認識した場合には、その契約の効力の実現に法が助力をするのは相当でないためであると考えられるためでございます。

 このような理解を前提とした場合には、賭博に該当し得る行為でありましても、法令上正当な行為とされるものの資金として金銭を貸し付ける行為は、その目的のみから公序良俗に反することにはならないと考えられるものでございます。

 また、一般論として、例えば、債権者が債務者に対して貸金返還請求訴訟を提起し、勝訴の確定判決が得られた場合には、債権者は、これを債務名義として、債務者の不動産等に対する強制執行の申立てをすることができるというものでございます。

藤野委員 つまり、貸付けをしても無効にならない、あるいは強制執行もできるということで、お墨つきを与えているわけですね。

 問題は、そのお墨つきをもらったといって喜んでいる人がいる。例えばIRゲーミング学会というのがあります。カジノを推進している団体の一つですが、このホームページ上にいろいろな記事が載っているんですけれども、二〇一二年の八月三十一日、これは今でも見ることができるんですけれども、こういう記述があるんですね。対顧客賭博資金取扱規制。これはすごいな、対顧客賭博資金ですから。その取扱規制というので、この文書のことが紹介され、「二〇一一年超党派議員連盟と法務省との議論では、正当行為として賭博が別途法律により認知されるのならば、当該行為に伴う債務に関しては、当然正当な債務となり、明文上の規定が無くとも、民法上の無効規定は適用されないとのことである。」というふうになっております。

 法務省にお聞きしたいんですが、このIRゲーミング学会は、当然正当な債務になると言っているんですけれども、法務省も同じ見解なんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、個々の貸付けが民法九十条の定める公序良俗に反して無効とされるかどうかは、個別具体的な状況に応じた司法判断に委ねられることになりますけれども、一般論として申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、正当な行為とされるものの資金として貸し付けた場合には、その目的のみから公序良俗に反することにはならないと考えているものでございます。

藤野委員 ですから、お墨つきを与えたこと自身はけしからぬのですけれども、それを更に、当然正当になるというふうに利用されているということですから、これは大問題だというふうに思います。

 日本の判例というのは、先ほど判例を述べられましたけれども、賭博行為を助長する金銭の貸付けは公序良俗に反して無効だと判示をしております。例えば、大審院昭和十三年三月三十日、これは判例百選にも載っております。その理由は、これは賭博行為の後にお金を貸した事例ですけれども、賭博債務が弁済されれば将来的にも賭博行為が繰り返し反復され、結果として賭博行為を助長、促進するということが理由になっているわけですね。ですから、日本の判例に反している。

 日本の公営ギャンブル、いろいろありますけれども、公営ギャンブルでも、例えばパチンコでも現場での金銭の貸付けというのは認められておりません。当然だと思うんですね。ギャンブル依存症、多重債務、これに直結するからであります。

 これは一体誰の要求に基づくものかということなんですが、在日米国商工会議所、この意見書で、「統合型リゾートが日本経済の活性化に寄与するための枠組みの構築」という意見書がございます。この中でこう言っているんですね。IRにおける顧客への金融サービスの提供を認めること、これは日本でカジノビジネスが成功する上で不可欠である、こういう記述があります、意見書の中に。つまり、対顧客賭博資金の提供というのはカジノが成功する上で不可欠と。日本に乗り込もうとしているカジノの大手業者の要求ということであります。

 アメリカでは、この貸付けが禁止されたらカジノビジネスはうまくいかないということで、例えばこういうことも言われているんですね。これを禁止すればカジノはうまくいかない、そんなことをすればバーでビールを規制するようなものだ、そこまで言われているわけですね。

 大臣にお聞きしたいんですが、これは日本の判例にも、あるいは日本の今ある公営ギャンブルの実態でもこういうことは認められていないわけですね、賭博行為を助長するから金銭の貸付けはだめだと。それなのに、アメリカが、大手のカジノ業者がこういうことを要求しているから貸付業務を合法化していく。こういうことは許されないんじゃないですか、大臣。

上川国務大臣 カジノ事業につきましては、その弊害につきまして心配をする声があるものと承知をしております。

 委員御指摘のように、カジノの資金とするための貸付けによって多額の債務を負った結果、生活が破綻すること、これを防止するということにつきましては重要なことであると理解をしております。

 法務省といたしましても、関係省庁と連携をし、このカジノ資金の借入れに伴う種々の問題につきましての啓発活動、また法テラスを含む相談体制の充実など、必要な協力をしてまいりたいというふうに考えております。

藤野委員 いや、私がお聞きしましたのは、日本の判例にも反する、他の公営ギャンブルでも認めていない金銭の貸付けを法務省が二〇一一年の段階でお墨つきを与えているわけですね。これは、冒頭大臣が言われたように、多重債務、これに直結するわけです。カジノ事業者が貸し付けるわけですから、まさに新たな依存症を生み、新たな債務者を生んでいく。多重債務や依存症を一層助長するわけでありまして、多重債務の防止が重要だとおっしゃった法務省がこういう貸付業務にお墨つきを与えるのはだめなんじゃないかというのが私の質問なんです、大臣。

葉梨副大臣 かつてちょっと私も個人的にパチンコ関係の担当者をしておりまして、今のパチンコの法制のもとを私がつくった経験から申し上げますと、パチンコをやる方にお金を貸すという行為は禁止されておりません。あるいは競馬、馬券を買いたいからということで貸すという行為は別に公序良俗違反ではありません。(藤野委員「現場で事業者が貸すんですよ」と呼ぶ)

 そして、その現場において事業者が貸すというようなことは、それぞれの形態がどういうような形態であるか、立法趣旨、IRというのは非常に大きな施設の中で一部がカジノであるということで、ほかの競馬ですとか競輪あるいはパチンコ、そういったものとは業態が相当違っているからだというふうに思いますが、少なくとも客に対して金銭を貸すという行為全体が公序良俗違反になるということではないということです。

藤野委員 大臣の答弁をお願いします、大臣。

上川国務大臣 先ほど答弁申し上げたカジノの資金とするための貸付け、これによりまして多重債務の問題について御指摘をいただいたわけでございますけれども、これは非常に大事な視点であるというふうに思っております。

 法務省といたしましては、カジノ資金の借入れに伴いまして種々の問題が発生するということにつきまして、啓蒙啓発活動については万全を期してまいりたいと思いますし、また、法テラスを含む相談体制の充実などにつきまして必要な協力をしっかりしてまいりたいというふうに思っております。

藤野委員 お答えにならないわけですね。

 副大臣は何かよくわからない答弁をされましたが、まさにパチンコについては、五月三十一日の内閣委員会で参考人質疑が行われて、弁護士の方から、まずはパチンコで認めていない、現場で事業者が貸すことは認めていない、なぜならそれはまさに過剰な、多重債務につながるからだというのは参考人からも厳しく指摘をされている問題で、全く話が違うというふうに思います。

 そういう点では、法務省が、多重債務を防止すべき法務省がこの貸付行為にお墨つきを与えているというのは、これはもう大問題だということを指摘したいと思います。

 その上で、法案についてお聞きをしていきたいと思います。

 今回の法改正は、相続法制が抱える重大な課題といいますか構造問題といいますか、これには率直に言って手がつけられていない、法律婚に限られている。改正部分については一定のニーズがあるというふうに思いますけれども、やはり全体として、あくまで端緒の改正であるというふうに思います。今後のさらなる抜本的な改正が必要だと思います。

 それとの関係でちょっとお聞きしたいんですが、先日の参考人質疑で、吉田参考人から、現在の寄与分制度ができたときに、一方では財産法的な論理での解決、他方であくまで相続法の枠内で解決するという議論があった、その議論の上、やはり相続の枠内で解決するということで現行の寄与分制度ができたという御指摘をいただいたんですが、法務省にこの点についてもう少し詳しく説明いただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先日行われました参考人質疑におきまして、吉田参考人から御指摘のような発言があったことは認識しております。

 現行法の寄与分制度は、昭和五十五年に、遺産分割に際し共同相続人間の実質的公平を図るという目的で創設されたわけですが、その寄与を認める者の範囲は相続人に限定しております。

 この議論の過程におきましては、相続人でなくても、相続人の妻などで被相続人の財産の形成に寄与した者については、遺産分割の手続への参加を認めて寄与分を求めることができるようにすべきとの意見があったものと承知しております。

 しかしながら、このような考え方をとり、相続人以外の方が遺産分割の手続に参加するということになりますと、その方が本当に貢献をしたか否かという点が判断ができるまでの間、遺産分割をすることができず問題である、こういったようなこともありまして、結局、そういった案は採用されなかったものと理解しております。

 吉田参考人の意見の財産法的な枠組みで考える考え方といいますのは、寄与者の範囲を相続人に限定しないという考え方を指すものでありまして、相続法的な枠組みで考える考え方といいますのは、寄与者の範囲を相続人に限定する考え方を指すものと思われるところでございます。

藤野委員 ですから、ある意味ずっと昔からこうした議論がされてきておりまして、やはり今回も、そこについて、中途半端といいますか、結論になっているということであります。

 もう一つ、日本の相続の特殊性についてお聞きしたいんですが、日本では時間的制限がないという先ほど御指摘もありましたけれども、要するに、相続人の合意と私的自治に相続というものが委ねられているというふうに思います。法務省も同じ認識でしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 相続につきましては、相続人が複数いる場合には相続人間の合意、あるいは、合意ができない場合にはこれにかわる家庭裁判所の審判ということになりますけれども、恐らく私的自治という点につきましては、諸外国の法制では、亡くなった方の債権債務ですとかあるいは積極財産と債務、こういったものについて例えば専門家が関与して整理していく、こういうような制度もあるところでございまして、日本ではそういうような制度はなく、積極財産と消極財産を承継したいわば相続人の方々、当事者の方々で処理する、そういう意味での私的自治という評価がされているものと理解しております。

藤野委員 吉田参考人はかなり純粋な包括承継主義とおっしゃっていましたが、結局、債権も債務も公証人とかを経ずに直接相続人に全部来ちゃって、その清算も相続人あるいは相続人間に委ねられているということであります。

 他方で、相続法学者の水野紀子東北大学教授はこう指摘しておりまして、相続は単なる積極財産の分配ではなく、責任財産を引き当てに取引する法主体の死による消失を市民社会が消化していく、半ば公的で複雑な手続であるという指摘であります。

 大臣、これは半ば公的な手続であるという指摘なんですが、日本の相続は、半ば公的なそうした手続がいわゆる私的自治というか、そういうものに委ねられている、こういう認識を大臣はお持ちでしょうか。

上川国務大臣 東北大学の水野教授から、参考人のということで、さまざまな貴重な御意見をいただいたものでございます。基本的な構造につきましての問題提起ということで、御意見というふうに思っております。

 その意味で、この法律案につきましても、高齢化の進展等の社会情勢の変化に鑑みまして、今回につきましては、基本的な構造に関しての問題というよりも、むしろ配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等のための喫緊の課題に対処しようとするものでございます。

 相続制度の基本的なあり方につきましてはさまざまな考え方があるということでありますが、今は、現在我が国がとっているそうした私的自治の考え方に伴っての相続の基本的な仕組み、こういったことにのっとって対応していくという法律案になっているものでございます。

藤野委員 今大臣おっしゃったように、本法案は、構造的な問題というよりも、喫緊の課題、そうした居住権の問題等で対応する法案だということであります。構造的な問題というのは、大臣もおっしゃられているように、国民の意識というものもやはりかかわってくると思います。そういう意味では今後の課題であるというふうに思います。

 その中でも、参考人からは、例えば吉田参考人の言い方で言うと相続のインフラストラクチャーという言い方をされておりましたが、半ば公的な手続であるということで、西欧では公証人とか遺産の裁判所というのもあったりしまして、まさに公的にそれを進めていく制度が担保されているわけですけれども、そうした相続のインフラのような組織というものを日本でどうやって構築していくかというのも、構造的な問題として大きいと思うんですが、この日本における相続のインフラの問題、大臣はどのようにして解消していこうというふうにお考えなんでしょうか。

上川国務大臣 先ほど委員から言及がございました吉田参考人の御指摘がございました。吉田参考人の御発言の趣旨については、相続につきましては債務の清算も含めまして大変複雑な法的処理が必要な分野であって、その意味で専門家の助力が必要であるけれども、我が国においてはそのような体制が十分に整備されていないというものであるというふうに理解をしているところでございます。

 もっとも、イギリスやフランス、先ほど外国の事例を言及されましたけれども、相続の手続をするのに際しまして常に専門家の関与を要することとする、そのことによりましては生ずるコストがございます。そして、そのコストにつきましても相続人が負担をするということでございますが、そのことについて国民の理解が得られるのかどうかということにつきましても、慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。

藤野委員 コストの問題はあると思うんですが、例えば日本の民法の母法、もとと言われているフランスでは、公証人が一万一千人を超えている。他方で、日本では五百人にも達していない。あるいは、では司法書士や弁護士はどうかといいますと、それぞれ利益相反の問題なども指摘されているということで、なかなか、公的に関与するといった場合、これというものが日本の場合はないのではないか。

 それで、法務省にお聞きしましたら、今回、遺言というのもその一つであるというふうに説明も受けましたし、あるいは、法定相続情報証明制度というのが二〇一七年五月にスタートしている、これもそうしたものに使えるのではないかという説明もいただいたんですけれども、しかし、やはり全体として求められている水準の公的な関与というものには至っていないというふうに思うんですね。

 ですから、そうした点も含めまして、本来であれば公的なサポートを受けられるはずの人たちが、そうしたサポートを受けられないまま相続という大変な手続をやっているということでありますので、今後、やはりそうした公的な手続であるという認識をもっとはっきりと持っていただいて、その上で家族的結合の多様性にも配慮するような法改正というのが必要だというふうに思います。

 先ほど大臣は、門委員だったと思うんですが、家族の多様なあり方について、国民の議論を注視して今後検討するというふうに答弁されたと思うんですが、この認識、もう一度お聞きしたいんですけれども、大臣。

上川国務大臣 相続に関する制度につきましては、国民の生活に係る大変重要なことでございます。

 今回は、大変喫緊な課題についての対応ということで、法制審議会でも十分な議論をいただきながら、パブコメも含めて行った結果として今回提案をしたものでございます。

 参考人の皆様からのさまざまな視点からの御議論もいただきましたし、今委員御指摘のように、大変基本的な御質問、また問題意識というものにつきましても問うていただいたところでございます。

 今、現在におきましては、提出させていただきました法律案ということについて、これをぜひとも通していただきたいということでございますが、法律案が成立して施行された場合につきましては、その施行状況、また同時に、社会経済情勢の変化、特に多様な家族のあり方に関する状況等、こうしたことを注視をしながら、見直しの要否、さまざまな点につきまして検討をしてまいりたいというふうに思っております。

藤野委員 相続法の抜本的な改正は今後の課題であるということを指摘して、質問を終わります。

平口委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 まずは、昨日でしたでしょうか、松山刑務所大井造船作業所の検証結果報告をいただきまして、ありがとうございました。

 中身を拝見させていただきまして、予想以上にいろいろな検証をされていらっしゃるということもありましたし、私も委員会で質問させていただいた一番逃走しやすい就寝から起床の間というのは、当面、厳重な警備体制になるまでは、一応、松山刑務所に収容されて、そして日々、大井造船作業所に護送されるということになっておりまして、これはやむを得ないなとは思いつつ、そういったようなことの配慮をしていただけたということは大変感謝をさせていただきます。

 これから一番大事なのはやはり周辺住民の理解だと思いますので、いろいろな方策をしながら周辺住民に理解をしていただき、また、この制度というのは、私も大変、再犯率が非常に低いということでありますので、続けていただきたいと思います。

 それでは、早速、今回の質問をさせていただきますが、まずは、預貯金に関して、これまで遺産分割の対象にならなかったものが、最高裁の判例によって遺産分割の対象になったわけですけれども、当面遺産分割の対象にならなかったことの理由と、今回遺産分割の対象にすることに最高裁が判断をした、その理由というのはどういうものなんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、従前は、判例上、共同相続された預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、遺産分割の対象にはならないと解されてきたところでございます。

 遺産分割は、共同相続人間で遺産共有にある状態の財産を分割する手続でございますが、預貯金債権は、その性質上可分であって、民法四百二十七条、これは分割債権及び分割債務の規定でございますが、その規定の適用によって当然に分割されることになるから、相続人間の協議や家庭裁判所の審判等によってその分割方法を定める必要がないとの判断がされてきたものと承知しております。

 ただ、今回、平成二十八年に最高裁の判断が示されて、こういう預貯金の債権につきまして遺産分割の対象になるとされたものでございますけれども、預金につきましては、例えば、入金した場合、その都度その都度入金しても、それが既存の金額と合わさって一体化していく、そういったような預金の特殊性に鑑みますと、通常の可分債権と同じように考えるということはできないのではないか、こういったことなどを理由として、最高裁の判断が示されたものと理解しております。

串田委員 最近、仮想通貨というのが非常に多くなりました。数としては千五百種類あるというような、日々ふえているという話もありますし、また、FXの取引をしている人も多いかと思うんですが、これは、株式は、株式の番号が書いてありますので、準共有というのはわかりやすいんですが、仮想通貨だとかFXというのは、特定しているわけではなくて、量的なものですので、可分といえば可分なわけですけれども、そういう意味で、預貯金と仮想通貨あるいはFXというのは今後は同じような扱い方をされていくのか、それともやはり預貯金とはあくまで別個の扱いをしていくのかという方向性というのはどうなんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 被相続人に属する特定の財産について、これが遺産分割の対象になるかどうかといったものにつきましては、判例は、その財産の内容や性質等を個別に検討した上でその対象になるかどうかということを判断しているものと考えております。

 お尋ねの、仮想通貨が遺産分割の対象となるか否かにつきましても、その権利の内容や性質等が明らかにならない限り、その判断をするのは困難でございますが、この点については、いまだ議論の蓄積がなく、適切な裁判例も見当たらないものと考えております。

 法務省といたしましては、今後の議論の動向を注視してまいりたいと考えておりますけれども、その権利の内容や性質等が必ずしも明らかになっておりません現時点では、仮想通貨が遺産分割の対象になるかどうかについてお答えすることは困難であるというふうに考えております。

串田委員 今回、仮払い制度というのができましたが、それの理由としては、葬式を挙げるときの費用に充てるという意味でも、社会的な、葬式を挙げなければならないという需要に応じていくのかなと思うんですね。

 そういう意味では、仮想通貨も、相手方が証券会社というようなこと、FXは証券会社ですし、仮想通貨は特殊な取引所ではありますけれども、かなりそういう意味では流通性が高いわけでございますので、お葬式を挙げるということの必要性という点では、極めて現金化しやすいというふうに思うんですが、こういうものを今後対象にしていくという考え方はあるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、預貯金の払戻しのところでも申し上げましたけれども、その対象となっている権利が可分債権なのかどうか、通常の民法の可分債権の規定の適用が当てはまる性質のものなのかどうか、やはりそういった権利の性質に応じて判断がされるべきものと思っておりまして、仮想通貨につきまして、そういった現実の経済的な実情につきまして、委員御指摘のような実情があるといたしましても、やはり法的な性質というものの判断ということがどうなるのかということにもよると思われますので、なかなかちょっと現段階でお答えするのは困難であるということでございます。

串田委員 仮想通貨に関しては、財金委員会でも私質問させていただいて、仮想通貨と書いてあるから通貨なのかと聞いたら、通貨じゃないと。それなら、物なのか債権なのか、どちらかは今わからない、こういう回答をいただきまして、日々すごい金額を取引されているのにかかわらず、法律の枠外というような扱い方なんですが、果たしてそういうことがいいのかどうかということで、国民はそれで取引をしているわけですから。

 株式の場合には、投資の判断として、金融商品取引法で極めて厳しい、会社の収支関係というのを報告をさせておきながら、仮想通貨という場合は、千五百種類もあって、日々つくられて、じゃ、誰がつくるのかというと、誰でもつくれる、こういう通貨を国民が投資をしている。

 こういう状況の中で、やはり国としては、それに対する規制というものをしていかなきゃいけないし、今回も、預貯金と同じとは言いませんけれども、同じような形で流通をさせているという部分には、何らかの規制というか法律的な枠組みというものをはめ込んでいくという作業が必要なのではないかなと思っております。

 次に、配偶者居住権についてお聞きをしたいと思うんですけれども、配偶者居住権は、いつ消滅をするんでしょうか。

 これはどういうことかといいますと、例えば、一時入院をしている場合、一時親族が引き取っている場合、これはいつ消滅をするのかというのが書かれていないんですけれども、どう考えたらいいんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 配偶者居住権の消滅原因といたしましては、その存続期間が満了した場合、居住建物の所有者による消滅請求が認められる場合のほか、配偶者が配偶者居住権の放棄をした場合等が挙げられます。

 御指摘の、配偶者が入院した場合や、あるいは配偶者がほかの親族のところに預けられた場合など、配偶者が居住建物から転居した場合につきましては、それによって配偶者が配偶者居住権を放棄したものと見ることができるのでありますれば、配偶者居住権が消滅することとなりますけれども、一般的には、そのような評価がされることはほとんどないものと思われます。

串田委員 一般的にそのようなことはないということは、親族が引き取っても、配偶者が放棄をしたという明示をしない限りは、黙示的には了承されないという理解なのか。非常にそういう意味で、所有者としては、誰も住んでいないけれども居住をさせなければいけないという負担がずっと残るという部分がちょっと曖昧かなというふうには思うんですけれども、この点はそれでいいんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、放棄といいますものが消滅原因となっておりますので、その放棄をしたかどうかといいますものは、これはさまざまな具体的な事情に応じて認定がされるべきものだと思います。

 ですから、入院ですとか、あるいはほかの親族のところに行かれた、こういったようなそれぞれの具体的な事情、そういったものを個別に考慮して判断されるべきものと考えております。

串田委員 では、一方、今度は、配偶者が一時中止をしてどこかに移動しておき、また戻るんだというような、そういう自由度というのは配偶者には認められているんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、配偶者居住権の消滅事由としては、配偶者がこれを放棄するということがあるわけでございますが、例えば、しばらく海外に行くなど一時的に居住建物の利用を中止するということでありましても、それは戻ってくる御意思があるわけでございますので、その場合には放棄には当たらず、引き続き権利者として居住建物を利用することができるものと考えられます。

串田委員 また別の、今度は遺言書の件についてお聞きしたいんです。

 遺言書に関して、署名だけということになるわけですが、これまでは、全部自筆で書いたということで、いわゆる認知症などのチェックも、自筆で書いているという部分からある程度判断ができるわけでございますが、これからは、署名という非常に単純な、名前を書くだけで内容自体を十分理解しているかどうかということがわからないという部分もあるわけです。

 例えば、周りの親族が、自分が取得するという部分をワープロで書いたものを添付して名前だけ書かせるとかいうようなこともあると思うんですが、この保管をするときに、署名欄と、本人が来るということは前にちょっとお聞きをしたんですけれども、それ以外に、例えば、本人が来たときに、保管を受ける側がその者に対して何か確認をするという作業はするんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回のこの法律案におきましては、自筆証書遺言の方式を緩和しておりますけれども、自筆でなくていいというのは財産目録の部分だけでございますので、遺言書の本文部分につきましてはやはり自書していただく必要がございます。また、財産目録につきましても、署名と押印と両方が必要ということになっております。

 その上で、新しい遺言書保管の制度におきまして、遺言書保管官の方が遺言書を預かるわけでございますけれども、その際には、自筆証書遺言が形式的にその要件を満たしているかどうか、例えば、本文のところがきちんと手書きで書かれているかどうかですとか、民法上の要件でありますようなそういったものが形式的に備わっているかどうかというものをチェックするということでございます。

串田委員 例えば、自分で持っていけない場合に、実印と印鑑証明をつけた委任状で代理人が持参をするということは許されるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書保管法におきましては、遺言書の保管の申請をするときは、遺言者が遺言書保管所にみずから出頭して行わなければならないこととしております。

 この趣旨は、遺言者の意思に反して遺言書の保管の申請がされることや、真正に成立していない遺言書の保管の申請がされることを防止することにございます。

 したがいまして、遺言書の保管の申請につきましては、例えば委員御指摘のような、実印と印鑑証明などで代理人が行うということは認められないものでございます。

串田委員 最後に大臣にお伺いしたいと思うんですが、参考人の方の中で扶養と相続というお話があったんですけれども、今後、非常に介護をする側も高齢化して、みとりというのを自宅で行うというようなこともあると思うんです。これから、将来的な意味でそういう、先ほど終活という話もほかの委員からもありましたが、法律上の整備として、みとりというようなことも含めまして、現在の法整備ということで十分なのかどうか、大臣の所感をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 社会の少子高齢化が進んでおりまして、介護の問題、また今おっしゃったみとりの問題ということについては、切実な課題になってきているというふうに認識をしているところでございます。

 今回の法律案でありますが、被相続人の親族が介護等の貢献をした場合を念頭に置きまして、新たに特別の寄与の制度を設けることとしておりまして、このことも介護の問題について一定の対応をすることができるのではないか、こんなふうに考えているところでございます。

 介護の問題、またみとりの問題、それぞれ、相続の場面だけではなくて、さまざまな場面が問題となるところでございます。政府全体としてもしっかりと取り組むべき大変大きな課題であるというふうに考えております。

 法務省におきましては、相続法を所管しているところでございますが、今後も、介護のあり方を含めまして、必要な見直しにつきましてしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

串田委員 終わります。ありがとうございました。

平口委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより討論に入ります。

 内閣提出、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案に対し、討論の申出がありますので、これを許します。山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党を代表し、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案につき、反対の立場から討論します。

 反対の理由は、本質的な一点であります。

 今回創設される特別寄与制度の対象から、法律上の親族には当たらない事実婚や同性カップルが外されていること、そして、その判断が象徴する安倍政権の差別的態度、人権意識における致命的鈍感さを私たち立憲民主党は容認できないからです。

 現行法制では捉え切れていない相続人以外の方が……(発言する者あり)静かにしていただいていいですか。何か問題があるなら、後で言っていただけますか。

 現行法制では捉え切れていない相続人以外の方が献身的に介護や看病などの貢献をしたとき、それを評価して、実質的な公平を図る制度をつくろうという提案には賛成です。しかし、その趣旨は、いわゆる長男の嫁のみならず、まさに事実婚のカップルや同性パートナーにこそ当てはまるのではありませんか。

 にもかかわらず、制度の対象からあえて事実婚や同性パートナーを外すのは、制度趣旨をねじ曲げる不公正ではありませんか。

 野党推薦の参考人はもちろん、与党推薦の参考人すら……(発言する者あり)黙っていただいていいですか、理事なんですから。(発言する者あり)黙れと言うなら、黙っていてください。(発言する者あり)反応しているのはそちらでしょう。

 にもかかわらず、制度の対象からあえて事実婚や同性パートナーを外すのは、制度趣旨をねじ曲げる不公正ではありませんか。

 野党推薦の参考人はもちろん……(発言する者あり)理事がそこからやじを飛ばすのはやめていただけますか。

 野党推薦の参考人はもちろん、与党推薦の参考人すら、一学者としての見解においては、親族に限定しないことが望ましいという立場に立たれていたことが明らかになりました。法制審のパブリックコメントでも、親族に限定しない立場は、限定すべしとする立場の約三倍でした。法制審そのものにおいても、第十九回、親族に限定しない立場を基本としてさらなる検討を進めることとされておりました。

 私は、参考人の意見やパブコメの数、法制審の流れが全てとは思いません。しかし、熟議の過程で多様な意見が一定方向に集約されていく流れに突如、最終的に逆行した結論を出し、この委員会でも是正しないからには、よほど説得的な理由が必要です。本委員会における法務大臣を始めとする政府答弁は、この論点については少なくとも説得力ゼロでありました。

 事実婚の当事者の中には、政府が選択的夫婦別姓を認めないがために、法律婚を望みながら事実婚を選択せざるを得ないカップルも大勢います。同性パートナーは、政府が同性婚を認めないがために、法律婚を望んでも不可能な状態に置かれています。

 選択的夫婦別姓やLGBT差別解消法、同性パートナーシップ制度あるいは同性婚は、多様で差別のない社会を選択する国家の標準装備です。しかし、私たち野党の多くの政党がこうした法案を提案しても、政府・与党は審議や協力を拒否しております。

 法律婚を望むカップルすら法律婚できない環境を意図的に放置しながら、他方で、提出してくる閣法では、法律婚でないという理由で結果的にこうした当事者を切り捨てるのは無責任ではありませんか。

 私たち立憲民主党は、この法案の賛否について最後まで判断を留保しておりました。しかし、最終的に、法案の一部であれ、多様で差別のない社会という譲れない価値に本質的に反する法案には反対の姿勢を明確にし、その理由を議事録にとどめることで、今の安倍政権には発信できないリベラルな価値の発信者となることを選択いたします。

 LGBT当事者である鈴木賢参考人の、法律の小さい文言が日本を変える力になるという本委員会での言葉を再度紹介いたします。私たちは、親族という本法案の小さい文言が、差別を固定化する見えない力となることに反対です。

 なお、附帯決議作成には全面的にかかわらせていただきましたし、我が党も賛成いたします。成立する可能性の高い法案に対して、与野党かかわらず、賛否かかわらず、最低限共有できる課題を明示することは、立法府として意義ある職責であると考えます。

 以上、反対の理由を明らかにし、討論といたします。(拍手)

平口委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、法務局における遺言書の保管等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 この際、ただいま議決いたしました両案に対し、田所嘉徳君外六名から、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、公明党、無所属の会、日本共産党及び日本維新の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。源馬謙太郎君。

源馬委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案」及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律案」に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 現代社会において家族の在り方が多様に変化してきていることに鑑み、多様な家族の在り方を尊重する観点から、特別の寄与の制度その他の本法の施行状況を踏まえつつ、その保護の在り方について検討すること。

 二 性的マイノリティを含む様々な立場にある者が遺言の内容について事前に相談できる仕組みを構築するとともに、遺言の積極的活用により、遺言者の意思を尊重した遺産の分配が可能となるよう、遺言制度の周知に努めること。

 三 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の実効性を確保するため、遺言者の死亡届が提出された後、遺言書の存在が相続人、受遺者等に通知される仕組みを可及的速やかに構築すること。

 四 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の信頼を得るため、遺言書の保管等の業務をつかさどる遺言書保管官の適正な業務の遂行を担保する措置を講ずるよう検討すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

平口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平口委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。上川法務大臣。

上川国務大臣 ただいま可決されました民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び法務局における遺言書の保管等に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

平口委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

平口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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