衆議院

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第2号 平成31年3月8日(金曜日)

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平成三十一年三月八日(金曜日)

    午前九時八分開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 階   猛君 理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    井野 俊郎君

      上杉謙太郎君    大隈 和英君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      門  博文君    門山 宏哲君

      上川 陽子君    神田  裕君

      木村 哲也君    黄川田仁志君

      国光あやの君    小寺 裕雄君

      小林 茂樹君    小林 鷹之君

      佐々木 紀君    佐藤 明男君

      平  将明君    中曽根康隆君

      古川  康君    山田 美樹君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      黒岩 宇洋君    松田  功君

      松平 浩一君    山崎  誠君

      山本和嘉子君    源馬謙太郎君

      遠山 清彦君    藤野 保史君

      串田 誠一君    井出 庸生君

      柚木 道義君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   内閣府副大臣       左藤  章君

   法務副大臣        平口  洋君

   総務大臣政務官      國重  徹君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   農林水産大臣政務官    濱村  進君

   経済産業大臣政務官    石川 昭政君

   国土交通大臣政務官    工藤 彰三君

   最高裁判所事務総局総務局長            村田 斉志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       長屋  聡君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 福田 正信君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 内藤 浩文君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 田中 勝也君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       西山 卓爾君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 山内 由光君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    名執 雅子君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    今福 章二君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  高嶋 智光君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  佐々木聖子君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     内藤 敏也君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    橋本 泰宏君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     小寺 裕雄君

  上川 陽子君     山田 美樹君

  黄川田仁志君     小林 鷹之君

  国光あやの君     佐藤 明男君

  古川 禎久君     平  将明君

  和田 義明君     木村 哲也君

  山本和嘉子君     山崎  誠君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 哲也君     大隈 和英君

  小寺 裕雄君     門  博文君

  小林 鷹之君     佐々木 紀君

  佐藤 明男君     上杉謙太郎君

  平  将明君     古川 禎久君

  山田 美樹君     上川 陽子君

  山崎  誠君     山本和嘉子君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     国光あやの君

  大隈 和英君     和田 義明君

  佐々木 紀君     黄川田仁志君

    ―――――――――――――

三月八日

 共謀罪(テロ等準備罪)を即時廃止することに関する請願(田村貴昭君紹介)(第一六三号)

 同(白石洋一君紹介)(第一八六号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(長尾秀樹君紹介)(第一八四号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(長尾秀樹君紹介)(第一八五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣人事局人事政策統括官長屋聡君、内閣府大臣官房審議官福田正信君、警察庁長官官房審議官内藤浩文君、警察庁長官官房審議官小田部耕治君、警察庁長官官房審議官田中勝也君、法務省大臣官房政策立案総括審議官西山卓爾君、法務省大臣官房審議官山内由光君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、法務省矯正局長名執雅子君、法務省保護局長今福章二君、法務省人権擁護局長高嶋智光君、法務省入国管理局長佐々木聖子君、文化庁審議官内藤敏也君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長橋本泰宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長村田斉志君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。松平浩一君。

松平委員 おはようございます。立憲民主党の松平浩一です。

 きょう、今国会、法務委員会で初めての質問ということで、よろしくお願いいたします。

 きょうは、コインハイブ事件、それからネット上の名誉毀損についてお伺いしたいなと思っています。

 まず、コインハイブ事件についてお伺いいたします。

 コインハイブ事件、御存じない方いらっしゃるかと思いますので、簡単に御説明したいと思います。去年の六月十四日に新聞で報じられた事件です。

 これはどういう事件かといいますと、同意なしに他人のパソコンを使って、仮想通貨の獲得手段、これはマイニングというんですけれども、採掘ですね、マイニングをしたなどとして、神奈川や愛知など全国の十県警が不正指令電磁的記録作成容疑などで計十六人を摘発した、そういう内容です。

 この事件は、自身が運営するウエブサイトに、仮想通貨、これはモネロという仮想通貨ですけれども、これをマイニングするためのコインハイブと呼ばれるプログラムを設置しておりました。それで、その設置したサイトに閲覧者が訪れると、見に行くと、その閲覧者、見に行った人のパソコンが自動的にマイニングを始めてしまう、そういったものです。始まったマイニングで得られた報酬は、モネロコインですけれども、これはプログラムの設置者、ウエブサイトの開設者が得る、そういうものです。

 これは、無断で閲覧者のCPUのパワーを盗む、そして仮想通貨を採掘するということで、CPUパワー窃盗というふうに俗に呼ばれたりもしております。

 このコインハイブ事件、一時期、報道等で少し話題になりましたけれども、その後、この二〇一八年六月の後、新たな摘発に関する報道というのは余りなされていないというふうに思っています。

 ただ、こういったマイニングプログラムは結構行われているんじゃないかなと推測されるところで、そこで、ちょっとお聞きしたいんですけれども、現在に至るまで、これは捕まったとき、十六人が二十三件の事案で捕まっているんですけれども、現在までその捕まった数というのはふえているんでしょうか。お聞かせいただければと思います。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 警察では、平成三十年中、仮想通貨を不正に採掘させるプログラムを利用した不正指令電磁的記録供用等事件を二十八件、二十一人検挙しているところでございます。

松平委員 承知しました。二十一人、二十八件ということは、最初の事件から五人新たに逮捕されているということになりますでしょうか。

 この事件、今おっしゃっていただいたように、この摘発については不正指令電磁的記録保管、供用罪などで逮捕されたというふうに聞いております。これは俗にコンピューターウイルスに関する罪というふうにも呼ばれているんですけれども、参考までに、資料一として条文をお配りさせていただいております。

 これを読むと、ちょっとややこしいんですが、刑法百六十八条の二、「正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」、そして、一号として、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」であるという形の規定になっています。

 それで、今回の事件、今申し述べた条文に反しての逮捕、起訴、略式起訴もあったと思うんですが、となっているわけですけれども、これは結構、この構成要件の該当性に関していろいろな議論があったと承知しています。

 それで、この構成要件に該当するかどうかというところを本来であればお聞きしたいんですが、恐らく個別の事件に関してはちょっとコメントできないという答えが返ってくると思うので、この点についてはやめておきますけれども、ただ、ちょっと言わせていただきたいのは、この構成要件、非常に曖昧であるというふうに思っています。閲覧者に無断でCPUを使ってマイニングさせる、これが、先ほど申し述べた一号に言う「その意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令」、これに該当するのかどうか、ここの部分なんです。

 このコンピューターウイルスに関する罪、これは立法当時、参議院法務委員会に参考人として出席した方で、産業技術総合研究所の高木浩光主任研究員が、このコインハイブ事件についてこうおっしゃられています。

 懸念したとおりの事件が起きた。閲覧者に無断で計算させCPUを使わせることが問題だというふうに言うけれども、一般のコンテンツの閲覧にも、普通に見るだけでCPUは使われます。動画広告を置けば、コインハイブよりもCPUを使って動作が重くなる可能性もある、したがって、これが急に犯罪とされるのは理解できないとおっしゃられております。

 私、これは非常に重要な指摘だと思っています。インターネット上には、動画広告、バナー広告など、サイト閲覧者やサービス利用者の承諾を得ずに動くプログラムというのはいっぱい存在しています。これらはほとんど、無断で閲覧者のPCのCPUを使っているんです。ネット上の動画広告やバナー広告はよくて、仮想通貨のマイニングはだめ、この違いがどこにあるのか。

 これは、この罪の構成要件が非常に不明確になっている、罪刑法定主義に反しているのではないかという疑義があると思っております。

 ちなみに、確認なんですけれども、罪刑法定主義、これは刑法、どこを見ても書かれておりません。ですが、この罪刑法定主義、前提として認められているということでよろしいんですよね。ちょっと確認させてください。

小山政府参考人 お答え申し上げます。

 罪刑法定主義に関するお尋ねでございます。

 こちらは法令上の用語ではないものの、一般的には、一定の行為を犯罪とし行為者を処罰するためには、あらかじめ成文の刑罰法規によって犯罪と刑罰とが規定されていることを要するという原則をいうものと承知しております。

 この罪刑法定主義、一般に、国家の刑罰権の抑制的原理として重要な基本的原則の一つとされておりまして、法務省といたしましても、法律案の立案に当たりましてはこの罪刑法定主義を踏まえているものと考えているところでございます。

松平委員 ありがとうございます。罪刑法定主義、踏まえているとはっきりおっしゃっていただきました。

 とすると、私、この罪刑法定主義に照らすと、無断でPCのCPUを使う動画広告はよくて、なぜこちらがだめなのか、なぜ今回は構成要件に該当して、動画広告の場合は構成要件に該当しないのか、これは該当性がやはり不明確であって、この罪の条文、改善の必要性があるというふうに思っているんですが、これはいかがでしょうか。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 お尋ねは、特定の事案を念頭に置いて構成要件該当性をお尋ねになっておりまして、犯罪の成否は捜査機関に収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事項でございまして、お答えはできないところでございます。

 なお、一般論で申しますと、刑法第百六十八条の二、不正指令電磁的記録作成等の罪及び刑法第百六十八条の三、不正指令電磁的記録取得等の罪についてでございますが、この電磁的記録の意義につきましては、委員も資料に掲示されております条文にございますように、この電磁的記録について、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」等とされているところでございまして、これらの構成要件は、通常の判断能力を有する一般人において、その意義を十分に理解し得るものであって、明確性の点で問題はなく、罪刑法定主義に反するものではないと事務当局としては考えております。

松平委員 今、明確性の点で問題ないというふうにおっしゃっていただきました。

 この不正指令電磁的記録作成、保管、供用罪について、今言及の方はなかったんですが、この解釈について、法務省さんは資料を出されていらっしゃいます。

 この資料はどういうものか。その意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令と、こっちは一号の要件、こちらに関して、それがどういうものかという解釈を行っていらっしゃいます。

 これは法務省ホームページに記載されておりまして、タイトルが「いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪について」という資料です。そこでは、何が不正に当たるかは、これは資料一としてお配りした紙の下段の方ですね、下のところに記載しています。何が不正に当たるか否か。こちらは、その機能を踏まえ、社会的に許容し得るものであるか否かという観点から判断というふうに解釈していらっしゃいます。

 私、この社会的に許容し得るものであるかどうかという部分の解釈なんですけれども、社会的に許容しているかどうか。コインハイブは新しい技術、新しい仕組みなので、判断できる材料がそもそもないというふうに思っているんです。新しい技術というのは、新しいので周りが理解できないので、時がたつにつれて評価も変わってくるんじゃないかなと。

 なので、社会的に許容されるかどうかなんてわからない場合もあると思いますし、往々にして、もしかすると、新しい技術というのは理解されない場合も多いんじゃないか、新しい技術というのは理解されないので許容されないところから始まる場合も多いんじゃないのかな、過去、そういうことも往々にしてあったんじゃないかなというふうに思っているんです。

 かつて、ファイル共有ソフトのウィニー、これは作成者の金子勇さんが著作権法違反幇助の疑いで逮捕、起訴される事件というものが起こっています。このウィニー、ピア・ツー・ピアという概念を広く世の中に知らしめる存在となった共有ソフトです。このピア・ツー・ピア、今やブロックチェーンを語る上では、通信技術でもう存在不可欠というふうになっていて、多くのウエブサイトで使われています。

 もしかしたら、ユーチューブ、皆さん御存じのユーチューブだって、新しいサービスで誰も理解していなかったですね。ユーチューブの開発者が著作権法違反の幇助になっていたかもしれない。

 こういった、社会的に許容し得るものかどうかという、新しい技術をもしかしたら否定させてしまう根拠となるような解釈をさせる、そういうもととなる規範をホームページ上に掲載するというのは、これはいかがなものかなというふうに思っているんです。

 この点、いかがでしょうか。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 まず、前提といたしまして、この不正指令電磁的記録に関する罪の要件である不正な指令の解釈がございました。

 こちらでございますが、同罪の対象を不正な指令に限定することといたしましたのは、その前提となる要件を満たす電子計算機の使用者の意図に沿うべき動作をさせず、又は意図に反する動作をさせるべき指令を与えるプログラムであれば、多くの場合、それだけで、その指令の内容を問わず、プログラムに対する社会の信頼を害するものとして、その作成、供用等の行為に当罰性があるようにも考えられてしまいますところ、そのような指令を与えるプログラムの中には、議員の問題意識にもあるかとは思いますが、社会的に許容し得るものが例外的に含まれるところでございまして、このようなプログラムを処罰対象から除外するためのものでございます。

 「不正な」との文言は、このような趣旨で設けられたものでございまして、あるプログラムによる指令が不正なものであるかどうかにつきましては、そのプログラムの機能を踏まえ、社会的に許容し得るものであるか否かという観点から判断するということになるものでございまして、それ自体、明確性を欠くものではないと我々としては考えております。

 また、刑法上、構成要件に「不正な」あるいは「不正に」との文言が用いられている例はほかにも複数ございまして、その意味でも問題がないものと考えております。

 したがいまして、インターネット上といいますか、ホームページ上に載せているこの解説も、こういう考えに基づいて、させていただいているところでございます。

松平委員 ちょっと余り納得感がないところではあるんですけれども。

 ちょっとしつこいようで申しわけないんですが、その機能を踏まえて社会的に許容し得るものか否かという観点から判断という解釈、新しい技術やサービスについて、社会的に許容されるまでには相応の時間がかかる。だから、許容されていないからだめ、先ほど、社会の信頼を害すれば当罰性があるみたいなお話もあったと思うんですが、だから、社会の信頼を害するからだめというふうに言ってしまうと、やはり新しいものがもしかして生まれなくなってしまうかもしれない、イノベーションが阻害されてしまうかもしれないという観点もあるというふうに私は思っています。

 ちょっと振り返って、このコンピューターウイルスに関する罪が立法された当時の議論、二〇一一年の議論を見ますと、参議院で附帯決議が付与されています。この附帯決議、資料二としてお配りしました。次のページです。

 この附帯決議、これはちょっと長いんですけれども、まず、上から六行目の後半部分に、「同罪の構成要件の意義を周知徹底することに努めること。」、そういうふうな附帯決議がなされています。この「周知徹底することに努めること。」、これは、まさしく本件のような事案の発生を見越した指摘なのかなと思っています。

 先ほど参議院の、ちょっとコメントを引用させていただいたんですけれども、その方以外にも、世の中の一般の方からも、このコインハイブ事件の摘発に関していろいろな意見がありました。

 実際、つくったエンジニアの方は、警察が家に来るまで、何が違法なのか、よくわからなかったと。ほかのエンジニアたちがみんな萎縮してしまっている、このシステムは端末に破壊的な悪影響を与えるものじゃないのにな、ウエブ広告と同じ仕組みでウイルスには当たらないのにな、そういうコメントが結構あります。

 これらは、私、やはりもっともな指摘だなと思うんですけれども、こういった意見が、コメントが出てくるということ自体が、やはり構成要件の意義が不明確であり、参議院の附帯決議にある周知徹底というものがなされていないことに原因があるのかなというふうに思っています。

 そこで、公的な見解、せめて判断基準をもう少し、もう少しというか、もっと詳細に明らかにする努力、摘発事例の解説であるとか違法の具体例を示す積極的な広報であるとか、国民の予測可能性を高める取組を進めるべきというふうに思っております。

 この点、現時点での取組、今後に向けてのお考えをお聞かせいただければありがたく思います。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど委員から御指摘がございました情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律の国会審議におきまして、御指摘のとおり、参議院法務委員会における附帯決議で、不正指令電磁的記録に関する罪の構成要件の意義を周知徹底することに努めることなどとされたことを踏まえまして、法務省といたしましては、同法の制定以降、既に御紹介ありました法務省ホームページに、この改正法に関するQアンドAを掲載いたしまして、不正指令電磁的記録に関する罪についての考え方を掲載いたしました。

 それから、法務省刑事局局長名で、各検察庁に対しまして、この改正法の施行に関する依命通達を発出いたしました。また、これを同時に警察庁及び最高裁にも送付してございます。

 また、立案担当者として、この改正法の解説について法律雑誌に掲載するといった周知を行ってきたところでございます。

 また今後も、必要に応じて、こういうものの周知は進めていきたいと考えております。

松平委員 警察庁さんに対して通達も発せられているということであったり、QアンドAを書かれていたり、結構やっていらっしゃるようなんですけれども、こういう、なぜ違法なのかわからないみたいな意見は出ているところは確かであるというところです。

 警察庁さんが、ホームページで注意喚起、「仮想通貨を採掘するツール(マイニングツール)に関する注意喚起」と題する広報を行っていらっしゃいます。これは、お配りした資料三、次のページ、めくっていただいて資料三にあるんですが、これはホームページをプリントアウトしたものです。これはちょっと下が切れちゃっていますけれども、太線で囲まれたところはウエブサイト運営者に対する注意喚起なんですが、その下はインターネット利用者への注意というものも行われています。

 それで、こちらの資料三の、今ちょっと言及させていただいた太線で囲まれた箇所ですね、「マイニングツールを設置していることを閲覧者に対して明示せずにマイニングツールを設置した場合、犯罪になる可能性があります。」というような形で注意喚起がなされています。私、これは相当、犯罪の取締りを行う警察庁の広報としては、ちょっと足りないのかなというふうに思っていまして、せめて、どういう行為がなぜ犯罪になるのかというところを示すべきであったのではないかなと思います。やはり、この広報を読んで、大丈夫なのかどうか、コインハイブを設置していいのかどうか、この文章じゃよくわからないんですよね。

 そもそも、この広報を、注意喚起を出された趣旨を教えてもらってもいいでしょうか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、サイバー犯罪に巻き込まれないための対策につきましては、平素より注意喚起を行っているところでございます。

 御指摘の注意喚起につきましては、仮想通貨を不正に採掘させるプログラムを利用した不正指令電磁的記録事件の発生状況を踏まえまして、インターネット利用者の方の被害防止を呼びかけるとともに、ウエブサイトの運営者の方に対しても、同種事案の発生防止を呼びかけるために行ったものでございます。

松平委員 私、運営者は、やはり警察庁のホームページで確認する人というのは多いと思うんですね。そこで、もうちょっと、先ほど申しましたとおり、なぜ、どういう行為が犯罪なのかというところを示していただきたいなと。それが、参議院の、構成要件を周知徹底することに努めることという意義に沿うことになるのかなというふうに思っています。

 ぜひ、実際に取り締まる警察庁の方で、こういった周知徹底の努力というものをしていただきたいと思っています。いかがでしょうか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の不正指令電磁的記録に関する罪の構成要件の意義の周知徹底につきましては、法務省におきまして、附帯決議に基づく取組が行われているものと承知しております。

 警察といたしましても、附帯決議の趣旨を踏まえまして、法務省と連携して、同罪の構成要件の意義の周知徹底に努めてまいりたいと考えております。

松平委員 行動を萎縮させないためには、動画広告はなぜよくて、こっちはなぜだめなのかということを説明することはやはり必須だと思っています。ぜひともお願いしたいと思います。

 コインハイブ事件のような、新しい技術が関係していて、全国初となるような事件の摘発というのは、やはり社会的に注目されると思うんです。しかしながら、対象となった人たちは、ちょっと今の周知徹底のところにも関連しますけれども、ほとんど違法性の認識がなかったと。それなのに、いきなり捜査機関が家宅捜索に来て、立件される。これは、個人の生活は一変してしまいます。

 もし仮に違法でなかったと後から判断されても、警察に踏み込まれたという事実は消えません。名誉の挽回というのはなかなか難しいものがあると思います。同様のことが自分にも起こってはたまらないと萎縮するエンジニアの方は相当多いと推察します。

 それで、再び、先ほどの参議院の附帯決議なんですけれども、資料二に戻っていただいて、先ほど六行目を見ていただいたんですが、七行目、もう一つ附帯決議がございます。「その捜査等に当たっては、憲法の保障する表現の自由を踏まえ、ソフトウエアの開発や流通等に対して影響が生じることのないよう、適切な運用に努めること。」、こういった一文です。

 やはりこちらも、このコインハイブ事件を見ると、この附帯決議が懸念している状況が生じてしまっていると思います。本件のような最先端技術に係る捜査について、しかも、その被害範囲や影響もさほど大きくないと思われるものについて、もうちょっと配慮すべきだったのではないかなと思っています。

 この点、個別の捜査の是非に言及するというのは難しいと承知しておりますので、一般論でも結構ですので、最先端技術に係る事件捜査について、この参議院附帯決議にある、捜査に当たって適切な運用に努めること、これはどのように取り組んでいらっしゃるのか、お聞かせ願えればと思います。

小田部政府参考人 警察庁におきましては、これまで、御指摘の附帯決議につきまして、都道府県警察に周知いたしまして、不正指令電磁的記録に関する罪につきまして適切な捜査が行われるよう指導してきたところでございます。

 今後とも、附帯決議の趣旨を踏まえた適切な捜査が行われるよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

松平委員 ぜひ、適切な捜査が行われるよう指導していただきたいと思っています。

 ある記事によると、ウエブデザイナーの男性三十一歳、何が違法なのか明確になっていないのがすごく恐ろしい、自分はもうすっかり新しい技術を試すのが怖くなってしまったと話したということです。

 先ほどちょっと言及いたしました、著作権法違反幇助の疑いで逮捕、起訴されてしまった、ファイル共有ソフトの作成者、ウィニーの金子勇さん、これは二〇〇四年に逮捕されました。そして、二〇一一年に最高裁による無罪判決が確定しました。ただ、この事件によって日本のソフトウエア開発に大きな萎縮効果が生まれたと言われています。無罪判決が確定するまで七年半。かなりの時間と負担を金子さんは背負ってしまいました。そのことが、この先端にいる研究者の前途を潰した。

 私たち日本人にとって、それは間違いなく悲劇であったのではないかというふうに思っています。このような事件が示唆する教訓を私たちは常日ごろから意識していかなければならないと思います。今回のコインハイブ事件の今後の経緯についても注視させていただきたいと思っております。

 偶然にも、きょう三月八日、コインハイブは本日をもってサービスを終了するようなんです。今後、コンピューターウイルスに関する罪などのサイバー犯罪、ハイテク犯罪について、社会の進展に合わせた見直しをちゃんと行っていかなければ、適法と違法の境界線はどんどん曖昧になります。捜査の現場が混乱したりします。これは、行き過ぎた取締りがサービスを殺すということにつながりかねません。

 コングレス二〇二〇年、来年四月に京都で開催されます。コングレスは、五年に一度開かれる、刑事関係で国連で一番大きな会議ということで、世界じゅうから数千人の刑事司法関係者が集まると言われております。

 大臣から、コングレスを控える中、加速度的に変化していくサイバー犯罪に対してどう向き合うのか、今ちょっと私お話しさせていただいた、イノベーションを阻害しないようにするという観点からお考えをお聞かせいただければなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

山下国務大臣 お答えいたします。

 本当に、サイバー問題に詳しい、法律家としても御活躍の委員からの御指摘を重く受けとめたいと思います。

 確かに、我が国にとって科学技術の健全な発展が大切であることは言うまでもございません。他方で、この犯罪は、御案内のように、欧州評議会サイバー犯罪条約に基づいてつくられた部分もございまして、各国が新たな犯罪であるサイバー犯罪に向き合っていくという中において、この条約に基づいてつくられた部分もあるというところでございます。

 ただ、御指摘のとおり、サイバー犯罪の捜査については、参議院の法務委員会における附帯決議において指摘されましたように、「捜査等に当たっては、憲法の保障する表現の自由を踏まえ、ソフトウエアの開発や流通等に対して影響が生じることのないよう、適切な運用に努めること。」とされた趣旨、これはしっかりと踏まえて設けられた犯罪でもありますし、個別事案についてのコメントは差し控えますが、事案に応じて、法と証拠に基づいて適切に、この附帯決議の趣旨も踏まえて行う必要があるというふうに考えております。

 御指摘の周知につきましては、先ほど刑事局長や警察庁からもお話があったように、これまでも努めておったところではあるんですが、やはり新たな犯罪であるだけに、これからもしっかりと周知に努めていきたいというふうに考えております。

松平委員 どうもありがとうございます。

 冒頭、重く受けとめるというふうにおっしゃっていただいたこと、ぜひよろしくお願いいたします。あと、影響が生じることのないよう、新しい開発とかイノベーションの促進に影響が生じることがないようという点も、何とぞお願いしたいなというふうに思っております。

 コインハイブの事件についてはこの程度にさせていただきまして、次に、ネット上の名誉毀損であるとか侮辱について質問させていただきたいと思います。

 法務省の人権擁護機関、個人からの人権を侵害されたという申告等を端緒に、その被害の救済、予防の対応をしていらっしゃる機関なんですけれども、法務省が発行している「平成二十九年における「人権侵犯事件」の状況について」、こちらによると、インターネット上の人権侵害情報に関する事件数というものが五年連続して過去最高件数を記録している、二千二百十七件、対前年比一六・一%増加している、そういう数字が掲載されています。過去数年のネット上の人権侵犯事件件数、こちらの推移はずっと右肩上がりになっているということです。

 こちら、率直に伺いたいんですが、このようにネット上の人権侵犯事犯が急激に増加している原因はどこにあると分析されておりますでしょうか。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、インターネット上の名誉毀損に係る人権侵犯事件数は増加傾向にありまして、平成二十五年のほぼ倍になっております。

 その要因についてはいろいろなものが考えられておりまして、確たるものをお示しするということは困難ではありますが、背景としましては、インターネットの利用、特にスマートフォンの普及が進んでいることが要因の大きな一つではないかというふうに考えております。

 また、人権相談、調査救済手続といった当機関の、人権擁護機関の取組の周知も積極的に進めておりまして、それも一つ、事件数がふえた要因ではないかというふうに考えているところでございます。

松平委員 どうもありがとうございます。

 今、原因の一つとして、インターネット利用、スマホの普及というふうにおっしゃられたんですが、ということは、今後ももっともっと件数がふえていくということは容易に予想できると思います。

 この二千二百十七件という数字は、法務省の人権擁護機関が申告を受けた数と私は理解しているんですけれども、これは別にインターネット・ホットラインセンターという団体がありまして、ここは、インターネット上の違法情報の通報を、警察に情報提供したり、サイト管理者に削除依頼したり、そういうことをされている団体なんですけれども、この団体が公表している数字で、平成三十年一月から六月までの半年間で二十八万九千六百七件、約二十九万件のインターネット上の違法情報の通報を受理していると。インターネット上の違法情報、相当多いんだということがわかります。

 そこで、こういったネット上の違法情報の中から、名誉毀損罪であるとか侮辱罪であるとかといった摘発件数、こちらはどの程度あるんでしょうか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 平成三十年におけるサイバー犯罪の検挙件数のうち、名誉毀損罪の検挙件数は二百四十件、侮辱罪の検挙件数は十六件であります。

松平委員 名誉毀損が二百四十件、侮辱罪が十六件ということなんですけれども、先ほど申し上げた約二十九万件という数からすると、もうちょっとあるのかなと思っていたんですけれども、これは正直な感想として、そんなに多くない。

 しかも、私、ちょっと拝見した新聞の記事なんですけれども、ことしの一月十六日に、ネット上のヘイトスピーチで、少年を侮辱した投稿者に初の刑事罰が適用されたという報道がございました。あともう一つ、やはりことしの二月七日に、ネットの匿名掲示板で人種差別をするヘイトスピーチによって名誉を傷つけられたとして、名誉毀損罪で略式起訴がなされ、罰金十万円の略式命令が下されたと報じられています。

 ネット上のヘイトスピーチに名誉毀損罪が適用されたということも初めてのようなんですね。最初の例が、侮辱罪、一月、そして、二月が名誉毀損罪。これは、全国初というのが正直ちょっと驚きでした。ヘイトスピーチにもう少し刑罰が適用されているんだと思っていました。

 そこで、ちょっとお伺いしたいんですけれども、先ほど紹介した報道の二件、一月十六日に侮辱罪、初めて、二月七日に名誉毀損、こちらも初めて、について、これは、それぞれ初めてやるというのは事実なんでしょうか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の報道につきましては承知しているところではございますが、警察庁におきましては、インターネット上の匿名のヘイトスピーチの検挙、処罰事例につきまして網羅的に把握しているわけではございませんので、御指摘の事案が全国初の事例であるか否かについてお答えすることは困難でございます。

松平委員 そうですか。網羅的に把握しているわけじゃないのでちょっとわからないということのようです。

 ただ、新聞で明確に、私、見たんですけれども、初めてと書いてありました。もちろん報道が全て正しいわけではないんでしょうけれども、少なくとも、ネット上のヘイトスピーチに侮辱罪であるとか名誉毀損が適用されたのが相当まれということは確かなのかなというふうに思っています。

 あともう一つは、ちょっと網羅的に把握されていないということですけれども、ネット上でのヘイトスピーチというのが本当に問題となっている今、こちらの数字を把握されてもいいのかなというふうに思っておりますので、意見させていただきたいと思います。

 では、ヘイトスピーチであるこのネット上の名誉毀損というものと、その他の普通の名誉毀損、この名誉毀損の適用の違い、これはどうなんでしょうか。どういうふうな違いがあるというふうに認識していらっしゃるか、教えてください。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 刑罰法令の適用の可否につきましては、捜査機関により収集された証拠に基づき、個別の事案ごとの事情に即して判断されるべき事柄でございます。こういうことでございますので、法務当局として、特定の類型の事案における刑罰法令の適用の容易さについてお答えすることが難しいことをちょっと御理解いただきたいと思います。

 なお、一般論として申し上げれば、検察当局におきましては、法と証拠に基づき刑事事件として取り上げるべきものがあれば、適切に対処しているものと承知しております。

松平委員 なるほど。適用の容易さについて、余り違いがない。つまり、刑法の適用として、特にヘイトスピーチであるからといって違いはなく、構成要件に、淡々と法と証拠に基づいて適用していくというような趣旨と理解いたしました。

 そうなると、ちょっと刑法以外の方法として、やはりネット上のヘイトスピーチにおいては、掲示板であるとかSNSのコミュニティーサイトというものでなされますので、これらの運営者への対応というものも重要なものかと思います。

 そういう意味でいうと、プラットフォーマーに対して、ヘイトスピーチを未然に防ぐよう、国として何か行っていらっしゃるようなことはございますでしょうか。

高嶋政府参考人 御指摘のヘイトスピーチでありますが、これは、特定の民族や国籍の人々を排除しようとする不当な差別的言動というふうに法律上は定義されておりますが、こういうものは、刑法における処罰の対象となるか否かにかかわらず、あってはならないものと考えている、そういう前提のもとにおりますが、その前提のもとに、法務省の人権擁護機関としましては、インターネット上のヘイトスピーチについて、現に被害があった場合ですが、被害の申告を受けた場合は、当該情報が名誉毀損や侮辱等の人権侵害に該当すると判断した場合は、事業者に当該情報の削除を要請するなどしているところであります。

 また、その救済を実効的にするために、関係省庁と連携した上、事業者と協議するなどして、人権を侵害する情報の削除について、理解と協力を得ているところであります。

 例えば、削除の対象となる書き込みや情報について定めている、こういうプラットフォーマーの約款、モデル約款の解釈について明確にしていただき、それに基づいて削除をしていただくということをやっているところでございます。

 今後も引き続き、迅速かつ確実な削除要請を可能とするための体制整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

松平委員 なるほど。刑法の適用については特に違いはないということでしたので、やはり、事実上の削除要請であるとかというのは非常に大切な部分だと思います。

 そういった意味では、事業者等の理解と協力を得た上で、モデル約款等を改正するなり、若しくはそれに基づいた削除要請をするなりというところで、ぜひともそういった事実上の施策というところも進めていただきたいなというふうに思っています。

 ヘイトスピーチに限らず、ネット上の、個人に対する名誉毀損の話にちょっと戻らせていただくんですけれども、インターネット上の情報というのは容易に国境を越えますし、書き込んだ人が海外にいる、又はサーバーが国外にあるというのはこれは一般的です。だから、日本人がある日本人に対して侮辱又は名誉毀損となる情報を海外のサーバーに書き込む、この場合、今はもう結構、書き込んだその掲示板のサーバーが海外にある場合なんてざらですので、犯罪が成立するかどうかというところ、これは重要だと思うんですね。

 基本的には、刑法一条一項で、刑法というのは属地主義をとっています。つまり、国内の犯罪に対しては国籍を問わず自国の刑法を適用すると。ただ、例外として、日本人が行った国外犯も対象となる属人主義をとっている犯罪というのもあります。これは二百三十条の名誉毀損がそうなんです。名誉毀損については国外犯も対象となるので、名誉毀損の文章を書いた先が海外のサーバーであろうがなかろうが、名誉毀損は国外犯でも処罰可能なんですね。

 それに対して、侮辱罪は、今言った国外犯対処可能となる属人主義をとっていないんです。つまり、日本人がある日本人に対して名誉毀損となる情報を海外から海外のサーバーに書き込んだ場合、名誉毀損罪となるのに対して、日本人が同じことをした場合、つまり、ただ、名誉毀損となる情報ではなくて侮辱となる情報を海外から海外のサーバーに書き込んだ場合、これは侮辱罪とはならないんです。なぜならというと、侮辱罪は国外犯規定がないからです。

 侮辱罪と名誉毀損というのは、事実を摘示したかどうかというところで区別されています。事実の摘示があれば名誉毀損、なければ侮辱罪ということになります。だから、同じ悪口でも、先ほどの事例であれば、事実の摘示があるかないかで、処罰できたりできなかったりするんです。

 今、侮辱罪の多くはネット上で行われていると思っています。ネットを見たら、もうばり雑言の嵐だったりします。しかも、サーバーは海外。これは、侮辱罪も名誉毀損と同じように属人主義とすべきだと思うんですけれども、こっちはいかがでしょうか。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 まず、前提として、海外にあるサーバーを経由した場合、あるいは、海外にあるサーバーに名誉毀損罪に当たる書き込みがなされた場合等ですね、侮辱もそうでございますけれども、これが国外犯となるのかどうかという問題でございますが、これは、犯罪地が日本国内であるか否かということは、犯罪構成要件の一部が日本国内にあるかどうかによって決せられるところでございますので、それを前提としてお答えはさせていただきたいと思います。

 まず、侮辱罪について国外犯処罰の対象とするか否かは、その罪の性質や、国外で犯されている実態のほか、国外犯処罰の対象とされている他の罪との整合性等を総合的に勘案した上で検討すべきものと考えておりまして、法定刑の軽重もその一つの要素として考慮されるべきものと考えてございます。

 名誉毀損罪の法定刑が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金であるのに対しまして、法定刑が拘留又は科料とされている侮辱罪について、現時点において国外犯処罰等の対象とする必要性があるとは考えていないところでございます。

松平委員 今おっしゃられたように、法定刑で国外犯、国内犯とするというふうにおっしゃられたんですけれども、私はこれに対してはちょっと反論があるんですが、時間が参りましたので、この続きは次回のお楽しみとさせていただきたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で松平浩一君の質疑は終了いたしました。

 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 五十九分の時間を、二つのテーマ、一つがGDPRの問題、もう一つが、私、ちょっと来週の恐らく政省令の質疑でどこまで時間がとれるかわからないので、時間がある限り政省令の方も少し触れていきたいと思っておりますが、まずは前半の方でしっかり議論をさせていただきたいと思います。

 今、松平議員は、インターネットの悪用による人権侵害ということで、これは先日の山下大臣の所信表明でも、インターネットを悪用した名誉毀損、プライバシーの侵害を解消するため、個別法規も駆使しながら、丁寧に取り組んでいきますと。こういう問題意識を共有していると思うんですけれども、インターネットの悪用による人権侵害を抑制するということ、それは、悪用というのがルール違反だとしたら、そもそも、まず、じゃ、インターネット上のルール、個人情報の扱い、それをやはりしっかりつくっていかなきゃいけないという時代に来ていることは間違いないんだと思います。

 なので、私は、松平議員と問題意識は同じなんですけれども、ちょっとその前提としてのルールづくりの話、あるいは運用の話をしていきたいと思うんです。

 皆様のお手元に資料がありますけれども、ちょっと前後のテーマが逆になっておりますので、まず、資料十一を見ていただきたいんです。後半の方、右下に振ってありますが、資料十一、これはきのうの日経新聞なんですね。カラー刷りの、今、平沢筆頭が見ている、この資料になります。これは非常にわかりやすい記事だなと思って、法務委員みんなで共有をしたいなとまず思いました。

 これは、まず右上を見ていただくと、このGDPRをめぐる情勢についてコンパクトに書かれています。二〇一八年五月にEUが施行した一般データ保護規則、これがGDPR、が世界に波紋を広げていると。「個人データの保護を厳しく企業に求めており、大量のデータを握る米IT大手への攻勢を強めている。GDPRを契機として、データの自由な流通圏の構築を目指す日米欧と、国家主導のデータ管理を目指す中国との間でデータエコノミーを巡る覇権争いも激しくなってきた。」

 厳しいとありますので、EUのルールがどれぐらい厳しいかというと、その下に「GDPRって何?」とありまして、最後の文章二行を見ていただくと、「違反企業には、最大で全世界の年間売上高の四%か二千万ユーロ(約二十五億円)の高い方の制裁金が科される」、これだけ厳しいんだということであります。

 左側、山本竜彦慶応大教授の取材記事もあるんですけれども、これもちょっと順を追って見ていただくと、覇権争いなるものの内情がわかりやすく書いてあるかなと思います。

 まず、一番上の段で、なぜEUですごくこんなに厳しいルールをつくったんでしょうという歴史的背景について、山本教授が、欧州には、ナチス・ドイツが国民の個人情報を集積してユダヤ人の選別や徴兵に活用したという負の歴史がある、こういう自分のデータが国とか企業に勝手に使われることに対する懸念が欧州の人には強いというような、背景としての分析を述べています。

 その後、今度は、安倍晋三首相がデータ流通圏を提唱していますと。データ流通圏というのは、いわばEUも、中心としたとまで言っていいかわかりませんけれども、EUを中心とした、共通のルールに基づいた一定程度の自由度を認めたデータ流通ということだと思いますが、これについて、日本はこうやってEUと足並みをそろえて、安倍総理がデータ流通圏を提唱していますねと。

 アメリカはどうなんでしょうというような質問に対して、四段目ぐらいを見ていただくと、フェイスブックの個人情報の流出問題で潮目が変わったんじゃないか、アメリカでもやはりデータ保護ということを規制していこう、ルールをつくっていこうというふうになってきて、日本、EU、アメリカと足並みがそろってきたんじゃないか、こういう分析をされています。

 これがいわゆる、さっきの覇権争いでいう、データの自由な流通圏の構築を目指す日米欧のコンパクトな状況をあらわしている。

 一方ということで、その同じ四パラグラフ目のところで中国のことがあります。中国との亀裂はどうなんでしょう、データの囲い込みとはちょっと対立するんじゃないですかと。

 中国について、山本教授がおっしゃっているのは、監視カメラと信用スコアを一体運用して、そのシステムを東南アジアやアフリカに提供をしているのではないか。つまり、国の統治には、データを国がどんどんどんどん食べて吸収して、それを統治に使っていく、あるいは経済効率をよくしていく、あるいは犯罪抑止に使っていく、これにはやはり、統治には効率的だ、データをどんどん一元化していくということは。したがって、民主主義が根づいていない国は導入に前向きだと。これはおもしろい指摘だけれども、なるほどなと思うわけですね。政治体制の違いにより、対抗関係はできてしまう。できてしまうのがいいかどうかは別として、できてしまうと。

 経済効率性とか犯罪抑止とか治安のことを考えると、それは、データを国がどんどん食べていく、あるいは大きな企業が食べていくということはいい面がある、効率いいんだけれども、何が起きるかということが最後のパラに書いてあります。

 例えば、経済効率性だけを求めれば、それはどんどんどんどん、Tカードのポイントもそうでしたけれども、とにかくプライバシーと引きかえにデータを集積していくようなことをしていけば、それは企業の経済効率性は上がっていくよね。でも、それと引きかえに、私たちは、プライバシーや個人情報をコントロールする権利を失っていきますよね。

 あるいは、一方で、犯罪予測のことがあるんですけれども、米国の幾つかの州では、警察のAIによる犯罪予測で人種のウエートを引き下げたと。

 これはどういうことを言っているかというと、今まで起きてきた犯罪をデータで取り込んで、そこに人種という要素を加えれば、これからの犯罪予測とか、この人は再犯を起こすのかとか、そういうことをAIに予測させるに当たって、それはやはり精度は上がるわけですね、いろいろな要素を組み込んでいった方が。でも、それと引きかえに、結局、人種によって差別をされたり評価をされたりしていくということがAIを通じてどんどんどんどん再生産をされていく。それで、アメリカの幾つかの州では、このバランスを考えたときに、AIの正確性、精度を下げてもやはり人種という要素はセグメントから外そう、こういう判断をしている州もあるということであります。

 でも、とにかく犯罪を抑止した方がいいんだ、とにかく犯人を捕まえた方がいいんだ、こういう立場に立てば、人種でも性別でも何でもやはり入れた方が、それはより捕まえやすいわけです。

 今、私たちは、やはりこういうすごく難しいバランスを両方考えていかなきゃいけないという立場にある。押さえておきたいのは、しかも、今のことを前提にすれば、日本は、今どうなっているか別として、民主主義が根づいている国として、国の統治の効率性とか経済効率性とかだけに偏らず、やはりこういう人権のことをしっかり考えていく、そういう流通圏に入っていきましょうとやっているわけです。このことは、そんなに考えに、政党を超えて、あるいは政府や国会を超えて、違いはないというふうに思っています。

 その上で、ちょっと導入が長いんですけれども、なかなか新しい話ですので、ちょっと一つ一つ勉強していきたいんですけれども、もう一個、次の資料を見てください、資料十二です。

 これは、ことしの一月十四日の東京新聞なんですけれども、日本はやはり日米欧のデータ流通圏に参画していく、かなり安倍総理も所信表明なんかでも一生懸命おっしゃっていました。その前提だとすると、この主導的なルールを担っているGDPRというEUのルールに参画していこう、仲間だというふうに認めてもらおうということを、法務大臣を恐らく筆頭に政府を挙げて、去年も含めていろいろやってきて、ことしの一月二十三日に、じゃ、GDPRの仲間ですね、個人情報をきちっと守っていくルールを持っている国としてあなたの国日本は十分ですというふうに認定いたしますという認定が出たわけです。

 それについて、水を差すわけではないんですけれども、ちょっと問題提起をしているのがこの記事です。

 赤線なんですけれども、これは、やはり日本は、特に令状なしの警察機関、捜査機関への個人情報の提供について、ちょっとやはりEUから懸念を持たれていたんですね、大丈夫なんですかと。それに対して、法務大臣の署名を筆頭に、EUに対して大丈夫ですという説明文書を出したわけです、去年。

 この説明文書の問題点として、この赤線ですけれども、いわゆる令状なしで照会で情報提供がされているということについて、外部からの監督が十分に機能している、プライバシー意識の高まりで、企業は余り照会に応じない、こういう説明文書になっていて、政府関係者は、その場しのぎの言いわけだったと批判されても仕方ない、十分性認定が更新される二年後が不安だと焦るというふうに書いてあります。

 じゃあということで、本当にこういうのを書いてあるのかなということで、次の資料をあけていただきたいと思います。

 資料の十三の一、これは、当時の上川陽子大臣の署名のもとで実際にこういう文書が、EU、これはベラ・ヨウロバーEUの委員に宛てられているということが出ています。去年の九月十四日ですね。

 ぺらりぺらりとめくっていただいて、十三の四、下に黄色い下線が二行引いてある資料がわかりますでしょうか。ここから質問になりますので、次、警察の方に聞きます。

 書いてありました、やっぱり。「プライバシー権や、かかる照会による負担への個人の意識の高まりを背景に、事業者において、かかる照会への回答がより慎重になされる傾向が顕著となっている。」というふうに書いてありました。EUへの政府の説明文書。

 そうなのかな、どうなのかなと思ったものですから、改めて、警察庁から来ていますよね、長官官房審議官に伺います。この根拠は何ですか。

田中政府参考人 お尋ねのEU宛ての文書には、「プライバシー権や、かかる照会による負担への個人の意識の高まりを背景に、事業者において、かかる照会への回答がより慎重になされる傾向が顕著となっている。」という記載がございますが、これは平成十一年に警察庁が発出した通達の記載を引用したものと承知をいたしております。

 この通達が発出をされました当時は、個人情報保護法の制定に向けた政府の検討が進み、個人情報保護に対する国民の関心が高まりを見せるなどしていた時期でありまして、そうした社会情勢を踏まえて、警察庁としての認識を通達に記載したものと承知をいたしております。

 また、平成二十年一月には、警察庁が都道府県警察の第一線の刑事警察官に対しまして日ごろの捜査活動についてアンケート調査を実施しているところ、約八〇%が捜査に対する協力を得ることが困難と回答し、そのうち半数近くが、情報提供に慎重な会社、事業者等が多いことを理由として挙げているところであります。

山尾委員 二十年前の内部文書と十年前の内部アンケートが根拠であります。二十年前、ビッグデータはあったんでしょうか。十年前と今、随分違うんじゃないですか。ちょっと信じがたい根拠だというふうに思います。

 中身に入っていきます。

 これは皆さんのお手元につけました資料の十四です。二十年前の警察の通達、確かに書いてありますよ、そのまま。「近年、刑事訴訟法百九十七条二項による捜査関係事項照会は、国民の権利意識の高まりを背景に、業務負担やプライバシー保護を理由として、回答がより慎重になされる傾向が顕著となっている。」

 こういうふうに書いてあるんですけれども、この根拠は何ですか。ファクトとなるデータはどこにあるんですか。

田中政府参考人 当時の平素の警察活動を通じて把握したものと承知しております。

山尾委員 そもそも、これに根拠があるのかどうかという前に、二十年前の警察内部の、警察が自分の感じ方として書いたものを、二十年後にEUに出す文書でほかに何の根拠もなく載っける。十年前の文書のこと、やりますけれども、まず、これは根拠じゃないんじゃないですか。根拠にならないでしょう、二十年前の内部文書。

 しかも、この通達というのは、その黄色い線の一行上を見てほしいんですけれども、照会書の不正使用事案が発覚して、要するに、捜査に対する信頼が著しく失墜したと。これは何の事案かというと、警察官が照会書を偽造して自分の知り合いに、NTTドコモに照会をかけて、七人ぐらい、名前と住所を回答させて、それを流出させたというやつですよ。

 それはまずいよねということで、それは、そんなことがあったら照会に応じなくなりますよね。それは慎重になりますよね、事業者も。

 そんな文書をもって、二十年後に、まるで今の状況かのように、まるでファクトがあるかのように説明するのは、やめてもらいたいというよりも、やってはならないことをやっていると言った方が私は正しいと思いますよ。いかがですか。

田中政府参考人 現状におきましても、警察庁では、本来であれば捜査関係事項照会で回答を得ることが可能であるにもかかわらず、令状による差押えによらなければ応じていただけない民間事業者が存在することを把握しておりまして、当時の情勢と大きな変化はないものと認識をしております。

山尾委員 大きな変化がないということの根拠を示してください。

田中政府参考人 警察庁におきましては、捜査関係事項照会への事業者の対応につきまして網羅的に統計等をとっているものではございませんが、警察庁におきましては、日常的に第一線捜査の実情を把握するためのさまざまな取組を行っておりまして、それらを通じまして、現状におきましても、本来であれば捜査関係事項照会で回答を得ることが可能であるにもかかわらず、令状による差押えによらなければ応じていただけない民間事業者が存在することを把握しているところであります。

山尾委員 存在するかしないかを聞いているんじゃない。変化があるかどうかの根拠を示してください。

田中政府参考人 警察庁におきましては、出張指導でありますとか各種の会議を始めといたしまして、さまざまな機会を通じて都道府県警察における第一線捜査の実情の把握に努めているところでありまして、それらを通じて、大きな変化がないということを認識しているところであります。

山尾委員 ということは、より慎重になったわけでもなく、より積極になったわけでもなく、変化がないということを言っているんですか。

田中政府参考人 捜査関係事項照会への回答が慎重でなくなったことを示す具体的な根拠を把握しておりません。したがいまして、当時の情勢と大きな変化がないものと認識をしております。

山尾委員 「慎重になされる傾向が顕著となっている。」というふうに書いてあるので、この根拠を出してくださいと言っているんです。

田中政府参考人 繰り返しになりますが、その記述につきましては、過去の警察庁の通達から記載を引用したものというふうに承知しております。

山尾委員 これは法務大臣の署名文書ですよね。これは二十年前の何のファクトの裏づけもない警察の内部文書で、それを根拠にして、照会への回答はより慎重になされる傾向が顕著となっているという文書をEUに出したままでいいんですか。

 ちょっと率直な感想をまずお聞かせいただけますか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、この文書について、若干御説明がありましたが、この文書というのは、欧州委員会が十分性認定の手続を開始した二〇一八年九月、これに答える形で提出し、そして、結果、ことしの一月二十三日に欧州委員会による十分性認定を、この文書、そのほかいろいろ説明をしていると思いますが、得たものでございます。

 この文書の性格は、法執行及び国家安全保障目的のための日本の公的機関による個人情報の収集及び使用に関する法的枠組みの概要を示したものということでございます。

 そこで、先ほどの御指摘の部分につきましては、これは原文は英文でございますから、記載としては、「ビジネス オペレーターズ アー モア アンド モア コーシャス イン アンサリング サッチ リクエスツ」というところで、この回答にも、先ほど御紹介のあった、警察庁が一九九九年に出した通達というのもこの回答の中に明示してあります。

 その上で、こういった傾向があることについては、こういったのは第一次的には捜査機関、これは警察でございますから、警察から得た回答については、捜査現場において基本的にそのような認識があるものであろうというふうに法務省も考えまして、こういうふうに回答したというところでございます。

 二十年前とおっしゃいますが、二十年前からもそういう傾向が続いているのだということについてはこのEUに対して出した文書に明示してあり、その上で、それも踏まえて十分性認定を得たものと考えております。

山尾委員 要するに、EUにもこれは二十年前が根拠ですと出した上で十分性が受けられているんだからいいだろう、こういう答弁だとしたら、それはそういうことではないと思うんですよ。

 もう一つ、二十年前はあんまりだということで、ここに書いてない十年前のアンケートというのも出てきたんですよ、今。この前、内閣委員会でも、突然、国家公安委員長が言い出したんですよ。

 十年前のアンケートって何かというと、皆さんのお手元の資料の十五を見ていただきたいんですけれども、十年前に、目的は、まさに現場の日ごろ感じている負担や課題を把握するためにということで警察庁がやったアンケートなんですけれども、問一、黄色いところ、「捜査活動に対する協力を得ることは困難であると感じると回答した刑事警察官は全体の七九・二%」、これだけですよ。

 それは感じますよね。それは感じますよ。それをもって、より慎重になされる傾向が顕著となった根拠にはならないでしょう。

 これはちょっとさっきの官房審議官に聞きたいんですけれども、私、この話を山本国家公安委員長としたときに、この議事録があるんですけれども、約八〇%、捜査に対する協力を得ることが難しくなったというふうに回答していると言ったんですよ。これは事実と違うんじゃないですか。あくまでも、今言ったように、困難であると感じると回答した警察官が七九・二なのであって、協力を得ることが難しくなったという変化を聞いているアンケートじゃないんじゃないですか。だとしたら、国家公安委員長の答弁、修正してもらわなきゃいけないんですけれども、いかがですか。

田中政府参考人 確かに、協力を得ることが困難であるというところには比較のポイントがございませんので、厳密なことは申し上げられませんけれども、困難であると感じるというのは、やはり自分の過去の経験と比較してそのような回答をしたものというふうに認識をしております。

山尾委員 あんまりいいかげんなことを言わないでくださいよ。過去の経験と比較して、だったら、困難であると感じるようになりましたか、困難になりましたかと。これは別に傾向を聞くアンケートじゃないじゃないですか。この時点でどうですかという現場の感覚を聞くやつで、それを、こういうアンケートをして、今、自分の回答ができるだけ、何とか委員長に寄せるようにとか、その場をごまかすために適当なことを言うのはやめてください。

 国家公安委員長は、協力を得ることが難しくなったというふうに回答していると答弁しているんですけれども、これは、持って帰って、答弁の修正、検討していただけますか。違うでしょう、事実と。

田中政府参考人 私の認識は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、御発言につきましては持ち帰りたいというふうに思います。

山尾委員 その上で、もう一回法務大臣にお伺いしますけれども、二十年前の警察内部の何のファクトの裏づけもない書面をもって、そして、突然、EUのこの文書には書いていないけれども、二十年前じゃあんまりだと、多分、私が指摘したのでつけ加わったのかもしれませんけれども、突然十年前のアンケートを持ってきて、その二つしか根拠がないのに、現在の状況としてですよ、「プライバシー権や、かかる照会による負担への個人の意識の高まりを背景に、事業者において、かかる照会への回答がより慎重になされる傾向が顕著となっている。」と。

 余りにも根拠がない、いや、大丈夫なんですと言いたいがための説明文書は不適切ではありませんか。

山下国務大臣 あくまでEUに提出した原文は、「ビジネス オペレーターズ アー モア アンド モア コーシャス イン アンサリング サッチ リクエスツ」ということでございまして、そうした現在形で回答しております。

 そして、その根拠として幾つか挙げる中で、例えば注釈の、これは原文の十一として、「シー オルソー ザ ノーティフィケーション」ということで、これも参照のことということで、幾つかある根拠の一つなのであろうというふうに考えております。

 そして、現在もそういった、「モア アンド モア コーシャス」という状況が続いているということにつきましては、これは捜査現場を所管する警察庁からの意見も参考にしながらこういうふうな回答をEUに英文で回答したというところでございまして、訂正する必要は感じておりません。

山尾委員 私も、別に自分の勝手な和訳を言っているんじゃなくて、内閣府の和訳をもとにやっているんですよ。

 しかも、現状の認識を書いているというのは一緒でしょう。その現状の認識を書いているのに、出てくる根拠は二十年前と十年前だけで、あとは現場の感覚だと言われても、おかしいでしょう、そんなの。

 そういうことをやりながら、一方で、警察に改めて確認しますけれども、照会では応じてもらえない企業、少なくとも、二〇一二年以降、三社に対して、もう令状なしで応じろよという要請をしているんですよね。していますね、官房審議官。

田中政府参考人 そのとおり、これまでも委員会で御答弁申し上げております。

山尾委員 法務大臣、こうやって、いや、根拠はないけれども、でも、事業主は照会にはなかなか応じてくれないからもうプライバシーは保護されているんですよと言っておきながら、一方で、国内では照会で応じろよと警察が事業者に言うというのは、これはおかしくないですか。もし根拠がなくても、そうやって事業者が自身の判断で適切に対応していますというんだったら、令状では応じないというふうに法の範囲の中で自分なりの適切な判断をしている事業者に要請をかけるのをやめさせてくださいよ。

 適切に事業者が判断するから大丈夫ですという文書を法務大臣名で出しているんでしょう。だったら、適切な判断はせめてきちっと尊重してくださいよ。これを両立させていくのはおかしいでしょう。御意見を伺います。

山下国務大臣 まず、二つの問題は分けて考える必要があるんだろうと思います。

 というのは、このEUに対する回答文書というのは、このEUの十分性の認定のために、その資料の一つとして、先ほど申し上げた、法執行及び国家安全保障目的のための日本の公的機関による個人情報の収集及び使用に関する法的枠組みの概要を示したものであり、そこに、法的根拠や適用条件、あるいは独立した監督、これは独立というのは法執行などのための公的機関から独立したという意味でございますが、あと、個人の救済の可能性を含む保護措置に関する説明資料として提出したものであり、その説明として、「ビジネス オペレーターズ アー モア アンド モア コーシャス」というふうな記載がなされているというところでございます。

 一方で、刑事訴訟法に基づいた捜査活動一般、これは一般論になりますが、一般としてどのような活動が許されるのかにつきましては、刑事訴訟法の規定に基づいて適正に行われているものというふうに我々は承知しておるところでございます。

 その権限の範囲内で、警察あるいは検察等の捜査機関はそのような活動をしているものというふうに考えておるところでございます。

山尾委員 回答してもらわなければよかった、時間の無駄だったと思います。

 全く、問題意識、わかって回答しているのか、わからないふりなのか、わかりませんけれども、法の枠組みを説明したものだというんだったら、根拠なく、こういうふうに運用されているから大丈夫だという運用とか実務を書かないでくださいよ、何の根拠もないのに。そうやって運用されているから大丈夫といいながら、全然矛盾するような、相反するような運用しないでくださいよ。

 今法務大臣の方から、もう一つ、独立した監督という話がありまして、それも書いてあるんですね。皆さんのお手元に、さっき、資料十五の全く根拠にならないアンケートを見ていただきましたけれども、次、めくっていただくと、資料十六。

 ここは、法務大臣、出番ですので、ちょっと適切な答弁をしていただく必要があるかと思いますけれども、これは、時事ドットコムニュース、令状なし位置情報取得は適法、スマホゲーム会社が任意なら、山下法相、こういうふうになっていて、予算委員会の私の質問の後だったものですから、ちょっとこの見出しを見てびっくりしたんですね。

 私の認識は、確かに山下大臣と、スマホゲーム事業者が位置情報を令状なしで任意に提出することの是非について議論をしたんですけれども、私の理解でいうと、別に山下大臣は、そのことについて、任意提出なら適法だと言ったのではなく、捜査のごく一般論として、いつもの答弁のブロックどおりにおっしゃったものであって、この記事は全く趣旨を誤読していると思うんですけれども、もしそうであれば、きちっと大臣の言葉で、訂正というか、この記事を訂正していただく必要があると思うので、お願いします。

山下国務大臣 お答えいたします。

 個別の記事について、ちょっと訂正というのではなくて、私は法務大臣としてどのようなことを答えるかというと、やはり、山尾委員の質問に対して、具体的な特定の状況下においていかなる捜査手法がとられているかについてはお答えを差し控えるということを申し上げております。

 そして、一般論として、刑事訴訟法百九十七条二項に基づく捜査関係事項照会に対して相手方が任意に応じる場合に、その回答を得ることは適法な捜査活動として許容されるものと考えているというふうにお答えしたものであって、私の答弁はそれ以上のものではないということでございます。

山尾委員 では、まずそこをちょっとはっきりさせた上で、きょうは國重政務官に来ていただきましたので、少しこのことを確認していきたいと思います。

 予算委員会での質疑でちょっと私も認識不足のところがあったものだから、ちょっと丁寧にやりたいと思います。

 まず、このスマホゲームの事業者というのは電気通信事業者に当たるのか。皆さんのお手元の、次の資料十七ですけれども、条文で見た方がいいですね、二条五項の電気通信事業者、つまり登録や届出をした者に当たるのか。それとも、下の百六十四条一項三号の、電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務以外の電気通信役務を電気通信回線設備を設置することなく提供する電気通信事業者、これはいわゆる、三項では電気通信事業を営む者というふうに言われるものだと思うんですけれども、これはどちらに該当するんでしょうか。

國重大臣政務官 昨年まで所属していた法務委員会にお呼びいただきまして、山尾委員を始め、さまざまこれまでやりとりをした委員の先生方のお顔を拝見し、非常に懐かしく感じております。呼んでいただいて光栄であります。

 質問に答えさせていただきます。

 まず、電気通信事業者の定義でありますけれども、電気通信事業者とは、電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する、又は電気通信設備を他人の通信の用に供する役務を他人の需要に応じて提供する事業を営むことについて、電気通信事業法第九条の登録を受けた者又は第十六条一項の届出をした者をいいます。

 スマホゲーム事業者はさまざまなサービス形態がありまして、一概に申し上げられませんけれども、電気通信回線設備を設置することなく、かつ、他人の通信の媒介ではなく、単に電気通信設備を他人の通信の用に供するにとどまる場合など、こういった場合には、先ほど言われました二条の五号の電気通信事業者には当たらず、同法第百六十四条第一項各号に該当することになります。そして、当たりますので、電気通信事業者にはこれは該当はしません。

山尾委員 スマホゲーム事業者といっても、更に数年たてば、またさまざまな形態で、もしかしたら事業者そのものに当たるような、届出や登録を必要とするような形態というのも出てくる可能性も、今うなずいていただいていますけれども、十分ありながら、それでも、ちょっと一個ずつ、条文を考えていくためにできるだけ正確だけれども明確にしていくと、多分、スマホゲーム事業者というのは、直接事業者に当たるというよりは、この一項三号の電気通信事業を営む者、今、國重政務官が言っていただいたように、形態によってはこれに当たり得るということになるんだというふうに私も思うんですね。

 それでは次に、通信事業者そのものではなくて、営む者であっても、総務省が出しているいわゆる電気通信事業における個人情報保護のガイドライン、この射程には入るんでしょうか。つまり、このガイドラインを守らなければいけない者ということになるんでしょうか。

國重大臣政務官 お答えいたします。

 電気通信事業法第百六十四条第一項各号に該当して登録又は届出が不要とされている者につきましても、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインの対象になります。

山尾委員 ありがとうございます。

 皆さんのお手元で、最後の資料十八ですけれども、ここの黄色いラインにも、今、國重政務官が明確に言ってくださったことが書いてあります。

 それではということで、これまた、位置情報といってもいろいろな位置情報があるわけで、本当に丁寧にやらなければいけない、難しいんですけれども、この位置情報について、私も予算委員会で石田総務大臣と議論をしたんですけれども、改めて國重政務官から、位置情報は、いわゆる通信の秘密に含まれて令状を必要とする場合もあれば、あるいは準ずるという場合もあり得ると思いますし、ちょっとこのガイドライン上も、位置情報についてどういうルールとなっているのかということが幾つかあると思うんですけれども、少しその御説明をいただけますか。

國重大臣政務官 お答えいたします。

 今委員が御指摘の電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン、ここにおきましては、通信の秘密に係る事項というのは、通信内容のほか、通信当事者の住所、氏名、受発信場所等の通信の構成要素を含むものとしております。

 また、これらの通信の秘密に係る事項については、裁判官が発する令状による場合に限り捜査機関に開示することができるものと定めております。

 その上で、全ての位置情報が通信の秘密に属する事項に該当するわけではありませんが、通信の秘密に該当する位置情報としては、電気通信事業者が保有しており、個々の通信に関係するものが該当をいたします。

 具体的には、個々の利用者が携帯電話を用いて通話する際に把握される利用者の基地局に係る位置情報、個々のユーザーがWiFiのアクセスポイントから外部と通信を行う際に把握される当該アクセスポイントに係る位置情報などが含まれます。

 なお、ガイドラインでは、先ほど委員が御指摘されましたとおり、位置情報が個々の通信に関係せず、通信の秘密に該当しない場合であっても、高いプライバシー性に鑑み、通信の秘密に準ずる取扱いを求めております。

山尾委員 ありがとうございます。

 順番にそういうふうに考えていくと、先ほどから話をしている、スマホゲーム事業者がその位置情報を令状なしの照会を受けたときに提供してしまう、令状なしで提供することについては、通信の秘密あるいは通信の秘密に準ずるものとして、ガイドライン違反になる場合もあれば、ならない場合もあるというふうに整理することができるかと思うんですけれども、それでいいでしょうか。

國重大臣政務官 お答えいたします。

 まず、ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、丁寧にお答えさせていただきます。

 スマホゲーム事業者が登録又は届出を要しない電気通信事業を営む者である場合であっても、同スマホゲーム事業者の取扱い中に係る通信については通信の秘密の保護がまず及びます。

 同スマホゲーム事業者が保有する位置情報については、これも先ほど言いましたとおり、全てが通信の秘密に該当するとは限りませんけれども、ただ、先ほどこれも言いましたガイドラインにおきまして、あらかじめ利用者の同意を得ている場合や裁判官の発付した令状に従う場合その他の違法性阻却事由がある場合に限って提供できる旨を定めております。

 したがいまして、こういった令状等がなしで位置情報を提供することについてはガイドライン上認めておらず、これについては適当ではないと考えます。

山尾委員 ありがとうございます。私よりもやはり明確に整理されて、わかりやすい答弁をいただきました。

 とすると、今の話の延長線で、提供してしまったという場合、やはり難しいですよね、すごく判断が。でも提供してしまったという場合は、事業者側にはどんなペナルティーがあり得るんでしょうか。処罰規定です。

國重大臣政務官 お答えいたします。

 これも少し繰り返しになりますが、前提として留保して言いますと、全ての位置情報が通信の秘密に属する事項に該当するわけではありませんので、御質問の点については一概には申し上げられませんけれども、一般論として申し上げますと、位置情報が通信の秘密に該当する場合には、通信の秘密の漏えいに該当し得ることから、その場合には通信の秘密侵害罪に該当する場合もあり得ると考えられます。

山尾委員 罰則もお願いします。内容ですね、懲役と罰金があると思います。

國重大臣政務官 電気通信事業法の百七十九条、この第一項で、「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」ということになっております。二項で、「電気通信事業に従事する者が前項の行為をしたときは、三年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。」ということで規定をされております。

山尾委員 そうなんですよね。だから、もし、これは照会では応じちゃいけない内容なんだよという場合に応じてしまった事業者には、二年あるいは三年の懲役、百万、二百万という罰金のリスクがあるわけですね。

 一方で、じゃ、それを國重政務官にもお伺いしたいんですけれども、所管なのかな、でも、多分お答えできると思うので。

 本当は令状でやらなきゃいけないのに、要するに、照会をかけたのはまず捜査機関なわけですよね。それに本当は拒絶しなきゃいけないのに、拒絶せずに応じてしまった事業者はそれだけのリスクを持っている。でも、まずその大もとである捜査機関の方、こっちにはペナルティーはあるんでしょうか。

國重大臣政務官 お答えいたします。

 これについても、あくまで一般論として申し上げますけれども、捜査員が通信の秘密に該当する情報を不適正に取得した場合には、通信の秘密侵害罪に該当する場合もあり得ると考えられます。

山尾委員 なるほど。そうすると、本当は令状を必要とするものを照会で済ませて、しかも提供を受けてしまった場合には、捜査官も場合によっては刑事罰を受ける可能性が制度としてはあるというお答えだったかと思います。

 ちょっと法務大臣にお伺いをしたいんですけれども、ちょっと私もまだ、今議論の成り行きなので、実際今までに、これは令状じゃないととっちゃいけない情報でしたよということで捜査官がペナルティーを受けた例はあるんですかね。ここまで細かい通告をしていないので、わかれば。

山下国務大臣 これは、通告がなくてちょっと手元に資料がございませんので、ちょっとお答えを差し控えます。

山尾委員 後ほど改めて私も調査をお願いしてみたいと思うんですけれども、今の政務官と私のやりとりを聞いていていただいて、スマホゲーム事業者による令状なしの位置情報の情報提供、これは言いかえれば、捜査機関のやるスマホゲーム事業者に対する照会による情報提供要請、主語を捜査機関にした方がいい面もあると思うんですけれども、これについては場合によってはやはりガイドライン違反になる場合があり得るということだと思うんですけれども、その認識は共有していただけますか。

山下国務大臣 お答えいたしますが、これは、私が所管する刑事訴訟法でございますね。刑事訴訟法に基づく捜査の適法性というのは、先ほどのガイドラインというのは、これは通信事業者等に対しての準則でございます、これによって定まるものではなくて、刑事訴訟法の規定の解釈によって定まるものであるということが前提でございます。

 そして、一般論として申し上げれば、刑事訴訟法第百九十七条二項に基づく捜査関係事項照会に対して相手方が任意に回答に応じたとしても、そのこと自体で刑事訴訟法に基づく適法な捜査活動として許容されなくなるというものではないと考えております。

 ガイドラインにおいても、令状がある場合だけ許すわけではなくて、あらかじめ利用者の同意を得ている場合、その他の違法性阻却事由がある場合に限りというふうなことを言っているわけでございますが、ガイドラインに従っても、そのように例えば判断して任意に回答に応じた場合には、ガイドライン違反も生じないであろうというふうに考えております。

 また、先ほど國重政務官がおっしゃった通信の秘密の侵害罪につきましては、構成要件該当性ということについて仮に当たり得るとしても、これは、例えば、この捜査関係事項照会というものが正当業務行為、法令に基づく行為というので該当するのであれば、これは違法性阻却事由ということに該当いたしますので犯罪は成立しないということになりますので、こういったことも踏まえて、適正な捜査活動がなされているものというふうに認識しております。

山尾委員 ちょっとさっきの話をすると、NTTドコモににせの照会をかけて、違法に個人情報をとった警察官というのがいましたよね。こういう場合で、じゃ、どうなっていると思いますか。逮捕されて、案件を認めたけれども、記事によればですよ、県警は、事犯は軽微で精神的に不安定と立件を見送り、依願退職を認めたと。

 違う事案ですけれども、私は、事ほどさように、ここまで違法なことを認めていて、やっていても立件見送り、依願退職だとすれば、やはり私は、要するに、事業者が任意で応じるということが、どれだけ事業者側にリスクを転嫁して捜査を行っているかということなんです。それをやはり事業者側もしっかり認識をした方がいいし、やはりそれぞれの判断の適正というのを、どうやって自分の身を守りながら、協力すべきところは協力しながらということもやはりもう考えなきゃいけない時代に来ていて、捜査機関の側も、こちら側に座っている皆さんも、法の制度として任意であればいいのですとか、そういうことにはもうならない時代に、前からそうなんですけれども、そうなっているということ。

 GDPRで、さっき、冒頭の話に戻りますけれども、私たちは、民主主義に立脚して、経済合理性や治安の面だけで追求するのではなく、ちゃんと人権保護も両立する陣営としてルールを決めていくという側に立っているわけですから、ちょっときょうの質問の中でも不本意なところはありましたけれども、何度でもこうやって議論をして共有をして、いいルールにしていきたいというふうに思っています。

 最後に、この関係で左藤内閣府副大臣に来ていただいていますので、質問しますけれども、これは二年後にもう一回、十分性の見直しというか、本当に大丈夫なのと。私もこの議事録をぜひEUにも見ていただきたいと思っていますけれども、それがあったときに、もし十分性認定が取り消されたら、日本そして日本企業に対してどういう影響、要するに、一度認定されたものが取り消されて、どうなるんですか。

左藤副大臣 お答え申し上げたいと思います。

 日本に対する十分性認定については、欧州委員会が、日本の現行の法律、枠組みを前提として十分なレベルであると判断されているものと承知しております。

 仮に十分性認定が取り消されることになった場合に、個人のデータの円滑な移転に支障を来すおそれがございまして、日、EU活動事業者双方に追加的な負担が生じかねないことから、個人情報委員会において適切に保護、運用していることが重要であると考えております。

山尾委員 要するに、GDPRの十分性認定が取り消されると、例えば、欧州にある日本企業の情報を日本国内の企業に持ってくる際にも、当事者の同意とかあるいは個別の契約とか、そういうものが必要になって、それがなくて仮に情報の移転があったときには、さっき申し上げたような物すごい罰金、巨額の罰金がかかってくる。

 だから、その移動するための手間、労力が物すごい上、それを欠いた場合のペナルティーも物すごいという状況の中で、グローバル社会で日本企業がやっていかなきゃいけないという状況にまた戻ってしまうということもこれあり、私は、人権の話を経済成長で語るのは好きじゃありませんけれども、両方にとって非常に大変なことになるということは申し上げておきたいと思います。

 その上で、もうあと五分なんですけれども、外国人の政省令の関係ですので、お二方はもう出ていただいて結構ですが、厚労、農林、経産、国交の政務官に来ていただいておりますので、ちょっと残りの時間でこのお四方に聞きたいところだけ頭出しをさせていただいて、また次の機会につなげていきたいというふうに思います。

 皆様のお手元の資料で、冒頭の資料に戻っていただきたいと思います。

 一番上にある資料は、国会中だったと思います、去年の十一月十六日に示された、黄色い線は五年間の受入れ見込み数であります。次にめくっていただくと、これは、国会終了後、十二月二十四日に閣議決定された五年間の受入れ見込み数であります。資料二の一の左側のところであります。五年間の最大値というところで書いてあるところです。

 もし違ったら違うと言ってください。これは結局、国会中に出された五年受入れ見込み数と、国会終了後に閣議決定でなされた受入れ見込み数に変化はなかったわけであります、結局のところ。

 それで、伺います。お四方に、それぞれの政務官に。十一月十六日からこの閣議決定までの間に、見込み数の算出に当たって、何か別の方法で、あるいは別の要素を加えるなどして新たな計算作業、精査をしたんですか、していないんですか、まずこれを聞きたいです。

葉梨委員長 それぞれ簡潔にお願いします。

 上野厚労政務官。

上野大臣政務官 厚生労働省の担当の分野で申し上げると、介護、あとビルクリーニングであります。

 介護について申し上げると、昨年十一月十六日に、向こう五年間で三十万人程度、介護についていうと人手不足が見込まれる中、生産性向上それから国内人材の確保を行ってもなお不足すると見込まれる五万から六万人を五年間で受け入れるというふうに試算をしたものであります。

 その上で、この試算、厚労省として試算をしたものでありますけれども、年末の分野別運用方針の決定に向けて、今申し上げた受入れ見込み数の考え方を改めて検証、精査をし、十一月にお示しした数値の上限である六万人を分野別運用方針に記載をしたものであります。

 ビルクリーニングについて申し上げると、十一月十六日時点、五年目までの累計を二万八千人から三万七千人というふうにお示しをしていたところであります。

 法案成立後、更に精査の上、向こう五年間の受入れ見込み数を受入れ上限として運用するということとなったことを踏まえて、ビルクリーニング分野については、分野別運用方針において、最大三万七千人を受入れ見込み数としてお示しをしたというところであります。

葉梨委員長 五十九分までなんですよ。厚労省と同じような考え方ですということであれば、そう言ってください。

 濱村農水政務官。

濱村大臣政務官 農林水産省といたしましては、十一月十六日時点でお示ししたものについて、改めて精査の上、再度お示ししたものでございます。

石川大臣政務官 経済産業省でございます。

 三分野につきまして、改めて精査してお示ししたところでございます。

工藤大臣政務官 お答えいたします。

 十一月の試算は、国土交通省として精査し、お示ししたものですが、年末の分野別運用方針の決定に向けて、受入れ見込み数の考え方等、改めて精査するとともに、改正入管法の成立の後、関係機関とともに協議の上、十一月にお示しした数値の上限である、建設分野については四万人、造船・舶用工業分野については一万三千人、自動車整備分野については七千人、航空分野については二千二百人、宿泊分野については二万二千人を、各分野別運用方針に記載したものであります。

葉梨委員長 山尾君、残りは来週で。

山尾委員 締めます。またちょっと、続きですね。

 お四方とも、改めて精査したら全く同じだったという答弁でありましたけれども、今まで部会とかでヒアリングしていますけれども、それぞれ、国会報告時点が既に最大限精査済みとか、精査の中で新たなファクターはない、状況は変わっていないので同じ数字、特に新しい要素はない。皆さんの部下の方が大変正直に、納得のいくお答えをこれまでいただいていますけれども、これからも議論していきましょう。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で山尾志桜里君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 国民民主党の階猛です。

 もうすぐ東日本大震災から丸八年ということで、きょうは、大臣所信のうちで東日本大震災に関連した部分を中心に御質問させていただきたいと思います。

 さきの大臣所信の中ではこんなことが述べられていました。登記所備付け地図の整備を積極的に行うという部分です。

 これに関してお聞きしたいんですが、きょうお配りしている資料の最初のもの、これは登記所備付け地図の実績と計画ということで、六年間の事業期間、平成二十七年度、二十八年度は、これは計画から実行まで丸二年を要するということで、二十八年度に計画したものが終わりを迎えて、それ以降のものはまだ仕掛かり中というわけなんですね。

 お伺いしたいのは、そもそもこの事業というのは何のためにやるかというと、境界が不明であったりして震災の復興が妨げられているということで、地図を整備しましょう、それによって被災地における復興の加速化をしましょうということだったんですが、六年間のこの事業期間のうちに被災三県で十八平方キロメートル、これぐらいの面積について地図を整備しましょうという話だったんですね。

 これは、実績とか今後の計画、仕掛かり中のものを見てみますと、私の地元岩手では、被災地は沿岸部なんですけれども、盛岡市の地図整備が半分ぐらいを占めているわけですね。これは、復興を加速化するという意味でいうと、被災地である沿岸部、ここには大船渡市とか宮古市は挙がっていますけれども、それ以外にもたくさんあるわけです。陸前高田市であったりとか大槌町、こうしたところがない中で、この十八平方キロを進めていったとしても、果たして復興の加速化につながるのかどうか。

 他方で、沿岸部の被災地では、今後、住宅が建てられたり、あるいは店舗や工場が建てられたりする中で、土地取引であるとか相続に伴う遺産分割であるとか、こういうものもふえていくだろう、そのニーズに応え切れているんだろうかということが疑問に思うわけです。

 こうした実績とか今の仕掛かり中の状況を踏まえて、今後ニーズにきちんと応えられるのかどうか、この見込みについて大臣の方から御見解をお伺いしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、現状に関する認識でございますが、登記所備付け地図というのが、登記された各土地の区画を明確にし、筆界の位置や形状を明らかにするものであって、特にこの整備というのは、被災地における復興整備事業等の前提として、円滑な実施に資するものであると認識しております。

 御指摘のとおり、我々としては、この整備計画、これは、過去三年間やって、合計六平方キロメートルの登記所備付け地図を作成してきたところでございます。その結果、委員御提示の資料にもございますが、平成三十年四月一日において、仙台法務局が八一・一%、福島地方法務局が七六・三%、盛岡地方法務局が七八・四%に達しているところでございます。

 そしてまた、この計画を三年間延長して、平成三十年度から三十二年度まで当該作業を引き続き実施して、六年間で合計十八平方キロメートルの登記所備付け地図を作成することとなるということでございます。

 委員の御指摘において、沿岸部等の作成事業につきましてでございますが、これについては、現在、被災地を管轄する法務局において、津波復興拠点整備事業や三陸復興道路建設事業を始めとして復興整備事業等を実施する自治体から、地図作成を要望する具体的な地域を聴取し、当該地域における地図混乱の程度等を総合的に勘案して、実施地区の選定を行っているところではございます。

 ただ、法務省においては、被災地における地図作成事業というのが、こういった復興整備事業等の円滑な実施に資するものとして、大きな効果を期待することができるものと考えているので、着実に、自治体からの御要望も受けながら、総合的に勘案して着実に整備していきたいというふうに考えております。

階委員 私の地元は盛岡なので、別に、盛岡で地図整備をやるのが悪いとは言っていません。ただ、やはり復興の加速化を目的にするわけだから、沿岸部をどんどん進めなくちゃいけないと思うんですね。岩手だけではなくて、仙台法務局管内、宮城県ですね、こちらでいうと、やはり仙台市とか、被災地でいうと石巻市は含まれていますけれども、仙台市が中心であったり、福島地方法務局管内、福島県でいうと、やはり内陸の郡山とか福島市が結構占められているんですね。

 なぜ、肝心な被災地よりも、こうした内陸の大都市が中心になっているのかということを自分なりにちょっと調べてみましたところ、この対象となる地域の要件として、宮城県、福島県及び岩手県におけるDID、人口集中地区という要件が加わっているんですね。単に被災地のニーズだけではなくて、このDIDという要件が加わっていることによって、どうしても都市部に偏ってしまう。そして、同じ県内の中でも、肝心な沿岸部よりも、内陸部に人口集中地域が多い中で、そちらに偏っている。

 私は、内陸部はもちろん、地図整備というのは全国でこれから重要だと思っていますけれども、ただ、復興の事業として進めるのであれば、こうした要件は取り払って、本当に重要な沿岸部の被災地に特化して、どんどん地図整備を進めるべきではないかと思っています。この点について、大臣、もし御所見があれば、お伺いしたいんですが。

山下国務大臣 お答えいたします。

 確かに、津波被害に遭った沿岸部、これについても重点を置くべきだという思いは、本当に被災県選出であります階議員ならではだと思っておりますし、そのことは、私も岩手に勤めたことがございます、沿岸部も承知しておりますので、重く受けとめたいと思っております。他方で、やはりDIDという観点も、その地域に住まわれる住民の方々の利便性等、そういったこともやはり考慮に入れざるを得ない部分もあろうかと思います。

 沿岸部につきましては、これは自治体からの要望、今後とも、それはしっかり受けとめさせていただきたいと思いますし、実は、本日発表させていただいたところでございますが、これは地図の整備とは直接関係ございませんが、本日の復興推進会議において、福島地方法務局の富岡出張所、これについては、これまで、いわきのところに一時、移転しておったんですが、富岡町における業務については、本年十月中を目途に、ちょっとシステム改修で時間がかかるんですが、全面再開するということも発表しているところでございます。

 こういった沿岸部等における法務サービスということも総合的に考えながら、地図の整備、これについても、自治体としっかりコミュニケーションをとりながら検討してまいりたいと考えております。

階委員 特に岩手県では、沿岸部、小さな町が多いので、今現在、DIDかどうかという点でいうと、対象地域に含まれない部分が大きいと思うんです。ただ、この復興の目的は、震災前よりも、もっとにぎわいのある町にしようということですから、将来DIDにするためにも、この地図整備というのは、そういう被災地に特化して進めるべきだということを大臣にはぜひ御理解いただいて、リーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 次の質問なんですが、復興予算について、今回、来年度予算として三十一・七億円を、法務省の復興特別会計を使った予算として計上されております。

 三十一・七億の内訳をちょっと調べてみますと、約二十一億、これが施設復旧関係費ということなんですが、その施設復旧関係費、具体的にこれは何でしょうか。事務方でもいいですし、大臣でもいいです。端的にお答えください。

山下国務大臣 これは、東日本大震災により被害を受けた法務省施設について、建物損壊等の危険を除去するための庁舎の建てかえ整備等に係る経費ということで計上させていただいております。

階委員 もうちょっと踏み込んで、この二十一億というのは、どこの、どの施設に係るものかということを教えていただけますか。

葉梨委員長 事務方を呼んでいないんですよ。手元資料、ある範囲で……(階委員「もし把握していなければこっちで言いますけれども。把握していなければいいですよ。じゃ、私、答えます」と呼ぶ)

 できれば、こういうものは、事務方でできるものは事務方を呼んでください。

階委員 はい、わかりました。

 これが、実は、資料の二ページ目をごらんになっていただけると、これは、三十一年度、今回の予算のは含まれていませんけれども、色がついている部分ですね、グレーになっている部分。この水戸地方検察庁とか水戸法務総合庁舎、これに係るものが今回、何と一年間で二十一億だというふうに伺っております。

 私がちょっとおかしいなと思うのは、平成二十六年度以降、過去五年間、そして、今回更に一年間、この復興特別会計の施設整備事業というのは、水戸の法務総合庁舎関係、地方検察庁関係だけに使われている。

 これは、建てかえるのはやればいいとは思うんですけれども、老朽化したりして必要であれば。ただ、復興の特別会計というのは、もっと、それこそ被災者の生活再建支援、あるいは、生業の復旧復興の支援、こうしたことに使うべきであって、こうしたものは通常の予算の中で堂々とやるべきだと思います。

 余りにもこれは極端過ぎて、ちょっと復興予算の使い方としてはいかがなものかと思うんですが、大臣の見解をお伺いします。

葉梨委員長 これ、茨城県も被災県なんです。水戸の法務総合庁舎、全壊したんですよ、地震で。(階委員「いやいや、ちょっと待ってください」と呼ぶ)

 山下法務大臣。(階委員「委員長、それは関係ないでしょう、今のは」と呼ぶ)

山下国務大臣 お答えいたします。

 この旧水戸法務総合庁舎は、もともと本館、第一別館、第二別館の三棟であったところ、いずれも東日本大震災により、壁や天井の落下のほか、コンクリートの崩壊による鉄筋の露出、鉄骨の破壊が生じるなど、庁舎機能が大きく損なわれたことから、改修工事では対応し切れず、庁舎新営の必要が生じたものでございます。

 そして、法務省においては、東日本大震災によって多数の施設が被害を受けました。その中で、緊急性が高く、工事の準備が整い、既定予算の範囲内で対応ができる案件については、例えば、平成二十三年度当初予算を用いて復旧工事を行うなどして対応し、予算措置を受けなければ対応できない案件については、緊急性の程度や工事規模などを勘案しつつ、平成二十三年度の第一次補正予算及び第三次補正予算等において、順次予算措置を受けて対応したところでございます。

 この水戸の法務総合庁舎におきましては、そういった事情を踏まえて、東日本大震災復興特別会計において予算措置を受けた上で、平成二十四年度から設計、二十六年度から仮庁舎新営工事、平成三十年度から本庁舎の新営工事を行っているというところでございまして、先ほど申し上げた平成二十三年度の当初予算や補正予算によらず、二十四年度以降の特別会計による予算措置を受けることとしたのは、工事期間が複数年度にまたがることなどを考慮したものであるということを御理解賜りたいと思います。

階委員 委員長、今のは不規則発言ですよ。やめてください。私は大臣とやりとりしているわけですから……

葉梨委員長 いや、事実関係として、私、茨城県選出ですけれども……(階委員「いやいや、そんなことを委員長に言う権限はないよ。おかしいよ。おかしいよ。それ、撤回してください」と呼ぶ)実際、地震で全壊したんです。これは後回しになっていたんです……(階委員「そんなことを言う権限はないでしょう。委員長は公正中立な立場です」と呼ぶ)

 私どもとしては……(発言する者あり)(階委員「関係ないでしょう、議場整理じゃ、権限ないですよ」と呼ぶ)後回しになっていたという認識ですけれども、質疑を続けてください。

階委員 おかしいですよ。ちょっと後で理事会で協議させていただきます。

 それで、私、別に、わかっていますよ、茨城だって被災地だと。そんなこと当たり前ですよ。当たり前だし、これ、一切使っちゃだめだとも言っていません。

 ただ、大臣の答弁にもありましたけれども、補正予算、あるいは、二十三年度二次、三次補正予算、手当てされていますね。これは、岩手も含まれています。いろいろな、宮城も、あるいは福島も含まれていますが、これは、二十三年度の当初予算や補正予算全部合わせても、私がきのういただいた資料によると、十六、七億なんですね。ところが、さっき言ったとおり、来年度一年間だけでも二十一億ですよ、水戸だけで。その前も含めると、さっきの網かけしたグレーの部分、二十六年度以降だけで、今年度までで十四億ですよ。この十四億プラス二十一億で三十五億。そして、その前にも、金額はわかりませんけれども、グレーの部分はあるじゃないですか。余りにも偏り過ぎだと言っているわけですよ。おかしいじゃないか。

 これをやるのであれば通常の予算の中でやるべきだし、やはり復興は、被災地の暮らしの再建あるいは生業の再建、こうしたところに優先的にお金を使うべきだということを指摘させていただきます。これは大臣、ちゃんとチェックをしていただきたい。老朽化した施設を直すのはいいですし、建てかえるのも必要とあらば認めますけれども、復興予算というのは、それにふさわしい使い方をしていただきたいということを御指摘します。

 それで、もう一つ、復興特別会計を使った予算で、昨年、ちょうど今ごろの時期に、この委員会では、委員長提案で、法テラスの特例法の延長法案を通しました。法務大臣もよく御存じだと思いますが、無料法律相談とかを被災者ができる期間を三年間再延長したわけですね。

 そのときに私、採決の前に発言をさせていただきました。上川法務大臣とやりとりをしまして、そのときに、私の方からは、復興の風化を防ぎ、加速させていくためには、被災者から寄せられる多数の法律相談の内容と傾向を分析し、政府内でその知見を有効に活用すべきではないかという趣旨のことを申し上げたわけですね。そのときに、当時の上川法務大臣からも大変前向きな答弁をいただいておりまして、「震災法律援助の利用状況等につきましては、どの程度まで詳細に把握し分析していくべきかということも含めまして、情報をしっかりと共有していくことができ、また、それを施策につなげていくことができるように検討をしっかりと進め、役立てていきたい」、こういう答弁をいただいたんです。

 さて、それから一年たちました。この法テラス業務で東日本大震災の被災者の現状はしっかり把握されているのかどうか、このことについて、大臣の今の状況をお尋ねしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 この法テラスの震災法律援助につきまして、現状把握に努めておるところでございますが、平成三十年度における震災法律相談援助の利用件数は、三十一年一月までで約四万五千件、これは速報値でございます、となっております。

 その事件別内訳を見ると、家事事件が全体の三八・八%を占めて最も多く、その家事事件のうち、半数が離婚問題でございます。それ以外の事案、すなわち、相続問題等も約半数を占めている点に特徴があるというところでございます。

 一般の民事法律扶助による法律相談援助では、家事事件の占める割合は三一・二%であり、そのうち三分の二を離婚問題が占めているということになると、やはり、被災地においては相続問題等に関する相談ニーズが高いということが見てとれるわけでございます。

 そして、震災法律援助では、家事事件に次いで多重債務事件が二番目に多い。全体の約二〇・五%を占めているということで、そのうち自己破産事案の件数は三分の一以下になっているということでございます。こうしたことからすると、被災者においては、自己破産以外の任意債務整理等に関する相談ニーズが、他のところと比べて、多重債務事件同士を比べてみると高いということが言えると思います。

 委員の御指摘も踏まえて、法律相談内容をより詳細な分類を行う、そして、被災者のニーズをより詳しく把握して、支援のあり方の検討に役立てていくべきと考えております。

 その重要性については十分共有しておりますので、今後とも、委員の御指摘も踏まえ、今年度における被災者の相談内容について、集計方法を見直して、従来よりもより詳しく分類して把握するため、集計作業を進めていると承知しておりますので、今後とも、ニーズをより詳細に把握できるよう、法テラスに協力してまいりたいと考えております。

階委員 今、法律相談援助件数四万五千件余りについて、大体の傾向をお示しいただいたんですね。

 それで、昨年は、法律相談の件数ほどじゃないんですけれども、代理援助、要するに、弁護士さんが代理人として法廷に立ったりとか裁判所に行ったりとか、そんなことをした案件について、どういう案件でその代理援助を行ったのかというのを、三ページのように、法務省で調べていただいたんですね。

 これは、もちろん、サンプル数が法律相談とは桁違いに少ないので、法律相談についてここまでやれるかどうかというのは、やはり、ビッグデータの処理とかそういうことをやっていかないとなかなか大変かと思うんですが、ただ、今は、先ほど来出ているように、技術の進歩もありますので、この法律相談の内容を分析すれば、被災者が何に困っているんだろうか、そして、どういう制度的、予算的な手当てをすればいいんだろうか、これが見えてきて、より確かな復興の手だてが打てるということで、ぜひこれは大臣、進めていただければと思っております。

 それで、今大臣からも、被災地では、自己破産とか、要はお金の問題で困っているというお話がふえているということもありました。お金の問題に関して、きょうは上野厚労政務官にも来ていただいているんですが、例の不正統計によって、雇用保険等の追加給付、これは、被災地の皆さんにとってみれば、少しでも多く、もらえるお金はすぐにでも欲しい、こういう実情なんだと思うんですね。そういう中で、統計がゆがめられて過少にもらっていたというものについては、早急に改めなくちゃいけないと思うんです。

 資料の四ページ目ですけれども、では追加給付額はどれぐらいかということでいうと、加算額を含めると大体六百億円ですね。それで、六百億円に対して、追加給付を行うための事務費が約二百億円。まあ、全体の四分の三が追加給付そのもので、それのための事務費が四分の一、こういう話で、これを保険料から払われたらたまったものじゃないな、何で役所の不始末を、保険料を納めた国民が背負わなくちゃいけないのかということなんですよ。

 そういう中で、この追加給付、先ほども言いました、一刻も早く、しかも自分の負担じゃない形で払ってほしいということなんですが、もう一枚めくっていただきますと、五ページ目ですけれども、追加給付の手続的なことが工程表で示されております。過去に給付を受けていた方に追加給付を行う場合は大体こういう流れということで、幾つかパターンに分けておりますけれども、要は、住基データの住所を確認して現住所を調べて、その現住所にお知らせを送って、回答が来たら払いますと。大体みんなそうですよ。

 問題なのは、被災地の場合ですね。現住所から避難されて現住所にいらっしゃらなかったり、あるいは本来受け取るべき方がお亡くなりになったり行方不明になったりして届かなかったり、こういうことがあるわけですが、そうした被災地の実情も念頭に置かれた上で、こういう手続を定め、そしてさっきの約二百億という経費を算出しているのか、このことについて教えてください。

上野大臣政務官 お答えいたします。

 まず、しっかり被災地の方々にも給付をしていくという観点から、一点、お答えをさせていただきます。

 今般の雇用保険等の追加給付の対象となる方の中で、ハローワークの雇用保険システムで住所情報を保有していない等の理由により住所の特定が困難な方がおられます。こうした住所の特定が困難な方については、ハローワークが保有をしている求職情報や、又は住民基本台帳データの活用も含め、さまざまな手法を検討し、できる限り多くの方々の住所を特定し、追加給付の御連絡ができるよう、最大限努力をしてまいります。

 その上で、東日本大震災の被災地については、委員御指摘のとおり、避難中の方や雇用保険等の受給後に亡くなられた方もおられ、住民基本台帳データを活用しても、追加給付の対象となる方の住所の特定が困難なケースが多いという可能性はあるというふうに思っております。こうしたケースについては、今後、さまざまな手法を検討しながら追加給付を行っていきたいというふうに思います。

 その際、お心当たりのある御遺族の方等に御連絡先をお申し出いただくということが必要となってきます。現在でも、住所情報の登録はコールセンターで受け付けておりますけれども、今後、こうした申出が簡便にできるように、方策をふやせるようしっかり検討していきたいというふうに思っています。

 国民の皆様の御負担を可能な限り軽減をしつつ、追加給付を実施できるように、最大限の努力をしていきたいというふうに思います。

 その上で、事務費の削減についてであります。(階委員「ちょっとそれはその後、まず被災地の問題ね」と呼ぶ)その後、わかりました。

 では、まず、被災地に対する給付という話でお答えをいたしました。

階委員 問題意識は共有されていると思うんですが、まだ具体策がちゃんと定まっていないので、これは早急にお願いします。

 その上で、今政務官お話しされようとした部分なんですが、この百九十五億は、我々国民の保険料ではなくて、既存の事務費を削ることによって捻出します、これが国会での答弁ですね。私も予算委員会で総理に尋ねたところ、この追加給付の事務費について、できる限り早く所要の財源を確保していくということになっていました。

 一応、来年度は、六ページ目にありますとおり、既定の事務費の削減についてということで、これはトータルすると三十億円ぐらいなんですけれども、二百億円を生み出していくためには、これぐらいのペースでいくと、六、七年かかるわけですね。そういうような方針だと。六、七年かけて、既存の事務費を削減する方法で百九十五億という事務費を捻出するんだということで理解してよろしいですか。

上野大臣政務官 事務費についてお答え申し上げます。

 今般の追加給付に要する事務費の財源については、複数年度をかけて、労働保険特別会計における既定の事務費の削減、具体的には、システム改修経費のより厳格な優先順位づけや、手続の合理化による人件費の削減等により確保していくということにしております。

 追加給付に要する事務費として総額百九十五億円と見込む一方で、来年度、平成三十一年度予算においては、既定の事務費を三十一億円削減することにより、その所要の財源の一部を確保したところであります。

 今後の具体的なスケジュールについては、追加給付の進捗状況も踏まえ、かつ、各保険制度等の適正な運営も確保しながら、複数年度を要するものの、できる限り早く所要の財源を確保していきたいというふうに思っております。

階委員 努力しているかのような御答弁でしたけれども、私は全然甘いと思っていまして、そもそも、来年度の三十億と言いましたけれども、これ自体が眉唾物だと思っています。

 六ページを見ていただくと、まず、システムの不測の事態に備えた経費を削減しましたということで、これで六億円浮かせている話なんですが、これは、平成三十年度、今年度もこの予算は計上されていましたが、結局、不測の事態に備えた経費、使用実績がゼロなんですね。だから、来年、そもそもこの六億円の予算、計上する必要がなかったのではないか。だから、削ったとしても痛くもかゆくもない話です。

 それから、人件費、マイナス十億円とあります。非常勤職員経費の削減、マイナス二百五十七人。二百五十七人も減らすのかというふうに一見思えるわけですけれども、これは違っていまして、来年度の予算で三百七人増員すべきところを五十人に増員をとどめた、よって二百五十七人減らしましたということで、別に減らしているわけでも何でもないんですね。

 しかも、三百七人のところを五十人でやりますといって、では、業務は回るんですかときのう事務方に聞いたら、いや、何とかなりますというお話なんですよ。だったら、最初から五十人で要求すればいい話で、そもそもの予算要求自体が間違っている。

 あと、最後の十四億円、システム改修経費、書類の電子化、これも不要不急なものですが、十四億円削ったと言っていますけれども、では、これは将来にわたってやらないんですかと聞くと、それもはっきりしない。いつかはやるかもしれません、こんなふうな話です。だから、この三十億円自体、眉唾なんです。

 ただ、他方で、次のページを見てください。労働保険特別会計の事務費、雇用勘定と労災勘定、二つの勘定で事務費が計上されています。

 私たち民主党政権のときに、最後に予算を組んだのが平成二十四年度。このときの事務費は、両者合わせると千四百億。で、平成三十年度では千六百五十九億に膨らんでおりました。二百五十八億増です。これが、来年度は千八百六十二億まで膨らむわけですね。

 もちろん、その中には、今回の事務費の一部、九十六億円も入っております。仮に、この事務費を除いたとしても、千七百六十六億円。前年度、すなわち今年度の平成三十年度と比べても、百七億もふえているわけですね。

 よく、母屋でおかゆをすすっているときに、特別会計、離れではすき焼きを食べているという話なんですが、今回の三十億の捻出というのは、すき焼きを食べているときの肉を一枚二枚、減らしたようなものじゃないですか。

 これだけ特別会計の事務費の予算が膨張している中で、私は、二十四年度から三十年度にかけて二百五十八億もふえているわけだから、そのふえている部分を削っていけば、百九十五億、六年も七年もかけなくてももっと早くできますし、もともと無駄な計上をされていた予算を減らすというやり方ではなくて、今まで無駄にふやしてきた、それこそ既存のものを減らす、こういう努力をすべきだと思いますよ。努力の方向が間違っていると思います。

 上野政務官、御所見をお願いします。

上野大臣政務官 先ほどもお答えをいたしましたけれども、今後の具体的なスケジュール、各保険制度等の適切な運営も確保していかなければいけないという中であります。追加給付の進捗状況も踏まえて、複数年度を要するということになると思いますけれども、しっかりと検討していきたいというふうに思います。

階委員 しっかりお願いします。

 最後の質問であります。

 分野別運用方針において、受入れ見込み数は、五年後で最大三十四万五千百五十人となっています。これが実現した場合、今回、出入国在留管理庁関係で三百十九人増員になっていますけれども、更にこれに追加して必要となる人数と、これに伴う人件費の増加額の見込み、事実だけお答えをいただけますか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 今、階委員御提出の法務省作成資料を見ておるんですが、これは概算要求時の資料でございます。ここでは、外国人受入れ見込み数が三十万人と仮定した場合と書いておりまして、実際、今回、昨年末に策定いたしました分野別運用方針における受入れ見込み数の最大値は、十四分野合計で三十四万五千百五十人ということで、三十一年度増員要求の根拠となった受入れ見込み数四万人の八・六倍ということになります。

 それを単純計算すれば、必要人員というのが概算要求では二百十八人の八・六倍となるのかということでございますが、ただ、結論から言えば、実際には、将来の業務量というのは、この見込み数のみによって決まるものではなくて、二年目以降の在留資格審査の所要時間や実地調査の対象となる受入れ機関数の変化により変わるものでありますし、また、我々としても、行政努力として、審査、調査方法の見直しや、さらなる効率化ということにしっかり取り組んでいきたいと思っております。

 そうしたことからすると、現在で人件費の増加額、現時点で正確にお示しすることは困難であるということで御容赦いただければというふうに考えております。(階委員「金額、人件費の方は」と呼ぶ)

 人件費の増加額も、やはりどれだけふえるのかということも、業務効率化の要素も多々ございますので、現段階でお示しすることは差し控えさせていただきたいと考えております。

階委員 これで終わりますけれども、特別会計のようにならないように、しっかりチェックの方をお願いします。

 終わります。

葉梨委員長 以上で階猛君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 国民民主党の源馬謙太郎でございます。

 きょうも質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まず初めに、山下大臣に再犯防止計画について伺いたいなと思います。

 平成二十八年の臨時国会において、再犯防止等の推進に関する法律案が超党派による議員立法として成立をいたしまして、昨年から再犯防止推進計画が始まったと理解をしております。大臣の所信の中でもこの再犯防止推進計画については触れられておりますし、また、今の再犯者の割合を考えても、これは非常に重要なことではないかなというふうに私も考えております。

 これを受けて、去年からの五年間で政府はこの再犯防止計画に基づいて各種施策に取り組むことになるわけで、大臣がおっしゃるように、再犯防止推進計画元年のまさに幕あけだというふうに思います。

 そんな中、大臣は、超党派の再犯防止議連の事務局長として懸命にこの再犯防止に取り組んでこられたと承知をしておりますし、その議員立法が施行されて、さらに、その年に大臣に御就任されたということは、非常に思い入れの強いところではないかなというふうに思っております。

 まず初めに、この計画がキックオフをされてから約一年ですけれども、本計画の今のところの進捗、進み方について、大臣の今の時点での御所見を伺いたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この再犯防止推進計画のもととなった再犯防止推進計画は、党派を超えた超党派の思いの議連の中で検討され、そして、国会においても党派を超えて幅広い御支持を得て成立したものでございまして、私も、その一員として関与させていただいたことを非常にありがたく思っておるわけでございます。

 そして、この再犯防止計画につきましては、新たな被害を生まない、安全、安心な社会を実現するためには犯罪をした者等の再犯防止が特に重要であって、政府一丸となって取り組むべき重要施策の一つであるということで、だからこそ、この再犯防止推進計画は閣議決定ということで、政府を挙げての計画になっております。

 また、再犯防止施策を効果的に推進するために、地方公共団体や民間協力者等と緊密に連携しつつ、息の長い支援を行うことが必要だということで、そういったことに取り組む初めての計画であるということで、五つの基本方針のもと、就労の確保等を始めとした七つの重点課題について、百十五の施策が盛り込まれているところでございます。

 私自身、今法務省を挙げて、推進計画に基づいて、犯罪をした者等の就労の確保を始めとした取組を進めているところでございますが、政府を挙げての閣議決定に基づく施策ということで、各省庁との連携も従前よりもはるかに連携がうまくいくようになりまして、また、携わられる民間の方の理解も非常に進んでいるということを感じているところでございます。

 一つ一つの政策について、これはまだまだ途上でございますので、連携を一層強化して、実施を着実にしてまいりたいというふうに考えております。

源馬委員 ぜひ、本当に大臣がおっしゃるように、これは党派、会派も全く関係なく、日本のために推進をしていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 ただ、一方で、問題意識としては、二年連続で今犯罪件数が百万件を下回ってきていて、初犯は減っているんだけれども再犯が減らないというところにやはりどうしても大きな課題があって、この再犯防止推進計画の政府の目標も、平成三十三年までに二年以内再入率を一六%以下にするなどを確実に達成しというふうにありますが、ちょっとやはり目標としてはつつまし過ぎるかなというふうに思います。

 伺ったところによると、平成二十四年ではこの二年以内再入率が二〇%あったのを、二割削減ということで一六%にしたということですけれども、今現在の二年以内再入率は事前に聞いたら一七%ということで、あと一%下げたら目標を達成しちゃうということはちょっと掲げる目標が小さいかなと思いますので、できたら、検挙者に占める再犯者の割合が今四八・七%あるというところをどのぐらいまで下げていくか、そういう目標もぜひ掲げていただきたいなと思いますが、この目標について御所見を伺いたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘の目標値につきましては、平成二十四年に犯罪対策閣僚会議で決定した再犯防止に向けた総合対策があって、そこには、平成三十三年までにということで、御指摘のとおり、再入率を二〇%から二割以上減少させて一六%以下にするという数値を掲げていたところでございます。これが順調に推移しているというところでございますが、順調に推移したがゆえに、目標達成にまであとわずかというところにはなっております。

 ただ、我々は、これに甘んじることなく、政策の効果等も見据えて、さまざまな今後の目標を掲げていきたいと考えております。

 ただ、検挙者に占める再犯者の割合四八・七%というのが、これは初犯者が大分少なくなってきているという、これもある意味、政策効果が出ている部分でございまして、人為的に、初犯者の割合が上がれば再犯者の割合が下がるということにはなるんですが、そういうことではなくて、効果的な指標、そういったことを委員の御指摘も受けながら考えていきたいというふうに考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 この推進計画の中で五つの基本方針と七つの重点課題がありまして、特にやはり、私も、この七つの重点課題のうちの一つである、就労や住居の確保というのが本当に大事なことになっていくなというふうに思っております。

 これも皆様御存じのことだと思いますが、やはり、再犯して再び入所してしまう人の七割が再犯時無職であったりとか、仕事についていない人の再犯率というのは仕事を持っている人の再犯率の三から四倍にもなっているという統計もございます。

 こうしたことから、いかに就職をさせていくかということが重要であることは、これはもう明らかなわけですけれども、その中で、法務省が始めているコレワーク、これをもう少し活用できたらいいのではないかなというふうに思います。

 このコレワークにおいて、協力雇用主等に対して、受刑者等が矯正施設在所中に習得、取得可能な技能、資格を紹介したり、あるいは、協力雇用主の雇用ニーズに合う受刑者が存在するかどうか、そういった矯正施設の紹介であるとか見学会、こういったことも他省庁の協力も得ながら支援するという取組で、非常にこれは広がっていくといいなというふうに思っています。

 ちょっと事前に伺いましたら、コレワークが設置をされた二〇一六年の十一月から本年の一月末現在までにおける利用実績というのが、相談件数が二千四十六件、そのうち去年だけで千百二十八件ということで、大分、去年爆発的にふえたと思いますが、そして内定が四百七十三件というふうに教えていただきました。

 この実績についてどうお考えになっているか、教えていただきたいと思います。

山下国務大臣 ありがとうございます。

 この機会に、若干コレワークについて宣伝も兼ねて答弁させていただきたいんですが、これはもう御指摘のとおり、平成二十八年四月、企業と受刑者等のマッチングを促進するために、矯正就労支援情報センターということで、通称コレワークとして東京及び大阪の矯正管区に設置したものでございます。

 このコレワークにおいては、全国の受刑者等の職歴や資格あるいは帰住予定地等の情報を一括管理しまして、企業の求人ニーズに適合する者がいる矯正施設の紹介を行っているところでございます。

 平成二十八年十一月から本格稼働を開始してから、企業からの相談受け付けが直近の統計だと二千百三十七件であり、また五百三件が就職内定につながっている。しかも、御指摘のとおり、去年飛躍的にそういった相談受け付け件数も伸び、また内定件数も伸びているということで、コレワークの実績は着実に伸びているというふうに考えております。

 ただ、今後もその充実そして周知をしっかりすることによって、さらなる拡大をする、効果が出ている政策というふうに考えておりますので、委員の御協力も見ながら、しっかりと周知あるいは充実に努めていきたいと考えております。

源馬委員 ぜひ充実させていただきたいなと思います。

 一方で、これも事前のレクで伺ったら、内定した人は四百七十三件あって、その方たちが果たして今でも働いているのか、それとも、雇用主に対して支援が終わってしまう最長六カ月が終わったら例えばもう解雇されてしまっているのかとか、そういったことの、後がどうなったかということは調査をしていないということでした。

 それも、できたらやはり後を追って、アフターケアも含めて、その人たちがどうなっていったかということももう少し後追いできると、非常にコレワークの制度自体に対する信頼度が増すと思いますし、雇用主も使いやすくなると思いますので、ぜひそこら辺も御検討いただけたらなというふうに思います。

 それから、更にコレワークについてちょっとお伺いしたいんですが、協力雇用主にまず登録をして、そしてさらに、雇用するかしないかというのがあるというふうに理解をしています。

 この協力雇用主というのは、犯罪を犯した者等の自立及び社会復帰に協力することを目的として、犯罪を犯した者等を雇用し、又は雇用しようとする事業主をいうというふうに規定をされておりまして、平成二十九年では一万八千五百五十五社登録をしていて、平成二十年のときの六千五百五十六社から比べると三倍近くになっているわけで、昨年の四月時点では二万社を超えているというふうに承知をしています。

 一方で、実際にその中で犯罪を犯した人たちを雇用しているのは八百八十七社でして、わずか四%です。二〇二〇年までにこの八百八十七社を千五百社にするという目標はなかなか厳しいように感じますが、協力雇用主はどんどんふえているのに一方で雇用はなかなかふえないという、この数字の乖離はなぜ起きているのか、副大臣か政務官にお伺いしたいと思います。

平口副大臣 お答えいたします。

 刑務所出所者等の再犯防止を推進していく上で、就労の確保は特に重要であり、前歴等の事情を理解した上で雇用していただける協力雇用主の存在は不可欠でございます。

 そこで、法務省では、刑務所出所者等を雇用し指導に当たる協力雇用主に対して年間最大七十二万円を支給する奨励金制度を導入し、効果的に活用するなどしながら、協力雇用主の負担と不安の軽減に努めてきたところであります。その結果、協力雇用主の登録数は大幅に増加し、実際に雇用している協力雇用主も増加傾向にあるわけでございます。

 ただ、平成三十年四月一日現在、御指摘のように、二万七百四事業主が協力雇用主として登録しているのに対しまして、実際に雇用している協力雇用主は八百八十七社にとどまっているということでございます。

 その理由としては、一つは、協力雇用主の業種が建設業などの特定の業種に限られておって、刑務所出所者等の職業選択の幅が限られていること、第二に、社会人としてのマナーや対人関係の形成等のための必要な能力を身につけていないなどによって、一旦就職しても定着できないこと、第三に、協力雇用主にとっては刑務所出所者等の雇用に伴う心理的不安や経済的負担が大きいことなどが考えられるわけでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 今副大臣が御指摘の二つの理由というのも確かにそうだと思うんですが、私、この制度を考えたときに、今御答弁ありましたように、協力事業主に登録すると、ちょっとインセンティブがあるわけですね。そうしないともちろん登録はしてもらいにくいので当然だと思うんですが、そのインセンティブの中に、今御紹介があったもののほかに、各自治体で、この協力雇用主に登録をしていると入札なんかで優遇されるということをやっている自治体が多いというお話を伺いました。

 逆に、これをやると、そのために登録だけして、なかなか雇用につながらないという矛盾があるんではないかと思いますが、一方でインセンティブを与えながら、それが余り行き過ぎると雇用につながっていかないというこのギャップを、副大臣、どうお考えになっているか、お伺いしたいと思います。

平口副大臣 御指摘の点について、今後検討していきたいと考えております。

源馬委員 難しいと思いますが、ここがやはり重要になってくると思いますので、協力雇用主の登録だけで済まないように、雇用までつなげていけるような仕組みをぜひ検討していただきたいなというふうに思います。

 続いて、会社法について伺いたいと思います。

 ことしの二月に、法制審議会総会において全会一致でこの会社法制の見直し要綱案が採択をされて、大臣に答申をされたというふうに伺っております。

 そのうちの大きなものとして、一つは株主総会に関する規律の見直しと、そしてもう一つは取締役等に関する規律の見直しが答申をされたというふうに承知をしております。

 その中で、社外取締役の設置を義務化するというところがありまして、今、東芝ですとか日産のいろいろな不適切会計ですとか不正会計の問題が非常に注目されている中で、この社外取締役をめぐる議論というのもいろいろあると思うんですけれども、まずは、この社外取締役自体に期待されることですとか、こうした不正会計を抑止するという観点から社外取締役が役割をどう果たしていくべきかということについての大臣のお考えをまず伺いたいと思います。

山下国務大臣 委員御指摘のとおり、社外取締役は重要な役割を負っておると考えております。

 社外取締役は、業務執行者から独立した立場で、業務執行者による会社経営の監督等を行うことが期待されております。

 不正を抑止するという観点からは、例えば、業務執行者がみずからの利益を図り、又は問題に気づいたにもかかわらず保身に走ってこれを隠蔽するといった危険を未然に防ぐメカニズムとして、特に社外取締役においてはその監督機能を発揮していただくということが期待されております。

源馬委員 私も全くそのとおりだと思うんですが、現状、上場企業の九割以上が社外取締役を既に設置をしていて、これも、前回、平成二十六年のときにこの社外取締役について議論があったときは、義務化するかというのは賛否が分かれて、当時は六四・六%しか設置していなかった。けれども、その折衷案という形で、社外取締役を置かない相当な理由を示さないといけないというふうにされたおかげで、今は九七%、社外取締役を設置しているというふうに理解をしております。

 ここまで設置されているのに、なぜ、あえてまた義務化をしなくてはいけないのかなという疑問があるわけですが、このことについて、どういった効果があるのかも含めてお伺いをしたいと思います。

平口副大臣 お答えいたします。

 社外取締役には、業務執行者から独立した立場で会社経営を監督するとともに、経営者あるいは支配株主と少数株主との間の利益相反の監督を行う役割等を果たすことが期待されているところでございます。

 特に上場企業等については、一般に、不特定多数の株主が存在し、株主の変動可能性も高いことから、株主による経営の監督が期待しがたい面があるわけでございます。そのために、上場会社等については、経営が独善に陥り、又は経営陣が保身に走るといった危険を予防するメカニズムとして、社外取締役を設置することの必要性が指摘されているところでございます。

 また、我が国の資本市場の信頼性を高める観点から、上場会社等においては社外取締役による監督が最低限保障されている旨のメッセージを発信すべきであるという指摘が、機関投資家や金融商品取引所等を中心になされているところでございます。

 したがって、上場会社等については、このような観点から、社外取締役の設置を義務づける必要があると考えているところでございます。

源馬委員 もちろん、すぐれた社外取締役の方が来て、厳しい目を向けて、そして、ずばずば物を言って会社経営に資してくれればいいんですが、例えば、社外取締役の義務化が不要ではないかと言う人の中には、そもそも義務化をしなくても、今だんだん、もうほとんどの会社が社外取締役を置いているにもかかわらず、それでも義務化をあえてすれば、義務化になっちゃったから誰か置かなきゃしようがないということで、例えば社長の知り合いとか、実際には、その経営を監視するというよりも、何となくお友達感覚で連れてくるというケースも生まれてくるんではないかという指摘があります。そういうケースも実際あると思うんですね。

 ですから、そうしたことも含めて、本当に社外取締役が機能して、例えば東芝や日産でも社外取締役はもちろんいましたし、東芝についてはかなり前から社外取締役を置いていたということもありますけれども、それだけではやはりなかなかきちんと監視をすることができないと思いますので、この社外取締役を設置する以外のところでも、外部による監視機能強化、例えば給与を第三者が決めるということもありましたけれども、そういうことも含めて、ほかにどのような手法をとるのが望ましいと考えているか、副大臣にお伺いしたいと思います。

平口副大臣 社外取締役について、いろいろ形態があるわけでございまして、委員御指摘のようなこともあって、運営に適正を果たしていかなくちゃいけないというふうに思っております。

 それで、それ以外にも会社を管理監督するいろいろな方法があろうかと思いますから、それらについてもぜひ適当に、前向きに検討してまいりたい、このように思います。

源馬委員 ありがとうございます。

 では、次、障害児者への性暴力被害について取り上げたいと思います。

 まず最初に、山下大臣は、再犯防止推進法、先ほどあったものですとか、改正ストーカー規制法ですとか、リベンジポルノ防止法なんかにも積極的に携わってこられまして、犯罪被害者、特に性暴力被害者に対する施策に熱心に取り組んでこられたというふうに承知をしております。

 そこで、まず、大臣が考える性暴力被害の現状における課題と取り組むべき施策について、所見をお伺いしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 性犯罪被害につきましては、やはり本当に魂の殺人とも言われている深刻な被害を被害者に与えるものである一方で、これまで、被害者の目から見れば、加害者が軽く考えているんじゃないのかというふうな指摘もあったところでございます。いわゆるミー・トゥー運動などもございました。そういった、やはり社会的に性犯罪被害に対して非常に厳しい目が向けられ、また、性犯罪被害を勇気を持って公表される方も、勇気を持って、本当に敬意を表する次第でございますが、実態が明らかになりつつあると思っております。

 こうした性犯罪被害については、やはりさまざまな人間関係の中で起こり得る犯罪でもございます。まずは、これは実態をしっかりと把握しなければならないんだろうと思っております。

 そうした中において、平成二十九年に成立した刑法の一部改正法律の附則において、性犯罪に対する総合的な施策のあり方を検討することとされておりまして、実態把握の上でやるということで、法務省においては、平成三十年四月、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを設置しておりまして、これまでにも合計五回の会合を開催して、当事者あるいは弁護士などからさまざまなヒアリングであるとか、あるいはワンストップ支援センターの見学等、実施してきております。

 まずは、そうしたことを重ねながら実態を把握して、適切な対応をとってまいりたいと思っております。

源馬委員 ぜひお願いしたいと思います。

 実態把握というのがやはり大事だと思いまして、そこからまずはやっていただきたいと思うんですけれども、特に、把握が難しいと思われる障害を持った方たちが性被害を受けたケース、これはやはりきちんと、ほかの外国並みにここもケアしていかなくてはいけないんじゃないかなと思っています。

 東京にある発達障害当事者のフリースペース、Neccoカフェというところが独自に行った調査によりますと、二〇一八年の三月、一月だけなんですけれども、サンプル数も非常に少ないです、三十二件しかありませんが、非常に多くの、障害を持った方たちの性犯罪被害があったということも伺いました。特に、障害を持っていると、なかなかやはり言えなかったり、これが本当に、自分は性被害に遭っているのかどうかということもわからないということもあったりすると思うんです。

 まず厚労省にお伺いしたいんですけれども、障害児者等への性被害の現状についてどう把握をされているのか、また、何か調査をしたりしたことはあるのかどうか。つまり、障害をお持ちの方のうちどのくらいの方が被害に遭ったかということを実態把握をできるような方策があるのかどうかを伺いたいと思います。

橋本政府参考人 私ども厚労省におきましては、障害者虐待防止法に基づきまして、障害児者の虐待の状況について把握をしております。その中で、性的虐待ということについても把握をしているところでございます。

 この障害者虐待防止法でございますが、養護者によるもの、障害福祉施設従事者等によるもの、使用者によるもの、こういう三つに分けて、毎年度、件数等を把握しておりまして、平成二十九年度におきましては、養護者による性的虐待が五十八件、障害者福祉施設従事者等による性的虐待が六十六件、使用者による性的虐待が七件、合計百三十一件となっております。

源馬委員 これはぜひ、声を上げられていない人の声は入っていないと思いますので、難しいと思いますが、声を実は上げていない人の被害数も調べられるような何か方策を考えていただきたいなと思います。

 同時に、警察庁にも来ていただいておりまして、逆に、性被害に遭った方のうち、どのぐらいの方が障害をお持ちだったかという実態を把握をしているのか。つまり、声を上げられない障害をお持ちの方の性被害の全容をつかむための調査というか、調べることは行っているのかどうかを伺いたいと思います。

内藤(浩)政府参考人 被害者が障害をお持ちの方である性犯罪の件数につきましては、把握をしていないところでございます。

 障害をお持ちの方であるか否かにつきましては、プライバシー性の高い情報でありますことから、警察としても捜査上必要な場合に限り把握するものでございまして、全体の被害のうち被害者が障害をお持ちの方である割合ですとか、その網羅的な実態を把握するということは困難でございまして、障害をお持ちの方の性被害の件数については把握していないところでございます。

源馬委員 間もなく時間なので終わりますが、またこの問題は引き続き取り上げていきたいなと思います。

 事前に教えていただいた中では、障害を持っている方、各国では、もう刑法に書いて、障害を持っている人に性的暴力を行った場合はこれこれこうなるというように細かく定められている国もたくさんあります。

 一方で、日本では、「心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、」というところで障害をお持ちの方も読むんだというような御説明がありましたが、果たしてこれで障害をお持ちの方の被害を本当に全て網羅できるのかというと、ちょっとこれでは心もとないなと思いますので、また引き続きこの問題は法務委員会で取り上げさせていただきたいと思います。

 以上です。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 まず、技能実習生についてお聞きしたいと思います。

 私、先日、二月十五日の予算委員会で、日立製作所の笠戸事業所、これは山口県下松市にあるんですが、技能実習生九十九人が解雇をされ、うち七十三人が帰国を強いられた問題を取り上げました。これは、実習生には何の落ち度もなくて、日立側が実習生に計画外の作業をさせていたということが原因であります。

 今回、この笠戸事業所以外の日立系列の事業所でも類似の事案が起きていたということが明らかになりました。朝日新聞の三月五日によりますと、ある事業所では、電気機器組立てを目的とする実習生がたくさんいたのに、その実習の必須の業務であるプリント基板の作業を外注していて、実習生には作業させていなかった。外国人技能実習機構は昨年、こうした事実を認定しまして、日立製作所と系列の十社に対して改善指導あるいは改善勧告を出しております。

 これらの日立の関連事業所に実習生を紹介したのは、監理団体のフレンドニッポンというところでございます。これは日本で最大手の監理団体の一つでありまして、日立との関係で大きくなってきた、こういうところであります。

 報道によりますと、このフレンドニッポンは、実習計画と実際の作業が一致していないということについて、日立側に働きかけて是正するどころか、逆に実習生を、不当じゃないかと訴えた実習生を説得して回っていたというんですね。実習を計画どおりに行わせるのがまさに監理団体の役割なんですが、それと全く逆であります。

 法務省にお聞きしたいんですが、いわゆる笠戸事業所以外の十二事業所については一定の指導や勧告を出されました。しかし、笠戸事業所あるいはフレンドニッポンについてはまだ出ておりません。これらについて、どうなっているのか。これはまだ調査中ということですか。

佐々木政府参考人 調査中の個別の事案についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 法務省におきましては、制度を共管する厚生労働省と外国人技能実習機構と連携をした上で、法令違反に対しましては、必要な調査を尽くした上で、技能実習計画の取消し等の可否を含め、適切に対応してまいります。

藤野委員 調査中ということでありまして、どのような結果になるのかはわからないんですが、どんな結果になっても、何の落ち度もない実習生が犠牲になってはならないと思うんです。

 技能実習法第五十一条二項には、主務大臣は、実習実施者、監理団体その他の関係者に対する必要な指導及び助言を行うことができるとの規定があります。

 大臣にお聞きしたいんですが、やはり実習生が、例えば日立の笠戸事業所であったような実習の中止、解雇、帰国、こういった犠牲を受けないように政府として万全の対策をとる、このことを約束していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 まず、技能実習につきまして、その管理につきましては、実習機構の監督、あるいは必要に応じて実地検査を踏まえて、我々もしっかり見てまいりたいと思っております。

 そして、技能実習計画が取り消された場合、技能実習生は転籍を余儀なくされるということもあるんですが、そういった場合に、まず監理団体等が転籍先をしっかりと確保していただくということ、これはもうしっかり、監理団体等は技能実習生の転籍を支援しなければならないこととされておりますから、それをしっかりと見ていきたいと考えております。

 監理団体が確保をする努力を尽くしてもなお確保できない場合については、外国人技能実習機構が、新たにその管理を行うこととなり得る監理団体の情報を提供するということでございまして、実際、機構のホームページにおいては、監理団体向け実習先変更支援サイトというものも開設しており、そういった新たに技能実習の管理を行うことができる監理団体の情報を掲載して、転籍先を探している監理団体に対する情報提供を行っているところではあります。

 また、緊急性が認められる事案については、外国人技能実習機構が監理団体等から直接相談を受け付け、転籍先の迅速な確保のための支援を行っていくところでございます。

 我々法務省としては、厚生労働省や外国人技能実習機構と連携して、引き続き、技能実習生が不利益をこうむることのないよう、技能実習生の保護を図ってまいりたいと考えております。

藤野委員 これは、同じ日立の笠戸事業所では解雇、帰国ということも起きていますので、こうしたことが二度と起きないようにしっかりとやっていただきたいと思います。

 それでは次に、入管収容の問題についてお聞きしたいと思います。

 前提として、法務省に確認したいんですが、現行入管法は、退去強制手続、収容につきまして、いわゆる全件収容主義というのをとっていると思います。これをとっている理由について、答弁いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 入管法におきまして、第五章第二十六条以降、一連の退去強制手続に係る規定が置かれておりますけれども、この退去強制手続におきまして、違反調査から送還に至るまで、容疑者を収容することを前提に条文が構成されておりまして、このことをもちまして全件収容主義と呼ばれることがあります。

 その理由といたしましては、我が国において不法に滞在しているなどの入管法違反者を対象に行われるこの退去強制手続において、その最終形であります送還を可及的速やかに、かつ確実に行うことが求められているからであると考えております。

藤野委員 今のが全件収容主義なんですが、今回の入管法改定では、これに関する法令等は改正されておりません。これは実に制定以来約七十年間、この収容とか身体拘束にかかわる規定というのは、根本的な改正というのは行われていないということになります。

 この問題は、実は、今回行われます外国人労働者の受入れ拡大と表裏一体だと私は思っておりまして、というのも、特定技能という新しい在留資格がふえるわけでありますが、何らかの理由でこの在留資格が失われて退去強制手続ということになりましたら、更に多くの外国人の方がこの全件収容の対象になりかねないからであります。

 では、その収容の実態はどうなのかということなんですが、私は昨年十月の十九日に、茨城県の牛久市にある東日本入国管理センターを視察させていただきました。私が視察した少し前に、山下法務大臣も視察されたと伺っております。

 牛久では、窓に鉄格子がある部屋に数人雑居で収容されておりました。仕事をすることも、教育を受けるとかそういうこともなく、ただ自由を奪われている。午前と午後三時間程度、合わせて六時間ほど部屋の外には出られるんですが、それ以外の十八時間というのは狭い部屋に数人で閉じ込められるわけですね。運動場もありますけれども、一日四十分だと伺いました。しかも、逃走防止用の鉄条網で覆われている。開放感がないんですね。共有スペースには監視カメラが設置され、二十四時間監視されておりますし、私が感じたのは、施設全体に、何とも言えない閉塞感といいますか、圧迫感といいますか、あったんですね。もし自分なら、私なら、これはもう数日でも耐えられないなというふうに率直に感じました。

 共有スペースでは、透明な強化ガラスだと思うんですけれども、その向こう側にたくさんの外国人収容者の方がいらっしゃいまして、彼らは我々を見て、日本語で呼びかけるんです、私たちは何もしていない、ここから出してほしい、こういう声をかけられました。

 大臣にお聞きしたいんですが、大臣も私たちとほぼ同じルートで視察したと伺っております。どんな感想をお持ちになったのか。あるいは、同じように収容者から声をかけられたんじゃないかと思うんですが、いかがだったでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、私も視察をさせていただいたところでございます。

 これについては、まず大前提として、出入国管理及び難民認定法五十二条は、三項において、退去強制令書を執行するときは速やかに送還しなければならないと規定しております。そして……(藤野委員「感想で結構です。後で聞きますから」と呼ぶ)いえ、感想の導入でございますので。

 直ちに送還することができないのは、その送還をしっかり確保するために、送還可能のときまで、その者を入国者収容所、収容場などに収容することができることとしている。

 私が実際視察して思いましたのは、こういった退去強制令書を執行したら送還しなければならない、そして、送還を確保するためのこういった収容であるということと、そういった中で、入管職員が、早期の送還、これは本人の同意とかそういったものも非常に重要なファクターになりますから、そういった説得を重ねながら職務に精励しているという実態を見ることができました。

 他方で、退去を拒んだ、だから自動的に釈放されるということだと、やはり我々入管、入国管理の目的が達成できないものですから、そのはざまの中で、人権擁護にもしっかりと配慮した処遇を入管職員が日々努力しているところを改めて確認したところでございます。

 ただ、他方で、やはり委員御指摘のような、センター内での生活に不満やストレス、あるいは不便なところはあって、あるいは、心身の健康を害するに至った被収容者に対する医療のあり方など、改めて考えさせられるところもありましたので、今後もそういったやはり入管法上の規定があり、送還に向けて我々はやらなきゃいけないし、やはり収容もやむを得ない場合もある、しかし一方で、そういった人権をしっかり配慮するということについて決意を新たにした次第でございます。

藤野委員 配付資料の一を見ていただきたいんですが、これは国連特別報告者、ホルヘ・ブスタマンテ氏の報告書の一部を抜粋させていただきました。二〇一一年三月二十一日であります。

 この黄色の部分を意訳させていただきますと、特別報告者は、東日本入管センター、これは大臣が視察された、ごらんになったところです、東日本入管センターで約二年間収容されていた非正規移住者と庇護希望者に面会した。彼らは耐えがたい精神状態にあり、裁判を受けることなしに、又はいかなる犯罪で有罪と宣告されることもなしに、また、釈放されるか否か、又はいつ釈放されるか知らないまま長期間収容されていた。こういう報告なんですね。

 耐えがたい精神状態、これはなぜ耐えがたい精神状態になるのか。これは、やはり被収容者の方が自分の処遇に納得されていないからだと思うんです。私は、この耐えがたい精神状態というものといわゆる全件収容主義というものが、本当に一体で、分かちがたく結びついていると思っております。

 配付資料の二を見ていただきたいんですが、これは日弁連が二〇一四年九月十八日に出した意見書であります。出入国管理における身体拘束制度の改善のための意見書。この二ページ、ちょっと小さくて恐縮なんですが、下の方を見ていただきますと、収容の根拠条文である入管法三十九条、五十二条五項は、逃亡のおそれなどの拘束の必要性を明文で要件として挙げていない、こういう指摘であります。

 そして、三ページに行っていただきますと、行政上は、仮放免の更新の許否判断について、主任審査官又は入国者収容所長の自由裁量であるとしており、法令上、仮放免許否の基準は定められていないと。

 さらに、四ページに行きますと、仮放免申請に対する不許可通知書には、実質的な理由付記が行われないと。その下の五のところには、退去強制令書による収容については、入管法に収容期間の上限の明文がない、こういう指摘であります。

 つまり、収容するかどうか、あるいは仮放免するかどうか、あるいはいつまで収容するかどうか、これは全て入管の裁量で、しかも理由も言わない、裁判所も弁護士も関与しない、これが今の実態なんですね。

 昨年の四月十三日には、牛久のまさにあの収容所で、センターで、当時三十一歳のインドの青年がみずから命を絶った。これは、仮放免の申請をされていたけれども、不許可になった、その不許可になった翌日だったというんですね。理由も書いていない。それほどの絶望を与えたということだと思うんです。

 大臣にお聞きしますが、なぜ自分が収容されるのか、いつまで収容されるのか、仮放免がなぜ許されないのか、こういうことが全くわからない、説明もされない。これが、収容者が耐えがたい精神状態に追い込まれていく大きな要因になっている、そういうことじゃないですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、入管法による身柄の確保、これは大前提として、我が国に在留する在留資格を持っていない、あるいは我が国に在留することが望ましくないと認められた、そういった外国人について、こういった退去強制令書等をもって、それで収容しているものであるということでございます。

 ですから、この収容状態は、令書に基づいて出国するということであれば直ちに解消されるというところでございます。それが前提であるということ。

 あと、こうした身柄の確保については、高裁判例では、裁判例ではございますが、国家が、在留資格に反した活動をし自国にとって好ましくないと認める外国人を、強制力をもって国外に排除する退去強制手続を行うに当たっては、身柄を収容して行うことが原則でありというふうな指摘もあって、そういったところもございまして、それに基づいて、法令に基づいて運用しているところでございます。

藤野委員 大臣、私がお聞きしたのは、今、在留ができないとか在留が好ましくないとおっしゃいましたけれども、その好ましくないとかできないという判断そのものが、入管だけしか関与できないではないか、恣意的ではないかという質問なんです。収容が必要かどうかの判断には、外部の裁判所も弁護士も一切関与しないわけですね。その理由も開示されない。だから納得できない。

 もし、自分とか、自分の家族、友人がこんな扱いを受けて何の説明もされなかったらどう思うかということなんです。こんな状況のもとで在留資格を拡大して、もしその資格が失われたら、これは全件収容ですよ。さらなる人権侵害が起きるおそれがあります。

 加えて、昨年、法務省は、仮処分について新たな運用方針に関する指示文書を出しました。

 配付資料の三を見ていただきたいんですが、昨年の二月二十八日付であります。

 これは、一ページ目の一番下にありますように、要するに、この間の仮放免に関する指示や通達が幾つも出ていますが、それを踏まえた上で、その下の三行にありますように、仮放免に係る具体的な運用方針について、別添のとおり定めたので、今後、当面の間は同運用方針に従い、仮放免の適切かつ厳正な運用に努めるように指示します、こういうものなんです。

 つまり、今後、新しいこの方針でやれということなんですが、その方針に何と書いてあるか。

 その配付資料の次のページを見ていただきますと、もうこれは黒塗りで、ちょっとこれ自身、時間があれば言いたいんですが、わかっているところだけでも見ますと、「仮放免を許可することが適当とは認められない者は、送還の見込みが立たない者であっても収容に耐え難い傷病者でない限り、原則、送還が可能となるまで収容を継続し送還に努める。」、こうあるんですね。

 大臣にお聞きしたいんですが、送還の見込みが立たないのに、送還が可能となるまで収容するというのは、これは矛盾じゃないですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、先ほどの繰り返しになりますが、退去強制令書を執行するときには速やかに送還しなければならない。で、その確保のために、送還可能なときまで収容することができることとしております。このように、我が国においてそもそも在留が許可されていない、あるいは望ましくない者であるということであります。

 そして、御指摘の仮放免につきまして、仮放免を許可することが適当と認められない者というものに、委員の配付資料として書かれているものの中に、例えば、殺人、強盗、人身取引加害、わいせつ、社会に不安を与えるような反社会的で重大な罪により罰せられた者であるとか、あるいは常習性が認められる者であるとか、社会生活適応困難者であるとか、あるいは仮放免の条件違反のおそれで仮放免許可期間が延長不可となり再収容された者であるとか、こういったカテゴリーが記載されているわけですけれども、これを例えば仮放免して送還ができないということになると、退去強制令書を執行するときは速やかに送還しなければならないという法律上の義務に反することになってしまうというところもぜひ御理解賜ればと思っております。

藤野委員 私の質問に答えられないんですが、今おっしゃられた、仮放免が適当と認められない者の定義ですね、今、カテゴリーを幾つか大臣御指摘になりました。その中で、「社会生活適応困難者」というのがあります。何ですか、この「社会生活適応困難者」というのは。どうやって、あなたは社会生活適応困難だと認定するのか。その中に括弧で(DV加害者や社会規範を守れずトラブルが見込まれる者など)とあります。社会規範を守れずトラブルが見込まれる者、見込まれる者と。あるいは、大臣読み上げられませんでしたけれども、「仮放免の条件違反のおそれ」というのもあるんですね、おそれ。

 見込みとかおそれをどうやって判断するのか、誰が判断するのか。全部入管が判断するんですよ。入管が、見込まれる、おそれがあると判断すれば、仮放免しなくてよろしい、そういうことになるわけですね。

 大臣、これは余りにも裁量が広過ぎると思われませんか、今、読み上げて。

山下国務大臣 まず、そもそも、先ほど御紹介した裁判例でも指摘されておるし、またマクリーン最高裁判決でも紹介されておるんですが、憲法上、外国人は本邦に入国する自由を保障されているものでもありませんし、在留の権利を保障されているものでもないというところでございます。そして、その裁量につきましては、仮放免につきまして、これについては仮放免の請求に対する許否の判断が主任審査官等の広範な裁量に委ねられているということについても裁判例でも指摘されているということでございます。

 そうした中で、例えば社会生活適応困難者、DV加害者など、そういった者に対してやはりこれを認めるのかというところがございますので、ここは、そうした健全な裁量権の行使に基づいて行使しているということで御理解賜ればと思います。

藤野委員 いや、全く理解できない。

 ちょっと聞き取れませんからあれですけれども、外国人に人権がないみたいな発言を今されましたけれども、とんでもない話ですよ。健全な運用とかおっしゃいますけれども、大臣もごらんになったあの牛久で、たびたび自殺も起きている。二〇一七年には自傷行為も四十件を超えているわけです。その中には自殺未遂まである。全くそんな運用をされていない、健全な運用なんかされていないわけです。

 もちろん、私たちも見ました。職員の皆さんが大変な苦労をされている、この姿も私も見てまいりました。本当に敬意を持っております。しかし、その職員の方が苦労されるのも、やはり収容が余りにひどくてストレスがたまって、その矛先が職員の方に向いている側面もあるわけですね。

 ですから、余りにも今裁量が広過ぎる、そのもとで深刻な人権侵害が起きている、ここに目を向けなければ私は本当に大変な問題になると思っております、新たに外国人を受入れを拡大するわけですから。

 結局、この新たな方針の狙いというのは、先ほど言いましたけれども、要するに、送還の見込みが立たないにもかかわらず、そういう人を送還が可能になるまで収容しなさいと、事実上無期限の、上限のない収容に道を開くというか、そういう指示を出したということですよ。

 今でも法律上の上限がないもとで、どうなるかわからないにもかかわらず、それを是正するどころか、送還の見込みが立たない人にまで、送還の見込みが立つまでという概念矛盾のような指示を出して、事実上無制限の収容を指示しているという、余りにも非人道的なやり方であります。これは絶対に許すわけにはいかない。

 大臣は、所信演説の中で京都コングレスに触れました。これはまさに、コングレスというのは世界最大規模の刑事司法の会議であります。しかしながら、世界から見ても、この日本の収容というのは本当に異常だと思うんですね。

 配付資料の四と五には、その一部ですが、紹介しております。これは本当はたくさんあるんです。あるんですけれども、一部紹介しております。

 配付資料の四、左側は、国連拷問禁止委員会、二〇一三年。これは、長期収容は精神的拷問に当たると指摘した上で、日本政府に対して、収容は最後の手段であり、必要な場合であっても可能な限り短い期間にとどめること、また、退去強制までの収容期間に最長期間を設定することを勧告しております。

 右側は、国連人権規約委員会、二〇一四年。これは、収容が、最短の適切な期間であり、代替手段が十分に検討された場合にのみ行われることを確保する、裁判所に訴訟手続をとれるよう確保すると。

 配付資料の五は、二〇一八年、国連の国際移民機関、IOMが、これは世界の百七十二カ国が参加しておりますが、移民や移住者をめぐる新たなグローバルコンパクト、基準ですね、この案を作成したものでありまして、これは二十三項目ありますが、その十三項目めに、収容は最後の手段として代替措置の追求をという部分を紹介しております。

 大臣にお聞きしたいんです。

 世界は、収容は最短であるべきだと。端的に言って、これが世界の到達点だと思います。ところが、日本では逆に、法務省が指示文書を出して収容を長期化させ、それによって肉体的にも精神的にも被収容者のことを追い詰めて、追い詰めて追い詰めて、送還に同意させようとしている。

 収容は最短でなければならないという世界の流れに全く逆行して、収容を長期化して送還の手段にする、こんなことが許されるんでしょうか、大臣。

山下国務大臣 お答えいたします。

 先ほど、私が外国人に人権がないように聞こえるというふうに御指摘がありましたが、私はそう言っているのではなくて、外国人に、憲法上、入国の自由であるとかあるいは在留の権利が認められるものではないという裁判例の文言を御紹介したというところでございます。

 そうした中で、例えばこの通達については、仮放免を許可することが適当とは認められない者ということで、先ほど御紹介したような、反社会的で重大な罪に罰せられた者などを列挙しているわけでございますが、こうした中で、本来はみずからの意思で帰国すれば直ちにその収容状態が解かれるという状態にあって、こうした方々を釈放、仮放免するということが国民の理解を得られるかということについてもやはり我々は考えなければならないというところがございます。

 ただ、他方で、我々としては、入管法に違反した外国人の退去強制、とりわけ送還業務に著しい支障を来しかねないように収容しているわけでございますが、その上で、訴訟提起、難民認定申請、あるいは病気の治療を理由に身体の拘束を解く必要が生じたときにおいては、仮放免を請求する被収容者の情状、容疑事実その他諸般の事情を総合的に考慮しつつ、人道上の観点から、これまでも弾力的な運用を図っており、これにより、収容が長期化しないよう最大限配慮しているというところでございますので、その点、御理解賜ればと思います。

藤野委員 いや、仮放免を弾力的にやっているとおっしゃいましたが、その仮放免に関する方針で、送還の見込みが立たない者にでも、送還の見込みが立つまでという事実上無制限の収容を指示しているじゃないかということなんです。

 それで、なぜそもそも送還に応じないのか。送還に応じればすぐ釈放されるんだとおっしゃいましたが、やはり、収容の入り口の段階で、この人は本当に収容の必要があるのかどうかというのをきちんと見きわめることなく全件収容しているから、本来送還できない、送還すべきでない、そういう人まで収容してしまって、そういう人は送還に応じるはずがないじゃないですか。

 例えば、昨年問題になった技能実習生の方も、自分は落ち度がないのに、余りにもひどい労働条件で働かされて、命の危険を感じて逃げざるを得ない方だっているわけです。日立のように計画外の作業をさせる、これで、帰国させられる、在留資格を失う人もいるわけです。母国で迫害を受けて、帰ったら命の危険があるという方もいる。日本に家族ができた方もいる。病気を抱えている人もいる。

 だから、そういう方々をちゃんと個別に判断して収容していないから、今、全件収容だから、だから送還にも当然応じないわけです。そのもとで更に長期化せよなんというのは本当に許されないと思うんです。

 時間が来ましたので終わりますけれども、要するに、七十年近く、この入管法というのは、特に収容に関する部分は改定されていない。時代錯誤も甚だしい。もう矛盾も限界に来ております。この矛盾を激化させるような指示文書は撤回すべきでありますし、大もとの全件収容主義そのものを見直すべきです。

 今後も引き続きこの問題を取り上げていく、このことを述べて、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一です。

 きょうは、法務大臣に、条約をどんなふうに考えているのかというのをお聞きしたいと思います。

 御存じのように、日本国憲法九十八条二項には、締結をした条約は誠実に遵守をする、しなければならないという規定があるわけでございます。

 昨今、近隣諸国において、条約あるいは協定、そういったようなものを、約束を守ってくれないというようなことがよく報道されておりまして、大変我が国としても納得ができないということで、遺憾というようなことを表明したということがあります。

 そういう中で、この遺憾というのは、恐らく、ただ単に遺憾とか言っているわけじゃなくて、どういったようなことをあなたはやっていないよというようなことを示していくんだと思うんですが、窓口は外務省だと思うんですけれども、法務省がそのことに関して何らかの、ほかの国からこの件は条約を守っていないよと言われることがあると思うんですが、法務省がそれを受け取ったときにはどのような対応をしているのか、まずはお聞きをしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、条約の解釈、これにつきましては、委員御指摘のとおり、外務省が第一次的な責任を有するということで、条約違反か否かということについては、外務省の判断を我々法務省は待ってというところではございます。

 我々にこういった国連や締約国等からの指摘が来る場合には、同時にそういった外務省からの意見等も来る場合が多いわけでございますけれども、それを踏まえて見た場合に、例えば、そういった場合に、他国や国連からなどの主張が、我が国の法制や運用を十分理解していない部分に基づくいわば誤解というか、あるいは、ちょっと一部を捉えて指摘している部分もあるわけでございます。そうした場合には、私どもは、法律の実施状況や運用について、それをしっかりと外交ルートを通じて御説明していくということになります。

 他方、これは仮にという一般論ではございますが、運用改善や改正が必要であれば、真摯に検討し、実行に移すということで適切に対応しているというふうに考えております。

 今後とも、関係省庁と連携して対処してまいりたいと考えております。

串田委員 その中で、二〇一八年にアメリカから、ハーグ条約に関して、日本国に対して次のようなことの表題でもって分類されて、指名されました。カントリーズ・デモンストレーティング・ア・パターン・オブ・ノンコンプライアンス、こういうような指定がされたということは御存じだと思うんですけれども、これは日本語で言うとどんなふうに訳したらよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、アメリカの国務省が昨年五月十六日付で公表した国際的な子の連れ去りの問題に関する報告書ということでございますが、先ほど御指摘のありました言葉につきましては、不履行のパターンを示す国、このように私ども、分類されているものと承知しております。

串田委員 二〇一八年に、日本は不履行のパターンを示す国ということで示されたわけです。要するに、条約に対して不履行のパターンを示す国ということを示されたんですが、この不履行というのは何を履行しなかったんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたアメリカの国務省の報告書におきますと、我が国は子を連れ去った親に対する裁判所の返還命令を執行する効果的な手段がないものと評価された、そういうことによりまして、先ほどのような分類がされているものと承知しております。

串田委員 ここの条約に使われている、不履行という中の、条約の一番のポイントであるアブダクションというのは、日本では何というふうに訳して理解しているんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 アブダクションという言葉でございますけれども、私どもといたしましては、連れ去りという言葉として理解しております。

串田委員 これは、そういうふうに訳す、訳し方はいろいろあるんですけれども、英和辞典などを調べると、拉致というふうに訳している言葉としても有名でございます。

 そうなると、拉致のパターンを示す国、日本は拉致の、パターンを示す国というのはいわば常習国ということですよね。アメリカからすると、日本は拉致の常習国と認定されて、トランプ大統領はアメリカの国内でも突き上げられている、そういう認識は法務省としてはおありですか。どちらでも結構でございます。

山下国務大臣 アブダクション、英語に詳しい当局がいますので説明をさせますが、アブダクションについて、これを連れ去りと訳しているのは、これは親によってなされるからということがございます。つまり、親による拉致というのは、なかなか日本語としても考えがたい。これはやはり、親による連れ去りが一部犯罪になっておるという、アメリカもそういうふうなところでございまして、そういった彼我の法律の差がこういった表現を生んでいるのかなというふうにも思います。

 ただ、他方で、先ほどの国務省、我が国でいえば外務省に当たるところでございますが、この報告書について、我が国が不履行のパターンを示す国に分類されておりますが、他方で、日本としては、ハーグ条約実施法が施行された二〇一四年四月から本年二月末までの五年の間に、既に我が国から外国への子の返還が実現した事案が三十件あるものと承知しております。

 こうしたことからすれば、米国から一方的に、国務省という省庁がこうした評価をしたということについては、まことに残念であるというふうに考えております。

串田委員 残念であるということではなくて、条約に対して守っていないということは、九十八条二項では、締結をした条約は誠実に遵守しなければいけないわけですよ。それを遵守していないのが残念であるというのはおかしな話でして、どうして誠実に遵守していないかというのは、それは、向上は認められるもののと私も読みました。

 だけれども、本当に恥ずかしいですよ。皆さんもホームページを見ていただければわかりますけれども、ここのページだと、不履行国というのは十二カ国、百カ国以上は締結している条約ですからね、先進国では日本だけ赤い枠で出てくるんですよ、日の丸の周りに赤い枠で、不履行国として、拉致の常習国として。

 こういうようなことを放置しているということで、それで、私も拉致特別委員会ですから、一刻も早く拉致の事件を解決したい、早く全員が戻ってもらいたいと思っている中で、日本自身がアメリカから拉致の常習国というふうに認定されているということに対して、これを残念だと言うのではなくて、解決をする方向に向かわなければいけないんじゃないか。これは残念だと言っているだけで終わりですか。

山下国務大臣 もとより、私が残念だと申し上げたのは、国務省はちょっと、私とすれば、一方的な評価ではないか、一方的に過ぎる評価ではないかということで申し上げたんですが、ただ、このままでいいというふうに思っているわけではなくて、私としても、ハーグ条約実施法が適切に運用され、子の返還が実現されることは重要であり、その意味で、この子の返還の強制執行の実効性を高めるべきであるとの指摘自体は真摯に受けとめるべきものと考えております。

 そこで、今般、国内の子の引渡しの強制執行に関する規律の整備にあわせて、ハーグ条約実施法についても見直すべきところは見直すべきと考えておりまして、先月十九日には、このことも含めた民事執行法及びハーグ条約実施法の一部を改正する法律案を提出させていただいたということでございます。

 この法律案には、ハーグ条約実施法に基づく子の返還の手続についても、その実効性を確保しながら、子の心身の負担にも配慮した規律を設けること等が盛り込まれておりますので、国会においてこの法律案を速やかに御審議の上、成立させていただくよう努力してまいりたいと考えております。

串田委員 そういう意味では、非常に私としては、私自身が残念なんですけれども、非常に恥ずかしいことですよ。不履行国と言われて、慌てて、つけ焼き刃的にそこの部分だけを補っている。

 今回、先月ですか、国連の子どもの権利委員会から勧告が出ましたね。勧告が出ているということは、やはり条約に対してちゃんと遵守していないんだということを示すことだと思うんです。私は、予算委員会の分科会で外務で聞きました。勧告があった、こういうのはどうするんだと言ったらば、外務大臣が、法的拘束力がないからほったらかしにしているというような感じの答えでしたよ。

 この勧告に関して、外務省から法務省に対し何らかの、こういうような指摘があり、これについてどのような見解があるのかというような相談を受けているんでしょうか。

山内政府参考人 委員御指摘の勧告につきましては、委員会からまさに総括所見という形で公表されたものと承知しておりますが、そういったまず審査に当たりましても、外務省も法務省も、ともに日本代表団を構成いたしまして審査に対処しておりますし、その勧告を受けた後、それらに関してどのように対応するかということは、外務省と協議しながら、連携して対処しているところでございます。

串田委員 そのときに私はちょっと驚いたのは、外務省は遺憾と言った数は何回ですか、五年間は何回ですかと言ったら、それはわからないと。じゃ、去年は何回ですか、数えていないと言うんですよ。遺憾と言われたことは何回あるんですか、整理していないと言っているんです。こんなことで、国際社会の信頼を得られるのだろうか。そして、法務省はしっかりとこれに対してちゃんと対応しているんだろうか。

 もちろん、我が国が約束を守らない国に対して、条約を守れ、契約を守れ、こう言うことは大事なことだと思います。しかし、それを国際世論から信頼されるためには、国際世論から言われたことも本当なんだろうかということをチェックしなきゃいけないのに、法的拘束力がないからいいんです、それじゃ、こちらが言ったことだって相手方は信頼しないんじゃないかなというふうに思います。

 今回の先月の勧告には、体罰としつけの区別をつけなさいよというのが書かれていました。それに対して、根本厚労大臣は早速すぐ動いて、そして、五年内のうちにと言われていたのが長過ぎると言われて、すぐに二年というふうに改善しましたよ。

 しかし、その中の、今度は法務省に関連する、共同して養育をしなさい、そういうふうに法改正をしなさいという勧告がありましたね。もちろん、法務省としてもこれに対しては改善を進めるということは間違いないでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、児童の権利委員会から勧告がされたことは承知しておるところでございます。

 共同親権につきましては、離婚に至った夫婦の間では、感情的な対立のため、子の養育、監護に必要な合意が適時に得られないなど、子の利益に反する事態が生ずるおそれがある上、DV被害防止の観点等から、国民の間にもさまざまな意見があり、慎重に検討する必要があると認識しております。

 こういった課題等がある上、また、国会を始めとしまして、超党派の議員連盟など、さまざまなところで検討がされているものと承知しております。したがいまして、それらの議論の状況等を踏まえながら、御指摘の勧告の内容を十分に精査しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えております。

串田委員 政府が、条約を守れないのは日本の国民が感情的な国民だといって、約束を守れないんだというふうにさんざん説明をしているというのはよく聞いていますよ。非常に残念です。九割が協議離婚で成立をしているこの国の、この日本の国民に対して、感情的な国民だから条約を守れないんですよと政府が国際社会に対して宣伝をしまくって、そして、再三にわたって国連からの勧告を無視し続ける。これは九十八条二項に反しないんですか、法務大臣。

 いろいろなことはわかりますよ、いろいろな国民感情があるのはわかります。だけれども、憲法には、条約を締結した以上は誠実に遵守すると約束してあるわけでしょう。これも無視していいんでしょうか、法務大臣。

山下国務大臣 まず、憲法の解釈については所管ではないのですが、まず、その場合において、先般予算委員会において外務大臣がおっしゃった、勧告ということ自体に法的拘束力があるのかといったことに関しては、法的拘束力はない。したがって、法的拘束力がないものについて、その勧告の文面と日本国の現状が例えばそごがあったとしても、これは条約違反ということにはならないんだろうというふうなものとして受けとめております。

 その上で、勧告の趣旨にとって、これは、勧告というものの性質上は、受け入れられるものは受け入れるし、また、そうすれば更によくなるよというふうな趣旨のものも含まれておりますので、そうしたことを我が国の法制の中で、これは国民主権ということもございます。親子に関する状況については、国民の幅広い関心事項でございますので、国民の議論、そして国会の議論をしっかりと注視しながら、法務省としても真摯に検討してまいりたいと考えております。

串田委員 今、法的拘束力というお話があったんですが、条約で、それが違反したときに、法的拘束力が発生する方が普通なんですか、発生しない方が普通なんでしょうか。

山下国務大臣 条約について所管外だということを前提に、私の答弁について御説明いたしますと、この勧告ということ、児童の権利委員会の勧告自体が法的拘束力を持っていないゆえに、その勧告の文言に例えばそごするような状況があっても、これは直ちに条約違反とはならないということを申し上げたところでございます。

串田委員 これは繰り返し堂々めぐりになるから言いませんが、例えば、二〇一八年のアメリカの、不履行のパターンを示す国、これは法的拘束力はありませんよね。ゴールドマン法の制裁がない限りは法的拘束力はない。そして、日本が遺憾だと言っている、これも法的拘束力もない。勧告も法的拘束力もない。国際間で法的拘束力があることというのは、まずないんですよ。

 ないからこそ、誠実に守らなきゃいけないんじゃないですか。法律上義務づけられないと日本というのは動かない国なんですか。法務大臣、どうぞ。

山下国務大臣 まず、先ほどのハーグ条約に関する国務省報告につきましては、これは言われたから訂正するということではなくて、今般、民事執行法において子の連れ去り事案について国内事案について法規を整備するがゆえに、これとあわせてハーグ条約の実施法も改正することを考えているというものでございまして、アメリカの報告書に法的な義務を感じてやっているわけではないということではございます。

 ただ、我々としては、勧告であるか、あるいは報告書であるか、そういったものについて、真摯に受けとめるべきは受けとめるということで対応しているということでございます。

串田委員 子どもの権利条約と国内の法律がいかに合致していないのかというのは、また時間が私がもっとあるときにちょっとお話ししたいんですけれども、子供の虐待というのが、例えば殴る蹴るであざがついた、じゃ、あざがつかない冷水シャワーはいいのか。これはやはり虐待ですよ。

 そういうことがわかる人が、何で、大好きなお父さん、大好きなお母さん、そういったものを悪く言うようなことを、ずっと言葉のシャワーを浴びさせられるのが何で虐待だと思わないのか。食事を与えないのが虐待だとわかっている人が、何で、双方の親から愛情を受けることを阻害することが虐待だと思わないのか。こういったようなことを、世界じゅう、百九十六カ国が子どもの権利条約を締結しているんですから、条約を締結した以上、守っていきたい、守っていっていただきたいと思います。

 また、これについては次の機会に質問させていただきます。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 信州長野の井出庸生です。社保でございます。

 早速ですが、おととい、カルロス・ゴーン氏が保釈になりまして、変装をして出てきたんじゃないかとか、相当話題になりました。警備員の方も大変多かった光景が、私も大変印象的なシーンだと思って見ていたんですが、一つ伺いたいのですが、あの保釈、変装してきたような格好で出てきた、周りを、拘置所の方なんですか、取り囲んだ。ああいうことに対して、何か拘置所サイドからの協力ですとか、便宜を図ったというようなことがあったのかなかったのか、伺いたいと思います、大臣。

山下国務大臣 まず、これは、個別の被収容者が釈放される際の様子につきましてお答えするということは差し控えさせていただきます。これが大前提。

 一般論として申し上げれば、釈放時の衣類については、被収容者が持っている衣類又は出迎え者が当日持参した衣類を着用するという取扱いを一般的にしております。という取扱いであって、拘置所が便宜を図るということはないというふうに承知しております。

井出委員 少し私も一般論で伺っておきたいんですが、ほかの方が、じゃ、私も変装して出たい、誰がいるかわからないから警備をたくさんつけてくれ、そういうことは認められるんですか。

山下国務大臣 これは変装と言うかどうかという問題があろうかと思います。

 私がお答えできるのは、被収容者が所持している衣類又は出迎え者が当日持参した衣類を着用するという取扱いをしているというところでございます。

井出委員 刑事収容施設法の逐条解説、これは刑事局長を昔務められた林真琴さんが書かれているんですが、持っているものですとか服とか、そういうことについては規定があるんですが、警備ですとかそういったものについては何か明文のこともございませんし、私も、今回の件、それをどうこう言うつもりもありません。

 ただ、ゴーンさんの保釈、これから裁判というものは、既に勾留の環境ですとか日数ですとか、そういうこともメディアに取り上げられてきておりますので、日本の刑事司法制度を考える一つのきっかけになるのではないかなと思っております。

 続きまして、前回の続きで性犯罪を伺いたいんですが、一月二十三日の法務委員会で、大臣から最後に少し、委員の御指摘も踏まえて、ふさわしい、検討に資するような実態把握をやりたいというようなお話がありました。

 私があのとき訴えたのは、性犯罪の常識を変えたいんだと。それは、例えば、お酒を飲んでいたからとか、ツイッターやフェイスブックで知り合ったから、そういうことが理由で立件に慎重に、事件化、捜査が慎重になってしまうようなケース。

 本来は、この間の議論でもありましたが、性的自己決定権の自由、この保護法益を害されないために刑法で性犯罪の定めがあると思いますし、大臣自身も、私が取り上げた暴行、脅迫要件については、保護法益を守るために、それに必要な客観的な明らかな行為を捕らえなければいけない、そういう趣旨の答弁があったと思うんです。

 その答弁を踏まえても、やはり、暴行、脅迫要件があった性行為を取り締まるんじゃなくて、本来は、同意のない、性的自己決定権を侵害するような性行為を取り締まるんだ。あくまでも、保護法益、性的自由を守る、同意のない性交を罰する、それがこの性犯罪の刑法の本質である。そこのところはちょっとはっきりこの際しておいてほしいなと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

山下国務大臣 まず、強制性交等罪の保護法益についてお尋ねということでございますが、これについては、一般に、強制性交等罪及び強制わいせつ罪の保護法益は性的自由又は性的自己決定権と解されているというふうに承知しております。

井出委員 もう一回ストレートに聞きますけれども、強制性交等罪は、暴行、脅迫のあった性行為を、それを罰するのはもちろん罰する、大きな事件だと思いますけれども、それはもちろんのこと、ただ、それも含め、本来は、同意のない、保護法益、性的自己決定権、性的自由、そういうものを害したような性行為に対して捜査をして立件を尽くしていく、そういうことだと思うんですけれども。

山下国務大臣 これにつきましては、二十九年の刑法を一部改正する法律で強制性交等罪が定められたわけでございます。そして、そこにはやはり要件として求められているものがあるわけでございますが、それを前提に、「政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」ということでございます。

 なので、まずは、既存の法律を前提に、これをしっかりと適用していくということをやる。他方で、この附則九条に基づいて、まずは、性犯罪に係る事案の実態、これをしっかりと把握しているということで、今、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを設けて、この被害の実情等の把握に努めているところでございます。

井出委員 かつてミスター議員立法と言われた大臣が、ぜひミスター刑法改正の法務大臣になっていただきたいんです。

 児童虐待の問題をとっても、体罰はいかぬ、民法の懲戒権についても議論しようと、この間の自民党の方が立ち上げてくださった超党派の勉強会、ほとんど自民党の方が御参加なんですけれども、自民党の中でも懲戒権が一番のやはり勘違いされている大もとだというような話がありまして、ですから、懲戒、体罰、しつけの分野も、例えば、顔はだめだけれどもお尻とか背中をひっぱたくのはいいとか、物置に閉じ込めるのはいいとか、でも、そういうものはもはや通用しなくなってきた、体罰、子供に手を出すことはいけないということをきっちりと法律化すべきじゃないか、そういう議論だと思います。

 ぜひ性犯罪についても、暴行、脅迫がなければだめというような、少しずつ変わってきていることは私も法務省から伺ってきているんですけれども、法律の検討に値する大きな議論だと思いますので、やっていただきたい。ミスター刑法改正になっていただきたいと思います。なっていただけますか。

山下国務大臣 議員立法やさまざまなところで、井出委員からこれまでずっと御指導いただいてきたところではございます。

 ただ、やはり刑法を考えるに当たっては、先ほども御指摘がありました罪刑法定主義、なかんずくやはり明確性の原則というのがございまして、犯罪になる行為とならない行為の外延、これがはっきりしているのかどうかというところが問題となります。

 今般、強制性交等罪の議論においても、暴行、脅迫のような外形的行為がないときには、被害者の同意を証明することが容易ではない、これは性交に応じるか否かという内心の立証、内心に係るわけですね、この認定というのが難しいという御指摘もあったところでございます。そういった指摘を踏まえて今般の改正ではこういうことだったわけですけれども、なお実態把握に努めて、必要な措置をとってまいりたいと考えております。

井出委員 ミスター刑法改正を目指していただきたいと思います。

 次に、裁判記録のことを最高裁に伺いたいんですが、配付した資料で新聞記事をおつけしているんですが、一枚目、「重要裁判 多数の記録廃棄」。これは、民事訴訟の裁判記録で歴史的なものを永久保存するための制度が最高裁の規程の中にあるんですが、東京地裁ではそういった規程で永久保存されている文書が十一件しかなかったよ、二百七十件は、とってあるんだけれども、ちょっと宙ぶらりんになっていると。

 一枚めくってもらって、見出しですが、歴史への自覚が欠けている。後で記事を読んでいただきたいんですが、裁判所は、目の前の事件判断だけでなく、歴史をつくっている、そういう自覚を持ってもらいたいと有識者のコメントがあります。

 実際、朝日新聞が情報公開請求をしたところ、かつて朝日訴訟という、生活保護制度の改善につながった、生存権の意味を問うた裁判の記録が廃棄、それから、レペタ訴訟といって、裁判所の傍聴でメモがとれなかった実態を改めた裁判の記録も廃棄されたということでございます。

 刑事裁判記録についてはさんざん昨年からやってきまして、上川前大臣の御英断を山下大臣が引き継いでくださって、これもすばらしい結論が出ると私は期待をしているんですが、最高裁に、直近の三年間で、民事裁判の記録、規程によって永久保存すべきとしている記録がどれだけ全国の各地裁にあるのか。

 それと、その永久保存している記録で、これは刑事記録で一部、私の質疑の中で明らかになったんですけれども、廃棄となっているものが刑事の場合、少しありました、そういうことがあるのかないのか、民事について伺いたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 地裁を含めます下級裁判所におきまして、事件記録等が史料又は参考資料となるべきものとして、今委員から御紹介のありました、事件記録等保存規程というものの九条二項で定めております特別保存に付した場合には、これを最高裁に対して報告するように求めております。

 この結果によりますと、二項特別保存に付されました事件記録に関する下級裁から報告のあった事件の件数等ですが、平成二十八年が百五十四件、記録の冊数にしますと二千二十一冊、平成二十九年が件数二百八十一件、記録の冊数では七百十冊、平成三十年は件数十一件、冊数で三百三十冊となってございます。

 これら今申し上げました記録についてでございますが、把握している限り、その後、廃棄されたものはないというふうに承知しております。

井出委員 民事の裁判は毎年十五万件程度新しいものが発生すると聞いておりますし、それは刑事裁判が年間新たに始まるものとは比較が到底できないものだと思います。

 ですから、その数字の評価は控えますが、今回のその記事とこの質問を機に、全国の地裁で特別保存をするべき文書がきちっと、東京地裁のように宙ぶらりんになっているようなものがないか、それから、特別保存する文書、特別保存する、しないを決めるときにもう少し、皆さんからとったら業務文書かもしれないですけれども、国民から、研究家からとったら歴史的な資料ですので、そういう視点で保存をしていってほしいと思います。

 もっと言えば、特別文書に指定すれば、いずれ公文書館に移すということをやってきているんですから、もうぼんぼんぼんぼん特別保存して公文書館に移して、文書の保管はプロに任せて、裁判所の皆さんは裁判に専念していただくという方向でちょっと検討していただけないかなと思うんですが、ちょっとでも前向きな答弁があれば、お願いします。

葉梨委員長 村田総務局長、簡潔に。

村田最高裁判所長官代理者 まず、前提といたしまして、委員の御指摘にありました報道にありますとおり、東京地裁におきまして、宙ぶらりんとの御指摘がございました、特別保存等の判断がされないまま、相当数の事件記録が保存期間満了後も保存されていた。これは事実であると承知しておりまして、規程などでは、保存期間満了後は特別保存に付する場合を除き廃棄しなければならないとされておりますので、特別保存に付すのか廃棄するのかを判断をしないで事実上保存しているというのは、これは規程等に反する状態であったというふうに言わざるを得ないと思います。

 そういう意味で、東京地裁に対しては、規程等に沿って、特別保存に付すべきものはその手続を速やかにとるように、そして、そうでないものは廃棄の処理を進めていくということで指導していきたいというふうに考えております。

 その他の一般的なところをどうすべきなのかというところに関してでございますけれども、この規程の定めにもございますが、学術研究者の皆様方等から事件及び保存の理由を明示してこの二項特別保存の要望があったときには、特別保存に付すかどうかの判断に当たって、その要望を十分に参酌するというふうに定めております。事件記録について史料等となるべきものであるか否かを判断するに当たって、この学術研究者の方々等から寄せられる要望の内容が検討の大きな要素になるということは間違いございません。

 したがいまして、学術研究者の方々、あるいは報道の方々も含めまして、適切に御要望を示していただいて、これを特別保存の判断に生かしていくということは、我々としても大変重要であるというふうに考えております。

 最高裁といたしましては、今後とも、こうした要望等が示されたような場合にこれを十分に参酌した判断がされるように、下級裁に対して指導をしてまいりたいというふうに考えております。

井出委員 丁寧に答弁いただきましたが、中身はこれまでと一歩も変わっていないと思いますので、この記事と、質問をさせていただいているということを受けとめて、善処していただければと思います。

 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮崎政久君。

宮崎委員 自由民主党の宮崎政久です。

 昨年十一月に国会に戻ってまいりました。改めてこの法務委員会にも戻ってまいりましたので、委員長を始め与野党全ての理事、委員の先生方、ここでは法務に関する分野で議論をして、国政にまた改めて微力を尽くしてまいりたいと思っております。どうぞ先生方、よろしくお願いいたします。

 浪人をしておりました十三カ月間、改めて地元、ふるさと沖縄で毎日歩いて回りまして、地域の皆さんの声を聞いて、私自身、みずからには政治に取り組む初心を強く問いかけて過ごしてまいりました。そこで、きょうは、通常国会がスタートいたしまして法務委員会の始まりでありますので、私にとっては政治を志す原点となっております、自分の初心であります更生保護、また再犯防止について最初にお尋ねをしたいと思います。

 この再犯防止につきましては、先ほども言及がございましたが、山下貴司法務大臣が超党派で再犯防止を進める議員連盟の事務局長として尽力をされたその成果として、再犯防止推進法が制定され、今、再犯防止推進計画に基づく手続が進められております。

 私は地元で更生保護に携わっているんですけれども、やはり一番重要なのは、仕事と住む場所の確保だというふうに今でも思っております。

 仕事につこうとすると、あなた、どこに住んでいるのというふうに聞かれるわけです。ではということで、住居からだと考えてアパートを借りに行こうとすると、あなた、どこで仕事をしているのというふうに聞かれて、言ってみると、人生のたらい回しみたいな状態になってしまうことが、刑務所出所者、また少年院を出た子の中には、そういう子もいるわけであります。

 そこで、私は、実は地元では、少年院を出る子や刑務所を出所する人の住居を借りる、政治の世界に入る前には、保証人になって、何とか住居を確保してあげたということもありました。また、今では、仕事をさせてもらいながら、住み込みで最初仕事ができるようにと、これは今、協力雇用主さんでありますけれども、友人などをたどって、毎年数社、協力雇用主を県内でふやしていくという活動をまだ今も続けております。

 そもそも私が更生保護にかかわろうと思ったきっかけは、政治に入る前、弁護士として仕事をしている中で、比較的高齢の刑務所出所者の方で、家族や身寄りもなくて住む場所もないということから、手持ちのお金がなくなっちゃった、寒くなってきたからという理由で、刑務所に戻りたいといって、無銭飲食であるとか窃盗などをして、再犯、累犯という形で刑事事件になる、そういった方の刑事弁護を何度か経験をしたことがあります。こういった案件は本当にやるせない気持ちになります。

 そして、こういった案件は、その一件一件を弁護するだけではどうにもならない面があるわけですね。刑事政策だけではなくて、社会政策として何か具体的に行動して手を差し伸べることができないかなというふうに思ったものですから、更生保護に自分でかかわろうと思いましたし、また、最終的には、更生保護だけでは乗り越えるべき壁が余りにも高過ぎるということで、私は、やはりこれは政治の場で、誰もが志を立てて立ち直ろうと思えば立ち直れるこの国にしたい、根っから悪人はいないというのが私の信念でありまして、一度間違いを犯しても見捨てられることがない、ともに生きていくことができる社会を目指したいと思ったのが私の政治を志す原点でありました。

 こういったときに、出所後の就労というのを考えた場合の課題で、やはり高齢化というのは非常に大きな課題です。誰もが高齢になると、仕事をするのが非常に難しくなってまいります。それは事件などに接したかどうかということにかかわりなく、人は年を重ねれば、体が自由がきかなくなる部分がどうしても出てくるわけであります。みずからの体が動かなくなってきてしまうことを認識している、社会も、やはりお年寄りだからなということで雇用にちゅうちょをしてしまう、こういう場面が、当然、十分に検討されていかなければいけない大きな課題です。

 そこで、現在行われている再犯防止対策の中で、特に、罪を犯した、そして出所をされる方の高齢化に対してどういう対策を考えているのか。現在の取組と将来の見通しについてもお聞かせいただきたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 委員におかれましては、沖縄県更生保護協会の理事長として、住居や就労の確保といった再犯防止の取組の基盤を支えていただいております。また、委員が活動されている沖縄弁護士会、この会におかれては、罪を犯した人の弁護に加え、釈放後の住居確保にも取り組んでいただいていると伺っており、改めてお礼申し上げます。

 そして、委員はそのようなさまざまな御経験を踏まえて、先ほど御指摘のあった再犯防止推進法、これは、議員立法で、超党派で制定する原動力のお一人として、ともにこの成立に至ったというところで、まさに、そういう視点からの高齢者に関する再犯防止でございます。

 罪を犯した高齢者の再犯防止については、再犯防止推進計画においても盛り込まれており、これは委員の御指摘もあったわけでございますが、法務省としても重要な課題であると認識しておるところでございます。

 高齢受刑者の人員及び割合は、ともに上昇しております。罪を犯した高齢者の再犯防止に当たっては、罪を償った後は、これはもう当然、自由刑が終わるわけですけれども、終わった後、適当な帰住先がない、そして自立が困難だというところで、住居の確保等が重要な課題でございます。

 そこで、法務省としては厚生労働省と連携して取組を進めており、例えば、具体的には、刑務所を出所後、速やかに福祉施設への入所等の福祉サービスが受けられるよう、矯正施設、保護観察所に加え、地域生活定着支援センター等の関係機関が連携して特別な調整を行っております。

 この取組の結果、平成二十九年度の数値でございますが、釈放まで調整を行った七百二十一人のうち、その九割を超える六百五十二人が福祉施設等に入所し、必要な福祉サービスを受けていると承知しております。

 今後も、この再犯防止推進計画にもありますが、関係機関との連携を一層強化して、こうした施策を始めとして、罪を犯した高齢者の再犯防止対策にしっかりと取り組んでまいりたいと思いますので、委員の御指導、よろしくお願い申し上げます。

宮崎委員 山下大臣、ありがとうございました。

 更生保護の分野は、保護司の先生方を先頭として、更生保護女性会の皆さん、そして、若いBBSの皆さん、多くの民間の皆さんの力をかりています。もちろん、先ほど触れた、協力雇用主になってくださる事業者の皆さんにも大きな力をかりています。

 しかし、高齢化をしていく社会の中で、罪を犯して出てきた方の対応、高齢化対応というのは、民間ではやはりなかなか難しいんです。これこそ、やはり政治が、行政が、公が手を差し伸べて解決をするべき課題でありますし、また、この国の今と将来に向けて政治が取り組んで解決すべき課題の典型の一つだと思っておりますので、今大臣からお話がありましたとおり、また、法務省の皆さんにもぜひ力を入れて取り組んでいただきたい分野であると思っております。

 次に、以前からちょっと疑問に思っていた別の課題、定員法についてお伺いしたいと思っています。裁判所職員定員法であります。

 毎年、通常国会では、この法務委員会の冒頭に、裁判所の定員に関する法律案、名前は、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案が審議をされます。今国会でも政府から法案提出されておりますので、この法務委員会で十分審議をして、可決をしてまいりたいと思っているところであります。

 しかし、ほかの省庁について、このように毎年法律改正の形で定員を審査して決定しているというところはありません。ほかの霞が関の官庁における公務員の定員の定めと異なって、裁判所だけ法律改正の形で毎年やる必要が本当にあるのかというのが私の疑問としている点であります。

 ほかの省庁はどうしているのかというと、国の行政機関の職員の定員については、昭和四十四年に制定をされました行政機関の職員の定員に関する法律という法律があります。この法律に、内閣における常勤の職員の最高限度が定められていまして、最終の改正では平成二十六年でありまして、これにより定員の総数は三十三万一千九百八十四人とされています。

 そして、内閣府、総務省、法務省を始め各行政機関の定員が、行政機関職員定員令という政令で、定員数、つまり各省庁の職員数の上限が決まっていて、その年の具体的な定員の数は各省庁の定員規則、例えば法務省であれば法務省定員規則によって定められていて、毎年機動的に規則を改正して対応するという形をとっているわけであります。

 このタイトルからもわかりますが、行政機関と書いてあります。行政機関の職員の定員に関する法律には、裁判所は入っておりません。それゆえ、裁判所職員定員法という法律で、裁判官の数、裁判官以外の職員の数を定めているので、毎年の法改正が必要になっている、こういうたてつけであります。

 まず、行政機関の職員の定員に関する法律で総定員を定めて、毎年の定員数は規則に委ねている趣旨、そして、この法律が昭和四十四年に制定された際、また今日に至るまで、裁判所の職員がこれに含まれていない理由について御説明ください。

長屋政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和四十四年に制定されました行政機関の職員の定員に関する法律、いわゆる総定員法でございますけれども、それまでは各省庁ごとの設置法で定員を定める、こういう形式を改めまして、各省庁を通じた総定員の上限を法定しまして、その範囲内で各省庁ごとの定員を政令で定める、こういう形式に改めたものでございます。

 制定の趣旨、目的につきましては主に二点ございまして、一点目は、各行政機関の職員の定員の総数の最高限度を法定するということで、行政機関の膨張を抑制する、二点目が、各省庁ごとの定員は政令で定め、さらに、省庁内の本省、外局別などの定員は各省庁の規則で定める、こういうことにすることで、行政需要の変化に対応した弾力的、機動的な定員配置を可能とする、こういったものでございます。

 また、総定員法につきましては、法律の名称にあるとおり、国の行政機関の職員を対象としたものでございますが、これは、三権分立の観点から、国会の職員あるいは裁判所の職員についてはその対象にはしていないということでございます。

宮崎委員 毎年、この通常国会で、先ほど指摘したとおり、裁判所の定員に関する法律が上がるわけでありますが、この改正法では、事件の適正かつ迅速な処理を図るためというのを理由として、員数の変更という形で法案が上がってまいります。

 しかし、法改正や事件動向で変化する司法需要に柔軟に対応して、職員の数について計画的、弾力的に運用するためには、行政機関の職員の定員と同じように定める方が効果的ではないかなというふうに私は考えております。

 例えば、この法律を所管している法務省として、例えばですけれども、裁判所法若しくは裁判所職員定員法で下級裁判所の裁判官の員数、裁判官以外の裁判所の職員の員数の上限を定めて、毎年具体的な定員数は、例えば最高裁規則に委ねて、機動的、弾力的にこれを対応していくということは検討できないものかどうか。法務省、見解、いかがでしょうか。

西山政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、行政機関職員定員法と同様に、裁判所職員についても、法律では定員数の最高限度数を定め、具体的な定員数の定めは最高裁判所規則等に委任するといった立法形式をとるとすると、定員の計画的、弾力的な運用や機動的な対応、これが可能になるといった長所が認められるところではございます。

 他方、このような立法形式を導入し、定員数の最高限度数を定めるに当たっては、ある程度中長期的な事件動向等を予測し、必要となる人的体制の見通しを立てることが必要になるものと考えられ、そうしたことの可否を含め、まずは裁判所において検討がなされるべきものと考えております。

 また、事件の適正迅速な処理を図るためには、事件動向を踏まえた人的体制の充実のほか、実務上の運用改善や手続法などの制度改正を含めた総合的な取組が必要である、そういったことから、そうした取組を踏まえた裁判所の人的体制の整備の必要性について、裁判所職員定員法の改正案の審議に際しまして国会で御審議いただくことにも意義があるものであると考えております。

 委員御指摘のような立法形式を導入するためには、以上申し上げた点を含めまして、さまざまな観点から検討を行うことが必要であると考えております。

宮崎委員 最高裁は、こういう総定員法のような立法形式で毎年機動的に必要な人員体制を、他の行政官庁と同じように、例えば規則などに委ねるという方式をとることについて、何か見解があれば教えてください。

村田最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。

 委員御指摘の総定員法のような立法形式をとろうという場合におきまして、法改正や事件動向等の中長期的な予測を行って必要な人的体制の見通しを立てることが必要になるというのは、これは今、法務省から御答弁があったとおりでございまして、裁判所の行うその業務の量はそうした事件動向等に大きく左右されるものでございますので、この見通し、予測というのはなかなか、かなりの困難を伴うということはあるところでございます。

 他方、裁判官以外の職員の定員につきましては、近年は一貫して定員数を減少させる改正をお願いしているというような現状もございまして、こういったところも含めまして、委員御指摘のいわゆる総定員法という立法形式を導入する場合に、その前提となります中長期的な事件動向等の予測、そして必要となる人的体制の見通しにつきまして、裁判所としてそういう見通しを立てることができるのかできないのか、その可否を含めまして、必要な検討をしてまいりたいというふうに考えております。

宮崎委員 ありがとうございました。

 私は、この問題は、限られた人的資源を有効に活用する、例えば国会の審議のあり方一つとってみても、そういうことも考えられていいのではないかという視点で質問を投げかけたものであります。

 他の霞が関の行政官庁においても、その時々の社会状況の変化、そして、この国が担うべき役割、また目指すべき方向性、いわゆる中長期的な見通しに基づいて、その各省庁がどういった人員構成によってこの国を担っていくかということを考えて、そこに必要な職員の方を充てて行政運営に携わっているというところはあります。

 私は、事件動向なども含めて、本質においては変わるところはないというふうに思っています。もちろん、裁判や司法に伴う、それ特有の事象というのはあることはよく承知をしています。しかし、それを言い始めると、例えば農林問題であるとか、例えばさまざまな、国土交通の分野、それぞれのいろいろなところについての事情があるということも一つ事実であります。

 定員配置を弾力的、機動的に行うという観点から、いろいろな考えをタブーなく、していくことは必要だというふうに思っておりまして、こういった考え方もまたこれから議論してまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、司法外交の推進についてお尋ねをしたいと思います。

 我が国が国際社会において確たる地位を持っていくためには、国益の増進を図ることはもちろんのこと、世界の平和と安定に我が国が積極的に貢献をしていくということが大切なことは改めて申すまでもありません。そのためには、法の支配の貫徹や、多様性や寛容性を持った安全、安心な社会であるとか、持続可能な社会の構築、そういったものを、日本が国際社会に対して訴えていく。そこには、日本のソフトパワーであります司法制度であるとか法を遵守していく文化、こういったものを積極的に発信をして、各国に浸透を図っていくように努めるということも我が国の重要な役割だと思っております。これが司法外交の一つの姿ではないかなと思っているところであります。

 これは、自由民主党の中でも、この点、平成二十九年六月の司法制度調査会の提言の中で、「司法外交の新基軸 五つの方針と八つの戦略」ということで明言をさせていただきました。当時、上川陽子司法制度調査会長のもとでこの提言をまとめさせていただきまして、私、事務局の方でお手伝いさせていただいたものであります。

 この中で、目指すべき方針といたしまして、まず、一番として、国の施策に司法外交を明確に位置づける、そして、二〇二〇年を司法外交元年と位置づけ、ちょうど平成二十九年からそれまでの三年間を準備期間として、第一に、推進力となる司令塔の組織を新設するということで取り組んでいこうというふうにいたしました。そして、司法外交の最大の舞台としてコングレス二〇二〇を位置づけて、効果的な情報発信を図る、こういった形で方針をまとめさせていただいたのが平成二十九年の六月であります。

 そこで、政府の取組についてお尋ねをしたいと思います。

 改めてでありますけれども、山下大臣が所信に示されている司法外交というものが目指すべき姿、我が国にとってのこれからの視座はどういったものをお考えでいらっしゃるのか、御説明いただきたいと思います。

山下国務大臣 まさに司法外交は、当時、自民党の司法制度調査会会長でありました上川陽子前大臣とともに、事務局長でおられた宮崎委員、まさに司法外交の生みの親の一人と言っても過言ではない、そういったことで、これは骨太の方針にも明記されて、それをしっかり受けとめて、法務省としては最重要課題の一つとして取り組んできたところでございます。

 具体的な取組としては、所信でも一部申し上げましたが、まず第一に、法制度整備支援等に関する国際協力。これはアジア各国を中心に相当なソフトパワーになっております。我が国の専門家のアドバイスにより、寄り添い型の法整備ができておる、そのことに対して非常に感謝いただいているということ。

 そして二つ目に、訟務機能の充実による予防司法機能。この中には国際訴訟の対応力の強化等も含みます。これが我が国の、例えば海外にある企業の安心感にもつながっていくんだろう。

 そして三つ目に、国際仲裁。これは、国際的な商取引において、解決のための中心的な役割を果たしている国際仲裁、これを我が国においても活性化しようじゃないかということ。これを国際社会と協力連携していこうということを強化しております。

 そして第四に、これは特に刑事司法分野ではあるんですが、犯罪防止分野ではあるんですが、国連のこの分野最大の会議でありますコングレス、これを来年四月に京都で開く、それで、日本の法支配の文化、あるいは安全、安心な社会状況、これを各国の代表にも体感していただく。そうしたことを含めて、ソフトパワーとしての日本の力、これを国際社会にも法の支配の共有として実施していくということを今後ともしっかりとやってまいりたいと思います。

 そうした司法外交について、今後とも、誰一人取り残さない社会の実現、あるいは持続性などの視点を持ちつつ、各国とともに実現する、その中心の国の一つとなれるよう、法務省としても全力で取り組んでまいります。

宮崎委員 大臣、ありがとうございました。

 今、国際仲裁についての言及もありました。衆議院を通過して、今、参議院で、予算委員会で御審議をいただいている平成三十一年度の予算の中にも、国際仲裁に関連する予算を大きく盛り込んでいただいているところであります。

 そして、コングレスでありますけれども、来年、二〇二〇年には、いよいよ京都の地で開催となるわけでありまして、司法外交元年にふさわしいものに仕立て上げていかなければいけないというふうに思っております。

 コングレスは、これまで我が国が展開をしてきた法の支配を中心とした司法外交を日本国内でアピールをして、また、世界の方々に、日本が世界一安全、安心な国であることを体感してもらう絶好の機会であると考えております。

 コングレスの開催に向けた現在の準備状況、所信の中では、準備を加速するというふうに大臣は述べられておられますけれども、準備状況についての御説明をお願いします。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 京都コングレスにつきましては、犯罪防止、刑事司法分野における国連の指針となります政治宣言というのが採択されることになります。

 日本国といたしましては、ホスト国として、この政治宣言を取りまとめる役割を担うことになるかと思います。そのため、本年の一月から世界各地で地域準備会合というのが開催されておりまして、ホスト国としてこれに参加し、協議に参加しているという形がまず一点でございます。

 また、先ほど委員御指摘のとおり、京都コングレスの会議に参加していただく皆様に、世界じゅうの皆様に、我が国の安全、安心な社会、これを体感していただく絶好の機会でありますので、コングレスにおいても、安全で安心して暮らせる社会を実現するための、先ほど話題になっておりました、再犯防止への取組とか、あるいはこれを支える法遵守の文化、これを世界に発信する、そのための一つの手段といたしまして、例えば、パネルディスカッションの形式などでサイドイベントを設ける、こういったものの準備も進めているところでございます。

 また、我が国の最先端のセキュリティーなど、そういった技術もコングレスの場において展示をする、そういったもののためには経済界にも働きかけを行っているような準備も行っております。

 また、再犯防止あるいは法遵守の文化など、コングレスの議題にもなっておりますので、これに関連した公開シンポジウム、この開催準備を進めることによって国民的な関心を京都コングレスにも寄せてもらいたいというふうにも考えて、その準備も進めているところであります。

 また、若者についても、やはり何らかの参加をしていただきたいと思っておりまして、ユースフォーラムというのを企画して開催する準備も、これもまた進めているところでございまして、こういった将来を担う若者が犯罪防止、刑事司法の分野について関心を寄せていただいて、これを話し合う機会を提供していきたいと思っている次第でございます。

宮崎委員 ありがとうございました。

 司法外交元年でありますので、スタートでありますので、これをレガシーとして次につなげていくためには、今御説明あった、コングレスをしっかりと形づくることが必要なんですが、そのためには、残されたこの一年の準備が全てを決するということでありますので、どうぞ、この準備に、大臣を先頭に力を尽くしていただきたいと思っております。

 また、その過程の中で、ここに多くの人がかかわっていただきたいと思っております。法務省の中で、この分野にかかわる職員の方を一人でもふやしてもらいたい。海外に出張するんだったら、何人でもどんどん一緒に行って、どんどん体験もしてもらうとかということによって、議員も、国民の皆さんも頑張りますけれども、法務省の皆さんも一緒になって先頭を切って頑張ってもらいたい、エールを送りたいと思っております。

 次に、法曹養成についてお尋ねをいたします。

 山下大臣の所信では、より多数の有為な人材が法曹を志望することとなるようにということで、法科大学院改革を踏まえた司法試験制度の見直しを行うなどの取組を積極的に進めるというふうに所信で述べられております。

 私も同じ思いでありますが、現実は非常に厳しい。しかも、この大臣の所信に明確にあらわれているように、多くの人が志望することとなるようにしないといけない状況になっているのが、今のこの現状なわけであります。法曹志願者が激減してしまっているという現実があるわけです。

 法科大学院の志願者は、平成十六年度は七万二千八百名であったところが、平成三十年度は八千五十八人であります。司法試験の受験者自体も減少の一途でありまして、平成三十年は、何と、五千二百三十八人しか受けていないというような試験になってしまっているということであります。

 これには、もちろん、幾つかの要因が複合的に影響していることは事実です。

 例えば、将来の夢みたいなところでいうと、私はよく弁護士貧乏キャンペーンというふうに言うんですけれども、弁護士になっても余りいいことないぞというようなキャンペーンを、日弁連さんなどを中心に大分やり過ぎたというふうに思っております。弁護士になっても仕事がないとか、資格を取ってもOJTもままならないとか、こういうようなことを、困難が多いということを言い過ぎたことがいろいろな意味で広がっていっちゃったというようなことはあると思います。職業領域の拡大が広がらなかったというようなこともあると思います。

 それと同じく、法曹になるための制度としても、時間的にも経済的にも負担がかかり過ぎるような制度であることへの改善がなかったということも大きな問題だったと思います。つまり、制度として、大学生を四年間やって、その後、法科大学院を二年ないし三年やって、法科大を卒業した後でなければ試験も受けることができなくて、もちろん司法試験に合格するか否かの保証はなくて、その後に司法修習を約一年やって、そうしたら初めて法曹としてのスタートが切れますよという制度として提示をしたわけです。

 つまり、高校を卒業して法曹の道を目指そうとしても、その高校三年生が、私が法曹としてのスタートを切れるのは最短でも八年後だなというふうに思う制度として提示をしてしまったことが、時間的また経済的な負担感として広く社会に広がっていったことは事実でありますし、余りにも、若い人たちにとっては道が遠過ぎたというふうに思います。

 社会が若者に示す将来像として、夢のあるような形で司法であるとか法曹というものを示していく必要があると思います。そのための一つの、これはベストとか唯一じゃなくて、一つの方法として、法曹になれるまでの期間を短くして、こういう短い期間の中で法曹としてあなたの力を発揮していただくことができますよということを示すことは、大人として大切なことだと私は思います。これは、特別優秀な人をつかまえて、スキップするためのトンネルをつくってあげるということではなくて、やはり、今の我々大人が若い人たちに対して、努力を重ねてくれたら、あなたを三権の一翼を担う司法分野の法曹として迎え入れたいから、これだけの期間で入ってもらえるようにするので、どうか頑張ってほしいというようなメッセージをつくることは大変大切なことだと思います。

 平成二十七年六月に出された法曹養成制度改革推進会議決定で示された法科大学院の集中改革期間は平成三十年度まで、つまり今月末までであります。文部科学省と連携しながらでありますけれども、法務省の現在の取組を御説明いただきたいと思います。

西山政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、法曹志望者が激減しておりまして、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の理念を維持しつつ質の高い法曹を多数輩出していく環境を整備することは、まさに喫緊の課題であると認識しております。

 委員も御指摘ございました平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定では、法曹志望者数の回復に向けて、平成三十年度までを法科大学院の集中改革期間として法科大学院改革を進めるとともに、法曹有資格者の活動領域の拡大、司法試験のあり方の検討等の取組を進めるとされたところでございます。法務省としても、関係機関と連携しつつ、法曹有資格者の活動領域の拡大に向けた取組などを進めてきたところでございます。

 そのような取組に関連しまして、昨年七月の与党文科、法務合同部会において、法曹志望者の経済的、時間的負担のさらなる軽減を図るための方策として、教育内容の充実や学部三年修了時に法科大学院に進学できる仕組みの明確化等を内容とする法科大学院改革、これを前提として、法科大学院在学中の受験の実現を含む司法試験制度の見直しを早期に行うべきとの指摘がなされたところでございます。

 この点について、法務省としましては、法科大学院に関する集中改革の取組を進める文部科学省と連携しつつ、今国会への法案提出に向けて、必要な準備を進めているところでございます。

 法曹志望者の激減はまさに喫緊の課題であるという認識のもと、引き続き、スピード感を持ってしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

宮崎委員 ありがとうございます。

 今、最後にありましたスピード感を持って取り組んでいただくことが非常に重要でありまして、必ず法案を提出して、しっかりとした法曹養成の姿を、国民の皆様、特に若い人たちに対して、制度として示していかなければいけません。このままでは三権の一翼を担う司法の担い手がいなくなってしまう、それぐらいの危機感を持っている状況でありますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 次に、最後のテーマになりますけれども、新たな外国人材の受入れについてお尋ねをしたいと思います。

 入管法の改正を受けて、新たな外国人材の受入れのための特定技能の在留資格制度が本年四月の一日から開始をされます。一昨日の読売新聞でも、「入管 「支援機関」の相談スタート」という見出しで、法務省が、外国人材を雇う際の企業負担を軽減する登録支援機関に関して、事前相談を三月一日から開始したと報道されておりました。四月一日の制度開始に向けて、準備は着々と進めていただいているということが報道でも伝わっておるわけであります。

 新たな制度の開始によって、外国人材の受入れ数は増加することが予想されますので、大臣所信でも述べられておりましたとおり、外国人材の受入れ数の増加に伴って、外国人材との共生社会のさらなる実現が必要となって、対策が必要となります。ちょっとこの点で一点、まず、技能実習制度との関連で一点、確認、質問したいと思います。

 昨年の臨時国会では、現行の技能実習制度に関する問題点、特に悪質な技能実習実施者や監理団体の存在が指摘をされたわけです。技能実習制度は、新たな在留資格制度の開始以降も引き続き存続することになって、技能実習制度での実習実施者が引き続き特定技能所属機関になるとか、技能実習での監理団体が特定技能での登録支援機関になることが想定をされているわけであります。

 そうすると、既存の実習実施者や監理団体に問題がある場合に、特定技能において指導監督に当たる出入国管理庁であるとか関係機関では、情報共有がしっかりされていないと、ステージを変えてまた同じ問題が発生するということにもなりかねないわけであります。

 そこで、既存の実習実施者や監理団体に関する情報が、特定技能において指導監督に当たる出入国管理庁関係部署、関係省庁においてしっかりと情報が共有されるのか、また、問題のある監理団体などが登録支援機関になろうとしてきたときにはどういう措置がとられるとしているのか、お答えください。

佐々木政府参考人 技能実習法の規定によりまして実習計画の認定を取り消された者や、出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不正な行為をした機関につきまして、特定技能所属機関の基準を満たさないこととなるほか、登録支援機関の登録拒否事由に該当をすることになります。

 したがいまして、技能実習制度における実習実施者や監理団体に関する情報は、特定技能制度の適正な運用を図るために必要な情報でありますことから、当然のことながら、出入国在留管理庁内の関係部局で共有をいたします。また、関係省庁との情報共有についても、情報共有の必要性と個人情報保護の必要性等を考慮しつつ、適切に対応をいたします。

 さらに、問題のある監理団体が登録支援機関となろうとする場合の措置でございますけれども、改正入管法においては、登録拒否事由に該当する場合は、登録支援機関としての登録を受けられないことが規定をされています。

 そのため、技能実習制度において問題があった監理団体、例えば相談対応を怠ったがために技能実習生の行方不明者を発生させたり、技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行うなどした監理団体につきましては、登録拒否事由に該当し、出入国在留管理庁は、登録支援機関としての登録を拒否をいたします。

 これらの仕組みによりまして、技能実習制度において問題があった実習実施者や監理団体が特定技能制度に関与することを防ぎ、制度の適正な運用を図ってまいります。

宮崎委員 ありがとうございました。

 そろそろ時間でありますので、もう一点だけ。

 総合的対応策の基本的な考え方のところにこういった一文があるんですね。環境整備に当たっては、受け入れる側の日本人が共生社会の実現について理解し協力するよう努めるだけではなくて、受け入れられる側の外国人もまた、共生の理念を理解し、日本の風土、文化を理解するよう努めていくことが重要であることを銘記されなければならないとなっています。

 さっと入っている一文でありますけれども、これはやはり、目のつけ方としては非常に重要だと思っております。私たちの国が、労働力不足から新たな制度をつくっていくわけでありますけれども、逆の立場で考えていくと、例えば、郷に入っては郷に従えというようなことも含めて、地域でともに社会をつくっていく人たちに、そういう思いを共有してくれということにもなっていくかと思います。

 これは、施策の中でどういうふうな方向で落とし込んでいくのか、少し簡潔に御説明いただければと思います。

佐々木政府参考人 総合的対応策におけるそれぞれの施策は、今御指摘の基本的な考え方を踏まえたものとなっていると認識しています。

 御指摘の点につきまして、対応策、施策の中で、例えば、仮称ですけれども、多文化共生総合相談ワンストップセンターの設置の支援を行うことを盛り込んでありますが、その場を地域との交流の場として活用することによって、我が国の風土、文化の理解の促進をするということが考えられます。

 また、もう一つ、安全、安心な生活、就労のために必要な基礎的情報を盛り込んだ政府横断的な生活、就労ガイドブックをつくることを挙げてありますけれども、そのガイドブックの中に、我が国の文化、生活習慣等の理解の促進に資する内容を入れてまいります。

 これらの施策を通じまして、受け入れる側の日本人と受け入れられる側の外国人、お互いに尊重しつつ、安心して安全に暮らせる社会の実現を図ってまいります。

宮崎委員 ありがとうございました。

 これからも、タブーなく、しっかり議論してまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で宮崎政久君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 山下大臣、私が最後のバッターでございますので、お疲れだと思いますが、よろしくお願いいたします。

 まず、山下大臣とともに私も一緒に策定に深く関与しました議員立法として、再犯防止推進法というものがございます。この法律に基づきまして、平成二十九年十二月には再犯防止推進計画が策定をされまして、再犯防止の強化に向けてさまざまな対策がとられてきたことを高く評価をまずしたいと思います。

 いよいよ東京オリンピック・パラリンピックも来年ということで、目前に迫る中、世界一安全な国日本の確立のために、山下法務大臣には、大胆なリーダーシップを発揮してもらいたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 私も、今は公明党の法務部会長ではないんですけれども、党内にあります再犯防止プロジェクトチームの座長としての立場は持っておりますので、法務省をしっかり応援をしていきたいと思っております。

 そこでまず、二つ、これに関して質問したいと思います。

 一問目は、大臣と私で議員立法をつくる作業をしているときに、保護司の皆様からのヒアリングもあったかと思いますが、その中で、保護司の皆さん、全国におられるわけですけれども、やはりその活動拠点がなかなか整備されていないという話があって、その活動拠点、今は法務省の資料を見ると更生保護サポートセンターと呼ばれているようでございますが、そういうセンターをつくるのに地元の地方公共団体の協力をお願いしたところ、非常に協力的なところと、適切な表現かどうかわかりませんが、ほとんど門前払いみたいな、保護司の活動なんて関係ないよと言わんばかりの自治体があるというようなお話があったかと思います。

 私も当時、あえて具体的な自治体名はここでは挙げませんけれども、しかし、当時は具体的な市役所の名前とか区役所の名前が挙がりまして、全然協力してくれない、我々、びっくりした記憶があるんですね。

 そこで、これはもう山下大臣のもとに改善をされていると思いますが、法務省として、保護司さんの活動、またそれに対する地方公共団体の協力を得るためにどういう取組をされてきたのか、またされているのか、そして、どういう成果がこの再犯防止推進計画をつくった二、三年前から上がってきているのか、お答えをいただければと思います。

山下国務大臣 遠山委員におかれましては、超党派議連におきまして本当に御指導を賜りまして、御指導いただきながら再犯防止推進法制定に向けて努力した日々を、きょうは本当に懐かしく思い出しているところでございます。また、委員の御指導もありまして、この保護司の活動について、地方公共団体からの協力を得られるようにするための取組も強化しているところでございます。

 もともと、平成二十六年、二十七年には、法務省と総務省の連名による協力依頼文書を地方公共団体の長宛てに発出して、地方公共団体所管の施設における更生保護サポートセンターの設置や保護司候補者に関する情報提供等、保護司活動に対する理解と協力を求めてきたところでございます。

 そして、御紹介いただきました再犯防止推進法に基づいて、地方公共団体は再犯防止施策を策定し、実施する責務を有する旨規定を、委員の強い御指導がありまして、盛り込んだところでございます。

 この成果もありまして、地方公共団体からの協力を得るための働きかけを強化した結果、保護司活動の拠点である更生保護サポートセンターについては、平成二十九年度までに設置されたうちの約八割が地方公共団体所管の施設内に設置されているところでございます。

 一方で、いまだ地方公共団体からの協力が十分得られず、民間施設等に設置されているサポートセンター、これは協力が得られないだけではなくて、利便性も考えてというところではございますけれども、そういった現状にあるということで、再犯防止推進計画に基づいて、全国八百八十ある区域に更生保護サポートセンターを設置する、その段階に至りましても、更に地方公共団体の協力もいただきながらやっていこうというふうに考えております。

遠山委員 ぜひよろしくお願いします。

 ちなみに、全国の保護司会の数は八百八十六カ所ということでございますので、この八百八十六の保護司会のところにしっかりとサポートセンターをつくっていただいて、一番我々の国民生活に近いところで再犯防止等に、また青少年の更生等に頑張っておられる方々ですので、しっかりお願いをしたいと思います。

 次に、協力雇用主についてもお伺いをしたいと思います。

 私も、当委員会で、谷垣法務大臣のころから、この協力雇用主の重要性についてずっと言ってきたつもりでございます。やはり、元受刑者の方々が、刑務所を出所して再犯にまた走る方々のほとんどが、住まいがない、仕事がない、雇用がない、こういう共通項があって、この協力雇用主というのは、まさにそういう元受刑者の方々に雇用を提供する会社として登録をいただいているわけでございます。

 谷垣大臣のころは一万ちょっと超えるぐらいだったものが、最新のデータを見させていただきますと、協力雇用主として登録している全国の企業の数は二万七百四社ということで、着実にふえております。

 他方で、登録はしているんだけれども、実際に元受刑者を雇用している企業の数の伸びが鈍いと言わざるを得ないわけでございまして、最新のデータでは八百八十七社、つまり、割合でいうと四・二%しかないということでございます。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですが、まさに日本全体では今人手不足だ、だからこそ、外国人材の受入れ拡大の法案も成立をさせたわけでありますけれども、この再犯防止推進のためにも、元受刑者の雇用拡大というのを図る上において、この人手不足という労働環境は、ある意味、元受刑者の雇用拡大を推進しやすい環境にあると言ってもいいわけでありまして、この推進方について法務大臣の御決意を、所信の質疑ですから、お伺いをしたいと思います。

山下国務大臣 この協力雇用主がいかに大切であるかということも、私、遠山委員から教えていただいたと記憶しております。

 御指摘のとおり、協力雇用主、実際に雇用してくださる方をふやす、これは非常に大事なことでございます。法務省では、これまでも、刑務所出所者等を雇用し指導に当たる協力雇用主に対して年間最大七十二万円を支給する刑務所出所者等就労奨励金制度を導入し、効果的に活用するなどしながら、協力雇用主の不安と負担の軽減に努め、協力雇用主による雇用の拡大を図ってきたところでございます。

 また、再犯防止推進計画を踏まえて、本年度、協力雇用主に対するアンケート調査を実施して、現在その結果を取りまとめ中でございますが、そういったことも踏まえて、協力雇用主のニーズを踏まえた支援策の充実策に取り組み、協力雇用主による雇用の一層の拡大を図ってまいりたいと思います。

 協力雇用主につきましては、先般、褒章を受けられた方も出たというところでございまして、その意義についてまた社会的に周知していただくということでもございますし、一月から三月までは就労支援強化月間ということで、法務省としては、雇用実績のない協力雇用主に対して重点的に求人提出の働きかけを行うなどの就労支援の強化や、刑務所出所者等を雇用することの社会的意義に関する理解を深めていただくための広報啓発活動を集中的に実施する取組を始めているところでございます。

 その一環として、法務大臣である私みずからが、日本商工会議所などの主要な経済団体のトップに直接お会いして、先ほど申し上げたような協力雇用主の取組、これが実は余り周知されていない部分もあるんですね。そういった刑務所出所者等の就労支援について、改めて経済界の皆様に御理解と御協力をお願いする。

 そういった中で、では、全国の商工会議所にそのチラシを置こうじゃないかというふうなありがたいお話も承ったところでございまして、そうした中で、施策についてしっかりと周知徹底に努めて、雇用主の皆様の不安感もあるわけですから、そういったところを払拭していく努力を力強く、委員の御指導も賜りながらやっていきたいと考えております。

遠山委員 ぜひお願いいたします。

 上川前法務大臣の時代だったかと思いますが、法務省として二〇二〇年までに実雇用している会社を千五百程度にするという具体的な数値目標がありまして、来年でございますので、今八百八十ですから、約倍にすると達成ということでございますので、ぜひ来年に向けて頑張っていただきたいと思います。

 さて、時間もなくなってきたので簡潔にお聞きをしたいと思いますが、難民認定において、第一次認定で難民認定されなかった方々が、不服申立てというか再審査請求というか、そういう形で請求をしたときに、より公平、行政から少し独立した立場で難民該当性を判断していただく方々、難民審査参与員制度というものがあります。

 実はこれは、私が今から十年以上前に、参議院の法務委員会の委員長をする前に、当時の入管局長に強く公明党の立場で改革を提言して、それだけが理由じゃありませんけれども、私どもの提言も受け入れる形で創設された制度でございます。

 ところが、最近になりまして、この難民審査参与員の資質を厳しく問う声が強くなってきておりまして、私も創設にかかわったものですから、困惑をしております。

 具体的に言うと、二〇一七年、二年前の九月に、全国難民弁護団連絡会議という団体が当時の法務大臣宛てに、難民審査参与員の問題発言・行動に対する申入書という文書を出しているわけでございます。私もこれを一読しておりますが、この内容が事実であると、ちょっと看過できないものが含まれております。

 例えば、母国で強姦をされたという女性に対して、美人だったから狙われたのかと聞いてみたり、あるいは、そもそも、参与員が審尋をして、その後に評価をして難民であるかどうか決めるはずなのに、その審尋の最中に、あなたは難民じゃないよとか、あなたは難民としては元気過ぎる、本当の難民はもっと力がないとか、ほかにもたくさんあるんですが時間がないので、極めて不適切な発言を、難民申請してきた、不服申立てしてきた難民に対してしているということが書かれております。

 この難民審査参与員の、審査参与員さんは法務省の職員じゃないんですよ、大学の教授だったり弁護士だったり国際機関の職員だったり、いろいろな、有識者と呼ばれる方々なんですが、法律にも書いてあるんですけれども、第一の要件が、人格が高潔というところなんですね。

 あともう一つ私が看過できないのは、ずっとインタビューの際、居眠りをしていて、誰が起こしても起きなかった人までいたんですね、インタビューの最中に。

 大臣、私、この件で大臣とか法務省を責めるつもりはないんです。私もつくれといって与党側から言った一人ですから、やや責任を感じているんですが、きょう申し上げたい提案は、これは運用されてからもう十年以上たっていて、一度も改善をするための協議も行われていないと思います。

 普通、例えば法律で五年後に見直しとか十年後に見直しという形で見直される制度というのはよくあるわけでございますが、大臣、このまま放置するよりも、もちろん、この申入れ書に書かれている事実関係を調査して、不適切な、資質を欠いている参与員がいたら差しかえるぐらいの措置はとった方がいいと思いますと同時に、もう少し抜本的にこの参与員制度のあり方について検証する、検討することを山下大臣のもとでやっていただいた方がいいんじゃないかというふうに思っておりますけれども、いかがでしょうか。

山下国務大臣 まさに委員御指摘のような指摘をいただく場合があるということは十分承知しております。

 法務省においては、難民審査参与員の方々に対して、御指摘の申入れ書、これも配付して読んでいただく、あるいは協議会の場を通じて注意喚起を行う、必要に応じて当該難民審査参与員本人に直接御指摘の内容をお伝えするということであります。そして、その際に、改めて法務省から、難民審査参与員の職務の遂行に当たっては、当事者の方々の境遇や心情等に配慮していただくようお伝えをしているというところでございます。

 そういったところで、入管法の規定上は、人格が高潔であって、公正な判断をすることができ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者のうちから任命するということを規定しておりまして、これまでもそれにのっとって任命され、また、今後も私もそれにのっとって任命していきたいということを考えておるんですが、なお改善の余地、あるいは何らかの対応措置が必要であるのかということは、やはり法務省内でも検討してまいりたいと考えております。

遠山委員 それで結構でございます。ぜひ検討してください。

 時間がないので、最後の質問を簡潔に申し上げたいと思います。

 死刑制度についてなんですが、実は、報道されているとおり、昨年の十二月に、超党派議連で日本の死刑制度の今後を考える議員の会というのを設立をさせていただき、自民党の河村建夫先生が会長、不肖私が幹事長に就任をさせていただきました。現在、五十五人を超える多くの国会議員の方々が入会をされておりまして、これから本格的な活動を開始する予定でございます。

 この議連は死刑制度の廃止派と存続派と両方の立場の議員の先生方がおられますが、これは、死刑に関する活発な議論をこの立法府でしっかり再開をしていきたいということで、そういう形でつくらせていただきました。

 死刑制度に関しては、亡くなられた鳩山邦夫先生が法務大臣のころに私が参議院の法務委員長で、相当議論されたんですが、最近余り議論されていないということがございます。

 山下大臣として死刑制度についてどうお考えか、お伺いをして、きょうはこれで時間切れなので終わりたいと思いますが、また今後、来年の京都コングレス二〇二〇が日本で開かれますけれども、世界で、死刑制度廃止あるいは事実上廃止している国が百四十二カ国、日本を含めて死刑制度をまだ持っているところが五十六ということであります。世界的潮流は死刑制度廃止。

 だけれども、日本の国民の世論調査を見ると、三回連続で八割以上の方が死刑制度容認、支持をしているという状況がありますが、さまざまな論点、この死刑制度もあるわけですが、これはまた後に譲るということで、きょうは、とりあえず、大臣としてこの死刑制度についてどうお考えかを伺って、終わりたいと思います。

山下国務大臣 死刑制度の存廃については、法務大臣就任の記者会見でも述べさせていただきました、我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題でございます。これは、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現など、さまざまな観点から慎重に検討すべき問題であると考えております。

 今現在、日本の刑法において死刑がある、存在するわけでございます。そして、その死刑制度について、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たないという状況等に鑑みると、その罪責が著しく重大であって凶悪な犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ないというふうに考えておりますし、死刑を廃止するということは適当ではないと考えております。

遠山委員 今、大臣の見解は法務省の公式見解だと思いますが、一点だけ指摘しておきます。

 多くの国民の皆さんが、被害者とか遺族の感情を考えて、やはり死刑を維持するべきだ、それから、もう言語に絶する凶悪な犯罪の場合は命で償わなきゃいけない場合もあるということで、それを認める。あるいは、死刑制度があるから凶悪な犯罪が抑止される、予防される、こういう考え方が大体一般的に広がっていて、多くの国民の皆さんが支持をしている結果になっていると思うんですが、実は、死刑によって犯罪が抑止されているということは全く実証されていないわけですね、科学的には。誰も実証したことがないということもございます。

 また、もちろん誤判とか冤罪の問題は日本でも起こってきたわけでありまして、きょうは時間がないのでこれ以上言いませんが、いろいろな論点から、もう少し、法務委員会においても、また先ほど申し上げた議連等においても活発に議論しながら、来年の京都コングレス二〇二〇でホスト国日本の死刑制度はいやが応にも注目されてまいりますので、大臣にも、少し公式見解をたまに離れて、いろいろと議論させていただければと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で遠山清彦君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時七分散会


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