衆議院

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第7号 平成31年4月2日(火曜日)

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平成三十一年四月二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 階   猛君 理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    井野 俊郎君

      池田 佳隆君    奥野 信亮君

      鬼木  誠君    門山 宏哲君

      金子 俊平君    上川 陽子君

      神田  裕君    黄川田仁志君

      国光あやの君    小林 茂樹君

      小林 鷹之君    杉田 水脈君

      高木  啓君    中曽根康隆君

      鳩山 二郎君    古川  康君

      古川 禎久君    宮路 拓馬君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      黒岩 宇洋君    松田  功君

      松平 浩一君    山本和嘉子君

      源馬謙太郎君    遠山 清彦君

      藤野 保史君    串田 誠一君

      井出 庸生君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   最高裁判所事務総局民事局長            門田 友昌君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 渡邉  清君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         藤村 博之君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            水口  純君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            中村  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    名執 雅子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 高橋 克彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長岡 寛介君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 住澤  整君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           藤原 朋子君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     宮路 拓馬君

  上川 陽子君     金子 俊平君

  黄川田仁志君     池田 佳隆君

  古川  康君     高木  啓君

  和田 義明君     杉田 水脈君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     小林 鷹之君

  金子 俊平君     上川 陽子君

  杉田 水脈君     鳩山 二郎君

  高木  啓君     古川  康君

  宮路 拓馬君     門  博文君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     黄川田仁志君

  鳩山 二郎君     和田 義明君

    ―――――――――――――

四月二日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(阿久津幸彦君紹介)(第四九六号)

 同(小川淳也君紹介)(第六二九号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(阿久津幸彦君紹介)(第四九七号)

 同(小川淳也君紹介)(第六三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、明三日水曜日午前九時、参考人として一橋大学大学院法学研究科教授山本和彦君、松浦法律事務所弁護士松浦由加子君、かんま法律事務所弁護士合間利君及びせたがや市民法律事務所弁護士三上理君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官渡邉清君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長藤村博之君、金融庁総合政策局審議官水口純君、金融庁総合政策局参事官中村修君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、法務省矯正局長名執雅子君、外務省大臣官房審議官高橋克彦君、外務省大臣官房参事官長岡寛介君、財務省大臣官房審議官住澤整君及び厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長藤原朋子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局民事局長門田友昌君及び家庭局長手嶋あさみ君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。黒岩宇洋君。

黒岩委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの黒岩宇洋でございます。

 昨日は、新元号の令和が閣議決定されまして、大変注目を受けて、国民も歓喜の渦に包まれたと言っていいでしょう。

 そこで、山下大臣、これはリラックスしてお聞きしたいんですけれども、その臨時閣議のまさに歴史的場面に立ち会った、御感想としておきましょうか、余りプロセスについては触れられないでしょうからね。どういった面持ちで立ち会われたのか、その点をお聞かせいただけますでしょうか。

山下国務大臣 まず、閣僚の一人としてというよりは国民の一人として、そのような場に立ち会えたことは大変光栄に思っております。

 また、閣僚の一人としては、その決定の場面にいたことよりも、これから、ここにおられる委員の皆様あるいは国会同僚議員の皆様と一緒に新しい時代の政治を進めていく、そういった責任もひしひしと感じたところでございます。

黒岩委員 いきなりペーパーが出てきましたけれども、私、通告していたわけじゃありませんからね。恐らく想定の範囲だったと思いますけれども。

 私どもも国会議員として、また、それ以前に国民の一人として、新時代、本当に平和で皆が支え合うような、そんな時代を切り開いていきたいと、心にしかと刻み込んで歩んでまいりたいと思っております。

 それでは、本題の民事執行法及びハーグ実施法の改正案についてお聞きしますけれども、ちょっと質問通告を変えまして、子に関する強制執行についてお聞きします。

 この中で、威力について、債務者、親に対しては、執行官は威力を用いることができる、ただし、このたびの新たな規定で、百七十五条八項で、子に対しては威力を用いることができない、このように規定されています。

 そこでお聞きしますが、この威力の定義と、また、ここまでは威力に当たらないけれどもこれ以上は威力に当たるという、いわゆる限界事例をお示しいただけますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案におきましては、委員御指摘のとおり、現行のハーグ条約実施法の規律と同様に、執行官は子に対して威力を用いることはできないものとしております。

 この威力でございますけれども、人の意思を制圧する程度の有形力の行使をいうものでございまして、一切の有形力の行使が禁止されるわけではないものと考えられます。

 具体的には、例えば、子供が、子が口頭で拒絶の意思を示しているにすぎないような場合に、執行官が子の手を引いたり肩を押したりするなどして子を誘導することは、子の意思を制圧しない程度の有形力の行使として許されるものと考えられます。

黒岩委員 裁判所のマニュアルですと、特に今、特にというか、今の国際的な子の返還に対してのマニュアルですけれども、その中では、威力に当たる事例というのは、子供が体全体で拒絶している、親や柱などにしがみついて拒絶しているときに子を引き離す行為。威力に当たらない行為というのは、自立的な意思表明をすることができない乳児を抱き上げたり、拒絶していない子の手を引いたりすることとありますので、今民事局長がおっしゃったのは、この後段について、拒絶していない子は当然として、口頭ならオーケーということでした。

 じゃ、その間なんですけれども、例えば、体全体では拒絶していないけれども、手を振って拒絶する、首を振って拒絶する、この程度の子に対して手を引いたりすること、これは威力に当たるんでしょうか、当たらないんでしょうか。

小野瀬政府参考人 威力に当たるかどうかというのは、先ほどの定義で申し上げましたとおり、人の意思を制圧する程度かどうかというところでございますので、なかなか一概に、手を振ってというようなことで引っ張ったりするのがどうかというのは、なかなか難しいと思います。やはりケース・バイ・ケース、その子供の意思というものをどう見るかということもありますので、ケース・バイ・ケースで判断されるものと思われます。

黒岩委員 そうなんですよね。その答えを待っていたんですけれども。

 今申し上げたとおり、実際に今執行官が持っているマニュアルでも、かなり極端な事例が書いてあるだけで、グレーゾーンについては書けないわけですよ。

 そうなりますと、私が申し上げたいのは、これは執行官は微妙な判断が迫られる、そして、威力に当たらない有形力とは一体何ぞやという、ましてや子供の年齢とか態様に応じての個別的な有形力の行使になるわけですから、かなり専門性が私は必要になってくる、このことをまずは認識をしていただきたいし、このことに対する問題意識で質問を進めてまいりたいと思います。

 それでは、最高裁の方にお聞きしますけれども、執行官の採用試験とはどのようなものが試験科目になっているのか、お聞かせください。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 執行官の採用選考は、各地の地方裁判所において筆記試験と面接試験を実施しております。

 筆記試験の科目は、執行官法、民事執行法等の法律科目となっております。

黒岩委員 まあ、言ってもらいましょう。じゃ、択一、論文、この具体的な科目名を全て言ってもらえますか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 択一式の科目の方ですが、憲法それから執行官法、民法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、刑法でございます。

 それから、論文式の科目につきましては、民法、民事訴訟法、民事執行法となっております。

 以上でございます。

黒岩委員 すなわち、全て法律科目です。

 今までは不動産、動産を扱うというのが、今もそうですが、基本ですけれども、今後は、子の引渡し、これに対して規定が生まれて、別に新たな業務ではありませんけれども、これが非常に、もしかすると今後、もちろん国際的な子の返還もあるわけですから、業務としては広がってくるかもしれない。

 その際において、いかんせん人を相手にするわけですから、全般な心理学、ましてや子供になれば児童心理学といった、かなり特段の専門分野が必要なんですけれども、こういった学問については試験科目としては問われていないということになるわけですよ。

 そんな中で、じゃ、配置する部署はどうなのかと聞けば、これは執行官というのは全て地方裁判所に配属されて、職務の差は全くない。さまざまな種類の強制執行を職務として担当するということになっていますから、その人間が、今申し上げたとおりオールラウンドプレーヤーとして対応する。ということですから、すなわち、子の引渡しに対する専門的な部署もなければ専門的な執行官もいない、こういう状況なんです。

 このことに対してやはり私もいささか以上の不安を感じるんですが、では、今申し上げたように、この執行官の子の引渡しに対するような、こういった専門的な研修内容、これも含めた執行官の研修とは今どのような体制になっているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所職員総合研修所におきまして執行官に対して実施されている研修等としましては、まず、その年に採用された執行官を対象に、裁判官及び家庭裁判所調査官等を講師として、子の引渡しの強制執行の概要や両親の紛争下における子の心理についての講義を内容とする研修を実施しております。

 また、経験五年以上の執行官を対象に、ベテラン執行官や子の心理の専門家を講師として、子の引渡しの模擬強制執行等を内容とする研究会を実施しております。

 このような研修や研究会のほか、各地方裁判所におきまして、専門家を招いて開催される研究会のテーマとして子の引渡しを取り上げ、この研究会に執行官を参加させるということもございます。

 さらには、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングとしまして、子の引渡しの強制執行事件が係属した際に、援助執行官ということで関与することで、スキルアップを図っているところでございます。

 以上です。

黒岩委員 わかりました。そういった研修プログラムがある。

 新任の執行官については、割と身内で、家裁の専門家とかそういった方々が講師に当たっているというようですけれども、やはりもうちょっと外部の有識者の講義なども取り入れていっていただきたいと思いますが、ただ、それにしても、やはり業務とすれば、子に対するこの業務よりも、はるかに動産、不動産に対する業務が多い。そういった中ですので、これから話を進めていく中で、執行補助者や立会人のこういった活用をどうしていくか、これについてもこの委員会で、この後、深く議論をしていきたいと思っております。

 それで、これもちょっと数字をお聞きしたいんですけれども、直近、平成三十年の子供の引渡しの強制執行における不能事件数と、そして、どうして不能だったか、その不能事由の内訳を教えてください。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 平成三十年度におきまして、子の引渡しの強制執行が執行不能で終局した件数は三十五件でございます。

 不能事由につきましては、一件で複数の事由により執行不能となることもございますので、延べの数ということになりますけれども、子の拒絶によるものが十三件、債務者の抵抗によるものが十二件、祖父母の抵抗によるものが二件、子の不在によるものが八件、債務者の不在によるものが五件、その他が一件となっております。

 以上でございます。

黒岩委員 わかりました。

 子の不在、債務者の不在、これは技術的にも法律的にも引渡しはできないわけですけれども、やはりそれ以外の、子の拒絶や債務者の抵抗、また祖父母の抵抗といった、その現場にいる、子供だけではなくて、そこにいる、居合わせた人の抵抗といったもので、拒絶といったもので、要するに、簡単に言うと説得し切れなかった、執行官が説得し切れなかったということで引渡しができなかったということが不能事由としては六割、七割を占めるということですので、これは私は非常に問題だと思っております。

 これをいかに引渡しを可能とならしめるか、こういう視点で質問をしているわけですけれども、そこでお聞きしますが、それを何とかカバーするために、先ほど申し上げた立会人や執行補助者がいるわけですけれども、この執行補助者及び立会人を選任する法的な根拠と、またそして目的について、それぞれお聞かせいただけますか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 立会人は、民事執行法七条に基づくものでございまして、執行官が債務者等に威力を用いるときに、それが適正であるかどうかなどを監視する役割を果たしております。

 執行補助者は、執行官法十条一項四号、執行官規則十二条に基づくものでございまして、債務者の説得、子供との対応を補助し、その他手続全般について専門知識に基づくアドバイスをする役割を果たしております。

 以上でございます。

黒岩委員 じゃ、立会人の方から聞いていきます。

 今言ったように、立会人は、要するに、立会人と執行補助者、根拠法も違うし、それを選任する目的も違うということが今の答弁でよくわかるんですけれども、立会人については、これは民事執行法の七条だというところで、じゃ、この立会人というのは、児童心理学の専門家といった人たちなんですか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 子の引渡しの強制執行における場合には、児童心理の専門家に立会人をお願いするという場合も多うございます。

 以上でございます。

黒岩委員 じゃ、ちょっと聞き方を変えましょう。

 これは法的に、児童心理学の専門家といった規定はありますか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 法的にそのような規定はございません。

黒岩委員 そうでしょう。そもそも目的が、今おっしゃられたように、威力が用いられていないかといったことをある意味確認するということで、その職種については、もうちょっと正確に答えてくださいよ、根拠条文で申し上げたんですから。

 条文では、「市町村の職員、警察官その他証人として相当と認められる者を立ち会わせなければならない。」というわけですから、どこにも心理学とか子の専門家なんということは書かれていないわけですよ。恐らくは市町村の職員とか警官ですよ。そういうことでしょう。

 じゃ、逆に、実際に立会人として、市町村の職員や警察官以外で、児童心理学の専門家を立ち会わせることはどのくらい事例としてあるんですか。

門田最高裁判所長官代理者 立会人についての一般的な扱いは、委員御指摘のとおりでございます。

 先ほど私の方から答弁しました、子の引渡しの強制執行に関しまして児童心理の専門家が立会人として関与したものが多うございますというふうに答弁いたしました件数的には、平成三十年において、既済件数八十三件ございましたもののうち、児童心理の専門家が立会人として関与した件数が十件ございます。

黒岩委員 この後、その数字を聞こうと思っていたんですけれども、平成三十年の立会人のこの十件というのは、これは全て児童心理学の専門家ということですね。

 逆に言うと、児童心理学の専門家以外の立会人はいなかったということでよろしいですか。

門田最高裁判所長官代理者 済みません、把握しておりません。

黒岩委員 これは、数値としていただいているんですよね。先ほどおっしゃったように、平成三十年、既済事件が八十三件だ、そのうち立会人がついたのが十件だということで、私はこれは児童心理学の専門以外の方もいるのかなと思ったけれども、この十件については全て児童心理学の専門家だと。ただ、それ以外の立会人がいたのかいないのか、また、それが児童心理学の専門以外かどうかというのは数字として把握していないということ。わかりました。

 今申し上げたとおりに、事実上は児童心理学の専門家がついている、これはこれで望ましいことだと思います。ただ、法的には、あくまでも、威力を用いなかったかどうか、これについて判断するということになっているので、児童心理学というのが書かれていない、このことを私は非常に問題だと思っていますし、この部分は、私はこの民事執行法の改正に今後つなげていっていただきたいと思っております。これは大臣も御留意していただきたいと思います。

 そこで、次に、執行補助者についてお聞きしますが、先ほど執行補助者の法的根拠、執行官法の十条の四項だとおっしゃいましたけれども、ここには技術者と労務者と書かれています。今議論しています児童心理学の専門家である執行補助者は、これは技術者に当たるんですか、労務者に当たるんですか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 技術者に当たると解釈しております。

黒岩委員 今、後ろの事務方に確認していましたけれども、私が説明を受けたときには何の説明もなかったですよ。技術者とも労務者とも触れていない、専門家、専門家と言うわけですけれども。じゃ、技術者だと。

 じゃ、この十条四項自体は、動産、不動産以外、子供を相手にすることは想定した条文だと解釈されますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 さまざまな専門家を想定しているというものでございます。

黒岩委員 小野瀬局長、この技術者の解釈、内野さんもいらっしゃるので、これは、法務省としての条文解釈として、この技術者は人に対してのものを想定しているのかどうか。人に対してというときに、これは一般的な認識として、技術者というのは人に対する何の技術なのか、そこら辺、ちょっと、今時点での認識をお聞かせいただけますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、専門的な知識を有していらっしゃる方、そういう者をこの技術者の中に含めて解釈するということはできるものと考えております。

黒岩委員 重ねますけれども、動産、不動産ではない、人、そして子供を、これは想定した条文ですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 想定しておりますのは、例えば扉を解錠するための技術者等々でございますけれども、やはり、子供の引渡しに当たってのそういう専門的な知識を有する者もこの中に想定されているというものでございます。

黒岩委員 小野瀬局長、別に無理やり後づけする必要はないんですよ。

 この民事執行法、済みません、直近の改正はいつだったかな、昭和五十四年かな、ちょっとわからないんですけれども、その時点で、今からさかのぼることですよ、それをちゃんと想定していたのかどうか。だって、子の引渡しに対する規定というのは今回初めて入れるわけですから。逆に、その時点で想定していたら、むしろその時点で子に対する規定を入れておかなきゃいけなかったという逆の矛盾も生じるわけですよ。

 だから、正直にお答えくださいよ。想定していなかったと私は思うんですけれども、いかがですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 もともと、子供の引渡しにつきましては、民事執行法で規定は今までなかったわけでございますけれども、ただ、民事執行の強制執行で直接的な強制執行ができるかどうかといった点につきましては、これはいろいろと解釈が、学説が分かれておりまして、当然できるという、そういった考え方もあったわけでございます。

 したがいまして、この技術者というものが一切そういったことを想定していなかったということかどうかというのは、なかなかそうも言い切れないかなというふうに思っております。

黒岩委員 わかりました。これ以上詰めてもね。それはそれで、苦しいながらも合理性は感じますので、先に進めますけれども。(発言する者あり)いつも時間がなくなっちゃうから。

 では、済みません、執行補助者の今言った法的な役割、そういったことについては今やりとりさせてもらいましたけれども、じゃ、この執行補助者を選任するのは裁判所ですけれども、選任義務はあるのかどうか、これは端的にお答えください。

門田最高裁判所長官代理者 選任義務はございません。

黒岩委員 立会人は、選任義務はありますか。

門田最高裁判所長官代理者 ございません。

黒岩委員 立会人は、選任義務はないですか。

 七条の読み方では、これは民事執行法の七条ですよ、そこ、慌てないで。立会人は、選任義務はあるでしょう。

門田最高裁判所長官代理者 威力を行使する場合には必要ということになりますけれども、威力の行使が想定されない場合には必要がないというふうに理解しております。

黒岩委員 だから、想定される場合は必要で、立ち会わせなければならないとあるわけですよ。これは選任義務とは読まないんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 一定の場合に、法律が定めますその場面におきましては選任義務があるという言い方はできると思います。

黒岩委員 私は、もう当然、これは、条件付、前提つき選任義務だと普通に読んだので。

 私は、今の場面を見てもわかるとおり、非常にそこら辺が整理されていないというか、今言ったように、子の引渡しについて、議論がもう少し成熟化していると思ったんですけれども、今言ったように、立会人と執行補助者、これも、民事執行法に書かれているのは立会人ですしね。で、執行官法ですよ、民事執行法には、執行補助者は何も書いていないわけですよね。そもそも、執行補助者という言葉もないですよね。

 だから、レクを受けちゃうと、あたかもすらすらと、執行官が子供に対応しづらいときどうするんですか、さっと執行補助者という言葉が出てくる。でも、執行補助者というのは、法的にも書かれていない。しかも、執行補助者というのは、今申し上げたとおり、技術者、労務者という執行官法の十条の四項を、これは読めるということですから。先ほどのやりとりで、私もわかるんですけれども、これは、読めるから改正していないということになるんだけれども、そういった、読めるという概念でやっているものだから、かなりおぼろげになっているというところでね。

 ちょっと戻りますけれども、立会人は義務規定がある、だけれども、執行補助者は義務規定がないわけですよ。この執行補助者についての選任については、これは、その後の執行官法の規則十二条で、技術者又は労務者を使用することができると。この表現も、一般の委員の皆さん、やはりちょっと違和感があると思うんですけれども。これはやはり、イメージなんですけれども、不動産なんかの強制執行のときに、労務者の場合は、これは一般的な民事の弁護士さんなんかに言わせると、執行補助者じゃなくて労務補助者と呼んでいるんですよね。非常に機械的な作業をしに行く、そういうイメージなんですよ、執行補助者。何々の専門家の先生が来て、その先生の御指導を賜るなんて感覚じゃないんですよね。何せ、使用することができるということですから。

 ここら辺も、やはり今言ったように、動産、物と、今回、人ですからね。この規定を新たに加えたことによって、やはり物とは違う、人ですよというものが各法や各規則に私はもうちょっとにじみ出なければいけないと思いますし、明らかに明記しなければいけないと思っていますよ。これはちょっと、この後、私も問題意識を整理して、最後に伝えますけれども。

 そこで、先ほどお話ありましたけれども、昨年でいいんですけれども、平成三十年で、子の引渡しの強制執行で、既済が全体で八十三件でしたと。この中で、執行補助者及び立会人が臨場しなかったケースが三十六件あるわけですよ。違うかな。正確に言うと、児童心理の専門家が立ち会わなかった事例が三十六件ある。このデータでは、八十三件のうち執行補助者が立ち会ったのが三十七件、立会人が臨場したのが十件、計四十七件だ。ですから、臨場していないのが三十六件あるということですが、臨場しなかった理由を端的に教えてください。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 さまざま理由はあるところなんですけれども、専門家が近くにいない場合であるとか、あるいは、債務名義が審判前の保全処分である場合には、債務名義が債権者に送達された日から二週間以内に執行しなければならないというふうにされていて、日程の調整がつかなかったことなどから専門家が関与していない例があるものと承知しております。

黒岩委員 これは二つに分けられると聞いております。まず、専門家の関与が必要ないと裁判所が考えたとき、認識しているとき、子供が乳児だとかいう場合だと。そのほか、事前に私が聞いた限りは、子の引渡しに債務者の積極的な拒絶反応がないことが予想される場合、これは最高裁から聞いているんですけれども。

 裁判所が専門家の関与が必要ないと認めた場合というのがあるんですけれども、逆に、裁判所が専門家は選任したい、すべきだと考えていたけれども、実際につけられなかった事案があるのか、あるということでした。その理由が、今おっしゃられた時間的な制約とか、管内にいないとか。

 私、ちょっと不思議なんですけれども、いわゆる専門家等の関与の方法としてお聞きしたのは、最高裁がまず専門家のいろいろな団体から提供を受けた名簿を地裁、各庁に送付する。ですから、名簿がしっかりあるわけですよ。それで、その名簿から、今度は担当執行官が名簿をもとに直接その専門家に依頼する、こういうネットワークができている中で、これはお聞きしますけれども、管内に専門家がいない場合や、あとは時間的に間に合わないという例があるんだという説明を受けたんですけれども、これは甚だ合点がいきません。そんなことがあるんですか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今委員に整理していただいたとおりでございまして、各地方裁判所の方に名簿等を提供しておりますけれども、実際に執行が行われる場所はさまざまなところがございますので、近くに専門家が得られなかったというような場合は存在するというふうに承知しております。

黒岩委員 もうこれで最後にしますが、大臣、今やりとりを聞いていて、やはり執行官というのは、人や、ましてや子の専門的な知見を持った人が選ばれるわけじゃありません。その後にいろいろな研修システムがありますけれども、かといって専門家になれるわけではない。だから、今、実務上では、立会人や、いわゆる執行補助者ですよ、法的にはこんな言葉はありませんけれども、つけているということです。ただ、民事執行法では、立会人というのはあくまでも威力を用いているか用いていないかだけのことですから、引渡しに対して、児童心理学の専門家というようなことは何にも書かれていない。

 ここも直すべきですけれども、ただ、ここを直さなくても、いわゆる執行補助者、これが今、執行官法の十条四項で、技術者と労務者、こういう表記しかないわけですよ。確かに、技術者で読み込むということが、今、苦しいながらも読み込むから、今回改正しなかったわけですけれども、せっかく子の引渡しというところまで踏み込んだわけですから、例えばこの十条四項に学術経験者とか、そういったことを新たに規定し、そして、規則で結構ですから、この、我々が言うところの児童心理学の執行補助者を、義務規定で、臨場させなければならないと、この二つ。

 法的に新たな規定を設けて規則を改正すれば、今、四割、五割はつかないわけですから、児童心理学の専門家が子の引渡しの場面で。今言った是正措置を行えば、あらゆる場面で児童心理学の専門家が子の引渡しの現場に立ち会うことができるわけです。このような改正を進めていく、これについて、ぜひ大臣、前向きな御答弁をいただきたいと思います。お願いします。

葉梨委員長 山下法務大臣、時間が過ぎていますので、簡潔に。

山下国務大臣 はい。

 まず、御指摘の点は重く受けとめたいと考えております。

 そういった観点から、本法律案では、児童心理の専門家等の活用を一層促す観点から、執行裁判所等に対して子の心身への配慮を求める規定を設けることとしておりますので、この規定の実質的に有効な活用、これを期待しているところでございます。

黒岩委員 民事執行法も物から人への時代になったんですよ、物から人への。だから、人へにしっかり、まだ追いつかない部分も、きょうの議論で、あるやと感じる部分がありますので、せっかくの一歩ですから、次の二歩目につなげていただくことをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で黒岩宇洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、松田功君。

松田委員 おはようございます。立憲民主党の松田功でございます。

 質問に入らさせていただこうと思いますが、まず、ちょっと大臣、この子の引渡しの強制執行、いろいろな問題がある中で、今、親権の問題がいろいろ出てきている。そういったことで、その問題の大きな中で一番多く言われているのが、DVを受けたりとか、児童虐待で問題が多くなっている、子供の心理も非常に複雑になっているということもあります。

 大臣の身近な方で、DVを行った人がいるかというか、身近で相談を受けたりとかされたことはありますか。

山下国務大臣 私の周りでということではないのですが、私も法律家でございます、検事あるいは弁護士の経験もございますので、そういった事例につきましては、関係者からお話は伺ったことは当然ございます。

松田委員 実は私もありまして、当事者、つまり、した側と、あと、された側、実は私が知っている二人だった部分で、それで、どうしたらいいかと。二人の言い分が全然違いますから、子供をどうしていこうかとか、また親の方とも話をしたりとか、そういったことでありました。私自身は別に弁護士でも何でもないものですから、地方議員としてというか、仲間としてというか、何とかうまくいくようにとか、いろいろなことを考え、また、ほかの仲間ともいろいろ相談しながら何とかしようと思いましたが、結論的には離れ離れに暮らさなければいけないというような状況になりました。

 しかしながら、こういった状況で、子供の利益を一番考えるということもありますし、親それぞれの意見を直接聞いた中で、親の言い分というか、思いもあります。そういった複雑な思いの中で、この法律も含めてですが、引渡しの部分、執行していく部分に当たっての裁量が非常に難しいということで、専門家の方とか、いろいろありますが、そういったことの難しさが浮き彫りになってきている。また、そういった中での親権の問題も出てきていますので、これは避けるわけにはいかないということも含めて、質問にぜひ入らさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 今回の民事執行法の改正により、子の引渡しに裁判所の強制力が強化され、同時に、ハーグ条約実施法にも同様の規律を採用することになりました。これは、ハーグ条約実施法施行五年を経過し、制度の見直しを始めたと思います。ハーグ条約を批准したことによって、国際ルールと国内法の整合性について、さまざまなところで、共同親権の問題やら面会交流の問題が検討をされてきております。

 世界的な流れとしては、大陸系のドイツ、フランスなどは、子どもの権利条約を機に子の最善の利益として共同親権の考え方を相次いで導入してきたけれども、家庭事件に関しての未整備部分も多く、事件が多発、問題も起きております。アメリカやオーストラリアもしかりで、そんな中で、日本も子どもの権利条約を締結しており、単独親権が子供の最善の利益とは言い切れるかどうかということも含め、共同親権制度も検討をしなければならないところに来ているのではないかというふうにも思われます。

 よって、今導入している国を見ながらの、今の日本の立場を考えながら、欧米諸国で起きている問題点を踏まえて、共同親権行使に対する両者へのサポートや面会交流のサポート、DVや虐待に対する適切な法整備などを考えていかなければならないというふうに思っております。

 本当にこの問題については、いろいろな意見、さまざまな考え方があります。時には意見がぶつかり合うこともたくさんあります。それだけ大変なことでありますので、慎重にお考えをぜひいただきたいというふうに思っております。

 そこで、ハーグ条約批准後、ここ五年で子供を日本から返還したケース、日本へ返還されたケースの中でDV問題が顕在化した数についてお伺いをいたしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 この五年間で日本への連れ去り等がなされた子の外国への返還は三十四件において実現し、外国への連れ去り等がなされた子の日本への返還は三十三件において実現しております。

 これらの事案において、当事者が話合いや裁判手続等において主張した内容に関して中央当局である外務省が把握する立場に実はございませんで、DV問題が顕在化した件数について外務省としては把握をしておりません。

 なお、子又は一方の親が他方の親からDVを受けていたなどの事情は、裁判所における子の返還拒否事由の有無の判断において考慮されていると承知をしております。

松田委員 DVの問題、外務省はちょっとなかなか難しい部分もあるかもしれませんが、返還したケースとか、こういうことできちっとされている部分ということも確認をされているということで理解していきたいと思います。

 次に、アメリカ国務省は、国際結婚破綻時の子供の連れ去りに関する年次報告を公表し、日本を、連れ去り問題の解決手続を定めたハーグ条約に基づく義務の不履行国に認定したわけです。

 DV被害者が、子供を伴って避難する場合もございますし、また、別居の際に、取決めなく、一人で置いていくことのできない幼い子を連れ家を出る場合もございます。そのような場合にも不法な連れ去りとなるのか、このハーグ条約実施法における不法な連れ去りというものの定義などを、法務省の見解をお伺いしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 ハーグ条約実施法におきましては、子の不法な連れ去りにつきましては、「常居所地国の法令によれば監護の権利を有する者の当該権利を侵害する連れ去りであって、当該連れ去りの時に当該権利が現実に行使されていたもの又は当該連れ去りがなければ当該権利が現実に行使されていたと認められるもの」と定義されております。

 このような不法な連れ去りによりまして、子が異なる言語又は異なる文化、環境での生活を余儀なくされるなどの有害な影響を受けると認識されておりまして、また、子の監護に関する紛争は子の常居所地国で解決されるのが望ましいと言えます。

 したがいまして、子の不法な連れ去りの問題におきましては、ハーグ条約実施法に基づいて、子の心身への影響に配慮しながら、子の返還が適切かつ迅速に実現されることが重要であると考えております。

松田委員 また、外国から日本に子が連れ去られた事案においてですけれども、ハーグ条約実施法が適用されるものにおいて、国内の裁判所で調停、審判された件数についてお伺いをしたいと思います。

手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 家庭裁判所に申し立てられましたハーグ条約実施法に基づく子の返還申立て事件の件数は、毎年二十件前後で推移しております。

 平成三十年四月から平成三十一年三月までの一年間に申し立てられた事件数は、速報の暫定数値でございますが、二十五件というふうになっております。また、同期間に家庭裁判所で終局いたしました事件数は、これも暫定数値でございますが、二十三件となっておりまして、このうち、調停が成立したものが十一件、裁判により終局したものが十件、取下げが二件という状況になってございます。

松田委員 日本から海外に子が連れ去られた事案において、連れ去られた先の国がハーグ条約に加盟していないことがあると思われます。そのような場合においての取組はどのように行っておられますでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のような事案に関しまして、外務省としては、例えば、日本に残された親に対して、子が連れ去られた先の国の現行制度、これを紹介するとともに、その活用を推奨する、また、当該親が子と会えない場合に領事が子と面会し、状況を確認する領事面会を実施することなどを含め、可能な支援を行ってきております。

 また、ハーグ条約の締約国のさらなる拡大、これが国際的な課題になっております。アジアの国々にはまだまだ多く非締約国がございますので、日本としては、特にこのアジア地域における締約国の拡大を重要な課題と認識した上で、積極的に取り組んできております。

松田委員 ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。

 次に移りたいと思います。

 養育費や面会交流に関することで、子の養育費、面会交流に関する家事事件の件数、推移についてお答えをいただきたいと思います。

手嶋最高裁判所長官代理者 お尋ねいただきました養育費、面会交流の調停事件と審判事件の件数の推移についてお答え申し上げます。

 養育費請求事件につきましては、一年間の申立て件数が、調停事件では、平成二十一年が一万八千五百十五件、平成三十年は一万七千八百三十一件と、おおむね同じ水準で推移をしております。また、審判事件の件数、これは養育費の調停が成立せず審判事件に移行した場合を含みますけれども、この件数につきましても、平成二十一年の申立て件数は二千九百十一件、平成二十四年は三千五百十八件、平成三十年は二千七百八十件と、若干の増減はあるものの、こちらもおおむね同じ水準で推移をしております。

 それから、面会交流事件の件数につきましては、近年増加傾向にございまして、一年間に申し立てられた件数は、調停事件では、平成二十一年に六千九百二十四件でございましたのが、平成三十年には一万三千七件に、それから審判事件につきましても、平成二十一年に千五十件であったものが、平成三十年には千九百三十六件と、いずれも十年間で一・八倍以上になってございます。

松田委員 面会交流に関してはちょっと数字が上がってきているということで、非常にここ数年、この面会交流についての問題が顕著化してきているように思います。

 特に、子供を大切にする親御さんの思いというのが出ているのかというふうに思いますし、その上、またいろいろな問題があって、会ったときに殺人事件が起きたりとかいろいろなことが起きているという現状も踏まえているところでありますので、事件は少ないにこしたことはありません。ただ、問題が複雑化していることも言えてくるのかなというふうにも思います。そういったことも含めて、進めていかなければなりませんので、よろしくお願いいたします。

 次に、平成二十四年の四月から平成二十九年の九月累計で、法務省の方から発表されております、民法七百六十六条改正後の養育費の取決め状況が、養育費の支払い取決めのありが六一%。しかし、厚生労働省の方から発表されております平成二十八年度全国ひとり親世帯調査結果報告によると、現在も養育費を受けているのは、平成二十三年度で一六%、民法七百六十六条改正後の平成二十八年度で二一・三%しかなく、養育費を受けたことのないのは六〇・三%もあり、早急に改善の必要があるというふうに思われます。

 養育費についての取決めや支払いの履行についてKPIがあるのか、また、KPIを想定しているものについては、その目標を達成するため、どのような取組をされておりますでしょうか。お答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、養育費の取決めにつきましては、委員御指摘の平成二十四年の四月から離婚届書にその取決め状況のチェック欄を設けておりまして、法務省では、この養育費の取決めに関する数値目標といたしまして、養育費の取決めをしているにチェックがされていたものの割合が、未成年の子がいる夫婦の協議離婚届出件数の七割を超えることを掲げております。

 ちなみに、平成二十九年度のこの取決めをしているにチェックが付されているものの件数は、未成年の子がいる夫婦の協議離婚届出件数のうち約六四・一%という状況でございます。

 この七割という目標を達成するために、養育費についてわかりやすく説明したパンフレットを作成しまして、離婚届用紙や、あるいは養育費の合意書のひな形と同時に交付することとして、養育費の取決めを促すこととしております。

 他方で、この養育費の支払いの履行につきましては特に数値目標は設定しておりませんが、ただいま申し上げましたパンフレットにおきまして養育費の重要性をわかりやすく説明すること等によりまして、当事者間の話合いで養育費の取決めがされる割合を向上させることは、任意の履行を促す意義もあるものと考えております。

松田委員 本当に、養育費を受けたことのないのが六〇・三%あるということは非常に数値が大きいんですよね。

 結果的には、子供がまた苦しんでいるということになります。そういったことで、やはり実態としてこういった数字を少しでも減らしていく努力というのは進めていきたい。まあ、ない袖は振れないというふうな表現で親が言っているのかどうかわかりませんが、そういったことを含めた中で、何とか養育費を受けられるような体制づくりというものを大きくぜひ前進をさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 また、次に移りたいんですが、オーストラリアの方ではいろいろ先に進んでいる部分がありまして、二〇〇六年の法改正によって、父母による養育分担の原則を進めておりました。しかしながら、二〇一一年の再改正において虐待やDVの定義を拡大するなどの対応を迫られているということで、共同監護等々の問題が先に進んでいるところでもやはりいろいろ問題が起きているということであります。

 やはり、家族観の見方、多様性が、家族のあり方が多様しているというふうに言われていく中で、家族の問題については、国全体で考え、法務省だけでなく、教育の分野でも、いろいろな分野でも本当は考えていかなければならない。なぜこうしてしまうのか、主張ばかりが進んでしまって、本当の愛情や大切さの部分はどこにあるのかということも解いていかなければならないというような状況になっているのかというふうにも考えられます。

 少し話がそれるかもしれませんが、児童虐待やDVの現場というものにおいて、本当はそれだけではないのかもしれませんが、また、男女間の問題で離婚されたりとか、いろいろな問題もあります。それ以外のこともあります。いろいろなことで、子供だけじゃなく家族全体を考えたときにどうしたらいいのかということを論議するのか、子供だけのことを考えて論議するのか、また、親としての考えで論議するのかによってもいろいろな意見が出てくるというふうに思われます。

 そういった状況の中で、離婚制度について、我が国の考えを少しお聞かせいただければというふうに思います。

 我が国においては、破綻主義の徹底をしていないという認識をしております。なぜならば、よく言われるのが有責主義。離婚において、有責主義の場合、家庭裁判所に持ち込まれるなど、夫婦間の罵倒のし合い、また、どちらが悪いのか、離婚事由に足り得るか夫婦が争い、子供のことは置き去りにされてしまいます。よって、養育費や面会交流の取決めなどが冷静にされず、子供の利益を損なうことになっているというふうにも考えられます。

 そこで、離婚制度についての考え方、見直しなどの御検討があるのかをお聞かせいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、裁判上の離婚について規律しております民法第七百七十条という規定がございますが、そこでは、離婚原因として、例えば配偶者に不貞行為があったときなどを挙げております。これは、破綻主義ではなく、有責主義の考え方に基づくものが含まれているというふうに考えられるわけでございます。

 この点につきましては、委員の御指摘もありましたとおり、現実の離婚訴訟において、婚姻関係の破綻原因が当事者のいずれにあったかが主要な争点となって紛争が激化し、当事者間の子供の福祉の観点からも好ましくない事態が生じているとの指摘がございました。

 そういったことから、法制審議会が平成八年に答申しました民法の一部を改正する法律案要綱におきましては、この民法第七百七十条について、いわゆる破綻主義の考え方を明記することが含まれておったものでございます。

 ただ、この法律案要綱につきましては、選択的夫婦別氏制度の導入の是非も含め、国民の間にさまざまな意見がありますことなどから、法制審議会の答申に沿った法案を提出することができない状況にございますが、法務省といたしましては、この答申を重く受けとめておりまして、委員御指摘の離婚原因の点につきましても、課題の一つであるというふうに考えているところでございます。

松田委員 結構、やはり課題の一つだということは認識はいただいているというふうに思います。

 いろいろな判断を裁判所でするといいながらも、個人的感情まで判断するというのは本当に難しいことだと思います。何が原因で家族がうまくいかなくなるのかというのは千差万別であります。少子化になってきて、子供を大事に思う思いというのは大きくなってきているということから、親権問題も含めて、非常に難しくなってきている。本来、争うものではないのかもしれないというふうには思うところであります。それをまた第三者に判断を委ねるということまで持っていかなきゃいけないことは、非常に本当はつらいことなのかもしれないということであります。

 愛情を持っていくことが重要であるというふうに考えられるのですが、そうでない事案も多くなってきているということも含めると、国の方というか法の方でというか、少しそういったことも考えていかなければならないというふうになってきているということであります。非常に残念なことなのか、これからの時代の先駆けなのかわかりませんが、そういったことで、今も検討をぜひしていただきたいというふうに思っているところでございます。

 親権制度について、最後、お伺いをしていきたいところでありますが、その前に、やはり、児童虐待の問題も年々大きくなってきている、DVの問題も大きくなってきている、それに対して殺人事件も大きくなってきている。それについて、虚偽DV、つまり、離婚理由にDVを挙げられ、しかしながら実際はそれがない、離婚するためにその理由を使われたという問題も出てきているというふうであります。

 これは、どちらがどうかという判断をするのが非常に難しいということもありまして、殴られたからすぐ病院へ行って診断書をもらってくるだとかああだとかということもありますし、また、実際、それで本当に危害に遭ったのかどうかを立証するというのは非常に難しい部分があったり、また、DV、暴力というのは、事実殴ったりとかということばかりではなく、言葉の実は暴力というものも今言われている中であります。それが指導なのか教育なのか、いろいろな問題点、いろいろな観点があって、これもまた判別するのが難しいというふうに言われているところではあります。

 そういった状況の中、皆さんからいろいろな声を聞いたりとかして検討していかなければならない離婚後の親権問題について、法務大臣の方にもお伺いさせていただきたいと思いますが、山下大臣は、昨年の十二月の六日、参議院の法務委員会において、離婚後の共同親権の導入の可否について、検討をしていきたい、また、ことしの二月十八日の参議院法務委員会においても、引き続き検討していきたいと答弁されております。検討状況や進捗状況についてお伺いをいたしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 離婚後の共同親権制度につきましては、離婚後も父母がともに親権者となる制度を導入すべきであるとの意見があることは承知しております。

 ただ、一方で、離婚後の共同親権制度導入については、父母の関係が離婚後良好でない場合に、親権の行使について適時に合意を形成することができないということで子の利益を害するおそれがあるとの指摘もなされておりますし、先ほど来、委員の御指摘がありますように、DV被害の防止の観点、これもやはり検討する必要があると思います。

 そういったことも含めて、国民の間にもさまざまな意見があるということで、慎重に検討すべきだと考えております。

 法務省においては、これまで、外国法の調査等を行ってきたところでございます。そこの親権の具体的な内容を、それが監護権の範囲としてどうなのかといったところも含めて検討しているところでございますが、さらなる調査等についても検討しております。

 ただ、一方で、先ほど申し上げたように、これは家族のあり方にかかわる、離婚後もですね、問題であって、この問題については国民的議論が必要であろうと考えておりまして、国会を始め超党派の議員連盟など、さまざまなところで現在検討されているものと承知しておりますので、そういった議論の状況も踏まえながら検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

松田委員 大臣の方も、いろいろな思いを持っていらして、考えていただいているとは思います。

 本当に実はこの問題、複雑でして、DVをした側というのは、事実されている側の気持ちというのはなかなかわかりにくいと思うんですよね。

 別に格闘家でなければ、殴られれば、絶対みんな嫌な思いをするし、意外とそれが覚えているものであります。常にそれがフラッシュバックします。これは格闘家でも実はあって、すごく強いチャンピオンにやられたボクサーは、そのパンチのことは忘れないらしいんですよね。

 つまり、軽くやったつもりでも、やられた側はやったことを覚えているということで、それをまた見た子供は、親がやられている、それを覚えている。その覚えているということを、やっている側は余り覚えていない。そういったことが続いていることで慢性化して、自分がそれをしていることに気づかないということもあります。

 しかしながら、人ですから、それをしていくことをやめていくこともあります。どんどん大人になって、年をとりということでなりますし、また、子供も大きくなって強くなっていくということも含めると、時をどこで見るのかということも、これも非常に判断材料の一つになっていくというふうに思われます。

 そういった局面を考えている中でも、先ほどもちょっと言いましたが、離婚したいから虚偽のDVを受けたということで相談を持ちかけられ、またそれで裁判沙汰になるということも含めた中で、この判断をするという難しさ。その現場で、今回も執行官が行って子を引き渡しするんだけれども、そこまでいくプロセスの間の問題ではありますが、その判断能力についての難しさというものをちょっと大臣はどのように考えられているか、少しお答えいただければと思います。

山下国務大臣 御指摘のところは、実際の家事審判あるいは裁判における裁判官がどう判断するかにかかわることなので、詳細は最高裁等に伺っていただきたいと思いますけれども、事実認定の問題ということになりますと、例えばDV等であれば、けがをしたというのであれば診断書、これは基本的に虚偽の診断書をつくってはならないということになっておりますので、そういったものを子細に検討する。あるいは、最近はさまざまな録音、録画手段、スマホを中心にございます、そういったところも駆使しながら認定に努めておられるんだろうというふうに考えております。

 一般論で恐縮ですが、裁判官というのは常に、家事事件に限らず、そういった事実認定、原告、被告双方の言い分を聞いて事実を見きわめるということにおいて、これは裁判官のみならず、弁護士あるいは検事もそうですが、実務的な経験あるいは知見は持っていると思いますので、そういった中で正しい事実認定をしていくんだろうというふうに考えております。

松田委員 ありがとうございます。

 これは非常に感情論やいろいろな問題も出てくる問題であります。また、された側の人たちの思いというのは非常に深いものがあるということも十分理解しながらこういった問題をぜひ進めていかなければならないと思いますし、超党派で進めている部分もあります。いろいろな形で、やはり国民一人一人の思いに沿った形でこれを進めていく、そこも、でも実は本当に難しいことなのかもしれない、そういった思いの中で今回はちょっと質問をさせていただきました。

 私の質問としてはこれで終了させていただきたいと思いますが、世界の親権制度を見て、用心すべき部分というのは、親権について、子を無視して親の権利が強くなり過ぎる危険性があるということ、そしてまた、子供の最善の利益のために目標を忘れずに法整備がなされていかなければならないということをぜひお願いを申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。

 本日はありがとうございました。

葉梨委員長 以上で松田功君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本和嘉子君。

山本(和)委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの山本和嘉子でございます。

 民事執行改正法及び子の引渡制度の見直しについて順次質問を進めてまいりたいと思いますが、我が党の委員からの質問と若干重なる部分もあるかと思いますが、どうかお許しをいただければと思います。

 まず、国内の子の引渡しの強制執行についてお伺いをしていきます。

 今回の改正案では国内の子の引渡しに関する強制執行に係る規定を整備するということでございますけれども、これまで、我が国において、動産の引渡しに関する規定を類推適用して引渡しを行ってきたということでございますけれども、そこからは一歩前進ということなのかなとも思います。

 今までどうしてこの規定が設けられてこなかったのか、その理由について、まずは大臣にお伺いをしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 国内の子の引渡しの強制執行に関して、従前、明文の規定が存在しなかった理由としては、これは、子の引渡しを求める請求権の性質は一体何なのかということであったり、それに伴って、その性質が、どういう執行方法によるべきかといったことが検討されるわけですが、それらについて、その考え方が必ずしも制定当時、明確でなかったということがございました。それに伴って、実務の運用も制定当時は確立していなかったというところでございます。

 ただ、現在では、子の引渡しの強制執行について、いわゆる間接強制の方法のほか、動産の引渡しの強制執行に関する規定を類推適用して、直接強制の方法によって行うとの運用が定着しているという現状がございます。

 そうしたことも踏まえて、国際的な子の返還の強制執行については、既に平成二十五年に制定されたハーグ条約実施法の中で明文化されておって、規律が整備されております。そうしたことから、国内の規律を明確化する必要性がより強く意識されるに至っているということでございまして、本法律案においても、国内の子の引渡しの強制執行に関する規律を整備することとしたということでございます。

山本(和)委員 ありがとうございました。経緯はよく理解できました。

 それでは次に、規定の整備の内容について順次伺っていきたいと思います。

 まず、法制審の部会において、中間試案では、ハーグ条約実施法の代替執行に関する規定を参考に規律を考えていたというふうにも思いますけれども、それが実際には、従来の国内の制度をハーグ条約にも合わせる形で今回の制度化に至っているのではないかなと思うんですが、この点の、どういう議論をされてきたのかという経過を教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 これまで、民事執行法には国内の子の引渡しについては規定はございませんでした。他方で、ハーグ条約実施法に基づく子の返還の強制執行についてはその法律に規定があるという状況でございます。

 ただ、国内の子の引渡しの強制執行とハーグ条約実施法に基づく子の返還の強制執行とでは、国内あるいは国境を越えるというそれぞれ適用場面は異なりますけれども、いずれも、子を監護している債務者に対して直接的な強制力を用いて子を解放する場面を対象として、その際にとるべき手段や配慮すべき事項はほぼ同じでございます。

 したがいまして、法制審議会におきましても、当初は、委員御指摘のとおり、現行のハーグ条約実施法の規定とほぼ同様の規律を国内の子の引渡しの強制執行にも取り入れる方向で検討が行われました。

 しかしながら、現行のハーグ条約実施法では、一律に間接強制の前置が要求されているために運用が硬直的になり相当でないという指摘、あるいは、執行現場で子が債務者とともにいることが必要でありますために、債務者が激しく抵抗するなどして子の心身に過度な負担を与えるような状況を生じさせているといったような指摘がされたところでございます。

 その結果、国内の子の引渡しの直接的な強制執行につきまして、強制執行の実効性を確保しながら子の心身の負担にも配慮する観点から、間接強制の前置やいわゆる同時存在の要件を不要とするなど、現行のハーグ条約実施法とは異なる規律を採用することとされたものでございます。

 これを受けまして、ハーグ条約実施法に基づく子の返還の強制執行手続につきましても、この機会に同様の観点から検討を行う必要があるとされまして、最終的に国内の規律と同様の規律を採用することとされたものでございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。議論の経過、いろいろ言っていただきまして、ありがとうございました。

 次に、子の引渡場所について伺っていきたいと思います。

 原則としては債務者の住居などにおいて行うということにしておりますけれども、その例外というのがあるかどうか、教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案では、債務者の占有する場所以外の場所で強制執行するということも想定した規定を置いております。

 ただ、この債務者の占有する場所以外の場所で強制執行するためには、執行官が、子の心身に及ぼす影響、当該場所及びその周囲の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときでなければならないとされておりますし、またさらに、当該場所が子の住居である場合を除いて、当該場所の占有者の同意を要することとしております。

山本(和)委員 要は、例外はあるということでよろしいんでしょうか。

 例えば、その例外というのが、祖父母の家以外で、例えば幼稚園であったりとか、学校とか、行く行く歩いている道とか、そういうのも考えられるのかどうかはいかがですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、例外はありまして、その典型的な例といたしましては、今委員が御指摘されました祖父母宅といったものが考えられます。

 ただ、例えば、今御指摘がありました保育所ですとか学校ということも一般論としては可能ではございますけれども、そのためには、子の利益に反することがないように、ほかの園児ですとか学童の目に触れる可能性、あるいは子のプライバシーや心身への影響等を考慮して、それでも相当と認められるというような場合に限られるということでございます。

 また、公道において強制執行することも一般論として排除はされておりませんが、そのためには、自動車の通行等に伴う危険の有無、程度のほかに、やはり近隣の者の目に触れる可能性、子のプライバシーや心身への影響等を考慮してもなお相当と認められるというような場合に限られるということでございます。

山本(和)委員 そうしましたら、債務者の住居以外の場所で執行官が子の監護を解くために必要なことというのは具体的には何を指すのか、教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、債務者による子の監護を解くために執行官がすることができる行為を明示的に規定しております。具体的には、債務者に対する説得を行うことのほか、必要に応じましてその住居等への立入り及び子の捜索を行うとともに、閉鎖した扉を開くために必要な処分をすること、あるいは債権者等と子や債務者を面会させること、あるいはその住居等に債権者等を立ち入らせることができることとしております。

 また、執行官は、債務者が説得に応じずに抵抗する場合には、債務者あるいは第三者の抵抗を排除するために、威力を行使したり、警察上の援助を求めたりすることもできることとされております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 そういう債務者の住居以外の場所での同意も必要だと思うんですが、強い権限で、今おっしゃった威力ということなんですが、執行官がいう威力というのは、ちょっと重なる質問かもしれませんが、威力というのはどういうものを指すのか、教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 執行官が行うことができる威力でございますけれども、これは人の意思を制圧する程度の有形力の行使をいうものでございます。例えば、執行官におきまして、抵抗する者に対して直接有形力を行使してその抵抗を排除することですとか、あるいは、バリケードの設置等の物理的な妨害に対して必要な限度でその撤去や破壊をすることも許されるものと考えられております。

山本(和)委員 執行官というのはその場でさまざまな個別の判断が恐らく必要になってくると思うんですけれども、例えば子の引渡しの強制執行について、執行官は、力ずくで子を連れ出すということを含めて、子に対して威力を用いることはできないということですが、では、債務者である例えば母親が子供を抱きとめて、もう離さないような場合、その母親には威力を用いることができるのか。

 また、執行裁判所の許可を得て債務者の住居以外の場所で子の引渡しを行う場合、例えば債務者の両親、子供の祖父母の家が執行場所となった場合で、その祖父母がたまたま家にいない場合でも、執行官は子供を連れていくことができるのかどうか、教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、子供以外の者に対する威力の行使でございますけれども、今回の改正案におきましては、子以外の者に対して威力を用いる場合でありましても、それが子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合についてはその威力を用いることはできないとされております。

 したがいまして、具体的なケースといたしましては、委員が御指摘されましたような、例えば債務者が子供を抱きかかえて離さないような場合にまでこれを認めることといたしますと、子の心身に有害な影響を与えるおそれがある、こういったような場合には威力を行使することはできないということになります。

 また、債務者以外の場所、例えば祖父母宅で執行する場合に、祖父母がいない場合はどうなのかというところでございますが、債務者以外の場所でその執行を行うためにはその占有する者の同意が必要でございますので、そういった同意がないままにそういう住居等に立ち入って執行することはできないということになろうかと思います。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 今のいろいろな議論の中で、やはり、強制執行というのは子供の心に傷を残すことになる可能性が過分にあると思います。子供の様子をきちんと把握するために児童心理司などの専門家の助けをかりることは重要であると思いますけれども、現行法上は、必要に応じて、当事者の費用負担によって児童心理の専門家を執行補助者として手続に関与させることができるという制度でございます。

 この制度はそのまま存続するということですが、また、当事者の費用負担というふうにも聞いておりますが、これは債権者の負担なのか債務者の負担なのか、どの程度の費用がかかるものなのかもちょっと教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、占有している者の同意が必要というふうに申し上げましたが、一定の要件のもとでは同意にかわる許可というものがされる場合がございますので、そういった執行裁判所の許可がある場合には同意がなくてもできるということをちょっと補足させていただきます。

 その上で、児童心理の専門家でございますけれども、今委員御指摘のとおり、執行官は、現行法上も、必要に応じまして、児童心理の専門家を執行補助者に選任して、その援助を受けることができることとなっております。

 具体的には、執行の現場における子の心身への影響を考慮して、児童心理に関する専門的知見を有する者を執行補助者に選任して、債権者への説明、債務者への説得、子への対応等を行わせているものと承知しております。

 一般に、そういった執行補助者として児童心理の専門家が選任された場合の費用でございますが、執行費用として最終的には債務者の負担とはなりますけれども、債権者が一旦みずからその費用を立てかえた上で強制執行を進めることとなると考えられます。

 ただ、執行裁判所は、債権者の申立てによりまして、債務者に対してこの費用をあらかじめ債権者に支払うべき旨を命ずることもできるというふうに改正法ではしているところでございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 子の引渡しに関して今いろいろとお聞きしましたけれども、強制執行に伴う子の精神的負担に関しましては、子供の安全と権利を守るということからも、債権者の要請の有無にかかわらず、執行官が必要と認めた場合は、児童心理の専門家などを補助者として置くのは義務化すべきではないかなとは思います。そこの辺は問題意識としてしっかりと対応していただければと思います。

 続きまして、養育費に関しまして聞かせていただきます。

 養育費とは子供を監護、教育するために必要な費用であると思いますけれども、離婚に伴って養育費の履行確保が困難になるケースが多くあると思います。

 養育費の取立てについて、公的機関から債務者の給与債権に関して情報を取得することができることとなるのは、両親がそろっている世帯に比べて厳しい生活を強いられている母子や父子世帯の一助になるとは思います。しかし、そうはいっても、生活をするのに精いっぱいという家庭にとって、この制度が使いやすいものなのかが重要だと思います。

 申立てをするためには裁判所に出向かなければならないと思いますし、専門家に依頼するにはお金もかかるということでございます。自力で養育費を取り立てる余裕はないのではないかと考えますけれども、こうした養育費の状況については政府は具体的にどのような支援をされているのか、お伺いしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 養育費は民事上の債権債務にかかわるものでございまして、現行制度上、その取立てについては債権者が主体となって行うこととなってございます。

 一方で、離婚した一人親家庭の生活の安定と子供の健やかな成長のため、養育費の確保は重要な課題であるというふうに認識をしておりまして、厚生労働省といたしましては、養育費の確保を支援をするという施策を行っているところでございます。

 具体的には、一人親家庭に対しまして、自治体における、弁護士による養育費相談の実施の支援ですとか、当事者からの相談に応じる養育費相談支援センター事業を公益社団法人に委託をして実施をするなどの取組を行っているところでございます。

 また、今年度からは、離婚協議開始前の父母に対しまして、養育費の取決めの重要性などについての講義を行うモデル事業も実施をすることとしております。

 引き続き、法務省とも連携を図りながら、養育費の確保に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 諸外国との比較もちょっと聞いておきたいんですが、ドイツやイギリスなどでは、養育費について公的機関が関与する制度を、取立て型や立てかえ型など、それぞれの国の事情に応じて取組を行っているということでございます。

 日本ではそのような制度はないと思いますけれども、今後検討する必要があるのか、教えていただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のような制度につきましては、その内容にもよると思いますけれども、一般に、公的機関などが養育費を取り立てたり立てかえたりという仕組みを考えた場合には、養育費が民事上の債権債務にかかわるものであることから、例えば制度の実施主体をどうするのかですとか、支払い義務者から徴収できなかった場合の負担のあり方をどう考えるかなど、さまざま検討課題があるというふうに考えております。

 また、こうした制度を導入している国々、全て私ども把握をしているわけではございませんけれども、多くの国では離婚に際して裁判所の承認が必要になっているというふうに承知をしております。

 一方、我が国では、当事者間の合意があれば養育費に関する取決めがなくとも離婚が可能というふうになっておりまして、離婚制度ですとか養育費の位置づけというものが異なるということにも留意をしていくことが必要かなというふうに考えてございます。

 ただ、厚生労働省といたしましては、先ほど御答弁申し上げましたような養育費の確保の支援施策、これは非常に重要であると考えておりますので、引き続きしっかり取り組んでいこうというふうに思っておりますし、また、今回の強制執行の申立てを容易にする民事執行法の改正法案、まさに今御審議をいただいているわけでございますけれども、この改正法案が成立した場合には、その実施状況も踏まえながら、養育費の確保に向けた取組を進めてまいりたいというふうに考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 いろいろと可能性を検討していっていただきたいと思いますし、やはり養育費に対して、子供の生育に関する権利も守る必要もございますので、重要な観点ですので、そこは支援施策等々、今後も検討していっていただきたいと思います。

 続きまして、次の質問に入らせていただきますが、今回、財産開示手続に関する規定の見直しとして、開示義務者の手続違反に対する罰則を強化しているということでございます。

 現行法では、不出頭や宣誓拒絶などなどに対しまして十万円以下の過料ということでございますが、これを刑事罰にして、六カ月以下の懲役又は五十万円以下の罰金を科すということになっています。これは非常に大きい変化なのかなと思います。

 こういうふうに厳しくした背景について説明をしていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 財産開示手続の現在の実務におきましては、債務者の不出頭等によりまして、財産の全部又は一部が開示されない事案が少なからず生じているという状況でございます。

 その原因の一つといたしましては、債務者の不出頭等に対する制裁が弱いことが挙げられます。開示義務者であります債務者が金銭債務の履行を怠っているものであることを踏まえますと、現行法の制裁は三十万円以下の過料でございますが、こういった金銭的な制裁のみでは債務者に対する十分な威嚇とならないと考えられるものでございます。

 そこで、この法律案におきましては、債務者の出頭等を確保し、この手続の実効性をより高めるために、不出頭等に対する罰則を強化することとしているものでございます。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 先日の本会議において、財産開示手続の申立て件数が少ない理由や、財産開示手続において実際に債務者の財産情報が開示される事件数が少ない理由について、要は、財産開示手続の実効性が乏しい原因として、債務者の不出頭に対する制裁が弱いと考えられると大臣は御答弁されていました。

 制裁を強めることで実効性を高めようということなんだと思いますが、そこで、近年の財産開示事件の不開示の件数のうち、不出頭によるものの割合はどのくらいなのか、そのうち過料事件として立件されたのは何件なのか、教えていただければと思います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 平成二十九年の数字になりますけれども、財産開示手続の申立て件数は六百八十六件でございまして、既済件数は六百八十一件でございます。既済事件のうち、債務者の不出頭を含みます不開示の件数は二百六十九件となっております。

 過料に関する全国的なデータはございませんが、平成二十九年の東京地裁本庁における財産開示事件の既済件数が百四十二件ございますけれども、過料事件の立件数は四十件で、処罰件数は二十六件というふうになっております。

 同様に、平成二十九年の大阪地裁本庁における財産開示事件の既済件数は三十九件でございまして、過料事件の立件数は十三件、処罰件数は十二件となっております。

 以上でございます。

山本(和)委員 今の数字を聞きますと、申立て件数に対して、処罰を受けている件数は少ないのかなと思いました。このことも開示手続の実効性が乏しいことの原因になっているのかなとか思ったりもしますけれども、重い刑が設定されたとしても、実際に立件や処罰がなされなければ何ら変わらないと思いますので、刑の重さだけではなくて、立件や処罰が適切に行われるかどうかというところが重要なのかなと思いますので、その点はぜひ御留意いただければと思います。

 次に、今回新たに、第三者からの情報取得手続制度の創設が提案されています。この制度では、特に債務者の個人情報という観点から慎重な配慮が必要であると考えられます。

 今回の財産開示手続において、申立て権者の範囲を拡大して、仮執行宣言つき判決や、養育費などの支払いを公正証書により取り決めた者も利用できるようにする、その実効性の向上を図るために債務者の不出頭などには刑事罰を科すということで、債務者みずからが協力せざるを得ないような見直しを行うというふうにしています。

 現行の財産開示制度の見直しにとどめず、第三者からの情報取得手続の制度をつくる理由、それはどういったものなのか、教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 金銭債権についての強制執行は、原則として、債権者が執行の対象となる債務者の財産を特定して申し立てることとされております。

 その点は、これまでの実務では、債務名義を取得した債権者は、強制執行の申立てをする準備として、財産開示手続などを活用して債務者の財産に関する情報を収集しておりましたけれども、先ほどお話がありましたとおり、財産開示手続につきましては、債務者の不出頭により、その財産に関する情報が開示されない事案が少なからず生じているという状況でございます。

 また、本法律案におきましては、今御指摘ありましたとおり、債務者の不出頭等に対する罰則を強化しておりまして、これによりまして債務者による財産開示の実効性が上がることが期待されますけれども、この罰則の強化による効果も一定の限界もあるのではないかと思われるところでございまして、それだけでは必ずしも十分とは言えないと考えられます。

 そこで、この法律案では、債権者がより確実に債務者の財産状況を調査することができるように、債務者以外の第三者に対して債務者の財産に関する情報の提供を義務づける制度を新たに設けることとしたものでございます。

山本(和)委員 平成十五年にこの制度の導入が見送られた理由が債務者の個人情報の保護であったということでございますけれども、この第三者からの情報取得手続制度において、具体的にどのように債務者の個人情報の保護を担保しているのかどうかもお聞かせいただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案におきましては、第三者からの情報取得手続により得られた情報につきましては、債務者のプライバシー保護の観点から、当該債務者に対する権利行使以外の目的のために利用し、又は提供してはならないものとしているところでございます。その上で、この規定に違反した者については三十万円以下の過料に処すことができるものとしております。

山本(和)委員 そうしましたら、債務者の預貯金債権等に係る情報について財産開示手続の前置を不要としたというふうに聞いておりますが、それはどのような理由からなのか、伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 第三者からの情報取得の手続でございますけれども、情報の提供を求められる第三者は、いずれも当該情報について債務者に対して守秘義務を負っているものと考えられますこと等を考慮いたしまして、この法律案では、基本的には、まず財産開示手続が実施され、債務者が自己の財産を秘匿する正当な利益を有しないと考えられる場合に、第三者からの情報取得手続の申立てを認めることとしております。

 もっとも、預貯金債権等につきましては、不動産ですとか給与債権と異なりまして、その処分が通常容易でありますことから、財産開示手続の前置を要求いたしますと、その間に債務者によって預貯金の払戻しがされてその金銭が隠されてしまうおそれがある、こういう点で特別な配慮が必要でございます。そこで、この法律案では、預貯金債権等に関する情報の取得の手続では財産開示手続の前置を不要としているものでございます。

山本(和)委員 なるほど、よくわかりました。

 そうしましたら、現行の民事執行法には、不動産や債権に対する強制執行の手続においては、請求債権の額を超える差押えとか売却を避ける趣旨のルールがあると思います。請求債権の額を超える財産情報を収集する必要はないのかなと思いますけれども、今回の改正案にはこのような制限がついているのか、請求債権の額を超える債務者の財産情報を収集することができるようになるのかどうか、そのような規律にしたのかどうかをちょっと教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案におきましては、第三者からの情報取得手続におきまして、情報提供があった財産の総額が債権者の請求債権の額を超えている場合でありましても、債権者はこの手続で得られた情報を取得することができることとしております。

 御指摘のように、債権額の限度でのみ情報提供する、もしこういうような仕組みを実現するということといたしますと、例えば、第三者から執行裁判所に対して回答が送付された段階でその財産の総額が債権者の請求債権の額を超えるときには、執行裁判所の判断によって債権者に提供する情報の範囲を制限する、こういった仕組みを採用することも考えられるところでございます。

 ただ、このように範囲を制限いたしますと、申立人のほかにも債権者がいる場合には、結局、その後に行われます強制執行等の手続におきまして案分配当がされて、結局、申立人において十分な満足を得られなくなるというおそれがある、そういう問題もございます。

 このような理由から、先ほど申し上げましたような制限は設けていないというものでございます。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので、これで終わります。ありがとうございます。

葉梨委員長 以上で山本和嘉子君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 今の山本委員の質疑の中でありましたけれども、今回、財産開示手続でうそを言った場合の罰則を強化するということが盛り込まれているわけですが、幾ら罰則を強化しても適用する気がなければ意味がないわけでありまして、検察の方もしっかり、罰則を強化したら運用する、そのためにしっかり捜査をする、これが絶対条件だと思います。

 ところで、森友問題で、さきの検察審査会の不起訴不当という議決は、まさに検察が捜査をいいかげんにやっていたのではないかということをうかがわせるわけです。

 国民に対しては、財産開示手続でうそを言ったら罰則強化だ、ところが、国税庁の長官は、国会でうそを言っても、そして公文書を改ざんしても処罰されないということであれば、とても検察への信頼は成り立たない。そして、今回の罰則強化ということについても、私も納得はできないと思っております。

 ところで、その検察審査会の議決なんですけれども、多岐にわたって、多数の被疑者について、多数の行為について、不起訴不当という議決がされているわけです。私もきのう見ました、議決の要旨文。その中で、特に今回、あえて一つだけ取り上げますけれども、皆さんのお手元の資料の最後のページです。

 佐川元国税庁長官が、他の関係者と共謀の上、土地取引に係る決裁文書の記載のうち、総理大臣夫人に関する記載を全て削除して変造し、その写しを国会に提出したという被疑事実に関するものです。そして、検察はこれについて、有印公文書変造、同行使の罪について不起訴としたわけですけれども、それに対する今回の検察審査会の議決を抜粋しましたのがこれです。

 まず、作成権限の有無というところでいえば、全くないとは言い切れない。まあ、あるということを言っているわけですね。そして、変造かどうかということについていえば、変造だというふうに言っています。

 そして、その上で、佐川元国税庁長官は、直接変造したというよりは共謀共同正犯ではないかということで、指揮命令を下したのかどうかというのが問題なんですけれども、ここの真ん中よりやや下を見ていただくと、被疑者佐川、国有財産行政を所掌する財務省理財局のトップであり、当時は財務省理財局のトップでした、本件行為は自身の国会答弁に起因したものであるということをまず言っています。

 この国会答弁というのが、まさにうその答弁だったわけですね。うその答弁を隠蔽するために公文書の変造とか行使というのがされていたのではないかという被疑事実なわけですけれども、これについて次のところ、実質的な指揮命令権を有しており、部下の供述等からしても、指示していないという本人の供述には信用性がない、こういうふうに審査会の方では認定しております。

 供述に信用性がないのは当たり前で、そもそも国会答弁でうそをついたりする人ですから、自分は指揮命令を下していないという供述など信じられるわけがないわけでして、部下の供述は、その信用性がないという方向を裏づけるようなことを多分言っていたんでしょう。この要旨の文章からは、その具体的な中身はわかりませんけれども。

 ということで、検察審査会の言っていることは、検察官ははなからやる気がないんじゃないかというようなことで、不起訴不当だという結論に至っているわけですけれども、こうした検察に対する厳しい姿勢について、検察をつかさどる法務大臣として、今回の議決に対してどのような見解でいらっしゃるか、お答えをお願いします。

山下国務大臣 御指摘のとおりの議決がなされたということは承知しておりますけれども、個別の検察審査会の判断について法務大臣がコメントするということは差し控えさせていただきたいと考えております。

 また、これは、今回の議決を踏まえて、検察当局については、適正にその後の手続を進めるのであろうというふうに考えております。

階委員 繰り返しますけれども、今回の民事執行法改正案で、うそをついたら厳しく処罰しましょうということを掲げているわけですから、うそをついた佐川氏に対しては、厳しく捜査をして、これは公開法廷で真実を明らかにしていただきたいと思います。そのことを法務大臣に強く申し上げたいと思います。

 本題に入ります。

 質問番号二番は、ちょっと時間があったらやりますので、最初に三番からお願いしたいと思います。

 きょうは金融庁にも来ていただいておりますけれども、今回、情報提供の対象として、金融機関の預貯金口座の内容について情報提供を求められることになっているんですが、今この低金利、マイナス金利という時代において、わざわざ銀行に預金するよりも現金で持っていましょう、ただ、現金を安全に保管するために銀行の貸し金庫を使いましょう、こういうケースは間々あると思うんです。お客さんは、貸し金庫契約に基づいて、寄託物返還請求権という債権を持っていますね。それについて差押えができるということは確定した裁判例であると思います。

 ところで、そもそも当該債務者が貸し金庫契約をしているかどうか、これはなかなかわからない。そこで、今回せっかくの情報取得手続というのを設けるのであれば、金融機関に対して、貸し金庫契約をしているかどうか、これも問い合わせて答えてもらう仕組みにするべきではないか、その方が債権回収の実が上がってくるんじゃないかと思っております。

 ところで、金融庁に聞きたいのが、もしそうした仕組みで、金融機関に調査して貸し金庫契約があるかないか情報提供せよといったときに、実務上は対応可能なのかどうかということについてお答えいただけますか。

中村政府参考人 お答えいたします。

 今回の法律案では、貸し金庫は第三者からの情報取得手続の対象としてはいないということでありますけれども、金融機関におきましては、これは当然のことながら、顧客との関係で守秘義務を負っている契約でありましても、開示をせよというような法律的枠組みがあれば、一定の時間軸は必要かと思いますけれども、しかるべき対応とか体制整備とか、そういうものは行っていくものだというふうに考えております。

階委員 だから、制度として定めればこれはできるということなんですが、実務上もですね。

 そこで、法務省に聞きますけれども、なぜ貸し金庫契約については今回の情報取得手続の対象に入れなかったのか、私は入れるべきだと思っていますけれども、その点についての見解をお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案で情報取得手続の対象となるもの、その対象となる第三者をどの範囲にするかという点につきましては、これは、一つは強制執行の準備のために取得する必要性が高いかどうか、あるいは、その第三者の方が情報提供する体制が整っているか、こういったようなことを考慮した上で、類型的にそういった情報取得を命ずることを正当化できるもの、こういったものを抽出して、個別的に規定をするということにしたものでございます。

 今、その体制につきましては、もし法律で決められた場合には体制を整備というお話もありましたけれども、やはり、法律をつくる際におきましては、現在における管理体制といったものをやはり考慮の必要があろうかと思っております。

 この貸し金庫契約に関する情報の管理体制につきましては、銀行等によってやはりさまざまであると考えるところでございまして、こういった第三者からの情報取得手続の対象に含めることにつきましては、そういった体制のことを、現時点での体制を考えると、この対象とするメリットは必ずしも大きいものではないと考えられることから、今回ではこの対象にはしていないというものでございます。

階委員 まず、必要性と体制ということをお話しされましたけれども、必要性については、さっき言ったとおり、あると思っています。体制については、施行開始の時期を一定程度、間隔をあければ、これはいいと思っていまして、かつ、金融庁からも、実務的な観点から、制度ができれば対応しますということだったので、これはぜひやっていただきたいと思いますよ。これをやらないと、せっかくの財産の情報を取得する手続が十全には機能しない。私は、これはやるべきだと思います。

 大臣にもちょっとこの点について、今の議論を聞いていて、コメントをお願いします。

山下国務大臣 貸し金庫に対する御指摘でございますが、今回の法案では預金債権についての情報については含めていて、貸し金庫債権については含めていないわけでございますけれども、ここの点について、やはり局長が申し上げたような必要性の程度、あるいはその他の執行方法について、また金融機関の体制等も総合考慮した上で、今回は含めなかったということでございまして、なお執行実務等の状況も見ながら今後も検討してまいりたいと考えております。

階委員 これをまずやるべきだということを申し上げたいと思います。

 それともう一つ、財産が隠匿される手段として仮想通貨というものが利用される、こういう懸念もあるんではないか。実例を、きょう、二ページ目、三ページ目につけておりますけれども、日経新聞の去年の六月ですね。

 きのう、この事件の代理人を務められました藤井さんという弁護士さんと、夜、お話を電話でさせていただきました。

 犯罪被害者の方が、加害者からだまし取られた仮想通貨の代金を回収しようと思って、それで裁判で勝訴して、裁判所に、仮想通貨交換会社に対する差押命令を申し立てて、差押えが認められたそうなんです。ところが、差し押さえられた仮想通貨交換会社というところが、かなり問題のある会社だったらしいんですけれども、この会社が差押えに応じなくて、本来差押えがかかれば当該債権について弁済とかは禁じられるんですが、入出金を適当にやっていた、こういうことなんですね。差押えの効力が全く発揮されなかったということなんです。

 ところで、この記事の後半、次のページあたりには、会社によっては差押命令が来たらちゃんと応じている、こういうケースもあるそうなんですね。

 そこで、また金融庁にお尋ねしますけれども、そもそも仮想通貨交換会社に対して、お客さんの側では、仮想通貨を預けていたとした場合に、仮想通貨そのものを、よくわかりませんが、自分の方に返せとか、あるいは仮想通貨を日本円に換金した上でその代金を口座に振り込めとか、そう言う権利があると思うんですね。つまり、これも債権ですよ。この債権を差し押さえすることは法的にできるのかできないのか、そして差し押さえした場合にその効力はしっかり交換会社に及ぶのかどうか、この点について、金融庁から見解をお尋ねします。

水口政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる暗号資産の移転につきましては、いわゆる秘密鍵というパスポートが必要でございまして、暗号資産交換業者が秘密鍵を管理している場合では顧客の暗号資産を移転させるということは可能でございまして、その意味では差押命令に対応することは可能であるというふうに思ってございます。

 この場合、暗号資産交換業者におきましては、通常ですが、利用規約に基づきまして、差押命令を受けた顧客によるサービスの利用を停止、解約して、顧客の暗号資産を法定通貨に換金した上で指定口座に送金するといった手続をとるというふうには聞いてございます。

 金融庁といたしましては、先ほど差押命令のお話がございましたけれども、差押命令を含む民事執行制度の趣旨を踏まえまして、関係法令を適切に遵守するように、必要に応じて暗号資産交換業者に促してまいりたいと考えてございます。

階委員 一定の場合に差押えの効力は交換会社に及ぶという趣旨だったと思いますが、そうすると、私、この仮想通貨というものもかなり今流通しているといいますか、値段が上がっているといいますか、かなりの財産額が世の中にはあるんだと思うんですね。これが、かつ、債務逃れのツールとして使われるようなことがあってはならない、こう思います。

 差押えができるというお話であれば、差押えをする前提として、情報取得手続の対象に、この交換会社というものも相手方に含めていいのではないかと思っております。

 この点について、法務省の見解を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、この情報提供の対象にするかどうかは、その必要性を考慮するというふうに申し上げました。その場合には、実際の債権差押えの実務においてどういったような特定が必要なのか、その特定に困難が、難しい面があるかどうかという点が問題なのかと思います。

 預貯金の場合には、今、判例で、その支店を特定しなければいけないというふうになっております。ただ、恐らく、暗号資産と呼ばれるようになるようでございますが、これにつきましては、一般的に、債権の差押えの場合に、その債権の特定は、厳密に特定することまでは要求されていないものと承知しております。

 したがいまして、こういった暗号資産につきましても、探索的な形で強制執行の申立てをすることが考えられるということでございますので、先ほど申し上げました預貯金等に比べますと、こういったメリットが大きくないものと考えられることから、今回は対象にはしていないということでございます。

階委員 要するに、情報取得するまでもなく、いきなり差し押さえすればいいということなんだと思うんですけれども、ただ、銀行と違って、交換会社というのが、どこにどんなものがあるのかというのがよくわからないですよね。

 それで、例えば、金融庁さんに、ちょっと通告していませんけれども、もしわかればですけれども、そういう交換会社の業界団体みたいなのがあるんじゃないんですか。そこに調査をお願いして、その業界団体を通じて、その債務者がどこかの交換会社を通じて仮想通貨を持っているんじゃないかということを調べてもらったりすることができると、これは債権者の側、特に犯罪被害に遭った方なんかにしてみると使い勝手がいいなと思うんですけれども、そういう、業界団体が各加盟の業者さんに対して情報提供を求めてくださいみたいな仕組みは考え得るのかどうか。

 もし、今の段階で何も考えていないということであれば、それで結構です、通告していませんから。コメントをお願いします。

水口政府参考人 失礼いたします、ちょっと突然のお尋ねでございますので。

 いわゆる暗号資産交換業者につきましては、自主規制機関というのが昨年十月にできてございます。この自主規制機関の趣旨は、あくまで、資金決済法という法律の登録の場合に、資金決済業というところの法令遵守の自主規制をしてもらうということが趣旨でございまして、民事執行法若しくは今回の民事執行法の改正に対してどのように対応できるかできないか、若干そこは、基本的に、この法令自体が今回法務省さんの所管でございますので、そこまで自主規制機関に情報提供するというのは、今のところでは想定してございません。

階委員 突然の質問で失礼しましたけれども、また後で、この点についてはちょっと御議論させていただければと思います。

 最後に、今回の法改正の中で、差押禁止債権の範囲変更の申立てというのを債務者側からより使い勝手をよくしようという趣旨の変更がありますね。使い勝手をよくするというのは、ある意味、債務逃れを助長しかねない面もあると思っていまして、そういう濫用的な範囲変更を防ぐ、これも重要な視点なのかなと。

 ところで、今回、この範囲の変更の申立てがあった場合に、民事執行法の五条で、一般規定ですけれども、審尋というのができることになっていますけれども、やはり、佐川さんじゃないですけれども、うそつきが多い世の中ですから、審尋をするというのはすごく重要だと思うんですね。裁判所が審尋をするのはどのようなケースなのか、教えていただきたいと思います。

葉梨委員長 門田民事局長、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 差押禁止債権の範囲変更の申立てがありますと、執行裁判所は、多くの場合、相手方、債務者の申立ての場合は債権者ということになりますけれども、これを審尋して、双方の生活状況その他の事情について主張、立証の機会を与えた上で、決定しているものと承知しております。

階委員 その実務を聞きますと、債務者がうそをついている場合、今、審尋の相手は債権者を想定しているわけじゃないですか。債務者がうそを言っている場合に、チェックする機能がないんじゃないですか。債務者がうそをついているかどうかというのは、何で、その申立ての書面だけでチェックするんですか。それだと危ういと思いますけれども、どうでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 審尋の方法としてはさまざまな方法があるかと存じますけれども、債務者、債権者という対立関係にある者から審尋で話を伺うということになりますので、債務者がうそをついている場合には債権者からの指摘等があるのではないかというふうに思います。

階委員 いや、だって、債権者にしてみると、債務者の財産内容というのはほとんど知らない場合が多くて、今回、それで情報の提供の手続とかも設けているわけじゃないですか。具体的な債務者の懐事情なんか普通はわからないわけですよ。だから、債務者がうそをついているかどうか、当然わかるわけがなくて、むしろ債務者にちゃんと審尋をして、例えば、養育費の負担を免れるためにうそを言っているんじゃないか、あるいは犯罪被害者からの損害賠償を免れるためにうそを言っているんじゃないか、そういうことをチェックする必要があると思いますよ。それは重要だと思いますよ。やらないんですか。

 済みません、時間をちょっと超過していますが、源馬さんの時間の範囲内で。

葉梨委員長 では、国民民主党の時間の範囲内で。

 門田民事局長。

門田最高裁判所長官代理者 債務者の方から申立てがありますと疎明資料も出てまいりますので、それも含めて検討することになりますし、疑問があれば債務者の方に再度審尋をかけるということもあろうかと思います。

階委員 そこで、最後の質問、法務大臣にお尋ねします。

 こういうふうに債務者がうそをついている場合にチェックすることも必要なんですけれども、さっきから言っているように、世の中うそつきが多いので、審尋でうそをつく人もこれは多分にあると思うんですね。そうした場合に備えて、まさに今回、財産開示手続ではうそつきの人の罰則を強化しているわけですけれども、こうした審尋でうそをついた場合にも罰則を設けるべきではないかと思います。この点について、大臣の答弁を求めます。

山下国務大臣 民事手続においては、例えば民事訴訟の当事者尋問において、当事者が宣誓の上で虚偽陳述をした場合でも、刑事罰の対象とはされておりません。そしてまた、現行の民事訴訟法においても、当事者が手続の過程で虚偽の主張をしたとしても、それのみで当事者を処罰することとはしておりません。これは、当事者の主張、立証がなされる中で、裁判所が客観的な第三者として判断するという構造の場合において、当事者が宣誓の上で虚偽の陳述をした場合でも、必ずしも直ちに刑事罰を発動するということはしていないというふうに考えております。

 他方で、御指摘のあった今回の法案改正につきましては、陳述について刑事罰により担保しているのは、これは必ずしも主張、立証が当事者同士でなされないというふうな構造もございまして、その陳述の真実性を刑事罰により担保することが必要なものに限って刑事罰を科するということにしたものでございまして、そのため、今回は、差押債権の範囲の申立て、これは当事者同士で主張、立証するということでございますので、これについては刑事罰の対象とはしなかったというところでございます。

階委員 理論的にできないということはなくて、民事執行法二百五条一項一号には、審尋のときにうそを言った人を処罰する罪も設けられています。今の答弁もちゃんと精査して、引き続き議論をさせていただきたいと思います。

 終わります。以上です。

葉梨委員長 以上で階猛君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。国民民主党の時間の範囲内でお願いいたします。

源馬委員 国民民主党の源馬謙太郎でございます。

 まず、今回の改正案について、代表質問でも御指摘があったと思いますし、この委員会の質疑でも指摘があったと思うんですけれども、そもそも、不動産競売における暴力団員の買受け防止ですとか債務者財産の開示制度といったものと、子の引渡しに関することというのがいろいろ一緒になっていて、私は、国民の目からするとこれは非常にやはりわかりにくいんじゃないかな、何で一緒にしなくてはいけないのかなという疑問がまず思い浮かびます。

 全く中身が違う性格のものを無理に一緒にしなくてもいいのではないかと思いますが、改めて大臣に、なぜあえてこれらを一つの法案にしたのか、束ねる必要があったのか、伺いたいと思います。

山下国務大臣 本法律案で取り上げている改正事項は、いずれも民事執行手続にかかわるものでございまして、その見直しが喫緊の課題となっているものでございます。また、ハーグ条約実施法、これは国際的な子の返還の強制執行に関して民事執行法の特則を定めておるということでございまして、両者は密接に関連するということで、同時に改正する必要があるということでございます。

 そのため、本法律案においては、いずれも民事執行法に密接にかかわる、民事執行法それ自体あるいはそれに密接にかかわる実施法であるということで、一つの法律案の中に盛り込ませて御審議いただくということでございます。

源馬委員 それぞれ三つのものに共通項があるということは、私も理解をいたしました、今の御答弁でも理解をいたしました。ただ、今大臣がおっしゃった、一つにする必要があるという、その必要性まで本当にあるのかなというふうに思います。

 逆に、これは、せめてハーグ条約に関することだけ、子の引渡しに関することだけ別にするというふうにした場合、何か不都合やデメリットはあるんでしょうか。

山下国務大臣 先ほど来も幾つか答弁させていただいた部分もあるんですが、子の引渡しに関しては、民事執行法の物の引渡しに関する条項を類推適用しているというふうなところがございます。そういった意味において、民事執行法の解釈全体について、その規律をどうするかといった問題が直接かかわってくる問題でございます。

 債務者財産の開示につきましても、これは執行の実効性をどう確保するかという問題でございます。また、暴力団員等について買受けを防止するというのは、この民事執行法全体の目的をどう達成するかということにかかわるものでございますので、これらは民事執行法の目的及び手続をどう考えるかということに密接にかかわりますので、これを切り離して審議するよりは、統一的に御審議いただいた方が審議に資するというふうに考えたところでございます。

源馬委員 大臣のおっしゃることもわかりましたし、共通項があるということはもちろんわかるんですけれども、例えば新聞報道を見ても、この三つをまとめて報道しているところは余りなくて、それぞれの、口座の財産開示請求手続がこうなるよとか、暴力団員の取得がこうなるよとか、子の引渡しはこうなるよというのは、やはりばらばらに報道されるわけですね。なので、国民から見たらやはりばらばらのことであって、国会の審議の手続上、一緒にやった方がいいということだけで、無理に一緒にしなくてもよかったのではないかなと私は感想を持っております。

 続きまして、まずは、今回のこの法改正の中で財産の開示に関するものがありますが、それに関連をして、養育費の不払いの実態について、まずお伺いしていきたいと思います。

 裁判所の判決や調停で支払い義務が確定したにもかかわらず、なかなか養育費が払われないという現状が深刻になっている。これはたびたび報道もされているところでございます。

 最高裁によると、全国の家庭裁判所において養育費を求める審判や調停は本当に二万件台で毎年推移をしているという一方で、厚生労働省によると、養育費の取決めをした母子家庭はわずかに四二・九%、そして、実際に養育費を受け取れているのは全体の二四%ともされている現状があるわけでございます。

 今回の法改正でも、それを少しでも改善していこうということがあるともちろん考えておりますけれども、そもそも、この養育費の不払いの問題というのがこれだけ深刻になってしまっている、そのそもそもの原因というのはどこにあるのか。制度にあるのか、それとも人間の人間性にあるのか、どういったところに根本的な問題があるとお考えなのか、お伺いしたいと思います。

平口副大臣 お答えをいたします。

 養育費が支払われない理由は、個々の事案によってさまざまであるというふうに考えられますが、厚生労働省による平成二十八年度全国ひとり親世帯等調査の結果によりますと、養育費の取決めをしていない理由として、まず、相手とかかわりたくないということや、相手に支払う能力がないと思ったということが上位に挙げられているところでございます。

 このような調査結果からすれば、離婚した夫婦の間で交流がないことや、養育費の支払い義務者の資力がないことなどが主な原因として考えられるところでございます。

源馬委員 今、副大臣から御答弁いただいたものは、恐らく、相手とかかわりたくないとか支払い能力がないと思ったということは、そもそも要求をしていないケースの原因なのかなと思います。払ってもらいたいのに、それを払ってもらうすべがないというか、そういうケースもやはりあるんだと思います。

 その上で、今回のこの財産開示制度、これは一つ前に進むものだと思いますが、一方で、例えば、ドイツで養育費立てかえ法というのがあるそうで、行政が養育費を立てかえるという仕組みがあるそうです。あるいはアメリカでも、連邦社会保障法によって、給与からの天引きがあったりとか、所得税還付のときの相殺、あるいは運転免許証の停止なんかも含まれているという制度もあるそうです。イギリスでも、不払いの親の給与から養育費を天引きして、あるいは収監までするという制裁もあるというふうに聞いております。

 一方では、給与を、余りにも差押えをどんどんしていくということは、これはやはり債務者の方の人権にもかかわりますし、余り過度な強制執行というのは日本にすぐなじむとは思いませんが、一方で、こうした困っている、特に子供が関係する養育費をしっかりと守っていくということに関しては、こうした諸外国の例も一定の効果はあると思うんですけれども、そういったことについての法務省の見解をお聞かせいただきたいと思います。

平口副大臣 お答えをいたします。

 養育費の取決めが適切に行われ、その取決めが確実に履行されるということは、子の利益を図る観点から極めて重要なことであるというふうに認識しております。

 もっとも、民事上の債権債務関係である養育費の支払いについて、御指摘のような公的機関の関与する措置を講ずるということについては、その是非を含めて、さまざまな意見があると考えられるところでございます。

 したがいまして、関係省庁とも連携しながら、慎重に検討する必要があるというふうに考えております。

源馬委員 慎重で構わないと思うんですが、ぜひ、そういったことも検討の俎上には上げていただけると、困っている一人親の家庭もしっかり守っていけることにつながるのかなというふうに思います。

 今度は、養育費ではなくて、犯罪被害者の方のケースについて少しお伺いしたいと思います。

 これは去年の報道ですけれども、こういった同じような報道はこれまでも多々されておりますけれども、民事訴訟において、犯罪の被害に遭った方が、約五千五百万円の賠償金が支払われることになったんだけれども、それから結局一円も支払われていないというケースが報道されておりました。また、殺人ですとか傷害致死事件で二〇〇五年以降に賠償命令が確定した十三件のうち、十一件では賠償金が全く支払われていないということがあるというふうに報道されています。

 特にこうした、離婚の場合は、もともと夫婦だったので相手の口座を特定できるという可能性というのはまだ残っていると思うんですけれども、それでも厳しい状況だと思いますが、犯罪において、被害者が加害者の口座を特定するというケースはほとんどないわけでございます。

 まず初めに、今御紹介した、十三件賠償命令が確定して、十一件で賠償金が支払われていないというようなケースを御紹介しましたけれども、政府として、犯罪被害者の遺族が、実態、賠償金をどのぐらいの割合で受け取れていないかという、こうした割合を把握しているのかどうかをまずお伺いしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 警察庁の平成二十九年度犯罪被害者類型別調査、調査結果報告書によりますと、殺人、殺人未遂又は傷害等の暴力被害の被害者等につきましては、加害者から賠償を受けている割合が一〇・二%、一〇・二%の者が賠償を受けているものと承知しております。

源馬委員 やはり、一〇・二%というのは本当に深刻な数字だと思います。

 犯罪で被害を受けた人が、それだけでもきついのに、賠償金をちゃんと受け取れているのがたった一〇%、一割ということは、やはり、制度としても何か考えていかなくてはいけないですし、被害者をしっかり守っていくという視点に立ったら、もう少し本腰を入れて何かできることを考えていかなくてはいけないなというふうに思います。

 その上で、犯罪を起こして刑務所に服役をしている受刑者というのは支払い能力がどうしても低くなってしまうということも当然だとは思うんですけれども、例えば、本当に微々たるものですけれども、刑務所での刑務作業の報酬金を強制的に弁済に充てるような仕組みにしていくとか、これはもう本当に、とてつもなく、賠償金の額に届くには長い道のりだとは思いますが、こうした少しのことでもやっていくという、そういった仕組みづくりの可能性というのはないのか、政務官にお伺いしたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 刑務作業における作業報奨金につきましては、刑事収容施設及び被収容者の処遇に関する法律第九十八条第一項において、受刑者の釈放の際、その時点での計算上の金額である報奨金計算額と同額の金額で初めて確定するものとされております。したがいまして、釈放前の段階で、作業報奨金の支給を受ける権利というものをそもそも観念する余地がありませんので、その譲渡しや差押えということも観念できないとされております。

 他方、一方、刑事収容施設法第九十八条四項においては、この作業報奨金の釈放時支給の原則に対する特別な規定がございます。すなわち、受刑者が釈放前に作業報奨金の支給を受けたい旨の申出をした場合、その使用目的が、被害者に対する損害賠償への充当等相当のものと認められる場合には、その支給のときにおける報奨金計算額に相当する金額の範囲内で、申出の額の全部又は一部を支給し、被害者への損害賠償に充当する制度がございます。

 作業報奨金は釈放後の更生のための資金という意味合いもございますが、被害者に対する損害賠償に充てることは、改善更生、円滑な社会復帰の促進という観点から望ましいことでもございます。そのため、同制度を十分に活用するため、刑執行開始時における指導等の際に告知をしているほか、居室内に備え付けている冊子等に記載して周知を図っております。

 受刑者に対する指導等により、引き続き、このような制度を利用させるなどして、被害者への損害賠償が図られるように努力してまいりたいと考えております。

源馬委員 一方では、例えば養育費の支払いの義務がある債務者が、この人も当然給与を受ける権利はあると思うんですが、それは差し押さえることができる。他方で、服役をしている受刑者が報酬を受ける権利はあるんだけれども、当然賠償金を支払う義務があるんだけれども、それを差し押さえることは制度上できないというのは、少しバランスが悪いのかなと思います。

 今御紹介いただいた制度では、受刑者の善意があって自分が受ける報酬を賠償金に充てたいからということを申し出た場合、それができるということは、なかなかそれは、立派な受刑者ばかりだったらいいんですが、そうもいかないのではないかな。ある意味、強制執行にかわるぐらいの、差し押さえることができるような制度というのはつくれる可能性がないのか、改めて今後の見通しを教えていただければと思います。

門山大臣政務官 先ほど答弁させていただいたとおり、作業報奨金の性質、すなわち、確定する時期の問題と、あと作業報奨金の意義という点から考えて、当然これは債権者にとっては大きな問題ではあるんですけれども、そういう考量の中で現行法は今そういう構造になっているんじゃないかというふうに理解しているところでございます。

源馬委員 それでは、この前もちょっとこの委員会質疑で取り上げたコレワークの制度があったと思うんですが、例えば、そういった協力雇用主をどんどんふやしていくという方針があると思いますが、受刑者が出所した後に協力雇用主の皆さんのもとで働いている場合に、例えばそういったところで天引きができるような仕組みというのをつくっていくことはできるんでしょうか。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 犯罪の加害者に関しては、損害賠償請求権を有する被害者やその遺族は、確定判決等の債務名義を得た上で、その加害者に対する給与債権の差押えをすることにより、雇用主から直接その給与債権を取り立てるということができます。

 また、今回の法律案におきましては、生命身体の侵害による損害賠償請求権の債権者が第三者から債務者の勤務先に関する情報を取得する手続を新設することとしております。この改正により、勝訴判決等を得た債権者は、給与債権を含む債務者の財産を把握しやすくなり、強制執行が容易になるものと考えております。

 一般に、犯罪被害者の中には、突然犯罪に巻き込まれ、あらかじめ加害者との接点がなく、その財産状況を知ることができない方がいると考えられることから、この改正は犯罪被害者の権利実現の実効性の向上に資するものと考えております。

 他方、この給与債権に対する強制執行を超えて、当然に協力雇用主等から犯罪加害者に支払われるべき給料の天引きを認める制度を設けることにつきましては、そのような行政の関与の必要性の有無を含め、慎重な検討を要するものと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 先ほどの養育費の問題同様、いろいろな方策を、もちろん慎重に議論していただければいいんですが、考えていただければなと思います。

 次に、債務者財産の開示制度の実効性の向上の部分についてお伺いをしていきたいと思います。

 先ほどから議論されておりますけれども、今回の概要で、預貯金債権や上場株式や国債などに関する情報を取得することができる、あるいは登記所から土地や建物に関する情報を取得することができる、そして市町村や日本年金機構等から給与債権に関する情報を取得できる、こういった中身だというふうに思います。

 この中で、先ほど階委員の御指摘にもありましたけれども、私も、やはり仮想通貨というのはこれからしっかり考えていかなくてはいけないものだなと思います。交換所だけではなくて、ウオレットを運営している会社も含めて、やはり情報を開示することぐらいまではできる仕組みにしていくことができるのではないかなというふうに私も思っております。

 ですので、先ほどと繰り返しになってしまいますが、仮想通貨が今回入っていない理由と、加えて、生命保険の情報が今回入っていないという理由について、お伺いをしたいと思います。

門山大臣政務官 今回の法律案におきましては、生命保険契約の解約返戻金請求権や、御指摘の仮想通貨、今後は暗号資産と呼ばれていくことになるようでございますけれども、これらについては情報取得手続の対象とはしておりません。

 生命保険を対象としない理由でございますけれども、確かに、法制審議会においては、各保険会社から債務者の解約返戻金請求権に関する情報を取得する手続についても検討はなされました。しかし、現在の実務においては、保険契約の内容等を厳密に特定することなく返戻金請求権の差押命令を発付することとされておりまして、債権者は各保険会社に対し探索的な形で返戻金請求権の差押えを申し立てすることができるため、各保険会社からの情報取得手続を設けたとしても大きなメリットはないと考えております。

 また、生命保険契約に基づく将来の保険金の支払いが債務者の生活維持のために重要な役割を果たす場面があり得るとの事実認識を前提として、返戻金請求権が差し押さえられると生命保険契約が解約されてしまうことになりますけれども、そのような状況になると、他の財産、これは預金債権等ですけれども、が差し押さえられた場合と比較して債務者に大きな不利益を与えることになり得るという指摘もなされたところでございます。

 このような議論を踏まえまして、生命保険契約の解約返戻金請求権については情報取得手続の対象としなかったものでございます。

 暗号資産につきましても、債務者がこの制度を利用して情報を取得するまでもなく、やはり探索的な形で強制執行の申立てをすることが考えられるため、各暗号資産交換業者からの情報取得手続を設けたとしても大きなメリットはないと考えられたことなどを考慮して、現在のところでは情報取得の対象とはしなかったものでございます。

源馬委員 生命保険に関してもそれから暗号資産に関しても、探索的に債権者がたどっていけばできるのではないかというような趣旨だったと思いますが、実際はなかなか難しいんじゃないかなと思います。

 私も暗号資産を取得したことがありますが、家族はどこの交換所で暗号資産を取引したかなんというのは知りませんし、生命保険も、どこの生命保険会社に入ったかというのを、例えば離婚のケースでいえば、円満なときであればもちろん知っていたかもしれませんが、その後に別居時に入ったり、そうすると全くわからないわけで、これは銀行の口座を特定するのが難しいということと同様ではないかなというふうに思います。

 そういったことも含めて、さらに、住民税の滞納において、市区町村が差押えのために生命保険を差し押さえているケースもあるというふうに聞いておりますので、こういったことも踏まえて、今回は入れなかったという理由はわかりましたが、今後こうしたものを対象にしていく可能性はあるのかどうか、改めて伺いたいと思います。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回のこの改正案におきましては、そういった情報を取得する必要性等々、さまざまな事情を考慮して、個別にその対象を規定しているものでございます。

 したがいまして、今後のこういったような制度の運用の状況を踏まえて、この対象をどうするかということにつきましては、引き続き検討してまいりたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 今後、金利も下がっていって、先ほど御指摘もありましたが、より生命保険や暗号資産も投機的に使われる可能性もあると思いますので、ぜひ、そうした資産が逃れるようなことがないように、そうしたことも検討をしていただければなというふうに思います。

 それから次に、公的機関からの債務者の給与債権に関する情報についてお伺いをします。

 債務者の給与債権に関する情報については、子の養育費や婚姻費用、離婚に伴う財産分与や慰謝料の支払い、人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求に限って情報を開示するというふうにされていると承知をしております。

 先ほども指摘をしましたが、債務者にとっては、一方で、給与所得というのは日々の生活を送るための金銭的な基盤をなすものであって、非常に重要なものであるということです。あらゆる債権について、むやみに第三者に、勤務先を含む給与債権に係る情報が開示されるということは、金銭的な生活基盤が脅かされるだけではなくて、職場での就業を継続することが困難になったり、場合によっては人権に関する問題も起こることもあるというふうに思います。

 もちろん債務者が養育費の支払いを履行しないということが一番の問題だと思いますけれども、それでも債務者にも生活があるといったことを考えて、これは確認させていただきたいんですけれども、公的機関による給与の情報については、あくまでも子の養育費や離婚に伴う財産分与であったりとか慰謝料の支払い、あるいは人の生命や身体の傷害による損害賠償請求だけに限って情報を開示するという理解でいいのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

門山大臣政務官 委員御指摘のように、給与債権に関する情報が第三者に開示されて、債権者が給与債権を差し押さえするに至った場合には、一般に債務者の生活に与える影響が大きいと考えられることから、第三者から債務者の給与債権に関する情報の取得を求めることができるのは、その必要性が特に高い場面に限定するのが相当であると考えられております。

 そのような観点から、この法律案では、給与債権に関する情報を取得できる者の範囲を、養育費等の債権など権利実現の必要性が特に高い債権を有する者に限定しております。

 また、この法律案では、債権者による情報の目的外利用を禁止して、これに違反した場合には罰則を科すこととしており、債務者のプライバシー保護にも配慮した規定を設けているところでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 それでは次に、差押禁止債権をめぐる規律の見直しの部分についてお伺いをしたいと思います。

 この改正案における債権者には消費者金融等も含まれているというふうに理解をしております。強引な取立てを想定して、財産の差押えから債権回収までの期間を現行の一週間から四週間に延長する、そして、債務者が債権回収の禁止を裁判所に申し立てることができるようにしたというふうに理解をしております。

 しかし、差押禁止の最低額というのが定められていなくて、割合になっておりまして、債務者の給与が少なくても、その給与の四分の一を差し押さえることができるというふうになっていると思います。例えば月十万円の給料の場合、四分の一に相当する二・五万円、これを差し押さえることが可能な制度になっていると思うんですが、給与債権の差押禁止の、割合ではなくて、最少限度額みたいなものも検討すべきではないかと思いますが、このことについて見解をお伺いしたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 現行の民事執行法では、給与等の債権については、原則としてその給与の四分の三に相当する部分を差し押さえてはならないものとされておりますけれども、具体的な事案において、債務者又は債権者は、差押禁止債権の範囲の変更の申立てをすることができるとされているわけでございます。

 このような規律に関しまして、委員の御指摘のとおり、債務者の保護を図るという観点から、支払い期に受けるべき給与の四分の三に相当する額が一定の金額に満たないときは、その全額を差押禁止とするというふうに見直すべきだという御指摘がされているところではございます。

 しかしながら、そのような見直しをすると、債務者が比較的少ない額の給与等を複数の勤務先から得ているような場合には、それぞれの給与債権について差押禁止部分があることになるため、結果として、債務者が必要以上の保護を受ける結果となりかねないという問題もございます。

 また、差押禁止債権の範囲変更の制度を利用すれば、債権者及び債務者の生活の実情に応じて、より柔軟で当事者間の公平にかなった解決を図ることができると考えております。

 そこで、今回の法律案では、給与等債権の一定の金額を一律に差押禁止とする制度を新設することはしないで、差押禁止債権の範囲変更をより申し立てやすくするための方策を講ずることとしております。まずは、この制度の運用状況を注視してまいりたいと考えております。

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

源馬委員 ありがとうございます。

 そうなると、やはり、こういう制度が実際にあるんだよということをきちんと知ってもらうということが何より大事になると思うんですが、債権回収までの期間が延びたということも含めて、あるいは、そもそもこうした制度があるんですよということをどういうふうに周知して知らしめていくのか、広く活用されるための具体的な方策というのはあるんでしょうか、それを伺いたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 この法律案が成立した後には、改正内容をわかりやすく説明した記事を法務省のホームページに掲載したり、あるいはパンフレットを作成したりするなどして、国民の皆様に対して改正内容を十分に周知してまいりたいと考えております。

 また、このような周知の際には、本法律案により取立て権の発生時期が変更されることについても、これは、弁護士会であるとか裁判所、法テラス等、関係機関等の協力を得ながら、適切な周知を図ってまいりたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 続いて、不動産競売の暴力団排除についてお伺いしていきたいと思います。

 この改正によって、暴力団の構成員ですとか、暴力団を脱退してから五年以内の組合員というふうに規定をされている、そうした人たちが買受人になることを制限をするということだと思います。

 いろいろこれも指摘されておりますが、暴力団員、あるいは暴力団から抜けて五年、元暴力団員ですね、こうした人たちが、この買受け申出人になるときに陳述をするときに、自分は暴力団員ですと本当に言うかどうか。

 それで、虚偽の陳述には刑事罰があるといっても、本当に正直に言うのかどうかも怪しいですし、更に言えば、暴力団からお願いされた第三者がこの買受人になるというケースもあると思います。しかも、その中には、相手が暴力団だと知らなくて依頼を受けてしまってということもあり得ると思うんですけれども、そういうケースにも対応できる制度、仕組みになっているのかどうか、伺いたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、暴力団への不動産の供給源を絶つためには、暴力団員が第三者を利用して不動産の買受けをすることを防ぐ必要があると考えております。

 そこで、本法律案では、暴力団員などの買受けを制限された者の計算において買受けの申出をした者による不動産の買受けを制限することとしております。そして、その実効性を高めるため、執行裁判所は、自己の計算において最高価買受け申出人に買受けの申出をさせた者があると認める場合には、その者が暴力団員等に該当するか否かについて都道府県警察に照会しなければならないこととしております。

 これによって、暴力団員が暴力団でない者に資金を提供して買受けの申出をさせたことが判明した場合には、売却不許可の決定がされることになります。

 また、本法律案では、買受けの申出の際に、暴力団員等の計算において買受けの申出をする者ではない旨の陳述を要求した上で、虚偽の陳述には刑事罰を設けることとしており、これには相応の抑止的効果があるものと考えております。

源馬委員 今のケースだと、例えば、暴力団から依頼を受けて、だけれども、相手が暴力団だと知らなかった人が買受け申出人になって陳述をして、それが結果的に虚偽だった場合は罰則を受けるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この刑事罰の対象となりますのは虚偽の陳述でございますので、これは虚偽であるということを認識した上で陳述することが必要でございますので、そこの虚偽の認識がなければ、これは刑事罰が科されるということはございません。

源馬委員 そうすると、やはり、本当は知っていたけれども、いや、知らなかったんだと言えば通ってしまうことかなと思うんですが、それはしっかり実効性は担保されるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 これは、刑事罰の適用においては、個別の事案に応じて判断されるべきでございますので、故意の立証というものができるかどうか、そういう個別の具体的なケースによるものと思われます。

源馬委員 その場合は、何か捜査したりするんでしょうか。これが虚偽の、本当は知っていたのに知らなかったというふうに言っているんじゃないかと疑われるケースとかそういったものは、本当に知らなかったのかどうかということを後から捜査する可能性はあるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 これもあくまでも一般論の話でございますけれども、犯罪の嫌疑がある場合には、それは構成要件といいますか、その故意の有無も含めて、それは捜査されるものと考えられます。

源馬委員 ありがとうございます。

 それでは、子の引渡しについて、もう時間がなくなりましたが、少し伺っていきたいと思います。

 今回のこの見直しで、原則として債務者が占有する場所、債務者の家であったり、債務者の占有する場所で執行が行われるということだと理解をしておりますが、原則としてということは、原則じゃないケースもあると思うんですけれども、例えば公の場であるとか、例えば保育園や幼稚園、こういったことで、執行、子の引渡しを行われるケースというのはあり得るんでしょうか。その可能性について、ちょっとお伺いをしたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 本法律案では、基本的には、債務者の住居等の債務者の占有する場所において強制執行を実施するものとした上で、執行官がそれ以外の場所で強制執行するためには、特に執行官が、子の心身に及ぼす影響、当該場所及びその周囲の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときでなければならず、さらに、当該場所が子の住居である場合を除き、当該場所の占有者の同意を要することとしております。

 そうすると、保育所や幼稚園において強制執行することは、一般論としては可能ではございますけれども、他の園児や学童の目に触れる可能性や、子のプライバシーや心身への影響等の具体的事例を考慮してもなお相当と認められることが必要であり、仮に相当と認められる場合であっても保育所や学校の管理者の同意を得ることが必要となるため、実際上は、これらの場所で強制執行が実施されることは余り想定されないものと考えられます。

源馬委員 実際上、想定されないだろうということで安心をしましたが、本当におっしゃるとおり、ほかの子供たちがいる前でそういうことがあったら、その子たちの心は本当に傷つきますので、相当と認めたとしても、こういうことに十分配慮できる運用をしていただきたいなと思います。

 さらに、今御答弁でもありましたが、その他の事情を考慮しても相当と認めるときは、それ以外の場所でも強制執行することができるという内容になっていると思います。具体的に言うとこういった保育園や幼稚園ということはないだろうという御答弁で安心しましたが、この相当と認めるときというのはどんな場合があり得るのか、そして、誰の判断で何をもって相当と認めるのか、見解を伺いたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 本法律案では、執行官が債務者の占有する場所以外の場所で強制執行するための要件の一つとして、執行官が、子の心身に及ぼす影響、当該場所及びその周囲の状況その他の事情を考慮し、相当と認めるときであることを要求しているわけでございます。

 そしてこの、子の心身に及ぼす影響、当該場所及びその周囲の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときとは、個別の事案における具体的な事情により異なるものと考えられますが、執行の場所及びその周囲の状況等に照らし、第三者の目に触れる可能性など、子のプライバシーや心身への影響が少ないと認められる場合等がこれに当たるものと考えられます。

 具体的には、子の祖父母の自宅等などがその典型例として想定されております。

源馬委員 ありがとうございました。時間ですので、終わります。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 よろしくお願いをいたします。

 済みません、きょうもまず、早速一問だけ、性犯罪のありようについて問わせていただきたいと思います。

 実は、昨年の十二月に私が提出した質問主意書の第百三十一号なんですが、刑法の性犯罪規定の見直しに関する質問主意書、その問い五だったんですが、当時の、改正前の刑法百七十七条、百七十八条、これの本質について政府見解を求めた。

 余り芳しい答えは返ってこなかったんですが、強姦罪、今の強制性交等罪の本質というものを、私は、おととし六月に当時の林真琴刑事局長と議論をさせていただいて、強姦罪の本質、それは一体、どのような性行為を処罰するためにこの強姦罪というものがそもそも設けられたのか、そういう趣旨のやりとりをさせていただいたんですが、そのときに林さんからは、強姦罪、準強姦罪の本質が同意のない性交にその本質を求めたということは十分あり得るところの見解であろう、そういうお答えをいただきまして、そのときは余り細かく通告しない中で林刑事局長によく御答弁をいただいたと思っているんですが、改めて、少し時間を経て、政府の見解を具体的に伺っておきたいと思います。じゃ、お願いします。

小山政府参考人 お答えいたします。

 刑法百七十七条、強制性交等罪でございますが、これは、十三歳以上の者に対し暴行又は脅迫を用いて行われた性交等を処罰の対象としており、百七十八条、準強制わいせつ及び準強制性交等でございますが、これは、被害者の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じて、又は被害者の心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて行われた性交等を処罰の対象としてございます。

 これらは、一般に、性的自由又は性的自己決定権を保護法益とするものでございまして、相手方の真意に基づく同意がある場合は犯罪が成立しないと解されているところでございます。

 その意味で、処罰の対象となるのは同意のないことが前提であると考えてございまして、御指摘の当局の答弁でございますが、強姦罪の本質が、委員から、同意のない姦淫にあるという見解についてお尋ねをされまして、そのような見解が成り立ち得る、つまり否定できないということをお答えしたものと承知しております。

井出委員 否定できないというか、肯定できると言っていただければよかったんですが、今後の検討に資する答弁を、そのときもいただいたと思いますし、きょう改めていただいたと思いますので、またこの点は提起をさせていただきたいというふうに思います。

 そうしましたら、法案審議の方に入ってまいります。

 先ほど源馬委員からも少しお話がありました、債務者の財産の開示制度の実効性の向上について、今回、給与債権に関する情報取得手続、これが、養育費等の債権それから生命身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみが申立て可能とあります。

 生命身体の侵害というのは犯罪被害を指すと考えられますが、殺人、傷害、暴行、性的被害、児童虐待、ストーカー行為、配偶者からのDV。今挙げたものは、先ほど源馬委員の中でも答弁ございましたが、実に九割以上、特に、性被害、児童虐待、ストーカー、配偶者、これは、九割を超える人たちが加害者からの賠償を一切受けていない。

 具体的に聞きますが、殺人、傷害、暴行、性的被害、児童虐待、ストーカー行為、配偶者からのDV、これらの犯罪による民事の賠償請求をする際に、債務者の給与債権の情報取得はこうしたものは全て対象となると考えてよいのか、教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案では、生命身体の侵害による損害賠償請求権を有する者は給与債権に関する情報取得手続の申立てをすることができることとしております。したがいまして、殺人や傷害の被害者のみならず、性的被害、児童虐待、ストーカー行為やDVの被害者につきましても、生命身体の侵害による損害賠償請求権について債務名義を有していれば、給与債権に関する情報取得手続の申立てをすることができることとなります。

井出委員 もう一点、特殊詐欺ですね。振り込め、オレオレ詐欺等、これも大変、生命身体ではないんですが、最近の特に悪質な犯罪でありますし、どうしておじいちゃん、おばあちゃん、ひっかかっちゃったんだ、そんなもの、電話を入れてくれればそんなことにならなかったのにというような、家族、親戚関係にも大きな影響を及ぼすとも聞いておりますが、では、詐欺罪は入らないという理解になってしまうのか、ちょっと教えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 給与債権に関する情報が第三者により開示され、債権者が給与債権を差し押さえるに至った場合には、一般に債務者の生活に与える影響が大きいと考えられますことから、第三者から給与債権に関する情報の取得を求めることができるのは、その必要性が特に高い場面に限定するのが相当であると考えられます。そういったことから、今回の法案では、生命身体の侵害による損害賠償請求権についてその請求権を有する者がこの情報取得手続の申立てをすることができることとしております。

 他方で、詐欺等の財産犯による被害を受けた場合、こういった場合も損害賠償請求権が発生し得るわけでございますけれども、財産侵害を受けた、被害を受けた方につきましては、生命身体の侵害による被害を受けた者と比べますれば、一般的に申し上げますれば、債務者の給与債権に関する情報取得を認める必要性が高いとは言いがたいものと考えられるところでございます。

 そこで、今回は、生命身体の侵害以外の事由による損害賠償請求権を有する者に対してはこの情報取得手続の申立ては認めることとはしていないものでございます。

井出委員 大変つれない答弁が出てきてしまったなと思うんですが、答弁の中に、特に必要性の高い、そういうものに対してというお話があったんですが、身体生命に限らず、ケース・バイ・ケース、裁判所の判断でというわけにはいかないんですか。裁判所の判断によっては、詐欺罪、財産犯であってもケース・バイ・ケースで認めるよ、そういうことはあり得るのかどうか、教えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 財産的な損害を受けた方がどこまで必要性が高いかどうかというのをケース・バイ・ケースで判断するというのもなかなか難しい面があろうかと思っております。したがいまして、制度のたてつけといたしましては、生命身体の侵害という、より類型的に必要性が高いものに限るのが相当であると考えられます。

 ただ、生命身体の侵害以外の事由によります損害賠償請求権を有する者も、財産開示手続の申立てをすることはできるわけでございます。今回は、債務者自身による財産開示手続につきましては、申立て権者の範囲を拡大し、また、債務者が手続に違反した場合の罰則を強化しております。

 そういう点では、そういった債務者の方々につきましても、債務者の給与債権に関する情報をこういった債務者を通じて取得しやすくなる、こういうことは期待できるのではないかというふうに考えております。

井出委員 少し課題が残るのかなというふうに思います。

 もう一点、この犯罪に関して伺っておきたいんですが、生命身体に係る賠償については債務者の給与情報がとれる。刑事裁判で無罪若しくは刑事事件として捜査はしたが不起訴、そういう事件であっても、民事で損害賠償が認められるケースは十分あると思うんですね。無罪若しくは不起訴であっても、民事で損害賠償が認められれば、生命身体に関するものに関しては債務者の給与情報というものがきちっととれるのかどうか、そこを教えてください。

小野瀬政府参考人 委員の今の御指摘のとおりでございます。

井出委員 ありがとうございます。

 そうしましたら、次に、離婚の関係、未成年のお子さんを持つ夫妻の離婚について、少し総論的な話をしたいと思います。

 これは、平成二十六年に法務省が委託をして一般財団法人比較法研究センターというところが行った調査、各国の離婚後の親権制度に関する調査研究業務報告書というものがございます。

 例えば、ドイツでは、離婚は、仮に夫婦間で合意があったとしても、全て裁判によるものとされる。未成年の子に対する配慮権、面会交流、養育費に関しては、夫婦間の諸権利義務と並び、取決めをしたかどうかを申立て書に記載をしなければならない。

 イギリスも、離婚手続の原則は司法の介入を前提とするものであり、全て裁判所の判決によって処理をされることになる。特に、イギリスは、子供は離婚事件の直接の当事者ではないが、両親の離婚や別離で最も被害を受ける者であり、離婚の成立前に子の福祉が考慮されなければならないとされている。このため、離婚や別居の判断を行う前に、裁判所が、子供法が規定する子の福祉に照らし、子の監護、養育に関する取決めがなされているかを確認しなければならない。

 フランスも、離婚については合意離婚、認諾、破綻、有責の四類型がありますが、全て裁判官が関与をして、手続は弁護士が行うというような状況になっております。

 日本の離婚の制度というのは、御案内のとおり、協議離婚がなされれば届出一つ。それから、もうこれまでもさんざん委員から指摘が出ておりますが、養育費が支払われていないですとか、今回の法改正にあります連れ去りの問題も、恐らく、離婚に当たって、その子供に対してどう接していくかというところがきちっと合意をされ、それが裁判所等によって担保されていれば、連れ去りをめぐる争いというものもそもそも減っていくのではないかなと思うんですが、この日本の離婚制度というものに、私はもう少し、特に未成年のお子さんがいる場合はもう少し裁判所の関与が必要ではないかと思いますが、その点についての見解を伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、未成年の子供を持つ夫婦が離婚する段階で裁判所が関与するということは、これは、離婚後の子供の養育をめぐる紛争を防止する観点からは有効である場合があるというふうに考えられるところでございます。

 もちろん、現行の制度のもとにおきましても、例えば離婚調停の場面におきますれば、それは家庭裁判所の方でいろいろと、離婚後に子供の養育に関する紛争が起きるということを防ぐためにさまざまな働きかけを行っているものと承知しております。

 ただ、裁判所の関与、監督を強めるということが、離婚一般についての、例えばその手続的な要件を厳格にしていくということであるといたしますれば、委員の御指摘もありましたとおり、我が国におきましては協議離婚が離婚の大半を占めている、こういう現状に照らして、果たして国民の理解が得られるかといったような問題もあろうかと思います。そういう点で、慎重に検討する必要があるのではないかというふうに考えております。

井出委員 もう少し例を挙げますと、同じ調査で、スウェーデンなんですが、スウェーデンは、共働きの夫婦が多くて、子供手当といった社会保障も充実をしているため、経済的な理由で離婚を踏みとどまる必要性が少ない。離婚率も高い。それがいいのか悪いのか何とも言えないんですが、離婚への社会的プレッシャーも少ない。ただし、配偶者の一方が十六歳未満の子供と同居をしており、子供の監護権を有する場合、例外として六カ月の熟慮期間が必要であるとされる。裁判所は、どちらの配偶者が共同の住居に住み続けるか、それからまた扶養料、そうしたものを決定をできる。当事者は、裁判所に離婚判決を請求をしなければならない。

 もう一つ、オーストラリアも、十二カ月継続的な別居という事実があれば、相手の意思にかかわりなく婚姻破綻はできる。だけれども、十八歳未満の子供がいる場合は、その子の監護、福祉及び生育に関して夫婦間で適切な取決めがされていることを裁判所に提示をしなければならないとされている。

 民法で、子供の離婚、養育費をめぐる部分がいろいろな制度のところで改善されてきているというのは承知をしておりますが、法律そのもの、大きな民法改正というようなところには至っていないのではないかなと思います。

 日本だと、どうしても、子供を連れていった配偶者の方とお子さんが生活をするのが何となく社会的通念になっているから、連れ去りという問題に消極的で、向き合ってこなかったという面もありますし、養育費に関しても、これは本来、子供のために養育費というものは存在をしているはずです。離婚をしても、たとえその相手方が再婚をしても、その相手方が特別養子縁組をしない限りは、子供はもとの親が親だ。

 そういうところの実態も本当に理解がされて離婚に至っているのかな、そういうことの実態の理解がないままに離婚ということを迎えているのではないかなというのが私の思いでありまして、ぜひ根本的な法のあり方というものも少し考えていただきたい。

 うなずいていただいているので、最後に大臣から一言いただいて、終わりたいと思います。

葉梨委員長 山下法務大臣、時間が来ていますので、簡潔に。

山下国務大臣 離婚をめぐる法制については、さまざま各国ありますが、やはり家族をめぐるあり方でございます、国民的な議論が必要だと思いますので、それらを踏まえながら、国会の御議論も踏まえながら検討してまいりたいと考えております。

井出委員 終わります。どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五分開議

葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 本法案は強制執行におきます幾つかの改正点があるわけですが、まず大前提としまして、大臣に、そもそも給与の差押えというものが持つ意味についてお聞きしたいと思います。

 資産は資産で大変な問題はありますけれども、やはり給与となりますと生活に直結してくると思っております。

 例えば、低所得の方が給与を差し押さえられたということもありますし、あるいは、今、貯蓄ゼロ世帯というのが非常にふえておりまして、全世帯の三割に達するとも言われております。こういう方が給与を差し押さえられると、たちまち生活できない。

 さらに、給与の差押えということをされますと、会社にも知られることが間々ありまして、仕事ができなくなる、退職せざるを得ないということも多くあるわけであります。

 さらに、給与の差押えというのは、高利金融業者、闇金などが債務者を威嚇する手段としても活用されていて、細々と回収するよりも、どんと給与を差し押さえてやった方が、ほかから借りてでも払うんじゃないかということで、よく使われております。

 大臣にお聞きしたいんですが、この給与の差押えが債務者の生活に直結する、崩壊させることもある重大な問題だという認識はいかがでしょうか、お持ちでしょうか。

山下国務大臣 御指摘のとおり、給与は生計を維持するための原資となるものでございますので、債務者がその給与債権を差し押さえられた場合には、その生活を維持するのに困難を来すことになるなど、債務者に与える影響は大きいというふうに考えております。

 そうした趣旨から、現行法では、給料等については、その四分の三に相当する部分を差し押さえることはできない、逆に言えば、差し押さえられるのは四分の一のみということとされているところでございます。

 また、御指摘のように、給与債権が差押えがなされたことをきっかけとして、債務者がその職場にいづらくなり、最終的には退職するといったようなこともあるとの指摘があることは承知しております。

 他方、従業員の給与が差し押さえられたことのみをもって従業員を解雇することは、一般に解雇権の濫用として許されないと考えられておりますが、いずれにせよ、やはりこの差押え自体が債務者に与える影響は非常に大きいと認識しております。

 他方で、債務者は判決等において債務を履行する義務を負っているということを踏まえると、給料等に対する差押えを一切禁止することは適当ではないと考えられますので、そうしたところから、こういった債務者と債権者の利益のバランスを図っている制度になっていると考えております。

藤野委員 私は別に、一切とは言っておりません。

 非常に重要だという答弁がありました。ただ、実際は、非常に低額の給与、もともと低い給与の差押えも行われております。

 法務省に確認したいんですが、法制審の民事執行法部会第十九回の議事録を読ませてもらいましたけれども、東京地裁では、二〇一八年の五月七日から十八日までの二週間で、給与の差押えに対して勤務先から回答が全部で百十七件返ってきたと聞いております。

 このうち、その会社で債務者が働いていたのは何件で、そのうち、給与の額が十万円以下のものというのは何件あったでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 恐れ入ります。実務の運用に関する問題ですので、最高裁の方から答弁させていただきたいと思います。

 先生御指摘の期間、平成三十年の五月七日から十八日までの二週間に、裁判所の方に提出されました給与等債権を差押債権とする差押命令に対する第三債務者からの陳述書が百十七件ございました。

 そのうち、債務者に給与を支払っているという回答が六十五件ございまして、そのうち、給与の額が十万円以下のものは七件でございました。

藤野委員 内訳もお願いいたします。

門田最高裁判所長官代理者 七件の内訳ということでございましょうか。

 具体的な金額を申しますと、十万円が一件、それから八万五千三百九十七円が一件、それから八万三千七百二十円が一件、それから八万円が一件、五万円が一件、四万三千円が一件、四万円が一件となっております。

藤野委員 今あったように、四万円台も含めて、非常に低額の給与が差押えをされているということであります。

 給与の差押えがされた事案のうち一割以上が、六十五件中の七件ですから一〇%を超えているわけですね。決して少ない数ではないと思うんです。

 もう一点、最高裁に確認したいんですが、二〇一七年一年間で、差押禁止範囲の変更、いわゆる範囲の変更の申立て、これの利用件数は何件か。その中で、今回の、今問題にしている給与に関する範囲変更の申立ては何件か。さらに、その申立てが認められた件数は何件か。それぞれ御答弁ください。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 東京地裁におけます平成二十九年の申立て件数のうち、いわゆる給与等債権を差押債権とする申立ての件数は五件でございます。そのうち、認容された件数はゼロということになっております。

藤野委員 今御答弁あったとおりなんですね。要するに、二〇一七年、ゼロだった。

 配付資料を見ていただきたいんですが、一枚目が債権等に対する強制執行事件数でありまして、大体一万件前後で推移をしてきております。これは、全部が全部、今言っているような給与の差押えとかいうことではありませんし、全部が範囲の変更の申立てとマッチアップするわけではないんです。ただ、債権に関してはこういうものが一万件ぐらいあるんですが、先ほど言ったように、二〇一七年の場合、申立て件数十六件のうち、給与に関するものが五件、さらに、認められたものはゼロ件ということなんですね。

 だから、やはりそういう意味では、現状ですけれども、いわゆる差押禁止債権、給与、の範囲変更の申立てというのがそもそも一万件に対して五件しかやられていないし、申立てをしても、ゼロとか、ほとんど認められていないという状況なんですね。

 何でこういうことになるのかということでちょっと考えてみたんですが、配付資料の二をごらんいただきたいんですけれども、これは東京地裁の「差押範囲変更(減縮)の申立てをする方へ」という文書なんですね。範囲変更をする場合、債務者から申立てがあれば、こういうものを紹介して書いてもらっているという文書であります。

 これをずっと見ていくと、書類がかなり多い。郵便切手五千八十円も必要だというのも、これもびっくりしましたけれども、申立てをずっと見ていくと、例えば、生活保護を受けるに至った事情というのをかなり書かせるとか、あるいは、その後の現在に至るまでの生活状況も書かせるとか、かなり、本当にこういうものが差押範囲の変更に必要なのかと思われるようなものまで求められているわけですね。

 せっかく教示制度を今回設けて、教える、こういうのがありますよといってこの申立てに誘導しようとしているわけですけれども、にもかかわらず、実際そこへ行ってみたらこんなものを書かされて、もう書く気も失せる。少額の給与の人にとっては、五千八十円も切手で出さないといけないとかいうのがいろいろあると思います。

 ちょっと法務省に、法案提出者なのでお聞きしたいんですが、新しく教示制度を設けていく、これを使ってほしいということですね、範囲変更に、そういう法案を提出されているわけですが、それにしては、この現状、ここまで詳細に求めるというのは改善が必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 差押禁止債権の範囲を拡張することは、債権者にとりましては不利益になるものでございまして、裁判所がその可否を判断するためには、債務者の生活状況等を適切に認定することができる証拠資料が必要となるわけでございます。

 裁判所におきましては、このような趣旨も踏まえ、債務者に証拠資料の提出を求める場合にも個別具体的な事案に応じて適切に対応しているものと承知しておりますが、この差押禁止債権の範囲変更の申立て件数が少ない原因といたしましては、そもそもこの制度の存在が知られていないということのほかに、短期間のうちに債務者がその範囲変更の申立てをすることが事実上困難であるといったことも指摘されております。今申し上げましたような準備をするということに対しましては、現在の差押命令の債務者への送達から一週間後といいますものはやはりちょっと短いのではないかというふうに思われます。

 そういうことからしまして、今回の改正法案では、現行法の規律を四週間後とする見直しを行うということとしたものでございます。

藤野委員 適切に運用とおっしゃいますけれども、先ほど言ったように、申出がない。しかも、申し立てた五件、狭い門をくぐり抜けて五件申し立てたけれども、ゼロですよね。

 だから、ここまで書かせて、それが適切な資料だというのであれば、それを認めたのであれば今のお話は成り立つかもしれないけれども、結局、苦労して出したってゼロなわけですよ。だから、こういう申請制度のやり方、書式含めて見直さないと、幾ら申立てに誘導していっても意味がないと言わざるを得ないと思うんですね。

 そもそも、現行の民事執行法では、先ほど大臣、答弁あったように、四分の一については差し押さえることができるわけですね。しかし、低所得世帯の給与が差し押さえられると、これはもう生存に直結するわけですね。大臣がおっしゃったように、非常に大きな影響がある。生活保護基準を下回る生活を強いられる場合も間々あるわけですね。にもかかわらず、それが差し押さえられる。

 国税徴収法についてお聞きしたいんですけれども、国税徴収法は差押禁止の最低限を規定をしております。月額十万円ということなんですけれども、財務省にお聞きしますが、国税徴収法は一九五九年に改正されていると思いますが、その改正の内容と改正の趣旨についてお答えください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の国税徴収法におきましては、給与等につきまして、その支給額から源泉徴収等がなされます所得税、住民税、社会保険料、これらを控除したいわゆる手取り額のうち、滞納者及びその生計を一にする親族の人数を考慮して定められております最低生活費相当額に達するまでの部分につきまして、差押えを禁止いたしております。

 この最低生活費相当額につきましては、生活保護法の規定に基づきます生活扶助基準額を勘案して政令で定められておりまして、御指摘のとおり、現在、期間一カ月ごとに、滞納者本人については十万円、また、生計を一にする配偶者その他の親族があるときは、これらの者一人につき四万五千円を加算した金額が差押禁止というふうにされておるところでございます。

 この現行制度の枠組みでございますが、御指摘のとおり、昭和三十四年の国税徴収法の改正によって導入されたものでございますが、この改正前の旧国税徴収法におきましては給与等の支給金額の七五%が一律に差押禁止の対象とされておりましたところ、そうした中で、所得の低い滞納者につきましては最低生活費に不足を生ずるような場合も生じ得る、その一方で、高額の所得のある滞納者については必要以上に多額の保護を与える結果となるという問題があったため、こうした問題を是正する観点から、最低生活費相当額の差押禁止額を定める現在の規定が設けられたものでございます。

藤野委員 今答弁ありましたけれども、国税徴収法は、一九五九年の改正以前は、まさにこの民事執行法と同じく四分の一まではできるという規定だったわけであります。そのもとで、今、趣旨の答弁ありましたけれども、それだと、低額所得者については最低生活費に不足する場合も生じる、片や高額所得者については必要以上に保護を与えてしまう傾向があったということなんですね。

 配付資料の三を見ていただきますと、これは大蔵財務協会が国税徴収法について改正の趣旨を紹介したものですが、まさに同じことが右の方で書かれております。

 ですから、そういう意味では、この四分の一規定というのは、国税徴収法ではもう既に乗り越えた規定なんですね。それはやはり、低額所得者には酷だし、逆に高額所得者には優遇だから、そういうのはやめて、最低限を決めてやろうというふうにしたわけでありますね。私はこれは合理的な改正だったというふうに思います。

 問題はこの民事執行法なんですね。民事執行法は、四分の一については相変わらず、どんなに低額の給与であっても差押えを認める。さっき言ったように、四万円とかそういう差押えがたくさんあるわけです。これでは、やはり給与生活者の最低生活を保障するというこの趣旨にも私は反してくると思うんですね。日弁連もこの点については提言しております、最低限を決めるべきじゃないかと。

 大臣にお聞きしたいんですが、民事執行法についてもやはり下限を定めるべきじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

山下国務大臣 先ほど説明のあった国税徴収法につきましても、あるいは民事執行法につきましても、給与債権というのが重要であるということから一定の制限を設けているというところでありまして、民事執行法については、差し押さえてはならないものが給付の四分の三に相当する部分。それでも、具体的な事案に応じて差押禁止の債権の範囲の変更申立てをするという方策をとっており、他方で、国税徴収法は先ほど国税庁から説明のあったようなことをやっているわけでございますが、国税徴収法上は、済みません、私の理解では、これは差押禁止債権の範囲の変更申立てというのがないのではないかというふうに思われます。

 民事執行法としては、差押え、給与については四分の一のみということにして、それでも過酷に過ぎるところは差押禁止債権の範囲の変更の申立てをするという制度をつくる。今回の法案においては、その差押禁止債権の範囲の変更申立てをよりやりやすくするというか、実効性あらしめるという方向で適正な結果を図っているところでございます。

 国税のような制度をとらない理由として幾つか挙げられるのは、国税徴収の場面については、国税において債務者の扶養家族の人数、これをもう把握していることが多い。他方で、民事執行の場合には、債務者の扶養家族の人数というのを必ずしも把握することが容易ではないということでございます。

 また、立法趣旨で言われているものが、給与債権のうちの一定額を差押禁止とすると、例えば今ダブルワークというものがございますけれども、比較的少ない額の給与を複数の勤務先から得ているような場合には、それぞれの給与について差押禁止部分が確保されるということも指摘されているわけでございます。

 そういうことから、今回の法改正においては、差押禁止債権の範囲変更の制度、この利用がより実効性あらしめるように、一週間から四週間に期限を延ばすということをやらせていただいたということでございます。

藤野委員 制度が違うのは当然でありまして、差押禁止範囲の変更とおっしゃいましたけれども、それが全然機能していないんですよ。先ほど言ったように、ゼロなんです。ゼロのもとで、これがあるじゃないかといったって、これは理由にならないですね。

 要するに、この変更というのは事後的救済であります。事後的救済ではだめだということで、国税徴収法では事前に下限を設けて、そこで救済する。なぜならば、実際やられちゃったら、執行されてしまったら、もう幾ら変更を申し立てたって意味がないわけだし、そもそも、最低生活費を保障すべきだという趣旨からいって、四分の一規定というのは低額者には酷で、高額所得者には優遇しているという、その趣旨からいっても、今の大臣の答弁は全くかみ合っていないというふうに思うんです。

 たくさん、何かダブルワークとかもおっしゃいましたけれども、それも法制審で議論されて、やはりそこも、もともとダブルワークせざるを得ないような低額の方に執行をかけているわけですから、だから、それも私はちょっとかみ合っていないというふうに思います。

 そういう意味で、ぜひこれは検討していただきたい。これについては、また機会があれば質問したいと思います。

 きょうは、もう一点、子の引渡しの強制執行についてもお伺いしたいと思うんです。

 まず、法務省に確認したいんですが、ハーグ実施法が施行されてから、二〇一四年から二〇一八年の十二月までの間に、子の引渡しの強制執行の申立て件数は何件なのか、そして、そのうち、認容されたのは何件で、代替執行に至らずに間接強制のみで帰国が実現したのは何件なのか、御答弁ください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 間接強制の申立てについてちょっとお答えさせていただきますと、ハーグ条約実施法が施行されました平成二十六年四月から平成三十一年二月までの間に、間接強制の申立てがされた件数は十六件でございます。その全ての事案において間接強制の申立てが認容されたものと承知しております。

 この認容された十六件のうち、代替執行に至らずに実際に子の常居所地国への返還が実現した事案は五件あるものと承知しております。

藤野委員 今答弁あったとおりでありまして、配付資料の四がそれなんですが、一件については審理中とあったのが恐らく認容されたんだというふうに思います。要するに、十六件中五件ということで、代替執行によらず間接強制で引渡しが実現したというのが三分の一近い、ほぼ三分の一ということなんです。

 大臣にお聞きしたいんですけれども、今回、選択制ということになっておりますが、子供の利益ということを考えた場合、いろいろなケースがあると思います。すぐさま緊急に代替執行した方がいいケースもあるとは思います。しかし、間接強制でこうやって実現しているということを見ますと、こちらにもやはり意味があると思うんですが、同じ認識ということでよろしいでしょうか。

山下国務大臣 先ほど当局から答弁させていただいたとおり、ハーグ条約実施法に基づく間接強制の手続がされた結果、実際に子の返還が実現した件数も相当程度存在しているということでございます。

 また、強制執行が子の心身に与える負担を最小限にとどめるという観点からは、できる限り債務者に自発的に子の監護を解かせる間接強制の方法によることが望ましいと私も考えております。

 それゆえに、今回の法案においては、子の引渡しの強制執行につきましては、百七十四条の二項に掲げる法定の事由がなければこれはすることができないということで、限定的にするということで御提案させていただいているところでございます。

藤野委員 やはり子の利益というのが非常に大事だというふうに思います。

 子供というのは、決して引渡しの客体ではなくて、みずからの人権や、そういうものを持つ主体であって、そうした子の権利や福祉を実現していくという観点がこの執行においても求められているというふうに思います。

 幾つか聞きたかったんですが、時間の関係で、ちょっと一点聞きたいのは、子供の引渡しという強制執行がいつまでできるのかという問題なんですね。

 というのは、裁判でそれなりの考慮をされて、子供の利益のことを一番考えて恐らく裁判が行われて審判が出ると思うんですが、しかし、その後、実際の執行までに時間がかかってしまいますと、その間に子供も成長しますし、周りの状況も変わってくるということになります。

 やはり子というのは成長するものだというのが今適用されている動産とは全く違う部分でありまして、それをどう勘案していくのかということで、法務省にお聞きしたいんですが、当該債務名義で執行できる期間というのに限界はあるのかないのか、一定期間の執行期間を設けるべきではないかという意見も法制審で出ていたと思うんですが、それについてはどのように考慮されたんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 子の引渡しの強制執行につきましては、いつまでという期限はございません。債務名義の成立から相当長期間が経過したような場合、そして子の監護に関する事情が変更した場合には、一般には、子の親権者又は監護者の変更の調停あるいは審判等が申し立てられるということが予定されているところでございます。

 期間制限、一定期間に限るべきではないかというような問題でございますけれども、親権者や監護者の変更をする調停や審判等におきましては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官の調査その他適切な方法で子の意思を把握するように努め、審判するに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないとされております。また、十五歳以上の子については、その陳述の聴取が義務的なものとされております。

 仮に、一定期間経過しますと強制執行が今後一切できなくなる、このようなことといたしますと、これによりまして親権者や監護権者が変更されたのと実質的に同様の効果が生ずるということにもなるわけですが、さっき述べましたとおり、そういった変更に当たりましては子の意思等を考慮することとされていること、あるいは、直ちに強制執行が行われない理由は事案ごとにさまざまであるということに照らしますと、一定の期間の経過のみをもって強制執行を禁止するという規律を設けることにつきましては、慎重な検討が必要ではないかと考えているところでございます。

藤野委員 ただ、いろいろおっしゃった制度はあくまで周辺的なものでありまして、一番初めおっしゃられた変更の申立て、これもハードルが高いんですよね。実際、その変更の申立てをやればいいとおっしゃるんだけれども、しかし、それが当事者にとっては、みずからアクションを起こさないといけない、もう大変な負担になっているのが現状であります。

 ですから、そこを法制度として、別に必ずということ、もうそこは知恵の出しようだと思うんですが、ただ、一定期間経過したときに、再審査も容易にハードルを下げて受けられるというような制度をやはり考えることの方が、子供にとって、あるいはその親にとってハードルが低くなっていくという事案は相当あると思いますので、この点についてもぜひ検討いただきたいというふうに思っております。

 そして、もう一点お聞きしたいんです。

 今度の制度改正の運用の鍵を握っているのは執行官だというふうに思います。これについては、先ほど来もいろいろ議論ありました。

 配付資料の五を見ていただきたいんですが、これは各地方裁判所の執行官の数でありまして、私もまだ実態を研究中なんですが、一見すると少ないなというふうに、ぱっと思ったんですね。私のブロックでいうと、長野で六人、新潟で五人、福井で二人、金沢三人、富山二人、執行官。もちろん、書記官とかいろいろな方がつかれるわけで、単純に言えないと思うんですが、しかも、ピークからすると、減ってきているわけですね、下の方を見ますと。なぜ減ったんですかとお聞きしましたら、これは要するに、不動産の現況調査が減ってきたからだというお話なんですけれども、それはそうかもしれませんが、今回、新しい役割として、子の引渡しについても執行官が重要な役割を担われる。家事審判についてはずっと高どまりして、むしろふえているわけでありまして、現状のこういうマンパワーといいますか体制で本当に大丈夫なのか。

 先日は裁判所定員法も質疑がありましたが、例えば専門官である家裁調査官なんかも、私もふやすべきだとこの間ずっと言っておるんですけれども、ことしも増減なしというようなもとで、実際、大丈夫なのか。

 最高裁にお聞きしたいんですが、執行官というのはどうやって採用しているのか。執行官に必要な資格というのが法律上あるんですが、どのようなものなのか。さらに、給与というのはどうなっているのか。簡潔にお答えください。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 執行官は、各地方裁判所に置かれる裁判所職員でございまして、特別職の国家公務員となっております。その任命資格ですけれども、多年法律に関する実務を経験したものとして最高裁判所の定める基準に該当する者で、筆記及び面接の試験により、執行官として必要な法律知識及び資質を有する者として選考された者とされております。

 この多年法律に関する実務を経験したものとして最高裁判所の定める基準ですけれども、法律に関する実務を経験した年数が通算して十年以上であることとしております。

 執行官は手数料制の公務員であり、国から給与の支給は受けておりません。

藤野委員 今のは裁判所法の六十二条に規定をされております。

 最高裁に重ねてお聞きしますが、執行官に必要な資格というのは最高裁が定めるということでありまして、今お話があったように、法律実務経験十年以上ということなんですが、今回、子の利益に配慮という規定が各所にたくさんあるわけなんですが、裁判所法六十二条に言う執行官に必要な資格との関係で、今回の法案で言う子の利益に配慮という点をどうこの資格に織り込んでいくんでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 執行官の職務は民事執行法等の法律に基づく裁判の執行であることから、執行官の資格は、先ほど申し上げましたとおり、多年法律に関する実務を経験したものとして最高裁判所の定める基準に該当する者で、筆記及び面接の試験により、執行官として必要な法律知識及び資質を有する者として選考された者とされておるところでございます。

 委員御指摘の、子の引渡しの強制執行における子の心身に対する配慮につきましては、執行官採用後の研修等を通じて身につけさせることとしております。

藤野委員 どんな研修をやっているんでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 執行官に対しましては、裁判所職員総合研修所におきまして次のような研修等を実施しております。

 まず、その年に採用された新任の執行官を対象に、裁判官及び家庭裁判所調査官等を講師として、子の引渡しの強制執行の概要や両親の紛争下における子の心理についての講義を内容とする研修を実施しております。

 また、経験五年以上の執行官を対象に、ベテラン執行官や子の心理の専門家を講師としまして、子の引渡しの模擬強制執行等を内容とする研究会を実施しております。

藤野委員 新任研修の方は、児童心理学等、一こま九十分のみ、五年以上たってから実務研修が、三日の合宿のうち一日が模擬強制執行という、今お話があったもの。これで本当に大丈夫なのかということなんですね。

 いわゆる執行官規則の第十二条では、執行官がその仕事をするに当たって技術者又は労務者を使用することができるという規定があります。これで、例えば子の利益に配慮という場合、どのような援助者をつけるということになるんでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 児童心理の専門家に技術者として関与していただくということになります。

藤野委員 具体的には今こういうことでやられていると思うんですが、そういう援助、執行官がというのは全ての子供に関する事件についているんでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 全ての事件にはついているわけではございません。(藤野委員「どれぐらい」と呼ぶ)

 失礼しました。平成三十年におきましては、既済事件の八十三件中四十七件について児童心理の専門家に関与していただいております。

藤野委員 今答弁があったように、八十三件中四十七件なんですね。五割、六割という感じであります。もちろん、ゼロ歳とかそういう場合もありますので、それはケース・バイ・ケースだとは思いますが、しかし、やはりまだ五割、六割しか率直に言ってそういう専門家がついていないという状況が現状としてある。

 それはつけた場合はいいと思うんですけれども、ただ、その専門性の担保を含めて、本当に十分なのかという点ではまだまだやはり検証が必要だというふうに思うんです。

 子の利益に配慮していくという上で、それを制度的にどう担保していくのかということなんですが、大臣、現状として、今あったように八十三件中四十七件で、ほかはついていないというのをどうやって全体に上げていくという、そういうお考えなんでしょうか。

山下国務大臣 半分児童の専門家がついていない理由については、これは裁判所の判断にもよることでございますので、例えば、現段階では債務者の同時存在の原則がございますから、そういった、例えば、子を持っている母親あるいは父親を説得して平穏に渡すということも考えているということなんだろうというふうに思っております。

 今回、改めてこの改正法案にはそういった児童の心情に対する配慮条項も入れておりますので、それを裁判所においても適切に活用していただきたいというふうに考えておるところでございますし、その運用状況はしっかりと注視していきたいと考えております。

藤野委員 終わりますが、根本的にやはり裁判所の人員の拡充、予算の拡充、これがどうしても必要だということを主張しまして、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 まず最初にハーグ条約実施法、大臣にお聞きをしたいんですが、これは誰を保護するためにある法律なんでしょうか。

山下国務大臣 これは、ハーグ条約実施法の第一条、目的にありますように、子の利益に資することを目的とするということでございます。

 ただ、これにつきましては、これもハーグ条約を受けて、子の監護に関する紛争は、その住居所地国で解決されるのが望ましいという認識に基づいて、その実施を確保する点から、国境を越えて不法に連れ去られるなどした子を住居所地国に迅速に返還することにより、それを通じて、子の利益を図ろうとするものであると承知しております。

串田委員 ちょっと今、幾分、大臣の回答の中で、不法な連れ去りというところはかなり声がちっちゃかったような気がするんですよ。

 これは、外務省のホームページの中で、一番最初にハーグ条約とはと書いてあって、「国境を越えた子どもの不法な連れ去り」。それで、子の不法な連れ去りの例として、括弧で、わざわざこう書いていただいている。「一方の親の同意なく子どもを元の居住国から出国させること」と。「一方の親の同意なく」というところが、これは、「不法な連れ去り」というのは、この「不法な」というのは、この「一方の親の同意なく」というところがポイントとして不法になるという理解で、大臣、よろしいですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 不法な連れ去りにつきましては、その常居所地国の法令によれば監護の権利を有する者の当該権利を侵害する連れ去りであって、当該連れ去りのときに当該権利が現実に行使されていたもの又は当該連れ去りがなければ当該権利が現実に行使されていたと認められるものと定義されておりますので、そのいわば監護権が侵害される、そういう態様の連れ去りが子の不法な連れ去りに当たるということかと思われます。

串田委員 今、御丁寧に説明いただけたので、では、ついでに質問をさせていただきますが、婚姻中、これは共同に監護権がありますね。そうすると、婚姻中に一方の同意なくして子供を連れ去った場合には不法だという理解でよろしいですね。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 どういう場合に不法な連れ去りに当たるかどうか、これは個別具体的なケースに応じて判断されるものだと思いますけれども、例えば、その子の監護権者が実際に子の日常的な世話をしていたにもかかわらず、連れ去りによってその子の世話をすることができなくなった、こういったような場合には子の不法な連れ去りに当たるのではないかなというふうに思われます。

串田委員 今ちょっとわかりにくかったんですが、監護権があるということは、法律上、婚姻中、監護権はありますよね。アメリカにおいてそれがどうであるのかということは日本で確認できるんですか、実施法をするときに。

 私は、ただ単に、一方の同意なくして連れ去った場合は不法なということがハーグ条約の中に書かれていて、今説明もされたように、監護権を侵害した場合には不法な連れ去りということになるわけですから、何か具体的にこういうことをやっていないと監護権と言えないのかどうか、そういう監護権に関して要件が決められているんですか。それをちょっとお願いします。

小野瀬政府参考人 特に監護権について具体的な要件が規定されているわけではございません。常居所地国の法令によれば監護の権利を有する者の当該権利を侵害する連れ去りでありますので、その監護の権利を害するかどうか、監護の権利の内容は常居所地国の法令によって判断されるものと思われます。

串田委員 だから聞いているんですよ。日本の国内においては、婚姻中は両方に監護権があるわけでしょう。そうだとすれば、一方の同意なくして連れ去ったら不法な連れ去りになるんじゃないんですかと聞いているんです。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、常居所地国の法令によればということでございます。ですから、そこが、例えば日本の法令と同じように共同監護というようなことになっていた場合に、それが、一方の監護ができない状態になってしまうということになりますれば、これはケース・バイ・ケースであるとは思いますが、一般的には監護権の侵害に当たるものと解されるケースは多いんじゃないかと思われます。

串田委員 だから言っているんですよ。アメリカで監護権があって、居住国に関して監護権があったら不法な連れ去りになるというんだったら、日本の国内でも同じように扱わなきゃおかしいじゃないですか。日本においても婚姻中は共同監護なんですから、それに対して、一方的に同意もなくして連れ去ったら、アメリカならば不法で、戻さなきゃいけない。それは居住国に従わなきゃいけないというんだったら、アメリカの居住国に従うんだったら、日本の居住国だって従わなきゃおかしいんじゃないですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 ハーグ条約の実施法の話かと思われますので、不法な連れ去りかどうかというのを日本の裁判所で判断する場合には、それはその常居所地国の法令によるということになろうかと思います。

串田委員 これは聞いていただければ、もう論理破綻もいいところなんですよ。アメリカの居住国の監護権を守りながら、日本の監護権を守らないなんということは、これはもう本来許されることではないんです。

 大臣、子供の利益ということがありましたけれども、それでは、ハーグ条約は、子供はどこで何を保護されていると大臣は考えているんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 ハーグ条約実施法におきます子の利益でございますけれども、これは、親権あるいは監護権に関する紛争といいますものは、子の常居所地国において、そこで解決するのが望ましい、こういう観点から、不法に連れ去られるなどした子を常居所地国に迅速に返還することが子の利益につながる、こういう考え方に基づいているものと理解しております。

串田委員 だから、同意がない連れ去りに関しては、国内でも居住地に戻すことなんですよ。アメリカで居住国に戻すのに、何で国内では戻さなくていいんですか。まあ、それはいいです。

 大臣、先ほどの質問にお答えいただきたいと思います。

 子供の権利、要するにハーグ条約が一番に求めているのは何なのかということを大臣からお聞きをしたいと思います。

山下国務大臣 お答えします。

 まず、先ほど私、常居所地というふうに発音したつもりが、ちょっと住居所地というふうに聞こえたというふうなあれがありましたので、これは、条約の文言どおり、常居所地でございます。

 御質問でございますけれども、ハーグ条約の目的につきましては、これはもう子の利益ということではあるんですが、この子の利益につきまして、これは、常居所地の生活環境に戻してやるということによって、そして、さまざまな紛争はそこで解決するということを通じて、子の利益を図ろうというところでございます。

串田委員 ですから、その子供の利益は何なのかという質問なんですよ。

 それは、子どもの権利条約で、子供というのは、父からも母からも養育を受けるというのが、子供の権利として子どもの権利条約に定められている。だから、アメリカは、そういう意味で、一方を、その子供の権利を侵害して連れ去ったのは不法だということで、ハーグ条約で、ほかの国に対しても条約で協力を求めているんですよ。ここの本質がわからないで、子供を連れ去ったから戻せばいいというような発想では、これは子どもの権利条約を執行しようというような方向性を見出せないですよ。ぜひ、子供の権利というものが何であるのかというのをもうちょっと考えていただきたいと思うんです。

 質問を変えますけれども、男女共同参画社会基本法というのの第六条に、家族を構成する男女は子を養育するというふうになっているんですが、この家族を構成する男女というのは、どう読んでも夫婦のように読めるんですけれども、この夫婦には事実婚も入るんでしょうか。

渡邉政府参考人 内閣府男女共同参画局でございます。

 今御指摘いただきました男女共同参画社会基本法第六条、これは「家庭生活における活動と他の活動の両立」という見出しがついております規定でございまして、この中で、家庭における活動とそれから社会における活動、職業活動などを両立していきましょうという基本理念を述べている、そういう条文でございます。

 御指摘の家族でございますが、婚姻、血縁、縁組などを基礎として生活上の関係を有する社会の自然かつ基礎的な集団単位というふうに私ども解釈をしておりますので、これに含まれる男女が、広く同法に言います家族を構成する男女に該当するものと解されると考えております。

串田委員 ちょっと、最終的な答えをお聞きしたいんですが。

 実はこれ、質問通告をしたのがきのうの午後五時。四時に理事懇が始まって、四時半でしたから、私、ちょっと準備をしていて、とにかく早く出さないと悪いなと思って、五時に出したんですね。そうしたらば、夕方に返ってきた答えは、事実婚も含まれる。十時四十五分、夜になったら、事実婚は、コンメンタールを開いたら、含まれない。そして、きょうの午前に、どちらかわからないという答えだった。

 どうなんですか。事実婚は入るんですか、入らないんですか。

渡邉政府参考人 昨日来の経緯は、大変、先生には申しわけございませんでした。

 事実婚が入るかどうかにつきましてですが、この男女共同参画社会基本法は、基本法という性格から、個別の権利義務関係などを定めているものではございませんので、幅広く、男女が何をしていったらいいのかという基本理念を書いてあるだけということでございます。

 私どもも少し過去の制定経緯なども見てみましたけれども、その当時、事実婚について何か考えながらこの法律をつくったという経緯は残念ながら確認することができなかったという趣旨でございます。申しわけございません。

串田委員 再三にわたって答えが変わったことが申しわけないんじゃなくて、基本理念を定めただけというのが、これはひどいと思いますよ。これは、男女が共同してやっていこうということの大原則を書いてあるわけですよ。それに対して、事実婚があるかどうか、検討もしていないからわかりません、ただ理念を書いただけって、それこそが失礼じゃないですか。

 私の思うには、いろいろな事情で法律婚になっていない方というのは私の周りにもたくさんいます。それこそ、選択的夫婦別氏が認められないがために、しようがなく事実婚になっている人もいるんですよ。その夫婦は全く法律婚と変わらないんです。ただ単に法律的な届出をしていないだけなんです。これは夫婦の問題。子供との関係は普通の親子ですよ。普通の親子なんだったら、当然、男女共同参画であれば、男女が共同してその子供を養育していくというのは当たり前じゃないですか。

 これは、法律が一九九九年にでき上がって、それからずっと、男性の育児というものも強化されていった。だから、この基本理念も、当然に、時代の趨勢に合わせて変わっていかなきゃいけないと思うんです。

 事実婚、これは当然入るべきだと思うんですけれども、今、どうですか。基本理念だけと言わないで、この法律に対する範囲というのは事実婚も入るというふうに私は思うんですけれども、お考えをお聞きしたいと思います。

渡邉政府参考人 失礼いたしました。基本理念だけというのは、ちょっと言葉が滑ったところがありまして、申しわけございません。

 基本法ですので、基本理念をしっかりと定めていて、それに基づいて、男女があらゆる分野で均等に責任と義務を果たしていくべきであるということを定めた法律であり、その中の第六条は、子の養育、家族の介護その他の家庭生活と、それから職業生活とか社会的な貢献ですとか、そういう別な活動と両立していきましょうということを宣言的に基本理念として掲げているものでございます。

 その中で、個別具体的に、家族の中に、また婚姻関係にある中に事実婚が含まれるのかということにつきましては、ちょっと今明言できないところでございます。申しわけございません。

串田委員 明言できないということですので、大臣に明言していただきたいんですけれども。

 要するに、法律的に婚姻関係があるかどうかということにかかわらず、子の養育に関しては男女が共同してやっていこうというふうに私は思っているんです。法律的に婚姻しているかどうかということとは、私は子供を養育をすることとは関係がないと思っているんです。

 ところで、婚姻をしていたけれども離婚する場合がある。そのときには、今、日本では約九割が協議離婚なんですよ。要するに、裁判のように争わない、お互いが同意をして離婚になる。そのときの離婚の形態というのはいろいろあると思います。言い争いになって本当にもう顔も合わせたくないという離婚もあれば、法律上の束縛を離れて、法律上の束縛を離れているけれども、これまでどおりにやっていこう、子供の養育も一緒にやっていこうというふうに思う場合もある。これは事実婚と変わらないと思うんですよ。

 もし事実婚として子の養育を男女がお互いにやっていこうと思うのであれば、離婚をしてお互いが子供を養育をしていこうと思っているその夫婦を、一方だけ監護権を認めるというのは、この男女共同参画の考え方に私としてはちょっと反しているんじゃないかと思うんですけれども、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

山下国務大臣 まず、離婚したとしても、例えば非監護親については、養育費の支払い義務等があることからすれば、そういったところで一緒に育てていくということについて、もとよりそういうことも含んでいるとは考えております。

 他方で、やはり離婚後の共同親権というものをどう考えるかということで、これは、離婚後の状況について、感情的な対立のため必要な合意が適時に得られないということもあろうし、またDV問題等、そういったところもございます。

 そうしたことから、いわゆる共同監護なり共同親権のあり方については、これは、離婚後の親子関係も含む家族のあり方という部分もございますので、国民的な議論、これを待ちたいですし、また、国会における議論あるいはさまざまな議連の議論、そういうのを注視しながら検討してまいりたいと考えております。

串田委員 どういう考え方がいいかというのを議論するということではなくて、日本は一九九四年に子どもの権利条約を締結しているんですよ。

 きょうは外務省の方もいらっしゃるんですが、この子どもの権利条約で、共同で養育をするという条約の規定というのは、婚姻中であるか、あるいは法律上の婚姻中でない場合であるのかということを分けて、これは七条とか十八条なんですけれども、共同で養育をするというこの子どもの権利条約は、分けてあるのかどうか、確認をしたいと思います。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 児童の権利条約の第十八条は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するよう締約国が最善の努力を払う、そういうことを規定をしております。

 この規定におきまして、父母が法律上の婚姻関係にあるか否かについては、明文の規定は存在しておりません。

 以上です。

串田委員 大臣、今聞いていただいたように、法律上であるかどうかを問わないで共同で養育をするということになっているし、男女共同参画も、これは法律であるから子供を養育しなきゃいけない、法律でなければ養育を男女はしなくていいとは考えないじゃないですか。そこら辺は、やはり、子どもの権利条約を締結した以上は、国はそれを遵守しなければいけないというふうに私は思いますし、いつも七百六十六条で協議をして定められるからと言っているけれども、私たち政治家が、小選挙区で与野党が協議してその選挙区の国会議員を選べますかと言われたら、これは選べないと思いますよ。

 それだけ、子供はどちらが監護権があるかというのを、この国が一人だけを選べと言う以上は協議できないんですよ。協議をしようと思ったら争いになってしまうんです。

 これに関しては、もう少し時間があったときに質問をしたいと思います。

 ありがとうございます。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、小林茂樹君。

小林(茂)委員 自由民主党の小林茂樹でございます。

 きょうは、このように質問の機会をいただき、感謝をいたしております。

 山下大臣が就任をされて最初の、私にとっての質問ということでありますが、いただいている時間、三十分ございますので、有効に使ってまいりたいと思います。

 今回の民事執行法及びというこの法律、基本的な法案というよりも、つくられた法案の実効性を高めるという意味においては、基本的なというよりも専門的な意味合いを含むのかな、こう思うんですが、この法律案、大きく三点に分かれるなと私なりに解釈をいたしております。

 まず、債務者財産の開示制度の実効性を高める、これが一点。次に、第二点目、不動産競売における暴力団員の買受けの防止。そして三点目が、先ほど来皆様方が質問されてきたハーグ条約に関係するもの、国内の子の引渡しに関するもの、これらの規律の整備であります。

 これらに共通することは、債権者が裁判所の判決によって権利があるということを認められた後に、裁判手続によってその権利の強制的な実現を求めるための手続であるという点であります。民事執行の手続に関するという共通点があるということであります。

 したがいまして、私としては、これらの三つの事項について、順に、内容そして意義について質問をしてまいります。

 まず、債務者財産の開示制度、実効性の向上について。

 金銭債権を有する債権者が裁判所で勝訴判決を得た場面などにおいては、強制執行によってその権利が、いわば絵に描いた餅ではなく、実現されるということが重要であります。そのためには、勝訴判決などを得た債権者が強制執行の準備として債務者の財産状況を調査するための制度が必要であり、平成十五年の民事執行法改正の際に財産開示手続が導入されたところであります。

 質問に入ります。

 では、そもそもこの財産開示手続とはどのような手続であるのか、また、平成十五年にこの制度を導入した背景にはどのような事情があったのでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 財産開示手続は、債務名義を有する債権者の申立てにより、執行裁判所が債務者を呼び出し、債務者に自己の財産について陳述させる手続でございます。

 勝訴判決等を得た債権者が強制執行の申立てをするには、差押えの対象となる債務者の財産を特定しなければならないということがございます。そのため、債権者が債務者財産に関する十分な情報を有しない場合には、勝訴判決等を得たにもかかわらず、その強制的な実現を図ることができないという問題がございます。

 司法制度改革審議会におきましても、このような問題を解決するために、新たな制度の導入を検討すべきだといった提言がされたところでございます。

 財産開示手続は、このような提言等を踏まえて、平成十五年の民事執行法の改正の際に新設されたものでございます。

小林(茂)委員 それでは、この財産開示手続、現状、改正前でありますが、債務者の財産状況を調査するという制度目的を十分に果たしているのかという点が問題になります。

 年間のこの制度の利用件数、そして実際に債務者の財産情報が開示される割合、具体的にお示しください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 平成二十九年の財産開示手続の申立て件数は六百八十六件でございまして、既済件数は六百八十一件と承知しております。債権の差押えの申立て件数が年間約十一万件であることと比較しますと、このような利用実績は低調と言わざるを得ないと考えております。

 また、この既済事件のうち実際に債務者の財産情報が開示された件数が二百五十三件で、割合にして約三七%。他方で、債務者の不出頭等により財産情報が開示されなかった件数は二百六十九件で、割合にして約三九・五%であると承知しております。

 このような実情を踏まえますと、現行の財産開示手続は、その実効性は必ずしも十分でなく、制度目的を十分に果たしているとは言えないと考えております。

小林(茂)委員 債権差押命令は十一万件ということでありますが、この制度は余り利用されていないというのが実情であるなと感じました。実効性が不十分であると言わざるを得ないわけであります。

 さらに、この法律案における改正の内容、そして、その意義について質問をしてまいります。

 本法律案では、債務者の財産に関する情報を債務者以外の第三者から取得する手続、これが新設されています。このような手続は、現行の手続と比較して、どのような利点があるのでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、財産開示手続につきましては、債務者の不出頭等によりその財産に関する情報が開示されない事案が少なからず生じておりました。

 これに対しまして、この法律案によりまして新設される第三者からの情報取得手続では、金融機関、登記所、市町村等の第三者から情報を取得することができますために、債権者がより確実に債務者の財産状況を調査することができるようになると考えられます。

小林(茂)委員 この中でも預貯金、これは多くの人が持っているわけでありますが、強制執行の対象としては、この預貯金、重要な財産であります。そのために、債務者の預貯金債権に関する情報、これをきちっと取得することが重要であります。

 それでは、平成十五年に民事執行法、この改正をしているわけでありますが、銀行等の金融機関から債務者の預貯金債権に関する情報を取得する手続を導入しなかったのはなぜでしょうか。平成十五年から現在に至るまでに何らかの、社会的背景に変化があるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 債務者の財産に関する情報を債務者以外の第三者から取得する制度を新設することは、平成十五年の民事執行法改正の際にも検討はされております。

 しかしながら、平成十五年当時は、例えば銀行から債務者の預貯金債権に関する情報提供を求めようとしましても、各銀行における当時の情報管理体制を前提といたしますと、各銀行の個々の支店に対して個別に照会をしなければならないということで、極めて限定的な範囲の情報しか得られない状況でございました。

 そのため、平成十五年には、こういった第三者からの情報取得手続を創設しても大きなメリットはないだろうと考えられたために、この第三者からの情報を取得する手続の創設はされなかったものでございます。

 しかしながら、その後でございますけれども、銀行における情報管理体制の整備が進んでおります。現在では、ある銀行の本店に対して照会をしますれば、その銀行の全ての支店で取り扱われている債務者の預貯金債権に関する情報を包括的に検索することができるようになっております。

 このように、現在では、平成十五年当時と異なりまして、第三者からの情報取得手続を創設するメリットが大きくなっておる。そしてまた、この手続を創設した場合に生じます金融機関側の負担も軽減されております。こういったことから、今回の法律案では、第三者からの情報取得手続を創設することとしているものでございます。

小林(茂)委員 本店単位で包括的に調査をする、これは大きな進歩でありますが、ただ、我が国には金融機関は随分たくさんあるわけでございます。債務者がどの銀行に預貯金口座を開設しているか、これは債権者がわからないところであります。

 この法律案では、預貯金債権に関する情報取得手続の申立てをするために、債権者の側においてどの金融機関からの情報取得を求めるのか、これを選択しなければならないことになっておりますが、その理由はどうしてでしょうか。債権者が情報提供を求める金融機関を特定せずに、全ての金融機関の全ての預貯金口座に関する情報、これを網羅的に取得することができるようにすれば更に実効性が上がるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この法律案によりますと、預貯金債権に関する情報取得手続の申立ての際には、債権者において情報の提供をすべき金融機関を特定する必要がございます。

 法制審議会における議論の過程では、債務者の預貯金債権に関する情報取得の方法として、例えば、一般社団法人全国銀行協会を通じて全ての銀行から網羅的に情報を収集することを求める意見もございました。しかしながら、全国銀行協会は各銀行の預貯金債権に関する情報を保有しているわけではございませんで、それ以外にも、全ての銀行等のあらゆる預貯金債権に関する情報を集約している機関は、我が国には存在しないという状況でございます。

 そのため、情報提供を求める銀行等を特定することなく債務者の預貯金債権に関する情報を取得し得る制度を設けることは、現状では極めて困難であると考えられているところでございます。

小林(茂)委員 債務者がどの金融機関に口座を開設しているかわからない、こういう場合ではどういう申立てを具体的にすればいいのか、教えていただけますか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案におきましては、債権者が複数の金融機関に対して同時に並行して情報取得の申立てをすることが認められております。

 したがいまして、債務者がどの金融機関に預貯金債権を有しているかがわからない場合には、債権者は、債務者が預貯金口座を開設していると予想される金融機関を複数選択して申立てをするなどの工夫をすることが考えられます。

 例えば、全国規模で支店を展開している都市銀行やゆうちょ銀行に加えて、債務者の住所の近隣に本店あるいは支店を有する銀行等を選択するといった工夫が考えられるところでございます。

小林(茂)委員 ちょっと何か専門的な話に入り込んで申しわけないんですが、私も、五年半でございますが民間の金融機関に勤務しておりましたので、そういうのを名寄せと言うんですね。名前が一緒であれば一つに集約できるんですが、住所が違えば、あるいは生年月日が記入されていなければ、別個の人間として存在するということであります。

 更に質問したいんですが、金融機関はコンピューターのシステムによって顧客の情報を管理しているというわけですが、このシステムによって、対象となる預貯金債権に関する情報を検索するわけであります。しかし、債務者が、ある金融機関に口座を開設した後に引っ越した場合、その金融機関のシステムに登録されたデータが転居前の旧住所のままとなっている、ですから、もう一人別個の人間ができ上がっているというわけでありますが、こういった場合においては金融機関においては適切に情報を検索できなくなる、こういう事態が生じるのではないでしょうか。

 債務者が過去に住所を変更しており、金融機関にどの時点の住所が登録されているかわからない、こういう場合には債権者がどのような申立てをすればいいのか、御提示願えるでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 第三者からの情報取得手続の申立てにおいて、債権者は、対象となる債務者を特定するために必要な事項を明らかにする必要があると考えられます。

 この具体的な特定方法につきましては、今後、最高裁判所規則で定められることにはなりますけれども、一般論としては、債務者の特定のために、その住所を明らかにする必要があると考えられます。

 御指摘の、債務者が転居により住所を変更したことがある場合には、情報提供を求められた金融機関において、過去の住所のみが登録されていて、現在の住所のみによっては必要な情報を検索することができないこともあり得ます。

 そのような事態を防ぐための工夫といたしましては、申立て書における債務者の特定の際に、現在の住所のみならず、過去の住所を併記するということが考えられます。そうすることによって、その申立て書の記載を踏まえて、執行裁判所が作成する情報提供命令に債務者の現在の住所と過去の住所が併記されれば、これを受け取った金融機関において、債務者の情報をより確実に検索することができるようになると考えられます。

小林(茂)委員 この件については以上としたいと思います。

 先ほど民事局長がお答えになったような検索の方法、なかなか専門家でないと思いつかない方法でありますので、国民の各層に周知する方法を工夫をいただければと思います。

 続いて、不動産競売における暴力団の買受けの防止について話題にしてまいります。

 警察庁の調べによりますと、全国に約千七百、こんなにあるんですね、千七百ある暴力団事務所、このうち、過去に不動産競売の経歴を有している事例が二百もあるということであります。

 このように、土地の場合ですが、不動産競売の経歴を有している暴力団事務所は、過去に、具体的にどのような人物が競落し、その後、どのような経過をたどって、現在、暴力団事務所として利用されるに至っているのか、できれば具体例もあわせて示していただければと思います。

藤村政府参考人 お答えいたします。

 警察庁において調査を行った結果、平成二十九年六月現在で、都道府県警察が把握している暴力団事務所約千七百カ所のうち、土地若しくは建物又はその両方が競売の経歴を有する暴力団事務所の数は約二百カ所でありました。

 それらを競落した者の内訳については、暴力団員又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者が約三七%、法人で役員に暴力団員等がいる者が約七%、暴力団員の親族等が約二四%、そのほか、準構成員や暴力団との関係が不明な者等が約三二%となっております。

 この調査は、競落された不動産がどのような経過をたどって暴力団事務所として使用されるようになったのかについてまでは網羅的に把握したものではございませんが、例えば、暴力団員本人が競落をし、そのまま暴力団事務所として使用された事例や、暴力団員以外の者が競落し、その後、暴力団事務所としての使用が開始されるに至った事例も把握されております。

小林(茂)委員 競売によって売却された不動産、これが暴力団事務所の手に渡り、活用される、そうなりますと、近隣住民に対してどのような悪影響を及ぼすのか。これは、後ほど私がお尋ねするところと関係するんですが、近隣住民がどのような負担を負うことになるのか、実情を示していただきたいと思います。

藤村政府参考人 お答えいたします。

 一般に、暴力団事務所は、暴力団の活動の拠点であるとともに、暴力団同士の対立抗争時には、発砲等による攻撃の対象となる危険もあるところであります。したがって、暴力団事務所周辺に居住する住民等は、日常的に暴力団員とのトラブルに巻き込まれたり、対立抗争の巻き添えとなるなど、平穏な生活を害されるおそれがあるものと認識しております。

小林(茂)委員 暴力団が不動産を取得できなくする、非常に重要なことであります。

 他方で、不動産競売の当事者である債権者、債務者にとっては、この対象の不動産が高く売れるということであれば、たとえ買受人が暴力団であっても構わないということ、こう考えるのも無理もないと思うんです。

 また、極端な見方をすれば、最高の価格で入札をした暴力団員の買受けを制限してしまいますと、結果的に売却価格が低下をするということになって、債権者や債務者の経済的利益を害する、ある意味、極端かもしれませんが、こういった意見もあり得ないではない、こう思うんですが、不動産競売における暴力団員の買受けを防止する意義、これを改めて問いかけたいと思います。

 暴力団員の買受けを防止するということは、誰のどのような利益の保護につながるのか、教えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現在の民事執行法では、暴力団員であることのみを理由として不動産の買受けを制限する規律は設けられておりませんが、近年、公共事業や企業活動等からの暴力団排除の取組が官民挙げて行われておりまして、民間の不動産取引の分野においても、暴力団排除の措置が講じられるようになっております。

 この法律案は、不動産競売において暴力団員等の買受けを防止しようとするものでございまして、この改正によって、暴力団員等が不動産競売において不動産を買い受けることができなくなれば、民間における暴力団排除の取組と相まって、暴力団への不動産の供給源を絶つことに寄与することができ、ひいては、市民生活の平穏の確保につながるものと考えられるものでございます。

小林(茂)委員 不動産競売における暴力団員の買受け、これを防止すると、結果として債権者や債務者の経済的な利益が害されるのでは、この指摘についてはどうでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この法律案で暴力団員等の買受けを制限いたしますと、債権者や債務者などの関係者にとって、不動産をより高値で売却するという利益が害されるおそれがあるという指摘もあり得るところでございます。

 もっとも、先ほど申し上げましたように、不動産競売で買い受けられた不動産が暴力団事務所として利用されることとなれば、近隣住民の平穏な生活に悪影響を及ぼすおそれなどがございます。

 民間においても暴力団排除の措置が講じられていることを踏まえますと、今回の買受けの制限により、不動産競売による売却価額が低下することがあり得るといたしましても、必要かつ合理的な制約としてやむを得ないものではないかというふうに考えられるところでございます。

小林(茂)委員 今、民事局長から、民間においてもという言葉があったんですが、そのとおりであります。

 不動産の取引を行う際の契約書、契約を取り交わすわけですが、その契約書のひな形においても、反社会的勢力の排除という項目がありまして、全国的な組織である全宅連あるいは全日不動産協会が進めている契約書のひな形においても、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員ではないということを確約しなければならない。売り主も買い主もこれを確約しなければならないという非常に厳しい制限を設けております。

 また、反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないということも確約しなければならない。そして、買い主は売り主に対し、みずから又は第三者をして本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供しない、これらも確約をしているということでありまして、民間においても一足先に反社会的勢力の排除に取り組んでいるというところであり、今回は、公共性を帯びている国の力が暴力団を利することのないように、こういう内容であるということでございます。

 この項目の最後の質問になるかと思うんですが、たとえ不動産競売において暴力団みずからが入札することを制限しても、暴力団員が、このような規制をかいくぐるために、第三者に資金を提供し、いわばダミーのように利用して、自分のかわりに入札させるということもあり得るのではないか。そのために、不動産競売が暴力団員への不動産の供給源となることを防ぐ上では、このようなダミーによる買受けを防止することがポイントになってまいります。

 本法律案で、暴力団員が第三者を利用して入札をすることをどのように防止をするのか、教えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、暴力団員等による買受けを制限したとしましても、暴力団員等が第三者に不動産の買受けをさせ、その後にその者からその不動産を取得することができるのでありますれば、買受け制限の実効性に欠けるということになります。

 そこで、この法律案では、暴力団員など買受けを制限された者の計算において買受けの申出をした者による不動産の買受けを制限することとしております。これによりまして、例えば、暴力団員が暴力団員でない者に資金を提供して買受けの申出をさせ、実質的に暴力団員が不動産を取得したものと言えるような場合には、売却不許可の決定がされることとなります。

 また、この法律案では、買受けの申出の際に、みずからが暴力団員等でないことのほか、暴力団員等の計算において買受けの申出をする者でもない旨の陳述を要求しております。その上で、虚偽の陳述には刑事罰を設けることとしておりまして、これには相応の抑止的効果があるものと考えております。

小林(茂)委員 暴力団あるいはそれに類する組織が不動産を取得するということにおいては、もう何重にも、こういう対策を講じているということでありますが、かえって、暴力団と見えないところが、そういう組織が、これからかわりの役割を果たしていくのではないかなと危惧をするわけであります。

 これがいわゆる半グレと呼ばれるところで、まあ半グレの活動をしている領域も、現在は多分狭いと思うんですが、いずれ、かわりに取得していく。表面的には暴力団には見えない、しかし、実際にはその役割を果たしていくというふうに、どんどんどんどん暗躍をするのではないかなということを危惧しておりまして、これは私の感想といたしております。

 ちなみに、民民については調査のしようがないというわけでありますが、暴力団組織から暴力団組織への直接取引というものは、これはもはや、不動産の一般的な取引の契約書にのっとらずに取引が行われ、登記をされるということでありますので、このあたりをどう取り締まるのかというところが今後の課題になってくるのかなという所感を述べさせていただきました。

 大きな二項目めまで終わったんですが、残り時間が五分ぐらいということでありますので、きょうは朝から再三委員の方々も取り上げられた子の引渡しについても、私も若干触れたいと思っております。

 この法律案、単に現在の実務を明文化したというだけではなくて、強制執行の実効性を確保しながら、子の心身の負担にも配慮をするという観点から、明確な規定を整備したということであります。しかし、現在の実務では、子の引渡しの直接的な強制執行、試みても失敗に終わっているものがたくさんある、この失敗の件数がどのぐらいあるかということについても御報告のあったとおりでありまして、多くが執行不能により終了しているということであります。

 家庭裁判所がよかれと思って判断をした場面であっても実行できない、子供にとっても大変よくないということでありますが、現行の実務において、子の引渡しの直接的な強制執行のうち、四割もの事件が失敗に終わっている、この原因はどのようなものでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 子の引渡しの強制執行事件が不能となった事由としては、子の拒絶や債務者の抵抗といった事由のほか、子供や債務者の不在といった事由があるものと承知しております。

小林(茂)委員 この法律案によって整備された規定によれば、子の引渡しの強制執行は、この法整備によってより成功しやすくなると言えるのでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 国内の子の引渡しの直接強制における現在の実務では、ハーグ条約実施法の規律を参考に、執行の場所で子が債務者とともにいる場面、いわゆる同時存在でなければ強制執行を実施することができないという運用がされているものと承知しております。

 しかしながら、それを前提にした実務ですと、例えば、債務者が子を祖父母に預けるなどして意図的に同時存在の状況を回避しようとする事案がありますほか、債務者側が執行の現場で執行官による説得等に応じず激しく抵抗するといった事案も少なからず存在しているものと承知しております。

 このような実情を踏まえまして、この法律案では、執行の現場に子と債務者がともにいることを不要とすることとした上で、債務者の不在により子が執行の現場で不安を覚えることがないよう、原則として債権者本人の出頭を要件とすることとしております。

 このように、この法律案による見直しによりまして、執行の現場に子と債務者がともにいることが必ずしも要求されないこととなるために、先ほど申し上げましたような事案においては強制執行の実効性が相当程度高まるものと考えられます。

小林(茂)委員 三点について触れさせていただきまして、持ち時間がそろそろ来るわけであります。

 一番最初の財産の開示制度に関して、今回私は預貯金のみ触れたわけですが、不動産についても、実は、自分が所有しているかどうかもわからないという所有者不明土地、これは随分ふえてきて、九州一つの面積に充当するぐらいまでふえたということでありますが、私が一昨年の十月に質問に取り上げたこの所有者不明土地に関して、法務省が旗を振って、登記の義務づけをという取組について、これを進めることによって所有者不明土地が減少すれば、この財産開示制度にもつながっていくのではないか、債権者がより確実に、不動産の売却資金等々で債権を充当するということにつながるのではないかなということを感想を申し述べて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で小林茂樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一です。

 きょう、私が最後の質疑者でございまして、皆様方が御質問された論点と多少重なる点もあろうかと思いますが、順次質問をしていきたいと思っています。

 まず、基本的なところで、子の引渡しについて基本的なところを確認したいと思っています。

 今回、民事執行法において初めて国内での子の引渡しというものが明文化をされるわけでございまして、これは、これまで物という動産執行の類推適用であったものが、しっかりと子の福祉にも配慮した規定を置かれることを大変評価をしたいと思っています。

 その前提として、ハーグ実施法において既に子の返還というものが規定されておったわけでございますけれども、この両者を見ますと、民事執行法の子というのは、当然、債権者は基本的には監護権者、また、ハーグ実施法においても、子の常居所における当該国での法律における監護権を不法に侵害された者が債権者となるわけでございますが、この国内の子の引渡しとハーグ実施法における子の返還ということについて、この大きな違いについてまず整理をさせていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 国内の子の引渡しの場面と国際的な子の返還の場面とでは、子の父母のうち、どちらが親権者、監護者として相当であるかという、いわゆる本案の問題についての判断を経ているか否かという点に主な違いがあるとされております。

 すなわち、国内の子の引渡しの強制執行は、親権者や監護権者等がその地位に基づいて子の引渡しを求め、その債務名義を取得したことに基づいて行われるものであります。

 これに対しまして、国際的な子の返還の強制執行は、子を国外に連れ去られた者が、親権や監護権に関する紛争等を子がもともと生活していた国、常居所地国で解決するために子の返還を求め、その債務名義を取得したことに基づいて行われるものである点に違いがあるものと承知しております。

浜地委員 おっしゃるとおりでございますが、どうしても、これを初めて見た人はその違いというものがなかなか理解されないのではないか。私も、事前レクのときにその点を確認させていただいてからこの質問をつくったものですから、基本的な事項として確認をさせていただきました。

 ところで、今回、子の引渡しの強制執行、百七十四条に規定をされるわけでございますけれども、これを見ますと、一項の第一号については、これは直接強制がまず来て、その後に、第二号において、法百七十二条第一項でございますので、間接強制が来るという規定の仕方になっております。しかし、その第百七十四条の二項を見ますと、必ずしも間接強制が前置主義とはなっておりません。

 今回の改正に当たって、では、この間接強制の意義をどのように基本的に考えているのか、これまでは当然、間接強制を行ってからというような実務の取扱いが多かったと思いますが、この間接強制の意義というのはこの法案によって変わるのか、御答弁をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 民事執行法一般におきましては、ある請求権について複数の執行方法が認められている場合には、債権者がそのいずれを自由に選択して申し立てることができることとされています。

 しかしながら、子の引渡しに関しましては、強制執行が子の心身に与える負担を最小限にとどめるという観点から、できる限り債務者に自発的に子の監護を解かせる間接強制の方法によることが望ましいわけでございます。このため、先に直接的な強制執行を選択することができるのは、相応の必要性が認められる場合に限るべきであると考えられます。

 そこで、この法律案におきましては、子の引渡しの直接的な強制執行の申立ては、間接強制があらかじめされていたときのほか、間接強制を実施しても債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき、あるいは、子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行する必要があるときのいずれかに該当するときでなければならないといったような要件を設けることとしております。

 また、現行のハーグ条約実施法におきましては、間接強制を先行させるということを必要としております。これも、先ほど申し上げましたような、できる限り子の心身の負担の少ない方法によるべきであるとの考え方によるものでありまして、この法律案におきましてもこの考え方自体は維持することとしておりますけれども、一律に間接強制の前置を要求しているために運用が硬直的になる事態も生じかねないという指摘がされております。そこで、ハーグ条約の実施法につきましても、国内の子の引渡しの強制執行と同内容のものに改めることとするものでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 やはり子の引渡しという子の心身の負担ということからすると間接強制が望ましい、それは変わりませんという御答弁だったと思います。

 それでは、この間接強制を前置しなくてもいい場合で、法百七十四条第二項の二号に、「債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき。」という要件があれば、間接強制によらずとも直接強制によれるわけでございますが、しかし、実際に金銭の負担を求めてみないとわからないわけでございます。

 幾らこの債務者の方が絶対に引き渡さないというふうにかたくなに言っていても、実際問題、引き渡さなければあなたは一日当たり幾ら金銭的負担が来ますよということをやってみると、もしかすると、その金銭的負担に耐えかねて子を引き渡そうという方もいらっしゃるかと思いますが、そういったことをしないのに、子の監護を解く見込みがあるとは認められない、要は、金銭的負担をかけていないのに、なぜそのように判断できるんでしょうか。その判断要素について御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 御指摘の債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないときということでございますが、これは、個別の事案における具体的な事情を踏まえて裁判所が適切に判断することとなるものと考えられます。

 その主張、立証の方法としましては、例えば、原則として債務者を審尋しなければならないということとしておりますし、また、債権者の主張、立証の方も考慮するということになろうかと思います。

 その上で、じゃ、どういう場合にこれが認められるのかということでございますが、例えば、それは、この債務名義が成立した後に例えば債権者と債務者の間で任意の交渉がされていたというような場合ですと、そういった任意の交渉の際の債務者の態度によっても判断できるというような場合もあろうかと思います。

 例えば、そういった任意の返還の交渉の、引渡しの交渉の際に、債務者の方が、たとえ間接強制の命令が出たとしても絶対に引渡しには応じないとか、あるいは、債権者からの連絡に一切応じないで無視し続けるといったように、返還に応じない意思を明確にしているような場合、こういったような場合には、そういった事情から判断し得るケースもあるのではないかと考えられます。

浜地委員 個別具体的な事情が前提でない今質問でございますので、難しいところでございますが、さっきの答弁からもやはり間接強制が望ましい中、この二号に移る場合というのはやはり一定の要件があるんだということは答弁のニュアンスであらわれたと思っています。

 先ほど局長の方から、債務者の審尋もするというお話がございました。百七十四条の三項に、これはただし書きがありますが、基本的には債務者を審尋をしなければならないということです。基本的にはこの審尋規定が規定をされているのは代替執行の場合でございまして、ほかの強制執行については審尋をしなければならないという規定がないわけでございますが、では、ほかの代替執行と比較して、やはり子の引渡しという観点を考えますと、この債務者の審尋というのはどういった事情が考慮されることになるのか、御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案におきましては、御指摘のとおり、原則として債務者を審尋しなければならないものとしております。

 こういった子の引渡しの直接的な強制執行あるいは国際的な子の返還の代替執行の申立てにつきましては、先ほど申し上げました、間接強制を実施しても見込みがあるとは認められないときとの要件、あるいは、子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行する必要があるときとの要件が掲げられておりますので、債務者の審尋に当たりましては、債権者の主張、立証の内容に対する反論等を聴取するほか、子の引渡しや返還についての債務者の意向、あるいはこれまでの対応状況、さらには債務者による子の監護状況等について聴取することになるものと考えられます。

浜地委員 そういった監護状況等も考慮して審尋をするわけでございますが、では、この審尋の場面で、まさに本案の確定、これは決定なんでしょうけれども、判決や決定が出た後に、では、債権者に引き渡すと今度は逆に虐待されるような事情が事後の事情で出てきた場合、そういったことも考えられると思います。

 今回、この強制執行を裁判所が、規定することによって、引き渡したがゆえに債権者の方で何かそういった事件が起きたとなると、またこれは裁判所の信用にもかかわる点だと思っています。ですので、この審尋において、債権者に非常に不利益な事情、特に子の福祉にとって非常に不利益な事情が出てきた場合は、どのような手続をとればよいのでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 子の引渡しの強制執行といたしましては、一般に、親権や監護権に基づく子の引渡しを認めた債務名義によるものが代表的であろうかと思われます。

 このような場合を念頭に申し上げますと、親権者や監護権者による子の虐待等があるなど、その親権や監護権の行使の状況が子の利益に反するような場合には、一般的に、親権者、監護権者の変更の審判を申し立てることが考えられます。

 そして、家庭裁判所は、子の利益のため必要があるときは、申立てによりまして、これらの審判を本案とする保全処分をすることができることとされております。

 したがいまして、仮にその債務名義の成立後に債権者による子の虐待等の事情が生じた場合には、これもあくまでも一般論ではございますけれども、債務者としては、債権者を相手方として親権者、監護権者の変更の審判を申し立てて、これを本案とする保全処分を得るなどした上で、既存の子の引渡し請求を認めた債務名義について請求異議の訴えを提起して、これに伴う強制執行の停止を申し立てることなどが考えられます。

浜地委員 今の質問は、私どもの党の部会で、特に今、児童虐待がかなり注目をされているテーマになっておりますので、実際に質問した議員さんがおられました。

 確かに、執行裁判所が本案の判決を勝手に自分たちが事情を聞いて変更するというのも、なかなか、これは裁判所の信用にかかわるものなので、難しい点がございます。

 ですので、先ほど局長の方からは監護権者の変更の申立てという方法がありますということでございますが、本人が申し立てしてもう一回本案に戻らなきゃいけないので、そういう部分でいいますと、そこがやはり、そういう手続があるんだということは、もし審尋のときにそういった不安があったときには、積極的にアナウンスするのはなかなか執行裁判所の立場として難しい点もあるかと思いますけれども、やはりそういう手続があることを債務者に知っていただくようなことも一つ念頭に置いて運用をしていただければというふうに思うところでございます。

 次に、先ほども、午前中の質疑でもございましたけれども、債務者の住居その他の債務者の占有する場所において子の引渡しを執行する場合は、それ以外の場所においては占有者の同意若しくは許可が要ることになるわけでございます。

 そこで、まず、同意を与える占有者とはどういった権限のある方でしょうか。まず端的にお答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この占有者でございますが、一般に、その場所を管理している者を指すものと考えられます。

浜地委員 そうなりますと、ちょっと済みません、細かくちょっと聞いていいですか。多分、わかると思いますので。

 そうなると、これもうちの部会で出ました。幼稚園、保育園、実際に、学校やそういった、養護施設で強制執行された例も以前、データであるんですけれども、そのときに、担任の保育士さんが、急に執行官が来られて同意を与えてくださいというような場面になった場合には、この保育士さんというのは管理権者として同意権を与える主体と捉えてよろしいですか、それともそうではないですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 例えば幼稚園が執行の場所となる場合におきましては、施設管理者が占有者になりますので、その場合にはやはり園長といったような方が同意の主体になるものと考えられます。

浜地委員 ありがとうございます。

 それと、午前中の質疑の中で、公道でも強制執行ができる場合があるということを御答弁をされておりました。実際に、私もデータを見ますと、特に、平成の二十六年以降は少ないようですが、それ以前、平成二十二年とか二十三年というのは公道で子の引渡しの強制執行をした例がございます。

 ただ、そのとき、もし子供を見つけて、先ほど局長は、午前中の答弁では、子の福祉のために、例えばそういう場所で強制執行するのが子の利益にとってどうだろうか、また交通の便は危なくないだろうかということもあるんですが、実際、でも公道は同意する人が恐らく道路を持っている国とか市とか県になると思うんですけれども、子供がいても、子供はそのまま歩いて家に帰ると思うんですね。その間に同意なんというのはとれるんですか。これは占有者の同意という面でいうと、公道で行う場合には道の管理者の同意をとる必要があると思いますけれども、実際にそういう場面というのは想定できますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 公道の場合には、通常ですと、その占有者の同意がなくても公道では執行ができるというふうに考えられると思います。

浜地委員 ちょっとしつこく聞きますけれども、条文上は、「当該場所の占有者の同意を得て」ということなんですが、それだと、公道はもう占有者という概念がないという、これはそう読み込むということになるんでしょうか。そこはしっかり整理された方がいいと思いますけれども。

小野瀬政府参考人 占有者の同意を必要とする、そういう趣旨から考えますと、そこの管理といったような権限をこの執行をすることによって侵害することになるのではないか、こういった場合にやはりその占有者の同意ということが必要になるわけでございますが、公道で執行を行う場合にはそのようなおそれがあるとも認められませんので、公道の場合にはその占有者という概念には当たる者はいないというふうに考えられるというふうに思われます。

浜地委員 ありがとうございます。

 条文をそのまま読むとそのように私は考えたわけでございますので、今、解釈によって御答弁をいただきましたので、それはそれで明確な回答であったというふうに思います。

 次に、今回、ハーグ実施法の方で要件としていました債務者の同時存在は、ハーグも要件としませんし、今回の民事執行法上での子の引渡しについても要件としなかったわけですが、具体的には、これまで、債務者の同時存在があったがために、運用でもこれまで債務者の同時存在でハーグ以外でも行われたと思いますけれども、具体的にはどのような弊害がありましたでしょうか。これは必要性の点でしっかりと答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現在の実務におきましては、例えば、債務者が子を祖父母に預けるなどして意図的に同時存在の状況を回避しようとする事案があるといった指摘もございます。また、債務者側が執行の現場で執行官による説得等に応じず、激しく抵抗するといった事案も少なからず存在しております。また、さらに、執行の現場で子が債務者からどちらの親と生活したいか意見を述べるように迫られるなど、こういったように、同時存在の要件が子の心身に過度な負担を与えるような状況を生じさせているとの指摘がされているところでございます。

浜地委員 済みません、最高裁に聞こうと思いましたが、ちょっと時間の関係で飛ばします。

 そうなりますと、先ほどそういった弊害があるということで、逆に、今回は債権者の存在というものを要件とされたわけでございますが、しかし、法百七十五条第六項では、原則として債権者の出頭を求めますが、代理人でもいいというふうに規定をされております。

 そこで、代理人とはどのような者を想定しているのか。ここはある程度規範といいますか判断基準を示していただいた方がよろしいかと思いますが、ぜひ御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 子の引渡しの直接的な強制執行を実施するための要件として、原則として債権者の出頭を要求することといたしましたのは、子が執行の場面で不安を覚えることがないようにするためでございます。

 したがいまして、債権者にかわって執行場所に出頭することが相当と認められる代理人につきましても、基本的に、例えば子と同居していた債権者の親族のように、子との間に一定の精神的なつながりがある者である必要があるものと考えられます。

 したがいまして、最終的には裁判所の個別の判断に委ねられることにはなりますが、養育実績のある親族、例えば祖父母等が選ばれることが多くなるのではないかと思われます。

浜地委員 そうですね。債権者の出頭原則の中、代理を認めるわけでございますので、今局長がなされた御答弁というのは一つのやはり判断基準になろうかと思っています。ここはしっかりと、やはり余り要件を緩めないようにしていただきたいと思っています。

 大臣にこの執行について一問お聞きしますが、今回、百七十六条におきまして、執行裁判所及び執行官の責務という規定をあえて設けられたと思っております。ここには、子の年齢やその発達の程度を踏まえて、「できる限り、当該強制執行が子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮しなければならない。」というような配慮規定を、強制執行の場面で、特に客体であります、目的者ですね、物じゃちょっとおかしいですから、子の心身に配慮というものをあえてこれは明文化をされたのはやはりそれなりの思いがあろうかと思っていますが、この百七十六条、責務を規定されたその背景について、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

山下国務大臣 本法律案では、子の引渡しの直接的な強制執行の場面においては、一連の過程で子の心身に深刻な負担が生じ得ることから、執行裁判所及び執行官の責務として、強制執行が子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮しなければならない旨の規定を設けることとしております。このことは、国際的な子の返還の代替執行においても同様でございます。

 この規定は、個別の事案に応じ、児童心理の専門家を執行補助者として立ち会わせることの要否を吟味する、あるいは、児童心理の専門家を立ち会わせるとして、執行官、専門家の役割分担、子への声かけの順序、子を安心させるための話題など綿密な打合せを行うことなど、これまでの執行実務において行われてきた子の心身の負担に配慮したさまざまな工夫や、それを実現するための執行官と執行補助者等の適切な連携に向けた工夫といった運用を一層促す趣旨で設けられたものであります。

 こうやって明文の規定になることによって、実際の運用においてその趣旨が更に十分に生かされることが期待されると考えております。

浜地委員 ありがとうございます。

 以上で子の引渡しの分については終わりたい。

 残りあと五分しかございませんので、ハーグの実施法についての質問はちょっと飛ばしまして、第三者からの財産情報取得手続について数問お聞きをしたいと思っています。

 今回のこの第三者からの財産情報取得手続は、まさにこれは財産開示制度を実効性あらしめるというのが趣旨でございますが、一つ、弁護士会等々から指摘があったかと思います。

 そもそもの財産開示制度における百九十七条の第一項の第二号、基本的にはこれは強制執行を前置してくださいというような条文でございます。しかし、知れている財産に対して強制執行を実施しても完全な弁済を得られないことの疎明があったときには、強制執行を前置しなくても財産開示制度がとれるような規定になっておりますが、私は、今回、第三者情報取得制度まで設けて財産開示制度をもっと幅広く実効性あらしめるためには、この二号の要件については、この疎明の要件、削ってもよかったんじゃないかというふうに思っております。

 実際に法制審でもそのような議論もあったかと思っておりますが、この財産開示制度において、法百九十七条第一項の第二号の疎明の要件を残したままになったのはどういった経緯でありましょうか。御答弁をお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この財産開示手続の実施要件のうち、御指摘のこの百九十七条第一項第一号、第二号、先に実施した強制執行が功を奏しなかったこと等の要件は、債務者のプライバシーあるいは営業秘密を保護するために必要でありまして、また、現在の裁判実務においてその要件の審査に関して特段の問題は生じていないと考えられたことから、そのまま維持しているものでございます。

 御指摘のとおり、法制審議会における議論におきましては、この不奏功等の要件、今申し上げましたその要件の疎明が必ずしも容易ではないのではないかということで、その緩和を求める意見も紹介されていたところでございます。

 しかしながら、現在の裁判実務におきましては、債務者の住居所在地の不動産登記事項証明書の提出等によって債務者名義の不動産が見つからないことなどが確認できればそれで足りるとされている例が多いとされるなど、この要件の疎明が容易ではないという評価が必ずしも現在の裁判の実務の状況を反映したものではないといったことが明らかになったところでございます。

 そのため、先ほど申し上げました不奏功等の要件についてはそのまま維持したというものでございます。

浜地委員 今、御説明の中で不動産みたいな話も出てきましたが、そこで、不動産の第三者からの情報取得制度についてちょっと聞きます。

 今、不動産登記は当然物件ごとに登記は整理をされていますが、今回、この第三者からの情報取得手続が不動産にも適用されますと、これはいわゆる債務者ごとの、人ごとの、物件ごとでなくていわゆる名寄せ帳のようなものをつくらなければならないのではないかと思っていますが、実際問題、こういったことが私はできるのかなというふうに思っております。

 準備状況も含めて、いわゆる人ごとの、人単位での物件情報を集めるような登記制度になるわけでございますが、そういったものができるのか、準備状況についてどのように考えているのか、御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、不動産についての情報取得手続を設けるためには、特定の者が登記名義人として記録されているのかどうかを検索することができるようにする必要がございます。

 この法律案が成立した場合には、この部分についての施行期日につきましては、公布されてから二年以内というふうにされております。この二年以内にその運用を開始することとされておりますので、現在、システムの開発に着手しているところでございます。

 運用開始に向けて、更にしっかりと準備を進めてまいりたいと考えているところでございます。

浜地委員 それで施行が二年後ろ向きになっているということであります。結構システムは大変だと思いますので、また、ただ、これができると、実際、今社会保険等々で、例えば介護とかで資産がある方については少し負担をしていただこうみたいな制度にも使えなくはないのかなとも思っておりますので、しっかりした制度にしていただきたいと思っています。

 では、最後の質問にしたいと思っています。これは大臣に最後お聞きをしたいと思っています。

 当然、御存じのとおり、年金などは差押禁止債権でございますが、これが預金口座に振り込まれれば、預金債権となって、実際に差し押さえられてしまうという事例がございます。

 実際に、私の周りでも、前回もちょっと保証の話をしましたけれども、自分の御主人が経営者で、負債を負いました、妻として保証人にさせられた、お父さんは亡くなったけれども、毎回毎回、年金が差し押さえられるのは怖いということで、預金口座に振り込めずに局どめにして、二カ月に一回とりに行っていらっしゃる方も、実際に事例として聞いております。

 なかなか難しい問題だと思いますが、いわゆる差押禁止債権が、預金債権になったとしても差し押さえされない、安心して差押えを回避できる、そういったものについては、大臣、どのように今後お考えか、最後御答弁をいただきたいと思います。

山下国務大臣 年金などの差押禁止債権、これが銀行口座に振り込まれた場合には差押えを禁止すべきであるとの考え方については、実は法制審議会民事執行法部会においても検討されたところでございます。

 その趣旨は理解できないではないんですが、この考え方をとるためには、口座に振り込まれたその原資が何であるのかということを金融機関において適切に識別することができなければならないということですが、これは実務上困難である等の問題が指摘されたところでございます。

 そこで、差押禁止債権の範囲変更の制度、これについて、これをより活用しやすくすることによって、債権者及び債務者の生活の実情等に応じて、より柔軟で当事者の公平にかなった解決を図ることができると考えておりまして、本法律案においては、御指摘のような考えはとらずに、他方で、差押禁止債権の範囲の変更、これをより申し立てやすくするための方策を講ずるということで考えております。

 まずは、この制度の運用状況を注視してまいりたいと考えております。

浜地委員 ありがとうございました。終わります。

葉梨委員長 以上で浜地雅一君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会


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