衆議院

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第13号 平成31年4月26日(金曜日)

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平成三十一年四月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 階   猛君 理事 浜地 雅一君

      青山 周平君    赤澤 亮正君

      井野 俊郎君    大岡 敏孝君

      岡下 昌平君    鬼木  誠君

      門山 宏哲君    上川 陽子君

      神田  裕君    黄川田仁志君

      国光あやの君    小林 茂樹君

      中曽根康隆君    古川  康君

      古川 禎久君    細田 健一君

      和田 義明君    落合 貴之君

      櫻井  周君    松田  功君

      松平 浩一君    山本和嘉子君

      源馬謙太郎君    遠山 清彦君

      藤野 保史君    串田 誠一君

      井出 庸生君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 高田 陽介君

   政府参考人

   (個人情報保護委員会事務局次長)         福浦 裕介君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 稲岡 伸哉君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁長官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 小野 洋太君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房施設監) 平井 啓友君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     青山 周平君

  鬼木  誠君     大岡 敏孝君

  門  博文君     岡下 昌平君

  逢坂 誠二君     落合 貴之君

  黒岩 宇洋君     櫻井  周君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     細田 健一君

  大岡 敏孝君     鬼木  誠君

  岡下 昌平君     門  博文君

  落合 貴之君     逢坂 誠二君

  櫻井  周君     黒岩 宇洋君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     奥野 信亮君

    ―――――――――――――

四月二十六日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(遠山清彦君紹介)(第九二五号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(遠山清彦君紹介)(第九二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案(内閣提出第三〇号)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官高田陽介君、個人情報保護委員会事務局次長福浦裕介君、総務省大臣官房審議官稲岡伸哉君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、出入国在留管理庁長官佐々木聖子君、財務省大臣官房参事官小野洋太君及び防衛省大臣官房施設監平井啓友君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。和田義明君。

和田委員 おはようございます。

 本日、質問の機会をいただきまして、委員長、理事そして委員各位に心から御礼を申し上げます。また、政府参考人の皆様方、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案に関して、早速質疑を進めたいと思います。

 まず、冒頭の質問でございますけれども、表題部所有者不明土地とはどのような土地を指すのでしょうか。また、こういった土地はなぜ生じたのでしょうか。お伺いをいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 表題部所有者不明土地といいますのは、所有権の登記がない一筆の土地のうち、不動産登記簿の表題部に所有者の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が登記されていないものをいうものでございます。

 具体的には、例えば法務太郎といったように、住所の記載がなく氏名のみが記載されている土地ですとか、大字例えば霞が関というように、地域名が記載されているような字持地と呼ばれる土地、あるいは、法務太郎外七名と記載され、外七名については名前も住所も記載がない記名共有地と呼ばれる土地などが存在しております。

 このような土地ですけれども、昔、課税台帳として活用されておりました旧土地台帳、この時代に不完全でありました記載が、不動産登記簿と一体化された際にその不完全な記載がそのまま引き継がれた、それが現在に至っているというものでございます。

和田委員 ありがとうございました。

 この表題部所有者不明土地でございますけれども、所有者が不明であることによってどのような問題があって、そして、今回の法案を通すことでどのような意義があるのでしょうか。お伺いをいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この表題部所有者不明土地でございますが、ほかに所有者不明土地、例えば相続登記が長期間されていないような土地もございます。ただ、そういう土地につきましては、登記簿に過去の一時点におきます所有者の氏名、名称、住所等が記載されておりますので、その記載を手がかりとして、戸籍や住民票等を請求して現在の所有者の探索をすることができます。

 しかしながら、この表題部所有者不明土地でございますけれども、そもそもその所有者の氏名や住所が正常に登記されておりませんので、戸籍や住民票等を請求するための手がかりすら得られないものでございます。

 したがいまして、この表題部所有者不明土地は、所有者不明土地の中でもとりわけ所有者の探索が困難な土地でありまして、今後、歴史的資料の散逸ですとか地域コミュニティーの衰退によって所有者の特定がますます困難になるおそれが指摘されておりまして、早期に解消する必要があるものと認識されております。

 この法律案でございますけれども、こういった表題部所有者不明土地について、その登記及び管理の適正化を図るために必要となる措置を講じようというものでございます。

 具体的には、登記官に所有者の探索のために必要となる調査権限を付与し、所有者等探索委員制度を創設しますほか、探索の結果を登記に反映させるための不動産登記法の特例を設けることとしております。

 またさらに、所有者の探索を行っても所有者を特定することができなかった表題部所有者不明土地等について、裁判所の選任した管理者による管理を可能とする制度を設けることとしております。

和田委員 ちょっと関連なんですけれども、この所有者の探索というのは、具体的にどのような方法を用いて行うのでしょうか。お答えください。

小野瀬政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、この法律案におきましては、登記官に対して、所有者等の探索をするために必要となる権限を付与しております。

 その探索の方法でございますけれども、まず、例えば、各種台帳等の調査ということが考えられます。今回この法律案では、関係地方公共団体の長等に対して所有者等に関する情報の提供を求めることができることとしておりまして、例えば、地方公共団体等が管理します農地台帳ですとか林地台帳、固定資産課税台帳などの各地の台帳、あるいは、土地の所有に関する経緯が記載された歴史書等を調査することができます。

 またさらに、聞き取り調査、占有者等関係者からの聞き取りや資料の提出を求めること、さらには実地調査、その土地さらに周辺の地域に所在する土地の実地調査、立入調査、こういったことができるということになります。

 こういったことを通じて所有者等を探索していくということでございます。

和田委員 ありがとうございました。

 この法案を通すことの意義のところでちょっと回答が部分的だったかなと思うんですけれども、公共事業がその土地の所有者が不明であることによっておくれてしまったり、また、民間の取引、不動産売買、これが所有者不明であることによって進まない、空き家が放置される等々といった懸念もございます。

 また、取引、売買が行われたとしても、例えば、所有者不明土地が隣にあって境界線が不明確であるためにその土地の価値が落ちてしまう、こういった現状の問題もあるというふうにも理解をしております。

 またさらには、場所によっては所有者が不明であるため固定資産税等々の税金が徴収できないといったものもありまして、まさにこれは大変深刻な問題であり、また、今の日本にとっても経済的損失、時間的損失を生み出している深刻な問題だというふうに理解をしてございます。

 それで、所有者不明の土地でございますけれども、これが大体、日本全体でどれぐらいあるのか、また、これらの土地の所有者を捜し当てるまでに、概算で結構ですので、どれぐらいの予算と期間がかかるとお考えでしょうか。お示しをください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 表題部所有者不明土地につきましては全国に相当数存在しているものと思われますが、法務省におきまして全国の土地のうち約五十万筆を抽出して調査した結果によりますと、五十万筆の土地のうち約一%が表題部所有者不明土地でございました。

 全国にある土地の総数でございますが、約二億三千万筆でございますので、仮にその一%の割合でこういった土地が存在するというふうに仮定いたしますと、全国で約二百三十万筆の土地が表題部所有者不明土地であるということになります。

 この解消にかかる予算でございますけれども、平成三十一年度予算におきましては、この解消作業に必要な経費といたしまして、所有者等探索委員の委員手当を含む約一億八千万円を計上しております。初年度であります本年度におきましては、全国で七千七百筆程度の土地について解消作業を予定しているところでございます。

 具体的な個々の対象土地における所有者等の探索にかかる期間については、これはさまざまであると思いますけれども、一般的には少なくとも三カ月から六カ月程度の期間、特定が困難なものについては一年を超えることも想定されるところでございます。

和田委員 ありがとうございました。

 ざっくりと二百三十万筆が所有者不明の土地である可能性があるといったことで、大変膨大な数であるといったことが今わかりました。

 そしてまた、平成三十一年度の調査の件数ですけれども、これが七千七百ということで、これは、仮に一件一年かかったと単純計算しますと三百年かからないと全部終わらないといったことでございます。

 平成三十一年度は登記官二百二十一人、これを駆使しまして頑張って調査をしていただくというふうなことでございますけれども、じゃ、この調査にこれだけの年数をかけるのかというふうに考えますと、事の重大さを考えますと、スピードを格段にアップしなければいけないということで、相応の予算措置が必要だと考えてございます。

 本日この場で、さらなる予算の拡充が必要だといったことを委員各位と共有をさせていただきたいと思っております。

 そして、その所有者不明土地の調査でございますけれども、どのような優先順位で行うのでしょうか。例えば、公共事業がとまってしまっているところを優先するですとか、又は、住宅密集地である都市部を優先するですとか、こういった優先順位に関するお考えをぜひともお聞かせください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 表題部所有者不明土地の解消でございますけれども、その解消の必要性、緊急性が高いところから順次解消することが相当であると考えられます。

 この対象土地の選定につきましては、土地の利用の現況ですとか、地域の自然的社会的諸条件、例えば、自然災害のおそれがある地域であるかどうかといったような点、あるいは、ほかの表題部所有者不明土地の分布状況その他の事情を考慮して行うこととしておりますけれども、まずは、地域の実情を知る地方自治体からの防災、減災、復興関係事業等に関する要望を優先して、所有者等の探索を実施する土地を選定することを想定しております。

和田委員 ありがとうございました。

 続きまして、表題部所有者不明土地のデータの管理のことについて少し触れたいと思います。

 この所有者不明土地の問題でありますけれども、昭和三十年代にデータの移行等々がありまして、この問題があるというようなことがクリアになったわけであります。その後、今日まで長い年数かかってこの問題が持ち越されてきた、こういった現実は否めないのかなというふうに思っております。

 そして、所有者不明土地が相続のたびに持ち越されてきた背景、いろいろあると思うんですけれども、その一つには、相続登記の手続の煩雑さがあるというふうに認識をしております。

 法務省さんもこれを認識しているというふうに私も考えますけれども、例えば、相続人の方は、相続手続を進めるために、大変精神的にもダメージを受けている、大変悲しい状況である最中にもかかわらず、膨大な相続の手続をしなければなりません。

 不動産に関しましては、土地の登記に関しまして、まず、法務省が所管をする戸籍の書類を取得しなければなりません。そして、この戸籍の情報を被相続人が口座を所有していた銀行にまず持ち込む。加えまして、今度は法務省の登記所、ここに戸籍の情報を持ち込むといった手続が必要になってまいります。

 法務省が所管する戸籍の情報を銀行に持ち込む、これはある意味、仕方ないと思います。しかし、一方で、登記データというのは法務省が所管しているものですよね。戸籍情報も法務省さんが持っている、そして登記データも法務省さんが持っているにもかかわらず、相続人が一々、これを取得して、また同じところに持ち込まなければいけない、こういう大変煩雑で、かつ無駄なデータの授受、これがあるというふうに認識をしております。

 それで、まずこの点で一点お伺いしたいのは、法務省さんが所管をしております戸籍データとそれから土地登記データ、これは連携しているかどうか、これについてお聞かせください。

小野瀬政府参考人 お答えします。

 まず、現在の状況についての御質問と承りましたけれども、現在、戸籍の方は市区町村等の地方自治体の方でやっておられまして、そちらの方のシステムの方で事務を取り扱っております。

 法務省の方では、戸籍の副本データ管理システムというシステムにおきましてそれぞれの戸籍データの副本データは管理しておりますけれども、これはあくまでも戸籍のバックアップのためのデータでございます。

 したがいまして、現在では、登記簿と戸籍等のデータというものにつきましては連携はしておりません。

和田委員 ありがとうございました。

 一方で、今後の法務省さんの計画を見ますと、ここの点について問題意識がないわけではないというふうに思うんですね。それで、登記簿と戸籍等を連携するための方策といったものを二〇一九年度中にはまとめるというふうな計画があるというふうに理解をしております。

 ここのところは連携をしていただけると思うんですけれども、この点の計画について、より詳細な情報をお示しください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 不動産登記と戸籍等との連携を図って、土地所有者の情報を円滑に把握することができるようにするための仕組みを構築することは、所有者不明土地問題の対策において重要であると認識しておりまして、経済財政運営と改革の基本方針二〇一八等におきましても、このような仕組みを構築することを目指すこととされております。

 本年の二月でございますが、所有者不明土地問題の解決に向けまして、法務大臣から法制審議会に対して、民法及び不動産登記法の改正に関する諮問がされておりますけれども、登記所がほかの公的機関から死亡情報等を入手すること等により不動産登記情報の更新を図る方策がその具体的な検討課題とされているところでございます。

 また、法務省におきましては、この国会に提出しております戸籍法の改正法案の成立、施行後は、これを踏まえた新しいシステムの設計、開発に取り組む予定でございまして、この新たなシステムのもとで、登記名義人の死亡情報等を戸籍から取得するなどすることで適時に死亡の事実等を不動産登記に反映させる方策を実現することができないか、今後、具体的な課題を整理しつつ検討を進めてまいりたいと考えております。

和田委員 ありがとうございました。

 先ほど、戸籍の情報は自治体が一元的には管理をしているというふうなことでございますけれども、最終的な管理責任、これは法務省さんにあると思うんですよね。ですので、法務省さんが所管していないというようなことにはならないと思いますので、この戸籍とそれから登記のデータの連携というのはスピード感を持って進めていただきたいと思います。

 そして、我々は今、ソサエティー五・〇のデジタル時代に入っております。あらゆる手続の効率化、そして生産性の向上を図るといったことは、これは政府の根幹的な方針でございます。

 そして、今国会で今後、デジタル手続法案というものを審議することになっているかと理解をしております。デジタルファースト、ワンストップ、そしてワンスオンリー、こういったことが行政手続の大前提になる時代が来るというふうなことをターゲットとしているわけでございまして、こういったデジタルファースト、ワンストップ、ワンスオンリーというところをぜひとも法務省さんにも力強く推進をしていただきたいと思っております。

 そして、今の相続のところでございますけれども、願わくばですけれども、こういった登記データそして戸籍データをしっかりと連携させるところも重要なんですけれども、やはりこれはユーザーフレンドリーでなければいけないと思っております。マイナンバー等の個人番号と連動させて、そして、法務省に相続の手続の必要性、これを通知しましたら、自動的に法務省さんの中でこういった登記とそれから戸籍の情報をマッチングして、電子証明書的なものが携帯電話そしてPC等々に返ってくる、そうした便利なシステムというのをしっかりとつくっていただきたいと思います。

 次の質問でございますけれども、マイナンバー、これを普及促進する検討の最中におきまして、自治体が所管する住民票と、それから法務省が最終的には管理をしております戸籍、これの一本化がなされませんでした。そして、住民データがこういう戸籍と住民票に分かれているような国というのは世界でも実はまれでございまして、ここのところに問題意識を私は持ってございます。

 こういった所有者不明土地の所有者を捜すための登記官、これをふやして任命していくことも大事だと思う一方で、登記官の業務の効率化を図るということも重要だと思っております。いろいろな情報が複合的に管理できる、こういったことは登記官の業務効率化に間違いなく資するものであると思いますので、こういったデータを少しでも多くまとめて、そして業務のスピード感を上げるといったこともあわせて御検討をいただきたいと思っております。

 続きまして、少しトーンの異なる質問をさせていただきますけれども、現在、外国資本が日本の不動産を買収しているという事例が多々ございまして、その中で、本当の土地の所有者や所有目的がはっきりしていないものが少なからずある。いわゆる土地と安全保障の問題というものが指摘をされております。

 この問題でございますけれども、北海道や対馬、そしてその他国境離島等々で深刻な問題としてピックアップをされております。北海道におきましては、広大な山林が外国資本に買収をされまして、そのまま使用されず放置をされている、そういった事例もございます。

 そして、その所有者を調べますと、ケイマン諸島であるなどタックスヘイブンであるケースが少なくなくて、本当の所有者は誰なのかわからないといったケースが多々あるというふうに報告をされております。そして、そういった山林の中は大事な水源地であったりして、水源地が外国資本に押さえられるのではないかといった不安を多くの国民が今感じている次第でございます。

 これは産経新聞の取材なんですけれども、北海道の平取町豊糠地区というところがございます、ここの豊糠地区の集落丸ごと、百二十三ヘクタール、これが中国と非常に関係性の強い日本企業によって買い取られてしまって、平成二十三年の買収のときから現在まで放置をされているというふうに聞いております。

 これは農地が放置をされてしまっているということで、それ自体も大変問題なんですけれども、危機感を感じますのは、その農地がいずれ雑種地に切りかわってしまうんじゃないか、そうすると、住宅や工場、こういったものがつくられてしまう、素性のわからない工場や住宅ができてしまうのではないかという懸念が持たれております。

 それで、最近、ここの土地に中国の通信会社が通信基地を建てる検討をしている、そういった情報もあります。また、ここに住む、もともと中国人だったんですけれども、日本人と結婚して帰化した人が、ほかの同様の女性の人たちをこのコミュニティーに入らないかといって勧誘をしているといったことも確認をされております。

 そういう意味では、この土地と安全保障の問題とそれから所有者不明の土地の問題というのは、切っても切れない密接した問題だと思っております。

 ちなみに、アメリカでありますけれども、土地登記の際には国籍を明記することになっておりまして、ある地域の何%の土地はアメリカ人が持っていて、残りは外国人といったものが明確に整理をされております。あくまで国籍は申告ベースではあるんですけれども、そういった整理がされております。

 一方で、今の日本の登記には国籍を書く欄がございません。そしてまた、外国人の場合は、名前も申告ベースでいいというふうに伺っておりますし、例えば通名でも構わないといったことになっておりまして、本当の外国人の所有者が誰なのか、非常にわかりづらい状況になっております。

 この状況につきまして、今後、登記のデータに、国籍そしてちゃんと照合された正しい名前、こういったことを書く必要があると思うんですけれども、この点について法務省の見解をお聞かせください。

葉梨委員長 小野瀬民事局長、質疑時間が終了していますので、簡潔にお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、国籍を登記記録として登記すべき事項に加えるべきだ、こういったような指摘があることは承知しております。他方で、不動産登記に記録された事項は何びともこれを知ることができるものでありますので、国籍を登記事項とすることにつきましては、プライバシー保護の観点からも慎重な検討も必要となるものと考えられます。

 法務省といたしましては、御指摘のような事項も含めて、どのような情報を登記事項として公示すべきか、御指摘も踏まえつつ検討を深めてまいりたいと考えております。

和田委員 ありがとうございました。

 この土地の所有者の……

葉梨委員長 まとめてください。終わります。

和田委員 はい。

 問題は、これは国の根幹的な問題であると思いますので、公開するしないは別として、これはしっかりと把握する必要があると思いますので、その点、しっかりと頭に刻んで、今後の方針をつくっていただきたいと思います。

 以上でございます。

葉梨委員長 以上で和田義明君の質疑は終了いたしました。

 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 きょうは平成最後の法務委員会になりますので、この歴史的な瞬間に質問をさせていただくことを大変うれしく思っております。次にお会いするときには令和の時代になりますので、まさに、新しい法律を成立させ、次の時代に必要な法案を、この法務委員会中心に、また山下大臣中心に提出をしていただければというふうに思っております。

 質問に入る前に、先ほどの和田委員の、非常に、安全保障上の問題というのは我が党でも共有をしておるところでございます。一時、大臣とも少し勉強会をしたことがございましたが、大臣になられましたので中断をしておりますけれども、ぜひこの問題、さまざま財産権との問題等ございますが、しっかりやっていかなきゃいけないなというふうに思っております。一言コメントをさせていただきました。

 答弁されますか。ぜひお願いします。

山下国務大臣 先ほど和田委員からの御質問もありました。国籍を表記するかどうかというのは、プライバシーの観点からもございますけれども、やはり必要だという指摘、これは重く受けとめて、今後もしっかり検討してまいりたいと考えております。

浜地委員 ありがとうございます。通告していなかったんですが、大事な問題なので、本当にしっかり研究もして、必要性の部分はあるんですが、どうしても許容性の部分もしっかりやっていかなきゃいけないと思っておりますので、これ以上はやめますけれども、しっかり我が党もこれについて関与していきたいと思っています。

 早速、今回の表題部所有者適正法案に入りたいと思っています。

 通告していました一問目の、なぜ変則的な登記が出現することになったのかについては、先ほど和田委員から質問がございましたので、一問飛ばさせていただきたいと思っています。

 今回の法案なんですが、登記官に表題部の、特に所有者について調査権を与え、また、特定できなかったものについては財産管理の制度をつくっていく制度でございます。

 そうなりますと、これは、登記官が調査をするということが何か新しいように見えるんですが、実は、不動産登記法という不動産の基本法では、表題部の登記というのは、そもそも登記官が職権で登記をできるという規定があります。かつ、登記官は、そのために調査をすることができる、また、日没までの間、不動産を検査をしたり、また、当該不動産の所有者その他の関係について質問もすることができるということでございます。

 そうなると、ぱっと見ますと、今回、特別法によって、このような登記官の調査権限を、また探索権限を付与されておりますが、もともと不動産登記法、いわゆる登記法の一般法に、登記官の職権登記と、また登記官の調査権や検査権があるのに、なぜ今回、特別法までつくって登記官に調査権を付与したのか、ここについて説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、表示に関する登記につきましては、基本的に登記官は職権で登記をすることができるものとされておりまして、その際にさまざまな調査権限も規定されております。具体的には、当該不動産の検査、あるいは、当該不動産の所有者その他の関係者に対する文書等の提示を求め、又は質問することができるとされております。

 しかしながら、この法律案の対象となっております表題部所有者不明土地でございますが、歴史的な経緯によって、その記録が本来のあるべき記載からは適合しない、こういう状態となっているもので、そういう特殊な土地でございまして、この所有者等が誰かという問題でございますが、こういった不動産の物理的な状況と異なりまして、登記官が現在の法律の規定に基づく例えば実地調査をしましても、そこで得られた資料のみで認定することは困難であるというふうに考えられます。

 今回の法案では、新たな権限といたしまして、その対象となっている土地だけではなくて、その周辺の地域に所在する土地の実地調査をすることもでき、これらの土地に立ち入ることができるというふうにもしておりますし、また、所有者等の探索のために必要な限度で、関係地方公共団体の長に対して、所有者等に関する情報の提供を求めることができるものとして、各種台帳の調査を可能としているものでございます。

 そういったように、これらの土地については新たないわゆる調査権が必要だというふうに考えているわけでございます。

浜地委員 今の御説明、よくわかりました。

 もともと不動産登記法が持っている調査権限は、その土地に限っての、特に物質的な、物理的なものだけに限るんだと。そうではなくて、周辺の部分の土地の利用まで含めてさまざま調べたり、また地方公共団体についてさまざまな情報提供をして、いわゆる所有者をしっかり特定していくというところに特化しているというふうに私は理解した次第でございます。

 そういった特別法であるならば、逆にこれは、対象の土地の選定については、やはりしっかり、私は、基本計画のようなものをつくって、その必要性もしっかり国民の皆様方が理解をされた上で行った方がいいんじゃないかというふうに思っております。

 この法案の前に成立をしました所有者不明土地の問題、特に収用や公共目的で空き地等を使う場合については、これはいわゆる、大臣が地方公共団体等のまた意見を聞いて基本計画をつくって、こういう必要性があるんだ、緊急性があるんだということで、特別にこれは計画をつくってやっているわけでございます。

 しかし、この法の三条を見ますと、対象地域の選定については、そういう基本方針ではなくて、先ほどの質問に出ましたとおり、さまざまな事情を考慮してとしかないわけでございますが、基本計画をなぜつくらなかったというところまではちょっと聞きませんけれども、いわゆるその他の特別の事情というところがしっかりと明確にならないと、これは特別法までつくる意味というものが理解されないんじゃないかと思っております。

 そこで、私の質問で、基本方針がないという問題点も踏まえて、この事情を考慮してというのは具体的にどういうところを想定しているのか、明確にちょっと答えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 地域の選定の際の考慮事情でございますけれども、土地の利用の現況、地域の自然的社会的諸条件、他の表題部所有者不明土地の分布状況その他の事情というふうになっております。

 具体的に申しますと、土地の利用の現況といたしましては、例えば山林であるか宅地であるかなどを考慮することとしております。

 また、地域の自然的条件といたしましては、例えば自然災害のおそれのある地域であるかどうかを考慮して、防災、減災、復興等の観点から、所有者等の探索を行う必要性、緊急性の高い地域を選定することを想定しております。

 また、地域の社会的条件といたしましては、例えば地域の実情を知る方が減少しているといったようなことが挙げられまして、速やかに探索を開始しなければその探索が困難になるおそれについても考慮することとしております。

 またさらに、こういった表題部所有者不明土地が一定の地域に複数存在する場合には、これらをまとめて解消するのが合理的でありますことから、ほかの表題部所有者不明土地の分布状況についても考慮することとしております。

 考慮事情としては、具体的にはそういったものを考慮することとしております。

浜地委員 ありがとうございます。

 今、かなり詳しく説明をいただきましたので、そういったところがないと、何となく、特別の調査権なんだけれどもアトランダムにやっているように見えますから、当然、予算に限りがあるので、そういうことはされないとは思っておりますけれども、法のたてつけとしてそうなっておったので、確認をさせていただきました。

 今の答弁は非常に大事だと思っておりますので、いわゆるその他の事情というところの考慮要素に従って、しっかりと国民の皆さんが納得いく優先順位をつけながら、これはやっていただきたいというふうに思っております。

 ところで、今回、表題部所有者の特定において、登記官がいわゆる所有者を特定していくという作業をしていくわけでございます。

 実は、表題部所有者というのは、確かに登記としての対抗力はございません。権利の登記のように強い権限はないんですが、後ほど私も質問で出させていただきますが、ただ、表題部所有者として書かれた方々は事実上の所有者として見られまして、例えば権利の登記である保存登記をするときには、基本的には住民票があれば、表題部所有者として登記されている人間は、権利の登記という、強い権限を持つ、対抗力を持つ保存登記ができるわけでございます。

 ですので、所有者を特定していくというのは、表題部という何か形式のところを整えるというよりも、半分は、半分はというのはちょっと言い方は難しいんですが、これはいわゆる権利の登記にもつながっていくような作業をされるわけでございます。

 そこで、質問なんですが、この表題部所有者の特定において、いわゆる相続人が複雑になって、相続人が最後、突きとめられたんだったらいいんですが、例えば、所有者がかわる時効取得とか、一時、昔の時代に土地を譲渡したという権利の移転についても、登記官という、本来形式的審査権しか持っていない登記官が認定することになるのか、そこについて御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、時効についてでございますけれども、例えば、表題部所有者欄に、字持地のように、大字霞が関というふうに記録されているものがございますけれども、こういった土地について所有者等の探索を行ったところ、表題登記をした当時の所有者を特定することはできなかったけれども、その土地には現在も占有者が存在していて、表題部所有者不明土地を時効取得している、こういうふうに主張されるケースがあり得ます。

 このように、取得時効による原始取得に関しましては、現在までの占有状況、固定資産税の納付状況など、その者が時効取得の要件を具備しているかどうかについても調査し、登記官において占有者が時効取得をしているものと認められる場合には、その者を現在の表題部所有者として登記すべき者と特定して登記することを予定しております。

 他方で、今御指摘のように、探索の過程において、表題登記をした当時の所有者がAということで特定することはできましたけれども、その後でBに売買されていたというようなことがわかるケースもございます。

 ただ、こういったような承継取得のケースにつきましては、Bを所有者として特定するためには、ほかに二重譲渡がされていないということについてもやはり調査する、確認の必要があると思いますけれども、通常、そういった確認をすることは困難でありますので、今回の探索では、特定承継の存否については認定しないで、表題登記をした当時の所有者Aを表題部所有者として登記すべき者として特定して登記することを予定しております。

浜地委員 よくわかりました。

 私の問題意識は、先ほど申し上げましたとおり、表題部所有者はすぐ保存登記ができる関係にあるので、これは本当に、安易に認定をし過ぎると後々の紛争の種になるのでということでございました。ただ、御答弁としては、原始取得については認めるけれども、承継取得のような、売買のような場合は、やはりこれは権利の得喪にかかわるものでございますので、登記官では認定させないということでございます。それで私はよろしいと思っております。

 その上で、原始取得といっても、もともと表題部に書かれていた住所がなかったり字持地だったりして、なかなか難しい方々の相続人以外の方を結局は登記することになると思います。ですので、これは権利の得喪の一つなんですが、これを登記官に適切に判断させるという点において、やはりそれについては危惧はないのか、しっかり適切に判断されるための仕組みとしてはどんなものを考えていらっしゃるのか、御答弁をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 取得時効に関します各種の判断につきましては、法的な判断を必要といたしますことから、その判断において考慮すべき要素を類型化する、そういった手引を作成するほか、弁護士を所有者等探索委員として関与させる、こういったことなどをいたしまして、登記官による判断の妥当性を確保するなどの対応を行う予定でございます。

浜地委員 それも、私の問題意識にしっかり答えていただいたと思っています。まずは、しっかりとマニュアル化、取得時効をするときのいろいろな要件がかなり細かくございますので、その認定の仕方についてもマニュアル化し、また、探索委員としてしっかりと法律家を関与させるということによって、私は、この問題については非常に手当てがされるんじゃないかと思っていますので、そういう運用をしっかり行っていただくようにお願いしたいというふうに思っております。

 次の質問に行きますけれども、先ほど私、まあ同じような問題意識を何度も申し上げておりますが、表題部の所有者は対抗力はないが、保存登記は、住民票を添付すれば保存登記の登記名義人になり、これは第三者にも対抗力を有するということです。

 ですので、間違った認定を仮にした場合には、先ほど、そうでない仕組みを答弁をしていただいたところですが、そうはいっても、仮に真の所有者と違う人を認定した場合には、真の所有者に対して、不服申立てを行える機会というのをしっかりと確保する必要があると思っています。

 仮に、取得時効等で、実は要件を満たしていない等のような、不服のある真の所有者があらわれた場合に、この方々はどうやって不服申立てをする手段があるんでしょうか。それについて、まず御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のようなケースで、自分が真の所有者である、こういうふうに主張される方につきましては、表題部所有者の登記について行いました登記官の処分に対する審査請求をすることですとか、あるいは、その処分の取消しの訴え等の行政訴訟を提起することが考えられます。

 また、最終的な所有権の帰属そのものは、AB間での民事で争われるということになりますので、そういったAB間での所有権の帰属そのものの確定は、Aというのは表題部所有者として登記された者ですけれども、そういった者を被告として、真の所有者と主張する者が所有権の確認の訴え等の民事訴訟を提起する、こういうことが考えられるわけでございます。

浜地委員 この不服申立ての機会、しっかり確保できるようにお願いしたいと思っています。

 ちょっと質問を飛ばしますけれども、所有者が特定されると公告を、これはされるということでございますので、その公告によっても、実は、そういった所有者が変わっているということがわかりますので、こういった公告の手続についても、確実にやっていただきたいなというふうに思っています。

 ちょっと時間が少なくなってきましたので、六番目の質問に行きたいと思っております。

 特定ができなかった場合には、特定できなかったという旨を登記簿に書くわけでございまして、実際に特定できなかった場合はよくわかるんですけれども、特定できない事由として、法十四条の第一項四号のロなんですけれども、当該表題部所有者不明土地の所有者等を特定することができた場合であって、特定できたんだけれども、当該表題部所有者不明土地が法人でない社団等に属するとき又は法人でない社団等に属していたときにおいては、これは特定できなかったといって登記をするように書いてありますが、ここが非常にわかりにくいんです。

 所有者を特定できたんだけれども、法人じゃないので特定できなかったというのは、具体的にはどういう場合なのか、御答弁をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のこの法案におきます十四条一項第四号のロの規定でございますけれども、対象土地を探索した結果、法人でない社団等に帰属していることなどが判明したために所有者等を特定することができない場合には該当しないけれども、他方で、表題部所有者として登記すべき代表者等が存在しないために表題部所有者として登記することができる者が存しない場合、こういうことを想定したものでございます。

浜地委員 恐らく、水利組合とか入会権とかというのが実はありまして、私も実務をやっているときに、水利権の裁判で、この人が代表と思ったら、実は代表じゃなかったという、多数決で決まるとかいろいろあるんですけれども、非常に複雑なものがございますので、恐らくそういった登記だろうと思っております。

 こういう登記をしておれば、どこかの水利組合に属しているんじゃないか、だから、代表者が誰なのかというのは調べなきゃいけないので、もし代表者が登記をしていいという規約があれば、そのまま登記されるわけでございますので、そういったところもきめ細かく見ていただきたいなというふうに思っています。

 最後の質問にしたいと思っています。

 これは、管理、処分がなされます。売却したときには、これは供託をされるわけでございますが、これについては、最終的には、供託請求が十年間なければ、これは国庫に帰属するわけでございます。

 私は、売却した金銭をずっと供託しっ放しというのはよくないと思いますし、速やかに国庫に帰属するようなシステムがあってもいいと思いますが、いわゆる消滅時効としてこの還付請求権を捉えると、なかなかこれは実務上、国庫に帰属するのが難しいというふうに聞いております。

 そこで、これを除斥期間、十年たてば自動的に国庫に帰属するという考え方はなかったのか、それを検討されなかったのか、今後検討される予定であるのか、それについて御答弁をいただきたいと思います。

葉梨委員長 小野瀬局長、簡潔にお願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 そのような除斥期間を設けることについても、この法案の検討の過程におきましては、検討が行われております。ただ、除斥期間は、権利者の権利を奪うことになる性質のものでありますので、慎重な検討が必要であるといったような消極的な意見もあったところでございます。

 そういったことで、この法律案では除斥期間に関する規定を設けないとしておりますので、今回の消滅時効の規定による運用を、まずは注視していきたいというふうに考えております。

浜地委員 終わります。ありがとうございます。

葉梨委員長 以上で浜地雅一君の質疑は終了いたしました。

 次に、松平浩一君。

松平委員 おはようございます。立憲民主党、松平浩一です。

 きょうは、表題部所有者不明土地について法案質疑ということでお伺いいたしますが、その前に、前回の質疑で、私、破産者マップと個人情報保護法の関係をさせていただいたんですが、その質疑のやりとりでちょっと不明な点がありましたので、数点、法案質疑の前に、その確認を再度させていただきたいなというふうに思っています。

 何かと言いますと、先日の質疑で、端的に言うと、破産者マップのネット上の公開と破産者情報を一方でDVD販売しているという業者がありまして、その違いについて、これは、一方で個人情報保護法に問われ、もう一方では個人情報保護法の問題はなく営業しているということで、どこが異なるのかという問題を提起させていただきました。

 そこで、その質疑の中で、個人情報保護法上、個人情報データベースという定義がございまして、そこから除かれる場合の議論がありまして、それが、つまりは第三者提供で同意が不要となる場合に当たるんですけれども、そこの該当性について議論をさせていただいた際、お配りした資料一、これは個人情報保護法の施行令の三条の一号、二号のところですね。一号、不特定かつ多数の者に販売することを目的として発行されたものであって云々という、これが一号。二号が、不特定かつ多数の者により随時に購入することができ、又はできたものであることという、いわば有償性というこの要件ですね。こちらについて、ちょっと再度確認させていただきたく思います。

 この有償の要件について、これは端的に、破産者マップ、先日の例でいうと破産者マップが、破産者マップとして他人に提供するデータが有償であるかないか、その場合の話であるのか、又は、破産者マップがもとにしたデータ、そのもとにしたデータが有償で手に入れたものであるのかどうか、そっちの場合の話なのか。この一号、二号はどちらの話であったのか、ちょっと不明確でしたので、明確に御答弁いただければと思っています。

福浦政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げれば、個人情報保護法施行令第三条第一項第一号は、当該事業者における個人情報データベース等の該当性を判断する際に、当該事業者が取得をした個人情報を含む情報の集合物が有償で販売されたものであるか否かを基準とするものでございます。

松平委員 明確に御答弁いただきました。ありがとうございます。

 当該事業者が取得した個人情報ということで、もとになったデータの話であることがはっきりいたしました。そうなると、破産者マップがその情報を有償で公開しようが無償で公開しようがというのは関係のない話となるかと思います。

 ということは、これはちょっと通告と順序が違うんですが、個人情報保護委員会が破産者マップに行政指導をされていると先日お伺いしました。では、その破産者マップが入手した情報が、もしかしたら官報情報、官報も有償で入手する情報もありますので、もしかしたら有償で取得したものもあるかもしれないということは、一号、二号の該当性というよりは、施行令の三条の一項の三号の方、こちらに該当しないということで行政指導の方を行われたという整理になりますでしょうか。お願いします。

福浦政府参考人 当委員会といたしましては、破産者マップで公開されている内容を確認し、少なくとも、個人情報保護法施行令第三条第一項第三号に定めます「生存する個人に関する他の情報を加えることなくその本来の用途に供しているもの」には該当しないという判断をしたものでございます。

松平委員 ありがとうございます。

 こちらも整理ができました。施行令の第三条の一項三号ということになりますね。

 ということは、破産者マップと先ほどの破産者情報のDVDの販売、この違いは何かという話に戻りますけれども、このDVD、破産者チェックプログラムというんですけれども、これは日本ソフト販売株式会社という会社が販売しているものと承知していますが、この会社は、では、個人情報保護法上どのような手続を行っていらっしゃるんでしょうか。

福浦政府参考人 お答え申し上げます。

 日本ソフト販売株式会社からは、個人情報保護法第二十三条第二項等に基づく届出書を受領いたしております。

 これは、個人情報保護法上、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、第三者への提供を利用目的とすることなど個人情報保護法に定める項目につきまして、あらかじめ本人に通知又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、当委員会に届出を行う場合は、本人の事前の同意なく第三者に個人データを提供できる、いわゆるオプトアウトの手続によるものでございます。

 当該届出書には、官報破産者情報データベース製品としての販売等が利用目的として記載をされております。

松平委員 承知しました。オプトアウト手続による届出が行われていると。すなわち、それによって、同意不要で個人情報を提供できる、そういう手続だということですね。そうなると、破産者マップとこのDVDの違いは、オプトアウト手続を実施していたかどうかというところになります。

 これは、ちょっと考えてみると、そうなると、この破産者マップも、オプトアウトの手続の届出をしていれば、もしかしたら個人情報保護法上適法であった可能性が出てこないかという疑問も湧いてきます。このオプトアウト手続で破産者マップを認めていいのか、これは大変疑問なわけです。

 ちょうどきのう、個人情報保護委員会、三年ごとの見直しによる中間整理案を発表されていらっしゃいます。これを見ると、オプトアウト規制と名簿屋対策の状況、そういった項目もありまして、そこで、オプトアウト手続を行っていない未届け業者への指導も行った、そういった記載もありました。

 ただ、ちょっと、今の話なんですけれども、そもそもこういったオプトアウトの届出による例外を認めていいのかという、この問題意識を、せっかくの機会ですので、きちんと御検討いただければなというふうに思っております。

 以上、個人情報保護法の件は、この辺にさせていただきたいと思います。

 それでは、本日の表題部所有者不明土地の法案質疑に移りたいと思います。

 まず、ちょっとおさらいということで確認したいのですけれども、現時点で把握されている表題部所有者不明土地というのはどのくらいございますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この表題部所有者不明土地、全国に相当数存在しているものと思われますが、法務省において全国の土地のうち約五十万筆を抽出して調査した結果では、この五十万筆の土地のうちの約一%が表題部所有者不明土地でございました。

 全国の土地の総数は約二億三千万筆でございますので、仮にこの一%の割合で存在していると仮定しますと、全国で約二百三十万筆の土地が表題部所有者不明土地であるということになるわけでございます。

松平委員 二百三十万筆という、なかなか多い数になっています。

 では、今回の制度で所有者の探索をするということですけれども、年間でどのくらいの探索をしていくおつもりでございましょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今年度、平成三十一年度の予算におきましては、全国で七千七百筆程度の土地について解消作業を開始することを想定しております。

松平委員 七千七百筆ということですけれども、そうなると、この制度を当初のまま運営していく、そして仮に、前提として所有者不明土地が今後ふえないというあり得ないような想定をしたとしても、全て探索するまでに実は二百三十年かかるという計算になります。

 そのような長大な計画を思い描いていることはないんだと思うんですけれども、そうなると、この目標として、全ての表題部所有者不明土地を解消するというのは制度の目的にあるのかどうかというところなんですけれども、これは最終的な解消は全てできないとそもそも諦めているのかどうか、そのあたりの全体像を教えていただければと思っています。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 相当数の表題部所有者不明土地が存在していることを踏まえますと、こういった土地の解消作業はある程度の年数をかけて計画的に実施していく必要があるものと認識しております。

 この表題部所有者不明土地の解消が喫緊の課題であることに鑑みまして、速やかに解消できるように努める所存でございまして、その必要性ですとか緊急性の高いと考える土地から優先して解消作業を進めるほか、その解消作業についての内部における作業手順をできるだけ定型化する努力や工夫を重ねるなどして、作業の効率化や合理化を図ってまいりたいと考えております。

 それでも、全国の表題部所有者不明土地の解消にはかなりの年数がかかるということが想定されます。先ほども申し上げましたとおり、今後は必要性や緊急性の高いところから優先して解消作業を進めていって、最終的にどこまでこの作業を進めるのかといいますのは、そういった作業の進捗状況、そのときの状況を踏まえて、また引き続き検討してまいりたいと考えております。

松平委員 そうですね。必要性を踏まえながら進めていっていただければと思います。

 それで、この探索、どういったきっかけで行われるかというところなんですけれども、法案では、三条で、登記官が必要と認めるときは職権でその所有者等の探索を行うというふうに定めております。つまり、これは職権というふうになっています。一方で、例えば利害関係人が、所有者不明土地にある方がいるとして、その人から探索を開始してほしいという申立て権限などは規定されておりません、どこにも。

 そうなると、例えば山奥の、誰も見向きがされないような土地があったとして、又は今後、もう数十年、もしかしたらほっておかれてしまうかもしれないなというような土地がありまして、そういったところを、必要性として、探索しても意味がないと思うんです。やはり意味があるのは利害関係人がいるところ、何か問題が生じたりしているような土地、取引の対象となったりするような土地、そういったところが必要性があるように思うんです。

 それで、では、そういった土地をどうやって見分けるのかということになると、やはり結局は、その土地に関心を持つ利害関係人の意見というものが必要になってくるんだろうなと思います。

 そう考えると、利害関係者の申立て、こういったものを端緒に探索を開始するという仕組みがあってもよかったんじゃないかなと思っています。

 この点、パブコメを見ますと、やはり意見が寄せられています。これを読みますと、所有者等の探索は、利害関係人等による申立て又は申出により開始することを認めるべきであるという意見がありました。もう本当に、私も全くそのとおりだと思います。もちろん、その申出に必ずしも従わなくてもいいと思うんですけれども、そういった意見を言える場があってもいいのかなと思いました。

 このパブコメに対する回答がございまして、それは何て書いてあったかというと、担当者骨子案においては特定の者に申立て又は申出権は与えておりませんが、いただいた御意見は運用に当たっての参考とさせていただきますというものでした。

 このパブコメ回答にございます運用に当たっての参考というもの、運用について、実際はどのような運用を想定されていらっしゃるのでしょうか、お聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この探索を行う地域の選定につきましては、その解消の必要性、緊急性が高い地域から順次解消していくこととするのが相当であると考えられます。

 そこで、この選定に当たっての考慮要素といたしましては、土地の利用の現況ですとか地域の自然的社会的諸条件等々の諸事情を考慮することとしておりますが、やはり対象地域の選定に当たっては、まず、地域の実情を知る地方自治体からの防災、減災、復興等に関する要望を最優先して、地域を選定することを想定しているところでございます。

 ただ、御指摘の、ほかの方々、そのほかの国民の方々からの要望がある場合には、その要望につきましても追加的な考慮要素として考慮するということを想定しているものでございます。

松平委員 追加的な考慮要素とされるということのようです。

 結局、不明土地が減ったとしても、実社会に役立たなければ意味ないという点なんです。そういった意味で、今の追加的な考慮というところ、ぜひ、実際の運用というところですので、実際にこれを行う探索官であるとか登記官への周知、しっかりやっていただければなというふうに思っています。

 次に、所有者等の探索を行うに当たって、法律では、必要な調査を行い、登記官への意見を提出させるため、探索委員を法務局及び地方法務局に置くことというふうにされています。そして、登記官は、必要があると認めるときは、所有者等探索委員に必要な調査をさせることができるというふうにされています。

 この探索委員は、どういった方が任命されるんでしょうか、お聞かせください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この所有者等探索委員でございますけれども、所有者等の特定について必要な証拠方法、例えば旧土地台帳ですとか閉鎖登記簿、旧公図、当該地域におけるさまざまな慣習等についての知識ですとか、あるいは、そういった証拠の評価を的確に行うことができる能力を有する方を任命することを想定としております。ですから、特に資格者ということを要件としておるものではございません。

 具体的には、弁護士あるいは土地家屋調査士等の資格者の方が想定されますほか、例えば、過去に地方公共団体等において用地取得を担当して、類似の案件を取り扱った経験がある方、こういった方などを所有者等探索委員として任命することが考えられるところでございます。

松平委員 なるほどですね。

 先ほど、御答弁で他の方々とおっしゃいましたか、恐らく住民とかも含まれていると思うんですけれども、そういった方の要望で探索を開始する場合もあるというふうに御答弁をいただきましたけれども、そうなると、探索委員がこういった要望を行った方と利害関係にあるなど、ある特定の土地の調査を行うことが不適切な場合というものも想定されるのではないのかなというふうに思います。

 こういった場合はどうするのかなと思って、ちょっと法案を見たら、余り、何か規定はなかったようなので、このような場合に、つまり探索委員が不適切な場合ということなんですけれども、どのように対処するおつもりなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 所有者等探索委員は、所有者等を調査する、そういうことでございますので、例えば、所有者になるのではないか、こういった方と特定のつながりがあるということになりますと、これはかなり不適切ということになろうかと思います。

 しかしながら、表題部所有者不明土地はそもそも所有者が不明な土地でございますので、あらかじめ本当の土地所有者と所有者等探索委員との間に一定の関係があるというようなことを、例えば除斥期間として定めて排除する、そういった対策をとることは事実上難しいのではないかというふうに考えられます。

 ただ、実際上、所有者等探索の過程で、この対象土地に係る関係者と所有者等探索委員との間に一定の関係があることが判明した場合には、これはやはり公平性の確保の観点から相当ではありませんので、そういった場合には、その所有者等探索委員には当該対象土地の調査を担当させない、こういったこととすることを想定しております。

松平委員 ありがとうございます。

 ごめんなさい、ちょっと今のところを詳しく聞きたいんですけれども、担当させないというのは何か制度上のものなんでしょうか、それとも裁判所の許可を得て行うようなものなんでしょうか。その辺はどのようにお考えでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 これは運用上でありますので、所有者等探索委員で、実際にその調査をしていただく場合には指定をいたしますので、その指定を外すということでございます。

 なお、先ほど私、除斥期間と申しましたが、除斥事由の間違いでございました。申しわけございません。

松平委員 了解しました。

 ちょっとその辺の指定の外し方、もうちょっと詰めていただいた方がいいのかなというふうに思いました。

 それでは、これはちょっと先ほどの浜地委員の質問ともかぶってしまうかもしれないんですが、探索をして所有者が特定できなかったという登記、こういった登記を登記官がした後に、その後に真の所有者があらわれるということもあると思うんですけれども、その場合にどうなるか、教えていただいてもいいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、一つのケースとしましては、探索の結果、例えば、Aという方が表題部所有者として登記されている場合がございます。この場合に、真の所有者であると主張する人、例えばBといたしますけれども、そういう方は、表題部所有者の登記についての登記官の処分に対する審査請求をすること、あるいは処分の取消しの訴え等の行政訴訟を提起することが考えられます。ただ、最終的な所有権の帰属そのものをAB間で確定するには、BはAを被告として、所有権確認の訴え等の民事訴訟を提起する必要がございます。

 他方で、所有者の探索の結果、表題部所有者として登記すべき者がない旨の登記がされている場合でございますが、この場合には、真の所有者であると主張する方は、その状態を是正することを目的としまして、自分を表題部所有者とする登記を申請することが考えられます。その上で、この場合に、登記官がもし申請を却下したときは、その登記官の処分に対する審査請求をすること、あるいは処分の取消しの訴え等の行政訴訟を提起することが考えられるところでございます。

松平委員 承知しました。整理できました。

 では、次に、法案の十九条なんですけれども、裁判所は、特定不能土地等管理命令、そういったものを発令することができるというふうにされています。これはどういったときにこの発令が認められるのか、教えていただいてもいいですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 特定不能土地等管理命令でございますが、所有者等特定不能土地につきまして、必要があると認めるときに、利害関係人の申立てにより、裁判所が命ずるものでございます。

 具体例といたしましては、例えば、所有者等特定不能土地に生育している樹木について、その枝の切除をしたいと、隣地の所有者等がその伐採についての同意を得るためにこの管理命令を申し立てるというようなケース、あるいは民間事業者ですとか公共事業等の実施主体が所有者等特定不能土地を買収して事業を実施したいという場合に、売買契約を締結するためにこの管理命令を申し立てるというようなケース、さらには、所有者等特定不能土地について、所有権の時効取得をしたと主張する方が訴訟を提起しようとする場合におきまして、その訴訟の相手方とするために特定不能土地等管理命令を申し立てて、その管理者を選任してもらう、こういうようなケースなどが想定されるところでございます。

松平委員 伐採などという、そういった事実行為だけかと思っていましたけれども、買収といった法律行為も認められるということになるんですね。つまり、誰か不明土地を欲しいという人がいて、では、これを売ってもらうために、この土地を手に入れるためにどうすればいいかということで、今の特定不能土地管理命令を申し立てる、それによって選任してもらって、その方と売買契約を結ぶというようなものなのかなと理解しました。

 ということは、自分がその土地を売ってもらいたいために管理命令を申し立てる。では、こういう場合、必ずというか、ほかにいないわけなので、売ってもらえる可能性が高いのかなとかいうふうに思っちゃうんですけれども、これはお手盛りのようなことになったりしないんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 管理の対象であります所有者等特定不能土地につきまして、これを誰にどのような条件で売却するかにつきましては、まず、一次的には、特定不能土地等管理者が善管注意義務に基づいて判断するところでございます。さらに、売却に関しましては、裁判所の許可を要するものでございますので、個別具体的な事案に応じて、裁判所において売却の可否が適切に判断されることになるものと考えられます。

 一般的に、適正な土地の管理の観点から見て売却の必要性が認められる事案であること、あるいは、売却価格が適正であるなど、売買契約の内容においても不相当な面が見られないことなどが認められる場合には売却が認められるものと考えておりますけれども、逆に、売買契約の内容において不相当な面が見られる、あるいは、特定不能土地等管理命令の申立てをした者よりもより条件のいい購入希望者があらわれたといったようなケースにおきましては、管理命令の申立てをした者がこの土地を購入することができないこともあり得ると考えられます。

松平委員 はい、承知しました。

 この部分、ちゃんと適正、公正に行われるかというところを、実際に運用が始まってからだと思うんですけれども、注視していきたい、注視させていただきたいというふうに思っています。

 それから、今の特定不能土地管理者ですけれども、こちらも特段の規定がないようなんですけれども、管理者はどのような方がなるんでしょうか、教えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この特定不能土地等管理者でございますけれども、裁判所が、個別の事案ごとに、管理者が行う職務の内容を勘案して、適切に管理することができる者を選任するものと考えております。

 例えば、所有者等特定不能土地の売却を任務とすることが想定されるようなケースにつきましては、売却に関します法的な問題についての検討が必要となりますので、弁護士ですとかあるいは司法書士等の法律専門家が選任されることが想定されます。

 他方で、個別の事案、例えば、生い茂っている草や木の伐採許可などの軽微な管理行為を行う、こういうような場合には、法律専門家以外の者が選任されることもあり得ると考えております。

松平委員 はい、承知しました。

 この特定不能土地の管理者は、一定の費用、報酬の支払いを裁判所から受けることができるというふうにされています。これも法律上定まっていました。これは、先ほど、必要があるとき管理命令が認められるというふうにされていたんですけれども、例として挙げていただいた伐採、伐採するに当たっても費用がかかると思います。それから、売買契約の締結、契約書を作成したりとか、費用がかかると思います。こういった費用、ケース・バイ・ケースで違うと思うんですけれども、どの範囲でカバーされるのか、これを教えてもらってもいいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この特定不能土地等管理者でございますけれども、その職務を行うために必要なものとして裁判所が定める額の費用の前払い及び報酬を、所有者等特定不能土地及びその価値の変形物、例えば、土地から生じた果実ですとか土地の売却代金など、こういったものから受けることができるというふうにされております。

 ただ、この所有者等特定不能土地などによって報酬を支弁することができないときは、申立人が裁判所に納めた予納金から費用の支払いを受けることとなります。

松平委員 はい、承知しました。

 では、ちょっと次に移らせていただきます。

 現在もかなり多くある所有者不明土地ですけれども、この所有者の探索を進めること、こちらは大事ですけれども、これ以上所有者不明土地をふやさないということも大事だと思います。

 そこで、先ほど和田委員からも質疑がございましたが、やはり外国の方の土地取得ということについても考えなければいけないというふうに思っています。外国の方はそもそも、この登記制度を知らないという方も多いでしょうし、例えば、外国の方が亡くなった場合に、例えば相続があった場合、国や制度をまたいでしまって、日本人の場合よりもはるかに所有者の特定が困難になってしまうというふうに思うんです。

 平成三十一年二月、先日出された、登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会というものがございまして、こちらの最終報告書を見てみますと、「外国人など戸籍に記載されていない者については、情報の取得先を含め、戸籍に記載されている者とは異なる独自の論点についても検討が必要となる。」というふうに記載されていました。そうなんです。検討が必要となる、これはまさにそのとおりで、外国人による取得の場合、どうなるのか、どうするのかというのが定まっていないと、所有者不明の土地の問題というのはなかなか解決しないんじゃないかなと思うんです。

 そこで、外国の方、外資も含めてなんですけれども、その方々の取得の場合の登記制度、又はそれにかわる情報の取得方法でもいいんですが、それについてどのような対応をしていくのか、検討をなさっているのか。私、早急な対応がこちらも必要だと思っています。

 大臣、現時点でいいですので、この整理をお聞かせいただければと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まさに御指摘のとおり、登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会において、登記所が戸籍等から最新の情報を取得して不動産登記情報を最新の状態に近づけるための方策についても検討が行われておりまして、その中で問題として、外国人など戸籍に記載されていない者については、戸籍が存在しないことから、情報の取得先をどうするかなど独自に検討すべき課題があることが指摘されております。

 これに関連しまして、本年二月十四日、私は法制審議会に対し、所有者不明土地問題の解決に向けて、民法及び不動産登記法の改正に関する諮問をしております。そして、それに基づいて、現在、法制審議会に設置された民法・不動産登記法部会において調査審議が開始されたところでございます。

 その中では、研究会報告書に記載された戸籍のない外国人に関する問題も含めまして、諮問事項とした、登記所が他の公的機関から死亡情報等を入手すること等により不動産登記情報の更新を図る方策について審議がなされる予定であるというふうに承知しておりますので、まずはこの法制審の民法・不動産登記法部会における充実した審議、これが行われることを期待しているというところでございます。

松平委員 わかりました。では、私も法制審の審議内容をウオッチしていきたいなというふうに思います。

 この点に関連しまして、外国人の土地所有の問題、ニュースとかでも、中国の方に水源の森が買われているとか、そういった話題が結構大きな話題になりました。

 外資による我が国の土地買収、年間どのくらいあるのかといいますと、これはエコノミストという雑誌ですけれども、二〇一七年の海外投資家の日本国内での不動産取得額、これは一兆一千億円らしいんです。不動産全体の海外勢が占める割合、これは二四%らしいです。相当な比率です。このような動きに結構自治体は警戒を強めていまして、例えば北海道、これは条例で、土地の売買をする場合は三カ月前までに利用目的などを届けるように義務づけるなどしているようです。

 今、水資源のニュースの話を出しましたけれども、こちらはあくまで一例なんですが、外国資本による土地の買収については国会でももう何度も質疑、答弁されておりまして、安倍首相はたびたび答弁されています。我が国の安全保障上重要な国境離島や防衛施設の周辺等における外国人や外国資本による土地の取得に関しては国家安全保障にかかわる重要な問題と認識していますと、本当に言い続けていらっしゃいまして、これは資料二でまとめました。

 こちらは六回しか載せていませんけれども、実はプラスであと三回あります。発言の時期が近いので、字がちっちゃくなっちゃうので除いてしまったんですけれども、全部で九回言っています。もしかしたら、検索の問題で、もっと言っているかもしれないです。

 この答弁、これだけ答弁されている、重要な問題と認識されているということで、じゃ、この答弁に基づいて、外国資本による土地取得について実際どういう対応をされているのか、これをお聞きしてもいいでしょうか。

平井政府参考人 お答えします。

 防衛省としては、平成二十五年十二月に策定をされた国家安全保障戦略に従って、防衛施設に隣接をする土地、これの所有状況について、計画的に把握するための調査を行っているところでございます。

 本調査は、約六百五十の防衛施設について、平成二十九年度までに一巡目の調査を終えて、防衛施設周辺の継続的な状況把握等の観点から、引き続き二巡目の調査を今行っております。

 これまで、調査の結果、住所が外国に所在し、氏名等から外国人と類推される方の土地が東京都区内において五筆確認をされておりますが、現時点までに、自衛隊や米軍の運用に支障が生じるような事態は確認をされておりません。

松平委員 具体的に御答弁いただきました。東京周辺で五筆確認されている、そして、今二巡目の調査に入っていると。調査をしてみて問題なければいいということでいいのかなというふうに思います。

 海外の動きを見てみますと、例えば、フランスのマクロン大統領、二〇一八年二月、外国資本による農地買収に対する規制を講じる意向を示しました。何とおっしゃっているかというと、どんな目的かもわからないまま外国人に何百ヘクタールもの土地を買わせるわけにいかないというふうに述べています。

 同じ二〇一八年二月、オーストラリア政府、外国資本による農地、送電網の取得を規制すると発表しました。

 それからニュージーランドでも、外国人の不動産取得を禁止、規制する法律を実施する方針を掲げています。

 それから米国、二〇一九年度の国防授権法、外資による土地取得の規制の強化、こちらも盛り込まれています。一定の場合の土地取得、借受けについて、CFIUS、米国の外国投資委員会の審査を義務づけるようにしています。

 では、一方で、我が国の外国人の土地取得の際、どのような規制があるか、教えていただけますでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 土地取得全般に係る規制ということではなくて、我が省が所管しております外為法につきましてのみ、お答えさせていただきます。

 現行外為法では、非居住者による本邦にある不動産の取得、これには特段の制限は課していないところでございますけれども、他方で、同法五十五条の三に基づきまして、不動産の取得に係る資本取引、これにつきまして事後報告が求められている、こういうことになっているところでございます。

松平委員 土地を買う場合に、外為法上の事後報告ですね。

 では、その事後報告、もうちょっと具体的に内容を教えていただいてもいいですか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 現行外為法では、非居住者が本邦にある不動産を取得した場合には、当該非居住者は、同法第五十三条の三に基づきまして、不動産の取得にかかわる資本取引につきまして、居住の用に供するためのもの等の一定の場合を除き、取得金額の多寡にかかわらず事後報告が求められている、こういうことになっているところでございます。

松平委員 居住の用に供するものを除くということで、そういった場合は報告は不要ということなんですか。ちょっと穴がある規制ということですよね。

 これは、ちなみに、罰則とかはあるんですか、報告しない場合に。

小野政府参考人 はい、罰則はございます。

 それから、補足の説明でございますけれども、先ほどの、報告を求められない場合ですね、免除される場合。居住の用に供されるものというものを例示として挙げさせていただきましたけれども、ほかにも、非営利目的の業務の遂行の用に供するためのもの、事務所の用に供するためのもの、それから、他の非居住者からの譲受けによるもの等々の免除される場合がございます。

松平委員 なるほど、まだやはり免除要件があったんですね。非営利目的、それから、非居住者同士ということは海外同士ということですね。外国資本が一回買収してまた外国人に売るときは、では、報告は要らないということですね。結構、穴があるような気がします。

 先ほど、調査しているとお聞きしましたけれども、調査して問題なければいいということだけではなくて、やはり制度上穴をなくして、問題が発生する前にきちんと事前に準備する、そこが大事なのかなというふうに思っています。

 それから、ちょっと時間が参ってきたので、最後、あと、外国人の土地取得の問題で、税金の問題もあると思います。日本の徴税吏員が海外で徴税するとなると、権限が及ばないといった問題、それから言葉の問題というのがあります。

 では、日本の土地を所有している海外の方からきちんと徴税できているのか、この辺、どうでしょう、教えてください。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 固定資産税でございますが、これは原則として、それぞれの土地等の登記簿上の所有者に課されるものでございまして、外国人や外国法人の所有する土地につきましても、登記簿情報に基づき、その土地の所有者に対して賦課徴収を行っているところでございます。

 納税義務者が国外に居住するなど、納税義務を負う市町村内に住所等を有しない場合には、納税に関する一切の事項を処理させるため、原則として納税管理人を定めることとされております。この場合、各市町村は納税管理人に納税通知書を送付することにより固定資産税の徴収を行う、こういうことになるところでございます。

松平委員 それでは、実際に滞納が発生した場合はどうなるんでしょうか。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 固定資産税に関しましては、その課税対象となる土地等が必ず当該市町村の中に所在することから、これらに対して滞納処分を行うということが可能でございます。

 固定資産税に滞納が発生した場合には、一般論で申し上げれば、納税義務者に対して督促を行った後、自主的な納付を慫慂し、それでもなお納付がなされない場合には、最終的には差押えや換価といった処分を行うこととなります。

 なお、納税義務者が海外に居住している外国人で、その住所等が確認できない場合には、滞納処分等に係る書類を掲示板に掲示することにより一定期間経過後には送付があったものとみなされる制度、公示送達でございますが、これを活用することにより、差押えや換価といった手続を進めることも可能ということでございます。

松平委員 そうですね、やはり差押え、換価といった実効的な処分をしていただくことが肝要なのかなと思います。

 ちょっと時間が来ちゃったんですが、最後に、日本と外国の方との徴税率の差、こちらだけ聞いてもよろしいでしょうか。

葉梨委員長 では、稲岡さん、簡潔にね。もう時間が来ていますから。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 市町村におきましては、納税義務者を国籍別に把握、管理しておりませんので、その差というものについては把握はしておりません。

 ただ、過去に、国外に居住する納税義務者の状況について、幾つかの市を対象として聞き取りを行ったことがございます。その中では、個々の市で状況は異なるところでございますが、国外に居住する納税義務者の滞納の割合が、固定資産税全体の滞納の割合と比べて高い状況にあるというお話は伺っていないところでございます。

 ただ、これはあくまで限られた範囲での聞き取りの結果であると御理解いただければと存じます。

松平委員 ちょっと、全国的に調査してみてもいいのではないかと思いました。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で松平浩一君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 おはようございます。国民民主党の源馬謙太郎でございます。

 きょうも質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、表題部不明土地の問題に関する質疑をさせていただきたいんですが、ちょっとその前に、幾つか最近の話題についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 四月十九日に東京の池袋で大変痛ましい事故が発生をいたしまして、八十七歳の高齢の方が運転する車が暴走して、若い母親とお嬢様が亡くなるという事故がありました。その後、その被害に遭われた方の御遺族、御主人が記者会見をされて、悲痛に訴えている姿が大変多くの人の心を打ったと思います。

 私も拝見をしていて非常につらい思いになりましたし、その中で特に、やはり少しでも運転に不安がある方はぜひ運転しないという選択肢を考えてもらいたいとか、その御家族もそういう不安を感じているならぜひ働きかけてもらいたいという悲痛な訴えがありまして、これは改めて、高齢ドライバーの方の免許保持と運転に関する世論を大きく動かしたんではないかなと思います。

 このことについて、これまでも法務委員会でもいろいろな先生が質問をされていますが、ちょっと改めて御質問させていただきたいと思います。

 まず、どこから高齢かというのもなかなか難しいですけれども、七十歳以上、そして七十五歳以上、八十歳以上における、それぞれの運転免許証、今、自主返納率がどのぐらいあって、実際に免許をまだ所持し続けている人の数と割合をまず教えていただきたいと思います。

高田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、お尋ねの運転免許証の自主返納率に関してですが、平成三十年中の運転免許証の自主返納件数は、七十歳以上が約三十八万件、七十五歳以上が約二十九万件、八十歳以上が約十八万件でありました。これをそれぞれ前年末の運転免許保有者数で割りますと、その比率は、七十歳以上は約三・六%、七十五歳以上は約五・四%、八十歳以上は約八・二%となります。

 次に、運転免許を保有している人の割合についてお答えいたします。

 平成三十年末における運転免許保有者数は、七十歳以上が約千百三十万人、七十五歳以上が約五百六十四万人、八十歳以上が約二百二十七万人でありました。これを総務省統計局の平成三十年十月一日現在の人口推計値で割りますと、その比率は、七十歳以上は約四三%、七十五歳以上は約三一%、八十歳以上は約二一%となります。

源馬委員 ありがとうございます。

 あくまでもやはり自主返納ということなのでなかなか難しいと思いますが、八十歳以上でも八・五%しか自主返納できていないという現実、また、七十五歳以上でも五・四%しか自主返納できていなくて、五百万人以上の方がまだ免許を保有している。その方が全員、運転に本当に不安があるかどうかももちろんわかりませんし、運転しているかどうかもわかりませんけれども、警察庁としては、この数字は今のところどういうふうに評価をされているんでしょうか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 運転に不安を覚えている高齢者の方に自主返納、運転免許を返納しやすい環境の整備を図るということは、重要な課題であると認識しております。

 なお、先ほど申しました自主返納のほかに、運転免許を更新しないという方もそれなりにいらっしゃるというふうに認識はしているところでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 新聞報道では、昨年一年間で交通死亡事故を起こした七十五歳以上が、前年比よりも四十二人ふえて四百六十人いたというふうに報道されました。死亡事故全体に占める割合は過去最高で、一四・八%に上ったという報道もされています。

 これを考えると、やはり、より踏み込んだ対応が必要ではないかなというふうに思いますが、現在の、今御説明のあった免許の自主返納率を更に高めていく、その方策というのは何かお考えなんでしょうか。

高田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、運転に不安を覚えている高齢者の方が運転免許証を返納しやすい環境の整備を図ることは、重要な課題であると認識しております。

 このため、都道府県警察では、運転適性相談窓口を設け、高齢運転者御本人やその御家族に対して、安全運転の継続に必要な助言指導を行うほか、運転免許の自主返納制度や自主返納された方に対する各種支援策についてお知らせしております。

 また、高齢者講習において自主返納制度について紹介しているほか、七十五歳以上の方が運転免許証の更新時に受検される認知機能検査の結果、認知症のおそれがあると判定された場合には、結果のお知らせとあわせて、自主返納制度についてお知らせしております。

 さらに、運転免許証を自主返納された方の申請により運転経歴証明書を交付しており、運転免許証を返納された方の本人確認書類として活用していただいております。

 このほか、警察では、運転免許証を自主返納された方への支援について自治体や民間事業者に働きかけを行っており、その御理解を得て、バスやタクシーなどの公共交通機関の割引を始め、各種施設利用料の割引など、さまざまな支援が行われております。

 引き続き、運転免許証を返納しやすい環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。

源馬委員 今も御説明がありました。これまでも取り組んできていらっしゃる取組があって、例えばタクシー券とか、そういうのもそうですけれども、それから、今御説明があった免許の履歴書ですか、身分証明のかわりになる。これは、免許を持っている目的が身分証がわりということであって、この人たちの返納率が上がっても余り交通事故を防ぐという意味では意味がなくて、しかも、例えば、これまで自治体なんかでも取り組まれている温泉の利用券とかも、これは本当に事故を起こしてしまう高齢ドライバーを防いでいくという方策にはつながっていないんじゃないかと思うんですね。なので、過去最高の、高齢ドライバーによる死亡事故数が生まれてしまったということもあると思います。

 私も、父がだんだん高齢になってきまして、運転を心配するんですけれども、なかなかやはり言いにくいです、家族であっても。これはもういろいろなところで声が聞こえてきます。やはり、自分の親であっても、自分の配偶者であっても、もう運転をやめてくれというのはなかなか言いにくかったり、ましてや他人が言うということは非常に難しいことだと思うので、何らかのもうちょっと強制力が働いた方策でないと、余りボランタリーにばかり頼っていると実効性は伴わないのではないかなというふうに思います。

 その上で、先ほどもちょっとお話ありました講習と検査、七十歳以上の運転免許取得者が免許更新を希望する際、座学ですとか適性検査を行うということになっていると思いますが、さらに、七十五歳以上では記憶力や判断力も測定するということですけれども、この内容、今どういうことをやられているのか、講習の内容と検査の内容を教えていただけますか。

高田政府参考人 お答え申し上げます。

 運転免許証の更新をされる方で運転免許証の更新期間満了日における年齢が七十歳以上の方は、年齢に伴う身体機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすことを理解していただくため、高齢者講習を受講していただいております。

 高齢者講習の時間は二時間であり、その内容は、高齢者の交通事故の特徴と安全運転の心構え等についての講義、視力等の変化を自覚していただくための検査や指導、受講者が運転を実際に行って指導を受ける実車指導となっております。

 そして、七十五歳以上の方については、委員御指摘のとおり、高齢者講習の前に認知機能検査を受けていただき、その結果、認知症のおそれがある第一分類又は認知機能低下のおそれがある第二分類と判定された方は、高齢者講習の時間は三時間となっており、さきに申し上げた講義、視力等の検査や指導、実車指導のほか、さらに、実車指導時のドライブレコーダーを活用した個人指導を行うなどしております。

源馬委員 報道によりますと、そうした検査でも、第一分類ですか、認知機能低下のおそれがあると分類された人は全受検者の二・五%しかいなかった。そして、第二分類でも二四・五%。七三%が問題なしというふうになっていたということでございます。

 実際に事故を起こした、これは去年の五月、茅ケ崎市のケースですけれども、九十歳の女性が事故を起こしまして四人の方が死傷された事故でしたけれども、この女性も、検査では異常が見られなかったというふうに分類をされているというふうに伺いました。

 さらに、今回の事故を受けていろいろな声がありまして、検査を受けて第三分類に、つまり問題なしというふうに分類されてしまうと、かえって自信を持って、自主返納をなかなかしない、もう俺は問題なしだったんだというふうになって、より自主返納から遠ざかるという御指摘もありますけれども、そのあたりについての御見解を伺いたいと思います。

高田政府参考人 先ほど申し上げました講習におきましては、年齢に伴う身体機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすことを理解していただくということを重要な内容の一つと考えておりまして、そうした指導を講習の中ではさせていただいているというところでございます。

源馬委員 理解できないから危険なことになるわけで、理解も、理解してもらうということで理解していれば、もちろん最初から問題ないわけなので、そこがやはり難しいところだと思うんですね。

 先ほども言いましたが、自主返納ということに余り頼り過ぎないで、やはり免許取得の年齢も十八歳以上という下限があるわけですから、そろそろ上限というのも、私は、少なくとも議論をしても、検討しても、やはり必要なことではないかなというふうに思います。

 人それぞれ、もちろん認知機能にも、また運動機能にも差はありますけれども、やはりどこかで線を切らないと、なかなか、この自主返納ばかりに頼っているとこうした悲惨な事故というのは後を絶たないのではないかなというふうに思いますが、そのあたりについての現在のところの、あるいは今後のことでもいいですけれども、御見解を伺いたいと思います。

高田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、運転免許に年齢の上限規制を設けるべきではないかという御指摘でございますが、平成二十九年六月に出された警察庁において開催した有識者の検討会の提言では、加齢に伴う身体機能の低下の程度は個人差が大きく、年齢のみによって一律に運転を制限すること自体に問題があるというふうにされておりまして、そうした御指摘につきましては慎重な検討が必要であるというふうに考えているところでございます。

源馬委員 高齢者ドライバーについての質問はこれで終わりますけれども、それはどんな問題でも同じであって、下限も、十六歳でも、二十の人よりもずっとうまく運転したり節度を持って運転する能力があったりする人もいるわけで、高齢者だけが能力に差があるんだから区切ってはいけないという理屈はないと思います。

 ぜひ引き続き、今のこの痛ましい事故も含めて、御検討をいただきたいというふうに思います。

 ここから法案の質疑に入らせていただきたいと思います。

 所有者がわからない土地というのがたくさんあるということは本当に多くの人が困っている問題でありまして、例えば、土地の一部分が誰が所有しているかわからないということで公共工事が進められなかったりとか、土地の一部が誰のものかわからないのでマンション開発ができないとか、いろいろな問題が起きているというふうに思います。

 昨年の通常国会で、所有者がわからない土地を企業ですとか地方公共団体が公園や駐車場といった公共目的に使うことができるようにする法案が成立をいたしました。これが昨年の十一月十五日から施行されていると思いますが、この所有者不明土地の利用円滑化特別措置法の施行日以降、公共事業に係る所有者不明土地に関する運用状況についてお伺いをしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法におきましては、登記官が、公共事業の実施主体からの申出を踏まえまして、所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記がされていない土地について、亡くなった方の法定相続人等を探索した上で、職権で、長期間相続登記未了である旨等を登記に付記し、法定相続人等に登記手続を直接促すなどの不動産登記法の特例が設けられております。

 この特例の部分につきましては、平成三十年十一月十五日から、委員御指摘のとおり、施行がされているところでございます。

 この長期相続登記未了土地の解消作業でございますが、平成三十年度から全国の七万筆を超える土地を対象に相続人の探索を既に開始しているところでございまして、今年度におきましても、新たに、先ほど申し上げましたものと同程度の土地を対象として作業を実施する予定でございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 ほかの委員の方の質問とちょっとかぶってしまって、答弁が重なってしまうところがあるかもしれません。ちょっとお許しいただきたいんですけれども、この質問も出ておりましたが、改めてになりますが、今回の表題部所有者不明土地がどのぐらい全国であると今見込んでいて、済みません、繰り返しになりますが、どのように試算をされていて、さらに、全体の所有者不明土地の中で表題部所有者不明土地というのがどういう位置づけにあるのか、それをお伺いしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 表題部所有者不明土地でございますけれども、法務省におきまして抽出調査をいたしましたところ、五十万筆の土地のうち約一%が表題部所有者不明土地でございました。全国の土地は約二億三千万筆でございますので、仮にこの一%の割合ということになりますと、全国で約二百三十万筆の土地ということになるわけでございます。

 所有者不明土地一般でございますが、広い意味では、不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず、又は判明しても連絡がつかないため、所有者を特定することが困難となっている土地をいうものと理解しております。ある調査の結果では、全国の土地の約二〇%がこれに該当するというふうになっております。

 ですから、まず、数の面で申しますと、これが二〇%で、先ほどが一%でございますので、所有者不明土地のうち表題部所有者不明土地の割合は約五%と計算上はなるわけでございます。

 この所有者不明土地が発生する主たる原因といたしましては、例えば、相続が発生しても、相続登記が未了のまま放置されるといったようなものがございます。これに対しまして、表題部所有者不明の土地は、これは歴史的な経緯によって発生したものでございまして、所有者の探索がとりわけ困難なものというふうに言われております。

 したがいまして、表題部所有者不明土地は、概念的には広い意味での所有者不明土地に含まれるものでございますけれども、その発生原因がほかのものとは異なっておる、あるいはまた、新たに発生することがないという点で特殊なものでございます。

 この土地につきましては所有者の探索がとりわけ困難なものであるということでありまして、公共事業の実施や円滑な土地取引の大きな支障になっているものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 今御答弁ありましたように、一度探索すれば、解決をすれば、また発生するようなものではないという特殊性があったり、あるいは逆に、探索が難しいという側面もあるということでした。それが全国で二百三十万筆ぐらいあるだろうと試算されるということです。

 先ほども松平議員からも御指摘ありましたが、今回の計上されている予算と、七千七百筆を対象とするということから計算すると二百年以上かかるという御指摘もありましたが、それは現実的ではないとしても、この二百三十万筆あるだろうと想定されている表題部所有者不明土地について、どこまで、いつまでというのは難しいと思いますが、どこまで、どの程度調査して明らかにしていくという方針を法務省はお持ちなんでしょうか、政務官。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 法務省において先ほど答弁した過去に実施した調査の結果によれば、全国都道府県に相当数の表題部所有者不明土地が存在していると考えられておりまして、これを直ちに解消するということは困難であるという状況です。そのため、必要性、緊急性の高いところから順次開始をしていくことが相当であると考えております。

 三十一年度予算においては、表題部所有者不明土地の解消作業に必要な経費として、所有者等探索委員の委員手当、これは約九千二百万円でございますが、それを含む約一億八千万円を計上しておりまして、本法案の成立、施行後においては、三十一年度中に、先ほど委員も質問に入れていただきましたけれども、七千七百筆程度の土地について解消作業を速やかに実施することを想定しております。

源馬委員 ありがとうございます。

 労力とか時間とかがかかると本当に全部やるというのは難しいと思いますが、その中で、限られたリソースを使っていって、効率的に、優先順位の高いところからやっていくんだというお話でしたけれども、土地の利用現況とか、土地の周辺地域の自然的社会的諸条件、あるいは土地の分布状況やその他の事情を考慮するというふうになっておりますけれども、今政務官が御答弁いただいた優先順位ですね。どこに本当に優先順位があるか、それを、では、例えば今年度はどことどことどこをやっていくんだ、こういう土地の選定をするに当たって、優先順位のつけ方や選定の手続をどう考えているのか、教えていただきたいと思います。

門山大臣政務官 今委員が御説明いただいたように、この法案第三条一項において、選定については、利用状況、地域の自然的社会的諸条件、他の表題部のそれらの分布状況その他の事情を考慮して行うというふうに書いてあるんですが、まずは、今回、地域の実情を知る地方団体からの防災、減災、復興関連事業等に関する要望を優先して、所有者等の探索を実施する土地を選定することを我々としては想定しております。

源馬委員 まず防災の観点からというのは非常にわかりやすいんですけれども、それに続いていく優先順位ということを将来的に考えていった場合に、何かやはり、この利用現況とか諸条件とかいうことではなくて、もうちょっと具体的なガイドラインがないと、なかなか、どのように選定されているかという透明性が確保できないのではないかなというふうに思います。

 そうしたもう少し具体的なガイドラインをつくっていく方針はあるのか。そして、選定の手続において、透明性と公平性をどう担保して、そして国民の皆さんに理解してもらえるようにしていくおつもりか、方針を伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えをいたします。

 地域の選定におきましては、先ほど御指摘ありましたように、土地の利用の現況等さまざまな事情を考慮する、また、その選定の手続につきましても、地方公共団体等からの要望を優先するということを申し上げましたが、具体的な選定の方策について、どのように具体的にやっていくのかにつきまして、何らかの法務省としての、民事局として、本省としての考え方、こういうことが示せないかにつきましては検討してまいりたいと考えております。

源馬委員 ぜひお願いしたいと思います。それがないと、やはりそれぞれの例えば地方で決めていく際も、何か不透明な決め方がまかり通ってしまったりとか、何か手心が加えられた選定になってしまわないように、あるいはそういう疑いが持たれないように、きちんとしたガイドラインを設けておけばそういった疑いも持たれないと思いますので、ぜひそこはこれからも検討していただきたいなというふうに思います。

 それから、先ほど政務官から御答弁のあった、今参考人からも御答弁ありましたが、地方公共団体からの要望ですとか、そういったものにも沿っていくということでしたけれども、実際そういう要望というのが、現在はまだ法案は成立していませんが、今の段階でそういうものが上がっているのかどうか、伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 表題部所有者不明土地の関係で、やはり被災地における復興整備事業、あるいは防災事業、土地区画整理事業などの実施地区内にそういった土地が存在するために、円滑な事業の実施に支障を来したり、あるいは計画の変更を余儀なくされた、こういった事案があるということは私どもも承知しております。ただ、ちょっと具体的な、どのぐらいの数といいますか、案件があるかまでは把握しておりませんけれども、そういった事案があることは承知しております。

源馬委員 被災地の復興ですとか、そういう視点についてはまず優先的にやっていただきたいと思いますが、同時に、民間業者も、先ほど御説明しましたけれども、例えば、不動産業者ですとか建設業者のような方もやはり困っているケースもあると思うんですね。

 私の前やっていただいていた秘書の方も、お父様が不動産開発会社を経営されていて、まさにこの問題で困っていたという話を聞いておりますし、こういった民間企業もあるというふうに思います。

 そうしたことを含めると、民間企業の方にも、こういう制度が始まって、解消できる道筋があって、こういうガイドラインで選定していきますよというようなことを周知していかなくてはいけないと思いますが、このあたりについてはどのようなことをお考えなのか、伺いたいと思います。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

門山大臣政務官 今、表題部所有者不明土地が問題を生じさせる場面というのは、これはさまざまあると考えられるところでございますので、今後、本法案に基づいて表題部所有者不明土地の解消作業を進めていくに当たりましては、先ほど私が答弁した地方自治体等のほか、委員が御指摘しているように、民間企業も含めて、幅広く本法案の趣旨及び内容について周知していくことがこれは重要であると法務省としても認識しております。

 具体的な周知方法なんでございますが、各種関係機関や関係団体等の御意見も踏まえながら今後検討していくところでございますけれども、例えば、全国の法務局において説明会を開催するとか、パンフレット等の配布等の取組を実施することとか、あるいは、法務省のホームページ、法務局のホームページの活用なども想定しているところでございます。

 いずれにしましても、法務省としては、本法案が適切に施行されるよう効果的な周知活動を行う所存でございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 そういった周知をぜひしていただきたいというふうに思いますが、同時に、表題部所有者不明土地を選定して探索を開始するときに、これは公告するということになっていると思いますが、この公告というのはどのように公告をするのか、その手続の開始を外部の人がちゃんと認識できるようにどういった公告の仕方をするのか、伺いたいと思います。

門山大臣政務官 本法律案においては、表題部所有者不明土地の所有者等の探索を開始するとき、これは法案第三条第二項でございますが、そのほか、あるいは表題部所有者の登記をしようとする前、これは十五条二項に規定されている、あと、また登記をした後、これは十六条等に規定されているところでございますが、そういうときに、その節々において公告をすることとされております。

 そして、この公告の方法に関しましては、今後、法務省令で定める予定ではございますけれども、対象土地を管轄する登記所の掲示場など公衆の見やすい場所に掲示して行う方法に加え、各地の法務局、地方法務局のホームページに掲載する方法を予定しております。また、公告の内容、公告の期間については、関係者に対する情報提供として十分なものになるように意を配る予定でございます。

 いずれにいたしましても、法務省令の制定に当たりましては、その案をパブリックコメントに付して、広く国民の皆様の御意見を聴取してまいる所存でございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間も迫ってきたので順番を少し変えたいと思うんですが、特定不能土地等管理者について伺いたいと思います。質問の通告の番号でいうと十六番だと思います。

 この法律案で、裁判所が必要であると認めた場合、利害関係人の申立てにより、その土地を特定不能土地等管理者による管理を命ずる処分をすることができるという制度になっていると思います。

 これは非常に、なかなか明らかにならない所有者を、そこにとらわれずに、円滑に土地を利用するということにつながるというふうに思いますが、一方で、本当の所有者の財産権の侵害に当たらないかという懸念もこれは言われているところだと思います。

 私は、余り財産権の保障ということにとらわれ過ぎていると円滑な土地利用はできなくなってしまうんじゃないかという立場におりますけれども、一方で、やはり財産権も守っていかなきゃいけない。

 このあたりのバランスをどうとっていくのか。真の所有者の権利をどこまできちんと大事にしながら、土地利用を進めていく。特に裁判所は、裁判所が判断をするわけだと思うんですが、裁判所がどういう基準で判断をして、管理者をつけて管理をしていいよということにしていくのか、そのあたりをお伺いしたいと思います。

門山大臣政務官 まず、基本的認識でございますが、本法律案が対象とする表題部所有者不明土地は、歴史的な経緯により表題部所有者欄の登記の記載が変則的なものになっている土地でございます。このため、まずは、登記の記載を適正なものに改めるよう、真の所有者の探索に努めることは重要であると考えております。

 他方で、表題部所有者不明土地が明治以降の歴史的な経緯に基づくものであることに照らすと、所有者の探索には限界があり、調査を尽くしてもなお所有者を特定することができない事態も生ずるものと考えられます。

 そこで、このようなケースについては、裁判所の関与のもと、真の所有者にかわってその土地の管理、処分を行う管理者に関する制度を設けることとしております。

 このように、真の所有者の保護はできるだけ意を用いつつも、それには限界があることを踏まえて、管理者等、解消にかかわる制度を設けることが適切かつ合理的であると考えているところでございます。

源馬委員 この探索について、探索委員なんかも使うことができるということになっておりますが、ちょっとお伺いしたいんですけれども、どのぐらいの期間、どのぐらいの労力を使って、この表題部不明土地の調査、探索というのをやるんでしょうか。もうとことんやるのか、それとも、さらっとやって済ますのか、どの程度やるものなんでしょうか。

門山大臣政務官 法務省において過去に実施した調査の結果によれば、全国都道府県に相当数の表題部所有者不明土地が存在していると考えられまして、現時点でどれぐらいの期間で解消することができるかということを明らかにするのは、これは残念ながら困難です。

 また、その全てを解消するためにどのぐらいの労力が必要かと言われる点についても、これも明らかにすることは困難であると言わざるを得ません。

 もっとも、表題部所有者不明土地の解消が喫緊の課題であることに鑑み、速やかに解消するよう努める所存ではございまして、表題部所有者不明土地を解消する必要性や緊急性の高いと考えられる土地について優先して解消作業を進めるほか、解消作業についての内部における作業手順をできるだけ定型化する努力や工夫を重ねるなどして、作業の効率化、合理化を図ってまいる所存でございます。

源馬委員 なぜこれをお伺いしたかというと、解消とおっしゃいますが、本当の所有者を見つけることが解消なのか、それとも、ちょっと見つからなかったから管理者に移すということが解消なのかによって、やはり目指すところが違うと思うんですね。

 それは、先ほどちょっとお伺いした、本当に真の所有者の財産権を守るという、そのためにやっていくならもうとことんまで調査をするんでしょうし、例えば探索委員の方、この方への日当も二万二千円を考えているというふうにお伺いしましたが、二万二千円の日当を何日、例えば、もうわかるまでやってもらうのか、それとも、ある程度のところで区切りをつけて、ここはわかりませんでした、では裁判所が管理者を認定しましょうということになっていくのかで、大分その解決の方法が違ってくるのかなと思うので、これもどっちだと言うのは難しいと思いますが、どの程度やるものなのかなと、ちょっとお伺いをしたいなと思います。

門山大臣政務官 そのバランスというのも難しいんですけれども、第一義的には、とにかく真の所有者を探索する。それでも限界があるので、そういう場合には管理者を選任していくということ。これは具体的にどういうというのはなかなか一概には申し上げられないんですけれども、やはりその辺のしっかりとしたバランスをとりながら、とにかくやはり解消に向ける、どちらの方法もこれは解消に向けた制度であるわけでございますので、それについて適切かつ合理的に進めていきたいというふうに考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 時間がなくなってきたので、大臣にお伺いしたいんですが、今回のこの表題部不明土地の探索を行うことによって、所有者不明土地の問題の全体の解決にどういう道筋をつけて、これがどういうステップになってくるとお考えなのか、お伺いしたいと思います。

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

山下国務大臣 表題部所有者不明土地は、例えば法務太郎外七名など、所有者の氏名、名称や住所に記載が欠けた部分のある変則的な届けがなされた土地でありまして、これはもう戸籍や住民票等を請求するための手がかりすら得られないものであります。

 そして、先ほど局長が申し上げたように、表題部所有者不明土地というのは、所有者不明土地の中で大体五%を占めるものではあるんですけれども、所有者不明土地の中でもとりわけ所有者の探索が困難な土地ということになります。公共事業の実施や円滑な取引等の大きな支障となっていると指摘されております。

 このような所有者の探索がとりわけ困難である表題部所有者不明土地について、所有者等の探索を行い、その登記を適正化していくということは、これらの大きな支障の解消につながるものでありまして、所有者不明土地問題全体の解決の中で重要な意義を有するものと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 先ほど御質問させていただいた中にも、真の所有者の財産権をどこまで守るのかということにもつながるんですけれども、よく言われることですけれども、他国と比べて、日本では土地の所有権の概念がすごく強いというふうに理解をしております。ほかの国では、土地というのは国のもので、それを一時的に借りたりしながらやっているという一方、日本は、この土地は俺のものだという概念がすごく強くて、一回取得したらもう本当に自分の所有物かのように、何かそんなやはり認識があるなというふうに思います。

 先ほどもちょっとお話が出ていましたが、外国人による土地取得の問題も、私は、一方では、所有権の考え方が強過ぎるということも解決が難しいところがあるんじゃないかなというふうに思っておりますが、我が国における土地所有権の強大性について、大臣の御所見があればお伺いしたいと思います。

山下国務大臣 委員御指摘の見解があるといったことは承知しております。

 しかし、憲法上、財産権の内容は公共の福祉に適合するよう法律で定めることとされておりまして、これを受けて、民法においても、所有権の内容は法令の制限に服することとされているのでありまして、公共の福祉優先の理念等に基づき、公共的に土地を利用するための立法が妨げられるわけではないものと認識しております。

源馬委員 わかりました。

 もちろん、それはそうだと思うんですけれども、一方で、やはりそれによって苦労する方たちもいらっしゃって、土地所有権を放棄を認める制度についても、いろいろこれまでも法制審議会等でも議論されているというふうに思います。

 私の周りでも、土地は要らないよという人もやはりおりますし、私の秘書でも、この前、奥様のお父様がお亡くなりになって、その場で親族が集まった中で、全然関係ない大分県にある土地の所有権をどうするかという話で持ち切りだったというふうに聞いております。誰も見たこともなくて行ったこともない土地を相続しなきゃいけないということになって、売却しようとしても誰も買ってくれない、無料で引き取ってほしいといっても、なかなかこれも難しいと。

 これもやはり所有権の強過ぎる弊害の一つだというふうに思いますが、これからますますふえていくだろうというふうに考えている相続のときにも、相続のときだけではありませんが、所有権の放棄について、大臣のお考えがあれば、最後にお伺いしたいと思います。

葉梨委員長 山下法務大臣、最後、簡潔に。

山下国務大臣 はい。

 御指摘の土地所有権の放棄を可能とすることは、所有者不明土地の発生を抑制するための方策の一つとして検討されるべき重要な課題の一つであると認識しておりまして、現在、法制審民法・不動産登記法部会において調査審議がなされているところでありまして、そういった点も含めて、充実した審議が行われることを期待しております。

源馬委員 終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 東日本大震災や熊本地震を始めとする大規模災害におきましては、やはり所有者の把握というものが困難なケースが多くあったということであります。復旧復興関連事業や町づくりのための事業というものが阻害されているという点も事実だというふうに思います。そういう点で、今回の法案というのは、そうしたものに対応するものだというふうに認識をしております。

 そして、これから起きるかもしれない災害の防止という点もかかわっていると思っておりまして、長野県、私は北陸信越ブロックで長野県も入っているんですが、岡谷というところでは、二〇〇六年の七月に大規模な山腹崩壊というのが起きました。八人が犠牲になるという大事故だったんですけれども、ここもやはり、実は山が所有者不明で管理がされていないというもとで、所有者が不明なまま放置されて、木が成長し過ぎて、密度が高くなり過ぎて、根が、要は地中に伸びなくなってというようなことが、地すべりに至った原因の一つだと聞いております。

 そういう意味で、やはりそうした管理を進めていく上でも、この所有者の確定というのは、つまり防災にとっても重要だなというふうに思っております。

 本法案が成立すれば、登記官等に一定の調査権限が付与される、いろいろな探索委員という方々と専門チームで行うということをお聞きしているんですが、法務省にお聞きしたいんですけれども、この探索チーム、専門チームといいますか、どのような人材を想定されて、どのようにそういう確定作業、調査作業を進めていこうとされているのか、教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、表題部所有者不明土地の所有者等の探索の体制でございますけれども、これは登記官が行うものとされております。また、登記官が探索を行うに当たりまして、必要があると認めるときは、所有者等探索委員が指定され、登記官と共同して所有者等の探索を行うこととなります。

 この必要がある場合でございますけれども、登記官のみの調査では所有者等の探索が困難であると考えられる場合を指すものでございまして、例えば、類型的に見て所有者等の探索が困難と考えられる記名共有地については、基本的にこれに該当するものと考えております。

 この所有者等探索委員でございますけれども、こういった所有者等の探索についての知識、それから能力を有する方ということになりますので、さまざまな、例えば、資料、旧土地台帳ですとか、そういった古い資料について、そういったものをきちんと見て評価できるような、そういった知識、能力がある方、あるいは地元の事情に詳しい方、こういったことが想定されますけれども、例えば、弁護士さんですとか土地家屋調査士さんといったような士業の方ですとか、あるいは自治体において用地取得の業務に当たった経験がある方などが考えられるところでございます。

 ただ、この所有者等探索委員は非常勤でございますので、必要な調査を全てみずから行うことには困難が伴うことも想定されますので、法務局あるいは地方法務局の職員をして、これを補助させることもできるというふうになっております。

 このように、必要に応じまして、登記官のほか、所有者等探索委員や、ほかの法務局、地方法務局の職員のマンパワーを結集して、所有者等の探索を行っていくことを考えております。

藤野委員 そうしたことを進めていくということと、一方で、やはり真の所有者の保護というものも大事だということで、そのバランスの問題だと思います。

 本法案の四条では、利害関係人の意見又は資料の提出とありますけれども、この実効性をどう図っていくのか。あるいは、二十一条の関係では、裁判所の許可を得れば、保存行為を超える行為もできる。つまり、保存を超えて、売買といったようなものもできてしまうということですので、やはり、その手続の適正さをどう担保するのかといった問題はしっかりとやっていく必要があるというふうに思います。

 いずれにしろ、そうした今回の所有者の確定の問題と真の所有者の保護、そのバランスを実現していくというのは、結局、今お話あったような、現場の法務局や探索委員の、働く方々になってくるわけで、問題はその体制が十分なのかということが問われてくると思います。

 この間、さまざまな増員というのは行われてきておりますが、現場の全法務労働組合の皆さんからお話を聞くと、やはりまだまだ足りないというお話でありました。本人からの申請が今あった場合に作業をされているわけですけれども、その場合でも、先ほど二百六十万筆とありましたが、一筆の土地を、所有者を探索するのに二週間から三週間、場合によっては一カ月かかる。必要な記載がないわけですよね。ない場合は、やはり、公的な資料を探したり、歴史的な文献を調査したりされるそうであります。その他、土地の経緯を知る近隣住民から聞き取りをしたり、非常に地道な作業が必要と。他方で、最近は、そういう歴史的資料が散逸したり、あるいは地域のコミュニティーも衰退したりしておりまして、ますます困難さが増しているという話もお聞きしました。現場の方に言わせますと、表題部所有不明土地の探索は、登記官の業務の中でも最も困難だというふうにおっしゃっておりました。

 配付資料の一を見ていただきたいんですけれども、これは全法務労働組合がつくられた資料なんですが、例えば、二〇一七年度、平成二十九年度は、増員数、1という一番左のやつが百八十二人なんですけれども、そのうち、法定相続情報証明制度の導入というので百五十五人、八五%を占めているんですね。二〇一八年度は、増員査定数が二百二十五名ですけれども、そのうち、長期相続登記未了土地の解消のための人員が二百二十三名、ほぼ一〇〇%。二〇一九年度は、二百三十五名の増員査定数のうち、今回の所有者不明土地解消が二百二十一名ということで、それぞれ、こういう形で増員はされてきているんです。一番左とその右にあるようにですね。

 ただ、2にありますように、それを上回るような定員削減が行われておりまして、結局、二〇一七年でいくと四十二人マイナス、二〇一八年でいくと一人マイナス、今年度はようやくゼロなんですけれども。結局、全体として法務局の人員を見ますと、これはもう、むしろずっと減ってきている、傾向としては減ってきているということで、現場のお話を聞くと、もう大変だということなんです。

 大臣にお聞きしたいんですが、今の答弁でも、やはり、土地家屋調査士さんや自治体のOBにももちろんお願いするんだけれども、それで足りない部分は、法務局の方やあるいは地方法務局の人も手伝って、もう総動員でやるんだというお話です。しかし、それが減ってきているということでありますから。今後もこうした所有不明土地の問題の解消というのは必要な業務であります。ですから、それを着実に進めていくためにも、やはり必要な要員の確保が必要だと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

山下国務大臣 まず、法務局の業務に対する御理解そして応援、ありがとうございます。

 この委員御提出の資料にもありますが、平成三十一年度におきましては、表題部所有者不明土地解消のための登記官二百二十一人を始めとして、法務局全体で二百三十五人の増員がなされております。

 他方で、委員御指摘のとおり、平成二十六年七月二十五日に閣議決定された国の行政機関の機構・定員管理に関する方針に基づき、平成三十一年度においては、法務局全体で二百二十四人の定員の合理化を行っている。これに加えまして、時限到来による減であるとか、そういった振りかえによる減ということを加えまして、この表のとおりになるわけでございますが、近年において、これまでは純減数が非常に大きかったものについて、やはり、法務局の職員の業務の重要性あるいは負担等も考えまして、純減数がもう劇的に減っておりますし、また、今回は、時限到来によるものも含めまして、プラマイゼロということにはなっております。

 今後とも、政府の一員として業務改革による総人件費の抑制に努めていく必要はございますが、表題部所有者不明土地の解消を含め、いわゆる所有者不明土地問題の解決に向けた取組に対するさまざまな社会の期待に応えるため、法務局において必要となる人的体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

藤野委員 ぜひ増員に向けて取組を強化していただきたいと思っております。

 それでは次に、技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームの報告書について質問させていただきたいと思います。

 先日二十四日の質疑の中で、源馬委員の質問に対する答弁で、門山政務官が、今回の調査で賃金台帳等を確認することができた二千九百九十三機関のうち、おおむね九百機関強については失踪直前の時期に最低賃金額と同額の給料が支払われていたものとうかがわれるところでございますという答弁をなさいました。配付資料の二にも紹介しておりますけれども。

 きょうはちょっとそれについて、その後、佐々木長官から答弁いただいた部分について確認を幾つかしたいと思っております。

 佐々木長官はこの後、幾つかおっしゃっておりまして、例えば、そもそも、雇用契約を結ぶときにどのくらいの額で雇用契約を結んだかという資料も、もともと入国審査のときのものがございまして、中には、そのときもその額であったというものもございますと言っております。

 長官にお聞きしますが、この九百強の機関のうち、入国審査のときも最賃と同額だったものは幾つあるんでしょうか。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 今回の調査につきましては、失踪当時の労働条件に関して、労働関係法令違反の疑いや暴力その他の人権侵害がなかったか否かについて実施をしたものでございまして、入国時の契約賃金につきまして、資料を有しているのは御報告したとおりでございますけれども、その入国時の契約賃金について網羅的に調査しておりませんので、件数についてはお答えはできません。

 ただし、必要に応じまして、調査の過程で入国時の契約賃金について確認をしたものがございまして、その中には最低賃金と同額であったものもあったという報告を受けておりましたので、せんだってそのように申し上げました。

藤野委員 いや、長官自身がそうおっしゃって、要するに、否定するためにそうおっしゃったわけです。要するに、九百あるけれども、それは入国時からそうだったんだというニュアンスで長官が答弁されているから聞いたわけですね。だから、これは答えていただかないと、その九百という数字そのものもどうなのかということになるわけです。

 だから、細かい数字はいいですから、どれぐらいなのか、固まりとして。

佐々木政府参考人 ただいま申し上げましたように、その点に着目をして網羅的な集計を行っておりませんので、ボリュームも含めて、お答え申し上げられません。

藤野委員 それはちょっと、ぜひ調査を求めたいと思います。時間の関係でできなかった側面もあるかもしれませんので。

 ですから、なぜこういうことを聞くかといいますと、技能実習制度においても賃金は日本人と同等でなければならない、そういうルールなわけですね。ところが、答弁のあった、まあなかったわけですけれども、最賃と同額が、もし入国時で仮に少ないということになって、それより多いものが例えば九百件のうち八百件ぐらいありましたということなんですが、それが九百件にふえたということは、その入国したときの契約と違って、実際の現場では最賃張りつきの同額の契約を強いられたということになるわけです。だから聞いているんですよ。

 つまり、皆さんが九百件については最賃と同額だとおっしゃいますけれども、長官自身が、いや、それは入国時もそうだったんだとおっしゃった。だとすれば、そうじゃない部分があるわけですよね。そうじゃない部分については必ず上のはずなんです、上じゃないと皆さん判こを押さないはずなんです、入国審査で。最賃以下の契約で技能実習を認めるわけがありませんから。だとすれば、上のものがあったはずで、それが最賃までおりてきた理由は何なのかということが問題になるんです。そういうものがあるはずなんですが、そういうものがあるとして、なぜだというふうに分析されているんですか。

佐々木政府参考人 私ども、在留期間の更新の際等に、その賃金が最賃を満たしているかどうかということはその都度チェックをいたします。

 ただ、それの上がり下がりについて、その背景等についてまで一つ一つ調査をしているわけではございませんけれども、今お話しのような、もともとは上を行っていたのが、その後、最賃に張りついたというものにつきまして、これは一般論で申し上げるものでありまして、先ほど言いましたように網羅的に集計をしているものではございませんけれども、あるケースといたしましては、その後、最賃が引き上げられたことによって、その額が最賃になってしまったというケースもあると思います。

藤野委員 いや、もちろんあると思いますよ、あると思いますけれども、だから、それも含めてきちんと分析が必要だということなんです。

 最賃と同額なんて、どう考えても不自然なわけですね。それが九百強という大きな固まりとしてあるということがわかったわけですから、それをちゃんと中身も含めて分析していただきたい。今言ったような内容もあるかもしれませんが、逆に、日本人と同等というルールが守られていない可能性だって大いにあるわけです。ですから、そこは今後も引き続き注視して、質問していきたいというふうに思います。

 もう一点、佐々木長官は、この日の答弁で、源馬委員が、それは実習生に確認したんですかという質問に対して、確認できる、要するに実習生がいるところについてはインタビューしておりますと答弁されております。これは何人にインタビューされたんでしょうか。

佐々木政府参考人 実地調査を実施した千五百五十五機関のうち、その場で現役の技能実習生から事情聴取ができたのは、これは速報値でございますけれども、約八百六十機関です。

 その八百六十機関のうちに最低賃金と同額の賃金を支払っていたのがどれだけかという内訳につきましては、そのような集計の仕方をしておりませんので、お答えできません。

藤野委員 佐々木長官の答弁というのは、自分の都合のいいときに使うわけですね。ちゃんと確認しようとした質問とか、あるいはそれはどういうことなのかという質問に対して、長官自身が、いや、それは入国のときもあったんだとか、いや、それは実習生にも聞いたんだとか、御自分でおっしゃっているんです、質問者を否定するというか、それに反論するために。それを更に聞いたら、いや、中身はわかりませんと。御自身の答弁の信憑性にかかわるんですよ。

 そんなに多くないはずですよ、ちょっと、答えてください。

佐々木政府参考人 その点に着目をした集計を行っておりません。

藤野委員 だったら、こういう答弁はしないでいただきたい。何だか、いかにも裏づけがあるかのようにおっしゃるわけです。しかし、裏づけを聞いたら出てこない。これでは質疑は成り立たないわけですね。皆さん方がおっしゃっていることが本当なのかどうかわからない。

 それで、もう一点お聞きしたいんですが、長官は、ここの一番下に、さらなる調査の深掘りというのはまだしていくわけでございましてとあるんですね。このさらなる調査の深掘りというのは、どのような調査で、いつまでに、どのように進めるんでしょうか。

佐々木政府参考人 今回の調査対象となりました実習実施機関に現在も技能実習生が在籍をしている場合につきましては、今年度中にもう一回実地調査をして、更に詳細な調査をするということは御報告を申し上げています。

 技能実習生や特定技能、その実習実施機関が特定技能外国人を受け入れるという可能性もございますので、加えまして、その審査の場におきまして、賃金が適正に支払われているかといった技能実習生に対する待遇などにつきまして、技能実習生の聞き取り、それから、せんだって御示唆をいただきました給与明細書の確認なども含めまして、事実確認に努めてまいります。

藤野委員 いずれにしても、中身ははっきり、よくわからないんです。

 先ほど質問した九百のうちの入国審査の場合とか実習生にインタビューした数とかも含めまして、今後も、調べた結果がわかったら国会に報告をいただきたいというふうに思います。私も確認していきたいと思っております。

 その上で、報告書の四十四ページの部分なんですが、申告制度、相談制度でございます。

 ここの四十四ページによりますと、二〇一七年の十一月から二〇一九年二月、つまり、新制度が始まってからことしの二月上旬までで、申告の数が四十七件、母国語相談の数が二千三百八十七件とあります。相談件数二千三百八十七に対して、申告件数が四十七と圧倒的に少ない、異常に少ないんですが、これは何でこんなに少ないんでしょうか。

佐々木政府参考人 まず、ここで申しております技能実習生に対する母国語相談、これにつきましては、賃金や休暇等の労働条件に関するものから、日常生活や職場の人間関係に関するものまで、非常に幅広く、多岐にわたります。

 他方で、ここで申し上げている法律上の申告につきましては、あくまでも監理団体や実習実施者の役職員に技能実習法令上の規定に違反する事実がある場合という定義づけがなされておりまして、技能実習生さんが申告の制度とそれから相談の制度、必ずしもきっちりわかって訪れるわけではないと思いますので、初めに相談として寄せられたものでありましても、内容をつぶさにお伺いする中で、技能実習法令違反が疑われる事案につきまして、この申告制度を説明して、申告として受け付けるということを行っております。

 ですので、範囲が、相談の方が広いということでございます。

藤野委員 ちょっと、答えになっていないです。

 それにしたって、皆さんがそう誘導されているんであれば、相談の中から、いや、これは申告に上げるべきだというのも誘導されているんであれば、二千三百八十七に対して四十七ということにならないんじゃないかと逆に思うわけですね。

 ちょっと時間の関係で、大臣にお聞きしたいんですが、今いみじくもおっしゃったんですけれども、やはり相談の中に、本来申告なのに、そう至らず、相談に終わってしまったというのもかなりあるんじゃないかと思うんですね。

 実際、愛知労連の相談状況を聞きますと、三年間で相談は百一件、これに対して、申告に至ったものが五十三件なんですね。百一件の相談のうち五十三件も申告に至っている。半分以上であります。ですから、そういう実態から見ましても、やはりこの報告書の二千三百と四十七というのは余りにもおかしいと思います。

 大臣にお聞きしたいんですが、やはり今あったような相談のあり方の改善といいますか、申告のあり方の改善でもあると思うんですが、この報告書では、例えば実習生への案内とか実習先企業への通知ということが改善策として書かれてはいるんですけれども、やはりそれではちょっと実効性が上がるとは思えないわけで、もっと踏み込んで、きっかけは相談だったとしても、不正行為をすくい上げるような何らかの強化策が必要だと思うんですが、その点についていかがでしょうか。

山下国務大臣 まず、周知及び活用に関しましては、これはまず、例えば監理団体による入国後講習という機会もございます。また、外国人技能実習機構による実地検査など、さまざまな機会を利用して、技能実習生に対して、母国語相談や実習先変更支援、一時宿泊支援などの保護、支援制度をよりわかりやすく周知するよう、関係機関と連携して取り組んでまいりたいと思っております。

 また、外国人技能実習機構作成の技能実習手帳、これは入国時に、技能実習生に配付しているところでございますが、これをよりわかりやすいような内容にするように、効果的な改善を図ってまいりたいと考えております。

 関係機関に対しては、必要に応じ通訳を活用するなどしながら、効果的な周知に努めるように指導していきたいと考えております。

 そして、相談を端緒とする不正行為への対応体制を強化するということにつきましては、これは、厚生労働省や外国人技能実習機構と連携して、各機関内及び関係機関相互の情報共有をより迅速かつ効果的に行うということをしっかりやっていきたいということで、取組を強化してまいります。

 具体的には、相談内容が実習実施者等の不正行為等に関係する場合には、速やかに実地検査の担当部署に情報を共有し、技能実習生の保護を図りつつ、迅速かつ効果的な実地検査等を実施するよう取り組んでまいります。その上で、事案の内容に応じて、行政処分等の措置や捜査機関への告発を含め、不正行為に対し厳正に対処してまいりたいと考えております。

藤野委員 やはりこれは、失踪を減らしていく、あるいは死亡に至る事案を減らしていく上でも重要だと思っております。

 もう一点、五十五ページには、人権侵害行為の禁止規定等の運用実績が少ないことという指摘があります。「罰則の適用例がこれまでに見当たらないことを含め、適用実績は未だ少ない。」という記述が報告書にあるんですが、いまだ少ないというのは、実績は何件なんでしょうか。

佐々木政府参考人 今、入管庁として把握しているものでのお答えになりますが、平成三十年九月末までに外国人技能実習機構が実施した実地検査の結果、まだ集計途上かもしれませんが、技能実習法第四十六条から第四十八条までの禁止規定違反の疑いによる改善勧告を行っている事案は四件です。

藤野委員 やはりこれは非常に少ないわけですね。

 こういう人権侵害行為を、罰則を含め、その段階でしっかり適用していく。そのことが、失踪や死亡事案を減らしていくという上でもやはり重要だというふうに思うわけです。

 なぜこの実績が少ないのか、この理由について、法務省、どのように認識しているんでしょうか。

佐々木政府参考人 さまざまな要因があるものと考えられますが、例えば賃金や労働時間に関しましては、今回の調査に使用したものでもありますが、法定の賃金台帳等の客観的な資料があり、その精査によりまして不正行為を発見できる場合がありますが、人権侵害行為につきましては、必ずしもそうした資料が存在するとは限らないという点も一つの要因であると思います。

 いずれにしましても、この禁止規定等についても適切に適用していくことが重要でありまして、調査手法の改善あるいは調査能力の向上などに取り組んでまいります。

藤野委員 これについては、大臣にも決意をお願いしたいと思います。

山下国務大臣 まず、現在、外国人技能実習機構において、八カ国語で対応する母国語相談窓口を設置しており、技能実習生からの相談及び申告を受け付けておりまして、その中で人権侵害行為を含めた不正行為の疑いを認めた場合には、最優先で実地検査を実施することとしております。

 また、今後、人権侵害行為の禁止規定を一層適切に適用するために、技能実習生からの相談、申告や、失踪の届出を端緒とする迅速かつ効果的な実地検査により、不正行為の早期の発見、是正を図ることが重要と考えておりまして、ここにつきましては、母国語相談等の周知を徹底し、活用を拡大するとともに、不正行為が疑われる場合には、連携して迅速に実地検査等の対応をとるようにしてまいりたいと考えております。

 また、失踪事案に対する初動対応の強化、これも重要でございまして、特に人権侵害行為がある場合には、早期にこれを発見し、是正を図ってまいるということ、さらには、人権侵害行為に関する調査手法を共有する、あるいは聴取票の書式、これももう少し細かく聞いていくということなども通じて、関係部門の調査能力の向上も図っていくというふうに考えております。

藤野委員 さらなる改善を求めたいと思います。

 配付資料の三を見ていただきたいんですけれども、外国人技能実習機構のホームページでは、今おっしゃったように母国語でいろいろな相談を行っております。災害時の相談、日本における労働基準監督法令についての紹介、労災保険請求のためのガイドブック、年金機構の説明、豚コレラの説明もあります。

 お話が先ほどありましたけれども、技能実習手帳というのはこれなんですけれども、百三十ページ以上あるんですが、中国語、ベトナム語、タガログ語、インドネシア語、タイ語、カンボジア語、ミャンマー語、英語とありまして、なかなか中身もそれなりだなというふうに思いました。

 今回の報告書も、私、ぜひ翻訳して、こういうホームページに載せたらいいんじゃないかというふうに思うんですね。

 技能実習手帳について、失踪という項目もあります。しかし、これを読みますと、こう言っちゃなんですけれども、あなたが誘われちゃだめですよとか、この報告書にあるような到達点が全く反映されていないわけです。いろいろな要因があるとか、人権侵害もあった上での失踪というところが反映されていないページになっておりますので、ぜひ大臣、これをホームページで、翻訳して載せていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

葉梨委員長 もう時間を過ぎていますので、簡潔に、山下大臣。

山下国務大臣 まず、翻訳についてどのような方法が可能か。

 例えば、報告書の概要をまず、翻訳をホームページに掲載することなどを含め、技能実習生等の周知を図るため、いかなる方法が必要かつ的確かについて検討してまいりたいと考えております。

藤野委員 終わりますが、これは百三十ページを超えているわけです。今回の報告書、六十四ページですか、三ページですか、十分可能だというふうに思うんですね。しかも、この手帳では、やはり、あの失踪分野の記述というのは非常におくれていると思います。

 そういう点で、ぜひこれは実現していただきたいということを求めて、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 昨日ですか、高齢者の自動車の事故における記者会見が遺族の方によって行われて、御主人でしたけれども、もう本当に言葉もない、つらい思いを私もしました。

 そういう意味で、ちょっと時間の関係で詳細を質問するつもりはありませんが、先ほど源馬委員からも大変詳細な質問もありましたし、私としてはちょっと提案をさせていただきたいんです。

 昨年、内閣委員会で提案させていただいたんですけれども、免許証の中にオートマ限定というのがあるわけです。これと同じように、高齢者にも、自動停止装置つきという、そういう限定免許にしたらいいんじゃないか。一番理想的なのは、源馬委員が質問されたように、自主返納が本当はどんどん促進されたらいいと思うんですけれども、なかなかうまくいかないときに、アクセルが戻らなかったというようなことではなくて、人間がとめられないんだったら、車がとめるしかないんじゃないかというようなこともあります。

 法務省としましては、例えば、自動車運転致死処罰法の第五条に、「運転上必要な注意を怠り、」となっているんですけれども、そこの「注意」の後ろに、又は技能に応じた装置を設置を怠りというような形で、自動停止装置つき車両を運転の限定にするというようなことで、そうでなかったら、観念的に自主返納がいいんだとかいろいろなことをいいながら、家族が幾ら注意してもそれに応じないというような方が多い中で、何か政府がやるとしたら、そういうようなことも私は考えてもいいんじゃないかと思うんです。

 これは、ちょっと通告の後に記者会見があったものですから、質問の中に入れていなかったんですけれども、大臣、ちょっとお考えがあればお聞きしたいと思います。

山下国務大臣 所管外の部分がございますので、御指摘については所管省庁とも共有をさせていただきたいと思っておりますが、法改正の部分につきましては、現段階では、その必要性については検討しておらないところでございます。

 これは、自動運転装置を所管する例えば国交省であったりするかもしれませんし、免許は警察庁等であるかもしれません、そういったところと問題意識を共有してまいりたいと思います。

串田委員 ぜひ検討をしていただきたいと思います。

 それでは、本件の問題についてお聞きしたいと思います。

 先ほど、浜地委員から大変いろいろな問題点の質問があって、それに対する回答も非常に詳細にわたっていたということで、今回の法案については、かなり政府も、いろいろな多方面のところから問題点というものを検討しているんだなというのを非常によくわかりました。

 そういった中でのちょっと延長線上になるんですけれども、表題部を登記されたときの是正というものに関して、浜地委員から大変細かな質問もありましたけれども、国民にとっては非常にそういう意味で重要なことなので、一つだけちょっと確認させていただきたいんです。

 この是正の方法の中で、審査請求、処分に対する審査請求、あるいは行政不服審査、そして、民間人における当事者間でのというようなことを幾つか挙げられたんですけれども、この真ん中の、行政処分に関する点なんですが、この行政処分で、表題部が所有者が不明であったという状況の中で、審査員が誰かを、Aという人をやったといった場合に、その行政処分を争うときに、当事者適格というのが行政訴訟の場合はいつも問題になるんですね。それは、もとに戻させるとしたら表題部に所有者がいなくなる状況を求めることになるので、そうなると、当事者適格としては、あらゆる人が該当してしまうんじゃないか。

 そうだとするならば、この場合には、当事者がある一定の、当事者Aとして決まったんなら自分がBなんだということで、民事上の当事者としての争いに限られていくんじゃないか。あえて無駄な、棄却を求めるような行政処分の訴えもできるんだということをここで明言して、それをやっても、私としては、ちょっと時間の、あるいは費用の問題も無駄になるんじゃないかと思うんですが、表題部に所有者が不明であるということ、もとに戻すということも当事者適格としてあり得るということなんでしょうか。

小野瀬政府参考人 審査請求あるいは処分の取消しということになりますと、例えば、登記官がAと判断してAと記載した、それを直すということになりますので、いわば白紙の状態、そういうことを求める審査請求あるいは行政訴訟になろうかと思いますが、ただ、そういったような審査請求あるいは行政訴訟を提起するのは、やはり自分が所有者である、そういったことを主張して、そういう審査請求あるいは行政訴訟を提起するのではないかというふうに考えております。

串田委員 そうすると、Aというのに不服で、当事者が不明な状況に戻すわけですよね。当事者が不明な状況に戻すのも当事者適格があるということになるんですか。この三条でいろいろな議論がなされたりしているんですけれども、回復に利益がある、要するに、不明な状況に戻すこと自体が行政事件としての当事者適格があるということでよろしいんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現実に審査請求あるいは取消し訴訟で処分等が取り消された場合でございますが、登記官といたしましては、やはりそういった審査請求あるいは行政訴訟の理由に拘束されまして、結局、今回の特定、探索の結果の特定として例えばAというように判断してAと登記したわけですが、それがやはり審査請求なり処分の取消しで否定された場合には、その理由で例えばBだというふうになった場合には、そのBであるという理由に拘束されて、改めてBというふうに特定してBを登記する、こういうことになろうかと思います。

 ですから、そういったことを求めて審査請求あるいは行政訴訟を提起することが考えられます。

串田委員 そうなると、今度はAがBを、Bにしたこと自体に行政訴訟を起こすんじゃないかなとちょっと思いますので、そういうループを起こさないためにも、その場合にはAとBとが当事者間で争わせた方が私はいいんじゃないかなとちょっと思うんですけれども、その後の実務に関しては、そういったようなことも検討に入れながら適切な運用をしていただきたいと思うんです。

 もう一つ、今回においては、表題部に関して、最終的にはこれは売却ができるということなんですが、売却することができるときの判断基準というのはどういうふうになっているんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 売却に関しましては、まずは、特定不能土地等管理者におきまして、善管注意義務に照らして売却をすることが相当であるというふうに判断することになるわけでございます。例えば、対象土地が現状では空き地状態になっているところ、当該地域一帯で公共事業を実施するなどの必要があってその売却を求められるといったケースですとか、あるいは対象土地の利活用の具体的必要性が認められるケースについては、売却を行う旨の判断がされるものと思われます。

 また、売買契約の内容につきましても、特に価格設定において適正な売却価格となるように売却先と交渉を行う善管注意義務が課せられておりますので、真の所有者にとって不利益とならないような配意がされるものと考えております。

 裁判所におきましても、こういったことを判断して、個々のケースにおける具体的な判断でございますが、許可をするかどうかを判断するものと考えられます。

串田委員 これは非常に画期的というか、私としては非常に評価したいと思っているんですが、この今の売却というのが、いわゆる今までの所有者不明、これは九州ぐらいの土地になっているんだというような話もありますけれども、所有者不明に関しても、売却という規定というものは、例えば類推適用とか、あるいは何か適用されていくものなんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回の管理の仕組みといいますものは表題部所有者不明土地に限った制度でございまして、それ以外の所有者不明土地、例えば相続登記がされていないような土地、こういうものにつきましては、既存の制度であります民法の不在者財産管理制度ですとか、あるいは相続財産管理制度を利用することとなります。

 ただ、現在、法制審議会の民法・不動産登記法部会におきましては、所有者不明土地問題の抜本的な解決に向けて審議を行っているところでございますが、その中では、所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みを整備する観点から、これらの財産管理制度の見直し、例えば、現在は不在者ですとか相続財産全般を管理する制度でございますが、特定の、一部の財産を管理する方策の検討、こういったことも含めて、今、審議が行われているところでございます。

串田委員 法務委員会でも、私、所有者不明のときに提案させていただいたんですが、登記がなされたからといって、どんどん処分が決まっていくわけではないんですね。

 相続登記がなされても、法律家であれば皆さん御存じだと思うんですが、採算がとれない、例えば調停を起こす、遺産分割の調停を起こす、遺産分割の訴訟を起こす。といって、自分の方に回ってくるのが、採算がとれないから放置されているんであって、こういったようなところでやはり売却をされていくということが非常に大事なんじゃないかなと思うので、法制審議会でそういったような検討もなされているということから、こういったようなことの応用を前向きに検討していただきたいということをお願いをいたしまして、時間になりましたので、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 よろしくお願いします。きょうも、まず性犯罪から伺います。

 法案にはお経読み、提案理由の説明というのがありまして、そのことに改めて思いをいたして一昨年の刑法改正の提案理由説明を見ていたのですが、その中で、性犯罪は被害者の人格や尊厳を著しく侵害する、そういう文言が出てくるんですが、この文言を具体的にわかりやすく少し解説していただくと、刑事局長、どういうことでしょうか。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 平成二十九年の第百九十三国会に提出いたしました刑法の一部を改正する法律案の提案理由として、「性犯罪は、被害者の心身に多大な苦痛を与え続けるばかりか、その人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪でありますことから、厳正な対処が求められております」と説明したところでございまして、委員御指摘のところでございます。

 お尋ねの人格や尊厳を著しく損害するという部分につきましては、具体的に申しますと、例で申しますと、もとより性犯罪の被害に遭われた方々の受けとめはさまざまではあるんですけれども、法制審議会でのヒアリングを例にさせていただきますと、そのヒアリングの中におきましては、人間としての存在そのものを壊された、あるいは、人や物音におびえ、学校や仕事にも行けず、食事も食べられず、眠れなくなるといった被害者が多くいるなどといった指摘がなされているところでございます。

 こういった指摘等も踏まえまして、この提案理由説明におきましては先ほどのような説明をさせていただいているところでございます。

井出委員 一つ私からも、人格や尊厳を著しく侵害するというところで、被害者のお気持ちを紹介したいんです。

 これは、最高裁の事務総局が研修教材としてつくられている参考資料集というものがございまして、その中で、平成二十九年に司法研修所で行われた公益社団法人被害者支援都民センター臨床心理士斎藤さんの講演録の中に出てくるくだりがあって、性犯罪被害の何が一番被害者にとって傷ついているかといいますと、自分の意思を無視されたということ、自分自身が人として扱われなかった、当たり前にあるはずのコンタクトをとって、自分の意思を尊重されて行われるはずの行為が全く尊重されなかったということ、個人領域、プライベートな領域とか、自分が安全だと思っていたことが侵害される、これが性暴力であるということを斎藤さんはおっしゃっているんです。

 この部分というのは、人格ですとか尊厳の侵害と合致し、そういうことのないように刑法の改正というものを提案の理由として説明し、であるからには、刑事局長がおっしゃっていただいた事例もそうですし、私が申し上げたものもそうなんですが、そういったことのないように刑法というものを考えていかなければいけないと思いますけれども、刑事局長、いかがでしょうか。

小山政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりかと思っております。

井出委員 次に、保護法益のところ、これもなかなか抽象的な話なので、一度具体的に聞いてみたいなと思っておったんですが、性的な事項についての自己決定の自由、この自己決定と、それともう一つ、自由、これはわかりやすく言うとどういうことなのか。

 それともう一つ、あわせて、性犯罪の処罰の前提として、同意のないことが前提であるというような話をずっとしてきているんですが、その同意というものについても、この際、わかりやすく具体的な見解を求めておきたいと思います。

小山政府参考人 不適切な言いかえを行いますとかえって誤解を招きかねないとは思いますけれども、お尋ねでございますので、御趣旨に沿うかはわかりませんが、まず、性的な事柄についての自己決定の自由を言いかえるとするならば、性的な事柄について、すなわち性的な行為に及ぶか及ばないかなどの性的な事柄について、自分自身の意思によって決めることができることというような趣旨で用いられてきているものと考えております。

 また、もう一つのお尋ね、同意についてのお尋ねでございます。

 これもあえて説明させていただきますと、同意の一般的な意義としては、これは辞書的な意義でございますけれども、意見、求めなどに対して賛成、承諾すること、あるいは、他の者がある行為をすることについて賛成の意思を表示することなどと辞書的にはされているところでございますが、本年一月二十三日の当委員会の委員からの御質問にお答えいたしましたとおり、一般に、被害者の真意に基づく承諾がありますれば刑法百七十七条前段の強制性交罪等は成立しないとされておるところでございまして、その承諾につきましては、自由な意思決定による真意のものである必要があるなどと説明されているところでございます。

 そういうことでございまして、お尋ねの同意も、このような承諾と同様の意味で申し上げているところでございます。

井出委員 性犯罪の現場で、被害者と加害者がどのようなことを感じているのか。きょうは少し加害者の言葉を紹介したいんですが、「性暴力の理解と治療教育」、藤岡淳子さんが誠信書房から出されている本の中に、藤岡さんが性犯罪を繰り返していた少年から聞き取った話であります。

 その少年によれば、強姦は、彼女とのセックスとは全く違った。それはそうだと思います。それから、泣き叫ぶ被害者の衣服を剥ぎ取り、殴りつけてセックスをするといった、ビデオで見たような、自分が思っていた強姦とも全く違った、実際には、ホテルの部屋に連れ込んで仲間三人で取り囲んだだけで、被害者は全くおとなしくなった、進んで服を脱ぎ、少し省略しますが、こちらの機嫌をうかがって何でもした、自分が強くなったようだったということを言っております。

 先ほどの斎藤さんの講演に戻るんですけれども、被害者の側からすると、生命の危機に対する恐怖というのを多くの被害者の方が感じておられる。また、被害の最中、被害者の頭の中に何がよぎるのかというと、やはり最悪の事態であったり、最悪の事態が起きたニュースといったものが頭の中に流れる。それから、抵抗をしても勝てる感じがしない、逃げ切れる感じもしない、じゃあ、どうするのかというと、諦める、あるいは体が動かないという状態になる。それと、さらに、被害状況を生き延びるために、自分に起きていることを過小評価したくなる、我慢をしていれば終わる、ただのセックスと同じで、こんなことは何でもないとおっしゃるのですが、大体、皆さん、その後の精神症状は大変重いです、自分が悪いことをしてしまった、恥ずかしいことをした、自分が悪いと思う方も結構いらっしゃる、被害者が、暴力ではなく性行為だと過小評価をすることで、心を守ろうとする側面があると思いますと。

 加害者も、自分が思っていたものと現場は全く違っていたと。そこには、私が読み上げたこの斎藤さんの被害者心理だけが全てだとは思いませんが、斎藤さんという方は本当に多くの被害者と向き合ってきた方ですので、大変重要な指摘であろうと思います。

 先ほど言われた自由ですとかそれから同意、今のところ国会答弁では真の同意ですとかそのあたりの言葉しか出てこないんですが、やはり、この間ちょっと三角で同意、不同意というようなものを示したんですけれども、私自身も、同意と不同意のこの線引き、私が簡単に引いた線は一体では何を線引きするんだと言われると、明確な解はないんですね。

 ただ、法律改正の中で法律に書くかどうかは別として、やはり被害者側の自由それから同意というものをもう少し突き詰めて、法務省も、この国会答弁でもう少し突き詰めたものが出るように研究をしていただきたいなと思うんですが、いかがでしょうか。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 なかなか難しいお尋ねでございます。今先生がおっしゃいましたけれども、同意と不同意のラインが個々の事例ごとに決まっているところもございまして、難しいところがございます。

 また、言葉の使い方として、先ほど申しましたように、同意とか承諾とか、これまで法律用語としても使ってきているところでございますので、それがまた非常にわかりにくいということなのであれば、我々としても何か考えなければいけないのかもしれないとは思っております。

井出委員 現状のものはわかりやすいと思っていらっしゃるのか。今紹介したように、加害者も実際自分が思っていたものと違ったと。で、被害者の心理もある。果たして、では今まで説明してきたものはわかりやすいという御認識なのかどうか、そこだけちょっと詰めておきたいと思います。

葉梨委員長 質疑時間が終了しています。小山刑事局長、簡潔に。

小山政府参考人 少なくとも、いろいろな解釈上用いられているところでございますので、そこに、すごく難しい内容ではないのではないかと思っているところでございます。

井出委員 平成の最後は大変苦しい答弁だったので、元号が変わっても引き続きやりたいと思います。

 法案の方は、先生方に深めていただきましたので、私、納得しました。

 終わります。

葉梨委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

葉梨委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、宮崎政久君外六名から、自由民主党、立憲民主党・無所属フォーラム、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、日本維新の会及び社会保障を立て直す国民会議の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。源馬謙太郎君。

源馬委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 登記官が行う表題部所有者不明土地の所有者等の探索を行う土地の選定に当たり、選定過程の透明性及び公平性が確保されるよう努めること。

 二 表題部所有者不明土地に関する所有者等探索及びそれに基づく登記への反映が迅速かつ適切になされるよう努めるとともに、効率的な予算の執行に努めること。

 三 所有者等特定不能土地及び特定社団等帰属土地の管理及び処分に関し、不当に真の所有者の権利が制約されることのないよう努めること。

 四 所有者不明土地が、災害の復旧・復興事業の実施など様々な場面において国民経済に著しい損失を生じさせていることを踏まえ、所有者不明土地の発生の抑制・解消に向け、相続登記の在り方や土地所有権の放棄の在り方等に関する法制審議会における議論も見据えながら、相続登記についての相続人の負担軽減策を含め、政府が行っている所有者不明土地等対策の更なる推進を図るよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

葉梨委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山下法務大臣。

山下国務大臣 ただいま可決されました表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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