衆議院

メインへスキップ



第20号 令和元年5月29日(水曜日)

会議録本文へ
令和元年五月二十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 源馬謙太郎君 理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    井野 俊郎君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      門  博文君    門山 宏哲君

      金子 俊平君    上川 陽子君

      神田  裕君    黄川田仁志君

      国光あやの君    小林 茂樹君

      中曽根康隆君    宮路 拓馬君

      八木 哲也君    和田 義明君

      逢坂 誠二君    黒岩 宇洋君

      松田  功君    松平 浩一君

      山本和嘉子君    森田 俊和君

      遠山 清彦君    藤野 保史君

      串田 誠一君    井出 庸生君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   厚生労働副大臣      大口 善徳君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   文部科学大臣政務官    中村 裕之君

   最高裁判所事務総局刑事局長            安東  章君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  朝倉 佳秀君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           藤本 隆史君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 田中 勝也君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         藤村 博之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       西山 卓爾君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    名執 雅子君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    今福 章二君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁長官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 高橋 克彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           丸山 洋司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           迫井 正深君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           藤原 朋子君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局次長)        鳩山 正仁君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     金子 俊平君

  古川  康君     宮路 拓馬君

  古川 禎久君     八木 哲也君

  岸本 周平君     森田 俊和君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     中曽根康隆君

  宮路 拓馬君     古川  康君

  八木 哲也君     古川 禎久君

  森田 俊和君     岸本 周平君

    ―――――――――――――

五月二十八日

 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)(参議院送付)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官朝倉佳秀君、警察庁長官官房総括審議官藤本隆史君、警察庁長官官房審議官小田部耕治君、警察庁長官官房審議官田中勝也君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長藤村博之君、法務省大臣官房政策立案総括審議官西山卓爾君、法務省大臣官房司法法制部長小出邦夫君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、法務省矯正局長名執雅子君、法務省保護局長今福章二君、出入国在留管理庁長官佐々木聖子君、外務省大臣官房審議官高橋克彦君、文部科学省大臣官房審議官丸山洋司君、厚生労働省大臣官房審議官迫井正深君、厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長藤原朋子君及び国土交通省土地・建設産業局次長鳩山正仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長安東章君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。

藤原委員 おはようございます。自民党の衆議院議員の藤原崇でございます。

 本日は、二十分という時間をいただきまして、一般質疑で質問をさせていただきます。二十分という時間ですので、簡潔に質問をさせていただきたいと思います。

 本日お聞きをするのは、主に民事裁判のIT化についてというところを中心に、それから、時間があれば、出入国管理に関しても一問お聞きをしたいと思っております。

 それでは、まず最初に、民事裁判のIT化についてということでお尋ねをさせていただきます。

 今、政府あるいは最高裁において、ようやくと言っていいと思うんですが、この民事裁判のIT化ということについて検討が始まっております。これは、日本の裁判というのは本当に、残念ながら、手続面ではおくれている、いまだに原本、郵便そしてファクスということでありまして、なかなかこれだけおくれている国も珍しいのではないかなということであります。

 そういう意味で、私は、このIT化、ぜひ力強く推していきたいと思いますので、ぜひ大臣にも御理解をいただきたいというふうに思っております。

 そういう状況であるのですが、ただ、その一方で、これは私、非常に重要だなと思っている一方、世間的にはそんなに関心を集めていないというのも事実なんだろうと思っております。経済界等はもとより、あるいは裁判を中心的に利用する弁護士の先生方でも、必ずしも賛成だけではないという状況にあります。

 しかし、これは必ず、裁判を使う弁護士の皆さんにとっても大きなメリットがあるはずですし、ひいては、それを弁護士にお願いをする経済界あるいは一般の方にとっても大きなメリットがある話のはずであります。

 大事なことは、単にいい制度をつくるというだけではなく、これはぜひ法務省に、最高裁に理解をしてほしいんですが、世論を巻き込んでそういう雰囲気をつくっていくということだと思っています。単に判決だけ書けばいいという裁判と違いますので、世の中を巻き込んで、そうだね、IT化をやっていく必要があるね、そういうような空気をつくっていくというのが法務省、最高裁に課せられているんだろうと思っています。

 そういう意味で、今後、ステークホルダーになり得る経済界あるいは消費者団体等、弁護士以外、広く関係者から意見を聞きながら制度設計を行っていくこと、その過程でヒアリングをしていくことが注目されて、ああそうだね、そういうことは大事だね、そういう議論を起こしていくことが必要だと思います。そのために、今後、各方面へのPRや意見聴取に積極的に取り組んでいくことが必要と思いますが、見解を伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、民事裁判のIT化は、裁判所ですとか弁護士などの訴訟関係者のみならず、経済界や消費者団体など各方面に多大な影響を及ぼすものでございますので、国民各層の幅広い意見を聞きながら、きめ細やかな検討を進めることが必要であると考えております。

 現在、民事裁判のIT化につきましては、民事裁判手続等IT化研究会におきまして法制面からの検討が行われておりまして、法務省では、現在のところ、来年二月ごろに法制審議会に諮問をすることを視野に入れて検討を進めております。

 この法制審議会における調査審議の過程におきましては、試案を取りまとめて、これをパブリックコメントに付することなどが通例でございまして、法務省といたしましては、このような機会も通じて、国民各層の幅広い意見を聴取してまいりたいと考えております。

 また、このIT化につきましては、多くの国民に関係するものでございますので、民事裁判のIT化によって、どのように民事裁判制度が変わってどのようなメリットが国民にあるのか、わかりやすく示す必要があると考えております。

 そこで、法務省といたしましては、検討状況をできる限り速やかに公開して、かつ、その内容をわかりやすく紹介するなどしまして、国民の間に幅広い議論を喚起することができるように努めてまいりたいと考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 ぜひ、一般の方に関心を持っていただくように工夫をするというところ、これが非常に難しいことでもありますので、適宜情報開示はしましたといって、じゃ、どうやっているんですか、ホームページに載っています、どれくらい見ているんですか、ほとんど誰も見ていませんみたいな、そういうような落ちにならないように、そこはぜひいろいろな工夫をしていただいて、例えば、今、十八歳成人でどういうふうに啓発をしていこうかという話をしておりますけれども、やはり根は一緒ですので、どうやって見せていくかということをぜひ意識をしていただければと思います。

 このIT化は立ちおくれている中でも、ことし四月から、政府内において、民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議が立ち上がりました。単なる調整役ではなく、司令塔として、リーダーシップを持って方向性を示してほしいなと思っております。

 そこで、この関係府省庁連絡会議においては、この民事裁判のIT化の実現にどのように取り組むのか。これは、内閣官房に新しいポストで審議官が置かれたと思っております、恐らく初めて国会に呼ばれたと思っておりますので、ぜひ決意のほどをお聞かせいただければと思います。

朝倉政府参考人 お答えいたします。

 民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議は、関係行政機関等の連携協力のもと、民事裁判手続等IT化等の民事司法制度改革に向けた喫緊の課題を整理し、その対応を検討するため、平成三十一年四月十二日に関係府省庁によりその開催の申合せがされたものでございます。

 この連絡会議におきましては、国際化社会の一層の進展を見据え、我が国の民事司法の国際競争力を強化するという観点から必要な課題の検討を行うべきであると考えておりますところ、委員御指摘の民事裁判手続等IT化は、民事司法の国際競争力を強化するという観点からも極めて重要な課題であると認識しております。

 この連絡会議の庶務は内閣官房において処理するものでありますので、今後、この連絡会議が司令塔としての機能を果たせるよう、適切に対処してまいりたいと思います。

藤原委員 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 本当に我が国の司法というのは、幸か不幸か、一億人以上の人口がある国でしたので、日本の中だけである意味、完結しても、弁護士としての仕事が成り立っていた。それがある意味、残念ながら、ガラパゴスに近いような状況になっているというのも私はあるんだと思っています。ぜひスピード感を持って取組をしていただければと思います。

 今、その府省庁連絡会議においては、民事裁判のIT化、それから知財関係等、ちょっと私、三つぐらいあったと思う、失念してしまったんですが、等が今、検討俎上に上がっていると思っております。

 私の方でぜひこれは取組をしてほしいなと思うのは、やはり総合法律支援法でございます。

 法テラスのあり方というのは、十年、十五年前にできたときとはもう大きくさま変わりしているんだろうと思います。ゼロワン地域の解消ということ、あるいは、地方にあまねく司法サービスをというのがスタートではあったんですが、それから法曹人口も大分ふえました。そういう意味では、ゼロワンだけでは恐らく理由にはならないでしょうし、司法ソーシャルワークというお話もあるんですが、まだまだ活躍の場というのはあるんだろうと思っております。

 例えば、今回、所有者不明土地について財産管理人を置く、それも、ただ、お金がかかる話ですから、じゃ、例えば、法テラスのスタッフ弁護士にやってもらったときは報酬はゼロにしてやってもらうとか、あるいは、国交省の代理人として、所有者不明土地について財産管理の申請を、それは法テラスのスタ弁にやってもらうとか、いろいろなやり方はある。あるいは、特定技能でこれから外国人が入ってまいります。そういう意味では国際結婚もふえてくる。そういう中で、串田先生、非常に熱心ですけれども、子供の問題というのもいろいろ出てくる。

 そういうような問題、さまざまな問題がございますので、ぜひ、この総合法律支援法のあり方については不断の見直しが必要であり、この関係府省庁連絡会議においてもぜひとも検討していただきたいなと思いますが、いかがでしょうか。

朝倉政府参考人 お答えいたします。

 本年四月十二日に開催されましたこの連絡会議の第一回会議及びその第一回幹事会におきましては、民事裁判手続等IT化を含む三点につきまして、今後、有識者へのヒアリングや、それを踏まえた議論を行う旨の合意がされたところでございます。

 先ほど申し上げましたとおり、この連絡会議におきましては、国際化社会の一層の進展を見据え、我が国の民事司法制度のあり方を検討するという観点から見た課題の検討を行うものでありまして、そのために必要な事項であれば、さきに合意された三点に限定することなく、今後必要な検討を行ってまいる所存でございます。

藤原委員 国際関係が絡んでいないとだめですよというようなことだと思うんですが、例えば、少し前、私は法整備支援というものをちょっと勉強させていただいて、提言を書かせていただきました。そのときに少し議論になったのは、やはり十年ぐらい経験を積んだ弁護士が仮に行こうとしても、お客さんもついている、じゃ、二年、三年間行って、戻ってきたときにどうなるかわからない、誰か後輩に預けたとしても、戻ってきて、よこせとも言えないというところで、なかなか挑戦ができないという話もありました。

 例えば、法テラスで一時的に、二、三年間事件を預かってもらって、戻ってきたら法テラスからは返してもらう。そういう形で、海外に出ていく弁護士の皆さん、今ある仕事をどうするかというのがやはりどうしても大きな問題になる、例えばそういうのを一時的に受皿で法テラスでやってもらうということも私は一つあるんだろうと思っています。

 そういう意味では、小さく考えるとなかなか国際競争力というところには結びつかないんですが、広く考えると、やはり外に出ていく弁護士のバックアップをする組織としてスタッフ弁護士等を使うということもあるんだろうというふうに思っておりますので、ぜひ御検討をいただければと思っております。

 そして次は、少し裁判のIT化とは違うんですが、法務省のお取組で、日本の法令について外国語訳をつくって、それを国際的に発信をしているという事業をやっております。日本法令外国語訳整備事業、これは非常に重要な取組の一つであろうと思っています。

 日産の事件があったときに、日本の司法制度というのはどういうふうになっているのかということで、我々からすればあらぬ批判を受けたところもあると思います。しかし、大事なことは、日本の刑事訴訟法がどういう仕組みになっているのかということをしっかりと海外に発信をしていって、その情報をちゃんと適切に受け取った上でどういうふうに判断をするかということだと思っています。

 今後は、特定技能で外国の方々も入ってまいります。そういう方々、ただ、労働基準法、労働契約法等を読んだとしてもすぐわかるわけではないんですが、でも、やはり、もし日本で働きたいなとなったときに、日本の法律はどうなっているんだろうとインターネットで調べる方だっているわけなんですよね。そういう意味では、しっかり法令の外国語訳を整備していくというのは、情報発信、そしてそれと同時に、これから来ていただける方のために非常に大事な事業だろうと思っています。

 しかし、まだまだ翻訳数が不足をしておりまして、今後施行される改正債権法、あるいは入管法の英訳も、まだ整備をされていないというふうに伺っています。今国会でも、大分多くの法律の改正を行いました。どんどんどんどんスピードが速くなって、同時に、海外発信の必要性も高まっております。

 今後、新しい技術、機械翻訳、本当に簡単なのだと、グーグルなんかでもちょっとした日本語であれば英訳できるわけで、まさかあれだけで、条文を全部入れてぱっとやるわけにはいかないというのはよくわかるんですが、それでも新しいテクノロジーというのは進歩していますので、そういうものの導入を進めながら、より一層のサービスの向上を図るべきだというふうに思っております。

 そこで、この日本法令の外国語訳の事業の拡充に向けて、AI翻訳、こういうものの活用を含めて、今後どのような方針で拡充をしていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の日本法令の外国語訳整備事業でございますが、平成二十一年以降、法務省が中心となって省庁横断的に進めてきたところでございます。現在、既に七百三十を超える翻訳法令の公開を実現しておりますが、委員御指摘のとおりの課題もございます。

 この事業は、社会経済のグローバル化に対応するとともに、我が国が司法外交を展開するに当たっての基盤となる大変重要な取組でございまして、今後、国際化の一層の進展に伴い、この日本法令の内容を迅速かつ正確に国際発信することの重要性あるいは必要性はますます高まることが見込まれております。

 そこで、法務省といたしましては、昨年の十二月に、国内外の経済界を含みます各界の有識者による日本法令の国際発信に向けた将来ビジョン会議を立ち上げまして、本事業のさらなる推進とその充実のあり方について幅広く御議論いただいたところでございます。

 その結果につきましては、先月十八日、ビジョン会議の提言として法務大臣に提出していただいたところでございます。

 このビジョン会議の提言ですが、今後の課題といたしまして、重要法令の翻訳の未整備状況の速やかな解消、あるいは法改正に対応したタイムリーな翻訳提供、また法令概要情報や法分野の基本情報の翻訳提供サービスの開始、あるいは御指摘のございましたAIの活用、また産学官連携などの具体的な事項を提示していただいたところでございまして、いずれの指摘も、本事業の今後の方向性を検討していく上で大変重要なものと受けとめております。

 法務省といたしましては、このビジョン会議の提言を十分に踏まえ、今後は、ユーザーの声にも一層耳を傾けつつ、これらの課題にスピード感を持って適切に対応していきたいと考えております。特に、改正法の概要情報の翻訳提供といった新しいサービスの開始に向けた検討、これを速やかに進めるとともに、法令翻訳におけるAIの活用に向けた国内外の調査検討等につきましても、関係省庁等としっかり連携を図りながら取り組んでまいりたいと考えております。

藤原委員 新しいテクノロジーを使っていくということは、これはIT化もそうですけれども、流れはとめられないんだと思っております。そういう意味では、ぜひスピード感を持って進めていただきたいと思います。

 さて、最後に一問、入管法に関してでございます。

 ことしの四月から特定技能制度が本格的に運用されまして、先日も新聞に、試験の合格発表がありまして、二百何人合格ということで出ておりました。まだまだ特定技能で入ってきている方は少ないんですが、これからいよいよふえてくるということで、その運用は私も見守っていきたいなと思っています。

 その際に、一つ議論になったのは、地方の人手不足に対応する、地方の人手不足は喫緊の課題である、じゃ、どうやって外国から来た人が地方にいて働いていただくか、あるいは都市部に集中をしないかということが大きな課題になっておりました。最終的な修正案でも、そこについて取組をするようにということで、法務省の方で取組をしていると思っております。

 私の方は、それについて少し提言をさせていただきたいと思います。

 在留資格認定証明書の交付率というものがございます。具体的には、海外から日本に来るときに、資格がちゃんとありますねということで認定をしていただく、そして証明書を交付していただく。それがないと日本に来れないのでありますが、この交付率というのは実は全国一律ではないということがあります。

 例えば、平成三十年、日本語教育機関に対する入学予定者に対して留学の在留資格認定証明書交付率は、平成三十年度で平均して約七割です、全国平均。ところが、例えば札幌局を見てみると六割、仙台局を見てみると五割、東京局を見ると七三%、横浜支局は約八割、名古屋は八割、大阪は八七、九割近くとなっております。つまり、全国一律で同じ水準で交付をされているわけではないのであります。

 これはいろいろな要素があると思うんですが、私は、地方に人を寄せる、地方に入ってもらうというのは、これは重要な、立派な政策目的になりますので、例えば、地方と都市部、どこで働くかによって交付率に差を設けるということは、私はこれは出入国管理行政の裁量の範囲内でできることだと思っておりますが、その点について、そういうような運用をすべきと思いますが、いかがでしょうか、長官。

佐々木政府参考人 御示唆をいただきました在留資格認定証明書の交付でございますけれども、これは、個々の申請ごとに入管法令上の要件の適合性について審査し、その結果として、その要件に適合している場合にはそれが交付をされるものでございます。

 したがいまして、各地方出入国在留管理局によって今御紹介をいただきましたように最終的な交付率に差異があったとしましても、それは個別の審査の結果ということでございまして、今御示唆をいただきましたように地方ごとに交付率を設定することにしますと、例えば入管法令上の要件を全て満たしている外国人の方からの申請も不交付にしなければいけないという場面が出てまいります。

 ですので、その対応はなかなか困難ではございますが、当庁としても、御示唆いただきましたように、外国人材が大都市圏等に過度に集中することとならないための対策は極めて重要であると認識しておりまして、適切に対処してまいります。

藤原委員 ありがとうございます。

 要件について、羈束的な要件もございますけれども、一般裁量、抽象的に書かれている要件もございますので、そこへの当てはめという形でやれば、そもそも要件を満たしていないというところで切ることができるということは御承知のとおりだと思います。そういう意味では、ひとつ、地方の人手不足対策として御検討をいただければと思います。

 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で藤原崇君の質疑は終了いたしました。

 次に、浜地雅一君。

浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。

 二十分、一般質疑の時間をいただきまして、きょうは、登記所備付け地図という、法務行政においては基本中の基本と言えるところだと思いますが、実はそういう私も、かなり細かく詳細を聞かれるとまだまだ理解していない部分はあるものですから、この基本的な登記所備付け地図というものについてまず議論をさせていただきたいと思います。

 きょうは資料一で見本を持ってまいりまして、これは法務省の方で作成したいわゆる十四条地図の見本でございます。基本的なところから聞きますが、なぜ、そもそも、登記所備付け地図を今整備を進めておられますけれども、これをする必要があるのか、それについて局長にお答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 登記所備付け地図、不動産登記法第十四条第一項に基づく地図でございますけれども、この地図につきましては、現状では全国的にその整備が十分ではございません。そのために、不動産の流通ですとか公共事業の円滑な実施が妨げられている、こういった指摘がされているところでございます。

 また、平成二十八年度の民間シンクタンクによる調査研究におきましては、全国の地図作成作業の経済効果は予算額の約九倍の経済効果があるといった試算もされているところでございます。

 こういったことを踏まえますと、引き続き、全国における登記所備付け地図の整備を進めていくことが極めて重要であるものと認識しております。

浜地委員 ありがとうございます。

 当然、地図がないと、いわゆる土地の位置であるとか、また境界、筆界というものが確定できないというふうに、それを前提として今の御答弁だと思いますが、ちょっともう一度基本に戻りますが、この見本で結構なんですが、この十四条地図、登記所備付け地図は何を実際に公証をしているのか、これによって何が証明をされているのか、御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この登記所備付け地図でございますけれども、登記された各土地の区画を明確にして、地番を表示するものと不動産登記法上されております。したがいまして、現地における各土地の筆界の位置、それからその土地の形状を明らかにするものでございます。

 具体的には、この資料の地図証明書でございますけれども、各土地の区画ですとか地番がまず表示されております。このほかに、表示地域の枠の座標値、右上の隅と左下の隅にございますけれども、この表示地域の枠の座標値、それから、これに付随いたします情報でございますが、精度区分、それから座標系の番号又は記号、こういうことを表記することによりまして、現地におけるそれぞれの土地の筆界の位置や形状を明らかにするというものでございます。

浜地委員 そうですね。今御答弁があったのが、筆界の位置と土地の形状ということだったわけでございます。

 この資料一を見ますと、これは請求したところが特別区の東都町一丁目、地番を請求したわけでございますが、この出力縮尺というのは五百分の一ですので、この地図は実際の形状の五百分の一に縮小されている。

 先ほど精度区分というお話がございまして、これは甲一と書いてありますので、ちょっと後でもう一度御答弁お願いします、この甲の一とかというものは何を示しているのか。座標系番号又は記号ということで、これは9と書いてあるわけでございますが、これが例えば何を示しているのか。例えば、甲だったら甲が二があるのか、番号また記号ではほかのものがあるのか。かなり細かく質問しておりますけれども、それも含めて、少しわかりやすいようにもう一回ちょっと答弁していただくとありがたく思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、先ほどの地図証明書の表記事項でございますけれども、精度区分でございますが、これは誤差の限度の区分をいうものとしております。甲一でございますけれども、筆界点の位置誤差ということでございまして、これはちょっとかなり専門的になりますけれども、平均二乗誤差が二センチメートル、公差が六センチメートルといったような位置誤差でございます。

 それから、座標系番号又は記号でございますけれども、これは、地球は丸いものですので地表は丸くなっておりますが、これを地図として平面に落とし込むということになります。地表を平面として計算するために適用すべき座標系というものを、日本の各地域によって、例えば九州の西ですとか九州の東、中国の西というように、各地域ごとにそういった座標系というものを設けている、そういう種類ということを指しているものでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 私の通告は、何を公証しているかと聞きますということで、ちょっと済みません、ここまで細かく聞くという予想がなかったようなんですが、さすが局長、しっかり答えていただきました。

 それこそ、甲一というのが、この誤差がわずか筆界で二センチ、公差、高さですね、わずか六センチしか変わらないということでございますので、そういった意味では、これは非常に現地の復元性があるというふうに思っております。私も実務を少しやっていたころには、公図、九州の方では字図と呼んでいましたけれども、なかなか現地復元性のないような地図だったわけでございますが、こういった十四条地図の整備というものによりまして、かなり筆界の位置又は形状というものが正確に記載をされているということだと思っております。

 特に、今回、表題部の所有者不明について法案を通過をさせていただきましたが、やはりその前提となる、この土地がどこが筆界であって、どういう形状をしているのかということもやはりしっかりと整備をしていかなければ、これは車の両輪ということで、所有者不明の土地の問題でありますとか、また公共事業がなかなか進まない、そういった問題については対処できないと思っておりますので、これも鋭意、備付け地図の整備をぜひ我々も応援をしていきたいと思っています。

 ところで、登記所備付け地図の供給源として、この見本は法務局の作成の地図でございますが、もう二つございまして、国土調査法に基づく地籍図、それと土地改良法等に基づく所在図というものがあるというふうに聞いております。この三つから主にこの十四条地図というものは供給をされて、登記所に備え付けられているということなんですが、じゃ、この法務局が作成する部分と、国土調査法に基づいて、主にこれは国交省が管轄をしながら地方公共団体にお願いする部分と、土地改良法に基づく所在図がございますが、なぜこのように分類、三つされているのか、御答弁をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 内閣に設置されました土地再生本部におきまして、平成十五年六月に、民活と各省連携による地図整備の推進と題します方針が示されまして、土地再生の円滑な推進のため、国において、全国の都市部における登記所備付け地図の整備事業を強力に推進することとされました。

 この方針に基づきまして、平成十六年度から、法務省と国土交通省とが連携して地籍整備事業を実施することとされております。

 その中では、人口集中地域、これはDIDと呼んでおりますけれども、人口集中地域であって、公図と現況のずれが著しく大きい地域については、法務局がみずから地図を作成することとされております。

 他方で、それ以外の地域については、国土調査法に基づいて市町村等が実施する地籍調査事業により地図を作成することとされております。

 法務省といたしましては、今後とも、関係機関と連携しながら、法務局が主体的に行う登記所備付け地図の整備作業を着実に進めていくとともに、市町村等が実施する地籍調査事業に対しても積極的に協力して、登記所備付け地図の整備を着実に推進してまいりたいと考えております。

浜地委員 今御答弁がございましたとおり、現況と大きく異なる地域で、人口密集地域については法務局が担当しますという御答弁でした。

 ですので、ここでは、やはりさまざまな方々との筆界の確定も必要でしょうし、また、現況をしっかり調査する上でも専門家の方々の知見も必要だということで、ここには土地家屋調査士の先生方がかかわっていらっしゃるわけでございます。

 先ほど、法務委員会の理事会の方で、今週金曜日、司法書士法、土地家屋調査士法の質疑をし、また、採決をするところまで理事の方で合意をさせていただいたわけでございますが、与党の時間帯は非常に短いものですから、ここで少し土地家屋調査士の問題についても取り扱いたいというふうに思っております。

 この法務局作成の登記所備付け地図については土地家屋調査士の先生方のお力を非常におかりしているということでございますので、これもぜひ積極的に進めていただきたいというふうに思うところでございます。

 しかし、土地家屋調査士会からは、さまざま、今回の、次回質疑をする法案について要望も寄せられているところでございます。その一つが、土地家屋調査士会が運営するADR、境界問題相談センターについての積極的な活用を更に図っていきたいということでございます。

 御存じのとおり、このADR、境界問題センターというのは、土地家屋調査士の五十の全ての支部に全国的に設置をされているところでございまして、このADRで相談をすればいわゆる時効の中断効等々も認められる制度でございますので、非常に公的な側面も私は担っているんじゃないかというふうに思っております。

 しかし、このいわゆるADR、境界問題相談センターに寄せられる件数が非常に少ないという問題があります。

 平成二十八年度の直近のデータしかございませんが、ここでは、相談件数が六百八十八件、全国でございますが、実際にこれは調停に行ったのが六十六件しかないということでございます。その前、実は平成二十四年ころには一千九十二件あったことを考えますと、この相談センターに対する相談件数もどんどん減っているというのが実情でございます。

 先ほど私、お話しさせていただきましたとおり、今、所有者不明土地問題について、法務省はこれからスケジュールを組んでさまざまな法案を出そうということで、今国会では表題部の所有者不明土地がございました。しかし、何度も繰り返しますが、こういった登記の方の整備が進んでも、実際の地図等、また筆界等が確定していなければ、実際に不動産を取引するとき、また公共事業で何か仕事をするときには全く進まないわけでございます。

 ですので、土地家屋調査士の役目というのは非常に大きいと思っておりますが、先ほどお話ししましたとおり、このADRの境界問題センターの活用が進んでいないことについて、ぜひ法務大臣には、このPRを含めて、法務省としても後押しをしていただきたいと思っております。

 土地家屋調査士の意義、そしてこのADRの境界問題センターのさらなる周知に関して、法務大臣の御見解をいただきたいと思います。

山下国務大臣 御指摘の境界問題相談センター、これは、全国五十の土地家屋調査士会において、土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事上の紛争を取り扱う裁判外紛争解決手続機関、いわゆるADR機関として設置されているものでございます。

 この境界問題相談センターの活動は、紛争の実情に即した迅速な解決を図るものでございまして、ADR関係業務について必要な研修を経て認定を受けた土地家屋調査士の方々がその専門的知識を生かしており、土地の筆界に関する紛争の解決における重要な役割を果たしているものと承知しておるところでございます。

 しかしながら、一方で、この境界問題相談センター、これの相談、調停件数を見ると、今手元に二十九年度の件数がございますが、相談は七百十三件と前年度より若干ふえているところでございますが、調停申立ては三十八件ということで、これは非常に残念な数値と私、個人的には思っております。

 この境界問題相談センターのポテンシャルを考えれば、もっともっと活用がされていいものと考えておりますので、法務省においても、委員の御指摘等も踏まえて、土地家屋調査士会の皆さんとも相談しながら、境界問題相談センターと連携し、土地家屋調査士の関与するADRの一層の周知、広報に取り組み、その活用の推進を一層図ってまいりたいと考えております。

浜地委員 力強い御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 何度も申し上げますとおり、この所有者不明土地問題、一気にここ数年で片づけなきゃいけない問題だろうと思っております。さまざまな手を尽くしながら今やっているわけでございますので、ぜひ、こういったADRの機関もフル活用しながら行っていくべき時期に来ているんではないかなと思っておりますので、さまざまなチャネルの一つとして、また法務省としても、この活用につながるように、ぜひ周知等、また御協力をいただければというふうに思っております。

 最後の質問にします。少し早く終わるかもしれませんが、大丈夫と思いますが、ちゃんと時間をちょっと延ばしてやりたいと思います。

 いわゆる商業登記の本店登記に関するウエブ申請の補助事業者というのが最近あらわれておりまして、産業競争力強化法のグレーゾーンというところで、例えば、自分のホームページに、いわゆる会社の方がそこに問合せをして、自分の本店登記をしたいようなフォーマットを自動的につくるような画面に移っていただいて、できたものを印紙を張ってその会社の代表者に送って、その本人が本人申請として法務局に届出をするということは、これは司法書士法違反であるのかないのかという問合せが実は経済産業省の方にあったわけでございます。

 経産省としては、基本的には、ただ単に本人が申請をするものを手引のように見ながらやるようなことであれば、これは司法書士法違反ではないということだったわけでございますけれども、しかし、これに関して、やはり不実の登記がなされる危険もあるし、特に、以前は、なかなか本店がない、実際には住所にないようなところも登記をされた事例もあると聞いておりまして、司法書士会の方としては非常に問題視をした経緯がございます。

 そこで、我が党の伊藤孝江さんという参議院議員も、これは参議院の法務委員会で質問をさせていただきました。このとき小野瀬局長は、このウエブ業者の申請補助事業については、本件が及ぼす影響に留意し、対応方策の検討を速やかに進めてまいりたいというふうに御答弁をされたわけでございます。

 これが平成三十一年の四月の十一日だったわけでございますけれども、その後、このウエブ申請における商業登記の本店登記の申請補助という点について、どのような対策を法務省としては具体的にとられたのか、御答弁をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この件につきましては、産業競争力強化法のいわゆるグレーゾーン解消制度に基づきまして、経済産業大臣から法務大臣に対して確認の求めがあったことから、平成三十年八月二十三日付で法務大臣がこれに回答したものでございます。

 ただ、この回答につきましては、誤解を招いているのではないかといったような指摘がされましたことから、そういったことを踏まえまして、この回答が、対象を絞って、かつ条件を付したものであることなど、そのポイントをまとめた文書をことしの四月十九日付で改めて法務省ホームページにおいて公表したところでございます。

 具体的には、まず、確認を求められた事業は、株式会社の本店移転の登記という特定の登記に必要となる登記申請書、印鑑届け書等を利用者が登記所に提出するためだけに作成する場合に限定されているということを前提として確認した上で、さらに、個別の事案において利用者からの依頼に基づき個別具体的なアドバイスをするようなものでない限りにおいてといった条件を付して、司法書士法との関係で実施が可能であるとしていることを確認しているものでございます。

 加えて、この回答により実施が許容される事業の範囲はこれらの条件を満たす場合に限られ、これらの条件を満たさない事業の実施については本件回答に含まれるものではないことにつきましても改めて明らかにしているところでございます。

 今後、こういったIT技術を活用した事業、社会全般で拡大していくことも予測されますが、法務省としましては、サービス内容や宣伝広告の内容を含めたこのような事業活動の実態を注視し、司法書士法等に抵触することがないかどうかを見きわめた上で、違法な行為を認知した場合には、関係機関及び関係団体と協力しつつ適切に対処してまいりたいと考えております。

浜地委員 明確な御答弁でした。

 終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で浜地雅一君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの黒岩宇洋です。

 せんだって、民法改正で、特別養子縁組に対して、夫婦共同縁組、これが条件になっているということについて質問をいたしましたけれども、時間の制約もありまして、得心に至るまで質疑ができなかったものですから、改めて大臣に確認の質問をさせていただきます。

 配偶者のいない片方の親、すなわち単親ではなぜ特別養子縁組ができないのか。この点についてお聞かせください。

山下国務大臣 お答えいたします。

 現行の制度の趣旨につきまして、現行の民法が夫婦共同縁組の原則をとっておりますのは、養親となる者が将来にわたり養子を確実、適切に監護、養育することができる者であることを要し、そのためには養親となる者が夫婦であることが望ましいとの理由に基づくものでございます。

 もっとも、我が国の社会においても、婚姻をしておられなくても子供を適切に監護、養育している方は多くおられるものと承知しておりまして、議員の問題意識は私も理解することができるところでございます。

 他方で、今回の改正は、五月二十二日の参考人質疑において大村敦志参考人も述べておられましたとおり、特別養子制度に関する喫緊の課題について見直しを行うものでございまして、法制審議会の議論におきましても、養子制度に関しては、未成年者を普通養子縁組によって養子とする場合を含め、検討すべき課題が残されているとの指摘がされたところでございます。

 本法律案が成立し、施行された場合には、まずは改正後の特別養子制度の運用状況を注視してまいりたいと考えておりますが、養子制度のあり方については、御指摘の点も含め、必要に応じて引き続き検討してまいりたいと考えております。

黒岩委員 改正案については既にもう衆院を通過していますので、これは将来においての議論なんですけれども、やはり確認しておかなきゃいけないのは、今大臣からは非常に柔軟な今の考え方というのをお聞きしたんですが、さはさりながら、この制度が始まった時点で、やはり配偶者のいない人というものは排除したわけですよね、法律上、できないわけですから。それについてなぜかということは、しっかりと答えていただきたい。

 その当時の認識で構わないんですよ。排除したわけですから、できませんよ、特別養子縁組はできませんよと言ったわけですから。なぜ配偶者のいない単身はできないのか、これについてお答えいただきたいんです。

山下国務大臣 私どもとしては、排除したというよりは、現行の民法が、そういった、養親となる者が夫婦であることが望ましいとの理由であることから夫婦共同縁組の原則をとっている、これを維持させていただいたということでございます。今回の改正が、繰り返しになりますが、喫緊の課題について見直しを行うものであることからというところでございます。

 他方で、先ほど申し上げたとおり、養子制度のあり方については、必要に応じて引き続き検討してまいりたいと考えております。

黒岩委員 やりとり、前回もしましたけれども、夫婦両方いる方が望ましいという判断だったと。ということは、逆に言えば、片方の場合は両方いる場合に比べて望ましくない、そういう判断でよろしいですか。

山下国務大臣 改めて判断をしたというものではなくて、現行制度のこの夫婦共同縁組の原則を維持させていただいたということでございまして、これは喫緊の課題についての見直しということで、今回は見直しの対象としなかったというところでございます。

黒岩委員 今回の改正のことを聞いているんじゃないんです。少なくとも昭和六十二年に発足したときの、そのときの認識でいいんですよ。あくまでもその時点で、今回の改正じゃありませんよ、昭和の時代に、単身は特別養子縁組できないと言ったわけですよ。

 夫婦共同原則、原則といっても、別にこれは数学の定理や公式じゃありませんから、一定の原則といっても、それが、安定した家庭であるとか、将来にわたって監護、養育ができることが望ましいといった限り、では、望ましくないという判断があったのか。この点のことをしっかりしておかないと、この次に。

 この議論を聞いたら、今片親で頑張っている母子家庭の皆さん、父子家庭の皆さん、正直言って、相当つらい思いをすると思いますよ。だって、将来にわたって安定して監護や養育ができないと言われているようなものですよ、議論を聞いていて。

 この中で、さっき大臣がおっしゃったとおり、片親だから、両親のいる家庭に比べて、今言った、安定した、また健やかな家庭がつくれないと断言する人なんかいませんよ。逆に、両親さえいれば、片親に比べてもすばらしい家庭が築けるという短絡的な結論にも至らない。ケース・バイ・ケースだとみんな、多分これについて異論を挟む人はいませんよ。と思います。

 ですから、ケース・バイ・ケースなわけですから、一律、配偶者のいない人を、単身を、これはできないと言っているわけですから、それについて、できないとした理由が何であって、そして、今後この考えを変えていくんだったら、やはりそのときの認識から、社会情勢も含めて認識が変わったと言わなければ、何で制度を、仮に変えていくとすれば、変える理由がはっきりしない、こういう趣旨で言っているんですよ。

 大臣、改めて申し上げますけれども、何でかという昭和六十二年のことは申しませんけれども、あくまでも、これだけは大臣から力強く言ってほしいですけれども、母子家庭や父子家庭で頑張っておられるその家庭が決して、安定した家庭ではない、将来にわたって監護や養育に適していないということではないと、今時点の大臣の認識は。このことははっきりとおっしゃってください。

山下国務大臣 先ほども申し上げたとおり、我が国の社会においても、婚姻をしていなくても子供を適切に監護、養育しておられる方は多くおられるものと承知しておりまして、その意味では、議員の問題意識は共有するところでございます。

 他方で、この夫婦共同縁組……(黒岩委員「大臣、他方はいいから。他方は要らないから」と呼ぶ)いやいや。ただ、制度趣旨をお尋ねですが、よろしいですか。(黒岩委員「いいです。大臣の見解を聞いているんだから」と呼ぶ)それはもう、先ほどの繰り返しになりますが、申し上げたとおりでございます。

黒岩委員 大臣、やっぱり山下大臣としての自分の考え、何度も言いますけれども、これはテレビ中継があるわけじゃないけれども、今たくさん単親家庭がふえているわけですよ、その是非はともかくですよ。だから、片親で頑張っている方に対してメッセージをちゃんと言ってあげなきゃ。

 この前のあの議論で制度趣旨だけ読んでいたら、私が理解したような認識を持ってしまうわけですよ。それは困るでしょう。令和の時代の大臣として、父子家庭や母子家庭が、両親がいる家庭に比較して、特別養子縁組をするには望ましくないというような認識として捉えられたら、それは法務省としても大臣としても本意じゃないと思いますよ。そうでしょう。そういうことを、他方がどうとかじゃなくて、大臣としてしっかりとアナウンスしていただきたい。

 これはこの前も申し上げましたけれども、例えば、確かに、単身世帯の方が経済的には所得が低い可能性もある。ただ、それすらも審判において個別的に判断する、そういう制度ですよね。例えば、今回、六歳未満から十五歳未満になった、しかも十七歳まで特別養子縁組が組める。すると、法律上は三歳違いの親子ができるわけですよ。これは、自然の親子では三歳違いの親子というのはあり得ない。でも、それすらも制度上は認めているわけですよ、制度上は。

 父子家庭や母子家庭というのは、自然の親子であり得る形態ですよ。これを排除しておいて、自然の形態ではあり得ない親子は認めている。これも私はねじれだと思っているし、自然の形態では三歳違いの親子はあり得ないけれども、それすらも審判において個別具体的に判断しましょうという広い裁量を持っているわけですよ、司法が、家裁が。

 だったら、そういう同じパラレルでこの夫婦共同縁組、もっと言えば配偶者がいない方についても、個別でしっかりと判断をしてくださいということを、これは主張で言っておきます。多分この議論を聞いても、やはり一定以上の矛盾があると誰もが思っているし、これを次の法改正では、これは議事録にしっかり残してありますので、大臣も前向きな答弁をいただきましたから、踏み込んでいただきたいと思っております。

 あと、重ねて言いますけれども、大臣、もっと自分の主張を訴えてくださいよ。今言ったように、現実に社会で暮らしている人がいるんだから。母子家庭、父子家庭で頑張っている方がいるんだから。別に、法の解釈をここでやりとりしているわけじゃないんですよ、私たちは。そんなのだったら、こんな国会審議は要りませんから。そのことはよく御理解いただきたいと思います。

 それでは、先に進めさせていただきます。

 今までさまざまな再犯防止についても私は議論をさせていただきましたけれども、今回、再犯に限りませんが、性犯罪の防止、再犯も含みますけれども、この防止策についてお聞きしたいと思っております。

 まずは、現状で、端的に数字を言っていただきたいんですけれども、性犯罪の発生状況というものがどういうものなのかを知る上で、まずは各国の比較で、殺人と窃盗の認知件数、件数というか発生率、人口比の発生率。他国と比べて、先進国と比べて、我が国のこの発生率、殺人と窃盗について、どのような違いになっているか、これをお答えください。

西山政府参考人 まず、殺人につきまして、平成三十年版犯罪白書によりますと、日本の二〇一五年の殺人の発生率、これは人口十万人当たりの発生件数でございますけれども、この発生率は〇・三でございます。他方で、フランスの殺人については発生率一・六、ドイツは〇・八、英国は一・〇、米国は五・〇となっております。

 続きまして、同じく窃盗につきまして、二〇一五年、日本の場合は、これも人口十万人当たりの発生件数でございますけれども、四百二十七・五、フランスは二千七百五十八・七、ドイツは二千二百七十三・六、英国はデータがございません、米国につきましては二千四百九十八・六というふうになってございます。

黒岩委員 殺人ですと、大体、ヨーロッパの国は日本の三倍ぐらい、米国になると十数倍だ、裏を返せば、日本は数分の一から十数分の一の発生率だと。窃盗に関しては、これは五倍から七倍ぐらいですから、日本は、発生率は五分の一から七分の一だ、治安のいい国だということがわかります。

 では、性犯罪の発生率の各国との比較、これをお答えください。

西山政府参考人 これも平成三十年版犯罪白書によりますけれども、日本の二〇一五年の強制性交等の発生率は〇・九でございます。他方で、フランスは発生率二十・一、ドイツは八・六、米国は三十八・八となっております。

黒岩委員 米国と比べると四十分の一ぐらい、他のフランスとかイギリスとかと比べると十分の一ぐらいですか。ということで、大変我が国の発生率が低い、性犯罪においては治安がいいということなんです。

 なぜ、殺人や窃盗に比べて、発生率に関して言えば数分の一から、強制性交等になると数十分の一、要するに十倍ぐらい治安がいいということになるんですよ、発生率が低い。この理由については分析されていますか。

西山政府参考人 御指摘のとおり、我が国における強制性交等の発生率が諸外国と比べて低い数値となってございますけれども、各国における性犯罪の構成要件が異なるということ、それから各国における統計のとり方等は必ずしも同一とは言えないこと、また性犯罪については一般に暗数が多いとされていることなどから、一律に比較分析は困難であるというふうに認識をいたしております。

黒岩委員 ごめんなさい、暗数って何でしたっけ。

西山政府参考人 今の発生率というのは認知件数に基づいておりますけれども、実際に発生している件数とはもとより異なるということで、認知されていない発生件数ということになります。

黒岩委員 さっきの構成要件でいうと、親告罪なのか非親告罪とか、かなり決定的に違うと思いますけれども。

 これはレクのときにもそういった内容で聞いていますが、もう少し私は精緻に分析していただきたいんですよ。これは、警察そして法務、やはりいろいろな今まで性犯罪防止に取り組まれてきているので、そのよい効果の可能性も高いわけですから。とすると、何らかの手段を講じてきたという、これを分析していただいて、いい手段については自信を持って、これからもその手段について更に取組を深めていくというようなことで、せっかくこれだけ他国に比べて何十分の一という性犯罪の発生率ですから、このことが一体なぜ起こったかということはもうちょっと精緻に分析していただきたいと思っております。

 性犯罪の認知件数や発生率、これはもうあえて聞きませんけれども、これは過去十年ぐらいを見ますと、割と、性犯罪が深刻化しているとか頻発化しているみたいなイメージがありますけれども、実際には横ばいから少し減っているぐらいですね。これは一つには、非常にやはり衝撃的な事件がニュースになるものですから、多くの国民の認識では、今申し上げたとおり、頻発化、深刻化していると。深刻化はしているかもしれませんけれども、頻発化という意味においては実は発生率も減っている、こういう認識を改めていくべきかなと思っております。そのぐらい、今言ったように、警察、法務、しっかりと対応しているのかなと思っております。

 今度は、再入所率、これについて、特に、一般の刑事事件の再入所率と、あと、よく性犯罪と、常習性が高いということで比較される覚醒剤事件の二年再入所率と、この性犯罪の入所率、これについて比較して、数字をお答えください。

西山政府参考人 これも平成三十年版犯罪白書によりますけれども、平成二十五年の出所受刑者の二年以内再入率は一八・一%でございます。罪名別では、覚せい剤取締法は一九・五%、強姦、強制わいせつは九・二%となっております。

黒岩委員 平成二十八年だと全ての出所受刑者の二年再入率が一七・三%、覚醒剤だと一九・五%ですから、これよりやや多い。ただ、強制性交等は九・二%と、全ての出所者と比べても半分なんですね。

 これも、やはり常習性が高い、だから再犯が多いというイメージだったんですけれども、私は、これはやはり、保護矯正、特に矯正はしっかりとした対応をし、また保護も、そのカバーをしながら再入所率が低いという点は、私はこれは非常に評価すべきことだと思っています。

 そこで、これは今言ったように、性犯罪についての傾向については、多分、一般の国民が思っている以上に発生率も低くなってきているし、再入所率も、これは半分以下ですので、低いということを改めて申し上げましたけれども、では、被害者と加害者の年齢層。

 よく、性犯罪については、低年齢化という言葉が使われますけれども、特に加害者の年齢、この十年ぐらいの経年変化、また被害者の、これも十三歳未満とか、いわゆる幼児、子供が被害者というイメージがあるんですけれども、この被害者の年齢の経年変化、これについてお答えください。

西山政府参考人 お尋ねは全体についてでしょうか、それとも性犯罪……(黒岩委員「性犯罪です」と呼ぶ)済みません、失礼いたしました。

 まず、平成二十七年版の犯罪白書によりますと、強姦、強制わいせつの検挙人員のうち二十歳代及び三十歳代の割合につきましては、昭和六十年から平成二十六年までの三十年間、一貫して約五割から六割を占めております。

 他方、同じ強姦、強制わいせつの検挙人員のうち少年の割合は低下傾向にございまして、平成二十六年は昭和六十年と比べますと、強姦が二分の一以下、強制わいせつが約三分の一となってございます。

 一方、六十五歳以上の高齢者の占める割合は、強姦、強制わいせつの検挙人員のうち、昭和六十一年では、強姦では〇・二%、強制わいせつでは一・〇%であったところ、平成二十六年には、強姦では二・五%、強制わいせつでは八・三%に増加しております。

 それから、被害者の年齢層につきましては、強姦につきまして、最近二十年間につきましては、一貫して、二十から二十九歳、二十代の方と未成年者の方の割合が高いという傾向が見受けられます。

 以上でございます。

黒岩委員 被害者の年齢はそれほど平成の時代でも変わっていないということなんですが、加害者なんですね。

 少年の割合が、とにかく、この平成の三十年で、強姦ですと約二分の一に減った、強制わいせつが三分の一になった、これはいいんですよ。でもこれは、少年が減ったということは、逆に三十代、四十代がふえているんですよね。強姦でいうと、三十代で、大体平成で二倍ぐらいにふえていますね、三十代の割合が。強制わいせつでも二倍ぐらいにふえている。四十代も、強姦でも強制わいせつでも約二倍にふえている。ということは、低年齢化というよりは高年齢化しているんですよね、実は。

 だから、三十代、四十代のいわば分別のある、これは十九歳から十四歳の未成年というのは、言い方はあれですけれども、性的衝動を抑え切れない、こういった要素が未成年である場合あるかもしれないんですけれども、この子たちは減っているけれども、逆に三十代、四十代が、割合でいうと倍にふえている。

 この理由についてどのように分析しているのか、これをお答えください。

西山政府参考人 年齢層の変化につきましては、分析がなかなか難しい部分がございまして、御理解をいただきたいと思います。

 背景事情として、そもそもの人口における年齢層の変化というものもございまして、例えば、端的には、六十五歳以上の割合が、人口比、増加して高齢化が進んでおりますけれども、刑法犯全体につきましても、年齢層の構成比において高齢者の割合が増加しているといったようなところも、こうした年齢構成の変化も影響があるのではないかというふうに考えてございます。

黒岩委員 済みません、平成の三十年で三十代、四十代の人口が半分になんかなっていないですよ。

 その部分や要素は否定はしませんよ、若干はあるけれども。ただ、もう少し厳密に、せっかく犯罪白書でいつも数字を出している、僕は言っているけれども、せっかく数字は出ているんだから、その背景を探ってくださいよ。その原因がわからなかったら、対策とれないじゃないですか。

 今これだけ、私はさっき、あえて保護局や矯正局の活動というものを、本当に評価しているわけですけれども、ただ、この高年齢化している、これについてこれからどう対策をとるかというときに、やはりこれは分析していただかないと。せっかく全体の発生率とか低く抑えているけれども、しかし、三十代、四十代はどんどんふえているわけだから。多分難しいと思いますよ。

 まあ、ネットが氾濫している、そんな中で、これがどう起因しているのかとか、そういったことをもうちょっと綿密にやってもらえると、その入り口のところでどう抑えられるか、これについては私も完全に分析し切れていないので。

 ただ、皆さんプロなんだから、これだけ顕著に、この性犯罪を見た中で、ある意味、悪い傾向の一番最大のものがこの高年齢化ですよ。本来ならわきまえなきゃいけない、性的な欲求というものを抑えなきゃいけない。犯罪ってみんなそうですよね。欲求を抑え切れない、金銭欲だとか、抑え切れないがゆえに起こってしまう。そのときに、この欲求を、今言った三十代、四十代が抑え切れない状況というのは一体何なのかということは、私、しっかりしていただかないと、この後かなり綿密な、これから対策についてお聞きしていきますけれども、それとどうやって関係づけさせるのかということが非常に重要なことになってきますので、これは非常に問題意識として申し上げておきます。

 それでは、ちょっと端的にお聞きしますけれども、保護局長と矯正局長に来ていただいていますので、今現状、この性犯罪の防止策に対して、矯正局、保護局の順番に聞きます。

 矯正局の方は、刑事施設における性犯罪処遇プログラム、その内容、これももう端的でいいですよ。そのプログラム、これはいつから始まったのか、その効果がどの程度あらわれているのか。

 これは同じ質問をします。保護局の方でも、同じように、それをお答えください。

名執政府参考人 刑事施設におきます性犯罪再犯防止指導は、平成十八年に、奈良県の痛ましい女児暴行殺害事件をきっかけにでき上がったものでございます。

 これは、欧米諸国において実施され、効果が認められている認知行動療法等の手法を取り入れて作成されたプログラムに基づきまして、受講対象者は、スクリーニング、また、調査の結果に基づいて、受刑者の再犯のリスク、また、再犯につながる問題性に応じて、高密度、中密度、低密度、そのいずれかに分類して受講させております。

 具体的な内容としましては、受刑者に、グループワークの中で性犯罪につながる要因を検討させ、その要因に対処するための知識、スキルを身につけさせ、それを出所後の生活で実践させるための計画を作成させて社会復帰に備えさせているということでございます。

 この効果につきましては、平成二十四年十二月に、このプログラムの受講の有無による再犯状況の分析結果をまとめたところです。

 この時点で、二千百四十七名を対象といたしまして、出所後三年間の推定再犯率を分析いたしました。その結果、処遇プログラムを受講した者の推定再犯率は二一・九%、受講していない者の推定再犯率は二九・六%であり、統計上、一定の再犯抑止効果があると認められたところでございます。

今福政府参考人 お答えいたします。

 保護観察所における性犯罪者処遇プログラムを実施しておりますが、これは平成十八年九月から行っております。

 これは、性犯罪者に対しまして、認知行動療法を理論的基盤とした全五課程から成るコアプログラムや、保護観察期間を通して問題性に応じて定期的に面接指導を実施する指導強化プログラムなどを内容とするものでございます。

 この効果検証につきましては、平成二十四年に行いました。保護観察開始後四年経過時点における性犯罪の再犯があったかどうかという観点で、刑事施設からの仮釈放者及び保護観察つき執行猶予者のいずれについても、プログラムを受講した者と受講していない者、それぞれの再犯率を比べましたところ、プログラムを受講した者の方が再犯率が低いということが示されております。

 具体的には、仮釈放者の場合は六・一ポイント、保護観察つき執行猶予者は一五・四ポイント、推定再犯率が低い結果となっております。

 以上でございます。

黒岩委員 ありがとうございます。

 済みません、保護局のは平成二十四年から始めたんですか、このプログラム。効果検証したんですよね。

今福政府参考人 お答えいたします。

 プログラムの実施は平成十八年でございます。

 その効果検証は平成二十四年に行いました。

黒岩委員 平成十八年からですから、どちらも十三年たつんですね。

 どちらのプログラムもこの認知行動療法に基づいているということで、効果検証ですけれども、矯正の方は、私もその再犯率の数字もいただきましたが、ただ、統計的には実証できなかったという、先ほどの中密度の対象者とかそういったものがあって、このプログラムだけではもちろん万全ではないということだと思います。

 これは、この後の薬物療法と絡んできますので、十三年続けてきて、認知行動療法のある程度の効果は検証されたけれども、まだまだ万全ではないということだと。特に、十三年かけて、新たなプログラムということですので、そこは今、確認させていただきました。

 では、先に進みまして、今度は、出所後の対策としてなんですけれども、これは警察との連携になりますが、一番大きな柱として、性犯罪を犯した人の出所後の情報を警察と共有すると。

 これは警察の方にお聞きするかな。じゃ、この共有の方法、一体どういった内容について、どういった手段で性犯罪者の出所者の情報を共有しているのか、お答えいただけますか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、十三歳未満の子供を対象とした暴力的性犯罪で刑務所に服役している者につきまして、法務省からその者の出所情報の提供を受けているところでございます。

 警察では、出所情報の提供を受けた者を再犯防止措置対象者として登録いたしまして、住居地を管轄する警察署長が出所後の所在確認を実施するとともに、必要に応じてその者の同意を得て面談を実施するなどして、再犯防止に向けた取組を実施しているところでございます。

黒岩委員 十三歳未満に対する性犯罪に限るということですが、では、全ての性犯罪に占める十三歳未満の子供に対する性犯罪の割合というのはどのくらいですか。

名執政府参考人 これは毎年とっているものではありませんけれども、平成二十七年版の犯罪白書にある特別調査によりますと、全国で性犯罪を含む事件で懲役刑の有罪判決を受け、平成二十年七月一日から二十一年の六月三十日までの一年間に裁判が確定した千七百九十一人を対象とした調査がございます。

 そのうち、被害者に十三歳未満を含む者は二百八人、一一・七%という数字がございます。

黒岩委員 そうですね。私のちょっと統計と違うんですけれども、平成二十六年で、強姦で六・二%、強制わいせつで一三・五%ですから、恐らく大体一割だろうなと。逆に言うと、九割は十三歳以上なんですよ。

 その中には、当然、再犯を繰り返しているような、非常に再犯リスクの高い人も含まれているという中で、では、質問しますけれども、なぜ、十三歳未満の被害者、この性犯罪だけが今回の情報共有の対象になるのか、お聞かせ願えますか。

名執政府参考人 これは、委員御指摘のとおり、再犯防止プログラムと同様、平成十七年六月から実施している、子供を対象とする暴力的性犯罪に対して出所情報の警察への提供を、原則として被害者が十三歳未満の暴力的性犯罪を犯した受刑者に限って、行っております。

 この理由は、子供は犯罪の回復能力が低いこと、また、子供は特に心身に受けるダメージが大きいこと、また、保護者など地域に与える不安が大きいことから、その未然防止が特に求められるところ、その対策として、前歴者による再犯の防止を図るために出所後の動向を把握することが有効と考えられましたので、警察庁と協議の上、制度の対象を被害者が十三歳未満の受刑者とされたものでございます。

 ただ、被害者が十三歳未満である暴力的性犯罪以外でありましても、出所後に子供を対象とする暴力的性犯罪を犯す危険性が特に高いと判断されるとして警察から情報提供の要請があった受刑者についても、出所情報を提供することといたしております。

 この出所情報を警察に提供する制度の対象をどの程度まで拡大するかにつきましては、出所して社会に復帰しようとする者の個人情報を慎重に取り扱う必要がありますので、再犯防止のための必要性とプライバシーの保護等の双方の観点から慎重に検討してまいりたいと思っております。

黒岩委員 十三歳未満で、特段の要請があった者に対して出所情報を共有する。これは年間でどのくらいですか。

名執政府参考人 ちょっと性犯罪だけに限ったものではないんですが、凶悪重大犯罪等に係る出所時情報提供制度として、殺人、強盗等の重大犯罪、またこれらの犯罪に結びつきやすいと考えられる侵入窃盗、薬物犯罪等に係る受刑者についてということで、毎月、釈放予定日、入所日、出所事由等の情報を提供しているところですが、性犯罪を含むということで申し上げると、三十年五月三十一日までに情報提供した対象者数は延べ約三十二万一千人でございました。

黒岩委員 ちょっと数が多過ぎちゃって、性犯罪がどのくらいなのか。だから、十三歳未満の情報共有する数と、特別に、この人は子供に対して性犯罪を起こしそうだという蓋然性のある人と、これは後でちょっと教えてください、これはどのくらいの幅なのか。

 それで、恐らく、性犯罪の防止という意味だったら、子供に限らず、まあ確かにおっしゃるとおり、子供自身にもやはり心身の影響というのは大きいと思うし、地域住民の不安も大きい、私もそう思います。ただ、性犯罪の防止という意味だったら、これは、すべからく性犯罪を犯した人の情報が共有されれば、防止にはつながると思います。

 そこまでしない理由は、今出ていたんですけれども、私、二点聞きますけれども、プライバシー、人権の問題がどのくらいなのか、あとは、例えば警察として人的体制がそこまで築けないのか、この二点についてちょっとお聞かせいただけますか。

 一点目は、じゃ、矯正局かな、二点目は警察の方で。

名執政府参考人 御指摘のとおり、やはり受刑していたという情報は、個人の社会復帰にとりましては非常にプライバシー、また秘匿性を保ちたいと思う情報だと思いますので、そこは、社会の再犯防止に対する影響と、それから個人の社会復帰のためのプライバシーの秘匿というものの両方の兼ね合いにおいて考えるべきものだと考えております。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの出所者情報提供制度の対象の拡大につきましては、先ほど法務省からも御答弁ございましたように、刑事施設を出所して社会に復帰しようとする者の個人情報は慎重に扱う必要があるため、再犯防止のための必要性とプライバシー保護等の双方の観点から慎重に検討されるべきものであるというふうに私どもも考えております。(黒岩委員「人的体制は」と呼ぶ)人的体制と申しますよりは、先ほど申しましたような観点であろうかと思っておるところでございます。

黒岩委員 わかりました。

 人的体制ではなく、これはやはり、プライバシー保護と犯罪の防止、この考量って多分、この後も大変な議論が必要だと思うんですよね。非常にこれは微妙なところだと思っています。

 この情報を共有した場合、これは先ほど答弁をいただきましたけれども、警察は一週間以内にその帰住先を外形的に確認する。多分、表札とかで確認して、そこが確認された場合、まあ確認されない場合もありますが、この時点でもう行方不明の場合。

 確認されたら、その出所者に直接連絡をとって面談を求める。面談の同意が得られれば、年最低二回会って、今後のさまざまな防止策について、その出所者とも議論しながら、五年間、性犯罪での再犯がなければこの登録から解除されるという中で、お聞きしたいのが、では、いきなり行方不明になった場合、ないしは面談の同意を得られなかった場合、こういう場合は警察としてどう対処しているんですか。

 まあ、行方不明になった場合はもうどうしようもないか。そういうケースがどのくらいあるんですかね。そのケースがどのくらいあるかということをお答えください。同意しない場合も、どのくらいあるんですか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 まず、所在不明になるケースでございますけれども、平成三十年十二月末現在、再犯防止措置対象者として登録している者の数が八百九十三名おりまして、そのうち八百六十七名につきましては、担当する都道府県警察においてその所在が確認されているところでございます。ところが、二十六名につきましては、所在確認中又は所在不明者という形になっているところでございます。

 再犯防止措置対象者が所在不明となった場合につきましては、当該対象者の元住居を管轄する警察本部長からの通知を受けまして、警察庁におきまして、警察本部長に対して当該所在不明の対象者に係る情報収集を指示するなどして所在確認に努めているところでございまして、今後も、所在確認に努めて、制度の適切な運用を進めてまいりたいと考えております。

 また、面談を求めた場合に同意が得られなかった場合でございますけれども、この面談につきましては任意のものでございますので、同意が得られなかった場合に面談を強要するということはございません。(黒岩委員「どのくらいいますか、同意が得られない場合」と呼ぶ)数字については把握してございません。

黒岩委員 では、後でそれをちょっと調べて、その八百何十人のうち、面談ができない人を教えてください。

 今回の、情報共有しても今言ったように行方不明になったりとか同意できなかった場合というのは、今言ったように、手当てができないというケースになるんですよね。

 そこで、では、新たな防止策として位置情報の確認、GPSとかを使って位置情報確認制度、これは、まず我が国については今どういう状況になっているのか。これが制度があるとは承知していませんけれども。

 また、そのほか、世界の主要国での位置情報確認制度、電子監視措置というそうですけれども、この電子監視措置は他の主要国ではどのような対応になっているのか、お聞かせください。

西山政府参考人 法務総合研究所におきまして、平成二十二年度に、七カ国、フランス、ドイツ、スウェーデン、英国、カナダ、米国及び韓国、この七カ国におけるGPS等による位置情報確認制度の運用に関する調査を実施しております。

 この調査結果によりますと、これらいずれの国も何らかの方法で位置情報確認制度を導入しており、自由刑の代替措置、保釈者、仮釈放者などに対する監督措置のほか、一部の国におきましては、性犯罪者等危険な犯罪者の再犯防止のための保安処分などとして用いられていることがわかっております。

 位置情報確認の方法としましては、無線電波を利用した在宅状況の確認や、GPSを利用した現在位置の把握などが行われているところでございます。

 今委員からも御指摘ございましたとおり、我が国はこの制度については採用していないところでございます。GPS端末による監視システムにつきましては、対象者の日常生活上の行動が常に監視される状況下に置かれ、プライバシー権などとの関係において人権上の大きな制約が生じることとなることから、我が国で導入するに当たっては慎重な検討が必要であるというふうに認識はしております。

黒岩委員 先ほど申し上げたとおり、プライバシー保護との本当に慎重な検討、再犯防止とのまさに利益の比較考量になると思うんです。

 ただ、人権意識も高い米英独仏やスウェーデンといった国でも、お隣韓国でもこれを採用しているわけですから、紹介事例はいただいたんですけれども、ただ、それは要旨が書かれているだけで、人権との兼ね合いの問題とか、そういったことのちょっと深掘りが、まだこの報告書を見ただけでは私も理解が得られるまでにいっていないので、ここは本当にもう少し突き詰めて、過度な位置情報ということを私は言っているわけじゃないんだけれども、今言った警察との情報共有でも漏れが出てくるわけですし、それも十三歳未満とある程度縛りをかけている。これも重要なことだと思っていますよ。全てが全てと言っているわけじゃない。ただ、そんな中でどこまで対応し切れるのかということについては、これは常に継続的に議論してほしいと思っております。研究していただきたいと思っています。

 最後に、薬物療法、これも世界で行われている。イメージとしては女性ホルモンの投与とかですね。これも、我が国において、人権意識からするとなかなか難しいなと思って、私自身はそういう認識を持っておるんですけれども。

 ここでお聞きしたいんですが、これも他の先進国ではどのような対応をしているのか、端的にお答えいただけますか。

名執政府参考人 なかなか網羅的に把握をしているものではありませんけれども、既に裁判所の命令等により病院等で薬物療法をしている諸外国はあると聞いております。

 そこでは、使用する薬剤にばらつきがあるほか、薬剤の効能、副作用による専門家の意見がさまざまであって、また、何より、刑事施設における薬物療法というのは、刑事施設出所後も継続的に薬物療法を受ける環境が整備されて初めて有意義となると考えられていること、また、諸外国におきましても、この薬物療法と認知行動療法等に基づくプログラムが併用して行われているものと承知しております。

黒岩委員 これも、私、きのうの段階でも法務省に聞いたところ、世界の採用状況については法総研が調べていないということだったんですね。

 これは調査室の方に確認したら、平成十八年三月、今局長もこれに基づいて答弁されていますね、その文言を使っていますので。だから、ちゃんとプログラムで研究しているわけですよ。これはアメリカとイギリスとカナダですね。アメリカとカナダはこの薬物療法を用いている。

 そのほか、私も調べたんですけれども、いろいろな論文が出ていますので、具体的には、そのほか、アメリカ、ドイツ、フランス、カナダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、みんな用いていますね。特に北欧が非常に多い。

 今から約百年前、デンマークが初めて、これは薬物療法とはちょっと違うんですけれども、非常に前時代的な外科的去勢を合法化した。ただ、これは今の時代、とてもということで、それでも、一九七三年、昭和四十八年まで続いていました。その後、デンマークが化学療法ということになったんですけれども。

 だから、そのように、我々からすると、かなり、正直言って意外な感じがしますけれども、ヨーロッパの先進国、ほとんど、イギリスを除けば、全てこの薬物療法をやっているんですよ。

 ただ、もちろん人権に対しては物すごい配慮をしていて、幾つもの条件とかかぶせています。もちろん、本人の同意なしでなんというのはどこもありませんし。

 例えば、ドイツの場合なんかですと幾つもの要件がかかっていて、例えば、今、副作用だとか、あとは、継続的に生理的機能がどこまで衰えるのかという事前説明の徹底した告知、特に対象者に精神的な障害やまた異常な性的衝動と関連した苦痛の防止になるとか、又はそれによって減少させるものとか、本人にとってもメリットがあるという場合に限るとか、かなりかぶせてやっているわけですよね。

 確かに、性的欲求を減退させるわけですから、効果は相当あると思いますよ。効果ばらつきというのが法務省のに出ていますけれども、他の国を見ていれば、これは効果抜群ですよ。抜群であるけれども、それは相当身体的についてもデメリットがあるわけですから、ここは慎重にならなきゃいけない。

 そこで、ちょっと時間もないので、これは委員の皆様にも、世界ではもうほとんどの国でやっている、いろいろなことをかぶせているわけですよ、だから、平成十八年のこれは報告書ですけれども、それから十三年たっていますので、更にもっと具体的なものを示していただきたい。今、できない理由については報告書にも書いてありますけれども、環境整備だとかいろいろなものはありますが、これは対応によっては、私が見る限りはほとんどできるものだと思っています。

 最後になりますけれども、本当は位置情報や薬物療法にすごい時間をかけたかったんですが、時間もなくなったので。

 これはある程度中長期的な課題でありますが、最後、保護局長、これは通告していないんですけれどもお聞きしますけれども、やはり、さはさりながら、今現状でできるところで、特に、仮釈放で保護観察措置を受けた人というのはいろいろな手当てを保護局からされますので、この人たちはまだ再犯についてはリスクがそれなりに低減されている。ただ、要するに満期釈放者、この人たちは何の手当てもできませんから、やはり再犯のリスクが高いわけですよ。この人たちに対して、でき得る範囲で今後、保護局としてどういった対応をとっていけるのか、この点について端的にお答えください。

葉梨委員長 今福保護局長、簡潔にお願いします。

今福政府参考人 お答えいたします。

 まずもって、受刑中から、どこに帰るか、どこにどういう環境のもとで整えて帰させるか、そういった生活環境の調整というものをやっておりますけれども、これを強力に推し進めることによりまして、仮釈放という形でできるだけ社会にソフトランディングさせる、それに取り組むことがまず第一と考えておりますが、しかし、やはりどうしても仮釈放できない人が生じる。

 その満期釈放になる人に対する対策としましては、まずその次には、先ほど申し上げました生活環境の調整を充実強化して、そして、出てきたときに、わずかに私ども、更生緊急保護という措置を持っておりますので、できるだけそちらにつなげて、適切な医療、福祉、そういったものにつなげられるように本人をしむけていくといいましょうか、気持ちを向けていく、そういうような調整も含めて強めていきたい、まずそれを考えております。

黒岩委員 終わります。

 魂の殺人と言われる性犯罪、これを何としても防止していくために、また法務省の皆様とも、委員の皆様とも、知恵を出し合っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で黒岩宇洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 国民民主党の源馬謙太郎です。きょうもよろしくお願いします。

 きのう、登戸で大変痛ましい事件が起きまして、小さなお子さんが亡くなったということがありました。また、その同じ日に児童虐待防止法案の採決がありまして、子供を取り巻くこうした事件が起こらないようにという観点からきょうは質問させていただきたいと思っていたんですが、きょうの内容が今の黒岩委員の御質問と私とほとんどかぶってしまいましたので、ちょっと重複するところはあると思いますが、お願いをしたいと思います。

 性犯罪、特に子供が被害者となる性犯罪について伺っていきたいと思います。

 いろいろなこうした事件があるわけですけれども、例えば、二〇一四年十一月に発生した、奈良県で発生した女児誘拐殺害事件がありまして、これでは、逮捕された被疑者が実は過去に子供に対する性犯罪によって服役していた経歴を有していた、こういうことがあって、非常に大きな社会的な関心を集めました。

 性犯罪というと、どうしても再犯率が高いというイメージもやはりありますし、刑務所に入っている間にしっかりと更生させることができたのか、こういった社会的問題意識、それから、子供を持つ親御さんからしたら、どこにそういう経歴がある人がいるかわからないという、非常に関心の高い問題だと思います。

 それらについてきょう伺っていきたいんですが、まず最初に警察庁に、直近三年でいいものですから、十三歳未満の子供が犯罪の被害者となった刑法犯の認知件数を教えていただきたいと思います。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 過去三年間におきます十三歳未満の子供が被害者となった刑法犯の認知件数でございますけれども、平成二十八年は一万七千二百五十二件、平成二十九年は一万五千七百二十一件、平成三十年は一万二千九百四十七件となっております。

源馬委員 十三歳未満の子供が犯罪被害者となった件数を今御紹介いただきましたが、このうち、性犯罪にかかわる件数の推移を教えていただければと思います。

小田部政府参考人 過去三年間におきます十三歳未満の子供が被害者となった刑法犯認知件数のうち、強制性交等及び強制わいせつの認知件数につきましては、それぞれ、強制性交等につきましては、平成二十九年七月の刑法改正前の強姦等も含めまして、平成二十八年が六十九件、平成二十九年が九十一件、平成三十年が百五十一件で、強制わいせつにつきましては、平成二十八年が八百九十三件、平成二十九年が九百五十三件、平成三十年が七百七十三件となっております。

源馬委員 両方合わせると非常に多い数だということがわかると思います。単純に計算をしても、一日三件から四件の性犯罪の被害が子供に対して起きているということがわかると思います。

 子供に対して性犯罪を犯した人、犯人ですが、どうしてもまだまだ、犯罪というよりも、何となく、いたずらという意識も、子供に対する強姦ですとか強制わいせつ自体が実は重犯罪なのに、子供に対していたずらしたみたいなイメージも持たれているという、非常に心配する状況があると思います。

 後ほど紹介しますが、実際にそうした事件を起こした犯人が後にインタビューに答えている記事があるわけですけれども、なかなか再犯をとめられない、先ほど黒岩委員の御質問にもありました。そういう観点から、まず、また警察庁に、十三歳未満の子供に対して性犯罪を犯した、先ほど御紹介いただいた件数のうち、その犯した者が再犯に及ぶ割合というのはどのぐらいなのか、教えていただきたいと思います。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの割合につきましては、そういった統計をとっておらないことからお答えいたしかねるところでございますが、平成三十年中に十三歳未満の子供を対象とする強制性交等又は強制わいせつの性犯罪で検挙された者が、被害者の年齢は判明しないわけなんですけれども、強制性交等又は強制わいせつの性犯罪の前歴を有しているもの、この割合につきましては二一・三%となっております。

源馬委員 ありがとうございます。

 先ほど少し申し上げた記事をちょっと紹介したいんですが、二〇一七年の週刊新潮なんですけれども、ここに、未成年者、十三歳未満の小さな女の子を誘拐して一緒に沖縄に行き、そして性的な行為も行ったという人がおりまして、この人は、実名、顔出しでインタビューに答えています。このケースの場合は、その女の子に対して性的な行為を行ったんだけれども、それは法廷の中でも自白をしたんですが、結局、未成年者誘拐と恐喝だけで有罪判決が出て、二年六カ月で出所をしたということです。

 その後も、彼はこのインタビューの中で、もちろん、自分は再犯をしないように気をつけていると。出所後に職につくときも、なるべく自分の性的対象の子供とはかかわりのない職場を選ぼうとしてきた。例えば、自分は小学校一年生から六年生までの女の子に興味があると思っていたので、保育園のお迎えの仕事についた。ついてみたら、その保育園児たちの入浴シーンなんかを見ると、もうどうしても興奮が抑えられない、なので仕事をやめた。それで、車椅子の方を押すような介護の仕事についたんだけれども、通り道に小学校があると、どうしても自分の衝動を抑え切れないと。

 ですから、今は、今というか、これは二〇一七年の記事なので大分前ですが、その犯行から当時でもう七年たっていたんだけれども、みずから部屋に引きこもって、このインタビューをした人によると、ごみもうずたかく積もっていて、三、四年風呂に入っていないというようなことだったそうなんです。なぜ三、四年風呂に入っていないかというと、こういう姿なら自分に子供も寄ってこないだろうということで自分の衝動を抑えるしかないと。一度は、自分が所持している児童ポルノなんかも持って警察に出頭して、逮捕してくれと言ったけれども、それでもだめだった、それぐらいやらないとなかなか抑え切れない衝動があるということを証言しています。

 非常に怖いことなんですが、先ほど黒岩委員の御質問にもあったとおり、やはりもう治療というのが必要なのかもしれません。

 ここまで重度じゃなくても、そうした、自分の意思じゃなくても再犯を起こしてしまうかもしれないというこの状況を防ぐために、先ほどもお話が出ましたが、性犯罪再犯防止指導のプログラムを導入していると承知をしておりますが、具体的なそのプログラムの中身、そして、そのプログラムを受けた人がその影響はどうだったのか、その受けた方たちの再犯率というのはどうなっているのかを教えていただきたいと思います。

名執政府参考人 先ほど黒岩委員の御質問にお答えしたとおりの内容ではございますけれども、今の御趣旨を踏まえまして、十三歳未満の子供に対して性犯罪を犯した者に特化したプログラムということについて申し上げますと、こういう特化したプログラムとしては刑務所の中で実施はしておりません。個々の受刑者の再犯リスク、問題性の程度に応じて、高密度、中密度、低密度の三種類の密度別のプログラムを実施しておりまして、これは、カナダ、イギリス、アメリカ等の諸外国においても、罪種や対象者の年齢等に応じた異なるプログラムというものは実施しておりません。その者の問題性の程度という観点から分類を行って、行っているところでございます。

 この効果につきましても、先ほど御紹介いたしました平成二十四年十二月の、プログラムの受講の有無による再犯状況の分析結果をまとめておりますけれども、このうち、被害者が十三歳未満の者で処遇プログラムを受講した者の推定再犯率に限って申しますと、これは二一・〇%、受講していない者の推定再犯率は二六・九%でありまして、処遇プログラムを受講した者の方が推定再犯率が低いということが認められております。

源馬委員 ありがとうございます。

 もちろん、人によっていろいろ状況も違うわけですし、一概に、これを全て再犯防止プログラムで防いでいくというのは難しいとは思うんですが、例えば、ことしの二月に、小学生の女児に対する強制わいせつ致傷罪などに問われた男が長崎地裁で懲役七年の実刑判決を受けた。女子中学生二人を殺害して服役した後、強制わいせつ事件を起こして再び服役し、再犯防止プログラムを受けていたんですが、事件を起こしたのは出所してからわずか四カ月後のことだったという事件もありました。

 今御答弁いただいたように、難しいとは思うんですが、この再犯防止プログラムだけで効果がないんじゃないかという声に対して、大臣がどうお考えになっているか。

 それから、先ほど黒岩委員のお話もありましたが、諸外国が行っているような、もう少し踏み込んだ、プライバシーもあるけれども、例えばGPSをつけるとか、メーガン法までいかなくても、一般の人が、子供がいる親が自分たちの地域にそういう危険な人がいないかどうかというところまで調べることができるところまではいかないにしても、例えば、全ての情報が警察機関に共有をされているようにするとか、そういった踏み込んだ対策も一方で必要ではないかというふうに思います。

 プライバシーの観点とバランスをとりながらだと思いますが、その点について、大臣の御所感を二点、お伺いしたいと思います。

山下国務大臣 性犯罪再犯防止指導につきましては、先ほど局長が若干御紹介させていただきましたとおり、平成二十四年に公表した効果検証結果において一定の再犯防止効果が認められたところではございますが、他方で、この検証結果を受けて設置した外部有識者における検討会においては、刑期の問題等から全ての対象者に必ずしも必要なプログラムが実施できている状況にないということ、あるいは、出所後相当の期間を経過してから再犯に及ぶ場合もあり、より長期的かつ継続的な働きかけが必要となることなどが指摘されております。

 また、委員御指摘のとおり、残念ながら、出所後それほど間を置かずに再犯に及んだという例もございまして、これはやはり、個々の受刑者の特性に応じた指導をより幅広く実施できる体制の構築、あるいは指導者の専門性の向上等が必要であると私も感じているところでございます。

 法務省では、こうした指摘等も踏まえ、現段階においても、対象者の個々の問題性に更に焦点を当てた指導を行うことができるよう、受講対象者への幅広い実施と指導担当者育成策の充実に取り組んできたところでもございますが、今後とも、プログラムの効果検証を進めて、指導内容、方法の見直し等も進めるなどして、施設収容中から出所後まで一貫性のある効果的な指導、支援の実施を更に図ってまいりたいと考えております。

 御指摘のGPS、あるいは、いわゆるメーガン法等に言われる、性犯罪者が刑事施設から出所する際に個人情報を警察などに登録させるというふうな施策に関しましては、やはりプライバシーに対する不当な制約ということも指摘がある中で、慎重に検討をする必要があると考えておりますが、まず現段階におきましては、先ほど申し上げたプログラムの効果、これをしっかり検証して、更に検討を重ねるということで性犯罪者の再犯防止を図っていきたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございました。終わります。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、森田俊和君。

森田委員 国民民主党の森田でございます。

 前回、特別養子縁組の件で質問をさせていただきまして、法案自体は審議は終わったわけでございますけれども、そのときの、いろいろと私なりの調査の中での出会いがございまして、引き続き、またその問題について、周辺のことを含めながら質問をさせていただきたいなというふうに考えております。

 山下法務大臣、またよろしくお願いをいたします。それから、きょうは、大口厚労副大臣、それから中村文科政務官にもお越しをいただいておりますので、また引き続きよろしくお願いをいたします。

 この前いらっしゃらなかった方もいらっしゃるので、ざっとそこの私の調査の背景をお話しさせていただきますと、たまたま、二十弱ぐらいある、特別養子縁組のあっせん機関が私の住まいである熊谷市にございまして、さめじまボンディングクリニックという産婦人科の先生なんですけれども、この先生が協力機関と一緒に立ち上げている連絡協議会の中で、五年間で百四十七件のケースを相談で扱ってこられたという背景がございまして、そのうちで、全体のうちの四割ぐらいが未成年であった、そのうち三割が中高生であったということで、若年の妊婦さんが非常に多く相談に来られている、そういう背景があるという中での質問だということで御理解をいただきたいなというふうに思っております。

 まず、厚労の方の質問をさせていただきたいと思うんですけれども、その先生が、あるいはその関係者の方がおっしゃっているのは、やはり自分のうちで産んじゃうこと、自宅で産んでしまうことのリスクというのは非常に大きい、あるいは、どこかの、例えばショッピングセンターのトイレとか駅のどこかでとか、そういうケースがありますけれども、そういうふうにさせてしまうと、母体と赤ちゃんと両方の命を危険にさらしてしまう、こういうリスクが非常に高くなるんだというお話がございました。ですから、なるべく早い段階で産婦人科にアプローチをしてもらいたいんだ、これをどういうふうにやっていくかというのが先生としても非常に大きな課題だというふうにおっしゃっておりました。

 それで、まずは、例えば、産婦人科に行って、ただで妊娠の検査ができるとか妊娠の相談ができるとか、こういうことができるといいんじゃないかなと思うんですけれども、こういったことを含めて、支援のあり方についてまずお答えいただきたいなと思います。

大口副大臣 森田委員にお答えいたします。

 今、鮫島先生のところの例も挙げていただきましたけれども、若年妊婦や経済的に困窮する妊婦など、妊娠に悩む妊婦を早期に発見し、相談や必要な支援につなげることは大変重要だと考えております。

 厚生労働省といたしましては、こうした妊娠に悩む妊婦を支援するため、都道府県等が設置している、全国七十三カ所、女性健康支援センターというのがございまして、ここで相談支援を行っています。

 また、今年度の予算におきまして、妊婦に早期の産科の受診を促し関係機関等に確実につなげるため、新たに、産科への同行支援を行う際にかかる人件費や、あるいは妊娠判定料を含む産科受診にかかる費用の補助を行っています。初回、まず妊娠について判定をする、そして、それはまた妊婦健診につながっていくということでございます。

 いずれにしましても、予期せぬ妊娠に悩む妊婦を支援するため、都道府県等における女性健康支援センターの設置を促すとともに、積極的な支援の実施がされるよう取組を促進してまいります。

森田委員 ありがとうございました。

 先ほど女性健康支援センター七十三カ所というお話を出していただきまして、それは非常に大事な取組ではないかなと思っております。

 一方で、やはり、支援センターを経由して行くというのが、まず、二カ所行くことになるというと、つらい思いを抱えている方が余り何カ所も、どこ行く、ここ行くというふうにやらない方がいいというのは多分あるんじゃないかなと思います。その支援の形はやっていただくとしても、直で行ったときにもきちんと産婦人科の方でも受入れ体制がある、例えば無料で受けられるよという枠組みをぜひ御用意いただくと、よりリスクが少ない体制というものができるのではないかなというふうに思っております。

 それで、次は文科の方の質問に移りますけれども、中高生が妊娠をしたということで一番のリスクというのが、説教されて閉じこもっちゃうというリスクが高いというお話がございました。

 まず、学校関係者への研修などの取組について伺えればと思います。

丸山政府参考人 お答えをいたします。

 委員の御指摘のとおり、文科省では、平成三十年の三月に、妊娠した生徒の学業の継続に向けた考え方や当該生徒に対する具体的な支援のあり方などを示した通知を全国の教育委員会等に対して発出をしたところでございます。この通知の内容が徹底をされるよう、全国の生徒指導担当者を対象とする会議等におきまして通知の内容の周知を行うとともに、各学校の教職員に対してもその内容が周知徹底されるように求めているということでございます。

 また、研修の関係でございますが、独立行政法人の教職員支援機構におきまして、各都道府県において生徒指導を担当する、各地域の中核となる指導主事や教員を対象にして生徒指導指導者養成研修を実施しておりまして、委員の方から御指摘のあった現場のカウンセラーや教職員に対しての研修については、当該研修で指導者養成を行いますので、その研修を受けた方々が地元に帰っていただいて、教育委員会等における主催事業になる研修の講師役をやっていただく、そういった形でこの通知の内容等についても周知を図ってきているということでございます。

 これらの取組を通じまして、各学校において妊娠した生徒が学業を継続できるような環境が整備されるように、引き続き努めてまいりたいというふうに考えております。

森田委員 ありがとうございました。

 これは私の偏見かもしれませんが、生徒指導の先生というと、何か体育の先生とかが、おまえらわかっているんだろうというふうに言っている先生という今イメージがあるんですけれども、もちろん生徒指導担当の先生がわかってくださっているというのも大事なことだと思いますが、なかなか、例えば妊娠で困っている生徒が、そういう生徒指導でいつもスカートの長さがどうのとかとやっている先生のところに行けるかどうかというと、非常に難しいんじゃないかなという思いがございます。

 できれば、例えば、保健室の養護の先生だとか、スクールカウンセラーの方だとか、あるいは管理職の先生とか、やはり、いつもの生徒指導とはちょっと違った方がちゃんと受皿として学校にいるんだよという形をいかにつくり出せるかというのが大事な視点かなというふうに思っておりますので、ぜひ、そういう視点からも、やはりそんなに表に、社会的に認知されているような問題ではないと思いますので、かなり個人情報にもかかわることですし、非常に細かなケアが必要なことですから、その担当の方と顔を合わせて何かちゃんとお伝えするような機会というものをぜひ持っていただけるとありがたいなというふうに思っております。

 それから、同様に、若い妊婦さんが相談に行ったりすると、産婦人科の先生とか助産師さんから叱られる、説教される、それで来なくなっちゃって、やはり自宅で出産になっちゃうみたいな、そういうこともあるらしいですが、産婦人科の関係者の方へのこういった研修などというのはどうなっているんでしょうか。

迫井政府参考人 御答弁申し上げます。

 予期せぬ妊娠の可能性がある女性に対して医療従事者が適切に対応できるように、産婦人科医あるいは助産師等の産婦人科関係者に対し研修等を実施するということは非常に重要であるという認識を持っております。

 まず、産婦人科の専門医につきましては、日本産科婦人科学会が実施をいたします専門研修プログラムの中で、予期せぬ妊娠への対応でございますとか予防に関する研修も盛り込まれておるものと承知をいたしております。

 さらに、医師免許取得直後の二年間で実施をいたします医師臨床研修におきまして、患者の苦痛でありますとか不安を軽減する基本的価値観を醸成するとともに、来年度、令和二年度から予定されております当該研修の見直しでは、産婦人科を必修の科目として位置づけておりまして、その中で、全ての医師が性教育等の研修を受講いたしまして、適切な避妊法等について指導できるよう、臨床研修の研修内容を充実させる予定となっております。

 また、看護師につきましては、保健師助産師看護師国家試験出題基準におきまして、看護師が具備すべき基本的な知識及び技能について出題する範囲の具体的な項目といたしまして、リプロダクティブヘルスに関する倫理が示されております。

 それから、助産師につきましては、家族計画に関する基礎的知識、それから各受胎調節法の特徴とか効果、指導における留意点等を示しているなど、各学校、養成所において適切に研修等を実施していただいているものと承知をいたしておりまして、予期せぬ妊娠の可能性がある女性が安心して医療機関を受診して、医療従事者が適切に対応できるよう、今後とも研修等の充実に取り組んでまいりたいと考えております。

森田委員 ありがとうございます。

 先ほども申し上げたとおり、非常に細かな配慮が必要な分野だと思いますので、実際に携わっていらっしゃる方のお話を聞くとか、現場に一緒に向き合って対処するとか、そういう研修も含めてぜひ対処していただければありがたいなと思います。

 それから、学校の延長のような話なんですけれども、やはり、この前もお話をさせていただいたんですけれども、妊娠をして例えばおなかが大きくなってくると、退学させるというケースはなかったという調査結果でしたけれども、何となく誘導があったり、周りからの流れで、自主退学といいながら、何となく強要されてしまったみたいな、そういうのもあると思うんです。

 ぜひ、例えばおなかが大きくなって、学校側もちょっとほかの生徒と一緒には置いておけないななんというときに、一時、学び続けながら例えば妊婦さんとしてのケアが受けられたり、あるいは、場合によっては、退院後は乳児といろいろな形で向き合いながらどういうふうに生活していくかなんというケアも受けながら学び続けて、かつ、その期間が終わったらまた復学をして卒業できるような、そういう施設なり枠組みがあるといいんじゃないかなと思うんですけれども、このあたり、どうなっているか、お答えいただければと思います。

中村大臣政務官 お答え申し上げます。

 高等学校の生徒が妊娠した場合には、関係者間で十分に話合いを行い、母体の保護を最優先としつつ、教育上必要な配慮を行うべきものと考えております。

 先ほど審議官から答弁しましたとおり、平成三十年三月に全国の高等学校に対して通知を発出しておりますけれども、妊娠した生徒が引き続き学業を継続するために、当該生徒及び保護者と話し合い、当該生徒の状況やニーズも踏まえながら、先生御指摘のとおり、養護教諭やスクールカウンセラー等も含めた十分な支援が必要であることを示しているところであります。

 休学に至った場合に学べる体制ということで、なかなか文部科学省としてそれを全国に整備するということは困難ではありますけれども、今、全国の教育委員会と連携している中学生を受け入れるフリースクールが三百カ所程度ありますので、そういった情報提供を行うなどして、生徒や保護者などと連携をしながら、学べる体制の支援をしてまいりたいと思っております。

森田委員 ありがとうございました。

 先ほどフリースクールのお話も出ましたけれども、単位の取得上配慮をしていただくとか、卒業証書を取れないと、例えば高卒の資格が取れずにまた貧困のルートに乗っていってしまうなんということもあると思いますので、ぜひこちらの方も取組を進めていっていただければと思います。

 それから、あっせん機関についてのことでお伺いをさせていただきたいと思いますが、まず、海外との縁組の制限についてどのようになっているか、お聞かせいただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 養子縁組あっせん法第三条になりますけれども、養子縁組のあっせんにつきまして、可能な限り日本国内において児童が養育されることとなるよう行わなければならないとする国内優先原則を定めているところでございます。

 また、この法律に基づきます指針におきまして、国際的な養子縁組につきましては、児童相談所や他の民間あっせん機関と連携をして日本国内在住の養親希望者を探すなど、日本国内における養子縁組の可能性を十分に模索をし、それでもなお日本国内での養子縁組が見込めない場合に限って認められるというふうに規定をしております。

 これらの定めに反する事業の運営がなされる場合には、民間あっせん機関に対して、許可をした都道府県によりまして必要な指導等が行われることになるということでございます。

森田委員 ありがとうございました。

 非常に、欧米に行くと黄色人種の赤ちゃんが人気があって、聞くところによると五百万ぐらいの、末端価格という言い方で私は説明を受けましたが、そういう金額も出ているということでございまして、非常にこのあたり、気を使って対応していただければと思います。

 また、先ほど来出ておりました児童性愛者等も場合によっては養親の候補者として出てくるケースがあると思うんですが、この排除をどういうふうに考えておられるか、御答弁ください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 養子縁組あっせん法におきましては、養親として適切ではない者への養子縁組のあっせんを防ぐという観点から、欠格事由を定めてございます。具体的には、児童福祉法や児童買春、児童ポルノ禁止法などの規定により罰金の刑に処せられるなどした者ですとか、児童虐待など児童の福祉に関し著しく不適当な行為をした者に対して、養子縁組のあっせんを行うことを禁止をしてございます。

 加えまして、この養子縁組あっせん法に関して厚労省で定めております指針におきましては、民間あっせん機関に対して、養親希望者の適性を丁寧に確認をしていただくということを求めているところでございます。具体的には、縁組のあっせんを行う前に、養親希望者及びその全ての同居家族の方と面会をいただくということ、それとともに、少なくとも一回は養親希望者の御家庭を訪問していただくということで、その家庭状況をしっかり把握をして、養親としての適切な養育ができることを確認しなければいけないというふうに規定をしております。

 これらの定めに反する事業の運営がなされた場合には、許可をした都道府県により必要な指導等が行われることとなりますし、また、法律の規定に違反して欠格事由に該当するような養親希望者にあっせんを行ったような場合には、許可をした都道府県によりまして改善命令といった措置を行うということになるということでございます。

森田委員 副大臣に伺いたいと思うんですが、こういった、あっせんにかかわる公費負担ですとか、あとは指導監査の適切なあり方についてどのようにお考えか、御答弁いただければと思います。

大口副大臣 費用負担につきましては、平成二十八年十二月にこれは議員立法で成立しました養子縁組あっせん法におきまして、民間あっせん機関は、養子縁組のあっせんに関する業務に要する費用を養親希望者などから徴収することができる、これは政令で定める手数料でありますが、徴収することができるとした上で、国や地方公共団体は、民間あっせん機関を支援するために必要な財政上の措置等を講ずることができるとされております。

 民間あっせん機関の人件費については、民間あっせん機関が養親希望者などから徴収することができる手数料に含まれております。一方、民間あっせん機関を通じて行われる養子縁組のあっせんにおいても、子供の最善の利益に資する観点から取組が行われる必要があるということで、厚生労働省といたしまして、民間あっせん機関の職員が研修を受講する費用の補助や第三者評価を受審する費用の補助、また、児童相談所等の関係機関と連携して養親子の支援に取り組む民間あっせん機関について、体制構築を支援するモデル事業を行う場合の補助を実施しております。

 これらの取組を通じて、民間あっせん機関の安定的な運営が確保されるようにしていきたいと考えています。

 また、民間あっせん機関に対する指導等につきましては、養子縁組あっせん法におきまして、民間あっせん機関は、あっせんの契約の締結から、試験養育の開始、養子縁組の成否の確定、成立後半年の、これはフォローをしていただくわけですけれども、その状況に至るまで、案件ごとに都道府県知事に報告をする義務があり、都道府県知事は、業務の適正な運営を確保するために必要な指導助言をすることができるとされております。さらに、都道府県知事は、立入検査や改善命令をとることができ、この命令に違反すれば許可の取消しを行うことができるとされております。

 引き続き、養子縁組あっせん法の着実な施行により、養子縁組あっせんの適正化や質の向上に取り組んでまいりたいと考えています。

森田委員 ありがとうございました。

 最後、大臣に、出自記録の……

葉梨委員長 質疑時間が終了しておりますので、次回よろしく。

森田委員 では、これで終わりにしたいと思います。済みません、大臣。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で森田俊和君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 私は、外国人の入管施設への収容問題についてお聞きをいたします。

 まず、法務省に確認しますが、全国の入管施設の外国人の被収容者数は、二〇一六年以降、何人になっているか。そのうち、収容期間六カ月以上一年未満、一年以上一年六カ月未満、一年六カ月以上の被収容者の割合は、それぞれ何名でしょうか。

佐々木政府参考人 お答えをいたします。

 年末現在の収容者数で、平成二十五年が九百十四人、平成二十六年九百三十二人、平成二十七年一千三人、平成二十八年一千百三十三人、平成二十九年一千三百五十一人となっております。

 後半の御下問ですが、平成三十年十二月末現在において、全国の地方出入国在留管理官署の収容施設に収容されていた被収容者総数千二百四十六人のうち、退去強制令書に基づく収容期間が六月以上の者は六百八十一人、全体に占める割合は五四・七%となっていました。また、千二百四十六人のうち一年以上の者は四百九十一人、割合は三九・四%。さらに、同じく千二百四十六人のうち一年半以上の被収容者は三百十三人、割合は二五・一%でした。

藤野委員 通告では、二〇一八年度分の前の二〇一六年と二〇一七年も、同じように、六カ月、一年、そして一年六カ月以上というようにお聞きしていたと思うんですが。

佐々木政府参考人 申しわけありません。ちょっと手元にございません。

藤野委員 通告はしていたので、ちょっと後でまた確認していただきたいと思うんですが、ざっくりした、法務省からいただいた資料でのこちらの計算だと、二〇一七年は、一年六カ月以上の方は一一・一%なんですね。二〇一六年は二・九%。細かい数字は違うかもしれませんが、大体三%前後。二〇一七年一〇%前後、そして二〇一八年は、今お答えがあったように二五%ということで、つまり、何が言いたいかといいますと、要するに、一年六カ月以上という極めて長い期間収容されている人が二五%、つまり四人に一人に達しているということであります。

 これは私は異常事態だと思うんですね。幾ら退去強制手続に乗っているとはいえ、一年六カ月以上も収容されているという方が四人に一人という状況であります。

 このもとで何が起きているかということなんですが、これも法務省に確認したいと思うんですが、施設における隔離という処分、処分といいますかやり方、あるいは戒具を利用する。さまざまな形で、押さえ込むために、そういう道具を利用するというのはあると思うんですが、これの利用回数、二〇一六年から二〇一八年まで、それぞれどうなっているでしょうか。

佐々木政府参考人 過去五年の御下問の数について御報告をいたします。

 まず、隔離件数でございますけれども、平成二十六年二百二件、二十七年百七十五件、二十八年百八十五件、二十九年二百九十五件、平成三十年につきましては、概数ではありますけれども、四百七件となっています。

 それからもう一つ、戒具の使用件数でございますけれども、平成二十六年五十五件、二十七年十七件、平成二十八年十六件、平成二十九年が三十三件、平成三十年につきまして、概数で四十五件となっています。

藤野委員 長期収容がふえることによってやはりストレスも高まってくるということで、いろいろな問題が起きます。起きて、それを制圧するために、あるいは解決するために、対処するために、隔離をしたり、あるいは戒具による制圧というのがふえてきているというわけですね。二〇一八年は、前年に比べて、隔離数は二〇一七年二百九十五件から四百七件、戒具利用率は二〇一七年の三十三件から四十五件ということであります。

 もう一点、法務省にお聞きしたいんですが、この間のいわゆる死亡された方の数、そして、うち自殺の数、それぞれ教えてください。

佐々木政府参考人 平成二十六年から平成三十年までの間に収容施設の中でお亡くなりになられた方が六件です。そのうち自殺に当たりますものは、平成三十年の一件です。

藤野委員 今ちょっと短目の期間をとって言われたんですけれども、私がいただいているのは、平成十九年ですから、二〇〇七年からの資料をいただいております。これの数字でいくとどうでしょう。

佐々木政府参考人 平成十九年から平成三十年までの死亡事案の総数、十四件です。そのうち自殺に当たりますものが、平成二十年の一件、平成二十一年の一件、平成二十二年の一件、そして先ほど御報告しました平成三十年の一件です。

藤野委員 今四件ということですけれども、それ以外に、平成二十二年、つまり二〇一〇年二月九日は、非定型縊死なんですね。ですから、非定型ですけれども、これも縊死ですから、これは当然自殺なわけです。つまり五件になる。

 しかも、これは十四件死亡されたということですが、そのうち八件が二十代から四十代、本来壮健な時期なわけですね。それが収容中に八人も亡くなっているということで、この間、長期収容が大きくなってくるもとで、さまざまな問題がうかがい知れ、実態はまだまだ闇の中ですけれども、こうした数字からも出てきているというふうに思います。

 配付資料の一を見ていただきたいんですが、これは横浜市の港町診療所というところの山村淳平医師が東京入管に提出された意見書であります。その一部、一部というか一つなんですね。幾つも出されているんですけれども、一つだけ紹介いたします。

 これは十四カ月にわたって収容されている二十代のトルコの男性であります。書いてありますように、不眠、食欲不振、頭痛、体の痛み、腹痛、体の震え、いらいら感などの症状があらわれています。黄色いところですけれども、これらの症状は収容による心因反応として見ていいですと。収容が長くなれば、症状が更に悪化する可能性は高いでしょうと。

 そして、右に行っていただきますと、これは人体図の略図でありまして、この方は自殺未遂を図ったということで、その傷の箇所であります。

 下の方に行きますと、こう書いてあるんですね。収容自体が彼を精神的に追い詰めています。収容自体が病気の原因、そして悪化させていることから、入管内での治療はまず不可能です。それよりも仮放免させることが当面のよい治療と考えますということであります。

 法務省にお聞きしたいんですが、この意見書に加えて、山村医師というのはもう何回も出されているんですが、一般論としてお聞きするんですけれども、やはり収容が長くなってくるということ自体が、健康な被収容者にとってもいろいろな病気を引き起こしたりするし、さらにはそれを悪化させることがある、こういう認識はお持ちでしょうか。

佐々木政府参考人 被収容者によって、収容中に体調に不調を来される、その要因は、今の御指摘の点も含めましてさまざまと認識をしております。ですからこそ、長期収容が病状の悪化につながることのないように、医療ですとか、あとカウンセリングの充実などを図るようにしています。

藤野委員 しかし、実態は極めて深刻になっております。

 配付資料の二を見ていただきたいんですけれども、これはチョラク・メメットさんという被収容者本人が情報公開請求によって求めた資料で、開示された資料であります。東京入管診療室の記録であります。

 つまり、これは、先ほどの、今資料一でお示ししたのは収容所の外にいらっしゃるお医者さんの診察なんですが、配付資料二は収容所の中にいらっしゃる医師の診察結果であります。

 見ていただきますと、一月二十九日、ことしの一月二十九日というふうにあります。

 Sとありますのは、サブジェクティブの略で、主観的情報という意味でありますが、S、頭が全体的に痛い。電流が流されている感じ。もう何カ月も。誰かとしゃべると興奮して我慢できない。いらいらしてしまう。壁などに頭をぶつけている。人の見ていないところで。本当に死にたい気持ちになる。もう来て一年過ぎ。母もそういう病気を持っていた。父やおじなど、いなくなった人に向かって二、三時間話しかけている。

 下の方に行きますと、Aとあるんですね。Aというのはアセスメント、評価であります。「抑うつ気分、希死念慮あり、本人曰く自傷に至っているとのこと。」、もう死にたいという願望があるというわけですね。

 次の資料は、同じ年の二月十二日、一カ月後の診察。一カ月後といいますか、二月の診察です。ここは、たくさん書いてありますけれども、読んでもよくわからない。

 その真ん中あたりにOとあると思うんですね。Oというのはオブジェクティブ、客観的情報という意味だそうですけれども、Oのところを見ますと、「会話はまとまりに欠ける。言葉の問題もあるが、つじつまが合わない話の流れが多く、何を言いたいかつかみがたい。」。

 最後にPとありまして、プランの意味です、治療計画ですが、一番下ですね。「ただ、根本的にここの環境がきつい、ということ自体は私には変えられない、とも伝えた。」、これは医師の方の言葉であります。

 もう一枚めくっていただきまして、ことしの三月の診察結果では更に悪化しておりまして、S、主観的情報のところは、「めまいと頭痛がある。脳が痛い。死んじゃう。本当に死んじゃう。腕が痺れる。足も痺れる。息できない。早く病院に連れて行って!」という言葉が記されております。

 Oのオブジェクティブ、客観的情報のところは、「車いすに乗っている。過換気様の呼吸を続けて、あえぐように話をする。うめき声のような泣き声をあげる。ほとんど、意味のある発語は認めない。」「車いすから何度も落ちそうになる。悲嘆に暮れている。」こういうことなんですね。

 つまり、これは、ことしの一月から三月にかけて、もうどんどん悪化している。一月のところは、まだ言っていることがよく、よくといいますか、わかるんです。読めばわかる、深刻ですけれども。二月になると、聞き取った人も、ここに書いているように、まとまりに欠けるとか、つじつまが合わないということになっている。三月になったら、もう叫びなんですね、ほとんど。車椅子から落ちそうになる、悲嘆に暮れているというふうに客観的にも評価されている。診療所内でもこういう状況になっている。

 法務省にお聞きしたいんですが、先ほど、診療所外の医師の意見書でも、収容そのものが病気の原因であり、悪化させているとあったわけですね。この配付資料二の収容所内の医師の診察記録でも、例えば、二月にも書いてありますよね、「根本的にここの環境がきつい、ということ自体は私には変えられない、」と。私はこれは同じことだと思うんです、収容自体が原因だということと。

 ですから、収容自体が病気の原因だということで一致しているわけですね、外も内も、医師の診察というのは。そうであれば、やはりもう、こういう方は収容ではなくて仮放免していくということが必要になるんじゃないですか。

佐々木政府参考人 この具体的な方の仮放免の適否ということについては申し上げられないのですけれども、まさに御指摘のとおり、健康上の問題で治療が必要な場合あるいは収容に耐えられない健康状態である場合には、人道上の観点から、仮放免制度を弾力的に運用することにより、収容の長期化をできるだけ回避するように、柔軟に対応を行っているところでございます。

藤野委員 いや、行っていない例として挙げているんですよ、まさに。この方、チョラク・メメットさんは、これほどの、収容所内の医師の診断でもこうなっているにもかかわらず、仮放免されていないから言っているわけです。

 大臣、これは対応が必要じゃないですか。

山下国務大臣 まず、仮放免につきましては、委員配付の資料にもございますけれども、被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の……(藤野委員「それは次に聞きますから」と呼ぶ)そうですか。そういった指示等に基づいて弾力的な活用を行っているところでございます。

 ただ、他方で、退去強制手続を行うに当たっては、その者の送還を確実に実施するとともに、その者の本邦における在留活動を禁止する目的から、身柄を収容して行うことが原則であるということでございます。

 そもそも、この入管収容施設は、刑事施設と異なって、被収容者が退去強制令書に従い出国することですぐさま収容状態を解かれるという性質の施設でございますので、長期収容は送還の促進によって解消すべきものであろうというふうに考えております。

藤野委員 全くお答えになっていないわけですね。

 やはり、これほど、今おっしゃったように、収容に耐えられない場合は仮放免、柔軟とおっしゃるわけだけれども、されていないから取り上げているわけですね。ですから、収容に耐えられないわけです、もうこれは。

 実際、二十代から四十代の方が、十五人中八人も収容中に亡くなっている。あり得ないことですよ。取り返しがつかないんです、命が失われたら。ですから、仮放免すべきだと。実際、こういう診断を診療所内でも行っているわけだから、やるべきだということなんですよ。まともに答えてください、そういう意味では。同じ答えになると思います、次に行きますけれども、本当に命にもかかわる問題だということであります。

 配付資料の三、今大臣が言ったものなんですけれども、これは、仮放免の運用についての新しい方針、昨年の二月二十八日の通達であります。

 この配付資料の右側を見ていただきますと、こういうことが新たに出されました。「仮放免を許可することが適当とは認められない者は、送還の見込みが立たない者であっても収容に耐え難い傷病者でない限り、原則、送還が可能となるまで収容を継続し送還に努める。」とあります。

 これは、やはりおかしいと思うんですね。送還の見込みが立たない者であっても送還が可能となるまで収容を継続する。これは何なんだということなんですね。送還の見込みが立たないと皆さん認めておきながら、長期収容する。

 これは結局、収容していれば、いつかは追い詰められて、いつかは根負けして、いつかは帰国するんじゃないかという、何の根拠もないやり方なんです。このもとで長期収容というのは、先ほど言ったように、四人に一人、一年六カ月以上というのが二五%に達しているという状況であります。

 私も、退去強制手続の過程で収容が必要な局面がある、そういうケースがある、これは否定しません。大臣、そういうことはあると思うんです。

 しかし、それが人権侵害に及ぶような、あるいは、六カ月、一年、一年六カ月と、まさに皆さんが認める送還の見込みが立たない人まで更に収容を続ける。これは絶対、制度を超えているだろうということなんです。そのもとで、病気や症状の悪化、人権侵害というのが既に生まれているわけです。

 送還の見込みが立たないと皆さんがおっしゃるには、一個一個理由があると思うんですね。その個別の事情を無視して全件収容してしまう、初めから全件収容してしまう。そして、その中から、長期収容によって、落ちていって、帰国に応じさせていく。こういうやり方が私はもう破綻しているというふうに思うんです。

 一年六カ月以上が四人に一人ですよ。やはりこの全件収容というやり方そのものを見直していく、そして人権を侵害するような退去の迫り方はやめるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

山下国務大臣 この配付資料につきまして、この指示の冒頭にありますように、送還の見込みが立たない被収容者について、一律に収容を継続することを指示したものではなくて、送還の見込みが立たない収容者のうち、仮放免を許可することが適当でない者とそうでない者を分けて考えまして、この仮放免を許可することが適当でない者を除いて、収容期間にとらわれず仮放免を活用するとした指示でございます。これによって、個別の事案に応じた柔軟な対応が可能となっておるということでございます。

 他方で、委員御指摘の文脈というのは、「仮放免を許可することが適当とは認められない者」というふうに書いてございまして、これは、例えば、殺人、強盗など反社会的で重大な罪に罰せられた者などについては、その放免は社会にとって決して好ましいものではなく、一刻も早い送還を期すべきであり、速やかな送還に努めているところであるというところでございます。

 また、全件収容について御指摘がございましたけれども、先ほど申し上げましたように、これは、退去強制手続については全件収容が原則であるということと、この収容の性質といいますのは、退去強制令書に従い出国することですぐさま収容状態が解かれるという性質のものでございます。

 その上で、現状においても、個々の状況を踏まえ、例えば、自発的に出頭した者に対しては、在宅のまま違反調査を進めたり、仮放免制度を弾力的に運用するなどして、人権に配慮した柔軟な対応を行っているところでございまして、御指摘のような全件収容の見直しということは現段階では考えていないということでございます。

 被収容者に対しては、今後とも人権に配慮した取扱いを図ってまいりたいと考えております。

藤野委員 全く実態を、大臣、踏まえていないというふうに思うんです。

 もう一点、聞きたいと思うんです。

 子供がいる非正規滞在の外国人を入管当局が拘束して施設に収容する際に、その子供を親元から分離して、児童相談所等に保護を依頼することがあります。

 法務省にお聞きしますが、保護者の収容を理由に入管当局が児童相談所に保護を依頼した子供の人数というのは何人でしょうか。

佐々木政府参考人 今の御下問のケース、年間数件程度と認識をしています。

 各年の正確な依頼件数につきましては、先日報道がございましたこともありまして、現在、各地方出入国在留管理局に事実関係の調査を指示し、精査中でございます。

藤野委員 これは事前のレクでも出てこなかったんですが、今のは、少なくとも年間数件というのは、入管が依頼した子供さんの数であります。それ以外にも、外国人の子供を、警察段階で児相に保護を依頼する子供もいるという説明を受けましたけれども、この数というのは把握されているんでしょうか。

佐々木政府参考人 退去強制手続に際しまして、個々の事案における家族関係等の正確な把握には努めておりますけれども、お尋ねのような形で、ほかの機関の取扱いにつきまして正確な件数を把握することは難しく、統計としてはございません。

藤野委員 いや、難しいとおっしゃいますが、やはり、法務省の指示を見ても、子供がいる場合は監護者はなるべく収容しないとか、通達が出されているわけですよね。自分たちのところについては年間数件というふうに把握しているんだけれども、警察を通じて児相に入ってくる分については把握していないというわけですよ。そうなると全体像がわからない。

 子供にとっては何の責任もないと思うんです、親御さんが何らかの資格を失うということはあったにしろ。しかし、それが分離される、引き離されるという事態が実際に起きているけれども、政府のどの機関も、聞いても、どの機関もつかんでいないというわけです。これはやはり私は問題だと思うんですね。一方で、一年六カ月も子供から引き離して収容している。

 もう一点、何が起きているか。面会にすら、子供が行っても会わせないという事態が起きております。

 配付資料の四を見ていただきたいんですけれども、これは左側が、昨年の七月に出された「家族面会の積極的な実施について」という指示であります。大臣が東京入管を視察された際、なお一層積極的な実施に向けて適切に取り計らうよう指示がなされたということで、この指示は、私、重要だと思うんです。ただ、これが貫徹されていないわけであります。

 右側が、ことしの三月二十九日、同じ文書の改正版といいますか、真ん中にありますけれども、親が内縁関係であるため父子関係が戸籍や出生証明に反映されていない場合や、配偶者の実子である場合などは、一部官署において家族面会を行っていないと聞き及んでいますと。

 つまり、大臣が去年の七月にちゃんと積極的にやるようにと指示を出したにもかかわらず、ことしの三月二十九日の段階でもやっていない官署があったということなんですね。

 やっていないということはどういうことかというと、例えば子供、一歳十一カ月ぐらいの女の子を連れていったにもかかわらず、板のある、一般的な、ガラスというんですかね、強化ガラスのあるところでしか会えないわけです。しかし、すぐ近くに、隣に親子面会所というのがあって、そこは仕切りもなくて、スキンシップできるわけですね。ところが、それが使われていないわけです。

 ことしの四月に入っても、この三月二十九日の通達が出た後になっても、実際、子供を連れていったのに親子面会できず、ガラス越しのだったというふうにも聞いております。

 法務省にお聞きしますが、これは何でそういう状態になっているのか。

佐々木政府参考人 お答えをいたします。

 今御紹介をいただきました通達を重ねて出していることもございまして、家族面会、いわば仕切りのない部屋での面会につきましては、積極的に、原則、家族の要望があれば仕切りのない部屋で面会をさせているところでございますけれども、被収容者本人が希望されない場合には、その部屋での家族面会はいたしておりません。

藤野委員 これもやはり裁量行政の弊害だと思うんです。

 お母さんと娘さんが行っている、にもかかわらず会えていないということが続いているわけですね。それは何でなのかといったら、本人に会わせていないと。これは本当にそうなのかという話なんですよ。法務省の裁量のもとでそういう事態が起きている。やはりこれは法治国家と言えるのかという話ですよね、皆さんが出した通達にもかかわらず。

 もう一点、配付資料の五も紹介したいんですが、これは配偶者にかかわるものなんです。

 これは、配偶者に、既に配偶者と法務省も認めているにもかかわらず、その右の方を見ていただきますと、その配偶者である収容者の方に退去強制令書を出して、あなたは出されております、もう帰らないといけませんと。で、その黄色いところですけれども、「しかし、あなたが退去強制に応じ、速やかに出国するのであれば、あなたと現配偶者との婚姻関係が今後も継続されることを前提とした上で、出国前に在留資格認定証明書の交付申請を行い、本邦からの出国後概ね一年が経過した時点で、この証明書の交付を受け、」「再び日本への入国が認められる可能性があります。」というんですね。要するに、皆さん自身が配偶者だと認めているにもかかわらず、一旦出ていけというわけです。

 お聞きしますけれども、これは簡潔にお答えいただきたいんですが、この文書に応じて出国した人は何人で、再入国が認められたのは何人ですか。

佐々木政府参考人 今御紹介いただきました紙を出してこの取扱いを始めたのは昨年からでございまして、それで戻ってこられた、再入国をされた方が出始めているところでございますが、まだ統計としてとってはおりません。

藤野委員 いや、私は、何でこういうことをやるのかと。わざわざ、もう一回入れてあげますよと言っているわけですよね。もう一回入れてあげて、その場合はもう認めてあげますよと。にもかかわらず、一回出ていけというわけです。

 こういう生木を裂くようなことをなぜやる必要があるのかが全く理解できない。そういう実態があるのなら、出国前にそういう証明書を交付すればいいと思うんですね。

 大臣、時間の関係でちょっとお聞きしますけれども、これはやはり、収容する必要がどうしてもあるんだ、どうしても退去してもらわなきゃいけないんだという場合、それは収容の必要があるかもしれません。しかし、今はもう事実上全件収容ですよね。そのもとでこういう問題が起きている。

 これは、何よりもまず長期収容にわたってしまって、帰ろうにも帰れない人も多いですから、長期収容にわたってしまって、さまざまな人権侵害を生んでいるということがあります。そして、本人だけでなく、今見たように、子供さんが親と引き離されてしまうという事態も生んでいる。さらに、配偶者からも引き離される、配偶者もそういう被害を生んでいる。結局、全件収容ということが、そういう個別の事情を捨象して行われているがゆえに、そういう事態を生んでいるというわけなんです。ですから、こういう全件収容そのものを見直していく。

 新しい制度のもとで、外国人の受入れを更に拡大しようと、皆さん、されているわけですよね。今でもこういうことが起きているわけです。今後拡大していくとなれば、更に大きな問題が起きてくる。

 皆さんが入り口を広げて、その入り口から入ってきてくださいと言うわけですね。けれども、出口は全く同じ。一律に扱われていて、この出口に関する入管法の規定は制定以降変わっておりません。大もとの規定がつくられたのは戦前ですよ。

 ですから、そういうこの入管法の規定、退去強制のあり方、全件収容のあり方、これはやはり見直していくべきだ。

 大臣、最後に答弁をお願いします。

葉梨委員長 山下法務大臣、簡潔にお願いします。

山下国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、全件収容が原則であり、また、この収容の性質というのは、指示に従い出国することですぐさま収容状態が解かれるという性質でございます。そうしたことから、全件収容の見直しということは考えておりませんが、なお、入管当局におきましても、先ほど委員御指摘の指示であるとか通達等によりまして、あるいは仮放免制度を弾力的に運用するなどの人権に配慮した柔軟な対応を行っているところでございまして、今後とも人権に配慮した取扱いを図ってまいりたいと考えております。

藤野委員 終わりますが、この問題は引き続き追及していきます。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 本日は、事前に配付をさせていただきましたこの新聞の記事を中心にして、まずはお聞きをしたいと思っています。

 その前提といたしまして、連れ去り、外務省で言うならば、監護権者の双方の同意を得ないで一方が連れ去った不法な連れ去りに関しては諸外国では犯罪にしているという国もあるかと確認させていただいていますが、もう一度、その点について説明をいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきまして外国の法制度を網羅的に把握しているわけではございませんが、参議院の事務局の方で平成二十四年に作成されました資料によりますと、不法な子の奪取について、例えば、アメリカでは、罰金若しくは三年以下の禁錮又はその併科がされ、イギリスでは、略式手続による場合は六カ月以下の拘禁若しくは罰金又はその併科がされ、正式手続による場合は七年以下の拘禁に処せられ、あるいはフランスでは、一年以下の拘禁又は一万五千ユーロ以下の罰金が科されるといった例が紹介されております。

串田委員 連れ去りということに対して、今のような犯罪が成立をし、逮捕状が出され、場合によっては国際指名手配というようなことも行われているかと聞いております。

 ハーグ条約というのは、このような監護権を侵害するものに対して、原状回復をする、その原状回復をする前提としては、国内では犯罪になっている、しかし、国外に連れ去ってしまったときはどうしようもないので、ハーグ条約という条約があるということであります。

 これは、基本は監護権を守るということだと思うんです。それで、諸外国はこれを犯罪にしているということなんですが、これは日本という国は違うんですか、大臣、お聞きします。

山下国務大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のハーグ条約というのは、正式名称は国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約ということでございまして、これは、子の連れ去りを犯罪とすることを加盟国に義務づけているものではございません。このハーグ条約は、国境を越えて子の連れ去り等があった場合に、子を常居所地国に返還することを目的として民事上の側面に関する規律を定めるものでございまして、刑事罰が存在することを前提とするものではないものと認識しております。

 諸外国において子の連れ去りを犯罪としている趣旨については、一概にお答えすることは困難でございます。我が国における子の連れ去りについての犯罪の成否というのは、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄でございまして、これもまた、一概にお答えすることは適当ではないと考えております。

串田委員 その今の答弁に関して、私も、基本的には同じ考えなんです。必ずしも刑事犯罪にすればいいというものではないと思うんですね。

 ただ、民事的にも、原状に回復をするということ自体はやはり一番大事なことなんではないかなと。民法の改正をして、相互に協議をするというのも、片方が連れ去ってしまうというような、協議ができないような状況をなるべく避けようという意味で民法の改正がなされているわけでございますので、そういう意味では、連れ去り自体が問題であるということを、これは国としても明確に示していく必要があるんだと思うんです。

 かつて、日本の妻が逮捕状が出されている状況でアメリカから子供を連れ去ったときに、アメリカ人が日本で子供を連れ戻そうとして逮捕された事例がありました。これに関しては、アメリカの日本の大使館の前でデモが行われ、クローリー国務次官補ですか、これは妻の方が子供を奪取したのであって、国としてはできる限り父親を支援していきたいという、そういう声明も発表され、そして、二〇一〇年には、アメリカの下院で、四百十六対一ですか、圧倒的な数で、日本の今の連れ去り問題について非難決議が出されているというような状況であります。

 そういう状況の中で、今回この新聞記事というものが報道されているわけですけれども、要は、何が言いたいかといいますと、本来は、連れ去った方が諸外国では犯罪にしている例もあるし、原状回復というものが当たり前である。連れ去った側が本来は、いろいろな意味で、国としてもそれはやめなきゃいけないんだということを告知しなければいけないのに、この記事は、連れ戻そうとしているという前提のもとで、こういうような、要するに対象を限定している。

 これを見ると、今、日本のドラマでも出てこないような状況ですよ。髪の毛が短くて、真っ黒で、サングラスをかけて、真っ赤なシャツを着て、そして皆さんに取り押さえられている、そういう状況であります。

 しかし、連れ去られている人というのは、この霞が関にもたくさんいらっしゃいます。私のところにも相談に来られている方がいっぱいいます。そして、民間のサラリーマンもいれば、自由業者もいる。連れ去られるということは、これは職業に関係がないわけですよ。そして、本来は国が戻さなければいけないにもかかわらず、それを放置しているという状況の中で、我慢して我慢しているというのが今の現状じゃないですか。

 そして、もしかしたら、幼稚園に顔を見に行きたい、あるいは運動会に顔を出したいというような状況のときに、こんな記事を載せれば、子供と一緒に暮らしているお母さんのところに父親がやってきたら、こういうような状況の凶悪犯人みたいな形で一般世論は考えてしまうんじゃないですか。

 この訓練というのは八幡警察署が働きかけているということなんですが、どういう趣旨でこういう取り押さえられている人の人相というか服装を取り決めたのか、説明をお聞きしたいと思います。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の防犯訓練についてですけれども、御指摘の防犯訓練を行った京都府警察八幡警察署の管内におきましては、平成三十年中の児童相談所への児童虐待の通告件数が前年よりも大幅に増加し、また、通告の相当数をいわゆる面前DV等を要因とするものが占めているといったような情勢があったと聞いているところでございます。

 そして、京都府警察の八幡警察署におきましては、このような情勢を踏まえまして、児童虐待やDVの加害者である親がこども園に押しかけて子供を連れ去ろうとしているという想定で、子供の安全確保の観点から職員の対応訓練を実施したものと京都府警察から報告を受けております。

 そして、委員御指摘の訓練におきます加害者役の服装等につきましては、当該訓練の想定が、先ほど申しましたように、児童虐待やDVの加害者である親がこども園に押しかけ子供を連れ去ろうとしているという想定であったことから、訓練参加者等から加害者役が明確に区別できるようにしたものということで、父親について悪い印象を与えることを意図するものではなかったと京都府警察から報告を受けているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、警察庁といたしましては、御指摘のような点も踏まえつつ、事例の設定のあり方等については、個別の訓練に即して適切な防犯教室、防犯訓練が実施されるように都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

串田委員 ここにも児童虐待というのが出ていますけれども、御存じのように、児童虐待のデータというのが出ていまして、平成二十六年が最新という形で、今、もっとそれ以降というのはまだちょっと私の手元にはないんですが、児童虐待の数としては、父が三四・五%で、母が五二・四%。児童虐待の数字から見れば、母親の虐待の方が父親よりも上回っているわけですよ。

 これはもう歴年、二十六年までずっとそういう傾向が続いているわけで、それは、子供と長く接しているからというような事情もあるでしょうけれども、そこに父親だから虐待が多いというわけではないのに、この写真から見て、母親と暮らす子供を別居の父親が連れ去ろうとするというような決めつけの中で、父親役をこういうようないかにも悪人のような格好をさせ、そして取り押さえているのが女性だらけというような形で、女性と男性というような決めつけの中でこういうような訓練を行って、そしてそれを報道させているということ自体は、極めて、私、これは誤解を招くようなことになるのではないかと思うんですよ。

 こういうようなことをやれば、本来、ただ単に、静かな中で遠くから顔を見たいな、運動会に行きたいなと思っても、こういうような非常に凶悪な状況なんだというようなことで、運動会の連絡も教えなくなる、あるいは来させなくなるというような傾向もあるかと思うんですが、大臣、率直に、この訓練、大臣から見て適切だと思いますか。どうでしょう。

山下国務大臣 これは個別の報道に関するお尋ねでございまして、見ておられる方の印象はそれぞれだろうと思います。また、これは民間の機関で実施された訓練でございますので、法務大臣としては所感を述べることは差し控えさせていただきたいと考えます。

串田委員 そういう返答であっても、これは京都府警八幡署と府警少年課が指導し、そしてこの犯人役というのは警察官だったというような話も聞いているんですが、そうなんだろうなというふうにはちょっと思うんですけれども、主導しているんですよ、警察署が。

 そして、ここにDVと書いてありますけれども、現在、DVというもの、私は、共同親権を進めるということで、DVに対して安易に進められては困るという声も聞いているわけですが、私は、DVは絶対なくさなきゃいけないということは、これはもう前から申し上げているし、そういうことに対する防止策というのを今いろいろな国に調査をしていただいているというふうに私も認識しています。

 DVというのはなくさなきゃいけないということはもうはっきりしているんですが、一方で、非常にそういう意味ではDVという認定がされやすい状況にあることもこれは事実でして、警察署なりなんなりに相談に行くと、意見書というのが出してもらえる、相談を受けたという意見書を出してもらう。そうすると、その意見書がひとり歩きして、DVの被害者と加害者という形になってしまうんですよ。

 前に小野瀬民事局長も、前の質問のときに、ハーグ条約のところで、返還をしない理由の中で相談をしたというようなこともおっしゃった中で、相談だけで拒絶できるんですかということに関しては私はまだ回答をいただいていないんですが、相談することだけで不法行為というものを証明できるという判決を小野瀬民事局長も出されたことはないと思いますよ。そんなことで立証できるんだったら、もう弁護士は楽でしようがないですよ、被害者の方が相談すればそれが立証できたということになれば。しかし、DVに関してはそれがまかり通っちゃっているわけですよ。

 そういう中で、犯人役のような、こういうようなイメージをつくられる別居親というものが世の中にたくさんいる。だから、そこはしっかりと見きわめていくということが必要であるので、現在、諸外国への調査をしていただいていると私も認識しています。ですから、しっかりとDV対策はしていかなければいけないんですが、そういうようなことの苦しみを今別居親が感じているということもしっかりと認識をしていただかなければいけないと思うんです。

 警察庁の方にお聞きをしたいんですが、この新聞記事から、これは何が問題となっているのか。例えば、塀を乗り越えるというのはとんでもないことだと私も思うんですが、塀を乗り越えるから、さすまたでとめているのか、やってきたことがいけないから、さすまたでとめることになるのか、ここら辺、この記事からわからないと思うんですが、訓練の趣旨はどっちなんでしょうか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の訓練につきましては、児童虐待やDVの加害者である親がこども園に押しかけて児童虐待の被害者である子供を連れ去ろうとしているという想定でございまして、子供が連れ去られた場合、加害者により児童虐待が行われるおそれがあることから、子供の安全確保の観点から、緊急時における迅速な通報、警察官臨場までの園児の安全確保のための対応要領を確認することを狙いとしたものと報告を受けているところでございます。

 いずれにいたしましても、警察庁といたしましては、先ほども御答弁申しましたけれども、御指摘のような点も踏まえながら、事例の設定のあり方等につきましては、地域の犯罪情勢等を踏まえた適切な防犯教室、防犯訓練が実施されるように都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

串田委員 その限定を聞いた上でこれを見れば、わからなくはないんですよ。やってきてDVをするんだというんだったら、とめなきゃいけないというのはわかるんですけれども、この記事だけだと、それはわからないんじゃないんですか、そういう人だということが。母親と暮らす子供を別居の父親が連れ去ろうとするということを想定しているわけでしょう。ただそれだけが冒頭の中に出てきて、こういう背景があるということなので、この人間がDVを日ごろからしているんだという限定がこの記事から読み取れない中で、こういうような表現というのは極めて誤解を招くんだと私は思うんです。

 ですから、今回は、もう出てしまって、やってしまったことはしようがないんですが、そこら辺の配慮というのを今後していただかないと、こういうのをこれからも行っていくということであれば、私は極めて、これは国際問題にもなりますよ。今、離婚の中で国際結婚の離婚率も非常に高い中で、国内でも連れ去られていく人間に対して諸外国ではしっかりと連れ去りに対して対応している国から来ている人たちが、この日本ではそれに対して十分にまだなされていないという中では自分たちがすごく被害者だという思いの中で、こんな記事で書かれてしまっていて、これは国際問題に私はなると思うんです。

 個々の事例に関してはコメントを控えられるということですが、法務大臣として、これは人権問題としては法務委員会の所管だと思いますので、今後の訓練の仕方とか、こういうような設定の仕方も含めて、そこら辺の配慮を法務大臣としても表明していただきたいんですが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 民間の施設における、まあ、警察の指導ともこの報道には書いてありますけれども、いずれにせよ、民間施設における対応ということでございます。

 そういったことで、こういった訓練等につきましては、関係機関の適切な指導を行いながら、こういった子供の連れ去り等が防げるということを期待したいと考えております。

串田委員 今はちょっと具体的にはなかなか言えないかとは思いますけれども、やはりちょっと、写真を見たら、法務大臣もこれはちょっとやり過ぎだろうと思っていただいていると思いますよ。そういったようなところで、警察の方も、同じ訓練においてもちょっと配慮していただきたいなというふうに思います。

 そして、こういうようなことがあると、学校が、何の、DVでもなければそういう虐待でもないのにかかわらず、子供を連れ去った側が、学校側から運動会とかに対するいろいろな情報を教えないでくれと言われると、学校が教えなくなる、場合によっては行けなくなるというようなこともあるんですが、そういうような法律上の根拠というのはどこにあるんでしょうか。

丸山政府参考人 お答えをいたします。

 父母間での子供との面会などをめぐるトラブルによって、連れ去りなどの子供が巻き添えになる事案が発生していることを踏まえれば、学校としては、子供への安全上の配慮等の観点から、別居親への対応について慎重に行う必要があるというふうに認識をしております。

 面会交流の権利については、民法第七百六十六条に根拠がありますが、父母間の協議、家庭裁判所の審判等によって具体的な頻度、方法などが決まるまでは、別居している親は具体的な面会交流の実施を求めることはできないものと解されておりまして、例えば、一部の学校においては、学校行事への参加など、子供と面会をする場合には父母間の協議が調っていることなどを前提にするといった事例があると承知をいたしております。

 学校が、教育委員会や福祉部局等と連携をしながら、子供の安全を第一に考え、適切に対応していくということが重要であるというふうに考えております。

串田委員 時間になりましたので、この点は次の回にもう少し細かくやりたいと思うんですけれども、連れ去った側が諸外国では犯罪になるんだという国まであるぐらいですよ。その状況を、この運動会だとかそういったようなことに対してどういうふうに国が考えていかなきゃいけないのかということを今後はまた問いたいと思います。

 きょうは、どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 よろしくお願いします。

 きょうも性犯罪です。

 きょうは、ほかの委員の方も性犯罪のことを取り上げてくださいまして、多くの方に関心を持っていただいて、集中審議的になっていることに感謝を申し上げたいと思います。

 早速ですが、性犯罪の被害者の側から刑法を改正してほしいという声があり、現行法のままであったとしても、一つには、ずっとやってきている、警察のまず被害者の相談対応ですね、そこをもう少ししっかりやっていただきたい、門前払いはやめてほしい、捜査を尽くしていただきたいという声が一つあります。

 それから、前回ちょっと途中になってしまったんですが、裁判において裁判官が判決を出す、それが、裁判官が本当にその被害者の心情ですとか被害の実態というものを理解してくれているのか、裁判官の研修というものはもっと充実した方がいいんじゃないかと。

 その二つのことがやはり被害者側の要望というか意見としてございますので、まず裁判の研修の方から、きょうは伺いたいんです。

 前回、最後に、裁判官の研修というのは、判事補ですとか、職の立場が上がっていくにつれて行われるポスト研修があると。これは、この間の答弁を見ますと、何か二日から五日間ぐらい、遠い方は泊まりに来られて、やると。それと別に、分野別、テーマ別のものがあって、性犯罪に関する研修というのは、平成二十九年からテーマ別、分野別の中で四回やってきている、そういう御回答だったかなということで理解しているんですが、この二十九年以降四回というのは、では二十九年の前は何もしていなかったのか。この二十九年以降四回というものが果たして多いのか少ないのか。

 そのあたりについて、ちょっと最高裁の認識を伺っておきたいと思います。

安東最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 五月二十四日の答弁におきましては、近時の研修の実施状況といたしまして、平成二十九年以降のものにつき四回と簡単に御紹介させていただいたところでございまして、平成二十九年より前につきましては、裁判官を対象としました司法研修所の研究会におきまして、平成二十六年二月に性犯罪の被害者の心理に詳しい精神科医をお招きして、講演と質疑を実施しております。また、平成二十八年九月にも、性被害に遭った子供からの事情聴取に用いられる司法面接につきまして造詣の深い大学教授をお招きして、講演と意見交換を実施しているということでございます。

 それから、二点目のお尋ねがございました、平成二十九年以降の性犯罪に関する研修の回数につきましてですが、平成二十九年の刑法改正、あるいはその際の御議論、附帯決議も踏まえさせていただきまして、刑事分野の研修の中でも積極的に実施しているところでございます。

 刑事分野においてさまざまな課題がございます中で、いかなる頻度でこれを行うことが適切であるかということについては、一概にちょっと申し上げにくいところがございますけれども、今後も、性犯罪の研修について、充実した実施に努めていきたいと考えているところでございます。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

井出委員 昨年、私はイギリスに行きまして、元裁判官の話を聞いてきたときに、性犯罪の研修で、実際、模擬裁判の動画を使って、例えば被害者が泣き崩れて話ができなくなる、そういったときに、じゃ、どうやって審理を進めていくのかということを、その動画を一旦とめて裁判官で議論するといったような、そういう研修をやっていますよというようなお話があって、恐らく日本の、今お話があったようなものは基本的には座学だと思うんですね。ですから、その研修のやり方というものも工夫をしていっていただきたいんです。

 もう一つ伺いたいのは、裁判官の中でも、自分たちで自主的に、やはり今こういう問題が出てきて、国民感情も変わってきているからよく勉強しておこうと、そういう被害者の御著書を読まれたりされているような裁判官もいるとは思うんです。ただ、裁判に問われた事実、その前提となる被害者と被告の関係、そういったものが、どんなに、これはひどいなというものであったとしても、刑法の構成要件をきちっと満たしている、裁判官というのは、わかりやすく言っちゃえば、こいつはとんでもないやつだといっても、法律のルールに沿って、それを超えて感情だけで判決を出すということは到底許されない、そのことはそのとおりであろうかと思うんですけれども、ちょっと確認をしておきたいと思います。

安東最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、二点目の方についてですが、委員御指摘のとおりでございまして、裁判官は法律にのっとって判断するということでございますので、感情に基づいて判断する、感情のみに基づいて法律を離れて判断をするということはないものというふうに事務当局としても考えているところでございます。

 それから、一点目の動画の話でございますが、委員の御指摘にあったように、模擬裁判の動画を用いて性犯罪事件における裁判官の訴訟指揮のあり方を議論する、そういった研修を実施したことはございません。もっとも、いわゆる司法面接につきましては、大学教授からその目的や技法について御講演をいただいた際に、幼児が誘導や暗示を受けやすいことを具体的に示した動画、これを上映いただいたことはございます。これによって、裁判官の司法面接の意義等についての理解が一層深まったということはございました。

 また、座学かどうかということにつきましては、性犯罪に関するものではございませんが、模擬の公判前整理手続の動画を用いまして、それを用いて裁判官同士で公判準備の進行のあり方について共同研究をする、そういった形での研修も行っているところでございます。

井出委員 前段のお話ですね、感情で裁いてはいけないと。

 これは、少し申し上げておきたいのは、国民感情として許せない、世論で許せない、この判決というような判決が出たときに、その裁判官も、許せないという思いはあって、それでも法律のルールにのっとって判決を出している、そういう方もいらっしゃると思うんですね。そのことはきちっと言っておかなければいけないなと思います。

 裁判官の中には、個人的に、いや、この法律って本当にどうなんだろうかと思いながらも、この法律が今現状こうなっているんだから、これにのっとって判決を出す、そういう思いで判決を出されている方もいらっしゃるのではないかな、そういうことは言っておきたいと思います。

 今度は警察の方なんですが、しっかりと被害の相談に対応していただく。別に、逮捕するしない、立件して検察庁に送って、それが起訴するしないは、それはケース・バイ・ケースなんですが、捜査を尽くして、それがきちっと立件できるのであれば立件をする。できない、途中で断念せざるを得ないのであれば、それをきちっと説明していただきたいというのが私の一貫した思いであります。

 前回から聞いております被害届の状況で、前回、警察の、被害の届出に対して、明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものを除いてそれは受ける、例えば、実在しない人物が加害者である、あり得ない日時や場所で犯罪行為が行われた、こういった例外的なものは被害届を受理していない、そういうものを集計することは余り、性犯罪に係る施策の推進に資するとは考えにくいとおっしゃられて、私がその後その答弁に疑問を呈したら、実態把握をやらないという趣旨ではないんだ、実態も含めて被害者団体から話を伺って、施策を進めていきたいと考えていると。

 やらないという意味ではございませんと答弁をしてくださったんですけれども、でも、議事録を何回も何回も読むと、不受理が一体どうなっているのか。本当に、田中さんが答弁されているように、極めて例外的なケースしか不受理になっていないのか。

 この間、東京のSARCさんとか大阪のSACHICOさんに、ちょっとこういう答弁が最近出てきているんだと、それは両方とも電話でのやりとりだったんですけれども、正直、唖然とされているんですよ。実態と違うんじゃないかということをおっしゃっておりました。

 私は、実態把握をするということが、田中さんの答弁で、適正にやっている、現場の警察官は一人一人適正にやっていると。ただ、本当にそれが適正なのか、一度実態を把握していただく。その上で、少なくとも、こういうことに対してはこう対応しよう、こういうケースもあるよというような、誰が対応してもきちっとある程度の対応ができるような、そういう仕組みをつくっていくということが大事じゃないかなと思います。

 そこで、やはり実態把握というものをやっていただきたいと思うんですが、そのことを、しつこいようですが、改めて伺います。

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

田中政府参考人 先日、五月二十四日の委員会で、被害申告の意思があるにもかかわらず被害届が不受理になる例外的なケースについて、その数や割合を集計することは、性犯罪に係る施策の推進に資するとは考えにくいと御説明申し上げました。

 こうした例外的なケースに当たるものにつきましては、例えば、実在しない人物が加害者であるものや、あり得ない日時や場所で犯罪行為が行われたといったものなどを想定いたしておりまして、被害者支援団体の方々の御関心とは必ずしも一致しないのではないかと考えております。

 また、先日申し上げましたように、被害届の不受理の件数を把握するためには、結局、性犯罪に関する全ての相談を精査することになってまいるわけでございますが、性犯罪に関する相談はさまざまな態様や経過をたどるものでありまして、個々の事案に関し、相談の時点において性犯罪の被害申告の意思があるか否かは必ずしも明確に判断できるものではなく、時の経過とともに変化することもあり、被害を届け出る意思があるにもかかわらず受理に至らなかったケースの件数や割合を把握することは極めて複雑な作業となり、たとえ期間を区切り、一つの都道府県警察に限定したとしても極めて困難であるため、このような困難な調査を、都道府県警察で捜査活動に当たっている職員の手をとめて実施することは考えていないところであります。

 しかしながら、一方、被害者支援団体におきましては、警察に対して相談がなされなかったケースも含めまして、個別の事例に関するさまざまな被害者の方の思い、心情、感じ方などについても把握されていることから、こうした団体の方々の御意見を伺うことは有益であると認識をいたしておりまして、警察といたしましては、被害者支援団体の方々から、被害届の受理に関し、具体例を含めて御意見等を伺うなどして実態把握を行いまして、性犯罪に関する相談に適切に対応してまいりたいと考えています。

井出委員 なかなか、統計的な分析というものはすると言っていただけないんですが、私も、数字もそうですけれども、数字以上に、個々のケースというものも調べてみなきゃいけないなと思いますし、通常国会が終われば少し秋まで時間があるので、私、少しトライをしてみたいな、その上でまた議論をさせていただきたいなと思うんです。

 あともう一つ、これもさっきの裁判官の方と一緒で、過去の答弁で、やはり明らかに構成要件を満たさないようなものというものも受理しないものの中に例示として挙げていただいているんですが、それはやはり法律にのっとってという意味であれば当然であろうかと思いますし、処罰の対象、現行の法律の構成要件を満たさないものが明らかであれば受理しない。

 そこは法律にのっとって、それは警察官も、さっきの裁判官と一緒で、これはとんでもないやろうだな、この被害申告は、その犯人がいるとするならばとんでもないなと一緒になって怒ってくださる方もいると思うんですね。でも、構成要件を満たさなければ、それは捜査に入っていくことはできないと思うんですが、その点は私の理解でよろしいかどうか、聞いておきたいと思います。

田中政府参考人 当然、構成要件該当性につきましては、法律に則して判断をするということでございます。

井出委員 ですから、警察にはまず相談をしっかりやっていただきたい、相談対応ですね。裁判官には研修をしっかりやっていただきたい。それで、それぞれ被害者と同じ思いを、相談を受けたり裁判を進めている中で思ったとしても、やはり法律というものののりを越えて、何か感情で捜査を進めて逮捕したりとか、感情で判決を出すということは許されない。そうであるならば、やはり法律の議論というものをしていかなければいけないなと思うんです。

 大臣に伺いたいんですが、この問題は、被害者側は、やはり同意のない、自分たちが望んでいない、性的自由、自分たちの意思で自由にそういう性的行為を行うという決定権のない、そういうものに対する被害を訴えてこられて、何とかしてほしいという思いがあって、中には、その不同意を罰する刑法改正をやってほしいという方もいらっしゃいます。

 一方で、大臣が過去にも答弁されていますが、やはり人を処罰する際に明確な要件というものがなければ、それはなかなか難しいんですと。そのことは、裁判官や検察官、弁護士さんの中では、ある程度共通の理解なのかなと思うんです。

 この暴行、脅迫要件の議論というところは、私は、法曹関係の方も、被害者の方も、お互いの主張によく思いをいたして理解をしてもらって、その上で、じゃ、被害者の、本当に、保護法益と言われる性的自由の侵害、そういうものをなくしていこう、その一方で、明確性というものも必要だ、その両方を、お互いを理解していただいて、平行線の議論ではなくて、その中から答えを見つけていくような議論を私自身は望んでおりますし、まだこれから長く時間のかかる、先のことだと思うんですが、恐らく大臣が、法務省、検察側の、行政のトップでもあり、また政治家のトップとして、その議論の方向性に一石を投じる役割というのは大変大きいと思うんですね。

 その意味で、私は、両者がお互いに理解をして、その中で新しい答えをつくっていく、そういう議論をしてほしいと思いますが、大臣の考えを伺っておきたいと思います。

山下国務大臣 強制性交等罪、古くは強姦罪でございますが、これにおける暴行、脅迫要件につきましては、その暴行、脅迫要件の要否、あるいは暴行、脅迫要件の解釈それ自体、これについてさまざまな御意見があったというふうに考えております。

 また、暴行、脅迫要件については、これは解釈の問題として、平成二十四年の最高裁判決により、反抗を著しく困難ならしめる程度のものをいうとされた一方で、昭和三十三年の最高裁判決によって、単にその暴行、脅迫のみを取り上げて観察すればそのような程度には達しないと認められるものであっても、被害者の年齢、行為の時間、場所の四囲の環境その他具体的な事情と相まって、相手方の反抗を著しく困難ならしめるものであれば足りると解されており、検察当局においても、そのような諸般の事情においても立証に努めていたというふうに承知しているところでございます。

 ただ、こうした強制性交等罪の要件あるいはその運用等についてさまざまな意見があることを踏まえまして、平成二十九年刑法一部改正法の附則九条に基づく検討に当たっては、御指摘のような事案も含め、実情を調査した上でさまざまな御意見を伺うことが重要であるというふうに考えておりまして、まずはしっかりとした実態把握の上、充実した検討が行われるよう適切に対処してまいりたいと考えております。

井出委員 前回の法改正もそうですし、刑法を改正するとなれば、法制審があって改正に至るんですが、基本的には、やはり議論があるものはなかなか成案を得ない。賛否両論あったから落とした、大方の人が賛成したからここは法改正するというのが法制審一般的な、その後の法改正一般的な流れであろうかなと思うんです。

 その際に、前回の性犯罪の刑法改正というのは、松島法務大臣が、物を盗んだ人間と強姦をした人間、その量刑いかんということを御発言されて、ただ、その前にもそういう議論というものがあったのを受けての御発言でまた検討が始まったのかなと思うんですが、やはり今までの議論を踏まえて、その中で一つ方向性を、こういう方向で議論をしてみてはどうかと、別に結論を示すというところまで言うつもりはないんですけれども、そういうリーダーシップといいますか、一つの問題提起というものが一番できるお立場というのは、大臣以外、いないと思うんですね。

 その思いをちょっと、短くて結構なので、伺っておきたいと思います。

山下国務大臣 まず、先ほど最高裁判決の年度について、平成と申し上げましたが、昭和ということでございます。

 また、この強制性交等罪に関する議論につきましては、構成要件それ自体の問題であるのか、構成要件の解釈の問題であるのか、あるいは、その解釈に基づいた運用、主張、立証の問題であるのか、こういったものも分けて考える必要があると考えておりまして、その実態がそれぞれどういった問題に起因するのかということもしっかり分析した上で、この平成二十九年一部改正法の附則九条に基づく検討をしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

井出委員 主張、立証を尽くしたとしても、法律がルールであれば、それを乗り越えた立証はできない。裁判も、判決は下せない。

 そして、構成要件の解釈とか、構成要件というのは、一番はやはり、暴行、脅迫要件とか抗拒不能の解釈を適正にやってきて捜査や判決をやってきましたという御議論と、私が再三言ってきたんですけれども、性犯罪というものは、そもそも同意のないそういう行為が処罰の前提であって、その中で暴行、脅迫要件というものが出てきていて、私はもう何度もこの資料をずっと出してきているんですけれども、処罰対象と不同意の性交と保護法益、この保護法益が処罰の対象を射程としているというのはさんざん刑事局長との中で議論をしてきましたし、先日少し紹介をしたんですけれども、資料の三枚目になりますが、研究者の方も、刑法の強制性交等罪と、当事者や被害者支援者が何とかしてほしいと訴えている不同意性交というものはやはり枠が違って、この方も、はてなをつけていますけれども、それを明確化して、法律でできることと支援でできることと分けてやっていこうと。

 被害届の把握もそうなんですけれども、こういうものをやはりトライしていただきたいんですね。できるだけ、同意のない性交とはどういうことなのか、それを、処罰を捉える明確な要件はあるのか、そういうものが法律の中できちっと議論が整理されてくれば、被害届の受理の際にも役に立つでしょうし、裁判官の研修にも役に立つでしょうし。

 ですから、実態把握、今法務省がやっていただいております。それを私は、じゃ、引き続き賛否両論があったからと、今度は再改正に向けた議論ですから、前回以上に踏み込んだ検討をしていただいて、それでもかなわないということもあるかもしれませんが、前回以上に具体的な新しい形をつくるための議論を進めていただきたい。

 そのリーダー役はやはり大臣しかいないんですが、よろしくお願いを、最後に一言、頑張ってくださいと申し上げ、ちょっと答弁いただいて、終わりたいと思います。

葉梨委員長 では、短く。

山下国務大臣 はい。

 いずれにせよ、平成二十九年刑法一部改正法附則九条に基づいて、しっかりと対応してまいりたいというふうに思います。

井出委員 言葉はいつもどおりでしたけれども、目つきは力強かったので、目つきを信じたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

葉梨委員長 次に、内閣提出、参議院送付、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。山下法務大臣。

    ―――――――――――――

 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山下国務大臣 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、近時の司法書士制度及び土地家屋調査士制度を取り巻く状況の変化を踏まえ、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正しようとするものであり、その要点は、次のとおりであります。

 第一に、司法書士及び土地家屋調査士について、それぞれ、その専門職者としての使命を明らかにする規定を設けることとしております。

 第二に、司法書士及び土地家屋調査士に対する懲戒の手続に関する規定を見直すこととしております。具体的には、懲戒権者を法務局又は地方法務局の長から法務大臣に改め、戒告の処分をしようとする場合にも聴聞の手続を経ることとするとともに、懲戒処分について除斥期間を定める規定等を設けることとしております。

 第三に、司法書士法人及び土地家屋調査士法人について、社員が一人であっても法人を設立することを可能とする等の措置を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る三十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.