衆議院

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第21号 令和元年5月31日(金曜日)

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令和元年五月三十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 源馬謙太郎君 理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    安藤 高夫君

      井野 俊郎君    奥野 信亮君

      鬼木  誠君    門  博文君

      門山 宏哲君    上川 陽子君

      神山 佐市君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 茂樹君    高木  啓君

      中曽根康隆君    福山  守君

      古川  康君    古川 禎久君

      和田 義明君    黒岩 宇洋君

      初鹿 明博君    松田  功君

      松平 浩一君    山本和嘉子君

      森田 俊和君    太田 昌孝君

      遠山 清彦君    藤野 保史君

      串田 誠一君    井出 庸生君

      柚木 道義君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   最高裁判所事務総局行政局長            門田 友昌君

   政府参考人

   (個人情報保護委員会事務局次長)         福浦 裕介君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           丸山 洋司君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           眞鍋  純君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     神山 佐市君

  黄川田仁志君     福山  守君

  古川  康君     安藤 高夫君

  和田 義明君     高木  啓君

  逢坂 誠二君     初鹿 明博君

  岸本 周平君     森田 俊和君

  遠山 清彦君     太田 昌孝君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤 高夫君     古川  康君

  神山 佐市君     赤澤 亮正君

  高木  啓君     和田 義明君

  福山  守君     黄川田仁志君

  初鹿 明博君     逢坂 誠二君

  森田 俊和君     岸本 周平君

  太田 昌孝君     遠山 清彦君

    ―――――――――――――

五月三十一日

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(青山雅幸君紹介)(第一二三八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一二三九号)

 同(小沢一郎君紹介)(第一二四〇号)

 同(岡本充功君紹介)(第一二四一号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第一二四二号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一二四三号)

 同(岸本周平君紹介)(第一二四四号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一二四五号)

 同(西岡秀子君紹介)(第一二四六号)

 同(森山浩行君紹介)(第一二四七号)

 同(山川百合子君紹介)(第一二四八号)

 同(柚木道義君紹介)(第一二四九号)

 同(石川香織君紹介)(第一二六四号)

 同(金子恵美君紹介)(第一二六五号)

 同(櫻井周君紹介)(第一二六六号)

 同(階猛君紹介)(第一二六七号)

 同(高木錬太郎君紹介)(第一二六八号)

 同(寺田学君紹介)(第一二六九号)

 同(中川正春君紹介)(第一二七〇号)

 同(阿部知子君紹介)(第一二八七号)

 同(岡島一正君紹介)(第一二八八号)

 同(黒岩宇洋君紹介)(第一二八九号)

 同(堀越啓仁君紹介)(第一二九〇号)

 同(道下大樹君紹介)(第一二九一号)

 同(宮本徹君紹介)(第一二九二号)

 同(吉川元君紹介)(第一二九三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一三一三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一三一四号)

 同(菅直人君紹介)(第一三一五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三一六号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三一七号)

 同(清水忠史君紹介)(第一三一八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三一九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一三二〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三二一号)

 同(長尾秀樹君紹介)(第一三二二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一三二三号)

 同(藤野保史君紹介)(第一三二四号)

 同(本多平直君紹介)(第一三二五号)

 同(宮本徹君紹介)(第一三二六号)

 同(本村伸子君紹介)(第一三二七号)

 同(池田真紀君紹介)(第一三四四号)

 同(生方幸夫君紹介)(第一三四五号)

 同(清水忠史君紹介)(第一三四六号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一三四七号)

 同(横光克彦君紹介)(第一三四八号)

 外国人住民基本法と人種差別撤廃基本法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第一二八五号)

 民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正に関する請願(阿部知子君紹介)(第一二八六号)

 民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正を求めることに関する請願(大河原雅子君紹介)(第一三一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として個人情報保護委員会事務局次長福浦裕介君、法務省大臣官房司法法制部長小出邦夫君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、文部科学省大臣官房審議官丸山洋司君及び国土交通省大臣官房審議官眞鍋純君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局行政局長門田友昌君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎委員 自由民主党の宮崎政久です。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。感謝の気持ちで質問に立たせていただきます。

 きょうは、今委員長から法案の読み上げがありましたとおり、司法書士法そして土地家屋調査士法の一部を改正する法律案の審議でございます。

 司法書士の先生方、また土地家屋調査士の先生方、そして会から年来の御要望をいただいて、この社会的意義のあるお仕事について法律上の規制をしっかりしていきたいという意味での法改正でありますので、そういった思いも込めて質問したいと思います。

 ということもありますので、少し歴史を調べてきました。司法書士の先生方を規律する法律、土地家屋調査士の先生方を規律する法律についてであります。

 旧の司法書士法が全部改正をされて、現行の新司法書士法、今の法律が成立をしたのと、土地家屋調査士法が成立したのは、いずれも戦争が終わってまだ間もない昭和二十五年までさかのぼることになります。

 司法書士の前身であります代書人と呼ばれる存在は、明治五年の、太政官無号達というそうですけれども、太政官布告のようなもので、司法職務定制というところまでさかのぼります。弁護士の前身である代言人というものもこの同じ司法職務定制において定められていて、代書人と代言人、これは裁判権の円滑な行使に不可欠な存在としてこのとき位置づけられたわけであります。

 代言人は、明治二十三年に弁護士と名称が変更されました。しかしながら、代書人という存在は法律上の表面にこの当時浮かび上がることがなくて、深く広く庶民の間で法律の実務家としての活動を続けていったのがこの代書人のお仕事であります。

 その後、司法代書人法が制定されて名称変更があり、また、日本司法代書書士会連合会が創設をされて、司法代書人から司法書士への名称変更を経て、先ほど申し上げた昭和二十五年の新司法書士法の制定に至るというわけであります。

 また、土地家屋調査士の皆さんには、土地台帳、家屋台帳の調査人制度の流れを継承して、昭和二十四年のシャウプ勧告を受けて税制の抜本改正がなされて、固定資産税が国税から市町村税に変わる際に、従来税務署で管理をしてきたこの二つの台帳を一元化して、課税のための台帳から現況を正しく表示をするための台帳として取り扱うため、法務局の所管に移され、これを機に、台帳業務の適正化と登記手続の円滑化、そして不動産による国民の権利を明確にするという目的で、こういった業務を専門的に行うものとして昭和二十五年に土地家屋調査士法が制定をされたわけであります。

 この司法職務定制というものが制定された明治五年から数えますと、ことしで百四十七年たちます。新司法書士法と土地家屋調査士法が制定をされた昭和二十五年から数えますと、東京オリパラが開催される来年、令和二年、二〇二〇年で七十年を迎えるということになるわけであります。

 その間、社会経済を取り巻く状況はどんどんどんどん大きく変化をしてまいりまして、それに伴って司法書士や土地家屋調査士の皆さんのお仕事も変化に応じて活躍の場を広げていっていただいているという状況を踏まえて、今回の改正であります。

 今回の改正の大きな柱が、使命規定を創設するというものであります。現行の司法書士法、土地家屋調査士法は、いずれも第一条が目的規定となっておりまして、これを使命にしっかり改めるということであります。司法書士会、土地家屋調査士会の皆さんからも使命規定の創設というのは長らく御要望をいただいているものでありまして、今回これを形にいたします。

 この使命規定の創設はどういった意義、理由に基づくものであるか、御説明いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現行の司法書士法の第一条、それから土地家屋調査士法の第一条でございますが、昭和五十三年の法改正の際に新設されたものでありますが、それぞれの法律自体の目的を定める規定でございました。

 しかしながら、近年、司法書士、土地家屋調査士は、その業務範囲の拡大に伴いまして、以前にも増して我が国社会において専門家として重要な役割を果たすようになってきております。

 また、最近では、所有者不明土地問題の解決等のため、登記制度の適正化が重要な課題となっておりまして、このような各種の課題解決に当たって、専門家として果たすべき職責は極めて重くなっていると言える状況でございます。

 このような状況に照らしますと、司法書士、土地家屋調査士が我が国社会において専門家として認知されていることを前提に、その使命を明らかにする規定を設けることで、個々の司法書士、土地家屋調査士の方々がその使命感をより一層高めてその職責を果たしていくことを期待することは極めて重要であると考えられます。

 このような観点から、司法書士法、土地家屋調査士法の冒頭におきまして、目的規定を改めて、それぞれ専門家としての使命を宣明する使命規定を設けることとしたものでございます。

宮崎委員 今、法務省、政府の方から御答弁がありましたとおり、司法書士、土地家屋調査士の皆さんの業務範囲が拡大をしている、専門家としての重要な役割を担っていて、専門家として果たすべき職責も重い、その業務が社会的に認知をされていて、その存在が社会の安定のために当然必要である、こういうことを受けているわけであります。そうである以上は、逆に、司法書士、土地家屋調査士の皆さんの資質や能力、こういったものも、今の社会的な需要であったりとか、専門家として担っている重要な役割に見合うような業務をしっかりやっていただく必要があるわけであります。

 そういった意味でいいますと、個人としての司法書士、土地家屋調査士の皆さんは、それぞれ試験に合格をされて登録をして、事務所に入るなど、また、事務所を開くなどして就職をされて、そこで仕事を通じてOJTをして資質や能力を向上されておられると思いますけれども、同時に、司法書士会、土地家屋調査士会のような団体、全体としての団体が研修を行って、個々の司法書士、土地家屋調査士の皆さんの資質の向上に全体として努めることも、またこれは社会的な貢献としては当然必要なことだと思います。

 そこで、それぞれ会内自治ということは、尊重することは当然のことでありますけれども、まず、この会における研修の現状などがどのようになっているのか、そしてまた、政府として、国として、これにどういった協力をすることができると考えているのか、御説明いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、司法書士の研修について申し上げますと、既に司法書士会に入会している会員の資質の向上を目的とする会員研修、それから、司法書士試験合格者を対象とした新人研修、簡裁訴訟代理等関係業務の資格取得のための特別研修というものがございます。

 会員研修は、司法書士会に入会している会員に継続して研修の受講義務を課すものでございます。これに対しまして、そのほかの研修につきましては受講義務が課されているものではございませんが、その実施状況につきまして申し上げますと、新人研修につきましては、平成二十九年度試験合格者の受講率は九〇・八%、六百二十九名中五百七十一名となっております。また、平成二十九年九月一日現在で、平成十五年度以降実施されております特別研修を修了した者は延べ二万人を超えておりまして、現時点における会員約二万二千人の中で、極めて高い割合の方が受講している状況でございます。

 他方、土地家屋調査士の研修につきましては、法務大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続機関において代理人として活動するための特別研修と、各土地家屋調査士会主催の研修会がございます。

 この特別研修を修了し、法務大臣の認定を受けた認定土地家屋調査士は、平成二十九年十月二日現在で延べ六千人を超えておりまして、現時点における会員約一万六千人のうち相当の割合の者が受講している状況でございます。

 各土地家屋調査士会主催の研修会につきましては、平成二十八年十一月の調査結果によりますと、全国各地で年間三百八十五回の研修が開催されております。

 こういった各団体における研修に対しての法務省及び法務局としての協力体制でございますが、法務大臣の認定の前提となるこの両方の特別研修の実施について協力を行っておりますほか、各単位会で実施される研修につきましても、法務局の職員を講師として派遣するなどの協力を行っております。

 今後とも、司法書士及び土地家屋調査士の資質の向上のため、これらの研修については引き続き積極的に協力してまいりたいと考えております。

宮崎委員 ありがとうございました。

 大変充実した研修であると思いますし、また、その受講の割合も高いと思っております。特に司法書士さんは研修が義務化されているという説明でありました。会の自治の問題でありますけれども、土地家屋調査士の先生方におかれても、ぜひ研修の義務化ということも御検討いただきたいというふうに思っているところです。

 次のお話に移りたいと思います。

 先ほどの御答弁の中でも、専門家として社会的に重要な役割をこの二つの職責の方々が担っている。

 ここに書籍を持ってまいりました。

 一つは、「東日本大震災 土地家屋調査士三・一一の軌跡」という書籍であります。もう一つ、「二〇一六熊本地震 それぞれの未来(あした)へ」という書籍でありまして、それぞれ、最初の方は日本土地家屋調査士会連合会さんが、二つ目の方は熊本県の土地家屋調査士会さんの方がまとめた冊子であります。

 こういった災害などによって、例えば、東日本であれば、津波もありました。多くの建物が倒壊、流失してしまったことを受けて、土地家屋調査士会の先生方が倒壊してしまった建物の滅失登記や境界の復元に大きな尽力をされたことが、その御苦労の過程も含めて、この書籍の中で示されています。

 もう一つは、司法書士白書、これはちょっと写しでありますけれども、二〇一八年版、これは日本司法書士会連合会さんがおまとめになったものでありまして、この中でも、司法書士の先生方が、災害復興の支援に向けて、困難な状況の中で御苦労されていることがまとめられております。つぶさに読ませていただきました。大変頭の下がる思いでありました。

 政府として、まず、こういったものがまとめられているんですけれども、こういった災害の復興などに対して司法書士、土地家屋調査士の皆さんが大きな貢献をしていることについてどういった認識を持っているか、御説明ください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今委員の方から御紹介もございましたとおり、東日本大震災等の自然災害からの復興に当たりましては、司法書士あるいは土地家屋調査士の方々は、その有する専門的知見及び能力を用いて、さまざまな場面で尽力され、多大な貢献をされているものと承知しております。

 また、自然災害の被災地の法務局において行っております復興事業、具体的には被災者向けの登記相談、倒壊等した建物の滅失調査作業、震災復興型の登記所備付け地図作成作業、登記所備付け地図の街区単位修正作業などに関しましても、司法書士や土地家屋調査士の方々には積極的に関与していただきまして、これらの事業をサポートしていただいているところでございます。

 自然災害の復興に関する事業を円滑に実施するためには、司法書士及び土地家屋調査士の専門的知見及び能力が必要不可欠であると認識しておりまして、法務省としましては、今後ともその協力をいただきながら、自然災害からの復興復旧に尽力してまいりたいと考えております。

宮崎委員 新しいどんどん出てくるいろいろな社会的事象への対処という意味でいいますと、空き家問題とか所有者不明土地対策という問題があります。

 空き家問題は、人口減少によって全国的に課題になっていて、平成二十六年に空き家対策特措法が成立しています。

 所有者不明土地問題も、相続登記の未了などによってさまざまな事象が生じておりまして、昨年、所有者不明土地の利用の円滑化に関する特措法が成立をして、私ども自由民主党でも引き続き特命委員会で新たな法制化も検討して、政府でも検討が進んでいることを承知しているところであります。

 こういった現代の課題に司法書士の方、土地家屋調査士の方の専門的な業務を活用していく必要があると思いますけれども、こういったことへの政府の認識を教えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、所有者不明土地問題、非常に重要な課題でございますが、こういった問題に関しましては、司法書士はこれまで、相続登記の促進のための取組を法務局と連携して行ってきておりますほか、平成三十年十一月に一部施行されました所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に基づいて進められております、長期間にわたって相続登記がされていない土地についての登記名義人となり得る者の調査の実施等に関しましても、その主たる担い手となっておられております。

 また、土地家屋調査士はこれまで、同様に相続登記の促進のための取組を法務局と連携して行ってきておられますほか、今国会で成立しました表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律で創設されます所有者等探索委員の主要な担い手としての活躍も期待されているところでございます。

 他方、空き家問題に関しましても、司法書士及び土地家屋調査士の方々は、それぞれの専門的な知見を生かして、市町村が設置する空き家対策協議会の構成員として参画するなど、空き家対策の推進に積極的に協力していただいているところでございます。

 また、このほか、経済財政運営と改革の基本方針二〇一八等の政府方針におきまして、二〇二〇年中に所有者不明土地問題の解決に向けた民法、不動産登記法の見直しを行うこととされておりますけれども、この検討の過程におきましても、司法書士及び土地家屋調査士の方々は不動産登記の専門家として積極的に検討に参画され、有益な御提言をいただけるものと期待しているところでございます。

 法務省としましては、引き続き、こういった問題、諸課題の解決に当たりまして、司法書士及び土地家屋調査士の皆様方が積極的に御活躍いただくことを期待しているところでございます。

宮崎委員 ありがとうございます。

 最後の質問にしたいと思います。これは大臣にお答えいただきたいと思っております。

 今、現代的な課題について、司法書士の先生方、土地家屋調査士の先生方の活躍が求められている説明がありました。もう一つ、デジタル化という現代的な課題があります。

 デジタル化自体を否定するということは適切ではない。イノベーションを促進するということも、我が国にとっては大切なことであります。

 ただ、デジタル化が進展をしていくことだけを全てもろ手を挙げて賛成ということになっていきますと、例えば、土地建物を現地できちっと確認をした上でさまざまな業務をしてもらっている司法書士の先生方、土地家屋調査士の先生方の業務が、確認が要らないような話になってしまえば、これは元も子もない話でありますし、東京などへの一極集中をどんどんどんどん進めていってしまって、各地の業務が成立しなくなってしまうことにもなりかねません。

 今回、使命規定を創設することにいたします。これは、司法書士、土地家屋調査士の方々の長年にわたるとうとい業務が、司法書士であれば、登記、供託、訴訟その他法律事務の専門家である、国民の権利を擁護して、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とするという公益的な社会的使命があることを明示するわけですね。

 土地家屋調査士の方であれば、不動産の表示に関する登記、土地の筆界を明らかにする業務の専門家であって、不動産に関する権利の明確化に寄与して、もって国民生活の安定と向上に資することを使命とするという社会的な使命を明確にするわけであります。

 こういった社会的な使命があって、例えば、それぞれの業務というのは、御高齢の方、情報の少ない個人の方、こういった方が全国津々浦々にいるさまざまな場面で仕事をしていただかなければ、今言ったような国民生活の安定に寄与するということはできないわけであります。私は、こういった、ある意味、困った状態だとか困惑した事態にあるときにアクセスをする業務の方の仕事が、全国でしっかりと成立するようにしてもらいたいと思っています。こういった偏在も防がないといけない。

 それぞれの業務をやっていただいている方へのエールも含めて、山下大臣から、この二つの業務に対する御認識もお伝えいただければと思います。

山下国務大臣 委員御指摘のとおり、デジタル化の推進は我が国社会に大きな変革をもたらすものであり、政府全体としても、我が国のさまざまな分野においてデジタル化を推進していくことは大きな政策目標となっているものでございます。

 他方で、我が国社会においてデジタル化が進展した結果、司法書士や土地家屋調査士といった専門職者の業務のあり方にも大きな影響を与え、地方部に所在する顧客に対しても都市部の専門職者がさまざまなサービスを提供することができるようになる可能性もございます。

 しかしながら、先ほど委員御指摘のとおり、司法書士の先生方におかれては、司法書士法の定めるところによる法律事務の専門家として国民の権利を擁護するという、人に直接携わる仕事でございますし、また、土地家屋調査士というのは、やはり、その土地土地の現況に即した登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家という活躍が期待されていることから、使命の明確化がなされたものでございます。

 今後は、デジタル化が進展してもその使命は変わることがないし、また、今回明らかにされたところでございますので、司法書士及び土地家屋調査士の皆様には、地域地域においても、それぞれの業務の専門家として、引き続き、全国の至るところで、デジタル化の利益も受けながらも、しっかりと活動していただくことを期待しているところでございます。

宮崎委員 ありがとうございました。

 司法書士の皆さん、土地家屋調査士の皆さんの業務が、これからも全国津々浦々で国民生活の安定のために寄与していただきますことを心から祈念をして、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で宮崎政久君の質疑は終了いたしました。

 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 今回の司法書士法及び土地家屋調査士法の改正案につきましては、私、ちょっとフライング的に、たしか一月の二十三日の一般質疑におきまして、使命規定の書きぶりについても我が党の意見をお伝えさせていただきまして、御要望のとおりの書きぶりになったことをまず感謝をしたいと思っています。また、二日前の一般質疑におきまして、きょう、私は時間がないものですから、先行しまして、土地家屋調査士さんのADR、いわゆる境界相談センターの活用についても大臣にお願いをしたところでございます。

 きょうは、書士法また家屋調査士法の改正案の中での懲戒権のあり方と、あとは委任規定というものがございますので、その関係について議論をしたいと思っております。

 各会の念願どおり、いわゆる懲戒権者が、目の前にいらっしゃいます法務大臣に、法案が成立すればかわることになるわけでございますが、司法書士法の七十一条の二、そして土地家屋調査士法の六十六条の二では、さまざまな法務大臣の権限が法務局長等に委任ができるという規定がございます。委任の内容については省令で定めるということでございます。

 せっかく法務大臣を懲戒権者としたんですが、委任の範囲が広過ぎますと、結果的に懲戒権者を法務大臣とした趣旨が没却されるのではないかという問題意識で質問をさせていただきます。

 きょうは資料を配付をしておりますが、資料一が、いわゆる司法書士さん、土地家屋調査士さんの懲戒手続の流れを書いております。左側から、懲戒となる事由が発生し、依頼者や司法書士会、調査士会、又は法務局長が懲戒の申立てをします。実際の事実の調査をこれまでは管轄の法務局長がやり、聴聞の手続についても法務局長が行い、最終的な判断でございます業務の禁止や、また業務の停止、また戒告の処分についても法務局長がやっておったわけでございますが、これを法務大臣にかえるということでございます。

 そこで、懲戒手続の開始の規定として、懲戒事由が発生してから七年が経過すると懲戒処分の手続が開始できないという条文がありますけれども、実際に、じゃ、懲戒手続とはこの図の中でどこになるのか、局長、御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案におきましては、委員御指摘の、いわゆる懲戒処分に関する除斥期間の規定を設けております。

 この規定におきます「処分の手続を開始する」、この意味でございますが、これは処分の手続を現に外部的に行うということを意味するものでございまして、具体的には、行政手続法第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続を開始すること、すなわち、同法第十五条第一項に規定する聴聞の通知をすることが処分の手続の開始に該当いたします。

 したがいまして、懲戒の事由があったときから七年を経過するまでに聴聞の通知がされなければ、除斥期間の経過によって懲戒処分の手続を開始することができないこととなるというものでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 そうなると、この図でいいますと真ん中の聴聞手続というところが懲戒処分の開始ということなんですが、じゃ、その前の調査について、フリーハンドで私は認めてしまうのは、これは逆に、そうはいっても事実の調査というのが大事でございますので、ここについてフリーハンドで法務局長の委任を求めるというのは、私は、趣旨を没却するのではないかと思っています。

 そこで、この聴聞手続について法務局長に委任できる範囲は、現段階で省令ではどのような規定ぶりを考えていらっしゃるか、どういう考えに基づいて規定するつもりであるか、御答弁ください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 改正法案におきましては、法務省令により、懲戒に関する法務大臣の権限を法務局又は地方法務局の長に対して委任することを許容する規定を設けております。しかしながら、あくまでも懲戒権者は法務大臣でございますので、委任することができるのはその権限の一部に限られるものでございます。

 この規定に基づきまして、法務局又は地方法務局の長に委任する権限といたしましては、法令違反の事実があると思料するときに国民が行う通知等の受領の権限、懲戒事案の事実についての必要な調査の権限、懲戒処分をしようとするときにする聴聞手続の権限を委任することを想定しております。また、あわせて、法務大臣にもこれらの権限を留保する旨の規定も設けることを想定しております。

 御指摘の聴聞の手続に関しましても、地方に在住しています懲戒の対象者の方が、常に法務省の所在する東京まで移動しなければならないとすることは合理性を欠く面もあることから、権限の委任を許容することを検討しているところでございます。

 もっとも、その具体的な運用に当たりましては、懲戒に関する各種の権限が法務大臣の権限とされた趣旨を踏まえつつ、日本司法書士会連合会及び日本土地家屋調査士会連合会とともによく協議して、両連合会の意見も踏まえた上で、懲戒手続の適正合理化を実現することができるように努めてまいりたいと考えております。

浜地委員 今、趣旨を没却しないようにという言葉がありましたので、ぜひ、各会の意見も聴取しながら、そういった規定にしていただきたいと思います。

 最後に、端的に聞きますが、では、今、委任の話をしましたが、実際、最終的な業務の禁止や業務の停止、また戒告の処分の最終的な判断については、これは法務局長に委任することはなく目の前の法務大臣が必ず下すということで、確認でよろしゅうございますでしょうか。簡潔にお願いします。

小野瀬政府参考人 委員御指摘のとおり、事実の認定あるいは処分の量定などの判断権限については法務大臣が行使することとなります。

浜地委員 ありがとうございます。

 テーマをかえまして、司法書士さんの法律相談についてちょっと議論をしたいと思っております。

 私の方では、資料二で、司法書士法の条文を少し抜粋をしてまいりました。

 司法書士法の中には二つの相談という言葉が出てきまして、司法書士法第三条第一項五号の、前各号の事務についての相談。前各号というのは、書類の作成代理であるとか登記の申請代理等々が記載をされています。六号に、いわゆる簡裁代理権、今、百四十万円が訴訟物の目的でございますが、その規定があった上で、七号において、その百四十万の額を超えない範囲での相談ということが書いてありまして、二つの相談という言葉が出てまいります。

 一部の方々は、この五号にある、いわゆる事務の相談というのを手続的な相談と称し、七号の、いわゆる簡易裁判代理権にかかわる相談を法律相談とするなどの解釈がございますけれども、百四十万以上の請求や目的について司法書士さんが相談を受けることができないのではないかといった間違った解釈がなされ、業務が大変縮小しているという指摘がございます。

 そこで、まず一般的に聞きたいんですが、局長、法律相談という定義はあるんですか。一般的に法律相談というのは何なのか、定義はございますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 一般論として法律相談の意義を定義した法令の規定は存在しないものと承知しておりまして、法律相談がどのようなものであるかを一概にお答えすることは困難でございます。

浜地委員 済みません、ちょっと端的な質問でございました。そのとおりです。

 法律はまさに、法的効果を導くためには三段論法というものがございます。当然、事実を法律要件に当てはめて法律効果を導くのが法であるわけでございますので、素直に考えれば、法律相談とは、この三段論法を使って事実を法律要件に当てはめて、このような法律効果になりますよということを依頼者の事実を聞いてアドバイスをするのが私は法律相談というふうに思うわけであります。ただ、今局長の答弁からいうと、一般的な定義はないということでございました。

 そこで、ちょっとまた話題をかえますが、では、一般的な法律相談は、例えば、七号の相談はいわゆる訴訟代理権の範囲に限るというような解釈がございますけれども、そのように解釈する方は、こうでなきゃいけないですね、法律相談は訴訟代理権に付随するものじゃなきゃいけないというような解釈になってしまうと思うんですが、一般的に法律相談は訴訟代理権の範囲に限定をされるというものになりますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 司法書士法第三条第一項第七号における相談に応じますこと、これは司法書士法がその当該条項に規定されておりますけれども、これは、手続的な法律問題に限らず、実体法上の法律事項についても法的手段や法律解釈を示しながら行うこととなるものとなりまして、この御相談は法律相談に当たると解されているものと承知しております。

 ただ、法律相談を超えまして、先ほど申し上げましたとおり、法律相談の意義を定義した法令の規定は存在しませんので、一般論として法律相談はどのようなものか、一概にお答えすることは困難でございますので、訴訟代理権を伴わなければ法律相談とは呼ばないのかにつきましても、お答えすることは困難でございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 司法書士さんの法律相談の範囲については、高裁の判例が二つあるのを私も承知をしております。一つは高松高裁、昭和五十四年六月十一日、もう一つは大阪高裁、平成二十六年五月二十九日の、これは高裁判例にとどまるわけでございますが、二つの裁判例ですね、判例じゃなくて裁判例があります。

 高松高裁の方はまだ司法書士さんの訴訟代理権というものは付与されていない時代のものでありまして、大阪高裁の平成二十六年は参考になろうかと思っていますが、ここで言っておりますのは、司法書士さんが法律相談に応じられるのは法律的に事実を整序することに限られると。例えば、法律専門職としての裁量的判断に基づく事務処理を行ったり、委任者にかわって実質的に意思決定をしたり、相手方と直接交渉を行ったりすることは予定されていないものと解されると書いてありまして、当然、相手方と直接交渉を行うのは、これは百四十万を超えれば弁護士法違反でございますので、それは当たり前のことなんですが、ここの裁量的判断に基づく事務処理を行ったりといったところが私は気になるわけでございます。

 実際に、司法書士さんの実務においては、例えば過払い金の請求によりますと、例えば百四十万円を超える、いわゆる訴訟代理権、簡裁代理権を超える過払い金の相談のときに、どのようなことが行われるかといいますと、利息制限法を超えて支払ったものを利息制限法の範囲内に引き直し計算をして、そして過払い金の請求を出します。このとき、例えば百四十万を超えてしまった。

 しかし、そのとき、例えば、取引が継続していなくて、一部消滅時効にかかっているかもしれませんねと。そうなると、実際は百四十万を超える請求はできないかもしれませんが、それでも御本人訴訟はしますか、その際は司法書士さんが私が訴状や答弁書の作成はお手伝いしますよといった判断は、三段論法を私は使っておりますが、何らこれは裁量的な判断ではない、いわゆる事実を普通に法律に当てはめているというふうに思っています。

 また、相続登記をするときにも、例えば大きな物件があるとして、法定相続分はこうなりますよ、例えば、奥さんと子供が二人いて、二分の一と四分の一になりますよと。しかし、ほかに預金があるので、もしあなたがこの土地を単独で相続したければ、その相続分に応じて、ほかの相続人に対してもこれぐらいの金銭を渡す必要がありますねみたいな相談は、これはいわゆる事実を法律要件に当てはめて法律効果を導いた上で、まさに法的三段論法を使って、私が言うところの法律相談なわけでございます。これは私の主張でございますけれども。

 そうなりますと、ずばり聞きますけれども、司法書士法三条一項五号の相談には、一般的な法律相談を私は前提とした相談であると思いますけれども、局長の御見解をお聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の司法書士法第三条第一項第五号でございますが、この相談につきましては、登記又は供託に関する手続の代理や提出する書類の作成に伴う相談のほか、裁判所に提出する書類の作成に伴う相談が含まれております。

 この相談は、依頼者の依頼の趣旨に沿って適切な書類を作成する等のために必要な範囲内の相談であって、通常は、依頼者の依頼内容を法律的に整序するためのものであると理解されております。

 したがって、依頼者から聴取した事実を取捨選択しながら、法的に整理した上で、その主張などを論理的に構成する必要があり、関係する法律的知識等が前提となるものであると認識しております。

浜地委員 今のは恐らく高松高裁の判例をもとに御答弁されたと思いますが、整序する範囲だとか、その辺がやはりなかなか線引きが難しいところでございますので、これは、私はきょう結論を出すつもりは当然ありませんし、今回の法律案にも入っておりませんので、今後の課題として、司法書士さんの法律相談の範囲がどこまで及ぶのかということは、引き続き、若干しつこく今後質問をしていきたいと思いますので、ここでこの範囲は終わらせていただきたいと思います。

 次に、いわゆる総合法律支援法、法テラスに基づく特定援助者法律相談事業に、私は更に司法書士さんを積極的に活用すべきと考えております。

 この特定援助者法律相談事業というのは、アウトリーチ型、いわゆる高齢者や障害者の方々のところに赴いて御相談を受ける、まさに国民の司法アクセス向上のための大事な制度でございます。私の個人的な意見としては、この法律相談業務に、ぜひ司法書士さんも法テラスを使っていただきたいというふうに思っておりますけれども、そうではなくても、例えば書類作成の援助の前提となる相談についても、私はこれは、先ほど言ったとおり、一部三段論法を使うなり、さまざまな相談に応じられるわけでございます。

 今、司法書士さんの法テラスの範囲というのは、百四十万円以内の訴訟代理権の範囲の御相談にしか適用ができません。しかし、書類の作成代理、例えば破産手続をするとか、そういった申立てをするとか、そういったときにもさまざまな意見聴取をして事実を調査しなきゃいけませんので、この相談についても私は法テラスの援助の対象とすべきというふうに個人的に要望をしております。

 そこで、これは法務省にお聞きしますが、ぜひ、総合法律支援法に基づく特定援助者法律相談事業に更に積極的に司法書士さんの活用を図っていただきたいと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 日本司法支援センター、通称法テラスで実施しております、認知機能が十分でない高齢者、障害者の方などに出張法律相談を行う特定援助対象者法律相談援助につきましては、運用開始前に、司法書士会等と連携いたしまして、司法書士の方々への周知、広報を徹底したことなどもありまして、委員御指摘のとおり、司法書士の方々が同援助を積極的に利用し、相談に当たっていただいているものと承知しております。

 引き続き、市民に身近な法律家であります司法書士の方々が、より一層、法テラスの特定援助対象者法律相談援助を積極的に利用していただけるよう、法務省としても必要な協力をしてまいりたいと思っております。

浜地委員 今、この特定援助者法律相談事業は八・数%、司法書士さんが利用されていて、普通の法テラスのものは一%でございますので、通常の法テラスの活用よりは使われているというのは、私も認識をしています。それをちょっと最初に言おうと思っていましたが、忘れました。済みません。

 しかし、やはり、例えば成年後見制度でいうと、もう弁護士を上回る成年後見人の選任件数があるわけでございますので、そういった意味で、広く活用をしていただきたいという要望でございました。

 では、最後の質問を法務大臣にしたいと思いますが。

 司法書士法には、いわゆる周旋を禁止する規定が現在ございません。これは弁護士法にはございます。大臣は専門家ですから説明は不要でございますが、司法書士の方から司法書士でない人に、仕事を紹介してほしい、仕事を紹介してくれたら何らかの報酬を払うよと。これは非司法書士提携、弁護士の場合は非弁提携、そういった禁止規定はございます。

 しかし、司法書士でない者が司法書士さんの方に赴いて、私が仕事をあっせんしてあげるから、その分報酬を頂戴ねというような規定は、弁護士法にはそういった規定はあるんですが、司法書士法にはございません。

 私は今回、使命規定に、いわゆる国民の権利擁護、法律の専門家としての権利擁護という規定が入ったわけでございますので、そういう意味では、やはり私は、弁護士と同じように、周旋禁止規定を今後検討すべきと思いますが、最後に山下法務大臣の御意見をお聞きして、質問を終わりたいと思います。

山下国務大臣 御指摘のような、司法書士以外の者が司法書士に対して司法書士業務をあっせんし、他方でその対価を司法書士から得るという周旋行為を禁止する必要があるのではないかという指摘があることについては承知しております。

 こういった周旋業務を業とすることを禁止する規定は、御指摘のように、弁護士法には存在するものの、他の士業法には同趣旨の規定は存在しておりません。このような司法書士に関する周旋行為がどの程度行われているのかの実態把握や、どのような弊害を現に生じさせているのかなど、関係団体と連携しつつ、十分に把握するとともに、このような禁止規定を設けることの影響についても見きわめる必要があるものと認識しております。

 法務省としては、委員の御指摘も踏まえつつ、司法書士の皆様について周旋を禁止する規定を設けることの要否についても、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

浜地委員 周旋禁止規定、ぜひ御検討いただきたいと思っています。

 以上でございます。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で浜地雅一君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本和嘉子君。

山本(和)委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの山本和嘉子でございます。

 きょうは、司法書士法及び土地家屋調査士法改正案の質疑ということで、若干、前の委員との繰り返しの質疑になるかもしれませんが、そのあたり御容赦いただければと思っております。

 まず、今回新たに、司法書士そして土地家屋調査士の皆さんのそれぞれの使命規定が設けられたということでございます。司法書士さんにおいては、「国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」というふうにされています。

 司法書士の使命について、より具体的に、何を意図して、どのような成果を期待しているのか。また、現在、司法書士の業務は、登記、供託、訴訟などの独占業務として定義されるものだけでなくて、遺産継承そして事業継承、成年後見、財産管理、信託など、いわゆる附帯業務とされる分野にも広がっているということでございます。

 これらに加えて、人権を守る活動であったりとか貧困問題そして多重債務問題など、主体的にかかわっていくようなこともイメージされているのか、そのあたり、大臣にお聞きしたいと思います。

山下国務大臣 お答えします。

 改正法案では、司法書士の使命として、司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とすると定めることとしております。

 このような改正を行った趣旨は、司法書士を専門家として位置づけた上で、司法書士が主体的に国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与するということをその使命として規定するものでありまして、司法書士の皆様の能動的な規範を定めるものでございます。

 新たにこのような使命規定を設けることによりまして、それぞれの司法書士の皆様が、より高い使命感のもとに、登記や裁判に関する司法書士の業務に加え、それ以外の例えば被災者支援や人権擁護活動も含めた各種活動等を通じて、国民の権利の擁護のためにその職責を果たしていくことが期待されているものでございます。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 今回の改正で、国民の権利を守るという使命を明確にした以上は、司法書士さんでない者からの周旋の禁止をする規定を置く必要があるのではないかなというふうには思うんですけれども、周旋の禁止について、今後法制度化していくことなどの検討がなされているのか、お聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 司法書士以外の者が司法書士に対して司法書士業務をあっせんし、他方で、司法書士からその対価を得るという周旋行為を禁止する必要があるのではないか、こういった指摘があることにつきましては承知しておるところでございます。

 士業の業務に関連してこのように周旋行為を業とすることを禁止する規定は、弁護士法には存在いたしますが、ほかの士業法におきましてはこういった趣旨の規定は存在していないという状況でございます。そこで、このような司法書士に関する周旋行為がどの程度行われているのかといった実態把握や、どのような弊害を生じさせているのかなど、関係団体と連携しつつ十分に把握するとともに、このような禁止規定を設けることの影響についても見きわめる必要があると認識しております。

 法務省としましては、委員の御指摘も踏まえつつ、司法書士について周旋を禁止する規定を設けることの要否について検討してまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 今後、公平性を保つ意味でも、ぜひ周旋の禁止について検討をしていっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、土地家屋調査士さんの使命についてお聞きしたいと思います。

 この使命は、不動産に関する権利の明確化に寄与して、もって国民生活の安定と向上に資することを使命とするというのは、より具体的に何を意味しておられて、どのような成果を期待されているのかということと、不動産に関する権利の明確化というのは、具体的に言うと、境界紛争の防止だけでなくて、所有者不明土地や空き家、空き土地の問題などにも主体的にかかわっていくことを期待されているのでしょうかということと、また、東日本大震災の発生、そのときには司法書士さんや土地家屋調査士さんはボランティアで多大な貢献をしていただいたということがありました。こうしたことが今回の使命の創設に影響しているのかどうか、そのあたりも教えていただければと思います。

山下国務大臣 改正法案では、土地家屋調査士の使命として、土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記及び筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上に資することを使命とすると定めることとしております。

 このような改正を行おうとする趣旨は、土地家屋調査士制度を取り巻く状況の変化が顕著であることを踏まえたものでございます。

 例えば、土地家屋調査士は、法務局における筆界特定手続の円滑な運用や登記所備付け地図の整備にも尽力しておりますほか、委員御指摘の例えば震災の復興の場面等において活躍されており、さらには、今国会において成立いたしました、所有者不明土地問題の解決の一環であります、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づく所有者の探索の主要な担い手として期待されているところでございます。

 そうしたことから、土地家屋調査士の皆様が主体的に不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上に資することを使命として規定するものでございまして、土地家屋調査士の能動的な規範を定めるものでございます。

 こうして、新たにこのような使命規定を設けることによりまして、個々の土地家屋調査士の皆様が、より高い使命感のもとに、能動的にその職責、その中には先生御指摘のものも含まれると考えておりますが、果たしていくことが期待されているというものでございます。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 いろいろ時代に即したニーズが出てくるというふうにも思いますので、そういった流れをくみながら、法整備の方をしっかりと進めていっていただきたいと思います。

 続きまして、本法案では、司法書士及び土地家屋調査士の懲戒権者の管轄を法務局長から法務大臣に変更することになったということでございます。ということは、業務の実情に合っているのかなというふうにも思いますけれども。

 しかしながら、除斥期間については、これが設けられたこと自体は大きな前進だとは思いますけれども、それが七年となった理由。例えば弁護士さんについては三年というふうになっているんですけれども、倍以上期間があるということでございますけれども、今後、この七年という期間が見直される可能性についてもお聞きしたいと思いますが、その七年となった理由、そして今後見直しの可能性があるのかも含めてお聞きをしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、弁護士法の第六十三条におきましては、懲戒手続の除斥期間は三年とされております。他方、司法書士あるいは土地家屋調査士の業務は、紛争性のない、権利変動についての登記の申請の代理ですとか、主として不動産の物理的現況を登記する、表示に関する登記の申請の代理など、一般に懲戒の事由の発覚に時間がかかるものが少なくないという事情がございます。また、司法書士の業務におきまして作成する資料のうちには、法令の規定に基づいて七年以上保存する必要があるものも存在しております。

 こういったような司法書士あるいは土地家屋調査士の業務の実態などを踏まえまして、今般、新たに除斥期間を設けるに当たりましては、その年数を七年とすることが相当であると考えられたものでございます。こういったことから、今回の改正案では除斥期間を七年というふうにしたものでございます。

 今述べましたとおり、改正法案の除斥期間の年数につきましては、司法書士、土地家屋調査士の業務の実態等も踏まえたもので、適切なものというふうに考えておりますが、改正法施行後の運用状況については今後とも注視をしてまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ぜひその注視というのをしていっていただきたいと思います。

 次に、また大臣にお聞きしたいと思うんですが、大臣が地方法務局長に権限を委任する内容、それについて、具体的に何か、教えていただければと思います。

山下国務大臣 改正法案では、司法書士、土地家屋調査士等に対する懲戒について、法務大臣が行うこととしておりますけれども、他方で、法務大臣は、その権限を法務局又は地方法務局の長に委任することができるものとしております。

 これは、懲戒事由に関する事実面の調査などについては、対象となる司法書士や土地家屋調査士の活動範囲に近接した各法務局、地方法務局の長が行うのが合理的であることが少なくないと考えられることから、その権限の一部を委任することを可能としたものであります。

 具体的には、懲戒に係る手続のうち、懲戒を求める通知の受理、あるいは事実の調査、聴聞手続といった手続については、全国の法務局、地方法務局の長に委任することを予定しております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 懲戒に関する調査について、これまでは地方法務局長が司法書士会に委嘱をしてきたというふうに聞いております。今回の改正で懲戒権者は大臣になるということでございますけれども、懲戒に関する調査に関しては従来どおり司法書士会が行って、その報告を尊重して懲戒を行うことになるのかどうか。また、委嘱する流れは、大臣から司法書士会に委嘱することになるのか、それとも権限を委任された地方局長になるのか。そのあたり、教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、司法書士、土地家屋調査士等に対する懲戒につきましては法務大臣が行うこととしておりますけれども、改正法案の施行後におきましても、懲戒に係る手続のうち、事実の調査等につきましては、法務省令に規定を設けることで、全国の法務局、地方法務局の長に委ねることを予定しております。

 そして、法務局又は地方法務局の長が行う事実の調査に関しましては、現在と同様に、必要に応じて各司法書士会にも委嘱することを想定しておりまして、各司法書士会のした調査の結果や意見等については、法務大臣が事実の認定や処分の量定について判断するに当たり参考とすることを想定しております。

 改正法案に基づく懲戒制度の具体的な運用につきましては、日本司法書士会連合会あるいは日本土地家屋調査士会連合会ともよく協議しつつ、懲戒手続の適正合理化を実現することができるように努めてまいりたいと考えております。

 なお、委嘱の手続でございますけれども、これは法務局又は地方法務局の長が行う事実の調査に関するものでございますので、法務局又は地方法務局の長から委嘱するということを想定しております。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 続きまして、研修制度についてお聞きしたいと思います。

 現行法上では、司法書士は、登録後直ちに司法書士業務を行うことができるようになっています。しかしながら、先日、司法書士の皆さんからちょっとお話をお聞きをしたんですけれども、司法書士の業務は高度化、専門化もしているということで、資格を得ただけでは業務を行うことは困難ではないかということでございました。今現在も、希望者を対象に新人研修を行っているということでございますが、多忙化する業務と研修と考査を両立させることが極めて難しいということでございます。

 これは土地家屋調査士さんに関しても同じことなのではないかなというふうに思いますけれども、そのために、例えば、弁理士さんなどと同じように登録前の研修を制度化する、そういう法改正をしていくのが必要なのではないかというふうに思います。

 この登録前研修を含めた司法書士さんや土地家屋調査士さんの研修のあり方についてお聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現在、日本司法書士会連合会や各司法書士会におきましては、司法書士試験合格後、登録前の研修を始めとして各種の研修が自主的に実施され、研修制度の充実が図られているものと承知しております。法務省といたしましても、引き続き、司法書士の資質向上等の観点から、日本司法書士会連合会等による研修の充実の取組に協力してまいる所存でございます。

 また、現在の司法書士法におきましては、司法書士試験に合格した者には司法書士となる資格が与えられることとされており、一定の実務経験や研修の修了を要することなく登録の申請をすることができることとされております。

 これに対しまして、委員御指摘のとおり、司法書士についても、一定の研修の修了を義務づけ、研修を修了しなければ司法書士の登録をすることができないといった措置を講ずるべきである、こういった指摘があることは承知しております。もっとも、現在、日本司法書士会連合会や各司法書士会におきましては、先ほど申し上げましたとおり、司法書士試験合格後、登録前の研修が自主的に実施されておりまして、研修生の受講意欲の向上に向けた研究や工夫も重ねられているところでございます。

 このような自主性を尊重することも重要であると認識しておりますし、土地家屋調査士の関係でも、各種の研修が自主的に行われているものと認識しております。

 法務省といたしましては、今後も、日本司法書士会連合会あるいは日本土地家屋調査士会連合会等、関係団体と連携しつつ、司法書士の資質を担保するための方策について検討してまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ぜひ、検討の方をよろしくお願いしたいと思います。

 それともう一つ、法改正の中に、司法書士さん及び土地家屋調査士さんの一人法人を認めるということが明記されています。

 平成十四年、前回の法改正では、一人法人の設立や存続を認める必要性に乏しいというふうに思われて、一人法人というのは許容されなかったということでございますが、それが今回認められることになった理由を教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現行法では、司法書士法人を設立する際には、社員となろうとする司法書士が共同して定款を定めなければならないとして、一人法人の設立を認めておりません。また、複数いた社員が一人となり、引き続き六カ月間その社員が二人以上とならなかったことをもって法人の解散原因とし、一人法人の存続も認めておりません。こういったことは、土地家屋調査士につきましても同様でございます。

 しかしながら、近年では、親と子の二人が社員となって司法書士法人、土地家屋調査士法人を設立、運営していた場合に、その親が亡くなったときには新たに司法書士あるいは土地家屋調査士を社員として加入させない限り法人を清算しなければならなくなるといった事態が生ずるなど、一人法人の存続を許容しないために法人制度の利便性が損なわれている、こういった指摘がされております。

 また、法人化によりまして経営収支状況等の透明性が確保されて、国ですとか公共団体が行います競争入札に参加しやすくなるといった利点も指摘されるなど、司法書士や土地家屋調査士の業務の拡大に伴って一人法人の設立等についてのニーズも高まっているものと考えられます。

 このようなことから、改正法案では、司法書士法人、土地家屋調査士法人につきましても、社員が一人であっても設立することができることとし、また、二人以上の社員がいた法人の社員が一人となった場合でも引き続き法人として存続することができることとしたものでございます。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 続きまして、所有者不明土地や空き家、空き地問題への対応についてちょっと質問させていただきたいと思います。

 私の地元の京都の北部地域でもそうなんですけれども、日本全体で高齢化と少子化が直面する問題であるということでございます。土地の利用価値や資産価値もだんだん下がっていく傾向にもありまして、例えば森林は、人口減少や林業の長引く低迷の中で、二十六年連続で林地価格が低迷している。宅地についても、一部の都市部を除いて、ほとんどの地方圏で下落傾向が続いているということでございます。

 所有者不明土地がふえている背景には、こうした状況の中で、手続に対する負担というものが土地の持つ資産価値よりも大きく感じられ、相続登記を放置するということがあるのではないかなというふうに思います。

 所有者不明土地や空き地、空き家問題などの背景には、任意となっている登記制度や、土地というものは昔から値上がりして当然だというような考えもあって、それが結局、上がらないということで、逆に価値が下がっているということもあると思います。そういうものが不明土地や空き家、空き地問題につながっているのではないか、そういうことから課題があるのではないかなというふうに思います。

 このような空き地や空き家問題、そして所有者不明問題に関しての国の認識はどのように思っておられるのか、お答えいただければと思います。

山下国務大臣 委員御指摘のいわゆる所有者不明土地問題あるいは空き家問題、これは深刻化していると認識をしているところでございます。こうした問題は、公共事業の例えば用地取得であるとか、森林の管理であるとか、あるいは住宅地における空き家の管理などさまざまな場面で問題になっておりまして、その対策は政府全体として取り組むべき重要な課題であると認識しております。

 このような問題が発生する主な原因として、相続登記がされないことがあるとの指摘がされておりまして、その背景事情の一つとして、委員御指摘のとおり、人口減少や高齢化の進展に伴う土地利用ニーズの低下等により資産価値が低下した土地などが生じて、相続登記の申請が任意であることと相まって、費用をかけてまで登記するインセンティブがない相続人がおられることが挙げられます。

 そこで、こうした問題意識も踏まえ、本年二月十四日に、私から法制審議会に対し、相続登記の申請の義務化や土地所有権の放棄を可能とする方策など、所有者不明土地の発生を予防するための仕組みなどについて、民法及び不動産登記法の改正に関する諮問をしたところであります。今後は、法制審議会民法・不動産登記法部会において、所有者不明土地問題の解決に向けて充実した審議が行われるものと考えております。

 これにつきまして、法務省としては、令和二年中に、民法、不動産登記法の改正を実現することを目指して、引き続きしっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 そんな中ではありますが、所有者不明土地問題や空き地、空き家問題に関しては、これらの問題の原因とされている相続登記未了問題などの解決のために、司法書士さんや土地家屋調査士さんの役割が過分に増しているのではないかというふうに思います。

 こうした問題に対して司法書士さんや土地家屋調査士さんに求められている専門的な知見というものはどのようなものを指すのか、また、求められる具体的な分野、そして役割についてお考えを聞きたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 所有者不明土地問題の対応ですとか、あるいは被災地における復興支援等に当たりまして、司法書士あるいは土地家屋調査士の方々の活躍というものが期待されているところでございます。

 具体的には、長期間にわたって相続登記がされていない土地ですとか、表題部の所有者の氏名又は住所等の全部又は一部が登記されていない土地についての登記名義人となり得る者の調査や探索、あるいは、震災等の地殻変動によって不明となった筆界の復元や探索といったようなさまざまな事業や取組を実施するに当たりまして、その専門的知見を生かした活動を担っていただくことが強く期待されているところでございます。

山本(和)委員 所有者不明土地や空き家、空き地に関する業務、今おっしゃられた被災地にかかわる業務というのは、大変必要性のあるものではありますけれども、若干やはり採算性には乏しいというふうにも思います。

 こうした状況の中で、政府として、所有者不明土地問題などの解消のために、何らかの予算措置とかそういうものの拡充の考えはあるのか、教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました各種課題を解消するために、本年度の予算で申しますと、例えば所有者土地問題に関して、長期相続登記未了土地の解消作業に必要な経費として約八億六千万円、表題部所有者不明土地の解消作業に必要な経費として約一億八千万円、それから、被災地における復興支援に関しまして、震災復興型登記所備付け地図作成作業経費として約五億二千五百万円をそれぞれ計上されているところでございます。

 法務省としましては、今後とも必要な経費の確保に努めていきたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 続いて、土地情報基盤の整備についても伺っていきたいと思います。

 所有者の所在の把握が困難な土地に関する探索や利活用のためのガイドラインでは、登記簿などさまざまな土地所有者情報の活用方法を述べておられます。相続による所有者の不在化もこれから更に広がっていくというふうに考える状況のもとで、実際にこれらの仕組みをどう運用していくのかというのは、まだまだこれからの課題であるのかなというふうにも思います。

 また、グローバル化する中で、土地や水や森林といった天然資源が国際的な投機対象になっているというふうにも思います。土地所有者の多様化そして不在化や匿名化という状況が加速する中で、根本的な対策が必要となっているのではないかなというふうにも思います。このような時代状況の中で、土地に関する情報基盤の整備は喫緊の課題ではないかというふうにも思います。

 日本には、土地情報基盤として、不動産登記簿、固定資産税の台帳、農地台帳、林地台帳などさまざまな台帳がありますけれども、もちろんこれを物理的に一元化するというのは難しいと思いますが、これらをどのように情報連携させるのかは大事な視点なのではないかなというふうに思います。具体的には、情報の標準化、そしてデータの相互性の担保、利用のルールの統一などが挙げられるのかなというふうにも思います。

 こうした土地情報基盤の整備についてお伺いしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 各行政機関が保有します各種の台帳がそれぞれ行政目的ごとに異なる状態のまま整備されていることが、所有者情報の円滑な把握を困難にして、所有者不明土地問題を助長した側面があるとの指摘がありまして、今後は、これらの情報の共通化や連携を行うことができる仕組みを構築することが重要であると認識しております。

 そこで、法務省としましては、関係省庁と連携しつつ、現在、不動産登記情報を、固定資産税課税台帳や農地台帳といった各種台帳を所管する省庁に対してオンラインで提供することができる仕組みの構築ですとか、各種台帳間の情報連携のため、連携に必要なデータ形式の見直しやシステム間の調整等について検討しているところでございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 続いて、改正案では、土地家屋調査士さんの保有する技能や情報を広く活用して、登記所備付け地図、いわゆる公図の整備の一層の促進を図るというために積極的な活用をというふうにもしております。活用が望まれる土地家屋調査士の保有する技能や情報とはどのようなものと考えておられるのか、また、登記所備付け地図の整備について、過去の実績やこれからの展望を教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、登記所備付け地図のさらなる整備を図るために、平成二十七年度を初年度とします新たな十カ年の作業計画を策定しまして、従前から行ってきております都市部における作業面積を拡大して実施するとともに、大都市の枢要部等や被災地についてもこの作業を実施しております。

 このような法務局における登記所備付け地図の整備に当たりましては、筆界の探索といった、土地家屋調査士の方が有する専門的な技能や知見をこれまで活用してきたところでございます。

 現在、法務省におきましては、今申し上げました新たな作業計画に基づきまして、大都市の枢要部や地方の拠点都市における地図の整備、あるいは東日本大震災等からの復興の加速化のための地図の整備の促進に精力的に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、作業の実施主体として、土地家屋調査士の方々の専門的知見を活用して、登記所備付け地図の整備を着実に推進してまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 先ほどのお話にもありました相続の登記の手続のオンライン化を進めるということはとても大事なことだと思うんですけれども、同時に、司法書士や土地家屋調査士などの専門家の補助を強化して、各種の手続がスムーズに進むような仕組みをつくっていくことも大変重要なことであるのかなというふうに思います。

 フランスでは、日本と違って、所有者不明の問題はほとんどないということでございます。その理由は、個人の相続については、ノテールという、公証人と呼ばれる民間の法律の専門家の関与が義務づけられているということでございます。日本の場合、現状では国全体に都市計画が適用されていないのかなという問題など、同様の制度の導入は大変難しいことではないかなというふうに思います。

 一方で、都市圏の空き地、空き家対策としては、専門家をもっと活用することが有効なのではないかなというふうに思います。日本の場合だと司法書士さんや土地家屋調査士さんだと思いますけれども、このような諸外国の仕組みも含めて、どのようにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 相続等の登記の申請人がこういった登記をスムーズに行うためには、申請人の実情によりましては、やはり登記の専門家であります司法書士や土地家屋調査士によるサポートが必要となることも少なくないと考えられます。

 そこで、これまで法務局におきましては、各地の司法書士会、土地家屋調査士会と連携して相続等の登記に関する無料相談会を実施したり、日本司法書士会連合会及び日本土地家屋調査士会連合会と共同して相続登記の促進に関するリーフレットを作成、配布するなど、申請人が必要に応じて司法書士や土地家屋調査士にアクセスすることができるような方策を講じてきたところでございます。

 先ほど御紹介ありましたとおり、諸外国におきましても専門家の関与といったような例があるところでございます。

 法務省といたしましても、今後も引き続き、日本司法書士会連合会及び日本土地家屋調査士会連合会と協力しつつ、必要かつ適切な場面において司法書士及び土地家屋調査士の活用が図られるように取り組んでまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 所有者不明土地や空き家問題、空き土地問題の解決に一番重要なことは、人口が減少して利用見込みのない土地の行き場をどうするかということだと思います。当面、利用見込みのない土地を誰が最低限の管理をして保全をしていくのかということだというふうにも思います。

 現在も、土地の寄附を受ける自治体は少ないけれども、自治体などが主体となって、積極的に土地の寄附を受け付けて土地をプールして、環境保全や里山の利用とか地域拠点などの資源として活用したり、地域にとって有益な、新たな活用者に譲渡できるような仕組みというのも必要なのではないかなというふうに思います。

 こうした土地の受皿整備の必要について、政府の考えをお聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 所有者が不動産を利用する意欲を失って、利用あるいは管理がされていない不動産が増加しておりまして、近年では、地方公共団体に対して、土地を寄附したいといった意向を有する所有者も多いとの指摘があることは承知しております。

 このような不動産が適切に利用されて、あるいは管理されるようにすることは政府全体として取り組むべき重要な課題でありまして、民法を所管する法務省では、現在、法制審議会民法・不動産登記法部会において、土地所有権の放棄を可能とすること等について検討を行っているところでございます。

 具体的には、土地所有権の放棄が認められますと、土地の所有者が一方的に土地の管理コストの負担を免れ、これを土地の帰属先機関の負担とすることになりかねないとの問題点があること等を踏まえまして、土地所有権の放棄が許されるための要件設定ですとか、放棄された土地の帰属先機関のあり方などについて調査、審議がされているところでございます。また、建物の所有権の放棄につきましても、この部会において取り上げられているところでございます。

 法務省としましては、法制審議会における調査、審議の状況を踏まえて、今後も引き続き、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 所有者不明土地問題は、ようやくその存在が社会問題として共有化されて、対策が始まったばかりだと思います。土地利用は、ある意味、国土の姿そのものを決めていくものだと思いますので、災害対応や地球環境の保全を踏まえて、しっかりとした国土全体の土地利用や、保全に関するマスタープランが必要な時期に来ているのではないかなというふうに思います。

 そんな中、土地家屋調査士さんや司法書士さんの役割は大変大きなものだと思いますので、その点も踏まえて、しっかりよろしくお願い申し上げたいと思います。

 これで終わります。

葉梨委員長 以上で山本和嘉子君の質疑は終了いたしました。

 次に、松平浩一君。

松平委員 こんにちは。立憲民主党、松平浩一です。どうぞよろしくお願いします。

 司法書士法、土地家屋調査士法の質疑の前に、済みません、先日の続きをさせていただきたいと思います。

 破産者マップの件なんですけれども、破産者の個人情報をネットで公開したという件、これについて、前、質疑させていただきました。そのときに大臣が、破産法に基づき公表された個人の情報に関して、その情報を取得した者がこれをどのように扱うべきかについては、個人情報保護法の規律によるというお話がございました。これは、規律はできていないんですね。

 どういうことかというと、これはその後の答弁にもあったんですけれども、オプトアウト手続、つまり、届出をしたら、破産者マップのような個人情報の公開ができてしまうという制度になっているんですね。

 具体的な答弁としては、こういったものでした。個人情報保護委員会の福浦事務局長から、届出を行って一定の要件を満たせば、本人の同意なく第三者へ提供することが可能ということだったんです。

 それで、このオプトアウト手続には除外事項がありまして、つまり、オプトアウト手続を行っても、本人の同意なく第三者提供はできないという除外事項がありまして、それは要配慮個人情報なんです。この要配慮個人情報に該当すればオプトアウト手続から除外されるということなんです。

 確認ですけれども、この要配慮個人情報は、オプトアウト手続されたとしても、本人の同意なく公開できないということでよろしいですね。

福浦政府参考人 個人情報保護法では、第二十三条第二項におきましてオプトアウト手続に基づく第三者提供について定めておりますが、委員御指摘のとおり、要配慮個人情報につきましては同手続の対象外というふうになってございます。

 これは、要配慮個人情報については、法第十七条第二項に基づきまして、取得の際に原則として本人同意を得ることが義務づけられているという趣旨に鑑み、対象とされたものとなってございます。

松平委員 そういうことであれば、もし破産者情報が要配慮個人情報に該当するということでしたら、オプトアウト手続をしても、破産者マップのようなことはできなくなるということになると思うんです。

 そこでお聞きしたいんですが、破産者情報は要配慮個人情報に該当するんでしょうか。

福浦政府参考人 お答え申し上げます。

 個人情報保護法第二条第三項に定めます要配慮個人情報とは、「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」を言います。

 委員御指摘の破産者情報については、破産したという事実それのみでは、現行の法令で定めます要配慮個人情報には該当しないんじゃないかというふうに考えてございます。

松平委員 該当しないという御答弁でした。

 今お話しいただいた条文は資料一でお配りしております。そうですね、具体的に政令で定めるというふうにもなっていまして、それで、その政令というものも載せています。この法律施行令の方の二条、こちらは一号から五号までありまして、これを見ると、この政令はやはり該当しないんですね。破産者情報はどこにも書いていないので、該当しないんですね。

 私は、この政令に破産者情報を入れるべきじゃないかなというふうに思っています。

 個人情報の保護の法律の方、二条の三項ですね、定義のところ、「その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの」と。破産者情報はこれに当たるんじゃないかなと思うんですね。破産者情報を開示すると、社会的評価を低下させてしまう、名誉を毀損してしまう、プライバシーを侵害する、これは本当に多くの専門家も言っています。生活の再建を阻害するものだと思うんですね。これは私にも多くの声が届いています。

 資料の二としてお配りしたんですけれども、こちらは全国青年司法書士協議会という司法書士さんの団体なんですけれども、こちらは破産者マップの電話相談を行われていらっしゃるんです。相談の内容を見ると、実際、近所の人が見ていないか心配であるとか、ひどく動揺していた、引っ越そうと考えている、就職活動をしているが、自分が破産したことがマイナスになることはあるかと、もう大変な心労があるようなんですね。

 ですので、私としては、先ほど申しました「その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの」にまさに該当する情報なんじゃないかなと思うんです。結論として、要配慮個人情報に含めるべきと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

福浦政府参考人 破産者の情報を要配慮個人情報に含めるべきかにつきまして、破産法において、裁判所は、破産手続開始決定をしたときは直ちに公告しなければならず、公告は官報に掲載してするものと規定されている趣旨についても十分勘案する必要があると認識しておりますが、当委員会では、三年ごとに見直しを行うとする法附則の規定に基づきまして、現在、法の施行状況について検討を行っているところでございます。

 現時点ではまだ具体的な方向性は決まってございませんけれども、個人情報保護に関します国際的な動向、技術の進展、産業の発展等を勘案しながら、各方面の御意見も十分聞いてまいることといたしておりまして、必要に応じて適切な対応をとってまいりたいと考えております。

松平委員 先ほど官報で周知する趣旨をおっしゃっていただいたんですけれども、この趣旨を考えると、知れている債権者に知らせるという趣旨であって、決して公開するという趣旨ではないと思うんです。ですので、今私もお話しさせていただいた、大変な不利益をこうむるという点をぜひ鑑みて御検討いただければなというふうに思っております。

 それでは、司法書士法、土地家屋調査士法の改正について質疑させていただきます。

 今回、戒告の処分について、聴聞手続を実施するという改正がなされることになっています。この戒告の処分は弁護士法でもあります。それで、この弁護士法で戒告の処分、例えば、弁護士法で戒告された、事実関係が違うとか、争いたい場合が出てくると思うんです。そういったときに、弁護士法では、自分が受けた戒告処分を裁判所に訴えて処分を争うということができる、そういう弁護士法の規定があるんですね。弁護士法六十一条なんですけれども、そこで訴えを提起して争えるという規定があるんです。私は、この規定は当然といえば当然だと思うんです。

 そこでお聞きしたいんですけれども、司法書士法、あと土地家屋調査士法、これらについてはこういった訴えの提起で争えるという規定が見当たらないんですね。そこで、今、まだ改正される現時点において、戒告について取消し訴訟を提起することができるのか、教えていただけますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 従来、司法書士又は土地家屋調査士に対する戒告は、名宛て人に対して法律上の効果を生じないことなどを理由に、行政事件訴訟法第三条第二項に言う「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらず、戒告を受けた者は、当該戒告について取消し訴訟を提起して争うことはできないと解されてきたものと承知しております。

松平委員 できないということでした。できない。

 今回の改正法を見ましたけれども、こちらでも取消し訴訟を提起できるという規定は盛り込まれていないんです。ただ、聴聞の機会は与えられた。

 この改正によって、では、戒告がなされた場合、争うことができないままなのか、できるようになったのか、教えてもらってもいいですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、この改正法案におきましては、戒告処分についても聴聞を行わなければならないこととする規定を設けております。この規定を設けることで、この戒告処分が行政手続法上の不利益処分に位置づけられるものとなることを前提としております。

 このことも踏まえますと、改正法案の施行後において、改正後の規定に基づき、司法書士、土地家屋調査士が戒告を受けた場合には、戒告を受けた者は、当該戒告について取消し訴訟を提起して争うことができると考えられます。

松平委員 どうもありがとうございます。明確になってすごくよかったと思います。理解できました。今後は取消し訴訟を提起できる、今までできなかったけれども、今回の改正でできるようになったということで理解いたしました。本当によかったと思います。

 ただ、結論はいいんですけれども、やはり納得いかない点がありまして、納得いかないというか、なぜかなと思う点がありまして、先ほどの御答弁で、戒告は法律上の効果が生じないので取消し訴訟はできませんよという話だったんですけれども、聴聞手続を設けたら取消し訴訟ができるようになる。戒告に法律上の効果が生じないというのは変わらないような気がするんですけれども。

 今、資料三というものもお配りしています。これは東京地裁の判決なんですけれども、こちらは戒告について述べられた裁判例です。

 一行目のところに、「戒告とは、当該司法書士に対し、その非行の責任を確認させ、反省を求め、再び過ちのないように戒めることである。」と書いてあります。そして、「戒告に伴って生ずる法的効果を定めた規定はない。」というふうに書いてあります。だから、先ほどおっしゃったように処分ではないという話ですね。

 今回の改正で戒告の内容が変わるわけじゃないと思うんですね。日弁連のホームページを見ると、弁護士会も戒告をやっていますけれども、そこでは、戒告とは何かというと、反省を求め戒める処分と書いてあるんですね。司法書士法の戒告も、今申し上げたように、その非行の責任を確認させ、反省を求め、再び過ちのないようにすることと。これは同じなんですね。にもかかわらず、今まで弁護士法で争うことができたというのは、立法があるからだったと思うんです、規定があるから。

 だから、私は、本来の筋でいうと、やはり規定を本当は設けるべきだったんじゃないかな。いや、争うことはできるという結論は賛成なんですけれども。

 今回、使命規定を入れましたよね。司法書士は、「法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」そして、土地家屋調査士は、「専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もつて国民生活の安定と向上に資することを使命とする。」こういった立派な使命を持つわけなので、戒告された場合に、自分の信念に反する場合であるとか事実関係を争う場合、これは争う機会を与えるべきということで、私は本当に賛成なんですけれども、聴聞の手続を入れたから取消し訴訟ができるようになったというのはちょっと疑問があるということは申し述べさせていただきたいと思います。あくまで立法手当てはした方がいいんじゃないかというふうに思っております。

 次に行きます。

 日本司法書士連合会は、平成二十三年に法改正要望として司法書士法改正大綱というものを取りまとめております。そこに、司法書士の業務の見直しというものが項目としてありました。ただ、今回の改正では含まれていないようなんです。

 こういった業務範囲の問題として、隣接士業の問題というのは結構あちこちで言われております。

 また日本弁護士連合会のホームページなんですけれども、こちらも資料四としてお配りしています。これの二行目ぐらいですかね、「隣接業種の人が職務を行える範囲は、それぞれの法律の中で規定されていますが、法律の規定が必ずしも明確ではないこともあって、本来、隣接業種の人が取り扱えない職務を行っている事例が見受けられます。中には、職務範囲ではないことを知りながら職務範囲外の職務を行っている例もあります。しかし、これではこのようなサービスを受けた人の権利や利益が充分に守られないことになります。」ということで、職務範囲を明確にする必要があるということも記載されております。

 本当にそのとおりだと思います。やはり職務の範囲を明確にして、各専門家が専門家同士であつれきなく職務を行う、協力し合ってサービスを提供するというのが国民にとってもいいことだと思うんです。やはり、後からその資格でできなかったということがわかると、依頼した方も不利益をこうむるということになってしまうと思うんです。

 私が一つ驚いたのが司法書士と行政書士の業際の例なんですけれども、行政書士法の規定で、権利義務又は事実証明に関する書類について、行政書士が作成できると条文上されております。結構ざっくりした規定なんですけれども、だからこそ業際がわかりにくくなっているんじゃないかなと思います。

 資料五で、これは結構昔なんですけれども、昭和三十九年ですね、民事局長回答があるんですけれども、四角で囲った部分、こちらは結構いろいろ書いてあるんですけれども、つまり、この民事局長回答によると、会社の設立については、定款など各書類の作成は行政書士の業務だと。ただ、会社設立申請というのは司法書士の業務だと。

 これは、設立登記の申請は司法書士で、定款とかほかの書類の作成は行政書士だと、会社をつくりたいという国民の利便性の点からいってどうなのかなと思うんです。

 ですので、実際の現場で、司法書士さんが、登記申請だけじゃなくて、登記に係る書類作成とか定款作成を行っていると思うんです。そうであれば、逆に、行政書士の方も、定款作成だけじゃなくて、登記申請を認めてもいいような気もしてくるんですね。

 なぜかというと、その方がワンストップサービスで利便性がいいからなんです。やはりこれからは国民の視点とか利用者の視点で考えていくべきなんじゃないかなと思うんです。そういう意味でいうと、相互の専門家の業界の垣根というのは低くしていってもいいんじゃないかなというふうに思います。

 今回は司法書士法の改正なので司法書士中心に申しますけれども、司法書士と弁護士の業際もそうだと思うんですね。百四十万円の範囲で簡裁の代理権が司法書士に与えられたということなんですけれども、この範囲について最高裁まで争われているんです。

 平成二十二年に一審が、訴えが提起されました。最高裁で結論が出たのが平成二十八年の夏なんです。結論まで六年かかっている。最高裁で争われるような話じゃなくて、本来は立法で解決すべき話だったんじゃないかなというふうに思います。

 一応詳しく言っておきますと、何が争われたかというと、百四十万円を超えるか否かのところで、結局、個々の債権ごとに、委任者、受任者である認定司法書士との関係だけではなく、和解の交渉の相手方など第三者との関係でも、客観的かつ明確な基準によって決められるべきであるという判示だったんです。本当によくわからないですね、依頼者にとっては。それで、やはりこれは立法で解決すべき、その方がすっきりするんじゃないかなというふうに思っております。

 そこで、大臣、こういった士業の隣接業際問題に今後法務省として取り組む方針などありましたら、御見解をいただいてもよろしいでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 いわゆる業際問題についてのお尋ねでございますが、専門職者につきましては、それぞれの法律に基づいてその業務を行うということで認められているというところでございます。その業務の範囲につきましては、その法律で定められたところに、一般論で言えば、我々は合理性を見出しているところでございます。

 そして、そういった業務の拡大に向けた見直しについては、そういった専門士業あるいは職者を取り巻く社会情勢の変化を踏まえつつ、引き続き、関連他士業との相互連携の状況なども慎重に見きわめながら、各専門職者がその専門性を発揮して我が国社会に貢献していくことができるよう、検討をしているところでございます。

 他方で、我が国においては、複数の専門職者がそれぞれの専門性を遺憾なく発揮して利用者に対して法的なサービスを提供しておって、このようなそれぞれの専門性を踏まえた役割分担は重要でありますが、一方で、連携も非常に国民にとっては利便性のあるものだと考えております。

 法務省としては、私が今言ったような立場を前提としながら、例えば、各専門職者の団体においても、それぞれの資格者の専門性を国民にアピールし、利用者が円滑に資格者から法的サービスを提供を受けられるようPR活動を行っているところについて、連携と協力を図っているというところでございます。

 今後も、利用者が適時に各専門職者から適切なサービスの提供を受けることができるよう、関係機関とも連携しつつ、必要な情報を利用者が取得することができるよう取り組んでまいりたいと考えております。

松平委員 利用者から見てわかりにくい、だからわかりやすくした方がいいんじゃないか、そういった問題提起でした。

 それでは、次のトピックに移らせていただきます。

 米国で通称CLOUD法と呼ばれている法律が、二〇一八年の三月に成立いたしました。これは簡単にどういうものかと言いますと、民間企業が保有する電子通信データに国境を越えてアクセスを簡単にできるようにするということを目的とした法律なんです。正式には、日本語で言うと、海外データ合法的使用明確化法という法律です。

 クラウドと聞くと、ネット経由でデータベースとかストレージとかを利用できるサービスというものをイメージする人が多いと思うんですけれども、今言っているこのCLOUD法のクラウドというのはそのクラウドではなくて、クラリファイイング・ローフル・オーバーシーズ・ユース・オブ・データの頭文字をとったCLOUDということのようです。

 これは具体的に言うと、企業がアメリカに拠点を置いていると、アメリカの企業のサーバーが国外にあってもデータへのアクセスを要求することを可能とするものなんです。

 この法律ができたのが、背景として、マイクロソフトのサーバーがアイルランドにあった、米国の差押令状でアイルランドにあるサーバーのメールにアクセスしようとして可否が争いになった。それがきっかけだったんですね。それでできた法律なんです。

 この問題は日本でも他人事じゃないです。東京高裁で判決も出ているんですね。この判決はどういった事案かというと、警察が、被告人のパソコンを対象とする検証令状はあるんですけれども、その検証令状で被告人のメールサーバーにアクセスして送受信メールをダウンロードして保存する、そういう検証をした事案なんですね。それで、判決では、パソコンに対する検証令状でリモートアクセスするというのは違法とされてしまいました。

 ここからがつながるんです。その判決文でどう書いてあったかというと、サーバーが外国にある可能性があったのであるから、捜査機関としては国際捜査共助等の捜査方法をとるべきであったというふうに指摘されているんです。

 そこでお聞きしたいんですけれども、当然被告人の同意がない場合を前提としまして、刑訴法二百十八条二項によるリモートアクセスによるメールデータ入手の場合、海外に仮にサーバーがあった場合、そのメール捜査について刑訴法上可能なのかどうか、どう考えていらっしゃるのかお聞きしたいと思います。

小山政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事訴訟法二百十八条二項におきまして、捜査機関は令状により差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって、当該電子計算機で作成、変更をした電磁的記録等を保管するために使用されていると認められるものから、その電磁的記録を他の記録媒体等に複写した上、これを差し押さえることができることとされております。

 捜査機関におきまして、この規定により、他国の領域内にある記録媒体のデータに直接アクセスしてこれを複写することができるか否かにつきましては、当該他国の主権を侵害するか否かによると考えられるところでございますが、この点につきまして国際的に統一した見解があるわけではないものと承知しております。

 それで、サイバー犯罪条約三十二条という規定がございまして、どのような場合にこのようなアクセスが許されないこととなるかは明示はしておりませんで、そのデータが公に利用可能な蔵置されたものである場合、又はコンピューターシステムを通じてそのデータを開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合には、締約国は他の締約国の許可なしにそのデータにアクセスすること等ができるとするにとどまっているところでございます。

 したがって、お尋ねの点でございますが、これについてのお答えを一概にすることは困難でございますが、その上で申し上げますと、望ましい運用といたしましては、電磁的記録を複写すべき記録媒体が他国の領域内にあることが判明した場合におきまして、先ほど申しましたサイバー犯罪条約の三十二条によりアクセス等をすることが許されている場合に該当しないときには、当該他国の主権との関係で問題を生じる可能性もあるわけでございますので、この処分を行うことは差し控え、例えば捜査共助を要請することなどが望ましいのではないかと考えられるところでございます。

松平委員 どうもありがとうございます。主権との関係で差し控えることが望ましい、捜査共助を行うということでした。

 捜査共助、もちろんそれが望ましいんでしょうけれども、聞くと、依頼件数が主要国で膨大な数になっちゃっている。捜査共助を頼んだら十カ月ぐらいかかってしまうと聞いたこともあるんです。そんなことをしていたら捜査が進まないじゃないかと思っちゃうんですね。

 今、データはクラウドになっていて、世界じゅうにデータの置く場所が割り振られちゃっているんですよね。しかも、普通、データサーバーがどこに置いてあるかなんて、企業秘密でわからないようになっているんですよ。ですので、サーバーが海外にあるというだけで、主権との問題でアクセスできないので差し控える、つまりメール捜査ができないというのは、私はこれは大変なことなんではないかなと思います。メール、サーバーが絡んだ犯罪を捜査することというのが事実上できなくなっちゃうんじゃないかなというふうに思っちゃうんですね。

 そもそも、私は、サーバーへのアクセスというのは主権を侵害することに果たしてなるのかどうかというところも疑問なんですよね。実質上アクセスするだけなので、何の主権侵害もないと思うんですよね。ですので、あえてここで、データサーバー設置国、どこが設置国かもわかりませんよ、そこの主権を侵害するという考えをする必要はないんじゃないかなというふうに思います。

 私は、その立場を明確にしたのが先ほど申し上げた米国のCLOUD法だと思うんです。今のままでは、刑訴法上、海外サーバーにアクセスできるかわからないということで、この疑義をなくすために、米国と同じように立法措置をとるということも考えてもいいんじゃないかなと思います。

 私は、こういった問題は、当然、日本だけじゃない、米国では対応しましたけれども、同じ問題がほかの国でも同様に起きてくる問題だと思います。ですので、世界的な枠組みの必要性というのはあると思います。米国はCLOUD法でほかの国のサーバーものぞけるのに、ほかの国はだめというのはおかしいと思うんですね。

 ですので、この辺の枠組みの設定といいますか国際協調というところを、ぜひリーダーシップを発揮して問題に臨んでいただきたいなと思っています。その点、大臣に御所見を伺いたいというふうに思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 米国CLOUD法というのが米国国内法上どういう手続かという部分もございます。

 他方で、やはり、国外に犯罪の証拠が所在するような場合、それがデータでありましても外国の主権に配慮しつつ証拠を入手する必要がある。これは国際法的な観点が必要でございまして、その証拠を入手する手段としては、捜査共助というのが有用な捜査手法であるということでございます。

 実は、私は、欧州評議会サイバー条約の交渉担当官でございまして、また、日米刑事共助条約、あるいは日・EU刑事共助協定、これも交渉を担当した者でございまして、それについては本当に必要性は感じておるところでございます。

 確かに共助は時間がかかるということではございますけれども、共助条約を締結することによって、当局同士で直接やりとりを行うことによって、より迅速な捜査共助も行うことが可能であろうというふうにも考えております。

 我々法務省としては、外務省など関係機関等の協力もいただきながら、より多くの国との間で迅速な捜査共助を可能とするため、さらなる二国間の条約の締結に努めてまいりたいと考えておりますし、また、その迅速な運用についても当局間でしっかりと働きかけたいというふうに考えております。

 また、国連等の国際会議の場においては、捜査共助の迅速化や、迅速な対応を可能とする国際協力体制の構築の必要性が各国の共通理解となっているということでございますので、各国と連携して、迅速な証拠の取得、特にサイバー証拠の取得に努めてまいりたいと考えております。

松平委員 どうもありがとうございます。

 実は、米国のCLOUD法の制定で、日本企業が日本法と米国法の間で板挟みになってしまうという問題もあるんです。CLOUD法で、令状で顧客の個人情報の開示要求を受けた場合、日本の個人情報保護法上の問題も生じるという問題もあって、この辺も議論したかったんですが、時間が来てしまいましたので、またの機会とさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で松平浩一君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 国民民主党の源馬謙太郎です。

 きょうは、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案の質疑ということで質問させていただきます。

 参議院先議でさまざまな議論もされてきて、そして、方向性としては反対するようなところがない法律だと思います。そういった意味からも、そもそもの、少し大枠な、法律改正することによってのメリットとか、どう変わっていくかというようなことなどについて、基本的なことからまず聞いていきたいと思います。

 まず最初に、第一条の目的規定を使命規定に変更する点についてですけれども、これまでも議論されてきたとおり、多くの法律において、大抵、第一条には目的規定を掲げているけれども、実は、使命規定になっているというのはそんなに多くはない中で、例えば、弁護士や税理士、弁理士や公認会計士などの士業の分野では、こうした使命目的を掲げているものもございます。

 近年、今回のこの法律案のもともとの概念で、やはり司法書士の先生方と土地家屋調査士の先生方の業務内容というのが非常に広がっていて、社会におけるその役割も非常に増してきている。こういった意味での改正だと思いますが、まず初めに、本当に基本的なことを伺いますけれども、この法律案で司法書士法及び土地家屋調査士法のそれぞれの目的規定を改めて使命規定にしたその背景と、同時に、なぜこれまで使命が規定されていなかったかという理由について、まずは政務官にお伺いしたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたさせていただきます。

 現行法におきましては、五十三年の法改正の際に新設されたこの法律では目的規定を定めていたものでございます。その後、委員ももう既に御指摘されていましたけれども、司法書士、土地家屋調査士は、専門的資格者としてその職域を確立し、また、近年ではその業務範囲が拡大し社会において重要な役割を果たすようになってきているわけでございます。また、最近では、所有者不明土地問題の解決等のために登記制度の適正化が重要な課題となっておりまして、その専門職者としての職責は極めて重くなっているという背景がございます。

 このような状況を踏まえると、司法書士、土地家屋調査士が我が国の社会において専門家として認知されていることを前提に、その使命を明らかにする規定を設けることにより、個々の司法書士、土地家屋調査士の方々にみずからの使命感と職責を更に高めていただき、そして、幅広い分野において活躍していただくことは極めて重要であると考えられるわけでございます。そこで、今般、司法書士法及び土地家屋調査士法に使命規定を設けることとしたものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 御答弁どおり、やはり役割は非常に大きくなって、その意義も大変大きくなっていると思いますので、法律で定めるだけでもなく、まさに司法書士そして土地家屋調査士の皆さんが働きやすい、そしてその使命を果たしやすい環境づくりにも、ぜひ力を入れていただきたいなと思います。

 さらに続きまして、また基本的なことを伺いますが、今回の法律案で司法書士及び土地家屋調査士法人が一人法人を容認することになっていると思います。他の士業においては、弁護士と社会保険労務士は一人法人が容認されていますが、弁理士や税理士、行政書士は二人以上とされていると承知をしています。

 今回、この司法書士及び土地家屋調査士法人について、平成十四年の改正の際には一人法人を容認しなかった経緯があったと思いますが、そのときのその背景と、そして今回は容認することになった、この意義と背景を伺いたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のように、改正法案では、司法書士法人及び土地家屋調査法人が、社員が一人であっても設立することができることとし、また、法人設立後、社員が一人となった場合であっても、引き続き法人として存続することができることとしているわけでございます。

 これまで一人法人が認められなかった理由でございますけれども、司法書士法人、土地家屋調査士法人の制度は、平成十四年の司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律によって新たに導入された制度で当時はありましたけれども、この当時には、一人法人の設立、存続を認める必要性に乏しいと判断されたため、これを許容することはしなかったものでございます。

 しかしながら、近年では、一人法人を許容しないために法人制度の利便性が損なわれているということが指摘されているわけでございます。そこで、本改正法案では、社員が一人である司法書士法人、土地家屋調査士法人の設立、存続を認めることとしたものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 当時と比べて一人法人のニーズが高まってきたということだと思いますが、この一人法人、ニーズに対応して認めることというのは望ましいことだと思うんですが、法務省が考える、一人法人を容認することによってのメリットというのは、どういったところに、司法書士や土地家屋調査士の皆さんにあるとお考えなのか、所感を伺いたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 一人法人を許容しないことによる不都合の例としましては、例えば、これは既に局長の方でも答弁しておりますけれども、親と子の二人が社員となって司法書士法人、土地家屋調査士法人の設立、運営をしていた場合に、その親が死亡したときに、新たに司法書士、土地家屋調査士を社員として加えない限り法人を清算しなければならないといった事態が生ずるということが指摘されているわけでございます。

 一人法人をもしこれで認めた場合には、このような不都合が解消されるという具体的なメリットが生じます。

 また、一般的に、法人化することによって経営収支状況の透明性が確保され、国や公共団体が行う競争入札に参加しやすくなるといった利点も指摘されており、社員一人であるケースについても、このような利点を享受させることができるというメリットが生じるわけでございます。

 そこで、改正法案では、社員が一人である司法書士法人、土地家屋調査士法人の設立及び存続を認めることとしたものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 続いて、本改正案の中では、業務の範囲については変更がないということだと思うんですけれども、先ほども質疑がありましたけれども、ほかの士業との境目ももちろん考えていかなくてはいけない中で、いろいろな業務がこれからふえてきて、司法書士の先生方あるいは土地家屋調査士の先生方が担っていけるような業務の範囲というのも、必ずしも限定されるものではなくて、広がっていく可能性もあると思うんですね。

 こういった業務の拡大に向けた見直しの可能性も含めて、法務省の御見解を大臣から伺いたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 司法書士の業務範囲については、これまで、司法制度改革審議会意見なども踏まえて、例えば、平成十四年の司法書士法の改正により、簡裁訴訟代理に関する業務が新たに追加されております。また、平成十七年の司法書士法の改正により筆界特定制度が創設された際にも、司法書士は、一定の価額以下の土地に関する筆界特定手続の代理業務も業務範囲に加えられているところでございます。

 このように、法務省においては、これまで司法書士の業務範囲を必要に応じて拡大してきているところでございます。

 そして、司法書士の業務のさらなる拡大に向けた見直しにつきましては、司法書士を取り巻く社会情勢の変化を踏まえつつ、引き続き、司法書士と関連他士業との相互連携の状況なども慎重に見きわめながら、各専門職者がその専門性を発揮して我が国社会に貢献していくことができるよう、検討を深めてまいりたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 続いて、これも何度か質疑に出てきましたけれども、所有者不明土地問題あるいは空き家問題というのは非常に大きな問題になっていて、本委員会でもたびたび議論をされてきました。表題部不明土地の問題も議論をされてまいりました。

 そういった中で、司法書士やあるいは土地家屋調査士の先生方が、不動産登記の専門家でもいらっしゃいますし、こうした問題の解決にとっては重要な役割を担うと思うんですけれども、改めて、先ほども質問ありましたけれども、所有者不明土地問題や空き家問題に対して、司法書士あるいは土地家屋調査士の先生方の関与を、どのように関与してもらうことを期待をして、どのような効果を期待されているのか、政府に伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 司法書士及び土地家屋調査士は、それぞれ、不動産登記のうち、権利の登記と表示の登記の専門家として幅広く活躍されておられまして、これまでも、所有者不明土地問題や空き家問題等に関しても重要な取組をされてきておられます。

 例えば、所有者不明土地問題に関しましては、司法書士は、相続登記の促進のための取組を法務局と連携して行ってきているほか、平成三十年十一月に一部施行されました所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に基づいて進められております、長期間にわたって相続登記がされていない土地についての登記名義人となり得る者の調査の実施等に関しましても、その主たる担い手となっておられます。

 また、土地家屋調査士は、これまで相続登記の促進のための取組を法務局と連携して行ってこられているほか、この国会で成立いたしました表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律で創設されます所有者等探索委員の主要な担い手としての活躍も期待されます。

 また、空き家問題に関しましても、司法書士及び土地家屋調査士は、それぞれの専門的な知見を生かして、市町村が設置します空き家対策協議会の構成員として参画するなど、空き家対策の推進に積極的に協力しているところでございます。

 またさらに、二〇二〇年中に所有者不明土地問題の解決に向けた民法・不動産登記法の見直しを行うこととされておりますけれども、この検討の過程におきましても、司法書士及び土地家屋調査士は、不動産登記の専門家として積極的に検討に参加され、有益な御提言をいただけるものと期待しているところでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 次に、ちょっと質問の順番が前後しますが、通告で最後にしている部分について伺いたいと思います。

 昨年の八月に、経済産業省から法務省に対してグレーゾーン解消制度による照会がされたというケースがあったということございます。ウエブサイトを通じたサービス上で、利用者に本店移転登記手続に必要な書類を洗い出すための質問をして、利用者の判断でそれを回答して、一義的な結果をウエブ上に表示して、そして、利用者が入力した情報を自動的に本店移転登記の書類として生成するというウエブサービス、これを経産省から、グレーゾーン解消制度による照会が法務省にされた。

 このことについて法務省からは、株式会社の本店移転の登記に必要となる登記申請書、印鑑届書等を利用者が登記所に提出するためだけに作成する場合に限定されていて、個別の事案において利用者からの依頼に基づき個別具体的なアドバイスをするようなものでない限りにおいて、確認の求めのあった法令の条項との関係においては実施可能である、こういう回答をしたという経緯があったと承知をしています。

 本来、関与すべき専門家の実体が伴わない登記が、こうしてウエブ上でいろいろ、いわば勝手にできるようになれば、もちろん利用者にとって便利なところはあるかもしれませんが、こうした登記制度に対する信頼自体が低下をしたり、あるいは、その先を言えば、企業取引自体に悪影響を与える可能性もあるんではないかというような指摘もございます。

 そこで、こうした経済産業省のグレーゾーン解消制度によって、ウエブサイトを通じたサービスによって、この本店移転登記に関する実質的なアドバイスや書類作成が可能となってしまいましたが、これについての法務省の今の見解、司法書士法に違反していないという御見解なのかどうか、参考人に伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の当省の回答でございますが、まず、一般論として、事業者がウエブ上に本店の移転の登記の申請をするのに必要な一定の入力フォームを用意し、その上で、利用者が自己の判断に基づきその入力フォームに用意された項目に一定の事項を入力して登記申請書を作成するという作成支援行為や、その際に、一般的な法解釈を踏まえたQアンドAを用意すること自体は、司法書士法違反には該当しないとしております。

 他方で、個別具体的な事案に応じて、入力内容についての相談を受け、入力内容を具体的に教授する行為は、司法書士法第三条第一項第五号の事務に該当するおそれがあるとした上で、商業登記の申請書に添付すべき書面は、株式会社の機関設計等に応じて異なるのが一般的であり、個別具体的な事案に応じて必要となる添付書面やその内容について相談を受けることは、司法書士法に違反するおそれがある旨を明らかにしております。

 その上で、結論として、委員御指摘のとおり、本件の事業は、株式会社の本店移転の登記という特定の登記に必要となる登記申請書、印鑑届書等を利用者が登記所に提出するためだけに作成する場合に限定されていることを前提として確認した上で、さらに、個別の事案において利用者からの依頼に基づき個別具体的なアドバイスをするようなものでない限りにおいてとの条件を付して、司法書士法との関係で、実施可能であるとしたものでございます。

 法務省としましては、このように、今回の回答により、実施が許容される事業の範囲は今申し上げた条件を満たす場合に限られるものと回答しているところでありまして、仮に個別の事業者においてこの範囲を超える事業を実施した場合には、司法書士法第三条第一項所定の事務を司法書士でない者が行ったものとして、厳格に対処する必要があるものと認識しております。

 法務省としては、サービス内容や宣伝広告の内容を含めたこのような事業活動の実態を注視し、司法書士法等に抵触することがないかどうかを見きわめた上で、違法な行為を認知した場合には、関係機関及び関係団体と協力しつつ、適切に対処してまいりたいと考えております。

源馬委員 個別のケースによってもちろん違うということは当然だと思いますが、やはり、じゃあ、そのウエブサービスを運営している人がどんな資格を持っているかですとか、ユーザーとのやりとりの中でそうした違反に当たるようなサービスを行っていないかなどは、把握するのもなかなか難しいと思うんですね。

 司法書士の先生に伺ったときも、同様のウエブ上のサービスが、少なくとも八つぐらい今存在しているという御認識も持たれていらっしゃいまして、こういうのがどんどん進んでいくと、一方で利用者は便利な側面もあるかもしれませんが、こうした士業の先生方の専門性ですとか職を脅かすことにもつながりかねないので、こういったものというのはウエブ上ですとどんどんどんどん出てきて、なかなか追いかけるのも難しくなってしまうところもあると思うので、ガイドラインを設けるなりなんなりして、適切に対応していただけたらなというふうに思います。

 続いて、通告の順番を戻りまして、六つ目の質問をさせていただきたいと思います。

 これも先ほどほかの委員からも質問がありましたが、研修制度についてです。

 例えば税理士の場合は、税理士試験に合格した後に二年以上の実務経験を積むことが必須の要件というふうにされておりますが、司法書士には現在このような制度がありません。

 こうしたことも踏まえて、これも繰り返しになりますが、司法書士においても、こうした一定の研修の修了を義務づけるですとか、そういった方向も検討可能ではないかと思いますが、このあたりの法務省の御見解を伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 司法書士につきまして、委員御指摘のとおり、一定の研修の修了を義務づけるといったような措置を講ずるべきである、こういう指摘があることは承知しております。

 もっとも、現在、日本司法書士会連合会や各司法書士会におきましては、司法書士試験合格後、登録前の研修が自主的に実施されておりまして、研修生の受講意欲の向上に向けた研究や工夫も重ねられているものと承知しております。そのような自主性を尊重することも重要であると認識しております。

 法務省としましては、今後も、日本司法書士会連合会等の関係団体と連携しつつ、司法書士の資質を担保するための方策について検討してまいりたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございました。

 終わります。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、森田俊和君。

森田委員 国民民主党の森田でございます。二十分のお時間をいただいております。よろしくお願いいたします。

 最初に、先日の、川崎の登戸の事件がございました。まだその詳しいことはわかっていない状況ですので、関連したことを聞きたいとは思いながらも、そこに直接関係するということよりは、もうちょっと広く捉えたお話をさせていただきたいなと思っているんですけれども。

 やはり、ああいう事件を見たときに、私たちは、例えば安全対策をこうだとか、あるいは犯罪者に対する厳罰化だとか、そういうことを考えるんですけれども、いわばそれは短期的な視点というか、あるいは対症療法的な視点ということであって、氷山からすれば、犯罪として目に見えてくる部分というのは本当の上の一角ではないかなというふうに思っております。

 私たちがこれから中長期的に考えていかなければいけないなと思っているのは、やはり氷山の下の部分をいかに小さくしていくかということを考えていきたいなと思っておりまして、というのは、やはり心の闇というものをいかに少なくしていけるかなということだと思っています。

 闇というのはどういうところにできるかといえば、やはり影であって、影はどこにできるかといえば、壁であったり障害物があったり、大きく立ちはだかるものがあれば、そこに影ができて、暗いものができる。この大きく立ちはだかっているものというのは一体何なんだろうなと思うんですけれども、私は、周りからのいろんな形での押しつけというか、価値観を周りから押しつけるというのが非常に大きな壁になってくるのではないかなと思っておりまして。

 というのは、例えば、いい大学に入りなさいよとか、いい就職しなさいよとか、あるいはスポーツであればプロになりなさいよとか。だけれども、そういうことを言っても、なれる人はほんの一部であって、何が大事かといえば、やはり、その人の持っている力を、それが社会的に大きく捉えられているか小さく捉えられているかは別にして、やはりその方が生かせるところというものを温かく見守って、その人の力を引き出せるような、そういう社会をつくっていくべきだろうなと思っています。

 追いつけ追い越せでやってきた、富国強兵とか、その後、高度成長の時代は、ある程度一つの目標に向かってがあっとみんなでやっていくということが必要だったかもしれませんが、やはり私たちは、ここに来て、ひとつ立ちどまって、そういうふうに私たちの国のあり方、社会のあり方というものを考えるべきではないかなと思っております。

 ぜひ、追い込まない、誰もが生き生きと暮らせるような社会をつくっていきたいなと思うんですけれども、ぜひ大臣の、これは個人的なことでも構わないと思っておりますので、その辺の御所見を伺えればと思います。

山下国務大臣 まず、今般の川崎市内で発生した殺傷事件でお亡くなりになられた二名の方々の御冥福、そして負傷された皆様の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。

 お尋ねの事件については現在警察において捜査中ということでございまして、事件を前提とした所感を述べることは差し控えたいと考えております。

 その上で、委員御指摘の点につきまして、私も議員として、心理の専門職の国家資格化、これは必要であろう、そういったこともありまして、公認心理師法の議員立法の策定にもかかわらせていただいたところでございまして、追い詰めない、生きやすい社会実現というのは、議員個人としては非常に重要であろうと思っております。

 ただ、今、法務大臣としてこうやって立っておりますので、法務行政の観点から申し上げますと、法務行政は、法秩序の維持を図るとともに、国民の権利を擁護するという重要な役割を担っているところでございまして、私は、法務大臣として、引き続き、国民の皆様の全ての活動の基盤となる安全、安心を実現するとともに、誰もがお互いの人権を大切にし、支え合う、誰一人取り残さない社会を実現するため、関係省庁と連携しながら取組を進めてまいりたいと考えております。

 委員の御指摘については、まさに国民の皆様が安全に安心して暮らせる、一人一人の人権が尊重される社会を実現していることが必要であるという意味において、私も重要であると考えております。

森田委員 こういうところにおりますと、短期的なところにどうしても目が行ってしまうんですけれども、やはり私たちの一番大事な仕事というのは、この日本という国をどこに持っていくべきなのかというのを常に考えて行動することだと思っておりますので、ぜひまたこういったことについても折に触れて議論をさせていただければ大変ありがたいと思っております。

 今回の法案について、たまたま私は、住んでおります熊谷の司法書士さん、あるいは土地家屋調査士さんに聞いてきました。柴先生という、今年度から埼玉県の司法書士会の会長さんになった方がたまたま熊谷にいらっしゃったりとか、あるいは関根さんという土地家屋調査士さん、もともと埼玉の土地家屋調査士の政治連盟の方の会長をされて、今、全国の副会長もされていらっしゃいます。

 こういった皆様に、どうなんでしょうねといろいろお話を伺いながら、きょうここに立たせていただいておりますけれども、柴先生が若いころに印象に残っている仕事として、県道の拡幅のときに墓地がかかったと。二十名の共有名義だったらしいんですけれども、そこをたどっていくと、中にはブラジルに移民をされた方がいらっしゃって、数でいくと本当に百人になってしまうような、そういう、一つ一つ丁寧に。今でも、そこの県道のところは、実はその一角、墓地のところだけが歩道が切れて残っているような状況になっておりまして、今でもなかなかそういうところというのは難しいということもあります。

 今、それぞれいろんな形で政府として取組を進めていただいておりますけれども、現時点での進捗をまず教えてください、所持者不明土地のことですね。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 所有者不明土地問題の対応、委員御指摘の公共事業の用地取得等におきまして問題となっておりまして、政府一体となって、期限を区切りつつ、その解決に向けて取り組んでいるところでございます。

 まず、昨年の通常国会で成立いたしました所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法におきましては、登記官が、所有権の登記名義人の死亡後三十年を超えて相続登記等がされていない土地について、亡くなった方の法定相続人等を探索した上で、職権で、長期間相続登記が未了である、こういった旨等を登記に付記するなどの不動産登記法の特例規定が設けられております。

 この規定は昨年の十一月十五日に施行されておりまして、現在、全国の法務局では、この特例に基づいて、所有権の登記名義人の死亡の有無や法定相続人の探索等の作業を実施しているところでございます。

 また、この国会におきましては、歴史的な経緯により、不動産登記簿の表題部所有者欄の氏名、住所が正常に登記されていない表題部所有者不明土地について、その登記及び管理の適正化を図るための措置を講ずる表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律が成立しております。

 この法律におきましては、表題部所有者不明土地について、所有者を探索し、これを登記に反映させる等の取組を行うこととされておりまして、本年中に探索作業を開始する予定でございます。

 さらに、ことしの二月十四日でございますが、法務大臣から法制審議会に対し、所有者不明土地問題の抜本的な解決に向けて民法及び不動産登記法の改正に関する諮問がされ、現在調査審議が進められているところでございまして、今後、来年、令和二年中の所有者不明土地問題の解決に向けた民法、不動産登記法の見直しに向けて取り組んでいく予定でございます。

森田委員 ありがとうございました。

 先生もおっしゃっていたんですけれども、公共嘱託の登記協会なんかで受託して、今作業を進めつつあるというようなお話も聞いております。ぜひスピード感を持って進めていただければありがたいと思っております。

 また、今、柴先生なんかも懸念をしていらっしゃったんですけれども、相続をしないというようなケースがふえてきているというようなことが出ておりました。身近なところに相続すべき親族がいても放棄をしてしまうということで、これは国に所有権が移ったようなときに管理し切れるのかなというような、こういう懸念を持たれておったんですけれども、この相続放棄等々の問題、大臣の御所見、いかがでございますか。

山下国務大臣 お答えします。

 土地の所有者が死亡し、その相続人の全員が相続放棄をしたときには、相続財産管理人による管理を経て、最終的には国庫に帰属することになります。相続放棄の件数が増加傾向にあることからすれば、委員御指摘のように、今後、国庫に帰属する土地が増加する可能性があるものと考えております。

 他方で、このような相続人の全員の存在が必ずしも明らかでない土地については、国庫に帰属するまでの間も相続財産管理制度のもとで適切に管理する必要がありますけれども、相続財産管理制度については、いわば手続が重く、コストがかかるなどの課題が指摘されているところでございます。

 こうした指摘を踏まえ、現在、法制審議会民法・不動産登記法部会においては、所有者不明土地の管理を合理化するための方策として、財産管理制度の見直しについても検討されているものと承知しております。所有者不明土地問題の解決に向けて、今後、法制審議会において充実した調査、審議がされることを期待しております。

森田委員 スクラップ・アンド・ビルドという言葉がありますけれども、私たちが今経験している世の中というのは、今まで、森を切り開いて田んぼにしてきたり、あるいは田んぼを開発して家を建てたり商業地をつくったりということで、開発するというのをやってきたんですけれども、恐らくは、今度は後退する流れをつくっていかないと、なかなか、今までと同じように全部管理しようと思っても、これはインフラもそうですし、面としての土地もそうだと思うんですけれども、同じようにはなかなか管理し切れないという問題が出てくると思います。

 具体的には今御検討していただいていることもたくさんあると思いますけれども、ぜひ、これもそんなに遠くないところで大きなまた問題となって私たちの目の前にあらわれると思いますので、引き続きの取組を進めていただければと思います。

 それから、所有者不明土地、どこから手をつけていくかというお話なんですけれども、東日本大震災のときの津波があって、再建を考えたときに、不明土地の問題が大変な障害となったというようなお話もございました。

 改めて、私も、今自分が住んでいるところの、地域内のハザードマップを一回調べてみて、市役所に問合せしたりしてみたんですけれども、市役所でつくっているハザードマップももちろんあると。そこから、危機管理の課長さんから言われたのが、いや、実はこれよりいいものがあって、国土交通省の重ねるハザードマップというのが、これがいいんですよというお話で、これが千年に一度ぐらいの、例えば洪水だったら洪水のハザードマップを、グーグルマップみたいにして、位置を特定していって見られる、こういうものができているというので、こっちの方が精度も高いし、これからこれをもとにしたりしながらまた更新をかけていくんだというような、そんなお話をされていらっしゃいました。

 どれだけ精度が高いかというと、例えばうちの自宅なんですけれども、うちは農地転用をかけて建てたうちなんですけれども、周りが田んぼなんですよね。田んぼに擁壁をつくって、土を入れて、そこに建てたうちなんですけれども、そこだけ白になっています。要するに何もリスクがないと。周りは、今の田んぼのところはまだ黄色みたいな、〇・五メートルぐらいの浸水がある、リスクがあるみたいな。そのぐらいの差をつけて表示してもらっているということで、今まだ市が持っているものというのは大体面的に見て高い低いでやっているぐらいの話なんですけれども、非常に精度の高いものがある。

 こういうものがあるということは、逆に言えば、私たちが優先して取り組むべき課題、土地も、かなり明確になってきているんじゃないかなというふうに思っています。ぜひ、優先順位をつけての、スピード感を持った対応ということをお願いしたいと思うんですが、ぜひ大臣から御所見をお伺いしたいと思います。

山下国務大臣 法務省におきましては、先ほど民事局長から若干答弁させていただきましたとおり、昨年成立した所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法や、今国会で成立した表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づき、所有者不明土地問題の解決に資する施策を実施することを予定しております。

 これらの所有者不明土地対策の取組の対象となり得る土地は全国に相当数存在し、これを直ちに全て解消するということはなかなか困難でございますので、解消の必要性、緊急性の高い地域から優先順位をつけて解消することが相当であると考えております。

 具体的には、地域の実情を知る地方自治体等からの要望に基づいて防災や復旧復興のための事業を実施しようとする地域は、優先してその解消を図ってまいろうというところでございます。

森田委員 ありがとうございます。

 もちろん自治体の方もそういうマップなんかを参照しながら要望を上げてもらっているものと思いますけれども、ぜひ国の方としてもしっかりとしたフォローをお願いできればなというふうに思います。

 また、空き家の問題で、かなり、私も地元を回っていると、このお話を伺うことが多くて、この前も、今の熊谷市の中に、ちょっと、そう言っちゃあれですけれども田舎のところで、旧妻沼町の地域なんかの方が、女性がこう話して、うちの近所にもう傾いていて崩れそうなうちがあるんだけれども、いわゆる分家という言い方をしているんですけれども、分家といったって、もう何代も前に分かれている分家なので、いわゆる相続人とかではないんですけれども。分家の人がね、草むしりなんか一緒に出てくるんだ、堀さらいなんか一緒に出てくるんだけれども、いるんだけれども、あのうちどうにかしてよと言っても、いや、直接うちじゃないので何にもできませんみたいなことを言って、もうらちが明かないと。

 こういう話というのは結構いろいろなところで多分聞かれると思っています。いろいろと対策もやっていただいているので、今の時点でこういうことについてどのような対処ができるかということをまずお聞かせいただければと思います。

眞鍋政府参考人 空き家対策についての御質問にお答えしたいと思います。

 平成二十六年十一月に公布され、平成二十七年五月に全面施行されました空家等対策特別措置法では、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある空き家などを特定空き家等というふうに定めております。

 市区町村は、この特定空き家等について、その所有者等に対しまして、除却などの必要な措置をとるよう助言指導を行うこと、改善されない場合には勧告を行うこと、勧告に係る措置をとられない場合には命令ができること、命令に係る措置を履行しない場合等には行政代執行ができること、そうした規定をこの法律の中に定めております。また、特定空き家等の所有者などがわからない、確知できない場合におきましては、同法に基づく略式代執行というような手でその除却などを行うことができることになっております。

 これらの措置の実績は、平成三十年十月までの集計によりますと、行政代執行あるいは略式代執行が約百二十件、勧告が約七百件、助言指導が一万三千件ほどに及んでいる、こういうことでございます。

 私ども国土交通省といたしましても、地方公共団体が行う空き家の除却、活用などの取組に対する予算上の支援ですとか、あるいは空き家の除却や市場への流通を図るための税制の措置、取組を円滑に行うための市区町村の方々のノウハウを横展開する措置、そうしたことを進めて、空家等対策特別措置法に基づく措置を始めとする空き家対策が一層進むよう、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

森田委員 ありがとうございました。

 既に、指導助言というと一万三千件とかあるいは代執行が百二十件とか、こういったかなりの実績が今積み上がってきているところだと思います。恐らく自治体でも、いろいろな事例を見ながら、うちでもできるかな、できないかなということも検討しながら今いろいろな対策を進めていただいていると思いますが、ぜひ、必要な助言については、市町村、法律の運用についてもアドバイスなどしていただきながら、円滑に空き家対策が進むようにお願いできればなというふうに考えております。

 また、空き家だけでなくて、樹木が管理されていなくて道に飛び出てしまったりなんていうこともありますけれども、こういったことについても非常に困っていらっしゃる方、例えば通学路に木が出てきて邪魔だというようなことなんかもあったりしますので、このあたりの対処はどうなっているか、教えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 民法では、隣の土地の竹木の枝が境界線を越えるときでもみずから切除することはできませんで、竹木を所有する隣地所有者に対して枝の切除を請求して、隣地所有者にその枝を切り取ってもらうことになります。もっとも、隣地所有者が所在不明であるケースなどでは、隣地所有者に対して枝の切除を請求する旨の訴えを提起して、その債務名義を得た上で強制執行する必要がございます。

 これに対しまして、竹木の根が境界線を越える場合については、民法上、みずからその根を切り取ることができることとされておりますことから、枝についても、越境された土地所有者がみずから切り取ることができるようにすべきだという指摘もございます。

 このような指摘を踏まえまして、現在、法制審議会民法・不動産登記法部会におきましては、枝の切除に関する規定も含めた相隣関係規定の見直しが検討されておるところでございまして、法務省としましては、法制審議会において充実した審議が行われるように、今後努めてまいりたいと考えております。

森田委員 ありがとうございました。

 最後にしますけれども、大臣、今回の制度の改正でいろいろな問題があると思います。こういった課題の解決に対して、これがどうやってプラスに働くか、最後、御所見を伺えればと思います。

葉梨委員長 山下法務大臣、簡潔に。

山下国務大臣 司法書士及び土地家屋調査士の皆様は、以前にも増して、社会において重要な役割を果たすようになってきております。御指摘の所有者不明土地問題や空き家問題等の解決に向けても、専門家としての重要な取組をされておられます。

 その果たすべき職責は極めて重くなっているものと考えておりまして、その使命を明確にする規定を新設し、より高い使命感と職責、これを高めていただきながら、社会的な課題の解決に向けて活躍していただくことを期待しておるところでございます。

 法務省としては、本法律案の趣旨も踏まえ、引き続き、これらの関係士業の皆様と連携しながら、我が国の直面する課題の解決に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

森田委員 ありがとうございます。

 質問を終わります。

葉梨委員長 以上で森田俊和君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 まず初めに、本法案の改正に関連して、関係者の皆様の長年にわたる人権の擁護を始めとする幅広い活動に対しまして、心から敬意を申し上げたいと思います。

 本法案の第一条には、「国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」とあります。この使命規定に関連しまして、ここで言う自由かつ公正な社会ということにつきましてお聞きをしたいと思います。

 四月十一日の参議院の法務委員会で、大臣は、我が党の仁比委員の質問に対しましてこう答弁されております。「司法書士が国民に身近な法律家として幅広く国民の権利を擁護することが期待されていることに照らせば、ここでいう権利の内容として当然憲法上の基本的人権も含まれると考えております。」こういう答弁でございます。

 そこでお聞きしたいんですが、憲法上の基本的人権の擁護も含めて今回使命として新たに規定するということからしますと、同条で言う自由かつ公正な社会というものにつきましても、そうした憲法上の諸権利が実現していくような社会、そういう人権が擁護されていくような公正な社会ということだと思うんですが、そういう理解でよろしいでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 改めて、この法律案による改正後の司法書士法の第一条につきまして、これは司法書士の使命を規律するものでありまして、司法書士を主体として位置づけた上で、国民の権利を擁護することをその使命として明確にするものでございます。

 そして、司法書士が国民に身近な法律家として国民の権利を幅広く擁護していくことが期待されているということ、そして、ここで言う権利には憲法上の基本的人権も含まれるものと考えていることは、そして、その内容としても憲法十三条や二十五条等の基本的人権も含まれると考えていることにつきましては、参議院で述べたとおりでございます。

 そして、このような使命を有する司法書士の皆様の活動によって、より自由で公正な社会が形成されていくことを期待しているところでございます。

藤野委員 今、憲法十三条、そして二十五条という答弁もありました。そうした社会をつくっていくということが大事な使命になってくると思います。

 次に、この使命の実践にかかわってお聞きをしたいと思います。

 今回の使命規定によりまして、個々の司法書士の皆さんにつきましてはそうした使命が明らかになったわけでありますが、他方、司法書士会あるいは日本司法書士会連合会については明記はされていないということになっております。しかし、きょうの質疑あるいは参議院の質疑でも明らかになったように、司法書士の皆さんは、やはり会として重要な役割を果たしていらっしゃる。

 大臣も参議院で答弁いただいたように、例えば全国青年司法書士協議会では、全国一斉生活保護一一〇番、あるいは全国養育費相談、これは、例えばシングルマザーの方々が貧困問題などを抱えて多重債務になる場合もありますし、あるいは、そもそも養育費が決められていないとか、あるいは取決めがあってももらえていないという場合もあって、その現状を少しでも改善していこうということで活動されている。さらには、全国一斉労働トラブル一一〇番、法律教育事業などが行われております。

 このほかにも、先般、当委員会でも問題になった児童養護施設における法律教室、十八歳になると基本的には出ていかないといけないもとで、社会で自分がどういう権利を持っているかとか、そういうことをしっかり教えていくということ。あるいは、外国人学校での法律教育ということも行われているし、今回の入管法改定に当たっては、外国人のための法律ハンドブックも作成していただいている。さらには、セクシュアルマイノリティー、LGBTの人権擁護活動なども行っておりますし、先ほど質疑もありました破産者マップに関する相談活動も行っております。

 本当に幅広い分野で専門性を生かして、国民に最も身近な法律家、ホームローヤーとして重要な活動を行っていらっしゃるわけですが、これらの活動がやはり会として行われることで、より大きな力を発揮していると思うんです。

 そこで、本法案の解釈を確認したいと思うんですけれども、弁護士法などでは明記されておりまして、弁護士法三十一条などでは、弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務に鑑み事務を行うと書かれておりますし、四十五条もそういう趣旨であります。さらに、税理士法や弁理士法にも同様の規定があります。

 大臣にお聞きしたいんですが、今回、法案には明記されておりませんが、使命規定が創設される趣旨からすれば、やはり、個々の司法書士にとどまらず、司法書士会あるいは連合会という会としてもこの使命を達成していくために活動していく、そういう解釈でよろしいでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、文言上からいいますと、確かに改正法案では、司法書士法の規定のうち、司法書士についての使命を定める規定を新設してはおりますが、他方で、司法書士会及び日本司法書士会連合会の目的を定めた司法書士法第五十二条第二項及び第六十二条第二項については特に改正はしていないところではございます。

 もっとも、司法書士会及び日本司法書士会連合会は、司法書士会の会員の品位を保持し、その業務の改善進歩を図ることを目標とするものでございます。そして、司法書士会の会員は当然司法書士でございますから、司法書士会の会員の品位や業務は、当然に改正後の司法書士法第一条に定める使命を踏まえたものとなるわけでございます。

 したがって、個々の司法書士の皆様はもちろん、司法書士会及び日本司法書士会連合会においても、司法書士の使命を定めた規定の趣旨を踏まえ、それぞれの目的の実現を図っていくことが期待されるものと認識しております。

藤野委員 もう一点、使命の実践にかかわって質問したいと思います。

 本法案では、無資力者に対する法律扶助の規定というものが明示はされておりません。

 他方、例えば弁護士法の三十三条第二項では、「弁護士会の会則には、次に掲げる事項を記載しなければならない。」とした上で、その第九号で「無資力者のためにする法律扶助に関する規定」というものが定められております。弁護士法四十六条二項も同様の趣旨であります。

 これを受けて、日弁連は、会則第八十九条の二で、無資力者のためにする法律扶助事業の定めを置いている。これは、お聞きをしますと、なぜこういう無資力者のための規定がわざわざ置かれているのかといえば、やはりそれは使命の実践だというんですね。弁護士法でいえば、弁護士の使命が基本的人権の擁護であって、社会的正義の実現である。そうであるならば、やはり、例えば経済的に困窮している方でもその基本的人権は実現しなければならないということで、法律扶助を行おうということになっているということであります。

 同様の趣旨は司法書士法にも当てはまるわけでございまして、現に、司法書士の皆さんはそうした無資力者に対する法律扶助を実践をされております。ですから、そうしたことをしっかり解釈としても確認していく必要があるというふうに思うんですが、法務省、そういう理解でよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、全国各地の司法書士会におきましては、無料の登記相談等を実施されるなどしており、日本司法書士会連合会におかれましても、各司法書士会が実施する経済的困窮者を対象とした法律支援事業の実施に係る助成事業を進めるなどして資力が乏しい方に対する法的支援を行ってきており、これまでさまざまな社会貢献や人権擁護活動に取り組まれていると承知しております。

 このような活動は、改正法案による改正後の第一条が定めております司法書士の使命である、国民の権利を擁護し、自由かつ公正な社会の形成に寄与することにもつながるものであると認識しております。

 もとより、司法書士会や日本司法書士会連合会が具体的にどのような活動を行っていかれるかはそれぞれの組織において決められるべきことではございますが、司法書士の使命を定めた規定の趣旨に沿う活動が行われることが期待されるものと認識しております。

藤野委員 お話をお聞きしますと、先ほども出ましたけれども、登記に関する仕事というのは大変重要なんだけれども、実は、法テラスでは、現在、登記手続に関する費用というのは対象になっていないわけであります。

 今、どんな登記でも原則として登録免許税を払わなければいけないわけで、その費用が出せないということで登記できないという例もありまして、政府は今、相続登記をちゃんとやれということで言っているわけですけれども、そうした関係でもやはり必要になってくると思うんです。

 先ほど、震災のお話も出てまいりました。東日本大震災や熊本の大地震の際にも寄せられた相談は、登記に関するものが大変多かった。一つ御紹介しますと、例えば、公費での解体を申し込みたいが、倒壊家屋の登記上の所有者が第三者で、その人がいなくなってしまって確認できない。あるいは、抵当権の登記があるけれども抹消費用が払えないとか、あるいは、登記費用を払ったら生活できなくなるとか、こういう切実な問題に司法書士の皆さんが対応されてきたということであります。

 簡易裁判所では、本人訴訟、自分がやられるというやつが七割から八割に達するということで、二〇一七年でも、第一審の通常訴訟、これは三十三万九千七百十一件あるそうですけれども、このうち二十五万五千八百十四件、七五%以上が本人訴訟ということで、この本人訴訟は、書類をつくる段階までいけば法テラスで費用は出されるんですが、書類をつくる前のそういうことができるんだろうかという相談では、なかなか法テラスでは手当てされないらしいんです。そうしたことも司法書士さんはやられているということであります。言うまでもなく、生活相談の同行支援というものも積極的にやられている。

 ですから、こういうことを、法案には明記されていないけれども、今答弁ありましたように、しっかり会として行うべき活動に含まれていくということが求められているというふうに思っております。

 今回の法改正が、個々の司法書士の皆さんはもとより、会としての司法書士会の皆さんの活動を後押しするものとなるように、そして、ひいては国民の権利、憲法の基本的人権の擁護につながることを強く求めたいと思っております。

 次に、話をかえまして、布川事件についてお聞きをしたいと思うんです。

 あした六月一日から改正刑訴法が全面的に実施をされます。取調べの可視化、録音、録画というものが全面的に行われていくということですが、まだ全面的といっても範囲は限定されておりますし、執行状況についてはしっかりと私たちとしても注視をして、範囲の拡大や弁護士の関与を含めて不断の見直しを実現していきたいと思っております。

 刑訴法の二〇一五年から一六年にかけての審議におきましても、当委員会に参考人として桜井昌司さんがお見えいただいて、御意見をいただきました。二〇一五年の六月十日の当委員会の参考人質疑であります。

 桜井さんが、皆さん御存じのように、一九六七年に起きた強盗殺人事件で有罪とされたわけですが、再審によってその後無罪が確定した。そして、その後、国と県に損害賠償を求めた国家賠償訴訟を提起して、五月二十七日、勝訴判決を受けております。桜井さんは、実に、一九六七年十月に逮捕されてから一九九六年十一月に仮解釈されるまで、二十九年間、強盗殺人犯の汚名を着せられて身体を拘束されておりました。

 今回の国家賠償訴訟における勝訴判決を受けて、桜井さんは記者会見で、冤罪で苦しんでいる仲間たちの力になれる判決だとおっしゃったことが私も非常に印象的でありました。

 それで、この訴訟について、まず判決についてお聞きをしていきたいと思います。

 最高裁にお聞きしたいんですが、確認したいんですが、東京地裁でことし五月二十七日に言い渡された、正式な訴訟番号等は省きますが、二〇一二年の国賠訴訟事件の判決、五十六ページで、警察官の取調べについて、原告側の主張としてこういう記述があります。

 名前をちょっと伏せますけれども、警察官は、原告が八月二十八日には○○荘に○○と泊まったとアリバイの主張をすると、警察官が言うんですが、

 「もう調べてあってお前の兄さんも泊まっていないと言っている。」と虚偽の発言をし、偽計を用いて原告を自白させようとした。

こうあります。

 最高裁にお聞きしますが、これに対する地方裁判所の結論、判決文の七十一ページ六行目から七行目にあると思いますが、個人名は伏せて結構ですので、何と判示しておりますか。

門田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分を個人名が記載された部分は省略して読み上げます。

 上記警察官の発言は、虚偽の事実を述べたものというほかなく、かかる取調べは偽計を用いたものとして違法というべきである。

このように記載されております。

藤野委員 続いて、同じ判決文五十八ページでこういう記述があると思います。貴公というのは桜井さんです。

 「貴公と○○を××さんの家の前で見た人がいるんだよ」

 「貴公が勝手口の石台に上がって××さんと話していて、○○が道路に立っていたのを、道路を通った人が見ているんだよ、その人が道路に立っていたのが○○で石台に上がって××さんと話していたのが櫻井昌司だったと断言するんだから駄目だ」

 「天網恢々疎にして漏らさずと言って、誰も見ていないと思ってもどっかで人は見ているもんだ。櫻井もまさか見られているとは思わなかったろうな」

 「見られてるんだからしょうがねえだろ」

こういう記述があります。

 最高裁にお聞きします。これに対する裁判所の認定、判決文七十三ページの十九行目から二十一行目にあると思いますが、どのように認定していますか。

門田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分、七十三ページの十八行目から二十一行目までを読み上げます。

  そして、上記発言がされた時期においては、被害者宅で原告を目撃した旨の供述をした者がいたことは認められないから、上記発言は、虚偽の事実を述べたものというほかなく、かかる取調べは偽計を用いたものとして違法であるというべきである。

このように記載されております。

藤野委員 最後にもう一点、判決文の五十八ページでは、原告側の主張として、

 「貴公の母ちゃんも、やったことは仕方ないんだから一日も早く素直になって話せ、と言ってるんだぞ」

こういう記述があります、警察官の言葉として。

 これについて、裁判所は、判決文七十四ページ二十五行目から七十五ページの一行目について、どのように判示していますか。

門田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分を個人名が記載された部分は省略して読み上げます。

 警察官による上記発言は、虚偽の事実を述べたものというほかなく、かかる取調べは偽計を用いたものとして違法であるというべきである。

と記載されております。

藤野委員 つまり、桜井さんの兄とかあるいは母親、そういう言葉を勝手に捏造して自白を迫るわけであります。さらには、目撃証言も勝手に捏造して自白を迫るわけであります。本当に許しがたいと思うんですね。

 警察は一言も謝っておりません、二十九年、三十年たっても。私は、警察は本当に桜井さんたちに真摯に謝罪すべきだというふうに思うんですね。

 続いて、今回の判決は、警察だけでなく検察についても、桜井さんたちに有利な証拠を開示しなかった点について違法と断定しております。

 具体的には、被害者の家の前で、路上で桜井さんたちを見たという目撃証言、目撃されたのは別人だったという証言がある、そういう捜査報告書とか、あるいは、目撃した日付に関する複数の証言、初期段階ではそうした証言は出ていなかったことだとか、あるいは、殺害方法が供述と矛盾することを指摘した鑑定書だとか、あるいは、現場から採取された毛髪が違う人のだったとか、検察がそうした証拠の開示に応じなかったことは違法であるという判決であります。

 大臣にお聞きしたいんですけれども、検察による証拠隠しによって桜井さんらが二十九年間も雪冤できずに身体を拘束され、まさに人生が狂わされたということであります。極めてこの問題は重大である、罪深いと思うんですが、大臣はどのように御認識されているでしょうか。

山下国務大臣 御指摘の訴訟について、東京地裁において判決が言い渡されたことは承知しておるところでございますが、これは現在係属中の訴訟に関する事項であるため、お答えは差し控えたいと考えております。

 判決内容を十分に精査し、適切に対応してまいりたいと考えております。

藤野委員 本当にこの重みというのが大臣にどれほど伝わっているのかと思わざるを得ない今の答弁だと思います。

 最高裁にお聞きしますが、判決は、検察官の証拠開示義務について、判決文の百十六ページの七行目から二十二行目までで判示していると思うんですが、どのように判示しておりますか。

門田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分を読み上げます。

  刑訴法一条は、「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」と規定し、また、検察庁法四条は、「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、

その後…と省略部分がありますが、

 公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。」と規定しているところであって、検察官は、公益の代表者として、事案の真相を明らかにする職責を負っているものというべきであるから、検察官の手持ち証拠のうち、裁判の結果に影響を及ぼす可能性が明白であるものについては、被告人に有利不利な証拠を問わずに法廷に顕出すべき義務を負うものというべきである。

  また、結果に影響を及ぼす可能性が明白であるとまではいえない場合であったとしても、被告人又は弁護人から、具体的に開示を請求する証拠が特定された証拠開示の申立てがあったような場合には、その重要性の程度、証拠を開示することによって生じる弊害の内容及び程度等に照らし、開示をしない合理的理由がない場合には、検察官は、その証拠の開示義務を負うものというべきである。

このように記載されております。

藤野委員 今回初めてこうした形で検察官の証拠開示義務が明示をされたというのは極めて重要だというふうに思います。

 この上で、問題がまだ残っている。再審段階における証拠開示の問題なんですね。今回の判決というのは確定審段階におけるものでありまして、これは非常に重要なんですけれども、再審については及ばないままになっている。

 これは考えますと、二〇一六年の刑訴法の改正で、捜査側が持つ証拠のリストを開示するルールが定められました、確定審といいますか通常審についてですね。これの反映という側面もこの判決はあるのではないかと思うんですね。その二〇一六年の刑訴法改正では、再審まではやはり及んでいない。それが今回の判決にもやはり同じように影響を与えているのではないかというふうに感じざるを得ないんですね。だからこそ、逆に言えば、再審段階においても刑訴法を改正して、再審に関する部分、とりわけ証拠開示のルールをつくることは急務だというふうに思います。

 この点で、五月十日に日弁連が、再審における証拠開示の法制化を求める意見書というものを発表しております。これはやはり大事な中身だというふうに思うんですね。

 これの中身といいますのは、この意見書の七ページにもあるんですけれども、日弁連が全国各地の再審の事件を調べまして、とりわけ証拠開示に絞って調べまして、実際に行われた弁護活動、これに対する検察官の対応、そして裁判所の訴訟指揮などの実践例を調査しているんですね。かなり分厚い意見書であります。調査した上で、今回、提言を行っております。日弁連によりますと、このような網羅的な調査を行ったのは今回が初めてのことだということなんですね。

 つまり、今回の意見書というのは、現行の再審請求手続を前提として、現行の再審請求手続でもここまでできているじゃないかという幾つもの実現例を分析して、それを踏まえて、それを明文化していく、それを法律に具体化していく、こういうつくりになっているんですね。ですから、そういう意味では、非常に今の実務にも合う現実性のある提案だというふうに思っております。

 大臣にお聞きしたいんですが、こうした非常に現実的な意見書が出ておりますので、こういったことも一つの参考にしながら、再審段階における証拠開示のルールの具体化は必要だと思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

山下国務大臣 御指摘の意見書については私自身がつまびらかに精査しているわけではないので、そういったところから、必要があれば当局を呼んでいただいて、当局から答えさせます。

 そうしたことから、一般論で申しますと、御指摘の再審請求審における証拠開示については、平成二十八年に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律の附則九条三項において検討することが求められておりまして、平成二十九年三月から、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、警察庁の担当者で構成する刑事手続に関する協議会を設けて協議、意見交換を行っているところと承知しておりまして、そこの検討を見守っているところでございます。

藤野委員 附則九条三項に基づく検討ということなんですが、では法務省にお聞きしますけれども、この検討会は今まで何回行われていて、そして、今後例えば中間報告とかを出す予定があるのか、その点についてお答えください。

葉梨委員長 担当の参考人が来ていないんです。呼んでいないんです、担当の参考人。

山下国務大臣 申しわけありません、参考人がきょう登録されていないということでございますので、私からお答えいたしますと、平成二十九年三月以降、これまでに、刑事手続に関する協議会が一回、協議会のもとに置かれている幹事会が合計十三回開催されていると報告を受けております。

藤野委員 これは、私が事前にレクでお聞きしますと、前々回ですけれども、議事録というものが公開されていないわけですね。一体何を議論しているのかがよくわからない。今後、中間報告とか、そうしたまとめ物が出るんですかとお聞きしたら、それはまだわからないということなんです。

 ですから、国会が附則で求めて、議論すべしというふうに求めたにもかかわらず、何を議論しているのかというのが我々はわからないわけですね。そういう状況になってしまっている。そのもとで幾ら再審について議論しているんだとおっしゃられても、やはり本当に、今、日弁連がこうやって明らかにしているこういう対策が盛り込まれているのかもわからない。何を議論しているのか、いつ結論が出るのかもわからない。これでは、国会が附則で求めたことに対応していると本当に言えるのかということになってくると思うんですね。

 この問題は私は立法府の責任でもあるというふうにも思っておりまして、日弁連は、この意見書を、実は五月二十一日付で法務大臣並びに衆参両議長、そして各党代表に提出していただいているんですね。私もお受け取りいたしました。そういう意味では、これは行政府だけでなく立法府も問われる問題であり、与野党を超えた課題だというふうに思っております。早期に実現する必要があると思うんですね。

 先日来、この委員会でも死刑の問題も質問されております。大事なテーマだと思います。

 私も、この問題をいろいろ考える中で、やはり刑事司法全体にかかわってくるし、再審の問題も大きくかかわってくるのがこの死刑の問題でもあると認識しております。そうした点で、今後もこの問題を取り上げていきたい。

 最後に紹介しますと、三月二日には冤罪犠牲者の会が発足いたしました。五月二十日には再審法改正をめざす市民の会も結成をされました。冤罪の苦しみを身をもって知る当事者や弁護団の皆さんが、同じ苦しみを二度と生まないために運動を開始しております。

 行政府と立法府がこの声に応える必要がある、そのためにも、再審法改正、このことを強く求めて、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 きょうから、第六十一回全国矯正展、全国刑務所作業製品展示即売会、CAPICと呼ばれているものが、科学技術館できょう、あした開催されます。私も去年行ってまいりまして、鉄製のしちりん、ちょっとちっちゃいんですけれども、屋外で利用するのにはとても重宝させていただいていまして、時間があったら今回も行きたいと思っているんです。

 そこで刑務官が一生懸命、ともに展示商品を説明したりとかされておりまして、大臣が政務官のときに、刑務官の職場環境というのが大変厳しいので、ぜひともこれを改善してほしいという提案をさせていただいたんですけれども、通告にないんですが、大臣、どうですか、刑務官の職場環境の改善というものが進んでいるのか、これからまたそれに対して力を入れていくつもりなのかどうか。

 私自身も、ずっと質問させていただいているときに、山下大臣も、大変なところだな、高齢化したことによって介護みたいなものもしていかなきゃいけないというようなこともありまして、非常に環境が大変なんですが、その点についてぜひとも改善を進めていただきたいんですが、大臣の所感をお聞かせいただきたいと思います。

山下国務大臣 まず、串田委員におかれましては、本日から開催されます科学技術館におけます矯正展にお触れいただきまして、ありがとうございます。私も、委員会がもし無事に終われば駆けつけたいというふうに考えておるところでございます。

 また、刑務官につきまして本当に御配慮いただきまして、法務大臣として心からお礼申し上げます。刑務官は日夜、もちろん改善更生を願って、再犯防止のためにも職務をしているところであり、その環境を整備するということは、法務省としても極めて重要であろうと考えております。

 法務省としては、政府の閣議決定でもあります再犯防止推進計画、こういったものにも、刑務官始め、処遇を行う側の環境整備等も触れられているところでございまして、今回、三十一年度予算、あるいは令和元年度になりますけれども、予算においても一定程度認められているところでございますが、今後とも、そういった刑務官の環境整備というのが再犯防止にも役に立つのだということもしっかりと踏まえまして、力を入れてまいりたいと考えております。

串田委員 きょうは、登記に関する質問をさせていただく前に、前回ちょっと誤解を招くような発言もあったかと思いますので確認をさせていただきたいと思うんですが、子供と別れている別居親と、そして同居親とがいる場合に、別居親に対して運動会などの学校行事に対する連絡をしないというような学校もあるようなんですが、これについての根拠規定を民法七百六十六条ということを挙げられているんですが、私はこれは何らかの誤解ではないかなと思うので、再度、この点について確認をさせていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 あくまでも民法としての一般論として申し上げますと、七百六十六条ですが、民法上、離婚後の面会交流につきましては、父母が協議で定めることとされておりまして、また、その協議が調わないときは、家庭裁判所がこれを定めることとされております。したがいまして、面会交流の時間ですとか場所等の具体的な内容についても、こういった中で定められることとされております。

 このため、面会交流を行う時間ですとか場所等の具体的内容が定まっていない場合には、子を監護していない親は面会交流の具体的な実施を求めることはできないものと考えられるところでございまして、先日の法務委員会において文部科学省の政府参考人が触れました民法第七百六十六条に関する部分といいますものは、この趣旨を述べたものと理解しております。

串田委員 前回の質問というのは、連れ去りに関する質問をずっと続けていく中で、別居親が学校からの行事の連絡を受けないということでありました。

 今、民事局長の回答というのは離婚後なのであって、離婚していない、両方が監護権者であるときに、まさに外務省が言っている一方の同意を得ないで連れ去る場合は、これは不法な連れ去りというふうに外務省が言っているわけですから、この不法な連れ去りを行った今子供と同居している側が学校に、別居親に対して運動会の連絡をしないでほしいというようなことがあったときに、学校がそれに応じなければいけない根拠規定というのは七百六十六条でないということを明確に断言していただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 あくまで民法七百六十六条の関係で申しますと、離婚前でありましても、婚姻関係が破綻し、父母が別居状態にある場合には、家庭裁判所は、民法七百六十六条の類推適用により、面会交流につき相当な処分を命ずることができるというふうにされております。

 また、ハーグ条約実施法との関係の御質問でございますが、ハーグ条約実施法におきます不法な連れ去りといいますのは、「常居所地国の法令によれば監護の権利を有する者の当該権利を侵害する連れ去りであって、当該連れ去りの時に当該権利が現実に行使されていたもの又は当該連れ去りがなければ当該権利が現実に行使されていたと認められるものをいう。」と定義されておりますが、ここで言う不法なという要件は、申立人に子供を引き渡すのではなく、子供を常居所地国に戻すための要件でございまして、国内における子供の連れ去りの違法性をこれとパラレルに考えることは必ずしも相当ではないというふうに考えております。

 いずれにしましても、面会交流の具体的内容は、先ほど申し上げましたとおり、当事者の合意あるいは具体的事実のもとで、子供の利益の観点から審判で定められるものでございまして、面会交流という事柄の性質上、そのような合意、審判のない段階で、いつ、この場所で、この方法でといったように具体的な実施を求めることはできないものと解されると考えております。

串田委員 大臣、今、非常に問題の発言だと私は思いますよ。

 大臣もはっきりしてほしいんですけれども、私のところに相談に来られるような方の中で、一割、二割というのは外国人籍の方もいらっしゃいますし、ハーグ条約に関しては、不法な連れ去りに対する面会というものもハーグ条約として求めているわけですね。

 監護権が双方にあるときに、もちろんDVとかそういうのは別としても、一方の同意なくして連れ去ったときというのをなくそうというのが七百六十六条の規定の一つの目的でもあったというふうに法律を改正するときには国会で議論されている。

 しかし、今のような回答ですと、先に連れ去った人間、者、親を有利に扱うような、七百六十六条が連れ去ったという実力行使をした方を有利に扱うというように私には思えてならないんです。これは本当にそういうような解釈を、日本の政府が連れ去りを推奨する、有利に扱う国なんだということを世界に公言するという理解になってしまいますよ。

 大臣、その点について明確に御意見をお聞かせいただきたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 民法上は、子供を監護していない親につきましては、例えば、家庭裁判所に申立てをすれば、子供の福祉の観点から問題がない限り、子供を監護している親に対して面会交流の実施を命ずる審判がされることになります。そして、面会交流の審判については、民事執行手続により、間接強制をすることができるわけでございます。また、子供を連れ去られた親は、家庭裁判所に子の監護者の指定及び子の引渡しの申立てをすることもできるということでございます。

 この場合には、家庭裁判所は、さまざまな事情を総合的に考慮した上で、いずれの親を監護者に指定するのが子供の利益にかなうかといった観点から判断するものと承知しているところでございます。

 父母の一方が他方に無断で子供を連れ去り、それが違法と評価される場合には、その事実は子供を連れ去った親に不利益な事情として考慮すべきものでございまして、現にそのような判断をしている裁判例があるものと承知しておりますので、一概には申し上げられないのではないかと考えております。

串田委員 きょうは登記をお聞きしたいので、その後にしますけれども、そういう意味では、連れ去った側というものが正当であるということを証明しない限りは、これは七百六十六条の趣旨に没却するわけですから、そういう運用がなされているということを大臣も前提として今お答えいただいたんだと思います。

 これについては、また一般質疑のときに再度続けさせていただこうと思います。実力行使で連れ去った側を有利に扱うことだけはしないようにしないと、子供が不幸になるということだけ申し上げたいと思います。

 所有者不明土地に関して、司法書士さん、あるいは土地家屋調査士さんというもののこれからの活用、積極的な協力というものが必要になるかと思います。

 まだ採決の前なので附帯決議の話をするのもなんですけれども、ここには、司法書士及び土地家屋調査士の知見や財産管理など、積極的に活用を図っていくということがあるわけでございます。

 まさに、今、所有者不明土地が九州ほどの広さになっている、これはもう本当に最大の問題であるということでありますし、逆に言えば、それだけ司法書士さんや土地家屋調査士さんへの依頼というものがまだ十分になされていなかったということで放置されているんではないかなと思うんですけれども、逆に、前回の法改正において、長年登記されていない場合には国がやってくれるんだ、国がやってくれるから自分たちがやらなくていいんだというような誤解も発生するやもしれません。

 これに対して、積極的に活用するという附帯決議も今後出される予定でございます。どういうような形で、この九州ほどの広さの土地について積極的に活用を図るということを政府として行っていくのか、お聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 所有者不明土地となります主な要因の一つは、やはり相続登記が未了のまま放置されているということが指摘されているところでございます。

 御指摘のとおり、昨年の法律によりまして、長期間相続登記がされていない土地につきましては、登記官の方で相続の有無ですとか相続人となり得る者を調査していくという制度がつくられたわけでございますが、やはり、委員御指摘のとおり、相続登記を促進していくということが非常に重要な課題だと考えております。

 今現在、法務省におきましては、登記制度、土地所有権の基本的なあり方について検討を行っているところでございますが、そこで、相続登記に関しましては、例えば相続登記を義務化することですとか、あるいは相続登記の手続を簡略化すること、そういった登記の申請人の負担を軽減すること、こういったことをさまざま検討しているところでございまして、そういうことも通じて、今後更に相続登記の促進について検討してまいりたいと考えているところでございます。

串田委員 今の質問に関連いたしまして、所有者不明土地というものを、本来、司法書士さん等に依頼をすれば意外と所有者がわかるということがあったかと思うんですが、その点についてかつて回答いただいたこともあるんですけれども、再度その点を確認をさせていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 委員御指摘のとおり、相続登記が未了のまま放置されております所有者不明土地につきましても、所有権の登記名義人である方の相続人において、戸籍の収集等をするなど必要な書類の収集を行った上で、相続による所有権の移転の登記を申請することは可能でございます。

 したがいまして、相続登記をする意欲のある相続人が存在するような場合ですと、相続登記がされないまま放置されております所有者不明土地であっても相続登記をすることができるものと認識しております。

 ただ、例えば数次相続が発生している場合には、一般的に相続人となる者の範囲が相当に広くなって、相続人の数が相当数に上ることも少なくないために、個々の相続人を特定するための戸籍等の収集が煩雑になることもございます。また、相続人の一部の者の所在が直ちに判明しないといったような事態も生ずることがあるために、遺産分割協議等が円滑に進まないということも考えられるところでございます。

 もちろん、専門家に登記の代理をお願いするということもあるわけでございますけれども、最近の人口の減少等もあって、例えば土地の資産価値が低下している。こういうようなことからしますと、そういったコストをかけてまで登記をするかどうかという点について余りインセンティブを持たない、こういった相続人の方もおられるものと認識しております。

串田委員 今、数字が出てきませんでしたけれども、私が前に質問したときには、九〇%以上というのが実はわかるんだと。所有者不明じゃなくて、所有者判別困難というのが本来は正しい言い方なんじゃないかなと思うんですね。不明というような言い方で、今度国がやってくれるということになったら、自分たちの手には負えないんだという勘違いをする方が国民に多く出てくるんじゃないかと思うので、調べようと思ったら、意外と、司法書士さんにお願いするようなことになれば実は登記ができるというようなことなんですよ。

 そうすると、今、九州ほどの所有者不明土地という言い方をされて報道されていますけれども、この九〇%以上が実は登記をすることができるわけでして、そういう意味での広報活動、自分たちがやれば、登記というのは頼めばできるんだ、所有者が判明するんだというようなことを推進していかなければならないのではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、今、九州ぐらいの面積があるというふうによく言われておりますけれども、それは不動産登記簿から直ちに所有者がわからないというものでございまして、そこは、委員御指摘のとおり、とことん調査を尽くしてもわからないというものはかなり数字的には限定的でございます。

 したがいまして、やはり相続登記をしていただくということが非常に重要でございまして、法務省におきましても、相続登記が重要であるということはさまざまな媒体を通じてPRをしているところでございますし、また、今後とも司法書士会あるいは日本調査士会連合会と連携して、そういった相続登記の促進にも努めているところでございます。

 今後とも、日本司法書士会連合会あるいは日本土地家屋調査士会等と連携協力しつつ、相続登記をしていくための促進といいますかPR活動、こういったものは引き続き行っていきたいと考えております。

串田委員 それと、今、登記義務化ということと所有権放棄というのが先ほど挙げられましたけれども、何で相続登記をしないのか、どうしてしないのかということの分析、意欲があると先ほど民事局長はおっしゃられましたが、意欲というのが何なのかということのもうちょっと細かな正確な分析はされているんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 正確な定量的な分析といいますか、そういうところまではしていないところでございます。先ほど申し上げましたような、土地の資産価値というものが低くなっているようなケースもある、そういったさまざまな要因が背景にあるものと考えております。

串田委員 地価が下がったということで、相続登記をしても、その相続登記をするまでの間に費用がかかったりとか、その後、全員を見つけ出さないと、調停を起こす、あるいは分割協議の訴訟を起こすことができないというような非常にハードルがどんどん出てくるというようなこともあって、採算がとれないというのも一番大きいのかなと思うんですね。ですから、登記の義務化と、あとは、所有権放棄だけではなくて、何らかの形で採算が合うような形の清算の仕方というものがないと、相続がどんどん続くと本当にもう手がつけられない状況になると思うんです。

 最後に、大臣、今非常にゆゆしき状況だと思うんですよ。この採算割れを何とか解決するような方法での費用の何らかの形だとか、そういうようなことのお考えはないでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 今後、所有者不明土地問題は、高齢化や人口減少が進み、相続が繰り返されるとますます深刻化することが予想されるというところでございます。

 そのため、政府においては、所有者不明土地問題について基本方針等を定め、期限を区切って対策を進めているところでございます。

 その一つとして、本年二月十四日に、私から法制審議会に対して、所有者不明土地問題の解決に向けて、民法及び不動産登記法の改正に関する諮問もさせていただいたところでございますし、また、法務省においても相続登記等に関する負担軽減策等も尽力しているところでございます。

 法務省としては、引き続き、所有者不明土地問題の解決に向けて、全力を挙げてスピード感を持って取り組んでまいりたいと考えております。

串田委員 時間になりました。

 ぜひ矯正展でお会いしたいと思います。ありがとうございました。

葉梨委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

葉梨委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、宮崎政久君外六名から、自由民主党、立憲民主党・無所属フォーラム、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、日本維新の会及び社会保障を立て直す国民会議の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。松平浩一君。

松平委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 司法書士及び土地家屋調査士の実務能力の向上のために実施される各種の研修制度について、その一層の充実に向けて協力すること。

 二 司法書士法人及び土地家屋調査士法人につき、その設立の諸手続が円滑に進められ、司法書士会及び土地家屋調査士会による指導が適切にされるよう努めること。

 三 空き家や所有者不明土地問題等の諸課題の解決に当たっては、司法書士及び土地家屋調査士の有する専門的知見や財産管理、筆界確定等についてのこれまでの実績に鑑み、その積極的な活用を図ること。

 四 司法書士及び土地家屋調査士の有する専門的知見を活用したADR手続により国民の権利擁護及び利便性の向上を図るため、引き続き、それらの手続の周知に努めること。

 五 総合法律支援法に基づく特定援助対象者法律相談援助事業に関して、司法書士の更なる活用を進めるなど、関係団体と連携しつつ、国民の権利擁護及び利便性の向上に資するよう努めること。

 六 IT環境の急速な進展の下で、各種登記制度やこれを支える司法書士制度及び土地家屋調査士制度に対する国民の信頼を損なうことのないよう、非司法書士行為及び非土地家屋調査士行為に対して引き続き厳正に対応すること。

 七 土地家屋調査士の有する専門的知見やその保有する知識、情報等を広く活用することにより、法務局における登記所備付地図の整備を一層促進すること。

 八 国民の権利擁護の観点から、司法書士でない者が司法書士の業務について周旋することを禁止する規定の整備について、本法施行後の状況も踏まえつつ、必要に応じ対応を検討すること。

 九 司法書士の登録前の研修を義務化することなど、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士の資質の向上のための施策について、本法施行後の状況も踏まえつつ、必要に応じ対応を検討すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

葉梨委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山下法務大臣。

山下国務大臣 ただいま可決されました司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十分散会


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