衆議院

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第2号 令和元年10月23日(水曜日)

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令和元年十月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松島みどり君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 越智 隆雄君

   理事 鬼木  誠君 理事 田所 嘉徳君

   理事 葉梨 康弘君 理事 稲富 修二君

   理事 山尾志桜里君 理事 浜地 雅一君

      畦元 将吾君    安藤 高夫君

      井野 俊郎君    上杉謙太郎君

      上野 宏史君    門山 宏哲君

      神谷  昇君    神田  裕君

      木村 哲也君    黄川田仁志君

      国光あやの君    小寺 裕雄君

      小林 茂樹君    佐藤 明男君

      高木  啓君    出畑  実君

      中曽根康隆君    百武 公親君

      藤井比早之君    古川  康君

      穂坂  泰君    宮崎 政久君

      宮路 拓馬君    山下 貴司君

      吉川  赳君    和田 義明君

      逢坂 誠二君    落合 貴之君

      高木錬太郎君    日吉 雄太君

      松田  功君    松平 浩一君

      宮川  伸君    山川百合子君

      竹内  譲君    藤野 保史君

      串田 誠一君    井出 庸生君

    …………………………………

   法務大臣         河井 克行君

   法務副大臣        義家 弘介君

   外務副大臣        若宮 健嗣君

   法務大臣政務官      宮崎 政久君

   最高裁判所事務総局総務局長            村田 斉志君

   最高裁判所事務総局経理局長            笠井 之彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       西山 卓爾君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          金子  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    名執 雅子君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    今福 章二君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  菊池  浩君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 高嶋 智光君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十三日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     安藤 高夫君

  国光あやの君     上杉謙太郎君

  小林 茂樹君     小寺 裕雄君

  出畑  実君     佐藤 明男君

  古川  康君     神谷  昇君

  吉川  赳君     畦元 将吾君

  和田 義明君     上野 宏史君

  山川百合子君     宮川  伸君

同日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     吉川  赳君

  安藤 高夫君     穂坂  泰君

  上杉謙太郎君     百武 公親君

  上野 宏史君     高木  啓君

  神谷  昇君     宮路 拓馬君

  小寺 裕雄君     小林 茂樹君

  佐藤 明男君     出畑  実君

  宮川  伸君     山川百合子君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     和田 義明君

  百武 公親君     国光あやの君

  穂坂  泰君     奥野 信亮君

  宮路 拓馬君     木村 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 哲也君     古川  康君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

松島委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房政策立案総括審議官西山卓爾さん、法務省大臣官房司法法制部長金子修さん、法務省民事局長小出邦夫さん、法務省刑事局長小山太士さん、法務省矯正局長名執雅子さん、法務省保護局長今福章二さん、法務省人権擁護局長菊池浩さん及び出入国在留管理庁次長高嶋智光さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松島委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長村田斉志さん及び経理局長笠井之彦さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。越智隆雄さん。

越智委員 自由民主党の越智隆雄でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 本日は、先週の河井克行大臣の所信的挨拶について質問をさせていただきたいと思います。

 この所信的挨拶でありますけれども、法務委員会ではかなり丁寧なんだな、かなり長いんだなと思いました。私も今まではほかの委員会に所属していたものですから、大分文化が違うなと思いましたが、大臣のお考えをじっくり伺えたことは、これから委員会質疑に臨むに当たって、本当によかったというふうに思いました。

 所信的挨拶を委員会でお伺いして、その後繰り返し読んでみて感じたことは、随所に大臣の思い、考えが語られていた、盛り込まれていたということでありまして、いわば河井カラーが随所にちりばめられた所信的挨拶だというふうに感じさせていただきました。この河井カラーを始め、幾つかの事柄について質問をさせていただきます。

 まず一つ目なんですけれども、児童虐待です。

 最近、東京都の目黒区あるいは千葉県の野田市などで発生した事件など、児童のかけがえのない命が親によって奪われる、大変痛ましい事件が相次いで発生をしております。政府を挙げて児童虐待防止に取り組む必要がある、これは当たり前のことだというふうに思います。

 そういう中で、河井大臣は今回の所信的挨拶で、法務行政が取り組む課題として、大項目で八つ、小項目で約三十挙げられたわけですけれども、その一つ目の項目として児童虐待防止対策を挙げておられます。ぜひともこれはしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 この問題については、河井大臣が大臣に就任した際に、総理からも差別や虐待のない社会の実現を目指すという指示があったというふうに聞いております。そして大臣は、就任直後の記者会見から繰り返し児童虐待防止対策の重要性を述べてこられて、その中で、政府を挙げてのさらなる取組が必要だというふうに述べてこられました。

 そして、先ほど申し上げたように、児童虐待防止対策を大臣所信、所信的挨拶の一番目の項目に挙げたわけですが、これは恐らく歴代の大臣の中で河井大臣が初めてのことだと思いまして、そこにすごい強い思いを感じるわけでございます。

 そこで、まず一問目は、児童虐待防止対策についての河井大臣のお考え、決意を聞きたいというふうに思います。

河井国務大臣 私が大臣を拝命いたしまして一番最初に役所に指示をした事項の一つが、今、越智理事御指摘いただきました児童虐待、これに真っ正面から向き合っていくということでありまして、イの一番にそのことを御質問いただきまして、大変ありがとうございます。

 今もおっしゃいましたけれども、子供たちは、これからの日本、そして未来を担うかけがえのない宝物だ、そしてそれは、その親御さんだけでなくて、地域社会また国家にとっても大変重要な存在だと私は確信をいたしております。しかしながら、現実は、この児童虐待によって子供が亡くなる事案、これが後を絶ちません。こういった事案の報道に接するたびに、胸をかきむしられる、そんな思いをいつもこれまで抱いてまいりました。そこで、法務大臣に就任した早々、事務方に対しまして、児童虐待防止対策について、私は、大臣として、最重要課題として取り組むということを表明し、また指示をいたしました。

 それを受け、今月の四日には、法務省内のあらゆる部局の担当課長らを構成員とする児童虐待とたたかう法務省プロジェクトチームを新たに設置をいたしました。いわば、法務省が有するあらゆる資源そして能力を総力を挙げて最大限にこのチームに注いで、そして児童虐待の撲滅に向かっていこうということであります。

 既に政府全体としては、先ほど委員も御指摘のとおり、児童虐待について、予防、発見、また児童の保護など、対策に総合的に取り組んでおりますけれども、さらに、法務省においてもそれをしっかりと進めていきたい、スピード感を持って私はこのプロジェクトチームを進めていくべきだという話をしておりまして、早々に提言をぜひ取りまとめていきたい。その際に重視をしたいのは、最も大切にしなきゃいけないのは子供の命である、生命である、この観点を最重視をしていく、同時に、現場感覚、そしてさまざまな関係者からも直接いろいろと聞き取りなどを行っていくべきだということをお話ししております。

 児童虐待の撲滅に向けて、法務省として、これまで以上により積極的に、そして総合的にその役割を果たしていく覚悟と決意であります。

越智委員 ありがとうございました。

 今、大臣から、この児童虐待は最重要課題である、そしてプロジェクトチームを立ち上げてスピード感を持って提言を早々に出す、現場感覚をしっかりと持って取り組むというお話がございました。

 そこで、法務省の事務方にお伺いしたいと思うんですけれども、この児童虐待とたたかう法務省プロジェクトチームでありますけれども、この児童虐待防止対策というのは文部科学省や厚生労働省などさまざまな省庁でもさまざまな取組が行われてきているという課題だと思いますけれども、そういう中で、この法務省のプロジェクトチームは具体的にどのような方向でどういった検討を行ってどのように動いていこうとしているのか、答弁をお願いしたいと思います。

西山政府参考人 児童虐待とたたかう法務省プロジェクトチームにおきましては、児童虐待の撲滅に向け、省内の関係部局における現行施策の実施状況の検証を行いまして課題を洗い出すとともに、それを踏まえつつ、法務省における有効な児童虐待防止施策や効果的な関係機関連携のあり方について幅広く検討を行い、年明けを目途として提言を取りまとめることといたしております。

 本プロジェクトチームには、これまで児童虐待防止施策にかかわってこなかった部局も含め、構成員として参加しておりまして、検討の方向性や検討分野を限定することなく、これまでの取組や所管にとらわれず、自由で柔軟な発想で幅広い検討を行うこととしております。

 具体的には、既に二回の会合を開催したところでございまして、今後も週一回程度のペースで会合を開催することとしており、児童虐待を取り巻く現状を把握するため、有識者や関係省庁等からのヒアリングや視察等も行う予定にしております。

 以上でございます。

越智委員 ありがとうございました。

 今お話を伺って、ぜひともしっかり取り組んでいただきたいし、そういう取組の中で新たな視点、新たな対策ということを発見して、しっかり進めていただきたいというふうに思います。

 それでは、次に、二つ目の大きなテーマとして、司法外交についてお伺いしたいと思います。

 河井大臣は、四年前、二〇一五年から二年間は外交担当の内閣総理大臣補佐官をお務めでいらっしゃいました。二〇一七年からは自民党の総裁外交特別補佐を歴任ということでございます。私の知る限りでは、アメリカのトランプ大統領との関係を始め、さまざまな外交関係の構築に尽力をされてきたというふうに思います。

 今回、所信的挨拶を伺って、この所信的挨拶の司法外交の項目についてもお伺いしたいところがございました。

 この項目、数行でありますけれども、前半は従来どおりで、国際会議の開催などが述べられておりますけれども、最後のところの二行ぐらいかな、ここで次のように述べられております。さまざまな機会を捉えて、先進諸国を始めとする各国の司法関係閣僚とも積極的に対話を行っていくと。この部分はこれまでの大臣が大臣所信や所信的挨拶で述べてこられなかった部分なんじゃないかと思っておりまして、逆に言えば、河井大臣独自の意欲を表明された河井カラーだと私は受けとめました。

 これまでさまざまな外交関係の職務で培った手腕や経験をどのように生かそうと考えておられるのか、具体的にどのような司法外交に取り組んでいこうと考えているのか、大臣から決意を伺いたいと思います。

河井国務大臣 今、越智理事から言及をしていただきましたけれども、これまでいろいろな外交、安全保障の仕事を進める上で、私がやはり、政治家として最も追求をしていくべき、実現をしていくべき価値観というもの、その一つに、自由、民主主義、法の支配、人権といった基本的な価値、これを共有していく、そして世界に発信していくことは大変重要だ、そう考えてまいりました。

 これまでも法務省におきましては、今御指摘いただきましたけれども、司法外交の取組、いろいろな形で進めてきています。例えば、来年の四月、春に京都で開催される第十四回の国連犯罪防止刑事司法会議、それから、犯罪防止や法制度整備支援について、主に発展途上国に対して国際協力を行ってきた、また、日本の国内を含めて、国際仲裁の活性化に必要な基盤整備といったものにこれまで取り組んできておりますけれども、私は、そういったこれまでの法務省が積み重ねてきた司法外交につけ加えて、二つの方向性を考えて、この世界に広がる法務行政というものをせんだっての挨拶で申し上げました。二つの方向性というのは、インとアウトです。

 まず、インということでいいますと、多文化共生社会の実現。つまり、外国から、過去最高の水準の観光客、外国人訪問者、あるいはこの四月から新たな制度に移行した外国人労働者、そういった方々を含めて多くの方々が日本に来ていただいている、そういう中で、外国人と日本人が日本国内において安全、安心に暮らしていける、そういう多文化共生社会をぜひ実現をしていきたい。日本で働いて、学び、生活する外国人、これからも間違いなく増加をしていきます。こういう状況において、法務省は外国人の受入れ環境整備に関する総合調整機能を担っている、そういう重要な立場から、いわば政府全体の司令塔となって、昨年末に取りまとめられた総合的対応策に掲げられた各種施策をできるだけ早く着実に推進していきたい。これはインなんですね。

 アウトの方については、自由主義陣営、先進諸国を始めとして各国の司法関係閣僚との対話あるいは会議体、そういった連携を強化する。そして、多国間の国際的な枠組みも戦略的に活用していく。

 そういう意味で、これまで外交、安全保障の分野で培ってきた、大変乏しゅうございますけれども、知見とか経験、そういうものを十分に活用して、この二つの方向を踏まえながら、世界に広がる法務行政を展開していきたい、そう考えております。

越智委員 ありがとうございました。

 世界に広がる法務行政、このアウトの部分ですね、この中で、司法関係閣僚との対話といいますか働きかけをしっかりやっていくというお話でございました。

 今、大臣のお話の中で、京都コングレスの話がございました。ここについて、ちょっと深掘りをさせていただきたいと思います。

 この九月の国連総会の安倍総理の一般討論演説の中でも、来年四月のこの京都コングレスの日本開催が言及をされました。限られた演説時間の中でこの京都コングレスのアピールをされたわけでありますけれども、安倍総理も強い関心を持っているということだと私は受けとめた次第でございます。

 この京都コングレスは来年の四月でありますので、もう一年を切っているといいますか、もう半年後だということですけれども、河井大臣はこの京都コングレスについてどんな意義があるというふうに考えておられるのか、また、これから先の法務行政を考えたときにこの京都コングレスをどのように生かされたいのか、その点についてお考えを伺いたいと思います。

河井国務大臣 ちょうどきょうから百八十日後なんです、この京都における国連の刑事司法会議。そういうときにこの御質問をいただいて、しっかりとこれから決意を持って、会議の成功に向けてまた一生懸命取り組んでいきたいと考えております。

 私は、今、成果を、どういうことを考えているかということを御質問されました。今の段階で二つ考えております。

 一つは、国連のSDGs、これの達成に向けた犯罪防止、刑事司法及び法の支配の推進という観点、国際連合においてこのSDGsが策定をされて、世界各国の加盟国で共有されて迎える、実は初めての国連の刑事司法会議ということでありますので、ここで打ち出された中長期的な方針に基づいて、参加していただける各国が犯罪防止や刑事司法分野の取組を進めていく、これが一つの私は大きな意義、そして成果としての目的ではないかと考えております。

 もう一つは、日本が長年にわたってたゆまぬ努力を行ってきました、世界一安全な国日本、そういったことを実現するために、さまざまな制度、そして民間の方々の御協力もいただいて行ってきました。その努力と成果をぜひ世界各国の皆様に御認識をしていただく、そして日本における法の支配の浸透や世界一安全な国日本を体感していただく、私は絶好の機会である、そう考えております。

 この機会を通じて、法の支配、基本的人権の尊重、基本的価値観を国際社会において確立させるべく、議長国が日本でありますので、しっかりと指導力を発揮して、さまざまな取組が成功するようにこれから積極的に進めてまいります。

越智委員 ありがとうございます。

 SDGsの推進と日本の成果のアピール、認識してもらうということを二つの目標に掲げ、意義だというふうにおっしゃられました。

 一つ目の方のSDGsのことについてちょっと深掘りをしたいと思います。これは事務方に聞きたいんですけれども。

 SDGsの目標の十六、「平和と公正をすべての人に」の関連の部分だというふうに思います。法務省において、より具体的に、このSDGsをどのように達成しようと考えているのかということをお伺いしたいわけですけれども、このSDGsは各省でさまざまな取組がございます。この九月は国連ではSDGs首脳級会合の第一回が開かれたわけでありまして、こういったことについては外務省が主導的な役割を果たされたんだと思いますし、ユネスコではESDイニシアチブというのをこの秋に採択する予定ですが、三カ国が主導的役割を果たすんですが、そのうちの一つが日本で、これは文科省の取組というふうに考えております。

 そういう中で、法務省は、外務省を始めとする関係省庁と連携した取組ができているのか、あるいは、これからどう連携して四月の京都コングレスに結びつけていこうとしているのか、この点についてお伺いしたいと思います。

西山政府参考人 まず、最初の方の御質問でございますけれども、京都コングレスの全体テーマとして、二〇三〇年アジェンダ、すなわちSDGsの達成に向けた犯罪防止、刑事司法及び法の支配の推進ということが掲げられてございます。

 それで、御指摘のSDGsのゴール十六では、「平和と公正をすべての人に」を掲げておりまして、法の支配の促進、テロ対策、犯罪撲滅等に向けた国際協力をうたっており、京都コングレスではその具体的な方策が議論されることとなっております。

 このような法の支配の推進がテーマとなる国連最大規模の国際会議を我が国で開催し、議論をリードすることで、世界じゅうに法の支配の重要性を訴え、ゴール十六の達成に貢献してまいりたいと考えております。

 また、SDGsのゴール十七では、「パートナーシップで目標を達成しよう」というふうにうたわれております。誰一人取り残さない社会を実現する上で、罪を犯した人の更生には、政府、自治体、民間企業や地域のボランティアが互いに連携することが重要だと考えております。

 法務省としては、そのような官民連携の取組等を各国に発信することなどを通じてSDGs達成に貢献したいと考えております。

 また、後の方の御質問でございます関係省庁との連携でございますが、京都コングレスの成功に向け、外務省や警察庁等と関係省庁連絡会議を設置しております。外務省を始めとする関係省庁としっかり連携して、SDGsの達成に向けて引き続き努力してまいりたいと考えております。

越智委員 ぜひ、より意義深いものになるように、関係省庁と連携して取組を進めていただきたいと思います。

 それでは、次の質問ですけれども、あと十分ございますので、これから特定技能制度と送還忌避者の問題についてお伺いしていきたいと思います。

 特定技能制度、これについてはことしの四月から運用が始まっているわけでございますけれども、我が国の深刻な人材不足を受けて、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある十四の産業上の分野において受入れをすることとしたということであります。

 まず入管庁にお伺いしたいんですが、現在までの特定技能制度の運用状況について、簡潔に説明していただきたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 特定技能の在留資格を取る手段は二つございまして、一つは、海外の外国人が取得する場合でございまして、この場合、在留資格認定証明書交付申請、それに対する交付ということがございます。これは、十月十八日時点の速報値で、千二百三十八件の申請に対して三百三十九件の交付となっております。

 それから、二つ目は、既に我が国に在留資格を持って在留する外国人がこの特定技能に在留資格を変更する場合でございまして、これは、同じく十月十八日の時点の速報値で、千二十件の申請に対して二百七十七件の許可が出ております。

 さらに、特定技能の場合には登録支援機関が活躍しておりますが、この登録支援機関につきましては、三千七百三十件の申請に対して二千七百二十五件の登録が既に終了しております。

 このほか、当初、登録支援機関の登録件数が少なかったことから、他の在留資格から特定技能への変更準備のための在留資格変更を許可しておりまして、これは特定活動という在留資格で許可しているものでございますが、これが速報値で七百七十一件の許可となっております。このうち二百五十七件は既に特定技能への在留資格変更申請に移行しておりまして、うち七十二件は既に許可が出ておるものでありまして、これは先ほどの二百七十七件の中に含まれているということになります。

 それから、技能試験の実施状況でございますが、特定技能一号外国人につきましては、その技能水準を確認するため、技能試験を実施することとしております。

 現在までに、介護、宿泊、飲食料品製造業、外食業の四分野で技能試験が実施されておりまして、このうち介護分野につきましては、フィリピン及びカンボジアで実施されております。また、航空、農業、ビルクリーニングの分野においても近日中に技能試験が実施される予定でございます。

 また、介護分野につきましては、先ほどのフィリピン、カンボジアのほかにネパール、インドネシアで、また、宿泊につきましてはミャンマーで、航空につきましてはモンゴルで、それぞれ近日中に技能試験が実施される予定でございます。

 このように、順次運用が進んでいるところでございまして、今後、在留資格を取得する外国人数は増加していく見込みと考えております。

越智委員 ありがとうございました。

 この特定技能制度については、初年度で十四分野で合計四万七千五百五十人、五年間で三十四万五千五百人を受け入れるという見込みであったというふうに思うんですけれども、今の御説明にあった数字をどう評価すればいいのかと思うわけでありますけれども。

 一年間の見込みと半年間の実績ですから、期間は異なるのでそれなりに乖離があるとは思うんですけれども、現在の受入れ見込み数について河井大臣はどのように評価をされているのか、これで深刻な人材不足に応えていけるのか、お考えをお伺いしたいと思います。

河井国務大臣 今、越智理事、御指摘いただきましたけれども、経済界を始めとして各方面から、深刻な人手不足への対応策として大きな期待が寄せられているということは重々承知をいたしております。

 今、入管庁の次長が御説明申し上げましたとおり、今後も特定技能の許可を受けられる方々は着実に増加していくと考えておりますが、現実にさまざまな課題があるということは、しっかりとそういったことについて向き合って、そして対策を打っていかなきゃいけない、そのように考えております。

 越智先生が部会長をお務めになる自民党の法務部会、あるいは自民党の外国人労働者問題に関する特別委員会などでも、いろいろと貴重な御意見を出していただいたというふうに承知をいたしております。

 現段階で、私たちは三点課題があるというふうに思っております。一つは、いまだ試験が実施されていない分野や国がある。二つ目は、送り出し国において送り出し手続がいまだに整備中のままである。三点目は、制度が複雑で申請する手続がわかりづらい。

 こういった現場の声にしっかり耳を傾けて、具体的に解決をしていかなきゃいけないと考えておりまして、まず最初の点につきましては、分野を所管する経済産業省、厚生労働省、国土交通省、そして農林水産省とともに、試験実施の分野や実施する国の拡大を強力に推進をしていく。二つ目、送り出し国に対して、送り出し手続の整備に向けた働きかけをしっかりと実施をしていく。三点目は、さらなる説明会を各地で実施をする、そして、法務省のホームページの中に、申請手続案内を始めとする情報を改善充実などを行って、制度のきめ細やかな周知を行っていく決意であります。

 深刻な人手不足の解消策として活用していただけるような制度となれるように、関係省庁と連携して力を尽くしてまいります。

越智委員 ありがとうございました。

 しっかりと取り組んでいただきたいと思いますし、私たちもしっかりとこの点については議論を進めていきたいと思います。

 それでは、最後のテーマでありますが、送還忌避者の問題についてお伺いをいたします。

 ちょっと時間が限られましたので、事務方への質問は飛ばしまして、大臣にお考えを伺いたいと思うんですけれども、所信的挨拶の中では、退去強制令書が発付されたにもかかわらず、さまざまな理由で送還を忌避している者がおり、その存在は、迅速な送還に対する障害や、収容の長期化の大きな原因となっているというふうに述べられたわけであります。

 記者会見の議事録を拝見すると、大臣は率直な感想をおっしゃっていて、これは十月一日ですけれども。就任早々、関係の部局からこの送還忌避者についての問題あるいは実態について報告を受け、私自身、正直言いまして驚いた部分があります、その上で、外国人がふえる中で、一方で所在不明者がいるという現実にしっかり対処するというお考えを述べられたわけでございます。

 所信的挨拶で、大臣は、迅速な送還の実現及び長期収容状態の着実な解消に努めるというふうにおっしゃっているわけでありますが、ここにも強い決意を感じるわけでありますが、どのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

河井国務大臣 この問題、大変、私自身、深刻に受けとめております。

 この退去強制業務は、出入国在留管理行政のいわば最後のとりでである。これが機能不全になるということは、日本のこの制度の根幹を脅かして、日本の社会秩序や治安にも大きな影響を与えるものだというふうに受けとめておりまして、まず、出入国在留管理庁に対しては、就任直後、このような指示をいたしました。現行制度でもとり得る方策を総動員してほしいと。

 例えば、仮放免の身元保証人となるべき者の適性審査をこれまでよりも慎重に行う。二つ目は、仮放免を認める際の保証金の金額の設定のあり方も見直していくということでありまして、具体的には、そもそも身元保証人というのは仮放免された者の活動状況を把握してその出頭確保等を保証するものである、にもかかわらず、身元保証がなされているのに現に逃亡する仮放免者が多数存在していることは、制度の趣旨にもとる事案もあるということですから、身元保証人の適性審査を厳格に運用するように指示しました。もう一つは、保証金の額について、入管法第五十四条第二項におきましては三百万円を超えない範囲内と定められているにもかかわらず、実際にはこれを大幅に下回っている金額を設定していることが多いと聞いております。よって、逃亡防止の実効性を担保できる金額に見直すように指示をしました。

 さらに、今月二十一日に、収容・送還に関する専門部会を出入国管理政策懇談会のもとに設置をしまして、今後、法整備を含む具体的な方策についてさまざまな角度から自由闊達な御議論がなされることを強く期待をしております。

越智委員 大臣にしっかり取り組んでいただくことをお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、浜地雅一さん。

浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。

 河井大臣、御就任なされまして初めての質問でございますので、よろしくお願いしたいと思っております。

 質問に入る前に、先ほど越智委員の質問の中で、河井大臣が、外交、安全保障の専門家として、総理補佐官としても世界を飛び回られたお話を聞いておりました。

 法務省としても、私も法務の理事、二年目に入るわけでございますが、ここ最近は法務省も司法外交ということを目玉にされております。私自身も、大体、外務や安保委員会に長く所属しておりまして、四年前、外務政務官も務めさせていただきましたが、まさに国際社会は弱肉強食で、ややもすると法の支配というのが後回しにされているというのが私の実感でございまして、そういった世界の情勢を知る河井大臣には、まさにこの法の支配の徹底ということも大変期待をしていきたいと思っておりますし、また、そういったお話も、随所、聞かせていただければなというふうに思っております。

 ちょっと感想めいたことを言いました。

 ちょっと私の方は、まず国内に目を向けまして、今回の法務省の災害対応についてお伺いをしたいと思っています。

 私は、地元は九州でございましたので、今回の台風十五号、十九号については余り大きな被害はなかったわけでございますが、全国的に大きな被害が今回起こったわけでございます。松島委員長におきましては、当初、黙祷を呼びかけられまして、しっかりと今回の被害者の皆様方へのお悔やみとお見舞いを申し上げたこと、大変すばらしいスタートだったというふうに思っております。

 まず、今回の台風被害で、法務省また裁判所所管の施設に大きな被害状況はあったのか、そして、現在も業務に支障が出ているような状態になっているのかどうか、端的にお聞かせいただければと思います。

西山政府参考人 今回の台風第十五号及び台風第十九号による法務省関係施設の一連の被害につきましてですが、東日本を中心とした多くの官署において、雨漏り、窓ガラスの破損などの、比較的軽微ではございますけれども、被害が発生したという報告がございましたほか、一部の施設におきましては、停電、フェンスの倒壊等の施設設備の損壊、敷地外への倒木、工事用足場の倒壊、高潮による浸水被害、情報ネットワークの障害等も発生したとの報告がございました。

 これらの被害のうち、情報ネットワークの障害により端末を使用できない法務局の支局におきましては、書面で受け付けた登記申請等の情報を法務局の本局にファクス送信するなどして、支局にかわって本局がシステム入力をするという代替措置を講じてございます。

 他方で、停電につきましては既に解消されており、そのほかの被害につきましても業務継続に支障がない程度まで既に復旧済みであり、いずれも現場の業務は既に再開しておるというふうに聞いてございます。

 以上でございます。

笠井最高裁判所長官代理者 裁判所施設についてお答え申し上げます。

 裁判所施設の比較的大きな被害といたしましては、台風十九号によりまして、長野地裁管内の飯山簡易裁判所庁舎におきまして一階部分の床上浸水被害が生じました。十月十七日木曜日まで閉庁いたしまして清掃等を行った上、十八日金曜日から庁舎の二階部分で開庁をしている状況でございます。

 このほかには、雨漏りなどの被害があったり、交通事情等を考慮して期日を変更したりした庁はございましたが、開庁できないほどの状況は生じておりません。

 以上でございます。

浜地委員 被害状況を確認させていただきまして、今は業務に大きな支障は出ていないということで、安心をさせていただきました。

 あとは、特に法務省の矯正施設等は、予算をしっかりとるときに、例えば地元住民の皆様方の災害時の避難場所として活用したいということも理由の一つとして予算化をしておるわけでございますが、では、今回の台風被害において、法務省の矯正施設を例えば地元住民の避難場所として開放するなど、そういった災害対策は具体的にとられたのかどうか、法務省にお聞きをしたいと思います。

名執政府参考人 矯正施設は、刑事施設五十三庁、少年施設十八庁の計七十一庁におきまして、自治体等と災害時の防災協定を締結しております。

 今般の台風に際しましては、自治体からの要請に基づき、台風十五号の際に八街少年院で、また、台風十九号の際には、東京拘置所、府中刑務所、東日本成人矯正医療センター、駿府学園において、それぞれ会議室や体育館等を利用し、避難者延べ百九十五名の受入れなどの支援を行っております。

 また、本月十七日からは、長野県須坂市の要請によりまして、長野刑務所職員を派遣し、災害ごみの廃棄作業などの支援に従事させているほか、これ以降も同市へ特別機動警備隊や甲府刑務所の職員を派遣しております。

 また同様に、茨城県水戸市にも、水戸刑務所、東京拘置所、喜連川社会復帰促進センターから職員を派遣し、二十二日までに延べ百二十名の矯正職員を被災地支援に充てております。

 今後とも、被災自治体と緊密に連携してまいりたいと思っております。

浜地委員 かなり具体的に、地元住民への対策や、また、職員等々の皆様方の派遣の状況を今御報告いただきました。

 防衛省は、結構、災害出動をしますので、よくホームページに記載をされておりますが、法務省としても、そういった地域に開放したり、また、職員を送っているということもぜひPRをしていただければなというふうに、今の答弁を聞いておりまして感じたところでございます。

 次に、耐震化の取組についてはちょっと一回飛ばしまして、法務大臣に質問をしたいんですが、今回の台風十九号において、私、ツイッターを見ておりましたら、法務大臣が英語で、日本にいらっしゃる外国人の皆様方に呼びかけをされておりまして、大変やはり外国人のことを思うツイートだったなというふうに思っております。今回の警戒について英語で呼びかけられました。非常に高く評価をしたいと思っております。

 そこで、法務大臣として、法務省として今後また災害対策に臨む、これからの大臣の姿勢といいますか、御決意といいますか、そういったところをお聞かせいただければと思っております。

河井国務大臣 まず初めに、相次ぐ甚大な災害によってお亡くなりになられた数多くの方々に御冥福を心からお祈り申し上げ、また同時に、被災された、今なお不自由な避難生活を余儀なくしていらっしゃる方々に心からお見舞いを申し上げます。

 今回の台風十九号災害につきましては、安倍総理大臣からこのような御指示をいただいておりました。現場主義を徹底し、被災自治体と緊密に連携しながら、復旧作業、被災者に寄り添った支援に尽力するようという御指示でございました。

 実は、私自身、衆議院議員に初当選したのが平成八年でありますけれども、それ以来、私の選挙区だけで三回、大規模な豪雨災害にこれまで見舞われてきました。平成十一年の六・二九、平成二十六年の八・二〇、そして昨年の七・六ということで、特に五年前の八・二〇では、自分の選挙区だけで七十七名という余りにも多過ぎる犠牲者を生んでしまいました。

 連日、そういった災害の発災した直後から避難所を回ったり被災地に赴いて、被災された方々のいろいろな御意見に直接耳を傾けて、そして、できるだけそれが、さまざまなことが少しでも解決するようにということで、一人の政治家というか衆議院議員としてはこれまで一生懸命取り組んでまいりました。

 ですから、もう、いつ、どこで大規模災害が起きても全く不思議ではない、そういう危機感、そして当事者意識を持った防災と災害対応の重要性を、法務省に入るまでも強く意識をしておりました。

 ましてや、法務省という役所は、国家の安定と社会の秩序、そして国民の皆様の安全と安心を守り抜く必要な法的基盤を整備するという大変重要な使命を帯びている役所でありますので、大きな役割を発揮しなきゃいけない。

 ですから、私は、就任した直後に、災害対応は法務省の本来業務の一つである、その意識を強く持ってほしいということを繰り返し職員の皆様にお話をしております。

 それを受けて、十月十三日日曜日、法務省内に政務三役と各局の部課長から成る法務省災害対策本部を立ち上げました、この台風十九号についてですね。実際に台風十九号が日本の本州に来たのは十月十二日の土曜日でありますけれども、その直後に立ち上げ、十四日は体育の日でお休みの日でしたけれども、省議メンバー、幹部の皆さんに、皆さん出席をしていただいて、第一回の会議を開催をいたしました。

 それで、今、浜地理事からおっしゃっていただきました英語の動画の話なんですけれども、外務大臣政務官の浜地先生に高く評価されると何となく面映ゆい気がいたしますけれども、英語の水準は余り高くなかったと思いますけれども、でも、私は、去年のあの関空で、外国から日本を訪れた方々が大変不自由をされた、難儀をされたというそのニュースに接しておりましたので、十月十日木曜日に、在留外国人向けに、私の拙い英語でありますけれども、動画を収録をして、法務省のホームページあるいはユーチューブなどに掲載をいたしました。

 内容は、十一カ国語が対応できる災害情報提供アプリケーション、セーフティーチップスというのがあるんです、それから日本政府の観光局の公式ツイッターであるジャパン・セーフ・トラベル、これをぜひお持ちのスマートフォンにダウンロードをしていただいて、台風に対する警戒を呼びかけるだけでなくて、交通機関の情報だとか、あるいはフローチャート、災害に遭ったときの流れ図が載っておりますから、そういうことについて情報をぜひとっていただきたいということを呼びかけました。

 また、同じ日に、職員に対しては、先ほど事務方が答弁しましたように、法務省施設の防災の備え、そして、自分たちが助かるだけではなくて、被災地の皆さんに支援をしてほしい、地域社会への貢献についても準備を指示をさせていただきました。

 今後の取組なんですけれども、引き続き、必要な地域支援、そして法的支援はしっかりと継続をしていきます。それに加えまして、特に在留外国人の皆さんへの災害関連情報の提供、これが重要でありますので、被災地の状況を見きわめながら、外国人や受入れ企業などから直接、今回のこの情報提供の方法、あり方、内容についてぜひ御意見をお聞かせいただきたいという聞き取りを実施するように、出入国在留管理庁に指示を既にいたしました。そこで得られた知見を、今後発生するかもしれない次なる災害のときにもぜひ活用していきたい。

 法務省のあらゆる資源、能力を最大限活用して、被災された皆様の生活再建に全力を注いでまいります。

浜地委員 ありがとうございます。

 災害対策は本来業務の一つであるというお言葉もいただきましたし、まさに大臣の御経験の中で、これまでの災害対応の中で、当事者意識を持つということは、私も政治家として非常に勉強になるなと思いながら、今御答弁を聞かせていただいておりました。

 引き続き、この在留外国人に対する聞き取り調査を行っていただきまして、やはり法務省は在留外国人に優しい政策をしているという非常に一つの大きなPRにもなろうかと思っておりますので、今後しっかりと、公明党の法務部会としても、そういった大臣の取組を後押しできるように頑張っていきたいなというふうに、今御答弁を聞いて思ったところでございます。

 今、少し在留外国人のお話が出てきましたので、京都コングレスの話をしようと思ったんですが、ちょっと質問を一つ順番を入れかえたいというふうに思っております。申しわけございません。

 ちょっと私のもとに来ておりますのが、在留資格をお持ちの方、また特別永住者の方々が十六歳を迎えると、在留期間の有無にかかわらず、例えば在留期間がそれ以上あったとしても、十六歳の誕生日を迎えると、在留カードや特別永住者証明書の切りかえを御本人が行わなければならないという規定があるようでございます。

 今、十六歳未満の者に交付されている在留カード等が、十六歳の誕生日を迎えると切りかえを行わなきゃいけないというような運用だと思いますが、この点について、今の仕組みといいますか、そういったものをまず御答弁いただきたいと思います。

高嶋政府参考人 御説明します。

 在留カード又は特別永住者証明書を持っていらっしゃる方のうち、有効期間満了の日が十六歳の誕生日までとなっている者の有効期間更新申請というのは、十六歳の誕生日の六カ月前から誕生日の日までの間に行う必要があるということになっております。ただ、本人が十六歳に満たない場合には、同居の親族がこれにかわってしなければならない、こういうふうになっております。

 そうしますと、十六歳の誕生日までは父母等が有効期間の更新申請を行うわけですが、十六歳の誕生日にはこの外国人本人に申請義務が生ずる、こういう仕組みになっております。

浜地委員 今、十六歳の誕生日の前までは六カ月前から父母が代理で申請できるんですが、十六歳になると本人がしなきゃいけない。私のもとには、十六歳になったときに更新できる期間がわずか誕生日の一日だけというふうに聞いております。だから、恐らく、高校生だったりすると、これは本人が出頭しなきゃいけませんので、学校を休んで御本人が、十六歳の、在留資格をお持ちの方がこのカードの更新に行かなきゃいけないということで、これが非常にやはり支障が出ているというふうに聞いております。

 これは恐らく法務省の方にも声が届いているかと思っておりますが、これについて、ぜひ改善を私は図るべきであろうと思っています。非常にやはりこれはふぐあいがあって、もし父兄の方が六カ月以内にそれを忘れてしまうと、本人がわずか一日でやらなきゃいけない。それをもし怠ると、刑事罰が実は科されるという法律でございますので、非常に本人に対する不利益が高いと思っておりますが、これについて、見直しの方向性で検討されるのか、法務省にお伺いしたいと思います。

高嶋政府参考人 委員御指摘のような意見、要望があることは入管庁としても承知しております。

 もちろん、この案に関して刑事罰に処せられた例はないと承知しておりますが、当庁においては、御指摘の点はごもっともでございますので、法改正を含めて見直しを検討しているところでございます。

浜地委員 そうですね。刑事罰を科されたことはないといっても、一応刑事罰が規定されていること自体がやはり一つプレッシャーでもございます。

 ただ、私も調べましたら、これは、当然法律ですので法律改正が必要になってくるので、運用でできれば簡単なんですが、やはり法律改正が必要だということでございますので、ぜひ河井法務大臣にも、こういった問題点があるということを、もう御認識だと思いますので、ぜひさまざまな点で検討されて、法改正されることを強く望みたいというふうに思っております。

 話を戻しまして、京都コングレスでございます。

 先ほども越智先生の方からお話がございましたが、私も、この京都コングレスを成功させる十一人会というのが、自民党の先生とともにつくっておりまして、前回、私もそのメンバーで、議連が立ち上がったところでございます。来年四月に行われる京都国際会議場にも視察に行かせていただきましたけれども、京都国際会議場、ジュネーブの国連の建物に似ているなというふうに私は感想を言いました。そうしたら、宝ケ池というのがありまして、実はルマン湖に見立ててつくったそうでございます。ですので、やはりジュネーブの国連の建物に非常に雰囲気が似ているということで、歴史的な建物でございますので、ここで五十年ぶりの京都コングレス、ぜひ成功をさせていただきたいと思っております。

 しかし、京都コングレス、コングレスといっても、私も、実は、昨年ぐらいからこの会議の存在を知りまして、恐らく多くの国民の方はわからないというのが実情だと思いますし、何をするのかというのがあると思っています。

 ですので、改めて、このコングレスの意義と、これまで例えば十数回行われてきたコングレスにおいて採択された決議や宣言が、具体的にこの国際社会における犯罪防止や刑事司法の世界においてどのような成果を上げてきたのか、だから、こういう重要な会議なんですよということを国民の皆様方にもお伝えするべきだと思っております。

 そこで、このコングレスの意義と、これまで採択された宣言や決議がどうこの国際犯罪防止や刑事司法に成果を上げてきたのか、具体的な御答弁を法務省にいただきたいと思います。

西山政府参考人 コングレスは、犯罪防止、刑事司法分野における国連最大の国際会議でございます。

 この会議は、各国の司法大臣、検事総長等を含む世界じゅうの刑事司法関係者が犯罪防止、刑事司法分野における諸課題を議論し、成果文書となる政治宣言、これを採択することにより、この分野における国連の取組の中長期的な方針を打ち出すという意義を有しておるものと承知しております。

 これまでのコングレスにおいて採択された政治宣言等は、その後の国連条約や準則の策定につながるなど、世界の刑事司法制度の充実に寄与してきたものと承知しております。

 例えば、二〇〇〇年のウィーン・コングレスにおいて採択された政治宣言は、腐敗対策のための国際的かつ法的な文書を作成する必要性を強調したものでございましたところ、その後、二〇〇三年に国連腐敗防止条約が採択されるに至っているものと承知しております。

浜地委員 そうですね。今、最後に答弁がありましたとおり、二〇〇〇年の会議で、ウィーンでのコングレスにおいて採択されたこの腐敗防止というものが、具体的にはそこから流れができて、二〇〇三年の国連腐敗防止条約の採択に至ったということでございますので、一つやはりこの国際社会における刑事司法の方向性を決めるものだと思っております。

 私も調べましたら、第九回の、一九九五年のカイロでのコングレスにおいて、まさに二年前に我々法案審査でさまざまもめましたけれども、いわゆるTOC条約、国際組織的犯罪防止条約の意義がここで宣言をされ、必要性が機運となってこの条約がつくられたというふうに私は理解をしております。二年前に晴れて日本はこれに加入をしたわけでございますけれども、その点もこのコングレスにおいてPRする場所があれば、ぜひしていただきたいなと思っております。

 そこで、河井大臣にお聞きをいたしますが、この京都コングレスにおいて、今回、日本として、やはり五十年ぶりでございます、大きな成果を目指すべきだと思っております。この国際犯罪防止、刑事司法に一つ布石を打ったような大きな成果を目指すべきだと思いますが、ここは、所管の大臣として御決意をお聞かせいただきたいと思います。

河井国務大臣 浜地雅一理事におかれましては、この京都コングレス二〇二〇を成功させる議員連盟、役員のお一人ということで、幹事長代理の重役をお務めいただいております。

 いわば、議員のお立場から、党派を超えてこの京都会議を成功させてやろうということで御努力いただいていることに感謝と敬意を表します。会長は元の法務大臣の上川陽子さん、そして、あちらにお座りですけれども、山下貴司前大臣も大変これには力を注がれていたというふうに直接伺っております。

 私自身、国会の都合が許せば、できるだけ早く京都を訪れて、そして、京都の皆さん方、また関係の皆さんと直接意見交換をして、ぜひこの会議、成功することができるようにしっかり陣頭指揮をとっていきたい、そう考えております。

 今、浜地理事からのお尋ねでありますけれども、この会議を開く目的、成果。

 まず一つは、SDGs、これが国連総会で採択されたのが二〇一五年の九月です。前回のコングレス、ドーハで行われたのが二〇一五年の四月ということですので、採択後初めて開催されるコングレスであるということですから、成果文書である政治宣言におきまして、このSDGsの全てのゴールの礎となる基本的価値、先ほども御紹介しましたが、自由、民主主義、法の支配、人権、そういった基本的価値の重要性を力強く打ち出してまいりたい。

 また同時に、日本の安全、安心な社会、そしてこれを支える施策、あるいはそれを生み出してきた日本の文化、そういったところまで世界各国からお見えの皆様に御理解をいただく、そういうわかりやすい紹介、そして展示、あるいはさまざまな活動といったものもこれからぜひつくり上げていきたい。そして、それも成果の一つであると考えております。

 更に加えて、テロ、組織犯罪、腐敗、サイバー犯罪など世界が直面する喫緊の課題、あるいは新しいテーマ、すなわち、AI、ビッグデータ、ICT、そういった最新の先端技術を活用した犯罪防止のあり方についても意見交換をして、それの有効な活用につき、ぜひ方向性を示していきたいと考えております。

浜地委員 そうですね。司法の世界にAIとかビッグデータとかICTというキーワードが出てきましたので、日本は確かに若干電子化等、おくれているところがございますから、しっかりとその部分をまたPRをいただきたいと思っております。特に、外交経験の長い大臣でございますので、ぜひこの京都コングレス、陣頭指揮をとっていただいて、大成功に結びつけていただきたいなというふうに思っております。

 あと残り五分程度でございますので急ぎたいと思いますが、最後に、ちょっとまた国内的なところで、登記所備付け地図の整備についてお聞きをしたいと思っております。

 私、前回の国会において登記所備付け地図の質問をさせていただきましたら、これがしっかりと整備されることによって、費用一に対して経済効果は七倍だという答弁を法務省からいただいたところでございます。

 今、所有者不明土地等について、さまざま法整備が進んでおりますが、やはりその前の、地積がどうなっているのか、境界がどこにあるのかというものがやはりしっかりとわかっていなければ、実際にそういった所有者不明土地も進まないわけでございますので、所有者不明土地の前段階の基礎的なインフラとして、私は、この登記所備付け地図整備という事業についてはどんどん進めていただきたいと思っています。

 しかし、これを受託される土地家屋調査士さん等々から、なかなか隣地の立会いを行ってくれない、これによって非常に地図整備について業務が停滞しているというような御相談も寄せられるところでございます。

 来年に向けて、さまざま、この所有権のあり方についても見直しをされると思いますが、この隣地の立会いを促進する意味でも、私は、所有者については、隣地の立会いの義務を何らかの形で規定すべきではないかというふうに思っております。

 まずは、この登記所備付け地図の整備において、隣地の立会いについてどのような今取組をされているのか、現状についてお伺いしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 法務局における登記所備付け地図の作成作業を行う際には、作業の対象となった地域の土地所有者等の立会いを求めまして、筆界の調査等を行うこととされております。

 もっとも、登記官は、地積測量図等の登記簿の附属書類あるいは関係官公署及び所有者が所有する書類など、また、土地の地目や面積、さらには囲障又は境界標の有無、そういった状況を総合的に考慮しまして、筆界の現地における位置を明確に特定することができるときには、隣接所有者の立会いが得られなくとも筆界の確認をすることができるとされておるところでございます。

 そのため、登記所備付け地図作成作業において筆界を確認することができなかった割合、これは約〇・七%、これは平成三十年度の完了分でございますが、そういった割合になっておりまして、隣接所有者の立会いが得られないことが登記所備付け地図作成作業の大きな支障とまではなっていないというふうに認識しているところでございます。

浜地委員 ちょっと時間がないので、最後、コメントして終わります。

 登記所備付け地図作成のときには登記官がそうやって確認をできますので大きな障害はないということでございますが、それ以外の、やはり筆界を確定しなきゃいけないところについてはさまざま支障が生じていると思っておりますので、ぜひ法務省として、これは最後のお願いでございますが、何らかの形でこういった立会いが促進されるように、私は今義務化と言いましたが、そこまで難しければ、それでも何らかの工夫をしていただくようにやっていただきたいというふうに御要望を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、山尾志桜里さん。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 法務委員会での質問、何回も立っているんですけれども、思うのは、できれば追及するよりも対話をした方が建設的な委員会質疑になるんだろうなということを思っていまして、河井大臣といい対話をして、河井大臣を、ちょっと言葉を選ばずに言えば、野党議員としてきちっと活用をして一つでもいい政策を実現するということが、私の、個の、法務委員会の自分なりの目標設定であります。

 ただ、対話をするにも、質問したことに対して紙だけの答弁をされてちぐはぐだと、結局対話にならず、そうすると追及になってしまうので、ぜひ、厳しいテーマも、あるいは御自身が掲げている話しやすいテーマも、できるだけ自分の言葉で話していただければ幸いです。

 最初、同性婚のところから通告しているんですけれども、最初から同性婚だとちょっと対話になりにくいかなということをさっき思っていまして、後ろの方に書きました司法面接と時効のことを、ちょっと先にお話を進めてみたいなというふうに思っています。

 まず、大臣にお尋ねするんですけれども、先ほど話に出ていました児童虐待についてのプロジェクトチーム、この年末にも一定の方向性を出すということを伺っていますけれども、児童虐待を起こさない、命を一つも失わせないというのが大事かと思うんですが、もう一つの視点として、不幸にも起きてしまった児童を被害者とする犯罪について、その後、その子供をやはり社会みんなでケアをしていくということがすごく大事だと思うんですね。

 そのケアは、何もちゃんと起訴をして有罪にするということだけではないんですけれども、それでもやはり、犯罪被害を受けた者にとっては、きちっと起訴がされて有罪になって、自分は何も悪くなかったんだ、相手が悪かったんだということをチャレンジする必要というのは、すごく大事なことだと思うんですね。

 そういう中で最初にお伺いをしたいのは、今回のそのプロジェクトチームの中で、そこに掲げました司法面接、被害者である子供をできるだけ代表者が少ない回数で聞き取りをするという試みについて、きちっとテーマとして掲げていただけているのかどうか。

 そして、もう一点もあわせて聞きますけれども、子供は、特に性被害に遭ったときに、自分は性被害を受けているということに気づけませんので、時効の起算点について、例えば何歳までずらすとか、あるいは殺人なんかの重たい犯罪については撤廃すらしているわけですから、その検討。

 この二点については、このプロジェクトチーム、あるいは、ほかの土俵でといいますか、河井大臣としてどういうふうに位置づけ、進めていくおつもりかをお聞かせください。

河井国務大臣 まず初めに、山尾志桜里理事におかれましては、この法務委員会だけでなくて、さまざまな政策に精通された、野党の議員の中でも大変著名な方だというふうに伺っておりまして、その方が野党の筆頭理事をお務めをいただいているということで、今回、大変緊張感を持って、また、かつ、冒頭に温かい言葉もかけていただきましたので、今後、国民のためになるような充実した質疑応答になるように、私も最大の努力を傾けていきたいと考えております。

 お尋ねの児童虐待とたたかうプロジェクトチーム、その議題に入るかどうかということでありますけれども、私は、自由かつ柔軟な発想をぜひ持ってほしいということを事務方にお話をしておりました。これまで、例えば人権擁護局などを中心に、児童虐待に対してさまざまな対処を行ってきた部局があります。それはそれで、これからもその活動は深化をしていかなきゃいけないというふうに考えておりますけれども、それ以外の、これまで児童虐待、本来だったら自分が持っている権能や資源、そして人材、予算、制度を活用できるかもしれなかった、そういったほかの部局にも呼びかけて、私は、総合的な法務省としての新しい考え方を含めてぜひ打ち出してほしいということを事務方に指示をいたしました。今委員が御指摘いただいたことも、これからまた役所に持ち帰っていろいろと考えていきたい。

 繰り返しになりますけれども、私は、児童虐待を撲滅するのに、一つの手段あるいは一つの領域だけではないと考えております。さまざまなことが複層的、複合的に組み合わさっているだろう。その一つ一つ、今いただいた御指摘も含めて、しっかりと考えていきたいというふうに思っております。

 それで、具体的におっしゃっていただいた、いわゆる平成二十七年三者通知以降の司法面接の事柄だというふうに考えますけれども、法務省が把握しているのは、平成二十七年の通知以降、千八百件以上の代表者聴取が実施されております。検察、警察、児童相談所の代表者が児童から聴取をする代表者聴取ということでありまして、検察の現場に着実に定着しているというふうに受けとめております。

 もう一つの、今御指摘をいただきました性犯罪の公訴時効についての御質問でありますけれども、言うまでもないことですけれども、年少者に対する性犯罪の被害は大変深刻であり、厳正な対処が必要であることはもう十分に認識をいたしております。

 もう理事はよく御存じと思いますけれども、前回の刑法改正でこの点について改正が見送られてしまった。いま一度その理由について述べさせていただきますと、一つは、公訴時効期間の進行を停止したとしても、子供の記憶につきましては変容するおそれが大きいということから、犯罪事実の立証が困難である場合も少なくないというのが現場の声として上がっております。もう一つは、性犯罪につきましては、被害者の供述が唯一の証拠である場合もあり、そういった場合には、被疑者とそして被告人、その防御の観点からも、証拠の散逸が問題となる。

 そういった点から、平成二十九年の刑法一部改正法におきましては、公訴時効について延長ないし停止を定める改正は行わなかったということでありますが、法務省におきましては、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを設置をしております。そして、山尾理事御指摘の、年少者に対する性犯罪の公訴時効の延長ないし停止に関する事柄を含めて、今、性犯罪の、まずは実態の把握が重要ですので、実態の把握と、外国法制の調査などを進めております。目途としては、来年の春ごろその結果を取りまとめる予定だというふうに聞いております。

 こういった実態把握、外国法制の調査といった調査研究の結果のほかに、今理事から御指摘いただきました点、あるいは被害者団体、被害当事者団体等から寄せられたさまざまな御指摘を踏まえて決めていくことにこれからなってまいります。

 いずれにしましても、充実した検討を行うことができるように、適切に対応してまいりたい、そう考えております。

山尾委員 時効のことは、外国の法制ということでいうと、多分、イギリスは性犯罪に時効がありません。ドイツは、子供が被害者のときは、三十歳まで停止をするというふうに聞いております。

 先ほど、前回前進できなかった理由としてお話がありましたけれども、ほかに目撃者がいないという犯罪の性質、だからこそ卑劣なわけですよね。子供が相手なので、子供の記憶って変わっていくよねと。そういう子供に対する犯罪だからこそ、卑劣なわけですよね。

 だから、そういう犯罪の性質のリスク、負担、これを被害者である子供の側に、もう時効が完成したからトライもできないというふうに差し向けるというのは、私は間違っていると思いますので。そうではない。確かに、立証は難しいと思います。防御の観点も大事だと思います。ただ、制度があれば、立証可能な限り、検察官は起訴します。やはり、可能であるという制度自体はつくる責任があるんだというふうに思います。なので、ぜひやっていただきたいということをお願いします。

 司法面接なんですけれども、本当に、国会をよくしようというのも私ずっと思っていまして、例えば、これは平成二十七年に法務委員会のメンバーで夏に行った視察の報告書なんですね。この視察のときには、法務委員もメンバーがかわっていきますので、やはりちゃんと視察の結果とか問題提起は引き継いでいった方がいいと思うので持ってきたんですけれども、このときは、奥野委員が委員長をやられていて、今いらっしゃるのが伊藤委員と、あと山下委員もいらして、私も行かせていただきました。

 このときに見たのは、イスラエルで司法面接の状況を見てきたんですよ。子供の保護センターというのがエルサレムにありまして、そこでは、読んでいただいたらいいんですけれども、全てを内包したトータルケアの提供を行っている。子供に対する捜査だけでなくて、治療。そこには、警察官、司法面接官、子供保護官、あるいは小児科医、弁護士、こういう人たちがここで働いているんですね。そういう施設が、イスラエルの中には当時ですけれども六カ所あって、今二カ所建設中ですという説明を聞きました。一番新しい施設は北部につくられていて、これはアラブ人の子供たちのためのものだという説明も受けたんですね。このイスラエルの施設自体は米国、アメリカの施設をモデルにしていて、アメリカにはこのような施設が六百ほどあるという説明も受けました。

 司法面接は、この三年で、やらないよりやった方がよくて、少しずつ件数把握なんかもしてもらっているんですけれども、ぜひ、着実に、少しずつ前進しているというところにとどまらず、しっかりこの三年の検証をしていただいて、やはり、子供にとって目標は高く設定してほしいものですから、そういったトータルケアができる施設を日本につくっていくことはできないだろうかというようなところまで目標を持って進めていただきたいというふうに思います。

 この二つのことは今後も一般質問等々でやっていきますので、いよいよ次の質問に行きたいというふうに思います。

 皆さんのお手元に、私の資料なんですけれども、ありますでしょうか。五ページ目をめくってください。これは、いわゆる同性婚訴訟における政府の側の準備書面です。ここに三の「結語」というところがあるんですけれども、これは裁判所から、婚姻制度というのはどのように考えられてきたものと捉えていますかというような求釈明に対して、問いかけに対して、政府の答弁なんですね。

 三つの時間軸でこれは構成されていまして、見ていただくと、婚姻関係は、まず、伝統的に生殖と結びついて理解されていたため男女間のものと考えられてきた。次が、じゃ、明治民法のとき、これも、制度化した婚姻は男女間の結合を前提としたものであり、同性婚の存在は想定されていなかった。次、じゃ、今度は日本国憲法とともに改正された現行民法、今の民法の制定されたときも、婚姻の当事者が男女であるという前提には変更がないと言える。言い得るなのか言えるなのか、ちょっとわかりませんけれども、言えるというふうに書いてあります。

 これ自体も論点があろうかと思います。過去であれ、別の見方があったんじゃないですかというような。

 でも、きょうは、ちょっと絞って、私がお伺いをしたいのは、現在の、現時点の法務大臣の認識です。婚姻の捉え方について、まずはお聞かせください。

河井国務大臣 婚姻制度の目的というお尋ねであります。

 民法における婚姻制度の目的は、一般に、夫婦がその間に生まれた子供を産み育てながら共同生活を送るという関係に対して法的な保護を与えることにあると言われております。この点について、確かに、子供を持つ予定がない男女等であっても婚姻をすることができるというのは既に今でもございます。

 一方で、婚姻関係のように、家族法における基本的な制度については、その目的もある程度抽象的、定型的に捉えざるを得ない、また、制度を利用することができるか否かの基準が明確である必要があると考えております。よって、具体的、個別的には、子供を持つ予定がない男女などであっても法的な保護の対象に含まれることになります。

 そしてなお、抽象的、定型的に子供を産み育てることが予定されていない同性カップルに、価値観が多様化している現代において、どのような保護を与えるべきかという点については、子供を持つ予定のない男女の場合とは異なる、家族のあり方の根本にかかわる問題であるというふうに現段階で認識をしており、よって、慎重に検討すべきものだと考えております。

山尾委員 わかりにくいんですけれども……(河井国務大臣「わかりにくいんです」と呼ぶ)わかりにくいですね、非常にね。

 よく議事録を見ながら、この議論、また別の回でも続けていきますけれども、私がまず受けた印象というのは、今の定義ですね、夫婦が子供を産み育てながら共同生活を営むというような、この定義は、私から見ると、ひどく具体的なんですね。抽象的というよりは、今この結婚の制度を利用する、さまざまな価値観やパートナーシップがある中で、男女たる夫婦が子供を産み育てながら共同生活を行うライフスタイル、価値観というのは、ひどく個別的であり具体的であって、全然、私から言うと、抽象的な規範にはなっていないんじゃないかなというふうにまずは感じました。

 もし抽象的ということを言うなら、私としては、それこそ子供を持つ持たないにかかわらず、パートナーとして社会的あるいは法的認知を得たいというこの抽象的な規範、こういう目的、子供を持つ持たないにかかわらず、パートナーとして社会的にあるいは法的に認めてほしいというこの思いというのは、婚姻制度の目的の中に現在全く入らないんでしょうか。ゼロでしょうか。

河井国務大臣 今の日本におきましては、婚姻とは、先ほども言いましたけれども、子供を産み育てる関係の典型的な形態である男女の関係に対して法的な保護を与えるものであるという家族観、家庭観、これが形成されているものだ、我が国においては形成されているものだと考えております。

山尾委員 もうその家族観は大きく若い世代から変わり始めているということも御存じだと思いますね。

 幾つかもちろんアンケートはありますけれども、例えば全国家庭動向調査、ことしの九月の公表ですけれども、例えば、結婚経験のある女性を対象とした同性婚についてのアンケートでは、何と六九・五%が同性婚を認めるべきというふうになっています。約七割ですよね。結婚歴のある女性の七割は同性婚を認めるべきだというアンケートになっている。なかなか趣深い話だなというふうに思うんですけれども。

 あと、NHKの二〇一七年の世論調査でも、「男性どうし、女性どうしが結婚することを認めるべきだ」という項目に対して、「そう思う」が五〇・九、「そうは思わない」というのが四〇・七。過半が、そう思うと、賛成をしているという状況にあります。

 私、やはり、一つ申し上げたいのは、この同性婚の問題というのは、同性婚を望む人がふえているとか同性婚を許す人がふえているとか、ついついそういう文脈で語りがちなんですけれども、これはマイノリティーの人権の問題なので、何か本来であれば、多数決あるいは多数の人が認めるから認めるという問題では本当は多分ないんだと思いますね。多くの人が積極的に賛成していなくても、少数者の人権については保障すべきだというのが本来の考え方だというふうに思うんですね。

 せっかくなので、じゃ、結婚の目的から同性婚自体の話に進んでいきたいんですけれども、これは私、政務官、副大臣にもお伺いしたいと思います。同性婚の導入について、いかなるお考えをお持ちですか。政務官からお伺いしていいですか。

宮崎大臣政務官 お答えいたします。

 社会一般にさまざまな立場の方がおられて、さまざまな意見がこの現代社会においてあるということは事実だと思います。また一方で、法制度をどうするかということに関しては、歴史や伝統であったり、形成されてきた国柄、さまざまなものを踏まえた上で、現在及び将来に向けて定めをしていかないといけないという状況だと思っています。

 私は今、現段階では、もう少し深まった議論をしていくことが必要な段階にあると考えています。

 以上です。

義家副大臣 お答えいたします。

 我が国における家族のあり方あるいは家族観の根幹にかかわる問題でありますので、慎重な検討が必要であろうと思っております。

河井国務大臣 私も、この問題につきましては、日本社会における家族のあり方、そして、家庭観、家族観、この根本、基本にかかわる大変重要な問題であるというふうに受けとめておりますので、慎重な議論そして検討を要するというふうに考えております。

山尾委員 私としては、積極的な議論、検討をしてほしいんですけれども、していきますが、ただ、お三方に共通したのは、議論をしていく必要がある、そこに慎重なという形容詞が加わる面もあるというところでありました。

 河井大臣にお伺いをします。

 その検討をしながら、ただ、じゃ、民法をもし変えましょうというふうになったときに、憲法を変える必要はあるんでしょうか。

河井国務大臣 憲法第二十四条第一項、ここで、御承知のとおり、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると規定されておりますので、当事者双方の性別が同一である婚姻の成立を認めることは、憲法上想定されていないというふうに考えております。

 その上で、この憲法第二十四条第一項が同性婚を禁じているか否かにつきましては、政府として、現時点において同性婚の導入を検討しておりませんので、具体的な制度導入を前提として、それが憲法に適合するか否かの検討も行っておりません。

山尾委員 現時点で同性婚の導入を検討していないので、憲法に適合するか否かの議論、検討そのものを行っていない。九月二十日の記者会見でおっしゃったことと同じかと思いますが。

 ただ、今、前提として、この同性婚の導入は検討する必要があると、政務官、副大臣、大臣、三人が口をそろえて言ってくださったんですね。検討する必要があるんですよ。だったら、同性婚の導入を検討していただきたいし、したがって、憲法に適合するか否かの検討もしていただきたいんですけれども、やっていただけますか。

河井国務大臣 先ほど私が御答弁したのは、日本の家族のあり方、家族観、そして家庭観の根本にかかわる重要な問題でありますので、慎重に検討を要するというふうにお答えをさせていただきました。

 そういう観点から、現時点においては同性婚の導入を検討しておりませんので、具体的な制度導入を前提として、それが憲法に適合するか否かの検討も行っていませんので、先ほど、冒頭御質問のありました憲法改正が必要かどうかという点についても、検討も行っておりませんので、お答えするのはなかなか困難であるということであります。

山尾委員 質問に答えていないので、もう一回だけ言います。

 検討していないので憲法適合性も検討していないというのが現時点の状態だという答弁はわかっています。ただ、同性婚の導入については、これまでの大臣の答弁でもありましたし、今皆さんに聞いていただいた、政務三役が全員、慎重なとついていましたよ、確かに。それは私だって、積極かつ丁寧、それを慎重といえば慎重でもいいんですけれども、これは政治の枕言葉ですね。慎重というとちょっと消極みたいな、積極というと積極みたいな。でも、余りそういうのはいいので。

 私は、丁寧な議論は必要だと思います。だけれども、検討をやはり要するんですよ。皆さんは、読んだのかもしれないけれども、でも、やはり議論はした方がいいと思っていると思うんですね。検討を要するんだったら、今検討していないので、検討してもらえませんか。

 したがって、それを検討するということは、大臣自身のロジックでもあり、私もそう思いますけれども、いや、じゃ、民法で同性婚導入を検討していきましょう、じゃ、それと並行して、ただ、これは憲法の枠を超えるのか超えないのかもあわせて検討しなきゃだめですよね。それも検討してほしい、やっていただけますかという問いです。やるべきだと思いますし、やっていただきたいんですけれども、やっていただけますか。

河井国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、慎重な検討を要する、大変重要な、日本の家族のあり方、社会のあり方、家族観、家庭観にかかわる大変重要な事柄でありますので、慎重な検討を要する。とにかく、慎重な検討を要するということであります。

山尾委員 慎重に検討するということと検討を先送りするということは違うんですね。

 検討を要するとおっしゃったので、いつから検討を始めていただけるか、教えてください。

河井国務大臣 慎重に検討を要するということであります。

山尾委員 もう一回だけ聞きます。

 いつから検討を始めるのか、教えてください。

河井国務大臣 もう一度お答えをさせていただきます。

 慎重に検討を要する、そういう課題であるというふうに受けとめております。(山尾委員「質問に答えていないです。とめてもらっていいですか。少し建設的な議論をするためにとめてください。かみ合っていないんです。私の質問は具体的です」と呼ぶ)

松島委員長 それでは、大臣、お気持ちはわかりますけれども、慎重に検討を開始する、検討の時期も慎重なのかどうかを含めておっしゃってください。

河井国務大臣 先ほど慎重に検討を要すると申し上げましたのは、検討するか否か、そのこと自体を含めて検討が必要であるという考えから先ほどの答弁をさせていただきました。

松島委員長 日本語としてはわかりました。

山尾委員 いや、私、日本語としてもわかりませんし、検討を要するということが、検討するかどうかの検討を要するというふうに日本語は読みません。なので、全く取り繕った答弁としか思えないし、こういうところから対話ができなくなって追及型になってしまうと思うので、ぜひ後退しないでほしい、本当に。検討したらいいと思うし、議論したらいいと思いますよ。だから、期限が切れないなら、いつから始まるかというのは今現時点では決めていないのでお答えできない、だけれども、ちょっと考える、いつから始めるか、そうやって言っていただいたらいいと思います。もう一度御答弁ください。

河井国務大臣 繰り返しの御答弁になりますけれども、検討するか否か、それ自体を含めた検討が必要であると考えております。(発言する者あり)

山尾委員 そのとおりじゃないわ。完全に答弁が変わったというふうに見るのが私は自然だと思いますけれども。

 大臣、大臣がこう言ったからとかいうのを余り時間を使いたくないけれども、大臣のその三つの観点が重要というので、これは二つ目、今この瞬間も日本じゅうで助けを待っている方々の声、中には声なき声もあると思いますが、それらにしっかりと耳を傾ける、温かい法務行政と真逆じゃないですか、それだったら。

 実際、声を上げている人がいるのは大臣も御認識ですよね、このことについて。どうですか。

河井国務大臣 先ほどの御答弁になりますけれども、家族のあり方、そうした家族観、価値観、ひいては日本社会、そういった事柄を含めて、大変重要な課題であります、家族のあり方それ自体に係る重要な問題でありますので、繰り返して申しわけないんですけれども、検討を始めるか否か検討することそのもの自体、それについても検討する必要があるというふうに考えております。

 政府としては、検討すべきものかどうか、それ自体慎重に検討する必要があるというふうに考えております。

山尾委員 今、先進国の中で、人権国家といいながら、差別を解消しようといいながら、同性婚の導入を検討するかどうかを検討するなんて言っている国、本当にどこにあるんですかという状況だと思いますよ。大変恥ずかしいというふうに思います。

 今のその答弁自体が、性的指向、性自認を理由とする偏見や差別というものを法務大臣自体がその根っこをつくりかねない答弁だというふうに思いますよ、同性婚の導入自体を検討するかどうかが検討だなんて言っていたら。どうやってこの差別や偏見をなくす、その人権を守るとりでになれるんですか、そういう大臣が。ちょっと本当に考えていただきたい。

 余り後退する答弁を固めないでほしいので、もし前進できる答弁だったらください、どうぞ。

河井国務大臣 今、山尾理事が御指摘されたように、世界のさまざまな動向、動きということについては十分関心を持って注視をしていくということはもちろんのことであります。

 その上で、政府としては、検討を始めるか否かを、それ自体を含めた検討を要するというふうに申し上げましたけれども、一方で、国民の皆様がさまざまな関心を持っていただいて、この議論を大いにしていただくということについては、私はあり得るべきことだというふうに考えております。

山尾委員 国民の議論は大事だと思いますけれども、全国民の代表者である私たちが集まった国会の場で議論しなきゃだめだと思いますよ。国会の場で議論しますけれども、やはりちゃんと政府としたってきちっと検討していただきたいというふうに思います。本当にちょっと大変残念ですけれども、これを契機にぜひ研究していただいて、一歩ずつ前に進んでほしいと、これはもう心から要請をします。

 次に、裁判記録のことをやりますね。

 これは、民事の裁判記録と刑事の裁判記録、民事の裁判記録を保管する責任主体は裁判所、刑事の裁判記録を保管する責任主体は検察庁ということなので、まず民事の方を聞きますね。

 皆さんのお手元の六ページですか、あけてください。

 これは、二〇一九年八月五日、東京新聞の朝刊一面の記事で、共同通信の沢さんという記者の署名記事であります。調査報道として大変参考になる記事だというふうに思っています。

 裁判所に伺います。

 この記事によると、憲法判例百選、これです、ここに憲法判例百選1、2というのがあるんですけれども、これは重要と思われる憲法判例を選び取ってテキストになっているものですが、この判例集の中で、刑事を除いた判例について、百三十七件あるんですけれども、そのうち百十八件、八六%が裁判所によって捨てられていたという報道ですけれども、これは事実ですか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 御指摘の報道に上がっております件数でございますが、具体的にどのような調査により算出された数字かが不明ですので、その件数の正確性についてまではお答えができないんですけれども、最高裁が調査したところでは、この憲法判例百選1、2、第六版でございますが、これに掲載されている事件の件数は、刑事事件を除くと百三十四件の事件記録というふうに思っておりまして、このうち、事件記録等保存規程九条二項の特別保存が八件、事実上保存しておりますのが八件、公文書館に既に移管しておりますものが一件、これを除いた百十七件が廃棄済みというふうに我々の調査ではなっておりまして、ですから、若干ずれておりますけれども、おおむね似たような数字になっているというふうに考えております。

山尾委員 初めて出てきた数字ですので、調べたということ自体は評価したいと思いますが、結果は惨たんたるものですね。

 憲法判例の九割に近い裁判記録が捨てられていたという話なんですよ。判決文は別です、公平に言うと。ただ、裁判記録というのは、要するに、当事者の主張とか法廷でのやりとりとか出した証拠記録とか、そういう、生で法廷で起きた、その事件と、それを主張する当事者の思いそのものですね。これが裁判記録ですけれども、九割弱が捨てられていたということなんですね。

 では、ちょっと事実確認していきますけれども、この記事の中では、長沼ナイキ訴訟、沖縄代理署名訴訟、広島薬局距離制限訴訟、寺西判事補分限裁判、この四つが廃棄の例示をされていますけれども、この四つが廃棄されたというのは事実ですか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 御指摘の四件の裁判の事件記録は、いずれも廃棄済みであることを確認しております。

山尾委員 廃棄済みと言われても、本当に、廃棄されたものは戻りませんので、大変ゆゆしき事態なんですけれども。

 では、もう一つのデータとして、皆さんのお手元の資料ですが、七ページです。

 これは本当に、戦後、違憲判決というのは物すごく少ないんですね。私は、最高裁の人事をやはり内閣が握っているとか、あるいは、統治行為論と言ってその判断からどうしても逃げるということ自体がすごく重大な問題だと思っていますけれども、それを放置している結果、最高裁において、戦後七十四年、違憲判決が出された事件記録、これを出してもらったんですね、最高裁に。十件なんですよ、十件。調べていただきました、この国会が始まる前に、やりとりをして。そうしたら、違憲判決が出されたたった十件の大事な事件記録について、上七つが廃棄と出てきたんですね。

 砂川政教分離のこの判決だけは、これは大事だねということできちっと特別保存されている。あとの二つは、四条一項保存というのは、要するに、まだ保存期間が経過していないからとってありますよという話です。

 これは最高裁が出していただいた紙なので、この書いてあること自体、間違いないですか。

    〔委員長退席、越智委員長代理着席〕

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 十件のうち、資料の上七件が廃棄されていることについては御指摘のとおりでございまして、やや細かくて恐縮です、下から二番目の遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件、これは、この夏に保存期間が満了いたしまして、その後、九条二項の特別保存に付しております。

山尾委員 どうしてこんなことになっちゃうのかというのを、ちょっと制度として知った方がいいと思うんですけれども、民事の裁判記録というのは、原則として、第一審の裁判所が五年保存して、その後廃棄するということになっています。一方で、例外が二つあって、一つは、その当該事件の必要から期間がたった後も保存するというものが、九条一項の特別保存というのがあります。もう一つが、今の話ですね、要するに、資料としての価値の高さから保存するというのが九条二項特別保存というものです。

 皆さんのお手元、八ページの資料なんですけれども、本当にこれだけ大事なのががんがん捨てられているので、誰がどんな基準で決めているんだというふうに疑問に思いまして、聞いたら、この基準が出てきました。

 黄色い線で書いてありますけれども、「ア」から「カ」まであります。結構、基準はいいんですよ。ちゃんとした基準、具体的基準が立っているんですね。重要な憲法判断が示された事件とか、法令の解釈運用上特に参考になる判断が示された事件とか、世相を反映した事件で史料的価値が高いとか、全国的に社会の耳目を集め、地方における特殊な意義を有する事件とか。まあ、それは、こういうものは裁判記録を保存した方がいいですよねと。

 きちっと全部網羅されているかどうかはともかくとして、それなりに、あ、これを読めば判断はできそうだねという基準は立っているんですね。なのにもかかわらず、なぜ今申し上げたような判例百選に出ている記録の九割弱が捨てられているのか。

 最高裁に伺います。

 まず、じゃ、ちょっと個別で伺った方がいいと思うんですけれども、長沼ナイキ訴訟は、さっき、もう廃棄済みですとお答えがありましたが、長沼ナイキ訴訟は初めて自衛隊の存在が憲法九条二項違反とされた憲法裁判と言われていますけれども、この長沼ナイキ訴訟は、この「ア」から「カ」のいずれにも当てはまらないという判断で廃棄になったわけですが、その判断は適切だったという認識ですか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 個々の記録の廃棄は記録を保存する裁判所において行われることになっておりまして、各裁判所の廃棄の判断が適切であったかどうかについては、廃棄に際して実際にどのような検討がされたかというあたりが不明だということもございまして、その適否について最高裁として見解を述べることは差し控えさせていただきたいというふうに考えます。

山尾委員 要するに、廃棄しちゃったので、なぜ廃棄したかもわからないから、適切だったかどうか答弁できないということなんですね。そんなばかなことありますか。じゃ、誰が責任をとるんですか。

 じゃ、長沼ナイキ訴訟を捨てましょうというふうに判断した者の名前、誰が判断したのか、教えてください。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 廃棄の判断は裁判所としてということになりますので、当該裁判所、記録を保存している裁判所の裁判官会議の判断によることになりますが、通常はそうした司法行政上の判断は所長に委任されていることが一般的ですので、恐らく、当時の所長までの決裁と申しますか判断で廃棄に至ったものというふうに考えております。

    〔越智委員長代理退席、委員長着席〕

山尾委員 じゃ、当時の所長は誰なんですか。

村田最高裁判所長官代理者 申しわけございません。そこまで調査しておりません。

山尾委員 じゃ、もう一つ、まあ、言っても同じだからな。

 私は、そのときの判断をした所長の個別の名前を挙げて、その人の責任追及を今、国会ですることが、そんなに適切なことだと思っていないんですよ。

 私が申し上げたいのは、やはり、こうやって最高裁が基準を示しておきながら、それを判断を第一審の現場に丸投げをして、じゃ、実際にどういう基準で何が廃棄され、何が保存されているのかということ自体を把握することも全くおろそかにしながら、結局こういう結果に至っているんだから、そうやって、この長沼ナイキを捨てた所長は誰ですと。この沖縄代理署名訴訟ですよ、これも捨てられたの、沖縄の米軍人の少女の拉致、暴行事件をきっかけに沖縄県知事がその米軍の土地の強制使用に署名拒否した事案ですよ。これも捨てられているんですよ。じゃ、そのときの裁判所長が誰で、その人の責任追及とかね。

 私はそういうことをしたいんじゃないんですよ。だけれども、やはり誰かがちゃんと責任を負って、そして解決策を示さなきゃいけないから、最高裁としてはもう適切かどうかは答えられないという答弁じゃ、私、だめだと思うんですよ。

 長沼ナイキ訴訟だって、この沖縄の代理署名訴訟だって、そのとき誰がいかなる理由で、もうこれは捨てると判断したとしても、これは間違っているに決まっているじゃないですか。この要件を見たって、どれにも当てはまるぐらい重要な判例じゃないですか。そして今も、九条の問題、沖縄の問題、今のその日本の政治の中核の問題についての判例じゃないですか。それを、そのとき誰がどう判断したかわからないので、廃棄という判断自体が適切かどうか答えないというのは、私はちょっと認められないと思います。

 もう一回、裁判所、いかがですか。

村田最高裁判所長官代理者 総体として、大量に記録が廃棄されていた、その中に重要な事件もあったではないかという御指摘かと思います。

 そうした中で、その根拠となっている規程あるいは通達につきましては、委員からも、それ自体は定められているというふうに御評価いただいておりまして、そこは、最高裁としても、こうした通達の定め等に問題があったとは考えておりませんが、運用の問題として、重要な裁判に関する記録が廃棄されているという御指摘、本日もいただきましたので、これを踏まえまして、下級裁を指導する立場にある最高裁としてどのような対応が可能なのかということについて検討してまいりたいというふうに考えます。

山尾委員 これは引き続きやりますけれども、ちょっと刑事裁判記録のこともやりたいので、一点伺います。

 今度、刑事裁判の方は、これは法務大臣が責任主体でして、去年の九月二十八日、上川大臣のときに、こういうふうにおっしゃっています。刑事参考記録、要するに保存をすると決めた記録のリストを作成して開示をするというふうに上川大臣が言った。一年以上がたった。そして河井大臣になった。一年以上経過しているんですけれども、まだ作成も開示もされていないんですけれども、どうなっているんですか。

河井国務大臣 まず、現状について御紹介しますと、刑事参考記録のリスト作成に当たりましては、一つは、全国の検察庁に保存されている膨大な記録の調査が必要である、二つ目に、事件関係者のプライバシーに配慮した事件の特定のあり方の検討が必要である、三点目は、リストの内容に誤りがないかの確認、そういった事柄などが必要であって、おっしゃるとおり、時間を要しておりました。

 鋭意作業中でありますけれども、せっかくの山尾志桜里理事の御指摘でありますので、ぜひ、刑事局に話をして、できれば年内に開示をする方向でこれから作業を進めていきたいと考えております。

山尾委員 初めて期間が出ましたので、そこは評価したいと思います。年内、待ちますので、ぜひしっかり作業していただいて、そこからまた見えてくるものがあると思いますし、問題も出てくると思います。ぜひやっていただきたいと思います。

 時間があと一分あるのかな。外務副大臣に来ていただいていますので、済みません、本当に最後になって大変申しわけなかった。

 今、香港のデモのことを少しお話ししたいんですけれども、きょう多分もう一問で終わりますので、次にしますけれども、私の問題意識としては、仮に香港のデモの当事者が日本に保護を求めてきた場合に、まず現状の制度として日本はどういうその支援可能な制度を持っているのかということを、二つに分けて聞きたいと思っておりました。

 一つが、日本に保護を求めるデモ当事者等が領事館に駆け込んできたらどういうことが起きるのか。もう一つ、自力で日本にやってきて保護を求めたらどういうことがあり得るのか。その最初のところだけ、最後の質問にします、外務副大臣にお答えいただきたいと思います。

若宮副大臣 お答えさせていただきます。

 まず、今、山尾理事の御質問は仮定の御質問でございまして、これはまずもってお答えすることはなかなか困難であることを御理解いただければと思っております。

 また、その上で、あえて一般論として申し上げさせていただきますが、外国人が日本の在外公館に庇護を求めてきた場合、この具体的な対応ぶりにつきましては、個別具体の事情に応じて対応を検討することとなるかと思います。

 一般的には、申請者の人定事項等の事実関係をまずしっかりと確認をさせていただき、同人の希望、それからまた、それをしっかりと聴取した上で、同人の生命又は身体の安全が適切に確保されるかどうか、こういった人道的な観点、また、さらには、関係各国との総合的な関係というのを考慮した上で、具体的な対応については検討させていただくことになろうかと思っております。

松島委員長 時間が終了しました。

山尾委員 ありがとうございました。仮とはいえ、一般論でお答えいただいて、まずは受けとめたいと思います。

 本日の質問はこれで終わります。ありがとうございました。

松島委員長 次に、山川百合子さん。

山川委員 立憲民主党の山川百合子でございます。

 法務委員会は初めてでございます。大臣の所信をお伺いいたしまして、私も、大臣のもとでいろいろとぜひ進めていただきたいなというふうに思ったことがいろいろございまして、例えば、虐待や差別のない社会の実現に向けて取り組みますと、さまざまな人権問題を第一に挙げておられること、また、多文化共生社会の実現に取り組みますと、在留外国人への対応のみならず、適正かつ迅速な難民の保護にまで言及をされていること、そしてさらには、来年四月に開催される、先ほどもいろいろありましたけれども、国連犯罪防止刑事司法会議、通称京都コングレスでございますが、これを控えて、我が国の諸制度、諸法規、また法務行政全般にかかわる課題解決に向けて国際的な視野で取り組まれようとされている姿勢に、私も大変共感をしたということを先に申し上げさせていただきたいと存じます。

 そして、その上で、幾つかの大きな課題について、私にとりまして最初でございますので、法務大臣となられた河井大臣の御見解、御所見等をるるお伺いをしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず初めに、選択的夫婦別氏制度の導入についてお聞きをしたいというふうに思います。

 この選択的夫婦別氏制度を導入する民法一部改正案については、我が党も提出の会派となって提出をしております。

 この問題は、平成二十七年十二月に最高裁の合憲判決が出され、導入の議論については国会に委ねられているというふうに思いますが、国会での議論は必ずしも活発であるとは言えないように感じております。

 国民の中で意見が分かれているということが政府の見解でこれまであったというふうに思うんですが、昨年公表された世論調査、夫婦が婚姻前の名字を名乗ることを希望している場合には、それができるように法律を改めても構わないという回答が四二・五%と、その前の調査と比較をしても七%ふえているという、過半数に届こうかというような、状況が変化してきているというふうに思います。

 少し長くなりますが、賛成、反対、いろいろ議論はありますけれども、日本の伝統的な家族の形態が損なわれるという危惧がしばしば指摘をされていることは私も承知をしておりますが、先ほども山尾先生の質問でもありましたが、家族の形態というものが今大きく変わりつつある、世界的にも、また日本の国内でも変わりつつあるのが現状ではないか。核家族もふえて、また一人親世帯もふえてきている。

 もはや、この選択的夫婦別氏の制度の導入が日本の伝統的な家族形態を壊す原因になるということは、こういう論理は現状を考えると成り立たなくなってきている現状があるのではないかな。現実の方がはるかに速いスピードで変化しているというふうに私は見ていて、国民がその変化を感じ取っているのではないかなというふうに思います。

 むしろ、働く女性たちにとっては、結婚後も旧姓、旧の氏で働くことができること、男性と同様に認められること、このことが男女平等の観点からも求められていることではないかなと私は思います。

 もちろん、法律上は両性に認められている、どちらを名乗るかはカップルで決めるということは書かれていますけれども、実際はほとんどが男性の姓を選択するというか名乗っているということが社会通念であるということを踏まえれば、果たしてこれが、今の法の趣旨が男女平等という点においてどうなのかという疑問を私は持っているわけであります。

 そこで、最初ですので、大臣の御見解、御所見を伺っておきたいんですが、家族の一体感がなくなるですとか、日本独自の家族形態の崩壊とか、あるいは子供への悪影響とか、これらは私は杞憂にすぎないのではないかと思っているんですが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

河井国務大臣 今、山川百合子委員御指摘のとおり、民法第七百五十条に、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」というふうに規定されておりますので、選択的夫婦別氏ということで答弁をさせていただきます。

 この制度の導入の問題は、我が国の家族のあり方に深くかかわる事柄でありまして、慎重な検討を要するものだと考えております。先ほども御紹介いただきました平成二十九年の世論調査の結果を見ても、国民の意見が大きく分かれている、そういう状況であると認識をしております。

 今後も、引き続き国民各層の意見を幅広くお聞きをしていく、同時に、国会における議論の動向を注視しながら慎重に対応を検討してまいりたい、そう考えております。

山川委員 今までの政府の御答弁のとおりというふうには思うんですけれども、家族の形態が変化してきているという世界的な流れがあると思うんですね。

 もちろん、我が国の家族形態にすごく重大なことだということについては、おっしゃられることは理解をいたしますが、それよりも世界の現実が大きく変化していて、先ほどもちょっと言いましたが、大家族が核家族に、核家族が一人親家庭に、先ほど山尾先生の質問にもありましたが、パートナーとの婚姻はしないで子供を持つとか、あるいは同性婚が認められるとか、世界の潮流、世界の流れがあると思うんですね。

 その流れというのは、もう日本もその流れから無縁でいることはできなくて、片側で伝統的な家族形態というのが日本にはあるというのはありますが、流れをとめることができないのではないか、制度が現実に逆に追いつかないのではないかということが懸念をされるわけですが、その点について、大臣の御見解はいかがでしょうか。

河井国務大臣 今、現実のお話をされましたので、結婚前の旧姓の通称使用、これが現実に今どこまで拡大されているかということを御紹介させていただきます。

 政府におきましては、これまで、婚姻によって氏を改めることによる社会生活上の不利益や不都合があるといった御指摘、あるいは、先ほどから御指摘いただいているように、今日の社会が多様化しているということなどを踏まえまして、旧姓の使用を望む方がそれを使用することができる機会の拡大に向けた取組を進めてきております。

 具体的に申し上げますと、まず、来月、十一月から、マイナンバーカード等への旧姓の併記が可能となります。それから、旅券への旧姓併記の拡大に向けた検討を今行っております。加えまして、各種の国家資格、免許等への旧姓使用の拡大を既に措置済みということでありまして、具体的には、医師、建築士、税理士、美容師、弁護士などがそれに当たります。さらに、銀行口座等における旧姓使用に向けた働きかけなども現在行ってきております。

 これからも引き続き、国や地方や企業などが、それぞれの部門において旧姓を通称として使用できる機会を拡大するための措置を適切に講じていく必要がある、そのように認識をいたしております。

山川委員 ありがとうございます。

 旧姓使用を拡大できるように取り組んでいるんだという御答弁はわかります。ぜひそれは進めていただきたいという思いもありますけれども、やはり、私としては、選択的でありますから、別にこの選択的夫婦別氏制度を導入しても、選択しないだろうというお答えの方も結構たくさんいるわけですよね。

 ですので、このことが、選択ができる、それを望む方は別氏を名乗ることができるという、選択、多様性を認める制度として、ぜひ大臣には前向きに取り組んでいただきたいなということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 続いて、児童虐待についてなんですが、大臣の所信表明のところで最初に掲げられていた児童虐待とたたかう法務省プロジェクトチーム、これは最初に掲げられていたということで、あっ、大臣は本気で取り組まれるんだなというのは、私もこれをお聞きしたときにそう思いました。

 先ほど、もう既に御質問が何回もございましたので、私もプロジェクトチームの内容についてお聞きしようと思っていましたが、それは先ほど御説明がありましたので、ぜひ成果が一日も早く上がるように取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 その上でなんですが、懲戒権に関する規定の削除についての大臣の御見解を伺っておきたいというふうに思います。

 この民法第八百二十二条の懲戒権については、現在、法制審議会で検討されているというふうに理解しています。

 平成二十三年の改正の際にも、児童虐待の正当化の口実に利用されているという指摘がなされて、規定の見直しがされ、親権者の懲戒権は子の利益のために行使されるべきもので、子の監護及び教育に必要な範囲を超える行為は懲戒権の行使に当たらないということを明確にしたわけでありますが、しかし、虐待によって子の命が奪われるという残酷な事件を防ぐことができないでいるわけであります。抜本的な防止策を講じることが必要です。

 私は懲戒権のこの規定を削除する方向で議論が進められることを望んでいるわけですね。というのは、懲戒権というものは、子供に対する親の権利を規定することにそもそも意味があるのか、また、親が子を叱り、しつけることは親権そのものに含まれる親の義務であり、教育権に属するものではないかというふうに思うからであります。

 暴力を正当化することになりかねない懲戒権を存置しておく必要はない、人権思想というのは大きく変わっている、そういうふうに思うわけですが、大臣のこの懲戒権の削除に関する御見解、御所見、そして、抜本的な対策という実効性のある施策を一日も早く講じていただきたいんですが、私からもその意気込みを伺っておきたいというふうに思います。

河井国務大臣 ただいま、民法第八百二十二条、懲戒権に関する規定の削除について御質問いただきました。

 今、山川百合子委員がおっしゃいましたその御意見が存在しているということは、私自身、十分に認識をいたしております。承知をいたしております。

 その上で、これにつきましては、現在、法制審議会に設置をされた民法(親子法制)部会におきまして調査審議がなされている真っ最中なんですね。第一回がことしの七月二十九日に開催をされました。その中で、この民法第八百二十二条の規定を削除するということを含めて、さまざまな選択肢を視野に入れた検討が今まさになされているというふうに認識をいたしておりますので、諮問をさせていただいておりますその最中でありますので、具体的な、今おっしゃったことを含めた見直しの方向性については、その部会の議論を見守りたいと考えておりますし、充実した調査、そして審議が行われることを私としては強く期待をいたしております。

山川委員 では、今法制審で審議をしているということなんですが、取りまとめはいつごろまでに行う予定なのか、伺っておきたいというふうに思います。

河井国務大臣 これは、できる限り早い答申を期待をいたしております。

 これは、こちらからお願いしている立場でありますので、法制審議会の議論の状況次第ということがありますけれども、この懲戒権の規定の見直しに関しましては、施行後二年を目途とされているということも踏まえまして、施行日が令和二年四月一日ということでありますので、それも十分に踏まえて、充実した調査審議の上で、できる限り早期の答申がなされることを強く期待をいたしております。

山川委員 本当に十分な調査審議が必要であると思いますが、児童虐待が繰り返されている、命を落とす子供たちが、もう二度と繰り返さないと誓ってもなお繰り返されているという現実がありますので、ぜひ本当に実効性のある対策を早急に講じていただきたいというふうに思います。

 続いて、三つ目として、死刑制度についてお伺いをしておきたいというふうに思います。

 命の問題でありますから、非常に重大な、また大切な問題だというふうに認識しているわけでありますが、私自身は、私の思想また哲学として、人が人の命を奪ってはいけない、人が人を殺してはいけない、国家権力といえども人の命を奪うものではない、そういう考えを持っています。ですので、戦争はもちろんでありますけれども、死刑制度についても、私の思想、哲学として、私は、やはり日本における死刑制度というのは廃止をしていくべきだという考えを持っております。

 ただ、この制度に対する思想、哲学というのは、廃止の立場からは、とうとい人の命は国家であっても奪う権利はないという考えがある一方で、いろいろな考えがありますが、そういう意見がある一方で、死刑存置の立場からは、人の命を奪った者は自分の命をもって償うべきであるとか、あるいは、どうしても死刑を適用せざるを得ない事案というのもあるんだ、それが社会正義なんだという考え方もあるわけであります。

 ですので、まず河井大臣の、人の命のとうとさ、重さというものについて、また、この死刑制度について、どのように考えているかを、大臣のお考えを伺っておきたいと思います。

河井国務大臣 死刑制度につきましては、我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる大変重要な問題であり、国民の皆様の世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現など、さまざまな観点から慎重に検討すべき重要な問題であるというふうに考えております。

 現在、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人ですとか強盗殺人など、凶悪犯罪がいまだ後を絶たない現状、これを鑑みると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ない、死刑を廃止することは適当ではない、そう考えております。

山川委員 そうしますと、今の御答弁は、今、国民の世論が多数として、やむを得ないと考える国民が多数であるので、大臣もそこはやむを得ないと考えているというふうな御答弁と今受け取りましたが、大臣のおっしゃったことはそれでよろしいでしょうか。

河井国務大臣 そのとおりであります。

山川委員 本当にすごく大切な問題なんですが、国民の世論の多数が死刑もやむを得ないというふうに現時点では考えているというのは、私も調査などからその数字は知っているんですが、国民がそのように考える理由の一つとして、死刑に重大犯罪の実行をためらわせる抑止力、犯罪抑止力がある点が指摘をされているというふうに思うんですね。大臣も今御答弁になられて、やむを得ないと。

 そこで伺っておきたいんですけれども、死刑の犯罪抑止力について大臣がどういう御見解を持っているか、そして、抑止力について大臣が考える根拠というものをお伺いをしておきたいというふうに思います。

小山政府参考人 申しわけございません。まず事務方から御答弁をさせていただきます。

 死刑の犯罪抑止力に関するお尋ねでございます。

 死刑の犯罪抑止力を科学的、統計的に証明することは困難でございますけれども、一般に、死刑を含む刑罰は犯罪に対する抑止力を有するもの、こういうふうに認識されているところでございます。

 また、これまで政府が行った死刑制度に関する世論調査においても、死刑がなくなった場合、凶悪な犯罪がふえるという意見とふえないという意見がありますが、あなたはどのようにお考えになりますかとの質問に対して、ふえると回答した者がいずれも過半数を占めているなど、死刑の犯罪に対する抑止効果は広く認識されているというところもあるところでございます。

 さらに、死刑制度の存在が長期的に見た場合の国民の規範意識の維持に有用であるというところもあるかと考えてございます。

山川委員 今の御答弁では、統計的には抑止力としての効果、そういう具体的な統計はない、数字としてはそれは示せないという御答弁であったということでよろしいですか。

小山政府参考人 御指摘のとおりでございます。

山川委員 ちょっと、後でもう一回触れるんですけれども、死刑制度を廃止した諸外国の国々で、死刑制度の廃止の前後で犯罪発生率の増加は見られないということもあるようであります。

 またこれにちょっと後で戻ってまいりますが、幾つか伺っておきたいんですけれども、裁判も、人間がやる以上、誤った判断が全くないとは言い切れないというふうに思います。

 再審請求で、殺人罪について無罪判決が言い渡された松橋事件などもありました。これは懲役刑であったために、刑事補償によって一定の金銭的回復は図られましたけれども、これがもし死刑判決で、それが実行されていたら、被害の回復ということはこれは見込めないというふうに思います。

 誤判の可能性が一%でもあるのであれば、やはり死刑制度には問題がある、むしろ、終身刑などの検討をより積極的に行うべきではないかという議論もあるわけでありますが、大臣のこの点についての御見解を伺っておきたいと思います。

河井国務大臣 今具体的な再審の話ですとか判決のお話が出されましたけれども、この問題につきまして、個々の判断にかかわる事項ということでありますので、お答えは控えたいと存じますが、一般論として申し上げれば、再審の請求は、刑事訴訟法上、それ自体で法務大臣が死刑の執行停止を命ずる事由には当たらないというふうにされております。再審請求を行っているから執行しないという考え方はとっていないということであります。

 一般論として申し上げれば、死刑の執行に関しては、個々の事案について、関係記録を十分に精査して、刑の執行停止、再審事由の有無などについて慎重に検討して、慎重の上にも慎重に検討して、これらの事由等がないと認めた場合に初めて死刑執行命令を発するものであると承知をいたしております。

山川委員 お聞きしたのは、個々の判決についてということではなくて、誤判もあり得るときに、取り返しがつかないことになるかもしれないというその可能性ですね。

 それを踏まえて、個々の判決についてどうこうという、例は出しましたが、そのことについてどうこうということではなくて、大臣の御見解として、死刑が執行されてしまった場合には取り返しがつかないのではないかということについて、どうお考えかということをお聞きしておきたいということであります。

河井国務大臣 委員御承知のとおり、日本におきましては、死刑は極めて厳格な制度のもとで慎重に運用されておりますので、誤った裁判によって無実の者に死刑が執行されるものはないというふうに考えております。

 今御指摘のありましたような、いわゆる誤判、誤った判断、誤判のおそれを理由として死刑制度を廃止すべきだという意見があることは承知をいたしておりますけれども、一つには、三審制が日本においては保障されております。さらに、確定した裁判においても、再審あるいは非常上告等の救済制度が設けられているということで、こういった仕組みが誤判を防止するために有効に機能しているというふうに考えております。

 そもそも、裁判所におきまして極めて慎重な審理を尽くした上で判決が言い渡されているということで、有罪の認定まで非常に厳格な手続が既にしっかりととられているということであります。

 先ほど私がお答えしましたように、さらにその上に、死刑の執行に際しましては、個々の事案について、関係記録を十分に精査、再審が開始されるべき事由が存在するかどうかなどについて慎重に検討して、これらの事由等がないと認めた場合に初めて法務大臣として死刑執行命令を発するというものであります。

山川委員 今の御答弁の中で、執行を決定するのは大臣ということで、判断をされるお立場にある所管大臣としては非常に重い決断をしなければいけないというふうに、私もそう認識をしておりますし、本当に大変な重責を担われているというふうに思っています。

 ちょっと伺っておきたいのは、この制度の実態と執行の手続についてであります。

 これはよくわからないので、あえて伺っておきたいんですけれども、我が国の死刑制度の実態をお示しいただくために、過去五年間における死刑判決の確定数と死刑執行数はどのように変化しているか、拘置されている死刑確定者の総数はどのように推移しているかもお聞かせいただきたいというふうに思います。

 また、死刑囚が教誨師などによる心のメンテナンスなどもなされていると思うんですけれども、この手続について実態と、そして、その実態について大臣がどのようにお考えになっているかをお聞かせいただきたいというふうに思います。

小山政府参考人 前提といたしました議員のお尋ね、過去五年間の死刑確定者数等についてまずお答えいたします。

 過去五年間における各年の死刑判決確定者につきましては、平成二十六年が七名、平成二十七年が二名、平成二十八年が七名、平成二十九年が二名、平成三十年が二名でございます。

 また、死刑執行者数でございますが、平成二十六年が三名、平成二十七年が三名、平成二十八年が三名、平成二十九年が四名、平成三十年が十五名でございまして、各年末時点における未執行者数につきましては、平成二十六年が百二十九名、平成二十七年が百二十七名、平成二十八年が百二十九名、平成二十九年が百二十三名、平成三十年が百十名でございます。

名執政府参考人 死刑確定者の心情の安定を図るための教誨師の活動などについてお答えいたします。

 死刑確定者の処遇につきましては、刑事収容施設法三十二条におきまして、「その者が心情の安定を得られるようにすることに留意するものとする。」という処遇の原則が定められております。

 これは、死刑確定者が来るべき死を待つという特殊な状況にあり、日常、極めて大きい精神的動揺と苦悩のうちにあるであろうことから、その処遇に当たりましては、人道的な観点からも、その心情の安定に十分配慮することが求められていることによるものでございます。

 したがいまして、刑事施設において、死刑確定者の処遇に当たる職員は、まず日常的に接する中で死刑確定者一人一人の動静や心情の把握を徹底し、その状況に基づきまして、確定者が心情の安定を得られるよう必要な働きかけをしております。

 また、死刑確定者からの申出に応じまして、教誨師による宗教教誨を実施しましたり、確定者が孤独に苦しむことのないよう、定期的に職員との面接を行うなどの取組も行っているところです。

山川委員 ありがとうございます。

 現状について御答弁いただきましたけれども、先ほどから繰り返し大臣の御所見と考え方をお伺いしているんですが、片側で、被害を受けた方がいらっしゃるということ、犯罪を犯したという事実があるということ、しかし、もしかしたら改心といいますか、自分のしたことに対しての罪の意識、罪責感というものに駆られていることもあるかもしれません、そこは人それぞれ、ケースはいろいろだとは思いますけれども。

 そういう中で、この手続について、執行を決定する、判断する大臣として、この執行手続ないし制度の実態について、何かつけ加えてお考えを述べていただくことがあれば伺っておきたいというふうに思います。

河井国務大臣 申し上げるまでもないことですけれども、死刑というものは人の命を絶つ極めて重大な刑罰であります。その執行に際しましては、慎重な上にも慎重な態度で臨む必要があるというふうに考えております。

 それと同時に、法治国家におきましては、確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないことはもう言うまでもないことでありまして、特に死刑の判決は、極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対して裁判所が、先ほど御答弁申し上げましたように、慎重な審理を尽くした上で言い渡すものでありますので、法務大臣としては、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところ、刑事訴訟法第四百七十五条に従って慎重かつ厳正に対処するべきものだと考えております。

山川委員 ありがとうございます。

 最後に、死刑制度についてのことで、世界的な潮流とのことで、来年開催が予定されている京都コングレスとあわせてお聞きをしておきたいというふうに思います。

 国連の総会においては、死刑の存続に深刻な懸念を表明して、加盟国に死刑廃止を視野に入れた執行の一時停止などを求める死刑執行停止決議が賛成多数で採択されるという状況が繰り返されているというふうに思うんですね。この背景には、この制度の廃止の前後で犯罪の発生率の増加が特に見られないということも国連決議の一つの要因となっているというふうに思います。

 来年、京都コングレスが開催されるわけでありますが、死刑存置国である我が国は、議長国として、この死刑制度の廃止を求める世界的潮流にどのように対峙をしていくおつもりなのかということ。日弁連のニュースの特集で書かれているようなんですが、法務省大臣官房国際課付の方が、日本でコングレスを開催する意義について、我が国の刑事司法制度や実務について客観的に見詰め直すよい機会となる点というのを挙げていらっしゃるようであります。

 こういうことを踏まえて、来年の京都コングレス議長国として、この死刑制度の廃止を求める世界的潮流にどのように対峙をしていくおつもりなのか、御見解をお伺いをしておきたいと存じます。

河井国務大臣 お答えいたします。

 死刑制度の存廃につきましては、今委員御指摘いただきました国際連合あるいは国際機関における議論の状況、そして諸外国における動向などを参考にしつつも、基本的には、各国において、犯罪情勢、刑事政策のあり方、そして国民感情などを踏まえて独自に決定すべき問題である、そう考えております。

山川委員 では、あと二つあったんですが、ちょっと時間が限られているので、二つのうちの一つのみお聞きをしたいんですが、恩赦についてお伺いをしておきたいと思います。

 昨日、天皇陛下が即位を宣明された即位の礼に私も出させていただきまして、この歴史的な儀式に参列できたことはすごく光栄に思っておりますし、また、天皇陛下が、日本国民の発展、安寧、それから世界の平和、これを切に願っているというふうにおっしゃられて、私も本当にそういう日本社会、そして国際社会に向けて精いっぱい努力していきたいというふうに思っております。

 そして、きのうのきょうでもありますので、この恩赦、政令恩赦ですね、復権令について、その内容をお伺いをしておきたいというふうに思います。

 裁判により罰金に処せられた者で、その全部の執行を終わり、又は執行の免除を得た日から令和元年十月二十二日、きのうですね、の前日までに三年以上を経過したものが対象ということでありますけれども、その対象となる刑また罪、及び各刑、各罪ごとの対象人数、今回の恩赦の内容の実態がどうであったかということ、それから、もう時間がないので、諸外国の恩赦というのはどういうものがあるかということをあわせて伺いたいと思います。

今福政府参考人 お答えいたします。

 今般の恩赦は政令恩赦と特別基準恩赦から成りますが、今御指摘の政令恩赦につきましては、罰金刑を受け終わった者であって、かつ三年以上罰金以上の刑に処せられていないものについて復権を行うというものでございます。これにつきまして、罪名を特定しているものではございません。

 また、特別基準恩赦についても申し上げますが、特別基準恩赦については、犯情等を考慮して、特に恩赦とすることが相当であると認められるものに対する刑の執行の免除及び復権の二種類のみを実施いたします。

 このうち、刑の執行の免除は、刑の執行が長期間停止され、かつ、なお長期にわたり執行に耐えられないと認められるものを対象としております。

 また、復権につきましては、罰金刑を受け終わった者であって、刑を受けたことが現に社会生活上の障害となっていると認められるものを対象としております。

 今回の恩赦の対象者を試算いたしますと、復権令でいえば、その対象者数は約五十五万人となることが見込まれております。その罪名を見ますと、約八割が道路交通法違反などの交通関係であると考えられます。

 諸外国でございますけれども、もちろん制度の背景、内容、運用状況等はさまざまでありますが、確定した刑を軽減するなどの恩赦制度は存在しておりまして、例えば、アメリカ、イギリス、フランスなどにも制度があると承知をしております。

 以上でございます。

山川委員 ありがとうございます。

 まだもう一つ、刑法の性犯罪規定の見直し等について、あと、再犯防止についてあったんですが、時間ですので、きょうはこれで終わらせていただいて、今後、法務委員会で真摯に取り組んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、高木錬太郎さん。

高木(錬)委員 会派名、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムに所属しております、立憲民主党の高木錬太郎と申します。初の法務委員会です。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速、大臣に伺っていきたいと思いますが、今国会、開会日十月四日、安倍総理大臣の所信表明演説、この内容は事前にお聞きでありましたでしょうか。

河井国務大臣 今お尋ねになりました臨時国会における安倍内閣総理大臣の所信表明演説は、十月四日の閣議におきまして決定をされたものでありまして、私も内閣の一員でありますので、その内容については当然承知をしておりました。

高木(錬)委員 大臣、その演説内容を読まれまして、どのように受けとめられましたでしょうか。

河井国務大臣 例えば、この法務省関連のところで申し上げますと、全ての人が個性を生かすことができる社会をつくる、そのために力を尽くす、そういった部分、これは、法務大臣として、また内閣の一員としてしっかりと取り組んでいきたい、そのように考えております。

高木(錬)委員 今大臣がおっしゃられたところのみならず、例えば「みんなちがって、みんないい」という言葉もありました。

 今大臣がおっしゃられたくだりのところも含めてですが、当然、この安倍首相の所信表明演説というものは、現内閣の全体としての方針という理解でよろしいでしょうか。

河井国務大臣 そのとおりであります。

高木(錬)委員 私は、二〇一七年に初めて議席をお預かりさせていただいた身でありますので、そうたくさん安倍首相の演説を何度も聞いているわけではありませんが、この間聞いてきた安倍首相の演説の中で、私にとっては、特別、とても驚いた、そして素直にいいなと思う演説でありました。

 今まさに大臣がおっしゃられたところであり、「みんなちがって、みんないい」ということを総理大臣が本会議場でおっしゃられる、とてもいいなと本当に素直に思いました。新しい時代の日本に求められるのは多様性であり、多様性を認め合い、全ての人がその個性を生かすことができる社会をつくる。

 ちなみにと申しますか、私の魂でもあるんですが、二年前の衆議院選挙の直前に立憲民主党は結党いたしました。そのときの結党の理念が、多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う社会をつくるということでした。

 私もその理念に心から共感をいたしまして参画したわけでありますが、この方針と申しますか、今大臣がおっしゃられた中身ですが、多様性や全ての人ということですね、これにつきましては、前提条件というのは当然ない、全ての人がということで、まさに全ての人ということでよろしいですよね。何か前提条件があったり、特定の人だったら多様性を認めるであったり、全ての人に入ってくるということではないですよね。いかがですか。

河井国務大臣 日本社会が多様性をお互いに認め合う、そういう社会づくりを目指していくということであります。

高木(錬)委員 そこで、具体的な話になりますが、一点伺いたいのが、今般の台風十九号、全国各地で被害に遭いました。大変な、甚大な被害がもたらされました。その中でも、都内、さまざまな場所で大きな被害がありました。

 そこで、触れておきたいのが、台東区における路上生活者避難所受入れ拒否という、大変私にとっては残念であり、問題な事案が発生しましたが、この事案につきまして、人権擁護をつかさどる法務大臣としてどのように受けとめられましたでしょうか。

河井国務大臣 お答えする前に、改めまして、さきの台風十九号で亡くなられた大勢の方々の御冥福を心からお祈り申し上げます。同時に、被災された、今なお不自由な避難生活、本当に余儀なくされていらっしゃる数多くの方々に心からお見舞いを申し上げます。

 今、高木錬太郎委員御指摘の事案につきましては、私も報道で承知をいたしております。

 この点につきまして、せんだっての参議院予算委員会におきまして、安倍総理大臣はこのように答弁をされております。避難所は、災害発生後に、被災者の生命、身体等を保護するために設置されたものであり、避難した全ての被災者を適切に受け入れることが望ましいと考えておりまして、御指摘の事例については、関係自治体に事実関係を確認し、適切に対応してまいりますということでありました。私も、総理がおっしゃったその方針、そのとおりだというふうに考えております。

高木(錬)委員 望ましいにとどまらずと申しますか、もう一歩踏み込んで、人権擁護をつかさどる法務大臣でありますので、お考えいただければなとは思うんですが、総理大臣は、先般、丸森でしたでしょうか、被災地の視察に行かれて、その後のぶら下がり記者会見で、被災者の人権を守るということも明言されておりまして、今回の台東区での事案を一つ教訓にして、確かに現場での判断になろうかとは思いますが、重ねて、人権擁護をつかさどる法務大臣でありますので、今後もそこら辺はリーダーシップをとっていただきたいなとは思うんですが、その災害に関連してもう一点。

 先ほども、大臣、広島県、これまで何度も台風被害、豪雨被害があってという御経験、お話がありました。昨年の七月豪雨の甚大な被害も、私たち、記憶に新しいところであります。先ほどの答弁の中でも、避難所を回られたという御経験もおっしゃられました。

 人権という観点で、今の避難所の姿、大臣、いかが問題意識をお持ちでしょうか。

河井国務大臣 その前に、先ほどの台東区の台風十九号のときの事案ですけれども、ホームレスの方々ということでありまして、このホームレスに対する偏見や差別をなくそうというのは、法務省の人権擁護機関においても強調事項の一つとして位置づけております。

 引き続き、ホームレスに対する偏見、差別をなくす人権啓発活動を実施して、共生社会の実現、その推進に力を尽くしてまいりたい。せっかくの高木委員の御指摘でありますので、国会情勢、あるいはさまざまな公務、そういった自分の予定も鑑みながら、ホームレスの方々を支援しているそういった方々ともぜひ一度意見交換をさせていただきたい、そう考えております。

 それから、今の災害発生後の避難所のあり方についての問題意識ということですけれども、自分自身、衆議院議員当選後、平成八年以来、自分の選挙区、地元で、少なくとも三度、甚大な豪雨災害を経験してまいりました。そのたびに避難所を訪れて、被災者の方々の姿をずっとお見舞いもしながら、ずっと見てまいりました。

 避難所の姿については、プライバシーの確保あるいはその他について強い問題意識を自分自身持っております。災害が発生したときであっても、できる限り平常時と同じような、全ての方々の人権が最大限尊重されなければならない、私はそう考えております。

 実は、法務省におきましても、東日本大震災を契機として、震災と人権ということをテーマにして、これまでずっと各地でシンポジウムを開催をしてまいりました。直近では、ことしの九月二十九日、札幌市で開催したシンポジウムで、まさに今、高木委員が御指摘になりました、人権的観点から被災者支援、避難所運営を考える、このテーマのもとに、専門家から、女性や障害のある被災者に対して必要となる配慮について具体的な御説明をいただきました。

 先ほども申し上げましたけれども、災害対応、災害対策を法務省の重要な業務の一つとしてしっかり位置づけるべきだと私も指示をいたしておりますので、今後ともその認識のもとに、人間同士のきずな、お互いに思いやる気持ち、温かい助け合い、そういったことが大切であるということを繰り返し伝えてまいりたいと考えておりますし、避難所における人権状況を改善するために、これもまたぜひ現場のさまざまな御意見などを聞き取った上で、法務省として、関係機関、関係省庁と連携して適切に取り組んでいきたいと考えております。

高木(錬)委員 前段の、ホームレス支援のさまざまな団体の皆さんと意見交換をしたいという御発言、とてもうれしく思います。ぜひよろしくお願いします。

 そして、後段の方ですが、それに関してもぜひ大臣ならではの視点で、強い問題意識もおありだということでありますので、それこそ現場感覚で、現場で汗を流していらっしゃる、自治体の皆さんもそうですし、いろいろな団体もあります、ぜひ意見交換しつつ。

 私、初めて衆議院の議席を預かって以降、ずっと災害対策特別委員会にも所属しておりまして、昨年の暮れには災害対策の先進国であるイタリアにも訪問しまして、あちらの対策、対応を見てまいりました。やはり避難所の姿が、我が国では、百年前の関東大震災の、あの東京駅の下にすし詰めになって雑魚寝でみたいなところと全く変わっていないということに私は強い問題意識を持っていまして、災害関連死の話もあります。気の毒に、被災されて家に住めない方、家で暮らせない方々が避難所に来る。その方々が我慢しなきゃいけないということではなくて、大臣もおっしゃられましたとおり、平常時と変わらない生活を送れるように、人権の観点、あるいは今申し上げた観点でぜひ避難所を変えていきたいという思いが、私はすごく持っておるんですが、重ね重ね、大臣、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

河井国務大臣 ただいま御指摘いただいた点を含めて、しっかりと適切に対処してまいりたいと存じます。

高木(錬)委員 それでは、先日伺いました大臣の所信的挨拶につきまして、気になったところを質問させていただきたいと思います。

 まず、児童虐待のくだりです。

 私も、今まで質問された委員の皆さんと同じような問題意識があり、またあるいは、大臣が児童虐待を根絶するという強い思い、共有するところであります。

 ですが、この児童虐待とたたかう法務省プロジェクトチームという名称なんですが、これは大臣の発案なんでしょうか、それとも省内の皆さんから上がってきた提案だったんでしょうか。

河井国務大臣 この児童虐待とたたかう法務省プロジェクトチーム、この名称につきましては、関係する部局等、意見を聴取をした上で、私も含めて了承して、決定をいたしました。

高木(錬)委員 なぜあえて、たたかうという言葉をお使いになられたんでしょうか。たたかうの意味するところはどこにあるんでしょうか。

河井国務大臣 基本的な認識を再度申し上げますと、子供たちは、これからの日本、そして未来を担うかけがえのない宝物である、同時に、御家族だけでなくて、地域社会そして国家にとって大変重要な存在であるにもかかわらず、児童虐待によって子供が亡くなる大変痛ましい事案が後を絶たない状況にある。児童虐待の根絶、これは政府を挙げて取り組む必要がある喫緊かつ極めて重要な課題であると認識をしております。

 その上で、法務省として、あらゆる資源、能力を最大限に活用して、これまで以上により積極的にその役割を果たしていくために設置をすることにいたしました。

 私が一番大切だと考えているのは、子供たちの命を守ることであります。

 そのたたかうという意味合いですけれども、まず一つは、法務省の総力を挙げて、全ての資源、能力を全て結集して、児童虐待の撲滅、根絶に向けて取り組むんだという強い決意をあらわす意味で、たたかうという単語を使っております。

 もう一つは、残念なことですけれども、あの痛ましい事案における被害者のお子さんたち、声を上げることができなかった。その声を上げることができなかった子供たちに成りかわって、法務省が児童虐待と真っ正面から向き合ってたたかっていく、そういう思いを込めてこの単語を使った次第であります。

高木(錬)委員 理解します。その意気込み、強い決意、理解しますし、共有もします。

 ですが、私がちょっとナイーブ過ぎるんでしょうか。私は、会社員をやっていたときに、児童虐待で苦しんでいた子、深い傷を負った子たちを支えるNPOで活動していまして、たくさんの子供たちと一緒に遊んだり、キャンプに行ったり、いろいろなことをやっていたんですが、深い心の傷を持っているんですよね。それで、大人に対して簡単に心を開かない、大人への不信というものもあったり。そういう子たちと接するときに、大人が温かく心を広く開いて、優しい言葉を、すぐには心を開きません、子供たちは。ですが、とことん温かく優しくということが私は大事なことかな、肝要なことかなと当時思った次第でした。

 そういう経験があるので、たたかうという単語が、既に、大臣も強い意気込みがおありですから、いろいろなインタビューでお答えになって、外にもうどんどん発信されています。子供たちは、特に、大人への不信感を持っている子ほど敏感だったりします。いろいろな発信をキャッチします。特に、ネット社会です。子供たちはいろいろな情報を手に入れることができます。大人に守ってほしい、もらいたい、助けてもらいたい、助けてほしいと思っている子供たちが、たたかうという言葉を聞いたときにどんなふうに思うのかなと。すごく、大臣も所信でおっしゃられた、温かい法務行政を目指す大臣のもとでの法務省のお仕事としては若干そぐわない言葉なんじゃないかなと思うんですね。

 だからといって、今からプロジェクトチームの名前を変えてくださいみたいなことはここで言えないんですが、私の問題意識としてはそこにあり、児童虐待、確かに根絶しなきゃいけない、思いは一緒ですが、子供たち、実際に被害に遭って、今も遭っている子供たちのことをぜひとも想像していただいて、共感していただいて、温かく包み込むような法務行政を目指していただきたいなと思うんですが、何かありますか、大臣。

河井国務大臣 今、高木錬太郎委員から大変貴重な御意見を賜りました。

 あくまでも、被害に遭っている子供たちに対しては、おっしゃるとおり、温かく包み込む、これはもうそういう精神を持って当たっていく、対処するのは当然のことであります。

 そのたたかうという言葉ですけれども、先ほど申し上げましたように、そういった声を上げることができない、あるいは小さな声しか上げることができない、そういう子供たちに成りかわって、法務省が児童虐待そのものとたたかっていく、そういう意気込みでありますし、また同時に、既にさまざまな制度というものが、政府においても、また社会においてもあります。それらがやはりさまざまな課題を持っていると思うんですね。そういった現行の仕組み、既存の仕組みについても勇気を持ってたたかうといいましょうか、問題提起をしていく、踏み込んでいく、それが攻めの法務行政にもつながっていくというふうに考えております。

 個人的なことを言いますと、私たち夫婦には子供がおりません。子供がいないだけに、大変僣越ですけれども、日本じゅうの子供たちが自分たちの子供だ、そういう意識を持ってこの問題、徹底的に取り組んでまいります。

 以上です。

高木(錬)委員 ありがとうございます。

 あえてもう一つ自分のエピソードを紹介をさせていただきたいと思うのですが、私、国会議員になる前まで九年間ほど主夫をやっておりまして、かみさんが政治家でして、二人でフルで働くのがなかなか難しかったものですから、下の双子の子が生まれて、私が、当時務めていた秘書をやめまして、家庭に入りました。その前は、今、かみさんは、妻は県議なんですが、第一子が生まれたときは市議で、生まれて、一般的な育休的な期間が過ぎればすぐ仕事に復帰して、当時、さいたま市議会は、今でもそうですが、非常に議会改革が進んで、議会日数も長いし、閉会中はいろいろなところに視察に行ったりもしていまして、当時、私が、ゼロ歳だった子供をほとんど見ていたんですね。

 そのときに、本当に児童虐待はだめですよ、根絶したい、私もそう思います。ですが、親の方もなかなかしんどくて、なれていない。うちの長女、第一子は非常に夜泣きのする子で、なかなか大変だった。そうしましたときに、私は今でも記憶があるんですが、そのときの手の感触、まだあるんですが、ベッドに投げつけた経験があるんですね。

 大人というか、親も、さまざまな思いを持ちながら子供を育児する、していると思うんです。これって、ひょっとしたら、世に言う児童虐待に当たるのかしらみたいなことも考えている親もいるかもしれない。煮詰まっちゃっている方も現にいらっしゃるかもしれない。そういった方々へのメッセージとしても、たたかうというのは、ごめんなさい、大臣、本当に、こだわっちゃって、若干私は違和感があるということを申し添えたいと思います。

 大臣、この子供への児童虐待は、いじめと同様、子供の人権侵害という側面もあろうかと思います。当然、暴行であったり、保護責任者致死という罪にも問われる話ですが、人権という観点から見ても、子供たちへの人権侵害であろうと思うわけであります。

 さまざまな人権問題等への対応ということで所信で述べられておりますが、そこで具体的にパワハラとかセクハラとか、ハラスメントの話が具体的に出てきていないんですけれども、いかがでしょうか、このハラスメント、いわゆる一般的なハラスメントということに関しても、これも人権侵害という御認識でよろしいでしょうか。

河井国務大臣 御指摘のとおりだというふうに考えております。

高木(錬)委員 そこで、大臣は所信で、大変さまざまな分野に関して、法務行政の課題について、意気込み、児童虐待のみならず、おっしゃられておりました。それは、これまで大臣の政治家としてのキャリアを見ても、私、察するところであります。例えば、所信でもおっしゃられていました、十一年前、十二年前でしょうか、法務副大臣に就任されて法務行政を見てこられた。あと、「司法の崩壊」という御著書もある。私も読ませていただきました。また次回、質問させていただきたいと思います。

 そういった法務行政に精通している、法務委員会での御質問や法曹養成改革などにも一家言ある、そういう大臣でありまして、まさに今私が触れました十二年前の法務副大臣時代の話をちょっとお聞かせいただきたいと思うんですが、振り返っていただけますでしょうか。

 まず一点目が、当時、法務副大臣時代、秘書官は何回かわられましたでしょうか。

河井国務大臣 法務省の秘書官、副大臣秘書官ということでございますか。

 ちょっとにわかには記憶をいたしておりません。

高木(錬)委員 二回だと伺っております。

 いかがでしょうか。御記憶ございますでしょうか。二回秘書官が交代された理由は御記憶でしょうか。

河井国務大臣 二回かわったかどうかを含めて記憶にないということであります。

高木(錬)委員 それでは、御記憶にないということでありますので、最初の秘書官が法曹資格者であったか、かわられた二人目の秘書官の方が法曹資格者であったかということも御記憶ではございませんか。

河井国務大臣 ちょっとはっきりと、判然といたしません。

高木(錬)委員 ありがとうございます。突然にこんなことを聞きまして、済みません。また機会がありましたら聞きます。

 先ほども触れました、大臣がとりわけ思いの強いであろう法曹養成改革について伺いたいと思うんですが、所信の中では、大臣、その著書で書くぐらい強い思いがおありなんだと思うんですが、所信では三行しか書かれていなくて、あれっというふうに私は思ったんですね。

 御著書の中で、法曹人口、法曹養成の改革がなし遂げられるか否かは、役人の微調整的な行政判断ではなく全て政治の意思にかかっていると書かれてあります。そして、先般の所信では、必要な取組を進めるということで締めくくられており、攻めの法務行政という言葉も冒頭おっしゃられており、そこで、法曹養成改革について大臣がおっしゃられている、政治の意思に基づいた具体的な必要な取組というものは、大臣の口からいつ発出される、どのようにお考えでしょうか。

河井国務大臣 もうかなり前のことでありますので、当時のいろいろな法曹養成、法曹人口についての状況をもう一度ちょっと振り返ってみますと、そもそも、平成十四年の三月に司法制度改革推進計画というものが閣議決定をされました。そして、「平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることを目指す。」というふうにその中に書いてありました。

 当時、平成十九年、私が法務副大臣として、鳩山邦夫法務大臣から、副大臣就任早々に特命、特別な任務を仰せつかりました。それは、当時の法曹に対するニーズや法曹の質の確保の観点からすれば、その人数、つまり三千人程度というのは多過ぎるのではないかと考えて、それについて特命を頂戴をいたした。その立場にのっとって、これまでさまざまな政治活動を行ってまいりました。

 そうした中で、この三千人目標につきましては、その後、平成二十五年七月、法曹養成制度関係閣僚会議決定におきまして、現実性を欠くとされて、事実上撤回をされたというふうに受けとめておりますので、私が当時示した政治の意思というものについては一定の成果を上げたというふうに受けとめております。

 今後につきましては、法務大臣として、あくまでも現場感覚を大事にしながら、関係者、さまざまな皆さんの意見をよく聞きながら、関係する大臣と連携して、国民の皆様に役に立つ、資する、国民の皆様の利益になる法曹養成、その仕組みづくりに向かって、これからも適切に対応してまいりたいと考えております。

高木(錬)委員 確かに、御著書の中で人数の話は多く出てきており、そこが大臣の問題意識の一つの肝かなということは拝察するところでありましたが。

 それこそ、攻めているなという御著書でございまして、弁護士たちの権利至上主義が今の司法、社会を確実にむしばんでいると痛感するであるとか、社会的道義や世間の常識を理解しない弁護士が数多く存在するのはどうやら間違いないであるとか、人数のことのみならず、法曹全体の、改革すべきところは改革していこうというような、弁護士会の皆さんであるとか、さまざまな、それこそ大臣がこの質疑の中でも何度となく触れておられるように、現場の方々ときちんと対話してということが重要かと思いますが、なかなか、出だしでこういうふうにおっしゃられると、十二年前の話ですからね、大臣もいろいろ、心変わりと申しますか、考えも変わっているのかもしれませんが、現場主義でぜひ取り組んでいっていただきたいと思いますし、法曹養成改革については引き続き今後も質問させていただきたいと思いますので、またよろしくお願いします。

 それでは、大村入国管理センターでの死亡事案につきまして、時間もないので一つ伺います。

 これまた、きょうは一つの質問にさせていただいて、また別の機会で質問させていただきたいと思いますが、不相当と判断するのは難しいという趣旨の報告書でありました。

 あの事案、大臣も報告書を読まれたと思いますが、あるいは、報告書のみならず、現場からのいろいろな話、伺っておられるでしょうか。受けとめを端的におっしゃっていただけますでしょうか。

河井国務大臣 収容施設の中で収容されている者が亡くなったということは、大変重く受けとめております。

高木(錬)委員 二度とこんなことが起こらないように、発生しないように、とうとい一人の命、犠牲になった方、犠牲になったというか、失われた命をきちんと検証して、二度と起こらないようにということが大事かと思います。また質問させていただきたいと思います。

 残りの時間は、長期収容の話をさせていただきたいと思います。

 平成三十年二月二十八日に仮放免運用方針を定め、そこにあります、仮放免を許可することが適当とは考えられない者という言葉がありまして、くだりがありまして、その定義がまた添えられております。

 その定義の中に、幾つかあるんですけれども、その一つに、再犯のおそれが払拭できない者や仮放免の条件違反のおそれとあります。このおそれというのは、誰がどのようなプロセスで決めることでしょうか。

高嶋政府参考人 委員御指摘のように、仮放免運用方針においては、仮放免を許可することが適当とは認められない者としまして、再犯のおそれが払拭できない者、仮放免の条件違反のおそれにより、仮放免許可期間が延長不許可となり再収容された者などが列挙されているところであります。

 仮放免するか否かという点でございますが、入管法第五十四条により、入国者収容所長又は主任審査官が個別の事案ごとに諸般の事情を総合的に判断して決することとされております。

 したがいまして、御指摘の再犯のおそれ及び仮放免の条件違反のおそれにつきましても、入国者収容所長又は主任審査官が仮放免の請求を行った者から提出された書類等を精査、検討した上で決することとなります。

高木(錬)委員 今の御答弁を受けて、また次回、機会がありましたら質問させていただきたいと思うんですが。

 最後に、ちょっと長くなりますが、御質問を大臣にさせていただきたいと思います。

 送還忌避者に対する、これまた大臣の強い思い、決意というのを伺いました。対応しなければいけない深刻な課題だということもおっしゃられました。一定の理解はします。

 ですが、その背景に何があるんだろうなということを私も考えました。さまざまあろうかと思います。ですが、ことしから来年にかけて、多くの要人、賓客、諸外国の首脳が訪れます。昨日もそうでした。それから、各種国際会議もあります、ありました。来年四月の会議についてもほかの委員が触れられております。それから、ラグビーワールドカップ、今、開催中です。来年には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会があります。そもそも、そういう大きなイベントがなくても、外国人訪日客三千六百万人、あるいは四千万人を目指そうという話もあります。そういうところを考えて、仮放免のみならず、さまざまな運用が厳しくなっているのかなというふうに勝手に私は感じているところなんですけれどもね。

 しかし、まさにそういった形で訪日された外国人の方々が、特に来年のオリパラですね、開催国の政府がオリンピック憲章のオリンピズムの基本原則に違反するような、そこに書かれてあることを遵守していないような、外国人に対する非人道的な措置とか人権侵害をやっているのではないかと疑われること自体がすごく恥ずかしいなと思うんです。実際に今いろいろな現場で起こっている事案です、先ほどの大村のみならず。

 安倍首相は、十月四日の、先ほど触れました所信表明演説の中で、百年前のパリ講和会議における日本の人種平等を掲げた提案に触れて、今日の国際人権規約を始め国際社会の基本原則となっていると誇らしげにおっしゃられました。

 国際人権規約というのは、大臣には釈迦に説法かとは思いますが、人権の保障を各国の独自判断だけに委ねるのではなくて、国際的な基準とシステムで人権を守ろうという条約であり、その条約に基づいて自由権規約委員会という国際組織がつくられて、加盟国が条約をきちんと守っているかどうかを監督し、各国に対して改善意見などを示しています。

 自由権規約委員会は、日本の入管の収容所における収容について、日本の第六回定期報告に関する最終見解で、収容決定に係る独立した審査もない中での長期にわたる行政収容があることを懸念すると表明し、さらには、同じ見解の中で、収容が、最短の適切な期間であり、行政収容の既存の代替手段が十分に検討された場合にのみ行われることを確保し、また移住者が収容の合法性を決定し得る裁判所に訴訟手続をとれるよう確保するための措置をとること、つまり、この収容というのは最短であるべき、仮放免許可ではだめかどうか十分検討すべき、そのことについて裁判所が審査すべきという勧告の内容かと思います。

 もっと言えば、日本が加盟している、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約についても、人種差別撤廃委員会が設置されて、この委員会から二〇一八年八月三十日に日本政府に対して示した総括所見の中で、庇護希望者の無期限収容について懸念を表明する、あるいは入管収容の最長期限を設けることを勧告し、並びに難民申請者の収容が最後の手段としてのみ、かつ可能な限り最短の期間で用いられることを保障すること、及び収容の代替措置を優先するための努力がなされるべきと書かれてあります。

 大臣、安倍首相が誇らしげに所信表明演説でおっしゃられた、先人たちの理想に基づいてつくられたさまざまな国際機関が、現在の我が国日本政府に対して勧告、指示、懸念を表明しています。このことをどう受けとめ、どう改善していくおつもりですか。

松島委員長 時間が終了しましたので、短くお願いします。

河井国務大臣 ただいま御指摘いただきました勧告につきましては、その内容の当否などを十分に検討した上で、政府として適切に対処していきたい、そう考えております。

 以上です。

高木(錬)委員 終わります。ありがとうございました。

松島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

松島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。日吉雄太さん。

日吉委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの日吉雄太です。

 本日は、質問の機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。法務委員会には初めて所属をさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、さきの台風被害においてお亡くなりになられた方々に心よりお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 本日は、安倍内閣におきまして、今回、法務大臣に御就任されました河井大臣に、法務行政を中心にお伺いをさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは初めに、河井大臣が先般、法務省の幹部の職員の方々に就任の御挨拶をされたときのお話について少しお伺いさせていただきます。

 紹介させてください。

 細かいことは、私は精通していないかもしれない。しかし、大筋では絶対間違いのない方向を示していきたいと思っておりますから、どうぞその大筋の中で、法務省の皆さんは思う存分自由闊達に努力をしていただきたい。責任は私がとるんです。法務省を代表して、私は戦うこともあるでしょう。法務省を代表して、責任をとらなければならないと、それは覚悟いたしておりますから、皆さんにはどうぞ思い切って頑張ることを心から期待いたしますと、鳩山邦夫元法務大臣の言葉を引用されてお話をされておりました。

 まず初めに、この言葉の意味するところ、真意といいますか、を少し補足的に御説明をいただけますでしょうか。

河井国務大臣 私は、十二年前、十一年前、副大臣として鳩山邦夫法務大臣にお仕えをさせていただきました。今も日吉委員から引用していただきましたけれども、鳩山邦夫法務大臣、法曹の資格は持っていらっしゃいませんでした。ちなみに、そのとき、大臣も副大臣も大臣政務官も、三人とも法曹資格はないようだったんですけれども、大変人情味があり、また温かく楽しい人柄で、それでいて問題の所在をぴっと察知をして、感知して、それに対して政治家としての考え、政治主導ということで見事に法務大臣としての職責を果たされた。私は、副大臣としてずっとそばでお仕えしながら、本当に敬愛をさせていただきました。

 私が法務省に御縁をいただくのはそれ以来ということでありますので、私の目標とする法務大臣は誰かともしお尋ねになるとすれば、それは鳩山邦夫法務大臣であります。そういう思いで、あえて自分自身の大臣訓示の中でその鳩山先生がおっしゃった言葉というのを引用させていただきました。これから、そういう法務行政をぜひつくり上げていきたい、そう考えております。

日吉委員 今お話しいただきました。その中で、私が大臣の言葉の中で特にポイントになる言葉というのが、皆さんは思い切って仕事をしてください、責任は私が何かあった場合は全てとりますというところだというふうに思っております。

 最初ですので、ちょっとお伺いしておきたいなと思う、具体的に何かというわけではないんですけれども、大臣が考える責任をとるというのは、これはどういうことを想定されておっしゃられた言葉なんでしょうか。

河井国務大臣 これは、あくまで鳩山邦夫当時の法務大臣がおっしゃった言葉を引用したということであります。

 その上で、私が所信でも申し上げましたけれども、三点、攻めの法務行政、温かい法務行政、世界に広がる法務行政、これまで法務省が培ってきたさまざまな基盤、それは大切にしつつも、ぜひ積極的に新たなそういった事柄についてもこれからしっかりと取り組んでいただきたい。

 当然、そうなりますとさまざまな事柄がこれから起きてくるかもしれませんけれども、本当に法務省の職員の皆さんがこれが正しいというふうに信じていただける、そういう方針であれば、私は、関係するさまざまな役所とも、しっかり責任を持って調整をする、交渉する、そしてその実現に当たっていく、そういう決意を表明したわけであります。

日吉委員 責任を持ってやると言われたときに、やはり法務省の職員の方々というのは、これはやりやすいといいますか、いざとなったら大臣が責任をとってくださると思ったら、本当に感銘を受けて一生懸命仕事に邁進されるのではないかなというふうに思ったところでございます。

 この責任をとるというのは、具体的にどうするかというのはさまざまなことがあると思うんですけれども、やはり場合によっては大臣を辞するというような責任のとり方をすることもあるかと思いますし、いろいろあるかと思いますけれども、そういった中で、責任をとるといっても、いろいろ、起こったことというのは取り返しがつかないことになろうかと思います。そういった意味で、慎重な判断と、そして慎重な行政の執行ということをまず最初にお願いをさせていただきたいなと思います。

 続きまして、大臣が所信でお話しになりました中で、コーポレートガバナンスについてのお話がございました。今回の国会の中で会社法の改正も盛り込まれておりますけれども、今回はそれはおいておきまして、コーポレートガバナンス、これについて一層勉強をしていくというような発言もございましたので、コーポレートガバナンスを始めとするガバナンス全般についての御認識等をお伺いさせていただきたいなと思っております。

 大臣の考えるコーポレートガバナンス、この意味合い、このポイントというのはどういったものか、教えてください。

河井国務大臣 まさに今委員御指摘の、会社法の一部改正する法案なども国会に提出をするということでありますので、またそのときにいろいろと質疑を通じて充実をしていただきたいというふうに思いますけれども、一般的に、コーポレートガバナンスというのは、会社の業務を執行する役員が、株主その他の利害関係人の立場を踏まえた上で、透明、公正かつ迅速果断な意思決定を行うための仕組みを意味しているというふうに考えております。

日吉委員 そのように、業務を適正に、そして効率よくやるための管理の仕組み、また、さまざまな企業で行っている、不祥事等もありますけれども、そういうものを未然に防ぐための管理体制、こういったものをつくっていくのがガバナンスにあるのではないかなというふうに考えております。

 そういった中で、行政、法務省も一つの組織でありますので、こういったガバナンスというものをしっかりと構築していかなければなりませんし、既につくられていると思いますが、大臣が就任に当たってまず組織のガバナンスについて評価をされたと思うんですけれども、どのようにこの法務省という組織についてガバナンスの評価、かなり精度の高いものなのか、不安があるところがあるのか、こういった大臣の評価をお聞かせください。

河井国務大臣 日吉委員は、公認会計士の資格を持っていらっしゃるということでありますので、また、そういった専門的な知見、御経験から、コーポレートガバナンスのあるべき姿について、さまざまな御高説をぜひともお伺いをさせていただきたい、そう考えております。

 その上で、法務省のガバナンスということでありますけれども、コーポレートガバナンスは民間企業ということで、民間企業と役所というものを同列に論じることは一概にはできないかもしれませんけれども、でも、私、やはり共通している点は幾つかあるんだろうと思っています。一つは、迅速かつ公正に意思決定を行っていくという点は、どちらの組織体もひとしく重要な視点だろうというふうに考えております。

 同時に、法務省につきましては、これも職員の皆さんへの訓示で申し上げましたけれども、霞が関の中でも最も優秀で有能な人材がそろっている、私は、前の副大臣を卒業した後、十一年間、十二年間、ずっとそういうふうに評価をしてまいりました。

 そういう点で、そういった優秀、有能な職員の方々の力を本当の意味で引き出していく。それは、国民の皆様のため、国家の利益のために引き出していく。それに向かって自分自身しっかり邁進をしていきたい。そういう意味合いで、冒頭に引用していただきました、当時の鳩山邦夫法務大臣がおっしゃったさまざまな言葉あるいは表現というのを、自分の考え、ぜひそこに向かっていきたいということで引用させていただきました。

日吉委員 各職員の方々の力を発揮してもらう、これは非常に大事なことだと思います。

 その一方で、いろいろな、組織ですから、ミスが起こったり、場合によっては不正が発生するということもあります。最近も他の省でありました。こういったことを、法務省さんでは起こるリスクは低いと判断されているのかどうかというところを、大臣、お話をお聞かせください。

河井国務大臣 もう少し、できましたら詳しく具体的にお尋ねをいただければと思います。

日吉委員 具体的にといいますか、さまざまな問題というのが発生する可能性があります。なので、大臣というその組織のトップに立たれている方というのは、その組織から問題が発生しない、するのかどうかということ、その可能性が高ければそれに対応をしなければいけないし、そんなに高くないのであればそんなに気にする必要もないということになろうかと思います。

 ですので、まず最初に、その組織としての評価というのはどうなっているのかというのを把握した上で対応を検討していくのではないかなというふうに思っているんですけれども、その組織に対する評価、大臣の評価を教えてください。

河井国務大臣 評価につきましては、先ほど述べましたように、極めて優秀で有能な皆さんがそろっているということ。そして、日本の法的な基盤、それのまさに屋台骨を背負っているという重要な使命、そういったことは、私は、職員の皆さん方は片時も忘れたことはない、そのように確信をいたしております。

 一方で、問題が起きたときと今御質問されて、具体的なことが判然としないんですけれども、例えばそれが職員のいわゆる不祥事ということについての御質問でありましたならば、そういったことはあってはならないし、そして、もう既に決まっているさまざまな事柄、そういったことをしっかりこれから全ての職員の皆さん方に周知するようにしっかり努力をしていかなきゃいけない、そう考えます。

 一方で、そういう目に見える形で問題とか不祥事ということではなくて、法務行政ですから、さまざまな政策判断が日々発生をするということを考えておりまして、その判断に誤りがないようにしなくてはならない。そのときに、私自身が心がけるべき指針としては、所信的の御挨拶で申し上げましたけれども、攻めの法務行政、温かい法務行政、世界に広がる法務行政というこの三点、この観点をしっかり重視をして、さまざまな事柄についてこれから対処していこう、そういうふうに自分で考えております。

日吉委員 そうやって対処していただくということは非常に重要なことだと思います。

 ただ、私の聞きたいこととはちょっとそれてしまったのかなという思いがありまして、そもそも、不祥事なりを起こさないようにするための組織の仕組みというのをつくらなければいけません。それが世の中では内部統制と言われています。各企業はそういった内部統制をつくります。もちろん、法務省内にも内部統制ができ上がっています。

 その内部統制をつくる責任というのは、企業でいえば経営者にあるというふうに、これは明確にされております。経営者、すなわち社長であったり、その担当する役員、経営層が責任を担うということです。

 なので、言いたいことは、今現在、何か問題があるというわけではなくて、そういう問題が起こる前に、問題が起こらないような仕組みをしっかりとつくっていかなければいけないということです。

 そこで、ちょっと別の角度から質問をさせていただきますが、こういった仕組みをつくる責任は、法務省内においては誰にあるのでしょうか。

河井国務大臣 もちろん、最終的な責任の所在は法務大臣にあるというふうに考えております。

 その一方で、コーポレートガバナンス、先ほど冒頭先生が質問で入っていかれましたけれども、もちろん、民間企業とこういう役所とは一概に同列に論じることはできないという前提の上ですけれども、民間企業におきましては、透明、公正な意思決定を担保するためには、業務を執行する役員から独立した立場にある者が役員を監督する体制を構築することなどが重要である、そういうふうに、純粋な民間企業におけるコーポレートガバナンスでは書いてありますし、それが社外取締役のさまざまな体制の充実ということだと思いますけれども。

 私は、先ほどから申し上げておりますように、今回、法務省に法務大臣として入ってまいりました。どうしても、きっすいのお役人の皆さん方だけでは気づかないこと、本当はさまざまな資源や能力やあるいは仕組みがあるにもかかわらず、そういったものについて、もっと積極的に取り上げるべきだということについて十分には認知しないというふうなことも私はあるのではないかと考えます。

 そういう意味で、政治家としての考え方、まさに冒頭、引用をしていただきました、鳩山大臣が、細かいことには精通していないけれども大きな方向性を自分は間違いなく示していきたい、そういう考え方、理念にのっとって私もこの法務省をしっかりと率いていきたいと考えております。

日吉委員 今おっしゃられたように、最終的には大臣に内部統制を構築する責任があるということをおっしゃっていただきました。そのもとで、ぜひしっかりと御対応いただければなと思っております。

 そうしたら、次の質問に行かせていただきます。

 天皇陛下の御即位に合わせて恩赦が行われるところでございます。現行憲法のもとでは十一回目の恩赦となります。上皇様の天皇即位の礼の際には約二百五十万人、天皇陛下の御成婚の際は約千三百名、そして今回約五十五万人の恩赦を実施することになっております。

 犯罪を犯した人の刑罰を特別に軽くすることは憲法にも定められているところでございます。日本国憲法下では、恩赦の決定は内閣が行い、恩赦の認証は天皇の国事行為として行われるというふうになっております。

 今回の恩赦ですが、前回よりも五分の一に対象者の数がなっておりますが、法務省の中でもいろいろな御意見があったというふうに伺っております。反対される方もいらっしゃったようにも報道等で聞いておりますが、今回の恩赦について、大臣の御所見をお願いいたします。

河井国務大臣 まず、恩赦の意義ということでありますけれども、今回、即位の礼という慶事に当たりまして、憲法第七十三条の規定に基づきまして、例えば、医師、看護師、調理師などの資格の制限を取り除くことによりまして、罪を犯した者の改善更生の意欲を高めさせる、そしてその社会復帰を促進するという刑事政策的な見地から実施をすることといたしました。

 その上で、今委員御指摘になりました、これまでと比べてのことですけれども、平成十六年に犯罪被害者等基本法が成立をしております。犯罪被害者やその御遺族に対するより一層の配慮が求められるというのが今の現状だと考えておりますので、それに鑑みまして、今回の恩赦の実施に当たっては、国民感情、特に犯罪被害者等の心情などに配慮して、前例に比べてその対象を限定的にした結果、規模が縮小したということであります。

日吉委員 対象を限定的にという御答弁をいただきました。

 先ほども対象者について少し御質問があったかと思うんですけれども、もう一度、減少したところ、そして今回の対象者について、簡単に御説明をお願いいたします。

今福政府参考人 改めまして、今回、恩赦の対象になる者について御説明を申し上げたいと思います。

 まず、政令恩赦でございますけれども、罰金刑を受け終わった者であって、かつ三年以上罰金以上の刑に処せられていないものについて復権を行うということです。

 また、特別基準恩赦につきましては、犯情等を考慮して、特に恩赦とすることが相当であると認められる者に対する刑の執行の免除及び復権の二種類のみを実施するというものであります。

 今申し上げました刑の執行の免除につきましては、その刑の執行が長期間停止され、かつ、なお長期にわたり執行に耐えられないと認められるものを対象としております。また、復権についてでございますが、罰金刑を受け終わった者であって、刑を受けたことが現に社会生活上の障害となっていると認められるものを対象としてございます。

 以上でございます。

日吉委員 もう一度お伺いさせていただきますが、例えば酒気帯び運転とか無免許、過失運転など、こういった罪を犯された方というのは対象になるんでしょうか。

今福政府参考人 今回の復権あるいは特別基準恩赦のいずれにつきましても、特定の罪名を限定しておりませんので、今御指摘の罪名についても含まれるものと承知しております。

日吉委員 今、含まれるとおっしゃられました。

 先般の世論調査を見ましても、この恩赦について反対している方というのも結構な割合でいたように認識しております。また、行政の司法への介入ではないか、こんな批判もされることもあります。

 そんな中で、こういった、今非常に厳罰にしなければならないというように言われている過失運転、酒気帯びとか、こういったものも入っていますけれども、それについて、どのように大臣は思われますか。

河井国務大臣 今、日吉委員が御懸念をされました悪質な過失運転致死傷罪、そういった事柄についてなんですけれども、それにつきましては、一般に、禁錮刑、懲役刑に処されるということで、そのような事案は今回の恩赦の対象にはなっておりません。ですから、御懸念は当たらない、国民の皆様から御理解いただけるものだと考えております。

日吉委員 ということは、罰金刑なので、禁錮刑以上のものは該当しないので、国民の皆様からおかしいのではないかというような批判は当たらないのではないかというふうに考えられているということですね。わかりました。

 続いて、人権の問題について少しお話をお伺いしたいと思います。

 先ほど来、人権侵害等のお話が出ておりましたけれども、改めまして、人権侵害の定義といいますかをちょっと教えていただけますか。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 どのような行為が人権侵害に当たるのかということにつきましては、具体的な事案に即して判断されるべき事柄でございますので、一概にお答えすることは困難と言わざるを得ませんが、一般的に申し上げれば、人がその固有の尊厳に基づいて当然に有する権利を損なう行為が人権侵害行為であり、差別であるとか虐待であるとか、あるいはいじめが一般的にはこれに該当するものと考えております。

日吉委員 差別、いじめ、虐待、こういったものが人権侵害に一般的には当たるという御答弁をいただきました。

 先ほど同僚の議員から質問がございましたが、懲戒権の話がございました。これについては民法で定められているところではございますが、こういった内容、これは人権侵害に当たるものなんでしょうか。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 懲戒権の内容について、私ども人権擁護機関として、その解釈について申し上げる立場にはございませんけれども、懲戒権として許される範囲を超えるような虐待行為については、一般的に、人権侵害に当たるものと考えられると思います。

日吉委員 その懲戒権を超えるところと超えないところの線引きというのは、今どのように解釈されているんですか。

小出政府参考人 懲戒権につきましては、現在、法制審議会で、本年度成立しました児童虐待の関係で、懲戒権を削除するのか、あるいは懲戒という言葉を修正するのか、あるいはどのような行為が懲戒権として許されるのかというような、いろいろな観点から今検討が進められているところでございます。

 それで、懲戒権につきましては、平成二十三年に民法改正がございまして、子供の利益のためにそれを行使するということが定められておりますので、懲戒権の範囲を超えるかどうかというのは、一応、そのような点が基準になり得るのではないかというふうに考えております。

日吉委員 先ほど大臣は、審議会の議論の状況をしっかり見守っていくというふうにお答えされておりました。今もそういう議論が行われているという話がございましたが、やはり大臣としても、何らか今の状況というのは問題があるから議論が進められている、こういう理解でよろしいですか。

河井国務大臣 今御指摘の懲戒権の規定、そのあり方も含めて、さまざまな御意見があることは十分承知をいたしております。

 その上で、今、審議会におきまして、慎重に、そしてまたいろいろな面から審議をされているということでありますので、その調査審議をしっかりと見守って、よい、充実した内容になるように強く期待をしているというところであります。

日吉委員 ありがとうございます。

 もう少し人権の話をさせていただきます。

 ハンセン病患者、元患者やその家族に対する人権、これについて大臣はどのようにお考えになられておりますか。

河井国務大臣 ことしの七月に内閣総理大臣談話が発出をされました。ハンセン病家族国家賠償請求訴訟の判決受入れに当たっての談話ということでありまして、そこに書いてございますように、ハンセン病対策については、かつてとられた施設入所政策のもとで、患者や元患者のみならず、家族の方々にも、社会において極めて厳しい偏見、差別が存在したことは厳然たる事実である、そういう認識を示しております。

 法務省としては、原告団の皆様を始めとする当事者の方々の御意見を伺いながら、関連する厚生労働省と文部科学省とともに、偏見や差別の解消に向けた取組を一層推進していきたいと考えております。

日吉委員 ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

 それともう一つ、ちょっと話はそれてしまうかもしれないんですけれども、原発がありますよね。原発、これは、一たび事故が起きますと非常に大きな影響がありますということになるんですけれども、例えば、原発の事故というのは、何十年に一回あっただけだからそうそう起こるものではない、だから大丈夫だと思う人もいると思いますし、そうはいっても、いや、起こるかもしれない、あした起こるかもしれないというふうに思う人もいると思うんですね。例えば、飛行機に乗るのであれば、飛行機事故、これに対して、避けたい人は飛行機に乗らなくても済みます。しかしながら、原発というのは、それができてしまって、もし事故が起こったら、原発は要らないと思っている人も巻き込まれてしまうというような、こういったものです。

 こういう意味から考えますと、ある意味、リスクの選択、人々がどのぐらいリスクをとるのか、そういう自由というのがあると思うんですけれども、リスクを選択する自由というのを原発はかなり侵害してしまうのではないかなと思っています。

 リスク選択、こういう自由を侵害するというのは、ある意味、人権の侵害につながっていかないかなと思うんですけれども、大臣はどのようにお考えになられますか。

河井国務大臣 ただいま原子力政策についてお尋ねをいただきましたが、私の所管外だというふうに考えますので、お答えを述べるのは差し控えたいと存じます。

日吉委員 では、次の質問に行かせていただきます。

 有罪判決を受けて服役中に刑務所から逃げ出したり、被疑者や被告人として勾留されている施設から逃げ出したりする事件が多く見かけられます。

 昨年八月十三日、強盗致傷の疑いで逮捕され、大阪府の富田林署で留置中だった容疑者が逃走した事件があります。弁護士と接見のために面会室に入った後、所在がわからなくなったという事件です。九月二十九日、山口県周南市の道の駅売店に並ぶ食料品を万引きした男が警備員に取り押さえられました。実に四十九日に及ぶ逃走劇が終わりを告げたわけでございますが、これが大きな社会問題となりました。

 ことし八月の横浜の事例もありますが、保釈中といってもいろいろな事例があると聞いております。逃走しているのは、今現在、何人ぐらい全国にいらっしゃるのか、教えてください。

小山政府参考人 いろいろな、二つの系統の事例について御指摘ございまして、保釈となって公判期日に出頭しない者、所在不明のまま自由刑が確定する者がおるわけでございますが、その数について、当局において現時点で網羅的に把握していないところはちょっとお許しいただきたいと思います。

 なお、関連してですが、自由刑の執行を免れる目的で逃走している、逃亡している者がおります。これはいわゆる自由刑遁刑者という類型になっておりますけれども、こちらにつきましては、平成三十年末現在で二十六名と把握しております。

日吉委員 大臣、これは多いんですかね。どう考えられますか、二十六名というのは。

小山政府参考人 今御指摘のありました、この数が多いか少ないかというのは非常に難しいところがございます。

 ただ、過去の数字でございますが、三年間の自由刑遁刑者の数でございますが、平成二十八年末ですと二十九名、二十九年末も二十九名、三十年末が二十六名ということでございまして、遺憾ではございますが、一定数の、刑が確定して遁刑している者というのはいるというところでございます。

日吉委員 これは、大きな原因といいますか、どこが問題だったというふうにこれまで考えられているんでしょうか。

小山政府参考人 自由刑の遁刑につきましては、例えば、問題といいますか、現象といたしましては、今、最近問題になっている、保釈中に逃亡してしまってそのまま刑が確定しているというような者もおりますが、それ以前に、裁判というのは必ず身柄拘束中に行われるわけではございません。在宅で裁判が行われ、そのまま確定した、それが結果的に実刑判決ということもございます。

 こういう制度自体は、それがおかしいのかと言われますと、それはなかなか難しい評価もございますので、なかなか事務当局としてお答えするのは難しいところかと考えております。

日吉委員 ありがとうございました。

 時間がなくなってきましたので、次の質問に行かせていただきます。

 ちょっと関連することなんですけれども、保護司についてお尋ねしたいと思います。

 罪を犯した人の社会復帰を支えるために、保護司の皆様が日ごろ御尽力されておりますことに敬意を表します。

 現在、保護司の数が減ってきているという中で、なり手の方もなかなかいないというふうに聞いております。この十年で約千六百人減少しているという報道もありますが、この現状について教えてもらえますでしょうか。

今福政府参考人 ただいま委員御指摘のとおりでございまして、保護司のなり手確保は困難化しております。

 保護司数は、平成二十一年一月一日現在、四万八千九百三十六人でございましたが、以後減少を続けておりまして、平成三十一年一月一日現在では四万七千二百四十五人と、この十年間で約千七百人減少しております。

日吉委員 こういった中で、公務員の方が保護司を兼務されるというようなこともあるというふうに伺っております。

 今後、このなり手不足にどのように対策をとっていくのか、そして、兼務における報酬、基本的にはボランティアというふうに伺っておりますけれども、報酬の体系といいますか、報酬をどのように考えているのか、ちょっとお聞かせください。

今福政府参考人 ただいま御指摘ございましたとおり、なり手確保のために諸施策をとっております。

 法務省では、まず、地域の関係機関等の関係者を構成員とする保護司候補者検討協議会を設置するですとか、保護司活動を体験する機会を提供する保護司活動インターンシップ制度を実施するですとか、あるいは、保護司活動の拠点として更生保護サポートセンターの設置などを進めてございます。特に、更生保護サポートセンターについては、本年度において、全ての保護司会、八百八十六カ所に設置することとしております。

 これらの施策を始め、ほかにも、地方公共団体の職員や職員のOB、あるいは経済団体、宗教団体、士業団体などに保護司に適当な方を紹介していただくよう働きかけをしているところでございます。

 以上です。

日吉委員 どうもありがとうございました。

 保護司の方々がしっかりと活躍できるように、そういったサポート体制をとっていただけるようお願いいたします。

 続きまして、ばらばらいろいろ質問させていただいて恐縮なんですが、戸籍のない子供たちについてお伺いをさせていただきます。

 現在、日本でどのくらいいらっしゃるのか、人数を教えてください。

小出政府参考人 お答え申し上げます。

 本年九月十日現在で法務省が把握しております無戸籍の方の数、これは合計八百二十一名でございます。その内訳のうちで、就学前の方、ゼロ歳から五歳までの方が四百九十二人、それから就学年齢にある方、六歳から十四歳の方が百六十一名ということでございます。

日吉委員 この戸籍がない状態というのは、どのような原因で、どのような背景で生じているのか、その分析をどのようにされているのか、教えてください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 戸籍に記載されていない理由でございますけれども、民法の規定により出生届を出すことによって前の夫の嫡出推定を受けてしまうということを理由として出生届を出さない、それが全体の七八%を占めているということでございます。

日吉委員 今お話がありましたけれども、その民法の規定は変えていく、こういったお考えは、大臣、ございますでしょうか。

河井国務大臣 まず、この無戸籍問題についての認識でありますけれども、これは人間の尊厳にかかわる極めて重大な問題だというふうに受けとめております。

 法務省は、これまでも、幾つかこの問題の解消につきまして取組を行ってきました。一つは、市区町村の窓口等から得られた情報を各法務局が把握して、無戸籍者の情報を把握する。それから、その把握した情報に基づきまして、法務局や市区町村の職員が無戸籍の母親などに定期的に連絡をしたり、一軒一軒戸別訪問を行うということで、一人一人に寄り添う、戸籍の記載に必要な届出や裁判上の手続がとられるように支援をしてまいりました。そして、その裁判費用などについて相談をもしいただいた場合には、日本司法支援センター、通称法テラスにおきまして、民事法律扶助制度について御案内をしております。

 こういった事柄を円滑に進めていくために、各法務局、市区町村、そして弁護士会、裁判所等関係機関と協議会を設置をして、この問題について密接に取り組んでまいりました。

 その上で、ではこれから何を行っていくかということでありますけれども、一つには、民法の嫡出推定制度がこの問題の一因となっているという御指摘がございますので、ことしの六月二十日、法務大臣から法制審議会に対しまして、嫡出推定制度に関する規定の見直し等を内容とする諮問を行いました。ですから、今、法制審議会におきまして審議をしていただいております。

 もう一つは、ことしの三月から実施をしておりますけれども、お子さんが生まれる前から、お母様方に妊婦用の啓発パンフレットを作成して、配布を今いたしているところであります。

日吉委員 さまざまな取組、ありがとうございます。

 そうしますと、今現在八百二十一名いらっしゃると推定されております、これをゼロに向けて頑張っていただきたいなと思います。よろしくお願いいたします。

 それと、最後に、法務省さんにおける障害者雇用についてお尋ねをいたします。

 現在の障害者雇用における法務省内の雇用人数を教えてください。

西山政府参考人 お答えいたします。

 令和元年六月一日時点におきまして、障害者雇用、済みません、人員でございますね。済みません、ちょっと、把握しているのが、この人員の数え方が、人の人員ではなくて、重度の方であると二人に数えるとかいうものがございまして、若干実際の人数と異なりますけれども、令和元年の六月一日現在で、法務省だけでございましたら、八百四名、八百四人となってございます。これは、出入国在留管理庁も足した数でございます。(日吉委員「雇用している」と呼ぶ)はい。雇用者人数です。

日吉委員 時間が来ましたので、最後に一点だけ。

 目標数が何人で、現在八百四名ということ、目標数を教えてください。

西山政府参考人 目標数の設定としましては、雇用率という形で設定をされていまして、これが法定雇用率二・五%となってございます。

 現状、令和元年六月一日時点で、雇用者数、約二・二〇%と足りません。どのくらい足りないかといいますと、人に換算しますと約百十四人まだ足りないという状況でございます。

松島委員長 もう時間になりました。

日吉委員 時間が来ましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

松島委員長 次に、藤野保史さん。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 まず冒頭、台風十九号の被害により大変な被害を受けていらっしゃる皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 私、北陸信越ブロックというところから国会に送っていただいておりまして、発災直後には、長野県、千曲川が決壊した現場にも行かせていただいて、長野市や佐久市に行かせていただきましたし、二十日には新潟県の長岡市、上越市、そして、きのうも再び長野市、千曲市に伺ってまいりました。

 本当に、避難所の生活の改善や泥の除去、被災ごみの処理、生活の立て直し、商店や農業の被害補償など、課題は山積みだというふうに実感をしております。

 法務省といたしますと、被災した土地の権利関係等の復旧などでこれまでも力を発揮されてこられましたし、法務省の力はどうしてもやはり復旧において必要になってくると思っております。余り目立たないけれども非常に大事な仕事だと思います。

 大臣は、所信の中で、法務省の総力を結集して被災者の生活再建に力を注いでいくと述べられましたし、きょうの答弁でも、災害対応は法務省の本来業務というお言葉もありました。そういう点では、私も全力を尽くしてまいりますが、ぜひ法務省としても、今後ともこうした立場で全力を尽くしていただきたいと思っております。これは答弁は求めませんので、よろしくお願いいたします。

 その上で、私は、大臣が所信の中で述べられました、入管収容施設における長期収容の問題についてお聞きをしたいと思います。

 大臣はこうおっしゃっております。長期収容者の問題は、我が国の出入国在留管理制度の根幹を脅かし、ひいては、我が国の社会秩序や治安に影響を与えることにもなりかねない深刻な問題ですというふうに述べられているわけですね。

 そして、新たに専門部会を設置して、必要な法整備も含めて根本的な方策を検討するように指示を出されていると思います。そして、二十一日月曜日にこの専門部会の第一回会合が行われております。

 入管庁にお聞きしたいんですが、この専門部会というのは、具体的にどのようなことを検討しようとしているんでしょうか。

高嶋政府参考人 御指摘の専門部会は出入国管理政策懇談会のもとに設けられたものでございまして、現在における収容の問題について、収容及び送還について存在する問題について御検討いただく、そういうものでございます。

藤野委員 それはわかっていまして、具体的に何を検討するのかということをお聞きしたんです。ちょっともう一回お願いします。

高嶋政府参考人 御指摘のとおり、月曜日にその第一回がありましたが、どのような問題について御検討いただくかにつきましても、これからの議論の中で御検討いただく、御議論いただくということになっております。

藤野委員 先ほどの大臣の答弁の中で、例えば、仮放免の身元保証人、これの要件の厳格化だとか、あるいは仮放免の保証金の金額のあり方という答弁も大臣がされているわけですね。ですから、そういったことを今後検討していく。

 具体的には、要するに、仮放免について言えば、送還もありますけれども、仮放免について言えば、厳格化していくということが一つの方向として出ていると思うんですが、それでよろしいですか。

高嶋政府参考人 先ほど大臣から答弁がありました保証人の件、それから保証金の件でございますが、これは、現行の枠内でも運用において対処し得る、これを最大限活用すべきところは活用しということでございます。

 現行の枠を超えてやるべきこと、あるいは現行の枠の中でできるんだけれども、まだ我々が十分使っていない部分がもしあるとすれば、それを指摘いただくという部分も含めて、これがこれから検討いただく内容になるかなというふうに思っております。

藤野委員 大臣は所信の中で、長期収容者の問題は、我が国の出入国在留管理制度の根幹を脅かしとおっしゃっていらっしゃいまして、私は、このいわゆる出入国管理制度の根幹が問われているという認識は私も同じなんです。この間、法務委員会でこの長期収容の問題は私は何度も何度も質問させていただいて、本当にいろいろな問題があると思っておりますし、そういう意味では根幹が問われている。法整備の必要性、これも私も実は一致しておりまして、今の入管法については改正が必要だという点も私は同じ認識なんです。

 ただ、中身が大きく違うというふうに思っておりまして、今からちょっとお聞きしたいんですが、まず、大臣は、その根幹を脅かしの後に、ひいては、我が国の社会秩序や治安に影響を与えることになりかねないとおっしゃっているんですが、なぜ長期収容が社会秩序や治安に影響を与えることになるんでしょうか。

河井国務大臣 この仮放免、先ほども御答弁で申し上げましたが、例えば、ことし六月末現在、送還忌避被収容者八百五十八人のうち四三%の三百六十六人が有罪の判決を受けている。うち八十四人は仮放免中の犯罪によって有罪判決を受けている。

 さらに、百八十九人は、これは全体の二二%ですけれども、退去強制処分を既に複数回受けている。また、百五十二人は仮放免中の逃亡や条件違反によって仮放免が取り消された上で再び収容されている。こういった人たちは、重複分を除きますと、全体の五七%、四百九十二人に上っております。

 しかも、その犯罪の態様は、殺人、強盗、強制性交などの凶悪犯罪。そして、薬物事犯、窃盗、詐欺、交通事犯の順で多くなっております。

 そして、その中には、幾つか御紹介しますと、平成二十七年十二月、名古屋イラン人集団暴行死事件、これは……(藤野委員「大臣、中身はいいです」と呼ぶ)いいんですか。

 それとあわせまして、強い問題意識を持っておりますのが、三百三十二人が今現在も所在不明になっているということから、強い問題意識を持って、先ほど申し上げたようなことを述べたわけであります。

藤野委員 社会にとって危険な人物だから収容を継続していいんだ、こういう論理は実は大変危険なものがございます。ある意味、日本人でも犯罪歴を持っている方や仮釈放の経歴がある方はいらっしゃるわけで、社会に危険だからと政府が認定すれば隔離できるんだ、収容を継続できるんだということになれば、これは本当に恐ろしい社会になってくると思います。

 もう一点、これは入管法そのものの趣旨とも大きくやはりずれている、逸脱していると私は思うんですね。

 私も、入管制度の中で収容制度があるということ自体、この制度趣旨は理解しております。主権国家ですから、主権国家として出入国管理を行うというのは当然であります。その際、送還に向けた収容が必要になるケースがある、これも理解をしております。ただ、入管法が想定している収容というのは、あくまで強制送還があって、その前に行われるものであります。

 入管法の五十二条三項にはこういう規定があるんですね。「入国警備官は、退去強制令書を執行するときは、退去強制を受ける者に退去強制令書又はその写しを示して、速やかにその者を次条に規定する送還先に送還しなければならない。」速やかに送還しなければならないというのが法の趣旨であります。

 法務省にちょっと、入管に確認しますが、この今言った入管法五十二条を始めとする退去強制に関する規定というのは、法制定以降、改正されておりませんね。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 昭和二十七年にかつての出入国管理令が法律に格上げされた以降、退去強制事由が追加されたり変更されたということはございましたが、平成十六年の入管法改正において出国命令制度を導入した、これは結構大きな改正ではございましたが、これを除いて、大枠の制度変更は行っておりません。

藤野委員 つまり、昭和二十七年ですと一九五二年ですかね。七十年近く法律は変えられていないわけであります。

 その当時の立法趣旨を当時の政府はどのように説明していたかというのが配付資料の一でございます。ごらんいただければと思いますが、一九五四年の二月三日の衆議院法務委員会で、当時の鈴木一入管局長が答弁されております。

 紹介しますと、ここはもちろん刑務所でもないし、そういう犯罪人を扱うところでもない、単に帰国する人たちの船待ちである、特に、外国人であり、我が方と対等な立派な人たちを扱うのであるから、その精神で、第一線の外交官たれということを隅々まで徹底させて扱っておるわけでございます、そういうような答弁なんですね。これがもともとの立法趣旨であります。

 つまり、送還、これはもう当然国家としてやる場合がある。その際、収容も必要だ。しかし、収容というのは、あくまで船待ちというか、飛行機待ちとかもそうでしょうけれども、短期間の、ワンショットの収容、身柄の確保というのがこの入管法が予定している収容の趣旨であります。ですから、そこを今大きく乗り越えているわけですね。

 入管にもう一つ確認しますが、今、被収容者の、収容されている方のうち、半年以上収容されている方、一年以上の方、一年半以上の方、二年以上の方、それぞれ何人で何%ぐらいでしょうか。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 収容期間が六月以上一年未満の者は百四十八名、一二・九%。一年以上一年半未満が百三十八人、一二・〇%。一年半以上二年未満の者は百四十二人、一二・四%。収容期間が二年以上の者は二百五十一名になります。

 以上でございます。

藤野委員 今のは全国の数字じゃないですよね。東京入管ですか。ちょっと確認してくれますか。

高嶋政府参考人 これは六月末現在でありますが、全国の地方入国在留管理官署の収容施設において、退去強制令書の発付を受けて収容中の者が千百四十七人いるんですが、その内訳でございます。

藤野委員 事前に伺っていたのとちょっと数字のまとめ方が違っていたんですが、結構だと思います。

 要は、例えば二年以上の方が二百五十一人いらっしゃるということなんですね。本来、船待ち、飛行機待ちであるはずの収容が二年以上というのが二百五十人を超えているわけですね。これはもう入管法が予定している送還のための収容という事態から大きく外れている、制度本来の趣旨が全くゆがめられているというふうに言わざるを得ないと思うんです。

 問題は、法務省がこの事態を更に長期収容する方向、悪化させる方向で進めようとしているということであります。

 配付資料の二を見ていただきますと、先ほど大臣が挙げられたような、いわゆる我が国で罪を犯し刑事罰を科された者や退去強制処分歴又は仮放免取消し歴を有する者を仮放免することは、我が国の安全、安心を確保する観点から認めるべきではなく、一刻も早い送還を期すべきと。送還を期すのはいいですけれども、仮放免を認めないというわけですね。要は、社会にとって危険だからというのが前面に出てきているわけであります。

 しかし、やはり入管法が認める収容というのはあくまで送還のための短期収容であって、何か再犯予防のための収容とかあるいは治安目的のための収容なんというのは入管法は全く予定しておりません。ですから、大臣がおっしゃっているように、法務省がやろうとしているのは、入管法の本来の趣旨を超えて、社会にとって危険だと政府が認定した人物は収容し続けようということなんです。

 大臣、お聞きしますけれども、これは入管法が認める収容じゃないんじゃないですか。入管の仕事じゃないんじゃないですか。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 入管法では、あくまでも入管法の二十四条において退去強制事由が定められておりまして、その中には犯罪を犯した者等がございます。

 その中で、そういう退去強制事由が存する者を確実に送還するために収容するというのが収容であります。この収容も、先ほど委員から御指摘がありましたとおり、できる限り早期に送還すべきということは我々も十分認識しているところでございます。さまざまな事情によっておくれているものはございますが、あくまでも確実に送還するための収容であるというふうに認識しております。

藤野委員 確実に送還とおっしゃっていますけれども、二年以上が二百五十人を超えているわけです。全く確実に送還されていない。そこの原因にメスを入れるべきであって、それを更に長期化しようなんというのはもう逆行以外の何物でもないと思います。

 大臣、確かに前科等があるのは好ましくないと思います。しかし、なぜそうなるのか。例えば、入管の場合は、仮放免されても、刑務所のような一時保護施設というのはないわけです。放り出されちゃうわけですね。しかも、仮放免の場合は就労も禁止されております。数年前までは法務省も、多分、大臣が副大臣をやられていたころは就労を認めていたんですけれども、厳格化によって認められなくなった。要するに、日々の糧が得られないわけですね。あるいは、生活保護とか国民健康保険も対象外になっています。仮放免の場合、入管から出された場合は刑務所以上に過酷な状態で放り出されるのが実態なわけでありまして、そうした中で、今大臣がおっしゃったような事案も起きているわけであります。

 最近は、仮放免しても二週間で再収容されるケースも相次いでいるんですね。あの人間扱いされない場所、私も牛久にも行きましたけれども、あの場所に戻るのであればというので、恐怖感からやむを得ず失踪するという例もあると。先日、東京新聞に柚之原牧師という長崎・大村の牧師さんが出ておりましたけれども、その方も、二週間で戻される恐怖が逃亡を誘発しているという指摘をされておりました。

 繰り返しますけれども、入管が認めているというのは送還のための収容であって、再犯防止とか治安目的のための長期収容などというのは断じて認めていないんですね。ですから、これをやろうというのは本当に許されないと思います。

 もっと言えば、日弁連は何と言っているかなんですけれども、配付資料の三を見ていただきたいんですが、これは日弁連の意見書であります。二〇一四年九月、出入国管理における身体拘束制度の改善のための意見書、ちょっと長いので一部だけ御紹介しておりますが、こう書いてあるんですね。「入管法上の収容を将来の「違法活動阻止のための身柄拘束」と解し、その点で、予防拘禁と共通する性質を認めようとするものともいえる。」予防拘禁という指摘であります。

 刑事局にお聞きしたいんですが、現行法上、予防拘禁というのは認められているんでしょうか。

小山政府参考人 現行刑法の制度としてお答えいたします。

 お尋ねの予防拘禁が犯罪に対する刑罰としてではなく、対象者が、将来、犯罪行為に及ぶ危険性があることに着目した予防的な措置として強制的に施設に収容する制度を意味するものだといたしますと、刑法上の制度としては存在はいたしません。

藤野委員 だから、存在しないというか認められないわけですね。

 配付資料の四には、この点についての過去の国会審議も紹介しております。

 これは我が党の正森成二議員に対する答弁なんですが、「御指摘は治安維持法下の予防拘禁のことであろうかと思いまするが、今日の憲法秩序下では、原則としてとても考え得ない問題のように思います。」こういう刑事局長の答弁があります。

 やはり、なぜ予防拘禁という拘禁という言葉なのかというのを調べますと、現実に犯罪を犯していないわけですね。あるいは、再犯を行っていない。だから、犯罪を行っていないから、禁錮とか懲役とか、そういう刑に関する言葉が使えない。だから拘禁という言葉が選ばれたそうであります。収容も今同じ役割を果たしている。

 今の入管収容がどれほど異常かということをちょっと御紹介するために、治安維持法で予防拘禁というのが実際ありましたので、それをちょっと御紹介したいと思うんです。

 かつての治安維持法による予防拘禁というのは要件がいろいろありまして、再犯のおそれが顕著な場合認められるというのが治安維持法三十九条の要件であります。顕著。そして、裁判所の決定が必要なんですね。裁判所が決定する。そして、上限が二年というふうに決まっております。この要件が全て当時の治安維持法という法律に書かれていたんですね。一応、法律に書かれていた。

 ところが、入管収容はどうかといいますと、前科等があるだけで、再犯のおそれが顕著かどうかは全く関係ないんです。先ほど高木委員が紹介された三十年二月二十八日の指示によりますと、再犯のおそれが払拭できないと書いてあるんですよ。

 治安維持法でさえと言ったらあれですけれども、治安維持法でさえ再犯のおそれが顕著じゃないと予防拘禁できないんですが、今の運用は、再犯のおそれが払拭できないなら収容を継続していいよというふうになってしまっている。しかも、裁判所の決定は不要であります。入管だけの判断。しかも、二年とかいう上限もありません。先ほど言ったように、二年以上が二百五十一人に達している。全て法務省内部の裁量で行われているという実態です。

 ですから、大臣、今の収容制度というのは、あの悪名高い治安維持法よりも緩い要件で収容が継続させられてしまっている、これが実態なんじゃないでしょうか、大臣。

河井国務大臣 ただいま藤野委員との御質疑を伺いながら、収容の長期化は、これは断じて防がなければならないという点では認識は一致しているなというふうに感じさせていただきました。

 出入国管理及び難民認定法上、退去強制令書が発付された者については速やかに送還しなければならない。そうなっているにもかかわらず、現実にはこういうふうな、先ほどから御指摘になっている事柄が現実に発生をしてきているということですので、まずは、現行の法制上、運用の改善などを通じて、とり得るべき、例えば身元保証人の審査の厳格化、それから保証金の金額のあり方、これは法律の規定がありますので、それを意識していろいろと考えていく。

 そういった直近の事柄に加えて、長期化を防止するための方策をまさに議論、検討していただく会議体が、おととい、二十一日に第一回会合が開催をされた、法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会のもとの収容・送還に関する専門部会ということでありますので、この専門部会の中でしっかりとした議論を起こしていただく、それを期待をいたしておるということであります。

藤野委員 いや、どうもお答えにならないんですが、私は長期収容は確かに問題にしております、大臣おっしゃったように。

 ただ、その原因が、今、本来収容すべきじゃない人まで収容してしまっている。それによって、もともと送還という出口に行けない人ですから、帰れないいろいろな事情を今から言いますけれども、そういう方まで全件収容主義という今の運用のもとでとりあえず収容している。そのもとで、どうしたって帰れないから二年以上という方がふえていってしまっているわけであります。

 大臣が十月一日に発表されたこの送還忌避者の実態について、先ほども答弁ありましたが、これを見ながら私が思い出したのは、さきの国会で、失踪された技能実習生について法務省がまとめた資料があるんです。この資料には、失踪した技能実習生の八割が、あたかも、より高い賃金を求めて、お金のために失踪したんだ、こういう法務省のまとめの資料があったんです。これは大問題になりましたよ、当時。聴取票も我々は実際に見て、実態は逆だ、使用者側に問題があったんだということも明らかになりましたけれども、そういうのを私は思い出したんですね。非常に一面的に危険だ危険だと描いて、これはもう仮放免しないんだという、これは実際の収容者の姿とも私は違うと思うんです。

 強制送還の見込みがなぜ立たないか。例えば、送還先の政府が受入れを拒否しているとか、あるいは本人が難民申請をしている、あるいは配偶者や子供がいて、もう日本に生活の本拠ができてしまっている、こういう人たちを力ずくで帰すというのは今の制度でもできません。難民条約に反しますし、それに基づく法律にも反するわけです。

 こういう人たちは、別途、例えば難民として受け入れるのかどうかを本気で検討するとか、あるいは別の在留資格で受け入れるかどうかを検討するとか、収容とは別の対応が求められるわけです。それが入管の仕事だと思うんです。

 例えば、近年、在留特別許可が大幅に減っているんですね。これは大臣が許可できるんですけれども、これがだあっと減ってきて、従来ならこの在留特別許可で日本への在留が認められていた人も認められなくなってしまって、収容されているわけです。あるいは、一時保護施設、先ほど言いましたけれども、刑事施設ならあるようなものが入管の場合はないわけですね。それを理由に収容継続という例まで出てきてしまっている。そして、根本的には難民認定率の低さ、これがあると思います。

 いずれにしろ、いろいろやることは、入管としてやるべきことはほかにあって、それを本気で今度の専門部会で検討すべきであって、収容を前提にして仮放免を厳格化するとか、そういうのは絶対にやってはいけない方向だというふうに思います。

 私はちょっと提案したいんですけれども、今度専門部会ができたわけですから、大臣は先ほどの答弁で自由闊達に検討してほしいというふうにもおっしゃいました。

 ですから、例えばですけれども、配付資料の六と七は日弁連の提案なんです。法整備をやるのであれば、こういうことをやるべきじゃないかということで、例えば日弁連は、「収容を退去強制の確保に必要な最小限の場合に行うこととし、収容の必要のない場合や相当でない場合には収容をしてはならないことを明文化すること。」これは法律的にやるべきだという提案です。配付資料の七は、これは東京弁護士会でありまして、非常にシンプルなんですが、「収容の必要性を明記すること」、法律にですね、こういう提案であります。私はこれは大事だと思うんですね。

 大臣にお聞きしたいんですが、今度の専門部会でこういう収容の必要性や相当性の要件化、これも検討するように指示していただきたいんですが、いかがでしょうか。

河井国務大臣 まず、設置いたしました収監、送還に関する専門部会の委員の先生方ですけれども、弁護士の先生を複数、委員としてお願いをいたしております。また、長年にわたって難民を救援する活動を特定非営利活動法人、NPOを通じて真摯にお取り組みの専門家の先生にもお入りをいただいておりますので、さまざまな角度から自由闊達な議論がなされることを期待をいたしております。

 今、藤野委員が御指摘をされました点、これが検討の対象となるか否かというのは、まさに今後この専門部会の中で御議論をいただけるものだと考えております。

藤野委員 これは、やはり両弁護士会が要求していますし、世界的にも当然の要件なんですね、法律上は。ですから、これは日本でもぜひ実現していただきたい。

 もう一つ提案したいのは、第三者の関与なんですね。今の入管法を見ますと、第三十九条の二項ではこう書いてあるんです。「収容令書は、入国警備官の請求により、その所属官署の主任審査官が発付する」。つまり、警察でいえば、警察署の警察官が、裁判所じゃなくて、同じ警察署の主任の警察官に逮捕状を請求して、それを主任が許可するということと同じ状況なんですね。これは身体の拘束という重大な人権侵害にかかわる手続としては極めて異常であります。海外でも、ドイツ、イギリス、スウェーデンでは、収容の要否、期間、仮放免等について裁判所が関与する。裁判所がいいですよと言って初めてできるわけですね。仮放免についても裁判所が判断する。

 日本でも実は重要な実例がありまして、少年法の手続であります。少年法は家庭裁判所が関与するわけですね。これも少年の身柄を拘束しますから。

 法務省にお聞きしますが、少年法の手続は、初めは実は行政府の中で、入管みたいに行政府の中でその審査手続をやろうとしていたんですけれども、裁判所が関与するようにしたというようになっております。国会でもその理由を答弁しております。どのような理由でしょうか。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 現行少年法に関することでございますね。

 現行少年法は、少年事件処理の中心に家庭裁判所を据えまして、家庭裁判所が刑罰か保護処分かの選択をすることとしております。

 このように、家庭裁判所に保護処分を行うこととさせた理由については、主として、保護処分を受ける少年の人権保障を考慮するのと同時に、刑事処分か保護処分かの第一次的選択を警察官でなく家庭裁判所に行わせることによって、少年に対しては保護処分を優先させるという考え方を強く打ち出したものと言えるなどとされております。

藤野委員 ちょっとずらされているんですけれども、その理由なんです。

 人権保障とおっしゃいましたが、配付資料の八がその国会答弁なんですね。一九四八年六月十九日。なぜ家庭裁判所を関与させたのかというところは、その黄色い部分であります。「新憲法のもとにおいては、その人権尊重の精神と、裁判所の特殊なる地位に鑑み、自由を拘束するような強制的処分は、原則として裁判所でなくてはこれを行うことができないものと解すべきでありまして、行政官庁たる少年審判所が、矯正院送致その他の強制的処分を行うことは、憲法の精神に違反するものと言わなければなりません。」こういう理由で国会で説明をされております。

 ですから、この趣旨、いわゆる強制的処分、身体を拘束するという強制的処分は、行政内部でなくて、裁判所が関与しろというのは日本の制度でも既にあるわけですね。国会でもそういう答弁をされております。

 大臣、お聞きしたいんですが、自由を拘束するような強制的処分という点では、少年院による処遇も入管の処遇も同じだと思うんですね。ですから、今、専門部会での検討において、退去強制手続についても裁判所などの関与、これはぜひ検討していただきたいんですが、いかがでしょう。

河井国務大臣 もう委員よく御存じと思いますけれども、退去強制手続に含まれる収容につきましては、まず、執行を担当する入国警備官、それと、別の官職である入国審査官による審査、その後、特別審理官による判定、そして法務大臣に対する不服申立ての機会を経て慎重に判断することになっておりまして、十分適正性が確保されているというふうに考えております。

 それで、もし被収容者が退去強制手続に含まれる収容や仮放免に関する処分に不服があれば、行政訴訟を提起することができる。この場合、裁判所による判断がなされるわけでありますので、収容に際しまして、あえて裁判所等の第三者の関与を経る必要はないというふうに考えております。

藤野委員 今大臣がおっしゃった三段階の審査ですか、入国審査官、特別審理官、そして法務大臣、これは全部法務省内の手続なんですよ。私が言っているのは、法務省内で全部の手続が終わっていることがおかしいじゃないですかという質問なんです。

 だから、判断が法務省内で行われることによって、本来収容すべきでない、本来送還できようにもできない人まで収容されてしまって、だから送還できないから、二年以上も収容されている方が二百五十人を超えてしまっている。だから、この手続そのものに問題があるのであって、だからこそ第三者を関与させるべきだということなんですね。

 ですから、そこは本当に、今、根幹とおっしゃっている大臣の、確かに私も根幹が問われていると思います。やはり、その根幹にメスを入れるかどうかが今問われているのであって、今の状態を更に悪化させるような改悪は絶対にやるべきではないというふうに思います。

 きょうは長崎県の大村収容所で起こった死亡事件についても取り上げる予定でしたけれども、時間もありませんので次回に譲りますが、本当に、入管制度の趣旨からも外れた今の運用というのは到底許されないということを最後に強く主張して、質問を終わります。

松島委員長 次に、串田誠一さん。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 きょうは、河井法務大臣に初めて質疑をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 最後でありますので、いろいろな方の、各議員の質疑、あるいは大臣の答弁も大変参考にさせていただけるわけでございますが、山尾委員からは同性婚の質問がございました。きょうは最初に家族法の質問をさせていただきたいと思いますので、参考にさせていただきたいと思うんですが、これに対して大臣が、婚姻の目的に関しては、子を産み育てるというのが典型的な例であると。抽象的ではあるけれども典型的な例ということでございまして、これは、言わんというのは、例外がないわけではないけれども抽象的にこう言っているんだということでございますが、ただ、昨今、不妊治療だとか、子供ができない夫婦もおりますし、熟年結婚というのもあります。婚姻が必ずしも子を産み育てるということではないということからするならば、山尾委員の言うように、ひどく具体的であるというのも確かだろうなというふうに思いますので、検討はしていくべきではないだろうか。

 特に、大臣は所信の中で、新たな時代に対応する民事法制、これを積極的に、果敢に攻めていくんだということでございますので、今の時代がどういうふうに対応しているのかということも耳を傾けていただきたいと思うんですが、きょうは、その後の、離婚後の共同親権についてちょっとまず最初にお聞きをしたいと思います。

 日本は、御存じのように、北朝鮮と日本と、あとわずかな国以外はほとんどが共同親権、G7も日本だけが単独親権でありますし、G20でもトルコと日本だけが単独親権で、あとは全部共同親権であるというようなことで、諸外国から大変批判も受けておりますし、ことしの二月には国連の勧告があった、昨年の三月にはEU二十六カ国から抗議文が出されているというような状況の中で、離婚後に単独親権にしているというのは、まさにひどく強制的であり、ひどく人権を軽視しているのではないかと私は考えているわけでございます。

 越智委員からの質問に対して、大臣は、子は国の宝だ、将来を担うんだというふうにおっしゃられていますし、浜地委員からは、国交、安全保障をずっとやっていらっしゃって、法の支配が大事であるということも共通項であると思っておりますが、子供の養育に関しては、子どもの権利条約、一九九四年に日本も批准しているわけです。これに対して、国連が、違反しているよ、法改正しなさいと言っているわけでございまして、所信の中には、声なき声を拾うというのも、大臣、書かれているわけです。まさにゼロ歳から一歳なんていうのは、子供はもう声も出せない中で、唯一、大人が子供を守るために子どもの権利条約を批准し、そして、国連もまたこれに非難をしているという中では、やはり日本もまた新たな民事法制というものを考えていかなければいけないのではないかというふうに思っています。

 山下前法務大臣が二十四カ国の調査を開始していただいて、バトンタッチをされ、河井法務大臣になられてからは、就任直後に研究会の立ち上げというものも鮮明にされております。

 今、国連に非難され、そして、子どもの権利条約、まさに子供は国の宝だとおっしゃられる大臣としては、この単独親権制度、憂慮しているという認識でよろしいんでしょうか。

河井国務大臣 丁寧にお答えをさせていただきたいと思います。

 今御指摘いただきました児童の権利委員会、ことしの二月に、父母による児童の共同養育を実現するために勧告がありました。今御指摘いただいたとおり、離婚後の親子関係について定めた法令を改正するとともに、子供と離れて暮らしている親と子供との定期的な人的関係及び直接の接触を維持することを確保すべきであると。いわゆる面会交流といったことを含まれているというふうに思いますけれども、これにつきましては、今、串田委員が御指摘をされたとおりでありまして、真摯に受けとめたいというふうに考えております。

 そもそも、父母が離婚した後であっても、お子さんにとっては、父母のいずれもが親であることに変わりはありません。よって、一般論といたしましては、父母の離婚後も父母の双方が適切な形でお子さんの養育にかかわることは、子供の利益の観点から非常に重要であると考えております。

 現行法のもとでも、家庭裁判所は、特段の問題がない限り、面会交流を認める運用をしているものだと承知をいたしております。

 さまざまな御意見、現場感覚ということを繰り返し御答弁申し上げておりますので、しっかりと耳を傾けていきたいと考えております。

 その上で、今もおっしゃっていただいた研究会、この研究会での検討に私は強く期待をいたしております。父母が離婚した後、子供の養育のあり方に関しましては、普通養子制度や財産分与制度などを含めた見直しの検討のため、商事法務研究会におきまして研究会が立ち上がるということを会見などでも申し上げておりますけれども、私としては、年内、できれば十一月中にこの研究会を立ち上げていただきたいというふうに期待をいたしております。

 法務省として、この研究会に担当者を派遣して、積極的に議論に参加をしてまいりたい、そのように今考えております。

串田委員 ありがとうございます。

 一方で、これまでの政府の単独親権を採用している理由としては、DVがある、あるいは高葛藤で、なかなか共同による協議というものが調わないということを挙げられているんですね。

 私なども、共同親権を促進すべきだというふうな立場で質疑をさせていただきますと、DVの被害者の方々から大変な批判を受けているわけでございます。

 ただ、私は、これは、DVの対策は十分に行わなければならないということは当初から申し上げているわけでございまして、共同でこれを行うということは、そういうことができ得るような状況になっていなければならないわけでございますので、この対策は十分政府はとっていただきたいというのが私の立場でございます。

 ですから、子どもの権利条約を守らない政府に対するいろいろな国民の声というものがあるわけで、それに対して政府が、DV対策ができていないからと言うのはおかしいと思うんですよ。

 なぜならば、子どもの権利条約を批准したのは一九九四年ですから、もう二十七年もたっているわけで、その間ずっと子供の権利というものを守られていない、諸外国からも批判されています。まずは、DV対策ができていないんだったら、それをしっかりとやっていかなければならないのを、それを放置していたのではないだろうか。それを、政府が言いわけをするというのは、これは非常におかしな話なのではないかと思うんですが、大臣、この点についてはいかがでしょうか。

河井国務大臣 共同親権の議論につきましては、国民のさまざまな皆様から、関係者の皆様から意見が出されているということは、十分承知をいたしております。

 よって、近々のうちに発足する予定の研究会におきまして自由闊達な議論が起きるということを強く期待をいたしております。

串田委員 それと、先ほど大臣が、現場での柔軟な対応、法律の改正というのがちょっと先になりますから、柔軟な現場での対応というのも大事だと思います。そういう意味で、日本の裁判官が、この子どもの権利条約を批准しているんだということの意識というのがどれほどあるのかというのが、私、大変疑問になっているんです。

 家庭裁判所で今ビデオが流されていて、面会交流をうまく行っている子供というのは長い目で見れば幸せになっていくんだというようなことをビデオでさんざん流しているんですね。ところが、この問題について争いが生じると、今の裁判官は、一月に一回、二時間ぐらいの面会を認めるケースというのが非常に多いわけですよ。一月に一回なんです。

 そして、その面会を認めてもらう側というのが別居親ということなんですが、御存じのように、今、国際的にも子供の連れ去りというのが非常に問題になっています。ここも、連れ去りというのを言うと、DV被害者の方から、いや、しようがないんだ、緊急避難なんだとおっしゃられる。そういうケースは間違いなくあるんだという前提の中で、そうでないケースも多分にありながら、その中で、継続性の原則というのがちまたに言われているんですけれども、法律用語ではありません、要するに、現在の状況を維持するということを裁判官はとりがちなんです。ですから、子供を連れ去った側が有利になってしまうというのが現状にはこれは間違いなくあるんだと。これを否定してもしようがないんです、現実にあるんですから。

 そういうことを、裁判官は、それはよくないよと。これは、民法七百六十六条には協議して定めると書いてあるわけですから、離婚をするときに。これは、単独親権ですから、本来は協議して一人に定める必要もないんですけれども、今の現行民法は、協議して一人を定めるしかないんです。協議して定めるときには、やはりフェアな状況でなければならないと思っているんですけれども、子を連れ去られてしまうと、協議をする過程の中で、子供に面会をしたいがために、いろいろな条件を全てなげうって、もう月に一回でもいいから、二回に一回にするよ、三カ月に一回にするよと言われるんだったら、月一回でもいいからのむよというようなフェアではない状況が続いているというのも、大臣、認識していただきたいと思うんです。

 子の連れ去りに関して、これは、アメリカの、ハーグ条約との関係で実施法を前回の国会でつくりましたけれども、これは、条約だけの問題じゃなくて、国内においても、やはり監護者は平等であるべきであって、片方が連れ去ったことを有利にしてしまってはいけないというふうに私は考えているんですが、大臣、お考えをお伺いしたいと思います。

河井国務大臣 ハーグ条約につきましては、条約を審議したときの、私は衆議院の外務委員長を当時務めておりましたので、諸外国からのさまざまな要請など、十分認識をしておりました。

 日本に居住する外国人の中には、婚姻して子供をもうけた後に、配偶者が子供を連れて出ていったために子供と離れて暮らすこととなっている方もいると。また、その逆もそうであります。

 今いろいろと串田委員から具体的なお話、そして状況について情報提供していただきました。それぞれの御家庭、離婚した後の御家庭、それぞれの事情がそれぞれあると思います。ですから、一律に考えるのではなくて、まずは、先ほど申し上げました近々のうちに発足する予定の研究会、ここにおきまして、さまざまな立場の方々が集まって自由闊達に議論をしていっていただきたい。

 共同親権の必要性について強く認識している、そういう御意見があることは、私は、社会の中にあることは十分承知をいたしております。そういったことを含めて、また一方で、共同親権にしたということで、それでさまざまな問題が解決するわけでもない、そういった議論もあります。そういったさまざまな多様な意見というものを、ぜひこの研究会の場で自由闊達に議論をしていただきたい。その行方をしっかり注視をしていきたいということであります。

串田委員 所信の中に、多文化共生社会というようなことがありまして、今、子供と会えない外国人の質問もしようかと思っていたんですが、大臣がそれについても今お答えいただきましたので、この質問は省かせていただきたいと思います。

 きょうは、所信に対する質問ということで、いろいろな取組について概括的にちょっと質問させていただきたいと思っているんですが、次に、児童虐待についてお聞きをしたいと思います。

 各委員からも、これについては質問がありました。そして、この児童虐待に関してはおおむね各党ともに異論はないと思うんです。私も全く異論はありません。児童虐待を防止するということで、広くそれについてアクションを起こしていくというのは大賛成なんです。

 ただ一方で、こういうようなことが起きますと副作用があるということも認識していただきたいんですね、大臣に対しても、しっかり知っていただきたいと思うんですが、現在におきましても、児童虐待ということの通報があって、子供が児童相談所に一時保護されていくわけです。これは児童福祉法の三十三条に規定がありまして、これは児童相談所長の判断で一時保護できるんですね。

 そうすると、二カ月間子供を保護することになるわけですけれども、保護といいましても、混合処遇といいまして、非行児童とも一緒に、何十人も同じ場所に保護されていくわけですね。外にも出られない。友達にも連絡ができない。場合には親にも会えない。そういう中で、保護といいながらも拘束状態になるわけです。

 そして、義務教育を受けている子供に対して、じゃ、学習ができるかというと、何十人もいる中で、いろいろな学年の子供たちが入りまじっている中で、学習なんか、なかなかこれはできないわけですよ。

 何が言いたいかといいますと、児童虐待を、保護するためということで間口を広げていきますと、本来保護すべきでないような子供も中にはやはり含まれていくということは十分あり得るわけです。

 これは通報ですから、今は一番通報が多くなってきているというのは、児童相談所長にもお伺いしましたが、警察からの通報が非常に多いんですね。その中には、夫婦げんかというのがどんどんふえてきているんです。子供の前で夫婦げんかをするというのは面前DVということで通報があって、通報があると児童相談所に行って、そして一時保護されていくんです。今、だから、夫婦が言い争いを子供の前ですると、外から通報があると子供が連れ去られるというのが非常にふえてきているんですね。

 ただ、この言い争いも、本当にけんかなのか、本当に子供にとって面前DVになっているのかどうかというのも、子供から見れば普通に思っている場合もあるでしょうし、そんなふうにして二カ月も拘禁されてしまうというようなことは、子供の人生にとっても大きな影響になると思うんです。ですから、強化するのは大事だけれども、その後の検証というものが必要ではないだろうか。

 国連の二月の勧告の中にも、司法の介入のないままの児相の保護に関しては問題であるという指摘が国連からもあるんですね。アメリカも、第三者機関というのがすぐに入るようになっている。ところが、日本は、児童福祉法三十三条は戦後の戦災孤児のためにつくられた法律であって、親を捜し出すこともできなければ、それが正しいかどうかなんということを検証するような余裕もない中での時代につくられた法律が、改正されないまま今まで来ているという経過がありまして、それを強化するということになると、これを検証するということもあわせ持っていただかないといけないんじゃないか。

 先ほど高木委員が、たたかうという文言をこだわられましたけれども、私も別な意味で、これは、児童虐待とたたかうというと、児童虐待の、保護をどんどんどんどん強化するだけになってしまうというふうになりそうなイメージがあると思うんですが、それに苦しんでいる子供や親御さんというのがたくさんいるんですよ。

 誤報による通知によって一時保護されて、二カ月ですからね。二カ月間、親にも会えない、友達にも会えないというと、もう神隠しみたいな感じなんですよ、その子供にとってみると。戻れと言っても、それはなかなか戻りにくいというのもあると思うので、この検証関係に関してはしっかりやっていただくということを大臣としても約束していただけないでしょうか。

河井国務大臣 法務省において、児童虐待とたたかうプロジェクトチームを設置をしますということを公にいたしまして以降、本当に、思っていた以上の多くの方々から貴重な御意見を承っております。

 私のフェイスブックやブログにも多くの書き込みをいただきました。あるいは、さまざまな機会、その中には、同僚の国会議員、いろいろな方々がこの問題について真剣に考え、そして悩み、そしてまた何とか今のあのひどい悲惨な状態を打ち破っていきたいということで皆さんが強い関心を持っていただいているということ、改めて強く実感をいたしております。

 その中で、今、児童相談所による一時保護について指摘をしていただきました。

 これは、一義的には厚生労働省においてガイドラインが作成されておりまして、子供の権利擁護の観点から一時保護の目的を達成したときは速やかに一時保護を解除するとされています。

 その中で、また、今委員が御指摘されたように、児童相談所に実際に入った、一時保護されたお子さんたちの状態についても、今言われたようなことを含めて、貴重ないろいろな御意見、そして情報というものを伺っております。

 繰り返しになりますけれども、このたたかうプロジェクトチームにおきまして、これまでの法務省の取組あるいは所管にとらわれず、自由で柔軟な発想から幅広い検討を行うこととしておりますので、今、串田委員が御指摘をされた点も含めて、現行制度が十分であるか否かも含めて、法務省としてどのようなことができるか、しっかりと検討してまいりたいと考えます。

串田委員 ありがとうございます。

 その中で、SBS問題というのがありまして、きょうは刑事局長もいらっしゃるのでちょっとお聞きしたいんですが、これはシェークンベビーシンドローム、SBSということで、検索するといっぱい出てくるんですが、揺さぶられっ子症候群といいまして、硬膜下血腫、網膜出血、そして脳浮腫という三兆候が認められた場合というのは、揺さぶられてできたんだと。子供を、新生児を揺さぶると、脳のすき間が大人よりもあるものですから、このような三兆候が発生しやすい。

 この三兆候が発生しやすいということを裏返すと、この兆候が認められる限りは、揺さぶられて虐待があったんだというふうに、双方向に認定される傾向が今あって、起訴されているんですね。子供が非常に異常な状況になって、救急車を呼びます。病院に連れていってもらって、心配ですと。そうやっているうちに、数日たつと警察が逮捕に来るんですよ。

 これは、つかまり立ちをしている子供が転倒してもこのような兆候があるという医学的な文献もあるようなんですが、今の日本は一九七〇年代の揺さぶられっ子症候群のSBSをそのまま採用し続けているのではないかという指摘があって、スウェーデンなどはこれを今否定するようになってきているんですが、このような、SBSであるからすぐに虐待であるということをそのままに行っていると、冤罪がどんどん生み出されるのではないかという大変心配があるんです。

 この三兆候があるからといって虐待にすぐになるんだというようなことの認定自体は、十分これは検証しなきゃいけないと思うんですが、この点については、どなたかお答えいただきたいと思います。

小山政府参考人 お答えを申し上げます。

 揺さぶられ症候群でございますか、SBS、いろいろあるかとは思いますが、個別の事案における犯罪の成否にかかわるところでございまして、こちらは捜査機関の収集した証拠により判断されるべき事柄でございまして、御答弁いたしかねることをお許しいただきたいと思います。

串田委員 この委員会は法律家も多いと思うんですが、ある症状が発生した場合、犯罪を認定していくというのは余り聞いたことがない、私も初めてなんですけれども、SBSはそれが行われているというのがありまして、非常に問題があると思っておりますので、これはまた別個、質疑をさせていただきたいと思います。

 次に、性犯罪に関しましても大臣が所信に書かれておりますので、これについても質問させていただきたいと思うんです。

 名古屋地裁の岡崎支部の判決もあって、世の中でも非常に問題になっておりますけれども、昭和二十四年五月十日に、強制性交罪というのが、名前が変わりまして、前は強姦罪という名前でしたが、あります。そこには、暴行、脅迫をもってと書いてあるんですが、この判例で、抗拒をすることが著しく困難な程度で足りるという判例が出されまして、この判例が今でもずっと生き続けていて、十九歳の女性が父親に強制的に行われたときにも暴行、脅迫は認められているんです。同意もしていない。しかし、抗拒を行うのに著しく困難な程度にまで達していないから無罪だと言っているんですよ。

 法律の中に暴行、脅迫をもってとしか書いていないのであれば、暴行、脅迫が行われて性交等が行われれば、これは許されることではないにもかかわらず、何で裁判所がこのハードルを上げて、著しく困難な程度でない限り無罪だという判断をして、それが昭和二十四年から生き続けているのかというのは、大変私は不思議だと思うんですが、もし、大臣、この点についての御意見、政府参考人でも結構です。

小山政府参考人 まず、個別の事案についての御答弁は差し控えさせていただきますが、一般論でございますが、もう御承知の、今御指摘のございましたその暴行又は脅迫の要件、これは平成二十九年の改正前の強姦罪におけるものの判例でございますけれども、抗拒を著しく困難ならしめる程度のもので足りるとされました。平成二十九年、刑法改正後の強制性交罪につきましても、議員御指摘あったかとは思いますけれども、同様の解釈がとられております。

 なお、この判断のあり方でございますが、昭和三十三年に最高裁判所の判決がございまして、単にその暴行、脅迫のみを取り上げて観察すればそのような程度には達しないと認められるものであっても、相手方の年齢、行為の時間、場所の四囲の環境、その他具体的事情と相伴って、相手方の抗拒を著しく困難ならしめるものであれば足りると解されているところでございまして、実務上はこのような解釈が定着されているのではないかと考えております。

串田委員 特に、あの岡崎支部の事案というのは、娘、親子なんですね。抗拒不能、著しく困難ということは、娘は、殴る、蹴るをしてでも、とにかく親を殴ってでも蹴ってでも抵抗して、それで逃れられるかどうか、そういうことまで要求を、娘にさせるわけですよ。そういう意味では、全く、その昭和二十四年の五月の判決を全ての事案に対してただ単に当てはめていく、それの検証も十分になされていない。何でそこまで要求するのかは条文に何も書いていないんですね。こういったようなことを、所信の中でも、性犯罪についての検討をするということでありますので、ぜひこれについても検討していただきたいと思います。

 最後に、再犯防止についてちょっとお聞きをしたいと思うんですが、先日、島根にありますあさひ社会復帰促進センターという刑務所のところに行ってまいりまして、そこには、日本で唯一、犬を受刑者が介護して、これは盲導犬なんですけれども、日本盲導犬協会とタッグを組んでやっているんですね。そこの取組というのは大変画期的でありますし、いろいろなことも取り組んでいく中で、PFIというのも一つの理由なのかもしれないんですけれども、非常に、犬を育てていくという意味で、これから盲導犬だけではなくて保護犬にも広げていけばいいんじゃないかと思いますし、受刑者にとっても、再犯率が極めて下がるんですよ。今度、個別の質疑のときに数字を出したいと思うんですが、再犯率も非常に下がるんです。

 そういう意味では、犬も助かり、動物も助かり、再犯率も下がるということで、このような取組をぜひ刑務所の改革に当たって大臣にも検討をしていただきたいと思うんですけれども、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

河井国務大臣 今回の串田委員の質問の御通告に当たりまして、島根あさひ社会復帰促進センターにおける盲導犬パピー育成プログラムというもので、犬の写真を拝見しました。大変かわいらしい犬でありまして、今おっしゃいましたけれども、犬と触れ合い、犬とコミュニケーションをとっていくということは、大変私は意義深いことだ、しかも、それが盲導犬パピーとしてこれから巣立っていくということは、いろいろな意味で意義が深いというふうに考えております。

 同じPFIの刑務所である播磨の社会復帰促進センターにおきましても、犬を使ったアニマルセラピー講座というものを実施しておりまして、せっかく先生の御指摘でありますので、串田委員は、弁護士、大学院教授、推理小説家、漫画原作者と多彩に活動してこられたというふうに伺っておりますので、そういったさまざまな御経験を踏まえてこういった御質問をされているものだと思いますけれども、情緒的安定を被収容者にもたらすだけでなくて、責任感、コミュニケーション能力も向上させると。

 ぜひ、しっかりと、この新しいプログラムの成果、これが実際どのようになっていくかを見きわめた上で、ほかの庁あるいは施設におきましても発展していくことができるかどうか、検討してまいりたいと考えております。

串田委員 時間になりました。ありがとうございました。

松島委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十二分散会


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