衆議院

メインへスキップ



第9号 令和元年11月19日(火曜日)

会議録本文へ
令和元年十一月十九日(火曜日)

    午前九時十五分開議

 出席委員

   委員長 松島みどり君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 越智 隆雄君

   理事 鬼木  誠君 理事 田所 嘉徳君

   理事 葉梨 康弘君 理事 稲富 修二君

   理事 山尾志桜里君 理事 浜地 雅一君

      畦元 将吾君    安藤 高夫君

      井野 俊郎君    奥野 信亮君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 茂樹君    出畑  実君

      中曽根康隆君    藤井比早之君

      古川  康君    宮崎 政久君

      山下 貴司君    吉川  赳君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      落合 貴之君    高木錬太郎君

      日吉 雄太君    松田  功君

      松平 浩一君    山川百合子君

      藤野 保史君    串田 誠一君

    …………………………………

   法務大臣         森 まさこ君

   法務副大臣        義家 弘介君

   法務大臣政務官      宮崎 政久君

   財務大臣政務官      井上 貴博君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         田中 勝也君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小出 邦夫君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 山名 規雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森  和彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中原 裕彦君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十九日

 辞任         補欠選任

  和田 義明君     安藤 高夫君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤 高夫君     畦元 将吾君

同日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     和田 義明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 会社法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)

 会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第一一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

松島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、会社法の一部を改正する法律案及び会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局組織犯罪対策部長田中勝也さん、法務省民事局長小出邦夫さん、財務省大臣官房審議官山名規雄さん、厚生労働省大臣官房審議官森和彦さん及び経済産業省大臣官房審議官中原裕彦さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松島委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田所嘉徳さん。

田所委員 皆さん、おはようございます。自民党の田所嘉徳でございます。

 発言の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私はいつも、あの霞が関の巨大な官庁街に行きますと、思うことがあります。それは、本当に多くの官僚の皆さんが働いていて、大きな組織があって、これらを維持するそのコストというものは大変なものなんだろうなというふうに思っています。

 さらに、国の予算をハンドリングするわけでありますけれども、そういう中にあっての国の予算というものも、福祉や教育や、さらには昨今の災害多発の中での対応ということで、大きなコストが、負担がかかるわけでありますけれども、これを経済的利益を原則的に生まない官庁街が、見るたびに、やはりどこでその財源が生まれるのかということに私は思いをいたさなければならないというふうにいつも思っているわけであります。

 この原資は、まさに全国津々浦々の人々の労働によって生み出される経済的価値、そして税金、そういったもので賄われるわけであります。したがって、経済が円滑に行われなければ、国家の運営にも大きな支障を来すというものだと思っております。経済の持続的な発展を可能ならしめるということが大変重要だというふうに思っております。

 とりわけ、会社組織の果たす役割は大変大きくて、その健全な発展を推進する必要があると思います。しかしながら、大手自動車会社や電力会社などで企業統治が破綻しているんではないかと思われるような事件が相次いでおります。会計不祥事やコンプライアンス違反ということが起きないようにしなければなりません。

 会社が持続性を保ちながらその社会的役割を果たせるようにすることは大変重要であると思いますけれども、これについてどのように考えているのか、あわせて、どのような制度にし、規制をしようとしているのか、森法務大臣にお伺いいたします。

森国務大臣 田所委員にお答えいたします。

 委員御指摘のとおり、会社が成長し、我が国の経済の発展に継続的に寄与することは重要であると認識しております。

 これを実現するためには、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を達成するための基盤となるコーポレートガバナンスの向上が必要であります。コーポレートガバナンスの向上のためには、業務を執行する役員から独立した立場にある者が役員を監督する体制を構築することや、役員に適切なインセンティブを付与するとともに、客観的にその業績を評価すること、これらに関する情報が早期に株主に対して提供されることなどが重要であると考えております。

 改正法案は、そのような観点からの制度改正を内容とするものでありまして、コーポレートガバナンスの向上が図られる基盤を整備するものとして意義があると考えております。

 その上で、会社が健全に機能するためには、改正法案の施行後の制度と、これに関連する各種の制度、すなわち、いわゆる内部統制システムや、監査役、会計監査人による業務監査、会計監査の体制、株主代表訴訟制度、情報開示などの制度等が一体となって機能することが重要であると考えております。

田所委員 会社といえば、私は渋沢栄一だろうというふうに思っております。二〇二四年から一万円札の肖像画になるというんですけれども、キャッシュレス化が進むので申しわけないなという感じもしなくはないんですが、いずれにしましても、百四十年以上も前に会社制度の有用性をフランスから学んで、約五百社もの会社をつくって、帝国ホテルとか王子製紙、東洋紡績など、その六割は今日に至っても形態を変えて存続しているということであって、資本主義の父などと言われるようであります。

 会社の持続性を確保することによって行政の継続性が維持され、そして、会社が持続的に成長すれば社会も発展するということだと思いますので、会社は社会の公器と言うこともできるのではないかと思っております。

 そこで、先ほど大臣から答弁がありました。今般の法改正における内容を述べていただければよかったのでありますが、非常にすぐれた見識も示されまして、内部統制システム、そして、監査役、会計監査人、さらには、株主代表訴訟、社外取締役、こういったものが関連して、合わせわざで力を発揮する、私も全くそのとおりだというふうに思っております。

 そういうことをしっかりと考えておられて立派だなと思うんですけれども、であるならば、申し上げたいことがありまして、私は、今回の法改正は法務省らしからぬ、ちょっと対症療法的な、ちまちましたものじゃないかなという印象を非常に持っております。

 法務省は非常に豊かな見識があって、例えば、技能実習法の改正、適正化等についても、私は関与させていただきましたけれども、これは、二国間取決めから始まって、外国人技能実習機構をつくったり、実習計画の認定、そして、実習実施者の届出義務、さまざまな報告、さらには、監理団体の許可とかサンクションとか、そういうものも定めておりますし、さらには、特定技能に至っては、出入国在留管理庁にしたわけであります。そして、登録支援機関や外国人の相談窓口などもあわせて外部も固めていった。そして、試験を行って、その送り出し国との連携もする。非常に遠大な、すばらしい構想をしてつくってきたわけですが、会社法のこの改正は、どうもそんなにダイナミックではない。

 大臣、就任したばかりでありますので、先ほど言われたように、総合的な、ダイナミックな、その会社が伸びるようなあり方というものをぜひ進めてもらいたいというふうに思っております。

 きょうは、ニュースで、見てみましたら、ゴーン逮捕から一年目というふうなことをけさのニュースでやっておりました。九月中間決算では、半期の昨対で営業利益が八五%減少している、本決算では半減するだろうというようなことが言われております。そういう中で、指名委員会設置会社としたり、あるいは、社外取締役を半数以上導入するというようなこと、そして、さまざま改革も進めているわけでありますけれども、外国人経営者が救世主になるはずであったんですけれども、搾取の対象になってしまったというようなことは、非常に問題があるというふうに思っております。

 そういう中で、情報公開等についても私は考えるところがありまして、公益通報者保護法もあります。消費者庁でありますけれども、対象となる法律に会社法も含まれております。

 この前、憲法審査会では外国の事例が報告されましたが、スウェーデンの憲法は、これは、法律で定めて列挙したもの以外は、公務員が知り得た情報をマスコミに流すことを情報提供権として憲法上認めているというようなことがあります。

 透明性とかいろいろなことを含めて、しっかりとしたリードをしてもらいたいと思います。

 それで、非常に各論でありますが、昭和五十六年の商法改正によって導入された株主提案権についてであります。

 これは、株主がみずからの意思を株主総会に直接訴えることができるもので、この権利を保障することは大変重要だというふうに思っております。特に、少数株主にとって大きな意味があります。そのような株主提案権に対して制限を加えるということは、十分な理由と慎重な検討が必要であるというふうに思っております。

 今般の改正法において株主提案権を制限することとしておりますけれども、どのような点が問題なのか、立法事実について法務大臣にお伺いしたいと思います。

森国務大臣 お答えいたします。

 近年、一人の株主により膨大な数の議案が提案されたり、株式会社を困惑させる目的で議案が提案されたりするなど、株主提案権が濫用的に行使される事例が見受けられます。

 株主提案権が濫用的に行使されますと、株主総会における審議の時間等が濫用的な提案に割かれることで、株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり、株式会社における検討や招集の通知の印刷等に要するコストが増加したりするなどの弊害が生ずるという問題がございます。

 また、近年の裁判例においては、株主提案権の行使が、株式会社を困惑させる目的のためにされるなど、株主としての正当な目的を有するものでない場合等には、権利濫用として許されないとの判断が示されております。

 しかし、どのような場合に株主提案権の行使が権利濫用に該当すると認められるかは必ずしも明確ではなく、実務上、株主提案権が行使された場合に、取締役等において株主提案権の行使が権利濫用に該当するか否かを的確に判断することは難しいという現状がございます。

 そこで、改正法案では、株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を設けることとしておるところでございます。

田所委員 たくさんの株主提案が濫用的に出されているというようなことでありますが、本当にそうなのだろうかというところもございます。平成二十九年からの一年間に出されたものは、回答は千七百二十七社あったんですけれども、五十六社でありますし、十年間の平均で年一・七程度でありますので、これも必ずしもそうも言えないだろうというふうに思っておりますけれども、やはり、濫用的に行われることはコストに響く、問題があるということであります。

 続けて、株主提案権の濫用的な行使を防止するためにどのような対策を考えているのか、お伺いしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株主が同一の株主総会において提案することができる議案の数を制限いたしまして、また、株主による不当な目的等による議案の提案を制限する規定を新たに設けることとしております。

 具体的には、取締役会設置会社の株主が議案要領通知請求権を行使する場合に、同一の株主総会において提案することができる議案の数の上限を十とし、十を超える部分については、会社は提案を拒絶することができることとしております。

 また、株主が、専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、若しくは困惑させ、又は自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で株主提案権を行使する場合や、株主提案権の行使によって、株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合には、会社は株主提案権の行使を拒絶することができることとしております。

田所委員 荒唐無稽な提案、そういうことで事務手続あるいは株主総会の機能が阻害されるということであって、定款変更とつければ株主総会決議事項になるとするのはやはりおかしいだろうというわけであります。

 どのような提案があったのか、しかし必ずしも明らかではありません。トイレを和式にして鍛錬して株価を上げろとか、そんなものとか変なものがありますけれども、これは、余りよくわかっていないのに、なかなか、会社のことですからよく情報がつかめない、よく調べたけれどもわからない、そういう中で、濫用が著しいというのも、なかなか具体例をつかめない中ではわかりにくい論理だなというふうに思っております。

 濫用の事例について、これは権利の濫用という一般法理で採用しない、ブロックすることができるんだろうと思いますけれども、今回、濫用事例の明文化というものをして対応しようとしておりますが、どんな意味を持つと考えているのか、お伺いをしたいと思います。

小出政府参考人 現行法のもとでは、どのような場合に株主提案権の行使が権利濫用に該当すると認められるかは必ずしも明確ではないことから、実務上、株主提案権の行使がされた場合に、取締役等において株主提案権の行使が権利濫用に該当するか否かを的確に判断することは難しく、株主提案権の行使が権利濫用に該当すると考えた場合でも、これを制限することにちゅうちょする場合があるという指摘がされております。

 それで、今回、このような指摘を踏まえまして、改正法案におきましては、株主提案権の行使が権利の濫用に該当するであろう典型的な場合を明文化いたしまして、このような場合に株式会社が議案の提案の制限を必要以上にちゅうちょすることがないようにすることとしたものでございます。

田所委員 あわせて、株主が提案できる議案の数を十までとしている、この根拠を示してもらいたいと思います。

小出政府参考人 株主が提案することができる議案の数の上限を十といたしましたのは、近年の株主提案権の行使の状況を見ましても、各提案株主について多くとも十程度にとどまっており、これを超える議案を提案する必要があるとは通常考えにくいことなどを考慮したものでございます。

 また、法制審議会の会社法制部会におきましては、外国の法制等を参考にして、株主が提案することができる議案の数を更に少ない数、例えば一ないし三とすべきであるという意見もございました。

 しかし、実務上合理的と考えられる株主提案であっても議案の数がこれを超えることは十分にあり得るものと考えられますし、また、改正法案におきましては、取締役等の選任や解任、また定款の変更に関する議案については、関連する二以上の議案であっても、これを一の議案とみなすことができる場合を法定しておりますが、株主が提案する議案の中でも最も大きな割合を占めております定款の変更に関する議案につきましては、判断基準の明確性を重視いたしまして、一の議案とみなすことができる場合を限定的なものにしております。

 改正法案では、これらの点を考慮いたしまして、株主提案権が不当に制限されることがないよう、株主が提案することができる議案の数の上限を十としたものでございます。

田所委員 株主提案権のこの流れを本質的に見ると、私は、直接経営陣に申し入れて、それがかなわなかった場合の次善の策、そういったことで使われる場合がある。少数株主の権利の保護とともに、広く問題点とか改善点を発見、表現する、そういう機能もあると私は思っております。故意に害悪を与えようとするものでなければ、最後の株主の手段として、過度に制限してはならないんだろうと思っております。取締役が株主総会をしのげれば後はいいんだというような、そういうものであってはならないので、やはり株主のしっかりとした発言の権利というものを守っていく必要があるというふうに思っています。

 それでは、取締役に関する規律の見直しについて。

 会社経営のかじ取りを行う取締役、これが法とか定款を遵守して適切な仕事をしなければなりません。その適正性を確保するために、上場企業等で社外取締役の設置を義務づけるというようにしているわけでありますけれども、なぜ今これを定めるのか、法務大臣にお伺いしたいと思います。

森国務大臣 社外取締役には、少数株主を含む全ての株主に共通する株主の共同の利益を代弁する立場にある者として、業務執行者から独立した客観的な立場から会社経営の監督を行い、また、経営者あるいは支配株主と少数株主との利益相反の監督を行うという役割を果たすことが期待されております。

 そして、機関投資家等からは、コーポレートガバナンスを実効的に機能させ、我が国の資本市場が信頼される環境を整備する観点から、上場会社等については、最低限の基本的な要件として、画一的に社外取締役を置くことを義務づけるべきであるとの指摘がされているところでございます。

 また、東京証券取引所の全上場会社における社外取締役の選任比率は、令和元年七月調査時点においては九八・四%になっております。このように、社外取締役の選任が進んだことなどに照らすと、社外取締役の有用性は一般的に広く認知されていると言うことができると考えております。

 そこで、改正法案においては、我が国の資本市場が信頼される環境を整備し、上場会社等においては、社外取締役による監督が保障されているというメッセージを内外に発信するため、会社法において上場会社等に社外取締役を置くことを義務づけることとしたところでございます。

田所委員 社外取締役の選任比率が東証で九八%、一部では九九・九%ということですから、非常に理解が深まっているんだ、皆さん、理解をされております。

 しかし、黙っていても設置されているわけでありまして、これを法制、しかも義務化することにどれだけの意味があるんだという感じがしなくはありません。社外取締役を設置しなかった〇・一%の企業に問題があったというならばそれは必要なのかもしれませんが、どうも後追いというような感じは否めないんではないかと思っております。社外取締役がいても問題が起きているということをよく考えなければならない。

 さらに、我が国の資本市場の信頼性の向上と言いますけれども、やはりいろいろな不祥事やコンプライアンス違反が起きている。さらには、もう既にソフトローにおいてはそれが明記されているんですけれども、今ごろハードローの整備をしたというと、市場の評価が下がっちゃうんじゃないか、日本の評価が、私はそう思ったりもするわけであります。

 そういう中で、しっかりと社外取締役がその役割を果たせるようにしなければならないというふうに思っております。例えば会計学等についての専門性を有するとか、あるいは、人数を一定程度多くして、しっかりとした管理体制がしけるとか。私は、本質は、やはり内部統制システムを管理していくというのが社外取締役の一つの役割だと思っております。任期や再任の制限、関係性など、実効性が確保できるようなものにしなければならないと考えておりますけれども、その点についてどう考えるのか、お聞きしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、社外取締役による監督の実効性を確保するためには、法制度として形式を整えるだけでなく、その制度を実質的に機能させることが重要であると考えております。

 上場会社等に社外取締役を置くことを義務づける改正法案は、コーポレートガバナンスを実質的に向上させる上で必要となる基盤を整備するものとして、意義があると考えているところでございます。

 その上で、社外取締役による監督の実効性を高めるためには、期待される役割を適切に遂行することができる知見と経験を兼ね備えた者を社外取締役に選任することや、社外取締役の機能が発揮しやすい環境を整備することなどの運用面の取組が重要でございます。そのような知見等を備えた社外取締役候補者の確保については、関係団体において、人材プールの充実などの取組が進められております。

 法務省としても、関係省庁と連携して、必要な協力をしていきたいと考えております。

田所委員 実際に問題を起こさないような抑止力の効果を持った、緊張感ある社外取締役との関係というものが非常に重要だというふうに考えております。取締役会でなあなあになってしまったのでは、これはその効果が出せないわけであります。

 そのことについては、既にもうソフトローの方で、コーポレートガバナンス・コードの中でも示されております、独立社外取締役というふうな言い方もしておりますけれども、報酬とか、会社との関係の中でそれ以外のものを受け取ったり、これまでに勤務関係があったりして、余り強い関係があり過ぎないということ、そういったことを含めて、お手盛りの社外取締役で、先ほど言いました、株主総会をしのげばいいんだというようなことで取締役が業務を執行するということがないようにしなければならないと思います。

 そこで、報酬についてお聞きしたいと思います。

 かつて日本は、日本的経営と言われまして、終身雇用制あるいは家族的経営で、役員の報酬も社員に比べてそんなに高くなかったわけであります。しかし、今日、会社は、取締役にとって、個人的な利益を得るためのものという風潮も強くなっているというふうに思っております。日産自動車のように、会社が取締役の搾取の対象になってしまったというものもあります。これから国際化が進み、外国人の取締役もふえるだろうと思いますし、考えるべきことがあるだろうというふうに思います。

 みずからの利益を追求するのは人間の本質であって、それがあるから成長し、力を発揮するというものでありますから、これは全て悪いとは言いませんけれども、しかし、それが高じてしまえば、これは、みずからの利益を優先して、株主や会社自体の価値を損ねることになってしまう、そういったことがお手盛りで利益獲得に走る取締役をつくるということになってしまうんだろうと思っております。

 適切に報酬を定める制度を整えることは大変重要である、無限定ではこれは暴走してしまうということだろうと思いますので、今回の法改正において取締役の報酬等に関する規定の見直しというものが打ち出されましたけれども、その具体的な意味について説明をしてもらいたいと思います。

小出政府参考人 現行法上、取締役の報酬等につきましては、当該株式会社が指名委員会等設置会社である場合を除きまして、定款又は株主総会の決議によりその総額を定めれば足り、取締役の個人別の報酬等の内容について定款又は株主総会の決議により具体的に定める必要はないなどと解されておりまして、取締役の報酬等の内容の決定手続等が不透明であると指摘されております。

 他方で、近年、取締役の報酬等には、取締役に対して適切に職務を執行する動機、インセンティブを付与する重要な機能があると考えられております。取締役の報酬等の種類や内容の適切な水準は企業の置かれている経営環境等に応じて異なるものではございますが、投資家等からは、このような取締役の報酬等の機能に照らすと、取締役の報酬等の内容を適切に定めるための仕組みを整備することは企業統治の強化の観点から重要であると指摘されております。

 また、法律実務家等からは、現行法の規律に対して、業績等に連動した報酬等の付与に係る規律に明確でない部分があり、このことが先ほど述べた取締役の報酬等の機能を活用する上で阻害要因となっているという指摘がございます。

 これらの指摘を踏まえまして、改正法案におきましては、取締役の報酬等の内容の決定手続等に関する透明性を向上させ、また、インセンティブ付与の機能を有する業績連動報酬等を適正かつ簡易に取締役に付与することができるようにするため、取締役の報酬等に関する規律の見直しを行っているところでございます。

田所委員 報酬決定についてしっかりとした規律をつくっていくということでありますけれども、報酬決定の透明性の向上というものが非常に重要だろうというふうに思っております。それは情報開示の充実によってもたらされるものでもありますし、その点をしっかりと図ってもらって、客観性があるような、そういう報酬決定によって適切な業務をしてもらえるようにするべきだろうというふうに思っています。

 あわせて、次のことも聞いていきたいと思っておりますけれども、やはり、人が力を発揮するその源泉というものは、その努力が報酬等の形で評価されるということが非常に意味もあるというふうに思っております。適切なインセンティブを付与することによって持てる力を十分に発揮できるようにする、大変重要だと思っております。

 しかし一方で、過剰な利益供与になってしまってはこれは適切ではありませんので、この点をどうバランスをとって適正な報酬によって取締役が力が発揮できるようにしようとしているのか、お聞きしたいと思います。

小出政府参考人 改正法案におきましては、株式会社が業績等に連動した報酬等を適正かつ簡易に取締役に付与することができるようにするために、上場会社が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合には、募集株式と引きかえにする金銭の払込み等を要しないこととするなどの見直しを行っております。

 他方で、改正法案におきましては、これとあわせて、取締役の報酬等の決定手続の透明性を向上させるための措置も講じております。例えば、上場会社等におきましては、定款又は株主総会の決議により取締役の個人別の報酬等の内容が定められない場合には、取締役会においてその決定方針を定めなければならないこととし、また、取締役の報酬等として当該株式会社の株式を付与しようとする場合には、定款又は株主総会の決議によって当該株式の数の上限等を定めなければならないこととしております。

 このように、改正法案におきましては、取締役に適切なインセンティブが付与されるようにしつつ、取締役に過剰な報酬等が付与され、株主や会社に不利益が生じることを抑止するための方策も講じているところでございます。

田所委員 取締役にしっかりとしたインセンティブも与えて仕事をしてもらうということが重要だろうというふうに思っております。

 やはり、経営判断というものはなかなか、一足す一が二になるような単純にいくものではないんだろうというふうに思っております。そういう中にあって、果断な決断をして、経営判断をして、厳しい競争の中でしっかりと勝ち抜いて利益を得るようにするということは大変重要なんだろうというふうに思っておりますが、報酬によるインセンティブでしっかりと働いてもらうとともに、やはりそういった判断やダイナミックな経営というものができるような支えというものも必要だろうと思っております。訴訟とか損害賠償の不安におびえていたのでは仕事もできないわけでありますので。

 そういう中にあって、会社補償というようなものもここで打ち出されているわけでありますけれども、これをどのように意義あるものとしているのか、ちょっと説明をしてもらいたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のございました会社補償とは、役員等が、その職務の執行に関し、法令の規定に違反したとして裁判においてその責任を追及されるなどした場合に、これに対処するために支出する費用や、その請求が認められて第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合の賠償金の全部又は一部を株式会社が当該役員等に対して補償することをいいます。

 会社補償には、役員等として優秀な人材を確保するとともに、役員等が、その職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うことを過度に恐れることによってその職務の執行が萎縮することがないように、役員等に対して適切なインセンティブを付与するという意義が認められるところでございます。

松島委員長 質疑時間が終了していますから、短くお願いします。

小出政府参考人 はい。

 また、役員等が、その職務の執行に関し、訴訟等で責任の追及を受けた場合には、当該役員等が適切な防御活動をすることができるように当該株式会社においてこれに要する費用を負担するということが株式会社の損害の拡大の抑止にも資するものとも考えられます。

 ただ、他方で、会社補償が認められる範囲によっては、役員等の職務の執行の適正性が損なわれたりするおそれがあるという問題等もございます。

 そこで、改正法案におきましては、会社補償するために株式会社が役員等との間で締結する契約である補償契約につきまして、その内容の決定をする手続や補償契約に基づき補償することができる費用等の範囲に関する規律を定めることとしております。

田所委員 ありがとうございました。

 国家を支える社会の公器であります会社がしっかりと持続的に成長していく、大変重要なことであります。しかも、これは一つの政策だけで健全化が図られるわけではありませんので、先ほどさまざま森大臣から示されました、そういったものをしっかりと総合的に整備をして、またすばらしい会社法というものをつくってもらいたいというふうに思っております。

 以上です。ありがとうございました。

松島委員長 午前十時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時十分開議

松島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。浜地雅一さん。

浜地委員 公明党の浜地雅一です。

 私も、会社法の改正案、順次質問をしたいと思っております。結構細かく聞きたいと思いますので、大事なところは大臣にお聞きしまして、あと細かなところは政府参考人の皆様方に答弁をいただきたいと思っております。

 まず、私は、株主総会資料の電子提供措置についてお聞きをしたいと思っています。

 この改正法ではなく、二十六年以前のもので既に、会社法二百九十九条の第三項では、株主総会の招集通知、これも株主の個別の承諾があれば電磁的方法により通知を発することができる、書面によらなくてもよいという規定もございますし、そういった、株主の承諾があれば株主総会資料についてもいわゆる書面ではなく電磁的方法による通知を発することができるという規定が既にあるわけでございますけれども、その中にありまして、今回、定款で定めることによって、株主総会資料等につきまして、いわゆるウエブサイトに掲示をすれば書面による通知を省略できるという規定を設けられました。

 この必要性について、法務大臣に御答弁をお願いしたいと思います。

森国務大臣 浜地委員にお答えいたします。

 近年、株主総会をめぐっては、株主総会等における投資家と株式会社との建設的な対話を促進させ、投資家からの信頼を確保しながら企業価値の向上を図ることが重要であると考えられておるところ、政府においても、投資家と株式会社との建設的な対話のために、情報開示の質の向上を図ることが重要な政策課題とされているところでございます。

 この点に関し、現行法上、公開会社については、株主総会の資料の発出の期限が株主総会の日の二週間前までとされているところ、投資家等からは、この二週間という期限が短く、株主が議決権を行使するに当たって株主総会資料の内容を検討する期間が十分に確保されていないとの指摘がされております。

 そこで、インターネットを利用する方法によって株主総会資料を提供することができることとすれば、株主に対し従来よりも早期に充実した内容の株主総会資料を提供することができるようになり、株主総会の活性化につながるものと考えられます。

 また、電子提供措置を新設することにより、株式会社は、印刷等の作業が不要となり、時間とコストを削減することが可能となります。

 改正法案では、これらの点を考慮して、株主総会資料の電子提供制度を創設することとしたものであります。

浜地委員 ありがとうございました。

 二つの趣旨を示していただきました。建設的な対話のためにしっかり三週間の時間をとって情報を提供すること、もう一つは、やはり会社の方の印刷のコストや時間も削減できるということでございました。

 そうなりますと、今回は、株主総会資料についてはこの電子提供措置がとられることになるんですが、この印刷のコストや時間というものを考えますと、招集通知自体もいわゆる電子提供にすればよりメリットがあるというふうに私は考えましたが、この検討過程において、株主総会資料のみならず招集通知自体も電子提供をするというような検討はされなかったのか、これは事務方にお聞きをしたいと思います。

小出政府参考人 電子提供措置を講ずる場合の、その電子提供措置に係るウエブサイトのアドレスにつきましては、株主に確実に知らせる必要があるため、株主総会の招集通知の記載事項とした上で、書面により通知されることを予定しております。

 こういった事情もございまして、委員御指摘ございましたけれども、株主総会の招集の通知については、電磁的な方法によることについて株主の個別の承諾を得ている場合を除いて、書面でしなければならないという規律を維持しております。

 もっとも、御指摘のように、株主総会の招集の通知についても、株主の個別の承諾を得なくても電磁的に通知することができる規律を設けるべきであるとの指摘もされているところでございます。

 この点につきましては、この改正法が施行された後の株主総会資料の電子提供制度及び書面交付請求の利用状況や、我が国の社会全体におけるインターネットの利用の状況等を踏まえて、必要な検討をしてまいりたいと考えております。

浜地委員 この夏、葉梨筆頭が委員長時代にエストニアに行きましたが、エストニアは、国民一人それぞれ、いわゆるEメールのアドレスをお持ちでございますので逆にそういったことが可能かと思いますが、日本においてはなかなか、そういった制度ではございませんが、先ほど、若干検討の余地にも上がったということでございますので、まずは株主総会資料の電子的提供の経過を見ながら、招集通知自体もいずれは省略できる、そういったシステムが構築できればよろしいのかなと個人的には思っております。

 ただ、一方で、社債や株式等の振替に関する法律、振替法というのがございますが、この振替法に基づき株式を発行する会社は、いわゆるこの電子提供措置は義務づけとなります。ほかの会社は定款で定めることによってこの電子提供措置をとることができるわけでございますが、振替法の適用会社についてはこれは義務づけとなっております。

 これは私がさっき言ったのとは少しまた違う観点になるんですが、逆に、義務づけとなると、今度は会社にとって、システムができていないところにつきますと過度な負担にならないかという心配もございますが、なぜ振替法の適用のある会社については義務づけとされたのか、御答弁いただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株式会社が株主総会資料の電子提供制度を利用することによって、印刷や郵送のために生ずる時間や費用が削減され、株主に対して従来よりも早期に充実した内容の株主総会資料を提供することが可能になると考えております。

 上場会社など振替株式を発行する会社につきましては、類型的に、その株式の売買が頻繁に行われて、不特定多数の株主が存在することが想定され、所有と経営の分離の程度も大きいために、株主総会において議決権を行使するに当たって、株主総会資料の内容を検討する期間を確保することが重要であります。そのため、振替株式を発行する会社については、電子提供制度の利用を義務づけることによって、投資家が議決権の行使に際して株主総会資料の内容を検討する期間を確保する必要性が高いと考えられます。

 また、上場会社など振替株式を発行する会社につきましては、通常、株主の数が多いことから、総会資料の電子提供制度を利用することによる時間や費用の削減等の効果は大きいと見込まれますので、振替株式を発行する会社に対して電子提供制度の利用を義務づけることが過度な負担となることもないと考えております。

 このような理由で、上場会社など振替株式を発行する会社については、株主総会資料の電子提供制度、これを義務づけるということにしたものでございます。

浜地委員 そうですね。これは施行の期間も三年六月を超えない範囲でございますので、準備期間もあろうかと思っておりますので、これはよろしいかというふうに思っております。確認でございました。

 実際には、しかし、ウエブサイト等をなかなか扱えない株主にとっては、やはり書面でこれまでの株主総会資料が届かないわけでございますので、そこで設けられたのが、書面交付請求というものが新しいこの法律案でも設けられております。

 これについては、例えば、定款で株主の書面交付請求を排除することができてしまいますと、その趣旨は没却されるかと思いますが、これは強行法規として、定款によっても書面交付請求は排除できるのかできないのか、確認をしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきましては、現在も高齢者を中心としてインターネットを利用することが困難である株主も一定数存在することが認められ、そのような株主の利益に配慮する必要があると考えられます。

 そのため、改正法案におきましては、書面交付請求権は定款の定めによっても排除することができないこととしております。

浜地委員 定款で排除できないということでございますので、これも確認でございました。

 次に、この電子提供措置が何らかの事由によって中断をしたとき、何か災害が起こってウエブサイトの掲載がダウンするとか、そういったこともあろうかと思っておりますので、この会社法、新しい改正法の三百二十五条の六には、電子提供措置の中断の場合における効力の規定が書いてございます。

 一つ、さまざまな要件があるんですけれども、まず、会社が、電子提供措置が中断されたことについて、善意かつ重大な過失でないこと又は株式会社に正当な事由があることが要件となりまして、さらに、これはいずれにも該当する場合でございますので、中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の十分の一を超えないこと、また、この中断が、特に、株主総会までの期間においても十分の一を超えないことというふうに、二重の規定をかけてございます。

 このいずれにも該当するときは、もし仮に電子提供措置が中断になったとしても、株主総会の参考資料の書面にかえるウエブサイトへの掲示というものの効力は失われないということでございますけれども、期間が十分の一を超えないことというふうに定められましたけれども、これはなぜ十分の一という期間によって条文を定められたのか、御答弁をいただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 電子提供措置期間のうち、株主総会までの期間につきましては、株主総会の招集の手続として、株主総会参考資料等の内容である情報について電子提供措置をとることを求めております。

 また、株主総会の日以降の期間につきましては、株主総会の決議の取消しの訴えに係る訴訟において証拠等として使用される可能性があることから、当該訴えの出訴期間を経過する日までの間、継続して電子提供措置をとることを求めております。

 こういった趣旨に鑑みますと、電子提供措置に長期間の中断が生じた場合までその電子提供措置の効力を認めることは相当でないと考えられますので、先ほど委員が御指摘のとおり、電子提供措置の中断が生じた時間の合計がその期間の十分の一を超えないことに加えまして、電子提供措置の開始日から株主総会の日までの期間中に中断が生じた場合には、その期間中に中断が生じた時間がその期間の十分の一を超えないという二段階に分けて規定しておるわけでございます。

 所定の期間の十分の一を超えないという要件でございますが、これは会社法の電子公告の中断に関する規定に倣ったものでございます。

 電子提供措置をとる株式会社は、中断が生じた場合には他のウエブサイトに電子提供措置事項に係る情報を掲載するといった対応策をとることが可能であると思われますので、こういった要件を設けることとしても、電子提供措置をとる株式会社に過大な負担をかけるものではないというふうに考えているところでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 電子公告の十分の一という規定に倣ったということでございますので、一つ根拠があろうかと思っています。

 そこで、先ほども御答弁いただきましたけれども、この電子提供措置の中断の期間が、いわゆる株主総会の日の三週間前から株主総会が終わって三カ月間、このうちの合計で十分の一を超えないこと、かつ、いわゆる株主総会までの期間、三週間だと思うんですが、ウエブサイトで電子提供措置がされてから株主総会が開かれるまでの期間について十分の一を超えないことでございます。

 そうなると、例えば、この三号の、電子提供措置の開始日から、主に株主総会の三週間前から株主総会の日まで、十分の一を仮に超えた場合の招集手続の瑕疵との関係でどう整理すればいいのか、いわゆる株主総会の取消し事由となり得るのはどういった場合なのか、御答弁いただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株主総会の招集の手続が法令に違反したときは、株主等は、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができます。

 電子提供措置期間のうち、株主総会の日よりも前の期間につきましては、先ほども申し上げましたが、株主総会の招集の手続の一環として、株主総会参考書類等の内容である情報について電子提供措置をとることを求めております。

 したがいまして、電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に電子提供措置の中断が生じた場合であって、改正法案の三百二十五条の六の規定、十分の一ですね、これによっても救済されない場合には、この中断は当該株主総会の決議の取消し事由となると解されます。

 これに対しまして、株主総会の日よりも後の期間につきましては、株主総会の決議の取消し訴訟において証拠等として使用される可能性があることから、この訴えの出訴期間を経過する日までの間、継続して電子提供措置をとることを求めているものでございまして、株主総会の招集手続の一環としてこれを要求しているわけではございません。

 したがいまして、株主総会の日よりも後に電子公告措置の中断が生じた場合には、株主総会の招集の手続が法令に違反したときには該当しませんので、この中断が株主総会の決議の取消し事由となることはないと解されております。

浜地委員 かなり細かいことを私は聞いていまして、多分、お聞きになっている皆様方も、条文を見ながらやっている私しかわかっていないかもしれませんが、これは大事なことだと思って聞いておりますので、ちょっと委員長も我慢して聞いていただければと。済みません。

 次に、株主提案権について御質問したいと思っています。

 先ほど、私の前の自民党の田所委員の方から、この株主提案権の制限等々についての趣旨については、法務大臣より答弁をいただきました。

 三百四条は、いわゆるこれは議題提案権、株主総会において、その場でこういったものを議題として取り扱ってほしいというものに対する制限でございます。片方、三百五条は、いわゆる株主招集通知に自分が議題としたいことを書いてほしいという議案要領通知請求権ということになって、これは区別されているわけでございますが、三百五条の、ぜひこれを株主総会招集通知に書いてほしいという議案要領通知請求権については、十を超える場合には拒絶できるといったような規定がございます。しかし、前段の、株主総会のその場において議題を提案するものについては、数の制限を今回設けられておりませんが、なぜ三百四条の議題提案権の数の制限は設けられていないのか、御答弁をいただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 済みません、その前に、先ほど、株主総会の日よりも後に電子提供措置の中断が生じた場合にはのところで、私、電子公告措置の中断が生じたというふうに言ってしまいましたが、それは電子提供措置の違いで、申しわけございませんでした。

 それから、今の三百四条の関係でございますが、三百四条は議案提案権でございまして、その前提でお答えいたします。

 御指摘のとおり、株主総会の議場における議案提案権につきましては、提案することができる議案の数を制限することとはしていないわけでございます。これは、取締役会設置会社におきましては、株主総会は、招集の通知に記載された目的事項、これが議題でございますが、これ以外の事項については決議をすることができないことや、議案の修正動議の範囲も目的事項から一般的に予見することができる範囲を超えることができないと解されていること、また、株主総会の議場における議案提案権の行使の態様等によっては、その議案や修正動議を取り上げなければならないものではないと解されていることを踏まえますと、株主総会の議場において提案することができる議案の数を制限する必要性は必ずしも大きくないと考えられたためでございます。

浜地委員 ありがとうございます。わかりました。

 次に、これは、株主総会のその場における議案提案権及び招集通知に書いてほしいという議案要領通知請求権、それぞれに、実は、不当目的についての排除というものが共通のものとして認められております。例えば、三百四条の第二号、「株主が、専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、若しくは困惑させ、又は自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で、当該議案の提出をする場合」、若しくは、三百五条でありますと、議案要領通知をした場合には会社の方は拒否をできるということになろうかというふうに思っております。

 そうなりますと、三百四条二号は、「専ら人の名誉を侵害し、」云々と書いてございます。これは判例法理を明確化したものというふうに私は聞いておりますが、判例では、いろいろなところで、主として、当該株主の私怨を晴らしとか、又は特定の個人や会社を困惑させるなどというように、主としてそういった目的があった場合にはこれまでは判例の中で制限できるとなっておりましたが、今回の法文ですと「専ら」というふうに強調されておりますけれども、これは判例法理との関係では私はかなり強化されたのではないかと思っておりますが、なぜ、判例では主としてという言葉を使っておったんですけれども、今回、条文案では「専ら」というふうになったのか、お答えいただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 「専ら」の要件についてでございますけれども、御指摘のとおり、主として経済界からは、その要件をもう少し緩和すべきであるとして、専らにかえて、主としてなどとすべきである、そういった御指摘もございました。

 もっとも、株主提案権の重要性に鑑みれば、拒絶事由の要件を緩めることについては慎重に考えるべきであり、また、第一次的には会社において要件該当性の判断をすることになりますので、要件の内容はできる限り明確なものとする必要があります。その点、主としてという要件ではその内容がやや不明確であって、運用によっては株主提案権の行使が不当に制限されるおそれがございます。

 そこで、改正法案におきましては、株主提案権の重要性や要件の明確性の観点から、「専ら」という厳格かつ限定的な要件を採用したものでございます。

 したがいまして、「専ら」の意義につきましては、例えば、他の正当な目的が併存しているような場合にはこの要件には該当しないということになるものと考えられます。

浜地委員 ありがとうございます。「専ら」という趣旨について、ちょっと確認させていただきました。

 次に、その後段にあります「又は自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的」の場合もこれは排除される場合があるわけでございますが、この「不正な利益」というのが、私にとっては非常にわかりにくいところでございます。

 例えば、ある株主が、この会社と大きな取引をすべきだと。実はその相手方の会社は私が株主であるから、私の持っているまた別の会社の株価が上がるからそういうふうにしてほしいというような提案は、果たしてこれは不正な利益と言えるのかどうか。やはり、自己の経済的利益を求める株主としては不正ではないというふうに思っていますが、そうなると、不正な利益を図る目的というのはどういう場合を具体的に言うのか、御答弁をいただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 ここで言います不正な利益につきましては、株主たる資格とは関係のない純個人的な利益を図る目的で株主提案権を行使する場合を想定しておりまして、具体的には、第三者から株主提案権を行使することの対価として金銭を受領する目的などが考えられるところでございます。

浜地委員 今、不正な利益ということで、純個人的なといったような一つの判断基準も示されたであろうと思っておりますので、せっかくここは判例法理以上に明確化をして厳格化したということであるのであれば、やはりいろいろな疑義が生じないように、しっかりと説明をこれからもしていただきたいというふうに思っています。

 もう一つ、制限できる不当目的としまして、「当該議案の提出により株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合」には会社は拒絶できるということでございますが、「株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、」という、この「著しく」という文言は、中間試案では、「株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるとき。」というふうに当初は検討されていたようでございます。しかし、この「著しく」という文言が「株主総会の適切な運営」の方に前倒しされましたけれども、これはどういった趣旨でそのように、この「著しく」の位置が「株主総会の適切な運営が」に係るようになったのか、御説明をいただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法制審議会の会社法制部会の中間試案におきましては、「株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ、株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるとき。」に株主提案を拒絶することができるとすることが提案されていたところでございます。

 この点につきましては、株主総会の適切な運営が妨げられるか否かの要件の方が、株主の共同の利益が害されるか否かの要件よりも客観的な判断になじむといった意見や、株主総会の適切な運営が妨げられるか否かの要件に限定を加えた方が株式会社による恣意的な解釈の余地は狭くなるといった意見、さらには、株主提案によって株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるとまで言えない場合であっても、株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、その結果として株主の共同の利益が害されるおそれがあるときは株式会社は当該提案を拒絶することができるものとして差し支えないといった意見が述べられまして、これらの点につきましてコンセンサスを得られたことから、改正法案の三百四条第三号においては、先ほど言ったとおり、株主提案により株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合に株主提案を拒絶することができることとしたものでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 では、またすぐ次の質問に行きたいと思います。

 三百五条の議案要領通知請求権の数の制限のところでございますが、これは第四項の「十を超える数に相当することとなる数の議案については、適用しない。」ということで、この「適用しない。」の意味は、株主が十以上議案を通知要求はしてはいけないということではなくて、十以上提案があった場合に会社の方で拒絶できるというふうな意味だというふうに私は説明を受けております。

 それを前提としますと、株主は、仮に十を超える数についても一応通知はすることができるわけでございまして、これを会社が、例えば十以内に、会社の判断でこれを選んでいくことになるわけでございます。そうなりますと、株主が、本来これは非常に重要な議案の通知権だったと思っているのに、会社によってこれを不当に拒絶されたんだというふうな株主もあらわれようかと思います。

 その場合の株主は、実際にどういう救済方法で不服申立て等ができるのか、それについて確認をしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株主は、株式会社の議案要領通知に関する判断に不服がある場合には、この議案の要領を株主総会の招集の通知に記載することを求め、又は、株主総会における決議若しくは株主総会の開催を禁止することを求める仮処分の申立てをすることが考えられます。また、株式会社に対して損害賠償の請求をすることも考えられるところでございます。

浜地委員 そうですね。

 今、仮処分というものがございました。仮処分も非常に急ぐ手続なわけで、この議案要領通知請求権は、株主総会が行われる八週間前に、会社に、こういった議案を扱ってほしいというふうに通知をされます。実際には、今回電子提供措置が行われれば三週間前、紙のままであれば約二週間前に、自分が提案した議案が載っていないということで、初めて恐らく株主はここで気づくわけでございますが、そうなると、仮処分を申し立てて自分の権利救済をしてもらうためには三週間か二週間しかないわけでございます。非常に短い期間だと思いますけれども、実際に株主が救済をされる場合には、更にもっと早い段階で、あなたの議案要領通知は今回拒絶されましたということを伝えるべきだと思いますが、それについて法務省はどのようにお考えでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 自分の提案が拒絶されたことを株主が事前に知る必要があるのではないかという御質問だと受けとめましたが、まず、株主が提案することができる議案の数の制限につきましては、議案の数の取扱いは客観的に判断できるものでございまして、提案株主が提案した議案の数が提案することができる議案の数の上限を超えているとして一部の提案を拒絶する場合であっても、株主に対してその判断を会社の方から事前に通知する義務を負わせることとはしておりません。

 また、不当な目的等による議案の制限につきましても、株式会社は、株主が不当な目的等で株主提案をしているとしてこれを拒絶する場合に、株主に対してその判断を通知する義務を負わせることとはしておりません。

 これは、不当な目的等による議案の制限につきましては、株主提案権の行使が権利の濫用に該当するであろう典型的な場合を明文化したものであり、現行法におきましても、株式会社が、株主提案権の行使が権利の濫用に該当するものとして株主提案を拒絶する場合に、株主に対してその判断を通知する義務は負っていないことなどを踏まえたものでございます。

 ただ、株式会社が、提案株主から問合せがあったような場合に、任意にその判断を通知するなどして、株主提案に仮処分の手続をとるか否かを判断する機会を与えるということは可能であろうと考えております。

浜地委員 あと一分しかございませんので、かなりこれはテーマが大きいので、もう一回、対政府質疑がございますので、そのときにまた大臣にさまざまお聞きをしたいと思っています。かなり細かい条文を聞きましたが、やはり新しい法律でございますので、しっかりコメンタール等に、参考になればという思いで聞いていますので、聞いている皆さんはかなり細かかったかと思いますが、次回も細かくやりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、落合貴之さん。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 本日は、会社法の一部を改正する法律案及び会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について質問をさせていただきます。

 この会社法、いろいろと調べてみますと、会社法ができたこと自体はそんなに古くはないということで、会社法をつくる検討が始まったのが二〇〇二年の二月でございます。前年の二〇〇一年の四月に小泉内閣が始まりまして、ブレーンの竹中平蔵大臣のもとで数々の経済分野の改革が行われてきた。検討が二〇〇二年の年明けから始まって、二〇〇五年二月に答申が出されて、その年にこの法律が成立をしたわけでございます。

 最近は、特に第二次安倍内閣のもとでは、コーポレートガバナンス改革というものが成長戦略の中の柱にも入りまして、金融庁や経済産業省などでも提言が行われてまいりました。そして、ことしに入って閣議決定された成長戦略実行計画においても、グローバルスタンダードに沿って、コーポレートガバナンスのさらなる強化が求められるというふうにされまして、同じ日に閣議決定された成長戦略フォローアップにおきまして、具体的な施策も書かれているわけでございます。

 会社法でコーポレートガバナンスを適正にするために規定をするということ自体は重要であると思います。しかし、どういうルールをつくるか、これは、日本全体の企業、株式会社の行動を縛るわけですので、日本経済全体のお金の流れにも影響を与えるわけでございます。

 私がこれは大丈夫かなというのは、グローバルスタンダードに沿ってということが事あるごとに枕言葉として入っていることです。

 例えば、後で詳しく取り上げますけれども、社外取締役の義務化にしましても、グローバルスタンダードに沿ってとか国際的な信認のためにといっても、法律で義務化しているというのはアメリカだけなわけで、ヨーロッパでは義務化はしていません。いろいろと、グローバルスタンダードに合わせてというふうに言っているんですけれども、グローバルに、国際的に見れば、各国、コーポレートガバナンスのあり方というのは多種多様で、憲法と同じように、その国の歴史とかにのっとって特徴があるわけでございます。

 グローバルスタンダードに沿って変えるのであれば、これは国益にかなうもの、国民のためになるもの、そのためになるものでなければ政府がやる意味がないわけです。きょうは、その観点から質問をさせていただきます。

 まず、前回の委員会の質疑で通告はしていたんですが聞けなかった点なんですが、大臣は、会社、特に株式会社というのは誰のものであるというふうにお考えでしょうか。

森国務大臣 落合委員にお答えいたします。

 一般に、株式会社は、資本の出資者である株主が所有するものであると理解されていると承知しております。

落合委員 これは一般に、教科書的に言えば、株式会社というのは株主のものであるということでございます。

 しかし、大臣、私は本会議の質問でも取り上げさせていただいたんですが、やはり、いろいろな株式会社を取り巻くステークホルダー、このバランスが崩れているから、この今の日本の経済もうまく回っていないのではないかということを申し上げさせていただきました。

 私も、学校を卒業した後に、金融機関に就職をしました。そのときに、会社というのは従業員とお客様と株主のものである、そのバランスを忘れてはいけないということを教わったわけでございます。

 歴史を振り返ってみても、一番有名なのは近江商人、売り手よし、買い手よし、世間よし、三方よしということが言われて、戦前もそういう商売が行われてきて、この日本の社会が成り立ってきた。これは、株式会社は教科書的には株主のものであるといっても、偏った政策が行われることで、この日本が今までうまくバランスがとれて、うまくお金が回ってきたのが、どんどんどんどん崩れていってしまっている。

 これは本会議でも取り上げましたが、株主のものだということを強調し過ぎた結果、この二十年間で日本経済というのは、売上げは上がっていない、従業員給与は上がっていない、設備投資は上がっていない。これは、法人企業統計、財務省が数字を出しています。私の計算が間違っていないかどうか、ほかの第三者のところにも確かめ算をしてもらいまして、やはり二十年間でほぼ上がっていないことは確かでございます。でも、経常利益はなぜか上がっているんですよね。要は、コストカット、経費を削減して、従業員のお給料も余り上げないようにして、設備投資も節約して、利益は上げて、配当金は六・二倍になっている。

 問題だと思うのはそれだけではないんです。法人税の税収もどんどんどんどん取れなくなっている。配当金はふえているのに、国にもお金が入ってこない、国民にもお金が入ってこない。これを解決しなければアベノミクスはうまくいかない。

 この状況であるのに、また今回、会社法改正で、会社は株主のものです、だから株主にどんどんもっと還元していくんです、これは国益にかなっているんですか。しかも、今やるべきことなのか。これは、この国をめちゃくちゃにしちゃうかもしれない大変な法案を今このタイミングで出してきていると私は考えています。これは、変な方向に向かっているのにエンジンを吹かすわけですから、大変危険なものであると思います。

 今回、これを機に、会社法についていろいろな専門家の意見を聞いてきました。それから、専門家の文書も読んでみました。二〇〇〇年代初めに会社法が成立した。アメリカの要求で会社法はできたとはっきり言っている、結構権威があるそういう専門家もいるわけです。

 この方はいろいろアメリカの会計にも詳しくて、一九六〇年、アメリカでは、最高経営責任者、CEOと労働者、平均的な給与の比率というのは二十五倍でした、でも、今は三百五十倍以上になっている、これが米国でも問題になっているということをしっかりと問うています。

 それで、米国でも問題になっているのに、なぜここからまた米国の問題になっている部分をまねして、日本に取り入れましょう、それが日本のためになるんですということを言っている、これは全く私は正しいことだとは思いません。

 二〇一四年に伊藤レポートを経産省のもとで出されました。これはコーポレートガバナンスの分野で大旋風を起こしたと一定の人からは評価されているんですけれども、ここではっきりと打ち出したのは、自己資本利益率、ROEを八%にします、日本の企業はROEが低いのでそれを高めます、成長戦略にはっきりと入れますということをこの伊藤レポートが出しました。

 ROE重視というのは、純利益を資本で割るわけですから、そうすると、先ほど申し上げたように、利益は上がるけれども、利益以外の分野は下がる、配当金は上げやすくなるということを更に進めますということをこの経産省の伊藤レポートは出して、これをもとにコーポレートガバナンス改革が進んでいるわけでございます。

 大臣、この路線に乗って法務省が会社法改正を進めていったら、日本社会、日本経済はおかしくなっちゃうんじゃないですか。大臣、どうでしょうか。

森国務大臣 委員御指摘のとおり、株式会社には、株主以外にも、従業員、顧客、取引先等の多様なステークホルダーが存在すると認識をしております。

 一般に、コーポレートガバナンスとは、会社の業務を執行する役員が、株主その他利害関係人の立場を踏まえた上で、透明、公正かつ迅速果断な意思決定を行うための仕組みを意味しまして、そのような意思決定を実質的に担保することができる仕組みがコーポレートガバナンスのあるべき姿であると思っております。

 このようなコーポレートガバナンスの意義及びあるべき姿に関する考え方は、我が国にも当てはまるものと考えております。

落合委員 答弁が、多分、教科書に書いてあることとほとんど変わらないんですよ。

 ただ、政治家は、今の時代に合わせて、教科書に書いてあることはこうだけれども、この時代の、この国の、この状況では具体的にこういうことをやろうという施策を打っているわけです。

 コーポレートガバナンス改革は必要なんですけれども、今の状況に合わない改革をしていませんか。特に、今、日本経済の流れが余りうまく好転していない、そういう中で、株主の方には資金が行っている。それなのに、悪いところを直さないで、よりそっち側に資金が流れるようにしたら、社会がおかしくなっちゃうんじゃないですかということを伺っているわけです。いかがですか、大臣。

森国務大臣 委員のような御意見を含む多様な御意見があることは承知しておりますが、先ほどのコーポレートガバナンスの意義及びあるべき姿をもとに、諸外国の例も参考にしながら、我が国の現状を踏まえた形が多角的に検討をされてきたものと思っております。

落合委員 例えば、本会議の答弁で大臣は、企業価値が上がればお給料が上がるから、経済がうまくいくんだというようなことを答弁されているわけですね。これは教科書的にはそうなんです、私も勉強したときにそう書いてあったんですけれども、実際に企業価値が上がったことでお給料は上がっていないんですけれども、大臣、どうですか。

森国務大臣 株式会社には、持続的に成長し、中長期的にその企業価値を向上させることが期待されておりまして、一般論として申し上げますれば、企業価値を向上させることなく従業員の待遇のみを向上させることは非常に困難であると考えます。

 ですので、会社が持続的に成長し、中長期的に企業価値を向上させることは、従業員の待遇を向上させるために必要な前提となると考えております。

落合委員 企業価値の向上は重要です。だから、そのための政策は打っていく必要があります。

 ただ、その企業価値の向上した結果、上がった利益の配分の仕方に今問題があるから、内部留保がたまったり、配当性向は上がっているけれども、労働分配率は下がっている、設備投資は上がっていない。

 しかも、インターネットの時代よりIT投資は額が下がっていて、二〇二五年には六割のITシステムが世界で通用しないんです。もうあと五年ちょっとで、日本の企業というのはもう明らかにやっていけなくなるんですよ。

 設備投資が上がるようなコーポレートガバナンス改革、検討していますか。従業員のお給料が上がるような改革、検討していますか。

 最初の答弁ではっきりと、会社は株主のものですと断言した大臣の今の向いている方向、これは私は間違っていると思います。これは本当に大変なことになると思います。

 総理は、トリクルダウン政策はとっていませんとはっきりと言っているんです。ただ、どんな省庁の政策を見ても、トリクルダウン政策、トリクルダウンが起こらなければうまくいかないような政策ばかりやっているんですよ、具体的には。

 やはり、総理がトリクルダウン政策はとらないと言ったんですから、全体がもうかれば一人一人が豊かになるんだというのは、そういう政策をとっていないと総理が言っているんですからね。

 でも、大臣の答弁は、言ってみればトリクルダウン政策ですよ。考え方を根本的に変えなきゃいけないと思います。これはもう一回聞いても同じ答えとなってしまうと思いますので。

 企業価値を上げる手段、それから利益の使い方の代表的なところで自社株買いがあるんですけれども、アメリカでは、一九八〇年代から自社株買いという手段がとられ始めたそうでございます。驚いたことに、九〇年代からアメリカでは、九三年でしたか、新株の発行よりか自社株買いの方が金額が大きくなって、しかも、その差はどんどんどんどん開いているんです。

 新株の発行と自社株買いというのは何が違うんですかというと、新株の発行というのは、株式市場に株を買ってもらって、その株式市場のお金がその会社に行くわけです。自社株買いというのは、その会社の内部留保が株式市場に行くわけです、株式市場から自分の会社の株を買うわけですから。

 アメリカのナスダック市場では、市場から資金調達するのではなくて、会社のお金を市場に放出するためにナスダック市場があるというふうに言われ始めている。これをグローバルスタンダードといってどんどんどんどん日本も取り入れて、従業員の働いた結果である利益をどんどん株主に放出している。だから、アベノミクスはうまくいかないんですよ。逆の政策をやらないといけないじゃないですか。

 自社株買いというのは、マクロで見るとそういうお金の流れになる。ミクロで見ても、例えば、経営者も今は自分の会社の株を持っていますから、自社株買いをすれば株価は上がるわけですから、経営者にとっても、リスクなしで自分の資産が上がる。それから、会社は株主のためにあるんですと言っていることで、株主も、株価が上がれば喜ぶわけです。これは、どんどんどんどん日本人が不幸せになると思います。

 しかも、今、日本の経済の救いは、内部留保が豊富にあるので、うまく回せば、いいところに投資が行けば、それが返ってきて、どんどん経済を好転させることが可能であるにもかかわらず、どんどん株主に還元していく政策をとっていく。特に、自社株買いを放置をする。これは大臣の、本会議で私の質問を見ても、全然危機感がないんですよね、会社法に定める規律の範囲内でやってもらえれば、あとは会社が判断してくれればと。会社が判断したら、自社株買いはどんどんふえますよ。実際に、ことし、めちゃくちゃふえていますので。

 大臣、これは喫緊の課題なんじゃないでしょうか。どうですか。

森国務大臣 剰余金の配当や自己株式の取得など、会社が上げた利益をどのように分配するかについては、基本的には、会社法に定める規律の範囲内であれば、それぞれの会社において判断されるべきものと考えます。そして、一般に、その判断は、事業環境や事業計画等を踏まえて、会社の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に資するように行う必要があるものと考えております。

 そのため、一般論として申し上げれば、会社がその利益を全て株主還元に充てるなど、持続的な成長のための投資等をしなければ中長期的な企業価値の向上は望めず、結果として株主や役員にとっても不利益となるものと考えております。

落合委員 教科書的な、教科書を切り抜いて持ってきたような答弁ですけれども、今言った、会社が中長期的に成長しなくても、株主は別にいいんですよ、だって、短期売買がふえているんですから。今だけ利益が上がって、今だけ株価が上がって、今だけ配当金がふえればいいんです。だから、投資家たちは、会社法を改正してくれ、もっと株主のための会社法にしないと外国から資金が来ませんよ、みんな逃げますよというふうに圧力をかけてくるわけじゃないですか。でも、その圧力に対して、そのまま聞いて、これがグローバルスタンダードで、格好いい改革をやるんですとやっていたら、この国はうまくいきませんよ。

 大臣、さっきから教科書的な答弁なんですけれども、教科書は教科書なんです。実際に今どういうことが行われるかを踏まえた上で、じゃ、我が国の会社法はどういう形にしようかということを考えなければいけないわけです。

 次に行きます。社外取締役について。

 社外取締役を義務化しますと。今、九九・九%の一部上場企業は、社外取締役、いわゆるグローバルスタンダードに合わせよう、そういう形でもう取り入れているわけでございます。

 大臣は、答弁で、義務化した方が資本市場からの信頼性が高まるとしているんですけれども、本当にそうなんでしょうか。

森国務大臣 上場会社等については、株主による経営の監督が期待しがたく、経営が独善に陥り、又は経営陣が保身に走るおそれがあることから、経営陣から独立した立場で経営を監督することにより、このような弊害が生ずることを予防するメカニズムとして社外取締役の設置を義務づける必要があるものと考えております。

 また、上場会社等について社外取締役の設置を法律で義務づけることは、上場会社等については社外取締役による監督が保証されているというメッセージを内外に発信し、資本市場が信頼される環境を整備し、その信頼性を高めるという意義があるものと考えております。

 そのような観点から、本改正案では、社外取締役の設置を上場会社等について義務づけるものとしたものでございます。

落合委員 先進国全部が社外取締役を義務化しているわけではないですし、法律で義務化しているのは少数ですよね。それなのに国際的な信認は上がるんですかね。どうですか。

森国務大臣 例えば、義務づけをしますと、社外取締役について、一定の者が選任されたときに、その者が不適任であるというような御意見が来たときに、その社外取締役を選任しないという選択肢をとるだけではなく、新しい社外取締役を選任しなければならないこととなるわけでございますので、そういう意味では、内外に対して先ほどのようなメッセージを発信することができると思っております。

落合委員 よくわからないんですけれども、企業を的確に監視する、適正に監視する仕組みをつくることが一番重要なのであって、形だけやればコーポレートガバナンスが適正になる、言っていることの意味がわかりません。

 ドイツにしても、イギリスにしても、フランスにしても、アメリカにしても、それぞれの歴史にのっとって、そもそも、冒頭申し上げた、会社は誰のものかとか、そういう歴史があるわけですよね。取締役が強い国もあるし、株主が強い国もあるし、だから、社外取締役は義務化しようとか、別のものをつくっていこうとか、そういうふうに先進国でもそれぞれ形があるのに、何か一番わかりやすいような、社外取締役をとりあえず設置をするのが適正なコーポレートガバナンス改革になる、言っていることの意味がよくわかりません。

 本会議でも申し上げましたが、東芝や関電は、義務化する前に、しっかりと、いわゆるグローバルスタンダードに合わせてコーポレートガバナンス改革をやってきました。それでも大きな不祥事が起きました。不祥事が起きた方が、日本の会社ってだめだなと、国際的な信認がなくなるんじゃないでしょうか。しかも、こんなでかい大企業がこういう不祥事を起こしているわけですから。

 無理やり社外取締役をふやしてきたこの数年間の結果、実際には問題が起きているわけです。これも専門家が多数指摘しているので、大臣も御認識されていると思います。

 まず、日本は、社外取締役を同じ人が複数の会社を幾つも幾つも兼務していて、これでちゃんとチェックできるの、兼務比率が多過ぎるんじゃないのというふうにもう専門家が指摘しているわけですよ。

 それから、官僚の実質的な天下りとなっているケースが多い。しかも、元官僚の人たちの方が、平均で百万円、報酬が高いそうです。計算した専門家がいらっしゃいました。

 それから、ファンドとか外資系企業から派遣される外国人の社外取締役の比率がどんどんどんどんふえています。日本にそもそも社外取締役になれるような人材がいないのに社外取締役をふやしたから、実際には全然コーポレートガバナンスが強化されない、そういう実態になっているわけです。

 社外取締役の設置というのも、大きいファンドですとか株主からの要求なんじゃないですかね。それで、社外取締役がどんどんどんどん経営に影響を与えていって、会社がどんどんより株主のものになっていく、こういうコーポレートガバナンスを行っているわけです。

 やはり、日本の歴史とか現状に合っていない制度をちょっとずつ取り入れるんじゃなくて、いきなりばんとやる、そして問題が出る、これに対して手当てを与えない、これは私は保守政治の行うことではないと思います。現状をしっかり認識した上で弱いところを補充していく、こういうような、最初に結論ありきではなくて、現状から結論を出していくような会社法改正を行っていくのでなければ、私は日本のコーポレートガバナンスはうまくいかないと思います。それを伝えさせていただきます。

 次は、外国人株主についてです。

 先ほどから国際的な信認というようなこと、いろいろな書類にも載っているわけですけれども、外国人株主の比率の推移についてどのように把握されているかと、それから、それに対する御見解を伺えればと思います。

森国務大臣 外国人株主についてお尋ねがございました。

 上場会社における外国法人等の株式保有比率は、二〇一八年度において二九・一%となっております。過去六年間で見れば約三〇%前後で推移しておりますが、委員御指摘のとおり、中長期的に見れば増加傾向にあると承知をしております。

 これについて、改正法案は、株主に対して早期に株主総会資料を提供し、議案等の検討期間を十分に確保するために、株主総会資料の電子提供制度を創設すること、我が国の資本市場が全体として信頼される環境を整備するために、上場会社等に社外取締役を置くことを義務づけること等をその内容としており、コーポレートガバナンスの向上を図るための基盤を整備するものであります。

 このような内容の改正法案には、外国人株主を含む投資家からの我が国の資本市場に対する信頼性を高め、我が国の資本市場への投資を促進するものとしても大きな意義があると考えております。

落合委員 六年前から横ばいです。それはなぜかというと、ちょうど六年前から日銀がETFを買うようになりました。日銀が確実に買ってくれるので、外国人が株を売り越し、五年前ぐらいから売り越しに転じています。

 コーポレートガバナンス改革が我が国で始まった二十年前からと比べると、二十年前は恐らく一七パーか一八パーぐらいが外国の株主の比率だと思います。そこから比べると、五、六年前までに一気に一・五倍に、十五年間で引き上がった、平均、年間一割ずつ外国人の比率がふえていったということでございます。

 自分の国に資金がない国というのは、どんどんどんどん海外から、今、東南アジアの国とかでもやっていますけれども、投資してくださいと言っているわけですけれども、二十年前はともかく、今は国内で金余りなんですよね。それなのに、何でもっと外国人投資家のためにとやる必要があるのか、そこになぜ力を入れる必要があるのか、私は全くわからないわけです。

 これも二十年前の改革だったらまだ理解はできなくもないんですけれども、そのころは、金融機関が不良債権問題で滞っていて、お金が回らなかったですからね。今、金融機関の不良債権比率も低くて、ファンドもちゃんとあって、政府系ファンドまでつくって、でも投資先がないというのに、何で外国人投資家をどんどん入れていくためのこの会社法改正をするのか、私は全くわかりません。

 時間がないので、きょうは経済産業省中原審議官にいらしていただいています。本当は、この局は経済産業局なので新原局長にというふうにお願いしたんですけれども、ちょっと忙しいということで、中原審議官にお越しいただきました。

 ちょっと時間がないので一問なんですけれども、MアンドA自体は私は大変意義があるものだと思うんですが、MアンドA自体も、海外を見ても短期で会社がどんどん売られちゃうわけですよね。投資自体も短期になってきて問題があるのに、事業を売り払うのも短期でどんどん事業自体が売買されているような、こういういわゆるグローバルスタンダードの中に日本の企業を放り込んでいいんですかね。これも、私、二十年前の改革だったらまだいいかもしれないけれども、もう時代が変わっちゃっていると思うんですが。

 この分野の旗振り役を経産省はしてきたわけです。どうですか。

中原政府参考人 お答え申し上げます。

 第四次産業革命による急速な変化が進展している中で、MアンドAによりまして新たな経営資源を機動的に取り込んでいくということは、企業の成長にとって極めて有効な手段ではないかというふうに考えております。

 今般の会社法改正案に盛り込まれております株式交付制度が対象としております自社株式を対価としますMAといいますのは、企業が多額の金銭の流出を伴わずに大型の買収を実施することが可能となるといったメリットがあるというふうに考えております。

 このため、この制度におきましては、例えば、手元資金に余裕がない、株式市場で将来性が評価されている新興企業が他の企業を買収しようとする場合ですとか、銀行の借入れでの資金調達に制約があるというような大型買収をしようとする場合においても利用されるということが想定されるというふうに思っております。

 いずれにしましても、各日本企業の皆様が、イノベーションのためにこれらの措置を十分に活用しまして、そうした事業再編の促進を通じて、中長期的な企業価値の向上というものを図るように、その持続的な成長が実現されるというふうにつながればというふうに考えてございます。

落合委員 もう時間が来ましたが、それも教科書的な答弁で、もう時代は変わってきていると思います。教科書を書いた人なんて、はるか昔の人ですからね。我々は、今の現状を見なければならないと思います。

 最後、一言だけ追加しますが、私は、当選以来ずっと原発の問題にかかわってきました。今回の会社補償、この訴訟の補償ですね、それから株主提案権の制限、これは電力会社の怠慢で事故が起きて、訴訟とか株主提案が行われてきて、ただでさえガバナンスが電力会社はぐだぐだである、その電力会社が喜ぶようなこういう改正を行うのは、私は、これも、コーポレートガバナンスを考えた上で、弱体化政策を今回出していると思います。

 私は、国民のためになる会社法改正をやるべきだと思いますので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、松平浩一さん。

松平委員 どうもお疲れさまです。立憲民主党の松平浩一です。どうぞよろしくお願いします。

 きょうは、株式交付制度、これにちょっと焦点を絞らせていただいて、質問させていただきたいと思います。

 今回の株式交付制度、実務上の観点からいうと、私は、ようやくできたのかなという印象です。やはり、今まで株式交換を使えなかったときに、これは現物出資しかなかったんですよね。買収しようとする会社が第三者割当てして、買おうとする会社の株主からその株を現物出資してもらうという方法だったので、これは、検査役の選任と調査というものがあって、本当に大変だと。時間もかかるし、面倒だしということで、そういう意味でいうと、実務上の観点からは非常に入ってよかったのかなというふうに思っています。

 ただ、こちら、ちょっとよくわからない点がありますので、前提としてお聞きしたいんですけれども、この株式交付、よく見ると、株式交付の計画の作成というものが必要だということで、組織再編行為なのかなと思いつつ、しかし、よく聞くと、買われる会社の株主と親会社になる会社との間の譲渡契約だというふうにも言われています。

 ということで、これは法的な整理をちょっとしていただきたいなと。何が組織再編行為で、何が組織的な行為じゃないのかなと。どの場面が取引行為なのかなと。どう理解すればいいのかという点、ちょっとお尋ねさせてください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株式交付につきましては、委員御指摘の組織再編行為と取引行為、二つの性質をあわせ含むものというふうに整理されております。

 株式交付の制度は、株式交付親会社と株式交付子会社との間に親子会社関係を創設するために、株式交付子会社の株式を取得する対価として株式交付親会社の株式を交付することを認めるものでございまして、現行法上、既に存在している株式交換の制度と類似しております。

 このため、御指摘ございましたけれども、株式交付においても、株式交付親会社は、株式交付計画を作成し、その計画について、原則として株主総会の決議による承認を受けなければならず、株式交付子会社の株式の譲渡しに対して金銭を交付する一定の場合には債権者異議手続をとらなければならないなど、子会社化とその対価としての株式の交付という組織法的な行為の効力が会社法に基づき生じる点で、株式交換と同様に、組織再編行為としての性質を有するというふうに考えております。

 また、具体的には、株式交付親会社は、組織再編行為としての性質を有する株式交付の効力として、効力発生日に、株式交付子会社の株式の譲渡し人から給付を受けた当該株式を譲り受け、当該株式を給付した譲渡し人は、株式交付の対価についての定めに従い、株式交付親会社の株式の株主となるものでございます。

 他方で、株式交付親会社は、株式交付子会社の株式を当該株式を有する者の譲渡しの申込みに基づいて譲り受けることとしておりまして、株式交付子会社の株式の譲渡しの申込み、また、譲り渡すべき株式交付子会社の株式の割当て、それから、株式交付子会社の株式の給付がされます。

 これらの行為は、株式交付子会社の株式の有償の譲渡又は現物出資と異ならないので、実質は、取引行為としての性質を有するものと考えております。

松平委員 詳細な説明ありがとうございます。

 もう一点、はっきりさせたい点があります。株式交付、定義を見ると、株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け云々という形で、その子会社とするためというふうにあります。これは、例えば、ちょっと考えたときに、買収の際に三分の二の持ち株比率まで上げたいことというのは結構あると思うんです。例えば、ある会社を六七%の所有割合にしたいということで、子会社とするためということであれば、四九%の株を既に持っている会社については、今回、株式交付できて、六七%にできると。しかし、五一%の株を既に持っている会社についてはこれは使えないということなんですかね。四九パー持っている会社については使えて、五一パーは使えないとなったら、たった二%の差で使えたりする場合、使えなかったりする場合というのが出てくるんですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株式交付は、株式交付親会社と株式交付子会社との間に親子会社関係が新たに創設されるということに着目いたしまして、株式交換その他の組織法上の行為と同様に、現物出資に関する規制を適用することなく、親子会社関係を円滑に創設することができるようにする制度でございます。

 したがいまして、今回の改正法案は、株式交付親会社が株式交付により株式交付子会社を新たに子会社としようとする場合に限って株式交付することができることとしております。

 委員御指摘のように、株式会社が既に総株主の議決権の過半数を有している子会社の株式を買い増すとき、新たに買い増すときにつきましては、それは株式交換その他の組織法上の行為と同視することは困難でございますし、例えば七〇%から七五%まで買い増す場合、あるいは五%から一〇%まで買い増す場合という間には本質的な違いはないと考えられます。

 このような場合についてまで、新たな親子会社関係が創設される場合でない場合についてまでこの株式交付を認めることについては、必要性に乏しいという点と、現物出資に関する規制を設けた趣旨との関係で慎重に検討すべきであろうというふうに考えております。

松平委員 どこかで線を引かなきゃならないので、新たにというところで線を引いたということで理解させていただきました。

 さて、この株式交付、産業競争力強化法、産競法、こちらにおいても、株対価買収のスキームを利用しやすくするということで、会社法の特例の措置というものが設けられています。

 そこで、産競法の株対価買収の特例措置と今回設けられる株式交付との違い、これについてちょっと、わかりやすく簡単に説明していただきたいんですが、よろしいでしょうか。

松島委員長 小出局長、わかりやすく簡単にお願いします。

小出政府参考人 御指摘の、産業競争力強化法による会社法の特例を利用して自社株式を対価として買収する場合、それと今回の株式交付制度の主な違いとして、まず一つには、主務大臣の認定の要否が挙げられます。

 産業競争力強化法による会社法の特例を利用するためには、事業再編計画、また、特別事業再編計画について主務大臣の認定を受けなければならないとされていることと承知しております。これに対しまして、会社法においては、株式交付をするためにそのような認定を受ける必要はございません。

 また、債権者異議手続の要否にも違いがございます。すなわち、産業競争力強化法による会社法の特例においては、債権者異議手続をとることは要しないと承知しております。これに対しまして、株式交付制度においては、株式交付子会社の株式等の譲渡しに対して金銭を交付する一定の場合には、株式交付親会社において財産の流出が生じ、債権者が害されるおそれがあるために、株式交付親会社は債権者異議手続をとらなければならないこととしております。

 そのほかにも、産業競争力強化法による会社法の特例は、先ほど御質問もございましたけれども、既存の子会社を対象会社としてその株式を買い増す場合にあっても利用することができるとか、外国会社を対象会社とすることができるとか、そういった点について違いがございます。

松平委員 簡単に大きな点を言うと、やはり主務大臣の認定、それが今回要らなくなったというのがでかいのかなというふうに思います。

 今までのこの産競法上の会社法特例の制度、これは平成二十三年に導入されています。ただ、これは導入されてからしばらく、残念ながら、この利用実績はゼロだったというふうに聞いているんです。

 その理由としては、二つほど理由があって、対象会社の株主に株式の譲渡益課税が生じてしまうということなんですよ。株をもらうだけなので、現金収入はない、にもかかわらず、別途納税資金を用意する必要があるということで、なかなかこれは使い勝手が悪いのかなというふうにも言われていましたし、あと、仮にそれで納税資金を確保するがためにもらう株式を市場に売却するということで株価の下落リスクが生じるというデメリットも指摘されていたところです。

 というわけで、こういったこの二つのことを踏まえて、去年の七月から、租税特別措置法で、この株主の譲渡益課税、これを繰り延べられる制度が導入されています。これによって今のデメリットがなくなるということで、これは産競法上の会社法の特例、株対価買収の制度が利用しやすいものとなったと思われるんですけれども、どうでしょう、現状、件数はいかがでしょうか。

中原政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘をいただきましたとおり、昨年の七月に施行されました産業競争力強化法におきまして、計画認定を前提に、その株式を対価とするMAを行う際に、対象会社株主の譲渡損益に対する課税を繰り延べる特例措置というのが創設されたところでございます。

 この制度の活用を促すために、私ども経済産業省としましてもこれまで一生懸命その広報に努めてはまいったところではございますけれども、これまでの利用実績はないということでございます。

 本特例措置の利用につきましては、事業者の皆様から数多くのお問合せ、御照会をいただいているということ自体は事実でございます。しかしながら、こうしたMアンドAの機密情報というのを社外に持ち出すこと自体に抵抗があるのだろうか、あるいは、計画の認定を前提としておりまして、その認定に際しまして所管省庁で数カ月の事前相談とか、あるいはそうしたことに向けての審査というものが行われますために、MアンドAのスピード感に合わないというような、こういう要因が重なりまして申請までには至らないというような御意見を頂戴しているところでございます。

松平委員 ありがとうございます。

 残念ながらゼロだと。やはり、認定を前提としているのでそれが厳しくて、相談などをしているときのスピード感が合わないということでした。やはりそうなんですよね。そこで、今回、一般的な株式交付という形で認定を不要として制度ができた。やはりここに譲渡益の課税の繰延べをしてもらいたいなというふうに思うんですけれども。

 じゃ、この株式交付の制度ができるに当たっての譲渡益課税の繰延べの措置は、現状はこれはどうなっていますでしょうか。

中原政府参考人 自社株式を対価とするMアンドAにつきましては、欧米主要国では特に大規模なMAの場合に積極的に活用されていましたけれども、日本では活用されてこなかったと承知しております。

 第四次産業革命による急激な変化が進む中、日本企業が自社株式を対価とするMアンドAによりまして新たな経営資源を機動的に取り込むということは、企業の成長にとって有効であるというふうに考えております。

 このため、会社法改正案に盛り込まれている株式交付制度の対象となる自社株式を対価としたMアンドAに関しまして、対象会社株主の譲渡益等に対する課税の繰延べ措置を税法の本則に措置することにつきまして、新規の税制改正要望として提出をさせていただいているところでございます。

 株式交付制度の創設に合わせた要望の実現に向けまして、当省としては最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えてございます。

松平委員 税制改正要望に組んでいらっしゃるということです。

 せっかく、井上財務政務官、お越しいただいていますので、ちょっとこの点、質問させていただきたいんですけれども。

 繰り返しますけれども、この株式交付制度、今までの産業競争力強化法上の計画認定を必要としない制度ということで、ただ、やはり譲渡益課税の繰延べ措置、これが認められないと、せっかくこの制度をつくったのに使われないという懸念があるんです。そういう意味で、私は、やはり制度をせっかくつくったので使われるようにする、そういう必要性があると思っています。

 それから、株式交換の場合、課税の繰延べ、これが認められていると思うんです。したがって、株式交換は認められているので、やはりこっちも認められてもいいんじゃないかという、その平仄を合わせる、そういう意味でも許容性もあるんじゃないかというふうに思っています。

 そういう意味で、ぜひともこの課税の繰延べ、認めていただきたいな、あってもいいんじゃないかなと思っています。ちょっと御所見をお伺いしたいなと思います。

井上大臣政務官 今の現段階で、結論から言わせていただくと、今、経済産業省からも御要望いただいておりますし、この法改正の御議論の状況もございます、それから税制改正のプロセスの真っただ中でもございますので、もう検討させていただくとしか、最終的な結論は言えないですが、そういう状況下の中で、現段階での原則の考え方と、それと今の方向性について少しお話をさせていただければというふうに思います。

 現段階で、法人の有する資産をほかに移転する場合には、所得の計算上、移転資産の時価取引として譲渡損益を計上することが原則になっています。他方で、企業が取り巻く経済環境の変化に応じて組織変更を行っていくことは、今、先ほど言われていましたとおり、活発な組織編成を行っていくことは企業の活力の維持のためにも必要だし、それから税制においても、組織編成の前後でこの経済実態に実質的な変化がない場合や、強制的な株式の譲渡である場合は、例外的に課税の繰延べを認める組織再編税制を設けているというのが今の現状であります。

 そういう状況下の中で、株式交換は、単なる資産の移転ではなくて、強制的な株式の移転であり、株式の投資が存続すると考えられることから、課税の繰延べを現段階で認めています。株式を対価とする公開買い付けによって買収に応じる場合は、任意の株式の移転であるため、譲渡益には課税されることが原則というのが財務省の根本的な今の考え方であります。

 ただし、大規模かつ迅速な事業再編による著しい生産性の向上を促す観点から、今、先ほど経済産業省から答弁がありましたとおり、平成三十年度の改正において、租税特別措置として、特定の事業者再編につき、自社株式を対価とする買収については、一定の要件のもと、株式譲渡に応じた株式の譲渡益課税を繰り延べる措置を講じている。要は、買収によって生産性が向上し、それをその所管する経済産業大臣が認めたという場合はいいですよということというのを平成三十年からやらせていただいたということであります。

 令和二年の改正については、経済産業省より、今般の会社法において、株式交付制度導入を契機に、今御質問があっているとおり、三十年度の改正に応じた措置を本則化するべきではないかというふうに経済産業省からも言われています。ですけれども、一方で、先ほど説明しました法人税法上の譲渡益課税の考え方は慎重にあるべきだという考え方も片方ではあります。

 今、先ほど結論を述べさせていただきましたけれども、そういう状況下の中で与党議論、そして今御質問がありました御意見を参考にしながら、今税制改正のプロセスの検討中でもありますので、十分検討させていただいて結論を導き出したいというふうに思っています。

 以上です。

松平委員 どうもありがとうございます。

 冒頭の質問で、今回の法的性質、組織再編類似の行為だという話もありましたので、ぜひ積極的に御検討いただければなというふうに思います。

 それから、これはもう質問ではないんですが、せっかく政務官がいらっしゃるので、もう一つ要望として。

 課税の繰延べに関して、株式交換のときもそうなんですけれども、株以外にも、現金も交付するという場合もあると思うんです。そういった場合も、今は非適格にしていると思うんですけれども、ぜひこちらも適格として課税の繰延べができるような形にしていただきたいなというふうに思っております。どうぞよろしくお願いします。

 お忙しいでしょうから、財務政務官、こちらで大丈夫ですよ。

松島委員長 では、井上財務政務官、お疲れさまでした。

松平委員 それから、次の質問へ行きます。

 産競法による会社法の特例では外国法人も子会社とすることができる、そういうスキームも可能だということなんですけれども、これをちょっと端的に、一言でお伺いしたいんですが、今回の会社法改正による株式交付は、外国法人を子会社とすること、これはできるんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 改正法案は、株式交付により子会社とすることができる法人は我が国の株式会社に限っておりまして、外国会社を子会社とすることはできないこととしております。

松平委員 こちらは、なぜできないようにしているんですか。

小出政府参考人 株式交付につきましては、その手続を進めて効力発生日が到来した後に株式交付の要件を満たさないということとなるなど、仮にそうなった場合には、多数の利害関係人に大きな影響が生じるために、法的安定性を確保する観点から、株式交付に関する規律の適用範囲を明確にする必要性が高いと考えておりまして、株式交付をする前に客観的かつ形式的な基準によってその有効性を判断することができるようにする必要があるものと考えられます。

 しかしながら、外国会社が我が国の株式会社と同種であるかどうかについての判断は、その設立準拠法の内容に基づきまして、当該外国会社の類型ごとに行わざるを得ないということでございます。

 このように、外国会社の場合にはさまざまな類型があるものと考えられ、その類型ごとに法的性質を適切に評価することは多大な困難が伴うものと考えられます。そのため、私人間の取引であります株式交付において、客観的かつ形式的な基準により、事前に当該外国会社が株式会社と同種の会社と言えるか否かを判断することは容易でないと考えられたところでございます。

松平委員 今の局長の答弁、これは中間試案で会社法上の株式会社及びこれと同種の外国会社はできるとされていた、それを前提としてお話しされていたのかなというふうに思うんですけれども、私としては、これはやはり認めていただきたいなというふうに思っています、外国会社もできるように。

 やはり海外への投資というのが、これを認めることで格段に行いやすくなると思うんです。海外の会社を子会社化しやすくなる。これからの日本は、やはり少子化が進んでいきますので、マーケットを海外に求めなきゃいけない。会社を買収することというのは、やはり時間を買うというふうに言われています。

 結局のところ、先ほどおっしゃられたように、これは、子会社となる会社の株主と親会社との間の取引契約ですよ。だから、外国株式を親会社に譲渡するというのと同じ、これは単純な話かなというふうに思えるので、そこも考えるとやりようはあるんじゃないかなというふうに思っています。

 したがって、これからマーケットを、海外に出ていって日本がどんどんどんどんプレゼンスを発揮できるようにするためにも、これは政策的観点から進めるべき、外国会社を含めて進めるべきなんじゃないかなと思うんですけれども、この点、ちょっと大臣、いかがでしょうか。

森国務大臣 松平委員御指摘のように、理論的には我が国の株式会社と同種の外国会社を株式交付の適用対象に含めることも考えられます。

 他方で、先ほどの事務方の答弁のとおり、法的安定性を確保するという観点から、株式交付についてはその適用範囲を明確にする必要性が高く、株式交付をする前にその有効性を的確に判断することができるようにする必要がありますが、外国会社にはさまざまな類型のものが存在しますので、私人間の取引である株式交付において事前に当該外国会社が株式会社と同種の会社と言えるか否かを判断することは容易ではないものと考えられます。

 このように、株式交付によって外国会社を子会社とすることができるようにすることについては、法的安定性の観点から問題があるものと考えております。

松平委員 ちょっと残念ですね。もうちょっと政策的な観点からの視点も入れて御答弁いただきたかったんですけれども、私としては、これは検討を何とか続けていくべきじゃないかなというふうに思っています。

 それから次に、株式交換の方ですね。

 三角株式交換、これは、手法はよく行われています。完全親会社となる会社が非上場の場合、子会社となる会社の株主はやはり非上場の株よりも上場株が欲しいということで、例えば完全親会社となる会社に上場親会社があった場合に、その上場親会社の株式を交付するということで、三角株式交換の手法がよく行われているんです。

 これを行う上でやはり重要な規定というのが、買収対価として親会社株式を子会社が持てるようにした会社法の八百条であると思います。これは例外的に子会社が親会社株式を持てるようにした規定なんですけれども、こちらもちょっと端的に伺いたいんですが、今回の株式交付においてもこの例外規定は設けられましたでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 そのような規定は設けておりません。

松平委員 今回の株式交付、そもそも株式交換で一〇〇%完全子会社をつくれるけれども、やはり五〇%を超える子会社をつくる場合も同様の制度があってもいいんじゃないかということでできた制度だと思うんです。

 そうであれば、株式交換の場合に親会社株式を対価にできるということなので、やはり同様に今回の株式交付の場合も親会社株式を対価にできるようにするのが平仄がとれているんじゃないかなというふうに思います。それでいて、やはり子会社となる会社の株主も親会社となる会社の親の上場株が欲しいという利害関係というのも変わらないと思うんです。

 したがって、今回の株式交付の場合でも対応すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。

森国務大臣 この株式交付制度を創設した趣旨は、株式会社がその株式を対価とする買収により他の株式会社を子会社としようとするときに現物出資規制等が適用されないようにして円滑にこれを実現することができるようにしたところにありますが、三角株式交付についてお尋ねがございましたけれども、本制度は、自己の株式を対価とする場合について新たな規律を創設したものでありまして、株式会社がその親会社の株式を対価とする場合には、制度創設の趣旨が妥当しないものと考えております。

 また、現時点において、株式交付に際して、対価として交付するために、株式交付親会社がその親会社である株式会社の株式を取得することを認める必要もないと考えております。

松平委員 もうちょっとその対価を柔軟にしてほしいなという趣旨で私は言っていました。だから、この自己の株式という部分をもっと広げたらいいんじゃないかということなんです。

 その理由としても、ちょっと先ほど言った理由で、やはり親会社の上場株が欲しいという理由も変わりませんし、株式交換の際とも変わりませんということなので、ここまで限る必要があるのかなというのが私の印象でして、ぜひやはりまだ今後の検討課題にしていただきたいなということは申し上げたいと思います。

 それから、一つ飛ばしたやつを質問させていただきますね。

 株式交付を使う場合に、買われる会社のどの株主からどれだけ買って、どの株主から買わないか、そのコントロールをどうするんだという疑問があるんです。これは株主平等原則というのがありますけれども、ここの部分、どう想定されているのか。

 私、これは先日、親子上場の質疑をさせていただいたときにも、親会社と少数株主の利益対立の問題意識を申し上げたんですけれども、やはりこれで、株式交付で選ばれなかった少数株主というのが、残った株主という少数株主が非常に不利な状態に置かれてしまうんじゃないか。

 したがって、この点、どういう形で運用する予定なのか、少数株主の保護も含めてちょっとお聞かせいただきたいなというふうに思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株式交付親会社は、まず、原則といたしましては、株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをした者の中から、その裁量により株式交付子会社の株式を譲り受ける者を定めることができることとされております。

 株式の有償譲渡の場面でも、株式を譲り受けようとする者は、原則として自由にその相手方を選択することができるわけですので、株式交付の場面でも、基本的には、株式の譲渡しの機会を平等に認め、また、そのような機会が与えられない少数株主の保護を図る必要は特段ないものと考えておりますが、その株式の譲渡について特に株主保護のための規制が現行法上設けられている場合には、そういった保護規制が適用されることになるということでございます。

 例えば、株式交付による譲受けの対象となる株式交付子会社の株式が譲渡制限株式であるときは、譲渡承認手続によって譲渡し人以外の株式交付子会社の株主の保護が図られることとなりますし、また、株式交付による譲受けが公開買い付け規制の適用対象となるときには、当該規制により株式交付子会社の株主の保護が図られるということになると考えております。

松平委員 あと、ちょっと時間がわずかになったので、もう一問、ちょっとトピックを出させていただきたいんですけれども、今回、株式交付親会社の株主に株式買取り請求権を認めています。私は、これは過剰な規制だと思っているんです。

 もともと、今回の株式交付、現行の現物出資規制が迂遠だ、面倒だからというのが出発点なんです。それで、現物出資の場合というのは、第三者割当てによって新株を発行します。それで、この場合、既存株主の保護というのは、有利発行規制、すなわち株主総会の特別決議で図られてきたわけです。つまり、今までは、既存株主に株式買取り請求権はなかったわけなんですね。

 それで、今回の株式交付も、同じように株主総会の特別決議、これを行うわけです。これにわざわざプラスして、親会社株主に株式買取り請求権をつけるというのは、これはやはり過剰なんじゃないかなと。現行法と、今の法律とやはり整合性がとれない。先ほど、もともと現物出資が迂遠だからという本来の目的とおっしゃいましたけれども、そこに立ち返ってみたら、やはり整合性はとれないんじゃないかなというふうに思うんです。

 この点、大臣、ちょっと最後、お聞かせいただけますでしょうか。

森国務大臣 株式交付の制度は、現行法上既に存在する株式交換の制度と類似しており、株主等の利益状況も株式交換を行う場合と類似をしております。そのため、株式交付親会社の手続については、基本的に、株式交換に関する規律と同様のものにしております。

 株式買取り請求権についても、株式交換完全親会社の株主と同様に、株式交付親会社の株主にもこれを認めたものであり、株式交換における規律との整合性がとれているものと考えております。

 また、株式買取り請求権は、会社組織の基礎に本質的変更をもたらす行為に反対する株主に投下資本を回収する機会を与えるために必要かつ合理的な権利であります。他方で、株式交付でも、会社組織の基礎に本質的変更をもたらすとは言えないような場合には、反対株主は株式買取り請求をすることができないこととしております。

 このように、株式買取り請求権を行使することができるかどうかは、株式交付親会社の株主に生ずる影響の程度に応じて区別がされておりまして、会社法上の他の制度とも平仄がとれているものであって、過剰な規制ではないと考えております。

松平委員 余り納得いきませんが、質疑時間が終了いたしましたので、これにて終わります。

 どうもありがとうございました。

松島委員長 次に、日吉雄太さん。

日吉委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの日吉雄太です。

 本日、質問の機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。

 会社法改正案についての質疑ではございますが、一問だけ、最初に、麻薬の取締りについて質問をさせていただきたいと思います。

 ここのところ、芸能界の方が麻薬取締法違反で逮捕されたという報道が繰り返されております。

 そんな中で、やはり、近年、麻薬の押収量というのもかなりふえてきているというふうに聞いております。その一方で、市場で出回っている、実際に取引されている価格というのが落ちていないというようなことも聞きます。そうすると、やはり量がふえているので、市場に出回っている量が減っているわけではなく、出回っている量自体はふえているというか、現状維持というか、そういった状況だというふうに考えられます。

 そんな中で、日本では、日本でつくるというよりも海外から入ってくるケースが多いということからすると、水際で食いとめるということが非常に重要になってくるということで、取締りをされている各省庁の方にきょうお越しいただいておりますので、ちょっと順番に、近年、どのぐらいの量が押収され、それに対してどのぐらいの人員の方が捜査に当たられているのか、また、その人員が十分な体制を整えられているのかということを教えてください。

森政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省の麻薬取締部の定員は、平成三十一年四月一日時点で二百九十一人でございます。

 それから、我が国の違法薬物の情勢につきましては、我が国全体での覚醒剤の押収量が平成二十八年から平成三十年まで三年連続で一トンを超えておりまして、本年も既にもう一トンを超える押収事例があるなど、予断を許さないような状況にございます。

 特に、我が国で乱用される覚醒剤は大部分が輸入されたものと考えられておりまして、これは、関係省庁が連携して、水際における密輸の取締りが極めて重要であると認識しております。

 麻薬取締部としても、引き続き、違法薬物の取締り体制を強化してまいりたいというふうに考えてございます。

田中政府参考人 全薬物事犯の検挙人員の七割以上を占める覚醒剤事犯につきましては、先ほど厚生労働省から御答弁がございましたように、平成二十八年から三年連続で押収量が一トンを超えるなど、依然として厳しい情勢が続いているところであります。

 このほかにも、平成三十年におきましては、乾燥大麻の押収量が約二百八十キログラムと前年比で五九%増加したこと、MDMAの押収量は約一万二千錠でありまして、前年から約九千錠増加したことから、覚醒剤以外にも、大麻や合成麻薬の乱用拡大が懸念をされるところでございます。

 警察におきましては、いわゆる水際での違法薬物の取締りにつきましては、主に薬物事犯捜査に従事する者だけではなく、暴力団犯罪捜査、来日外国人犯罪捜査、鑑識、鑑定活動等、さまざまな部門の者が従事して行われるものでありまして、これに従事する者の数を一概に申し上げることは困難ではございます。

 なお、都道府県警察におきまして、違法薬物の取締りのほか、暴力団対策、来日外国人犯罪対策等を含む組織犯罪対策に従事する警察官の定員について申し上げれば、平成三十一年四月現在、全国でおおむね一万人程度であるというふうに承知をいたしております。

 治安情勢に的確に対応するためには、警察官の増員が有効な手段であることは言うまでもございませんが、現下の治安情勢、財政状況等を踏まえまして、薬物対策につきましては、まずもって、教育訓練による人材の質的向上、資機材の高度化等の諸方策を総合的に推進することにより、警察力の強化を図ってまいりたい、このように考えております。

山名政府参考人 お答え申し上げます。

 税関の関係でございますけれども、税関業務を取り巻く環境につきましては、訪日外国人旅行者数の急増に加えまして、国際的なテロの脅威、金地金の密輸への対応、御指摘の不正薬物押収量の増加など、困難な課題に対応する必要があると認識しております。

 先ほど厚生省の方からもございましたけれども、特に、不正薬物の押収量は平成二十八年から本年までの四年連続で一トンを超えておりまして、その取締りが急務となっているところでございます。

 こうした検査、取締りを着実に行っていくため、税関の定員につきましては、五年連続で三桁の純増を確保しているところであり、令和元年度におきましてもプラス二百九人の純増となっております。

 今後も、税関における不正薬物に係る水際取締り体制につきましては、業務運営の効率化を図りつつ、必要な職員の確保に最大限努めてまいりたいと考えております。

日吉委員 どうもありがとうございました。

 来年はオリンピック、パラリンピックも開催されます。いろいろな方が日本にやってきます。それに乗じて密輸しようというようなことを考えている方もいらっしゃると思いますので、十分な体制で対処していただきたいと思います。大臣にも、その旨お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、会社法の改正について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、株主提案権の濫用的な行使を制限する規定が設けられましたけれども、それについてお伺いいたします。

 株主提案権、これは濫用的に行使されるということが懸念されるということで、今回それに制限をかけるわけですけれども、それが濫用的なのかどうなのか、それを公正に判断するのは、どのようにその公正性を担保するのか、その何か対策というものというのはあるんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株主がみずからの提案、株主提案権、これを拒絶された場合に、当該判断に不服があるときは、株主総会の開催前であれば、株主は、提案した議案の要領を株主総会の招集通知に記載することなどを求める仮処分の申立てをすることが考えられますし、株主総会の開催後であれば、株主は、株式会社に対して、みずからの提案が招集通知に記載されず、株主総会に付議されなかったことを理由として損害賠償請求を行うことが考えられます。

 これらの場合、最終的には、裁判所が、株主が提案した議案が拒絶事由に該当するかどうかを判断することとなりますので、その意味で、判断の公正性は担保されることになると考えております。

日吉委員 今、裁判所の仮処分のお話がございました。確かに、それで提案ができるのであれば、それで担保されるのかもしれませんけれども、ただ、タイムリーにそれができるのかといったことも懸念されます。(発言する者あり)

松島委員長 じゃ、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松島委員長 速記を起こしてください。

日吉委員 じゃ、続けさせていただきます。

 仮処分で対応できるということでありますけれども、それが実際にタイムリーにできるのかどうかといったところが少し疑問に残っております。

 もう一つちょっとお伺いしたいのが、そもそも、先ほど来、株式会社の所有者、持ち主は誰かといったときに、株主ですというお話がありました。教科書的に株主ですということなんですけれども、それを考えた場合、今回、株主提案権への制限をかける、それが公正なのかどうかというのは、一義的には取締役会、会社の方で判断するということになるんですけれども、所有者である株主が、取締役というのは、会社との委任関係で職務の執行を委任され、それを受任しているというような関係にある中で、株主が提案したことを取締役会が拒否するというのは理論的におかしいんじゃないかなというふうに思うんですけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。

森国務大臣 この株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を設けたその趣旨に返って考えますと、濫用的に行使された場合には、株主総会における審議の時間等が濫用的な提案に割かれて、株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり、株式会社における検討や、招集の通知の印刷等に要するコストが増加したりするなどの弊害が生ずるということでございます。

 委員御指摘のように、株主が判断をしたらどうかという御提案がございましたが……(日吉委員「まだしていないですが」と呼ぶ)会社の所有者は株主ではないかということの御指摘がありましたので、株主が判断するべきではないかという御質問だというふうに思ったんですけれども、そうであるならば、今の趣旨から考えると、それでは、濫用的であると思われる株主提案をリスト化して株主総会に示して、それを株主総会で決議をしましょうということになりますと、結局のところ、株主総会でその判断をするために、その情報を株主に対して提供して、各提案について議論するということになりますと、先ほどの趣旨に鑑みますと、株主総会の時間等が割かれてしまいまして、濫用的な提案を制限しようとした趣旨がかなりの程度没却されてしまうというふうに思われますので、株主提案を審議対象とするかどうか株主総会で判断するという枠組みはなかなか難しいと思われますので、これを取締役会で判断するということ、必ずしもそれは、委員指摘のように、おかしいということにはならないのではないかというふうに思っております。

日吉委員 政策的に取締役会で判断するということだと思うんですけれども、確認したいのは、理論的におかしいですねというところをちょっと確認しておきたいんですけれども、いかがでしょうか。

宮崎大臣政務官 お答えをいたします。

 まず、ここで今法制化しようとしているのは、濫用的な株主提案権の行使なんですね。ですから、今、実際の、現実に、これまでの説明の中でも出てきておりますけれども、お一人で百件も提案してみたりとか、いろいろ濫用的な行使をしている。それに対して、結局、総会で処理するということになるとすれば、要するに、濫用的な行使の実は上がってしまう。実際、そこでいろいろな議論をして、説明してというふうなことになってしまうと、制限をした趣旨が何もそこに成立しないということになってしまうわけであります。

 ですから、今回、政策的な判断としても、そのような濫用的な行使を防ぐためには、総会でこれをやるということになれば濫用的な行使の実が上がってしまいますから、これは、その前の段階でしっかりと判断できるような法制化が必要だというふうに判断をしたということであります。

日吉委員 今のお話ですと、やはり理論的にはおかしいけれども、政策的に、実務的にやっていくということだと思います。だからこそ、より慎重な対応が必要になってくるのではないのかなというふうに思っておりますので、当初申し上げた、公正な判断ができる枠組みをもう少ししっかりつくった方がいいのではないのかなということを申し上げさせていただきます、もしこれをやるのであればということですが。

 続きまして、会社補償と役員等賠償保険について御質問させていただきます。

 これは、取締役の賠償責任が問われたときに、取締役みずからではなくて会社がそれを補償したり、その賠償に備えて支払う保険、その保険料を会社が取締役にかわって、ある意味、肩がわりして、支払いをしているというようなことを、実務が先行する中で、それについて法整備をしよう、こういう趣旨だというふうに理解しております。

 しかしながら、そもそも、会社の責任ではなくて取締役に対して問われている責任に対して、会社がその補償をしたり、肩がわりするということに対して、この理論的な根拠というものはあるんですか。

小出政府参考人 理論的な根拠ということでお尋ねでございますけれども、問題となりますのは、取締役が負う損害賠償責任等につきまして会社が補償するということにいたしますと、取締役の職務の執行の適正性が損なわれるとか、あるいはそれは利益相反に当たるのではないかという疑いが生ずるわけでございます。

 今回の改正法案におきましては、そういった問題点を踏まえまして、会社が、取締役の損害賠償責任、あるいは訴訟等によって支出すべき費用につきまして、適正な範囲内で、また適正な手続をもって補償するということを設けたものでございます。

日吉委員 利益相反が生じるので規定を設けたというよりも、法律で、それは利益相反には当たらないというようなたてつけにしたというような理解なんですけれども。

 だからこそ、今の話から伺いますと、理論的な根拠というのはやはりなくて、取締役がそういうふうに責任過大、過大というか大きな責任を問われるような社会になってしまったら、なかなか取締役のなり手がいなくなるからというような、これもやはり政策的な判断なんだろうなというふうに理解はしているんですけれども。

 そういった中で、そもそも、取締役の報酬というのは高額になっているわけで、責任を問われるためのリスクも含まれた金額だと思うんですけれども、そういう理解でよろしいですか。

宮崎大臣政務官 基本的には、各会社において委任を受けた取締役にいかなる報酬を与えるかということは、それは最終的には株主総会において判断をされる事項であるわけであります。

 その上で、今委員御指摘のような形で取締役の社会的責務が非常に重くなっている、それに対して与えられるべき報酬として適切なものが幾らかという議論は行われているわけでありますので、その責任に見合う形での報酬の額が決まっていく。

 また、万が一のときの、社会的に、また法的にも求められる責任の重さみたいなところから、今問題になるDアンドO保険みたいなものをどうするか、それで、その保険料をどうするかということについては、やはり報酬政策であるとか、会社としてリスクヘッジをどうやってとっていくかということとの兼ね合いの中から決まっていくので、御指摘のような形で、理論的にこれが正しいということではなくて、むしろ会社の政策としてどれが合理的かという判断をすることになるわけでありますが、その中で、今事務方から御指摘をさせていただいたような形で、利益相反などが起きないような形の法規制が必要であるということが今回の会社法改正の一つの背景にあるというふうに考えております。

日吉委員 今御説明いただきましたけれども、いろいろな要素があって取締役の報酬というのは決まっていくわけですけれども、今、私の質問は、リスクも含めた形で報酬は決まっているはずなので、それなのにまた改めて会社から補償してもらうというのはおかしいのではないんですかという意味合いだったんですけれども。

 例えば、今、保険の話も出ましたけれども、その保険についても、会社が保険料を支払うのではなくて、報酬にその保険料も含めた形で取締役の報酬を決め、取締役自身がその賠償保険の保険料を支払うというような形にすればより透明な感じがするんですけれども、それ自体、そういった検討はなされなかったんですか。

宮崎大臣政務官 先ほどとちょっと繰り返しになる部分もあるんですけれども、先生が御指摘になるような形で、例えば、保険契約の場合に、役員がみずから保険契約者となるのか、それとも会社が保険契約者になっていくのかということについては、やはりそれぞれの会社において、その報酬政策をどのようにするか、これは税制上の問題もありますので、報酬政策をどうするかとか、リスクヘッジをどうやってとるのか、また、株主の皆様に対してどうやって説明をしていくのか、そういったことが、いずれが合理的であると考えているのかという観点から考えることでありますので、やはり、法制上、理論的にどちらが正しいとか、どちらかが例えば正しい、間違っているというふうな次元で考えるものではなくて、いずれが望ましいかということについて、例えば法が一定の見解を示すというよりも、それぞれ各会社が私的自治の範囲内でしっかり判断をしていくべきことではないかというふうに考えております。

日吉委員 どちらが正しいかという話ではないという御説明だったんですけれども、そもそもの私の問題意識として、取締役の責任なわけですから、取締役の責任に対して損害賠償を請求されているものについて会社が払うという、会社に対する責任は会社が払うわけでありまして、取締役に対する責任は当然取締役が払うというもので、それを政策的に会社が補償するということに違和感があります。だから、おかしいんじゃないですかというところの中で、じゃ、保険料については取締役がみずからその報酬の中で支払った方が、それは対外的にも納得感のあるものなんじゃないのかなということを申し上げたところでございます。

 ちょっと繰り返しになるので、もうこれについては御質問をしませんけれども、そういった意味で、この点についてももう一度御検討いただければなというふうに思います。

 それと、こういった取締役に対して補償をする、保険料を肩がわりするというようなことになった場合に、むしろ、取締役が安心して職務に励むことができる一方で、緊張感がなくなってくるといいますか、その責任をしっかり果たすという面で懸念もされるかなという意味で、取締役の業務の執行を適正に行うために、どのような対策というか、どのようにこの仕組みの中で考えられているのか、教えてください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 会社補償の側面で申し上げますと、委員御指摘のとおり、補償契約の定めに従って役員に対して費用等を補償すると無制限に認めるものとしますと、役員等の職務の執行の適正性が損なわれるというようなおそれがあるために、改正法案では、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合のうち、役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があった場合については、役員等が負担した損失を補償することができないこととしております。

 したがいまして、その補償の対象になるのは、職務を行うについて重大な過失がなくても第三者に対して損害を賠償する責任を負う場合ということになります。

 また、役員に対して適切なインセンティブを付与するという会社補償の意義からすれば、会社補償をする場合の条件につきましては、それぞれの会社の状況や役員の職務内容等によってその適切な内容は異なると考えられますので、その会社と役員等との間で締結する契約の中で条件を個別に定めることとしておりますが、いずれにいたしましても、こういった会社補償、補償契約の定めをする場合には、その内容の決定あるいはその内容の開示について、改正法では適切な手続を設けているところでございます。

日吉委員 悪意、重過失があったときに取締役個人が責任を果たすというのはそれは当然なんですけれども、善意であれ、軽い過失があったといっても、取締役としてのその判断に対する結果責任というのは第三者に対しても生じるわけだと思います。そういった意味で、やはり、その責任の明確化というものをはっきりさせていただきたいなということを申し上げさせていただきます。

 次に、社外取締役についてお伺いさせていただきます。

 社外取締役がほとんどの会社で選任されているんですけれども、この社外取締役を導入することによってどれだけの効果があったかというような、そういう検証をしたデータというか結果というものがあったらちょっと教えてください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 社外取締役の選任が企業の価値に与える効果につきまして、幾つかの実証研究の結果が公表されております。

 このような実証研究のうちには、社外取締役の選任は、企業価値や企業業績、株主還元の向上に一定の効果があるという結果を示すものもございます。

 他方で、平成二十七年に、社外取締役を置かない場合にはその理由を説明しなければならないという規律が設けられた後でございますが、社外取締役が選任された場合の効果については、一貫した傾向は見られないか、あるいは、一部の小規模な上場会社に関しては株式市場における評価が低下した可能性があるという結果を示すものもございます。

 このように、社外取締役の選任が企業価値に与える効果につきましては、実証研究の結果によってはいまだ一貫した結論が得られていない、そういう状況にございます。

日吉委員 今お話しいただきましたように、一貫した結果が出ていない、いい面もあるし、悪い面もあるというような中で、このタイミングで社外取締役を法制化するというその理由を教えてください。

森国務大臣 上場会社等については、かねてより、経営が独善に陥り、又は経営陣が保身に走るおそれがあるといった問題点について、これを予防するメカニズムとして社外取締役を置くことの必要性が指摘されております。また、業務執行者から独立した立場にある社外取締役が業務執行者の監督を行う体制を構築することは、国内外の投資家からの日本の資本市場の信頼性の向上につながるものであり、大きな意義があると考えております。

 現に、東京証券取引所の全上場会社における社外取締役の選任比率は、令和元年七月調査時点において九八・四%となっておりまして、このように社外取締役の選任が進んだことなどに照らすと、社外取締役の有用性は一般的に広く認知されていると考えております。

 以上のとおり、社外取締役の選任が企業価値に与える効果が実証研究の結果として必ずしも明らかとなっていない現状のもとでも、上場会社等について社外取締役の選任を義務化することは大きな意義があるものと考えております。

日吉委員 実証研究で明らかになっていない中で、大きな有用性があるというのが、ちょっと話がつながっていないように思ったんですけれども、もう一度、つながっていますか。

宮崎大臣政務官 実証研究はどうかというふうに言われれば、それは実証研究について今御説明を事務方の方でさせていただきました。

 これは、実は、委員も御承知のところだとは思うんですけれども、さまざまな実証研究がされているところでありまして、時期もちょっと若干ばらついているわけでありますけれども、経済界から、また学者の先生から、いろいろなケースを捉えて説明がされているところであります。ですから、その中に、何か統一をした、例えば数理的なテーゼみたいなものが示されているわけではないということは御説明をさせていただいたところなんです。

 ただ、我が国の会社法制の中でコーポレートガバナンスをどのようにして立てていくかというときに、社外取締役の問題というのは、これは産業界、経済界もそうでありますし、また日弁連さんを始めとする法律を扱っている方々、また、さまざまこういう法制を考えていく中で、やはり社外取締役の選任をしっかりしていくことによって経営の独善を防ぐ、また経営陣が保身に走るおそれがあるといった問題点について予防するメカニズムをしっかり立てる、大臣が今御説明をさせていただいたような形で、その有用性というのはやはり一般的には広く認識されているからこそ、先ほど御説明させていただいたとおり、東証の全上場会社においては九八・四%で社外取締役が選任されている、一部ですともう九九・九%になるわけですね。

 ですから、そういったところは、やはり広く一般的には有用性は認識されているからこそ、こういう会社経営における実像があるというふうなことを御説明をさせていただいたというふうに御理解いただければと思います。

日吉委員 一般に認識されていますという一方で、十分に社外取締役が機能しなかったというような事案も出ております。

 そういった中で、本当に機能しているのかどうかということは、実証研究を始め、しっかりと今後も研究していただきたいと思います。

 それと、もう少し質問させていただきますが、時間がなくなってまいりましたけれども、義務化したときに、ある意味、ある会社に影響を及ぼそうとする会社があって、義務化したら、そういった人が社外取締役になることによってその会社への影響力を強めようということが加速してしまうんじゃないかという懸念や、又は、社外取締役同士、A社、B社があって、それぞれを融通し合うというか、相手の会社の社外取締役になるというような形をとることによって、社外取締役制度自体が骨抜きになってしまうようなケースがないかとか、こういった懸念もあるんですけれども、そのあたりはどのような御検討をされていますでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 まず、先ほど私、実証研究の結論につきまして、一貫した結論が得られていないというふうに申し上げましたけれども、ちょっと補足させていただきますと、社外取締役は、少数株主を含む全ての株主に共通する株主の共同の利益を代弁する立場にある者として、業務執行者から独立した立場から会社経営の監督を行って、経営者あるいは支配株主と少数株主との利益相反の監督を行うという役割を果たす、そういった役割は期待しているものでございますので、こういった役割を果たしているかどうかが、先ほど申し上げました企業価値の向上を示す指標の数値にはあらわれにくい。

 したがいまして、これを定量的に示すということが性質上困難な面があるということは御理解いただきたいと思います。

 それから、先ほど二つの会社が相互に社外取締役を派遣し合うということについて御指摘ございましたけれども、会社法上に定める社外取締役の要件を満たす限り、ある会社の出身者である者が他社の社外取締役となり、あるいは当該他社の出身者である者が当該会社の社外取締役となるもの、これは、他で規制されていない限り、親子会社関係があるとかいうことがない限りは許容されるわけでございます。

 こういった場合にそれぞれ相互にどんな影響を及ぼすかということでございますけれども、それは、社外取締役の期待される役割に当てはまる、それに応える形で、社外取締役の選任につきまして、適正な知見と経験を兼ね備えた者を選任すること、あるいは社外取締役機能が発揮しやすい環境を整備する、運用面での取組が重要だというふうに考えておりまして、この点につきましては、各省庁と連携して、法務省としても必要な協力をしていきたいというふうに考えております。

日吉委員 運用面で頑張っていくということなんですけれども、この運用面も非常に問題があると思います。

 仮に、社外取締役が一生懸命取締役会で意見を言いました、しかし、社内の取締役の反対に遭ってその意見が却下されたといったような場合に、この社外取締役が責任をある意味果たしたようなことを担保する制度みたいなものというのはあるんですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 やはり社外取締役が取締役会での会議に際して、当然議決に加わって、議論した上で議決に加わるわけでございますが、社外取締役が反対した場合であっても、取締役会決議は、それ自体は有効に成立するということでございまして、ただ、社外取締役がどのような発言をしたのか、どのような投票態度をとったのかということは、監査役会設置会社、あるいは監査等委員会設置会社、あるいは指名委員会等設置会社においては取締役会の議事録でまたチェックできるわけでございます。

 いずれにいたしましても、先ほどの繰り返しでございますけれども、社外取締役が機能するためには、業務執行者がみずからの利益を図り、又は問題に気がついたにもかかわらず保身に走ってこれを隠蔽する、そういった危険を未然に防ぐという役割を十分認識して、運用面におきまして、適正な知見あるいは資格を有した者の選任、あるいはそういった社外取締役の機能を十分発現できるための環境整備、そういったものについて不断に引き続き取り組んでいかなければならないものと考えております。

日吉委員 どうもありがとうございました。

 ただ、いろいろな面で社外取締役の問題点というのはあるかと思いますので、引き続き御検討をお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

松島委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十九分開議

松島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤野保史さん。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 早速質疑に入らせていただきます。

 本法案は、株主提案権に新たな制限を加えようとしております。法案の三百四条二号では、いわゆる不当な目的の場合、例えば、自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的などの場合、あるいは第三号では、株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがある場合、会社は株主提案を拒絶できるということであります。

 まず、法務省にお聞きします。

 この三百四条などに該当するかどうかについて、どの機関が判断するんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の第三百四条は、株主が株主総会の議場において議案を提案することができる旨を定めた規定でございます。

 株主総会の議長は、適法かつ公正な審議により合理的な時間内に効率的に議事を進めるよう株主総会を運営する職責を果たすために、会社法三百十五条第一項に基づいて議事整理権を有しております。

 株主が株主総会の議場において提案した議案が三百四条第一号から第四号までの場合に該当するかどうかについては、株主総会の議長が三百十五条一項の議事整理権に基づき判断することになるものと考えております。

藤野委員 それでは、三百五条についてはどの機関が判断するんでしょうか。

小出政府参考人 三百五条一項に基づく議案要領通知請求につきましては、三百四条の場合と異なりまして、株主が提出しようとする議案が同条第四項又は第六項の拒絶事由に該当するかどうかにつきましては、取締役会設置会社におきましては、取締役会が会社法二百九十八条第一項及び第四項に基づく株主総会の招集の決定の一環として、また、取締役会を設置していない会社においては、取締役が会社法第二百九十八条第一項に基づく株主総会の招集の決定の一環としてそれぞれ判断することになると考えております。

藤野委員 今、取締役会等が判断するということでありました。

 しかし、濫用に当たるかということと株主の権利行使というのをいわばはかりにかけて、濫用を理由に権利行使を制限するというのは、私は、そもそもこの株主提案権が会社法に導入された趣旨を没却するんじゃないかというふうに思うんですね。両者ははかりにかけるようなものじゃないと。一定の議論を経た上で、権利行使を優先しようということでまさにこの権利が新設されたわけであります。

 法務省にお聞きしますが、一九八一年の国会でこの議論がされたと思います、導入されたと思うんですが、なぜこの株主提案権を導入するのか、国会ではどのように説明されていたでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株主提案権の制度は、昭和五十六年の商法改正によって、制度上、株主がみずからの意見を株主総会で訴えることができる権利を保障することにより、株主の疎外感を払拭し、経営者と株主との間又は株主相互間のコミュニケーションを図り、株式会社をより開かれたものにする目的で導入されたものでございます。

 昭和五十六年五月二十一日の参議院法務委員会におきまして、当時の法務省民事局長は、株主提案権を導入する趣旨につきまして、「株主総会の形骸化ということが言われて久しいものがあるわけでありまして、これを何とかして生き生きとしたものにしたい、株主総会を、法律が期待しておりますそういう充実したものにしたいということを考えたわけであります。」と答弁しております。

藤野委員 今御答弁いただいたところ、株主相互間のコミュニケーションという答弁もありました。

 今御指摘のあった答弁をもうちょっと紹介しますと、当時の民事局長はこう答弁されているんですね。「自分の言い分、主張というものを会社に対して申し出て、そしてそれを総会の議題にしてもらうことができる。会社に対して自分の言い分をアピールする、あるいは他の株主に対して自分の主張を聞いてもらうということによりまして、会社との間のコミュニケーションを高めると申しましょうか、盛んにする、そして株主と会社の間の連帯感、ひいては信頼感というものを確保する方法として考えた」、こういう答弁がされております。

 大臣にお聞きしますけれども、この答弁の趣旨というのは今も変わらない、こういう理解でよろしいでしょうか。

森国務大臣 はい、その制度趣旨は今日においても変わらないものと認識しております。

藤野委員 ですから、この一九八一年の議論というのは私は大事だと思っておりまして、何か自分の言い分をアピールするというだけではなくて、まさに会社と株主の対話ということで、他の株主とのコミュニケーションを高めるということも含むし、結局はそのことを通じて株主と会社の間の連帯感、ひいては信頼感を確保する方法として考えたということであります。

 よく政府は濫用のおそれがあるというふうにおっしゃるんですね、この導入目的として、今回の法案の。ただ、この濫用のおそれというのは、一九八一年の当時も、実はもうさんざんといいますか、物すごく議論されて、ある意味、これは導入してはだめだとおっしゃる方々の最大の論拠の一つでございました。

 それを全部を振り返る時間はないんですが、ちょっと一部振り返りたいと思うんです。実は、一九八一年と申し上げましたが、これは前段がありまして、もともとは一九七四年にも、当時はまだ商法でしたけれども、商法改正されております。ただ、それでは不十分だということで、その商法改正の際に、衆参の法務委員会、両方の法務委員会で附帯決議がなされているんですね。

 こちらで紹介させていただきますと、衆議院の、当院の場合は、一九七三年の七月三日にこういう附帯決議がされております。「わが国の株式会社の現状にかんがみるとき、商法等に改正を要する問題が少くなく、今回の改正をもつてしてもその十分な実効をあげることは困難である。 よつて政府は、次の点について早急に検討すべきである。」といって、幾つか挙げる中に株主総会のあり方というもの、株主提案権は明示されておりませんが、株主総会のあり方とある。

 参議院でも、紹介しますと、一九七四年、次の年の二月二十一日であります。附帯決議はこう言っているんですね。株主、従業員及び債権者の一層の保護を図り、あわせて企業の社会的責任を全うできるよう、株主総会云々かんぬんなどの改革を行うために、政府は、速やかに所要の法律案を準備して国会に提出すること、こういう附帯決議があるわけです。

 法務省に確認したいんですが、この株主提案権の議論というのは、政府のみならず国会からの要請としても求められていた、これは間違いないですね。

小出政府参考人 そのとおりだと承知しております。

藤野委員 今紹介した両院の附帯決議は二年間にまたがっておりまして、当時の商法というのは一国会ですんなり通したのではなくて、七四年が参議院の附帯決議だとすると、一九八一年ですから、七年かかっているわけです。やはり、それだけかんかんがくがくの議論をして、この株主提案権をどうするかということも含めて議論をされていた。法制審にも照会されたり、各界にも意見照会されているんですが、この中でまさにその濫用ということがやはり何度も議論される。これは入れない方がいい、導入しない方がいいという人は必ずこの濫用の議論をするわけですね。

 私も議事録を読ませていただきましたけれども、ちょっときょうは時間がないので、それをまとめた論文を配付資料の二で御紹介しております。これによりますと、こう書いております。

 「このように、」というところで、結局、「委員は」というのは衆参の法務委員であります、「委員は総会屋等による株主提案権の濫用、個人株主の権利の減少のおそれ、株主提案権と単位株制度の法的アンバランス等を主張することで、株主提案権を認めることに大いに疑問を持っていた。」大いに疑問を持っていたというんですね。特に総会屋等による株主提案権の濫用といった考えが委員の意見の底流に存在していたと言うことができる、こういうふうに言っているんです。

 その後が大事だと思うんですね。「政府は総会屋等による株主提案権の濫用のおそれよりもむしろ、株主提案権を少数株主権として認め、株主総会の形骸化の防止や株主の権利の強化を図ろうとすることに重点を置いていたということができる。」重点を置いていたというんですね。まさに、濫用というのが本当に議論されたんですが、やはり、それよりも、株主総会の形骸化を克服していくことが重要だという価値判断で提案権が認められた。その後にも書いていますけれども、結局、修正されていないんです、政府案は。そのまま通っているわけですね。

 ですから、法務省にお聞きしますが、まさにこれが立法趣旨だ、だから、濫用と権利行使をはかりにかけて、何か濫用の場合は権利行使を制限してもいいなんというのは、もともとの何年もかけてきた国会の議論からしておかしいと思うんです。これは、大臣、いかがですか。

宮崎大臣政務官 ちょっと先にお答えをさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、過去の国会における審議があったということは承知をしているところでありますし、立法の趣旨についても、例えば文献だけでなく教科書のようなものを読んでも、先生が指摘されたようなことの記載は当然あるわけであります。

 ただ、今次、時代がだんだん移っていくことによって、いろいろな事例の集積もある。例えば、既にもう説明をさせていただいているところでありますけれども、非常に不適切な、株主総会における株主さんの、まさにこういうのを濫用的というんでしょうけれども、一人の株主によって膨大な数の議案が提案をされる。例えば百個の議案を提案したとか百十四個の議案を提案したというような、個別具体的な事例でもあったりして、そういうことが見られているという現実もございます。

 それでまた、判例も出ているというようなこともございますので、これは御承知だと思いますけれども、平成二十七年の東京高裁の判例ですけれども、こういった事例もあるということも踏まえて今般の法改正に至っているということでございます。

藤野委員 いや、私は濫用はないなんて言っていないんです。濫用はあるということは当然認識した上で、しかも、それをこの国会、この委員会を含めてさんざん議論した上で、濫用は確かにあるね、しかも、提案権なんというものをもし創設したら、それは更に悪化するんじゃないか、こういう懸念があったわけですよ。しかし、それを、議論の結果、それは濫用もあるし、事例もあるし、そのおそれがこの提案権を入れたら更に広がるかもしれないけれども、株主総会の活性化や少数株主の権利拡大という観点から、そちらの方が重点を置かれて、国会で修正もなくこの提案権が通った、実現したじゃないか、こういう提案なんです。

 大臣、これは明確に重点は株主提案権の方にあるんじゃないですか。

森国務大臣 委員の御意見は大変重要な御指摘だと思います。

 委員のおっしゃるとおり、株主総会の活性化や少数株主の保護等に重点を置いたからこそ株主提案権が導入されたということでございまして、今回はその制度をなくすわけではなく、その制度があるという、その原則の上に立って、しかし、濫用はあるよねと議員も言ったとおり、濫用がこのところ見られてきた、そのことについてどのように考えていくかということが、ここまでの間に多様な角度からさまざまな御意見をいただいてきて、今回の法改正の措置がなされたというふうに理解しております。

藤野委員 それは、立法趣旨で、株主提案権の重さというものに対する、大臣、やはりちょっと認識が違うんじゃないか。

 濫用事例は民法の一般法でも規制できますし、議長の議場整理権もこのときに強化をされております。取締役会の権限というのも強化されているわけですね。ですから、本当に、濫用の事例というのはそうした各利害関係者が毅然と対応するということで当然乗り越えていこうということも含めて、この提案権が制定されているわけですね。

 ですから、提案権をいじるなんというのはもともとの議論の到達点から全く違うし、ここは触れないで、ほかの部分で手当てするのが今までの会社法の到達点なわけであります。ですから、そこは株主提案権の重みというものをやはり本当にちょっと考えていただかないといけない。全く的外れなことをされていると思います。

 具体的に、どのように株主提案権が行使されているかということを見ていきたいんですね。濫用とおっしゃっているのはごくごく一部だということであります。

 配付資料の三を見ていただきますと、これは脱原発・東電株主運動に取り組んでいる皆さんからいただいた資料であります。きょうも傍聴にもお見えになっていただいております。配付資料の三はその一部なんですけれども、「私たちの議案にご賛同ください」という、いわゆる共同を広げようといいますか、そういう取組なんですね。ことしのものであります。

 これを読んでいただくと、要するに、ことし日立が英国の原発計画から撤退したということを受けて、去年、私たち脱原発株主の提案議案の一つ、海外原子力関連企業への出資禁止、これは的を射た提案だったと思いますというふうに書いていると思うんです。そのとおりだと思うんですね。まさに経営にかかわる問題で、非常に重要な提起をされていた。

 また、ここには載っていませんけれども、二〇〇七年の東京電力の株主総会では、議決権行使書面の閲覧を通じて自分たちの提案に賛同する株主を約八百人集められて、その結果、役員報酬の個別開示、個別に開示しろという提案については三三%もの高い賛同を得ることができております。

 同じく役員報酬の個別開示の提案は、ことしの関電の、先ほどのは東電ですけれども、関電の株主総会でも提出され、ことしは四三・一%の賛同を得ているわけであります。

 大臣、先ほど、立法当時の中島法務省民事局長の答弁、同じ御趣旨だとおっしゃいましたが、その答弁の中には、自分の言い分をアピールするだけでなく、「他の株主に対して自分の主張を聞いてもらうということによりまして、会社との間のコミュニケーションを高める」、これも趣旨だというふうにおっしゃいましたが、今のような実際のこういう活動はまさにこの法が期待する提案権の行使だと思うんですが、そのとおりでよろしいですか。

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

森国務大臣 個別の事案に対してはお答えすることがなかなか難しいんですけれども、その上で、一般論として申し上げますと、正当な株主提案権の行使の場合は、これは認められる。つまり、今御指摘の、改正当時の事務方の答弁にのっとった正当な株主提案権の行使かどうかということが問題になりますので、客観的に判断して、当該提案が会社の経営を改善するなどの正当な株主提案権の行使であると認められる目的を有しているという場合には、専ら人を困惑させる目的とは認められず、当該提案を拒絶することはできないものと考えます。

藤野委員 何か正当なものと濫用の事例を今一緒になっておっしゃったように思うんですが、私が聞いたのは、要するに、当時、他の株主に対して働きかけるということも、これは一般論で結構ですよ、他の株主に対して働きかけるということも正当な、要するに、まさに会社法が期待する議決権行使のあり方ですねということをお聞きしたんです。それだけ端的にお答えください。

森国務大臣 先ほど御指摘の、成立時の議事録のとおりでございます。

藤野委員 どれだけ権利行使するのに苦労されているかということも御紹介したいんですけれども、まず法務省にお聞きしたいんですが、八百人、先ほど賛同を集めたと言いましたが、これをやるために議決権行使書面を閲覧して、前の年、その株主の方がどういう議決権を行使されたかというのを調べる必要もあるわけですが、この議決権行使書面の閲覧について、大体どういう定めになっていて、大体どれぐらいの期間が認められるんでしょうか。端的にお願いします。

小出政府参考人 お答えいたします。

 議決権行使書面によって議決権を行使できる期間でございますけれども、書面による議決権行使、これは、議決権行使書面に必要な事項を記載して、法務省令で定めるときまでに議決権行使書面を株式会社に提出して行うものとされております。

 そして、これを受けまして、会社法の施行規則では、当該期限を株主総会の日時の直前の営業時間の終了時とするか、あるいは、株主総会の日時以前のときであって、株主総会の招集通知を発した日から二週間を経過した日以後の特定のときをもって書面による議決権の行使期限とする旨定めたときは、その特定のときまでとしているところでございます。

藤野委員 だから、大体二週間というのが一般的になってくるわけであります。二週間で、限られた期間でやるというのはなかなか大変なのであります。

 しかも、三百十一条、現行法は何と書いてありますかといいますと、「株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる。」とあるんですね。

 法務省にお聞きしますが、ここで言う謄写、謄写の請求というのは何なんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 一般に、株主が議決権行使書面の謄写を請求することができるということの意味は、会社は、株主に謄写のための場所を提供して謄写をさせ、その間、謄写を妨げてはならない義務を負うことを意味すると解されているものと承知しております。

藤野委員 いや、私はこれを聞いてびっくりしたんですよ。謄写の請求とありますから、例えば、今の時代でいえば、コピーしてくださいと請求したら、請求することができると書いてありますから、それはもうコピーしてもらえるとか、あるいは、それが無理でもコピーはできるとか、費用負担の関係で、会社に費用負担が生じるなら自分でやりますよということであれば、謄写という場合、あるいは謄写の請求ができるという場合、そういうことができるのかなと思っていたんです。ところが、お聞きしますと、場所を提供して、謄写を妨げないというんです。一瞬、平安時代の話かなと私は思いました。

 深刻なのは、私たちが聞いたところでは、この規定の解釈を盾に、企業側からコピーを拒否されるという例もあるらしいんですね。コピーしたらだめだと。どうするかといったら、手書きでやるわけですよ。手書きで写せと。

 私はこれを聞いて思い出したのは、また思い出したんですけれども、何で毎回思い出すのか不思議なんですけれども、会社法で。失踪された技能実習生、聴取票、これは二千八百七十枚ありました。これは野党各議員が、五会派の議員が、当時、入れかわり立ちかわり取り組んでも、手書きしたら二週間かかったんです。わずか二千八百七十枚ですよ。株主というのは物すごい多いんですよ。それがどれほど大変な作業かというのは私はよくわかります。

 大臣にお聞きするんですけれども、今の時代ですよ、たとえ謄写というのがかつてそういう、これはちょっと通告していないので感想でもいいですけれども、謄写を請求できる、こういう規定なら、解釈で、解釈の変更を検討するとか、やはり時代に合わせたものにする必要があると思うんですが、ちょっと率直な感想はいかがでしょうか。

森国務大臣 今、藤野委員が御指摘なさったことについては、事務方にしっかり確認をさせて、その上でまたお答えしたいと思います。

藤野委員 いや、確認というか、ああいう答弁で、それを盾に場所だけ貸すというのが実態なんです。これでは、ここでせっかく請求できると書いてある権利の実情が伴わないわけであります。ですから、これは確認ではなくて、事務方に指示していただいて、少なくともコピーは認めるというふうにしていただきたいというふうに思います。

 そして、今のは現状の話なんです、この現状に加えまして、今回の改正案の三百十一条は、更にまた目的による制限が加わってくる。

 これは法務省にお聞きしますが、何でこういう制限を加える必要があるんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 議決権行使書面につきましては、株主の住所等は法令の記載事項になっておりませんけれども、これが記載されていることがあるということでございまして、株主名簿の閲覧謄写請求権と平仄を合わせまして、議決権行使書面の閲覧、謄写を請求することができる要件をそろえたものでございます。

藤野委員 いや、そこがよくわからないんですね。

 名前等が含まれる、つまり、同質の情報が、百二十五条の株主名簿、名簿ですから、名簿閲覧請求権にあると。今回、三百十一条で、その権利行使のところに名前が入る場合もある、だから、同質だから、百二十五条にある目的の制限、目的の制限とは具体的には「業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で」などですね、三百四条と似ているんですけれども、こういう目的を加えるんだというんですけれども。

 もともと、この法律、三百十一条が初めにできたときから、その権利行使書面に名前が含まれる場合があるというのは当然あったわけで、だから、同質の情報が含まれるから、百二十五条と同等に、三百十一条にも目的規定で制限をかけるんですというのであれば、もともとやっておけばいいじゃないですか、三百十一条に。何で今になって新たにやるんですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 議決権行使書面の閲覧謄写請求につきましては、株主名簿の閲覧謄写請求とは異なりまして、株主はその理由を明らかにする必要はなく、拒絶事由も明文で定められていなかったところでございます。

 これは、先ほど申し上げましたとおり、株主名簿には株主の氏名又は名称及び住所を記載することとされているのに対しまして、議決権行使書面には株主の氏名又は名称及び行使できる議決権の数を記載することとされており、株主の住所は法令上の記載事項とされていないこと、また、いわゆる名簿屋に情報を売却するといった目的で閲覧謄写請求がされた場合には、権利濫用として、会社側は当該請求を拒絶することができると解されていたことによるものと考えられます。

 しかしながら、議決権行使書面には、株主名簿と同様に、株主の住所等が記載されていることが多く、また、株主名簿の閲覧等の請求が拒絶された場合に、議決権行使書面の閲覧等の請求が濫用的にされている可能性があるという指摘、あるいは、株式会社の業務の遂行を妨げる目的など、正当な目的以外の目的で議決権行使書面の閲覧等の請求がされていることが疑われる事例があるという指摘がされるに至ったところでございます。

 そのような事情がございまして、改正法案では、株主名簿の閲覧等の請求に関する拒絶事由と同様の事由に該当する場合には、議決権行使書面の閲覧等の請求を拒むことができるというふうにしているところでございます。

藤野委員 そういう説明を受けたんですけれども、やはりよくわからないんですよ。そういう事態があるのなら、濫用ともおっしゃいましたけれども、やはりそういうのは別で、権利を制限することによって濫用を防ぐという発想そのものが株主提案権にはなじまないんです。濫用というのはあるという前提で、しかし提案権は保護するという明確な立法意思があるわけですね。ですから、それをまたここで、その権利行使の実質的な部分である書面閲覧をこれまた制限するというのは、そのもともとにある発想が私はおかしいというふうに思います。

 時間の関係でちょっと最後になりますけれども、やはり、なぜ今になって株主の権利行使を制限するのか、合理的な説明というのがないわけです。

 確かに、野村ホールディングスとかHOYAとかあるのは承知をしておりますけれども、立法事実と言えるようなものはないわけであります。結局、経営者にとって都合の悪い提案をなるだけ出さないようにしようという点にあるのではないか。ただ、逆に、それは結局、企業への不信を増幅して、健全な発展を脅かすと思うんです。

 配付資料の四を見ていただきたいと思うんですけれども、これは一九八一年五月二十七日の参考人質疑で、神田秀樹法制審の部会長の師匠筋に当たる方だと思うんですけれども、竹内昭夫東大教授……

伊藤(忠)委員長代理 藤野委員、質疑時間が終結しました。

藤野委員 はい。わかりました。

 では、一点だけ。

 要するに、この参考人が指摘しているのは、真ん中あたりにあります、「わが国における経済社会というものを支えております企業のいわば姿勢を健全にし、国民、投資家大衆との間のコミュニケーションを太くする、国民の側から企業に対する不信の念をぬぐい去っていく一つの手段」、こういう指摘なんですね。

 ですから、今、関電とか日産とか東芝とか、まさに不信の念が広がっているわけであります。取締役も社外取締役も監査役もその役割を発揮できないような事案がふえているわけですね。ですから、そういうときこそ、今の時代こそ株主との対話が必要だと思うんですが、大臣、この点だけお願いします。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

宮崎大臣政務官 簡潔にお答えいたします。

 先ほど大臣もお答えいたしましたけれども、個別の事案にはという前提でお答えしましたけれども、一般論として考えれば、株主がその正当な株主提案権の行使としてやってきた場合に、それが、今いろいろな、さまざまな御指摘があったような、きちっとしたコミュニケーションがされるということを否定するものではないわけであります。

 他方、また、時代の進展などに伴って、先ほど、もう繰り返しになり、言いませんけれども、そういった事情もあって、今回こういう法改正に至っているということも御理解いただければと思っております。

藤野委員 引き続き審議することを述べて、質問を終わります。

松島委員長 次に、串田誠一さん。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 ずっと各委員が質問していただいている中で、私も株主提案権を中心に質問させていただきたいんですが、本会議でも質問させていただきました。その際、このような不当な目的を判断する機関はどこですかという質問に対して、森大臣は株式会社が判断するという話をされていたので、これは目ですか、鼻ですかと聞いているときに顔ですと答えているようなものなんですよ。随分雑だなと思ったんですけれども、きょう、途中まで取締役会という話があったので、あれ、そうなのかなと。これは、三百五条は取締役会、三百四条は議長、こういうような形で正確に整理をさせていただくということが議事録を整理するのにいいのかなというふうに思っているんです。

 その中で、この条文に、「株主が、専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、若しくは困惑させ、」というところの文言を少し確認させていただきたいんですが、その第三百四条の一号には「法令又は定款に違反する場合」というのがあるんですね。それに加えて、二号は「専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、」というのが入っている。しかし、「人の名誉を侵害し、」これは刑法二百三十条の名誉毀損罪にありますし、侮辱というのは刑法二百三十一条に侮辱罪というのがあるわけですよ。これはどちらも法令に違反しているわけですよね。法令に違反していればこれはだめなのに、二号に重ねて「専ら」と書いてあって、この場合には、専らこの場合でない限りはいいような条文に読めるんですけれども、これは条文をどういうふうに読んだらいいんでしょうか。

小出政府参考人 委員御指摘の三百四条第一号及び三百五条第六項第一号、改正法案でございますが、そこで言う議案が法令に違反する場合とは、典型的には、会社法上の欠格事由がある者を取締役として選任する議案の提案、あるいは分配可能額を超える剰余金の配当をする議案の提案などがこれに該当すると解されております。

 これらに加えまして、例えば、御指摘のような名誉毀損罪や侮辱罪等の刑法犯が成立するような議案の提案がされた場合も、この議案が法令に違反する場合に該当するかどうかにつきましては、ちょっと判例、学説上も必ずしも明らかではないところでございます。

 改正法案におきまして株主提案の拒絶事由を明文化したのは、権利の濫用に該当するものとして株主提案を拒絶することができるであろう典型的な場合を具体化したものでございます。そのため、名誉毀損罪や侮辱罪が成立するような議案の提案がされた場合については、議案が法令に違反する場合に該当するものとして提案を拒絶することができると解釈できて、これと重なり合うという可能性はあるとは思いますけれども、改正法第三百四条第二号及び三百五条第六項第二号は、株主が専ら人の名誉を侵害し、又は人を侮辱する目的で当該議案の提出をする場合には株主提案を拒絶することができるということを明確化するものでございまして、これは一定の意義があるものと考えているところでございます。

串田委員 全くわからなくて、意義があるようにも思えないので、何か「困惑させ、」というのを入れたいがために、その前にいかにも納得できるようなものを重ねて入れて、こういうのはだめでしょうというので例示しているかのようにしか私にはちょっと思えないですね。

 それと、次に、「若しくは困惑させ、」というところをちょっと知りたいんですが、かなり法律用語的には、極めて珍しい表現なんじゃないかなと思うんですよ、困惑させというのは。困惑させというのを国語辞書で調べてみると、どうしてよいかわからず困ることと書いてあるんですよ。

 そこで、ここの条文を確認させていただきたいんですが、「専ら人の」、この「人」、次に「人を侮辱し、」、「人」というのは、これは、当該取締役等ではなくて、普通一般人を指すのか。そして、次の「若しくは困惑させ、」というのは、ここには「人」というのが入っていないんですね。この困惑させられる対象というのはどういう人なのであるのかというのを明確にしていただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 人を困惑させる目的という要件におきます人といいますのは提案株主以外の自然人及び法人を指しておりまして、株主提案を受けた株式会社の代表者や取締役、そして当該株式会社も含まれてございます。

串田委員 そうすると、確認すると、「若しくは困惑させ、」というのも、この困惑させというのも一般人の理解でよろしいんですか。

小出政府参考人 該当条文は、人を困惑させというふうに読むことになっております。

串田委員 だから、その人というのは当該会社関係者ではなくて一般人をいうという、前と同じ、名誉毀損とか侮辱とかというのと同じなんですかという質問なんです。

小出政府参考人 先ほどもお答えさせていただきましたけれども、提案株主以外の自然人及び法人を指しておりまして、名誉侵害あるいは侮辱の対象となる人と同じでございます。

串田委員 名誉を侵害しとか侮辱というのは、これは一般的に判断できると思うんですよ。ところが、困惑というのは、どうしてよいかわからず困ること。

 例えば、不正を暴かれて、取締役を追及する、解任決議案なりいろいろな決議案がある。これね、一般人は困惑しないんですよ。困惑するのは取締役なんですよ。自分の不正を何か暴かれるかのような感じがして、どうしてよいかわからず困ることと。まさに困るようなことを提案するから株主提案権というのは設けられたんじゃないですか。

 この場合には、困惑というのは、取締役に関してだけ困惑するということはこれに該当しないということでよろしいですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 人を困惑させの人には、提案株主以外の人を指すものでございますから、提案によって取締役が困惑するというのも条文の規定上は含むということだと思います。

串田委員 答えをすりかえないでください。

 一般人は困惑しなくても、当該取締役の不正を追及するって、一般人は困惑しないんですよ。むしろ、もっとやれ、会社を健全化する、コーポレートガバナンスのために提案するわけですから、それは一般人からすればどしどしやってくれと言われるんですが、当該取締役はどうしてよいかわからず困るわけでしょう。回答を、どうやって言い逃れをしようかと。

 だから、その困惑というのは誰を基準にするのかというのをお聞きしているんです。一般人が困惑しないのであるならばこれには該当しないと明確に答えてください。

宮崎大臣政務官 ちょっと法文の解釈の仕方の問題だと思うんですけれども、例えば、まず、先ほど事務方も答えたとおり、この人を困惑させというときの人というのは提案株主以外の自然人及び法人をいうわけですね。そうしますと、提案株主でないですから、提案の内容によっては、会社の取締役がいろいろなことを追及されて、ああ、私は困惑するというふうなことは、それはある、場合として当然想定できるわけですけれども、この法文で今問題にしているのは、正当な権利行使と認められない提案のみを拒絶するということを前提にしてつくっているわけであります。

 つまり、専ら困惑させる目的によってのみ提案されたものを拒絶できるというふうな形になっておりますので、専ら困惑させる目的でというふうなところで御理解いただきたいと思っております。

串田委員 答弁とかみ合っていないと思いますよ。

 取締役が困惑をするということになれば、専ら取締役を困惑させる質問であっても、一般人にとっては困惑をしないということであればこれに該当しないということでよろしいですかという質問なんです。

 なぜならば、質問によって、一般人が困惑するのと当該取締役が困惑するのとは違うわけですよ。そのために株主総会で議案提案権があるわけですから。世の中で、いろいろ人のことを名誉毀損したりとか侮辱したりというのと違うんですよ。株主総会で議案提案権を行使するということは、当該取締役や今やっている会社の執行を問いただそうとしているわけでしょう。

 ですから、困惑をするのは一般人と取締役が食い違いがあるということは幾らでもあるわけで、困惑をするというのは、一般人が困惑をしない限りはこれに該当しないんですねということをはっきりと言っていただきたいんです。

松島委員長 じゃ、政務官、質問に合致した答弁をしてください。

宮崎大臣政務官 ちょっと一度、先ほどのこともあわせて説明をさせていただきますけれども、今問題にしている改正法案は、株主による議案の提案を拒絶できるかどうかを、株主が人を困惑させるなどの正当な株主提案権の行使とは認められない目的で当該提案をしたかどうかによって判断することとしておるわけであります。

 したがいまして、株主から、今ちょっと例として挙げられているような、当該会社の取締役の不正を指摘する内容の提案がされた場合に、仮にその取締役が当該提案によって困惑するようなことになったとしても、その提案を拒絶することはできるわけではないということが原則だというふうに理解していただければと思います。

串田委員 今、しっかり回答していただいたような気がします。

 要するに、名誉毀損とか侮辱というのは一般的に判断できるわけですよ。しかし、困惑というのは個々人の主観的な部分というものが出てくるわけですから、一般的には困惑をしなくても、当該取締役にとってみると都合が悪い質問とか議案提案権というのはあるわけですから、そういう意味では、この中には該当しない。

 要するに、それは、議案提案はできるということでいいのかどうか、最終的に、政務官、お答えいただけますか。それでいいんですよね。

小出政府参考人 専ら困惑させるなどの目的で提案をしたという事例を前提といたしましても、それを客観的に見て、客観的に判断して、その提案が会社の経営を改善するなどの正当な株主提案権の行使であると評価できる、そういった目的もあわせ有していると認められる場合には、専ら人を困惑させる目的とは認められないということでございまして、そのように整理をしているところでございます。

串田委員 だから、正当なとかという要件が書いていなくて、「若しくは困惑させ、」と書いてある。その前の部分は「名誉を侵害し、人を侮辱し、」と、これは刑法にも、犯罪になるぐらい、これはだめなんだというのははっきりしていますよ。

 ただ、困惑という言葉の中には、どこにも評価が入っていないんですよ。困惑さえさせられれば、それが、追及している側が正しくても、受ける側は困惑することはあるわけでしょう。どうしていいかわからないで困ることというのが国語辞書なんだから。

 だから、その質問が、本来は必要である議案提案権というのもあるわけです、一般的に考えれば。しかし、当該取締役にとっては困惑をするようなことがあるかもしれない。しかし、それは、今回のここには入らないですよ、一般人をも困惑するような質問でない限りはこれには該当しないから、議案提案権は認められるんだ、こういう整理でよろしいですね。

小出政府参考人 困惑させるという言葉自体は、確かにネガティブな意味合いの少ない言葉だということもあるかもしれませんが、改正法では、専ら困惑させるなどの目的ということの提案でございます。

 それで、この規定は裁判例の趣旨を明文化したものでもございますし、法制審議会での部会で議論してきた経緯からいたしましても、専ら困惑させることは、正当な権利行使とは認められない場合、つまり不当な目的の場合を規律の対象とするという議論でずっとやってきておりますので、専ら困惑させるイコール不当な目的の場合であるというふうな整理をしているところでございます。

串田委員 いろいろな審議会だとか判例とかと言われても、これはコーポレートガバナンスをしっかりとやっていこうという法改正の中で改正されている言葉ですから、ここの委員会でしっかり説明できなかったら何にもならないんですよ。ここには単に、困惑させと書いてある。

 そして、次に、議長がこれを判断するというのはきょう初めてお答えいただいたんだと思うんですけれども、三百十五条に議事進行の整理が書かれていますが、困惑をするかしないかというのは、取締役にしてみれば、しっかりと答えられるんだというようなこともあるわけでしょう、困惑するというのは主観的な問題なんだから。これは何で議長が判断できるんでしょうか。

小出政府参考人 議場における提案がされた場合に、それは、提案の内容あるいはその理由といったものを議長の方が提案者に尋ねまして、そのときの総合的な事情を考慮して、専ら困惑させるかどうかということを判断するんだろうと思いますが、確かに、株主総会の議場でこのような提案がされた場合に、それが不当目的であるかどうかということを認定することが難しいという場合ももちろん想定されますので、そういうような場合には、議長としては、それは不当な目的でされた提案であるというふうには認定しないのであろうというふうに考えてございます。

串田委員 何度も繰り返すと時間がもったいないので、もうそんなに聞かないですけれども、専ら困惑という意味で、名誉侵害とか侮辱というのは、客観的にもこれはよくないというのは刑法にも犯罪として定められているからわかるんだけれども、困惑というのは、どうしていいかわからず困ることというのは、相手が不正をしているときだってあるわけですよ。それまでもこれはできなくなるように読めるから何度も聞いているわけでして。

 そういう意味では、取締役はしっかりとこれについてはちゃんと説明できるんだ、それは誤解なんだというふうに取締役が発言する機会があるかもしれない、発言しようと思っているかもしれないのに、その主観的な取締役の困惑しているかどうかというのを何で第三者の議長が判断できるのかと聞いているんです。

小出政府参考人 繰り返しになりますけれども、議場における提案の内容、理由、その提案がされた経緯、また歴史的な背景、またその株主が過去にどのような提案をした者であるかというようなことを総合考慮して判断するものと考えてございます。

串田委員 それが不当に排除された場合についての質問も各委員からありましたが、仮処分ができるとか損害賠償ができるということがありましたけれども、不当に議案提案権を拒絶したということを争うときに、会社法八百三十一条かな、株主総会取消しの訴えを起こすことはできますか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 個別具体的な事案によりますけれども、拒絶された株主提案権に関する議案とまた別で可決された議案との間にまた密接な関連性があるというような事情がある場合には、その可決された議案について決議の取消しの訴えを提起することが考えられるというふうに考えてございます。

串田委員 決議取消しの訴えができないと私はおかしいと思いますよ。損害賠償といったって、今回の改正で、損害賠償の保険代は会社が出すんでしょう。ということは、取締役に対して都合の悪いことは排除しちゃって、どんどん蹴っちゃっておけばいいわけですよ。後で損害賠償を請求されたって、その保険代は会社が出すんだから。そんなような規定をして、ガバナンスなんかできるわけないじゃないですか。

 こういうようなことで、しっかりとした株主提案権であるにもかかわらず排除されたことが客観的にわかった場合には、決議取消しの訴えができなければむしろおかしいというふうに思いますので、今はっきりと、仮処分や損害賠償のほかに株主総会決議取消しの訴えができるということを明確に示していただけたということをお聞きしておきたいと思います。

 ところで、今回、この会社法の改正がなぜ問題になっているかといいますと、先ほど田所委員がおっしゃられたように、現在、もう上場会社というのは圧倒的に社外取締役が採用されているんですよ。それにもかかわらず不祥事が起きているという状況の中、九十何%も九九・何%も社外取締役が採用されている中で義務づけたところで、不祥事が起きているところを解消できるかというような中での改正の中で、現在の改正というのは、取締役の責任を軽減するような規定になっているんじゃないですか、コーポレートガバナンスに対して逆行しているんじゃないですかというのが最大の課題なわけですよね。

 先ほど大臣も内部統制システムのことをおっしゃっていただきましたが、内部統制システムも、株主提案権も含めまして、外部から提案して初めて機能する内部統制システムができるわけで、そういう声を排除して、取締役だけで内部統制システムなんかできるわけないし、その問題の請求をされたら、第三者から損害賠償を受けても、保険代は会社が払うという改正なわけでしょう。何のためのコーポレートガバナンスなのかというのを指摘したくなるのは、これは当然ではないかなというふうに思います。

 ところで、条文の説明をもう一つちょっとお聞きしたいんですが、不当なというような場合には適用しないというのが三百五条の第六項に書かれていますけれども、一方で、十を超える場合というのも、これはできないということになるんですが、不当なというようなことで排除された議案というのは、この十の中の数に含まれないのか、含まれるのか。条文上はっきりしないので、これは明確にしていただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 今回の提案権の規律で、十を超えた部分については、会社の方で提案を拒絶できるということになりますので、十を超える部分について会社に拒絶権を与えたということでございます。

 お尋ねの趣旨は、不当目的だということで排除された場合、それがカウントをされるかどうかということでございますけれども、これは、十のカウントと不当目的というのは別の規律でございますので、今ちょっと整理ができておりませんけれども、その場合には、十の数の中のカウントからは外れるんではないかなというふうに思いますけれども、ちょっとここはまた整理させていただいて、また回答させていただけたらと思います。

串田委員 ちょっと整理していただかないと、条文上はっきりしないんですね。質問を整理させていただくと、十を超えるか、あるいはそれの中でもいいんですけれども、数で単純に拒絶をする項目と内容で拒絶をする項目とが二つ入っているんですね。内容で拒絶をしたときには十の数の中に入るのか入らないのかというのが、これははっきりしないので、拒絶をされたら、例えば十の中で三つ拒絶されましたよということになったら、七になるのか。しかし、いやいや、十のままなのか。七になったら、あと三つ足せるんですねという話にもなるわけで。

 自分が拒絶されるかどうかというのは、先ほどちょっと浜地委員からの質問もあったかと思うんですけれども、早く、自分がこの議案提案ができるものかどうか、そしてまた、この議案が認められない場合には、先ほども言ったように、仮処分なり、損害賠償なり、決議取消しの訴えなりというような法律上の準備もしなければならないわけですから、そこは明確に、その数が入っているのかどうかというのは、やはり整理をしていただかなければならないのかなというふうに思っています。

小出政府参考人 済みません。先ほどちょっと、少し不正確なことを申し上げました。

 まず、十個の個数制限と不当目的の制限でございますが、判断の順序といたしましては、形式的にまず十個の制限をかけまして、その中のうち、不当なものについてそれを外していく、そういう順番になるというふうに考えております。

串田委員 こちらが今の答えを聞いて、ちょっと頭が整理がまだできていないので、それでいいのかどうかというのはまた別の機会にと思うんですが。

 三百五条で、その提案権を判断するのは取締役会だという話だったんですが、当該取締役の不正を追及しているかのような株主提案権があった、ただし、それが専ら困惑をさせるかどうか微妙な場合に、当該取締役は完全にこれは利益が相反するんじゃないかと思うんですよ。そういう場合には、取締役会で議決権を行使するということは許されないと思うんですが、そういう考慮はしないんですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 取締役会の議決については、特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができないとされております。そして、特別の利害関係とは、特定の取締役が会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的な利害関係ないし会社外の利害関係を意味すると解されております。

 取締役会の決議によって、株主により提案された議案が取締役を困惑させる目的でされたものかどうかを判断する場合に、当該取締役が特別の利害関係を有する取締役に該当するかどうかにつきましては、議案の内容等を踏まえ、個別具体的に判断する必要があると考えられますので、一概にお答えすることは困難でございます。

串田委員 そうすると、除外される場合もあるというようなことになるのかなと思います。

 時間になりましたが、あしたはまた参考人質疑というようなことがありますが、大変重要な法案ですので、またしっかりと質問していきたいと思います。

 ありがとうございます。

松島委員長 次回は、明二十日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.