衆議院

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第8号 令和2年4月10日(金曜日)

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令和二年四月十日(金曜日)

    午前十時三十一分開議

 出席委員

   委員長 松島みどり君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 越智 隆雄君

   理事 鬼木  誠君 理事 田所 嘉徳君

   理事 葉梨 康弘君 理事 藤井比早之君

   理事 稲富 修二君 理事 階   猛君

   理事 浜地 雅一君

      井出 庸生君    井野 俊郎君

      奥野 信亮君    門山 宏哲君

      神田  裕君    黄川田仁志君

      国光あやの君    小林 茂樹君

      出畑  実君    中曽根康隆君

      古川  康君    宮崎 政久君

      山下 貴司君    吉川  赳君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      高木錬太郎君    日吉 雄太君

      松田  功君    松平 浩一君

      山川百合子君    竹内  譲君

      藤野 保史君    足立 康史君

      串田 誠一君

    …………………………………

   法務大臣         森 まさこ君

   総務副大臣        長谷川 岳君

   法務副大臣        義家 弘介君

   内閣府大臣政務官     神田 憲次君

   内閣府大臣政務官     今井絵理子君

   法務大臣政務官      宮崎 政久君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      一宮なほみ君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   最高裁判所事務総局刑事局長            安東  章君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  奈尾 基弘君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  北川 哲也君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 伊藤  信君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            池永 肇恵君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 太刀川浩一君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 高田 陽介君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 森  源二君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   伊藤 栄二君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       西山 卓爾君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 山内 由光君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    今福 章二君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  菊池  浩君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    舘内比佐志君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 高嶋 智光君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉永 和生君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中原 裕彦君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    鎌田  篤君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  串田 誠一君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  足立 康史君     串田 誠一君

同日

 理事藤井比早之君同日理事辞任につき、その補欠として越智隆雄君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

松島委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事藤井比早之さんから、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に越智隆雄さんを指名します。

     ――――◇―――――

松島委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官奈尾基弘さん、内閣法制局第一部長北川哲也さん、内閣府大臣官房審議官伊藤信さん、内閣府男女共同参画局長池永肇恵さん、警察庁長官官房審議官太刀川浩一さん、警察庁長官官房審議官高田陽介さん、総務省大臣官房審議官森源二さん、法務省大臣官房長伊藤栄二さん、法務省大臣官房政策立案総括審議官西山卓爾さん、法務省大臣官房審議官山内由光さん、法務省民事局長小出邦夫さん、法務省刑事局長川原隆司さん、法務省保護局長今福章二さん、法務省人権擁護局長菊池浩さん、法務省訟務局長舘内比佐志さん、出入国在留管理庁次長高嶋智光さん、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官浅沼一成さん、厚生労働省大臣官房審議官吉永和生さん、経済産業省大臣官房審議官中原裕彦さん及び中小企業庁次長鎌田篤さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松島委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長安東章さん及び人事局長堀田眞哉さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。古川康さん。

古川(康)委員 自民党の古川康でございます。

 それでは、質問をさせていただきます。

 四月七日火曜日、新型インフルエンザ等対策特別措置法第三十二条に基づきます緊急事態宣言が発せられました。この三十二条の条文を読んでみますと、政府対策本部長は、新型インフルエンザ等、この等に今回の新型コロナウイルスによる感染症も含まれるわけでありますが、この新型インフルエンザ等が国内で発生し、その全国的かつ急速な蔓延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあると認めるときは緊急事態宣言を発することができる、このような規定になっております。

 甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるということが一つのポイントになっているわけでありますが、その日の政府のコロナウイルス対策会議において、本部長たる安倍総理大臣は、そのおそれがあるということで緊急事態宣言を今回したわけであります。これを受けて、政府として必要な対策に取り組んでおられることと存じます。

 この緊急事態宣言が発せられて初めての法務委員会になります。まず大臣、法務大臣としてこの事態にどのように対処されていく方針なのか、お聞かせください。

森国務大臣 このたびの緊急事態宣言は、総理において、現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況、諮問委員会等の意見、政府対策本部での議論の内容等を総合的に考慮し、感染拡大を防ぐとともに、国民の生命及び健康、国民生活並びに国民経済を守るために決断を下したものであると受けとめておりますので、この緊急事態宣言を受けて、私も総理の記者会見の後に法務大臣としての記者会見でも発表したところでございますが、法務省職員、法務省所管の収容施設の被収容者、庁舎へ来訪する一般の方々への感染を防止する対策を改めて徹底するよう指示を出したところでございます。

 また一方、法務省は、国民生活の安全、安心を守るための法的基盤の整備、社会正義の実現という重大な使命を負っており、緊急事態のもとでも必要な業務を継続して実施する必要もございます。そのための対策を講ずる必要がございますので、法務省においては、緊急事態宣言や、それをもとに改正された基本的対処方針の内容等踏まえて、法務省としても基本的対処方針を策定してまいります。より一層効果的な感染防止対策と業務継続対策を講じてまいります。

古川(康)委員 ただいま法務大臣としての基本的な取組方針についてお示しをいただきました。

 具体的にどのように取り組んでいかれるのか、その辺を教えてください。

森国務大臣 具体的な取組としましては、まず、緊急事態宣言等を踏まえた上で、法務省における職員、被収容者、来庁者等への感染防止対策、職員に感染者が発生した場合の感染拡大防止策、そして、多数の職員が出勤できない場合の業務継続計画についての指針として、本日、法務省新型コロナウイルス感染症対策基本的対処方針を策定いたします。

 また、感染症や危機管理等に係る有識者の知見を活用してより効果的な対策を実施するため、先般、既に法務省危機管理専門家会議を立ち上げました。機動的に専門家の御助言をいただく体制を構築してあります。

 次に、感染防止対策及び感染拡大防止対策については、手洗い等の基本的な対処や、いわゆる三つの密を防ぐための職場環境の確保などの対策を更に徹底するとともに、職員の感染リスクを低減、解消するため、テレワークや交代勤務制を強力に推進し、会議や出張などは原則中止又は延期にするなどの対策を講じました。

 また、矯正施設、入管収容施設等の収容施設は、閉鎖的空間であるため、感染者が生じた場合には急速に感染が広がるリスクがあるところ、先般、大阪拘置所の複数の職員の感染が判明したこともあり、徹底した対策を進めております。例えば、義家副大臣を四月八日に大阪拘置所の現場に派遣するとともに、感染症に関する専門的知見を有する自衛隊の職員や専門家の方々にも同拘置所を視察していただきました。先ほどの危機管理専門家委員会のメンバーにも御視察をしていただき、有益な助言をいただいたところです。その助言を踏まえ、矯正施設におけるより一層効果的な感染拡大防止策を講じるために、副大臣のもとにタスクフォースを設置し、この大阪拘置所の対処方針を全国の矯正施設に共通しておろすためのルールを、マニュアルを策定いたします。

 さらに、窓口業務についても、手続を待つ来庁者で庁舎内が混雑したり、職員が不特定多数人と近距離での会話等をしたりすることで感染や感染拡大のリスクが大きくなるため、徹底した対策を図っております。例えば、待合の場合の人と人との間のソーシャルディスタンスをとりますとか、一席ずつあけて座るなど、徹底した対策をとっております。例えば、在留諸申請に係る期限の延長や庁舎への入場制限などにより庁舎内の混雑緩和を図ったり、窓口に飛沫感染防止のためのアクリル板等の設備を設置したりしているところでございます。

 今後も、専門家の助言を得つつ、より一層効果的な対策を具体的に講じてまいります。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 具体的にさまざまな措置を講じていただける、その一端をお伺いすることができました。特に、法務省の場合は、先ほど大臣からもお話ありましたように、収容施設、矯正施設、こうしたどうしても密になりがちなものを抱えておられますので、ぜひとも十全なる対策をお願いしたいところでございます。

 それでは、今大臣からもお話がありましたが、東京出入国在留管理局、ここの実態についてお尋ねをしていきたいと思います。

 三月十日の緊急対策第二弾において、行政手続、公共調達に係る臨時措置として免許の更新の臨時措置等が挙げられておりまして、また、先日改正されました新型インフルエンザ等特措法においても各種手続の特例が規定をされています。外国人の在留許可の更新などについてどうなるのかというふうに思いまして、先日、東京出入国在留管理局に赴いてみました。恐らく多くの外国人で混雑しているのではないかという問題意識のもとであります。

 四月七日の火曜日、比較的混雑しているのではないかという時間帯に行ってみました。確かに局外には比較的長い行列ができておりましたが、逆に、今大臣からお話があったように入場制限をしているようでございまして、中はすいておられました。そのまま人を入れてしまうと混雑してしまって密が発生してしまう、そうならないようにということの規制をされていたということだったのかなと思っているところでございます。

 そこでお尋ねをさせていただきます。

 今、割とすいているような印象を受けたんですが、何か措置を講じられたんでしょうか。講じたとしたら、その根拠規定は何だったんでしょうか。お願いします。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 まず、在留申請窓口の混雑緩和のために、三月、四月、五月、六月、この期間中に在留期間の満了日を迎える在留外国人からの在留資格変更許可申請等につきましては、その満了日から三カ月後まで受け付けるという措置を講ずることといたしました。

 これは、法令上の根拠というのは特にはございませんで、受け付けにつきましては省令において定められているところでございますけれども、申請者の利益を図るために延長することは必ずしも法令に違反するものではないという判断をいたしまして、運用面に関する事項として柔軟に対応することとしたものでございます。

 それから、最も申請の多い、今御指摘のあった東京出入国在留管理局におきましては、窓口混雑の解消を図るためということで、今御指摘のありました入場制限のほか、待合スペースにおける周囲の人との間隔を確保する案内などを行っているほか、なお十分ではない面もありますので、品川駅の東京入管局行きのバスのバス停で、受け付け期間延長を記載した、あるいは入館制限をしていますよということを記載した案内状を配布して、場合によっては出直していただくという取組も行っているところでございます。

 引き続き、感染拡大の防止に向けて万全を期してまいりたいと思います。

古川(康)委員 ありがとうございます。

 こうして運用上でさまざまな御配慮をいただいているということで、大変ありがたく思ったところでございました。

 一方で、行政でありますから法律でないとできないこともあれば、運用でできるというところにも分かれているんだと思います。その辺の区分についてはどう考えておられますか。

高嶋政府参考人 先ほど、受け付け期間につきましては運用において延長しているということを申し上げましたが、実は、先例としまして、平成二十三年の東日本大震災発生時に講じた措置がございます。これは、非常災害特別措置法に基づいて、延長期間の上限を政令の中で定めまして、さらに法務省告示を制定して、在留外国人の在留期間の満了日を一律に延長したという措置を講じたことがございました。

 これは、在留期間というのは法律に定められておりますので、これを延長する場合には法律上の根拠が必要ということになります。

 これにつきましては、今回、インフルエンザ対策特別措置法上にも同様の規定はございますが、こういう規定を用いて同様の措置を講じることができるかどうかにつきましては、政令が必要となりますので、関係省庁とも連携して検討していきたいと考えております。

古川(康)委員 ありがとうございます。

 こうやって許可の延長をしていただくということは大変ありがたいと思います。

 一方で、延長したものについては、いつかは出てきていただかなければならないということになるわけでありまして、本来であれば、デジタルガバメントの推進、まさに、出てこなくてもいいようなものについてはもうオンラインで手続を進める、こうした取組が必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

高嶋政府参考人 御指摘のとおりだというふうに考えておりまして、我々、手続全般につきまして、申請手続等につきましてはオンラインでできるように一つ一つ、一歩ずつ進めているところでございます。今回改めて、この状況を踏まえて、それを推進させていきたいというふうに考えているところでございます。

古川(康)委員 コロナに対する緊急対策ということと、コロナが収束した後の新しい社会としてどうあるべきなのかということについて、一つ一つ歩みを進めていただきたいと思います。

 それでは、最後の質問になりますが、運転免許更新の特例についてお尋ねをさせていただきます。

 同じ発想なのでありますけれども、運転免許の更新について、今、コロナが蔓延する中でどのような方針で臨んでおられるのか、教えてください。

高田政府参考人 お答えを申し上げます。

 警察におきましては、新型コロナウイルス感染症対策として、運転免許証の有効期限が到来する方について、期限前に申出をしていただければ、免許を引き続き有効とし、運転可能期間を三カ月延長する手続をとっております。

 そして、この手続は、四月末までに運転免許証の有効期限が到来する方を対象としておりましたが、今般、その対象者を七月末までの方に拡大したところでございます。

 また、この手続の申出につきましては、各都道府県における新型コロナウイルス感染症の状況や個別の方の実情に応じ、代理人や郵送による申請も認めることができる旨、都道府県警察に周知をしているところでございます。

古川(康)委員 ありがとうございます。

 これについても、このような対応を実務上していただいているということで、大変ありがたく思っているところでございます。

 一方で、東日本大震災を始めとする特定非常災害法に基づく措置としては、法律に基づく措置として、運転免許の期限の更新というものが定められているわけであります。今回も、新型コロナウイルス感染症に基づく特措法として、こうした運用が行われるのかと思いましたけれども、まだ蔓延しているという状況ではなく、今回の緊急事態宣言が、おそれがあるという状況だという状況認識のもとに発せられているというところで、まだそこには至っていないというふうに説明を伺っているところでございます。

 これからも事態の推移に応じた機敏な対応をお願いして、私からの質疑を終了させていただきます。ありがとうございました。

松島委員長 次に、竹内譲さん。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 私からは、このたびの新型コロナウイルスの世界的大流行によって延期となりました京都コングレスにつきまして質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 時間も限られておりますので単刀直入に申し上げたいと思いますが、まず、コングレスそのものの沿革、歴史的変遷、そしてまた現在の機能についてお尋ねをしたいと思います。

山内政府参考人 国連犯罪防止刑事司法会議、コングレスでございますが、一九五五年にその第一回が開催されております。もともとは、一八四六年に第一回が開催されました行刑分野に関する国際監獄会議にさかのぼる会議でございました。その後、国連が発足いたしまして、それに伴って、行刑分野にとどまらず犯罪防止、犯罪者処遇、これを議論する国連の会議に再構成されたものでございます。一九五五年の第一回会議以降、五年に一度、世界各地で開催されておりまして、一九七〇年の第四回会議は京都で開催されたわけでございます。

 今日のコングレスでございますが、ここは、各国の司法大臣や検事総長などを含む世界じゅうの刑事司法関係者が犯罪防止、刑事司法分野における諸課題を議論いたしまして、成果文書となる政治宣言を採択するという形の会議になっております。まさに犯罪防止、刑事司法分野における国連の取組の中長期的な方針を打ち出すという機能を有しているものと承知しております。

竹内委員 そこで、五十年ぶりに我が国で、京都で開催されるということで、私も京都が地元でございますので、我が国で、京都で開催されることの意義を改めて確認をしておきたいと思います。

山内政府参考人 先ほど答弁させていただいたとおり、京都コングレスにおきましては、まさに各国の司法大臣や検事総長などを含む刑事司法関係者が集う会議でございます。先ほど申し上げましたように、犯罪防止、刑事司法分野における取組とか国際協力のあり方について議論を行うわけですが、成果文書として、国連の、あるいは加盟国の刑事司法、犯罪防止の分野における取組の中長期的な指針を政治宣言として採択するわけですが、その採択される宣言は、京都宣言という形になろうかと思います。

 日本国としては、ホストとして、政治宣言、これはあくまでも交渉事でございまして、これを取りまとめるという任に任じられておりまして、そこでリーダーシップを発揮していく。そういう意味では、我が国の国際的なプレゼンス、京都の国際的なプレゼンス、この向上につながるというふうに思われます。

 また、我が国、これまでもいろいろな形で刑事司法の実務者を対象とした研修などを実施しておりましたし、京都コングレスの全体テーマはSDGsが掲げられております。そのSDGsの礎となるような法の支配の浸透に向けたいろいろな地道な取組を日本はやってきたわけでございまして、京都コングレスにおきましては、京都という場を通じて、まさに世界じゅうから参加していただく方々にこういった日本のたゆまぬ努力あるいはその成果を認識していただくといういい機会だと思われます。

 また、法の支配の浸透や世界一安全な国の日本、これを京都を通じて体感していただくという意義もあろうかと思います。

竹内委員 そこで、この京都コングレスでも関心が持たれているというふうに言われておりますが、再犯防止につきまして少し質問したいと思います。

 現在の日本の再入率の実態についてはどうなっておりますでしょうか。

西山政府参考人 刑務所出所者の二年以内再入率について御紹介いたしますと、最新の数値は平成二十九年出所者についてでございますけれども、一六・九%となってございます。

竹内委員 そこで、再入率の実態は今お聞きしました。再犯防止といいますか、再入率を低くしていくことが非常に重要なことだと思うんですけれども、やはり、日本独自の制度として、保護司さんとか更生保護制度、こういうものが非常に重要なのではないかなというふうに思っております。

 地域でも、更生保護女性会の皆様も本当に献身的にさまざまな貢献をしていただいておりますし、大変ありがたいことだというふうに思っております。しかし、なかなか現実に、いろいろ伺っておりますと、高齢化や、それからなかなか保護司さんのなり手がないとか、更生保護女性会もそうですけれども、本当に、せっかくの組織を維持していくことがなかなか困難な状況もあるというふうにお見受けしているわけでありまして、そういう意味で、今後、この辺の課題をどういうふうに捉えているか、そしてまた、これをどのように改革をしていくか、その辺のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 刑務所出所者等の再入率を減少させていくという目標達成のためには、民間協力者の活動の促進や満期釈放者対策の充実強化などを課題として取り組むべきと考えております。

 最初に、委員御指摘ございました民間協力者についてでございますけれども、更生保護女性会というボランティア団体が犯罪予防活動等の地域に根差した意義深い多様な活動を展開していただいておりまして、まさに安全、安心な地域社会の構築のために欠かすことのできない存在となっていただいているところでございます。

 また、刑務所出所者等の社会復帰を支援していただいている保護司さんでございますけれども、実はそのなり手の確保が困難となってきているということでございまして、そこで、法務省におきましては、保護司の負担感や不安の軽減を図るために、保護司活動インターンシップ制度や更生保護サポートセンター等を効果的に活用するなどいたしまして、引き続きその安定的確保といった課題にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 また、もう一つの満期釈放者の対策の充実強化が重要でございますけれども、これまで、刑務所を出所したものの帰るべき場所がない者につきましては、更生保護施設などがその受皿となっていただいておりました。今後、この息の長い支援というものが求められておりますので、更生保護施設を退所した者が地域に定着できるまでの間、更生保護施設が生活相談支援等の息の長い継続的な支援、これを行うことが極めて重要になると考えておりまして、引き続きその充実強化を図っていく必要があると考えております。

竹内委員 現在は、今コロナウイルス対策の真っただ中にありますので、なかなか大変な状況ではあると思うんですけれども、しかし、中長期的に見れば、やはりこの問題は非常に重要な課題だと思っておりまして、単なる、日本がやっていますというだけではなくて、本当に真剣にこれに取り組んでいかないといけないんじゃないかなというふうに私も思います。地域では、目の当たりで、やはり、どちらかというと高齢の女性の皆様のさまざまな御努力に負っている部分が本当に多いともうはっきりわかりますので、保護司、更生保護女性会等、本当に真剣に考えていただいて、前進をしていっていただきたいというふうにお願いをします。

 もう一つ、やはり、元受刑者の雇用の問題、これも非常に重要だと思っておりますし、協力していただける企業さんとか、これがどうなっているのか、また、元受刑者の住居の確保などについても、これは本当に真剣に考えていかないといけないというふうに思っておりますが、この辺につきましてはどのようになっておりますでしょうか。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 刑務所出所者の前歴等にかかわらず就職を支援してくださる、その意思を持ってくださる事業主を協力雇用主と呼んでおりますけれども、この数につきましては、近年、その数がふえてきているという状況にございます。

 しかし、出所者の就労につきましては早期離職の防止というものが重要な課題になっていると認識しておりまして、現在、保護観察所においては、矯正施設やハローワークとも連携をいたしまして、きめの細やかな就労先のマッチング支援をいたしましたり、刑務所出所者等の就労奨励金制度などを活用して雇用継続にも取り組んでおります。さらに、今年度からでございますが、更生保護就労支援事業に新たに職場定着支援業務を加えまして、就労継続のためのマンツーマンの相談支援を開始したところでございます。

 次に、住居の確保という点でございますけれども、これは、先ほども申し上げましたとおり、更生保護施設や自立準備ホームなどに委託をいたしまして、帰住先のない者につきまして年間約九千人から一万人を保護しているところでございますが、しかし、なお、このような者は三千人以上存在しているということでございますので、引き続き、更生保護施設の受入れ、処遇機能の充実を図るとともに、自立準備ホームの開拓や積極的な活用により、こういった帰住先のない出所者等の住居確保に努めてまいりたいと考えております。

竹内委員 今御答弁いただいた課題についても、引き続きしっかりとバックアップをお願いしたいというふうに思います。

 最後に、今回のコロナウイルスの世界的大流行で京都コングレスは延期ということになったんですけれども、やはり日本で開催される非常に重要な国際会議でありますので、ぜひともこれは間違っても中止にならないように願いたいというふうに思っておりますので、この京都コングレスの開催に向けての大臣の強い決意を伺って、質問を終わりたいと思います。

森国務大臣 竹内議員の京都コングレスへ向けてのこれまでの御貢献に深く感謝を申し上げます。

 京都コングレスについては、まことに残念ではございますが、先日、国連が新型コロナウイルス感染症の世界的な感染状況に鑑み開催を延期する旨発表したところでございますが、これは延期でございまして、中止ではないわけでございますので、必ず、延期後の開催については五十年前と同じように京都で、そして国際的な会議の開催地として人気を博している京都、今回、京都府、京都市を始めとする民間団体の皆様も含めて、京都で開催するためにさまざまな準備を行ってきてくださいました。外務省と連携して、主催者である国連と必要な調整を鋭意進めて、ホスト国として必ず、開催へ向けての責任をしっかりと果たしてまいります。

竹内委員 力強い決意、ありがとうございました。

 以上で終わります。

松島委員長 次に、階猛さん。

階委員 立国社共同会派の階猛です。

 ちょっと委員長、私、マスクをしていると息苦しいので、ちょっと外してやらせてください。

松島委員長 周辺から二メートルぐらいありますね。はい。

階委員 緊急事態宣言が出されました。法秩序の維持や国民の権利擁護という重要な職責を担う法務省のトップとして求められる資質とは何なのか、法務大臣から御所見を伺います。

森国務大臣 法務省は、国民生活の安全、安心を守るための法的基盤の整備、社会正義の実現という重大な使命を負っております。

 法務大臣は、このような使命を負う法務省の長として、民事、刑事、基本法の整備、出入国在留管理、各種の人権問題への対応、国の利害に関係のある争訟への対応などにおいて、国民の権利利益や生活にかかわる重大な権限と責任を有しております。

 もとより、このような法務省の使命は国民の皆様からの信頼なくして成り立たないと考えております。そのために、私は、法務大臣としての職責を担うに当たっては、法務行政が直面するさまざまな課題に対して、国民の皆様の声もしっかりと聞きながら、国民の皆様の目線に立って取り組んでいくこと、困難を抱える皆様を一人でも減らしたい、正義の実現という意思を強く持って職務に取り組んでいくこと、国民の皆様に身近で頼りがいのある法務行政を実現するという目的意識を持って、積極的な姿勢で職務に取り組んでいくことが重要であると考えております。

 今述べたようなことが法務大臣の職責を担うに当たって重要であることは、緊急事態のもとでも変わらないと考えております。

 その上で、今般の新型コロナウイルス感染症のもとでの緊急事態下にあっては、感染防止対策、感染拡大防止対策の徹底を図り、職員や国民を始め社会で暮らす方々の生命身体を守ること、感染等により多数の職員が出勤できない状況下にあっても必要な業務を適切に継続することで国民に対する法務省の使命を果たしていくことといった平時にはない課題もございますことから、新型コロナウイルス感染症への対策としてこれらの課題に積極的に取り組むことも、法務大臣が果たすべき職責であると考えております。

階委員 求められる資質とは何かということを聞いているわけで、私は、法秩序の維持や国民の権利擁護という重要な職責を担う法務省のトップとして求められる資質を聞いているわけで、職責は何かと聞いているわけじゃないんですよ。

 事ほどさように、いつもそうなんですが、聞かれたことに素直に答えない。何回も同じ質問を繰り返して、あげくの果てに、ようやく答えともならない答えをする。それで、今答弁の中で言われましたけれども、信頼を得る法務行政というのは成り立たないと思います。

 また、国民の声を聞きながらというくだりもありましたけれども、国民の声を聞いていれば、今回の検察官の定年延長というのもあり得ないと思いますけれどもね。撤回すべきだと思いますよ。

 それで、私、今の答弁を聞いていて改めて思いました。森大臣は、就任以来、国民の代表が集まるこの国会の場で、東日本大震災のときに検察官が理由なく逃げたなどと虚偽の答弁をして、虚偽の情報を流して、質問に対して関係のない意味不明なことを延々と述べ、国民への正確でわかりやすい情報発信をしていないという問題があります。

 今は令和二年ですけれども、昭和の二年というときに昭和金融恐慌がありました。そのときには、当時の大蔵大臣が、破綻していない銀行を破綻したと言うことから取付け騒ぎが起きて、そして金融恐慌に陥ったという苦い歴史もあるわけです。

 こうしたことから、大臣として求められる資質の第一として私が思うのは、国民への正確でわかりやすい情報発信、これが大事なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

森国務大臣 国民への正確でわかりやすい情報発信が重要であることは、委員と認識を共有しております。

階委員 もう一つ重要なことは、法秩序の維持と国民の権利擁護という観点から、法の公平かつ適正な執行を徹底する能力も重要だと思いますが、この点はどうでしょうか。

森国務大臣 もとより、法務大臣は法の公平かつ適正な執行を担う職責を有しておりますから、それが重要であることは同感でございます。

階委員 そうであるならば、改めて、黒川検事長の勤務延長が法の公平かつ適正な執行に当たるのかどうかということを問いただしていかなくてはなりません。

 まず、きょうお配りしている資料の最初のページなんですけれども、何カ所か傍線が引いてあります。最後の方に引いてあるところをごらんになっていただきたいんですが、「検察官が「準司法官」として、以上のような地位と職責を持ち、特殊な検察体制を構成して居る点から見れば、検察官は公務員法では一応「一般職」に含まれて居るけれども、その任免転退等については、一般の行政官吏とは異る特別の措置を定める必要がある」というくだりがあります。

 これはどこから引用してきたものかといいますと、表題に書いてあるとおり、検察官について公務員法の特例を認める必要のある理由ということで、芦田内閣の閣議書類の中に入っていたものであります。

 こうしたことからすると、検察官については一般の公務員と同様の定年制の適用があるといったようなことをこの国会でるる繰り広げられて、解釈変更を正当化しようとしておりますけれども、そもそもはこういう考え方があったということ、それから、昭和五十六年の国公法改正法時に設けられた国家公務員の勤務延長制度は検察官には適用されないという政府見解もあったということ、そういったことも踏まえますと、今回の黒川検事長の勤務延長を可能にした国公法と検察庁法に関する法解釈の変更は、解釈変更の限界を超えていて、不可能ではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

森国務大臣 委員お示しのこの昭和二十二年当時の資料に書かれております、最後に線を引いてあるところをお示しいただきましたが、検察官の準司法官としての性格に基づく記述がございます。

 もとより、私どもも、検察庁法と国家公務員法の関係は一般法と特別法にあるというふうに理解をしておりまして、検察官が準司法官としてこのような特別のさまざまな規定があるということは、ここに書かれていることと同じ理解でございます。

階委員 質問に答えてください。ここに書いてあることとか過去の政府見解を踏まえれば解釈変更の限界を超えているんじゃないかという問いに対して、お答えをお願いします。

森国務大臣 解釈変更については、法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものでございまして、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないものではないというふうに考えております。

 社会経済情勢の多様化、複雑化に伴い犯罪の性質も複雑困難化する状況下において、検察官の勤務延長制度の適用について改めて検討したところ、同制度の導入当時の検討の過程や検察官について適用除外とした理由等については、現時点では必ずしもつまびらかではございません。

 また、検察庁法上、検察官について勤務延長を認めない旨の特例は定められていないこと、検察庁法で定められる検察官の定年による退職の特例は定年年齢と退職時期の二点であり、定年により退職するという規範は一般法たる国家公務員法によっているというべきであること、勤務延長制度の趣旨は検察官にもひとしく及ぶべきであることなどからすれば、検察官の勤務延長については一般法たる国家公務員法の規定が適用されると解釈でき、この解釈変更、今般の解釈変更については問題がないものというふうに考えております。

階委員 大臣、恥ずかしくないですか。いつもそうやって論点ブロックみたいな紙を読み上げて、昔の司法試験の受験生みたいなことをやって。それがだめだから、今新しい司法試験になったんでしょう。恥ずかしいですよ。だから、ロースクールはあれだけだめなのに、昔の司法試験よりも今の方がいいんだなんて言われるわけですよ。そんな論点ブロックを見ないで、自分の言葉で、端的に、わかりやすく。さっき私が冒頭に言ったとおりですよ。この局面で求められる資質として、国民への正確でわかりやすい情報発信が必要だということを認めているわけじゃないですか。全然わかりやすくないことを、関係ないことをるる述べるのはやめてください。

 その上で、過去の今の点に関する国会の答弁では、諸情勢の変化とかそこから生じる新たな要請というものがあったから法解釈の変更はなし得るんだということも言われています。そうした諸情勢の変化は、この短い期間にあったとは到底思えないんですね。もしあったというならば、黒川さんだけではなくて、ほかの検察官についてもどんどん勤務延長されているはずだと思うんですよ。

 官房長に伺います。

 あの解釈変更以降、黒川検事長以外に勤務延長された人はいますか。

伊藤(栄)政府参考人 お答えいたします。

 黒川検事長の勤務延長以降に勤務延長を行った検察官はございません。

階委員 今答弁されたとおりですよ。はっきり言って、黒川さんのためにやっただけじゃないですか。それを素直に認めたらどうですか。それをやるということは、まさに、法解釈の変更を権力者の都合によって恣意的にやった、まさに法の支配ではなくて人の支配ということになるわけですよ。

 もしそうでないというんだったら、この間どういう諸情勢の変化があったか、自分の言葉で答えてくださいよ。論点ブロックを見るような、昔の司法試験受験生のようなことをやっていたら、いつまでたっても国民の信頼は得られませんよ。答えてください。また論点ブロックを見ないでくださいよ。

森国務大臣 委員の質問通告に応じて正確に答えるために、事務方と答弁の内容を準備しております。

 十月末ごろに法制局の第二部の審査が終了しましたが、法律案の提出に至っていなかったので、その後、通常国会への提出に向けて、時間ができましたので、法律案を改めて見直しながら検討作業を行ったところ、担当者の方で、果たしてこの解釈を維持するのが妥当かどうかという観点に立ち戻って検討を行ったところ、今まで答弁したとおり、一月十七日までに法務省内において今般のような解釈に至ったわけでございます。

 そして、その解釈を前提として法律案を策定するのであれば、通常国会の提出に向けて急ぎ作業を開始しなければならず、早期に最終的な結論を得る必要があったことから、直ちに関係省庁と協議を行いました。

 その中で、委員御質問の社会経済の情勢の変化については、勤務延長制度が導入された昭和五十六年当時と比べての社会経済情勢の変化について検討したわけでございます。

 その中では、今まで述べたとおり、例えば、国際間を含めた交通事情でございますとか、各種情報の交換や種々の手続が簡単に行えるようになっているなどの社会経済情勢に基づき、犯罪の性質も変わってきている、複雑困難化している、そのようなことから、犯罪の捜査等に当たる検察官を取り巻く情勢が昭和五十六年当時と比べて大きく変化をしていると考えられたことから、検察官についても、今般の、特定の職員にも定年後も引き続きその職務を担当させるということが公務遂行上必要があるというふうに考えたものでございます。

階委員 まず、昭和五十六年から情勢が変化した、それはそれで認めますけれども、だったらなぜ、十月末の最初に案をまとめた段階で、それを考えて今回出しているような法案にしなかったのかということがありますね。

 それともう一つは、本当に事件の内容が変化して現場でいろいろな能力が、新たな能力が求められるということであれば、さっき私が確認したような、黒川検事長以外に勤務延長がないということは、どういう理由でそうなっているんですか。

 この二点、説明してください。

森国務大臣 まず、一点目の、十月末ごろの法案の中身についての説明でございますけれども……(階委員「中身じゃないですよ。質問について答えてください」と呼ぶ)その法案は、どうしてそのときに検討しなかったかという質問でございますけれども、これについては、その場では、国家公務員法の方の改正に合わせるということで検討する中で、その論点については出てこなかったということでございます。

 十月末ごろに第二部長の審査が終了したんですけれども、法律案の提出に至りませんでした。その後、通常国会への提出に向けて、その提出までに時間ができたので、同法律案を改めて見直しながら検討作業を行いました。具体的には、定年年齢の引上げや、これに伴う諸制度について検察官への適用等を改めて検討する中で、特に勤務延長制度と再任用制度について検討を行ったわけでございます。

 すなわち、勤務延長制度と再任用制度については、従前は検察官には適用がないと解釈されておりまして、それを前提として法律案を策定しておりましたが、昨年十二月ごろから、担当者において、果たしてこの解釈を維持するのが妥当なのかという観点に立ち戻って検討を行った中で、このような解釈を検討するに至ったわけでございます。

 後段の点でございます。後段は、個別の人事についての、黒川検事長以外に勤務延長をした検察官がいないのはなぜかという御質問でございますけれども、個別の人事にかかわることでございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

階委員 個別の人事について聞いていませんよ。それだけ情勢の変化があるんだったら、黒川さん以外にも勤務延長が出てきて当然じゃないですか。

 しかも、きょうの新聞を見ていますと、約千人の方が定時の異動を延期されてその職にとどまるということであるわけだから、まさに大臣が前に言っていた、災害のときなどに異動ができなくなるから、だから定年延長する必要があるんだみたいなことも言っていましたよね。でも、実際、異動を延期にしても定年延長はされないわけじゃないですか。

 全く必要がなかったこの解釈変更、諸情勢の変化というのも後からつくり出しただけであって、本当に諸情勢の変化ということがあるんだったら、長い間かけて十月末まで検討したわけですから、その段階でもう論点としては出ていて条文に反映させているはずですよ。そんな見え透いた作り話をして。まさに私が先ほど言ったとおりですよ。国民への正確でわかりやすい情報発信とか法の公平かつ適正な執行という、この局面で法務大臣に求められる資質を大臣は兼ね備えていない、そう言わざるを得ないんですよ。

 どうですか、大臣。自分の言葉で、反論があるんだったら言ってください。

森国務大臣 個別の人事についてはお答えをすることが困難なんでございますけれども、一般的に、それが必要であるという場合には延長されるということでございます。

 また、災害時については、私は欠員について申し上げたところでございますので、今回の異動については、出る者も入る者も同時にこの新型コロナウイルスの緊急事態に際して一旦異動を見合わせておりますので、御指摘は当たらないものと考えます。

階委員 同じ場にとどまるということは、その間に定年を迎える人もいるかもしれないじゃないですか。その場合に、まさに千人もいれば勤務延長というのも必要なような気がするんだけれども、それはないということは事実としてあるわけです。だから、本当に勤務延長は黒川さん以外に必要だったのかどうかということも改めて言いますし。

 それから、勤務延長の今回の手続ですね。これは私、二月に予算委員会で大臣に何回も繰り返し質問して、ようやく認めたことですけれども、今回の法解釈の変更がなければ黒川検事長の勤務延長は違法になるということを認められたわけですよ。それに関して、黒川検事長の勤務延長の閣議請議の前に解釈変更が行われなければ違法であるということを、大臣は主観的に当時、認識していましたか。認識していなかったかのようなその後の答弁でしたけれども、認識していましたか。

森国務大臣 まず、解釈変更が適切に行われ、その後、個別の人事がございましたので、解釈変更の時期に個別の人事について認識していたわけではございませんので、解釈変更のときには、その変更の手続が適正に行われたということだけは認識していたということでございます。

階委員 済みません、整理させてください。

 解釈変更が一月の二十四日に行われているわけです。その後、閣議請議がたしか一月の二十九だったかに行われていたと思いますけれども、解釈変更なかりせば閣議請議はできないということを当時、大臣は認識されていたのかどうか、お答えください。

森国務大臣 解釈変更の際には個別の人事について認識しておりませんので、委員の御質問の、解釈変更なかりせば閣議請議ができないというようなことを問題意識として持っていたわけではございません。

階委員 問題意識として持っていなかったということは、閣議請議をするわけですよね、その前に当然、法務省の中で、黒川検事長の勤務延長について閣議請議をしますということの決裁を法務省の中でとりますよね。そのとる際には、今般は従来の解釈と変更して検察官である黒川検事長の勤務を延長しますということの理由とかを書いているはずなんですよ、閣議請議の前提となる法務省内の決裁で。そうしたその閣議請議の前提となる決裁書の中で、大臣は、解釈変更が行われたということは御存じでしたでしょうか。知らされていましたでしょうか。

森国務大臣 閣議請議は一月二十九日に行われたわけでございますので、その一月二十九日の直前に事務方から説明を受けましたけれども、そのときには当然、解釈変更が適正になされたということを認識しておりました。

階委員 そうすると、閣議請議の前提となる法務省内部の決裁というのがあるはずなんですが、その内部の決裁書には解釈変更についても言及があったということで、あるいは、添付資料として解釈変更に関するものもつけられていたということでよろしいですか。

森国務大臣 閣議請議の場合に解釈変更についての資料がつけられていたかどうかという御質問でございます……(階委員「法務省の中の決裁です、その閣議請議の前提となる」と呼ぶ)法務省の中の決裁の際に資料がつけられていたかどうかという御質問でございますが、黒川検事長の勤務延長については、適正な解釈変更を前提に、検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、検察庁を所管する法務大臣から閣議請議を行い、閣議決定をされたものであって、適切に法令が適用されたものでございます。

 それ以上については、個別の人事のプロセスに関することでございますので、お答えを差し控えさせていただきます。

階委員 閣議請議の前提となった法務省の内部の決裁書、これを開示していただけませんか。

伊藤(栄)政府参考人 お答えさせていただきます。

 これは、参議院の予算委員会の際に理事会等でお求めがあって既に提出させていただいておりますけれども、閣議請議の書類でありますが、決裁のかがみがございまして、法務大臣……(階委員「法務省の中の書類ですか、それは」と呼ぶ)御指摘は、法務省の中の決裁関係の書類でございます。それは、参議院の予算委員会の理事会等に提出させていただいているものでございます。

階委員 済みません、私、寡聞にして知りませんでしたので、その出されたもの、添付資料も含めて一式、この場に、法務委員会の方に出していただくようお取り計らいを、委員長、お願いします。

松島委員長 では、後刻、理事会で協議の上、要請することとします。

階委員 というよりも、既に出しているから、直接お願いしてもいいですね。

 大臣、いいですよね。出していただけませんか。

森国務大臣 委員長の指示に従います。

階委員 それで、私は、この解釈変更、そもそも、限界を超えて問題があると思っておりますし、必要もなかったのではないかと思っておりますけれども、今申し上げたとおり、本当に解釈変更を前提として閣議請議がなされたのかどうかということも疑問に思っています。要するに、手続が適時的確に行われたのかということも疑問に思っていまして。なぜ疑問に思うかというと、いつまでたっても、日付の入った、その手続をいつ行われたのかということを客観的に証明する資料が出てきていないわけですよ。

 人事院総裁、先般も御答弁いただいて、口頭ではちゃんと、例の書面は一月二十四日に出したということを伺っていますけれども、これも他の委員からもさんざん要求していて、私もずっとこの間お願いしてきましたけれども、なぜ、例の文書のプロパティー、一月二十四日に作成されましたというプロパティーがこの場に出せないのか。それを出していただければ何もこの場にお越しいただく必要もなかったんですけれども、なぜ出せないのかということをお答えください。

一宮政府特別補佐人 一月二十四日に作成し、当方の事務総長が法務事務次官にお渡しした文書については、当該文書のファイルのプロパティーに含まれる情報からは当該文書に関する意思決定の時期は明らかとならないこと、また、このプロパティーに含まれる情報には個人情報やファイルの置き場所などに関する情報が含まれており、これが明らかになればセキュリティー上の問題などを生じるリスクがあることから、プロパティーを提出することは困難であると考えております。

 いずれにしましても、人事院から法務省に回答した文書につきましては、累次にわたり私が国会で御説明申し上げているとおり、一月二十四日に作成し、当方の事務総長が法務事務次官にお渡ししたものであるということは間違いのないところでございます。

階委員 そういうことを言っているから、なかなか国民の信頼は得られないということだと思います。

 それで、大臣は国会でいろいろなことを答弁されていて、私も疑問に思ったことは多々あるんですね。

 今回、法解釈の変更をして、それを法改正の前に適用するということで、読みかえ規定とかがないのにそんなことはできないじゃないかという指摘も別の委員からもされていますけれども、実際、法改正を見ますと、読みかえ規定を置いているわけですよね。読みかえ規定が必要ないと言っているのであれば、読みかえ規定をなぜこの機会につくるのか。

松島委員長 質疑時間が終了いたしましたので、簡潔に願います。

階委員 特に問題となっているのは、定年に達した日、あるいは、内閣の定めるところにより、こういったところをあえて読みかえ規定で設けています。二ページ目、三ページ目につけていますけれども。なぜそんな読みかえ規定が必要なのか。そして、読みかえ規定を置くのであれば、そもそも法改正の前に適用するのは難しかったのではないか。この点について最後お尋ねします。

松島委員長 簡潔に御答弁願います。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の読みかえ規定でございますが、定年に達した日等の点については、必ずしも読みかえ規定を置かなくても現行国家公務員法の規定を直接適用できると考えたところでありますが、改正後の国家公務員法の規定につきましては、管理監督職などの用語が用いられておりまして、これにつきましては読みかえ規定がないと検察官に適用はできないことから検察庁法に読みかえ規定を置いて、その際に、あわせて、今御指摘の定年に達した日などについても、読みかえ規定を置くならばということで読みかえ規定として入れたものでございます。

 以上でございます。

階委員 国民への正確でわかりやすい情報発信と法の公平かつ適正な執行という能力がなければ法務大臣にとどまる資格がないということを重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、山川百合子さん。

山川委員 立国社の山川百合子でございます。

 きょう、五つのテーマの質問ということで、少し急ぎ足でお願いしたいと思います。

 まず、性犯罪の実態に即した対処を行うための施策のあり方の検討と法改正を含む所要の措置を講ずることについて、お伺いをしたいと思います。

 改めてですが、三年前、平成二十九年六月、性犯罪に関する刑法改正が百十年ぶりに行われました。そして、附則九条で、施行後三年をめどとして、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための検討を加え、必要であれば所要の措置を講ずることが求められているため、法務省ではワーキンググループを設置し、十四回の会合を開催されてこられました。このことについては、委員会でも何度も、御答弁の中にもございましたし、こちらも指摘をさせていただきました。そして、この報告書が三月末に出されたということで、これを踏まえて、性犯罪に関する刑事法検討会を立ち上げたというふうに認識をしております。

 大臣の発表によりますと、この検討会、十七名であるけれども、被害当事者、被害者心理、被害者支援関係者、刑事法研究者、実務家から成るということで、私もその委員のメンバーを見せていただきましたけれども、当事者、支援者団体が、求めていたほどの数ではないけれども、当事者であるとか被害者に寄り添う方々も入っているということで、実態に即した活発な議論、検討がなされるということを期待しております。

 そこで、このタイミングでもありますから、この点、幾つか伺っていきたいと思います。

 まず、この報告書の意義と検討会の役割についてお伺いをいたします。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員も御指摘ありましたが、平成二十九年の刑法一部改正法附則第九条におきまして、政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策のあり方について検討を加えることとされておりました。

 そこで、法務省では、この検討に資するように、平成三十年四月、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを設置いたしまして、性犯罪の被害者を含めた、さまざまな立場の方々からのヒアリング等を実施したほか、同法による改正後の規定の施行状況の調査、裁判例等の収集、分析、諸外国の性犯罪に関する法制の調査等の各種調査研究を行いまして、性犯罪の実態把握を進めてきたところでございまして、先月三十一日、その結果を取りまとめた報告書を公表したところでございます。

 この取りまとめ結果を踏まえまして、法務省といたしましては、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための刑事法のあり方を検討するため、今委員からも御指摘ありましたが、性犯罪被害当事者、被害者心理、被害者支援等関係者、刑事法研究者、実務家を構成員とする性犯罪に関する刑事法検討会を開催することといたしました。

 今後、この検討会におきまして、ワーキンググループの調査研究の成果も活用しながら、法改正の要否、当否について、幅広い観点から論点を抽出、整理して、議論を行っていくことといたしております。

山川委員 御答弁、御用意していただいたのはありがとうございます。ただ、私が言ったことは繰り返していただかなくても、ちょっとまとめて、時間がないので、同じことは繰り返さないで御答弁をいただければ大変ありがたく思います。

 それで、私は、この検討会は十分な議論そして検討、必要とあらばさらなるヒアリングとか調査というものも十分行って、熟議を重ねて検討会としての見解を出していただきたいなというふうに思っています。

 ちょっと報告書の内容に、細かくじゃない少しだけ触れさせていただくと、三年前の法改正のときから持ち越されている課題である、いろいろなところでも指摘されている、例えば暴行、脅迫要件、不同意性交、あるいは性交同意年齢、地位、関係性利用や公訴時効について、この報告書の中で、例えばなんですが、実態と法律とが乖離しているのではないかと思う、社会的抗拒不能とでもいうべき状況がある、性交同意年齢が十三歳というのは被害実態からずれがあると感じており最低でも十六歳に引き上げるのが適当である、ドイツでは公訴時効は態様等によるが最長二十年、被害者が満三十歳になるまで時効の進行は停止、イギリスでは正式裁判については公訴時効がない、そういうようなことも報告書の中に書かれております。

 この報告書はすごく大事だと思うんですけれども、検討会のスケジュール感ですね、法制審議会にいついつまでにかけるから、いついつまでに検討会の結論というか見解を出してくださいというような、お尻を決めてやるのではなくて、やはりコロナで今状況が大変ですから、検討会も今開かれていないということもありますので、きちっと熟議を重ねていく、丁寧に進めていっていただきたいと思いますが、この点について森大臣にお伺いをしたいと思います。

森国務大臣 ワーキンググループの報告を受けてこのたび設置された検討会でございますが、その検討にどの程度の期間を要するかというスケジュール感については、検討すべき内容や議論の経過によって決まるものでありますから、現時点で確たることを申し上げる段階にはないと思っております。

 御指摘のとおり、性犯罪の事案の実態とか、被害者団体から示された御要望等も踏まえて、法改正の要るか要らないかという要否、当否、そしてまたその内容についても幅広く論点を抽出、整理して熟議を行っていくということでございますが、一方で、もちろん、被害者団体からの御要望の中にもスピード感というものも入っておりますので、その二つを両立させていくということが本当に重要なのではないかというふうに思っております。

山川委員 スピード感を持ちつつも熟議を重ねていくということで御答弁いただいて、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 そして、もう一点、ここで伺っておきたいのが、過去の法務委員会で私二度ほど取り上げさせていただいた、障害のある方々が性暴力の被害者になる実態があるので、これについて法体系を整備していくことを御提案させていただいたんですけれども、この報告書の中で、障害者の方々の性被害に対してどのように報告されているかということ。それから、宮崎政務官は、先日被害者団体から一万一千五百十四筆の署名を受け取られておられますし、非常にこの問題に心を寄せてくださっている方だということを皆さんも認識されていますので、改めて、この問題に取り組む決意も含めてお伺いできればと思います。

宮崎大臣政務官 御指摘の報告書では、海外の調査に関する文献レビューの結果、これは東洋大学の岩田先生がおまとめになったものでありますけれども、この中で、障害者は健常者より性暴力被害の割合が高いとか、障害者は性暴力被害から逃れることが困難であるというような御指摘をいただいております。

 また、内閣府が依頼をしました支援団体による事例調査では、十四団体が選定した特徴的な事例二百六十八件のうち、被害者の障害の有無について回答があった事例百二十七件について、障害がありと見受けられる事例が七十件あったというふうに挙げられております。

 また、ヒアリングにおいても、障害者の特性に配慮をした規定を設けることが必要であり、障害の重さや行為者と障害者の関係性などによって処罰の要件を定めることも考えられるとか、現在、子供について行われている司法面接を障害者にも拡大すべきであるというような指摘も触れられているところでございます。

 今、先生御指摘をいただきましたNPO法人しあわせなみだの皆様からの御要望でありますが、三月二十五日、中野宏美理事長を始めとする皆様に御来訪いただきまして、刑法改正を求める署名を受け取らせていただき、改めて御意見を聞きました。先生御指摘のとおり、一万を超える数の大変膨大な署名でございました。その思いをしっかり受けとめさせていただくとともに、障害者の性暴力被害が深刻な問題であることを改めて深く認識をしております。

 障害者の方の性暴力というのは、障害のある方が声を上げにくい、そして被害の声が届きにくいというような特徴がございます。こういった特徴をしっかり踏まえて、法務行政、こういった分野に取り組むことが必要であると考えているところでございます。

 今後、検討会において議論が進められていくことになりますけれども、取りまとめ報告書で示されましたような障害者の性暴力被害の実態を踏まえて、スピード感を持って充実した議論を行っていただきたいと考えているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

山川委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 また、報告書の中には、ワンストップ支援センターの強化の必要性についても記述をされております。支援センターは各県にあるんですけれども、まだまだその存在が知られていなかったり、相談員と専門家の連携の必要性が指摘されたり、また専門家の配置とかあるいは予算の確保など、いろいろ声が上がっています。このワンストップ支援センターの機能強化、そして周知など、内閣府としてどう取り組んでいくのかもお伺いをしておきたいと思います。

伊藤(信)政府参考人 お答えいたします。

 内閣府におきましては、性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにおける相談員の処遇改善、二十四時間化、それから拠点となる病院の整備など、支援の質の向上を図るために、交付金によりまして地方自治体の取組を支援してございます。今年度におきましては、前年度の二・一億円から二・五億円に予算を拡充したところでございます。また、自治体の職員ですとか相談員に対する研修も毎年実施をしているところでございます。さらに、若年層の性暴力被害者が相談支援につながりやすくなるように、昨年度、SNSを通じた相談事業を試行実施しましたけれども、これにつきまして、今年度は更に拡充して実施をするということにしてございます。

 ワンストップ支援センターの周知につきましては、先ほど申し上げた交付金によりまして、各都道府県におけます広報経費の二分の一の補助を行ってございます。また、本年度中に全国共通の短縮電話番号を設ける予定としてございまして、これについても今後周知を図ってまいりたいというふうに考えております。

 引き続き、性犯罪、性暴力の被害に遭われた方が速やかにワンストップ支援センターにつながり、適切な支援を受けることができるよう、機能強化、広報の充実に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

山川委員 ありがとうございます。

 今、全国共通の短縮番号の設定というお話がありましたので、ぜひお願いしたいんですが、あわせて、実はシャープ八一〇三という番号が警察庁の方の相談の番号としてあって、このことが全然知られていないという印象を私は持っています。ぜひ、まあ二つあってもいいのかもしれませんが、ちょっとその辺との調整もお願いした方がいいのかなと、今伺って思いました。

 では、きょうはちょっとたくさんあるので、この件、ぜひよろしくお願いしたいと申し上げて、次の点。二つ目の質問として、被告人の保釈中の逃走の増加と日本の司法制度の課題と今後の取組についてお伺いをしたいと思います。

 カルロス・ゴーン被告人が想定外の計画的な国外逃走を実行してから三カ月余り。逃げ得が許されるのかというやり場のない国民の静かな怒りと感情が、我が国の検察や司法に向けられているのではないかというふうに思っています。

 本件に関してその後どのような対応が行われてきたのかお伺いし、あわせて、最近、増加傾向にある被告人の保釈中の逃走事件に関する課題と今後の取組、伺えればと思います。

高嶋政府参考人 まず最初に、出国防止のところから出入国在留管理庁の方からお答えさせていただきたいと思います。

 御指摘のカルロス・ゴーン被告人の逃走に関しましては、当時、出国審査ブースを通過しないで、携行荷物の中に潜んでプライベートジェットにより出国した、こういう情報がございました。

 法務大臣からは、このような事犯を二度と発生させないようにという御指示がございまして、我々出入国在留管理庁としましては、国土交通省に対しまして、厳格な保安検査、荷物の保安検査の実施について協力要請を行ったところであります。

 その結果、本年一月六日から、プライベートジェットの専用施設等において、全ての大きな荷物の保安検査、エックス線による検査でございますが、これが義務化されることとなりまして、以後、空港運営権者等におきまして適切に実施されていると承知しております。

 今後とも、出入国在留管理庁においては、不正な出国を防止するため、関係機関と連携して、適切な出国管理に努めてまいりたいと考えております。

川原政府参考人 ゴーン被告への対応のうち、刑事事件に関するものについて、まずお答えを申し上げたいと思います。

 この件につきましては、東京地方検察庁におきまして、まず、ゴーン被告人本人につきまして、本邦から不法に出国したという出入国管理及び難民認定法違反の事実により、また、ゴーン被告人の共犯者らにつきましては、ゴーン被告人を国外に逃亡させたという犯人隠避と出入国管理及び難民認定法違反幇助の事実により、それぞれ、本年一月三十日に逮捕状の発付を受けるなどしており、引き続き、所要の捜査を行っているものと承知しております。

 それから、委員からこういった逃亡事案での課題と対処という形でお尋ねがありましたので、引き続き、この点についてもお答えを申し上げたいと思います。

 近時、このゴーン被告人の逃亡、あるいはそれ以前に我が国の国内で発生いたしました逃亡事案によりまして、さまざまな御指摘をいただいているところでございまして、法務省といたしましては、保釈中の被告人や刑が確定した者の逃亡を防止し、公判期日への出頭や刑の執行を確保するための刑事法の整備につきまして、法制審議会にその調査審議をお願いしているところでございまして、法制審議会の議論を踏まえまして適切な対処をしてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

山川委員 ありがとうございます。

 その法制審議会への諮問のことなんですけれども、森大臣は、保釈中の被告人逃亡を未然に防止する方策として、GPS、アンクレットでしょうかの装着に言及しておられます。このことは言及はされているんですが、法制審で御議論いただきたいというふうに思っていることとして、司法制度というのは全体的なバランスと調和の中で実効性を発揮するものであると思いまして、もちろん、GPSが特出しはされていますけれども、それ以外も諮問の内容には含まれているというのももちろんそうなんでしょうけれども、その諮問が、出頭と刑の執行を確保するための刑事法の整備ということに、タイトルになっていますので、ただどうやって逃げないようにするかということだけじゃなくて、それはより包括的に議論していただきたいと思っています。

 それで、ちょっと時間もないので、次の質問とあわせてお聞きしますけれども、まず、全体的なバランスということの中で、一つ目は、保釈金の役割と金額の設定について、あわせて伺っておきたいと思います。この保釈金の設定が、ゴーン被告の財力に対して低過ぎたのではないかという印象を多くの国民が感じたわけですけれども、基本的に保釈金は、裁判が結審することによって回復される不利益が逃走に見合わない範囲で設定されなければなりませんが、この基本的な保釈金の役割と金額の設定について。

 また、GPSアンクレット等の装着について、メリットとデメリット。それから、保釈中の被告人の監視がこのGPSによって強化されるわけですが、これにあわせて、被告人の人権に配慮して、海外等から人質司法と解されてきたような勾留期間の短縮や、またこれまでも懸案であった取調べにおける弁護士の同席、これについても検討すべきだと思っています。

 そして、もう一つ加えるとすれば、被告人の海外逃亡事件が発生した場合の、国際司法の役割の実態についても。これは、日本にさえ戻らなければ逃亡犯が自由に世界じゅうを移動できるとなれば、保釈金をかけてでも、逃走資金をかけてでも逃走のインセンティブは強調されることにもなりかねないということで、犯罪人引渡し条約、日本はアメリカと韓国だけだというふうに思いますけれども、締結国の拡大。これには日本の死刑制度が相手国にとっての障害になっているというふうにも思います。この締結国拡大についてのメリット、デメリットを含めて、全体的な司法体系として考えていただきたいと思うんですが、スケジュール感も含めてお伺いをしたいというふうに思います。

森国務大臣 刑事司法制度がバランスの中で成り立っているという委員のお考えと、私も同じ意見でございます。

 このたびの諮問は、逃亡が今ふえている現状の中で、その防止のための刑事法の整備ということで諮問をいたしましたけれども、刑事司法制度が個々の制度と関連し全体として機能するように成り立っているものであるから、その中の全体のバランスということについてもこれは考えていくべきです。これについては、現在、四者協議会という関連機関において協議をなされてきておりますので、そちらに法務省も積極的に参加をして検討するように指示をしたいと思います。

 その他の論点については、事務局から答弁させます。

山川委員 こういった問題に総合的に取り組んでいただきたいということを申し上げたので、済みません。通告も、そのような感じで通告をさせていただいたというふうに思っております。ありがとうございます。

 では、続いてなんですけれども、新型コロナウイルス感染症対策、緊急事態宣言に関連してなんですが、ちょっと一、二、三の順番を変えて、三つ目の法務省のかかわるところで。

 おとといかな、きのうのニュースでしょうか、京都市で新型コロナウイルスに感染していることが判明したとする個人名が書かれた張り紙が民家の壁や掲示板に掲示されたと。男性三名の名前が記されていて、実在する方かどうかは不明だけれども、京都府の対策本部長という形で出されていたようですが、それは実際そういうものはないということであります。

 感染が拡大して、経済活動が非常に制約を受け落ち込んで、国民はみんなその苦しみの中にいる中で、やはり人心が乱れ、人の心がざわつき、社会が不安定になっていくというふうに心配されます。そんな中で、ネット上を始めとして、事実であるかどうかもわからない、フェイクを含む個人を特定した誹謗中傷の書き込みなどが広がってくるおそれがありますが、被害防止、個人情報保護、プライバシー保護への対応と対策についてお伺いをいたします。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症に関連して、不当な差別や偏見があってはならないものと考えておりますし、不当な差別や偏見をあおるような行為もまた許されないと考えております。

 法務省におきましては、これまで、SNS等によりまして、感染者等に対する誤解や偏見に基づく差別を行うことは許されない旨のメッセージを発信するとともに、人権相談の窓口の案内を発信してきたところでございます。

 また、新型コロナウイルス感染症に関連したものを含めまして、さまざまな人権相談に応じております。相談等を通じて人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講ずることとしておるところでございます。

 法務省といたしましては、こうした形で人権擁護活動にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

山川委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いをいたします。

 それから、コロナ対策関連で、二つ目として、警察への協力要請ということについてお伺いをしておきたいんですけれども、私の知人、関係者の中でイギリスからの帰国者の話をちょっと伺うと、現地での外出自粛要請に住民は整然と従っていて、軍や警察が強制権力を行使するような事態は生じていないけれども、地元警察による市中警らは通常よりも頻度を増しているということでもありました。

 それで、自粛要請に対して、我が国でも、このような今の状況の中で、先ほどのSNS上での情報とか、いろいろなことが起こっています。日本では法的にはロックダウンはあり得ないと政府は繰り返していらっしゃいますけれども、拘束力がなくても日本国民は自制的であり、また、警察による通常警戒や、詐欺事犯など防犯対策の強化、都道府県知事との連携などで国民の安全と安心を守ることが十分できると思いますが、警察の対応をお伺いしたいというふうに思います。

太刀川政府参考人 今委員がお尋ねの中で御指摘をいただいたように、警察では、この新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針にのっとりまして、混乱に乗じた各種犯罪の抑止や取締りの徹底にも努めているところでございます。

 その上で、今回の緊急事態宣言を踏まえて、東京都を始めとする七都府県の知事は、新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定に基づく外出自粛要請等を実施しているものと承知しております。

 警察としては、知事からの要請等を踏まえ、外出自粛要請に伴う繁華街等でのトラブル等の発生を防止するため、制服によるパトロールを強化し、警戒活動等の所要の措置を講じておりますほか、そうした活動を通じて、状況に応じ、国民に対し、外出自粛要請が出されている旨の一般的な声がけを行うなどの協力も行っているところでございます。

 引き続き、都道府県知事が新型コロナウイルス感染症拡大防止のための対応を行うに当たっては、警戒活動等、所要の措置を通じて適切に対応してまいります。

山川委員 ありがとうございます。

 緊急事態宣言でも、今まで、これまで行っている一般的な対応をしていくという、だけれども、ぜひ国民の安心、安全を守っていただきたいなというふうに思っております。

 それで、コロナ対策に関連して、クラスター対策も含めてあと残り幾つかあったんですけれども、ちょっと時間が足りないので、この質問は、もう一つほかの委員会で質問の機会があるので、ちょっとそちらに回させていただいて、最後、自殺された元近畿財務局職員が不正を告発するために残したとされる手記を法務大臣としてどのように受けとめているかを伺いたいというふうに思います。限られた時間ですので。

 この手記が発表されて、皆さんも、大臣ももちろんお読みになっていらっしゃるというふうに思います。

 抵抗したとはいえかかわった者としての責任をどうとるかずっと考えてきました、今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでしたとして死を選んだ。あるいは、責任をとるために死を選ばざるを得ないというふうに追い詰められてしまった。そして、自分ばかりが責任を負わされる理不尽さに対して抗議の死であったというふうにも言えるというふうに思います。

 若者がきのうツイッターで、こういうのがありましたよと紹介されていました。まじでこんなのないと。初めて週刊誌読んだ、正直、政策とかよくわかんないけど、人として何がよくないかは有権者の高校生にもわかる、真面目な人が守られる世の中であってほしい、本当にびっくりした、こんなのないよ、まじでこんなのないというふうにツイッターで発信されているということであります。

 大臣は、文字どおり命をかけたこの手記について、どのように受けとめられていらっしゃるか、伺えればと思います。

森国務大臣 近畿財務局の職員の方がお亡くなりになられたことについて、心より御冥福をお祈りし、また、残された御遺族の方にお悔やみを申し上げたいと思います。

 手記については、紙面に掲載されているものを読ませていただきました。法務大臣としては、検察当局が捜査を行い、また不起訴処分とした事件に関係するものでございますので、この場で感想を述べることができないことを御理解くださいませ。

山川委員 立場上、この場では感想を言えないということはわかりました。

 質問時間も終了なんですけれども、またの機会にもう一度伺いたいと思うのは、森大臣にとって正義とは何なのかということを改めて別の機会に伺っておきたいというふうに思います。本当にこの国の政治に正義を取り戻したい、その思いは一緒であると思いますので、改めて次の機会に譲りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

松島委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十一分開議

松島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松平浩一さん。

松平委員 どうもこんにちは。立国社の松平浩一です。

 けさ、古川委員の方から、出入国管理庁が混雑緩和の措置をとられているみたいな話がありました。私もこの間、きのうかな、おとといかな、ツイッターで知ったんですけれども、法務局も非常に多くの人が並んでいるんですね。新型コロナの中小企業支援の関係で、補助金であるとか融資であるとか、そういったものをもらうために登記簿謄本をとるというので、もう本当にすごい列の写真が載っていました。そういった現状にあるということで、そのあたりの対処もぜひお願いしたく思っております。どうぞよろしくお願いします。

 それで、今回、新型コロナの関係で、人が一カ所に集まる株主総会、こちらをどうするのかということで聞きたいなというふうに思っています。

 この株主総会について、私は、一年ちょっとぐらい前ですかね、この法務委員会の方で、株主総会をバーチャルにできるのかということをさんざん質問させていただいて、そのときに、ハイブリッド型ならできて、バーチャルオンリー型はちょっと現行法上できない、そういう御回答をいただいたかと思うんです。

 今の新型コロナの影響で、やはり、三つの密というので物理的に集まることができない、こういう状況で、今こそバーチャル株主総会というものが求められている、必要とされているということなんだろうというふうに思います。ちょうど今、三月決算の会社も多いので、余計、ここに焦点を当てて考えていかなきゃいけないのかなと思っています。

 そこで、まず最初にお聞きしたいのは、新型コロナの件で、株主総会に関する法務省の見解というものをホームページで発表されていらっしゃいます。こちら、資料一の方でお配りさせていただきました。これはホームページを抜粋したものなんですけれども、一から三までありまして、ちょっと一までを区切って、資料として記載させていただいたんですけれども、「定時株主総会の開催について」と題するここの部分ですね。これは、結論から言うと、新型コロナウイルス感染症、今回の事象に関係して株主総会をどうするのかというと、定時株主総会が開催できなくなった場合、延期は可能としているんですね。下から三行目のところなんですけれども、会社法は、株式会社の定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定していますと。これは会社法の原則として規定していますけれども、事業年度の終了後三カ月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけじゃないというふうに言っているんです。

 それで、下から四行目のところを見ると、状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるというふうに書いてあるんです。そういうふうに説明しているんです。そこで、この合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるよという、じゃ、どういった場合かというと、今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合にはと。そういった場合には延期が可能ということを言っているんですけれども。

 ここでちょっと質問なんですが、今のこの新型コロナの状況、緊急事態宣言も出されました。じゃ、緊急事態宣言が出されたこの状況をもって、もう株主総会は延長していいということでよろしいんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、定時株主総会を開催することができない状況にあるかどうかについてでございますが、これは、株主の数や会社の規模、各会社が置かれている状況など個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されるべきものであります。

 したがいまして、緊急事態宣言がされたという一事をもって、これに当たるかどうか、お答えすることは困難でございますが、例えば、これにより決算の手続が遅延して決算の内容等を確定することが困難となったといったような場合には、一般論としてはそのような状況に該当する場合が多いと考えているところでございます。

松平委員 なるほど。つまり、この状況、新型コロナが蔓延しているからですとか、緊急事態宣言が出たからというだけじゃなくて、もう一つ置かなきゃいけない。今の具体例のように、決算が遅延するですとか、そういったものが必要ということなんですね。

 その程度でよろしいんですね。じゃ、株主の中に感染者がいたとか、そこまでは要求されていないと。

小出政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、各会社が置かれている状況など個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されるものでありますので、一概に申し上げることは困難でございますが、あくまで一般論としては、先ほど申し上げたような、決算の手続が遅延し決算の内容等を確定することが困難となった状況のほか、新型コロナウイルス感染症の拡大の状況、会社の規模、株主の人数や年齢、その他の株主構成、また株主総会への株主の出席動向等を総合的に考慮して、社会通念上一般に要求される安全性を確保した上で株主総会を開催することが困難であると判断される状況等も含まれると考えているところでございます。

松平委員 なかなか判断が難しそうなんですけれども、この判断というのは、じゃ、誰がするんですか。

小出政府参考人 各会社において、その置かれている状況など個別具体的な事情を総合的に考慮して、各会社において御判断いただくことになると思います。

松平委員 わかりました。各会社の責任で判断するということです。

 では、そのように判断して延期を決めました、その後に、この株主総会はどうすればいいのかというと、下から四行目に、その状況が解消された後合理的な期間内に開催すればいいというふうに書いてあるんですけれども、こちらもちょっと先ほどの質問とかぶるんですが、例えば、新型コロナ肺炎の終息宣言が出されたですとか、緊急事態宣言が終わったということで、じゃ、株主総会を開催しなきゃいけないのかということになるんですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるという記載でございますが、これは必ずしも、緊急事態宣言が解除された場合にはすぐに定時株主総会を開催しなければならないという趣旨ではございませんで、各会社において、定時株主総会を開催することができないと判断するに至った個別具体的な状況が解消された後、株主総会を開催するために必要となる合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるという趣旨でございます。

 一般論として申し上げるとすれば、例えば新型コロナウイルス感染症の影響によりまして決算の手続が遅延し、決算の内容等の確定が困難となった状況が生じたことを理由として定時株主総会を開催することができないと判断している場合には、その決算の内容等の確定や株主総会の開催準備等に要する期間を含めた、株主総会を開催するために必要となる合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りると考えているところでございます。

松平委員 今、状況が解消された後に、合理的な期間内に株主総会を開催すれば足りるという話なんですが、これは、私はちょっと言い過ぎかなというふうにも思っています。新型コロナのこの状況が収束するまで、これはいろいろなことを言っていらっしゃる方がいらっしゃいます。私もそんなことは考えたくもないんですが、収束まで一年かかってしまう、一年半かかってしまうという可能性もあり得るという話もあります。そういうことから考えると、やはり、株主総会を一年半開催しないというのは、なかなか、それでいいのかなというふうにも思ってしまうのですね。

 ちょっとそのあたりで、ここで、解消された後に足りるとまで言っちゃっているので、これはずっと、ずっとというのも永久にという意味じゃなくて、一年半とか解消されなかった場合、これはどうなるんですか。ずっと開催しなくていいということになりますでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 会社法上は、定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないこととされております。この趣旨ですが、一般に、毎事業年度の損益状況を確定し、これに基づいて剰余金の配当を決定することにあると解されておりまして、本来、各事業年度に係る定時株主総会は、次の事業年度中に開催されることが想定されていると考えられます。

 他方で、先ほど来御指摘ございます法務省のホームページにおいて示しているとおり、定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に総会を開催すれば足りるという整理をしております。

 いつ定時株主総会を開催するかにつきましては、各社において個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されるものというふうに考えられますが、一般論としてまたこれも申し上げるとすれば、法は不可能を強いるものではございませんので、会社法の規定も、定時株主総会を開催することができない状況が長期間継続したとしても定時株主総会の開催を義務づける趣旨ではないというふうに考えられますので、やはり、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えております。

松平委員 それでいいんでしょうかね。私は、今、株主総会はバーチャルでも開けるので、やはり一定の時期に開催しましょうよという形で進めた方がいいのかなというふうにも思っているんですけれども。

 ちょっと私、もう一つわからない点がありまして、それが、私も先ほど気づいたので資料一の方に記載できていないんですけれども、このホームページ上、この一の後に二、三とありまして、この二の方に基準日の話が書いてあるんです。それで、ちょっと資料一に書くことができなかったので今読みますと、定款で定時株主総会の議決権行使のための基準日が定められている場合においてと。この場合においてというのは、これは大抵の会社が該当すると思います。株懇のモデル定款とかも基準日の定めというのがデフォルトで書いてありますので、大抵の会社はこれの場合においてに該当すると思います。

 そうすると、この場合において、新型コロナ感染症に関連して、当該基準日から三カ月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じたとき、会社は、新たに議決権行使のための基準日を定めと書いてあるんです。そういった形で書いてあるので、定時株主総会を延期するという状況が生じた場合に、新たに基準日を定めなきゃいけないのかなというふうに読めちゃうんです。

 ただ、今の質疑でちょっと言っていただきましたけれども、法は不可能を強いるものじゃなくて、長期間開催できない状況が継続しても義務づけるものじゃないというふうにおっしゃっていただいたので、そのことを考えると、いつその基準日を定めていいかわからない場合、今の状況なんかはそうだと思うんですが、その場合に、延期を決めたときに基準日を定めなきゃいけないのかというところをちょっと聞かせてください。

小出政府参考人 お答えします。

 株主総会における議決権行使のための基準日につきましては、個別の事情に応じて各社において判断されるべきものでありますが、一般論として申し上げれば、当初予定していた時期に定時株主総会を開催しないことを決定する時点で新たな基準日を具体的に決定することが求められるものではなく、株主総会を開催する時期の見通しがついた時点で、そういった段階で、それを踏まえて基準日を定めることが可能だというふうに考えております。

松平委員 了解しました。ちょっと、二のところがそういうふうに読めてしまったもので、明確化のためにお聞きしました。安心いたしました。

 それで、次に、バーチャル株主総会自体に関してお聞きしますけれども、できると言われたハイブリッド型の株主総会、こちらは、物理的な場所を決めて、ネットで株主総会に参加できますよというものなんですけれども、二月の二十六日に経産省の方で、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイドというものが公表されています。これは読むと非常におもしろくて、結構踏み込んだ解説がなされているんです。

 例えば、バーチャルで入る株主の端末にふぐあいがあってバーチャル出席できない場合、これは、まあそのとおりかなと思いますが、株主総会の決議の瑕疵とはならない、そういうことが書いてあったり、あと、会社の方で、通信障害のリスクがありますよと告知を事前に株主にしていて、それで、かつ、通信障害の防止のための合理的対策をとっていた、そういった場合には、仮に通信障害があってバーチャル株主総会に株主が参加できなかったとしても、決議の取消し事由には当たらないと解することもできる、そういうふうに書いてあるんですが、ただ、やはりこれも、これはこれで結構踏み込んでいるなと思います。

 ここまで書いていただけると、やはり企業としてはありがたいことかなと思うんですけれども、会社法はやはり法務省の所管法令なので、今のガイドライン、経産省のガイドラインですけれども、どうなんでしょうね、法務省としてもこのガイドラインと同じ立場にあると考えてよろしいんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のこの経済産業省が公表したハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイドでございますが、これは経済産業省が開催した新時代の株主総会プロセスの在り方研究会における議論に基づいて策定されたものでございまして、この研究会には法務省も出席しておりました。

 このガイドは、株主総会の開催方法の選択肢としてハイブリッド型バーチャル株主総会の実施を検討する企業のために、法的、実務的論点や具体的な実施方法等を示しているものと承知しております。

 法務省といたしましても、このガイドが示しているハイブリッド型バーチャル株主総会の具体的な実施方法等は適切なものであると認識しております。

松平委員 どうもありがとうございます。確認させていただきました。

 それで、次なんですけれども、資料二として裏で書いてあります。お配りさせていただいています。

 上の方の欄に、これは日経新聞の記事なんですけれども、四月二日に出された記事です。これは見出しが、「株主出席ゼロで総会可能 経産省見解、新型コロナで」という見出しになっているんです。

 恐らくこの記事のきっかけになったのが、やはり同じ日に出されている、この資料二の下のところに今記載させていただいている株主総会運営に係るQアンドA、こちらの案内になります。

 これは経産省と法務省で連名で出されているQアンドAになるんですけれども、こちら、ちょっと見ると、例えば、Q1で、株主総会の招集通知において、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために出席を控えることを株主に対して呼びかけることは可能ですかというクエスチョンがありまして、それで、答えとして、可能ですと。そして、云々と書いてあるんですけれども、可能ということなんですね、株主総会出席を控えてくれと言うことは。

 それで、Q2として、こちらは、感染拡大防止に必要な対応をとるために会場に入場できる株主の人数を制限することは可能ですかという質問で、こちらも、可能ですと書いてあります。それで、これをもっと詳しく読むと、その結果として会場に事実上株主が出席していなかったとしても、株主総会を開催することは可能、そこまで書いてあります。これは、控えるように言っておいて、それで結果として株主ゼロになっていて、それでも株主総会を開催することは可能ですよというふうに読めるんです。

 ここなんですけれども、ちょっとお聞きしたいのは、結局、ゼロに制限することはできるのかというところなんです。出席を控えるという呼びかけというのがちょっと曖昧なんですよね。出席しないでくださいとそこまで強くない、まあ日本語の部分なんでしょうけれども。そこでいうと、どうなんでしょうかね、これは、ゼロに制限した上で株主総会を開くということもできるんですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株主が株主総会に出席して取締役等に説明を求めて意見を陳述する権利、これは十分に尊重される必要があるというふうに考えております。

 したがいまして、合理的な理由もなく、会場で株主総会に出席することを希望する株主の出席を拒否するといったことは許されないと考えられます。

 しかし、例えば、発熱やせき等の症状を有するなど、新型コロナウイルス感染症への罹患が疑われる株主については、会場で株主総会に出席することを強く希望したとしても、感染拡大防止に必要な対応として、会場への入場を制限することや退場を命ずることができると考えられます。また、出席希望者にそのような症状がない場合であっても、希望者全員を出席させると感染拡大を防止するために必要な措置を講ずることができないと判断されたときには、事前に必要な範囲で出席者の人数を制限するなどの措置を講ずることができるものと考えられます。

 こういった措置がとられた結果として、株主がみずから出席を控えるなどして、事実上、会場に株主が存在しなくなるといった場合もあり得ると考えます。

 このQアンドAは、そういったことを前提にして記載されたものだというふうに考えておりまして、ただ、こういった措置を講ずることについては、株主に事前に十分に周知することが望ましいというふうに考えております。

松平委員 つまり、最初からゼロに制限することはできないと。だから、あくまで出席を控えるような呼びかけということで、来た株主を合理的理由なく拒否することはできないということでよろしいんですよね。

小出政府参考人 委員の御指摘のとおりだと思います。

松平委員 やはり感覚として、出席を控えるように言っていて、日本語の部分なんでしょうけれども、それでいて会場の場所をとらなきゃいけないというのは、結局、大きな会社ばかりじゃないので、これは何のためなんだという気持ちにも会社としてはなりそうな気もします。

 そういう意味で、これはやはり今のところ、前に議論させていただいた、ハイブリッド型の株主総会はオーケーだけれどもバーチャルオンリーの株主総会はだめだと、そこの議論につながってくるんです。

 このバーチャルオンリーというのは、開催場所もバーチャルで、それでバーチャルな空間、ネット上で総会に参加できるというものなんですけれども、これは前の民事局長の小野瀬さんが、会社法で株主総会の場所を定めなければならないと書いてあるからだめだと答弁されています。

 ただ、今の話だと、呼びかけて、株主が結果として誰も来なくなるのはオーケーだと。つまり、その場合でも、会社法上の場所にはなるわけですよ、呼びかけているから。多分そういう解釈だと思うんです。でも、結果だけを見ると、その結果だけ、経緯は無視して結果だけ見ると、株主はいなくても、会社法上の場所という形でなっているんです。そう考えると、株主がいないバーチャルの空間も、やはり場所と解釈していいんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうかね。

 前回は、やはりそれはそう解釈はできないよとおっしゃられていたんですけれども、もうこういう状況なので、解釈変更しちゃってもいいんじゃないかなと思うんですけれども、どうでしょうか。大臣、お聞きします。

森国務大臣 御指摘の条文における株主総会の場所とは、一般に、議決権を有する株主が株主総会に出席するために入場ができる場所を意味するものと解されております。

 委員の問題意識は理解できるんですけれども、株主総会の場所をバーチャル空間も含むものと解釈しますと、インターネットの利用が困難な株主から、株主総会で質問をし、説明を聞く機会を奪うおそれのあることを踏まえますと、慎重に検討せざるを得ないというふうに考えております。

松平委員 わかりました。解釈の問題じゃなくて、実質上も慎重に検討せざるを得ないとおっしゃいました。

 ただ、私、これは前の質疑でも言ったんですけれども、あくまで、バーチャルオンリーにするかどうかというのは、これは義務じゃなくてその会社の選択ですし、反対の株主、つまり使えない株主は定款変更に反対すればいい話なんですね。それで、そもそも、株主権への制約というのはもっと大きな制約が会社法上あるわけですよ、スクイーズアウトとかですね。だから、どうなんですかね、そこはそういう制約に比べたら非常に小さな制約なのかなと思います。

 今回、ドイツでは、やはり新型コロナの影響で集会を禁じたこともあって、バーチャルオンリーを法改正で認めるぐらいしているんです。非常に迅速なことをしているんです。だから、今解釈でできないというふうにおっしゃっていたので、例えば時限立法とかそういった形でもいいので、今こそバーチャルオンリーの株主総会を認めるべきじゃないですか。

 ちょっともう一度、繰り返しになりますけれども、大臣、お願いします。

森国務大臣 確かに諸外国においていろいろな例がございます。ドイツの例を委員お示しになりましたけれども、米国においては、平成三十年三月時点においては、バーチャルオンリー型及びハイブリッド型の両方を許容する州が三十、ハイブリッド型のみが十一、いずれの態様のバーチャル株主総会も許容しない州が九である。また、英国においてもさまざま解釈も分かれております。

 このような状況下のもとにおいて、我が国では、先ほど言ったようなバーチャルオンリー型としますと、インターネット利用の困難な株主が事実上株主総会に参加できなくなる、そういう懸念が示されているわけでございますので、先ほどのお答えと同様で恐縮でございますが、慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

松平委員 このバーチャルオンリーについて、経産省さんが現場の声を聞いていらっしゃるのかなと思うんですけれども、ちょっと経産省さんの御意見を聞かせていただいていいでしょうか。

中原政府参考人 いわゆるバーチャルオンリー型の株主総会につきましては、これを選択肢として認めることを支持する見解が一定程度存在するというふうに認識をしております。一方で、インターネットを通じて出席する形態については、多数の株主が出席した場合でも円滑なコミュニケーションを実施できる技術の確立を望む声もあるところでございます。

 今回の新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、企業の皆様におかれましては、株主総会の開催のあり方についてもさまざまな御検討を頂戴しておりまして、インターネットを活用した株主総会についても事例がふえるというふうに考えられますことから、引き続き、法務省とともに、連携して必要な検討を進めてまいりたいというふうに存じます。

松平委員 お願いいたします。

 ちょっと、もう時間がほとんどなくなってきたので早口で、トピックをかえさせていただくのですが、国が被告になる訴訟、国が訴えられた訴訟の場合、当然国は応訴しますね。この応訴のためで、これは一般論で結構です、事案の事実関係の調査、国が訴えられた場合、調査は行われるという理解を私は当然していますけれども、そういった理解でよろしいでしょうか。どういった形で調査なさるんでしょうか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げますと、訴訟追行に当たりましては、関係省庁との間で訴訟方針に関する打合せを行うなどの協議をした上で適切に対応しているところでございます。

松平委員 訴えられた場合には協議をして適切に対応されているということなんですけれども、私の方でもうちょっと補足すると、やはり、訴えが提起されたら、答弁書とか準備書面に書かなきゃいけないので、事実関係を当然調査しなきゃいけないんです。それで、協議して、事実関係を調査するということになると思います。これは担当する訟務検事さんが中心となると思います。これは法務大臣の指揮下にあります。

 そこでいうと、先日、みずから命を落とされた近畿財務局の赤木さんの奥様が国と佐川元理財局長を提訴したと報道がありました。済みません、こちら、訴状は届きましたでしょうか。

舘内政府参考人 本日午前中までの時点では、まだ送達されていないものと承知しております。

松島委員長 松平さん、時間が終了しておりますが。

松平委員 時間が来ましたので終わりにしますけれども、これはまだ届いていないということですけれども、届いた場合、先ほどの御答弁にありましたように、訟務検事さんが中心となって事実関係を調査されるということになると思います。特別扱いで調査しないということはないように、私からもちょっとくぎを刺させていただきたいと思います。

 これにて質問を終わります。どうもありがとうございました。

松島委員長 次に、稲富修二さん。

稲富委員 立国社の稲富でございます。

 きょうも質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、コロナ対策を中心に質問させていただきますが、現場でさまざまな声がありますので、その声をお届けすることを旨としてやってまいりたいと思います。

 日ごろから、大臣始め政務の皆さん、そして役所の皆さん、本当にお疲れさまでございます。きょうは、大きく三つのテーマでお伺いをします。

 まず、ちょっと質問の順番を変えて、水際対策のことをお伺いいたします。

 新型コロナウイルスに対する水際対策については、四月一日に、水際対策強化に係る新たな措置というものが決定をされて、四月三日から外国人の上陸拒否の対象が七十三カ国というふうに拡大をいたしました。

 そこで、お伺いします。事実関係です。外国からの入国者数、外国人、日本人、それぞれ大体一日どれぐらいいらっしゃるのか、お伺いします。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 直近一週間における外国人の入国者数について取り急ぎ集計しましたところ、この直近一週間というのは四月二日から四月八日まででございますけれども、一日当たり約三百六十人。

 次に、日本人帰国者数でございますが、成田空港、羽田空港、中部空港及び関西空港の四大空港における日本人帰国者数について取り急ぎ集計しましたところ、この同じ直近一週間では一日当たり約二千人となっております。

稲富委員 ありがとうございます。

 続きまして、その入国者に対してどのような水際対策をとっているのか、感染症危険情報レベル2、3の国によってどう異なるのか、PCR検査の対象の範囲なども含めて御説明をお願いします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 検疫所では、海外からの入国者のうち、今入管法上の入国拒否の対象となっている地域、外務省の感染症危険情報のレベル3にも当たりますが、に入国前十四日間以内に滞在歴がある方に、症状の有無を問わず全員に対してPCR検査を実施しているところでございます。検査結果が陽性であった場合は、指定感染症医療機関に隔離等を行い、検査結果が陰性であった場合でも、潜伏期間を考慮し、感染症の拡大防止の観点から、検疫所長が指定する場所における十四日間の待機と国内における公共交通機関の不使用を要請するとともに、入国後に保健所等による定期的な健康確認を実施しているところでございます。

 加えまして、不要不急の渡航を自粛するよう求めている地域、これが外務省の感染症危険情報のレベル2でございますが、その地域から入国した方につきましては、国内における公共交通機関を使用しないこと、検疫所長が指定する場所で十四日間待機をすることを要請しております。

稲富委員 確認です。レベル2のところは必ずしもPCR検査をしていない。レベル3のところは全員。レベル2のところは全員が対象ではないという理解ですが、そのことだけ確認させてください。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりでございまして、外務省の感染症危険情報レベルの2の地域から入国された方につきましては、PCR検査は実施しておりません。

稲富委員 ありがとうございます。

 先ほど御説明あったように、公共機関が使えないということはどの方も共通している、十四日間待機も必要であるということで、空港近くに宿泊せざるを得ない方が多くいらっしゃると思います。このような方々に対してどのような対応をされているかということなんですが、いろいろな、宿泊施設を御紹介したり等されていると伺っておりますが、やはりもうちょっと国として積極的にそういった関与をすべきじゃないかという声がありますが、その点の御対応についてお伺いします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症の流行地域から帰国された方々につきましては、先ほど申し上げました、入国後十四日間、自宅、ホテルなどにおける待機を要請しております。その際になんですが、待機場所やその場所への移動手段については、出国前から家族や会社を通じまして御自身で確保していただくようお願いをするとともに、電車やバスなどの公共交通機関を使用しないようにお願いをしているところでございます。

 宿泊に係る費用などにつきましては自己支弁としているところでございますが、他方、空港近隣の宿泊施設、これは宿泊施設によっては拒否されてしまうところもございますので、受け入れてくれる宿泊施設を手配するよう、助けるように、厚生労働省といたしましては、宿泊施設に関する情報の提供、また、空港周辺の宿泊施設に対しましては公共交通機関が使えないということで、借り上げバスを使いまして移動の支援を行っているところでございます。

稲富委員 今、大変な時期かとは思いますが、ぜひさらなるお取組をお願いします。

 先日、決算行政監視委員会の分科会で、同僚の源馬議員が、お客様目線からの検疫所の対応について御質疑があったかと思います。きょうは、そこで働く方々からの意見について、こういった声があるということをちょっと御紹介をさせていただければと思います。

 まず、検疫が到着のお客様に対して要請書を配付されており、その中には、公共交通機関を、先ほど御説明あったように、しないような記載があるということで、その中には国内線の飛行機も含まれて記載されています。しかし、検疫官が旅客に、お客様に帰宅方法を確認する際に、飛行機の利用は控えるようにということが十分に伝わっていないことがあって、旅客としては、お客さんとしては、検疫からだめだと言われなかったという認識で国内線のカウンターにいらっしゃるということがあって、旅客対応の係員とお客様の間でクレーム対応が必要になってきたということがあったということでございます。

 あと、例えば、到着の旅客から健康調査票の提出を義務づけられている。しかし、その調査票に住所、帰宅手段を記載する箇所があるけれども、日本での住所が例えば北海道、帰る手段は自家用車と書いてあったとしても、とめられることなく入国できたということもあったということでございます。

 ちょっとここから質問と意見ですけれども、「帰国されたお客様へ」、四月四日というのでQアンドAというものがホームページにもあります。非常に内容がこれはわかりやすくて。ただ、場所が非常にわかりにくくて、そこになかなかたどり着かないということがあろうかと思います。よりわかりやすいところにあった方がいいんじゃないかというこれは御提案と、水際対策のためにこれをやっているので、今こういう状況で検疫の方も大変だろうとは思いますが、ぜひしっかりとこれをやらないとそもそもの目的が達せられないということで、検疫体制の強化として今回、補正予算で四十二億円、次ですね、これから審議される、四十二億円ということで、ちょっと少ないんじゃないかなと私は個人的には思いますが、もっと検疫所から旅客に対する要請事項というのを周知徹底すべきだと思いますが、その点、御答弁をお願いします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおりでございまして、厚生労働省では、確かに、もっとわかりやすいところにQアンドAがあるというようにこれから御提案を踏まえて考えますけれども、ホームページの活用、また在外公館からの連絡、航空会社からの案内などによって新型コロナウイルス感染症の検疫体制については周知を行うとともに、帰国時の検疫時におきまして、その旨が記載されました健康カードも用いましてお一人お一人に直接説明し、皆様の御理解と御協力をいただけるよう努めているところでございます。

 御指摘のような事項があったということは真摯に受けとめて、より適切な検疫に努めてまいりますが、現在、新型コロナウイルス感染症対策が正念場を迎えておりまして、お一人お一人が自発的に感染拡大防止のための行動をとっていただくことが重要と考えております。

 流行地域からの帰国者の方に対しましては、御不便をおかけしながらも、新型コロナウイルス感染症対策につきまして御理解、御協力をいただけるよう、引き続き努めてまいります。

稲富委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 厚労省さん、もう結構です、以上で終わりますので。

松島委員長 お疲れさまでした。お帰りください。

稲富委員 次に、緊急事態宣言に伴う対応についてお伺いします。

 私の地元の福岡もその対象とされているわけですが、まず基本事項としてお伺いしたいのは、特措法四十五条のような蔓延防止に関する措置というのがございますが、これはあくまで、ちょっと質問の基本的事項ですけれども、県知事が、福岡であれば県知事が住民に対して要請や指示をするのであって、コロナの担当大臣や総理がするものではないということだとこの法上書いてあると思うんですけれども、そのことをまず確認をさせてください。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の第四十五条でございますけれども、あくまで主体は特定都道府県知事ということでございますので、その地域の感染の状況を見て特定都道府県知事が判断されるというものでございます。

稲富委員 続きまして、この四十五条の二項について質問をさせていただきます。

 施設の利用制限の対象とされている、さまざま書いてありますが、具体的にどこかということは各種報道でも今テーマになっております。中でも社会福祉施設というものがありますが、これは社会福祉法上の第二条二項にある第一種社会福祉事業を行う施設という理解でいいのか、あるいは第二種社会福祉事業の施設というのも含まれるのかということと、あと、より具体的に、放課後デイサービスというのはこの対象に含まれるのかどうか、その点、御答弁をお願いいたします。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 特措法第四十五条第二項に基づきまして、具体的に新型インフルエンザ等特別措置法施行令第十一条というところで規定がございます。こちらにおきましては、御指摘の社会福祉施設について一つ類型がございまして、「保育所、介護老人保健施設その他これらに類する通所又は短期間の入所により利用される福祉サービス又は保健医療サービスを提供する施設」ということで、具体的にかなり、五十ほど類型を挙げているわけでございますけれども、幅広く、通所、短期間入所によって利用されるサービスというのを列挙してございます。

 御指摘の放課後等デイサービスを行う事業についても、この要件に該当するものとして考えてございます。

稲富委員 該当するということですね。ちょっと驚きましたけれども、そうなんですね。わかりました。

 一項では、外出しないことを要請することができるということがありますが、例えば、その中で、これは地元の方からの御質問、御意見、そして、ちょっとどうなるんだということなんですが、保育所あるいは、放課後デイはもう使えないということなのであれですけれども、保育所でお昼みんなで公園に行くということがあります。それは外出に含まれる、散歩は外出になるのかということ、そして、二項で使用制限の対象となった施設への出社、これは一項の外出自粛の要請に当たるのかどうか、まとめて御答弁お願いします。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的に、放課後デイサービスに通う子供さんたちも外出自粛要請の対象にはなると考えております。

 他方、私ども、基本的対処方針というのを示したわけでございますけれども、その中で、外出自粛の要請の対象にならない外出の具体例の一つといたしまして、屋外での運動や散歩など生活の維持のために必要なものというのが挙げてございます。したがって、三つの密、密閉、密集、密接、これを避けるとともに、手洗いやせきエチケット等の感染防止のための行動を徹底していただきながら、子供さん方の健康の維持や健全な発育のために必要な範囲内で、放課後デイサービスに通うお子さん方たちが外出していただくことは問題ないと考えてございます。

 もう一個の御質問ですけれども、特措法第四十五条第二項によって施設使用の制限がなされた場合におきましても、当該施設の職員等の出勤を妨げるものではございません。

 いずれにいたしましても、まずは在宅勤務を強力に推進するとともに、職場に出勤する場合でも、時差出勤か自転車通勤等、人と人との交わりを低減する取組をこれまで以上に強力に推進していただきたいと考えてございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 続きまして、外出自粛であれ使用制限であれ、要請と、我々は特に補償はセットではないかということをずっとこの間訴えてまいりましたが、この点については、総理そして西村大臣もちょっと前向きではないという御答弁をずっと続けていらっしゃいます。しかし、補償がないとなかなか営業をとめるわけにはいかないということで、やはり何らかの補償が必要だと思います。

 逸失利益を全て国が補うということは非常に難しいとは思いますが、例えば、県が決めるけれども、しかし県が、財政的に、国がやらない中でやるというのは非常に現実的には困難です。

 そこで、より具体的に、賃料についてお伺いをいたします。

 やはり、雇用については雇用調整助成金がある。ただ、店舗経営をされている方にとってみれば、固定費たる人件費と賃料が非常に重くのしかかっているというのは現実です。そこで、これを全部、例えば国が何か補償するというのは難しいとは思います。ということで、三月三十一日に、国交省の名前で各不動産関連団体長宛てに依頼文書というのが出されておりまして、支払い猶予に応じる等柔軟な措置の実施を検討するようにという文書もあります。しかし、ここを更に踏み込まないと、各店舗営業をされている方、非常に厳しい状況であります。

 賃料への補助ができればより望ましいですけれども、そうでないとしても、例えば、今回の、一部には固定資産税の減免をするという当人に対しての減免がある、そういった固定資産税の減免を通じて、例えば間接的に家賃収入を補填するなどで家主とテナントとの交渉そのものを促すとか、今後更に政府の働きかけを何らかできないかということをお尋ねしたいんですが、いかがでしょうか。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 新型インフルエンザ等対策特措法におきまして、損失補償は、緊急措置の内容や強制力、それから対象者がこうむる不利益等を総合的に勘案して位置づけられてございます。特措法が、要請や指示、公表といった比較的強制力の弱い措置を中心として、原則補償を伴わない法体系になっていることから、その全てに補償措置が位置づけられているものではございません。

 先生お尋ねの賃料、家賃につきましては、先ほどもお話ございましたとおり、国土交通省におきまして、ビル賃貸事業者に対して、入居するテナントが新型コロナウイルス感染症の影響によって支払いが困難な場合には、その置かれた状況に配慮し、賃料の支払い猶予などの柔軟な措置を検討いただく、こういったことを不動産関連団体について検討いただいているというふうに承知してございます。

 他方、経済的に大きな打撃を受ける事業者が多数、多く存在することも事実でございますので、政府といたしましては、先般決定いたしました緊急経済対策等におきまして、中小企業、小規模事業者の事業継続等を全力で支えてまいりたいと思ってございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 この点はなかなか踏み込めないというのが今のお立場というのはよくわかりましたけれども、ぜひ、他委員会でもこの点、しっかりと議論させていただきたいと思います。

 内閣府の方、ありがとうございました。以上で終わりますので。

松島委員長 奈尾審議官、もう退室、いいんですか。

 お疲れさまでした。

稲富委員 次に、日本語教育機関についてお伺いします。

 ちょうど一カ月前の当委員会において在留資格の延長について御要望させていただき、そして、法務省としても御対応いただいたというところがございました。午前中にもありましたように、柔軟にその点、御対応いただいたということでございました。しかし、一カ月たって、この新型コロナがおさまればいいと思いつつも、むしろ今拡大をして加速化しているということでございまして、更にこの在留資格をどう延長するかということ、延長しないと非常に厳しいという状況がございます。

 そこで質問いたします。

 日本語教育機関への二〇二〇年十月期の入学、これが六月ぐらいに在留資格認定申請の締切りが来るということで、各国のコロナウイルス感染症の影響というのを鑑みて現状の締切日を延長できないかということ、そして、更に言えば、今後どうなるかわからないという中で、大幅に申請が減っているということが見込まれる以上、例えば特例的に、ある一定の申請日を決めてそこに向かってというのではなく、毎月締切日を設けるなど、そういった柔軟な対応、随時の申請ができないのかということでございますが、御答弁をお願いします。

高嶋政府参考人 十月期の日本語教育機関等への受け付けの期限の御質問でございますが、現在も、同様に、在留資格認定証明書交付申請の準備が間に合わないといった相談が日本語教育機関などから現に寄せられているところでございまして、各地方出入国在留管理局の実情に応じて、一括申請の受け付け日、これは御指摘のとおり六月中のものが多いんですが、これを一定期間延ばして、柔軟に対応することとしております。

 いつごろまでにというところについての詳細につきましては、準備が整った地方出入国管理局から順次、各日本語教育機関に対して周知することとしておりまして、現にその周知が始まっているところでございます。

 締切日を決めないという方法についての御質問でございますが、現在、その方法につきましてはまだ検討をしておりませんけれども、出入国在留管理庁としましては、申請者数も踏まえまして、引き続き、日本語教育機関や留学生の置かれた状況に応じて柔軟に対応してまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。ぜひ、柔軟にということでございますので、よろしくお願いします。

 次に、日本語教育機関に対するさまざまな通知についてお伺いします。

 今の日本語教育機関は、どこの省庁が責任を持ってというところが非常にはっきりしないままというところがございます。例えば学校に対してのさまざまな通知、例えば、今手元にありますけれども、外出自粛に対するものや、あるいは臨時休業、あるいはイベントの中止、延期、あるいは卒業証書に関するもの、そういったさまざまな文部科学省から、あるいは県からの通知が各学校に対しては来ている。しかし、日本語教育機関に対しては、特に株式会社の日本語教育機関にはこういったものが来ていない。法務省としては、在留資格に関するさまざまな、先ほど御答弁いただいたようなことについてはしっかりとお知らせいただいている。ただ、学校としての機能に関するものが非常に少なくて、やはり現場では不安を抱えているという声がございます。

 ぜひこれは、設置形態にかかわらず、政府として、そこは連携をして、通知だけでもやはりこの期間だけはお伝えをするという対応ができないかというふうに思うわけですが、ぜひその点の対応を御答弁お願いします。

高嶋政府参考人 御質問の日本語教育機関等に対する連絡、周知体制でございますけれども、さまざまな日本語教育機関から、現に、休校等の措置を講じた場合の、日本語教育機関の告示基準との関係に適合性があるかどうかというような質問をいただいているところでございます。

 出入国在留管理庁としましては、新型コロナウイルス感染症への対応に係るQアンドAというのを作成して、これは質問の内容に応じて順次改定もしておりまして、改定した都度、これはもちろん、法務省のホームページに掲載するとともに、その改定の内容、改定したものにつきましても日本語教育機関にメール等で送信、送付して、周知を図っているところでございます。

 出入国在留管理庁としましては、日本語教育機関や留学生が必要とする情報の提供について、引き続き適切に提供できるよう努めていきたいというふうに考えているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 今のは、在留資格に関することは、今おっしゃるとおり法務省は御対応いただいているんですが、学校的な側面についての、例えば生徒の安心、安全とかそういったことに関するものがやはりないということで、そのことをぜひ御協力の中で対応いただけないかということ。ちょっとこれはまた具体的に後ほどでもお知らせをさせていただければと思います。

 次に、冒頭申し上げましたように上陸拒否の対象国が今七十三カ国にまでなって、去年の三月、四月の留学生、比べると、例えばアジアだけでも九割近くが上陸拒否の対象国に今なっております。したがって、日本語教育機関は、もうことしは生徒が来ないんじゃないかということを非常に心配をしている。ことしは生徒が来ないとすると、来年の今ごろゼロ人の生徒を迎えるんじゃないかという心配を非常に受けているということで、こういった中でどうやって経営として対応するのかということ、経産省の方に来ていただいておりますので、御対応についてお伺いします。

鎌田政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者に対する資金繰り支援につきましては、これまで、信用保証協会によるセーフティーネット保証や危機関連保証、また、日本政策金融公庫などによる特別貸付制度とこれを使った実質無利子無担保の融資制度、こういった措置を講じてきたところでございます。

 また、委員御指摘の株式会社の日本語学校につきましては、通常と別枠で保証可能なセーフティーネット保証のうち五号の業種としまして四月一日に追加を指定し、資金繰り支援を行っているところでございます。

 また、四月七日に決定しました緊急経済対応策におきましては、融資窓口を拡充する観点から、民間金融機関でも実質無利子無担保の融資を受けられるようにすることですとか、また、既往債務の負担を軽減するために、日本政策金融公庫などからの既存借入れや民間金融機関からの信用保証つき既往借入れにつきまして、それぞれ実質無利子無担保の融資への借りかえを可能とすることなどを内容とする資金繰り支援策を取りまとめたところでございます。

 これらの施策によりまして、引き続き事業者の資金繰りをしっかりと支援していきたいというふうに考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 最後、大臣に伺います。

 法務省告示の日本語教育機関は、令和元年末で七百七十四機関ある。設置形態はさまざまですけれども、株式会社、有限会社はその約半数になる。恐らく、そこで働く先生方は一万人を超えるであろうと思われます。

 日本語教育機関は非常に、どう位置づけるかということがまだ議論の中かと思います。しかし、今、現実にはコロナで非常に影響を受けて、このままでいくと来年の今ごろ生徒がゼロになっているんじゃないかという危惧を持っている。しかし、外国人を受け入れるという大きなインフラとして我が国としてどう考えるかということは、ぜひより高いレベルのところから、大所高所から考えていただきたいというふうに思うわけですが、まあ、在留資格に関してはこうするよと。ただ、申し上げたように、在留資格、幾ら要件緩和したとしても、そもそも上陸できないということであれば、現実にはそれが難しいということになります。ぜひ、今後どうするのかということを、大臣の御答弁を求めます。

森国務大臣 日本語教育機関は、留学生がその後我が国で教育を受けるために、又は就労を行ったりする際の基本的な、基礎的な日本語能力を身につけるためにという重要な役割を担っているというふうに認識をしております。また、外国人を日本社会の一員として受け入れる上で、より円滑な意思疎通を実現するためにも重要であります。

 委員御指摘の問題点というものは、私も共有をしております。日本語教育機関が社会において担う役割がこのように重要である中で、今回の新型コロナウイルス感染症の影響によって日本語教育機関の運営に支障や困難が生じておりますので、法務省としても、日本語教育機関、引き続きその役割を果たしていただくことができるように、担当省庁、関係省庁と連携して適切に対応してまいりたいと思います。

稲富委員 時間となりましたので、終わります。ありがとうございました。

松島委員長 次に、藤野保史さん。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 私は、先日出されました緊急事態宣言にかかわって、まずお聞きしたいと思います。

 今、新型コロナウイルスの感染拡大防止等、あるいは治療などのために日夜奮闘されている多くの関係者の皆様に心からの敬意を表したいと思います。

 他方、政府や与党の一部からは、この新型コロナウイルス感染拡大という状況を、改憲、憲法を変えるという議論に結びつけようという動きがあります。いろいろな発言がありますけれども、中でも、何といっても、先日、安倍総理自身が、六日の衆議院議運委員会、参議院議運委員会で、かなり、最も強い発言をされていると私は思います。

 衆議院では、自民党が示した、これは改憲草案のことですけれども、自民党が示した四項目の中にも緊急事態対応が含まれており、緊急事態において国家や国民がどのような役割を果たすか、憲法にどのように位置づけるか、極めて重く大切な課題と述べましたし、参議院の議運でも、新型コロナウイルス感染症への対応も踏まえつつ、国会の憲法審査会の場で与野党の枠を超えた活発な議論を期待したい、こういうふうに答弁されております。この間の一連のさまざまな発言の中では、最もこれは踏み込んだ発言だというふうに思います。

 総理は、この衆参の議運での質疑は、新型コロナ特措法に基づく、法律に基づく緊急事態宣言を国会と国民に説明する場であるということを百も承知の上で、あえて自民党が示した四項目ということも挙げて、憲法上の、特措法上ではなくて、憲法上の緊急事態条項が極めて重く大切な課題であると力を込めたわけであります。

 今はまさに、新型コロナの対応に対して、党派の違いを超えて、立場の違いを超えて力を尽くさなければならない、まさにそのときに、国民の不安を逆手にとるように、憲法改定に結びつけていく。これは党利党略のきわみというふうに言わざるを得ません。絶対に許されないと思います。

 きょうは、要するに、そうやって政府、総理を先頭に、緊急事態宣言と緊急事態条項、これを意図的に混同させるといいますか、地続きのものであるかのように描いているという状況が一方である。他方で、やはり新型コロナに対する国民の不安というのは、私の事務所にも連日、本当にさまざまな要請もいただいております。何とかしてほしいという不安がある。だから、その両方のもとで、やはり今、冷静に、落ちついて、両者の関係あるいは内容、そして現行憲法の立場について整理しておく必要があるんじゃないかというふうに思います。

 そこで、以下、質問したいと思います。

 前提として、内閣府にお聞きしたいんですが、もう基本中の基本ですけれども、要するに、憲法上の緊急事態条項を置くかどうかという話と、今回の特措法上の緊急事態宣言とは全く別物である、間違いありませんか。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 緊急事態宣言につきましては、新型インフルエンザ等特別措置法に基づきまして、例えば、都道府県知事が同法四十五条に基づく外出自粛の要請ができる、そういった、法の第四章といったところがございますけれども、そこの各条に規定された新型インフルエンザ等緊急対策の特例を講じることができるというものでございまして、御指摘の緊急事態条項とは別のものと考えてございます。

藤野委員 全く違うわけですね。

 要は、非常事態、災害とか感染症、戦争、内乱、さまざまな非常事態に対してどういうアプローチをとるかという場合に、二つのアプローチがあって、一つは個別法ですね、今回問題になっているインフル特措法とか、あるいは災害対策基本法、原子力災害対策特別措置法、これらは、そうした非常事態に対して個別法でアプローチしよう、そういうやり方であります。もう一つは、憲法を改正して国家緊急権などを創設するという、緊急事態条項というアプローチがあるわけでありますが、この二つは全く違うわけであります。

 そして、現行憲法にはこの緊急事態条項は存在せず、個別法で対応するというアプローチがとられているわけであります。

 そこで、なぜ日本国憲法に緊急事態条項がないのか。配付資料の一を見ていただきたいんですが、これは有名な国会質疑でありまして、御存じの方も多いと思うんですが、一九四六年、昭和二十一年の七月二日、衆議院帝国憲法改正案委員会というところの質疑であります。

 当時の金森徳次郎大臣が議員の質問、これは、なぜこの憲法改正草案は緊急勅令などの規定を持たないのかという質問に対して、黄色の部分でこう答えております。

 緊急勅令及ビ財政上ノ緊急処分ハ、行政当局者ニ取リマシテハ実ニ調法ナモノデアリマス、併シナガラ調法ト云フ裏面ニ於キマシテハ、国民ノ意思ヲ或ル期間有力ニ無視シ得ル制度デアルト云フコトガ言ヘルノデアリマス、ダカラ便利ヲ尊ブカ或ハ民主政治ノ根本ノ原則ヲ尊重スルカ、斯ウ云フ分レ目ニナルノデアリマス、

こういう答弁が七月二日なんですね。

 私は、緊急事態条項をめぐる論点といいますか、焦点といいますか、それを説明する上で、これはなかなか簡潔な名答弁だなというふうに思っております。まさにここが分かれ目なんですね、便利を選ぶのか、民主政治の根本原則を選ぶのか。

 これに対して、同じ金森大臣は、七月十五日、配付資料の二なんですが、答弁をしております。答えを出しております。黄色の部分ですけれども、

 民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、左様ナ場合ノ政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス、言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、随テ此ノ憲法ハ左様ナ非常ナル特例ヲ以テ――謂ハバ行政権ノ自由判断ノ余地ヲ出来ルダケ少クスルヤウニ考ヘタ訳デアリマス、

ということなんです。

 内閣法制局にお聞きしたいんですが、現行憲法は、先ほどの論点でいえば、行政側の便利な事情というよりも、民主政治の根本原理、国民の権利を十分擁護するために民主政治の根本原理を尊重した、だから、緊急事態条項を憲法上むしろ積極的に設けなかった、そういうことでよろしいですか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 委員が御指摘されました、昭和二十一年七月二日それから同月十五日の衆議院帝国憲法改正案委員会におきまして、当時の担当大臣でありました金森大臣が、先生が述べられたような、緊急勅令等の規定をなぜ設けなかったかということを尋ねられました際に、その理由として、先生が引用されました部分を含めて答弁をしたものでございます。

藤野委員 これは、論点設定もわかりやすいし、なぜ緊急事態条項を置かなかったのかというのも非常にわかりやすいんですね。

 もう一つ、今のは国会向けの説明なんですが、それだけじゃなくて、国民向けにも、当時の政府は、よりわかりやすく説明するためにいろいろなものをやっているんですね。そのうちの一つ、「新憲法の解説」というものを紹介しております。これは、表紙に、法制局閲というのがありまして、内閣発行というのもあります。

 さらに、これを見ていただきますと、当時の内閣総理大臣の吉田茂さん、担当大臣の金森徳次郎大臣、そして内閣書記官長の林譲治さんが序というものを寄せているんですね。ちなみに、この林さんというのは、その後、内閣官房長官に就任されております。まさに当時のトップが序文を書いているわけで、事実上、当時の内閣が作成したという位置づけであります。

 そこの第四章をちょっと御紹介しているんですが、こういう指摘があります。

  明治憲法においては、緊急勅令、緊急財政処分、また、いはゆる非常大権制度等緊急の場合に処する途が広くひらけてゐたのである。これ等の制度は行政当局者にとつては極めて便利に出来てをり、それだけ、濫用され易く、議会及び国民の意志を無視して国政が行はれる危険が多分にあつた。すなはち、法律案として議会に提出すれば否決されると予想された場合に、緊急勅令として、政府の独断で事を運ぶやうな事例も、しばしば見受けられたのである。

  新憲法はあくまでも民主政治の本義に徹し、国会中心主義の建前から、臨時の必要が起れば必ずその都度国会の臨時会を召集し、又は参議院の緊急集会を求めて、立憲的に、万事を措置するの方針をとつてゐるのである。

こういう説明であります。

 内閣法制局にお聞きしますが、現在の内閣法制局も、これは同じ認識ということでよろしいでしょうか。

北川政府参考人 先生の御引用されました、法制局閲となっております「新憲法の解説」に記載されております緊急勅令等に係る見解でございますが、この見解それ自体が当時の内閣法制局の見解そのものであったかどうかはちょっと別といたしまして、御指摘の記載内容につきましては、その趣旨を理解できるものであります。その旨、平成二十八年の五月二十七日の衆議院東日本大震災復興特別委員会におきまして、当時の横畠内閣法制局長官も答弁いたしております。

藤野委員 そうなんですね。これは、階委員がまさに質問されたときに、横畠内閣法制局長官が、この今私が読み上げさせていただいた部分は、今日においても十分理解できるものでございますというふうに答弁されております。ですから、これはそういう中身だということであります。

 大臣にも確認したいんですが、大臣も同じ立場だということでよろしいでしょうか。

森国務大臣 お尋ねは憲法の一般的解釈に関するものであり、法務大臣として、所管を離れ、憲法の解釈について所感を申し上げることは差し控えさせていただきます。

藤野委員 これは、例えば経済の問題とか、あるいは安保の問題でお答えにならないというのは、所管外というのであれば、わからなくもないですが、先ほどるる申し上げてきたのは、国民の権利を保障する、それを最大限尊重するのが民主主義の根本原則だ、だから、緊急事態条項を置かないという、こういう論立てなんです。ですから、人権をつかさどる法務大臣が、これは所掌じゃありませんなんて、私は言えないと思うんですけれども、いかがですか。

森国務大臣 政府部内において、憲法に関する一般的解釈について全面的に責任を負うべき立場にありますのは内閣とされておりまして、法務大臣は内閣を代表してお答えする立場にないことを御理解いただきたいと思います。

藤野委員 いや、理解できないですね。

 二〇一六年のときは、河野太郎議員が当時、内閣府防災担当大臣で、その際は、階委員の質問に対してお答えになっているんです。現時点においても憲法の解釈として十分理解できるものだと。

 だから、やはりそれぞれのお立場はあると思います。ただ、問題は、人権にかかわる問題でこういう憲法の立場があるわけですから、これについて法務大臣が何も言わないというのは、これはおかしいと思うんですが、いかがですか。

森国務大臣 河野大臣が答弁した事情については私から御答弁することはできないんですけれども、いずれにしても、御指摘の法制局長官の答弁、また、憲法の一般的な解釈に関するものについて、法務大臣として、所管を離れて、憲法の解釈について御答弁申し上げることは差し控えさせていただきます。

藤野委員 本当に、政治家として、こういう方が法務大臣をやられているということが非常に残念でなりません。

 「新憲法の解説」というものを先ほど読み上げさせていただいた中に、要するに、法律案として議会に提出されれば否決されると予想された場合に、緊急勅令として、政府の独断で事を運ぶような事例もしばしば見受けられたというのがあるんですね。単なる懸念とかじゃなくて、戦前しばしば見受けられたから、それを繰り返さないために緊急事態条項は置かないという、まさにそういう経験に基づく日本の憲法の判断なんです。

 実際、大日本帝国憲法には、四つも緊急勅令に関する条例がありまして、一つは八条、緊急勅令。十四条の戒厳。三十一条の非常大権。そして、七十条の緊急財政処分。今いわゆる緊急事態条項と言われるものが四つも形を変えて措置されていて、そのもとで百本以上、緊急勅令が戦前には出されております。

 その中には、例えば治安維持法の最高刑を死刑にするというものも、これは議会で廃案になったんです、戦前の議会でさえ廃案になったんですが、緊急勅令で、死刑が最高刑にされてしまった。

 まさに、そういう、しばしば、戦前、人権侵害が見受けられた、行政による暴走が見受けられたという痛苦の反省から、新憲法はあくまで民主政治の本義に徹して、国会中心主義に立つんだと。これがやはり緊急事態条項をあえて規定していない、積極的に規定していない一番の理由なわけであります。ここをやはり踏まえていくということが、法務大臣としてもどうしても必要になると思うんですね。

 その上でですけれども、ここからは、緊急事態条項というより、宣言のもとでの話をちょっとお聞きしたいんですが、緊急事態宣言のもとで私権制限ということが行われております。行きたいところに行けないとか、行きたい集会に行けないとか、声を上げられないとか、さまざまな制限を伴うわけですけれども、これはやはり必要最小限といいますか、不当な、こういう自由の侵害はあってはならない、これをまず確認したいんですが、そういう御認識でよろしいですね、大臣。国民の人権制限。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 新型インフルエンザ等対策特別措置法ということで申し上げますと、法律第五条に基本的人権の尊重といったものがございまして、例えば、法四十五条に基づく外出自粛の要請等におきましても、国民の権利と自由に制限を加える場合には、当然ながら、必要最小限にしなければならないという原則のもと、やってございます。

藤野委員 これもお答えにならないというのは、ちょっと驚きました。通告もしておりましたし。

 一般論で私は聞いたんですね。この宣言のもとで私権制限がある場合であっても、それは必要最小限のものでなければなりませんね、法務大臣としてそのようにお考えですか、こういう質問なんです。

森国務大臣 お尋ねの新型インフルエンザ等対策特別措置法は、法務省の所管ではございませんので、法務大臣としてその解釈に関する所見を述べることは適切ではないと考えております。

藤野委員 ちょっと、本当に心配になってきました。

 ちょっと具体的に聞きたいんですけれども、安倍総理は七日の衆議院議運の質疑で、警察に要請して職務質問を活発化させることがあるのかという質問に対して、罰則がないので警察が取り締まることはない、ただ、御協力はさせていただくことはあるかもしれない、こう言いました、答弁されました。

 先日は、神奈川県の知事が、これはもう相当、何か踏み込んで、警察に頼むんだ、そういうことをやってもらうんだと明言するような例も出てきているんですね。

 新聞報道でも、毎日新聞の四月三日はこう報じております。外出自粛をめぐっては一歩踏み込んだ方策の検討も進む、その一つが、警察官がいわゆる職務質問と同じような形で外出の理由を尋ねるというようなことも報道されているんですが。

 内閣官房にお聞きますが、政府内で、一歩踏み込んだ検討なるものがなされているんでしょうか。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 都道府県知事が外出自粛要請を行うに当たりまして、当該都道府県警察に協力を求めた場合には、外出自粛要請に伴う繁華街等でのトラブルの発生を防止するために、制服によるパトロールを強化し、警戒活動等の所要の措置を講じている。また、そうした活動を通じて、状況に応じて、国民に対し、外出自粛要請が出されている旨の一般的な声かけを行うなどの協力を行っていると警察庁から聞いてございます。

藤野委員 いや、私が聞いたのは、それはもう読んで知っているんですが、要するに、職務質問と同じような形というのがわからないんですね。職務質問というのは、あくまで、警察官職務執行法第二条に基づいて、犯罪のおそれがあるとき、思料されるときに限定して行われるものであります。他方、緊急事態宣言というのは、特措法に基づいて行われておりまして、犯罪というのは関係ない。

 要するに、官房にもう一回お聞きしますが、この特措法のたてつけ上、一歩踏み込んだ方策として警察官に職務質問と同じような形で行動させるということが可能なんですか。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 特措法は、あくまで、例えば外出自粛の要請につきましては、市民への協力ベースという話でございます。例えば警察官職務執行法第二条第一項で、いわゆる職務質問でございますけれども、いわゆる職務質問ではなく、一般的な声かけをされるというふうに警察庁からは聞いてございます。

藤野委員 だから、できないということですね、法律上。

 ただ、何か一般的な声かけとおっしゃるんですが、それなら、ほかの、県の職員とか、別に警察官がやる必要はないわけですね。

 何のために特措法はそもそも罰則を設けていないのかというと、もともと、私権制限という、憲法上の権利を制約するからなんですね。だから、それを最小限にしようということで、罰則も設けず、協力ベースというたてつけにしているわけです、法律を。

 だったら、今、この宣言を出されたもとでやるべきことは、そもそも外に出なくていいように、先ほども野党の委員から指摘がありましたけれども、しっかり補償を行って、仕事へ行かなくていいようにするということをまず根本に置きながら、あとはしっかり別のやり方で対応していくということが、この法律の世界というか、予定されている状況だと私は思うんですね。

 それを何か飛び越えて、もう全く飛び越えて、いきなり警察に行くというのは、本当に私は危険な動きだというふうに思います。厳しく今後も見ていきたいというふうに思います。

 そして最後に、検察官の定年延長についてお聞きをします。

 配付資料の三を見ていただきたいんですが、これは四月六日に日弁連が会長声明を出されまして、それそのものなんです。

 これは通告させていただいているんですが、この日弁連の声明は、解釈変更についても、そもそも検察官の独立性というのは、あるいは特殊な定年制度というのは、憲法の基本原則である権力分立に基礎を置くものである、だから、それを変えることは、それこそ先ほど御指摘もありましたけれども、範囲を大きく逸脱するものであって、法の支配と権力分立を揺るがすものと言っておりますし、法律につきましても、憲法の基本原理である権力分立に反するという、こういう指摘がされております。

 大臣にお聞きしますが、このような日弁連会長声明の指摘、どのように受けとめられますか。

森国務大臣 御指摘の会長声明が出されたことは承知をしております。

 検察官は、刑事訴訟法上、唯一の公訴提起機関であり、その職務執行の公正が直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすという職責の特殊性があり、準司法的性格を持っているとされます。そのため、検察官には一般行政官と異なる身分の保障及び待遇が与えられております。

 もっとも、検察官に勤務延長の規定が適用されるものとしても、内閣ないし法務大臣が自由に検察官を罷免したり、検察官に対して身分上の不利益処分を行ったりするものではないため、その身分保障を害するものではないと考えております。

 したがって、今般の解釈変更及び検察庁法の改正案は、検察官が準司法的性格を有するとされていることとは矛盾するものではないと考えます。

藤野委員 いや、私は、大きく矛盾していると思うんですね。大臣の答弁の前半と後半自体が矛盾している。

 配付資料の四を見ていただきたいんですが、これは先日も御紹介したんですけれども、法務省が出してきた資料でありまして、検察官に今回の国公法と同じような規定を設ける必要があるかということについて検討した結果を書かれているものであります。

 ここにありますように、例えばアのところに、「検察官については、管理監督職勤務上限年齢制を導入し得ない」云々かんぬんと言った後に、しかしながらということなんですが、「検察官については、職制上の段階がなく、降任等が概念し得ないことから、他の一般職の国家公務員に比してより柔軟な人事運用が可能である。また、検察官は、定年に達した時に退官することとされているため、同時期に一斉に退官することとはされていない。さらに、管理監督職勤務上限年齢制の趣旨を踏まえて導入する仕組みにおける異動時期は誕生日を基準としていることから、一斉に異動することにもならない。」と。

 つまり、三つのないと先日言いましたけれども、降任等が概念し得ないということ、同時期に一斉に退官しないということ、同時期に一斉に異動もしない、だから柔軟な人事が可能で、一番下にありますけれども、それにより公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考えがたいと言っているんですね。考えがたい。

 もともとこういう検察の特殊性があるから、現在も国家公務員法の八十一条の三の第一項は検察官には適用されていないし、今後も必要ないというふうに結論づけているわけであります。

 大臣にお聞きしたいんですが、私が三月三十一日に法務委員会で、この特殊性ですね、降任がないとか、一斉にやめないとか、一斉に異動しないとか、この状況は昨年十月末から今までに変わったのかと質問したら、大臣は、現在も同様だと答弁をされました。

 ちょっと確認したいんですが、大臣が現在も同様だとおっしゃったのは、検察官がさまざまな特殊性を持っている、一斉に退官しないとか、そういう特殊性は現在も同じだが、別の観点から今回新たな法律をつくったんだ、そういう理解でよろしいですか。

森国務大臣 はい。法務省においては、御指摘の検討は、昨年十月末ごろの時点でございますが、退官や異動により補充すべきポストが一斉に生じるおそれがあるか否かという視点のみから検討をしたものでございますけれども、この法案が提出に至らず、通常国会までの提出までに時間ができたので、昨年十二月ごろから担当者において改めて検討作業等を行い、この従前の解釈を維持するのが妥当か否かという観点に立ち戻って検討をしたものでございます。

藤野委員 そういうことなんです。要するに、現在も同じだけれども、別の視点からやられた。

 これは日弁連が指摘しておりますように、検察官の地位の特殊性というのは憲法の基本原理である権力分立に基礎を置くものであるというふうに、憲法の基本原理というのがこの日弁連の声明には何回か出てくるんですね。

 大臣にお聞きしますが、現在も同様だと言った検察官の特殊性というのは、大臣も、この特殊性は憲法の基本原理に基礎を置くものである、これは、大臣、同じ認識なんでしょうか。

森国務大臣 憲法の理念に基礎を置くとおっしゃった特殊性というのは、準司法官的性格のことだというふうに思われますので、それについては、先ほど御説明したとおり、唯一の公訴提起機関であるというところから出ている性格で、それは現在も特殊性があるというふうに考えております。

藤野委員 余り細かいことはいいんですが、要するに、検察官の地位の特殊性というのは、大臣も、憲法の基本原理に基礎があるということでよろしいんですね。

森国務大臣 憲法によって定められている、法の、裁判官による、裁判官と行政機関、立法機関の中で、その裁判官が行っている刑事裁判に唯一の公訴提起機関である検察官が重大な影響を及ぼすという、そういう意味で、その職責の特殊性があり、準司法的性格を持っているとされていると理解しております。

藤野委員 じゃ、ちょっと聞き方を変えますけれども、要するに、この問題、今回問われているのは、憲法の基本原理に基づく現行制度、これを変えていこうという話なんですね。大臣は、社会経済情勢が大きく変化し、多様化し、複雑化し、犯罪の性質も複雑困難化していると言うんですが、そういう漠然としたものが権力分立などの憲法の基本原理よりも優位するというふうに大臣はお考えになって、別の視点から今回の法案を提出されたということなんですか。

森国務大臣 検察官が準司法官的性格を持っていることはそのとおりでございますが、今回の勤務延長の規定が適用されるものとしての検察官の準司法官的性格を害するというふうには考えておりません。

藤野委員 私が聞いているのは、大臣も一部であれ、憲法の基本原理が検察官の地位の特殊性の土台にあって、基礎にあって、それが、先ほど言った、大臣が現在も同様と言った、例えば一斉に退官しないとか、一斉に異動しないとか、そういう身分保障につながっているわけですね。検察独自の身分保障なんです、これは。だから、法務省自身が、一般の国家公務員法八十一条の三は適用されないし、今後も必要ないと一旦は結論づけたんです。それを大臣は一部ではあれお認めになって、ただ、それを、特殊性として、経済情勢などとかいう、そういう一般的なというか漠然としたもので憲法の基本原理に基づく部分まで変えようとしているんですか、そういう質問なんです。

森国務大臣 先ほどの繰り返しになりますけれども、勤務延長制度を適用されるとしても、検察官に対して身分上の不利益処分を行ったりするものではないため、その身分保障を害するものではございません。

 したがって、今般の解釈変更が検察官が準司法的性格を有するとされていることと矛盾するものではないと考えております。

藤野委員 いや、矛盾するんですよ。検察の準司法的性質が、一斉に退官しないとか一斉に異動しないところに、定年とかそういう身分保障でいえば、反映されているわけです。

 じゃ、また、別の聞き方をしますけれども、要するに、十月末までは、二十二条については改正する必要はないとおっしゃっていたわけですね。ところが、それを変えていくわけです。しかも、二十二条が必要ないと言っていた理由について、大臣は現在も同様だとおっしゃっている。だったら、これは分けるべきじゃないですか。切り分けて、九条とか六十三を六十五にするというのは十月末にも入っていましたから、これは当時も検討済みであり、現在と同様という範疇だと思います。

 けれども、大臣、今でも現在と同様とおっしゃっているのであれば、十月末のときになかったものはやはり別にすべきだと思うんです。大臣自身おっしゃっているように、別の観点から入れ込んだ条文なんだから、これは国家公務員法そのものと切り分けて、やはり法務委員会で堂々と、これこれこういう理由だから、検察官の問題は特別に議論をする、これが法務省として当然とるべき態度じゃないですか。

森国務大臣 昨年十月末ごろ時点では、退官や異動により補充すべきポストが一斉に生じるおそれがあるか否かという視点のみから検討していたわけでございます。

 ところが、法律案の提出に至らなかったので、本年の通常国会までの提出までに時間ができたので、昨年十二月ごろから担当者において改めて検討作業を行いました。そのときに、先ほどから申し上げておりますけれども、また別の視点での解釈を、検討を行ったわけでございます。

藤野委員 今、別の視点とおっしゃいましたように、要するに別の視点なんです。別の法律と考えた方がいいんです。

 国家公務員法という束ねでやろうとしているのであれば同じ理念でやるべきであって、国家公務員法の役割制度などの理念は当てはまらないというふうに法務省自身が結論づけたわけですから、国家公務員法の束ねを解いて、検察庁法は検察庁法として、別の視点とおっしゃっているのだから、別の法律として提出すべきじゃないですか。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 今般の国家公務員法等の改正の束ね法案でございますが、一般の国家公務員に適用される国家公務員法、それから検察官に適用される検察庁法、それから自衛隊員に適用される自衛隊法ということで、いずれもその趣旨、目的は、知識、経験が豊富な高齢期の職員を最大限に活用する点などあるところ、この共通の目的に基づいた国の政策を整合的に行うべきということで、束ねて審議をお願いするところでございます。

藤野委員 そういうやり方は二重三重に権力分立を破壊するものだということを指摘して、質問を終わります。

松島委員長 次に、足立康史さん。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 きょうは串田委員にかわりまして質問に立たせていただきます。

 維新の会は、もう一般質疑は御遠慮させていただいて、できるだけ国会の質疑を合理化していく、こういう方針でございますが、きょうの法務委員会は緊急事態宣言が出る前にセットされておりましたので、質問を予定どおりさせていただきたいと思います。

 きょうの議運委の理事会で、出席議員削減を正式決定いただきました。これは、かねがね、遠藤国対委員長を始め日本維新の会が、新型コロナで国民の皆様にさまざまな御無理を要請させていただいている中で、国会だけがのんべんだらりとやっていたらあかんということで申入れをずっとしてきたことでありますが、ようやく関係会派の御理解をいただいて前に進んだことを歓迎したいと思います。遅いですが、やらないよりはいいと思います。

 さて、きょうは、まずちょっと冒頭、総務省それから内閣府、お越しをいただいています。内閣府神田政務官と今井政務官、お世話になります。毎度済みません。

 例の現金給付、三十万の現金給付、心配しています。ちょっと通告、細かいところは入っていないと思いますが、政務官、いつごろ給付できそうですか。それぐらいちょっと。一言でいいですよ。いつごろできそうかだけちょっと。それぐらい詰めていますよね。ちょっと、誰か、もし頭に入っていなかったら。いや、通告しているんだよ。ばくっとちょっとしていたから。でも、ちょっと全体のことは割愛して、要はいつごろかということだけ教えてください。済みませんね。

神田大臣政務官 お答え申し上げます。

 本当に明確なということになるとなかなか申し上げにくいんですが、できるだけ早くということは我々も肝に銘じておるところでございまして、今、自治体側とも、急ぎ届けられるように調整しておるところという形でございます。

足立委員 その事務を内閣、政府は総務省に詰めてくれということで、ちょうどきのう、総務省から全国の自治体、都道府県あるいは自治体に通知が出ています。総務省も急に振られてかわいそうですけれども、大丈夫ですかね。大丈夫ですか。

長谷川副大臣 委員におかれましては、総務委員会でいつも御質問いただいているのに感謝申し上げたいと思います。

 総務省においては、生活支援臨時給付金を実施するために、四月の七日に、関係省庁の人的協力を得まして、生活支援の臨時給付金の実施本部というのを設置いたしました。私もこの実施本部の皆様にもいろいろお話をしましたが、この目的は、もう迅速に、とにかく迅速に、できるだけ早く給付を実施するところにあるということを皆さんそれぞれわきまえておられます。

 さらに、今回、新型コロナ対策、感染症が広がる中で、どういうふうな、感染拡大防止も含めて、市町村窓口等の、徹底をしていくかということが課題でありまして、とにかくこの実施本部でありとあらゆる課題を想定しながら迅速に実施をしていきたい、そのような考え方でございます。

足立委員 気合いはわかりますが、私はかねがね、これは無理ですよと言ってきました。総務委員会でも詳細、議論してきましたが、いろいろ工夫、困ったなということで工夫をされているのは承知していますが、依然として、新型コロナウイルス感染症発生前に比べて大幅に減少、収入が半減以上減少するという要件は今も残っています。これは、もし一千万世帯、一千三百万世帯に配るんだったら、二千万世帯は下らないですよ、窓口に行くのが。郵送とかおっしゃっていますけれども。でも、相談になるでしょう、これは。だから私は、本当にこれはうまくいかないなと思って、ずっと心配して苦言を呈してきました。

 その中で、ここに提示をさせていただいている、いや、今審査しようとするからもめるんだから、事後マイナンバーひもづけ審査・給付切りかえ方式というのをずっと私どもは提案してきています。もう詳細は御紹介しませんが。死人が出ますよ、経済で。新型コロナじゃなくて経済で死人が出つつあるわけです。だからこそ、民間金融機関を活用して、貸金業者でもいいですよ、活用して、一〇〇%政府保証でまずお金を配ってくれ、それを給付に切りかえるかどうかは、事後、据置期間三年間の間に議論したらいいだろうということをずっと言っているんだけれども、政府・与党は言うことを聞かない。もうとんでもない政権ですよね、本当に。

 私はかねがね、現政権は野党第一党が権力を握るよりはましだということで支援してきましたが、これはだめだと思いますね。まあいいや。よくない。大変よくないです、これは。

 それで、皆さん、ぜひ、法務委員会に僕はきょう来させていただいたけれども、法務委員の皆様にもぜひ、重要な行政分野ですからお願いしたいのは、大臣にもお願いしたいのは、ふだんからやっておけばいいんですよ、議論を。

 なぜこれだけ現金給付でもめているかといったら、私たち維新の会、私が、ねえ、山下大臣、外国人の受入れを拡大するときから言っていたじゃないですか。日本人で、共産党が反対するからどうしても国内で入れられないんだったら、外国人からでもいいじゃないかと。マイナンバーのフル活用を早くしろということを、入管法改正の附則にまで明記をして、それを求めてきたけれども、結局やっていないからこんなことになっているんですよ。

 だから、私は、皆様に申し上げたいことは、平時からやるべきことをやっていないからこんなことになるんだということを改めて申し上げたいと思います。

 そういう観点から、きょうは、新型コロナの中で選択的夫婦別姓かよと言われますが、こんなものは早くやったらいいんですよ。しようもない。いや、しようもないって、国会の活動がしようもない。

 ここに書いてあるように、何か、枝野さんとか玉木さんとか、ちょっと、言っていること、非常にレベルが低いんですけれども、彼らが言っていることをやると、戸籍は廃止か、個人戸籍にするか、あるいは二つの氏が並び立つという、いわゆる日本の戸籍制度の大原則である同一戸籍同氏の原則を修正しなければなりません。だから、もめているんですよ。

 自民党だって、やみくもに全部ノーと言っているんじゃない。参院選のときに安倍総理だけ手を挙げられなかった気持ちはわかる。そやけど、維新の会は、だからこそ、自民党ものめるような案をかねがね、参院選の公約から言っています。それは、旧姓を使いましょうと言っているんです。

 そうしたら、安倍総理も答弁で、予算委員会で、いや、旧姓使用の拡大に内閣も頑張っていますと言う。でも、あくまでも、内閣が、今自公政権がやっているのは旧姓併記です。こういうややこしいことをするから、災害のとき、新感染症でこういう緊急事態、非常事態のときに混乱するんですよ。

 私は、旧姓を住民票、住民基本台帳で公証し、それに一般的な法的効力を付与したらいいじゃないか、民法と戸籍法はさわらなくていいと言っているんです。

 きょう、最高裁に来ていただいています。

 最高裁では既に、裁判関係文書については、裁判官が旧姓で判決文、裁判関係文書を作成できることになっています。こういう制度を取り入れた経緯、考え方を御紹介いただければと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判官を含む裁判所職員につきましては、従前は、行政府省の職員と同様に、一定の司法行政文書等について旧姓使用を認めることとしておりました一方で、裁判関係文書につきましては、国民の権利義務に重大な影響を及ぼしますことから、作成者の作成権限を明確にする必要があるということで、戸籍姓を用いることが最も確実な方法と考えていたところでございます。

 しかしながら、作成者の同一性を確認するための措置といたしまして、旧姓使用者を管理する台帳等を裁判所内に整備することによりまして、裁判所職員が裁判関係文書に旧姓を用いたとしても作成者の作成権限の明確性を十分に担保することができ、当事者に混乱が生ずるおそれはないということから、男女共同参画社会の実現に向けての社会情勢の動向等も踏まえまして、裁判関係文書に旧姓を使用することを認めるということとしたものでございます。

足立委員 まさに今おっしゃったように、国会がのろのろやっている間に、立法府、そして行政府がぽうっとしている間に最高裁はもうやっているんですよ。全く問題ない。

 今御答弁いただいた堀田局長、何か支障はありますか、今。

堀田最高裁判所長官代理者 特段、支障は生じていないというふうに承知しております。

足立委員 そうなんですよ。民法、戸籍法を改正しなくたって、裁判官、女性だけじゃないね、配偶者、要すれば旧姓を使いたい裁判官は何の支障もなく旧姓単独で使用して、裁判関係文書という大変重大な文書を旧姓だけでやっているのに、なぜ安倍政権は、自公政権は、自民党は併記にこだわるんですか。理由がわからないですね。

 これは、担当は今井政務官ですか。ちょっと今井さんに余り強い言葉で言いたくないんだけれども、これはできると思うんだけれども、どうですか。

今井大臣政務官 政府においても、旧姓を併用すると限定しているわけではなくて、併用して、拡大について取り組んでおるところでございます。

 社会における活動や、また個人の生き方が多様化する中で、やはり女性が不便を感じているというお声も承知しております。女性活躍の視点に立った制度等を整備することが重要であるという問題意識の下、旧姓使用の拡大について取り組んでいるところであります。

足立委員 今の政権はまさに旧姓使用の拡大をやっていますよと。またこの曖昧模糊としたね。国民をだましているんですよ。やっていますと言って、やっていませんよ。旧姓併記で、パスポートに旧姓併記したら、海外に行ったら、何だこの併記はといろいろ聞かれ、聞かれたら困るから、今度はそれがわかるように、これは旧姓だということをパスポートに書くんだと外務大臣もおっしゃっていたけれども、そういう問題じゃなくて、旧姓に一般的法的効力を与えたらいいだろうと言っているんです。

 それを野党は、多分、維新以外の野党の皆さんは、そういう方々の不便を解消したいと思っていないんですよ。戸籍を破壊したいか、国会を混乱させて、願わくば女性天皇、女系天皇の実現につなげたいと思っているんですよ。だから、昨年の参院選で、枝野代表は演説で、選択的夫婦別姓と女系天皇を、同じ演説で両方やろうと言った。途中で引っ込めたけれどもね。

 だから、本当に利便性の問題ですよ、これは。日本のある意味での伝統とか習慣、慣習を維持しながら不便を解消できるんだったら、早くやったらいいんですよ。そういうことをぽうっとしてふだん解決していないから、緊急事態、非常事態でみんな困ったことになっているんでしょう。

 私は、ここに書いてあるように、今、最高裁は自分のところで台帳をつくっていると言うんだけれども、日本国には台帳がもう既にあります。住民基本台帳という台帳があります。住民基本台帳は既に制度改正して、希望者には旧姓を併記するように、要するに、住民基本台帳で旧姓をある意味では公証しているわけです、既に。それを制度インフラとして使うことに私は何ら支障はないと思いますが、いかがですか、総務省。

長谷川副大臣 総務省では、住民基本台帳法施行令等を改正して、昨年十一月から、住民票やマイナンバーカードなどに旧姓を併記することを可能といたしました。これによって、例えば婚姻により姓が変わった際においても、これまで使用していた旧姓を住民票やマイナンバーカードなどに記載することにより、旧姓を公証しやすくなったところでございます。

 各制度における具体的な活用は、制度を所管する各府省に対応していただくことになるものと考えておりますが、総務省としては、旧姓が記載された住民票やマイナンバーカードを円滑に活用いただきたいというふうに思います。

 ちなみに、令和元年の六月十八日に、政府の、すべての女性が輝く社会づくり本部で決定された女性活躍加速のための重点方針二〇一九においても、各種国家資格等について旧姓の使用が可能であることが制度上担保されるよう早期の実現に向けて検討を行うことや、旧姓使用がしやすくなるよう関係機関等に働きかけを行うことが盛り込まれているということをつけ加えさせていただきたいと思います。

足立委員 今あったように、もうインフラはあるじゃないですか、制度インフラ。やればいいんですよ。

 法務大臣、お忙しいところ、恐縮です。

 法務省は、まさに民法、戸籍法、そういう法体系を全部持っていらっしゃるけれども、まさに最高裁が実施しているように各府省が広く所管の法律について旧姓だけでも有効にする、今、商業登記法とかは旧姓併記になっていますけれども、そうじゃなくて、旧姓だけで社会生活、仕事ができる、そういう環境を整備しようというふうに、例えば今井政務官と私が協力してそういうことを進めたら、僕は法務省は困ることはないと思いますよ。思いますが、どうですか。何か、それはやめてくれという感じですか。

森国務大臣 委員の御質問は、各省庁で進めるというような御提案でございますかね。なかなかお答えは難しいのでございますけれども、制度設計上、いろいろな案があると思います。足立委員のような案もございますし、それから、自民党の稲田朋美議員を中心として、旧姓ではなくて、旧姓と言わないんです、生まれたときの姓をそれぞれが戸籍の中で法的効果を発するようにというような意味合いのことをおっしゃっていましたけれども、さまざまな御意見があります。そしてまた、今新しく、各省庁でいろいろやったらいいのではないかという御提案もなされました。

 私は、弁護士のときも旧姓で仕事をしておりましたし、金融庁の課長補佐のときもそのまま旧姓で仕事をさせていただいておりましたが、ただ、そこを進んで、まだやはり不便もあるし、悩みもあると思います。また、一人っ子同士の結婚ということ、中でも本当に深刻な悩みがございます。そこを解消するために、国会における御議論をしっかり注視をして、そして、不便だからすぐ解消しようということではなく、やはり課題がございますので、そこはしっかりと検討させていただきたいと思います。

足立委員 いや、大臣、申しわけない。最近、自民党は、一人っ子同士の結婚だからそういう制度が要るという何かかじを切り始めているのは承知していますが、維新以外の野党と自民党は、そういう意味では大変大きな同床異夢、同じ選択的夫婦別姓に前向きな議論をしていても、言っていることは全く違う。

 じゃ、自民党が二つの氏を本当に認めることができるのか。かつて法制審、民行審が答申をしたときに、自民党はそれを実現できなかった。じゃ、もう一回、ここの、私が点線で囲っているところの議論を本当にやるんですか。やるんなら、いつまでにやれるか。僕は、今の自民党のぐだぐだだと、これはまとまらないと思いますよ。だって、ずっとまとまってきていないんだから。

 だから、私は、その本質的な議論はちょっとやっていただいて、それはやっていただいたらいいですよ。でも、第一ステップとして、本格的な選択的夫婦別姓制度を実現する前に、もう不便で苦労されている方がそこに、目の前にいるんだから、その人を助けましょうよ。それは私の提案している足立方式、旧姓公証方式でできるんだから。いや、維新方式ね。いや、山下さん、一緒に名前つけてあげてもいいよ、山下・足立方式。でも、山下さん、全然協力してくれなかったから、僕は今井政務官と一緒にやりたい。

 今井さん、もちろん政務官として、御答弁、限界はあると思いますよ。でも、きょう私が申し上げたことをわかってくれると思うんですよ。本質的な議論の前に、まず、最高裁がやっているように、できることがあるんだから不便を解消しようよと。そういうできることからやるという発想がなければ、今回の新型コロナだって、本当に困っている人がいたら助けてあげましょうよ。不便だと本当に困っている人は本当に困っているんですよ、先ほども大臣からあったけれども。

 今井さん、これ、私と一緒にやりませんか。ちょっとお願いします。

今井大臣政務官 足立議員おっしゃるとおり、やはり平時からの取組、そしてスピード感を持ってやるということ、また、夫婦別姓のこういった議論というものを、やはり国民全体で議論を重ねていくということはすごく必要なことであると思っております。

 政務官としてお答えすると、やはりまだまだ、こういった旧姓使用できるような周知というもの、もっともっとやはりしていかなくちゃいけないのかなと感じております。住民票やマイナンバーカード、運転免許証のように旧姓併記を可能としているものがあるということ、そして銀行口座のように旧姓名で口座開設を可能とするものなどありますので、そういったことからまずは周知していって使用していく、そのことが重要かなと思います。

足立委員 今井政務官、ぜひ足立とタッグを組んでやっていただければと思います。

 大臣、もういいんですが、法務省には事前に、法務省として、私たちがこういうものを推進したら、旧姓単独の、まあ公証システムはあるわけだから、それを、一般的な法的効力を各府省の持っている法律で実現していくということを、例えば今井さんと私で実現に向けて動き出したときに、僕は法務省に事前レクで、法務省として法務省の法益を害するようなこと、何か思いつくことはありますかと一応聞いているんですよ。何か見つかりましたか。ないと言ってもらって、大臣に。ないと思うんですけれども。

小出政府参考人 お答え申し上げます。

 仮定の制度に基づく御質問でございますので、詳細にしっかりしたお答えは困難でございますけれども、例えば、旧姓のみを用いることができて民法、戸籍上の氏との併用を認めないということとする場合には、社会生活上、民法、戸籍上の氏がほとんど意味を持たないこととなりかねず、法的に公証される旧姓と民法、戸籍上の氏との関係をどのように法的に整理すべきかという慎重な検討が必要になるものと思います。

 それから、旧姓と民法、戸籍上の氏との併用を認めることとする場合につきましても、両者の関係を法的に整理する必要があるほか、こういった制度を採用いたしますと、民法、戸籍上の氏を称することも、また旧姓を称することもできることとなり、また、あわせてそれらを称することもできるということも考えられますので、社会における個人の特定に混乱が生じないかといった点も含めまして検討していく必要があるのではないかというふうに考えています。

足立委員 今おっしゃったことはささいなことですよ。そんなことは、ほかの案、共産党から、立憲民主党から、自民党から、公明党から、皆さんが言っている議論全てにおいて、どうせ必要な議論でしょう。整理したらいいんですよ、整理を。どこかで決めて、政治のリーダーシップで今御答弁されたようなテーマについては早く論点整理して、不便を解消するところからやりましょう。

 こういうことをふだんからやっていないことが、先ほど冒頭申し上げたような、今回の三十万円の現金給付にあってもマイナンバーが使えない。

松島委員長 質疑持ち時間が終了しましたので。

足立委員 マイナンバーで銀行口座をひもづけていれば、ボタン一個で現金は配れますよ。

 しっかり与党の皆様にも、その点、お願いをして、質問を終わります。

 ありがとうございます。

松島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十四分散会


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