衆議院

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第2号 令和3年3月10日(水曜日)

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令和三年三月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 義家 弘介君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 稲田 朋美君

   理事 奥野 信亮君 理事 宮崎 政久君

   理事 山田 賢司君 理事 稲富 修二君

   理事 階   猛君 理事 大口 善徳君

      井出 庸生君    井野 俊郎君

      大塚  拓君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 鷹之君    武井 俊輔君

      出畑  実君    中曽根康隆君

      野中  厚君    深澤 陽一君

      藤原  崇君    盛山 正仁君

      山下 貴司君    吉野 正芳君

      池田 真紀君    寺田  学君

      中谷 一馬君    堀越 啓仁君

      松平 浩一君    屋良 朝博君

      山花 郁夫君    吉田 宣弘君

      藤野 保史君    串田 誠一君

      高井 崇志君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        田所 嘉徳君

   外務副大臣        鷲尾英一郎君

   法務大臣政務官      小野田紀美君

   外務大臣政務官      鈴木 隼人君

   厚生労働大臣政務官    大隈 和英君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 伊藤  信君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 檜垣 重臣君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 猪原 誠司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       竹内  努君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          金子  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    大橋  哲君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 有馬  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岩井 勝弘君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           岸本 武史君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 大森 恵子君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十日

 辞任         補欠選任

  屋良 朝博君     堀越 啓仁君

同日

 辞任         補欠選任

  堀越 啓仁君     屋良 朝博君

    ―――――――――――――

三月九日

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

義家委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官伊藤信君、警察庁長官官房審議官檜垣重臣君、警察庁長官官房審議官猪原誠司君、法務省大臣官房政策立案総括審議官竹内努君、法務省大臣官房司法法制部長金子修君、法務省民事局長小出邦夫君、法務省刑事局長川原隆司君、法務省矯正局長大橋哲君、外務省大臣官房審議官赤堀毅君、外務省大臣官房参事官有馬裕君、厚生労働省大臣官房審議官岩井勝弘君、厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長岸本武史君及び環境省大臣官房審議官大森恵子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

義家委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。国光あやの君。

国光委員 茨城六区選出の衆議院議員、国光あやのでございます。

 本日は、若輩にもかかわらず、御質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 本日、法務委員会で質疑に立たせていただくに当たりまして、まず、是非このことをお伺いをしたいと思いまして、御質問を上川大臣にさせていただきます。

 大臣の所信表明の演説の中でも冒頭にございました、そして先週の日曜日から開催をされております京都コングレス、国連犯罪防止刑事司法会議、先週の日曜日からスタートをされ、かなりメディアでも大きく取り上げられています。日本国内のメディアだけでなく海外のワシントン・ポストなどでも取り上げていらっしゃるというのは、本当に国内外で目覚ましいことだと思います。

 ただ、前回ドーハで二〇一五年に会議があってから、本当に、大臣始め田所副大臣、小野田政務官、そして関係の皆様方、御苦労が多かったのではないかと思います。本当は昨年四月に開催をなされる予定が、コロナの第一波ど真ん中で延期をされて、やっとこの度に結ばれたわけでありますけれども、二つのことが本当にすばらしいなと思っております。

 今回、コロナになってから日本では初めての大型の国際会議でございます。国連の会議でもございます。徹底的に、オンラインと、そして実際の出席、出席された国というのは百五十か国中十五か国と伺っております。今は原則海外の渡航は禁止になっていますけれども、今回の会議のために特別に許可をされて、閣僚の方も十五か国からいらっしゃっていると承っております。

 そしてまた、京都も、そして日本も、まだまだ感染予防にしっかり努めていかなきゃいけない大事な時期でございますので、PCR検査を国内外を出るときに徹底をされて、そして、京都で間もなく桜の香りもというところもあるわけですが、参加者の皆さんは、基本的には会議場で、京都の国際会議場ですか、でずっとステイされるということで、特に観光はないわけですけれども、そこもしっかりとキープされながら対応されたことというのは、本当にすばらしいことだと思います。

 そしてもう一つ、本来のこの会議の意義としまして、上川大臣が以前から提唱されていらっしゃる司法外交。今年を司法外交元年とされるという意気込みで、様々な、国際犯罪防止、そして、特に、日本が今まで培ってこられた、私の地元もたくさんいるんですが、保護司。保護司の活動も、今まで、例えば、ケニアやあるいはフィリピンなどで、法務省さんからいろいろ、保護司の活動、地域のボランティアが、犯罪被害者、そして矯正をされようとされている方、その後をボランティアとしてフォローされる。すばらしい制度だと思います。その辺りを、今回のいろいろなワークショップなどで広めていかれるということも取り組まれていると伺っております。

 本当にすばらしい意義、あのコロナの中でも、ウィズコロナとともに、しっかり国際会議も感染予防に心がけながらできるんだという強いメッセージと、そして、日本が司法外交の舞台でもセンターに立つということで、本当にすばらしいことだと思います。

 改めて、上川大臣の意気込みと司法外交元年に至る御決意をお伺いできればと思います。

上川国務大臣 おはようございます。

 冒頭、初めての質問ということで、京都コングレス、この点につきまして御質問いただきましてありがとうございます。

 今回の京都コングレスは、六年前の二〇一五年に開かれましたカタールでの国際会議、これの五年に一回のサイクルで開催される、これを日本に誘致したということでございますが、御指摘のとおり、コロナ禍がございまして、昨年の四月開催される予定を、今年の三月七日からということになったわけでございます。

 状況が様々動く中にありまして、どのように対応していくのかというこの準備につきましては、国連そして主催者であります国連のUNODCの様々な協議を通じて、最後の最後まで、また、今も継続しておりますので、最後のエンディングのところまで、あるいは更にその先までも含めて、トータルにリスク管理をしながら開催をするという、非常に厳しい、難しい開催になりました。

 日本におきましての国際会議の開催も、こうした規模のものは初めてでありますが、国連にとりましても、コロナ禍におきましてこうした国際会議、この規模の国際会議を開催するという意味では初めてということでありまして、その意味でも、世界的に様々なこの教訓を、また知見を生かしていくということが極めて大事だというふうに認識をしております。その意味で、この七日から開催されました京都コングレスが、その最後のところまでしっかりと安全、安心に開催されますよう、毎日毎日しっかりとチェックしながら動いているところであります。

 また、二点目の点につきまして、司法外交の点にも触れていただきまして、本当に、私が一つのビジョンを持ってこの六年間進めてきましたので、その意味では、非常に大きな成果を上げることができているのではないかというふうに、また、更にそれをどのようにこれから生かすのかということについては、大変力を入れてまいりたいというふうに改めて思うわけであります。

 改めて、この七日に京都コングレスが開催されまして、各国から司法大臣とか検事総長の、リーダーの方々、司法の分野のリーダーの方々がお集まりいただくことができました。

 開会式におきましては、高円宮久子妃殿下に御臨席を賜りまして、大変貴重な御挨拶を、お言葉を頂戴することができましたし、また、菅総理にも御出席をいただきまして、ホスト国の代表としてのスピーチをいただくことができました。

 また、グテーレス国連事務総長におかれましては、ニューヨークからライブ中継で御参加をいただきまして、全てのセッションにつきましても御覧をいただいたというふうに承っております。

 七日でありますが、京都宣言という形で採択をされました。京都宣言におきましては、犯罪防止、そして刑事司法あるいは法の支配の推進が持続可能な開発、誰一人取り残さない、SDGsの取組でありますが、この実現のための礎になるということでありまして、特に、国際連携の一層の推進、あるいはマルチステークホルダー・パートナーシップによって、犯罪抑止、犯罪防止を進めていくことなどが宣言されたところでございます。

 今後、この宣言をいかに実現していくかということが主催した国のまた責任でもあるということでありまして、国連あるいは加盟国とともに、この京都宣言の実現に向けまして、主催国としてもしっかりとリーダーシップを発揮していくということが重要であるというふうに思っております。

 先ほどお触れいただきました保護司の制度でありますが、これは世界保護司会議という形で、今回、大きな会議を開催したところでございまして、こうした知見もしっかりと生かしながら、再犯防止、更生保護分野におきましての国連におきましてのスタンダード作り、あるいは、グローバル人材の育成に向けたユースフォーラムの定期開催、こういうところにしっかりと力を入れてまいりたいというふうに思っております。

 さらに、この法制度整備支援につきましては、長い歴史の中で展開をしてきたものでありますが、更にその推進を図り、人材派遣を通じた国際機関との連携、あるいは我が国におきましての国際仲裁の活性化ということにつきましても、引き続き強力に推進してまいりたいというふうに思っております。

 この京都コングレスを新たな出発点として捉え、国際社会におきましての法の支配の確立に向けまして、国際機関また関係各国との連携、しっかりと強力に進めながら、司法外交の次のステージという形で進めてまいりたいというふうに考えております。

国光委員 上川大臣、力強いメッセージをありがとうございました。

 私も、テレビや動画などで、当時のちょうど開会式のときの上川大臣や菅総理のステートメントを拝聴いたしておりまして、まず、総理が、ポストコロナの国際秩序を日本がしっかりリードしていくんだ、こういうお言葉がありまして、その部分は多くのメディアにも取り上げられております。本当に力強いメッセージで、司法外交、そして司法外交元年が、この先の国際秩序をまさに日本が旗を振ってリードしていくということが、本当にすばらしく、日本の国益にも資するもの、そして国外のSDGs、誰一人取り残さない、法の支配を貫徹するという意味でも重要だと思います。是非この成果をしっかりとつなげていかれることを心から期待を申し上げたいと思います。

 続きまして、SDGsの概念、誰一人取り残さない、法の支配という点で、二つ今日はお尋ねを、国内のことでさせていただきたいと思います。いずれも、ちょうど私の地元で被害者の方がおられて、かなり深刻であり、かつ、私も何とかしたいという思いで当選以来取り組ませていただいていることでございます。

 一つは、ちょうど二月二十六日に閣議決定をされて国会に提出がされました、インターネット上の誹謗中傷の対策でございます。

 私も、実は、当選する前、まだ候補者時代、地元で高校生の方が、ネット上の、SNS上の誹謗中傷を受けて、残念ながら自殺をされてしまう、自死されてしまったという事件がございました。それ以来、ライフワークの一つとしてこのテーマに取り組ませていただいております。

 ただ、正直申し上げまして、当選して、総務省、特にプロバイダー責任制限法を所管する、ソーシャルメディアを所管なさる総務省さん始め、いろいろ関係者に当たったんですが、なかなか腰が重たくて、やはり表現の自由問題、それに対して被害者救済、このバランスというものがこれほどさように難しいものなのかということは、一人の国会議員となっても本当に実感する壁でございました。でも、やはり何とかできないのか、このまま泣き寝入りをする多くの方をみすみすこのままにしておくのは政治の無責任ではないかという思いでやってまいりました。

 昨年、そこに大きな、何といいましょうか、神風といいますか、動きが出ることがございました。

 ちょうど昨年、コロナが始まって、誹謗中傷をSNS上で受ける、例えば事業者の方、そして医療者の方、多くの誹謗中傷の問題が社会問題になりました。そしてもう一つ、五月に、ちょうど、まだ皆様、記憶に新しいかもしれません、とある著名人の方がSNS上の誹謗中傷によって自死をされてしまった、そういう事件がありました。かなりこれらのことで空気が変わったなということを、ずっと追いかけてきた私としては感じております。

 実は、上川大臣にも顧問に御就任いただき、そして元大臣で委員でもおられます山下元大臣にも同じくメンバーに入っていただいて、自民党の中でインターネット上の誹謗中傷対策プロジェクトチームを立ち上げさせていただき、そして、私、事務局長を拝命させていただきました。

 この問題を何とかしたいという思いで、急ぎ提言を取りまとめ、元々、総務省さんの方で、発信者情報を開示、書き込んだ人の情報を特定しやすいように、省令を改正して電話番号をすぐ入手できるようにするということは既定路線では考えていただいていたんですが、何とか、この度、法改正ということで、プロバイダー責任制限法の改正案をまとめられて、具体的には、何か誹謗中傷的な書き込みをした者、それが認定された場合、その発信者を特定をしやすくする。

 今までは、SNSに情報開示請求をして、その次にプロバイダーに聞いて、さらに、発信者を特定したら、それで損害賠償請求をするという三段階の裁判。これは、被害者の方、話すけれども、本当に大変です。時間はかかる。二、三年ですよ、平均。二、三年で、SNSに書かれたことはあっという間に広がります。多分、委員の皆様方も身に覚えといいましょうか、恐らく、なるほどと思われる部分が多いんじゃないかと思います。そしてさらに、三段階も裁判手続をしていましたら、なかなか一般の方で、経済的な御負担、そして心理的な御不安、やはり本当に大変です。

 これを今回、裁判手続を簡素化をして、できれば、総務省がおっしゃるには、三か月、数か月で発信者を特定をする。今まで表現の無法地帯だったのを、しっかり発信者を特定をして、しっかり裁判、本人の特定とそして書き込みの削除、刑事罰に至るまでということを強化をしていくというふうになっております。

 表現の自由問題があるわけですが、今のところこの法改正においては、表現、例えば、書き込んだことのどこまでが誹謗中傷に当たるかということを特に縮めるものではなくて、明らかにこれは誹謗中傷だ、人権侵害だと、当たった範疇のことを対処するときに裁判手続を簡素化するということですので、表現の自由の萎縮には当たらないかというふうには私も考えております。

 この点につきまして、私、総務省がやっと重たい腰を上げていただいた今、法務省のお力、本当に重要だと思います。人権擁護の観点から、人権擁護窓口で、全国の各法務局でインターネット上の誹謗中傷の相談窓口も設けておられます。その窓口を更に実効的なものにしていく。人権擁護委員さんが、よく相談を伺うんですけれども、実際、結構、割とシニアな方が多くて、SNSといっても分からない、やはりなかなかそういう意思疎通ができにくいという現実的な問題もよく承っております。本来ならば警察に、あるいは違法・有害情報センターに、そしてプロバイダーに削除要請ということをつなげていただかなければいけないんですが、なかなかそこまで至る人権擁護の窓口が少ない。

 そしてもう一つ、ちょうどプロジェクトチームでも提言案に入れさせていただきましたけれども、この刑事罰、何か書き込んで、明らかに誹謗中傷だ、名誉毀損だとなった場合、侮辱罪や名誉毀損罪に該当いたしますが、明治四十年に刑法ができて以来、全くこの量刑、刑事罰の中身は変わっておりません。

 当時の明治は、当然ながらネットもありません、SNSもありません。ですので、そこまでその事実が公知になることはない。ただ、今は全く違います。一時間どころか十秒で一つの書き込みが多くの広がりを持つという、かなりやはり状況が変わっている。

 これは、私としては、是非法務省のリーダーシップで、刑事罰の、刑法上の対応についても、今の時代に合った形で見直す。これは諸外国でも、ドイツや韓国やアメリカなどでも取り組んでいることでございますので、表現の自由に配慮しながら御検討をいただくということを是非お願いをしたいところでございますが、大臣の御所見を改めてお伺いいたします。

上川国務大臣 委員がこの問題につきまして、政治の中でも大変大きく取り上げて動いていただいてきたことに対して、心から敬意を表したいというふうに思います。

 インターネット上での誹謗中傷等の書き込みは、同様の書き込みを次々と誘発をしていくということでありまして、取り返しのつかない重大な人権侵害にもつながるものであるというふうに認識しております。決してあってはならないというふうに思っております。

 委員御指摘の人権相談の体制等につきまして、法務省では、人権擁護機関におきまして、相談者の意向に応じまして、例えば、誹謗中傷等の書き込みの削除依頼の方法等につきまして助言をしたり、また、違法性を判断した上でプロバイダー等に書き込みの削除を要請する、こうした、事案に応じた適切な措置を講ずることとしているところでございます。関係省庁とも連携をいたしまして、被害者がどのような相談窓口を活用すればよいのか、入口の段階で分かりやすい形で御案内できるように、この周知につきましては徹底して今やっているところでございます。

 また、相談を受ける側の研修、これは、それぞれのケースも様々な要素を持っておりますので、しっかりと、一人一人の、一つ一つのケースにしっかりと向き合うことができるように力をつけていくという意味での研修、こうしたことを通じまして、相談体制についてはしっかりと充実したものにしてまいりたいというふうに思っております。

 また、委員御指摘の、刑事法上の対応につきましては、検察当局におきまして、刑事事件として取り上げるべきものにつきましては、事案の内容を踏まえた適正な処分、こうしたものに努めているものと承知をしております。

 さらに、御指摘ありました侮辱罪等の法定刑の在り方などにつきましては、ただいま法務省におきまして必要な調査また検討を行っているところでありまして、これにつきましてもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

国光委員 ありがとうございます。

 誰一人取り残さないという中で、恐らくインターネット上の誹謗中傷の被害者は、年々、これからも数が増してくると思います。十年間で約四倍被害者が増えている。今、高校生でも八割の方がいわゆる携帯かスマートフォンを持ってSNSに触っておりますので、普通に考えると、やはり若い頃から、小さい頃から、きちんとSNSのネットモラルやネットリテラシーの教育をつけながら、余り刑法の御用にならないように、その前の未然の防止というのは非常に重要だと思いますので、是非リーダーシップで、ほかの関係省庁、文科省や警察庁、総務省と連携を更にお願いをできれば大変光栄です。ありがとうございます。

 続いて、被害者の救済、被害者保護の観点から、DV、ドメスティックバイオレンスの問題についてお伺いをしたいと思います。

 私の地元でも、かなりこの被害者の方、増えてこられて、そして一つ一つが悪質性を増している。なかなか加害者の方も、制度の裏をかくような、なかなか、被害者と加害者の間でかなりのいわゆるコミュニケーションギャップがあったり、お互いにそれぞれ言い分があるんだけれども、なかなか解決しない事例、複雑性や深刻性が増している事例が非常に増えてきたなという実感を持っております。先日、警察庁が発表したデータでも、この五年間で一・五倍相談が増えて、いわゆる警告されるような数というのも増えてきたというふうに承っています。

 私としては、DV防止法、これは平成十三年に議員立法でできたわけですけれども、この法自体ができて、非常に、保護命令を出されるであるとか、配偶者暴力相談支援センターが窓口をしっかりつくって被害者に寄り添うということなどが明記されて、非常に進んだというふうに思いますが、まだまだ本当の意味での被害者救済ということが、先ほどのネットの誹謗中傷と同じように、更に私ども、政治の力で取り組んでいかなきゃいけないことがたくさんあるのではないかというふうに思っております。

 例えば、先生方の地元でもひょっとしておられるかもしれません。DV被害を受けている、またあるいは、受けた後に離婚されて、別居しているけれども、加害者の方がその被害者の方に随分やはり接近行為をする、例えばつきまとう。それは、本人だけじゃなくてお子様、例えばお子様の学校の門の前でずっと待って見張っているというような状況だったり、なかなか、法律で言うところの生命や身体への暴力行為まで、実際に殴ったとか蹴ったとかそういうことまで至らなくても、そのおそれがある蓋然性が非常に増している状況というような御相談が、私の地元では非常に増えております。これを一体何とかできないのかということ。

 もちろん、実際にそれが被害につながる、実質的な被害につながるかどうかというところというのは判定は難しいわけですけれども、今、実際、例えば保護命令を発令するとなると、やはり相当の実際の暴力、おそれがあって精神的に非常に不安であるというだけでは、基本的には保護命令は発動はされません。実際に発令ができないものですから、実際、その被害者の方々は泣き寝入りの状態を繰り返している。

 具体的には、例えば、被害者の方が裁判所で、私の地元の事例ですけれども、伺って、書記官の方に言われたのが、保護命令を百歩譲って出されたとしても、ずっと被害者の方は逃げ続けなきゃいけないんですよと。実質そういうことになるのかもしれませんが、それを書記官の方に言われてしまう被害者。あるいは、実際に警察に御相談されても、なかなか警告や指導に至るプロセスまでは至っていただけません。そういう中で、非常に、被害者の方というのは本当にやりきれない思いを多く抱えていらっしゃるということがあるかと思います。

 是非、法律に基づく保護命令の発令の基準、基準自体は変わらなくても運用で、いわゆるそのおそれがあるというところを本人から裁判所に申立てするわけですけれども、是非そのときに、より円滑に話を聞いていただける、間違っても、ずっと逃げなきゃいけないですよなんということは余り言わないでいただきたいなというふうには個人的には思いますし、実際に、例えば法テラスに御相談なさっても、なかなか、資力があるんだったらちょっと代理人は立てにくいですねと言われてしまったりとか、皆様にとってはそうではないと思われることも、被害者の方はかなり心ない言葉を受けているということが実際問題あられると思います。

 今すぐ法律をどうこうや、運用どうこうという前でも、相談自体はしっかり親身になって聞いていただきたいと強く思うわけですが、是非その辺りの御見解をお伺いできればと思います。

金子政府参考人 法テラスによる支援について御説明します。

 法テラスでは、御指摘のDVやストーカーの事案も含めまして、犯罪被害者に対する支援として、法律の専門家による支援が必要な場合には、犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士の紹介を無料で行っております。

 また、DVやストーカーの事案につきましては、深刻な再被害へと急速に発展する危険性が大きいため、できるだけ早い段階で弁護士の助言を受けられるようにする必要があるということを踏まえまして、法テラスでは、法改正により、平成三十年一月からDVやストーカー等の被害者を対象に、資力の有無を問わない法律相談援助を開始し、支援を強化したところでございます。

 これらの支援は、複数回御利用いただくことができるようになっているため、相談をした弁護士に受任を断られたような場合には、改めてこれらの弁護士紹介や法律相談援助を御利用いただくことができることとなっております。

 今後とも、法テラスにおきまして、DV等の被害者の方々に寄り添った適切な支援が提供できるよう、被害者支援に精通している弁護士の確保や法テラスの職員の知識、スキルの向上に努めるものと承知しておりまして、法務省としましても必要な協力をしてまいりたいと考えております。

国光委員 ありがとうございます。

 加害者の人権という点もありますので、なかなか難しい問題、さっきのネット上の誹謗中傷と一緒ですけれども、なかなか難しい問題とは存じますが、是非ソフトロー的な部分ででも、実際に完全アウト、完全保護命令を発動しなきゃまずいですというレベルの手前の方というのはたくさんいらっしゃると考えられるわけです。ですので、その辺りのしっかり寄り添った支援ということも更に御検討いただきたいと思います。

 また、先ほど答弁でも触れていただきましたけれども、実際問題として、DV被害者の方が裁判所などに伺いますと、やはり直接申立てはできるわけですが、実際的には、代理人を立てたらどうですかという話はよくいただかれるというふうに承っています。

 その代理人である弁護士を探すときに、なかなかこのDV被害を受任してくださる弁護士の方を探すのは、本当に皆さん苦労されていらっしゃいます。私の地元でも、ちょうど弁護士さんを立てたらば、加害者の方がその弁護士さんを攻撃されてしまって、逃げられました。その次に、たくさんの弁護士さんの方を探されたんですが、なかなか受任していただける方がいない。法テラスに最後、行ったけれども、なかなかということがあったり、そういう事例を何回も聞いております。是非、寄り添った御支援というのをお願いをしたいと思います。

 最後に田所副大臣に。

 ちょうど、田所副大臣も私も地元が茨城でございますので、やはり同じ御相談は地元からよくいただくかとは思うんですけれども、所有者不明土地の問題。話は変わって、この所有者不明土地問題、地元からも大きく御要望をいただいております。

 今回、所有者不明土地問題の解決に向けました、民事基本法制の見直しを内容とする法律案が提出されておられます。例えば、民間の土地取引や災害の復旧復興作業などで、なかなか用地取得の問題というのは常に地元の茨城や全国でもハードルになっているわけでございます。

 是非、改めて副大臣に意気込みをお伺いさせていただきたいと思います。

田所副大臣 ありがとうございました。

 超高齢社会にあって、ますます相続の機会は多くなっている。しかし、相続登記がなかなかされない。所有者不明土地が増えているわけでありますけれども、それによって土地の利用も阻害されるということですから、重要な観点に着目をしていただきまして、ありがとうございました。

 今般提出した法案は、所有者不明土地の増加等の社会的情勢の変化に鑑みて、所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化の両面から総合的に民事基本法制の見直しを行うものであります。

 まず、発生予防の観点から、不動産登記法を改正し、これまで任意とされていた相続登記や住所変更登記の申請を義務化しつつ、それらの手続の簡素化、合理化策をパッケージで盛り込んでいるというものでございます。

 同じく発生予防の観点から、新法を制定して、相続によって土地の所有権を取得した者が、法務大臣の認証を得てその土地の所有権を国庫に帰属させる制度を創設するものであります。

 次に、土地利用の円滑化の観点から、民法等を改正して、所有者不明土地の管理に特化した所有者不明土地管理制度を創設するとともに、土地の共有者の一部が不明でも土地の利用、処分を可能とする制度を創設するなどの措置を講ずるものであります。

 これらの法律案を適切に実施、運用することによって、着実に所有者不明土地の解決につながるものと考えております。よろしくお願いいたします。

国光委員 これで終わります。ありがとうございました。

義家委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 上川大臣、第十四回国連犯罪防止刑事司法会議、京都コングレス、大臣のリーダーシップで、本当に国内外で注目を集めておられる。非常に成功裏に、この十二日までの会議でありますけれども、期待をしておるところでございます。

 また、所信におきまして、大臣は、多様性と包摂性のある、誰一人取り残さない社会の実現を目指すと、力強く決意を述べられました。

 無戸籍者の問題につきまして御質問いたします。

 無戸籍者は、自らに何らの落ち度がないにもかかわらず、社会生活上の様々な場面で著しい不利益を被り、過酷な状況に置かれております。無戸籍者問題は重大で深刻な人権侵害であって、一刻も早く解消しなければならないと考えています。

 無戸籍者問題については、本年二月九日、法制審議会民法(親子法制)部会が、これを解消する観点から、民法の嫡出推定制度の見直し等を内容とする民法(親子法制)等改正に関する中間試案を取りまとめました。中間試案については、二月二十五日から四月二十六日までパブリックコメントの手続が実施され、今後、パブリックコメントを踏まえた調査審議を行い、来年には法案を提出することを目指していると承知しております。

 我が党では、二〇〇七年に無戸籍問題等プロジェクトチームを立ち上げ、無戸籍者の救済に向けた様々な提案を行い、リードしてまいりました。

 二〇〇八年には、総務省が全市区町村に無戸籍者の住民票を作成する際の統一判断基準を通知し、民法の嫡出推定制度に関連して、戸籍がない場合であっても、嫡出否認等の手続を行っているときは、その子の住民票の記載をすることができることとなったこと。加えて、二〇一八年には、就籍許可手続等の場合にも拡大することとなりました。

 また、無戸籍者が利用することができる裁判手続として、妻が夫の子を妊娠する可能性がないことが客観的に明白な場合の嫡出推定が及ばない子が、夫を相手とせず、実父に対し申立てできる認知調停の案内が適切に行われるよう、裁判所のホームページの改定等を行うよう提言を行い、実施されました。

 さらに、新型コロナウイルス感染症対策として支給された一律十万円給付の特別定額給付金につきまして、住民登録されていない無戸籍者を除外せずに給付対象とするよう求める緊急要望、法務省、総務省が連携をしてほしいということで要望いたしまして、そしてこれは実施されました。

 これまでの法務省の取組についてお伺いします。

 上川法務大臣もこれまで無戸籍者問題の解消に向けて積極的に取り組まれており、その指揮下で法務省において、市区町村の窓口等から得られた情報により各法務局において無戸籍者の情報を把握し、把握した情報に基づき無戸籍者の母親等に寄り添った支援を行ってきたほか、これらに資するための関係機関との連携にも取り組んできたものと認識しております。

 無戸籍者の解消に向けた更なる取組としてどのようなことを行っていくのか、大臣にお伺いいたします。

上川国務大臣 無戸籍者問題につきましては、大口先生、力強いリーダーシップを振るっていただきまして、様々な御提言をこの間いただきました。一つ一つがしっかりと実現できるように取り組んでまいったところでございます。

 無戸籍の方々の存在がこの日本の国であるということ自体、あってはならないというふうに思っておりまして、国民としての社会的な基盤、これが与えられていないということでありますし、また社会生活上の不利益を受けるということでありますので、これは人間の尊厳に関わる重大な問題であるというふうに強く認識しているところであります。

 法務省におきましては、無戸籍者の解消のために、平成二十七年の五月から、無戸籍者ゼロタスクフォース、これを設置いたしました。一人一人にしっかりと寄り添って、そして、戸籍の記載に必要な届出、また裁判上の手続が取られるようしっかりと支援をするという寄り添い型の取組の実施でございます。

 そして、昨年十二月におきましては、無戸籍者やその母親等の関係者に相談をしていただくということが極めて大事であるということで、ウェブコンテンツを充実するという観点から、法務省ホームページに「無戸籍でお困りの方へ」のページを、スマートフォンにおきましても見やすいものにリニューアルをさせていただきました。また、無戸籍解消までの流れがしっかりと分かるように、スライドショーというような形での掲載もしているところであります。また、具体的に七つの解消事例集ということを作成いたしまして、法務省の担当者のアドバイスとともにこれを掲載をしているところでございます。

 無戸籍者の解消、かつ、その解消までの期間ができるだけ短くなるように、新たにこうしたウェブコンテンツなどによりまして、難しいと皆さんから思われている裁判手続等の情報を分かりやすく提供させていただき、法テラス、弁護士会等、関係機関と更に連携を取りながら、無戸籍者ゼロを目指しまして、各種政策をフル稼働してまいりたいというふうに思っております。

大口委員 無戸籍者問題の解消のためには、無戸籍者をめぐる現状や無戸籍に至った原因の分析が必要であると考えます。

 今回初めて法務省民事局より出していただいた資料、これは配付資料としてお示ししておるところでございます。

 法務省で把握している無戸籍者の数は、令和三年二月十日時点で八百八十一人、累計の無戸籍者の数は三千四百三十五人。現在の無戸籍者のうち六百四十人、約七三%が、無戸籍となった理由としては、夫ないし前夫の嫡出推定を避けるためであると回答しております。このうちDVがあるものが四十七名、まあ、全てを把握されているわけではないので、実際はもっと多いと思いますけれども、そういう数字が出ております。

 次に、この資料の、無戸籍者の母の婚姻の状況を見ますと、婚姻中に無戸籍者を出生し、現に婚姻が継続している、継続中であるものが百五人、約一二%、婚姻中に無戸籍者を出生し、現在婚姻が解消しているものが百人、約一一%になっています。

 無戸籍となる原因として、DVも重要な事情であると考えますので、このうちDVの被害を受けている人は何人なのかもお伺いしたい。また、これ以外に、法制審議会の部会ではどのような事実が調査審議の基礎資料となっているのかもお伺いしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のDVの被害につきましては、あくまで当事者の申告により把握しているものでございますけれども、御指摘の、婚姻中に無戸籍者を出生し、現に婚姻が継続中であるもの、これは百五名中、DVの被害があるものは十六人でございます。それから、婚姻中に無戸籍者を出生し、現在は婚姻が解消しているものについて、これは百人中十六人がDVの被害があるということでございます。

 このほかにも、法務省では、嫡出推定制度の見直しの検討をする際の資料とするために、婚姻解消後三百日以内に子が生まれたケースについて、母の再婚との関係に関する調査を実施しております。

 まず、母の婚姻解消後三百日以内に生まれた子であって母の再婚後二百日以内に生まれた子につきましては、原則として母の前夫の子と推定されるわけですが、現在の戸籍実務では、裁判が確定した場合や離婚後に懐胎した子であることが医師により証明された場合については、母の再婚後の夫を父として届け出ることができることとされております。

 調査の結果、このような子のうち九六・六%の子については、判決の謄本等や懐胎時期に関する証明書を添付することによって、母の現夫、すなわち再婚後の夫を父とする届出がされていたことが明らかとなりました。

 また、法務省が把握している無戸籍者であって離婚後三百日以内に生まれた子のうち、母が離婚後三百日以内に再婚をし、その後に出生しているものの割合は約三五・八%、再婚後に生まれたか否かにかかわらず母が離婚後三百日以内に再婚しているものの割合は四六・八%であることが明らかになっております。

 こういった結果は法制審議会の民法部会にも報告されており、その調査審議の資料とさせていただいているところでございます。

大口委員 今回の配付資料をまたしっかり分析しますとともに、法制審で出された基礎資料もしっかり分析して議論をしていかなきゃいけない、こう思っています。

 これらの調査結果から分かるように、無戸籍者問題を解消するためには、民法の嫡出推定制度の抜本的見直しが不可欠だと考えています。

 今回の中間試案は、嫡出推定規定について、婚姻解消等の日から三百日以内に生まれた子について前夫の子と推定するとの原則を維持しつつ、母が前夫以外の男性と再婚した後に出生したものは再婚後の夫の子と推定するとの例外を設けています。それとともに、未成年の子に嫡出否認を認め、夫ないし前夫に対する嫡出否認の訴えを提起することができるようにするものであり、無戸籍問題の解決に資するものと考えます。

 ただ、基礎資料で、例外規定に該当する子は三五・八%、また、DVがある場合には未成年の子が夫又は前夫に対する嫡出否認を行使することが困難な場合が相当数あると考えられます。無戸籍者問題を根本的に解消する観点からは、離婚前出産の救済や、離婚後三百日以内に生まれた子を前夫の子と推定するという現行法の規定を撤廃することが必要であるという、長年無戸籍者問題に取り組んできた現場の弁護士らの意見もあります。また、母にも固有の立場で、成年等に達した子にも嫡出否認を認める必要があるとの意見もありますが、これらの意見について中間試案でどのように考えているか、法務省にお伺いします。

小出政府参考人 お答えいたします。

 中間試案におきましては、委員御指摘のとおり、嫡出推定の期間について、離婚後三百日以内に生まれた子は前夫の子と推定する規律を原則としては維持しつつ、母が再婚した後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定するといった例外を設けること、また、嫡出否認の訴えの提訴権者を子に拡大するとともに、その提起期間を三年又は五年に伸長すること、また、女性の再婚禁止期間を撤廃することなどを内容とする見直し案を提案しているところでございます。

 こういった見直しが実現した場合には、離婚後三百日以内に生まれた子であっても、母が再婚した後に出生した子については再婚後の夫を父とする出生届を提出することができます。また、そのような事情がない子であっても、未成年の子に代わって母等が嫡出否認の訴えを提起することによって、前夫の嫡出推定を否認することが可能となるため、前夫以外の男性の子として届出をすることができる場面が広がるものと考えています。

 他方で、委員御指摘のとおり、こういった見直し案に対して更なる改正をといった意見があることも承知しております。事務当局といたしましても、委員の問題意識を踏まえつつ、これと併せて、子の身分関係の早期安定を図る必要性等の要請も考慮に入れながら、充実した調査審議が法制審議会において行われるよう努めてまいりたいと考えております。

大口委員 しっかり広くパブコメで意見を、またいろいろヒアリングもして、議論をしていただきたい、こういうふうに思います。

 次に、養育費不払い問題についてお伺いします。

 子供たちの命や未来を守るために早急に解消しなければならない喫緊の課題であると考えます。我が国の子供の貧困率は一三・五%でありますが、中でも、大人が一人の世帯の子供は四八・一%であり、大人が二人以上の世帯の子供は一〇・七%と比べて、著しく高いわけであります。養育費について、直近の一人親世帯等の調査の結果では、母子世帯で、この養育費の取決め率が四二%、現在も受け取っている割合が二四%にとどまっており、早急に改善されなければなりません。

 我が党は、昨年六月、女性活躍加速のための重点方針二〇二〇の策定に向けての提言、そして養育費支払い確保のための相談支援体制の充実強化を提案し、政府方針に反映されました。また、私が座長を務める公明党不払い養育費問題対策プロジェクトチームは、昨年九月に、現行制度の運用によって対応することができる方策に関する緊急提言を、さらに昨年十二月には、上川法務大臣や厚労大臣宛ての養育費不払い問題の抜本的解決のための制度見直しに向けた提言を、それぞれ政府に申入れを行い、政府において、これをしっかりと受け止めて、スピード感を持った取組をお願いしてきたところでございます。

 我が党の九月のこの緊急提言では、養育費が確保されるような広報啓発の拡充のため、離婚時や別居時に夫婦間で決めておくべき事項や支援内容、関連諸手続について、分かりやすい動画解説をウェブ上で提供するなど、SNSによる情報提供や、離婚届の用紙に養育費に関する相談機関に関する情報を追加すること、養育費、婚姻費用の自動計算ツールを提供すること等を提案しております。この対応状況につきまして、法務大臣よりお伺いいたします。

上川国務大臣 養育費の不払い解消の問題につきましては、子供の生活あるいは未来を守る観点から喫緊の課題であると認識しておりまして、御党のPTから、九月と十二月にわたりまして具体的な提案をいただいたところでございます。この広報啓発に関する御提言の内容につきましては、いずれも重要なものであるということで、積極的に取組を進めております。

 まず、養育費の重要性、また取決めの方法など、分かりやすく説明する動画を初めて制作をいたしまして、養育費バーチャルガイダンスとして法務省の動画サイトで近日中にアップする予定でございます。この動画におきましては、養育費に関するお悩みの場面ごとにQアンドAの形で分かりやすく説明するという内容になっておりまして、養育費の問題で悩んでいらっしゃる方々広くに御覧をいただき、また御参考としていただきたいというふうに考えております。

 また、離婚届用紙を通じた情報提供ということにつきましても御提言がございまして、離婚に関する参考情報の記載を充実する見直しにつきまして、今検討中、準備中でございます。

 また、養育費の自動計算ツールの提供につきましては、養育費の取決め促進という観点から、法務省の離婚に関するウェブサイトにおきまして情報提供する方向で積極的に検討してまいりたいというふうに思っております。

 養育に関する効果的な広報啓発を進めてまいりたいと思っておりまして、この問題の解決に自らがしっかりとキャパシティーを持って、そして臨んでいただくということに支援をしてまいりたいと思います。

大口委員 よろしくお願いしたいと思います。

 本年二月十日、法務大臣から法制審議会に対し、父母の離婚後の子の養育に関する制度等の見直しについて諮問されました。大臣が所信でも述べられていますように、チルドレンファーストで、子供の視点に立った検討をお願いしたいと思いますが、そのためには実態に即した議論が必要であると考えます。

 その観点から、我が党九月の緊急提言では、協議離婚の実態や養育費の不払いの原因、それらが子に与える影響に関する実態調査の提案をし、十二月提言では、父母の別居中の婚姻費用に関する実態調査の実施も提案をいたしました。これらの提案について、対応状況を大臣よりお伺いします。

上川国務大臣 御党から御提言をいただきました、養育費の不払いなど父母の離婚が子に与える影響に関する実態調査につきましては、私も極めて重要であるというふうに考えておりまして、担当部局に早急に実施するよう指示をいたしました。既にアンケート調査を実施しておりまして、近日中の公表に向けまして、結果を今分析している状況でございます。

 この調査につきましては、未成年の間に父母の離婚を経験した二十代及び三十代の男女、合計一千名を対象とするものでございます。父母の離婚後の子の養育に関しまして、子供の立場に立った皆様の声を直接聞くという意味で、法務省として初めての実態調査となります。

 この問題につきましては、これまで申し上げましたとおり、子供の視点に立って検討を進めるということの重要性の上にこうした調査をしているわけでありますが、子供がどのような状況に置かれているのか、その実態の把握につきましては、今後の政策立案の上で極めて重要であると考えております。

 また、同じく御党から御提言をいただきました協議離婚の実態調査につきましても、実際に協議離婚を経験した方を対象として、アンケート調査を近く実施する予定としております。現在、その内容につきましても準備中ということであります。

 この調査の中では、協議離婚後の実態調査だけではなく、それに先立つ父母の別居状態にも目を向けて、御指摘の婚姻費用の分担の有無等に関する調査も併せて行う予定としております。

大口委員 次に、一人親にとって最も身近な相談窓口は地方自治体であるということを踏まえ、我が党九月緊急提言では、地方自治体におけるワンストップでの相談支援の充実強化の観点から、自治体内の戸籍担当部署と一人親支援担当部署などの部署間連携の強化等を求めてきたところであります。

 この点につきまして、法務省及び厚労省が立ち上げた養育費問題支援タスクフォースでは、昨年十二月、自治体における部署間連携の在り方等について検討した成果を取りまとめ、今年二月には全国的に通知をしたと聞いております。

 また、我が党九月緊急提言では、新たな自治体の法的支援の在り方として、ITツールを活用した離婚、別居問題に関する相談支援、弁護士、司法書士による裁判手続の申立て書等の作成支援等について調査分析するための自治体モデル事業を提案しています。

 タスクフォースにおいてどのような自治体連携の方向性が示されたのか、また、モデル事業ではどのような法的支援について検討がなされるのか、民事局長にお伺いします。

小出政府参考人 お答えいたします。

 養育費の不払い解消のために運用改善等により速やかに取り組むべき課題につきましては、先ほど来話が出ております御党の養育費PTからの緊急提言、昨年九月にいただいております。この緊急提言に盛り込まれていた自治体内の部署間連携の強化につきましては、これも委員から御指摘ございましたが、法務省と厚生労働省の担当審議官等をメンバーとする養育費支援タスクフォースで検討を進めまして、その成果として、両省から本年二月五日付で、戸籍担当部署と一人親支援担当部署の更なる連携強化の推進を求める事務連絡を発出したところでございます。

 この中では、自治体内の戸籍担当部署と一人親支援担当部署の連携の在り方の一例といたしまして、戸籍担当部署の職員が離婚届の書類を取りに来た方に対しまして一人親支援担当部署への誘導を行うといった具体的な方策を示すなどしておりまして、これを活用した自治体の取組が進むことを期待しているところでございます。

 また、同じく緊急提言に盛り込まれておりました自治体モデル事業の実施につきましては、地方自治体と連携してモデル事業を実施し、その成果等について調査研究を行う委託業務を行う予定にしておりまして、その予算が令和三年度予算政府案に法務省経費として初めて盛り込まれたところでございます。このモデル事業を通じまして、委員の御提案にあるように、養育費の取決めや紛争解決のための法的支援の在り方などに関しまして幅広く調査、分析を進めていきたいと考えております。

 御党の御提言を踏まえまして、法務省として、運用上の改善に向けた取組についてもスピード感を持って対応しているところでございます。今後とも、厚生労働省を始めとする関係省庁と連携しながら、必要な取組をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

大口委員 次に、養育費を確保するためには、家庭裁判所の手続の利便性を格段に向上させることが重要であります。

 我が党の九月緊急提言、十二月提言では、家事事件手続のリモート化、IT化の検討を進めるよう提言をし、これを受けて、現在、法務省、最高裁、日弁連、法曹三者連絡協議会の家事ワーキンググループを設置をしていただきました。この家事事件手続のリモート化等について今検討していただいておるということであります。

 利用者には様々な方がおられます。養育費の請求の相手方と離れた地に住んでおられる方やDVの被害を受けている一人親の方は、期日に出頭することは物理的、心理的に困難であります。そのような利用者の裁判所の出頭の負担を軽減するため、テレビ会議を一層活用するとともに、更に一歩進めて、ウェブ会議を利用するなどして当事者が裁判所に行かなくても済むようにするべきであります。

 ウィズコロナ、ポストコロナの観点を踏まえると、更なるIT化を含め、これらの取組を一層進めていく必要があると考えますが、法務大臣の所見をお伺いします。

上川国務大臣 家事事件の手続の利便性向上をさせるため、利用者の出頭の負担、これを軽減するということは極めて重要であると認識しているところであります。

 実務的な課題につきましては、今委員が御指摘いただきました、現在、民事司法の在り方に関する法曹三者連絡協議会家事ワーキンググループにおきまして、手続のリモート化、具体的には、現在も行われているテレビ会議の更なる利活用等を課題として検討を進めておるところであります。本年度末までに取りまとめの予定としているところであります。

 さらに、本年四月以降は、令和三年度中に新たにウェブ会議の導入を目指しまして、最高裁、日本弁護士連合会とともに、実務的な観点からの検討を積極的に進める所存でございます。

 家事事件手続のIT化につきましては、成長戦略フォローアップにおきまして本年度中にスケジュールを検討することとされておりまして、現在、今後のスケジュールについても詰めの検討を行っているところでございます。積極的に検討を進めてまいりたいと考えております。

大口委員 また、現在、法制審の仲裁法部会において、国際調停活性化の観点から、裁判外の調停、ADRによる和解合意に執行力を付与し得る制度の創設について議論されています。三月五日、中間試案が取りまとめられたことは承知しております。

 国際的な性質を有する調停に限定するとの意見や、家事紛争については執行力を付与し得る対象から除外すべきであるとの意見もあるようでありますが、国内、国外で差をつけることは理論上の整合性の問題があります。そしてまた、我が国のADRまたODRの推進のためには、そのような限定を設けることなく、国内の事案に広く執行力を付与し得るような制度設計にすべきであると思います。

 特に、養育費の履行確保の観点からは、例えば認証ADR機関でなされた和解合意であれば、家事紛争であっても執行力を付与すべきであると考えますが、法務大臣の見解をお伺いします。

上川国務大臣 本年三月五日でありますが、法制審議会仲裁法制部会におきまして、仲裁法等の改正に関する中間試案が取りまとめられたものと承知をしております。

 部会におきましての議論におきまして、執行力を付与し得る調停による和解合意の対象につきまして、国際性を有するものに限定をするという考え方、また、そのような限定をすることなく、国内の事案も含まれるとする考え方が示されておりまして、中間試案におきましては両論が盛り込まれているものと承知をしております。

 また、家事紛争に関する和解合意にも執行力を付与し得る制度にすべきであるという委員の問題意識につきましても、この部会におきまして引き続き検討がなされるものというふうに考えております。

 中間試案につきましては、今後、パブリックコメントの手続をする予定でございまして、この結果も踏まえまして、部会におきまして、委員御指摘の点も含めて、引き続き充実した調査審議が行われるものと期待しております。

大口委員 そして、また養育費に戻りますけれども、二月十日の諮問を受けて、法制審議会では、今後、父母の離婚に伴う子の養育の在り方等に関する家族法制についての検討が進められていて、制度面の課題について検討を行っている。

 我が党十二月の提言において、まず、制度の基本理念として、民法で、養育費は子供の非監護親に対する重要な請求権であって、子供の福祉のため特に優先されるものであることを明示すべきである、民事実体法上の優先的な地位を認めるべきであるという提案をしました。また、養育費の取決めの確保について、取決めを協議離婚の要件とするのではなく、DV、虐待被害その他様々な事情で離婚が望ましい場合でも速やかに協議離婚をできなくなる弊害のおそれがあることに十分配慮した上で、離婚時の子供のことを夫婦で考える時間を持てるよう、親ガイダンスなど、離婚時の養育費取決めを促進するための方策を実施することを提案しています。

 これらの提案は、これまでの法務省の担当者も参加してきた家族法研究会でも議論され、今後更に検討が進んでいくものと理解しておりますが、この二点の課題について、その重要性、方向性についてどのように認識しているか、民事局長より伺いたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 昨年十二月に御提言いただいた事項でございますけれども、まず、養育費を子が有する重要な権利として明示することにつきましては、委員から御指摘いただきました家族法研究会におきまして、親の未成熟子に対する扶養義務の法的概念の整理として議論がされたところでございまして、その取りまとめの報告書では、これが通常の親族間の扶養義務よりも重いものであることを明示する方向で更に検討を進めることが提案されております。

 また、この報告書では、協議離婚時の養育費に関する取決めを支援する方策として、協議離婚をする父母を対象に公的機関において養育ガイダンスを実施することや、その受講を確保するための方策について更に検討を進めることが提案されています。

 父母の協議離婚時に子の養育に関する事項の取決めを促進、確保する方策としては、協議離婚の要件とする考え方も選択肢として挙げられてはいますが、現行の協議離婚制度における簡易な手続はDV被害者が早期に離婚するための役割を果たしているといった指摘があることも踏まえた上で検討を進める必要があることも指摘されているところでございます。

 この家族法研究会の報告書、この取りまとめでございますが、今後、法制審議会で調査審議が行われるに当たって検討の素材になるものでございます。事務当局を務める法務省民事局としても、法制審議会において充実した調査審議がスピード感を持って行われるよう努めてまいりたいと考えております。

大口委員 養育費問題は、子供の貧困の問題でありますし、本当に命にも関わる問題であります。法制審においてスピード感を持って検討をされますようお願い申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。

 今日はありがとうございました。

義家委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 今国会での法務委員会での論戦が今日から本格的にスタートしました。前回、上川大臣が所信表明をされたということで、私も政権を目指す野党第一党の法務部門の責任者として、我々が当委員会にいかなる姿勢で臨むかにつき、まず三点ほど述べさせていただきたいと思います。

 まずは、目下の最重要課題である新型コロナ対応についてですが、一刻も早くコロナ禍を収束させ、社会経済活動を平時の状態に戻すということは国民共通の願いです。この点については、与野党が協力して取り組まなくてはならないと思っております。特に、適時適切な水際対策、テレワークの法的安定性の確保、感染者への差別、偏見、誹謗中傷の防止といったことは、当委員会が責任を持って対応すべき課題だと思います。そのために必要かつ効果的と考える提案を随時行っていきたいと思います。政府・与党との建設的な議論を希望します。

 次に、法の支配についてです。法の支配とは、恣意的、高圧的になりがちで誤りを犯しやすい人の支配を排斥するとともに、権力を法で縛ることによって個人の権利や自由を擁護することを目的とする立憲主義に基づく重要な原理であります。上川大臣も所信表明において、法の支配の貫徹された社会を目指すということを言われておりました。

 しかしながら、権力を担う政府・与党と、それを支える官僚組織において、法やルールを無視する事案が後を絶ちません。こうした事案の真相解明、責任追及、再発防止は、身内である政府・与党では十分にできるはずがありません。我々野党に課せられた任務であると考えておりまして、積極的に取り組んでまいります。上川大臣にも協力をお願いしたいと思います。

 最後に、法務・検察行政の信頼回復についてです。昨年は、黒川元検事長の異例な勤務延長をめぐり法解釈の変更を含む政策立案プロセスが問題となり、同人の賭けマージャン問題をめぐり法務・検察組織のガバナンスが問題となりました。

 前者については、事後検証を可能とするため、手続の記録と公開が必要です。加えて、最近では、立法事実や立法の効果が疑わしい内閣提出法案の審議に我々が忙殺されまして、我が党などが提出している真に必要な法案の審議がなかなか前に進みません。政府のエビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング、EBPMが適切に行われているのか厳しくチェックするとともに、同僚議員とともに真に必要かつ有効な政策を提言してまいりたいと思います。

 さらに、後者については、すなわち法務・検察組織のガバナンスの問題については、黒川氏の賭博罪容疑につき検察が起訴猶予としたために、検察の刑事訴追権の行使に国民の疑念が生じました。検察審査会も起訴相当という厳しい判断を下しています。検察の起訴猶予処分が厳正中立に行われているか、監視する仕組みが必要だと思います。このほか、法務・検察行政刷新会議での有識者の皆さんの議論を踏まえて、法務・検察組織への国民の信頼回復のため、人事慣行を見直しすることなどにも積極的に取り組む必要があると考えております。

 以上、三点申し述べた上で、質問に入りたいと思っております。

 まず一点目、新型コロナ対応についてです。資料の一ページを御覧になってください。

 これは、今行われている京都コングレスでの感染拡大を防ぐ様々な方策について挙げられております。この記事の左側の方に、ちょっと細かい字で恐縮ですが、箇条書のように対策が幾つか挙がっております。例えば、二つ目、専用ホテルの宿泊とシャトルバスの利用、海外参加者についてはということなんですが、あるいは、会議前後の会食自粛、握手や名刺交換など接触禁止、会議の出席者と座席表の保管、席移動の禁止、ドアノブは肘で使う、非常に厳しい対策が取られています。

 これはこれで水際対策としては大変有効だとは思いますけれども、今回は、海外から来た人数、国連職員が七十五人、それから十三か国の代表団五十五人、百三十人程度です。この程度であるから、これだけ厳しくても実務的に対応可能だったのではないかと思うのですが、東京オリンピック・パラリンピックでは、選手団や役員だけでも、人数、国数とも桁違いに大きくなると思います。同じような対策は難しいのではないかと思いますけれども、他方で、本来であれば、多種多様、多人数の人が集まれば集まるほど感染リスクは高まるわけで、厳格な水際対策が必要だと思います。

 そこでお伺いしますけれども、こうした京都コングレスの対策を踏まえますと、東京オリンピック・パラリンピックで海外から観客を呼ぶのは大変難しいのではないかと思っておりますけれども、この点について大臣の御所見をお願いします。

上川国務大臣 今回の京都コングレスにおきましては、コロナ禍においての国連が主催する大規模な国際会議という意味では、初めて日本で開催したものでございます。日本におきましての国際会議の開催ということについても初めてでありますが、世界、国連の組織としても初めてでありました。

 ゆえに、国連の組織と全世界の加盟国が参加しているわけでありますので、その参加をどこまで、どのようにすることができるのか、そして、感染の状況も、世界、今同時に起こっておりますので、そういったことも踏まえて、ずっと詰めを、協議を重ねながら、ドキュメンテーションとしては、今新聞紙上では数点挙げられているところではありますが、分厚いドキュメントがしっかり積み上げられておりまして、一つずつのプロトコールに沿ってしっかりと対応するという極めて厳しい中で、今運用がなされている状況でございます。

 その中に、国連職員でありますとか各国からの閣僚級の代表団、これが入国をいたしました。京都コングレスの参加者におきましては、通常の水際措置、出国前の七十二時間以内のPCR検査などに加えまして、専用シャトルバスでの移動、借り上げ宿舎への宿泊、用務以外での外出は禁止をするという形で、本当に会場の中だけで、ある意味では閉じ込めるという状態でありましたので、そのことを全部理解した上で、しかしなおハイブリッドでやる意味があるというふうな認識の中で今回開催したところでございます。

 今夏開催を予定されている東京オリンピック・パラリンピックの競技大会につきましては、観客をどうするかという取扱いにつきましてはまだ決まっていないというふうに承知しておりまして、現時点で、どのような規模で、どういう形で開催されることになるのかということをお答えすることができないわけでありますが、委員御指摘いただきましたとおり、京都コングレスと比較すると、より多くの関係者が我が国を訪れるということになることは確かだというふうに思っております。

 したがいまして、私どものところは水際、出入国在留管理行政を所管しておりますので、今回の京都コングレスにおいて講じた防疫措置をしっかりと踏まえた上で、関係省庁とより一層連携をし、安全、安心な東京大会の実現に向けて、必要な水際対策につきましては検討してまいりたいというふうに思います。

 委員御指摘の厳格なというところについては、これは非常に重要な要素でございますし、また、今回の京都コングレスのドキュメンテーションをしっかりと生かして、これは国連でもまとめるとおっしゃっていますし、私ども、しっかりまとめさせていただいて、よりその知見を共有してまいりたいというふうに考えております。

階委員 知見を生かしていただくのは是非お願いしたいんですが、繰り返しになりますけれども、今回は、十三か国で、国連職員も含めても百三十人ぐらいの規模です。それでもこれだけの厳重な対策をしなくちゃいけなかった。これが規模的にも国的にも桁違いに多くなるというときに果たして知見を応用できるのかどうか。やはり現実的に考えると、海外から観客を呼ぶのは難しいのではないかというふうに私は考えます。その点はくれぐれも、人の健康、国民の健康が第一でございますので、水際対策をおろそかにすることがないようお願いしたいと思います。

 それから、テレワークのことについてもちょっと触れさせていただきたいと思います。

 我々立憲民主党としましては、前国会でテレワーク促進法案というものを出しております。三つの柱から成っておりまして、二ページ目、三ページ目にわたってつけさせていただいております。一つ目の柱は、電磁記録の場合、文書と違って本人の意思に基づくことの立証が困難であるため、それの解消を図った。二つ目は、今までグレーゾーンであったいわゆるリモート署名、これも電子署名に含まれることを明文化した。三つ目としては、電子署名がなかなか普及しにくい中小企業でもテレワークを促進するため、一定の要件を満たす電子メールに、判この押された私文書と同じような証拠能力を認めた。

 大体こういう三つなんですけれども、この点について、我々のこの柱が、今現在法務省としてはどのように実現されているのか、あるいは実現を図ろうとしているのか。これは実務的なことなので、民事局長からお願いしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 まず、法務当局といたしまして、議員立法の内容について直接お答えする立場ではないということを申し上げた上で、議員御指摘のテレワーク促進法案でございますが、我々の理解しているところによりますと、まず電子署名法につきまして、本人しかできない一定の方式を満たした電子署名については、本人の意思に基づく電子署名であることの推定、いわゆる一段目の推定を明文化する改正、それから、電子署名法三条の推定規定について、いわゆるリモート署名サービスによる電子署名も含まれることを明文化する改正、それから、一定の要件を満たす電子メールにつきまして、当分の間、真正に成立したことを推定する旨の改正、こういったものが含まれるというふうに承知しております。

 押印についての、いわゆる一段目の推定につきましては、本人の印章による印影があれば本人の意思に基づく押印であると推定するものでありまして、これは、実印であるか否かによって程度の差はございますが、一般に印鑑はみだりに他人に手渡さないという我が国における慣習を前提として、最高裁判例によって認められているものでございます。

 これに対しまして、電子署名については、いまだこれと同様の意味における慣習があるといった前提を置くことはできないわけでございますが、具体的な事案における裁判所の判断次第ではございますが、例えば、十分な水準の固有性、本人しかできない一定の方式を満たしたということがある電子署名サービスにつきましては、電子署名がされた事実経緯も踏まえまして、本人の意思に基づく電子署名であるということが実際上推定され得るのではないかと考えております。また、サービス提供事業者のサーバーに本人の署名鍵を設置、保管して行うリモート署名サービスにつきましても、電子署名法三条の適用はあり、同条が定める推定効が働き得るものと考えております。

 他方では、電子メールの真正な成立の推定につきましては、どういった要件の下で推定できるかについて、成り済まし対策等、技術的な対策、検証が必要でありまして、いまだ検討する必要があると認識しております。法務省といたしましても、この電子メールに関しましては、昨年六月十九日に内閣府や経済産業省とともに押印についてのQアンドAを公表いたしまして、文書の成立の真正を証明する手段として、電子メールのやり取りを含めた契約の成立過程を保存することなどを周知しているところでございます。

 法務省といたしましては、議員の問題意識も踏まえまして、引き続き各府省と連携して、テレワークの促進のため、電子署名の普及に努めてまいりたいと考えております。

階委員 大臣所信の中でもテレワーク勤務の推進ということが挙げられていましたので、我々もここは建設的にいろいろな知恵を出していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 もう一つ、誹謗中傷、差別、偏見の解消ということで、差別、偏見の解消についても大臣所信で述べられていました。

 他方で、先般、新型インフル特措法の改正で、十三条にこれに関係する条文が盛り込まれております。ただ、私が読みますところ、これは国や地方自治体に啓発活動などを義務づけるものであって、国民に対してこういった差別や偏見を行わないようにというような禁止規定などは置かれていないですし、差別、偏見で被害を被った人たちを救済するような規定もないということで、私は不十分ではないかと思っております。

 この新しい特措法の条文で、果たして効果は上がるのかどうか。大臣の所見をお願いします。

上川国務大臣 この新型コロナウイルス感染症に関連した差別、偏見につきましては、決してあってはならないというふうに思っております。私の所信でも、そのことについては強く訴えさせていただいているところでございます。

 今回の特措法改正によりまして新たに設けられました差別等の防止に向けての規定については、このあってはならない差別的取扱い等の内容を類型化いたしまして、具体的に記載をしている状況でございます。

 したがいまして、法務省で今担当しております人権擁護機関におきまして、人権相談を受けたり、また人権侵犯事案の調査処理を行うに当たりまして、このよりどころとなる大変重要な、また有意義な規定であるというふうに考えております。

 法務省の人権擁護機関、全国の法務局、地方の法務局におきまして実施しているわけでありますが、この人権相談にしっかりと応じ、また、それを通じまして、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行って、当事者間の話合いまた仲介をしたり、また、人権侵害を行った者に対して改善、説示でありますとか勧告するなど、事案に応じて適切な措置を講じてきました。

 こうした相談、調査救済活動を行う際に、相手方に対しまして、その行為が新たな規定に具体的に規定された差別的行為である、差別的扱いであるということを指摘して改善を求めるということにつきましては、現場では大変重要なツールになるというふうに思っております。こうした取組をばねに、しっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。

階委員 法文に書かれていないことが重要だということで、今の大臣のお話をお伺いしました。

 ただ、やはり、法律上もなるべく明確に、何をしてはいけないか、そして被害に遭ったらどういう救済が受けられるのかというのを明確にしていく必要があるのではないかと思っております。引き続き、この点についても、我々、提言をしてまいりたいと思っております。

 さて、二つ目の大きなテーマ、法の支配についてもお聞きしたいと思います。

 京都コングレスの議題の中で、議題三というところで、「法の支配の促進に向けた各国政府による多面的アプローチ。」という中で、「効果的で説明責任のある公平かつ包摂的な機関を構築」というくだりがあります。この効果的で説明責任のある公平かつ包摂的な機関が、日本の検察組織、これに当たるのかどうかということをまず大臣にお尋ねしたいと思います。

上川国務大臣 この京都コングレスの議題の一つであります、法の支配の促進に向けた各国政府による多面的アプローチ、とりわけ、効果的で説明責任のある公平かつ効果的な機関を構築すること、これは、持続可能な開発目標、十七のゴールがございますが、この中でもゴール十六を受けての取組ということでございます。

 法の支配の促進に向けまして、犯罪防止、刑事司法の分野における、効果的で説明責任のある公平かつ効果的な機関の構築ということでの議論でございまして、この対象となる機関につきましては、検察も含む犯罪防止、刑事司法に関連する機関を指すものと理解をしております。

階委員 やはり検察は説明責任があるということを今確認しました。

 そこで、資料の四ページ目、これは、河井案里氏の有罪が確定して再選挙へという見出しが出ております。

 四月二十五日にこの補欠選挙、参議院広島選挙区で行われるわけですけれども、今般、その補欠選挙に出馬予定の自民党の候補予定者の選対会議において、有罪が確定した河井案里さん、あるいは今公判中の河井克行さんから買収資金を受け取ったとされる県議、市議数人が出席したという報道がありました。

 河井案里氏の刑事裁判で、河井夫妻による選挙買収の事実認定が既に確定しています。そうであれば、本来、必要的共犯である被買収者側も罪に問われるべきだと考えております。ところが、検察は、その被買収者の方の処分状況がどうなっているのか、我々の問いに対して一貫して説明を拒んでいます。

 先ほど言った、説明責任のある公平かつ包摂的な機関が検察だというのであれば、この点について直ちに説明責任を果たすべきではないかと考えます。大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 検察の活動を国民の皆様に正しく理解していただくことは重要であるというふうに認識をしております。

 もっとも、一般論として申し上げるところでございますが、仮に、捜査機関の活動内容等を公にした場合におきまして、他人の名誉、プライバシーの保護の観点から問題があるのみならず、罪証、証拠隠滅活動を招いたり、裁判所に予断を与えたり、また、関係者の協力を得ることが困難になるなど今後の捜査、公判に重大な支障が生じるおそれがあるところもございます。

 検察当局におきましては、対外的な事件広報に当たりましては、個別の事案ごとに、公益上の必要性とともに、関係者の名誉、プライバシーへの影響及び将来をも含めた捜査、公判への影響そして有無、程度等を考慮しながら、公表するか否かにつきましてはその程度及び方法を慎重に判断しつつ、適切に対処しているものと承知をしております。

 今御指摘がございました事案につきまして、被買収者の処分状況ということでございましたけれども、捜査機関の活動内容に関わる事柄ということでございまして、お答えにつきましては差し控えさせていただきたいと存じます。

階委員 今、考慮要素を幾つか挙げられた上で、捜査機関が慎重に判断するということなんですが、本件の場合、非常に公益上、処分について説明する必要性は高いと私は思っています。

 というのも、もし、これらの県議や市議が訴追されて有罪となれば、公民権停止となって、今回の補選の応援には参加できないんです。このまま選挙に突入して、買収資金を受け取った県議や市議らが応援して、その候補者が当選し、後から起訴され、有罪が確定しても、手遅れになってしまうんです。民主主義の健全性を守るという最重要の公益的な観点からしても、早期に処分を決め、そして公表すべきではないかと思っております。

 これは民主主義の根幹に関わる問題ですから、いかなる裁量を検察が有するにしても、この点については説明責任を果たすべきだと考えます。大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 お尋ねいただきました件ということでございますが、委員の御主張については承りましたけれども、捜査機関の活動内容に関わることでございまして、お答えにつきましては差し控えさせていただきます。

 検察当局におきましては、一般論として申し上げるところでございますが、対外的な事件広報に当たりましては、刑事訴訟法四十七条の趣旨を踏まえまして、個別の事案ごとに、公益上の必要性とともに、関係者の名誉、プライバシーへの影響及び将来のものも含めた捜査、公判への影響の有無、程度等を考慮し、公表するか否かにつきましてはその程度及び方法を慎重に判断しているものと承知をしているところでございます。

階委員 慎重に判断して、公表もしないということになると、手遅れになってしまうということを言っているわけです。ほかの事案では慎重にやってもいい場面もあるんだと思いますが、補欠選挙が迫っている中で、本来であったら公民権停止で選挙に関われないような人が応援をしている、選挙応援に回るというようなことはあってはならないと思います。

 逆に、もし、不起訴なら不起訴と言っていただければ、その人たちは大手を振って選挙の応援すればいいわけだし、いずれにしても、起訴にするにせよ、起訴をしないにせよ、この選挙が始まる前に結論をはっきり出していただかないと、民主主義にとって大きな影響を及ぼすと思っていますから、この事案についてはやはり説明責任を果たされることが必要ではないか、その前提として処分を決することも必要ではないかというふうに考えています。もう一度大臣、この点は重要なので、もう一度お尋ねさせていただきます。

上川国務大臣 それぞれのケースにつきまして、刑事訴訟法の四十七条の趣旨を踏まえて、個別事案ごとに、公益上の必要性とともに、関係者の名誉、プライバシーへの影響及び将来のものも含めた捜査、公判への影響の有無、程度等を考慮し、公表するか否かや、その程度及び方法論を慎重に判断している。検察当局におきましてのこうした基本的な姿勢ということでございます。

 個別の事件、事案でもございまして、お答えについては差し控えさせていただきます。今委員が御指摘いただきましたことの意味ということについては、私自身は受け止めさせていただきました。

階委員 問題意識は共有していただいたということで承っておきます。

 京都コングレスで、日本の検察組織が、「効果的で説明責任のある公平かつ包摂的な機関を構築する」、このことに当てはまるんだというのであれば、議長国として、しっかりそのあかしをちゃんと出してほしいと思っております。

 もう一つ、法の支配の関係で、昨年問題になりました黒川元検事長の起訴猶予なんですが、先ほど申し上げたとおり、黒川氏の起訴猶予は、検察審査会が起訴相当の判断というのを示したわけです。これだけ国民の間から起訴猶予について疑念が生じているのに、検察は我々野党に対して不起訴記録の開示も拒み続け、説明もろくなものはされないという状況です。

 先ほど大臣も触れられたと思います、刑訴法四十七条なんですが、五ページ目に、四十七条の趣旨を判示した判決とともに条文を示しております。ポイントは下線を引いている最後の方でありまして、「訴訟に関する書類」、これには不起訴記録も含むわけですけれども、「「訴訟に関する書類」を公にすることを相当と認めることができるか否かの判断は、」「公にする目的、必要性の有無、程度、公にすることによる被告人、被疑者及び関係者の名誉、プライバシーの侵害等の上記の弊害発生のおそれの有無等諸般の事情を総合的に考慮してされるべきものであり、」ということなんですが。

 総合的に考慮をした場合であっても、法を犯した人を処罰する検察官、そのトップの人が自ら罪を犯しても起訴猶予になっているということですから、こうした事情を考慮しても、不起訴記録は開示すべきだし、説明責任を果たすというのが当たり前のことではないかと思うんですが、この点について、大臣の見解をお願いします。

上川国務大臣 今、このお出しいただきました「不起訴記録の開示について」ということで、刑事訴訟法の四十七条の規定がございます。同条の本文の上の、下線の上のところに、「「訴訟に関する書類」を公にすることを原則として禁止しているのは、」云々という記述がございます。そうしたルールにのっとって、この規定があるということでございます。

 今御指摘いただきました事案、事件につきましては、検察当局につきまして、令和二年七月十日、黒川高検検事長らを不起訴処分とし、当該処分についての説明がなされたところでございます。

 検察当局におきましては、個別事件の対外的な事件広報の在り方につきまして、法務大臣として所感を述べることにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

階委員 法の支配ということを大事にしていくという大臣であれば、こうした問題についてもしっかり取り組んでいただきたい。

 また続きは次回以降に回すことにしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

    〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕

宮崎委員長代理 次に、池田真紀君。

池田(真)委員 立憲民主党の池田真紀です。よろしくお願いいたします。

 初めに、大臣所信で触れられなかったオリンピック・パラリンピックについての大臣の所信をお伺いしたかったんですが、先ほど階委員の質問の際に、これからの、どういう在り方ということは別として、水際対策を行っていくんだという話を伺いましたので、割愛させていただき、次の質問に行かせていただきます。

 それでは、選択的夫婦別氏制度についてなんですが、今回、大臣の所信においても特に言及がございませんでしたので、改めて、今国会における大臣の所信として、夫婦別姓についてお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 夫婦が希望すれば結婚前の氏を名のれる選択的夫婦別氏制度の導入の問題につきましては、我が国の家族の在り方に深く関わる課題であるということでございまして、国民的な議論を踏まえて、そして意見の集約が図られていくことが望ましいというふうに考えております。

 これまで政府におきましても、定期的な世論調査を繰り返して実施してきております。選択的夫婦別氏制度の導入に賛成するという声が毎回高まっているということは事実でございますが、全体を見ますと、いまだ国民の意見が分かれている状況にあるというのも事実でございます。

 他方で、家族形態の変化、またライフスタイルの多様化、さらに女性の社会進出、女性の活躍が進む中、女性の約九六%が、結婚に伴いまして女性が氏を変更している、こういう現状がございます。婚姻前の氏を引き続き使えないということによりまして、婚姻後の生活におきまして様々な支障が生じているとの声があることなど、これらの社会情勢についても十分に配慮する必要があるというふうに考えております。

 また、令和二年十二月九日、昨年の暮れでありますが、夫婦別姓を認めず婚姻届を受理しないのは憲法に違反すると訴えた三件の家事審判の特別抗告審で、最高裁の審理が大法廷に回付されたところでございます。今後、改めて司法の判断が示されることが想定されるところでございます。

 法務省といたしましては、男女共同参画基本計画に基づきまして、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関しまして、国民各層の意見、国会における議論の動向、そして司法の判断、こうしたことを注視しながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

池田(真)委員 国民的な議論は、結構もう大分高まっているというふうに思いますし、あと、分かれているというふうに大臣はおっしゃっていましたけれども、その分かれ方が、もう時代が、どんどん賛成の率が高くなってきていると思うんですね。

 昭和六十二年で調査されているところでは、賛成が一三%で反対が六六%でした。振り返りますと、私の人生の中で振り返って恐縮なんですけれども、ちょうど中学で技術と家庭科が分かれていた時代でもあるんですね。教育の中で、男の子と女の子が分かれちゃうというような、そんな時代でもあって、DVや児童虐待、それこそDVという言葉もなく、家庭内暴力というような言葉で、警察が来たとしても無視されて、殺されかかっていたとしても放置をされていた時代だったななんて振り返っているところです。

 それから、平成八年、一九九六年ですけれども、賛成が三二・五%で、三九・八%が反対、要するに、ちょうどここで半々ぐらいになってくるんですが、そこは、ちょうど、その翌年の平成九年には、保育が措置から契約、そして、ちょうどその年の十二月には介護保険法が成立する、いわゆる子育てや介護の社会化、家族の在り方が多様化して、変容したことを象徴する年であると思うんです。それ以降は、賛成の率がどんどん増えてきている。加えて、今回のこの九〇%以上の方々が男性の氏に変えることによって不具合が生じているということもあるかと思うんですね。

 大臣が思われるのに、何が今、こんなに議論が進めることができないでいるのかというふうに思うんですが、これはなぜかといいますと、この国会においても地方議会からの意見書が来ているわけですね。賛成の意見といいますか、賛成というより求める意見なんですが、議論を進めてください、そして導入を求めますという意見がずっとこの間増えているんですね。それに対して、どう国会は受け止めるのかということが重要だと思うんですけれども、その辺、どうお考えでしょうか。

上川国務大臣 先ほど、世論調査の結果につきまして、社会の政策とのマッチングで委員から御説明をいただきましたが、今、この世論調査の結果というのはよく見るものでございますけれども、一番直近の政府が行った調査によりまして、先ほど御指摘いただいた、四二・五%が賛成になっている状況であります。そして、反対は三〇%ということでありまして、全体として見ましても、これを分かれていると私は表現いたしましたが、平成八年の時点の、先ほど三二・五、そのところで少し変わったということは確かでありますが、そして、どんどん支持、賛成する方の比率が高くなってはいますが、やはりまだ三割が反対しているということ、この意味では、意見は分かれているというふうに、私自身、表現をさせていただいたところでございます。

 地方の議会からも様々な御意見を寄せられている。まさにこの選択的夫婦別氏も含めまして、様々な意見を、皆さん、国民の間の中でも議論していただいているということでございまして、まさに委員自らもこうしてこの問題について御議論いただいてきたということでありますので、そうした動きをしっかりとサポートしていきたいというふうに思いますし、また、世論調査などにつきましても、定期的にやっているものではございますので、こういったこともしっかりと考慮してまいりたいというふうに思っております。

    〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕

池田(真)委員 民間の調査とかでありますと、反対派が三割でなくて一割とか、あと、これからを担う世代においては一〇%台の反対というような形で、極めて、もう世論といいますか国民の声というのが明らかになってきているのではないかと思います。

 何もこれは必ずこうしてくださいという一種類のものではなく、選択でございますから、今までのとおりというようなお考えの方はそれを選択すればよいだけでありますので、多くの国民が望んでいる、そして、加えて言いますと、やはり不自由を強いられているケースというのが、特段、生活に困っている方とか、家族の多様化で子供さんが名前を変えるとか、あるいは女性もそうだとは思います、いろいろなケースがあるんですが、そういったケースがもう本当に多くなってきているんだということの表れではないかと思います。

 私が何で今日この質疑をしようと思ったのかといいますと、大臣の所信に、こんなに世論が沸き起こっているのに、何で入らなかったのかなという素朴な疑問から、過去のずっと大臣所信を全部読みました。そうしましたら、百七十三国会の二〇〇九年と、あと百七十四国会では明確に、このときにも進めるとか進めないとか、導入する、しないとかということよりも、世論、いろいろな声があるので、平成八年の答申がなされたことにもかかわらず、立法措置に至っていないので、積極的に議論を進めていくというような、こういう趣旨の大臣所信があるんですね。

 私、これは当然のことだと思っていて、それが今回なかったことに、今回、非常に違和感を感じました。加えて言えば、地方議会に対する反対のメールみたいな通知文があったというふうに報道でお聞きしているところでございますので、そういうものも民主主義としてはあってはならないことだというふうに思っています。

 ちょっと大臣に、進めていく気があるのかどうかがよく分からなかったので、そういう意味で、私、大臣所信で触れられなかったのでこの場でお聞きしたいと思っていますから、是非、積極的議論を進めたいのか、進めようとしているのかどうかという意思みたいなものを、意思表明を是非お願いしたいと思います。

上川国務大臣 私の大臣所信で触れられていないことをもって、私自身がこの問題に対して意識を持っていないのかというふうに取られたとするならば、それはそうではございません。

 限られた所信でございまして、京都コングレスも非常に大きいテーマでありましたので、結構そこが分量が多くて、限られた時間の中でということでありますので、そういう意味で、今集中的にやっていることも含めて所信の中に盛り込ませていただいたところでございます。決して、盛り込まないからといって、これを全く取り扱わない、こういう趣旨では全くございませんので、そこのところははっきりと申し上げたいというふうに思っております。

 今、長い時の流れの中で、自民党政権また民主党政権の中でも、この問題につきましては、当時から、選択的夫婦別氏の法案につきましての議論ということに進みますと、なかなかそれが結論に至らない、こういう数々の動きがこの間ございました。

 今回、この問題をしっかりと議論した上で、また前に進んでいくためにも、私は、国民の中の議論をしっかりと待ちたいというふうに思っております。もちろん、先ほど申し上げたように、世論調査等につきましては、今、平成二十九年の段階のものが最新でありますので、また民間の調査も数々、スペックはちょっと違うので、単純に何%ということについて比較ができるものではないのですが、しかし、若い世代の皆さん中心に、また地方からもそうした声が上がってきているということについては、大変重要なデータではないかと思いますし、御意見ではないかというふうにも思っているところであります。

 そういう意味で、今やるべきことは何かということを検討しながら、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

池田(真)委員 ありがとうございました。

 安心しました。是非、積極的に議論を今国会でも進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に入らせていただきます。

 次は、やはり家族の在り方ということに関わってくるかと思うんですが、生活保護の扶養照会について、今国会、話題になり、そして通知がなされたところでありますので、その確認をさせていただきたいと思っております。今日は政府参考人さんに厚労省から来ていただいておりますので、お答えいただきたいと思います。

 もう単刀直入に入っていきますけれども、まず、その前に四条の関係で、いいですか。コロナ禍ですので窮迫されている方々がたくさんいる中で、扶養照会のテレビをちらっとだけ見てためらう方がいらっしゃるのではないかというふうに、報道も切取りですので、心配です。ですので、確認をさせていただきます。

 憲法二十五条の生存権の生活保護でありますが、これは世帯といった世帯支給になっています。しかし、この世帯支給は、戸籍でも民法の親族でもない、生活実態そのものである、生計を共にするというものであって、四条一項といった補足性の原理ではございますけれども、これとは異なって、扶養照会については四条の二項、加えて言えば、急迫したものであれば、四条三項といったもので、優先であって義務ではないんだということであることの確認をしたいと思います。簡単なことだと思うので、済みません、大前提で。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護法におきましては、扶養義務者の扶養が保護に優先して行われると、先ほど先生御指摘の四条二項に記されておりまして、これは生活保護法に明記された基本原理でございます。これにつきましては、先生御指摘のとおり、これは優先するというものでございまして、それが条件であるとかそういうことではないということでございます。

池田(真)委員 条件ではないということであります。

 じゃ、何で今こんなに扶養照会が問題になっているのかということでありますけれども、まず、今回の通知でありますが、曖昧な、今の実態に合わせてという言葉なんですが、これはどういう意味か。今の時代や実態に沿った形という表現がありますが、これはどういう意味ですか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、生活保護法におきましては、扶養が保護に優先して行われると記されておりまして、扶養調査を行うことは必要と考えております。

 そうした中で、扶養照会を行う場合につきましては、照会を省略できる場合などということを従来から定めておりました。例えば、現在、一定期間音信不通の場合などを例示しておるわけでございますが、あわせまして、現在の状況に合わせて、音信不通の期間にかかわらず、著しい関係不良の場合には扶養照会を省略できる場合に当たるという考え方を示しております。

 これにつきましては、従来の取扱いを定めた当時と比べまして通信手段が発達したことを踏まえ、扶養照会を省略できる場合として例示する音信不通の期間を見直したほか、自治体の運用におきましても、従来示していました、二十年音信不通として示してきた運用について、今回、著しい関係不良等として整理したような場合には省略できるとしているのですが、こうした実態が既に行われておるという実態、また、虐待等の場合も、これはDVについても省略できるとしていたのですが、虐待等の場合もDVの場合と同様に扱って省略しているという実態がありましたので、こうした社会情勢や自治体におけます運用などを踏まえて通知を改正した次第でございます。

池田(真)委員 まず、通知を改正したとおっしゃっているんですが、二月の二十八日に厚生労働大臣宛てに、一般社団のつくろい東京ファンド、生活保護問題対策全国会議から要望書をいただいているのは共有されているでしょうか。

岩井政府参考人 はい、大臣宛てにいただいておりまして、共有しております。

池田(真)委員 ここで申し上げたいのは、まず、福祉事務所の現場サイドからもそうなんですが、現在の社会状況にそぐわず、意味がないのではないかとか、親族の調査に関わる業務の負担が大きいという声が上がっているという調査が実際にあるわけであります。

 二十年が十年みたいな、そういうものだけが報道されてしまうのがとても怖いといいますか、今現在でも、昨日でも、状態が異なれば、自立の阻害の要因というような形で、身の危険性もあるような場合も多いわけでありますね。そのことをちゃんと実態把握を、状況を、本人からの聞き取り、そして、もう見れば分かるというような状況からきちっと対応ができるというもので、省略というふうにすると、省略ではないんです。ちゃんと保護をするということが目的でありますので、命を守っていくということが目的でありますので、そのことを申し上げたいと思います。

 そして、事実について、効果についてお聞きをしたいんですが、そもそも、平成二十五年の改正のとき、芸能人の親族が生活保護を受けていた、このバッシングというものが報道があって、必要以上に扶養照会が強まって、このことが、私、本当に、ここからまず撤回をしていくべきだろうというふうに思っているぐらいの状況なんですが、それ以前、それ以降、そして、改正前、改正後のデータといいますか、政策的な評価なんですが、数字的に取っているものがあればお示しいただきたいと思います。

岩井政府参考人 平成二十八年七月に保護を開始した世帯に関する扶養照会の状況について、調査を行っております。これによりますと、全体の照会件数が三・八万件のうち、精神的援助も含む何らかの形で扶養に関わるとした件数は一万件、そのうち金銭的援助が可能と回答した件数は約六百件でございました。

池田(真)委員 これなんですけれども、六百件までなんですが、そうですか、分かりました。

 じゃ、そのまま次に行きますけれども、続きまして、それでは、その六百件の掘り起こしを、その先をちょっと問いたいなというふうに思っております。

 そもそもなんですけれども、これはお手元にあるかどうか分からないんですが、二〇一七年の厚生労働省の調査で、四十六万件の保護申請の扶養照会で一・四%、これは金銭的な扶養が行われているのが一・四%。あとは、東京足立区でいいますと、二〇一九年で二千二百、これは件数というよりは、〇・三%の、金銭的な可能になったもの。荒川区でいうとゼロ件というような結果も出ていて、私自身も十四年間福祉事務所におりましたから、実感としてでも極めて可能性の低いものであります。この照会の事務的な労務がとても負担だということだけを申すと、じゃ、事務をほかに切り出せばいいでしょうみたいな話になるんですが、これもまた極めて危険だということを申し上げたいなと思って、一律的な扶養照会は極めて危険だと思っております。

 そして、その法的根拠もないのではないかというところに入らせていただきたいのですが、そもそも、相対的扶養義務といったものが発生するというのが、民法八百七十七条の二項が明らかだと思うんですけれども、三親等の方の相対的扶養義務者に該当するかどうかの判断を福祉事務所が行って、そのまま通知を出しちゃうこと自体が違反じゃないのかというふうに思うんですね。その見解をお聞かせいただけますか。

岩井政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、生活保護法におきましては扶養が保護に優先すると記されておりまして、これは生活保護の基本原理でございまして、この法律に則して適正に事務を執行するために扶養照会などが行われます。

 この扶養照会の実態につきましても、民法上の絶対的扶養義務者に当たる配偶者、直系血族、兄弟を除く、おじ、おば等の三親等以内の親族に対して行う扶養照会につきましては、実際に家庭裁判所において扶養義務創設の蓋然性が高い特別の事情のある方に限って、福祉事務所がその意向を確認しております。

 具体的には、過去に申請者がおい、めいを扶養していた場合や、おじ、おばから遺産相続を受けた場合に限り照会を行うなどといった限定的な運用をしておりまして、問題のある取扱いとは考えておりません。

池田(真)委員 いやいや、今私が申し上げたのは、一律に発送して照会をかけるのが違法じゃないですかということを言っているんですね。

 だから、家裁の審判とかでようやくそこで初めて認められるものであって、もともと、生活保護法で、七十七条でやればいいだけですよね、該当すると思われる方は。

 で、七十七条の実績を教えていただけますか。

岩井政府参考人 先ほど、二十八年七月に保護を開始した世帯に関する扶養調査の状況について調査をしたということを御報告しましたが、このときに、法第七十七条第二項に基づく家庭裁判所への申立てと結びついた件数、これは自治体に照会した結果でございますが、三件でございました。

池田(真)委員 この七十七条も、先ほどあったような、相続を知らなかったけれども、相続が、最後、行き来もなかったし、何も関係なかったけれどもあったというようなケースだとか、いろいろなケースがあると思いますが、昭和二十七年から平成二十七年だけでも、これ、家事審判だけでも容認されたのは四件ですよ。それで、家事調停の方で、調停でいうと成立したのが五件ですよ。昭和二十七年から平成二十七年でですよ。

 それ以降の話でいうと、審判はゼロ、そして、調停の関係でも、まだこれは結論は出ていませんけれども、今おっしゃった三件が新たに発生をしている最中という段階だとは思っています。

 これをパーセンテージにしたら幾らですか。幾らというか、パーセンテージにして驚くのが、先ほどの、平成二十八年の七月に保護を開始した、御回答いただきました三・八万件のうちの六百件だと。その六百件のうちの、私が今言っている相対的扶養義務者、これの照会件数はたった百十件ですよ。該当するのがですよ。これが〇・三%。そして、そのうちの、金銭的援助が可能と、回答です、実績はこれは分かりません、収入認定も含めて。回答したものが四件です。これは〇・〇一%。こんな数字で、物すごい事務と、あと物すごい嫌がらせと、水際と心理的な圧力が物すごいんですよ。

 そうではなくて、これはやはり表記にも問題があると思いますから、扶養義務があるように思われるんですが、扶養義務という解釈自体も、この文言も誤解を招かないように、再度通知を出し直す必要が私はあると思っています。改正自体に踏み込むべきだと思っています、これは。

 ちょっと受け止めだけ、是非ちょっと一言、御回答いただきたいと思います。変える変えないと言えないと思いますから。

岩井政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたが、平成二十八年七月に保護を開始した世帯に対する調査では、全体の照会件数三・八万件のうち、精神的援助も含む何らかの扶養に関わるとした回答のありました件数が一万件でございます。そのうちの金銭的援助が可能と回答した件数が六百件でございました。

 このように、金銭的援助が行われない場合であっても、例えば、定期的な訪問、病院への送り迎え、子供の一時的な預かりといった援助を受けることができれば、生活保護受給者の自立の助長につながると考えております。生活保護法におきましては生活保護受給者の自立の助長というものを目的としておりますことからも、これは意義があるものと考えております。

池田(真)委員 今、精神的な援助とかとおっしゃいましたけれども、それは別に切り立てるべきだと私は思っています。

 だって、これは要件ではないですよね。四条一項と四条二項とは違いますし、四条二項の中でいいますと、精神的な援助ということであれば、これは、じゃ、近所の方々にも言うんですか。御近所の方々、お友達にも言うんですか、援助してくださいと。もう同じような状態なんですね。これは当然ですよ。自立のためには、日常生活自立、社会生活自立、これが言われ始めたのは平成十六年ですよ。厚労省では十七年ですよ。そこの中で話をするわけであって、あくまでも自立の助長、生活保護法の第一条の目的である最低生活の保障と自立の助長、その自立の助長の中を細分化した中の一つの手だてだと思うんです。

 なので、これは資産とか収入認定と切り分けるべきで、もっと言うのであれば、そもそも収入認定は課せられている義務があるんですよ、義務。そもそも生活保護法には、収入申告して収入認定していく、その収入申告しなければならない義務が課せられているわけですから。これはどんな場合にでも同じなんですから。

 そこの部分は、今回は扶養義務調査、扶養調査ということが極めて大きな問題になっていて、もっと言えばトラブルになっていますからね。家に居場所がない、家自体が虐待だ、家自体がDVだ、そしてそれが子供であればなおさらのことです。親と来い、あるいは家があるだろうというところから全部、必要な保護が受けられない、時によっては、命も奪われ、犯罪にも巻き込まれ、加害者にもされ、被害者にもなる、こういったことになっているんだということを強く受け止めてもらいたい。

 実務的にもそうです。膨大な事務をかけた割には効果がそんなにないわけですね。そもそも、そんなことを言うのであれば、家族の実態調査、所得が大幅に国民は変わっています。どのぐらいの一般の家庭の中でそういう扶養の可能性があるのかというような調査を強く求めていきたいと思います。これはちゃんと調査すべきものを調査しておっしゃっていただきたいと思います。

 済みません、もう厚労省さんは結構です。

 せっかく大臣がいるので、大臣、家族の多様性とか女性ということで、最後に一言だけ、もう質疑時間を終了しますので一言お願いしたいんですが、先ほど選択的夫婦別姓については、議論していきましょうという、いただきました。本当に、今、一つの例として申し上げて、今日は説明できなかった、配付した資料もそうですけれども、本当に家族が多様化しています。誰一人取り残さないという所信演説もありました。その実現のために、そして、ガラスの崖ではなく、女性の大臣でもありますので、きめ細やかな、実態に即した法整備に向けて国会審議を進めたいんです。是非、力強い御所見をいただきたい、決意をいただきたいと思います。

上川国務大臣 誰一人取り残さない社会の実現、持続可能な開発目標、この中の大変重要なコンセプトになっています。私自身、所信の中で明確に、法の支配と、この誰一人取り残さない社会の実現ということを目標に、全ての政策につきましても、その視点を大事に動きたいというふうに思っております。

 今、この京都コングレスにおきましても、ちょうど世界女性デーでありましたので、その特別の企画がございまして、女性とジャスティス、正義という形で、シンポジウムが開催されました。今まで、このSDGsの中でもゴール五に関わる、女性のジェンダー平等を実現しようという項目がございまして、その中では、健康でありますとか医療でありますとか、また教育という分野につきまして、この幅広い分野においての女性の視点というものが極めて重要である、こういう問題意識を世界的にも共有してきたことでありますが、今回の京都コングレスにおきましては、加えて、ジャスティスという、このキーワードがその中に組み込まれたところでございます。

 今回の法の支配の先に、女性の問題、あるいは子供の問題、そして家族の在り方、こういったことをしっかりと考えて一つの成果を上げていきたいという思いで、誰一人取り残さないということの具体的なアクションプランということも含めて、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

池田(真)委員 大臣、ありがとうございました。同じ女性議員としても、私も頑張って取り組みたいと思います。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

義家委員長 次に、屋良朝博君。

屋良委員 立憲民主党の屋良朝博でございます。当委員会においては初めて質疑に立たせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 私は、養育費の不払い問題について取り上げさせていただきたいと思っております。

 上川大臣は、所信でも、養育費についてチルドレンファーストということを表明なさいました。実態はやはり厳しくて、母子家庭での養育費の取決め約四三%、現在受け取っている割合二四%、そして一人親世帯の貧困率約四八%で、およそ半分という高さであります。一人親世帯の貧困の要因の一つに養育費の不払いがあることは明らかでしょう。この実態が、チルドレンファーストとは言い難い社会の存在がある。それが大臣の言葉の背景にあるのじゃないかというふうに受け取っております。

 さらに、このコロナ禍において、一人親家庭の窮状は想像に難くありません。子供の権利を保護する上でも、養育費不払いの問題に対する公的な取組は焦眉の急だというふうに認識しております。

 養育費の不払い解消に関する法務省のこれまでの取組を踏まえた上で、この問題に対する上川大臣の取り組み姿勢、そして御決意をお聞かせください。お願いします。

上川国務大臣 委員から御指摘をいただきました養育費の不払い問題につきましては、子供の利益の観点から、しっかりと取り組む極めて重要な課題であるというふうに認識をしております。また、喫緊の課題でもある、特にコロナ禍におきましても喫緊の課題であるというふうに認識をしております。

 この問題につきましては、特に離婚後の子供の生育、成長に関わる問題でありますし、その成長とその生活ということについてこれは直結する課題であるということでございますので、このことについて、運用面についての対応、さらには制度面の課題というところについて、大きく二つに分けながら取組をさせていただいているところでございます。

 養育費の支払いの確保のためには、まず、父母の離婚時に、子供のことを第一に考えて養育費の取決めが適切にされることが極めて重要であるというふうに考えております。その意義、また取決めの方法につきまして、幅広く社会に認識していただくということが必要であるということで、法務省におきましては、養育費等の取決めに関する合意書のひな形を掲載したパンフレットを作成いたしましたり、また、夫婦が離婚をする際に考えておくべき事項をまとめたウェブページにつきまして公開をしておりまして、こうした積極的な広報に取り組んでいるところでございます。

 また、制度面ということでの課題でございますが、養育費の不払い問題を始めとして、父母の離婚等に伴う子の養育の在り方について、民事法の観点からも近年様々な課題が指摘されてまいりました。こうしたことを受けまして、私自身、今年二月に法制審議会に対しまして、離婚及びこれに関連する制度の見直しについて諮問を行わせていただきました。法制審議会におきましても、子供の目線に立つ、そしてチルドレンファーストの観点から充実した議論をしていただきたいということで、大きく期待しているところでございます。

屋良委員 この問題、子供の目線に立つということがやはり一番初歩的なスタンスだというふうなことだと思います。そして、この問題、子供の貧困防止にも直結するし、生存にも直結するというふうに言っても過言じゃないと思っております。

 そして、今、大臣御説明されました合意の取付け、合意書をひな形で作っているということは、やはりこれは広く国民に知ってもらわないといけない。チルドレンファーストなんだということ。親の都合でばらばらになって、子供の養育、発育、そういったものがないがしろになったら駄目だよというふうなことの意識の改革も含めているというふうに思います。

 その上で、今法務省でいろいろ制度面や運用面についての議論がなされているということなんですけれども、これは広く、政府を挙げて全庁的に取り組まないといけない。それは、財務省にも入ってきてもらって、財政的にどのような裏づけを取るんだとかといった、そんなことも含まれてくると思うんですね。

 そして、問題は方法論ということを先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、諸外国では立替え型とか、取立て型とか、その併用などがあります。効率的で効果的で利用しやすい制度をつくり上げるためには、やはりエビデンスが最も大事だというふうに思います。養育費の支払いが低調であるのは、別れて住んでいる親、離別親に支払い能力がないからであるというアメリカの研究結果もあるようです。

 そこで伺いたいんですけれども、そういった調査は必要じゃないのかということなんですね。厚生労働省は、一人親世帯について調査を行っておりますし、法務省も、協議離婚後の実態調査を今年度中に実施する予定があるというふうに聞いておりますし、先ほども、子に与える影響調査を近々まとめて発表されるというふうな御答弁もありました。

 そこで、離別親の追跡調査、それが必要じゃないのかということなんですけれども、それについてのお考えを、厚生労働省、法務省、それぞれお伺いいたします。

大隈大臣政務官 お答えいたします。

 厚生労働省におきましては、全国ひとり親世帯等調査におきまして、養育費や生活保護の受給状況について把握しております。

 今後とも、一人親家庭の実態を把握しまして、必要な支援が行き届くようにしっかりと検討してまいりたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法務省では、協議離婚を経験した当事者を対象とした実態調査を近く実施することとしておりまして、現在準備をしているところでございます。

 養育費の不払いの問題の解消のためには、養育費の支払い義務者が、そもそも養育費を支払うことができない状況にあるのか、それとも、支払うことができるのに支払っていないかという点についても実態を把握して分析する必要があると考えられるところでございまして、今回予定している調査におきましては、協議離婚をした当事者双方の離婚時及び現在の職業、収入等についても調査項目にすることを予定しております。

 この調査の結果は、養育費の不払い解消に向けた今後の検討において重要な資料の一つになるものと考えているところでございます。

屋良委員 大隈政務官、もう一度お伺いしたいんですけれども、一人親の調査はなさっているということなんですけれども、私、ここでお伺いしたのは、先ほど法務省の方がおっしゃっていた離別親の経済状況、お仕事をされているのか、そういったことを念頭にした調査というのは必要じゃないかということなんですね。やはり支払い能力がないと、どんないい制度をつくったにしても、これは回収は無理ですよね。そういったエビデンス、それを獲得した上で運用なり制度なりを議論していくべきだというふうに思うんですけれども、もう一度お願いできますか。

大隈大臣政務官 御指摘のように、離別親の経済状況については把握しておりませんで、またしっかりとこちらの方でも検討させていただきたいと思います。

屋良委員 是非とも、検討に終わらず、全庁的に政府を挙げてというふうな取組をやっていただきたい。それぐらいのやはり大きな問題だというように私は認識しておりまして、法務省だけに預けるというのは、これは余りにも多分、荷が重いというような気がしております。

 そこで、制度設計なんですけれども、イギリスやオーストラリア、そしてお隣の韓国でも、養育費を扱う行政庁を設置して、関係省庁と横断的に連携を取って対応しているというような現状も現在ありますよね。それを是非とも実現するには、やはり私たちも全庁的に政府を挙げてやらないと、この問題はなかなか前に進まないんじゃないかなというふうな気がするんですね。

 そこで、やはり、この問題に取り組む上で、スケール感が大事だと思うんですね。大臣、ここで、今のような、法務省が制度も運用も検討していますよというふうなスモールスケールでいくのか、それとも、いや、政府を挙げてやるんだよ、ほかの国が前例あるでしょうというふうな認識を持ってやるのかどうか、そこのところ、ひとつ御見解を、スケール感をお伺いしたいです。

上川国務大臣 養育費の立替え払いの制度、また強制徴収制度につきましては、先ほどアメリカ、韓国の事例を御説明いただきましたけれども、我が国にはない制度であると承知をしております。また、そうした制度については、養育費の不払い解消のために導入を検討すべきという御指摘があるということにつきましても承知をしているところでございます。

 法務省の中ということでございますが、昨年六月以降に、法務省の中に有識者会議を設置させていただきまして、養育費不払い解消に向けた検討会議でも検討していただいたところでございます。また、厚生労働省とともに、不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォースということで設置をさせていただきまして、アメリカを含みます諸外国の制度等も参考にしながら、理論上考え得る制度のイメージ、これにつきましてしっかりと挙げながら、制度面、体制面、理論面等の論点整理を行って、昨年の十二月に取りまとめたところでございます。

 この論点整理についての様々な課題もございますので、今後、公的支援の在り方につきましては、必要に応じてこのタスクフォース型の検討をしっかりと進めてまいりたいと思いますし、また、先ほど来御説明もさせていただいておりますが、法制審議会におきまして民事法制の幅広い御検討をしていただくべく諮問をしている状況でございますので、全ての様々な政策、政府を挙げての政策を、やはりチルドレンファーストの子供視点でしっかりと束ねられるようにしてまいりたいというふうに思っております。

屋良委員 大臣、ありがとうございます。

 先ほどの離別親の追跡調査、これはやはり僕は必要だと思うんですけれども、大臣、どのようにお考えでしょうか。

上川国務大臣 私ども、二つ調査を予定をしておりまして、一つは、先ほど申し上げたところでございますが、御自分が子供のときに御両親が離別をしたという子供さんの世代で大きくなった世代、大きくなったというか、その方を対象にした、これは近々、分析結果を発表いたします。

 そしてもう一つは、離別の親ということでございますので、そのスキームにつきましては、項目も含めて、今、検討、準備をしている状況であります。そうした視点もしっかりと踏まえてまいりたいと思います。

屋良委員 ありがとうございます。是非とも、その調査、期待させていただきたいというふうに思います。

 続きまして、その実態例をちょっとお話しさせていただきたいんですけれども、これは私の地元沖縄に住む二十代の女性の話です。

 お配りしました新聞のスクラップにその事例が書かれておりますけれども、アメリカ本国に妻子がいるアメリカ兵が、既婚であることを隠して、その女性に結婚してちょうだいよというふうに交際を求めて、おつき合いが始まった。女性が妊娠すると、私はアメリカ本国にもう帰らないといけない、軍から解雇されちゃったんだ、もう会えないというふうなことを言い残して音信不通になった。

 その後、女性は、子供を出産し、アメリカ兵の居場所を特定するために県内の弁護士に相談しましたけれども、そのアメリカ兵の社会保障番号とか居場所が特定されないと、これはなかなか難しいですよというふうに言われてしまった。そこで、国際家事相談を扱う市民団体に相談したところ、インターネットのSNSなどからこのアメリカ兵の所属部隊を特定することができて、その上司に通報したんですね。ところが、裁判所の命令がないと私たちも動けませんというふうなことしか答えをもらえなかったというふうなケースなんですね。

 そのサポート団体と女性は、米国の養育費回収システムを活用することにしたんです。米国では、行政の担当課が、離別親の捜索と、法的な親子関係をDNAで鑑定してくれて、養育費の回収までやってくれるというふうな制度がございます。この女性の申出に対して、その男性が所在する州の公費でDNA鑑定が行われ、このアメリカ兵が子供の父親であることが確定されました。州の家庭裁判所は、この女性から申請のあった翌月分に遡り、子供が十八歳になるまで毎月約十二万円の支払いを命じる決定をしました。

 支援した市民団体ウーマンズプライドのスミス美咲代表は、日米で財産の差押えに関する協定を結び、養育費の支払いが迅速にできるような制度を整えるべきだというふうに訴えております。

 このケースは、養育費を請求する父親がアメリカに帰国していたので利用できたアメリカの回収システムなんですね。仮に、このアメリカ兵が日本の基地内にとどまっていたらどうなっていたか。現行制度では裁判所の決定がまず得られなかったでしょう。裁判所に手続を求める前提となる公正証書など、債務名義がありません。そもそも、権利義務関係が確定していないので財産差押えは無理なんですね。さらに、日米地位協定では米軍人軍属の給与など具体的な差押対象を明記していないため、養育費の回収につながらないケースがほとんどだと言われております。

 国境を越えてアメリカからの養育費は回収できたのに、日本の基地内の、日本のアメリカ軍基地のフェンスを挟むと養育費を支払ってもらえないというこの矛盾があります。外務省はこの現状をどのように認識されていますでしょうか。お願いします。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 日米地位協定上、米国は、公務執行中に米軍構成員等が第三者に与えた損害に関する判決の執行手続についてを除きまして、米軍構成員等に対する日本の民事裁判権からの免除を請求してはならないこととなっております。したがいまして、米軍構成員等の公務外の事項につきましては、基本的に我が国の民事裁判上の手続に従うこととなっております。これは、地位協定第十八条九項に定められております。

 同じく地位協定第十八条九項の中で、日本国の法律に基づいて強制執行を行うべき私有の動産が、合衆国軍隊が使用している施設及び区域内にある場合には、合衆国の当局は、日本国の裁判所の要請に基づいて、その財産を差し押さえて日本国の当局に引き渡さなければならない旨規定しております。例外といたしましては、この動産が、合衆国が使用している場合にはその対象とはなってはおりません。

屋良委員 今、その十八条九項(b)を持ち出されたんですけれども、これは、日本ではもう泣き寝入りしないといけないよというふうに言っているのとほぼほぼ同じであると思います。相手はアメリカに帰っちゃったというケースがあるんですね。この条項では国内にいる場合のみの対応方法なんじゃないでしょうか。

 そして、日米地位協定では債務を回収するというような仕組みがない、給与を差し押さえるという仕組みがない。なぜなら、この人がアメリカの銀行で給与振り込みを受けている可能性がありますね。日本の基地の中でATMを使って給料を引き出しているというときには、日本国内には財産がないんですよ、動産が。そうすると、差押えが不可能になるんですね。

 こういった状況を恐らく認識なさっていながらこの地位協定の条項を持ち出したということは、これはもう、日本に住んでいて、私が今紹介したような女性はもう泣き寝入りするしかないよと。そもそも、債務名義が取れないわけですから。公正証書とか、ないわけですから。言っている意味、分かりますか。だから、裁判所の命令が取れないんですよ、決定が。

 この条項によると、裁判所の決定があって初めて差押えのプロセスが始まるというふうになっているじゃないですか。それがないわけですよ。そういうことがあるので、ここで法的な、あるいは制度的な不平等が生まれていますよ、それについて外務省は認識なさっていますかということが私の質問でありますけれども、もう一度、質問をさせてください。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しで恐縮でございますけれども、地位協定の第十八条におきましては、先ほどの答弁の途中からになりますが、米軍構成員等の公務外の事項につきましては、基本的に我が国の民事裁判上の手続に従うことが定められておりますとともに、日本国の法律に基づいて強制執行を行うべき私有の動産が、合衆国軍隊が使用している施設及び区域内にある場合には、合衆国の当局は、日本国の裁判所の要請に基づいて、その財産を差し押さえて日本国の当局に引き渡さなければならないという規定になっております。

屋良委員 これは、何度聞いても多分同じ答えしかないと思いますけれども、これはできないということを今何度も繰り返しているということです。日本国内に動産があればということですよね。なければどうなるのと。もう帰っちゃって追跡もなかなかできないという中で、これは奇跡的にインターネットのSNSとかを使って特定したんですよ、場所を。そういったことがアメリカの回収システムを使うとできちゃうわけですよ。実現しちゃうわけですね。

 ところが、制度的な担保がまだないわけですね。民事的に、今後、養育費の議論は、制度設計がなされて運用が始まっていくと思われます。これは不可逆的に動いていくでしょう。そのときに、やはり、この矛盾を放置していると、日本の一人親はずっと不平等なまま、不公平なままでいるということなんですね。

 だから、地位協定においては、改定は厳しいかもしれませんけれども、これまで運用改善で対応してきた。運用改善の中で、刑事事件における損害賠償においては、日本側が立て替えるという制度を今まさにやっているところじゃないですか。そういったことも検討すべきだと私は思うんですね。もう一度、ちょっと外務省、お願いします。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しで恐縮でございますけれども、地位協定上は、米軍構成員等の公務外の事項につきましては、基本的に我が国の民事裁判上の手続に従うこととなっております。

 したがいまして、我が国の民事裁判上に出ます判決につきましては、先ほど申し上げたとおり、日本国内に私有の動産がある場合には、それが施設・区域内にある場合には、合衆国の当局は、日本国の裁判所の要請に基づいて、その財産を差し押さえて日本国の当局に引き渡すこととなっております。我が国の民事裁判上の手続に従うことは定められているとおりでございます。

屋良委員 条項を何度も読み上げられても納得いかないのは、当然、答弁されている方も御承知だと思いますけれども、これは給与を差し押さえることはできるんですか。そして、子供が成人年齢に達する十八歳まで、アメリカでは十八歳まで、それを回収することが可能なんでしょうか。お願いします。

有馬政府参考人 給与の差押えについての御質問でございますが、在日米軍関係者の給与についてでございますけれども、一般に外国政府が非商業目的に使用する財産につきましては、これを差し押さえることは主権免除の観点からできないと認識しております。

屋良委員 時間がもったいないので次に進みますけれども、一つだけ。

 ドイツの地位協定、ボン補足協定、これでは給与の差押えがちゃんと明記されています。日米間はないんですよ、それが。これがないと、この問題、全体でいうと対象者というのは一握りかもしれませんよ。だけれども、不平等はずっと続いていくので、是非とも外務省には、そういったことも踏まえた上でのちゃんとした対策、だって、刑事事件の損害賠償は一時立替え払いをやっているじゃないですか。そっちはやって、こっちはできないよという話には恐らくならない。

 しかも、日本の国内で、今、与野党を含めて、この制度はちゃんとしていこうねというふうな機運が盛り上がっている中だけに、外務省はちゃんと対応してもらわないと困るということをまず意見として申し述べさせていただきまして、次に移りますけれども、こういった不平等があるということを、是非法制審議会でも、取りあえず踏まえて、これはどうしようかというふうな議論もしていただきたいんですけれども、法務大臣、今の議論を聞いた上で御意見をお伺いしたいです。よろしくお願いします。

上川国務大臣 養育費の不払い問題につきましては、父母の離婚後の子供の生活に直結する重要な課題であると認識している、改めてそう申し上げるところでございますが、その重要性につきましては、日本人同士の父母の場合であろうと、また、日本人と外国人の父母の場合であろうとも変わりはないというふうに認識をしております。

 法制審議会におきましても、先ほど来申し上げたチルドレンファーストということでありますので、そうした視点から様々な角度での検討が行われると期待しております。

屋良委員 是非積極的にこの問題についても取り組んでいただきたいと思います。

 大臣、アメリカのこの回収システム、御存じでしょうか。

上川国務大臣 私もちょっとアメリカに留学をしておりまして、かなり前から、離婚に伴いまして、家族の構成が変わってきている状況であります。

 養育費の支払いについて、強制的に回収していくという制度そのものは、子供のためにということで、非常に重要であるというふうに私も認識をしておりまして、世界には様々な仕組みがございますので、これにつきましての検討もこの間やってきてはいるところでありますが、更に深掘りをしてまいりたいと思っております。

屋良委員 日本にいても使える仕組み、とてもありがたいと思うんですね。しかも、ワンストップですよ。申立てをすれば、DNA検査をやってくれて、親子関係が確認されれば、それで州の家庭裁判所が差押えを命令するというふうな、ワンストップの本当に典型例なんですけれども。

 これを逆の立場で考えたときに、日本の制度は余りにもなさ過ぎる、現状では。これから整備されていくと思われますけれども、国際的に見て、この日本の制度、外国で結婚して、日本に離婚して帰ってきた、子供が外国で育っている、貧困にあえいでいるかもしれない、そんなときに訴える手だてがないわけですね。回収する手だてがない。こういった現状はやはり国際的に見てもおかしいし、遅れているんですよ。

 大臣、この現状、ちょっとこれをどうお考えなんでしょうか。

上川国務大臣 我が国におきまして、養育費確保のための制度、これにつきましては、今まさに法制審議会におきましても審議をしていただいているということでございます。

 離婚の件数も非常に、社会の中で残念ながら増えているという状況もございますし、確実に成長と生活の支援をしながら、子供が、そうした離婚の現状を受け入れて、しっかりと対応できるようにしていくということが極めて大事だと思います。

 先ほど申し上げましたとおり、この養育費の回収の仕組み、実際に取決めがあってもなかなか実現できないというところが今、実態でありますので、この制度の整備のことも含めまして、しっかりと議論をしてまいりたいと思います。

屋良委員 やはり、一人親にとってみると、今、現状は非常に厳しいですよね。子育てをしながら、裁判所に申立てをして、そして養育費を回収していかないといけない、自力で。これは非常に厳しい。ほぼほぼこれは難しいと思います。

 そういった方々をやはり制度的にサポートする仕組みがないと、安心、安全につながらないし、子供の福祉につながらないというような現状がございますので、是非とも、例えば立替え制度とか、アメリカのような限りなくワンストップに近い養育費回収システムの導入について、最後になりますけれども、法務大臣のお考え、改めてですがお聞かせください。

義家委員長 申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

上川国務大臣 一連の御指摘をいただきました。

 様々な検討課題がございます。その中の一つとして、重要に考えてまいりたいと思います。

屋良委員 ありがとうございます。

 質問を終わります。

義家委員長 次に、松平浩一君。

松平委員 立憲民主党、松平浩一です。よろしくお願いします。

 先週、大臣所信を聞いていて、ソーシャル・インパクト・ボンドを活用した再犯防止事業を進めてまいりますというふうにおっしゃられていました。略してSIBと言いますけれども、この仕組み、どういったものなんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 ソーシャル・インパクト・ボンド、略称SIBと申しますが、民間への事業の委託契約におきまして、成果に応じて委託料を支払う成果連動型民間委託契約方式のうち、民間資金を活用したスキームとなっております。

 必ずしもスキームが一様ではないのですが、基本的なスキームにおきましては、行政から事業の委託を受けた民間事業者において、事業に必要な資金を外部の資金提供者から調達をすること、民間事業者は、成果指標の改善状況、つまり事業の成果に応じて行政から対価の支払いを受け、資金提供者に還元することが特徴となっております。

松平委員 それでは、具体的に、令和三年度からの事業としてはどういったものをお考えなんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、再犯防止推進計画におきまして、再犯防止活動への民間資金の活用の検討等が挙げられたことなどを踏まえまして、令和元年度に、再犯防止分野においてSIB事業を導入するための調査研究を実施しております。

 この調査研究の結果をも踏まえまして、法務省におきましては、SIBを活用した再犯防止事業といたしまして、令和三年度から、非行少年を対象とした学習支援事業を実施することを予定しております。

 具体的には、令和五年度までの三年間を事業期間として、委託を受けた事業者において、少年院の在院中に学習支援計画の策定などを行った上で、出院後、最長一年間にわたり継続的な学習支援を実施し、事業の成果を評価した上で、それに基づいて委託費の支払いを行うということを考えております。

松平委員 ありがとうございます。

 先ほど、調査委託も行われているということで、私も報告書を拝見させていただきました。この報告書を見ると、欧米中心に行われている実績があって、そして、再犯率の低下やコスト削減の効果も見られたものもあるというふうに書かれておりました。

 今回、そういった意味で非行少年への適用を想定されているということなんですけれども、我が国でも、欧米と同じように、将来的に刑務所出所者への適用というものを考えていらっしゃるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 令和二年三月に関係府省庁連絡会議で決定されました、成果連動型民間委託契約方式の推進に関するアクションプランというのがございます。ここにおきましては、SIBを含む成果連動型民間委託契約方式の普及促進を図るとされておりますところ、再犯防止はその重点分野の一つとして挙げられております。

 法務省におきましては、来年度から実施する事業の実施によって得られる成果や課題なども踏まえまして、再犯防止分野におけるSIBなどの普及促進を図ることとしております。

 初めてのSIB事業の開始前でございますので、現在の時点で今後の予定に関する確たることを申し上げるのはなかなか難しいのではございますけれども、今回実施する事業の成果などをしっかり把握した上で、再犯防止分野におけるSIBの更なる活用方策について引き続き検討してまいりたいと考えております。

松平委員 図もあったら分かりやすいかなと思ったので、法務省の資料を、資料一としてお配りしています。

 先ほどの御説明と、この資料を見てお分かりのように、今回の令和三年度からの事業というのは、報酬の増加というあめを用いて、再処分率、大人だったらこれは再犯率ですよね、を減少させるプロジェクトをさせるということになるかと思うんですけれども、これは、やはり肝は、このプロジェクトを行うに当たって資金が必要なので投資家から資金を集めるというところにあると思います。

 やはり、この投資家がいるかどうか、これが鍵になるわけなんですが、普通、海外で行われているSIBは、やはり元本割れのおそれもあるというので、この投資リスクを引き受けてくれる投資家がいるのかどうかというところです。

 この点、やはりアメリカでは、寄附が御承知のように盛んな文化ですので、この再犯防止事業のSIBに、様々な財団が実質的に寄附という形で投資しているんです。ちょっといろいろ投資家を見ていると、ゴールドマン・サックスが投資しているとかあるんですけれども、これもよくよく見ると、ゴールドマン・サックス社会的投資基金という非営利団体によるものなんですし、だから、そういう意味でいうと、日本は寄附文化もまだまだ未熟かなと。

 そういう中でどういうふうにして投資を呼び込んでいくのか、その辺の見通し、感触についてお聞きできればと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 一般に、SIBにおける資金調達の方法は幾つかございまして、委員御指摘の、金融機関ですとか、あるいは財団等からの投融資ですとか、クラウドファンディングなどを通じた個人投資家による出資というのも、様々なものがあるというふうに承知をしております。

 来年度から法務省で実施をいたしますSIB事業におきましては、どのような方法で資金調達を行うかも含め、まずは事業者の方において検討と提案をしていただくということを考えております。

 もっとも、法務省といたしましても、資金提供者となり得る金融機関等に対しまして、SIB事業に関する周知ですとか、あるいは情報提供を積極的に行うなどいたしまして、受託事業者が事業の実施に必要な資金を調達できるよう努めてまいりたいと考えております。

松平委員 周知、情報提供を行うというお言葉なんですが、例えばイギリスでは、主に休眠預金を原資とする基金でやったりしていますし、社会的な投資というそのものに対しての減税措置というものがあったりします。やはり、そういった税の側面からのアプローチというものも非常に効果的と考えますので、検討していただければなというふうに思います。

 それから、もう一つ重要だと思う点を言いますと、この投資を呼び込むためのプロジェクトの成果の予測可能性というところ、これがはっきりしていることが重要だと思うんです。今、このSIB、社会的インパクト投資の一形態ということだと思うんですけれども、このインパクト投資する多くの団体では、投資先を選定する際に、投資に当たっての社会的インパクト評価というものをきちんとしているところが非常に多くなってきているということなんです。

 だから、例えば、今回の件、利益だけの話を見ると、本当に例えばですけれども、再犯率を一%下げたら入所者が百人減りましたと。そうなると、その分の刑務所の運営コストが減りますよね、幾ら幾ら下がりますと。だとしたら、では、運営者に支払う業務委託料、幾らでもペイするよねと。そういうことで、非常に分かりやすいんですけれども、今回の場合、やはりそれだけじゃなくて、運営コストの問題だけじゃなくて、社会的な便益ですね、アウトカムを指標として明確に出せるかどうかというものが重要だと思います。

 この点、再犯防止分野においてこの明確な指標というものが立て得るのかどうかというところ、それから、その成果に応じた委託報酬についても適正な数字がどういうふうに出せるのかというところ、どう考えているのかというところをお聞きできればと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、SIBを活用して効率的な財政拠出を図る上では、成果指標の設定ですとかあるいは成果報酬額の算定を適正に行うということが大変重要になってくると認識をしております。

 そのため、来年度から実施予定にしておりますSIB事業に当たりましては、その成果をしっかりと測定できるような指標の設定を検討しているところでありまして、具体的には、先ほど委員も御言及されました再処分率あるいは再非行率、あるいは学習の継続率などが成果指標となり得るものと考えております。

 また、成果報酬額を適正に算定するためには、成果報酬額の支払い条件の設定ですとか、あるいは、その達成状況の評価を適正に行うということが必要であると考えておりまして、達成度に応じた支払い条件の設定に当たりましては、事業対象となった少年と同様の条件を持った少年との比較を行うということですとか、あるいは、達成状況の評価に当たりましては外部有識者からの助言を受けるというようなことなど、客観的な条件設定ですとか評価を行うことを検討しているところでございます。

松平委員 済みません、ちょっと一問飛ばさせていただくんですが、やはりこのSIBでの再犯防止の取組、今までにない、法務省として新しいチャレンジだと本当に思います。今後普及して定着するには、今回の最初の事案というものがやはり大事なのかなと。やはり最初に失敗してしまうと機運がしぼんでしまって、こういう民間資本を入れるのは間違いだったということになりかねないので、しっかりやっていただきたいなと思います。

 日本、我が国、インパクト投資全体としては本当に右肩上がりで今盛んになっていると思います。二〇一七年から一九年までの二年間でインパクト投資残高というのが四倍ぐらいに増えています。インパクト投資ファンドというものも次々と立ち上がっている現状にあります。

 ここで、GSG国内諮問委員会という団体がありまして、この団体が出している冊子、日本におけるインパクト投資の現状、二〇一九年版というものがあるんです。こちらを見ると、日本のインパクト投資の投資先の分野の一位は質の高い教育、教育というところになっているんです。一応挙げていきますと、二位は健康、医療、三位は先端技術、四位として女性の社会進出みたいな形で続いていきます。

 そう考えると、この再犯防止の矯正教育もやはり教育の一種なので、これはうまくやれば、投資家の皆さんはすごく興味がある分野なので、投資を呼び込むポテンシャルを有していると思うんです。

 したがって、先ほどの、周知ということをおっしゃいましたし、明確な成果指標を立てるという点、この辺をしっかりとやっていただいて、是非、成功するように、次につながるように進めていっていただければと思います。この点、大臣の意気込みをお聞かせいただければと思います。

上川国務大臣 まさに、法務省におきまして来年度から実施予定でありますSIB、ソーシャル・インパクト・ボンドを活用した非行少年への学習支援事業でありますが、再犯防止分野におきましても、我が国初のSIB事業ということでございます。この事業は国が主体となってSIBを活用するという意味でも我が国初の事業ということになるわけでございます。

 再犯防止におきましては民間事業者のノウハウをしっかりと生かさせていただくということが肝でございまして、質の高いサービスを提供していただきたいということでございますし、また、今御指摘になりました民間資金の活用ということになりますと、新しいステークホルダーにこの分野におきましてもどんどん参加していただくということ、これが大変大きな意義があるのではないかというふうに思っております。

 法務省におきましては、まず、この導入予定の初のSIB事業を着実に実施してまいりたいと思います。そして、その成果につきましては、委員、先ほど来御指摘いただいてきた評価項目の指標のことも含めまして、しっかりとその成果が見える化し、そして、多くの皆様にそれに対して期待をしていただきたいというふうに思っておりますので、そういうトータルな設計をしながら事業を進めてまいりたいと思います。

 全ての企業者、また、関係する省庁もございますし、先ほどインセンティブのお話もございましたので、アンテナ高く、いろいろ張り巡らせながら、この一つの事業に集中して初の仕事を成し遂げたいというふうに思っております。

松平委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 この再犯防止事業に関してなんですが、再犯率を下げるという取組で、アメリカで非常に興味深い取組があります。こちらについては衆議院議員の柿沢未途先生もお詳しいんですが、ちょっと私から紹介させていただきますと、プリズン・アントレプレナーシップ・プログラムというもの、略してPEPという団体がやっている取組です。この団体は、テキサス州を拠点に活動するNPO団体で、刑務所の中で受刑者に起業家育成プログラムというものを提供するんです。

 このプログラム、試験などを通じて、受刑者の応募者から毎年五百人ぐらい選びます。そして、起業家であるとか投資家を招いた講座を開催して、起業に必要なノウハウやスキルを学ぶ機会を提供する。しかも、大学とも提携をしたりしていて、プログラムの修了者にはミニMBAも取れてしまうという、大変興味深い職業訓練なんです。

 私、資料二として配付させていただいております。これは、今紹介させていただいたPEPのホームページなんですけれども、そこに、このPEPの起業家育成プログラムの成果が載っております。

 左から二つ目、このプログラムを受けた受刑者、卒業生は何と五百を超える会社を立ち上げていまして、そのうち年間売上げが百万ドルを超える企業が五つもあるというんですね。

 それから、その一つ右、米国の元犯罪者の失業率というのが大体五〇%であるというのに対しまして、このプログラムの卒業生は、十二か月後の雇用率というのはほぼ一〇〇%になっているというんですね。

 また、この一つ右、だから一番右のところですね、プログラムの卒業生の釈放後の最初の平均時給というものはアメリカの最低賃金を六八%も上回っているというふうに書いてあったりします。

 一番下のところ、再犯率なんですけれども、アメリカ全体で三年間の再犯率の全国平均というものが五〇%程度であるということに対して、このプログラムの卒業生は八・三%と非常に低くなっています。

 こういった起業育成プログラムは既にアメリカで多くの州に広がっていまして、例えば、主にカリフォルニア州で起業家育成プログラムをやっているデファイベンチャーズというところがあるんですが、この団体は、このプログラムをする機能に加えてベンチャーキャピタルの機能もあって、プログラムで学んだ受刑者がそれによって起業した会社に投資したりもしているということなんです。

 翻って、日本を、我が国を見ますと、やはり刑務所の刑務作業は単純作業がほとんどですし、職業訓練も、建設、建築や介護など、直接仕事に結びつくものばかりです。これが悪いとは言いませんが、やはり、刑務作業で裁縫の仕方、製品の組立て方、そういうものを学びますけれども、残念ながらそれだけになってしまうところというものがあります。それだと、出所した後も就業能力というものが低いままですので、やはり元受刑者というレッテルも相まって、多くの方が安い賃金で働くしかない状況になっていたりします。そうなると、やはり、安い賃金でその日暮らしとして、頑張っても貧困から抜け出せず、また犯罪に走ってしまう、そういうことも往々にしてあると思います。

 今御紹介しているアントレプレナーシップ教育ということは、世間で、ちまたに言われている、何も、AI系の最先端のスタートアップを創設するような、ぴかぴかの人材とか革新的な人間を育てよう、そういう話じゃなくて、やはり、今まで学んでいた裁縫の仕方であるとか製品の組立て方、そういったものだけじゃなくて、それを作る材料の仕入れをどうするのか、費用を計上して、人を雇って、資金を調達して、広告して、マーケティングして経営する、そういう教育なんです。こういった教育によって付加価値が高い労働ができる、それでちゃんと稼げて、貧困、犯罪の連鎖から抜け出せる、こういうプログラムを日本でもやってみたらどうかなと思うんです。

 やはり、再犯率が減ることで受刑者自体が減ります。そうしたら経済的コストも減るので、同時に、今までよりも多くの受刑者が起業や就職をする。それによっては税収を見込むことができる。当然、再犯率が減るということは安全な社会にもなるということで、受刑者のみならず、社会全体にとってもプラスの効果が生まれるということで、大臣、今紹介したこういったプログラム、どういうふうに思われますでしょうか。お聞かせいただければと思います。

上川国務大臣 今、我が国の刑務所におきましての刑務作業のことにもちょっと触れて、それよりもというお話もございましたが、様々な刑務所におきましては職業訓練、職業研修ということでも取組をしておりまして、免許を取るとか、あるいは資格を取得させる、これは自信にもつながりますし、社会に出た後に仕事をしっかりと持って働き続けることもできるということで、様々な社会のニーズに合わせて、この刑務作業の内容につきましても、民間の協力をいただきながら実施してきているところでございます。その社会復帰を円滑にしていく、また改善更生を図るという意味で、このプログラムをいかに社会のニーズに合わせて組み立てていくのかということについては、絶えず改善していく必要があるというふうに考えております。

 今、プリズン・アントレプレナーシップ・プログラムということで、PEPのテキサス州の事例、アメリカにおきましての拡大のことについてお話をいただきまして、大変興味深く聞いたところでございます。

 刑務所におきましてのMBA等の取得というような、そういうくくりもできるんじゃないかなというふうに思っておりますが、ただ、それはMBAのような制度ということよりも、むしろそういうことに関心を持っている方にしっかりとつながっていただくということでありますので、大変興味深いプログラムではないかなというふうに思っております。

 日本とアメリカの状況も異なりますが、いずれにしても、出た後にやはりしっかりと仕事をしていく、また自分で自立していくということが何よりも大事であるというふうに思っておりますので、アメリカのそうした実績に基づく展開につきましては、しっかりと検討をし、また、調査もしてまいりたいというふうに思っております。

松平委員 どうもありがとうございます。御紹介してよかったと思っています。

 もうちょっとつけ加えますと、御存じのとおり、日本というのは開業率、起業率ですね、起業する人の割合が非常に低くて、主要先進国の半分ぐらいになってしまっている。これは政府も中小企業白書で言っていますけれども、起業というものは社会経済にとってはとても重要で、社会の新陳代謝、産業構造の転換、イノベーション促進の原動力となる、経済成長のエンジンとなる、そういうふうに書いています。

 このアントレプレナーは、元々フランス語で、今でも起業家の意味で使われていまして、このアントレプレナーシップというのは、新事業に高い創造意欲を持って、リスクに対しても果敢に取り組んでいく、そういう姿勢のことを言います。こういうリスクに対して果敢に取り組んでいく姿勢を持つ人は、もしかしたら刑務所に入っている方に多いんじゃないのかなと思ったりもします。誤解を恐れずに言えば、刑務所に入る方、既存のルールからはみ出してしまうという、ハングリー精神、反骨精神を持った方が多いかもしれない。その観点でも、刑務所でのアントレプレナーシップの教育というものが結構有効なんじゃないかなと思います。是非お考えいただければというふうに思います。

 それから、今、民営刑務所という、社会復帰促進センターが全国に四か所ほど設置されております。この社会復帰促進センターを出られた方というものの刑務所への再入率というものも非常に低くなっています。

 法務省が出している検討会議報告書というもの、この資料を見ますと、出所者全体の再入率が一八%なのに対して、社会復帰促進センターを出た方の再入率というものは大体五%と大変低くなっています。

 これは運営の仕方としても、民間に業務委託しているだけありまして、いろいろな発想を持った取組がなされています。

 上川大臣、現地視察をされていて、本当にお詳しいとは思うんですけれども、美祢社会復帰促進センター、こちらで受刑者に対してEコマースの職業訓練も行われていると聞いています。これは、Eコマースの知識ですとかネットショップの運営スキルがそこで学べるということなんです。

 先ほど紹介したアントレプレナーのプログラム、今のEコマースの職業訓練のプロジェクトというのは、やはりこのプログラムの発展形のようなもののようにも考えることもできるというふうに思いますし、この社会復帰促進センターの運営というのが、今、定額払いと聞いています。

 そこで、犯罪率低下の成果連動のような形の報酬形態とすることもやはり考えられるというふうに思いますし、ちょっと冒頭議論させていただいたソーシャル・インパクト・ボンド、こちらの手法も使って、投資家を募ってやるというのも非常にぴったりくるというふうにも思うんです。

 そういった形で、どうできるかというところ、具体的にも考えていただきたいと思うんですけれども、大臣、最後に、この点、いかがでしょうか。

上川国務大臣 この社会復帰促進センター、PFIの事業としては全国で四件ございますが、とりわけ美祢の社会復帰促進センターにおきましては、委員御指摘のEコマースを中心に、本当に、研修生の方々が、この分野でワークショップを開いたり、あるいはプレゼンテーションしたり、そして自分のいろいろ個性を生かした形で取り組んでいるということで、アントレプレナーシップの一つの要素としては、そうしたプログラムの中に入っているというふうに私は理解をしたところでございます。

 この社会復帰促進センターは、PFIという手段でございますので、国の定める要求水準を満たす業務遂行を前提として、定額のお支払いをその契約内容としていると。十年ということでございますので、今おっしゃったような成果と連動した支払いということには今のところなっていない状況でございます。

 このSIB、また成果連動型の支払いについては、先ほど申し上げたSIBの初めての非行少年の教育学習プログラムということで実施してまいりますので、全体の組織、施設そのものの運営の中にどういうふうにはめ込むことができるのかということについては、PFIそのものも極めてチャレンジングな制度でありますので、これから、その評価も含めまして、また新たなそうした動きも参考にしながら、しっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。

松平委員 ありがとうございます。しっかり検討していただければと思います。

 以上で終わります。

義家委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

義家委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。寺田学君。

寺田(学)委員 立憲会派の寺田です。

 質疑時間をいただきまして、ありがとうございます。三十分間の時間をいただいた中で、今日は性犯罪について質問したいというふうに思います。

 大きく分けて二つのことをお話しするんですが、唐突なんですけれども、私自身、秋田の横手というところで生まれまして、十八歳まで過ごしていました。浪人だったので東京に出ることになった三月のちょうど今頃ですけれども、東京に初めて独り暮らしで出る前の日に母親に呼ばれまして、夜中ですね、夜、まあ座りなさいと言われて、出ていく前に一言だけということを言われて、それは、これから独り暮らしをするけれども、レイプだけは絶対にするなといきなり言われたんです。私も、別にそういうそぶりがあったわけでも何でもなく、いやいや、本当に冗談みたいに言っちゃ駄目ですよ、それはびっくりはしたんですけれども、本当にそれは衝撃があったので、心にずっと刻んでいました。

 今思うと、私も今七歳の息子がいますけれども、物心ついたらちゃんと言おうかなと思っています。やはり、そういうふうにしてちゃんと何か伝えていかないと、母親からそのときに言われたのは、何でそれをするなと言ったかというと、人間として最低の犯罪だ、それだけは絶対にするなと、ただそれだけでした。

 そういう意味を持って、今こういう仕事に就いて、法務委員会になって性犯罪についてお話をするんですが、大臣のいろいろなインタビューとかも拝見しました。委員会が始まる前にワンツー議連の話もしましたけれども、ワンツー議連の、議連のそのワンツーの意味も、初めて、恥ずかしながら知って、本当にすばらしいお言葉だなと思いましたし、当時、大臣がインタビューの中で、自分事にちゃんとしなさい、そこからだと言われて、私も今回、これから紹介しますけれども、もちろん、その母の言葉もありながら、本当にこの問題にちゃんと取り組まなきゃなと思ったのは、最近、本当に最近ですけれども、友人から相談されたことです。被害に遭った娘さんを持つ友人からの話でした。

 ですので、二つ、性犯罪が起きた場合の運用の在り方と、あと性犯罪の刑法の在り方と二つあって、最初は、その友人から相談を受けたことも含めてですけれども、性犯罪が起きた場合の運用の現実ということを、ちょっと大臣と、あと政府参考人と話をしたいです。

 今、DBSとか、幼い子供を性被害から守ろうという話が出ていて、それは本当にどの党も含めて、遅い早いはあるけれども、関心を持って取り組んでいます。

 ただ、それ自体は、結局のところ、性犯罪として裁判で認められて、そういう前科がついた方をどういうふうに子供から離すかという話になるんですが、結局のところ、裁判に行かない限り、その方がそういう行為を起こした事実はあったとしても、そのDBSだったりオフセットの仕組みの中には入ってこないと思うんです。だから、氷山の一角として出てきたものをどうやって適正に扱うかということとともに、その下にある、氷山の一角の下にある部分をちゃんと表面に出さなきゃいけないというのが私の問題意識です。

 今日、参考資料としてA4一枚、表裏でありました。警察の通達と、もう一つは、ある弁護士事務所の、強制わいせつでも刑事事件は軽くできる、弁護士が必要な理由、不起訴で前科を回避、不起訴率は八二%と様々なことをいろいろ書いています。最後の方には、「強制わいせつ事件の場合、被害者と示談が成立すれば不起訴となる可能性が高まります。強制わいせつ事件は刑事罰として罰金刑がなく、有罪となれば懲役刑に服することになります。そのため、示談成立により不起訴を獲得することは、刑事弁護活動の中では最も重要なことだといえます。」と。

 ここは以前、レイプ犯も、いわば、それは示談にできるというような四こま漫画みたいなのを出して問題になって、自ら削除されていたというような話を聞きました。

 ただ、ここだけじゃなくて、こういうのはいっぱいあります。私は、示談そのものを否定するつもりはありませんが、まさしく示談自体が、被害者の家族であったり被害者そのものが、本人が理解をした上で、納得した上で成立するのであれば私はふさわしい示談だと思うんですが、泣く泣くそこに導かれるようなことはあってはならないと思いますし、先ほど申し上げたとおり、DBSだったりオフセットも含めて、ちゃんと表面化しない限りそれは実効的な機能をしないということなので、問題意識を持っています。

 これからちょっと、私が相談されたことを、友人の了解とともに、友人から是非とも国会でもちゃんと議論してほしいと言われたので、ここでお話をします。

 今日、いろいろな方がこの場にいますけれども、娘さんがいらっしゃる方は是非とも、自分がもしその立場だったらどう思うかということを是非一緒に考えてほしいんです。追及も何もしません。

 ある方がお店で不審な行動を取っているので通報されて、携帯電話の中身を見たら児童ポルノの写真が山ほど出てきた、動画も含めて出てきたという事案でした。本人はその犯行を認めて、どの子供を撮ったかということを全部お伝えしたので、学校経由で私の友人の保護者に連絡が来ました。複数回、その仲がよかった友達のお父さんが加害者でした。仲がよくて何度も泊まりに行っている間、九歳のときも十歳のときも、寝ている間に衣服を脱がされて写真を撮られ、その被害者のプライベートゾーンも触られ、そしてまた、加害者自身の性器を勃起させたものを触らせているような写真もあったということでした。

 父親はもう正直その証拠を見ることができなくて母親に任せたという話でしたけれども、本人自身は、何度も泊まりに行くことがあるように、全く気づいていなかった、ないだろうというふうに、親としても何度もそれは確認をしています。

 犯行が起きた九歳、十歳から、もう今十一歳か十二歳ぐらいになっているという話でしたけれども、そういうことで警察から連絡が来まして、最初に言われたことは何かというと、娘さんに聴取をさせないんだったら被害届は出せない、聴取なしで被害届を出す方法があったら教えてほしいぐらいだといきなり言われたと。親にしてみると、本当に許せない犯行をされて、多分、相当な気持ちになっていると思いますよ。しっかりとせめて裁きに遭ってほしいと思いながら、その条件として、そういうことをされたことが分からない娘に対して聴取をすることが条件だといきなり言われたそうです。

 もちろん、聴取の在り方は様々ありますので、事そのものを聞かずに何かしら間接的に聞くんだと思いますが、私も七歳の子供がいますけれども、男の子ですけれども、恐らく、同じ年でもやはり女性、女の子の方が物すごく聡明だし、十歳、十一歳になれば、その家で寝ていたことがあるよね、夜起きたことあるとか様々なことを間接的に聞いても分かりますよ、何か私はされたんだと。そういうことを子供の、自分の愛すべき娘に傷をつけたくないので、事情聴取、本人聴取はなしで、本来被害届も出せますから、被害届を出したいという話を言ったんですが、警察は最初にそういう形で、本人の聴取がなければ被害届なんて出せない、それが俺のやり方だと言ってきたそうです。

 二回目のときに、私の方が弁護士をちゃんと紹介しまして、仲介というかアドバイスをしながらやったんですが、まず、二回目に行ったときに、娘が傷つくことが嫌なので被害届は出しませんという調書を用意していたそうです。こんなものに判こは押せないと。弁護士さんから聞いたけれども、検事さんと事前協議はできるはずだということで事前協議をお願いしたところ、そんなものあるかどうか分からないと言うので、弁護士さんと話をしてもらったところ、渋々その方はその事前の検事さんとの協議をすることになったと。そうしたら、後刻電話が来て、検事が本人聴取をすると言っているので、やはり本人聴取の方針は変わらないと言ってきたそうです。

 是非、本当に皆さん、お子さんがいるのかどうかも含めてですけれども、もし本当に自分がその立場に立たされたら、自分の娘を傷つけたくないという思いで示談に逃げることもできるでしょう。ただ、そのときに、本来裁かれる人間を裁かなかったという社会的なものと、娘に対する申し訳なさと、またその人が示談によって前科もつかず野に放たれて同じことをするんじゃないかと。小児性愛者の再犯率はもう言うまでもないと思いますけれども、その社会的なざんげの気持ちを持つはずですよ。私は又聞きしただけでも本当に苦しいです。こんなことが現実に行われていますよ。

 特殊なケースかと思いきや、今日お見せした弁護士、加害者側についた、この示談をかち取るという方向性、結構いろいろなところにありますよ。今回私が相談を受けたところの相手の弁護士のホームページを見ましたけれども、同じようなことが書かれています。弁護士一般の方々に聞けば分かりますけれども、大概、こういうところはよくあるものだと。

 加害者弁護士がこういうようなことをやってくる。そしてまた、頼みの綱である警察が、いや、本人の聴取をやらせてもらわないと被害届なんて出せませんよと突き放してくる。そして、間接的とはいえ、検事も、恐らく、私も素人なのであれですけれども、いろいろな元検事の方にも様々聞きましたが、十三歳未満、性同意年齢より下です。ですので、起きていようが起きていまいが、本人が同意しようが同意しまいが、強制わいせつなんです。有罪であることはほぼ確実であって、量刑としてどうなるかというところは本人聴取によって左右されるところがあるんじゃないかというのが多くの方々のお話でした。

 ただ、その量刑の的確性とのてんびんにかけられているのは子供の心の傷ですよ。こういうことが今、現状にあるということを、私は自分事にして、今この場に立って質問をしているんです。

 まず、警察に聞きたいです。

 今日お渡しした資料の裏側、もう一枚の方は、平成三十一年に警察庁刑事局長からあまねく警察の方々に、余りにも被害届の不受理という件が目につくので、ちゃんとやれということを通達している紙です。被害届の迅速、確実な受理、「記」の下ですね、「受理の原則」、「被害の届出に対しては、被害者・国民の立場に立って対応し、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理すること。」。

 こういう方針を出しているにもかかわらず、今回私が相談を受けた現場は、これが俺のやり方だと言うとおり、何度もやってきたそうですし、同じように、同一の加害者から被害に遭ったもう一人の親は、私に相談するようなつてもなく、シングルマザーで一人で考えざるを得なかったという話でしたけれども、もう娘の傷があれなので被害届は出しませんというものに一回判こを押したそうです。

 実態はそうなんですよ。分かりますよ、様々、警察として何を考えているか、検事として的確な量刑を求めたいというのは分かりますけれども、その代償として親が迫られているものがこういうものであり、もしそれで本人聴取を受けたときに気づいたときに、受けるのは子供なんですよ。わざわざ、この司法制度の中で、子供に対して傷を負わせるようなことになっているんですよ。

 警察にまず聞きますけれども、一般論になりますよ、この個々別に対して何か言うことはできないと思いますが、こういう実態が起きていることが、私も実例として聞きましたし、こういう加害者弁護をやっている方々が高らかにうたっているように、恐らくそういうことがこのかいわいではあるんだと思うんです。警察として、まず、こういうような事例が起きたことを踏まえて、一般論としてどう思いますか。

猪原政府参考人 個別のケースにつきましては、その捜査の在り方について言及することについては差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、被害の届出に対しては、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理することとされております。

 また、特に、御指摘の低年齢の被害者の方に係る性犯罪事件の捜査に当たりましては、被害者の方に対する慎重な配慮が重要であると認識しており、今後とも、このような点を含め、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 この場では言いませんけれども、どこのどういう署がやっているかは後で言うので、ちゃんと指導しておいてください。

 警察がそうやって示談を誘導しているんですよ、結果的に。若しくは、子供にわざわざ傷を与えることを警察がやっているんですよ。もう一人の被害を受けた子の親が判こを押しちゃったということはそういうことですよ。後で言うので、ちゃんとやってください。

 加害弁護士側もそういうような誘導をしますし、警察もこういうことが起こり得るんだと思います。起こっているからこそ、こういうような指導文書を出しているんだと思いますけれども。

 あとは検察ですよ。私は法律の専門家じゃないから分からないですけれども、弁護士さんに何人も相談しましたけれども、十三歳未満の性同意年齢以下の子供が、寝ていても起きていても、同意しても同意していなくても、強制わいせつに当たることが刑法に記されていると。だけれども、検察側はやはり本人聴取をしたいと言うんだそうです。私は間接なので分かりません。

 ただ、様々な事情がありますよ。様々な量刑の在り方というのを探りたいと思いますが、それのてんびんにかけられているのは子供の傷ですよ。親として知らせたくないことを知ることになることと引換えに、量刑の適正さを求めるのかもしれません。私は、これはバランスが全然取れていないと思います。

 大臣にお伺いしたいんです。正直、ここにいるみんなで考えたいですよ、本当に自分がその選択、親として迫られたらどうしますかと。大臣、どうします、本当に。大臣だけの問題じゃないと思いますが、この国の司法制度、司法行政がこういうことを国民に押しつけているんですよ。悶絶する選択ですよ。大臣、どう思いますか。まず、所感を教えてください。

上川国務大臣 今委員からお話をいただきました。具体的なお話であります。私も伺っているだけで、本当に胸が苦しくなりました。

 その子のこと、今どういう状況なのかも含めて、心配をしています。そして、親御さんも含めて、子供さんの受けた暴力あるいは犯罪、このことについてどのように向き合っていくべきなのか。本当に相談もできずに悩まれて、そして最後に御相談なさったのではないかと思います。

 性犯罪、性暴力に係る事柄につきましては、そうした事案が非常に多いというのが、私は正直な、この問題を扱いながら感じている点であります。ようやく大きくなってというか大人になって、あのときのこと、いろいろ思い出しながら、ようやく口に上らせることができるようになったという方が何人もいらっしゃいます。小さいときには、なかなか御自分も言うことができない、親にも言えない、あるいは親からも、こういうような状況でありますので、極めて根が深い問題であるというふうに認識をしております。

 ゆえに、この問題については、今、この時点の中でしっかりと取り組んでいきたいと思っているところであります。

 また、様々な、犯罪に至るプロセスの中には、幾つもの、当事者の方にとっては全く知らない方々とつながらなければいけないわけでありますので、そのところで今のような更なる傷を負うことがあるということを、そういう問題であることも前提に、今の現状の課題や問題をしっかりと掘り下げて、そして対応していく必要があるということを強く感じております。

寺田(学)委員 答弁書も見ずに御答弁いただき、ありがとうございます。

 現実、こういうことが起きているということだと思うんです。この警察を僕は許せないですけれども、検察としての正義感、社会正義に対する考え方は考え方であるかもしれませんが、それ自体が子供の傷ということに対する考慮をしたときには、社会正義が勝ってそういうような発想になっているか分かりません。個々別のことをこの場で議論するつもりはありません。こういう問題があるということを大臣に認知していただきたいと思っているんです。認知いただけましたか。

上川国務大臣 今のお話で、様々な問題意識を私も持たせていただきました。一つ一つのケースにつきましても、しっかりと向き合ってまいりたいというふうに思います。

寺田(学)委員 ありがとうございます。

 私が起訴基準とかそういうものを述べるような立場にないかもしれませんけれども、私は、十三歳の性同意年齢以下の子には、本人の聴取があるとかないによって、起訴する、しないというようなことにならないように、検察庁としても一定の基準を出していただきたいと思います。大臣、御指導よろしくお願いします。

 もう一点ですが、性犯罪に関する刑法の在り方。今、法務省の方で検討会を鋭意やっておられるのを聞いています。不同意性交罪ということが一つの論点として議論されています。

 今、いわゆる強制性交自体は、加害者側の方の威力であったり何かしらの対応があったかどうかということですけれども、根底には、不同意である、本人が同意していないということであれば犯罪ではないかという声が、やはりそういう法体系にするべきだと。私自身が十八歳の夜に言われたこと自体、まさしくそのことですから。

 議論がいろいろあるのは分かりますけれども、私が子供に問われたらでもないですけれども、同意なき性行為は犯罪なのか、犯罪と思うかと問われたら、大臣、何と答えますか。

上川国務大臣 今、一般的なお言葉でおっしゃいましたので、そのことの犯罪の定義とか、あるいは、同意なき性交等の行為という形の中でその定義についてもこれは詰めなければいけないことではあると思います。

 しかし、こうした行為そのものは、やはり基本的人間の尊厳に関わる極めて重要な行為である、行為というか、それをじゅうりんする行為であるというふうに思っております。

寺田(学)委員 そういうような行為にもかかわらず、やはり、今までの裁判事例も含めて、無罪になったり、もっと言うと、さっき言ったとおり、そういう前提だからこそといって示談の方に強く誘導される形で表面化しなかったということはいっぱいあると思います。

 多くの不同意性交罪、私はスウェーデンのモデルとかはすごいなと思いながら見ているんですけれども、イエス・ミーンズ・イエスという意味ですけれども。

 こういう罪を設けることを求める署名自体が約七万人ぐらい集まったというふうに聞きました。大臣として、そういうような署名活動が行われている認知はございますか。

上川国務大臣 多くの署名活動、六万件、また更に追加をして活動していらっしゃるということで、更なる、六万、七万の署名をお持ちいただいております。拝見させていただいております。

寺田(学)委員 様々な、制度設計の在り方であるとか議論というのはあるので、一足飛びに答えをすぐ出せるような状況にないとは思うんですけれども、じっくりと、やはり同意がない性行為は犯罪なんですよ。それを、いかにその性暴力自体を全て性犯罪として捉えていくかということが私は大事だと思っているので、非常に重要な考え方だし、私は強く賛成します。

 今、検討会がありますので、検討会の後に法制審に臨むと思うんですが、是非法制審に、少年法のときもあったようですけれども、被害者団体の方を法制審のメンバーにも入れていただきたいと思っているんですが、いかがですか。

上川国務大臣 今、性犯罪に関する刑事法の検討会が開催されておりまして、その中には被害者の方にも当事者としての御発言をいただいているところであります。

 今、そういう意味で、様々な論点で議論を、二巡目ということでありますが、していただいているということでありますので、その結果につきましてはしっかりと検証していただけるものというふうに思います。

 その次の段階ということでの御指摘でございますが、ちょっと、今委員の構成につきましてお答えをする段階にないということについては御理解をいただきたいというふうに思っております。

 いずれにしても、この検討会、しっかりとした議論が、またスピーディーに行われることを支援しておりまして、期待しているところでございます。

寺田(学)委員 現段階で、構成員に対して予断を持ってお話しすることができない立場は十分理解しています。要望として申し上げておきます。

 もう一つ要望ですけれども、まさしく、不同意性交罪もそうですし、あと性同意年齢の引上げも含めて、いろいろ議論がなされています。議論が分かれているもの自体を先送りするというのは一つの手法ですが、まさしく社会的なニーズというか強い要望もあるものですから。大臣が今度法制審に諮問されるお立場になると思いますので、意見が分かれているものであっても、社会として必要なものであるということであれば是非とも法制審の審議課題にのせていただきたいという要望ですけれども、いかがですか。

上川国務大臣 失礼いたしました。先ほど私、検討会の議論について二巡目というふうに申し上げましたけれども、三巡目に入っているということでございますので、訂正させていただきたいと思います。

 法制審議会の諮問の内容につきましては、これも検討会の結果を踏まえてということではありますが、この問題につきまして総合的にこれまで取り組んできておりますので、ここで、この問題は議論足らずなのでというようなことにならないような、そういうものに検討会でしていただきたいなと実は思っております。また、法制審議会の方でも幅広く検討していただけるような、そうした環境整備については努めてまいりたいと思います。

寺田(学)委員 議論が多く分かれるとは思うんです。刑法学者、刑法の専門の方々にしてみると、及び検察の方、弁護士の方々、法律に本当にたけている方々にしてみると、どういうふうにして実態として運用するのかということが念頭にありながら組み立てていくんですけれども、やはりそれだけじゃ、やはり全てのニーズ、ニーズというか状況自体を把握するということができないと思うので、私は被害者団体の方々にはしっかり会っていただきたいというふうに思っています。

 あと、障害者に対する性犯罪ということ自体も非常に私は問題だと思っていますし、先日、そういう被害に遭われた方々をサポートする方からお話をお伺いしました、井出さんから御紹介いただいたんですけれども。

 やはり、その判断能力に対して十分じゃないということに、本当にけしからぬことですけれどもつけ込んだ形の被害があって。とはいえ、それでは、じゃ、警察であり、検察であり、裁判の場においても、そのこと自体が非常にネックになって、真っ当な裁き及び対応がされないということはあると思います。

 司法面接というのが今始まって、子供に対しての司法面接をやろうというのも、私が聞く限りだと、一か月、二か月ぐらい何か司法面接を受けるまで時間がかかっているという声も聞かれたりはして、そこに障害者の方々もちゃんと入れてくださいと、今の段階で入れるのはなかなか難しいかもしれませんが、ただ、この司法面接自体も非常に重要な役割を果たしますので、一、二か月かかっているとすれば迅速な対応で強化をしていただきたいと思いますし、そういう中にも、障害者の方々の被害を受けられた方もしっかりそういう枠組みの中に入れられるようにしていただくというような提案です。

 御答弁があれば、どちらでもいいですが。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員のお尋ねは、一つは司法面接という形でおっしゃいましたけれども、児童に対するそういった司法面接と、そういった手法を障害者が被害者の場合でも活用すべきではないかというお尋ねと、あと、司法面接、代表者面接、代表者聴取について時間がかかっているのではないかと二つあったと思いますので、それぞれ分けてお答えを申し上げたいと思います。

 まず、障害を有する被害者の方からの聴取の在り方の問題でございますが、昨年、令和二年六月に性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議で決定されました性犯罪・性暴力対策の強化の方針におきまして、児童を被害者とする事案において従来から行っている代表者聴取の取組について、その対象を障害がある被害者にも拡大するなど、被害者に対する事情聴取の在り方をその供述の特性や心情等に配慮したものとすることといった指摘があることなどを踏まえ、更に検討し、適切な対処を行うとされたところでございます。

 検察当局におきましては、あくまで一般論として申し上げれば、現在におきましても、障害者が被害者である場合には、負担軽減及び被害者の供述の信用性確保の観点から、その障害の内容や程度等を踏まえまして、その供述の特性に応じた適切な事情聴取を行うように努めているところであると承知しておりますが、今申し上げました強化方針を踏まえまして、障害のある被害者に対する事情聴取の在り方について現在検討を進めているところでございますので、そのように御理解を賜ればと思います。

 あと、それに関連して、いわゆる代表者聴取の実施まで時間がかかっているのではないかという御指摘もございました。

 これは、現に行っているその児童の関係でお答えを申し上げたいと思いますが、検察当局におきましては、児童の負担軽減及び児童の供述の信用性確保の観点から、送致又は刑事立件前の段階を含めまして、警察及び児童相談所から情報提供を受け次第、速やかに警察及び児童相談所の担当者と協議して代表者聴取を実施しているものと承知しております。

 お尋ねは、まさに捜査機関の活動内容に関わる事柄である上、御指摘の代表者聴取が行われるまでに要する時間につきましては、例えば事件発生から発覚までに既に長期間が経過している事案もあるなど、事案の内容や被害児童の状況等の、個別具体的な状況等の個別具体的な事情により大きく異なり得るため、一概に比較、評価することは困難であるということを御理解賜りたいと思います。

寺田(学)委員 十分な対応を取ってください。

 残り時間が少ないのであれですけれども、やはり今回、本当に自分のことになりましたよ。かつ、自分の立場で、野党という立場ですけれども、野党をまとめてやっていかなきゃいけないなと思います。これは赤澤亮正さんからうちの妻が言われたことでもあるんです。本当にいろいろなところでいろいろな反対の声が上がるからしっかりと抑えてほしいと言われたのは、私もやりたいと思っていますし。

 検察出身の法務省の方々とやっていますけれども、僕だってやはり怖いですよ、検事さんだと思うと。普通の方々にとってみるとやはり怖いですよ、警察も、検察も、弁護士まで出てきて。

 そういう被害に遭った方々の本当の実情というか、気持ちにも寄り添った行政の在り方を探っていただきたいと思います。大臣、期待していますので、よろしくお願いします。

 以上です。

義家委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 大臣は所信の中で、様々な困難を抱える方々への取組、この冒頭で、性犯罪、性暴力対策を挙げられました。寺田委員も取り上げていらっしゃいましたけれども、私も今日、この点に関連して質問いたします。

 緊急事態宣言が三月二十一日まで延長されました。家が安全でない人にとっては、孤独と恐怖の期間がまだ続くということになります。

 内閣府にまず確認したいんですが、コロナ禍の下で、DVや性犯罪、性暴力の相談件数、どのようになっていますでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 DVの相談件数につきまして、全国の配偶者暴力相談支援センターと、昨年四月に内閣府が開設いたしました新たな相談窓口でございますDV相談プラスに寄せられた相談件数を合計いたしますと、今年度、令和二年四月から本年一月までの間の数字でございますが、約十六・二万件、これは前年同期と比べて約一・五倍となってございます。

 性犯罪、性暴力につきましても、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの令和二年四月から九月の間の相談件数は約二・三万件となってございまして、前年同期の約一・二倍と増加をしてございます。

 内閣府といたしましては、引き続き支援の充実に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

藤野委員 大臣にお聞きしますが、このコロナ禍の下で、こうしたDVや性犯罪、性暴力が急増している。これはやはり法務省としても深刻な問題だ、そういう御認識だということでよろしいでしょうか。

上川国務大臣 ただいま内閣府からも答弁がございましたとおりでありますが、本年度におきましては、DVや性暴力等の相談件数、いずれも昨年度を上回って推移をしておりまして、顕在化したものだけということでありますけれども、その増加傾向は明らかでございます。

 DVや性犯罪、性暴力につきましては、元々被害が潜在化しやすいものであること、また、先ほど御指摘いただきましたけれども、新型コロナウイルス感染症拡大に伴いまして、外出制限、外出自粛という形によりまして、生活の不安またストレスがたまっている状況の中で、家庭内で起きるDVなどの事案というものが更に潜在化して深刻化をしていくということが懸念されているものというふうに考えております。

 DV、性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を著しく侵害をし、そして心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けるものというふうに認識をしているところでございまして、その対策の強化につきましては、コロナ禍の影響も踏まえながら、政府全体としてしっかりと取り組むべき必要のある喫緊の課題ということについて認識をしているところでございます。

藤野委員 今大臣がおっしゃったように、氷山の一角といいますか、顕在化したものだけでも増えてきているということであります。

 今、国連のグテーレス事務総長も、コロナ禍の下でのDVや性暴力の急増を受けて、これは陰のパンデミックだというふうに呼んで、各国に包括的な対策を求めております。

 この点、日本政府はどうなのかと、私、調べてみたんですが、配付資料一を見ていただきたいんですけれども、これはいわゆるコロナの基本的対処方針と言われる文書におけるDVや性暴力対策の位置づけであります。

 もうそこに書いてあるとおりなんですが、ここまでもう十何回も基本方針は改定されているんですけれども、このDVや性暴力の問題というのは、一貫して、その他という位置づけなんですね、その他。

 かつ、女性の生活や雇用への影響が深刻だという、この深刻という認識が示されたのは今年になってからなんですね、一番下になるんですが。それまでは、影響に配慮という程度に、記述としてはとどまっていまして、今年になって初めて、影響が深刻になったということに書きぶりが変わった。

 性犯罪、性暴力という文言が入ったのは今年になってからなんですね。これも今年になってから。

 これは、国連が求める包括的な対策には、ちょっとほど遠いんじゃないかと思うんです。

 大臣、率直にお聞きしますけれども、日本政府のコロナの基本的対処方針がこれでいいのか。これでいいと思われますか。

上川国務大臣 委員御指摘の政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針におきましては、DVや性犯罪、性暴力などに対応するため、地方公共団体と連携し、適切な支援を行うということが挙げられているところでございます。これは、従前より取り組んでまいりましたDV、性犯罪、性暴力対策に加えて、このコロナ対策が長期化をしている、こういう中で生じてきている大変潜在的な、深刻な課題という認識を新たにしている状況でございまして、更なる取組をしていくべきだ、こういう認識が示されたものというふうに私は理解をしているところでございます。

 基本的な対処方針を踏まえまして、現在、内閣府を中心として、DVや性犯罪、性暴力の被害者に対する相談支援体制の強化拡充ということにも取り組んでおりますし、また、コロナ下の女性への影響と課題につきましては、現在も内閣府におきまして研究会を開催をいたしまして、更なる検討が進められているところでございます。

 性犯罪、性暴力につきましては、特に昨年六月に関係府省庁会議の中の強化方針を策定して、令和四年度までの三年間、集中強化期間として、政府を挙げて取り組むという方向性がしっかりと示されておりますので、これに加えて、今の実態もしっかりと踏まえた形で、コロナ下の問題としても、つけ加える形で今後とも対応してまいりたいと思っております。

藤野委員 強化の方針については、また後ほどお聞きしたいと思います。

 私は、今年一月十三日に、東京都の新宿歌舞伎町で、一般社団法人Colaboが行っているアウトリーチの現場に行きまして、代表の仁藤夢乃さんなどからお話を伺ってきました。

 厚労省にお聞きしますが、このColaboというのは、どのような活動を行っている団体でしょうか。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省におきましては、様々な困難を抱えた若年女性は、自ら悩みを抱え込み、問題が顕在化しにくく、公的な支援につながりにくいといった側面が指摘されていることを踏まえまして、平成三十年度に若年被害女性等支援モデル事業を創設をいたしまして、公的機関と民間団体が密接に連携し、夜間の見回り、声かけなどのアウトリーチ支援や居場所の確保、相談対応、自立支援等の支援を行ってきたところでございます。

 御指摘の一般社団法人Colaboでございますが、本事業の創設初年度より東京都から事業の実施を受託されまして、虐待や貧困など様々な事情から、家に帰ることができないなど困難な問題を抱える若年女性に対して、声かけを行い、居場所を提供するなどの支援を行っていらっしゃると承知しております。大変重要な活動をされているものと思っております。

藤野委員 このColaboというのは、全ての少女に衣食住と関係性をということを合い言葉に、困っている少女が搾取や暴力に行き着かなくてよい社会を目指して活動されております。

 配付資料二を見ていただきますと、伴走型の支援のフロー図というのがあると思うんですね。いろいろな関係機関がありますけれども、それより先に、手前で、アウトリーチというのを行いながら活動する。

 というのは、やはり今、少女たち、少年たちもそうですけれども、そもそも自分が何に困っているのかとか、助けを求めていいんだとか、そういうことも思っていない子供たちがたくさんいるんですね。だから、窓口で待っていて、相談においでではなくて、その施設で待っているとかではなくて、出会いに行って、こういうものがあるよ、支援があるよということを提案していけるような、そういう活動がしたいということで、例えば、夜間巡回バス、あるいはスタッフが声かけで夜の町で歩いていくとか、あるいは、バスやテントの中で、食事、物品、情報、こういうことを提供し、相談に乗っていくという活動をされております。

 今、二〇一八年度からというお話がありましたけれども、やはりコロナ禍の影響で、とりわけ休校要請のあった去年の三月から相談が急増しております。昨年度は年間で五百九十人だった相談が、昨年度って、もう一昨年度ですね。二〇年度は千二百人を超えている、四千回以上の具体的対応を行っているということでありました。仁藤さんによりますと、緊急事態宣言下での利用者というのは、知的障害とか重い精神疾患を抱えて、性産業で搾取されながら、路上やネットカフェ生活をしている方がほとんどだったということであります。

 私が行った一月十三日というのは、新宿の歌舞伎町のシネシティ広場でこのアウトリーチ活動が行われまして、実はこのColaboというのは、今まで、新宿の区役所に横づけして、だから、ある意味後ろを守られているところでテントとかを作ってやっていたんですけれども、私が行ったときは三百六十度見渡せる場所で、緊張しながらテントの設営などを行ったことを覚えております。

 実は、私が行った日じゃないんですけれども、つい先日、三月四日には、この同じ場所でやったんですけれども、嫌がらせなのか何なのか分からないんですが、たばこの火か何かでこのテントの一部が燃やされる、こういう事件も起きております。一つ間違えば大惨事になるような、本当にそういう危険と隣り合わせの活動だと思っております。

 ただ、テントの中では、やはりいろいろな、弁当などもありますし、机もあるし椅子もある。バスの車内には、生理用品だとか、あるいは妊娠検査薬、あるいはコスメ用品や靴や洋服など、あるいはWiFi、充電器などもあるということなんですね。

 このアウトリーチという、声かけ活動というのが一つ大きな役割を果たしているんですが、私も同行させていただきました。三時間ほど歌舞伎町を歩いたわけです。配付資料の三を見ていただければと思うんですが、これが現物なんですけれども、こういうものを渡すんですね、会った少女たちに。家に帰れない、住むところがない方へ、ホテルを無料で用意します、こういうのを渡していく。なかなか受け取ってくれない子もいるんですが、渡せたら、ああ、よかったと言うんですね、支援している人たちは。もしかしたら、後でこれを見て、このQRコードで、ツイッターとかいろいろありますから、これを見て連絡してくれるかもしれない。そういう活動をされております。

 実は、新宿とか渋谷には、JKビジネスとか違法風俗店のスカウトと言われる人たちが百人以上おりまして、毎晩少女たちに声をかけているんですね。私も目にしました、その方々、スカウト。やはり飲食店のあれとは全く違うんです、雰囲気が。もう一目で分かる。

 先ほどもお話がありましたけれども、様々な理由で家に帰れない、帰りたくない、そういう少女たちに対して、スカウトは、仕事を探していないかとか、おなかがすいていないかとか、こんなところにいたら補導されるよとか、巧妙に声をかけて、食事も提供する、宿泊場所も提供するんです。まさに少女たちが切実に必要としている衣食住と関係性を与えることを手段として、風俗産業などに取り込んでいく。

 仁藤さんは、少女たちがColaboなどの支援につながる前に危険に取り込まれる、それが後を絶たないとおっしゃっていました。まさにこの声かけ活動というのは、Colaboの支援につながるのか、それとも、スカウトを通じて搾取や暴力の危険に陥ってしまうのか、その攻防の最前線だというふうに痛感いたしました。

 大臣、お聞きしますが、このColaboのこうした取組、どのようにお感じになりますか。

上川国務大臣 困難を抱える女性たち、とりわけ若い女性たち、この課題につきましては、AVの問題あるいはJKビジネスの問題、様々な問題を抱えながら、複合的に抱えている若い方、女性たちが町に繰り出して、またそこでいろいろな手にかかるというふうなことがございます。

 そういう中で、世代が近い方たちが、Colaboの活動そのものでありますが、声をかけて、アウトリーチをして、そして、そこでテントの中にお連れをして、そしていろいろなお話をしながら、その方の心を解きほぐしながら、一時的な居住を提供したり、悩み事を相談したりという形で、極めて寄り添い型のアプローチで取り組んでいらっしゃるということでありまして、今の日本の社会制度の中でも極めて重要な役割を担っているということを私自身も感じてまいりました。

 Colaboの皆さんからの御要望の中にも、ただ、一時的な居住は提供できるけれども、長い間はなかなか民間の団体では難しいということも御指摘がございまして、そうした、国との、また民間との役割分担ということにつきましてもしっかりと総合的に取り組んでいかなければ、悩み解決にも、またそうした方たちの問題の解決にもつながらないということでございます。

 その意味では、総合的な支援体制の中に、しっかりとお力を頂戴して、そして、特にアウトリーチでつながるということの重要性ということは、これは大変重要であるというふうに思っておりますので、今回の予算の措置におきましても、是非その部分について委託をさせていただきながら、その特性を生かした活動の中で、しっかりと女性たちを守って、そして導いていただきたいというふうに思っております。しっかりと対応させていただきたいと思います。

藤野委員 今、大臣も寄り添い型とおっしゃられましたけれども、まさにそうなんですね、伴走型。何か、つないで終わるのではなくて、ずっと自立まで伴走していくというのがColaboの活動であります。

 こうしたColaboを含めて、今、全国で百二十四の民間シェルターが活動されています。これは、設置根拠法を調べたら、ないんですね。そういう下で大変な努力をしていただいております。

 NPO法人全国女性シェルターネットの近藤恵子理事は、政府の検討会で、こうした民間シェルターの問題は、何を差しおいてもお金の問題、財政上の問題です、こうおっしゃっております。

 配付資料の四を見ていただきますと、これは、先ほどおっしゃられたモデル事業、今年から本事業になるわけですが、これは四つの事業をやるというんですね。アウトリーチは1、2は下の方にいって関係機関との連携ですよね。3が居場所の確保、4が自立支援ということなんです。

 厚労省にお聞きしますが、来年度からこれは二千六百万円、モデル事業のときは一千万円だったのが二千六百万円になるということなんですが、この積算根拠、この一から四の事業、それぞれ教えてください。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 今年度までの三年間、モデル事業として実施してきております若年被害等支援モデル事業につきましては、必須事業であるアウトリーチ支援と関係機関連携会議の設置、それから、任意事業である居場所の確保及び自立支援の全てを実施した場合の補助単価を約一千七十万円としてきたところでございます。

 令和三年度予算案におきましては、本格実施に移行することに伴いまして、今後求められる支援ニーズ等を踏まえた拡充を行うこととしておりまして、例えば、アウトリーチ支援に関しましては、アウトリーチや相談支援に対応する職員の増員、ICTを活用したアウトリーチの実施等に要する費用、それから、居場所の確保に関しましては、感染防止対策を図った上で、夜間における相談、見守り支援を行う支援員を配置するための費用、自立支援に関しましては、性被害によるトラウマのケアや感染症検査等について医療機関と連携して支援を実施するための費用を見込んだ上で、全ての支援メニューを実施した場合の補助単価を約二千六百七十万円に引き上げたとしているところでございます。

藤野委員 私は、一から四のそれぞれの積算を聞いたんですけれども、ちょっと時間の関係で、もうこちらで事前にお聞きしているので言いますけれども、アウトリーチ、1が千六百八十四万円ぐらい、2が七十六万円、3が三百七十九万円、4が五百六十九万円ぐらいだというふうに聞いております。

 配付資料の五を見ていただきますと、これはColaboが実際に自分たちの活動を経験して必要と考える、不足している予算の額なんです。

 例えば、バスカフェというものが、もうColaboでは七十四回以上やっているんですが、韓国ではこのバスカフェのようなアウトリーチ事業だけで約五千万円の予算をつけているんです。ところが、先ほどの、総額でも二千六百万ですし、このアウトリーチ支援、さっき言ったように千六百万ちょっとなんです。韓国の三分の一ぐらいなんですね。

 また、Colaboはシェルターとしてホテルとも提携していまして、部屋も確保されているんですが、しかし、これはモデル事業のお金では到底足りないんですね。

 配付資料の五の、シェルター運営費というのがあると思うんですが、これを全部足しますと、実は二千七百九十五万円なんです。この二つ目のくくりというか、シェルター運営費用、二千七百九十五万円。だから、このシェルターだけで、来年つけられる二千六百七十四万円、全部飛んじゃうんですね。

 あるいは、弁護士の費用というもの。例えば、未成年だと親権の問題があって、国の要綱でも、宿泊させるときは保護者に連絡とあるんですが、親がDVとか性暴力の加害者の場合もあるわけで、Colaboから直接やるわけにはいかないんですね。その場合、弁護士をどうしても通じてやるんですが、今も手弁当でやっていただいている。これも時給八千円という額で、これはやはり二千三百万ぐらいかかるんです。これでもやはり来年度予算は大半、飛んでしまう。

 だから、仁藤さんたちは、二千六百万になったことは認めつつも、圧倒的に足りないと言っているのは、こういう事情があるからなんです。実際に必要なんです、これが。とりわけ東京で、繁華街でシェルターを確保しようなんということになると、大変なお金もかかります。ですから、これも要望しますけれども、引き続き検討していく上で、やはり地域特性も踏まえた抜本的な財政支援の拡充というのを求めたいと思います。

 その上で、次に行きますけれども、Colaboの皆さんが苦労していたのが、関係機関との連携なんです。このモデル事業というのは二〇一八年度から始まっているんですが、ずっともう三年近くやってきて、仁藤さんによると、この事業の中で出会った、専門的なケアとかそういうものを必要とする人を、婦人保護施設につなぎたくても、一件もつなげなかった、ゼロだとおっしゃるんです。

 だから、公的施設につなげないから、結局はColaboで抱えざるを得ない。Colaboというのは、本当は、自分で声を上げられない十代の少女たち、若い女性などを対象にしているんですけれども、成人の方も含めて、公的な受皿が機能していないから、抱えざるを得ない。だから、Colabo本来の役割、先ほど評価していただいたんですけれども、その本来の役割ができなくて困っているというんですね。

 ただ、他方で、公的な機関の方、こちらも大変苦労されている、それはもう本当に私も認識しております。婦人保護施設も児童相談所も、本当に大変な中にある。

 二〇一八年に厚生労働省に設置された、困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会というのがありまして、この中でも、全国婦人保護施設等連絡協議会の横田千代子会長が、やはりニーズは山のようにあるんだとおっしゃるんです。婦人保護施設を使うとか、そういうニーズはある。ただ、実態は使われていないと。

 ちょっと確認したいんですけれども、婦人保護施設の充足率、利用率、二〇一七年、一八年、どうなっていますでしょうか、厚労省。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省におきまして現在把握しております婦人保護施設の利用率でございますが、二〇一八年度、平成三十年度までの状況でございますけれども、二〇一七年度の利用率は二三・六%、直近の二〇一八年度の利用率は二一・九%となっております。

藤野委員 ですから、二割なんですね。使われていない。これは私は、今の現行制度の問題だというふうに思っております。

 お聞きしたいんですが、この検討会で、今の、現状の制度の問題点について、課題について、そして新しい枠組みについての指摘があったと思うんですが、どのような指摘でしょうか。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 今の入所率に関しましては、検討会、直接はございませんけれども、大きく制度の問題と運用の問題とあろうかと思います。

 運用の面に関しましては、利用者本人の意思を尊重して決定するわけでございますが、厚生労働省で行いました調査研究によりますと、集団生活に不安があるですとか、仕事や学校を続けたい、携帯電話やスマートフォンが使えないといった理由で入所の同意が得られなかったケースがあるとか、そういった点は運用の改善がまた必要であると思います。

 それから、検討会における制度的な面の御議論でございますが、検討会から二〇一九年十月にいただきました中間まとめにおきまして、女性が抱える困難な問題は、売春防止法を根拠とした従来の枠組みでは対応が限界である、法制度上も売春防止法ではなく、新たな枠組みの構築が必要であるといった指摘がなされているところでございます。

 こういった認識の下、中間まとめにおきましては、若年女性への対応など、専門的な支援の包括的な提供、行政、民間団体を通じた多機関における連携、協働を通じた早期かつ切れ目ない支援などが新たな制度の下で提供される支援の在り方として指摘されておりますほか、国、地方公共団体の役割、地方公共団体と民間団体との連携、協働などについても言及いただいているところでございます。

藤野委員 今、売春防止法に基づく現行制度というお話がありました。やはり、婦人保護施設の利用率がこれほど低い、しかしニーズはあるんだ。このギャップですね、この乖離、これはなぜ起きるのか。やはり、それはもう売春防止法そのもの、婦人保護事業の根拠法であるこの売春防止法がまさに限界になっている。

 一九五六年に制定されて以降、六十五年間、改正されてこなかったわけですね。元々この法律の目的というのは、売春した女性の補導、処罰であって、非常に女性差別的な法律であります。国連の差別撤廃委員会からも、これは女性差別規定だと指弾されて、廃止しろと勧告されているわけですね。

 コロナ禍の下で急増する被害についての緊急的な対応は、私は当然必要だと思います。ただ、同時に、国連が陰のパンデミックといって包括的な対応を求めている、これとも関連する、やはりこの今の根本的な制度の見直しも同時に進めるべきだと思うんですね。その一つが、私は、売春防止法を根拠とする現行の婦人保護事業の見直しだと思います。

 実は、この売春防止法の所管というのは複雑なんですけれども、どのようになっていますでしょうか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 売春防止法は四つの章から成っておりますところ、第一章から第三章は法務省が所管をしておりまして、第四章、これは、章のタイトルが保護更生となっておりまして、婦人保護事業についてはここで規定されているところでございますが、これは厚生労働省の所管でございます。

藤野委員 複雑な法律なんですけれども、やはり主要な所管官庁である法務省の責任は重いと思います。

 実は、大臣は、この婦人保護事業の見直し、大変関係が深くていらっしゃると思うんですね。勝手ながら、配付資料の七で、政府・与党内での婦人保護事業の見直しと上川大臣の関係といいますか、時系列にしてみたんです。

 大臣は、三回、法務大臣を務めていらっしゃるんですけれども、大臣でない期間というのは、与党やあるいは自民党のこの問題でのPTの座長として婦人保護事業の見直し作業に取り組んでこられたと思うんですが、間違いありませんか。

上川国務大臣 困難を抱える女性の皆さんの課題につきましては、様々な御要請をいただきながら、また具体的な御要望もいただきながら、本当によく打合せをさせていただきながら進めてまいりました。

 今、資料を拝見させていただきまして、ちょっとびっくりしましたけれども、そのとおりでございます。

藤野委員 ですから、これは大変主導的な役割を果たされてきたというふうに思うんです。

 もちろん、中身については我が党としていろいろな意見はありますが、ただ、大事だなと思うのが、この売春防止法が根拠となっている現行の婦人保護事業はもう限界だというこの認識、そして、法的な枠組みを含めて、新たな女性支援の根拠法が必要だ。この大きな方向では、私はこれは一つのもう共通認識なんじゃないかなというふうに思っているんですね。

 しかし、ちょっと確認しますけれども、先ほど出た強化の方針では、この婦人保護事業について、法的な在り方も含めて検討を加速するとあるんですね。この加速されている検討は、今はどうなっているんでしょうか。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 婦人保護事業の見直しにつきましては、御指摘の、困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会の中間まとめにおきましても、「DV防止法等の既存の法体系との関係にも留意しつつ、具体的な制度設計等が進められ、できるだけ早く実現していくことを強く期待する。」というふうにされているところでございます。

 今後、更に具体的な検討が様々な場でされていくものと承知しておりますが、厚生労働省といたしましても、検討会の中間まとめで示された考え方に沿って検討が進んでいくよう、しっかり対応してまいりたいと考えております。

藤野委員 要するに、検討を加速するとあるんですが、検討が進んでいないんですね。

 私は、これはやはり厚労省だけでは、先ほどお話ありましたように、厚労省が所管するのは四章だけなんですね、この売防法の。一章から三章は法務省が所管しているわけであります。そして、中間まとめは、新たな法律的枠組みについての検討を加速するというふうになっていて、まさにこの三年間でこれを集中的に取り組まないといけないと思うんですね。ですから、私は、そういう意味でも、この具体化が求められているというふうに思います。

 実は、この中間まとめに至る議事録というものも読ませていただいて、ちょっと是非紹介したいんですけれども、先ほど紹介した全国婦人保護施設等連絡協議会の横田千代子会長は、こうおっしゃっているんですね。

 売春防止法で入所される女性たちの中でも、大きな原因になっているのは暴力です。特に性暴力です。そういう子供たちが傷ついて成長し、やがて居場所がなく、BONDやColaboのところに、あるいは高橋さんのところにつながっていくのだと思います。これは支援団体です、その後に、私たちは大きく声を上げて、被害実態に即さない売春防止法では限界と言っているのです。現場から悲痛な訴えを叫び続けているのです。

 こういう婦人保護施設の連絡協議会の会長の声なんですね。

 同じ方が、こうおっしゃっているんです。

 私は、三十五年間、売春防止法の中で仕事をさせていただきました、そしてこれだけ切実に、しかも皆さんの思いがある一点にまとまってきていることってかつてなかったんですね、こうおっしゃっています。この一点というのは、まさに、売防法を変えていくんだという、この一点なんですね。それで一致してきていると。

 Colaboの仁藤夢乃さんもこうおっしゃっています。

 運用を変えるだけではやっぱり駄目で、緊急的にやるべきことをやった上で、十年かかってもやっぱりそこを目指してやっていきたいと思いますし、今始めなければ、またその先、十年かかるんだとしたら、もっと遅れてしまいます、こう言うんですね。

 大臣、やはり、困難を抱える女性に寄り添いたいという熱い思いが結実しているのがこの中間まとめだと私は思うんですが、大臣、やはり与党のPTの座長としてそうした取組をされてきましたし、現在は、まさにこの法律、売春防止法を所管、主要に所管する法務省のトップでいらっしゃる。ですから、上川大臣の下でこの売春防止法を乗り越える新たな枠組み、この集中期間で具体化すべきじゃありませんか。

上川国務大臣 困難を抱える女性たちの問題につきまして、二つのステージ、一つは、運用の改善で対応していくということ、そして、法制度の見直しをきちっとし、そして現在の情勢に合わせた形で、総合的な、包括的な措置を講じていく、このことについては中間報告の中のまとめでもしっかりと述べられているところでございます。

 売春防止法は四章ということでございますが、時代にそぐわないということについては、これはそのとおりだというふうに思っておりまして、この点も含めて、しっかりと対応してまいりたいと思います。

藤野委員 長年、この売春防止法を根拠とした事業の下で活動されてきた方や、あるいは民間の支援団体あるいは研究者の方が、こうした、ある意味、認識を示していただいているわけで、やはりこれに応えるのが政治の責任ですし、この強化の方針で三年間を集中期間と、先ほどもおっしゃいましたけれども、まさにこれは集中期間のときに、しかも、上川大臣が法務大臣である、こういうときに私はやるべきだというふうに思っております。

 もう一つ、声を紹介したいんですけれども、やはりこれは売防法そのものが知られていないという側面もあると思うんですね。しかし、例えば、この検討会の中では、こういう指摘があるんです。

 売春防止法においては、婦人保護事業は保護更生という位置づけ、そのため、社会福祉事業としての事業理念は明確でなく、そして自立支援も明記されていないことが、対象女性に対する各実施機関における自立支援の実施や関係機関との連携などの課題の根本にある、こういう指摘なんですね。

 やはり、自立支援を最終的には目指していく、それにおける課題、連携が進まないという課題の根本にやはり、そういうことが書かれていない、理念になっていない売防法があるんだという指摘、これは非常に重いと思うんですね。

 こういう指摘もあります。

 措置、収容、指導という言葉がちりばめられた売春防止法の下では、本来の意味での女性支援は成立しないというのは明らかな事実、その課題と限界は明らかになっており、私たちは、女性の人権の確立を目指す、売春防止法に代わる新たな女性支援の根拠法を急いで作る必要がある、この根拠法は、当事者主体はもちろん、暴力を根絶するためのジェンダー平等法としての機能をきちんと果たすものであることを心から願う、こういう指摘もされております。

 今、大臣からも法制面のお話もありました。私は本当に、この法制面、運用面の取組はるる書かれてありまして、これはこれで進めていただいたらいいと思うんですが、やはり大事なのは、この根本にあるのが、やはりこの売春防止法を根拠としたスキームですから、これにしっかりと応えていただく、この決意を最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。

上川国務大臣 困難を乗り越え、さらに自立していくところまでシームレスに対応していくということ、そのことの理念を含めた法制度というものについては私も必要だと思っております。

 売春防止法も所管しておりますし、また、関係する省庁とよく連携を取りながら、形をつくっていくべく、努力をしてまいります。

藤野委員 これは検討を強く求めて、質問を終わります。

義家委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 今日は大臣所信に対する質疑ということで、先ほど階委員も、EBPM、エビデンスに基づく政策が必要だということでございますので、今日は、政策に関して、保護法益を中心にして質疑をさせていただきたいと思います。

 先ほどからずっと性犯罪、性被害の件が出てまいりましたので、まずその点から質問させていただきたいと思います。

 まず、この問題が、今、スプリングという団体の方にも何度も私、陳情を受けておりますし、ここの委員の方も恐らくそういうふうに陳情を受けていらっしゃる方が多いと思うんですが、一番何が問題かというと、刑法百七十七条の暴行、脅迫の要件が、昭和二十四年五月十日の判決によって、かなりハードルが高い状況になっているというのが一番大きな問題になっていると思うんですけれども、このわいせつ関係、性犯罪関係の保護法益、これが変遷しているというようなこともあるようなんですが、その点についての説明をお願いいたします。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員の方のお尋ねの保護法益、性犯罪関係ということですが、強制性交等罪ということだろうと思いますので、強制性交等罪の保護法益についてお答えを申し上げたいと思います。

 現在の強制性交等罪、これは平成二十九年の刑法改正以前は強姦罪と呼ばれていたものでございますが、この条文の位置につきましては、明治十三年に制定されましたいわゆる旧刑法におきましては、身体に対する罪の章に置かれていたものでございますが、明治四十年に現行刑法が制定された際、現行刑法では、公然わいせつ罪等の罪と併せて、わいせつ、姦淫及び重婚の罪の章に置かれたものと承知しております。

 もっとも、このように、明治四十年の現行刑法の制定時に当時の強姦罪の条文の位置が変更された趣旨につきましては、現時点で帝国議会において説明された記録が見当たらないことなどから、この現行の刑法制定によって強姦罪の保護法益に変更が生じたか否かについて、確たることをお答えすることは困難であるところでございます。

 ただ、いずれにしましても、一般に、強姦罪又は強制性交等罪の保護法益につきましては、かつては、学説上は、風俗犯としての面を有するとしつつ、主として個人の性的自由ないし貞操を保護法益とすると解する見解などもあったものの、現在は、個人の性的自由ないし性的自己決定権であると解されているものと承知しております。

串田委員 これはかつて藤野委員が大変重要な指摘をしてくださいましたが、刑法百七十七条の位置関係が社会的法益のところにあるようだと。

 それで、今の説明なんですが、旧刑法の明治十三年の頃は個人的法益だったのが社会的法益になり、戦後、個人的法益に回帰してきたというような説明をしている論文等も結構多いんではないかなと思うんですが、そういうものがあるということはいかがですか。それでいいですか。そういう考え方があったとかなり有力に主張されていると思うんですが、いかがでしょうか。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 ちょっと今の関係でなかなか難しいところではございますが、条文の位置の問題とその条文の位置の変更が直ちに保護法益に変更を加えたかという問題はちょっと別の問題のようでございます。

 その上で、先ほど申し上げましたように、明治四十年に現行刑法が制定された際に社会法益の罪なんかと一緒に規定されたものですから、その点について、この点は社会法益としての性格を有したんだと解する見解もございますというところでございます。

串田委員 そこで、先ほどずっと質問が出ていました売春防止法、この売春防止法の制定とそして猶予期間の刑事罰が施行された年月を御紹介いただきたいと思います。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 売春防止法自体が制定されたのは昭和三十一年五月二十一日でございます。施行の関係ですが、この法律の全てが施行されましたのは昭和三十三年四月一日でございます。

串田委員 細かいことですけれども、売春防止法というのは当時議法で何度か上程されていたんだけれども、なかなか法律としては国会内での賛同が得られなかったという経緯というのは御存じでしょうか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 存じております。

串田委員 事実としてはそういうことがあったと。

 その三十一年に遡ること昭和三十年十月七日の最高裁に、酌婦業務を前提とした前借り金契約に関する判例がありました。この判例の内容を簡単に説明してください。

小出政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの酌婦業務を前提とした前借り金契約に関する昭和三十年十月七日の最高裁判例は、いわゆる酌婦として稼働させる対価として消費貸借の名義で前借り金を受領した事案におきまして、酌婦としての稼働契約が公序良俗に反して無効であり、その稼働契約と密接に関連して互いに不可分の関係にあるいわゆる消費貸借契約も無効となるため、交付した前借り金の返還を求めることはできないと判示したものであると承知しております。

串田委員 酌婦契約と言いながら売春と同じようなことをされていたということで、ここに出席されている委員の方も御存じだと思うんですが、小説とかドラマでもありますけれども、家の借金のカタに娘が身をそういうところに売られていたというような時代というのは現実にあったわけでございます。それが昭和三十年のこういう判例に基づいて個人的法益というものが重視されていって、そして議法がなかなか通らなかったのがようやく売春防止法として昭和三十一年に成立に至った。ですから、それまでは女性が嫌がっていても、そういうようなところに身を置かざるを得ないように追い込まれていった時代が現実にはあったんだということは、これは素直に認めざるを得ないというふうに思うわけでございます。

 昭和二十四年の先ほどの暴行、脅迫、この最高裁の判例、百七十六条と百七十七条、隣り合わせなのに、百七十六条は単純な有形力、身体に対する有形力の行使という暴行の要件で運用されているのにかかわらず、百七十七条は最高裁の判例によって、どういうような形で今判例としては出されたものなんでしょうか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘の刑法百七十七条の判例についてでございますが、まず、昭和二十四年五月十日の最高裁判決におきまして、平成二十九年の刑法改正前の強姦罪における暴行、脅迫につきまして、抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることをもって足りるとしておりまして、これは強制性交等罪についても同様であると考えておるところでございます。

 具体的なその判断の在り方としては、昭和三十三年六月六日の最高裁判決がございまして、これによりますれば、単にその暴行、脅迫のみを取り上げて観察すればそのような程度に達しないと認められるものではあっても、相手方の年齢、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情のいかんと相まって、相手方の抗拒を著しく困難ならしめるものであれば足りると解されているところでございます。

 そして、これらの最高裁判決は、今申し上げております暴行、脅迫の意義につきまして一般的な解釈を示したものとして、その後の裁判例でも前提とされるなど、実務上定着していると理解しているところでございます。

串田委員 今、昭和二十四年の判例が言われたわけですけれども、何を申し上げたいかといいますと、売春防止法が成立したのは昭和三十一年、そして、酌婦契約と前借り金契約が無効になったというのは昭和三十年なんですね、それまではそういう契約で女性が身売りをさせられていたということ自体が現実にはあった、そういう時代の昭和二十四年の判決なんですよ。ですから、女性が本当はそういうような行為をとてもじゃないけれども耐えられないという状況の中でも、それを犯罪にすることができないような社会情勢が昭和二十四年にはあったのではないか。何を申し上げたいかというと、そういう時代に出された昭和二十四年の判例を、個人的な法益を重視する今の時代にそのまま踏襲していっていいんだろうかということを申し上げたいわけです。

 民法は、七百九条で、暴行、脅迫によれば不法行為という違法行為が成立するわけですよ、暴行、脅迫で。ところが、刑事では、暴行、脅迫で強制性交等罪を行ったとしても無罪なんです。おかしいじゃないですか、統一的に。違法だと言って、民法では違法なのに、刑法では無罪。そして、反抗を著しく困難にする程度の暴行、脅迫でない限りは犯罪が成立しないんだ。暴行、脅迫があったら犯罪は成立するでしょう。

 上川法務大臣、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 今、委員から、この間の歴史的な法体系の動きにつきまして、またその法益につきましての御説明をいただきました。

 個別具体的な事件におきましての裁判所の判断に関わる事柄につきましては、法務大臣として所見を述べることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

 また、現在法務省において開催しております性犯罪に関しましての刑事法検討会におきましては、委員御指摘になりました暴行、脅迫や心神喪失、抗拒不能の要件の在り方につきましても検討すべき論点として挙げられておりまして、その中で、委員御指摘の点、すなわち強制性交等罪の暴行、脅迫の要件、準強制性交等罪の心神喪失、抗拒不能の要件につきまして、判例上必要とされる被害者の抗拒を著しく困難にさせる程度、これを緩和した要件とすべきかにつきましても御議論が行われているものと承知をしております。

 性犯罪に係る刑事法の在り方の検討につきましては喫緊の課題である、こういう認識の中で今検討を行っていただいているということでございますので、スピード感を持って充実した審議が行われるよう期待をしてまいりたいというふうに考えております。

串田委員 是非スピード感を持って検討していただきたいと思うんです。

 百七十六条と百七十七条、隣り合わせの条文で同じ「暴行又は脅迫」と書いてあるのに解釈を異なって行うというのは本来非常に不自然であって、そういう解釈をするべきだという国会議決があったのかといったら、そういう国会審議というのは記録にないと言っているわけですよね。突如として裁判所が昭和二十四年にその判例を出した、ただそれだけなんです。何の根拠もないんですから。

 こういうことでやはり苦しめてはいけないと思いますので、実は、これは暴行、脅迫と書いてあるだけですから、内閣の議決で、これは、解釈は、通常の百七十六条と同じように解釈しようと議決していただければ解決するんですよ。法律改正は必要ないんです。是非、上川法務大臣にはそういう提案を内閣の方でしていただきたいということをお願いしたいと思うんです。

 次に、選択的夫婦別姓について、先ほども質疑がありましたが、この氏名というのは、最高裁としてはどういうふうに憲法上の権利として判示しているんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年最高裁判決では、氏名を正確に呼称される利益の性質等が争点となった昭和六十三年の最高裁判決の判示を踏襲する形で、氏名は、社会的に見れば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するとの判示がされたものと承知しております。

串田委員 婚姻をしようとしている夫婦のそれぞれがその人格権を持っているという個人的法益、これが保護法益というのは分かりました。

 それでは、現在、婚姻すると氏を同じにしなければならない。同じにしなければならない、失われる保護法益というのは何なんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 御質問の趣旨は、保護法益ということですけれども、夫婦同氏制度が保護し、実現しようとしている利益は何か、すなわち同制度はいかなる理由を有するかというのをお尋ねだというふうに理解しました。

 平成二十七年最高裁判決では、夫婦同氏制度につきまして、氏には、名とは切り離された存在として、夫婦及びその間の未婚の子や養い親子が同一の氏を称することにより、社会の構成要素である家族の呼称としての意義があること、また、夫婦同氏制は、家族を構成する一員であることを、対外的に公示し、識別する機能を有しており、嫡出子が両親双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義があること、また、家族を構成する個人が、同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見出す考え方も理解できる、さらに、夫婦同氏制の下においては、子の立場として、いずれの親とも等しく氏を同じくすることによる利益を享受しやすいと言えるなどといった判示がされておりまして、夫婦同氏制はそのような意義を有するものと考えているところでございます。

串田委員 氏を守ることが人格的利益であるという保護法益がはっきりしていますよね。

 もう一つは、客観的に同一であるということを保護法益と今ずっとおっしゃっていましたが、政府が言っているのは、通称をどんどん広めようと言っているわけですよね。戸籍上の氏とは違う通称上の氏をできるだけ利用できるようにしようと。

 同一性、客観的に判示できないじゃないですか。そういう方向に広めようとしているのに、客観的に分かることを保護法益にしているというのは全く矛盾じゃないですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 現行の夫婦同氏制度を前提として、旧姓の通称使用を広く認めることとした場合でも、個人が家族を構成する一員であることを示す場面におきましては、家族の呼称としての氏を用いることが通常であると考えられることからすれば、氏が有する公示、識別機能等は、その限度で維持されることになるものと考えております。

 ただ、また旧姓の通称使用につきましては、戸籍上の氏との使い分けに関するルールが必ずしも明確に定まっているとは言い難いということからすれば、氏の公示、識別機能等に一定の影響を及ぼす可能性は否定できないものと考えております。

串田委員 その同一のものを示すというのはどの場面で言うんですか。

 通称を自ら選んで、そして通称をどんどん広めようとしているのに、同一を示す必要があるとおっしゃったのは、どの場面で言っているんですか。

小出政府参考人 抽象的で申し訳ございませんが、先ほどお答えしたように、個人が家族を構成する一員であることを示す場面では、家族の呼称としての氏を用いることが通常であるというふうに考えております。

串田委員 だから、どこなんですか、どういう場面なんですか、それは。具体的にどういう場面でそれを示したいと思っているんですか。

 そして今、これは選択的なんですから、別に示したくないという人間に対しては、別にそれは自由を認めたらいいじゃないですか、それが権利、保護法益だと言うなら。保護法益は必要ないと言っている人に対して押しつける必要はないでしょう。

小出政府参考人 家族を構成する一員であることを示す、すなわち、その親子関係を明確に示さなければならない、例えば、学校において自分が親権者であるというようなことを示すような必要がある場面が想定されるんではないかと思います。

串田委員 学校の場面なんですか。学校の場面で旧姓を示さなければならないと、そうお考えなんですか。

小出政府参考人 学校におきましてその子供の親権者であることを示すために、通称ではなく、戸籍上の氏を表示することが合理的な場合があるんではないかということでございます。

串田委員 そういう合理的な場面というのはあるんですか。なるべくそういうことがないようにしようとしているんじゃないんですか。通称を利用しながら戸籍上の名前を学校が求める場面があるということですか、それは合理的な、どういうときですか。

 次の問題に移りたいと思います。

 この所信の中に、家族法というのがありまして、私はずっと、家族法の面会交流、親子交流という名称にしようではないかというような話がありました。

 ずっと、養育費の話がほかの委員からも出ております。養育費、非常に私、大事だと思っております。

 ただ、車の両輪として、この所信の中の十二ページにも、養育費の不払いや親子の交流の欠如などの父母の離婚等に伴う子供の養育への深刻な影響が指摘されているというようなことも大臣が述べられているわけで、私、これはやはり車の両輪として進めなければならないんだろうなと思っているんですけれども。

 この問題に関しましては、国連が勧告をしております。その国連の子どもの権利委員会の勧告というのは、子どもの権利条約を基にして言っているわけでございますが、子どもの権利条約の十八条には、「締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保する」ということであります。これに対して日本が十分に行われていないということで、国連が、児童の最善の利益である場合に外国籍の親も含めて児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子関係について定めた法令を改正するよう勧告をしています。

 ですから、そういう意味で、これは国に対して国連が勧告をしているわけですけれども、なかなかそれが実現されていないということで、昨年の七月には、ついにEUが日本に対して非難決議というのが行われました。この中に、チャイルドアブダクション、これは子供の拉致とか誘拐ということが書かれておりまして、それを行わないこと、行っていることに対してはチャイルドアビューズ、児童虐待だというようなことを賛成六百八十三、反対一、棄権が八ですね。これは、日本の今の子供に対しての状況を世界は非常によく知っているんですよね、ドキュメンタリーでも論じられているし。日本では余り知られていないかもしれないけれども、世界中に知られているから、こんなはっきりした、六百八十三対、反対一という、そういう形で、これは珍しいですよね、友好国であると思われているEUが日本に対してここまで非難決議がなされている。

 上川大臣も、児童虐待に関してこれは解消しなければならないというのを五ページの所信に書かれているんですけれども、外国から見ると、日本の今の状況は児童虐待している国だという、そういう指摘がなされているわけですよね。そして、このチャイルドアブダクションというのは、まさに実力行使で行われているわけですよ。

 現在、京都コングレスは、法の支配を守ろうと言って、主催国になって、今、日本はやっているんですけれども、EUが、実力行使によって児童虐待している国だと、こんな非難を指摘されているという意味では、私、大変、上川法務大臣も、これは出席をしているのに対してつらいお気持ちなんだろうなというふうに思っているんですが、この点に関して、今、法制審議会で審議されているということですけれども、上川法務大臣としての、この今のEUの指摘、国連の指摘、子どもの権利条約との適合性、これに対して、大臣としてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

上川国務大臣 ただいま委員が御指摘になられました様々な御指摘、勧告等についてでございますが、児童の権利委員会の総括所見の内容、その他におきまして、我が国の今の現状につきまして大変厳しい勧告がなされてきたということについては認識をしております。

 もっとも、我が国におきましては、児童の権利条約の趣旨に照らしまして、子供の利益を確保するという観点から、これまでも必要な対応を講じてきたところでございまして、児童の権利条約につきましては誠実に遵守してきたものというふうに考えております。

 例えば、二十三年の民法改正におきましては、離婚後も適切に親子の面会交流等が行われることを促進する趣旨で、離婚の際に子供の利益の観点から定めるべき事項の一つとして、面会交流を条文に明記するなどの法改正をしてきました。また、このような改正の趣旨につきましても、広く周知をされるよう努力をしているところでございます。

 もっとも、父母の離婚に伴いまして、子供の養育の在り方につきまして、また、我が国の制度やその運用につきまして、子供の利益の観点から、必ずしも十分なものではないという指摘がなされてまいりました。また、様々な意見も寄せられてきているところでございます。

 離婚及びこれに関連する制度につきましては、その見直しについて、今後、法制審議会において調査審議が進められるということでございまして、私も法制審議会にこのことについて諮問をさせていただいてきたところでございます。

 子供の目線に立って、しっかりと充実した議論が行われることを期待をいたしているところでございます。

串田委員 今述べていただきましたが、ずっと保護法益という話をさせていただいていて、大臣のところに書かれている養育費の不払い、これもやはり子供を貧困にさせるということですから、しっかりとこれはやっていかなければならないとともに、親子の交流の欠如、この欠如によって誰の法益が侵害されているんでしょうか。簡単に一言だけ、大臣、お願いします。

上川国務大臣 子供の権利というこの大きな法益を守るということであります。親の離婚の状況については、子供にどのような影響が及ぶのかということについては深刻に考えておりまして、あくまで子供の目線、またチルドレンファーストという視点でこの問題も捉え直さなければいけないというふうに考えております。

串田委員 これはあくまで子供の権利が、一九九四年に子どもの権利条約を批准してからずっと国連が守れ守れと、そして昨年のEUも、これは子供に対する虐待なんだとまで言われているわけですよね。子供の権利を侵害されているという、これは大変、そういう国、放置している国だということは、私、ちょっと恥ずかしいなというふうに思いますので、是非これは車の両輪として子供の権利を守っていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 もう一つ、今度は動物に関しての保護法益をお聞きしたいと思うんですけれども、動物虐待罪の保護法益、これは動物愛護法に書かれているんですが、動物虐待罪の保護法益は何でしょうか。

大森政府参考人 お答えいたします。

 動物虐待罪の保護法益につきましては、動物虐待罪を定める動物愛護管理法の目的に照らして判断されるものと考えております。

 動物愛護管理法は、動物の愛護と管理を目的としております。動物の愛護として、動物を愛護する気風の招来、動物の管理として、動物による人の生命、身体、財産の侵害の防止及び生活環境保全上の支障の防止が目的となっております。

 動物虐待罪は、動物の愛護に関わるものであるため、その保護法益は、法の目的等に鑑み、解釈論上は、動物愛護の気風という社会の良俗の保護にあると解されると認識しております。

串田委員 社会の良俗ということで、ここも、法務委員会は法律家も多いと思うんですけれども、自分の飼っている動物に対しても虐待罪は成立するんですね。

 要するに、所有物であっても虐待罪が成立するというのは、これは今までの法律的な所有権の概念から少し違う部分があるわけですよ。自分の所有物に対しては、それは捨てても構わないし、壊しても構わない。だけれども、動物だけは、これは犯罪が成立するんだという点では、もうこれは動物は物とは違うんだと。保護法益として、その飼い主が所有しているから飼い主が万能な権利を持っているんだということの考え方を変えていかなきゃならないんじゃないか。

 諸外国に関して、動物を物と同じように扱っているかどうかに関して、ほかの国、御紹介いただけますでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 ドイツでは、動物は物に属さないという条文がございます。動物は特別の法律により保護する、動物には別段の定めがない限り物に関する規定を準用するという条文がございまして、動物は物ではないという原則を書いているのはドイツだというふうに理解しております。

串田委員 ほかにも、そういうふうに、民法上、動物を物ではないんだというふうに規定している国が結構あるわけですよね。国民も、動物を物と同じように扱うのはやめてもらいたいというようなことがありまして、虐待があったときに、保護団体がその動物を保護できないんですよ。万能なものとして、虐待をした人があくまで所有者だ、そういう考え方になっているので、いよいよ日本も、そろそろ、この動物は物であるというような、同じような扱い方、大臣、最後に、これは変えていきませんか。その答えをもって終わりにしたいと思います。

上川国務大臣 我が国の民法上は、一般に動物は物に含まれると考えられております。外国において、先ほどドイツの例を紹介しましたけれども、動物は物ではないという規定が設けられている例があるということについては承知をしております。

 民法上、動物を物と扱っていることを改めるとすると、その他の関係法令におきまして、これをどのように扱うか、全般的な検討が必要になるということでありますので、大変その影響が大きいものと考えられるところであります。

 他方、動物を物として扱う制度自体は維持した上で、必要に応じて、その性質に応じた特別の規定を設けるなどの方法も考えられるわけでございます。このため、一般的に物としての扱いを改めることにつきましては、その必要性も含めて、慎重に検討することが必要ではないかというふうに考えております。

串田委員 是非検討していただきたいと思います。ありがとうございました。

義家委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 国民民主党・無所属クラブの高井でございます。

 今日は、人権外交の問題について、外務省から鷲尾副大臣にもお越しいただきまして、議論をしていきたいと思いますが、昨今、様々な諸外国において、人権侵害が非常に多発というか深刻化していると思います。

 私、去年の一月に香港に行ってまいりました。まだコロナウイルスが発生する前だったんですけれども、大変ひどい状況というか、日本のテレビ、メディアで取り上げている以上に現地はやはり深刻で、香港のメディアすら、やはり地上波は取り上げないんですね。ネットニュースとかを見ると、やはり相当深刻な、中国政府による、警察に対して非常に憤っていましたけれども、暴力、人権侵害行為が目の当たりにされていた現状を私は聞いてまいりました。

 また、つい最近は、ウイグル自治区の問題、これは、国民民主党会派でヒアリングを、日本ウイグル協会の方に来ていただいて、かなり詳細な話を聞きました。

 職業訓練センターというところが千か所ぐらいあるそうでして、そこにかなり多くの方が強制収容されていると。職業訓練センターといいますけれども、例えば、そこに入っている方は、元新疆大学の学長を、十年学長をやった方がなぜか職業訓練センターに入っているというような矛盾でありまして、これは、国連の発表でも百万人以上、それからアメリカの国防省では三百万人、それから台湾メディアは四百五十万人が収容されていると。ちなみに、ナチスの収容所は七十一万人ですから、いかにそれと比べても規模が大きいか。

 あるいは、日本ウイグル協会が言っているだけではなくて、BBCは、かなり克明にその状況を報道していまして、世界中にもう知られていると。実際に私が見た映像は、集団レイプをされている、それに手伝いをさせられたという女性の証言などが取り上げられていました。こういったことが起こっている。

 特定の国を、中国を私は非難したくて、今日この場に立っているわけじゃありません。そういう意味でいえば、ミャンマーの軍事クーデターも、これはもう最近メディアでも毎日のようにやっていますから、非常にやはり大きな問題だと。

 こういった一連の人権侵害行為に対して、やはり私は、日本政府としてもっと毅然と対応すべき、行動を起こすべきだというふうに考えますけれども、まず鷲尾外務副大臣に、日本政府としての対応をお聞きしたいと思います。

鷲尾副大臣 高井先生御指摘のとおり、新疆ウイグル自治区につきましては、重大な人権侵害が行われているとの報告が数多く出されているところであります。我が国としても、新疆ウイグル自治区の人権状況については深刻に懸念をしております。

 国際社会における普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要であると考えておりまして、こうした立場を含めて、国際社会からの関心が高まっている新疆ウイグル自治区の人権状況について、我が国として、中国政府が透明性のある説明をするように働きかけているところであります。

 また、例えば、昨年十月には、国連総会第三委員会におきまして、香港、新疆ウイグルに関する共同ステートメントに、アジアから唯一の参加国として参加をいたしまして、香港、新疆の人権状況に関する深刻な懸念を表明したところであります。

 さらに、二月二十三日には、人権理事会におきましても、大臣から深刻な懸念を表明するとともに、中国に対して具体的な行動を強く求めたところであります。

 引き続き、国際社会が緊密に連携して中国側に働きかけていくことが重要であると考えております。

高井委員 なかなか、働きかけたとおっしゃるんですけれども、余り報道されていないですよね。

 やはり具体的に、例えば国連機関、国際機関の第三者機関の調査をすべきだ、中国は受け入れるべきだということであったり、あるいは、ミャンマーの話が今出ませんでしたけれども、アメリカなどは、もうミャンマーの軍幹部に対しての制裁などをしていたり、あるいはバイデン大統領が直接、習近平国家主席に電話会談でその旨を伝えるということをしているわけですけれども、日本政府として、やはりその発信が弱いというか、どこまで言っているのか、しかも、そのことも報道もほとんどされていないという状況ですから、私は、ここはもう一段ギアを上げてやっていただかなきゃいけないと思います。

 その中で、もう一つ、今、ウイグルの話がかなり出ましたので、ウイグル自治区における、先ほど私がもろもろ申し上げた、日本ウイグル協会が主張している行為というのは、これはジェノサイドに該当するんじゃないかと。

 ジェノサイドというのは、これはユダヤ系のポーランド人のラファエル・レムキンが言い出した言葉と言われていますけれども、民族の絶滅を目指して、必要不可欠な生活基盤を破壊する行為だということ。

 これは実は条約もありまして、ジェノサイド条約というのがあって、そこの中で定義が書かれています。集団殺害とは、国民的、民族的、人種的又は宗教的な集団の全部又は一部を集団それ自体として破壊する意図を持って行われる次のいずれかの行為。ですから、次から言う五つあるんですけれども、集団の構成員を殺すこと、それから重大な肉体的又は精神的な危害を加えること、身体的破滅をもたらすよう企てられた生活条件を故意に集団に課すこと、出生を妨げることを意図する措置、不妊手術とかですね。あと、子供を他の集団に強制的に移すこと、このいずれか一つでも該当すればジェノサイドだというふうにこの条約では定義しているわけですが、ウイグルにおける中国政府の行為はジェノサイドだと思いますけれども、政府としてはいかがですか。

鷲尾副大臣 済みません、先ほどの答弁でミャンマーのことが漏れていましたので、ちょっとミャンマーのこともお話をさせていただきたいと思います。

 ミャンマーにつきましては、各地のデモにおいて、ミャンマー治安部隊の実力行使によって多数の民間人が死傷しておりまして、拘束者が発生する事態を強く懸念をしております。

 この点、我が国としては、ミャンマー国軍に対して、民間人に対する暴力的な対応の即時停止、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含む拘束された関係者の解放、民主的な政治体制の早期回復の三点を強く求めてきているところであります。

 我が国は、国軍を含めましてミャンマー側に様々な意思疎通のルートがありまして、民主的な政治体制の早期回復のため、しっかりと役割を果たしていくというところでございます。

 あわせまして、今ほどジェノサイドについての御質問がございました。我が国としても、新疆ウイグル自治区の人権状況につきましては、先ほども申し上げたとおり深刻な懸念を持っております。その中で、我が国を含めまして、その表現の仕方が異なるとしても、国際社会が緊密に連携して、中国側に強く働きかけていくことが重要であると考えているところです。

高井委員 なぜ表現の仕方が異なるのかということですが、実際、アメリカ政府はもうジェノサイドだというふうにはっきり言っていますし、あるいはカナダ、オランダの議会でもそういう声明が議決されているということで、これは先般、会派に来ていただいた有識者の方も言っていましたけれども、やはり沈黙は黙認なんだ、何も言わなければそれはもう黙認していることになるんだと。これは、ヨーロッパが特にこの問題に非常に関心が強いのは、やはりナチスの苦い経験があって、あのとき黙認してしまった、そのことが大変な悲劇を生んでいる、そういうことは繰り返してはならないということで声を上げていくわけです。

 やはりここは是非、このジェノサイドにちょっとこだわりますけれども、実は、これはもう一つ問題なのは、このジェノサイド条約というのが、世界百五十一か国が批准していまして、何と中国や北朝鮮も批准しているんですね。ところが、日本はしていないんですね。これはなぜ批准しないんですか。

鷲尾副大臣 我が国は、集団殺害犯罪のように、国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した者が処罰されずに済ませてはならないと考えております。こうした犯罪の撲滅と予防に貢献するとの考えの下、ICCローマ規程加盟国としてその義務を誠実に履行しているところでございます。

 一方、ジェノサイド条約は、締約国に対し、集団殺害の行為等を犯した者を国内法により犯罪化する義務を課しております。今後、ジェノサイド条約の締結を考えるに当たっては、我が国におけるジェノサイド条約締結の必要性、締結の際に必要となる国内法整備の内容等につきまして、引き続き慎重に検討を加える必要があると考えております。

高井委員 いや、ですから、前段でそういう行為は許すわけにはいかないというふうに答弁されているわけですけれども、結局、それに対する法整備ができていないということじゃないかなと思うんですね。法整備ができていないので、その条約、これは実は、いろいろ聞くと、法整備までしていなくても条約だけ結んでいる国も結構あるんですね。ただ、日本は非常に真面目に、法整備ができていなければ結ばないということで、それならそれで、やはり法整備をしなきゃいけないということだと思います。

 これは必要な法整備、外務大臣も記者会見なんかで、それは法整備、国内法の整備を踏まえみたいな答弁をされていますけれども、これはどういう法律かといえば、やはり、刑法であったり、法務省所管の法律が多いと思いますけれども、法務大臣にお聞きしますけれども、ジェノサイド条約の批准に必要な法整備をすべきではないですか。あるいは、今どういう法律が具体的に足りないのか教えてください。

上川国務大臣 人種や民族等に対する集団殺害行為、犯罪につきましては、国際社会全体の関心事でございます。このような犯罪に対しまして適切に対処することは重要であるというふうに認識をしております。

 お尋ねいただきましたジェノサイド条約、これの担保法の整備についてでございますが、まずは外務省におきまして、ジェノサイド条約締結の必要性等を御検討され、更に法整備が必要であるということであれば、法務省としても、様々な観点から十分に検討してまいりたいというふうに考えております。

高井委員 確かに法務大臣の言うことも一理ありまして、条約を結ぶときに、国内法が整備されていなければ、やはり条約を結ぼうという外務省から、こうこうこういう条約を結びたいから国内法を整備してくれという話があって検討するのだというのもそうなんです。

 そう考えると、やはり外務省にちょっともう一度聞きたいと思いますけれども、外務省として、このジェノサイド条約の必要性をきちんと検討して、そして法務省に法の整備を依頼するというのが筋だと思いますけれども、外務大臣やさっきの鷲尾さんの答弁を見ても、国内法が整っていないから、ちょっと鶏と卵みたいな、どっちが先かみたいな話なんですけれども、やはり私は、外務省として、その意思を明確にして、必要であれば早急に法務省に検討を依頼するということだと思いますが、そうじゃないですか。

鷲尾副大臣 先ほどの答弁の繰り返しになって大変恐縮なんですけれども、今後ジェノサイド条約の締結を考えるに当たって、我が国における締結の必要性、締結の際に必要となる国内法の整備の内容等につきまして、引き続き慎重に検討を加えてまいりたいと思っております。

高井委員 必要性が、だから検討中ということなんでしょうけれども、本当に速やかに検討して、これだけ世界中で問題になっていますし、先ほど言いましたように、せめてこの条約を批准するところは、百五十一か国、中国、北朝鮮も批准している条約ですから。

 やはり外務省の方に聞くと、いや、国内法がしっかり整備されていないのでと言うんですけれども、いやいや、それは、だから、国内法を整備してくれと一刻も早く言わないと、法務省だって検討に時間かかるでしょうから、まずはそこは外務省が検討を依頼するというのが筋だと思います。

 これに似たような話というか、同じ話なんですけれども、国際的な人権侵害に対して制裁を科すということが今かなりされています。香港などについても、例えばそういった人権侵害をやっている人の資産を凍結するとか、あるいはビザの発給を停止するというような、そういう法律が、実はマグニツキー法という、マグニツキーという人の名前なんですけれども、その方の名前を取った法律がアメリカでまず成立して、その後、イギリス、カナダ、そして最近ではEUでも承認をされた。あるいは、オーストラリアやスイスなどでも今検討中ということで、急速に今、やはり香港の問題がかなりクローズアップされて以降、このマグニツキー法を制定すべきだと。

 これは、実は、議員立法でやろうということで、超党派でもう今どんどん進んでいます。会長は中谷先生、自民党の先生ですし、あと我が会派の山尾志桜里さんと一緒に、共同代表ということで、長島さん、自民党が事務局長をやったり、どっちかというと自民党主導で今やっていますけれども、これは是非、ただ、議員立法だというだけではなくて、やはり、政府としても、もう一刻も早くこのマグニツキー法を私は検討すべきだと思います。

 これは、政府に聞くと、議員立法だということはおいておいて、マグニツキー法というふうに聞くとそうですから、じゃ、そのマグニツキー法、議員立法を制定するかどうかじゃなくて、通告で言っていますけれども、人権侵害を理由に制裁を発動できる条件、これを今、国内未整備なわけですよね。実は、G7の中でそういう制度がないのは日本だけなんです。ですから、繰り返しますけれども、人権侵害を理由に制裁を発動できるという仕組みをやはり政府として一刻も早く入れるべきだと思いますが、これは何か、事務方に幾ら聞いても法務省と外務省は押しつけ合っているんですけれども、それぞれ、大臣それから外務副大臣からお答えいただけますか。

上川国務大臣 国際社会におきまして、普遍的価値であります自由、基本的人権の尊重、法の支配が各国におきまして保障をされるということについては極めて重要であるということは言うまでもございません。各国が普遍的価値の保障の下で、自由で開かれた体制で民主的、安定的に発展していくということが重要であるというふうに考えております。

 その上で、委員御指摘がございました、国際的な人権侵害に対しまして制裁を科す法律につきましては、法務省の所管ではございませんで、私自身、所見を述べることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

鷲尾副大臣 日本は人権を普遍的な価値と考えておりまして、人権擁護は全ての国の基本的な責務でございます。

 そのような考え方から、日本はこれまで、人権侵害に対してはしっかり声を上げる一方で、対話と協力を基本といたしまして、民主化、人権擁護に向けた努力を行っている国との間では二国間対話や協力を積み重ねて、自主的な取組を促してきております。

 御指摘の、一方的に人権侵害を認定して制裁を科すというような制度を日本に導入すべきかにつきましては、これまでの日本の人権外交の進め方との関係、国際社会の動向など、様々な観点から不断の分析、検討を必要としていると考えております。

高井委員 まあ、お二人とも枕言葉では、非常に重要でもう異論のないというか当たり前のことだ、そういう人権侵害を許さないんだとおっしゃいますが、いざ国内で法律を作るとなると、法務省は所管じゃないと。外務副大臣は、まあ所管であることは認めたんでしょうね、ただ、慎重に検討。何で慎重にする必要があるんですかね。やはりそれだけ、こういうことを許しちゃいけない、国際的な人権侵害を許しちゃいけないというのであれば、やはり私は立法をすべき、議員立法で出すまでもなく、政府の方で是非やってもらいたいと思いますが。

 ちょっと一点、法務大臣にお聞きしたいんですけれども、所管じゃないとおっしゃるんですが、例えば、入国を禁止する、外国で人権侵害をしたような人に対して入国を禁止するというのは、これは法務省の所管じゃないんですか。

上川国務大臣 それは私どもの所管でございます。

高井委員 それもマグニツキー法の一つのメニューなんですね。だから、マグニツキー法というといろいろな経済制裁とかも入るから法務省の所管じゃなくなるかもしれないけれども、一個一個のパーツを見れば、少なくとも一番大きな、入国を禁止する、制限する、これは法務省の所管なので、是非、人権侵害、外国でやった、激しくやっている人の入国を禁止するという規定を検討していただけませんか。

上川国務大臣 これを発動するに当たりましても、全体のしっかりとした枠組み、骨組みというものをしっかりとした上で考えるべきことであるというふうに思っております。

高井委員 まあ、確かに法務省だけで勝手に決める話じゃないかもしれません。ですから、やはり、外務省とよく連携していただいて、検討チームを立ち上げるとか、何か事務方で聞いていると、それぞれ、うちじゃない、うちじゃないみたいな、検討すらしている雰囲気がないんですね。

 これは本当に、国際的に見ればというか、日本の中でも、何か中国に過剰に遠慮しているのかなとか、もっと言えば、外務省は最近チャイナスクールの人が結構幹部にいるからかなとか、何かそう思っちゃうわけですよ。だから、そういうことにならないように、しっかり検討の場を設けて、両省でまず中心になって検討していただきたいということをお願いをいたします。

 それでは、あと五分くらいしかありませんので、今度は選択的夫婦別姓の話をさせていただきます。

 この問題は前回も取り上げました。私も過去の議事録をちょっと遡って、令和になってからぐらいのを見たんですけれども、ほとんど、壊れたテープレコーダーのようにと言っていた方もいますけれども、国民各層の意見を幅広くお聞きし、国会における議論の動向を注視しながら対応を検討してまいりたいという、総理から大臣まで、みんなこの答弁を必ず最後につける。もう数十回、この答弁、本当に聞き飽きたんですけれども。

 それでは聞きますが、国民各層の意見を幅広く聞くって、どうやって聞くんですか。つまり、この議論をどうやって進めていくのか、また、進めるつもりがあるなら、いつどのような形でそれを行うのか、お答えください。

上川国務大臣 国民各層の意見を幅広く聞くということで述べさせていただいているところでございますが、選択的夫婦別氏制度の導入の問題につきましては、我が国の家族の在り方に関わる大変重要な問題であるということでありますので、国民の皆さんの理解をしっかりと得た上で、こうした基本的な問題についての対応をしていく必要があるというふうに思っております。

 内閣におきまして、政府としては、国民の意見の一つの表れとして、世論調査というのがございます。この間、五年に一回の割で、きちきちっと五年に一回というわけではございませんですけれども、一つの全体の家族の在り方に関しての考え方の流れを、内閣の大規模な面談調査の中で、この間してきているわけでありますが、同じ質問、設問を、少し途中で通称使用ということを加えまして、取ってきている状況でございます。

 その結果につきましてもいろいろ読み取れるところがございまして、賛成も、年代ごとに、また若手になればなるほど増えている、またトータルとしても全体的には増えているという状況ではありますが、まだ反対という声も根強く残っているということであります。やはり家族の問題に関わることでありますので、できるだけその意見を集約する形で結論に導いていくということが必要ではないかというふうに思っております。

 いろいろな、設問の仕方も含めまして、民間の調査も行われているところでございますので、また、男女共同参画基本計画の策定に当たって若手の意見を聞くとか、いろいろな形で内閣府も調査をしているところでございますので、そういったことを幅広く捉えて、また、しっかりと分析、整理をしながら進めてまいりたいというふうに思っております。

高井委員 これもテープレコーダーのように、二〇一七年、もう四年近く前の調査結果を答えるんですけれども、直近でいろいろな新聞社とかいろいろな団体がやっている調査と、かなり変わっているんですよ。

 ですから、国民各層の意見を幅広くお聞きしと言うなら、やはり聞く努力をしないと。前回のこの法務委員会でも言いましたけれども、いち早く調査をやったらいいと思うんですね。母数なんか大した母数じゃないんですよ、内閣府の調査って。すぐにでもできる話ですから、是非国民の意見を聞くという努力をまず、そして議論を進めるという努力をして、その議論を進めた結果どうなるかは分かりませんよ、だけれども、議論を全然しようという姿勢が感じられないので、これは引き続きまた取り上げますが、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

     ――――◇―――――

義家委員長 次に、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。上川法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上川国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を減少しようとするものでありまして、以下、その要点を申し上げます。

 その概要は、裁判官以外の裁判所の職員の員数を十七人減少しようとするものであります。これは、事件処理の支援のための体制強化及び国家公務員のワーク・ライフ・バランス推進を図るため、裁判所書記官を二人、裁判所事務官を三十九人それぞれ増員するとともに、他方において、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、技能労務職員等を五十八人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を十七人減少しようとするものであります。

 以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

義家委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時六分散会


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