衆議院

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第2号 令和4年3月1日(火曜日)

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令和四年三月一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 馨祐君

   理事 井出 庸生君 理事 熊田 裕通君

   理事 葉梨 康弘君 理事 山田 美樹君

   理事 鎌田さゆり君 理事 階   猛君

   理事 守島  正君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    尾崎 正直君

      奥野 信亮君    国定 勇人君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      谷川 とむ君    中谷 真一君

      中野 英幸君    西田 昭二君

      西野 太亮君    野中  厚君

      長谷川淳二君    古川  康君

      八木 哲也君    山田 賢司君

      伊藤 俊輔君    梅谷  守君

      鈴木 庸介君    藤岡 隆雄君

      山田 勝彦君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    中川 宏昌君

      平林  晃君    福重 隆浩君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         古川 禎久君

   法務副大臣        津島  淳君

   外務副大臣        小田原 潔君

   経済産業副大臣      石井 正弘君

   法務大臣政務官      加田 裕之君

   外務大臣政務官      本田 太郎君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  木村 陽一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    佐伯 紀男君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  松下 裕子君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 有馬  裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 安東 義雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           矢作 友良君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 大和 太郎君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     西野 太亮君

  野中  厚君     古川  康君

  藤岡 隆雄君     梅谷  守君

  日下 正喜君     中川 宏昌君

同日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     長谷川淳二君

  古川  康君     野中  厚君

  梅谷  守君     藤岡 隆雄君

  中川 宏昌君     平林  晃君

同日

 辞任         補欠選任

  長谷川淳二君     東  国幹君

  平林  晃君     日下 正喜君

    ―――――――――――――

三月一日

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)

 裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

二月二十八日

 子供の性虐待・性搾取被害悪化の現状に鑑み国連勧告に沿った児童買春・児童ポルノ禁止法の抜本的改正を求めることに関する請願(寺田学君紹介)(第二五六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第一部長木村陽一君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長川原隆司君、法務省矯正局長佐伯紀男君、法務省保護局長宮田祐良君、法務省人権擁護局長松下裕子君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、外務省大臣官房審議官有馬裕君、外務省大臣官房審議官徳田修一君、外務省大臣官房審議官安東義雄君、経済産業省大臣官房審議官矢作友良君及び防衛省防衛政策局次長大和太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君及び家庭局長手嶋あさみ君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井出庸生君。

井出委員 おはようございます。よろしくお願い申し上げます。

 冒頭、まず、ロシアのウクライナに対する侵略につきまして、一刻も早く元の平穏な状況が訪れることを願っております。

 このロシアのウクライナへの侵略と、ここまで様々日本政府は対応をしてきておりますが、この件について一言、大臣の見解を伺います。

古川国務大臣 お答え申し上げます。

 総理も申しておりますとおり、今回のロシアによる侵略は、力による一方的な現状変更を認めないという国際秩序の根幹を揺るがすものでありまして、欧米を始めとする国際社会と連携しながら迅速に対処する必要があるというふうに認識をしています。

 大変なことが起こっておるわけですけれども、政府全体として、現地情勢を把握しながら適切に対処していきたいと考えております。

井出委員 ロシア、ウクライナの間にいろいろな歴史、いきさつがあり、また日本にとってもロシアとの関係は様々ございますが、おっしゃるとおり、力による現状変更は絶対あってはならないというのは、私もまさに同じ思いです。

 その上で、大臣はこれまでかねがね、外国の紛争に軍事力をもって介入しないことは戦後日本の国是であると。所信の質疑に当たりまして大臣のブログを拝見しまして、この、紛争に軍事力をもって介入しないことは戦後日本の国是であるということが繰り返し述べられておりました。

 ウクライナの危機をきっかけに国内でも様々外交、安全保障の議論が既に始まっている、そういう状況だと思っておりますが、大臣には是非、これまで掲げられてきたその国是というものをこれからもしっかりと守っていっていただきたい、そういう政治家であっていただきたいと、今回ブログ等を拝見していて強く感じましたが、この件についても一言、大臣の見解を伺います。

古川国務大臣 我が国は、明治以降、海外との関係を軍事力をもって展開をいたしました。いわば覇権主義をもって戦前の歴史があった、その結果、破滅をしたという歴史を持っております。戦後は、一転しまして、覇権主義と決別をし、国際法や国際協調あるいは外交交渉といったものを旨としてやってまいりました。そして、その結果、今日があるというふうに認識しています。

 僅か百五十年ほどの歴史の時間の中で、我が国は、この正反対とも言える生き方を経験した希有な国であるというふうに思っておりますし、その中で我が国が得た教訓というものは何だったかというときに、覇権主義ではいけないということ、そして、やはり平和と安定こそが国益であり、これは国際社会共通の利益であるということであったと思います。

 したがいまして、これからも、東アジアの平和と安定、あるいはインド太平洋の平和と安定、そのためにひたすら汗をかくというのが我が国の生きるべき道ではないかということを政治家として考えているところです。

井出委員 この問題は、戦後の日本の歴史の中で、日本に関わりかねない、今回のウクライナもそうですが、有事があった際にいろいろな議論がございましたし、今もあると思います。ただ、やはり私も大臣と同じように、日本のあるべき国是の根底というものは今大臣がおっしゃったとおりのことだと思っておりますので、そのことは大臣にもこれからもそういう発信をしていただきたいですし、私もそういう思いで取り組んでまいりたいと考えております。

 そうしましたら、所信に関する質疑で、まず、名古屋入管のスリランカの女性の方の死亡事案について取り上げます。

 この場で、改めまして、亡くなられた女性の方に心から御冥福をお祈りを申し上げますとともに、御遺族の皆様へのお悔やみ、そして、こうした事案が二度と起こらないように、そういう思いでいます。

 今日、少し細かい字でございますが、資料をつけております。

 年末に、法務委員会の理事の皆さんと一部の希望される委員の方で、ウィシュマさんが三月六日に亡くなられる、その映像が保存されている二週間の映像を、七時間弱、六時間数十分だったと思いますが、拝見をしました。居室の映像ということで、報告書にあるとおり、ほとんど居室では寝ているような様子でした。私はそのことにも、映像というものを見て大変強いショック、衝撃を受けましたし、それに至る、その二週間の映像に至る前の経過というものもしっかり見なければいけないなと。

 資料の方は、法務省の最終報告書を基に、主に体調面ですね、いつ頃まで自力で歩行したり食事がきちっと取れていたのか、いつ頃から介助が必要になったのかとか、その部分を私なりにメモとして書き出してまいりました。

 まず一つ伺いますが、この被収容者、女性の医療診断に対する申出について、報告書の七十ページに記載があるんですが、名古屋局では、被収容者から診療の申出があった場合でも、事前に看守勤務者や看護師等の、診療の必要性を判断して、いわば事前のスクリーニングが行われており、診断の必要があると判断されなければ、診療申出書が作成されず、局幹部への報告や決裁が行われない運用となっていたとあります。

 同じ報告書の七ページ、八ページには、そうしたことに関する法務省の、いろいろの決まり事が書いてありまして、その中、七ページなんですけれども、名古屋入管の方では処遇に関する細則というものを決めている。細則の三十四条には、被収容者から医師の診療の申出があったときは局長に報告するとあります。その報告書の八ページには、後半になるんですけれども、名古屋局の実際の運用では、これに従った取扱いがなされていなかったということが書いてあります。

 規則と運用が違っていたということが書かれているわけですが、これはどうして、どういう理由、いきさつでこういう状況になってしまったのか、それが長期的に行われていたのか、それとも最近のことであるか、その辺りでも状況はまた違ってくるかと思うんですが、実際、規則と実際の運用が違っていたそのいきさつや理由について、入管の方に伺いたいと思います。

西山政府参考人 名古屋入管におきまして、この案件の当時、委員御指摘のような事前のスクリーニングが行われていて、運用が規則と異なっていたということは御指摘のとおりでございます。

 調査チームにおきましては、このようなスクリーニングが行われていた背景、経緯につきまして、資料の精査や関係職員からの聴取などにより可能な限りの解明に努めたところではございますが、結果的には明確に解明するには至らなかったものでございます。

 今回の調査結果を踏まえて、調査報告書では改善策が示されておりまして、具体的には、名古屋局における非常勤医師の増員や、被収容者の健康状態等の情報共有体制の構築、それから体調不良の訴えがあった場合や医師による診察を受ける際における通訳の一層の活用などを実施したほか、先般の医療体制の強化に関する有識者会議において提言が取りまとめられまして、そこでは、庁内診療体制の強化、外部医療機関との連携体制の構築、診療室と職員の連携などが盛り込まれているところでございます。

井出委員 それと、もう一点伺います。

 DVに関することです。

 報告書の九十ページ、この女性の方は、国内にいるときにパートナーの方からDVを受けていたということが指摘をされておりますし、御本人もそうした旨を訴えていたと聞いておりますが、報告書の九十ページでは、そういう情報に接した名古屋局の職員は、そもそもDVの措置要領の存在や内容等を認識しておらず、措置要領に基づく女性の事情聴取、局内での情報共有を行わなかったということが書かれています。

 このDVの措置要領というのは、報告書の十九ページにきちっと出てくるんですが、政府の基本的な方針の中に、不法滞在外国人である場合、加害者が在留期間の更新に必要な協力を行わない、そのため不法滞在になるような事案も発生するですとか、今申し上げた措置要領の中には、DV事案の内容等について事情聴取を行うなど、事実関係を可能な限り明確にするということが書かれています。

 報告書の九十ページは、今申し上げたとおり、職員の方がそれを認識していなかった、それは反省を要する改善点であるということが出ておりますが、これもやはり、どうして措置要領等をその職員の方が認識をしていなかったのか、それは職員の方、その人個人の問題なのか、それは組織としてその措置というものをしっかりと徹底すべき問題だったのか、その背景というところを伺います。

西山政府参考人 委員御指摘のように、DV措置要領については、かねてより、地方局等における自局職員に対する研修や、同措置要領上の手続の周知徹底についても定められているところでございますが、名古屋局においては、措置要領の存在、内容などが職員に十分周知できなかったということが考えられます。

 調査報告書では、全国の地方官署に対し、措置要領の存在及び内容等を改めて周知徹底することが示されておりまして、これを踏まえまして、調査報告書が公表された令和三年八月以降、入管庁長官から指示等を行い、改善策として示されたDV措置要領の周知徹底を既に実施しているところでございます。

井出委員 このDVの件と、それから被収容者の医療の診察の申出の件と、いずれも収容される方に係る問題です。今回、この事案の報告書によって、被収容者からの申出に対して対応する規則がどうなっているか、それから、被収容者にDVの疑いがあったときにどういう対応をしなければいけないか、その点の規則という部分は今回の報告書によって広く明らかになって。そのことは、名古屋局のみならず入管局組織全体の再発の防止に、この報告書によってその規則が公開をされたということは一定の効果があるだろうと思います。

 ただ一方で、これからそうした再発防止を、なくしていくし、もちろん、この女性の事件を防ぎたかったという思いもございます。私は、一番の問題は、医療の申出に関する規則であっても、措置要領であっても、やはり、組織の、身内の人たちだけの共有に終始をしてしまっていたのではないか。

 少なくとも、例えば、被収容者が収容されたときに、被収容者が何かを希望する申出をするときは、うちの施設ではこういう決まりになっています、報告書に書いてあるこういう決裁をすることになっています、そういう必要なことをやりますので言ってくださいということを言っておく。それから、DVに関することも、DVの申告があったときに、私たちはDVのことに対してはこういう対応をしなければいけないと。少なくとも、被収容者本人に対する事前の告知ですとか、何か第三者的な、実際に第三者の目が入るということはなかなか想定しにくいんですが、第三者からの目、今回公表になりましたが、そうしたものに応え得る透明性というものを確保していなければ、いつ頃からこういうことになっていたか明確には分からないというお話がありました。

 そこの部分の、再発防止という意味でも、規則に関する公開性、透明性、そして、具体的には、やはり被収容者に関わることは被収容者にきちっとお伝えをしていく。言語のコミュニケーションにも不安がある、一人で収容される、情報弱者でもある、そういう人たちの権利に関わることというものは、少なくとも、そういう周知、告知を本人にきちっと収容時にすることで、こうした事案がより一層防げるのではないかと思いますが、入管の見解を伺いたいと思います。

西山政府参考人 委員の御指摘につきましては真摯に受け止めたいと存じます。

 なお、規則等についての第三者に対する開示につきましてでございますけれども、各地方官署に定めている処遇細則については、情報公開請求等に対しましては開示に応じるということで対応させていただいているところでございます。

 また、私どもとしましては、先ほどの委員の御指摘の問題点につきましては、まずは被収容者の健康状態に関する情報を的確に職員の方で把握、共有し、医療的対応を行うための組織体制の改革を着実に取り組むことが重要であるというふうに考えております。

井出委員 今回の事案は、いろいろな原因が考えられると思いますし、亡くなられた直接の死因というものはなかなか特定に至っていないというような報告になっておりますが、私が今日指摘したその二点、これは入管にかかわらないんですけれども、いかなる行政組織、行政にも限らないかもしれません、組織がいろいろなことに取り組む上で、相対する人間であったり、姿形の見えぬ第三者に対して、透明性、公開性を果たせるということがきちっと内々で担保されるような、そういう緊張感を持った取組というものが求められると思います。

 繰り返しになりますが、こうした事案を二度と起こさないようにすることだけが、今、亡くなられた方や御関係の方のお気持ちに応える唯一のすべだと思いますので、今日の質疑のこともよく入管の中で共有をしていただいて、再発の防止に努めていただきたいと思います。

 次の話題に入ります。

 大臣の所信の質疑の中で、大臣は、二回にわたって大局観、大局観を常に念頭に置き、諸課題に当たると冒頭に述べておられまして、最後にも、大臣政務官、職員と力を合わせ、大局観を常に念頭に置きというお話があって、この大局観という言葉は大臣のお人柄にぴったりの、恐らく大臣がこれを入れろと言ったのではないかなと、私、勝手に推測をしておるんですが、今日は、刑事裁判の、まさにその大局的な見地から、私がずっとお願い、訴えをしております刑事裁判の記録の閲覧、公開について伺いたいと思います。

 まず、刑事裁判記録というものは、それぞれ保存期限があって、保管期限が来たら廃棄をされる。先日の分科会で、保管期限が切れても国立公文書館の移管の対象になりますよ、考えてはいるんですけれども移管したことはございません、全部捨てていますという答弁があって、かつては、それは、廃棄の時期が来たら、プライバシーがあるから廃棄するのが大原則だという答弁もありました。それから、保存期限が切れてもなお重要なものを刑事参考記録として残しておくと。これは長年残すことになるんですけれども、じゃ、その先どうするんだみたいなところをかつて指摘したことがございます。

 それと、もう一つは、特別処分といって、検察庁の中で記録を保存しておく。この特別処分で保存された記録というものは一体どうなっていってしまうのかは、ちょっと外部からは今のところ全く状況が分からない。

 こうした刑事裁判で長年取っておくような文書をきちっと国立公文書館に移していく。どうして私がこういうことを再三申し上げるかといえば、やはり、古い裁判の文書を将来の人が国立公文書館で見て、当時の裁判の仕組みを知ったり社会情勢を知ったり、場合によっては、事件の直後注目されなかったものが、五十年、百年たって注目されるような事実がそこに記載をされているかもしれない。

 有名な話では、ロッキード事件に関する検証ですとか、いろいろな、こういう側面があったみたいな話というものは、おおむねアメリカのそういう裁判記録から出てくる。日本に関わるものが日本の記録から見られることはないという、この大きな欠陥を私は抱えているなと思っております。

 ここのところをやはり、いつまでも古い記録を検察庁が持っているというのは、刑事局長が検察庁にお勤めで、これからも検察庁にお勤めで、退官されるぐらいまでの間だったらいいかもしれません。井出という国会議員がうるさかったから、文書をきちっと取っておこうとなるかもしれない。しかし、先々三十年、五十年後の、大局的に検察の運営を考えて、それから、大局的に国家に対して裁判の情報というものを、どう、どこに保管しておくのか、閲覧できる状態にするのかということを考えたときに、抜本的にその古い刑事裁判記録を公文書館に移すと。

 これまで、谷垣法務大臣が、軍法会議のものが法務省にあったので、検察庁にあったので、移しましたと。それから、最近では、上川大臣が、治罪法という、うんと古いものを、これは文書の判読も難解な資料なんですけれども、それを判読した上で公文書館に移すということをやっていただいたんですね。ただ、重立ったものは、それと、あと古いものが幾つかあるぐらいで、刑事裁判記録というものは基本的には検察庁の方で持っている。

 それは、大局的な見地に立てば、やはり将来的には公文書館に移さなければいけない、そういう答弁は何度もいただいてきたんですけれども、そろそろこの大局観に立った課題を解決するべきだ、そう思うんですけれども、いかがですかね。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 委員が御指摘の、刑事裁判記録の国立公文書館への移管という問題でございます。委員が今御質問の中で、記録の保存についていろいろと御指摘をいただきました。

 委員御指摘のように、現在の記録の保管の関係では、保管期間が満了した保管記録のうち、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料となるものにつきましては、法務大臣が刑事参考記録に指定して保存を継続することとしております。

 刑事参考記録はこのようなものでございますところ、歴史性を帯びるものにつきましては、一般に刑事参考記録として保存されることになるものと考えられるところでありまして、また、この刑事参考記録の指定に関しては、文書管理の専門家であるアーキビストの方二名を含む刑事参考記録アドバイザーの御意見も得て、より適切にその要否を判断することとしているものでございます。

 このような刑事参考記録の保存の趣旨に照らせば、その保存は、刑事に係る基本法制等を所管する法務省及び検察庁において行うことが適当であるものと考えております。

 その上で、長い年月の経過や法制度の変化等により刑事参考記録として保存する理由が失われたものの、なお重要な公文書等である歴史的公文書等に該当するものにつきましては、公文書の管理に関する法律四章の規定によりまして、国立公文書館への移管がなされるものと考えております。

 もっとも、移管を実現するためには、相当古い時期の刑事参考記録の内容を確認し、記録の内容を公にした場合における事件関係者の名誉、プライバシー等を害するおそれの有無やその程度等を踏まえた慎重な検討を尽くす必要があると考えているところでございます。

 委員御指摘の刑事参考記録の国立公文書館への移管の在り方につきましては、公文書管理の重要性や刑事確定訴訟記録法、公文書管理法の趣旨を踏まえ、国立公文書館や刑事参考記録アドバイザーの御意見も伺いつつ、不断の検討をしてまいりたいと考えているところでございます。

井出委員 不断の検討をしていただいて、ただ、ずっと検討されていると、何か全然不断じゃないじゃないか、何か断ち切れてしまったんじゃないかという思いを私はずっと持っておりまして。ただ、将来的には、いつまでも検察庁が持っているわけにもいかないなという問題意識はあろうと思うんですよ。誰かがやらなきゃいけないと。

 公文書館の移管というのは、現状、法律によって、法務大臣と総理大臣との申合せで、公文書館の、谷垣さんが軍法会議の資料を移したのもそういうやり方をして、上川さんが治罪法の文書を移したのも申合せでやっているんですね。

 最高裁に来てもらっておりますが、民事裁判の記録は、最高裁と内閣総理大臣の申合せで、これは、いつの事件とかじゃなくて、一律、何年たったものは公文書館に移すという申出がされていて、これはこれで大変すばらしいことだなと思うんですけれども、最高裁はそういう大変すばらしい運用をされているんですよね。最高裁、お願いします。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 委員お尋ねの件につきましては、平成二十一年八月五日の内閣総理大臣、最高裁判所長官申合せ並びにこれを受けました平成二十一年八月五日及び平成二十五年六月十四日の内閣府大臣官房長、最高裁判所事務総局総務局長等申合せに基づき、事件記録等保存規程第四条に規定します五十年の保存期間を過ぎました民事訴訟事件の判決書の原本が順次裁判所から国立公文書館へ移管されているものと承知しております。

井出委員 日本の大局的な見地に立った、刑事裁判記録を、特に長くなってきたものをどうするんだということに、先日、分科会でも大臣に聞いていていただいた質問なんですけれども、今日、もう少し時間をかけて伺いましたので、是非、少し頭の中でかみ砕いていただいて、要請があればいつでも説明に伺いますので、少し、課題の一つとして、すぐにとは言いませんが、いつかこの所信に入ることを私は強く希望したいと思います。

 残りの時間で、もう一つ資料を作ってきました、二枚目のカラー刷りの資料なんですが、これは、公文書館に移管する前の裁判記録、保管されているものを閲覧する仕組みでございます。

 赤い字が、裁判記録というものは裁判の公開を拡充するものとして誰でも見れなきゃいけないというのが刑訴法の五十三条、下の、文書を扱う確定記録法ですね、閲覧させなければいけない。

 それから、字が小さいですけれども、憲法でも、政治や出版に係るものは必ず公開せよ、これに係る文書の閲覧の禁止は厳に禁止されています。

 しかし、青字でだだだっと書いているんですけれども、この文書管理の法律には見せなくていいよという規定が六つございまして、犯人の更生ですとか関係人の名誉ですとかいろいろあるんですけれども、その中に、事件終結三年がたったものは見せなくていいという規定があります。

 これは、私、犯人のプライバシーとか更生改善というものは、三年たとうがたつまいが関係ないだろうと。それはそのとおりだとこの間刑事局長はおっしゃった。だけれども、実際、実務として、三年たつまでは、犯人の更生に影響があるかないか、名誉がどうかとかで、大丈夫です、じゃ見せます、駄目です、見せません。それが三年たってしまうと、犯人の更生の妨げがあるかないか、まあ、じゃ、それは大丈夫だ、でも三年たっているからお見せできませんというのが今の実務だと思うんですね。

 そうすると、やはりこの三年規定、今日、こんなに字を大きくしちゃって局長には大変申し訳ないなと思うんですけれども、この三年規定というものが、刑訴法五十三条の、記録の閲覧をすることができる、その前提となっている憲法の、裁判は公開でやる八十二条、三十七条の刑事裁判は公正な公開法廷でやる、その原則をやはりひっくり返しちゃっているのがこの三年規定だと思うんですね。

 その三年規定について、すぐになくせとか取り消せとか、そういうことを言うつもりはないんですけれども、この件についても少し、刑事局長とこれからまたじっくりと議論をしていきたいと思いますけれども、刑事局長の見解を伺います。

鈴木委員長 川原刑事局長、申合せの時間が来ておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事確定訴訟記録法の規定は、委員御指摘のとおりでございます。

 ただ、三年経過した場合、後でありましても、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者からの閲覧請求は認めるという形で、この場合には記録の閲覧を可能としているものでございまして、こういった現行の制度を改めるべきという御意見については耳を傾けてまいりたいと思いますが、現時点で、私どもとしましては、この制度は二つの利益を調和させる仕組みとして相応の合理性を有していると考えているところでございます。

井出委員 耳を傾けるというのはちょっとあれだけれども、時間が来たので、大臣の、特に入管行政が喫緊の課題だと思いますが、御活躍をお祈り申し上げまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 質問をさせていただきます。

 大臣は所信で、人類社会は、人間の尊厳が重視され、尊重される社会、そしてまた、自由、基本的人権の尊重、法の支配、そして民主主義は、そうした社会を実現するための原理、そしてまた、きずなを結び、誰もが幸せを享受できる社会を目指す、こういうことを述べられています。

 今回のロシアのウクライナへの軍事侵攻、これは、力による一方的な現状変更であり、また、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害する明白な国際法違反であり、国際秩序の根幹を揺るがす行為として断じて許されるものではないと強く抗議するものでございます。

 そういう中で、昨夜、岸田総理がウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談をされて、そして、日本はウクライナと共にあるということで、確固たる支持を伝えたわけでございます。その中で、在留ウクライナ人の在留の延長、これを可能にする措置も取る、こういうことも言われました。

 また、本日の未明のG7などの首脳らの電話会談におきましても、しっかり国際社会一致して強力な制裁措置をやっていくということの中で、ウクライナから多くの人が避難してきている、その避難してきている周辺国への支援、こういうことも意見が交換されたというふうに報道されているところでございます。

 そういう中で、今五十万人以上と言われております、ウクライナからポーランドやルーマニアにこの戦争を避けて避難されている、家族がばらばらで、お母さんとお子さんだけで避難される、こういう非常に悲しむべきことが起こっているわけでございます。

 そういう中で、我が国としましても、例えば、かつてインドシナ難民を、閣議了解の上、制度として積極的に受け入れたことと同様に、政府は、ウクライナの避難民を、閣議了解の上、制度として受け入れることを直ちに決定し対応する必要があると考えますが、法務大臣の御所見をお伺いします。

古川国務大臣 大事なことは、ウクライナから避難される方々を迅速かつ適切に保護することだと思っております。在留資格制度や難民認定制度を所管する法務省として、今後のウクライナ情勢等を踏まえつつ、個々の外国人の置かれた状況等にも配慮しながら、引き続き適切に対応してまいる所存であります。

 その上で、今委員が御指摘になりました、ウクライナからの避難民を制度として我が国に受け入れるということにつきましては、その要否も含めて、関係省庁と連携の上、早急に検討して、積極的かつ適切に対応してまいります。

大口委員 大変前向きな御答弁をいただきましてありがとうございました。早急に結論を出していただきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

 昨年三月の六日、名古屋入管に収容されておられたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんがお亡くなりになりました。あってはならない悲しい事案であり、改めて、衷心よりお悔やみを申し上げますとともに、御遺族にお見舞いを申し上げます。

 昨年十二月の二十四日、当委員会で、ウィシュマさんの収容中の様子を撮影したビデオの映像を私も理事の一人として閲覧させていただきました。大きな衝撃を受けました。名古屋入管において、被収容者の大切な命をお預かりしているという自覚、人権への配慮や容体急変に対する危機意識に欠け、適時適切な対応が取れなかった問題点をしっかりと認識、反省するとともに、二度と同じような事案が起きることのないよう、全職員の意識改革、組織改革、医療体制の強化など、改善策を早急に講じなければならないと痛感した次第であります。

 本件死亡事案の発生を受け、昨年八月十日、調査報告書が発表されたわけでありますが、大臣におかれては、この名古屋入管の被収容者死亡事案に対する受け止め方と今後の改善に向けた姿勢をお伺いします。

古川国務大臣 ウィシュマ・サンダマリさん、亡くなられて間もなく一年がたとうとしておるわけですけれども、これはもう誠に悲しい出来事であって、心からお悔やみを申し上げたいというふうに思っております。

 この事案に関する調査報告書ももちろん読みましたし、ビデオも、私も見ました。これはもう大変胸の潰れる思いをしておるところであります。

 そこで、今委員もおっしゃいましたけれども、人の命を預かる収容施設において、やはり何か欠けているものがあったということは間違いないと思っております。

 したがいまして、今後やらなければならないこと、私は二点あると思いまして、一つは、やはり、この調査報告書が示されております、きちんとした調査、検討の結果、この報告書において十二項目の改善策が示されているわけですけれども、これを着実に、そして可能な限り速やかに実行していくということであります。

 それともう一つは、やはり、先ほども申しましたけれども、何らかの欠けているもの、足らざるものがあるのだろうと思いますから、それは是非、虚心坦懐に、今の収容の在り方を含む様々な入管の在り方については、しかしこれはきちっと点検をして、改めるべきものがあれば改めなければならない、そういう姿勢でもって向き合わなければならない、そのように感じているところです。

 この不幸な出来事をもう二度と繰り返さない、二度と起こしてはならないという、固く決意をいたしておりますから、結果にきちんとつながるような努力をしてまいります。

大口委員 昨年の八月十日の調査報告書で、二月十五日の尿検査結果、これは基準値を超える数値、ケトン体やたんぱく質でそういう数値が出ているにもかかわらず、追加の内科的検査等が行われなかった、二月下旬、点滴、受診を求めたのに、これに対する組織的な対応がなかったこと、亡くなられた直前、体調に外観上の顕著な変化が生じていたにもかかわらず、抗精神病薬等の服薬につき医療従事者への相談する体制がなかったこと、バイタルチェックで血圧等の測定が不能となったことを受けた対応が取られていなかったこと、救急搬送等の対応に関して、特に休日において体調不良の容体急変等に対応する体制が整備されていなかったこと、こういう問題点が指摘されていました。

 また、ビデオ映像を閲覧しましたが、亡くなられた方が適切に食事を取れていない状況、そしてまた、職員に対して点滴や受診を求める状況が確認されています。なぜこれらに対する対応がなされなかったのかと痛感しました。

 これらの問題の背景には、名古屋局の幹部や現場職員の意識、情報共有が不十分という問題や、常勤の医師がおらず、週二回各二時間の非常勤内科医師と、月一回二時間の非常勤整形外科医師しか確保、配置されていなかったり、あるいは、休日における医療従事者へのアクセスの手段がなかったり、救急時の対応について統一的な対応方針がなかったという医療体制の問題があったと思われます。

 この医療体制の強化については、昨日、有識者会議から提言が取りまとめられて大臣に手交されているわけでありますが、これらの点に関する改善策の実施状況、これは名古屋局も含めてお伺いします。

西山政府参考人 まず、名古屋局における改善としまして、まず、非常勤医師を増員し、それに伴いまして診療機会も増やしているということ、それから、被収容者の健康状態等の情報共有体制の構築などの医療体制の強化を実施したところでございます。

 また、委員御指摘の医療体制の強化に関する有識者会議、昨日提言を出していただきましたところですが、その中には、常勤医師を中心に複数医師による勤務体制の構築等、庁内診療体制の強化、それから、地域医療機関との協議会の実施など外部医療機関との連携体制の構築、必要な医療用機器の整備、更新、医療従事者と職員間、各官署の診療室の間、各官署と本庁の間のそれぞれの連携、夜間、休日における対応体制の整備等、そのほかの医療提供上の改善策を御提言いただいたところでございまして、必要な対応を早急に検討を実施することとしております。

 このほか、医療的対応に対する改善策の取組として、職員が被収容者からの体調不良の訴えを正確に把握するための翻訳機器などの活用を指示したほか、救急対応マニュアルを策定したところでございます。

 引き続き、医療体制の強化に努め、被収容者に対して適切な医療を提供してまいりたいと考えております。

大口委員 特に常勤の医師が確保できていないという状況があります。そういう点でも、やはり法整備をしなきゃいけないというふうに思います。

 また、この調査報告書では、二月下旬の点滴、受診の求めに対する職員から幹部への報告、情報共有が不十分であったこと、介助等の対応能力強化や人員体制確保等の取組が不十分だったこと、仮放免の判断における関係部門間で被収容者の健康状態に関する情報を幅広く共有すべきだったこと、支援者の申入れについての対応窓口や報告方法の方針が定められていなかったことについて問題点が指摘されています。

 また、ビデオ映像を閲覧しましたが、人権への配慮に欠けた不適切な発言、亡くなられた方の体調不良の訴えに関する上司への進言や上司による積極的な体調確認等が不十分だったのではないか、また、亡くなられた方がベッドから落下した際、そのときに対応した女性職員だけでは体を持ち上げられず、数時間床に放置してしまうことがあるなど、現場の職員だけでは適切な介助等を行うことが困難な状況が続いていたのではないか、そのような状態であるならもっと早く仮放免することができたのではないか、こういうふうに感じたわけであります。

 これらの背景には、個々の職員の人権意識の問題、名古屋入管の幹部と現場職員の間での上下の情報共有が不十分であること、処遇を担当する部署と仮放免の審査を担当する部署の情報共有が不十分であること、支援者からの申出に対する対応のばらつきがあったことなど、風通しの悪い組織上の問題点があったのではないかと思うわけであります。

 これについて、改善策の実施状況、名古屋局も含めてお伺いします。

西山政府参考人 まず、名古屋局における組織体制の強化としましては、被収容者の健康状態等について、幹部と現場職員及び現場の関係職員相互の情報を共有する体制の構築などを実施したところでございます。

 また、組織、意識改革のため、全職員及び外部有識者の意見を集約しまして、人権と尊厳を尊重し、礼節を保って職務に従事すること、風通しのよい組織風土づくりに努め、セクショナリズムに陥らず、組織が一体となって課題に対応することなどを内容とする出入国在留管理庁職員の使命と心得を策定し、現在その浸透に取り組んでおります。

 さらに、体調不良者等に係る仮放免運用指針を策定し、同指針において、医師の所見を踏まえた仮放免の判断の在り方、それから、幹部による被収容者の体調把握、関係部署間での情報共有、体調不良者の情報の本庁への速報など、情報共有の在り方などを定めているところでございます。

 そのほか、監査指導部署の設置、これは来年度を予定しておりますが、に向けた現在準備をしておるほか、支援者からの情報提供の一元的対応窓口、それから情報共有体制の整備など、外部からの情報提供に対する組織的な対応についても取り組んでいるところでございます。

大口委員 次の課題についてお伺いします。

 今年二月十四日の法制審議会の総会で、嫡出推定などを見直す民法改正の要綱が採択されました。この要綱では、離婚後三百日以内に生まれた子は夫又は前夫の子と推定する嫡出推定規定を維持する一方で、離婚後三百日以内に生まれた子であっても、その間に母親が再婚したとき、再婚後の夫の子と推定するとの例外規定を設けて、その結果、父性推定の重複がなくなるため、女性の再婚禁止期間は廃止するとしています。

 また、嫡出推定規定に基づく父子関係を否定する嫡出否認の規定についても、その否認権の範囲を夫のみならず母及び子にも拡大するとともに、その出訴期間も一年から三年に延長するなど、無戸籍者の発生を予防する観点から、この要綱は大きな前進だと評価しております。

 私どもは二〇〇七年から無戸籍者問題のプロジェクトチームを立ち上げておりますけれども、その中でも、この要綱の案というのは非常に大事である、こういうふうに考えています。

 これにつきまして、嫡出推定規定を撤廃をしないと離婚前に出産した場合などが救われないとか、そういう現場の弁護士の意見があったり、あるいは、嫡出否認制度の見直しについても、DVがある場合に、子や母が夫に対する嫡出否認の訴えの提起をためらう場合があるのではないか、こういう懸念もあるわけであります。このDV事案の嫡出否認の訴えをためらう方に対しては、家事事件や人事訴訟のIT化によって加害者と対面する心理的な負担を減らし、被害当事者の住所の秘匿によって加害者から危害を加えられる懸念をなくすことが必要であると考えております。

 まずは、無戸籍者の発生を予防する観点から、この要綱に基づく民法改正をできるだけ早期に行うことが求められます。民法改正へ向けた法務大臣の御所見をお伺いします。

古川国務大臣 無戸籍の方につきましては、国民としての社会的な基盤が与えられておらず、社会生活上の不利益を受けるという、これはもう人間の尊厳にも関わる重大な問題が生じているというふうに認識しています。

 ただいま委員御指摘の二月十四日の法制審議会の答申は、様々なアプローチによって無戸籍者の発生を効果的に防止しようとするものでありまして、この問題の解消に大変有益であるというふうに考えております。

 答申の内容は、いずれも、喫緊の対応が必要な課題を解決するため重要な意義を有しているものでありますから、できる限り早期に改正法案を国会に提出したいと考えています。

大口委員 法務省では、今回の要綱に基づく改正がなされれば無戸籍の解消にどれぐらいつながるのか、それから、改正が実現すれば、施行後に生ずる事案に対して適用されることはもちろんのことでありますが、既に生じている無戸籍者の問題の解決についてどのように対応することを検討されているのか、お伺いします。

金子政府参考人 仮に御指摘の法制審議会が決定した要綱の規律に従えば、離婚後三百日以内であっても、母の再婚後に生まれた子を再婚後の夫の子と推定する規定が、規律が設けられることとなり、このような子については、裁判手続を要することなく、再婚後の夫を父とする出生届を提出することができるようになります。この点は、法務省が把握している無戸籍者のうち、このような事情のある子の割合が約三五・八%であることが明らかになっております。

 また、そのような事情がない子であっても、子や母が嫡出否認の訴えを提起することにより、前の夫の嫡出推定を否認することが可能となるため、前夫以外の男性の子として届出をすることができる場面が広がるものと考えられます。

 それから、既に発生している無戸籍者の問題の解決に関しましては、今後準備する法案において、新たな規律をいつの時点のいかなる事案に適用するのかという点に関わります。現時点では具体的内容は未定でございますが、現在既に無戸籍者となっている方や法律の施行時までに無戸籍となる方が存在することも念頭に置きつつ、この点について適切に検討してまいりたいと考えております。

大口委員 次に、これも、本年二月十四日の法制審議会の総会で、調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設に関する要綱が答申されました。

 これは、私が昨年の大臣所信で質疑をさせていただいたところでございます。これも、国際調停における執行力の付与という、海外、国際調停というだけじゃなくて国内の和解調停についても執行力を付与すべきだ、それがまたODRあるいはADRの促進にもつながるんだ、こういう提案をしたところでございます。

 これにつきましても早期の法制化を期待しておりますが、大臣の御所見をお伺いします。

古川国務大臣 二月十四日の法制審の答申は、裁判所の決定により裁判外の調停で成立した和解に執行力を付与する制度を創設することなどを内容とするものであります。また、我が国の認証ADRにおいて成立した和解であれば、養育費の支払いを内容とするものについても執行力が付与される対象となるということとされています。

 答申の内容は、委員御指摘のとおり、利用者の利便性を高める点でも大きな意義を持つものであります。養育費の履行確保という重要な課題にも応えるものであります。これらを実現するための法案をできる限り早期に国会に提出できるよう、準備を進めていきたいと考えています。

大口委員 昨年、これは法務大臣の所信の質疑でも私は述べさせていただきましたが、家事事件のリモート化を推進すべきだということでございます。

 これに対して、昨年の十二月八日より、東京、大阪、名古屋、福岡の家庭裁判所本庁において、同日以降に実施される調停期日で、調停委員会が相当と判断した事案について、ウェブ会議による調停が試行されています。

 このウェブ会議導入のニーズは高く、仕事を休めず日程調整に難しさを感じていたり、遠隔地に居住するなどの事情を抱えている当事者の出頭負担の軽減、DV事案における当事者の接触回避等による安全、安心な手続の実現、新型コロナウイルス感染症対策にも有効である。

 現時点におけるウェブ会議による調停の利用状況や、利用者の声をお伺いします。

手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、令和三年十二月から、東京、大阪、名古屋、福岡の四つの家庭裁判所で、順次、家事調停手続のウェブ会議の試行を開始しております。令和四年一月末までのウェブ会議の実施件数は、四つの家庭裁判所の合計で八十八件となっております。

 ウェブ会議を利用された当事者のお声としましては、例えば、調停委員の表情やうなずいている様子が見えることで自分の話が伝わっていると感じた、また、実際の調停室で調停をしているような気持ちになった、相手方当事者と同じ建物に行かなくてよいということの安心感があるといった感想があったというふうに聞いておりますところでありまして、おおむね好評をいただいているものと承知しております。

大口委員 今、これを令和四年度中に更に十九庁に拡大していくということでございますし、民事訴訟法の改正案が国会に提出される予定になっています。そこにおいて、離婚訴訟、ウェブ会議で和解、調停による離婚の成立が可能となる仕組みが創設される。これが施行されるまでには全庁に拡大する、こういうふうに伺っておるところでありまして、しっかりこのウェブ会議による和解と調停の利用というものを拡大をしていくべきである、こういうふうに考えております。

 最後に、昨年の通常国会で、これは大臣にお伺いしますが、少年法が改正されました。この改正では、今年の四月から、十八歳、十九歳を特定少年として、引き続き少年法の適用対象としつつ、いわゆる逆送である検察官送致決定後は、少年法が定める刑事事件の特例を原則適用しないこととするものとしています。

 その中で、特定少年のときに犯した罪によって刑に処せられた場合、資格制限を排除する少年法の規定の適用を受けないこととされておりまして、そうしますと、出所者等の就労を制限している資格制限自体を見直さなきゃいけないということで、当委員会の附帯決議で、政府全体として検討するよう求めたところであります。

 法務省は、この附帯決議を受けて、再犯防止推進計画等検討会の下に前科による資格制限の在り方に関する検討ワーキンググループを設置して、昨年六月二十九日から三回やっていまして、今年の三月に四回目が開催されると聞いております。

 少年本人、支援者に対してはニーズの調査を行い、所管省庁からは警備員、看護師、介護福祉士、調理師、宅地建物取引士の資格等についてヒアリングが行われていると承知しています。

 特定少年などの若年者の社会復帰促進の重要な柱の一つが安定した就労であり、安定した就労を確保するための有力な手段に資格の取得があります。迅速な対応が必要と考えますが、今後のスケジュールや具体的な取組について、大臣にお伺いします。

古川国務大臣 委員御指摘のとおり、罪を犯した特定少年などの若年者にとって、資格の取得等を通じて安定した仕事に就くということは、社会復帰を促進するために非常に重要だというふうに考えています。

 当委員会における改正少年法の附帯決議などを受けまして、法務省では、委員にも御紹介いただきましたけれども、令和三年六月に有識者を構成員としたワーキンググループを設置しまして、前科による資格制限の在り方について検討を行っております。

 このワーキンググループでは、まず、少年院に在院中又は保護観察処分に付された十八歳以上の者と、少年院の法務教官や保護観察官等の指導者に対して、資格に関するニーズ調査を実施し、合計で千百六十二人から、今後取得したいと考えている資格、資格制限があることにより就労に支障が生じた事例などについて回答を得ました。その上で、回答数が多かった資格を中心に所管省庁からのヒアリングを実施するなどして、検討を進めております。

 今後のスケジュールということでございますが、現段階で確たることを申し上げるのはちょっと難しいんですけれども、この前科による資格制限は、一定の合理的な趣旨、目的をもって法令に基づいて運用されてきたものでありますから、その在り方につきましては、これらを踏まえた十分な検討が必要であろうというふうに思います。

 他方で、本年四月に改正少年法の施行を控えております。各所管省庁と密に協議をしつつ、例えば、資格審査における運用面での改善を働きかけるなど、早期の対応が可能なものから検討を進めていきたいというふうに考えています。

大口委員 時間が来ましたので、終了いたします。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 立憲民主党・無所属会派の鎌田さゆりでございます。

 冒頭、私からも、ウクライナの人々に一日も早く平和な日々が戻ることを祈り、そして、ロシア軍の一刻も早い撤兵を強く要求、発言をさせていただきます。

 それでは、大臣所信について伺ってまいります。基本、大臣に伺いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、「はじめに」の部分に込められている古川法務大臣としての哲学をお伺いします。

 ちなみに、冒頭の、この一ページ目の箇所は、大臣御自身でお書きになられたのでしょうか。伺います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 この文章は、私が言ったことを事務方において文字にしてもらって、そのやり取りの中で作成したものであります。私の思いがこもっています。

 哲学ということでございますけれども、人というものは、やはり、自らの考えを持ちながらも、他者を尊重して、そして助け合いながら生きていくものだというふうに思っています。ですから、きずな、つまり自分と他者との関係性を築くということは、生きていく上で非常に大事なことだと思っておりまして。ですから、法の意義というものは、自由かつ助け合いながら生きていく社会をつくるためのルールづくり、そこに法の意義というものがあるのではないかと私は思っています。

 人類は、様々な時代をくぐり抜けていく中で、やはり、基本的人権の尊重であるとか自由とか法の支配といったような、原理と言ってもいいような価値観、そういう原理に結実させてきたというふうに思うわけですけれども、法の意義というものを現代社会に引き寄せて、当てはめて考えますときに、現代社会というのは、非常に人の価値観というものも多様化して複雑化してきております。ともすれば他者との衝突というものも増えていくような時代ではないかなと思っております。

 だからこそ、今申し上げました、ルールという、法の支配であるとか、そういう原理がまた意味を持ってくるのだと思っています。また、先ほどウクライナの話もされましたけれども、ルールに基づく国際秩序というものですね。

 ですから、現代の社会に照らしましても、やはり法の意義というものがますます大きくなってきておりまして、法務行政というものは、法というものをお預かりする、つかさどる仕事でありますから、このような哲学を持って、私としては職務に臨みたい、このような思いを込めて文章にいたしました。

鎌田委員 ありがとうございました。

 人権と人権は常にぶつかり合います。そのときにどちらが上回るかといえば、基準となるのは公共の福祉です。ですので、私は、法務省こそが、洞察力を深めて深めて、めくってめくって物事を見る洞察を極めていただきたい、そのような願いを込めて今哲学をお伺いをしたところであります。

 次に、大臣に就かれておよそ二か月のとき、十二月二十一日、三名の死刑が執行されました。大臣、署名をなさったのは何月何日でしょうか。京都コングレス、それから東京のオリパラ、これが終わっての執行に私は正直衝撃を受けました。伺います。

古川国務大臣 私が執行命令書に署名をいたしましたのは、昨年の十二月十七日であります。

鎌田委員 大臣、三名のうち二名は再審請求中でした。御存じでしょうか。

古川国務大臣 昨年十二月に死刑を執行した者による再審請求の有無等につきましては、法務大臣である私からお答えすることは差し控えます。

鎌田委員 執行された三名のうち二名は再審請求中でありました。

 大臣、誤判や冤罪の可能性を審査する機会を奪って、憲法三十二条の裁判を受ける権利、憲法三十一条、適正手続保障に違反していると断ぜざるを得ないことを指摘をしました上で、死刑制度の犯罪抑止効果、執行の選定基準とプロセスなどなど、国民に、国会に、そしてこの法務委員会に、根拠となる情報を開示すべきだと考えます。答弁を求めます。

古川国務大臣 お答えいたします。

 死刑の犯罪抑止力を科学的、統計的に証明するということは困難であるというふうに思っております。

 しかし、一般に、刑罰というものは犯罪に対する抑止力を有するものと一般的に認識をされておりますし、死刑もまた同様でありまして。また、これまで政府が行った死刑制度に関する世論調査におきましても、死刑がなくなった場合、凶悪な犯罪が増えるという意見と増えないという意見がありますが、あなたはどのようにお考えになりますかという問いに対して、増えると回答した者はいずれも過半数を占めているということなど、死刑が犯罪に対する抑止力を有することが広く認識されている、社会において認識されているということも、これは死刑が抑止力を有することの表れであろうというふうに考えております。

 お尋ねの、執行対象の選定基準、選定プロセスということでございますけれども、それを公開するべきではないかということでございますが、個々の死刑執行の判断に関する事項につきましては、死刑の執行を待つ立場にある死刑確定者の心情の安定を害するおそれがあるなどの理由から公表を差し控えることが相当であると考えているところです。

鎌田委員 日弁連等々、しかるべき機関からは、この死刑制度の犯罪抑止効果、執行の選定基準とプロセスなどなどを公開するように、その要望は再三出されているはずです。

 私は、今の大臣の御答弁ございましたけれども、委員長、ただいま質疑をいたしました、求めました根拠、情報をこの委員会に開示していただくように求めたいと思います。

鈴木委員長 後刻、理事会にて協議いたします。

鎌田委員 大臣の所信では、大変大切で肝要と、おこがましいんですけれども、不遜ですが、評価をできる文言が列挙されています。

 他者を尊重、共に生きる、社会とのきずな、誰もが幸せを享受できる社会、どれも耳に聞こえのいい文言です。ですが、私には、きずなという、偏った美化をしてしまうおそれのあるキーワードにちょっと無理やりつなげられているようで、このきずなにマッチできない個性を排除することにつながらないか、正直、どきっとしながらお聞きをいたしました。

 人間は、いつも、いつまでも強く生きられる生き物ではありません。過ちを犯してしまう生き物でもあります。さらに、日本の現状は他国の労働力に頼らざるを得ない実態があります。

 そこで伺います。

 所信初めには明記されていない大切な文言を、これまた不遜ですが、指摘をさせていただきます。それは、多様性のキーワードです。多様という文字が確認できましたのは、罪を犯した若者の立ち直りを支えるための多様な教育の箇所、一つのみ。もちろん、法テラスを、様々に支援するという表記はございました。しかし、この最初の、冒頭の大臣の所信のところにはございませんでした。

 今、国内には、LGBTQを始めとして多様な個性を持って生きて暮らしている方々がいらっしゃいます。所信の大臣の思いの中には、これら全ての人々も包摂していると解してよろしいでしょうか。伺います。

古川国務大臣 人というものは、もう人それぞれであります。それぞれが個性を持っておるわけですね。ですからこそ、その違いをお互い認め合って、尊重し合って、助け合って生きていく、これすなわち共生社会だという思いを持っております。

 今委員の御質問、私が申し上げた他者の尊重、共生社会という言葉の中に、LGBTQの方々や外国人など含めて、これは多様性を包摂する趣旨で申し上げております。

鎌田委員 安心しました。是非その思いで携わっていただきたいです。

 では、一つ目の視点の共生社会の実現について伺います。

 互いの違いを認め、尊重し、助け合うとうたわれています。その後に続く具体的な所信には選択的夫婦別姓の言葉が見当たりません。法制審の答申等を尊重し議論すらもありません。私は非常に残念でした。

 二〇一五年、そして昨年、二〇二一年、最高裁は国会での議論を要求しています。二〇一七年、内閣府が行った家族の法制に関する世論調査では四三%が賛成と答えています。国際条約にも、今のままでは違反しています。この所信原稿をお読みになりながら、違和感や疑問は覚えませんでしたでしょうか。伺います。

古川国務大臣 済みません。今ちょっと聞き逃しちゃったんですけれども、何を読んで。(鎌田委員「所信を読んで。原稿を読んで」と呼ぶ)私のということですね、夫婦別氏の話についてということですね。済みません、失礼しました。

 それは、私が書いた、基本的に私のメッセージでありますから違和感は感じておりませんけれども、選択的夫婦別氏制度につきまして申し上げればよろしいでしょうか。(鎌田委員「はい」と呼ぶ)

 この選択的夫婦別氏制度というのは、広く国民全体に影響を与えるものでありますから、それこそ現在でも国民の皆さんの間に様々な意見があるものと承知をしております。

 ですから、この制度を導入するか否かということについては、しっかり議論がなされて、より幅広く国民の皆さんの合意というものができるのが望ましいなというふうに考えております。ですから、そういう合意が形成されるということを私も期待したいというふうに思っています。そのように考えております。

鎌田委員 ただいまの答弁であれば、この所信の中の共生社会の実現のところに、一つ項目として、私、十六年前もこの法務委員会に籍を置いておりまして、この法務委員に戻ることを目指して、十六年かかってここの衆議院に戻ってきたんですけれども、選択的夫婦別姓制度の、せめて議論をするとか、今おっしゃったような国民的な議論の形成を図っていきたいんだということはあってしかるべきだったのになという思いで今改めてお伺いしたんですね。

 再度伺います。

 私は、先ほど来伺っていれば、本当に他者を尊重して、そして共生社会を目指すという大臣の所信ですから、大臣の在任中に、一定の目指すところ、選択的夫婦別姓制度の導入について、別に私の在任中に民法改正してどうのこうのというんじゃなくて、何か一定の目指すべきところが私はきっとあるんじゃないかと期待をしたいんですが、改めて伺います。

古川国務大臣 先ほども申しましたように、この制度を導入するか否かというのは、社会に大きな影響もありますから、やはり国民の皆さんの合意ができ上がるということが大事なことであります。政府としてこうあるべきだということを何か押しつけるというようなことであってはならないわけでして。

 ですから、そこは、国民の皆さん、例えば、国会においてもいろいろな議論が行われて、各政党内あるいは政党間においてもいろいろな議論が行われて、そして国民の世論も醸成されていってという中で合意が形成されていくことを期待しております。

鎌田委員 私は、大分合意は形成をされたと思っております。法制審の答申もこれしかり、最高裁からの要求もしかり。ですので、質問はここでとどめますけれども、これからもこれは議論に臨んでいきますので、そのことは述べておきたいと思います。

 次に、名古屋入管の事案についてです。

 先ほど、大臣は最終報告書もお読みになった、それからビデオも視聴されたというふうにおっしゃっていました。だから、もちろん最終報告書に記載のあるA氏、彼女が亡くなった日は御承知だと思います。

 間もなく一年たちます。いまだに死因が曖昧で不明な状態です。なぜこのようなことになっていると大臣はお考えですか。

古川国務大臣 三月六日でございました。先ほども申しましたけれども、これはもうあってはならない大変悲しい出来事でありまして、心からお悔やみを申し上げたいというふうに思っています。

 私は、いわゆる調査報告書、それからビデオも閲覧をいたしました。大変苦しい思いで見ました。その上で、これは入管の在り方として、やはり、何か欠けているものがあるのではないか、足らざるものがあるのではないかというような感想を持ちます。そのときに、やはりこれをしっかりと点検をして、あるべき、よりよい入管行政の姿に近づけていく、そのための努力をしなければならないというふうに思っています。

鎌田委員 私がお尋ねをしたのは、これはちょっと打合せのときの通告には具体的なところでは入れていなかったので、今答弁はなかったんですけれども、いまだに彼女の死因が不明で曖昧なままなんですね。一年たつんです。何で死因がいまだに不明で曖昧なのか、なぜこんなことが起きているのかということをお尋ねしたんですけれども、続いての質問にちょっと関連をしますので、今の答弁はそのままで結構でございます。

 大臣、今、彼女のきょうだい、妹さん、日本に滞在しています。このA氏の妹さんと会える機会なんじゃないでしょうか。二度と起こしてはならない悲しい出来事と所信で述べられていらっしゃいます。今だからこそ、その思いを態度でお示しになりませんか。

古川国務大臣 御遺族との面会については、実を言いますと、私、就任後間もなく、昨年のことですけれども、面談の申入れがあったんです。ただ、そのときは日程が合いませんでした、本当に。それで面会に応じることができませんでした。

 そこで、改めて、今の委員の御質問なんですけれども、今、国賠訴訟を見据えて、証拠保全手続が裁判所で進行中であります。今後、法務大臣、国と御遺族は訴訟において対立当事者の関係に立つ見込みということになっておるわけですね。

 このような事情も踏まえて、その面談については判断をしていかなければならないなというふうに思っています。

鎌田委員 今大臣がおっしゃったとおりの見込み、見通しであることは間違いないと思います。

 ただ、今、今の時点です。就任直後は日程が合わず会えなかったということでした。今の時点ではまだ、政府や大臣、敵対関係にあるその国賠の手続に入っていないですよね。まだですよね。敵対関係はまだですね。

古川国務大臣 それは、国賠訴訟そのものはまだでありますけれども、先ほど申しましたように、証拠保全手続が進行中であるということでございます。

鎌田委員 彼女の妹さんが、あのビデオを日本の全ての人に見てもらいたい、そして岸田総理にも見てもらいたい、泣きながら訴えている彼女に、私は日本を代表できる立場じゃないけれども、ごめんなさいと伝えました。

 入管の方々は今、殺人罪で、該当する方々は裁判の中にありますから、それは司法の判断を見守るしかありませんけれども、私は、入管の職員の皆さんも、法務大臣も、同じ日本人として、根っからの悪気があって意地悪をしようとしたんじゃない、組織的に、構造的に、大臣がおっしゃったとおり、何かが足りなくて彼女を死に至らしめてしまった。

 でも、結果として死なせてしまったんです。私は、今しか、大臣が直接彼女に申し訳なかったと一言言える、その機会のときだと思うんです。

 改めて伺います。

 今しかないです。どうか会っていただきたい。伺います。

古川国務大臣 法務大臣といたしましては、様々な事情を考慮しながら対応していきたいと考えています。

鎌田委員 大臣、様々な事情を考慮しながらという御答弁の中に、きっと大臣は、御自身の政治家としての政治信条に基づいて、日本の入管で死なせてしまったという大臣の気持ちがあると私は拝察をいたします。

 申し訳なかったなというお気持ち、正直なところございますか。

古川国務大臣 日本に来たいという思いを持って日本に見えた方だったんですね。誰も悪意があってということではなかったけれども、結果としてこういう悲しい事態に至った。そして、それは、私が責任を持っております入管施設においてそういう悲しい出来事が起きたということに対して、私は心から申し訳ないという気持ちを持っておりますし、御遺族の皆さんの立場に立って考えれば、それは、愛する家族が異国の地でこういう亡くなり方をした、その心中を察するに、大変つらいものがあります。そんな思いです。

鎌田委員 今後会っていただけるかどうかは、今大臣から、申し訳ないという、入管庁も所管する法務省のトップの法務大臣として、申し訳ないという答弁をいただきましたから、会っていただきたいという願いはお伝えをさせていただいたままで、もうこれで。

 私は、この最終報告書から、日本の入管に係る仕組み、あるいは根底にある、あってはならないこと、これがきっと、大臣の先ほどおっしゃっていた、何かが足りないんだろうというものと同じではないかなと思って、先ほど来答弁を伺っていました。

 その何かが足りないことと私が感じたあってはならないこと、結局、何かお気づきにはなられてはいるんでしょうか。

古川国務大臣 それは、具体的にこれとこれというふうに列挙するわけではありませんが、やはり制度として何か不具合があるというものは、これは直感的にもちろん感じます。

 これは、入管行政に限らず、何でもそうだと思います、あらゆる制度あるいは法律においてもそうだと思いますが、それが制定される当初は、最善のものだということで制度なり法律なりができるんだと思います。しかし、時を経る中で様々な不具合が生じたり、時代が変わったり、いろいろなことがあって、そこに不具合あるいはそごだとかギャップというものが生まれてくるものだと思います。

 ですから、そのようなものに対して、やはり神経を研ぎ澄ませて、どこに問題があるのか、改めるべきものがあるならば改めなければならない、そのような姿勢を持って、私は、やはりあらゆるものについてそういう真摯な向き合い方をせねばならないと思っています。

 そのような考え方に基づいて、お尋ねの件につきましても、具体的にこことここというふうに限定的に言うわけではありませんけれども、やはりどこかに制度としても改善すべきところがあるのだ、それをきちっと点検をし、見極めていかなければならないというふうに思っているところです。

鎌田委員 また不遜ですけれども、私が一言で申し上げるならば、人権意識が甚だしく欠如している。これが足りない。そして、具体的なことはいろいろあると思いますが、被収容者への医療的なケア、これが現状から大きく改善しなくちゃならない大きなテーマだと私は考えております。大臣の所信にも、改善項目全てを着実かつ迅速にというふうに述べられてあります。

 そこでなんですけれども、この名古屋入管のことを、二度と起きてはならない悲しい出来事と表された大臣にちょっと伺いますが、長崎は大村の入管、ここで、三年前に左股関節にけがをして、同じく三年前に大腿骨頭壊死の診断を受けた三十九歳のネパール人の男性の件は、大臣、御承知でいらっしゃいますか。

古川国務大臣 今お尋ねのネパール人被収容者に関しましては、入管庁から必要な報告を受けておりますし、現状についても承知いたしております。

鎌田委員 必要な報告を受けているという御答弁でしたけれども、改めて申し上げますと、この当該者なんですが、二年前からほぼ寝たきりです。車椅子の日常です。昨年の秋からは自力での排せつは不可能になっています。一年半で体重は十三キロ減少しています。そのような中で、身体表現性障害、詐病の見立てもなされて、適正な医療措置が受けられていないというのが現状であります。

 食欲や体力が落ちていく中で、本人の希望とは真逆のリハビリテーション続行です。これは、名古屋入管の彼女が体が痛くてしようがないのに無理やりリハビリをさせられているときの、あのビデオの様子を思い出させてしまうんです。

 大腿骨頭壊死です。つまり、細胞が腐って死んでいってしまっています。万が一にも、当該被収容者が足を切断する、足を片足失う、そのようなことに万が一にでもなったら、私は、法務委員に籍を置いている一人として、本当に後悔をしてもし切れない。今すぐに、大村入管から今介護施設に移っている当該被収容者への適正な医療の措置を行うべきです。大臣のお考えをお示しください。

古川国務大臣 事実の認識に相違があるように思います。このネパール人の方ですけれども、リハビリのために今介護施設に入所しているというのではなくて、これは要介護、介護が必要であるがゆえに介護施設に今入所しているということであります。

 それで、今大腿骨頭壊死というふうな話もなさいましたけれども、入管としては、体調不良を訴える被収容者に対しましては、訴えの内容あるいは症状等に応じて、やはりこれは必要な診療、治療を適時適切に受けさせております。このように私は認識しています。

 先ほど来、委員御指摘ですけれども、若干事実の認識に相違があるということを申し上げたいと思います。

鎌田委員 大臣、おっしゃっちゃいけないことを私はおっしゃったように思いますよ。要介護だから、今介護を必要としているから介護施設なんだと。それを言っちゃ、私はいけないと思う。介護が必要な状態に、この三年間、入管で放置されていたんですよ。本来なら、三年前に適切な医療のアプローチ、医療の措置が行われていたら、自分で排せつができなくなる、寝たきり、足が動かない、そのような状態、介護が必要になる状態になんかならなかったんですよ。

 だから、気づいたんだから、気づいた今、当該被収容者の希望どおり、大学病院などの総合病院で大腿骨頭壊死の根治治療に向けた医療的ケアを行うべきだと思います。再度答弁を求めます。

古川国務大臣 プライバシー等の問題がありますから詳細な事実についての言及は差し控えますけれども、委員御指摘のその被収容者につきましても、複数の医師の診察を適時に受けさせた上で、その診察結果に従った医療的対応を行ってきております。

鎌田委員 これで最後にいたしますが、二つ伺います。

 一つは、日本の入管の決まりには、医療的ケアを必要としている被収容者を診療する庁内の医療の考え方、そこに根治治療はしないという方針が存在しているんでしょうか。実は、今申し上げました当該被収容者の庁内の医師が外部の病院に対して紹介状を書いています。その紹介状には、根治治療は行わないとしているのでということが記載されています。それを一つ伺います。

 そして、最後に……

鈴木委員長 鎌田君に申し上げます。

 申合せの時間が経過をしておりますので、御協力をお願いいたします。

鎌田委員 はい、分かりました。

 じゃ、以上で終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 御答弁、いいですか。(発言する者あり)

 鎌田君。

鎌田委員 では、根治治療を行わないという方針が存在しているのでしょうか。

古川国務大臣 そのような規定は存在しておりません。

鎌田委員 分かりました。では、そのように、基づいて、入管の方で対応をお願いいたします。

 以上で終わります。

鈴木委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属の鈴木庸介です。

 まずは、今ちょうどウクライナは午前の三時三十八分ですかね。今日、この国会中継を、現地の在留日本人の皆様、かなりの数が御覧になっていらっしゃいます。お名前を出していい方とすると、高垣さん、本当に今日はどうもありがとうございます、早朝にもかかわらず。電気を消した暗い部屋の中で御覧になっている皆さん、地下室で御覧になっている皆さん、この絶望的な状況の中で、皆さんが少しでも希望を持っていただけるように一生懸命質問をいたしますので、どうぞ応援よろしくお願いを申し上げます。

 まず、大臣にお伺いをいたします。

 ウクライナ情勢についての現状は、どのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

古川国務大臣 これは総理も述べておられるとおり、今回のロシアによる侵略は、力による一方的な現状変更でありまして、そういうものを認めないという国際秩序の根幹を揺るがすものであります。欧米を始めとする国際社会と連携して、迅速に対処する必要があると認識しています。

鈴木(庸)委員 今ウクライナにいらっしゃる皆さんの御自宅の近くでも、やはり迫撃砲が炸裂したり、ずっと機関銃、自動小銃の音がしているような状況なんですけれども。

 もう一度、大臣にお伺いいたします。

 今後どうなると。この後の展開、今後悪化するのか、それともよくなるのか、大臣の見通しと、あと、これは人道的に大変厳しい状況であるという認識でいらっしゃいますでしょうか。その点をお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 今後の展開については、私からなかなか申し上げることは難しゅうございます。

 しかし、事態は、これは人道問題である、人道上の重大な問題が今進行中であるという認識です。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 人道的な問題であるという認識を共有していただけているということが大変重要な点かと存じます。

 それでは、まず、邦人保護についてお伺いをいたしたいと思います。

 邦人保護について、これまでどのような対応を取ってきましたでしょうか。外務省が注意喚起、渡航自粛、退避勧告を出した日と、その連絡先の数、教えていただけますでしょうか。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアによるウクライナ侵略を受け、在ウクライナ日本国大使館より、ウクライナ滞在中の邦人に対して、連日、領事メールを発出しております。

 お尋ねの在留邦人に対する注意喚起、退避勧告でございますけれども、政府は、まず一月二十四日、ウクライナ全土に渡航中止勧告を発出するとともに、商用便を利用した早期の出国を強く呼びかけております。また、二月十一日、ウクライナ全土に退避勧告を発出し、民間商用機を含む最も安全な方法で直ちに退避することを勧告しております。

 これらの危険情報を発出するとともに、先ほど申し上げたとおり、在ウクライナ日本国大使館からは、これまで、在留邦人に対し直ちに出国を呼びかける領事メールを累次にわたり発出するとともに、館員総出で全在留邦人に個別に電話連絡を行うなど、粘り強く退避の呼びかけを行ってまいりました。

 引き続き、政府として、現地の情勢を踏まえながら、在留邦人の安全確保に最大限取り組んでまいります。

鈴木(庸)委員 そこから何人、ウクライナ人が日本に入国していますでしょうか。

安東政府参考人 政府の方から退避を呼びかけてからということと理解いたしましたが、ウクライナの方が日本に何人入国されているのかということについて、具体的な数は承知しておりません。

西山政府参考人 委員のお尋ねが、外務省が退避勧告を発出した後のウクライナ人の入国数ということでございますれば、発出したのが本年二月十一日でございまして、昨日二十八日までの間に、ウクライナ人の入国者数は、速報値でございますが、三十七人、このうち新規入国者が十六人、再入国者が二十一人となっております。

鈴木(庸)委員 退避勧告をウクライナ国内にいらっしゃる在留邦人の皆さんにお伝えしたということなんですけれども、御案内のように、これは百二十人で頭打ちになっているんですね。

 この百二十人で頭打ちになっている理由というのも極めて明確にありまして、例えば、ある方は、現地のウクライナ人の奥様と御結婚されています。結婚してからこっちに戻ってきていないんですね。ですから、日本では婚姻届を出しておりません。現地のウクライナ人の奥様との間にお子さんもいらっしゃる、そしてその奥さんの連れ子もいらっしゃる、この人たちを置いて俺は国を出られないよという方がいらっしゃいます。

 ほかの方は、自分の奥さんはウクライナ人、日本で婚姻届も出しているから奥さんは連れてこられるけれども、それについて外務省の現地に確認したら、その奥さんの両親は駄目だよ、連れてこられないよと。いや、それは、女房と自分の家族を置いてこの国から出ることができないよ、それで残っているんです。

 こうした状況を踏まえた上で、二月二十五日、岸田さんがおっしゃっていらっしゃるのは、ウクライナ在留邦人の安全確保のため全力を尽くします、ウクライナの在留邦人に対しては、これまで累次にわたり退避を呼びかけてきた結果、二月二十三日時点で、ウクライナ人の御家族をお持ちの方など、自らウクライナ残留を希望される方が百二十人となっております。

 これは総理にしっかり情報を上げていますか、外務省の皆さん。この国難ですから、いろいろな情報が入ってくると思うんですけれども、まず、これは自己責任論になっているんですよ。こちらの、日本政府の制度の不備なのに、自己責任論になっている。このことをまず申し上げたい。

 今日、別に、政府の姿勢を責めるとか外務省の姿勢を責めるとか、そういったことを責めるとか、そういうつもりで立っておりません。一人でも多くのウクライナ人の皆さんに、これは本当に命のビザですから、この命のビザをどうやってお渡しして、この日本に連れてくることができるか、少なくとも命を助けることができるのかという視点で申し上げたいと思います。

 一つ目。日本の難民制度について、概要を教えてください。

西山政府参考人 まず、難民の定義でございますけれども、入管法第二条三号の二におきまして、難民とは、難民の地位に関する条約、いわゆる難民条約の一条の規定又は難民の地位に関する議定書第一条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいうというふうにされております。

 そこで、難民条約上の難民でございますが、その規定は、基本的に、「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であつて、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」をいうというふうにされております。

鈴木(庸)委員 その視点から基づくと、ウクライナ人に対してはその基準が適用されますか。

西山政府参考人 日本に退避してきたウクライナ人の方々から我が国において難民認定申請がなされた場合には、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づいて、難民と認定すべき者を適切に認定するということになりますので、個々の方々の事情に応じて、難民に認定できるかどうかということが判断されるということになります。

 また、難民条約上の難民とは認められない者であっても、本国情勢等を踏まえ人道上の配慮が必要と認められる者については、我が国への在留を認めることとしております。

鈴木(庸)委員 となりますと、今御案内のように、難民の認定率は〇・四%、この枠組みの中でいってしまうのかなと私は大変強い危惧を覚えております。

 ここで、ちょっと資料を一つお配りをさせていただいているんですが、御覧いただけますでしょうか。

 こちらの一枚目の方が、ウクライナ周辺国の難民への対応。ポーランドに関しては、ここに、乗車券の無料化とか、PCR検査を不要にしたとか、必要書類が足りなくても柔軟に対応する。極端な話、もう何も持ってこなくてもとにかく入ってきてくれと。PCR検査は要りませんね。あと、犬とか、こういう自分のペットも検疫なしで取りあえず持ち込むことができる。

 裏を見ていただくと分かるんですけれども、これはポーランド政府が作った難民のサポートアプリです。ウクライナを助けよう、これはポーランド語の直訳になるんですけれども。

 これは一枚目で、あなたはまだウクライナ国内にいますか、それとももう国外に出ていますか、出ていたら、どんなサポートが欲しいですか、どこに泊まりたいですか。これは、クリック、クリック、クリックするだけで全て必要なサポートが受けられる、すばらしいアプリなんです。

 もう一つの項目もあって、自分たちが、サポートしたい側が、何ができるのか。例えば、個人ならば、医療を提供する、食料を提供する、住居を提供する、企業ならば、何人雇えるのか、そこまで踏み込んでこのアプリから全て対応することができるんです。

 また裏に戻りますが、スロバキアもルーマニアもモルドバもハンガリーもドイツも、そしてアメリカも、ウクライナ難民に対して多くの政策を取っています。

 その上で、改めてお伺いをいたします。

 日本は、ウクライナ難民に対して今何をしていますか。

西山政府参考人 先ほども申し上げましたが、ウクライナ人の方が本邦において難民認定申請を行ったという場合におきましては、先ほど申し上げたとおり、事情に応じて適切に対応いたしますし、また、仮に認められないという場合であっても、人道上の配慮で在留を認めるというような取扱いをしたいと思っております。

鈴木(庸)委員 一緒にこの翻訳をやってくださったポーランド人の方がいらっしゃるんですけれども、何でポーランドはここまで一生懸命やるのかと聞いたら、いつ自分たちがそうなるか分からないからと。自分たちが攻められたときにほかの国が私たちのことを助けてくれるようにするためには、ここまで踏み込んだサポートをしておかないと、将来的な自分たちの国の国益に合致してこない、だからポーランドはここまでやるんだ、そういう言い方をしていらっしゃったことが大変印象に残ったということをまずもって申し上げたいと思います。

 それで、とにかく、チャーター機についてはポーランドと少し交渉が進んでいるということで伺っていますけれども、まずは、このチャーター機が飛ぶポーランドまで行けなかった人たちのこと、昨日の夜お電話いただいた日本人の方は、奥様が足をけがしてしまって、千キロ、ポーランドの道を行くことはできない、どうすればいいんだという御相談もいただいておりますが。

 行けなかった場合、当然、自衛隊、飛行機を飛ばすというような事態も検討されるかと思うんですけれども、まず、自衛隊法の八十四条について、防衛省の方に御説明いただけますでしょうか。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 在外邦人等の輸送について規定した自衛隊法八十四条の四の下で、防衛大臣は、外務大臣から外国における緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があった場合において、予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、輸送を安全に実施することができると認めるときは、邦人の輸送を行うことができるとされております。

 また、条文上明記はされておりませんが、国際法上、一般に、自衛隊を他国の領域に派遣する際には、派遣国の同意を得る必要があります。

 その上で申し上げれば、ウクライナ在留邦人の退避に当たっては、政府として様々な選択肢を検討する中で、委員からお話もありましたように、ポーランドから他の国へ移動するためのチャーター機の手配を既に済ませているものと承知しております。

 政府としては、邦人の安全確保に最大限取り組んできておりまして、防衛省・自衛隊としても、外務省を始めとする関係省庁と緊密に連携を取りつつ、情勢の推移に応じて適切に対応してまいります。

鈴木(庸)委員 この八十四条の三項と四項には外国人という言葉が大分、何回か出てくるんですが、この外国人にはウクライナ人も含めるという理解でよろしいでしょうか。

大和政府参考人 外国人は外国人でございまして、日本人以外の国籍を有する者ということでございます。

鈴木(庸)委員 そうしますと、解釈として、大変、今この現況で自衛隊機をウクライナ国内に飛ばすのが厳しいということは私も当然認識しておりますけれども、仮に飛ばした場合、国内であろうと国外であろうと、在留邦人の皆さんが自分の家族を連れて、その自衛隊機にウクライナ人と一緒に乗ることができるという理解でよろしいですね。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 これも一般論になりますが、八十四条の四の下で、防衛大臣は、邦人輸送の際に、外務大臣から当該緊急事態に際して生命若しくは身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者を同乗させることができるとされております。

 委員お尋ねのような、日本国籍を有していない邦人の家族や親族等の外国人についても、この条文の下では、外務大臣から防衛大臣に対して依頼があれば、自衛隊機に同乗させることは可能であります。

鈴木(庸)委員 踏み込んだ答弁、どうもありがとうございました。少し安心しました。

 次、これはチャーター機についても同じ理解でよろしいでしょうか。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 もちろんそのときの状況によりますけれども、基本的に委員の御理解のとおりだと考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 本当にありがたいと思います。今、本当に地下室で不安な思いをしていらっしゃる日本人の在留邦人の皆さんが、取りあえずウクライナからポーランドまで抜けることができれば、家族と一緒に抜けることができれば、そこで日本のチャーター機に乗って、取りあえずの生活が保たれるという安心を少しでも与えることが今できたということは、本当にすばらしいことだと思います。ありがとうございます。

 こうして、多くのウクライナ人の皆さんを日本に連れてくる。多くといっても、僕の勝手な積算ですけれども、マックスで二千人ですよ、せいぜい。マックスで千五百から二千人ぐらいです。これは二千人と仮定をさせていただきます。

 ここで、当然ビザの話になってくると思うんですけれども、まず、今日から水際対策強化に新たな措置が始まっておりますが、ここにウクライナは、対象国になっていますでしょうか。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナも、当然、水際措置の対象となっております。これは、日本人の方、外国人の方、それぞれ同様でございます。

鈴木(庸)委員 五千人の枠がありますね、今。これは五千人の枠の中ですか、それとも五千人の枠の外ですか。

本田大臣政務官 お答えいたします。

 海外で緊急事態等が発生した場合には、希望する在留邦人が帰国できますように、これまでも政府全体として適切に対応してまいりました。

 そして、ウクライナの流動的な現地の情勢の中におきましては、政府として、あらゆる事態に備えつつ、引き続きまして、御指摘の点も踏まえまして、在留邦人の安全確保に最大限取り組んでいくということでございます。

鈴木(庸)委員 結論はどっちなんですか。枠内ですか、枠外ですか。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 枠内か枠外かということであれば、枠内でございます。

 ただし、これまでも、アフガニスタンであるとかミャンマーであるとかインドネシアであるとか、現地の情勢が悪化した、ないしはコロナの感染状況が悪化したということで、邦人の帰国の際には、これを関係省庁と協議した上で、その枠とは違う形で扱ってきております。今回、同様の状況が生じるのであれば、そのような検討が行われるということになろうかと思います。

鈴木(庸)委員 機関銃の音が聞こえている人たちに対して、関係省庁と協議というコメントが、大変私には違和感を感じるんですけれども。

 五千人の枠、これは分かります。どういう根拠で五千人かというのは、これはここで話す話じゃないですけれども。でも、ここが、この五千人の枠に、例えば先ほど申し上げた在留ウクライナ人、この後で今日本にいらっしゃるウクライナ人の家族の方の命のビザについても論じさせていただきたいと思うんですけれども、質問させていただきたいと思うんですけれども、この方々に、五千人の枠の中でやってくれという。

 昨日通告して、ちょっとお話ししたときは、前向きな回答をいただけるというお話だったんですけれども、五千人の枠以外についても柔軟に対応していくと。柔軟に対応していく、だから、これは大丈夫かなと思って僕は安心していたんですけれども。

 ちょっと、もう一回説明していただけますか。先ほど、大臣に一番最初にお伺いさせていただいたのは、人道上のお話。この人道上のお話という認識は皆さん共有されていると思います。でも、人道上のお話なのにもかかわらず、五千人の検疫。これは、人の命と検疫体制の維持と、どっちが大事なのかという話ですよ。

 だから、もう一度教えてください。五千人の中なのか、その外なのか。外だと断定できないならば、弾力的に外で運用することも含めて検討するというところまでは言っていただかないと、皆さん安心してポーランドに来れませんよ。ポーランドまで来て、五千人の枠の中に入らないから、済みません、あなたは飛行機に乗れませんよ。どうするんですか。そういう感覚でやっていただきたいんですね、こういう状況だから。お願いします、答弁。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、五千人の枠内だということを申し上げました。そのような状況になった場合については、先ほど、アフガニスタンであるとかミャンマーであるとか、そういう例を申し上げましたけれども、それは枠外で別途検討しております。

 例えば、今、水際においては、事前にPCR検査を受けてきて、その陰性証明書を持っていただくとか、そういうふうなことになっておりますけれども、これについても、もし現地でそういうことができないということであれば、それの代替措置を検討する、そういうことになろうかと思います。

古川国務大臣 今起きておることは人道上の重大な懸念のある出来事でありまして、ある意味、一刻の猶予も許さないような事態だというふうに思っております。

 先ほど来、政府参考人からの答弁がありますけれども、この対処については政府全体で今動かしているところであります。ですから、政府参考人としては、なかなか思うところを言えないつらさがあったというふうに御理解をいただきたいと思います。

 いずれにしましても、大事なことは、この非常事態において、庇護を要する人に対して、我が国はきちんとそれを受け入れるということに尽きます。家族、邦人、現地の邦人はもとより、その御家族についても、それは最大限の努力をして受け入れるんだということははっきり私の責任において申し上げたいと思います。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。大臣の答弁に心から敬意を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 ポーランドまで行けば、家族と一緒に安心がある、この答弁が、今ウクライナ国内からこの質疑を聞いていらっしゃる日本人の、邦人の方々にどれほど勇気を与えたのかと思います。ありがとうございます。

 具体的なところになってくるんですけれども、ビザは、取りあえず短期滞在というような理解でよろしいんでしょうか。

 これは、外務省マターが法務省マターを少し上回るというか、どちらかというと外務省マターでビザが進んでいく話なのかなという理解をしているんですけれども、たてつけとしては、短期滞在でまず入ってもらって、そこから九十日を過ぎたら特定活動に移行していく、それで政情が安定するまである程度国内にいていただけるような、そういったやり方ができるのではないかと僕は思っているんですが、その辺の御見解を、外務省、お伺いできますでしょうか。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の状況におけるウクライナの国籍を持たれている方へのビザの発給でございますけれども、その状況に応じて、また申請者がどのような形での滞在というのを希望されるのかという個別の事情に応じて、ビザの発給について検討するということになろうかと思います。

鈴木(庸)委員 御案内のように、短期滞在のビザを発給するには、国内からのインビテーションと、あと旅程表だけでいいはずです。極端な話、僕が二千人に書いてもいいわけですよ。

 紙一枚なんです、紙一枚。紙一枚のビザで人の命が助かる。ですから、そこに関しては、出すと。もちろん、日本人の関係者が当然のことながらインビテーションを出すとか、一枚かんでいないと駄目ですよ。それは当然の話ですよ、これはビザですから。でも、これは日本人が一枚かんでいれば、要件を満たせば。

 なぜ僕がこんなことを申し上げるかというと、在ウクライナ日本邦人の皆さん、先ほども申し上げましたけれども、本当にウクライナ人に短期滞在を出してほしいんだ、外務省にお願いしたけれども、いや、御両親はねとずっと言われて、断られ続けてきたと。だから、今、皆さん、電気を消しているんですよ、部屋の中で。

 短期滞在のビザが、しっかりと受けてくれると、取りあえず、これからロジの話、ちょっと時間がなくなってきましたけれども、ロジの話もしたいんですけれども、ポーランドまで抜けて、ポーランドで外務省なり入管庁のロジの方がいらっしゃってそこでビザを発給するのか、それとも、飛行機に取りあえず乗せて、国の中で、日本の空港で発給するのか、もうどっちでもいいんです。方法論はどっちでもいいんですけれども、とにかくこのウクライナの短期ビザに関しては、人道上の理由ということで、日本人が一枚絡んでいれば出していただきたい。

 そういう判断、なかなかできないと思うんですが、外務政務官、御答弁願えますでしょうか。

本田大臣政務官 お答え申し上げます。

 ウクライナの現状に鑑みますと、できる限り多くの邦人関係者の退避を可能とするために、日本人の配偶者及び子、そのほか人道上配慮すべき事情のある日本人の親族についても、迅速な入国を認め、ビザを発給をしていくということでございます。

 現在、在ウクライナ大使館及びリビウの連絡事務所は規模を縮小しておりますが、邦人保護を中心に業務を継続しております。日本人の配偶者及び子供等のビザの申請は、リビウ連絡事務所で受け付けております。また、日本人の配偶者の親族等についても、ウクライナ周辺国を含む第三国での申請が可能となっている、そういう状況でございます。

鈴木(庸)委員 踏み込んだ御答弁をどうもありがとうございました。

 同じように、今日本にいらっしゃるウクライナ人の皆さん、この皆さんが、インターネット上を見るとありとあらゆる情報が出てきてしまっていますから、もう本当に、両親が連絡が取れないとか、国にどうやって、連絡が取れないとか、死んでいるんじゃないか、生きているんじゃないかと。この皆さんも本当に呼びたがっている。先ほど、千五百から二千と申し上げたんですけれども。

 まずお伺いしたいのは、今、在日ウクライナ人の人数と、そのビザの内訳についてお伺いできますでしょうか。

西山政府参考人 本邦に在留するウクライナ人の人数でございますが、速報値ではございますが、令和三年十二月末時点で千九百十五人。在留資格の内訳でございますが、永住者が九百四十七人、日本人の配偶者等という資格が二百六十六人、技術・人文知識・国際業務という資格が百九十三人などとなっております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 この皆さんが、やはり御両親とかお子さんとかを日本に呼びたいということで、こっちの外務省に連絡すると、いや、水際の対策の関係で今短期滞在を受け付けられないんだよ、全部突っぱねられているんだ、そういうお話をずっと聞いています。

 ここでその手続上について外務省をどうこう言うつもりはないんですけれども、この皆さんについて、人道上の理由から、まず、別に彼らは、日本にお金を払ってくれとか言っているわけじゃないんですよ、飛行機に乗せてくれと言っているわけじゃないんですよ。自分でウクライナの国外から出て、自分で飛行機に乗ってくるから、紙一枚、ビザだけ出してくれと言っているんです。こっちで彼らは、自分の親戚の保証はするわけですから。

 この皆さんからビザの申請があったときに断らないでいただきたいと思うんですが、これは法務大臣に御答弁いただけますでしょうか。先ほど、人道という視点からも大変踏み込んだ答弁をいただいたんですが、この皆さんに対して、日本で当然、保証人とかそういうのはしっかりしている人たちですから、この人たちの家族についても、まず受付を断らないでいただきたいというところをお願いしたいんですけれども、答弁いただけますでしょうか。

古川国務大臣 ビザの発給については法務大臣の所管外でありますから、私からお答えすることはできません。

 しかし、その後の受入れについては、先ほど入管の次長からもお答えしましたけれども、仮に難民と認定されなかった場合であっても、人道上の配慮から我が国の在留資格を付与するというふうに、積極的に、前向きに対応するつもりでおります。

鈴木(庸)委員 ありがとうございました。

 とにかく短期滞在のビザ、これは当然、ビザですから人によって違うとは思うんですけれども、でも、今現状では受けてももらえない、それが最大の理由となって多くの在ウクライナの日本人が国から出られないという状況があったことだけは皆さんに強く認識をしていただきたい。これを解決するためには、短期滞在のビザ、これを積極的に出していく。

 どんなときでも日本政府はあなた方とあなたの家族は見捨てませんよ、そして、今日本にいらっしゃる在日ウクライナ人の皆さんの御家族も、今生きるか死ぬかのところになっているわけですから、この皆さんについても、紙一枚をけちらず、しっかりと助けていただきたいとお願いを申し上げまして、私からの質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党、栃木県第四区の藤岡隆雄でございます。

 本日、法務委員会におきまして初めての質問となります。本当に地元の皆様に心から感謝を申し上げ、そして、この質問の機会を与えてくださった先輩各位、心からまた感謝を申し上げたいと思います。

 まずもって、冒頭、今、ロシアの侵略に立ち向かうウクライナの皆様に本当に心からのエールを送りたいと思います。私も今日、手作りで仲間が作ってくれたこの国旗、ウクライナと日本の国旗のバッジを両方につけてまいりました、こちらとこちらに。本当に心からのエールを送らせていただきたいと思います。

 大臣所信に入る前に、私もこのウクライナ問題に関しての質疑からさせていただきたいと思います。今、同僚の、同期の鈴木庸介議員から本当にすばらしい質疑がございました。重なる部分もあるかもしれません、できるだけ重ならない部分におきまして質疑をさせていただきたいと思います。

 先ほどからあります人道上の受入れ、まず、今、制度として、先ほど大臣、政府としても検討されているという話もございました。その検討、その前に、今すぐに、当然、いらっしゃるウクライナの方に対して、人道上の在留許可についても、本当に温かく保護して在留許可をしていただきたいと思いますけれども、大臣の御見解をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、熊田委員長代理着席〕

古川国務大臣 お答えをいたします。

 ウクライナから我が国に避難を希望されるウクライナ人の方から上陸申請がなされた場合には、入管庁において、個々の置かれた状況に十分配慮しながら、発給された査証に基づき、本邦への上陸を速やかに認めることといたします。

 法務省としては、この避難される方々の我が国への受入れについて、関係省庁と連携の上、早急に検討し、積極的かつ適切に対応してまいります。

 また、本邦に入国されてきた方について、入国後においても、本国情勢等を踏まえまして、個々の置かれた状況等にも配慮しながら、その活動内容に応じ、在留資格について適切に対応してまいります。

藤岡委員 ありがとうございます。

 大臣からまた、先ほど来力強い御答弁もいただいておりますが、その早急に検討、これはちなみに、いつまでに検討していただけますでしょうか。

古川国務大臣 もう極めて早急にです。

藤岡委員 ありがとうございます。本当に極めて早急に、是非、リーダーシップを発揮して、お願いをしたいということを思います。

 続きまして、難民の認定の話でございます。

 先ほど来、申請者ごとに判断というお話がございました。そして、難民認定ができない場合にも、在留許可というような話もございました。ここは、在留許可ということですと、難民認定と違いまして、受けられる支援というのがやはり異なってきてしまうという問題がございます。改めて、この難民認定、個々の申請者ごとに判断されるという枠組みが続いてしまうのであれば、先ほど来出ております難民認定にできない場合の、在留許可をされる方に対しても、支援を当然考えていかなければいけない話だと私は思います。

 今、政府として、先ほど制度としての受入れを検討されている、極めて早急にという話がございましたから、これは極めて早急に検討していただきたいと思うんですけれども、もし、申請者ごとの判断の中で、これは通告しておりますけれども、難民認定が万が一できない場合の、在留許可をされた方に対する支援、これを是非お願いしたいと思うんですけれども、これは外務省の副大臣に御答弁をお願いできればと思います。

小田原副大臣 お答え申し上げます。

 ウクライナから避難される方々が迅速かつ適切に保護されることが重要であります。今後のウクライナ情勢等を踏まえつつ、個々のウクライナ人の方の置かれた状況などにも配慮しながら、外国人の在留支援を所掌する出入国在留管理庁を始めとする関係省庁と連携の上、引き続き適切に対処していく所存であります。

藤岡委員 難民認定されない場合の支援について、検討をしていただけるということでよろしいんでしょうか。

小田原副大臣 関係省庁と連携の上、引き続き適切に対処してまいります。

藤岡委員 対処というのは、検討をされるということでよろしいんでしょうか。

小田原副大臣 対処は対処であります。

藤岡委員 非常にちょっと、また不安に思うような話ではございますが、これは本当に、陸続きではないから何か人ごとのように思うというふうな対応であっては私はいけないと思うんです。やはり、陸続きではなくても、今大変侵略を受けているウクライナの国民の方が日本に来られた場合に、本当に適切な、本当に手厚い保護を是非していただきたいと思うんです。

 といいますのも、先日も、私もちょっとお世話になっている方からも御相談いただきまして、本当にやむを得ない事情でウクライナに滞在をしていた、何とかポーランドとの国境を越えたと。先日、本当に二、三日前でございますが、何とか越えられたと。領事館の皆様にも御協力をいただき、これは本当に心から、邦人の保護に努められている最前線の方に、外交官の方に敬意を表したいと思いますけれども、その中でも、国境を越えるまでの間、ウクライナの皆さんの温かい支援もいただき、何とか国境を越えることができたという話もいただいております。陸続きじゃなくて、遠くの話じゃなくて、日本人も、ウクライナの皆さんにも本当にお世話になりながら、何とか国境を越えているというような実態もあります。

 是非、適切な支援、最後にもう一度、外務副大臣、お願いしたいと思います。

小田原副大臣 委員の人道心にあふれた温かみのある御懸念、私個人としても共感するところ大でありますし、受け止めたいというふうに思います。

 その思いも踏まえた上で、適切に対処をしてまいります。

藤岡委員 最大に思いを酌んでいただき、得た答弁につきまして、本当に感謝をまず申し上げたいと思います。

 是非これから、先ほどの古川大臣のリーダーシップの下、極めて早急にどうかお願いをしたいということを思います。

 続きまして、先ほど来ビザの話が出ております。思い切ってビザなしの入国を認めることはできないんでしょうか。

小田原副大臣 お答え申し上げます。

 我が国は、現在、六十八か国・地域に対し、短期滞在に係る一般旅券の査証免除措置を実施をしていますが、現在は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けまして、水際対策措置の一環として、査証免除措置の効力を原則一時停止をしています。

 一般的に、査証免除は、我が国の治安等への影響や相手国・地域からの要望等を踏まえ導入を検討することとしています。現在のウクライナ情勢を踏まえつつ、査証免除での受入れを含め、ウクライナ国籍者の受入れについていかなる対応ができるかを関係省庁と協議していきたいと考えております。

藤岡委員 今、本当に大変、査証免除を含めて検討していただけるというふうな前向きなお話もいただきました。これは是非、副大臣、査証免除も含めて、力強く、御検討する、やっていく、御決意をちょっとお願いしたいと思うんですが、よろしいでしょうか。

小田原副大臣 再度申し上げますけれども、委員の、その喫緊の、人としての危機に手を差し伸べるべきだという思い、責任を持って受け止めまして、関係省庁とよく打合せをして、対処してまいります。

藤岡委員 是非早急にお願いをしたいということを思います。

 実は、副大臣、昔、私、前に勤めていた職場でお目にかかったことがあったときに、温かいはがきをいただいたこともあって、本当にそういうお気遣いをされる方ということも私は実は思っております。是非、その気持ちも酌んでいただき、早急に御検討を、そして実行をお願いしたいということを思います。

 続きまして、ロシアの侵略に対する断固とした対応につきましての話に入らせていただきたいと思います。

 現在、安倍元総理がプーチン大統領に提案をした協力プランというのがあるはずでございます。この侵略という状態があり、そして断固として容認できないという立場を政府も発信をしながら、一方で協力をしているこの状態、私はこれは非常に、ある意味で異様な状態というふうに思います。

 この協力プラン、中止、もしできなくても停止、少なくとも。できないんでしょうか。経済産業副大臣に最初に御答弁いただき、外務副大臣にお願いをし、そして最後に、閣僚の一人として古川大臣にお願いをしたいと思います。お願いします。

石井副大臣 お答えいたします。

 今般のロシア軍によりますウクライナへの侵略は、これは強く非難されるべきものでありまして、断じて認められない、この立場でございます。我が国の安全保障の観点からも決して看過できない、こういう点をまず強調させていただきます。

 その上で、経済産業省といたしまして、まずは米国及び欧州諸国との連携を行いながら、ロシア向け輸出に関する制裁など、今回の事態の対処に専念をしてまいります。

 その上で、御質問にございました八項目の協力プランの扱いについてでありますが、米国や欧州を始めとするG7などとの国際連携や、ウクライナをめぐる情勢変化も踏まえながら検討してまいりたいと存じます。

小田原副大臣 委員に、まず、私が出したはがきのことを覚えていただいていること、大変感激をいたしました。実は、二十年ほど前からでしょうか、議員になる前から、私は、お恥ずかしながら、名刺交換をさせていただいた方には例外なく、手書きで一言添えて、自分で署名をしたおはがきを出させていただいております。これも何かの御縁でありましょう。

 お答えを申し上げます。

 国際社会は、ロシアの侵略により、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはもはやできないと考えています。我が国としても、ロシアとの関係で新たな経済分野の協力を進めていく状況にはないと考えています。

 他方、今回の事態を受け、関係する日本企業には様々な影響が及ぶことになります。したがって、その対応など、検討すべき事項が残されています。経済産業省と協力しつつ、適切に取り組んでまいりたいと存じます。

古川国務大臣 岸田総理も、今回のロシアによるウクライナ侵攻、これは明白な国際法違反であり、我が国として強く非難をしています。そして、今回の事態を受け、既に明らかにしている制裁措置に加えて、これを強化する、制裁措置を強化するというふうに強い意向を示しております。

 法務省としても、この政府方針に従って、関係省庁と連携し、一体となって、適切に向き合っていきたいと思っています。

藤岡委員 ありがとうございます。

 先ほど経済産業副大臣からの御答弁がございました、米国と連携、またいろいろな諸外国との連携という話もございました。もちろん連携をすることは大切なことでございます。一方で、ロシアとの関係は二か国間の話だと思います。その中で、もちろん連携もしつつでございますが、日本としての意思も、きちっとやはり示していくべきだと私は思うんです。検討をされているという話もございました。

 これは、少なくとも、ロシア側に対して、とてもつき合えないよ、そういう話はされているんでしょうか。副大臣、お願いしたいと思います。

石井副大臣 お答えいたします。

 ロシアとこの件に関しまして具体的な話をしているかというお尋ねでございますが、現時点におきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、経済制裁、この件に関して、更に一段と踏み込むといった総理の御答弁もありまして、G7、ほかの各国との国際的な連携をより強めていく。一方で、ウクライナの情勢が刻々とこれからも変わっていく、その動向も踏まえながら、全体といたしまして、今は制裁の方に向かっているということは御承知のとおりでございます。

 その上で、二国間の大きな問題でございます八項目の協力プランの扱いにつきましては、そういった動向も踏まえ、そういう現在の我が国の立場、それをしっかりと維持をしながら、全体としてしっかりと検討していく、こういう立場でございます。

藤岡委員 経産副大臣、これは伝えたんでしょうか、ロシアに対して。何か、この侵略に対して、協力プラン、もうとてもこれは続けられないよと伝えたんでしょうか。その点、いかがでしょうか。

石井副大臣 今の御質問の点に関しまして、ロシア側と話合いをしているかという点に関しましては、現時点では、私ども、そういう動きはしていない。まずは、今、経済制裁の方に力を入れて国際連携の下で対応している、こういう状況でございます。

 今後、そういった動向も踏まえながら、検討はしてまいりたいと思います。

藤岡委員 少なくとも、懸念なり、とても続けられない、そういう、せめてニュアンスだけでも伝えた方がいいんじゃないんですか。

 副大臣、これ、伝えていただけますか。お願いします。

石井副大臣 大変これは我が国にとりましても大きなテーマでございますので、今のような御質問があったと、そういう趣旨につきまして、私も上司の方にお伝えをして、しっかりと全体として検討してまいりたい、このように考えております。

藤岡委員 是非伝えていただきたいと思うんですが、ちょっと通告はしていないですけれども、外務副大臣、これ、伝えていただけないでしょうか。

小田原副大臣 お答えを申し上げます。

 今回のロシアの侵略行為について、林大臣からガルージン大使に対し、厳重に抗議を行っております。

藤岡委員 八項目の協力プランについては、何か触れたということはあるんでしょうか。

小田原副大臣 二月二十四日にロシアによるウクライナの侵攻が発生したことを受けての厳重な抗議であります。八項目の経済協力について触れたことはありません。

藤岡委員 これは触れていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

小田原副大臣 経済産業省を始め関係者とよく議論をして、御意向は受け止めましたので、検討いたしたいと思います。

藤岡委員 ありがとうございます。是非検討して、速やかに、これは本当に毅然とした姿勢をやはり示すべきだと思うんです。中途半端な、何か恐る恐るみたいな対応にしかどうしても見えないんですね。もうここは本当に思い切って、毅然とした対応をお願いしたいと思うんです。

 そして、先ほど、八項目の協力プランについて、今、いろいろな情勢を踏まえての今後の検討ということを副大臣からありましたけれども、これはいつまでに検討していただけますか。お願いします。

小田原副大臣 お答え申し上げます。

 可及的速やかに検討いたします。

藤岡委員 ありがとうございます。

 経産副大臣、いかがでしょうか。

石井副大臣 大変、今、国際情勢も大きく動いているわけでございますので、その情勢を踏まえながら、なるべく早くこれは方向性を出していくということは、しっかりと受け止めさせていただきたいと思います。

藤岡委員 ありがとうございます。本当に速やかに、可及的速やか、もう可及的可及的速やかにお願いをしたいと思います。

 改めてウクライナの皆さんのことを思ったときに、断固たると言っている一方で協力しているという状態は、本当にこれは早急に見直しをしていただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 ウクライナのこの話に関しては質疑は以上になります。大変お忙しいと思いますので、こちらで結構でございますので、御退席をしていただければ。どうも本当にありがとうございました。お二人とも、外務副大臣、経産副大臣、是非早急にお願いします。ありがとうございました。

 それでは、大臣の所信の質疑の方に入らせていただきたいと思うんですけれども、今日、このウクライナの話をした後になりますけれども、少々前置き的にちょっとお話しさせていただきたいと思うんですが、私、古川大臣にこうして質問させていただくことを大変本当に光栄に思います。

 昨年の一月に、月刊日本で、私、この浪人中にいろいろ励ましていただきながら、していたのは、私、栃木県の第四区というところでございますが、隣になるんですね、福島伸享衆議院議員との対談の原稿を拝見しました。率直に言って感銘を受けました。党派を超えて、非常に私、率直に、大臣が語っているところを読んで、純粋に本当に感銘を受けました。

 「「自発的隷従」という亡国に至る病」という表題ということでございましたが、日本は自主自立の気概を持って生きる以外に道はないということも触れながら、香港の民主派に対するいわゆる弾圧に対して、海外の知人からの言葉ということで引用されておりましたけれども、日本が非難をしていることについて、何か笑止な話だみたいなことを言われたんだというような話が出ておりました。なぜそうだったかというと、改めて、じゃ、日本の、自分たちの国の民主主義や人権の体制はどうなんだということを問われたというような趣旨のように書かれていたと思います。

 その中にも、世界の報道の自由度ランキングで、日本が二〇一三年以降順位が急落していて、今年も六十六位だった、そういう日本の、私たちの心もとない自由と民主主義の実情を、世界はよく見て知っている。確かに、安倍政権下の自民党に、そして官界やマスコミにも、物を言えない息苦しさがあったとして、きっと戦前もこうして時代が転がっていったのだなと思うこともしばしばでしたということを語られておりました。

 本当にそういう思いも改めて持って、是非法務行政の方も進めていただきたいなということも思います。

 そして、私も、ちょっと私ごとになってしまいますけれども、役所を辞めて政策秘書を経て、四度目の挑戦で初めての議席を得させていただきました。大変僭越ですが、若輩ながら僭越ですけれども、大臣も、役所を辞めて政策秘書を経て、三度目ということで得て、そして今大臣になられている。私は四度目でございますので、まだ全く努力が足りませんし、また、初当選ということで、もっと精進をしていかなくてはいけないんですが、人としてちょっと共感する思いも持ちながら、この後の質疑に入らせていただきたいと思います。

 まず、名古屋入管における、ウィシュマさんのお亡くなりになられた件につきまして、私も改めて心からの哀悼の誠をささげたいと思いますし、絶対にこのことをまた起こしてはいけないという、本当に御遺族の方の御心痛を思いながら質疑をさせていただきたいと思うんです。

 先ほど、鎌田さゆり先輩議員から、本当にすばらしい質疑もございました。改めて私も、本事案発生から一年がたつということで、先ほど、何かが欠けているというところの中で、そういうところももう一回含めて、大臣の現状の御認識をお伺いしたいと思います。

    〔熊田委員長代理退席、委員長着席〕

古川国務大臣 ウィシュマさんが亡くなって間もなく一年を迎えようとしておりますが、改めて哀悼の誠をささげたいというふうに思います。

 今、委員からのお尋ねでありました。悲しい、二度とあってはならないこの事案を受けて、どのように考えているかというお尋ねでございました。

 率直に申しまして、まず、このような出来事を二度と起こしてはならないということを強く思いました。がゆえに、いわゆる調査報告書で示されております改善項目というのがございます。これを、できるだけ早く確実に実行する、それが一つの大きな目標であると思います。

 それと同時に、一方で、現在の私どもがお預かりしております出入国在留管理行政というものが、やはりどこか、その運用において不具合があるのではないか、あるいはひょっとしたら制度上にも問題があるのではないか、こういうことをやはりこの機会にきちんと向き合って、見詰めて、そして改めるべき点があれば改めなければならない、そういう思いを強くいたしました。

藤岡委員 本当に心からの思いで改めていただきたいと思うんですけれども、まず、近年において入管施設内でお亡くなりになられた方の人数を改めて教えていただけないでしょうか。

西山政府参考人 平成十九年以降、入管収容施設における被収容者の死亡事案の発生件数は十七件となっております。

藤岡委員 十七人、事前に資料も少しいただきましたけれども、一年に一人以上お亡くなりになられていて、その内訳も、何かお聞きしますと、二十代、三十代、また四十代の方、本当に多くいらっしゃるという中で、やはり収容、入管の在り方、世界からも恥じないような、人権がしっかり守られているというふうなことを改めてしっかりやっていかなければいけないと思うんです。

 その上で、八月の報告書の件で私も一点だけ、いまだにどうしてもまだ腑に落ちないことの一点を先に今日お聞きしたいと思っているんですが、二月十五日の検査の結果があったと思います。ケトン体の三プラスという結果でございました。これに対して、その結果を看護師の方は医師には一応お伝えをしたということが報告書に出ていて、医師のコメントというのは、記憶が定かでない、二月十八日にそのことを受けたのは記憶が定かでないというふうなことが報告書に書かれていたと思うんですね。

 私もちょっと専門家の方に聞きますと、やはりこのケトン体三プラスというのが、本当に飢餓状態、通常は、なかなかこれ、明らかにおかしいというところを気づくような話だというふうに私はお伺いもしております。

 医師の方から、これは予断を許さない状況だよということを職員の方に本当に話がなかったんでしょうか。お伺いしたいと思います。

西山政府参考人 委員からも御指摘ございましたように、庁内の医師の方は、調査チームの聴取に対しては、尿検査結果を把握したかどうかの記憶は定かではないというふうにおっしゃっておいででございますので、それを踏まえての何かしら措置をしたということまでは認められないということでございます。

藤岡委員 しかし、本当に、ここのところ、何らか伝えられたのではないのかなというふうに私はどうしても感じざるを得ないようなところもあって、これが予断を許さないことというのが、誰も本当にお聞きしていなかったのか。大臣、ちょっといかがでしょうか。

古川国務大臣 御指摘の点に限らず、幾つか様々な疑問がやはりあると思います。

 ですから、この調査報告書、客観的な資料に基づいて、部外者の御意見もいただきながら、幅広い視点から調査報告書をまとめ上げております。そして、この報告書に従って改善策を着実に実行していくということに全力を挙げたいと思っております。

藤岡委員 この最大の疑問の点、またこの後の質疑でも、時間も少し押してきましたので、これは引き続き行っていくということで、また事実関係を丁寧に検証をさせていただきたいなということを思います。

 最後に、出入国在留管理庁職員の使命と心得というのも発表されております。これを見ますと、人権と尊厳の話、あるいは心情を察しつつとか、これ、随分後の方に出てきてしまっていると思うんですね。

 やはり、先ほど鎌田さゆり議員からも話がございましたが、もう少し、人権や尊厳の話をもっと前に出して、お亡くなりになられてしまったこの件、この件を受けて作られた心得だということだと思いますと、やはりこれはもっと前に出して徹底するべきじゃないでしょうか。内容を変えた方がいいんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

古川国務大臣 この使命と心得は入管の全職員そして外部有識者の御意見を集約して作成をいたしました。これは、いわゆる名古屋事案を受けて、二度とこういうことを起こさないんだという決意の下に、改めて全職員を巻き込む意味でこういうものを策定したというものでございます。

 おっしゃるとおり、人権と尊厳の尊重ということは、やはりこれは何にも増して重要なことだと思いますから、そういう気持ちのこもった使命と心得であるというふうに思っております。

 今後も、この使命と心得というものを踏まえて、入管行政がよりよいもの、あるべき姿に近づけていけるように、全職員挙げて努力をしてまいります。

藤岡委員 時間もなくなりましたので、是非大臣、本当に再発防止を徹底して行っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、長崎三区の山田勝彦と申します。

 まず冒頭、私からも、今回のロシアのウクライナへの侵攻、最後の被爆地である長崎を代表する一国会議員として、今回、核を威嚇で使ったロシア政府の本当に許せない行為、多くの多くの、長崎県民の皆様、広島の皆様、そして唯一の被爆国である国民の皆様を代表し、強く抗議をさせていただきたいと思っております。

 その上で、大臣の所信に対して質疑に入らせていただきます。

 私の地元長崎には、二つの世界遺産がございます。一つは軍艦島に代表される明治日本の産業革命、そしてもう一つが長崎と天草地方、潜伏キリシタンの関連遺産でございます。

 潜伏キリシタン、これは、幕府の弾圧から逃れながら、何世代にもわたり信仰のともしびをつなぎ続けた、当時のキリスト信者の皆様の知恵と勇気の結晶と言えるでしょう。

 大臣は、所信の冒頭でこう述べられました。人類社会は、人の尊厳が重視され、尊重される社会へと、一歩ずつではあるが、着実に進んできた、自由、基本的人権の尊重、法の支配、民主主義は、そうした社会を実現するために、あまたの苦難を乗り越えながら獲得した原理である。大変すばらしい所信であると共感させていただきました。

 長崎の各地で潜伏を余儀なくされた当時のキリシタンの先人の皆様も、あまたの苦難を乗り越え、今や正々堂々とキリスト教を信仰する自由を享受できる社会が実現しました。そして、その潜伏キリシタンの崇高な魂が世界から評価されました。

 しかし、同じ長崎の地で、国際的な人権問題が再び起ころうとしています。今、大村入管で、第二のウィシュマさんになってしまうかもしれないネパール人の男性がいることが判明しております。

 そこで、まず、基本的なことをお聞きさせていただきます。

 入管行政について、大臣が所信で、共生社会の実現、外国人の人権に配慮しつつと述べられました。現在の入管行政において、長期収容を余儀なくされている外国人の方々への人権的配慮、是非お聞かせください。

古川国務大臣 お答えいたします。

 私の所信において、外国人の人権に配慮しつつという言葉を使っております。これは、外国人との共生社会を実現する上において、やはり、その人権に配慮しつつも、ルールにのっとって外国人を受け入れ、そして適切な支援を行い、同時に、ルールに違反する者に対しては厳正に対処するということを述べております。

 これは、出入国在留管理を預かっております法務大臣として、やはり、いわゆる入国管理を適正に行う責任を私は帯びているのでございます。それを全うするために、出入国在留管理庁という組織がありまして、鋭意この職務に取り組んでおりますが、その上において人権に配慮するということは特段大事なことであるというふうに思いますがゆえに、その一文を差し入れたということでございます。

山田(勝)委員 先ほど、ルールにのっとりながら配慮という御答弁がございました。

 しかし、その入管行政のルールにのっとりながら運営されている状況の中で、大変悲しい事件が起きております。

 私も、ウィシュマさんの居室での映像を法務委員会の一員として拝見させていただきました。本当に心が痛い思いをいたしました。特に印象的だった、最初の頃の映像で、ウィシュマさんが必死に担当の看守の方に頼んでいました。担当さん、担当さん、病院へ行きたい、私死ぬ、点滴を打ちたい。それに対し、ごめんね、私たちには権限がないの、ボスに伝えておくね、こういうやり取りが行われていました。とても人権に配慮されている現状ではないと言わざるを得ません。

 法令や規則に従った上で、外国人の方の命が奪われ、人権が侵害されているのであれば、もはやその法令や規則を変えるしかありません。当然の話だと思っております。

 第二のウィシュマさんを絶対に出してはならない、その決意で、名古屋入管での死亡事件後、最終調査報告書が出されました。どこを見直し、どう改善されるのか、簡潔にお答えください。

西山政府参考人 委員御指摘の最終調査報告書の指摘で、十二項目の改善策が挙げられております。

 そのうち、全職員及び外部有識者の意見を集約して、出入国在留管理庁職員の使命と心得を策定、それから、名古屋局における非常勤医師の増員や被収容者の健康状態等の情報共有体制の構築、医師、学識経験者、弁護士による有識者会議において医療体制の強化に関する提言の取りまとめ、体調不良の訴えがあった場合や医師による診察を受ける際における通訳の一層の活用、体調不良者等につき、本庁への速報等の上、仮放免を判断する新たな運用指針の策定など、十項目につきましては実施をしているところでございます。また、残りの二項目についても、早期の実施に向けて検討を進めているところでございます。

 引き続き、改善策の着実な実施、適正な運用を徹底してまいりたいというふうに考えております。

山田(勝)委員 御答弁にありました出入国在留管理庁職員の皆様の使命と心得、作成されたこと自体は大変評価させていただきたいと思っております。職員の皆様の意識改革、進まれていることと思います。

 しかし、もう一つの柱でもある医療体制の強化、本当に図られているのでしょうか。

 一か月ほど前、鎌田法務委員会次席理事、そして石川参議院議員とともに、私の地元、大村入管へ行きました。そこで、先ほど来話題に上がっている、既に寝たきりの状態であるネパール人男性と面会し、その男性から、一刻も早く手術を受けたいと、当事者である、その声を聞いた上で、すぐに大村入管の所長へ私たち三人、国会議員として申入れを行いました。一日でも早く手術を行うよう強くお願いをいたしましたが、一か月たった今なお手術がなされていない。医療体制の強化、本当に図られているとは信じ難い現実があります。

 命を守る入管行政であってほしい、心から願っております。幾ら意識改革や組織改革を行っても、根本的な法令そのものが変わらなければ、この悲しみの連鎖を断ち切ることはできません。

 ウィシュマさんの妹さんが、こう私たち国民に向けてメッセージを発信されました。私の姉は何度お願いしても病院に行かせてもらえず、命を失った。この映像を国会議員だけでなく、日本の国民の皆さんに見てほしい。そうすれば何が行われているかが分かる。制度を変えなければならない。これからも頑張るので、一緒に戦ってください。

 このメッセージ、古川大臣に届いているのでしょうか。先ほどから鎌田議員が、面会のお願いがあったと思います。私からも是非、直接御遺族の皆さんに会っていただき、その思いをこの国の入管行政の責任者として受け止めていただきたい、心からお願い申し上げます。

 そして、その御遺族のメッセージの中であった、国民の皆さんへのビデオ開示、希望する国民の皆さんへのビデオ開示、できないでしょうか。できないのであれば、その理由も教えてください。

古川国務大臣 改めまして、ウィシュマ・サンダマリさん、亡くなられて間もなく一年です、謹んで哀悼の誠をささげたいと思います。と同時に、御遺族の方にも謹んでお悔やみを申し上げます。

 今委員が御紹介をいただきましたけれども、御遺族がそのようなメッセージを述べておられるということでございますが、そのような御意見については真摯に受け止めさせていただきたいと思っています。

 その上で、くだんのビデオを国民に開示するべきではないかという御意見ですけれども、御質問ですけれども、このビデオ映像につきましては、保安上の問題に加えて、亡くなられた方の名誉、尊厳の観点からも問題があることから、ビデオ映像を一般に公開することは適当でないというふうに考えております。情報公開法上も、これを不開示情報というような扱いにいたしております。

 ただ、先日、国会からのお求めがございましたので、やはり私ども行政府としまして、立法府からのお求めということに対しては真摯にお応えしたいということから、委員会に対して開示をさせていただいた、こういうことでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 まず、できない理由として、保安上の問題が挙げられました。居室の映像を一部公開することによって入管自体の保安能力が損なわれるとは到底思えません。我々が求めているのは、あくまでウィシュマさんと看守の方々、そのやり取り、その内容でございます。それ以外の部分に係る部分は、例えばモザイクやぼかしなど、加工処理をすれば十分保安上の問題はないはずですし、また、音声データなど、会話内容だけでもすぐに公開できるのではないでしょうか。

 さらに、亡くなられた方の名誉、尊厳の観点からという御指摘もあられました。正直、失礼ですが、全く意味が分かりません。詐病を疑い、必要な医療を受けさせず、さんざんウィシュマさんの名誉や尊厳を傷つけてきた入管行政が何を言われているのか。名誉や尊厳を回復するためにも開示が必要であり、そもそも、御遺族の意思はウィシュマさんの意思そのものではないでしょうか。法務省が守りたいのは、ウィシュマさんの名誉や尊厳でないことは明らかです。全くもって理由になりません。

 映像を見れば、制度改革が必要であることは誰の目にも明らかです。大臣が所信で強調されていた民主主義を重んじるのであれば、国民の皆様に広く映像を公開した上で、ウィシュマさんの御遺族が望む制度改革が本当にこの国の入管行政に必要なのかどうか、国民の皆さんに問うてみてはいかがでしょうか。是非前向きに検討ください。

 その上で、次の質問に入ります。

 私の地元大村の入管では、二年以上収容されている方がほとんどです。長い人では十年にも及んでいます。本当に大変深刻な問題です。この収容が長期化している最大の原因は、日本の難民認定制度にあると思っております。

 日本は、難民条約に締結しているにもかかわらず、他の先進国が二〇%から五〇%の認定率に対し、我が国は僅か〇・四%と衝撃的な低さです。諸外国に比べ五十分の一から百分の一と圧倒的に低い。なぜこんなに認定率が低いのでしょうか。国際機関からも問題視されている事実への受け止めも含め、御回答ください。

西山政府参考人 難民認定をめぐりましては、各国、前提となる事情が異なっており、難民認定者数や難民認定率により単純に我が国と他国とを比較することは相当ではないと考えております。

 我が国では、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定し、難民とは認定できない場合であっても、人道上の配慮が必要と認められる場合には、我が国への在留を許可しているところでございます。

 我が国の難民認定者数や人道配慮者数はこうした取組の結果であるということを御理解いただければと存じます。

山田(勝)委員 難民認定制度の改革が必要なことは明らかです。大臣も、先ほどの質疑の中で、制度に何か不具合が生じている、改めるものがあれば改めなければならない、こういった明確な御答弁がございました。

 もう時間が来ましたので、ここでの質疑は終わりますが、午後からこのテーマについて引き続き議論をさせていただければと思っております。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 本会議散会後直ちに委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二十八分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、山田勝彦でございます。

 午前中に引き続きまして、質疑をさせていただきます。

 大臣からは、午前中の様々な答弁の中で、入管行政、制度に何か不具合が生じている、改めるものがあれば改めていかなければならない、そういう答弁がございました。

 早速ですが、その改めるべきものは何かというテーマについて議論をさせていただきたいと思います。

 大臣所信の、難民問題を国際的に扱うUNHCRの連携も含め、幅広い知見を集積する、こういったお話がありました。おっしゃるとおりです。

 現行制度の問題点は、外国人の方々を強制送還する目的の入管行政の中で難民認定を行っていることそのものではないでしょうか。

 私たち立憲民主党は、適切な難民認定を行うために、UNHCRと連携した第三者機関、入管行政から難民認定の業務を独立させるべきだと再三提案申し上げました。他の野党の皆さんと一緒に議員立法も昨年提出しています。ウィシュマさんの御遺族からもあったように、必要なのは、意識改革ではなく、入管行政の制度改革そのものです。

 難民認定の機関を独立させる、いかがでしょうか。大臣のお考えをお聞かせください。

古川国務大臣 難民認定手続とその他の出入国在留管理行政上の様々な手続とは密接に関連をいたしております。そのため、難民の認定に関する業務を入管庁において行うということには合理性があるというふうに考えています。

 その上で、入管庁においては、絶えず制度や運用の適正化を図りながら、難民条約の定義に基づいて、難民と認定すべき外国人を適切に認定してきました。

 加えて、現在、入管庁におきましては、難民該当性に関する規範的要素の明確化、難民調査官の能力向上、出身国情報の充実を三つの柱としまして、難民認定制度の運用の一層の適正化に取り組んでおりまして、これらの取組を加速させるため、昨年七月にはUNHCRとの間で協力覚書を交換したところです。

 法務省としては、引き続き、国際機関と協調しながら、真に庇護を必要とする外国人の迅速かつ確実な保護に取り組み、共生社会の実現を目指してまいりたいと存じます。

山田(勝)委員 あくまで現行制度のままで運用していくという御回答でございました。これに関しては、ウィシュマさんの御遺族そして多くの国民の皆さんにとって、到底納得のいく説明ではありません。残念です。

 ただ、大臣は昨年、名古屋入管に視察に行かれました。現場主義の姿勢、大変すばらしいと思います。是非とも、私の地元大村を始め全国各地の入管施設に足を運んでいただきたいと思います。

 その際、入管センターの幹部職員の方々のお話だけではなく、収容されている外国人の方々と面会され、直接お話を聞いていただきたい。例えば、大村のネパール人男性は、私たちが面会したとき、一日でも早く手術をしてほしい、二本足で歩けるようになりたい、ベッドで横たわりながら声を振り絞っておっしゃっていました。

 直接会って話をすれば、要介護だから介護施設へ入所してもらうのが適当であるという大臣の答弁は到底出てくるはずがありません。官僚の皆さんからの報告だけではなく、現場主義であられる古川大臣が直接会って、その上で政治決断をしていただけるよう強く求めます。

 大臣、ネパール人男性にお会いいただけないでしょうか。

古川国務大臣 入管庁に限らず、法務省の職員は全国に五万五千おりまして、それぞれの官署が全国に配置されております。不断に、法務大臣として、機会があれば現場の視察を行うことによって、絶えず現場を見て回るということとともに、全国の職員の士気が上がるように督励をしていきたいというふうに思っています。

山田(勝)委員 収容されている方々と会うという明確な答弁がなかったことは残念に思います。

 また、現場に行かれた際、是非、そういったことを加えて、現地で支援をされている支援者の皆さんとも意見交換をしていただきたい。違う角度、違う視点から情報収集をいただくことで、この入管行政の様々な課題や改善点が見えてくるはずです。

 命を守る入管行政の改革に与党も野党もないはずです。この問題、委員会で引き続き皆さんと議論していきたいと思います。

 次のテーマに移ります。

 四月より成年年齢の引下げに伴い、民法や少年法の改正について所信の中で言及されました。

 多くの国民の皆さんにとって唐突な印象を受ける十八歳への引下げ。そもそも、なぜ引下げが必要だったのでしょうか。また、その場合のベネフィットとリスクについて、どう考えられているでしょうか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 成年年齢を十八歳に引き下げた理由は、憲法改正国民投票の投票権年齢や選挙権年齢を十八歳と定めるなど、十八歳以上の者を大人として扱うとの国政上の判断がなされて、それが我が国の社会において定着をしてきたということ、それから、諸外国においても成年年齢の主流は十八歳であるということなどが挙げられます。

 成年年齢の引下げは、十八歳、十九歳の若者が親の同意なく契約を締結することができるようになるなど、経済取引の面でも一人前の大人として扱うものであります。十八歳、十九歳の若者の社会参加の時期を早めて、社会の様々な分野において積極的な役割を果たしてもらうことは、我が国の社会に大きな活力をもたらすことにつながるというふうに考えております。

 委員、ベネフィットとリスクというふうにお尋ねになりましたけれども、リスクもございますね。

 それは、成年年齢の引下げによりまして十八歳、十九歳の若者が未成年者取消権を行使することができなくなるため、若者の消費者被害の拡大のおそれが指摘されてきたところであります。こういうリスクもあるということです。

 これらのリスクに対応するために、政府としては、法務省や消費者庁等の関係府省庁との連絡会議を通じまして、環境整備の施策を推進してまいりました。例えば、高校において消費者教育を拡充させるということ、あるいは、特設ウェブサイトによる若者への必要な知識の提供というような施策を推進してまいりました。

 また、今年の一月七日には、岸田総理の下で成年年齢引下げに関する関係閣僚会合が開催されまして、より強力に環境整備の取組を推進していくことが確認されたところでございます。

 法務省としては、今年の四月一日、成年年齢の引下げに向けて、関係府省庁と連携をして環境整備の施策を全力で推進していきたいと考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 重大な御指摘がございました。消費者被害、まさに現状でも、二十代前半の多くの若い人たちが消費者被害に遭われています。また、十代を含めた若者を中心にSNSのトラブルも多発し、社会問題になっています。このままでは、十八歳、十九歳の方々にその被害が拡大してしまいます。御答弁にあったとおり、消費者教育がとても大切です。政府を挙げて推進していただきたいと強く願っております。

 具体的に、私たち立憲民主党は、消費者の権利実現法案を議員立法で提出しております。成年年齢の引下げによる若者の消費者被害の拡大を避けるため、是非積極的な議論をお願いし、次に移りたいと思います。

 大臣は所信の中で、性犯罪、性暴力を根絶する決意を述べられました。

 先日、性被害の当事者であられる支援団体の皆様方と意見交換をさせていただきました。特に重要だと感じたのは、時効の問題です。体験談をお話しいただきました。

 四歳から十歳まで親族から性的な被害を受けていた、その被害を性暴力被害だとはっきり認識できたのは二十八歳の頃だった。子供一人では受け止められないほどの強烈な長期的な加害を前に、解離した状態にあり、二十四年間記憶を喪失していた。この解離は、生き延びるための脳の働きだそうです。この団体のアンケートでは、五千八百九十九件の被害回答が寄せられ、記憶が戻るまでにかかった年数の平均は十・八年でした。つまり、現行法の十年の時効では全く足りないということが分かります。

 そこで、大臣に御提案です。

 性被害の時効を三十歳まで停止し、その後二十年間提訴可能にする。これは全国の性被害に遭われた方々の願いでもあります。大臣のお考えをお聞かせください。

古川国務大臣 性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を著しく傷つけて、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けます。そのような性犯罪、性暴力は決して許されるものではありません。

 性犯罪につきましては、令和三年九月に、性犯罪に対処するための刑事法の整備について法制審議会に諮問をいたしておりまして、現在、部会におきまして、お尋ねの性犯罪の公訴時効の在り方も含め調査審議が進められているところであります。部会には、被害者支援団体からも委員として御参加をいただいておりまして、その御意見も踏まえて議論が行われているものと承知しております。

 性犯罪への適切な対処は喫緊の課題です。国民の関心も高いです。法制審議会における充実した議論を期待しているところです。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 大変大切な御指摘、お考えを述べていただきました。諮問委員会自身に、当事者である現場の方々の具体的な提案を聞いていただける、そういう環境づくり、是非とも進めていただきたいと思っております。

 続きまして、大臣所信の中で法曹人材の確保についてのお話がありました。

 地元長崎の弁護士協会の皆さんからお話を伺い、驚きました。一九四七年から始まる司法修習生への給費制が、二〇一一年から一六年の六年間は、給費を受けられなかった世代が、貸し与えである貸与制が導入された世代、いわゆる谷間世代が存在していることを強く懸念しております。

 この谷間世代、この皆さんへの国からの具体的な救済策を教えてください。

古川国務大臣 国民から頼りがいのある司法というものを実現するためには、やはり有為な法曹人材の確保が非常に大事だということはよく認識をしております。

 一方で、今委員からお尋ねのありました件については、従来、課題として、この委員会などでもそういう趣旨の御意見、御質問をいただいているものだと承知しておりますが、いわゆる谷間世代の司法修習生に対する救済措置ということでございますが、既に法曹となっている者に対して国による相当の財政負担を伴う金銭的な給付等を意味することとなります。したがいまして、これは国民的理解を得ることは大変難しいと考えています。

 仮に何らかの救済措置を講ずるとしましても、従前の貸与制下において貸与を受けていない者等の取扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題も考えられます。また、従前の貸与制下の司法修習生が、経済的な事情により法曹として活動に支障を来すことがないようにするための措置として、貸与金の返還期限の猶予も制度上認められております。

 以上のようなことから、いわゆる谷間世代の司法修習生に対して、立法措置による抜本的な救済策を講ずることは困難であり、救済策を講ずるということは考えておりません。

山田(勝)委員 考えていないということでした。しかしながら、三十五歳から五十五歳までの幅広い、いわゆる就職氷河期世代への支援策、政府を挙げて取り組まれている実態があります。なぜこの司法修習生の谷間世代について対応できないのか。到底納得いく答弁ではないと思っております。このような明確な不公平感が解消せずして、法曹人材の確保などあり得ません。

 弁護士会からは具体的な提案もなされています。この谷間世代と呼ばれる、貸与制だった約八千人の方々への返還免除を実施する。そうすれば、国の新たな財政負担は五十一億円程度という試算もあります。

 納税者の方々の理解が得難いのではなく、法務省にはこの問題への解決、説明責任があります。是非、実現に向けて、解決に向けて取り組んでいただきたいと強くお願いいたします。

 続いて、女性活躍についてです。

 午前中も鎌田議員と質疑、やり取りがあられました。その中で、国民的議論が必要という答弁がございました。政府の直近調査では、賛成が四三%、反対が二九%です。さらに、今現在、全国の自治体から選択的夫婦別姓の導入を求める意見書が多数政府へ提出されています。幾つ出されているか御存じでしょうか。三百三十一自治体です。まさに、大臣が所信で強調された、この国の民主主義が試されています。

 大臣に単刀直入に伺います。

 導入に当たっての壁は何でしょうか。そして、国会や国民に議論を求めるのではなく、古川大臣は導入すべきとお考えでしょうか。お尋ねいたします。

鈴木委員長 古川法務大臣、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

古川国務大臣 いわゆるこの選択的夫婦別氏制度というものは、これは仮に導入されたということになりますと、国民生活に大きな影響を及ぼす課題でありますから、ですから、これは、従前より申し上げておりますとおり、広く国民の皆さんの合意が形成されるということが大事だろうと思っています。何か一つの考え方を、こうあるべきだということで政府の側からそれを押しつけるといいますか、そういうものにはなじまない、やはり国民の合意が形成されるのを待ちたいというふうに思います。

山田(勝)委員 時間になりました。

 引き続き、法務行政の様々な課題について皆さんと議論をしていきたいと思っております。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、守島正君。

守島委員 日本維新の会、守島です。

 早速質疑に入らせていただきます。

 まず、ロシアのウクライナ侵攻によりまして、連日緊迫したニュースが伝わっておりますが、この場をおかりし、今回の侵攻により亡くなられた皆様にお悔やみを申し上げるとともに、今まさに被害を受けている全ての皆様の安全が確保されることを心から祈念いたします。

 さて、今日は大臣所信に対する質疑ということで、大臣はさきの所信表明において、四つの大きな視点で法務行政に取り組むとされました。

 まず、その大きな視点の第一に共生社会の実現を挙げられ、その中で、外国人の人権に配慮しつつ、ルールにのっとって外国人を受け入れ、適切な支援を行うとともに、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくことが重要と発言されております。

 今まさに、ウクライナからポーランドなど隣国に数多くの避難民が殺到しており、一刻も早い外国による受入れが望まれる状況を鑑みるに、ウクライナ国民において、日本に暮らす家族たちを頼り日本への入国を望む人もたくさんいると思うんですが、そうしたウクライナ在住者に対するビザの発給手続の現状の体制であったり、発給対象者がどうなっているのかを確認したいと思います。外務省、お願いします。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、在ウクライナ日本大使館及び臨時に設置しておりますリビウ連絡事務所は、規模を縮小し、邦人保護を中心に業務を継続しております。日本人の配偶者及び子供さんのビザの申請については、リビウに所在する連絡事務所で受け付けてございます。また、日本人のウクライナ配偶者の親族等については、ウクライナ周辺国を含む第三国での申請が可能となっております。

 目下のウクライナの現状に鑑み、日本人のウクライナ人配偶者及び子供さんのほか、人道上配慮すべき事情のある日本人のウクライナ人配偶者の御両親などの親族についても、可能な限り迅速な入国を認め、ビザを発給していくこととしております。

守島委員 ありがとうございます。

 配偶者、子供だけではなく、その親族に対しても発給していくようにするということで、ビザ発給に関しては、本当に迅速かつ発給対象者をより広範にするべく、外務省だけではなく、これは入管もそうなんですけれども、連携して柔軟な対応を行っていただきたいというふうに思っているんです。

 そうして日本を目指すウクライナの避難民に対して、我が国が広く受け入れる、まあ広くの定義もありますが、受け入れることが可能であるかどうか、またそのためにすべきことを大臣の声でお聞かせください。お願いします。

古川国務大臣 最も大事なことは、ウクライナから避難される方々、この方々を迅速かつ適切に保護をする、これが今最も重要なことであります。

 ですから、この避難される方々の我が国への受入れにつきましては、関係省庁と連携の上、早急に検討して、積極的に、前向きに対応していきたいと思っております。

守島委員 大臣、ありがとうございます。本当に前向きな答弁をいただきました。本当に、迅速かつ適切に、積極的に行動していただきたいというふうに思っています。

 我が国在留のウクライナの方は約千九百名ですので、午前中の鈴木委員の質疑にありましたように、現在の入国制限の枠の話が解消されたとすれば、その家族の受入れとか、ボリューム的にはそこまで大きな話ではないので、十分可能だと思いますので、日本への入国を望まれる方がいた際には、是非受皿になっていただきたく、機動的な在留資格の付与であったり、それらの方々が長期在住を望まれる際には、在留資格もそうなんですが、難民認定も柔軟にお願いしたいというふうに思っています。

 そもそも、ビザどころかパスポートも持たない戦渦にいる人々を、本当に日本として救う手段などを含めて、政府においては、ある種現行法の枠組みに縛られない措置も含めて、あらゆる手段というのを検討していただきたいというふうに思っているんです。

 というのも、今回の戦地近くで我が国の外交官をしていた杉原千畝さんのことをやはり想起してしまいます。御存じのとおり、杉原さんは、リトアニア在任当時、当時は日独伊三国軍事同盟の締結直前だったんですが、それを控える中で、ドイツから迫害されていました避難民に対して、ある種外務省からの訓令に違反して大量のビザを発給して、これを救いました。

 この行動は、今を生きる我々の多くは正しかったと解しているという現実を見るに、日本が今何をすべきかというのはよく考えるべきで、それは、今回のウクライナへの支援がどこまでできるのかという話にとどまらず、我が国の周辺においても、例えば台湾などにおいて有事が起こる可能性がやはりあるからです。

 もちろん、そうした事態を防ぐ最大の外交的努力というのはするべきだとは思うんですが、もし有事があった際に、大量の亡命者であったり難民が生まれることを想定するに、今後の外務省であったり、法務省、入管が機動的に動けるかどうかが非常に重要になると考えています。

 大臣は、今後の難民認定において、例えば、難民条約上の難民とは異なる定義の検討であったり、あるいは、平時の議論とは別に、有事の際も念頭とした法制度であったりを検討する考えはありますか。お聞かせください。

古川国務大臣 難民の認定ということについてお尋ねがありました。

 現行入管法上の難民というのは、難民条約の適用を受ける難民であります。ですから、迫害を受けるおそれがある理由というのが、人種、宗教、国籍、特定の社会集団の構成員であること、政治的意見という、この条約上の五つの理由である者に限られることになるんです。

 しかし、例えば、本国が内戦状態にあって、戦闘に巻き込まれて命を落とすおそれがある、そういう方については、迫害を受けるおそれがある理由がこの条約上の五つの理由に必ずしも該当しない、入管法上の難民に該当しない場合というのがあります。

 そこで、法務省としては、さきの通常国会に提出しておりました入管法改正案の中で、補完的保護対象者の認定制度を創設することとしておりました。この制度は、条約上の五つの理由以外の理由によって迫害を受けるおそれがある者を補完的保護対象者として認定をして難民に準じて保護するという制度でありまして、例えば、先ほど述べた、内戦で戦闘に巻き込まれて命を落とすおそれがある、そういう方々などを想定していたものであります。

 残念ながら、入管法改正案は成立には至らなかったわけですけれども、法務省といたしましては、今後とも、真に庇護をする必要のある者、真に庇護を必要とする者を確実、迅速に保護するため、必要な法整備及び運用の見直しに努めていく所存です。

守島委員 ありがとうございます。

 先ほど来、難民認定の話は、ちょっと認定率が低いんじゃないかという話も質疑であったように、難民認定においては、迅速性の難しさであったり、それこそ要件に見合うかという、照らし合わせた状況がなかなか意思決定にスムーズに結びつかないということで、今大臣がおっしゃったような補完的保護対象者をしっかりと救っていける、その内枠の難民認定をしっかりしていくということも大事なんですけれども、その外にいて急を求める人に対してしっかりと手厚い保護をしていけるよう、迅速な体制構築を、そして法の整備をしていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。

 こうした点は、今日、明日の質疑で我が会派の阿部議員からも引き続き指摘があると思いますので、そこにつないでいきたいと思います。

 次に、大臣が四つの視点のうちの二つ目に挙げた、困難を抱える方々への取組の推進についてお聞きします。

 現行の民法の嫡出推定制度における子供の無戸籍問題に関してですが、先日、法制審議会の親子法制部会において、民法改正の法制審要綱案がまとまったと聞いています。この要綱案、聞くところによると、原則、離婚後三百日以内に生まれた子供は元夫の子供と推定するという考えは引き続き維持されるんですけれども、再婚後に子供が生まれた際には現夫の子とみなすというものでありまして、かつ百日の女性の再婚禁止期間も撤廃するものであります。

 まず、前提として、現状何が問題で、要綱案で何が解消できて、課題として何が残るのか。そして、要綱案に対する大臣の受け止めを聞きたいと思います。お願いします。

古川国務大臣 無戸籍者の方については、国民としての社会的な基盤が与えられておらず、社会生活上の不利益を受けるという、人間の尊厳にも関わる重大な問題が生じているというふうに認識しております。

 今御指摘いただきました民法の嫡出推定制度につきましては、このような無戸籍者を生ずる一因となっているという指摘がありまして、二月十四日、先日の法制審の答申は、これに対応する内容となっております。

 答申には、民法の嫡出推定規定を見直し、離婚後三百日以内であっても、母の再婚後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定するとの例外を設ける、嫡出否認制度に関し、否認権者を子及び母にも拡大するなどの見直しが盛り込まれておりまして、これは無戸籍者問題の解消に有益なものだというふうに考えています。

 その上で、法務省としては、このような法制度の見直しに加え、子について出生の届出がされることを確保するために、法テラスや弁護士会など関係機関と更に連携を取らせていただきながら、現在行っている無戸籍者やその家族に寄り添った支援を更に進めていきたいというふうに考えているところです。

守島委員 大臣の受け止めでは、一定、再婚後の、再婚後というか、この要綱案によって無戸籍問題は解消されるということですが、僕自身もそう思っていて、これは進めるべきとは思うんですけれども、新たな問題も逆に生じてしまう可能性があるんじゃないかなというのを少し危惧しています。

 例えば、百日間の再婚禁止期間が撤廃されることによって再婚が早期化した場合、実際の父子関係と推定の父子関係が異なってしまうケースが増えてしまわないか、そういう懸念とかもあって、その場合、元夫が親子関係を求めるということにつながる可能性とかもあると思うんですけれども、そういう点に対して考慮とかされていますか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 仮に法制審議会で答申された要綱の規律に従うとしますと、離婚後三百日以内に生まれた子であっても、その出生が母の再婚であった場合には、再婚後の夫の子と推定することとなります。

 しかし、委員御指摘のとおり、実際には、そのような推定と異なり、再婚後の夫の子との間に生物学上の父子関係がないケースも生じると考えられます。

 答申された要綱では、このような場合には、再婚後の夫や子又はその母が嫡出否認の訴えを提起することができるほか、前の夫も一定の要件を満たす場合には嫡出否認の訴えを提起することとしております。そして、要綱では、このように嫡出否認の訴えにより再婚後の夫の子との推定が否認された場合には、その子は前の夫の子と推定することとしているため、前の夫もその子の父となることができるという規律とすることで、委員のような御懸念にも応えるものとなっているものと思います。

守島委員 ということで、前の夫も今の夫との嫡子の関係を否認することができるので、それは一定カバーできるという話なんですけれども、こういう新しい制度をつくっていくとなると、新たな問題とかも出てくると思うので、そういうことにはしっかりと対処をする措置も講じながら、引き続き、やはり問題であるのは、子供が無戸籍ということが、大臣がおっしゃったように一番問題なので、これを解消すべく、私たちとしては、民法改正案の早期提出をお願いしたいというふうに思っております。

 次、大臣所信の三つ目の視点、時代に適した法務、司法制度の確立に関してですが、その中で、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化している件に関して、前の予算委員会で、我が会派の岩谷議員という議員がいるんですけれども、まさにこの問題で命を絶たれた木村花さんのお母様の木村響子さんと直接お話をした上で、被害者家族としてのメッセージを総理に投げかけました。僕自身も、オンライン上ではあるんですけれども、その場にいて、じかに話もさせていただきました。

 やり取りに関しては、恐らく大臣もその場にいて聞かれたというふうに思っていますが、やはり、ネット上の誹謗中傷は、御存じのとおり、加害者側は軽い気持ちで行為をしても、被害者側においては回復不能なほどの精神的なダメージを負ったり、時には命を絶ってしまうというケースもあります。

 被害者は、こうした事案に対して、警察に訴えてもなかなか動いてもらえず、訴訟をしようにも、例えばプロバイダーへの開示請求など含めても、ハードルが数多くあるんですね。裁判費用だけ考えても、その負担というのはとても大きいのが現実です。

 しかし、それに対して、加害者に科される刑罰とか民事上の賠償責任は非常に軽くて、刑法上の侮辱罪に当たったとしても、法改正前の現在では、拘留三十日未満か科料一万円未満という非常に軽いものになっています。

 また、例えば、死んでほしいとか、消えてくれ、そういう表現が使われたとしても、こうした文言は刑事上の侮辱罪には該当しない可能性もあり、もちろん事実の摘示はないので名誉毀損には当たりません。

 まず、現行、侮辱罪の適用の範囲はどこまでで、どの程度の誹謗中傷をカバーできるのか、具体的に示せる範囲でお答えいただければ幸いです。

川原政府参考人 お答えいたします。

 刑法第二百三十一条の侮辱罪は、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱したことが要件とされておりまして、より具体的に申し上げますと、事実を摘示せずに、不特定又は多数人が認識できる状態で他人に対する軽蔑の表示を行った場合に成立し得るものとされているところでございます。

守島委員 具体的ではあったんですけれども、ちょっと具体的にはやはり分かりづらいんですね。

 ちょっと話が長くなるので、どの程度の侮辱がカバーできるかというのは非常に重要な話ですし、刑法の改正案は上程後に議論の時間があると思うので、細かい話はそこで聞いていきたいと思うんですけれども、大前提として、この侮辱罪の法定刑が、引上げが盛り込まれている予定の刑法改正案に関して、侮辱罪の量刑って、これは妥当になるのかな、また、名誉毀損罪とのバランスってどうなのかな。また、これがネット上の誹謗中傷の抑止策になると考えているのか、大臣にお答えいただきたいと思います。

古川国務大臣 誹謗中傷による人権侵害というのは、決してこれはあってはなりません。

 誹謗中傷が行われた場合、刑法の名誉毀損罪又は侮辱罪に該当し得ることになるわけですけれども、両罪はいずれも人の社会的名誉を保護するものでございますが、具体的な事実を摘示するか否かによって類型的に名誉侵害の程度が異なるというふうに考えられるため、法定刑に差が設けられておりまして、そのこと自体にはなお合理性があるというふうに考えられるところであります。

 その上で、近年における侮辱罪の実情等に鑑みますと、侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して、これを抑止する必要があります。そのため、法定刑を名誉毀損罪に準じたものに引き上げることが必要と考えられます。

 令和三年十月に法制審議会から、拘留又は科料とされている侮辱罪の法定刑を、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に引き上げることが相当である旨の答申がなされたところでありまして、これを踏まえて、現在、今国会に法案を提出できるよう準備を進めているところであります。

守島委員 大臣は、法定刑に合理性はあって、審議会の意見も含めて引上げを検討していると言うんですが、一年以下の懲役と三十万円以下の罰金、科料というのは、やはり、訴訟しようにも、弁護士費用だけでそんなもの消し飛んでもらうぐらい少ない額だと思いますし、やはり、適用される範囲を推察しても、本当に名誉毀損とか侮辱というのが適用される言葉がどこまであるのかというのも抽象的な中で、まだまだネット上の誹謗中傷の被害者、加害者の負担の釣合いというのは取れない、よって、抑止効果というのは限定的になるんじゃないかなというふうに思っています。

 こうした中で、大阪府議会では、先日の二月十七日に、大阪府インターネット上の誹謗中傷及び差別等の人権侵害のない社会づくり条例案というのが提出されました。中身としては、府が行為者及び被害者を発生させないための施策などがまとめられた内容になっていますが、こうした自治体における動きに対する受け止めと、大阪府の条文を見たんですけれども、中身的にはネットリテラシーの向上とか相談体制の構築などが主になっていて、条例でできることの限界というのも感じます。なので、こうした動きを受けて、国として取り組む方針があれば教えてください。

古川国務大臣 インターネット上の、あるいはSNS上の誹謗中傷の書き込みというのは、これは重大な人権侵害にもつながるものでありますから、決してあってはなりません。

 法務省としても、侮辱罪の法定刑の引上げだけではなくて、各種の取組を実施しているところであります。

 まず、法務省の人権擁護機関におきましては、被害者から相談を受けた場合に、その意向に応じて、違法性を判断した上で削除要請を行っておりまして、その実効性を高めるため、総務省とも、プロバイダー事業者等との意見交換を行うなどして、削除要請に対する事業者の理解を求めているところであります。

 また、法務省の人権擁護機関では、学校に人権擁護委員や法務局職員を派遣して行う人権教室を通じて、地域に根差した人権啓発活動を行っておりますほかにも、総務省及びSNS事業者団体と連携した、SNS利用に関する人権啓発サイトの開設などを行って、インターネット上の人権侵害の防止に取り組んでいるところでございます。さらに、法務省では、新たな発信者情報開示手続の創設を内容とします改正プロバイダー責任制限法の円滑な施行に向けた各関係省庁等への協力も行っているところです。

 今後とも、関係省庁等とも連携して、多角的な視点からしっかりと取組を進めていきたいと考えています。

守島委員 ありがとうございます。

 是非取組は推進していただきたいんですが、今、例えば大臣がおっしゃった法務局のプロバイダーへの削除要請も機能していないという問題も聞きますし、この問題というのは解消できない理由というのがたくさんあって、法定刑の引上げなど、現行制度の延長だけでは解決し切れない案件じゃないかなというふうに思っています。もちろん表現の自由に対する配慮は必要という前提で、維新国会議員団としては、この件に関しては具体的な法制化に向けて取り組んでいきたいと思います。

 持ち時間、もうすぐですが……

鈴木委員長 申合せの時間が経過していますので、御協力お願いします。

守島委員 はい。我が会派内で調整します。

 最後に、大臣所信の四つ目の視点であります国際化、国際貢献の観点から質問したいと思います。

 自由、基本的人権の尊重、法の支配の原理を、国内はもとより、広く世界の国々とも分かち合い、ルールに基づく国際秩序を形成、拡大していくという大臣の思いに私も共感いたします。しかしながら、残念なことに、世界の一部には、ウイグルやチベットのように、こうした原理が全く通用しない地域があります。

 世界はつながっていますので、我々に全く無関係な話ではなく、遠い国の人々であっても、彼らが人権問題で不幸な状況にあるならば、やはりこれを無視することはできません。こうした地域にどうやって司法外交によって自由、基本的人権の尊重、法の支配を及ぼしていくのか、最後に大臣の思いを聞かせていただきたいと思います。

古川国務大臣 ただいま触れていただきましたけれども、司法外交、法の支配あるいは基本的人権の尊重といった普遍的な原理を我が国から国際社会に発信していく、浸透させていく、それによってルールに基づく国際秩序を支えることも一つの目標としております。

 このような司法外交の重要性を、改めて私ども今認識しているところでありまして、これまでもですけれども、また今後とも鋭意ここに取り組んでいかなければならないという思いを持っております。

 具体的には、これまでもやってまいりました法制度整備支援でありますとか、あるいは、昨年の京都コングレスの成果を展開していって、世界にリーダーシップを発揮していくというようなことですとか、あるいは、価値観を共有する国々等との協力覚書を通じた戦略的な連携を強めていくというようなことなど、やはり、国際社会を舞台にして、法の支配であるとか、自由、基本的人権の尊重、こういった価値をソフトパワーという形に変えて世界に日本が発信をしていく、ますますその要請が高まっている、そういう時代を迎えているなということを考えております。

守島委員 大臣、ありがとうございます。是非広く価値観の共有を図るべく、司法外交に力を入れていただきたいと思います。

 以上、大臣所信に対して広く質問させていただきました。

 以上で終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 まずは、ウクライナ。ロシアの侵攻に伴いお亡くなりになられた方に改めまして哀悼の誠をささげたいと思います。

 さて、ウクライナで起きていることを私ども国民は他国のことというふうにはなかなか思えないところがございます。実際に、ロシアとの海を隔てた国境が日本はあり、そして、北方領土では軍事訓練を行っているというふうにも聞くわけでございます。

 本来は、国内治安や、究極の人権侵害である戦争ということは、この委員会のテーマにはそぐわないかもしれませんが、ちょっと私、不勉強なので、いろいろなことを教えていただきたいと思いまして質問いたします。

 まず、日本国憲法第九条についてであります。

 これは、御承知のとおり、戦争の放棄と戦力の不所持、交戦権の否認ということが書いてあります。しかし、他国から侵略を防ぐという規定はどこにも書いてありません。つまり、憲法九条があれば他国は侵略してこないと高らかにうたっては、それは先月から起きたウクライナ侵攻においてはにわかに信じられず、現実味を帯びてくる。

 私、高校一年生のときに、奈良時代、長安で杜甫という詩人が歌を詠まれました。まさに今の「春望」であります。国破れて山河あり、城春にして草木深し。そして、やがて、長安の都を杜甫は去っていくわけでございますが、戦争というものがいかに非生産的で、そしてむごいものであることを、奈良時代の詩がいまだに愛されているのはそこに理由があるのではないかというふうに思うわけでございます。

 さて、集団的自衛権はない、認められないということですが、では、日本の個別的自衛権については、どのようなお考えを、解釈が今あるわけでございますか。内閣法制局ですかね、お願いします。

木村政府参考人 お尋ねの憲法第九条でございますけれども、憲法第九条は、我が国が主権国として持つ固有の自衛権まで否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の実力を行使することは認められているという理解でございます。

阿部(弘)委員 ありがとうございます。

 そういう解釈の下に今日の自衛隊があり、そして、日本を守ってくれるというふうに信じているわけでございますが、ウクライナ侵略は、当初はウクライナ侵攻という言葉を使っていらっしゃいました。ウクライナ侵略と今使われている総理の認識としては、これは戦争状態なんですか。済みません、お答えできる方、よろしくお願いします。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のロシアによる侵略によりまして、国際的な武力紛争が発生していると考えてございます。

 一般に、厳密な国際法上の定義を離れて戦争という言葉を用いることはございますけれども、国際法上は、国連憲章の下で武力行使は一般的に禁止されておりますので、戦争が政策遂行の一つの手段として認められた時代における伝統的な意味での戦争というものは、現代においては認められなくなっているということでございます。

 したがいまして、国際法上の用語としては、今回のような状況につきましては、戦争ではなく、冒頭に申し上げた、国際的な武力紛争と申し上げているところでございます。

阿部(弘)委員 国際的な武力紛争。しかし、今日のネットでは、気化爆弾と、本来は紛争で使用してはいけない新型爆弾を使用しておるわけでございます。また、ロシアのプーチンは、原子爆弾の使用もちらつかせる。そういう状態で、この日本は、もしものときに守れるのか。

 日米安全保障条約では、第三国の侵略に対して米国が日本を守ってくれるという条約でございますが、そのことについてはいかがでございましょうか。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国及び米国は、日米安全保障条約第五条に基づき、我が国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が発生した場合、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処することとなります。

 米国は、累次の機会に日米安保条約の下での自国の対日防衛義務を確認してきており、このことは、本年一月の日米首脳テレビ会談においてもバイデン大統領から改めて表明されました。

 日本政府として、米国が条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いております。

阿部(弘)委員 少し安心するところではございますが、しかし、実際は、ウクライナで起きている現実は、政府が、あるいは軍が機能せずに、国民自らが武器を持って戦っているという現状があるわけでございます。

 政府は、こういう状態になった場合、どのように国民を守っていただけるのか。お願いします。

大和政府参考人 我が国に対する武力攻撃の対応について一般論として申し上げれば、武力行使の三要件を満たす場合、自衛隊は当該武力攻撃を排除するため必要な武力の行使を行うことになります。

 防衛省・自衛隊としては、あらゆる事態に対応し、国民の生命財産及び領土、領海、領空を断固として守り抜くため、引き続き万全を期してまいります。

阿部(弘)委員 法務省の参考人にお聞きしたい。

 ウクライナでは、実際には軍だけでは兵力が足りずに、国民が銃を持ってロシア軍と戦っている状況であります。

 日本で、第三国が攻めてきて戦闘状態に入った場合に、日本国民は銃を持って戦えるのでしょうか。自衛隊員や自衛隊予備役の方々はその資格があり、使える。しかし、一般国民はどのようにして自らの自衛権を行使できるのか。銃を持てないというのは薄々分かっておるところでございますから、法務省の刑事局、どなたかお答えいただければありがたいと思います。

川原政府参考人 お答えいたします。

 私どもの立場からしますと、今先生お尋ねの国民が銃を持って戦えるのかということについてお答えするというよりは、仮にそういうような行為があったとして、それは刑法上の犯罪が成立するのかという御趣旨の質問としてお答えをさせていただきますが、大変申し訳ありませんが、先生の御質問の内容は仮定の質問でもあり、また、犯罪の成否は捜査機関により収集された証拠により個別に判断されるべき事柄でございますので、一概にお答えを私どもの立場で申し上げることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。

阿部(弘)委員 なかなか答えにくい質問で申し訳なかったと思いますけれども、しかし、現実にはもうそういったことは仮の話ではない。ヨーロッパでは現実に起きている。その国とも国境を接しているわけでございます。

 最後は、憲法審査会の話をいたしますが、大臣、今のウクライナ情勢についての御感想、御意見をお聞かせください。

古川国務大臣 お尋ねの趣旨がよく理解できずにおるんですが、今のロシアによる侵略は、力による一方的な現状変更を認めないとの国際秩序の根幹を揺るがすものであります。欧米を始めとする国際社会と連携して迅速に対処する必要があると認識しています。

阿部(弘)委員 最後に、私の提案といいますか、結論でもあるんですけれども、現在、憲法審査会が動き出して、真剣に憲法議論を行っていただいている。ありがたい状況であります。

 そしてまた、先週は緊急事態条項についての議論も、有識者などを交えてしっかりと議論が始まったと。私は、是非とも、こういうときだからこそ、憲法議論を、調査会の議論をしっかり深めていただいて、日本の安全を国民とともに政府が守っていくんだという決意を示していただきたいと思いまして、早いですが、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 私は、学生時代、少林寺拳法を習っていた一人なんですけれども、その教えの中に力愛不二という言葉があります。愛のない力は暴力なり、力のない愛は非力なり、この言葉が今の世相を表しているのかなというふうに思っています。

 法律を作ったから、それを守る人ばかりじゃないから処罰があったり、国際法があるんだからみんなルールを守りましょうといっても、現実は守らない国が幾つもあるし、それが事象として出たのが今回のロシアとウクライナの話だと思うんです。

 別にけんかを売る必要はないんですけれども、けんかを売られたときに、自分のファミリーも含めてやはり一人でも多くの人を守るというのが今忘れ去られていて、立憲主義というふうに声高々に言う方がいらっしゃるんですけれども、国防の義務は自衛隊があるだけじゃないんだ、国民一人一人が国を守るという気持ちがなければやはり国難に立ち向かっていくことはできないんじゃないかというふうに思って、質問に入らせていただきたいと思います。

 大臣の所信で、我が国の法制度の基盤を担う法務省においては、このような大局観を常に念頭に置きつつというふうに述べられているんですけれども、現在、我が国に二千を超える法律があります。

 私は、八年前に、連絡室を通して各省庁に、今所管している法律が運用されているのか、要するに、もう対象がないとか、時代がもう過ぎてしまっている、そういう法律があるんだったら照会をかけて返事を下さいというふうに投げましたら、自分の課は分かる、部は分かる、局は分かるけれども、隣の局がそれをされているかどうかは分からない、ましてや、その隣の省、違う省に行けばなおさらだというんです。

 でも、今回の通常国会でも五十八本の法律が上程されるような話になっています。毎年毎年、法律改正と新法ができていく中で、二千を超えている中で、誰もそれが分からない。自分の所管している、自分が商売をやっている、自分が生活しているところの法律は分かっていても、ほとんど違うところで法律が運用されてしまっている、この今の現状を大臣としてどう捉えておられるのか、まずお尋ねしたいと思います。

古川国務大臣 現在二千を超える法律が存在しておる、これを整理、改廃するべきではないかという趣旨での御質問だと思いますが、法務省所管外の法令の整理、改廃につきましては、それは所管しておる当該省庁で検討されるべきものでありますから、私、今、これは法務大臣としての立場でお答えをさせていただくことは差し控えさせていただきたいと思っております。

 ちなみに、法務省所管の法令といいますのは、社会経済情勢の変化ですとか、当該法令の実効性を踏まえ、必要に応じて改廃をしてきたものと承知しております。

 今後も、法令の改廃の要否については、適時適切に検討して対応していくというふうに考えています。

鈴木(義)委員 例えば、明治帝国憲法から日本国憲法に移行するときに、三百の法律がスクラップ・アンド・ビルドされたと聞いています。中曽根内閣のときに、土光臨調を始め、三百の法律がスクラップ・アンド・ビルドされている。もうそれから四十年近くたっているわけですね。

 だから、先ほど大臣が答弁で、先般述べられたように、法律を所管する法務省として、やはり率先してそれをやっていくべきだと私は思うんですけれども。でも、二千もある中で、それは基本法だとか、いろいろな呼び方はされますけれども、法律の基本は制約と強制を伴うものだと思っているんですね。

 大臣の所信でも述べられた、一番最初に自由という言葉を使っているんです。でも、毎年毎年、法律の改正と新法ができていくことによって、必要だから制定するし見直しをしていくんだと思うんですけれども、結局、国民や事業者の自由というのはどんどんどんどん制約されていくんだと私は思うんですけれども、それについてもう一回御所見をお尋ねしたいと思います。

古川国務大臣 私は所信表明の中で、自由とか基本的人権の尊重、あるいは法の支配という、これまで人類があまたの困苦を越える中で結実させた原理というものを所信表明の中で述べました。

 ここでいう自由といいますのは、今委員が御指摘になりました、つまり、たくさんの、あまたの法律、法令が世の中に生み出されてくる結果、いろいろな規制を受けるということにおいての、自由が制約されるということにおいての自由という言葉をお使いになったと思いますけれども、私がその所信の中で申し上げております自由というのは、要するに、人類社会が歴史の中を通じて得た価値、つまり、人は、全ての人がやはり自分の考えをしっかり持ちながらも他者を尊重し、そして助け合いながら、自由にかつ助け合いの社会で幸せを享受して生きていく、こういう理念を述べたものであります。

 その意味では、法律がこの国会において毎年たくさん量産をされることによって制約をされるという意味での自由ということで申し上げているものではございません。

鈴木(義)委員 なかなか趣旨がかみ合わないのかもしれないんですけれども。

 結局、法律を作るというのは、もう一度言いますけれども、強制と制約をさせることが法律の本分だと思うんですね。あなたは何をやっちゃいけない、何をしなさいと。でも、自分は自由に、それは自分には関係ないだろうといいながらも、どんどんどんどん国会で法律を作ることによって、やはり社会が息苦しくなってきているんじゃないかというふうに考えるわけです。まあ、それはそれでおいておきます。

 今回提出された職員の定数の見直し、裁判官も含めて、毎年毎年法案が出てきているんだというふうに説明を受けましたけれども、こういったものは、何か上限をきちっと決めて、そんな一年ごとに見直しを諮るんじゃなくて、五年なり、十年なり、ある程度、社会の状況を見ながらで、毎年毎年法案を出すより、違う法律を審議していくという方に向けていった方がいいんじゃないかと思うんです。

 特に、国家公務員の処遇に関わるものが法案で出るんですけれども、それは一つの省で全部がリンクするようにできないものかなと思うんですけれども、その点についてお考えをお示しいただきたいと思います。

古川国務大臣 委員が今御質問なさっているのは、国家公務員の身分、処遇に関する制度とおっしゃいましたから、これは、一般職及び特別職の国家公務員ですとか、あるいは、裁判所の職員ですとか裁判官ですとか、そういうあらゆる公務員を全部一括して扱ったらどうかという御趣旨でおっしゃったんだというふうに受け止めた上でお答えを申し上げますけれども、憲法七十六条第三項に、裁判官は、法と良心に従い独立して職権行使すべきものと規定されております。裁判官の法的地位については、このような憲法の定めに由来する特殊な面がありまして、行政機関の職員とは根本的に法的地位が異なるものだというふうに理解をしております。

 また、裁判事務等の円滑な運営のため、裁判所の人的体制や裁判所の職員の勤務条件の在り方については、これは司法権の独立に配慮した上で検討されるべきものだというふうに考えます。

 このような裁判官の地位の特殊性等を踏まえますと、裁判所の定員ですとか裁判官の人事に関わることについて、一般職の国家公務員や他の特別職の国家公務員と一緒にして、一括してやって処理する、扱うということは、非常に問題があるのではないかというふうに考えます。

 したがいまして、やはりそこは別の法律で定める必要があるだろうというふうに考えております。

鈴木(義)委員 これは法案のときにまたお尋ねいたしますけれども、結局、独立した制度であっても、上限を決めておけばいいんじゃないかという考え方です。

 今回法律でその減数をするということは、結局は、欠員を補充していなかったから、裁判の件数も減ったから、その分、圧縮しましょうという話で説明を受けたんですけれども、それだったら、じゃ、そこを上限にしておけばいいだけの話じゃないかというふうになるんじゃないかということです。

古川国務大臣 御質問が、これまた、裁判所の職員の定員、これもこの委員会でまた御議論いただくことになると思うんですけれども、そのことについて関連してお尋ねになっているということだと受け止めさせていただいた上でお答えをさせていただくんですが、確かに、委員が御指摘になるように、法律で定員の最高限度を定めておいて、具体的な定員数については最高裁判所規則などで決める、そこに委任するといった形のたてつけにしてしまえばいいではないかという御提案、御提言だと思います。

 確かに、このような立法形式を取る場合には、定員の計画的、弾力的な運用ですとか機動的な対応が可能となるだろうといった、そういう長所も考えられるなというふうに思います。

 しかし、他方、御指摘のように定員数の最高限度数を定めてしまうと、ある程度中長期的な事件動向等を予測して、必要な人的体制の見通しを立てることなども必要になると思われます。ですから、そういう様々な論点があるということであります。

 ですから、その立法形式を取るかどうかというようなことについては、やはりまず裁判所において検討がなされるべきものだなというふうに今思いながらお聞きしたところであります。

鈴木(義)委員 これ以上話をしても水かけ論になるだけなので。

 ただ、法務大臣として、法務行政に寄せられる内外の様々な声にしっかりと耳を傾け、法務行政をよりよくしていくんです、持てる力を尽くして、取り組んでまいりますと述べているということは、やはり不断の改革をしていくことが大事なんだというふうに思います。

 次に、法務行政の具体的課題の取組のうち、外国人との共生社会を実現するためにというふうにあるんですけれども、私の身近なところで外国籍の人が働いたり住んだりしているんですけれども、日本の商習慣というんですかね、生活習慣だとか社会習慣を理解して入ってきてもらっているようには思えない人が多いんだな。

 例えば、エスニック料理が大好きな、それが自分の主食として生活してきた国から日本に来られたときに、やはり、周りで、毎日エスニックのにおいを嗅いで、いいなという人もいれば、もう全然嗅ぎたくないという、アパートを借りる、その大家さんなんかも、申し訳ないけれどもそういう人方は入所させないでくれと言われるんです。だから、法律でいいからとか悪いからという話じゃないところで、生活習慣の中でのいざこざがやはり起きているのも事実あるんですよね。

 だから、日本に入ってこられて、日本で学生をするとか、就職、仕事をするとかというふうに来られたときに、日本はそういう国だというのを、ビザを発給したりなんなりするときに、やはり分かってもらうような努力もしなくちゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、その辺についてのお考えをお示しいただきたい。

古川国務大臣 委員がおっしゃるように、我が国の生活習慣、社会習慣を理解してもらうということはやはり大事だなというふうに思うわけです。

 法務省においては、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策に基づきまして、生活・就労ガイドブックを政府横断的に作成をして、外国人生活支援ポータルサイトで公開しております。

 このガイドブックの中には、安全、安心な生活、就労のために必要な基礎的情報を盛り込んでおりまして、しかも、これは多言語で作成をしてあります。ですから、日本に来る前、入国前であっても、外国人の方が日常生活におけるルールですとか習慣などの情報を入手することができるということになっております。

 我が国での生活に必要となるこれらの情報を、やはり、入国前に外国人が入手をしてそして理解をしていただくということは、その外国人が入国した後に、私たちのこの社会でより円滑に溶け込んでいく、生活をしていくということにつながる、役に立つというふうに思っています。

 今後、入国前の情報提供の在り方については、外務省等の関係機関とも連携して、やはり広報、周知に関する取組は一層推進していきたいというふうに思います。

鈴木(義)委員 啓蒙啓発だけして、ルールを守ってくれれば、それにこしたことはないと思うんですけれども。そういう事案が国内の中でもやはり散見されるんだと思うんです。

 去年、おととしだったですかね、埼玉で起きたのは、ヤギがいなくなったとか鶏がいなくなったとかという。それが、外国籍の人が取って食べちゃったと。中には、その肉を販売をしていた。日本人ではちょっと考えられないことが起きているんです。

 それは、ルールが前段にあるんだからそれでいいじゃないか、鶏を取ったとかヤギを取ったというのは窃盗罪で、それは刑法で処罰すればいいじゃないか。そうなる前に、やはり、日本のルールというのを分かって入ってもらう。また、そこに、ビザを出すなり審査をするときに、そこのところはやはりもうちょっと厳しく、ルール化するなりしてやらないと駄目なんじゃないかと思うんですけれども、もう一回ちょっと、答弁できれば。

古川国務大臣 人というのはそれぞれの性格を持っているわけですね。いろいろな価値観、文化、趣味も趣向もいろいろあるわけです。外国人ということのみならず、お互い日本人同士であっても、やはり人はそれぞれ違う。だからこそ、その違いを認め合って、そしてお互いに尊重し合って、いろいろぶつかることもそれはあるのだけれども、何とか折り合いをつけながらこの世の中を共に形成をしていく、世の中を支えていくということが、やはり私は目指すべき世の中の姿だろうと思います。全ての人がみんな同じになるわけはないわけですからね。

 ですから、そういう考え方を持っておりますけれども、例えば、外国人が日本の社会に入ってみえる、そのときに、文化の違いや習慣の違い等からいろいろなことがあるのでしょう。でも、そういうことをやはり乗り越えながら、理解が進んでいく、やはり共に暮らしていく、私は、そういう懐の深いといいますか、おおらかな社会であったらいいなということをかねて思います。

 以上です。

鈴木(義)委員 野党から一生懸命拍手が出るのだから、大したものだな。

 じゃ、次に行きます。

 再犯防止の取組の中で、犯した罪を償い、立ち直ろうとする人たちを受け入れられる懐の深い、しなやかな社会づくりを推進しますとあります。

 昨年、犯罪白書のデータを見ると、刑法犯の再犯者率というんですか、平成十三年から右肩上がりで、令和二年の数値が四九・一%。大臣が掲げている理念は再犯者には届いていないのかなというふうに思うんですけれども、御所見を伺いたいと思います。

古川国務大臣 お答えします。

 安全、安心な社会をつくっていくためには、再犯防止の取組がとても重要だというふうに思っておりまして、政府におきましては、再犯防止推進計画等に基づいて各種施策に取り組んでまいりました。これらの取組は着実に成果を上げていると思っています。例えば、刑法犯の検挙件数も年々減少しているところであります。

 しかし一方で、初犯者の数も減少しているものですから、結果として、再犯者の占める割合、すなわち再犯者率が高止まりをしているという、数字上、そういうことにもなっておるわけですけれども。

 いずれにしても、よりまた着実に成果を上げるべく、より一層の取組が求められているというふうに考えています。

鈴木(義)委員 さらに、私は矯正教育の考え方が限界に来ているんじゃないかと思われるデータがもう一つあるんですけれども、入所受刑者人員中の再入所者人員は減少しているんですけれども、再入所者率は五八%。年々やはり増えちゃっているんですね。

 そうすると、今までの司法の取組の中で、矯正教育というのをベースにしてやってきたんだと思うんですけれども、今大臣が御答弁いただいたように、やはり初犯を起こす人は減ってきているんだけれども、再犯する人は余り下がっていない。だから、割合が上がっちゃっている。

 だから、そこの本の考え方を少し変えていかない限り、再犯率や再入所者率を減少するというのは難しいんじゃないかという考え方です。中には四回も五回も再犯を起こしている人も、刑法犯の物によって再犯率が高いのはもう御案内だと思うんですけれども、今までの考えのやり方ではなかなかそれは再教育していくというのは難しいんじゃないかという考え方なんですけれども、御答弁いただきたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 刑事施設におきましては、委員御指摘の矯正教育について、様々、取組をこれまでもいたしてきております。やはり刑事施設においては、受刑者の特性に応じた効果的な処遇を行うことが求められておりますから、各種の改善指導プログラムを実施しております。例えて申しましたら、薬物依存離脱指導、性犯罪再犯防止指導、被害者の視点を取り入れた教育、交通安全指導、暴力防止プログラムなどなど、こういう様々な改善指導プログラムを取り入れる、あるいは、社会復帰に向けた就労支援等の取組も行っております。

 それから、これは矯正教育というのではありませんけれども、高齢又は障害があるなど、出所の後、やはり福祉的な支援が必要となる受刑者に対しましては、本人の同意を得た上で、常勤又は非常勤の社会福祉士が関係機関と必要な調整を行ったりしております。

 このように、刑事施設では、今後とも、矯正処遇の効果検証を行いながら、受刑者の特性に応じた指導や支援を一層充実させるべきだと考えています。こういうことを通じて、再犯防止の施策を着実に進めていきたいと思っているところです。

鈴木(義)委員 私のところの会社にも、犯罪を犯したというのかな、保護司さんから頼まれて、使ってほしいということで雇うことがあるんですね。それでも途中でやはり辞めていっちゃうんですね。何で辞めていくと聞いたら、夜の仕事をしていて、やはり夜の方が実入りがいいんです。昼間の仕事はそれよりも少ない。だから、やはり辞めて、夜の仕事に帰っていってしまう。それが現実だと思うんですよね。まあ、うちの会社が安い給料で雇っているからいけないんだと言われればそれで終わっちゃうんですけれども。

 現実を直視した中で、やはり、制度なり考え方が違ってきているんだったら、それは改善していくべきだというふうに思います。

 最後にもう一点だけ、大丈夫ですか。

鈴木委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、御協力お願いいたします。

鈴木(義)委員 過ぎているんですか。じゃ、終わります。

 また是非、おいしいお茶を用意しておきますので、議論させてください。

鈴木委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず冒頭、ロシアによるウクライナ侵略に、表現し得る最大限の憤りを持って抗議をいたします。国際社会がロシアのウクライナ侵略反対の一点で力を合わせ、侵略をやめさせなければなりません。

 また、プーチン大統領が核兵器の使用を示唆する発言を行ったことを絶対に許すことはできません。私の父は長崎の被爆者です。被爆者の皆さんが人生を懸けて核兵器をなくすために御努力をされてきた。長崎を最後の被爆地にという声を上げ続けてこられました。この被爆者の皆さんの思いに応えて、核兵器を絶対に使用させない、威嚇も許さないという立場で、政府としても全力を挙げていただきたいということを切に求めるものでございます。

 既に子供たちを含め民間人の命も奪われ、そして犠牲になっているという報道がございます。この命の危機から逃れる避難民の方々の救済、保護というのは喫緊の課題です。七百五十万人もの子供たちもいらっしゃるということが言われておりますけれども、命を守るための支援をこの日本でもやっていかなければいけないというふうに考えております。

 国連の難民高等弁務官事務所では最大四百万人、そしてEUの危機管理局は七百万人の難民の可能性が出るということが言われておりますけれども、日本でも、ウクライナからの避難民の方々の救済、保護、そしてビザの発給、在留資格発行、そして、難民として柔軟に受け入れていくべきだというふうに思っております。また、ロシアの中でも、プーチン大統領に異を唱え、迫害を受けている方々の救済、保護も必要だというふうに考えております。

 ウクライナへの侵略によって命の危機にさらされている避難民の方々を保護し、そして生命の安全を確保するためにも、日本も役割を果たし、そして難民の受入れを適切に行っていくべきだというふうに考えておりますけれども、法務大臣、お答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 我が国に避難を希望される外国人から上陸申請がなされた場合には、入管庁において、個々の置かれた状況に十分配慮しながら、発給された査証に基づき、本邦への上陸を速やかに認めることといたしております。

 法務省としては、避難される方々の我が国への受入れについて、関係省庁と連携の上、早急に検討し、積極的かつ適切に対応してまいる所存です。

 本邦に避難した外国人から難民認定申請がなされた場合は、その申請者ごとに申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定してまいります。また、難民条約上の難民とは認められない者であっても、本国情勢等を踏まえて人道上の配慮が必要と認められる者については、本邦への在留を認めております。

 今、委員からは、ウクライナからの避難民の方々に加えて、ロシアの中でもプーチン大統領に異を唱えて迫害をということにお触れになりましたけれども、そのような場合にも適切に対応してまいりたいと思っています。

本村委員 以前、シリア難民の皆様には日本は大変冷たい状況があったわけですけれども、今度こそ難民の受入れを適切に行っていただきたいということを強く求めたいと思います。

 私も、名古屋でウクライナ出身の方々のお声をお伺いをいたしました。御家族、御親戚、御友人のことを思い、不安で眠ることができないという日々をお過ごしになっておられます。命の危機から逃れ、多くの困難を抱えた方々の救済に、日本政府としても全力を挙げていただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 ウィシュマさんの死亡事件について質問をいたします。

 先ほど来大臣からもお話がありますように、ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋出入国在留管理局でお亡くなりになった三月六日から一年がたとうとしています。名古屋入管に私も行かせていただきました。その際にも黙祷をさせていただきましたけれども、心から哀悼の意を申し上げたいと思います。

 日本の入管収容が国際人権条約に反することは、国連の自由権規約委員会、拷問禁止委員会、人種差別撤廃委員会から指摘をされてきましたけれども、改善しようとしなかった。出入国在留管理庁の調査チームの報告書がありますけれども、それは、こういう国際的な機関からの指摘を何ら顧みられていないという厳しい指摘がございます。

 ですから、この報告書を出したからもう終わりだというふうにしないで、真相解明のために引き続き努力をしていかなければいけないというふうに思っております。

 昨年十二月二十四日、法務委員長そして法務委員会の理事、オブザーバー、希望する法務委員の皆様が、私も参加をさせていただきましたけれども、ウィシュマさんが亡くなる二週間前からの監視カメラの約六時間半の記録を視聴をいたしました。二週間分ですから三百三十六時間あるわけですけれども、その中の六時間半ピックアップされたものでございます。その中でも多くのことが明らかになったというふうに思っております。

 法務大臣も視聴されたということを先ほど来答弁されておりますけれども、亡くなる二週間前、見ることが可能な最初の二月二十二日から、ウィシュマさんは下半身がほとんど動かない状況になっておられ、かなり調子が悪いということが見て取れました。

 法務大臣は、二月二十二日、どのような状態にあったというふうにお感じになっておられますでしょうか。

古川国務大臣 ウィシュマ・サンダマリさん、亡くなられて、三月六日で一年です。改めて哀悼の誠をささげ、御遺族にもお悔やみを申し上げたいと存じます。

 今委員お尋ねの件でございますけれども、本事案の評価につきましては調査報告書が出ております。この調査報告書では、可能な限り客観的な資料に基づいて、医師、弁護士等の外部有識者の方々に御意見、御指摘をいただきながら事実を確認し、考えられる問題点を幅広く抽出して検討がなされたものというふうに承知をしております。

 調査報告書では、ウィシュマさんの一月中旬以降の健康状態及び医療的対応の在り方について詳細に言及がされております。その上で、問題点は幾つか指摘されております。法務大臣としては、このような調査結果を踏まえた改革を着実かつ迅速に実現するよう入管庁に徹底をするということが重要であるというふうに考えています。

本村委員 下半身がほとんど、二月二十二日の段階でもう動かないような状況がありましたけれども、早い段階からの精密検査そして根本治療が必要だったのではないかと思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 本事案の評価につきましては、先ほど申し上げました調査報告書に委ねられるべきものだというふうに考えております。

本村委員 だから、先ほど来、報告書は不十分な点があるということも御指摘をさせていただいているんですけれども。

 既に二月三日の時点で、愛知県内の支援者の方が、なぜこのような状態になるまで放置していたのか、点滴等、しかるべき処置はきちんとされていたのかと指摘をされておりました。そして、二月十五日の尿検査では肝臓や腎臓の病気が疑われる数値、そして、先ほど来御議論ありましたけれども、飢餓状態と指摘をされる状態になっておりました。

 なぜ精密検査や根本治療が行われなかったのか、その点、大臣、お答えいただきたいと思います。

西山政府参考人 大臣からもお話がございましたけれども、本件につきましては調査報告書を作成して、案件について、客観的な資料等に基づきまして、また有識者にも加わっていただいて検討したものでございまして、その調査結果は尊重すべきであるというふうに私どもも考えておりますけれども、その調査結果に基づきましても、委員が御指摘の下半身の状態も含めまして、ウィシュマさんに生じていた体調不良について、その当時、ウィシュマさんを庁内外の複数の医師が検査等を行ったものの、調査結果に記載してございますとおり、当時、その原因を特定することがそもそもできていなかったということがございます。

 また、調査チームによる調査におきましても、死因となった疾患及び死亡に至った具体的な経過を詳細に特定するために、専門医二名から意見を聴取するなどいたしましたけれども、詳細な死因については、複数の要因が影響していた可能性があり、死亡に至った具体的な経過、機序を特定することは困難であるとの結論に至っているものでございます。

 そうした本事案の評価に基づきますれば、個別の治療行為の必要性については言及はなかなか難しいということでございます。

本村委員 私は、もっと早い段階で精密検査や根本的な治療が行われていればウィシュマさんの命が守られたのではないかというふうに思っております。

 昨日、二月二十八日、私の事務所に入管収容施設における医療体制の強化に関する提言というものを届けていただきましたけれども、その中の「入管収容施設における医療の目的」の中には、「被収容者は、自己の意思により自由に施設外の医療を受けることができず、その健康の保持と社会一般の医療水準に照らし適切な医療上の措置を行うことは、収容を行う国の責務である。」というふうに書かれております。

 今後、収容者の方々の健康状態が悪い場合、外部の医療機関も利用して、精密検査も含めて、根本的な原因を突き詰め、そして根本治療をやると約束をしていただきたいと思います。大臣、お願いしたいと思います。

古川国務大臣 昨日、入管収容施設における医療体制の強化をテーマとする有識者会議からの報告書を受け取りました。これは、ウィシュマさんのあの悲しい出来事を、二度と同じことを繰り返してはならないというその決意の下に、そのための改善策の一つとして、このように有識者会議を設置していただいて、そこで多角的に御議論いただいた、その成果がこの提言でございます。

 この提言をしっかりと受け止めて、二度とあのような出来事のないようにしっかりと努めてまいる覚悟です。

本村委員 精密検査など、根本的な原因を突き止め、そして根本治療をしっかりとやっていただけるということでよろしいですね。

古川国務大臣 入管庁の施設におきましては、被収容者に対しては、体調不良や傷病等を訴える被収容者に対しましては、訴えの内容や症状等に応じて、必要な診療、治療を適時適切に受けさせております。庁内外の医師の診察を適時に受けさせた上、その診察結果に従った医療的対応を行ってきております。

 その上で、今回いただいた提言を踏まえて、やはり、その提言の中に、今までのやり方では足りないところがあるという指摘であるならば、それを真摯に受け止めて、そのような改善に努めてまいりたいということでございます。

本村委員 少し確認をさせていただきたいんですけれども、出入国在留管理庁の収容施設の中で死亡事件が相次いでおります。戦後から今まで何人の方が亡くなられたのか、改めてお伺いをしたいと思います。

西山政府参考人 平成十九年以降でございますけれども、全部で十七件ございます。

本村委員 戦後の数字をお願いしたんですけれども。

西山政府参考人 私どもで資料で確認できる限りで、平成十九年以降で数字を挙げさせていただいた次第でございます。

本村委員 先ほども指摘をさせていただきましたけれども、そもそも、二月三日の時点で、亡くなる一か月以上も前から、点滴をということを訴えておられました。

 私は、十二月二十四日の、監視カメラの映像を六時間半見させていただいたときに、この二月三日の時点のビデオも見させてほしいというふうに申し上げましたけれども、名古屋入管の監視カメラの記録は二週間で上書きされるから残っていないというふうに言われました。

 外から隔離をされた閉鎖空間の中で、命と尊厳が守られ、虐待、暴力などの隠蔽を許さないためにも、映像記録が二週間前までしか残らないという仕組みはやめて、記録媒体、保存機器などで残すなど、もっと長期に保存できる仕組みを構築するべきだと思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

古川国務大臣 委員の御指摘は受け止めさせていただきます。

 他方で、記録媒体の保存容量の問題ですとか、被収容者個人の着替えの場面など、プライバシーに関わる映像記録を必要以上に長期間保存することの適否等の問題もございます。

 また、この監視カメラというのは、その設置の趣旨でございますけれども、これは体調不良の被収容者や遵守事項違反に及び保護室に収容された被収容者の動静をリアルタイムで監視して、容体に変化があった際ですとか自傷行為に及んだ際などに迅速に対応するために、そういう趣旨をもってこのカメラというものは設置をされておるわけです。

 このカメラ設置の趣旨等にも照らして、十分な仕組みとなるように努めてまいりたいと思います。御指摘は受け止めます。

本村委員 センシティブな個人情報はしっかりと保護しながら、それをどうやって両立するのかということも含めて検討をスタートしていただきたいというふうに思います。

 先ほども、報告書、報告書というお話がありましたけれども、その報告書ですけれども、様々な問題がございます。

 階議員が映像記録を見た際にも御指摘ありましたけれども、二月二十四日の監視カメラの記録、朝四時から朝四時五十九分までの映像を見させていただきました。ウィシュマさんは、最初、動かない状況で、一瞬白くなり、そして四時五分頃、ああ、ああという苦しみの声が続き、そして毛布をかぶり直し、四時十五分過ぎに、ため息、はあという声があり、吐くような状態がありました。そして、四時十五分から四時二十分の間に、担当さん、口から血、できない、ああ、息、ああ、ああという、そして吐き気がひどそうな状況もございました。ああ、ああと、ずっと苦しみ続けている状況がございました。

 しかし、出入国在留管理庁調査チームの報告書には、かぎ括弧で、日中以外では、午前四時台にも体調不良を訴えたとしか書かれておりません。

 明らかに命の危機と言える深刻な状況があったのに、報告書の書きぶりはおかしいというふうに思いますけれども、正確でないというふうに思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 この調査報告書には、問題点や改善点の検討の前提となる事実関係を幅広く記載しておりますが、亡くなられた方や職員の発言、行動等の全てを逐一記載することはしていないところであります。

 御指摘の場面につきまして、看守勤務者が臨場した当初は、亡くなられた方、ウィシュマさんが息苦しさや腹痛等の体調不良を訴えていたが、血液等の測定、バイタルチェックで数値に異常は見当たらず退出したものであったことから、この場面も含めて調査報告書には、A氏はこれらのほかにも体調不良を訴えて、「(日中以外では、午前四時台にも体調不良を訴えた。)」、バイタルチェックを希望し、看守勤務者がバイタルチェックを行ったが、各数値に異常は見当たらなかったと記載しているものと承知しています。

 なお、二月下旬の体調不良の訴えに対する医療的対応の問題点につきましては、外部有識者の方々の御意見、御指摘を踏まえて指摘をされております。

 具体的には、名古屋局の幹部が、被収容者の体調や診療の申出事実等を的確に把握し、必要に応じ、外部医療従事者による対応を検討する、指示できる体制を構築しておくべきであったこと。

 あるいは、この亡くなられた方の、ウィシュマさんの訴えが誇張やアピールであったと疑っていたとしても、仮にですよ、疑っていたとしても、そのことと医療的対応の必要性とを区別して、真に医療的対応の必要な状況を見落とすことなく適切に対応できるよう、職員に意識させておく必要があったというようなことが、そういう指摘を受けております。

鈴木委員長 本村君、申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。

本村委員 今、報告書、問題点を指摘させていただきましたけれども、真相究明をこれで終わりにしないでいただきたいということを重ねて申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、明二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十六分散会


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