衆議院

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第3号 令和4年3月2日(水曜日)

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令和四年三月二日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 馨祐君

   理事 井出 庸生君 理事 熊田 裕通君

   理事 葉梨 康弘君 理事 山田 美樹君

   理事 鎌田さゆり君 理事 階   猛君

   理事 守島  正君 理事 大口 善徳君

      五十嵐 清君    石橋林太郎君

      尾崎 正直君    奥野 信亮君

      国定 勇人君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    谷川 とむ君

      中谷 真一君    中野 英幸君

      西田 昭二君    野中  厚君

      八木 哲也君    保岡 宏武君

      山田 賢司君    伊藤 俊輔君

      鈴木 庸介君    太  栄志君

      山田 勝彦君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    角田 秀穂君

      福重 隆浩君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         古川 禎久君

   法務副大臣        津島  淳君

   法務大臣政務官      加田 裕之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  下田 隆文君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁長官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 安東 義雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 股野 元貞君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     保岡 宏武君

  藤岡 隆雄君     太  栄志君

  日下 正喜君     角田 秀穂君

同日

 辞任         補欠選任

  保岡 宏武君     東  国幹君

  太  栄志君     藤岡 隆雄君

  角田 秀穂君     日下 正喜君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)

 裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官下田隆文君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長川原隆司君、出入国在留管理庁長官佐々木聖子君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、出入国在留管理庁出入国管理部長丸山秀治君、外務省大臣官房審議官安東義雄君、外務省大臣官房参事官股野元貞君及び厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより政府参考人に対する質疑を行います。

 なお、理事会におきまして、昨年十二月二十四日のビデオ閲覧に際し、今般の閲覧で知り得た情報は、お亡くなりになった方のプライバシー、御遺族の心情等に最大限配慮して取り扱うこととすると申し合わせてございますので、御留意いただきますようよろしくお願い申し上げます。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。米山隆一君。

米山委員 それでは、私から御質問させていただきます。

 まず、冒頭ですけれども、お配りした資料、大変恐縮ながら、私書式をよく分かっておりませんで、これは厚労省発出の平成十七年七月二十六日の通知であるということを下に記載しておりませんでしたが、お許しください。こちら、上にもありますとおり、厚労省が平成十七年七月二十六日に各都道府県知事向けに発出しました通知でございます。こちら、参考資料としてお配りさせていただきました。

 それでは質問に移らせていただきます。

 まず冒頭、ロシアからの侵略に対して全力で戦っているウクライナの方々に心より敬意を表させていただきます。そして、我々日本は、国際社会と連帯して、ウクライナの努力を全力で支援し、全てのウクライナ在留邦人及びウクライナ国民の安全を確保するためにできる限りのことをすべきことを私からも申し上げさせていただきたいと思います。

 さて、そのために、邦人保護、邦人及び邦人関係者へのビザの発給、さらには、邦人とは直接関わらないウクライナの方々の難民認定などにつきましては、昨日、多くの委員の方々から御質問があり、政府からも、法務省、外務省挙げて早急に取り組む旨の御答弁が得られたものと思います。

 ですので、あえてここでは繰り返しませんが、一つだけ質問させていただきます。

 今後、戦火が激しくなり、また、その上で、どのような形であれ、紛争は長期化すると思います。戦火を逃れて日本に来られたいという邦人、邦人関係者のみならず、邦人とは直接関係のないウクライナの方々もこれから増えてこられるというふうに思います。また、短期的には多くの難民を受け入れた東ヨーロッパからも、紛争が長期化すれば、日本にも一定数の難民を受け入れてほしいという声が出てくるものと思います。

 その際、日本は、国際社会に恥じない受入れをなすべきだと思うところでございますが、それに当たって、日本がビザを発給し難民認定をするその条件がはっきり分からないと、日本に来たいという方々は日本を目指していいのかどうか分からない。やはり、条件をきちんと明示するということは非常に重要かと思います。

 昨日の答弁で、大臣、担当者の方々は、ビザの発給や難民認定について、制度として受入れを検討して、早急にこれをつくっていくというふうに御答弁されておりましたが、しかし、認定については、個別の事案に従ってという趣旨で御答弁がなされておりました。もちろん、一人一人の認定につきまして、その事情を考慮すべきは当然かと思いますけれども、しかし、今ほど申しましたとおり、大枠として、やはり、ビザの発給、難民認定、その条件をきちんと示すということは極めて重要であり、それが制度として受け入れるということであろうかと思います。

 今後、政府が早急につくられる制度としての受入れ体制において、ビザ発給、難民認定の条件を明示的に示すことを考えているかどうか、御担当者、政府の御見解を伺います。

西山政府参考人 現在、入管庁においては、難民認定制度の透明性向上の観点から、我が国及び諸外国での実務上の先例やUNHCR発行の文書などを参考に、難民該当性に関する規範的要素の明確化の検討を進めており、UNHCRとの意見交換も行っているところでございます。

 具体的な内容については現在検討中でございますが、この規範的要素の明確化によって、難民のより適切、迅速な認定、判断の透明性が確保され、申請者サイドにおいては適切な申請にもつながると考えております。

 策定に当たっては、関係省庁の意見も伺った上で取りまとめたいと考えており、策定後、できるだけ早期に公表したいと考えております。

米山委員 少し補足で御質問いたしますけれども、特に、それは、今回のウクライナの難民認定に関しまして、やはりウクライナからの方々の受入れに関してはまたちょっと別の要素があるんだと思うんですけれども、ウクライナからの、ビザの発給であり難民認定に関しても条件をきちんと明示される、その方向で今検討されているという趣旨でよろしいでしょうか。御回答をお願いいたします。

西山政府参考人 ただいま御答弁いたしました規範的要素の明確化、これについては、ウクライナのこういう状況になった以前から既に課題として取り組んでいるところでございまして、当然ながら、今後、この規範的要素の明確化の中で、ウクライナの関係についても対応が取れるように、こちらとしても検討をしっかりしていきたいというふうに考えております。

米山委員 それでは、御期待申し上げます。

 次に、名古屋入管における、もう名前を言っていいんだと思いますけれども、もう報道されているところですので、ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件につきまして御質問させていただきます。

 この事件、間もなく三月六日で一年を迎えます。非常に痛ましい事件で、昨日の質問、また大臣を始めとする答弁でも、二度と繰り返してはならない、そのようなことが本当に繰り返されました。私も日本人の一人として、ウィシュマさんに心より哀悼の意を表し、また痛惜の念を申し上げさせていただきたいと思います。

 そして、昨日の大臣の答弁で、このようなことが二度と起こらないように、再発防止に全力を尽くすということが何度も繰り返し答弁されました。また、その中では、二〇二一年八月十日付調査報告書、こちらに基づく対応策、さらには、二月二十八日付の医療提供体制の強化に基づく報告書、対応策というようなものに基づいて対策を打っていく、そのような御答弁がございました。

 しかし、私、こちらをよく精読させていただきましたが、この報告書、またその対応策には欠けているところがあると思います。それで、その点につきまして御質問をさせていただきます。

 私、法務委員会で、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなる前二週間、二月二十三日から三月六日までの居室の様子を撮影した監視カメラの抜粋、これを昨年十二月二十四日に法務委員として拝見させていただきました。昨日、鎌田委員、山田委員がこのビデオの全面公開を求めたところ、大臣は、収容の保安上の問題と死者の尊厳を理由としてこれを拒否されました。

 しかし、内容は非常に悲惨ではありましたけれども、一方で、映っているのは居室の中だけ。会話としても、極めて個人的な会話だけであり、これを公開したからといって、保安上の問題が生じるとは到底思えません。また、仮に生じるのであれば、その部分に関してはモザイクをすればよいことであろうと思います。また、死者の尊厳ということにつきましては、御遺族が公開を望み、そして、恐らくはウィシュマさん御自身も、それを推定するのは不遜ではあるかもしれませんが、しかし、恐らくはウィシュマさん自身も公開を望んでいると思われるところから、全く理由にならないと思います。

 このビデオを御遺族及び関係者に全面的に公開する意思があるのかないのか、改めて伺います。また、意思がない場合には、その理由も改めて御答弁ください。

西山政府参考人 御指摘のビデオ映像につきましては、収容施設内や被収容者等の具体的状況の記録であるため、情報公開請求に対しても、法に基づき基本的に不開示情報として取り扱っているものと承知しております。

 調査報告書が公表された現在においてもなお、保安上の問題に加え、ウィシュマさんの名誉、尊厳の観点からの問題もあるため、ビデオ映像を公開することは適当でないと私どもは考えてございます。

米山委員 ただいまの答弁は、私がちゃんと理由を挙げて、このような理由で保安上は関係ない、このような理由で御遺族の、尊厳、意思には反しない、死者の意思には反しないと言ったことに対して、何ら回答をせず、ただ単に従前の答えを繰り返しているだけです。つまり、法務省は、この件に関して真っ当に回答する意思がない、そのように私としては捉えております。

 次、この件に関してもう一度申し上げますけれども、私、何も今、責めたわけじゃ、ちょっとまあ、それは責めましたけれども、法務省を責めたいから言っているのではございません。このビデオ、何のために公開すべきか。これは、我々が見て、いろいろな問題点を感じて、だから、こうしてここに、質問に立っているわけです。

 大臣、このビデオ、またこの報告書、有識者がきちんと見た、レビューしたとおっしゃっておられますが、その有識者は僅か五人です。その中には医師は二人しかいません。また、この医師も、肩書だけで御判断するのはちょっと恐縮ですし、また、もちろん御立派なお医者さんなんだと思うんですけれども、ただ、肩書から判断するに、非常に傑出した御経歴の方ということでもございません。

 僅か二人の医師が見ただけで、これが全て正しいと言うことはできないんです。これは、多くの人が見て、多くの専門家が見て、多くの医師が検証して、それによって初めて正しい原因が分かり、正しい対応策が分かる。だからこそ公開すべきだと私は申し上げております。

 そのような観点から、公開する意思があるのかないのか、多くの専門家のレビューをするために公開する意思があるのかないのか、もう一度御見解を伺います。

西山政府参考人 私どもとしましては、今回調査に加わっていただきました外部有識者の方については、適切であり、その外部有識者が、客観的、公正な立場から御意見、御指摘をいただきまして、問題点を幅広く抽出して検討いただいたものと考えておりまして、この調査、検討は、この外部有識者も含めたものとして、特段問題があるものとは考えてございません。

米山委員 つまり、法務省の方は、法務省が任意に選ばれたたった二人の医師がレビューさえすれば、問題点は全て抽出されて、それ以上のレビューは不要である、そのように考えたと捉えさせていただきますが、極めて残念な御見解だと思います。

 続きまして、やはり、繰り返させていただきますけれども、私、このビデオを公開するべきだと言っている理由はもう一つございます。

 御承知かと思いますけれども、ウィシュマ・サンダマリさんの御家族、国家賠償請求を準備しております。既に証拠保全手続に着手をしているものと伺っておりますが、今後、訴訟手続の中で、意図するとせざるとにかかわらず、このビデオが公開され、また一般に流布する可能性は決して低いものではありません。また、仮にビデオ自体が流布しなかったとしても、裁判の中で、その様子が言葉として認定され、そして、それは公開される。その可能性も、これはより高いものと言えます。

 そのとき、世界は、日本政府がこのビデオを意図的に隠蔽した、そのように見ます。見られてしまいます。それは、人権外交を掲げる日本にとって、私は極めて恥ずべき状態であると思います。

 今後の訴訟の展開を考えて、そして、その中でこのビデオが公開されることも考えるのであれば、日本政府は、仮に過つことがあったとしても、自らその過ちを認め、少なくとも主張すべきは主張すべきとして、少なくとも証拠開示の点においては積極的に御遺族に協力し、自らその誤りをきちんと見つけ出す、そういう国家である、そういう誇りある国家であるということを示すためにも、私は、日本政府はこのビデオを自ら全面的に公開すべきだと思いますが、その観点から、公開する意思はないのか、もう一度お伺いします。

西山政府参考人 まず、裁判上の手続につきましては、裁判所の訴訟指揮に従って証拠を開示するということはもちろんございます。

 ただ、私どもがこちらから情報を開示する、一般とかあるいは特定の人たちに対してということに関しましては、これは情報公開法にのっとってやらなければならないことでございますので、それについては、あくまで法によって適切に対応するということでございます。

米山委員 私、三つ理由を述べましたが、いずれに関しても、その理由に関しては御回答がなかったというふうに認識しております。私は非常に残念でございます。

 それはつまり、日本政府が御遺族の意思を無視して、多くの専門家の目によるレビューによる原因究明からも目をそらして、そしてまた、やがて裁判手続によって一般に公開される、そのことも考えずに情報を隠匿している、隠蔽しているということであろうと思います。

 私は是非公開すべきだと思いますので、これは要望として大臣にお伝えいただけるようにお願い申し上げます。

 そして、次の話題に移らせていただきます。

 また、ウィシュマ・サンダマリさんの死因が解明されていない理由の一つに、報告書作成に当たって、これは報告書三十ページに書いてありますが、司法解剖の鑑定書が入手されておらず、解剖した医師からの聴取もなされていないということがあろうかと思います。

 死因の判断に当たって、死因不明と書かれていますが、解剖報告、解剖の鑑定書って極めて重要だと思うんですけれども、何でこの解剖鑑定書を入手せずに報告書を作ったのか、その理由をお聞かせください。

西山政府参考人 そもそも司法解剖は捜査手続としてなされているものでございまして、現在、この件につきましては刑事事件として捜査が行われているため、司法解剖の鑑定書の入手はできなかったということでございます。

米山委員 今の御質問に対してもう一度お伺いしたいんですけれども、捜査手続の中で作られた文書である、それはそのとおりだと思います。

 一方で、これは多分、名古屋県警ということになると思うんですけれども、名古屋県警内の行政文書かと思います。違うんですか。まあ、警視庁でもいいんですけれども、いずれにせよ行政文書だと思います。これを入手できないという法的根拠があるのか、お聞かせください。

西山政府参考人 申し訳ございません、御質問の趣旨がよく分からなかったもので、ちょっと……(米山委員「じゃ、もう一度」と呼ぶ)よろしくお願いいたします。

米山委員 入手できないとおっしゃいましたけれども、入手してはいけないという法律はございますかという質問です。

川原政府参考人 お答えいたします。

 捜査書類に関するお尋ねですので私からお答えいたしますが、委員も御案内と思いますが、刑事訴訟法四十七条に、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」とあります。

 現在、当該事件は刑事事件としても捜査中でございまして、その観点から、この書類につきまして、刑事訴訟法四十七条に従った取扱いをしているところでございます。

米山委員 今ほど読まれたとおり、ただし書の方に、公益上の理由があり、相当と認められる場合はこの限りでないとあるわけです。

 公益上の理由はないとお考えですか。法務省の御担当の方、御回答お願いします。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 四十七条の趣旨は、起訴されて、公判廷に顕出されていない書類につきましては、関係者の名誉、プライバシーその他を守るために公にしないという利益がある一方で、御指摘のように、ただし書については公益の必要という場合がありまして、公益の必要があれば直ちにこれを明らかにしろというふうには書いてございません。条文には、「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」ということでございまして、現在、捜査が現に進行しているということもございまして、この四十七条に従った取扱いをしているところでございます。

米山委員 相当と認められるかどうかについての御回答ではないと思うんですけれども。

 また、何度も申し上げますけれども、本件は、それは刑事事件かもしれませんけれども、犯人が隠避する可能性はありません。この証拠を開示したところで、何か捜査に影響があることはないです。一方で、これを見ることによって死因がはっきりと分かります。公益上の理由は明らかです。

 両者を考量した上で明らかに公益上の理由が勝ると思うのですが、今の御答弁は、そうではない、捜査上の理由が勝るという御答弁かと思いますので、これを公開するとどのような捜査上の影響、支障があるのか、御答弁いただけますか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 この四十七条に係る判断は、捜査機関が判断すべき事柄でございますので、私ども法務当局から、個々の事案に際しまして具体的な内容を申し上げることは差し控えたいと存じます。

米山委員 そうしますと、これは、捜査当局が断った、法務省としては、きちんと照会をかけた、鑑定書を下さいと言ったけれども、捜査当局が捜査上の理由があるから断った、そういう理解でよろしいですか。

西山政府参考人 調査の過程におきまして捜査機関とどのようなやり取りを行ったかについての具体的な事柄につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

米山委員 つまり、この点におきましても、法務省は死因の究明という極めて重要な点について正面から取り組んでいない、そのように理解させていただきます。

 ちなみに、私、この鑑定書も是非公開して多くの専門家のレビューを受けるべきだと思いますけれども、聞くまでもないんでしょうが、この鑑定書を公開する意思があるかないか、一言でお答えください。

川原政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の鑑定書は、先ほど来申し上げております、捜査機関が捜査活動に伴って作成された書類でございまして、その取扱いは捜査機関が判断すべき事柄でございますので、法務当局としては御答弁を差し控えさせていただきます。

米山委員 それでは、次の話題に移ります。

 さて、ビデオを見ますと、入管職員はバイタルチェックをしております。また、報告書七十ページを見ても、被収容者からの診療の申出に対して、看守勤務者や看護師等により診療の必要についてスクリーニングが行われ、その申出について出入国管理局の幹部の目が届かず、ウィシュマ・サンダマリさんの診療の申出にもかかわらず、診療が行われなかった旨が記載されております。

 ところで、御案内のとおり、医師法十七条は、医師でなければ、医業をしてはならないと定め、三十一条で、これに反する者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金を定めております。また、保健師助産師看護師法、いわゆる看護師法第三十七条は、「保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。」と定めております。

 入管職員及び看護師が診療の必要性についてスクリーニングを行っている、これはもう報告書に書いてありますからね。スクリーニングを行うことは、私は医師法に反すると思いますけれども、御見解を伺います。また、反しないというのであれば、その理由を御回答ください。

西山政府参考人 御指摘がございました医師法十七条の解釈につきましては、法務省の所管外であることからお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

 もっとも、調査に加わった医師や弁護士を含む外部有識者の方々からも、看守勤務者や看護師等によるスクリーニングが行われたことについて医師法に反するとの御指摘はいただいてはおりません。

米山委員 報告書、改善策、九十五ページにおいて、「名古屋局のこれまでの運用を改め、局幹部が、被収容者の健康状態や診療の申出に係る情報を把握した上で、庁内の医療体制で対応できない場合は外部の医療従事者による対応を検討・指示できる組織体制を速やかに構築すること」と書いてあります。

 これは、実は看護師や職員ではないんですけれども、やはり医師ではない局幹部職員がスクリーニングをする、そういう意味でございますが、局幹部によるスクリーニングは医師法十七条に反すると思いますけれども、反しませんか。御見解を伺います。

西山政府参考人 先ほど申し上げたとおり、医師法十七条の解釈についてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じますが、今委員が御指摘いただいた改善策は、先ほども申し上げました医師や弁護士などの外部有識者の御意見も踏まえた上で出された改善策であるということを御理解いただきたいと存じます。

米山委員 それでは、御担当の厚生労働省大坪大臣官房審議官に御質問いたします。

 ちなみに、配付しました資料にあるとおり、厚生労働省、平成十七年七月二十六日の通知、出しております。こちら、三ページ。また、一から三に掲げる行為、これは血圧測定、体温測定及び酸素飽和度の測定でございますが、一から三までに掲げる行為によって測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為であり、事前にされた数値の範囲外の異常値が測定された場合には医師、歯科医師又は看護職員に報告すべきものである、このように通知されております。

 そうしますと、バイタルサインをチェックしてスクリーニングをすることは、私は明文でここに反する、この通知に抵触すると思いますが、厚生労働省の御見解をお伺いいたします。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の事案に関しまして医師法、保助看法等に抵触しているかどうか、こういったことをなかなか判断が難しいところではございますが、まず一般論として医師法の解釈について申し上げますと、入国管理局におかれましては、先ほど先生おっしゃいましたように、法務省が定める被収容者処遇規則等々におきまして、その取扱いが、例えば所長等は、被収容者が傷病に罹患、負傷したときには医師の診療を受けさせる、また傷病により適当な措置を講じなければならない、また被収容者から体調不良の訴えがあった場合には、その内容を十分聴取するとともに、体温測定等により身体状況を的確に判断した上で、診察の要否について医師等の判断を仰ぐ又は速やかに医師の診断を受けさせるなど病状に応じた適切な措置を講ずるよう定められており、組織として対応されているというふうに承知をしております。

 こうした入国管理局における取扱いは、先生が今読み上げていただきました医師法十七条の解釈に定めておりますいわゆる医行為、これは医療を受けさせるかどうかを判断するための取組というものを定めているものだというふうに、入国管理局の方では定めているものと存じますので、そこは直ちに医師法、保助看法の、抵触するものではないというふうに考えております。

米山委員 今ほど審議官がお話しになられました細則は守られておりません。その細則が守られておらず、看護職員がスクリーニングをしていたと報告書にも書かれております。スクリーニングというのはバイタルサインを採取するだけではなく、そのバイタルサインに基づいて、診療を受けるか否かを医師でも看護師でもない者が判断していたという意味です。

 個別の事案ではお答えできないということですので、仮定のケースとして御質問いたしますけれども、バイタルサインに基づいて医師の診療の要否を医師、看護師でない者が判断することは医師法十七条に反するか否か、厚労省の見解を伺います。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 医行為というものは、先生もおっしゃっていらっしゃいますとおり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、また危害を及ぼすおそれのある行為のことを申し上げます。

 今般、入国管理局における取扱いというものは、様々な症状等々から、医療を受けさせるかどうかということを定めた運用上のプロセスなんだろうというふうに考えておりまして、そこは医療の医行為というところに当たるものではなく、医療を受けさせるかどうかというプロセスを定めたというふうに解釈をしておりますので、そこは直接的に医行為に当たるものではないというふうに考えております。

米山委員 そうしますと、厚労省としては、看護施設等においても、看護職員が採取したバイタルサインに基づいて医師に診療を受けさせるかどうかを判断してよい、そのように考えているということでよろしいですか。

大坪政府参考人 お答えを申し上げます。

 通常におきましても、医療を受けた方がよいのではないかということは、必ずしも医療者が判断するということではない場面も多くあろうかと思っております。

 この入国管理局の定めというものは、そういう意味で、医師の助言を仰ぐですとか、医療につなげるためのプロセスというものを定めたものだというふうに解釈をしておりますので、ここは直接的に医行為に該当するものではないというふうに一般論としては考えております。

米山委員 私、この守られなかった細則について聞いておりません。介護施設において、介護職員がバイタルサインに基づいて医師に診察させるかどうかを自分で判断することは、それは違法ではないのか。逆に、それが違法でないなら、あらゆる介護施設でそれができることになるんですが、それでいいんですかね。御回答をお願いします。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 あくまでも一般論ではございますが、一つの特定の疾患に関する診断、判断ということをされたというものではなく、医療につなげるためのプロセスというふうに考えますと、そこは直ちに医行為に当たるものではないというふうに考えております。

米山委員 今の御回答は私は非常に残念です。もしそれが許されるのであれば、多くの介護施設で多くの方が亡くなられる可能性があります。

 それは、バイタルサインを取るのはやっていいですよ。でも、そこから診療を受ける必要があるかないかは医療従事者が判断すべきことです。政府がこの問題に関して自分たちの非を認めないがために、厚労省がわざわざ通知を出して、全国の介護施設、全国の医療施設に通知したものを覆すような回答をされる。私は極めて残念です。

 質問、もうあと五分ですので、ちょっと時間が足りませんから、残りはまたさせていただきますけれども、一つお伺いいたします。

 二月十五日の尿検査でケトン体三プラスという飢餓を示す値が示されたにもかかわらず、追加の内科の診療が行われなかったということが報告書六十七ページに書いてございます。これについて、報告書では、制約された医療体制の中での判断であったことも考慮する必要がある、直ちに不適切とは言えないと言われました。

 しかし、法務省からいただいた数字によりますと、二月十五日に診療して、十八日の診療件数を伺ったんですが、十八日の診療件数は二時間で十五件。十五日も、後ほど私伺ったんですけれども、二時間で十七件ということでございました。

 そうしますと、一件に対して、一人当たりの患者に対して八分ございます。八分というのは、私も医者をやっていましたので分かるんですけれども、正直長いです。全く医療体制は逼迫していません。八分もの診療時間がありながら、ケトン体三プラスという状態をそのまま見逃した。これは私は大いに問題があると思うんですが、診療行為そのものに問題があると思うんですが、法務省としては、これは診療行為に問題はない、全ては医療体制の逼迫のせいだ、そのように考えておられるのか、御見解を伺います。

西山政府参考人 まず、前提として、当庁としましては、診療一件当たりの診療時間の多寡や逼迫の程度などについてお答えする立場にはございません。

 また、調査報告書では、二月十五日の尿検査結果を踏まえた追加的な検査等が行われなかった点について、先ほど委員も御指摘いただいたとおり、甲医師が、週二回各二時間という限られた時間において、診療を申し出た被収容者に対していわば受動的に対応していた、こうした制約された医療体制にこそ問題があったとの外部有識者の御意見も踏まえてそのような問題点を指摘しているということで承知しております。

 当該御意見は、当時の医療体制に医師が勤務する上での制約があったことを問題視したものでありまして、御指摘のような、診療の逼迫の程度などを問題としたものではないというふうに理解をいたしております。

米山委員 もう時間が過ぎていますが、ちょっと調整させていただいて、この質問で私は一旦終わらせていただきますけれども。

 今ほど、逼迫体制に対して答弁する立場にないという御答弁だったんですけれども、報告書において逼迫していると書かれており、さらに、二月二十八日の改善策においても医療体制を強化すると書かれているわけですよ。

 また、この逼迫というのは、ちょっと今御答弁の趣旨が分からなかったですけれども、何か勤務の、恐らく常勤じゃなかったと、そういう意味なのかもしれませんが、じゃ、逼迫というのは、常勤にすることを言うんですか。通常、医療体制の逼迫というのは、十分な診療時間が取れないとか十分なスタッフがいないとか、そういうことを言うと思うんです。

 法務省、医療体制を強化すると言っているわけですから、何らかの基準で逼迫を判断して、その逼迫がないように、十全な医療ができるようにするということだと思うんですけれども、一体全体、法務省は本当に、じゃ、どういう観点で医療が逼迫しているか逼迫していないかを判断し、どういう観点でそれを改善しようとするのか。若しくは、一切逼迫に関しては我々は関わらないというならそのようにお答えください。

西山政府参考人 申し訳ございません。委員が御指摘のその逼迫という言葉が、どのような意味でお使いになられているのかがよく分かりませんので、なかなかお答え……(米山委員「じゃ、今、私言いますから。一回戻ってもらって。今言いますので」と呼ぶ)

米山委員 今、私、質問の中で言ったと思うんですけれども、逼迫というのは、十全の診療をするために十分な時間が取れないか、十分なスタッフがいないために十全の診療ができないことです。

西山政府参考人 私どもとしては、調査報告書に基づいて医療体制の改善に努めていきたいというふうに考えているところでございますが、その報告書において、個々の診療の逼迫について指摘をされているとは考えておりません。

米山委員 全体には逼迫しているけれども個々の診療は逼迫していない、そういう趣旨ですか。

西山政府参考人 重ねて申し上げます。

 調査報告書において、診療行為が逼迫しているか否かという点を問題視して改善策を提示されているというふうには理解しておりません。

米山委員 つまり、法務省は、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなられたときにおいて、医療は十全に行われていた、何ら逼迫しておらず、十分な時間をもって診療され、十分なスタッフをもって診療されていた、そう理解しているということでよろしいですね。

西山政府参考人 私どもは、あくまで調査報告書の結果に基づいて当時の医療体制がどうであったかというところを認識し、また、その問題点を認識し、それによって提示された改善策について、それを遂行していくというところでございます。

米山委員 しつこいかもしれませんけれども、今ほど、答弁書には逼迫しているとは書いてないと言ったわけですよ。今、報告書に基づいて対応すると言っているんですよ。つまり、たった今、ウィシュマ・サンダマリさんの診療において医療体制は逼迫していないと報告書に書いてありました、我々はそれに基づいて対応策を打ちます、そう言っているんです。

 これで終わりにしますけれども、これはもう質問じゃなくて私の意見を言って終わりますけれども、逼迫していないんですよ。八分もありますから。つまりこれは、診療した医師の医療過誤の可能性が高いんです。

 済みません、質問しないと言いましたが、もう一問だけ質問させていただきますが、この医師は現在も勤務しておられますか。

西山政府参考人 医師の現在の勤務状況につきましては、一般に公表するものではなく、また、公表すべき特別の事情なども見当たりませんので、お答えは差し控えさせていただきます。

米山委員 これでもう終わらせていただきますけれども、この方は、逼迫していないにもかかわらず、瀕死のウィシュマ・サンダマリさんを何回も何回も診療していたのに適切な措置を打たず、死亡をもたらしたんですよ。その方を、その原因をきちんと追及せずして、どうして再発が防げるんですか。どうして同じことが起こらないと言えるんですか。

 大臣、何度も、二度と起こしてはいけない、そのためにどんなことでもする、そうおっしゃっていましたよね。それに対して法務省の皆さんがきちんと向き合わない。それで何で日本が人権国家だと、法治国家だと言えるんですか。

 極めて強い疑問を呈させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

鈴木委員長 次に、階猛君。

階委員 私も、名古屋入管におけるウィシュマさんの死亡事件について取り上げたいと思います。

 まずもって、もうすぐ三月六日です。若くして理不尽な形で命を失ったウィシュマ・サンダマリさんに対し、改めて心より哀悼の意を表したいと思います。

 その上で、質問させていただきます。

 今日お配りしている資料、一ページ目を御覧になってください。これは最終報告書からの抜粋でして、この網かけしている真ん中辺りの部分、午後一時三十五分頃から午後一時四十分頃までの間、看護師がA氏の居室を訪れ、A氏というのはウィシュマさんのことですが、A氏の居室を訪れ、A氏は看護師と、精神科受診の際に医師に話すべき内容を確認したというふうに書かれております。

 この部分、私の方が、当日急遽、追加で開示してくれということをお願いして、ビデオ映像を見ました。この記述だけ見ますと、大体五分ぐらい中身のある会話を行ったように記載されています。あたかもウィシュマさんが正常な会話能力を有していたように思えるわけです。

 ただ、この時点というのは亡くなる二日前のことでして、前後の映像を見ていますと、ウィシュマさんは終始ぐったりしていますので、本当にここで五分ほど意味のある会話をしたんだろうかということが疑問だったわけです。

 そこで、ビデオ映像を見て、実際にその中で行われていたやり取りを書き起こしたもの、これが、二ページ目の真ん中やや下の段に網かけしている部分です。看護師は、亡くなられた方の居室に入室した後、亡くなられた方に対して、その後ですね、看護師が言った言葉、メンタルの先生に困っていることをちゃんとお話しするようにということを言ったのに対して、ウィシュマさんはありがとうございますと述べていますということなんですが、要するに、一言、二言、挨拶程度の一瞬のやり取りだったんですね。

 なぜ、こんな実態とかけ離れた、誤解を招く表現をしたのか、調査報告書を書いた入管庁の方から説明をお願いします。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 ウィシュマさんは、今御指摘のありました三月四日以前の、三月三日の看護師との面談におきまして、翌日の精神科での診察の際に医師に話す内容を確認した際、頭の中で電気工事をしているみたいに騒がしいであるとか、耳の奥で波の音がして聞こえづらい、目がぼんやりしている、食事が少ししか食べられない、もう死んでもよいと思うときがあるといったことを話したい旨述べており、この点は報告書の四十五ページでございますが、このような三月三日のやり取りを踏まえ、精神科医師に対して話すべき内容を念押しして確認したという趣旨で、調査報告書四十六ページにおきましては、「看護師が、A氏と面談し、精神科受診の際に医師に話すべき内容を確認した。」と記載したところでございます。

階委員 要は、一ページ目のこの記述だけでは、医師に話すべき内容を確認したということは読み取れない。前日のやり取りがあって初めてここが意味を持つということなわけですよね。

 だとすれば、私は、この前日の部分はビデオ開示してもらえなかったんですけれども、ここを見ないと、本当にこういうやり取りだったのかどうか確認できないんですよ。

 入管庁長官、この今部長がおっしゃった部分、前日三月三日にいろいろな会話をしたようなんですが、この部分について、我々法務委員に見せてもらえないですか。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 これまでのビデオ開示に関わります経緯といたしまして、国会のお求めに応じて私ども準備をしたものでございますので、同様のことだと思います。

階委員 それでは、委員長によろしくお取り計らいをお願いします。

鈴木委員長 ただいまの件につきましては、理事会にて協議いたします。

階委員 もう一点、最終報告書とビデオ映像のそごについて指摘したいと思います。

 資料三ページ目を御覧になってください。

 これは、二月二十四日、亡くなる十日ほど前のことです。上の方に、網かけを付しておりますが、括弧の中に、日中以外では、午前四時台にも体調不良を訴えたと、何かさほど重要な場面でもないかのような括弧書きがあるわけです。

 ところが、昨日、本村委員も指摘したとおり、実際我々が見た約一時間にわたるビデオ映像は、見るにも聞くにも堪えないものでした。断末魔のような叫び声を上げるウィシュマさんを見ても、救急車も呼ばずに放置して、最後は、ベッドの端に毛布を背もたれにして座らせ、私死ぬと言っているウィシュマさんに、あと四時間ぐらい我慢してと信じられないような言葉を言い残して、職員たちはウィシュマさんを置き去りにして出ていったわけです。

 昨日の大臣の答弁では、調査報告書には問題点や検討の前提となる事実関係を幅広く記載したということなんですが、この場面こそ、まさしく問題点や検討の前提となる事実関係ではないですか。この場面の詳しい記述がない理由を説明してください。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 調査報告書には、問題点や改善点の検討の前提となる事実関係を幅広く記載するように努めておりますけれども、ウィシュマさんや職員の発言、行動等の全てを逐一記載することはしておりません。

 御指摘の場面につきましては、看守勤務者が臨場した当初はウィシュマさんが息苦しさや腹痛等の体調不良を訴えておられましたが、血圧等の測定で数値に特段の異常は見当たらず、退出したという場面でございます。

 この場面を含めて、調査報告書には、今委員から御指摘ございましたように、「A氏は、これらのほかにも体調不良を訴えて」、括弧書きでございますが、「(日中以外では、午前四時台にも体調不良を訴えた。)バイタルチェックを希望し、看守勤務者がバイタルチェックを行ったが、各数値に異常は見当たらなかった。」と記載したところでございます。

階委員 要は、皆さんの方で取捨選択して、ここは大事だというところを記載したわけですね。

 ということは、逆に言うと、私が今申し上げた信じられないような映像の部分というのは、これは別に、皆さんにとってみるとごく当たり前、日常茶飯事のようなことだったということなんですか。

 私だけじゃなくて、昨日、与党の議員さんからも、衝撃を受けたとか、なぜこんなに放置したのかといったような疑問の声などもあったわけですよ。そういう中で、あの場面がこの程度の括弧書きで終わっているということは、いかにほかがもっとひどい場面であったか。しかも、そのほとんどは私たちには開示されていないんです。

 全体、二週間のビデオのうち、六時間半のビデオでしたけれども、全体に占める割合は二%なんですよ。それで、その中で私たちがたまたま見た、あの二十四日の午前四時の場面がとてつもなくひどいものだったのに、この程度の記載で終わっているということは、ほかは推して知るべし、もっとひどいことがこの報告書には書かれないまま放置されていた、書かれないでいたということは考えられないでしょうか。

佐々木政府参考人 御指摘をいただきました。

 先ほど部長の方から申し上げましたように、ビデオが残っている二週間分について、二週間分だけではなくてその前からも含めて、逐一、サンダマリさん、それから職員の発言等々を詳細に記載する、緻密に記載するという性質の報告書にはしてございません。

 御指摘いただきましたように、問題点の解明、そして、これからの入管行政が反省を踏まえて改善をしていく部分、べきことの基になる事実について記載をしたところでございます。

 先ほどの場面につきましては、部長も申し上げましたように、声を出していらっしゃることについては私どもももちろん把握をしておりましたけれども、その後バイタルチェックをして、それに問題がなかったということで、その声などを出していらっしゃることについて、体調不良を訴えたという書き方をしたものでございます。

階委員 いや、とてもじゃないけれども、そんな、逐一記載するものでないという話で切り捨てられるような部分じゃなかったですよ。これは私の主観的な印象じゃなくて、多分、あの映像を見た人は誰もがそう思うと思います。

 このように、この報告書に書かれていることというのは、事実関係を大幅にはしょっていたり、あるいは大幅に丸めていたり、要は、実態を伝え切れていないわけですよ。だからこそ、入管の今までの実態がどうだったのか、これをどうやって改革していくのか、これをちゃんとやろうという気になれば、これはおのずと国民にも公開しようという話になると思いますよ。

 さっき、米山委員の質問に対して、なぜビデオを開示しないのか、行政情報公開法の不開示事由に当たるからとおっしゃっていましたね。五条の不開示事由のどれに当たるんですか。お答えください。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点につきましては、情報公開法五条一号、これは個人に関する情報でございます。また、同第四号、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報、及び第六号、国の機関の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を根拠として、不開示情報として考えているところでございます。

階委員 結局、今おっしゃったことは、かねがねこの委員会でビデオを見せられないと言っていた理由を条文に即して言っているだけなんですよ。いつも、保安上の理由、そしてもう一つは、死者の尊厳とか名誉、この二つを言っているんですが、それを条文に置き換えると、一号とか、四号、六号ですね、ここなんですよ。だから、同じことの繰り返しなんですよ。

 昨日も山田委員おっしゃったとおり、保安上の問題は、これはぼかしを入れたりすることによって全く問題なくできるし、実際、我々はそういう映像を見せられています。

 それからもう一つ、死者の尊厳とか名誉ということでいえば、まさに入管が、ウィシュマさんが亡くなって、その尊厳や名誉を最大侵しているわけですよ。その皆さんのやったことを棚に上げて、死者の尊厳や名誉があるから開示できないというのは、全くどの口で言っているんだ、こういう話ですよ。

 ですから、不開示事由とおっしゃったことは、今まで言っていたことの繰り返しです。

 長官、これは絶対に見せてください。一般国民に見せろということはウィシュマさんの遺族も言っていることです。見せてもらえませんか。お答えください。

佐々木政府参考人 先ほどの階議員の御指摘の中で、入管が適切な対応をしなかったということにつきましては、この報告書にもありますように、反省点がたくさんあります。

 その上で、役所としてはといいますか行政機関として、私どもが保有する情報についてどのように開示をするのかということにつきましては、基本的な法制であります個人情報の保護の法制度にのっとって判断しなければいけないと思っています。その一番の……(発言する者あり)ごめんなさい。情報公開に基づいて対応しなければいけないと思っています。

 先ほど部長が申し上げました条文の適用号でございますけれども、やはり基本的には、個人情報、一です、五の一。ここについては、まさに私たちはたくさんの個人情報を持っております。それを開示する、行政情報を開示することによりまして個人が特定をされてはいけないというのが、まさに五条の一項に載っている基本だと思ってございまして、まずはそれを大前提にして考えなければいけないと考えております。

階委員 今、職員の情報、個人情報ということを意味されるのだとしたら、そこはぼかしを入れることもできるし、そもそも、職務上のことであれば、これは不開示事由に当たらないと思いますよ。だから、これ、検討してくださいよ。やると言ってくださいよ。

佐々木政府参考人 先ほど申し上げました趣旨は、職員の個人情報ということではなくて、まさにウィシュマさんを含めての保有している情報でございます。

階委員 であれば、なおのことですよ。ウィシュマさんの、御本人が亡くなり、今御遺族が自ら公開を望んでいるわけで、個人情報ということは、個人の意思でもって開示するか不開示するか判断できるわけですから、本人が、あるいは御遺族がいいと言っている以上、開示すべきでしょう。

 逆に言うと、それを言うんだったら、なぜ我々には開示できたのかということですよ。

 これはおかしいでしょう。理由になっていません。

佐々木政府参考人 亡くなられた方のプライバシーの問題につきましては、その御遺族の方が御同意なされたということをもちましてその問題が解消されるというものではないと考えてございます。

階委員 今、重要な答弁だと思いますが、この点について、政府の統一見解、これを紙で出してください。お願いできますか。

佐々木政府参考人 御指示に従います。(階委員「では、私の指示に従うということですね」と呼ぶ)委員会とされての御指示に従います。

階委員 委員長、この点についてお取り計らいをお願いします。

鈴木委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。

階委員 次に、これは昨日、藤岡さんが取り上げた、米山さんもさっき取り上げていましたね、尿検査の点についてお尋ねします。

 四ページ、資料、御覧になってください。

 上の方に、一月二十八日に甲医師から再検査の指示があって、尿検査をした結果、二月十五日に判明した数値、ケトン体三プラス、飢餓状態を示す非常に生命に危険のある数値が出ていたと。ところが、この検査結果、非常に重要なものにもかかわらず、下の欄外脚注に、調査チームは、この尿検査結果について、中間報告後の調査により把握するに至った。

 中間報告の段階では、この点については全く触れられていなかった。そして、触れられていなかったことを前提にして死因の判断がなされたわけですよ。

 なぜ中間報告の段階でこのような重要な情報が出てこなかったのか。その理由をお答えください。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 四月九日に公表いたしました中間報告におきましては、まずは、ウィシュマさんが亡くなられるに至った経過を速やかに明らかにすべきであるとの考えから、その時点までの調査により把握した事実関係を記載させていただいたところでございます。

 御指摘の二月十五日の尿検査結果につきましては、中間報告後の更なる調査の中で、二月十五日に尿検査が実施された可能性が疑われたことから、名古屋局に対しこの尿検査結果の有無を確認した結果、当該尿検査に関する資料が調査チームへ送付漏れであることを把握するに至ったというところでございます。そのため、今回の、当該尿検査結果につきましては、調査報告書で明らかにしたところでございます。

 また、中間報告の時点では、事実関係の記載はさせていただいてございますけれども、たしか、死因に関してはまだその時点では記載していなかったかと思います。

階委員 中間報告に書かれてあることを踏まえて、死因については、後日、一枚のペーパーが我々の方に来ていますよね。それはいいですよね。本題じゃないからいいです、答えなくて。

 何を言いたかったかというと、送付漏れがあったと今おっしゃいましたよね。送付漏れ、不自然ですよね。この一ページだけが、たくさんある診療記録の中で、しかも、一番上とか一番下にあるわけじゃないんですよ、真ん中にあるのが一枚だけ抜かれていたんですよ。隠蔽工作があったんじゃないですか。隠蔽工作はなかったと言えますか。お答えください。

佐々木政府参考人 委員、大変申し訳ありません。先ほど私、亡くなられた方のプライバシーの問題が解消されると申し上げましたけれども、亡くなられた方の尊厳と名誉でした。申し訳ありません。

 その上で、今の御指摘の点でございますけれども、尿検査結果について、その中間報告後の更なる調査の中で、尿検査が実施された可能性が疑われたことから、名古屋局に対しこの有無を確認した結果、送付漏れであるということを把握するに至った、先ほど申し上げたとおりなんですが、実は私たち、そのときの一報を受けて、まさに、非常に驚きました。こんなものが漏れていたのかということで、なぜこんなことになっているのかということを、私はもとより、調査チームのみんなも同じ問題意識を持ちました。

 なぜこれが一枚送付漏れになっていたのか、しかも、後からよく検証していきますと、今御指摘のように、非常に大事な問題を惹起した可能性のある数値であったものが、なぜ一枚漏れていたのか、ほかにもたくさん送付されていたものはあったにもかかわらずということで、私たち、驚愕といいますか非常に驚いて、ここのところは何としても解明といいますか、分からなければいけないと私たちも思いました。

 その上で、そうした問題意識の下で調査を尽くしましたところ、この報告書にも書いてありますように、看護師の方は報告をした、そして、医者の方は……(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛にお願いします。

佐々木政府参考人 その時点では本庁としてはそれを入手していなかった、それは間違いありません。

 ですので、そこについて調査を尽くしたところ、医師はそれについて記憶がない、定かではないということが調査報告の結果でございます。(階委員「それは別の話ですよ。隠蔽工作があったかなかったかと聞いている」と呼ぶ)それはなかったというのが報告の結果でございます。

階委員 ちなみに、部長に聞きますけれども、送付漏れがあったのは、この一枚以外にもあったんですか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 ほかに送付漏れの書類は確認できておりません。

階委員 そういうことなんですよ。これしか送付漏れがないっておかしいでしょう。何で一番肝腎なものが送付漏れになっているんですか。

 私がこの調査チームに有識者として呼ばれたら、ここは徹底的に調べるところですよ。徹底的に調べて、隠蔽工作があったとしたら、これは大問題ですよ。そうでしょう。これは、公文書隠蔽とか統計の不正とか、いろいろなところで隠蔽がありましたけれども、それと類する話ですよ、とんでもないですよ。

 入管庁、何か今回、簡単な処分でお茶を濁していますけれども、とんでもない話ですよ。隠蔽工作があったかなかったか、長官の責任でしっかり調べるべきじゃないですか。お答えください。

佐々木政府参考人 先ほど申しましたように、なぜこれが一枚だけ送付漏れだったかという疑問は私たちも持ちました。それは先ほど申し上げたとおりです。

 その上で、調査を尽くして、隠蔽工作はもとより、そうした不正な意図を持ってこれが送付されなかったことはないと判断をいたしております。

階委員 甘過ぎますね。

 これはそもそも、昨日、藤岡さんも指摘しましたけれども、さっき長官も関係ない話をされていましたけれども、看護師さんは、この検査結果を伝えた、甲医師に伝えたと。甲医師は記憶にないと言っているわけですよ。両者の言い分がずれていますよね。この点も、どっちなんだということがこの報告書には書いてない。甲医師は認識していたのか、していなかったのか。自分が頼んだ検査ですよ、尿検査、自分がやり直せと言ってやらせた検査結果を記憶にないってどういうことなんですか。その点も含めて、私は隠蔽工作の疑いが極めて強いと思っています。

 どうですか、長官、このやり取り、看護師とこの甲医師のやり取り、どういうふうに調べましたか。お答えください。

佐々木政府参考人 先ほども申しましたように、私たちもこの点について非常に疑念といいますか疑問を持って、調査を尽くしたつもりです。甲医師とそれから看護師の双方について何度もインタビューをして、それで最終的にこの結果になったということでございます。

 一つ、余り説得力を持つか自信はありませんけれども、この一枚が、尿検査の結果があるのではないかと名古屋局に調査チームの方から問合せをしましたところ、あったということで、即座にそれが送付をされてきたということからいたしましても、隠蔽の意図はなかったと考えて、この調査結果にしたものでございます。

階委員 後から出したから隠蔽の意図がないとか、何でそういう話になるんですか。当初隠蔽の意図があったかどうか、そのことで明らかにならないでしょう。そんな、ごまかされないでくださいよ。

 いいですか。こういう肝腎なことをおざなりにやっていたから、いまだに死因がはっきりしないんですよ。死因がはっきりしないのに、処分なんてできるんですか、そもそも。

 私、今回、そういえばこの件で法務省の関係者はどれだけ処分されたのかなというふうに調べてみたら、何と法務省の公式ホームページには載っていないんですよ。ニュースサイトで調べて初めて分かったんですけれども、名古屋入管の佐野局長と当時の渡辺伸一次長が訓告、これは懲戒処分じゃありません、人事上の処分です。処遇部門の幹部二人が厳重注意、これも人事上の処分です。

 いいですか。そもそも死因が分からないのに、こんな処分ができるのはなぜですか。処分の理由は何なのか、説明してください。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 名古屋出入国在留管理局におきましては、局長等が、被収容者の体調等を的確に把握し、医療対応について検討、指示することができる体制を整備しておらず、診療の必要性を部下職員に判断させる運用を行わせるなど、処遇業務を行う上での体制の整備や運用に問題があったと認められたところでございます。

 そのため、今委員御指摘のとおり、当時の名古屋出入国在留局の幹部職員につきまして、局長及び次長を訓告処分とし、警備監理官及び処遇部門担当の首席入国警備官を厳重注意処分としたところでございます。

階委員 いや、結局、死因が分からないのに適正な処分なんかできるはずがないんですよ。まず死因を確定する、そのためには、隠蔽工作があったかなかったかどうかも含めて再調査する、本来の意味の第三者を入れて再調査することを求め、今日の質問は終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹です。

 まず、難民受入れとその保護についてお伺いします。

 今日は外務省の方、来ていただいておりますが、まず、難民受入れ、難民条約と難民の地位に関する議定書というのがあります。ちょっとそのことについて御説明をいただけませんでしょうか。

西山政府参考人 まず、入管法第二条第三号の二において、難民とは、「難民の地位に関する条約第一条の規定又は難民の地位に関する議定書第一条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいう。」とされております。

 この難民条約上の難民は、基本的に人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍外の、外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者をいうとされております。

阿部(弘)委員 今、議定書のことも御説明いただけましたか。

西山政府参考人 難民の定義で申し上げますと、難民条約の難民の定義がございますが、その一部を変更しているのが難民議定書でございまして、その変更後の難民の定義を今御説明した次第でございます。

阿部(弘)委員 ジュネーブで難民条約が発効したのが一九五四年。議定書が発効したのはいつですか。

股野政府参考人 突然の御質問でございまして、今持ち合わせがないものですから、申し訳ございません。

阿部(弘)委員 ちょっと困りましたね。難民についての一般的な話でございまして。まあ、いいです、いいです。追って、分かったら教えてくださいね。

 実は、難民条約、日本はインドシナ難民を受け入れたときには入っていなかったんですね。多くのインドシナ難民が日本に来られて、そしてそれから日本は難民条約に入った、そういう経過がある。

 では、ウクライナは難民条約に加盟していますか。

股野政府参考人 済みません、再度同じでございまして、至急確認させていただきます。

阿部(弘)委員 では、台湾はいかがでございましょうか。

股野政府参考人 大変申し訳ございませんが、同様でございまして、今、至急確認させていただきます。

阿部(弘)委員 いや、しっかり難民条約について、私は外務省からこうこうこういう条約でありますと説明を受けたわけですから、当然そのデータをお持ちだと思います。一方の他国が難民条約に加盟していないときに、日本は難民条約に加盟しているから、UNHCRなどの国連機関の保護を受けるという説明を受けたわけでございます。

 非常に残念なことで、実はアメリカとは議定書しか結んでいないんですね。日本の国内、日本国に何らかの侵攻を他国から受けた場合に、国内難民も当然発生するわけでございます。それと、もう一つは、海外から、海外で侵攻などが起きた場合には、紛争が起きた場合には、インドシナ難民のように、多くの方々が日本に助けを求めて来られるというところになるわけです。

 ちょっと議事が停滞しますので、次の質問に移らせていただきます。

 ウクライナのことを聞いてもいいんですか。今、国内難民が推定百万人、今日のデータですね。そして、六十万人以上が海外に逃げてある、難民として国境を渡っているということでございます。他党のニュースを見ますと、駐ウクライナ大使がおっしゃったことには、是非とも日本に多くの難民を引き受けてほしいというコメントもあったわけでございます。

 さて、次はお答えできると思いますが、日本が難民条約に加入していなかった時期のインドシナ難民について、その概略を御説明いただけますでしょうか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 インドシナ難民は、一九七五年、インドシナ三国、ベトナム、ラオス、カンボジアで政変が発生した際に、迫害を受けるおそれ、あるいは新体制になじめない人々が難民となって周辺国に流出した件でございまして、我が国に初めてボートピープルとして到着したのは七五年の五月でございます。

 その十二月におきまして、国連総会決議にて、インドシナ難民を包括的に難民として保護を与える権限を与えられたUNHCRから、これらの難民を自らの保護の下に置きという要請が我が国にもあった件でございます。

阿部(弘)委員 難民条約に加入していなくても日本はしっかりと難民を引き受けたということですから、最初の二つについては説明はいただきたかったんですけれども、実は、台湾もウクライナも難民条約に加入していないんじゃないですか。台湾は、まあ別な話ですけれどもね。ウクライナもですね。

 分かりました。一万数千人のボートピープルが日本に来られた。その後、日本を経由して第三国に出国されることもあれば、日本で生活訓練などを行われることもある。そのときに外務省が行われた保護について御説明願えないでしょうか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 インドシナ難民に対する事業としましては、関係省庁が協力をして、一九七九年以降、二〇〇五年までの間、財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部を通じて、定住促進センターにおいて、日本語教育、職業紹介又は職業訓練などの事業を行いましたほか、生活費などの各種生活援助を行っております。

阿部(弘)委員 アジア難民ですね。じゃ、アジアの難民じゃなければ。

 その団体はまだ継続して、そしてUNHCRの委託事業を受けているんですかね。外務省、お答えください。

股野政府参考人 委託事業というのは、インドシナ事業に関してでございましょうか、一般的にでございましょうか。

阿部(弘)委員 そのアジア財団です。

股野政府参考人 失礼いたしました。

 アジア福祉教育財団難民事業本部の方では委託を受けております。

阿部(弘)委員 勉強会でそのように教えていただきましたので、そのようにお答えいただきたいと思いますので、是非とも。アジア福祉財団、アジアの福祉財団ですね。

 じゃ、今後、二番目にも、二番目の周辺有事の際のときには、外務省は退席されると思われますけれども、アジアじゃない難民については、そういう福祉財団はどのようにされるんですか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 難民認定された方々に対しては、柔軟に対応できる体制と承知しております。

阿部(弘)委員 アジア福祉財団でアジア以外の難民についても柔軟に対応できるんでしょうか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 難民申請中の方であれば、国籍を問わず、どこの方でも受託できると承知しております。

阿部(弘)委員 是非とも、名称についても、こういう国際社会でございます、多くの国が難民条約に加盟していることがありますので、名称についてもよく御検討を願いたいと思います。

 では、ちょっと古いんですが、朝鮮戦争での半島の難民者というのはどのような具合だったんでしょうか。

西山政府参考人 委員御質問の趣旨が朝鮮戦争の際の難民の数ということでございましたら、入管庁の方では把握をしてございません。

阿部(弘)委員 当時は、終戦直後で非常に混乱していた時期、まだ海外から邦人が引揚げを繰り返していた時期ですから、混乱して、現在データがないのかもしれませんが、半島有事、朝鮮戦争のときも数多くの方々が日本に難民として来られたことは容易に想像できることだと私は思うわけでございます。

 私の父親も、家族は戦前は満州に住んでおりました。満州に住んでいて、私の父は、ハルピンというところの大学生、一年生でしたが、突然、ソ連の兵隊が来て拉致された、拘束されて連れていかれた。数か月、半年ぐらいたって、ひょっこり帰ってきたと家族は申しておりました。どういう経過で帰ってこれたのか、それは生前話を聞くこともありませんでした。これは邦人保護の話ですから、難民とはちょっと違いますけれども。

 ですから、戦時中、戦争や紛争に巻き込まれたときには多くの人たちが非常に大変な目に遭う。人権侵害のことは双方の紛争国にも生じることだと思いますが、現在の領事機能はポーランドやルーマニアで小規模でやってあるということですが、そこのところはウクライナに関してお答えいただきます。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 今の大使館の体制でございますが、本日付で、キエフにありました大使館につきましては、機能を一旦退避いたしまして、隣国に移っておりますが、しかし、国内におきましては、リビウ市、それから、隣国のポーランドのジェシュフ市におきまして、臨時の連絡事務所を設置し、数名の大使館員を在住させた上で、万全の体制で邦人の保護に当たっているところでございます。

阿部(弘)委員 難民申請は、恐らく、そういうウクライナからお見えになられる方と、国内に居住のウクライナ人の方の在留許可の延長なども考えられるわけですが、その辺についてはいかがでございましょうか。

西山政府参考人 本邦に在留するウクライナ人の方の在留資格の更新等につきましても、適切に対応してまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 官房長官は、在留許可は、適切じゃなくて延長しますよというふうに記者会見してありましたけれども、その点はお答えいただけませんでしょうか。

西山政府参考人 失礼いたしました。

 ウクライナの情勢に鑑みまして、人道上の配慮も含めて、更新については適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

阿部(弘)委員 政府は、在留許可が、得て、その在留許可が、期間が間近に控える方については、しっかりと在留許可を延長すると官房長官が力強く国民に発してありましたので、私はそれで非常に安堵したところでございます。

 難民が発生するのはウクライナだけではありません。周辺においても、そういう紛争が発生すれば、考えられるところでは様々あるわけでございます。台湾もあります。あるいは朝鮮半島もある。そして、国境を接する北方領土などもあるわけでございます。有事の際は、他国の難民を引き受けることもあれば、侵攻を受ければ、当然、国内の方が、国民が難民になるということがあるわけでございます。

 そういうことについて、内閣官房、そういうシミュレーションなどは行ってあるかどうか、お答えいただきたいと思います。

下田政府参考人 お答えいたします。

 政府におきましては、海を渡って我が国に避難民が流入してくる場合を想定してございまして、平素より関係省庁が連携して必要な準備、検討を行っているところでございます。

 我が国に避難民が流入した場合の基本的な手順として考えられますのは、まず第一に、避難民の保護、身柄の確保をする。また、応急物資の支給をしたり、身体検査の実施をする。第二に、入管、税関、検疫といった上陸手続をしっかりやる。第三に、上陸した避難民を宿泊させる収容施設の設置、運営。そして、我が国が庇護すべき者に当たるかどうかということにつきましてのスクリーニングを行うといった対応を取ることが想定しているところでございます。

 今後とも、事態に応じて関係機関が連携して的確な対応ができるように検討を進めてまいりたいと考えてございます。

 以上です。

阿部(弘)委員 難民受入れの際は、様々な手続は、当然、今の出入国管理と同じように仕組みはできているわけでございますが、難民を受け入れる場合には、それとは別に、住まい、住む場所の確保というのが非常に大切になってくる。それは、日本は災害などで多くの経験をしておるわけですが、そういったところもシミュレーションの中に入っておるわけでございますか。

下田政府参考人 お答えいたします。

 避難民の方の宿泊施設の確保に関しても、関係省庁において、政府全体としての対処の手順などについて論点整理を行う中で、その方策を検討しているところでございます。

 具体的な検討の中身は、事柄の性質上、お答えは差し控えたいと存じますけれども、関係省庁と連携してしっかりと検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上です。

阿部(弘)委員 事とシミュレーションの次第によっては、国内難民も多数発生するわけでございますが、その際の出国、受入れではありませんが、出国については適切に法務省では対応できますか。

西山政府参考人 事柄の性質上、お答えを差し控えさせていただきたいとは存じますが、委員御指摘のような対応につきましても、関係省庁と緊密に連携して適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

阿部(弘)委員 ウクライナ情勢というのは、この一か月で大きく動いた情勢でございますから、まだまだ準備が行き届かない、準備ができていないというのはあるわけですが、シミュレーションはいろいろ、内閣官房も、あるいは法務省の出入国管理庁も行っていただけるというふうに信じているわけでございます。

 特に、外国人難民の保護については、関連団体のUNHCR、難民高等弁務官事務所との連携が必要なんですが、先ほどの、一番当初の質問に戻りますけれども、相手国が難民条約や議定書に同意していなくても、それは処遇は変わらないんでしょうか。

西山政府参考人 委員の御質問が、難民申請をされる方の母国が条約に加盟しているかどうかということでございましたら、難民の定義上、そのような制約はございません。

阿部(弘)委員 少し安心しました。世界地図でいろいろ見ていくと、加盟していない国も、アジアでもたくさんあるようでございますので、そういった方々が広く日本を頼ってこられて、紛争に伴う難民申請を行われたときには、国際社会の上での役割を十分に果たされることを期待するわけでございます。

 今後とも、ウクライナの方々、本当にロシアの侵攻を受けて大変な事態になっていると思います。多くの方々が亡くなられて、本当に心を痛めるところでございますが、是非とも、日本が国際社会の中の一員としてその役割を果たしていけるよう、政府そして議会が一丸となってそういうことに取り組めることを期待いたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 昨日に続いて質問を行いたいと思います。

 昨日も質問があったし、今日のやり取りを聞いていたんですけれども、出入国管理庁の意識改革、組織改革を含めというふうに大臣の所信で述べられているんですけれども、具体的な話を担当の方ができるのかどうか、まず簡単にお願いしたいと思います。

西山政府参考人 名古屋局において被収容者が亡くなられた事案を受けまして、入管庁におきましては、外部有識者に客観的、公正な立場から御意見、御指摘をいただきつつ、問題点を広く抽出して検討を行い、結果として、十二項目の改善策を含む調査報告を取りまとめ、その着実な実施に取り組んでいるところでございます。

 報告書で示された改善策のうち、まず名古屋局における組織体制の強化として、非常勤医師の増員、被収容者の健康状態等について、幹部と現場職員及び現場の関係職員相互の情報を共有する体制の構築などを実施したところでございます。

 また、組織、意識改革のため、全職員及び外部有識者の意見を集約して、人権と尊厳を尊重し、礼節を保って職務に従事すること、風通しのよい組織風土づくりに努め、セクショナリズムに陥らず、組織が一体となって課題に対応することなどを内容とする出入国在留管理庁職員の使命と心得を策定し、現在その浸透に取り組んでいるところでございます。

 引き続き、改善策の着実な実施、適正な運用を徹底してまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 例えば、具体的な話で、昨年の暮れ、ビデオを見させていただいた一人ですけれども、そのビデオを見る前に、八月ぐらい、九月だったですかね、その施設に入所されるんですよね。そのときの映像は全然ない、何かの記録もない、どこから具合が悪くなったのかもよく分からない。当事者は亡くなっているわけですから、聞き返すこともできない、身内である職員の聞き取り調査しかない。

 例えば、先ほども、ペーパーが一枚なくなった、おかしいじゃないか。だったら、ダブルチェックできるように複写式の、診断書というんですかね、医師が診たやつを、片一方は医療のところで持たせて、片一方は管理部門で持たすぐらいのことをやらないと、訴訟になったときどうするんですかということも念頭に入れて、やはり報告書から上がってきたことを改善項目といっても、より具体的な対応をしなければ、同じことが繰り返されるんじゃないかということなんです。

 それと、もう一つ、あの映像を見ていて、後からお話を聞いたら、医者に診せるときは通訳をつけているというんですけれども、担当の職員さんも看護師さんも日本語しか分からない人なんです。私がもし逆の立場でいたときに、イングリッシュだって幾らもしゃべれないし、ポルトガル語なんかはオブリガードしか分からない。そういう人間がもしそこの国で同じような対応をされたときに、自分の窮状を訴えるといっても、言葉が分からないと思うんです。

 その辺は改善策として組み入れられているのかどうか、御答弁いただきたいと思います。

西山政府参考人 委員御指摘の点につきましては、報告書にも指摘がございまして、まず、医師の診療につきましては原則通訳人を入れるということを、対応を徹底するということ、それから、急な場合、あるいは職員と被収容者とのやり取りで通訳人をすぐに介すことができない場合に備えまして、翻訳機を各官署に導入する、そういったことも改善策として含まれておりまして、今後しっかりと対応してまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 もう一つ、答弁漏れがあったと思うんですけれども、そういった診断書に関わるやつは二枚複写にするとかということは考えておりませんか。

西山政府参考人 二枚複写で保管する、その必要性、場面等につきましていろいろあろうかと思いますが、委員の御指摘も踏まえまして、考えたいと思います。

鈴木(義)委員 考えてやるよりも、指摘されたんだったら、なくなったものを出せと言ったって、なければそれで終わっちゃう話でしょう。だから、改革をするということはそういうことじゃないんですか。また、捜してみてありませんでしたという報告書を、再調査をされたって同じことが起きるだけの話だから。そこのところはやはりちゃんとやっていかなくちゃいけないと思う。

 それと、あともう一つ、せっかく外務省からお越しいただいて、日本から出国していった人方が世界中に、仕事をしたりレジャーで行っている人もいれば留学している人もいると思うんですけれども、どのぐらいの人が海外に出て、例えばオーバーステイをしているのか、人数を把握しているのかどうか、そこのところをお尋ねしたいと思います。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 在外公館が把握する邦人援護事案を取りまとめた二〇二〇年海外邦人援護統計というのがございますが、ここにおいて、二〇二〇年に出入国、査証関係の犯罪の加害事案として在外公館が認知しているものとして五十九件八十名の事例がございます。

 ただし、在外公館がこういう件数を認知する経緯としては、海外で不法滞在中の邦人本人から相談があったり、若しくは外国の当局から通報を受けた場合にとどまっております。したがって、現に不法滞在されて捕まっておられない方とか検挙されておられない方も含めて、必ずしも全ての不法滞在者について把握しているものではございません。

    〔委員長退席、山田(美)委員長代理着席〕

鈴木(義)委員 例えば、アメリカの話を昔聞いたことがあるんですけれども、オーバーステイしてしまっていても、事故とか事件に巻き込まれない限り、ほとんど分からないという話なんです。

 何でそんなことを聞くか。今回のウクライナのような事件が起きたり、ほかでも紛争が起きたときに、邦人救護ということがもう全然できないという考え方になっちゃうと思うんです。まあ、行った先でまた動いてしまったらそれはどうしようもないんですけれども。

 でも、今回の入管の話になっていくんですけれども、じゃ、日本から出ていった先の外国で不法滞在をしたときに、収容施設が日本の対応と相手国の対応とどのぐらいの差があるのかというのを、もし分かればお聞かせいただきたいと思うんです。

西山政府参考人 他国の入管収容施設における被収容者に対する処遇につきましては、情報を収集しておりませんので、比較がなかなか困難でございます。

 なお、処遇に関連して、取扱いの一例として収容期間について申し上げますと、我が国では法律上収容期間の上限が設けられていませんが、英国、オーストラリアなどの国でも同様であるというふうに承知しております。

鈴木(義)委員 例えば、外国に出ていったりなんなり、ビザもそうですけれども、お互いの相手国との同意というんですか、やり取りの中で、例えば観光ビザだったら三十日まではビザなしでいいでしょうというのは、お互いに行き来するためにそれをやっているわけじゃないですか。日本に入ってきたときには日本の条件はこうなんですというのと、相手国に行ったときにも条件をある程度そろえなくちゃいけないんじゃないのか、そう思うんです。

 例えば、ブラジルに私も十三年、四年前に行きましたけれども、ビザがないとブラジルは入国させないんです。だから、日本のブラジルの大使館に申請して一か月ぐらいたたないとビザが出ないんですけれども、そういう手続をして、日系ブラジルの方でも、日本に入ってくるときはビザを取得しないと入ってこれない。そこで一回チェックをかけるんです。

 相互通行をやっているところは別でしょうけれども、それだって三十日だとか何日というルールがあるんだったら、今回の、入管でお預かりする、入所してもらう方に関しても、やはり外国の情報をきちっと捉えて遜色ないような対応をするというのも一つの改革じゃないかと思うんですけれども、御答弁いただきたいと思います。

西山政府参考人 我が国の収容施設というのは、退去いただかなければならない方を収容するための施設でございます。

 他国の収容施設というのがどのようなものであるのかつまびらかではございませんので、なかなか比較は困難でございますけれども、ただ、委員の御指摘するところが、他国の収容施設もきちんと情報を収集し、また情報交換をすべきだということであれば、そういう趣旨であれば、その点は私どもとしても考えていきたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 考えていきますというのは、やってもらいたいということですね。

 日本が劣悪なのか、それともそれなりのやり方をしているのか分からなければ、だって、比べようがないじゃないですか。もっとこういうふうにやりなさい、もっとこういうふうになっているじゃないか、より具体的な調査をして、きちっと対応してもらいたいなというふうに思います。

 それともう一つ、外国の方が日本に来るときに、日本に入国するというのはどういうことなのかというのを知らしめているとは思うんです。

 例えば、就業ビザで入ってきた人が途中でその学校を辞めてしまえば、不法滞在になっちゃうんでしょう。その方は直ちにもう国外退去なんですよ、いいも悪いもなくて。だって、前提が、働きに来るのか、就学で来るのか、観光で来るのかという、日本に入ってくる目的があるわけじゃないですか。そこら辺の考え方はどうなのか、お尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 委員御指摘のような、在留資格外の活動をしてはいけないといった、本邦で在留する上で遵守すべきルールがございますが、それを外国人に理解していただくことは非常に重要であると考えております。

 当庁においては、昨年七月から、遵守すべきルールや、困ったときに相談できる相談先等の情報を集約した新規入国者向けのガイダンスを作成して当庁のホームページに掲示しておりまして、外国人の方が入国前にでもこの情報に接することが可能となっております。

 引き続き、在外公館等の関係機関並びに外国人を受け入れる機関等とも連携しつつ、入国しようとする外国人の方が遵守すべきルールをしっかり御理解いただけるよう、周知に努めてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 以上で終わります。

山田(美)委員長代理 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 昨日に続き、名古屋入管でのウィシュマさんの死亡事件について質問をいたします。

 出入国在留管理庁の調査チーム報告書には、ウィシュマさんが亡くなる三日前、三月三日の夕食について、食べた、ウィシュマさんが食べたと書かれております。調査チームは全ての映像を見たということもお伺いしているんですけれども、映像記録を私たちも見させていただきましたけれども、口に運ばれ、吐くような状況がありました。食べたとは言えない状況があったと思いますけれども、食べたと書かれております。なぜ食べたと書かれているのか、御説明をしていただきたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の場面につきましては、ウィシュマさんが、職員から食べ物を口に運んでもらうなどの介助を受けながら、確かにそれを吐き出す場面もございましたけれども、かゆなどを食べていた状況であったことから、こうした状況を踏まえて、調査報告書には、A氏は、官給食の三食とも看守勤務者の介助を受け、朝食はかゆを全量、昼食及び夕食ではかゆを少量ずつ食べた、そのほかに自費購入のバナナなどを食べるなどしたと記載してあるところでございます。

本村委員 私たちが見た映像では、口に運ばれ、吐くような状況がございました。それを食べたというふうに認識をしているという状況、異常だというふうに思います。やはり、ウィシュマさんが亡くなられて、責任を逃れるために、食べたんだというふうにしたのではないかということも疑いを持つわけでございます。これは調査チームの認識の問題点だというふうに思います。

 その食べるということに関してお伺いをしたいんですけれども、ウィシュマさんが食に関して細っていて、二月十五日、先ほども階議員の質疑でもありましたけれども、飢餓状態、尿検査の結果では飢餓状態ということがございました。その後の二月十七日、名古屋出入国在留管理局がウィシュマさんを拒食者だと判断をし、そして二月二十二日、出入国在留管理庁、本庁の方に拒食者だと報告をしております。しかし、断末魔と先ほど階先生は言われましたけれども、二十四日、もう拒食者ではなくなったと名古屋入管は本庁の方に報告をしております。

 ウィシュマさんが大変な状態にあるのを本庁も把握をしていましたね。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる拒食者、官給食の食事を拒否している方につきましては本庁の方に報告をするというルールに基づいて報告をしていたというところでございます。

本村委員 本庁の方も、ウィシュマさんが大変な状況にあったということは把握をしていたというふうに思うんですけれども。

 そこで、把握をした、そのときに、診断書ですとか検査の結果ですとかをちゃんと取り寄せて、この人はどういうふうに対応するべきだということをちゃんと把握をしていたんでしょうか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 その当時、本庁の方に御報告がある内容と申しますのは、拒食をしている方の、被収容者の身分事項等でございます。

本村委員 何のためにそれは把握するんですか。佐々木長官が通達を出していますよね。被収容者の人権を尊重しつつ、適切な、適正な運用に努められたく通達いたしますと。何のために、名前だけ聞くだけなんですか、本庁は。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 本庁が、種々、このことも含めまして現場の方からいろいろ報告を受けますのは、報告を受けた上で、何か特に指導する事項がないかどうか等を確認するためのものでございます。

本村委員 だからこそ、診断書ですとかあるいは検査の結果、把握をするべきだったのに、しなかったということでしょうか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘されていることにつきましては、この方につきましては、拒食として本庁には報告があって、食べ始めましたとその後報告がある期間も短くございますので、特段、更に詳しい事情等を本庁から確認したという経緯はその時点ではございません。

 ただ、今般の報告書にも記載してございますけれども、今回の反省点を踏まえまして、当庁では、昨年十二月二十八日、体調不良等に係る仮放免運用指針を策定、発出しておるところでございます。この中におきましては、収容継続によって健康状態を大きく害するおそれがある旨の医師の所見が付された被収容者については、原則として仮放免を許可するなど、医師の所見を踏まえて判断を行うと定めております。

 その上で、体調不良者に関しては、各官署の幹部による被収容者の体調把握や本庁へのより詳しい報告を義務づけるなど、仮放免の判断における情報共有の方策を取っているところでございます。

本村委員 本庁が、被収容者の健康状態の把握とか、あるいは、人権に尊重しつつというふうに書いておきながら、そういう把握の努力もしようとしなかった。

 元々、私は、ウィシュマさんが亡くなられた後にお電話をいたしまして、どういう状況なのか、これは名古屋入管だけで判断をしてきたことなのか、それとも本庁も関わってきたことなのかということをお伺いをしたときに、本庁は一切関わっていない、何の連絡も受けていないということを言われたわけですよ。そうしたら、報告書が出てきたら、実は拒食者として報告をされていたということが明らかになりました。

 二十四日、拒食者ではなくなったと名古屋入管は本庁に報告をしたわけですけれども、しかし、その後、命が失われる危険性がますます深刻になっていた。この拒食者の制度は一体何のためにあるのかというふうに聞きますと、特別に保護をするためだというふうに私に御説明をされた。

 ウィシュマさんが拒食者だと判断をされた、そうではないというふうになったとき、その報告されて翌日ですね、二十三日、ウィシュマさんは、私死ぬ、病院に持っていって、お願い、私、病院点滴お願い、救急車呼んでというふうに言っています。そして、拒食者じゃないというふうに言われた二十四日も、病院、点滴を求めておりました。そして二十六日、ベッドから落ち、放置をされ、そして二月二十七日、床に落ち、点滴だけお願いということを言っておりました。そして、二月二十八日も嘔吐がありました。そして、三月一日も、転落をし、眠れない、頭の中が電気の工事のような音がする、そしてカフェオレもうまく飲むことができないという中で、名古屋入管の心ないあの言葉があったわけですけれども。

 私は、名古屋入管だけの問題ではないというふうに思います。やはり本庁も、拒食者ということで把握をしておきながら、命の危機にあったにもかかわらず、しっかりとした対応をしてこられなかったというのは問題だと思いますけれども、長官、お答えをいただきたいと思います。

    〔山田(美)委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木政府参考人 御指摘のように、今回の事案につきましても、本庁として十分に把握できていなかったという反省はございます。

 先ほど部長の方から申しましたように、この新たな仮放免運用指針におきましては、それぞれの体調不良者の、地方各官署での被収容者の状況を本庁に報告をすることにして、委員御指摘のように、本庁も併せてどのような対処をするのがいいのかということを考えるという体制に改めているところでございます。

本村委員 反省をされているということなんですね、しっかりと状況を把握せずに、不十分な対応だったという点。お答えいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 あの報告書に記載のとおりでございますけれども、改善をすべき点につきましては特定をして、その改善に当たっているところでございます。

本村委員 本庁も把握をして善処できなかったということを反省、是非述べていただきたいと思います。

佐々木政府参考人 報告書に記載されている問題点、改善点につきましては、十分な対応ができていなかった、それは名古屋だけではなくて、入管庁全体としても不十分であったというところが報告書記載のとおりでございますので、そこにつきましては、改めるところは改める、反省すべきところは反省するという気持ちを持っています。

本村委員 先ほどもお話があったんですけれども、ウィシュマさんの名古屋入管の監視カメラの二週間分、三百三十六時間の映像の記録のうち、私たちは六時間半しか見ておりません。そして、御遺族もビデオの開示を求められております。今後も、希望する箇所、書き起こしの提出ですとか、あるいは希望する箇所の視聴ができるようにお願いしたいと思いますけれども、長官、お答えをいただきたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 今般実施されました国会議員の方々によるビデオ映像の閲覧につきましては、衆議院、参議院の法務委員会理事会の御判断として、ビデオ映像の一部について、保安上の問題等にも配慮を加えた上での閲覧のお求めがあったことを踏まえまして、検討した結果、お求めがあった範囲と方法でビデオ映像を閲覧していただくこととしたものと承知しております。

 ただいまいただいた希望される箇所のビデオ映像の反訳の提出や視聴等の御要望につきましては、保安上の問題に加え、ウィシュマさんの名誉、尊厳の観点からも問題があることから、閲覧いただくことは適当ではないと私どもとしては考えているところでございます。

鈴木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いしたいと思います。

本村委員 引き続きの審議を強く求め、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。古川法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案

 裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

古川国務大臣 まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、近年の事件動向及び判事補の充員状況を踏まえ、判事補の員数を減少するとともに、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を減少しようとするものでありまして、以下、その要点を申し上げます。

 第一点は、近年の事件動向及び判事補の充員状況を踏まえ、判事補の員数を四十人減少しようとするものであります。

 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十六人減少しようとするものであります。これは、事件処理の支援のための体制強化及び国家公務員のワーク・ライフ・バランス推進を図るため、家庭裁判所調査官を二人、裁判所事務官を三十九人それぞれ増員するとともに、他方において、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、技能労務職員等を六十七人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十六人減少しようとするものであります。

 続いて、裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 裁判官について育児休業の取得回数の制限を緩和する必要があることから、育児休業を原則二回まで取得可能とすることに加え、子の出生後五十七日間以内に育児休業を二回まで取得可能とするものであります。

 以上が、両法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

鈴木委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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