衆議院

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第5号 令和4年3月9日(水曜日)

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令和四年三月九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 馨祐君

   理事 井出 庸生君 理事 熊田 裕通君

   理事 葉梨 康弘君 理事 山田 美樹君

   理事 鎌田さゆり君 理事 階   猛君

   理事 守島  正君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    尾崎 正直君

      奥野 信亮君    国定 勇人君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      谷川 とむ君    中谷 真一君

      中野 英幸君    西田 昭二君

      野中  厚君    八木 哲也君

      山田 賢司君    伊藤 俊輔君

      鈴木 庸介君    藤岡 隆雄君

      山田 勝彦君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    前川 清成君

      日下 正喜君    福重 隆浩君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         古川 禎久君

   内閣官房副長官      木原 誠二君

   総務副大臣        田畑 裕明君

   法務副大臣        津島  淳君

   外務副大臣        鈴木 貴子君

   厚生労働副大臣      佐藤 英道君

   法務大臣政務官      加田 裕之君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局人事局長            徳岡  治君

   最高裁判所事務総局民事局長兼最高裁判所事務総局行政局長           門田 友昌君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  小玉 大輔君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局総括審議官)          伊藤  豊君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            有泉  秀君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 池田 達雄君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          山越 伸子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       吉川  崇君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  松下 裕子君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    武笠 圭志君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       曽根 健孝君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 安東 義雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 股野 元貞君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 北川 克郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           出倉 功一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           淵上  孝君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮崎 敦文君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           青山 桂子君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)

 裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長竹内努君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君、人事局長徳岡治君、民事局長兼行政局長門田友昌君及び家庭局長手嶋あさみ君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。立憲民主党の階猛です。

 前回、短かったので、やり取りが不十分な点がありましたので、まず最高裁にその続きを行いたいと思います。

 前回指摘したとおり、これだけ判事補の定員が余っている状況が続いていることからすると、昨年、法案で判事補の定員を減員しなかったのは、見通しを誤っていたのではないかと思っております。今後の定員については、我々の意見に耳を傾け、虚心坦懐に、柔軟に検討していくべきではないかと考えます。最高裁としてどのように受け止めるか、お答えをお願いします。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 昨年につきましては、当時の事件状況、充員の見通し等も踏まえまして、判事補の定員は減員しないという慎重な判断をしたものでありますが、昨年の審議の後の充員状況を見てみますと、欠員が更に拡大していることは委員御指摘のとおりでございます。

 このように現在員が減少した状況におきましても事件処理体制に支障は生じておらず、結果として、昨年の時点である程度の判事補定員の減員をしていたとしても差し支えはなかったものと認識しております。

 裁判所といたしましては、御指摘を真摯に受け止めまして、裁判官の定員について、今後も、そのときそのときの事件状況、充員状況等をより丁寧に踏まえて検討していきたいと考えております。

 また、これまで毎年、定員法として御審議をいただき、附帯決議など、様々な御指摘、御意見をいただいているところでございます。このような様々な御意見を含む諸情勢も考慮しながら、柔軟に、真摯に検討していきたいと考えております。

階委員 是非よろしくお願いします。

 それと、もう一点、コピペ問題ということを前回取り上げました。今回のこの問題は、裁判所の信用を失墜させかねない重大な問題だと考えております。裁判所全体に関わる問題として、重く受け止めるべきだと考えます。

 最高裁として、改めてお尋ねしますが、実態を調査すべきではないか、この点についてお答えください。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 まず、今回の報道では、最終的に作成する判決書の内容が自分の判断となることについて責任を持って検討しているのかという点が問われたものと認識しております。その点に関し、国民の皆様の疑念を生じさせる事態となったことについては、裁判所に対する信頼を揺るがしかねないものとして重く受け止めているところでございます。

 他方で、委員から御指摘がありましたような実態の調査ということになりますと、裁判官の判断過程への介入につながりかねないものと思われまして、憲法上保障されている裁判官の独立の観点から、慎重でなければならないというふうに考えているところでございます。

 ただ、そうした中、既に裁判官の間で、今回の議論を受けて議論が行われているとのことでございまして、下級審の裁判官同士の議論におきましては、裁判官の矜持として、争点が実質的に同じであっても、個別事案ごとの当事者の主張、事実関係及び証拠等を踏まえて、裁判体において検討、議論を尽くした上で結論に至るべきものであり、それに基づいて作成する判決の説示内容及び表現も十分に吟味されるべきものであるといった意見が出されているとのことであります。このような認識は、裁判所全体として共有されているものと考えております。

 最高裁としましても、このような裁判官同士の議論の状況を見守りつつ、必要があれば支援してまいりたいというふうに考えております。

階委員 裁判全体への信頼と個々の裁判官の独立、これをどのように調和させていくべきかという悩ましいことなので、私もこれ以上は申し上げませんが、今のお話を聞いていると、ボトムアップで取り組んでいくという動きもあるようですので、何か進捗がありましたら、是非国会にも御報告をいただければというふうに思います。

 さて、その上で質問に。今日は、法曹志願者の減少についてお尋ねしていきたいと思います。

 まず、今日お配りしている資料一ページ目を御覧になってください。

 最高裁に伺いますけれども、この一ページ目のペーパーの冒頭では、これは法務省の作ったペーパーなんですが、昨年の附帯決議を一部抜粋した部分があります。その中で、法曹志願者の減少について顕著な改善傾向が見られないことを踏まえ、判事補任官者数に及ぼす影響につき必要な分析を行い、その結果を国会に示すというくだりがありますよね。このことは、実際、分析をやられたのか。そして、私どもの方にまだ報告がないような気がするんですが、いつ報告するのか、お答えいただけますか。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所といたしましては、法務省及び文部科学省が開催する法曹養成制度改革連絡協議会に参加するなど、関係機関と協力して検討を進めており、また、これまでもどのような事情が判事補任官の希望者数に影響しているかについては、検討、分析をしてきたところでございます。

 その中で、法曹志望者の減少に顕著な改善傾向が見られないことに伴い、司法試験受験者及び合格者の人数、ひいては司法修習生の人数が減少すれば、一般的には、司法修習生の中で、裁判官にふさわしい資質、能力を有し、任官を希望する者の数も減少することにつながり得るものと考えております。

階委員 従来の答弁をなぞっただけで、新たに必要な分析を行ったとは思えないんですけれども、去年の附帯決議を踏まえて、新たに必要な分析は行ったんですか。その点、結論だけお答えください。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 御指摘の点も踏まえ、実務修習指導の担当者や司法研修所教官、あるいは新任判事補などから事情を聞いたりもしております。

階委員 では、その事情を聞いた結果についても、取りまとめた上で報告してもらえますか。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今御指摘の点も踏まえ、どのような形でお示しするかも含めて、所要の分析、検討を進めてまいりたいというふうに思います。

階委員 では、早急にお願いします。

 それで、議論しているとおり、判事補の欠員が増えて、実員が減っている中で、裁判官の出向者というものはかなり数が多いというふうに言わざるを得ません。

 資料の二ページ目、これが、左側には、行政省庁等に勤務している裁判官出身者の人数ということで、行政関係が合計で百七十一人、民間に十四人、弁護士職務経験ということで二十六人という人数が出向しているわけです。これは去年の十二月一日現在の数字です。その中で特に目立つのが法務省の訟務検事、この数字です。

 こうした出向者の数とか出向者の行く先について、必要性とか合理性が果たしてあるのか。特に、訟務検事の数が多くなっているのはなぜなのか。この点について、まずは最高裁からお答えをいただければと思います。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 司法制度改革におきましては、多様で豊かな知識経験等を備えた判事を確保するため、原則として全ての判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませることを制度的に担保する仕組みを整備すべきであるとされております。裁判所といたしましても、同様の考え方の下で、法務省を含めた行政官庁への勤務、民間企業等への研修、弁護士職務経験などを行っているところであります。

 委員御指摘のとおり、相当の人数が外部に出向しておりますところ、この中で判事補に相当する年次の者は、毎年おおむね百二十人前後ということになっております。

 裁判所といたしましては、引き続き、適正迅速な事件処理と判事補の多様な外部経験の機会の確保を両立していくように努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

階委員 訟務検事の数が五十四人となっています。

 それで、その中で、五十四人の中で、国を当事者とする裁判で指定代理人、いわば弁護人として活動する、そういう人が四十二人もいるわけです。この辺りの出向先は最高裁が決めているんでしょうか。お答えください。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 訟務検事を含みます法務省等への出向につきましては、裁判実務の経験があり、法律に精通している人材としての裁判官の派遣を求める要望を踏まえ、裁判官としての知識経験を生かせるなど、職務内容自体が相当なものであるかどうかなどを検討の上、個別に判断しているところでございます。

階委員 結論は、最高裁がこの訟務検事の数とか、あるいは、その中でも国の指定代理人として活動する者の数を決めているということでいいんでしょうか。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 求めは法務省さんからいただいているところでございます。その中で、どういう形で活動するかということは、最高裁判所が決める立場にはございません。

階委員 では、法務大臣にお尋ねします。

 実は、今、国の代理人として裁判官の人が法廷で活動することについて、この委員会でも議論になりまして、要は、裁判官と関わりのある人が法廷に立って国の弁護をするわけですね。そうすると、裁判への信頼が揺らぐのではないかという問題意識から、過去に、民主党政権のときですけれども、我が方の法務大臣が、この数については減らしていくという答弁をしまして、実際、平成二十二年から平成二十七年にかけて、五十五人だったその数が四十二人まで減少しているんです。

 ところが、今日お配りしている資料の二ページ目の右側にあるとおり、それ以降、四十二人からずっと変わっていないんですよ。ですから、政府の答弁を守っていないんじゃないかということで、これは附帯決議でも、度々、この数を減らすようにということを我々決議しているんですね。こういう問題があります。

 この点について、やはり大臣のリーダーシップで、今申し上げたような、裁判への信頼を揺るがしかねないという問題意識を持って、減少させることに取り組むべきではないかと考えますが、大臣の見解をお願いします。

古川国務大臣 お答えいたします。

 国の代理人として活動する検察官につきましては、その数に占める裁判官出身者の数の割合が余り多くなるのは問題であるという御指摘を受けたことから、その人数や割合を次第に少なくするとの方針の下で、必要な見直しを継続的に行ってきたものと承知しております。

 一方、法曹間の人材交流というものは、それが直ちに、それ自体が御懸念の裁判の公正中立性を害するものに直結するというふうには考えておりませんで、むしろ、法務省の所掌事務の適正な処理のためですとか、国民の期待と信頼に応え得る多様で豊かな知識経験等を備えた法曹の育成、確保のためにこれは意義があるというふうにも考えられます。

 このような観点から、御懸念の、裁判の公正や中立性に疑念を持たれることがあってはなりませんので、そのようなことにも十分配慮しながら、しかも、先ほど触れていただきましたように、縮小の方針を取っております、平成二十六、二十七年でしたか、そのような、縮小するという方針を念頭に置きつつも、適材適所の配置として裁判官出身者を訟務検事に配置をしてきたところでございます。

 今後も、そのような疑念を持たれることのないように配慮しながら、かつ、人材交流を適切に行うということも配慮した上で進めていきたい、その際、縮小の方針を念頭に置きながら進めたいというふうに考えます。

階委員 古川大臣にしては歯切れの悪い、官僚的な答弁だったと思います。

 私は、ちょっと個人的になりますけれども、弾劾裁判員というのを今拝命していまして、ちょうど九年ぶりに事件が係属しているんですね。弾劾裁判員で裁判席の方に座っていますと、法廷で、訴追側の国会議員の皆さん、あるいは訴追された人を弁護する弁護士の皆さん、両方に知り合いがいて、私自身は公正中立にやろうと思うんですが、外から見た場合に、何か結託しているとか、あるいはこの人とつながりがあるからこういう判断をするんだろうとか臆測を招いたりとか、何か、我々、本当に、判断したときにそれが信頼されるんだろうかと一抹の不安を覚えているんです。

 裁判官の人たちも、もちろん皆さん、ちゃんと公正中立にやろうとは思っていると思うんですよ。実際やるとは私も信じています。ただし、そういう見え方が国民からされるということ自体が、私は裁判の信頼を揺らがすと思うんです。

 ですから、私は、これについては、政府方針に従ってとおっしゃいましたけれども、途中までは従っていたんですが、ここ五年ぐらいはもう全然減っていないんですよ。減らしたとしても、訟務検事には別の仕事があります。裁判の代理人だけではなくて、例えば予防司法支援業務というのをやっていますよね。私は、この問題について前回予算委員会でも取り上げたんですが、予防司法支援制度というのを使って、各省庁で、何か法律問題が生じたときに公正中立な立場から法解釈を示す、それによって紛争を未然に防ぐといったようなところで裁判官の知見を役立たせるということもありだと思うんです。

 法廷に立たせるということは、やはり、本人は真面目にやっていても国民の疑念を招きかねないということで、これはやはり大臣のリーダーシップで数を減らしていく、これをしっかり約束していただきたいんですが、お願いします。

古川国務大臣 疑念を持たれてはならない、そういう観点は非常に大事なことだと思います。これは司法そのものに対する信頼に関わることですから、それは大事な観点で、決してそれをないがしろにするわけではありません。

 しかし、先ほど、四十二人から減っていないということでございましたけれども、一方で、複雑化、困難化している訟務事件等の適正な遂行には、やはり、法律に精通し、訴訟手続等の専門家である裁判官出身の実務経験を有する者を活用することが必要であるということ、国民の期待と信頼に応え得る、多様で豊かな知識経験等を備えた法曹の育成、確保が必要であることなどの理由から、そういう理由をもってこの四十二名が必要だというような実態的な理由があるというふうに考えておりまして、この四十二人が減ってはいないんだけれども、それが必要なだけの理由があるというふうに判断をいたしております。

 ですから、委員が御懸念のように、疑念を持たれてはならないということはまさにそのとおりですから、そこに配慮はするのですけれども、一方で、今申し上げたような要請にも応えていかなければならない。このバランスといいますか、そこを見極めながら進めていきたいと考えています。

階委員 法律実務に精通した方であれば弁護士にもいます。弁護士じゃなぜ駄目なんですか。お答えください。

古川国務大臣 まあしかし、それは裁判所判事との、裁判官との人事交流という全体的な関わりの中で、国の代理人、指定代理人というものが、その経験の内容等において、知識や経験を豊かにする上で大事な内容を含んでいるということもありますから、ここは大事なことじゃないかなと考えております。

階委員 だから、人事交流をする上で、さっき言ったような予防司法支援制度の中で働いてもらうということもこれからはやっていくべきだと思うし、何も訴訟代理人でなくちゃいけないということにこだわる必要はないと思うんですね。その点をやはりゼロベースで考えていった方がいいんじゃないでしょうか。

古川国務大臣 望ましい姿、あるべき姿というものについては、やはり将来に向けて柔軟に考えていく必要があると思います。何も固定的に考えているわけではありません。

 今申し上げたように、やはり適正なバランスだとかというのは大事だと思っております。

階委員 では、この点、最後に、四十二人を減らすということを約束していただけませんか。

古川国務大臣 今申し上げたように、様々な総合的なバランスを考えながら四十二人ということになっておるわけです。状況が今後どうなっていくかということにもよりますので、今ここで断定的に、減らしますということをお約束というのは難しゅうございます。

階委員 この後、附帯決議にもこの点がうたわれる予定ですので、是非その重みをかみしめていただいて、正しい方向に持っていっていただけるように、よろしくお願いします。

 さて、法曹人口の減少につながる法曹志願者の減少、これが著しく進んでいるわけです。

 三ページを御覧になってください。

 これは「司法試験及び司法試験予備試験の受験者の推移」ということで、平成三年から直近まで、緑の折れ線グラフが司法試験の受験者数です。途中まで見ますと、コロナの新規感染者の波のようですけれども、このマッターホルン形が今の司法試験の受験者の在り方です。ピーク時に比べると十分の一以下です。ここでは一番最後のところが令和三年ですけれども、令和四年、今年の受験者は更に減りそうです。まだ試験は行われていませんので志願者ということなんですが、志願者ベースで三千三百六十七人ということで、もう既に志願者の段階で昨年の受験者よりも減っている、こういうことであります。

 一方、平成二十三年から始まる紫の折れ線グラフ、これは予備試験の受験者数です。緑の線と組み合わせてみますと、日本の財政状況のようにワニの口が開きつつあるんですね。

 ちなみに、令和四年も、紫の方は一万六千百四十五人。これは志願者ベースですけれども、より一層、ワニの口が開くような方向になっています。なぜこうなるかといえば、法科大学院に入って時間とお金をかけることに見合うだけの法曹の魅力がなくなっているということを、若者に聞きますと言われます。要は、若者の言葉で言うとコスパが悪いということを言われるわけです。

 そういうコスパが悪い状況にあって、法科大学院に入らないとなかなか司法試験が受けられないということで、予備試験に受かって司法試験に臨む、その人数はすごく狭き門になっているんですね。その結果、予備試験の人数、受験者の数はどんどん増えていても、予備試験を通って司法試験に臨む人が少ないので緑の線はどんどん減ってきている、こういうこともあるわけです。

 このままいくと、司法試験の受験者、法曹志願者がどんどん減って、我が国の様々なところに影響を及ぼしかねないと思っています。これは大臣の言葉で、こうしたことについてどのように大局的見地から考えられるのか、お答えいただけますか。

古川国務大臣 法曹志望者数の減少については、これは大変重く受け止めております。委員もかねてよりこの点について重大な懸念を持たれて、本委員会においても度々御指摘をされているところでございます。

 世の中がどんどん複雑化、高度化していく中で、やはり法曹あるいは法務、司法そのものに対するニーズというのは、これは非常に高まっていっているのだと思います。実際、例えば、企業法務のみならず、児童福祉や高齢者福祉、教育行政など様々な分野に法曹に対する需要というものが広がっていくわけでして、そして、今後の社会におきまして、これは国内外問わずですけれども、やはり法曹の存在というものが非常に大きな役割を持つということは断言できると思います。

 その意味で、法曹が、志望者が減ってきているというこの事実に対して委員が大変懸念を持たれるのはもっともなことでありまして、私も問題意識を共有いたします。

 その上で、司法制度改革におきまして、やはり将来的にしっかりした法曹を養成する、あるいは人員を確保するということも盛り込まれた上での、これまでも、累次の改革といいますか見直しといいますか、そういうことが重ねられてきた、今その途上にあるんだと思います。

 しかし、なお、今御指摘をいただいたような数字に表れた状況、こういうことがあるということを見ますと、やはり本来の、私たちが望ましいと思っている方向になかなか事態が進んでいっていない、これはまた事実だと思っています。

 様々、今、試行錯誤を重ねながらも、やはり望ましい姿を追求していく、こういう状況にあるというふうに考えております。

階委員 私も弁護士ですけれども、弁護士は、自由と正義、人権、これを守ることを使命としているわけですね。

 今まさにウクライナでは、自由や正義や人権が踏みにじられている状況なわけです。これは決して対岸の火事ではなくて、我が国もいつそういう状況になるとも限りません。そういうときに、もし為政者が暴走したりして国民の人権や自由や正義が踏みにじられようとするときに、立ち上がらなくてはならないのが法曹だと思います。

 その法曹がどんどん日本で少なくなっているということは、国民の自由や人権、そして正義というものがどんどん損なわれかねない、そういう危うい状況がつくられつつあるということだと思います。

 まさに、国際状況を見たとして、そういう思いを是非大臣にも共有していただきたいと思いまして、今日は、まずは実態をお伝えした上で、その上で何をすべきかということをお尋ねしていきたいと思います。

 まず、法曹の質がどうなのかということを、法曹志願者が減っていく中で調査してくれということを、昨年、附帯決議でお願いしました。ようやくこの法案の審議直前に資料はいただいたんですけれども、ちょっと中身が中途半端だったと思っています。

 また、そういうことを議論する場である関係者の協議会、この中でどういう議論がされたのか。昨日、担当者に聞いても、去年の七月に議論されたということなんですが、そのときの議事概要がいまだにできてこないというとんでもない状況なんですね。本当に法曹志願者の減少について真面目に考えているんだろうかというふうに思うわけです。

 そうしたことについて、やはり、改めて必要な調査、これをしっかりやるということを大臣にお約束いただきたいんですが、いかがでしょうか。

古川国務大臣 今回実施しました調査は、法的支援等が必要とされている主要な分野における法曹、特に弁護士の活動内容に着目をして、それぞれの分野に具体的にどのようなニーズがあって、そのニーズに対し法曹がどのような活動をし、その活動が利用者や関係者からどのように評価されているかという観点から調査分析をして、法曹の質に関する検証を行ったという内容のものでございます。

 利用者等の評価という観点から検証した内容になっておりまして、確かに、今回、この一面だけ、いわば一つの切り口としてこういう調査をしたということになるわけでございまして、委員がこれは不十分ではないかというふうに思われました、委員が望ましいと思われている調査方法というのが幾つかあるのかも分かりませんけれども、それを必ずしも否定するわけではありません。ただ、今回の調査におきましては、今申し上げたように、利用者の評価ということを中心に検証を進めたものであります。

 コロナということもあったりしまして、やはりある程度活動が制約される状況の中で、アンケートですとかというようなものを中心に調査を進めたというふうに報告を受けております。

階委員 利用者から見た法曹の評価ということを調べたということなんですが、利用者が過去の法曹と現在の法曹、両方を見た上で、質が下がっているのか、上がっているのか、維持されているのか、これを答えるのであればまだ分かると思うんですが、過去の法曹を評価した利用者と現在の法曹を評価した利用者、回答している人が違うんですよね。だとすると、余り意味がないというふうに思っています。そういうことも踏まえて、改めて調査というものを考えていただきたい。

 やはり、どう考えても、昔は司法試験って二%とか三%しか合格しない試験だ、同年代だからよく分かると思います。司法試験を受ける人はよっぽどの変わり者か大天才かどっちかだという時代でした。今や、司法試験、受ければ四割ぐらい受かっちゃうという試験なんです。普通はそれだったら質は下がるというのは当然だと私は思いますけれども、そういう観点で、やはり質がどうなのかということは調べていかなくちゃいけないだろうと。

 私も、定性的な評価ですけれども、やはりいろいろなところで質が下がっているという話は聞くんです。なので、大臣、ここについても、ちゃんとリーダーシップを発揮して、調査をしていただければと思います。

 実は、さっき、司法試験の志願者が減っているということなんですが、そこに至るまでの過程で、大学の法学部、この志願者も、実は、3+2という法曹養成コースというのを設けた割には減っていたりするんですね。これもゆゆしき状況だと思っています。

 こうしたことが続くと、どんどん法曹養成が先細りになっちゃうということで、ここは、法科大学院のみならず、その手前の段階、法学部の受験生の動向などについても、文科省と連携しながら、どうやって底上げしていくかということを取り組んでいただければと思います。

 ちょっと質問を飛びまして、通告している七番の質問に移っていくんですが、予備試験の合格者と法科大学院修了者、この二つが司法試験の受験者となるわけです。ところが、同じ試験を受ける二つのカテゴリーの中で、合格率が大きく違うという問題があります。

 お配りしている資料の五ページ目を御覧になっていただきたいんですが、全体の合格率というのが上段の表の左側、太枠で囲んでいる部分。今申し上げたとおり、直近で司法試験の合格率は四一・五%です。そのうち、ロースクールを終えて受験した人の合格率は三四・六二%、予備試験に合格して司法試験に受かった人は何と九三・五%です。物すごい合格率の差があるわけですね。

 このことについて、大臣、ゆゆしき問題だとは思いませんか。お答えください。

古川国務大臣 これは平成二十七年でしたか、改革推進会議の、そこで閣議決定された文書だったと思いますが、その中で、やはり両者の合格率が大体均衡するようにというようなことが規定されておったと思います。

 そういうことを目指して一連の改革は進められているものというふうに承知しておりますけれども、ただ、そのとおりになっていないというのは、これは委員の御指摘のとおりでございます。

階委員 今、閣議決定、平成二十七年とおっしゃいましたけれども、それ以前に法律にも抵触しているということなんですよ。

 六ページ目、これは司法試験法から抜粋したところなんですが、第五条というところを見ていただければと思います。司法試験予備試験は、司法試験を受けようとする者が前条第一項第一号に掲げる者、これは、第四条を見ますと、法科大学院を修了した者という意味なんです。要は、司法試験予備試験を受ける場合に、法科大学院修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することが司法試験の予備試験の目的だというふうになっていますね。

 同等の学識等々となっているわけで、本来、同等の学識等々であれば、合格率も予備試験に受かった人と法科大学院を修了した人と同じぐらいにならないとおかしいわけですよね。

 この異常な状態を招いていることによって何が生じているかというと、次の質問なんですが、予備試験の人は、さっき言ったように受験者は多いんですが、予備試験合格者は四百人ぐらいしかいません。一方で、政府は合格者の枠を千五百人めどということに定めています。四百人が予備試験枠、予備試験合格者の枠、残り千百人が、今、毎年千八百人ぐらいしか入らない法科大学院修了者の枠なんですよ。

 いいですか。片や、一万何千人受けて四百人しか通らない予備試験、これを何とか通って司法試験を受けると、一〇〇%に近い確率で司法試験に合格する。他方で、法科大学院は、二千人も入らない法科大学院の方々が毎年千百人の枠を与えられて、千百人の合格枠に二千人弱の中から入るという非常に緩い制度になっているわけです。

 要するに、受験機会、合格する機会、これが両者の間で大きく違いがあるわけで、これを是正しないと、とてもではないけれども、司法試験の受験機会の平等であるとか公正さが保たれないと思うわけですけれども、こうした状況を改善する、もしお考えがあれば、具体策とともにお答えください。

古川国務大臣 御指摘のとおり、両者において合格率に相当な開きが出ているというのは、これはもう一目瞭然でありますし、それが司法試験法五条の期待する姿ではない状態であるということもおっしゃるとおりです。これを均衡させる、均衡した姿がやはり望ましいということについては全くそのとおりでございます。

 では、どのようにしてそれを実現するかという、そのアプローチとしてなのでございますが、法科大学院修了資格者の合格率を高めていくということが一つのアプローチだと、私は大事なアプローチだと思っておりまして、それはこれまでも集中的な、平成二十七年かな、これはまたちょっと……(階委員「いいです、いいです。そこは大丈夫です」と呼ぶ)続けます。

 法科大学院の集中的な改革を含めて、その後、改革推進法でしたっけ、改革法ですね、あそこに基づいた手順を踏んで鋭意進めている、改革を進めているのは御存じのとおりです。そして、来年から新たな、3+2を含め、法科大学院の在学生であっても受験資格が得られるとか、そういう幾つかの改革を実行している段階、今、途上にあるわけです。

 これはやはり結果を見てみなきゃ何とも言えないところもございますけれども、このようにして、やはりあるべき姿に近づける、つまり合格率が均衡するように、そういう方向を目指して、法科大学院修了者の合格率を上げていくということを目標に今進めているところです。

 累積合格率も七割ぐらいになってきているというふうにも聞いていますし、方向としてはあるべき方向に向かっているのではないかと認識しているところです。

階委員 終わりますけれども、合格率が上がっているのは枠が確保されているからだというふうにも言えるわけです。納得できる形で合格率を上げる一つの方法は、法科大学院を修了するときに予備試験を受けさせればいいんです。予備試験を受かった上で司法試験を受けるということであれば、合格率はちゃんとそろう。これは合理的なやり方だと思います。それも選択肢に置いた上で、いろいろ御検討いただければと思います。

 終わります。

古川国務大臣 ごめんなさい。ちょっと訂正があります。

 私、先ほど、平成二十七年の閣議というふうに申し上げましたけれども、これは平成二十一年の誤りでした。申し訳ありません。訂正させていただきます。

鈴木委員長 次に、前川清成君。

前川委員 おはようございます。日本維新の会の前川清成でございます。

 まず、私からも、冒頭、ロシアによるウクライナ侵攻については強く抗議しなければならないと考えております。

 法務省におかれては、難民の受入れなどについて御尽力をいただいているというふうに聞いております。また、大臣におかれても、岸田内閣の一員として御尽力をいただいているかと思います。

 今日も無辜の市民が殺されています。本当にたまらないような気持ちになります。トルコが仲介を申出したりしておりますけれども、日本政府としてもっとできることはないのかなと。例えば、安倍前総理は二十七回、プーチン大統領とも面談しておられます、そんなチャンネルを利用できないのか、あるいは、更に経済制裁等を強化できないのか、いろいろな方策があろうかと思います。

 この問題については、この委員会でも様々に質疑があったと思いますので、もしも、大臣におかれて、何か追加して御発言いただくことがあれば御発言いただきたいですし、特になければ結構でございます。

古川国務大臣 ロシアによるウクライナ侵攻は、これは力による一方的な現状変更にほかなりません。ルールに基づいた国際秩序というのを標榜する現代の、二十一世紀における国際社会において、これはもう断じて許されないことだというふうに考えております。

 総理も発言しておられるとおり、ウクライナからの受入れ、避難される方の受入れ、これについては積極的に、前向きにいくのだということを既に表明しておりますけれども、そのようにしてこの事態に政府として向き合っていくということでございます。

前川委員 大臣は、鳩山邦夫法務大臣の下で政務官をなさっております。私も、二〇〇七年当時、参議院の法務委員会におりまして、鳩山大臣とは様々な議論をさせていただきました。

 鳩山大臣は、私がそれまで議論させていただいたほかの法務大臣の方と違って、紙頼みではなくて、官僚の答弁書を朗読するという答弁ではなくて、その都度、御自身のお言葉で議論していただいたと思います。私たちも、その誠意に応えて、重箱の隅をつついたり、揚げ足を拾ったり、そんなことはしなかったつもりでございます。

 是非、大臣にも、大物の対応を期待申し上げているところでございます。

 それで、今、階議員から予備試験の問題がございました。私も、ちょっと質疑の順序を変えて、この予備試験の問題を大臣にお尋ねしたいと思います。

 階議員からもお話がありましたけれども、予備試験の合格者の司法試験合格率は九三・五%で、法科大学院卒業生の司法試験合格率は三四・六%です。予備試験に通った方であれば、ほぼ司法試験に通る。これはちょっと異常かなと。

 なぜ予備試験の合格者の方はこれほど本番、司法試験に通るかというと、予備試験の合格率が僅か四・二%しかないんです。

 予備試験というのは、法科大学院ができたときに、原則三年間、法科大学院に学ばなければならない、国立大学でも一年間に八十万円、私立大学だったら一年間に百三十万円お金がかかってしまう、そういう経済的に厳しい立場にある方についても法曹への道を閉ざさない、こういう趣旨で予備試験という制度が設けられたと思います。

 それにもかかわらず、その経済的に厳しい立場の方が一生懸命勉強をして予備試験を受ける、しかし、その合格率が四・二%。これは余りにもその経済的に厳しい若者たちに対して酷なのではないかと私は思います。

 この点、先ほど、アプローチとして、大臣は、法科大学院の卒業生の合格者を増やすというふうにおっしゃいましたけれども、私は、そうじゃなくて、予備試験の合格者を増やせばそれで済むことじゃないのかな、こう考えるんですが、いかがでしょうか。

古川国務大臣 法科大学院修了資格者と予備試験合格資格者とで司法試験の合格率に大変な差があるというのは、これは事実でございます。

 予備試験の合格者につきましては、これは、実際の試験結果に基づいて、法科大学院修了者と同程度の学識、能力等を有するかどうかという観点から、予備試験考査委員の合議によりまして適正に判定をされて、これに基づいて司法試験委員会において適正に決定されるというものだと承知をいたしております。

 これは、やはり試験の独立性、中立性を確保するという見地から、予備試験の合格者の判定は予備試験考査委員に委ねられておるというふうになっている、そういうことだと承知しております。したがいまして、法務大臣として、合格者の当否を論ずることは差し控えたいと思います。

前川委員 大臣は、予備試験の合格率が四・二%、予備試験の合格者の司法試験合格率がほぼ一〇〇%、これは異常だとは思われませんか。

古川国務大臣 先ほど、階委員との質疑の中で、かつての制度という話がございました。私も法学部生でしたけれども、非常に、当時の司法試験というものは、おっしゃいましたけれども、特別な世界というような、そういう印象がございました。

 一連の司法制度改革の中で、あの当時のような、かつてのような、点としての法曹への入口を開くというやり方よりも、やはりプロセスとして法曹を養成していくんだという方にシフトしていったというのが、この一連の司法制度改革の中での趣旨だったと思います。

 今、前川委員の御質問をいただきながら思いますに、かつての、いわば一発勝負的な、あのときの司法試験の姿を思い出したんですけれども、やはり、そういうことであってはならない、ああいう先の見通しの立たないような、点のみの司法試験であってはいけないということから、幅広く入口を開くというような方向での議論の中で、この予備試験の制度というものが出てきたというふうに考えております。

 それがなかなか、先ほど来、法科大学院の修了者資格者と、それから予備試験合格者資格者の間での司法試験合格率の差というのが問題点として指摘をされているわけですけれども、そういう現状を見るにつけ、これが望ましい姿だとは思っていません。

 しかし、本来そもそも目指した法曹養成の改革の中での、今、試行錯誤の一途上にあるのだなというような認識をしておりまして、したがいまして、今の予備試験の合格率の低さということをお尋ねになったわけですけれども、これは事実は事実として認めますけれども、あるべき全体像の中での評価をしなければならないというふうに思っております。

前川委員 プロセスが大事だ、それは分かるんです。だから、法科大学院をつくったということですけれども。

 では、経済的に厳しくて法科大学院に学ぶことができない学生はどうするんですか、それはもうほったらかしでいいんですか、いや、違うよね、予備試験をつくったわけだ。それなのに、その予備試験の合格率が余りにも狭き門だ。これが異常だというふうに私は申し上げています。

 それと、今、大臣の御答弁の中にありましたが、予備試験考査委員という人たちがいるわけですか。ちょっと私、知らなかったんですが、これはどんな人たちなんですか。

古川国務大臣 予備試験考査委員というのは、予備試験を行うについて必要な学識経験を有する者という観点から、各分野の研究者や法律実務家などの中から司法試験委員会において適切に推薦を行い、これに基づいて法務大臣が試験ごとに任命しておるというものでございます。

前川委員 今のお話だったら、研究者もいる、結局は大学の先生ということですよね。

 結局、この予備試験の合格率が低いのは、法科大学院に対する忖度ではないのか。要は、法科大学院に行ってもなかなか司法試験に合格できない、法科大学院の受験生、法科大学院の学生がどんどん減ってしまう、すると、大学の経営が、法科大学院の経営がうまくいかない、だったら、予備試験というチャンネルを閉めてしまったら、みんな嫌々でも法科大学院に行くのではないか。

 もしこれ、フラットに競争したら、大臣、予備試験の合格者はほぼ一〇〇%通るわけです。お金も要らないわけです。私がもし四十年前に戻って司法試験を受けるとしたら、それは法科大学院ではなくて予備試験を選ぶと思います。でも、大学経営者としてはそれをされると困るから、予備試験のチャンネルを狭めている。

 こういう実態であるとすれば、もちろん試験に関しては公正でなければなりませんが、考査委員に任せているので法務省は、政治は一切コミットしないというのは私は筋が通らないのではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

古川国務大臣 予備試験は、法科大学院修了者と同程度の学識、能力等を有するかを判定することを目的とした試験でございます。ですから、法科大学院において実際に指導を行っている方とか、学者というふうにおっしゃいましたけれども、そういう学識経験者が予備試験の考査委員というふうになることには、これは合理性があるというふうに思われます。

 不当に優遇するものではないかというような御指摘は当たらないと思います。

前川委員 今、大臣がおっしゃったとおり、予備試験の目的は、法科大学院修了生と同程度の学力を持っているかどうかなんですよね。

 そうであれば、法科大学院の卒業生は、およそ三割、司法試験に合格する、だったら、予備試験の合格者も、司法試験の合格率が三割程度になるようにその間口を広げるべき、合格者を増やすべきではないかというふうに私は申し上げているんです。

古川国務大臣 予備試験合格の資格者と法科大学院修了者の資格者と、この両者の司法試験合格率に著しい差があるではないかというところがやはり問題意識の核心だというふうに思います。そのような御指摘だと思います。

 そのときに、やはり、法科大学院の修了者の司法試験の合格率を上げていくような努力、取組をするのが、それによって両者の合格率を均衡させるということを図ることが私は前向きな、生産的なアプローチだというふうに考えております。

前川委員 ちょっと途中ですけれども、時間が参りましたので、これで終了させていただきます。続きはまた午後にお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。本村伸子君。

本村委員 私は、日本共産党を代表して、裁判所職員定員法改定案に反対の討論を行います。

 本法案は、裁判所全体で過去最大規模となる六十六人の純減を行おうとするものです。判事補についても過去最大の四十人減員とし、さらに、最高裁判所が概算要求で求めた事務官の数を抑制し、いわゆる行(一)職を初めて純減し、技能労務職員もアウトソーシングで減員するものです。

 本法案の提案理由は、事務を合理化し、及び効率化することに伴い、職員の員数を減少する必要があるとしています。ところが、職場からは、簡素化、効率化が進んだという実感はないとの声があります。また、地方からの都市部への人員シフトを続けてきた結果、地方の人員不足は深刻な状況となっており、定員削減が可能な状況ではありません。

 人員配置の前提である客観的な勤務時間把握が行われていないことも質疑の中でも明らかになりました。職員の方々の命や健康を守ることができ、出産や育児、介護など、男性も女性も多様な性の方々も、家庭的な責任を果たしながら働き続けられる人員確保が必要です。

 家庭裁判所調査官は、おおむね三年ごとに異動があるため、配偶者との関係や育児、介護等の理由により異動が困難となり、仕事を辞めざるを得ないケースが増えています。お一人お一人の事情を把握し、配慮ある人員配置を行うとともに、抜本的な増員を図るべきです。

 事務官等の人員削減は、恒常化している残業や持ち帰り仕事に拍車をかけ、繁忙な司法現場の実態を更に悪化させるだけではなく、裁判所の使命である国民の裁判を受ける権利を保障することにも逆行するものです。

 最高裁判所が、国民の権利保障機能の後退を招く政府の定員合理化計画に協力する姿勢を改め、憲法が保障する国民の権利を守るという本来の重要な役割を果たすために、裁判所職員の増員、裁判所予算の増額を強く求め、討論といたします。

鈴木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、山田美樹君外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。階猛君。

階委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 民事訴訟手続の審理期間及び合議率の目標を達成するため、審理期間が長期化している近年の状況を検証し、審理の運用手法、制度の改善等に取り組むとともに、産業の高度化や国際化に対応できるよう裁判官の能力及び職責の重さの自覚の一層の向上に努めること。

 二 裁判所職員定員法の改正を行う場合には、引き続き、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにし、その定員が適正であることを明確にすること。

 三 平成二十五年三月二十六日、平成二十八年三月十八日、平成二十九年三月三十一日、令和二年四月三日及び令和三年三月十二日の当委員会における各附帯決議等を踏まえ、最高裁判所において、引き続き、判事補の定員の充足に努めるとともに、判事補の定員の在り方について、現実的な実員の増減見通しも踏まえて更なる削減等も含め検討していくこと。

 四 現在の法曹養成制度の下で法曹志望者の数について顕著な改善傾向が見られないことを踏まえ、そのことが法曹の質や判事補任官者数に及ぼす影響につき引き続き必要な分析を行い、その結果を国会に示すとともに、同制度や法改正の趣旨を踏まえた更なる法曹養成機能の向上、法曹志望者の増加等に向けた取組をより一層進めること。

 五 司法制度に対する信頼確保のため、訟務分野において国の指定代理人として活動する裁判官出身の検事の数の縮小を含む必要な取組を進めること。

 六 裁判手続等のデジタル化の進捗状況を踏まえ、合理化・効率化が可能な事務と注力すべき事務をそれぞれ考慮した上で適切な人員配置を行うよう努めるとともに、裁判官以外の裁判所職員の労働時間を把握し、適切な労働環境を整えること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。古川法務大臣。

古川国務大臣 ただいま可決されました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、内閣提出、裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官小玉大輔君、金融庁総合政策局総括審議官伊藤豊君、金融庁総合政策局審議官有泉秀君、総務省大臣官房審議官池田達雄君、総務省自治行政局公務員部長山越伸子君、法務省大臣官房政策立案総括審議官吉川崇君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長川原隆司君、法務省保護局長宮田祐良君、法務省人権擁護局長松下裕子君、法務省訟務局長武笠圭志君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、出入国在留管理庁出入国管理部長丸山秀治君、外務省大臣官房国際文化交流審議官曽根健孝君、外務省大臣官房審議官安東義雄君、外務省大臣官房参事官股野元貞君、外務省大臣官房参事官北川克郎君、文部科学省大臣官房審議官出倉功一君、文部科学省大臣官房審議官淵上孝君、厚生労働省大臣官房審議官宮崎敦文君及び厚生労働省大臣官房審議官青山桂子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鎌田さゆり君。

鎌田委員 立憲民主党・無所属会派の鎌田さゆりでございます。今日もよろしくお願いします。

 まず、さきの三月六日日曜日、名古屋入管でウィシュマ・サンダマリさんが亡くなられて一年の日でした。改めて私は、日本人の一人として、彼女や彼女の御家族に心からおわびの気持ちを伝えたい、そのようにまず申し上げたいと思います。

 では、質疑に入らせていただきます。

 最初に、旧優生保護法をめぐる我が国の人権の課題について伺ってまいります。

 私は、そこに一つの命がある限り、皆、平等の一つの人権が存在すると考えている一人です。大臣はいかがですか。伺います。

古川国務大臣 人権は、人が人であることによって当然に有する権利であるというふうに考えております。

鎌田委員 御存じのとおり、旧優生保護法の下で強制的に優生手術の対象となった障害者とその配偶者は、子をもうけるか否かの意思決定の自由が奪われていた事実が私たちの国のこの日本で起きていました。

 大臣、このことについて、何かお感じになるものはございますか。

古川国務大臣 旧優生保護法につきましては、この法律に基づいて、あるいはこの法律の存在を背景として、多くの方が特定の疾病や障害を理由として生殖を不能にする手術などを受けられるということを強いられて、心身に多大な苦痛を受けてこられたことについて、これは政府として真剣に反省をし、心から深くおわびを申し上げているものと承知をしておりますが、私もこうした立場に変わりはございません。

鎌田委員 大臣も昭和四十年生まれで、私もたまたま同じ四十年生まれで、私たちの小さい頃は、盆や彼岸にお墓参りに田舎に行きますと、陰の部屋に、私なんかは、おんつぁまと呼ばれている人が隠されていて、何でおんつぁま出てこないんだべといつも子供の頃思っていたんです。物心つくと、ああ、あのおんつぁま、人前に出させられない障害があったんだなということを、親戚から聞かされて、私たちが小さい頃というのはそういうことが普通にありました。でも、今の時代、もうそんなことは絶対に考えられません。

 そこでなんですけれども、先月の二月二十二日に、大阪高裁で、国に対して慰謝料等の支払いを命じる判決を言い渡しました。戦後最大の人権侵害と断じて、優生手術という非人道的で重大な人権侵害に対して、除斥期間適用を制限して、配偶者にも人権侵害を認めた、障害者に対する偏見や差別解消に向かう大きな一歩と評価されてしかるべきと私は捉えている高裁判決が出ました。

 そこで、資料の一番を御覧いただきたいんですが、これは要請書なんです。今月、三月の一日、優生手術被害者・家族の会などから、五つの項目にわたって、総理大臣、厚労大臣、そして古川法務大臣、そして松野官房長官に向けての要請書が出されています。

 古川大臣、これはお目通しされましたか。

古川国務大臣 この要請書が法務大臣宛てにも提出されているということについては承知をいたしております。

鎌田委員 承知をされているということは、ここに五つ項目があるんですけれども、お読みではないのかなと思って、私、じゃ、読みますけれども。

 簡単に要約すると、上告受理申立ては断念してほしい。それから、除斥期間の主張を撤回して、大阪高裁を踏まえた優生保護法被害に関する統一的な解決に向けて協議の場に政府に着いてほしい、被害者の皆さんとですね。そして、一時金支給法の改正、期間を延長することを立法府として検討してほしい。これはちょっとまとめた三つを申し上げました。五つ書いているんですけれども。

 私、これが、大臣がお読みになっているだろうと信じていたんですね、大阪高裁判決が出て。ところが、一昨日です、三月の七日、国は上告受理申立てをしました。法務大臣による指定代理人、厚生労働大臣による指定代理人が署名をしての手続であったということですが、これは間違いないですか。

古川国務大臣 間違いございません。

鎌田委員 つまり、指定代理人であっても、この上告受理申立ては法務大臣の意思が反映されているということでよろしいですね。

古川国務大臣 大阪高裁の判決につきましては、厚生労働省とその内容について精査をし、対応について協議をし、最高裁の御判断を仰ぐ方針としたところでございますけれども、この方針について、報告を受けた、私、法務大臣として、この上訴の方針を了といたしました。

鎌田委員 もう一つ確認させてください。

 二月二十二日の大阪高裁判決後に、官房長官が被害者に向けておわびの言葉を述べられていました。しかし、この上告受理申立て後、その謝罪を訂正したと聞き及んでおりますけれども、大臣、これは事実でしょうか。

古川国務大臣 個別の訴訟に関しての国内部でのやり取りについては、これはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

鎌田委員 大阪高裁判決後におわびの言葉を述べられた官房長官が、上告受理申立てをした後、そのおわびの言葉を訂正するという、とても残念で、私はその事実を弁護団から聞いたときに非常に悲しくなりました。

 改めて伺います。

 上告受理申立ての判断理由は何だったのでしょうか。お答えできる範囲で伺います。

武笠政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の訴訟につきましては、先月二十二日、大阪高裁において、国の損害賠償責任を一部認める判決が言い渡され、国は、本月七日、最高裁に対する上告受理申立てを行ったところでございます。

 同判決につきましては、厚生労働省とその内容につきまして精査し、対応について協議してまいりましたところでございますけれども、厚生労働省から発表されているところですが、同判決につきましては、除斥期間の法律上の解釈、適用に関して、旧優生保護法に係る本件事案にとどまらない法律上の重大な問題を含んでいる、また、近く同種訴訟につきまして判決も予定されていることから、最高裁の御判断を仰ぐ方針といたしましたところでございます。

鎌田委員 今の御答弁をちょっと要約すると、最後のところに結論があって、あさって、十一日ですね、東京高裁でまた判決の予定ですけれども、それを見据えた上で最高裁の判断を仰ぐというのが最後の答弁のところにありましたが、そのような理由でなんですか。大臣、私は、上告はしない、するはずないって信じていた一人なんですね。人がよ過ぎるかもしれません。

 旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律の前文には、大臣も御存じだと思います、我々は、それぞれの立場において、真摯に反省し、心からおわびすると明記されています。結びには、「国がこの問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚し、この法律を制定する。」とあります。

 だから、私は、大阪高裁の判決からも、もうきっと国は争わないのだろうと信じていました。だって、人の一生です、人生です。それに対して国は、過去に取り返しのつかない過ちを犯してしまっていたんです。過ちに気づいたんですから、過ちを改めて、この上告を取り下げる判断は政治家にしかできないんじゃないでしょうか。

 大臣、一人の政治家としての英断を私は今なすべきではないかと思います。要請書には上告しないでほしいとありました。しかし、それを行った。でも、取り下げることは可能です。政治家として法務大臣に伺います。

古川国務大臣 この大阪高裁の判決について最高裁の御判断を仰ぐということとした理由については、先ほど訟務局長から御説明を申し上げたとおりであります。これ以上の詳細につきましては、今後、上告受理申立て理由書の中で明らかにいたします。

鎌田委員 私は今、政治家として、これは政治判断できる話ではないかと伺ったんです。じゃ、大臣にはこれを取り下げる意思は一切ないということですか。

古川国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、私は、最高裁の御判断を仰ぐという方針に、これを了といたしたものでございます。

鎌田委員 分かりました。これ以上伺いません。

 大阪高裁判決では、法律で定められている一時金の額を超える慰謝料が認められています。強制不妊手術を受けた方の名簿は、確認されている限り二万五千人に及びます。現在の請求件数は累計で一千百三十八件、認定された方は九百六十六件とのことですが、私は、今すべきことは争うことではなく、もう高齢になって、そして障害があること、優生手術を受けたこと自体を隠して生きてこざるを得なかった被害者に対して誠実に正面から向き合って、寄り添って、そして救済をしていくことが私は今するべきことだということをここで申し上げておきたいと思います。

 次に移ります。ロシアによるウクライナへの武力侵攻が続いていることについて少し伺います。

 負傷した避難者を救助した一般市民の女性が銃撃を受け、死んでいます。縫いぐるみを抱えて泣きながら歩く男の子、同じ地球上で起きている事実に、自分の子供が幼かった頃、それを投影してしまいます。

 私は、アメリカ同時多発テロの後に、アフガニスタンに行きました。ペシャワール会の、今は亡くなりましたが、中村哲医師と会いました。そして、現地でクラスター不発弾をこの手に持ちました。不発弾の処理の現場に立ち会いました。その処理の現場に立って聞かされた言葉は、日本語で言えばですけれども、こいつは殺すことが目的じゃないんだよ、手や足を奪って障害者を生み出すことが目的なんだよ、つまりその国の国力を奪うことが目的なのさ、このクラスター弾はと聞かされました。

 今、ロシア軍が、戦時国際法に抵触する、いわゆる悪魔の兵器、クラスター弾の使用が取り沙汰されています。オスロ条約にロシアが加盟していないとはいえ、許されません。

 日本は、政府として、これをどこまで確認できているでしょうか。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 現在のウクライナ情勢についてですけれども、まず、ロシア軍は、ウクライナ各地で激しい戦闘を続けております。委員御説明のとおり、激しい戦闘の中で、占拠する領域を拡大し、首都キエフの制圧を目指して攻勢を強めるなど、ウクライナ各地で戦闘が行われております。ウクライナ側も、それに対して懸命の防戦を続けております。

 どのような武器が使われ、どのような被害が起きているかについて、詳細な資料は今手元にございませんけれども、そういったロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為、明白な国際法違反であり、我々として厳しく非難をしております。

 日本政府といたしまして、国際秩序の根幹を守り抜くため、毅然と行動しなければならないと考えておりまして、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、ロシアに対する強い制裁措置を取っているところでございます。

鎌田委員 今、国際法違反という文言の御答弁がありました。これは明らかな犯罪行為です。国際法違反です。

 私は、陸戦法規上、文民、病院、学校、原発施設など、軍事目標以外の民用物は攻撃対象禁止であると明記されている限り、このロシアの指導者が行っている行為は戦争犯罪であると断じておきたいと思います。そこに対する毅然とした態度を、引き続き、法務大臣を始め政府におかれましては取っていただきたいと思います。

 先日、鈴木庸介委員の質疑に対して、古川大臣は、私の責任においてと、ウクライナからの避難民を保護する意思を御答弁されました。思わず拍手をしてしまった、私もその一人です。

 日本政府として、衣食住だけではなくて、就労も含めて、日本への上陸許可を得ただけではない支援が必要だと私は思います。この課題は、入管庁のみならず、政府を横断的にまたがって、連携を大至急図って、チーム化するなどでもいいと思うんですが、そうしないと遅きに失するおそれもあります。

 二百万人以上が避難民として国外に出るという報道も毎日流されています。政府として、法務大臣、具体的に何か準備、用意は進んでいますか。伺います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 今、ウクライナで起きているこの重大な事態に向き合うために、これまでも申し上げておりますとおり、ウクライナの人々のための支援に力を尽くす、そして我が国への避難民の受入れを進めていくということは明確に申し上げております。

 そして、まずは、我が国に親族や知人がいる方の受入れを想定しておりますけれども、しかし、それにとどまらずに、人道上、人道的な観点から、積極的な対応をしていくということも申し上げております。

 ウクライナから避難民を受け入れるに当たりましては、委員が御指摘のとおり、これは、生活支援など幅広い分野にわたって政府全体として取り組む必要がございます。そのためには、政府全体としての方針をしっかりと持って関係省庁でしっかり連携を取りながら進めることは、これは必要だと思います。

 現在、内閣官房を中心としまして、不断に省庁間で連携も取っております。そういう調整を今不断に重ねながら、申し上げておりますように、受入れについて万全を期すように進めているところでございます。

    〔委員長退席、熊田委員長代理着席〕

鎌田委員 その受入れが私たち野党の側からも賛成できるように、あるいは、私たちもこういう提案があるんですよということをこれからどんどんしていきますので、是非これは、与野党の壁を越えて避難民の方々への支援を行っていきたいと申し述べておきたいと思います。

 次に、名古屋の入管で亡くなったスリランカ人女性についての最終報告書についてなんですが、再三にわたりこの法務委員会でも疑義の指摘がなされてきました。私、どうしても解せない点があるものですから改めて伺いますけれども、その一つに、まず薬なんですね。処方です。

 三月四日に、クエチアピンという抗精神病剤、向精神薬ですね、これが処方されているんです。

 このクエチアピンという薬を処方するに当たっては、警告ということで赤文字で記されていたり、それから、用法及び用量については、一回二十五ミリ、一回当たりのマックスの量も記されておりまして、さらには、特定の背景を有する患者には特に注意をすることということで、不整脈、既往症のある患者、それから、不動状態、長期に寝たきり、脱水状態、肝機能障害、これらの患者にはこのクエチアピンは徹底して注意するようにと、処方を。それがあるんですね。

 ですが、最終報告書の処方量を見ますと、マックス量の処方がされています。それが三月四日です。その日に彼女が夜飲んだと思われるんですけれども、飲んで、翌日はもう全身脱力状態で、そして六日に亡くなっています。

 このクエチアピンの処方に対して、最終報告書、あるいは有識者の方々、検証をなされましたでしょうかね。伺います。

西山政府参考人 委員御指摘のクエチアピンの投与の点に関しまして、この調査報告書でございますけれども、それまでの診療経過等の事実関係を前提に、医師である二名の有識者の御指摘や専門医である総合診療科医師の御意見を踏まえ、処方した医師の判断に問題があったと評価することはできないというふうにされているところでございます。

鎌田委員 いやいや、向精神薬投与後に呼吸抑制に対する対応が私は不十分だったと思うんですね。

 三月五日、誤嚥、窒息に注意と書いてありますよね。深呼吸、腹式呼吸をしようとするが、しっかりやれないの記載がちゃんとあります。呼吸が浅くなっていることに気づいているのに、何で救急搬送の判断がなされなかったのかという疑問には至っていないんでしょうか。

西山政府参考人 調査報告書におきましては、ウィシュマさんの外観に顕著な変化が生じた後にも薬の投与を続けた点に関して、薬剤の効果や副反応につき、処方した医師から事前に十分に情報を得たり、服用後に外観上の顕著な変化が表れたときに医師と連絡、相談できる体制の整備が必要であったということで、問題点として指摘されているところでございます。

鎌田委員 問題点として指摘しているからということで事済まないんですよ、人が死んでいるんだから、死なせてしまったんだから。

 私は前回も申し上げたと思うんですが、二月二十四日の時点で、明らかに飢餓状態で、栄養学面からのアプローチが必要で、栄養療法ができる医療機関に搬送するべきだった。その判断もなされていない。

 とにかく、この報告書では、今でも死因は、まあ係争中でありますから、解明できていないとあるんですけれども、報告書にある死因の結論について、内分泌科医、総合診療医共に、甲状腺炎の死因への関与は低く、肝・腎機能障害、栄養失調、脱水含む、抗精神病薬の投与が死因に関与している可能性を述べています。しかし、死因の結論では、なぜか、「甲状腺炎による甲状腺機能障害により全身状態が悪化し、既存の病変を有する腎などの臓器不全が加わり死亡したとするのが考えやすい。」と、矛盾していますよね。矛盾した結論になっているんですよ。これはどのように整理したらいいんでしょう。

    〔熊田委員長代理退席、委員長着席〕

西山政府参考人 私どもとしましては、あくまで調査報告書の結果に基づいて、その点については認識せざるを得ないところではございますが、結論として、調査報告書では、詳細な死因に関しては、複数の要因が影響した可能性があり、専門医らの見解によっても、各要因が死亡に及ぼした影響の有無、程度や死亡に至った具体的な経緯、機序を特定することは困難であるというふうに判断されたところでございます。

鎌田委員 今の御答弁では、私が今指摘しました、矛盾があるということについての明快な御答弁ではないというふうに思います。

 時間がないので次に進みます。

 大臣、先日、長崎・大村入管に収容されていた体調不良者に際して、私が伺った際に、根治治療しない方針は存在しないという答弁をされました。

 では、これは御本人の了解を得て私の手元にある、庁内の医師から大学病院の医師に対しての紹介状があるんですけれども、その紹介状には、お忙しいところ、誠に恐縮です、本センターでは、センターというのは、これは大村ですね、本センターでは、一時的収容所で、原則的には根治治療は行わないことにしていますが、保存的加療が可能かどうかを含め、加療方針につき御意見をお願いできればと存じますという紹介状になっているんです。

 なぜこのような記載がされたとお考えになりますか。

西山政府参考人 大村センターの医師が作成した紹介状の記載についてお答えする立場にはございません。

鎌田委員 大臣、今、お答えする立場にはございませんという入管次長からの答弁でしたけれども、それでいいんですかね。

古川国務大臣 前回の委員会のときに委員から、根治治療は行わないというようなコメントがあったということをもって、では、入管においてそういう規定なり方針なりが存在するのかというお尋ねがあったかと記憶しておりますけれども、それに対して、そのような規則はございませんと明確に申し上げました。そのとおりです。

鎌田委員 そうすると、今次長が、お答えする立場にないとおっしゃったんですが、大臣はそういう方針はないということなのに、実際に紹介状には、根治治療しないのでと書いてあるんですよ、これはおかしいですよね。どう整理されますか。

西山政府参考人 先ほど申し上げたように、紹介状の記載について、私ども、お答えする立場にございませんし、どのような意図でそのような記載がなされたかも承知していないところでございます。

鎌田委員 どのような意図で記載されたか承知していないって、だって、被収容者に対する医療的ケア、改善をしていくということ、再三方針を出されて、入管庁から。だけれども、この紹介状に書かれていること、承知していないと。大臣、おかしくありませんか。

西山政府参考人 紹介状の記載を承知していないと申し上げたのではなく、紹介状に記載した、この当該医師の意図について、お答えする立場にもございませんし、承知もいたしていないということを答弁させていただいた次第です。

鎌田委員 じゃ、調べなくちゃいけないんじゃないですか。伺います。

西山政府参考人 調査の必要を考えません。

鎌田委員 大臣、伺います。

 入管庁で起きている出来事です。今の答弁、おかしくありませんか。これはちゃんと調べないといけないと思います。いかがですか。

西山政府参考人 この紹介状の記載について、委員が問題視されているのは、もとより御指摘の被収容者の医療行為、医療的対応について問題があるのではないかという問題意識かと存じます。

 それにつきましては、私どもとしては、一般論ではございますが、適切に診療、医療対応を行っているというところでございます。

鎌田委員 もうおかしいことだらけですよ。大臣は、根治治療しない方針は入管庁としてはないんです、法務省としてはないんですと答弁しているけれども、ここに書いてある根治治療しないんですという医者の、この記載した紹介状について、方針と違うことを書いているのに、調べもしない、調べる立場にないって、おかしくないですか。古川大臣、いかがですか。

古川国務大臣 プライバシーの問題もありますから、詳細に語ることは差し控えたいと思いますけれども、詳細にはですね。しかし、前回の質疑のときにもやり取りしましたけれども、御指摘の被収容者について、複数の医師の診察を適時に受けさせた上、その診察結果に従った医療的対応を行っております。行っておるんです。

 今、次長から、医師の判断、医師の内的な判断についての御質問をいただいたときに、それは答えられないというふうに申し上げたわけですけれども、それは、入管としては、複数の医師の診察を適時に受けさせた上、その診察結果に従った医療的対応を行っているということを申し上げたいと存じます。

鎌田委員 引き続きこれは追及させていただきます。

 資料二を御覧ください。これの質問で最後になろうかと思います。

 私どもの部会で、入管庁に被収容者の移送、入管の移送について、移送の基準を示すように資料要求しました。出てきたものが今日の資料の二であります。

 大臣、この黒塗りの部分を明らかにして、ちゃんと移送の基準を、我々、この法務委員会に明らかにして、議論ができるように、私は必要だと思います。

 時間が来ましたので、大臣の御答弁をいただいて、そして、委員長に、この資料の開示について御検討いただきたく、お取り計らいいただきたく申し上げます。

古川国務大臣 御指摘の文書には被収容者の移送に関する詳細な基準等が記載されておりまして、情報公開法上の不開示情報が含まれております。このため、開示することは、全て開示することは困難であるということを御理解いただきたいと存じます。

鈴木委員長 今の件につきましては、理事会にて後刻協議いたします。

鎌田委員 終わります。

鈴木委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党、栃木県第四区の藤岡隆雄でございます。

 本日も、まず地元の皆様に感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩また関係各位に心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず冒頭、先日、鈴木庸介議員からの質疑に対しての、責任を持って受け入れる、そして、私も大臣に、いつまでにという話をさせていただきまして、極めて早急にという力強いお言葉をいただき、三月三日だと思いますが、岸田総理から、避難受入れの表明につながったということ、本当に古川大臣にこれは感謝を申し上げたいということを思います。

 そして、今日は、本当に大変多忙な中、まさに政権の中枢の中枢の中枢というのでしょうか、木原官房副長官、また鈴木貴子外務副大臣、鰐淵洋子文部科学政務官、いらっしゃっていただきまして、ありがとうございます。

 今日は、資料をお配りをさせていただいております。

 これは、私、昨日、在日ウクライナ特命全権大使のコルスンスキー大使のところにお邪魔をしてまいりました。そして、激励、さらには、避難民の受入れに関して何か御要望やまた御意見はございますかということを昨日お聞きをしてまいりました。

 大使の方から、外交官というふうに何か言うよりも、日本にいるウクライナの方の声も入った七つのアクションプランというのがあるということで、是非これを見ていただけないかという話をいただきましたので、今日はそれをお配りをさせていただいております。

 これは、今オンラインでの署名ということがされておりますが、その中の七つのアクションプランということになってございますので、是非御覧をいただければということを思います。

 それでは、質疑の方に入らせていただきたいと思いますが、まず最初に、在ウクライナの邦人保護の話からさせていただきたいと思います。

 国会での答弁などで、現在ウクライナにいらっしゃる邦人、八十名ぐらいになっているというお話をお聞きしておりますけれども、現状はこれはいかがなんでしょうか。外務副大臣の方からお願いしたいと思います。

鈴木副大臣 今、委員も御指摘されましたように、三月七日時点におきまして確認されているウクライナの在留邦人の人数でありますが、約八十人であります。

 なお、現時点までにそれらの邦人の皆様の生命そしてまた身体に被害が及んでいるとの情報には接していないことも付させていただきたいと思います。

藤岡委員 ありがとうございます。

 今、身体に危害がというような話もありました。少しそこはほっとしているところでございますが、現状、この中で、まだやはり退避できない理由を抱えていらっしゃるという方が当然いらっしゃると思います。

 そういう中で、やはり、夫又は配偶者の方がウクライナ人の方、あるいは生活基盤を抱えられている方、本当にいろいろな事情を抱えていて、なかなか退避できない理由を抱えていらっしゃる方というのは当然いらっしゃると思います。

 ただ、このロシアの侵略の現状を見ておりまして、もちろん無理やりということではない、いろいろな難しい事情を抱えていらっしゃると思います、しかし、事ここに至って、もしも退避される、退避の御希望があるのであれば、生活の基盤やいろいろな不安も抱えていらっしゃっていて、全てをひょっとしたらなくしてしまう方もいらっしゃるかもしれない。これは、政府として、生活支援も含めて支えるから、もし帰りたくなったらまたすぐ帰れるように支援するからという温かい言葉もかけて対応する時期なのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

鈴木副大臣 在ウクライナ大使館でありますけれども、一番在留邦人の皆さんと身近なという立場であります。大使館からも、まさに館員総出で、お一人お一人の皆様に直接、電話で出国自体を働きかけもさせてきていただいているところであります。

 加えて、連日、領事メールもそれぞれの方に発出もさせていただき、出国先の入国要件等の情報提供を含み、様々な形で情報提供を行い、そしてまた退避の支援もさせてきていただいているところであります。

 また、在留邦人の皆さん方から、それぞれの、まさに委員御指摘のように、個別の背景、御事情もあると思っております。そういった個別の御相談についても、大使館館員総出で対応させていただいております。

 なお、ウクライナの在留邦人の皆さんでありますが、陸路でポーランドへ出国を支援するべく、リビウ市に臨時の事務所も開設、そしてまた、ウクライナから実際に退避してきた邦人の皆さんの受入れ支援、これをするために、ポーランドのジェシュフ市というところにも、加えて臨時の事務所も開設をさせていただいているところであります。

 ウクライナの在留邦人の皆さんの安全確保、出国支援には最大限、今も取組をさせていただいておりまして、委員御指摘のように、個別の事案というものにもしっかりと寄り添って対応させていただいているところであります。

 引き続き、最大限の配慮とともに、全面的に支援をさせていただきたいと思います。

藤岡委員 現場の外交官の皆さん、大変な状況の中で邦人の保護に当たられていることに関して、本当に心からこれは敬意を表したいと思います。

 ただ一点、今ちょっと外務副大臣の答弁の中で、どうなんでしょうかね、これ。生活支援まで含めてとか、いろいろな事情があると思います、踏み込んで、当然、一時的に避難されて、もしあれだったらウクライナにすぐ帰りたいという方もいらっしゃると思うんですけれども、こういうふうな生活支援まで含めて温かく手厚くお声がけをするということはいかがなんでしょうか。

鈴木副大臣 在留の皆さんの安心、安全の確保、そして何よりも保護というのは、そもそも我々の責務である、このようにも認識をしております。ましてや、今般のロシアによる侵略という極めて異例といいますか異常の事態におきまして、在留邦人の皆さんの不安というものはまさに筆舌に、耐え難いといいますか、言葉にするのも難しいものがある、このようにも承知をしております。まさに現地の大使館を挙げて、まさに昼夜問わず、個別の皆さんの要請ベースでの御支援というものを現状もさせていただいております。

 この点に関しましては、引き続き、皆さんの要請、そしてまた御不安、相談に合わせて、生活支援にも関連しての御質問も寄せていただいている場合には、しっかりと受け止めさせていただいているところであります。

藤岡委員 今、これから避難民の受入れの話もさせていただきます。まずウクライナにいらっしゃる日本人の方も、事実上避難というふうな感じの方もその事情によってはいらっしゃるようにも思うんですね。その際、やはり生活支援とかこういうところまで先も踏み込んで対応するときが来ているのではないかということを思いますので、是非これはよろしくお願いいたします。

 さて、続きまして、ウクライナからの避難民の受入れに関しての質疑をさせていただきたいと思います。

 昨日、古川大臣は参議院の法務委員会で、今、岸田総理が表明されてから八名受入れをされたということを御答弁されているかと思います。八名、これは実際、その御親族、いわゆる知人が日本にいらっしゃる方ということだと思いますけれども、内訳といいますか、言える範囲でちょっと教えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

西山政府参考人 まず、昨日、大臣が答弁されました、三月八日までの八人についてでございますけれども、その退避された方々は、いずれも日本人又は在日ウクライナ人の親族であると承知をしています。

藤岡委員 親族ということで、それ以上はなかなか踏み込んで、じゃ、今、知人という方はいらっしゃらないことで、まず、よろしいんでしょうか、ちょっと確認させてください。知人を頼ってという方はいらっしゃらないんでしょうか。

西山政府参考人 いずれも親族であるというふうに承知をいたしております。

藤岡委員 親族を頼る場合でも、これ以上、個人の特定につながるようなことはお聞きしませんけれども、いろいろな事情があると思うんですよね、その親族、本当に近い親族、又は遠い親族って今いらっしゃると思うんですけれども。避難民の受入れということを既にされているということであれば、生活支援というのが当然必要な場合が出てくると思うんですけれども、大臣、これはもう生活支援されるということでいいんでしょうか。是非よろしくお願いします。

古川国務大臣 生活支援など、幅広い分野にわたって政府全体としての後押しが必要だろうと思っておりますし、そのための検討を政府全体で進めていかなければならないというふうに思っております。

 引き続き、政府全体での検討を踏まえて、この問題に向き合っていきたいと思っております。

藤岡委員 本当に大臣らしくないといいますか、政府全体と。できれば、生活支援するというところをいよいよ御決断をしていただく時期なのかなということも思うんですよね。

 実際、EUなどは、非常に手厚い支援、保護ということを既にされていると思います。我が国において本当に連帯を示す、積極的に受け入れるということであれば、もちろん言葉の壁もある、もちろん距離的なものもある、その中で、既にEUなども手厚いことをやっている中において、我が国が本当に連帯をする、国際社会に貢献をするということであれば、やはり早期に決断をして、ある程度、もっと大胆にやっていくんだというところを、もちろん規模の問題は最終的にまた議論するところはあると思います、やっていかなければいけないというふうに私は思います、この時期において。

 そこで、先日、報道で、木原官房副長官から法務省にこの受入れに関して検討加速を指示されたという報道がございますけれども、これは、官房長官、事実関係と指示内容、いかがでしょうか。

木原内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 今、藤岡委員から御指摘いただきました報道、この内容については承知をしてございますが、これは政府部内のやり取りでございます。そうしたやり取りに関する個別の報道内容についてはお答えすることは差し控えたい、このように存じます。

藤岡委員 検討を早くということはおっしゃられていないんでしょうか。

木原内閣官房副長官 繰り返しになりますけれども、政府部内でのやり取りに関する個別の報道内容についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、官房副長官として、常日頃、必要に応じて、各府省の大臣を含めて意思疎通を図っているところでありますので、引き続きしっかりと連携を取ってまいりたい、このように思っております。

藤岡委員 古川法務大臣、これは実際、どういう指示をいただいたんでしょうか。

古川国務大臣 今副長官からもありましたように、政府部内でのやり取りの詳細については、つまびらかにするのは差し控えておきます。

 しかし、かねてより申し上げておりますとおり、ウクライナからの避難してこられる方々に対しては、政府を挙げて積極的に、柔軟に、適切に対応していくんだというその方針には変わりはありません。

 そのために、政府全体でというのは、これは政府全体で一丸とならなきゃできないことなわけでございます。岸田総理の明確なリーダーシップの下に政府が一丸となって、そしてその下に、私ども法務省としても、例えば在留資格の問題等もありますね、こういうことを含めて可能な限りの努力をしていくということを私は申し上げております。

藤岡委員 ありがとうございます。

 そこで、私もいろいろなレクを受けていて、当然、現場の職員の方は一生懸命やられて、本当にいろいろなことを教えていただいております。ただ、例えばこういう問題はどうなんだろうといろいろ話をすると、いや、まだ政府部内で受け止めるところというのがちょっとはっきりしないという話も多く聞いております。これは、避難民の受入れに関して、司令塔というのは一体どういうふうな形になっているのか。

 ある意味、よく古川大臣も、関係省庁とよく連携をしてということになっておりますが、当然、今おっしゃったように政府全体、これは、生活支援や就労支援や日本語の習得支援、いろいろなことを含めますと、確かに関係省庁にまたがるような話だと思います。

 これは本当に古川大臣が責任を持って、政府のある意味司令塔としてやってくださるということでよろしいんでしょうか。どうでしょうか。

古川国務大臣 法務省として、例えば、在留資格、これは御本人がいろいろな希望がありますから、働きたいとかいろいろなことがあるでしょう、そういうことに見合った在留資格を付与するというようなことを含めて、私は、法務大臣の所掌として可能な限りの努力をいたすことはもう申し上げているとおりです。

 政府全体として取り組むに当たっては、やはり法務大臣がというわけにはそれはなりません。現在のところ、実態上、今日副長官も見えていますけれども、内閣官房において指揮を執っておられる、具体的な調整の、そういう状況であるということは申し上げられると思います。

藤岡委員 ありがとうございます。

 今、法務省、いろいろと、所掌の範囲もあるということもありました。よく内閣官房でいろいろな準備室をつくられたりとかして、政府全体で取り組む場合にされていると思います。これは内閣官房が司令塔ということでよろしいでしょうか。

木原内閣官房副長官 まず、先ほど藤岡委員から、非常に重要なお言葉、連帯という言葉がございました。私どもも、この局面に応じてウクライナの人々との連帯をしっかり示していく、非常に重要だと、委員と同じ思いであります。

 その上で、法務大臣からは、積極的、柔軟に、適切にしっかり対応していく、こういうことであります。そして、法務大臣から、まさに政府全体として対応していく、こういうことでありましたが、こうしたことも踏まえて、内閣官房においても、出入国在留管理庁、外務省等の関係省庁と連携をしながら、情報共有を図るとともに、受入れに当たっての対応を検討する、必要な調整を、今も図っているところでありまして、今後とも政府全体としてしっかり進めてまいりたい、このように思います。

藤岡委員 本当に早急にこれは結論を出していって、やはり国際社会に訴えていく必要があると思うんですが。

 今少し分かりづらかったんですが、内閣官房が責任を持ってこれは進めるということでよろしいんでしょうか。そこをもう一回お願いします。

木原内閣官房副長官 政府全体として対応すると申し上げております。

 その上で、内閣官房として、情報共有を図りながら、そして、各省庁と連携をし、必要な調整を図って、内閣官房としてもしっかり取り組んでまいりたい、こういう趣旨でございます。

 いずれにしても、しっかりやらせていただきます。

藤岡委員 ちょっとまだはっきりしないところはありましたけれども、いずれにしても、本当に速やかに、極めて早急にまさにこれは行っていただきたいので、何か、責任のなすりつけ合いじゃなくて、あの省庁この省庁と縦割りになってということがないように是非お願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。古川大臣、是非よろしくお願いします。

 続きまして、避難民の受入れ、続けていきたいと思うんですけれども、私も昨日、コルスンスキー大使のところにお目にかかって、いろいろ話を聞いてきました。

 古川大臣、大使に直接会ってお話を聞かれているんでしょうか。教えてください。

古川国務大臣 在日のウクライナ大使ですね、近々面会するような調整が行われております。まだ確定的なことは申し上げられません。

藤岡委員 ありがとうございます。

 実は、私、昨日お目にかかったときに、外務大臣や経済産業大臣や財務大臣やという話はありましたけれども、まだちょっと古川大臣と直接話しているような感じじゃなかったものですから、じゃ、私、この法務委員会の場で話してきますということも申し上げてきました。

 古川大臣、是非、こういう時期です、すごく大使もいろいろな思いを持たれています、直接お話を聞いていただく、やっていただくということでよろしいでしょうか。

古川国務大臣 私はいつでもその用意がございます。

藤岡委員 ありがとうございます。古川大臣、是非お願いしたいと思います。

 鈴木外務副大臣にもちょっとお聞きしたいんですけれども、大使に直接会って、このウクライナの関係、いろいろな要望を直接お聞きしていただいているでしょうか。

鈴木副大臣 ウクライナ大使また大使館の皆様とは、それぞれのレベルでしっかりと連携を連日させていただいております。

 私も、先週でありますが、大使と直接お会いをさせていただきまして、大変幅広く話をさせていただいたところであります。その姿勢は今後も変わるものではありません。

 外務省として、また、私、副大臣としても、大使を始め、まさにウクライナ政府、そして何よりもウクライナの皆様としっかりと連帯を示してまいりたいと思います。

藤岡委員 大使館の方にも、お邪魔をされて、お伺いしたということはあるんでしょうか。

鈴木副大臣 私自身が大使館の方にお邪魔をしたということはございません。

 しかしながら、今まさに、大使館も、そしてまた大使も、大変、経験をしたことのない状況下において、昼夜分かたずの御奮闘をされているところであります。大使としっかりと日々心合わせをさせていただきながら、適切に対応させていただいております。

藤岡委員 こういう状況でございます。是非、手厚く大使館の方もフォローして、やはり政府として連帯を示していくということが必要だと思いますので、お忙しいと思いますけれども、大使館の方も訪問して、本当に連帯を示していただきたいなということを申し上げておきたいなと思います。

 さて、続きまして、この避難民の受入れに関して具体的なところに行きたいと思うんですけれども、これはUNHCRからのお話でありますと、二百万人を超えるというふうな話が、今、避難民の状況は出ていると思います。この二百万人のうち、ポーランドに非常に多くの、百二十万人でしたかね、こういうような感じの避難民の方がいらっしゃるということも出ております。

 ポーランドにおける日本の大使館において避難の相談があった場合にどういうふうな対応をしていくのかというところ、これは極めて重要だと思います。ここでどういう話をするかによって、日本に避難をするのかしないのかということもあると思います、相談があったときに。

 これは現状はどういう対応になっていらっしゃるのでしょうか。

鈴木副大臣 今委員から、ポーランド大使館、ポーランドへというお話もありましたが、現実問題として、ウクライナから、ポーランド始め様々な第三国に避難をされていらっしゃるところであります。

 ウクライナの皆さんとのまさに連帯を示す上では、こういった第三国に避難された皆様への支援というもの、そしてまた我が国への受入れも含めて、しっかりと対応を取っていかなきゃならない、このように思っております。

藤岡委員 今、ポーランドなど、いろいろなほかの国で避難民の方から相談がある場合に、生活支援も含めて、いわゆる就労などいろいろな支援、ビザの問題、いろいろなことを含めてきちっと話ができないと、日本に避難するということの判断にならないと思うんですね。こういうことも考えて、今政府で、この避難民の受入れの在り方について、やはり結論を早く、早急に示していかないといけないと思うんですね。

 ちょっとまだ第三国定住の受入れの話もあるんですが、先に、避難民の子供の方、避難されてきて、子供の方の教育機会、こういうものもしっかり確保していかないといけないと思います。もちろん、日本の中で外国の方が受け入れられたら、義務教育と同じように、義務教育期間について無償で受けられるということは昨日もお聞きしております。

 ただ、それに加えて、子供さんの日本語教育など、学校におけるものを含めまして、手厚く支援をやはりしていくべきだと思うんですけれども、鰐淵政務官、是非お願いしたいと思います。

鰐淵大臣政務官 お答えいたします。

 今後、ウクライナ避難民の受入れが行われた場合、避難してきた子供たちに適切な教育機会を確保することは極めて重要であると認識をしております。

 受入れの詳細が見通せない状況ですので、現時点では一般論でのお答えになりますが、我が国では、先ほど委員からもお話がございました、外国人の保護者が子供を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には、国際人権規約等も踏まえまして、日本人児童生徒と同様に無償で受け入れております。その上で、こうした児童生徒を受け入れている学校の多くでは、特別の教育課程を編成し、日本語指導を実施しております。

 文部科学省としましては、日本語指導に必要な教員定数の着実な改善に取り組んでおります。また、日本語指導補助者、母語支援員等の外部人材の配置など、外国人児童生徒へのきめ細かな支援に取り組む自治体を補助事業で支援をしております。

 いずれにしましても、文部科学省としては、関係省庁及び受入れ自治体等と緊密に連携協力しつつ、避難民の子供たちの就学機会の確保や、きめ細かな支援に取り組んでまいります。

藤岡委員 本当に、避難される子供の方の教育の支援、是非これをお願いしたいと思います。

 そこで、避難民の受入れに関して、いわゆる難民なのかとか、難民ではないがどういう形なのかという、この受入れの在り方というのが昨日も議論されているということを思います。

 難民条約上の難民に該当するかというところで、日本が非常に限定的に解しているというところの課題があるんですけれども、まず、難民申請から認定などの結果が出るまでの時間、今これはどういうふうになっているのか、是非お願いします。

西山政府参考人 お答えの前に、先ほど、ウクライナから退避された方八人を、三月八日までというふうに御答弁差し上げましたけれども、三月七日の誤りでございます。訂正させていただきます。

 その上で、今のお尋ねにつきましてですが、令和二年における難民認定申請の平均処理期間は約二十五・四か月となっております。

藤岡委員 二十五・四か月ですと、二年を超えるということでございますから、難民の定義に該当するかどうかに加えて、この処理期間ということを考えますと、とても避難民の受入れに、この制度でどうなのかということが当然出てくるということだとは思います。

 そういう中で、避難民の受入れに関して、今政府も、いわゆる難民条約上の難民とは別に、ミャンマーからの避難民、例えばタイやマレーシアに行かれた、そこから更に日本に受け入れるということで、第三国定住の難民の受入れということを閣議了解でかつてやられていると思うんですね。

 いわゆる条約上の難民ではない、閣議了解でいいのかどうかは一旦おいておきますけれども、第三国定住による難民の受入れ、これも政府は難民というふうに話していると思うんですけれども、この制度の中で、いわゆるUNHCRからのいろいろな、推薦というか、何かそういう中で受け入れるということで、年間に六十人とか、そういう数字も具体的に出していると思うんです。これを少し応用するとか、拡充するとか、UNHCR、そこで時間がかかってしまうのであれば、何か別の枠組みもありますけれども、この第三国定住の受入れのやり方を工夫、応用をして、避難民の受入れ、第三国定住の受入れは難民と同様に生活支援やいろいろな支援が入ることになっているというふうに思います、これを拡充、応用して、受入れを早急にできないんでしょうか。

古川国務大臣 いわゆる難民認定というプロセスを経る手続の場合には、どうしても幅は狭くなりがちであるというようなことから、委員の御懸念は、やはりここは、速やかに幅広く受け入れるためには新たな取組が必要ではないか、制度を工夫する必要があるのではないか、そういう御指摘だと思います。

 今、第三国定住ということをお触れいただきましたけれども、現在の枠組み、第三国定住の枠組みでは、これは、出身国から避難をし、アジア地域に一時滞在している者が対象となっておりますことから、この枠組みでは、今回のウクライナからの避難民に対しては、必ずしもその対象にできるというふうには限らないという状況があります。だから、ぴったりこないわけですね。

 ですから、その意味では、じゃ、これを少し拡充するなりして対応できないかということについては、その枠組みの拡充をすることの当否を含めて、これは政府全体で考えていかなきゃならないことだと思います。

 また、この第三国定住に限らず、かねて申し上げておりますとおり、必ずしも難民認定、難民申請をしてそれで認定されるというそのプロセスに限らなくても、従来申し上げておりますとおり、人道上の、人道的な観点から、そこは幅広く、臨機応変に受け入れる対応をしてまいりますので、これは。

 そのような様々なことが考えられると思いますけれども、しかし、委員が御指摘になっておりますとおり、この際、新たな枠組みが要るのではないかというのは、十分検討に値することだと受け止めています。

藤岡委員 大臣、本当に前向きに御答弁いただいたことをまず感謝を申し上げたいと思います。

 ただ、やはり事務方の皆さん、これはどうしてもなかなか言えないと思います。こういう話をしても、当然、いや、これはアジアの範囲になっています、なかなかこれは使えません、それは事務方だとどうしてもそういうふうな答弁を大臣に示さざるを得ないというのは、私はそこはよく分かります。

 だからこそ、政治決断でやはり、アジアに絞っているんだったら、それを今回広げられないのか、そして、まさにこれは難民と同様の支援のプログラムがございますから、これを応用する形、拡充する形というのを活用していくということが速やかないわゆる避難民の受入れということにつながるんだということを私は感じます。これはやはり政治決断だと思います。

 大臣、このプログラムの応用の形、そして、今いろいろな、それにとどまらず人道上のとおっしゃいましたけれども、在留許可ということにとどまってはいけないと思うんです。そこにどういう支援を組み合わせていくかということが最大のポイントだと私は思います。

 そのときに、既に第三国定住の受入れというこのスキームがある中で、これをうまく応用するということで早急な決断というのを考えられると思うんですけれども、もう一度、是非お願いします。

古川国務大臣 委員が先ほど来御指摘いただいておりますとおり、今回のこのウクライナにおける事態に我が国は全力を挙げて向き合う必要がございます。

 そのために効果的な対策を打つ必要があります。そして、その対策というのは、独り法務省のみができるものではありません。ですから、政府全体、政府が一丸となって進めていく必要があります。そのためにも、ここはしっかり検討するべき点はありますからね、そういうことをきちっと検討し、精査した上で、早期に結論を出して、そしてその上で実行に移していくということでございます。

藤岡委員 では、最後にお伺いしたいと思いますが……

鈴木委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、御協力をよろしくお願いします。

藤岡委員 はい、済みません。

 では、質疑を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。

 早速質疑に入らせていただきます。

 先日、私の地元長崎で、平和公園で、今回のロシアによるウクライナへの武力侵攻に対する抗議のための集会が行われていました。長崎を最後の被爆地にする、その決意で長年平和運動に取り組んでこられている多くの皆さんにとって、プーチン大統領の核を威嚇で使う発言は断じて許せない、改めてその思いを現場の皆さんと一緒に強くしたところでした。

 そのような混乱状態の中に、安倍元総理による核の共有論、突如持ち出されました。長崎や広島で多くの犠牲があり、多くの悲惨な、非人道的な、たくさんの命が奪われた、こういったことは決して繰り返してはならない、その決意で、この国の非核三原則、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませない、この思いをないがしろにするような暴論ではないでしょうか。

 閣僚のお一人として、また一政治家として、古川大臣にお聞きいたします。核の共有論への御見解、いかがでしょうか。

古川国務大臣 岸田総理も答弁の中で申し上げているとおり、非核三原則を堅持するというのは我が国の立場である、したがって核の共有論は認められないということでございます。私も当然この認識を共有しております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。古川大臣から力強く、良心的な、そして慎重な御発言をいただきました。ありがとうございます。

 その上で本題の方に入っていきたいと思います。

 先ほど来、鎌田議員からもありました、三月六日、名古屋入管でお亡くなりになったウィシュマさん、一年が経過しました。本当に無念であられたウィシュマさんに対し、改めて哀悼の意をささげます。そして、二度とこのような悲しい事件が起こらぬよう、法務委員会に所属する国会議員の一人として、入管行政の制度改革に全力を尽くすことをウィシュマさんの魂に誓います。

 三月六日、ウィシュマさんの一周忌追悼集会が全国各地で行われました。夢や希望を抱きながら私たちの国に来られたウィシュマさん。大臣にお聞きします。なぜ三十二歳という若さでその命を失ってしまわれたのでしょうか。大臣のお考えを改めてお聞かせください。

古川国務大臣 亡くなられてから、三月六日で一年を迎えました。改めてウィシュマ・サンダマリさんに哀悼の誠をささげます。

 これは、二度とあってはならないという認識の下に、可能な限り客観的な資料に基づいて、弁護士や医師といった外部有識者の幅広い御意見、御指摘を受けながら事実を精査し、そして幅広く論点を指摘した、改善点を指摘した調査報告書が取りまとめられたところでございますから、ここで示された改善項目をしっかりと確実に実行していく、そして二度とこういうことが起きないように最善を尽くす、全力を挙げるということだと考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。大臣のその誠実な思い、すごく伝わってきます。

 しかし、残念ながら、法務省の最終報告書には全くその思いが伝わってきません。実際、なぜウィシュマさんが本当に命を失わなくてはいけなかったのか。報告書では医療体制の不備ということが指摘されているのですが、これは全くの筋違いの言い逃れではないか、そう指摘せざるを得ません。

 決して医療体制に問題があったわけではないし、その場に医師がいなかったことで命を失ったわけでもない。あえて言わせてください。瀕死の状態の方が、断末魔の、ああ、ううと助けを求めている方が目の前にいるにもかかわらず、救急車を呼ばない。電話一本で救えた命なんです。お医者さんの数が足りないとかそういうことで起こった事件ではない。

 入管庁全体に流れる、何があっても母国へ強制送還するという異様な空気感、不法滞在し退避命令に従わない外国人は悪であり、自分たちこそが正義だと決めつけ、入管庁の全職員が、人の命や人権よりも、その偏った使命感を優先しているその異常な組織文化そのものが原因ではないでしょうか。私はそのように考えますが、大臣、改めていかがでしょうか。

古川国務大臣 調査報告書、当然ながら、私、目を通しまして、いわゆるビデオも閲覧をいたしまして、やはり感じることは当然あります。

 率直に申し上げて、足らざるもの、何かが欠けているということは、これはもう直感的に感ずるところでありますから、それは改めていく。改めていくこと、改めるべきは改めるという誠実な態度をもって事に向き合うということ、それによって二度と同じようなことを起こさない、私はそれを改めて感じているところです。

山田(勝)委員 改めるべきは改めるという力強い御発言を前回もいただきました。その大臣の直感は本当にそのとおりだと僕自身も感じております。法務委員会の、あの映像を見た多くの国会議員の皆さんがそれを共有していることだと思います。

 その上で、やはり、調査報告書の問題を指摘させてください。

 体調不良を訴え、仮放免を望むウィシュマさんに対し、調査報告書の五十八ページによれば、「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要あり」、こういう衝撃的な内容が書いてあります。これこそ異様な組織文化の表れです。

 さらに、八十六ページ、再度申請します、ウィシュマさん。「仮放免されてこれら支援者の下で生活するようになれば、在留希望の意思がより強固になり、帰国の説得や送還の実現がより一層困難になるおそれがあると考えていた。」と報告書に書かれています。

 作成した入管庁の、法務省の皆さん御自身がよく理解されているのではないでしょうか、この異常さ。内容をしっかり見ると、強制送還させる意思が組織として働いていたことは明らかです。立場を分からせないといけない、仮放免になれば日本に残りたいと思ってしまう、こういった発言が実際に記録されています。

 身体的、精神的な苦痛により意思を変えさせる、これはまさに拷問そのものではないでしょうか。収容を拷問の手段として利用していることは、この報告書からも明らかです。この異様な組織文化こそが、入管に収容され続けている多くの外国人の皆さんを、今なお苦しめ続け、そして、たくさんの方々の貴い命を奪い続けています。そこに原因があることを強く御指摘させていただきます。

 そのような中、私自身も、なぜこんな、常識では計り知れないような、異様なまでの偏った正義感なのか、調べてみました。すると、驚くべき資料が出てきました。時間がなかったので今回共有はできなかったんですが、この資料、御紹介させていただきます。

 当時の入管局長の名前で、平成二十八年四月七日付で各入国センター長宛てに出された文書です。「安全・安心な社会の実現のための取組について」という通知が出されています。この文書がそのものです。その中に驚くべき内容がたくさん書かれていたんですが、一部紹介させてください。

 送還忌避者の発生を抑止する適切な処遇及び積極的な送還執行について、様々な工夫や新たな手法を取り入れるなど、我が国社会に不安を与える外国人の効率的、効果的な排除に、具体的かつ積極的に取り組んでいくことと書かれています。

 驚くべき内容です。要約すると、法務省として、入管庁として、あらゆる手段を使い、何が何でも帰国させないといけない、そういう趣旨の話。そして、我が国社会に不安を与える外国人の排除と。排除とは一体何でしょうか。これは大臣が所信で述べられていた共生という言葉とはほど遠い概念ではないでしょうか。

 大臣、この文書の存在、御存じだったでしょうか。

古川国務大臣 その文書は私自身は確認をしておりませんので、その文書そのものについては、コメントは今の時点では差し控えをさせていただきますが、私は法務大臣として出入国在留管理に対して責任を負っております。これは、所信でも申し上げましたとおり、外国人をルールにのっとって受け入れて、そして適切に支援をし、そしてルールに違反する者には厳正に対応するということです。それをもって私の責任を全うすることができるというふうに考えております。

 いろいろな事情で日本から退去したくないという、いろいろな事情の方もおられますよ。そういう方を含めて、その希望に任せるままであったら、私は私としての職責を全うできないんです。こういう事情も御理解を賜りたいと思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。もちろん、不法滞在、ルールを守ってもらわなかった外国人の方に、まずは一時的に母国へ帰ってもらう、これは大切なことです。

 しかし、分かっていただきたいのは、多くの外国人の皆さんは、そうやって、日本の入管行政のルールを守り、母国に帰っていらっしゃいますし、支援者の皆さんも、難民認定が難しいという場合には説得をして、母国に帰るように説得をされている支援者の皆さんも多くいらっしゃいます。

 私たちが問題視しているのは、母国に帰れない、帰りたくても帰れない事情があるにもかかわらず、収容を長期余儀なくされている、そして入管庁は排除という言葉を使っている、こういう組織文化を改めていかないといけないと強く申し上げたいと思います。

 その上で、この異様な組織文化を裏づける貴重な資料なんですが、これは是非、次回、皆さんにも共有させてもらった上で、委員会の皆さんにもしっかり議論に参加していただきたいと思っております。

 お医者さんを増やしたから再発防止になる、もしそのようなことを大臣や法務省が考えているのならば、是非とも考え方を改めてもらいたいと思います。法改正も含め、入管行政の抜本的な制度改革を求めます。

 続いてのテーマです。

 この悲惨な事件はあくまで氷山の一角、第二のウィシュマさんを出してはならない、日本の入管を変えよう、ウィシュマさんやウィシュマさんの御遺族、そして多くの国民の皆様の決意です。大村入管のネパール人男性、大腿骨頭壊死症により、今なお激痛で夜も眠れない、食欲不振になられ、寝たきりの状態です。私も直接お会いしました。御本人から早く手術をしてほしいという言葉もいただきました。しかし、現在は介護施設に入所されています。

 この大村に今いらっしゃるネパール人男性の状況についてなんですが、先ほど鎌田議員の質疑に対して驚くべき政府答弁があったので、改めてこの内容について確認をさせていただきたいと思います。

 鎌田議員から指摘があった大村の入管センターの診療室から長崎大学病院への紹介状、これは、実際に私たち、資料として持っています。ここに何と書いてあったか。本センターは、本センターとは入管のことですよ、大村入管のことですよ、大村入管は、原則的には根治治療を行わないこととしていますが、保存的加療が可能かどうかを含め、加療方針につき御意見をお願いしますと、入管のお医者さんから長崎大学のお医者さんへこういうメッセージが残っているんです、事実として。

 大臣も全然、鎌田議員の質疑に対してはっきりと明確な答えがなかったんですけれども、西山次長が答える立場にないとおっしゃいました。全くもって意味が分かりません。入管のお医者さんから長崎大学のお医者さんへ出された紹介状です。

 じゃ、答える立場にないと言われているのであれば、まず、この入管センターのお医者さんと法務省なり入管庁との契約内容について教えてください。

西山政府参考人 御指摘の大村センターの医師でございますけれども、非常勤の職員でございます。(山田(勝)委員「何ですか」と呼ぶ)非常勤の職員でございます。

山田(勝)委員 今、職員という、はっきりとお答えになられましたね。雇用関係を認められた、まさにその答弁があったと言わざるを得ません。

 改めて、大臣、今、雇用関係にある医師が、当入管センターは根治治療は行わないものとしていますがと、このネパール人男性に対して。そう紹介状を出しています。大臣が、先週の委員会でも、法務省は、入管庁は根治治療を行わないということはないんだと我々に答えていただきました。矛盾するのではないでしょうか。

西山政府参考人 先ほど、私、非常勤の職員というふうに通常の用語として申し上げましたけれども、契約関係としては委託契約になってございます。

山田(勝)委員 委託契約であれ、職員という位置づけであれ、入管庁の意図が明らかに働いている、それは間違いありません。

 大臣に聞いています。入管庁の、委託でもいいです、入管庁の中のお医者さんが根治治療を行わないものとしているということと、大臣が答弁で述べられた、法務省や入管庁は根治治療は行わないことはないんだと述べられたことの矛盾点についてお答えください。

古川国務大臣 入管の収容施設におきましては、体調不良を訴える被収容者に対しては、訴えの内容や症状等に応じて、必要な診療、治療を適時適切に受けさせています。

 今の、大村のこの方の件につきましても、複数の医師の診察を適時に受けさせた上、その診察結果に従った医療的対応を行っています。例外なく、このような方針が我々入管の収容施設における方針です。

 したがいまして、根治治療は行わないとか行うとかということを定めた規定はありません。今申し上げましたように、医師の診察や治療、その中で、結果的に根治するものもあるだろうし、しないものもあるだろうし、あるいは途中で本国にお帰りになるというケースもあるでしょうし、それも状況は様々です。

 しかし、あくまでも、入管の施設におきましては、申しましたように、体調不良を訴える被収容者に対しては、訴えの内容や症状等に応じて、必要な診療、治療を適時適切に受けさせる、これが入管の施設における方針でございます。

山田(勝)委員 根治治療を行わないという明確な資料を私たちは持っているんです。

 大臣、ちょっと質問に答えていただきたいんですけれども、大臣は、根治治療を、法務省として、入管庁として行わないことはないんだというのであれば、この医師の判断が入管庁の判断と違う、そういうことでいいんですか。

古川国務大臣 この件につきましては、これは訴訟係属中の案件でございますから、つぶさにお答えすることはできません。

山田(勝)委員 いつもそうやって逃げられるなという印象です。法務省の職員さんと話をしていてもそういった回答になってきます、都合が悪くなると。このことは私たちも追及を緩める気は到底ないですし、おかしいということは大臣も気づかれていると思うんですよね。

 私たちは医師ではないので、このネパール人男性が手術が必要だなと思っていますし、保存治療よりも根治治療だなと思っているんですが、この数年前の時点で、仮にお医者さんが保存治療と判断されたとしても、それは医師の判断だと思います。

 しかし、問題なのは、入管のお医者さんが長崎大学のお医者さんに対して、保存治療を行わないこととしていると。余計じゃないですか。(発言する者あり)ああ、ごめんなさい。根治治療を行わないとしているという紹介状が余計なメッセージなんですよ。理不尽、違和感しかないメッセージなんです。

 さらの状態で、ニュートラルな状態で、長崎大学のお医者さんがそのネパール人男性の症状を見て、根治治療なのか保存治療なのかを判断されるなら分かります。でも、受渡しの段階で、なぜ、根治治療を行わないものとしているというこのメッセージがなくてはならなかったのか。

 これはこの問題の本当に本質的なところになりますので、訴訟中とかで逃げずに、是非、この問題、この当時のお医者さんにも確認をいただきたいと思います。なぜそういう方針を出されたのか。法務省と、この国会での答弁と、相違があるではないですか。是非調べてください。強くお願いいたします。大臣、お答えください。

古川国務大臣 これは、先ほど申し上げましたとおり、訴訟係属中の事柄であります。詳細についてはお答えを差し控えます。

山田(勝)委員 訴訟係属中という言葉で本当に済まされる問題ではないので、改めてこれは、これ以上やり取りしても進展がないとは思いますが、改めて強く求めていきたいと思います。

 その上で、このネパール人男性、もう前回もお伝えしたとおり、一か月以上前に私たちが大村の入管所長に求めて以来、今なお介護施設でのリハビリが継続されているという状況です。なぜ、このネパール人男性の手術、御本人も望まれているのに、二年以上も経過して、今なお手術が行われないのでしょうか。お答えください。

西山政府参考人 まず、一般論として、体調不良を訴える被収容者に対しては、訴えの内容や症状等に応じ、必要な診療、治療を適時適切に受けさせているところでございまして、御指摘の被収容者につきましても、複数の医師の診察を適時に受けさせた上、その診察結果に従った医療的対応を行っているところでございます。

山田(勝)委員 適切な医療を受けさせているというお話をいただくんですけれども、なぜ手術に踏み切らないのかというのが、私たち、本当に強く疑念を抱いております。

 その上で、この問題、私たちがなぜこのネパール人男性の問題を取り上げているのか。それは、第二のウィシュマさんの危機があるからです。当たり前に適切な医療を当時受けさせていれば、このネパール人男性は、弁護士とともに入管庁を裁判で訴えることもなかったんです。私たちもこのように国会で取り上げることもなかった。

 このネパール人男性の、個人情報等々、法務省は言われますが、プライバシーを奪っているのはむしろ入管庁そのものであることにまだお気づきにならないのでしょうか。一体、彼の何を守ると言われているのか。

 私は、直接御本人に伺いました。日本のメディアに何かメッセージしたいことはないか、記者会見の前に尋ねました。すると、彼はこう答えてくれました。二年以上放置され続けている、頼んでも手術を受けさせてもらえない、歩けるようになりたい。御本人は、広くこの問題を私たち日本人に知ってもらいたい、それが御本人の意思です。病院に行きたい、私死ぬ、点滴打ちたい、こう訴えて亡くなってしまったウィシュマさんとまるで同じじゃないですか。

 ビデオ開示も含め、個人情報とか訴訟中とか、そういう盾を都合よく使い、問題の本質から逃げようとする姿勢に、多くの国民の皆さんはもう既に気づいているし、あきれています。そして、怒りの感情で、三月六日もそうです、各地でデモが行われています。そういった答弁で済まされると思っているのは入管庁の職員の皆さんだけです。

 一般論ではなく、大村入管で収容中の、大腿骨頭壊死になり、今もなお介護施設で激痛に苦しむネパール人男性がなぜ手術を受けられないのかということを再三聞いているんです。是非答えてください。

西山政府参考人 繰り返しになりますが、医師の診察結果に基づいて適切な医療的対応を行っているということでございます。

山田(勝)委員 それが本当に適切なのかということを尋ねているんですが、ずれてしまいますね。

 そうしたら、代わりに、手術を受けさせない理由を私から述べさせていただきたいと思います。

 調べて、これも驚きました。

 ある入管庁の職員の方が、手術を求める支援団体の皆さんに対し、こういう発言がありました。手術費一千万円を超える、かなり高額になるため手術費を払うつもりはないと。この発言、事実でしょうか。

西山政府参考人 御指摘のような発言はしていないと報告を受けております。

山田(勝)委員 昨日も私、支援団体の皆さんの集会に参加して、この問題、直接ヒアリングしました。多くの支援団体の皆さんが、こういう趣旨の受け止めをしています。正確にこういう発言じゃなかったにしろ、多くの支援者の皆さんには、そういう法務省、入管庁の姿勢というのを受け取っています、お金の問題じゃないかと。

 そして、この支援団体の皆さんは、累計約六千万円も、民間団体がお金を集めて、寄附を募って、収容された外国人の方々の治療や生活保護、そういうこともなさっています。

 これに関連して、二月四日の予算委員会で、コロナの問題だったんですが、瀬戸参考人がこう発言されています。この現場に大臣もいらっしゃったかもしれませんが、紹介させていただきます。

 今日は、入管行政の話をするところじゃありませんから、それは触れませんけれども、具体的に、やはり生きているわけなんです、その人たちは。最低限のやはり生存については守っていただきたい。なぜ我々支援団体が医療費を出すんでしょうか。今、大村入管でネパールの方が、具体的に、足が壊死状態でいます。仮放免でいいから出してくれと言っています。でも、出してくれません。我々は、出していただいて、取りあえず、とにかく緊急対応なので、民間のところでお金を集めて、この壊死の問題については、手術とか、そういう問題についても費用を出すから出してくれという話をしています。切迫した状態を、是非、国会議員の皆さんにも認識をしていただきたい。このような瀬戸参考人の予算委員会での発言がありました。

 これの受け止めについて、大臣、お答えください。

鈴木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

山田(勝)委員 じゃ、次回以降、この問題、コストと捉えるのではなく、命を守る、最優先に命を考える入管行政であっていただきたい、そう強く願いまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君、人事局長徳岡治君、民事局長門田友昌君及び家庭局長手嶋あさみ君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、前川清成君。

前川委員 午前中の質疑の続きで、一つだけやり取りをさせていただきたいと思います。

 午前中、私からも、あるいは階委員からも紹介がありましたけれども、予備試験の合格率が二〇二〇年で四・二%。予備試験の合格者の司法試験合格率は九三・五%、法科大学院修了生の司法試験合格率は三四・六%、大きな違いがございます。

 ですから、私は、司法試験法にあるように、予備試験というのは法科大学院修了者と同等の学力を持っているかどうかの試験であるというのであれば、予備試験の合格者数を増やさなければならない、予備試験の合格率を上げなければならない、こういうふうに申し上げました。

 論理的には私の言うとおりだろうと思いますが、ところが、大臣の方から、いや、そうではなくて、法科大学院修了者の合格率を上げるんだ、こういうふうにおっしゃいました。これは具体的にどのようなことをおっしゃっているのか。

 法科大学院修了者の合格率を上げるとなると、方法は二つしかありません。法科大学院の入学者数を減らすか、司法試験の合格者を増やすか、どちらかしかないと思いますが、大臣はどのようなお考えで午前中発言なさったのか、御確認をさせていただきたいと思います。

古川国務大臣 司法試験の受験資格が設けられていなかった旧制度下におきましては、司法試験という点のみによる選抜の方法について様々な問題点が指摘をされました。これを克服するために、新たに法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度を導入した、こういう経緯であったと理解しておりますし、それは現在も、この考え方はひとしく重要だというふうに思っています。

 また、近年、法科大学院修了者については、いわゆる累積合格率が七割程度となってきておりまして、審議会意見書でも想定していた合格率に達しつつあるという状況です。

 一方、予備試験は、御指摘になりましたけれども、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由によって法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得のための道を確保するためのものでありまして、そのような予備試験の位置づけというのは現在も変わっていないというふうに考えております。

 しかし、平成二十七年の法曹養成制度改革推進会議決定が指摘するとおりに、予備試験受験者の半数近くを法科大学院生や大学生が占める上、予備試験合格者の多くが法科大学院在学中の者や大学在学中の者であり、しかも、その人数が予備試験合格者の約八割を占めるまでに年々増加しており、この予備試験制度創設の趣旨と現在の利用状況が乖離をしてきているということでございます。

 現在、平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定に基づいて、法科大学院の集中改革に取り組み、法曹資格取得までの時間的、経済的負担を軽減し、かつ予測可能性を高めることを内容とする法曹養成制度改革法が段階的に施行されているところです。御案内のとおりです。

 こうした改革を着実に進め、これまで予備試験ルートを選んでいた大学生等が法科大学院に進学することも併せ、法科大学院全体としての司法試験合格率と、司法試験合格、資格者の合格率との差異が解消されていくべきものと考えています。

 要するに、委員が、増やすか減らすかしかないじゃないかという、その目の前のことというよりは、時間的な、この改革の経緯の流れに沿って、その中で問題を解決していきたい、こういう趣旨で申し上げたものでございます。

前川委員 大臣、恐縮ですけれども、今長々お答えいただきましたけれども、私の質問には一向に答えていただいていないんじゃないですか。大臣は午前中、法科大学院修了者の合格率を上げるんだ、それによって、予備試験の合格者、予備試験に合格して司法試験に合格した人たちと同じ水準に持っていくんだ、こうおっしゃったんですよ。

 今のお話だったら、どういう方法で法科大学院修了者の合格率を上げるのかがお答えになっていないと思うんです。合格率ですから、受験者を減らすか、合格者を増やすか、どちらかしか方法はないはずです。

古川国務大臣 御指摘の懸念されていることの本質は、合格率に大きな差異があるということを、階委員も御指摘になっておられるし、前川委員もその点を問題視されているわけですね。

 それは、私も、先ほどの答弁でも申し上げましたとおり、両者の合格率というものは均衡するというのが望ましい姿であって、それが目指すべきところであるということでございます。

 そのときに、私が先ほどるる申し上げましたのは、法曹養成に係る制度の様々な今日までに至る取組を改めてお話をさせていただいたわけですけれども、そういう取組を通じて、法科大学院修了者が司法試験に合格する割合が結果的に上がっていくということを申し上げたわけでございます。

前川委員 今の御答弁が論理的に成り立っていないことは、賢明な大臣におかれては御自覚いただいていると思いますので、この予備試験の問題、またどこかの機会で議論させていただきたいと思いますので、是非大臣におかれても検討をお願いしたいと思います。

 ただ、旧司法試験当時、司法試験の本質というのは公平、平等、開放、こう言われておりました。誰だって受けられるし、平等だし、扱いは公平だと。しかし今、予備試験と法科大学院修了生とは全く公平ではない。これは司法試験の本質から大きく乖離しているということを指摘をさせていただきたいと思います。

 ちょっと、今日は予備試験の問題だけをできませんので、次の問題に移りたいと思います。

 最高裁の皆さんにおかれましては、午前中の質疑でお尋ねする予定が午後にずれ込んでしまいました、御迷惑をおかけいたしました。

 その上で、裁判官の数について、今十分なのかどうなのかということを少しだけ議論させていただきたいと思います。

 今回、判事補の定数を四十人減らします。その結果、来年の判事補の採用数、これも減るのではないかというふうに私は心配しています。かつて、司法試験の合格者が五百人だった当時、例えば一九九〇年、四十二期ですけれども、判事補の採用数は八十一名でした。四十三期は九十六名でした。五百人の時代におよそ百人判事補が採用されておりましたが、現在、千五百人、それにもかかわらず、二〇二〇年の判事補の数は六十一名です。合格者が三倍になったにもかかわらず、大ざっぱに言って判事補の数は半分に減っているんです。本当にこれで大丈夫ですか。裁判所の人的基盤が先細りしていくのではないかということを心配しています。

 その上で、今年の判事補の採用数としてはどれぐらいを見込んでいるのか、目標にしているのか、この点、お尋ねしたいと思います。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 次に判事補として採用されるのは七十四期の司法修習生ということになります。新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて令和二年の司法試験の実施時期が変更されたことに伴って、修習時期が例年に比べて後ろ倒しになっておりまして、判事補採用は今年の五月を予定しているところでございます。

 判事補採用を希望する司法修習生については、今後、下級裁判所裁判官指名諮問委員会において判事補に任命されるべき者として指名することの適否が審査される予定であるため、現時点では最終的な採用数はお答えできないところでございます。

 ただ、現時点において七十三名の司法修習生から採用願が出ているということでございます。

前川委員 先ほど、附帯決議の中で、審理期間が長期化している近年の状況云々という文章もありました。

 率直に申し上げて、審理期間が長期化するのは、裁判所あるいは裁判官の問題だけではないと私は思っています。当事者である弁護士が、代理人が、準備に時間がかかる。例えば、一か月単位で弁論準備を入れるんだけれども、弁護士の都合で、準備の都合で二月になってしまう、こういうことになれば審理期間は延びてしまうわけです。

 ですから、裁判官の数だけが審理期間の長期化、短期化の原因ではないとは思いますが、ただ、少し分かりやすい例として挙げさせていただきたいのは、民事訴訟法の二百五十一条です。判決の言渡しは口頭弁論終結の日から二か月以内にしなければならない、こういうふうに定めております。旧民訴法時代は一か月だったと思いますが、裁判官が全部この条文を守らないので、新法制定の際、これは司法制度改革以前ですけれども、二か月というふうに延長されました。

 私は、実感として申し上げて、この間、細々と弁護士をしながら糊口をしのいでまいりましたけれども、三月二十四日に、私、手持ち事件で二件、判決が予定されております。個別具体的なことは申し上げませんが、三月二十四日に判決言渡し予定なんですけれども、うち一件は、去年の十二月二日に弁論が終結しております。およそ四か月。もう一件は、一月六日に弁論が終結しております。

 ですから、裁判官も実は足らなくて、忙しくて、民事訴訟法を守りたくても守れない、そんな状況があるのではないか。それにもかかわらず、判事補の定数を減らす。将来的には裁判官、判事の数も減る。これで本当に大丈夫なんですかということを最高裁にお尋ねしたいと思います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 委員の方から民事訴訟法二百五十一条一項について御指摘がございました。今委員が御指摘された後にただし書がございまして、「ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない。」というのが続いておるところでございます。

 この二百五十一条一項ですけれども、これは、判決の言渡しは口頭弁論の終結の日から二か月以内とすることを原則としたものでございますけれども、事件が複雑困難であるときその他特別の事情があるときには例外的に二か月以上後に判決を言い渡すことを許容したものと解されております。

 多くの事件においては、この原則が意識されて、口頭弁論終結の日から二か月以内に判決を言い渡しているものと承知しておりますが、近年は複雑困難な民事訴訟事件が増加しているほか、事案によっては口頭弁論終結後に和解の協議を行うことなどもございますので、口頭弁論終結の日から二か月以内に判決が言渡しされない例もあるというふうに承知しております。

 個別の事件についての言及は差し控えますけれども、いずれにせよ、判決言渡しの期日の指定は、個々の事件において裁判官が適切にしているものと承知しております。

前川委員 今、民事訴訟法のただし書の議論をしたいと思って紹介したんじゃなくて、私が担当する事件だけ複雑困難なやつばかり集まるはずがないじゃないですか。

 でも、一般的にそういうのが目につくということは、やはり裁判官がなかなか忙しくて、事件が十分回っていないんじゃないのか。もちろん、裁判官の方も良心があって、やっつけ仕事でするわけにはいかないので、じっくり考えているので判決言渡し期日が先になる、こういうことであるならば、もっと最高裁の方も、司法試験の合格者は増えているわけだから、判事補の採用数も増やして、裁判官の数も増やす、そういう姿勢でもいいのではないのか、こういうふうに思っております。またこの点は御検討いただけたらと思います。

 それで、大臣、お戻りになりましたので、ちょっと話を変えまして、赤木俊夫さんの裁判、亡くなられた赤木俊夫さんの裁判を国が認諾した件について取り上げさせていただきたいと思います。

 森友学園事件に関してお亡くなりになった赤木俊夫さんの御遺族が、令和二年の三月十八日に国に対して国賠訴訟を提起されました。私も、大臣と同様に、赤木さんの御無念、これは察するに余りあると思っています。突然、最愛の夫を失った奥様の悲しみもいかばかりのものかと思っています。この請求について、この国賠訴訟について、国は、争っておりましたけれども、令和三年十二月十五日、突然、原告の請求を認諾するに至りました。

 今日は、赤木ファイルがどうとか、安倍元総理御夫妻の関与がどうこうとか、そんなことは一切触れません。法務委員会らしく、また、恐縮ですけれども、赤木様の御無念や奥様の悲しみは一旦横に置いておいて、法律上の問題に限って議論をさせていただきたいと思います。

 その前提としてですが、私たち維新の政策調査会が、この事件の概要を知りたいと思いまして、法務省に、訴状なり、あるいは答弁書、これのコピーが欲しい、こういうふうに申入れをさせていただきました。その結果、法務省から訴状、答弁書のコピーが来ましたけれども、大臣、御覧いただけますか。まさに黒塗り、ノリ弁当。ここなんか、もうほとんどページが真っ黒々なんです。

 どうしてここまで黒塗りにする必要があるのか。個人の識別情報だけをマスキングしたという状況では決してないと思います。どのような基準で、どのような理由でマスキングをされたのか、お伺いしたいと思います。

古川国務大臣 これは、情報公開法上の不開示情報に該当するか否か、そういうことを踏まえて判断しているものと承知いたしております。

前川委員 その情報公開法の不開示情報というのは、具体的には何を指すんですか。

 これだけ真っ黒だったら、恐らく、当事者の言い分は全部知らせたくないんだ、こんな趣旨かなと思うんですけれども、どういう基準なんですか。

古川国務大臣 それは、情報公開法の第五条の各号でございます。

前川委員 済みません、不勉強で、情報公開法第何条の各号と言われても、私は暗記しておりません。御教示いただければと思います。

 そして、このケースにおいてはどの条項でマスキングをされたのか、教えていただきたいと思います。(発言する者あり)

鈴木委員長 では、速記を止めてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 では、速記を起こしてください。

 古川法務大臣。

古川国務大臣 情報公開法五条は、行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報のいずれかが記載されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならないと定めております。(発言する者あり)

鈴木委員長 では、速記を止めてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 古川法務大臣。

古川国務大臣 この場では、このマスキングの理由についてお答えしかねますけれども、例えば、因果関係に関する事実や請求額の詳細は、個人の機微に触れる情報でありまして、情報公開法上の不開示情報に該当するものと考えています。

前川委員 ちょっと時間もありますので次に行きますが、私は弁護士を通して御遺族の意向も確認しましたけれども、別にマスキングを希望しておられるわけでは決してありません。むしろ、御遺族の意向としては、自分たちの主張というのをこの国会の審議にも公にしてほしい、こういうふうに思っておられると思います。

 昨年の維新の政策調査会の際には、法務省の担当者が、マスキングの範囲について見直す、こういうふうにお約束されていましたけれども、今日までナシのつぶてでございました。

 是非このマスキングについても、適正な範囲、もちろん、個人情報が公にさらされて御遺族が不当な圧力を受けるなどあってはあきませんけれども、しかし、一億七百万円国の税金を使うわけですから、その税金の使い道が適正かどうか、そのためには、当事者がどのようなことを主張していたのかは明らかにしていただく必要があると思います。

 その上で、鈴木財務大臣、令和三年十二月十五日の会見で、国の責任は明らかになった、御遺族には心よりおわびを申し上げる、こういうふうに発言をしておられます。本当にそうだったら、どうして和解をしなかったのか、認諾をしてしまったのか。大臣も、遺族が求めておられたことというのは決してお金ではないということは御理解いただいているかと思います。

 訴状でも、冒頭に、本件訴訟の目的についてというところがありまして、本件訴訟の目的は、第一に、なぜ黒塗りが黒塗りに追い込まれなければならなかったのか、その原因と経緯を明らかにする点はある、原告は、愛する黒塗りがなぜ黒塗りに追い込まれたのか、その真相を知る権利を有するし、かつ義務があると考えている、黒塗りが黒塗りに追い込まれた原因と経緯がうやむやにされ、黒塗りがなかったことにされることは、原告にとって到底受け入れられるものではない。訴状の冒頭にもこう書かれているんです。

 そうであれば、本当に国が責任を認めて、御遺族に申し訳ない、反省しておられるのであれば、一方的に裁判を打ち切ってしまう認諾ではなく、和解協議をするべきだったと私は考えますが、いかがでしょうか。

古川国務大臣 まず、お尋ねのこの訴訟につきましては、御案内のとおり、認諾した理由について、財務大臣が幾つかその理由を申しております。

 そういう理由からこれは認諾に至ったわけですけれども、具体的なことに関しましては、これは個別の訴訟における、国の訴訟追行に関わる事柄でありますから、お答えを差し控えさせていただきます。

前川委員 今の大臣の、国の裁判に関わることだから答弁しないというのは、令和三年十二月十六日の参議院予算委員会における質疑、あるいは令和三年十二月十七日における予算委員会の質疑、これと矛盾しております。

 参議院の予算委員会では、なぜ認諾したのか、なぜ和解しなかったのかについて詳細に答弁しておられます。なぜ法務委員会では答えられないんですか。

古川国務大臣 その答弁をしたのは財務大臣だったのではないかと思います。私は答弁をいたしておりません。

 私が今申し上げたことは、公開の法廷に表れていない訴訟活動や、国内部の協議内容等についてお答えすることは、将来における国の訴訟活動にも影響を及ぼしかねないということから、お答えを差し控えさせていただきたいということでございます。

    〔委員長退席、井出委員長代理着席〕

前川委員 法廷におけるやり取りを明らかにすると、国の将来における訴訟活動にどのような差し支えが出てくるんですか。

古川国務大臣 公開の法廷に表れていない訴訟活動やということを申し上げました。

前川委員 憲法で、公開の裁判を受ける権利というのが保障されていまして、裁判というのは全部公開されているんです。

 公開されていない場所での裁判上のやり取りというのは世の中にあるんですか。

古川国務大臣 訴訟そのものに関わる事柄ということになると限定をされてくると思いますから、この世の中のありとあらゆることということにはならないと思いますが。

前川委員 ちょっとおっしゃっている意味が分からないんですけれども。

古川国務大臣 先ほど、国の訴訟追行に関わるものでありますからお答えを差し控えさせていただきたいということを申し上げましたその意味は、公開の法廷に表れていない訴訟活動や、国内部の協議内容等をお答えすることは、将来における国の訴訟活動にも影響を及ぼしかねないということから、お答えを差し控えるということを申し上げております。

前川委員 国が支払った一億七百万円の内訳についてちょっと大臣に確認したいと思っております。

 この点もマスキングされておりまして、原告の請求が幾らだったのか分かりません。分かりませんが、損害賠償の基準、これは大阪地裁であったんですけれども、大阪地裁、東京地裁、大きな裁判所でしたら損害賠償基準というのを公開しています。大阪の場合には、このように弁護士会が取りまとめて本が公刊されております。

 この基準で赤木さんの損害額を計算させていただくと、まず、葬儀費が百五十万円、死亡慰謝料が二千八百万円。逸失利益の計算、これはちょっとややこしいんですけれども、亡くなったときの所得に就労可能年数を掛けて、ライプニッツ係数というので中間利息を控除する、そして生活費控除を差し引く、生活費控除というのは三五%であったり、これも全て裁判所の方で算定基準を公開しております。そういたしますと、赤木さんの亡くなられたときの収入が分かりませんので、平均賃金、平成三十年の賃金センサス、男性、産業計、企業規模計、学歴計の五十歳から五十四歳までの平均賃金が七百八万二千三百円、それに就労可能年数、六十七歳までの十三年間、これのライプニッツ係数が九・三九三、生活費控除を三五%で引きますと、逸失利益、死亡慰謝料、葬儀費、合計が七千二百七十四万円になります。これに弁護士費用を上乗せしますと八千四万円。これでも、国が認諾した一億七百万円との間に三千万円の差額があります。

 一億七百万円という数字が裁判の相場からしたら大き過ぎる。それにもかかわらず、突然、認諾した。何か別の思惑があるのではないか、こういうふうに思わざるを得ません。

 それと、赤木さんには誠に恐縮なんですけれども、御遺族の御意向というのは、訴状で御紹介したとおり、金銭だけではない、こういうふうに私も確認しております。

 そこで、指摘させていただきますが、当然、法務省の訟務検事は認識しておったと思いますけれども、被害者が自死に至った場合、その加害行為と死亡との間に因果関係を認めるかどうか、これは最高裁の判例が分かれております。

 最高裁の昭和五十年十月三日の判決は、因果関係そのものを否定しております。したがって、この昭和五十年十月三日の最高裁判決に従ったならば、賠償額というのはゼロ円ということになってしまいます。

 最高裁の平成五年九月九日の判決、これは因果関係を肯定しております。認めておりますけれども、いわゆる過失相殺、この条文を類推適用して、損害額の八割を減額しています。二割だけを賠償額として認めています。そうなりますと、平成五年九月九日の最高裁判例に従ったとしても、先ほど計算した八千四万円から八割が減額されて、一千六百万円程度の賠償額、これが実務の現実なんです。

 もちろん、これを佐川元長官がポケットマネーでお支払いになるというんだったら、わざわざ国会の委員会で取り上げる必要はないかと思いますが、税金の中から支払われています。

 先ほど、鎌田委員、優生手術について、国があえて上告受理申立てをしたという紹介がありました。国というのは、徹底的に責任を争う、賠償額を支払おうとしない。それにもかかわらず、なぜこの赤木さんの事件、最高裁の平成五年の判決に従ったとしても、認容額は一千六百万円です。それなのに一億七百万円支払っている。明らかにおかしいのではないかと私なんかは思うんですが、大臣、いかがですか。

古川国務大臣 公開の法廷に表れていない内容につきましては、その詳細については差し控えたいと思いますが、今回の認諾した損害賠償額については、決裁文書の改ざんという重大な行為が介在しているという本事案の性質などに鑑みて、妥当なものだと判断をしたということでございます。

前川委員 賢明な大臣は御理解いただいていると思いますが、責任の有無と責任の範囲とは別なんです。一〇〇%過失があったとしても、じゃ、原告の請求を一〇〇%のむのか。そうじゃないはずなんです。適正な損害額というのは責任の有無とは別の議論、別の次元の議論です。

 今の大臣の御発言というのは、ちょっと論理的にもつじつまが合っていないと思いますが、いかがですか。

古川国務大臣 詳細についてはお答えを差し控えます。

前川委員 今のもちょっとお考えいただけたらと思います。

 それで、ちょっと時間が残り少なくなってまいりましたけれども、大臣が所信の中で、一人親家庭の養育費について御発言されております。その中で、工夫をするというふうに述べておられます。その工夫について教えていただけたらと思います。

 今、法務省の離婚届の中には養育費の取決めについてチェック欄が設けられてありまして、これをもっと周知できたならば、今、離婚に際して養育費の取決めのない場合が約半分あるわけですけれども、この割合がもっと上がるのではないか、そうなれば、一人親家庭の二人に一人が相対的貧困にあると言われている現状についても改善できるのではないか、こんなふうに考えております。

 この点、大臣からでも結構ですし、あるいは法務省から民事局長も来ていただいていますので、どちらかから、法改正を待たずに、少しでも一人親家庭の貧困が救済されるように法務省としてできることはないのか、お答えいただけたらと思います。これで質問を終わらせていただきます。

金子政府参考人 養育費の不払い解消に向けた取組について御質問いただきました。

 委員御指摘のとおり、まず当事者間で養育費についての取決めをしていただくということが大事だというふうに認識しております。もちろん、それが難しいというケースもございますけれども、可能であれば、まずその取決めをしていただくのが肝要かと思います。

 その取組の前提として、離婚後であっても養育費をきちんと支払う義務、権利があるんだということをきちんと認識していただく必要があるので、離婚届のチェック欄も、まず当事者の方には離婚に際してそういう問題意識を持っていただくといういい機会ではないかということでチェック欄を設けたという趣旨でございます。

 そのような取組も含めまして、今、動画の作成とか、それからホームページの拡充に取り組んできたところでございますが、引き続き効果的な周知、広報を行うとともに、実際お子さんを養育されている現場での対応が不可欠になりますので、自治体等にお願いしまして、モデル事業として、弁護士によるオンラインでの無料法律相談等、あるいは自治体職員による家庭裁判所への付添支援などをモデル事業として行っていただいているところでございます。

前川委員 終わります。

井出委員長代理 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 質問に入らせていただきたいと思います。

 最初にお尋ねするのは、取調べの弁護人の立会い権について。

 これは随分古くからいろいろな議論があったやに聞いておりますが、逮捕、勾留の要件を定める条文は、取調べを身体拘束の目的としない、そうであるにもかかわらず、捜査実務において、身体拘束は取調べの機会を確保する手段として働いているのではないか、身体拘束が自白を獲得するための手段として働いているのではないかというお尋ねですが、まず御所見を伺いたいと思います。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 身体拘束が自白獲得のための手段ではないかということのお尋ねでございますが、身体拘束と取調べの関係について、まず御説明申し上げますと、捜査機関が被疑者に出頭を求めて取り調べることができるという旨の規定が刑事訴訟法百九十八条一項にございますが、そのただし書は、「被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」と規定しておりまして、この規定からも、捜査として、被疑者の逮捕、勾留中に取調べが行われることは当然予定されていることでございます。

 したがいまして、まず前提といたしまして、被疑者が逮捕、勾留中であることをもって被疑者の取調べが不当、不適切と評価されるべきものとは考えていないところでございます。

 その上で、被疑者の取調べと申しますものは、犯行の動機や背景等も含めて、事案の真相を解明するための証拠収集方法として重要な役割を果たしているところでございまして、当然のことながら、その実施に当たりましては、被疑者の人権にも十分配慮しつつ行われているものと承知をしております。

 捜査機関におきましては、今後とも、客観証拠の収集等に努めるとともに、取調べを含めた捜査全般について、法令の規定にのっとり、基本に忠実な捜査の適正な遂行に努めていくものと承知をしております。

鈴木(義)委員 それと関連して、これも、こういう考えを述べている記事を目にしたんですけれども、一般的な日本の刑事裁判は、七割が被告人の全面自供事件と言われている、これを指摘しているんですよね。検察が起訴すれば有罪率が高く、弁護側は、事件後、被告人は反省し、重い刑罰を科さなくても更生することができることを立証するために証人を立て、執行猶予つきの有罪判決を実質的に獲得しているようにも見える、こう指摘している人がいるんです。つまり、公判廷が形骸化しているんじゃないかということですね。

 この法廷の実態を欧米人の目から見れば、もはや裁判でなく、被告人の無実を争うものではなく、反省を示して刑罰を軽くしてもらう、許しを請う場と見られているとも聞きます、このような現状を招いている一因が、被疑者の自白の獲得のために、被疑者取調べが長時間化しているからではないかと指摘しているんですね。事実発見は公判廷で追求すべきであるが、現状は、捜査機関としては、取調べ室で事実を追求しようとしているのではないか、こういうことが言われています。そのため、被疑者取調べが長時間化しているんじゃないかということなんですね。

 その点について、御認識を伺いたいと思います。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 まず、お尋ねの中に、取調べ時間が長時間にわたっているのではないかということでございますが、取調べ時間につきましては、網羅的、統計的に把握しておりませんので、長時間化というのは具体的にどういった内容の御指摘かもございますけれども、取調べ時間が長時間化しているか否かということについて一概にお答えすることは困難でございます。

 その上で、事案の真相解明の見地からということで御指摘がございましたが、これは委員も御承知のところと思いますが、検察当局が起訴し、それについて、その起訴事実について裁判が行われるわけですが、当然、検察当局におきましては、事件を起訴する、起訴しないといった終局処分を決するに当たりまして、検察当局として、捜査機関として事案の真相を解明することが必要でございます。そして、被疑者の取調べは、先ほども申し上げましたように、犯行の動機や背景等も含めて、事案の真相を解明するための証拠収集方法として重要な機能を果たしているものと承知しております。

 その上で、捜査機関は、一般に、事案の真相解明に当たっては、取調べのみに依存することはなく、客観証拠についても十分収集、分析し、あるいは、被疑者、被告人側に有利な、いわゆる消極証拠と言われるものも十分検討するなどしているものと承知しております。

 捜査機関におきましては、今後とも、客観証拠の収集等に努めるとともに、取調べを含めた捜査全般について、法令の規定にのっとり、基本に忠実な捜査の適正な遂行に努めていくものと承知しております。

鈴木(義)委員 適正に捜査をして、裁判の中で判決を出していくんだと思うんですけれども、弁護士の方からお話を聞くと、自白ということに関して、女王様なんだという話なんですね。日本はやはり、戦後の、七十年たった後も、自白ということを、一番に力点を置いて、今まで裁判なり捜査をしてきたんじゃないかというふうに言われているんですけれども、それがために、取調べなり、被疑者というんですか、犯行を起こした人を取り調べるに当たって長時間化しているんじゃないかというふうに言われているんです。その辺の御認識についてもう一度御答弁いただければと思います。

川原政府参考人 お答えいたします。

 委員の御指摘で、自白は証拠の女王だというような言葉も言われているんじゃないかということで、その自白の位置づけがということでございますが、まずもって、先ほど来申し上げておりますが、捜査機関は自白のみを収集しているのではなくて、客観証拠等、自白以外の証拠も収集して真相を解明しているということがございます。

 それから、自白が証拠の女王という言葉は確かにございますが、自白というのはやはり真相解明にとって極めて重要なものであることは間違いございません。先ほども御答弁申し上げましたが、例えば犯行の動機、背景等、これはやはり本人が語らなければ分からないことがございます。また、若干捜査の具体的手法に立ち入って申し訳ありません、例えば隠してある凶器であるとか、盗んで隠してあるものの所在、これを発見すれば客観証拠としては極めて重要な証拠になるわけですが、そういったものをどこに隠してあるのかということも、被疑者自身が語ることによって判明することがございます。したがって、およそ自白を捜査の中で除外するということはなかなか不可能でございます。

 その上で、先ほど来申し上げておりますが、捜査機関におきましては、客観証拠の収集等に努めるとともに、取調べを含めた捜査全般については、法令の規定にのっとり、基本に忠実な捜査の適正な遂行に努めていくものと承知しているところでございます。

鈴木(義)委員 今御答弁いただいて、その件を含めて、例えば過去に冤罪事件が幾つも起こったやに聞いておりますし、その冤罪事件を防ぐためにも、取調べの可視化だけでは不十分であり、取調べ室という特殊な場で、捜査機関側の人間のみ、弁護人がいない中で、被疑者に十分な保護機能、防御機能が果たせていないのではないでしょうかという問いかけです。

 そのためには弁護人の立会い権が必要だと考えています。アメリカ、イギリス、EU、韓国など、諸外国においても被疑者の立会い権は認められているところでありますが、我が国においても、憲法三十八条一項や三十四条から弁護人立会い権を導くことができるのではないか。また、犯罪捜査規範百八十条二項も弁護人の立会いを想定した規定と思われるんですが、弁護人の立会い権について、大臣の御所見を伺います。

古川国務大臣 被疑者の取調べに弁護人を立ち会わせることを捜査機関に義務づける制度につきましては、平成二十八年の刑事訴訟法改正に先立つ法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会において議論をされております。

 ここでは、取調べの在り方を根本的に変質させて、その機能を大幅に損なうおそれが大きいなどの問題が指摘された結果、答申には盛り込まれませんで、それで平成二十八年の刑事訴訟法改正においては制度として導入しないこととされた、こういう経緯があったものと承知しております。

 したがいまして、おっしゃるこの制度導入については慎重な検討を要するものと考えております。

鈴木(義)委員 先ほど、ほかの委員さんから質問の中で、弁護士の使命というのは自由と正義と人権だ、こういう話になったんですけれども、なかなかこれも、犯罪を犯す人が故意にやるのか、過失でそういうことが起きてしまうのか。私の地元でも、いろいろな事件、事象が起きます。

 その中で、テレビなのか映画の見過ぎなのか分かりませんけれども、アメリカは、警察官が犯人を逮捕しようとしたときに、黙秘をするか、弁護士を呼ぶか、こういう尋ねかけをしているわけですよね。それは、だから、一つの人権ということであれば、やはり、被疑者になる人にも権利があるんだろうというふうに推測できるんですけれども、答申で、今のところ立会いを認めないんだというふうになったときに、大臣としては今後どうしていきたいというのを、もしあればお答えいただきたいと思うんです。

古川国務大臣 刑事司法制度の在り方あるいは刑事司法政策ですね、こういうことについては、様々な御意見だとか様々な御指摘もあろうかと思います。

 しかし、法制審議会という場で、しかも、様々なそういう議論が闘わされた中での答申というものは、非常に重いものがあるというふうに考えております。

鈴木(義)委員 いや、答申に関してじゃなくて、大臣として、これからのこの件についてどういう見解をお持ちなのかというお尋ねをしているので、もう一度御答弁いただきたい。

古川国務大臣 私は、この法制審の判断を尊重したいと考えております。

鈴木(義)委員 また時期が来たらその法制審の会議を開かれて、じゃ、答申が出てくれば、そのときに大臣をされているかどうか分かりませんけれども、それに従っていくという考えでよろしいわけですね。

川原政府参考人 若干、立法プロセスに関することも含まれていますので、私から答弁させていただきます。

 法制審ということでございます。

 まず、御案内のとおり、法制審は、刑事訴訟法などの基本法制に関しまして、大臣の諮問に応じて専門的な見地等から検討して答申するものでございますので、一般論として申し上げますと、大臣としては法制審の答申を尊重していただくというのが、一般的にはあり得る姿だと思います。

 したがいまして、委員御指摘のように、仮に法制審議会でこのことが議論され、その取調べの立会い制度が、導入すべきという答申が結論としてなされたならば、法務省といたしましては、その答申に沿った形で立法作業を進めていくということは一般的に想定されることでございます。

 ただ、先ほど来大臣が答弁されていますように、平成二十八年の法改正という、今からさして遠くない時期に一度議論されて、先ほど大臣が答弁されたような結論になっておりますので、慎重に検討する必要があるという認識でいるというところでございます。

鈴木(義)委員 弁護士の立会い権ばかりじゃなくて、様々な状況の中で連携を図っていかなければ真実の解明というのはできないと思いますので、是非。ただ、一人の人権として尊重していくという考え方は、やはり変えちゃいけないんだというふうに思っております。

 それに基づいて、一度犯罪を犯してしまった人が一般社会に戻ってきたときに、保護観察処分を下されて、私も、応援していただいている方に何人も保護司さんがいて、たまに、個人名とかそういう状況は、プライバシーもありますから、お話しいただかないんですけれども、大変難儀をされているという話を聞きます。

 それと、もう一つ、保護司の活動をするに当たって、どうしても地域と連携しなければならないにもかかわらず、今の制度でいくと、保護司さんが、例えば自治会制があったり町会制があるんですけれども、その人たちと連携しなくてもなれちゃうんですね。例えば後継指名みたいな形で、あなたやってくれないかと。その方が地域との関わりが薄い方、若しくは地域の方と反目しているような立場の方ですと、地域の協力が得られないんです。月に二回の面接、今、リモートでやるのか電話で聞き取りをしているのか分かりませんけれども、今どういうふうに仕事しているの、どういう生活を送っているのというのを聞き取りされるんだと思うんです。それをまた上司の方に上げて更生の道に歩んでもらおうというふうになっているんですけれども、なり手不足で、なかなか、保護観察でお預かりするというんですかね、いろいろな相談事をする方が難儀をされているということと、なり手不足という、じゃ、それを改善をどうしていくというふうに考えているのか、まずお尋ねしたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 保護司の方々がその職務を行う上での御負担の状況でございますけれども、お一人お一人ではありますけれども、例えば、処遇が困難な保護観察事件などが多い中で、それを保護司として単独、一人で担当するようなこと、保護観察は面接が基本でございますけれども、それを自宅において保護観察対象者等と行うこと、あるいは、保護観察対象者を地方公共団体の福祉サービスにつなぐに当たりまして、窓口などにおいて様々な問題が発生したりするようなことに御負担を感じていらっしゃる方もおられます。

 また、活動の報告は全て書面でお願いしておりますけれども、保護観察の状況、経過に関する報告書なども手書きで作成していただいて、それを郵送していただいています。それに対する御負担。

 あるいは、保護司自身が保護司会の組織運営に係る事務を担っております。保護司会と申しますのは、保護司は全国八百八十六の保護区に、どれかに配属されるわけですけれども、その保護区ごとに保護司会というのを組織しております。構成員であります保護司の意見に基づいて自主的な運営をしておりまして、地域活動は本当に様々、多彩でございますけれども、その運営に係る事務も保護司自身が担っているということの御負担などがあるというふうに認識をしてございます。

 保護司の数の減少は深刻な状態、状況が続いておりまして、保護司のなり手が確保しにくくなっておりますけれども、それは、このような保護司活動における負担が影響しているものというふうに考えてございます。

 そのため、法務省におきましては、これまで、保護司の活動における負担を軽減し、適任者を確保するために、面接場所にもなります、活動拠点であります更生保護サポートセンターの設置、難しいケースあるいは初めてケースを担当される保護司には、複数の保護司さんに担当していただく保護司複数指名の積極化、あるいは、セキュリティーを確保されたインターネット上で報告書を作成できるようにする保護司活動のデジタル化などの取組を進めてきております。

 また、委員御指摘のとおり、地域との連携というのは大変大事でございまして、地方公共団体からの協力がいかに得られるかというのも特に重要だというふうに考えてございます。地方公共団体に対しまして、保護司候補者の推薦、自宅以外の面接場所の確保などについても協力を求めてきているところでございます。

 今後、これに加えまして、若手保護司の意見を吸い上げるオンラインフォーラムというのを昨年から続けております。その意見を集約しまして、その結果に基づいて、保護司制度の持続的な発展のための方策の検討、推進、保護司活動のデジタル化の推進などによりまして、一層積極的に取り組んで、引き続き、保護司の負担軽減、適任保護司の確保に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

    〔井出委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木(義)委員 もう時間が来ましたので終わりにしますけれども、最後に、今後の保護司の在り方について、副大臣でいいんですかね……(発言する者あり)時間がないんですか。答弁ももらえないですか。

鈴木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をいただければと思います。

鈴木(義)委員 分かりました。終わります。

鈴木委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子です。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず最初に、コロナ禍で過労死の危機にある保健師の長時間労働の問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、大臣にお伺いをしたいというふうに思います。命、尊厳を守る立場から、人権擁護そして人権尊重の観点から、民間、公務の職場における過剰、不当な労働時間に関し、法務大臣の見解を伺いたいと思います。

古川国務大臣 長時間にわたる過重な労働は、働く人に疲労の蓄積をもたらし、甚だしい場合には心身の健康にも重大な影響を及ぼしかねないものであり、人権の尊重及び人権擁護の観点からも留意すべき課題であると認識しております。

本村委員 ありがとうございます。

 今、コロナ禍の中で、自治体労働者の皆さんも本当に大変な状況になっております。

 資料の二、三を見ていただきたいんですけれども、自治労連の皆様が、過労死ラインを超える働き方の実態調査をやられ、三月七日、結果を公表されました。コロナ禍の中で、一か月最高二百九十八時間もの時間外労働が確認されました。それが資料三なんですけれども、これは京都市の職員の方ですね。埼玉県でも、そして千葉県でも、あるいは静岡市でも、そして名古屋市でも、二百時間を超えるような時間外労働が確認をされております。

 一か月最高二百九十八時間ということになりますと、一日十五時間以上働いて、三十日間連続で働くということになってまいります。これはまさに命の危機にあるというふうに思います。

 今、労働基準法の三十三条第一項及び第三項では、第一項は、災害その他避けることのできない事由によって、第三項は、公務のために臨時の必要がある場合は、時間外の労働時間が上限の規制がなくて、青天井で労働させることができるという規定になっております。

 しかし、保健所の保健師の皆さん始め、新型コロナの対応は二〇二〇年から二年以上続いております。もはや臨時とは言えない状況となっておりまして、今、膨大な新規感染者が出ている下で、このまま続けば過労死がまた増えてしまうという緊急事態だと私は認識をして、今日、質問させていただいているんですけれども、住民の皆様の命も守らないといけない、と同時に保健師の方々の命も守らないといけない。どちらも守るために国が今早急に対策を取るべきだというふうに思います。

 年度を通して行政需要があるということですから、保健所の保健師の抜本的な増員を図る地方財政措置を行うことが必要だと思います。現場からは、人口一万人に一人、まずはこの配置をやってくれということですので、是非その点、総務副大臣、厚生労働副大臣に来ていただきました、是非お願いしたいと思います。

田畑副大臣 お答え申し上げます。

 今般の新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、各地方団体におきまして保健所の体制強化に取り組んでいただくことが必要であるというふうにまず認識をしてございます。

 総務省といたしまして、保健所の恒常的な人員体制強化を図るため、感染症対応業務に従事する保健師を、令和三年度と令和四年度の二年間で、コロナ禍前の約千八百名から、一・五倍の約二千七百名に増員できますよう、令和四年度におきまして、地方財政計画上、四百五十名増員するとともに、地方交付税措置として、道府県の標準団体において六名増員することとしてございます。

 今後の保健所の体制の在り方につきましては、まずは厚生労働省において地方団体の意見を踏まえ検討されるべきものでございますが、総務省といたしまして、厚生労働省と連携しながら、必要な支援に努めてまいります。

佐藤副大臣 保健所の保健師につきましては、新型コロナへの対応を踏まえ、感染症の拡大時に円滑に業務ができるよう、感染症対応業務に従事する保健師について、令和三年度から二年間かけて、コロナ禍前の千八百名から、一・五倍の約二千七百名に増員するために、必要な地方財政措置を講じることとしております。

 これを受けまして、各地方自治体におきましては、各地域の実情を踏まえながら必要な体制確保に取り組んでいただきたいものと考えております。

 また、昨年夏の感染拡大を踏まえまして、各都道府県には保健・医療提供体制確保計画を策定をしていただき、全庁体制や外部委託の活用などにより、感染拡大のピーク時においては、全国平均で平時の約三倍の人員を確保できる体制を構築していただいたところであります。

 さらに、専門人材の派遣の仕組み、いわゆるIHEATの構築など必要な支援を実施するとともに、MyHER―SYS等のシステムの徹底活用、健康観察のために都道府県等が設置するフォローアップセンターの強化など、保健所のみに頼らず健康観察等に対応できる体制の構築を各自治体に働きかけるなど、保健師が専門的な業務に注力できるようにするための取組を実施してきたところでありますが、厚生労働省としては、引き続き、関係者の声もよく伺いながら、総務省との連携の上、保健所における人員体制の強化や業務の効率化等の取組を支援してまいりたいと考えております。

本村委員 百七十万人の標準団体で地方財政措置をしていただいているんですけれども、しかし、一万人に一人という水準にはなっていません。更に増員を図るためにも、地方財政措置をやっていただきたいというふうに思っております。

 保健所の保健師さんなどの地方自治体の現場でも、過労死しそうなほど長時間労働を続けているということですけれども、時間外労働の絶対的な上限規制を明確にしていただきたいと思うんです。臨時というより、恒常的にずっとあるわけですから、絶対的に明確にしていただきたいというふうに思います。

 医師による面接指導だけでは現実的に過労死防止の実効性がないというふうに現場から言われています。休んでくれと医師に言われても、現場では休めない現実があって、それだけでは駄目だということで、勤務間インターバル十一時間を取らせることですとか、あるいは、過労死をさせない確実な措置を政府として明確にしていただきたい。人を増やすという指導も含めて、是非強く求めたいと思いますけれども、お二人の副大臣、お願いしたいと思います。

佐藤副大臣 まず、新型コロナウイルス感染症への対応のために、医療従事者、保健所の職員を始めとしたエッセンシャルワーカーの皆様方に、日々大変な御努力をされていることに心から改めて感謝と敬意を申し上げたいと思います。

 その上で、地方公共団体における保健所の職員につきましては、労働基準法に基づく時間外労働の上限規制の適用対象となっており、労働基準監督署において指導等を行っているところであります。

 一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止等のために保健所の職員の皆様が行っている業務は、人命、公益の保護の観点から、緊急性、必要性が高いことから、労働基準法第三十三条第一項の規定により、上限規制を超えて時間外労働を行わせることが認められていることになっております。

 こうしたことから、やむを得ず長時間労働となっている方々の健康が確保されるよう、労働基準監督署において、労働安全衛生法に基づく医師による面接指導の実施などの取組が徹底されるように指導を行うとともに、時間外労働を削減するための具体的な方策を検討し実施するよう指導を行っているところであります。

 人命等の保護の観点からも、新型コロナウイルス感染症の対応も重要でありますが、その一方で、長時間労働など、職場環境を原因として、働く方が健康を害するようなことはあってはならないことであります。

 引き続き、労働者の健康確保対策の徹底を図るとともに、労働時間の縮減に向けて必要な指導や支援を粘り強く実施してまいります。

田畑副大臣 改めて、総務省として御回答申し上げたいと思います。

 まず何より、コロナ禍におきまして保健所で働く方々には大変な御苦労をおかけして、業務に従事なさっていらっしゃること、何よりも感謝を申し上げたいと思います。

 地方公務員の時間外勤務の上限規制や健康確保措置については、平成三十年の働き方改革関連法とこれに関連する人事院規則の改正を踏まえ、総務省としても自治体に対して助言通知を発出をし、各団体において制度、体制の整備に取り組んでいただいたところであります。

 公務員につきまして、災害や新型コロナウイルス感染症への対応など、公務のため臨時の必要がある場合においては一時的に長時間勤務が必要となるときがあることから、超過勤務が一定時間を超えた場合にそれ以上勤務を命ずることができないとする制度とはなっておりません。

 一方で、コロナ禍が長引く中で、時間外勤務の上限規制や健康確保措置の制度を厳格に運用することで過労死等を防止をし、職員の健康を確保していくことが極めて重要になってきていると考えております。

 総務省といたしまして、これまでも自治体に対して助言をしてきたところでございますが、本年一月及び二月に、勤務時間の適切な把握や時間外勤務の要因の整理、分析、検証などの制度を適切に運用し、時間外勤務縮減に向けた取組を図ることや、医師による面接指導の効果的な実施、ストレスチェックの実施による職場環境の改善、相談体制の整備など、職員のメンタルヘルス対策といった制度の実効的な運用に当たっての留意点について改めて自治体に通知したところでございます。

 引き続き、各自治体における実態を把握をし、確実に措置が講じられますよう助言をしてまいります。

本村委員 住民の皆さんの命を守り、そして保健師の皆さんの命を守るためには、人を増やすしかないんですよ。そういう指導を是非、厚生労働副大臣、やっていただきたいと思います、労働基準関係で。よろしくお願いしたいと思います。

 厚生労働副大臣、そして総務副大臣、ありがとうございました。別のテーマに移りますので、御退席、お願いしたいと思います。

 次に、名古屋入管におけるウィシュマさんの死亡事件について質問をさせていただきます。

 三月六日、ウィシュマさんが亡くなられてから一年となりました。心から哀悼の意を申し上げたいというふうに思います。

 そのウィシュマさんの生の声が書かれている手紙がいまだに開示をされていないという問題について質問をさせていただきたいと思います。

 調査報告書の別添、一月十五日から三月六日までの経過等の詳細には、ウィシュマさんが手紙を書き、昨年一月三十日に入国者収容所等視察委員会宛ての提案箱に投函したと書かれています。その前々日の一月二十八日、ウィシュマさんは胸の痛みを訴えておられました。嘔吐が続き、嘔吐物に血が混じっていた、唇と足はしびれ、下半身もしびれがあったというふうに書かれております。

 そして、ウィシュマさんは泣きながら訴えておられました。外の病院に今すぐ連れていって、今日の医者は私の話を聞いていない、ここまで体調が悪くなったのに病院に行けない、私が死んでもいいのかと泣きながら訴えておられました。翌二十九日は床に倒れ、嘔吐物に血が混じっていました。死ぬのが怖いとも言っておられました。そういう状況の下で書かれた手紙です。

 この手紙は投函して、開封をされたのが亡くなった後の三月八日でございます。この手紙の写しを是非提出をしていただきたいと思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

古川国務大臣 手紙そのものは個人情報に該当する上、これを公にすることによりまして、今後、視察委員会における収容者からの意見聴取などの活動に支障を来すことになりかねないということなどから、情報公開法上の不開示情報に該当するものと考えております。

 なお、国会における閲覧ということにつきましては、国会の御判断を踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えております。

本村委員 ウィシュマさんが泣きながら訴えた生の声が書かれた手紙です。名古屋入管といった限られた、閉じられた空間で、入管ではない第三者に状況を知ってほしい、これを改善してほしいという、だからこそ手紙を出したのだというふうに思います。

 是非、委員長、一月三十日にウィシュマさんが投函をした手紙、この委員会に提出するようお取り計らいをお願いしたいと思います。

鈴木委員長 ただいまの件につきましては、理事会にて協議をいたします。

本村委員 お願いしたいと思います。

 それで、今後、この名古屋入管の監視カメラのビデオ、二週間分あるわけですけれども、いろいろ見させていただきたいというふうに思っております。様々、与野党の筆頭理事の皆様の御尽力もあって、次、また見られる機会が得られるということですけれども、是非私も見させていただきたい部分がございます。

 二月二十七日、午前一時台の、ベッドで上体を起こそうとした際に臀部から床に落ちたところからベッドに戻るまで。そして、午前七時台、点滴だけお願いなどとウィシュマさんが述べたけれども回答がなされなかった一連の映像。そして、バイタルチェックの映像。血圧がかなり低い状態があったあるいは測定できなかったということも書かれております、そのバイタルチェックの映像。そして、食事の時間の映像。是非この映像を見させていただきたいというふうに思います。

 委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。

鈴木委員長 ただいまの件につきましては、理事会にて協議をいたします。

本村委員 まだ見ていない部分を申し上げたわけでございます。この二十七日は余り時間を取っておりませんので、引き続き、このウィシュマさんの件、真実を解明するために審議をお願いしたいということを申し述べ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、山田美樹君。

山田(美)委員 自由民主党の山田美樹です。質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 冒頭に、現在ロシアから侵攻を受けているウクライナへの人道的な支援について、法務行政の観点からお伺いいたします。

 私は、五年前に外務大臣政務官を務めておりましたときに、ベラルーシの首都ミンスクとウクライナのチェルノブイリ原子力発電所敷地内の二か所でそれぞれ開催された、チェルノブイリ原発事故後三十年の追悼式典に出席をいたしました。ロシアも含め各国の政府関係者が一堂に会し、犠牲者の記念碑に花束をささげ、二度と再び悲惨な事故を起こさないと誓ったにもかかわらず、今回、原子力発電所が攻撃され、占拠されたことは、にわかには信じられず、決して許されない暴挙だと感じています。

 ウクライナの方々は御家族が生き別れになり、再び会えるか分からないという悲劇は、現代の出来事とは思えず、こうした状況を一日も早く終わらせたいと強く願っております。

 ウクライナから国外への避難民は二百万人を超えたとの報道があります。先週、岸田総理は、まずは親族や知人が日本にいらっしゃる方々について受け入れることを想定しているが、それにとどまらず人道的な観点から対応するとして、避難民の受入れを表明されました。昨日の時点で既に八名の方が入国されたとのことですが、日本への退避を希望するウクライナ避難民の方々に一刻も早く安心していただけるよう、受入れに向けた具体的な手続について示していく必要があると思われます。

 新たに日本に退避してこられるウクライナ人の方々に対して、法務省はどのように対応していくのか伺います。

古川国務大臣 具体的にどうするのかというお尋ねでございました。

 総理も言っておられますとおり、まずは我が国に親族や知人がおられる方の受入れを想定しておりますが、それにとどまらず人道的な観点から対応してまいります。

 ウクライナからの避難民を受け入れるに当たりましては、本邦に在留できる地位のみならず、受入れ規模、生活及び定住支援など、幅広い分野にわたって政府全体として方針の検討が必要になるものと認識をいたしております。

 このことを踏まえまして、法務省においても、関係省庁と連携して検討を進めてまいりますとともに、内閣官房における必要な調整も含め、政府全体として対応を早急に進めていくということになろうかと思います。

 法務省としては、今後、政府全体での検討を踏まえ、関係省庁との連携の上、積極的、適切に対応をしてまいります。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 避難民の多くは女性と子供だと伺っています。日本への退避を希望するウクライナ避難民の方々に対しては、是非ともできる限りの支援をお願いしたいと思います。

 古川大臣におかれましては、この後、参議院の方があると伺っております。どうぞ御退出いただいて結構でございます。

 続きまして、現在、我が国には約二千人弱のウクライナ人の在留者がいらっしゃると伺っています。その中には、帰国に不安を抱き、引き続き日本国内にとどまることを望まれる方もおられるかと思いますが、このような方々に対して法務省はどのように御対応をされていくのでしょうか。津島副大臣にお伺いします。

津島副大臣 山田委員にお答え申し上げます。

 山田委員、政務官在任中にウクライナを訪れたことがあるということで、ウクライナのこの間の問題について思いひとしおのものがあると思いますし、私も、今回のロシアによるウクライナ侵攻ということは、まさに国際法違反、暴挙であると強い憤りを持っているところでございます。

 そういった中で、日本に在留するウクライナの方々がこの情勢を踏まえて帰国に不安を抱くということは当然のことでございまして、その方々が引き続き日本国内にとどまることができるように、まず、在留期間の更新を認めるなどの措置を講じております。そのことについては、入管庁のホームページで御案内を申し上げてございます。

 また、今申し上げた対応は、ウクライナにおける情勢が改善していないと認められる間は同様に行うことといたしております。

 在留ウクライナ人の方々の置かれている状況に十分配慮しながら、在留許可の判断を適切に行ってまいります。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 今本当に大変な状況であろうかと思いますので、是非、丁寧な御対応をお願いいたします。

 今回のウクライナ危機で改めて痛感いたしましたのは、国際社会において、自由と民主主義、基本的人権という普遍的価値観を共有していく取組はいまだ道半ばだということ、しかし、今後、これまで以上に、我が国から法の支配の重要性を国際社会に発信する必要性が高まっているということでございます。

 法務省においては、昨年、犯罪防止、刑事司法分野の国際協力として京都コングレスを成功させ、その成果を様々なフォーラムで展開するとともに、かねてより、アジア諸国を中心とした法制度整備支援で実績を積み重ねるなど、積極的に司法外交を展開していると承知をしております。

 日本の法制度整備支援の歴史は四半世紀に及びますが、その間に国際情勢は大きく変化いたしました。ポスト冷戦の時代とは異なって、国際社会において民主主義国と非民主主義国との分断が進む中で、民主主義国の中にも我が国と競合する形で法制度整備支援を行う国が出てきておりますし、非民主主義国が我が国の支援プロジェクトと競合して支援を行う事例もあります。時代の変化に対応して、日本が行う司法外交にも、独自の理念や方法など、より明確な戦略が必要になってきているように感じられます。

 日本が行う司法外交の意義、そして今後の展望についてどのように考えておられるか、津島副大臣にお伺いします。

津島副大臣 司法外交の重要性についてのただいまの委員の御指摘というのは、大変重要なものがあると思っております。

 改めて、司法外交の持つ意義というもの、まずは、このウクライナ情勢というものが、法の支配や基本的人権の尊重、これがまさに普遍的原理であるということを逆に再認識させている。そして、じゃ、司法外交の意義は何かといえば、その普遍的原理を世界各国に発信をして共有をするということにあるわけです。

 その司法外交を推進していくということは、国際社会の平和と安定に寄与していくことに相なりまして、経済成長を支える司法インフラを整備し、持続可能な発展に資するものとして大変重要なものだ、そう位置づけられるところです。

 そこで、その推進のための具体的な取組として、いろいろな、多岐にわたるんですが、我が省、法務省では、四半世紀以上にわたりまして、アジアを中心とする開発途上国等における法制度整備支援を行って、法の支配の定着に貢献をしてまいりました。

 我が国の法制度整備支援の特徴はといえば、相手国の主体性を尊重し、国の実情、ニーズに合った法制度整備を支援しているところにございます。このような我が国ならではの特徴を持つ支援は、おかげさまで高い評価をいただいておりまして、結果、各国と強固な信頼関係を築くに至っております。

 こうした信頼関係を基に、自由で開かれたインド太平洋の要であり経済成長も著しいASEANとの連携を戦略的に推進していくために、法務省では、日・ASEAN友好協力五十周年を迎える二〇二三年に、ASEAN各国の法務大臣との会合を主催すべく、準備を進めているところでございます。

 また、法務省では、ルールに基づく国際秩序の形成の取組の一つとして、紛争解決のグローバルスタンダードである国際仲裁の活性化にも取り組んでいるところでございます。

 引き続き、我が国ならではの強みを最大限生かしつつ、司法外交を力強く推進してまいります。

山田(美)委員 大変力強い御答弁、ありがとうございます。

 資金力に乏しく、戦力を持たない日本にとって、人の力こそが国力だと感じております。司法外交というソフトパワーの意義は今後ますます重要になりますし、これからは攻める法務省への期待が高まると感じています。日本人ならではの誠実さと質の高い仕事を世界にアピールできるように、司法外交の更なる推進に期待をいたします。

 続きまして、同じく攻める法務省というテーマから、日本の国際競争力強化における司法行政の役割についてお伺いをいたします。

 二〇〇〇年前後からアジアのハブになっていた香港が、事実上の中国化に伴って、国際ビジネスの急速な脱出が進んでいます。避難先としてシンガポールと日本がライバル関係にありますが、日本の国際競争力強化のために、国際ビジネスにとって魅力的なインフラ整備が急務であります。シンガポールとは比較にならない高額の税率を踏まえても、国土の大きさ、民主的社会基盤など、日本が提供できる魅力は大きいと考えます。

 他方で、日本は法的インフラの国際化が大きく遅れています。日本法はまともな英訳すらないものが多く、また、各種届出も英語では受け付けていません。英語を公用語としているシンガポールとは異なり、日本では当局の英語対応能力も極めて低いのが実情です。欧米レベルのビジネスにおける適正手続の整備も、まだまだ遅れています。こうした課題の多くは法務省の所掌範囲であり、法務省の取組が日本市場の国際的ハブとしての復活のための大きな鍵を握っていると感じております。

 日本の国際競争力を確保するための法的インフラの整備として、まずは英訳された日本の法令を迅速かつ正確に国際発信することが重要だと考えますが、法令の外国語訳の整備について、これまでの進捗状況と今後の取組についてお伺いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 日本法令の外国語訳を整備して国際発信することは、日本企業の海外進出や対日投資等の促進を図るためのインフラ整備として大変重要な取組であると認識をしております。

 法務省では、関係府省庁の協力も得まして、専用ホームページに八百本以上の日本法令や改正法の概要情報の英訳を公開しておりまして、近時のアクセス回数は一日平均約十六万回に及んでおります。

 今後の取組でございますが、法令外国語訳の司令塔であります、日本法令の国際発信の推進に向けた官民戦略会議からは、英訳法令の迅速な公開に向けた具体的な御要望をいただいているところでございます。

 これを踏まえまして、法務省では、現在、翻訳工程におけるAI翻訳の活用に向けた実証研究を実施しておりますほか、必要な体制整備も進め、令和四年四月には専用ホームページをリニューアルして、利便性を高めていく予定にしております。

 引き続き、関係府省庁とも協力の上、整備の加速化に向けてしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 地道で膨大な作業だと思いますが、これこそまさに日本の国際競争力を支えるインフラだと思います。ビジネス界からのニーズも踏まえつつ、対象法令を広げていただけるよう、十分な人的、物的体制の整備をお願いいたします。

 法令の翻訳の問題と並んで、日本市場の参入障壁と言われてきたのが、各種の申請や届出を英語でできないかという問題です。

 これまで、香港やシンガポールがアジアの国際的なハブとして日本よりも優位だとされた背景には、法令そのものはもちろん、手続も英語で行えるという点があります。

 日本でも、金融行政においては、英語化とワンストップ化が積極的に進められています。金融庁は、昨年、新規に日本市場に参入する海外の資産運用会社などに対して、登録に関する事前の相談、登録の手続、登録後の監督を英語で行うこととして、これらの業務をワンストップで行う拠点開発サポートオフィスというのを開設されました。また、海外の証券会社にも一定の条件の下で英語での登録申請を認めるよう制度を改正中だと伺っております。

 もちろん、あらゆる手続を全て英語化するというわけではなくて、業態の中身ですとか行政側の英語対応のキャパシティーなど、様々な点を考慮しながら必要なものは英語化を進めていくとのスタンスだと伺いました。

 法務省の関連では、会社設立登記が英語でできれば望ましいと考えますが、どのように対応しているのか伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 会社の設立登記は我が国において起業するための最初の手続であり、その手続について英語対応を進めていくことは、対日直接投資の促進の観点からも重要であると認識しております。

 これまでの対応について御説明しますと、まず、法務省におきましては、日本語を自由に話すことが困難な外国人からの会社設立登記手続に関する電話でのお問合せに対して、通訳者及び登記所職員との三者間通話により、会社設立登記手続に関する情報を外国語で提供するサービスを行っております。ちなみに、このサービスは、英語を含めて十か国語に対応しております。

 また、現在、外国人向けに、会社の設立手続の説明や会社設立登記の申請書の書式見本を英語に翻訳したものを本年三月末までに法務省のホームページに掲載すべく、準備を進めているところでございます。

 今後とも、グローバルなビジネス環境の整備の一環として、外国人による会社設立登記の申請が容易となるよう、英語対応を含めた更なる充実に努めてまいりたいと考えております。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 着々と準備を進めていただいているというところであろうかと思います。各省庁それぞれの行政分野ごとに、実務的な制約や国内産業保護の必要性、安全保障上の配慮など、様々な考慮要素を抱えているとは思いますが、全体的な方向性として、日本のビジネス環境をグローバルなものにするために、各省庁が協働し、政府が一体となって手続の英語化を進めるべきと考えます。

 将来の話ではありますが、先ほどの法令外国語訳整備と同様に、各種申請、届出の英語化についても、法務省など関係省庁を中心に、政府内に推進体制をつくるなどして一体感を持って進めていただければと思います。

 次に、法令の翻訳、手続の英語化に続いて、紛争解決制度のグローバル対応について伺います。

 先ほど津島副大臣からのお話にもありましたように、法務省は、司法外交推進と国際競争力強化の観点から、国際仲裁の活性化に力を入れていただいています。

 日本企業の海外進出を後押しするには、国際商取引から生じる法的紛争が日本において解決できる仕組みが重要ですし、逆に、外国企業を日本に呼び込むに当たっても、日本で行った商取引から生じる紛争が日本でグローバルスタンダードに基づいて英語で解決できる仕組みが整っていることが重要です。

 とはいえ、日本における国際仲裁の利用件数はいまだ低調にとどまっているのが実情です。日本で仲裁を活性化させるためには何が足りないのか、ビジネスの現場に近い方々の声を伺ったところ、中小企業の間ではまだまだ認知度が低く、そもそも仲裁って何というところが非常に多い、具体的な仲裁案件を紹介しようにも、企業秘密を守るという制度趣旨から内容が非公開のために、一般の方にイメージを持ってもらいにくい、それから、費用が高い上に、日本人で英語でちょうちょうはっしができるような仲裁弁護士がなかなかいない、それから、国際仲裁では仲裁地の法律にのっとって執行されるが、日本の法律は英訳がないものが多いため、海外から日本における国際仲裁は安心できないと見られてしまうなどなどの御意見がありました。

 法律の英訳は、先ほど御答弁いただいたように、政府内に体制を組んで進めていただいているところですが、やはり人材育成と国内外への広報の充実が大きな鍵を握っているように思います。法務省において国際仲裁活性化のためのインフラ整備として具体的にどのような取組を行っているのか伺います。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 国際仲裁は国際商取引における法的紛争を解決する手続のグローバルスタンダードでございますが、委員御指摘のとおり、我が国における利用は諸外国に比して低調でございました。

 その要因といたしましては、我が国にはこれまで仲裁の専門施設がなかったこと、それから国際仲裁に精通した人材が不足しているということ、それから国際仲裁のユーザーである企業において国際仲裁の有用性に関する理解が十分でなく、また海外へのマーケティングが不足していることなどが指摘されてきました。

 これらの指摘を踏まえまして、法務省では、国際仲裁の活性化に向けたインフラ整備といたしまして、一般社団法人日本国際紛争解決センター、JIDRCに委託をしまして、令和元年から五か年の事業として、国際仲裁の活性化に向けた基盤整備に関する調査等業務を実施しているところでございます。

 この調査業務においては、仲裁専用施設の整備、国内外の企業等に対する広報、意識啓発、それから、仲裁人、仲裁代理人等の人材育成の各施策を包括的かつ実効的に実施することとしております。その一環として、令和二年の三月に、虎ノ門ヒルズビジネスタワーに国際仲裁の専用施設、JIDRC東京がオープンしております。

 また、国内外の企業に対する広報、意識啓発という観点につきましては、特に、国際仲裁の認知度が高くない中小企業に対するアウトリーチが重要な課題だと考えております。現在、経済産業省や日本商事仲裁協会などと連携いたしまして、業界団体別のセミナーを多数実施しているところです。

 また、海外に対する周知啓発といたしましては、日系企業が多く進出して国際仲裁のニーズが高いと思われるアジアを中心に、日系企業及び現地企業を対象とするセミナーを実施して、今年度は、シンガポール、タイ、中国、台湾を対象としたセミナーを実施しました。さらに、在京の各国大使館に対するJIDRC東京の内覧会、それから外国弁護士に対する施設の案内等も行っております。

 引き続き、関係機関、関係府省と連携いたしまして、周知啓発を始めとする国際仲裁の活性化に向けたインフラ整備を積極的に進めてまいりたいと考えております。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 最近、一つ気になっておりますのは、コロナ禍でオンラインが常態化し、将来は仲裁地の考え方が相対的になっていく可能性もあるのではないかという点です。今後の動向を見極めながら、必要な予算を確保し、効率的な取組を行っていただければと思います。

 最後に、国際仲裁の活性化のためには、インフラ整備だけでなく、最新の国際水準に見合った法制度を整備することも重要だと考えています。

 昨年十月と今年二月に、仲裁、調停に関する法改正について法制審議会において答申がされたと伺っていますが、その内容と今後の法整備の予定はどのようなものか、お伺いします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法制審議会は、昨年十月に仲裁法の改正に関する要綱、本年二月に調停に関する要綱をそれぞれ法務大臣に答申しました。

 国際的な商事紛争の解決手続としては仲裁がグローバルスタンダードとされているところ、近時、仲裁と調停とが相互に活用されるようになっている状況も踏まえ、法制審議会では、我が国における仲裁、調停に関する法制度を最新の国際水準に見合ったものとする必要があるとの問題意識の下で議論が行われたところでございます。

 まず、仲裁法の改正に関する要綱は、仲裁廷における暫定保全措置の定義、発令要件、執行等に関する規律を整備することなどを内容とするものであり、国連国際商取引法委員会、UNCITRALの最新の国際商事仲裁モデル法に準拠した内容となっております。

 また、調停に関する要綱は、裁判外の調停で成立した和解合意について、裁判所の決定により一定の要件の下で執行力を付与する制度を創設することなどを内容とするものであり、調停に関するシンガポール条約と整合的な内容となっております。

 国際仲裁の活性化のために、これらの要綱の内容を踏まえた所要の法律案をできる限り早期に国会に提出できるよう、準備を進めてまいりたいと考えております。

山田(美)委員 詳しい御説明をいただきありがとうございます。

 関係者の皆様の地道な御努力が、将来、五年後、十年後に必ず大きな実を結ぶと確信しております。

 以上をもちまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩でございます。

 順次、質問をさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 まず、離婚時における財産分与についてお伺いをいたします。

 二年以上に及ぶコロナ禍にあって、女性の貧困の問題が改めて浮き彫りとなっております。女性がその多くを占める一人親家庭の相対的貧困率は、二〇一八年の厚生労働省国民生活基礎調査によれば、四八・一%となっております。その中には、離婚がきっかけで経済的な困窮に陥った場合も少なくありません。

 離婚時には、その財産分与の範囲は、家庭裁判所の実務上、特段の事情がない限り二分の一とする運用が行われております。しかし、法務省が昨年四月に発表した調査では、財産分与の取決めについて、していないと答えた方が六二・七%に上っております。私は、離婚後に子供と同居される親御さんが適正な財産分与を受けることは、子供の利益の観点から重要であると考えております。

 そこで、お伺いをいたしますが、法務省として、離婚時の財産分与の現状についてどのように捉えておられるのか、御見解をお伺いいたします。

加田大臣政務官 委員御指摘のとおり、法務省では、離婚を経験した男女七百名を対象にしまして、財産分与に関する事項を中心としました実態把握のための調査を実施しまして、昨年四月、令和三年四月にその結果を公表しております。

 この調査結果によりますと、六二・七%の人が、離婚するに当たりまして財産分与の取決めをしていないと回答がございました。この実態調査によりまして、客観的な数値によって実態を把握することができまして、そして、実際に離婚を経験した方々の声や分与の実情に即した議論を進める上で極めて有用な調査であったと認識いたしております。

 離婚に伴う財産分与の取決めの重要性につきましては、公明党の提言でも、財産分与制度に関する効果的な周知を行うため、周知の方法の抜本的な見直しを行うべきとの御意見もいただいております。この問題につきましては、制度面の検討を進めながら、現行制度を国民の皆様に分かりやすく周知するために、運用上の取組についても積極的に進めてまいりたいと思います。

 今後とも、どうぞ委員の御指導をよろしくお願いいたします。

福重委員 政務官、御答弁ありがとうございました。

 私は、基本的な問題として、慰謝料とは全く別の制度である財産分与制度そのものを知らないまま離婚に至るケースも多いのではないかというふうに思っております。

 財産分与のいわゆる二分の一ルールを徹底させる観点から、我が党の大口委員からの提案により、昨年の四月から離婚届の標準書式を一部改定し、養育費についてはレ点で記入するようになり、あわせて、財産分与や年金分割なども説明文の中に加えていただきました。

 その上で、私は、財産分与や年金分割について、離婚時、しっかりと取決めが行われるよう、更なる周知徹底を図る必要があると考えますが、御答弁をお願いいたします。

金子政府参考人 御指摘のとおり、離婚に伴う財産分与の取決めの重要性については、離婚を考えている方を始め、広く社会に認識していただくことが必要であると考えております。

 そのことも踏まえまして、財産分与に関するQアンドAのウェブページを公開するとともに、令和三年四月には離婚届の標準書式を見直し、離婚するときに考えておくべきことの一つとして財産分与がある旨を周知する文言を加えるとともに、当該ウェブページにリンクする二次元バーコードを記載することとしました。

 また、令和三年十二月に、当事者が別居時や離婚時に知っておくべき情報を網羅的かつ簡潔に記載したもので、各市区町村において活用してもらうための別居、離婚リーフレットのひな形を作成し、財産分与に関する情報提供も行っております。このリーフレットのひな形につきましては、令和三年十二月に、各市区町村に対し、活用の具体例も示した事務連絡を発出しているところでございます。

 財産分与の取決めを促進するための周知、広報について更なる取組が必要であることは委員御指摘のとおりでございまして、一層力を入れて取り組んでまいりたいと考えております。

福重委員 どうもありがとうございました。

 次に、この財産分与について請求できるのは、現状では、離婚時から二年と決められております。

 我が党の女性委員会では、以前から、離婚時の財産分与が適切に活用されるよう政府への提言を行ってまいりました。そして、二〇二〇年の十二月には、当時の法務大臣に対し、財産分与の期限を少なくとも五年に延長するよう申入れを行っております。

 これを受けて、法務大臣は、昨年の二月、財産分与の期限の延長の検討などを含む離婚及びこれに関連する制度の見直しについて、法制審議会に諮問をいたしました。

 そこで、お伺いをいたしますが、夫婦間でDVなどの問題がある場合、離婚後速やかに調停や審判を行うことが著しく困難である場合など、二年という歳月はすぐに経過してしまいます。私からも改めて、財産分与の期限を、二年から、一般債権と同じく五年に延長すべきと提案をさせていただきますが、これまでの法制審議会の議論も含めて御答弁をお願いいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、離婚前後の様々な事情によって夫婦間で離婚後二年以内に財産分与請求権を行使することができなかったために、結果として、離婚の当事者や、その元にいらっしゃるお子さんが困窮することは少なくないと考えられ、財産分与の請求可能期間の問題は、離婚後の家族の生活の在り方に影響する重要な課題の一つと認識しております。

 御指摘の点は、法制審議会家族法制部会におきましても、財産分与についての除斥期間を伸長することを含め、同様の問題意識の下で議論がされておりまして、引き続き充実した調査審議が行われるよう、必要な対応にしっかりと努めてまいりたいと考えております。

福重委員 今、しっかりと審議を進めていただくということでございますけれども、やはり、子供の貧困問題も、この後も質問させていただきますけれども、是非、この問題というのは重要なことだと思いますので、早急に結論を出していただければというふうに思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 次に、養育費の不払い問題について、先ほど前川議員さんからも質問がありましたけれども、私からもお伺いをさせていただきます。

 一人親世帯が困窮する大きな要因の一つとして、養育費の不払い問題があります。

 法務省では、不払いの解消を目指し、自治体と連携したモデル事業を進めておられます。離婚届の提出など当事者と接する自治体の窓口業務での情報提供を強化するとともに、養育費確保に向けた支援体制を整備すると報道されております。

 具体的には、自治体が当事者に、弁護士によるオンライン法律相談などの支援を提供し、また養育費の取決めを法的に証明する公正証書の作成や裁判手続に係る費用の補助、裁判所への付添支援などを通して養育費の不払いを防ぐことが目的であります。

 モデル事業が昨年の十一月から兵庫県の宝塚市、山口県の宇部市など五つの市で順次スタートし、法務省では事業の成果を養育費制度見直しの議論などに生かしていきたいというふうに言われております。

 そこでお伺いをいたしますが、養育費不払いにおける現状の認識及びモデル事業の今後の展開についてお伺いをいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法務省では、今委員から御説明があったとおり、五つの市と連携しまして、様々な支援施策を施行するモデル事業を行っております。

 これは、現行制度の下での支援の在り方について、一人親にとって最も身近な相談先である自治体と連携して検討するものでございまして、御指摘がございましたが、自治体内の戸籍、一人親支援等の関係部署間の連携、オンラインでの弁護士による無料法律相談、オンラインでの家庭裁判所職員による家事調停等の手続案内、司法書士による裁判手続書類の作成補助、自治体職員による家庭裁判所への付添支援などを行っていただいているところでございます。

 本モデル事業を通して、自治体からは、関係機関との人的ネットワークを構築できたことで自治体内のワンストップでの支援の強化につながったとの声や、利用者からは、自治体窓口からオンラインで相談できたことにより弁護士がより身近な存在になったとの声をいただいているところでございます。

 この調査研究につきましては、今後提出される報告書も参考にしつつ、有効と認められる成果につきましては、公的支援等に関する今後の施策を立案する上で適切に勘案されるよう、関係府省庁とも連携を図りながら、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

福重委員 御答弁ありがとうございました。

 私は、群馬県の公明党の県代表を務めておりますが、昨年、群馬県本部所属の議員が集まり、養育費の不払い問題の対策について講習会を開催し、司法書士の先生に講師をしていただきました。その折、養育費の不払い対策として、先ほども申しました公正証書を取り交わすことが有効であり、司法書士会としても自治体と連携し、公正証書の作成推進を行っていきたいとの話をいただきました。

 その後、前橋市では、公明党の市会議員の提案を受け、厚生労働省の離婚前後親支援モデル事業を活用し、国の二分の一の補助を受け、離婚時の公正証書作成費に関して、四万三千円を上限とする補助制度を本年一月からスタートし、併せて、保証会社と養育費保証契約を結ぶ際の費用について、初回分五万円まで補助をする制度を創設いたしました。

 来年には、こども家庭庁が創設されます。私は、養育費の安定的確保支援及び一人親家庭における子供の貧困解消に向け、前橋市のような取組が全国に拡大することを期待いたします。と同時に、さきに述べた離婚前後親支援モデル事業など、厚生労働省や法務省を始めとする子供に関わる全省庁が総力を結集し、あらゆる方策、施策をもって、未来を担う子供が最大に恩恵を受け、尊重され、誰一人取り残されることなく幸福を感じられる日々を送れるよう切に願うものであります。

 是非、要望とさせていただきますので、今後、政府においての検討をよろしくお願いいたします。

 次に、ワクチン未接種の方への偏見や差別に対する対策についてお伺いをいたします。

 ワクチン接種は、新型コロナ感染症の発症や重症化を防ぎ、感染拡大を抑える上で重要であると考えます。既に国民の八割が二回目の接種を終え、現在は三回目の接種が急ピッチで進められております。一方で、病気やアレルギーなど様々な事情で接種を受けることのできない方もおられます。こうした人たちが偏見や差別にさらされ、不利益な扱いを受けるようなことがあっては断じてなりません。

 法務省には、コロナ関連の人権相談が、二〇二〇年二月から今年一月までの二年間で約四千七百件寄せられていると伺っております。当初は、コロナ感染症や医療従事者やその家族に対する偏見や差別に関するものが多かったと承知しておりますが、最近ではワクチン接種に関する相談が増えているとお聞きいたしました。

 そこでお伺いをいたしますが、基礎疾患等によりワクチンを打ちたくても打てない方もいらっしゃるわけですが、法務省にはどのような具体的な相談事例があるのかお伺いをいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 相談の詳細は控えますけれども、例えば職場におきまして、ワクチンを打たない人は会社を辞めるように言われた、あるいは、ワクチンを打ったことが分かるようワクチンを打った人はバッジを着用することとされた、あるいは、ワクチンを打たない人は協調性がないと責められたといったものが寄せられております。

福重委員 今後、五歳から十一歳を対象とした小児に向けたワクチン接種も始まります。接種をしない子供たちまでもが悲しい思いをすることがないよう、政府は偏見や差別を防ぐための情報発信に一層努める努力をしなければならないと思います。

 そこでお伺いをいたしますが、先ほど申し上げましたとおり、ワクチン接種は強制ではございません。ワクチン未接種の方への偏見や差別を防ぐために、法務省を始め、関係省庁と連携しながら対応されていると思いますが、具体的な施策についてお伺いをいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、具体的には、新型コロナウイルス感染症に関連する偏見や差別を予防するために開設した特設サイトにおきまして、ワクチン接種に関する偏見や差別を防止するための人権啓発動画やリーフレットを公表して、それぞれの事情に応じた感染症対策を行いましょうと呼びかけております。

 法務省といたしましては、引き続き、このような意図で、ワクチン接種に関する不当な偏見や差別の防止に取り組んでまいりたいと考えております。

福重委員 不利益を被らないように、是非政府が一体となって支援をお願いしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十二分散会


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