衆議院

メインへスキップ



第9号 令和4年4月15日(金曜日)

会議録本文へ
令和四年四月十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 馨祐君

   理事 井出 庸生君 理事 熊田 裕通君

   理事 葉梨 康弘君 理事 山田 美樹君

   理事 鎌田さゆり君 理事 階   猛君

   理事 守島  正君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    尾崎 正直君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      国定 勇人君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    谷川 とむ君

      中谷 真一君    中野 英幸君

      西田 昭二君    野中  厚君

      古川 直季君    八木 哲也君

      山田 賢司君    伊藤 俊輔君

      鈴木 庸介君    藤岡 隆雄君

      山田 勝彦君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    前川 清成君

      日下 正喜君    福重 隆浩君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         古川 禎久君

   法務副大臣        津島  淳君

   法務大臣政務官      加田 裕之君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局民事局長            門田 友昌君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   嶋田 俊之君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     加藤 竜祥君

  尾崎 正直君     古川 直季君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     東  国幹君

  古川 直季君     尾崎 正直君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君及び財務省理財局次長嶋田俊之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君及び民事局長門田友昌君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鎌田さゆり君。

鎌田委員 立憲民主党・無所属会派の鎌田さゆりです。よろしくお願いいたします。

 大臣、重篤にならなくてよかったです。心配していました。お帰りなさい。そして、津島副大臣、ポーランドから御無事にお帰りになってよかったです。お帰りなさい。その間、留守を預かっていた政務官、お疲れさまでした、本当に。それはそれ、これはこれとして質疑に入らせていただきます。

 まず、今日、私、資料をいっぱい提出させていただきました。理事会で御許可をいただきました。

 資料一を御覧いただきたいです。

 これは参議院の予算委員会でなんですが、今回の法案の中に、いわゆる期間限定裁判のことについても新制度として盛り込まれています。

 そこで、古川法務大臣が、質問をされた際に答弁されているのが、ここにマーカーを引いているところがございますけれども、このとおり、海外には例を見ない、そして日本が初めて、独自ということで、再確認、よろしいですね。

古川国務大臣 はい、そのように思っております。

鎌田委員 そこでなんですけれども、すごく大事なことを私は大臣とまず共有したいと思っております。それは立法事実についての認識を共有できるかなんです。

 法律を制定する際には、合理性を支える根拠、科学的な事実、そして、誰が、いつ、いかなる動機、意図で制定したのか、直接の当事者に関する客観的な事実が必須であって、それらは国民に明らかにされなければならないと私は考えます。というか、日本にいち早く立法事実とはを紹介した有名な先生がいらっしゃいます。その方も論じていらっしゃいます。

 この立法事実を検証しないままでは、法律制定の説得力に欠けると私は思います。この認識、大臣におかれましても共有していただけますでしょうか。伺います。

古川国務大臣 立法事実というのは、法律の必要性を根拠づける社会的、経済的な一般的事実のことをいうものと承知をいたしております。

 当然、立法あるいは法改正においては大事な論点だと思います。

鎌田委員 よかったです。ありがとうございます。これを共有できたということで、質疑をさせて、確認をさせていただいてまいります。

 今回の民訴法IT化の法案の三百八十一の二から三百八十一の八、ここに法定審理期間訴訟手続に関する特則ということが新たに盛り込まれています。そして、海外では例を見ないと、先ほど答弁のとおりでございました。

 そこで伺いたいんですけれども、民事裁判IT化研究会というものがございまして、その第二読会での提案の中に、これは二〇一九年四月から十二月までが第二読会だったんですけれども、この第二読会で、先日参考人でもいらっしゃいました山本和彦先生が座長でいらっしゃいますが、ここに法務省若しくは最高裁はどのように関与されていますか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の民事裁判手続等IT化研究会には、法務省それから最高裁が参加しております。この研究会に参加しまして、いわば論点整理的なことに関与するということになります。そこまででよろしいですか。

鎌田委員 はい。参加をされていて、論点整理をされている。ありがとうございました。

 第二読会の議事メモ、議事録的なものを見ますと、手続の対象とする事件を限定するか否か、期日の回数若しくは期間等々、最高裁から説明をされています。そして、この第二読会のときに、座長は、この件については、これは第二読会が二〇一九年の四月から十二月までの間ですから、この件については今回が初めての提案だと思いますという発言をなさっています。

 そこからいろいろ議論があったと思うんですけれども、この第二読会について、法務省及び最高裁で調査をしたり、そして報告書をまとめたりしたということはございますか。

金子政府参考人 この研究会の第二読会においては、取りまとめ的なものはされたんだろうと思いますが、それは研究会としての取りまとめをしたんだと思います。

鎌田委員 済みません。ここに最高裁が提案をしていて、そして関わっていて、そっちのIT化研究会で取りまとめしたんだろうということですか。皆様は、それを、議論したのをまとめたり、報告書にしていないんですか。立法事実にとって大事なところだと思いますけれども。伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の提案、これは、元々、最高裁判所から提案がされたものでございますけれども、それについて、当然、その提案に基づいて、この読会においては議論されたということになります。

鎌田委員 済みません。私が伺ったのは、だから、最高裁が提案しているというのは、ここに議事メモがありますから分かります。法務省さんも関与していた、参加していた。議論が第二読会で二〇一九年四月から十二月まで行われた。そのことについての議論の経過とか報告書、まとめたもの、これは立法事実の根拠に、私は、大きく寄与すると思っているから伺っているんです。

 それはあるかないかでいいですから、答えてください。

金子政府参考人 報告書のたたき台自体は事務当局として作ったものであって、その後、会として取りまとめをしたということになります。

鎌田委員 報告書のたたき台があるんだったら、済みません、委員長にお願いします。

 第二読会というのはIT化研究会で、法制審ではないんですけれども、その後の法制審の審議にも、これは影響というか参考になるIT化研究会の議論なんですね。そして、初めて期間限定がこの第二読会で提案されているわけです。

 ですので、今、たたき台はあるというふうにおっしゃった、報告書の。じゃ、たたき台があるんだったら、そのたたき台をきちんとまとめたものがあるのかどうか。あるんだったら、それを委員会に資料として提出を求めたいと思います。委員長、御検討をお願いします。

鈴木委員長 本件につきましては、理事会にて協議をいたします。

鎌田委員 期間限定裁判のこの提案の担当部署はどちらでしょうか。また、責任者は、固有名詞は結構です、役職はどなたになるんでしょうか。提案理由のペーパーはあるのかどうか、伺います。

金子政府参考人 改正法案における法定審理期間訴訟手続につきましては、法制審議会における議論を経た上で答申された要綱に基づくものであって、その提案の担当者といったものはございません。

 ただし、法制審議会の民事訴訟法(IT化関係)部会におきましては、議論のたたき台となる資料について、事務当局を務める法務省民事局において作成しております。事務当局としては、部会での議論を踏まえて適宜資料を作成しているものでございます。

鎌田委員 では、今の御答弁だと、担当部署は民事局ということで、そして、法案提出者は法務省さんですから大臣の責任の下であるという解釈が成り立つと思うんですけれども。

 次に伺います。

 今回のこの期間限定裁判のことについて、裁判官、また裁判官OBへのアンケートなどは行われましたでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 改正法案の立案に当たりまして、法務省において独自に裁判官や裁判官OBへのアンケート等の調査を実施することはしておりません。

 もっとも、改正法案は法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会が取りまとめた民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案に基づいて立案、提出されたものでありますところ、同部会は研究者、弁護士、司法書士、関係省庁等の関係者によって構成されており、現役裁判官もその委員として部会の議論に参加、関与しているところでございます。

 また、同部会で取りまとめられた中間試案はパブリックコメントに付され、これに対する意見として裁判所からも意見が提出されたところであります。

 このように、改正法案は現役裁判官を含む専門職や一般国民の意見を広く踏まえて作成されたものと理解しております。

鎌田委員 つまりは、ないということですね。はい。

 全国の裁判所に正式に書面で尋ねる調査というのはなさっているんでしょうか。中間試案を提示をして、それに対して意見を下さいという程度のものだったんでしょうか。伺います。

金子政府参考人 改正法案の作成に当たり、法務省として、全国の個々の裁判所に対して書面を送付する方法によって調査を実施したことはございません。

 しかし、法制審議会が中間的に取りまとめた中間試案に対するパブリックコメント、これは非常に大きなものでございます。ホームページ等でも説明資料を付して公開しているもので、それに対する裁判所からの意見も出ているものですから、全国の現役裁判官の意見を広く踏まえたものというふうに言えるものと理解しています。

鎌田委員 ただいまの答弁を、もしこの委員会をインターネットを通じて視聴されている方がいらっしゃったら、とても残念に思いながら聞いていらっしゃる方が多いんだろうなと思います。広く国民の声を聞いて、そして裁判所等々から聞いたと。

 調査室さんが作られた分厚い黄色いこの本ですね、ここに、パブコメが全部、ちっちゃい米粒みたいな字なんですけれども、だあっと書いているわけですよ。このパブコメを見ると、甲案、乙案、丙案、中間試案で出された甲案に対しての賛成、乙案に対する賛成、反対、丙案の方がいいとか、事細かに書かれていますよね。それももちろん御覧になっていると思うんですけれども。そうすると、甲案には賛成しているところがどこで反対しているのはどこでとか、丙案の方がいいとか、確実にその違いが明確に出ているわけですよ。そうすると、今の答弁というのはすごく残念だなというふうに思うわけです。委員の皆様も、この調査室さんが作られた大変な資料を御覧になっていると思いますので、今私が甲案、乙案、丙案が何だというのを説明しなくても、皆さん御存じだと思いますので。

 つまり、言いたいのは、今回のこの期間限定裁判、これを新たにIT化のこの法案の中に盛り込んで入れるのは違うでしょうというお声が非常に多いんですよ。そして、今聞いたところ、全国の裁判官や裁判官OBへのアンケート等は、一言で言えばない、裁判所に書面で尋ねる調査はないと。

 それで、伺いますけれども、海外の調査というのはなさったんですか。

金子政府参考人 法務省では、民事裁判手続のIT化を検討するに当たり、外国法制に関する調査を実施するなどしておりますけれども、この法定審理期間訴訟手続に特化した形での調査は実施しておりません。

鎌田委員 大臣、聞いていただきましたか。海外調査、ないんです。

 法務省さんのホームページを見ると、IT化調査及び報告書というものがホームページにちゃんと立派に載っているわけですよ。有名な学者さんの調査研究報告書が掲載されているわけです。

 だけれども、更に伺いますけれども、今、海外の調査がないという、もうないない尽くしでしたけれどもね、いろいろなものが。改めて伺いますが、法務省さんのホームページに、今回の特則、新たな裁判制度を設けるに当たって、IT化調査及び報告書と同様の調査報告書というのを何ぼ探しても見当たらないんですけれども、その報告書、掲載ありますか。

金子政府参考人 御質問が法定審理期間に関する調査に特化した報告書という意味では、ございません。

鎌田委員 だから、さっき、私、残念だと言ったんです。国民の皆様にも広く御理解をとおっしゃったけれども、ホームページに今回のこの新しい裁判制度の特則のことについての、調査しました、研究しました、そして報告書はこれですというものがないんですよ。それで皆様に御理解いただけたとは、私は言えないと思いますよ。それで立法事実がなかなか見えてこないということなんです。大臣にはまだ後でお聞きしますので。

 この特則制度の導入についてなんですけれども、拙速で不十分な審理のおそれを危惧するという声についての御認識はお持ちでしょうかということを伺いたいということを前提に、今日提出しています資料で、順番が、済みません、六番と七番を御覧いただきたいんです。今日の提出資料の六番と七番です。

 これは大阪市立大学の名誉教授でいらっしゃる松本博之氏によります、法務省民事局参事官室御中の書面と、それから法制審議会の委員の各位と、そこに宛てた書面があります。いかに、今回の新たな特則、この期間限定裁判の制度が危ういものかということが、民事訴訟法学の専門家としてこちらに書かれてあります。参事官室にも届いていますけれども、これを承知をしているかということと、それと、特に法制審議会委員各位に宛てたこの書面の中で、私の事務所の方でマーカーをつけておりますところは松本氏が非常に危惧しているところで、重大な問題点をここに明らかにしていますが、承知をしているかということと、これらの問題点についてどのように反証されるか、伺います。

金子政府参考人 松本博之氏の意見が記載された書面が法制審議会委員等に宛てて発出されたこと、また、参事官室宛てに提出され、届いていることはそのとおりでございますので、そのような意見があるということは承知しております。

 この意見書には種々の懸念が記載されているというふうに承知しておりますけれども、いずれにしましても、法制審議会においてはそのような種々の懸念に対する意見等を踏まえながら検討がされ、制度的な様々な配慮をした上で要綱が取りまとめられたものと認識しておりまして、先生が御指摘になるような問題点については御懸念に及ばないと考えております。

鎌田委員 到底及ばないという今の御答弁ですけれども、とても雑ですね、ラフですね。

 ここに書かれてあることは、法制審議会委員に宛てた松本氏の、一ページにもだあっと書いているわけですけれども、「一」の「訴訟における法的審問請求権の保障」ということで、民事訴訟手続のIT化と直接の関連のない事項であって、民事訴訟制度の全体に影響を及ぼし得る手続がこの機会になぜ提案されたのか、その理由が不明だと。期間を定めることによって、下から八行目ですかね、後段、「その期間内に攻撃防御方法を尽くすことが当事者に実質的に保障されるかどうかが決定的に重要な問題であり、日本の訴訟手続と判決の質に直結する。」と。参考人質疑の際も、判決が粗雑になるんじゃないかという指摘もありました。それを心配する声がパブリックコメントにも多く寄せられています。

 めくっていただいて、下に三ページというところがありますけれども、三ページの中間辺りの方なんですが、マーカーしているところのちょっと下の方ですけれども、「しかも、消費者契約事件と個別労働事件以外のすべての民事事件を対象として、一般的に、導入することは異常というほかない。」と。民訴法の専門家からここまで言われているわけですよ。これに対してきちんと反証するべきものを持つためには、調査をして、研究をして、そして国民に対して報告をするという立法事実が私は整っていないといけないと思います。

 そこで、ちょっと具体に伺いますけれども、この法案から読み取れるものとして、これで合っているかどうか伺います。文書提出命令、これの申立てというのは難しくなるというふうに読んでよろしいんですよね。

金子政府参考人 法定審理期間訴訟手続においては、提出できる証拠方法には、法律上、制限がございません。他方、この手続においては、当事者は、その手続の開始から五か月以内に主張や証拠を提出しなければならず、証拠調べは六か月以内にしなければならないとしております。文書提出命令については、その判断の是非につき時間を要することもあると承知しており、当事者において文書提出命令が必要であると考えるに至った時期等によっては、この手続の中でその申立てをすることが難しくなる場合もあるというふうに考えられます。そのような場合でも、その当事者は、通常の手続に移行させる旨の申出をした上で、その手続の中で文書提出命令の申立てをすることができることになると考えられます。

鎌田委員 今、後段のところで、それが、いわゆるリスクが発生するときの救済策だと思うんですけれども、その時点でもう論理破綻していますよ。こういう制度をつくりました、でもこういうリスクが考えられる、だからこういう救済策があります、いわゆる乗換え自由というやつですよね。乗換え自由の制度があるから大丈夫なんです。これでは、新しい裁判制度を設けるに当たって、そういう論理の組立て方では、私は、もう論理矛盾だし、論理破綻していると思いますよ。

 ちょっと大臣、ここまでやり取りを聞いていて、何か感想をお聞かせいただけますか。

古川国務大臣 先ほど来、委員からは、この新たな立法に当たって、十分な調査なり分析なり、立法事実に迫るそのプロセスが十分ではないのではないかというような御趣旨の、今お尋ねをいただいたと思います。

 この法定審理期間訴訟手続は、法制審議会において答申された要綱に基づき、改正法案に盛り込まれたものでございます。法制審議会におきましては、研究者のほか、弁護士、裁判官といった法律実務家の参加を得て調査審議がなされたものでございまして、特にこの手続については、これまでにない制度であったこともありまして、部会の委員や幹事から様々な問題点の指摘がされまして、それを解消するために制度の修正を幾度も試みた上で成案に至った、そのような経緯があったと承知をいたしております。つまり、十分な議論が尽くされたものというふうに認識をしておるところです。

 それに、委員もお触れいただきましたけれども、パブリックコメントを実施しまして、そこで様々な意見が出されるわけですけれども、示された意見や懸念等にも配慮を行った上で進めてきておりまして、この手続の創設に当たり、更なる調査といいますか、委員が求めておられるところの分析なり検討なりというのは、私は、尽くされているものだ、その上での法案提出である、このように考えております。

鎌田委員 やり取りの感想をお聞きしたんですけれども、いや、私は尽くされていないと思うんですね。海外の調査もしていない、裁判官、OB裁判官に聞いていない、私はまだまだ尽くされていないと思う。突然出てきて、これは単独で法案審議してもいいくらいの、だって新しい裁判制度ですから。なのに、何でIT化に突然混ざってくるのかなということで、私はこれは無理があると思います。調査がされていない、報告書が国民の目にさらされるような状態になっていないということなんです。

 ちょっと具体に伺いますけれども、例えばなんですが、欠陥商品の裁判で、被害者がメーカーに同種事故の記録の提出を求めたとします。早く手に入れば証明に役立ちます。裁判は早く進みます。立証に必要な資料の取り寄せが難しいと、勝つことも、早い裁判も難しくなりますよね。そういうケース、発生しますね。

金子政府参考人 もちろん、初めの段階から証拠がそろっているとは限りませんので、そういうケースは生じますが、この新しい手続は、何かこの手続を強制するという契機が全くない、一つの、任意の、当事者が、双方が合意の下でそういう手続を選択できるという制度でございますので、最初から時間がかかることが見込まれていれば、そのような希望をしなければ通常の裁判手続をしていただくということですので、それをもって、何か特段この制度に問題があるものとは考えておりません。

鎌田委員 特段この制度に問題がないですか。いやいやいや、私はそうは思いません。

 双方に訴訟代理人がいない場合には利用できないことの明文化がないのはなぜでしょうか。それから、裁判官が当事者に利用を促すことを禁止することを定めていないのはなぜでしょうか。二つ伺います。

金子政府参考人 法定審理期間訴訟手続は、事案の性質、訴訟追行による当事者の負担の程度その他の事情に鑑み、この手続による審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正な審理の実現を妨げると認めるときは開始しないこととしております。

 当事者双方に訴訟代理人が選任されているのでなければ、基本的に、適正な審理の実現を妨げると認めるときに該当すると考えられます。それは、この手続を利用するか否かについて適切に判断し、また法定された審理期間内に必要な主張や立証をするには、原則として法定代理人の関与が必要であると考えられるからでございます。

 もっとも、企業間の訴訟で、当該企業内の法務部門に法曹資格者が在籍している場合や、破産者を当事者とする訴訟で、弁護士である破産管財人が訴訟追行する場合など、弁護士が訴訟代理人に選任されてはいないが、訴訟代理人が選任されている場合と同視することができるような場合もございます。そして、このような場合にまでこの手続の利用を制限する必要はないと考えられますことから、訴訟代理人を選任されているとの要件を明文で規定することはしなかったというものでございます。

 二番目は、裁判官が当事者に利用を促すことを禁止することを定めていないのはなぜかという御質問です。

 法定審理期間訴訟手続は、基本的に、専門家である訴訟代理人が法定された審理期間内に必要な主張及び立証をすることができると適切に判断した場合に利用されることが想定されているものでございます。

 一般論として、裁判官は、このような法の趣旨を踏まえ、適切に手続を進めるものと考えられる上、この手続は基本的に訴訟代理人が選任されている場合に利用されるものであって、法定審理期間訴訟手続を利用するか否かについては、訴訟代理人がその専門的知見に基づき適切に判断するものと考えられます。

 したがって、裁判官が当事者にこの手続を利用するのを促すことによって弊害が生ずることは考えられないことから、御指摘のような明文の規定も置いていないところでございます。

鎌田委員 長々と御答弁いただいたんですけれども……

鈴木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

鎌田委員 はい。済みません、会派内で。済みませんです。

鈴木委員長 はい。結構です。

鎌田委員 ありがとうございます。

 お手元にお配りをさせていただきました二番、三番、四番、五番、この資料は、今回のIT化の研究会と法制審のIT化の座長さんも務めてお取りまとめをされた山本和彦先生の御著書、論文でありますね。

 二番は、めくっていただきますと、一番最後のところ、判事の提案に触発されながら、思いつきの域を出ないものであるが、新たな手続の可能性を試論的に提示してみたいと、思いつきの域を出ないという論を張っていらっしゃいます。

 それで、三番、これは「訴訟と非訟」という、これも山本氏による論文なんですが、めくっていただきますと、ハイブリッド型の手続の限界ということで、マーカーを引いてあります。今、救済策として乗換え自由だとおっしゃったんですけれども、でも、結局は、ハイブリッド型だとすると、前置された判断が覆る可能性は実際上低いこととなって、当事者は移行自体を諦めて、実質上裁判を受ける権利が侵害されるおそれも否定できないことになると、これは山本氏が論じていらっしゃいます。

 それから、四番、こちらは、民事訴訟法十年、判例タイムズというところでありますけれども、黄色でマーカーを引いてあります左側、ある程度ラフな手続で。ラフというのは直訳すると雑ですからね。そして、右側にあります、実際には異議が出されることは多くないという予測を前提にして、迅速簡易に和解解決が図られることを期待するものと言えるということが載せられています。

 さらに、五番です。五番の資料を見ていただきたいです。これも、山本氏の御意見を参考にされて作られた、民事裁判のIT化、ジュリスト一千五百四十三号に書かれてあります。「特別の訴訟手続」という欄ですが、右側の方のマーカー。外国や労働審判の実例なども踏まえ、そのニーズの所在やユーザーの要望等を踏まえて今後慎重に制度設計すべきものだと。山本先生も、この制度がこういうリスクをはらんでいる、そしてこれは制度設計に対してしっかり慎重にすべきだということをおっしゃっているわけですよ。

 これらの論文を基にして、法務省は分析、精査、調査をしてから新制度の制度へと丁寧に進めるべきだと私は考えている一人なんです。

 大臣、ここは、この三百八十一条の二から三百八十一の八、ここについては立法事実がまだ整っていないと、今やり取りを聞いていていただいてそのように受け止められませんでしょうか。そして、パブリックコメントには、主婦団体の方々、消費者団体の方々、お願いだから今ここで立ち止まってほしい、そして、各地の弁護士会も反対の意見を上げています。今ここでここの部分は削除をして、そしてIT化の方、これは当初の皆様が計画を立てられたとおりに、日々見直しを行っていきながら進めていくべき法案じゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

古川国務大臣 現行法には、民事訴訟手続の審理期間や判決までの期間に一定の期限を設ける規定はありません。当事者が互いに主張や証拠を提出する時期について合意をしたとしても、裁判所はその合意に拘束されないこととされておりまして、判決言渡し時期についても当事者の希望が取り入れられるとは限らないわけです。

 このため、当事者にとって、裁判所の判決がされるまでの期間を予測することは困難であるという指摘がございまして、民事訴訟の利用者を対象とした調査におきましてもそのような結果が出ているところでございます。

 このように、現行制度については、審理期間や判決の時期に関する予測可能性が低いことなどがそのデメリットとして指摘されておりまして、これは予測可能性を高める手段を講ずる必要性が指摘をされております。

 そのような立法事実に基づいて検討を進め、今回の法案提出に至った、法制審議会においても様々な意見、様々な議論を経た上でこのような法案の提出に至った、こういうことでございます。

鎌田委員 ありがとうございました。私は、この期間限定については立法事実は整っていないと思います。

 終わります。

鈴木委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属の鈴木庸介です。

 私、法律の専門家でも弁護士でもございませんので、一中年男が裁判で訴えられたときにどう思うか、そういった視点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、ITの方から、人材の確保について伺いたいと思います。

 IT人材の確保というのは、御案内のように、法律分野ではなくて、各分野で喫緊の課題となっているわけでございますけれども、法律分野でも、リーガルとテクノロジーを組み合わせたリーガルテックという企業がどんどんどんどん伸びてきて、アメリカでは千社を超えているというデータもございます。

 こうした中で、IT化を進める上で人材の確保は大切だと思うんですけれども、現在、この人材をどのような規模で、どの程度確保できているのか、また、当然、職員の教育ということも必要になってくると思うんですが、どういった教育制度を考えているのか、その点について教えてください。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所といたしましても、民事裁判手続等のIT化の検討、準備が本格化する中で、IT等の専門的な知見や経験を取り入れていくことは有用であるというふうに考えております。

 最高裁判所におきまして採用いたしましたIT人材の人数でございますが、令和三年四月に一名、同年八月に二名、令和四年の四月に一名のIT人材を採用したところでございまして、更に本年五月に二名の採用を予定しているところでございます。

 また、令和三年に採用いたしました三名のIT人材は任期付の常勤職員として、また、令和四年の採用に係る三名のIT人材は非常勤職員として、それぞれ勤務していただいているところであります。

 具体的な仕事の内容ということになりますけれども、令和三年四月に採用した一名については、民事裁判手続等のIT化に向けたアプリケーションの検討、開発を担当しております。令和三年八月に採用した二名及び令和四年四月に採用した一名の合計三名につきましては、ネットワークなどの情報通信基盤や各システムの全体最適に向けた企画立案、情報セキュリティーの在り方の検討などを担当しているところでございます。

 今後、民事裁判手続のIT化の検討、準備が加速していくものと考えられますので、必要に応じて適切な体制を確保していきたいというふうに考えているところでございます。

鈴木(庸)委員 ありがとうございました。しっかり教育の方もお願いしたいと思います。

 令和二年の十二月に内閣府の広報室が実施した民事裁判IT化に関する世論調査というのがあるんですけれども、ここで、あなたが、仮に今後、訴状など、裁判所への提出はインターネットを利用する方法に限定したとする、持参や郵送による方法を認めないとした場合、賛成ですか、反対ですかというアンケートをやったようなんですね。これは、どちらかというと反対と反対が五一・七、どちらかというと賛成又は賛成が二二・四%と、圧倒的に反対が多いという結果になっております。また、今回の法案に盛り込まれたと思うんですけれども、反対の理由について、八二・四%の人が、誰もがインターネットを利用できるとは限らないからと答えております。

 全ての方がIT化ということに対して大変大きな不安を覚えているというような現状が浮かび上がってまいるかと思うんですけれども、実際、ITを実際使うというところだけではなくて、セキュリティーの問題でも、アメリカでもかなり問題が起きているようです。

 これは第十一回の法制審議会のIT化関係部会でも参考人の方が述べているところではあるんですけれども、例えば、二〇一四年には、アメリカの連邦裁判所のPACERというシステムが頻繁にサイバー攻撃を受けて、四時間停止したという事実がございます。また、二〇一七年には脆弱性が発覚して、データ漏えいが起きていた可能性も高いと言われております。

 州裁判所のレベルでも、アトランタ市全体が大規模なサイバー攻撃を受けて、いわゆる身の代金のコンピューターウイルス、こちらに感染して、令状とか手数料とか交通違反の反則金だけではなく、裁判のスケジュールとか、こういったファイルが全部開けなくなってしまったということがあったようです。

 国民が漠然と心配しているし、裁判所のセキュリティーとしても本当に大丈夫なのかという不安の中で、こういったところにどういった対策を取られていくのかというところを教えていただけないでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 改正法の下で裁判所において構築するシステムでは、訴訟当事者の個人情報を始めとします機微な情報を取り扱うこととなりますので、十分なセキュリティー対策等を講じる必要があると認識しております。

 このシステムにつきましては、本法案が成立した後に仕様を確定して開発に入るものでございますし、セキュリティー対策という性質からしましても、具体的な内容についてお答えするのは難しいところがございますが、政府においては、政府機関の遵守すべきセキュリティーに関する各基準が定められているところと承知しておりますので、それらの内容も踏まえまして、十分なセキュリティー対策を講じてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 万全なセキュリティー対策と広報の方をお願いしたいと申し上げたいと思います。

 それでは、期間限定裁判の方を伺わせていただきたいと思います。

 例えば、私に今、突然訴状が来て、六か月以内でどうこうしろとなったら、やはり、あわわわわとなって、どうしたらいいのか分からないなというところが率直な感想なんですけれども、まず、これ、六か月って、何で六か月なんですか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法定審理期間訴訟手続は、争点及び証拠の整理を行う期間、証人及び当事者本人の尋問を行う期間、口頭弁論終結及び判決の言渡しの時期について定めることとして、審理期間に係る一つのモデルを定め、その利用の有無について当事者の判断に委ねるものでございます。

 もっとも、その終結までの期間が余りに長期であると、当事者においても、その訴訟活動等を予測することは難しくなります。そこで、民事訴訟の平均審理期間を踏まえつつ、争点及び証拠の整理を行う期間を五か月、証拠調べの期間を一か月として、審理の終結までの期間を六か月としたものでございます。

鈴木(庸)委員 審議会の議論の中でも、六か月じゃなくて九か月でもいいんじゃないかとか、十二か月でもいいんじゃないかとか、そういったことがあるということでも伺っているんですけれども、先ほど鎌田委員からのお話もありましたが、これは調査とかを十分にしていないので、この六か月という時間の流れについても、ちょっと説得力がないのかなと私も考えております。

 とりわけ裁判官の皆さんは多数の事件を抱えていて、審理期間が法定された事件を期間内にこなそうとすると、当然、六か月という期間に限定して十分な審理が行われるのかということには疑問が残ると思うんですが、迅速化を名目にして、実際はスケジュールありきで、簡単手続によって訴訟処理するという指摘もあるのも事実でございます。

 甲、乙、丙案を審議していた議事録の方も拝見したんですけれども、そもそも、こういう制度をIT部会の場でまとめて議論するべきではない、別途十分な時間をかけて議論するべきなのではないかと主婦連合会さんとか各方面から意見が出されていると思うんですが、別途の議論としないで一括した議論にした理由ということについて教えていただけますでしょうか。

金子政府参考人 裁判の迅速化、効率化というのが一つの大きな目的となっている法制審議会の諮問であり、その中で、IT化もそうですけれども、法定審理期間訴訟手続というのが一つの迅速化に資するという面がございますので、同じく法制審議会で十分な御議論をいただき、その答申に基づいて法案の提出をさせていただいているところでございます。

鈴木(庸)委員 迅速化という枠でIT化部会で中に入れてやった、そういう御答弁だったと思うんですけれども、ちょっと無理があるなというのはいろいろな皆さんの思うところだと思うんですが、対象となる事件についても伺わせてください。

 消費者契約事件と個別労働事件が対象ということなんですけれども、裁判所が選別、除去できる基準が極めて抽象的ではないでしょうか。また、これも法制審で議論があったんですけれども、サブリース問題みたいに、多額の借金をして建物を建てて一括で借り上げてもらう、しかし、借り上げてもらったけれども家賃が払われないといった案件については、建物を建てた者は消費者ではなく事業者になってしまいますよね。ですから、民事事件というのは多様なものでありまして、消費者というところでくくって外すのは大変難しいことかと思うんですけれども、この二つの事件類型を外しただけで問題の解決につながると考えていらっしゃいますでしょうか。

金子政府参考人 二つの事件類型については、初めから対象としないということで外しています。それ以外については、常にどんな場面においても対象になるというのではなく、事案の性質、訴訟追行による当事者の負担の程度、その他諸般の事情を考慮して判断するということになります。

鈴木(庸)委員 なかなかすぱっとした感じでお答えいただけないなというところは分かるんですけれども、この国の裁判制度自体が、弁護士費用保険の整備の遅れとか、賠償金の少なさとか、強制執行の困難さとかに問題があると言われている中で、こうした問題をそのままにして時間だけを早めようとしているという議論があるのも事実でございます。

 六か月というんですけれども、当事者は途中で通常裁判に移行もできますし、異議を申し立てれば移行できますし、さらには、争点が絞られた簡単な案件がなじむとされているんですけれども、今でもそういった案件というのは短時間に判決ないし和解で終了しているのではないかという指摘もあるんですが、改めて、何でつくるのかなと。そういったことを考えてくると、何で無理にこの制度を今、裁判を受ける権利を侵害する可能性があるにもかかわらずつくるのかという意味が分かりにくくなってくるんですが、もう一度意味を教えていただけますでしょうか。

金子政府参考人 争点が絞られた事件などについては、結果として、現在の訴訟手続の下でも早期に判決に至っているということはあると思いますが、当事者双方が迅速な判断を求めるというような場合でも、それが制度的には担保されているわけではありません。当事者双方の意見が一致している場合に限定して、そのような要請に制度的に応えるということに眼目があるものでございます。

鈴木(庸)委員 更に申し上げると、要するに、判決に異議を言って通常訴訟の審理となったときも、同じ裁判官が担当するわけですよね。そうすると、当然、当事者は異議を諦める可能性も出てくるわけですけれども、その場合、裁判を受ける権利が侵害されるということは考えないんでしょうか。

金子政府参考人 法定審理期間訴訟手続においても、これは訴訟手続でございます。通常の裁判の手続も訴訟手続でございまして、いずれも憲法三十二条の裁判を受ける権利が及びますけれども、異議があった後に通常の手続で審理、裁判をするに当たり、新たな証拠調べを追加して行うなどのこともあるということがあるということを考えますと、別に、更に加えられた証拠調べの結果も基礎とした上で判断をするわけですから、同じ裁判官がするということで何か裁判を受ける権利を侵害するというふうなことはないものと考えております。

鈴木(庸)委員 なかなかすぱっとお答えいただけないという事情も分かるんですけれども、どう考えても、やることの意義が見つけられないなという、私、法律の素人でも考えるところでございますが、本来、裁判の迅速化に異議を唱えるものではもちろんありません。ただ、裁判官の増員とか証拠手続の整備の方が、裁判の迅速化という視点においてははるかに効果的かとも思うんですけれども、その点はどう思われますでしょうか。

金子政府参考人 裁判の迅速化のための手法として、この法定審理期間訴訟手続以外の選択肢を否定するものでは全くございません。例えば証拠収集方法の拡充なども一つの論点だというふうに承知しておりまして、それはそれで今後の検討対象になっていくものと思いますが、それをもって、この法定審理期間訴訟手続が不要だということにはならないものと考えております。

鈴木(庸)委員 不要だということにはならないということなんですけれども、先にやるべきことはいっぱいあるなと本当に思います。

 制度に理解のある弁護士の存在というのは、これは本当に不可欠になってくるのかなと。突然、自分のところに何か千代田区とか港区あたりの有名な法律事務所の先生から訴訟が来て、これは半年以内でとやられると、ほとんどの人はあわわわわとなってしまうかと思うんですね。

 本当に制度に対して理解のある弁護士の存在というのは不可欠であると思うんですけれども、これは当事者双方に弁護士である訴訟代理人が選任されている事案に限定するべきなんじゃないかなとも考えるんですが、その辺りはいかがお考えでしょうか。

金子政府参考人 当事者双方に弁護士がついているということを基本に考えております。

 ただ、それと実質的に同視できるようなものがございますので、その場合に限定すると狭きに失すると考えて、今回は双方に弁護士がついているということを明文の規定で定めるということはしなかったというものでございます。

鈴木(庸)委員 当然、今申し上げたように、双方に訴訟代理人がつかないと、訳が分からないままに進んでいってしまうなというところがあるんですけれども。本人訴訟の場合にも認めるということなんですけれども、訴訟制度の知識とか経験のない人間ですと、この制度で適切に訴訟を進めるのはかなり難しいと思うんですね。結果的に、審理状況に応じた十分な主張ができないとか、必要な証拠を提出できないといったことも想定されると思うんですけれども、そうしたことを鑑みて、私のような一般の国民にこれからどういった形でこの制度を広報するとかという具体的な方法を考えていらっしゃいますでしょうか。

金子政府参考人 今委員が想定されているような御本人の場合は、この制度は活用されないというふうに思います。

 私が先ほど申し上げたのは、資格は必ずしもなくても、それと同等の能力を持っている、例えば組織内で法務部を持っているようなところであれば、弁護士がついていなくてもそれは同視できるだろう、そういう場合もあるのではないかということを申し上げております。

 一般の、法律知識がないような方が、弁護士などの訴訟代理人がついていないケースにこの制度を使うということは想定しておりません。

鈴木(庸)委員 済みません、私が不勉強だったら申し訳ないんですけれども、想定していないということは、ないという理解でよろしいんですか。今おっしゃった、企業法務をやっている方とか、実際の弁護士とか、そういう方がついていない場合、済みません、ちょっともう一度そこを御説明いただければと思うんですけれども。

金子政府参考人 こういう制度をつくるに当たって、どういう例外があるかというのを全て想起しておくというのが難しいんですけれども、基本形は弁護士がついているということです。あるいは、一定の事件であれば、司法書士である訴訟代理人がついているということです。

 それと同視できる程度の法律知識あるいは経験を持っている方がついていなければ、この制度は利用しないということになります。

鈴木(庸)委員 詰まっていないという理解をしたんですけれども、基本形と言われても、当然、応用形もあるわけで、なかなかちょっと分かりにくい制度だなということを改めて感じたところでございます。

 冒頭に申し上げたように、四十六歳の中年男が、例えば、この裁判を使ったり、IT化というところを考えたときに、大変分かりにくくなっておりますので、その点を是非是非、基本的にこれは反対です、私は。でも、その点を、もし進めるとしたら考慮していただいた上で、しっかりと制度をつくっていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 今回の民事訴訟法、デジタル化、IT化の改正法案でございますが、まず最初に、法務大臣にお尋ねいたします。

 今回の民訴法のデジタル化、改正の意義についてお伺いいたします。

古川国務大臣 お答え申し上げます。

 改正法案は、民事訴訟手続等の一層の迅速化及び効率化等を図り、民事裁判を国民がより利用しやすいものにすることを目的とし、その一環として、民事訴訟手続を全面的にIT化しようとするものでございます。

 改正法案は、民事訴訟手続を全面的にIT化するための仕組みとして、大きく分けて三つのものを定めております。

 具体的に申し上げますと、訴状等をインターネットを通じて提出することができ、相手方も裁判所のサーバーにアクセスをして送達を受けることができるという仕組み、ウェブ会議により口頭弁論を行うことができるとするなど、ウェブ会議等を利用しやすくする仕組み、訴状や判決書などの事件の記録を電子化し、当事者は自分の端末から裁判所のサーバーにアクセスして記録の閲覧、ダウンロードをすることができる仕組みを定めております。

 これらの仕組みを設けることによりまして、例えば、自宅や事務所からの申立てが可能となるなど、当事者の利便性が向上し、また、訴訟手続の迅速化、効率化が図られ、社会全体のコストが低減するメリットがあるものと考えております。

阿部(弘)委員 ありがとうございます。

 このデジタル化については、世界の潮流といいますか、そして、裁判の迅速化、様々な関係者の、非常に便利になるということで、とても意義があると思っております。

 しかし、ウクライナ侵攻を契機に、非常に今、サイバー攻撃が各団体に、組織に及んでおります。

 デロイトトーマツサイバー社の調べによりますと、日本も千三百社のサイバー攻撃の被害を受けている。その中に、法律事務所を中心とする専門サービスも百四十六社、製造業に次いで多い数でございます。

 そういう外部からのサイバー攻撃に対して、先ほど、専門委員を採用したという答弁を質問者に対していただいておりますが、オンライン裁判、特に、裁判所における、あるいは裁判におけるセキュリティー対策について、どのような対策を考えておられるのか、法務省にお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 改正法案は、オンラインによる訴えの提起や訴訟記録の電子化を実現するための所要の規定を整備するものでございます。

 もっとも、民事訴訟では、当事者のプライバシーや営業秘密などに関わる事項が取り扱われます。仮にシステムのセキュリティーが十分でない場合には、このような情報が漏えいするおそれがあり、ひいては、国民が裁判手続を安心して利用することができなくなってしまうことになりかねません。そのため、システムの構築に当たっては十分なセキュリティー水準を確保することが極めて重要であると考えております。

 具体的なシステムの設計は必要な法改正の後に裁判所において行われることになると承知しておりますが、十分なセキュリティーを確保したシステムとなるよう、必要な検討がされるものと認識しております。

阿部(弘)委員 そのようにお答えになるのはもちろん正しいことでございます。しかし、日々こういうサイバー攻撃というものが進化しているということは、皆さんも実感として感じてあるところだと思います。対策を打てば、次にはまたそれを超えるランサムウェアやマルウイルスの攻撃を受けていく、ファイアウォールをつくっても、更なる進化を遂げたウイルス攻撃が攻めてくるということです。

 中央省庁も、ファイル共有サービスを導入して、そのセキュリティーの番号が送られてきて、それで、共有番号で共有ソフトを開けていって、そして使用するという制度、しかし、これを突破されて、それがウイルスに感染してしまったから、この制度をやめましたということになったのは、皆さんの記憶に新しいところだと思います。

 今後とも、こういう専門業種、専門サービスは、様々あるわけでございます。アメリカの大手メディア系事務所では、レディー・ガガさんやあるいはマライア・キャリーさんのデータが闇サイトに漏れて、そして白日の下にさらされたというウイルス攻撃も受けているわけでございます。

 この件に関しては、安全性の高い仮想私設網、VPNなどに頼ることも想定されるわけでございますが、もう一度、攻撃も進化するわけでございますから、その進化する攻撃に対してもしっかりと対応していただけるのかどうか、お答えいただけないでしょうか。

金子政府参考人 委員御指摘のとおり、サイバー攻撃をしかける側の技術も日に日に進んでいるんだろうと思います。その辺も十分に考慮した上で、必要なセキュリティーのための制度構築に努めていきたい、裁判所の方がそのようなことができるように協力してまいりたいと思っております。

阿部(弘)委員 続いて、弁護士事務所とのやり取りにおいてのセキュリティーについてお伺いいたします。

 弁護士事務所も、当然、裁判においては裁判資料を裁判所の方に提出するわけでございます。裁判所やあるいは行政機関がしっかりセキュリティー対策をしていても、弁護士事務所によっては、小さな個人弁護士事務所から大きな弁護士事務所まであります。先ほどの話は、大きな弁護士事務所もサイバー攻撃を受けて業務が行えなくなったような事実もあるわけでございます。もちろん、弁護士さんのITリテラシーといいますか、あるいは裁判所のITリテラシーもあると思いますが、しっかりとその辺を、このデジタル化に向けて、どのようにウイルス対策、それとIT化の訓練といいますか、それが広く行き渡るように考えているか、お答えいただければ幸いです。

金子政府参考人 委員御指摘のとおり、法律事務所をターゲットにしたサイバー攻撃が増加するおそれも予想されるところでございます。

 法律事務所は、各種プライバシーや営業秘密の情報を取り扱うことが少なくなく、その情報の流出を防ぐことが重要な問題であるというふうに承知しております。

 各種法律事務所では、適切にその情報を管理すべく適宜対応を取っていると解されますが、日本弁護士連合会においては、弁護士の情報セキュリティー対策の取組を支援することを目的として、弁護士及び法律事務所向けに弁護士情報セキュリティガイドラインを策定するとともに、サイバーセキュリティーに関するセミナーを開催するなど、弁護士、法律事務所における情報セキュリティーの確保に向けて適切に対応しているものと承知しております。

 また、日本弁護士連合会においては、民事訴訟手続のIT化等を踏まえ、今後、情報セキュリティーに関する会規、会則の制定に向けて検討を始めているものとも承知しております。

 法務省としても、このような実務の動向を注視してまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 そうだと思います。

 しかし、今は、PDFにウイルスが感染していて、そしてPDFを裁判所などに送ってくる。すると、多分、今の最新鋭のチェックシステムがあったら、それはアラームが鳴るんだと思いますが、そういうシステムについてはいかがですか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所では、今般の民事訴訟法改正に先行しまして、裁判書類の電子提出を一部実現するため、民事裁判書類電子提出システムというシステムを開発しまして、今月から一部の庁で運用を開始することを予定しておるところでございます。

 このシステムでは、委員御指摘のような観点も踏まえまして、マルウェアなどが検出された場合には、当該電子データのアップロードを拒絶する仕組みを備えております。

 今般の改正法案を踏まえて新たに開発します本格的なシステムは、法律が成立した後、仕様を確定して開発に入ることになりますけれども、こうした先行運用の成果等も踏まえた上で、万全のセキュリティー対策を講ずることとしたいと考えております。

阿部(弘)委員 様々なサイバー攻撃、想像あるいは心配すれば切りがないわけでございます。

 続いての質問に移らせていただきます。データの改ざんを防ぐことについてお伺いします。

 データはそれぞれ、メタデータというものが、作成あるいは送信、あるいは送信日時など様々な、ファイルのプロパティー情報や電子メールのヘッダー情報などがあるわけでございますが、これらを熟練者においては容易に変更し、データの改ざんが、提出時はもちろんですが、提出した後もサイバー攻撃などでできることも考えられます。これらの対策についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほども申し上げたところですけれども、法改正後に開発を予定しております本格的なシステムは、これから開発に入るものでありますし、セキュリティー対策という性質からしましても、具体的な対策の内容についてお答えするのは難しいところですけれども、政府におきましては、政府機関の遵守すべきセキュリティーに関する各基準が定められておりまして、その中で、例えば、電子データを暗号化して、これにアクセスすることのできる者を制限するですとか、あるいは、電子データにアクセスがあった場合には、その証跡、ログをしっかり記録するなどの内容が定められていると承知しておりますので、これらの内容も踏まえて必要な対策を講じてまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 かつて法務省も、検察官の方が証拠データを改ざんしたという歴史もございます。そういった場合に、フォレンジック、これをどのように、法的な証拠を見つけて鑑識作業を行うということも場合によっては必要になってくるわけでございます。その点についてもお願いできますでしょうか。質問いたします。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、まさに委員御指摘のような、フォレンジックを行うというために有力な情報、情報というか証拠になりますものが、先ほどの、ログをきちんと記録しておくということが出発点になるというふうに理解をしておるところでございますので、こちらの対策等々を講じてまいりたいというふうに思っておるところでございます。

阿部(弘)委員 大都市の裁判所のみならず、地方の裁判所もこのような対策が取られることは十分に考えられますので、あとは、それに携わる皆様方がITにどれだけ修練するかによってくるんだと思います。そういうことを怠れば、捏造したデータ、捏造合戦で裁判が行われるということはあってはならないことでございますので、是非とも対策をよろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 リモートで証人尋問、尋問といいますか、様々な意見を聞くことがございます。従前は、出廷していただいてそれぞれの方々が話を聞く、話を聞けば、その人の口ぶりや、あるいは身なりや態度などで様々なことが得られる情報が、リモートでは、私は精神科の医者として、情報が少なくなっていくんじゃないかというふうに思うわけでございます。

 その点は、リモート尋問、しっかりとやっていただけると思いますが、優位性についてお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、証人尋問について、ウェブ会議を活用することができる場面を拡充し、当事者双方に異議がない場合であって裁判所が相当と認めるとき等にもウェブ会議で証人尋問を行うことを認めることとしております。

 もっとも、委員御指摘のとおり、証人尋問を行う場合には、通常の証人の証言内容のみではなく、その表情や声、動作や態度等も証言の真実性を判断するに当たり重要な要素となります。

 改正法案では、証人が受訴裁判所に出頭することが困難である場合や、その証人をウェブ会議を利用して尋問することにつき当事者の異議がないなどの事情があり、かつ、裁判所が相当と認めるときに限り、ウェブ会議を利用した証人尋問を実施することができるとしております。

 そのため、裁判所が証人の様子を直接面前で確認しながら証言の信用性を判断する必要があると考える場合には、現在と同様に、証人が法廷に出頭しての尋問が行われることになると考えられます。

 これに対して、当事者双方が信頼する専門家の証人尋問のように、その証言内容に重点が置かれ、その信用性をその表情等から吟味する必要性が低いと考えられる場合には、迅速な審理を実現するために、ウェブ会議を利用して証人尋問を行うことが相当と認められることがあり得るものと考えているところでございます。

阿部(弘)委員 医療の世界ではまだまだ、リモート診察ということよりも、直接医師と患者さんが面談し、そして触診し、視診し、問診し、様々な情報を得ることで病気の診断に近づいていくということですので、決して、会うことよりもリモートの方がいいというふうなことはないわけでございますので、是非ともその点も御留意いただきたいというふうに思っております。

 最後の質問をさせていただきます。

 裁判当事者から裁判記録の閲覧ができるわけでございます。これはまた同じような質問になりますが、今度は裁判記録が、メールで申請をする、当然アクセスするわけでございますから、その点のセキュリティー対策も同様なのかどうか、お答えいただければありがたいです。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 現状、まず、先ほど申し上げました民事裁判書類電子提出システムというシステムを開発して運用を開始するところでございますけれども、こちらのシステムには、提出をする当事者の方とそれから裁判所の職員がそれぞれログインできるというシステムになっております。

 今後開発を予定しております本格的なシステムにつきましても、同じような形で、当事者の方も含めてシステムにログインするということが当然できるということになりますし、そのセキュリティー対策も同様の形で講じていくということを予定しております。

阿部(弘)委員 では、終わります。

鈴木委員長 次に、守島正君。

守島委員 日本維新の会、守島です。

 早速質疑に入りたいと思います。

 今回の民訴法を改正する法律案においては、主目的は、民事裁判のIT化等を行うことで迅速化、効率化を図り、国民に利用されやすい制度を目指すものと考えている次第ですが、その上で、まず、先日の参考人質疑を聞くに、日本の裁判におけるIT化に関しては、遅いというのと、かつ不可避という意見が多かったと思いますので、課題はあれど、これは進むしかない道かなというふうに思っています。

 ちなみに、世界銀行のビジネス環境評価における各国の比較を見るに、我が国は裁判手続の質を含めた契約執行分野の評価というのが低くて、それは、事件管理や裁判の自動化、IT化の評価が大変低かったことによると解されているようなんですけれども、特に山本参考人なんかは、平成の前半は当時の技術を使って前向きに改革というのをやってきたけれども、後期はちょっと停滞していたんじゃないか、そういう話もありました。

 その理由というのを教えてほしいのと、例えば、平成十六年の民訴法改正によってオンライン申立て等が可能になりましたが、こうしたインターネットの試験的運用というのは過去余り利用されなかったという認識があるんですけれども、そうした背景を教えていただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 我が国における民事訴訟手続のIT化につきましては、平成八年に成立した現行民事訴訟法により、民事訴訟手続における電話会議システムやテレビ会議システムの利用が始まり、特に電話会議システムの利用は実務上広く普及しております。

 また、平成十六年の民事訴訟法改正により、インターネットを用いた申立て等を可能とする規定が設けられました。

 これを受けて、平成十八年には、支払い督促手続についてインターネットを用いて申立て等を可能とする督促手続オンラインシステムが導入されるなど、利用者の利便性を向上させるためのITの活用が図られてきました。

 このように、平成八年、十六年の民事訴訟法改正においてITの活用が進められ、実務上は一応の対応が図られてきたものと認識しております。

 もっとも、平成十六年以降は、インターネットを用いた申立て等を可能とする試験的な運用が一部の裁判所の一部の手続で実施されたものの、訴訟記録が紙媒体によるものとされたままであり、当事者の利便性の向上に乏しかったことなどからその利用が進まなかったこともあり、民事訴訟手続のIT化を促進する法改正がされてこなかったというふうに位置づけられるところでございます。

 もっとも、近時、ウェブ会議が急速に普及するなど、ITを取り巻く社会の状況は大きく変化し、諸外国においても欧米等を中心に民事訴訟手続のIT化が進められていること等を踏まえ、我が国においても民事訴訟のIT化に向けた検討が進められ、今般、民事訴訟手続のIT化を実現する改正法案を提出したものでございます。

守島委員 ありがとうございます。

 今の説明では、対象が一定、地域とかも含めて限定的であったり、データと紙のパラレルであったりということが要因となったということで、ニーズを余り感じてもらえなかったというか、利便性を感じてもらえなかったということに起因していると思うんですけれども、今回、法改正がたとえ成ったとしても、こうした根本的な問題を解決しないと、利便性を感じてもらえないと、問題解決にはつながらないということも考えられるので、システムをつくる上で、限定的なものにならず、制度の定着に至るまでしっかりと目標を定めたデジタル化というのを推進してほしいと思っているんですが。

 例えば、諸外国においては、民事訴訟法に限らず、全てインターネット上で裁判手続をすることができる、インターネット裁判所の設立なんかも本格的な話がされていて、IT化が進んでいるんですけれども、やはり、日本におけるそういうIT化導入の議論というのは、そうした先進国の状況から比べると遅れているのかなというふうに言わざるを得ないと思いますが、実際に海外の状況を簡単に教えてください。

金子政府参考人 委員御指摘のとおり、諸外国においては、民事訴訟手続等のIT化が進められているところでございます。

 ここでは、アメリカ、ドイツ、韓国の例を御紹介します。

 アメリカでは、連邦最高裁判所を除く全ての連邦裁判所におきましてインターネットの利用が可能であり、平成三十年には、弁護士に代理されている当事者は、原則としてインターネットの利用が義務づけられることとなっております。

 ドイツでは、平成三十年にインターネットの利用が可能となり、令和四年一月一日以降は、弁護士についてはインターネットの利用が義務づけられております。

 韓国では、平成二十三年から、民事通常事件においてインターネットの利用が可能となり、平成二十五年からは家事事件、行政事件について、平成二十六年からは破産、再生事件について、平成二十七年からは執行事件、非訟事件について、それぞれ申請の対象が拡大されていると承知しております。

守島委員 ありがとうございます。

 各国進んでいるといいますし、アメリカにおいてはもう原則論がインターネットになっているということで、かなり先進国においてはIT情勢は日本より進んでいるというふうに思うんですけれども、先ほど僕から話した、インターネット裁判所などといった記述とか意見を見るに、これは今も回答でありましたように、民訴法以外の部分でのIT化というのも進んでいるので、この点に関しては是非参考にしていただきたいなというふうに思っています。

 国内においては、議論を見てきたんですけれども、未来投資戦略などを経まして、内閣官房に裁判手続等のIT化検討会というのが設置されて、その中で、裁判手続等のIT化に向けた取りまとめというのが公表されました。その方向性としては、裁判手続等の全面IT化を目指すべきとか、電子情報によるオンライン提出へ極力移行し一本化していくというふうにされておりまして、訴訟記録について紙媒体を併存させないことが望ましいということまで書かれておりました。

 それが当面の目標というのは理解しているんですが、今回の法改正では、e提出の義務化は訴訟代理人に絞られていまして、ある意味、まだ時代的にも道半ばというのは仕方ないと思うんですけれども、道半ばという状況を理解しつつも、現段階で落としどころをつけた理由と今後の展開について教えていただけると幸いです。

金子政府参考人 お答えいたします。

 インターネットを用いた方法により訴えの提起等をすることができるようになった場合には、訴訟記録が電子化されることと相まって、書面管理等のコストを削減することができ、さらには、訴訟手続の迅速化、効率化が図られることとなって、民事訴訟に関する社会全体のコストが削減されることとなります。このような観点からすれば、訴えの提起等は、可能な限りインターネットを用いた方法により行われるのが望ましいと考えられます。

 改正法案において、弁護士等の法律専門職にある者にインターネットを用いた申立て等を義務づけることとしたのは、これらの者は職務として民事訴訟手続に関与する者であるから、訴訟手続の迅速化、効率化に率先して取り組むことを期待することができ、また、一般に、インターネットを用いた申立て等に対応する能力を十分に有しているものと考えられるためであります。

 これに対して、弁護士等以外の者にインターネットを用いた申立て等を義務づけることとした場合には、現状では、これに十分に対応することができない者が一定数存在するものと考えられ、これらの者の裁判を受ける権利にも影響を及ぼすことが危惧されるところでございます。

 そこで、改正法案では、弁護士等以外の者については、インターネットを用いて申立て等をすることができるようにしているものの、これを義務づけることまではしていないということになります。

 もっとも、先ほど述べたインターネットを利用するメリット等を踏まえると、弁護士等以外の者においても、広くインターネットを用いて裁判所に対する申立てが行われるようになることが望ましいところでございます。

 法制審議会から答申された要綱でも、最高裁判所規則において、申立てをインターネットを用いた方法によりすることができる者は、申立てをインターネットを用いた方法によりするものとする旨の訓示規定が設けられることが提案されているところでございます。

 法務省としましても、インターネットによる申立てが広く行われるように、関係機関等と連携して必要な環境整備に努めてまいりたいと考えております。

守島委員 最初の問いでもありましたように、やはり紙とデータのパラレルということではその効果をフル発揮はできないというのは事実ですが、今おっしゃるように、裁判を受ける権利というのはひとしくあるので、それは状況を見て、発展的に、原則オンラインに少しずつでも移行していければいいかなというふうに思っているんですが、最終目標はあくまで裁判手続等の全面IT化でありまして、紙媒体とデータの併存というのは、段階的にこれも解消していく話なのかなというふうに思っているんです。

 その一本化もそうなんですけれども、今、e提出の次のステップとして考えるべきは、裁判データの活用というふうに推定します。

 裁判データの活用に関してですが、どのような範囲で活用できるかという検討がされているのか、あれば教えていただきたいのと、例えば、判決のオープンデータ化などは、参考人の質問とかを聞くと、むしろ行政側とか裁判所が期限を決めて実証実験したりした方がいいんじゃないか、トライした方が導入に向けて進むんじゃないかという意見などもあったんですが、そうした考えとか検討というのは今法務省の方でされているのか、教えてください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の民事判決のデータでございますが、社会全体で共有、活用すべき重要な財産でありまして、より広く国民に提供されるようにすることが重要であると認識をしております。

 現在、民事判決データを集約しデータベース化する要望が高まっていること等を踏まえまして、公益財団法人日弁連法務研究財団主催のプロジェクトチームにおきまして、民事判決データの利活用等に当たり検討すべき課題や対応策について実務的協議が行われておりまして、法務省及び最高裁判所もオブザーバーとしてこのプロジェクトチームに参加しているところでございます。

 検討の過程におきましては、多数の判決に効率的な仮名処理を行うにはAIツールの活用が必要であるとされまして、現在、こうしたツールの実証実験を踏まえて、その改良を重ねつつ、必要となる人員体制を含めて、適切な仮名処理の在り方について検討が進められているところでございます。

 法務省といたしましては、こうした検討の成果を踏まえまして、データベース化の早期実現に向けて必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

守島委員 ありがとうございます。

 期限的な目標というのは聞かれなかったんですが、日弁連さんたちもプロジェクトチームをつくって検討しているということで、それは前向きにサポートをしてほしいと思います。これも、データの活用ということに関しては、弁護士さんたちにとっても有用なものというふうに考えているので、それは、業界へのプッシュも含めて、具体的に進捗するように後押ししてほしいというふうに思います。

 ちなみになんですけれども、こうした裁判手続のデジタル化とかデータ活用を図るのであれば、これは一気にやった方がいいというのが前回の参考人の意見で何個かありました。そういう見立てだったんですけれども、本改正案では、施行されて後、五年を経過した場合に、改正後の施行状況について検討し、必要があれば所要の措置を講じるとされている中で、五年の検証期間自体長いんじゃないか、今のテクノロジーを考えたらという意見も実際ありました。

 こうした意見も踏まえて、五年を待たずに、例えば、電子決済の方法であったり、e提出の義務化の範囲とか、裁判の審理期間を定める手続のケースごとの可否とか、個別具体の話はたくさんあると思うんですけれども、改正案における細部の規定などを途中で見直すというか、それを検証するということは、その余地があるのかも含めて聞きたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 本法律案には、委員御指摘のとおり、改正法の施行後五年を経過した場合の検討条項がつけられております。これは、本法律案の施行後も、情報通信技術や社会経済情勢の進展や変化を踏まえ必要な見直しを検討する必要があることによるものですが、他方で、本法律案による改正は民事訴訟手続全般に及ぶ相当大規模なものであり、その見直しを検討するには相応の期間の運用実績を考慮する必要があると考えられます。そこで、五年の経過措置ということにしているものでございます。

 もっとも、本法律案の適切な運用を図るためにも、本法律案の成立後にその運用状況を的確に把握していくことは必要であると考えておりまして、法務省としましても、本法律の施行後、関係機関や関係団体と連携し、本法律の施行後の具体的な運用状況を適切に注視してまいる所存でございます。

守島委員 もちろん多岐にわたることは重々認識した上で、施行後五年となると、今の技術進化からするとやはり時代遅れになっていく可能性はもちろんあるので、全体観はちゃんと施行状況を見ながら精査していくということは非常に大事だと思いますし、今何かしらの明言ができるわけじゃ、法改正前なのでできないと思いますけれども、テクノロジーの進化も見つつ、運用できることは運用していってほしいなというふうに思っております。

 今回、法改正が成ったとしても、実運用面に関しては、実際には裁判所規則等でその手続が多く定められていることを鑑みますと、ここの定期的な見直しはこれからも必要になりますし、そのためには技術水準を追いかけられる人材の確保とか育成が必要になる。これは別所参考人がお話ししていましたし、先ほど鈴木委員からの質問でもあったんですけれども、最高裁の人材確保に関する質問、重なりますが、考え方を教えていただければ幸いです。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所といたしましても、民事裁判手続等のIT化の検討、準備が本格化する中で、IT人材等の専門的な知見や経験を取り入れていくことは有用であるというふうに考えております。

 最高裁判所において、令和三年には合計三名、令和四年四月に一名のIT人材を採用し、更に本年五月には二名の採用を予定しているところでございます。

 今後とも、裁判所におけるIT化の検討状況、技術水準や技術動向などを踏まえながら、必要に応じて適切な体制を確保していくよう検討に努めてまいりたいと思っております。

守島委員 必要に応じてしっかり確保するということなんですが、状況に応じた採用というのも大事だとは思っているんですけれども、先ほど鈴木委員の答弁でいうと、採用する方も任期付の職員であったり臨時職員ということなので、どちらかというと、管理職など、IT人材の登用に当たっては、長期的なビジョンを描いてしっかりと確保というか、採用計画というのを立てていただきたいと思いますし、その知識も、やはり共有知というか、裁判所にストックしていかないといけないと思いますので、その点をお願いしたいというふうに思っています。

 続きまして、IT化から移りたいんですけれども、いわゆる期間限定裁判、当事者の申出による期間が法定される審理の手続に関してなんですが、この手続を今回導入する前提として、審理期間の見通しが立たないことが裁判を利用する上でのハードルになっていると法務省さんの説明ではあったんですけれども、それって定量的に言えるんでしょうか。これで訴訟提起が増えるという根拠があるのかというのをちょっと聞きたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年に実施された民事訴訟利用者調査におきましては、裁判が始まった時点で、裁判が終わるまでにどれくらいの時間がかかるか事前に予想がついていたかとの質問に対し、全く予想がつかなかったとの回答が五六・四%でございました。また、同調査においては、裁判をちゅうちょした気持ちがあったかとの質問に対して、はいとの回答が四九・四%であり、その理由として、裁判は時間がかかると思ったからが当てはまるとの回答が七八・四%でございました。

 法制審議会の部会におきましても、紛争解決までに要する期間の予測可能性が低いことが訴訟による紛争の解決をちゅうちょさせる要因になっており、審理期間の予測可能性を高めることには大きな意義があるとの意見や、その審理期間が適切となるようにする必要があるなどの意見が出されたものと承知しております。

 これが導入されたことにより、どの程度の訴えが増えるかということについては、現段階ではお答えすることが困難であります。

守島委員 そうなんですね。今、見通しがつかなかったという意見であったり、ちゅうちょしたという意見があったんですけれども、これは裁判手続に入った人が言っていることであって、裁判手続に入らなかった人というのはこの統計というかアンケートの外数になってしまうので、審理期間を定めればイコール訴訟提起が増えるかということを断定するようなアンケートとは言い切れないのが実情だとは思うんですけれども、ニーズとしてはそういう、審理期間の見通しというのを求める声が多いというのは理解いたします。

 ちなみに、反対意見としては、先ほど来ありますように、本制度は、近代訴訟制度の原則である、主張、立証が尽くされたときに審理終結するという趣旨に反するというもので、ひいては憲法における裁判を受ける権利の侵害につながりかねないというような強い見解もありまして、それに加えて、裁判期間をこのようにあらかじめ定める制度はどこの国も採用していないということがこの間の質疑で明らかになっている次第です。

 このどの国も採用していない制度を実施するにおいて、審理が尽くされていないのではないかということを始め、各種の懸念が示されていることに関しての対応策をちょっとお聞きしたいと思います。

金子政府参考人 この手続では、審理期間が法定されることにより訴訟の当事者に不当な弊害が生じないようにするため、各種対応策を講じております。

 まず、この手続では、当事者において訴訟活動を集中的かつ迅速にする必要が生ずるので、証拠の偏在や経済力に格差がある事件類型はこの制度の前提を欠くと考えられます。そのため、消費者契約に関する訴え及び個別労働関係民事紛争に関する訴えについてはこの手続を利用することができないこととしております。

 これらの類型に当たらないものであっても、事案の性質、訴訟追行による当事者の負担の程度その他の事情に鑑み、法定審理期間訴訟手続により審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正な審理の実現を妨げるときは、この手続は開始しないこととしております。そのため、例えば訴訟代理人が選任されていないケースは、基本的に、適正な審理の裁判を妨げるものと認められるときに該当し、この手続は開始しないことになります。

 また、当事者の一方が審理期間の限定を望んでいる場合でも、これにより他方当事者の訴訟活動が不当に害されることがないよう、この手続は、当事者の双方がその利用を希望する場合にのみ利用することができることとしております。

 さらに、一旦この手続が開始された場合でも、当初予期していた進行とは異なり、この手続で法定された審理期間では十分な主張、立証をすることができない事態が生ずることもあり得ます。そのため、当事者の一方は、相手方の同意がなくとも通常の手続での審理を求めることができることなどとしているほか、判決に対しても異議を述べて、通常の手続での審理を求めることができることとしております。

 以上のとおり、この制度においては、御指摘のような問題が生じないよう様々な配慮をしており、十分な審理がされないまま判決されるという事態は生じないものと考えております。

    〔委員長退席、井出委員長代理着席〕

守島委員 僕も鈴木委員と一緒で、四十を超えた、弁護士でもない素人なんですが、僕自身、変な理由で訴えられたことがありまして、余りにも不当なので、それは弁護士をつけず自力でやって、弁護士なしで勝訴というか請求棄却をかち取ったことがあるんですけれども、そうしたことも踏まえて、個人的には、訴訟代理人なしの裁判でも審理期間を見通せる裁判はあっていいというふうに、そうしたケースもあるので、そういうケースもあるというふうに個人的には思っています。

 もちろん、裁判の審理期間を定めることに関しては、批判というのが多いのは理解しているんですけれども、通常の裁判においても被告の合意があれば一〇〇%認諾ということもできることを考えると、当事者同士の合意がある前提で審理期間を限定すること自体が大きな問題になるとは、僕はそういうふうには解さないです。

 加えて、通常の訴訟手続に戻れるという可逆性を有することに関して、法改正に当たっては、否定的な立場からの指摘もこれは一定考慮されていると思います。なので、るる課題はあるものの、裁判の迅速化というのは重要なテーマでありまして、もちろん、裁判官を増やすということも大事なんですけれども、本制度も、柔軟な裁判制度の一ツールとして活用するには有用なんじゃないかなというふうに思っています。

 ちなみに、これから、ITとかデジタル化というのがより進んで、オンラインによる審理が尽くされていく機会というのが増えると思うんですけれども、その先には、より広義の意味でデジタル裁判というのが広がっていく未来を想像するんですけれども、そうなれば、現状の裁判所の所管とか土地管轄に縛られず、訴訟数と、裁判体制の需給ギャップみたいなものが解消されたり、より専門性が高いところ一か所に集約するといった、そういった今の枠組みにとらわれないビジョンというのも描くことが可能なんじゃないかなというふうに思っています。

 この近未来における裁判所の管轄というのを聞きたいんですが、今日、大臣がいないので副大臣にお願いしたいんですが、政治家として、今、足下の規則に縛られず、未来をちょっと描いていただけたら幸いなんですが、よろしくお願いします。

津島副大臣 守島正委員にお答え申し上げます。

 土地管轄規定の在り方について、本法律案の提出に当たってその点についても検討されたものの、本法律案ではこの点の改正は行わないものとしたものです。

 これは、ウェブ会議による手続への関与が可能になった場合であっても、やはり当事者が裁判所に出頭し、裁判官の面前で自分の言い分を述べたいとの意向を有すること、これは十分に想定されることでございます。このような意向を尊重する必要があると考えられたことによりまして、今回は見送るということになったわけです。

 このように、土地管轄の見直しというのは、裁判所へのアクセスといった国民一般の利便性等にも関わる問題であって、ある意味とても深い論点なんですね。

 したがって、社会における情報通信技術の進展の状況や、本改正によるウェブ会議による手続の利用の状況といった本改正後の民事訴訟手続の運用状況、裁判手続の利用者の意向を踏まえながら、慎重に検討していくべきものであろうと私は考えてございます。

守島委員 副大臣、ありがとうございます。

 もちろん、足下は、現地に行ってという当たり前のニーズを充足することが大事ですし、それに意見があるわけではないんですけれども、未来を見据えると、そういう状況も、デジタルの進展とともに国民のニーズというか環境も変わってくるかもしれないので、そういった未来を見据えて、どういう姿が効率的な裁判所の在り方なのかということも、政治家じゃないとなかなかそういうビジョンというのは描きづらいと思うので、是非お願いしたいと思います。

 以上、網羅的に質問させていただきましたが、ちょっと細かい論点についても聞いていきたいと思います。

 次に、住所、氏名等の秘匿制度について聞きたいんですが、これに関しても、DVとか犯罪被害者が訴訟当事者という可能性を踏まえると、これは必要な制度だと認識するんですが、例えば、裁判所に秘匿申立てを行うケースにあっても、秘匿決定前に出された情報に関しては、これはやはり遡って秘する必要があると思うんですけれども、既に出されている情報に対する対応策はどうするのか教えてください。

金子政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、秘匿決定があった場合には、秘匿事項が記載された秘匿事項届出書面の閲覧等、秘匿決定に加えて閲覧等の制限の決定があった場合には、秘匿事項届出書面以外の訴訟記録中の秘匿事項及び秘匿事項を推知することができる事項が記載された部分の閲覧等をすることができる者を秘匿対象者に限る旨の決定を求めることができることとしております。

 また、秘匿決定及び閲覧等の制限の決定がされる前であっても、秘匿決定の申立て及び閲覧等の制限の申立てがあった場合には、その申立てにつき判断がされるまでの間は、秘匿対象者以外の者については、申立てがあった秘匿事項及び秘匿事項を推知することができる事項とされている部分の閲覧等を認めないこととしております。これにより、決定がされる前であっても、その保護を図ることができることとしております。

守島委員 決定前の情報もやはり漏えいしないことが大事だと思うので、是非、手続中のものもしっかりと秘してほしいと思うんですけれども。

 関連して、これは、秘匿をすることになると、もちろん裁判所にも守秘義務が負わされることになると思うんですけれども、こうした情報が漏えいしないための対策というのをどう考えているのか、教えてください。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 秘匿情報は、それが相手方に知られることによって秘匿対象者が社会生活を営むのに著しい支障が生ずるおそれのあるものでございまして、御指摘のとおり、外部に流出させるようなことはあってはならないと考えております。

 現行法下におきましても、このような秘匿情報が裁判書類に記載されることはあり得るところでございますけれども、これを外部に流出させるようなことがないようにするために、現在の運用では、まずは、書面等を提出する当事者において、手続遂行上必須ではない秘匿情報を記載、提出しないようにしていただくようにお願いしているところでございます。

 そして、訴訟記録上に現れることとなった秘匿情報については、訴訟記録のどの部分に秘匿情報が記載されているかを最もよく知る当事者において秘匿情報の記載箇所を特定していただきまして、これを裁判官も含めた関係職員間で共有して、外部に流出させることがないように注意深く管理しているところでございます。

 今回の改正法案においては、現在先ほど述べましたような方法によりまして運用で対応しているものが制度化されるなどしておりまして、より確実な取扱いになるものと考えておるところでございます。改正法の施行後においても、これまで同様に秘匿情報の適切な管理に取り組んでまいります。

守島委員 制度構築後のことが大事だと思うので、是非しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 次に、人事訴訟、家事事件手続のIT化に関して、これはウェブ会議による期日参加で、和解、調停による離婚成立を可能とする仕組みの創設なんですけれども、実ニーズとしては、実際に顔を合わせたくないということはあると思いますが、とはいえ、離婚などの調停事件においては本人の真意確認が必要とされるので、この確認方法も踏まえ、ウェブ化に際する問題がないのか一応確認したいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 現行制度の下でも、離婚等の調停事件において、調停の途中の協議の期日につきましては、既に一部の家庭裁判所において、ウェブ会議を試行的に実施され、家事調停手続の特性も踏まえつつ、適切に運用されているものと承知しております。

 裁判所においては、改正法案の成立後は、このような現行制度下におけるウェブ会議の実施の結果によって得られた知見等を踏まえながら、離婚に係る和解や調停の成立の場面においても、ウェブ会議による離婚意思の確認が確実にされるように運用されるものと考えております。

    〔井出委員長代理退席、委員長着席〕

守島委員 ありがとうございます。

 秘匿制度とか家事事件のIT化なんかは、安全な生活を送る上では大事なことになってくると思うので、肯定的に考えたいんですが、るる指摘した問題はしっかりと対応していただくようお願いします。

 最後も確認なんですけれども、今後ますますテクノロジーを用いた裁判を広げていくに当たり、自由心証主義というものとバーターの間柄になってくると思うんですけれども、根源的に、オンラインによる審理に関しては裁判官の心証を形成するのに影響を与える可能性があるとも感じるんですが、そうした心証への影響をこの改正案ではどう配慮しているのか、あれば教えてください。

鈴木委員長 金子民事局長、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

金子政府参考人 改正法案では、ウェブ会議による口頭弁論の期日を行うための要件は、裁判所が相当と認めることと当事者の意見を聞くことです。

 これに対しまして、ウェブ会議による証人尋問を行うための要件としては、証人が裁判所に出頭することが困難な場合や当事者双方に異議がない場合等であって裁判所が相当と認めることとしており、ウェブ会議による口頭弁論と比べて厳格なものとなっています。

 これは、証人尋問を行う場合には、証人の証言内容のみではなく、その表情や声、動作、態度等も証言の真実性を判断するに当たり重要な要素となることから、相手方当事者の反対尋問を行う権利にも配慮し、ウェブ会議を利用することができる場面を限定したものです。

 また、ウェブ会議によることにつき当事者双方に異議がない場合であっても、裁判所が証人の様子を直接面前で確認しながら証言の信用性を判断する必要があると考える場合には、裁判所は、相当と認められないものとして、証人に現実の出頭を求めるというような運用がされることが想定されております。

鈴木委員長 簡潔にお願いいたします。

金子政府参考人 このように、裁判所は、ウェブ会議による会議を利用しても裁判官の心証形成等に支障がないと認められる場合に限りこれを行うこととして対応しているものでございます。

守島委員 るる指摘しましたが、IT化、デジタル化はもう不可避なものなので、課題にはしっかり、解決しつつ、僕たちも建設的な議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、東国幹君。

東委員 北海道六区選出、自由民主党の東国幹でございます。初めての質疑なものですから、どうぞよろしくお願いします。

 ところで、津島副大臣、ポーランドのお務め、本当にお疲れさまでございました。

 ロシアの侵攻、心を痛める毎日でありますけれども、やはり、国際政治においても法の支配、そういったことが醸成されるような世界であってもらいたい、これを願うばかりであります。

 法治国家の我が国においても、手続法として重要な民事訴訟法の改正でございます。順次質問をさせていただきますが、諸先輩の質疑をお聞きいたしまして、重複はなるべく避けようとは思いながらも、重複があるかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 先月の参考人質疑において論点が分かりやすく表されたものと思うんですけれども、その質疑があった論旨を基に、法務省がどのように考えて、どのような考え方でこれを進めていくのかを中心に質疑をさせていただきたく存じます。

 まず初めに、訴状のネット提出を始めとする民事裁判のIT化でありますが、この改革ですが、イギリスではもはや二〇一五年から、そしてアメリカや、韓国では既に二〇一〇年から導入をされているところでありますけれども、IT化の進まないと言われている我が国、これが、ビジネスのしやすさランキングのうち、裁判手続の分野では世界で五十位というランクにとどまっております。このままでは日本の国際取引や対日投資に影響を与える可能性があると考えますが、この改正の狙い、そして効率化、また合理化という角度から、副大臣はどのように考えておられるのか、お伺いします。

津島副大臣 東国幹委員にお答え申し上げます。

 委員が国際社会と日本との関係というところを主要テーマに活動されているやに承知をしておりまして、その流れの中での本改正案の意義の質問であろうと理解をいたします。

 その上で、まず、民事上の紛争が生じた場合に、これを迅速かつ効率的に解決することは、企業の経済活動に資するものでございます。民事訴訟手続の迅速化及び効率化、これは大変重要な課題であると認識してございます。

 そこで、改正法案は、民事訴訟手続等の一層の迅速化及び効率化等を図り、民事裁判をより利用しやすいものにするために、民事訴訟手続の総合的な見直しなどを行うものでございます。

 具体的には、オンラインによる訴えの提起や訴訟記録の電子化、ウェブ会議を活用した口頭弁論期日等を実現するための所要の規定の整備をしており、これによりまして、自宅や事務所からも訴えの提起等が可能になります。また、改正法案には、当事者の申出により一定の期間内に審理を終えて判決を行う手続の創設なども盛り込んでいるところでございます。

 以上申し上げましたように、改正法案は、国民の司法アクセスの向上とともに、民事訴訟手続の一層の迅速化、効率化を図るものでございます。改正法案により創設された制度を適切に実施、運用することで、民事訴訟手続等が一層迅速化、効率化され、国民がより利用しやすいものになるとともに、企業が我が国においてビジネスを行い、投資をするための環境を整えることにもつながるものと考えてございます。

東委員 御答弁いただきましたが、そのIT化の進み具合によって、これは、当事者だけではなくて、世界の投資家始めビジネスラインが我が国を注目している、そういう効果が外部効果としてはあると思うんですね。これはやはり加速するべきだと感じております。

 ただ、何事もそうなんですけれども、多かれ少なかれ改革ということになると不安がつきまとうわけでございますけれども、その不安をどれだけ解消していくか、そういったこともまた執行部、法務省の責務だと思うんです。

 特に指摘されると思われるのは、メールなどのデジタルデータが証拠となる例が増える中で、文書ファイル、画像、デジタルデータ形式の証拠や文面の書換えといった改ざんが実は容易なわけなんですね。しかし、現時点では、法律などの規定はなく、チェックする方法は確立されてはおりません。

 紙の場合は、御承知のとおり、原本を目視して、印影などを確認して、問題がなければコピーを正規の訴訟記録として保管をする。原本が紙なら、コピーが偽造かと疑われた場合には、原本と照合し確認ができるわけなんですが、現民事訴訟法ルールで定められております電子媒体に関してはまだ不十分だと言えるわけなんですが、これらの点は今後どのように対策を実施していくのか。

 そして、あわせて、本人訴訟、この場合以外は義務化ということを想定しているようでありますけれども、将来的な全義務化になるのかどうなのか、そういったことの見通しをお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 電磁的記録の申請について、偽造、改ざんが行われているといった主張がされた場合には、裁判所は、必要な証拠調べを実施した上で、偽造や改ざんの有無等についての判断をすることになります。

 どのような証拠調べをするかにつきましては、当該事案や証拠の性質等に応じて裁判所が判断することになりますけれども、電磁的記録についてその真正が争われた場合には、検証や専門家による鑑定を実施したり、証人等の尋問などをするということが考えられます。

 今後、特有のこの問題について、更に、その技術の発展等も踏まえつつ、証拠調べの在り方等も検討されていくことになっていくものと思います。

 それから、将来的には全面的義務化の方向なのかというお尋ねでした。

 制度上、裁判所に対する申立てがインターネットを用いてすることができるようになれば、これによって、自宅や事務所からの申立てが可能となるなど当事者の利便性が向上し、また、訴訟手続の迅速化、効率化が図られ、社会全体のコストが低減するメリットがあると考えられます。

 そのような観点からは、弁護士等以外の者においても広くインターネットを用いて裁判所に対する申立てが行われるようになることが望ましいと考えておりまして、法務省としても、インターネットによる申立てが広く行われるよう、関係機関等と連携して必要な環境整備に努めてまいりたいと考えております。

 将来的にインターネットを用いた申立て等を義務づけられる者の範囲を拡大していくことにつきましては、ただいま申し上げたような方策の下、インターネットを用いた申立て等がどの程度用いられるかなど、改正法案の施行後の運用状況等を注視しつつ、引き続き検討してまいりたいと考えます。

東委員 前回の質疑においては、大口先生からの御質問に対しては、本人サポート体制の構築に関する取組の姿勢についてお答えをいただいたところでありますけれども、今般のIT化について、とりわけ障害者に対する手続上の配慮について検討を更に深めていくことが重要と思われるわけなんですが、今後、障害者に対する手続上の配慮についてどのように検討していくのか、副大臣の所見をお伺いしたいと思います。

津島副大臣 ありがとうございます。

 東委員今御指摘の裁判を利用する障害者の方に対する手続上の配慮の在り方について、これは大変重要な課題だと認識してございます。

 改正法案においては、施行後五年を経過した際の検討条項を盛り込んでおりまして、制度の運用状況を踏まえて、障害者の司法アクセスの向上に資する法整備について、引き続き必要な検討を進める予定でございます。

 しかし、今御指摘がございました。古川法務大臣からは、事務方に対して、まずは運用面の課題を中心に、法曹三者で幅広く意見交換をいたしまして、必要な検討を進めるよう指示していたところでございますが、前回の質疑において大口委員から、障害者に対する手続上の配慮についての御指摘をいただき、本日も東委員から同様の御指摘もいただいたことも踏まえて、今後検討を更に加速化させてまいります。

東委員 また、個人や企業の機密を扱う法律事務所、先ほども質疑があったわけなんですけれども、サイバー攻撃の標的になりつつあるということ、これに関して、アメリカ、韓国などでも事件が相次いでいるわけなんですが、これは標的企業から情報を盗んで、脅して、金銭の支払いを求める、そういう手口まであるということであります。

 二〇二〇年だけでも、法律事務所、百四十六社の被害、そして法律事務所をターゲットにしたサイバー攻撃が増大するおそれも予想できるんですが、その認識、法改正後の対応策があればお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 民事訴訟に関する資料等につきましては、裁判所はもちろんですが、法律事務所等に各種プライバシーや営業秘密の情報が保存されているということが多くございます。その情報の流出を防ぐことが重要な問題であると承知しております。

 個別の法律事務所の対応ということもされていると思いますけれども、日本弁護士連合会においては、弁護士の情報セキュリティー対策の取組を支援することを目的として、弁護士及び法律事務所向けに弁護士情報セキュリティガイドラインを策定するとともに、サイバーセキュリティーに関するセミナーを開催するなど、弁護士、法律事務所における情報セキュリティーの確保に向けて適切に対応しているものと承知しております。

 また、日本弁護士連合会においては、民事訴訟手続のIT化等を踏まえ、今後、情報セキュリティーに関する会規、会則の制定に向けて検討を始めているものと承知しております。

東委員 サイバーの防衛は、知識もそうなんですけれども、費用というのもやはり拠出されるわけなんですが、経営上のリターンは極めて少ないということ、そして中小の事務所ほどその対応は負担にもなるために、二〇二五年の全面IT化に向けて対策を急がれる、そういったことを是非対策を打っていただきたい、このように思っているところでございます。

 また、現行民事訴訟法では、当事者の記録閲覧に制限はなくて、訴状等に記載された相手方当事者の住所、氏名の閲覧が可能になっておりますけれども、この度の改正では、社会生活を営むのに著しい支障を生じるおそれがある場合は、当事者の住所、氏名等を秘匿する制度が創設となっているわけなんですけれども、例示としては、当事者がDV、犯罪被害者であるケースを挙げられておりますけれども、社会生活を営むのに著しい支障という件はそれだけではやはりないような気がするわけなんです。

 御承知のとおり、訴訟は、より具体的に事案を提示しなければなりません。その登場人物には、取引金融機関もあるかもしれませんし、商取引のお得意さんもあるかもしれませんし、我が国では、訴訟そのものに登場すること自体、それがたとえ脇役であっても、これは異常事態の雰囲気があって、その後の人間関係だとか商売上の取引に多大な影響を及ぼすこともやはり考えられる。できれば、原告であろうと被告であろうと、全ての当事者は秘匿にしておきたい、そういう心理状態が働くと思うんですけれども、そうする制度を創設するに当たっての分水嶺というか、これは基準はどこに置かれているのか、お伺いしたいと思います。

 あわせて、裁判官の裁量というものであるんだったら公平さに欠ける面も生じると思いますけれども、その公平性をどのように担保するのか、お伺いしたいと思います。

金子政府参考人 民事訴訟の記録は、裁判の公開の要請とも関連し、これを制限することにつきましては、慎重な考慮がもとより必要でございます。

 ただ、申立て等をする者が社会生活を営むのに著しい支障のおそれがあるというような場合につきましては、その訴訟記録中の記録の一部を秘匿するという余地を認めようというものが今回の改正でございます。

 具体的に、住所等を秘匿することを想定されるケースとしては、委員から御指摘があったと思いますが、配偶者暴力の被害者と加害者との間の訴訟において、加害者等からの暴力を逃れるために被害者が住所を変更したにもかかわらず、加害者に新たな住所を知られることにより、被害者の身体等への更なる加害行為や被害者を畏怖、困惑させる行為がされるおそれがあるケースが考えられます。

 また、氏名等を秘匿することが想定されるケースとしましては、性犯罪の被害者とその被害者の氏名を元々知らない加害者との間の訴訟において、被害者の氏名等が加害者に知られることにより二次的な被害が生じ、被害者の立ち直りに著しい支障のおそれがあるようなケースが考えられます。

 これらのほか、暴力団員を被告とする事案や、マンションの近隣トラブル等で生命等の危害を加えられるおそれのあるような事案なども考えられるところです。

 法務省としては、このような想定される事案を紹介するなど、この制度の趣旨及び内容を適切に周知し、この制度が適切かつ公正に運用されることをもって公平な運用がされるように期したいというふうに思っております。

東委員 次に、家事事件の手続法についてなんですけれども、もはや十年前になります、平成二十五年施行の家事事件手続法の制定についてなんですけれども、それ以前の家事審判法からの改正点において、電話会議、テレビ会議システムの利用の手続を認めたことが挙げられますが、その十年前の手続法の改正と比べ、今回の人事訴訟法及び家事事件手続法改正の一部改正がどのように変化したのか、お伺いします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 離婚等の人事訴訟は、現行法の下では、一般的な民事訴訟と同様に、その口頭弁論期日にウェブ会議の方法を利用して出席することはできません。

 改正法案では、当事者の利便性向上の観点から、一般的な民事訴訟手続の見直しと併せて、人事訴訟につきましても、ウェブ会議の方法を利用して口頭弁論期日に出席することを認めることとしております。

 また、現行法の下では、離婚等の人事訴訟において和解をする場合や、家事調停手続において離婚調停を成立させる場合には、当事者がその期日に出頭する必要があり、ウェブ会議の方法で和解や調停を成立させることはできません。

 もっとも、ウェブ会議においても当事者の意思確認等を適切に行うことは可能であるものと考えられます。そこで、改正法案では、当事者の利便性向上の観点から、離婚訴訟や離婚調停においても、ウェブ会議を利用して和解や調停を成立させることができることとしております。

東委員 次に、施行期日についてなんですが、施行期日、これは、原則として、公布の日から起算して四年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するとのことなんですけれども、やはりちょっと幅があり過ぎるような気がするんです。

 ずばり副大臣、これは腹積もりはできていると思うんですけれども、いつから施行でしょうか。

津島副大臣 お答えを申し上げます。

 訴状等のオンライン提出や訴訟記録の電子化など、民事訴訟手続の全面的なIT化については、システムの構築等の準備に相応の期間を要することになりますので、公示後四年以内の政令で定める日を施行日とすることとしておりまして、具体的には、令和七年度中の施行を目指しております。

 なお、この改正法案の施行時期については、その内容に応じて施行の準備等に要することが見込まれる期間等を考慮して、順次施行することを予定してございます。

 例えば、一例申し上げれば、当事者双方が現実に出頭せず電話会議による弁論準備手続の期日に参加することができる仕組み等については、公布後一年以内の政令で定める日、つまり、令和四年度中の施行を目指している。また、ウェブ会議による口頭弁論の期日に参加できる仕組み等については、公示後二年以内の政令で定める日を施行日、つまり、令和五年度中の施行を目指しているということでございます。

 いずれにしましても、成立の暁には、関係機関とも連携して、その周知も含め、円滑な施行に万全を期してまいります。

東委員 今まで数々質疑をさせていただいてきたんですけれども、制度をつくる上で、運用していく中で今後も課題が表れて、これは五年を経過して見直しもあるかもしれません。しかし、法廷、裁判という性質上、受益者はもちろん、これはダメージ、デメリットを受ける人も当然出てくるわけなんですけれども、当然のように試験的な施行などは許されるものではございません。

 法務省におかれましては、ありったけの知見、想像力を働かせて、対症療法にならないように制度設計に努めてもらうことを御期待し、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時三十分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党、栃木県第四区の藤岡隆雄と申します。

 本日も、地元の皆様に感謝を申し上げ、質疑に入らせていただきたいと思います。

 先ほど、鈴木庸介議員から中年男と、私も実は、若く見えるんですけれども四十五歳、引き続き中年男でございますが、質疑の方、頑張らせていただきたいと思います。

 古川大臣、本当にまず、お元気な姿でほっとしました。何よりでございます。今日は、質疑をどうぞよろしくお願いします。副大臣、政務官、よろしくお願いします。

 さて、民事訴訟法の改正案の質疑でございますが、先ほど来出ております法定審理期間の手続に関する特則に関して、まず確認をさせていただきたいと思います。

 あくまで丁寧に確認させていただきたいのですが、双方当事者に訴訟代理人として弁護士がついている場合、あるいは、簡易裁判所においては、訴訟代理人として、司法書士のうち訴訟代理業務を行うことのできる認定を受けた者がついている場合、あるいは、法人の法務部において法曹資格を有する者が当事者となるような場合、こういう場合に限定されるということでよろしいのかどうか、改めて丁寧に、ちょっと確認させていただきたいと思います。お願いします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘のあった、当事者双方に弁護士がついている場合、認定司法書士等の訴訟代理人がついている場合、これはそのとおりでいいと思います。

 それから、法人の法務部において法曹資格を有する者が当事者となる場合という点、ちょっと私、必ずしも正確に理解できていないのかもしれませんが、法人の法務部があって、その企業内の法務部門に法曹資格者が在籍しているという場合は当然あると思いますけれども、当事者が法人というのが普通になるので、法曹資格を有する者が当事者になるというと少し違うのではないかなという気がします。

 それから、法人の法務部に法曹資格を有する者が在籍していなくても、企業の規模や法務部の規模や内容によっては、訴訟代理人が選任されている場合と同視することができるケースもあると思われるので、そのような場合はこの手続を利用することができるというふうに考えております。

藤岡委員 何かちょっと詰まっていないのかなというか、そんなふうに感じてしまうんですが。

 要するに、司法書士の、訴訟代理人として認定を受けた者ということに加えて、あとは法曹資格者、何らかそこに限っているということでよろしいんでしょうか。法曹資格者に限っているのか、いわゆる、何か同視するものと先ほど出ていますけれども、法曹資格者に限られているのかどうか、そこをちょっと確認させてください。

金子政府参考人 お答えいたします。

 その意味では、法曹資格者に限っていないということになります。

藤岡委員 限っていないということは、いわゆる本人訴訟においてもこの手続が使われるということを想定しているということでよろしいんですかね。確認させてください。

金子政府参考人 例えば、企業が当事者になる場合は、企業が当事者ですので、それに訴訟代理人がついていなくても、その企業の法務部がしっかりしていて組織として対応できているというような場合であれば、法曹資格を有する者が当事者とならなくても、それはこの手続を利用することができる、つまり、同視できる場合に当たるという理解でございます。

藤岡委員 じゃ、その法人において法曹資格を有する者がいなくても、今の答弁ですと、まず認められるということと、それ以外に、双方当事者のうちどちらかでも本人訴訟になっているような場合に、それは認められるのか認められないのか。大事な法案審議でございますので、条文の審査で、解釈についてお聞きしているものですから、できれば丁寧に、はっきりとお答えをお願いしたいと思います。

金子政府参考人 本人に法曹資格者である訴訟代理人がついていないというような場合をおっしゃっているのかもしれませんが、その場合も、先ほど申し上げているとおり、その本人は通常は法曹資格者があるような訴訟活動はできないので、その個人は。他方、組織的に対応ができるようなところであればそれもできるというか、それは法曹資格者と同様な活動もできるであろうということであれば、考え得るということでございます。

藤岡委員 済みません、正直、今、曖昧で、解釈がすごく不安定な感じが明らかにするんですけれども、これ、こういうちょっと煮詰まっていない状態での法案審査ということになるんでしょうか。考え方をはっきり整理をしていただきたいと思うんですけれども、大臣、御見解いかがでしょうか。

古川国務大臣 訴訟代理人が選任をされていない場合については、基本的に、これは適正な審理の実現を妨げると認めるときに該当するものとして、手続開始の要件を満たさないというふうに考えています。

 しかし、訴訟代理人が選任されていない場合であっても、選任されている場合と同視することができるような場合、つまり、今民事局長が紹介をしております、例えば企業間の訴訟において、その企業内の法務部門に法曹資格者が在籍している場合など、こういう場合は実質上訴訟代理人がついているものと同視できるというふうに解釈をする、みなすという趣旨で民事局長は答弁をしております。

藤岡委員 分かりやすく御答弁ありがとうございました。

 その同視し得る場合というのはどこまで広がるといいますか、これは歯止めがないんでしょうか。同視し得る場合というのが、これをもう少し、ここは民事局長で結構ですけれども、御答弁をお願いします。

金子政府参考人 改正法案の条文上は、適正な審理の実現を妨げると認めるとき、この解釈問題です。その解釈をする上で、訴訟代理人の存否というのを問題にされているわけですけれども、訴訟代理人が選任されていない場合は、基本的には、訴訟代理人が選任されている場合と同視できるような場合を除けばこの手続は利用できないということであって、さらに、同視できる場合がどういう場合かというのは、具体的な個別の事件の中で裁判所の方が適正に判断されるということになります。

藤岡委員 非常に重要なところでございます。この同視し得るというところが、それこそ、少し法律を勉強していましたとか、そういうところを仮に言ったとしたら、裁判官の方で、いや、それはいいですよと。何か、そのところの解釈がすごく今曖昧な感じを受けたのですけれども。元々、これは訴訟代理人に極めて限定するというふうな話で法案になったのかなというふうに理解をしていたんですけれども、今のお話を聞いておりますと、どこまで広がるのかなというところが、正直なところ、すごく今不安な感じを覚えました。

 同視し得る者というのは、基本的には、私は、訴訟代理人はもちろん弁護士さんです、同視し得る者というのは、弁護士登録をされていないんだけれども、法曹資格を例えば有されているという方とか、そういうふうに理解をしていたんですけれども、そういうことではないんでしょうか。

 法曹資格を、弁護士でないんだけれども、ある意味、司法試験を合格されて、司法修習を終えて、ただ弁護士登録をされていないとか、そういう方に限るという話だというふうに私は理解をしておりましたし、何か、午前中の答弁でも、随分そのところは、原則というか、原則というのもまた、例外は何だとなってしまいますからあれですけれども、非常に限定的なように答弁されていたと思うんですけれども、民事局長、そういう理解じゃないんでしょうか。

 同視し得る者というのは法曹資格を有されている方という、弁護士に登録していないけれども、そういう方のことを指しているということで、これはなってきたんじゃないんでしょうか。だからこそ、条文がこういう書き方になると、すごく広がって曖昧になる。法制審のところでも、代理人と限定して書くような書き方も考え得るんじゃないか、これまではそうじゃなかったけれどもという意見もあったように思うんです。

 この同視し得る者というのが、法曹資格を有する者という、今申し上げたところじゃないんでしょうか。ちょっと確認させてください。

金子政府参考人 お答えいたします。

 訴訟代理人は、本人から委任を受けて、本人に代わって訴訟手続をします。例えば、企業間訴訟の場合、当事者は企業になります。もちろん、訴訟代理人を、弁護士を雇う、企業として雇うということもありますけれども、この企業が当事者として弁護士をつけなくても、このバックにきちんとした企業法務のチームがいたりするような場合であれば、それは同視してもいいんじゃないかということです。

 このバックにいる企業法務の方々の中には、法曹資格がある人もいるでしょうし、ない人もいるかもしれない。ただ、組織的な対応がきちんとできるのであれば、しかもリーガルな対応がきちんとできるのであれば、それは同視し得るというふうに考えているところでございます。

藤岡委員 それはどういうふうに判断するんでしょうか。細かくお聞きすると、どういうふうに。その法務部がしっかりしているとか、一人何か関係している、それこそ行政の経験者がいればいいとか、そういうことでもいいのかどうかとか、具体的な判断基準がすごく曖昧だというふうに思うんです。そこをはっきりしていただかなければいけないように思うんですけれども、いかがでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 基準は、適正な審理の裁判を妨げると認めるときに当たるかどうかです。それを個別具体的な事案に当てはめて、最終的には裁判所が判断しますが、あえて怪しいケースについて認める必要もないので、これはあくまで当事者が希望して選択するもので、裁判所がこうしましょうといって押しつけるような制度じゃありませんので、その辺の疑義があれば通常の手続で進めていただければいいということで、ぎりぎり限界線がどこにあるのかをはっきりしなければ運用できないというものではないと思っています。

藤岡委員 そうしますと、逆の方からお聞きしたいと思うんですけれども、双方当事者から、では、三百八十一条の二の第一項の申出がされたとき、両方の当事者がこれでいきたい、ただ、法曹資格があるかどうかよく分からない状態だ、ただ何となく、経験者、何か法律に詳しそうな人がいるというふうな場合の申出がなされたときには、これは適正な審理の実現を妨げるときに該当して、決定がされないという理解ということじゃないんでしょうか。どうなんでしょうか、逆の方から聞くと。

金子政府参考人 お答えします。

 この法定審理期間訴訟手続を利用するための前提としては、両当事者が希望しているということですので、希望しているということはまず前提になります。

 ただ、希望していても、例えば、ある程度集中した争点整理、それから証拠調べをきちんと、どれくらいの期間でやれるかということの見通しが立てられなければ、この利用をするに相当でないと考えられますので、その辺は、当事者の状況を見て裁判所の方で判断されるということになると思います。

藤岡委員 民事局長、本当に若輩ながら、大変僭越に申し上げておりますけれども、何か本当に解釈が定まっていないといいますか、では、これはどういうふうに担保されるんでしょうかね、そういうふうに次から次へと広がらないようなふうになってくることが。こういうふうな、条文上は、適正な審理の実現を妨げるときと認めるときとか、その前に、事情を考慮しとか、広く解釈できるような、当然、条文上、文言上はそういう形になっている。だからこそ、ここではっきりと、ある意味限定されるなら限定される、そういうふうに申し上げてくださらないと、本当にこれ、どこまでの想定をした制度なのかということがはっきりしませんよね。

 だから、少なくとも法案審査の前提として、もう少しそこの考え方について、ちょっとこれ、整理して出していただきたいと思うんですけれども、委員長、いかがでしょうか。

鈴木委員長 本件につきましては、理事会で協議させていただきます。

藤岡委員 よろしくお願いいたします。

 その上で、例えば、そうすると、口頭弁論の期日においては、これは書面の申出ではなくて、口頭で申出、口頭で同意というのも妨げられないというふうになっていると思います。それは、通常の裁判のところで、ほかのケースで口頭ということもあると思うんですけれども、しかしながら、この期間限定のところの申出に関して、口頭申出、口頭同意が条文上可能になっているということで。

 そうしますと、懸念として出ております、裁判長から、当事者から是非それでやりませんかと言われたときに、誘導すると言ったら言い方はあれかもしれませんけれども、せっかくですから是非ねとか、勧めるというようなことだって、これは懸念があるという指摘がなされております。そういう懸念に対して、今の御答弁を前提としたときに、どういうふうに。そういうふうに勧められないとか、誘導されないとか。

 私も本当に、さっきの鈴木庸介議員の話じゃないですけれども、四十五歳、中年男で、まさに素人ですよ、私も。だから、言われたときに、裁判所に行くというのは、想像していただければ分かりますけれども、イメージしたら、本当に怖いところか何かとか分からなくて、そこで裁判官と向き合って、どうですかと言われて、ああ、そうせざるを得ないのかなというふうに思うのは、これは普通に感覚としては私はあると思います。

 したがって、これはどういうふうに、誘導されないとか、担保されるんでしょうか。教えてください。

金子政府参考人 改正法案では、委員御指摘のとおり、口頭弁論又は弁論準備手続の期日においては、口頭で申出及び同意をすることができるとしております。

 先ほどから述べてきたとおり、本手続は、基本的に訴訟代理人が選任されている場合に限り利用されるものです。また、訴訟代理人が選任されていないケースでも、訴訟代理人が選任されている場合と同視することができるような場合に限り、この手続を利用することができるわけです。

 このような方々は、通常、期日において、裁判官、他方の当事者や代理人と口頭でやり取りをするのに慣れております。口頭弁論という言葉があるとおりです。その申出及び同意は適切にすることができるものと解されます。逆に言うと、そのようなことが望めないような方であれば、そもそもこの手続を使うのは相当でないということでございます。

 また、この手続が、当事者が希望する場合に限って利用されるものであるということや、一旦同意をしても、その後に通常の手続に移行されることができることとされており、また、双方当事者が法定の期間内に必要な主張、立証を行うことを前提としているものであるということからすれば、裁判所が当事者の意に反して法定期間訴訟手続に誘導するということは考えにくいと思っております。

藤岡委員 あくまで、訴訟代理人がついている場合について、私もそれを申し上げるつもりは、もちろん、そういうことを今指摘するつもりは、どちらかというとございません。そういうことよりも、私、申し上げたいのは、先ほどの中で解釈が広がっていって歯止めが利かない中において、ある意味本人訴訟なりそういうところに広がるときに、同視し得るというのがどこまで広がるのかというところが、正直言ってなかなかよく分かりませんでした。

 そういう中において今の懸念を申し上げたところでございますけれども、そういう、いわゆる訴訟代理人というところではない場合の話ですね、弁護士さんがついているような場合でないときに、そのときにどのような担保なんでしょうか。

金子政府参考人 先ほども御説明しましたが、訴訟代理人が選任されている場合と同視できるような場合でなければこの手続を使うことができませんので、先生のような御懸念は当てはまらないと思います。

 また、この手続、法定審理期間訴訟手続というのが、当事者の、途中に気が変わった場合等でも通常の手続に移行できるような仕組みになっておりますので、そもそも裁判所の方から誘導するような動機を持ちにくいような制度としてつくっていますので、その辺の心配はないものとお考えください。

藤岡委員 同視し得る者の解釈がはっきり答弁されていれば、特にこういう話になることは、私はこれを別に質問する予定はなかったんですけれども、そのところの解釈が定まっていないからこそこういう質問をさせていただきました。

 大臣、済みません。じゃ、大臣から。

古川国務大臣 先ほど来、民事局長から御説明申し上げておるわけですけれども、先ほど私の方からは訴訟代理人が選任されていない場合の話をいたしました。その場合は、基本的に手続開始の要件を満たさないのだということを申し上げました。

 この手続が開始されるのは、もちろん当事者双方がこの手続を利用することを希望した場合であります。しかしながら、制度にありますように、この手続を開始した場合であっても、もうやはりやめようというふうになった場合にはやめられるような制度になっておりますし、また、双方が希望している場合であっても、それは開始をするにはふさわしくないというふうな事情が認められる場合には、やはり本来の審理に戻す、手続に戻すということが規定をされております。

 そして、その判断、先ほど来委員が、これを、法案審議なのだからきっちりしなければならないという御主張ですが、それはもうおっしゃるとおりだと思います。しかし、これは実際、その判断といいますか、その運用は裁判所においてなされるものでございまして、私ども、法務省というのは行政でございますから、三権分立の精神にのっとったときに、やはり裁判所における法の運用、制度の運用について細かく物を申し上げるということは御遠慮している。そういう事情の下に、民事局長もなかなかはっきりと申し上げにくいということがあったということをどうか御理解をいただきたいと思います。

藤岡委員 済みません、大臣にお聞きしていないのにもかかわらず、わざわざお手を挙げていただいて御答弁いただいたことに本当に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 そういう中で、整理の方は理事会の方でお願いをしたいと思うんですけれども、今大臣がおっしゃってくださった中で、通常裁判への移行手続というところをおっしゃってくださいました。その中で、さっきの同視し得るの考え方に関係してきてしまうんですけれども、やはり裁判官の心証を気にする余り、通常手続への移行をちゅうちょする当事者というのも出てくる可能性があるのではないかという指摘がございます。そうすると、裁判を受ける権利が害される可能性というのがあるとの指摘もございます。

 こういうふうに通常手続に移行することをちゅうちょするというふうなことがないように、これも同視し得るの解釈に関係してしまうんですけれども、これはどういうふうに考えたらいいんでしょうか。

金子政府参考人 本手続は、基本的に訴訟代理人が選任される場合に限り利用されるものであり、当事者が法律専門家の助言を得られる立場にあります。このことは、当事者が裁判官の心証を気にして通常の手続への移行の申出をためらうことがないことの担保と言えます。

 改正法案におきましては、審理期間が法定されることにより訴訟の当事者に不当な弊害が生じないようにするため、手続の途中だけでなく、判決後であっても、当事者の一方は通常の手続での審理を求めることができることとしています。

 こうした法の趣旨に照らせば、通常の手続への移行の申出は訴訟進行に関して当事者に認められた手続上の権利と言うべきであり、そうした権利が行使されたということをもって裁判官の心証に影響するということは考えられないところでございます。

 いずれにしても、法務省としては、関係機関等と連携して、法の趣旨等を適切に周知し、適切な運用が図られるように努めてまいりたいと考えております。

藤岡委員 最高裁の方はいかがでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 訴訟当事者が法律上定められている申出等を自らの意思に基づいて任意に行うことができるというのは、訴訟手続の当然の前提であろうと思いますし、裁判官の心証と申しますのは、当事者の主張内容や証拠に基づいて形成されるものですので、通常手続への移行の申出をしたということが裁判官の心証に影響を与えるということは、現実問題としては考え難いところでございます。

 最高裁としましても、改正法の趣旨が各地の裁判官に伝わるよう周知するなど、適切な運用がされるように努めてまいりたいと存じます。

藤岡委員 御答弁ありがとうございます。

 現実問題とすると、意外にやはり気にするということは当然あると思いますので、いずれにしても、この法律の、先ほどの解釈の考え方については、よくまた整理をお願いをさせていただきたいと思います。

 時間があれですので、次に行きたいと思います。

 障害者の利用機会の確保として、障害者の権利に関する条約十三条及び障害者基本法二十九条を遵守するための制度構築がなされなければならず、民事訴訟法の総則規定において障害者に対する手続上の配慮を行うべきことを定めることということが要望されていたと思うんですけれども、盛り込まれなかった理由と、今後、障害者に対する手続上の配慮の法整備の方針について御見解をお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 障害を有する者が民事訴訟の当事者となった場合には、その障害ゆえにその者の訴訟行動に支障が生ずることがないよう適切に配慮を行うことは、その者の裁判を受ける権利を実質的に保障する観点からも極めて重要であるというふうに認識をいたしております。

 法制審議会における部会においては、そのような観点から、障害を有する者への配慮に関する一般規定を設けることが検討をされたところでございます。

 もっとも、現行法には、裁判所は民事訴訟が公正に行われるよう努めなければならない旨を定めた規定がありまして、抽象的には、障害者に対しては、その特性等に応じて必要な手続上の配慮を行うべきこととされているものと考えられます。

 このため、この改正法案においては、障害者への配慮に関する規定を重ねて設けることはしなかったということを認識しております。

 そこで、委員の御指摘、そこに配慮して、今後どうするのだということでございますけれども、この法案は、成立をさせていただいたとしまして、施行後五年を経過した際の検討条項を盛り込んでおるわけですけれども、制度の運用状況も踏まえて、障害者の司法アクセスの向上に資する法整備について、引き続き必要な検討を進めていく予定であります。

 事務方に対しては、まずは運用面の課題を中心に、法曹三者で幅広く意見交換をして、必要な検討を進めるよう指示していたところでございますけれども、前回の質疑において、大口委員からも、その点、配慮するべきであるという御指摘をいただいております。また、本日午前中の質疑におきましては、東委員からも障害者に対する配慮について御質問いただいたというふうに聞いておりますけれども、さらに、今、委員からも御指摘をいただいたところでありまして、今後、検討を更に加速化させていきたいというふうに考えています。

藤岡委員 ありがとうございました。

 では、私の質疑を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。

 私も、引き続き、民事訴訟法等の改正案に対して、特に期間限定裁判についてお尋ねいたします。

 まず、大臣、IT化の推進と期間を限定することは全く関係ありません。それにもかかわらず期間限定裁判が同法案の中に入っているのはなぜでしょうか。お答えください。

古川国務大臣 お答えいたします。

 改正法案における法定審理期間訴訟手続も、民事訴訟手続のIT化のいずれも、これは、民事訴訟手続等の一層の迅速化及び効率化を図り、民事裁判をより利用しやすいものとすることに資するという点において、共通点を有するものだと認識をしております。

 また、改正法案には、ウェブ会議の導入や自宅からの訴訟記録の閲覧を可能とする施策等を盛り込んでおりますけれども、これらは審理そのものの円滑化や訴訟活動の準備等を円滑にするものであって、法定審理期間訴訟手続の運用を考える上でも不可欠な要素であるというふうに考えております。

 そのため、法定審理期間訴訟手続は、民事訴訟手続のIT化そのものを内容とするものとは言えないとしても、先ほど述べましたように、両者には密接な関係性があるものと認識をいたしております。

 いずれにしても、法定審理期間訴訟手続は、民事訴訟手続のIT化同様、法制審議会において議論を尽くした上で示された答申に基づき創設するものでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 かなり強引なくくり方をされているという印象は拭えません。ここにいらっしゃる委員の皆さんがそう感じていらっしゃいますし、国民の多くの皆さんがそう感じているというふうには思います。

 そして、この期間限定裁判は、民事訴訟手続等IT化研究会の第一回読会では提案がなく、第二回の読会の会議で突如提案されています。さらに、多くの弁護士や有識者の方々が反対の声を上げたにもかかわらず強引につけ加えられた期間限定裁判は、そもそも、誰のために、何のために導入するのでしょうか。大臣、お答えください。

古川国務大臣 誰のために、何のためにというお尋ねでございましたけれども、民事訴訟利用者調査の結果によりますと、裁判が始まった時点で、裁判が終わるまでにどのくらいの時間がかかるか事前に予想がついたかとの質問に対して、全く予想がつかなかったとの回答が五六・四%もあったところでありまして、より頼りがいのある司法制度を構築する観点からは、審理期間の見通しを高める工夫をしていく必要があるものと考えております。

 また、法制審議会の部会におきましても、紛争解決までに要する期間の予測可能性が低いことが訴訟による紛争の解決をちゅうちょさせる要因になっており、審理期間の予測可能性を高めることには大きな意義があるとの意見や、その審理期間が適切なものとなるようにする必要があるなどの意見が出されたところでございます。

 法定審理期間訴訟手続は、訴訟の審理期間に対する当事者の予見可能性を高めることを目的として導入するものであり、裁判の利用者のために導入するものでございます。

山田(勝)委員 期間の見通しをつけてほしいということでした。国民の皆さんが本当に望んでいるのか大変疑問です。本音と建前のようにしか聞こえません。午前中、鎌田委員が指摘したように、最高裁からそもそも提案されている。これは、裁判所の業務効率化、合理的に行いたい、そういったことが本音なのではないでしょうか。

 次に、期間限定裁判のそもそもの必要性について。

 期間限定裁判が可能だとしている裁判に、事実関係に争いがなく、争点の少ない事件とされています。

 そこで、用意させてもらった資料を御覧ください。この度の期間限定裁判の対象となる事件の現状の平均審理期間からして、本当に必要なのでしょうか。

 参考資料、ここに書いてある合議事件とは、複雑な事案のため、複数の裁判官により審理を行う裁判のことです。つまり、先ほど御答弁があったように、期間限定裁判の対象は比較的簡易な事件を取り扱うことから、この資料では単独事件の数値が参考になります。提訴から裁判終了までの平均審理期間をまとめた表なんですが、もう既に六か月以内に五七・九%、一年以内で二〇・二%、つまり、七八・一%の裁判が一年以内に終わっており、そのうち約六割は半年以内となっています。

 さらに、この資料の下の図を御覧ください。重大な御指摘をさせていただきます。今回の期間限定裁判の六か月というのは、指定日から弁論の終結日までの期間です。一方、この表で示されている期間とは、提訴から裁判終了までです。つまり、今回の期間限定の六か月は、事実上の九か月程度まで含みます。

 改めてこの表を見たとき、この六か月以上一年以内にカウントされている事件の約半数は、事実上六か月以内にカウントされると見込まれます。よって、つまり、正確なデータとしては、一年以内に七八・一%が、そして、うち、六か月以内に約六八%が、ほぼ半年以内、短期間で裁判が終わっている現状です。

 大臣、期間限定の裁判、本当に必要なんでしょうか。この資料を見た上でお答えください。

古川国務大臣 法定審理期間訴訟手続の対象となり得る事件につきましても、当事者が適切に主張、立証等を行えば、この手続を利用しなくても法定審理期間内に審理を終えることができる場合はあり得るものと考えられるところです。しかし、そのような場合でも、結果的に早期に審理を終えたのはあくまでも個別事件の運用によるものでありまして、制度上、一定の期間に審理を終えるべきことが明確にされているわけではないわけです。

 法定審理期間訴訟手続は、当事者双方の意向が合致した場合には、審理期間や判決までに要する期間が法定されていることにより、訴訟の早い段階で紛争解決までに要する期間の予測可能性が高まる点に大きな意義があると考えられます。また、制度として一定の審理期間が定まることで、当事者の訴訟活動がより集中的に行われることにもつながると考えられます。このため、法定審理期間訴訟手続の導入は必要なものであるというふうに考えております。

 そこで、今委員御指摘のように、単独事件の六割ぐらいが六か月以内の審理期間で終わっているではないかという御指摘でございます。しかし、その御指摘を前提としましても、単独事件のうち約四割は六か月以内に審理を終えていないものと承知をしております。したがって、この制度はやはり意義を有するものだというふうに認識をしております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 大臣、僕の先ほどの話、よく聞いていただいていなかったようで。下の図を見たところ、今回の、カウントされるのは、事実上、この二〇%のうち約半数は入るので、六割じゃないんです。もう七割を超えていることが見込まれています。

 その上で、時間の迅速化を図りたいということでした。そもそも、大臣は、この期間限定裁判を導入することによって迅速化を図りたいというお話なんですけれども、裁判が長期化している原因は何だとお考えになられますか。

古川国務大臣 令和三年の裁判の迅速化に係る検証に関する報告書におきましては、民事第一審手続のうち、争点整理手続が長期化し、それに伴って全体の審理期間が長期化する傾向にあるとの指摘がされておりますが、その原因としては、例えば、争点整理のために必要となる裁判所と当事者との間の主要な争点に関する認識共有が必ずしも十分に行われていないといった指摘があるものと承知いたしております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 争点整理の長期化、認識共有、今回の期間限定裁判で改善されるんでしょうか。

古川国務大臣 法定審理期間訴訟手続は、当事者双方の意向が合致した場合には、審理期間や判決までに要する期間が法定されていることにより、訴訟の早い段階で紛争解決までに要する期間の予測可能性が高まる点に大きな意義があると考えております。そして、先ほども申し上げましたけれども、制度として一定の審理期間が定まることで、当事者の訴訟活動がより集中的に行われることにもつながると考えられます。また、改正法案が成立した場合には、民事訴訟手続のIT化によっても手続の迅速化が進むものと考えております。

 もっとも、改正法案によりまして、民事第一審訴訟事件の平均審理期間の長期化傾向の原因の全てが解消されるというふうには考えておりません。改正法案の施行状況を踏まえて、適宜必要な検討をしていく必要があるものと考えています。

山田(勝)委員 長期化している原因は、難しい事件が増えているという指摘も一方であります。今回の期間限定裁判には、難しい事件にはそもそも使えない、簡易な裁判しか使えない、簡易な裁判はもう既に長期化していない、つまり、ほとんど必要性、有効性がないと御指摘をさせていただきます。

 その上で、裁判の迅速化については、原因の調査と、裁判官の増員など基盤整備、証拠、資料などの収集手続などの手続の整備、運用の改善など、総合的な対策が必要です。

 松森参考人が本委員会で発言されている内容を引用させていただきます。

 私は、二〇〇三年に日弁連で裁判官の増員について意見書をまとめたときの座長です、いろいろ調べましたが、少ない国もございまして、オランダあたりは一人で三十件ぐらいしか持っておられない、もちろん、いろいろな国があるし、事情は違いますけれども、やはり聞いていますところ、裁判官、東京地裁の場合、二百件前後のところ、毎月四十件、五十件の記録が回ってくるんです、逆に言いますと、四十件、五十件さばいていないとたまっていく、そういう中にあって、どこまで丁寧な審理ができるのか、良心的な裁判官であればあるほど、悩み、仕事に追われている、こういった御指摘が松森参考人からありました。

 つまり、裁判の迅速化を図る上で、問題の本質は期間限定裁判ではなく、裁判官の処遇改善、定員増こそが本質の課題であり、期間限定裁判でないことは明らかです。司法改革の方向性が誤っていると御指摘をさせていただいた上で、次に、海外の事例について伺います。

 期間限定裁判、海外の事例を研究されたのか、午前中の鎌田委員の質疑に対し、驚きました、調査していない。

 なぜ、IT化について海外の先進事例を研究されたにもかかわらず、期間限定裁判については調査していないのでしょうか。突如提案された内容だから間に合わなかったのか。それとも、今後一切、期間限定裁判について海外の調査を行わないつもりなのでしょうか。お答えください。

金子政府参考人 今後一切しないというつもりもございません。この法定審理期間訴訟手続が導入された場合には、その利用の状況についてきちんと検証しなきゃいけないというふうに考えております。

 そのときに、私どもの把握する限り、海外にぴったりとした制度がないようでございますけれども、いわゆる迅速トラックというようなものがある国もあるようですので、その辺の実態も踏まえて、今後の検討課題とさせていただければと思います。

山田(勝)委員 驚きました。今後一切調査しないということではあるが、導入してから、法案を通した後に事後的に調査する。ちょっと待ってもらえませんか。調査してから法律審議じゃないんでしょうか。大臣、本当にこれでいいんでしょうか、この手続の進め方で。民主的な進め方とは当然思えません。

 その上で、なぜどこの国も期間限定裁判を導入していないのか、その理由について、大臣、お答えいただけますか。

古川国務大臣 その期間限定裁判というのは法定審理期間訴訟手続のことだと存じますが、これは、先ほど来述べておりますとおり、法務省が把握しておる限りでは、今回創設しようとしている制度と類似の制度が諸外国にあるというふうには承知しておりません。調べなかったというのではなくて、やはり、見当たらないということは、それを分かっている上でこの制度を設計したということでございます。

 諸外国の法制度というのはそれこそ様々でありまして、諸外国にこの法定審理期間訴訟手続と同様の制度がない理由をお答えするというのはなかなか難しゅうございます。

 いずれにしても、法定審理期間訴訟手続は、法制審議会において議論を尽くした上で示された答申に基づいて創設をしようとするものでございます。

山田(勝)委員 期間限定裁判を設けて迅速化を図るようなことは、外国、先進国は、国民の裁判を受ける権利を侵害することから、どこもしていません。裁判までして権利を実現しなければならない人や会社は、立場の弱い方々が多く、証拠や資料も持っていないことが多く、時間を限定されれば不利になられてしまいます。

 ここまで大臣と議論をさせてもらって、必要性や迅速性の効果がないこと、さらに、海外の事例も研究されていないことがよく分かりました。誰のため、何のため、期間限定裁判の導入の理由、全く理解できません。なぜどこの国もない裁判を、世界初の試みを、日本で行わなければならないのでしょうか。効果はほぼ期待できず、リスクしかないと、私たちは期間限定裁判に明確に反対します。

 その上で、どうしても期間限定裁判を導入されたいというのであれば、法改正ではなく、運用導入でまず試験的に行って、先ほど、法案を通した後に海外の事例を研究されると言われましたが、まずは運用導入で試験的に行って、十分な検証をすべきではないでしょうか。大臣、お答えください。

古川国務大臣 法定審理期間訴訟手続は、当事者双方の意向が合致した場合に審理期間や判決までに要する期間を法定するものであり、紛争解決までに要する期間の予測可能性が高まる点に大きな意義があるものと考えられます。

 そして、裁判所における個々の運用に委ねるのでは、紛争解決までに要する期間の予測可能性を高めることは難しく、制度として一定の規律を設ける必要があると考えております。

 また、個々の事件の処理は、事案ごとに個々の裁判所の判断で行われるものであり、試験的に運用するといった手法を取ることは直ちには困難であると思われます。

山田(勝)委員 試験的な運用を行うことは困難であると、今大臣、明確におっしゃいました。

 それでは、次のテーマに移ります。

 福岡方式、迅速トラック、これはまさに試験的な運用です。今の答弁、完全に矛盾すると思いますが。裁判の迅速化を試みて、福岡で運用導入が行われていました。この福岡方式、迅速トラック、詳細を教えていただけますでしょうか。どのような経緯で始まったのでしょうか。

金子政府参考人 過去に福岡地方裁判所において迅速トラックと呼ばれる取組がされていたことは承知しております。

 その内容は、例えば、争点が比較的簡明な交通損害賠償請求事件や不貞等を理由とする慰謝料請求事件等を対象として、付調停により事件の早期解決を図ろうとする審理モデルであり、訴訟早期に事件を特別の調停手続に付し、訴訟担当裁判官がそのまま調停を担当しながら、原則三回以内の期日で、調停又は調停に代わる決定による解決を目指すものであり、平成二十二年頃から実施された取組であるというように承知しています。

 経緯の詳細は把握しておりませんが、この取組は、組織的に行われたものではなく、同裁判所に着任した裁判官の判断により始められたというように聞き及んでおります。

山田(勝)委員 福岡で、私たちのこの国で実際に行われた迅速を試みた運用、裁判の運用方式、これに関しても把握が十分にできていない、あくまで裁判官が独自に提案し行ったことだ、本当に先ほどから驚きの答弁が続いています。海外だけでなくて、国内のテスト導入の事例も全く検証されていないとの発言、余りにも国会を軽視されているのではないでしょうか。

 与党の先生方も、さすがにこれはあんまりだと思われるのではないでしょうか。国民の皆様に、自信を持って、世界初の期間限定裁判、本当にお勧めできるのでしょうか。

 大臣、先ほど、運用導入ができないということなんですが、福岡で実績があります。運用導入から始めるべきではないでしょうか。

古川国務大臣 過去に行われた、福岡地裁における迅速トラックという取組がなされていたことは承知しております。また、現時点において、その取組が継続していないとの指摘があることも承知をしております。

 このような取組については、法制審議会において、弁護士委員から、そのような運用上の取組では、これを継続するか否かについても個々の裁判官の判断に委ねられることになるため、裁判官の交代などの事情で取組が継続されなくなるといった問題があり、法律上の制度として一定の規律を設ける必要があるとの指摘がされたと承知をしております。

 このように、法制審議会の部会におきましては、福岡地方裁判所の取組も踏まえた上で、立法的手当てをして制度を設ける、その必要性があるとの結論に至ったものと認識をいたしております。

    〔委員長退席、熊田委員長代理着席〕

山田(勝)委員 実際に福岡で、この迅速トラックを試みた弁護士の先生方から直接お話を聞きました。

 裁判所からの提案により、平成二十二年十一月一日から運行が始まった。交通事故の過失割合、不倫の慰謝料など争点の少ない簡単な案件を想定していた。弁護士側は特に必要としていなかったが、裁判所より、意識づけ的意味合いもあり是非やりたいと。仕方なく協力をした。自然と使われなくなっていった。事件を選別するのにかえって手間がかかった。簡単なものはそもそも早い。今や忘れ去られた存在に。

 このこと自体も、現場の方々のヒアリングも十分にされていない。その上で、このなくなった理由が、裁判官が異動するから、人事異動があるから、国を挙げてやらないと、法律まで変えてやらないと、本当の効果検証を図れない、そういう理屈で、大臣、本当にいいんですか。

 今の福岡の実態を踏まえた上で、到底この期間限定裁判は導入すべきじゃないと改めてお伝えいたします。

古川国務大臣 お尋ねは、迅速トラックのことについてどう思うかということですか。

山田(勝)委員 今、福岡の弁護士先生の方のお話をお伝えしました。本当に、効果もないし、自然と消えていったんですね。

 大臣は、裁判官が人事異動があったので、どうしても福岡で自然と消えていってしまったというふうに言われたんですけれども、実態はそうじゃないと、現場の声は。実際に、案件を整理するのにかえって手間がかかると。これは、このまま、福岡の検証なくして本当に法改正していいんでしょうかという問いです。

古川国務大臣 先ほども御答弁の中で申し上げたんですが、迅速トラックのような取組に関して法制審議会において議論がなされた際に、それこそ弁護士委員からなされた指摘なんですけれども、この取組では、運用上の取組では、これを継続するか否かについても個々の裁判官の判断に委ねられることになるため、裁判官の交代などの事情で取組が継続されなくなるといった問題があるというような御指摘、だから、運用で取り組むのではなく、制度として確立して取り組むべきであるというような意見が弁護士委員から出されておる、法制審議会で、そういうことを、先ほど、今御紹介したところです。

山田(勝)委員 海外の事例、そして国内のこの福岡の事例、しっかり検証をした上で、まずは試験的に運用をすることが最も望ましいと改めて指摘をいたします。

 次に、裁判を利用しない本当の理由について……

熊田委員長代理 申合せの時間が過ぎております。

山田(勝)委員 ごめんなさい、分かりました。

 ありがとうございました。これで失礼いたします。終わります。

熊田委員長代理 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 まず、ここまでの質疑に関連しまして、私からも法定審理期間訴訟手続について伺いたいと思います。

 さっきのやり取りを伺っていてちょっとひっかかったのは、大臣は、我々が呼んでいる期間限定訴訟という呼び方をあえて使わずに、法定審理期間訴訟手続という言葉を使われていました。

 法定審理期間訴訟手続って、別に法律にそういう用語があるわけでもないと思いますので、ちょっと確認したいんですが、大臣の認識としては、この手続は期間限定ではないというふうに認識されているということでよろしいですか。

古川国務大臣 私は、表現の仕方、用語の使い方として、法定審理期間訴訟手続というふうに呼んだ方が適切である、ふさわしいというような思いで使っております。

階委員 大臣は、これは期間限定と言うとミスリーディングになってしまうというふうに考えているということでよろしいでしょうか。

古川国務大臣 期間限定と申しましたときに、あくまでも、この期間にこだわって、期間の長短のみにこだわった何か制度のような、そういう印象が強調されるのかなというふうな印象を持ちます。それが悪いというわけではありませんけれども、私どもとしては、先ほど来使っております用語の方が、よりこれを適切に表現しているなということでございます。

階委員 いや、ちょっと、そういう言い方をされると、この制度の趣旨がどんどん曖昧になっていくと思うんですね。

 なぜならば、私、今手元に法務省が作ってくれたこの法案の説明資料を持っているんですが、この手続、期間限定訴訟と我々が呼ぶ手続が設けられた理由として、現行民訴法には、審理期間を定めた規定はなく、当事者は、審理終結等の時期の見込みが立たない、これをもって、当事者双方の申出、同意があれば、一定の事件につき、手続開始から六月以内に審理終結、そこから一月以内に判決をする制度の創設というふうに書いているんですね。ですから、まさにこれは、期間限定というのが本来の趣旨であったということではないんでしょうか。

 これは、この制度を設けても期間限定されなければ、そもそもこの制度創設の理由に反してしまうということになると思うんですが、違いますか。

古川国務大臣 もちろん、この制度の中に、期間ということがその一つの要素になっておるわけですけれども、しかし、この制度を利用するかどうかというのは、あくまでもその当事者の御判断、当事者が希望した場合にこういう利用ができるということでありまして、そういう意味では、呼称はともかくとして、そういう当事者の希望によって活用できる制度であるということであります。何か強制的に、不本意であってもその期間が限定されてしまうというようなものではございません。

階委員 なぜこの制度をつくったかというと、現行民訴法では、審理期間を定めた規定がない、そして、当事者は審理終結等の時期の見込みが立たない、こういう問題意識から制度はつくられているわけですね。

 ところが、いろいろ調べてお話を聞いてみますと、この制度ができたとしても、当事者は乗換え自由だと。当事者の一存でもって通常の訴訟手続に移行できるわけじゃないですか。そうすると、そもそも制度を設ける意味がないというふうになりませんかね。

 なぜ一存で乗換え自由というふうな仕組みにしたんでしょうか、教えてください。

古川国務大臣 この制度を創設しようとする背景には、やはり、その期間の予測可能性を高めたいという一つの考え方があります。一方で、裁判、訴訟をする当事者の利益が不当に侵害されるようなことがあってはならないという要請もまた一方にあるわけです。このバランスを上手に両立させる中で制度を考えた、設計をしたということでございまして、そのときに、乗換え自由ということは、要するに強制ではない、その当事者自身の判断、希望によってこの制度を利用するか選べる、乗り降り自由であるということでございます。そういうふうな制度のたてつけでございます。

階委員 要は、期間限定というものが絶対的なものじゃなくなり、毒にも薬にもならない制度になっているわけですよ。それだけではなくて、今大臣が言われたように、降りるのが自由、相手方の意向は関係なく、一方当事者の一存で降りるのが自由だということは、相手方当事者の期待を裏切るちゃぶ台返しのようなものなわけですよ。

 民訴法の二条に、当事者の責務ということで、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を進行しなければならないという定めが置かれております。こうした観点から見ても、この制度設計はおかしいのではないかと思います。

 なぜ、降りる場合に相手方当事者の同意を要件としないのでしょうか。この点についても、これまで議論になっていますので、お答えいただけますか。

古川国務大臣 それは、あくまでも当事者双方の合意が必要であると。(階委員「降りる場合ですか。降りる場合ですよ」と呼ぶ)いやいや、だからこそ、降りる場合には、要するに、片方が希望しないということでありますから、片方が希望した場合には、両者が、双方共にというこの条件が崩れますので、ですから、この利用はできないということでございます。

階委員 いや、そういうことではなくて、始まる場合は、当事者が双方合意の上で始まっていますけれども、降りる場合は、片っ方がやめますと言ったらそれで終わりなんですよ。通常訴訟に移行しているんです。これはおかしくないですか、信義則に反するんじゃないですかということを尋ねているんです。なぜ降りる場合は勝手に一方だけで降りられるのかということを聞いているんです。

古川国務大臣 いや、そもそも、まあ通常の手続と言ってしまいましょう、この法定審理期間の制度ではなく、通常の、これまでの従来の現行制度における運用では、あえて期間を限定せずに裁判が、訴訟が行われるわけですよね。

 今回、こういう新たな制度を創設をしたいということなのですけれども、その際に、当然、両方の当事者の希望、合意があって初めてこの制度が活用ができるということでありまして、しかし、片方がやはりこの制度を利用はしたくないという意思をお持ちであれば、それは原則に立ち返って、本来といいますか通常の形に戻るわけですから、そこは信義則違反ということにはならないと思います。

階委員 いや、ちょっとよく分からないんですけれども。

 とにもかくにも、最初は合意して始まるわけじゃないですか。合意して始まったら、当然、途中で変えるのも合意によって変えるというのは、契約の場合は当然ですよね。契約の場合、合意して決めたものを一方だけが勝手に破棄するということは通常あり得ないわけでして、なぜこの手続では一方だけが勝手に破棄して元の裁判に戻れるのか、おかしいんじゃないですか、第二条の訴訟上の信義則にも反するんじゃないですかということを聞いているんですよ。

古川国務大臣 契約の場合を引かれましたけれども、通常の契約の場合に合意したじゃないかということではなくて、これは、仮に制度が、手続が開始をしたとしても、その途中から片方が、やはりこの制度利用はやめたい、ここから降りたいということになる、これは制度上そういうたてつけになっていまして、それを前提でその開始を合意するわけですので、それは信義則違反ということにはなりません。

階委員 なるほど。要するに、当事者は、どうせ合意しても後からひっくり返されるということを前提としてこの期間限定訴訟を利用するということをおっしゃったわけですけれども、それだとそもそもの目的が果たされないですよね。そういうリスクを、途中でひっくり返されるリスクも考えて、この制度を利用しろというわけですか。それだと全然、審理終結の時期の見込みが立たなくないですか。元々の制度趣旨に反するんじゃないですか。おかしくないですか。

古川国務大臣 これは冒頭申し上げましたように、期間の予測可能性を高めたいという要請が一方にあります。片方に、やはり裁判に関する不当な、裁判を受ける権利の、それが不当に侵害されることがあってはならないという要請が片方にはあるわけです。その両者が調和する形でこの制度の設計を目指しております。

 その際に、やはり基本は両者の合意、一緒にやりましょう、早く終わらせましょうというような合意があった場合には、これはこの活用がスムーズにできるのだろうと思います。しかし、事情によって、始めてみたけれども、様々な事情というのはあるんだろうと思います。それこそ、委員は弁護士でいらっしゃるから実際よく御存じだと思いますけれども、様々事情があるだろうと思います。その際に、ちゅうちょせず、やはりこれは降りるということが、やはり保障されていなきゃいけないと思うんですね、制度としてですよ。その意味で、こういう制度のたてつけになっている。

 ですから、それは、一旦合意したものを覆すのは信義に反するというような、そういう問題ではなくて、あくまでも裁判を受ける権利というものをしっかり保障をするという、その精神にのっとったものだと御理解をいただきたいと思います。

階委員 バランスを取るということなんですけれども、その結果、期間限定されるのかと思いきや、そうでもない。当事者が期間限定だと思っていたら、もっと長くかかっちゃうといったようなことも起こり得るわけであって、このような制度が果たして利用されるのだろうかというふうに思うわけですよ。

 私は、さっき言ったように、やはり訴訟上の信義則というのは民訴法上の大原則ですからね、これがちょっとないがしろにされているんじゃないかと思っています。

 同じように、私はこの訴訟上の信義則に照らしてどうなのかなと思うのが、請求の認諾とか請求の放棄という仕組みが民訴法であるわけですね。この請求の認諾とか放棄も、一方当事者の一存で訴訟そのものから降りられるわけです。相手方当事者の期待が裏切られる場合もあって、現に、近畿財務局で公文書改ざんを命じられ自殺に追い込まれた赤木俊夫さんの夫人が提訴した国家賠償請求訴訟では、国が証人尋問前に請求を認諾して訴訟を終結させて、相手方当事者の赤木さんが抱いていた事件の真相解明の期待が裏切られたわけです。

 請求の放棄や認諾を行う場合も、この訴訟上の信義則という観点から、相手方当事者の同意を要件とする、こうした見直しも、今回民訴法を変えるのであれば併せて検討されてもよかったのではないかと私は思うんですけれども、大臣、こうした訴訟上の信義則という観点からの民訴法の見直し、先ほど大臣は、今回の見直しは使い勝手をよくする、利用しやすくするといったようなことをおっしゃっていましたけれども、信義則をちゃんと守るということも併せて改正の観点に入れて、請求とか認諾、一方当事者の一存でやれないようなことにするということも考えてよかったのではないかと思うんですが、大臣のこの点についてのお考え、伺ってもいいですか。

古川国務大臣 その信義則ということから請求の認諾ということに話が及んだわけですけれども、請求の認諾というものは、請求自体を認めて、その請求の内容が実現をするわけであります。ですから、これは、その意味では、争いのあったところが、その争いが解消されるという意味では、信義則違反というような話にはなかなかつながらないのではないかなというふうに思うのですけれども。

    〔熊田委員長代理退席、委員長着席〕

階委員 相手方当事者は、お金がもらえればいいと思って裁判を起こしているわけでは必ずしもない。やはり、何のために裁判を起こしているかということでいうと、真相解明というのも一つの大きな目的であったりするわけです。そういう中で、国が当事者となる裁判において、安易に請求を認諾して一方当事者の期待を裏切っていいのかどうかというのが問題だと思っています。

 今日は財務省に来ていただいていますけれども、今取り上げた国賠訴訟における請求の認諾に当たって、請求金額の多い少ないはどういうふうに影響しているのか、考慮しているのか、この点についてお考えをただしたいと思います。

嶋田政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、認諾ということでございますと、請求金額の多寡を含めて、原告の御請求内容の当否を適切に判断した上で行われることになるのではないかと考えております。

 本件につきましては、国の責任は明らかである、損害賠償請求額についても妥当なものであると判断し、認諾を行ったところでございます。

階委員 妥当だと今おっしゃいましたけれども、以前、前川委員がこの場で、同様の案件に比べて、認諾された今回の一億円超の金額というのは非常に大きな金額だということを指摘されて、私も弁護士なんですが、前川先生のお話を聞いて、ごもっともだなというふうに思いました。

 財務省にお尋ねしますが、請求金額の多寡も考慮要素になるということなので、どれだけの金額になればこれは認諾が認められないのか、基準などがあるのか、もし基準があるということであれば、今回は基準を満たしているということなのか、法務省とその判断をめぐって相談したのかということについてお答えいただけますか。

嶋田政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的にどのように請求金額を検討したかということは、国としての訴訟方針等を明らかにすることであり、将来における国の訴訟活動や、それからその方針を推知されかねないということから、これは従来よりお答えを差し控えさせていただいております。

 いずれにせよ、本件につきましては、法務省にも御相談申し上げ、それから損害賠償額、決裁文書の改ざんという重大な行為が介在しているという本件事案の特殊性に鑑みれば、妥当なものと判断したということでございます。

階委員 皆さん、国民の税金でお金を払うわけですよね。皆さんのお金じゃないんですよ。税金の使い方について、財務省ですからね、説明責任があるでしょう。なぜこれが適正だと言えるんですか。説明責任を果たしてください。

 一億円、ほかの裁判に比して、同種の案件に比して異常に高いという指摘が専門家である前川先生からあったわけですよ。適正だと言えるんだったら、その理由をきちっと説明してください。もう一回お願いします。

嶋田政府参考人 今回の国家賠償訴訟というのは、赤木さんが公務による心理的、肉体的負荷を原因としてお亡くなりになったということに関する損害賠償請求訴訟でございます。

 国は、まさにそれについて責任があるということをお認めし、損害賠償額をお支払いすることになったということで、それは、今申し上げましたとおり、改ざんという重大な行為が介在したという特殊性に鑑みれば妥当であるということと判断したということでございますが、その中身については、先ほどから申し上げましたとおり、どのように請求金額を検討したかということを明らかにするのは、国としての訴訟方針等を明らかにすることになり、将来における国の訴訟活動やその方針を、推知されないことから、従来よりお答えを差し控えさせていただいているということでございます。

階委員 いや、先ほど、請求額の多い少ないが一つの判断材料になるとおっしゃいました。これ、仮に請求額が一億じゃなくて十億とか百億だったらどうしていたんですか。教えてください。

嶋田政府参考人 一般論としては、請求金額の多寡を含めて、原告の請求内容の当否を適切に判断した上で認諾ということになろうかと思いますが、階先生のお尋ねは仮定の御質問ということでございますので、それについての直接のお答えは差し控えたいというふうに思います。

階委員 ここで、こういういいかげんな基準で国民の税金で勝手に認諾されるような今の仕組みというのを変えたいと思うんですね。そのためには、一つの案として、相手方当事者の同意を得ないと認諾はできないというような仕組みにするか、もう一つやり方があると思います。今回の法案でも訴訟に関する手数料の見直しが一部含まれておりますけれども、認諾の濫用を防ぐために、訴え提起の手数料構造を見直して負担を軽減するべきではないかというふうに思います。

 私が今日お配りしている訴えの提起の手数料の体系というのを見ていただきたいんですが、訴額が百万円の場合は手数料一万円、一千万だと五万円、一億だと三十二万円、百億円だと一千六百二万円。これは、同じ国賠訴訟で、責任の認定とか、そんなに審理する内容は変わらないにもかかわらず、訴額によって手数料が大きく変わるということで、訴えを提起する側は、本来だったらもっと請求したいのにこれぐらいの金額にしておこう、それは手数料を抑えるためなんですが、そういうことによって、逆に、訴えられる国の側からすると、訴額が少ないので認諾しやすくなっているという問題があると思います。

 この手数料が訴額によってどんどん増えていくような仕組み、これは改めていいのではないかと思います。これはなぜこんな手数料の体系になっているんでしょうか。最高裁からお答えいただけますか。

 最高裁は答えられない。いいです、じゃ。

 じゃ、法務大臣に提案します。

 私が言っているのは、こういう訴額によって手数料がどんどん上がるようなシステムではなくて、むしろ、訴え提起の場合はある程度固定的な金額にして、訴えを起こして勝ったという場合には勝った金額に応じて追加で手数料を納めてもらうといったやり方の方が、訴えをする側からとっては訴えがしやすくなりますし、他方、先ほど来取り上げているような国が勝手に認諾するといったようなことも防げるのではないかと思うのですが、手数料の見直しについて大臣の見解を伺いたいと思います。

古川国務大臣 今委員御指摘の手数料が累進的に変わっていくスライド方式では、裁判制度を利用する者にその制度の運営費用の一部を負担させることとした上、裁判制度の利用者相互の間においても、取得可能な利益の多寡に応じて手数料の額に差を設け負担の公平を図ることを考慮したものであり、また、副次的に濫用的な訴訟の防止という観点をも踏まえたものと認識をいたしております。

 訴額に応じて手数料の金額が増加する現行のスライド方式は、今申しましたように、裁判制度の運営費用の負担の公平を図るという観点からすると、なお合理性があるんだというふうに考えております。

 もっとも、現時点で確定的な見通し、将来の見通しを申し上げることは困難ではございますけれども、今般の裁判手続のIT化によりまして、仮にこの法改正が実現したその場合には、事務の合理化が図られて、そして裁判制度の運営コストが全体として低減されるということも期待されるところだと考えております。

 したがいまして、今後の訴え提起の手数料の在り方につきましては、施行後における裁判手続の事務処理の実態などを踏まえながら、負担の公平の見地から必要な検討を行ってまいりたいと思います。

階委員 この訴訟の手数料については、国民に利用しやすい訴訟制度にするという今回の法改正の目的にも沿っていますし、また、先ほどから申し上げておりますように、国が当事者となった場合、税金を使って安易に認諾するということを防ぐ一つの手だてにもなり得るということで、是非御検討いただきたいと思います。請求の認諾の問題、そして求償権を行使していない問題は、また別途取り上げたいと思います。

 財務省はもう御退席いただいて結構です。

 残り時間が短くなってきましたが、一つ気になっていることを、法案に関して取り上げます。

 今回、当事者の口頭弁論へのウェブ参加は認められるのに、裁判官や傍聴人のウェブ参加を認めないのはなぜなのか。この点について、これは、制度設計したのは法務省だから、法務大臣でよろしいんでしょうか。お答えください。

古川国務大臣 当事者の口頭弁論の期日へのウェブ参加は、当事者がウェブ参加を希望する場合で裁判所が相当と認めるときにされるものでございます。

 他方で、現行法下におきましては、当事者は、現実の法廷に出頭して、裁判官の面前で主張を述べることができます。

 改正法の下でも、当事者が希望する場合には、裁判官に現実に対面して主張を述べることを保障する必要があると考えられることなどから、裁判官が在廷することなくウェブ会議の法廷で口頭弁論の期日に参加することを認めることについては、慎重な検討を要するものと考えております。

 そこで、改正法案が施行された場合にも、裁判官は法廷に現実に在廷することとし、当事者が裁判官と現実に対面して主張を述べる機会を維持することとしたものでございます。

 また、現行法下では、傍聴に関しては、現実の法廷に赴けば、裁判官の発言や態度を含め、法廷全体の様子を観察することができます。

 憲法上、裁判の公開が要請されている趣旨は、訴訟手続を傍聴人の観察の下で行うことを通じて、裁判の公正等を担保する点にございます。

 そうであるとすれば、当事者に口頭弁論の期日へのウェブ参加を認めることとする場合でも、傍聴人は現実の法廷において、そこで実施される手続を傍聴することができるようにすることが、裁判の公開の制度趣旨に沿うものと考えられます。

 このため、改正法案が施行された場合にも、傍聴人は法廷の傍聴席において、裁判官が行う手続を観察することができるようにするとともに、法廷に設置されたモニターを用いるなどして、ウェブ会議の方法で参加する当事者とのやり取りを傍聴することができるようにすることを想定しております。

階委員 時間が来たので終わりますけれども、傍聴人がなぜわざわざ法廷に来なくちゃいけないのか、当事者は来なくていいのにというのが、これも、先ほどの期間限定訴訟と同じく中途半端だなというふうに思いました。

 終わります。

鈴木委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 たしか先々週だったと思うんですけれども、衆議院の議員会館の事務局から、不審なメールが来ているので開けないでくださいという通知が回ったと思うんですね。ああ、懐かしいなと思ったんですけれども、トロイの木馬という、たしか二十年ぐらい前にはやったウイルスだったと思うんですけれども、そんな名称があったので、ITをどんどん進めていく上で疑問点が幾つかあるので、今日お尋ねさせていただきたいと思います。

 まず一点目が、個人や企業の機密を扱う法律事務所がサイバー攻撃の標的になり得るんじゃないか。近年、その事象が顕著に表れるようになった。今回のIT化の制度改正は、それに対応しているか。

 例えば、国内の話ばかりじゃなくて、海外の自分の関連会社にウイルスを仕込んだメールを送って、それが本社とのやり取りでウイルスに感染して、訴訟の当事者になっていった場合に防げるかという、そこまでのカバーをしない限り、国内だけの話では終わらないと思うんですよね。

 サイバー防御は、先ほども質問にあったように、知識や費用を、当事者である、利用する私たちは求められるんですけれども、全然お金にならないんです、経営上は。だから、目に見えるリターンやメリットがないということで、これからまた非対面の機会が、コロナが収束した後でしょうけれども、ウェブ会議で今裁判をやったり、そういう手続が社会の中で多くなっていると思うんですね。

 デジタルでの資料保管が求められる機会が、IT化を進めれば進めるほど、旧来の紙を前提とした情報管理体制の見直しを求めるのはもちろんのこと、裁判所に対して、不正アクセスやサイバー攻撃を防御するファイアウォールを徹底することが必要だというふうに考えますし、その対策が万全か、お尋ねしたいと思います。

 例えば、ファイアウォールの導入の有無や、ITを使ってデータのやり取りをする、裁判所はいいんですけれども、相手方ですね、それのチェックをどうするのかということですね。それと、今申し上げましたように、メールを開けた途端に感染してしまうということがあって、幾らセキュリティーをきつくしたとしても、メールに添付されちゃっているものを開けてしまったら、もうそれで感染してしまうんですよね。だから、それを防ぎ切れるのかということ。

 それと、ファイアウォールも、一年に一回ぐらいか、毎回、バージョンアップじゃないけれども、アップデートしていけばいいんですけれども、たまたま古いソフトをそのまま使ってしまっている。OSも同じです。セキュリティーにカバーがされていないような古いOSを使っていて、脆弱性の中で突破されて入ってきてしまった。裁判所じゃなくて、それを利用する人たち、どうチェックするのかということなんです。

 その辺の対策があったら、まず御答弁いただきたいと思います。

門田最高裁判所長官代理者 まず、裁判所の方にもお尋ねがあったように承りましたので、裁判所の関係をお答えさせていただきます。

 改正法の下で裁判所において構築するシステムですけれども、こちらの方では、訴訟当事者の個人情報を始めとします機微な情報を取り扱うことになりますので、十分なセキュリティー対策を講じる必要があるというのは、先生の御指摘のとおりでございます。

 システムは、本法案が成立した後に仕様を確定して開発に入るものでございますし、セキュリティー対策という性質からしても、具体的な内容についてお答えするのは難しいところでございますけれども、政府においては、政府機関の遵守すべきセキュリティーに関する各基準が定められているところと承知しておりますので、それらの内容も踏まえて、十分なセキュリティー対策を講じてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 例えば、三月十五日で、基本は、税務申告は終わったと思うんですけれども、今税務申告もネットで申請できますよね。そうすると、どういう機種で、どういうソフトなりなんなり、プリンターも含めて、この仕様でお願いしますね、それに該当していれば次に進んでくださいといって、画面を変えていくんです。それでも、やりようによっては幾らでも抜けちゃうと思うんですよね。最低でもやはりそのぐらいなことをして、裁判所なら裁判所にアクセスさせるぐらいなことをしないと、まず、そういうことも想定しているのかしていないか、これからプログラムしていくのか。

 それで、外部委託しちゃうんだと思うんですね。外部委託しちゃうと分からないです。私もプログラムは全然自分でも携わっていないから分かりませんけれども、何がよくて何が悪いのかが、素人の私たちは分からないんです。そこでチェックができるのかということなんです。

 その辺の対策が、もう一回ちょっと答弁してもらいたいんですけれども。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 具体的なところはこれからということになりますけれども、今ほど委員の方から御指摘がありましたような点、非常に重要な点だと認識しております。

 どういう危険が存在するのか、それを防ぐためにどういう対策が取れるのかということについてはよく検討してまいりたいと思いますし、私ども文系の人間ですので、詳しくないところがあります。外部の者を活用するにしても、その辺のことがよく分かる人間と密接に連携を取りながら、あるいはデジタル庁などとも連携を取りながら、十分な対策をしていきたいというふうに思っているところでございます。

鈴木(義)委員 民間でよく、テレホンアンサーじゃないんですけれども、電話をかけても、お客様の御利用のサービスの向上のために、この会話は録音させていただきますというアナウンスが出るんですね。それと同じぐらいなことをやったって成り済ましも起こり得るだろうし、一番は、裁判の当事者じゃない、裁判を起こした当事者かどうか、それの確認をどうするのかというのが一番のキーになっていくと思いますので、是非その辺を御注意いただいて、対策と制度を確立していただきたいと思います。

 参考人のときにもお尋ねしたんですけれども、IT化を進める一つに、集約されたデータは国民のための公共財だというふうに答弁いただいた参考人の方もいらっしゃったんですね。法務省が中心となり、より使いやすく、全国で行われた和解や判決等のデータとして蓄積して、そのデータを活用することで紛争解決に資するものと考えます。

 私が冒頭、大臣所信のときに質疑に立たせてもらったときに、そもそも裁判所に持ち込まなくてもお互いで解決ができればそれにこしたことはないという考え方なんですね。だから、和解だとか判決が出たもの、今でも判例主義でやっていると思うんですけれども、やはりそれを事前に情報開示することが、IT化する上で一番大切になっていくんじゃないかと思うんです。

 公共財として活用する仕組みを構築する考えがあるのか、津島副大臣にお尋ねしたいと思います。

津島副大臣 鈴木義弘委員にお答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、民事判決情報は国民の行動規範や紛争解決指針ともなり得るもので、社会全体で共有、活用すべき重要な財産、公共財と言っていいんだと思います。

 現在、民事訴訟制度のIT化の議論と相まって、より多くの民事判決情報を集約し、データベース化する機運が高まっております。民事判決情報については、弁護士を始めとする法律実務家はもとより、今後、より広く国民に提供していくことにより、法の支配の更なる浸透につながるものと考えてございます。データベース化の実現に向けて、これはスピード感を持って検討を進めていく必要があるのではないかという認識を持ってございます。

 現在、公益財団法人日弁連法務研究財団主催のプロジェクトチームにおいて、データベース化の課題や対応策について実務的協議を行っております。法務省及び最高裁判所もオブザーバーとして参加しているところであります。

 法務省としては、データベース化の早期実現に向けて、セキュリティーの確保といったこともございますけれども、そういった必要な検討を積極的に行ってまいりたいと考えてございます。

鈴木(義)委員 去年だったですかね、デジタル庁ができたんだと思うんですけれども、これからだと言われればそうなんですが、各省庁でいろいろな仕組みをつくっていくといったときに、やはりばらばらで仕組みをつくっても意味をなさないと思うんですね。

 今、公共財としての使い方をしていくんだというふうに御答弁いただいたんですから、例えばこういう仕組みをつくりたいんだと、いきなり法務省が外部に投げてプログラムをつくらせる、仕組みをつくらせるんじゃなくて、一回デジタル庁に寄せて、これはもう法務ばかりじゃなくて、国交でも経産でも何でもそうです、いろいろな仕組みが縦割りで全部できている。実際、使うとき、コロナがいい例だと思うんです。みんなばらばら、遅い遅いと地元じゃ文句ばかり言われて。

 そういったことがないように、もしこれからプログラムをつくって運用していこうと考えるんだったら、デジタル庁ならデジタル庁を、せっかくつくったんだから、そこにシステムを構築させるような形で、今後、また違う省からもいろいろなシステムをつくるときに、それをデジタル庁がベースのところだけはつくっていくような考え方を申し入れてもらいたいんですけれども、どうでしょう。

津島副大臣 デジタル庁設置ということがあって、その御活用についての委員のただいまの御意見でございました。

 こうした御意見を参考にして検討を進めてまいりたいと考えてございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 では、次の質問に入ります。

 審理の迅速化は誰の要請だったのか。法制審の資料を見ても、審理六か月、判決で一か月。今日午前中からずっと限定裁判の話が出てきたと思うんですけれども、私が大臣に質問したときに、犯罪を犯した人に、警察官の取調べを受けるときに弁護士を同席したらどうだという提案をしたら、法制審で審議されていないから、その答申を尊重するんだというふうに答弁されたんですね。

 そうすると、今回の期間限定裁判のやつ、六か月、一か月というのは唐突に出たんじゃないか。議事録を見ても、まあ、出ているんですけれども、あくまでも法制審に諮問をするのは、大臣が諮問をしない限り、いきなりそこで何というのは出てこないはずなんですね。違いますか。こういうことをやりたいから法制審で審議してください、そこでいろいろ代表の方がけんけんがくがくの審査をした中で答申として戻してきて、それを基にして、法務省で最終的に精査して法案にする、制度化するという仕組みになっているんじゃないんですかね。

古川国務大臣 何かあらかじめ法務省、法務大臣の側から具体的な案を用意して、これで議論してくださいというようにして諮問するものではございません、具体的な案をですね。

鈴木(義)委員 いや、聞いてびっくりしちゃったんですけれども。じゃ、この期間限定裁判というのは、その中から唐突に出てきちゃったんですか。出てきちゃったから、法務省として、それはいい案だと思って法制化したということでよろしいんですかね。

 そうすると、事前に、反対を述べたい人だとか、国民の意見を聞くとかという作業もなくて、法制審だけが答申を出してきたものをそのまま法案化してしまうということでよろしいんですかね。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法務大臣は法制審議会に諮問をする立場でございますが、諮問の仕方もいろいろですけれども、大きな諮問事項というのがございまして、その範囲内でどのような議論をするかというのは、基本的には法制審議会の方に委ねられております。ですから、その中でいろいろな提案が出れば、委員の間で議論をするということが行われます。

 それから、必ず国民の意見を一般的に問うという機会を設けるというのが、必ずかどうか、普通です。

 これは、中間試案という中間的な案を作って、これをパブリックコメントの手続に付して、国民から広く意見募集をする。その意見をもう一度法制審議会の方にフィードバックして、国民からこのような意見があるということを前提に更に審議をしていただく。その上で答申をいただく。

 法制審議会は大臣が諮問しておりますので、基本的には、法制審議会から出された答申というのは、法務大臣あるいは法務省として尊重するというのが基本的な立場でございます。

鈴木(義)委員 じゃ、全然、幅の中にあった内容を協議してもらっていれば、何が出てきても尊重するということでよろしいんですかね。

古川国務大臣 法務大臣から、ある論点について法制審に諮問をいたします。その法制審は、様々な知見をお持ちの方々による合議体で議論が重ねられて、そしてパブコメというような手続を通じて国民一般の皆さんの御意見も吸収する。そのような形で議論を重ねていって、要綱なりをまとめていただいて答申をいただくということでございますから、私は、これは非常に丁寧な議論を重ねておりまして、信頼に堪え得るものだというふうに考えております。

鈴木(義)委員 じゃ、そもそもの話をさせてもらいたいんですけれども、期間限定裁判を導入するに当たって、何か産業界でもそれを入れてくれというようなコメントが出ていないんですよね、議事録をずっと見させてもらったんですけれども。じゃ、誰がこれ、六か月で早く審理してくれと言い出したんですかね。不思議でしようがない。法制審でというふうに言うんですけれども。

 日本の裁判は長い長いと言われて、前任の方も資料を出して、それについて、六か月以内だとか一年以内だとか、二年だ、三年だ、五年だというふうにお示しいただいたんですけれども、そもそも、結局、証拠の偏在状況や証拠を保持する相手方の対応状況など、証拠手続の整備が不十分なことが裁判が長引く要因になっていると聞くんですよね。

 裁判の迅速化を図るためには、証拠収集手続の拡充の整備が先決じゃないかというふうに考えるんですけれども、御見解をお示しいただきたいと思います。

古川国務大臣 民事紛争が専門化、複雑化していることなどに鑑みまして、証拠収集手続の拡充等を中心とした民事訴訟法の見直しを求める意見や指摘があることはよく認識をいたしております。

 民事訴訟における証拠収集手続の充実等につきましては、現在、日本弁護士連合会、最高裁判所及び当省の担当者におきまして、意見交換を行い、検討課題を整理しているところでございます。

 法務省としては、民事基本法制を所管する立場から、引き続き、民事訴訟における証拠収集手続の充実等について必要な検討をしてまいりたいと考えています。

鈴木(義)委員 今御答弁されたことを先にやってから期間限定裁判の法案を出した方が筋だったんじゃないかなと思うんですけれども、どうでしょうか。

古川国務大臣 今回のこの制度は、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、予見可能性を高めるという要請と、それから、裁判を受ける権利、これは守らなければならないという、この両者の要請の下にこの制度を設計をしたものでございます。

 そして、法制審議会におきましても、様々な議論を重ねて、よりよいものということで様々な議論がなされてきているというふうに承知をしております。

 このように、要請があり、そして議論を積み重ねて、適正な手続の下に今回の法案は作成されているというふうに自負いたしております。

鈴木(義)委員 質問しているのがちょっと理解いただけていないのかなと。

 だから、証拠手続を先にやった方が早くなるんだったら、それを、今議論していることを形にしてから迅速性を図るような形を取っていった方がいいんじゃないのかなというお尋ねなんですよね。それがちょっと前後逆じゃないかということなんです。

 それともう一つ、法制審から出てきたものを、そっくりそのまま、いいことだからやりましょうということじゃないような気がするんですけれども。あくまでも専門家の人たちの意見として上がってきたけれども、最終的にそれを形にするときに、大臣を中心にして、これはちょっと待っておいた方がいいんじゃないかとか、これは入れた方がいいんじゃないかというふうに最終判断するのは行政の長の役目じゃないかと思うんですけれども、その辺について御答弁いただきたいと思います。

古川国務大臣 二点ございました。

 まず、証拠収集手続の充実に関してでございますけれども、先ほども答弁申し上げましたように、これは非常に大事なことだという認識は持っております。

 したがいまして、既に検討をしております。ですから、もろもろの法改正と御指摘の問題点についての検討、これはやはり並行して進めるべきものであるというふうに考えています。

 それから、法制審ということでございますけれども、あくまでも法務大臣として、最もよい形で法案というものを国会に提出をさせていただきたいという考えの下に、信頼すべき法制審の委員の皆様に議論いただいて、それを踏まえての法案作成ということになるわけですけれども、それを最終的に法律として形にされるのは国会でございますので、私どもは、そのような三権分立のきちんとした構造あるいは精神というものをしっかり踏まえながらこの法案を御審議をお願いしておるところでございます。

鈴木(義)委員 もう最後になりますけれども、一つ、ああ、難しいなと思うんですけれども、民事訴訟法の二百四十三条の一項に、裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときに終局判決をするんだというふうに法律でうたっているんですね。それを、結局、今回の限定裁判に当たっては無視しているんじゃないかと思うんですけれども、最後に御答弁いただいて、終わりにしたいと思います。

金子政府参考人 法定審理期間訴訟手続においても、訴訟が裁判をするのに熟したときに判決をするわけでございますので、そのような御指摘は当たらないと思います。

鈴木(義)委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 民事訴訟法案の期間限定裁判について、私も質問させていただきたいというふうに思います。

 この期間限定裁判は、審理期間が制限されるということにより、主張や証拠を提出する機会も必然的に制限をされ、その結果、粗雑な審理や誤った判断がなされる危険性が高まってしまう、そのことは国民の裁判を受ける権利の侵害にほかならないという強い批判の声が上がっております。憲法三十二条の裁判を受ける権利を保障するためには、公平公正で慎重、誤りがないこと、厳密な事実認定が大前提だと考えます。

 裁判を受ける権利の侵害になるという懸念の声が上がる中で、国会審議もまた慎重で十分なものでなければならないというふうに考えております。幾つもの論点がある中で、理事会の中で、次回、二十日には採決という御提案もありましたけれども、是非、採決を急がずに、論点ごとに十分な審議を強くお願いをしたいと思いますけれども、委員長、お願いしたいと思います。

鈴木委員長 先ほど理事会で決定したとおりにいたしたいと思います。

本村委員 十分な審議をやるべきだというふうに思うんです。

 なぜ期間限定裁判のようなものをつくるのかという問いの中で、裁判の期間の見通しをつけるためだというふうに言われますけれども、先ほど来御議論がありましたけれども、私も改めて確認をさせていただきたいというふうに思います。

 現在の訴訟制度でも、当事者間において事実関係に争いがないが契約条項の解釈や法適用について争いがある事案など、政府が想定している事案については比較的早期に裁判を終えることができますね。

金子政府参考人 お答えします。

 現行法の下で早期に審理を終えている事件も、そのような場合、多いと思われますが、結果的に早期に審理を終えたのはあくまでも個別事件の運用によるものであり、制度上、一定の期間に審理を終えるべきことが明確にされているわけではございません。

 法定審理期間訴訟手続は、当事者双方の意向が合致した場合には、審理期間や判決までに要する期間が法定されていることにより、訴訟の早い段階で紛争解決までに要する期間の予測可能性が高まる点に大きな意義があるというふうに考えられます。また、制度として一定の審理期間が定まることで当事者の訴訟活動がより集中的に行われることとなり、早期に審理を終えることにつながることも考えられるところでございます。

本村委員 先ほど来、階先生も先ほどお話がありましたけれども、政府の言い分は言うわけですけれども、本当は見通しが立たないことがあり得るんだと、通常訴訟に移行するわけですから、そういう反論がなされているわけでございます。

 先ほど山田議員からも御指摘がありましたように、六か月ではなく九か月、大体時間がかかるんだと。私も資料を出させていただきましたけれども、約半数以上の訴訟が六か月以内で終わっている、そして、一年以内で見ますと、七割が一年以内で終わっているということでございます。

 見通しが立たないということなんですけれども、こういう主張や証拠がそろって、ほとんど争いがない事件は、こういうふうに終わっていますよということを広報すればいいだけのことではないかというふうに思うわけです。にもかかわらず、なぜ、裁判を受ける権利の保障が後退するということへの危惧さえ抱かれているこういう制度をつくらなければならないのかということなんです。

 鎌田議員も先ほど言われましたけれども、法案の作り方にも大きな疑義があるというふうに思っております。幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 現在の民事訴訟制度で比較的短期に終わっている事案について、原告、被告の個人、法人の別、そして事件の類型、そして審理期間、控訴された数など、クロスの分析をお示しをいただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 六か月以内に終局した事件の種類について、原被告、個人、法人の別、事件類型、審理期間、控訴された件数等について、網羅的に調査分析しているものではございません。

 もっとも、裁判所の統計に基づき、令和二年における六か月以内に終局した事件の割合を見ますと、医療関係訴訟、建築関係訴訟、知的財産権訴訟などのいわゆる専門訴訟と呼ばれる訴訟類型においては、六か月以内に終局した事件の割合が、民事第一審訴訟全般において六か月以内に終局した事件の割合よりもかなり低い状況にあるものと認識しております。

本村委員 ちゃんとした分析はなされていないわけです。賠償金や解決金も含めて、法案を通す前に是非こういう資料を出していただきたいというふうに思います。

 また、民事訴訟法百四十七条の三には計画審理の規定があります。これは、民事訴訟の充実、迅速化ということで、訴訟の早い段階から終わりまで見通し、そして双方の協議の下で計画的に審理を行うというものですけれども、この計画審理を活用した事案について、原告、被告の個人、法人の別、事件の類型、審理期間、控訴された数など、これまたクロスの分析をお示しをいただきたいと思います。

金子政府参考人 今委員が御指摘になったような分析結果についてですが、法務省として、審理計画の制度を活用した事案の件数を調査分析したものはございません。

 一方で、審理計画の制度が十分に活用されていないとの指摘があるものと認識はしております。

本村委員 これも迅速化ということで導入された制度なんですけれども、法制化したのに使われていないわけです。先ほど、福岡地裁の迅速トラックは法制化しないからできないんだというふうに言ったんですけれども、法制化しても、この審理計画、計画審理の活用はないわけです。なぜ低迷しているんでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 民事訴訟法第百四十七条の三に規定されている審理計画の制度が十分に活用されていない理由には様々なことがあるものと考えられ、その理由を的確にお答えすることは困難でありますが、実務的には、計画審理が有効と考えられる類型の事件とそうでない類型の事件があるなどの指摘や、判決言渡しの予定時期までは定めないものの、可能な限り各当事者の準備書面や書証の提出時期を定めるなど、計画的に審理を行う運用がされ、審理計画の制度の活用にまでは至っていないとの指摘があるものと認識しております。

本村委員 制度をつくっても、これは活用が低迷しているというものでございます。

 先ほど御指摘がありました、福岡地裁が、これも迅速な解決のためにということで、独自で導入をされました迅速トラック、これについても、原告、被告の個人、法人の別、そして事件の類型、期間、そして通常訴訟に移行した数など、分析をお示しをいただきたいと思います。

金子政府参考人 過去に福岡地方裁判所において迅速トラックと呼ばれる取組がされていたことは承知しておりますが、その件数等について調査分析したものはないものと認識しております。

本村委員 先ほどの審理計画の制度、そしてこの迅速トラックを含めて、賠償金、解決金を含めて、法案を通す前に資料を提出していただきたいというふうに思います。

 先ほども申し上げましたように、計画審理というのが法制化していますが、余り活用されていないわけで、単純じゃないわけです。だからこそ、ちゃんとこういう迅速化ということで導入された制度がどうなのかということも含めて、調査、分析、研究して、それを明らかにして、法制審も、そもそもこれも含めて議論するべきだったのではないかというふうに思うわけです。

 今回、大臣、何回も聞かれていると思うんですけれども、諸外国にはこの期間限定訴訟のような制度はありませんねということも、確認をもう一度させていただきたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 外国には類似の制度があるというふうには承知しておりません。

本村委員 なぜ外国にはないというふうに大臣はお考えでしょうか。

古川国務大臣 制度は各国様々でございますので、なぜないかということにお答えするのは非常に難しゅうございます。

 いずれにしても、法定審理期間訴訟手続というものは、法制審議会において議論を尽くした上で示された答申に基づいて創設をさせていただこうとするものでございます。

本村委員 諸外国なんですけれども、国民、住民の皆さんの権利義務を定めるために厳密な事実認定を必要とする裁判制度では、裁判を受ける権利として、主張や立証をする権利、つまり、参考人もおっしゃっておりました、法的審問請求権があるので、期間を決めてしまうとそれを制限することになるから、各国とも期間を定めることを認めていないんじゃないですか。大臣、お答えください。

古川国務大臣 他国の制度について、我が国の法務大臣としてコメントするのはなかなか難しゅうございます。

本村委員 先日の参考人質疑で、法制審の民事訴訟法(IT化関係)部会長の山本参考人が指摘をされた、イギリスのファストトラック、フランスにおける運用など、類似の他国の制度を分析調査されておりますでしょうか。

金子政府参考人 お尋ねのイギリスやフランスにおける制度運用について、それに特化した形での調査を法務省ではしておりません。

本村委員 今、私、四つの調査、研究、分析について伺いました。それについて、いずれもしっかりと調査、分析、研究がやられていないということがはっきりしたというふうに思います。

 法案の前提として、総合的に立法事実、必要性を精査、検討するために、これら、今私が指摘をした四つのところは分析するべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 先ほど来、委員からは、審理計画であるとか、福岡地裁の迅速トラックであるとか、そういう例を引かれまして、そういうものに十分な調査を行って、それを検証して制度を考案するべきではないか、それをしていないのは問題ではないかという趣旨の御指摘だというふうに思います。

 しかしながら、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、今回のこの制度については、いわゆる予見可能性を高めるべしという要請と、一方で、裁判を受ける権利というものを侵害してはならぬ、これを保障しなければならないという要請があります。その要請の中で、それを両者両立させるような形での制度を設計をしておるわけでございます。

 また、法制審議会におきましても、例えば、そこでは福岡地裁の迅速トラックについて、その取組について触れたやり取りがありまして、そこでは、弁護士の委員から、迅速トラックのような取組ではなかなかこれを継続は難しい、それは、やはり個々の裁判官の判断に委ねられての運用となりますから、例えば裁判官が交代するなどの事情でなかなか継続されなくなってしまうといった問題があると。なので、やはり法律上の制度として仕組む必要があるだろうというような御意見、御指摘がなされたりしておるわけです。

 このようにして、御指摘のように、例えば福岡地裁における迅速トラックについても、法制審の中ではちゃんとそういうものを一つの材料として議論を進めて、そして、その結果、このような答申をいただいておるということでございます。

本村委員 福岡地裁の迅速トラックについても、先ほど山田議員が御指摘されましたけれども、大臣がおっしゃっていることと違うということですよね。そして、私、さっき指摘させていただいて、お話を聞いていなかったのかちょっと分からないんですけれども、聞いていなかったのだろうなというふうに思うんですけれども、法制化したものでも十分活用していないものを指摘したわけですけれども、単純じゃないんだ、だからこそもっと精査、研究していただきたいということなんですね。

 今、四つ指摘させていただきました、現行の訴訟の制度の中で審理計画を活用した事案、比較的早期に裁判を終えた事案、福岡地裁で行っていた迅速トラック、イギリスのファストトラックそしてフランスにおける運用など類似の外国の制度、これの実態把握、メリット、デメリット、功罪、これをしっかりと調査、研究、分析を行って、情報開示をして議論することが必要だと思いますけれども、これを是非すぐに出していただきたいと思うんですけれども、すぐやっていただきたいと思うんですけれども、大臣、お願いしたいと思います。

古川国務大臣 いずれにしましても、法定審理期間訴訟手続は、法制審議会において議論を尽くした上で示された答申に基づいて創設をしようとするものでございます。

本村委員 法案の前提となる調査分析もしていない、それで法制審の議論を行われたんだなということで、大変おかしいというふうに思っております。

 法案の作り方が粗雑過ぎるというふうに思うんです。弁護士の方や、あるいは研究者の方と同時に、主婦連合会や全国消費者団体連絡会、そして全国消費生活相談協会の皆さんも新たな訴訟手続の新設に反対しますと。法制審のIT化関係部会ではない、独立した検討会などで十分な時間をかけて検討してくださいという御意見を出しているわけでございます。

 立証、主張の期間を制限するものということで、粗雑な審理、誤判の危険性が高まり、そして訴訟による権利保障を損なうという懸念の声について、懸念はないというふうに答弁されているんですけれども、裁判官が本当にフェアにやっていただけるのかということも、私には疑義があるわけでございます。

 例えば、裁判官の資質という面でいいますと、生活保護の引下げ中止を求める訴訟でもコピペ判決が相次いだ。裁判官の資質が問われる中で、原告、被告双方が期間限定裁判に同意している中で、裁判官が、客観的に見れば本当はよく分からない状態なのに判決を出すということはないのか。より誤判のリスクを高める、そういうふうに皆さんが見るのは当然だと思うんですけれども、その点、大臣、いかがでしょうか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 法律上、裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときに終局判決をすることとされておりまして、このことはこの制度を利用した場合にも変わりはございません。

 この制度は、当事者双方が制度の利用を希望した場合に開始され、六か月以内の期間内に審理に必要な主張や証拠を提出することが前提とされていることからすれば、その期間内に訴訟が裁判をするのに熟するのが通常であろうと考えられます。

 そのため、この法定審理期間手続においても、裁判官は適切にその心証を形成することができ、裁判官に無理を強いるようなものではなく、誤判の危険性が高まるものでもないものと認識しております。

 この制度については、裁判所において、法の趣旨を踏まえ、適切な運用がされるものと考えておりますが、法務省としても、改正法案が成立した場合においても、関係機関等と連携をして、この制度の趣旨の周知に努めてまいりたいと考えております。

本村委員 この期間限定裁判については、やはり今よりも、厳密な事実認定ができなくなったり、あるいは誤った判断のリスクは高まるというふうに私は考えております。リスクを高めてまでやらなければいけない制度なんでしょうか。今でも、現行法でもできるのに、リスクを高めてまでやらないといけない制度なんでしょうか、大臣。

古川国務大臣 今日の質疑の中で何度か御答弁をさせていただきましたけれども、実際、裁判を利用した方々のお声を聞きますと、裁判にどれぐらい時間がかかるのか全く分からなかったという。であるがゆえに、ちゅうちょせず裁判手続を利用するということが促進されるためにも、予見可能性、期間のですね、というものは高められるべきであるという要請があります。一方で、裁判を受ける権利というものが侵害されてはならない、その権利は保障されなければならないという要請がまた一方にございます。

 この両者のバランスを取ることのできるような制度設計をすることによって、そして、この制度に加えて、民事訴訟法、IT化の様々な内容を含んだ法律でありますけれども、こういうものがお互いに連関して、一体となって、裁判の迅速化あるいは効率化というものを実現し、その結果として、国民の皆様に利用しやすい、より利用しやすい制度となるようにしたいということから、こういう法案を提出をさせていただいているということでございます。

本村委員 期間の予測についての希望があるという理由だけで、十分な調査研究もしないで期間限定裁判を設けるのは短絡的だと言わざるを得ません。期間限定裁判は撤回するべきだということを求めて、質問を終わらせていただきます。

鈴木委員長 次回は、来る二十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.