衆議院

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第10号 令和4年4月20日(水曜日)

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令和四年四月二十日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 馨祐君

   理事 井出 庸生君 理事 熊田 裕通君

   理事 葉梨 康弘君 理事 山田 美樹君

   理事 鎌田さゆり君 理事 階   猛君

   理事 守島  正君 理事 大口 善徳君

      秋本 真利君    東  国幹君

      五十嵐 清君    石橋林太郎君

      尾崎 正直君    奥野 信亮君

      国定 勇人君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    谷川 とむ君

      中谷 真一君    中野 英幸君

      西田 昭二君    野中  厚君

      藤丸  敏君    八木 哲也君

      山田 賢司君    伊藤 俊輔君

      鈴木 庸介君    藤岡 隆雄君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      前川 清成君    日下 正喜君

      福重 隆浩君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         古川 禎久君

   法務副大臣        津島  淳君

   法務大臣政務官      加田 裕之君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局民事局長            門田 友昌君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    角田  隆君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十日

 辞任         補欠選任

  野中  厚君     藤丸  敏君

  山田 勝彦君     吉田はるみ君

同日

 辞任         補欠選任

  藤丸  敏君     秋本 真利君

  吉田はるみ君     山田 勝彦君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     野中  厚君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君及び財務省理財局長角田隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君及び民事局長門田友昌君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中谷真一君。

中谷(真)委員 本日は、委員長始め理事、また委員の皆様、質問の機会をいただきまして心から感謝申し上げます。

 早速質問に入りたいと思います。

 何人かの委員の先生方から、非常に疑念をというか、疑問を持たれている部分からまず質問したいと思います。当事者の申出による期間が法定されている審理の手続の創設の部分から質問をしたいと思います。

 これは審理期間を六か月にするということで、予見可能性が出るというものだというふうに思っているところであります。これによる利益をどう考えておられるのか。また、疑問を持たれている部分でありますけれども、これは拙速審理となり、当事者に不利益を与える可能性があるのではないかというふうに言われているところでありまして、それを防ぐための方策についてはどう考えておられるのかについて質問したいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 現行法には、民事訴訟手続の審理期間や判決までの期間に一定の期限を設ける規定はございません。

 現行の法の下で早期に審理を終えている事件も存在すると思われますが、結果的に早期に審理を終えたのはあくまで個別事件の運用によるものであり、制度上、一定の期間に審理を終えるべきことが明確にされているわけではございません。

 このように、現行の民事訴訟では、紛争解決までに要する期間の予測可能性が低く、このことが訴訟の利用をちゅうちょさせる要因になっているとの指摘がございます。

 法定審理期間訴訟手続は、当事者双方の意向が合致した場合に行われる手続として、審理期間や判決までに要する期間があらかじめ定められることにより、訴訟の早い段階で紛争解決までに要する期間の予測可能性が高まる点に大きな意義があるものであり、これにより、利用者にとって民事訴訟がより利用しやすいものになると考えています。

 一方で、この制度を設けるに当たっては、審理期間があらかじめ定められることにより、訴訟の当事者に不当な弊害が生じないようにすべきであるとの指摘がございます。そのため、当事者双方がその利用を希望している場合に限り、この手続を開始することとしております。また、一旦この手続が開始された後も、当事者の一方は、相手方の同意を要することなく、通常の手続での審理を求めることができることとしております。

 さらに、事案によっては、審理期間に入ってみたところ、当初の予定と異なり、あらかじめ定められた期間内に必要な主張や証拠の提出がされておらず、訴訟が裁判をするのに熟していないとの判断がされることもあり得なくはないところでございますが、そのようなときは、裁判所は、通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をすることができるものとされております。

 このように、この手続においては、御指摘のような問題が生じないよう、制度的に様々な配慮をしているところであり、これによる審理が拙速なものとなり、当事者に不利益を与えるおそれはないと考えております。

中谷(真)委員 これは、六か月で終わらせたいとか終わるだろうと双方が思ったときにのみ、この六か月の期限を切るということが行われる。ただ、六か月で終わってほしいなと両方が思っているんだけれども、長引くのではないかという疑念が今まであったというところで、なかなか裁判に踏み切らず、示談に持っていこうかとか、こういうことがあったというところで、それを裁判によって法的に解決する、それが分かることによって、今まで裁判をしなかった人たちが来るということでいいんですよね。それが利益だと思われているということでいいんですよね。

 もう一回、ちょっとお願いします。

金子政府参考人 訴えを提起する動機として、もちろんその結果も重要ですけれども、裁判所の判断がいつ出されるのかということの予測が立つということがその利用をする動機として非常に重要なものという指摘がございます。

 ですので、この手続を利用した場合には、もちろん当事者双方の合意の下で、このくらいの期間で終わるだろうという見通しが立つ事件においてのみ使われるわけですから、そういう事件において予測可能性が立つということについては大きなメリットがあると考えております。

中谷(真)委員 私も、地元から行政に対して言ってくれということの中に、非常に時間がかかっていて、それは様々なことがありますけれども、非常に時間がかかっていて、これを何とか早くしてもらえるようにしてくれないかというような陳情とかを受けるんですよね。行政というのは、時間を遅らせてしまうとかという性格はどうしてもあるというふうに思います。長引くのではないかという疑念を払拭するということは、私、重要だというふうにも考えているところでありまして、この部分をしっかり説明をしていくということがこの法改正の理解につながるのではないかというふうに思いますので、是非お願いをしたいというふうに思っているところであります。

 あとは、審理時間制限は、これはあくまで当事者双方の合意がなければ駄目だ。よく言われているのは、個人と企業となったときに、情報量の差があって、それによって企業側に有利に働くのではないかとか、こういうことが言われているわけでありますが、あくまで双方の合意が必要、これがなければ期限を切ることはできないんだということだというふうに私は理解しているんですけれども、そこをもう一回答えていただきたいということと、あと、審理中に、最初は六か月で終わらそうと思っていたけれども、やっていくうちに、あら、これは六か月ではこちら側の主張がしっかりできないなというふうに思ったときは、これでは駄目だということで、それを外してほしいという片方の申出でその期限を外すことができるというふうに私は理解しているんですけれども、その部分をちょっともう一回答えてください。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法定審理期間訴訟手続に入るためには双方の合意が必要ですけれども、この合意をするということは、審理期間を六か月以内に終わらせられるという見通しが双方にあるからこそ合意をするというのがまずもちろんですけれども、かつ、その合意を、そのような見通しをきちんと立てられるという状況の下での合意ということを担保できるようにしております。

 それから、仮に双方がこれは六か月で終わらせられると思っていても、裁判所がこれは主張や立証にかなりかかりそうだなと思えば、この手続を始めないということもできます。また、始めてみたところ、当初は六か月以内で終えられると双方も裁判所も思っていたけれども、審理の経過によっては、もうちょっとここは主張を尽くしてもらわないといけない、もうちょっと証拠調べをしないといけないという事態に至った場合には、当事者の一方からでも、それから裁判所の方のイニシアチブでも通常の手続で行えるということを保障しているというものでございます。

中谷(真)委員 大体が今六か月で終わっているじゃないかということも言われているわけで、この手続、必要あるのかということを言われているわけでありますけれども、私は、六か月で終わっているということはあるんでしょうけれども、それを六か月で終わらせるんだという意思とか、終わらないのではないかという疑念を払拭するとか、こういったところは当事者にとっては利益になるというふうに思っているところでありまして、そのことによって、ぐずぐずと解決しようとしていたものが、ちゃんと法的に裁判所で解決しようという機運につながるというふうにも考えているところであります。

 これは是非、ちょっとここの部分が非常に分かりにくいというか、私もここで委員で聞いていて分かりにくかったので、その部分はしっかりと法務省として説明をしていっていただきたいということであります。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 今回、民事訴訟制度のIT化を進めるというところでありますけれども、今回のこのIT化が国民にとってどのような利益をもたらすのかについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 今般の改正法案は、民事訴訟手続等の一層の迅速化及び効率化等を図り、民事裁判を国民がより利用しやすいものにするために、民事訴訟手続のIT化を行うものでございます。

 改正法案で盛り込まれております民事訴訟手続のIT化の具体的内容としましては、訴状等をインターネットで提出することができ、相手方も裁判所のサーバーにアクセスをして送達を受けることができるようにすること、ウェブ会議により口頭弁論を行うことができることとするなど、ウェブ会議や電話会議を利用することができる場面を拡大すること、訴状や判決書などの事件の記録を電子化し、当事者は自分の端末から裁判所のサーバーにアクセスして記録の閲覧、ダウンロードをすることができるようにすることなどがございます。

 これらの改正によりまして、自宅や事務所からも訴えの提起等が可能となるなど、民事訴訟を利用する国民の利便性が向上するとともに、訴訟手続の迅速化、効率化が図られ、社会全体での紛争解決のためのコストが低減するメリットがある、このように考えております。

中谷(真)委員 こういう技術革新、ITというのは非常に技術革新だというふうに思っているところでありまして、その技術革新をやはり使って更にいいものにしていく、法廷をいいものにしていくということは非常に重要だというふうに考えているところであります。大臣の言われるとおりだというふうに思っているところであります。

 そこで、幾つかお聞きしたいんですが、そうはいっても、IT化を進める上で、リモート、今まで対面でやっていたところを遠くにいてもできるようにするとか、こういったことを行っていくというところでありますが、対面でのやり取りというのは、そうはいっても一番確実であるというふうに思っているところであります。

 そこで、確実性とか、あとは、対面でやることによって理解が容易になるという理解の容易性とかが失われるのではないかというところもあるというふうに思っています。特に、本人確認とか、リモートでやった場合に、本当にその人なのかとか、あとは、その人がここにいればどういう状況か分かるんですが、画面の向こうではどういう状況であるか分からないとか、こういったところをしっかり担保していかなければいけないんだろうというふうに思っているところであります。

 それについての方策についてお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 ウェブ会議により手続を実施するに当たりましては、裁判所は、ウェブ会議で手続に参加している当事者の本人性やその言動をウェブ会議の画面越しに確認することになります。現在の一般的なウェブ会議システムの品質等に鑑みますと、基本的には、ウェブ会議を通じて当事者の本人性等を確認することに支障はないと考えられますけれども、法廷に出頭した当事者を直接確認する場合とは異なる配慮が必要となる場面もあると考えられます。

 例えば、現行の電話会議の方法による手続の場合におきましては、当事者の本人確認が必要な場合には、少なくとも一度は裁判所に出頭してもらい、裁判官が電話越しに通話相手が本人であると確認できる状況になってから電話会議を利用するような運用が取られていると承知しております。

 また、現在のウェブ会議の方法による争点整理手続の運用においては、必要に応じて、例えばカメラを動かして室内を撮影するよう指示するといった工夫により、画面に映っていない第三者がウェブ会議に不当に関与していないかを確認しているというふうに聞いております。

 ウェブ会議を通じた当事者等の確認の在り方については、こういった工夫も含めまして、個別の裁判体において適切な方策が検討されるものと承知しているところでございます。

 また、現行法の下では、口頭弁論の公開は現実の法廷を公開することによって行われていますけれども、ウェブ会議による口頭弁論が行われる場合も、裁判官が所在する法廷を公開して行われることを想定しております。

 具体的には、法廷の傍聴席において、裁判官が行う手続を観察することができるようにするとともに、法廷に設置されたモニターを用いるなどして、ウェブ会議の方法で参加する当事者のやり取りを傍聴することができるようにすることを想定しております。

 このような方法により手続が公開されることにより、裁判を傍聴する国民は、ウェブ会議による手続についても、現実の法廷における手続と同様に傍聴をし、その様子を観察することが可能になるものと考えております。

中谷(真)委員 私、子供の頃、法廷ドラマで赤かぶ検事の事件簿という、あれをよく見ていたんですよね。ああいうのが法廷かなというふうに私は思っているところでありまして、あれがウェブでとかいう形になっていくとどういうふうになるのかなというのは、なかなか私も想像がつかないところもあります。

 ただ、ここは、やはり国民がこの裁判はどういう裁判だったのかということを理解するということは極めて大事だと思いますので、その設定というか、そこにはしっかりと注意を払っていただいて、分かりやすく理解がしやすい、そういった法廷をつくっていただきたいなというふうに思うところであります。要望をさせていただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移ります。

 このIT化を進めることによって、何が果実であるかというところで、大臣もおっしゃっていましたが、やはり迅速化そして効率化が図られるというのがまさに果実であるというところである。ただ、早くなって効率的になればいいというものでもないのかなと。まあ、それは重要ですが、それだけではないのかなというふうに思っております。

 そう考えますと、やはり審理の充実という部分も大事なんだろうというふうに思っているところであります。IT化というのは、今までこの社会においてできなかったことをIT化によってできるようにするというのは、これは一つのIT化を進める大きな理由となっていると思います。ソーシャルネットワークとか、こんなのもそうだと思います。そう考えますと、IT化を審理充実のためにということも考えていかなきゃいけないんだろう。ただ効率化を図ればいいという話じゃないと思うんですよね。

 そういった意味では、こういう部分について、重要部分について、こういうことをやって厚くするんだとか、今までできなかったこういうことをIT化によってできるようにするんだというような具体例があれば教えていただきたいと思います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 民事訴訟手続がIT化されれば、裁判所における事務の在り方も一定程度合理化、効率化されていくものと思われます。そして、合理化、効率化される事務に従前要しておりました労力や時間を真に注力すべき事務に振り向けることによって、委員御指摘のとおり、より一層の審理の充実を目指していくべきであるというふうに考えておるところでございます。

 具体的な方策については、今後、更なる検討と実践を重ねていく必要がありますけれども、現時点で御紹介できるものとして、例えば、いわゆるフェーズ1ということで、現行法下でも実施可能なウェブ会議等のITツールを用いた争点整理手続というのをしておりますけれども、その運用の中においては、そのITツールのファイル共有機能ですとかあるいはチャット機能等の機能を用いることによりまして、裁判官と双方代理人の認識の共有、これがちょっと不十分だったというところが今ありますので、この共有をより効率的、効果的に図るということで充実した審理につながっているなどと聞いているところでございます。

 今後とも、ITの特性を生かして審理の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

中谷(真)委員 是非、審理充実のために、今までできなかったことをできるようにするという観点でもIT化を進めていただきたいというふうに考えているところであります。

 最後の質問にいたします。

 今回、法廷をIT化していくということなんですが、やはり法廷のことをよく知った人材がIT化を進めていかなければいけないというふうに思います。外注すればいいという話じゃないと思うんですよね、外注した先が法廷を理解しているかどうかということはよく分からないわけでありまして。法廷という専門知識、裁判という専門知識を持った人がITのことを理解していなきゃいけないというふうに思います。

 そういった観点では、人材を育成する必要があるというふうに考えているところであります。そのための方策について教えてください。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所といたしましても、ITなどの専門的な知見や経験を取り入れていくことは有用であるというふうに考えております。

 最高裁判所における専門人材の採用状況ですけれども、令和三年四月に一名、同年八月に二名、令和四年四月に一名の専門人材を採用し、五月に更に二名の採用を予定しております。

 これらの方々には、民事裁判手続のデジタル化に向けたアプリケーションの検討、開発、あるいは、ネットワークなどの情報通信基盤や各システムの全体最適に向けた企画立案、情報セキュリティーの在り方の検討などを担当していただいております。

 今後も、裁判所におけるデジタル化の検討状況や技術動向などを踏まえながら、必要に応じて適切な体制を確保できるよう、検討に努めてまいりたいと考えております。

中谷(真)委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。

 昨年、比例中国ブロックで初当選をいたしまして、今日、この質問が本委員会では初質問となります。私は法律専門家でもございませんので、不慣れな面もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 民事訴訟におけるIT化については、日本は各国に比べ相当な後れを取っているようです。世界銀行が公表したビジネスのしやすさランキング二〇二〇年版では、裁判手続の分野で五十位、その三年前の二〇一七年版では四十八位、順位を下げているという現状がございます。

 裁判所は、国民生活の平穏と安全を保つとともに、社会経済活動を回していく基盤とも言える存在です。ビジネスのしやすさランキングの大切な指標になっているゆえんがあると思います。

 私は、資源の乏しい我が国が国際社会で生き抜くには、輸入した資源から価値を生み出す科学技術力、サービス力、そしてスピードが必要不可欠だと考えております。

 そういった意味では、裁判所こそ、最新のIT技術を用い、スピード感を持って利用者の利便性を図り、裁判の効率化、迅速化を図るべきだと考えますが、まず、その点について、古川法務大臣の所感を伺いたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 我が国における民事裁判手続のIT化につきましては、平成八年に成立した現行民事訴訟法によりまして、民事訴訟手続における電話会議システムやテレビ会議システムの利用が始まり、特に電話会議システムの利用は、実務上も広く普及をしておるところでございます。

 また、平成十六年の民事訴訟法改正によりまして、インターネットを用いた申立て等を可能とする規定が設けられました。これを受けまして、平成十八年には、支払い督促手続について、インターネットを用いて申立て等を可能とする督促手続オンラインシステムが導入されるなど、利用者の利便性を向上させるためにITの活用が図られてきたところでございます。

 もっとも、民事訴訟一般に関しましては、平成十六年以降、インターネットを用いた申立て等を可能とする試験的な運用が一部の裁判所の一部の手続で実施されたものの、訴訟記録が紙媒体によるものとされたままであり、当事者の利便性の向上に乏しかったことなどからその利用が進まなかったこともあり、民事訴訟手続のIT化を促進する法改正等はされてこなかったところでございます。

 改正法案は、訴状等のオンライン提出や訴訟記録の電子化など、民事訴訟手続の全面的なIT化を図ったものでありまして、当事者の利便性が大きく向上することが見込まれます。今回のこの改正法案により創設された制度を適切に実施、運用することで、民事訴訟手続等が一層迅速化、効率化されるものと認識をしております。

日下委員 この度の改正は、訴状等のオンラインの提出、口頭弁論等のウェブ参加、訴訟記録の電子化によるインターネット閲覧など、弁護士等の訴訟代理人、利用者の利便性は、海外の例を見てもかなり向上するものと期待できます。

 例えば、IT化が進む韓国では、訴状受付から第一回口頭弁論までの所要期間が、これは五年前の報告ですけれども、紙の場合は百十三日かかっていたのが、オンラインを取り入れることで九十日、二十三日短縮されたというふうに報告されております。

 また、ドイツでは、電子化が二〇一三年、二〇一七年と段階的に進められてきており、二〇二〇年に行った弁護士や地方裁判所への調査では、そのメリットとして、電子文書化されると時間的にも場所的にも仕事が柔軟になる、裁判所の外でのアクセスができるのでホームオフィス化するとか、訴訟記録の取扱いがしやすくなった、複数で閲覧することができる、また、司法が魅力ある勤務先になる、自由にいろいろなところで仕事ができるという意味で。先日も判事のなり手不足ということがありましたけれども、こういった一助になるのではないのかなというふうに思います。また、自動化による訴訟期間の短縮、これも挙げられております。また、弁護士の所感として、裁判文書の電子的やり取りについて様々な面で懐疑的であったが、慣れた現在では、なくてはならないものになっているというふうに書いておりました。

 しかし、一方、この度の改正におきましても、地方裁判所における事務作業の面では、訴訟の半数以上、五五・五%が、オンライン手続が義務化されていない本人訴訟が占めており、裁判所における書類管理、効率化の観点から見た場合、この度の改正の段階では電子書類と紙の書類が入り交じることによって、実際の事務作業は果たして効率化され、迅速化されるのかどうか。運用面での率直な見立てについて、最高裁判所に伺いたいと思います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 書面による申立てとインターネットを用いた申立てとが併存することとなりますと、御指摘のとおり、申立てに係る書面を電子化して記録するなどの事務作業が裁判所に生ずる面がございます。

 ただ、それだけではございませんで、当事者側におきましても、一方の当事者が電子申立てをしましても、他方の当事者がシステムを利用していないということになりますと、システムを用いた迅速な送達を実施することができなくなるなど、IT化による利便性、メリットを十分に享受していただけないということになります。

 したがいまして、御指摘のような事態ができる限り少なくなるように、インターネットを用いた申立てが義務化されていない方々につきましても、広くシステムを利用してその利便性を実感していただくことが重要であるというふうに考えておりまして、そのために、裁判所としては、簡易かつ分かりやすい、使いやすいシステムの構築に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

日下委員 先ほどのドイツにおきましても、まだ紙媒体と電子的な訴訟記録が混在している。やはり、混在するこの移行期をどれだけ短くするかというのが課題というふうにも報告されておりましたので、ここの部分は本当に大事な観点かなと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 あと、利用者の利便性と、そして手続を行う裁判所の効率化、これは切り離して考えるべきなのではないかなと思うんですけれども、両面を考え合わせると、やはり本人訴訟においてもいかにオンライン化の方向に早く移行していけるかが今後の大きな課題になると思います。

 通常の民事事件や家事事件における申立てについて、訴訟代理人を立てない本人訴訟の場合であっても、司法書士等が書面を作成する場合が少なくないと聞いております。

 一般人にとって、裁判は一生のうちで何度もあるようなものではございません。一度もない方がほとんどかもしれません。そうした慣れない手続については、士業者が一枚かむことによって訴訟自体がスムーズに進み、インターネットを利用した申立てを始めとするIT化にも寄与するものと考えられます。

 特に、ITが不慣れな人、また障害のある人に対しては、オンライン手続の補助として司法書士等の活用を積極的に進めてはどうかと考えますが、法務大臣の所見を伺います。

古川国務大臣 弁護士や司法書士が訴訟代理人とならない本人訴訟の場合には、訴訟活動を支援する観点から、司法書士が行う裁判所提出書類の作成業務が重要な役割を果たしていると認識をいたしております。

 民事裁判手続のIT化が実現した場合には、本人訴訟において、司法書士が裁判所に提出する電磁的記録の作成や当該電磁的記録を裁判所に提出するための支援を行うといった、適切なITサポートを行うニーズは高いと考えられます。

 このような観点から、日本司法書士会連合会では、司法書士による電磁的記録の作成業務に加えて、インターネットの利用環境が不十分な訴訟当事者やIT機器の操作に不慣れな訴訟当事者を対象とした支援を行うための総合的かつ全国的な本人サポート体制の検討を進めていると承知をいたしておりまして、法務省とも情報交換を行っているところであります。

 法務省としては、IT化された民事裁判手続においても、司法書士がその役割を十分に果たし、本人訴訟におけるITサポートも含め、適切に活用されることを期待したいと存じます。

日下委員 また、ITが不慣れな人へのサポート体制の強化とともに重要に思うのは、スマートフォンやモバイルアプリでも訴訟手続が行える簡便性なども求められると思います。特に簡易裁判所においては、取り扱う金額も百四十万円以下の訴訟、また六十万円以下の少額訴訟制度もあり、これらは少額であるだけに、弁護士を立てる費用を考えると割に合わず、全体の九三・三%が本人訴訟となっております。

 そこで、こうした簡便な、身近な訴訟こそ、インターネット、モバイルアプリなどを利用した方法が適しているのではないか。そういう意味では、ほとんどが本人訴訟である簡易裁判所に、力点というか重点というか、置いていただいて、広くオンライン手続の利用啓発、促進、普及を進めてはどうかと思いますけれども、法務省の見解をお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 この改正法案では、簡易裁判所における民事訴訟手続についても全面的にIT化することとしており、そのIT化によるメリットを実現することとしております。

 もっとも、御指摘のとおり、簡易裁判所では、地方裁判所と比較しましても相当数の事件が双方又は一方に弁護士等が訴訟代理人に選任されていないいわゆる本人訴訟となっており、どの程度弁護士以外の者によるインターネットを用いた申立て等がされるかが課題になるものと考えております。

 いずれにしましても、先ほど述べたインターネットを利用するメリット等を踏まえますと、地方裁判所に限らず、簡易裁判所においても、弁護士等に限らず、広くインターネットを用いて裁判所に対する申立てが行われるようになることが望ましいと考えております。

 現在、日本弁護士連合会や日本司法書士連合会において、いわゆる本人訴訟において、書面の電子化等のIT支援を含めたサポート体制の整備などの取組を検討しているものと承知しております。また、法テラスにおきましては、こうしたサポート体制や支援窓口等に関する情報を提供することや、法律相談の際に、法的助言に加え、必要に応じ書面の電子化等に関する助言も行うことなどを検討しているものと承知しております。

 法務省としましても、簡易裁判所においてもインターネットによる申立てが広く行われるよう、関係機関等と連携してまいりたいと考えております。

日下委員 この度の裁判のIT化、海外に後れを取っているとはいえ、我が国にとっては大きな改革だと思います。

 最終段階では、IT技術の進展具合によっても変化していくかと思いますが、イギリスにおきましては、民事、家事事件において公正かつ迅速な解決を図るためのデジタルサービスを提供するプロジェクトが立ち上げられ、一つ一つのプロジェクトに期限を設け、着実に進められてきております。

 やはり、こうした改革を進める際には、明確な目標を定め、そこに向けたロードマップ作りが不可欠だと思います。それによって、周辺、関係機関の足並みもそろい、様々な技術提案も寄せられるものと思います。この改正後、利用者の利便性を高め、裁判の効率化、迅速化に寄与するIT化をどのように進めていかれるのか。

 先日、私は、スーパーコンピューター「富岳」の視察をさせていただいたんですけれども、世界一のコンピューターでございます。今、ビジネスのしやすさランキング、世界で五十位という、非常に弱小チームというか、それをやはり、社会の基盤を支える裁判所こそが世界に一位と言われるような、そういう裁判所になっていくべきだというふうに思うんですけれども、このIT化をこれからどういうふうに進めていかれるのか、古川大臣の御決意を聞かせていただきたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 民事訴訟手続のIT化につきましては、これまでも、閣議決定がされました成長戦略フォローアップ等に基づき推進してきたものでありまして、今般の改正法案の提出もその一環であるものと承知をいたしております。改正法案が成立をしました場合にも、成長戦略フォローアップにおいて示された工程に基づき順次施行してまいる所存であります。

 例えば、当事者双方が現実に出頭せず電話会議により弁論準備手続の期日に参加することができる仕組み等につきましては、公布後一年以内の政令で定める日を施行日とすることとしておりまして、令和四年度中の施行を目指しております。

 また、民事訴訟について、ウェブ会議により口頭弁論の期日に参加することができる仕組み等につきましては、公布後二年以内の政令で定める日を施行日とすることとしており、令和五年度中の施行を目指しております。

 さらに、訴状等のオンライン提出や訴訟記録の電子化など、民事訴訟手続の全面的なIT化につきましては、システムの構築等の準備に時間を要することとなるため、公布後四年以内の政令で定める日を施行日とすることとしておりまして、令和七年度中の施行を目指しております。

 法務省としましては、まずは、成長戦略フォローアップ等に基づき、改正法案の内容を着実に施行することが重要であると認識しております。

 他方で、改正法案におきましては、施行後五年を経過した際の検討条項を盛り込まれているところでありまして、インターネットを用いた申立て等を義務づけられる者の範囲の拡大を含めて、改正法案の施行後も、情報通信技術や社会経済情勢の進展や変化を踏まえ、引き続き必要な検討をしてまいりたいと存じます。

日下委員 時間も迫ってまいりましたので、あとの質問は省きたいというふうに思いますけれども、このIT化、しっかりこのことが法曹界及び国民に広報、周知され、本当に利便性の高い、皆が司法に親しみを感じるというか、やっているな、日本の法曹界も司法も変わってきたなと、産業界も、全ての、また世界からもそういうふうに見られるように、しっかりとこれからも進めていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 私の質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、立憲・無所属会派、米山から質問させていただきます。

 法定審理期間訴訟手続についてお伺いしたいんですけれども、まず、私、裁判官、職員定員法の審議におきまして、民事訴訟における平均の期日回数と平均の期日間隔というのを御質問したところ、平均期日回数は四・七回、おおむね五回ということで、また、平均の期日間隔は二・一か月であるとの御回答をいただきました。

 法定審理期間訴訟手続におきましては、条文を見る限りということですけれども、まず、法定審理期間、この手続に移行する旨の決定があった場合には、二週間以内に次の期日が決まる、また同時に六か月以内のところで最後の期日を決めるということで、かつ、六か月以内だから、三か月後に決めたっていいといえばいいのかもしれないですけれども、これは常識的には恐らく六か月以内のところに入る。

 要するに、すぐと六か月以内と二期日入ると思うんですけれども、これは想定として、もちろん、回答としては、それは個別だから答えられないと言われると困るんですが、想定として、一体、じゃ、この二期日の間に何期日ぐらい入るということを予定しているのか、予想といいますか御見解を伺いたいと思います。

金子政府参考人 法定審理期間訴訟手続の対象事件としては、当事者間の交渉が先行しているなどして争点が明確になっており、当事者間に事実の存否に関する争いが少なく、契約書の文言や法律の解釈等が争点となっている事案などが想定されているところでございますが、そのような事案であれば、当事者間は比較的短期間でも主張、立証の準備をすることができる場合があると考えられます。また、制度として一定の審理期間が定まることで、当事者の訴訟活動がより集中的に行われることにもつながると考えられるところです。

 六か月の審理期間における期日の回数を具体的に予想することは困難でございますが、法定審理期間訴訟手続が利用された場合には、当該事件において、この手続が利用されなかった場合と比べて、より集中的、高頻度に期日が指定されることが考えられます。

 もっとも、裁判所においては、現行法の下でも、インターネットを利用し、ファイル共有機能やチャット機能等のITツールを活用して、期日を開くことなく期日間の釈明等を行うといった形で争点整理を進める運用があるものとも承知しており、そのような方法をこの手続においても利用することが考えられるところでございます。

米山委員 質問に対する回答では全然なかったんですけれども。大体そういう回答が来るんでしょうとは思っていましたが、それはさすがにちょっとおかしいといいますか、この手続を導入することによって一体どのぐらいの期日が入って、それはちゃんと裁判官が処理できるのか。というのは、それを処理できるという目算が立っていないと六か月以内に判決を下せないわけですよ。ですから、そういう目算というのを聞いているのに、常にそういうことがないというのは、なかなかいかがなものかと思う。

 ただ、今の御回答ですと、平均よりも多いということをおっしゃられたと思うんですね、平均よりも期日回数が多い。ちなみに、これは五か月間で、平均二か月で入れると、むしろ、大体四期日入りますから、四期日というと平均どおりなんですよ。私の感覚としては、恐らくこの六か月という期間を決めたのは、大体平均どおりに期日を入れれば、大体平均どおりの、今までと同じように処理できるからだろうと思っていたんですが、今の御回答ですと、それより、より一層、期日を増やすということかと思われます。

 そうしますと、裁判官が多くないと処理できないと思うんですけれども、これは処理できるという認識でよろしいんでしょうか。期日回数が増えちゃうわけなんですけれども、そうしますと、裁判官が多いなり、若しくは、そもそも裁判の部屋が多くなったりしないといけない。我々、私、弁護士なんですけれども、期日を取るときに部屋が空いていないと言われるんですけれども、期日が多くなきゃいけなくなるんですが、そういうことは全部処理できるという認識でよろしいんでしょうか。

金子政府参考人 裁判所における人的、物的体制については、ちょっと法務省の方でお答えする立場にないのですけれども、今委員が御指摘になったような、例えば二か月程度、期日と期日の間が空いているというようなことでは、この手続は半年では恐らく終わらないと思うので、それよりは高頻度に期日を入れていくことになると思います。ただ、それは争点整理の手続であったりすれば、公開の法廷を必ずしも準備する必要がないということにもなりますので、その点について何か裁判所の方から、これでは裁判が回らないというようなお話は一切聞いておりません。

米山委員 ここは押し問答してもしようがないんですが、そうだと思うんですよ。

 恐らく、この手続を導入すると、実は、少なくとも導入した当初六か月間というのは、一気にいろいろなことをしなきゃいけない。期日回数が多くなってしまうので、むしろ裁判所は大変になると思うんです。

 もうこれ以上質問してもきっと答えてくれないので質問しないんですが、それに対してきちんと処理できる体制をつくっておかないと、本当に粗雑な審理になるか、若しくは、言うだけ言って結局六か月で判決を書けないということになるんだと思います。

 ですので、それは法務省なり裁判所なりが、ちゃんと、毎回質問を書いてきませんけれども、きちんと想定していただいて、一体、何回期日があって、それにはどのぐらいの処理がかかって、だからこのぐらいの体制を整えておくんだというのを想定していただいて、つくるならちゃんとやるべきだし、逆に、そういうちゃんとできる体制を整えられないんだったら、そもそもこの制度をやるべきじゃない、導入すべきじゃない。きちんとその想定ができてから導入したらいかがですかということを申し上げさせていただきたいと思います。

 また、これもさきの質問で、山田委員からの質問だったと思うんですけれども、ほぼほぼ審理期間って大体九か月ぐらい、今、平均審理期間は九か月ぐらいなんですが、この六か月というのも、前後を合わせると結局九か月ぐらい、しかも簡単な短い裁判を選んで九か月ぐらいとしているということは、この法定審理期間訴訟手続はほとんど全く裁判の迅速化には効果がない。ただただ終局判決の期日が六か月前に分かる、それだけがほとんど全てだというふうに私は見えるんですけれども、この裁判手続によって、導入することによって、裁判は迅速化するのかしないのか、御見解をいただければと思います。迅速化するのであれば、またその根拠もお示しいただければと思います。

金子政府参考人 お答えします。

 法定審理期間訴訟手続では、当事者が六か月の審理期間内に十分な主張、立証を尽くすことができると考えた事件について申立てがされるというふうに考えられます。

 その中には、この手続において、制度上、審理期間が法定されていることを踏まえ、当事者双方の訴訟活動がより集中的に行われることによって、通常の手続であれば六か月以上の審理を要していた事件も含まれるものと考えられます。

 したがいまして、この法定審理期間訴訟手続は、裁判の迅速化に資するものであるというふうに認識しております。

米山委員 今の話は、個別にはそれは迅速になることもあるでしょう。それはあるでしょうね。でも、結局、平均としてはほとんど迅速化の効果はないということかとお聞きしました。

 では、また次に、この手続では、双方又は一方が通常の手続に移行させる旨の申出をしたときは通常の手続による審理を行うという規定があるんですけれども、この申出は一体、正確にはいつまでなのか。六か月以内に定められた最終期日その日にも言っていいのか、さらに、判決の直前に、判決を言おうとしたその瞬間に、いや、やはりやめました、通常手続をお願いしますと言っていいのか。これは一体どの時点なのか、その御見解を伺います。

金子政府参考人 通常移行の申出の時期については、明文の規定は設けていませんが、判決後であっても、適法な異議の申立てであれば通常の手続により審理をすることとしておりまして、これは法案の三百八十一条の八ですが、これとの対比からしましても、判決がされるまではいつでも申出を行うことができるということを前提としております。

 したがいまして、口頭弁論終結後、判決前に通常の手続への移行が申出がされた場合は、口頭弁論を再開して、通常の手続に移行することになりますし、それから、予定した期日の、審理を終結する予定の日に、その当日に通常移行の申出がされても、これは通常の手続に移行するということになります。

米山委員 更にそこでお伺いしたいんですけれども、その日に、いや、やはりやめました、通常手続をお願いしますと言った場合には、通常手続になって、そこでもし裁判官が、いや、もうここで弁論終結しますと言えば、それは実は何も変わらないんですよね。でも、そうじゃなくて、やはりそこで新たな期日が設けられるということでよろしいんですかね。

金子政府参考人 口頭弁論が終結する予定の期日において当事者が訴訟を通常の手続に移行させる旨の申出をした場合は、裁判所は、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければなりません。

 この決定により訴訟は通常の手続に移行することとなるため、通常は続行期日が指定されることになると考えられますけれども、当事者の当初の見込みどおり争点整理と証拠調べが終わったような場合には、通常の手続への移行がされたとしても、既に訴訟が裁判をするに熟しているとして当該期日において口頭弁論を終結することは、規定上、否定はされていません。

 もっとも、改正法案において、この手続が開始された後であっても当事者の一方の申出により通常の手続への移行を認めることとしたのは、この手続が開始された後、当事者の当初の見込みと異なり、定められた期間内に十分な主張、立証をすることが困難となる場合も生じ得るものと考えられるが、このような場合には、この手続により審理を継続し、判決をすることは、当事者の裁判を受ける権利を実質的に保障する観点からも相当でないからであり、このような趣旨に照らして考えても、通常は続行期日が指定されるということになるものと考えられます。

米山委員 そうしますと、その続行期日において、いきなりその当事者は新たな争点を出していいという理解でいいんですよね。

 というのは、この手続の中で、五か月以内に争点を出しなさいと。それは双方そこで頑張って争点を出すわけですよ、一生懸命。ところが、一方が、やはり駄目だ、やはりやめたと言って、通常に出しますと言って、しかもその後、新たな争点を出せる、しかもそれが時機に後れた攻撃防御方法として却下されないということなんですねということを確認させていただきたいと思います。

 要するに、新しい期日では、それまでの争点整理のスケジュールを無視して、やはり新しい通常手続になったんだから新たな争点を出しますと言っていいということでよろしいでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げたような、この法定審理期間訴訟手続における通常手続への申立てに係る当事者の権利ということを考えましても、通常手続に移行した後の審理においては、当事者がその定められた期間内では十分にすることのできなかった主張や立証を行うということが想定されておりますので、新たな主張や証拠を提出することは可能と考えられます。

 もっとも、先生御指摘のとおり、民事訴訟手続においては、主張や証拠といった攻撃又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じて適切な時機に提出しなければならず、当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃防御方法については、裁判所は一定の要件の下に却下することができるという一般的な規定がございます。

 先ほど述べたような通常手続への移行を認めた趣旨からしますと、法定審理期間訴訟手続において提出しなかった、あるいは提出することが後れたという一事をもって、時機に後れた攻撃防御方法に当たると判断することはできないというふうに考えられます。

米山委員 これは実は、本当に本質的なところでこの手続の問題だと思うんですね。なぜかというと、要するに、実は、全然、名前と実態にそごがありまして、この手続というのは、法定審理期間で決めるという手続じゃなくて、法定審理期間を決めた上で、更に通常手続がある二重の手続なんですよね。

 単に最初からずっと通常手続なら、それはもう流れの中で、やはり攻撃防御方法を遅く出した人は、それは遅いですよといって却下できる。ところが、わざわざ最初に短期間と決めた上で、しかも救済措置として通常に移れるものだから、むしろ通常に移ったときに攻撃防御方法を却下できないわけです、今御答弁いただいたように。それをできないと言っちゃったら、通常に行ったことの価値がなくなってしまうから。だから、むしろ後で出しやすくなる。

 ちなみに、最初のところで言ったとおり、それは個別には短くなることもあると思うんですけれども、平均的にはこれは全然、訴訟期間を短縮しません、どう考えても。

 そして、先ほど来ずっと御答弁いただいているのは、審理期間が分かる、予想できる、それが利点だとずっと言っているんですけれども、それは予想できないんですよ。だって、相手がやはりやめたと直前まで言える。しかも、直前に言ったら、次の期日で新しい攻撃防御を出せるんですよ。だから、かえって、むしろよほど予想可能性を害してしまうんです。そのまま最初から通常の方がむしろ予想できるんです。

 この矛盾といいますか、じゃ、一体何の価値があるんだと思うんですけれども、この手続は本当に予想可能性を高めるのか、大臣の御所見を伺います。

古川国務大臣 法定審理期間訴訟手続から通常の手続に移行した場合には、新たな主張や証拠を提出することができるようになりますから、この手続を開始した全てのケースで審理期間が確実に定まるものではございません。

 もっとも、この制度は、その手続の開始を当事者双方の意思が合致している場合に限定しておりまして、その双方の意思の合致は事案や紛争の内容をよく知る訴訟代理人の助言等に基づくものと考えられることなどに照らせば、通常の手続に移行するための申出がされることなく法定の期間内に審理、裁判がされることになる事案も少なくないものと考えております。

 また、この手続中に行われました弁論や証拠調べの結果が通常手続への移行により失われるものでもございません。

 この制度は、紛争解決に要する期間について、当事者の合意がある場合に法律上一定の規律を設けるものでございまして、当該期間に係る当事者の予見可能性を高めるという点においてやはり意義を有するものであるというふうに考えております。

米山委員 これはもう繰り返しませんけれども、当事者の合意がある、ずっとそういう御答弁ですけれども、裁判って紛争があるから起こるので、要するに当事者が合意しないから裁判するんですよね。それは、期間だけで合意したって、その合意なんというのは常に非常に破れやすい。だからこそ裁判をするんだし、だからこそこの期間の合意なんか簡単に破られるわけで、まあ、そういう制度ですしね。なので、これは本当に、私は、ほとんど何の意義もない制度というふうに申し上げさせていただきたいと思います。

 次の質問ですけれども、ちなみに、ほとんど何の意義もないのに、実は、条文三百八十一条の五におきまして、意義があるなと思うのは、判決を簡単にできるんですね。当事者に確認すべき事項を確認して、そこについて判決を書けばよろしいということになっております。

 先ほど来、期日は通常訴訟よりもむしろ多い、しかも事案として簡単である。であるのに、何でわざわざ、裁判をすべき、理由を書くべき事項を限定する必要があるのか。だって、別にそんな、簡単なんだし、しっかり審議しているんだったら、きちんと今までどおり書けるはずじゃないですか。何でわざわざ三百八十一条の五を作ったのか、御所見を伺います。

古川国務大臣 御指摘の民事訴訟法第三百八十一条の五ですけれども、ここでは、法定審理期間訴訟手続の判決においては、事実として、請求の趣旨及び原因並びにその他の攻撃又は防御の方法の要旨を記録し、理由として、当事者双方との間で確認した事項に係る判断の内容を記録することとしております。

 法定審理期間訴訟手続におきましては、法定の審理期間内に集中的かつ迅速に訴訟活動することを可能とするため、裁判所が判断すべき事項につきましては、裁判所と当事者双方との間で確認することとしております。

 まず、事実については、先ほど申しましたとおり、裁判所の判断すべき事項について、裁判所と当事者双方との間で確認し、その認識が共有されているものでありますから、その記載については要旨で足りるものとしたものでございます。

 次に、判決の理由を記載する判断の対象は、裁判所と当事者双方との間で確認した事項についてということになるわけですが、その判決の理由の内容につきましては、簡略的な記載を認める趣旨のものではございません。

米山委員 そういう御答弁をきっと繰り返されるんでしょうけれども、なら、そもそも三百八十一条の五は要らないんですよね。だって、私は判決をいっぱいもらいますけれども、基本、そんな、ここまで書かなくていいよという判決は余りなくて、大体、ここは書いてくれなかったなというところも、判断するまでもないとか言われたなということの方が多いわけなので、それをわざわざ削るというのは、要するに、結局この制度は判決を簡単にするためだけの制度じゃないのかと言わざるを得ないのかなと思います。

 じゃ、次の質問に移ります。

 先ほど来、双方の合意でということがあったんですが、この手続が導入されますと、特に企業間などの契約書において、合意管轄等と同じ、大体、企業間なら東京地裁を専属管轄とするみたいな合意、条項が入るものなんですけれども、それと同じように、A社とB社の紛争については必ずこれを申し立てることとするというような契約はいかにも出てきそうなものなんですけれども、これは有効なのか。

 もちろん、双方が合意したらはなから有効なんでしょうけれども、そういう契約書を結んだけれども、いや、それは元請に言われてしようがなく結んだんだ、私は本当はそうしたくないんだといった場合には、それは通るのか。それについて御見解を伺います。

金子政府参考人 法定審理期間訴訟手続は、当事者双方の申出又は同意がある場合に限って開始することができます。この当事者の同意は訴訟行為でございますので、当該当事者が裁判所に対して書面又は口頭でする必要があります。

 このため、法定審理期間訴訟手続の利用を義務づける内容の契約を訴訟外で締結したとしても、それだけでは当事者が法定審理期間訴訟手続による審理及び裁判をすることに同意したのと同一の訴訟法上の効果は認められないと解されます。

 したがって、裁判所は、事案の性質、訴訟の追行による当事者の負担の程度その他の事情から、当事者間の衡平を害し、適正な審理の実現を妨げると認めるときに該当するかどうかを判断するまでもなく、当該訴訟外の契約の存在をもって、訴訟を法定期間訴訟手続による審理及び裁判をする旨の決定をすることはできないと解されます。

米山委員 ということで、ここでも結局、本当にこの手続で予見可能性は全く高まらないんだと思うんですよね。常に全然普通になってしまうし、かえってそれによって不都合なことが起こると思います。

 ちなみに、法務省としては、この訴訟手続を導入するのにどのぐらいの周知期間を置いて、どのようなキャンペーンを行うつもりか。また、その予算はどれほどなのか。その想定がございましたら、ないと言われるのもまた予想されてくるんですが、想定すべきだと思うので、その想定がございましたら予算の想定をお願いいたします。

 ないと言われることに備えて、一九九八年には少額訴訟制度、二〇〇六年には労働審判手続が新設されておりますので、それぞれの制度において、導入時にどのような周知キャンペーンが行われて、その予算はいかほどであったか、お答え願います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法定審理期間訴訟手続は、これまでにない新たな仕組みを設けるものでありますから、法務省としては、改正法案の成立後は、その制度の内容を適切に周知する必要があると考えております。

 具体的な周知方法につきましては今後検討していくことになりますが、例えば説明会の開催やパンフレット等の配布など、国民に分かりやすく周知する取組を進めていくことを想定しています。

 周知、広報に必要な予算措置につきましては、法定審理期間訴訟手続は、令和七年度中の施行を目指しているところでありまして、現段階では具体的な予算額をお答えすることは困難でありますが、いずれにしても、施行に向けて必要な予算の確保に努めてまいる所存でございます。

 なお、お尋ねのありました少額訴訟制度及び労働審判手続の周知に関する具体的な内容等につきましては、その具体的な予算額を含めて確認することができなかったところであり、お答えすることが困難であることを御理解いただければと思います。

米山委員 ちゃんと質問を通告していたと思うんですけれども。

 何を言いたいかというと、それは当然かなりの予算がかかるわけですよ、新しい手続を入れるわけですから。もちろん少額訴訟制度とか労働審判とかは悪くなかったわけなんですが、私、この制度は本当に、先ほど来、ほとんど何の意味もないと。何せ、一体全体、手続期間が決まっているのか決まっていないか分からない。要するに、決めるなら決めた方がいいし、決めないなら決めない方がいいのに、幾らでもずらせるので、かえって予想ができない制度になっていると思います。

 それなのに、導入する以上はかなりの予算を食うわけですよ。それは、かなりなリソースも使うし、かなりな予算も使います。それが私は、余りに国の予算というものの無駄遣いだと思います。是非、これはきちんと制度を詰めて、さすがにもうちょっと意義のある、予見できるならできる、期間が短くなるなら短くなる、そういう制度にしてから導入することを申し上げさせていただきたいと思います。

 一分ぐらい時間がまだ、一つだけ質問しますけれども、これは、一定期間を置いた後に、いろいろなことを調査すべきだと思いますが、調査の予定又はその予算など、御予定がありますでしょうか、伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 改正法案におきましては、施行後五年を経過した際の検討条項を盛り込んでおりまして、制度の運用状況を踏まえて、引き続き、この制度を含めて必要な検討をしてまいる所存でございます。

 当然、そのために必要な予算措置を取るべく、講ずべく努力するつもりでございます。

米山委員 では、それはよくよく御検討、まずは私は取り下げることを強く主張させていただきますし、また、万が一通ったのであれば、それはよくよく調べて、きちんとした制度にしていただければと思います。

 質問は以上でございます。

鈴木委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党・無所属会派の藤岡隆雄でございます。

 本日も、地元栃木県の皆様に感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩各位に感謝を申し上げ、質問に入らせていただきたいと思います。

 法定審理期間訴訟手続に入る前に、前回も長いやり取りになってしまったものですから、ちょっと先にお聞きしたいことを聞かせていただきます。

 以前の鈴木義弘委員の質問にも関連するんですが、改正法の下で構築されるシステムに関して、ちょっと最高裁にお伺いしたいと思います。

 改正法の下で裁判所において構築するシステムにつきまして、委託先などが海外のサーバーなどで管理することがないように、これはすべきだと私は思うんですけれども、この点、しっかりとやっていただけるでしょうか。お願いします。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今後開発するシステムに関する質問でございますので、現時点で確定的なお答えが難しいことは御理解願いたいのですけれども、お尋ねの点につきましては、政府において、クラウドサービス利用に関する標準ガイドラインが定められていると承知しております。

 そのガイドラインにおきましては、クラウドサービスに保存される利用者のデータの可用性の観点から、我が国の法律及び締結された条約が適用される国内データセンターと我が国に裁判管轄権があるクラウドサービスを採用候補とするものとするというふうにされておりますので、裁判所としましても、こうした内容を踏まえまして、国内にデータセンターがあるクラウドサービスを採用候補とする方針でございます。

藤岡委員 最後に小さい声で候補ということではなくて、確定していただけないでしょうか。是非お願いします。

門田最高裁判所長官代理者 済みません、冒頭に申し上げたとおりでございまして、今後、法案が成立した後、開発していくシステムということになりますので、確定的なお答えというのは、大変恐縮ですが、難しいところではございます。

 ただ、先ほどのような方針がございますので、もうこれを第一候補としてやっていくということで御理解いただければと存じます。

藤岡委員 第一候補ということではなくて、是非、そういう海外のサーバーで管理されることがないように、また、何かいつの間にかそうなっていたとかないように、これは必ずお願いをしたいということをはっきりと申し上げておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、続きまして、済みません、ウェブの証人尋問に関してちょっと、順番は前後しちゃいますけれども、お聞きしたいと思います。

 ウェブ会議等による証人尋問を行う場合におきまして、証人の陳述の内容に影響を与えないようにする、また、メモを見ながらの証言が行われないようにするなどの担保、どのように行われますでしょうか、改めてお伺いさせてください。

金子政府参考人 お答えいたします。

 現行法におきましては、ウェブ会議による証人尋問の実施の細則は最高裁判所の規則に委ねられておりまして、これを受けて、最高裁判所規則において、ウェブ会議による証人尋問を行う場合には、証人は別の裁判所等に出頭することとされております。

 改正法案におきましても、証人尋問の実施の細則につきましては、引き続き最高裁判所規則に委任することとしておりますが、法制審議会での議論も踏まえ、今後、裁判所以外の場所に出頭して尋問を行うことも認める方向で検討が進められるものと承知しております。

 他方で、証人は、裁判所の許可を得た場合を除き、書類に基づき陳述することができないのでありまして、書類に基づく陳述をどのように防ぐかが課題になり得ますが、書類に基づく陳述がされるようなおそれがある場合は、そもそもウェブ会議を実施せず、受訴裁判所に現実に出頭しての尋問を実施することが考えられます。

 いずれにしても、裁判所におきましては、証人の属性や当該事件における事情を総合考慮し、出頭場所の適正性等を判断していくことになるものと考えられます。

藤岡委員 今の御答弁で、どう担保されているのかちょっと不明確だったんですが、原則利用されないというふうなことで、その後、どう担保されるんでしょうか。ちょっとお願いします。

金子政府参考人 今後は、まず最高裁判所規則に委任するということになると思いますが、書面を見ながら陳述するおそれがあるような場合はそもそもウェブ会議による証人尋問を実施しないということが考えられますし、それから、裁判所以外の場所での尋問において、証人に対し、その周囲の状況をウェブ会議のカメラに映してもらい、周囲の様子を確認するといったことも考えられます。

 証人の属性にもこれはよるので、その点も含めて、そのようなおそれがある場合なのかどうかということを含めて、裁判所の方が総合的に考慮して判断されるものと思います。

藤岡委員 ウェブカメラで映して見られるとおっしゃいましたけれども、じゃ、例えば、ポケットにスマホを忍び込ませて、カメラが映しているときはスマホを入れておいて、スマホを置いて、遠隔で何か教えてもらう、これはどうするんですか、その場合。お願いします。

金子政府参考人 改正法案では、証人は、裁判長の許可を得た場合を除き、書類その他の物に基づき陳述することができないとされています。このその他の物にはタブレット端末等が含まれますから、スマートフォンの表示に基づいた陳述は許されないということが明示されております。

 もっとも、これに反し、例えば裁判所以外の場所に出頭した証人の身近にスマートフォンが置かれて、それにより影響を与えるといったような事態は生じないようにする必要がございます。この問題につきましては、個別の事案において、スマートフォンを見ながらの陳述がされるようなおそれがあるケースでは、出頭場所を別の裁判所に指定して尋問を実施することとするなど、裁判所において、その証人の属性や当該事案における事情を総合考慮し、その出頭場所の適正性等を判断するなどして対応することが考えられるところでございます。

 改正法案におきましては、証人尋問の実施の細則につきましては、引き続き最高裁判所の規則に委任することとしておりますけれども、同規則につきましては、法制審議会での議論も踏まえ、今後、裁判所以外の場所に出頭する尋問を認める方向での検討が進められるものと承知しておりますが、御指摘のような問題も考慮しながら検討が進められるものと承知しております。

藤岡委員 裁判所が裁判所以外のところでの証人尋問を認めた、しかしながら、認めた場合、もちろんそれはできないというのは当然できないんですけれども、できないところをくぐり抜けて行われてしまう懸念というのが当然あるわけだと思うんですが、それをどのように防ぐのか。

 先ほどの、ウェブカメラで拝見すると言いましたけれども、スマホを例えば忍び込ませている、見えないようにしているというケースも当然、例えばですけれども、考えられると思います。要するに、どういうふうに担保されるのかということが少し詰まっていないのかなという感じがしましたけれども、改めて、どう担保するんですか、これは本当に。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 運用に関わる部分が大きいかなと思っております。

 先ほどございましたとおり、メモ等に基づく、書面等に基づく証言はできないということになっておりますので、仮に、もちろん、そういうことが想定されるような証人ということは、これは、証人の採否あるいは尋問の実施場所を決める際に当事者の御意見を伺いますので、それでそういうことが懸念されるということが当事者から御指摘があれば、そもそもウェブで尋問はしないということになろうかなと思いますし、万が一、尋問を始めまして、何かメモを見ながら証言をしているな、あるいはスマホを見ながら証言をしているなというのが分かりましたら、もうその段階で尋問を打ち切るということもあり得るかなと思っています。

 その制度的担保としては、先ほどの法律の方の規定にあります、書面に基づく陳述は裁判長の許可がない限り許されないというふうになっているところかなというふうに理解しておるところでございます。

藤岡委員 通告していないのに、最高裁、済みません。門田局長、御答弁ありがとうございます。感謝を申し上げたいと思います。

 ただ、これは非常に難しい課題を持っていると思います。これは本当に担保がしっかり行われるようにこれから行っていただきたいと思いますし、ちょっと残念ながら、今のこの法案審議の中ではまだまだ検討が足りていないのかなというところはしっかりと指摘をさせていただきたいということを思いますので、是非、今後よろしくお願いをいたします。

 では、続きまして、期間限定裁判、いわゆる法定審理期間訴訟手続に関する特則に入りたいと思いますけれども、改めて、ちょっと前回からまた確認なんですけれども、当事者双方に訴訟代理人が選任されているのでなければ、基本的には適正な審理の実現を妨げるときに該当するとの御答弁でしたけれども、当該選任がない場合に特則の適用が認められる場合の考え方について、また教えてください。

加田大臣政務官 藤岡委員の質問にお答え申し上げます。

 法定審理期間訴訟手続は、事案の性質、訴訟追行による当事者の負担の程度その他の事情に鑑みまして、この手続により審理及び裁判をすることが当事者の衡平を害し、また適正な審理の実現を妨げると認めるときは開始しないということになっております。

 そして、委員の言われた中におきましての、当事者双方に弁護士等が訴訟代理人として選任されていない場合についても、基本的に、適正な審理の実現を妨げると認めるときに該当し、手続開始の要件を満たさないものであると考えております。これは、この手続を利用するか否かについて適切に判断し、また法定された審理期間内に必要な主張、立証をするには、一般に、弁護士等の訴訟代理人の関与が必要であると考えられているものであります。

 しかし、訴訟代理人が選任されていない場合でありましても、例えば、企業間での訴訟で、当該企業内の法務部門に法曹資格者が在籍しているなど、この手続を利用するか否かを適切に判断しまして、そして法定された期間内に必要な主張、立証をすることが期待でき、弁護士等が訴訟代理人に選任されている場合と同視することができるような場合は、この手続の開始の要件を満たしていると考えられております。

    〔委員長退席、熊田委員長代理着席〕

藤岡委員 訴訟代理人が選任されていると同視し得るという考え方としたら、その同視し得る場合として、破産者を当事者とする訴訟で、弁護士である破産管財人が訴訟を追行する場合、あるいは法人の法務部に法曹資格者がいる場合に限られるということなんでしょうか。また、個人においては、同視し得る場合とは、個人が法曹資格を有している場合に限定されるということでいいんでしょうか。教えてください。

加田大臣政務官 お答え申し上げます。

 訴訟代理人が選任されているものと同視し得る場合は、弁護士である破産管財人が当事者として訴訟を追行する場合や、当事者である法人の法務部に法曹資格者が在籍している場合等が考えられますが、必ずしも法曹資格を有している場合に限られないということであります。

 他方、個人が訴訟代理人を選任しないで訴訟を追行する場合であって当該個人が法曹資格を有しない場合には、仮に法律等の知識を一定程度備えているとしましても、裁判実務の経験等は乏しいというのが通常であると考えられますから、そのような場合には、当該個人は、この手続を利用するか否かについて適切に判断し、また法定された審理期間内に必要な主張、立証をする能力を有する者とは認められず、この手続の開始の要件を満たさないことになるのではないかと考えられております。

藤岡委員 ちょっと今、確認させていただきたいのですが、個人においては、そうしますと、同視し得る場合というのは、法曹資格者を有しているときに限られるということでいいんでしょうか。確認させてください。

金子政府参考人 法曹資格者でない者が、およそ一〇〇%、同視できる場合には当たらないと言い切れるかどうかは、ちょっとその限界事例がどこにあるのかということを一義的に御説明するのは難しいと思いますが、一般的に言えば、裁判実務等の経験がない者であれば、例えば法律等を学んだことがあったとしましても、なかなか適切な、法定された期間内に必要な主張、立証を尽くすことができるかどうかということの判断をするのは難しいと考えられますので、基本的には、個人で法曹資格者を有していない場合は要件に当たらないと考えられると思っております。

藤岡委員 同視し得る場合って、いろいろな、法律で例外に備えるということで、当然、そういうことを対応する場合ももちろんあるときもあるとは思うんですよね。

 しかし、今回のこの法定審理期間訴訟手続に関して言えば、法曹資格を有している場合とそうでない場合というのは非常に明らかといいますか。そこで、有していない場合を、そこに同視し得るというふうに考えたとき、非常に解釈が次から次へと、何かいざあったときに、いや、これ、読めるだろう、この条文でというふうに役所の中で会話が行われそうだということは容易に想像がつくということもあるのかなということも思うんですけれども。

 これは、要するに、個人においては法曹資格者を有していない場合も認められることがあるということなんでしょうか。

金子政府参考人 一〇〇%その可能性を排除することは難しいと思います。

 いずれにしても、裁判所の適切な判断によるものということを申し上げたいと思います。

藤岡委員 要は、はっきりと、そこの点が曖昧なままになってしまいましたので、この点についての解釈が引き続き拡大していく懸念というのは残ってしまったのかなというふうに思います。これはしっかりと運用のところでも本当に気をつけていただかなければいけないのかなということをしっかり指摘をさせていただきたいと思います。

 法人の法務部においては、では、法曹資格者が在籍していなくても認められる場合というのは、認められるんだとしたらですよ、これはどのような判断基準になるんでしょうか。

加田大臣政務官 委員の御指摘のように、当事者である法人の法務部に法務資格者が在籍していない場合でありましても、当該法人が、この手続を利用するか否かについて適切に判断し、法定された審理期間内に必要な主張、立証をすることができる能力を有していると認められる場合、例えばなんですけれども、当該法務部の規模や体制等に照らしまして、当該法務部が組織として民事裁判に関する実務に習熟しているものと認められ、あるいは、社外の弁護士との緊密な相談体制が構築されていたり、そのアドバイスを得ながら適切な判断等をすることができ得ると認められる場合におきましては、適正な審理の実現を妨げると認めることはできずに、この手続の開始の要件を満たすことがあり得ると考えられます。

 いずれにしましても、どのような場合に適切な審理の実現を妨げると認められないかは、裁判所におきまして、個別具体的な事案に応じまして、事案の性質、当該訴訟の追行による当事者の負担の程度のほか、当該法人の規模、法務部の体制等を総合的に考慮しまして判断されることになるものであると思います。

藤岡委員 政務官、ありがとうございます。

 今の御答弁ですと、社外にアドバイスがあればいいんだみたいなふうに聞こえたんですけれども、そうすると、これは物すごい範囲を拡大していくおそれがあると思うんですが、どうでしょうか。

加田大臣政務官 法人の中でいいますと、これは活動という部分の中におけると思うんですけれども、社外の部分におきましても、いわばアドバイスを得ながら適切に判断できるかどうか、そのことが、今回の適正な審理の実現を妨げるということとか、そういうことの部分におきましても、これは一つの法人の法務部の中におきましてのチームとして考えますので、その中での体制という部分に、いわば当事者双方の中におきましての法人の方が実行できる体制があるかどうかということに関わっていると思っております。

藤岡委員 要するに、広がることを容認するということなんでしょうか。ちょっとはっきり、政務官、お願いします。

加田大臣政務官 これは先ほど来、前回の委員会でも、ずっと議論させていただいているんですが、いずれにしましても、どのような場合に適正な審理の実現を妨げると認められないかは、最終的には裁判所において、個別具体的な事案に応じて、事案の性質、当該訴訟の追行による当事者負担の程度のほか、当該法人規模とか法務部の体制等を総合的に考慮するものでありますので、この場でこれだとかという形を提示するというのは困難であると思っております。

藤岡委員 しかし、法務省としての有権解釈、裁判所が運用するに当たっての、これはどういうふうな考え方なのかということは当然お話をいただかなければいけないと思うんですけれども。

 だから、要は、アドバイスを受ければいいんだと。これは当初の想定と随分広がっているというふうに思うんですけれども、そういうことなんですか。済みません、政務官、お願いします。

加田大臣政務官 例えば、当該法務部の規模や体制に照らしまして、当該法務部が組織として民事裁判に関する実務に習熟しているものと認められる、あるいは、社外の弁護士などの緊密な体制が構築されており、そのアドバイスを得ながら適切に判断等をすることができると認められる場合ということで、そのことについてしっかりとできるという体制というものが求められていると思っております。

藤岡委員 残念ながら、はっきり明快にお答えをいただけませんでした。

 これは、大臣、解釈を拡大していく懸念、どういうふうに止めていくというか、しっかりこれを収めていくんでしょうか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 これまで大臣政務官からもいろいろ答弁をさせていただきましたけれども、個人が訴訟代理人を選任しないで訴訟を追行する場合においては、基本的に、適正な審理の実現を妨げると認めるときに該当するものであるとして、手続開始の要件を満たさないものと考えています。

 当該個人が法定審理期間訴訟手続を利用するか否かについて適切に判断をすることができ、かつ法定された審理期間内に必要な主張、立証をすることができる場合でなければ、この手続を利用することはできないわけであります。

 ただ、そのときに、訴訟代理人であるかどうかということについて、その境界線はということで、先ほど来、委員からは御指摘がなされているところであります。

 訴訟代理人が選任されている場合と同視できることができるような場合について、今までるる政務官との間でやり取りがあったと思うのですけれども、ならば、もう訴訟代理人が選任されている場合に限ると言ってしまえばいいではないかということを先ほど委員もおっしゃいましたけれども、あえてそのようにしていない理由というのは、先ほど来御説明を申し上げているとおり、幾つかの、そういう実態上、同視し得る場合があるのだということを御説明しておりまして、そういう場合があり得るわけですから、改めてそういうものを排除する必要まではないだろうという考えの下に、このような表現ぶりにしておるのであります。

 さらに、制度として、法務省としては、この法律を作るに当たりまして、この法定審理期間内に必要な主張、立証をできるかどうかということに着眼して、こういう方針を法律の中で定めておるのでありまして、それを実際どう運用するかというのは、裁判所において適切に運用されるべきものだというふうに考えておりますときに、そこを余り、境界線をぎりぎり申し上げることは、これはどうかなということから、前回の委員会でも申し上げましたとおり、あえてぎちぎち限定しないというような答弁をさせていただいております。

 このようなことでございまして、この制度によっては、法定審理期間の中で必要な主張、立証を行うことができるかどうか、その能力にきちんと着目をするのだということを申し上げておりますから、結果的に範囲が不当に拡大するという委員の御心配は、御懸念には及ばないのではないか、大丈夫だということを申し上げたいと思います。

    〔熊田委員長代理退席、委員長着席〕

藤岡委員 本当に、法曹資格を有するか有しないか、ある程度はっきりしている部分が多いと思いますので、もちろん、排除とかそういうことではありません。

 ただ、本件に関して、同視し得るというのは、少しまだまだ拡大していく懸念が拭えないのかなということは指摘をさせていただきたいと思います。

 最後に、三百八十一条の二第二項における、当事者の衡平を害しとは、どのような場合が想定され、さらに、訴訟の最初の段階で、衡平を害するかどうかというのは、これはどのように判断されるのでしょうか。

津島副大臣 藤岡隆雄委員に、事前通告によれば二問、今御質問いただいた、間違いないでしょうか。(藤岡委員「はい」と呼ぶ)

 まず、最初の問い、改正法案第三百八十一条の二第二項に言うところの問いでございます。

 法定審理期間訴訟手続は、事案の性質、訴訟追行による当事者の負担の程度その他の事情に鑑み、この手続により審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害すると認めるときは開始しないことといたしております。

 この例でございますが、具体的には、当事者間に証拠の偏在、偏りがある場合、事件、例えば、大企業が製造したものにより消費者が被害を被った場合に消費者が大企業を相手に損害賠償請求を求めるような事件については、基本的に、当事者間の衡平を害すると認めるときに該当すると考えられます。

 次いで、当事者間の衡平の、審理の初期の段階で判断される場合という質問ですが、この手続は審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害すると認めるときは開始しないというのは今ほど申し上げたところです。

 この判断は、事案の性質、訴訟追行による当事者の負担の程度その他の事情に鑑みてすることとされておりますが、審理の初期であって、当事者がまだそれほど主張や証拠を提出していない段階であっても、当事者の属性や立場、当事者間の関係性、当該事件の種類などから、当事者間の衡平を害すると認められるときに該当すると判断できるものもあると考えられます。

 先ほど申し上げましたように、当事者間に証拠の偏在がある事件、例えばPL法に基づく損害賠償事件のことを申し上げましたが、基本的に、当事者間の衡平を害すると認めるときに該当すると考えられます。

 以上でございます。

藤岡委員 ありがとうございました。

 やはり、この法定審理期間訴訟手続、ちょっとまだ検討が足りていないということを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 私からは、訴訟記録の電子化の件をお話しし、議論させていただきたいと思います。

 法改正によって、訴訟記録を電子化して、その閲覧等をするための仕組みがつくられるというふうに伺っております。電子データで訴訟記録を保管するのであれば、書庫等の収容能力を度外視して保管できるわけです。そうすれば、保管期間も従来よりも延長できるはずだというふうに考えております。

 私の資料の一ページを御覧になってください。

 左側の方に表のようなものがあります。これは最高裁の事件記録等保存規程の抜粋なんですけれども、判決の原本の保存期間は五十年、和解等々は三十年とありまして、他方で、それに関する事件記録、様々な証拠であったり主張書面であったり、いろいろあるかと思うんですが、そうした事件記録は五年というふうになっております。

 事件記録の保管期間は、判決の原本等と同じ期間にすれば、わざわざ分けて管理する手間も省けますし、閲覧する側もより便利になるかと思います。事件記録の保管期間もこの際見直すべきではないかと考えますが、これは規程を作っている最高裁でよろしいでしょうか。お願いします。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 御指摘いただきましたとおり、現在の事件記録等保存規程におきましては、民事訴訟の事件記録等の保存期間は、判決の原本は五十年、和解等調書は三十年、事件記録は五年と定められているところでございます。

 訴訟記録が電子化された際のことについて御指摘をいただいたところでございます。

 訴訟記録が電子化されたときに、記録の物理的な保管スペースの問題は、御指摘のとおり生じなくなります。他方で、永久あるいは相当長期間これを保存するということになりますと、システムにおける保存容量が累積的に増加し続けることになりますので、それに伴うシステムの維持管理に関するコストが増大するということも考えなければならないかと思っております。その他、訴訟記録中に表れる高度な個人情報を保有し続けることに関する問題等も考慮する必要があるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、訴訟記録の保存期間につきましては、改正法案の内容等を踏まえまして、その在り方については今後検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

階委員 せっかく保管スペースの問題がなくなるわけですから、そこは是非、前向きに検討していただきたいと思っています。

 そして、なお、保管期間は、延長されても残り得るということは理解します。延長してほしいんですけれども、限界があるということは理解します。

 ただ、その上で、今の仕組みにあっても、特別保管という制度があるわけですね。一ページ目の右側に書いていますけれども、例えば、重要な憲法判断が示された事件などについては、保管期間が過ぎても保管対象になるというふうになっています。ただ、私が本などで読んだところ、重要な憲法判断が示された、例えばマクリーン事件という在留外国人の基本的人権について判断した事案などについては、特別保管の対象にならなかった。今、記録は廃棄されたというふうに伺っています。この法改正を契機に、特別保管の対象も広げるべきではないかと思っています。

 この特別保管の要件、右側に書いてあるところを見ると、保存期間満了後も保存する必要があるとき、あるいは括弧三のところに、弁護士会の要望などがあったときは要望を十分に参酌するということで、要は、最終的には、必要性は最高裁が判断して、必要性がなければ特別保管しないということになっているわけですよ。ここは原則として、重要な事件であれば保管する、保管しなくてもいいような特段の事情があれば保管しないというような、原則と例外を変えるべきではないかというふうに思います。

 特別保管の要件の見直し、この点も考えていただきたいんですが、いかがでしょうか。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 いわゆる、私ども、特別保存という言い方をさせていただいておりますけれども、これについての御指摘をいただいたところでございます。

 現状の事件記録等保存規程第九条第二項にこれは定めてございまして、いわゆる、私どもは二項特別保存という言い方をしておるんですけれども、この選定手続については、各庁において運用要領を定めて選定を行っているところであります。

 委員から御指摘をいただいたように、以前、著名な事件についての保存がされていないのではないかという御指摘をいただいたこともありまして、それ以降、令和二年くらいから、各地できちんとそれを、運用を改めるというようなことが行われました。

 一例を御紹介させていただきますと、東京地方裁判所におきましては、外部有識者の意見を聴取した上で、令和二年に運用要領を定めました。ここでは、最高裁判所民事判例集に判決等が掲載された事件、事件担当部から保存するよう申出がされた事件、地域面を除く主要日刊紙のうち二紙以上に終局に関する記事が掲載された事件を保存に付するというような客観的な基準を設けたところでございます。

 また、このほか、弁護士会、学術研究者等から、事件及び保存の理由等を明示して要望があった場合には、これを保存に付するかどうかを適切に判断するため、裁判所内に設置した保存記録選定委員会の意見を踏まえて、最終的には東京地方裁判所長において特別保存の要否を判断するという運用になっております。

 したがいまして、委員から御指摘をいただいた点につきましては、近年、運用をしっかり改めたというところでございますので、これをしっかりと運用を続けていきたいというふうに思っております。

階委員 今お話を聞いていて、以前、この委員会でそういうことが取り上げられたことは思い出しました。

 この電子化を契機に、やはりその運用もより適切に、かつ充実したものになるように努めていただければと思います。

 あと、最後にこの関係で伺いたいのは、参考人の御意見で、電子化といいましても、書面をPDFにして、それを保存しているだけだと、後々、調査とか分析するときに使い勝手が余りよくない、デジタル化の時代ですから、テキストデータの形で保管なり保存なりしていただけると便利になるというような御指摘がありました。

 これは、全部の事件記録は無理だとしても、判決文などは、元々電子データなわけですから、テキストファイルの形で閲覧、利用できるようにするのはありだと思うんですけれども、この点についていかがでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 これは今後開発予定のシステムに関するものということになりますので、現時点では確定的なお答えはできないところなんですけれども、訴訟記録になるものということですと、当事者が提出する書面は、訴訟資料として、裁判所だけではなくて、双方当事者の共通の資料になるというところがございます。これは、判決についても、判決原本に当たるものは同様ということになりまして、これは文書作成者の意図したレイアウトどおりに表示、印刷されることが必要ということになりまして、そのようなファイル形式としてはPDFファイルが想定されるというところでございます。

階委員 いや、それは、PDFはPDFで残してもいいかもしれないですけれども、別に、調査分析に資するようにするためにテキストデータの形でも閲覧できるようにする、利用できるようにするというのもやってもいいんじゃないでしょうかね。それをやらないと、各判決がどのような整合性があるのか、あるいは考え方がどのように変遷しているのか、いろいろな調査とか分析が困難になると思うんですね。

 せっかく電子化するのであれば、そうしたことにも配慮すべきではないかということで、検討していただけませんか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 済みません、ちょっと今、手元に資料がございませんので、正確なところは、ちょっと違っているかもしれないのは御容赦いただきたいんですけれども、今、日弁連の法務研究財団の方で、判決のオープンデータ化についての検討が行われていると承知しております。

 そちらの方での検討次第ということにはなりますけれども、そのオープンデータ化を実際にしていこうということになりますと、裁判所からそちらの方に判決データを提供するということも考えていくことになるかなと思っております。

 そこの作業の中では、今委員が御指摘になったような点も踏まえて検討していくことになるかなと思っておるところでございます。

階委員 では、しっかり進めていっていただければと思います。

 次に、前回の質疑に関連して、財務省に伺っていきたいと思います。

 三ページ目の資料を御覧になってください。この上段の方が、前回、財務省とのやり取りで、今日は理財局長に来ていただきましたけれども、前回のやり取りというのは、赤木訴訟のように、真相解明を望む当事者の期待、これを裏切るような請求の認諾を防ぐことが必要ではないかという問題意識を私は示しました。

 そして、その方策として、一つは、請求の認諾の際に相手方当事者の同意を得るという法改正、これを行うか、もう一つは、手数料の負担を軽減して、認諾しにくい大きな金額を請求することをやりやすくするか、どちらかの法改正を行うべきだということを主張しました。

 この流れの中でやり取りがあったわけですけれども、今日お配りしている資料の上段の最後のパラグラフ、財務省の答弁として、本件につきましては、法務省にも御相談申し上げ、それから賠償額云々かんぬん、妥当なものと判断したということだというふうに答弁していますが、これはちょっと文章が読みにくい、言い方が分かりにくいので確認しますけれども、認諾金額、損害賠償額が妥当だと判断したのは、法務省と相談した結果だということでいいですか。確認ですけれども。

角田政府参考人 認諾に当たりましては、当然、金額につきましても、金額を含めて認諾をさせていただいているのは当然のことでございまして、その認諾につきまして、法務省と協議してということで、そういう構成になってございます。

階委員 金額についても法務省と相談したということですので、法務省にも聞きたいと思います。

 法務省としては、相談を受けて、認諾金額が妥当だというふうにアドバイスはされたと思うんですが、妥当だとアドバイスされた根拠を説明していただけますか。法務大臣、お願いします。

古川国務大臣 まず、一般論として申し上げますと、訴訟追行に当たりましては、関係省庁との間で訴訟方針等に関し協議、検討を行うなどして、法務省としては適切に対応しているところでございますけれども、個別の訴訟における国内部の協議内容につきましては、国の訴訟追行に関わるものでもあり、通例はお答えを差し控えているところでございます。

 ただ、今お尋ねの件につきましては、前回の委員会に引き続き財務省の政府参考人が御答弁されておりますので、そういうことを踏まえまして、あえて申し上げたいと思いますけれども、御質問の、訴訟において国が支払う損害賠償額につきましては、財務省とも協議の上で妥当なものと判断したものと認識をいたしております。

 この金額についてでございますが、これは原告が訴状において国に対して請求をした金額でございまして、この訴訟を代表する立場にある法務大臣におきましては、当事者が積極的に公にしていない事実に言及をすることは適切ではないというふうに考えておりますということでございます。

階委員 ちょっとよく分からないんですけれども、認諾だから請求額をそのまま丸のみするわけなので、請求額がこの金額だったからこの金額を認諾します、するのは妥当と。要するに、請求された金額が一億七百万だから一億七百万を認諾するのは妥当だと言っているふうにしか聞こえなくて、幾ら一億七百万請求されたからといって、それを丸のみするかどうかは別問題なんですね。

 請求金額が妥当かどうかは、前に前川委員がこの場で説明されたとおり、裁判所で損害賠償金額の基準というのは公開しているわけですよ。それに基づいて弁護士会などもちゃんと本にまとめたりしているわけです。基準がある中で、それに当てはめて妥当かどうかということを、当然法務省はそういう基準も知っているわけですから、アドバイスすると思うんですね。

 そういうことはやらずに、単に、訴える側が一億七百万請求してきたからそれでいいよと言ったにすぎないということでいいんでしょうか。

古川国務大臣 その金額の妥当性についてお尋ねなわけですけれども、御質問は個別の訴訟における国内部の検討過程を問うものでありまして、国の訴訟追行に関わるものでございます。したがいまして、お答えを差し控えたいと存じます。

階委員 大体いつも苦しくなるとそのお決まりの文句が出るんですけれども、私はそれを認めるわけにはいかないんですね。これ、一億七百万円は国民の税金ですから、ちゃんと根拠は示すべきなんですよ。

 それで、財務省に、では、法務省と相談したときにどんなやり取りがあったのか聞きたいんですが、当然、何らかの基準、これは公開されている基準というのが世の中にはあるわけですよ。何らかの基準に当てはめて、この金額だったら妥当だというふうに判断したと思うんですね。その損害賠償金額の妥当性を判断した基準、それが何かということと、その基準に当てはめた結果、これを記録した文書、両方示していただけませんか。お答えください。

角田政府参考人 認諾に当たりましてどういう文書があるのかということを以前にもお尋ねいただいておりますけれども、第四準備書面がまさにその残す文書として作成したものでございます。年末にもお答えしたと思います。文書としてはそういうものでございます。

階委員 いや、それは、前に答弁されたのも当然知っていますよ。でも、今言った準備書面には、請求金額のことについては一切触れていませんよね。幾らで認諾するのが妥当かどうかということについては一切その書面には記されていない。あれで法務省に相談したからといって、認諾金額が幾らにするのがいいかどうかまでは、あんな書面では判断できないはずですよ。あれはあくまで認諾すべきかどうかの根拠を示しているだけであって、認諾した金額が妥当かどうか、これについては一切文書には記されていないんです。

 そうした文書を作っていないんですか。お答えください。

角田政府参考人 金額そのものについて文書で協議したかと言われると、恐らくそういうことはなかったと思います。

階委員 あり得ないですよ。何でそんな勝手に、一億七百万、法務省と相談するときに、何の資料も持たずに口頭で、一億七百万払っていいですか、いいですよねと、こんなやり取りで済むんですか。それが財務省のやり方ですか。おかしいですよ。

 しかも、例の公文書改ざんの問題があった後、皆さんもコンプライアンス研修だ何だといって、公文書管理の在り方を徹底的に教育したわけでしょう。

 今日、配っていますけれども、四ページ、「行政文書の作成(打合せ等の記録作成)」という見出しの文書、これはコンプライアンス関連研修基礎、基礎の基礎のところで出てくる資料ですけれども、一番上に、「意思決定過程や事務・事業の実績を合理的に跡付け・検証することができるよう文書を作成。」とあるじゃないですか。これを守っていたら、当然、今言ったような大事な文書を作るべきでしょう。何で作っていないんですか。あるでしょう。あるならあると言いなさい。そして、あるなら出してください。

角田政府参考人 申し訳ありませんけれども、認諾の際に作成した文書は第四準備書面でございます。それと、会合を開いて、記録を残せと書いてあるんですけれども、特段、何か会議をセットしたとか、そういうことはございません。

階委員 何ですか、これ。会合なんてどこかにありますか。別に会合なんかどうでもいいんですよ。「意思決定過程や事務・事業の実績を合理的に跡付け・検証することができるよう文書を作成。」、金額を口頭で合意するなんということはどこにも書いていないでしょう。こういうときこそ行政文書を作成しなくちゃいけないじゃないですか。何でそれを作っていないんですか。全く前回の公文書改ざんのときの反省が生かされていないんじゃないですか。

 理財局長、あなたのお膝元で起きたんですよ、前任者か前々任者か知らないけれども。どうなっているんですか、そちらの組織は。おかしいでしょう。絶対あると思いますよ。一億七百万、税金を使っているわけだから、出せないのはおかしい。相談したときに一億七百万算定した際の基準、そして、それに照らして、これが妥当だと考えた根拠、それに関する文書を出してもらえませんか。

角田政府参考人 当然、その金額が妥当かどうかというのは検討はしなきゃいけないと思うんですけれども、何か文書でというのが、その点について言われれば、文書という形ではございません。

階委員 じゃ、別に今からでも作っていいじゃないですか。コロナの会議だって、後から作っていたじゃないですか。我々のときも、東日本大震災の会議の政府の文書を後から作りましたよ。今から作ってくださいよ。法務省と相談して、打合せをしているわけでしょう、これが妥当かどうか。今から作って出してください、どうぞ。

角田政府参考人 金額について、国がどういう具体的な検討をした結果、これでいいというふうに判断したのかということを明らかにすること自体が、今後の訴訟に不測の支障を生じると困りますので、それは差し控えさせていただきたいと思っております。

階委員 損害賠償金額が妥当なものかどうか、これに関する文書を示せと言っているわけですよ。別に、訴訟遂行なんか関係ないですよ。皆さんが、税金を使うわけだから、不当に大きな金額を払ったら背任行為ですよ。民間だったら許されない、犯罪行為ですよ。だから、それを、ちゃんと私たちは適正な金額を払いましたよということを示す証拠を出してくださいと言っているわけですよ。関係ないですよ、訴訟の遂行なんて。当たり前のことを言っているんですよ。出してください。

角田政府参考人 残念ながら、お答えは、特段、先ほどと違うことを申し上げるわけにもまいりませんので、何とぞ御容赦いただきたいと思います。

階委員 委員長に、この件について、委員会として、財務省から、事後的に作成してもいいですから、提出するようにお取り計らいをお願いします。

鈴木委員長 ただいまの件につきましては、理事会にて協議をいたします。

階委員 どうして文書を作らないという判断をしたのか、それが分からないんですよ、仮に作っていないとすればですよ。仮に作っていないとすれば、何で作らないで許されると思ったんですか。あれだけの事件を起こしておきながら、しかも理財局で起こしておきながら。何で今回の文書を作らなくて済むというふうに判断されたんですか。それをお答えください。

鈴木委員長 申合せの時間が経過しておりますので。

階委員 はい。では、最後にそこだけ。

鈴木委員長 では、簡潔にお願いいたします。

角田政府参考人 済む、済まないということについて、何か判断があったわけではないんですけれども、作成していないということでございます。

階委員 時間が来たので終わりますけれども、全く改まっていない。同じことを繰り返しますよ。とんでもない。

 終わります。

鈴木委員長 次に、前川清成君。

前川委員 日本維新の会の前川清成でございます。

 期間限定裁判に関して、何人もの委員の皆さん方から様々な論点について質疑がありましたが、先ほどの米山委員の議論が大変緻密だったと思います。つきましては、通告の順番を変えて、期間限定裁判についてまずお尋ねしたいと思います。

 先ほどの大臣の御答弁ですけれども、期間限定裁判については、判決を簡単にするものではありませんよと。今の民事訴訟では審理に要する期間がなかなか予見できない、ついては、使い勝手が悪い、裁判の使い勝手をよくするように予見可能性を高めるんだ、そのための期間限定裁判なんだ、こういう御説明だったと思いますけれども、これで間違いないでしょうか。

古川国務大臣 期間に関する予見可能性を高めることによって、それによって国民にとって裁判制度がより利用しやすいものになるというようなことを期しましてこのような制度を考案をしております。

前川委員 それでは、今大臣のおっしゃる予見可能性ですけれども、その予見の時期、それはいつになるんでしょうか。

金子政府参考人 予見の時期は、法定審理期間訴訟手続が開始する段階で期間が設定されますので、そこからの期間。ですから、いつの時点での予見かというと、その開始時点での予見ということになると思います。

前川委員 大臣、そこをお聞きしているんじゃなくて、国民が、あるいは企業が裁判を利用しやすいかどうか、そのための予見可能性のはずなんです。であればですよ、今の局長の答弁は的外れで、裁判を起こす前に、あるいは起こすか起こさないか決定する前に予見できていないと、おっしゃるような使い勝手のいい裁判にはならない。だから、予見の時期というのは裁判を起こす前、決して手続が始まってからではない、私はそう思うんですが、いかがですか。

古川国務大臣 これまで、例えば裁判制度を利用した方々に対するアンケート調査などによりますと、裁判を始める時点においてどれぐらいの期間がかかるか予想しましたかという問いに対して、ほとんどの、ほとんどといいますか、多くの方が、分からなかった、全く予想できなかったというようなことで、これが裁判制度を利用するに当たってちゅうちょさせる、何か要因の一つになっているのではないかという問題意識が従前からございました。

 そのような意味で、この予見可能性、どれぐらいの期間がかかるものであろうかということをあらかじめ大体見込むことができることによって、それでは裁判制度を利用しようと、そういう促すことにつながるという、そういう趣旨での予見可能性というふうに申し上げております。

前川委員 ですから、予見の時期は、裁判を起こす前、裁判を起こすか起こさないか決める段階ということでいいですよね。

金子政府参考人 先ほどは、具体的な、六か月の予見の起算点というような趣旨でお答えしてしまいましたが、前川委員の問題意識からしますと、裁判を起こすかどうかを決める段階で予見可能性があってこそ起こすという行動につながっていくということになりますので、その前の段階で予見できるということが望ましいというか、想定されている姿ということになろうかと思います。

前川委員 局長、私の意識じゃなくて、大臣の答弁が、先ほど米山議員との議論を聞いていて、判決を簡単にするための期間限定裁判ではありません、裁判を利用しやすいために、するためには裁判の審理期間を予見可能なものにしなければならない、そのための期間限定裁判だ、こういうふうにおっしゃったので、それに関してちょっとお尋ねしております。

 その上で、大臣にお尋ねしますけれども、裁判を起こすか起こさないかを決める。ああ、期間限定裁判がある、六か月程度で終わりそうだな、じゃ、裁判を利用してみようか。たとえ個人があるいは企業がそういうふうに判断したとしても、三百八十一条の二の二項のとおり、双方が申出をしないと期間限定裁判は使えません。それと、先ほどからるる議論があったように、原則として、こちらは弁護士をつけても被告が弁護士をつけなかったら期間限定裁判は使えない。さらには、三百八十一条の四の一項、期間限定裁判が始まっても途中下車が自由になっています。さらには、三百八十一条の八の一項、異議があれば期間限定裁判が終わって通常訴訟に戻ります。

 こういうふうな、様々に、期間限定裁判が当然に始まるんじゃなくて、様々な要素によって、始まる場合もあれば、あるいは始まっても途中で終わってしまう場合もある、通常訴訟に戻ってしまう場合もある。

 結局のところ、この期間限定裁判の予見可能性、これが、遠慮して言えば中途半端なものになっているし、もっとはっきり言えば、予見可能性と大臣はおっしゃるけれども、そんなものは実際のところほとんどないのではないか、こういうふうに考えるんですが、その点、いかがですか。

古川国務大臣 先ほども申しましたように、裁判というものを利用しやすく、より利用しやすいものとするために、期間の予測ができないというお声があるわけですから、それに応えるべくこのような制度を考案しているということでございますが、しかし、前回の委員会の場でも申し上げましたとおり、一方では、裁判を受ける権利というものが十分保障されなければならないという要請がございます。こういう二つの要請の、要は、バランスを取ると申しますか、そういうことに重きを置きながらこの制度の詳細を考えてきたという経緯がございます。

 その中で、先ほど来委員が幾つか指摘をされましたとおり、言ってしまえば乗り降り自由というような制度でありまして、決めたからにはそれで最後まで、どんなことがあっても決められた期間で終わるのだというものではございません。あくまでも、当事者の意思であったり、あるいは裁判を受ける権利という、それを保障するという要請、それに基づいて制度設計されておるものでありまして、そういう意味では、予見可能性と、私、この趣旨を申し上げましたけれども、必ずしもその予見可能性という言葉が、この制度のこういうたてつけをもって全て否定されるというようなものでもないというふうに申し上げたいと存じます。

前川委員 予見可能性については、今議論させていただいたとおり、必ずしも当事者にとって十分なものではない、このことは大臣もお認めいただけると思います。

 それと適用範囲、今日は余り時間がありませんので指摘だけにとどめますけれども、想定しているのは、当事者間に基本的な事実の争いはない、ただ、契約書の解釈あるいは法律の解釈、これだけを裁判所にお願いしたい、こういうケース、あるいは交通事故、こんなことが想定されているんです。

 私、弁護士で、今年で三十三年目、参考人になられた松森弁護士、恐らく弁護士を五十年近くされていると思いますけれども、契約書の解釈だけで裁判というケースは一件もありません。ほとんどそんな、実務においてそういう実例はないと思います。

 交通事故については、過失割合についても、先ほど階議員からあったように、損害額についても全て公刊されていますので、これについて、期間限定裁判が活躍する、活用される場面というのもほとんどないんじゃないのかな、こんなふうに思っております。

 ちょっとほかの論点についても議論させていただきたいので、次に、百三十二条の十の一項についてお尋ねをいたします。

 ここで、書面等の提出については、ファイルに記録する方法によって行う、こういうふうに書かれていますが、これは民事局長で結構ですが、ファイルに記録する方法というのはどういうことでしょうか。

金子政府参考人 改正法案では、裁判所に対して行う申立て等は、最高裁判所規則で定めるところにより、インターネットを用いて裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法によりこれを行うことができるという趣旨の規定を置いております。

 ここで言うファイルに記録する方法とは、裁判書が用意したシステムに、インターネットを通じて直接データをアップデートすることを想定しておりまして、その技術的な細目につきましては、今後、最高裁判所規則で定められることとされております。

前川委員 百三十二条の十の五項で、こちらは電磁的記録の送達によってするというふうに書かれています。ファイルに記録する方法と電磁的記録の送達、これは当然意味が違うと思います。電磁的記録の送達、これはどういうことを意味するんでしょうか。

金子政府参考人 先ほどの答弁で、データをアップデートと申し上げたかもしれませんが、アップロードでございます。訂正させていただきます。失礼いたしました。

 今度、百三十二条の十第五項の電磁的記録の送達によってするということの中身ですけれども、改正法案の百三十二条の十第五項は電磁的記録の送達によってするものと規定しておりますが、これは、改正法案第百九条及び百九条の二に規定する送達の方法を意味するものでございます。

 具体的には、送達を受けるべき者が、裁判所からの通知を受ける場合の連絡先など所要の届出をしない限り、原則として、その事項を出力することにより作成した書面を、現行法と同様に、郵送等の方法により送達することにより行うこととなります。

 他方、送達を受けるべき者が、先ほど述べた、連絡先など所要の届出をしている場合には、インターネットを用いた方法により送達することとなります。

 その方法は、裁判所において、送達を受けるべき者が裁判所に設置されたサーバーにアクセスをして閲覧をし、ダウンロードすることができる措置を取るとともに、送達を受けるべき者に対し、この措置が取られた旨の通知をすることにより、送達をするものでございます。

前川委員 そうしたら、ファイルに記録する方法により行うというのは、今、弁護士が、例えば訴状であれば、裁判所に持参しているあるいは郵送している、準備書面についてはファクスで送っている。これをメールで、添付ファイルで送るではなくて、あらかじめ、裁判所の何かコンピューターのシステムがあって、そこに書き込んでいく、こういうことでいいですよね。

 その上でお聞きするんですけれども、じゃ、そのためのシステム、これは、どれぐらいの期間で、どれぐらいのお金をかけてつくるんですか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 改正法の成立後に開発を開始するシステムに関する御質問になりますので、具体的な開発期間や予算等について確たるお答えは難しいところではございますけれども、今国会で法案が成立した暁には、本年度中にシステム開発の要件定義を実施したいというふうに考えております。

 要件定義の確定後、システムの実際の開発、構築作業に進むことになりますけれども、これには更に相当期間を要することになると見込まれまして、試行、導入の期間も必要と思われます。

 いずれにしましても、改正法案のうち、システムに関係する部分の施行日は公布から四年を超えない日とされておりますので、それを目指して、システムの開発と導入を着実に進めてまいりたいと考えております。

 また、システムの開発に当たりましては、デジタル庁とも意見交換を行いながら、費用対効果を十分に意識して開発を進めてまいりたいと考えております。

前川委員 今の門田民事局長の御答弁は、システムをつくるのにどれだけお金がかかるかまだ分かりません、こういうことだと思うんですけれども、でも、それだったら、これは例えば与党の先生方であっても、賛成するか反対するか決めかねるんじゃないですか。だって、漠然と何億円か何十億円かで済むというふうに思っているけれども、例えば、極端な話、何兆円もかかるんだったら、ここにいる議員みんな反対すると思いますよ。

 大体どれぐらいの金額でできるのか、今やじもありましたけれども、相場みたいなものはあるでしょう。

門田最高裁判所長官代理者 今後開発するシステムということになりますので、現時点では確たるお答えは申し上げられません。

前川委員 そうしたら、これは、幾ら金がかかるか分からないのに賛成するか反対するか決めるわけですか。

 次に、百三十二条の十の三項についてお尋ねをしたいと思います。

 これは、まず、例えば訴状については、ファイルに記録されたときに受け付けられたものとみなされる。だから、例えば時効が問題になっている事件だったら、記録されたときに時効の完成が、完成猶予される、こういうことだと思うんですが。

 百三十二条の十一の第三項、裁判所の電子計算機の故障がある場合については適用しません、こういうふうになっているんですね。要は、裁判所のコンピューターが壊れたら、あるいはシステムが障害を起こしたときのために百三十二条の十一の三項という規定が設けられています。

 裁判所のシステムでさえ、裁判所のパソコンでさえ壊れることを想定しているんですが、当事者のパソコン、例えば弁護士が使うパソコン、これは壊れることは当然あると思うんです。この場合に一体どうするのか、お尋ねをしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 百三十二条の十一第三項は、裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由により、電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができない場合には、電子情報処理組織による申立てを義務づけられている弁護士等の訴訟代理人であっても、紙媒体を提出することが認められるという規定でございます。

 御指摘のとおり、裁判所の使用に係る電子計算機の故障を例示しておりまして、この規定は裁判所にシステム障害が生じた場合を典型的なケースとして想定したものでございます。

 その上で、弁護士の使用するパソコンの故障がその責めに帰することができない事由に該当するかどうかは、最終的には裁判所が個別具体的な事案に応じて判断することとなります。

 この判断に当たりましては、弁護士の使用するパソコンの故障等の原因、代替手段の有無、これを利用することの容易性等を考慮することとなるものと考えられますが、例えば、他のパソコンを利用してインターネットを用いた申立てを行うことが容易であるといった場合には、通常はこの要件に該当しないことになるものと考えられます。

前川委員 裁判所のパソコンが潰れてしまう場合を想定して条文が置かれています。そうしたら、そこよりもお金もないし予算もないし人もない法律事務所のパソコンが潰れる場合というのも当然考えておかなければならないと思います。

 裁判所のコンピューターが壊れたら紙で出すことを認めている。そうであれば、今民事局長が言うように個別具体的な判断ではなくて、ここの、百三十二条の十の一項に言う書面等には、例えば控訴状も含まれるわけです。控訴期間が過ぎてしまって出せなくて、後になって個別具体的な事情で裁判所が判断すると言われても、それは当事者は不安でたまらないので、当事者のパソコンが潰れた場合でも、一旦は紙で提出することを認めて、その上で後で追完をさせる、どうしても電子データの方がいいというのであれば後で追完させる、こういう運用があってもいいと思うんです。

 ですから、この場で法律を修正しろとは言いませんが、これから最高裁で規則を決めていくときに、民訴規則を決めていくときに、そういうふうな運用を盛り込むことはできないでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所で今後開発するシステムの関係で確たることはお答えできないと申し上げているところで、再々申し訳ないんですけれども、今の開発思想のところで考えておりますのは、特殊なプログラムをインストールすること等は要求しないということを考えております。ですので、ふだん弁護士がお使いになっているパソコンが故障した場合でありましても、インターネットに接続された一般的なパソコンを用いていただくことによりまして電子的な申立てをすることが可能であろうというふうに思っております。

 それもなかなかないというお尋ねかとは思うんですけれども、裁判所としましては、これはあくまで本人訴訟の当事者の方の申立てを行う場合を念頭に置いておるものですけれども、裁判所内にパソコン等の電子機器を設置することも検討しておるところでございます。訴訟代理人等につきましても、今ほど委員から御指摘ありましたように、本当に緊急の場合ということになりましたら、こうしたパソコンを御利用いただくということもあるのではないかと考えているところでございます。

前川委員 次に、百三十二条の十二の一項についてお尋ねをしたいと思います。

 この条文によると、本人であれば準備書面や書証を紙で出してもいい、ただ、紙で出した場合には裁判所の書記官がこれをファイルに記録する、電子データ化する、こういうことになっていると思います。

 ところが、参考人質疑においても、小澤司法書士会会長から、ファイルに記録する方法によって行うことについて、本人サポートが必要だ、こういうふうな発言がありました。でも、裁判所の書記官がやってくれるのであれば、何もわざわざ司法書士会の司法書士さんたちがボランティアで取り組む必要もないんだろうと思うんです。

 金子民事局長が十五日の答弁でも、可能な限り当事者も、当事者というのは本人訴訟の場合の本人も、インターネットを用いた方法によって行われることが望ましい、こういうふうに答弁されておられるので、もしかすると裁判所はこれから、この百三十二条の十二の一項の条文があるにもかかわらず、本人が紙で持っていったらこれを嫌がるのではないのか、電子データで申立てするように、強引にと言えば言い過ぎでしょうかね、強く誘導してしまうのではないのかと。それもこれも、裁判所の書記官が不足しているからではないのかなと。

 今年の法案でも、裁判官も裁判所の書記官も定数を減らすという法案が出ましたけれども、むしろ、こういうことがあるのであれば、裁判所の人的な基盤というのを拡充していく必要があるのではないのかな、こう考えるんですが、いかがですか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 改正法案におきましては、委任を受けた訴訟代理人等でなければ書面で申立て等を行うことが可能であり、そのような場合には、裁判所書記官においてこれを電子化した上でファイルに記録することになっていると承知しております。

 そのようなことからしますと、裁判所の側で電子的な書面提出を強制してはならないというのは、まさに御指摘のとおりかなというふうに思っております。

 もっとも、法制審の部会においては、書面での申立て等が可能とされている方にも可能な限り電子申立てを行っていただくことが、当事者も含めた社会全体の利便性向上を図ることができることから望ましいという御指摘があったものと承知しておりまして、そういう意味では、やはり本人サポートは重要であるとも考えられるところでございます。

 裁判所としては、多くの方が任意に電子的な方法による申立てを行ってもらえるよう、簡易かつ分かりやすいシステムを構築しましたり、あるいはその御本人が自ら書面を電子化することができるように、裁判所内にパソコンやスキャナー等のIT機器を設置したりするなど必要な環境整備に努めてまいりたいと考えておりますけれども、弁護士会や司法書士会等の関係機関における本人サポートの検討にも必要な協力をしてまいりたいと考えておるところでございます。

前川委員 門田局長、是非、今の御答弁を新法成立後も守っていただきたいと思います。やはりパソコンとかITについて不慣れな方というのは国民の中にたくさんいらっしゃいますので、何が何でもパソコンを使えとなると、それこそ国民の裁判を受ける権利というのが侵害されると思います。

 私がなぜ、ちょっと耳の痛い話をさせてもらうかもしれませんが、なぜ裁判所がいろいろ当事者に押しつけるかもしれないという危惧を持っているのかについて、資料を配らせていただきました。

 一枚目は、これは私や金子さんの頃の司法研修所の民事訴訟記録の一審手続の解説の別冊の、そこの書証目録の部分です。

 本来、裁判所は、当事者が出した書証について、裁判所の書記官が、例えば標目、契約書だったり催告状だったり書いて、あるいは、いつ出たか、認否も書いて提出することになっていますが、一枚めくっていただいて、今の実務では、裁判所はこういう本来の書証目録を作っていません。当事者が書証を出しても、裁判官は証拠説明書はまだですかと言います。証拠説明書がまだだったら、じゃ、今日は出していないことにしましょうと言って、裁判所に届いているんだけれども受け付けてくれない。証拠説明書を出した段階で初めて書証は提出したことに扱っています。

 何でそんな扱いにしているのかというと、この二枚目の書証目録を見ていただいたらいいんですが、証拠説明書記載のとおりという判こを押すと、一枚目にあるような証拠の標目だとか作成日だとか、そんなのを書かずに済む。書記官にとっては省略化ができる。つまりは、本来書記官が作るべき書証目録を弁護士に作らせているという現実があるのではないのか。

 だから、これからITが、どんどんなってくると、やはり同じような知恵が裁判所の中に湧いてきて、同じようなことが行われるのではないのか、こういう心配をしています。この証拠説明書について、いかがでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 民事訴訟規則百三十七条の一項は、文書を提出して書証の申出をするときには、原則として、当該申出をするときまでに、その文書の写しに加えて、文書の記載から明らかな場合を除き、文書の標目、作成者及び立証趣旨を明らかにした証拠説明書を提出しなければならないと規定しておるところでございます。

 書証の申出がされる場合に、その文書の標目、作成者及び立証趣旨が明らかにされるということは、裁判所及び相手方当事者にとって、書証の内容やその証拠価値の評価若しくは確認又は取調べの必要性の検討等のために有益でありまして、充実した審理運営が可能となるからと、そういう趣旨で設けられたというふうに認識しております。

 書記官の事務を軽減するのが目的ではございません。

前川委員 これで終わります。

 今の答弁は、お立場上、そうお答えになるしかないと思いますが、くれぐれも当事者に、インターネットについて、電子申立てについて、必要以上の指導、勧告をしないように、この点はお願いしたいと思います。

 終わります。

鈴木委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 期間限定訴訟の判決について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 この期間限定裁判の判決は、通常の訴訟と違いまして、請求の趣旨、原因、その他攻撃又は防御の方法は要旨でよいというふうにされております。そして、判決の理由については、当事者双方と確認した判決において判断すべき事項のみを記載すれば足り、そして通常の訴訟より部分的、簡略的な判決にすることができると読めるんですけれども、その点、事実確認させていただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、法定審理期間訴訟手続の判決においては、理由として、当事者双方との間で確認した事項に係る判断の内容を記録することとしています。法定審理期間訴訟手続においては、法定の審理期間中に集中的かつ迅速に訴訟活動をすることを可能とするため、裁判所が判断すべき事項については裁判所と当事者双方との間で確認することとしております。

 判決の理由を記載する判断の対象は、裁判所と当事者双方との間で確認した事項についてということになりますけれども、判決の理由の内容について簡略的な記載を認める趣旨のものではございません。

本村委員 判決において判断すべき事項のみで、やはり部分的、簡略的な判決になるということになるというふうに思います。

 この簡略化された判決に通常の既判力や判例としての価値を認めるのかどうか、この点、大臣にお伺いをしたいと思います。

古川国務大臣 まず、前提として、法定審理期間訴訟手続の判決は、理由の記載の内容を簡略化することを認めるものではございません。

 その上でお答えを申し上げますが、確定判決に既判力が認められるのは、当事者に対し、当該判決に係る訴訟において裁判資料提出の機会が与えられており、その結果として一定の判断が確定したことによるものであるとされます。法定審理期間訴訟手続においてされた判決が確定した場合にもこの趣旨は当てはまりますので、同様に既判力を有することとなりますということでございます。

本村委員 当事者の主張や立証の機会を制限し、粗雑な審理、そして誤判の危険性がある中で、しかも、部分的な、そして簡略化された判決だとこれは言わざるを得ないわけです。それが積み重なっていくことは、将来の国民、住民の皆さんの自由や権利を後退させることにもつながるのではないかと大きな危惧を私は抱いております。

 この大問題の簡略化された判決の提案は一体いつからされたのかという点、簡略化された判決の提案は法制審の部会の中間試案に入っていたのか、いつ、誰の提案で入ったのか、お答えをいただきたいと思います。

金子政府参考人 委員とは、御理解の前提が違うので大変お答えをしづらいのですが、改正法案では、法定審理期間訴訟手続の判決においては、理由として、当事者双方との間で確認した事項に係る判断の内容を記録することとしておりまして、これは判決の理由の内容について簡略的な記載を認める趣旨のものではないということをまず確認させていただきたいと思います。

 その上で、判決の記録事項について中間試案に入っていたかということについては、この新たな訴訟手続における判決に理由として記録すべき事項については提案はされていません。

 新たな訴訟手続における判決の理由として記載すべき事項については、事務当局を務める法務省の担当者から提案され、複数回の調査審議による修正等を経まして、改正法案どおりの内容の規律に至ったものと承知しております。

本村委員 資料も出させていただきましたけれども、資料の一、昨年の十月十五日の法制審部会の第十八回会議の中で部会資料二十六というものが提案をされております。この提案は初めての提案だということで、山本部会長もその法制審の中で発言をしております。

 じゃ、パブリックコメントをちゃんとかけたのかという問題なんですけれども、パブリックコメントをかけたのは、昨年二月の法制審の部会の中間試案がパブリックコメントをかけられたわけですから、この簡略化された判決の提案というのはパブリックコメントはかけられていませんねということも確認をさせていただきたいと思います。

金子政府参考人 繰り返しになりますが、判決の理由の内容について簡略的な記載を認める趣旨のものではございませんけれども、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会の中間試案では、新たな訴訟手続における判決に理由として記載すべき、記録すべき事項についての提案はされておりませんので、当該提案部分についてパブリックコメントの手続が取られたものではないと承知しております。

本村委員 大変重要な判決の部分でパブリックコメントがかけられていない、結局、後出しでこのことが決まっていったということでございます。

 なぜパブリックコメントをかけなかったのか、見解を伺いたいと思います。

金子政府参考人 これも委員の御指摘と前提が違うのですが、判決の理由の内容について簡略的な記載を認める趣旨のものではなく、また中間試案の段階で既に示された案を本質的に変更するような内容の規律ではありません。また、当然に想定される規律で、特段、改めてパブリックコメントの手続を取る必要はないと考えられたものと理解しております。

本村委員 中間試案の内容と全く違いますよ。全く違う内容が、昨年十月十五日、初めて提案をされて、パブリックコメントもかけていない。私はこれは大問題だというふうに思います。国民の皆さんの意見を聞いていない、そういう案が法案化されているというふうに思います。

 この法案の中に、同じようにパブリックコメントをかけていない条文というのはあるんでしょうか。

金子政府参考人 例えば、第百三十二条の十第五項や同条第六項のインターネットによる申立て等がされた電磁的記録の送達に関する規定などは中間試案に含まれていないものと認識しております。

本村委員 その点もパブリックコメントをかけていないということですけれども、判決という本当に重要な部分の提案でパブリックコメントもかけていないという法案の作り方には私は瑕疵があるというふうに思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 中間試案につきましてはパブリックコメントに付されておりまして、法定審理期間訴訟手続の判決についても中間試案を本質的に変更するような内容の規律とはなっておりません。

 したがいまして、この手続の重要な部分についてはパブリックコメントの手続に付されたもの、そのように承知をいたしております。

本村委員 山本部会長も、中間試案と同じだと全然言っていないんですね。初めて具体的な提案をするというふうに言っているわけです、法制審の部会の中で。全く違う提案をしているわけでございます。大臣も、中身を見ていただきたいんですけれども、答弁を読むだけじゃなくて、しっかりと自分の言葉で話していただきたいというふうに思うんです。法制審の中でも、簡略化される判決については反対の声が出されております。

 前回の質問の中でも、法制審の部会の議論が、通常の訴訟で比較的早く判決が出された裁判の客観的なデータ分析も、計画審理の客観的データ分析も、福岡地裁の迅速トラックの客観データ分析も、手のひらに乗せることなく議論がされている、外国の法制度の調査研究もしないで法制審の部会の議論がやられていったということに私は大変大きなショックを受けましたけれども、その上に、この大事な判決の制度設計でもパブリックコメントもかけずに、簡略化した判決でいいと法案を出してきた。裁判を余りに軽視しているのではないかというふうに私は思えるわけです。

 当事者の主張、立証の機会を制限し、粗雑な審理や誤判の危険性がある、しかも部分的、簡略化された判断、これが積み重なっていくことは、将来の国民、住民の皆さんの自由と権利を後退させることにつながるという危惧が私にはありますけれども、大臣にはその危惧はないんでしょうか。

古川国務大臣 法定審理期間訴訟手続は、法制審議会において答申された要綱に基づいてこの改正法案に盛り込まれたものでございます。

 法制審議会におきましては、研究者のほか、弁護士や裁判官といった法律実務家の参加を得て調査審議がされたものでございます。特にこの手続につきましては、これまでにない制度であったこともありまして、部会の委員や幹事からは様々な問題点の指摘がされ、それを解消するために制度の修正を幾度も試みた上で成案に至ったと承知いたしておりまして、十分な議論が尽くされたものと認識をいたしております。

本村委員 パブリックコメントも取らずに作られたということで、法案の作り方にも瑕疵があるということが私は明らかになったというふうに思っております。

 この期間限定裁判の利用、双方の当事者の同意の取り方について、簡略化された判決なんだということも含めて、デメリットも含めて説明をしっかりとされて同意を取られるのかという点も疑問があるわけでございます。

 資料を出させていただきましたけれども、資料の二のところですね、後ろ一枚めくっていただきますと、これは福岡地裁の迅速トラックの要旨なんですけれども、黄色いマーカーをつけておきました点について、期日の進行についてというところで、「特に迅速な進行を希望する」というところがチェックを入れられる欄になっているんですけれども、こういうことで同意ということであれば、それは早く進めてほしいというのが多くの皆さんの思いだと思いますので、チェックを入れてしまうのではないか、安直に、早い方がいいと選んでしまうのではないかということも危惧をするわけでございます。

 公正で充実した裁判、真実の発見、真相の解明を望む当事者にとって、本当は期間限定訴訟は当事者の利益にならないのに、早く終わらせたい、判決を書くことを簡略化したいという裁判官や、あるいは弁護士の方もお忙しいかもしれません、そういう下で当事者の方の不利益はないのか、見解を伺いたいと思います。

古川国務大臣 法定審理期間訴訟手続におきましては、基本的に、専門家である訴訟代理人が法定された審理期間内に必要な主張及び立証をすることができると適切に判断した事件について利用されることが予定されております。

 したがいまして、当事者本人は、法定審理期間訴訟手続を利用するかどうかを検討するに際し、訴訟代理人から法定審理期間訴訟手続を利用することによるメリットやデメリットの説明など、法的なアドバイスを十分に受けることになるものと考えられます。

 また、この手続において審理期間が法定されることにより当事者の訴訟活動が不当に害されないようにするため、類型的にこの手続になじまないと考えられる特定の事件を明示的にその対象から除外しているほか、適正な審理の実現が妨げられると考えられる一定の事情が認められるケースではこの手続を開始しないこととし、また、手続の途中だけでなく判決後であっても、当事者の一方から通常の手続での審理を求めることができることとしております。

 したがいまして、この手続を創設することが当事者に不利益を与えることはないものと考えておりますけれども、いずれにしても、法務省としては、関係機関等と連携をして、この法の趣旨等を適切に周知し、適切な運用が図られるように努めてまいりたいと存じます。

本村委員 資料三を見ていただきたいというふうに思うんですけれども、労働問題の裁判というのは、今、数も増えておりますけれども、長期化する傾向にございます。解雇などされた労働者の不安定な生活の状況を考えれば、やはり一刻も早く解決がなされなければなりません。

 この期間限定訴訟が、先ほども期日がよく入るというような御答弁もありましたけれども、この期間限定訴訟が優先されて、通常訴訟の方がなかなか期日が入らない、長期化する、そういうことが絶対にあってはならない。通常訴訟の方も早く、しっかりと事実認定をして結論を出していただきたいというふうに思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 この手続は、法定された期間内に攻撃防御の方法を提出することとされていることや、審理の終結から一か月以内に判決の言渡しをすることに伴って、裁判官において集中的に当該事件の処理をする必要が生ずる可能性がございます。

 もっとも、この手続では、審理期間が法定されることにより当事者の訴訟活動が計画的なものとなり、必要な主張及び立証も集中的に行われることにつながり、裁判官においても計画的に事件処理に対応することができると考えられます。

 このため、この手続を設けることにより、他の事件の処理が後回しになって通常の訴訟の審理期間が遅くなるといった事態は生じないものと考えております。

本村委員 誤った判断や誤判の危険性、リスクが高まる、そして作り方にも瑕疵があるこの期間限定裁判、撤回するべきだということを強く求め、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 今日は、経産委員会の参考人質疑とかけ持ちになったので、御配慮いただきまして感謝を申し上げたいと思います。

 先般もお尋ねしたんですけれども、今回の法制審の、六か月、一か月の具体的な数字の根拠をまず示していただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法定審理期間訴訟手続は、争点及び証拠の整理を行う期間、証人及び当事者本人の尋問を行う期間、口頭弁論の終結及び判決の言渡しの時期について定めることとして、審理期間に係る一つのモデルを定め、その利用の有無について当事者の判断に委ねるものであります。

 もっとも、終結までの期間が余りに長期であると、当事者において、その訴訟活動等を予測することが難しくなります。そこで、民事訴訟の平均審理期間を踏まえつつ、争点及び証拠の整理を行う期間を五か月、証拠調べの期間を一か月として、審理の終結までの期間を六か月としたものでございます。

 また、この手続では、基本的に当事者双方が明確に争点を確認することとしており、その判断すべき事項も明確となります。そこで、現行法上、判決の言渡しは口頭弁論の終結の日から二か月以内にしなければならないとされているものの、この手続では、それよりも短い期間である一か月としたものでございます。

鈴木(義)委員 では、続きまして、産業界や利用者からの声やニーズが反映されて期間限定訴訟という制度が設定されたのかという点については、過去に私も質問した中で疑問が残るんですけれども、制度をつくったところで、制度が利用される予測をどのぐらい見込んでいるのか、お尋ねしたいと思います。

金子政府参考人 現行法においては、民事訴訟手続の審理期間や判決までの期間に一定の期限を設ける規定はございません。

 この法定審理期間訴訟手続という制度は、現行法にはない新たな手続を設けるものでございますため、その利用件数の見込みについて、現段階において具体的な数値をお示しすることは困難であります。

 もっとも、民事訴訟利用者調査の結果によれば、裁判が始まった時点で、裁判が終わるまでにどのくらいの時間がかかるか事前に予想がついたかの質問に対して、全く予想がつかなかったとの回答が五六・四%でございました。

 法制審議会の部会におきましても、紛争解決までに要する期間の予測可能性が低いことが訴訟による紛争の解決をちゅうちょさせる要因になっているとの意見が出されました。また、先日の参考人質疑でも、別所参考人は、企業法務に携わっておられた立場から、この手続創設に賛成する意見を出されたものと承知しております。

 以上のようなことからしますと、この手続を導入するニーズはあるものと考えられ、現段階で利用件数等を予測することは困難であるものの、一定の利用が見込まれるものと考えております。

鈴木(義)委員 どのぐらいのニーズがあるか分からないって、社会に要請があるから制度をつくるとか、改正するとか、法律をそれに基づいて整理していくという。

 今御答弁いただいたんですけれども、利用されるかどうか分からないという制度をつくるのは、ある意味、無駄じゃないか。過去の質問の中で、六か月以内で終わったとか、一年未満とか、数字がありましたね。その辺について、今のお二人の政府参考人から答弁いただいたんですけれども、それを受けて、無駄なものはやってもしようがないんじゃないのと私は思うんですけれども、大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 現行法には、民事訴訟手続の審理期間や判決までの期間に一定の期限を設ける規定はございません。

 現行法の下で早期に審理を終えている事件も存在すると思われますが、結果的に早期に審理を終えたのはあくまでも個別事件の運用によるものでありまして、制度上、一定の期間に審理を終えるべきことが明確にされているというわけではございません。

 現行の民事訴訟において、紛争解決までに要する期間の予測可能性が低いことが訴訟の利用をちゅうちょさせる要因になっているとの指摘がございます。

 法定審理期間訴訟手続は、当事者双方の意向が合致した場合に行われる手続として、審理期間や判決までに要する期間が法定されることにより、訴訟の早い段階で紛争解決までに要する期間の予測可能性が高まる点に大きな意義があるものと思います。

 また、先ほど見込みについてもお尋ねがありましたけれども、手続を設けるニーズそのものはあると考えておりまして、これによって利用者にとって民事訴訟がより利用しやすくなるものになるというふうに認識をいたしております。

鈴木(義)委員 五年で見直しをするというけれども、今の大臣の御答弁を聞いておりますと、まあ、一年じゃちょっとかったるいかなと思うんですけれども、三年ぐらいでどうするというのをやはり、見直しをするなら、五年まで置かなくて、ニーズがあるかどうかも分からないという話でこれからスタートを切るわけですから、もっと前倒しして判断してもいいんじゃないかと思います。それは御答弁は結構ですから。

 それで、そもそもの話を前にもしたと思うんですけれども、なぜ裁判が長引いてしまうかって、証拠調べをするのに時間を要する。民事訴訟法が過去にも何回か改正されて、平均的な事件の審理が比較的早期に終局できるようになってきたものの、専門的知見を要する事件はいまだに審理に長時間を要しているというふうに言われているんですね。

 こういった記事を目にして、まだこんなことをやっているのと私は思ったんですが、それは、それなりに、専門訴訟を適切かつ迅速に処理するために様々な取組が各裁判所において始められており、ちょっと長いんですけれども、例えば、裁判官有志による専門的知見を利用した民事訴訟の運営の研究を始め、医療過誤事件が多く係属している東京地裁、大阪地裁においても、実態調査がされ、それを前提とした医療過誤事件の運用改善に関する提言等がされているというふうにうたっているんですね。

 それらの中で、ドイツやフランスにおいては、弁護士自身が専門化しているほか、専門家の協力の下に鑑定人候補の名簿が充実していて、専門家の確保に苦労することはないのに対して、日本では、そのような名簿もなく、裁判所には専門家の中で誰が権威であり適任であるかも分からない。しかも、専門家になかなか協力に応じてもらえないという指摘をされているんですね。

 例えば、大学の医学部等に鑑定人の推薦方を依頼しても、適任者がいないとの回答しか得られず、一件の事件で五軒から六軒の大学に照会をしたり、鑑定人の推薦を得るまでに一年以上かかったりしている苦労話は枚挙にいとまがないという話なんです。実際、鑑定人を選任する期間の方が、鑑定人が選任されてから鑑定書が提出されるまでの期間よりも長期を要しているという統計もあるということなんです。

 専門家と率直な意見交換を行うために、裁判官及び書記官を加えて、鑑定人経験者の医師を始め、患者側、病院側の弁護士の参加も得て、医療鑑定に関する協議会が各高裁で実施されたというふうに聞いています。

 そのような中で、医師が鑑定を引き受けたがらないのは、自己の研究に専念することが重要で、鑑定を行うことが自己の業績に反映しないという意識があるのではないかとの指摘や、学会、大学に体制的に協力してもらわない限り、公平中立な鑑定人を選任することができないのではないのかというふうに指摘されているんです。

 今でもこんなことをやっているのかなと正直、素人の私が感じるんですけれども、やはりこういったところも整備していかないと、幾らITを入れるとか、期間限定裁判の形だけをつくったとしても、前に証拠調べという話で大臣から答弁いただいたときに、両方並行して議論していくんですと。同じような答弁をされちゃうかなと思うんですけれども、まずやらなくちゃいけないことがいっぱいあるんじゃないかということなんですよね。だから、弁護士さんなり裁判官の方で専門家をつくっていくという考え方。

 それとあと、制度を運用させるようなものも、やはり、これから知財に対しての裁判がどんどんもし増えていくようなことになれば、経済安保の法律もできました、そうなってきたときに、自分のところを、これは秘匿にしろとか、いや、うちは特許を出したいんだと。じゃ、損害賠償に対して、まだ日本の場合は何千万とか何億ぐらいでしょうけれども、もっと広い、高額な損害賠償を訴えるような話が出てきたときに対応できるかという話です。

 そこのところの、今回改善すべきと考えますが、審理期間の早期、短縮のために、期間限定訴訟を導入するよりも、鑑定人の制度設計や手続、運用を改善すべきでないかと考えるんですけれども、大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 委員の御質問は、専門訴訟への対応について問うておられることだと思います。

 現在、日本弁護士連合会、最高裁判所及び法務省の担当者におきまして、文書提出命令制度ですとか専門委員制度の見直しなどを含めた検討課題を整理しているところでありまして、法務省としては引き続き必要な検討をしてまいりたいと考えております。

 改正法案の法定審理期間訴訟手続は、訴訟の早い段階で紛争解決までに要する期間の予測可能性が高まる点に大きな意義があるものでございます。

 したがいまして、改正法案の法定審理期間訴訟手続は、委員御指摘の課題への対応、御指摘自体、私は大変意義のあるものだと思いますが、しかし、その課題への対応状況がどうであれ、この法定審理期間訴訟手続についてはこれを設けたい。これによって現実のニーズに応えることができることになり、これによって利用者にとって民事訴訟がより利用しやすいものになるというふうに認識をいたしております。

 前回の委員会でも御答弁申し上げましたように、これは並行して進めていきたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 大体、並行して協議していくという話かなと思ったんですが、じゃ、もう一点、お尋ねします。

 国民が裁判所を利用しやすい制度にするための一環として期間限定訴訟によって審理の早期化を目指すものと思われるんですが、国民が裁判所を利用しやすいものにするためには、それよりも司法アクセスの拡充が必要ではないでしょうかという問いかけです。

 司法アクセスの拡充が重要となり、司法アクセスの拡充には物理的な拡充と経済的なアクセスの拡充があるというふうに言っている方がいらっしゃるんですね。一番の問題は、経済的なアクセスですと。

 例えば、弁護士費用の問題で、裁判は手作りであって、自動車を生産するように大量生産できるわけじゃない、ケース・バイ・ケースということですね。時間もかかるから、その分、費用をいただかなければ損害賠償だ何だとできないと思うんですけれども。結局、多くの利用者は、裁判費用を自分で出しているんですよね。ただ、その中に、例えば百万円の損害賠償を提起するのに当たって、弁護士費用が六十万、七十万かかったら、それはやめますよ。だから、経済的に恵まれない人に対して国が裁判を受ける権利を担保しなくちゃいけないんだという話なんです。

 公助が重要なわけですが、日本は法テラスが対応していると聞きます。ただ、残念ながら、現在の日本の訴訟費用は自助に頼っていると言われています。扶助制度はありますが、日本の扶助制度の予算は年間で二百二十億、諸外国と比べると大変少ない状況だと言われているんです。

 更に問題なのは、償還制度。つまり、利息なしの貸付制度になっている点で、他の国では経済的に恵まれない人に対して返還を求める制度とはなっていない、唯一日本だけが償還制度になっていて、この状況が裁判を受ける権利を制約しているんじゃないかというふうに指摘している人がいるんです。

 これらを改善する考えはあるのか、大臣にお尋ねしたいと思います。

古川国務大臣 ただいま委員より、司法アクセスの拡充ということで、特に経済面についての御質問がございました。

 法テラスにおける民事法律扶助業務では、限られた財源を用いてより多くの困難を抱えた方々を支援するために、立替えによる弁護士費用等を援助しているところでございます。

 この弁護士費用等の立替えを給付制にするべきではないかとの点につきましてでございますけれども、本来、当事者が負担すべき弁護士費用等を国民負担とすることが合理的と言えるのかどうかという観点からの慎重な検討が必要になろうと考えています。

 法テラスにおきましては、被援助者の立替金の償還について、その資力、状況に応じて、免除を含めた柔軟かつ適切な運用を行っているものと承知いたしております。

 法務省としては、民事法律扶助制度がより利用しやすくなるよう努めてまいりたいと存じます。

鈴木(義)委員 今はやり始めているという、例えば、自動車保険に入っても、弁護士費用も払いますよというオプションがついている保険があるんですね。だから、経済的に厳しい立場の方が訴訟を起こしたいといっても手元のお金がない、だからお金を借りて裁判をやって、何らかの形でいただければ戻しますよと、それを補完する意味で、やはり弁護士保険みたいなものをきちっともっと広めていくしかないんじゃないかと思うんです。

 これは、大臣にお尋ねしたから分かりましたという話にはならないと思うんですけれども、所管が違うと言われちゃえばそれで終わっちゃうんですけれども、そういった、何かあったときに困るよなというからみんな保険に入るんだと思うんですね。その保険に入るということをもう少し社会にどんどんアピールしていくことが経済的アクセスを阻害しないことにつながっていくんじゃないかと思うんですけれども、最後に御答弁いただければありがたいんですけれども。

古川国務大臣 自助あるいは共助という考え方の下に、考えられる様々な危険に対して保険という制度、そこに加入をするということによってその危険に備えるという考え方は、私は、私たちのこの社会において非常に実用的で意義深い制度であると思っております。

 しかし、今お尋ねになりました、法テラス、法律扶助におきましては、これはあくまでも、弁護士等の費用というものは本来その当人が負担するべきものでありまして、それを免除する、要するに給付制とする場合に、つまるところ国民の負担になるわけでありまして、保険とはまた性質の違うものだろうというふうに思います。このような、委員が御指摘のような給付制というものを、国民の理解が得られるのかどうかということは、やはり慎重に考える必要があるだろうと思います。

鈴木(義)委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。鎌田さゆり君。

鎌田委員 私は、立憲民主党・無所属を代表して、民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論いたします。

 本法律案は、民事裁判を国民がより利用しやすいものとする観点から、民事訴訟手続を全体的にIT化するものとされており、必要性は否定しません。

 しかし、幾つかの懸念事項があり、各委員から質疑を行ってまいりましたが、政府から納得できる御説明をいただくことはできませんでした。

 以下、反対の理由を申し上げます。

 第一に、このIT化を行う法律案に、IT化とはまるで関係のない法定審理期間訴訟手続を盛り込んだことです。

 まず、この手続については、立法事実が見えません。この点に関する政府答弁は、この手続が迅速化に資する面があるということでした。

 しかし、裁判の迅速化を図るのであれば、裁判官の増員や証拠収集手続の拡充によるべきではないかとの意見が委員会の議論でも出されたところです。これらを行うことなく、なぜこの手続の創設だけを行うのか、理解できません。

 また、政府は、海外には同様の制度はなく、調査もしていないと言います。さらに、迅速化の運用上の取組として福岡地裁で行われていた迅速トラックについても、検証は行っていないという答弁がなされています。これでは、この制度を導入してよいかどうか、我々は何をもって判断すればよいのでしょうか。

 次に、この手続は、国民の裁判を受ける権利を侵害する危険性があるという点です。

 憲法上の裁判を受ける権利には、当事者の主張、立証が尽くされることも含まれていると解されますが、この手続の限られた期間内で主張、立証を尽くすことが本当に可能となるのでしょうか。

 政府の答弁では、当事者が合意している場合にのみ認められる制度であり、嫌なら同意しなければよいと言います。確かにそうかもしれませんが、訴えられてパニックになり、正確な判断ができなくなることはあり得ます。

 政府は、この手続は、弁護士等の訴訟代理人がついているような場合のみに認められるので、本人訴訟に適用されることは想定していないと言います。しかし、訴訟代理人がついている場合に限るといったことは法律案には書かれていません。

 さらに、一方の判断でいつでも通常の手続に移行できる制度設計は、審理期間を見通せる制度をつくるはずであった当初の目的と矛盾しています。さらに、民訴法二条関係に関わる相手方当事者の期待を裏切る訴訟追行上の信義則違反に当たるのではないかなど、多くの懸念が払拭されていません。

 第二に、ウェブ会議における不正の防止策については、法案成立後に定める最高裁判所規則で規定することになっているため、現段階では確定的な答弁がなされておらず、不正の防止策が十分でないことが法案審議で明らかになりました。

 第三に、障害者に対する手続上の配慮をする規定が置かれなかったことです。この点に対する政府の答弁は、施行後五年を経過した際、法整備について検討するとしています。施行は、原則、公布後四年以内で、法案どおり五年経過した際の検討となると、どれほど先送りされるのでしょうか。遅きに失します。

 以上の理由から、民事訴訟法等の一部を改正する法律案に反対いたします。

 以上、私の反対討論といたします。(拍手)

鈴木委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 私は、日本共産党を代表し、民事訴訟法改定案に対して反対の討論を行います。

 第一に、期間限定裁判は、訴訟が裁判をするのに熟したときに判決をするという民事裁判の大原則に反します。審理を六か月に限定、口頭弁論終結から一か月以内の判決は、当事者の主張、立証の機会を制限し、粗雑な審理や誤判の危険性が高まります。

 第二に、立法事実がありません。当事者双方が主張、証拠が明らかで、争点が少ない事案であれば、あらかじめ期間を定めなくても迅速な審理は可能です。審理計画、迅速トラックなどの仕組みを再検討するべきです。

 第三に、簡易な判決の蓄積は、将来の国民、住民の自由と権利を後退させます。判決は、判断すべき事項のみ記載すれば足り、部分的、簡略な判決となります。不服がある場合は控訴はできず、同じ裁判所に異議を申立てします。裁判所は既に事件の心証を形成しており、公正かつ適正な判断を期待することが困難になります。

 第四に、当事者間の均衡を害する懸念は払拭できません。消費者契約事件、個別労働関係民事紛争事件は期間限定裁判の申出はできないことになっていますが、製品事故などの不法行為事件や、労働事件でも個別労働関係民事紛争以外の労働組合が関わる事件などは対象になり得ます。

 第五に、民事訴訟のIT化により、裁判所の判断で、ウェブ会議での口頭弁論、証人尋問の希望について、当事者の意見が必ず通る保証がなく、事実上強制できることは、直接主義、口頭主義、公開主義という根本的な訴訟原則に反します。

 裁判は、当事者の家族、事件の支援者、記者らが固唾をのんで見詰める中で行われるからこそ、弁論が裁判官や関係者の心を動かし、正当な解決をとの国民的な世論と運動につながります。虐待、DV、性暴力被害者などの安全を守る特別な配慮が必要なことは当然ですが、ウェブ会議では、国家賠償事件、大企業を相手取った労働事件、公害事件など、多くの訴訟で国民、住民の皆さんの不利益になりかねません。

 訴訟記録をオンライン上に置くことの事実上の強制は、情報漏れのおそれもあります。セキュリティーを含め、信頼性、安定性、利便性の確保されたシステムづくりから開始するべきです。

 憲法三十二条が保障する国民の裁判を受ける権利を侵害する改定案は撤回し、裁判所の職員などの人的体制を拡充することこそ求められます。

 以上申し述べ、反対討論といたします。

鈴木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、民事訴訟法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、山田美樹君外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 本法施行後において、訴訟手続の電子化が速やかに行われ、適切な裁判が実施されるよう環境整備及び事務負担の軽減に努めること。

 二 訴訟手続の電子化を円滑に進めることが利用者の利益になるという観点から、施行後五年を経過した場合における検討に当たっては、改正法の施行状況や施行後の情報通信技術の進展等の社会経済情勢を踏まえつつ、電子情報処理組織による申立て等の利用を拡大・促進するための方策について検討すること。

 三 訴訟代理人に委任しない者が電子情報処理組織による申立て等を容易に利用できるよう、関係機関及び日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会等と連携し、必要に応じて弁護士・司法書士等による支援を受けられる環境整備に努めること。

 四 訴訟手続は国民の権利関係の得喪に深くかかわり、その電子化は重大な事柄であるから、制度の円滑な施行を実現し、その利用を促進するため、関係機関及び日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会等と連携して、制度の周知を十分に図ること。

 五 裁判所の電子情報処理組織を構築するに当たっては、サイバー攻撃などで訴訟記録が流出して訴訟関係者のプライバシー侵害が起こらないよう、適切なセキュリティ水準を確保するとともに、誰でも分かりやすく使いやすいものとするよう努めること。

 六 訴訟記録を電子化するに当たり、事件記録の保存期間を広げるとともに、判決書については、国民が調査や分析しやすいものとなるよう努めること。

 七 ウェブ会議の方法による証人尋問等については、心証形成が法廷で対面して行われるものとは異なる場合もあることを踏まえ、裁判所における相当性の判断が適切に行われるよう法制度の趣旨について周知すること。

 八 口頭弁論等における当事者等のウェブ会議による参加については、当事者や証人へのなりすましを防止すること及び第三者からの不当な影響を排除すること並びにウェブ会議の録音・録画を防止することを確保できるよう努めること。

 九 訴えの提起の手数料の在り方について、本法施行後における裁判手続の事務処理の実態等のほか、訴える側の資力により、適正な訴額の請求を断念せざるを得ない状況があるとの指摘も踏まえつつ、負担の公平の見地から、必要な検討を行うこと。

 十 訴訟手続の電子化を速やかに実現させるため、裁判所の必要な人的態勢の整備及び予算の確保に努めること。

 十一 民事訴訟手続を利用する障害者に対する手続上の配慮の在り方について、本法施行後の制度の運用状況及び障害者の意見も踏まえて、障害者のアクセスの向上に資する法整備の要否も含めて検討し、必要な措置を講じること。

 十二 附則第百二十六条の規定による検討については、改正法の施行状況や施行後の情報通信技術の進展等を踏まえて、適時に行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。古川法務大臣。

古川国務大臣 ただいま可決されました民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次回は、来る二十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十八分散会


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