衆議院

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第11号 令和4年4月22日(金曜日)

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令和四年四月二十二日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 馨祐君

   理事 井出 庸生君 理事 熊田 裕通君

   理事 葉梨 康弘君 理事 山田 美樹君

   理事 鎌田さゆり君 理事 階   猛君

   理事 守島  正君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    尾崎 正直君

      奥野 信亮君    国定 勇人君

      笹川 博義君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    谷川 とむ君

      土田  慎君    中谷 真一君

      中野 英幸君    西田 昭二君

      根本 幸典君    野中  厚君

      古川 直季君    八木 哲也君

      山口  晋君    山田 賢司君

      伊藤 俊輔君    神津たけし君

      鈴木 庸介君    馬場 雄基君

      藤岡 隆雄君    山田 勝彦君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      市村浩一郎君    日下 正喜君

      福重 隆浩君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   議員           鎌田さゆり君

   議員           山田 勝彦君

   議員           米山 隆一君

   法務大臣         古川 禎久君

   法務副大臣        津島  淳君

   法務大臣政務官      加田 裕之君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   最高裁判所事務総局刑事局長            吉崎 佳弥君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  河野  真君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  吉川 徹志君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            林  伴子君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 住友 一仁君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 鎌田 徹郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 森元 良幸君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 原田 義久君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 川窪 俊広君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     齋藤 秀生君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       吉川  崇君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    佐伯 紀男君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  松下 裕子君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    横尾 洋一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 北川 克郎君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    角田  隆君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    星屋 和彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房学習基盤審議官)       茂里  毅君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           榎本健太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    田原 克志君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         江口 純一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石坂  聡君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  尾崎 正直君     古川 直季君

  中野 英幸君     山口  晋君

  野中  厚君     根本 幸典君

  藤岡 隆雄君     馬場 雄基君

  前川 清成君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  根本 幸典君     笹川 博義君

  古川 直季君     土田  慎君

  山口  晋君     中野 英幸君

  馬場 雄基君     神津たけし君

  市村浩一郎君     前川 清成君

同日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     野中  厚君

  土田  慎君     尾崎 正直君

  神津たけし君     藤岡 隆雄君

    ―――――――――――――

四月二十一日

 刑法等の一部を改正する法律案(米山隆一君外二名提出、衆法第三一号)

 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案(内閣提出第五八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案(内閣提出第五八号)

 刑法等の一部を改正する法律案(米山隆一君外二名提出、衆法第三一号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官河野真君、内閣官房内閣審議官吉川徹志君、内閣府男女共同参画局長林伴子君、警察庁長官官房審議官住友一仁君、警察庁長官官房審議官鎌田徹郎君、警察庁長官官房審議官森元良幸君、警察庁長官官房審議官原田義久君、総務省大臣官房審議官川窪俊広君、消防庁審議官齋藤秀生君、法務省大臣官房政策立案総括審議官吉川崇君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長川原隆司君、法務省矯正局長佐伯紀男君、法務省人権擁護局長松下裕子君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、公安調査庁次長横尾洋一君、外務省大臣官房参事官北川克郎君、財務省理財局長角田隆君、国税庁課税部長星屋和彦君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官茂里毅君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君、厚生労働省大臣官房審議官榎本健太郎君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長田原克志君、経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官江口純一君及び国土交通省大臣官房審議官石坂聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長吉崎佳弥君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田所嘉徳君。

田所委員 自由民主党の田所嘉徳でございます。よろしくお願いをいたします。

 ロシアによるウクライナ侵略によって多くの無辜の市民が殺害されている。まさに許されざる暴挙であります。このような武力による現状変更がまかり通るなら、世界は弱肉強食の大変な時代になってしまうわけであって、このような侵略が絶対に成功してはならないというふうに思っております。

 そのような中で、我が国は、人権を守る国家を標榜しておりまして、できるだけの人道支援を行う必要があるというふうに思っております。そのような中で、入管庁がウクライナ避難民の受入れ、支援に尽力されていることは、大きな意義があるというふうに思っております。

 そこで、現在の受入れ状況と、いかなる制度に基づいてウクライナ難民を受け入れているのか、条約上の難民でない者を保護する制度的裏づけが必要であるというふうに思っていますけれども、どのように考えるのか、津島副大臣にお聞きしたいと思います。

津島副大臣 田所嘉徳委員には、前任副大臣ということを超えて、様々、法務行政に関して御助言をいただいておりますこと、まず心より感謝申し上げます。

 そこで、ウクライナ避難民の受入れ、そして制度的な裏づけについてのお尋ねについてお答え申し上げます。

 現在の我が国の対応は、まさにウクライナが瀕する危機的状況を踏まえた緊急措置として、難民条約上の難民に該当するか否かにかかわらず、ウクライナからの避難民の方々について、人道的な観点から幅広くかつ柔軟に受け入れているものでございます。

 難民条約上の難民は、迫害を受けるおそれがある理由が条約上の五つの理由に該当する場合に限られており、内戦や戦争で戦闘に巻き込まれて命を落とすおそれがある者などは必ずしもこれに該当せず、条約上の難民に該当しない場合がございます。

 そこで、法務省では、難民条約上の五つの理由以外の理由により迫害を受けるおそれがある者を補完的保護対象者として認定し、保護する制度の導入を検討しているところでございます。

田所委員 補完的保護対象者という言葉が出ましたが、やはりしっかりとした位置づけがなければ、今まで、難民認定申請が、非常にその割合が低いと批判もされますけれども、そういう中にあって、人道的な配慮で在留特別許可を出している者もたくさんいる、そういう中にあって、そういった人道的に保護するそういう仕組みというものは大変重要だろうというふうに思っておりますので、しっかり進めてもらいたいというふうに思っております。

 次に、不法残留の外国人についてであります。

 過日の報道の発表によって、令和四年一月一日の不法残留者が六万六千人ということになっております。これはコロナ禍の影響で若干これまでからは減少をしておりますけれども、しかし、これから出口戦略やあるいは水際対策の緩和というものが主張されている中で、本格的に海外との交流が再開すれば、また不法残留の外国人が増えることになってしまいます。まさに今、不法残留外国人対策を講じておかなければなりません。

 そこで、どのような者が不法残留者になっているのか、法務当局に伺います。また、不法残留者の摘発に向けてどのように対応しているのかについてもお伺いいたします。

西山政府参考人 令和四年一月一日時点で、御指摘の約六万六千人の不法残留者のうち、約四万三千人が短期滞在の在留資格を有していた者でございます。このように、簡易な手続で容易に入国した後、所在不明となる者が多数存在するため、不法残留者が後を絶たないと考えております。

 入管庁といたしましては、関係機関と連携をいたしまして情報収集、分析に努めて、積極的に摘発を行い、不法残留者の一層の縮減に向けて努力をしております。

田所委員 短期の旅行などで簡単に入国して不法に残留するということは、大きな問題であります。しっかりとした在留管理が必要なのであって、せっかく出入国在留管理庁ということになったわけでありますから、摘発を含めてしっかりとやってもらいたい。逃亡天国になっては困る、治安にも非常に問題があるということだと思いますので、しっかりお願いしたい。

 ところで、摘発をされて、すぐに送還すべき不法残留者についても送還できないという問題があります。その原因の一つに難民認定制度の送還停止効というところがあると思っておりますけれども、これをどう捉えているのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 摘発された外国人のうち、そのほとんどは退去強制令書が発付された後に退去されておりますが、一部、退去強制令書が発付されたにもかかわらず送還を拒む、いわゆる送還忌避者が存在いたします。

 現行入管法では、難民認定手続中は、その申請の理由や回数にかかわらず、法律上一律に送還が停止される、いわゆる送還停止効が存在するため、正当な理由がない者であっても、難民認定申請を繰り返している限り送還されないということとされています。

 入管庁として、委員御指摘のとおり、難民認定申請手続中の送還停止効の規定が送還忌避者を送還することができない理由の一つであると考えております。

田所委員 重大犯罪で有罪の判決を受けた場合であっても、難民認定申請を繰り返しさえすれば送還できないということになるかと思うんですけれども、そのとおりでいいのかどうか、お聞きしたいと思います。

西山政府参考人 御指摘のとおり、現行法におきましては、我が国で重大犯罪を犯し有罪判決を受けた者であっても、難民認定申請をしさえすれば、申請の理由や回数などを問わず送還することができないこととなっております。

田所委員 難民認定申請制度を誤用、濫用できる状態は、大変大きな問題であるというふうに思っております。

 現在、在留資格がないにもかかわらず、難民認定申請を繰り返すことで我が国に在留し続ける者のうちで、申請回数が最多の者は難民認定申請を何回行っているのか、また、不法残留しているのは、最長で何年不法に残留しているのか、お伺いしたいと思います。

西山政府参考人 令和二年十二月末時点で、入管庁が把握しております難民認定申請を繰り返して本邦に残留し続ける者のうち、申請回数が最も多い者の申請回数は六回、退去強制令書が発付されたにもかかわらず退去を拒み、不法に滞在している期間が最長の者の期間は二十一年でございます。

田所委員 大変な長期にわたってこれを繰り返しているということは、私はもう誤用、濫用そのものだというふうに思っております。

 そういう中で、どのような在留資格で入国した者が難民認定申請を行っているのか、その割合についてもお伺いしたいと思います。

西山政府参考人 令和元年に難民認定申請を行った者の主な在留資格の割合でございますが、短期滞在が約六六%、特定活動、出国準備期間、これが約一〇%、留学が約七%でございます。

田所委員 大変な割合が、短期の資格で入って、そして難民認定をするということでございます。

 ちょっとした期間で、数か月しか許可がないのに、その間に切れないで出すというような巧妙なものもあります。まさに、私は、例外を認めないわけではありません、本当に迫害されて、それしか手段がなかった人ということもなくはないだろうと思いますが、それはごく少数であって、非常に私は濫用的であるというふうに思っております。

 難民審査の参与員の意見を聞きますと、入管で見落としている難民を探して何とか認定したいが、ほとんど見つからないと言っておりますし、また、難民認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということだ、こういうことを言っております。しっかりと、この制度が濫用の温床にならないようにしなければならないというふうに思っています。

 ところで、難民認定申請数が平成二十二年から二十九年には急増しました。これは、正規滞在者が難民認定申請をした場合に、申請から六か月経過すれば一律に就労を認める運用にしたことによります。

 七年間で難民認定申請が十六倍になったというけれども、これは真実なのか、また、この後、このような状況を受けて運用の見直しを行ったと聞いておりますけれども、その効果をどのようなものと捉えているのか、お聞きしたいと思います。

西山政府参考人 御指摘のとおり、平成二十二年に、正規在留中に難民認定申請をした者に対し、申請から六月経過後、就労可能な在留資格を付与する取扱いにいたしましたところ、同年には千二百二件であった難民認定申請数が平成二十九年には一万九千六百二十九件に増加し、七年間で十六倍となっております。

 このような増加の原因には、就労を目的とする難民認定申請の誤用、濫用が考えられましたことから、運用の見直しを行い、平成三十年一月から、本来の在留活動を行わなくなった後に申請した者などについては就労などを制限することといたしました。

 この見直しにより、平成三十年には難民認定申請者数が前年よりほぼ半減いたしましたが、我が国での就労を継続する手段としての申請が依然として見受けられ、問題の抜本的な解決にはなお課題があるものと考えております。

田所委員 運用の見直しだけで半減したというのであるから、いかに制度設計が重要かということだろうというふうに思っております。母国に送還されないばかりか、仕事までできるということであれば、これはもう濫用が起きるということだろうというふうに思っております。

 このことは、認定の平均処理期間も累積した負担によって非常に長くなっている、不服申立ても含めますと平均で五十二か月ということ、四年と四か月になりますが、不法残留増加にますますつながっていくということでありますので、しっかりしてもらいたいと思います。

 資料が出ていますので、その推移については、見ていただければ、この棒グラフでも分かるとおりであります。

 次に、収容者の仮放免についてお伺いをいたします。

 送還できないということで結局は長期収容になる、そうすると、仮放免をすべきとの圧力が強くなるわけであります。現に、コロナ禍を考慮してかなりの割合が今仮放免になっているというのが事実であります。

 そして、実務上、身元保証人がついて十分に管理すべきこととなっているわけでありますけれども、実態がどのようになっているのか、説明をしてもらいたいと思います。

西山政府参考人 委員御指摘のように、現行入管法上、仮放免許可に当たり、身元保証人を付すことは義務づけられていないものの、実務上、仮放免の際に身元保証がなされる例が多うございます。

 しかしながら、身元保証人の存在にもかかわらず、仮放免された外国人が逃亡して所在不明となる事案のほか、仮放免中に、殺人、強姦致傷などの重大犯罪を含め、犯罪に及ぶ事案も相当数発生しております。

 このような状態は、少なくとも、現在の仮放免制度では、仮放免をされた者の管理が十分にできていない場合があるという課題の表れであるものと認識しております。

田所委員 非常に、身元保証人がいても逃亡が多いということでありますから、この制度自体も考慮すべきことがたくさんあるというふうに思っております。

 仮放免を認めない、これは問題だという意見もありますけれども、他方で、強姦とか重大犯罪を犯すというようなこともある。本当に仮放免するのにふさわしくない者がいるということであります。そして、その仮放免をした結果、様々な犯罪が増えるということは非常に問題がありますので、ここでもやはり早期の送還が実現するようにするということが、これは大変管理上重要なことだろうというふうに思っておりますので、理解してもらいたいと思っております。

 続いて、私は、入管行政というものは契約責任に基づくものであるというふうに考えております。すなわち、我が国に入国するために約束した当初のルールを守るならば適切に保護を行う、滞在期間の経過とかそういったこと、また、我が国で犯罪を犯すようなことがあれば直ちに帰ってもらうなど、厳格な規律あるいは法制度であるべきだと思っておりますけれども、法務大臣の考えをお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 日本人と外国人がお互いを尊重し合って安全、安心に暮らしていける共生社会を実現するためには、やはり、人権に十分配慮しながらも、ルールにのっとって外国人を受け入れて、そしてルールに違反する者に対しては厳正に対処する、これが私は出入国在留管理の基本原則だろうというふうに思っております。

 ルールに違反する者へは厳正に対応する、そして人権への配慮も忘れない、この二つの要請を、やはり制度として、施策として、相互に連関しておりますから、この両者を、全体として、一体として、適正に制度が機能してこそ、初めて出入国在留管理というものに関する責任を全うできるというふうに考えておるわけです。

 ですから、真に庇護すべき者を確実に保護する制度の整備と同時に、送還忌避、長期収容問題といった現行入管法下の課題、これを一体的に解決する法整備がどうしても必要だというふうに考えているところです。

田所委員 今大臣におまとめをいただきましたけれども、やはり、ある程度の期間、決められて我が国に入国をする、そして、こういった目的、観光あるいは技能実習、特定技能、様々な制度はありますけれども、それを途中から、私は難民になったんだというようなことで、こういった制度を、あるいは濫用し、誤用して、長期に滞在し、そしてそれが不法残留になり、あるいは逃亡も行われるということでは、非常に制度的に問題がありますので、先ほど大臣が言われましたように、総合的にこれを改革をして、そして、しっかりとした、守るべき外国人を守って、そしてそういった不法な者はしっかりと送還をしていく、そういう中で我が国の秩序やあるいは治安というものを守る、そういった出入国在留管理の制度というものを確立していってもらいたいというふうに思っております。

 最後になりますが、所有者不明土地に関連して一つだけお聞きしておきたいと思っております。所有不動産記録証明制度についてであります。

 不動産登記は、かつては紙の帳簿で管理されていましたけれども、電子化の要望で非常にこれからデジタル社会に変わっていくわけであります。そういう中でしっかりと改革をしていく必要があります。

 そして、所有者不明土地の発生の予防ということをしていかなければ、今非常に多くの面積が、九州ぐらいと言われておりますけれども、この所有者不明土地になっている。ますます活用できなくなってくる、公共事業もできない、民間の投資もできないということになってしまいますので、この防止、解消というものに力を入れていかなければならないというふうに思っております。その土地だけではなくて、隣接する土地もしっかりとした境界等を決めなくてはなりませんので、所有者不明土地の問題というものは非常に外延も広いわけでありますから、それをしっかりと行わなくてはならないというふうなことでございます。

 その予防という意味では、相続があった場合に漏れなく全ての不動産について相続人が登記されることが重要であります。それが、登記の義務がありません。昨年の法改正で、新たな所有者不明不動産記録証明制度が令和八年までに開始予定と聞いております。本人や相続人が所有している全ての不動産の情報を一覧的に見ることができるという意味で画期的な制度だと思っておりますが、他方で、場面は限定してありますけれども、所有不動産の名寄せを認めることになりますので、運用は慎重にしなければ、その情報管理というものが大変重要であります。

 その観点から、今回の所有不動産記録証明制度については、個人のプライバシー保護がおろそかにならないように、この制度を利用できる範囲などについてどのような配慮がされているのか、加田法務大臣政務官にお伺いをいたします。

加田大臣政務官 田所委員の質問にお答え申し上げます。

 所有者不明土地の発生を予防する観点から、令和六年四月に相続登記の申請が義務化されます。この実効性を確保するためには、相続が発生した際に登記漏れが生じないよう、相続登記が必要な不動産の把握を容易にする方策を整備することが重要であると考えております。

 そこで、昨年四月の不動産登記改正法により、特定の者が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する所有不動産記録証明制度が新設されており、今後、令和八年四月までに運用が開始される予定でございます。

 この所有不動産記録証明制度では、証明書の交付を請求することができるのを、一つ、不動産の所有権の登記名義人本人と、二つ、相続人その他の一般承継人に限定しており、それ以外の第三者を請求することができない仕組みにするなど、個人のプライバシーの保護や信用の確保に配慮したものとする予定でございます。

 法務省としましては、本制度の運用開始に向け、今後、法務省令等により制度の詳細を定めることとしておりますが、田所先生の御指摘のプライバシーの保護等の観点にも留意しつつ、検討を進めてまいりたいと思います。

田所委員 よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩でございます。

 短い時間でございますので、早速質問に移らせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、犯罪を犯した者、いわゆる前科による特定職業への資格制限についてお伺いをいたします。

 前科とは、法律上に定義はなく、一般的には、過去に確定した有罪判決を受けた事実、経歴を意味すると言われておりますが、この質疑では、便宜上、前科の言葉を使わせていただきます。この前科があると、特定の職業に就く資格が制限されるなど、犯罪で刑に服した人の社会復帰は容易ではありません。

 今月、四月からは、民法上の成人となる十八歳、十九歳でもある方の社会復帰を応援するべく、昨年から法務省の検討グループで議論が始まっていると認識しております。若年者の再犯防止、健全育成の視点で資格制限の緩和を検討することが重要であると思っております。

 四月から施行された改正少年法は、十八歳、十九歳も特定少年として扱い、健全育成の対象としました。しかし、民法上の成年としての社会的責任もあるため、資格制限については成人と同様に制限されることとなっております。

 これに対し、衆参両院の法務委員会は、改正法への附帯決議の中で、十八歳、十九歳の若年者の社会復帰の促進を図るために、前科による資格制限の在り方について、対象業務の性質や実情等を踏まえた検討をするよう政府に求めております。これを受け、法務省内で有識者による検討グループが設置されました。

 そこでお伺いをいたしますが、有識者による検討グループでの今までの議論や現時点で決定している事項などあれば、御答弁をお願いいたします。

吉川(崇)政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法務省では、少年法等の一部を改正する法律の附帯決議などを受けまして、令和三年六月に有識者を構成員とした検討ワーキンググループを設置し、十八歳及び十九歳などの若年者に対する前科による資格制限の在り方について検討を進めております。

 検討ワーキンググループでは、まず、少年院に在院中又は保護観察処分に付された十八歳以上の者と、少年院の法務教官や保護観察官等の指導者に対しまして、資格に関するニーズ調査を実施いたしました。その上で、ニーズの多かった資格を中心に、所管省庁と、ヒアリングや照会などを実施し、各資格の制限の内容や趣旨、目的などを把握しながら議論を進めております。

 資格制限には、一定の前科がある場合に必ず資格を与えないとする必要的制限、資格を与えるか否かを判断者の裁量とする裁量的制限がございまして、またそれぞれ制限の範囲や期間も異なっております。

 これまでの議論を踏まえまして、現在、各所管省庁に対し、例えば、必要的制限としなければならない理由や裁量的制限の資格審査の判断基準などについて、更に突っ込んだ照会を実施しているところでございます。

 今後、その結果や、矯正施設における職業指導、訓練の実情なども踏まえまして、所管省庁に協力いただきながら、検討ワーキンググループでの議論を深めてまいりたいと考えております。

福重委員 ありがとうございました。

 次に、前科による資格制限としては、保健師、助産師、看護師、理学療法士、栄養士、調理師などは、罰金以上の刑に処せられたとき、免許が与えられないことがあります。また、公務員や自衛官は執行猶予期間中は採用されないと承知しております。刑を終えても一定期間は資格制限が続く職業もあります。

 前科による資格制限は、業務の社会的信頼性を守るため行われていると思いますが、一方で、再犯防止の観点からも、しっかりと仕事に就くことも重要な視点であり、資格によっては制限緩和の検討の余地があってもよいのではないかと思います。この二つの相反する視点についての御見解をもう一度お願い申し上げます。

吉川(崇)政府参考人 お答えいたします。

 前科による資格制限は、各資格の業務の性質や実情に応じて、その適正や信頼性の確保など一定の合理的な趣旨、目的をもって法令に規定され、運用されてきたものでございます。

 検討ワーキンググループで実施した所管省庁からのヒアリングにおきましても、例えば、警備員については、他人の生命、身体、財産を守るという業務の適正化を図ること、宅地建物取引士については、国民生活や企業活動の基盤かつ高額な財産である宅地建物を扱う業務の適正化を図ることを目的として資格制限を課している旨の説明がございました。

 一方、罪を犯した者の社会復帰を促進し、再犯を防止するためには、資格の取得を通じて安定した就労を確保することが重要と認識しております。そのため、検討ワーキンググループでは、まずニーズ調査を行って、罪を犯した者の社会復帰の観点から、ニーズの高い資格を把握した上で議論を進めているところでございます。

 委員御指摘のように、個々の制限の趣旨、目的と制限を緩和すべきニーズの双方を踏まえた検討が必要であると考えておりまして、先ほど申し上げました追加の照会結果も踏まえ、例えば、裁量による資格制限について、運用面での改善を所管省庁に働きかけるなど、早期の対応が可能なものからしっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

福重委員 社会復帰するために、職業は重要な視点だと思いますので、是非検討をよろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 我が国の高等学校への進学率は、令和二年度には九八・八%となっております。しかし、少年院入院者の教育程度について、どのくらいまでの教育を受けたのかについて見てみますと、二〇・七%が中学校卒業後に高等学校に進学しておらず、また、四三・六%が高等学校に進学しても中退している現状にあります。

 他方、少年院出院者の一五・五%は、進学を希望しているものの、進学先が決まらないまま少年院を出院しており、令和二年に保護観察を終了した少年について、保護観察中に再非行、再犯により新たな処分を受けた少年の割合を見てみますと、少年院出院者について、学生生徒であった者は一二・七%であったのに対して、中学校卒業後、高等学校に進学しなかった少年や高等学校を中退してしまった少年を含む無職者は四二・九%となっています。

 以上のような現状から、少年院出院者の中には、学習を継続できずに再非行や再犯に至る例があり、これに対応するために、少年院在院中から保護処分終了時まで国として一貫した学習支援を行うことが大変に重要であると思われますが、残念ながら現状はそのような体制になっていないと認識しております。

 そこで、ソーシャル・インパクト・ボンド事業について質問をさせていただきます。

 ソーシャル・インパクト・ボンドを活用した再犯防止対策については、我が党の再犯防止対策強化プロジェクトチームにおいて、満期釈放者対策を始めとした再犯防止対策の充実の強化に関する提言を取りまとめ、令和二年七月に当時の森まさこ法務大臣に申入れを行っております。

 法務省は、昨年、令和三年八月から、ソーシャル・インパクト・ボンドによる非行少年への学習支援事業を実施しております。これは、国が主体となってソーシャル・インパクト・ボンドを活用する初めての事業であり、再犯防止分野においては、地方公共団体を含めて初めての取組ということで、大変に期待をしております。

 まずは、この取組の概要について御説明をお願いいたします。

吉川(崇)政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法務省では、令和三年八月から令和五年度までの三年間を事業期間として、ソーシャル・インパクト・ボンドを活用した非行少年に対する学習支援の事業を開始いたしました。

 本事業は、法務省が民間の受託者に委託して、少年院在院者のうち、高等学校への復学を希望するなど、出院後の継続的な学習に意欲のある者に対しまして、少年院在院中に学習指導計画の策定を行った上で、出院後最長一年間にわたり継続的な学習支援を実施し、事業の成果に応じて委託費を支払うものでございます。

 具体的には、学習教材を提供する事業者と、東京と大阪に所在し、困難を抱える少年に対する支援の実績がある二つの事業者の三者が共同事業体として組成し、本事業を受託しております。また、民間の事業者がそれぞれの強みを生かし、少年院在院中の段階から仮退院後の保護観察段階、さらには保護観察の終了を含め、一貫した支援を行っております。そして、本事業では、受託者である共同事業体が、事業の成果に応じた変動型金利による銀行からの融資や、事業の成果に応じて償還、分配を行うクラウドファンディングなどの方法により民間から資金を調達しております。

福重委員 次に、この学習支援事業の事業期間でございますけれども、令和三年度から五年度の三年間の総額の最大支払い額は七千百二十二万円と伺っておりますが、予算上、学習支援事業の支援の対象者はどのくらいの人数規模になると想定されているのでしょうか。また、事業者に支払われる委託費に連動することとなっている成果について、何を成果指標とし、それをどのようなお考えの下で設定したのか、お伺いをいたします。

吉川(崇)政府参考人 お答えいたします。

 本事業は令和三年度から令和五年度までの三年間を事業期間とし、少年院から仮退院後、東京又は大阪に帰住する者のうち約八十名の少年を対象として、東京と大阪に設置した学習支援拠点において学習指導等を実施することとしております。

 法務省は毎年度、事業の成果を評価し、成果に応じて委託費の支払いを行うこととしており、具体的な指標としてはプロセス指標とアウトカム指標の二つの観点からそれぞれ三つ、合計六つの指標を設定しております。

 このうちプロセス指標は事業の実績を評価するものであって、例えば学習支援の継続率という指標を設定しておりまして、支援計画上の学習支援と実際に行われた学習支援を対比することで計画どおり学習支援が実施されたかを測定し、その割合に応じ支払い額を変動させることとしております。

 また、アウトカム指標は事業の成果を評価するものでございまして、例えば支援対象者の再処分率という指標を設定しておりまして、本事業における支援開始後一年間の再非行、再犯による再処分率が支援を受けていない少年たちと比べてどの程度減少したかを把握し、その割合に応じ支払い額を変動させることとしております。

 このように、本事業では事業の実績と成果の双方において客観的に測定可能な指標を用いるなどして適正に評価できるよう配意してございます。

福重委員 どうもありがとうございました。

 今後の取組についてもお聞きしたいと思っていたんですが、時間の関係上、ちょっと割愛をさせていただきますが、この事業に対しては大変期待をしておりますので、是非推進をよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、サイバー攻撃についてお伺いをいたします。

 インターネットを通じてコンピューターシステムに不正に侵入し、被害を与えるサイバー攻撃がございます。この脅威は年々増大しており、対策を強化する必要があります。

 国は、サイバー攻撃による犯罪を専門に扱う部局を警察庁内に発足させ、そのために必要な人件費やシステム整備費が令和四年度予算案に盛り込まれたことは、公明党の主張を反映したものであり、感謝申し上げます。

 昨年五月には米国最大の石油パイプラインが攻撃を受け、数日間の操業停止に追い込まれました。また、今回のロシアによるウクライナ侵略においてもウクライナの行政機関への大規模なサイバー攻撃が行われたとの報道もありました。日本企業も、大手、中小企業を問わず、また、国内拠点が海外子会社、支店かを問わず、サイバー攻撃を受け、データや情報が流出する被害が出ております。

 今年一月、岸田総理の施政方針演説に対する代表質問において、我が党の石井幹事長は、命を預かる医療施設などに対してはサイバーセキュリティー総点検を実施し、国と都道府県が協力して丁寧に取り組むべきだと主張をいたしました。

 その上で、サイバー攻撃の状況について質問をさせていただきます。

 社会のIT化、デジタル化の進展に伴い、サイバー攻撃の手口も多様化かつ巧妙化しているものと承知しております。最近ではランサムウェアが大変な問題となっておりますが、サイバーセキュリティ戦略に基づく政府の取組についてお伺いをいたします。

吉川(徹)政府参考人 お答え申し上げます。

 サイバー空間の公共空間化が進展することで、様々な恩恵がもたらされる一方で、ランサムウェアを始めとしたサイバー攻撃のリスクが高まっております。特に、近年、国家の関与が疑われる海外からのサイバー攻撃事案も見られるなど、サイバー空間における脅威は急速に深刻化しているものと認識をしております。

 こうしたサイバー攻撃の対策の強化を図り、自由、公正、安全なサイバー空間を確保する観点から、サイバーセキュリティ基本法に基づき、官房長官を本部長とし、関係省庁の大臣を本部員とするサイバーセキュリティ戦略本部を設置し、政府一体となった推進体制を確保しているところでございます。

 また、昨年九月に閣議決定をいたしましたサイバーセキュリティ戦略においては、公的機関が限られたリソースを有効活用しつつその役割を果たせるよう、関係機関の一層の対応能力強化、連携強化を図ることとしているところでございます。

 例えば、ランサムウェアによる攻撃を始めとする現下の情勢を踏まえた対策の強化を図るため、NISCや関係省庁が連携して、政府機関や重要インフラ事業者、産業界に対して、サイバーセキュリティー対策の強化に関する注意喚起を実施しておりまして、直近では三月二十四日に行うなど、政府一体となって取り組んでいるところでございます。

 政府といたしましては、今後も、関係省庁が連携を図りつつ、サイバーセキュリティ戦略を確実に実施し、我が国全体のサイバーセキュリティーの確保に万全を期してまいりたいと考えております。

福重委員 引き続き、そのランサムウェアについて聞きたいんですけれども、コンピューターウイルスを感染させてシステムやデータを使用できない状態にし、その復元と引換えに金銭を要求するものであり、近年、大変な問題となっております。今年三月には、取引先がランサムウェアによるサイバー攻撃を受けた影響により、トヨタ自動車の国内工場がストップする事態も発生いたしました。

 大企業におけるサイバー攻撃対策が十分であったとしても、関係するサプライチェーンの中にはセキュリティー対策の脆弱な企業もあれば、そこを狙われる可能性が十分に考えられます。特に中小企業は、大企業に比べ、サイバー攻撃への対策が不十分であることが多いのではないかと思います。そうした中小企業へのサポートなどの対策を講じているのでしょうか。御答弁をお願いいたします。

江口政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、サイバー攻撃の中には、中小企業等、サプライチェーンの中でセキュリティーが脆弱な部分を狙ったものも多く、中小企業を始めといたしまして、サプライチェーン全体でセキュリティーのレベルを上げるというのが必要になってまいります。特に、大企業と同じような対策を講じることが難しいというような中小企業に対するきめ細やかな対策と支援というのは不可欠であるというふうに考えております。

 このため、経済産業省におきましては、業種別や中小企業向けのガイドラインを策定をする、また、意識啓発、このようなものに努めているほか、自社サーバーの異常監視やサイバー攻撃を受けた際の初動対応の支援、復旧に要する費用の簡易保険など、中小企業に必要な対策をワンパッケージにまとめ安価に提供するサイバーセキュリティお助け隊サービスを導入する企業をIT導入補助金の優先採択の対象とするなど、対策の普及に努めてまいっておるところでございます。

 経済産業省といたしましては、NISCを始めとした関係省庁や産業界と連携をしながら、引き続き、中小企業を含めた我が国産業のサイバーセキュリティーの確保に努めてまいりたいと考えております。

福重委員 御答弁ありがとうございました。

 またちょっと引き続いて質問させていただきたいんですが、昨年開催された東京オリンピック・パラリンピックの期間中、大会運営に関わるシステムやネットワークに相当数の数のサイバー攻撃を受けたとの報道がございました。幸いなことに、日本の高い技術やセキュリティー対策の結果、全ての攻撃をブロックし、大会運営への影響はなかったということでございます。関係者の御努力に心から感謝を申し上げます。

 サイバー攻撃は世界各地から行われたと見られています。そこで、質問させていただきます。

 この東京オリンピック・パラリンピックにおけるサイバー攻撃の状況や対応について、政府はどのように総括をされているのでしょうか。

 また、来年は、主要七か国首脳会議、いわゆるG7、それから、令和七年に開催の大阪・関西万博や、令和九年に横浜で開催される国際園芸博覧会など、我が国では今後も、国際的な会議、イベントの開催が予定されております。規模の大きい国際的な会議、イベントはサイバー攻撃の格好の標的となりやすいと思いますが、東京オリンピック・パラリンピックで得られた教訓や対策のノウハウをどのように生かし、対応されていくのか、政府の御見解をお伺いいたします。

吉川(徹)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、東京大会のように世界から注目を集める国際イベントでは、サイバーセキュリティーの確保が重要との認識の下、官民が連携してサイバーセキュリティー対策に精力的に取り組んでまいりました。

 具体的には、大会準備期間において、政府として、競技会場や大会運営を支える重要サービス事業者等を対象として、想定されるリスクの評価や対応策の検証等を繰り返し行ってきたほか、インシデント発生等に備えた実践的な演習、訓練を積み重ねてまいりました。

 また、東京大会期間中には、脅威情報の共有等を行う中核組織であるサイバーセキュリティ対処調整センターを二十四時間体制で運用して、積極的に関係者間の情報共有を行いました。例えば、大会期間中には、競技のライブ配信を装った不正な動画配信サイトなどが観測をされたものの、官民が連携して的確に対処することなどにより、結果として、大会運営に影響を与えるようなサイバー攻撃は確認をされませんでした。

 今後は、東京大会を通じて得られた知見やノウハウをこれまでよりも広い範囲の事業者等に活用いただくことなどにより、大規模な国際イベントに生かしていくことが極めて大事だと認識しております。

 また、我が国の経験等を諸外国にも共有することで、サイバーセキュリティーの分野での国際貢献にも取り組んでまいる所存でございます。

福重委員 こういったことは世界的脅威でございますので、今、世界貢献へという話もございましたけれども、是非頑張っていただきたいなというふうに思います。

 本当は、この後、障害者の性暴力に関する質問を大臣等にさせていただきたいと思っていたんですが、時間が参りましたので、次の機会にさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 今日もよろしくお願いいたします。立憲・無所属会派の鎌田でございます。

 まず最初に、津島副大臣に、ウクライナ避難民支援についてポーランドをお訪ねになられました、その結果について法務委員会で御報告をいただく機会が私はあってしかるべきだと思っておりますので、ちょっと要約して、お訪ねいただいて帰ってきた御感想を含めて、これからの課題などをお願いいたします。

津島副大臣 鎌田さゆり委員にポーランド出張の報告の機会をいただきまして、感謝申し上げます。ありがとうございます。

 委員御指摘のポーランド出張でございますが、四月一日から五日の日程でポーランドに行ってまいりました。ポーランドに行った理由というのは、ウクライナ避難民を率先して受け入れ、積極的に支援を行っている国であるからであります。

 ポーランドでは、政府要人との意見交換、ワルシャワにある避難民施設やウクライナとの国境地帯の視察、現地で活動をする国際機関やNGOとの面談を行ったところであります。

 また、多くの避難民の方々や避難民の支援に従事されている方々と直接お会いをし、避難民の方々の置かれた困難な状況や、支援に当たっての具体的課題等について、現場の生の声を聞くことができたと思っております。

 特に、ポーランドの国境検問所で、寒さの中、本当に寒いときでありました。当時の気温が一度、日中でも最高気温一度、二度というような状況で、恐らく開戦当初はもっと寒かっただろうという想像もできます。そういった中、徒歩で避難してくる方々に対して、ボランティアによる温かい食事の提供や健康相談を行っていたこと、また、ワルシャワの避難民施設で、食事や衣服のみならず、医療カウンセリング及び子供の遊び場を提供していたことなど、避難民の方々がほっとする、温かい支援が行われていたことが強く印象に残ってございます。

 現在、出入国在留管理庁においては、こうしたポーランド出張で得た知見を踏まえ、我が国が受け入れたウクライナ避難民の支援について取り組んでいるところでございます。

鎌田委員 お疲れさまでした。ありがとうございました。

 是非、現地に行かれて具体的に収集してきた情報を基に、ウクライナから避難されている方々を日本としてサポートしていっていただきたい。

 私、忘れもしないんですけれども、この委員会で鈴木庸介委員が、ウクライナでロシアの侵攻が始まったそのすぐあたりのこの委員会で、これは日本としてどうなんだという質疑をした際に、古川法務大臣から、これは積極的に、人道支援の観点から、受入れなどを始めとして支援をしていくと。あのとき、大臣の、私は御英断の御答弁というふうに拝聴しました。それが何か救いのようにも聞こえましたし、だから、是非、今の津島副大臣のレポートを含めて、積極的に行っていただきたいと思います。

 ちょっと、大臣、一言よろしいですか。ポーランド、行けなかったんですけれども、改めて。

古川国務大臣 本当に、この未曽有の人道危機に対して、これは決して人ごとではないという、これはもう共通した思いだと思います。政府全体として迅速な受入れ、そして支援というものを決定したわけでありまして、その政府全体の取組の一環として、外務大臣そして津島法務副大臣がポーランドに行き、つぶさに事情を見、帰ってまいったわけであります。

 また、法務副大臣は、先週の土曜日にも、ウクライナから日本へ避難してこられた方々の一時滞在施設に足を運びまして、日本においてもまた同様に、避難民の方々からの生のお声をお聞きして、そしてニーズの把握ということを継続してやっております。

 このように、大きな事業、取組を始めたわけですけれども、今後更に、事態は続くわけですので、常にきめ細かな対応を心がけて、しっかりとした支援を行うように、引き続き頑張ってまいりたいと思っております。

鎌田委員 ありがとうございました。

 林外務大臣と津島副大臣が政府専用機とそれから予備機でポーランドに行かれた際に、実際、そのとき、日本から支援物資を積んでいく予定だったと聞いております。ただ、調整がうまくいかなくて支援物資を積んでいけなかったということが今ちまたで言われておりますけれども、そこのところの事実関係というのはどうなのでしょうか。

 実際に、今国内に二万トン以上、支援物資を送るばっかりになっているものがたまっている状態。先日、政府専用機で積んでいけなかったというその背景にあるものは何か、外交的な問題があったのかどうか、御承知のところを、ございましたら教えていただきたいんですが。

古川国務大臣 直前までは、いろいろな、直接私も、どのようなことで行くかということに、ずっと見ておりましたから。まあ正直なところ、大変調整に、いろいろなことがあって、何事にもいろいろな、例えば法律上どうだとか、現実問題どうだとか、いろいろな様々な要請があって、その調整に大変、いろいろな課題に取り組んでおったということは記憶しておりますけれども、津島副大臣においてはそれをつぶさに見ていたわけではないので、なかなか津島副大臣からお答えすることは難しいと思います。

 ただ、そういうことで、様々な調整があったということでございます。

鎌田委員 済みません、同じ質問を、今日、政府参考人として外務省から北川大臣官房参事官がいらっしゃっていると思いますので、当時の背景、いきさつ、外務省として御答弁いただけることはありますか。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の御質問が、林外務大臣、津島法務副大臣、ほかの方々が現地にいらっしゃるときに、政府専用機に救援物資を積んだか、積むための調整をしたかということでしょうか。という御質問であれば、今、古川法務大臣がお答えなされたように、様々な調整等はございますけれども、実際には積んで運んでいないということであろうかと思います。

 以上です。

鎌田委員 積みたかった、運んでいきたかったけれども、積んでいけなかったというふうに世間では伝わっているわけですね。それが事実関係としてあったのかどうか、もしそれが事実ならば、その事実関係、なぜそういうことが起きたのでしょうかとお聞きしたいんです。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 今私が申し上げましたのは、現地に林大臣、津島副大臣ほかが参るに当たってはいろいろな調整はございましたけれども、今委員御質問の、支援物資を積むかどうかについての調整は事前にはございませんでした。

 したがいまして、報道等は承知しておりますけれども、そのような事実関係はございません。

鎌田委員 ありがとうございました。

 朝から夜までの様々な民放、報道等で、支援物資を実はあのときに政府専用機に積んでいく予定だったけれども、できなかったという報道がなされておりますが、今、北川参事官からの御答弁で、そういう予定は当初からなかったと。じゃ、今般、今ちまたで伝わっているのは誤報だということで私は受け止めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 これも、済みません、また報道ベースなんですけれども、日本全国から、先ほども申し上げました、二万トンを超える支援物資が今集まっていて、それを自衛隊機で輸送する、インド経由で、それが閣議決定されたんだけれども、それを見送りすることになったやに聞いておりますが、この事実はございますでしょうか。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 PKO法に基づいて自衛隊機でどのような支援を行うかにつきましては、外務省のみではなく、PKO事務局を含め政府全体で調整してまいっているところでございますが、インド政府を始め各国との事前の外交調整については、外交的なやり取りに関わることですので、お答えを差し控えさせていただきます。

鎌田委員 外交的なやり取りだから答弁を差し控えたいということなんですけれども、一回は閣議決定しているんですよね。自衛隊機で輸送するということを閣議決定したけれども、インドとの調整、外交的な調整、何かあったのかは分かりません、私には。だけれども、その閣議決定を見送ることになったと伝わっているんです。

 じゃ、閣議決定自体がなかったということでよろしいんですか。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 私、担当部局ではないので正確には承知していない部分もございますけれども、まだそのような決定はなされていないのかと承知しております。

鎌田委員 古川大臣、これは閣議決定はされていませんか。

古川国務大臣 済みません、その閣議決定されたとする内容を再度御確認したいと思うんですけれども、もう一度おっしゃっていただけないでしょうか。

鎌田委員 今、日本全国から二万トンを超える支援物資が、皆様いろいろお寄せになられて、集まっている、それを自衛隊機で輸送するということを閣議決定をしたけれども、インドとの調整、やり取り、何かしらあったのか分からないのですが、それを見送ることになったというふうに世間では伝わっています。

 それで、閣議決定があったかどうかの事実と、閣議決定されたのであれば、それを見送った事実関係、何で見送ったのか、いろいろ分からないことがございますので、確認させていただきたいんです。

古川国務大臣 ちょっと突然の御質問で、私も正確なことをここで申し上げられるかどうか自信がありませんけれども、私の記憶するところでは、そういう趣旨の、内容の閣議決定はなかったものと承知をいたしております。

鎌田委員 ありがとうございました。

 私がお尋ねをしたのは、いろいろな事実関係を知りたくて、事実関係を確認をして、そしてまた、政府において、どこが司令塔になって、どこが情報収集して、オペレーションをどこがどう組んでいるのかということを知りたかったんですね。

 そのオペレーションがよりよく機能していないと、私たちの気持ちや心、情熱でもってウクライナの方々に支援の手を差し伸べたいと思っても、やはり今度は物理的なところでオペレーションがきちっと機能しないといけないと思ったものですから、いろいろ伝わっていることが、私、これは個人的な感想ですけれども、古川法務大臣の本当に最初の頃に述べていらっしゃった、あの意思にきちんと沿って動いていっているだろうかと。なかなか、情報が散らばって届いてきて、その事実関係も分からない。国民から選ばれて国会に来ている我々も分からない。それではやはりよろしくないんじゃないかなと思ったんですね。

 改めてお伺いしますが、このウクライナからの避難民の方々を受け入れる、支援の手を差し伸べるに当たっての司令塔機能、政府内にあると思うんですけれども、その司令塔のトップはどこで、それを補佐するところがどこでとか、そういうオペレーションを回すための組織機構図というか体制、それはどうなっているんでしょうか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 官房長官をヘッドとしまして、政府に、ウクライナ避難民対策連絡調整会議というものが設置されております。そして、その下に、具体的な作業をする上でタスクフォースを設置しておりまして、そこで様々な具体的なことについても検討し、そして実行しということでございます。

鎌田委員 分かりました。ありがとうございます。

 また改めて個別に伺いたいと思いますが、先般、津島副大臣が林外務大臣と一緒に行かれたときに、帰ってくるとき、予備機の方に二十名の方を、ウクライナから避難される方をお乗せになって帰国されていらっしゃいますが、この二十名の選択といいますか、二十名に決めた過程、決定過程ですね、それはどうやって行われたのか。これは、西山さんですか、それを伺いたいと思います。

西山政府参考人 お尋ねの件につきましては、在ポーランド大使館や在ウクライナ大使館に対して日本への渡航を相談してきたウクライナ避難民の方々のうち、現地に設置されましたウクライナ避難民支援チームが聞き取りを行った方で、その中で、日本への避難を切に希望しているものの自力で渡航手段を確保することが困難な方々について、関係省庁で決定したものでございます。

鎌田委員 その際の予備機は、本来は何名搭乗できる機体だったんでしょうか。

西山政府参考人 申し訳ございません。承知しておりません。

鎌田委員 私も報道等でこれも知る限りですけれども、一桁違う数字の方を受け入れられるくらいの予備機の大きさであったんだろうと。二十名と聞いたときに、恐らく、圧倒的な日本国民の多くの方が、二十名だけなのと思ったと思うんです。

 今はもうアプリでいろいろな便利なものがありまして、私もスマホで、現地のキーウにいられる方と、自分の宮城県の温泉旅館でこの一月から働く予定だったウクライナ人の女性の方々、七名の方々と、翻訳機能がついているので、会話しているんですけれども、今、切に避難を希望していて自力で帰れないという方々は大変な数がいらっしゃると思うんですよね。その二十名だった数について、どのような周知をしたのか。

 今、支援チームがあって聞き取りをしてということの御答弁だったんですけれども、これはもちろん、日本政府が無償で提供して帰られたという方々だと思うんです。だから、そこの方々と、自力で帰られるとしても、いわゆる自腹で帰ってくる、ああ、帰るじゃない、自腹で入国する方と公平性がどう保てるのかということと、その二十名という数字が、何でこれは二十名だけなのという疑問については政府として明確にお答えをいただきたいなと思うんですよね。一桁違うんじゃないかと。

 いや、現地で聞き取りやら何やらする時間がどうしても間に合わなくて二十名だったんです、実際、本当は、もっとちゃんと時間があって調べたら、この十倍いらっしゃる、あるいは百倍いらっしゃるかもしれませんというんだったら別なんですけれども、その二十名になった経緯のところの説明が、私は丁寧さに欠けるんでないかなと思うんですよ。もう一回聞いてよろしいですか。

西山政府参考人 ただいま申し上げましたとおり、二十名の避難民の方々というのは、現地での調整の結果、先ほど申し上げたように、渡航を切に希望しているものの、現在、自力で渡航手段を確保することが困難な方々として、結果としては二十名になったということでございまして、これ以上の詳細につきましては、避難民の方々のプライバシー等の関係もございますので、お答えを差し控えたいと存じます。

鎌田委員 大臣、伺います。

 これから先も避難民の方々へ支援をしていく、人道的な支援をしていくという御答弁、ずっと続いております。私は、今回、予備機で二十名の方が日本にいらっしゃってというその数字にがっかりした一人です。これから先は、是非、こうなりましたという説明のときに、なぜそうなったのかということと、それから、やはり、徹底して支援をしていく、手を差し伸べていくんだということに基づいて、我々が、できれば、ああ、よくやった、お疲れさま、これからも応援していきますと、これは与野党を超えて、そういうふうな支援というものをやっていただきたいと思うんです。大臣、いかがですか、そのところ。

古川国務大臣 ありがとうございます。

 国民の皆様も、やはり、このウクライナの惨状を報道等で御覧になるにつけて、そこから避難を余儀なくされている方々に対する、共感というか同情といいますか、おおむね国民の皆さんもそういう形で受け止めていただいているなと。そして、政府が今取り組もうとしているこのことに対しても、頑張れというような御趣旨でのお声もいっぱいいただいておりますし、大変ありがたいことだと思います。また、今委員からも、そのような形で一緒にやっていこうという御趣旨でおっしゃっていただいて、ありがたいと思っています。

 ただ、一つだけ、私、これは心に留めておかなきゃいけないなと思いますのは、やはり避難民の方々、それぞれいろいろな事情もおありだろうし、いろいろなそれぞれ課題を抱えておられる、それぞれだと思います。ですから、是非、プライバシーということについては、やはりそこは一つ心に留めながら、この受入れとか支援というものについて取り組んでいかなきゃいけないなということ、これはいつも胸に置いておることでございます。

鎌田委員 分かりました。また次の機会にします。

 残りの時間は、次のテーマに移らせていただきます。

 通告しておりますのは、芸能従事者の人権問題について通告をさせていただいております。

 最初に、一昨年、木村花さんが自ら命を絶たれました。その事案について、その事案の背景にあるところはどのように捉えていらっしゃるでしょうか。

松下政府参考人 木村花さんが苛烈な誹謗中傷を受けられ、お亡くなりになられたことは、そのお気持ちを思いますと誠に痛ましく、心から御冥福をお祈りしたいと考えております。

 SNS上の誹謗中傷の書き込みというものは、同様の書き込みを次々に誘発して取り返しのつかない重大な事態を引き起こしかねないものでございまして、このような人権侵害は決してあってはならないことだというふうに考えております。

鎌田委員 ただいま御答弁ございました、SNS、インターネット等での誹謗中傷を特筆していらっしゃる、特にそこを感じていらっしゃるというふうに受け止めたんですけれども、私は実は違うんですよね。もちろんそれも一部にあります。インターネット上で彼女がどれだけ追い詰められたか、それは一部あります。

 ただ、私がちゃんと同時に見なきゃいけない背景は、彼女が番組制作会社と、テレビ局と、どのような合意書、誓約書を交わしたかということなんです。

 一方的に、上下関係の力、利害関係で、その同意書と誓約書にサインをした彼女は、何も逆らえない、何も言えない、そのような、契約書とは呼べない同意書、誓約書、そういうものをサインさせられて、もしネット上で何かトラブルが起きても全部自分で処理すること、それから、制作会社には一切文句を言うな、そして、万が一、自分はこの番組を降りたいということがあったら、その番組の制作に関わる費用を全部出すようにということを、あらかじめ誓約書、同意書でサインさせられるわけですよ。

 そうすると、もう、テレビでつくられるイメージでもってインターネットで彼女への誹謗中傷が始まっていきますから、ある意味、書き込みした人も、テレビ局や制作会社の意図に乗せられてしまっているんですね。

 だから、背景は、SNS、インターネット上の誹謗中傷の書き込みだけじゃなく、今、特に若い人たちの、芸能従事者の雇用契約、労働契約等々、どういう環境でその身を置いて働いているかという、その人権がどれだけ守られているかということが私は大事な観点ではないかなと思うんですね。

 そこで、続けて行きますが、今年の四月一日から、十八歳から十九歳も成年ということで、民法の五条に規定がされております未成年者の取消権、これが適用されなくなりますよね。

 我が党の塩村参議院議員が参議院の予算委員会で質問していると思いますけれども、民法の五条をやはり変えないと、十八歳、十九歳の、もう成年扱いになる、アダルトビデオに出演をさせられる女性というものは、この取消権は使えないということでよろしいんですか。

松下政府参考人 まず、個別の事案の契約内容等についてはここで私が述べる立場ではございませんし、個別の話はちょっと控えさせていただきまして、一般論といたしましては、民法も、申し訳ございません、私、ちょっと所管ではないんですけれども、十八歳、十九歳が成年となったことに伴いまして未成年者取消権というその条文が使えないというのは、御指摘のとおりだと思います。

 しかしながら、ほかにも様々、契約者の保護の条文等ございますので、そういったものを活用して保護を図るということはできると考えておりまして、私どもも、人権相談でそういった御相談をいただいたときにはそういった形で対応してまいりたいというふうに考えております。

鎌田委員 私の時間が迫ってきましたので、大臣に伺いたいです。

 これは、新宿駅とか都内の渋谷駅とかに三十分から一時間ぐらい立つと、その現場をすぐあからさまに見ること、確認することができます。今、女子中高生が、アダルトビデオのターゲットになってスカウトされるんです。古川大臣、予算委員会でもお尋ねがありましたから御存じだと思いますが。

 十八歳からもう成年扱いになって、今、契約した後に守られる、保護される仕組みがあるからそれで取り消すことも可能だというお話があったんですけれども、最初に、木村花さんの同意書、誓約書のときと同じように、無防備状態で、保護者の同意なくサインさせられて、そして説明とは違うアダルトビデオに出演させられて、その後、契約を取り消したいと言っても、そんなことをするんだったら、言葉をはばかるような言葉で脅されて、その後、裁判で訴えようと思っても泣き寝入りするしかないというのが今実際なんです。

 ですので、大臣におかれましては、民法の第五条に規定されている、十八歳、十九歳、もう成年扱いになりましたけれども、ここのところの取消権、これが該当されるようなことを、今後、省内で御検討されるように御指示いただけないでしょうか。そのことをお願いして、質問を終わります。

古川国務大臣 委員御指摘の御懸念の問題については、これまでも、例えば政府として、教育や啓発というようなことで力を入れてやっていこうということで取り組んでまいったところでございます。

 今、各党内において議員立法を目指したいろいろな動き、考えがあるというふうに仄聞をいたしておりますけれども、法務省としては、そのような御議論の状況を見守ってまいりたいというふうに思っております。

鎌田委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、立憲・無所属会派を代表して質問いたします。

 昨日の本会議に上程された政府提出の刑法の一部を改正する法案、私からは侮辱罪厳罰化法案と呼ばせていただきますけれども、これについて御質問させていただきます。

 こちら、政府からの私に対するレクでもあったんですけれども、そもそものところでちょっと確認させていただきたいんですが、侮辱罪を厳罰化する、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金を追加したのは、これは、SNS、インターネット上の誹謗中傷に対処するため、立法事実はSNS、インターネット上の誹謗中傷だということでよろしいでしょうか。確認をお願いします。

古川国務大臣 最近、SNSなどのインターネット上において、誹謗中傷を内容とする書き込みを行う事案が少なからず見受けられ、大きな社会問題となっております。

 それらの書き込みは、不特定又は多数人が認識できる状態で、すなわち公然と行われると、先行する書き込みを見た者が更に書き込みをするなどして過激な書き込みが次々に誘発されていき、多数の者からの誹謗中傷の内容がエスカレートして、非常に先鋭化することがございます。

 インターネット上の誹謗中傷はこのような特徴を有することから、他人の名誉を侵害する程度が特に大きく、社会問題化しているということでございます。

 そして、このように、インターネット上の誹謗中傷が特に社会問題化していることを契機として、インターネット以外のものも含めて、誹謗中傷全般に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識が高まっております。

 こうしたことから、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するため、その法定刑を引き上げることが必要であることから、今回の法律案を提出したところでございます。

米山委員 要するに、インターネット上の誹謗中傷に対応するために法定刑を引き上げた、侮辱罪の法定刑を引き上げたということかと思います。

 お手元の資料を御覧ください。

 これは、政府から発表された資料を国会図書館がまとめたものなんですけれども、まず、インターネット上の人権侵犯事件の新規救済に対して、これは要するに、人権救済として法務省に助けてくださいと申出が出たもの、これは大体、年間千五、六百から二千ぐらいあります。お配りした資料の表二のところです。うち、名誉毀損は大体五百ぐらい。

 この残りの千二百ぐらい、これは一体どういう事案でしょうか。

    〔委員長退席、山田(美)委員長代理着席〕

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 私、犯罪として処罰された事案あるいは捜査の対象となった事案は承知しておりますが、いわゆる捜査機関でない、人権擁護機関で対応されました事案については所管外で、済みません、詳細を承知しておりません。失礼いたします。

米山委員 分からないなら分からないでいいんですけれども、きっと詳細な統計もないのかもしれないんですが。でも、これは、わざわざ救済してくれと言っていて、しかし、名誉毀損でない。恐らく侮辱とか、若しくは侮辱に当たらないような誹謗中傷なんでしょうね。だから、侮辱であったり誹謗中傷であったりというのが千二百ぐらいあったりするわけなんですよ。

 その次の表三を見てください。そのうち、侮辱罪で処罰されているのは毎年三十名ほどです。私、昨日の本会議で六十と言い間違えましたが、三十ですね、三十ほどです。表二の上の方というのは、これは法務省にわざわざ申し立てているわけですから、御本人だって処罰感情はあるわけなんです。何とかしてほしい、どうにかしてくれと法務省まで行っている。相談された法務省の人だって、それは警察に言ったらどうですかというようなこともあるんだと思うんですよね。そもそも言わないのはおかしいと思うんです、もしそうであったら。

 にもかかわらず、要するに、千六百件もの相談が、申立てがちゃんとあるにもかかわらず、なぜ侮辱罪で処罰されているのは三十名だけなんでしょうか。御回答をお願いいたします。

川原政府参考人 お答えいたします。

 委員の御質問は、人権侵害ということで申立てがあったものと、それから、犯罪としての侮辱罪の処罰の比較をされておりまして、私どもからしますと、ちょっとその関係が必ずしも、先ほどもちょっと申し上げましたが、人権侵犯事犯のところの詳細が分からないということが一つでございます。

 ただ、あくまで今一般論として申し上げれば、検察当局におきましては、侮辱罪に関わる事件を含む各種事件の処理に当たっては、これまでも、個々の事案に応じて、法と証拠に基づいて適切に対処したものと承知しておりますので、特に侮辱罪については、先生も御案内のとおり、親告罪、いわばその被害者の告訴をもって初めて訴追できる罪でございますので、そういった告訴を元に捜査を行った結果、処罰すべき事案を起訴して、処罰されたものという関係でございます。

米山委員 まあ、そうなんでしょうね。もちろん親告罪ではあるんですけれども、人権救済まで申し立てているわけですから、それはもう御本人、これはちゃんと処罰されますよと言われていれば、大体それは申告するんですよ、恐らく。千六百もいるんですからね、全員じゃないでしょうけれども、百や二百や三百は、それはいるんです。

 ところが、私も弁護士ですから、そういう御相談を受けるんですけれども、警察は動いてくれないよと言われるんです。このぐらいの侮辱は、従前、侮辱罪として処罰される対象ではない。正直、米山君、老けているね、そのぐらいのものは侮辱罪として処罰されないから、警察に言ったって駄目ですよ、そう言われます。私もクライアントにはそう言います。だから、三十しか、これは処罰されていないわけです。私、それが悪いと言っているんじゃありません。それは一つの見識であろうと。それはやはり、何から何まで侮辱というのを処罰したら、それは、日常生活はできないですからね。米山、老けているぐらいのことは言われますから。

 それで、私の質問ですけれども、さらに、この三十の中で、こちらはもう犯罪として成っているわけですから、所管だと思うので、この中で、インターネットに関わる侮辱で処罰された人の数、そしてまた、それぞれの人の正確な法定刑、それが一体、例えば、科料九千円が何人とかですね、この三十人のうち。その法定刑と、あとは、この処罰された人の実例一例、これはちゃんと通告しているので出せると思うんですけれども、実例一例をお示ししてください。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 今の御質問、済みません、確認をさせていただきますと、前段で、委員が、大体年間約三十人ぐらい処罰されているだろうというところの、その処罰の、何というか、具体的な内訳の話と……(米山委員「インターネットです。そのうちのインターネットを教えてください」と呼ぶ)ああ、なるほど。それから、具体例の話でございますね。(米山委員「具体例と、あとは、科料というのが一体幾らだったかということですね。拘留はいないわけですから」と呼ぶ)はい。

 まず、委員が先ほど来御指摘されている、年間三十名程度処罰されているんだということの全体の、その科料の金額の内訳は、まず申し上げさせていただきますと、平成二十八年から令和三年までの間、これはインターネットに限らず、態様はインターネットか否かにかかわらず、侮辱罪に当たる行為として、侮辱罪のみによって第一審の判決又は略式命令のあった者というのは、合計百六十一名でございまして、この内訳、刑の内訳を申し上げますと、科料九千九百円に処せられた者は四十四人、科料九千円に処せられた者は百十三人、科料五千円に処せられた者は二人、科料四千五百円に処せられた者は二人でございます。

 ただ、これは今、最初に申し上げましたように、態様はインターネットか否かにかかわらずということでございまして、お尋ねは、じゃ、そのうちインターネットを利用した者は何人かということでございますが、大変申し訳ございませんが、犯行の態様という形での統計は取りまとめておりませんので、それについてお答えすることは困難であることを御理解賜りたいと思います。

 それから、実例でございます。

 これは、近時、侮辱罪によって処罰された事例を申し上げますと、例えば被害者のツイッターアカウントにおいて、てか死ねや、くそが、あるいは、きもいなどと投稿した事案などがあるものと承知をしております。

米山委員 てか死ねや、きもいが侮辱になるかどうか分からないんですけれども、それはそれとして、これは法務大臣に御質問したいんですが、昨日の本会議でも御答弁いただいたんですけれども、この処罰範囲は変わらないということでよろしいんですね、もう二回も三回も御答弁されているので。千六百ぐらいある中で、年間三十ぐらいしか処罰していない。私の認識としては、極めて強い、非常に強い侮辱しか処罰されないというのが今までの運用だと思うんですけれども、それの処罰範囲は変わらないんだということでよろしいですか。

古川国務大臣 今般の法整備におきましては、侮辱罪の法定刑を引き上げるものの、構成要件を変更しておりませんので、処罰対象となる行為の範囲は変わりません。

米山委員 そうしますと、相変わらず、千二百ぐらいの人は、相談だけして、いや、全く処罰できません、済みませんね、ごめんなさいと言われることになるんですけれども、これで何でインターネット上の誹謗中傷対策と言えるんでしょうか。御所見を伺います。

川原政府参考人 お答えいたします。

 大変申し訳ありません。委員の御質問の前提が、どうしても人権擁護機関への相談、申告を前提にしていますので、それが必ずしも、何といいますか、現在の構成要件に当たる行為であったのか、あるいは刑罰として処罰すべき行為であったのかというところがつまびらかでないために、必ずしも今の御質問にお答えすることができないところでありますが、私どもといたしましては、インターネット上の誹謗中傷行為、これは、大変痛ましいことでありますが、お亡くなりになった方もいらっしゃる、そういった事案を踏まえたときに、先ほども侮辱罪の例を申し上げましたけれども、現行の侮辱罪、インターネット上の誹謗中傷行為は、多くの場合は、基本的にはSNSなどですと、公然とということで、構成要件的には問題となった事案は対処できているという前提で、ただ、余りにも法定刑が低いために、抑止という意味で十分でないということで法定刑の引上げという政策を選択したものでございます。

米山委員 もちろん、本当にインターネット上の誹謗中傷が何件あるかなんて、それは分からないですよ。ですから、ここの救済制度からのもので推定しているわけなんですが。

 ちなみに、私、そんなにこの事件を一生懸命扱っていない弁護士ですけれども、それでも年間二十件や三十件の相談はありますよ。常識的に考えて、インターネット上の誹謗中傷って、多分一万とか二万とか三万とかという、若しくは、何でしたら十万、二十万のレベルであることなんだと思われるわけですよ。それは統計がないから知りませんと言われたら、それはもう困っちゃうんですけれども、あるわけですよね。

 かつ、それを、こちらがお金をもらって刑事告発したり民事訴訟を提起しないのは、基本、それは動いてくれないからです。いや、動かないんです、実際問題、動かないです。動かなくて、それが悪いと言っているんじゃないですよ、何せ繰り返し。でも、その基準は変えないわけですね、動かないという基準は。このぐらいの軽度な、誹謗中傷であるか侮辱であるか、そういったものに関しては動きませんというその基準は変えないとずっと言っているわけです。

 変えないのに何で、法定刑を増やすだけでその人たちが救われるんですか。だって、その人たちの加害者は相変わらずほったらかしでしょう。何で救われるんですか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 委員は、動かないということで御質問されております。拝聴しておりますと、二つの側面があるかなということを考えます。

 一つは、そもそも侮辱罪の構成要件に当たらないので、捜査機関として捜査に乗り出すことができない事案。それからもう一つは、さっきから委員が、私の方から申し上げるのはちょっとはばかられるのであれですが、委員が御自身のことで、こういうことを言われても、それは軽い、軽度、軽微だというようなことをおっしゃっています。これは、私の方で受け止めますと、それは構成要件には当たる、したがって、犯罪が成立するかどうかという机の上の議論では当たるものの、その程度。

 私ども、当罰性という言葉で使っておりますが、当罰性が軽いために、捜査機関において具体的に捜査活動に乗り出さない、そういうような、捜査機関が、犯罪に重い軽いという言葉を使うのはいかがかと思いますが、そういった判断をして動かないということがあると思います。

 今言った二つの動かないという要素のうちの最初の方の、そもそも範囲に当たらないから動かないというところは、これは構成要件を変えていませんので、変わるところではございません。

 問題は、構成要件に該当するものの、当罰性が軽いからというところ。これは、まさに先ほど大臣が冒頭で答弁されましたように、私どもの改正案では、ここについて法定刑を引き上げる、すなわち、犯罪としての評価が重たいものであるということを示す、すなわち、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示すということでございますので、私どもの改正法が成立いたしますれば、侮辱罪の構成要件に当たる行為として捜査機関に申告があった場合は、捜査機関は、それは拘留又は科料に当たる罪としてはこれまで受け止めていたのですが、私どもの改正案だと、今度は一年以下の懲役の罪ということで、法定刑をもってみても、犯罪として重いという評価、これを、もし国会でこの法律をお通しいただければ、立法府が示したということを前提に動きますので、そこの部分は、捜査機関において、その法定刑引上げの趣旨を適切に勘案して、必要な捜査及び訴追がなされるのではないかと考えているところでございます。

米山委員 そうでしょう。そうなんですよ。そうなんです。これは、法定刑を上げることによって、当罰性というのか可罰的違法性というのか分かりませんが、上げるんですよ。今まさにおっしゃいました。大臣、おっしゃいましたよね。

 だから、今まで、構成要件に当たっているけれども、当罰性がない、可罰的違法性がないと言われたものが、これから処罰されるようになるんです。そう答弁したんだから。そうでしょう。処罰範囲が広がるんですよ。それは、構成要件に該当しないものは該当しないでいいと思いますよ。それによって、効果はないって、それは別の議論として。やはり、これがインターネット誹謗中傷対策だと言っているからには、今まで処罰されなかったものが処罰されるんです。

 今まで、先ほどのお話にございました、九千円、みんな九千九百円以下。四千円とか五千円とかもある。それは、正直言って、それほどの刑罰とは言いづらいですよね。そのぐらいのお金を払わされることは交通違反だってあるわけですから。それが一気に一年以下の懲役、懲役って大きいですから、なるわけですよ。

 そうしますと、今の御答弁を反映するならば、物すごく当罰性が上がる、物すごく可罰的違法性があると考えられるものが広がるということだと思うんです。大臣、それでいいですよね。そうしないと、今までの答弁が整合的にならないんですけれども。

川原政府参考人 お答えいたします。

 私の先ほどの答弁、法定刑の引上げのところで上限のところを申し上げましたけれども、今回の私どもの改正案、下限のところは拘留又は科料、一番下限だと科料になりますが、ここは変えておりません。

 すなわち、先ほど引上げの趣旨のことを大臣が答弁されましたけれども、今般、SNSなどのインターネット上において誹謗中傷を内容とする書き込みという事案が出まして、こういったSNSを利用した事案など、当罰性の高い行為、侮辱罪の中には当罰性の高い行為があるんじゃないか。

 例えば、路上で通行人のいるところで侮辱行為を行うような事案、これは、インターネットのない時代も、昔からあった事案でございます。これに対して、インターネットというものが出てきて、インターネットを利用したもので侮辱が行われる。そうなると、従前に比較して当罰性の高い行為があるんだろうということで、こういった当罰性の高い類型に適切に対応できるようにということでございます。

 一方で、インターネットのない時代からあったような侮辱事案というのはまた、なおも存在するであろうと。そういったことから、法定刑の上限は引き上げるものの、下限につきましては現行と同じようにしまして、その事案に応じて適切に対応できるようにということでございます。

 したがって、今まで拘留又は科料であった事案がすべからく懲役刑になるということではございませんで、そのうち、やはりそれぞれの行為の当罰性において適切な量刑がなされる、あるいは、元々、量刑の手前でございますが、検察官が訴追裁量権を持っていますので、事案によっては起訴猶予ということもございます。

 そういったことが事案において適切になされるようにということで、あくまでも当罰性の高い行為について適切に対応できるようにということの上限の引上げでございます。

米山委員 その話は、違う話を混乱させて混ぜているんですよ。その話、違いますでしょう。それは、法定刑の幅はあるんだから、軽い刑は軽く、重い刑は重く処罰してもらわなきゃ困りますよ、それはそうです。

 でも、先ほどおっしゃられたのは、今まで侮辱罪というのは最高刑が拘留又は科料だった、それに対して、最高刑が懲役一年、三十万円以下の罰金という判断を立法府が示した、そう言いましたよね。法定刑が重い罪だという判断を示した、だから、それに相応する処罰をするんだ、可罰的違法性があるんだと言ったわけですよ。その答弁、撤回していないですよね。撤回していないんだったら、今の話に関係ないんです。今の話は単に、刑罰は刑罰に応じますって、それは当たり前ですよ、下限と上限があるんだから。その話じゃないですからね。その話をまた繰り返さなくていいです。

 大臣にお伺いしたい。

 そのようにおっしゃられているんですから、可罰的違法性の範囲、処罰される範囲は広がるんですね、構成要件の中で。

古川国務大臣 私、先ほども御答弁申し上げましたけれども、処罰対象となる行為の範囲は変わらないわけであります。法定刑を引き上げることになるわけですけれども、しかし、下限を変えるわけではありませんので、したがいまして、だから、軽い行為を重く処罰するわけではないわけです。その意味では、範囲が広がるというようなことではないというふうに考えております。

米山委員 もうずっとあれなんですけれども、御承知だと思いますけれども、大臣、東大の法学部を出られていらっしゃるので。

 構成要件に該当するかしないか、横の範囲がありますよね。あと、可罰的違法性があるかないか、縦の範囲があるわけですよね。構成要件に該当したって、可罰的違法性がないものは処罰されないんですよ。可罰的違法性というものがどのラインかというのは大事な話なんです。そして、今までそのラインは極めて高かったんです。だから、千件も、ちゃんと申告されているもので千件、弁護士に単に相談しているものだったら、多分一万とか十万とかある。そういう誹謗中傷の中で、僅か三十件しか処罰されてこなかったんです。

 御回答として、変えません、私は別に構成要件のことを言っていないので、可罰的違法性の範囲は、ラインは変えませんというなら、それはインターネット誹謗中傷対策としては無意味です。多くの、何万件が放置されるんだから。インターネット誹謗中傷対策とされるなら、可罰的違法性を変えざるを得ないです。しかも、それを、刑事局長は御答弁されているわけです、変えるって。変えるんですよね。

川原政府参考人 私の答弁に関係してということを御質問でございます。

 まず、委員、可罰的違法性ということをおっしゃっております。この言葉自体は、法令用語でなくて、委員も御承知のように、講学上の用語なものですから、少しあれかもしれませんが、一般に、私の理解するところですと、犯罪は成立しているものの、違法性が特殊な事情によって低いために処罰されないという。

 委員は、御質問の中で、これまで、委員の御指摘によると、年間三十人程度が科料に現実に処せられているというところを前提に御質問されておられまして、私は、先ほどの答弁は、こういった科料に処せられたものの中には、先ほど来御説明しておりますような、インターネットによる誹謗中傷のように当罰性が高く、先ほど私の答弁でも申し上げた、路上で、すぐ消えてしまう言葉で侮辱したような事案とは違う、非常に当罰性の高い事案がある。

 ところが、これが現行法ですと拘留又は科料、どんなに当罰性が重くても拘留又は科料というところですから、そういうものについては法定刑を引き上げて、従前より重く処罰できるようにするということでこれを抑止すべき犯罪であるということを示すということを申し上げておりまして、従前処罰されなかったものが処罰されるようになるんだという趣旨の答弁はしておらないところでございますので、御理解を賜りたいと思います。

米山委員 分かりました。じゃ、そういう内容なんですね。そういう内容なら結構です。であれば、三十件しか、相変わらず処罰されないわけですよ。そうですよね。そうおっしゃった、今。

 であれば、これは全く、インターネットの誹謗中傷対策として無力ですが、それでよろしいですか、大臣。

川原政府参考人 処罰の人数については、いろいろな個々の事情があるところでございます。

 ただ、先ほど大臣も冒頭に答弁されましたように、法定刑の引上げによりまして、こういった行為は厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示しまして、これを抑止と、刑罰の効果の一つで一般予防効果がございますので、むしろ、発生したものを処罰するということも大事でございますが、これを抑止するということも考えて法定刑を引き上げるものでございます。

米山委員 つまり、今ほど、実は大臣も、威嚇効果があると言いましたね。抑止すると言いましたね。つまり、犯罪の範囲を広げて、しかもどこまで処罰されるのか分からないようにして、言論の自由を侵害したい、萎縮させたい、そういうことじゃないですか。そうでしょう。だって、分からないんですよ。どこまで処罰されるのか分からない、でも処罰されるかもしれない。そう思って、いや侮辱的なことは言えないな、そう思うということじゃないですか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 委員のおっしゃっておられる処罰の範囲を広げるというのが、その行為の態様によって処罰されなかったものがされるという趣旨であれば、そういうことではございません。私ども、大臣も先ほど答弁されましたけれども、構成要件を変えていませんので、侮辱罪の構成要件に該当して処罰される行為の範囲は変わりません。ただ、当罰性の高いものについて、従前より重く処罰できるようにということでございます。

山田(美)委員長代理 米山君、時間となりました。

米山委員 いいんですけれどもね。まあ、じゃ、いいですよ。ともかく……(発言する者あり)

 じゃ、これで終わりにします。次回に持ち越させていただきます。

山田(美)委員長代理 次に、市村浩一郎君。

市村委員 日本維新の会の市村浩一郎でございます。三十分いただきまして、質疑をさせていただきたいと存じます。

 大臣とはもう三十年以上の御縁ということでありまして、今日こうして議論をさせていただくこと、そして、大臣は、私の知る限り、大変現地、現場のことをよく御存じの方であり、かつ人の心がよく分かる大臣と思っておりますので、今日はいい議論、そして問題解決についていい流れができればと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 大臣、今、いわゆる入管庁が告示校と認めている日本語学校が八百十八校あるということ、そして、この過去十年間で倍増しているということ、そうした日本語学校で外国人に対する人権侵害行為が起きているということが、今日私が特に取り上げたいことでございます。今から三つ具体的な事例を申し上げます。よろしくお願いします。

 その三つの事例のうちの一つ目が、まず、宇都宮市の日本語学校で二〇一九年に発覚した事例があります。これはどういうことかというと、留学生の皆さんが進学や就職をする際には、出席、成績証明書や卒業見込み証明書というのが必要になってくるんです。ところが、この日本語学校ではその発行を拒否されまして、そして、同学院といいますか、その同学校が運営している系列の専門学校へ内部進学を強要していたという事例がまず一個あります。

 それから、二つ目でございますが、これは仙台市の日本語学校の例でありますけれども、これは今年になって発覚した事例でございますけれども、その日本語学校に入学が決まったベトナム人留学生の皆さんに対して、在籍途中で就職した場合、三百万円の賠償金を支払うという誓約書に署名をさせていたということでございまして、また、日本語学校の留学生の皆さんには、中途退学して、就職を含め、進路の自由があるにもかかわらず、大学に進学しなかった場合の保証金として、入学金や学費とは別に留学生から二十万円から三十万円程度を入学時に徴収して、大学に進学しなかった場合、留学生の皆さんにはその保証金を返還していない事例がありました。

 これにつきましては、一部のベトナム人留学生の方たちが保証金の返還を求めて仙台地裁で裁判を起こして、昨年十一月に学校側と和解していますけれども、現在まで多くのベトナム人留学生に保証金は返還されていません。

 また、三つ目の事例でございますが、これは福岡市の日本語学校の例でありますけれども、昨年の暮れ、二〇二一年の暮れに発覚した事例でありますけれども、在留カードの提示を拒んだベトナム人留学生に対して、職員が鎖で拘束するという暴行を行っています。

 この学院といいますか日本語学校は、留学生に系列の専門学校への内部進学を強要している、また、学校側の方が素行不良とみなした留学生に対して母国への帰国を強要していた疑いもあると思われます。

 この三つの事例に対しまして、これはいずれも、入管庁が日本語学校に対して定めております日本語教育機関の告示基準で、告示からの抹消の基準となります第二条第一項第八号の留学生に対する人権侵害行為に相当すると私は思いますが、大臣の御見解をいただきたいと存じます。

古川国務大臣 市村委員にお答えいたします。

 日本語教育機関による留学生に対する人権侵害行為は決してあってはならないものだというふうに思います。

 個別の事案に言及することはできませんけれども、ただ、入管庁では、今年の二月、人権侵害行為が疑われる事案の報道があったことから、即時に全ての日本語教育機関を対象に、留学生への人権侵害行為等を含む不適切な行為を防止するなどの適正な運営を行うように、改めて全ての日本語教育機関を対象に注意喚起を行ったところであります。

 また、地方入管局に対しましては、留学生に対する人権侵害行為の疑いがある事案等を認知した場合は、留学を担当する部署において速やかに調査に着手すること、そして、在籍管理が適切に行われていない日本語教育機関には速やかに実地調査を行うことなどを指示いたしております。

 こうした報道が出ること自体、懸念すべき事態でありまして、入管庁には常に緊張感を持って対応するよう日々督励をいたしております。法務省としては、関係省庁とも連携し、留学生の立場に十分に配慮した適正な対応に努めてまいります。

 その上で、一般論として申し上げますが、生徒の進路を妨害する行為、生徒に対する暴力、高額な賠償金について誓約させる行為などは、日本語教育機関の告示基準第二号において定められている抹消基準の人権侵害行為等に該当すると考えられるものと存じます。

    〔山田(美)委員長代理退席、委員長着席〕

市村委員 ありがとうございます。

 また後ほどこれについて深く議論させていただきたいと存じます。まずは、該当するとはっきりと大臣からおっしゃっていただいておりますし、これが、大臣の今の御発言がしっかり入管庁及び地方の局に伝わるように、またどうぞ督励をよろしくお願い申し上げます。

 引き続き、もう少し具体的事例としてお話をさせていただきたいと存じます。

 先ほど挙げました三つの事案については、今大臣がもう大分お答えになられたんですが、いずれも、最寄りの地方出入国在留管理局には情報は届いているんですね。

 しかも、その宇都宮の事例では、留学生の皆さんは宇都宮入管に助けを求めているんです。求めていますが、入国管理局の担当者は、その留学生の皆さんに対して、証明書なしで進学できる学校を探すように告げ、そして、当該の日本語学校を指導しなかったと私は承知をしております。

 結果、希望する進路を断たれた留学生が多く存在するということなんですが、入管庁としては特に問題はなかったと考えておられますでしょうか。大臣、よろしくお願いします。

古川国務大臣 お答えいたします。

 先ほども申しましたけれども、留学生に対する人権侵害行為、日本語教育機関における、これは決してあってはなりません。そのような御指摘を受けること自体、そういう御指摘がなされること自体がこれは大変懸念すべき事態であって、日々緊張感を持って対応すべきものだと考えております。

 個別の事案についてはお答えするのは難しゅうございますが、しかし、申し上げておりますように、入管庁では、日本語教育機関の告示基準違反が疑われるような行為を把握した場合には、当該日本語教育機関に対して実地調査を行うなど、事実関係を確認した上で、その日本語教育機関の告示基準第二条に基づく告示からの抹消などの対応を行っております。

 また、個々の留学生の進路に支障を来すことのないよう、教育機関への指導等必要な措置を取ることといたしております。

 引き続き、各地方入管局に対して、留学生からの相談に適切に対応するよう指導を徹底してまいります。

市村委員 大臣、本当に大臣のお気持ちは重々受け止めておりますが、例えば、今、告示取消し等の対応をしているという大臣からのお話があったんですが、つい先ほど、ここに入ってくる前の情報では、平成二十八年以降、一つも、一件も、いわゆる抹消、取消しが、告示学校としての取消しがあったという事例はないんですね。自主的解散をしたことで取消しというのはあるんですけれども、実際に、いろいろ問題があるということで、例えば調査をしていただいて、そしてその結果、いわゆる告示校としての取消しというのに至ったケースはないということなんです、これが。ないんですね。

 だから、結局、制度としてはあり、かつ、大臣始め、副大臣、政務官の皆様始め法務省の皆様も、これはいかぬと多分思っていただいて対処していただいていると私は信じているんですが、残念ながら、現場でそれを、一罰百戒ではありませんけれども、やはり、なあなあ、まあまあという形で収めているのではないかなと。

 そうすると、こうした悪質な日本語学校が反省をすることはないわけですね。まあ、言われたら、そのときだけ対応して、もしそれが言い逃れできなくなったら謝れば済むかなということで、その日本語学校は存続していく。そして、実際の実態は変わらないまま、留学生がまた入ってくるということになる。

 実際の、これは多分、大臣、副大臣、政務官、皆さん、実態は御存じだと思いますけれども、結局、元をただせば、二〇〇八年に福田内閣において三十万人留学生計画ができたということで、そのときの志は、日本に来ていただいて、日本で学んでいただいて、日本語で学んでいただいて、そして日本に、有能な人材として日本の企業また日系企業に就職していただいて、そして将来的に日本と母国との懸け橋になってくれるということを、そういう思いでこの制度はできているのかもしれませんが、実態はどうなっているかというと、結局、一方で、技能実習生制度ってあるんですけれども、これは、ていのいい、安い労働力を日本の労働市場に提供するような実は現実になっているんじゃないか、こういう思いが私はとても強くあるんです。

 それで、例えば、留学生の方は週二十八時間は一応、アルバイトというか仕事をしていいということになっているんですが、実際、日本語学校に入るためには高額のお金がかかるわけです。そして、さっきから申し上げているように、ほかに行きたくても、移さないように、もう人権侵害とも言える、そういう歯止めをかけている、強制をしている。言うことを聞かないと、もうすぐに、その日に送り返すらしいです、その日に。有無を言わさず、チケットを取って、その日に送り返す。後から、何と、本人のクレジットカードを預かっていて、給与が振り込まれたらそれで航空チケットを引き出す。こんなことも横行しているというふうに伺っているんですね。まあひどいと。

 これは逆の立場になって考えたら、我々日本人の、これからの我々の子供や孫がそんな目に遭ったら許せるかという話なんですね。そういうことを日本が、私が大好きで麗しいこの日本がですよ、こういうことをやっているのでは情けないというこの思いで、今日こうして質問をさせていただいておるんですね。

 だから、実態というのは、大臣は心の優しい方だから、何とかすると思っていただいても、現場が動かないと全く意味がないわけでございまして、特に現場ということになりますと、先ほどから出ています地方の出入国在留管理局ということになるんですけれども、じゃ、ここが本当にちゃんと対応できているのかということに疑問が湧いてくるわけであります。

 実際にここに行ったとしても、先ほど申し上げたように、いや、それは証明書のない学校を探して行ったらどうですかとかね。それができるんだったら行かないわけですよね。そうさせないようにさせているわけですから。そうさせないようにさせているものを、いや、そうしたらどうですかと言って、しかも日本語ですよ。

 そういう状況にあるということで、これは法務省の入管庁が対応されているんですけれども、そもそも何でこれは法務省の入管局が対応しているのか。これは政府委員の方でいいので、ちょっとお答えいただけますでしょうか。そもそも何でこれ、例えば、留学生なら、何で文部科学省じゃないんでしょうか。

西山政府参考人 お尋ねの件につきましては、入管庁としては出入国を管理しております。在留資格を認定するという手続は当方が所管しております。

 それで、留学生の場合につきましては、留学という在留資格で初めて日本において学ぶという活動が許されるという関係にありますので、私どもの方で留学の在留資格を管理するとともに、在留管理ということで、留学生がきちんとこの日本で在留資格にのっとって、留学の場合であれば学業をやっているかということについては私どもで管理をし、それでもし、留学で入ってきても、実際上は就労ばかりやって、そういう留学の活動をやっていないということになれば、在留資格を取り消すといったところも私どもの方でやる、そういう関係になってございます。

市村委員 ですから、私は、法務省は法務省としてのあるべき対応をしている、やるべきことをやっていると思うんですが、しかし、留学生の立場に立ってみると、そもそも論はあるんですよ、そもそも論はあるんだけれども、留学生として来ている人の立場に立ってみたら、その出入国管理だけのことでぎちぎちぎちぎちやられるというのも、これはどうなのかな。結局、いわゆる教育の質というか、そういうところはおいておいて、とにかくちゃんと出席しているのかとか、そういうところですね、二十八時間以上まさか働いていませんよねとか、こうなるんですね。

 そうなると、留学生側としては、この高額な授業料、さらに母国に常にお金を、資金を送らなくちゃいけない、やはり家族を支えるとかいうような理由もあるのかもしれません。そういうふうな御苦労で、二十八時間以上もし働かなくちゃいけない、この高額な保証金とかも課されてしまっているわけですから。

 だから、そういうところに追い込まれている人たちに対して、やはりそういう留学生の立場に立って適切な指導を行うという機関が本当に法務省さんの入管庁さんで適切なのかどうかというのもあるんですが、大臣、ちょっとどう思われますか、これ。

古川国務大臣 入管庁におきましては、在留資格、留学の対象となる日本語教育機関を告示する立場から、その適正な運営に向けた指導監督を行っているところです。

 具体的には、日本語教育機関が就労を主たる目的とする留学生を受け入れることのないよう、必要に応じて実地調査を行い、適正な入学選考、在学管理の徹底等の厳格な指導を行うなどしております。

 個別の留学生への対応としまして、留学生の入国、在留審査等におきまして、勉学の意思、能力や経費支弁能力等について審査を行って、真に学習する目的があることを確認しています。

 そして、条件に違反をして長時間にわたりアルバイトに従事するなどの資格外活動違反が認められる留学生に対しては、資格外活動許可の取消しや在留期間更新不許可処分を行うべく、ハローワークを通じて雇用状況の把握に努めているところです。

 このように、法務省としては、関係省庁とも連携し、引き続き、日本語教育機関への留学生の適正な受入れに努めてまいりたいと考えております。

市村委員 大臣、大臣の御答弁、本当にお気持ちを察しながら聞かせていただいておりますけれども、先ほどから申し上げておりますように、法務省としての対応はそうなんでしょう。それはそれで法務省としての対応はしっかりやっているんだと思いますが、しかし、留学生の立場、しかも、留学生という名の下に、実際にていよく低賃金労働者として入れている人たちがいるわけです、実態は。悪徳日本語学校と言ってもいいと思いますけれども。そういう人たちをどうするかというのが大切なんですね。

 実際、その現場で一様に暴力行為とか人権侵害行為が起こっているという現実があるということをどう解決するかというのが大切でありまして、それがもし法務省さんとしての任じゃないのであれば、もっと別の何か部署とかでやってもらうしかないと思うんですよね。だから、法務省は法務省でやることをやっているわけですから、ただ、それでは実態が全然収まっていない、変わっていないという、適当に、なあなあ、まあまあになっているんじゃないかなということなんです。

 今、留学生が、実は、三十万人計画が、三十五万人まで増えていたんです、コロナの前は。今、コロナで二十二万人まで減っています。しかし、今、十五万人待機しているんですね、早く日本に行きたいと。それが本当に留学であればいいんですけれども、やはり、そういうあっせん業者なるものがそこに介在して、結局、日本に行ったらまあまあいい仕事があるよということで、しかも、日本語学校に行けば、二十八時間だと言っているんだけれども、後はなあなあ、まあまあだというようなことで働いている。それで、日本語学校の方も、そういう留学生の弱みにつけ込んで、おまえ、言ったらすぐ強制退国だぞと、こういう話で、まあ言わないでしょうけれども、無言の圧力をかけながら縛っているのではないかなというふうに思うわけです。

 こういう実態に対して、法務省がもしその解決に、なかなか所管として出せないならば、やはり解決方法を考えないといけないと思うんですね。これについて、大臣、ちょっと御見解をいただきたいと存じます。これはもう大臣の言葉で語っていただきたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 市村委員、もう何十年のつき合いですけれども、やはり熱い正義感、変わらないなというふうに思います。おっしゃっていることは私も共感いたします。

 その上で、先ほど来、私、答弁しておりますのは、法務省としては、在留資格、留学という在留資格を付与する立場から、その適正を期すということであります。あるいは、告示基準のお話も冒頭させていただきましたけれども、幾つか例を挙げましたけれども、人権侵害等々あるまじき行為が認められる場合には厳正に対応する、これはもう当然のことであります。申し上げてきたことは、法務省の立場としてできる限りのことをやるということは間違いありません。

 そして、冒頭申し上げましたように、今年の二月に、ある事案につきまして、即座に、きっかけは報道によって知ることになった事案なんですけれども、しかし、これは、申し上げたように、全国の日本語教育機関への注意喚起を行って、そして全国の入管局に対しても、必要に応じて速やかな対応ということを厳に言っております。そして、そういう緊張感の下で、今なお日々そのような姿勢で取り組んでいるということは、はっきり申し上げられることだと思います。

 繰り返しになりますけれども、あるまじきことですよね。立場が弱いということにつけ込んでというようなことは、やはり日本人の名誉に懸けてもあってはならないことだと思いますから、そこはしっかり、職員を督励しながら、私、先頭に立ってやってまいりますから、そこは御理解をいただきたいと思います。

市村委員 本当にすばらしい答弁をいただきました。感謝いたします。是非とも、現実的な問題が解決するようにお取組をお願いいたしたいと思います。

 その中で、本当はここでもう終わってもいいぐらいの気持ちで今いるんですが、もうちょっと時間がありますからやらせていただきたいと存じますが、今、対応で、ちゃんとやっていただいている、何とかしようと思っているのは分かっているんです。

 ところが、例えば、入管庁としてはどう対応されているかというと、これは留学生に限らないんですが、外国人相談センターがある、ここに行ってくれれば、通訳もいるし、母国語でいろいろ対応はしているんだということであるんですけれども。

 ちょっと、今日、入る直前にその現物を手に入れさせていただいたところでありますが、日本語なんです、日本語。学校で留学生に対してこれを配っているらしいんですけれども、これは日本語なんですね。しかも、恐らく、これ一枚を渡しながら、ちゃんと説明しているとは思えないんですね。しかも、外国人相談センターと書いてあるのはこの裏側でありまして、裏側の下の方に、外国人在留支援センター、FRESCということで、日本での暮らしについていろいろ相談ができますと、電話番号も、これは多分フリーダイヤルなんでしょうか、書いてあるということであります。

 入管庁さんとしては、こういうことで何とか皆さんの声を、つまり駆け込み寺的なものをこれが担っているとおっしゃっていたんですね、昨日お聞きしたら。これが、技能実習生の場合は、外国人技能実習機構というのがありまして、ここが駆け込み寺的な役割を果たしているわけです。いろいろな、様々な相談を受けています、技能実習生の場合は。ところが、留学生の場合、ないんですね。なくて、おっしゃったのが、この外国人在留支援センターである、こういうことでございました。

 しかし、これを、今これで頑張っている、告知していますと。どういうふうに告知しているんですかと言ったら、こうやって配っていますと。昨日は、何か、こういう外国人支援センターの紙、FRESCだけのことを書いたのを空港で配っているかのようなことを、私は、それは空耳なのか、聞いたような覚えがあるんですが、どうもそれは違っているということで、今日、入る前にこれをいただいたわけです。

 しかも、これは日本語なんですよね。漢字もあります。たまたま、少し分かりやすくするためにということで、これは二種類あるんですけれども、なかなか面白いんですが、皆様へが漢字のバージョンと、皆さんが、日本語バージョンがあって、これが対応かと言われると、ちょっとさっきの大臣の御決意からすると、乖離がめちゃくちゃあるんですね。まあ、留学生だけじゃないですよ、これは。

 だから、こういうところを含めて、駆け込み寺的なものをもし入管庁がなお続けるのであれば、ほかの省庁でそういうのを対応する、例えば外務省とか、文科省とか、厚生労働省とか、何かそういうところが、別にそこに押しつけるんじゃなくて、そこと一緒に共管する、一緒に力を合わせて、情報を出し合って頑張るというところで私は対応していくべきじゃないかなと。

 やはり、まず窓口として、即どこに相談すればいいのか、そういう目に遭った、つらい目に遭っている、ましてや暴力すら振るわれたという場合に、どこに相談すればいいのかということについて、その窓口というのを定めておいた方がいいと思いまして、ただ、それがこういう状況では大変心もとないな、こういうところでございますが、大臣のちょっと御見解をいただきたいと存じます。

西山政府参考人 前提といたしまして、今御紹介ありましたFRESCで、一元的にといいますか、全国からの相談を受け付けるという仕組みがございます。

 そのほかに、各地方入管局がございます。全国に八か所の地方入管局、それから、横浜、神戸、那覇の三つの支局がございます。そこには、それぞれ業務の規模に応じてでございますけれども、留学生に係る在留審査の専従部門の部署が設置あるいは担当者が専従でおりまして、そういったところに留学生から御相談いただけましたら、そこでフェース・トゥー・フェースで対応することも可能になっております。

 ただ、そこが留学生にどの程度周知されているのかというところが委員の御指摘かと存じます。それは真摯に受け止めて、私どもとしても、なお積極的にその周知に努めてまいりたいというふうに考えております。

市村委員 最後に一問。

 現状では、留学生が悪質な日本語学校に入学しても、学校側の許可がなければ実質転校が認められないと私は承知しております。在籍先の日本語学校が認めなくても、入管当局の判断で転校の自由を認めるべきではないかと考えておりますが、これは大臣の方から最後にお答えいただければと存じます。

古川国務大臣 留学生は、どの日本語教育機関に入学、在籍していても、その学校の許可を得ることなく自らの判断で転校することができます。できるんです。

 その上で、留学生から入管庁に対して御相談があった場合には、これは必要に応じて当該日本語教育機関に対して実地調査を行うなど、事実関係を確認した上で、厳正な対応、つまり、日本語教育機関の告示基準第二号に基づく告示からの抹消など、厳正な対応に移行していくということになります。

市村委員 感謝します。終わります。

古川国務大臣 済みません、ちょっと言い間違い。

 今、二号と言ったそうなんですけれども、二条の間違いでした。失礼しました。

鈴木委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 まず初めに、知的障害、よく執行部から説明を受けますと、知的障害あるいは障害者、高齢者も地域定着支援という点では同じだ、同じような施策を取っているということでございました。

 まず、知的障害の方々が、犯罪白書によりますと、令和二年、入所受刑者は二百九十七名、少年院入院者は百三十九名。少年院の方では知的障害の比率は高いということでございます。今日はその知的障害の累犯ということでお尋ねをしたいと思っております。

 まず、その点、万引きや無銭飲食などの軽犯罪だというふうにはお聞きしておりますが、当局から、累犯についてのお尋ねをしたいと思いますので、よろしくお願いします。

鈴木委員長 答弁、どなたですか。

 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 法務省佐伯矯正局長。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 大変申し訳ございませんが、累犯率につきましては手元にございません。申し訳ございません。

阿部(弘)委員 後で結構です。

 質問の主題ではありませんけれども、ただ、「累犯障害者」という本、元国会議員がそのような本を出版されて非常に話題になった。その内容は、万引きや無銭飲食などを繰り返す知的障害者や、あるいは高齢者のことでございます。累犯を繰り返して、軽犯罪も、初犯なら執行猶予等ございましょうが、実際は刑に服することもあるわけでございます。

 今日の私の主眼は、前半は、そういう刑務所の受刑者の、中身という言い方は失礼かもしれませんから、実態が、以前と比べて変わりつつあるのではないかという話をしたかったわけなんです。ですから、一定の数、知的障害の方々がそういうことで罪を犯すということですから、そういう方に対して、長崎県モデルというのを、法務省では厚労省と一緒につくっていっているということでございますから、そこのところをまず御説明いただけませんでしょうか。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 令和二年度に当局が実施しました特別調査におきまして、全国で千三百四十五名の知的障害を有する人あるいはその疑いのある受刑者がいることが、調査の結果、判明しております。そのうち、療育手帳を取得している人は四百十四名、約三一%であることが判明してございます。

 これらの受刑者につきましては、再犯に至るまでの期間が比較的短く、刑事施設への入所度数は全体より多い傾向にあることから、再犯防止の取組を推進するため、本年度から、長崎県諫早市にございます長崎刑務所において、障害者福祉の専門的知見やノウハウを有する事業者等と連携いたしまして、在所中から、出所後の生活安定に向けた一貫性のある指導及び社会復帰支援を実施する体制を構築していくほか、出所後も息の長い寄り添い型の福祉サービスに移行させることを目的としたモデル事業を実施することとしてございます。

 具体的には、長崎刑務所の中に定員五十名程度のユニットを設けまして、九州、沖縄の八県内の刑事施設に収容されている知的障害を有する受刑者等に対しまして、特性に応じたアセスメント等処遇計画の立案、処遇計画に基づく訓練、教育、療育手帳等の取得に向けた調整、息の長い寄り添い型支援を可能とする調整といった取組を開始する予定でございます。

 このモデル事業の事業期間は令和四年度から令和八年度までの五年間を計画してございまして、今後、委託先事業の選定等の事務を進めまして、本年中に事業を開始する予定でございます。

阿部(弘)委員 少しずつ動いているということはよく分かったわけでございます。でも、長崎県の南高愛隣会のお話がなかったように思います。また、NPO法人の長崎県地域生活定着支援センター、それについては、どなたか参考人、お答えいただけますでしょうか。

本多政府参考人 お答えいたします。

 地域生活定着支援センターについてでございますけれども、高齢や障害によって支援を必要とする矯正施設退所者等に対する厚生労働省の取組の一つといたしまして、都道府県が社会福祉法人などへの委託によって設置する地域生活定着支援センターの運営に対する支援を実施をしております。このセンターは、原則、各都道府県に一か所、長崎県にも設置をされているところでございます。

 地域生活定着支援センターにおきましては、矯正施設退所者等のうち、高齢や障害のため、釈放後直ちに福祉サービスを受ける必要があるものの、釈放後の帰住先のない方などにつきまして、保護観察所等と連携をして、釈放後に必要な福祉サービスの利用等につなげるための支援を実施しております。

 引き続き、法務省とも連携しまして、高齢や障害によって支援を必要とする矯正施設退所者等への支援に取り組んでまいることとしております。

阿部(弘)委員 是非とも、社会福祉法人の南高愛隣会の、お亡くなりになりました社長さんの話を少し委員の皆様方に御披露いただければよかったかなと思ったんですけれども、そういうことを言うとまた速記が止まってしまいますので、やめます。

 一つ、北海道は二か所なんですよね。それも言っていただきたい。北海道は広いですから、各都道府県に一か所、そして北海道は二か所ということで、そういったことで、帰住先がない知的障害の出所者についても、定着、そして社会福祉法人などと連携しながら再犯の取組をしているという、しっかり法務省としての取組をここでPRしていただきたかったんですが、ちょっとつまずいてしまいましたので、まあ、いいです、いいです。

 じゃ、次に行きます。

 認知症、これは大問題ですよ。平成二十七年六月時点において、六十五歳以上の受刑者のうち、認知症傾向のある人たちは一六・七%。高齢化の時代ですから、矯正施設の中も高齢化して、高齢化に伴って認知症の方々が増えている。つまり、最初に私が言いましたように、認知症が増えて、そして知的障害などの障害者の累犯が増える、そうすると、本来の矯正施設の機能が、定数がだんだん減ってきてしまう。

 それで、説明を求めますが、こういう矯正施設の中の認知症高齢者の処遇についてはどのように今対応してあるのか。これもしっかり対応してあるから、事前に通告してあるからちょっとPRしていただければいいと思いますので、お願いします。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十八年一月に公表いたしました当局での特別調査におきまして、二十六年末時点で六十歳以上の受刑者のうち、認知症傾向のある人はおよそ一四%、全国で千三百人程度と推計されるところでございます。

 このような認知症又はその傾向のある受刑者に対しましては、処遇上の配慮や社会復帰の際の支援が必要と認識してございます。

 このため、刑事施設におきましては、認知症スクリーニング検査結果であるとか受刑生活の状況から認知症又はその傾向のある受刑者の把握に努めております。

 こうした者に対しまして、可能な限り集団処遇の機会を設けまして認知症の進行を遅らせる、症状等に応じまして一般の受刑者とは異なる個別の処遇を行うなどの配慮もしてございます。

 さらに、こうした者のうち、帰住先がないなど、出所後の支援が必要な人に対しましては、先ほども御紹介ございましたが、地域生活定着支援センター等の関係機関と連携いたしまして、出所後に福祉サービスが受給できるような調整を行ってございます。

 引き続き、受刑者の認知症傾向を早期に把握し、それを踏まえたきめ細かな処遇を実施するとともに、関係機関と連携を密にいたしまして、認知症傾向のある受刑者に対する一層の適切な社会復帰支援を推進してまいりたいと考えてございます。

阿部(弘)委員 講じている方策、もっと言ってほしかったですね。

 実は、受刑者が受刑者を介護している。ですから、認知症サポーター養成研修制度、ヘルパー講習みたいなものを受けて、認知症になった高齢者を受刑者が介護ヘルパーとなって介護する。そもそも、本来の、刑を勤めていくという言い方なんですか、それとはちょっと違うような、刑務所内、矯正施設内での姿というのが、高齢化社会もやはり矯正施設内でも訪れてくる。

 ちょっと聞くのを忘れましたけれども、認知症の診断はどういう診断で行われますか。事前通告しております。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事施設の中でのということで申し上げますと、現行におきましては、認知症スクリーニング検査は、長谷川式認知症スケールの実施をいたしまして、同スケールで基準点以下の人につきまして医師が診察をする、こういう二本柱で行っているところでございまして、両方円滑に実施できる体制が整備されている施設においてこういったことを実施してございます。

阿部(弘)委員 結構です。長谷川式が一番簡単ですし、いろいろな方々が、専門家であれば、国家資格を持ってある方などでは容易にできる診断方法ですので、いいんじゃないかと思っております。

 ただ、高齢者が今後、更にどんどん増えていくと、先ほどの地域生活支援ではありませんが、刑の、仮釈放とかそういったことで、寝たきりの受刑者を福祉施設あるいは精神病院で処遇するということは、今後は検討はなさらないんでしょうか。

本多政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの、説明させていただきましたように、地域生活定着支援センターにおきましては、退所された方の中で、高齢などのために、釈放後直ちに福祉サービスを必要とされる方については、その必要な福祉サービスの利用につなげるための支援を実施をしております。

 実際に、つながった先、帰住先の中には、養護老人ホーム等の老人福祉施設もあるところでございます。

阿部(弘)委員 出所者ということでございますけれども、今度の刑法の改正の中では、私、覚醒剤などの薬物事犯の一部執行猶予制度については質問させていただきますけれども、そういう制度を活用して、もう認知症がかなり進んだ場合には、医療刑務所もまたいっぱいになってしまう、刑務所の中も認知症の患者さんでいっぱいになってしまう。じゃ、刑務所は、認知症の方々を介護する施設なのかという議論が出てくるわけなんです。

 ですから、いずれ、こういう高齢化社会ですので、そういう検討も、今すぐではないかもしれませんけれども、いずれ出てくるんじゃないかということでございます。ちょっと大臣には通告していませんので、これは私の提案だけにとどめたいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 次は、大阪で起きました、曾根崎で起きましたクリニックの放火事件なんですね。これは予算委員会でも、私、お聞きしましたので、多少重複するかもしれません。

 実は、私は、二十数年前、九七年頃は厚労省の役人でございました。精神保健を担当しております。十二月のあるときに、子供たちが人気アニメの「ポケットモンスター」をお茶の間の夕食時に見ていたら、ピカチュウの十万ボルトで、そうしたら、テレビを見ていた子供たちが、みんなひっくり返っちゃったんですね。だから、東京中の救急車がほぼ出動して、そして子供たちを病院に運んだという事件があった。

 これは、光の刺激が子供たちには強過ぎたんです。当時、四秒間の間に百六回という、光の繰り返しといいますか、我々はバブル世代に青春時代を送ったんですけれども、ミラーボールというのを知っています。ミラーボールみたいなものを子供たちが見たら、ひっくり返っちゃうんですね。これは、頭の中に興奮を覚える。

 興奮のデータは、その後、私、専門家ではありませんので、研究者に研究班をつくってもらって研究したら、子供たち、特に女性の方が、思春期あたりに激しい興奮を覚えるということが分かってきました。何が言いたいかといいますと、光、あるいは木漏れ日、太古の昔でいえば炎ですね。炎に対して非常に興奮を覚えるというのが脳波のデータなんかで分かってきたわけです。

 我々も、繁華街に行きますと、赤ちょうちんを見て、おお、いいぞ、いいぞと思うわけでございます。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━実は、科学的根拠は、光に対する興奮がある程度の年齢になっても残っているということなんです。

 本題に移ります。

 精神障害、これは、犯罪白書をもらいまして、精神障害者の殺人、意外に多いんですね。ですが、もっと特筆すべきなのは、放火、これが一四・八%。障害者だから多いということではありませんが、一般的に、障害者、精神障害者の犯罪というのは少ないんですが、身内など身の回りの人たちに対する殺人、あるいは、放火はその事情は特段存じ上げませんが、今回の大阪北区曾根崎で起きた放火というのは、何らかの関係があるのかなと私なりに想像もするわけでございます。

 この放火事件については、予算委員会でも大臣に所感についてお伺いしましたけれども、改めて、大臣、所感をお願いします。

古川国務大臣 委員には、大阪クリニック放火事件を引かれて御質問だったということだったと思いますが、御指摘になったような事件は、これは本当に未来のある多くの方々の命が失われるなどした、実に痛ましく、そして、本当にあってはならない悲しい事件だというふうに思います。改めて、亡くなられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げるところです。

 政府一丸となって、国民の生命、身体に危険が及ばないような安心、安全な社会づくり、それへの取組に力を尽くさなければならないというふうに思います。

阿部(弘)委員 このようなガソリン放火事件、今回は北区の精神科クリニックに通院してあった患者さんであったんですけれども、京都アニメーションの放火事件、この方が精神科に通院してあったかどうかは私は存じ上げません。ただ、ポリタンクに持ってきたガソリンをバケツに移し替え、そして、京都アニメーションのビルの入口に、職員の方にそのガソリンをかけて、そして、火をつけて全体を燃え上がらせた、想像に絶する凄惨な場面が容易に想像できるわけでございます。

 今日は、消防庁、警察庁の方がお見えでございます。

 ガソリンについての、今どういう規制、取組を行ってあるかお伺いしたい。

齋藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 ガソリンの販売につきましては、今御指摘のありました、令和元年に発生した京都アニメーションにおける火災を踏まえ、ガソリンスタンドにおいてガソリンを容器に詰め替えて販売するときは、顧客の本人確認、使用目的の確認、販売に関する記録の作成を義務づけております。

阿部(弘)委員 警察庁もお見えでございます。

 このことを踏まえまして、どういう取組、御検討なのか、お願いします。

鎌田政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、近年、大阪市内のクリニックや京都市内のアニメーション会社でガソリンを使用した放火殺人事件が発生し、多数の方々が死傷されたと承知しております。

 ガソリンは揮発性が高く、これを使用した放火事件は、瞬時に一酸化炭素が建物内に充満するなど甚大な被害をもたらすおそれがあると承知しております。

 こうした事件が発生した場合、警察におきましては、事案の全容解明に努めるとともに、御遺族や被害者の方々に寄り添い、きめ細やかな被害者支援に取り組んでいるものでございます。

 また、先ほど申し上げました令和元年七月の京都市内のアニメーション会社における放火殺人事件の発生を受け、消防庁からガソリンの販売事業者に対して、ガソリンを容器で購入する者の本人確認や使用目的の確認等に関する通知が発出されたと承知しておりまして、その際、顧客の言動等に不審な点が認められた場合には警察への通報を要請しているところでございます。

阿部(弘)委員 京都アニメーションの放火事件、道連れ殺人、要するに一緒に死にたいという願望の方も増えている。この後、新幹線内での焼身自殺や、私鉄電車の中での、ガソリンだったんですか灯油だったんですか、ちょっと私も分かりませんが、そういうものをまいて道連れ殺人事件を起こすようなこと。そして、一番震撼したのは、京都市の雑居ビル、アイドルのコンサートが来ているところに、五十名近いファンが楽しんでいるその真下の階で、ガソリン一・八リットルをまいて、まさに放火しようという事件が起きております。

 こういったことで、是非とも消防庁も警察庁も取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございます。

 しかしまた、大阪のクリニックに関して言えば、放火した後に、逃げてくる職員か患者さんか、人間を両手で入口で塞いで止めてしまうというような、ビデオに映っていたわけでございます。その方が、人生に非常につらい思いをされて、そしてそういう行動に走られたのかどうかは、本人が亡くなられていますから、動機についての解明は分かりませんが。

 実は、私は、国会議員になるまでは精神科病院の医師を務めておりました。指定医でもございます。矯正施設からの方も治療させていただきますし、また、措置入院の方々も治療させていただく。すると、最初は嫌だというような拒否感があった患者さんも、治療によってよく眠れるようになった、あるいは、幻聴や幻覚が著しく減ってくることで、非常にありがたみを感じて、なかなか病院から出られない患者さんもいらっしゃいますが、非常に感謝されることが多いわけでございます。もちろん退院請求も自由に出せるわけでございますから、その点は、人権の確保には配慮していくわけでございます。

 しかし、津久井やまゆり園のときに、精神保健福祉法を改正し、医療の充実と、それと、その直前に指定医の不祥事が起きましたので、正確に言うと申請する大学の方々の不祥事が起きたわけで、そのことも実際は法改正につながらなかったわけでございますが、これからの精神障害者の医療についての基盤となる法律、精神保健福祉法や医療観察法などがあるわけでございます。

 まず、精神保健福祉法の今後の取組についてお伺いしたいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 精神医療の提供体制につきましては、地域で暮らす全ての人が、精神症状の変化に応じて、必要なときに適切な医療を受けられる体制を整備していくことが重要であると認識しております。

 具体的には、平時の対応を行うためのかかりつけ精神科医機能等の充実、それから、緊急時に迅速に対応できる精神科救急医療体制の整備、多職種チームによる入院医療の充実や退院後の支援等を図ることが重要と考えております。

 こうした点につきまして、昨年十月から、当事者、家族、医療関係者等を交え、その実効的な仕組みにつきまして議論を進めているところでありまして、引き続き、地域の精神医療の更なる充実に向けて精力的に検討してまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 これから刑法改正の説明を受けて議論も進むわけでございますが、今日は時間がありませんので、医療観察法や、あるいは医療観察法の罪刑、罪名等についての御質問はこの後に譲りたいと思います。またその際は是非とも御議論をよろしくお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 今日は、ずっと御質問したかったなという案件をお尋ねしたいと思います。

 私の地元でも、駅前にマンションがどんどん建ち並ぶんですけれども、また新しいマンションができたな。先日、新聞の報道で、都内の二十三区内にあるマンションの販売価格が六千万を超えている、バブル以上の価格になっていると。需要があるんだなというふうに思うんですけれども、まず初めに確認をしたいんですけれども、RCだとか鉄骨の建築物の耐用年数若しくは使用できる年数をお尋ねしたいと思います。

石坂政府参考人 お答えいたします。

 建築物の寿命につきましては、いわゆる法定耐用年数がございますが、実際には、建物の立地、環境、維持修繕の状況等に大きく影響を受けるものでございます。このため、建築物の耐用年数について一概にお示しすることは困難でございますが、適切な維持修繕が行われていれば、長期にわたって安全な状態を保つことは可能ではないかと考えているところでございます。

鈴木(義)委員 財務省の方で、いろいろな、耐用年数というんですかね、減価償却の年数でいくと、鉄筋コンクリート造で、鉄骨コンクリートのものが四十七年。

 これは、私の資料が間違っているか分かりませんけれども、古いんですよね。一九五一年に大蔵省の主税局が、コンクリートの中性化から算出した物理的効用持続年数を百二十年と見ているんです。間違っていたら言ってください。それで、外装仕上げをした場合、これも大蔵省の主税局が一九五一年に出しているんですけれども、百五十年と言っている。長期ですよね。間違っていないか、もし御答弁できればお願いしたいんです。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 法人税法の減価償却資産の耐用年数等に関する省令におきましては、鉄骨鉄筋コンクリート造りの住宅用、寄宿舎用、宿泊所用等の建物の耐用年数は四十七年とされているところでありまして、今お尋ねのSRC造りの居住用マンションの耐用年数は四十七年となるということでございます。

鈴木(義)委員 じゃ、百二十年、百五十年というのは、大蔵省、今は財務省になっているんでしょうけれども、それは間違いないか、ちょっと御答弁いただきたいんですけれども。

 まあ、たまには助け船を出さなくちゃいけないのかなと思うんですけれども。

 ところで、法務省のホームページを見て、どういう所管をしているのかとずっと見ていたら、区分所有法というのが法務省の所管になっていたんですね。これは国交じゃないのかなと思ったら、法務省なんです。これは自分の解釈なんですけれども、所有権、区分所有法ということだから、権利に関わるから法務省が所管したんだと思うんです。

 今御答弁いただいた四十七年については、昭和四十年ぐらいに位置づけしたもので、もう五十年以上たっているのに全然見直しがされていない。先ほど、いきなりの答弁だったので数字を持ち合わせていなかったんだと思うんですけれども、百二十年とか百五十年という数字が出ているわけです。

 このマンション法と言われる区分所有法が、間違っていなければ昭和三十八年にスタートしていると思うんです。約六十年近くたっているんですね。その間、大丈夫かなと思って、今日、最終的には法務大臣の意気込みをお尋ねしたいんですけれども。

 今御答弁いただいた中で、結局、建築後のそのメンテナンスの仕方いかんによっては、劣化して対処が必要な老朽化マンションが増加しているとも言われているわけです。相続などにより区分所有者の一部が不明となったり、高齢化などにより区分所有者の合意形成が難しい場合、元々管理組合が機能していない場合など、様々な問題があると言われています。建物の区分所有等に関する法律、区分所有法の見直しについて、喫緊の課題になっているんじゃないかと私は思うんです。

 最初にこの法律がスタートした昭和三十八年頃は、大体、一棟で二十世帯から三十世帯ぐらいを想定していたんだそうです。それが、今、一棟で百世帯、二百、五百、千、下手すれば二千とかですね。都内にはいっぱいタワーマンションが建っていますから、もう何百じゃ利かない。これが、最初の立法のときから六十年近くたっているのに、区分所有法の限界が来ているんじゃないかというふうに私は思うんです。

 一つの事例を挙げます。

 二〇一九年に、滋賀県の野洲市において、廃墟マンションが強制解体方針であるとの報道がなされた後、老朽化が進んで、マンションが廃墟同然となり、外壁が崩れるなど危険な状態になったところを、野洲市は、空き家対策特別措置法に基づいて解体命令を出すものの、区分所有者の一部と連絡が取れず、自主解体ができないので行政代執行をしたんです。当初の見込みが七千万か八千万だったんですけれども、最終的には一億八千万で解体したという。これは新聞の記事にも出ていたと思うんです。

 このような廃墟同然の建物や土地に対して、区分所有法ですから、固定資産税はお支払いいただいていたのか、誰も住んでいなければ払う必要もないから滞納していたのか分かりませんけれども、その事実確認だけ、ちょっと確認したいんですが。

川窪政府参考人 お答え申し上げます。

 固定資産税につきましてでございますが、まず、課税客体となります家屋につきましては、不動産登記法の建物とその意義を同じくするものでございまして、具体的には、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものとされているところでございます。この要件に合致する場合には、建物、家屋としての固定資産税の課税対象となるものでございます。個別の事案につきましては、個別具体の事実関係に応じて、課税庁において判断されるということとなります。また、土地につきましては、建物の敷地であるか、あるいは更地であるかにかかわらず、土地としての課税対象となるものでございます。

 なお、固定資産税の課税の状況、また課税後の収納や滞納の状況につきましては、全体としての統計しかございませんで、そのうち、そうした廃墟同然のものについて状況がどうかということにつきましては、ちょっと数字としては把握できておらないところでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

 それで、この野洲市の案件で、報道によれば、所有者は個人八人と法人一社、解体費用は一者当たりに計算すると一千三百万ぐらいかかったんですけれども、納付したのは個人三人のみで、残る約七千九百万円の回収は滞っているという報道なんです。

 公費で解体されている以上、回収されていない部分の負担は税金で賄うことになるんですけれども、こういった事例は今後全国で、いろいろなところで出てくるんじゃないかと私は思っています。

 こういったマンションに対して、解体命令が全国でどのぐらい出された事例があるのか、教えていただきたいと思います。

石坂政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年の空き家対策特別措置法の施行以降、令和三年三月末までに特定空き家に対して何らかの命令を行った件数は、全国で二百十五件と認識しておりますが、先生御指摘のような、廃墟同然のマンションに対して除却の命令を行った件数や除却に至った件数については、先生御指摘の滋賀県のマンションの事例以外についてはちょっと承知をしていないところでございます。

鈴木(義)委員 まあ、調べていないんじゃないかなと思いますけれどもね。例えば、リゾート開発しているところのゴルフ場に隣接しているホテルだったところが廃墟同然になっている。窓枠だ何だという全部を取っ払えば建築物としてはみなさない、工作物には該当するんでしょうけれども。私はそれを自分の目で見たことがありましたよ。是非調査してもらいたいなというふうに思います。

 私の地元でも、公団が建てた、五十年を超えている公団が何棟もあるんですけれども、このような事例が、再度繰り返しますけれども、今後ますます増加していくんです。そこにお住まいの方も、ほとんど年金でお暮らしをされている方が大半。分譲で買っていますから、それを建て替えるといったって、差額代、一千万だ、一千五百万だ、二千万だと出せるか。出せないですよね。

 そこの公団にお住まいの方のお話を聞くと、一万五千円の修繕費と管理費を払ってもらえれば賃貸でいかようにでも。結局、相続になったときに、自分は福岡に住んでいて、埼玉の物件を所有はしているんです、相続で。管理費は一万五千円払っているんですけれども、違う人に貸している人もいれば、貸さないで管理費の一万五千円だけ払ってそのまま継続している。これを、じゃ、どうするという話なんです。

 区分所有法では対応がもう難しくなっているのは明らか。過去に何回か法律の改正はやっているのは聞いておりますけれども、でも、もう六十年たって、一つの事例しか今ないよという話なんですけれども、実際、調べていけば結構、これはちょっとまずいんじゃないのと。例えば阪神・淡路もあったし、山古志村の地震もあったし、東日本もあったし、もっと古く言えば神戸、大阪の、淡路島の地震もあったし、結局、そのたびに建築の基準法を上げて、強度を上げるものじゃないと許可しない。じゃ、古くなったやつはどうするのという話なんです。誰もそれを問いかける人がいない。

 ここでただ言うだけじゃしようがないので、例えば、私、今、経産委員会に所属していて、今年の七月から、太陽光発電で十キロワット以上のを設置したものに関しては、廃棄費用を、固定資産税とはちょっと違うんですけれども、お預かりしようという制度ができているんです。十年、二十年たって、太陽光発電をやらなくて野ざらしになった。途中で事業がうまくいかなくて放置しました、会社は潰れています、誰も撤去しない。環境保全上どうするんだといっても、当事者がいなくなっちゃっている、会社がもうないんだから。じゃ、またこれは行政代執行をするんですか。それは、今やはり区分所有法の抜本的な見直しをしていかなくちゃいけないと思うんです。

 だから、これはちょっと算出する数字が難しいんですけれども、将来にわたって、これが四十七年じゃなくて、七十年住めるのか、百年住めるのかによってお預かりする金額が変わってくるし、そのときの経済状況で、解体費用が幾らになるかはなかなかこれは見通しというのは難しいんですけれども、でも、解体費用の捻出を、今申し上げたように、太陽光発電と同じような仕組みをつくって、少しずつ少しずつ、所有している人に、コンマ一%なのかコンマ五%なのか、それを、取り崩させないような形で、供託金みたいなものできちっとお預かりするという制度をつくっていった方がいいんじゃないかと思うんですよね。

 最後は、人口減少です、今、八百万を超える空き家があります、どんどん建物が建っています、それで結局、壊すときになったら全部税金でやりますというのが一番いいですよね。それはやはりちょっと違うんじゃないかと思うんですけれども。今日では受益者負担の原則が少し崩れていて、負担は税金でという考え方が多過ぎるんじゃないかと思うんです。

 今までの議論の中で、法務大臣に是非意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

古川国務大臣 委員からは、区分所有建物の建て替えを含め、様々な問題について今御指摘をいただいたところであります。

 マンション等の区分所有建物の建て替え決議をするためには、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の賛成が必要であるとされておりますが、要件が厳格に過ぎるというような指摘もございます。

 そういう様々な、この指摘も含めて様々な指摘がある中で、現在、法務省も参加しております研究会におきまして、区分所有法の見直しに向けた論点整理が進められているものと承知いたしております。

 この研究会におきましては、建て替え決議の要件緩和につき、多数決割合の単純な引下げですとか、所在等が不明な区分所有者を決議の分母から除外することを含めて、幅広く検討がなされているというふうに承知をいたしております。

 負担の話も先ほど来御指摘されていますけれども、マンションは堅固で長寿命なものも多うございますから、適切に管理される限り取壊しがにわかに必要とはならない、そのようなものもあるというふうに考えられるところなんですけれども、御指摘のように、取壊し費用の積立てを一律に義務づける、何かそういう制度を設けるということになりますと、場合によっては、区分所有者にとって過度な負担となるようなおそれもあると思われますから、一律に何か義務づけるということについては、やはり慎重な検討が必要ではないかというふうに考えています。

 一方、御指摘されているように、老朽化によりマンションを取り壊さざるを得ないという事態を予防するためには、必要な管理費を確保してマンションの円滑な管理を図ることは、やはり重要な課題であるというふうに認識をいたします。

 先ほど申し上げました研究会におきましては、管理費の額の決定などを行う集会の決議の円滑化などについても検討されているものと承知をいたしておりまして、多角的に検討が進められることを期待しているところです。

鈴木(義)委員 そもそもの話なんですけれども、結局、この法律ができたときに、法務省が所管していて、建物の構造だとか強度に関しては、国交省の協力を得られなくちゃ判断がつかないと思うんですよね。

 先ほど前段で申し上げたように、行政代執行で、七千九百万。まだこれは十世帯ぐらいだったからいいんですよ、トータルで一億八千万で済むんですけれども。例えば、あと百年たって、タワーマンションを解体するといったら、何十億じゃ終わらないと思うんです。それを税金で出すんですかというお尋ねなの。だから、そこにお住まいになっている人は、結局、今からでもいいから少しずつ、別途枠でいいから積み立てていかないと、誰が、じゃ、最終的にそれを取り壊すんですかという話になっちゃうだろうということなんです。

 もう一回、ちょっと、研究会に振っているというだけじゃなくて、やるよという、何か、こうこうという、お願いしたいんですけれども。

古川国務大臣 それは、何でもかんでも税金、公的な負担で片づけるというような考え方はいかがなものか、そういう御趣旨での委員の問題意識であるというふうに思います。私はそこに共感をいたします。

 先ほども御紹介いたしましたように、既に、区分所有の在り方についての議論というのは鋭意始まっております。様々な論点をそこにのせて今動いているところですので、それを期待を持って見守っているところです。

鈴木(義)委員 一生懸命やはり自分で旗立てて行くぞというふうにやらなければ、これは問題解決にならないと思いますよ。いろいろな部署が入ってくれば入ってくるほど利害関係が出てきますから、そこのところは是非、取りまとめたら、報告書でもいただければありがたいなというふうに思います。

 それで、もう一つ、もう時間がないので、お尋ねしたいんですけれども、契約ということに関してもう一回おさらいをしたいんです。

 民法五百二十二条には、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対して相手方が承諾したときに成立すると。当たり前の話ですね。契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方法を具備することは要しない、こういうことになっている。

 これが民法のたてつけなんですけれども、これじゃカバーし切れないからということで、下請法ができたり、宅地建物、宅建法ができたり、消費者の関係の消費者契約法だとか、独禁法の下請法などができるんですけれども、日本の社会が契約社会になり得ているのかどうかということなんです。

 例えば、これも経産で使わせてもらう資料なんですけれども、働き方改革をして、それによってコストが上がった部分を、元請さんがそれを承諾してくれているのかというアンケートを取るわけです。元請さんでいう、仕事を出す方からすると、結構な割合で、やっていますと答えるんですけれども、下請さんの方でアンケートを取ると、そのギャップがこんなにある。

 罰則も何もないんです。でも、世の中、契約社会だと言われている。だから、そこのところをもう一回、法務省が、先ほどの続きじゃないんですけれども、契約ということを、準ずるんだったら、最初の前提をきちっと捉えなくちゃいけない。もし時代背景が変わってくるとかニーズが変わってくれば、その本のところ、前提を変えなくちゃいけないという考え方なんです。どうですか、大臣、御答弁いただけますかね。

古川国務大臣 委員御指摘のとおり、契約上のトラブルといったものを未然に防止するためには、契約の締結に際して、当事者双方がその内容や効果を正しく理解することが極めて重要であります。

 その観点から、契約自由の原則、私的自治の原則など、私法の基本的な考え方の理解を深めることを含め、法教育を広く国民に浸透させていく必要がある、これが重要なポイントだというふうに考えております。

鈴木(義)委員 私は、契約社会だということを認識されているかどうかのお尋ねだったんですけれども。

 確かに、契約は口頭で成り立つ。そこで、口頭だからトラブルが生まれるわけですよ、言ったの言わないのと。契約内容が当事者同士で明らかにならないで、言ったの言わないので争いが起きたり、契約内容がきちっと履行されていないことで争いが起きている。裁判所に裁判を持ち込んでジャッジをしてもらうということにつながるんですけれども。

 今年の四月から成年年齢も十八に引き下げられたり、先ほど申し上げたように、社会背景がどんどんどんどん変わってくるんです。学校教育で、契約に関しては教育でちゃんとやればいいんだというふうにおっしゃっているんですけれども、もう十八から成人になっちゃう。自由に契約ができる。

 また、契約について、口頭で、いいです、いいじゃないという話になったときに、誰も助けてくれないような社会じゃなくて、第一原則を口頭契約じゃなくて書面による契約、そして記録を残すという社会にしていかないと、同じトラブルが同じように繰り返されるんじゃないかというふうに思うんですけれども、もう時間が来ていますので、大臣の御答弁をいただいて、終わりにしたいと思います。

古川国務大臣 成年年齢引下げということがあったということもありまして、やはり若年者が契約上のトラブルに巻き込まれるのを未然に防止するためにも、そのような視点からの取組というのは非常に重要だ、その重要性はいよいよ増しているというふうに認識しております。

 そこで、法務省ではこれまで、法教育教材の作成、配付、教員向け法教育セミナーの開催、法律専門家による出前授業の実施など、特に学校現場において、より充実した法教育が実施されるよう取組を進めてきたところであります。

 また、令和二年度からは、契約や私法の基本的な考え方などについて分かりやすくまとめた高校生向け法教育リーフレットを作成しまして、全国の高校二年生を対象に配付をいたしております。

 なお、この法教育のリーフレットは、法務省ホームページで公開をしておりまして、公開以来、大学や関係機関等からも問合せが寄せられるなど、広く一般にも利用されているところでございます。

 法務省としては、こうして、引き続き、関係機関等と連携しながら、法教育の一層の推進を図り、国民が私法の基本的な考え方についても理解を深められるよう、積極的に取り組んでまいりたいと考えています。

鈴木(義)委員 中学卒業したり高校中退した人は、公教育は受けられない、そこで終わっちゃうということを認識して、終わりにしたいと思います。

 終わります。

鈴木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属の鈴木庸介です。今日もよろしくお願い申し上げます。

 ウクライナでは、三月中はかなり外出禁止令が多発されたと聞いております。時にはこれは三十五時間にわたりまして、この外出禁止令、空爆への備えという意味もあるんですけれども、禁止された大きな理由の一つとしては、ロシアの工作員が施設の状況を確認した情報を本国に送っていたため、こうした人たちをあぶり出すためだったということであります。

 スパイが町じゅうで建物などを調べて、蛍光塗料の印をつけていたと現地の人は語っているわけですけれども、当然、戦争を始める前には、相手国の施設を調べて、どういった工作ができるのかということを確認するのかと思います。

 こういった中で、我が国においても、先月には、津軽海峡をロシア軍の軍艦が十隻航行したり、宗谷岬沖にもロシア軍の潜水艦や駆逐艦の航行が確認されたほか、数日前には対馬海峡の方にも、日本海に抜けていったというような、そういった報道がございます。ロシアだけではなくて、中国の無人機も東シナ海の日本の防空識別圏内を飛行したとも言われております。

 世界情勢がこれまでとは全く違った理屈で今動き始めている中で、今日は、まず、国内での外国によるスパイ行為について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、日本では、外国人によるスパイ活動やテロの脅威に対してどのように取り組んでいらっしゃるのか、概要を教えていただければと思います。

横尾政府参考人 まず、公安調査庁といたしましては、必要な日本国内におけるスパイ活動に関する調査というものを実施させていただいているところでございます。

鈴木(庸)委員 まあ、やっているのはもちろん分かるんですけれども、もう少し具体的にお願いできますでしょうか。例えば情報コミュニティーとか、いろいろそういった存在があるかと思うんですけれども。

河野政府参考人 現在の情報コミュニティーは、内閣直属の情報機関として内閣情報調査室が設置され、また、情報コミュニティー各省庁が内閣の下に相互に緊密な連携を保ちつつ情報収集、分析活動に当たっております。

 具体的には、内閣官房長官が議長である内閣情報会議や、その下に置かれる合同情報会議を通じるなどして、各省庁が収集、分析した情報が集約され、総合的な評価、分析を行う体制が整備されており、情報コミュニティーとして機能していると認識しております。

 我が国を取り巻く国際環境が一層厳しさを増す中で、情報の収集や分析等は極めて重要であると認識しており、政府としては、今後とも情報機能の強化を図ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 内閣情報調査室だと国際部門、公安調査庁だと調査二部で、警察庁だと全国の警備部と警視庁公安部というところだと思うんですけれども、それぞれの組織は、具体的にどのような活動、具体的といってもどこまで具体的かという話もあるんですけれども、すみ分けはどうなっているのか、お話しできる範囲で伺えますでしょうか。

河野政府参考人 我が国の情報コミュニティーの各省庁は、内閣の下に相互に密接な連携を保ちつつ、それぞれの所掌に応じ、情報の収集、分析活動、情報分析活動に当たっているものと認識しております。

 内閣情報調査室におきましては、内閣法の規定に基づき、内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務をつかさどっておりまして、官邸の情報関心に基づき、幅広い観点から、国内外の政治経済情勢等について情報収集活動を行っております。

鈴木(庸)委員 僕はここに問題意識を一つ感じておりまして、これはそれぞれの省庁が独自に捜査、調査していらっしゃると思うんですけれども、やはり警察庁さんが圧倒的に情報量は持っていると思うんですけれども、ここである程度情報の共有みたいなものができているのかというところが問題意識としてございます。

 というのは、私、以前、ニューヨークにいたことがあるんですけれども、現地は、外務省からは領事の方が出てきていて、経産省からはジェトロに人が出てきている。両方とも、本当に優秀なエース級の方々がいらしているんですけれども、結局、全然コミュニケーションを取っていない。

 これはニューヨークだけなのかなと思ったら、世界中でジェトロと外務省は余り情報を取っていないよみたいな話も聞こえてきていて、これが、日本の情報コミュニティーの中でもそういったことが起きてしまっているのではないのかなというような危惧がありますので、是非、出せる情報は出して、緊密に連絡を取りながら対策に当たっていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。

 その中で、ここは法務委員会なので、公安調査庁についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 現在、外国からの脅威に対する体制等、どのぐらいの予算でやっていらっしゃるのか教えていただければと思います。

横尾政府参考人 公安調査庁といたしましては、外国からの脅威等を含む調査活動費、全般の調査活動費といたしましては約二十億円ほどの予算をいただきまして、それで、調査一部、調査二部の方でそれぞれ適切な調査活動を行うということで執行させていただいておるというところでございます。

鈴木(庸)委員 二十億ということなんですけれども、実際にそのぐらいの予算規模だと、人件費を払ったら、尾行対象に対する監視捜査以外できないんじゃないかなというような感覚をちょっと持っておりまして、公安調査庁さんも破防法の範囲から出ることはできないということはもちろん承知しているんですけれども、例えばCIAとかMI6がやっているような大がかりな捜査をすることも含めて、今はこういう時期なので、外国からの脅威に対しては十分な予算措置も含めて法務省には検討していただきたいなと改めて思うところでございます。

 それと並行して、八人のロシア人の外交官が国外退去処分になった件についても伺わせてください。

 二十日に国外追放となったロシアの大使館の外交官とロシア通商代表部の職員、合わせて八人ということなんですけれども、去年六月も神奈川県警が七十歳の男を電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕して、このときもロシア通商代表部の名前が出ている。おととしも某通信会社の元社員が機密情報を持ち出したそのときにもロシア通商代表部の名前が出ている。何か毎年のように出ている印象があるんですけれども、政府として、このロシア通商代表部というのはどういった組織だと認識していらっしゃいますでしょうか。

横尾政府参考人 ロシアの通商代表部につきまして、我々の方からどうこう言うような立場ではございませんので、その点の答弁については差し控えさせていただきます。

鈴木(庸)委員 いや、何を言いたいかというと、例えば、よく言われるのは、展示会に来て名刺を渡されて、そこから関係が深まっていくというようなことが実際のケースとしてもありますような、警察の書類にも結構このロシア通商代表部の名前が出てくると思うんですけれども。私も浪人時代、大臣は焼き鳥屋さんをやっていたと存じ上げておりますけれども、私、ショットバーをやっていまして、バーテンもやっていたんですが、自分で一生懸命やっているときに、例えばこのロシア通商代表部みたいな名刺を持った方がぱっといらっしゃったら、舞い上がっちゃうわけですよね、中小企業は。自分で一生懸命つくった技術があって、展示会に行っている、そこに、いや、あなたの技術はすばらしいと、全く知識のないところにそういう人たちが来たときに、国として、ある程度そこの方針が、今、何とも言えないということだったんですけれども、一般企業の皆さんに対する啓蒙につながればいいなと思ってちょっとこの質問をやらせていただいているんですけれども。そうすると、この組織についての、日本政府は見解を持っていないという理解でよろしいんでしょうか。

横尾政府参考人 繰り返しになりますけれども、ロシアの通商代表部について、政府として私が答弁する立場ではないということでございます。

鈴木(庸)委員 別に、公安調査庁さんじゃなくても、警察庁さんでもどちらでもいいんですけれども、政府として見解があればお伺いしたいということで通告はさせていただいていたんですが。

河野政府参考人 ロシア通商代表部に関する政府の見解について、内閣情報調査室はお答えする立場にはないということでございます。

鈴木(庸)委員 分かりました。いろいろなところで名前が出ている団体ですので、一般的にはそういうことなのかなというようなところもあるんですけれども。

 ロシアだけではなくて、中国の諜報活動についても留意しなくてはならないと思います。国内約二百の企業や研究機関へのサイバー攻撃に関与した疑いが強まったとして、警視庁の公安部が去年、中国共産党員でシステムエンジニアの三十代の男を書類送検したということなんですけれども、先ほど伺ったら、これも不起訴処分になっているということで伺いました。

 何を申し上げたいかというと、この件はいわゆるサイバー攻撃なんですけれども、私電磁的記録不正作出、同供用の疑いということなんですが、これだと五年以下の懲役か五十万円以下の罰金なんですね。ほかの国では死刑まである重大犯罪であるスパイ活動というものを、今の法律とか、不正競争防止法とか、窃盗罪とか、建造物侵入とか、こういった刑の軽い特別法とか一般刑法で取り締まっているという今の現状が、私の問題意識としては、これがスパイに協力する人たちのインセンティブになってしまわないかということが大変不安に思っております。

 サイバー攻撃だけじゃなくて、産業情報など、日本が守るものは、本当に大変多岐に及んでおりますので、是非、厳罰化も含めた、捜査しやすい法整備についての検討もお願いできればと考えております。

 また、先ほど情報コミュニティーについての御説明はいただいたんですけれども、現場の、例えば公調の調査員の方々とかともいろいろお話を伺っていると、やはり国からの脅威については、対外情報庁みたいなものをつくって、その道のプロである、対人捜査とか電波傍受とかサイバーテロとか、こういった皆さんを、出向ではなくてちゃんと移籍で移して、専門的になってもらう。それに専門に予算をつけていけば、その省庁はもうやるしかないということになると思うので、是非、そういったことについても検討をいただければなと思います。

 このパートの最後に、ちょっと公安調査庁に一点だけ伺いたいんですが、例の、現在マリウポリで戦っているアゾフ大隊についての報道がございました。国際テロリズム要覧のネット版記事に載せていた、ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成したという部分を削除したものですけれども、ロシアの外務省がこれに口を出してきたと。

 この問題について、経緯を御説明いただけますでしょうか。

横尾政府参考人 まず、公安調査庁がネオナチ組織の認定とか指定という業務というのは行っておりません。公安調査庁がアゾフ大隊をネオナチ組織と認定した事実というものはございません。

 当庁が作成しております国際テロリズム要覧でございますけれども、これは、最近の国際テロ情勢やテロの脅威などにつきまして、内外の研究機関などが公表する報告書等を収集した公開情報を取りまとめたものでございまして、公安調査庁の独自の評価を加えたものではございません。

 アゾフ大隊につきましては、研究機関が公表したレポートなどを踏まえて、国際テロリズム要覧二〇二一において言及したものでございます。

 近時、一部におきまして、公安調査庁がアゾフ連隊をネオナチ組織と認めている旨の事実と異なる情報が拡散されている状況というのが見受けられましたので、このような事実と異なる情報が拡散されることを防ぐため、公安調査庁ホームページ上の国際テロリズム要覧二〇二一から当該記載を削除することとしたものでございます。

鈴木(庸)委員 そうなると、公安調査庁さんの出している書類とか冊子とか、こういうものに対しては、その情報の出どころに対して責任を持たないということになってしまうかと思うんですが、いかがでしょうか。

横尾政府参考人 情報の出どころ等につきましても、この国際テロリズム要覧で注書きという形で出典は明らかにしておりますし、そもそも国際テロリズム要覧というものが、こういう、研究機関等の公開情報を取りまとめたものであるということを前提に作られているものでございますので、その出典等について責任を負わない云々という話は当てはまらないのではないかというふうに考えております。

鈴木(庸)委員 なるほど。いろいろな御意見もあると思うんですけれども、やはり国の機関として出しているものですから、一般の方はそれを信じて、自分の行動に対する決定の材料にすると思うんですね。ですから、いろいろな御意見、お考えはあると思うんですけれども、やはり国の機関として、本当はできるだけ正確な情報を集めていただけますよう、重ねて強くお願いをしたいとお願いを申し上げます。

 次に、ウクライナからの避難民についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今、ウクライナ避難民に対する支援とかサポートの体制、これを改めて概要を御説明いただいてよろしいでしょうか。

西山政府参考人 政府では、官房長官を長とするウクライナ避難民対策連絡調整会議、これを司令塔といたしまして、政府一体となってウクライナ避難民の円滑な受入れと生活支援等を行っていくこととしております。

 入管庁におきましては、これまでに、避難民の方々の在留資格についての柔軟な対応、自治体や企業、NPO、NGO等からの支援申出を一元的に把握するための窓口の開設、あるいは自治体が運営する相談窓口におけるウクライナ語通訳に係る支援などの取組を実施してきたところでございます。

 また、身寄りのない避難民の方々に対しましては、既に、一時滞在場所の提供、生活費や医療費の支給を始めており、今後、カウンセリング、日本語教育、就労支援等、受入れ後の各場面に応じた具体的な支援策を実施していくこととしております。さらに、関係省庁と連携いたしまして、自治体や企業、NPO、NGO等による支援とのマッチング等も進めていくこととしています。

 今後とも取組を進め、政府全体として、避難民の方々にしっかり寄り添った支援に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 今日、一番最新の情報でお話しできればなと思ったので、現地の人たちと、ちょっと朝、電話してきたんですけれども、ヨーロッパではちょっと潮目が変わり始めているんですね。

 というのは、例えば、最初に脱出した皆さんというのは、情勢が少し安定してきたので、今キエフに戻ろうとしている人も多いと。昨日とおとといのキエフ行きのリビウからの列車というのは立ち乗りの人も出始めているということでした。また、その彼らと入れ替わるように、激戦区になりつつある東部から来た人たちがヨーロッパ諸国に逃げ延びていると。

 問題としては、例えば、ポーランド国内とかドイツとかで、家と仕事も用意した、でも、すぐにいなくなってしまって仕事に穴が空いたとか、自宅を提供したのに、ある日、何も言わずにいなくなってしまったとかということで、これまでかわいそう、かわいそうでヨーロッパも受け入れてきたんですけれども、紛争が長期化する中で、ウクライナ避難民の在り方についてはちょっとヨーロッパもこれまでとは違った見方をしてきているんだろうなと、潮目が変わりつつあるのを感じているところでございます。

 日本も、法務大臣の御英断で多くのウクライナの避難民が入ってきておりますけれども、現在のところ、そのようなトラブル、今のところ日本では聞いていないんですけれども、ヨーロッパの潮目が変わっても日本はぶれないという姿勢を示していただきたいと重ねてお願いを申し上げたいと思います。

 日本に実際いらっしゃったウクライナ避難民の皆さんに聞くと、こんな冊子が入管庁から送られてきていると。これは結構、なかなか分かりやすいことになっているんですけれども、例えばハローワークが仕事を手伝うとか、学生はこういって学校に入ってくださいとか、そういうのがあるんですね。大変よくできた資料だと思います。

 我々、常々入管庁の在り方については厳しい意見をお伝えしておりますし、今日もこの後、山田代議士ががっつりやるかと思うんですけれども、このウクライナ支援については、入管庁さんの限られたリソースの中でも一生懸命サポートしていこうという覚悟が感じられますので、そこは大変評価をさせていただきたいと思います。

 また、実際にお金が入らない、電車賃が払えないといった声とか、給付金の最初の支払いについても迅速にお願いしたいみたいな声とか、あとは、テレグラムとかフェイスブックに、日本に来た人たちとこれから日本に来ることを考えている人たちが情報交換するホームページとか、いっぱいあるんですね、こういったところに、日本は地震があるから大変だとか、ウクライナ語しかしゃべれないんだけれども仕事が見つかるのかとか、そういった声が多く寄せられていますので、是非、そういったところに入管庁のアカウントから書き込むことも含めて、攻めの広報をお願いしたいな、そうすればもっと安心して皆さんお越しいただけるのかなと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 ところで、ロヒンギャとかシリアとかアフガニスタン難民とこのウクライナ難民の取扱いがここまで違う理由は何なんでしょうか。

西山政府参考人 ウクライナ避難民に対する現在の我が国の対応につきましては、まさにウクライナが頻する危機的状況を踏まえた緊急措置として、避難される方々にまずもって安心できる避難生活の場を提供すべく、政府全体として取り組んでいるものでございます。

 そのため、現在のウクライナの方々への対応とそれ以外の方々への対応とを一概に比較して論じることは困難ではございますけれども、本国における情勢不安を理由として、就労可能な特定活動の在留資格の変更を認めるといった対応につきましては、これまでも、本国情勢を理由に我が国での在留を希望するアフガニスタンやミャンマーの方々などにも認めてきたところでございます。

 したがいまして、ウクライナ避難民と同様に、アフガニスタン等から避難してきた方々につきましても、特定活動の在留資格への変更をすることで、例えば国民健康保険等の各種住民サービスを受けることが可能となってございます。

 今後も、困難に直面する方々に寄り添った支援を速やかに実施できるよう、政府全体としてしっかりと対応していきたいと考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 今、大変重要な答弁だと思うんですけれども、例えば、今ウクライナの皆さんがヨーロッパの現地の日本大使館にビザを申請すると、ほぼ一日で出てくるという話なんですね。

 御案内のように、三月二十二日には、アメリカのブリンケン国務長官が、ミャンマー国軍が国内の少数民族ロヒンギャに対してジェノサイドを行ったとアメリカ政府として正式に認定したと発表しています。また、最初の一か月だけで六千人以上殺害されて、逃れたロヒンギャの難民の皆さん、数十万人に上るというデータもあるんですけれども、今の言い方だと、例えば、こういった方々に関しても、日本までの飛行機代を出すか出さないかは別として、申請すれば特定活動について十分道が開けているというような、そういった理解でよろしいんでしょうか。

西山政府参考人 先ほども申し上げたとおり、本国の情勢に鑑みまして日本に庇護を求めるという方々に対しては、ウクライナの方々もそうですけれども、ほかの、本国の情勢で帰国が困難な方につきましても同様に特定活動を認めていくという対応を取っておるところでございます。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 例えば、ワールド・ビジョンさんの推計ですね、シリアだと、十五歳未満の子供が武装勢力に徴用されたうちの二五%を占めて、八二%が直接戦闘に動員されたとかとあるんですけれども、例えば、具体的なお話をさせていただくとするならば、シリアやミャンマーとかから今いっぱいいろいろな方々が、日本でも難民申請している方もいるかと思うんですけれども、そういう方も、難民としてではなくて、特定活動に切り替えてくださいというのだと、もちろん、本国情勢に鑑みてということは分かるんですけれども、これは比較的簡単、簡単というか、ウクライナ避難民並みに特定活動にすることができるということでよろしいんでしょうか。

西山政府参考人 委員が今お話しになったように御理解いただいて構わないと考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 まさかこんな答弁がいただけると思っていなかったので、大変、日本の移民政策というのは変わりつつあるんだなということを、古川大臣の下で改めて感じたところでございます。

 今まではダブルスタンダードとかトリプルスタンダードがあったために、せっかく人権国家として尊敬される日本がチャンスをなくしてしまっていたのかなというふうに思っております。

 ただ、こうした対応を通じて、開かれた国になりつつあるんだなということをアピールしていけば、潮目が変わって、態度も変わりつつあるヨーロッパの国々と違って、やはり日本はいい国なんだなと思っていただけるところになるかと思いますので、引き続きの御努力をお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、山田勝彦でございます。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、最後の被爆地である長崎の声を、二十日の厚生労働委員会で届けさせていただきました。黒い雨訴訟について、後藤厚生労働大臣にこのように尋ねました。

 政府は、内部被曝による健康被害を認めた広島高裁の判決をなぜ真摯に受け入れないのでしょうか。判決では、黒い雨に放射性降下物が含まれていた可能性があったことから、雨に直接打たれた者は無論、たとえ打たれていなくても、空気中に滞留する放射性微粒子を吸収したり、水を飲んだり、野菜を摂取したりすることで、内部被曝による健康被害を受ける可能性があったことから、被爆者に該当するとされました。つまり、雨に打たれたかどうかではないと広島高裁では明確に述べられています。この判決を受け入れた政府が、なぜ執拗に雨にこだわるのでしょうか。長崎においても、雨に打たれた方はもちろん、たとえ打たれていなくても内部被曝の可能性があったことから、広島同様に被爆者として認めるべきではないでしょうか。

 そのように後藤大臣に尋ねたところ、後藤大臣はこのようにお答えされました。

 今回の判決には、原子爆弾の健康影響に関する過去の裁判例と整合しない点があるなど、重大な法律上の問題点がある。とりわけ、黒い雨や飲食物の摂取による内部被曝の健康影響を、科学的な線量推計によらず、広く認めるべきとした点は、これまでの被爆者援護制度の考え方と相入れず、容認できるものではない。

 政府は、あくまで広島高裁の判決を全面的には受け入れていない。内部被曝も含め広く認めるべきとした点について容認できない等の理由から、黒い雨に打たれたかどうかで、個別審査による被爆者認定にこだわり続けています。

 本来、司法の判決に不服であるならば上告すべきであり、上告を当時の政府は断念し、その判決を受け入れたならば、判決内容に対し、正確に運用していくべきではないでしょうか。広島高裁で判決が確定した黒い雨訴訟について、政府は、判決内容を恣意的に解釈して運用している。これに対して、争訟の統一的で適正な処理を任務とする法務省の見解について、古川大臣にお尋ねします。

 政府の現状の、黒い雨訴訟、恣意的運用は適切なのでしょうか。広島高裁の判決内容に対し、忠実な運用に改めるべきではないでしょうか。お答えください。

古川国務大臣 被爆者援護法による被爆者の認定の運用については、厚生労働省が所管をしており、法務省としてお答えする立場にはございません。

 その上で、一昨日、厚生労働大臣が御答弁されているとおり、黒い雨訴訟の判決を踏まえることとして、被爆者認定指針が定められたものと承知しております。

山田(勝)委員 この国は、国家権力を三つに分ける三権分立によって、国家権力の濫用を防止し、国民の権利と自由を保障する仕組みになっています。現行の被爆者救済制度の政府による恣意的運用には重大な問題があることを指摘した上で、入管についての質疑に入ります。

 早速、配付させてもらいました資料を御覧ください。配付資料一です。前回の質疑でも紹介させていただきました。

 これは、法務省の公文書で、「安全・安心な社会の実現のための取組について」というタイトルで、各入管に通知がなされています。前回も大臣にお尋ねしましたが、文章の内容を詳細には把握していないという前回回答でしたので、配付資料として御用意いたしました。この文章には驚くべき言葉が散見されています。

 外国人との共生を大臣所信で強調された古川大臣にお尋ねします。外国人の方に対し、排除という言葉が用いられておりますが、この文章の取扱いはこのままでいいのでしょうか。

古川国務大臣 御指摘の通知は、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が予定されていた当時の情勢下において発出されたものでありまして、多数の外国人を歓迎する安全、安心な社会を実現すべく、我が国の社会に不安を与える外国人を縮減するための取組の実施を指示する内容であると承知しております。

 我が国社会に不安を与える外国人の効率的、効果的な排除との言葉遣いが不適切ではないかとの御指摘については、そのような御意見があることも真摯に受け止めたいと思いますし、今後、十分に配慮してまいりたいというふうに考えています。

 もっとも、我が国において、日本人と外国人がお互いを尊重し合い、安全、安心に暮らせる共生社会を実現していくためには、外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れ、適切な支援等を行っていくこととともに、ルールに違反する者に対しては厳正に対応すること、退去強制とされた者については速やかに送還することも、入管行政を預かる立場として重要なポイントであると考えております。

 そのため、法令に違反し、法令に基づく手続の結果、退去強制が確定した者については速やかに送還するなど、ルールに違反する者に対する厳正な対応にもしっかりと取り組んでまいります。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 今後配慮していきたいというお言葉はありましたが、排除という表現に対しては、撤回をしたり修正をしたりということはないということでした。

 また、この公文書で記載されている、この赤線を引いた「我が国社会に」の前段の部分です。「様々な工夫や新たな手法を取り入れる」と記載がありますが、外国人の方々を排除するための、ここで書かれている工夫や手法とは、具体的にはどのような内容なのでしょうか、お答えください。

西山政府参考人 委員御指摘の、様々な工夫や新たな手法を取り入れるとは、我が国の社会に不安を与える外国人の縮減を図るため、調査、処遇、送還の各場面で、個々の案件に応じ、十分な工夫などを行うことを指示する趣旨というふうに承知をいたしております。

 具体的には、偽装滞在者対策を推進するため、情報の収集、分析に基づき効果的な偽装滞在者の発見、摘発等を行う、IOM、国際移住機関駐日事務所の協力による自主的帰国及び社会復帰支援プログラムを実施し自主的な帰国を促す、送還妨害行為に対応するためチャーター機を利用した送還を実施するなどといった手法を利用することにより、より効果的に不法滞在者等を縮減することが可能になると承知しており、御指摘の記載もそのような取組を指示する趣旨というふうに考えております。

山田(勝)委員 これから大臣と、入管行政の様々な課題や問題点について議論をさせていただきます。過去も様々指摘させてもらいましたが、いかに現場の皆さんが入管行政において傷つけられているのか、非人道的な行いが繰り返されているのか、一つ一つ、大臣との議論を通じて明らかにしていきたいと思います。ここで入国管理局長が述べられている、外国人を排除するための工夫や手法そのものではないかと思っています。

 これもまた、前回の委員会質疑の続きになります。資料二を御覧ください。

 大村入管で私も直接面会したネパール人男性についてです。さんざんこの場でも、一日でも早く手術をと求めてまいりました。三年余りの長期収容、足が壊死状態でありながら、入管内で二年半以上放置され続け、今なお寝たきりの状態になられています。御本人から直接、一日でも早く手術をしてほしい、自分の足で歩けるようになりたい、そのような悲痛な訴えをお聞きし、すぐに大村入管の所長へ手術を行うよう強く要請しましたが、いまだ手術を行う方針すら示されていません。到底理解ができません。これもまた、日本から排除するための工夫や手法なのでしょうか。

 大村入管と明確な雇用契約にある入管センターの医師が、センター外の病院の医師宛てに出した紹介状にこう書かれています。「本センターは一時的収容所で原則的には根治治療は行わないことにしていますが保存的加療が可能かどうかを含め、加療方針につきご意見をお願い出来ればと存じます。」何回見ても衝撃です。ここで明確に示されている根治治療を行わないことが、外国人の方を排除するための工夫や手法なのでしょうか。

 古川大臣、念のために確認させてください。入管センターは根治治療を行わないということでよろしいでしょうか。

古川国務大臣 これまでにも何度となく御答弁を申し上げましたが、入管関係法令には被収容者に対して根治治療を行わないとの規定は存在しておりません。

山田(勝)委員 であれば、大臣がこのようにいつも発言していただくんですけれども、入管センターと雇用契約にある医師であることが前回の委員会でもはっきりしました。この入管の医師が、本センターは根治治療を行わないんだ、つまり、このネパール人男性には手術はしないという趣旨のことを紹介状の中で記載されている。これがどうしても矛盾があるということを前回も指摘させてもらったんですが、どちらが、大臣の方針が正しいのであれば、この医師が誤った方針を示したということでよろしいんでしょうか。

古川国務大臣 何度も申し上げますように、入管関係法令には被収容者に対して根治治療を行わないとの規定は存在しておりません。

 そして、御指摘の紹介状、今資料として配付いただいております紹介状の記載については、これは医師という専門家間のやり取りでありますし、また、入管当局の医療的対応について国家賠償請求訴訟が提起されている、訴訟係属中の事案に関する事柄でございますから、お答えは差し控えさせていただきます。

山田(勝)委員 いつもそうやって、都合が悪くなると訴訟中ということを盾に逃げられるということなんですが、これは国会での議論の場ですし、訴訟云々じゃなくて、大切な、処遇に関わる、そして命に関わる、だからこそ現場の皆さんも、一日でも早く手術をしてほしいと支援者の皆さんも必死で動いていらっしゃいますし、この紹介状も御本人から提供してもらっているんですよ。訴訟中とか関係なくて、御本人はこのことを多くの国民の皆さんに知ってほしいという願いなんですよ。大臣、是非とも誠実に答弁いただきたいと思います。

 根治治療を行わないとおっしゃるのであれば、手術を是非とも行っていただきたいということを強くここで申し上げて、次のテーマに移ります。

 今現在、この方はなぜか、手術を私たちが求めているにもかかわらず、介護施設にいらっしゃいます。そして、ネパール人男性について近況を支援者の方々からお聞きしました。いまだベッドに寝たきりの状態のまま、寝返りすら打てないほどの激痛に苦しめられています。歩くためのリハビリは行えておらず、足のマッサージが数回行われた程度だそうです。そして、四月十八日、電話で担当弁護士へ、手術を受けたいと強い意思を伝えられています。

 このようにして、一貫して二年以上も手術を希望されているにもかかわらず、なぜ手術がこの方は受けられないのでしょうか。大臣、お答えください。

古川国務大臣 一般論として申し上げれば、体調不良を訴える被収容者に対しては、訴える体調不良の内容や症状等に応じ、必要な診察、治療を適時適切に受けさせているものと承知しています。

 以上です。

山田(勝)委員 驚きました。適切な医療は受けさせているということでした。

 その適切な医療を行っている医師とは、まさに、この紹介状で根治治療を行わないと宣言をされている入管センターの医師そのものではないですか。さらに、その医師による紹介状によって、当センターは根治治療を行わないものとする、そういった紹介状によって忖度が働いた可能性のあるセンター外の医師の判断ではないでしょうか。適切な医療とは到底言えません。

 そもそも、患者さんにはセカンドオピニオンという権利があるはずです。民間、公的部門を問わず、担当の医師、病院を自由に選択し、また変更する権利を有します。入管に収容された外国人の方々にも、このようなセカンドオピニオンの権利、当然あると思いますが、いかがでしょうか。

古川国務大臣 改めてお答えいたしますが、体調不良を訴える被収容者に対しては、訴える体調不良の内容や症状等に応じ、必要な診察、治療を適時適切に受けさせております。

 そして、今お尋ねの件につきましては、訴訟係属中の事案に関する事柄でもありますから、詳細について言及することは差し控えさせていただきますけれども、しかし、御指摘の被収容者については、複数の医師の診察を適時に受けさせた上、その診察結果に従った医療的対応を行っているものでございます。

山田(勝)委員 セカンドオピニオンに関しては、訴訟中とか関係なく、では、一般論で構いません。入管センターに収容された外国人の方々が体調不良を訴えました。医師の治療方針に不満があります。そのような場合、入管に収容されている外国人の方々においても、セカンドオピニオンの権利、この方じゃありません、一般的で構いません、あるのでしょうか。お答えください。

古川国務大臣 一般論として申し上げます。

 体調不良を訴える被収容者に対しては、訴える体調不良の内容や症状等に応じ、必要な診察、治療を適時適切に受けさせているものと承知しております。

山田(勝)委員 答えになっていないんですけれども。

 大臣、お願いします。適切な医療を受けさせているということは分かっているんですけれども、それに不満がある場合に、患者の権利としてセカンドオピニオンというものがあります、それが収容された外国人の方々にも当然あるということでよろしいですかと何度も聞いております。お願いします。

古川国務大臣 繰り返しになりますけれども、体調不良を訴える被収容者に対しては、訴える体調不良の内容や症状等に応じ、必要な診察、治療を適時適切に受けさせているものと承知しております。

山田(勝)委員 一向に答えられていないんですが、答えないということは、ないということと理解します。

 このように、当たり前の権利すら収容された方々は持ち合わせていない。ますます、異様な、異常な体質であるということが明らかになりました。

 手術を望む本人の訴えを無視し続ける、これもまた、排除のための、強制送還のための工夫や手法なのでしょうか。支援者の皆さんは、入管センターとは違い、現場でとても汗をかき、連日、ミーティングを繰り返し、何とかこの方を手術させるためにどうすればいいのかと必死で動いていらっしゃいます。もう時間がない、とにかく早く手術しないと筋力が低下していく、これ以上、半年から一年たつと手術もできなくなってしまう、一日でも早く手術を、そのように訴え、大腿骨頭壊死症の手術を行ってくれる医師を、入管に任せていても一向に手術が行われないので、皆さんは自ら、手術を行ってくれる医師を懸命に探されています。

 どうしても入管センターは手術を行わないのであれば、せめてもの提案です。このように緊急に医療が必要な方に対し、在留特別許可を出されてはいかがでしょうか。大臣、お答えください。

西山政府参考人 個別の被収容者に対する在留特別許可に関する事柄についてはお答えを差し控えますが、一般論として申し上げれば、在留特別許可の許否判断は、個々の事案ごとに、在留を希望する理由や人道的な配慮の必要性等、諸般の事情を総合的に勘案して適切に判断をいたしております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。人道的な配慮を行い、個々に判断するという答弁でありました。

 ここで、このネパール人男性御本人の手紙を紹介させていただきます。少々長くなりますが、生の声を、どうか、古川大臣、お聞きください。

 私は、今まだどうにか生きている。私は、日本の法務大臣の古川禎久さんに人道的な配慮を強く求め、今日この場所から特別に在留許可を認めてもらう再審請願を提出します。私は、仮放免はしません。出ても歩けないので申請しません。歩けるように手術をしてください。どうかお願いします。二〇二二年四月十五日。

 そして、次が、請願の趣旨です。

 私は、二〇二一年六月二十二日から七月十三日まで、大村入国管理センターの三階の部屋で、そのときは一人部屋でしたが、一日二十四時間ずっと鍵をかけられ、一歩も外に出ることはできませんでした。七月十三日に面会に来てくれた牧師の柚之原さんにそのことを話したら、保護室でもない普通の部屋で二十二日間もそのようなことを入管がしたことは大変な問題である、身体拘束三原則、切迫性、非代替性、一時性に明らかに違反している、事実を確認すると怒っていました。柚之原さんは、面会の後すぐに総務課に行き、そのことを伝えたところ、処遇の対応に不適切な行為があったことを認め、翌日七月十四日からはその身体拘束はなくなりました。

 二十二日間のとても長い間、体を拘束する目的は一体何でしょうか。誰の許可でそのようなことをしたのでしょうか。入管の医師ですか。処遇の指示でしょうか。私が二十二日間自由が奪われていた、そのような怖さや不安が分かりますか。足が腐ってほとんど動けないのに、それで更に二十四時間も鍵をかけ、出られなくなることは物すごい精神的な苦痛でした。精神的な拷問でした。

 あの頃から私の病気は一気に悪くなりました。私は、六月に入ってから尿が余り出なくなりました。おしっこの管をつながれ、とても恥ずかしい思いをしました。その姿を他の人に見せないようにするために、私の自由を奪ったのでしょうか。

 二〇一九年の春、センターの中で運動しているときに、他の人とぶつかり、足を痛めてしまいました。強い痛みでした。医者に診てもらったのは、それから一週間たってからでした。痛みは治らず、どんどん痛みが大きくなっていきました。入管の医者は、きちんと診てくれませんでした。痛み止めの薬も余り効きませんでした。どんどん歩くことが難しくなっていきました。痛いときは一人で泣くこともありました。私は、入管の中の診察ではなく、外の病院で検査を受けさせてほしいとお願いしましたが、無視されました。医者が許可しなかったのか、入管が許可しなかったのか、分かりません。ようやく外の病院に連れていってもらったら、足が壊死しているかもしれないと言われました。施設の中で松葉づえをついて移動しました。

 二〇二〇年の冬から、もっと痛みは大きくなっていきました。それから、車椅子を使う生活になっていきました。こんな体では、仮放免で出ても人に迷惑をかけるだけです。私は、手術を強く希望するようになりました。私は、入管に入ったときは歩くことができました。でも、けがをしてからずっと痛み止めだけで、どんどん悪くなっていきました。今は、自分でトイレに行くこともできません。

 今の医師は、八十歳ぐらいの医師です。何度も、手術をしてくださいとお願いしました。私の体はどんどん弱くなっています。このまま手術をせずほったらかしにされたら、本当に手術できない体になってしまいます。だから、早く手術をしたいのです。

 手術にはお金がたくさんかかります。一回の手術だけで終わるかどうかも分かりません。長い間、病院に入院し、リハビリもずっと続けていくかもしれません。また、後遺症が出て、一生、障害を持って生きていかなくてはなりません。仮放免では生きていけないのです。

 手術をするにはたくさんのお金がかかると思います。ボランティアの人にこれ以上迷惑かけたくありません。だから、入国管理センターのボスにお願いするのです。法務大臣にお願いするのです。仮放免では、手術も、生きるための生活もできません。だから、私は再審請願をお願いするのです。

 私は今、裁判をしています。この裁判は、お金をもらうための裁判ではありません。自分の足を取り戻すための裁判です。歩ける足を返してください。どうかこの願いを聞いてください。お願いします。

 最後にもう一つお願いがあります。再審請願の結果を一日も早く出していただきたいのです。何をすることもできない私にとって、一日は一か月のように長いのです。このままだと本当に手術ができない体になってしまいます。どうかお願いします。

 このネパール人男性の願い、そして、今インターネット中継を御覧の全国各地の支援者の皆さんの願い、古川大臣へ届いたでしょうか。どのように受け止められますか。ネパール人男性へのお言葉をお願いいたします。

古川国務大臣 訴訟係属中の事案でもあり、個別事案についてはお答えを差し控えます。

山田(勝)委員 全く届いていないようで、残念で仕方ありませんが。

 続いて、仮放免の本質的な問題について質疑を進めたいと思います。

 一時的に収容が解かれる仮放免中には、なぜこのネパール人男性が、仮放免を拒む、仮放免ではいけないのかというと、仮放免には重要な問題があります。仮放免中に仕事ができない、医療が受けられない、そういう深刻な生活環境に置かれます。

 この仮放免者の生活実態調査を、特定非営利活動法人北関東医療相談会が二〇二二年三月に行っています。仮放免の皆さんにアンケートを取っています。生活が苦しいとお答えになった方が八九%。食事が、苦しい、満足に取れない、六五%。医療費の負担が苦しい、八七%。経済的問題により医療機関を受診できない、八四%です。大変厳しい実態です。

 まずは、命に関わる医療についてです。仮放免中に医療が必要になった場合、外国人の方々は国民健康保険制度を使えるのでしょうか。

    〔委員長退席、井出委員長代理着席〕

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねの国民健康保険の適用についてでございますが、これにつきましては、日本国内に住所を有する方に適用するということとしてございまして、外国人の方につきましても、適正な在留資格を有して住所を有しておられる場合には、原則として適用対象となっているところでございます。

 この要件は、国民健康保険が被保険者全体の相互扶助によって成り立っておりまして、公費や保険料により支えられる仕組みであるということから、その市町村の区域内で安定した生活を継続的に営む蓋然性が高いということを確認するために求めているものでございます。

 こういった点を踏まえますと、お尋ねの仮放免中の外国人の方につきましては、適正な在留資格を有しておらず、また住民票もないということになりますので、国民健康保険制度の適用対象とすることは困難という状況でございます。

山田(勝)委員 ならば、特定活動、医療はどうでしょうか。

 一九九一年から港町診療所で多数の外国人を診察されてこられた沢田貴志先生からお話を伺いました。大変この問題に強い関心と、大きな改善を必要とされる、そういった問題提起をされている先生でございます。

 この間、進行がんで帰国が困難な仮放免者に特定活動、医療が出された例が複数あります。この特定活動、医療の指示書には、日本の医療機関にて医療を受けることを必要とする特別な事情を有すると記載されております。このように、日本にいて医療が必要になった外国人の方に対し、この特定活動、医療が出されれば、国民健康保険の対象になります。

 仮放免中に医療が必要になった外国人の方々にも、この特定活動、医療、適用できるのでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 大変恐縮でございますが、個別の事例について、その是非についてお答え申し上げるのはなかなかちょっと困難という状況でございます。

山田(勝)委員 個別について困難と言われていますが、実際に適用されている例もあることから、積極的に、まさに命に関わることです。この私たちの国で、医療に、必要に迫られている、そういった外国人の方々に対し、このような制度を積極的に活用いただき、命を守る入管行政であっていただきたい。強く訴えさせていただきます。

 次に、法務省は、コロナ禍で、収容者を仮放免することを推奨し、現在、多くの外国人の方々が仮放免中です。大村市で、現在仮放免中のネパール人男性で友人のBさんから、話を伺いました。みんなが外に出たら、みんながみんな、ボランティアで支援を受けられるわけではない。働けないのにどうやって御飯を食べるのか。

 そもそも、なぜ、仮放免中の方々は就労が認められていないのでしょうか。お答えください。

西山政府参考人 一般論として、法令に違反し、法令に基づく手続の結果、退去強制が確定した外国人は、速やかに日本から退去することが原則であり、仮放免中の生計は、本人の資産や身元保証人や家族の支援等によって賄われることを想定いたしております。

 もっとも、生活や健康上の問題を抱える方々に対する人道上の支援の必要性はもとより承知をいたしており、入管庁では、仮放免中の外国人から連絡、相談があれば、個別に適切に対応しているところでございます。

 また、入管庁では、仮放免中の外国人について、本人が希望する場合には、その者の情報を居住する自治体に通知しており、各自治体において、その情報を基に可能な範囲で行政サービスを提供しているものと承知しております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 今の答弁では、これもまた、在留特別許可同様、個別事情によっては就労も許可をするということでよろしかったですかね。そういう趣旨のお話があったと理解します。もう一回確認させてください。

西山政府参考人 仮放免中の方は、そのものでは在留資格をお持ちでないので、就労をすることはできません。

山田(勝)委員 つまり、仮放免中には、やはり普通の暮らしができない。御飯も十分に食べられない。医療も、お金がなく、保険も適用されず、受けられない。これもまた、外国人の方々を排除、この国から強制的に母国へ送還するための工夫や手法なのでしょうか。本当に恐ろしい国だと思います。大臣所信の共生とは、一体何なのでしょうか。

 そもそも、コロナ感染症対策で、全国の入管センターから仮放免を推奨したのは法務省の都合ではないでしょうか。ここにその文章がありますが、佐々木長官名で通知された文章があります。

 コロナウイルス感染症に係る状況を踏まえた仮放免の運用について。感染症が拡大している状況に鑑み、仮放免の活用により被収容者の数の抑制を図ることが重要だ、特に仮放免が不適当である事情のないものについては、仮放免相当と判断される場合には速やかにこれを許可することと。

 かたくなに仮放免を認めてこなかった入管行政に様々な支援者の皆さんの声があったんですが、コロナ感染症で一気に対応を変化させ、どんどん仮放免を認めました。むしろ、積極的に仮放免を進め、多くの人たちを入管の外に出していきました。

 法務省にお尋ねします。

 コロナ対策で仮放免を促した多くの収容されていた外国人の方々に対しても、従来どおり、仕事もできない、医療保険も適用されない、そのような状況で今なお暮らされているということでよろしいでしょうか。

西山政府参考人 あくまで仮放免中の方につきましては、コロナ禍であってもその部分では同じでございます。

山田(勝)委員 このように、外国人の方々に対し、余りにも非人道的な扱いが数々繰り返されています。

 さらに、仮放免中に、月に一度、入管センターへの出頭を求めています。そして、行動範囲も制限されていますが、何のためでしょうか。

西山政府参考人 仮放免は、退去強制手続において収容されている者について、諸般の事情を総合的に考慮し、一時的にその収容を解く制度でございます。

 仮放免中の者については、退去強制手続中の立場であり、逃亡防止や出頭確保の必要があることから、入管法上の規定により、住居及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他の必要な条件を定めることとなっております。

 仮放免中の者について出頭を確保するのは、仮放免を継続する必要性等を確認するため、定期的に所管の地方出入国在留管理局に出頭を求め、生活状況等の聴取を行う必要があるためでございます。

山田(勝)委員 生活状況の確認を行うと最後の方でありました。

 仮放免中の先ほど紹介した友人のBさんは、私にこう教えてくれました。毎月一回、入管は呼ぶ。長崎から福岡まで交通費が一万円かかる。仕事をしてはいけません。どうやってそのお金を払ったらいいのでしょうか。担当者に尋ねたら、それはあなたの問題だから、あなたが考えてください、このように言われたそうです。

 何が生活状況の確認なのでしょうか。この運用自体が仮放免者の方々の生活を余計に苦しめていることが理解できないのでしょうか。

 Bさんの話は続きます。仮放免されたベトナム人の友人が、一週間御飯を食べられず、ふらふらになりながら、意識も薄らぎながら歩いていて、コンビニに入り、おにぎりを食べた。万引きではなく、その場で食べてしまった。警察が来て、入管へ再収容された。

 確かに、万引きは当然悪いことです。その上で、こう続けられました。一日四時間でも仕事をさせてもらえれば御飯が食べられる。自分で生活できるくらいの仕事はさせてほしい。でなければ、悪い道に走ってしまう人も出てくる。一人でもそうなれば、外国人みんなが同じ扱いを受けてしまう。犯罪を止めるためにも私たちに仕事をさせてほしい。税金も払う。コンビニで万引きするよりそちらの方がよいではないですか。

 さらに、日本人女性と結婚されたこのBさんは、泣きそうな声でこう伝えてくれました。四十代の男が、いい年した男が、奥さんの稼ぎで御飯を食べる。物すごく恥ずかしい。その気持ち、分かりますか。

 この声は、全国各地で生活に苦しみ不安な日々を送られている仮放免者の皆さんの願いでもあります。古川大臣、仮放免中の就労を認めるべきではないでしょうか。運用を改めていただけませんか。

古川国務大臣 入管行政を預かる法務大臣として、この場でも何度も御答弁申し上げておりますけれども、日本人と外国人が互いを尊重して、安全、安心に暮らせる共生社会を実現するためには、外国人の人権に十分に配慮しつつも、ルールにのっとって外国人を受け入れ、そして同時に、ルールに違反する者には厳正に対処することが非常に重要であり、これが基本原則であると思っております。これが達成できなければ、入管行政をお預かりする者として、その責任を全うできないというふうに思っております。

 そして、先ほど来、委員からは様々な角度からの御指摘をいただいてまいりました。収容者の医療の問題であったり、仮放免中の医療やお仕事のことであったり、仮放免、いろいろ御指摘をいただいたわけです。様々な御意見が世の中にいっぱいあるということは私もよく承知をいたしております。

 ですから、私としては、やはり、ルールに違反する者への厳正な対処、それと同時に人権への配慮、この両面が両立できるように、きちんと全うできるように、そのためには、制度全体が一体として適切に機能する、そういう姿がなければ実現することができません。

 したがいまして、真に庇護すべき者を確実に保護するという要請と、送還忌避、長期収容問題を改めなければならない、解決しなければならない、そのための法整備が必要であるということは、一体のものとして、制度一体の見直しを図ることによって与えられた責務を全うしていきたいというふうに思っております。

 法令に違反し、法令に基づく手続の結果、退去強制が確定した外国人は速やかに日本から退去することがやはり原則であるということは改めて申し上げたいと思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 先ほど鈴木委員の質疑の中でも、ウクライナの難民の皆さんに対して積極的な支援を法務省始め政府がやられていることは大変すばらしいことです。なぜウクライナだけなんでしょうか。同じような境遇で日本に逃れてきた外国人の方々はたくさんいらっしゃいます。そういったところにも目を向けるべきだし、生活支援を行っていくべきではないでしょうか。

 大臣の先ほどのお話、よく分かります、お立場は。しかし、私が何度も言っているように、収容されている外国人の方々は、帰りたくないんじゃなくて、帰れない事情がある方々がほとんどですし、日本はそもそも難民の認定の制度自体に大きな問題がある。〇・四%しか。国際的にも問題視されている。このことを改善することがまず初めに必要なことではないでしょうか。

 現行の仮放免の仕組みに固執し、外国人の方々を苦しめ続けても、一向にこの問題は解決されません。母国へ帰すことにこだわり続けるのではなく、外国人労働者として私たちの社会にいま一度受け入れ、一定期間、再チャレンジの機会を与える運用の見直しを行ってはいかがでしょうか。それこそが、古川大臣が所信で述べられた、外国人の方々との真の共生ではないでしょうか。

 以上、強くお訴えさせていただき、時間になりましたので、質疑を終わります。ありがとうございました。

    〔井出委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木委員長 次に、階猛君。

階委員 今の山田委員の質問に関係して、ちょっと順番を変えて伺いたいと思います。

 私、今の、在留資格を失って退去強制手続を経て、そして仮放免になっている人が就労できないという問題なんですけれども、根本的には、そもそも安い賃金で長時間労働をさせ放題させておいて、それでいたたまれなくなって逃げ出して、在留資格を失ったりして、在留資格を失って仮放免になって、これまでさんざん働かせてきた割には、一旦在留資格を失うと、全く働けなくなる、まさに御都合主義ではないかというふうに思うわけですね。

 この問題を根本的に解決するためには、大臣も今、勉強会をされていますよね。特定技能や技能実習に係る大臣勉強会というのをされていると伺っておりますけれども、特定技能や技能実習の制度の見直し、これをやらなければ、今の山田委員のような問題がより深刻化してくると思っているんですよ。

 ですので、まず大臣に、この件に関して、勉強会をされて、どんな問題意識を持たれているのかということからお尋ねしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 まず、今、勉強会についてお触れいただきました。これは法務省内において、特定技能、技能実習制度に係る法務大臣勉強会というものを設けまして、これまでもこの勉強会、検討を重ねてきておるわけです。

 これは、御存じのとおり、特定技能の入管法や技能実習法、その法律の中に見直し規定がありまして、ちょうどその時期に当たっているということもありまして、きちんと勉強して、見直すべきものがあればきちんと見直すべきである、そういう考え方の下にスタートいたしました。そして、各界各方面、いろいろな角度からの御意見を承りながら、今鋭意この検討を進めているところであります。

 そこで、今の時点で明確に、論点はこれとこれというような形で具体化して、今の成果をここで御紹介する、そういう段階には正直今至ってはいないのですけれども、一点だけ私から、率直に、私が今胸のうちにある、これは結論ではありませんよ、お断りしておきますけれども、しかし、現在、私の胸にあることをこの場で一つ御紹介をさせていただくとするならば、まさに今、階委員から御指摘をいただいたような問題意識、つまり、特定技能、技能実習、こういう制度を考えるときに、この制度の見直しのみでは、やはりこれは根本的な解決に至らないのではないか。同時に、在留資格の在り方であるとか、難民制度あるいは難民認定の申請の在り方であるとか、あるいは、送還忌避、長期収容問題、こういう様々な分野における問題が相互に連関し合って、そして、非常に様々な方面から御指摘やお叱りを受けるような、こういう事態も生まれているのだろうと思います。

 この際、私は、改めたいと思っています。よりよいものに、あるべき姿にできるように、思い切って、これは改革をするチャンスが来ていると思います。それは、法律に見直しの時期というのがあるからだけではありません。やはり社会的にもその時期を迎えている。そして、その際、委員が先ほど御指摘をいただいたように、その部分だけを見るのではなく、全体的な姿を見渡しながら検討することが非常に重要だという感想を持っているところです。

階委員 非常に考え方として正しい方向を向いているなというふうに思いました。

 それで、もう少し入管法について、ちょっと質問の順番が変わりますけれども、尋ねていきたいんです。

 入管法改正案、御案内のとおり、昨年廃案になったわけですけれども、再提出を検討されているということで、今大臣がお話しされていたように、我々も、入管法の世界だけではなくて、特定技能とか技能実習も含めた外国人政策全体について幅広く検討して、解決策を法案という形で出すべきだということを考えております。

 そういう中で、入管法改正案については、再提出、いつぐらいになるのか、あるいは、昨年から内容は当然変わるべきと我々は考えていますし、大臣も多分そういうお考えもあると思うんですが、もし変えるということであれば、昨年の内容から変えるということであれば、どういうことを考慮してその変える内容を考えていくか、この時期と考慮すべき要素、この二点についてお答えいただけますか。

古川国務大臣 先ほど、勉強会において、申し上げたような問題意識を持ちつつ、精力的に検討を進めているということは御紹介したとおりです。

 しかし、具体的な法案ということになりますと、その具体的な内容であるとか時期ですとか、こういうものを今の時点で予断を持って申し上げることは非常に難しゅうございます。

階委員 内容まではともかくとして、考慮すべき要素というのはあると思うんですよね。昨年のときは考慮されていなかったけれども、その後、様々な問題がこの委員会でも取り上げられ、そしてウクライナの情勢などもありました。そういう中で、考慮すべき要素として、私は、大きなものの一つに名古屋入管の問題というのがあったと思うんですね。

 名古屋入管の問題は、先日、大臣もこの場でおっしゃいましたけれども、ちょっとビデオ映像とそごがあるんじゃないかということを我々も、ちょっとどころじゃないんですけれども、かなりそごがあるんじゃないかと我々は申し上げました。それについて補足説明をされるといったようなことも大臣からお話がありました。

 そうした真相解明の取組をしっかり行った上で、こうした名古屋入管、あるいは、山田委員も取り上げられた、ほかの入管収容施設でもあるような人権侵害の問題、こうしたものが二度と起こらないような仕組みをつくっていく、これも重要な考慮要素というか考慮すべきポイントだと思うんですが、この点について大臣のお考えをお願いします。

古川国務大臣 お答えいたします。

 昨年三月に発生をしたいわゆる名古屋事案、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった事案ですけれども、これは本当に、本当にあってはならない残念な出来事でありました。そして、二度と、二度とこういうことを起こしてはならないという決意の下に、その後も私どもはその緊張感を持って仕事を進めております。

 まず取りかかったことの一つは、この委員会でも累次にわたって議題にされておりますとおり、調査報告書をまとめたわけです。これは、医師や弁護士など外部識者も交えて、できるだけ客観的な資料に基づいて、多角的な視点から問題点を整理して、そしてまとめたものでありまして、私は、この調査報告書というものは、やはりここに、まずは起きた事案に対して、きちんと公正公平に取りまとめられたものだという認識を持っております。

 そして、その中で示されております十二項目、改善すべき項目ということで挙げられておりますけれども、まずは、迅速に、着実にこの十二項目を全て実施するのだということでずっと取り組んできておりますし、かなりの部分、今それが実施できているということで考えております。

 しかし、この調査報告書で示された十二項目全てで、もうこれで十分だということを申し上げているつもりはありません。私も就任をして早い段階からずっと申し上げておりますとおり、いわゆる入管行政全般にわたって、どこかやはり欠けているもの、足らざるものがあるのだろうというふうに思っておりますし、改めなければならないものであれば、それは誠実に、勇気を持って改めるべきだというふうにこれは一貫して思っておりますし、入管職員も結束して、私とともに今取組を進めてくれております。

 このような、やはり不断の努力をもって改善するんだ、こういう意思を持ちながら取り組んでいるのは、これは御理解をいただきたいと思います。

階委員 まずできること十二項目ということで取り組んでいらっしゃるということはお聞きしていますし、その御努力は多としたいんですが、一方で、十二項目では十分だと言うつもりはないというお話もありました。私も十分ではないと思っております。つまり、法改正を経なければやれない部分もあるというふうに考えております。

 その関連でいうと、昨年の入管法改正案、これは、政府案が出た後、この場で審議をする中で、最終局面では与野党間で真摯な修正協議を行ったわけです。そのときの、どういう協議が行われたかというのを二ページ、三ページ目あたりに資料としてつけさせていただいておりまして、大きく十項目から成るんですけれども、全部について取り上げることはできませんので、少し大臣にも認識していただきたいものを何点か取り上げたいと思います。

 一つ目は、いわゆるスリーアウトルール、難民認定手続中の送還停止の例外事由である三回目以降の申請というのを、我々は、これはおかしいということで削除すべきだということを申し上げ、それに対して、与党の皆さんからも打ち返しがあり、今のところ、修正協議の進捗状況としては、私どもの方から、申請に対し、難民又は補完的保護対象者の認定を行うべき理由に係る資料を提出できないものというふうに、二ページの右側、上の段の方に書かせていただいておりますが、要は、三回目以降の申請であっても、難民申請の認定を行うべき理由に係る資料を提出した場合には、スリーアウトルールは当たりませんよ、スリーアウトルールにひっかかりませんよというのが、我々から提案し、かつ、与党の方からも、私の認識ではおおむね了解を得ていると思っています。

 これは、全くもって理由がないというんだったら、三回目であろうが、これはもうしようがないと思うんですけれども、やはり、何がしかの理由があって申請しているのであれば、三回目以降も認めていいのではないか、送還停止効を認めていいのではないかというふうに考えるんですが、この点について、大臣、見解をお願いします。

古川国務大臣 前回の入管法改正案の審議のときに、修正協議といいますか、与野党間で様々やり取りが行われたということは聞いてはおります。詳細については、私は直接、詳しく把握はしておりませんけれども、国会において与野党が協議をして、一定の合意、成果を求めて合意を得る、これは非常に大事な、大きな意義のあることでありまして、法案提出者である政府側としては、そのような国会の御判断は重く重く受け止めなければならないというふうに思っておるところです。

 その上で、今委員から、御指摘といいますか、御質問いただいたのは、その協議の内容に関わることなのでございましょうか。(階委員「そうですね。今の点についてどう考えるか」と呼ぶ)では、その前提でお伺いいたしますけれども、協議の内容といいますか、階委員のお考えという意味での御説明としてお聞きしたということでよろしいですね。(階委員「はい」と呼ぶ)

 法案の具体的な内容ということになりますと、私も今ここでお答えすることは非常に難しくなるわけですけれども、そうではなくて、一つの考え方に対してお答えをさせていただくとするならばですよ、昨年提出した法案では、送還停止効が難民認定申請者の法的地位の安定を図るために設けられるものであることに鑑み、既に二度にわたり難民等の該当性について審理が尽くされた三回目申請者についてはその例外としていた、こういうことでございました。

 現行入管法上、送還忌避、長期収容問題の解決は喫緊の課題でありまして、運用上の工夫のみではこれを解決することは困難であるということから、送還停止効の例外や監理措置制度を設けるなどの法整備が必要だということで、この改正案になっておったわけです。そのような現状認識であります。

 先ほども申しましたけれども、法務省としては、改めるべきところは改める、よりよい入管行政を目指すのだ、そういう姿勢を持って、この法案についても今後検討を進めていきたいと思っております。

 先ほども申しましたように、制度全体の適正化ということは非常に重要な視点である。そういう視点を持ちながら、様々な御意見にも耳を傾けながら着実な検討を進めたい、こういうことでございます。

階委員 是非、ここはもう一歩のところだったと思うんですね。スリーアウトルールについてどこで折り合えるかというところ、もう一歩のところだったんです。是非、ここについてはまた、我々の意見などもちょっと参考にして、よい制度にしていただければと思います。

 他方、隔たりが大きかった項目もあるんです。それは、六番目の身柄収容前の司法審査、三ページ目の一番上に書いている項目です。

 これは一昨年九月の国連人権理事会恣意的拘禁作業部会というところの意見書に基づいたものでもありまして、我が方からは、外国人の収容は、弁護士等の立会いの下で対象者からの聴聞を経た上で、裁判官があらかじめ発する収容許可状、これによって行うべきだ、司法審査を経るべきだということを言っておったわけです。ただ、それについてはかなり法務当局は慎重でございまして、何とか交渉の過程でぎりぎり譲ったのが右側の方の最後の一文ですね。「当該判断に当たっては、透明性を確保するための措置を講ずる。」といったようなことまでは認められたというのが我々の認識です。

 ただ、やはり、第三者ではなくて、収容する入管当局が判断するということであると、やはり、なお不十分ではないかということです。

 これは、国際ルールにおいては、国連の部会が言っているように、司法審査、事前の司法審査というのはグローバルスタンダードということもあるようですので、ここも、我々の主張を真摯に受け止めて、これからの法改正、立案の参考にしていただければと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。

古川国務大臣 御指摘の収容前の司法審査ですとか収容上限の導入には、私どもとしては、これには問題があるという認識の下に、昨年の入管法改正案の中にはこれは盛り込まれておりませんでした。

 しかし、先ほどから申し上げておりますとおり、改めるべきところは改めよう、よりよいものにしていこう、こういう姿勢には変わりはありませんので、虚心坦懐に様々な御意見に耳を傾けながら、できるだけいいものを目指したい、この姿勢に変わりはありません。

階委員 いや、なかなかあれですね、すごく、何か去年とは全然違う建設的な答弁が返ってくるので、鈴木さんもさっき建設的な答弁をいただいて、よかったと思うんですけれども、本当に、大臣、是非その方向でお願いします。

 入管法改正案、これは本当に、余り時間をかけてはいられないんですけれども、抜本的なことをやるべきだ、中途半端ではなくて抜本的なことをやるべきだと我々も考えています。それで、我々も対案を用意しております。こういったことも是非、並行審議させていただければと思っております。

 入管法の話はここまでにしまして、また前回に続いて財務省に来ていただいているので、前回の質問に関連して伺いたいと思います。

 前回の質疑で、赤木訴訟の認諾に当たり、認諾した損害賠償請求額が妥当かどうか、その際、検討した文書が作られていないのかというふうに尋ねたところ、金額について文書で協議したかと言われると、恐らくそういうことはなかった。恐らくそういうことはなかったという答弁でした。

 恐らくそういうことはなかったというのは曖昧なので、協議のときの文書は作っていないということでいいのかどうか、これを端的にお答えください。

角田政府参考人 認諾に際して財務省が作成して法務省に協議した資料は第四準備書面以外にないことは、先日答弁したとおりでございます。

階委員 その第四準備書面、これを抜き出してきたものを一ページ目に掲げさせていただきました。この右側が第四準備書面の文章の部分ですね。当事者の表記とか、そういうところ、形式的なところは除いて、大事なところだけ抜き出したのがここです。

 「第二」のところに「請求を認諾するに至った理由」というふうにありまして、これだけが理由の部分で、ここが大事なんですけれども、読んでみましても、金額が妥当なのかどうなのかというのは裁判上は出てきておりません。国賠法上の責任を認めるのが相当との結論に至ったと。責任を認めるのが相当ということは書いていますけれども、責任を認めた上で、どうしてこの金額が妥当なのかということはこの書面上は出てきていない。

 ということは、法務省とは、一方で協議はされている、金額については協議をされているというのが前回の答弁だったわけで、金額については、この文書以外で協議をされているわけだと思うんですよ。その協議はどのように行ったのかということを教えていただけますか。

角田政府参考人 この配付していただいた資料の下の方の段落ですけれども、決裁文書の改ざんという重大な行為が介在している本事案の性質などに鑑み、認諾するというのは、これは金額について妥当だという判断をしている部分でございます。

階委員 結論を聞いているんじゃなくて、その金額が妥当だと判断した理由についてはどこにも書いていませんよということを言っているわけですよ。なぜ一億七百万円が妥当なのかというのは、この文章上はどこにも出てきていない。

 別に法務省と協議をした際に文書があるんじゃないかと、金額についてですよ。あるのかないのか、お答えください。

角田政府参考人 金額の妥当性についての説明が問題になったときのために、このように明示的に、本件事案の特殊性に鑑み、妥当と判断したんですということを御説明しようということをこの文書でセットしたということでございます。

階委員 これだけで説明責任は果たされるというふうに考えているということですか。これだけで、法務省に金額の相談をするのに十分だったというふうに財務省としては考えているということなんですか。とてもこれで一億七百万円税金から払うことを説明するのに十分とは思えないんですよね。お答えください。

角田政府参考人 認諾に際しまして、財務省が作成し、法務省に協議した資料は第四準備書面以外にないということは先ほど答弁したとおりでして、それとは別に、訴訟は長く続いておりますので、いろいろな論点はあると思います。それにつきましてどのような協議をしてきたかということは、それは国の訴訟方針が推知されるなど、今後の訴訟活動に影響を及ぼすおそれがありますので、お答えを差し控えたいと思います。

階委員 突如として認諾されているわけだから、認諾した場合の金額の妥当性についてはそれ以前の書面なんかに出てくるわけないじゃないですか。

 私が問題にしているのは、認諾する際の金額が妥当だったということを、法務省と協議をしたのであれば当然文書はあるはずじゃないですか。仮に協議のときに使わないとしても、さすがにこれだけで一億七百万円払えるかという話ですよ。

 向こうの請求額が妥当だということは、法務省に示したかどうかは別として、内部でも検討する、検討した過程を文書にする、これを作れというのが、前回お示しした、皆さんが受けているコンプライアンス研修に基づく正しい公文書作成の在り方なんじゃないですか。なぜそういう文書が一切ないんですか。

角田政府参考人 去年、おととしの春から訴訟が続いておりますので、もちろん、いろいろな論点はあるわけでございますけれども、その個別の論点についてどのような検討をして、あるいは資料を作成したか、しなかったということについて申し上げることは、今後の訴訟活動に影響を及ぼすので差し控えたいと思います。

階委員 今後の訴訟活動になぜ支障を来すんですか。なぜ作成したかどうかすら言えないんですか。意味が分からないですね。

 公文書作成のルールがあるわけでしょう。皆さんはコンプライアンス研修をしているわけでしょう。それに従って文書を作っているのであれば、ちゃんとこの金額が妥当かどうかについては検討した過程が文書に残っているでしょう。

 いいですか。意思決定過程や事務事業の実績を合理的に跡づけ、検証することができる文書を作るというふうに研修資料にあるじゃないですか。その文書を作っているかどうか、作っているんだったらこちらに出してくださいということを言っているわけですよ。

 訴訟に不測の支障を生じるなんという理由は全く成り立たないですよ。公文書管理の問題を言っているわけですから。お答えください。

角田政府参考人 お答えいたします。

 公文書管理法や財務省行政文書管理規則に基づきまして、財務省の意思決定過程や事務及び事業の実績を合理的に跡づけ、また検証できるように文書を作成して保存しているところでございます。

 本件訴訟における認諾に際しましては、財務省が作成して法務省に協議した資料として、被告国第四準備書面を作成したところですが、財務省としては、当該準備書面をもって財務省における意思決定過程や事務事業の実績を合理的に跡づけていると考えておるところでございます。

階委員 あきれますね。これでなぜ合理的に跡づけ、検証することができるんですか。

 そもそも、一億七百万円、妥当じゃないという見方もこの委員会で示されているわけですよ。国民の代表から成る国会の場でそういう疑問が呈せられているわけですよ。でも、皆さんは、この書面だけで妥当だということを言うわけですか。おかしいでしょう。

 その一億七百万円、一般的な相場からすると不当に高いのではないかという疑問が呈せられているんだけれども、それに対する反論はこれ以外にないということですか。お答えください。

角田政府参考人 それは金額の妥当性についてのお尋ねだと思いますけれども、こういうことで私どもは妥当だと判断しているところでございます。

階委員 ちょっと、法務大臣、とんでもないと思うんですよね。こういう、国が裁判の当事者になって、争わないでお金をそのまま払ってしまう。払うのであれば、その金額は妥当なのかどうか、国民の税金を払うわけですから、ちゃんと後で検証できるように文書を作らなくちゃいけない。これは当然のことだと思うんですよ。

 法務省としても、相談を受けたのであれば、そういうことを財務省にも求めると思うんですね。何で一億七百万円で認諾するんですか、その根拠はどうなっているんですかということを、相談を受ければ、当然そういうことを求めると思うんですが、法務省もそういうことはやらないんですか。

古川国務大臣 まず、請求の認諾ということについては、訴訟追行に当たっては、関係省庁との間で訴訟方針等に関し協議、検討を行うなどして適切に対応しているところでございますけれども、個別の訴訟における、国の訴訟追行に関わる事柄であり、通例はお答えを差し控えているところでございますが、今委員が御指摘になっているこの認諾の件については、鈴木財務大臣が国会等で答弁されていることを踏まえまして、あえて申し上げますと、これは、原告の請求を認諾するに当たって、第四準備書面を提出することについては、この書面を用いて財務省と協議を行ったものと承知をしております。

 その上で、今御指摘の件ですけれども、金額の妥当性についてですが、裁判所に提出をしました被告国第四準備書面以外の財務省との協議に関わる文書作成の有無につきましては、お答えを差し控えさせていただきます。

階委員 肝腎のところを差し控えられても困るんですけれども、これは、あったかなかったかということも答えられないんですか。これは普通あるでしょう。じゃなければ、協議を求められた法務省としても、まともにアドバイスできないじゃないですか。当たり前ですよね。これは、また隠蔽とかいう話になってしまうととんでもないですよ。理財局長、また隠蔽ということになったらとんでもないですよ。

 まず、理財局長に聞く前に、法務大臣にもう一回聞きます。そういう金額の妥当性について、相談を受ける際に文書はあったのかなかったのか、それについてお答えください。

古川国務大臣 裁判所に提出をしました被告国第四準備書面以外の財務省との協議に関わる文書作成の有無につきましては、お答えを差し控えます。

 御質問は、個別の訴訟における、国の訴訟追行に関わる事柄でありまして、そのように控えさせていただきます。

階委員 訴訟に関する文書であるのは、これは当然だと思うんですが、一方で、我々は国政調査権を持っていて、当然、税金の使い方が妥当かどうかチェックする使命を持っているわけです。それに基づいて、金額が妥当なのかどうか、妥当だとするのであれば、それを合理的に説明する文書は当然あるでしょうということを言っているわけで、その文書は訴訟追行に関係なく出せるでしょうと言っています。出していただけないでしょうか。

古川国務大臣 裁判所に提出しました被告国第四準備書面以外の財務省との協議に関わる文書作成の有無は、公開の法廷に表れていない国内部における検討過程に関するものでございます。国を当事者とする訴訟における法務大臣は国を代表する立場とされておりまして、そのような立場で、関係省庁との間でいかなる協議が行われ、その協議に関わる文書作成の有無などといった公開の法廷に表れていない事柄の詳細をつまびらかにすれば、関係省庁との間の信頼関係が害され、今後提訴され得る訴訟において関係省庁との率直な意見交換が困難になるなど、将来における国の訴訟活動にも影響を及ぼしかねません。

 よって、御質問については、お答えを差し控えさせていただきます。

階委員 法務大臣、それは一般論としては正しいことなんだと思うんです。ただ、ここで問題になっているのは財務省理財局が文書を作っているかどうかです。

 彼らはずっとうそをついていたんですよ。私も聞きました。森友学園との交渉記録はあるだろう、当然、将来損害賠償の請求のリスクがあるんだから文書はあるだろうと、ずっと当時の理財局長にも尋ねていたんですね。ところが、国会の中でも外でも、ないないと言い張っていたんですよ。ところが、実際はあった。改ざんまでしていた。こういう人たちですよ。だからこそ、信用できないから、法務大臣に聞かざるを得ないんですよ。法の支配を貫徹する、そして国民に対して説明責任を果たすということが、全く財務省が怠ってきたし、また今もここで虚偽答弁している疑いも出ていると私は思っています。

 そこで、法務大臣には、一般論を超えて、こういう大事な問題について、金額の妥当性、この文書は絶対にあるはずだと思うんですが、どうですか、お答えいただけないですか。

古川国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、お答えを差し控えさせていただきます。

階委員 これはとんでもないですね。理財局は、何だったんですかね。あの反省はどこに行ったんですかね。まず、文書を作ったかどうかも明らかにできないって、普通にこのコンプライアンスを守っていたら、作ったと胸を張って言えるはずじゃないですか。

 守っていない、守っていない可能性もあるというふうに受け止めていいですか、理財局長。

角田政府参考人 繰り返しになりますけれども、公文書管理規則に基づいてちゃんと保存すべきものは保存しなければいけないということは十分認識しております。

 今回の第四準備書面ですけれども、本来でしたら、そこにいろいろな理由を書くというような書面ではなくて、単に認諾すると書いてある。それを残すために、文書管理規則にのっとってそれを残すために、準備書面という形で作成をさせていただいたということでございます。

階委員 全く納得できないんですよね、これだけで一億七百万円認諾するんですかと。裁判所に出すのは、こういう記述になるのは、私も弁護士だから分かりますよ。結論だけ出すというのは分かるんだけれども、でも、内部で検討するときに、一億七百万円の根拠はちゃんと残しているでしょう、検討の過程。それを作らなかったら公文書管理法に違反じゃないですか。

 作ってないと言い切れますか。作ってなくて、それで公文書管理法違反ではないと言い切れますか。

角田政府参考人 訴訟のプロセスの中では、まさにその金額について争うかどうかということもあるわけですよね。ですから、いろいろなプロセスの中でいろいろなことを考えたりはもちろんするんですが、それを一つ一つを全部開示していくというものではないと思っておりますので、私どもとしては、作成の有無を含めて、今後の訴訟に影響があるので、お答えを差し控えさせていただいているところでございます。(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛にお願いいたします。

階委員 ちょっと答弁が変わりました。さっきまでは第四準備書面しかないと言い切っていましたよね。今、訴訟のプロセスの中でいろいろなものは作っているけれども、開示できない、作っている可能性があっても開示できないという話になりましたよ。

 認諾の金額については、第四準備書面しかないとさっき言っていましたよね。そうじゃないということですね、じゃ。

角田政府参考人 先ほど、認諾に際して財務省が作成して法務省に協議した資料は第四準備書面以外にないことは先日答弁したとおりであると申し上げました。これはそのとおりでございます。

階委員 その後、聞いたのは、協議に使ったかどうかはともかく、財務省の内部で作ったんじゃないですかということを言ったわけですよ。それについてもないと言いませんでしたか。

角田政府参考人 そのような点について、作成した、しないということをつまびらかにすることは、今後の訴訟に影響を与えるので差し控えさせていただきますということを申し上げたと思います。

階委員 結局、作った可能性はあるということですよね。これは大事な話ですよ。一億七百万円、本当に妥当な金額だったらその根拠を示せばいい。もし妥当でない金額で認諾したということなら、これはまた、訴訟を途中で終わらせて真相を隠蔽するために、一億七百万、不当だけれども、不当に高いけれども認諾したということで、これも大問題。

 早急に、検討したときの文書、出してくださいよ。この間も言ったけれども、絶対これはあるはずです。あるはずですから、出してください。

 改めて、理事会での協議を求めます。

鈴木委員長 ただいまの件につきましては、理事会にて協議いたします。

階委員 質疑時間が終わりましたので、終了します。

鈴木委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 同性婚について質問をさせていただきます。

 今日は、この国会内で第四回マリフォー国会が開催をされました。そして、東京レインボープライドも始まりました。自らの性をどう認識し、どんな性的指向を持つかは人によって違い、多様な生き方を認めることは個人の尊重の観点から重要です。そして、いつ、誰と、結婚するかしないか、性的指向にかかわらず、人生の選択はひとしく開かれなければならないものです。

 現行法では同性婚は認められていないということで、同性のカップルの方は互いに法定相続人にはなれず、パートナーが手術を受ける際の同意の手続も関与できない、あるいは外国人のパートナーの方が国外退去と、多くの社会生活上の不利益を受けております。

 今各地で、結婚の自由を全ての人にと訴訟が提起をされております。同性婚ができないのは、婚姻の自由や法の下の平等に反すると訴えておられます。

 与党の方が真剣にこれを聞いてくれていないということを大変残念に思います。

 同性婚ができないのは、婚姻の自由や法の下の平等に反すると訴えられ、そして、札幌地裁の判決では、同性カップルが婚姻することができず、婚姻によって生じる法的効果を享受できないのは、性的指向、性愛の対象に基づく区別であり、性的指向は、性別、人種などと同様に人の意思によって選択、変更できないものであるから、真にやむを得ない区別でなければ、憲法十四条一項に違反をすると判断をいたしました。

 今、政府や、あるいは立法府の責任が問われているというふうに思います。全国で裁判がやられているんですけれども、その中で、被告である国の主張に私は大変驚きました。婚姻制度の目的は自然生殖の保護にあるというんです。

 改めて確認をいたしますけれども、大臣、婚姻は生殖と関係しなくても当然いいですよね。

古川国務大臣 お答えいたします。

 憲法上、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立することとされておりまして、これを受けて、民法においても、婚姻は男女間においてされることが想定されております。それは、婚姻制度の趣旨が、一般に、夫婦がその間に生まれた子供を産み育てながら共同生活を送るという関係に着目して、これを保護の対象にしたものと言われていることによるものです。

 もっとも、婚姻関係のように、家族法における基本的な制度については、その目的もある程度抽象的、定型的に捉えざるを得ず、また、制度を利用することができるか否かの基準は明確である必要がありますから、男女間であればよいこととしています。このため、子供を持つ予定のない男女の婚姻の場合であっても婚姻による保護の対象に含まれることになります。

本村委員 憲法の問題をおっしゃいましたけれども、憲法二十四条は、婚姻が両性の合意のみに基づくと書かれています。それはなぜかといいますと、当事者が望む婚姻を戸主の同意権などによって制約されないという、封建的な在り方をなくす趣旨で書かれているものでございます。ですから、憲法学者の皆さんも、この憲法二十四条は同性婚を許容しているということを言っているわけでございます。そして、生物学的な意味の性には例外も多く含む、不安定な基準であるということも明らかになっております。

 なぜ国が、婚姻制度の目的は自然生殖の保護であるというような、それが伝統なんだということを持ち出すのか、何で人権が保障されていない時代の伝統、慣習、そういうことを持ち出すのかということで大変憤りを持っております。

 国の主張の中でもう一つ、同性婚は、社会的な承認が存在しているとは言い難いというふうにあります。社会的承認とは何ですか。どうしたら同性婚を認めることができるんでしょうか。どういう基準であれば社会的承認があると言えるんでしょうか。大臣、お答えください。

古川国務大臣 お答えいたします。

 同性婚制度を導入すべきか否かは、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、国民各層の意見を踏まえる必要があると考えておりまして、御指摘の点につきましては、事柄の性質上、一概にお答えすることは困難であります。

 まずは、引き続き、国会における議論や自治体の取組等の動向を注視してまいりたいと存じます。

本村委員 そんな、明確な、はっきり答えることができない基準を持ち出さないでいただきたいと思うんですね、訴訟で。

 そもそも、差別に苦しむ方々の人権救済、人権保障に社会的承認を持ち出すことがおかしいというふうに私は思っております。また、国が結婚という制度から同性カップルを排除しているから、異性カップルと同等だという承認が得られないんです。国の責任が大きいわけです。

 そして、昨年三月の朝日新聞の世論調査、同性婚を認めるべきというふうにお答えになっている方は六五%です。そして、十八歳から二十九歳の若い世代でいいますと、八六%が同性婚を認めるべきというふうに答えております。社会的にもこれは合意があるというふうに私は考えております。

 LGBTQの当事者の方々が、様々な言葉や、制度がないということによって、傷つけられて自ら命を絶っている、こういう事件が実際は相次いでいるわけでございます。

 大臣は、所信表明のときに、誰もが幸せを享受できる社会にするために不断の努力をしていくんだというふうにおっしゃいました。

 共に生きる社会をつくっていくために、同性婚を認めて、人権や個人の尊厳が何よりも大切にされる社会のために、是非、大臣、同性婚を認めていただく方向で検討を今すぐ進めていただきたいということを強く求めたいというふうに思います。

 次に、四月から成人年齢が引き下げられ、AV出演契約の十八歳、十九歳の取消権がなくなってしまいました。

 別の委員会でも、私は津島副大臣に質問もさせていただきましたけれども、そのときにも御紹介をしたんですけれども、この十八歳、十九歳の契約取消権がどれだけ大事だったかということも強調させていただきたいと思います。

 撮影の現場に行って初めてAVだ、アダルトビデオだ、撮影だというふうに知り、大勢の大人から囲まれて、もう何十人も動いていると違約金をちらつかせながら、そして後に引けないような状況に追い込んでいくわけです。

 追い詰められて撮影をしてしまった、でも、せめて販売とか流通、配信を止めてほしいと願ったときに、ほぼ唯一対抗できたのがこの未成年の取消権だった、被害者支援を実際に行っている伊藤弁護士がそういうふうに指摘をされ、これは本当に重い言葉だというふうに私は思っております。

 このAV出演契約の取消権に関しましては、二〇一八年六月十二日、参議院の法務委員会で、日本共産党の仁比聡平参議院議員が質問をいたしました。

 そのときに、上川陽子法務大臣が、AV出演に関し不当な契約をなくすために、法的体制、対策を含めてしっかりと検討し、そして実現をしてまいりたいと法務大臣が答弁をしたんです。法務大臣が答弁をしたその責任を取っていただきたいというふうに、果たしていただきたいというふうに思います。

 三月まで使えた十八歳、十九歳の取消権と同等の行為を持つ取消権の法的整備を今すぐ行っていただきたいと思います。そして、四月の契約、今日の契約も遡って救済できる法制度をやると今法務大臣が宣言していただければ、AVの制作や販売や流通関係、こういうところに抑止効果になるというふうに思います。

 今からすぐに救済できる法整備をしていただきたいと思いますけれども、法務大臣、お願いしたいと思います。

古川国務大臣 一般論として申し上げれば、アダルトビデオ出演契約のように特殊な契約類型について、その性質や特徴に着目して、一旦締結した契約について、錯誤、詐欺又は強迫などがなくとも取り消すことができるという特別な制度を設けるとすれば、一般法である民法ではなく、特定の政策目的に基づく特則として、特別法において定められるべきものと考えております。

 したがいまして、アダルトビデオ出演契約に限って御指摘のような規定を設けるべきかどうかについては、民事基本法制を所管する法務省としてはお答えをする立場にはございません。

 いずれにしても、関係省庁においてそのような特則が検討されるということであれば、法務省としては、一般法を所管する立場から、民法との関係の整理等を含め、必要な協力をしてまいりたいと考えております。

本村委員 上川大臣が実現をしてまいりたいとおっしゃったのに、しっかりと責任を果たしていただきたいんです。立証の難しい取消権ではいけない。過去に撮ったものも含めて回収、販売中止できるようにするべきだというふうに思います。

 今、与野党で協議をするという方向で進んでいるということですけれども、実効あるものにするように、できるように、与党の皆さん、そして政府の皆さん、是非御協力をいただきたいと思います。強く求めておきたいと思います。

 このAV出演契約の同意の考え方についても伺いたいと思います。

 性的虐待を受けた子供たちに顕著に表れると言われているのが、性化行動と言われるものです。あるいは、性的自傷、トラウマ再演、深刻な性暴力被害に遭い、こうした行動になってしまうことがございます。

 この性的自傷やトラウマ再演、性的虐待による性化行動に関して、これは医療や福祉につなげなければいけないというふうに思いますし、しっかりと配慮をすること、そして、契約無効、契約取消しができるようにするべきだ。

 同時に、同意とは、以下の条件を全て満たすことが大前提だというふうに考えます。

 一つは、年齢、成熟度、発達度、役割、経験に基づいて、何をなされるか理解していること。二つ、提案されていることに関する社会的規範を知っていること。三つ、性行為をした場合に起こり得る結果と、性行為を行わないという別の選択肢もあるという、それぞれ承知していること。四つ、性行為に賛成する意思と反対する意思の両方の選択肢が平等に尊重されるという前提があること。五つ、意思決定が自発的になされていること。六つ、知的な理解力を有すること。

 同意とは、これらを全て満たすことが大前提だというふうに思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 法務省は、民法等の民事基本法制を所管しております。お尋ねの、AV出演契約のように特殊な契約類型について、その性質や特徴に着目した特別な無効原因、取消し原因を設けるべきか否かをお答えする立場にはございません。答弁は差し控えたいと存じます。

 その上で、一般法である民法を所管する立場から申し上げますと、契約は、一般に、当事者の意思表示が合致することによって成立すると解されております。その前提として、当事者が意思能力、すなわち自分が行う法律行為の意味を理解する能力を有していることが必要であり、当事者が意思能力を有しない場合には法律行為は無効であります。また、当事者の意思表示が錯誤、詐欺又は強迫によるものであるときは、その当事者は法律行為を取り消すことができます。

 もっとも、意思表示の合致の有無や、当事者の意思表示が錯誤、詐欺又は強迫によるものであるかなどは、具体的な事実関係を踏まえて個別に判断される事柄であり、一概にお答えをすることは難しゅうございます。

 御指摘の性的自傷等を踏まえた法制度の整備について、仮に現行の法制度が不十分であれば、特別な立法をすることが考えられるわけですけれども、関係省庁においてそのような検討が行われる場合には、法務省としては、一般法を所管する立場から、必要な協力をしてまいりたいというふうに考えております。

本村委員 ありがとうございます。こうしたこともしっかりと考慮をして施策を進めていかなければならないというふうに思っております。

 年齢を問わず、AV出演強要被害に遭った当事者の方、十八歳、十九歳のAV出演契約をした方々から高額な違約金や関係諸費用を支払わせることをやめさせる有効な対策を取るべきだというふうに思いますけれども、お答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 ただいまの委員の御指摘は、アダルトビデオ出演契約の性質に着目して、違約金等に関する定めを規制することを検討すべきだというものであったかと存じます。

 先ほども申し上げましたとおり、アダルトビデオ出演契約のように特殊な契約類型について、その性質や特徴に着目して違約金に関する合意を無効とする特別な制度を設けるとすれば、特定の政策目的に基づく特則として、特別法において定められるべき事柄であります。

 このため、アダルトビデオ出演契約に限って御指摘のような規定を設けるべきかどうかということについては、法務省としての立場からお答えすることは困難でございます。

 いずれにしても、関係省庁においてそのような特則が検討されるということであれば、法務省としては、一般法を所管する立場から、必要な協力をしてまいりたいと考えております。

本村委員 もう一つ、AVを配信して収入を得ているのに、風営法の届出を行っていない事業者もあります。また、同人AV、個人配信など、大手のものだけではないものがかなり流布をし、そしてシェアを占めているというふうに言われております。

 加害を防止するための対策が必要だというふうに思いますけれども、これは警察庁、お願いしたいと思います。

住友政府参考人 お答え申し上げます。

 風営法においては、映像送信型性風俗特殊営業、これを規制の対象とし、都道府県公安委員会への届出を求めるなどしておるところでございます。

 映像を送信する者が個人であるか法人であるか、また、映像の内容が個人的なものであるかどうかにかかわらず、風営法に定める映像送信型性風俗特殊営業に該当する営業を届出を行わずに営んだ場合は、風営法違反として取締りの対象となるほか、送信する映像の内容等に法令違反があれば、所要の取締りを行ってきたところでございます。

 警察といたしましては、引き続き、風営法の無届け営業も含め、法令に違反する行為については厳正に取締りを行ってまいります。

本村委員 内閣府の男女共同参画局の方が総合的なパッケージを出しているとは言うんですけれども、AV出演強要など被害を発生させないための教育を、大学だけではなくて、中学校、高校まで拡大をさせること、そして、個人の尊厳を大切にし、容姿に関わることを評価することはハラスメントであるということ、ルッキズムの意識をなくす教育の徹底を図ることが必要だと思いますけれども、政務官、来ていただきましてありがとうございます、よろしくお願いします。

鰐淵大臣政務官 お答えいたします。

 今、二つ御質問いただいたかと思います。

 まず、AV出演強要等の被害に遭わないための教育の取組につきましてお答えをいたします。

 成年年齢の引下げに伴いまして、十八歳及び十九歳には契約における未成年者取消しが適用されなくなることにより、御指摘のようなAV出演強要などが懸念されております。このことにつきまして、本年三月十一日に、文部科学省から各都道府県教育委員会等に集中的に啓発を図るよう依頼をしております。

 また、十八歳から一人で有効な契約ができるようになることを踏まえ、例えば、高等学校の新学習指導要領等では、家庭科で、新たに契約の重要性に関する内容を盛り込み、未成年と成年の法律上の責任の違いについて理解をさせるとともに、新たに必履修科目、公共で、多様な契約について学ぶ中で、詐欺、強迫など不完全な意思表示に基づいて契約が行われる場合は取り消すことができること等を理解させることとしております。

 さらに、卒業直前の高校生向けの生命の安全教育の啓発資料では、AV出演強要等の性産業への望まない従事等は性暴力であることや、町中のスカウトやインターネット上のモデル応募等をきっかけにAV出演強要等の被害が生じていること等を記載し、性暴力の被害者にならないよう指導をしております。

 次に、人権教育の取組についてお答えをさせていただきます。

 自分自身も含め個人の尊厳を大事にするよう指導することは大変重要であり、生徒指導や人権教育等を始め学校教育活動全体を通じまして、人権尊重の精神に立った学校づくりに取り組むよう、各教育委員会等に周知をしてまいりました。

 引き続き、人権教育を始め学校教育のあらゆる場面を通じまして、AV出演強要を含めた性被害の予防に努めてまいります。

本村委員 日本は、大変、包括的な性教育という点で遅れております。

 改訂版の国際セクシュアリティ教育ガイダンスも、ユニセフですとかユネスコですとか、そういうところが出しているんですけれども、遅れた学習指導要領を変えて、日本でも国際スタンダードな包括的な性教育をやるべきだということも強く求めておきたいというふうに思います。

 次に、名古屋入管のウィシュマさんのあの事件の問題でございます。

 ウィシュマさんは、入国者収容所等視察委員会に、嘔吐物に血が混じっていた旨、そして、男性職員から迷惑な人だと言われた旨、病院に連れていってもらえない旨を訴える手紙を書いて、二〇二一年一月三十日に提案箱に投函をいたしました。この手紙を出入国在留管理庁は入手をして報告書を書いたのか、確認をしたいと思います。

西山政府参考人 御質問の手紙につきましては、調査過程におきまして調査チームにおいて入手をいたしております。

本村委員 元々、出入国在留管理庁は、ウィシュマさんが視察委員会宛てに出したもので、第三者に向けて出したものではないので出せないというふうに言っておりました。ウィシュマさんが入管の待遇を改善してほしいと出したものを、入管は見ることができて国会は見ることができないというのはおかしいというふうに思います。

 大臣、この文書、出していただきたい。ウィシュマさんのお手紙、出していただきたいと思いますけれども、お答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 手紙そのものは個人情報に該当する上、これを公にすることにより、今後、入国者収容所等視察委員会における被収容者からの意見聴取等の活動に支障を来すこととなりかねないことなどから、情報公開法上の不開示情報に該当するものと考えております。

 なお、国会における閲覧につきましては、国会の御判断を踏まえ、適切に対応してまいりたいと存じます。

本村委員 委員長、いま一度、このウィシュマさんの手紙、委員会に提出をお願いしたいと思います。

鈴木委員長 ただいまの件につきましては、理事会にて協議いたします。

本村委員 ウィシュマさんの死亡事件について、真相解明が、出入国在留管理庁の調査チームの報告書は出ておりますけれども、ビデオを見させていただきまして、そのビデオと事実が違うという点が幾つもあるわけでございます。やはりこの報告書は内容的に虚偽があるというふうに私は思っております。

 ウィシュマさんに関わる名古屋入管の全ての映像記録の開示とともに、出入国在留管理庁の職員が入っていない第三者の検証委員会で、是非、真相究明をやり直すべきだというふうに思いますけれども、大臣、最後にお願いしたいと思います。

古川国務大臣 今回の調査は、客観的な資料等に基づき、外部有識者の客観的、公正な立場からの御意見、御指摘もいただきつつ、問題点を幅広く抽出して検討を行ったものと承知いたしております。

 その結果として、医療的対応体制の整備や職員の意識の問題などが指摘され、その改善策が示されたものであり、調査、検討が尽くされたものと考えております。

本村委員 第三者の、完全第三者の検証を是非求めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、内閣提出、刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案並びに米山隆一君外二名提出、刑法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。古川法務大臣。

    ―――――――――――――

 刑法等の一部を改正する法律案

 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

古川国務大臣 まず、刑法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 新たな被害者を生まない安全、安心な社会を実現するためには、罪を犯した者の改善更生及び再犯防止を図ることが重要です。これまで、国、地方公共団体、民間協力者が一体となって様々な取組を進めてきたこともあり、再犯者の人員は減少傾向にありますが、依然として刑法犯の検挙人員のうち五割近くを再犯者が占めております。

 こうした状況を踏まえますと、罪を犯した者について、その特性に応じたきめ細やかな指導、支援を行うことができるようにするなど、その改善更生及び再犯防止に向けた処遇の充実を更に推進することが必要であると考えられます。

 また、近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契機として、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識も高まっていることに鑑みますと、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止することが必要であると考えられます。

 そこで、この法律案は、罪を犯した者の施設内、社会内処遇をより一層充実させるため、刑法、刑事訴訟法、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、更生保護法その他の法律を改正し、所要の法整備を行うとともに、刑法を改正して侮辱罪の法定刑を引き上げようとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、懲役及び禁錮を廃止し、これらに代わるものとして、拘禁刑を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができることとするとともに、再度の刑の全部の執行猶予の言渡しをすることができる対象者の範囲を拡大し、あわせて、猶予の期間内に更に犯した罪について公訴の提起がされている場合には、当該罪についての有罪判決の確定が猶予の期間の経過後となったときにおいても、猶予された当初の刑を執行することができることとするものであります。

 第二は、資質及び環境の調査の結果に基づき受刑者ごとに定めるものとされている処遇要領について、入所後できる限り速やかに、矯正処遇の目標並びに作業、指導ごとの内容及び方法をできる限り具体的に記載して定めることとするほか、再び保護観察付全部執行猶予を言い渡された者については、少年鑑別所による鑑別を行うなどして再犯の要因を的確に把握し保護観察を実施することとするものであります。

 第三は、刑事施設の長や保護観察所の長は、被害者等から申出があったときは、その心情等を聴取することとし、これを矯正処遇や保護観察に生かすこととするほか、被害者等から申出があったときに保護観察対象者に対して被害者等の心情等を伝達する現行法上の措置に加えて、受刑者に対しても被害者等の心情等を伝達することとするものであります。

 第四は、侮辱罪の法定刑について、現行の拘留又は科料から、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に引き上げるものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 続いて、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴い、爆発物取締罰則等の関係法律の懲役及び禁錮を拘禁刑に改めるなど所要の整理等を加えるとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。

 以上が、これら法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いいたします。

鈴木委員長 次に、鎌田さゆり君。

    ―――――――――――――

 刑法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鎌田議員 ただいま議題となりました刑法等の一部を改正する法律案について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明いたします。

 この法案は先ほど趣旨説明がありました政府提出の侮辱罪厳罰化を始めとする刑法等の一部を改正する法律案に代わる対案ですので、まず、政府提出の侮辱罪厳罰化法案の問題点を指摘します。

 現在、SNS、インターネット上の誹謗中傷は、大きな社会問題となっています。

 一昨年五月、二十二歳の若さで木村花さんが命を失ったのは、極めて痛ましい事件でした。この場をかりて、衷心より御冥福をお祈りいたします。

 SNS、インターネット上の誹謗中傷対策として、政府は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」とされていた侮辱罪の法定刑に、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金を付加する侮辱罪厳罰化法案を提出しました。しかし、この法案は、端的に、SNS、インターネット上の誹謗中傷対策として有効ではありません。

 まずもって、外部的名誉を保護法益とする侮辱罪では、死ねばいいのに、いつ自殺するのといったような、SNSで見られる人を傷つける心ない言葉が侮辱とは言えず、必ずしも処罰の対象となりません。また、侮辱罪は公然性を要件としていますので、ダイレクトメッセージや電子メール、LINEなどで行われる少人数での誹謗中傷やいじめにも対応できません。

 その一方で、政府案には、言論の自由を強く萎縮させる大きな問題点があります。

 侮辱というのは非常に広い解釈がなされる言葉で、おまえあほやなといったような日常的会話も侮辱罪となり得ます。また、Aさんは総理の器じゃないといった、本人は正当な論評のつもりで言った批判の言葉でも、侮辱罪となることもあり得ます。その結果、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金となり得るのです。

 日本における言論の自由を、なかんずく民主主義に欠かせない公務員、政治家に対する正当な批判を、大きく萎縮させるものにもなります。

 このような批判をしますと、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金と定められている名誉毀損罪があり、そのようなことは起きないという反論があり得ますが、名誉毀損罪には公共の利害に関する場合に違法性が阻却される特例が明文で定められているのに、侮辱罪にはそのような規定がありません。

 さらに、侮辱罪自体は今までも存在しており、そのようなことは起きなかったという反論もあり得るでしょう。しかし、この政府案による厳罰化では、侮辱罪による逮捕が可能となり、教唆犯、幇助犯といった従犯が処罰されるようになります。厳罰化されると、今までの侮辱罪とは全く異質なものになってしまうのです。

 この政府案の問題点を正面から解決するのが、立憲・無所属会派が提出した、人の内面における人格に対する加害の目的でこれを誹謗し又は中傷した者は拘留又は科料に処すると定めた、加害目的誹謗等罪です。

 加害目的誹謗等罪は、端的に、人の内面における人格権を保護法益とします。これにより、死ねばいいのに、いつ自殺するのといったような、人の人格を傷つける言葉が処罰対象になります。

 一方で、おまえあほやなといった日常的な会話については、これを言った人が加害の目的がないと弁明することが可能となります。その上で、このようなことを言われた人が、私は東京出身なのであほと言われると傷つくんです、やめてくださいと言っていたことを知りながら、なおそれを繰り返していた場合は、加害の目的があると認定され、処罰されることになります。

 つまり、加害目的誹謗等罪では、加害の目的を要件とすることで、被害者がやめてほしいと言っていることを知りながら誹謗中傷したことという客観的事実によって、処罰すべき誹謗中傷と処罰すべきでない言葉を適切かつ明確に画することができるのです。

 また、加害目的誹謗等罪には、明文で公共の利害に関する場合の特例を定めていますので、公務員、政治家に対する正当な批判をした人がこの罪で処罰されることはありません。法定刑も、拘留又は科料となっています。原則として逮捕されることはなく、従犯が処罰されたりすることも基本的にありません。

 同時に、本法案では、犯罪被害者保護法における損害賠償命令制度の対象に加害目的誹謗等罪、名誉毀損罪、侮辱罪を加えて被害者救済を図るとともに、プロバイダー責任制限法の使い勝手をよくして、誹謗中傷の行為者を特定しやすくする現実的対策を講じています。

 私たちは、矜持を持って、加害目的誹謗等罪こそが、SNS、インターネット上の誹謗中傷に対し、処罰すべき対象を適切に捉えて処罰し、処罰すべきでない正当な批判を処罰対象から除外し、言論の自由を抑制することなく誹謗中傷を抑制し、被害者救済を実現する適切な法律であることを申し上げて、趣旨説明とさせていただきます。

 何とぞ、速やかに御審議の上、御賛同いただきますようお願い申し上げます。

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査のため、来る二十六日火曜日午前九時三十分、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十六日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十九分散会


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