衆議院

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第13号 令和4年4月27日(水曜日)

会議録本文へ
令和四年四月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 馨祐君

   理事 井出 庸生君 理事 熊田 裕通君

   理事 葉梨 康弘君 理事 山田 美樹君

   理事 鎌田さゆり君 理事 階   猛君

   理事 守島  正君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    石原 正敬君

      尾崎 正直君    奥野 信亮君

      国定 勇人君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    谷川 とむ君

      中川 貴元君    中谷 真一君

      中野 英幸君    西田 昭二君

      野中  厚君    八木 哲也君

      山田 賢司君    伊藤 俊輔君

      鈴木 庸介君    藤岡 隆雄君

      山田 勝彦君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    遠藤 良太君

      日下 正喜君    福重 隆浩君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   議員           山田 勝彦君

   議員           米山 隆一君

   法務大臣         古川 禎久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 二之湯 智君

   法務副大臣        津島  淳君

   法務大臣政務官      加田 裕之君

   最高裁判所事務総局刑事局長            吉崎 佳弥君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 鎌田 徹郎君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    大賀 眞一君

   政府参考人

   (警察庁警備局警備運用部長)           安田 浩己君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       吉川  崇君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    佐伯 紀男君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  松下 裕子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           堀内  斉君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十七日

 辞任         補欠選任

  国定 勇人君     石原 正敬君

  中野 英幸君     中川 貴元君

  前川 清成君     遠藤 良太君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     国定 勇人君

  中川 貴元君     中野 英幸君

  遠藤 良太君     前川 清成君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案(内閣提出第五八号)

 刑法等の一部を改正する法律案(米山隆一君外二名提出、衆法第三一号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案並びに米山隆一君外二名提出、刑法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官鎌田徹郎君、警察庁刑事局長大賀眞一君、警察庁警備局警備運用部長安田浩己君、法務省大臣官房政策立案総括審議官吉川崇君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長川原隆司君、法務省矯正局長佐伯紀男君、法務省保護局長宮田祐良君、法務省人権擁護局長松下裕子君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君及び厚生労働省大臣官房審議官堀内斉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長吉崎佳弥君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。尾崎正直君。

尾崎委員 高知二区選出の尾崎正直でございます。法務委員会、初質問になります。どうぞよろしくお願いをいたします。

 それでは、刑法等改正法案につきまして御質問させていただきます。

 まず、拘禁刑についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 令和二年の検挙人員に占める再犯者の比率は四九・一%、統計を取り始めて以来最高となったわけでありまして、いかに再犯防止を図るか、このことが今後の大きな課題であります。

 この点、今般の法案によりまして受刑者の処遇の充実が図られる、再犯防止の効果が高まるものと大変評価をするところでありますが、問題となるのは、この法案の意図したとおりの効果を発揮するためにはそれなりの体制の整備が必要だということであります。今日は、その観点から御質問をさせていただきたい、そのように考えるところです。

 まず第一に、処遇要領についてお伺いをしたいと思います。

 個々の受刑者の特性に応じた柔軟な処遇を実現するという拘禁刑創設の意図したところを実現していくためには、それぞれの受刑者にとって何が必要なのかをしっかりと見極めて、それぞれの受刑者に応じた処遇要領を的確に定めることが大事となってきます。これは、相当時間もかけてしっかりとやらなければならないことなのだろうと考えるところでありますけれども、問題はそのための体制が十分なのかということです。

 調査専門官の増員も含めまして、各施設ごとに的確な処遇要領を定めるための体制の充実、これを図っていくことが大事ではないかと思いますけれども、御見解をお伺いします。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事施設におきまして、処遇要領を策定するため、従来も個々の受刑者につきまして、医学、心理学、教育学その他の専門的知識及び技術を活用した処遇調査を行いまして、その特性の把握に努めているところでありまして、拘禁刑受刑者に対しても、このような専門的知識及び技術を活用した処遇調査を行った上で、作業や指導の必要性を判断することとなります。

 拘禁刑創設の趣旨を踏まえまして、判断の適正さを担保するためには、一層的確に受刑者の特性を把握することが重要となるため、刑事施設において処遇調査を行う職員について必要な人員を確保するとともに、個々の職員の能力の向上も図ることが必要になると認識しておりまして、御指摘のとおり、必要な体制の整備に十分努めてまいりたいと考えております。

 また、必要に応じまして、受刑者に対し、長年にわたり若年者を中心に専門的知識を用いた科学的調査を行ってまいりました少年鑑別所の鑑別を受けさせることを可能とする法改正も本法律案に盛り込まれておりまして、受刑者の特性の把握をするに当たりまして、少年鑑別所の調査機能も十分効果的に活用してまいりたいと考えてございます。

尾崎委員 どうもありがとうございます。入口として一番大事なところだと思いますので、是非しっかりと御対応いただきたいと思います。

 続きまして、教育についてであります。

 拘禁刑の創設によりまして、若年の受刑者に対しては、現行に比べて基礎学力の向上に向けた指導時間を増加させることができるなど、的確な処遇、これが充実をしていくことになります。問題は、各施設における教える体制は十分なのかということであります。

 松本少年刑務所では、施設の中に地元中学の分校が設置されていると伺っているところでありますけれども、こうした外部の教育施設との連携をより一層強化するなど教える体制を強化する必要がある、そのことが大事ではないかと思いますが、御見解をお伺いします。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 従来も、刑事収容施設法が規定する矯正処遇といたしまして、作業改善指導、教科指導を実施してきたところでございます。御指摘のような一部の刑事施設、例えば松本少年刑務所では、近隣の中学校の分校を設置いたしたり、あるいは近隣の高等学校の協力の下、通信制課程を設置したりという行いをしているところでございます。

 しかしながら、大半の受刑者を占める懲役受刑者につきましては、一定の作業時間を作業に割かなければならないとされているため、このような取組にも一定の限界がございました。これに対しまして、拘禁刑受刑者に対しましては、その個々の特性に応じて作業改善指導、教科指導を柔軟に組み合わせて実施することが可能となります。これによりまして、例えば、処遇調査の結果、学力不足により社会生活に支障がある者など教科教育を十分に行うべきと考えられる若年受刑者などには学力向上のための指導を中心に行うなど、柔軟な処遇を実施することを想定してございます。

 そのためには、教科指導の内容の充実を図る必要もあると考えられるところでございまして、刑事施設の各種体制の整備、これを整えるとともに、従来から御協力いただいている教育機関やその関係者の方、あるいは関係機関との効果的な連携を更に深めて行っていくよう、在り方について引き続き検討をしてまいりたいと考えてございます。

尾崎委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 再犯の防止のためには社会復帰支援の充実、これが大事なことは言うまでもありません。社会復帰支援を刑事施設の長の責務としたりとか、またさらには、保護観察所の生活環境の調整との連携強化をうたうなど、法案ではその充実を図る方向でありまして、この点、大変評価できるところだと思います。

 ただ、一つ気になっておりますのは、協力雇用主との連携の在り方であります。

 協力雇用主のうち、実際に保護観察対象者等を雇用しておられる方というのは、実際のところはほんの一握りにすぎないということでありまして、令和元年でも僅か六・八%という状況であります。様々な理由があると思いますけれども、政府として今後どのような対策を講じていこうと考えているか、お伺いをしたいと思います。

 例えば、それぞれの施設の職業訓練プログラムを定めるに当たって、協力雇用主のニーズをより一層踏まえた内容とするよう努めるとか、より実効性あるプログラムとなるよう取り組んでいかなければならないのではないか、その点についての御見解をお伺いしたいと思います。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 受刑者の就労を支援し、釈放後速やかに就職できる状況にあるということは、再犯を防止する上で極めて重要なことでありまして、そのため、刑務所内における職業訓練の種目や内容が社会の雇用ニーズに応じたものであることが必要でありまして、委員御指摘のとおりだと考えてございます。

 このため、刑事施設におきましては、毎年、協力雇用主や各種業界団体、関係機関等による職業訓練見学会というものを実施しておりまして、充実すべき訓練内容や今後新たに導入するべき訓練種目などについて御意見をいただく機会を設けておりますほか、有効求人倍率などを参考としつつ、職業訓練が雇用ニーズに応じたものとなるよう、継続的にその充実や内容の見直しを図っているところでございます。

 今後とも、協力雇用主のニーズの的確な把握に努めまして、雇用ニーズに応じた職業訓練が実施できるよう、その充実に取り組んでまいります。

尾崎委員 教育、さらには協力雇用主の皆様との関係、様々に、今後この拘禁刑創設に当たって体制を整備しないといけないことは多いと思います。是非お取組を強化をしていただきたい、そのように考えるところです。

 続いて、刑の執行猶予制度の拡充についてお伺いをいたします。

 法案によりますと、保護観察付執行猶予中の再犯について再び執行猶予を付すことができるようになるなどという形で、刑の執行猶予の適用範囲が拡大をされるわけであります。裁判所の選択肢も広がる、それぞれの対象者の特性等に応じたより一層的確な処遇が図られることが期待をされるわけでありますけれども、こちらについても各種の体制整備が必要かと思います。

 何といっても、やはり保護観察付執行猶予を受ける方のケースというのは増えてくるんじゃないかと予想されるわけですが、他方で、保護司の皆様方の現在の充足率は大体九割程度で推移をしているという状況です。保護司の確保、こちら、より一層力を入れなければならないと考えるわけですが、御見解をお伺いしたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 保護司の数は減少傾向が続いてございます。

 法務省では、保護司のなり手確保の観点も踏まえまして、保護司専用ホームページの開発、運用、タブレットの配備等のデジタル化に着手するなど、保護司の活動環境の整備や負担軽減等に努めているところでございます。

 御指摘いただきましたとおり、新たな制度の下で保護観察対象者の増加も予想されることがありますので、保護司専用ホームページの活用促進等のデジタル化の着実な実施、自宅以外の面接場所の提供といった地方公共団体による支援の拡充など、一層の環境整備や負担軽減を検討していく必要がございます。

 法務省といたしましては、保護司活動の環境整備、負担軽減策に全力で取り組みまして、保護司適任者の確保に力を注いでまいりたいと考えております。

尾崎委員 ありがとうございました。

 高齢化も進んできているという状況でございますので、この点は本当に力を入れなければならない点だろう、そのように考えるところであります。

 また、この法案によりますと、保護観察中の処遇も非常に充実してくることになり、中でも、更生保護施設の役割がより一層重要なものとなってくると考えられるところであります。

 例えば、薬物犯罪など特定の犯罪的傾向を改善するための援助なども実施をされることとなるわけでありますけれども、もっと言えば、さらにこれを特別遵守事項ともし得るというふうに法改正がされていくわけであります。

 これらの改善プログラムの質の担保ということが非常に重要になってくるかと考えるわけでありますが、この点、法案では、法務大臣が定める基準に適合することを求めておられるわけではありますけれども、そもそも、それぞれの更生保護施設において、充実したプログラムを作り、実施するための人的、予算的体制は十分なのかということであります。非常に小さな施設で頑張っておられるところもたくさんあるわけでありまして、国としても、より一層更生保護施設に対する支援を充実させる必要があるのではないかと考えるところですが、御見解をお伺いしたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正によりまして、更生保護施設等による薬物等の犯罪的傾向を改善するための専門的な援助、これを事業内容として明確化するなどによりまして、更生保護施設による処遇の一層の充実が求められているところでございます。

 この点、更生保護施設がこういった処遇を実施するに当たりましては、薬物以外の専門的な処遇についても的確に対応していただく必要がありますほか、専門的援助の実施に伴う報告等の負担が新たに発生するなどの課題があるものと認識しております。

 このため、更生保護施設が充実した処遇を実施できるよう、専門的援助を含め、処遇の内容や負担に応じた委託の在り方の検討など、国として、人的、物的体制整備に向けた必要な支援を行ってまいりたいと思っております。

尾崎委員 是非、これは大変期待されているところだと思います、対策をしっかりと講じていただきたいというふうに考えるところです。

 満期釈放者対策についてお伺いをしたいと思います。

 満期釈放者の再犯率を引き下げていくことが大きな課題でありまして、出所受刑者の二年以内再入率は、満期釈放の場合は仮出所の場合の約二倍以上という状況でありまして、ここが本当に大きなポイントとなるわけであります。

 法案では、本人からの申出があった場合に行われます更生緊急保護の期間、これが二年までという形で延長されたりとか、本人から申出がない場合でも必要な助言が行われることとなっておりまして、本当にこちら、対策を強化しよう、そういうお考えが見えてくるわけであります。

 この更生緊急保護の中身を一層充実させていく必要があると考えるところであるわけでありますけれども、近年、いろいろ新たな取組が行われているところだと思いますけれども、その現状と効果などについてお伺いしたいと思います。

 更生保護施設によります訪問相談支援事業がモデル事業として八施設で行われておりますけれども、その現状はどうなのか。また、地域の支援者たちのハブ機能や支援者支援機能を有します更生保護地域連携拠点事業、これが全国三か所で行われることとなっておりますけれども、その狙いはどうか。こちらについてお伺いしたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 満期釈放者等につきましては、それぞれ様々な課題を抱えているものの、地域で適切な支援につながることができないで孤独、孤立に陥り、結果として再犯に至るということも少なくないわけでございます。

 こうした課題に対応するため、更生保護施設を退所した者等に対しまして、更生保護施設の職員が定期的に居宅を訪問して支援する訪問支援事業を昨年度から全国八か所で開始しております。この事業を実施する更生保護施設からは、例えば、アルコール依存のある者に対する継続的な支援によりまして飲酒による問題行動を防ぐことができたといった、効果を実感する声が寄せられております。

 また、満期釈放者等に関する課題の解消のためには、地方公共団体、保護司等の民間協力者、関係機関が多機関ネットワークを構築いたしまして、相互の連携をより一層強化する必要があることから、都道府県域に専任のコーディネーターを配置します更生保護地域連携拠点事業を今年の十月から全国三か所において実施する予定となっております。

 これらの事業の実施状況を踏まえまして、各地域で必要な支援が円滑に行われますよう、適切に対応してまいりたいと考えております。

尾崎委員 この訪問相談支援事業は大変有効だと思うわけでありますが、八施設ということですね。是非、効果を見極めていただいて、早期に、また全国でも展開できるように頑張っていただきたいものだ、そのように考えるところであります。

 更生緊急保護の期間が最長二年間、先ほど申し上げました。ただ、満期釈放者を始め、再犯防止を徹底していくという観点からは、こうした刑事手続が終了した後も、本当に、切れ目なく息長く支援を継続していくということがやはり重要なんだろうと思います。そういう点からいきますと、出所者の皆さんがお暮らし続けられるところの地方自治体の役割というのは非常に大きなものが今後あるのではないかと考えるところでございます。

 市町村段階での地方再犯防止計画、もっともっと策定していただきますように促していかなければならないというふうに考えるわけでありますが、その上で、自治体が、再犯防止に向けた取組、これをしっかりやっていただけるように後押しをする、そして、国から自治体への財政支援もしっかり充実させる、こういうことが必要だと考えるところでありますけれども、御見解を伺いたいと思います。

吉川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、罪を犯した者の再犯を防止するためには、刑事司法手続終了後も地域社会において息の長い支援を行う必要があり、地方公共団体の役割は重要でございます。

 法務省では、これまで、三十六の地方公共団体に委託して地域再犯防止推進モデル事業を実施し、その成果を他の地方公共団体に共有するとともに、地方公共団体が再犯防止施策を行う上での課題について、地方公共団体などと協議を重ねてまいりました。

 これらを通じ、法務省として、地方公共団体の取組を推進するためには、国と地方公共団体との役割分担や国から地方へのつなぎの在り方について整理し、地方公共団体に実施していただく施策をより具体的に提示することが必要と考えております。あわせて、地方公共団体からは、施策を実施するための財政支援などについて御要望をいただいているところでございます。

 法務省としては、さらに、地方公共団体の御意見も伺いながら、これらの点について検討を進めるなど、速やかに課題に取り組んでまいります。

尾崎委員 是非、大事なことだと思います、進めていただきたいと考えるところです。

 最後に、大臣にお伺いをさせていただきたいと思うわけであります。

 再犯防止を一層進めていくためにも、受刑者ごとに、その年齢、特性等に合わせて、処遇要領の定め、必要な作業、必要な指導の実施、社会復帰支援、保護観察、更生緊急保護、自治体による支援、こういう形で、切れ目なく息長く処遇を行っていくということが大事だと考えるところであります。

 今後とも、組織の縦割りを排して、関係者の連携を密にして、切れ目なく息の長い対策を講じていく必要があると考えるわけでありますが、最後に、大臣にこの点についての御決意をお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 罪を犯した者の再犯を防止するためには、釈放後の円滑な社会復帰が不可欠でございます。これまでも、矯正官署と更生保護官署が連携をして、受刑者に対して、釈放後には自立した社会生活を速やかに送ることができるよう、生活環境の調整等を実施してきたところでございます。

 今回の法改正では、受刑者の社会復帰支援をより一層推進していくために、刑事収容施設法では、受刑者の社会復帰支援を刑事施設の長が保護観察所の長と連携して実施する規定、そして、更生保護法においては、満期釈放者等に対し、更生緊急保護の措置を取り得る期間を一年から二年に延長し、その申出を刑事施設収容中から可能とする規定などの法整備を行うものでございます。

 受刑者の円滑な社会復帰による再犯防止の推進に向けて、これらの新たな施策等を通じて、これまで以上に矯正官署と更生保護官署が連携を強化し、受刑中から釈放後の社会生活までを見据えた、切れ目なく息の長い支援の実施に一層努めてまいりたいと考えております。

尾崎委員 大臣、どうもありがとうございました。

 最後に、一点要請をさせていただきたいと思うわけでありますが、今回の法案によりまして、いわゆる受刑者の皆さん、受刑者等皆様方の処遇は充実をしていくわけでありますが、他方で、被害者の方への様々な支援ということを充実させるということもしていかなければ均衡を欠くんだろう、そのように思うところでありまして、経済的支援の充実も含めまして、是非、この点もまた今後政府において御検討いただきたい、要請としてこのことをお話しさせていただきたいと思います。

 それでは、侮辱罪についてお伺いをさせていただきたいと思うところです。

 昨日、参考人質疑で、本当に木村響子様のお話には胸をつまされる思いがいたしたところでありました。木村花さん、本当に心から御冥福をお祈りを申し上げたい、私からも申し上げたい、そのように思うところであります。

 その上で、この侮辱罪について、まず政府にお伺いをします。

 今回の侮辱罪の法定刑の引上げの狙い、これはどういうものか、また時効はどうなるのか、簡潔に分かりやすくお答えいただきたいと思います。

川原政府参考人 お答えいたします。

 近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契機といたしまして、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識も高まっているところでございます。

 こうしたことに鑑みますと、公然と人を侮辱する侮辱罪につきまして、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止することが必要であると考えているところでございます。

 そこで、現行法上拘留又は科料とされている侮辱罪の法定刑を引き上げて、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料とするものでございます。

 お尋ねの公訴時効の期間でございますが、公訴時効につきまして、現行の侮辱罪は拘留又は科料に当たる罪として一年とされているところでございますが、この法定刑の引上げによりまして三年に延びることとなるものでございます。

尾崎委員 開示請求には時間がかかるという中で、時効一年というのが一つの壁になってきたわけでありますが、それが三年になるということかというふうに伺いました。

 続いて、この法定刑の引上げによりまして、今まで取り締まられなかった行為が取り締まられることとなる、結果、表現の自由に対して強い萎縮効果をもたらす、ひいては政治家による言論の弾圧につながるもの、そういうような懸念の声も上がっているわけでありますけれども、この点についてどのように考えるか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

川原政府参考人 お答えいたします。

 今般の法整備は、侮辱罪の構成要件を変更するものではなく、処罰の対象となる行為の範囲、すなわち侮辱罪が成立する行為の範囲は変わらないところでございます。

 また、法定刑として、現在あります拘留、科料を引き続き置くこととしておりまして、当罰性の低い行為を含めて、侮辱行為を一律に重く処罰することを趣旨とするものではございません。

 その上で、法定刑が引き上げられた場合の運用につきまして、侮辱罪を含め、刑事事件における捜査機関や裁判所の判断は、刑事訴訟法等の規定に従い、証拠に基づいて個別の事案ごとになされるものでありまして、御懸念の点につきましては、法制審議会の部会におきましても、捜査、訴追を行う警察、検察の委員から、これまでも表現の自由に配慮しつつ対応してきたところであり、この点については今般の法定刑の引上げにより変わることはない等の考え方が示されたところでございます。

 したがいまして、今般の侮辱罪の法定刑の引上げは、表現の自由を不当に侵害するものでも言論の弾圧につながるものでもないものと考えております。

尾崎委員 どうもありがとうございました。大事な点だというふうに思うところです。

 昨日、山田委員の御質疑の中でもありましたけれども、今回野党の皆様からこの対案、法案が出された、このことは、本当に、議論を深めていくという観点から非常に大事なことであって、有意義なことだと思います。是非、議論を深めるために、こちらにつきましても御質問させていただきたい、そのように考えるところであります。

 法案提出者の方にお伺いしたいと思いますけれども、まず第一に、侮辱罪をそのまま残したままで、あえて加害目的誹謗等罪を創設する理由、これは何でしょう。

米山議員 時間が足りなさそうなので、早口でお答えさせていただきます。

 加害目的誹謗等罪は、近年におけるインターネット上の誹謗中傷による被害の実情に鑑み、現行の名誉毀損罪や侮辱罪では処罰し難い誹謗中傷行為を正面から処罰の対象とするものです。すなわち、現行の名誉毀損や侮辱罪は、外部的名誉を保護法益とするのに対し、加害目的誹謗等罪は、内面の人格を保護法益とする新たな構成要件を定めたものです。

 また、処罰の対象となる行為も、他人を低く評価する価値判断を表示することである侮辱と、そのような評価の要素を含まないものもある誹謗中傷とは、重なる部分もありますが、異なる部分もあり、概念として別のものです。

 よって、侮辱罪と加害目的誹謗等罪は、それぞれ保護法益や処罰対象となる行為を異にし、相互に矛盾するものではなく、むしろ、悪質なネット上の誹謗中傷に対処するものとして相互補完関係にあると言えることから、侮辱罪を残したまま、新たな罪を創設することといたしました。

尾崎委員 侮辱罪では公然とという構成要件が入っていますが、加害目的誹謗等罪では入っていません。この理由は何でしょうか。

米山議員 近年問題となっておりますインターネット上の誹謗中傷は、時に、ダイレクトメールや電子メールといった一対一でやられることもありますし、LINEいじめのように、少人数のクローズドな環境で行われることもございます。

 そのようなものに公然性を要求してしまいますと、そのようなものが処罰対象となりませんので、あえてこれは公然性という要件を外させていただきました。

尾崎委員 ということになりますと、加害目的で誹謗する、しかも一対一でする、これも構成要件に該当するわけですね。

 けんか、口論の類い、その場合、相手に対して厳しい言葉をぶつける、これも構成要件に該当します。著しく表現の自由を侵害する、そういうおそれはないでしょうか。

米山議員 それに関しましては、加害の目的という、内面の人格を加害する目的という要件を要しておりますので、それは単に、相手を傷つけるつもりがない、相手の内面の人格を傷つけるようなつもりではなく、単なる口論の中で強い批判であり強い論評として言ったということは、この構成要件に該当しないことになりますので、そういった意味で言論の自由を阻害するものではないと考えます。

尾崎委員 けんかのときは、相手を傷つけようという意図を持つことはたくさんあるんじゃないでしょうかね。だから、そういうものを一律、この構成要件に該当するようにするというのは、随分、表現の自由という観点からどうなのかなということをちょっと考えるところですが。

 関連しまして、人格を加害する目的で、事実を摘示することなく政治家を誹謗した場合、法案で言うと、二百三十の二の例によっては救済をされません。この場合、加害目的誹謗等罪で罰せられることになるでしょうか。

米山議員 今ほど御質問がありましたけれども、あくまで内面の人格を加害するような誹謗中傷でございますので、内面の人格を害するような加害の目的でありますので、単に、討論上の、討論で相手を攻撃するというものは、それらに該当しないということになります。

 また、今ほどの、政治家に対するということで御質問にお答えしますけれども、政治家を誹謗しあるいは中傷する場合には、公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に関する場合として、二百三十の二第三項の適用が考えられますが、事実の摘示がない場合には本条の適用はありません。この場合でも、刑法三十五条の正当行為として処罰されない可能性はありますが、その適用がなければやはり処罰されます。

 たとえ政治家に対するものであっても、事実の摘示をすることなく、専ら人の人格を傷つけるような誹謗中傷は、公共の利害に関する言論とは言えず、特例による保護に値しないものであると言わざるを得ません。

 なお、侮辱罪においても、事実を摘示することなく政治家を侮辱した場合は処罰されることとなりますが、このときは、加害の目的がなくても処罰され、処罰範囲はより広くなります。

尾崎委員 刑法三十五条の正当行為、その理論はお認めになるということですね。

米山議員 これは刑法の一般条項ですので、それは、ほぼあらゆる、全ての条項に適用されるかと思います。

尾崎委員 加害の目的で厳しい言葉を吐くというのは、通常のけんかではよくあることでありまして、死ねやとか、こんなことは言いたくありませんが、けんかではそういうことはあるわけです。しかし、そうやって言ってしまった後で加害目的誹謗等罪に問われ、けんかをしたら罪に問われる、これは本当に暮らしにくい世の中になるんじゃないか、私はそれを心配するところです。

 最後です。

 加害目的誹謗等罪では、法定刑の上限は、今までどおり、拘留及び科料とされているところでありますが、これでは、これまでに比べて抑止効果は強まらず、かつ、いわゆる時効一年の壁もなくならないわけです。本当に人の命をも奪うようなネット上の誹謗中傷、これを防ぐことができるんでしょうか。

米山議員 議員の最初の質問にお答えしますが、まず、議員は侮辱罪に関しては肯定されているわけで、侮辱して処罰されることはいいんだけれども、けんかして処罰されるのはいかぬというのは、極めて不自然な議論であろうかと思います。

 なお……(尾崎委員「当然かどうかは違いますね」と呼ぶ)最後まで答弁させていただいていいですか。なお、何度も申し上げますけれども、加害の目的は、内面の人格を害するような加害の目的でございますので、単に相手を、討論の中で相手に対する、何といいますか、ある種のアグレッシブな意思を持ったというものは、内面の人格に対する加害の目的とは認定されませんので、そのような御懸念は不要であろうかと思います。

 次に参りますけれども、時効についてでございますが、まず、抑止効果があるかということでございますが、私は抑止効果はあると思います。

 木村響子さんは、科料を科せられても、何だ、九千円くらいかと言っていた人が多かったと言われました。確かにそういう人も一定数いるとは思います。しかし、大多数の人にとっては、前科がつき、時に刑事犯として報道されるのは大きなことで、これによる一般予防効果は大きいと思います。また、立憲・無所属案では、犯罪被害者保護法の損害賠償命令制度を用いることで、そういった人からの損害賠償を容易にしており、民事での制裁も科されます。

 加害目的誹謗等罪は、インターネット上において悪質な誹謗中傷が行われている実情に鑑み、現行の名誉毀損罪や侮辱罪では処罰し難い誹謗中傷行為を正面から処罰の対象とするものであるため、人の命を奪うような……

鈴木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

米山議員 はい。

 ネット上の誹謗中傷の防止策としては有効であると考えます。

 また、時効一年の壁とは、侮辱罪の公訴時効が一年であるのに対して、開示請求等に時間を要し、加害者を特定した際には捜査の時間が不足していることを問題とするものと承知しております。しかし、そもそも開示請求は民事の手続です。犯罪である侮辱罪の捜査において、被害者が民事手続で加害者を特定しなければならない現在の警察の運用が間違っているのであり、SNS、インターネット上の誹謗中傷において、加害者が特定されない状態で被害届を受理し、捜査を開始すれば、時効一年の壁の問題は相当程度に解決されます。

 また、侮辱や誹謗中傷のような犯罪は、事実認定に困難なところは少なく、立件すべき事案は一年で立件できることがほとんどであり、木村響子さんも言ったように……

鈴木委員長 簡潔にまとめてください。

米山議員 はい。

 これに三年をかけてはいけないんだと思います。

 本罪の法定刑を、現行の侮辱罪と同様に、拘留又は科料にとどめた趣旨は、民主主義社会において極めて重要な言論の自由を萎縮させないためであり、警察の捜査の現状に合わせて公訴時効を延長するために必要以上に重い刑を科すことは、本末転倒であると言わざるを得ません。

 失礼いたしました。

尾崎委員 質疑時間は終わりましたので。是非、法案についても一緒に議論を深めさせていただきたい、そのように思うところです。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 今回、刑法の改正法案、非常に重要な中身でございますので、しっかり議論していきたいと思います。

 昨日、木村花さんのお母さんである木村響子さんの、参考人としての、本当にもう夜も眠れないという状況で来ていただきまして、そして、木村花さんがお亡くなられた当日のこと、そしてまた、響子さんに対する誹謗中傷、それから、裁判の手続における様々な困難、費用の面も含めてですね、そういうことについてお話ございました。自らNPOを立ち上げられて、そして、インターネット上における誹謗中傷の根絶に向けて、幅広い活動をされておられる。やはりそれに立法府としてもしっかり応えていかなきゃならない、こういうふうに決意をしたところでございます。

 それこそ、おっしゃっていましたけれども、花や私、松永さんというのは、例の暴走事故の件の遺族であります、被害を受けたたくさんの人たちが踏みにじられてきた尊厳を、どうか法律で守っていただきたいと思っています、私たちは、チェンジさんという署名サイトで、厳罰化に対する賛同者の署名を集めております、この署名が、今、六万三千五百人の方が賛同してくださっていますということで、厳罰化は、これで終わりということではなく、これを始まりとして、細やかな法整備を、どうか迅速に超党派でしていただきたいと思っております、言葉狩りや言論封じに悪用されないように、適用に注意をしていただきたいです、何よりも、被害者の救済のための厳罰化であってほしいと思います、こういうふうに述べておられるわけであります。

 そして、参考人からの提出書面ということで、侮辱罪の厳罰化を早急に求めますという中で、現代、誰もがインターネットを当たり前に利用する時代になり、インターネット上では毎日のように心ない言葉が多くの方々の見ている中で無責任に発信され続けています、その心ない言葉が人の名誉を侵害するだけでなく、人の心を深く傷つけています、そして、その心ない言葉が凶器となり、人の心を傷つけるだけではなく、人を追い詰め、かけがえのない人の命まで奪うことがある時代になっています、花の件では、書き込みをした人に対して、侮辱罪で科料九千円の略式命令となりました、私は、このような侮辱罪で科料九千円という結果について、心ない言葉が凶器となり、人の命を奪うことすらある今の令和の時代に合った罪の重さではないと考えています、こういうふうに述べられているところでございます。

 本当に、近年、インターネット上の誹謗中傷、人権侵害がばっこしており、とりわけ匿名でなされるインターネット上の誹謗中傷はより攻撃性が助長される傾向にあるところ、これによって取り返しのつかない事態も生じているわけで、看過できません。

 一昨年、SNSの誹謗中傷によってお亡くなられた木村花さんに衷心より哀悼の意を表します。

 我が党でも、令和二年六月に、総務大臣、法務大臣に対し、インターネット上の誹謗中傷・人権侵害に対する対策の提言を出させていただきました。その中に、誹謗中傷・権利侵害情報に対する適切な削除の促進ということで、法務省の人権擁護機関は、中立的な立場で、違法性を判断した場合、プロバイダーへの削除の要請ということもしっかり進めてもらいたいということも要請しておりまして、そのとおりしっかりやっていただいて、プロバイダーとの意見交換もしていただいたということでございます。

 また二番目に、発信者情報開示請求の実効性の向上ということで、これは昨年の常会にプロバイダー責任制限法の改正という形でつながったわけでありますが、施行を今待っている状況である。

 あるいは、教育・普及啓発、相談体制の強化。そしてまた、賠償額の高額化や調査費用の発信者負担。そして、刑事罰については、侮辱罪の法定刑の在り方について検討をすべきである、その場合は、公共的言論、政治的言論に不当な萎縮効果を与えないようにすべきである。

 こういう提言も出させていただいたところでございます。

 今回の刑法改正で、第二百三十一条の侮辱罪について、構成要件に変更はなく、処罰の対象となる行為の範囲は変わらないという答弁でございます。また、法定刑の下限を維持しつつ、ですから、当罰性の低いものについては従来どおり、そして、それに一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万以下の罰金を追加し、法定刑の上限を引き上げて、インターネット上の誹謗中傷など、当罰性の高い類型に厳正に対処できるようにということで抑止力を高めることとしたわけでございます。これに伴って公訴時効も現在の一年から三年になり、それこそ、投稿者の特定など、捜査の時間が確保され、適正な処罰につながることが期待されているところでございます。

 木村参考人からは、時効が延びることによって警察の捜査が遅れることについては懸念を感じているということでございますけれども、公訴時効の関係で間に合わなくて立件できなかったものも相当あるのではないかなと思っていますので、そこは公訴時効の延長で、時間切れで訴追できなかったものもより訴追できるようになるのではないかというふうに考えているところでございます。

 でも、その一方で、法定刑の引上げは表現の自由の萎縮につながるのではないかという懸念が示されており、侮辱罪においても、名誉毀損罪に関する刑法第二百三十条の二のような規定を設けるべきとの意見もあります。

 今回、このような規定を置かなかった法理論上の理由と、そしてまた、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、民主主義の発展に必要な公正な評論、健全な批判、正当な言論活動は、刑法三十五条の正当行為として違法性が阻却されると考えておりますが、この点について、法務大臣の御所見を伺います。

古川国務大臣 表現の自由は憲法で保障された極めて重要な権利でありまして、これを不当に制限することがあってはならないのは当然のことでございます。

 公正な評論、健全な批判といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であったとしても、刑法第三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないと考えられます。このことは、今般の法定刑の引上げにより、何ら変わることはございません。

 侮辱罪は、名誉毀損罪と異なり、事実の摘示を前提としておらず、刑法第二百三十条の二を適用する前提を欠きます。したがって、侮辱罪については、刑法第二百三十条の二と同様の特例を設けることはしていないということでございます。

大口委員 これまでの議論の中でも、侮辱罪については概念が曖昧だ、こういうことで、法定刑の上限を上げることについての批判があるわけでありますが、昨日の只木参考人は、判例の蓄積がありますので、ある程度外延は画されている、こういうことも述べておられることも付言しておきたいと思います。

 次に、拘禁刑の創設についてお伺いをしたいと思います。

 まず、現行刑法では、第十二条の第二項で、「懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。」とあります。十三条の第二項で、「禁錮は、刑事施設に拘置する。」と規定されているわけです。

 今回、改正刑法では、懲役刑と禁錮刑を廃止し、これらに代わるものとして拘禁刑を創設する。そして、第十二条の二項で、「拘禁刑は、刑事施設に拘置する。」、同条第三項で、「拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。」と、項を分けて書き分けているわけでありますが、その趣旨について法務省にお伺いいたします。

川原政府参考人 お答えいたします。

 拘禁刑は、これに処せられた者の改善更生、再犯防止を図るために、個々の受刑者の特性に応じ、作業と指導とをベストミックスして行うことができるようにするために創設するものであります。

 刑事施設への拘置につきましては、拘禁刑である以上、当然に行うものであるのに対しまして、作業及び指導は、拘置の間に、個々の受刑者の改善更生のため、必要に応じて行うものであるという違いがあることに加えまして、一文で書こうといたしますと条文が長くなってしまうということ、これを回避するという法制技術的な要請もあることを踏まえまして、項を別にすることとしたものでございます。

大口委員 これについても、只木参考人からは、相対的な応報刑ということで、応報刑の枠の中で一般予防、特別予防を課しているということで、これに対して、いろいろな議論があるけれども、そういう整理をしているわけですが、ちょっとそこを、局長、お伺いしたいと思います。

川原政府参考人 お答えします。

 応報の観点は抜くこととしているものでございます。

大口委員 次に、拘禁刑の創設は、受刑者の個々の特性を踏まえた処遇を行うと。例えば、学力不足により社会生活に支障がある人が、教育等を十全に行うべきである。こういう、受刑者に対しては、必ずしも一律に刑務作業を行わせるのではなくて、まず、基礎学力の向上を図るため、教科指導を中心とした処遇が必要であると考えるわけであります。

 また、令和二年末に刑事施設に在所している受刑者は一四・一%が六十五歳以上となるなど、高齢化による課題が指摘されているわけであります。高齢化又は障害により心身の機能低下が著しい受刑者については、健康な体づくり、福祉的支援の理解を促進するための指導がまず必要であると考えます。

 今回の改正刑事収容施設法第九十三条に、「刑事施設の長は、受刑者に対し、その改善更生及び円滑な社会復帰を図るため必要と認められる場合には、作業を行わせるものとする。ただし、作業を行わせることが相当でないと認めるときは、この限りでない。」とあります。

 拘禁刑に処せられた者には、改善更生のために必要な作業を行わせ、指導を行うこととなるため、個々の受刑者の特性等を正確に把握することが一層重要になると思われるわけであります。

 そのような受刑者の特性は、どのような方法で把握することになるのか。そのような受刑者の特性を把握した上で、拘禁刑においては、刑事施設での処遇がどのように変わるのか、どのような作業や指導を行うことを想定しているのか。改善指導や教科指導、それと作業とのベストミックスをどう考えるのかということ、そして、受刑者の実情に合わせてですね、これらについて法務省に問います。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事施設におきましては、処遇要領というものを策定しまして、個々の受刑者の特性に応じた処遇を展開していくということになりますが、このために、医学、心理学、教育学、その他の専門的知識及び技術を活用した処遇調査を綿密に行うということでございまして、このことにつきましては、拘禁刑受刑者に対しても同様になるものと考えてございます。

 拘禁刑創設の趣旨を踏まえまして、判断の適正さを担保するために、一層的確な特性の把握ということが重要になるということは御指摘のとおりでございまして、実務運用上、この処遇調査につきまして、例えば、改善更生に必要とされる作業の指定等に関する調査、あるいは、福祉的支援の必要性等の把握のための調査、教科指導に資する学力の把握のための調査等の在り方、あるいは改善指導等の充実のための精密な処遇調査の対象者の拡大などについて、具体的に現在検討を進めているところでございます。

 具体的には、学力不足により社会生活に支障がある人などにつきましては、御指摘のような教科教育を中心とした受刑の期間を設定するであるとか、高齢、障害により認知機能や身体機能の低下が懸念される受刑者につきましては、当該機能の維持向上に資する訓練であったり、出所後の社会適応に必要な知識、能力を付与するための改善指導、福祉的支援等の社会復帰支援を個々の特性に応じてバランスよく実施することを考えてございます。

 以上でございます。

大口委員 こういう形でなったわけですから、拘禁受刑者の矯正処遇について、きめ細かく対応していただかなきゃいけませんし、そのための特性の把握を、今答弁されたように、しっかりやっていただきたい、こういうふうに思っておりますが、それについて、体制の方はしっかり、これは対応できる体制になっているのか、お伺いしたいと思います。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 体制の整備ということは非常に重要でございまして、先ほども御答弁させていただいたところでございますが、個々の職員の能力の向上であったり、あるいは必要な人員の確保ということについて一層努力していく必要があろうかと思っております。

 また、この法案の中に盛り込ませていただいておりますが、少年鑑別所の職員を必要に応じて活用するなどということで、必要な体制の確保に努めてまいりたいと考えてございます。

大口委員 今回の改正では、受刑者等について、被害者等の心情等の聴取及び伝達の制度を設けられているわけであります。

 やはり、自らの犯罪等に対する反省や悔悟の情を深めさせること、あるいは改善更生を効果的に図る一助として、被害者及びその遺族や親族等の心情、またその置かれている状況について受刑者に正しく理解をさせることは極めて重要である、昨日の只木参考人もそういうふうに述べられておったわけでありますけれども、この制度の意義について、まず法務省にお伺いします。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 受刑者等に対しまして、自らの犯罪や非行に対する反省や悔悟の情を深めさせるためには、被害者であったり御遺族であったりといった方々の被害に関する心情やその置かれている状況について正しく理解させることが極めて重要であると考えられるところでございまして、御指摘のとおりかと思います。

 現状におきましても、矯正施設におきましては、被害者や支援団体等による講話であったり、被害者の命を奪う罪を犯すなどした特定の者を対象といたしまして被害者の視点を取り入れた教育を行うなど、必要な働きかけはしてきているところでございます。

 もっとも、受刑者等の処遇において、被害者等の心情を反映し、被害者の立場や心情等の配慮を一層充実させるとともに、受刑者の反省や悔悟の情を深めさせ、その改善更生を効果的に図るためには、受刑者等に対しまして、自身が犯した罪の被害者等の心情や状況等について直接的な形で触れさせることがより重要であると考えてございます。

 こうしたことから、刑事施設及び少年院の長が被害者等から被害に関する心情等を聴取いたしまして、被害者等が当該心情などの内容を伝達することを希望した場合には受刑者等に対しこれを伝達する仕組みを設けますとともに、刑事施設の長、少年院の長が受刑者等への教育的な処遇を行うに当たっては、被害者等自身から聴取したものを含め、被害者等の心情やその置かれている状況を考慮すべき旨を法律で規定しようとしているところでございます。これらを適切に対応していきたいと考えてございます。

大口委員 その中で、被害者等から心情を聴取しない場合である、相当でないときと認めるとき、それから、聴取した心情を受刑者に伝達しない場合である、相当でないと認めるときが条文に出ているのですが、どのような場合を想定しているのか、伺います。

 また、刑事施設等の職員は、これまで受刑者等の被害者やその遺族の方に対応するということがなかったと思いますが、今後、その職員が被害者等から適切に心情等をお聞きすることができるような体制づくりが必要と思いますが、その点について考えをお伺いします。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 矯正施設の長が被害者等の心情などを直接的に把握すること、これにつきましては処遇を行う上で貴重な情報となるものでありまして、被害者等の心情等を考慮するためにも、基本的には申出があれば聴取することを想定しているところでございます。

 ただ、事件の性質であったり被害者側との関係など、被害者等に関する情報を考慮して、相当でないと認めるときは心情等を聴取しないこととしているところでございます。

 具体的な場面については、個々の事案に応じて判断することとなるため、一概に申し上げるということは困難でございますが、例えば、聴取しない場合の例として、被害者等が暴力団抗争の相手方であったり、反社会的な集団に所属しておって顕著な犯罪性があると認められる場合で、被収容者への報復の意思を繰り返し明らかにしているなど、処遇上の観点からも、また被害者の心情等への配慮という観点からも、これ以上聴取の必要性が認め難い場合などを想定しております。

 一方、伝達することが相当でない場合といたしましては、受刑者等がいまだに例えば被害者を逆恨みしておって、現状、伝達することがその処遇上の効果を減ずる可能性が高い場合であったり、施設内で発生した受刑者同士を当事者とする事件で、伝達することにより施設内の規律及び秩序の維持上支障が生じるおそれがある場合など、あるいは、受刑者が重篤な疾病にかかっているため当面伝達が相当でないと判断される場合などを想定しているところでございます。

大口委員 今回、再度の保護観察ということがあるわけであります。再度の執行猶予を言い渡すことができる宣告刑を一年以下から二年以下に引き上げ、かつ、初度の保護観察付執行猶予中の再犯について、再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことができるようにすることとなったわけです。その趣旨は何か、また、どのような事例が再度の保護観察付執行猶予となることが想定されるのか、お伺いします。

 また、再度の保護観察を言い渡された者は保護観察中に再犯に及んだ者であり、初度の保護観察において本人の問題性の把握等が十分でなかった可能性があります。おのずと、再度の保護観察においては、再犯の要因を的確に把握した上で、必要な指導監督が行われるよう特に留意しなければならないと考えますが、どのように対応していくか、法務省の見解を伺います。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員のお尋ねの前段の方、私の方からお答えを差し上げます。

 まず、再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができる宣告刑の上限の引上げについて申し上げますと、現行法上、その上限は一年とされているところでございますが、執行猶予の期間内に再犯に及んだ者について、一年を超える刑期とする場合でありましても、改善更生、再犯防止を図る観点から、実刑に処するよりも再度の保護観察付執行猶予を言い渡して社会内処遇を続けさせる方が適当な場合もあることなどから、その刑期の上限を二年に引き上げるものでございます。

 これによりまして、新たに再度の刑の全部の執行猶予を言い渡されることとなる事案といたしましてどのようなものが想定されるかにつきましては、個別具体的な事実関係によるために一概に申し上げることは困難でありますが、例えば、窃盗を犯して執行猶予中の者が再犯に及ぶことなく真面目に生活していたところ、過失により交通死亡事故を起こしたものの、示談が成立し、遺族も寛大な処分を望んでいるような事案などにおきましては、一年を超える刑期を言い渡しつつも、再度の刑の全部の執行猶予を言い渡されることがあり得ると考えられるところでございます。

 さらに、初度の保護観察付執行猶予中の再犯について、再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことを可能とすることについて申し上げますと、現行法上、保護観察付執行猶予の期間内に再犯に及んだ場合には再度の執行猶予を付すことはできないとされておりますが、保護観察付執行猶予の期間内に再犯に及ぶ事案には様々なものがあり、再犯に及んだというだけで社会内処遇によることがおよそ不適当であるとは言えず、実刑に処するよりも改めて保護観察付執行猶予を言い渡して社会内処遇を継続する方が罪を犯した者の改善更生、再犯防止に資する場合があることなどから、初度の保護観察付執行猶予の期間内に再犯に及んだ場合にも再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことができるようにするものでございます。

 どのような事案がこれに当たる事案になるかということにつきましては、これも一概に申し上げることは困難ではございますが、窃盗罪で少年院送致の前歴を有しているなど、再犯のおそれが高いと考えられる若年者に対して、立ち直り支援のために保護観察付執行猶予が言い渡され、その後、真面目に生活していたものの、猶予の期間内に、先ほど申し上げたような、交通事犯を起こして公判請求された場合など、改善更生が図られている最中に偶発的に一種の犯罪を犯したと考えられる事案などにおいて、再度の保護観察付執行猶予を言い渡されることがあり得ると考えられるところでございます。

宮田政府参考人 後段の御質問について、私の方から御説明、御回答申し上げます。

 委員御指摘のとおりであります。今回の改正では、再度の保護観察付執行猶予を言い渡された者に関しましては、再犯に結びついた要因の的確な把握に留意して保護観察を実施しなければならない旨を明記した上で、当該要因を的確に把握するため、原則として、少年鑑別所の長に対して鑑別を求めるものとする規定を設けるなどの特則を設けてございます。

 それまで処遇に携わった更生保護官署以外の視点を取り入れ、多角的な分析により、より慎重かつ綿密な処遇方針を立てて保護観察を実施することとしております。

 この特則も活用いたしまして、着実に再保護観察付執行猶予者の特性に応じた指導、支援を行いまして、再犯防止、改善更生を図ってまいりたいと考えております。

大口委員 そのためにも、保護観察の一層の活用が見込まれますので、しっかりその体制を整備していかなければいけません。

 ただ、ここ十年ぐらい保護観察官の人員はほぼ横ばいという現状でありますし、また、保護司さんの方も、四万六千三百五十八人と定員を大きく割り込んでいる状況で、高齢化も進んでいますので、保護観察官の増員や保護司活動への支援などの体制整備は極めて重要であると考えます。大臣の御所見をお伺いします。

古川国務大臣 委員御指摘のとおり、今回の法改正は、社会内処遇の大幅な充実強化を図るものでございます。

 法務省としては、新たな制度下における各種業務の遂行に万全を期すべく、これに対応するために必要な保護観察官の確保などの人的体制の整備に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、保護観察官と協働して我が国の再犯防止を支える保護司につきましても、その活動のデジタル化の着実な実施や、自宅以外の面接場所の提供といった地方公共団体による支援の確保など、その負担軽減や活動環境の整備にしっかり取り組んでまいりたいと存じます。

大口委員 次は、満期釈放者でございますけれども、出所後、地域において孤立しやすく、仮釈放と比べて二年内再入所率が二倍ということでございます。この満期釈放者の再発防止対策を充実させるために、我が党も提言を出させていただき、時の法務大臣に申入れをしたところであります。

 今回の点で、今回法案において、更生緊急保護の期間を最長二年に延長する措置と、更生保護施設の職員が継続的な訪問支援を行っている現状に対して、財政的な面を含め、十分に対応していただけるものか、お伺いします。

 また、更生保護法八十六条の改正によって、収容中の者からの申出による更生緊急保護開始について、今回の改正の趣旨と内容についてお伺いします。

 そして、運用上、支援が必要となりそうな受刑者に対して、更生緊急保護の申出の必要性を理解してもらえるよう、働きかけをしっかりしていただきたい、出所後に確実に保護観察所につなげられるように取り組んでいただきたい、この点についてお伺いします。

鈴木委員長 法務省宮田保護局長、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

宮田政府参考人 お答えいたします。

 満期釈放者につきましては、とにかく息長く支援するということが、安全、安心な地域社会づくりに極めて大事だと思います。

 そこで、統計的に見まして、刑務所等からの出所、釈放後、二年以内が最も再犯による再入所率の増加幅が大きいことに鑑みまして、一年を超えて更生緊急保護の措置を取ることができるよう、その期間を最長一年から二年にするものでございます。

 また、更生保護施設の職員が施設を退所した満期釈放者等を定期的に訪問して支援をしています訪問支援事業、昨年十月から開始いたしました。地域で適切な支援につながることができないで、孤独、孤立に陥りやすい満期釈放者等への支援として大きな意義を有するものでございます。実施状況を踏まえまして、各地域で必要な支援が円滑に行われますよう、適切に対応してまいりたいと思います。

 現行におきまして、更生緊急保護の申出ができますのは身体拘束を解かれた後に限られているものの、刑事施設等からの釈放後直ちに必要な更生緊急保護の措置、支援が受けられるようにするため、更生緊急保護の申出を矯正施設収容中から行うことができるようにいたしました。

 改正法の運用につきましては、矯正施設と連携いたしまして、釈放後に保護が必要と見込まれる受刑者に、保護観察官が面接をし、出所後の生活計画等について助言するなどしてその更生意欲を高め、出所後確実に保護観察所につながるよう取り組んでまいりたいと思います。

大口委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 今回の刑法等の一部を改正する法律案につきまして、特に侮辱罪の法定刑の引上げについて質問させていただきます。

 まず、大臣に伺います。

 昨年の九月十六日に法制審議会に侮辱罪の法定刑に関する諮問を行って、大変な速さで、スピーディーだったんですけれども、諮問するに当たっての最も大きな動機、やはりこれは木村花さんの事案というものは大きかったんでしょうか。伺います。

古川国務大臣 近時、インターネット上の誹謗中傷が特に社会問題化していることを契機として、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識も高まっております。こうしたことに鑑みますと、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止することが必要であると考えられたところでございます。

 そこで、早急に侮辱罪の法定刑を引き上げる必要があると思われたことから、法制審議会に対し、御指摘の諮問を行ったものでございます。

鎌田委員 今日は、私は配付資料として四部提出をさせていただいております。

 配付資料の一枚目を御覧いただければ。これは調査室の方で作ってくださった、主な適用関係ということで、現行とそれから政府案、閣法から出ている改正後の違いが一目で分かる、分かりやすいものなんですけれども、大臣に伺います。

 そもそも、侮辱罪の法定刑を、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料とすると。一年以下の懲役、それから、若しくは三十万円以下の罰金の数字の合理性なんですけれども、今大臣、動機のところで抑止という言葉を使われました。この数字についての合理性は、我々はどのように捉えたらいいのか、それを伺いたいと思います。

 あわせて、被害者の方々から、この数字が妥当だという何か御要望はあったんでしょうか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 今般の法定刑の引上げは、公然と人を侮辱する侮辱罪につきまして、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止しようとするものでございます。

 人の名誉を害する行為が公然と行われた場合、刑法の名誉毀損罪又は侮辱罪に該当し得ることとなりますが、現行法におきましては、名誉毀損罪の法定刑は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金と相応に重いものとされているのに対しまして、侮辱罪の法定刑は、刑法の罪の中で最も軽い拘留又は科料とされているところでございます。両罪はいずれも人の社会的名誉を保護するものでございますが、事実を摘示するか否かによって類型的に名誉侵害の程度が異なると考えられたために、法定刑に差が設けられているところでございます。

 しかし、近年における侮辱罪の実情等に鑑みますと、事実の摘示の有無をもって両罪の間にこれほど大きな法定刑の差を設けておくことは、もはや相当とは言い難いことから、侮辱罪の法定刑を名誉毀損罪に準じたものに引き上げることが相当と考えられるところでございます。

 一方、侮辱罪につきましても、懲役、禁錮、罰金が選択刑として定められた後も当罰性の低い事案も想定されることからいたしますと、拘留、科料を存置しておくことは、具体的な事案に応じた適切な量刑に資するものと考えられることから、私ども、改正案のような御提案をしているところでございます。

 被害者との関係でございますが、これを審議いたしました法制審議会の部会におきまして、被害者の代理人等を務めておられることが多くて、被害者の事情にお詳しい弁護士に委員として入っていただいているところでございます。その委員は、この案に賛成されているところでございます。

鎌田委員 次の質問に入る前ですけれども、今、私、この数字の合理性についてというくだりを質問をさせていただいたときに、不規則発言として、考えろという言葉が私は聞こえました。私にとっては非常に侮辱であります。

 この委員会で合理性を問うということ、そして、みんなで考えて議論していくことは当然のことで、考えろとはどういうことでしょうかね。私の聞き間違いであったらいいんですけれども、聞き間違いであったらいいなということを願いたいと思いますが、そういう不規則発言も私にとっては侮辱でございます。

 次の質問に移りますけれども、今御答弁いただきましたが、この法定刑を引き上げて威嚇力、抑止力があるのかということを、科学的に根拠があるのかということを知りたいんです。

 法制審議会の中で、常にそういうネット上の誹謗中傷などを監視する、それから不適切なものがあるかというものを見ている方の御意見の中には、インターネット上ですからね、まだまだやれますよねといったような趣旨の発言もありますので、私、昨日、木村さんが切々と語っていらっしゃいましたけれども、あの木村さんの気持ち、それから、ほかにも大勢いらっしゃいます、十六歳のお嬢さんを亡くされたお母様も今も闘っていらっしゃいますけれども、果たしてこれであの気持ちに応えられることになるのかというところが疑問なんですね。

 だから、今回の法改正で、はっきりと抑止力、威嚇力が科学的に検証されているんだからという根拠があるのならなんですけれども、今の御答弁では、私には、科学的な根拠があるのかというのは、法制審議会の中での委員の皆さんの意見の交わし合いでございますから、そこはデータとしては使えないのではないかなというふうに思います。

 大臣に伺いたいんですが、昨日の参考人の意見陳述、それから各委員からの質問なんですけれども、どちらかで御視聴はされましたでしょうか。

古川国務大臣 視聴につきましては、一部視聴いたしました、全部ではありませんが。

 その内容、参考人の陳述については、要旨は把握しております。

鎌田委員 一部ということは、参考人の四名の方の一部ですか。参考人全ての方ですか。

古川国務大臣 参考人、四人陳述されたと思いますけれども、そのお一方の一部についてインターネット中継で視聴しました。

鎌田委員 お一方の一部というのは、お一方というのはどなたですか。

古川国務大臣 木村響子さんです。

鎌田委員 重ねてになるんですけれども、昨日、木村響子さんのその切実な訴えの一部を視聴されたということを確認させていただきました。

 ちょっとここで改めて伺いたいんですけれども、大臣、これは通告していないので、大臣の御学歴等々も踏まえて、ちょっと伺いたいんです。

 これは通告していないんですけれども、刑法の理念とは何ぞやというのを私はいつも心に置いているようにしているんですけれども、刑法の理念です。これは通告していないので、答弁しませんと言われれば、それで結構ですが。

古川国務大臣 十分な御回答になるとは、自信がありませんけれども、本来、刑罰、犯罪を犯して、それに対する報い、応報というような考え方が一つ大きなものがあるというのはございますが、やはりその一方で、教育的な効果、あるいは再犯防止というような、社会に復帰できるような、そういう教育というような観点、そういうような考え方も同時にあろうかと思います。様々、学説があろうかと思います。

鎌田委員 私、十六年前の法務委員会のときも、厳罰化のテーマのときに、刑法の理念を大事にしてほしいということを訴えたんですね。

 私が大事にしているのは、刑法は、何かされたときに仕返ししたい、復讐したい、その復讐権を国家が奪って、国家が代わりに復讐をするわけですよ。だから、目には目を、歯には歯をというものがありますから。

 なので、私、刑法を今回一部改正するに当たって、いろいろな被害者の方がいらっしゃる。そのときに、特に昨日、木村さんのを一部御視聴されたというのであると、木村響子さんがお嬢さんを亡くされてからの、これまでのつらさ、それから御苦労、大変なものが、お金もかかっている、そこに対して、この刑法の一部を改正する法律案でもって、響子さんの受けたダメージというものに対して、昔だったら復讐してやるで済んだかもしれません。でも、今は刑法があって、国家がその復讐権を奪っているわけですから、私は、今回の法改正で、木村さん始め被害者の方々のその思いに応じているのかどうかが非常に疑問なんです。

 そこは、大臣は、自信を持って応じられるとお考えでしょうか。

古川国務大臣 冒頭に、委員の方から、法制審に諮問をしたときの動機についてお尋ねがございましたけれども、そことの関わり方も出てくるかなと思いますけれども、何か特定の個別事件への対応ということのみを目的としてこの法整備を行おうというものではございません。

鎌田委員 次に参ります。資料の一、併せて二を御覧いただきたいと思います。

 今日は、二之湯国家公安委員長、国務大臣にもお越しをいただきました。ありがとうございます。二之湯大臣には、警察の対応について伺いたいと思います。

 資料の特に二の方なんですが、これは法制審にも提出をされている資料でありまして、令和二年中に侮辱罪のみにより第一審判決・略式命令のあった事例ということで、三十例がこのように法制審では資料として提出をされています。

 これをちょっと目を通しますと、六番のところで、「配信動画で「BM、ブタ」などと放言」、BMって何だろう、私、分からないんですけれども、十六番だと、「自己中でワガママキチガイ」「変質者じゃけ!」、二十二番ですと、「情報誌を発行する企業の代表取締役が、誌面の下部に「ふしだらな○○(被害者名)」」とか、二十九番にいくと、「路上において、被害者に対し、大声で「くそばばあが。死ね。」などと言ったもの。」。

 私、街頭演説していると、くそばばあ、死ねとよく言われるんですよ。その言った方には多分くそばばあで、それから、死ねの対象なんでしょうけれども。

 これがその三十例だと思うんですね、ずっと法務省さんから御説明のあった。

 二之湯大臣にお伺いしたいんですけれども、まず、昨年の侮辱の容疑による被害届と相談届出数の件数を教えていただけますでしょうか。

二之湯国務大臣 侮辱罪として相談を受けた件数は把握はしておりませんが、警察が侮辱罪としていわゆる被害届を受理した件数及び検挙した件数につきましては、令和三年、認知件数百三十四件、検挙件数九十八件、令和二年、認知件数九十五件、検挙件数六十一件と把握しております。

鎌田委員 侮辱の、冒頭、把握していないとおっしゃったのは何でしたっけ、ごめんなさい。(発言する者あり)相談ですね。失礼いたしました。

 侮辱の相談によるものは把握していないということは、どういう意味なんでしょうか。普通、警察署に、こういうことで被害届あるいは相談で行くと、警察の方々はどんな事案でもメモに残したり記録を取ったりするものですけれども、なぜ、相談件数を把握されていないんでしょうか。

二之湯国務大臣 警察では、国民から寄せられる相談に対しまして、迅速、確実に、組織的な対応、全警察署として取り組んでおるわけでございますけれども、そういうことで、侮辱罪に関する相談については、相談業務を組織的に、署を挙げて管理する上で、他の業種と区別する必要がございません。したがいまして、その件数を把握していないということでございます。

 いずれにいたしましても、侮辱罪に関する相談が寄せられた場合には、この度の法定刑の引上げの趣旨も踏まえつつ、適切な対応を警察庁として取り組んでまいりたい、このように思っております。

鎌田委員 他の業務と区別することが日常はないということは、つまり、相談を受けたとき、侮辱ということでの相談を受けたという、書類作成のときなど、そのカテゴリーがないんじゃないでしょうか、現在。いかがでしょう。

二之湯国務大臣 侮辱罪に関する相談につきましては、寄せられた相談が漏れなく迅速に処理されているかなどという観点から、組織的に業務を管理する上で他の業種と区別する必要がないことから、侮辱罪だけについて件数を把握するという必要はないと考えているわけでございます。

 なお、侮辱罪に限らず、他の刑法犯についても、警察としては全てについて罪名ごとに相談の件数を把握はしているわけではございません。

鎌田委員 そうすると、これから先なんですけれども、もし、閣法が成立をした後は、全国の都道府県警に対して、この侮辱罪法定刑引上げに基づいて様々な指示が警察庁から出されると思うんですけれども、法制審の動きも御存じだったと思うんですけれども、全国の都道府県から意見聴取などはされたんでしょうか。

二之湯国務大臣 今回の侮辱罪の法定刑引上げに係る刑法改正法案に関しまして、法制審議会の刑事法部会における議論等に際しまして、警察庁において、各都道府県警察から意見聴取等を実施したことはございません。

鎌田委員 法制審に警察庁の方は、お一人だったかな、お出になっていらっしゃるんですけれども、実際にこういう案件が発生したときに動くのは現場の都道府県の警察の方々ですよね、一番最初に動くのは。その方々から意見が聴取されていないということ、それから、先ほどは、侮辱の相談の件数を把握していない。

 私、全国の都道府県の警察、今でも大変なんですけれども、これから先、どのように大変になっていくのかなというのをいろいろ想像するんです。そこら辺を、法務省のお役所の方で机の上でいろいろ議論して考えたものを、現場で実際に動くのは地方の警察官なんですよ。なので、私はそこを確認したいんですね。

 そこでなんですけれども、これは法務省になるかもしれませんが、侮辱罪の適用事例で、判決、略式命令となった者の再犯、これの統計というのはあるんでしょうか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 その前に、済みません、先ほどの答弁、一点だけ訂正をさせていただきます。

 法制審の部会に入っていた弁護士、私、委員と申し上げましたが、幹事として参加されております。したがいまして、表決での意見は述べておりませんで、幹事として参加していただいて、議論の中で私どもの諮問に対して同意する内容の意見を述べておられたというふうに訂正させていただきます。失礼いたしました。

 それで、今お尋ねでございますが、法務当局として、お尋ねのような観点での統計的な把握をしておらず、お答えすることは困難でございます。

鎌田委員 再犯統計はないということで、答えられないということでした。全く分からないところですよね、これから先。

 また、済みません、二之湯大臣にお伺いします。

 私が、先ほどもちょっと触れましたが、街頭演説をしていて、鎌田、おまえ、ばばあだから、とっとと消えろよと言われた場合、私はその場で現行犯の私人逮捕は可能ですよね。

二之湯国務大臣 まず私の方から答弁させていただきます。

 現行犯逮捕につきましては、現に罪を行い、又は罪を行い終わった者は現行犯人とされておりまして、現行犯については、何人も、逮捕状なくしてまず逮捕することができることとされているわけでございます。

 なお、警察においては、逮捕に当たっては、表現の自由等を十分に尊重して、また、慎重、適正な運営がなされるものと私は考えております。

鎌田委員 ごめんなさい、二之湯大臣、済みません、私がお伺いしたのは、私が街頭演説をしていて、鎌田、おまえ、ばばあなんだから、とっとと消えろと言われたら、その場で私が現行犯の私人逮捕をすることは今回の法改正に該当しますよねという確認なんです。しますか、しませんか。お願いします。

川原政府参考人 お答えいたします。

 刑訴法上、現行犯人は、何人も、逮捕状なくしてこれを逮捕することができるものでございますが、現行犯というのは犯罪を犯したことが明らかな場合でございまして、委員はその具体的な事例を前提にお尋ねになっておりますが、その具体的な事例が侮辱罪に該当するかどうかという点につきましては、具体的な事実関係によって定まるものでございますので、この場でそれを前提とした逮捕の可否の御質問に対しては一概にお答えいたしかねるところでございます。

鎌田委員 今の御答弁を、二之湯大臣、お聞きになったと思うんです。ですので、現実の運用上の御答弁を二之湯大臣にお願いします。私の現行犯私人逮捕は該当しますね。

二之湯国務大臣 個別の事案の具体的な状況に即して判断されるものと思っているわけでございまして、いずれにいたしましても、私人同士のけんか、それによって警察に行かれて逮捕するということは、個人の基本的人権を尊重という立場から、公正、誠実に捜査の権限を行使して、逮捕権は慎重、適正に運営される、このように思っております、運用されると思っております。

鎌田委員 二之湯大臣、何回も申し訳ないけれども、私、これはけんかで言っているんじゃないんですよ。

 私が公然と、パブリックの場面で侮辱された、それで、今回の法改正で逮捕が可能になっているわけですよ。私は、そこで現行犯の私人逮捕ができますよねと聞いているんです。だから、できますか、できませんかだと思うんですよ。この法改正の説明を見ると、できると思うんです。それを確認したいの、警察の運用上の確認で。

二之湯国務大臣 ただいま、先生がそういって個人的に侮辱された、そして警察に行って警察が逮捕するということは、そういう個々の事案については非常に難しい判断が要求されるわけでございますから、そういうことはちょっと私の方から即答しかねます。

鎌田委員 二之湯大臣、申し訳ないんですけれども、私がまず私人逮捕、現行犯なら私人逮捕は逮捕要件に当たるわけですから、侮辱された、私人逮捕だ、現行犯だ、これができますねとお聞きしているんですよ。

川原政府参考人 まず、再三のお答えで恐縮ですが、委員は具体的な文言を前提として、これが侮辱罪に該当するということで、私人逮捕の点についてお尋ねになっております。

 先ほど申し上げたのは、そこに当たるかどうかということと、私人逮捕の場面ですので、これは、私人が逮捕した場合、これを警察官に引き渡すという場面で初めて警察が出てくる場面でありまして、私人逮捕のその瞬間は警察官がいないものでございます。これは申し上げるところでございます。

鎌田委員 では、今の御答弁だと私の私人逮捕はできるということで、その後、警察に引き渡すということになりますね。二之湯大臣、それでよろしいんですね。

二之湯国務大臣 逮捕できるか否かは、先生がその方を警察、交番所まで連れていくことが重要でしょう。

 しかし、警察が逮捕できるか否か、これは制度に関することでございますから、私からは答弁を差し控えさせていただきます。

鎌田委員 済みません、ちょっとよく分からないんですけれども、今の御答弁が。

 いずれにせよ、今回の法改正で、私が例えば街頭演説していて侮辱を受けたときは、私の現行犯の私人逮捕は該当するという解釈でよろしいんだと思います。そして、警察に引き渡して、その後、警察で粛々となされていくんだと思います。

 ちなみに、また伺いますけれども、ツイッターなど、今回、教唆犯とか幇助犯も該当しているんですけれども、ツイッター上でのリツイート、それから、いいね、この反応をした者というのは教唆犯、幇助犯といった従犯に該当するか確認させてください。警察の現場で伺いたいんですけれども。

川原政府参考人 お答えいたします。

 警察の現場でということでございますが、まずはその犯罪が成立するかどうかという問題をお答えさせていただきます。

 今、リツイートやいいねという反応につきましてお尋ねがございました。

 一般論として申し上げますと、現行法におきましては、教唆犯、幇助犯というものにつきましては、侮辱罪は処罰されておりません。ただ、これが、法定刑が引き上げられますと、侮辱罪、あるいは幇助犯、これは従犯とも呼ばれておりますが、教唆犯と従犯、幇助犯が成立するものと考えます。

 ただ、お尋ねのリツイートやいいねといった反応が、既に侮辱罪に該当する行為を行った後に、時系列的に後に行われた場合には、犯罪実行の決意を生じさせる行為にも、他人の犯罪を容易ならしめる行為にも該当しないために、一般的には教唆犯や幇助犯に該当しないと考えられるところでございます。

鎌田委員 成立するものと考えるという御答弁をいただきました。

 書き込みをした後の削除、それからアカウントの抹消、これは逃げ得ということになりますか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 今、お尋ねの中で、まず、私の先ほどの答弁が、いいねやリツイートは犯罪が成立するんだ、教唆犯、特に幇助犯が念頭に置かれるんでしょうけれども、幇助犯が成立するんだという答弁だったとお答え、その趣旨で更に逃げ得かというお尋ねであります。

 私が申し上げましたのは、一般的なものとして、委員の問題意識は幇助犯にあるということで幇助犯に限定させて申し上げますと、私どもが御提案している法改正がなされれば、侮辱罪についても幇助犯、従犯の規定の適用はございます。ただ、それは一般的な幇助犯規定が適用があるという趣旨の御答弁でございまして、委員が具体的にお尋ねされていますリツイートやいいねといったものにつきましては、一般的に、既になされた侮辱行為に当たるような、そういったものの後になされる、時系列的には後のものでございます。

 こういった犯罪が行われた後に、既遂になった後に行われた場合には、教唆犯の要件であります犯罪実行の決意を生じさせる行為にも、他人の犯罪を容易ならしめる行為にも該当しないために、該当しない以上は、この場合には幇助犯には該当しないということでございまして、私、基本的に、リツイートとかいいねが幇助犯に該当するんだという趣旨の答弁をしていないところでございます。

 その上で、じゃ、逃げ得かと言われますと、犯罪の成否は個々の事案によりますので、一般的に、それが逃げ得、すなわち、その逃げ得の御趣旨が犯罪の証拠隠滅的なことをおっしゃっているのだとすると、その前提としての犯罪の成否がお答えいたしかねるために、結論的にお答えをいたしかねるところでございます。

鎌田委員 分かりました。

 先ほどの私のも、じゃ、それに沿って認識を訂正をしたいと思います。

 もう時間も迫ってきましたので、済みません、資料の三と四を御覧をいただきたいと思うんですが、資料の三番は、昨日、この委員会に参考人として御出席をされました木村響子さんから御提供をいただいたものであります。

 このタイトルですけれども、先週の委員会でも私ちょっと触れさせていただいたんですが、これは、木村花さんが番組制作会社とそれからテレビ局と交わした、交わしたという表現が適切かは私も正直分かりませんが、同意書兼誓約書の写しであります。もちろん、テレビ局や番組制作会社は黒くマーカーをさせていただいておりますが。

 昨日、木村響子さんは、この委員会で、本村委員の質問に対してこのように答えています。

 番組の悪意ある編集であったり、誹謗中傷すらを利用して、炎上商法のような形で視聴率を稼いでビジネスとしていた大人たちがいるわけで、そういったメディアの責任もある。そして、一方的に誓約書を書かされて、契約書じゃないんです、誓約書です、私たちはこういうことをしません、こういうことはしません、もしした場合には多額の損害賠償が発生する、こういったものに一方的に、明確な力関係が働いている中で、言うことを聞かざるを得ない中で、この同意書兼誓約書に、二十二歳の、二十代前半の彼女はサインをさせられて、そして特に、一枚めくっていただいて、十六番です、「途中リタイアしないことを誓約します。」ということに約束させられています。

 それから次のページ、十九番、「貴社らが」というのは制作会社とテレビ局ですが、「貴社らが当該投稿を自由に削除することを異議なく承諾します。」つまり、SNSやそういうインターネット上で何か起きた場合、これをどうするかというものは、花さんには権限が与えられていなかったんですね。防御することも、それから反論することも許されない。全て、この番組制作会社やテレビ局がその権限を握っていたと。

 それで、一番最後のページ、二十六番ですけれども、後半です、私が線を引いた後半、「私の違反によって貴社らに生じた損害を賠償します。」と。

 番組名はここの中にもありますけれども、「テラスハウス」という、これはもう皆様も、報道等で公になっている番組です。情報リアリティー番組なんですが、こういう番組を作るときに、途中リタイアすることは許されないし、プライバシー権も侵害するような、こういった誓約書でもって、若手の、若年芸能者、芸能従事者というものは縛られるわけですよ。

 大臣、炎上商法という言葉は御存じですか。

古川国務大臣 はい。

鎌田委員 資料の最後を御覧いただきたいと思います。

 これは、昨日の木村響子さんに随行されていた佐藤弁護士が作られた、分かりやすくしたものですが、このリアリティー番組出演による誹謗中傷の機序、流れを絵にしたものなんですけれども、上の方の図を見ていただきますと、黄色いところ、ネット上の誹謗中傷が一気に加速。それはなぜかというと、その下の方に、青いところがなっていますね、番組側の過度な演出で炎上を誘発するんです。そして、ネット上の誹謗中傷が一気に加速するんです。そして、最終的に本人を追い込むという。

 これが今、日本の、夢を持ってアイドルになりたいとか、そういう若年芸能者に対して、一方的に大人のもうけのために、この構図の中に若者たちが巻き込まれていっているんです。

 そして、下の図を見ていただきますと、右下のところですね、黄色い視聴者がいて、それから、本人を暴力的な、死ね、消えろ、価値がない、そしてそれが拡散される。ところが、こういうものが起きていても、先ほどの同意書、誓約書では、これに対して口外規制は、しないという誓約書になっているんです。

 ですので、私は、今回、木村花さんの案件は非常に大きな動機の一つだったと思いますけれども、彼女や響子さんたち、同じように今つらい思いをしている人たちのその思いにちゃんと応じるための法整備というものは、刑法の侮辱罪の法定刑の引上げではなくて、労働者を守る法整備が私は必要だと思います。

 そのことを申し上げて、質問を終わります。時間です。

鈴木委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党、栃木県第四区の藤岡隆雄です。

 本日も、やはり地元栃木四区の皆様、そして質問の機会を与えてくださった先輩各位に感謝を申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。

 その前にまず、やはりインターネット、SNSの誹謗中傷によりお亡くなりになられた木村花さんに、改めて心から哀悼の誠をささげたいと思います。

 そして、今日、二之湯大臣、国家公安委員長、いらっしゃっていただいております。ありがとうございます。地元で結構、通学路のいろいろな危ない箇所等話があって、私、PTAの役員等もやっているんですが、話を警察にしに行くと、比較的速やかに対応してくださっております。改めて感謝申し上げたいなと思います。

 また、本当に、与党の自民党さんの議員から、議員立法の提出に関して、議論が深まるというふうにおっしゃってくださっていることに関して、本当にこれは心から敬意を表したいし、感謝を申し上げたいと思いますし、先ほど尾崎議員の質問に関して、若輩で僭越でございますが、すごく、皮肉じゃないですよ、本当にいい質問であったなというふうに私はすごく思いました。

 しかし、だからこそ逆に私は、政府案への追及を聞いてみたかったなと、あの追及力ですね、なんというふうに私は思いましたが、逆に、米山議員の説明で、議員立法の非常に分かりやすさというのも、よさが明らかになったのではないかなというふうに私は思いました。

 さて、この法案でございますが、古川大臣らしくない法案だなというふうに私、本当に思っております。是非、法案修正というのを今後考えていただきたいなということを思うんですが、まず、侮辱罪のこの侮辱の定義、いかがでしょうか。

古川国務大臣 侮辱罪における侮辱とは、一般に、他人に対する軽蔑の表示をいうと解されているものと承知をいたしております。

藤岡委員 他人に対する軽蔑ということで、非常に曖昧なというか、広い概念というふうになっていると思います。

 その意味で、侮辱罪につきまして、過去、現行犯逮捕の実績というのはあるんでしょうか。

大賀政府参考人 平成二十九年から令和三年までの五年間で、侮辱罪で現行犯逮捕したものはございません。

藤岡委員 これまでは、それはそういうことでございますよね。

 それでは、改正法案成立後、侮辱罪の厳罰化で、現行犯逮捕というのも広く可能になるということで、理解でいいんでしょうか。二之湯大臣、お願いします。

二之湯国務大臣 今回の改正によりまして、侮辱罪の構成要件に変更はなく、処罰の対象となる行為の範囲は変わらないと聞いております。

 なお、現行犯逮捕につきましては、今回の改正により、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合という制限はなくなります。

 しかしながら、警察においては、逮捕に当たっては、表現の自由、いわゆる言論の自由等を十分尊重した配意、配慮がなされているものと考えておりまして、改正案が成立すれば、適切な対応がなされるよう警察庁を指導してまいりたい、このように思っております。

藤岡委員 重ねてお聞きしますけれども、したがって、今、いわゆる現行犯逮捕に関してのこれまで加わっていた条件が、二つの条件がなくなるということで、これは大きなこの法案の違いだということを思います。

 私は、ある意味刑法は素人でございますけれども、言論弾圧につながる可能性があるんじゃないかという指摘をしますと、いや、処罰の範囲も変わらないんだから、何を言っているんだという当然御指摘があると思います。

 一方で、一番大事なことは、この逮捕要件が緩和をされる、この逮捕が制度上、これはある意味しやすくなる、広く可能になる、この制度上はそうなるということで、二之湯大臣、よろしいですよね。逮捕が可能になるということで。大臣、お願いします。

川原政府参考人 法定刑の引上げに伴う逮捕の要件の変更でございます……(発言する者あり)はい。

 侮辱罪の法定刑の引上げによりまして、侮辱罪による逮捕に関しましては、委員御指摘のように、住居不定であることなどの制限がなくなります。しかしながら、逮捕状による逮捕は、従来と同様に、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合において、逮捕の必要性があるときに、あらかじめ裁判官が逮捕の理由及び必要性を判断した上で発する逮捕状によって行われることになります。

藤岡委員 大臣、よろしいですか。逮捕が広く可能になるということでよろしいですか。広く可能になるとおっしゃってくださればそれで結構です。

二之湯国務大臣 逮捕状による逮捕については、刑事訴訟法の規定によりまして、検察官又は司法警察員の請求により、裁判官が、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めて逮捕状を発することとしております。

 警察はこれまでも表現の自由に配意しつつ、法と証拠に基づいて適切に対応してきており、逮捕状による逮捕は、今申し上げたように、裁判官による令状審査を経て初めて行い得るものでありますから、委員御指摘のような政治的な弾圧あるいは言論弾圧的な逮捕が行われることはないと考えております。

藤岡委員 一番大事なところは、逮捕のできる場合の条件が今回緩和をされるというところが最大のポイントになってくると思いますが、今、司法官憲の発行する逮捕状の話をおっしゃいましたけれども、逮捕状の請求に関して、一体、発付の割合、どのぐらいの割合ですか。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 令和二年における通常逮捕状の請求に対する発付の割合は九八・五三%でございます。

藤岡委員 これは、ホームページ等で拝見すると、却下率は九九・九五ということでよろしいですか。失礼、却下じゃない、却下が〇・〇五で、発付率がだから九九・九五でよろしいですか。済みません。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 令和二年の通常逮捕状の請求に対する却下率が〇・〇五%、取下げがございまして、それを合わせたものについて先ほどお答えした九八・五三%の発付割合ということになります。

藤岡委員 今の九九パー、九八パーという割合を考えましても、逮捕状を請求すれば基本的にすぐ出ているというふうなケースということが、今、数字上は明らかになっていると思います。

 これは、さっき、二之湯大臣、先に答えていただいちゃっているんですけれども、いわゆる侮辱罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合において、逮捕の必要性があるときに司法官憲が逮捕状を出すことになると思いますけれども、疑うに足る相当な理由があれば逮捕できちゃうということだと思うんです。ある意味、それは、政治的な弾圧なんて明確には言いませんけれども、さっき、侮辱罪の定義も非常に曖昧ですよね、そういう中で、政府がその気になれば、非常に政治的な批判に対して、侮辱的要素を含む批判に対して逮捕が可能になってしまうということじゃないんですか。

二之湯国務大臣 侮辱罪の解釈によって、今委員が御指摘のように、政治的な配慮がなされて逮捕ができるんじゃないかという御心配でございますけれども、私は、今回の侮辱罪の適用に関しましては、あくまでも言論の自由、表現の自由を尊重すべきだということを警察庁に申しております。

藤岡委員 申されていても、制度上そうなってしまっているわけですよね。

 では、これを聞きます、二之湯大臣に。

 閣僚又は国会議員を侮辱した方というのは逮捕される可能性がありますか。可能性があるかどうかだけ教えてください。

二之湯国務大臣 可能性はほとんどゼロ%に近いんじゃないかと思います。

藤岡委員 ほとんどゼロ%というか、じゃ、可能性があるということでよろしいですか。あるかどうかでお答えください。

二之湯国務大臣 ありません。

藤岡委員 今、重要な答弁をされたんですけれども、国会議員又は閣僚を侮辱した者は逮捕されないと今おっしゃったんですが、その法律の根拠はどこにあるんですか。今、ないとおっしゃいましたから、そういう制度、どこにその法律の根拠があるんですか。今、重大な答弁ですよ、これ。それは、本当にそうならば、そういうことで結構でございますが、しかし、法律の改正法案に、どこにそういう根拠があるんですか。おっしゃってください。

二之湯国務大臣 だから、先生今御心配の質問がございましたから、私としては、表現の自由として、あるいは言論の自由を最大限尊重すべきだ、こういう配意から、そういうことはあり得ない、こういうことを申し上げているところでございます。

藤岡委員 改正法案のどこにその根拠があるんですかということを教えてください。今までは、正当な、いわゆる刑法三十五条で違法性の阻却という話をされておったと思うんですが、今は明確にないという話をおっしゃいました。これは、本当に大きな、法律の重大な変更といいますか、なりますよね。法律の根拠はどこですか。おっしゃってください、本当に。大臣、お願いします。

川原政府参考人 お答えいたします。

 まさに委員が御質問の中で刑法三十五条を言及されています。刑法三十五条の適用につきましては、これは法の改正の前後を通じて変わるところはございませんので、正当な言論につきましては、刑法三十五条によって違法性が阻却をされる結果、犯罪は成立しないということでございます。

藤岡委員 私は先ほど丁寧に申し上げました。閣僚又は国会議員を侮辱した方は逮捕される可能性があるんですかと申し上げました。それに対して、ありませんとおっしゃいました。ありませんとおっしゃったということは、刑法三十五条の解釈も、正当な業務による今行為とおっしゃいました。この業務というのは反復継続の、本当はそういうふうな解釈だと思いますから、普通にやじられただとか、ネット上で書き込まれただとか、そんな業務として行っていないことも当然あると思います。そういう批判も含めて侮辱された場合、一切ないというふうにおっしゃいましたから、そういうふうに法律を変えていただくということでよろしいですか、修正。

 二之湯大臣、お願いします。これは、責任を持って、閣議決定されていますからね、法案は。是非、法案修正してください。お願いします。そうなっていませんから、今。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 私、刑法三十五条を先ほど出しましたが、業務という言葉は使っておりません。正当行為でございますので。

 あれは、条文の書き方はございますが、刑法三十五条は、社会的に正当な行為の適用がありますので、業務のことは言及しておりません。

二之湯国務大臣 不当な弾圧をすることによって逮捕されるということはない、こういうことでございます。

藤岡委員 少なくとも、閣僚又は国会議員を侮辱した者は逮捕される可能性があるかと聞きました。それに対して、ありませんというふうにはっきりおっしゃいました。それであれば、その根拠はありません、はっきり言えば。その明確にないと言い切れるだけの根拠はないはずです。であれば、法案修正をお願いしますということを申し上げておりますが、古川大臣、いかがでしょうか。

二之湯国務大臣 私の申し上げたところは、不当な弾圧として逮捕することはない、こういうことでございます。

藤岡委員 私は、そういう不当な弾圧とか、言葉に限定をかけて聞いておりません。丁寧に言葉を使って一応聞いておりますので。

 あくまで、日本をよくしたいと思って、閣僚又は国会議員を侮辱した者は逮捕される可能性があるんですか。あるんですか、可能性が。

二之湯国務大臣 先生が言われることがよく分からないんですが、政治家を、不当な弾圧として逮捕することはないということで御了解いただきたいと思います。

藤岡委員 少なくとも、質問の内容を理解をしていただきたいなということをまず思います。

 それで、私は、閣僚又は国会議員を侮辱した者は逮捕される可能性がありますかと言って、ありませんとおっしゃいました。可能性があるんですか、だから。

二之湯国務大臣 だから、侮辱ということは、言論の自由を弾圧するということでしょう。そういうことをおっしゃっているわけですね。そんなことによって政治家が逮捕されるということはあり得ないということを私は言っているわけです。これはあくまで、そうでしょう、侮辱するということは、侮辱することによって相手が……(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛に。

藤岡委員 これはちょっと、考え方、全く整理がされていないのかなと思います。だって、侮辱をした者が逮捕される可能性は、さっきありませんとあくまでおっしゃいました。ないのであれば、その根拠は今この法律にはないと思います、私は、今回の改正法案には可能性がないと言い切れるものはないと思います。であれば、法案修正をするべきですということを私は申し上げています。

 しかも、侮辱をした者というのは、ある方が侮辱をした、国会議員や閣僚に侮辱をした、その方が逮捕される可能性はありませんとおっしゃったわけです。これは本当に重大な答弁ですから。それはそれで、そうだったら、そういうふうに是非、法案修正が必要ですよねということを申し上げています。

 その考え方はどうですか、二之湯大臣、法案修正するべきだと思いませんか。

二之湯国務大臣 私は、国会議員とか大臣に対してやじを飛ばした人、侮辱した人が逮捕されるということはほとんどありませんということですね、政治家として、そういうことは、あり得ては、あってはいけないということを答弁しているわけでございます。

藤岡委員 あってはいけないではなくて、可能性はあるんですか、だから。あるということでいいんですか、逮捕される可能性が。

二之湯国務大臣 あってはならないということでございます。

藤岡委員 ちょっと、答えていただけませんか。可能性があるんですか。これは大事な審議ですから、あるんでしょうか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 先ほどから二之湯大臣は、不当な弾圧として逮捕されることはないという趣旨だとおっしゃっておられまして、委員お尋ねの事例、非常に広い事例でございますが、まず、今回の法整備は正当な言論活動を処罰の対象とするものではございませんので、おっしゃっているような侮辱行為が、これは正当な言論活動として刑法三十五条に該当するような場合には犯罪が成立しませんから、逮捕の問題は生まれてきません。

 その上で、そうではない、なお犯罪が成立する場合、これはあり得ると思います。その場合につきまして逮捕がどうなるかということにつきましては、住居不定要件などの制限がなくなること以外は逮捕の要件はこれまでと変わりませんので、捜査機関において法と証拠に基づいて適切に対応し、現行犯逮捕を除く場合では適切な裁判官による令状審査がなされるものと考えております。

藤岡委員 正当なのところも、また非常に解釈が揺れるところだと思うんですよね。何が正当なんですか。

 インターネットで、誹謗中傷で、政治家、閣僚や国会議員に対して誹謗中傷される、書き込みがある。例えば、総理の器ではないとか、いろいろな書き込みがあると思います。それに対して、正当なと、一体どういう基準でこれはやられるんですか。何が正当で何が正当じゃないんですか、それは。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 私が申し上げている正当なというのは、刑法三十五条の話でございまして、違法性、犯罪の成立要件のうち違法性に関わる部分でこの違法性阻却事由に該当する事情、事由があるかどうかということで、個別具体的な事案の事実関係に係ることでございますので、一概にお答えすることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。

藤岡委員 今、刑事局長から、一概にお答えすることはできないという話がございました。まさに、ここに曖昧性があるわけでございます。その運用によって、もちろん、時の権力が、これは言論弾圧だなんてそんなことを言って逮捕するなんてことは、それはないですよ。そうじゃなくて、これは侮辱だと言って逮捕する、それが実質的に弾圧のように見えませんか、見えるんですよね、それがまさに時の権力のいかんによって行われる可能性がありますよね、だからこそこの法案は今のままではいけませんよ、修正しなくてはいけませんよということだと思うんです。

 先ほど、二之湯大臣も、あってはいけない、おっしゃいました。そうですよね、あってはいけないですよね。だからこそ、今のままだと、ある可能性がありますよ。二之湯大臣の後にこれからいろいろな国家公安委員長、当然担当されますよね。その可能性がこの法案は残るということですから、将来に対して禍根を残す可能性があります。

 二之湯大臣、これはやはり修正すべきだと思いませんか、どうですか。

二之湯国務大臣 先ほどから私は度々申し上げているように、不当な弾圧として逮捕されることはあり得ない、こういうことを申し上げております。

 そして、ちょっと訂正させていただきますけれども、侮辱罪を犯した者が、多少の可能性があって、逮捕される可能性はまだ残っておるということでございますから。(藤岡委員「多少の可能性はある、つまり、逮捕される可能性があるということでよろしいんですか」と呼ぶ)だけれども、再三申し上げていますように、言論の自由あるいは基本的人権、そして、そういうことを配慮しつつ警察としても対処してまいりますから、そういうことは、私も、思いとしても、あってはならないし、ないように願いたい、このように思っております。

藤岡委員 法制審も含めまして、刑事局長の答弁も含めまして、変わることはないと。

 例えば、そういう捜査によるいろいろな手続なりが全て、ある意味最悪の状態、権力の暴走という事態を想定されていないと思うんですね。今回は、この逮捕が広く可能になるというところが大きな違いです。これは本当に、扱いを間違えると、実質的に弾圧につながるようなことが起こります。したがって、今回は、大臣もおっしゃってくださっているように、あってはいけない、そうですよねと。だからこそ、法案をもっときちっと整備をしていかなければいけないと思うんです。

 ちなみに、加害目的等誹謗罪ですね、議員立法の提出者の米山議員にお伺いしたいんですが、これはどんな工夫をされていますか。

米山議員 加害目的誹謗等罪では、明文で公共の利害に関する特例を定めることにより、処罰すべき誹謗中傷と正当な意見、論評や政治に対する正当な批判等を適切に分けることができる罰条でございます。

 人の心は複雑であり、例えば、総理大臣がそんなことを言わないでくださいと言っていることを知っていても、義憤に駆られて、国会で事実と異なる答弁をするとは総理はうそつきだと言うことはあり得ます。そのような言葉は、それ自体は恐らく加害目的にも認定し得ると思われますが、同時に、公共の利害に関する事実に係り、公益目的になされたものとも考えられます。そのような言論が自由になされることは、民主主義を維持するために極めて重要なことです。

 そのため、本罪では、公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときはこれは罰しないという条項を適用することでこれを処罰しないこととしたものです。

 この公共の利害に関する発言は処罰しないとの特例により、正当な意見、論評や政治に対する正当な批判は処罰の対象とならず、処罰すべき誹謗中傷とその範囲を客観的基準に基づき適切に画することになります。

 なお、政府案では、「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」とする三十五条をもって、正当な意見、論評は侮辱罪の処罰対象とならないと説明されておりますが、何が正当業務に当たるのか明らかでなく、国家公安委員長がどう考えるかによって簡単に解釈が変わってしまうという極めて不安定な条文でございます。このように不安定な条文では処罰範囲がどこにあるのか全く明確でないことを申し添えさせていただきます。

藤岡委員 ありがとうございます。

 まさに、今日この場でも国家公安委員長の解釈が変わりました。変わったというのかどうなのか、ある意味あり得ないというふうな答弁がなされました。それだけでこの法案審議に非常に重大なところの問題が今回明らかになったということを私は思います。

 古川大臣、大臣としてではないですけれども、一議員としてのときだと思いますけれども、月刊日本、二〇二一年の一月号、戦前もこうして時代が転がっていったのだなと思うこともしばしばでしたというふうにもあります。

 是非、法案修正、ここは考えるべきじゃないですか。大臣、いかがですか。

古川国務大臣 まず、申し上げておきますけれども、表現の自由というのは憲法で保障された極めて重大な権利であります。これを不当に制限することがあってはなりません。この自由、表現の自由、報道の自由、言論の自由、こうした基本的人権を保障すること、そして国民の権利を擁護すること、これは法務大臣の責務であります。

 その意味で、この表現の自由に関しては、法制審議会におきましても様々議論がある中で、表現の自由がきちんと保障されるかという趣旨での議論もなされたというふうに聞いております。そして、様々な議論を重ねて検討した結果、最後には全会一致をもって法制審の答申の要綱が……(藤岡委員「八対一じゃなかったでしたっけ」と呼ぶ)いやいや、表現の自由についてはきちんと担保されるということでその答申に結びついて、それを踏まえた上での今回の法案提出ということになっております。

 先ほど来、二之湯国務大臣を交えての様々議論がありましたけれども、二之湯大臣がおっしゃったのは、不当な、先ほど来、委員が、言論弾圧というようなことに対する懸念を大変重視して、その趣旨での御質問をなさっておられましたから、その文脈において二之湯国務大臣は、決してそのような不当な弾圧というようなことはないということを、やはり政治家としてその思いを述べられたことだというふうに私はお聞きしております。

 繰り返しになりますけれども、この法案は、委員が大変懸念をしておられるような、言論弾圧的な、そのような内容ではございません。

 逮捕の在り方についても、先ほど来委員から様々御質問が出ておりましたけれども、確かに、法定刑が引き上げられることによって、逮捕の態様が一部緩和される部分がございます。そこを捉えて、これは言論弾圧につながっていく懸念があるのではないかという問題意識で御質問なさっているんだと思いますが、ただ、確かに制限が一部緩和されるわけですけれども、逮捕に関して、しかし、それ以外の要件には変わりはないわけです。前回も申し上げておりますとおり、構成要件は変わりません。ですから、対象となる行為というのは変わらないわけなんですね。

 そして、逮捕状による逮捕というのは、もう繰り返しになりますからはしょりますけれども、結論で言うと、これは法の規定それから裁判官の判断に基づいてこの逮捕状というのは出されるわけでしてね。

 ですから、そのような意味でも、言論を弾圧的に封じるというような、そのような御懸念に及ぶような内容ではないということを繰り返し申し上げたいと存じます。

藤岡委員 もし答弁修正されるところがあるのであれば、どうぞ。法制審、全会。

古川国務大臣 済みません、訂正をさせていただきます。

 確かに、部会の議決は全会一致ではございません。失礼いたしました。議決を採ることについては全員異論がなかったということでございまして、それを私が取り違えました。訂正いたします。

藤岡委員 法制審の議論を拝見しましても、二回で結論になる、しかも、お一人の委員が比較的懸念を示す中で、もう何か皆さん、ある意味結論ありき的なように私には見えるようなやり取りであったように私は感じました。そういうふうに思いました。

 その中で、当然言論弾圧的なことは行わないんだ、それは当然、今法案の提出者をされている大臣始め、そうおっしゃると思います。しかしながら、この法案に、制度として逮捕が広く可能になるようなことに、制度として道を開いてしまっていますよね、それに対する手当てが足りないんじゃないんですか、少なくとも。それを、今この法案を通すことによって、その時の権力によって、これは運用を間違うと大変な事態に陥る可能性がありますよね。だからこそ、法案の修正が必要じゃないですか。

 法制審の議論も、本当に、ある意味、二回で終わっちゃっているわけですね。憲法学者も入っていません。そういうふうな中でこの結論が導かれて、十分な、先ほども二之湯大臣の答弁も、はっきり言えば、安定していませんでした、分かりませんでした。そういう中で、この運用をやはり懸念するというのは私は当然のことになると思います。

 改めて、制度としてこういうふうな道が開かれてしまうこと、これに対してやはり修正をするべきではないですか。お願いします。

古川国務大臣 繰り返し申し上げますが、法定刑の引上げによりまして委員が懸念をしておられますような言論弾圧的な逮捕が可能となるものではございません、これは。

 繰り返しになりますけれども、逮捕状による逮捕というのは、従来と同様に、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合において、逮捕の必要性があるときに、あらかじめ裁判官が逮捕の理由及び必要性を判断した上で発する逮捕状によって行われることとなります。つまり、法の規定と裁判官の判断によって逮捕状というのは発せられるものでありまして、そこに法定刑が引き上げられたから何か逮捕が突然弾圧的になる、恣意的な逮捕につながるというものではございません。

藤岡委員 制度として道が開かれるというところになってしまうんですけれども、建前としての、たてつけとしての御説明は分かります。しかしながら、その時の総理あるいは閣僚の考え方によって、侮辱を広く捉え、当然、逮捕されるという可能性がありますよね、可能性が。そういうふうな制度になってしまうことで、大臣、本当にいいんですか。いいんでしょうか。

古川国務大臣 繰り返しになるわけですけれども、やはり、表現の自由、あるいは言論の自由も報道の自由もそうですけれども、私は非常にこれは重大な価値だと思っています。これは民主国家が成り立っていく上で極めて重要な要素であって、それを重視する思いというのは、もちろん、人後にもとるものでもありませんし、何よりもそこをつかさどっているのは法務大臣という自負を持っております。

 一般に、政治家がいろいろな議論を言うことに対して、様々な批判やいろいろな言説はあるでしょう。しかし、先ほど来刑事局長も再三答弁しておりますとおり、刑法三十五条におきまして、正当な行為は違法性を阻却されるわけであります。犯罪を構成しないのですね。

 ですから、そういう形で、法というものは、例えば、表現の自由を守るためにもしっかりとした制度的な保障で構成されておるわけですから、私は、制度としてしっかりしたものが備わっているというふうに思います。

 もちろん、その上で、政治をあるべき政治にしていく、つまり、制度を本当に正しく運用していくのは、我々政治を預かる者一人一人の自覚と矜持であろうと思います。

藤岡委員 大臣が何かそういう暴走をするということを今申し上げているわけではありません。ただ、非常に残念です。とても、このままだと、これは本当に、この法案を容認するようなことはできません。

 ちなみに、以前、安倍前総理が街頭で、こんな人たちに負けるわけにはいかないというふうなことで演説もされましたけれども、こんな人たちに負けるわけにはいかないというこの軽蔑したような演説は刑法三十五条の正当行為に該当するんでしょうか。国家公安委員長、いかがですか。

川原政府参考人 犯罪の成否に関わることでございます。

 犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございますので、お尋ねの行為が刑法三十五条の正当行為に該当するかどうかについて一概にお答えすることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。

藤岡委員 大臣、いかがですか。

二之湯国務大臣 刑事局長と同じことでございます。

藤岡委員 本当に、この法案、正当行為の範囲も解釈も広い、したがって、本当にこの法案の修正が改めて必要であるという旨申し上げまして、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、米山隆一君。

    〔委員長退席、熊田委員長代理着席〕

米山委員 それでは、立憲・無所属会派を代表して質問させていただきます。

 今ほどの二之湯国家公安委員長の答弁に関して、一応私からも一言御質問させていただきたいんですけれども。

 当初の質問は、閣僚又は国会議員を侮辱した者は逮捕されるかという質問でございました。それに対して二之湯大臣の回答は、可能性はゼロである、ないと言ったわけです。これに対して周りから、三十五条ではというお話が出ておりましたが、ということは、すなわち、国会議員、閣僚に対する侮辱はすべからく、全てが正当行為になる、そういう解釈を一旦示されたわけです。ところが、その直後に、いや、それはそうでないものもあるというふうに実は答弁を変更されたということかと思います。

 たった五分の間で、たった一人の人がこれほど答弁が変わってしまう。つまり、これは、正当行為による区別というものは極めて属人的であり、全くそれに頼って処罰すべきと処罰すべきでないものを画することはできないということを示しているのではないかと考えます。

 その上で、御質問させていただきます。

 木村響子さん、昨日の意見陳述におきまして、木村花さんの自殺後、誹謗中傷を行って、二十人弱を特定したものの、侮辱罪に問えたのはそのうち三名だけであったという旨、陳述しております。

 たった今ほどから、古川大臣からも、処罰範囲は変わらないというふうに御答弁いただいたところで恐縮ではございますが、侮辱罪が厳罰化された場合、木村花さんのうちの、特定した二十人のうち処罰される人数は何人になりますでしょうか。

大賀政府参考人 個別の事案に関する答弁は差し控えさせていただきたいと考えておりますけれども、今回の改正におきましては侮辱罪の構成要件に変更はございませんので、処罰の対象となる行為の範囲は改正法の成立前後で変わるものではないと承知をいたしております。

米山委員 そうなんです。だから、相変わらず、二十人、誹謗中傷した人がいる中で、三人しか処罰できないんですね。

 古川大臣、先ほど来、インターネット上の誹謗中傷に迅速に対応するためにこの法案を作ったとおっしゃられていますけれども、全く対応できていないと思うんですが、御所見はいかがですか。

古川国務大臣 今般の法整備によりまして、侮辱行為を抑止し、また、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対して、これまでよりも厳正な対処を可能とすることが、これがインターネット上の誹謗中傷対策になると考えております。

 すなわち、今般の侮辱罪の法定刑の引上げにより、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示すことでこれを抑止する効果がある、そして、インターネット上で行われる当罰性の高い悪質な侮辱行為に対して、これまでよりも厳正に対処することが可能となるということでございます。

 インターネット上で行われる悪質な侮辱行為は、時に人を死に追いやるような、あってはならない行為であって、重大なものであります。法定刑の引上げによる抑止と厳正な対処によって、こういう悪質な侮辱行為の根絶を図るのだということが対策として大事な姿勢だというふうに考えております。

 また、処罰対象とならない事案であっても、被害に遭われた方からの人権相談への対応など、行政的な諸施策を推進していくことが重要だというふうに考えております。

米山委員 大臣、毎回同じのを読まれるのは非常に私はちょっと残念なんですけれども、多分御理解いただいていると思うので。

 厳正に対処する、厳正に対処すると言っていますけれども、木村花さんのようなそれこそ非常に悲惨な誹謗中傷があって、それが二十人ちゃんと個人も特定されているけれども、たった三人だけが処罰されて、十七人は厳正に対処されていないんです。それを変わらないと、何度も何度も何度も大臣答弁されているんです。それでいいんですか悪いんですかと聞いています。イエス、ノーで答えてください。

古川国務大臣 今般の侮辱罪の法定刑の引上げによって、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示すこと、これによって抑止する効果を期待するということ、そして、インターネット上で行われる当罰性の高い悪質な侮辱行為に対して、これまでよりも厳正に対処することが可能となる、こういう考え方を持って、誹謗中傷対策、インターネット上の誹謗中傷対策を考えているところです。

米山委員 質問に答えていないんです。木村響子さんが特定した二十人のうち三人しか処罰されない状態は、変わりますが、それでいいですか悪いですか。イエス、ノー以外は要らないので、イエスかノーで答えてください。

    〔熊田委員長代理退席、委員長着席〕

古川国務大臣 今回の法整備は、特定の個別事件への対応のみを目的とするものではございませんで、従来から申し上げておりますとおり、近年におけるこの種の犯罪の実情等を踏まえて、立法、法改正を目指すものであります。

米山委員 私は、今回の法解釈の、意義は全く聞いておりません。聞いていないことに答えていただかなくて結構です、そんな御丁寧に。

 私が聞いているのは、二十人、あんな悲惨な例で特定されたうちの三人だけが処罰されて、十七人は放置されているんですけれども、それでいいですか悪いですか、それだけを答えてください。

古川国務大臣 個別の事件に関して、具体的な評価を法務大臣が述べることは差し控えたいと存じます。

米山委員 つまり、大臣は、これによって、この法律を評価しているとも評価していないとも言えない、そういうことでよろしいんでしょうかね。

 別にこれは、単に個別なことに対して聞いているんじゃなくて、例として聞いているわけですよ。例として、こういうことがずっと全ての事案で起こりますよと言っているわけです。これから同じようにインターネットの誹謗中傷をやって、それは大概何十人もいるわけですよ、そんな一人のことはめったにないですから。何十人もいて、そして、処罰する範囲は変えていないというんですから、ほとんどは処罰されないままなんです。

 それでいいか悪いかというのは、むしろ制度趣旨だと思うんです、個別の案件じゃなくて。その制度趣旨も大臣は答えられない、そういう御回答でいいですかね、もう三回も四回も答えていないので。この法律でいいのか悪いのかということです。

古川国務大臣 世の中に、あらゆるいろいろなことがあるのだと思います。いろいろな事象があり、いろいろな出来事がある。しかし、それを何か一律に、何か一本の法律によって世の中のありとあらゆる事象を全て網羅するというようなことは、およそこの世の中では考えられないことであります。

 そこで、繰り返して申し上げておりますように、インターネット上の誹謗中傷対策として、その考え方として、先ほど来申し上げておりますとおり、要するに一般予防効果を期待するということ、それを旨として、先ほど来申し上げておりますとおり、この法的評価を示すことで抑止効果を期待する、あるいは、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対して、これまでよりも厳正に対処することが可能となるということをもって、この対策を構築しているところであります。

米山委員 私も別に全ての……(発言する者あり)不規則発言しなくていいんですよ。隣、ちょっとうるさいので。

 私も別に全てのものを処罰しろなんて言っていないんです、それは無理ですからね。あらゆる法律にはプラスもあるし、マイナスもある。でも、プラスはこれだけあって、マイナスはこれだけあって、でも、全体として了とするから、法務大臣がいて、閣法として法案を出すものだと思うんですよ。なので、私は、この法案では全くインターネット上の誹謗中傷対策にならないですよと言っているのに、それに対しての御所見を伺っているのに、全く御回答いただけないのは極めて残念です。

 私の配付した資料を御覧ください。

 今のお話というのは、実は、図一の話なんだと思うんです。要するに、政府の侮辱罪厳罰化というのは、侮辱罪の構成要件に該当するものの中で一部が、年間三十件ほどが処罰範囲なんです。それ以外のものは年間数万件ほど多分あるんです。政府はこの処罰範囲を変えないと言っていますから、この法定刑を、拘留又は科料から、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金を加えたものにしているだけなんですよね。

 なので、これではインターネット上の誹謗中傷対策にはなりません。なりっこないんです。そう言っているんです。誹謗中傷、横にありますよね。誹謗中傷に該当する構成要件はないので、かつ、これに対する処罰はないので、この処罰はぽっかり穴が空いたままなんです。

 先ほど来、大臣、一般予防効果があると。これは一般予防効果はあるんだと思いますよ。これは黄色の部分です、一般予防効果ですよね。何か重くなったからやはり怖いなと思って、今まで処罰されていない人が、やはり侮辱しないようにしよう、誹謗中傷しないようにしよう、名誉毀損しないようにしよう、それが一般予防効果ですよね。

 この一般予防効果というのは、結局、何が当たるか、何が当たらないか、分からないんですよ。先ほど、大臣、ずっと一般予防効果があると言っているんですけれども、変わらないと言っているのに一般予防効果があるということは、それは結局、今まで処罰範囲に当たらなかった人たちが、何となく処罰に当たるかもしれないと思って、誹謗中傷であり侮辱であり名誉毀損をやめる、そういう趣旨でよろしいですね。

古川国務大臣 何か曖昧な威嚇効果を期待しているということでは当然ございません。そのような意味で一般予防ということを申し上げているわけではありません。

 変わらないと申し上げておりますのは、構成要件が変わらないわけですから、対象となる行為そのものの範囲は変わらないということを申し上げております。

 そして、前回の委員との質疑の中でも、たしか委員は当罰性という言葉で表現しておられたと思いますけれども、横が構成要件の対象範囲だとするならば、そこは変わらない。しかし、上、高さ、縦が変わるというようなことなわけですよね。引上げによりまして、下限は維持をいたしておりますから、上限を上げますけれども、下限は維持しております。したがいまして、この高さは二種類になるわけですね、簡単に言うと。L字形のイメージになるわけであります。そういう形でもって、法定刑引上げということについてのイメージを今説明させていただいたわけです。

米山委員 そこは、処罰範囲は変わらないとおっしゃられているので、処罰範囲は変わっていないんですよね。単に処罰の内容が変わっているだけなんです。だから、やはり効果はないんだと思います。それはもう、言ってもずっと一般論しか言われないので。だって、二十人のうちの三人しか処罰されないのは変わらないんですからね。(発言する者あり)うるさいんですよね、横から。別に答弁を求めていないので。答弁を求めていないんですけれどもね、委員には。(発言する者あり)ああ、そうですか。じゃ、私もこれからどんどん独り言を言いますので。

 それでは、次に御質問を続けさせていただきますけれども。

 先ほど、正当な批判というものは正当行為であるから大丈夫だというようなお話があったんですけれども、次の私の、ちょっと恥ずかしいんですが、配付資料を御覧ください。

 これは、さる元通産官僚が私に対して誹謗中傷したメールでございます。これは、私、国会議員ではありますけれども、国会議員としての業務に対する誹謗中傷ではありません。単に、この人にブロックされているのに、済みませんね、にもかかわらず、私、別のアカウントでその人を見て、この人何言っているんだと思ってその人を批判したら、相変わらずストーカーみたいで気持ち悪い人だなというふうに、インターネット上、SNS上で公然と侮辱されたわけでございます。

 この侮辱は侮辱罪に当たるか当たらないか、御回答お願いします。

川原政府参考人 委員の方から具体的な事例を示しての御質問でございます。

 これまで再三お答えをしているところで恐縮でございますが、犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございまして、お尋ねの行為が侮辱罪に該当するか否かについて一概にお答えすることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。

米山委員 それはそうだという声が、独り言が聞こえましたけれども、インターネット上の犯罪ってみんなこのぐらいですよ、証拠って、私やっていますけれども。だって、インターネット上にあって、これ以上何の証拠があるんですか。

 これ以上の証拠がなければ答えられないということは、つまり、あらゆる犯罪について、それは該当するかしないか全く誰も答えてくれないということです。

 先ほど鎌田委員の資料にもございました法制審にあった例から見れば、これは、ストーカーみたいで気持ち悪い人だなと書いてあるわけですから、十分侮辱罪に該当すると思うんですけれども、該当するかしないか、もう一度御回答いただけますか。それとも、判断できないなら、何があったら判断できるのか教えてくれますか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的事案における犯罪の成否を確定するのは刑事手続でございます。したがいまして、具体的事案における犯罪の成否は、その当該刑事手続におきまして、捜査機関が収集した証拠に基づき判断される事柄でございますので、法務省として、このお示しの事例について、犯罪の成否についてお尋ねということでございますので、これは一概にお答えすることは困難である旨、申し上げているところでございます。

米山委員 これもまた結構重要な御答弁だと思うんですけれども。つまり、こんなに具体的な事例があるのに、これが犯罪に該当するかしないか分からないんですよ。この経産省の官僚さん、困ると思いますよ。これは言っていいのか悪いのか、明日逮捕に来るのか来ないのか、まるで分からないわけです。刑事手続があるまで分からないわけですよね。

 私もそれは困るので、しかも刑事手続しなきゃ分からないというんでしたら、これは刑事告訴しようと思うんですけれども、御受理いただけますか。

大賀政府参考人 一般論として申し上げますと、要件の整った告訴がございました場合には、これを受理して、適切に対応することとしております。

米山委員 そういうことになるんですよ。

 これは結局、余りにも侮辱というものがどこにあるのか分からな過ぎて、次々と刑事告訴が起こってしまうんです。しかも、今まででしたら、それは所詮、科料九千円でしたから、刑事告訴だってなかなか素人がやるのは難しいですから、わざわざお金を払ってするかと思いましたけれども、これからは、憎い相手を一年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金、さらには逮捕、勾留までしてもらえる可能性があるんですよ。しかも、それに対して、結局、基準は示されない、誰も答えてくれない。じゃ、刑事告訴しようと思う人は出てくると思うんですよね、そのような可能性があれば。

 しかも、今度はそれは困るわけです、そうされたら困ると思って言論は萎縮するわけです。いかに政府がちゃんとやります、ちゃんとやりますと言ったって、刑罰の範囲をきちんと決めてくれなかったら、それは言論は萎縮するんです。

 大臣、御所見を伺います。

古川国務大臣 犯罪の成否というものは、法と証拠に基づいて、裁判によって判断、確定されるものであります。

 今お尋ねのように、個別具体的な事案について、この場においてその判断を法務大臣として申し上げることはできません。

米山委員 今の答弁、ちょっと聞き捨てならないんですけれども。じゃ、法律は要らないですよね。法律というのは、犯罪の範囲を少なくとも言葉からある程度類推できるようにする、推定できるようにする、そのために法律というものがあり、言葉があるわけですよね。今の大臣、法律は要らない、全部それはその場で証拠だけで決めればいい、そういうことですか。

古川国務大臣 法と証拠に基づいて、裁判によって判断、確定というふうに申し上げました。そして、刑法典というものがあって、様々な判決というものが蓄積されて、判例ですね、それが判断基準として一つの指針を示すものとなっていくというものだと思いますけれども、いずれにしましても、法と証拠に基づいて、裁判によって判断というものはなされるものであります。

 先ほど来、委員がここで提示しておられますような個別の案件についての判断を私がここで軽々に申し上げることは差し控えたいということを申し上げております。

米山委員 それはおかしいんですよ。法務大臣がそのような答弁をされるのは非常にがっかりするんですけれども。

 それは、最終的な刑罰は裁判で決めますよ。でも、法務大臣、先ほど来、一般予防、一般予防と言っていらっしゃいますよね。一般予防って、自分の行為が刑罰に当たるかどうか、裁判前に分からなければあり得ないんですよ。そうでしょう。一般予防というのは、裁判前に、自分の行為が刑罰に当たるかどうか、ある程度判断できるから成立するものですよ。

 逆に、それができない、裁判になるまで分からないんだったら、それはありとあらゆる言論が萎縮してしまうんです、分からないんだから。それは、我々がずっと言っている、言論の萎縮のおそれがありますよねと。幾ら政府がちゃんとやると言ったって、条文上はっきりしない、構成要件がはっきりしない、それでは駄目ですよねと何度も例を示しているわけですよ。例を示しているのに、私の恥ずかしい思いをして出したこのツイートに対してだって、これが該当するかどうか分からない。じゃ、何の一般予防効果もないじゃないですか。

古川国務大臣 まず、この侮辱罪の構成要件というのは条文において明示されております。

 それから、繰り返しになりますけれども、犯罪の成否というのは、法と証拠に基づいて、裁判によって判断、確定されるものでありますが、先ほど来私が申し上げておりますのは、具体例を示されたわけです、そこに対して、私が、その犯罪の成否というようなことについて法務大臣として何らかのことを申し上げるということは、捜査機関や裁判所に不当な影響を与えるおそれがありますし、社会一般に対して、何か一定の予見を与えるといいますか、誤解を与えることにもなりかねない、そういうことですから、コメントを慎む、差し控えたいということを申し上げているんです。

米山委員 それは本当にびっくりするんですけれども。私、何もここで確定判決を下さいなんて言っていません。全然、確定判決したいなんて言っていません。私が聞いているのは、子供が親に、スーパーで、お母さん、このパンを持っていってお金を払わず出ていっていいの、そうしたら、お母さんは、それは駄目ですよ、窃盗に当たるからしてはいけませんと言いますよね。

 だから、法律というのは、事前に、それが当たるか当たらないか分からなきゃいけないし、確定判決前の公権的解釈権者は、法務大臣、あなたなんですよ。それは行政としての解釈ですよ、司法ではない、それは分離しているから。行政の解釈は最終的ではないですけれども、行政が一定の解釈の基準を示してくれなかったら、国民はどう動いていいか分からないんです。

古川国務大臣 侮辱罪の構成要件は、条文に明示をされております。

米山委員 公然と侮辱した者は、侮辱の中身を言ってください。

川原政府参考人 お答えいたします。

 侮辱罪における侮辱とは、一般に、他人に対する軽蔑の表示をいうと解されているものと承知しております。

米山委員 これは押し問答ですから繰り返しませんけれども、要するに、それでは分からないんです。

 そして、インターネット上の言論、先ほど鎌田委員が出したいろいろな例と私の例と、全く区別がつかないんです。それは、どんなに政府がきちんとやったって、言論の萎縮効果をもたらすんです。

 その一般的事実は、私はお認めいただきたいし、大臣、御答弁を伺うと、言論の自由を非常に大事にしてあられるようですから、それは幾ら大臣が心で大事にすると言ったって駄目なんですよ。制度として、言論の自由が担保されるような分かりやすい構成要件、分かりやすい罰条を作って、何が罰せられ、何が罰せられないかをきちんと国民に示す責任があるのに、それを一切放棄されておられるということに極めて残念な気持ちです。

 次に、この三十五条と刑法二百三十条の二のお話をさせていただきたいと思います。

 名誉毀損罪には、刑法二百三十条の二、「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」という明文規定がありますので、この文章の解釈、条文の解釈にのっとって、何がこの例外規定になるのかならないのか、それが分かるわけです。

 ところが、侮辱罪にはこの要件はございません。しかも、先ほど来、答弁を聞きますと、この二百三十条の二の類推適用もない。ひたすら、三十五条の正当行為でやるとおっしゃられています。

 また分からないと言うのかもしれませんけれども、やはり、こういうときは正当行為なんですか、正当行為でないんですかと聞いて、答えてくれないと分からないんですよ。

 例えば、私が、総理はうそつきで顔を見るのも嫌だ、早く辞めたらいいのにと言った場合、これはうそつきという侮辱的表現を含むものだと思いますけれども、この発言は侮辱罪に該当しますか、伺います。また、これを、私ではなく、ちょっと妻の名前を出して恐縮ですけれども、私の妻がコラムで書いた場合には該当しますか。また、新潟県魚沼市で生肉店を営んでいる私の母が、買いに来たお客さんにこの言葉を言った場合には、侮辱罪に該当しますか。それぞれ、法的根拠を基に答えてください。

川原政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しの答弁で恐縮でございます。

 委員は、具体的な事例をお示しになって犯罪の成否をお尋ねになっているところでございまして、犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございますので、この場で法務当局あるいは法務省として、その犯罪の成否についてお答えをすることは差し控えたいと存じます。

米山委員 法務大臣にお伺いしますけれども、これは最後までこれでいくということですか。つまり、何が侮辱罪に当たるのか、何が正当行為に当たるのか、その線引きは一切答えないまま、この法案の審議を終えて成立させる、そういう意図だということでよろしいですか。

川原政府参考人 先ほど来、委員のお尋ねになっていることでございますが、一つは、侮辱罪の構成要件はどういうものかということにつきまして、先ほど、私、侮辱の一般的定義はお答えいたしました。

 その上で、昨日の参考人質疑の中でもあったと思いますが、これまでの事例の集積におきまして、おおむね侮辱というのはどんなものを指すのかというのは、その解釈はそれなりに示されてきているところでございます。

 その上で、そういった一般的な解釈を前提としまして、個別の事案がその侮辱罪の構成要件に該当するかという個別判断につきましては、繰り返し申し上げますように、捜査機関が収集した証拠に基づいて判断される事柄でございますので、それについてはお答えを差し控えると申し上げているところでございます。

米山委員 大臣にお伺いしますけれども、つまり、この法案で何が侮辱罪に当たるのか、何が正当行為に当たるのかは、今までの判例を見ろ、それしか言わない、それでよろしいですね。

古川国務大臣 先ほど来委員は、境界といいますか、境目が分からないということをおっしゃるわけですけれども、これまでも、この侮辱罪の法文というのはあのとおり記載をされているわけであります。

 申し上げておりますとおり、今回、法定刑を引き上げるということを御提案させていただいているわけですけれども、しかし、構成要件は変わらないわけでございまして、ですから、何と申しますか、全く明示していないというのは当たらないというふうに存じます。

米山委員 私、それは聞いていないので、聞いていないことにお答えいただかなくて結構ですので。

 国民に示すガイドラインとして、こういう要件、こういうのが当たります、当たらないということは言わないんですね、だって、国政調査権がある国会議員が何度も何度も何度も聞いているのに、ひたすら答えずに判例を見ろとしか言っていないんだから、国民にも示さないんですねと聞いているんです。イエスかノーで結構ですので、余計なことは言わずに、イエスかノーで答えてください。

古川国務大臣 余計なことというのは、いささか失礼じゃありませんか。(米山委員「本当に質問に関係ないことを言っています。本当に質問に関係ないです。私、質問をすごく限定して言っているので、答えやすいように」と呼ぶ)

 済みません、もう一度御質問をお願いいたします。

米山委員 この侮辱罪改正法案を出すに当たって、何が処罰される侮辱で、何が処罰されない侮辱なのか、何が正当行為で、何が正当行為でないのか、きちんとガイドラインを示すべきだと思うんですけれども、特に具体的な事例も示して。それは示されるんですか、示されないんですかと聞いているので、それだけに答えてください。

古川国務大臣 あえてお尋ねにお答えさせていただくとするならば、近時、侮辱罪により処罰された事例の中から一つ挙げますと、その被害者のツイッターアカウントに、てか死ねや、くそが、きもいなどと投稿した事案などがあるものと承知しております。

米山委員 つまり、答えていないんですよ。つまり、過去の例をそうやって出すだけで、国民に分かりやすいガイドラインを出す気がないと御答弁いただいているのと一緒なんです、私の答えに一切答えない、関係ないことを言いながら。でも、それでは国民は分からない。分からなければ言論は萎縮するんです。そうして民主主義が死んでしまうんです。

 大臣、きちんと制度として、言論の自由が守られる、そういう分かりやすい法律を作りましょうよ。そして、百歩譲って、それは与党で、正直に与党ですからね、そちらが、百歩譲って、もしそれができないなら、せめて分かりやすいガイドラインを作ってください。それはもう法務大臣としての責任ですよ。そして、それをちゃんとこの場で答弁してください。何が当たるか、何が当たらないか言わないなんというのは責任放棄です。

古川国務大臣 正当な表現行為に対する萎縮効果を懸念しておられるということですが、それは私はもっともなことだと思います。法制審議会においてもそのような意見があったというふうに承知をいたしておりますし、それは真摯に受け止めるべきことだというふうに思います。

 したがいまして、国民に対する周知ということには適切に対応していきたいというふうに思います。

米山委員 国民に対する周知は、具体的にどういうものが当たるか当たらないか言わなければいけないんです。そして、国民に対して言えるのに、国会議員の質問に対して言えないというのは、それは国会軽視が過ぎます。

 大臣、私、また質問しますが、次はきちんと具体的な基準をお答えいただけるんでしょうか。御質問させていただきます。

古川国務大臣 具体的な、何か、ここからここまではいいけれども、ここからは駄目だというようなことを一概に申し上げることは非常に難しいことであります。

 そして、それをあえて私がここで何か発言をするということは、先ほど来申し上げておりますとおり、これは捜査機関や裁判所にいろいろな影響を与え得るということから、その答弁は私は差し控えさせていただいているところですけれども、しかし、委員が重ねて指摘をしておられる萎縮効果、萎縮があるのではないか、そういう懸念、そういうことに対する懸念ということは、これは非常に大事な御指摘だと思います、大事なポイントだと思いますから、そこには、国民の皆さんにきちんと周知できるように、何ができるかしっかり考えながら対応していきたいというふうに思います。

米山委員 国政調査権のある国会議員の質問に対してもきちんと御回答をお願いします。国会議員に対しても周知をお願いいたします。

鈴木委員長 申合せの時間が経過しておりますので。

米山委員 はい、終わりです。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 表現の自由を制約するような刑罰の規定、かつて共謀罪というのが問題になったことがあるんですね。そのときに、目くばせが共謀に当たるかということを聞いて、それに対して、当たるという趣旨の答弁があったんですよ。

 そのように、過去には、いわゆる表現の自由を制約する可能性があるものですから、そういったことについては、表現の自由は、憲法上の人権の中でも極めて重い、民主主義的な価値、自己統治の価値が言われています。そうした表現の自由を制約するような立法をするに当たっては、ちゃんとメルクマールを示すというのは、私も政治の責任、国会の責任だと思いますので、是非、今の米山さんの指摘は真摯に受け止めて、しっかりとしたメルクマール、この場で示していただきたいと思います。そのことを大臣に申し上げた上で質問に入ります。

 川原刑事局長、前回の答弁について伺いますけれども、今日の配っている資料の一ページ目に書いておりますけれども、法定刑引上げの趣旨を適切に勘案して、必要な捜査及び訴追がなされるのではないかといったくだりがあります。

 この意味なんですが、侮辱罪を処罰する場合の必要な捜査及び訴追、これが法定刑引上げをすることによって変わるというふうに理解したんですが、それでよいですか。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 私の先日の答弁についてでございます。

 この場で侮辱罪の当罰性ということがしばしば議論になっておりますが、個別事案の当罰性とは別の犯罪類型としての当罰性というものは、それぞれの罪の法定刑に示されていると考えられるところでございます。

 侮辱罪につきましては、今般の法整備により、その法定刑を引き上げることとしておりまして、これにより、厳正に対処すべき類型の犯罪であるという法的評価が示されることになりまして、捜査機関においてはそれを前提として対応することとなると思われるところでございます。

 その上で、先日来申し上げているところでございますが、まず、正当な言論につきましては、刑法三十五条が適用されて犯罪が成立しないので、これは訴追ということはできない、犯罪としての訴追はできないところでございます。

 また、今般、私どもの改正案につきましては、法定刑上限を引き上げるものの、下の方の拘留又は科料は残しておりますので、犯罪類型ではなくて個別事案の当罰性という点では、当罰性の高いもの、低いもの、それぞれに、それに応じた適切な量刑処分ができるようになるものと考えております。

階委員 肝腎なことには全く答えていないんですよ。

 いいですか。私が聞いたのは、法定刑引上げの趣旨を適切に勘案して、必要な捜査及び訴追がなされるとおっしゃっていますけれども、そうすると、引き上げたことによって、ここで言っている必要な捜査及び訴追というのは変わってくるのかということを聞いている。変わるのであれば、その具体的な中身も含めてお答えください。聞いたことにだけ答えてください、時間がないんだから。お願いします。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 法定刑の引上げによりまして、当罰性の高い行為については、これまでとは違った重い刑を科すことが可能になりますので、これまで訴追されているような類型のうち、当罰性の高いものについては高い量刑がなされるということを考えております。

階委員 要するに、捜査対象の事件の範囲が変わるとか、そういう話ではなくて、重い事件は重い事件に見合った捜査をする、今までと同じような事件についてはそれに見合った捜査をするということで、重い処罰が必要なものについてはそれに見合う捜査をするという趣旨だと伺いました。間違いないですね。そこでうなずいてくれればいい、長いから。はい、うなずきました。うなずきましたので、答弁したと理解します。

 さて、昨日の木村響子参考人の発言で、お嬢さんが亡くなった後、警察とやり取りしたところ、被害者がどこの誰かを自分で調べて明らかにしないと被害届すら出すことができない、こんなお話をされていました。私もそのような扱いがあるということは見聞きしております。

 これは二之湯大臣にお伺いしますけれども、確認ですが、現在のところは、被害者が被疑者を特定できなければ侮辱罪の告訴を受理しない、そんな扱いをしているんですか。お答えください。

二之湯国務大臣 警察では、告訴をする者があったときは、これを受理して所要の捜査を行うことになります。被疑者が特定されていない場合でも、要件が整ったものにつきましては受理するものと考えております。

階委員 そうすると、昨日の木村さんの発言は誤りだったということなんでしょうか。

二之湯国務大臣 個別の事案に関することにつきましてはお答えは差し控えたいと思いますけれども、いずれにせよ、被疑者が特定されていない場合でも、要件が整ったものについては受理するものと考えております。

 なお、インターネット上の書き込みを行った被疑者の特定に当たっては、被害者の方から発信者情報の開示請求により明らかになった事項を提供いただくなど、協力をいただくことはあると聞いております。

階委員 まさにそれが、特定しないと受理しないという話じゃないですか。

 私が聞いているのは、そういう発信者情報を突き止めるのは被害者にとっては大変な負担なんですよ。昨日も、何十万、何百万とお金がかかったと言っていましたよ。そういう負担をしないと被害届を受理しないんですか。どっちなんですか、お答えください。

二之湯国務大臣 先ほども申し上げましたように、被疑者が特定されていない場合でも、要件が整ったものについては受理するものと考えております。

階委員 それは聞いたんですよ。その後つけ加えて、発信者情報を調べてもらう、協力を求めるといったようなことを言ったので、そんなことまでしないと受理しないのかということを言っているんです。どうですか。

二之湯国務大臣 できるだけ、何といいますか、協力をいただくような、そういうSNSの発信業者などからできるだけ協力いただくようなことも努めていかなければならない、このように思っておりますけれども。

階委員 大変なことなんですよ、発信者情報を突き止めるのは、一般私人にとって。特にお金を余り持っていない人にとっては大変なことなんですよ。

 これは、そういう負担を負わせないで、警察の方でやると言ってくれませんか。どうですか。

二之湯国務大臣 例の木村さんの事件のときに、それ以前から私も党本部のそういう通信部会なんかに出ておりまして、こういうインターネットの書き込み、これの発信者の特定ができないというような話がよくございました。これは大変な費用がかかるということも聞いております。

 警察としてどういうことができるか、これから検討してまいりたいと思います。

階委員 そうしたことを是非やっていただきたいんですが、今のところは、発信者情報の壁があるせいかどうか分からないんですが、二ページ目につけておりますが、警察庁で把握している侮辱罪の認知件数、検挙件数は非常に少ないんですよ。令和二年、令和三年は、先ほど警察庁から答弁ありました。その前、遡っても、認知件数、検挙件数はほぼ二桁台で推移しているわけですね。

 世の中全体を見渡して、私と米山さんだけでも軽く百件を超えていますよ、インターネットの侮辱を受けるのが。そういう状況の中でこれは少な過ぎませんか。本当に適切に受理されてきたのかどうかというふうに思うわけです。

 今大臣もお答えになったように、これからは発信者情報を突き止める負担も少なくするということを検討するとおっしゃっていました。そうであれば、今までと異なって、侮辱罪の認知件数や検挙件数は法改正後は増えていくんじゃないかと思うんですが、それでいいですか。

二之湯国務大臣 今回の改正によりまして、認知件数や検挙件数が増加するかどうかについては、なかなか、はっきりと言って、評価しにくいところがございます。

 いずれにいたしましても、被害の届出があれば、被害者の心情にも配慮した適切な対応がなされるよう警察庁を指導してまいりたい、このように思っております。

階委員 じゃ、逆に、先ほど来、一般予防効果、威嚇効果、抑止効果があると言っているわけだから、今までもし警察が適正に事件を受理していたという前提に立てば、むしろ件数は減るというふうにも考えられるんですが、そこは警察はどういうふうに把握されていますか。警察の方ではどう考えていますか、その点は。

二之湯国務大臣 今の委員の御質問に答える明確な答えが私は用意されておりませんので、ちょっとまた考えさせてください。

階委員 要するに、一般予防効果とか抑止効果とか威嚇効果、あるあると言っているんだったら、その根拠を示すべきだと思うんですよ。抽象的にあるあると言っても、信用できないじゃないですか。

 だから、今後もし減るというふうに見込んでいるのであれば、その根拠をちゃんと、もうちょっと客観的な、定量的な、資料などで説明していただければというふうに思っていますので、この点は、では、今日はこれ以上求めませんので、後で資料を提出、よろしくお願いします。委員長、お取り計らいをお願いします。

鈴木委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。

階委員 あと、侮辱罪の刑が重くなって、公訴時効の期間が、一年が三年に延びるわけですね。これによって、捜査に時間を長くかけられるということで検挙しやすくなるという説明がなされています。そこで、これについても、現状はどうなっているのかというふうに思うわけです。

 現行法の下で、侮辱罪の事件を認知しながら、公訴時効にかかったということで検挙を見送った事案の割合はどのぐらいあるのか、国家公安委員長、お願いします。

二之湯国務大臣 委員お尋ねの件に関しましては、把握していないのが現実でございます。

階委員 これも、だから、本当に今まで時効の壁で検挙ができなかったのかどうかというのは定かじゃないんですよ。

 米山委員がさっきお答えになったとおり、被害者がすぐ届けを出して、しかも、発信者情報なども負担を求めないで、自分で調べないと受理しないとかそういうことをしないでちゃんと受理すれば、一年あれば大抵のものは検挙、起訴に持っていけるわけですよ。

 だからこそ、私たちは、本当に時効の壁があるんだったら、その証拠を出してほしいというふうに思っているわけです、立法事実ですから。それがないということも、今の政府案の正当性が少し疑わしいと言わざるを得ないというふうに思っています。私どもの方では、そうしたことについて対案を出しています。

 もう時間が来ましたので、午後に回していきたいと思います。引き続きよろしくお願いします。

鈴木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。階猛君。

階委員 引き続き質問をさせていただきます。

 我々立憲民主党で対案を出していますので、米山委員にお尋ねします。

 昨日の参考人、木村響子さんは、ネット上の誹謗中傷を行った者に厳罰化を強く希望していらっしゃいました。野党案はこの被害者の処罰感情に応えられるのか、この点について、まず、スピーディーに、かつ密度濃く、お答えをお願いします。

米山議員 それでは、御要望どおり、早口で答えさせていただきたいと思います。

 昨日の委員会において、木村響子参考人からは、侮辱罪厳罰化にプラスして、立憲民主党案のような法律が必ず必要になってくると思うとの御意見をいただきました。

 被害者の方々の処罰感情に十全に応えるためには、木村参考人の御指摘のように、刑の厳罰化と処罰範囲の拡大が共に必要となるのかもしれません。しかし、政府が提案する侮辱罪の厳罰化には、原則として逮捕が可能となり、教唆犯や従犯が処罰されることになるなど、単に法定刑が重くなっただけにとどまらない影響があり、言論の自由を強く萎縮させるものであることから、賛成することはできません。

 立憲民主党案では、SNS、インターネット上の誹謗中傷という新たな課題に対応するために、次の三つの措置を講ずることとしております。

 すなわち、加害目的誹謗等罪を創設し、侮辱とは言いづらい誹謗中傷や、DMや電子メール、LINEなどによる公然性を欠く少人数での誹謗中傷などの処罰すべき行為を適切に捉え、犯罪被害者保護法の損害賠償命令制度の対象事件に、名誉毀損罪、侮辱罪、そして新設する加害目的誹謗等罪に係る被告事件を追加し、誹謗中傷の被害者が損害賠償請求を行う際の負担を大きく軽減させ、その被害の実効的な救済を図ることとし、プロバイダー責任制限法の発信者情報の開示請求を被害者にとって利用しやすい制度に改めることにより、インターネット上の権利侵害に対する被害者救済手段の充実を図ろうとしております。

 立憲民主党案は、このような措置によって、被害者の方々の処罰感情に少なからずお応えすることができているものと考えております。

 ただ、その上でも、もしかして、木村響子さんの処罰感情には十分応えられないこともあるかもしれません。例えば、昨日の委員会に木村響子さんと一緒に来られた松永さんは、交通事故、暴走事故で妻子を失いました。もしかしたら、被告に非常に重い刑を望んでいたのかもしれません。しかし、過失運転致死傷罪の法定刑は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金であり、被告は禁錮五年の刑でした。

 最愛の人を失った家族の処罰感情は時に非常に強くなりますが、しかし、処罰は、常に公序のバランスを失してはいけません。特にSNS、インターネット上の誹謗中傷は、木村響子さん自身がいみじくも言っていたように、本人はそんなつもりはなく行っていたものが少なくありません。もちろん、その重大な結果に対する責任は強く認識し、罪を償っていただかなければなりませんが、その行為を余りにも重い罰で罰するのは、行為にふさわしい量刑を与える応報刑論の考え方から適切でないと思います。

 同時に、木村響子さんは、ガイドラインを作ってくださいとも訴えておられました。一般予防を考えるのであれば、むしろ、刑罰の厳罰化よりも、明確な構成要件を定める、若しくは明確なガイドラインを定めるなどして、刑に何が当たるか当たらないかを明確に示すことの方が重要であろうと思います。

 被害者の処罰感情には寄り添いながら、しかし、刑法の謙抑性と処罰のバランスを忘れないのが、私は、立法府の、法を守る者の矜持であると思います。

階委員 非常に重要な、私は罪刑法定主義の原則にのっとった御答弁だったと思います。すなわち、実体法の適正と手続法の適正、両方が必要だということから、立憲の案は考えられているということだと思います。

 もう一点お尋ねしますけれども、米山委員が本会議で答弁されたときに、侮辱罪についても明文で、公共の利害に関する場合の特例のような条項をつけるべきだというふうにお答えされていました。この点につき、具体的な条文のイメージがあれば、お答えいただけますか。

米山議員 こちらも早口で答えさせていただきます。

 政府は、誹謗中傷等対策のための侮辱罪の法定刑を引き上げる案を提出しておりますが、一方で、侮辱罪の処罰範囲については変更しないと答弁しております。しかし、現在の侮辱罪の処罰件数の少なさに鑑みれば、誹謗中傷対策のために侮辱罪を用いることとした以上、今後、運用における処罰範囲の拡大は避けることができないのではないかと、御答弁とは異なり、避けることができないのではないかと考えます。

 そうであるとするなら、言論を萎縮させないようにする観点から、侮辱罪に、公共の利害に関する場合の特例のような、刑法二百三十条の二のような条項をつけるべきではないかと先日の本会議において指摘したところです。

 そこで、委員お尋ねの、公共の利害に関する場合の特例のような条項の具体的イメージについてですが、例えば日弁連の、侮辱罪の法定刑の引上げに関する意見書においては、「侮辱罪については、公共の利害に関する場合の特例の適用がないことから、公共の利害に関する論評であっても、他人に対する軽蔑の表示が含まれていれば、処罰対象とされるおそれがある。」と指摘されているところであり、このような問題意識を共有をした上で、侮辱罪について、例えばですけれども、公共の利害に関する公正な意見、論評については侮辱罪が成立しないと定めるような特例の条項を検討してみることが考えられるのではないかと思います。

階委員 確かに、そういうことが明文ではっきりすれば、例えば政治家に対する批判的な言論、こういったものが処罰されないということで、これは非常に有効な措置ではないかと思っています。逆に、これがないがゆえに、侮辱罪を厳罰化すると現行犯逮捕が容易になるというのが午前中もるる指摘されたわけですね。

 そこで、ここからは国家公安委員長にお尋ねしますけれども、現行犯逮捕、これは逮捕状は必要ないんですね、御案内のとおり。

 それで、資料五ページ目を御覧になってください。条文をつけていますけれども、刑訴法二百十二条「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。」、二百十三条「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」ということで、逮捕権の濫用というのが非常に気になるわけです。

 これは侮辱罪の事例ではないんですが、一つ戻って四ページ、これは札幌地裁の先日の判決ですけれども、安倍首相が街頭演説を行っている最中に、聴衆の中で安倍辞めろとやじを飛ばした若い男性が警察官らに排除されたり、増税反対と叫んだ若い女性が警察に移動させられた上で長時間つきまとわれたりした事案も現にあったわけです。

 今後は、侮辱する発言を行ったとして警察に現行犯逮捕される危険も高まるわけです。表現の自由を萎縮させないという見地から、いかなる場合に現行犯逮捕がなされるか、基準を明確にすべきではないかと考えます。

 国家公安委員長、警察が現行犯逮捕を行う基準、この法律が変わることを前提として、どういう基準にするか、お答えいただけますか。

二之湯国務大臣 現行犯逮捕するかどうかというのは、逮捕に当たっては、言論の自由に配意しつつ、慎重、適正に運用することとされておりまして、法改正の後においても変わることはない、このように思っております。

階委員 変わらないと言葉でおっしゃるだけじゃなくて、基準を明文化してほしいと思っているんですね。先ほど来、ガイドラインということも出ていましたけれども。

 例えば、具体例に即してお尋ねしますけれども、街頭演説やデモ行進などで政治家など権力者への批判を行った場合、それが事実を摘示せずに相手の社会的評価を低下させる内容だったとしても現行犯逮捕はされないというふうにすべきだと思いますが、大臣の見解も恐らくそういうふうなことをおっしゃったと思うんですが、今のようなことでよろしいでしょうか。

二之湯国務大臣 私、個人的には、そういう札幌の駅前での安倍首相の街頭演説、これは安倍首相が表現の自由、言論の自由を振るったわけですね。やじをしている人も恐らく表現の自由だと。それぞれの言い分はあるわけでございますけれども、具体的にどのような場合に可能かは刑事訴訟法を所管する法務省にお尋ねをいただきたい、このように思います。

階委員 後で示しますけれども、警察の捜査規範などは国家公安委員長が国家公安委員会規則として定めているわけじゃないですか。だから、逮捕の基準というものは、まさに捜査の一環として行われるものですから、国家公安委員長に聞いているんですよ。

 私が言ったように、街頭演説やデモで政治家のような公職にある、権力を持った人の批判を行った場合は、事実に基づいていれば例の名誉毀損の二百三十条の二が適用があるわけですけれども、事実を摘示しない場合は、いかに相手の社会的評価を低下させる内容であったとしても現行犯逮捕の対象にならないということをここで明確にしていただいて、その旨を何か明文のルールとして定めた方がいいと思います。どうですか。大臣、お願いします。

二之湯国務大臣 繰り返し何遍も申しますけれども、あくまでも警察は、言論の自由、表現の自由、そういう憲法に定められた基本的人権を尊重してこういう問題に対処していきたい、このように思っております。

階委員 だから、何遍も繰り返しになるのは、私の質問に答えていないからですよ。質問に答えてください。どこがセーフ、どこがアウトかということを明確にしてほしいと言っているわけですよ。大臣の思いだけ述べられても、みんな安心できません。大臣が替わったら、それは消えてしまいますから。

 いいですか。形に残る、そして常にそれが適用されるガイドライン、明文で定める、これを約束してもらえませんか。

二之湯国務大臣 私に何回御質問いただいても、私の答弁はそれの繰り返しになるわけでございますけれども、お尋ねの件に関しましての解釈や制度に関わることでございますので、この法案を立案された、提案された法務省に聞いていただくことが適当ではないかと思います。

階委員 逮捕の基準は、後で述べますとおり、留置するかどうかの基準、警察の方で定めていますよね、犯罪捜査規範、それと同様に、逮捕の基準も定めればいいじゃないですか。警察が逮捕する場合ですよ、警察が逮捕する場合。それをやらないと表現の自由が萎縮するということは分かるでしょう。それをやってください。法務省マターじゃないですよ。国家公安委員長マターだから言っているんですよ。やれるのにやらないんですか、それとも、そもそもやれないとさじを投げるのか、どっちですか。

二之湯国務大臣 委員がおっしゃいますように、何がセーフかアウトかということにつきましては、法律の解釈になるわけでございます。しかし、不明にして私はそういうことについて知識を持ち合わせておりませんけれども、後日、この法務委員会では、私なりの、一度しっかりと精査して、回答させていただきたいと思います。

階委員 回答すべきは、でき上がったガイドラインですよ。まずやると言ってくださいよ、それはちゃんと。どれがセーフで、どれがアウトか。現行犯逮捕って重要ですよ。

 我々、街頭演説しているときに、さっき鎌田さんも言っていたけれども、いきなりいろいろな人が現れて、向こうが誹謗中傷してくることもあれば、私どもの発言が、例えば二之湯大臣のことを、けしからぬ、二之湯大臣は資格がないと言ったときに、第三者が現れて、今、階さんは誹謗中傷したから現行犯逮捕だ、現認されていますから、そういうことも起こり得るわけですよ。

 これはセーフ・ハーバー・ルールが必要ですよ。そこの点を踏まえたら、ガイドラインを設けるべきでしょう。やってくださいよ。やる、やらない。やるんだったら後で出すのはいいけれども、やると言ってくださいよ、国家公安委員長として。

二之湯国務大臣 何遍も申し上げますように、これは法の解釈の問題でございます。そういうことでございますから、法務省に、法務大臣にお尋ねをいただいた方が適当ではないか、このように思います。

階委員 では、留置の基準はどうですか。留置するかどうかの基準、犯罪捜査規範にちゃんとありますよね。これについて、どこまでいったら留置されるのか、されないのか、そこは明らかにすべきです。それはやらないんですか。

二之湯国務大臣 留置の要否を判断するということでは、その判断に当たっては、その事案の軽重及び態様並びに逃亡あるいは罪証の隠滅、通謀等捜査上の支障の有無並びに被疑者の年齢、境遇、健康その他の諸般の状況を考慮しなければならないこととなっております。

 これらのことを踏まえ、個別具体のケースごとに留置の要否について判断することと考えております。

階委員 個別の事案が起こったたびに判断されるんだったら、事前の予測可能性がないんですよ。分かりますでしょう。だから、事前にガイドラインみたいなものを作って、予測可能性を担保しろと言っているんですよ。それができないんだったら、侮辱という表現の自由を抑圧するような行為を取り締まるわけだから、それが現行犯逮捕できるようになるわけですよ。そうすると、皆さん、現行犯逮捕されるんじゃないかとびくびくして、物も言えなくなっちゃいますよ。とんでもないでしょう。

 国家公安委員長として、せめて、そうした身柄拘束の基準ぐらいは示すべきですよ。これは警察の権限なんだから、国家公安委員長、是非やってくださいよ。これをやらないんだったら、こんな法案で審議すべきではない。審議する必要はないし、すべきではないと思いますよ。どうですか、大臣。

二之湯国務大臣 委員いろいろなことをおっしゃいますけれども、それぞれの事案は具体的な状況によって異なるわけでございますから、一概に、一律に申し上げることはできないわけでございます。

 しかし、私は、何遍も申しましたように、憲法の基本的人権を尊重し、そして、表現の自由、言論の自由を始めとする権利を最大限尊重してこういう事案に当たっていかなければならない、このように思っております。

階委員 答えになっていません。私の質問に答えてください。

 事後的に適切に対応するでは予測可能性が担保されないから、事前に基準を示すべきだ。そして、これは法解釈じゃなくて、身柄拘束の基準は、犯罪捜査規範で国家公安委員長、国家公安委員会が定めることになっているんですよ。だから、やってください。できないんだったらその理由を示す、やるんだったら速やかにやる、どっちか、答えてください。

二之湯国務大臣 委員御指摘の件に関しましては、私も今、突然のそういう質問でございますから、よく知識はないわけでございますけれども、もう一度時間をいただきまして、私なりの回答をさせていただきたいと思います。

階委員 できるんだったら速やかに示す。できないんだったら、できない理由を次の質疑のときまでに示してください。

 私は、申し訳ないですけれども、予算委員会でも言いました。この一ページ目の下の方に、予算委員会でも言いましたよ。「これで大臣務まるんですか。国家公安委員長、公務員制度担当大臣、務まるんですか。あなたにその資質があるのか、私は非常に疑問に思います。」私、ここまで言いました。

 大変無礼な発言だと思いますけれども、大臣、これは侮辱罪の構成要件に当たりますか。もし私が国会議員でなくて免責特権がない、街頭演説でこういう発言をした場合ですけれども、こうしたものは侮辱罪の構成要件に当たりますか。

二之湯国務大臣 委員の発言が侮辱罪を構成するかどうかについては私もよく分かりませんけれども、私は、こういう世界に長いことおりますから、政治家に対する批判、中傷、こういうことはもう当然のことだと受け流しておりますから、全く意に介しておりません。

階委員 大臣、これが逮捕されるようなことがあれば、とんでもないですよね。大臣は今立派だと思いますよ。私も厳しいことを言いますから、これを侮辱だと言われると私も黙っちゃおられないんですけれども、大臣、意に介さない、さすが立派だ、リスペクトしますよ。

 ただ、二之湯大臣のような方だけとは限らないんです。とんでもない、プーチン大統領みたいな人が出てきたときに、現行犯逮捕されるかもしれない。だから、明確な基準を作れと言っています。

 次回までに資料を用意していただくようお願い申し上げまして、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹です。

 前回、質問の機会をいただきまして、少し質問が途中で切れましたので、まず最初に、障害者の累犯についてお伺いしたいと思います。

 刑務所の中では、福祉専門官を設けている、社会福祉士や精神保健福祉士、そして介護福祉士など。私は、役所にいた時代に、精神保健福祉士を、身分法を小泉純一郎大臣とともに作り、法案が成立したことを記憶しております。

 まず、厚労省に、社会復帰モデルについて、南高愛隣会の取組など、そういう取組をなさっていると思いますが、御説明いただけませんでしょうか。

本多政府参考人 お答えいたします。

 委員から指摘のありました社会福祉法人南高愛隣会ですけれども、この法人は、故田島良昭前理事長の下で、障害のある累犯者の社会復帰に注力されてきたものと承知しております。

 平成十八年度から平成二十年度にかけて、罪を犯した障がい者の地域生活支援に関する研究を実施していただきまして、この南高愛隣会は、地域生活定着支援センターのモデルとなる、司法と福祉が連携した支援に取り組んでいただきました。そこで得られた知見が、二十一年度からの地域生活定着促進事業の開始につながったところでございます。

 また、二十一年度以降は、長崎県からの委託を受けて地域生活定着支援センターを運営され、十年以上にわたって現場での支援の実践を積み重ねてこられたところと承知をしております。

阿部(弘)委員 今お話しになったとおりでございます。

 例えば、知的障害の累犯というのは、何度も同じような無銭飲食や窃盗、いわゆる万引きなどを繰り返して、何度も刑務所に入る。出所しても居場所がないために、同じような行為を五年以内に何度も起こしてしまう。そういうことではいけないということで、長崎県の南高愛隣会の理事長は、生涯を賭して、厚労省の事業が始まる以前からこのことをなさって、そして、長崎刑務所管内では少しでも累犯の障害者が減っていったということでございます。

 その件について、大臣の所見をお願いします。

古川国務大臣 長崎県の社会福祉法人南高愛隣会と同法人の初代理事長である故田島良昭先生には、出所、出院後に福祉的支援が必要な者が支援を得られるような道筋をつくっていただいたと承知をいたしております。まさに社会復帰支援の先駆者でありまして、その御貢献は極めて大きく、法務省としても大変感謝をし、かつまた尊敬をいたしております。

 具体的には、田島先生の御尽力により、地域生活定着支援センターなどと連携をしながら、帰住先がない高齢や障害を有する被収容者を出所後に適切な福祉的サービスにつなぐことが可能となり、また、これを契機として、矯正施設における社会福祉士の配置を広げることにもつながったところでございます。

 また、南高愛隣会におきましては、従来から出所者等を受け入れ、その社会復帰に御尽力をいただいているところですが、令和元年には長崎刑務所と南高愛隣会が刑事施設内外における活動や教育に関する協定を結びまして、受刑者の再犯防止に関して更なる御支援をいただいているところでございます。

 加えて、今年度から、長崎刑務所に九州、沖縄の刑事施設から知的障害受刑者を集約して、モデル事業を実施予定でありますけれども、このモデル事業につきましては、地域の自治体のほか、南高愛隣会などの関係機関の御理解、御協力を得ながら進めていく予定となっております。

 今後とも、地域生活定着支援センターなどの関係機関と連携して、高齢や障害を有する受刑者の円滑な社会復帰を一層推進してまいりたいと思います。

阿部(弘)委員 先週の質問は、矯正施設、刑務所の高齢化、認知症受刑者の増加ということを質問させていただきました。

 従来の矯正施設の役割が少しずつ変わりつつある。少なくとも、国民のためにいい方向に変わっていって、知的障害の方々が常同行為という、同じことを繰り返すということをよく御理解いただきまして、そして居場所づくりを行うことでその累犯を防ぐことができるというのは、そしてそれを国がサポートしていく、全国にこの取組を広げていこうという取組は本当にすばらしいことだと思いますので、今後とも続けていただきたいと思っております。受刑者の中には一定の障害を持つ方がいらっしゃいますので、よろしくお願いします。

 次に、医療観察法の取組についてお伺いいたします。

 医療観察法は、御承知のとおり、池田小学校殺人事件をきっかけに、その五年後にできた法律でございます。その仕組みについて、法務省から、概略で結構ですので、御説明いただけますでしょうか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律、いわゆる医療観察法でございますが、これは、心神喪失又は心神耗弱の状態で殺人、放火等の一定の重大な他害行為を行った者に対し、継続的に適切な医療を行い、また医療を確保するために必要な観察と指導を行うことによって、その病状の改善とこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もって本人の社会復帰を促進することを目的とするものでございます。

 そして、この法律におきましては、今申し上げた対象者に対しまして行うべき適切な処遇を裁判所で決定するための審判の手続、指定医療機関による医療、その確保のために必要な精神保健観察制度などの事項が定められております。

阿部(弘)委員 私は精神科医でもございますし、また、矯正施設からの措置入院患者を継続的に治療することもございます。

 この医療観察法の指定医療機関というのは、本当に恵まれた医療環境で、精神医療の中でも特に予算面では恵まれた施設でございます。しかし、なかなか、この医療観察法を運用していく上では、心神喪失でありながら、その対象となり得ない方々が多数いらっしゃるわけでございます。

 六罪名について今刑事局長からお話がありましたが、もう少し詳しく、全ての六罪名をお聞かせ願えないでしょうか。罪種ですね、ごめんなさい、六罪種をお願いします。

川原政府参考人 お答えいたします。

 法律で定められている六罪種でございますが、放火、強制わいせつ及び強制性交等、殺人、強盗並びに傷害の六つでございます。

阿部(弘)委員 私も聞いたところによると、なかなかこの六罪種だけでは、こういう医療観察法の指定医療機関への入所を判定するのは難しい事案というのがあるというふうに聞いておるわけでございます。

 犯罪白書によりますと、令和二年で三百二十三名の検察官申立てがあって、最終的に入院決定になったのは二百三十六名ということでございます。実際に心神喪失ではないということ、あるいは取り下げられた者も合計で八名おられますけれども、この運用というのは、今後、五年後の見直しや十年後の見直しということは検討するに値するものかどうか、そういった点、御所見をお願いします。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 医療観察法の運用の見直しということでございます。

 医療観察法におきましては、殺人、放火等の一定の重大な罪として規定される行為を対象行為とした上で、同法による処遇の対象者について、刑事責任を負うべき者に対しては刑罰を執行すべきであることを前提といたしまして、検察官による不起訴処分において、対象行為を行ったこと及び心神喪失者又は心神耗弱者であることが認められた者、対象行為について、心神喪失者と認められて無罪の確定判決を受け又は心神耗弱者と認められて刑を減軽され、実際に刑の執行を受けない者を対象としているところでございます。

 また、これらの対象行為の罪種につきましては、これは先ほど具体的に御答弁したところでございますが、いずれも個人の生命、身体、財産等に重大な被害を及ぼす行為である上、実態として心神喪失者等により行われることが比較的多いものであることに鑑みまして、心神喪失等の状態でこれらの行為を行った者について、特に継続的かつ適切な医療の確保を図ることが肝要であることから選定されたものでございます。

 医療観察法の対象者の範囲につきましては、こうした趣旨を踏まえつつ、仮に対象行為の罪種を拡大するとすれば、新たに対象とする行為が、現行の対象行為と同様に、個人の生命、身体、財産等に重大な被害を及ぼすものと言えるか、また、実態として心神喪失者等により行われることが多く、現行の対象者と同様に手厚い専門的な医療の必要性が高いと言えるかといった観点から、病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、その社会復帰を促進する必要があることのみならず、対象者の人権にも十分配慮する必要があることを踏まえて、慎重に検討することが必要であると考えているところでございまして、その必要があるならば、それに応じまして慎重な検討が必要だろうと考えております。

阿部(弘)委員 犯罪白書を見ておりますと、検察官の申立ては三百二十三人、これはあくまでも六罪種に限ったことでございます。それに該当しない精神障害者は、一体、心神喪失あるいは心神耗弱であっても、どのように治療が受けられているのかは不明なところでございます。

 私も、この委員会でも、あるいは予算委員会でもお話ししましたが、少なくとも、精神障害の方は、治療を受けられることで眠れるようになる、そして幻聴や幻覚が減少することで非常に楽になったと、医療に対して感謝をされるわけでございます。

 是非とも、先ほど言いましたような、指定医療機関というのは、本当に、設備面でも人員面でも、そして予算面でも非常にいい医療が受けられております。そしてまた、社会の中でも、精神病院の急性期医療病棟、これは診療報酬が非常に手厚いものですから、同様に手厚い精神医療が受けられるというところでございます。

 後ほど矯正医療のお話をさせていただきますが、何よりも、罪を犯した精神障害者に関して、医療を提供できる、そして罪を償うということが私は必要だと思いますので、今日はその質問をさせていただこうと思っております。

 では、次の質問に移ります。

 非常にすばらしい制度、保護観察処分つきの一部刑の執行猶予、この制度について御説明を願えないでしょうか。

宮田政府参考人 刑の一部の執行猶予制度でございますけれども、平成二十八年六月一日に施行されてございます。

 判決の言渡しにおきまして、刑期の一部の執行を猶予し、その猶予期間、保護観察に付することができるものでございますけれども、その趣旨は、施設内処遇に引き続き、相応の期間の社会内処遇を実施し、施設内と社会内、双方の連携により、再犯防止、改善更生を図るというものでございます。対象の多くは、覚醒剤事犯者がなっているというふうに承知しております。

阿部(弘)委員 そうなんですよね。私は、ここに当選するまでは、覚醒剤依存症の治療をたくさん行ってまいりました。覚醒剤依存症の方々は、病院との連携あるいは福祉施設との連携があっても、やはり、薬物を繰り返し行って、使用してしまう傾向が非常に強いです。それは、アルコールなんかに比べてもはるかに依存性が強い。この制度ができて、私どもの医療機関にも数名の保護観察付一部執行猶予の方々が入院していただくようになったわけでございます。

 では、今般、この制度の改正の提要というのはございますでしょうか。執行猶予をもう一度行えるというところです。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員は保護観察付執行猶予ということでお尋ねになっておりますので、その観点で申し上げますと、初度の、最初の、一回目の保護観察付執行猶予中に再犯を犯した者につきまして、現行法は再度の執行猶予を付すことができないのでありますが、この改正案におきましては、再度の執行猶予を付すことができるようにするという制度としております。

阿部(弘)委員 例えば、保護観察付一部執行猶予で、断薬のための福祉施設、実名は差し控えますけれども、そういった施設で更に薬物事犯などを起こした場合、比較的薬物事犯で検挙された回数が少ない場合は、その適用となることがあり得るんでしょうか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 今の委員の事例は、薬物事犯を犯して保護観察付執行猶予中であった者が、施設での治療などを受けているにもかかわらず、再度また薬物事犯を犯したという例だと思います。

 具体的にどういう事案について再度の執行猶予が付されるかということにつきましては、個別の事案に応じて裁判所が判断することでございますが、再度の執行猶予の趣旨からしますと、なかなか、一般的に、広く、常に認められるというものではなかろうかと思います。

阿部(弘)委員 ちょっと質問の仕方が悪かったですね。そういう場合には、確かに全てとは言いませんけれども、そういう制度の事案になる可能性があると思って質問したわけでございます。

 今後とも、こういう障害者の保護観察処分つきの一部執行猶予の実施に当たり、厚生労働省としても精神障害者の拠点病院づくりを都道府県に通知していると思いますが、その説明をお願いします。

堀内政府参考人 お答え申し上げます。

 覚醒剤を含む薬物依存症を抱える方々への支援につきましては、再犯防止推進計画等に基づきまして政府として施策を進めているところでございます。

 厚生労働省におきましても、都道府県、政令指定都市において相談拠点、専門医療機関の整備を推進しておりまして、令和三年度におきましては、全国で相談拠点は六十六の都道府県、政令指定都市、専門医療機関は五十二の都道府県、政令指定都市に設置されているところでございます。

 家族や司法の関係機関等から治療に関する相談があった場合には、これらの相談拠点や専門医療機関等におきまして回復プログラムの紹介や治療等の必要な対応を行っていると承知しております。

阿部(弘)委員 それでは、次の質問に移ります。

 次は、矯正施設での医療体制についてです。

 精神障害者を取り巻く環境というのは、地域と矯正施設、それと、先ほど言いましたような医療観察法による指定医療機関とあるわけですが、地域での精神科救急医療も非常に充実して、予算も充実してきた、そして医療観察法の指定医療機関も非常に充実をしてきたわけでございます。

 矯正施設の医療体制、今の被収容者の有病率というのは非常に上がってきて、年々増加傾向、これは高齢化に伴うものもあるかもしれません。その一方で、矯正医官の定員、現員の推移は、やはり欠員で、少し上向きにはなってきたんですが、現状はまだ定足数に足りていないという状況でございます。

 この点について御説明いただけますでしょうか。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事施設におきましては、収容中の何らかの疾病を有している被収容者、全体の疾病で見ますと六八・五%となりますが、このうち精神及び行動の障害を有する患者という方は約一五%を占めております。

 こうした人に対しましては、社会一般の医療の水準に照らして適切な医療上の措置を講ずるということとしておりまして、被収容者の状況に応じて、施設内での治療のほか、近隣の病院を受診させたり、医療刑務所に収容するなどして必要な治療を行っております。

 この治療を担う矯正医官でございますが、本年四月一日現在で、定員三百二十八名のところ二百九十五名、充足率九〇%となっております。矯正医官の欠員が非常に深刻でありました平成二十六年頃と比較しますと四十三名の増となっておりまして、矯正医官特例法の施行によりまして兼業であったり施設外勤務が柔軟に行えるようになったことがその要因と考えられますが、御指摘のように、矯正医療の充実に当たりまして、医師の確保、こういったことは非常に重要でございますので、引き続き、常勤医師の確保のための取組は進めてまいりたいと思っております。

阿部(弘)委員 矯正医療に限らず、法務省の医官、時々は大学などで研修を行っていただいたり、あるいは先端医療情報を外の病院で研修をいただくような仕組みを行っていただいているというように聞いておりますので、是非ともその点も、こういう矯正医官の定員が埋まるようにいろいろな努力をしていただきたいと思います。これは質問ではございませんけれども。

 しかし、先ほどお話ししました、刑事施設の疾病別の表があるんですけれども、精神及び行動の障害は一六%。先ほどお話がありましたように、循環器の病気や、あるいは骨折したとか、そういったものは近隣の病院で治療をいただく、あるいは胃がんなども、医療刑務所で治療するのか、あるいは近所の病院で治療するのか、ケース・バイ・ケースだと思いますが、しかし、精神や行動の障害がある受刑者については、なかなか刑務所外での治療を行うというのはないんじゃないかなというふうに思っております。

 ですから、是非とも、先ほどの矯正医官をしっかり確保をしていくというのも大切でございます。

 また一方で、施設面での整備、例えば札幌刑務所では、透析やCTスキャンの設備などもあります。

 東日本矯正医療センターの取組、立派な施設ができたやに聞いておりますが、そこの説明をお願いします。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事施設を代表して言わせていただきますと、医療の体制といいますのは、一般の施設での通常のドクターの下での治療のほかに、全国九庁の医療重点施設、これは、札幌、宮城、府中、東京拘置所、名古屋刑、大阪刑、広島刑、高松刑、福岡刑の九庁でございますが、ここを医療の重点施設ということで、重点的に医療関係のドクターであるとか機器の整備はしております。

 さらに、医療専門施設ということで、東日本矯正医療センター、それから大阪医療刑務所、北九州医療刑務所、岡崎医療刑務所、この四庁につきまして、医療専門施設ということで更に重点的な整備等のことをしておりまして、お尋ねのような透析であるとか、様々な先進的な治療機器も整備しているところでございます。

 それから、精神科医につきましても、全国の施設で非常に必要性高い分野でございます。そういった観点で、様々な形で、募集等、充足するように努めてございますが、一般の施設でも精神科医が配置されているところもございますし、東日本成人矯正医療センター等であれば三十名を超えるドクターがおられまして、うち八名だったと思いますが精神科医が配置されている、こういう充実した体制になってございます。現員ドクターは三十三名でございます。

阿部(弘)委員 矯正施設、刑務所におきましても、しっかりした精神医療を提供することが社会復帰の促進になっていくというふうに思いますので、是非とも今後ともよろしくお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、守島正君。

守島委員 日本維新の会、守島です。

 まずは、侮辱罪の法定刑引上げに関して聞きたいと思います。

 この件は、大臣の所信表明の際も質問させていただきまして、その際にも、昨日参考人として来られました木村響子さんとのやり取りを踏まえた上で、今回の法定刑引上げに関しては、僕としては反対しないと思っているんですけれども、やはり、そもそも侮辱罪自体の適用範囲というのが狭く、かつ不明瞭で、インターネット上における誹謗中傷に関しては、被害者の精神的とか金銭的な負担と釣合いとか公平性というのは、量刑を引き上げたとしても担保されないという話をさせていただきました。多くの方もそういう認識は持っていると思いますが、それを重ねて質問したいと思います。

 昨今のSNSによる社会問題が浮き彫りになる中、ネット上の誹謗中傷に関しては、刑事法においても厳罰化する方向で防止策につなげるべきという意見も世間において一定出てきていると思っています。

 だからこそ、そうした状況も踏まえて、大臣は法制審に諮問し、答申を受けて、今回の法提出につながっているのかなというふうに思っているんですけれども、しかしながら、従来の話にあるように、表現の自由への過度な侵害になってしまうおそれもあり、刑引上げに対する危惧という点にも理解を示す次第です。

 みんながインターネット上の誹謗中傷をどうにかしないといけないと思っているのに、厳罰化と表現の自由、この両面への配慮から難しいというのが今の現状かなというふうに思っています。

 議論を進めていく前に、まず、名誉毀損罪と侮辱罪の保護法益について質問します。

 前回の質疑では、侮辱罪の適用範囲に関しては、事実を摘示せずに、不特定また多数人が認識できる状態で他人に対する軽蔑の表示を行った場合に成立すると回答をもらいました。

 その上で、名誉毀損罪と侮辱罪の法益保護は何なのか、全く同じでいいのか、お答えください。

川原政府参考人 お答えいたします。

 名誉毀損罪と侮辱罪は、いずれも名誉に対する罪として位置づけられているところでございますが、この二つの罪の保護法益は同じと解されておりまして、一般に、いずれも社会が与える評価としての外部的な名誉であると解されているところでございます。

守島委員 なので、要するに、事実の摘示があるかないかといっただけで、同質の犯罪ということです。

 これらの法律の守備範囲、適用の範囲というのは、今回の法定刑引上げで、米山さんの質疑でもあったように、変わるわけではないので、今回の法改正で抑止効果が、期待すると言いつつも、内容は多少変わっても、網の大きさが変わらないので、これをもってネット上の誹謗中傷が減るかということに関しては疑問を持っています。

 もちろん、木村花さんの場合も、これは外部的名誉が害されたのは間違いないと思うんですけれども、死に至った原因は、必ずしも外部的名誉だけじゃなくて、内面的、精神的なダメージがあったというふうに思っています。

 この点、立憲さんの案では、加害目的誹謗等罪を新設し、保護法益を内面的な人格とされています。しかし、内面的なものを保護法益としてしまうと、受け手により影響というのが異なるので、対象の線引きというのは不明瞭になるし、なかなか、無限定に罪の範囲は広がりかねないのかなというふうにも思っています。

 それはそれで、表現の自由に対する制約になるのかなというふうにも感じる次第ですし、二百三十条の二の真実性の証明の規定で、違法性を阻却できるようにも読めるんですけれども、事実を摘示しない場合においては証明の対象がないため、真実性を争うことが難しいんじゃないかなというふうに思っています。

 ちなみになんですけれども、立憲さんの法案趣旨説明について一言だけ言わせていただくと、あほと言われて関西人は傷つかないという認識であれば、それはちょっと誤解がありまして、多くの人は傷つくことはあるということを伝えておきたいと思います。

 それほど内面的な人格というのは、客観評価は難しいと思います。それを否定しているわけじゃなくて、客観的な評価は難しいと思って、より、真実とか認識の証明は困難であるので、誹謗中傷に当たる言葉を適切かつ明確に画することができるとおっしゃっていることに関しては、まだまだそれも難しいのかなというのが僕の認識であります。その点だけちょっと御理解いただきたいと思います。

 なので、今回の刑法の範囲で、侮辱罪の法定刑の引上げをすることに関しては、一定、今の段階ではそれも必要だとは思っているんですけれども、一連の改正では、抑止効果を生むこととか被害者の納得感を得るということは不十分で、今の現状、加害者と被害者の公平感が釣り合わないというのは、これまで言っているところと変わらない考えです。

 もう一つ大きな問題は、やはり、ネット上の誹謗中傷で死ということを生起してしまうことが起こっても、その評価というか結果に、変わらない、影響を与えないんじゃないかなということが気になっていまして、その点聞きたいんですけれども、誹謗中傷において死という結果が招かれてしまった場合、それというのは評価されているのでしょうか、ちょっとお聞かせください。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御質問の一番最後にありました、評価されているのかというのは、処罰される際の、量刑上評価されているのかという御趣旨と承ってお答えを申し上げます。

 侮辱罪と同様に、外部的名誉を保護法益としている名誉毀損罪につきまして、判決で判示された量刑の理由を調査いたしました。

 そうしたところ、被害者の社会的評価を害した程度、犯行の手段、方法や公然性の程度、犯行の期間、回数、犯行の動機や公益目的の有無、被害者の精神的苦痛、処罰感情の程度、示談の有無、現状回復措置の有無などの事情が量刑上考慮されているようでございます。

 そして、被害者が被害を苦にして自死したことは、被害者の精神的苦痛の程度を示す事情として位置づけられ得るものでありまして、保護法益を同じくする侮辱罪においても同様であると考えられるところでございます。

 この点は、今般の法改正によっても変わらないと考えられるところでございます。

守島委員 考慮し得る、精神的ダメージも含めてという答えなんですけれども、そうなると、侮辱罪の中で加味し得るといったところで、量刑で加味されたとしても、結局は、現行の侮辱罪は科料一万円というのが最大なので、やはり評価というのは、納得、被害者からしたら妥当性を感じるものじゃないなというふうに思っています。

 例えば、侮辱罪というのは致死罪があるわけじゃないから、これを、法定刑を上げたとしても、その処罰感情というのに一定理解を示すようなものは、法定刑を上げればいいということでもないのかなというふうに思っていて、思うに、現行法で何とかしようと思っても、侮辱とか名誉毀損で致死という概念がない以上、こうした重大な事件が起こったときに対処できないんじゃないかなと思っています。

 誹謗中傷で人の生理的機能を害する、つまり、人を極度の精神疾患の状態に陥れ、その結果として自死を招くということは、むしろ、例えば傷害致死罪とか、ある種、死を強いるような表現をしているのであれば、脅迫とか強要罪、そういう話に行き着くんじゃないかなと思っているんですけれども、こうした大きな不幸をもたらす結果を生む加害も、侮辱罪でやろうとするから量刑との間にバランスの乖離というのが生まれて、その溝を埋めることができないというふうに思っているんです。

 そこで、確認したいんですけれども、まず、一般論として、人を誹謗中傷して、その結果、ノイローゼ等の精神的な疾患を生じさせた場合、傷害罪が成立するのか、教えてください。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございますので、お尋ねのような行為が刑法二百四条の傷害罪に該当するかということにつきましては一概にお答えすることは困難でございます。

守島委員 答えられないということは、可能性はあるということですね。可能性、多分あると思うんです。

 例えば、直接暴行してけがをしたとかじゃなくても、騒音迷惑とかで傷害罪になった事例とかもあるので、それはあると思うんですけれども、一概には答えられないということは、例えば、それが、結果、自死を招いたときとか、致死罪が成立するかということを聞いても、答えられないという認識でいいですか。そのケースによるという答えでいいですか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの繰り返しになってしまいますが、犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございますので、お尋ねのような事案が傷害致死罪に該当するかということにつきましても一概にお答えすることは困難でございます。

守島委員 一概に答えられないということで、傷害類型にしようと思っても、これは無理だと思う、無理というか答えられないということで、なかなかそういうふうな適用はできないというのが事実で、ということは、そうした例は余りないということだと思っています。

 ちょっと論点を変えまして、例えば、SNSで誹謗中傷の特徴というのは、加害者が一人というわけではなくて、数多くの人たちが心ない言葉を一斉に被害者に投げかけるということが多いと思って、むしろ一人一人の加害行為は僅かであり、相乗効果となって、総体として被害者を苦しめていることになっていると思います。

 総体は、個々人がそれぞれの意思でやっていると思うんですが、共同正犯というように一緒にやっているわけではない現状、一人が、例えばそうだというような同調の意思を示した場合もあると思うんですけれども、それが結果的には加害行為というか加害結果につながっていて、最初にそれを発した人が侮辱罪とされた場合に、それに同調とか便乗した人がある種侮辱罪に該当するということはあり得るのか、それを教えてください。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 繰り返しで申し訳ございませんが、犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございますので、お尋ねの行為が刑法の侮辱罪あるいは共犯に該当するかについて一概にお答えすることは困難でございます。

 その上で、あくまで一般論として申し上げれば、侮辱罪は、人を侮辱した、すなわち他人に対する軽蔑の意思表示をした場合に成立するものですから、委員がおっしゃっている賛同したという人が侮辱に当たる行為をしたのならば、その侮辱罪の成否が問題となるところでございます。

 ただ、一方で、賛同の意思表示というのは、まさに、いいねというような、ただそれだけにとどまっているような場合でございますが、こういった場合につきましては、当該御本人のやっている行為に独立して侮辱に当たる行為がないという場合になりますと、現行法におきましては侮辱罪の幇助犯、従犯の処罰はないのでございますが、改正法におきますと処罰がされることになりますので、あくまで一般論として申し上げるならば、その従犯の成否ということが問題となり得る場面ではございます。

 ただ、賛同の意思表示が、既に侮辱罪に該当する行為を実行し終わった後、先に行われている侮辱罪の行為が既遂となった後に行った場合には、他人の犯罪を容易にするという行為には該当しませんので、このような関係に立つ場合には幇助犯に該当しないと考えられるところでございます。

守島委員 もう一回聞かせてください。

 法改正で、同意をした人が侮辱罪に、これまではならなかったけれども、なり得るという話をされましたけれども、その理解でいいんですか、同調した人は。犯行後じゃないです、犯行前に。

川原政府参考人 現行法で、侮辱の実行行為の前に幇助行為に当たるものをした者が幇助犯が成立するかというお尋ねでございますが、現行法の侮辱罪は拘留又は科料に当たる罪となっております。そして、拘留又は科料に当たる罪につきましては、特別の規定のない限り、教唆犯及び従犯、幇助犯ですね、この規定の適用はないとされていますので、幇助犯として処罰することがないということでございます。

守島委員 幇助犯として今回の改正で同調に一定網が広がるということなんですけれども、とはいうものの、やはり先ほど言ったように、そうだというよりか、いいねというか、同調の内容、言葉次第ということで、なかなかこれも線引きというのは難しいと思います。

 今回法定刑を上げたとしても、なかなか、それをもって量刑も、いろんな政党さんは逮捕される可能性を危惧していますが、被害者の心情を鑑みると、量刑が正しいかどうかは僕も判断しかねているところでありまして、かつ、今の回答も含めて、言葉的にどれが明確に侮辱罪に当たるのか、若しくは傷害類型に当たるのかというのは非常に不明瞭な中で、やはり今の社会問題に適用できる状況じゃないのかなというふうには感じています。

 現実的にこうした今の法体系で被害者が求めるような処罰が難しいのであれば、例えば、これは一例なんですけれども、危険運転致死罪のように、時代に合わせた法体系というのは必要なんじゃないかなと思っていまして、これまで法制審議会では、ネット上の誹謗中傷に対して、それを防ぐための議論というのはどういうふうな経過を経たのか、教えてください。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 この点に関しましては、法制審議会の刑事法部会におきまして、刑法の侮辱罪の法定刑を一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料とすることについて御意見を承りたいという法務大臣からの諮問につきまして専門的に調査審議を行っておりまして、この部会において、まず、今申し上げた諮問の当否に関する議論が行われたところでございます。

 また、基本的に諮問の内容は刑罰の引上げでございましたが、この部会における議論におきましては、民事責任の追及についてこれまで以上に迅速かつ実効的なものになるように推進すべきこと、誹謗中傷を内容とする書き込みをしないよう広く啓発活動を行うべきことなどについて意見が出されましたほか、事務当局からは、人権擁護機関において人権相談による誹謗中傷への対処などの施策が進められていること、プロバイダー責任制限法の改正を通じて被害者の迅速な被害回復や救済に向けた法的な手当てが進められていることなどについての発言がなされるなどしたところでございます。

守島委員 ありがとうございます。

 諮問はあくまで刑法に限るところだと思うんですけれども、やはり意見としては、民事責任であったり、プロバイダーの責任であったり、広報啓発というのをしていかないとという意見が当然出てくると思います。なので、刑事法の制定ということに関連すると、極めて慎重になるべきというのは法務省としては当たり前の立場と思うんですけれども、やはり今回の侮辱罪の改正だけでは問題解決しないと思っています。

 だからこそ、新たな罪を規定するような、特別類型とか、若しくは、被害者の損害をより酌むことができるような法整備とか行政施策とか、何かしら立法措置というものを措置することが必要なのかどうか。

 ここで終わるのか、これからもっと拡大して、インターネット誹謗中傷対策を法整備も含めてやっていく必要性があるのかどうかを大臣に聞きたいと思います。お願いします。

古川国務大臣 今般の法整備によりまして、侮辱行為を抑止し、また、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対して、これまでよりも厳正な対処を可能とすることがインターネット上の誹謗中傷対策になると考えております。

 すなわち、今般の侮辱罪の法定刑の引上げにより、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示すことでこれを抑止する効果があるとともに、インターネット上で行われる当罰性の高い悪質な侮辱行為に対して、これまでよりも厳正に対処することが可能となるということ、こういうたてつけでの誹謗中傷対策を盛り込んだ法整備をしているというところでございます。

 ただいまの委員からの問題意識、御指摘でございますけれども、確かに、インターネット上の誹謗中傷に適切に対処して、これを抑止するためには、様々な取組を進めることが必要であるというふうに、それは思います。

 ただ、委員御指摘のような更なる法整備ということにつきましては、今般の法整備や行政的な諸施策による効果なども踏まえつつ、更なる特別な罰則の新設をすることの要否、当否であるとか、特定の犯罪類型のみを対象にして被害者の損害を補填する制度の要否あるいは当否というような、様々な観点から十分に検討をする必要があるものというふうに考えております。

守島委員 ありがとうございます。

 木村響子さんも、昨日は、法改正には賛成だということで、厳罰化を求めるとおっしゃっていたことも含めて、ここに関しては賛同する方は多いと思いますけれども、だからといって解決するわけじゃないということは多分みんなの認識だと思うので、ここに止まらず、今後も推移を見るとおっしゃってくれた大臣の言葉を受けて、しっかりその検討をしてほしいというふうに思います、時代も変わってくると思いますし。

 立憲さんも今回対案を出していただいているんですけれども、維新の会としては、刑法だけに限らない、ちょっと広い範囲での法制の立法措置も含めて検討していくので、そういった我々の案もしっかり今後見てほしいというふうに思っています。お願いします。

 続きまして、時間の許す限り、拘禁刑における質問をしたいと思います。

 拘禁刑の創設に当たり、その目的は理解するんですけれども、拘禁刑においては、作業を改善更生のために必要なものと位置づけており、懲役刑における作業とはちょっと異なるものになっていると思うんですが、懲役であれば、罪を犯した受刑者に対して、否定的評価を含めた法的非難の一つとして、懲らしめ的な意味合いで作業というのが与えられていたと思うんですけれども、拘禁刑における作業の位置づけを教えてください。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 現行法の懲役の方から御説明いたします。

 現行法の懲役の作業につきましては、過去の犯罪に対する報い、懲らしめとして課されるという性格を有するとされてきたところでございますが、実際の行刑におきましては、罪を犯した者の改善更生、再犯防止や円滑な社会復帰を図る上で重要な機能を有する処遇方策として、基本的かつ重要な地位を占めているところでございます。

 近年では、作業に対し、出所後の就労の確保等に資する機能を求める要請が更に高まってきておりまして、作業について、過去の犯罪に対する報い、懲らしめとして課されるという性格は希薄化しているところでございます。

 一方、拘禁刑におきましては、作業については、罪を犯した者の改善更生、再犯防止という特別予防のために課すものとして位置づけることといたしまして、刑法の規定として、刑事施設に拘置することに加えまして、拘禁刑に処せられた者には、改善更生、再犯防止を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができると明記することとしたものでございます。

守島委員 作業の位置づけが変わることで、ちょっと質問したいんですけれども、時間がないので、ILOの質問を先にしたいと思います。

 ILOの強制労働の廃止に関する条約に関して、今、外務委員会において審議が図られるものと認識しているんですけれども、この件、昨年の、僕はまだ衆議院じゃなかったんですけれども、改正法で、同条約が禁止する強制労働に該当するおそれがある国内法の規定を改めたという経緯を伺いました。

 その中で、具体的には、懲役刑を禁錮刑にするなどして、本人の意思に反した強制労働に該当されかねないようなものは一旦なくなったというふうに伺ったんですけれども、今回、拘禁刑の創設で、刑法上、作業を伴う可能性というのが出てくることになると思うんですが、例えばそれは、拘禁刑で入所をされた方が本人の意思に反した作業を伴う可能性があるかどうかということも含めて、ILOが言っているような強制労働に該当するおそれがないかだけ、ちょっと確認させてください。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 拘禁刑に処せられた者が行う作業が、御指摘の条約上の義務に抵触しないよう担保するための在り方につきましては、本条約締結のために、令和三年六月に、強制労働の廃止に関する条約の締結のための関係法律の整備に関する法律がございますが、その趣旨を踏まえまして、関係省庁間で協議し、適切に対応することとしております。

 具体的には、同法によりまして罰則が改正された国内法令上の犯罪を行ったことにより拘禁刑に処せられた者が受刑する場合、本改正法案では、相当性を欠く場合は受刑者に作業を課さないものとしておりますので、条約上の義務を履行する観点から、本人の意思に反して作業を課さないということで、その旨を通達等で当局から各刑事施設長宛てに発出して対応することを検討してございます。

 以上です。

守島委員 運用で、条約締結に抵触するようなことがないようにお願いします。

 拘禁刑によって作業の位置づけが変わるということなんですけれども、これまでの法定刑においては、懲役とか禁錮というのは必ずしも並列な刑じゃなくて、それぞれに役割とか重軽というのがあったと思います。それを統一することで、使い分けとか刑の重さ、軽さに矛盾が生じないか。

 例えば、殺人罪が起きて、これまでであれば懲役七年と処されるような人が拘禁刑になることで、ある種、裁判所の決定する量刑として刑期の長さが変わったりするようなことはあるんでしょうか。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 拘禁刑の量刑がどのようなものになるかにつきましては、個々の事案における裁判所の判断によるために、一概にお答えすることは困難でございます。

 その上で申し上げますが、今回の改正法案におきましては、法定刑としての拘禁刑の長期及び短期を、現行法の懲役、禁錮と同じものとすることとしております。

 また、一般に、裁判所におきましては、犯行の動機、行為態様、結果等の犯罪行為それ自体に関わる事実により量刑の大枠を決定し、被告人の反省、家族状況、前科関係等の一般情状事実を考慮した上で、量刑傾向を踏まえつつ、最終的な量刑を決定しているものとされているものと承知しているところでございまして、今回の改正案は、こうした量刑判断の在り方を変更するものではございません。

 裁判所におきましては、改正後の法定刑の範囲内において、個別の事案における具体的な事情に基づき、適切に量刑を決定することになるものと承知しております。

守島委員 時間なので終わります。

 刑期が変わるわけではないですけれども、懲らしめ的な要素がなくなるということは、受け手としては、罪の重さ、軽さが変わってしまうんじゃないかなという気も一定しているので、そうしたことがないように、しっかり運用面でやってほしいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。お疲れだと思うんですが、もう少し、気合を入れて御答弁をいただければなというふうに思います。

 この度の、もう何回も何回も御質問されていると思うんですけれども、侮辱罪について、構成要件の変更がない、処罰対象とされてこなかった、法律の解釈は変えていませんよということで、正当な労働運動中の意見や論評の表明と言えるような発言については処罰されないということでよろしいんでしょうか、大臣。

古川国務大臣 シンプルに申し上げれば、そういうことです。

鈴木(義)委員 それと、昨日も参考人のときに自分の意見を述べさせていただいたんですけれども、インターネットという公共の電波なり仕組みに載った時点で公然という考え方を取れないのかという考え方なんです。一対一でやっているうちはいいんですけれども、今回の木村さんが亡くなった案件もいろいろな人がそこに輪をかけて入ってくる。もうそれは公然だろうということですよね。

 だから、訴えをして検挙できたのは三人だというような、昨日も答弁いただいたんですけれども、その辺の御見解はどうですかね。インターネットに載せたということがもう公然という考え方、捉えられないかということです。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 具体的にどういった場合が公然になるかということにつきましては一概にお答えすることは困難でございますが、その上で、一般論として申し上げますが、侮辱罪における公然とは、不特定又は多数人が認識できる状態をいうところでございまして、相手方が特定少数人であったとしても、伝播して間接的に不特定多数人が認識できるようになる場合も含まれていると最高裁判例によっても解されていることから、こういったものに該当する場合には公然性の要件を満たすと考えられるところでございます。

鈴木(義)委員 じゃ、今回の侮辱罪の法律の改正によって、今局長の方から御答弁いただいたように、インターネットに載せて、それがたくさんじゃなくても、数人数であっても、それは公然性を認められるということでいいわけですね。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しで恐縮でございますが、犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございますので、私の方からそれが当たる、当たらないという形で明確に御答弁申し上げることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。

 その上で、先ほど申し上げたような公然性の解釈がございますので、これによって公然性が認められる場合には侮辱罪における公然性を満たすということになるものでございます。

鈴木(義)委員 ここのところの何回ものやり取りを聞いていて、表現の自由だとか言論の自由と、それと、結局、今回の事件に行ってしまった一つは匿名性が高いということですよね。それと、あと、プロバイダーになるところが開示をしない。表現の自由だから開示をしない。それのやり取りが長く続くから、公判も長くなっていく。そこのところを一点きちっと捉えられれば、問題の解決を図れるんじゃないかと思うんですけれども、どうですか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 今の委員の御質問、プロバイダーの対応ということだろうと思いますが、済みません、私ども、プロバイダー責任の方については所管外でございますので、その点についてはちょっとお答えを私から申し上げるのは差し控えさせていただきます。

鈴木(義)委員 事件が起きたから捜査するんでしょう。所管外という答弁の仕方というのは、いや、ちょっと、一般では、国民の側には説明できないと思いますよ。だからどんどんいろいろなものが起きちゃうんじゃないんですか。

 今回、法定刑を引き上げることによって、先ほども質問にあったんですけれども、幇助罪とか教唆罪というのが適用できると。昨日の参考人にお尋ねしたら、今と同じことをお尋ねしたら、プロバイダーを幇助罪の中に入れることができるんじゃないかというふうな、学者の方というより弁護士の方の答弁がありましたけれども、そういう認識でよろしいんですか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しで恐縮でございます。犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございますので、私の方から一概にお答えすることは困難でございます。

鈴木(義)委員 じゃ、幇助罪とか教唆罪というのかな、それは適用になるということでよろしいんですね。確認だけです。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 あくまで一般的な事柄として、私どものお願いしている法改正が実現しますれば、侮辱罪につきまして教唆犯それから幇助犯、これが成立して処罰することになるということは、そのとおりでございます。

 その上で、どういった行為がなるのかということについては、先ほど御答弁したとおりでございます。

鈴木(義)委員 そうしますと、自殺幇助罪というのがあるんだそうですね。死んでしまえとか、おまえはもう生きているに値しないと言って、もし私が自殺すれば、それを言いしめた人間が幇助罪で検挙できるということでよろしいんでしょうか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員がおっしゃられた、まさに自殺幇助罪ですが、これは、刑法の各論、すなわち、いろいろな罪を書いてあるところに独立の犯罪として規定されているところでございます。これは刑法の二百二条でございますが、人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人を云々した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処すということでございますので、侮辱罪によって、人を追い詰めて死に至らしめたというものではなくて、まさにこの自殺幇助罪は、侮辱罪とは無関係に、今申し上げた刑法二百二条の罪として処罰されるということでございます。

鈴木(義)委員 現職の刑事局長が本を読まなくちゃ分からないということは、ほとんど適用されることがないということですかね。違うんですか。まあ、分かりました。

 じゃ、次に、拘禁刑のことで何点かお尋ねしたいと思います。

 戦前の刑事法では、受刑者を、西洋とは別に、日本独自のやり方で、刑務所で教育イコール矯正して改善更生させるという方法を考え出したんだそうです。確かに、当時は、教育を受けられなかった受刑者も多く、作業や矯正が出所後の就業に一定程度役立つような世の中だったんです。しかし、一九八〇年以降には全く役に立たないものになった。端的に言えば、組立て作業等が要求される工場が次々と海外に移転してしまって、刑務所は就業に結びつく技能を受刑者に与えることができないのが実態であるというふうに指摘する人もいるんです。

 私がもう十五年ぐらい前に地元の少年刑務所に県会議員のときに視察に行ったんですけれども、木工作業だとか、大体、昔のやり方のままなんですね。そういう訓練をして出所した後に、それを受けた業種がなければ再就職ができないんですよね。

 だから、作業自体も就業に結びつくようなことができるのか、今回の法律の改正で。大臣、いかがでしょうか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 刑務作業は、規則正しい勤労生活の維持、就労意欲の喚起、あるいは忍耐力や集中力の醸成といった各種の機能を有しておりまして、出所後に正業に就いて、さらに就業を継続していく上で必要なものである、出所後の正業を維持していく上でも必要なものである、そのためにも必要なものであるというふうに認識しております。

 また、刑務作業の一形態として実施しております職業訓練では、例えば、建設機械科等において取得した資格、技能等を生かして、土木等への就労に結びつけるほか、協力雇用主などから指導を受けて、在所中の就労内定につなげるような取組も行っております。

 拘禁刑における刑務作業は、個々の受刑者の特性に応じて、改善更生及び円滑な社会復帰を図る必要な範囲で拘禁刑における刑務作業を課すわけでございますけれども、個々の刑務作業につきまして、その具体的な処遇効果や従事させる受刑者等について、これまで以上に明確化していくことが必要というふうに考えています。

 刑務作業の具体的な内容について、例えば申し上げますと、一般の社会と似たような環境の下で実施する外部通勤作業などの充実、あるいは、社会人として求められるコミュニケーション能力や課題解決能力などを更に向上させていく手法の導入、雇用情勢を踏まえた職業訓練の充実などについて取り組んでいく必要があるというふうに考えています。

 具体的な刑務作業の在り方の詳細については引き続き検討してまいりますけれども、個々の受刑者の特性に応じて、当該受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰を図る上で必要が認められる作業を実施し、一層就労に結びついたものになるよう努めてまいりたいと考えております。

 ただいま委員が指摘をされました問題意識、社会復帰後の実態に即した就労形態、そういうものにやはりつながるような方向での努力が必要だと考えます。全部ではありませんけれども、一部においてはそういう試みも進めているところでございます。

鈴木(義)委員 そうしますと、懲役刑で入所した人が、作業を強制的に、やらせるという言い方はちょっと語弊があるかもしれないですけれども、やらせていたんだと思います。先ほど前任の人が質問したように、ILOで、強制労働に関してはさせないという形で条約の締結を審議しているんだと思うんですけれども、そうすると、私はこの作業をやりたくないともし私が意思表示したら、やらなくて済むのかということです。そこのところはどうですか、お答えできますか。

佐伯政府参考人 拘禁刑の下における作業につきましても、刑事施設の長が必要と認めて課しているものについては、正当な理由なくこれを拒んだ場合には、いわゆる懲罰の対象となるというような形で実効を担保するという形になってございます。

 ただ、これまでと異なりますのは、といいますか、その作業につきましても、指導につきましても、本人の改善更生を図る上、いわば教育的な観点がより強くなってくるわけでございますので、本人の全くの不同意の状態で強制することで効果的に実施できるというふうには私どもも考えてございませんので、実務においても、例えば、指導を拒んでいる人なんかにつきましては、動機づけの面接を繰り返したりということは実際行われておりまして、指導を拒んで直ちに懲罰というケースは余り多くないのかなというふうに考えてございます。

鈴木(義)委員 私は刑務所に入ったことがないから、どういう状況だったかというのはよく分かりませんけれども、例えば作業をさせるということにあっては、労働という概念もあるわけですね、作業イコール労働。そうすると、刑務所の中で、ある作業をさせて、一日八時間なら八時間、規則正しい生活をさせるために、朝何時に起床して、何時から何時まで作業をさせて、休憩を入れて、また四時間で、休憩なりなんなりしていくんだと思うんですけれども、その四時間なり八時間なりでどのぐらい労働の対価として受刑者に、報酬というんですか、お金を払っているのか、簡単な事例で結構ですから挙げてください。短めにお願いします。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 刑務作業を行った受刑者に対しましては、作業報奨金というものを支払っておりますが、これは労働の対価ではございません。対価性のないものということで御理解いただきたいと思いますが、令和四年度における受刑者一人当たりの予算上の釈放時平均支給額というのは七万九千九百二十円となってございます。(鈴木(義)委員「一月」と呼ぶ)釈放時一人当たりでございます。累計です。

鈴木(義)委員 七万円もらって刑務所を出た後、通常の生活に戻れるかといったら、なかなか難しいんじゃないかと思うんですね、刑期にもよるんでしょうけれども。

 だから、やはり作業させるということになって、労働の対価じゃなくて報奨として、あんたはよくやったから御褒美を上げますよというようなことなんでしょう。そうじゃないやり方をしなければ、後段でまた御質問しますけれども、社会になるべくなじみやすいようにしていくために拘禁刑に変えるんですよという一つの目的があるわけじゃないですか。

 そうすると、ある程度、実社会とは違った環境に置くのは致し方ないと思うんですけれども、ある程度、出所した後も生活ができるような報酬を払うようなことを考えていかないと、出所後の再犯をさせない、生活のサポートをするんだと声高々に言うんだけれども、それもやはり一つ考えた方がいいんじゃないかと思うんです。

 大臣、どうですか、この辺について。

古川国務大臣 刑務作業というものが矯正処遇の一方策であって、一般社会における自由な労働とは本質的に異なるために、作業に対する純粋な対価ではない、とは認めないというふうな、そういう理屈があるのは、これは御理解をいただきたいと思います。

 しかしながら、委員が指摘されますように、やはり報奨、報酬というような意味合いであるとか、社会に復帰してからの生活が円滑にいって、そこに前向きに意欲的に取り組んでいくということのためには、やはり、そういう趣旨からのちょっと見直しが必要ではないかという御指摘に対しては、私も共感するところがございます。

 この作業報奨金については、今も申しましたとおり、社会復帰を実現するための大事な意味合いを持った資金でもあるということから、この適正な金額を支給できるように、ここは努力をしていきたいというふうに思っております。

鈴木(義)委員 それともう一点、これも指摘されたので、ああ、そうなんだと思ったんですけれども。

 例えば、私が何か事件を起こして逮捕されて、取調べされて、拘置所に入れられて、裁判にかけて、また刑務所に入監、入監というのかな、送られたときに、携帯電話の解約の手続だとか、何かローンを組んでいたときも一切そういうことを触れさせてくれない。それで、今度、ブラックリストに載るんだそうですね、滞納がずっと続くわけですから。そうなって、何年かたって、刑期を終えて社会に出てきたときに、鈴木義弘はブラックリストに載ったままですから、携帯も持てない、カードも作れない、何もない、ブラックリストに載っちゃっているわけです。

 そうなって、どうやって生活支援だとか就職の支援をするのかといったときに、そこのところをちょっと、犯罪を犯しているんですからどこまでというのはあるんですけれども、再犯をさせない、社会になじませるんだということで今回の法律の改正になっているんだったら、その辺のところをどういう配慮ができるかというのは考えなくちゃいけないと思うんですけれども、そういう手続もさせないというのはどんなものかなと思うんですけれども、その辺についても、大臣、どうでしょう。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 携帯電話であったりその他の各種の契約の解除手続につきましては、基本的には私的な契約関係でございますので、被収容者本人において解決すべき問題だという位置づけでございます。

 現行法上、外部の方との間での信書の、手紙の発受であったり面会を行うことは可能でございますので、本人の御意思により各種契約の解約等の手続を進めることは可能でございます。

 ただ、本人から様々こういった御相談が施設に寄せられたりした場合には、必要な、例えば発信の回数について、緊急性があれば認めるとか、そういった意味での必要な便宜を図る等、適切に対処しているものと考えてございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 それともう一点、少年や、刑務所に入ったことになった、受刑者になるんですけれども、経済的に恵まれないとか、家族との関係が難しく社会からも孤立などの困窮の中で、地域の人々、ほかの人たちとの信頼関係を構築することができず、非行や犯罪に陥ってしまったということも指摘されています。

 それで、受刑者の社会復帰では、受刑者と支援者との信頼関係の構築が要になるんだと考えるんですが、今回の法改正で、信頼関係の構築に配慮する制度設計となっているのか、お尋ねしたいと思います。

古川国務大臣 お答えをいたします。

 受刑者が釈放後に速やかに住居を定めて、仕事に就いて、円滑に社会復帰することが再犯防止の上からは極めて重要だというふうに考えます。

 御指摘のとおり、受刑者が円滑に社会復帰するためには、就労や生活上で様々な支援が不可欠です。受刑中から支援者との信頼を構築しておくことがその要となろうかと思います。

 今般の法改正におきましては、受刑者処遇の一層の充実を図るため、出所後の就労や帰住先の支援など、受刑者に対する社会復帰支援を刑事施設の長の責務として行うことを法律上明確化することとしております。また、社会復帰支援につきましては、効果的な実施を図るために必要な限度において、刑事施設の外の適当な場所で行うことができることとし、受刑中から支援者と触れ合うことで信頼の構築につなげることが可能となります。

 今回の法改正は、受刑者と支援者との信頼関係の構築に配慮した制度となっておりまして、その趣旨を踏まえ、引き続き受刑者の円滑な社会復帰の支援に努めてまいりたいと考えます。

鈴木(義)委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 刑法の改正案について質問させていただきますけれども、今日、皆様方のところに資料をお配りをさせていただいております。

 これは、刑罰の基本政策の変更について慎重な審議を求めるという、刑事政策学の研究者の皆さんの声明です。そこでは、衆議院法務委員会の委員様ということで宛先が書かれておりまして、日本国の刑法の根幹を成す自由剥奪を伴う刑罰体制を改変する法律案が上程されているということで、「わたくしたち刑事政策学の研究者有志は、このような事態を憂い、日本の刑罰政策の根幹を揺るがしかねない同法案について、真摯かつ慎重な議論を切に要望し、本声明を公表します。」ということで、要望一、国会においては、本法律案を真摯かつ慎重に審議すべきである。要望二、刑罰制度に関して、関連学界における科学的かつ真摯な検討及び国民的議論を踏まえて、変更の可否を検討するべきであるというふうに書かれております。

 委員長にお願いしたいというふうに思いますけれども、慎重な審議、これからも続けていただきたいと思いますけれども、お願いしたいと思います。

鈴木委員長 ただいまの件、後刻改めて理事会にて協議いたします。

本村委員 この議論についてはまた後ほどしたいというふうに思うんですけれども、侮辱罪について質問をさせていただきたいと思います。

 昨日も、木村響子さんが国会に来てくださり、そしてお話をしてくださいました。木村花さんを始め、誹謗中傷で心を痛め、そしてお亡くなりになった方々に、私からも心から哀悼の意を申し上げたいというふうに思います。

 そして、現在も、この誹謗中傷によって苦しまれている方々が実際にいらっしゃいます。被害を受けた方々が泣き寝入りをしなくてもいいように、相談しやすい体制ですとか、有効な対策を打たなければならないというふうに考えております。

 侮辱罪の法定刑の引上げのために、その契機となったのが、SNS上の誹謗中傷による木村花さんの自死ということでございます。この事件の検証というものが必要だというふうにまず考えますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうかという点、そして、木村花さんが自ら命を絶たなければならなかったこの事件の検証をしっかりやってこそ、総合的な有効な対策を取ることができるというふうに考えますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 木村花さんが亡くなられたのは、これは本当に大変痛ましい出来事でありまして、心からお悔やみを申し上げます。

 今般の法整備は、御指摘のこの事案を含む、近年における公然と人を侮辱する犯罪の実情などを踏まえて行うものでございます。

 すなわち、近時、SNSなどのインターネット上の誹謗中傷が特に社会問題化していることを契機として、インターネット以外のものも含めて、誹謗中傷全般に対する非難が高まってきているとともに、これを抑止すべきだという国民の意識も高まってきているというふうに承知いたしております。

 こうしたことに鑑みますと、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して、これを抑止するため、その法定刑を引き上げることが必要である、このように考えまして、今回の法律案を提出いたしたところでございます。

 このように、今般の法整備は、特定の個別事件の対応のみを目的とするものではございません。近年におけるこの種の犯罪の実情等を踏まえて行うものでございますから、個別事件の検証が必要だとまでは考えておりません。

本村委員 個別事件の検証は必要ないと言われたこと、私は大変ショックに感じております。個別事件だからこそ見えてくることが様々あるというふうに考えております。

 先ほど鎌田議員も言われましたけれども、テレビ局の制作会社の同意書兼誓約書の問題や、あるいは海外を含むプロバイダー、プラットフォームの問題、あるいは、警察に行くと、具合が悪くなるぐらい警察が高圧的な態度だったというふうにおっしゃっておりました。こういう検証や、あるいは加害者を生まないためにどうすればいいかということ。

 裁判では、二年かかって二十件近く裁判をして、侮辱罪は三人なんだと。この判決の分析ですとか、これもやらないといけないというふうに思っております。

 また、必要な経費。裁判だけでも総額一千万円近くかかったというふうに木村響子さんがおっしゃっておりましたけれども、こういう経済的な負担がある状況では、被害者は救済されないというふうに思います。

 民事で、加害者に百三十万円の損害賠償の判決が出たけれども、一円も支払われていないということも言われました。これもやはり、国が代理で、まず被害者の方に支払って、そして、国が加害者の方から請求をする仕組みなんかもつくる必要があるんじゃないか。こういう総合的な対策を取らなければ、やはり、被害者の方の救済にもならないし、早期発見にもつながらないというふうに思っております。

 こういう検証をして、個別事案だけれども重要な社会的な影響を与えた事案でございます。個別事案ではあるけれども検証して、全体に、総合的に対策を打たないといけないと思いますけれども、大臣、改めてお願いしたいと思います。

古川国務大臣 近時におけるインターネット上の誹謗中傷、こういうことに対する国民一般の問題意識というのも非常に高まってきております。

 議員御指摘のように、やはり事態を根本解決するためには、様々なアプローチが必要になってこようと思いますし、そこは、政府を挙げて、関係省庁も連携を取りながら、これをやったから大丈夫だ、解決したということにはなかなかならないというふうに思いますので、様々協力をし合って、この問題の解決を図るという姿勢が、やはりこれは大事なことだというふうに思います。

 その中で、今般の法整備というものは、法定刑の引上げ、下限は維持したままですけれども、上限を引き上げるということをもって、そこにやはり迫ろうという一つの施策、アプローチの仕方であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

本村委員 残念ながら、侮辱罪については効果が薄いというふうに言われております。やはり根本的に考え直さないといけないというふうに思っております。

 少し確認なんですけれども、単純な確認でございます。ダイレクトメールなどは、侮辱罪の適用範囲にはならないですねという点、そして、脅迫罪や強要罪の適用は、具体的にどのような言動を対象にしているのか、伺いたいと思います。

川原政府参考人 お答えいたします。

 まず、ダイレクトメール等の関係でございます。犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であることから、お尋ねの行為が侮辱罪の公然性の要件を満たして、侮辱罪が成立するかどうかということについて、一概にお答えすることは困難でございます。

 その上で、あくまで一般論として申し上げれば、侮辱罪における公然ととは、不特定又は多数人が認識できる状態をいい、相手方が特定少数人であったとしても、伝播して間接的に不特定多数人が認識できるようになる場合も含まれると解されていることから、公然性の要件を満たすか否かは、そのような状態にあると認められるか否かによることとなるところでございます。

 それから、脅迫罪、強要罪の関係でございます。これも、犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でありますので、一概にお答えすることは困難でございますが、その上で、一般論として申し上げれば、脅迫罪は、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合に成立し得るものでございまして、また、強要罪は、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合に成立し得るものと承知しております。

本村委員 脅迫罪、強要罪については、もう少し具体的に言っていただきたかったんですけれども、法文を読まれたということなんですけれども、誹謗中傷であっても脅迫罪や強要罪に当たるものもあるというふうに思います。

 今回、先ほど来御議論がありましたので、質問は省かせていただきますけれども、侮辱罪は、今は現行犯の逮捕はできないけれども、法定刑の引上げで、この法案が施行されたら現行犯逮捕ができる、そして、教唆犯や幇助犯の処罰もできるということになってまいります。

 先ほど階さんもお話をされていたんですけれども、どのような言動が侮辱とされているのでしょうかということで、判例の積み上げについてお示しをいただきたいというふうに思います。また、通常逮捕あるいは現行犯逮捕などのときに、誰がどのような基準で判断をするのか、明確にお答えをいただきたいと思います。

川原政府参考人 お答えいたします。

 まず、どのような言動が侮辱に当たるかということでございますが、侮辱罪により処罰された近時の裁判例を申し上げますと、例えばインターネット上において、整形その他で見た目をごまかし、名前なども成り済ます習性が極めて強い性質は攻撃的かつ凶暴で、人類との協調性、人間モラルなどの持ち合わせなしなどと書き込んだ事案につきまして科料九千円に処された例、あるいは、被害者のツイッターアカウントに、てか死ねや、くそが、きもいなどと投稿した事例について科料九千円の略式命令が発付されたなどがあるものと承知をしております。

 次に、現行犯逮捕の関係でございます。

 侮辱罪による現行犯逮捕につきましては、今般の法定刑の引上げがなされますれば、住居不定であることなどの制限がなくなることとなりますが、それ以外の要件は変わりはないところでございます。したがいまして、従来どおり、現に罪を行い又は現に罪を行い終わった者が対象となるものでございまして、他の罪と同様に、犯人による特定の犯罪であることが明白で、かつ犯人も明白である場合に該当するか否かを逮捕者が判断することとなるものでございます。

本村委員 逮捕者が犯人ということを判断するということですね。

 また、もっと基準を示さないといけないというふうに指摘がありましたけれども、私もそのように思っておりますので、次の機会に出されるということを期待しております。

 少し具体例に移りたいと思うんですけれども、いわゆる北海道警察のやじ排除事件の全容について、詳細な事実経過とそれに対する北海道警の対応が適切であったのか、国家公安委員長にお願いをしたいというふうに思います。

二之湯国務大臣 お尋ねの事案は、令和元年七月十五日、札幌市におきまして、参議院通常選挙に係る街頭演説が行われた際、警護、警備を行う中で、北海道警察の現場の警察官がトラブル防止の観点から一部の方々を移動させるなどした事案であると承知いたしております。

 本件に関しましては、街頭演説中に北海道警察がやじを飛ばした男女を移動させたことなどについて国家賠償請求訴訟が提起されているところですが、北海道警察からは、いずれも現場の警察官がそれぞれの状況を踏まえ、法律に基づき必要と判断した措置との報告を受けております。

 今後とも、各種法令に基づき適切に職務を遂行していくように警察を指導してまいりたいと思っております。

本村委員 確認ですけれども、北海道警察の対応は適切ではなかったということですね。

二之湯国務大臣 本件に関しては、いずれも現場の警察官がそれぞれの状況を踏まえて、法律に基づいて必要な判断だと、私はそのように報告を受けておりますし、何遍も申し上げますように、北海道警察の措置は正しかった、このように思っています。

本村委員 国家公安委員長が正しかったというふうにおっしゃるのは衝撃でございます。

 札幌地裁の判決の中では、JR札幌駅及び札幌三越前で参議院議員選挙の応援演説を行う当時の安倍晋三内閣総理大臣に対して、安倍辞めろ、増税反対などと発言したことによって警官らに排除された原告二名が北海道警察を訴えた国家賠償請求事件で、北海道の方に合計八十八万円の支払いを認める判決が言い渡されました。この判決は、北海道警察による表現の自由の侵害を正面から認めた歴史的な判決だというふうに思います。

 市民の方が撮影した動画やあるいは関係者の証言から、原告のお二人が危険な事態にあったとは言えず、警察が体をつかんで移動させた行為などは、警察官職務執行法の要件を満たしておらず、違法と認定をされております。

 また、判決は、憲法二十一条で保障された表現の自由について、立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎づける重要な権利と位置づけ、二人が声を上げたことは、重要な権利の中でも特別に尊重されなければならない公共的、政治的事項に関する表現行為に当たるということで、北海道警察の行為が違憲であり、そして違法であるというふうに判決で指摘をされております。

 それが正しかったというふうに、北海道警察の対応が正しかったというふうに二之湯委員長は言われるんでしょうか。

二之湯国務大臣 その時点での北海道警察の措置は、北海道警察のこの判断を私は正しい判断だと思いますけれども、札幌地裁で八十八万円の損害賠償を命じる判決が出ました。これについて、私は国家公安委員長の立場としてコメントする立場にございませんし、そして、道がただいまそれを控訴中でございますから、これはもう司法の場に移っておりますから、私の答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

本村委員 先ほど二之湯国家公安委員長は、閣僚や国会議員を侮辱したら逮捕するのかという質問に対して、あってはならない、不当な弾圧はないんだというふうに明言をされました。

 今回の札幌地裁の事例でも、私たちは、この警察の働きは、行為は不当だというふうに思っておりますけれども、委員長はそうじゃないということですよね。そうしますと、先ほどの、不当な弾圧はあってはならないというふうに、不当な弾圧はないんだというふうに言われましても、価値判断が違うということで、実際には政治的な弾圧にもつながっていくんじゃないかという危惧を抱くわけですけれども、その点、お答えいただきたいと思います。

二之湯国務大臣 当日のその場にいた現場の警察官が、それぞれの状況を踏まえて、法律に基づいて必要とした判断を措置したものと私は報告を受けております。

 なお、一般として申し上げれば、警護、警備の現場では、要人や聴衆の安全確保、雑踏事故の防止などのため所要の措置を講じる必要があり、今後とも、各種法令に基づいて適切に職務を遂行していくよう警察を指導してまいりたい、このように思っております。

本村委員 安倍辞めろということや増税反対と言って、十秒程度で排除をされているそうです。これは不当な弾圧に当たるというふうに私は考えますけれども。

 この北海道警察のやじ排除事件のような場面で、政治家に対する批判をした者に対して現行犯逮捕が可能になり、同行していた者も教唆犯などで逮捕され得るのではないかというふうな危惧を抱くわけです。仮に不起訴となったとしても、現行犯逮捕などのインパクトというのは、やはり自由な言論や表現に対する脅威となり、言論活動の萎縮を招くというのは明らかだというふうに思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 侮辱罪の法定刑の引上げにより、委員が御指摘をされているような言論弾圧的な逮捕が可能となるものではなく、政治的な批判に対する萎縮効果が生じるとの御懸念は当たらないものと考えております。

本村委員 恣意的な現行犯逮捕があるのではないかという危惧を抱くわけでございます。やはり、この侮辱罪、撤回を強く求め、時間が来ましたので質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、来る五月十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時散会


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