衆議院

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第15号 令和4年5月13日(金曜日)

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令和四年五月十三日(金曜日)

    午後一時三十四分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 馨祐君

   理事 井出 庸生君 理事 熊田 裕通君

   理事 葉梨 康弘君 理事 山田 美樹君

   理事 鎌田さゆり君 理事 階   猛君

   理事 守島  正君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    尾崎 正直君

      奥野 信亮君    国定 勇人君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      谷川 とむ君    土田  慎君

      中谷 真一君    中野 英幸君

      西田 昭二君    野中  厚君

      八木 哲也君    山田 賢司君

      伊藤 俊輔君    鈴木 庸介君

      藤岡 隆雄君    山田 勝彦君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      前川 清成君    日下 正喜君

      福重 隆浩君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   議員           山田 勝彦君

   議員           米山 隆一君

   法務大臣         古川 禎久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 二之湯 智君

   法務副大臣        津島  淳君

   法務大臣政務官      加田 裕之君

   最高裁判所事務総局民事局長            門田 友昌君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 森元 良幸君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    大賀 眞一君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     北林 大昌君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    佐伯 紀男君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十三日

 辞任         補欠選任

  尾崎 正直君     土田  慎君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     尾崎 正直君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案(内閣提出第五八号)

 刑法等の一部を改正する法律案(米山隆一君外二名提出、衆法第三一号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案並びに米山隆一君外二名提出、刑法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、内閣提出、刑法等の一部を改正する法律案に対し、階猛君から、立憲民主党・無所属提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。階猛君。

    ―――――――――――――

 刑法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

階委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、侮辱罪の法定刑を引き上げる内容を三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料のみとし、一年以下の懲役若しくは禁錮の部分を削るものであります。

 政府原案の規定は、近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契機として、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民意識の高まりに鑑み、侮辱罪を厳罰化しようとするものと聞いております。

 ところが、厳罰化のためになぜ一年以下の懲役若しくは禁錮が必要なのかという点については、名誉毀損罪の法定刑とのバランスを取るといった形式的かつ抽象的な説明しかなされていません。

 政府・与党は、厳罰化によって公訴時効の期間が一年から三年に延びるというメリットを主張しています。しかし、従来の刑に三十万円以下の罰金を加えるだけでも時効期間は同様に延長されるため、一年以下の懲役若しくは禁錮が必要である根拠とはなり得ません。

 むしろ、侮辱罪の法定刑に一年以下の懲役若しくは禁錮を加えることとなれば、逮捕を制約する規定が適用されなくなり、公権力や私人による現行犯逮捕が容易にできるようになります。しかも、名誉毀損罪における刑法二百三十条の二のような表現の自由を保護するための規定は侮辱罪には設けられていません。このままでは現行犯逮捕が頻発し、表現の自由の萎縮と刑事司法の混乱が生じることは火を見るより明らかです。

 この点、私も法案審議の中で、政治家の街頭演説や一般市民のデモ行進において安倍総理はうそつきだと言い放ったら現行犯逮捕されるのかと国家公安委員長に尋ねました。ところが、答弁は最後まで二転三転、かつ曖昧模糊として、懸念は払拭されませんでした。その後、政府統一見解が策定される運びとなりましたが、昨日までの段階では納得できる文書はでき上がっていません。

 仮にこのような事例で現行犯逮捕が可能となれば、時の最高権力者が国会で百十八回の虚偽答弁を行ってもおとがめなしなのに、一般市民は町中でたった一回本当のことを言っただけで現行犯逮捕されるという理不尽極まりない結果となります。このような事態を避けるために、一年以下の懲役若しくは禁錮、これは削除されるべきものと考えます。

 以上が、修正案の趣旨及び内容の概要であります。

 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

鈴木委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 各案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官森元良幸君、警察庁刑事局長大賀眞一君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長北林大昌君、法務省刑事局長川原隆司君、法務省矯正局長佐伯紀男君及び法務省保護局長宮田祐良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局民事局長門田友昌君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより各案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。谷川とむ君。

谷川(と)委員 自由民主党の谷川とむです。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 これまでいろいろと議論を積み重ねてまいりました刑法等の一部を改正する法律案ですが、いよいよ最終局面を迎えております。そのような状況を踏まえながら、質問に入らせていただきたいと思います。

 さて、近年の我が国の犯罪情勢を見ると、刑法犯の認知件数は平成十四年をピークに減少傾向にあります。一方で、刑法犯により検挙された再犯者は、平成十八年をピークに少しずつ減少傾向にあるものの、それを上回るペースで初犯者が減少していることも相まって、検挙人員に占める再犯者の比率は上昇しています。令和二年は、現在の統計を取り始めた昭和四十七年以降最も高い四九・一%となっています。

 刑法犯により検挙された者の約半数を再犯者が占めている現状から、再犯防止対策は刑事政策上の重要な課題であると考えております。

 今般の法改正の目的は、再犯防止という非常に重要なものであると認識をしています。なぜ、罪を犯した者の特性に応じたきめ細やかな指導、支援を行うことが、その者の改善更生、再犯防止につながるのか。また、罪を犯した者の特性に応じたきめ細やかな処遇を行うことができるよう、刑法や刑事収容施設法、更生保護法などを改正し、どのような制度を導入しようとお考えか。古川大臣、御答弁をお願いいたします。

古川国務大臣 お答えいたします。

 犯罪に至るには様々な要因が関わっている上、その関わり方は人によって様々でありますことから、罪を犯した者の改善更生及び再犯防止を図るためには、その者が犯罪に至った要因を分析し、その中から適切なものを選び、効果的に働きかけることが重要だというふうに考えます。

 罪を犯した者の特性に応じたきめ細やかな指導、支援とは、このような観点から、対象者一人一人の状況に応じた指導、支援を行うことであり、これにより、一層効果的に、罪を犯した者の改善更生及び再犯防止を図ることができるものと考えます。

 刑法等一部改正法案におきましては、刑事施設における、罪を犯した者の特性に応じたきめ細やかな処遇について、例えば、作業と指導とをベストミックスした処遇を行うことができるようにするため、拘禁刑を創設して、改善更生を図るため、必要な作業又は指導を行うこととし、受刑者の矯正処遇の目標及びその内容等を定める処遇要領について、できる限り具体的に記載するものとすることといたしております。

 また、社会内処遇における、罪を犯した者の特性に応じたきめ細やかな処遇について、例えば、保護観察の実施方法として、保護観察対象者の犯罪又は非行に結びつく要因及び改善更生に資する事項を的確に把握しつつ、指導監督等を行うことを加える。更生保護施設等が行う特定の犯罪的傾向を改善するための専門的な援助であって法務大臣が定める基準に適合するものを受けることを指示したり義務づけたりすることができるようにすることとしているものであります。

谷川(と)委員 大臣、ありがとうございます。

 御答弁いただいたように、犯罪に至った要因を分析して、一人一人の状況に応じた適切な指導や支援を行うことが再犯防止につながると私も思っております。今般の法改正により、より一層効果的に改善更生、また再犯防止を図ることができるということで、引き続きしっかりと取組を進めていっていただきたいというふうに思っています。

 続きまして、社会支援について質問させていただきます。

 再犯防止のためには、受刑者に対する社会復帰支援は非常に重要で、効果的であると考えています。刑事施設における社会復帰支援の現状はどうなっているのでしょうか。また、本法律案で社会復帰支援に関する規定を設けることによって受刑者への現在の取組は変わるのか、御答弁を願います。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 現在、刑事施設において行っております社会復帰支援の主な取組といたしましては、就労支援として、ハローワーク職員が刑事施設に来所していただきまして、在所中から就労につながるための調整を行ったり、あるいは、矯正就労支援情報センター室というものを設置いたしまして、受刑者の求職と、出所者等の雇用を希望する事業主の求人をマッチするなどの取組を行っているところでございます。

 また、福祉的支援といたしましては、出所後の社会福祉制度の利用等に関する助言を行ったり、釈放後速やかに福祉サービスを受けられるようにするための関係機関との連携を調整するなどの取組を行っております。

 本法案におきまして、社会復帰支援を行うことが刑事施設の長の責務であるということが法律上明確になることから、関係機関からの御協力を得るなどの促進が期待できまして、各種支援をより効果的に推進していくことが可能になるものと考えてございます。

谷川(と)委員 これまでも様々な取組を行っていただいております。本改正後は、社会復帰支援のために各種支援が効果的に推進していけるというふうに御答弁をいただきました。期待申し上げたいと思いますので、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、刑の執行猶予制度の拡充について質問をさせていただきます。

 今般の刑法の改正には、再度の執行猶予を言い渡すことができる宣告刑を一年から二年に引き上げることとするとともに、初度の保護観察付執行猶予中の再犯に、再度の執行猶予を可能とする規定が設けられています。

 再び罪を犯しても再度の執行猶予がつくというような不当な期待が生じて、執行猶予制度が有する、執行猶予中に罪を犯せば刑事施設に拘置されるといった心理的な再犯防止の担保的機能が大幅に低下するのではないかという懸念がありますが、このような懸念に対していかがお考えでしょうか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 今般の法整備におきまして、再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができる宣告刑の上限を現行の一年から引き上げることとしておりますが、その引上げ幅につきましては、刑期の上限を二年とするにとどめ、初度の刑の全部の執行猶予の場合と同じ三年にまで引き上げることとはしていないところでございます。

 これは、執行猶予の言渡しを受けた者は、いわば再犯に及んではならないとの警告を受けていたのであり、それにもかかわらず、あえて猶予の期間内に再犯に及んだ以上、その行為責任は執行猶予の言渡しを受けていない者よりも重いのであって、再度の執行猶予に対する安易な期待を与えるべきではないと考えられることによるものでございます。

 また、今般の法整備におきまして、保護観察付執行猶予中の再犯についての再度の執行猶予を言い渡すことができるようにすることとしておりますが、これを言い渡すための要件として、現行法と同じく、情状を特に酌量すべきものがあることが必要とされ、初度の執行猶予よりも特に酌量すべき情状がない限り、再度の執行猶予を言い渡すことができないところでございます。

 このように、再度の刑の全部の執行猶予の言渡しが相当でない場合にはそれがなされないようにしていることから、執行猶予の言渡しの取消しによる心理的強制を低下させるものではないと考えております。

 むしろ、引き続き社会内処遇によることが改善更生、再犯防止に適当と考えられる者について、その選択を可能とし、裁判所の選択肢を増やすものであり、これによって、罪を犯した者の特性に応じた処遇をより一層充実させることができるものと考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 刑の執行猶予制度の拡充といっても、事案事案が違うわけですから、しっかりとそれを見て、つけるかつけないかということが、するというふうな御答弁をいただきましたので、引き続きよろしくお願いを申し上げます。

 次に、保護観察官、保護司の人員体制の強化また支援について質問させていただきます。

 本改正によって、保護観察付執行猶予による保護観察対象者が増えることとなった場合、保護観察に携わる保護観察官、保護司の方々への負担増加が懸念されます。

 人員体制の強化が必要であると考えるとともに、改正後の円滑な運用のためには、保護司活動のデジタル化を推進するなど、保護司の負担軽減や活動支援に取組が必要である、重要であると思います。

 また、保護司の活動は安全で安心な地域づくりのための活動でもあり、地方公共団体からの支援が必要不可欠と考えます。地方公共団体が保護司活動への充実した支援を行うためには、国から地方公共団体への財政支援も必要と考えますが、その前提として、地方公共団体による保護司活動への支援の現状と課題がどうなっているのか、答弁を求めます。

宮田政府参考人 地方公共団体の中には、保護司が面接を行うための場所を提供してくださったり、保護司の相談に応じる窓口を設置していただいたり、手厚い支援をいただいている例もあるものと承知をしております。

 しかしながら、保護司の活動に対する地方公共団体からの支援の状況は様々でありまして、団体ごとに相当な差があるのが現状です。また、その地方公共団体からは、保護司の活動への支援に必要な人的、物的体制の整備が十分でないなどの課題を抱えていると伺っております。

 法務省としても、引き続き、全ての地方公共団体に対し、保護司の活動に対する理解を深めていただき、支援を充実していただけるよう、支援に努めてまいりたいと思います。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 私の母も親戚も保護司を務めていて、小さいときには保護観察の方がよく家に来て、母の苦労だったりとか又は親戚の苦労等もいろいろ聞いています。

 衆議院に当選させていただいてから、保護司の皆さんともいろいろと意見交換をさせていただく中で、なかなかなり手も少ないと。いろいろな先生方も御指摘でありますけれども、やはり私の選挙区でもそのようなことがたくさんあります。しっかりと物的やまた人的支援をしていかなければならない、そのためにも財政を、支援もしっかりとしていかないといけないというふうに思っています。

 財務当局、また総務省も、地方公共団体、千七百四十一自治体の所管をしておりますので、しっかりとそことも連携を取りながら、できるだけ保護司の皆さんの負担が軽減できて、運用しやすいように取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 続きまして、侮辱罪について質問させていただきます。

 インターネット上での様々なコメントは、時にして過熱し過ぎることがあります。それによって傷つく人もいます。最悪の場合は、木村花さんのように命を落とす方もいます。木村花さんのことを思うと、非常に悲しくて悔しい気持ちでいっぱいになります。私からも、改めて、謹んで哀悼の誠をささげたいと思います。

 本改正の目的は、誹謗中傷、侮辱の行為によって命が失われる人、傷つく人、苦しむ人、悲しむ人を生じさせない、それが一番の目的であると思います。

 本改正で、法定刑の引上げによって、ある程度の抑止力につながり、木村花さんのような事案を二度と生み出さないのであれば、被害者を思うとき、異論は出ないのではないかと私は思います。

 表現の自由が毀損されるとの意見も出ていますが、私は表現の自由と侮辱の行為は異なるものと思っています。表現の自由といっても、何を言っても構わないというわけではないと思います。人を傷つけ、死に追いやるような表現は決して許されるものではありません。

 また、本改正後も、これまで同様に、構成要件は変わらない、処罰される範囲も広がらないと政府は答弁をしています。

 一方で、野党の対案は、誹謗中傷や目的などの新たな要件を設けています。

 誹謗中傷という軸で構成要件は明確に定められているのでしょうか、加害目的を要件としているため問題ないとするが、度を越えた言葉による誹謗中傷がなされた場合であっても、加害の目的がなかったと抗弁された場合には、加害目的誹謗等罪は成立するのでしょうか。御答弁いただきます。

米山議員 ただいまの質問にお答えいたします。

 まず、構成要件というものは、単に明確に定められることが重要なのではなくて、処罰の対象とするものをちゃんと網羅的に対象とできる一定の広さと、その上で、処罰されるものと処罰されないものが明確に区分けされるということが重要でございます。

 誹謗というのは、そしること、悪口を言うことであり、中傷というのは、事実に基づかないことを言って人を傷つけることを言い、これは、つまり、人を傷つけるような言葉を発することということでございまして、これ自体は一定の広さのある言葉でございますが、その言葉について、人の内面の人格を加害する目的というものが加えられておりますので、人の内面の人格を加害する程度の言葉である必要がありますし、また、加害の目的があるということで、一定の広さのある言葉の中できちんと区分けされるということでございます。

 これに対して、侮辱というものは、極めて軽いものから極めて広いものまであるわけです。委員の例からもありましたが、三振したバッターに引っ込めと言うのも侮辱ではあります。しかし、それを、処罰されるものと処罰されないものの区別が明確でないということが非常に問題でございまして、この法案をそのまま大きくすることには問題があるかと思います。

 そして、度を越えた言葉による誹謗中傷がなされた場合でも、加害の目的でなかったと抗弁された場合には成立しないかということでございますが、例えば、殺人罪においては故意というものが必要でございます。ナイフで人を刺したときに、いや、私は故意はなかった、ナイフで人を刺しても死ぬとは思いませんでしたという抗弁はできるのでございますが、通常、それは、ナイフで人を刺したということによって故意が認定されます。

 この加害目的誹謗等罪も同じくでございまして、度を越えた言葉を使っている場合には、加害の目的はなかったと言っても、その言葉を使ったこと自体で加害の目的が認定されるという枠組みになってまいります。ですので、死ねばいいのか、いつ自殺するのといった度を越えた言葉は処罰対象になるということでございます。

 また、ちょっと戻ってしまいますけれども、侮辱罪ではこちらは処罰対象にならないということになりますので、私といたしましては、加害目的誹謗等罪はきちんと、一定の処罰すべきをきちんと網羅した上で、処罰されるべきものとされないものを明確に分ける、そういう罰条になっていると考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 答弁を聞かせていただきましたが、私は必ずしも明確ではないというふうに感じました。

 最後に古川大臣の意気込みを聞きたかったんですけれども、時間が参りましたのでこれにて質問を終わらせていただきますけれども、しっかりと法改正、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。

 拘禁刑の創設について、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 時間の関係で、通告の二番、三番を後ろの方に回したいと思いますので、よろしくお願いします。

 明治期に刑法が制定されて以来、日本の刑罰制度は、懲らしめるという応報の考え方が色濃くありましたが、この度の改正案には、拘禁刑が改善更生を図るものと明記されました。また、平成十七年には、刑事収容施設法が、受刑者の改善更生、社会復帰に向けた処遇を図るものとして制定されております。

 平成十七年の同法の制定と今回の刑法等の改正によって、体系的に受刑者の改善更生を図るための法整備が整ったと見ていいのかどうか、また、今回の改正によって具体的な処遇に関する運用がどのように変わるのか、お示しいただきたいと思います。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十七年に成立いたしました刑事収容施設法でございますが、被収容者の人権を尊重しつつ、これらの者の状況に応じた適切な処遇を行うことを目的とし、受刑者処遇につきましても、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることをその原則とするなどを明確にしてございます。

 具体的な処遇といたしましては、作業、改善指導、教科指導を矯正処遇として規定いたしまして様々な取組を実施してきたところでございますが、御承知のとおり、懲役受刑者につきましては、刑の本質的要素でもある作業に一定の時間を割かなければならないという制約もございました。

 これに対しまして、拘禁刑受刑者に対する今回の改正でございますが、拘禁刑受刑者に対する処遇におきましてはそのような制約はなくなるために、まさに刑事収容施設法が規定する受刑者処遇の趣旨に沿った形で、作業、改善指導、教科指導を柔軟に組み合わせて実施していくことが可能となるものと考えてございます。

日下委員 私は、ゴールデンウィークの合間に、岩国女子刑務所を視察させていただきました。

 そこで感じたことは、まず、刑務所内の実務を担い、受刑者とじかに接する刑務官の処遇についても充実させる必要があること。女子刑事施設における女性職員の年齢構成は、二十歳代以下の若い刑務官が多い。二十歳代以下が三四%、三十歳代と合わせると半数以上という、そういうふうな形であります。結婚や出産を機に退職する方が多いこともその要因であります。結婚後は、仕事と家庭、子育てとの両立の問題があることも考えられます。受刑者の平均年齢は五十四歳、最高齢は八十八歳の方でしたが、かなり年上の受刑者に対応しているという状況でございました。

 この度の法改正によって、受刑者の資質に応じた個別処遇の充実が求められることから、刑務官の仕事も増え、能力の向上も必要となります。

 ソフト面では、刑務官など職員の増員や処遇の改善、女性刑務官のためには保育所を近隣に設けるとか、何かそういうふうなことができないのかなというふうなことも思いました。

 また、ハード面では、刑務作業、職業訓練、教科指導や各種矯正指導などを行う場所を考えると、現在の収容施設の部屋数では足りない、もう少し大きい部屋も必要だと感じました。

 今後、どのように職員の増員や施設整備をされていくのか、お考えをお示しいただきたいと思います。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 受刑者の改善更生のため、施設内処遇の一層の充実強化を図るには、御指摘のように、的確な特性の把握、こういったことが非常に重要でございます。このことについて、きめ細かに対応していく必要があるものと考えてございます。

 さらに、新しい改正案の下におきましては、被害者等の心情の聴取などもございます。聴取した被害者等の心情を受刑者に伝達するに当たりまして、受刑者への指導を丁寧に実施していくことなど、様々な要因での業務の負担というのが出てこようかと思ってございます。

 これらの指導を適切に行うためには、御指摘のような、面接室であったり教室といった物的な場所の整備というのも必要だと考えてございます。

 法改正の趣旨を踏まえまして、関係機関の御理解も得ながら、必要な人的、物的体制の整備に全力で努めてまいりたいと考えてございます。

日下委員 岩国刑務所には、初犯の、一入というんですね、一回目の入る、一入から六入以上まで、再犯者の割合はやはり高く、一、二入が減り、三入以上が増加していると伺いました。

 今後、犯罪歴も境遇も年齢もまちまちの受刑者の社会復帰及び再犯防止を進めるためには、AIやデジタル技術の活用も考えてはどうかと思います。犯罪傾向、そして処遇の内容、さらに更生保護施設や保護司との関わり方など、ビッグデータ化し、分析を行うことにより、再犯を減らすことも可能になるのではないかと考えます。また、デジタル化によって、保護司等の負担軽減にもつながるのではないかと思います。

 矯正局、保護局、それぞれのお立場で、現状と展望をお聞かせいただきたいと思います。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 矯正におきましては、令和四年度に、受刑者等の処遇に関する情報等のデータベースを管理する業務システムを刷新するための開発に着手したところでございまして、令和六年度の運用開始を目指してございます。この新たなシステムによりまして、受刑者等のデータにつきまして、様々なIT技術を活用しながら、効果的、効率的に収集、分析することを通じまして、犯罪傾向の把握、矯正処遇の検討であったり実施、それから効果検証といった様々な施策、取組を一層充実させることが可能となると考えてございまして、これらにより、受刑者等の再犯防止や社会復帰を更に的確に推進してまいりたいと考えてございます。

宮田政府参考人 更生保護におけるデジタル化に関しましては、保護司専用ホームページの運用を開始するなどして、保護司の負担軽減にも努めております。

 保護観察につきましては、犯罪等に結びつく要因などを明らかにするアセスメントツール、CFPと呼びますが、これを導入しております。これら、事件に関する記録をデータ化し、関係機関等とのデータ連携を一層進めることなどによって、保護観察処遇に活用することができる情報の質、量の充実化につながるものと考えております。そして、こうした情報を、AI技術も活用し、詳細に分析することで、より実効性のある再犯防止策の立案にも資するものと考えられます。

 本年度は、AI導入に関する調査研究を実施する予定としておりまして、その成果を踏まえ、保護司活動を含む更生保護行政のデジタル化及びこれに伴う処遇の一層の充実に取り組んでまいりたいと思っております。

日下委員 御答弁ありがとうございました。

 先日、参考人としてお呼びした只木教授は、矯正施設について、建築学の観点から、一つには保安、二つには教育、そして生活の三つの機能があり、ともすると保安機能に重点が偏って他の機能との不均衡が生じがちとされ、矯正施設の空間の在り方として、一般生活に近い備えの空間、限定された空間の中に社会性を持ち込む、規律維持にきちんとした備えの空間の三つを挙げられています。

 岩国刑務所におきましても、同じユニット内にある受刑者の単独室を鍵をかけずに自由に行き来できる半開放寮を見させていただきましたが、生活感、社会性という意味では大切だなと感じました。

 あと、刑期が三年以下の受刑者が約六割で、三年が最も多かったことを記憶しておりますが、ほぼ施設内だけでその期間を過ごすにしては、刑務所の殺風景さ、今までは応報の考え方が長く続いておりましたので、無駄なものは一切ない、そういうふうな殺風景さが広がっておりました。受刑者が教育や指導により学びを深め、自省を促し、改善更生を図るという意味では、保安上の問題にも配慮しつつ、例えば季節を感じられるような花や庭木などを十分に配置すべきだという印象を持ちました。

 受刑者の社会復帰、再犯防止を考えた場合、こうした空間整備が、この度の法改正の趣旨とも合致し、より効果が高まるのではないかと考えますが、これまでの取組や効果、今後の計画などがあれば、是非お伺いしたいと思います。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 被収容者の生活環境を整えるということは、改善更生の意欲の喚起であるとか円滑な社会復帰のためにも非常に重要であると私どもとしても認識しているところでございます。

 ただ、刑事施設におきましては、保安警備上、例えば鉄格子であったり、俯瞰防止が必要になる場面がございますし、樹木を増やすということで死角が増える、こういったデメリットもございます。

 そういった制約があることも事実でございますが、施設ごとにやや構造は異なってございまして、例えば、開放的な、御指摘のような半開放寮、こういったものをたくさん設置している施設もございますし、花壇を設置したり、運動場などに桜の木を植えて、運動時には季節を感じられるような、こういう工夫もしているところでございまして、可能な限り社会復帰のための生活環境にも配慮しているところでございます。

 引き続き、保安警備上の観点も考慮しつつ、再犯防止に資する生活環境の整備には取り組んでまいりたいと考えてございます。

日下委員 安上がりな刑事政策は結果として高くつくとも指摘されております。刑事施設や更生保護官署に係る人員や保護司、更生保護施設も含めた予算の拡充に向けて、どのようにお考えか、大臣の御決意を伺いたいと思います。

古川国務大臣 今回の法改正は、矯正施設で行う施設内処遇及び更生保護官署で行う社会内処遇の大幅な充実強化を図るものでございます。

 法務省としては、新たな制度下における各種業務の遂行に万全を期すべく、これに対応するために必要な刑務官等の矯正施設職員及び保護観察官の確保などの人的体制の整備に取り組んでまいりたいと存じます。

 また、刑事施設におきましては、先ほど委員から御指摘のありました受刑者の社会復帰や再犯防止の観点から、施設内処遇や社会復帰支援に必要となる物的整備やデジタル化の着実な実施に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 さらに、我が国の再犯防止を支える保護司や更生保護施設についても、新たな制度下での役割の重要性に鑑み、保護司の負担軽減等のためのデジタル化の着実な実施や、地方公共団体による保護司支援の確保、更生保護施設が充実した処遇を実施するための委託の在り方の検討など、人的、物的体制の整備に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

日下委員 今日は大変にありがとうございました。

 時間もほぼ参りましたので、これで終わらせていただきたいと思います。

鈴木委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 今日もよろしくお願いいたします。

 国家公安委員長もお席に着かれましたら始めるのでよろしいでしょうか、委員長。

鈴木委員長 はい。

 では、速記を止めてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 鎌田君。

鎌田委員 よろしくお願いいたします。

 まず、法務大臣に伺います。

 今回の刑法等の一部を改正する法律案の中で、侮辱罪の厳罰化というものが盛り込まれております。これの立法の趣旨、立法の目的、ここを改めて確認をさせていただきたいんですけれども、最近の頻発しているインターネット上での度を越える誹謗中傷等、これで傷つけられる人が多くいて、そういう行為も抑止をするためというものも入っているという認識でよろしいですよね。

古川国務大臣 お答えいたします。

 近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契機として、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識も高まってきております。

 こうしたことに鑑みましたときに、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止することが必要であります。

鎌田委員 法制審の方でも、それからこの委員会でも、今回のこの法改正が、後々、万が一にも、表現の自由、論評の自由、それを脅かすようなものになってはいけないという意見が再三にわたって出されてまいりました。

 今回のこの法改正で、そこを、表現の自由を脅かさないものだというふうに読み取るには、どこをもって示されているでしょうか。

古川国務大臣 今般の法整備におきましては、侮辱罪の構成要件は変更しておらず、処罰対象となる行為の範囲は変わらず、もとより、これまでと同様、正当な言論活動を処罰対象とするものではありません。

 侮辱罪は、事実を摘示せずに公然と人を侮辱した場合、すなわち、不特定又は多数人が認識できる状態で他人に対する軽蔑の表示を行った場合に構成要件に該当することとなりますが、刑法第三十五条が定める正当行為に該当するときは処罰されません。

 個別の事案の犯罪の成否につきましては、法と証拠に基づいて、最終的には司法において判断されることとなりますが、侮辱罪における侮辱にいかなる行為が当たるかという一般論としての基準については、侮辱罪で有罪が確定した裁判例により、その処罰範囲の概念は明確になっているものと考えます。

 また、どのような場合に刑法第三十五条の正当行為として違法性が阻却されるかにつきまして、法制審議会の部会におきましては、例えば、民事上の不法行為についての公正な論評の法理を踏まえつつ、民事上の不法行為責任よりも広く侮辱罪の成立が認められることはないとする考え方が示されたところでございまして、こうした考え方は実務においても参照されると考えられます。

 したがいまして、今般の改正は、法定刑を引き上げるのみであって、処罰の対象となる行為の範囲に変わりはないのでありますから、改正によって表現の自由を萎縮させるものではないというふうに考えております。

鎌田委員 私たちがすごく懸念をしているのは、今回の侮辱罪の厳罰化の中に、刑法の二百三十条の二と同様の、公共の利害に関する場合の特例、これが定められていない、これが明記されていない、だから、後々、権力者の意図でどうなるか分からないという懸念を示しているんです。

 今の御説明ですと、私はまだ足りないのではないかなと思うんですけれども、ここが実は肝腎なところで、ここで二百三十条の二と同じようなことを、同様なことをきちんとうたっておかないと、明記しておかないと、民主主義の健全な発展の中で最も尊重されるべき表現の自由を将来不当に萎縮させかねない、その危惧を抱いていると私は申し上げておきたいと思います。

 ちょっと具体に伺っていきたいんですけれども、資料を御覧いただきたいと思います。

 今日は、私は、昨年の十一月の、記者会見をなさっている伊藤詩織さんという女性の方が名誉毀損で訴えて、それで、ネット上のリツイートが、これは名誉毀損に当たるということでの判決を受けた後の会見の様子でありますけれども、ここで、リツイートしたことがこの伊藤さんの訴えに該当して罰金が命じられています。

 ちなみに、この侮辱罪の方でも、最近のインターネット上の度を越える書き込みが元になっています。例えば、いいねを押したり、本人のコメントをつけないでリツイートをかけたり、そういうものは今回のこの法定刑の中に該当するでしょうか。

古川国務大臣 今、御質問の趣旨がちょっと正確に把握できていないのかもしれませんが、一般論として、刑法上、リツイートやいいねとする行為が、侮辱罪に該当する行為が先に実行されて、既遂になった後に行われたとしても、他人に犯罪実行の決意を生じさせる教唆行為にも、他人の犯罪を容易ならしめる幇助行為にも該当しないために、教唆犯や幇助犯の成立はしないというふうに考えられています。そのような仕切りです。

鎌田委員 今すごく大事な御答弁をいただいたと思うんですけれども、ネット上でいいねやリツイートをした場合には、共犯、教唆、幇助、これには該当しないということでよろしいんですね。

古川国務大臣 いいねとか、さっきリツイートと言いましたけれども、そのリツイート行為自体にこの侮辱罪が成立するか否かにつきましては、収集された証拠に基づいて、捜査機関や裁判所において判断されるべきものでございます。

鎌田委員 ちょっと今お隣から、いいねとリツイートについての違いの御指摘があったんですけれども、そこのところの整理はされていますでしょうか。そこのところの整理というのは、いいねとリツイートの違いについて。

古川国務大臣 いいねというのは、その前提になるものがあるわけですね。そして、その前提になるもので侮辱罪が既に、先に成立している場合には、そのいいねでもって、つまり、いいねという、押したこと自体が、そこで侮辱罪が成立するということにはならないわけです。

 ところが、リツイートの場合には、何か書き込むわけですよね、何か表現をするわけでありますから、それが侮辱罪に当たるかどうかということについては、先ほど申しましたように、収集された証拠に基づいて、捜査機関や裁判所において判断されるべきものであるということでございます。

鎌田委員 つまり、分からないということでしょうか、現時点で。

古川国務大臣 ちょっと御質問の意味がよく分からないんですけれども、もう一度、正確にお願いします。(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛にお願いします。

鎌田委員 もちろん、人の心を傷つける度を越えた書き込み、それから、いいねや、そしてリツイートも含みます、ネット上ではいろいろなことが起こり得ますから。そのときに、リツイートすること、あるいは何か反応すること、それが、今回の侮辱罪の法定刑の引上げによって、自分の行為がこれに該当するのかな、どうなのかなというのが分からなくて、人々が、この行為は罪になるんだろうか、罪にならないんだろうかと。それが慎重な検討ならいいですけれども、人々の表現の萎縮につながってしまうということもあるわけですよ。そこのところは明確にしておかないといけないと思うんですね。

 もう一回お聞きしてよろしいですか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 リツイートにしても、あるいはいいねにしてもそうなんですけれども、個別具体的な、そのことそれぞれに関しまして、やはりそれは、個別に捜査機関あるいは裁判所において最終的に犯罪として成立するかどうかというものは判断される、そういうことでございます。具体的に云々と言うことはできません。

鎌田委員 ネット上ですと、多人数による一回だけの誹謗中傷行為の場合もあります。これはどうするんでしょうか。ネット上では、不特定多数による行為はもう今顕著です。どのように捉えればよろしいですか。

古川国務大臣 済みません、御質問の意味がよく理解できません。もう一度お願いします。

鎌田委員 結構です。じゃ、質問を変えます。

 保護法益について伺いたいんですけれども、侮辱罪というときの保護法益というのは、その人の外部的な名誉、傷つけられた、それが保護法益だと思うんですね。

 今回の立法の動機になっているものというのは、外部的な名誉ではなくて、人の内面の、心のうち、悲しみ、苦しみ、悩み、そして、それの取り返しのつかない状態のところが自死というところにまでいってしまうわけです。そうすると、これは、誹謗中傷を適切に捕捉するものとは私は言えないんじゃないかと思うんですね。

 だから、被害者を救済しようと、こういう書き込みが、度を越えた誹謗中傷などが多くなって、それで傷ついた人が増えている、そういう人たちの被害を少なくしよう、書き込み、そういったものがもっと抑えられるようにしよう、そういう目的で作られているわけですよね。だけれども、そういう傷ついている人というのは、内面が傷ついているわけで、心のうちが。そこは伝わりますでしょうか。保護法益のところで、外部的な名誉と、日常の平穏な生活、日常の穏やかな心の状況、それを保護法益とするかによって、私は違うと思うんです。伝わっていないですね。

 ですので、今回、インターネット上のこういった出来事が多いことで、それを抑えよう、そして被害者を救済しようという動機、目的、狙いがあって、今回の法改正は、私はここはリンクしていないんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

古川国務大臣 今般の法整備によりまして、侮辱行為を抑止し、また、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対して、これまでよりも厳正な対処を可能とすること、これがインターネット上の誹謗中傷対策になると考えております。

鎌田委員 国家公安委員長に伺います。

 さきの理事懇談会で、現行犯逮捕に係る基準ですとか可否ですとか、その紙を私たちはいただきました。その際、現行犯逮捕、これは、表現行為という性質上、逮捕時に、正当行為でないことが明白と言える場合は、実際上は極めて限定されるというペーパーをいただきました。昨日ですね。

 極めて限定されるということは、文字どおり、極めて限定されるんだと思います。ということは、そのケースがもう明らかになっているのではないかと思うんですが、どのようなケースをもって極めて限られるとされるんでしょうか。

二之湯国務大臣 特定の行為が侮辱罪に当たるかどうかについては、個別具体の事案に即して、法と証拠に基づいて個別に判断されるべきものと考えておりますから、そういうことでございます。

鎌田委員 私がお聞きしたのは、現行犯逮捕において、理事懇談会に示されたペーパーでございます、そして全法務委員の方々にもお配りされているペーパーであります。昨日です。

 そのペーパーの二番の白い丸、五つ目ですけれども、現行犯逮捕について書かれております。正当行為でないことが明白と言える場合は、極めて限られる、表現行為についてですね。だから、この極めて限られるということは、もう明らかになっているんでしょう。それを示していただきたいんです。

二之湯国務大臣 現行犯逮捕は、逮捕時に、犯罪であることが明白で、かつ、犯人も明白である場合にしか行うことができません。この要件を満たす場合には、住所不定であるなどの要件がなくても、法律上は可能となりますが、犯罪であることが明白というのは、違法性を阻却する事由がないこともまた明白ということであり、侮辱罪については、表現行為という性質上、逮捕時に、正当行為でないことが明白と言える場合は、実際上は想定がされません。

鎌田委員 私は、明白と言える場合は極めて限られるとあるから、限られているケースを教えてくれとお尋ねをしたんですが、今の御答弁の最後の方で、想定されないという表現があったんですが、聞いたことにそのお答えで、今日、よろしいんですか。

二之湯国務大臣 実際上は想定されないということでございます。

鎌田委員 私の質疑時間は終わりましたので、これで、言いっ放しで終わります。

 昨日、各法務委員に、全てに配られた現行犯逮捕の可否についての政府の統一見解の表現と、ただいまの国家公安委員長の表現は、具体的にはっきり踏み込んで示したという評価もできますけれども、今まで我々に示されたものとは全く違う踏み込みですので、そこのところは指摘をさせていただいて、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党、栃木県第四区の藤岡隆雄でございます。

 本日も、地元栃木県四区の皆様に感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩、関係各位に感謝を申し上げ、質問に入らせていただきたいと思います。

 冒頭、再び、胸から上に上げてはいけないということで、また資料の配付というのが認められないということでございました。本当に、残念ながら、何をそんなにこだわっていらっしゃるのかなと。例えば、こういう公の方の例をもって確認をさせていただこうということではございましたが、何でそこまで確認を、そこまでこだわっていらっしゃるのかが正直言って分からずに、大変情けないなということを申し上げまして、質問に入らせていただきたいと思います。

 さて、今の質問の続きでございますが、改めて二之湯大臣にお伺いをしたいと思います。

 二之湯大臣、免許の返納をされたということで、本当に英断に敬意を表したいということを思いますが、今日は是非、現行犯逮捕のことについて、ひとつ御英断もお願いしていきたいなということを思います。

 それで、侮辱罪に係る現行犯逮捕の可否の考え方、改めて丁寧に教えていただけますでしょうか。侮辱罪に係る現行犯逮捕の可否について、丁寧にちょっと御答弁をお願いしたいと思います。

二之湯国務大臣 警察においては、これまでも、捜査に当たっては、個別の事案の具体的な状況に即して、法と証拠に基づき判断がなされてまいりました。また、捜査に当たっては表現の自由等に対して配慮がなされておりまして、この点について、法定刑が改正された場合においても全く変わりません。

 その上で、現行犯逮捕は、犯罪であることが明白で、かつ、犯人も明白である場合にしか行うことができず、この要件を満たす場合には、法律上は逮捕は可能ですが、犯罪であることが明白というのは、違法性を阻却する事由がないということもまた明白であり、侮辱罪については、表現行為という性質上、逮捕時に、正当行為でないことが明白と言える場合は、実際上は想定をされないと考えております。

 そのため、委員お尋ねの、閣僚又は国会議員を侮辱した者が現行犯逮捕されるということは、実際上は想定されないと考えております。

藤岡委員 昨日お示しいただいたものから変わったということで、これは実際上は……(発言する者あり)お話ししますので、確認していますので。

 逮捕時に、正当行為でないことが明白と言える場合は、実際上は想定されないということでよろしいでしょうか。

二之湯国務大臣 実際上は想定されないということでございます。

藤岡委員 住居要件とかの話というのは御答弁には入ってこないんですか。ちょっと、もう一回、丁寧に読んでいただいてよろしいですか。

二之湯国務大臣 現行犯逮捕の基準でございますけれども、現行犯逮捕は、捜査機関において、個別具体的な事実関係に即して、法と証拠に基づき判断されるものであり、侮辱罪に限らず、あらゆるケースを想定した基準を示すことは困難であります。

 その上で、侮辱罪に係る現行犯逮捕の可否について申し上げます。

 まず、今般の法整備は、もとより、正当な言論活動を処罰対象とするものではございません。

 侮辱罪による逮捕に関して、今般の法定刑の引上げにより、住居不定であることなどの制限はなくなりますが、それ以外の要件に変わりはございません。

 捜査機関においては、侮辱罪による現行犯逮捕について、表現の自由の重要性に配慮しつつ、慎重な運用がなされるものと承知をいたしております。

 現行犯逮捕は、逮捕時に、犯罪であることが明白で、かつ、犯人も明白である場合にしか行うことができません。この要件を満たす場合には、住居不定であるなどの要件がなくても、法律上は可能となりますが、犯罪であることが明白というのは、違法性を阻却する事由がないことも明白であり、侮辱罪については、表現行為という性質上、逮捕時に、正当行為でないことが明白と言える場合は、実際上は想定されないのであります。

藤岡委員 今、重要な御答弁をいただいたと思います。想定されないということで、できないということを今おっしゃったということだと思います。本当に、こういう内容をきちっと、しっかりと周知をしていただきたいなということをまずは思います。

 古川法務大臣、同じ見解でよろしいでしょうか。

古川国務大臣 結構でございます。

藤岡委員 最後に一点確認したいんですが、では、できる場合というのはあるんですか、逮捕ができる場合というのが。国家公安委員長、お願いします。

二之湯国務大臣 実際上は想定はされません。

藤岡委員 ゼロということでよろしいですか。確認させてください。

二之湯国務大臣 再々申し上げていますように、実際上は想定されないということでございます。

藤岡委員 最後に確認します、もう一回。ゼロということでよろしいですか、現行犯逮捕、ゼロ。

二之湯国務大臣 再三同じ答弁で申し訳ございませんけれども、実際上は想定されないということでございます。

藤岡委員 そうすると、できる場合というのはどういう場合なんですか。そこをおっしゃってください。

 これは、国家公安委員長、お願いします。私は、このことに関して、国家公安委員長にお願いします、大事な答弁でございますから。

二之湯国務大臣 実際は想定されないということでございますから、私から答弁をすることはこれ以上できません。

藤岡委員 これは本当に大事な話でございますから、局長ということではなくて、これは今お答えになられておりませんので、できる場合があるんですかと私はお聞きしております。それに対してお答えをお願いいたします。

大賀政府参考人 侮辱罪に関する現行犯逮捕についてお尋ねでありますけれども、先ほど国家公安委員会委員長からも答弁がございましたように、いろいろな要件を満たす場合には、法律上は逮捕は可能だということでございますけれども、そもそも、表現行為という性質上、その表現が逮捕時に正当行為でないということが明白だと言える場合が、実際上は想定されないということであります。もうこれ以上言いようがございません。

藤岡委員 そうすると、想定されない、結局、では、できる、できないといったら、これはどちらになるんですか。国家公安委員長、お願いします。

二之湯国務大臣 現行犯逮捕は、逮捕時に、犯罪であることが明白で、かつ、犯人も明白である場合にしか行うことができないものでありますが、犯罪であることが明白というのは、違法性を阻却する事由がないこともまた明白ということであり、侮辱罪については、表現行為という性質上、逮捕時に、正当行為でないことが明白と言える場合は、実際上想定されないと考えております。

藤岡委員 同じ答弁の繰り返しということで、その点についてのお答えがちょっと得られないということに関しては、これにつきましては引き続き、このお答えがないということでございますから、委員長、これはお答えの方を是非お願いしたいと思うんですけれども、整理を。

鈴木委員長 質問を続行してください。

藤岡委員 ちょっと速記を止めてもらってよろしいですか、速記を。(発言する者あり)いや、質問の趣旨は同じ趣旨でございます。だから、できるんですかと。できる場合というのがあるんですかということを私はお聞きをしております。

二之湯国務大臣 現行犯逮捕というのは実際上は想定されないということに、私は、答弁に尽きるわけでございます。

藤岡委員 大変恐縮でございますが、ちょっと、委員長、静粛にという注意をしていただいてよろしいですか。これは純粋にお聞きしておりますので。

 これを、だから、想定されないということで、私も重要な答弁ですねと申し上げました。そうしたら、できる、できるというふうな話も聞こえてきました。実際、それで、できるのでしょうかと私はお聞きしております。これに関して、国家公安委員長から明確な今答弁がございません。私はそのことを申し上げております。

 したがって、国家公安委員長、これはできるんですか。できるかできないか、イエスかノーでお願いいたします。

二之湯国務大臣 実際上は想定できないから、私は同じような答弁を繰り返しているわけでございます。

藤岡委員 本当に、お答えになられていないということでございます。

 いいですか。できるかできないかということで、想定をするしないということのところは今お聞きしました。想定していないんだけれどもできる場合があるというふうな形に、何か私には聞こえました。したがって、それができるのかできないのかというところでございます。

 国家公安委員長、これは本当に、できるのかできないか、想定という言葉じゃなくて、できるのかできないのかということでお答えいただきたいんですが、お願いします。

二之湯国務大臣 法律上は可能でございますけれども、実際上は想定されないということでございます。

藤岡委員 それは、法律上は可能で、じゃ、実際、逮捕しないということですか。それをお願いします。

大賀政府参考人 先ほども御答弁いたしましたけれども、現行犯逮捕の要件を満たす場合には、法律上は可能でございます。しかしながら、表現行為という性質上、逮捕時にその表現行為が正当行為かどうかということを明白に判断するという場合は、実際上、本当に想定されないということでございますので、どうか御理解をいただきたいと思います。

藤岡委員 それはもう、できないというふうに、では、理解をさせていただきますけれども、よろしいですか。

二之湯国務大臣 今も刑事局長がおっしゃいましたように、法律上は可能でございますけれども、表現行為、あるいは言論の自由、あるいは表現の自由、憲法の基本的、尊重という立場からすれば、実際上は想定されないということでございます。御理解いただきますようお願いいたします。

藤岡委員 では、最後に古川法務大臣にお聞きしたいと思いますけれども、これは想定をされない、これはできないということでよろしいですか。

古川国務大臣 実際上は想定されないことを具体的にお答えすることは困難でございます。

藤岡委員 では、実際上は想定されないということで、実際上はできないというふうに理解をさせていただきたいなということで思いますが。

 それでは、次の質問の方に移らせていただきたいということを思います。

 古川大臣にお聞きしたいと思いますけれども、死ねばいいのに、いつ自殺するのといった誹謗中傷というのは、これは侮辱に該当するんでしょうか。

古川国務大臣 侮辱罪は、事実を摘示せずに公然と人を侮辱した場合、すなわち、不特定又は多数人が認識できる状態で他人に対する軽蔑の表示を行った場合に構成要件に該当することとなります。

 個別の事案の犯罪の成否は、収集された証拠に基づき事案ごとに判断されるべき事柄でありますことから、お尋ねの行為が侮辱罪に該当するかどうかについて国会で問われた場合に、法務大臣として確定的なお答えをすることは困難です。

 お尋ねに関連して、近時、侮辱罪により有罪が確定した裁判例を御紹介すると、例えば、被害者のツイッターアカウントに、てか死ねや、くそが、きもいなどと投稿した事案などがあるものと承知をいたしております。

藤岡委員 少し、処罰範囲が変わらないという中で、今申し上げたことが対象になるのかどうか、やはり不明確なところがあると思います。

 今回の改正で、侮辱罪の厳罰化で、このネット、SNS上の誹謗中傷を必ずしもやはり捉え切れていないという課題があると思います。最後に、その御見解をお願いします。

鈴木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

古川国務大臣 そもそも、インターネット上の誹謗中傷は、公然と行われると過激な書き込みが次々と誘発されていって、多数の者からの誹謗中傷の内容がエスカレートして、非常に先鋭化することがあるという特徴を有しており、こうした状況に至れば、他人の名誉を侵害する程度が特に大きく、抑止の必要性が高くなります。

 今般の侮辱罪の法定刑の引上げにより、公然と行われる侮辱行為を抑止し、また、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対して、これまでよりも厳正な対処を可能とすることが、インターネット上の誹謗中傷対策になると考えております。

 すなわち、今般の侮辱罪の法定刑の引上げにより、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示すことでこれを抑止する効果があるとともに、インターネット上で行われる当罰性の高い悪質な侮辱行為に対して、これまでよりも厳正に対処することが可能となります。

 インターネット上で行われる悪質な侮辱行為は、時に人を死に追いやる、あってはならない行為であって、法定刑の引上げによる抑止と厳正な対処によって、悪質な侮辱行為の根絶を図ることが重要であると考えております。

 また、処罰対象とならない事案であっても、被害に遭われた方からの人権相談への対応など、行政的な諸施策を推進していくことが重要であるというふうに考えております。

藤岡委員 捉え切れていないところがやはりまだあるということの課題を申し上げまして、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、立憲・無所属会派を代表して御質問させていただきます。

 先ほど来、近時の裁判例をというふうに、基準として示すというふうにお伺いしておりますけれども、今までの答弁の中で、近時の裁判例というものは、私が今ほどお配りしておる資料の十九ページ以降、これしか示されていない、これしか把握していないということなんですが、おっしゃられている裁判例はこれだけだということでよろしいですか。イエスかノーかでお願いします。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、把握している裁判例、この委員のお示しになった事例集がございますが、これは、法制審議会の部会におきまして、私ども事務当局から、令和二年中に侮辱罪のみにより第一審判決・略式命令のあった事例を事例集として、資料としてお配りしたものでございます。

 また、これ以外に侮辱罪の成立が認められた複数の事例をこの部会において口頭で紹介したところでございます。また、これらの事例のほかにも、近時、侮辱罪により有罪が確定した裁判例について、幾つかあるものと承知をしております。

米山委員 何例あるんですか。

川原政府参考人 数というものについて、詳細な数としてはお答えいたしかねるところでございますが、例えば、例として申し上げますと、被害者のツイッターアカウントに、てか死ねや、くそが、きもいなどと投稿した事案などがあるほか、公刊物に掲載されている裁判例として、これは、○○は、会社名でございますが、悪徳○○弁護士と結託して被害者を弾圧している、両社は責任取れなどと記載したビラを被害者たる法人の支店のあるビルの玄関柱に貼付した事案などがあるものと承知しております。

米山委員 そうしましたら、告訴状を受理して、そして処罰されなかった例を把握されていますか。それも簡潔に答えてください。イエス、ノーで。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員のお尋ねのある観点で事案を把握することをしていないために、お答えすることは困難でございます。

米山委員 そうしますと、先ほど来、結局、ほかのはあると言いながら、事実上、もうこの十九ページ以降しかないんですよ。先ほど来、それ以外にちゃんとしたのは出てきませんから、まあ、プラス五とか六とかあるのかもしれませんが、ほぼほぼないんでしょうね。

 そうすると、どうなるか。私自身が、このトップにある告訴状を出しましたけれども、どうなるかというと、現場の方々は分からないと言うんです。それで、この裁判例を示して、ほら、あるでしょうと言うと、じゃ、まあ、しようがないと言って、受理するんですよ。

 私、これでいいんですかと再三聞いているんですね。別に告訴状は、ちゃんと条件がそろった告訴状は受理する、それはそれでいいですよ。でも、全部受理したら大変なんですよ。やはり犯罪がおよそ成立しなそうなものは、告訴状としては受理し得るけれども、およそ成立しないから、やめた方がいいよと、そういうことをちゃんと言うから整理されるのに、ともかくこの十九ページ以降のこれしかないといったら、それは、私は余りにも基準としてできていないと思います。

 先ほど来、ひたすら、もう基準はあるからいいと言う。基準がないと言うと、与党の先生方から、今まであったからいいじゃないかと言われる。だけれども、侮辱罪というのは、もとより漠然として、基準は正直できていなかったんです。それが、拘留と科料しかないから誰も問題にしなかっただけで、本来、このぼやっとした問題を抱えてきたんですよ。

 それが、一年以下の懲役、三十万未満の罰金というものが来て顕在化したんです。顕在化したんだから、私はそれを、基準はちゃんと示すべきだ、こう言っているんですが、法務大臣、相変わらず基準を示さずに、この後ろの三十例だけで、現場の判断に任せる、そういう御趣旨でよろしいですか。イエス、ノーでお答えください。

古川国務大臣 個別の事案の犯罪の成否につきましては、法と証拠に基づき、最終的には司法において判断されることとなりますが、侮辱罪に言う侮辱にいかなる行為が当たるかという一般論としての基準については、侮辱罪で有罪が確定した裁判例により、その処罰範囲の概念は明確になっております。

米山委員 イエス、ノーと聞いたときは、イエス、ノーだけで結構ですので、時間がもったいないので。

 私の配った資料に、P四から十八、これは、個別の事案についていろいろな答弁がなされているわけですよ。個別の事案について答えられないなんということはないんです。

 これに対して、法務大臣、これは新しい、新設の、罰則の新設や処罰範囲の変更に際してだから、これは個別の事案に対して答えておる、今度は構成要件は変わっていないから、従前のものだから答えられないと言っているんですけれども、それは全然整合しないと思うんです。そこを、合理的に何でそれが違うのかを説明できないと思うんですよ。だって、私が配った資料、これは、ホームページに書いてあるものから含めて、これはちゃんと、法的拘束力といいますか、公文書として残っているわけですよ。これはちゃんと、幾ら今までない法案についての話であったって、もうできているわけですよ。できていて、この答弁を参照してみんな行動を決めるわけです。影響しているわけですよ、裁判に。だから、法務省の見解が既存の法条に影響するなんということは十分あるんです。それなのに、何で今回だけしちゃいけないのか。

 しかも、今ほど申しましたとおり、今まで漠然としていた、その問題が放置されていた。それが今顕在化したんだから、じゃ、ここでちゃんと一定の基準を示さなきゃいけないんじゃないですかと言っているんですけれども、大臣に、新設の法案のときには個別の事案に答えられるのに、何で既存の法案では個別の事案には一切答えられないのか、その合理的な、論理的な答えをお伺いします。理由をお伺いします。

    〔委員長退席、山田(美)委員長代理着席〕

古川国務大臣 罰則の新設や処罰範囲の変更に当たっては、国会審議の場や法務省のホームページ等において犯罪の成否についてお示しすることがございますが、これは、新設、改正する条文の文言の意義や処罰範囲の概念を明確にするために、その文言や要件を立案した趣旨としてお示しするものでありまして、既存の罰則について、個別具体的な事実関係を前提として犯罪の成否を回答することとは異なります。

 罰則の新設や処罰範囲の変更を内容とする法律が施行されますと、刑事実務におきましては新たな罰則の適用に関する判断が蓄積されていくこととなります。それらの判断は個別具体的な事実関係を前提としたものであり、細かな事実関係の違いによって結論が異なることがあり得る上、法務省がそうした判断の全てを把握しているわけでもありません。

 それにもかかわらず、法務省が細かな事実関係を捨象して、現に施行されている罰則の適用に言及すると、実際には適用された事例があるにもかかわらず適用が困難であるとの見解を示すこととなったり、逆に、実際には適用困難との判断がなされた事例が積み重なっているにもかかわらず適用可能であるとの見解を示すこととなるといった事態が生じ、捜査機関や裁判所に不当な影響を与えるおそれがあるだけでなく、国民の間にも誤解を生じるおそれがございます。

米山委員 つまり、合理的な理由はない、そういう御答弁だと思うんですよ。合理的な理由を全く説明できていませんからね。だって、こちらの答弁には、例えばバグはウイルスに当たらないとか、そういうものはちゃんと文書として残っていて、それをみんな参照しているんですから。なのに、これだけ駄目というのはおかしいんです。

 そもそもなんですけれども、侮辱罪というのは、言うまでもないかもしれませんが、明治八年太政官布告の讒謗律に遡り、明治四十年に刑法として現行の文言になったわけなんですよ。当時の状況と今の状況は全然違うわけです。大臣もそうおっしゃいましたでしょう。インターネットが普及して、SNSが普及して、まるで適用条件が変わった。だから、過去の積み上げというのは役に立たないんです。今、新しい状況でどう適用するのか。それはみんなが困っているんですよ。しかも、今までは科料だからまあいいやと思っていたのが、懲役を食らう、だったらちゃんとしなきゃいけないと思っているわけなんです。

 しかも、先ほど大臣が御答弁いただいた、逮捕はされない、逮捕されることはおよそ想定されないというのは、実はあれは正当行為に対するある種の解釈を示されたんです。示されましたでしょう。今までずっとしなかったのに、個別の事案じゃないかもしれませんよ、ある程度抽象的な話ですよ、でも、ある程度抽象的な事案に対して、正当行為を広く取るから逮捕できませんというふうに判断したんですよ。それは、もし大臣がおっしゃるみたいに判断が捜査機関に影響を与えちゃいけないというんだったら、それも駄目でしょう。ちゃんと判断しているんです。

 だから、新しい事態が生じた、それに対してどうこの法案が適用されるかどうか分からない、それに対して、一定の判断の基準は示していいし、示されたんです。それは別に、もちろん最終的な判決じゃないですよ。それに対して違う判決を裁判所がやってもいい。でも、それがちゃんとできるんです。

 そして、先ほどの、大臣が、現行犯逮捕はほとんど想定されない、およそ想定されないと言ったのは、私はすばらしい答弁だと思います。なぜなら、それによってみんな安心できるから。なぜなら、それによって言論の自由が守られるからです。大臣の御答弁はそういう価値があるんです。大臣がきちんと、事案に対して、何も私も、例えば私の例が本当に有罪になるかと聞きたいんじゃないですよ。事案に対して一定程度抽象化していい。抽象化した中で一定の基準を示すことがちゃんと言論の自由を守ることになる。それが国会の場なんです。

 ですので、私は是非、大臣に、それぞれの個別の事案を言われたら、通り一遍のことを言うんじゃなくて、別に個別の事案そのままでなくていいですから、ある程度抽象化した上でガイドラインを示していただきたいと再三申し上げているところです。

 そこで、御質問させていただきますが、安倍総理はうそつきだと言った場合、これは侮辱罪に該当しますでしょうか。

 ただ、これだけ言うとまた同じことを繰り返されますので、私として期待している御答弁を恐縮ながら言わせていただきますけれども、言論の自由は極めて重要である、二百三十条の二項、名誉毀損罪というより重い犯情においても、二百三十条の二項という例外規定が示されている、したがって、政治家について一定の根拠に基づいて行われた批判は、それに侮辱的要素が入っていても、通常、公共の利害に関する事実に係り、公共目的であるものと考えられ、侮辱罪が成立する場合は極めて限られると。先ほどと同じですよね。そう言っていただければ、みんな随分安心して、この条文、迎えられるんですよ。ちゃんと言論の自由は守られるんです。

 その前提でお伺いします。安倍総理はうそつきだと言ったら侮辱罪に該当しますか、しませんか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 犯罪の成否は、収集された証拠に基づいて事案ごとに判断されるべき事柄でありますから、お尋ねのような事例で侮辱罪が成立するかどうかについて国会で問われた場合に、法務大臣として確定的なお答えをすることは困難でございます。

 その上で、一般論として申し上げますと、侮辱罪は、事実を摘示せずに公然と人を侮辱した場合、すなわち、不特定又は多数人が認識できる状態で他人に対する軽蔑の表示を行った場合に構成要件に該当することとなりますが、刑法第三十五条の正当行為に該当するときは、違法性が阻却され、処罰されないこととなります。

 また、先ほど委員が御質問の中で、先ほどの私の答弁で、何か評価を下したというようなことをおっしゃったわけですけれども、それは違うと思いますね。あくまでも先ほどは、侮辱罪に係る現行犯逮捕の可否についてのお尋ねに答弁をしたものでありまして、個別の事案ではありません。なおかつ、実際上は想定されないがゆえに、具体例をお答えすることは困難ですというお答えをしております。

米山委員 これで押し問答してもしようがないんですけれども、想定されないというのは一つの評価なんですよね。そこはもう言ったってしようがないんだとは思いますけれどもね。

 ですので、大臣は、少なくとも想定され難い、だって、想定され難いというのはどういうことかって、大概のものは正当行為になるということですから。若しくは、大概のものは正当行為としての可能性が残っていると言っているんですよ。

 だから、何せ、別に個別の事案に個別に答えなくたっていいんです。個別の事案というのは、刑法の教科書を読んだら分かりますでしょう。個別の事案というのは、それ自体に答えることが目的じゃなくて、そこから抽象化することに答える目的なんです。だから、抽象化して答えていただければと思っております。

 最後に、また繰り返されるのも非常になんではあるんですけれども、本当にこのまま、この三十例しか示さないと、言論も萎縮しますし、現場が混乱します、どう考えたって。私が本当に告訴状を出してきて分かりましたから。現場は全く分からない。この三十例で処罰すべきかなんて、まるで分からないですよ、普通に考えて。大臣は分かるのかと聞きたくなりますけれどもね。

 あえてもう一回お聞きしますけれども、我々にはもう結構ですよ。ノーと言うから。現場に対してこの三十例しか示さないんですね。ほかはしないんですね。御質問です。イエスかノーかで答えてください。

古川国務大臣 法務省として、個別の具体的な事案に対する評価を、法務省が予断を持って、ここからここはセーフ、ここからここはアウトというようなことを申し上げることはできません。

 それは、この場で何度となく申し上げておりますように、犯罪につきましては、これは捜査機関でありますとか裁判所、最終的には司法権たる裁判所において判断がなされるべきものでありまして、ここで、法務省、法務大臣が、何か法的評価を与えるようなことを申し上げると、不当な影響を与えるおそれがありますから、ですから、個別のことについてお答えすることはできないということを申し上げております。

 それから、るる御質問をいただいておるのですけれども、今般の改正は、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみでありまして、処罰対象となる行為の範囲、すなわち犯罪が成立する行為の範囲というのは変わらないんです。変わりません。

 したがいまして、今般の法整備をすることによって、これまで侮辱罪によって処罰できなかった行為が処罰できるようになるものではないんですということを改めて申し上げます。

米山委員 たった一言だけ言わせていただきますが……

山田(美)委員長代理 米山隆一君、時間が終わっておりますので。

米山委員 処罰範囲は変わらないかもしれませんけれども、時代が変わったんです。だから、きちんと基準を示していただかないと、今の時代においてそれがどう適用されるのか分からないんです。

 以上です。

山田(美)委員長代理 次に、前川清成君。

前川委員 日本維新の会の前川清成です。

 昨日と今日、令和四年五月、法務省、警察庁と書かれた紙が配られました。これは警察庁が作ったんですか、法務省が作ったんですか。法務大臣にお尋ねしていいのか国家公安委員長にお聞きしていいのか分かりませんが、どちらがお作りになったのか、まずお答えいただきたいと思います。

古川国務大臣 政府統一見解でございます。

前川委員 この紙の中に、侮辱罪の成否の基準について、侮辱罪に言う侮辱がいかなる行為が当たるか、基準については、侮辱罪で有罪が確定した裁判例により、その処罰範囲の概念は明確になっている、こういうふうに書かれています。

 処罰の範囲が明確であるのならば、例えば先ほど米山議員がおっしゃったように、誰々総理大臣はうそつきだとか、あるいは、私が昨日例に挙げたように、A総理大臣はあほだとか、これをツイッターに投稿した場合、処罰されるのかされないのか、明確に答えることができるはずだと思うんですが、政府統一見解ということですので、国家公安委員長、お答えいただいてよろしいですか。

二之湯国務大臣 お尋ねの事案につきましては、侮辱罪が成立するかしないかについてでございますけれども、個別の犯罪の成否は、収集された証拠に基づき事案ごとに判断されるべき事柄であることから、この場で確定的なお答えをすることは大変難しいと思います。

前川委員 それでしたら、甲子園球場で、何万人か入っている甲子園球場のスタンドからある観客が、三振したB選手に対して、あるいはホームランを打たれたC投手に対して、ピッチャーに対して、役立たず、給料泥棒、こういうふうにやじった場合、これは侮辱罪が成立して一年以下の懲役に科せられる場合もあるのでしょうか。国家公安委員長、いかがですか。

二之湯国務大臣 お尋ねの件でございますけれども、それが侮辱罪になるのかならないかということは、個別の犯罪の成否は、収集された証拠に基づき事案ごとに判断されるべき事柄でありますので、この場で確定的なお答えをすることは大変難しいと思います。

前川委員 この場で確定的な答えができないとなると、野球場でやじったら、場合によったら逮捕されて刑務所に行かなければならないかもしれない。国民に不安を与えてしまうんですよ。やはり、犯罪というのは、どこまでが犯罪で、どこまでが犯罪でないのか明確にしないといけないのではないかと思います。

 それと、これ以上言いませんけれども、大臣にしたって、国家公安委員長にしたって、収集した証拠に基づいて法と正義で云々かんぬんといつもおっしゃいますけれども、例えば司法試験の短答試験で、次の場合に侮辱罪が成立しますか、枝があって、成立するとかしないとか答えないといけない場合があるわけですよ。その場合に、法と証拠に基づいて判断します、こんなの答えてしまったら零点ですよ。

 次に、一昨日、大臣と議論になりかけていた正当な行為、これについてお話をさせていただきたいと思います。

 四月二十七日の委員会で大臣は、正当な表現行為であれば、それは違法性を阻却する、刑法三十五条に基づいて違法性を阻却する、こういうふうに答弁をされました。

 それで、一昨日申し上げたように、刑法三十五条は、正当な行為とは書かれておりません。「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」こういうふうに書かれておりまして、この条文をてこにして、手がかりにして、刑法の教科書などにおいては、社会的相当性が認められる行為については違法性が阻却される、こういうふうになっております。社会的相当性のある行為。

 その社会的相当性の部分をきっと古川大臣は省略されて、正当な行為、こうおっしゃっているんだろうと思うんですが、そもそも、侮辱罪において、侮辱において、社会的相当性のある誹謗中傷、これはどんな場合に成り立つんでしょうか。

古川国務大臣 正当行為には様々な類型のものがありまして、また、証拠によって認められる具体的な事実関係に即して個別に判断されるべきものでありますから、一概にお答えすることは困難でございます。

    〔山田(美)委員長代理退席、委員長着席〕

前川委員 四月二十七日に、二之湯国家公安委員長は、何がセーフでアウトか、私は知識を持ち合わせておりません、こういうふうにおっしゃいました。

 国家公安委員長で、しかも、ある日突然道端で尋ねられたのではなくて、侮辱罪の法定刑引上げが審議されている国会に臨んで、知識を持ち合わせていない、こういうふうにおっしゃいました。

 国家公安委員長でさえ、正当な表現行為に当たるのか当たらないのか直ちに判断できないにもかかわらず、現場の警察官の方、刑事手続において、正当な行為に当たるのか、侮辱に当たるのか、一番最初に判断するのは警察官ですが、警察官はどのような知識と判断能力に基づいてこの点を評価するのでしょうか。

二之湯国務大臣 被害者からの被害の届出によりまして警察において侮辱罪にこれが該当するのかどうかという、行為を認知した場合は、当該行為が正当行為として違法性が阻却されるかどうかも含めて、第一義的には、おっしゃるように、警察において判断することになっておるわけでございます。

 特定の行為が正当な行為、いわゆる正当な表現行為に当たるかどうかについては、過去の判例などを踏まえた上で、個別の事案の具体的な事実関係に即して、把握した証拠に基づき判断されるべきものと考えております。

前川委員 国家公安委員長、揚げ足を拾うわけじゃないんですが、過去の判例って、何かあるんですか。

二之湯国務大臣 特定の行為が侮辱罪に当たるかどうかについては、個別の事案の具体的な事実関係に即して、把握した証拠に基づき判断されるものと考えております。

 一方で、改正法が成立した場合には、各都道府県警に対し、例えば、侮辱罪で有罪判決が確定した事例を周知することも含め、法改正の趣旨等を適切に周知するよう警察庁を指導してまいりたいと思っております。

前川委員 先ほど国家公安委員長は、正当な行為に当たるかどうかについて判例に照らして判断するんだ、こうおっしゃったので、正当な行為かどうかメルクマールを示した判例があるんですかとお尋ねをしたんですが、この点についてはお答えになりませんでした。寡聞にして、私は、侮辱罪の成否について、正当な行為に当たるかどうかについて、最高裁あるいは高裁が示した判例というのは知りません。したがって、そういうような判例はないと思います。だから、全て個別具体的に判断すると言われれば、そのときの捜査官による恣意的な、差別的な判断を許してしまうことになります。だから、私はよくないと思います。

 実は、昨日、私たち日本維新の会は、この侮辱罪、対案を提出させていただきました。

 その中で、表現の自由を萎縮させないように、公共の利害に関する場合の特例を検討するよう政府に求めました。

 これは私の試案ですけれども、例えば、刑法二百三十条の二を参考にして、公共の利害に関わる事項についての論評は侮辱罪の違法性を阻却するとか、公務員又は公選による公務員の候補者に関する論評は公共の利害に関する事項とみなす、こういう条文をつけ加えたらいいのではないか、こういうふうに考えておりますが、この点、法務大臣の御見解はいかがでしょうか。

古川国務大臣 お答えをさせていただきますが、その前に、前提として、刑法第三十五条の正当行為というのは、一般に、社会生活上正当なものとして許容される行為であるとされているものと承知をしておりますが、どのような場合がこれに該当するかということは、収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄でありまして、一概に基準としてお示しすることは困難でありますが、法制審議会の部会では、この点に関して基本的な考え方が議論されております。

 部会では、例えば、民事では、事実の摘示を含まない論評や意見表明について不法行為責任が追及され得るものの、公正な論評の法理が判例上確立しており、人身攻撃に及ぶなど論評の域を超えるものでない限り不法行為の違法性が否定されているところ、これは、憲法第二十一条の要請であって、憲法の解釈としても、同法第三十五条を介して当然に認められるべきであり、刑事では、更に限定がかかることはあっても、民事における不法行為責任より広く侮辱罪の成立が認められることはないという考え方が示されたところであり、このような考え方は実務においても参照されるものと考えております。

 というようなこと、委員重々御存じだと思いますけれども、あえて、聞いておられる方もおられますから、これを御紹介をさせていただいた上でお答えをさせていただきますけれども、御指摘の条文は、公務員又は公選による公務員の候補者に関する論評は、公共の利害に関わるものとみなして違法性を阻却し、侮辱罪として処罰しないこととするものであると理解されます。

 法制審議会の部会におきまして、公務員に対する侮辱を処罰しない旨の規定を設けることを検討すべきとの意見もあったのです。あったのですが、これに対しては、仮に公務員を保護の客体から外すこととすると、あからさまにうそを前提として公務員を侮辱した場合でも処罰しないこととなり、刑法第二百三十条の二とも矛盾することになりますし、なぜ公務員であれば虚偽の事実を前提として侮辱してよいこととなるのか理解できないということになる、あるいは、政治家をカテゴリカルに全て侮辱罪の対象外とするのは行き過ぎではないかといった意見が述べられたところでございます。

 他方、現在でも、刑法第三十五条により正当な表現行為は保護されており、このことは、構成要件の変更を伴わない今回の法定刑の引上げにより変わることはございません。

 こういう趣旨の意見もありまして、議論の結果、侮辱罪について違法性阻却に関する特例規定を設けないという意見が大勢を占め、本改正と同内容の答申に至ったところでございます。

前川委員 今大臣がおっしゃるように、前半の部分は、お聞きしたところ、違いましたけれども、後半の部分のところ、公共の利害に関わる表現であれば、いかなる誹謗中傷であったとしても違法性を阻却してしまうというのは、確かに、ある意味、行き過ぎがあるのかもしれません。しかし、その一方で、その場その場の出たとこ勝負で判断しますとなると、国民に予測可能性を与えませんので、それは表現の自由を萎縮させてしまいます。

 ですから、今日すぐにこの刑法改正案を修正しろとは言いませんが、憲法学者とか刑法学者の意見も聞いて、適切なメルクマールを設定する、こういう努力を引き続きしていただいたらどうかと思います。

 次に、昨日提出した維新の対案では、インターネットによる誹謗中傷の被害を根絶する、このためには刑事罰だけでは足りない、こう考えています。

 被害救済という点でいえば、木村響子参考人がおっしゃったとおり、賠償金が安過ぎるのではないか、賠償金で裁判費用さえ賄えないのであれば、被害者は泣き寝入りを余儀なくされてしまうのではないか。木村さんは、裁判費用に一千万円近いお金がかかったとおっしゃっていました。ですから、私たちは、損害賠償制度であるとか、あるいは被害者に対する給付金制度、あるいは裁判費用の支援、こういったものも必要ではないかというふうに提案をしています。

 この文脈で確認をしたいんですが、今、改正プロバイダー責任法がまだ施行されていません。この段階で、例えばツイッターに誹謗中傷した加害者に対して損害賠償請求を起こそうと思うと、まずはツイッター社を債務者にして、IPアドレスの開示を求める仮処分を申し立てます。仮処分の決定が出て、裁判所に保証金、お金を預けて、その上で、IPアドレスが判明したら、今度は通信事業者、例えばNTTを被告にして、発信者の住所、氏名を開示する裁判を起こします。仮処分に勝って、通信事業者を被告にした裁判に勝って、やっと加害者に対して損害賠償を請求する裁判を起こすことができます。

 しかし、ツイッターを債務者にした仮処分、通信事業者を被告にした開示請求の裁判、さらには加害者を被告にした損害賠償請求訴訟、これらの手続を弁護士に委任せずに御自身でやることは困難です、不可能です。

 ところが、木村さんは、御自身の裁判において、判決は百三十万円を認容しただけです、しかも一円も払われませんでした、こういうふうにおっしゃっています。

 他方で、その人が、これは加害者のことですけれども、どこの誰かを突き止めるために百万円近いお金がかかってしまった、こういうふうにおっしゃっていました。

 そこで、今日は最高裁にも来ていただいていますが、私たちは、インターネットによる誹謗中傷、その場合に、裁判所が認容する賠償額、これが低過ぎるのではないかと考えておりますが、最高裁の方では、賠償額、各地の裁判所がどの程度の金額を認容しているのか、統計をお持ちなのか、お持ちでないのか。

 あるいは、諸外国の裁判所が、同種事案においてどの程度の賠償額を認容しているのか、調査しておられるのか、していないのか。

 あるいは、これまでの裁判実務であれば、慰謝料として百万円前後を認定して、その一割を弁護士費用として、追加して認める、これが実務です。しかし、木村響子さんの例のように、誰が加害者か突き止めるためだけに百万円以上かかってしまう。そうであれば、仮処分や、あるいは発信者の開示情報、特定するための開示請求、これらの裁判費用についても、不法行為の賠償額の一部として認めるべきではないかと、私たちはそう考えておりますが、この三点について最高裁の御見解をお伺いしたいと思います。

鈴木委員長 最高裁判所門田民事局長。時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 まず、一番最初の御質問の関係ですけれども、御質問の損害賠償額について、司法統計において、裁判所が認定した額を集計しているといったことはございません。

 二つ目の御質問の関係ですけれども、諸外国の裁判所が認定した損害賠償額について、最高裁が調査しているといったことはございません。

 最後の御質問ですけれども、損害賠償額の認定につきましては、個々の裁判体において、具体的な事案の内容等に応じ、これはどういう請求がされているかも含めてですけれども、それに応じまして判断がされているものと理解しております。

 認定額の多寡について委員からの御意見がございましたけれども、この評価にわたる点についてコメントすることは、個別事件の裁判体の判断に影響を及ぼすことがございますので、答弁を差し控えさせていただきます。

前川委員 時間が参りましたので終わりますが、もちろん司法の独立は承知しております。しかし、裁判所の判断と……

鈴木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、よろしくお願いいたします。

前川委員 世間の常識とがずれていますので、この点については是非御検討をお願いできたらと思います。

 終わります。

鈴木委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 大事な九分なので、すぐに質問に入りたいんですけれども。

 今日、御質問しようと思ったのは、視点を変えようと思ったんですが、例えば、改善更生を、矯正することで再犯を防ぐことはできるのかというふうにお尋ねしたかったんですけれども。

 仮に、私が侮辱罪で、大臣を侮辱して、禁錮刑になりました。それで、刑務所に入って、出てきたんですけれども、また同じことを繰り返すのか返さないのかは、何を基準にして自分は更生すればいいのかと尋ねられたときに、法務省は、分かりませんと言って、それで通用するのかということですよね。

 犯罪を検挙するのは、それは警察であったり、それをジャッジするのは裁判所であったりするけれども、法案を出してきているのは法務省の法務大臣で、閣議決定して出してくるわけですね。

 だから、自分が犯罪を犯してしまったんですけれども、今までの矯正教育の考え方で、百四十年、五十年、江戸時代からずっとやってきたのかもしれません。それで、これから、拘禁刑に変えるとか、矯正教育も、その人に合った作業だとか治療、また支援策によって更生できると思って、今やろうとしているんだけれども、実際、それができるのかというお尋ねなんです。それには、この社会で何をルールにするかしないかというのをやはり示さないと駄目なんだと思うんです。

 じゃ、仮に私が孫から、おじいちゃん、侮辱罪って何と聞かれたら、何と答えりゃいいんですか。より具体的に、だって、皆さんは優秀な人だから、難しい漢字を並べて、ああ、そうか、こういうことだろうなというふうに思ったとしても、一般の国民は分からないよ。

 だから、自分がここまで言っちゃったりここまで書き込んだら、結局、犯罪になるというのを自分の中で、だって、刑量を上げるということは、抑止をさせるという意味で刑量を上げるわけじゃないですか。犯罪を犯す人を社会から少なくさせようというのが一つの目的だったんだと思うんです。私は、刑法だとか、犯罪者が少ない社会の方が、やはり住みやすい社会だと思うんですよね。ちまたにいる人を検挙したからそれでいいのかといったら、そうじゃなくて、拘禁刑をつくることによって、社会になじみやすいように戻しましょうという考え方でやっているんだから、社会の中ではこれがルールですよというのをある程度オーソライズしなければ、同じことを繰り返しちゃうんじゃないかという考え方です。

 大臣に、今の質問、分かりづらかったかな。

古川国務大臣 ちょっと分かりづらかったので確認をさせていただきますが、要は、改善更生の議論の前に、先ほどの、侮辱罪のことに関して、分かりにくいのではないか、やはり一般の人に分かりやすいような説明が要るのではないかという御趣旨の、そういう御質問と受け止めてよろしいですか。

 何度かお答えをさせていただいておりますけれども、今回の改正によりまして、法整備によりまして、侮辱罪の構成要件を変更いたしておりません。したがいまして、処罰される行為の範囲が広がるわけではありませんし、これまで処罰されなかったものが今回の改正によって新たに処罰されることになるということはないわけです。まず、それを申し上げておきたいと思います。

 それで、いろいろな、この質疑の中で、いや、既に例えばテロ等準備罪のときなんかはそういうことを示しているではないかというような御指摘もありましたけれども、それは、新たな刑罰を新設するときであるとか、そういうときにきちっとやはり、国民の皆さんに迷いや不安があってはいけませんから、それは御説明をするということでございまして、あくまでも、今回の侮辱罪の法定刑の引上げというものは、その処罰の対象、範囲となる行為は変わらないわけでございます。という御回答でよろしいでしょうか。

鈴木(義)委員 駄目だね。

 何で私が例示を挙げて、だから、私がもし刑務所に入っちゃって、侮辱罪で、大臣を批判したから刑務所に入るわけですよ、六か月なら六か月。(古川国務大臣「入りませんよ」と呼ぶ)まあ、いいじゃないですか、例えの話なんだ。それで、出てきたときに、何が侮辱に当たるかどうかが社会の中でオーソライズされていなければ、結局同じことをまた繰り返すでしょうということで聞いているわけです。私はそう思うんですよね。

 裁判所だとか警察だとかというのは、実際にそれを起こすんだけれども、今回は、法律を出してきているのは法務省が出してきているわけだから、そこのところのやはり考え方の差異が出ちゃっているから、逃げたような答弁になっちゃうんだと思うんですよね。

 じゃ、もう一つお尋ねしたいのは、今までの考え方で本当に再犯を防ぐことができるのかとなったときに、もう一歩踏み込んで、いろいろな国でやっている事例も含めて取り入れていかないと、社会更生がなかなかできづらい。

 例えば、前任の方が過去に質問しましたけれども、精神的に脳のダメージがある方とか、高齢者になって認知症を少し持つような方が万引きしてしまって、二回、三回やったら窃盗で捕まってしまった。自分が悪いことをしている自覚がない人も世の中に増えてきちゃっているということです。そこのところを捉えて、新しい考え方を、刑事施設、刑務所の中にも入れていかないと、やはり同じことを繰り返されちゃうんじゃないか。

 例えば、性犯罪を犯した人が、女性を見るとむらむらむらむらしちゃうから、これはもう、ある考え方は、病気だという人もいるし、病気でもないわけですね。でも、そういう衝動に駆られちゃうということがあれば、幾ら矯正教育をしたとしても、その場はいいけれども、社会に出てくれば同じことを繰り返してしまう。

 まあ、日本の場合は外国と比べて再犯率のパーセンテージがすごく低いから問題にされないんでしょうけれども、そういったことも踏まえて、今回、拘禁刑に改正することによって、今までとは違う、百十五年でしたっけ、大幅に変えようというところだから、考え方も変えない限り、結局また再犯が繰り返されちゃうんじゃないかというふうに思うんですけれども、簡潔に、大臣、御答弁いただきたいんですが。

古川国務大臣 委員は、要するに、受刑者の自覚がやはり大事であるということを御指摘になっているのではないかなと。違いますか。もう一度御質問をお願いいたします。

鈴木(義)委員 何か言うと差別だ、区別だというふうに言う人がいるから、違う言い方をしているだけの話で、結局、自分の責任というのが、どこまで責任を負えばいいのかというのを自覚できない人も世の中にいるということです。

 それが、私たちの社会で、何とか罪、何とか罪、何とか罪といって逮捕されて、裁判にかけられて、あんたは半年だ、一年だ、三年だといって刑務所に入れられるわけだ。でも、元々、自分がその意識がない、自覚がない人がいて、幾ら刑務所に入れられても、そこで教育されたとしても……

鈴木委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

鈴木(義)委員 ということです。だから、含めて、もし御答弁いただければ。

古川国務大臣 改善更生のための処遇によって再犯を防止することができるかどうかという御趣旨のお尋ねだというふうに受け止めさせていただいて、お答えをいたします。

 今般の法改正は、罪を犯した者の改善更生、再犯防止に向けた処遇をより一層充実させ、安全、安心な社会の実現を目指すものであります。

 刑事施設では、従来から、再犯防止のため、受刑者の特性に応じ、各種の職業訓練を含む作業や改善指導を行うとともに、社会復帰に向けた就労支援等に取り組んできました。近年、二年以内再入率も低下しており、刑事施設における処遇は再犯防止に一定の効果を上げているものと認識をいたしております。

 今般の法改正によりまして、個々の受刑者の特性に応じ、作業、指導、社会復帰支援を組み合わせた柔軟な処遇が可能となり、これまで以上に再犯防止に資する取組ができるものと考えております。

 今後は、各種の改善指導を始めとした処遇の効果等を更に検証しながら、法改正の趣旨を踏まえ、受刑者への動機づけを高める働きかけを充実させるなどして、再犯防止に効果的な矯正処遇の実施に努めてまいりたいと存じます。

鈴木(義)委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 昨日の理事懇談会に法務省と警察庁が提出をした資料、そして今日の改訂版のところに、侮辱罪の成否の基準の中で、侮辱罪に言う侮辱にいかなる行為が当たるかという一般論としての基準については、侮辱罪で有罪が確定した裁判例により、その処罰範囲の概念は明確になっているというふうに書かれております。

 その点で、特に重要な憲法上の権利である公共的、政治的事項に関する表現の自由についてなんですけれども、公共的、政治的表現行為に関する有罪が確定した裁判例をお示しをいただきたいと思います。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 法務省におきまして、侮辱罪により有罪が確定した裁判例を網羅的に把握しているものではございませんが、例えば、最高裁判所の判例といたしまして、市長を侮辱する内容を記載した新聞一万部を頒布する行為につきまして、憲法の保障する言論の自由の範囲内に属するものでないことは明らかであるとして、侮辱罪の成立を認めた例があるものと承知しております。

本村委員 今、最高裁の判決を御紹介いただきましたけれども、ある新聞が、あほにつける薬とか、市長を、犬的存在とか、頭脳の空っぽさですとか、そういう表現があった、これは侮辱に当たるということで、裁判所が、最高裁が判決をしているわけです。

 公共的、政治的表現行為をするであろう新聞でも、処罰をされております。もちろん、人格を否定することは行ってはならないと私も考えますけれども、社会の中でこういう表現というのは少なくないというふうに思っているわけです。

 こういうことも結局、処罰をされてしまう。しかも、今後は懲役、禁錮、まあ今後、拘禁にするというふうにいうんですけれども、罰金というふうになるわけですけれども、今回のこの最高裁の判決の場合、これはどういう、懲役になるのか罰金になるのか、その点お伺いしたいんですけれども。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的事案につきましてどのような刑を科すかということは、その事案ごとに、その事案の裁判を担当する裁判所が決める事柄でございまして、法務省としてお答えをすることは困難でございます。

本村委員 法の提案者として、法務大臣、法務省は、侮辱罪の懲役、禁錮、罰金、まあ今後、拘禁にするというんですけれども、それぞれのレベルというのは、何なら懲役なのか、何なら罰金なのかとか、そういうことをお示しをいただきたいというふうに思うんですけれども。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、法定刑を引き上げた場合に、具体的事案がそれぞれどのような刑になるかということは、その当該事案の有する当罰性に応じて裁判所において判断することでございますが、当該事案の当罰性というのは、その事案固有の、個々の事情を判断して決せられる事柄でございますので、法務省として一概にお答えすることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。

本村委員 憲法上非常に重要な権利の部分でも本当によく分からないというのが、この侮辱罪の成否の基準ですとか、どういう処罰がなされるのかということだというふうに思います。よく分からないがゆえに不安は広がり、結局、言論の自由が脅かされるということが懸念されるわけです。

 よく分からない中で警察がいろいろ判断をするということになるんですけれども、北海道の警察やじ排除事件についてですけれども、資料を御覧いただきたいと思います。

 判決の中で、警察官の証言が、証拠として出された動画を見ると事実とは認定されず、採用することができないということで、裁判官は証言が採用することができないということを書かれているわけです。それは一人ではなく、三人の警察官の証言が次々と違う、動画と違うと。これは組織的な事実に反する証言なのかというふうに思わざるを得ないんですけれども、国家公安委員長、お答えいただきたいと思います。

二之湯国務大臣 本件に関しましては、北海道警察からは、いずれも現場の警察官がそれぞれの状況を踏まえて、法律に基づき必要と判断した措置を講じたものと報告を受けておるわけでございます。

 ただ、現在、国家賠償請求訴訟が係属中でありますから、訴訟当事者ではない私の立場で発言することは控えさせていただきたいと思います。

本村委員 事実に反することを三人の警察官がそれぞれ証言をしている判決を読んで、私は非常に心配になりました。

 現行犯逮捕だけではなく、重罰化する侮辱罪、いろいろな犯罪はあるんですけれども、通常逮捕においても、事実に反することで令状を取ろうとするのではないか、裁判所も警察が言うことをちゃんと本当に否定できるのか、そして逮捕ということに至るんじゃないかということも大変懸念されるわけでございます。

 警察官の公正性というのは問われているというふうに思いますけれども、ここの北海道警察の証言、これは本当に反省していただかなければ公正性は担保できないと思うんですけれども。

二之湯国務大臣 委員御指摘のとおり、事実と異なる証拠に基づき警察が不当に逮捕状の請求を行ったり、それによって得た逮捕状によって逮捕することはあってはなりません。

 警察では、これまでも、法と証拠に基づき適正に捜査を行っているところでありまして、このことは逮捕状の請求にあっても同様であると認識しております。

 引き続き、適正な捜査を行うよう警察を指導してまいりたいと思っております。

本村委員 北海道警察が、三人の警察官の証言が動画と違うということで、大変重大な事態だというふうに思っております。そういうのが、この侮辱罪の運用でもやると。

 九分ですけれども、これだけではないので次に移りたいんですけれども、受刑者の作業や指導は、本人がやる気がなければ更生につながらない、強制してもほとんど効果がないというのが国際的な刑事政策の潮流だというふうに思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいというふうに思います。

古川国務大臣 お答え申し上げます。

 作業、指導といった矯正処遇の効果を高めるためには、受刑者自身に自分が受ける処遇の意義を理解させ、これらを自発的に受ける気持ちを持たせることが重要であると認識をいたしております。

 そのため、本人が自発的に処遇を受ける意思がない場合には、これまでも、実務上、職員による面接等により本人に対する動機づけを高めるなど、必要な働きかけを行ってきたものと承知しております。

 拘禁刑の創設によりまして、より柔軟な矯正処遇が実施できることを踏まえ、矯正処遇に対する本人の希望、意欲などを丁寧に聴取し、動機づけを高めるための働きかけを手厚く行うなど、これまで以上に効果的な矯正処遇の在り方について検討してまいりたいと存じます。

本村委員 この法律では、作業、指導を強制するものになっており、やはり国際的な潮流に反しているということを指摘をして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後三時四十三分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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