衆議院

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第5号 令和4年11月8日(火曜日)

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令和四年十一月八日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 薗浦健太郎君 理事 谷川 とむ君

   理事 藤原  崇君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石井  拓君    石橋林太郎君

      岩田 和親君    小田原 潔君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      熊田 裕通君    鈴木 馨祐君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      津島  淳君    鳩山 二郎君

      深澤 陽一君    山下 貴司君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         葉梨 康弘君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   文部科学副大臣      簗  和生君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 親家 和仁君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 今福 孝男君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房学習基盤審議官)       寺門 成真君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           里見 朋香君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           青山 桂子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           野村 知司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   参考人

   (学習院大学法務研究科教授)           大村 敦志君

   参考人

   (東北大学大学院法学研究科教授)        久保野恵美子君

   参考人

   (弁護士)        近藤 博徳君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     石井  拓君

  山下 貴司君     小田原 潔君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     加藤 竜祥君

  小田原 潔君     山下 貴司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、学習院大学法務研究科教授大村敦志君、東北大学大学院法学研究科教授久保野恵美子君及び弁護士近藤博徳君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いでございます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、大村参考人、久保野参考人、近藤参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず大村参考人にお願いいたします。

大村参考人 おはようございます。学習院大学で民法を担当しております大村敦志と申します。

 本日は、このように意見を申し述べる機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 法制審議会の民法(親子法制)部会の部会長を務めさせていただいておりましたけれども、本日は、その審議に参加した一研究者としての個人的な意見を申し上げさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今回の民法改正は、一方で、未成年の子に対する親権に関する見直しを、他方で、実の親子関係の成立ないし確定に関わる見直しを内容とするものでございます。以下、このうち実親子関係に関わる見直しを中心に私の考えるところを申し述べますけれども、一言で申しますと、いずれの改正案も、子供の立場を重視しつつ、親子関係に関する民法上の規律を現代的な観点から見直そうというものであるというふうに理解をしております。

 親権の見直しに関しましては、詳しいことは後に久保野教授が述べられるのではないかと思いますので、私からは一点だけ。新たに原則的な考え方が明示されるということは、親子法において意味があるだけではなく、人というものの価値を重視する民法の大きな流れに合致したものであり、今後の立法の指針にもなる重要な提案であるというふうに位置づけているということのみを申し上げさせていただきたいと思います。

 そこで、実親子関係に関わる見直しについてでございますけれども、実親子関係は、これまで、母親が婚姻中にその子を懐胎したか否かによって、嫡出の親子関係と嫡出でない親子関係に分けられてまいりました。この二種類の親子関係を通じて主として問題になるのは父と子の関係、父子関係でございますけれども、父子関係の成立ないし確定については、嫡出子には嫡出推定という制度が、嫡出でない子には認知という制度が設けられております。今回の改正案は、嫡出子の父子関係を中心にしつつ、嫡出でない子の父子関係にも及ぶものでございます。

 嫡出子の親子関係に関して最も重要な点は、婚姻中の母が産んだ子は原則としてその夫の子とされるということでございますけれども、これを嫡出推定と呼んでおります。このようにして、嫡出子の父子関係はいわば自動的に定まり、一定の期間内に夫が父子関係を否定する嫡出否認の訴えを起こして、それが認められない限り、夫が父であるということが確定いたします。今回の改正案の中心を成すのは、以上のような嫡出推定と嫡出否認とを組み合わせた広い意味での嫡出推定制度を見直すという点にあると理解をしております。

 具体的には、第一に、嫡出推定が及ぶ範囲を広げて、現在は推定が及ばない、婚姻の成立から二百日までに生まれた子に嫡出推定が及ぶこととしております。

 これは、夫婦の間に生まれた子は、婚姻前に懐胎されていたとしても、婚姻後に生まれれば嫡出子として扱われるということを意味しております。嫡出子の概念を拡張するように見えますけれども、婚姻成立の日から二百日までに生まれた子も嫡出子として届出ができるという従来の判例、戸籍実務の考え方を正面から認めた上で、子の地位をより強化したものでございます。

 あわせて、重要なのが、再婚後に生まれた子の扱いでございます。

 現在は、婚姻の解消などから三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎されたものと推定されまして、前の夫の嫡出子であると推定されますけれども、再婚後に生まれた子については、前の夫の子であるという推定と後の夫の子であるという推定が重なるという場合に、後の夫の子であるという推定を優先させるという提案、これが併せてなされているところでございます。

 これによりまして、三百日問題と呼ばれております、離婚後出生子の親子関係に関わる問題のうち、母が再婚をしたというケースにつきましては、後の夫の嫡出子としての届出が可能になります。

 また、このように二つの嫡出推定が重なる場合につきまして優劣を定めるということにいたしますので、これによって、この推定が重なること自体を避けようという考え方に基づいてできておりました再婚禁止期間というものが不要になります。女性についてのみ存在していた再婚禁止期間の廃止というのも、そのため提案されているところでございます。その結果、従来懸案になっておりました男女平等の実現が図れるというふうに評価をしているところでございます。

 第二に、従来、子の出生を知ったときから一年以内とされておりました嫡出否認の訴えの期間を三年以内に延長し、かつ、訴えを起こすことができる者を子供や母にも拡張するということとしております。

 これまでは、子や母が父子関係を否定したいと考えていても、訴訟を起こすことができるのは夫だけでしたので、夫の協力なしに父子関係を否定するということはできませんでした。

 しかし、この提案によりますと、子や母の側から父子関係を否定することができるようになりますので、再婚によって後の夫の子とされず、前の夫の子のままであるという場合であっても、子や母の側から嫡出否認の訴えを起こすことが可能になります。これもまた、三百日問題の解消に資する提案であるというふうに評価できるかと思います。

 なお、この提案は、二〇二〇年に制定された生殖補助医療に関する法律にも影響を与えるために、必要な修正をするということも提案されているというふうに理解をしております。

 嫡出でない子の親子関係についても、若干の提案がなされております。

 嫡出でない子の場合には、認知によって成立ないし確定された親子関係が、場合によっては認知無効の訴えによって覆されるという仕組みになっておりますけれども、従来、認知無効の訴えには期間制限というのがございませんでした。これは、子供の地位をいつまでも不安定な状態に置くことになるということで、事情に応じて認知無効の訴えを権利濫用で制限する必要があるということが言われてまいりました。しかし、どのような場合に権利濫用となるかということは明らかでありませんので、改正案では七年という期間を設けるということが提案されております。

 なお、この提案との関連では、国籍法上の取扱いも問題になりますけれども、従前同様、濫用には一定の対応をすることを前提にしつつも、認知無効の主張に期間制限を設けて子の地位の保護を打ち出すことができたということは、全体として評価できることなのではないかと考えております。

 以上のような実親子関係の成立ないし確定に関する見直しは、民法制定以来百二十年ぶりに行われるものであるというふうに理解をしておりますけれども、従来の基本的な考え方自体を変更するものではございません。すなわち、嫡出推定あるいは認知という制度によって、生まれた子供に父を与え、子供の養育環境を整えるということをベースとするものでございます。

 その上で、一方で、嫡出推定の重複につき合理的な解決を与えるとともに、従来は余りにも厳格に制限されていた嫡出否認の訴えを緩める、他方で、従来は全く無制限であった認知無効の訴えに一定の制限を設けることを通じて、全ての子供の父子関係をバランスの取れた形で保護しようというものであるというふうに見ることができると考えております。

 もちろん、今回の実親子関係の成立ないし確定に関する改正案に関しましては、検討はされたものの最終的には提案に至らなかったものもございます。その理由については、次のように考えております。

 実親子関係の成立ないし確定という問題については、子供の立場に立ちつつ、父の立場、母の立場を考慮に入れるとともに、制度の整合性、安定性ということも考えなければなりません。また、戸籍窓口での対応可能性ということも重要な要素でございます。当事者の方々には様々な御意見があるであろうと思いますし、実務家や研究者の間にも様々な異なる見方がございます。

 そうした中でよりよい制度を考えていくには、多くの人たちが同意できる項目から始めて、意見対立のある項目へと進んでいくということが必要なのではないかというふうに考えております。今回の改正案は、そうした検討方法を通じて取りまとめられたものであるというふうに認識をしているところでございます。

 最後に、全体的な評価と今後の見通しについて、一言だけ触れさせていただきたいと思います。

 親子法に関しては、近年では、二〇一一年に親権の喪失、制限につき、二〇一九年に特別養子につき民法の改正がなされ、また、二〇二〇年の生殖補助医療法により民法の特則が設けられているところでございますけれども、今回の民法改正案は、親権行使の態様に関する原則を定めるものと実親子関係の成立ないし確定という親子法の根幹に関するものから成っておりまして、非常に重要度の高いものであるというふうに認識をしております。この改正が実現し、さらに、親子関係の中心的な効果である親権につき具体的に定める規定やこれと密接に関連する規定の見直しが進むということを切に願っております。

 私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、久保野参考人にお願いいたします。

久保野参考人 東北大学で民法を担当しております久保野恵美子と申します。

 今日は、このような場で意見を申し上げる機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 法制審議会民法(親子法制)部会にも幹事として参加しておりましたけれども、本日は、民法改正案に対して研究者としての意見を申し上げたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 民法改正案の内容の概要は、今、大村教授から御説明のあったとおりですけれども、親権に関する見直しが子の立場を重視するとの意義があることはもちろん、実親子関係の成立、確定に関するルールの見直しも、親の状態がどのようであるかということと独立して、子の立場を重視し、子の利益を図ろうとするものであり、法案は、全体として、民法の親子関係に関するルールを子供の立場を重視する観点から改善していくものであり、子供の立場に立脚した民事基本法制の推進としての意義を有するものであると考えております。

 以下では、基本的に親権の見直しに絞って二つの観点から意見を申し上げ、さらに、運用上考慮されるべきと考える点と今後の課題に触れたいと思います。

 法案の親権の見直しに関する部分に対する評価ですけれども、まず、児童虐待への対応としてということからです。

 児童虐待防止の観点からの民法の親権法の改正は、二〇一一年に続くものです。二〇一一年の改正は、主に、親権者が子の利益を害する態様で親権を行使しているときに、どのように介入して子供の利益を確保するかということに関わるものでした。

 同改正は、親権の不適切な行使に対して子供を保護する方策を取るに当たり、民法の規律が使いにくいものであるとの指摘を背景に行われました。つまり、親権の喪失よりも効果の軽い親権の停止あるいは制限する制度が必要だという指摘でありまして、結果として効果の軽い親権の停止制度が新設されたというのが、使いやすい制度への改正の代表的事項でありました。これは、この二〇一一年改正以前から、児童虐待防止法の制定や児童福祉法改正によって対処されてきたことと共通する課題に応えるものであったと言えると思います。

 これに対しまして、今回の改正案は、子の利益が害されているという事例への事後的な介入というよりも、子の利益のために親権がどのように行使されるべきかを法文上明らかにするという、これまでの親権法改正では必ずしも十分に対処されていなかった、いわば残された課題に応じるものと言えます。

 具体的には、現行の民法八百二十二条に存する懲戒権の規定を削除し、さらに、新たに親権者が子を監護、教育するに当たっての一般的な指針となる事柄を示す規定、改正案の中の新たな八百二十一条、これを新設することが提案されております。新しい規定となります八百二十一条案には、子供の人格の尊重、年齢、発達の程度の考慮、そして、体罰などの禁止が盛り込まれております。

 事後にどのように子供を保護するかということのみならず、事前に一般的な観点から親権の適切な行使とはどのようなことかということを示すということによって、より包括的に児童虐待への対策に資する内容の改正だと評価できます。

 さらに、今回の親権法の見直し案には、児童虐待防止対策にとどまらない、一般的な意義があると言えます。

 先述のとおり、二〇一一年改正は、親権喪失、停止制度の整備が主たる事項でしたけれども、同改正は、さらに、子供の立場を重視しての親権法の見直しという、より一般的な重要な意味も持っていました。

 少し振り返りますと、その二〇一一年の改正での意義というのは、親権の喪失の原因について、親権を濫用しなどと親の行為態様の側から定めていたものを、子の利益が害されるかどうかという、子の状態の側から定める内容に転換しました。また、懲戒の範囲について、懲戒権規定の削除はそのときは成し遂げられなかったわけですけれども、懲戒の範囲について子の監護、教育に必要な範囲に限られるということを明示しただけではなく、その監護、教育ということは子の利益のために行われるべきなのだということを明記したこと。これらに、子の利益という観点からの親権法の見直しとしての一般的な意味を一定程度持っていたというのが二〇一一年改正でございました。

 二〇一一年改正の以前から、民法は元々親権を子を支配する権限として規律しているわけではないということは理解されていたことではありますけれども、この二〇一一年の改正は、子の利益のための親権を監護、教育の指針として正面から明示するという重要な意義を有しました。

 もっとも、子の利益というのは抽象的で内容を定めにくいものであることも確かです。今回の改正案で提案されている新しい八百二十一条というのは、親権者と子の間であっても、子供を一人の人格として尊重し、子の年齢や発達の程度を考慮しなければならないとして、子の利益のための親権の行使の仕方についての指針を具体化するものであります。

 今回の改正が実現しますと、親権についての当事者の協議や裁判所における判定において、改正法案八百二十一条で示された指針が、運用や解釈に生かされていくことになることが期待されます。

 子供の人格の尊重ということで申しますと、子供の意見や、子供の状態や、どのような意向を持っているか、あるいは子供の状態ということに、あるいは価値観に配慮し、自らの価値観や考え方を不当に押しつけるという形ではなく親権を行使するということが期待されますし、また、年齢や発達の程度に応じた個々の子供の状況に応じて、それに適合した形で監護や教育を行うということが要請されていくことになると考えられます。

 このように、今回の改正は、二〇一一年の親権法の改正で示された子の利益のための親権という指針の延長にありつつ、子の利益を具体化するという意義があるとまとめることができます。

 以上、親権の見直しについて二つの観点からその意義を述べました。

 続いて、今後について望むことと課題に簡単に触れさせていただきます。法案の下での、法案が実現した場合、改正が実現した場合の実務運用について望むことです。

 意見の最初の方で、今回の法案についてこのように述べました。親の状態がどのようであるかということと独立して、子の立場を重視し、子の利益を図ろうとするものと評価できるというふうに申し上げました。

 しかし、子の利益を図っていくためには、できる限り、親が不適切な養育を行うような状態となる原因を取り除いていくことが望ましいわけです。

 親権の見直し案では子の利益のために親権者がこうすべきとの指針が示されましたけれども、様々な事情からその指針どおりに行動することが難しい事情を抱える親がいることも想定されます。

 法案が親権者に指針を示すことは、その周知や運用の仕方によっては、困難を抱える等の事情のある親を追い込み、かえって子の利益を害するということになりかねないとの懸念も表明されています。親の抱える経済社会、保健心理面での様々な困難や状況について、適切な対応や支援がなされることが重要であると考えます。この点につきましては、既に法案に対して複数の法学者からも指摘されていることでありまして、特に付言させていただきました。

 なお、このように支援を強調しますと、他方で、支援によっても状態の改善や子との関係性の良好な構築が図り得ない親への対応として疑問であるとの御懸念も抱かれようかと思います。

 この点につきましては、先ほど触れました二〇一一年の改正で親権喪失制度が改正され、親権停止制度が創設されたものの、それらが十分に活用されているかということに検討の余地があると考えているということ、具体的には、支援が重要だと申しましたけれども、その限界を見極め、限界を超えた悪意ある重篤な事例においては親権喪失の請求をちゅうちょせずに行っていくということもまた、支援の充実と同程度に必要であると考えているということを申し添えます。

 ここで、少し親権の見直しから離れますが、悪意のある事例に関連して、実親子法の見直しについて一言加えます。

 それは、認知によって成立した父子関係の否定のルールの改正による子の保護について、国際法の側面において、なお不徹底であり課題が残るとの指摘がなされていることですけれども、国籍の不正取得という悪質な事例への法対応という課題と関連している問題だと認識しています。

 国際法の問題は、民法研究者としての私の専門を超える問題であり、申し上げられることは少ないですけれども、ただ、この点は強調したいということがございます。それは、国内法において、先ほど大村教授からも御説明ありましたとおり、父子関係の成立の方法が嫡出推定か認知であるかということの違いによって子の身分関係の安定化にできるだけ違いを生じさせないよう、現行法の認知無効の制度を改正し、子の利益の確保の方法の平準化を図っていくというこのこと自体が、実親子関係の基礎ですとかその成立の方法に関して様々な意見が存在している中で、その改正課題の達成自体が決して容易ではないというふうに捉えております。したがって、これをまず実現することが非常に重要な一歩だと考えているということをお伝えさせていただきたいと思います。

 今回の法案に含まれている国籍法の改正案は国籍に関わる子の立場を現行法よりも悪化させるものではないと認識しておりますけれども、国内法において上記のような子の利益を基軸とする平準化の改正、これが行われることが、間接的に国際法の側面における状況によい影響を与えることを期待しております。

 最後に、今後の課題として期待されることとしまして、運用の留意点として、子の立場を重視していくためには、親が困難な状況等に置かれないことが重要であり、支援の充実が期待されるというふうに申し上げましたけれども、その支援の充実の一環として問題となり得る民事法制に関わる点としまして、法的な問題の解決手段へのアクセスの容易化、充実化があると考えております。

 夫婦や親子の関係に関わる相談や解決について、家庭裁判所の各種手続や前段階に位置づけられ得る法律家、自治体、関係諸団体等による相談や支援について拡充が図られるよう、法改正や人的基盤の強化を含む制度改善がなされていくことを願っているところでございます。

 以上で意見とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、近藤参考人にお願いいたします。

近藤参考人 おはようございます。私は、弁護士の近藤博徳と申します。

 日本弁護士連合会の人権擁護委員会難民国籍特別部会の特別委嘱委員であります。また、特定非営利活動法人JFCネットワークの役員でもあります。

 本日は、意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今日は、今国会で改正が審議されています国籍法三条三項の新設について意見を申し上げます。

 私たち弁護士有志は、国籍法三条の改正について、十月二十七日付の意見書を作成し、共同提案団体とともに発表し、委員の皆様にもお届けをしております。

 私の発言の趣旨を最初に申し上げますと、提案されている国籍法三条三項の新設には反対するという内容です。

 本日、ポンチ絵を資料としてお配りしていますので、これを見ながらお話をさせていただきます。

 まず、関連する法律の改正案について、簡単に整理をしたいと思います。

 ポンチ絵上段右側に、国籍法三条の現行法と、その下に赤字で、追加が提案されている三項が記載をされています。追加される予定の三項追加法案を見ますと、「前二項の規定は、認知について反対の事実があるときは、適用しない。」というふうになっています。

 つまり、認知について反対の事実があるとき、認知をされたけれども父と子に血のつながりがなかったときは、認知による国籍取得は認めないという内容です。

 このような条項が追加される理由というのは、民法七百八十六条の改正案にあります。

 そこで、ポンチ絵上段右側の、青の白抜きで書かれている部分について見ていただきたいんですが、民法七百八十六条の改正案は、先ほど大村参考人からもお話がありましたように、原則七年間、認知あるいは認知を知ったときから七年間経過したら認知は否定されない、認知を争える当事者の範囲を限定し、認知を否定する方法は確定裁判のみという制度を設けています。

 ところが、これに対して国籍法三条三項は、これはポンチ絵の上段左側の赤地白抜きで書かれている部分ですが、民法七百八十六条一項改正案の適用を否定して、父と子に血のつながりがないときはいつまででも国籍の取得を否定し、しかも、裁判所も関与せず、行政庁の判断で国籍取得を遡って否定するということにする、つまり、国籍取得をなかったことにするという扱いをするものです。

 認知が事実に反する場合に国籍取得を認めない、そういう現行の運用ですが、これを維持しようという考え方の基には、認知の濫用あるいは国籍の不正取得目的の偽装認知、そういうお考えがあるのかと思います。

 けれども、ちょっと考えていただきたいんですけれども、認知をしたけれどもそれが事実に反していた、親子関係が、実は父と子との関係がなかったということは、外国人の子供だけに発生するわけではありません。

 今回の改正もされている嫡出推定あるいは認知の制度、これは、届出のときに子供が父の子であるかどうか生物学的には証明することができない、つまり、父の子ではないかもしれないということを前提につくられている制度です。そういう意味では、親子関係がない認知ということは、日本人同士でも当然起こっているわけです。

 私が実際に経験した事件ですが、子供が生まれて、生まれたときから父親はその子がずっと自分の子供だと思っていました。子供はフィリピンに住んでいるので、毎年毎年子供のところに行って一緒に暮らし、子供をたまに日本に呼んで、一緒にディズニーランドに行ったりしてかわいがってきました。子供がもうすぐ二十歳になるというときになって、子供に選択肢を上げたい、子供が日本で暮らすかフィリピンで暮らすか、彼の将来の選択肢を広げてあげたいという気持ちで認知をしました。そして、国籍取得をしようとしたら、できませんでした。親子関係がないというふうに法務省が判断しました。

 そんなはずはない、俺はこの子が生まれたときから知っているんだ、母親も俺の子であると認めているし、顔がそっくりだ、誰が見てもこの子はおまえの子だと言う。それで私のところに相談に来られました。私も、全くそのとおりだと思って、もう一回国籍取得の手続をするためにDNA鑑定をしました。そうしたら否定でした。父親は本当にショックを受けていました。子供も泣いていました。

 そういうことは普通にあると思います。日本人でもそういうことはあります。当然御理解いただけると思います。外国人のケースが偽装で、国籍取得目的の、濫用の、偽装認知だというふうに決めつけることはできない。私たちの弁護士の感覚としては、むしろ、父も子も母も、その子が本当の子供であるというふうに信じていたというケースの方が多いんです。

 そういうケースを、国籍を喪失させるのが現在の運用で、民法七百八十六条の改正案は、そういう場合には子供を救おう、子供の地位をひっくり返すことはやめよう、そうすると子供がかわいそうじゃないか、認知が事実に反することについて子供に何の責任もない、そもそも、婚外子として生まれたことについて子供に責任はない、そういう子供を救おうというのが民法七百八十六条の趣旨です。

 ですが、国籍法の三条三項改正案の追加案は、認知が事実に反することについて責任がない子供に最大の不利益を負わせよう、その責任を全部子供に負わせよう、そういう制度です。

 この三条三項が新設されることによってどういう問題が発生するか。ポンチ絵では中段に四つの点が書いてありますが、ここでは簡単に五つの点を申し上げたいと思います。

 まず、中段の一ですが、認知後何年たっても、そして何歳になっても、取得した日本国籍をみんな国籍取得のときに遡って剥奪されるということになります。

 民法七百八十六条一項の改正案によれば、認知があってから、あるいは認知されたことを知ってから七年たてば、認知は覆されません。認知はまず有効であるものとされて、認知無効の判決があったときに初めて無効になるという扱いがされます。

 ところが、国籍法三条三項は、それから何年、何十年たっても、行政庁の判断で、認知がなかったものと事実上否定されて、国籍を奪われます。しかも、国籍取得をしたときに遡って失います。

 お配りした、以前にお届けした意見書に事例が書いてありますが、この子供は、十四歳のときに父から認知をされました。ところが、二十八歳のときに認知無効の判決が出て、日本国籍を失いました。しかも、彼は日本国の国籍選択もしていました。けれども、国籍喪失によって、彼は日本人としての十四年間を全てなかったものとされました。

 民法七百八十六条の改正の趣旨は、子の身分の早期安定による子の権利利益の保護にあります。けれども、国籍法三条は、日本人父から認知された子の身分を永久に不安定な状態に置くということを法律によって宣言するものです。今まで実務によって事実上行われていたことを法律の中に明文化するということです。今回の民法の改正の方針と全く正反対の方向を目指しているものと言えます。

 また、ポンチ絵の中段の二ですが、認知によって日本国籍を取得した人が国際結婚をして子が生まれ、またその子が国際結婚により更に孫が生まれた。ところが、元々認知を受けた、認知を受けて国籍を取得した人の認知が事実に反するとして遡って日本国籍を失うと、その子や孫も日本国籍を失います。つまり、ドミノ倒しに日本国籍をみんな出生時に遡って喪失していくわけです。社会は大混乱になると思います。戸籍の扱いもどうなるか分かりません。大変な問題が出ると思います。

 二つ目は、国籍を失った子が日本で生活している場合、遡って日本国籍がなくなる、その結果、その子は不法滞在外国人となってしまうということです。元日本人として日本に住んでいた子がです。

 不法滞在外国人になってしまうと、仕事をすることはもちろん許されません。例えば皆さんのような国会議員、あるいは裁判官や検察官、霞が関などの官庁で働いている職員、自衛官、警察官、これらの人も、本人には何の落ち度もないのに、当然にその地位を失います。

 健康保険、銀行口座、住民票など、普通の人が当然に持っているもの全てを失います。住まいを失っている人すらあります。仕事ができませんから、収入がありません。身分証明ができない。不法滞在、法律違反をしている人だということで、家に住めない、新しく家を借りられない。家、住まいを失ってしまう人もあります。本当に、生きていくこと自体が非常に困難な状態に陥ります。

 しかも、町中で警察官に声をかけられたら、ほぼアウト。職務質問をされて、不法滞在外国人として逮捕されてしまいます。元日本人だった人がです。

 それでも、日本で生まれたり、あるいは小さい頃に日本に連れてこられたその子にとって、母の母国に帰って生活するという選択肢はほとんどありません。日本が母国です。子供にとっては、母の国は全くの異国です。生まれ育った日本で生きたい、生活していきたいと思うのは当然です。

 けれども、そのためには在留特別許可というものを得なければなりません。この在留特別許可は、法務大臣の広い裁量にあります。これが認められるという保証はもちろんありません。もし認められたとしても、その結論が出るまでには年単位の時間がかかることも少なくありません。その間、彼は入管法違反の容疑者として扱われ続けます。

 意見書に記載した事例では、認知無効の判決が確定して、日本国籍を失ってオーバーステイになった彼が入管に行った。日本の入管に行って、私は日本に住みたいというふうに言ったら、本当の父親の認知が得られなければ在特は出せないと言われたそうです。彼は当時二十数歳でした。母親が二十数年前に交際していた男性、しかも、母親から見れば外国人である日本人の名前と当時の住所を漢字で正確に再現するなんて、ほとんど不可能です。奇跡的に彼のケースではできたので、本当の父親を見つけ出して、認知の裁判を起こして、認知を獲得し、在特を取ることができました。本当に奇跡です。

 もしこれができなかったら、彼は今でもオーバーステイです。もしかしたら強制送還されていたかもしれません。彼には全く責任はありません。彼は、この人が父親だと母親に紹介され、私がおまえの父親だと父親に言われ、認知してもらい、国籍を取ってもらい、日本に呼ばれて、日本で暮らしていました。彼には何の落ち度もありません。

 一旦日本国籍を失った人が再度日本国籍を取得する方法は、通常、帰化手続によることになります。しかし、帰化をするためにはまずその人が在留資格を持っていなければならないので、在特を取る。さっきの問題が発生します。

 しかも、帰化は法務大臣の裁量が非常に広いです。どんなに広いかというと、法務大臣は、帰化が認められない、不許可の理由を説明する義務もないというふうにされているほどです。帰化が認められるかどうかは全く保証ができません。むしろ帰化が認められるという方が少ないくらいです。いつ結論が出るかも分かりません。帰化は、国籍法三条三項によって日本国籍を失った人が元の地位を取り戻すための救済手段とは到底言えないです。

 三つ目は、ポンチ絵の中段の三ですが、認知によって日本国籍を取得した子が、その日本国籍しか持っていない。日本国籍を失うと無国籍になります。無国籍になると、どこの国からも保護を受けられなくなります。

 無国籍の発生防止と解消は国際的な要請です。無国籍者の地位に関する条約、無国籍の削減に関する条約、これらは年々締約国が増加しており、無国籍の発生防止は今日では国際慣習法と言われています。UNHCRも、二〇二四年までに無国籍者をゼロにすることを目指したIBelongというキャンペーンを展開しており、今回の国籍法三条に対しても、私たちと同趣旨のコメントを出しています。

 そのコメントでも詳しく述べられていますが、親子関係が無効となることによって国籍を失わせる、そういう制度を持っている国は、通常、無国籍となってしまう場合には国籍を失わせないという制度も併せて設けています。

 我が国の国籍法は、国籍唯一の原則に立っているとされています。国籍唯一の原則は、必ず一つの国籍を持つということを含んでいます。つまり、無国籍の防止を要請しているわけです。この要請に基づいて、国籍法二条三号は、無国籍者の発生を防止するようにしています。また、八条四号は、無国籍者の解消、無国籍だった人に、帰化によってですが、国籍を与えるという制度を設けています。

 国籍法の本来の適用によって無国籍者を発生させるという条項、制度は今の国籍法にはありません。国籍離脱の制度、憲法で保障されている国籍離脱ですら、本人がほかの国籍を持っていない場合、つまり、日本国籍を離脱すると無国籍になってしまう場合には国籍離脱は認めていません。

 なのに、三条三項は、国籍を失わせた結果、本人が無国籍になってしまう可能性があるということをその制度として当然に予定している、そういう制度です。そういう制度を国籍法三条三項で新設するということになります。

 無国籍になっても救済する制度があるという意見があります。それでも、そこで想定されているのは、法務大臣の広い裁量に委ねられる帰化であったり、あるいは裁判所の判決が必要な手続であったりして、無国籍者の救済になる保証は全くありません。

 そもそも、無国籍となった人を救済するためにまた国籍を与えるというのであれば、最初から国籍を失わせなければよいのです。無国籍になってしまう場合には日本国籍を失わせない、そういうUNHCRの提唱する仕組みは、本人のためにも、また行政の側からも、非常に合理的なものと言うことができます。

 四つ目は、ポンチ絵の四ですが、嫡出子との差別を法律によって固定化するという点です。

 今回の民法改正案条文を対照しますと、嫡出否認の訴えと認知無効の訴えは非常に似た制度になっています。先ほどお二人の参考人からの御説明にもありましたように、嫡出親子関係、非嫡出親子関係のなるべく両方を整合性があるようにする、同じような扱いにするということが今回の改正の眼目であるというお話がありました。嫡出関係、認知無効、いずれも、それを主張するためには裁判によらなきゃいけない。裁判を起こせる人を制限する、裁判を起こせる期間を制限する。それによって、裁判によって嫡出否認あるいは認知無効が確定しない限り親子関係は否定しないというのが今回の民法の改正案の方針です。

 では、国籍法の扱いはどうか。

 明文の規定はありませんが、嫡出子については、今の法務省は、嫡出否認によって親子関係が否定されない限り、仮に父と子に血縁がなかったとしても国籍を失わせることはしない、そういう扱いをしています。では、非嫡出子はどうなるか。民法七百八十六条の改正案は、仮に血のつながりがなかったとしても、認知無効の判決が出なければ認知は有効なものとして扱う、一定の期間がたったらそれを誰も争えなくなる、そういう制度をつくっています。

 ところが、国籍法は、認知が事実に反するときはいつまででもひっくり返せる、そういう制度です。つまり、民法のレベルでは嫡出子と非嫡出子をなるべく同じ扱いにしようとするのに、国籍法のレベルでは嫡出子と非嫡出子の扱いを差別化しようとしています。今まで実務によって事実上行われてきたことを、法律によって差別的な扱いを固定化しようというのが今回の国籍法三条三項の内容です。これは、私は憲法十四条一項、法の下の平等原則に反するというふうに考えています。

 もう一点、これはポンチ絵には書いていないことですが、実務上非常に重要な問題があります。

 現在の国籍法三条の規定の運用では、国籍取得の審査の過程で父子に血のつながりがないことが判明したときは、職権で父の戸籍の認知の記載を消すという扱いがされています。戸籍の認知の記載が消されると親子関係の証明ができなくなります。認知を否定するのと同じことです。

 今回、民法七百八十六条の改正によって、一定期間が経過したら認知の無効は主張できない、つまり、戸籍の認知の記載は消せないということになります。ところが、その後に認知が事実に反することが明らかになって、国籍取得を否定する、あるいは国籍を失わせる、それと同時に、法務局が職権で父の戸籍の認知の記載を消すということができるとなると、民法七百八十六条を無視して父の戸籍の記載が消せるということになります。これは民法七百八十六条の規定を否定するものと言わざるを得ません。

 長くなりましたが、私の意見は、今いろいろ問題点を申し上げましたが、根本には、今回の民法七百八十六条、民法の改正、嫡出子と非嫡出子の間の差別的な取扱いをなるべく減らしていこう、その方向と国籍法三条三項の方向は正反対の方向にあるということです。

 恐らく、その根底には、これも申し上げたように、偽装認知による国籍の不正取得を防止するということがあろうかと思います。ただ、現在既に、平成二十年の大法廷判決を受けての国籍法の改正によって国籍法三条が改正された、その際の附帯決議に基づいて、法務省は認知による国籍取得には非常に厳格な審査を行っています。それでもう、かなり偽装認知の国籍取得は防止できているというふうに言うことができます。

 更にそれに加えて、今のような子供の不利益な取扱いを維持する必要があるのか、差別的な扱いを法律によって固定するべきなのか。子の利益という、子の地位の早期安定という今回の法改正の目的に反するのではないか、これが重要な懸念です。

 是非、委員の皆様には、この点についてよく御理解、御検討の上、法案審議をしていただきたいというふうに考えております。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。

藤原委員 参考人の皆様方には、今日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。自民党衆議院議員の藤原崇でございます。

 私の方から幾つか、三参考人の皆様方に、お話を踏まえて、お聞かせをいただければなと思っております。

 今日余りお話は出なかったんですが、今回一つ大きな耳目を集めているのは、懲戒権の削除というものがございます。

 これは大村参考人にちょっとお伺いしたいなと思うんですが、二〇一一年には見送られましたが、今回は一転して削除という結論になりました。

 これは、十年前から事情も変わっているということもあるんだと思うんですが、是非そこを、議論の中で、どういう経緯でこういうところに至ったのか、部会長を務めていた大村参考人からお聞かせをいただければと思っております。

大村参考人 御質問ありがとうございました。お答えいたします。

 議員御指摘のように、二〇一一年の改正の際には、懲戒権の規定についての削除は、検討されましたけれども実現には至りませんでした。その際には、懲戒権を削除することに対する懸念というものもございまして、それに配慮したというところもございます。

 これも議員御指摘のとおり、その後、懲戒権を口実とした虐待等というものが減らないというような御指摘がありまして、そうした認識が社会に浸透してきたというふうに理解をしております。児童福祉関係の立法の方もそのような考え方に基づいて改正がなされている、それを踏まえて、今回、削除に踏み切ったというのが一つでございます。

 それから、もう一つございまして、懲戒権の規定は、親権の内容を定める八百二十条の後に続きます幾つかの各則規定の一つでございます。前回、削除に当たりましては、他の各則規定とのバランスを考慮する必要があるのではないか、他の規定をそのまま残すということが必要なのかどうなのかというようなことも議論になりました。今回はその点も併せて検討いたしまして、他の規定については残す必要があるのではないか、この規定については削除しても構わないのではないか、このように議論をしたということでございます。

 以上でございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 百二十年前、まさしく民法ができてから基本的なラインが変わっていないのと同時に、時代に即してということで今回は懲戒権がなくなったということで、よく内容は分かりました。

 そういう中で、久保野参考人にお聞きをしたいのは、今回、親権の内容についても、人格の尊重であるとか年齢や発達の程度に配慮というようなことが入ったということなんですが、この運用のというところであったんですが、やはり、では法律を変えたからそれでいいかというと、現場現場で、お父様、お母様、あるいは養親子、養親関係もあると思うんですが、そういう方々が、では実際、そういう考えに基づいてしっかり親権を行使できるかというと、これはやはり別の問題なんだろう。サポートが必要だというお話があったんですが、こういう内容で改正をしたとして、どういう取組をしていくことが、その現場現場というか、家庭家庭で、それにのっとったような親権の行使が行われるようになってくるのか。そこについて、ちょっとお考えをいただければというふうに思っています。

久保野参考人 御質問ありがとうございます。

 御質問いただきましたとおり、このような一般的な文言の条文が入ったからといって、直ちに親の方々の行動が変容するというわけではないと思います。

 ただ、まず一つは、外国の経験として明らかになっていますのが、立法当時は、体罰等について、体罰といいますよりは、子供の人格を尊重した親権行使という文脈も同じだというふうに私の中では理解しておりますけれども、そのような親権の行使について必ずしも国民の十分な理解がなかったということが統計的に明らかであったところ、やはり、立法するということ自体を契機に、それを広く周知徹底していくことで驚くほど国民の意識が変わったというようなことが紹介されています。

 日本の場合、既に児童虐待防止法の改正によって、児童福祉という狭い文脈ではなく、広く周知のための非常に分かりやすいパンフレットなどが発行されているかと思います。そのような取組について、民法の改正というより基本法制の改正というものに即して、徹底的にと申しますか、行っていくということが、予想する以上に意味があり、行動変容を促すのではないかと期待しているところでございます。

 ちょっと一般的なお答えになってしまって恐縮ですけれども、以上でございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 なかなか、正直難しいなというのが、今の答えじゃなくて、これはどんな法律を改正したとしても、なかなかそれが、では普通の御家庭にその理念が本当に浸透するかというと、やはり難しいなというのは、これは一つ一つやっていかなきゃいけないんだろうなというふうに思って伺っておりました。

 それと同時に、久保野参考人のお話、これは感想なんですけれども、やはり経済、保健心理面、様々な面でしっかり支援をしていって、そういうふうに親権をしっかり行使ができるようにサポートするのがすごく大事だというお話があって、そのとおりだなと思って、その一方で、それだけしっかりやることを、今はまだ不十分かもしれませんけれども、やったとして、それでもちょっと難しいなということであれば、喪失ではなく停止などもちゅうちょなくというお話があって、なかなか、恐らく、このことを考えれば、それが一番いいことなんだろうというふうに思っております。

 ただ、その一方で、私、何かお話を聞いていると、これは単なる感想なんですけれども、ちょっと今までの家庭と国の在り方とはかなり、結構転換をするようなニュアンスなんかは感じて、ただ、それも、やはり時代の中で、ある程度後見的な関与というものをもっと広げていく要請もあるのかななんということをちょっと思いながら、お聞かせをいただきました。

 そういう中で、近藤参考人にちょっとお伺いをしたいんですが、個別の事例なので、なかなか言えること、言えないことはあると思うんですが、私、ちょっと聞いていて、三条三項の問題というのは、バランスの中で、非常に難しい問題が確かにあるなというのは私も思っております。

 そういう中で、少しお聞きをしたいのは、先ほど、近藤先生が取り扱った事件で、国の方ではこれは親子関係がないというふうになって、そんなはずはないということでDNAも調べたらそうだったということなんですが、逆に、国は、何で一回目はそれで親子関係がないと判断ができたのかなというのは、結構、聞いていてちょっと疑問に思ったところなんですけれども、そこは恐らく調査の仕方にも関わると思うんですが、ちょっとその点について、差し支えのない範囲で御教示いただければと思っています。

近藤参考人 御質問ありがとうございます。

 具体的な事案のことなので、なかなか、どこまでお話ししていいかという問題がありますが、これは任意認知のケースだったんですね。

 任意認知による国籍取得の場合には、法務省は非常にたくさんの資料を要求します。父母それぞれの、知り合ってから子供の妊娠、出産に至る経緯ですとか、父母それぞれの、母が子を懐胎した当時の、どこにいたか。日本にいたか、本国にいたのか。日本に来たんだったらば、渡航記録ですとか、日本の当時の外国人登録の資料とか、外国にいたのであれば日本の外への渡航記録であるとか、そういうものをいろいろ出させます。

 そういうものを全部突き合わせて、母が子を妊娠した当時、その男性とその女性、母との間に交際、妊娠に至ることができるような関係があったかどうか、状態があったかどうかということを調べるわけですね。DNA鑑定というものをやるわけではないんです。こちらのDNA鑑定を出せば受け取りはしますけれども、法務省の方が積極的にそれをやるわけではないので。

 そういう事実調査の過程で、例えば、本人側が十分に資料を出せなかった、インタビューのときに聞き取り間違いがあったということで、事実認定が誤っていたということもあります。

 間々、例えば、これはこのケースではないんですけれども、実は、母親が日本に来ていて、日本で男性と知り合って、交際して妊娠した。そして、国に帰って、本国で出産した。ところが、母親は他人名義で日本に来ていたので、そのことを言うわけにはいかない。ですので、国に帰ってから知り合ったと。たまたまその男性の方も、その女性を追いかけて国に帰っているので、そこで知り合ったというような説明をしたというケースが、別ですがあります。

 ただ、そうすると、妊娠期間が短くなっちゃうんですよね。そのときに関係を持ったと言ってから、出産まで七か月しかない。でも、では未熟児だったかというと、普通の大きさで生まれているので、これはおかしいといって、法務省が不許可にした、認知国籍取得を認めなかったというケースもありました。

 だから、本人の説明が何らかの形で不十分であったり、間違っていたりということもありますし、資料の認定評価の仕方でひっくり返ったという事例もあります。そこは様々です。

藤原委員 ありがとうございます。

 なかなか、全当事者が真実だと思っている中から、それを資料だけで洗い探して違う事実を認定するというのは、かなり、能力というか、簡単ではないなというのは思いながら聞いておったので、ちょっと聞かせていただきました。

 認知することについて、私も意見書を読ませていただいて、フィリピンの方の事例を聞かせていただいたんですが、やはり認知というのは非常に重いものであるということ。わらの上からの子というか、私の子じゃないんだけれども子供と同様に育てたいという気持ちもよく分かるんですが、ただ、ルールとして、認知というのは自分の子であることが前提だというふうなところを、これはある意味でそういう認識がなくやってしまっているところもあるのかなというのは思って、確かに、非難の程度としてはかなり違うんだろうというふうには思ったんですが、やはり、結構簡単に考えてやってしまうけれども実は大ごとになるというのは、結構あるのかなと思っております。

 そういう中で、これは大村参考人にお伺いするんですが、この三条三項、確かに、公法と私法の分野の違い等ございます。まさしく近藤参考人の資料にあるとおり、認知、親子関係、私法上の関係については普通に確定をさせる一方で、「反対の事実があるときは、」というふうになって、これはいろいろな考え方がある中で現行の扱いを継続するというふうにしたんだと思うんですが、そこの議論の経緯をちょっと教えていただければと思っております。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 民法七百八十六条の認知の訴えに関する期間制限の問題と、今御指摘の国籍法三条三項の問題というのは、何度も、様々な御意見がありまして、議論を重ねたところでもございます。紆余曲折があって、最終的に今回のような案になっているというふうに理解をしております。

 先ほど久保野参考人からもお話がありましたけれども、七百八十六条をこのような形にして期間制限を設けるということ自体に、国籍法の運用との関係で障害があるのではないかという意見もございました。

 そうなりますと七百八十六条を改正できないということで、では、七百八十六条に、濫用的な認知についての、その効力を否定するという規定を設けてはどうかというようなことも検討いたしました。しかし、そのような規定を民法の中に、国籍法のことを考えた、いわば公益に関わるような規定を置くのはいかがかというような議論もありまして、様々な立場からの検討をいたしました。

 一時は、もう七百八十六条の改正は難しいのではないかというところもございましたけれども、最終的には、今回出ておりますように、三条三項を新設すると。ただし、これによって従来の、これは久保野参考人もおっしゃいましたけれども、従来の取扱いを変えるというものではないという理解の下で七百八十六条の改正案を実現する、このようなプロセスであったというふうに理解をしております。

藤原委員 ありがとうございます。

 いろいろ、まだまだ三参考人にお聞きしたいこともあったんですが、ちょっと私の時間が参りました。これから、今日の御意見を踏まえて、また審議を進めさせていただきたいと思います。

 貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、平林晃君。

平林委員 公明党の平林晃と申します。

 本日は、三人の先生方におかれましては、貴重な御意見を聞かせていただきまして、大変にありがとうございます。

 私、長い間、これまでずっと、法ではなくて工の、工学の分野で生きてまいりましたもので、法学については本当に初学者の立場からの質問ということで、御指導いただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 時間の許す限りになりますが、主に嫡出推定制度について大村参考人にお伺いできればと思っておりまして、その後、懲戒に対する考え方と無国籍条項に関しても、可能な範囲で久保野参考人、近藤参考人にお聞きできればと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 では、まず、嫡出推定制度についてお聞きできればと思います。

 現行民法第七百七十二条第一項において、婚姻中の懐胎、また、その同二項において、「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」、このようにされているということでございます。

 この条項、先ほどから何度も出ていますけれども、百二十年以上前の明治三十一年に制定された民法の規定がそのまま受け継がれたものと聞いております。一八九八年といえば、日清戦争、日露戦争の間という、本当に、工学の世界にいた人間としては、はるかかなたという昔のような感じがいたします。現代とは風俗に対する考え方も異なっていたと思いますし、また、DNA鑑定などの技術も全く存在をしていない時代であります。

 こうした今と大きく異なる時代の嫡出推定制度がどのような背景で、どのような考え方に基づいて制定されたものであるのか、大村参考人にお伺いできればと存じます。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 議員御指摘のとおり、百二十年間の間にいろいろなことが変わりましたけれども、今回の法案は、嫡出推定、否認の基本的な考え方を維持しようとするものでございます。

 その基本的な考え方と申しますのは、婚姻中の男女の間に生まれた子供につきましては、父親というのは婚姻が定める、これはヨーロッパの法格言で、父は婚姻が指し示すというのがございます。これが基本にある考え方であるということだろうと思います。

 そして、このような考え方によって、父親が定まるということの利益というのが子供にとって非常に大きいというのが基本思想である。そうであるがゆえに、嫡出否認の訴えというのは非常に厳格に制限されてきたということであるというふうに理解をしております。

 以上でございます。

平林委員 ありがとうございます。

 父は婚姻が定める、指し示す、そのことが子にとって利益が非常に大きいというお考えであるというふうにお伺いをいたしました。

 その上で、今、婚姻の成立から二百日、また、取消しから三百日、こういう規定があるわけですけれども、この二百日と三百日という期日に関して素朴な疑問を感じている部分もありまして、教えていただければと思うんですが、二百日は恐らく早産、三百日は恐らく晩産というんですか、遅い出産の日数で決められているというふうに理解をしております。

 ここで出てくる疑問といたしまして、離婚後直ちに再婚をして懐胎した場合には、新しい夫の子が離婚から三百日以内で出生することもあり得るということであります。離婚後の妊娠が早産であれば三百日以内ということも、元の夫とではなくて、あり得るということであります。実際、法務省の調査でそのようなケースが三〇%から四〇%程度あったということも伺っております。

 現行法では、これを避けるために百日結婚禁止規定があり、今回の改正案によれば、再婚すれば出生の直近の婚姻における夫の子、すなわち新しい夫の子と推定することになるわけですけれども、結婚しなければ前の夫の子と推定されるということになるわけであります。

 離婚したばかりの女性の中には、再婚を望まない方も少なからずおられるのではないかということも想定をいたします。このように、事実婚を選択される方もやはり出生届を出さないことになって、無戸籍問題というものに対する効果が限定的ではないのか、こういう意見があるということもお聞きをしております。こんなケースを排除するために、離婚後三百日以内の嫡出推定の規定を廃止するということも、こういう選択肢もあるのではないかという意見もあるということも承知をさせていただいております。

 今回の法改正では、この三百日規定は維持をされているということでありまして、早産のみ削除して晩産を残すという点では、論理的にも若干アンバランスを感じる部分も私は思っておりますけれども、この三百日規定をもし削除してしまったときに発生する何か問題点、そういったものがございましたら教えていただきたく、大村参考人の見解を伺います。

大村参考人 ありがとうございます。

 二百日、三百日という期間の定め方について、一言まず最初に申し上げさせていただきたいと存じます。

 これは、議員御指摘のように、平均的な妊娠期間というのをベースにしておりますけれども、明治時代に、当時の帝国大学の医科大学に鑑定を依頼しまして、この期間を出していただきました。

 今回の改正に当たって、早産で助かるケースなどというのも増えておりますので、この点について期間の見直しが必要ではないかということも検討いたしまして、やはり医学部の先生に御意見をいただきましたが、基本的にこれを変える必要はなかろうということで、二百日、三百日という日数の長さ自体は維持しております。

 その上で、御質問の三百日というのを削除した場合にどうなるかということでございます。

 確かに、離婚後三百日内に生まれた子供の中には、前の夫の子供でない子供というのが含まれていることは確かでございます。そうであるがゆえにこそ、再婚した場合には後の夫の子供だというルールを今回提案しているわけでございます。

 では、反対に、全ての子供が前の夫の子供でないというふうに言えるのかというと、それはそうでないというところがございます。

 日本には明確な別居制度というものがございませんので、離婚に至るまで夫婦の間に関係があるということも少なからず存在するというふうに言われております。そうなった場合に、前の夫の子供を依然として保護する必要があるだろうということで、その三百日以内という規定についてはなお残す必要がある、それを前提にその対応策を考えたということであるというふうに承知しております。

 以上でございます。

平林委員 ありがとうございます。

 あくまで前の夫の子の可能性、これは否定できないという考えの下に、この三百日規定が維持されているということで理解をさせていただきました。

 もう一点、諸外国の制度も教えていただければと思うんですけれども、嫡出推定制度に関する規定で、韓国が日本と同様の制度を有しているというふうなことを伺いました。すなわち、婚姻中妊娠した子は夫の子、また、婚姻から二百日あるいは婚姻終了から三百日、ここを嫡出と推定するということですけれども、本制度に関して、韓国国内について何か議論されている部分があるのか、もし御存じであれば、また、韓国でなくても他の国において参考になる制度や議論があるのか、この点も大村参考人に伺えればと思います。

大村参考人 ありがとうございます。

 韓国についてだけ一言申し上げますが、韓国につきましては、嫡出否認の訴えの期間をいつから計算するかということにつきまして、憲法問題となって争われたことがございます。それに基づいて民法の規定が改正されたということがございます。

 それは、韓国は嫡出否認の期間、二年という期間なのですけれども、子供が生まれたということを知ってから二年という規定が憲法違反である、生まれたということを知っただけでは、自分の子供であるということは分からないじゃないかということで、自分の子供ではないということを意識した、認識したところからというふうに改めたというのが韓国法にとっては一番重要な改正かというふうに思っております。

 以上でございます。

平林委員 ありがとうございました。

 様々教えていただきまして、引き続きよくこの今回の改正案について思索してまいります。

 続いて、懲戒権に関しまして、久保野参考人に伺えればというふうに思います。

 学校教育法第十一条では、校長及び教員が、教育上必要があると認めるときは、児童生徒及び学生に懲戒を加えることができる、ただし、体罰を加えることはできない、こう規定をされていると認識をしております。

 今回の改正案では懲戒そのものを否定しておりまして、体罰も含めてと認識しますけれども、懲戒を否定しているということと認識をしております。親も教師も共に、教育を行うという立場では同じ立場というふうに考えますけれども、一方は懲戒全体を否定していて、一方は体罰以外の懲戒が許されるという状況、この差異に関しまして、久保野参考人の御見識を伺えればと思います。

久保野参考人 御質問ありがとうございました。

 御指摘ございました学校教育法での懲戒や体罰についての定め方と父母ができることとの関係というのは、この改正との関係でも学会等でも議論されていることでございますが、目的や状況等が異なるので、直ちに参照し合って考えることの不適切さ、あるいはそれを慎重であるべきだという議論が主と認識しておりまして、それは集団生活である学校の特徴ですとか、あるいは、広く言えば監護、教育に当たるようなことを担っているとしましても、目的が異なることですとか、あるいはその専門性も異なるのではないかと思います。

 父母について先ほどいろいろ申し上げましたけれども、大事なのは、医学ですとか教育心理学の最先端の知見を生かした監護、教育方法を父母が選択しなくてはいけないということではないと思うのであります。

 そのような父母の状況と比べましたときに、教育の現場というのは、いろいろな事情はありながらも、専門性を持った場ということになりますので、参照し合いつつ、議論は必要だと思いますが、今申したような違いを踏まえての個別の議論が必要だと考えております。

 以上になります。ありがとうございます。

平林委員 ありがとうございます。

 目的、状況、そういった差異を考慮して検討していくべきだ、考えていくべきだということで理解をさせていただきました。ありがとうございます。

 最後に、国籍問題について近藤参考人に伺えればと存じます。

 先ほどの意見陳述で、大きな部分に関しては、御意見、理解させていただいたところでございます。

 今回の改正のそもそものきっかけというのが、私の認識の範囲ですけれども、平成二十年の国籍法の一部を改正する法律の立法過程で、国籍取得における虚偽認知に対する強い懸念が示されたことにもあるというふうに認識しているわけですけれども、この部分に対応すること、先ほども少しお述べになられたと思いますけれども、改めてもう一度、端的に教えていただければと思います。

 よろしくお願いいたします。

近藤参考人 御質問ありがとうございます。

 平成二十年の大法廷判決を受けて、平成二十年に国会で国籍法三条が改正されまして、それ以前は、準正の成立、認知プラス両親の婚姻が要件だったのが、両親の婚姻という要件が外されて、認知があれば国籍取得ができるというふうに変わりました。

 ただ、その改正の過程で、偽装認知による不正な国籍取得がされるのではないか、その懸念が大きいということが、大変な大きな御意見がありまして、国会の審議で、法条文そのものは認知により国籍取得されるというふうになりましたが、附帯決議で、偽装認知による国籍の不正な取得がないように審査には慎重に期するという、たしかそうでしたかね、あの附帯決議が衆参議院でなされました。

 それを受けて、現在、法務省では通達を出しておりまして、まず、国籍法の施行規則に、こういう手続や審査をするという規定を設けて、こういう書類を提出しなさいというものを定めています。また、通達を発出しまして、その中で、さらに、詳しい書類の提出ですとか、こういう内容、手順で審査しなさいということを事細かく決めています。現在はそれに従って運用されていまして、非常に審査は厳格になっています。

 ただ、さっき申し上げましたように、DNA鑑定までやるというわけではないので、事実認定として誤った認定がされる可能性というのはゼロではもちろんありません。それは、その誤った認定の原因は、本人が不正確な話をした、さらには、ちゃんと資料を提出したんだけれどもその資料が不十分だった、資料からの法務省の担当者の認定が不正確だった、適切でなかった、様々な事情がある、ケース・バイ・ケースです。

 ただ、もちろん、偽装認知、国籍を不正に取得するための偽装認知というのが、私どももゼロであるとは申し上げません。でも、恐らくそういうケースは、現在の運用によって、かなりの程度排除されると思います。

 他方で、先ほども申し上げた、両親共にこの子が自分の子供だというふうに信じている場合、本人の考えている事実関係のつじつまが全く不整合がない、それを聞いた法務省も、ああ、そのとおりだなというふうに思って国籍取得を認めるケースはあると思います。

 そういうケースが後で国籍取得がなかったことになるというのは、往々にして夫婦間のトラブルが発生してということがあるんですけれども、そうやって、現在でも、認知が事実に反するけれども国籍取得してしまったというケースはあり得る。そういうケースで、今回、国籍法三条三項が新設されると、認知はあるのに国籍が奪われてということが起こってしまうというものであるというふうに思います。

 以上です。

平林委員 時間となりましたので、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 おはようございます。今日もよろしくお願いいたします。

 今日は、親子法制の法制審の部会長を務められました大村敦志先生、そしてまた、私の地元の仙台の東北大学から、この法制審では幹事をお務めくださいました久保野恵美子先生、ありがとうございました。専門的見地を伺いました。そして、今日は、近藤先生、長きにわたっていろんな方々の救済、様々御労苦をされてきたこともあったと思います。今日はお話、ありがとうございました。

 時間が限られておりますので、私は、今回の民法改正のことについて、参考人の先生の方々に、特に、とても気になる点を絞って伺っていきたいと思っております。想像は察するかなというところですが。

 先ほどは、自民党の藤原委員も、そして、公明党の、公明会派の平林委員もお触れをくださいました。やはり皆さんちょっと気になっていらっしゃるんだな、確認したいんだなということを再認識したところでございますが、国籍法の三条三項が新設をされたということなんですね。

 先ほど、大村先生、部会の中でも紆余曲折があったというふうに率直に御回答されていらっしゃいました。どのような紆余曲折があったか、ちょっとお披瀝いただけるとありがたいんですけれども、お願いいたします。

大村参考人 御質問ありがとうございました。

 先ほど述べさせていただいたのが基本でございますけれども、七百八十六条の改正を実現したいということで、国籍法との調整を図る必要があるということで、その調整の仕方について様々な意見が出されたということでございます。

 その中身につきましては、民法の方に制限規定を置くという考え方が一方で出されました。そのようなものを置くというのは適切ではないということであるとすると、今回の七百八十六条の改正は見送らざるを得ないのではないかというような意見も出ておりました。

 そこで、国籍法の方で手当てをして、従来の国籍実務にこの民法の規定が直接には、直ちには変更を加えるものではないという了解の下で、七百八十六条にこのような規定を置き、国籍法の三条三項を新設するという形で案を作らせていただいたということであるというふうに承知しております。

鎌田委員 ありがとうございました。

 部会長として御苦労もされたということは拝察をさせていただきます。

 では、その気になる点について、今度は参考人の久保野先生とそれから近藤先生、教えていただきたい、お伺いをいたします。

 国籍法は日本国民たる要件を定めているというところは周知のところですが、今回の民法改正に併せまして、この国籍法の三条三項が新設されたことによって子に生じる不利益についてであります。

 この三条三項には、認知について反対の事実があるときは適用しないとあります。先ほど来質問もされています。つまり、これは国籍を失うということ、国籍がいわゆる剥奪されてしまうということだと私は解釈をしております。そういう解釈でよろしいかということを伺います。

 あわせて、この期限の定めがないということなんですが、これはいわゆる無期限になるということでよろしいんでしょうか、重ねて伺います。

久保野参考人 御質問ありがとうございます。

 この国籍の問題につきましては、意見を申し上げましたときに申し述べましたとおり、国籍法の適用あるいは解釈に固有の問題、固有というのはちょっと、強調するのは不適切かとは思いますけれども、国籍に関わる問題について、余り、申し上げるのが難しいところが専門上ございます。

 それで、子に生じる不利益につきましては、本当に痛ましいといいますか、対処すべき問題だというふうに事例を見ては存じますけれども、先ほど申し上げた認識のとおり、国内法についても、濫用的なものと好意的なものが両方あり得るところをどういうルールにするかといったような問題がある中で、国籍の側面について、現在と同じ状態を法文上はやむを得ず保つということは、段階的によい方向へ、様々な利益衡量をしつつ、立法を進めるに当たってやむを得ないといいますか、というふうに考えているという認識は先ほどのとおりです。

 ただ、これも繰り返しになってしまいますけれども、国内法が先ほどのような理念に貫かれて、難しい調整をしつつも、一歩やはりかじを切るだろうということでありますので、運用面での改善というものが期待されるということは考えております。

 また、父子関係について、国内法上は影響を与えないと認識しておりますので、状況は今よりは、父による対応等を含めて、期待できないかということは少し考えております。

 ちょっと、無期限かの点につきましては、冒頭に申し上げた理由でお答えは差し控えさせていただきたいと思います。御理解いただけましたら幸いです。

近藤参考人 まず、国籍法三条三項が適用されると、子供は日本国籍を失います。これは、条文を御覧いただいてもお分かりのように、法務大臣の裁量ではございません。適用しないとなっていますので、国籍は取得できない。一旦取得した国籍は取得したときに遡って失う、これは行政権の判断によって変えることはできません。もう確定的な処置になります。ですので、国籍を失うのか、剥奪されるのかという御質問に対しては、そのとおりということになります。

 次に、無期限かという御質問については、無期限です。これも、現行の民法における認知の考え方は、これは先ほど申し上げましたが、認知が事実に反するときには、最初からいつまででも無効である。その考え方がそのまま国籍法に移って、認知が事実に反するときは国籍は取得できないとなります。ですので、認知が事実に反するときには、いつまででも国籍を剥奪できる、無期限で剥奪できるということになります。

鎌田委員 ありがとうございました。

 久保野参考人、久保野先生からは、運用の改善というフレーズもございました。だから、こちらがマイナスの方向に、子の不利益の方向に行かないように期待をしたいというお気持ちは察したということは述べたいと思います。

 また、近藤参考人からは、はっきりと、これは無期限であって、そして国籍を剥奪されるということになるということを確認させていただきました。

 続いて、また済みません、久保野先生と近藤先生に伺いたいんですけれども、つまり、認知された後何年たっても、何歳になっても、国籍取得届出時に遡って、これは、今回の法改正でいくと、国籍取得届け時に遡って国籍を失ってしまう可能性があるという解釈でよろしいんでしょうか。

 というのは、私は、間違っても、このことによって不法滞在扱いされてはいけないと思うんですよ。不法滞在にされたら、その方の人生は、どんな環境に、どういう状況に、どの国に、どんな社会に生まれるかなんて、子供は選べる権利も選択も何もないわけで、大人や親の様々な事情でこういう境遇にさらされてしまうわけですから、間違ってもそのことで不法滞在扱いされてはいけないと私は思うんです。

 なので、改めて伺いますが、国籍取得届け時に遡ってという可能性があるか。そして、不法滞在扱いされてはいけないと思う、そのためのケアは、この法律改正ではどういうものが含まれているでしょうか。教えてください。

久保野参考人 御質問ありがとうございます。

 これも同じ、国籍法の解釈について専門的にお答えできる立場にはございませんが、遡って喪失される可能性があるかということでは、可能性があるということだろうと理解はしております。

 その上で、ちょっと少しそれるかもしれませんが、立法しますと考えますときに、直近で生じている非常に深刻で気の毒な事案への対応ということと同時に、中長期的な方向性、影響をどう与えるかということと、両方視野に入れて考えるんだというふうに思っておりますけれども、遡ってという問題が生じるのは、やはり生まれる時点での対応というもの、あるいは生まれるまでの人々の行動に関わる法ルールというものをしっかり考えていくということが重要だと考えておりまして、何年もたってから認知の問題や国籍を失うような問題が生じないような出生時までのルールの形成や情報提供、とりわけ出生の前後における情報提供といったことを検討していくことが重要なのではないかと思っております。

 ちょっと、今問題になっているような事例におきまして、養子縁組がどう働くかとか、済みません、詳しく詰めてきていないんですけれども、そのような国籍を遡って失うような事態にならないように、父母や関係の支援関係者等が動くような法制度や運用をつくっていくということが中長期的に見たときに大事であるというふうに思っております。

 以上でございます。

近藤参考人 先ほども申し上げましたように、事実に反する認知は最初から無効とされます。ですので、認知によって国籍取得をしたがその認知が事実に反するときは、最初から国籍取得の根拠がなかったので、国籍取得自体が否定されます。つまり、遡って国籍がなくなります。これは現在の運用ですし、それを否定することは不可能だ、その現行の制度を前提にする限り不可能だと思います。

 民法が、七百八十六条が改正されたことによって、それが適用されれば、認知無効の判断がされたときから国籍がなくなるということはあり得ると思いますが、この規定を適用されないというふうにされている結果、やはり今後も、国籍取得時にまで遡って、最初から国籍がなかったというふうにされます。

 これも、行政の裁量はありませんので、どうしても、自動的に国籍がなくなる、そのときに遡ってオーバーステイになるということになります。

 例えば、意見書に書いた事例では、フィリピンで、国籍取得をしてから日本に来ました、その日本国籍取得がなくなる、そうすると、彼は、日本人ではないのに日本人と装って日本に入ってきた不法入国者ということになります。また、日本にいる間に、外国人というのは日本にいるときは在留資格を持っていますが、その後に日本国籍を取得した。ところが、それが遡ってなくなると、元の在留期間を過ぎた時点でオーバーステイ外国人というふうな扱いになります。もう何年も前ですから、ビザの更新なんかできません、もちろん。ですので、自動的にオーバーステイという扱いになっています。これは避けようがありません。

鎌田委員 ありがとうございました。

 この法律が新設されることによってのメリット、デメリットというか、光と影の部分については、委員会で我々はきちんと審議をしなければいけないんだなということを改めて認識をいたしました。

 最後に、大村先生と近藤先生に、時間の許す限りなんですが、UNHCR、国連の難民高等弁務官事務所が、今回の民法改正を、無戸籍者を減らすということ、終止符を打つためにこの改正は非常に歓迎するという声明を出していますね。これは団体として正式に出しているものですから、すばらしい法改正だとは思うんですけれども、歓迎する、ただし、この国籍法の三条三項の新設については、ここについてだけは提言をしたいですということを正式に表明されています。

 私、これは、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRが組織として出しているものですから、非常に重いものだと思うんですね。ですので、これを同じように重く捉えるべきだと、大村先生、お感じになられるか、近藤先生、どのようにお感じになられるか、それを聞いて、私の質疑を終わりとさせていただきます。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 国際機関からの日本法、民法についての要望というのは、この問題以外についても幾つか伺っているところでございます。

 それらについては、今回の再婚禁止期間の規定削除というのはその一例でございますけれども、国内法の現状に照らして、可能な限りで配慮していくことが必要であろうというふうに考えておりまして、そのように対応をしているというふうに認識をしております。

近藤参考人 先ほども申し上げましたように、この国籍法三条三項は、制度的に無国籍者を発生させる可能性があるという規定です。今の国籍法にはそういう規定はありません。無国籍者を制度的に本来の適用によって発生させる可能性のある唯一の原因になる可能性があります。

 そういう意味では、UNHCRの懸念は当然のものであるというふうに思いますし、無国籍になる場合には国籍を剥奪しない、喪失させないという規定一つを設ければ済むことです。そういう意味では、対応は十分に可能だというふうに考えています。

 以上です。

鎌田委員 ありがとうございました。

 終わります。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 本日は、お時間いただきまして、貴重な御意見もいただき、本当にありがとうございます。

 質問に移らさせていただきます。

 まず、近藤参考人にお伺いいたします。

 虚偽認知による国籍の不法取得に関して、これを防止するには、今の仕組み、通達で十分できるんだ、ゼロとは言わないまでも十分防げているということでしたけれども、ここについてもう少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか。

 この法が、三条の三項が成立することで、三条の三項によって、実際これがあることでゼロになるのかどうかということも含めてお伺いしたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

近藤参考人 現在の運用については、法務省が、平成二十年十二月十八日第三三〇〇号、三三〇二号という通達によって、国籍法の運用が細かく規定されています。その中で、国籍法の施行規則プラスこの通達によって様々な詳細な書類の提出が求められており、また、このような形で審査をすべきであるということが事細かに規定されています。ちょっと今そこの詳細まで述べる余裕はないのですが、それによって、現実には、かなりの事実に反する認知による国籍取得がはじかれているというのが実情だと思います。

 ただ、先ほど私が具体的な事例として申し上げましたように、それが、全部が全部、国籍の不正取得目的の虚偽認知ではないということが事実です。さっき申し上げたように、そういう事例がゼロだとはもちろん言いませんけれども、そうではない、本当の子供だと信じていた、客観的に聞いたらそういうふうに考えてもおかしくないだろうという事案もたくさんあります。

 例えば、男性が女性と交際している、そのときその女性が別の男性と交際しているということは男性側から必ずしも分からないので、その女性が妊娠した子が自分の子供であると信じていることというのは普通にあることです。

 そういう場合に、認知は事実に反しますが、それが国籍の不正取得目的であるとは言えません。でも、そういうケースの場合に、入管の、法務省の審査をスルーしてしまう、通ってしまうというケースもあります。それは今回の三条三項でも必ずしも止められるものではないだろうというふうに思っています。むしろ、一旦取得した国籍を後で剥奪する、それによって不法滞在者にしてしまったり無国籍者にしてしまったりということが問題である。

 後で国籍が奪われるというのは、例えば、法制審議会の中の資料では、刑事事件の中でそれが判明するとかということも書いてありますが、あと考えられるのは、父と母の関係が悪くなって、父が母に対して離婚を求めて、その中で親子関係がないんじゃないかということを法務省に言ったりとか、あるいは、母が帰化申請あるいは永住申請をする、その中での慎重審査の過程で不明点が、疑問点が発生したというようなことがあるかと思います。

 そちらも様々事案はありますけれども、そういう中で発生する、どちらにしても子供には責任がないケースです。親に何か不正の目的あるいは軽率な点があったとしても、その責任、不利益を子供に負わすというのはおかしいんじゃないか。今回の民法改正はそこにも大きな眼目があるんじゃないかと思っていますが、その点が国籍法改正には欠落しているところが問題だというふうに思っています。

漆間委員 ありがとうございます。

 次に、参考人の皆様にお伺いしたいと思います。

 今回は懲戒権や嫡出子推定規定などが議論されておりますけれども、家族法制全般については、ほかにも共同親権だったり選択的夫婦別姓など、様々に議論されているところであります。

 そこで、ちょっと大きな質問なんですけれども、ざっくりとした質問なんですけれども、政府の進める家族法制の議論について、皆様それぞれの思うところや所感や課題などありましたらお聞かせいただきたいと思います。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 議員の御質問の中にもございましたし、私の陳述の最後にも申し述べましたけれども、現在、離婚後の養育などを中心とした次の改正についての検討もしているところでございます。

 私、この家族法の立法について、多少その原案作成に関与している者として考えていることが一つございまして、それは、この家族の問題は国民全ての方々が関心を持っている問題であって、簡単にどれかの考え方で割り切るというのは非常に難しいものだということでございます。様々な考え方を参照しつつ、少しずつその改正というのを進めていくということが大事なのではないかというふうに思っております。

 今回の懲戒権の問題にいたしてもそうでございます。二〇一一年の改正の際に、できるところはここまでだ、将来の課題はこれだというふうに仕切りまして、その将来の課題を受けて、今回、新たな改正案が出ているというふうに承知しております。

 今回の改正案につきましても、できるところはここであって、残るところについては将来を期待したい、そのようなことで少しずつ進めていくということが非常に大事なことなのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

久保野参考人 御質問ありがとうございます。

 家族法改正全般についての御質問としてお答えをさせていただきますけれども、家族の多様化ですとか価値観の変化ということが語られる中で、一方で、子供を中心に、あるいは高齢者も入るかもしれませんが、主に子供をどのように生育させていくかということが家族を考えるときの一つの視点になると思っておりまして、他方で、多様性を踏まえて、その様々な大人の関係を、契約で自律的に行えば済むと考えるのか、もう少し何か必要と考えるのかという辺りが家族をめぐる中心的な論点だと思っております。

 それらの両方につきまして、既存の、制約を設けずに改正を考えていくという動きが比較的次々と、もちろん、遅いという御批判の目で御覧になっている方もいらっしゃると存じますけれども、難しい中でも進んでいっているのではないかというふうに基本的には好意的に捉えております。

 また、この家族をめぐる問題について、冒頭の意見でも少し申しましたが、支援ですとかアクセスの問題の改善ということは非常に重要だと考えておりますので、民法や裁判所というようなことだけではなく、保健、教育、母子保健といった必ずしも司法という分野ではない分野、官庁でいいますと厚労省の関わりといったようなことが重要だというふうに、今後、もちろん、官庁の再編といいますか、新たな動きというのもございますけれども、申し上げたいことは、法的なアプローチと非法的な福祉や教育等のアプローチが連携しながら考えていくということが重要であるところ、私の知る限り、そのような取組は、会議体レベルあるいは実際の立法の検討レベルで精力的に進められているように感じておりますので、それをますます推進していってほしいというふうに思っております。

 以上です。

近藤参考人 御質問の内容は一介の弁護士には大変大き過ぎる内容で、どこまでお話しできるか分かりませんが。

 私が実務をしながら感じていますのは、今回も問題になっております婚内子と婚外子の扱いの違い、差別と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、扱いの差異をなるべく少なくしていく方向であるべきではないか、また、家族関係における男性と女性の間の扱いの違いもなるべくなくしていくべきではないか、そういう方向にあるべきではないかというふうに考えているのが一つ。

 それから、直接民法の問題ではないんですが、家族と密接に関わる問題として戸籍の問題があるというふうに感じています。特に国際結婚の場合、配偶者が外国籍、子供が外国籍の場合に、戸籍の記載が極めて不十分で、戸籍を見てもきちんとした親子関係が分からない、家族関係が分からないということが間々あります。

 一点、象徴的なことを申し上げますと、日本人の父が外国籍の子供を認知すると、父の身分事項欄に認知された子供の名前が記載されます。日本人と外国人が結婚をしてその子供が生まれた、嫡出子です。ところが、外国に住んでいて国籍喪失をすることがあるんですね。国籍法十二条という規定で、一定期間内に国籍留保をしないと日本国籍を失うという規定があります。その日本国籍を失った子は、嫡出子なのに父の戸籍には載りません。戸籍を見ても、そこの子の存在はどこからも分かりません。そういうアンバランスがあります。せめて、出生しているんだから出生の事実は書いてほしいというふうに法務省に何度も言っているんですけれども、そういう扱いはしないとの一点張りで。

 そういう、戸籍法は家族関係を公証する制度ですが、現在の、国際結婚が非常に増えてきている、その実態を反映していないという問題があって、かえって日本の家族関係を混乱させる元凶になっています。これは早急に改善していただきたいというふうなことが、家族法そのものではないですけれども、関連することとして私が考えていることです。

 以上です。

漆間委員 ありがとうございました。

 続きまして、大村参考人、久保野参考人にお伺いしたいと思います。

 今法案の懲戒権の削除であったり、再婚禁止期間の撤廃については、これまでの国会の議論では、この削除や撤廃について時間がかかり過ぎだとか、段階を踏み過ぎだといった意見もあるところであります。先ほど大村参考人の御意見では、少しずつ進めるべきだという御意見もあったところなんですけれども、この懲戒権削除、再婚禁止期間の撤廃それぞれについて、今法案までに要した時間やこれまで段階を踏んだことについて、この長さについてそれが妥当だと思うかどうか、早過ぎるか遅過ぎるかについてそれぞれお伺いできたらなと思います。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 立法をスピード感を持ってやるということは必要なことだというふうに思いますけれども、他方で、先ほど申し上げましたとおり、一歩一歩進むということも非常に重要なことだろうというふうに考えております。

 今回、この案に至るまでの時間が長かったか短かったか、これはなかなか評価の難しいところなのではないかなというふうに思っておりまして、どちらとも言えないというふうに考えております。

 しかし、いずれにしましても、この一連の流れの中で、ともかくもここまで至られたということはとてもよかったのではないかというふうに思っております。

 以上でございます。

久保野参考人 懲戒権の削除につきましては、二〇一一年の段階でも議論がありましたので、その段階での削除ということはあり得たのだとは思いますけれども、しかし一方で、懲戒あるいは監護、教育のために一定の事柄ができるということは、その懲戒権規定の存否にかかわらず親権者はできるのでありまして、しかもその懲戒というのはつまり、つまりはちょっと時間もありますので控えまして、懲戒として行えることにつきましても、子供の利益のために必要なことができるということについては解釈上は明らかだったことでありますので、その規定自体の削除が遅過ぎたとまでは感じていないというところでございます。

 また、再婚禁止期間につきましては、確かに女性のみが再婚に制限がかかるという意味での深刻性は大きいものの、最高裁判例などでも議論されましたとおり、やはり嫡出推定制度を維持する以上は結びついて出てくる結論だった面があると思っておりまして、過剰な面は最高裁判例の後にすぐに改正がされておりますので、嫡出推定制度を根本的に変えることは子の利益との関係で慎重に、まさに今回行っているような議論が必要なところだったわけですので、こちらは嫡出推定制度と一緒に今回ということで、遅過ぎたとは言えないのではないかというふうに思っております。

 以上です。

漆間委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 おはようございます。国民民主党の鈴木義弘と申します。

 本日は、三人の先生方に、貴重な意見陳述を拝聴することができまして感謝を申し上げたいと思います。

 今日のいろいろ議論を聞いていて、私もなかなか自分の中で考えをまとめ切れていないんですけれども、一番ここのところ余り議論されていないのが、日本人のアイデンティティーって何だろうかというのが一つあります。これだけグローバルな時代になって、人も動くし、お金も物も動く時代の中で、もう一度、日本というのはどういう国なのか、日本人というのはどういうことかというのを私は再確認した方がいいんじゃないかと思う一人なんです。

 簡潔で結構ですから、三人の先生方から一言、本当は通告を出してお聞きするのが私たちのルールなんですけれども、いきなりの質問なので、お答えできるところで結構ですから、今お考えになっている個人の見解で結構ですから、御答弁いただけたらありがたいんですけれども。

大村参考人 ありがとうございます。

 私は、大学で研究者になりまして四十年ほどになりますけれども、日本法というのは何かということはずっと考えているところでございます。

 今回の改正との関係も含めて申し上げますけれども、私どもの法は、明治期に外国から導入された法であります。その意味で、諸外国に広い関心を向けて、そのよいところを取る、これが日本法の一つの在り方なんだろうというふうに思っております。

 他方で、明治に法典を導入する以前の私どもの長い文化というのもございます。これを基礎にして法典を運用してきたというのも、私たちの一つの特色なのではないかというふうに思っております。

 この二つの面というのを日本法の特色としてうまく組み合わせていくということで考えてきましたし、今後も考えていきたいというふうに思っております。それが、私にとっての日本というものということになろうかと思います。

 以上でございます。

久保野参考人 御質問ありがとうございます。

 日本人としてのアイデンティティーということに直接お答えできる器は私にはございませんけれども、ただ、やはり法律を専攻する、研究する者としまして、西洋近代法の枠組みを参照し、継受して日本法の体系を組み立てた背景の下で、西洋法での在り方と、日本のとりわけ立法を考えていくときにどう考えるかということの関係というものは、やはり考えるところがございます。

 今回の親子、実親子というのはそのような難しさが特に出る分野だと感じておりまして、血縁や社会的な親子関係としての実態、これは国籍との関係で、今例で出ているようなものがよく分かりやすい例だと思いますけれども、そのような実態、そして、父母や子の意思といったものをどのように組み合わせて調整していくかということ、これは私の理解ではどの国も模索中だというふうに考えております。

 西洋法の先行例を見ることによって、一定の指針、今回日本が平準化するという方向もそれに即すものだと思っていますけれども、子の利益というものをどちらかというと相対的に優先するといったようなことは、外国からも見て取れると思っていますが、しかし、細部はどの国も相当苦労しております。

 例えば、日本で二十一歳までの子供についての否定ルールを今回入れたことですとか、七年間でよいのかですとか、三年間というのはどうかといったことにつきましては、頻繁に改正できる法律ではないとはいうものの、血縁や社会的な親子関係としての実態ということについて日本の国でどう考えるのかということを、社会通念も含めて、そういうことを、養子縁組との関係なども視野に入れながら考えていかなくてはいけない。そういう意味での国の事情ということは大事にして考えていかなきゃいけないというふうに感じております。

 済みません、以上でございます。

近藤参考人 アイデンティティーというのは、非常に難しい問題だというふうに考えています。

 私自身、ずっと先祖も日本人で、実家のお墓には、墓碑には、一番古いのは元和というふうに書いてあります。自分が日本人であることについて、私自身はみじんも疑っていませんけれども、もし、私が父と母の子ではない、拾われてきた子だということが後で分かったら、今ここに立っている私は何者だろう、近藤という名字も本当は違うのかもしれない、日本人の血も、元和からの血も流れていないのかもしれないと思ったときにどういうふうに思うか、想像もつきません。

 他方で、私は今は自分をきっすいの日本人だと考えているので、正直実感として分からないところはありますけれども、欧米で複数のパスポートを持っておられる人、その人は、パスポートはどこかの国で何かあったときにそこから逃げるための、自分を守るためのものだ、そういう認識でいるというふうにおっしゃる人もいます。

 他方、ある人は、米国の片田舎に住んでおられる。そこにはほとんど日本人はいない。日本人を見ることもめったにない。そういうところで日本語の先生をしている。その方は、この地では私は唯一の日本人、みんな私を見て日本はこういう国だと、日本人はこういう人だというふうに見る、理解をする。私はここで日本を代表している、変なことはできない、そういう気持ちでいるということをおっしゃったこともあります。

 アイデンティティーは、血でももちろん生まれると思いますが、そこで生きることによって、日本の文化に触れて、言葉を理解して、人間関係を身につけることによってもでき上がる、そういうものだというふうに思っています。

 以上です。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。突然の質問で、感謝を申し上げたいと思います。

 それを受けて、今回の民法の改正の中で、そもそもの話をさせていただきたいんですけれども、一つは、嫡出推定制度を、今も取り入れて、民法の改正になるんですが、これは審議会の中でも議論があったと思うんですけれども、DNA鑑定だとかミトコンドリアを測定することによって、すごい確度が上がるぐらいの、親子関係が分かる時代になってきました。自分の父方をたどっていこうとすればDNA鑑定、母方をたどっていこうと思えばミトコンドリアでそれをたどっていくことができる時代になったんですね。

 その中で、嫡出推定制度を、先ほど大村先生の方から、少しずつ少しずつ時代に合わせていった方がいいんじゃないかという、何回も御答弁されていると思うんですけれども、この運用の仕方をもうやめた方がいいのか、存続していった方がいいのか、その辺の御意見を三人の参考人の先生にお尋ねしたいと思います。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 親子関係を確定するのに、嫡出推定ですとか認知といった制度によらずに、議員御指摘のような科学技術を用いていくというのは一つのあり得る考え方であろうと思います。

 しかし、嫡出推定や認知というのは、そうした生物学的なと申しますか、あるいは遺伝上の親子関係ということに立ち入ることなく、親と子の関係ということを決めることができる、そういう制度である、そういう制度として、私どもがこれを受け入れてきたんだろうというふうに思っております。生まれた段階で、全ての子供について、その父が誰であるかということを必ず明らかにするという制度が、その子にとって、あるいはその両親にとって幸せなことであるとは限らないというふうに思っております。

 さはさりながら、DNA鑑定が用いられることになったことによって、生物学上の親子関係というのが分かるという事態が増えてきておりますので、それに対する対応というのはしていかなければいけないというふうに考えております。

 以上でございます。

久保野参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど、血縁と社会的な実態とのバランス、あるいは意思のバランスを取って、微妙なバランスを取っていく必要があるというふうに申しましたけれども、今後、安定的なパートナーとして結婚といったものをするといったような社会の在り方が劇的に大幅に変わるということがあればまた別だとは思うんですけれども、そのときはまた別の考え方があり得ると思うんですけれども、そうではない中では、劇的に変わらない状況の下で、結婚しているカップルの子供については、生まれて直ちに父が決まり、基本的に父が安定して与えられていく、それによって安定した養育環境が生まれた途端に確保されるといったこの仕組みの価値というのは否定できなく、維持されていくのが基本だというふうに今の時点では考えております。諸外国も、その点については根本から否定するというところはなかなか現れていないというふうに理解しているところです。

 また、DNA鑑定を必要に応じて使っていくということが必要だというのは、私も大村参考人と同じでありますけれども、DNA鑑定をした結果、父として名のり出ている方、あるいは養育したいと言っている方々、全てと関係が否定されるということもあり得るといったことも視野に入れて制度を構築していく必要があるかと考えております。

 以上です。ありがとうございます。

近藤参考人 今のお二人の御意見を拝聴しながら私も考えましたが、やはり、子供は、生まれたときにその子供を親として養育している人に育てられることが一番いいのではないかというふうに考えます。生まれた瞬間にDNA鑑定、ミトコンドリア検査を行って、即座に、真実の、血縁の父、父母が、母が確定できるのであればまた違うのかもしれませんけれども、それは、技術的にも経済的にも、多分、制度的にも難しいというふうに思います。

 そうすると、やはり、子供を自分の子供として育ててくれる、その子供との親子関係を守るということが、まず子供のためには大事なんじゃないかというふうに思います。

 以上です。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 それともう一点だけ、もう時間がないので、お尋ねしたいんですけれども、今回の法律の改正でも、子の最善の利益という言葉をよくお使いになるんですね。今回の法律の改正でも、三年間とか五年間とか七年間とか二十一歳とか、そういう数字を切っていくんですけれども、失礼なお尋ねかもしれませんけれども、じゃ、当事者である子供が成人した後に、いろいろトラブルがあった御家庭が多いんだと思うんですけれども、その当事者の子供の意見というのを聞いたことがあるのかどうかということなんです。

 意外と、子育て支援だとか、いろいろな施策を国会も取り上げて法律化していくんですけれども、当事者である子供の意見を聞いたことというのは余り聞いたことがないんですね。だから、やはり、法律を改正していったときに、一番難題を抱えておられる、当事者である子供、ある程度の年齢にならないと自分の意見というのは言えないと思うんですけれども、是非、その辺の考え方を今後取り入れてもらえたら、もっともっといい制度になっていくんじゃないかと思うんですが、それについて一言コメントいただければありがたいんですが。

大村参考人 ありがとうございます。お答えをいたします。

 子供、立法の関係者である子供の意見を立法に際して聞く必要があるのではないかという御指摘であるというふうに了解をいたしました。

 議員御指摘のように、例えば今回の嫡出否認の問題などですと、多くの場合、幼児、小さな子が問題になりますので、意見を聞くには適しないという場合もございます。他方で、一定の年齢以上の子供さんの意見を聞くべき場合があるというのも、議員御指摘のとおりだろうと思います。

 例えば成年年齢の引下げのときには、法制審の部会だったというふうに記憶をしておりますけれども、一定の年齢の方々にその意見を聞きに行くというようなこともしたように記憶をしております。

 他方、この後、離婚後の養育などの場面につきましても、これは、相手の方の、意見を聞く方の御事情というのもありますので、なかなか容易ならざるところはあるのですけれども、可能な範囲で、関係を持たれているような方々の意見を、未成年者であっても聞くことはあり得ることであろうし、必要なことだろうというふうに思っております。

 以上でございます。

久保野参考人 御指摘のとおり、非常に大事なことだと考えております。

 今進んでいる様々な家族法改正でも、研究会や審議会等で成人した後の方々、当事者の方々にお話を聞くという機会は設けられてきており、拡充していただきたいと思いますし、また、子供、未成年の方の直接の御意見を伺うのは難しいですけれども、その子供の意見や意向について、専門的なトレーニングを受けて関わっている専門職の方々が層が厚くなっていると思っておりますので、その方々の積極的な関与というのは今もあると思いますが、この後も充実していけばというふうに願っております。

 以上です。

近藤参考人 私は法制審議会に関わっていないので、直接法制化のことについて申し上げられませんが、平成二十年の大法廷判決の事件、私は代理人として関わっておりました。あの事件は、お父さんから認知を受けた子供が、お父さんは日本人なのに何で私は日本人じゃないのと言ったことから始まった事件です。

 その子は、第一審の地裁で、裁判官に向かって、私は裁判官になれないのですかというふうに言いました。もちろん能力の問題ではなくて、資格の問題です。国籍がないので私は裁判官になれないのですかという問いかけをしました。子供であっても、自分がどういうものであるべきかということの気持ちは持っています。それは是非聞いてあげるべきだと思います。

 今回の国籍法の三条三項の改正も、身分関係は変えないというのであれば、私はお父さんの子、日本人であるお父さんの子なのに、何で国籍を取れないの、認知ができているのに何で国籍をもらえないのということになるだろうと思います。その発言は、私は大事にしなきゃいけないというふうに思っています。

 以上です。

鈴木(義)委員 どうも今日はありがとうございました。終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 大村先生、そして久保野先生、近藤先生、お忙しい中、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、大村参考人の方にお伺いをしたいというふうに思います。

 大村先生は法制審議会の民法の親子法制部会の部会長ですけれども、懲戒権の削除の部分に関わって、法制審の最終段階で、児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動を禁止する文言が加わったわけですけれども、これはなぜでしょうかという点。

 また、部会の議論で、無戸籍の方や無国籍になってしまった方や、あるいは支援する方々からヒアリングなどは行われましたでしょうか。その声はどのように反映され、あるいは反映されなかったのかという、この二点、お伺いしたいと思います。

大村参考人 御質問ありがとうございました。

 懲戒権につきましては、一方でこれを削除することの当否ということが検討されましたが、議員御指摘のとおり、積極的な規定を入れる必要があるのではないかということが、ある段階から議論されるようになりまして、最終的に、先ほど御指摘のような規定を置くことができたというふうに理解をしております。途中までは、やはり懲戒権を削除できるかどうかということに重点を置いて議論をしておりましたけれども、それについて法制審の中でほぼ意見がまとまったという段階で、更にもう一歩進めないかということが中心的な話題として浮上してきた、このように理解をしております。

 それから、二点目の御質問ですけれども、これもなかなか、先ほども触れましたが、関係者というか、子供そのものというのにこの問題について意見を聞くことは難しいのですけれども、御両親とか、あるいは関係をしている、活動している方々については、ヒアリングの機会というのを設けたというふうに理解をしております。そしてそれは、審議に際して参考にさせていただいたというふうに承知をしております。

 以上でございます。

本村委員 大村参考人そして久保野参考人に伺いたいというふうに思います。

 この懲戒権の削除に関しましてなんですけれども、児童虐待というのは起こる前に防がないといけないということが基本だというふうに思いますけれども、この法案の中では、身体的暴力である体罰の禁止とともに、児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動が禁止されているわけです。これがどういう言動を指すのか分からなければ、なかなか防止する効果は発揮しないというふうに思うんですけれども、児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動に関して、保護者の方が適切に判断できるように、どのようなものなのかということを少し具体的に示す必要があるのではないかと思いますけれども、その点、伺いたいと思います。

 というのも、例えば、保護者の信仰を理由にしたものは、なかなか、今までは虐待というふうに認識がされにくかったようで、対応もしてもらえないということがあって、今は、通達を出して、それも児童虐待であるというようなことで、それが社会的な認知になってきているというふうに思いますので、そういう点も含めて教えていただけたらというふうに思っております。

大村参考人 ありがとうございました。

 先ほど久保野参考人からお答えがあったところでございますけれども、今回のこの八百二十一条の規定というのは、基本的な考え方を示すということに主眼を置いております。その基本的な考え方を示すものとしては、シンプルなものとして、メッセージ性の高いものとしてその規定が提案されているのではないかと思います。

 他方で、しかし、その中身、あるいは限界というのがどういうものであるかということにつきましては、ここに書くことはできませんので、先ほど御指摘ありましたような通達と、そして、それを適切に広報するという形で、その時々に、これに当たるものは何なのかということを社会全体で考えていくということが望ましい、必要なことなのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

久保野参考人 御質問ありがとうございます。

 審議の過程での資料では、大声でどなりつけるといった、罵詈雑言を浴びせかけて子の人格を傷つける行為や、また、これは一つの例となり得るものということだと思いますが、子供が非常に大事にしているものを目の前で壊すといったようなことがあり得るということが指摘されております。

 ただ、評価の幅がある程度生じることは避けられない、避けられないといいますか必然だというふうに思っておりまして、それは、一方で親にとって困難を招くというのは先ほど申し上げたとおりではありますが、考え方を支援とともに示していって対応していくということ、そこの体制整備や、財源も含むかもしれませんが、といったものを充実していくということがやはり何より大事なんじゃないかと、ちょっと、また繰り返しで申し訳ありませんが。

 ただ、法案を踏まえて、議論として広くも狭くも両様に解し得る、広い方向と狭い方向と両方あり得ると指摘が既に学会でされておりまして、それは、事後的に、例えば、一番極端な例では刑事罰を科すといったようなことを考えるときの、してはならないという問題と、事前に、つい手を上げてしまう親というのは何かやはり手を差し伸べてやらなくては、支援をする必要があるのではないかということで、何かしら動かすという段階での視点とか段階によって、やってはいけないことと一言で申しましても、広狭があり得るのではないかということも指摘されております。

 今お答えしまして、ますます分かりにくいというふうになっているようにも心配しますけれども、むしろ、しかし、そのような、手を上げたから直ちに刑事罰を科されるといったことではないといったことですとかということを含めて、ごめんなさい、手を上げたからという表現は、ちょっと、済みません、修正させていただきます。

 ここで、手を上げるというのは、手を上げてたたくということを想定しているという意味ではありませんで、注意を与えるために肩に手を当てて振り向かせようとしたのが、見方によっては、客観的に見れば体罰と言うべきだといったような場合などを考えますと、限界事例では親にとって難しいということがあると思いますという趣旨でございますが、そのようなことについて適切に発信していくということがやはり何より重要ということで、繰り返しで申し訳ございませんが、以上になります。

本村委員 ありがとうございます。

 続きまして、近藤参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 国籍法三条三項について、政府は虚偽の認知を防ぐためだというふうに言いますけれども、先ほどお話がありましたように、子供さんには何の責任もないのに一番非難の対象となり、最も大きな不利益を受けるということを、当事者に接しているからこそ大きく胸を痛めておられるというふうに思います。

 先ほどのお話の中で、職権によって父の戸籍の認知の記載が消除される、消されるというお話もありましたけれども、なぜそういうことになるのか。そして、今回の法改定ではそこの手当てがなかなか見えていないというふうに思うんですけれども、どうお考えになるのか、お示しをいただきたいというふうに思います。

近藤参考人 先ほど、職権によって父の戸籍の認知の記載が取り消されるというふうに申し上げました。これは戸籍法の二十四条に規定がありまして、簡単に言うと、戸籍の記載に間違いとか漏れがある場合に、本籍地の市町村長が届出人、届出をした人に、ここは間違っているから直してくださいというふうに伝えたり、あるいは、法務局長の許可を得て職権でそれを直すということができるというふうな内容です。

 字が間違っているとか子供の生年月日が間違っていたとか、そういうレベルのことを多分想定していると思うんですが、その規定を使って、認知が事実に反するときには認知の記載を消すということをやるということです。これは、さっきも紹介しました平成二十年十二月十八日の民一第三三〇〇号の法務省の通達に、このような扱いをすることというふうに明記がされています。

 恐らく、国籍取得を認めないだけではなくて、その国籍取得の申請の届出の基になった認知の記載も消して、事実に反する認知そのものをなくしてしまおうということがこの制度の目的だろうと思います。

 現行法では、これはもう何度も繰り返して申し訳ないんですが、認知は事実に反するときは初めからいつまでも無効なので、その戸籍を消すというのは当然の発想になったのかもしれません。だけれども、民法が改正されて、七百八十六条で認知無効の制限がされますと、その認知無効の制限が利いた以降は、誰も認知を争えないはずです。なのに、今の職権による戸籍の消除の手続がされると、法務局の判断によって戸籍が消されてしまう、認知がなくなってしまうということになってしまう。

 本当にそういう扱いをするのか、それとも、民法七百八十六条ができたら、もうそういう取扱いはしないのか、この通達を改定して、取扱いをしないようにするのか、そこは全く分かりません。今回の法制審の記録を見ても、それについての言及は全くありませんし、元々が通達で運用が決められたことなので、今回も法律ができた後に法務省が通達でどのようにするか、あるいはこれは全く変えないのか、そこも法務省が決めようとされているのかなというふうに思っていますが、戸籍が消えてしまったら、結局、認知が証明できないので、身分関係が否定されるのと同じことになります。民法七百八十六条を否定するようなことになると思いますので、そこは十分御理解いただき、御検討いただきたいというふうに私は思っています。

本村委員 その点も国会審議に生かして、政府質疑に生かしていかなければいけないというふうに思っております。

 日本国籍しか持っていない人の日本国籍をこの三条三項によって失わせると無戸籍になる、無戸籍になるとどのような不利益があるのかというのをお示しいただきたいのと、また、弁護士の方が支援する際にも、法テラスは使えない、様々な持ち出しなどもあるかというふうに思うんですけれども、その点の実情もお話をいただけると大変ありがたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

近藤参考人 無国籍になる場合というのは幾つかのパターンがありますが、どの場合でも、無国籍になってしまうと、どこの国からも保護を受けられないということになります。つまり、どこの国からもパスポートなどの身分証明を発行してもらうことができなくなります。つまり、自分が何者かを証明できなくなります。身分証明がないので、携帯電話を持つことができなくなる可能性があります。銀行口座も作れません。部屋を借りることもできなくなります。海外に行けない、修学旅行、みんな韓国に行くのに、自分はパスポートがないから行けない、社員旅行に行けない。そういうふうな実例は幾らでもあります。

 こういう場所で無国籍について議論していると、無国籍は保護しなきゃいけないというお気持ちになるかと思うんですけれども、例えば皆さんがアパート経営をしていて、私、国籍がないんですけれども、身分証明がないんですけれども部屋を貸してくださいと言ったときに、どんな感じになるでしょうか。何かうさん臭い、こいつ、パスポートを持っていないって変なんじゃないか、ちょっとこの人に貸して逃げられたら回収がつかないと思う人が多分多いと思います。実際、国籍が無国籍だと言ったら、どこの国からも排除されている、あなた、テロリストなんじゃないかというふうに言われた人もいたそうです。

 無国籍者に対する弁護士の支援なんですけれども、まず、先ほど御指摘ありましたように、法テラスというのは基本的に裁判支援をするものでして、無国籍者に対する行政支援、国籍取得の手続ですけれども、行政支援、これには法テラスは使えません。また、無国籍であり、また在留資格もない場合に、不法在留外国人に対しては法テラスは使えないということになっています。

 そういう場合には、日本弁護士連合会が設けている委託援助という制度、これは弁護士が払った会費の中から基金をつくって、経済的な支援が必要な事件に対して、ほんの少しですけれども弁護士費用を肩代わりするという制度ですが、それを使って弁護士は活動しています。けれども、ほとんど持ち出しになってしまうケースです。

 ただ、その人が、下手すれば命に関わる、少なくとも日本にいられなくなってしまう、そういうケースが弁護士のところに来て、残念ながら無国籍の事件について対応できる弁護士というのは限られていますので、自分がやらないとこの人はもうどうにもならないという気持ちで、多くの弁護士は手弁当で対応しているというのが現状です。

本村委員 ありがとうございました。国会審議に必ず生かしていきたいというふうに思います。

 本当にありがとうございました。

伊藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様方には、貴重な御意見を述べていただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官親家和仁君、法務省民事局長金子修君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、外務省大臣官房参事官今福孝男君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官寺門成真君、文部科学省大臣官房審議官里見朋香君、厚生労働省大臣官房審議官青山桂子君、厚生労働省大臣官房審議官野村知司君及び厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 今日は、御理解いただきまして質問させていただきます。ありがとうございます。

 また、葉梨大臣、また門山副大臣、高見政務官、本当に大変期待をしております。葉梨大臣とはもう長年のおつき合いの仲で、特にこの法務行政に通暁されておりますので、大変期待しております。どうかよろしくお願いいたします。

 まず、今回の改正では、もちろん、親権の行使、懲戒権の削除、非常に重要な課題であります。これは同僚議員が聞かせていただきます。そして、無戸籍問題を解消する、そのための嫡出規定の見直し、これを行うということでございます。

 本当に無戸籍の問題は、出生届をしなければならないのに、何らかの事情でそれが出せない、国民でありながら戸籍がないまま暮らさざるを得ない、そういう方々、それは本当に人権上の極めて大きな問題で、これを解消していくことは重大な課題であると思います。

 我が党も、平成十九年に、無戸籍問題の解消のためのプロジェクトチーム、これを設置をいたしまして、そして、嫡出規定の見直しや無戸籍者の救済策の拡充に取り組んでまいりまして、平成三十年には、当時の法務大臣に対して、嫡出推定の規定の例外規定を設けることや、新たな無戸籍者を生み出さない民法の改正等についてを内容とする無戸籍問題対策に向けた提言、これを出させていただいたところでございます。

 今回、民法の改正におきましては、嫡出推定の規定の見直し、女性の再婚禁止規定の廃止、嫡出否認制度の見直しや認知無効の訴えの見直しを行うこと、それによって無戸籍者の問題を解消する等、大きな前進であると評価しておりますが、大臣に、今回の民法改正の意義、そして無戸籍者問題に対する御所見をお伺いしたいと思います。

葉梨国務大臣 御党には、無戸籍問題に本当に積極的に取り組んでいただきまして、敬意を表させていただきます。ありがとうございます。

 もうおっしゃるとおり、無戸籍の問題、国民でありながら戸籍という社会的基盤が与えられておらず、社会生活上様々な不利益を受けるという、人間の尊厳にも関わる重大な問題です。

 法務省では、平成二十六年、ちょうど私が最初の副大臣をやったときだったと記憶しています、無戸籍者の徹底した実態把握、全国各地の法務局における丁寧な手続案内、そういった寄り添い型の支援というのを行ってまいりました。

 しかしながら、このような支援による無戸籍問題の解消にはやはり限界があります。将来にわたって無戸籍者問題を抜本的に解消していくためには、法制上の課題などに取り組んでいく必要があると考えています。

 本改正案は、そのような法制上の課題等に対応し、無戸籍者問題を解消する観点から、嫡出推定制度に関する規律を総合的に見直すものです。これによって、無戸籍者問題の解消に大きく前進すると考えております。

大口委員 今回の改正案は、無戸籍者が発生する原因とされてきた、婚姻の解消の日から三百日以内に生まれた子は前夫の子と推定するとの原則を維持しつつ、例外を設け、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定することとしております。

 無戸籍者の解消に一定の効果は期待できると思いますが、ただ、法務省の民事局の調査、令和二年九月末時点によれば、無戸籍者で離婚後三百日以内に生まれた子のうち、母が離婚後三百日以内に婚姻しその後出生した者の割合は三五・八%ということで、限界があるというふうに言われております。

 私も令和三年の三月の法務委員会でも御紹介させていただいたんですが、無戸籍問題に取り組んでおられる現場の弁護士から、無戸籍問題を根本的に解消するには、離婚後三百日以内に生まれた子を前夫の子と推定する現行法の規定を撤廃する必要がある、こういう御意見もいただきました。DNA型鑑定が以前よりも迅速、容易に行えるようになったので、DNA鑑定で法律上の親子関係を確定する方法を導入してはどうかという考え方もあるわけです。

 今回、見直しにおいて、離婚後三百日以内に生まれた子を前夫の子と推定する嫡出推定の原則は維持することの趣旨についてお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 離婚後三百日以内に生まれた子を前夫の子と推定する、この推定の原則を維持することにした趣旨は、第一には、一般的な妊娠期間からすると、婚姻の解消等の日から三百日以内に生まれたお子さんの場合、婚姻中に懐胎した可能性が相当程度あるということが言えます。

 我が国では、協議離婚制度の下、離婚に先立って一定期間別居するということが離婚の要件とはされていないため、離婚に至る前の時期において、離婚後に出生した子の懐胎の契機としての夫婦の性関係の基盤が失われていたとは一概に言えず、婚姻中に夫の子を懐胎し、子の出生前に協議離婚に至り、しかる後に子を出生するといった事案が一定数存在するものと考えられる。これが一つ目の根拠です。

 それから二つ目としては、生まれた子について、早期に父子関係を確定し、子の地位の安定を図るということがございます。婚姻の解消又は取消しの日以降に生まれた子については、前夫の子と推定されないというふうな扱いを一律にするということも考えられますが、そのようにしますと、真実は前夫の子である場合であっても、前夫の認知によらなければ直ちに子の法律上の父が確保されないということになり、子の利益を害するおそれがあります。

 このようなことから、三百日の推定を維持しているということになります。

大口委員 そういうことで、今回の改正では否認権者が拡大され、子や母が前夫との父子関係を否認することができるようになりました。母の場合は、子の法定代理人、あるいは母独自、固有のものとしての否認権者となったわけです。

 しかし、夫からDVを受けるなど、母は、加害行為を行った前夫と裁判で対面することによる心理的な負担を感じ、また、裁判を通じて自身や子の住所が前夫に知られることを懸念して、訴えを提起すること自体をちゅうちょする可能性があります。離婚に対する家事ないし裁判についても同様なんですね。このようなDVなどがある事案について、嫡出否認の訴えなどの手続を希望する方が不安に感じることなく権利を行使する仕組みが必要だというふうに考えます。

 そこで、一つは、DVがある事案について、生命身体に危害を加えられるおそれを排除するため、嫡出否認の訴えでは、ウェブ会議を活用し、裁判所へ出向くことなく手続を完結する、こういうことも考えなければなりません。そして、このことについては、本年五月に成立した民訴法の一部改正法案によって、人事訴訟における口頭弁論をウェブ会議により行う改正がなされているところでありますし、また、現在、家事手続の更なるIT化を法制審において審議中である、また、運用としても、ウェブ会議を活用した家事調停の試行もされていると承知しております。

 一日も早く人事訴訟、家事事件のIT化の実現、これについて大臣に一つお伺いしたいということです。

 もう一つは、やはりDVがある事案については住所地等の秘匿が不可欠であります。これについて、DVなどの被害者に係る裁判記録の閲覧を制限するなど、住所等を加害者に知られるという懸念をなくす必要があり、これも、本年五月に成立した民訴法を改正する法律によって、人事訴訟等に被害者等の住所等を秘匿する制度が導入されたわけでありますが、このような懸念をなくすことが大事でありまして、また、そういう点で、この制度をしっかり利用する、そして周知、広報の徹底、これが大事である。これによって、ちゅうちょされることのないようにこの否認権の行使等についてもやっていただきたいと思いますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

葉梨国務大臣 お答えいたします。

 全く、大口委員、おっしゃるとおりでございます。

 離婚後三百日の推定を維持する以上は、嫡出否認の訴えをしなければならないときに、それをちゅうちょをするようなことがないように、よく我々としても配慮していかなければいけないと思っています。

 御指摘のありましたとおり、本年五月の民訴法の一部改正、これによって人事訴訟の手続についても、ウェブ会議による口頭弁論を行うことが可能とする制度が導入されました。現在、法制審において、人事訴訟等の手続の更なるIT化について御議論を賜っておりまして、これは、先般閣議決定されました、令和三年十二月ですが、デジタル社会の実現に向けた重点計画において、来年の通常国会には必要な法案を提出すること、そういうふうにされております。

 また、本年五月に民訴法で成立をいたしました、氏名、住所、この場合は住所ということになるんだろうと思いますけれども、相手方に住所等を秘匿する人事訴訟法の手続上の制度についても、これが導入が図られた。これについては、やはり非常に重要な制度だと思いますので、本当にしっかりと周知、広報、それから御相談に応じるということをしていかなければいけないというふうに思っています。

 今後とも、私ども、関係機関と連携して、人事訴訟等の裁判手続のIT化を進めるために必要な措置を講ずるとともに、住所等秘匿制度についても、その周知に努めるなど、円滑な施行に向けて取り組んでまいります。

大口委員 しっかりお願いいたしたいと思います。

 次に、前夫の否認権についてでございます。

 改正後の民法七百七十四条第四項で、再婚後の夫の子と推定される子について、前夫にもその否認権の行使が認められています。前夫によるその否認権の行使は、前夫が再婚後の夫婦の家庭に介入することを認めるものであり、嫌がらせ目的で否認権を行使することも考えられます。また、前夫の否認権については、争いを複雑化させるとの懸念もあります。前夫の否認権を認めた理由をお伺いしたいと思います。

 また、前夫の否認権は限定的に行使される必要がある。法制審において、明確な要件として、子との間に生物学上の父子関係があることを要件とするということも検討されていると承知しております。そのような要件が設けられなかった理由についてもお伺いします。前夫の否認権を認める要件として、結果的に、改正後の民法七百七十四条第四項ただし書で、否認権の行使が子の利害を害することが明らかなとき、この限りでないと規定しています。具体的にどのような場合にこのような要件に該当するのか、お伺いいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 婚姻の解消又は取消しの日の後三百日以内に生まれた子であって母が再婚した後に生まれた子については、再婚後の夫の子と推定されることになりますが、前夫は、母がこのような再婚をしなければ子の父と推定されるべき地位にあること等を踏まえますと、再婚後の夫の子であるとの推定が事実に反し、実際には前夫が子の生物学上の父であるときは、前夫に子の法律上の父となる機会が確保されている必要があるものと考えられます。これが、再婚後の夫の子と推定される子について前夫に否認権を認めた理由です。

 御指摘のとおり、前夫に否認権を認めるということは、前夫が再婚後の夫婦の家庭に介入することを認めることにつながりますので、前夫による否認権の行使を正当化するだけの事情が必要ではないかとの指摘もあり得るところで、こうした観点から、法制審議会における議論の過程では、前夫の否認権行使の要件として、前夫と子との間に生物学上の父子関係があることを要求する案についても検討がされておりました。もっとも、このような案に対しては、本来であれば否認権行使の結果として父と推定されるはずの前夫に対して、DNA型鑑定等を用いた父子関係の積極的な証明を要求することとなる点で、嫡出推定制度の基礎と整合しないではないかという懸念がありました。

 こういった懸念を踏まえまして、法制審議会では、生物学上の父子関係の存在を前夫による否認権行使の要件とする規律は採用しないこととされ、前夫が再婚後の夫婦の家庭に介入することを防止するための方策としては、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときには前夫の否認権行使を認めないという規律を採用することとされました。

 具体的にいかなる場合が、その否認権行使が子の利益を害することが明らかなときに該当するかについては、最終的には具体的事案における裁判所の判断に委ねられることになりますけれども、一般に、前夫が子の父として自ら子を養育する意思がないにもかかわらず、嫌がらせ等の目的で嫡出否認をするような場合には、子の利益を害することが明らかであると考えられるところでございます。

大口委員 次に、子の否認権については、出生のときから三年以内に提起しなければならないとされています。父と継続して同居した期間が三年を下回るときは、子が二十一歳に達するまでの間、嫡出否認の訴えを提起することができるとしています。このような、子の出訴期間の特則を設けた趣旨、そして、出訴期間を、成年年齢の十八歳まででなく二十一歳までとする理由はどのようなものかについてお伺いします。これは、認知無効の訴えも同様の形になっています。

 また、改正後の民法七百七十八条の二の二項ただし書で「子の否認権の行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときは、この限りでない。」ともしています。どのような場合にこの要件に該当するのかもお伺いいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 子の出生のときから三年以内という原則的な出訴期間内には、事実上、子が自ら否認権を行使することができません。法務省が把握した無戸籍者の事案には、幼い頃に無戸籍状態を解消することができず、そのまま長期間が経過したといったものも相当含まれています。そのような事案において、子自身の判断によって嫡出否認の訴えを提起することができるものとすることが必要と考えました。そこで、子の出生から三年以内という原則的な出訴期間を経過した後であっても、成年年齢に達してから三年間、すなわち二十一歳に達するまでの間は、子自らの判断によって嫡出否認の訴えを提起することができることとしたものでございます。

 もっとも、子が自らの否認権を行使する場合において、父と子が親子としての実態を有していたときまで否認権の行使を認めることは相当でありません。そこで、まずは三年間継続して同居したことの有無という明確な要件を設けました。その上で、三年間継続して同居したことがない場合であっても、裁判所が父による養育の状況等を踏まえ、親子としての実態がないとは言えないと認めるときには、嫡出否認を認めないとすることが相当であります。そこで、本改正法案においては、子の否認権の行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときは、嫡出否認をすることができないものとしています。

 この要件の設けられた趣旨に照らしますと、継続して同居した期間が三年を下回る場合であっても、父が三年以上の期間継続的に養育費の支払いをしていたときや、三年に満たない期間を断続的に同居しその合計期間が三年を上回るときなど、三年以上の継続した同居と同程度に社会的な親子関係が形成されているような場合に限り、その要件に該当するものと言えると考えております。

大口委員 次に、現行民法では、事実に反する認知があったときには、認知された子その他の利害関係人が反対の事実を主張することができるとされています。この利害関係人は、個別の事案において訴えの利益を有する者とされ、判例では、親族間の扶養義務や相続を理由に、認知者の妻や兄弟などの訴えが認められたものであります。

 今回、この改正後の民法七百八十六条第一項で、これまで利害関係人にも広く認められていた認知無効の訴えの提訴権者を、子、子の法定代理人、認知をした者(父)及び母に限定して、そのように認知の無効の提訴権者から利害関係人を除外した、この理由についてお伺いしたいと思います。

 また、それが、この見直しの影響がどれほどあるのかということや、出訴期間を七年とした理由についてもお伺いいたします。

金子政府参考人 お答えします。

 現行法の下では、事実に反する認知、すなわち血縁関係がない者による認知は無効とされ、子その他の利害関係人が無効を主張することができるとされています。この規定については、主張権者が広範で、無効主張の期間制限もないことから、子の身分関係がいつまでも安定せず、嫡出否認の訴えについて厳格な制限を求められていることとの均衡を欠くとの問題点がかねてから指摘されていたところでございます。

 そこで、認知された子の身分関係の安定を図るため、無効を主張することができる主張権者の範囲を、子、子の法定代理人、認知した者、それから子の母に限定しました。その結果、裁判例等において、これまで利害関係人として提訴することが認められることのあった認知者の妻、認知者の妹、子の真実の父と称する者などは認知無効の訴えを提起することができなくなるものと考えられます。

 そして、認知無効の訴えの提訴期間を七年間としているところ、これは、嫡出否認の訴えの出訴期間とのバランスのほか、民訴法、民法上の各種制度における期間制限の規定の在り方等を参照するなどして、認知がされたことを前提にした身分関係の状態が継続した場合には、もはや覆すことは社会的に相当でないと考えられる時間の経過として合理的と認められる期間を設定したものでございます。

 認知無効に関する見直しは施行日以降にされる認知に適用することとしておりますが、本見直しにより嫡出でない子の身分関係の早期安定が図られることになるものと考えております。

大口委員 また、今日、参考人からいろいろお伺いもさせていただきました。特に弁護士の近藤先生からは、国籍法三条三項についてるるお話をいただきました。この国籍法三条は、日本国民により認知された子で十八歳未満の者は法務大臣への届出によって日本国籍を取得できると定めています。そして、この規定に基づく日本国籍の取得について、認知が事実に反するときは認められないとされているものとは承知しておりますが、改正後の国籍法三条第三項ではそのような規律が維持される、それで、この規定が設けられたわけでございます。

 しかし、そのような規律の下では、一旦届出によって日本の国籍を取得した子について、その後に認知が事実に反するものであることが判明した場合は日本国籍が否定されてしまう。結果的に無国籍となってしまうような例があるとも、御指摘も、参考人からもありました。

 そのような場合、国籍法上、また入管法上、人道的な対応をしていく必要があると思うんですね。具体的にどのような対応が可能なのか、法務大臣にお伺いしたいと思います。

葉梨国務大臣 本日、参考人の質疑、私も意見陳述の部分は聞けたんですが、その後の質疑は、ちょっとほかの所用があって、参議院に行ったりしていて聞けなかった部分もあるんですが、後でまた視聴させていただきたいと思います。

 その上でですけれども、御指摘のとおり、改正後の国籍法三条三項の規律というのは、現在の規律を維持するという観点から、確認的に書かれたものであるということを前提として申し上げます。ですから、確かに今でも、あるいは現在でも、その届出が有効な届出でないということに判定されますと、遡って届出がなかったものとして扱われるということで、現状と新しい改正法によってその取扱いが異なるわけではないんですが、御指摘のような問題があるということは、もちろん十分私どもも踏まえていかなければいけないと思っています。

 そこで、国籍法の世界の話ですが、国籍法で無国籍というふうになる事案が生じたときですけれども、一つは、国籍法の要件を満たしていれば帰化による日本国籍の取得が認められる余地があります。日本人の子として日本で安定した生活をしていたなどの個別の事情も考慮され得るところだと考えています。また、所定の手続を取ることで母親側の国籍が認められる余地がある場合、これは、無国籍とならないように、当該外国の大使館若しくは領事館又は本国政府において所要の手続を取ることができます。こちらの方も例は実際にあるというふうに聞いています。

 そこで、法務局では、日本の国籍を取得するための手続や外国の大使館等における所要の手続に係る案内を無国籍者の身分関係や意向等を踏まえて行うなどの取組を行っていますし、また、行ってまいります。

 また、入管法上の取組ですが、認知が事実に反することが明らかになり、日本国籍が認められなくなった者について、退去強制の手続、これを受けることになるんですが、しかし、個別の事案ごとに、日本への定着性、日本国籍が認められなくなったことについての帰責性がないなどの事情を踏まえて、日本への在留を認めるべき者について適切に在留資格が付与されるよう、法務大臣の裁量によって在留特別許可がなされることがあります。

 本人の帰責性がなくて、日本で教育を受けているような、そういう事情がある方を、それが不利益な扱いがされるということは、やはり政治の責任としても解消していくことが私は必要だというふうに思います。

 ですから、この許可をするまでの期間について、個別の事情によりますけれども、可能な限り本人に不利益な取扱いとならないよう、迅速な処理に努めていかなければならないというふうに考えています。

 いずれにしても、無国籍者の置かれた立場に配慮して、無国籍状態の解消に向けて、可能な対応をしっかりやっていきたいと思います。

大口委員 本当に、人道的な対応をしっかりやっていただくことを強く求めたいと思います。

 それから、今回の改正で、将来的に無戸籍が生じないようにするための法整備について措置することとしていますけれども、その一方で、母が再婚していない場合や、そもそも母と婚姻解消ができない場合など、今回の改正の対象にならなかった方々や、嫡出推定を原因としない無戸籍の方々もおり、このような無戸籍者の解消も同時に進めていく必要があります。

 無戸籍者の方々に対する救済措置に関して、更なる取組について大臣の御所見をお伺いします。

葉梨国務大臣 やはり、周知、広報、それから寄り添い型の支援というのが極めて大切であろうと思います。平成二十七年五月から、無戸籍者ゼロタスクフォースを設置し、法テラス、弁護士会等の関係機関と連携の下に、一人一人に寄り添って、戸籍の記載に必要な届出や裁判上の手続が取られるように支援する、寄り添い型の取組を実施してきております。

 この改正案で、先ほど申し上げましたとおり、相当程度の対応ができるようになるわけですけれども、やはり知識を持っていただくということも極めて大切なことです。ですから、御指摘のように、全てがこれで解決したんだというような立場は取りません。そうじゃなくて、やはりこれまでの寄り添い型の支援をしっかりと継続する、そういうような必要かつ可能な支援、これを行っていくということが大切だと思います。

大口委員 今回、改正後の民法七百七十四条の嫡出否認の訴えの規定は、改正前に出生届が提出されず、既に無戸籍となっている方にも遡って適用されますが、経過措置の期間として定められている一年は妥当な長さと言えるのか、お伺いします。

 また、この点について、嫡出否認の訴えを提起できる子、母を、期間内にできるだけ多くの方を救済できるよう、どのように周知徹底を図るのか、とりわけ、法務局が無戸籍者として把握している方々に対し個別の通知をする予定があるのか、お伺いします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、改正法案による子や母による嫡出否認の規定につきましては、嫡出否認の訴えの提訴権者を拡大することにより無戸籍者の問題の解消を図るという見直しの趣旨に照らしまして、施行日より前に生まれたお子さんについても、一定の範囲で適用することとしております。

 ただし、その場合には、同時に、身分関係の安定ということにも配慮する必要がありますので、施行日前に生まれたお子さんについては、施行日前から準備することが可能であるということも勘案しまして、子及び母の嫡出否認の訴えに関する規定を施行日後一年間に限って適用することとしております。このような観点から、一年という期間は妥当なものであると考えております。

 このように、施行日前に生まれたお子さんについて、子及び母の嫡出否認の訴えに関する規定を適用する期間を施行日後一年間に限っていることから、嫡出否認の訴えを提起できる子や母に対する周知徹底は特に重要なものと考えております。

 具体的な周知の在り方については、法務局が無戸籍者として把握している方々に対する個別の通知をすることを含め、今後十分に検討してまいりたいと考えております。

大口委員 時間が参りましたので、これで終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時四十七分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 まず、国籍法第三条第三項の規定についてお尋ねいたします。

 せっかくですので、これは事例ということでお伺いしたいんですけれども、まず、アメリカ国内で、ちょっと事例で恐縮ですが、結婚していない日本人の父Aとアメリカ人の母Bとの間に子供Cが生まれました。日本において日本人の父Aがこの子供Cを認知したといたしますと、アメリカは属地主義で日本は血統主義ですから、子供Cは自動的に二重国籍を有します。そして、その上で、この子供Cが国籍法第十四条の義務を履行するためにアメリカ合衆国の手続で国籍離脱をした場合に、この子供Cは日本単独の国籍になります。

 ここで手続についてお伺いしたいんですけれども、法務省のホームページを見る限り、国籍法第三条第一項による届出は、認知した日本の父の戸籍、出生届、認知に至った経緯の申述書、懐胎時期における渡航歴、その他親子関係を認めるに足る資料とされているんですけれども、その他というのはいろいろあるからその他として、前半の四つ、戸籍と出生届と申述書と渡航歴という、これだけで十分であれば、その他としてDNA鑑定は必須ということではないという理解でよろしいんでしょうか。

金子政府参考人 認知された子が届出によって国籍を取得するためには、認知した者と子との間に真実の親子関係があることが必要でありますが、そのことを認定するためにDNA鑑定の結果を添付するなどの資料を要求するということは、実際しておりません。

米山委員 そうしますと、午前中の参考人の御意見、お話でもあったとおり、当然、それは申述等々ですから、エピソード的なものですから、後になって、いや、違ったということはあり得るんだと思います。また、DNA鑑定を必須としたところで、それは、誰かが偽のDNA鑑定書を持ってくるといいますか、他人のサンプルを出すなどとして、後から事実が判明するということはあり得るんだと思います。一旦国籍を取得した後、お話もありましたし事例もありましたが、後で事情が分かるということは当然あり得るということになるわけなんです。

 そういったふうに、今ほどの事例で、子供Cが一旦日本国籍を取得した後に、何らかの事情で、いや、これは違うぞと判明したら、この子供Cは、先ほどの事例にもありましたが、確認ということで、無国籍になるということでよろしいでしょうか。

金子政府参考人 委員が挙げていただいた事案について、子Cが日本国籍及びアメリカ国籍以外の第三国の国籍は有しないという前提でお答えします。

 事後的に父の認知が事実に反することが明らかになった場合は、認知による国籍取得の届出の効力が生じませんので、認知された子は日本国民でないということになります。また、子Cはアメリカ国籍を既に離脱しているため、国籍の回復手続などがされない限り、無国籍者となるということになります。

米山委員 今ほどのアメリカの話なんて、いかにもありそうな話なわけなんですよ。そんなに特異な事例じゃなく、十分無国籍はあり得るということなんだと思います。

 無国籍になった場合、子供Cはどうなるんでしょうか。在留資格といいますか、日本にいる資格というのはあるんでしょうか。

西山政府参考人 日本国籍が認められなくなった場合には、当初から在留資格を有していなかったということになります。

米山委員 有していなかったらどうするんですか。有していないその人を、一体、法務省としてどうされるのか、どうするのか教えてください。

西山政府参考人 日本国籍が認められなくなった者は、退去強制手続を受けることになります。

 もっとも、退去強制手続について、これをどのように進めるかは個別の事案によるところでございます。

 例えば、児童については原則として収容しないということとしていることのみならず、その児童の監護に必要な親がいる場合には、その親が退去強制事由に該当するときであっても、収容することなく手続を行っております。

 退去強制手続においては、外国人が在留を希望する場合などに十分に主張できるように慎重な判断がなされるようになっているほか、退去強制事由に該当する場合であっても、法務大臣の裁量により、在留特別許可をされる場合がございます。

米山委員 結局、個別で考えるしかありませんということですよね。無国籍なんですから、退去しろといったってどこにも退去しようがないわけですので。

 ちなみになんですが、判明するとき、午前中のお話でもありましたけれども、子供Cと言っていましたけれども、子供Cがもう二十歳になって、何なら十八歳でも十六歳でも、結婚していました。子供Cがもはや結婚していて、しかも、この結婚する相手はアメリカ人だった。アメリカ人と結婚して、孫Dが生まれていました。

 そうしますと、この子供Cが日本人だったら、孫Dは、日本は血統主義ですから日本国籍を持ちますけれども、孫Dが生まれてから子供Cがやはり認知は違いましたということになりましたら、この孫Dは日本国籍を失うということでよろしいでしょうか。

 また、同じように、孫Dもこの事態が判明する前にアメリカ国籍を離脱していたら、孫Dも無国籍になるということでよろしいでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 このDにつきましては、出生による国籍取得が問題になります。

 孫Dがアメリカで出生しているなどによってアメリカ国籍を取得するといった事情がない場合を前提にしますと、関係しそうな日本国籍の取得の要件としては、出生のときに父又は母が日本国民であるときというのがありますが、Cが先ほどの理由、認知が無効とされたことによって日本国民でないということになると、これを理由にDが日本国籍を取得するということはないと思います。

 それから、アメリカ国籍も取得していない、あるいは失っているという条件の下では、Dが無国籍となる可能性が高いと考えられます。

米山委員 やはりこれも同じような話で、そんなに異様な事例じゃないんですよね。割にありがちな話であるので、ありがちな話でそんなことが起こり得るんだということになろうかと思います。

 ちなみに、先ほど、強制退去の話について、無国籍であったら強制退去はないという話だったんですが、逆に、今ほどの話が、アメリカ人との結婚だとアメリカの国籍を離脱みたいな話があり得るとして、無国籍にならず、例えば韓国人の方と結婚されていて、日本国籍は失うんだけれども、日本国籍を失った時点で、では今度は韓国の国籍が残りますみたいな話になった場合に、要は、認知無効によって韓国籍だけが残りました、今まで日本国籍があると思っていたんだけれども、それがないから韓国籍だけ残りましたみたいになったときには、それは韓国にやはり強制退去になるんでしょうか。

西山政府参考人 今委員が御指摘になった限りにおきましては、韓国国籍が認められたとしても、日本における在留資格を付与されていない状態になりますので、日本に在留されたいということであれば、適切な手続を取って対応することになると考えられます。

米山委員 つまり、適切な手続を取らなければ韓国に行けと言われかねないということですよね。

 ちなみに、やはり、この認知無効の手続というのは非常に、きちんと定まっていないですし、分からないんですけれども、例えば、今ほどのお話で、いや、その認知が事実でない、実は、俺は、俺が父親だから認知が事実でないことを知っているという人がいたとします。そうすると、その人は一体全体、その認知は事実でないということを、どういう手続をして、いや、あの認知は実は事実じゃないんだということを言うのか。かつ、それはいつまでできるんだということは伺いたくなるわけなんですが、誰か、私人Xという方が、あの認知は事実でないということを把握した場合に、一体その人はどういう手続をすることになるんですか。

金子政府参考人 私人が、ある認知が真実でなくて無効じゃないかというようなことを主張する方法というのは、ちょっと私どもではよく分かりませんが、少なくとも、国籍の取得の有無という観点で問題とされる場合は、通常は、公的な機関からの通知が市区町村長にされるということを端緒にするということになっていますので、何か特定の私人が、あそこの認知はおかしいんじゃないかというようなことで、何か積極的に我々の方として調査をするとかいうようなことは想定されないと思います。

米山委員 いや、それはすごく想定されるんです、相続がありますから。

 相続を契機に、私、弁護士だからそういうのは多々あるんですけれども、相続を契機に、いやいや、あれは実は息子じゃないんだという話はあり得るんですよね。だから、それを想定しなくていいんですか。

 では、全く私人が、いや、違うぞ、国籍法三条三項に基づいて、あれはうそだと思っても、それはもう何もできないということなんですか。それとも、それを警察に言ったら、それは警察からしかるべき公的機関に行くんですか。

金子政府参考人 少なくとも、相続等の民事上の問題であれば、今回、認知無効の主張できる者の範囲を限定しましたけれども、主張できる範囲であれば、訴えを提起するというふうなことで、民事上の決着は図られるということになります。

 国籍をめぐる公法上の法律関係については、別途考えるということになります。

米山委員 いやいや、その別途をどうするんですかと聞いているんですけれども。

 民事でやったら、では民事が確定したらいきなり、突然無国籍になるんですか。

金子政府参考人 民事上の判決と必ずしもリンクするわけではありません。

米山委員 つまり、出入国管理庁ですか、どこかが突然動かない限りは、民事上、認知無効だとなっても、それは関係ないということでいいんですか。

西山政府参考人 入管庁といたしましては、認知の有効、無効等を判断する立場にございませんので、もし、委員お尋ねのような事案で情報提供がございまして、それに基づいて、対象の方が外国人であるというふうな取扱いを直ちに行うことはありません。

 ただ、そういった情報提供を受けましたら、例えばですけれども、虚偽認知という問題もございますので、警察に通報するなり、あるいは法務局に御連絡をするなりという対応は考えております。

米山委員 国籍法第二十条で言うような偽装認知というか、虚偽認知の罪はあるんですよね。では、これも、刑事罰が決まったとかということ、それは関係ないということですね。刑事罰が決まったって、やはり国籍があるかないかは相変わらず分からないということでいいんですか。

金子政府参考人 刑事罰が決まったことをもって、取りも直さず国籍がなかったということではないと思います。

 そのような有罪判決があったということが端緒になって届出がされ、市区町村長の通知されたことをきっかけに、その認知の効力を判断するということはあると思います。

米山委員 そうしますと、結局、手続はどこで行われているかというと、各市町村長なんですか、それとも法務省なんですか。手続、何か、誰かが、いや、違うぞと言った場合に、それはどこで、どういうふうに、誰がやるんですか。

葉梨国務大臣 今、いろいろと御指摘ありましたが、まず、後でも、今日、議論のあることなんですが、今回の取扱いで新たにそうなったというわけではないということはまず御理解をいただいた上で、例えば、認知無効の訴えというのが確定する、それが法務局に何らかの形で通報があって、法務局において国籍を削除する、そういうような行政行為を行う。あるいは、刑事事件で虚偽であるということが確定する、それが通報が行くことによって、法務局においてその国籍の削除というようなことをやる。いずれにしても、法務局においての行政行為ということになります。

米山委員 そうすると、法務局の担当官がその場で判断する、そういう理解でいいわけですね。誰がどうやるんですか。法務局の何か、たまたま担当官がやるということですね。

金子政府参考人 何らかの端緒があって、市区町村から連絡があって、その上で、戸籍の記載が法律上許されないものとか、あるいは記載に錯誤あるいは遺漏があることを発見ということであれば、最終的にはその戸籍の訂正という形に結びついていくということになります。

 その効果は、そのときに国籍を失うのではなく、初めから国籍を取得していなかったということになるので、ここに何らかの行政行為は想定されていないということになります。

米山委員 そうしますと、そもそも、今、虚偽だということが前提になっていますけれども、これはまたさらに、いや、虚偽だと言ったけれども虚偽じゃなかったということはあり得るわけですよね。俺が父親だと言ったけれども、実はその人は父親ではなくて。そうすると、今、行政行為ですらないので、一体全体、それに対してどうやって子供Cは異議を唱えるんでしょうか。一体全体、誰にどう異議を唱えたらいいのか。

 行政行為ならまだしも、行政訴訟というのはできるかもしれないんですけれども、行政行為でもない、刑事でもない、民事でもないとなりますと、もし偽の告発をされた場合に、偽の告発であの認知はうそだと言われた場合に、一体全体、子供Cはどうやってそれに対して異議を唱えるのか、教えてください。

金子政府参考人 ある程度確実性のあるような端緒がないと、我々の方で、元々認知が無効だったという認定が難しいと思います。認知をした方の人についてはかなり手続が、例えば刑事罰、されるなら刑事手続、それから民事訴訟であれば民事訴訟の中で主張できる機会があると思いますが、確かに、今おっしゃった認知された子Cの側からするとなかなか、防御する、あるいは反論する機会というのはないというのが現実かと思います。

米山委員 またさらに、そうやってはっきりしない中で、Xさんが、いや、あいつは日本人じゃないんだといううわさだけ立てて、うわさだけならまだしも、例えばXさんが実は子供Cと雇用関係を結んでいて、雇用関係を結んでいたんだけれども、実はあの人は国籍がないから在留資格がなくて労働ビザがないんだよといって、実際にお金を払わないとかということは可能なんですかね、もし仮に認知が本当に無効だとして。

 虚偽認知だということをXさんは本当に知っていて、だって俺が父親だもの、だからあいつは違うんだということをちゃんと知っていたとして、では、それを知っている、しかも、法律上無効というのは誰にとっても無効なわけだから、そうすると、そもそもあなたは遡って無効なんだから、それは私はお金を払う必要がない、そういう主張は通るんでしょうかね。

葉梨国務大臣 ずっと議論、やり取りを聞いておりまして、先ほど、私、行政行為と申し上げましたのは、行政機関が行う事実行為、そういう意味で申し上げたんですけれども、今のお話ですと、遡って確かに国籍というのは削除されるわけですけれども、それと雇用関係における契約というのはまた別物ではないかなというふうに思います。

米山委員 ここまでで終わりにしようと思うんですけれども、何を言いたいかというと、どう考えても法に不備があるでしょうということだと思うんですよ。

 それは例外的な事象、先ほど、午前中の話でもありましたが、法に不備があったって、例外的な事象だからその場その場でやればいいとおっしゃられたような気がするんですが、それは、やはり法をつくる者として、そんなことではいけないでしょう。やはりこれはちゃんと手当てをして、そういった、それはゼロにはできないにせよ、よく分からない事態が生じないようにすべきだと思われます。

 しかも、その方法は、比較的、そんなにおかしなことをする必要はなくて、認知を無効と言える期限を区切ればいいとか、それは最初から無効じゃなくて、ちゃんと何か手続を定めて、それで定まったら、そこから初めて効果が生じるというふうにすればいいわけですよ。しかも、その中で、無国籍のときには国籍はなくならないとすればいいわけなので。

 やはり、こういう穴のある法律をそのままにほっておいて、その場でやりますなんというのは、それこそ法治国家としていかがなものかと思いますので、是非、新しい、きちんとしたこれに対応する修正なり、法律案を作っていただきたいと思うんですが、葉梨法務大臣の御見解を伺います。

葉梨国務大臣 この点について、実は法制審議会でも議論がございました。

 それで、今回、民法において、認知無効の訴え、これについて期間を定めるとか、あるいは出訴権者を限るとか、そういった規律を新しく導入することになったわけなんですけれども、確かに、パブリックコメントの段階で、そういうような規律を国籍法の世界にも導入すべきではないかというようなコメントがあった。それについて法制審でも議論が行われたんです。

 ただ、やはり、先ほどもちょっと議論になっていましたけれども、必ずしも認知無効の訴えということだけで認知が無効になる、取り消されるということではなくて、例えば偽装の認知の場合なんかは、さっきも言ったように、刑事罰の過程でそういうことが、事実が分かる。

 そうなりますと、偽装認知の場合ですと、これは法制審の議論というよりも、ちょっと私の意見ということになるわけですが、捜査もやっていましても、偽装認知の場合ですと偽装した側がぐるだという場合もあって、認知無効の訴えを起こすかといったら、なかなか起こすという場面はないんじゃないかというふうに思われるわけです。

 いろいろなこともございまして、私自身、法制審の議事録を読ませていただきましたけれども、民法での認知に関する規律を国籍法に取り入れるということについては、現段階でそれを取り入れることはしないで、やはり別途、国籍法の世界と民法の世界は切り分けていくべきであるというような議論があったというふうに承知をしています。もちろん、だからといって、今の国籍法の規律について、午前中も近藤委員の陳述だけは、私、聞くことができましたので、いろいろな御意見があるというのもよく存じ上げています。

 ですから、先ほど、個別の事情ということで米山委員言われたわけですけれども、しっかり個別の事情を酌みながら、日本で生活して、あるいは教育を受けていた、そういうような子供たちが不利益を被らないように、私たちとしてもしっかりと、入国管理行政の面でも、あるいは帰化とか、あるいは国籍を本国に紹介するとか、そういった面でも適切な対応をしていかなければいけないなということは痛感をしております。

金子政府参考人 一点だけ訂正させていただきます。

 先ほど、戸籍の記載について訂正等をする主体、私、もしかすると法務局と申し上げた場面があったかもしれませんが、主体は市町村長、市区町村長ということになりますので、訂正させていただきます。

米山委員 では、それは分かりましたが、それはやはり非常に穴のあるところで、混乱するところですので、それはもうこの三条三項をつけないなり、修正するなり、立法するなり、きちんと対応すべきだと思います。

 では、あと、もう時間が大分少ないんですが、ばっと言いますけれども、葉梨法務大臣、先般、葉梨ゴルフ大会につきまして、いや、それはアドホックな会員がやったことだから俺は関係ないんだとおっしゃいました。

 週刊誌で報道されたところに、主催葉梨康弘後援会と書いてある、これは誤記だとおっしゃいました。まあ、それはそうしましょう。

 ちなみに、ここにはもう一つ、連絡先として、茨城県取手市新町四の二十二の三十三という連絡先も書いてあったわけですよ、電話番号は消されていましたけれども。この連絡先、住所は何だろうと思って、葉梨法務大臣の葉梨康弘後援会収支報告書を見ますと、その住所にあるわけですよ。

 結局、このアドホックな方々は、連絡先を葉梨康弘後援会にしたわけですね。それでいいですね。

葉梨国務大臣 これは新潮社に対して、取材がありまして、その回答で、当該ゴルフ大会の準備、運営については、葉梨後援会ゴルフ大会実行委員会の求めに応じ、葉梨康弘事務所の職員が運営のお手伝いや連絡等の業務を担ったことがありますというような回答もしておりまして、これは便宜的に私どもの事務所の電話番号を連絡先というふうにしたものにすぎないです。

米山委員 ちなみに、葉梨康弘後援会の収支報告書を見ますと、代表は葉梨康弘さんなんですね、葉梨法務大臣なんですよ。そうすると、葉梨法務大臣はどんな業務をしていたか知っているはずなんですけれども、どんな業務をされたんですか。便宜的にやられたということは、大会運営を全部やられたということでいいんですかね。

葉梨国務大臣 葉梨康弘後援会というのは誤記であるということについては先般申し上げさせていただきました。あくまで、これは葉梨康弘後援会とは別の、葉梨後援会ゴルフ大会実行委員会という親睦の団体ですから、葉梨康弘後援会とは全く異なるもので、あくまでもアドホックに、やりたい人が集まっている親睦の団体、団体というより、アドホックに立ち上げた、その都度立ち上げるというものであります。

 団体という言い方もちょっと、恒常的な団体でもございませんので、正確ではないので、訂正をいたします。

米山委員 それを聞いているんじゃなくて、そのアドホックな実行委員会が葉梨康弘後援会にお仕事を依頼したんですよね。そのお仕事を依頼した後援会の代表は葉梨さんなんですね。しかも、このときの会計責任者、渡辺さんという人も、これは今度は葉梨さんの第三支部ですか、の会計責任者もやっていらっしゃるので、要するに、どんなお仕事をそのアドホックな人たちから依頼されたか、葉梨さんは全部把握していますよねと聞いているんです。

葉梨国務大臣 葉梨康弘後援会という団体に依頼したということでは、実行委員長は思っていないと思います。あくまで、葉梨事務所で手伝ってくれないか、そこで葉梨事務所の職員もお手伝いをしてくれないかということだろうと思います。

米山委員 あくまでそうおっしゃるのは、それはいいんですよ。

 では、今ほど配りました資料のところで、これは葉梨康弘法務大臣のブログから取りました。これは平成二十三年ですけれども、「十月二十四日は、毎年恒例の後援会ゴルフ大会。おかげさまで、約三百五十人の参加を得て開催することができた。」と書いてあるんですよね。これも誤記ですか。

葉梨国務大臣 毎年恒例のというのは、ほぼ毎年のように行われているということで、確実に毎年同じ時期に行われているというものではございません。まさに後援会の皆様が、そこに看板も出ているかと思いますが、葉梨康弘後援会ではなくて、あくまで葉梨後援会ゴルフ大会ということで、後援会の皆様が親睦のために三百五十人集っていただいて、大変ありがたいことだというふうに思います。

米山委員 いやいや、葉梨大臣、これは葉梨後援会と書いてあるけれども、葉梨大臣自身がブログに毎年恒例の後援会ゴルフ大会と書いているんですね。これも、では、ブログも誤記したんですね。

葉梨国務大臣 葉梨後援会ゴルフ大会という親睦で集まった方々の団体で、葉梨というのを略して後援会ゴルフ大会と書かせていただいたんです。

米山委員 つまり、葉梨法務大臣は、葉梨後援会ゴルフ大会と言ったとしても、それは後援会でやったんじゃない、それをみんながそう言っていいという主張をしているんですね。

葉梨国務大臣 葉梨後援会という政治団体はないんです。葉梨康弘後援会という政治団体はございます。

 葉梨後援会ゴルフ大会というのは、葉梨後援会ゴルフ大会、まさに字のとおりなので、後援会の方々が自主的に集まったものなので、葉梨康弘後援会ゴルフ大会というような名前も使っていないということです。

米山委員 もう一言だけですけれども、葉梨大臣、それはさすがにひど過ぎませんか。同じことであれなんでしょうけれども、その主張が通るんだったら、全部それで通りますよ。

 そもそも、では、後援会主催のゴルフ大会というのはあり得るんですか。ありとあらゆるものは、そんなもの、いや、やりたい人がやっただけだ、後援会はやらないんだ、公職選挙法百九十九条の五なんというものはないんだ、そう言っているのと一緒でしょう。それは余りにひどいと思いますよ、私。

 もう一度聞きますけれども、では、葉梨康弘さんがブログで書いた毎年恒例のゴルフ大会というのは違うんですね。これは今ほど聞いたので、もう一回言わなくていいんですけれども。

 ちなみに、十月二十四日、恒例で大会をされているらしいわけですよ。だって、自分で毎年恒例のゴルフ大会と書いているんだから。にもかかわらず、十月二十四日、ほぼ十月。次の、平成二十八年は十月十七日にやっているんですけれども、多分これはほぼ毎年十月にやっているのに、アドホックに集まった人たちもまた十月にやるんですか。何で、ちゃんと後援会のゴルフ大会を恒例でやっているのに、また別にやっているんですか。それとも、葉梨大臣が言っている恒例のゴルフ大会というのは、毎回毎回毎回毎回、全部アドホックに集まっているということなんですか。どちらの主張なんですか。

葉梨国務大臣 十月にといっても、おっしゃられますが、これはたしか週刊新潮にちっちゃく、私どもから提供した資料で出ていたものの開催日は十二月ですし、また、週刊新潮に、葉梨後援会の実行委員会です、しかも主催は実行委員会事務局ですよということでしっかり訂正したものを、週刊新潮に提出したものは三月ですし、月によっても、また、毎年のようにやるということであって、毎年毎年必ず同じ時期にやっていたとかそんなものではありませんで、やはりゴルフ好きの方が、親睦のために、さあ、やろうというふうに集まって、アドホックにつくった実行委員会だというふうに思います。

米山委員 これで終わりますけれども、時間ですから。

 余りにも残念です。法務大臣自らそうやって、脱法行為であり、余りにもあり得ない言い訳をし続ける。自分がブログに書いたことにすら反するようなことを堂々と国会の場で言うということに対して、極めて残念ですと言わせていただいて、残念ですよ、何で笑っていられるのか、私、分からないですよ。(葉梨国務大臣「ちゃんと説明しているじゃないの」と呼ぶ)説明になっていないでしょう。(葉梨国務大臣「なっていますよ」と呼ぶ)そんなのはあり得ないですよ。(葉梨国務大臣「あり得る、あり得る」と呼ぶ)あり得るんですね。

伊藤委員長 米山さん。

米山委員 分かりました。結構です。

 これで質問を終わらせていただきます。

伊藤委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の民法の改正案、親の体罰を禁止し、子供の利益を守ることが明確化されました。また、女性が離婚後百日間再婚できないという理不尽な現行法を改め、再婚禁止期間が廃止されました。さらに、認知によって親子関係が一旦成立し、七年が経過した場合は、その認知を否定できなくし、子の権利や利益を保護しようとする前向きな内容になっています。全体として改正内容に賛成しております。

 しかし、国際的な流れから逸脱する国籍法三条三項が新たに設けられました。ある日突然、父親だと信じていた人が父親でなかったという事実が判明した場合、日本国籍を失ってしまう。親の事実に反する認知によって、なぜ何の責任もない子供が国籍を失うという多大なる不利益を受けなければならないのか、全く理解できません。

 午前中の近藤参考人と鎌田委員との質疑を聞いていて、改めて人道的な問題があることを強く感じました。日本人でなくなる。それが国籍を取得した日にまで遡り、日本人としてこれまで過ごしてきた全期間が、その人の人生が否定されてしまうこと。驚くべきは、過去に遡って不法滞在扱いされてしまうということです。子供に、生まれ育った日本にいれなくなる、そういった恐怖心を与えてしまうような法改正、子供の無国籍はあってはなりません。

 そもそも、この国籍法を新設する理由、事前に法務省の担当部局に確認しておりますが、偽装認知による不正な国籍取得を防止するためだ、そういう説明を受けています。

 今日の午前中、近藤参考人ははっきり言われました。既に厳格な審査を行っていて、偽装認知はかなり防止できていると。国際的な無国籍を防止する法整備が他国で進む中、また、本改正案において子の権利や利益を保護するという趣旨に、明らかに矛盾しています。

 法案全体には賛成ですが、参考人の意見を聞いた上で、やはり、この国籍法には強く反対いたします。大臣、国籍法三条三項、大きな問題があると思います。削除すべきではないでしょうか。

葉梨国務大臣 これも先ほど来議論のあるところで、私も近藤参考人の意見陳述は、グランディ難民高等弁務官とかと会ったりもしていたものですから、ほかの、鎌田委員の質疑の時間に聞けなかったんですけれども、意見陳述は拝見、見させていただきました。

 その上で、近藤参考人が、たしか十月二十七日の意見書の中にも書かれていたんですが、この三条三項の規律というのが新しい規律ではなくて、今の、現状の規律をなぞったものであるということは近藤参考人も理解をされているだろうというふうに思います。

 先ほどもちょっと申し上げましたが、ここの三条三項で、私どもは新しい規律を設けようとしているわけではありません。公法である国籍法の規律の中で、認知に反する事実が明らかになったときは、これを遡って、つまり、届出が有効でなかったものとして、不受理という事実を遡ってという現在の運用規律、これを変えるものではない。

 そして、なぜそこのところを変えなかったのかということなんですが、先ほどもちょっと紹介をさせていただいたんですが、法制審議会での議論がございます。パブリックコメントの中でも、今回の認知に関する規律というのが相当変わってきている、この民法の認知の規律というのを国籍法にも適用すべきではないかという意見はあったことはありました。そこについても丁寧な議論は、実は法制審議会でも行われておりました。しかしながら、民法の規律をそのまま公法である国籍法に取り入れるということについては、議論の一致というか、これは見ることができませんで、やはりそこは切り離していくべきであるということが結論として全会一致で、結論としては決まったということに理解しています。

 その説明として偽装認知の話もあるんだろうと思うんですが、偽装認知といいますのは、つまり、平成二十年に国籍法が変わるときに、やはり偽装認知の問題というのが非常に大きな問題になりました。

 そこで、偽装認知ということを考えますと、認知を偽装する側が誰かとぐるになって、子供に責任がない場合は多いと思うんですが、そうすると、認知無効の訴えを偽装認知をした側が出すということはなかなか考えられない。ですから、いろいろな形の摘発ということでその偽装認知が明らかになって、そして、それが市町村を通じて法務局に通報されて、法務局が国籍を持っていますので、国籍を削除するというような事実行為を行う。そうなってくると、今の認知に関する民法の規律、これをそのままやはり国籍法に当てはめるというのは、なかなか議論のあるところだと思います。

 また、国籍法の原則というのが、やはり血統主義で、極めて例外的な出生地主義ということになっているということになりますと、それについての、やはり今後、哲学的な議論もまた出てくる可能性もある。

 ただ、るる申し上げましたけれども、思いは全く一緒でございまして、日本に生活していた子、しかも帰責事由のない子供、それから教育なんかも受けている、そういう子供、これを不利益な扱いをしては絶対ならない、私は政治家の一人としてそう思います。ですから、後でも議論いたしますので、そのとき答えるといたしまして、個別にしっかり対応していかなければいけないと思います。

山田(勝)委員 大臣、丁寧な御回答、ありがとうございます。

 虚偽認知に基づく国籍取得は、大臣おっしゃるとおり、本当にあってはならない、そういうのは私も当然だと思っております。大いに取り締まるべきだと。

 しかし、虚偽認知による不正な国籍取得を防止するために無国籍者を生み出してしまっていいのでしょうか。まさに本末転倒ではないでしょうか。近藤参考人が指摘されたように、不正な国籍取得に対しての対策は今まさに法務省を挙げてされていると。自らに何の罪もない子供が突如として無国籍状態になってしまうことを現行法は肯定してしまっています。

 法治国家として、どちらを葉梨法務大臣は優先して防ぐべきだと思われますか。簡潔にお願いします。

葉梨国務大臣 時間の関係もあるので、簡潔に御答弁します。

 先ほども紹介した法制審の議論を鑑みますと、制度的に国籍法で対応するというのはなかなか難しい面があるかな。ただ、しかしながら、やはり個別に私どもがしっかりと運用することによって、帰化、あるいは本国の紹介、あるいは在留特別許可、いろいろな手段を講じながら、不利益が生じないような方策というのをしっかりやっていくということが大切だと思います。

山田(勝)委員 まさに木を見て森を見ず、そのような状況かと思います。余りにも不正防止を意識する余りに視野が狭くなり過ぎている。より重要な視点が抜け落ち、物事の本質を見誤った法改正が行われようとされていることに強い懸念を示させていただきます。

 国際機関であるUNHCRは、国連総会から無国籍の把握、防止と削減そして無国籍者の保護という世界的任務を与えられ、各国政府と今まさに協力して取り組んでいるところです。

 UNHCRは、今回の国籍法三条改正案に伴い、日本政府に対し、国籍法に基づいて無国籍及び国籍の恣意的剥奪の防止を確実にするための具体的な提言がなされています。大臣、日本はなぜ無国籍者地位条約、そして無国籍削減条約、この二つに批准していないのか。これも大きな問題だと思っております。

 時間がないので次に行きますが、その上で、この国籍法三条三項、実は、日本が締結している国際条約である児童の権利条約や自由権規約に明らかに違反しております。

 自由権規約の第二十四条第三項では、全ての児童は国籍を取得する権利を有するとしています。また、児童の権利条約第八条第一項では、締約国は児童が法律によって認められた国籍を含むその身元関係事項について不法に干渉されることなく保持する権利を尊重することを約束するとあります。

 児童が国籍を保持する権利を尊重する、この条約に日本は締結しているにもかかわらず、全く尊重されていないではないでしょうか。このような明確な国際条約違反、大臣、これは問題ではないでしょうか。

葉梨国務大臣 先ほど来の話で、木を見て森を見ずというお話でありましたが、この国籍法の世界もまた法治主義の世界でございます。これはなかなか制度的に、今、だからといってすぐにいじるというのが可能かどうかというのは、なかなか難しい面があるんです。

 その上でお答えをさせていただきたいと思うんですが、おっしゃるとおり、児童の権利条約あるいは自由権規約、これについては、児童が国籍を取得する権利を有することなどを規定しています。これは、現在の国際社会で国籍を有しない児童の地位が不安定であること、これに鑑みて、締約国が児童は国籍を取得する権利を有することを認めるとの原則を規定したものです。

 ただ、これは、各条約の締約国が、自国内で出生する場合を含めて、自国内にいる全ての児童に対して自国の国籍を付与する義務まで課したものではない、そういうふうに理解をしています。

 我が国の国籍法では、無国籍者の発生を予防すべく、出生による国籍の取得に関し、原則として父母両血統主義を採用し、補充的に生地主義を採用しています。さらには、無国籍者について、より帰化条件が緩和される、簡易帰化によって日本国籍を取得する、そういったこともできるようにしています。

 ですから、このような施策、法律の体系が、おっしゃるような児童の権利条約あるいは自由権規約に反している、そういうふうに私どもは考えているわけではございません。

山田(勝)委員 大臣から、先ほど来、なかなか国籍法に適用していくのが困難であるというお話がありました。

 しかし、海外ではどうでしょうか。用意した資料を御覧ください。UNHCRの資料です。

 一ページ目、オランダ。第十四条第八項では、オランダ国籍、喪失の結果無国籍が生じるときは失われない。ノルウェー。同様に、無国籍となる場合は適用されない。ここで示されている多くの国々が、国籍を失う場合に無国籍となる場合はその国籍を剥奪しないことを明記しています。これがグローバルスタンダードではないでしょうか。

 さらに、一番最後、スペイン。スペインでは、スペイン国籍を十年間保持し、かつ継続的に使用してきたことは、そもそもの資格が無効とされるべきであったとして、スペイン国籍を確認する根拠となると明記されています。つまり、十年間スペイン人として過ごしていた実績があれば、仮に事実的に親子関係が認められなかったとしても、スペイン人として、そのままスペインで生活していいという規定です。

 日本が今行おうとしている法改正は、全く世界の流れから逆行していると言わざるを得ません。これまでの国籍が維持されるように、日本でも、世界同様、保護していくべきだと思われます。無国籍を防ぐ法改正が求められています。

 大臣、無国籍防止規定、加えるべきではないでしょうか。

葉梨国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、国籍法については、更なる哲学的な議論も含めた議論というのが私は必要なんだろうと思います。ただし、グランディ難民高等弁務官とも今日お会いいたしましたけれども、やはり、我々は、無国籍者を生み出さない、そういう努力をしっかりしていくということは大切なことだというふうに思っています。

 そういうことで、先ほども申し上げましたように、例えば簡易帰化の要件、あるいは無国籍とならないように本国を紹介する、さらには、日本にいていただいて、いろいろな帰化をお手伝い、お手伝いというか支援をしていく。そういう意味で、先ほど言ったような、日本に生活していたこと、あるいは教育を受けていること、これは積極的に考慮する要素として、しっかり私たち自身も考慮していかなければいけないと思います。

 そこは、血も涙もないというふうに言われないように、しっかり血も涙もあるように、我々しっかり対応しなきゃいけないし、また、今後是非、国籍法の議論については、全体の議論ということで、また国民的にも議論をしていただければありがたいなというふうに思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 新聞報道によれば、国内で無国籍の人は二〇一四年以降約三千四百人確認されている、そして、支援する民間団体によれば実際は一万人以上いるとも指摘されています。

 このように、現行、無国籍状態を放置してしまうかのような法整備。実際に無国籍になってしまった方々、どのような不利益を私たちの社会で被ってしまうのか、改めて教えてください。

葉梨国務大臣 これは、本当に不利益は大きいと思います。守ってくれるべき国がないということ、このことは本当に、私は、だからこそ私自身も解消の努力というのはしっかりしていかなければいけないと思います。

 具体的には、当然旅券も発行されませんから、諸外国にも行くこともできないし、極めて大きな不利益であるというふうに思います。

山田(勝)委員 大臣の真っすぐな思い、気持ち、本当に届きました。確かに、不利益、物すごい不利益なんです。

 さらに、恐ろしいことに、遡って効力を失わせますよね、今回の内容。違法滞在期間中、日本国民として受けられた社会保障や、例えば選挙権などはどうなってしまうんでしょうか。児童手当は返還しないといけないんですか。選挙で投票した票はどうなってしまうんですか。過去の日本人としての歩みを消されるということは、大変重要なことです。この点についてもお答えください。

葉梨国務大臣 児童手当とか生活保護、これは是非厚労省の方にも聞いていただければありがたいと思うんですが、例えば選挙権について言えば、過去に投票したもの、これについては、別に、後日、前の選挙の確定結果からその一票が抜かれるとか、そういうことはないというふうに私は聞いています。

山田(勝)委員 大臣から、対策として、先ほど来、帰化についての言及があっております。

 国籍法五条二項では、このように規定されています。「法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。」

 つまり、葉梨法務大臣は、特別な事情があると御自身が認めれば、帰化を許可する権限をお持ちです。このようなケース、葉梨大臣、当然、帰化、許可されるのでよろしいでしょうか。そのような法解釈でよろしいでしょうか。

金子政府参考人 今御指摘になったのは国籍法五条二項かと思いますが、「外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合」というのは、重国籍状態にある者がその重国籍を解消することができないような場合を想定しておりますので、ちょっと場面を異にするように思います。

山田(勝)委員 それでは、葉梨大臣が先ほどおっしゃった簡易的に帰化を認めるというのは、一体どういうことなんでしょうか。

葉梨国務大臣 これは、今局長から答弁したとおり、その帰化の許可をすることができない理由というのが第五条にずっと列挙されている。二項を委員引かれたんですけれども、簡易許可というのは、そうではなくて、八条になってまいります。

 第八条の四号、これで「日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者で」、これは遡りますので、「その時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの」、これについては、その者が五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができるという規定になっておりまして、これを利用していくことができるのではないかという趣旨で最前来答弁をさせていただいています。

山田(勝)委員 ありがとうございます。では、八条を活用することで、こういったケース、帰化を与えていくことができるということでよろしいでしょうか。

 ただし、ここにも大きな矛盾、午前中、近藤参考人が指摘されたように、そもそも国籍、帰化を与えるということは、国籍を更に与え直すんですよね。であれば、国籍を奪う必要はないんじゃないでしょうか。ここに大きな矛盾があるんですが。帰化ができるから大丈夫ですよじゃないんですよ。帰化を与えるぐらいだったら、国籍を奪う必要はなくないですか。大臣、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 そこが先ほど来ちょっと哲学的な議論と言っているところでございまして、国籍法というのは、まさに血統主義と例外的な出生地主義。そして、帰化というのは、それと別で個別に国籍を与えるという行為になってまいります。

 そうなってまいりますと、真正・生物学的な子供ではない子供、これに対して国籍を与えるということになりますと、やはり今の現行法の体系の中では帰化というものを利用していかざるを得ないというたてつけになりますので、最前来そういう答弁をさせていただいています。

 そうなりますと、つまり、生物学的な、血統主義じゃない方を最初から日本国籍を認めるということになりますと、そこの血統主義の例外ということになりますので、これはいろいろと議論のあるところではないかなというふうに思います。

山田(勝)委員 大臣なり、法務省、行政側の理屈はそうなのかもしれませんが、これは人生が懸かっているんですよね、当事者は。その行政手続の、何か国籍と帰化がちょっと一緒にできないとか、誰も理解できないと思います、国民は、その説明で。これは本当に検討していただきたいと思います。

 さらに、じゃ、帰化があればいいじゃないかということは大きな問題がありまして、帰化はそもそも半年から一年ほどの長期間を有する。簡易的な帰化をと言われたので、これは大事なポイントです。どの程度の期間で帰化が認められるんでしょうか。

葉梨国務大臣 実際、認知無効になりまして帰化を認めるケース、近藤参考人の例を出されたのを私も勉強させていただいたんですが、ちょっとあのケースは少し長くかかったというのは、別にいろいろな事情があったからだというようなこともあるようでございます。

 具体的にどれぐらいの期間で帰化を認められるかというのは、なかなかこの適用事例がないものですから、しっかりそこら辺の運用も含めて、私ども検討していきたいと思います。できるだけ早くというふうには思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 今改正案では、親子関係の認知無効を訴えられない期間として、七年の認知期間が提案されています。親の虚偽認知によって全く罪のない子が国籍を喪失してしまい、不利益を被ることがあってはなりません。葉梨大臣も、守ってくれる国がないという状態は大変な状況であると御心配いただいております。

 子が既に取得した国籍が喪失、剥奪されることのない、先ほど紹介したスペインのように、一定の期間制限として、今回改正される親子の認知関係同様、この七年の期間を同様に適用すべきではないでしょうか。

葉梨国務大臣 これも最前来ずっと申し上げているとおり、やはり、今回御提案させていただいたものは、法制審の議論を踏まえて、民法の世界をしっかり整理をしていこうと。ただ、その民法の改正内容、これを国籍法に取り込むということは切り離してということで提案をさせていただいています。

 御意見が御意見としてあるということは、私もよく、山田委員のお気持ちも、熱い気持ちも分かりますし、また理解もできるんですが。ただ、しかし、私どもとしては、やはり、法律として提出している以上は、国籍法の取扱いというのは従前どおり、もちろん、いろいろ御意見はあるだろうと思います。ただ、今回はやはり民法の部分をしっかりと整理をしていきたいなというふうに思っています。

山田(勝)委員 そろそろ時間になります。大臣とるるいろいろ議論をさせていただきました。

 最後に、これだけ伝えさせてください。やはり、日本国籍を七年以上有していれば親の虚偽認知が判明しても国籍を失うことがない、また、そもそも日本国籍を失うことで無国籍になってしまう、そういったことを防止するための法整備、必ず必要であると強くお訴えさせていただいて、私の質疑といたします。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 まず冒頭に、本日午前に開催いたしました参考人質疑における野党枠の貴重な参考人を一名欠員させてしまったことについて、本日参加されています全ての委員の皆様へ、この場をおかりしましておわび申し上げます。

 また、御報告が遅れたことで、伊藤委員長、薗浦筆頭理事、寺田野党筆頭、委員部の皆様に多大なる御迷惑をおかけしましたことを重ねておわび申し上げます。大変失礼いたしました。

 本日は、先日行われました衆議院本会議での葉梨法務大臣、永岡文科大臣に質問をさせていただきました際の御答弁いただいた内容、そして附帯する問題点について議論をしたいと思っております。

 葉梨法務大臣を始め関係省庁の皆様、委員長、委員部の皆様、そして、お忙しい中、簗文科副大臣、本日、よろしくお願いいたします。

 法務委員として民法を知ろうとルーツをたどれば、日々の暮らしに多く関わっている法律である我が国の民法は、フランス民法を規範とし、日本近代の司法制度の基礎を築いた江藤新平氏主導の下、推進されたことを今更ながら知りました。

 明治二十九年に民法が制定されてから今日に至るまで様々な改定が行われてきました中、本日議論させていただきます嫡出推定制度や懲戒権については、基本的に明治以来の規定がいまだに引き継がれております。

 まずは、懲戒権に関する規定等の見直しについて伺います。

 今回の改正では、懲らしめる、戒めるという強い語気をはらむ懲戒という言葉が民法の規定から削除されることとなりました。従前より児童虐待の口実として使われてきたと言われているような懲戒権が削除され、虐待、そして正当なしつけ、この境界を曖昧にする要素が今回の改正によって排除されることは歓迎すべきことと考えます。

 特に、前回、二〇一一年の民法改正の際に、懲戒権の削除は議論の俎上にのせられていながら、正当なしつけを妨げる可能性があるとして削除には至らなかった中で、児童虐待の深刻化などを今の政府全体として向き合った結果、二〇一一年に見過ごされた言葉すら今回丁寧に向き合い、改正を目指すという姿勢には、こちらは共感いたします。

 そして、今回、民法の規定から削除された懲戒という言葉は、民法のみに使われる用語ではもちろんございません。文科省の所管する学校教育法には、いまだに懲戒についての規定が残っております。

 本会議においても、永岡文科大臣から、学校教育法第十一条を見直す必要はない、こういった御答弁をいただいたんですが、法務省と文科省における懲戒の言葉の意味やイメージを含めて、それぞれどのようにお考えなのか教えていただきたい。

金子政府参考人 まず、法務省から、民法に言う懲戒について御説明します。

 民法第八百二十二条の懲戒、これは現行ですけれども、一般に、子に問題行動等があった場合に、子の監護、教育に責任を負う親権者がこれを矯正し、その責任を全うするために厳しく説教するなど、一定の制裁を加えることをいうものと理解されていると思います。

寺門政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校教育法についてでございますけれども、学校教育法十一条に規定する懲戒につきましては、学校が教育目的を達成するため、校長及び教員が児童生徒及び学生に対し、教育上必要な範囲で叱責、注意や退学、停学等を行うこと、このように解釈をしてございます。

沢田委員 法務省と文科省からそれぞれ懲戒という言葉についてお伺いしました。

 ただ、一方では規定が削除され、一方では残存しているということで混乱する可能性が高いのは、私は、日々子供たちと接する学校現場ではないかと考えております。

 というのも、今回の民法の改正で大事な部分は、懲戒という言葉を法務省は大変デリケートに考えた結果、削除するという方向性を出されました。ただ、児童虐待をする親が本当に、この懲戒という言葉を盾に児童虐待を始めるんでしょうか。私は、虐待をした親が、結果として自らの正当性を訴える材料に使ったとしても、民法を読んで、懲戒してもいいんだというほど民法に精通している方など、私自身、子育てをしながら見たことがほとんどございません。

 逆に、学校教育法を知らない学校の先生は一人もいません。そして、先生はもちろん公務員ですから、特に児童生徒に関係するような民法改正について関心や興味は高いと考えて普通だと思います。

 言い方は極端かもしれませんが、ほとんど知らない方に向けてデリケートな判断をする法務省の姿勢を知っても、文科省は何も問題がないとお考えなのでしょうか。答弁ください。

寺門政府参考人 お答えを申し上げます。

 最前、先生が御指摘いただきました本会議でも大臣が御答弁申し上げておりますとおり、先ほど私が申し上げました学教法の懲戒の趣旨というものにつきましては、今回の民法の改正の趣旨とは異なるものでございますので、改正の必要はございません。

 ただ、先生おっしゃいましたとおりでございますので、民法上の規定の改正、懲戒規定とは趣旨、目的が異なるものでございますけれども、こうしたことにつきましては、何らかの機会を捉まえまして、学校現場にも周知を図ることを検討してまいりたい、このように存じているところでございます。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 何か少しトーンが変わったような気がしております。レクのときからずっとお話を伺っていて、やはり問題がないという文科大臣の意見を役所の方もずっと踏襲していたと思ったんですけれども、今、御検討いただけるということをいただいたので、大変ありがとうございます。

 私はPTA会長をやっており、もう今ちょっと辞めちゃったんですけれども、現場の声をいろいろと聞いてきました。

 今の先生方は、子供に逆上がりを指導する際、セクハラや体罰へのおそれから、体には触れずに、表から頑張れ頑張れと言っているんですね。そこまでして鉄棒を教える意味が一体どこにあるのか、私は正直分かりません。そして、これが学校の現場の実情なんです。

 私は今四十三歳ですけれども、中学校でも高校でも体罰を受けてきました。私の、昭和五十四年生まれ、まさに、高校で遅刻をすれば、蹴る先生がいました。私立にもいました。そんな中で、体罰は決して許されないというのは、私、自分の教育にも課しています。子供たちに手を上げない、親として声を荒げないということは徹底しているんです。

 だからこそ、体罰は決して許されない、これは当たり前の話なんですけれども、今の現場は、こうやって先生方をがんじがらめにして、教育という本質から逸脱したことですら平気で行わせてしまうようになっているということを目の当たりにした私からは、懲戒という言葉すら小さなゆがみになり、現場に新しい混乱を生んでしまうのではないかと強い危惧をしておるんです。

 先ほども御説明いただきましたが、学校においては、停学や出席停止といった法律上の懲戒と実際の教育現場における懲戒、この両面があるとは思いますが、仮に、民法の規定が見直されたのならば、学校現場に誤解のないよう、民法改正についての説明や通知等を発出するつもりがあるのかをお伺いいたします。

寺門政府参考人 お答えいたします。

 先ほども若干申し上げましたけれども、学校教育法の懲戒規定というものと、今般の民法の改正の趣旨ということは異なるのでございますけれども、こうしたことにつきましては、機会を捉まえまして、例えば、都道府県の教育委員会の集まりの会議ですとか、そういう場を捉まえまして、学校現場にも周知を検討してまいりたいというふうに存じているところでございます。御理解をいただければと存じます。

沢田委員 更に御検討、ありがとうございます。

 次に、学校教育法第十一条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例についてお伺いいたします。

 これは、本会議でも取り上げました。文部科学省がホームページに掲載している児童生徒の懲戒、体罰等に関する参考事例では、認められる懲戒として、練習に遅刻した生徒を試合に出さずに見学させるなどが例示されておりますが、文科大臣によれば、心に深い傷を与えるような指導であれば、それは懲戒権の範囲ではないということでした。私は、正直、載っているものと、この大臣の答弁も含めて、この答弁によってまた学校現場は更に混乱していくのではないかと思っております。

 そこで、この参考事例について幾つか質問をさせていただきます。

 まずは、これらの参考事例をホームページに掲載している意味、文部科学省としての狙いについて教えてください。

寺門政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘の参考事例が添付されています通知でございますけれども、経緯といたしましては、この通知が作成された当時、部活動中の体罰を背景とした高校生の自殺事案が発生したことを受けまして、各都道府県教育委員会に対しまして、体罰の禁止の徹底を改めてお願いしてございます。

 そこで、御指摘の参考事例でございますけれども、もとより、教員等の児童生徒等に対する懲戒行為が体罰に当たるかどうかという点につきましては、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況などなどを、諸条件を総合的に考えまして、個々の事案ごとに判断をするものでございますけれども、この参考事例につきましては、学校現場の参考に資するように、あくまでもその参考としてまさに示してございます。

 また、この趣旨につきましては、先生が御指摘くださいました事例の添付してございます通知にも明記をさせていただいているところでございます。

沢田委員 御丁寧にありがとうございます。

 ちょっと質問、また続くんですけれども、次に、どのような経緯でこれらの事例を選定されたのか、また、これに現場の声など、数量的なデータというものが取り入れられているのかもお伺いしたいと思います。

寺門政府参考人 お答えを申し上げます。

 参考事例につきましては、具体的な事案やそれを踏まえました教育効果を想定して懲戒の類型というものを示したものではございませんで、学校現場での実践に当たりまして、通常、懲戒権の範囲内と判断されると考えられる行為につきまして、あくまでも例示として記載してございます。

 経緯、背景でございますけれども、この事例につきましては、定量的とまでは、済みません、申し上げられませんけれども、専門家、有識者や校長会など、学校現場の御意見も踏まえながら作成したものというふうに承知をしてございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 いろんな現場の声というものが入っているということなんですけれども、各都道府県、また学校ごとに、更に細かいマニュアルなどは作成されているんでしょうか、これ以外に。

寺門政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、文部科学省につきましては、例えば、この参考事例の添付してございますものの通知のほかに、部活動につきまして、運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインにおきまして、通常のスポーツ指導による肉体的、精神的負荷として考えられるものですとか、運動部活動で教育上必要があると認められるときに行われるものなどについて、これもあくまでも参考として例示をしているところでございます。

 また、文科省におきまして、教育委員会等において作成されている体罰防止に関する資料を網羅的に把握しているものではございませんけれども、一部の自治体では実施してございまして、そういった体罰防止の取組事例につきましては、これも、機会を捉まえまして、各都道府県教育委員会等に周知して、教育実践の参考に資するように努めているところでございます。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 各自治体などで細かいマニュアルを作成していることがやはりあるという御答弁も先ほどありましたけれども、改めてなんですけれども、体罰の禁止は明確にまず決まっております。

 そんな中、各教育現場にも細かいマニュアルが配付されている中で、文科省が懲戒についてわざわざあのような細かい例示をすることで、やはり、また同じように混乱が起きるのではないかというふうに考えてしまうんですね。

 ポジティブリスト、ネガティブリストという言葉がございます。ポジティブリスト方式、ポジティブリスト制度など、いろいろ呼び方はありますけれども、基本的には、軍事、防衛の分野ではよく使われる言葉です。要は、いわゆるそれ以外は禁止する方式はポジティブリスト。そして、一般に、ポジティブリスト方式は、原則として禁止、規制している犯罪、事件、事故などを抑止する効果があると言われています。反対に、原則として自由とする状態で、例外的に禁止、規制するものを列挙した一覧表をネガティブリストと呼びます。

 そこで、教育現場で考えた場合、どうでしょうか。私は、恐らく、現状としては、ポジティブリスト的に使われているのではないのか。現場の教職員は許されることが限定的になるため、いろいろな縛りや同調圧力などで拘束され、自由にやれる環境ではなくなっているように思います。

 本来は、生徒児童のためになることであれば、最低限のやってはいけないこと以外は自由にやっていい環境が必要だというふうに私は個人的に感じています。つまり、ネガティブリスト的な動き、考えができた方がよいのではないでしょうか。

 このような中途半端な事例を載せることが現場の混乱を生む、教職員の皆さんは疲弊されているのではないでしょうか。

 以前、文科省の方と話した際に、懲戒とは教育に含まれるという言葉をいただきました。ということは、ホームページにある懲戒についても、本来、教育として何か別の意図がないならば、やるべきでないとも私は考えます。

 ちなみに、文科省にお伺いしたいのですが、例としてある、放課後等に教室に残留させることや、授業中、教室内に起立させることで、一体どんな教育になるとお考えなんでしょうか。

寺門政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来、るる繰り返しで申し訳ございませんけれども、今回の事例はあくまで参考事例でございます。まさに、教育現場、日々現場で児童生徒に向き合って、真摯な教育活動を行ってくださると存じています。

 そういう中で、例えば、体罰は絶対禁止、許されない行為でございますけれども、教育熱心な余り、懲戒と体罰というものの線引きといいますか、それに悩まれるというようなお声も聞きますので、そういう意味において、参考事例としておつけをしてございます。

 ただ、先生、るるおっしゃっていることにつきましては、私どもの通知の精神と通底する部分もあると思いますので、改めてそういう趣旨は、機会を捉まえまして、教育委員会等を通じて学校現場にしっかりと対応を図ってまいりたいと思います。

 なお、文科省といたしましては、現在、改訂に取り組んでおります、現場で先生方が指導に使います生徒指導提要というものにおきましても、懲戒と体罰の区別等につきまして新たに記載をしてございまして、しっかりと対応を今後も続けてまいりたいというふうに考えてございます。

沢田委員 重要なのは、懲戒を教育とするのであれば、何を行うかではなくて、手段ではなくて、その懲戒によってどのような教育的効果が得られるのかということこそが本質であり、それを教育現場の先生方が常に考え、そして子供たちに接していく。

 先ほど言った例なんて、私が小学校に行っている頃からやっている懲戒です。あれをやはり、私は当事者の意識として、やられたからといって何の反省もした記憶はありません。ただただ嫌だったなと。だけれども、じゃ、何かを省みたかというと、省みた記憶がありません。そして、あれによって実際に何が変わるのかというのも、やはり今考えても分からないんですね。

 おうちで同じことをするか。子供が御飯を食べ散らかしたら、そこに立っていなさい、ずっと立っていた。私は、どちらかというと、おうちで竹の定規でお尻をたたかれたりとか、おうちから外に出されて家に入れないとか、そういうことを考えて、逆に、怒られたくないから、帰りたいとか、たたかれたくないから気をつけようというのはあったとしても、家の中に立っていなさいと言われても、多分これって何も関係ないんですよね。

 私は、日本の教育でよく言われているもので、相関関係と因果関係、これを余りにも混同している教育制度というものがあるというのは、これは専門家の方もよくおっしゃっています。いわゆる、これをやっておけばいいんだ、結果、それによってうまくいく、いかないということではなくて、例えば、本を読んでいる学生が頭がいいのか、本を読んだ学生が頭がよくなったのか、これを証明できないものを相関関係といいます。因果関係というものは、その生徒に対して、また児童に対して、こういった教育を施した結果、ある新しい能力が得られた、そういったものを因果関係といいます。

 よく言うのが、一億総教育者といって、医療についてはほとんどの人が何も言わない中、多分全ての方が、子供の教育を含めて、教育に対して口を出せるんですね、今私が言ったように、自分の意識として。でも、こんなことをやっていったら、決して子供たちのためになるとはやはり思えないんです。

 やはり、最先端の技術とデータと子供たちのいろんな知見を基に、学校現場の先生方が本当に子供たちのことをどうやって成長させていくのかということを考えていく、この本質的な議論がなければ、やはり、何かいろんなものを、先生方にやれないことを言って、結果、鉄棒というものを、表から頑張れ頑張れなんて言っている。こんなばかげたことをやって、先生方も意味が分かっていないと思います。子供たちも、一体どうやったら逆上がりができるのかも分かりません。

 こんなばかげたことが起こっていることが、まさに現場の環境なんですね。だから、やはりここに、副大臣に質問させていただきたいと思います。

 私は、参考事例にある懲戒が、やはり教育につながるとはどうしても思えないんです。目的を見失い、手段だけを現場の先生方に押しつければ、当然、現場の理解は得られません。そうなればこそ、先生方含めて、無責任な手段だけが残って、教育からは更にかけ離れたことが起こってしまうということがあります。

 まずは様々な有識者の意見や実際の因果関係のデータを集めて、どのような懲戒が子供たちにとって教育として効果的なのか、懲戒を教育にどう生かすのかという方向性を考え直す必要があると思うんですけれども、副大臣、どうお考えでしょうか。

簗副大臣 先ほど来事務方からお答えしていることと重複する部分もありますけれども、学校における懲戒は、校長及び教員が、児童生徒に対し、教育上必要があると認められるときに、児童生徒の自己教育力や規範意識の育成を目的に、叱責、注意や退学、停学等を行うものであります。

 懲戒を行うに当たりましては、当該事案の状況や児童生徒の発達段階等を考慮し、個別の事案に即した対応が求められており、文部科学省が一律に方針や懲戒の類型を示すのではなく、各学校が教育活動を行う中で必要に応じて行われるものであるというふうに考えております。

 こうした観点から、参考事例につきましては、具体的な事案やそれを踏まえた教育効果を想定して懲戒の類型を示したものではなくて、学校現場での実践に当たり、通常、懲戒権の範囲内と判断されると考えられる行為について、あくまで例示として記載したものでございます。

 御指摘の通知についてでございますけれども、これは、この通知のところに、そもそも、学校教育法第十一条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例ということで、いわゆる、委員も御懸念されているように、体罰と懲戒というものをしっかりと具体的に示すことで、こうした行為は体罰に当たりますよということで、そういうものをしっかりと示して区分を整理しているということでございまして、逆に、先生が御懸念されているところにしっかり対応するべく、しっかり区分けを整理しているという趣旨の通知であるというふうに承知をしております。

沢田委員 副大臣、今日はわざわざ、お忙しいところ、ありがとうございました。

 ただ、私も十歳と八歳の父親でもありまして、やはり学校の先生に生き生きと教育の現場に立っていただいて、なおかつ、うちの子供たちも、私たちから、私は今四十三ですけれども、もう三十年以上前ですよね。その三十年という時を超えて、これだけ時代も進歩しているわけです。

 教育の方法であったり、調べられるデータの在り方というものも劇的に変わっている中で、同じことを繰り返している教育よりかは、やはり最先端、この国の子供たち、未来、まさに我々の土台になっていく、礎となっていくような、そういった強い子供たちを育てていくことは私はとても大事なことだと思っていまして、それを育てる、子供たちのサポートの、教育の側に回る先生方も、目的、本質、ここから即したところで教育に誇りと自信を持って動いていただきたいと思っていますので、多くの規制や多くのいわゆるリストがあると、やはりそういった動き方に制限がかかってしまうということをお伝えしたいと思います。

 私のちょっと知る人間でも、本当にうつ病になってしまった学校の先生、大変真面目で若い女の先生がなってしまったというのを私は見てきました。

 子供たちも、今、情報化社会の中で本当にませていますね。うちの十歳の娘も本当にやはり大人びていますし、その年齢でティックトックをやったり何をやったりという子も増えているんですけれども、そういうのを感じると、学校の先生方を本当にどんどんどんどん閉じ込めるよりかは、もっともっとウイングを広げて、先生方がやれることを広げていくことの方が私は必要なんじゃないかなということも是非文科大臣とお話ししていただければと、よろしくお願いいたします。

 続きまして、昨年四月に成立しました教育職員等の児童生徒性暴力防止法、いわゆるわいせつ教員法というものがあります。これによって、性暴力等で免許を失った者への教員免許の再授与が相当程度困難になったと承知しております。

 立法から現在までの経緯や学校現場への周知方法、また教育職員の性犯罪に関わる懲戒処分等の最新の状況についてお伺いしたいと思います。

里見政府参考人 お答えいたします。

 児童生徒を守り育てる立場にある教員が児童生徒に対して性暴力等を行うなどということは、断じてあってはならないことでございます。

 法施行前のデータではございますが、公立学校教員のうち、令和二年度に児童生徒等に対する性暴力等により懲戒免職となった者は九十一人に上り、依然として深刻な状況にあるものと考えております。

 児童生徒性暴力等を行ったことにより懲戒免職となり、免許状が失効となった特定免許状失効者等への免許状の再授与に関しましては、教員性暴力等防止法に基づきまして、外部有識者から構成される都道府県教育職員免許状再授与審査会の意見を聞いた上で、再び免許状を授与するのが適当であると認められない場合は再授与しないこととされております。

 文部科学省におきましては、本年三月に教員性暴力等防止法に基づく基本指針を策定し、再授与審査等に関する具体的な考え方を示すとともに、六月には法や基本指針の概要等に関する啓発動画を作成、周知し、都道府県教育委員会を含め、各関係者における適切な運用を図っているところでございます。

 引き続き、児童生徒等を教育職員等による性暴力の犠牲者とさせないという断固たる決意で、性暴力等を行う教員の根絶に向けた取組の実施に全力を尽くしてまいります。

沢田委員 どうもありがとうございました。

 次に、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの増員、今後の計画についてお伺いいたします。

 今回の懲戒権の削除の趣旨については、本会議においても、葉梨大臣より、児童虐待の防止に向けた明確なメッセージを国民に向けて発し、児童虐待の防止を図ることにありますと御答弁いただきましたが、児童虐待防止に向けては、子供たちの通う学校での虐待の早期発見が重要な鍵となります。

 学校で起こる問題や児童生徒の抱える困難も複雑化している中で、チーム学校として更なる体制強化が期待されますが、中でも、文科省のチーム学校を実現するための三つの視点、第一に掲げられる専門性に基づくチーム体制の構築、特にスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーといった学校内又は学校に近い場所で問題を解決に導く専門職の配置、拡充は喫緊の課題となっております。

 既に専門職の配置、拡充に向けては取組が進んでいることと思いますが、予算確保の面でも苦慮されているとも伺っております。体制強化に向けた今後の見通しについて、予算確保に向けての決意も含めて、文科副大臣、御意見いただきたいと思います。

簗副大臣 お答えいたします。

 様々な課題を抱える児童生徒に対し、心理の専門家であるスクールカウンセラーや福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーによる教育相談体制の整備を図ることは重要と考えております。

 このため、文部科学省においては、令和四年度予算において、引き続き、スクールカウンセラーについて、基礎配置分として全公立小中学校に相当する二万七千五百校分を、また、スクールソーシャルワーカーについては、基礎配置分として全公立中学校区に相当する一万中学校区分を計上するとともに、これらに加え、それぞれ重点配置も計上するなど、予算の拡充を図ったところでございます。

 他方、文部科学省としては、児童生徒等への対応や教師への助言等のための時間を十分に確保する必要があると考えていることから、令和五年度概算要求においても、配置時間の更なる拡充に向け、必要な予算を計上しているところでございます。

 今後の配置目標について現時点で明確にお答えすることは困難ですが、文部科学省としては、引き続き必要な支援の充実に努めてまいる所存でございます。

沢田委員 副大臣、ありがとうございました。

 子供たちにとって必要な予算になりますので、是非とも確保に向けて動いていただけたらと思います。

 続いて、厚労省にお伺いいたします。

 御承知の委員も多いと思いますが、毎年十一月は厚労省の定める児童虐待防止推進月間となっております。そこでは、オレンジリボンキャンペーンとして、オレンジをテーマとしたバッジをつけている方を見たことがあると思います。私も今日つけさせていただいているんですけれども。

 児童虐待防止において最も重要と言える役割を担うのは、やはり、都道府県や政令指定都市、中核市など全国二百か所以上に設置されている児童相談所となります。令和三年度の速報値では、児童虐待の対応件数が二十万七千六百五十九件と過去最多に上りました。

 児童相談所には様々な専門性を持つ職員が配置され、物理的に親子を引き離す一時保護などの強い権限を持ち合わせております。が、しかし、どれだけ強い権限を持っていても、緊急時の難しい判断を適切に下すのは難しいものです。さらに、慢性的な人員不足によって、職員たちが限界量を超えた案件を抱え、それによって判断が鈍るというようなことが起こることもございます。

 厚生労働省にお尋ねします。

 平成三十年に策定されました児童虐待防止対策総合強化プランには、児童福祉司の二千人以上の増員、一時保護の体制強化などが盛り込まれておりますが、現在の取組状況を教えてください。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の平成三十年に策定いたしました児童虐待防止対策総合強化プラン、こちらのプランに基づきまして、児童福祉司、全国で、この四年間で、つまり本年度末までに二千人程度を増員し、約五千二百六十人の体制とすることを目指しておりました。

 この増員の目標でございますけれども、一年の前倒しで、昨年度末、令和三年度末、おおむね達成という段に至りましたので、今年度、つまりこのプランの最終年度である今年度は、当初の目標から更に五百人強を増員いたしまして、合計五千七百六十五人の体制を目標として進めているところでございまして、今年度中にこちらの新しい目標値の方も達成が可能な見込みでございます。

沢田委員 ちょうど時間となりましたが、今日は御答弁ありがとうございました。

 最後になりますが、私は、この懲戒という言葉、決して、今あることが問題だとは思っておりません。ただ、小さな言葉一つ、現場にとって大きなおもしになることも、是非、今日のやり取りをもって全ての関係省庁の皆様に考えていただければというふうに思っております。

 質問が時間の都合上できなかった部分もございまして、御準備いただいた方、皆様、大変申し訳ございませんでした。

 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 順次質問に入らせていただきたいと思います。今日も朝からお疲れさまでございました。

 明治に制定された民法における嫡出推定の規定について、約一世紀を経て改正がなされた、法律案が上程されたわけですが、社会情勢の変化や家族観の多様化により改正法ができたと理解しています。

 法律上の父子関係と生物学上の父子関係についてどう考えるべきか。最新の科学の知見を用いれば、生物学上の父子関係が高い確率で明らかになっている。これは午前中にもちょっと御質問申し上げたんですが、法律上の親子関係の在り方については、血縁主義でいくのか。

 血縁主義なんですけれども、私はひいおじいさんに育てられたんですね。その親がいた。そのひいひいおじいさんとひいひいおばあさんまでは、自分のところの話で申し訳ないんですけれども、五代までは血がつながっているんですけれども、その先は子種がなくて、結局、そこで鈴木の家の血は切れちゃっているんです。

 ただ、明治の初めぐらいのことを考えれば、江戸の流れからずっと来ていますから、やはり家を大切にしようという考え方が価値観であったんだと思うんです。養女をもらったり、養子さんをもらったりですね。その中で民法というのが制定されて、今日まで運用されてきたというのは自分でも理解できるんですけれども、結局、家族というのがやはり一番小さな単位になるんだと思うんですね。

 先ほど申し上げましたように、いろいろな家族の形態が変わってきているというのは承知しているんですけれども、我が国の社会の成り立ちの考え方にも、在り方にも影響を及ぼすような複雑かつ慎重な議論が必要なんじゃないかというふうに思うんです。

 科学の進歩や社会情勢の変化が著しい今日において、嫡出推定制度の存在意義は何なのかというのをまず大臣にお尋ねしたいと思います。

葉梨国務大臣 やはり子供の利益を図るという観点から、早期に子供の地位を安定させるということが必要だということだと思います。やはり母親、父親が子供を、親権者として監護をしていくわけですから、早期にその関係を確定していくということが、結果的に、監護される子供の利益につながるというふうに思います。

鈴木(義)委員 子供の法律上の安定を一番に考えているということなんですけれども、推定ということをずっとやってきたんですね。

 午前中にも学者の先生方にもお尋ねしたんですけれども、結局これだけ、DNAの鑑定だとかミトコンドリアの鑑定とかという、確度がすごく高くなっている時代の中で、何でも全部それをやればいいということじゃないんですけれども、いざ父子関係で争いをするとなったときに、自分の子だ、いや、自分の父親じゃない、何といったときに、DNA鑑定をきちっと制度上取り入れて裁判をやっているという話も聞くわけじゃないですか。それは、争ったから初めてそうなっただけの話かは分かりませんけれども。だから、推定でずっとこれからやっていった方がいいのか、やはり技術が少しずつ分かってきた段階で。

 私は、世の中というのは、全てが分かったから幸せかというのは、ちょっとまたこれは議論が必要なところだと思うんですね。そこのところを、大臣、もう一回御答弁いただきたいんですが。

葉梨国務大臣 DNA鑑定は、争いになればDNA鑑定を使うという例があるというのは私も存じ上げていますけれども、例えば、戸籍窓口において必ず、届け出てこられる方皆さんに、ではDNA鑑定を求めることができるかといったら、なかなかそこのところは難しいところはあろうかと思います。

 ですから、形式的審査をするしかないわけで、そのよすがとして、やはり嫡出推定という制度は有用性を持つものだというふうに思います。

鈴木(義)委員 今朝からの議論を聞いていると、何年もやはり一緒に住んでいたから、それを事実として認定するのか、でも、遡ってみたら自分の子供じゃなかったという話になっていくわけですね。だったら、疑いのある人だけでもやはりそういう技術を取り入れるというのが一つの方策じゃないかなと思うんです。

 例えば、夫の子を懐胎することが不可能であることが明らかな場合やDNA鑑定の結果で生物学上の父子関係が明らかな場合に、親子関係は明らかと言えるわけですよね。このような場合にも嫡出推定が及ぶとすれば、これを排除するのには裁判に訴えなければ、アクションを起こさなければならないわけです、今回の法改正であっても。しかし、訴えを起こすというのは、やはり精神的にも経済的にも負担となるというふうに私も思うんです。

 そこで、外観上懐胎が不可能な場合、遠方に暮らしているのが長かった、ほとんど接触がなかったとか、あとはDNA鑑定の提出があったような場合については、例外的に七百七十二条の推定を受けないとするような考え方はできないのかというのを、法務大臣に見解を求めたいと思います。

葉梨国務大臣 もう既に判例法理の中で、婚姻中の懐胎であっても、明らかにそれが、懐胎ができない状況であるということについては推定が及ばないという判例法理はあるわけなんですが、ただ、いずれにしても、やはりそこは裁判で明らかになっていくものであることだと思います。

 実際のところ、先ほどちょっと申し上げましたけれども、そういったように、婚姻中に懐胎ができない状況であったことが明らかであるかということについては、先ほども申し上げた戸籍の窓口の形式的な審査でこれを明らかにするというのは、極めて難しい面がございます。

 また、DNA鑑定というのも、みんなにDNA鑑定を義務づけるというわけにもまいりませんから、そういったことが裁判等の形の争訟になりまして、そこで明らかにする材料として使われるというのがやはり実務上は妥当なところではないかなというふうに思います。

鈴木(義)委員 前段でお尋ねした裁判というのは、一般の国民、私も含めて、裁判というのはそんなに簡単にぱっぱぱっぱできるものじゃないと思うんですよね。だから、その前段として制度を設けられないかという考え方です。

 最終的には、国民の権利として、法治国家ですから、裁判に訴えるということはなくしちゃ駄目だと思うんです。でも、その前段として、明らかにそれはもう大丈夫だろうということであれば、そういったものをやはり制度で確立しないと、何でも裁判に訴えればいいじゃないかといったって、それは金もかかるし、法テラスがあります、何がありますというのはあったとしても、何でも裁判をすればそれで事が済むような問題じゃないような気がするんですけれども、もう一回、そこのところのお考えを、ちょっと再答弁、お願いできればと思います。

葉梨国務大臣 やはり、そういうお考え、御意見として承りましたが、これは身分関係、親子関係の確定に関するものでございますから、慎重に考えていかなければいけないんじゃないかなというふうに私は思います。

鈴木(義)委員 私も、毎日毎日あなたは鈴木義弘さんですといって育てられてきたから、ああ、私が鈴木義弘なんだなというふうに自覚しているだけの話です。

 例えば、私たちが、私も車を運転しますから、免許証があります。免許証が身分証として広く一般に使われていますよね。

 免許証を一番最初に取得するときに、住民票を持ってこいと。では、その住民票が正しいか正しくないかはよく分からない。だって、身分証明書がないんだから。でも、住民票を取ってきて免許証の申請。それで一回免許証を取得できれば、五年に一回、昔は三年に一回、免許の書換えは、その免許証が身分証みたいな形で、後から戸籍謄本を取ろうが住民票を取ろうが何を取ろうが、必ず市役所の人が、身分証明書はありますか、免許証はありますかといってお尋ねになる。誰も疑うことなくその制度を使ってやっているんです。でも、基のところは正しいのか正しくないのか誰も分からない。

 そういったことで社会が動いちゃっているというのが現実だと思うんですよね。そこのところをやはり少し考えなくちゃいけないかなというふうに思っています。

 それと、無戸籍問題についてですね。

 これまで法務省は取り組んでこられたと思うんですが、ホームページにも、無戸籍でお困りの方へというものがあり、無戸籍となった方への情報提供をされています。

 平成二十六年七月には、法務省の民事局通達として、市区町村の業務の過程で無戸籍者の存在を把握した場合には、法務局への相談を促し、あわせて、法務局において無戸籍者の情報を集約することとする通達を発しているんだそうです。

 このように、市区町村などとも連携して問題解決を図ることを努力されていると聞いているところなんですけれども、しかし、これらの、無戸籍になってからの問題なんですね、無戸籍問題について取り組むには、なる前の方策を講じることが必要であるというふうに考えるんです。

 妊娠すれば、これも届出を出さない限りは駄目なんですけれども、自治体に母子健康手帳を申請するんですね、大半の方は。一部、申請されない方もいるやに聞いています。この情報を共有することで、無戸籍者問題の解決を図ることができないかという考え方です。

 それぞれ制度の役割が、趣旨だとか管轄が違うということは承知しているんですけれども、今ある制度の中でオーバーラップするような部分については連携していくことはできないのかということですね。新たな制度を立ち上げてサポートするよりも、今ある制度を有効に使った方が対応が早くできるんじゃないかという考え方です。

 是非、無戸籍問題について、母子手帳を今まで以上に活用できないだろうか。大臣か、厚労省なんですか。大臣の方で。

葉梨国務大臣 こちらは市区町村にお願いしている立場ですから、私からお答えをいたします。

 今回の民法改正、これは無戸籍を解消するために、そのネックとなっている再婚をした後の嫡出推定、そこら辺も直したり、あるいは再婚禁止期間をなくしたりというようなことをやらせていただいているんですが、やはりそれだけで全ての無戸籍が解消するというわけではないと認識しています。

 今おっしゃられたように、しっかりとアンテナを広くして、それも、しかも関係機関がしっかり連携をしながら、寄り添った対応をしていく。そのためには実態把握というのが非常に大切です。残念ながら、法務局に無戸籍だよと届けてくれる方がいるわけではないので、やはり市区町村が持っている情報をいかに共有していくかということが大切だと思います。

 御指摘のような母子健康手帳の問題でも、そういうことで、市区町村の戸籍、住民票の窓口、これも連携をしなければいけません。さらには、市区町村の母子保健や福祉担当部署等においてもこれに接することがある。そこで、私どもは、これらの機関に対して、無戸籍の情報に接した場合には市区町村の戸籍担当部署に知らせていただければ、そこからまた法務局にも情報が共有されます。また、法務局に情報提供をしていただくような協力依頼をしております。

 現在も、母子健康手帳が交付された際に、出産前の母が出生届の提出を拒む意向を示しているなどの事情があるときは、関係する部署の間で情報が共有されております。

 今後とも、引き続き、無戸籍者の情報を把握する取組をしっかり進めていきたいと考えています。

鈴木(義)委員 是非、いろいろなツールを使って、一人でも救えたらなというふうに思います。

 それと、次に、嫡出否認制度に関する規定の見直しについて質問をさせていただきたいと思うんですが、もう時間が来ましたので。

 二十一歳とか三年とか七年とか、数字が出てくるんですけれども、その数字の根拠は一つ一つお聞きすればいいかと思うんですけれども、やはりそこのところはきちっと説明をいただければなと思うんですが、それで終わりにしたいと思います。

葉梨国務大臣 三年といいますのは、大体親子の関係が確定する、その期間を参考としながら、三年ということです。

 二十一歳、嫡出否認の訴えというのも、これは条件はありますけれども、十八歳の成人プラス三年という形に成人の場合はさせていただいています。

 七年というのは、失踪宣告が七年になっておりまして、そういったものも参考にしながら七年という形で作らせていただいたんですが、詳しくは、法制審の議論等、事務方にも聞いていただければと思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、懲戒権の削除の関連でお伺いをしたいというふうに思います。

 この懲戒権の削除については、長年求められてきたことで、例えば、二〇一一年の民法と児童福祉法の改定のときも、虐待する親の口実に使われているということなど指摘が相次いで、日弁連の皆さんや運動団体の皆さんや、そして私ども日本共産党も削除を求めてまいりましたので、この点は評価をしております。

 先ほども参考人質疑の中で指摘をさせていただいたんですけれども、やはり、子供への虐待というのは、未然に防ぐということが一番大事だというふうに私は考えております。

 その点で論戦もやってきたんですけれども、今回、体罰の禁止に加えて、児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動を禁止するという文言が加わりました。

 本会議でも葉梨大臣とやり取りをさせていただきまして、今日も資料に出させていただいております速記録の二ページの下の段のところなんですけれども、葉梨大臣に、児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動とは何かという質問をさせていただきまして、葉梨大臣は、子に不当に肉体的又は精神的な苦痛を与え、その健やかな心身又は精神の発達に悪影響を与え得る行為を指すものです、これに該当するか否かは、最終的には、具体的な事案を前提として、裁判所における社会通念に照らした個別的な判断に委ねられますが、一般論として、当該行為の態様のほか、子の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的、時間的環境等が配慮されるものと考えていますということで、結局は司法判断に任せているということ、委ねられているというふうになっております。これでは、やはり民法に何が違反をするのかということが具体的に分からないということになってくるというふうに思います。

 実際に子供さんと向き合う具体的な場面で保護者の方が適切に判断できるものを示す必要があるのではないかというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 お答えします。

 正確を期しますと、民法に違反するかどうかというのが問題になったときは、最終的には司法判断ということで申し上げたんですけれども、先ほど来議論があるとおり、民法を変えたからといって、みんな民法を読んでくれるわけではないんですよね、親御さんも。ですから、この内容がどういう、ちょっとイメージが湧く形で、具体的にどういう内容だということを周知、広報するということが、まさに今回の民法改正の趣旨と、具体に、こういうことは、体罰だけじゃなくてそういう言動もいけませんよということを、やはりできるだけ私ども分かりやすい形で広報していく、このことはしっかり努めていかなければいけないというふうに思います。

本村委員 どういうものが出てくるかということで、またそれについて議論をさせていただきたいんですけれども、この文言で、禁止する行為やあるいは言動が狭く解釈されるんじゃないかという懸念も実際に出ているわけです。

 健全な発達のために必要なしつけだといって身体的あるいは性的、精神的、心理的、経済的暴力が正当化されるようなことはあってはならないというふうに考えますけれども、大臣も共有していただけますでしょうか。

葉梨国務大臣 従来から、平成二十三年の改正が行われまして、子の利益というのが入りました。ですから、その中でも、今回削除した懲戒権というのは、体罰とかそういったような心身に悪影響を与えるようなことは当然駄目だということを、当時も考えておったわけなんですけれども、それがなかなか昨今の児童虐待の中では、やはり徹底をしないということで、しっかりとそこは、具体のいろいろな、どういうような広報資料になるかどうか、そこら辺のところはまた議論をさせていただくにしても、気持ちとして、それがしつけの名の下で悪影響を与えるような言動が行われるということは、それは許されないだろうというふうな意味では共有させていただきます。

本村委員 狭く解釈することがないようにということで申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、国籍法の三条三項についてお伺いをしたいというふうに思います。

 十一月一日の本会議でこれも質問させていただきました。認知が事実に反する場合、国籍の取得を否定されてしまう、そうすると、何十年も日本国内で日本人として暮らし、安定した生活がなされていても、反対の事実があると認められた場合は、国籍を失い、無国籍となってしまう、これは子供の権利利益に反するじゃないかということで質問させていただきました。

 それに対して、葉梨大臣のお答えが、二つ論点があるかなというふうに思うので、それについてお伺いをしたいんですけれども、まず一つ目の答弁は、認知について反対の事実があった場合でも必ずしも子が無国籍になるとは限りませんというものでございました。

 この答弁の無国籍にならないのは、私はこれは一部にすぎないのではないかと考えますけれども、どういうケースでしょうか。

金子政府参考人 お答えします。

 例えば、母の出身国が父母両方の国籍を承継できる国、韓国、フランス、イタリア等であれば、母の国籍である外国の国籍が認められる場合もあり、必ずしも子供は無国籍とはならないということになります。

 また、出生地の国籍を取得できる国、これは生地主義といいますが、を採用している国、アメリカが有名かと思いますが、で出生していた場合には、出生地の国籍が認められる可能性があり、必ずしも無国籍となるものではありません。

 なお、生地主義を採用しない国で生まれ、かつ父が判明しない場合で母が無国籍の場合、又は母の国籍国が厳格に父の国籍のみ承継を認めている国である場合などについては、無国籍となることがございます。

本村委員 今日は、資料の中で、法務省が出しておりますフローチャート、どういうケースで無国籍になるのかということも出させていただいているんですけれども、やはり一部にすぎない、無国籍にならないケースというのは一部にすぎないですし、先ほども、各国で父母の両系の血統主義の話もありましたけれども、その国の国籍を取るのにどれくらいの御苦労があるかというのはつかんでおられるんでしょうか。

金子政府参考人 国籍の問題は、国ごとにどういう場合に国籍を付与するのかというのが決まります。日本における帰化の場合であればある程度把握できますけれども、外国の国籍を取得することにどのくらいの期間がかかるかということは承知しておりません。

本村委員 国籍を取ること自体も、物すごい苦労が要るわけです。例えば、日本の戸籍のところに母の名前が片仮名で書いてある、そうすると、母国語に変換が正確にできない、照合できない、なかなか国籍を取るのが難しいというケースもあるというふうに聞いております。

 法務省が、昨年の八月なんですけれども、事務連絡を出しております。各国の国籍取得に関する主要国法制表というのもあるんですけれども、実は、これが正確じゃない。例えば、ネパールでも婚外子だったらこの取扱いとは違いますよというふうに、これも正確じゃなくて、もしこれで事務的にやられたら、あなたの国、母国はできるでしょうということで、はね返されてしまうケースだって出てくるかというふうに思うんですけれども。

 やはり、こういう資料も正確にしていただきたいというふうに思うんですね。弁護士の方や支援者の方としっかりと情報交換しながら、この資料もブラッシュアップなんかを是非していただきたいと思いますけれども、通告していなくて申し訳ないんですけれども、お願いしたいと思います。

金子政府参考人 国籍の在り方はそれぞれの国で決まっております。もちろん、我が国として、他の国がどういう場合にその国の国籍を取得できるかということについては他の国の法律に書かれていますので、もちろん、こういう時代ですから、他の国の法律を、国籍法に当たる法律を、きちんと目を光らせて、そのような資料も正確を期するように努めてまいりたいと思いますが、例えば、改正があったときに多少のタイムラグがあるとか、そういうこともあろうかと思いますが、極力御迷惑がかからないように努めてまいりたいと思います。

本村委員 加えて、日本にしか住んだことがないのに、外国の国籍を取得したからそれで終わりというわけではないわけです。

 先ほど、国籍法の八条の四号、大臣、御説明ありましたけれども、無国籍になりました、外国の国籍を取りました、そのケースは、次に帰化をするということにも行くケースもあると思うんですけれども、国籍法の八条四号、これは使えるんでしょうか。

金子政府参考人 八条四号は、「日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの」となっておりますが、この場合は緩和された要件で帰化を許可することができるとされています。

 日本で生まれたかどうかというのははっきりしていると思います。出生のときから国籍を有しない者というのは、虚偽の認知だということになった場合は、最初から日本の国籍を有していなかったことになるので、ここに該当してくる。あとは継続三年要件というのを満たせば、この四号の要件は満たすことになります。

本村委員 外国の国籍を取っても、生まれたときから無国籍ということになるんですか。

 また後で教えていただければと思います。済みません、進めたいというふうに思います。

 大臣は、もう一つ答弁をされました。仮に子が無国籍となるような場合であっても、無国籍者の置かれた立場に配慮しつつ、無国籍状態の解消に向け、可能な対応をしてまいりますというふうに答弁をされましたけれども、無国籍状態の解消に向け可能な対応とはどういう対応でしょうか、お示しください。

葉梨国務大臣 先ほど民事局長が答弁しましたように、八条の四号というのは、出生が日本である、そして出生時に国籍がない、ですから無国籍ですね、それで三年以上という要件です。ですから、これは遡ってですから、三年以上の、無国籍状態が認定されるような方であれば、これを活用するということで、無国籍から日本国籍に移るというようなことが可能になるということを最前来答弁しています。

 もう一つは、やはり、本国の国籍を取りたいという方もいらっしゃるだろうと思います、日本国籍だけではなくて。そういう方については、やはり、大使館につなぐとか領事館につなぐ、あるいは本国政府と御相談をしていただく、そういうような形を取っていく。

 いずれにしても、私どもとして、日本で暮らしている、日本で教育を受けているといったことは、日本にいていただくための積極的考慮要素であるというふうに考えておりますので、先ほどの答弁と同様、私どももそこのところは汗をかいていかなければいけないと思います。

本村委員 支援をされている方のお話を伺いますと、この八条の四号は当てはまるケースがかなり限定されているということで、子供たち全てを救うということにはならないというふうに思いますので、更なる支援が必要だというふうに思いますし、やはり国籍を剥奪するようなことはやめるべきだということを強く求めまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次回は、明九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十一分散会


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