衆議院

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第6号 令和4年11月9日(水曜日)

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令和四年十一月九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 薗浦健太郎君 理事 谷川 とむ君

   理事 藤原  崇君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      上杉謙太郎君    大岡 敏孝君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      神田 潤一君    熊田 裕通君

      島尻安伊子君    鈴木 馨祐君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      津島  淳君    中曽根康隆君

      中西 健治君    西野 太亮君

      鳩山 二郎君    平口  洋君

      平沼正二郎君    深澤 陽一君

      山下 貴司君    末次 精一君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         葉梨 康弘君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   最高裁判所事務総局経理局長            氏本 厚司君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房学習基盤審議官)       寺門 成真君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           野村 知司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           日原 知己君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月九日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     中曽根康隆君

  熊田 裕通君     平沼正二郎君

  津島  淳君     中西 健治君

  深澤 陽一君     上杉謙太郎君

  吉田はるみ君     末次 精一君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     深澤 陽一君

  中曽根康隆君     大岡 敏孝君

  中西 健治君     島尻安伊子君

  平沼正二郎君     熊田 裕通君

  末次 精一君     吉田はるみ君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     岩田 和親君

  島尻安伊子君     神田 潤一君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     西野 太亮君

同日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     津島  淳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官三橋一彦君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長川原隆司君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官寺門成真君、文部科学省大臣官房審議官安彦広斉君、厚生労働省大臣官房審議官野村知司君及び厚生労働省大臣官房審議官日原知己君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局経理局長氏本厚司君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山下貴司君。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 今回の民法改正は、懲戒権の規定の見直し、あるいは嫡出推定規定の見直し等について、私が法務大臣のときに諮問をさせていただいたことでございます。そして、それが、今、私も大臣当時、法務委員長としていろいろ御指導いただいた、そしてまた、自ら議員になる前も少年の問題とか家族の問題を見詰めておられた葉梨大臣の下、こうやって法案としてまとまる、これを審議させていただくというのは、本当に私にとって喜ばしいことでございます。

 今回の懲戒権の規定、これが、今お配りしている資料一のように、現行民法では、親権を行う者は、八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができるという、この規定が、いわゆるしつけ名目での児童虐待、これを正当化する口実に使われているのではないかという懸念がありました。また、嫡出推定規定の見直しについても、やや形式的に過ぎる厳格なこの嫡出推定規定が、破綻した婚姻関係で生まれた子などのいわゆる無戸籍者問題の遠因となっているのではないかという指摘がございました。

 そこで、懲戒権に関する規定や嫡出推定規定の見直しについて、先ほど申し上げたとおり、法務大臣当時、法制審議会に諮問させていただいたということで、熱心な御議論を経て、そしてまた葉梨大臣の下でこうやって成案になるということ、本当に感謝申し上げます。

 本日は、先ほど申し上げた二つの大きな問題、懲戒権規定の見直し、そして嫡出推定規定の見直し等についてお話を伺いたいと思います。

 まず、懲戒権の見直しについてということで、そこの資料一に、新しい、改正案の八百二十一条ということで原案を記載させていただいております。

 そこで、懲戒することができるという懲戒権は当然削除されているわけですけれども、親に対する、親権を行う者に対する禁止事項として、体罰その他子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないということが書いてあります。

 ちょっと私、正直に告白しますと、私は、こういう民法という基本法で体罰という言葉、あるいはその他定義が必要な言葉について記載することについては、若干消極的だったわけであります。というのは、親が許される行為、親が許されない行為であれば、例えば学校教育とか、いろいろな場でも許されないはずであります。そういったことを考えると、ここは、体罰というところについて、しっかりと当局の方からこういうことなんですということを明示していただきたいというふうに考えております。

 そこで、当局に、体罰又はその他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動、これは一体どういうものなのかということを、当局のお考えを伺いたいと思います。

 そして、併せて、こうした体罰その他の行為をした場合、どういう法的効果を生むのかということについてもお答え願いたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 本改正法案における体罰は、子の問題行動に対する制裁として、子に肉体的な苦痛を与えることを意味するものであります。改正法案の八百二十一条で禁止される、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動につきましては、子に不当に肉体的又は精神的な苦痛を与え、その健やかな身体又は精神の発達に悪影響を与え得る行為を指すものと考えております。

 これに該当するかどうかということは、一般的には、当該行為の態様のほか、子の年齢や健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的、時間的環境等が考慮されるものと考えております。

 それから、体罰等をした場合の効果ですけれども、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動は、民法八百二十条が規定する監護教育権の行使として許容されることのない、監護教育権の範囲外の行為と評価され、そのような行為があった場合には、親権喪失や親権停止の審判における要件判断の考慮要素となり得るほか、民法七百九条の要件を満たす場合には、子に対して不法行為による損害賠償責任を負うことがあるものと考えております。

山下委員 これ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をした場合に、やはり親権の例えば剥奪であるとか、そういった重大な効果もあるわけですね。ですから、その点はやはりきちんと明確にすべきだろうと思いますけれども、ちょっと重ねて聞きます。

 判断基準ですね。これは、将来的には、個別案件だから裁判所で決められるということであるんですが、裁判所というのは、事が起こってから決めるんですよ。だから、事が起こる前に、こういったことは許されないんですよということをある程度明確にしておく必要があると思うんですが、その点について、今の説明でちょっと抽象的に過ぎたかなと思うので、さらに、どういうふうな具体的な概念ということを考えておられるのか、体罰あるいはその他の言動について、いかがでしょうか。

金子政府参考人 具体の場面はなかなか御説明が難しいところがあります。こういう場合は当たるのか、こういう場合は当たらないのかというような御説明は可能かと思います。

 今後、いわば御家庭において指針とされるようなものにつきましては、当たるか当たらないかということについては、これが御家庭の中で問題になるわけですから、そこは分かりやすくするような工夫を、パンフレットを作ったりとか、そういうようなことは進めていきたいと考えております。

山下委員 それは是非お願いしたいと思います。というのは、これは民法という基本法ですから、ここで親でも許されない行為は当然学校の先生や他人も許されないわけであります。ですから、民法という基本法の中に入ることによって、相当程度、これが基準になる可能性がございます。

 現段階ではそういった基準を明らかにされておられないので、今回、衆議院の調査局の法務調査室の中で取りまとめていただいた、これは百四ページからのもので、学校教育法、これをちょっとよすがに聞かせていただきたいんです。

 学校教育法十一条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例ということで、(一)で体罰、これはもう体罰、駄目ですよということ。あるいは、認められる懲戒ということで、学校の先生が、放課後に教室に残すとか、授業中に起立させるであるとか、あるいは掃除をさせるとか、当番を多く割り当てるであるとか、そういったことがあります。あと、正当な行為として、様々、危害を及ぼすような暴力行為に対して、これを制止したりするというようなことがあると。

 この参考事例というのは、許される基準を文科省なりに整理したものということでありますが、家庭生活でもこういった同様の事例というのは起こり得ると思われますけれども、これは通告してあるので局長に伺いたいんですけれども、ここで許される、認められる懲戒とか正当な行為とかで挙げられているような事例に関しては、これは親としても許されるというふうに考えていいのかどうか。

 というのは、具体例が法務省から提示されていないので、こういったものをよすがにするしかないということと、加えて、これは文科省が許される行為として出しているものなんですが、それが今回の新法によって許されなくなるということがあるのかどうか。それは、ないのであればないというふうにお答えいただければと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 民法が適用される場面が家庭における監護、教育の場面ということで、それから、文科省が出されている参考事例、これは学校における教育の場面ということで、場面は異にするという面があるので、直ちに当てはめるということが難しいところがございます。

 ただ、その上で、御紹介いただいた参考事例の具体的な例を見ながら、それを家庭の中で起こった場合になぞらえて考えますと、例えば、子が問題行動を起こし、又は起こそうとしている場合に、その体を押さえて制止したり、腕を引っ張って移動させたりといった行為、こういう行為につきましては、一般的に、子に対する制裁を目的としたものではなく、不当に子を肉体的、精神的に傷つけるものとも認められないと考えられることから、監護教育権の行使としても許容されるのではないかと考えます。

 また、御指摘の参考事例のうち、例えば、問題行動をした子に清掃活動を課したり、家庭でいえば、何か問題行動があったときにどこどこを掃除をさせるとかいうことになろうかと思いますが、そういうこととか、あるいは、食事中に立ち歩く子を叱って席に着かせるといった行為は、これらを親権者による監護教育権の行使に当てはめた場合にも許容されるものだというふうに考えております。

 それから、御質問の後半ですけれども、この全ての行為について検討したわけではありませんが、民法の規定が今回改められることによって、今まで許容されたものが許容されなくなることがあるのかという御質問かと思いますが、これは教育現場でどのように判断されるかという問題かと思いますが、一般的に言えば、今まで許容されていたものを今回の改正によって許容されなくするというような趣旨のものではなくて、本来的に許容されなかったんだけれども、それを明示的にするという、そういう趣旨の改正であることを考えれば、そのようなことには一般的にはならないんじゃないかなというふうに思っています。

山下委員 ありがとうございます。

 我々の世代は、親からげんこつを食らって育ったというところが当たり前に行われていた部分がございます。なので、そういったことで、今回の法律ができることによって混乱しないように、是非、法務省におかれては、分かりやすくやはり伝えていただきたいので、先ほどおっしゃったパンフレットとか、そういったものも工夫して周知に努めていただきたいと思います。

 それでは、嫡出推定規定の見直しについて御質問しますけれども、この改正は、離婚後三百日以内に生まれた子に対する前の夫の嫡出推定の規定を維持しながらも、特則として、再婚した場合には直近の再婚配偶者の嫡出と推定するというもの、あるいは、父による嫡出否認の訴えについて、出訴期間を父が子の出生を知ってから三年に延長するとともに、父親だけに認められていた嫡出否認の訴えを母親や子自身にも認めたこと、事実に反する認知について争うことができる期間や人的範囲を制限した、あるいは、生殖補助医療などにより出生した子について特則を設けるということで、科学技術の進展によって真の親子関係の確定が可能になったことも踏まえながら、子の利益を最大限に配慮しつつ、適正な改正がなされたものと考えております。

 そこで、今回、私が伺いたいのが、これは資料の一に戻りますけれども、改正法案附則四条の二についてであります。

 この嫡出否認の訴え、これ、適正化は無戸籍者を救うということがありました。そういった趣旨で見ていると、これ、施行後一年を経過するまでは、施行日前に生まれた子も嫡出否認の訴えを提起できることとされていると。

 この施行日前に生まれた子というのは、既に成人した子、例えば私どもなんかは成人しているんですが、そういった者も含まれるのか。元々、無戸籍者ということであったわけですけれども、既に戸籍に入っている者も、今後一年、施行後一年は嫡出否認の訴えを、きちんとしたエビデンスがあればできるのかということについて伺いたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 私どもが把握している中でも、無戸籍のまま成人にまで達している方というのが、かなり、二百名近くいらっしゃいます。そういう方についても施行日より前に生まれたお子さんに含まれるということで、先生の御質問に対しては、成年に達した者も含まれるということになります。

 それから、御指摘されましたように、この経過規定を見ますと、目的としては、主として無戸籍者の解消ということではございますけれども、対象は限定しておりません。現在、お子さんが戸籍を有する場合でありましても、これまで、子やお母さんから嫡出否認の訴えの提起が認められていなかったために、血縁関係のない夫又は前夫の子として戸籍上扱われることを甘んじて受け入れておられたという方も存在すると考えられますので、このような方につきましても救済を図ることに必要性、合理性が認められるというふうに考えておるところでございまして、そういう趣旨から、戸籍のない場合に限定していないということになります。

山下委員 今おっしゃったように、無戸籍者を救うために、もう既に戸籍に入っていても、あるいは成人しても手遅れではない、今後、施行後一年間はできるのだということ、これは、法務省としても、是非、周知徹底していただきたいと思います。

 次に、これは今回の改正では直接ないんですが、親権、それと養育費の問題、それと面会交流の問題、この三つは実は違うというところは指摘しておきたいんですが、養育費の支払いについてちょっと伺いたいと思います。

 私は、法務大臣のときに民事執行法の改正を行って、養育費の強制執行に関して、元の配偶者の給与債権からの執行を容易にするため、勤務先情報や口座情報など、差押えに必要な情報を取得できる財産開示制度を整えました。ただ、こういった財産開示をやるためには、養育費の取決めをした公正証書や判決とかの債務名義が必要なんですね。でも、大体離婚する場合はもう顔を見るのも嫌な状態ということで、DVなんかもあったりすると、そうした取決めをしないまま別れられる方が非常に多いし、その後で調停や審判を受けろといってもなかなか厳しい経済状態にある方も多い。実際に養育費の取決めをしているのは母子家庭で四三%ですが、実際に支払いを受けている方は四分の一以下なんですね。

 養育費の請求権は、まず子供のための権利で、ある年齢の子供が健康で文化的な最低限度を送るための養育費は計算できるはずであります。現に生活保護の算定ではそういうふうに考えていると思っていますが、養育費については、父母間の協議や調停、審判などの債務名義がなくても、一定の要件の下で、少なくとも一定額の養育費請求権が当然に発生して、別途債務名義なんかを得なくても強制執行できるということになれば、相当数の生活に苦しむシングルマザーの皆さんが助かるんじゃないかというふうに思われます。

 もちろん、個別の家庭環境によって増減が必要であれば、それは別途の手続で調停、審判などをやってもらうということですが、まずは、当然に一定の養育費についてはできるのだということを考えるべきではないかと思っており、法務大臣のときにもそういうふうに考えておったんですが、今、法制審の中で、そういった論点についてはどのように検討されているのか、簡単にお願いします。

金子政府参考人 委員御指摘のとおり、養育費の取決めあるいはその実施が低調であるということの背景として、DVなどの様々な理由により父母間の協議をすることが困難な事例があるものと承知しております。

 御指摘の法制審議会家族法制部会におきましては、現在、一定の要件の下で毎月一定額の法定養育費請求権が発生するような新たな制度を創設することや、その請求権に一般先取特権を付与することで債務名義を得なくても執行手続をすることができるようにすることを含めた養育費の履行確保に向けた様々な方策を検討しているところでございます。

山下委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、最後に葉梨大臣の意気込みを伺って終わりたいと思います。

葉梨国務大臣 とにかく、国民のコンセンサスを得ながらしっかりやっていきたいと思います。

 それと、私は改めて思いますのは、法務省は基本法制を持っていますので、諮問をしてから実現するまで結構時間がかかるんですね。ですから、継続性もしっかり大切にしながら、しっかり進めていきたいと思います。

山下委員 よろしくお願いします。

 終わります。

伊藤委員長 次に、田所嘉徳君。

田所委員 自民党の田所嘉徳でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 今、刑法犯の認知件数というのは、平成十四年の頃ピークでありまして、二百八十五万件ありました。しかしながら、令和二年では六十一万件ということで、激減しております。昨年は国連の犯罪防止刑事司法会議、コングレスが開催をされまして、まさに世界に誇るべきだという、そういう安全な数値になってきたというふうに思っております。

 しかしながら、児童虐待の相談対応件数は、平成十二年からでも、一万八千だったんですけれども、二十万件を超えておりまして、十一倍以上ということで、急増をしております。

 これはまさに、私は、人の成長過程の中で、人間大好きという、そういう感性をしっかりと備える、そういう意味で非常に大きな問題があると思っておりますし、虐待の連鎖というようなことにもなってしまうということだと思います。DVも高水準にある、将来の日本にとって非常に問題があるというふうに考えているわけであります。

 そこで、改正案では、虐待を禁止するという形ではなくて、平成二十三年の改正でも対応できなかった懲戒権の規定を削除したわけであります。体罰を明示的に禁止したということでありますけれども、これは、懲戒の規定が児童虐待を正当化する口実にも使われる、お墨つきになっては困るということでありまして、そういった抗弁も散見されるという中で行われたわけでありますけれども、同じ法律であっても、時代背景の変化によってその規定の捉え方が違ってくるという例だろうというふうに思っておりますが、現在において、この懲戒権を削除した意義についてまず聞いておきたいと思います。

金子政府参考人 懲戒権に関しましては、御指摘のとおり、平成二十三年の民法の改正のときに削ることも検討されたのですが、それは実現されず、そのときに、監護、教育が子の利益のために行使されるべきであるということが明確化されたわけであります。

 しかし、その後も、懲戒の文言が民法八百二十条の監護教育権を超えた強力な権利であるかのような印象を与えることなどから、児童虐待を正当化する口実に利用されているという指摘や、懲戒として体罰が許容されるといった誤解を与えかねないといった指摘がされていたところでございます。

 そこで、この改正法案におきましては民法八百二十二条の規定を削除することとしたわけですが、その意義としましては、児童虐待の防止に向けた明確なメッセージを国民に向けて発することにより児童虐待の防止を図るということにあるものと考えております。

田所委員 改正法の、離婚後に前夫に嫡出推定が残るということの問題点についてちょっとお聞きしたいと思います。

 無戸籍者が発生する原因とされてきた、婚姻の解消等の日から三百日以内に生まれた子は前夫の子と推定するという規定を残して、その例外を設けて、母が再婚した後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定するということにしております。これは実態にも合うんだということだろうと思います。そこで、前夫の子との推定を嫌って無戸籍としてしまうことが、それによって防止されるというわけだろうというふうに思います。

 しかしながら、母が、離婚後に新たなパートナーがいても再婚をしないで、事実婚でよしとする、あるいは、すぐには再婚に至らないという場合などには、相変わらず前夫の子としての推定が働き、無戸籍の原因が残るということにもなるんだろうと思います。

 それでは、婚姻の解消の日から三百日以内に生まれた子について、推定規定を廃止した方がこの発生を抑えることになるというふうにも考えられるわけでありますけれども、この規定を維持したその理由についてお聞きしておきたい。

 そして、改正法案の、再婚後の夫の子とすることの規定がどの程度の効果が期待できるかを推測するために、離婚後三百日以内に生まれた子のうち、母が離婚後三百日以内に婚姻して、その後に出生した者の割合についてもお聞きしたいと思います。

金子政府参考人 まず、三百日推定規定を維持した理由について御説明いたします。

 現行法にもあるこの規律の趣旨は、第一に、一般的な妊娠期間からしますと、婚姻の解消等の日から三百日以内に生まれた場合には、婚姻中に懐胎した可能性が相当程度あるということで、すなわち、我が国では、協議離婚の制度の下で、離婚に先立って一定期間別居するということが離婚の要件とはされていないために、婚姻中に夫の子を懐胎し、子の出生前に協議離婚に至り、しかる後に子を出生するといった事案が一定数存在するものと考えられるという点が一つ目の理由、趣旨です。

 第二は、婚姻の解消又は取消しの日以降に生まれた子について、例えば、一律に前婚の夫の子と推定しないものとするということが考えられますが、そうすると、真実は前夫の子である場合であっても、前夫の認知によらなければ直ちに子の法律上の父が確保されないということになって、子に父が与えられない結果、子の利益を害するおそれがあるという点にあります。

 このような趣旨は現在においても妥当すると考えられますので、この三百日推定規定を維持するということにしました。

 なお、法務省が令和二年に実施した調査の結果によりますと、離婚後三百日以内に出生した無戸籍者のうち、母の再婚後に出生した者の割合は約三五%でございました。

田所委員 三五%という数字を見ますと、六割以上が改正法案では無戸籍の原因が解消しないとも捉えられるわけであります。

 したがって、婚姻の解消の日から三百日以内に生まれた子については前夫の子と推定するという現行法の規定を廃止して、前夫の嫡出子として届けるか、あるいは嫡出でない子として届けるか、いずれかを選択して出生届をすることができるようにするということも、テクニカルな問題として、私は可能ではないかというふうに思うので、そういったことも考慮する必要があるんだろうというふうに思っております。

 続きまして、改正法の施行前の子の救済ということで、先ほどもお話に出たわけでございます。

 前夫の子となることを嫌って無戸籍にしてしまう、そういう中にあって、嫡出否認は夫にしかできない。非常に問題であって、これが子や母にも拡大されることになったことは当然で、早くやるべきだったのかもしれません。封建的な背景があった制度なのかもしれません。

 しかし、私は、大変重要な、救済としての規定が盛り込まれているというふうに思っています。

 附則のうち、経過措置に関する規定、附則第四条二項において、子及び母は、施行日から一年間に限り、施行日前に生まれた子について嫡出否認の訴えを提起することができるとしておりまして、大変この意味は重大だというふうに思っております。分かっていれば、たくさんの人が待っていて、これに対応するかもしれません。嫡出否認権の拡大の効果を遡及的に及ぼす大きな特典でもあるというふうに考えているわけでありまして、絶大な効果も期待される。これが最大限生かされなければならないんですが、これを一年間とした、その期間の理由についてお尋ねをしたいと思います。

金子政府参考人 一年間という短期間にした理由は、今いるお子さんについては既に問題が顕在化している状況にありまして、今後、この法案が通った後、施行日まで、この法案では一年半とされていますけれども、その間にも準備が可能だと考えております。そこから更に一年の間に出訴していただければというふうに思っていますので、この一年間というのは短過ぎるということはないものと思っています。

 他方において、その状態の解消のために、逆に言うと、嫡出否認の訴えを提起される可能性というものを、ずっとこの間、そういう状況が続くということになり、これがいわば身分関係がいつまでも確定しないという状況を生み出しますので、長期にすることにはそのような弊害もあるというふうに考えております。

田所委員 施行までの準備期間というものもあるだろうということでありますが、そうであるならば、この時限的な救済措置が生かされるためには、周知徹底をしっかりする、そして実効あらしめるようにする必要がありますけれども、それについてどのように取り組んでいくのか、お聞きしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 経過規定を作って、何とかその期間に、これまで訴えを提起できなかったお子さんあるいはお母さんの側から訴えを提起するという機会を与えましたので、そういう機会を逸することなく使っていただくというためには、嫡出否認の訴えが、この経過規定により、子やお母さんに対してもできるんだということをきちんと周知、広報する、これは極めて重要なことだというふうに考えております。

 具体的な周知方法につきましては今後検討されていくことになりますが、法務局の方で無戸籍者として把握できて連絡がつく方がいらっしゃいますので、そういう方々については個別に連絡をすることを含めて、十分に検討してまいりたいと考えております。

田所委員 子の嫡出の否認権者が拡大されて、子あるいは母にも父との父子関係を否認することができるようになったわけであります。

 母による否認権が認められることによって、例えば、DV夫の子となる戸籍は拒否できる、戸籍でなくなることがあります。あと、無戸籍を生まないことにつながるんだろうと思います。

 ただし、当該母親が虐待をしていたということも少なくありません。そういった場合に、否認権を認めることは、かえって子にとって害悪ともなってしまうわけでありまして、改正法案では、母の否認権行使について、「その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。」こうしているわけであります。

 否認権の悪用や濫用、これを防止するための規定と思われるわけでありますけれども、この内容、子の利益を害することが明らかな場合とは、具体的にどんな場合を想定されているのか、お聞きしたいと思います。

金子政府参考人 いかなる場合が子の利益を害することが明らかなときという要件に該当するかにつきましては、個別具体的な事案に即して判断されるべきでありますけれども、一般的には、例えば、母が自ら子を養育する意思や能力がなく、父を失うことで子が経済的に困窮するような状況になるということが分かっていながら、父子関係を断絶させるような目的で嫡出否認を行使するというような場合はそういうものに該当するというふうに考えられます。

田所委員 続いて、前夫による否認権行使についてでありますけれども、改正法案では、離婚後三百日以内に再婚し、子が生まれた場合には、現在の夫の子と推定されると。しかし、前夫がそれを受け入れ難いという場合に、改正後の民法第七百七十四条四項において、前夫は子が嫡出であることを否認することができるということになっています。しかし、この規定が濫用されれば、現在の家族関係に、再婚後の家族関係に不当に介入するというようなことにもなってしまう。せっかく改正法において再婚後の夫に嫡出推定を及ぼしたというその意味がやはり損なわれるわけであります。

 その点、ただし書において、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときはこの限りではないと規定しているわけでありますが、どのようなケースなのか。そして、その判断の過程、裁判等において、母ではなく前夫による否認権の場合は、司法手続の過程で、DNA型鑑定などによる生物学上の父子関係が考慮される場合もあるというふうに考えるわけでありますけれども、そういった点はいかがであるか。その点についてお尋ねをしておきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 子の利益を害することが明らかなときの具体例ということになりますが、これも個別具体的な事案に即して判断されるべきでございますけれども、一般には、前夫が、再婚後の夫と子との嫡出推定を否認した後、実は、自分自身、子の父として自ら子を養育する意思がないにもかかわらず、例えば、別の、嫌がらせ等の目的で、再婚後の夫と子との嫡出否認をするような場合が考えられると思います。

 だから、前夫が子の父として自ら子を養育する意思があるかどうかというのは重要な基準になると思いますけれども、DNA型鑑定などによって子と前夫との間に生物学上の父子関係があるかどうかということが判明していれば、その重要な事情になるものと考えられます。

田所委員 今回の改正法で、子や母に否認権が拡大をされたとしても、前夫からDVを受けるなどした母は、加害行為を行った前夫との裁判で対面をしたりすることに非常に心理的な負担を感じるんだろうと思います。

 また、裁判を通じて自身や子の住所等の情報が知られるということも懸念をされる、そういう中で訴え自体をちゅうちょするということではならないというふうに思っております。

 このような課題の類例として、DV事案においては、ビデオリンク方式とかウェブ会議方式等を使って進めている、住所などが知られないような配慮が秘匿制度によってその訴訟で行われているということであります。

 訴えを母等がためらわないための被害者保護というものが大変重要だろうと思っております。そうしたDV事案等、現在、裁判手続においてどんな配慮、方法が取られているのか、現状の制度や取組についてお伺いしたいと思います。

 また、今回の改正法が成立した場合において、母の負担軽減を図ることにつきまして、現状の制度を拡充するなどして対応していくことが非常に重要な分野だろうというふうに思っておりますけれども、どのようにするのか、お伺いをいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のDV被害者への配慮に関しましては、例えば、現実に対面することなく裁判の手続を進めることができる仕組みがございます。

 訴訟であれば弁論準備手続、家事調停であれば家事調停手続におきましては、電話会議の方法を利用することが可能となる仕組みがございます。

 また、DV等があった事案について、申立人と相手方が出頭するとしても、裁判所の構内で直接対面することがないように配慮するなどの、当事者の安全、心情に配慮した手続の運営がされているものと承知しております。

 さらに、本年五月に成立した民事訴訟法等の一部を改正する法律によりまして、民事訴訟等の手続におきましても、ウェブ会議によって口頭弁論を行うことや、合意に相当する審判をする際に当事者間の合意をすることを可能とする制度が導入されました。

 また、先ほどの法改正によりまして、人事訴訟や家事調停の手続においても、一定の要件を満たす場合には、訴状等に現住所を記載せずに訴えの提起をするなどの申立てをすることが可能となっておりまして、相手方に住所等を秘匿することができる制度が導入されたところです。

 さらに、人事訴訟等の手続の、今後更なるIT化が考えられますところ、この点につきましては、令和五年の通常国会に必要な法案を提出するということが、閣議決定されましたデジタル社会の実現に向けた重点計画においてうたわれております。現在、法制審議会で調査審議がされているところでございます。

 法務省としましては、関係機関と連携しまして、人事訴訟等の裁判手続のIT化を進めるために必要な措置を講ずるとともに、住所等の秘匿制度につきましても、その周知に努めるなどして、円滑な施行に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

田所委員 分かりました。

 これまでの議論を通じて家族のことにつきまして考えてきたわけでありますけれども、葉梨大臣に結びに聞いていきたいというふうに思っております。

 法務行政はいずれも非常に重要な役割を持っていると思います。これは、安全な国づくりでありますとか、あるいは国際的な出入国の管理でありますとか、公安、非常に大きなそれぞれの意味があります。矯正あるいは更生保護、そういったことがありますけれども、私は、その中にあっても、家族法制によって社会を形作るということの非常に大きな意味があると思いますし、何といいますか、やりがいのあるというか、将来的なそういうデザインをする、積極的な意味で、大変重要なすばらしい役割を担っているというふうに思うんです。

 それで、明治二十三年の民法制定のときには、穂積八束の、ボアソナード民法に対して、民法出て忠孝滅ぶというのは大変有名な言葉でありますけれども、これがありました。これは、法律と伝統的な風習あるいは道徳との調和、こういった点の論点があったと思いますけれども、いずれにいたしましても、私が最も重要だと思うのは、法律が人々の生活に与える影響の大きさを真剣に捉えていたんだろうというふうに私は思います。

 今日においても、家族法領域が時代の変化に対応しているのかや、あるいは社会生活にどのような影響を及ぼすのかということを深く考察して、立法政策によってその時代の社会を形作るということを、そういう使命感というものを持って取り組むべきだというふうに私は思っているわけであります。

 何の罪もない子の利益を奪う無戸籍者発生の原因についても、虐待やDVの増加ということに起因しています。その背景には、年間六十万組が婚姻するけれども二十万組離婚するというような現実がある。そして、前夫の子を疎ましくなってしまう。いろいろな悲惨な事件も起きているわけであります。

 懲戒権も、考え方が違って、これが虐待の……

伊藤委員長 時間を超過しておりますので、手短にお願いします。

田所委員 理由に使われるということでございますので、そういった時代の変化の大きさを考えて、国際化の進展や社会変化、デジタル化、そういう中で、たゆまずにそれに対応した政策を推進する必要があると思いますけれども、葉梨法務大臣の法務行政に精通した観点からの考えをお聞きしたいと思います。

葉梨国務大臣 御指摘を踏まえて、今後も引き続き検討を行ってまいります。

田所委員 以上です。

伊藤委員長 次に、谷川とむ君。

谷川(と)委員 おはようございます。自由民主党の谷川とむです。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 民法等の一部を改正する法律案ということで、本法律案は、懲戒権に関する規定の見直し、また、嫡出推定規定の見直し、女性の再婚期間の廃止などが盛り込まれております。これまでの審議を聞いておりますと、これらの点についてはさほど異論はないのではないかなというふうに思っております。しかしながら、国籍法については、今のところ賛否が分かれているところだというふうに私は認識をしておりますので、私からも、国籍法について質問させていただきたいと思っております。

 まず、葉梨法務大臣にお伺いをさせていただきます。

 本改正法案、国籍法第三条第三項、認知された子の国籍の取得に関する規定は、認知について反対の事実があるときは適用しないとしておりますが、その趣旨はどのようなものなのか、御答弁をいただきたいと思います。

葉梨国務大臣 今回、国籍法三条三項というのを提案をさせていただいたわけですが、これは、新たな規律を設けるということではなくて、現在の規律を維持するという観点から、念のためといいますか、確認のために設けたものでございます。

 認知に反する事実があったとき、現在の規律においても、三条一項の届出ですね、これは遡って不受理というような規律になっております。そのことを確認的に記したということでございます。

 この経緯については、昨日もちょっと申し上げましたが、パブリックコメント等の中で、民法の規律、これについて、認知の関係ですね、これを国籍法にも反映させるべきではないか、そういうような意見もございました。しっかりと法制審の中でも議論していただいたわけなんですけれども、なかなか、民法の規律と、それから国籍法の世界は、やはり議論の上で切り離して今回は御提案をしようということで一致をしたものというふうに認識をしています。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 大臣から答弁いただいたように、今回の改正法案で認知無効の出訴期間を七年以内に制限するということになっておりますので、それに合わせて、一応、念のため三条が追記されることになったと私も認識をしておりますし、運用はこれまでどおり、同じだというふうに私は認識しておりますけれども、その認識で間違いないでしょうか。

葉梨国務大臣 谷川委員御指摘のとおりです。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 じゃ、続きまして、現行の実務において、虚偽の認知による国籍取得を防止するためどのような審査が現在行われているのか、御答弁をいただきます。

金子政府参考人 お答えいたします。

 虚偽の認知による国籍取得を防止するため、認知による国籍取得の届出につきましては、認知が事実に反するものでないかを審査した上で受理の可否が判断をされます。

 そのため、認知による国籍の取得の届出に際しては、届出人は、認知に至った経緯等を記載した父母の申述書、母が子を懐胎した時期に係る父母の渡航履歴を証する書面、その他実親子関係を認めるに足りる資料等の書類を添付しなければならないものとされており、これらの提出を受けた書類の審査に加えまして、届出人に対する事情聴取等によりまして事実関係の調査を行っております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 国籍法第三条の日本国籍取得に係る届出後、事後的に、父の認知が事実に反する等、認知の無効が明らかになるとはどのような場合でしょうか。また、認知が無効であれば、認知された者の日本国籍は当初から認められなかったことになり、そのような場合でも、母親側の国籍が認められれば無国籍にはならないと思いますが、母親側の国籍も認められない場合は無国籍となると思いますが、いかがでしょうか。

金子政府参考人 事後的に認知が事実に反することが明らかになるケースとしましては、検察庁などから、事件に関わるものとして市町村長に通知がされる場合が考えられます。

 このようなケースにおきましては、事実に反する虚偽の認知に基づく国籍取得の届出は効力を生じず、当初から日本国籍を有しなかったことになりますが、例えば、母の出身国が父母両方の国籍を承継できる、いわゆる父母両系血統主義の国、韓国とかフランスとかイタリア等であれば、母の国籍である外国の国籍が認められる場合もあり、必ずしも子供は無国籍とはならないということになります。また、出生地の国籍を取得できる、いわゆる生地主義を採用している国、アメリカ等でございますが、で出生していた場合には、出生地の国籍が認められる可能性があり、この場合も必ずしも無国籍となるものではありません。

 他方で、生地主義を採用しない国で生まれ、かつ父が判明しない場合で母が無国籍の場合又は母の国籍が厳格な父系血統主義の国である場合などについては、お子さんが無国籍となるということがございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 仮に母親側の国籍が認められぬ場合、日本国籍も認められない者は無国籍となります。これを救済することはできないのでしょうか。特に、無国籍となるのが未成熟子の場合、要保護性は大きいと言えるため、その利益保護の観点から対応すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法務省では、無国籍の発生を防止する観点から、令和三年に改めて、無国籍等の状態にある外国人からの国籍相談に係る留意事項についてとする事務連絡を発出しまして、無国籍状態の解消に向けた可能な対応に取り組んでおります。

 すなわち、子が無国籍となる事案が生じた場合にも、国籍法上の要件を満たしていれば、帰化による日本国籍の取得が認められる余地があり、帰化を認めるか否かの審査においては、日本人の子として日本で安定的に生活をしていたことなどの個別事情も考慮されることになります。また、所定の手続を取ることで母親側の国籍が認められる余地がある場合には、無国籍とならないよう、当該外国の大使館若しくは領事館、又は本国政府において所要の手続を取ることができます。

 そこで、法務局においては、日本の国籍を取得するための手続や外国の大使館等における所要の手続に係る案内を、無国籍者の身分関係や意向等を踏まえて行うなどの取組を行っているところであります。引き続き、無国籍状態の解消に向けて可能な支援を行ってまいりたいと考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 日本国籍を取得するために帰化の余地があると御答弁をいただきました。

 しかしながら、帰化が認められるためには一定の期間を要するのが通例であると思います。帰化が認められるまでの間は外国人として扱われることになると思いますけれども、それぞれの場合の対応はどうなるのか、一つずつ聞いていきたいと思います。

 無国籍となった場合、子供は引き続き学校に通うことができるのでしょうか。文科省、御答弁いただきたいと思います。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省として、教育を受ける権利を保障するため、戸籍や住民票の有無にかかわらず、全ての学齢の児童生徒の義務教育諸学校への就学の機会を確保するということは極めて重要であると考えております。

 児童生徒が就学途中で無国籍になった場合であっても、公立の義務教育諸学校に引き続き通うことができるということになっております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。学校には引き続き通えるということで、ありがとうございます。

 じゃ、次に、住民票はどうなるのか。総務省、御答弁いただきたいと思います。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 御質問のケースにおきまして、日本国籍を喪失した方につきましては、住民基本台帳法施行令第八条の二第二項の規定によりまして、日本人住民としての住民票は消除されることとなります。

 その際、出生の日から六十日を経過していない場合は、入管法第二十二条の二第一項に規定する出生による経過滞在者に該当いたしまして、外国人としての住民票が作成されることとなります。

 また、出生の日から六十日を経過している場合は、出入国在留管理庁により在留の許可を受け、在留カードが交付されれば、市町村におきまして転入届を行うことで住民票が作成されることとなります。

 以上でございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 じゃ、六十日以内であれば、自然的に外国人登録されるということですか。

三橋政府参考人 さようでございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 ただ、六十日後いっていれば住民票は消除される、されたままということですよね。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 日本国籍を喪失しておられる方でございますので、住民基本台帳法施行令の規定に基づきまして、日本人住民としての住民票は一旦消除されるということになります。

谷川(と)委員 ありがとうございました。

 じゃ、続きまして、健康保険や年金等その他の社会保障はどうなるのか。厚生労働省から御答弁をいただきたいと思います。

日原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、国民健康保険につきましては、日本国内に住所を有する者に適用することといたしておりまして、外国人の方につきましても、適正な在留資格を有し、住所を有している場合には、原則として適用対象としてございます。

 したがいまして、父親からの認知が無効となることで無国籍となった子供につきまして、適正な在留資格を有しないこととなる場合、国民健康保険制度の適用対象とすることは困難でございますが、他方で、無国籍となった子供が適正な在留資格を有するに至った場合につきましては、在留資格が付与された時点から国民健康保険制度の適用対象となるものでございます。

 なお、国民年金などの社会保障制度につきましても、適正な在留資格を有し、日本国内に住所を有している場合には、同様に制度の適用対象となるものでございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 文科省からは、子供たちが無国籍になったとしても、引き続き学校に通える、今までどおりの生活ができるということが確認されました。

 ただ、住民票は消除をまずされる、また、健康保険、年金等の社会保障も、住民票が作成されなければなかなかそのサービスを今までどおり受けることはできないということがありましたけれども、では、日本国籍が認められなくなった者が住民票を得ることや健康保険等の社会保障を受けるには、一番まず在留が認められることが前提になっているということですけれども、在留は認められるのでしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘のような場合で、日本国籍が認められなくなった者につきましては、在留資格を有しないこととなりますので、退去強制手続を受けることになります。

 ただ、退去強制事由に該当する場合でも、法務大臣の裁量により在留特別許可を受けることがあります。特に、先ほど委員が御指摘になったような、未成熟子であって、その子供を本邦で監護、養育するほかないなどの場合がありましたら、極めて高い人道配慮が必要であるとの観点から、在留特別許可をする方向で検討されることになると考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 子の最善の利益を確保するためには、やはり不利益を被らないようにしていかないといけないというふうに思っております。

 ただ、この国籍法第三条三項を追記することによって、これまでと同じ運用であって、これを追記することによって、何か不利益を被るようなことは私は考えられないというふうに思っておりますし、子供はやはり何の罪もないんですよね。虚偽の認知をする者が悪くて、また、政府も、法務省も、いろいろな関係省庁も全く悪くない。ただ、しっかりと厳格にしないと、虚偽の認知によって国籍を得る者も防止をしていかないといけないということで、本改正法案に至ったというふうに思っております。

 そのような中で、改正後も、今いろいろ各省庁に聞かせていただきましたけれども、様々な対応が可能であるということも分かりました。しかしながら、今後も法務省として無国籍の解消に向けてどのような取組を進めていくのか、また改めて葉梨法務大臣の決意を聞かせていただければというふうに思います。

葉梨国務大臣 今回の御提案の中で、こういうような国会審議が行われているということは、極めて私は重要な意味があると思います。

 先日も申し上げましたが、今、谷川委員おっしゃったように、子供に帰責事由もなくて、しかも、生活を日本で送っていて、教育も日本で受けている、その子が無国籍になったということで不利益を被るようなことは、法務大臣としても、政治家としても、あってはならない、そういうような答弁、これは議事録に残ります。

 ですから、関係省庁、しっかり連携を取りながら、私どもでできることというのは、先ほど申し上げた在留特別許可、さらには、国籍の関係では、本人の身分関係とか意向にもよりますけれども、帰化、簡易の帰化とか、あるいは、もし、本国籍というか、元々の外国籍を取りたいという方であれば、本国に紹介したり、また大使館、領事館に紹介したり、そういうような可能な手だてをしっかりやっていくということ、これを改めてこの審議の中で、運用は変わらない、規律は変わらないと言いながらも、確認できたということは、改めて大きな進歩だろうというふうに私自身は考えていますので、よく第一線にも、このような審議があったということをしっかり徹底をしながら、今後の運用に役立てていきたいし、また、関係省庁の連携にも役立てていきたいというふうに思います。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 子の最善の利益を確保できるように、不利益を被らないように、しっかりと各関係省庁と連携を取りながら、法務大臣、葉梨大臣、リーダーシップを取って前に前に進めていっていただきますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。今日もよろしくお願い申し上げます。

 まず、懲戒権の見直しについて質問させていただきたいと思います。

 懲戒権の見直しについては、公明党としても、令和元年一月の千葉県野田市における児童虐待による女児死亡事件を受け、しつけと称した体罰の一掃に向け、当時の政調会長が予算委員会で質問し、同時に官邸に申入れをするなど、当時から、懲戒権規定の見直しなど、強く求めてきたものです。

 今回、民法の法文の中で、明治以来の懲戒権という文言が削除されたこと、規範性をはっきりさせたことは大きな前進であると評価するところでございますが、一方、既に令和元年にも、児童虐待防止対策の強化を図るため、児童福祉法等の一部を改正する法律が公布され、しつけに際して体罰を加えてはならないことが明文化されております。また、それに合わせ、報道等でも、しつけのためであったとしても体罰は許されないことがアナウンスされたと記憶しております。しかし、一方、児童相談所に寄せられる児童虐待相談件数の増加傾向は止まらず、令和三年度も過去最多となっております。

 今ここで最も大切なことは、今回の改正に伴い、児童虐待をいかに減らしていけるかという実効性であると思います。

 厚労省が令和三年に発表したアンケート調査では、子育てにおける体罰の使用が法律的に禁止されていることを知っているかという問いに対して、内容まで知っているが二〇・二%、聞いたことはあるが詳しい内容は知らないが六〇・二%、知らないが一九・六%でありました。法律で禁止したことの効果は一定数出ていると思いますが、広く浸透するには至っていない状況が見て取れると思います。

 そして、同じアンケートでございますけれども、子供に体罰を与えることは場合によっては必要だと思うかという問いに対して、非常にそう思うが三・五%、そう思うが一〇・四%、ややそう思うが二六・三%。ここまでの合計、体罰を肯定的に見ている人が四〇・二%。次に、余りそう思わない、体罰は必要だとは思わないが二八・一%と続くわけですが、産後うつに象徴されるように、特に小さい子を抱える育児中の若いお母さん、お父さんは、経済的に余裕もなく、育児にも手がかかる、なかなか外食にも、友達と遊びに出ることもできない、大変なストレスを抱えている場合が多いと思います。余りそう思わないと答えた二六・三%の方でも、ストレス状態の中では子供に手を上げるケースもあり得るのではないかと思うのです。

 そこで、まず法務当局に確認したいのは、子の心身の健全な発達のためになされるしつけとはどのようなものか、また、どのような体罰、言動が有害な影響を及ぼすと考えるか。国民に広く伝えていくには、分かりやすい具体性が必要だと思います。具体的に例示できるものがあれば、お示しいただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 子の心身の健全な発達のために行う適切なしつけということが何かということですが、子の人格を尊重して、その年齢及び発達の程度に配慮しながら、具体的な事案を前提として社会通念に照らして判断されるべきものであります。一概に申し上げることは困難でありますが、例えば、子の問題行動に対しては厳しく注意したり、逆に適切な行動に対しては褒めたりすることなども含まれると思われます。

 また、改正法案の八百二十一条で禁止される、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動についてでございますが、これは、子に不当に肉体的又は精神的な苦痛を与え、その健やかな身体又は精神の発達に悪影響を与え得る行為を指すものでございます。

 最終的に、具体的な事案を前提とし、その行為の態様のほか、子の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的、時間的環境等が総合的に考慮されることになると思います。

 明らかな典型例として挙げますと、それに至らないものはいいのかというニュアンスを含みかねないので若干ちゅうちょを覚えるんですが、そういう趣旨で申し上げるのではないということは御了解いただきたいのですが、例えば、悪いことをしたといっても、それが軽微なものであるにもかかわらず、そういうことをした非常にまだ小さい幼少の子に対して、制裁として、かなり夜遅い時間帯に家から締め出したりとか、あるいは長時間にわたって大声で罵倒し続けるなどのことは、子の心にもかなり有害な影響を及ぼし得るのではないかと思われますので、そういうものは、ここに言う禁止行為に当たるというふうに思います。

日下委員 ありがとうございます。

 本当にしつけというのは、今もなかなか言葉で表すのが難しい問題でございまして、広報するのも本当に難しい、言葉を選ぶといっても選びようがないというか、状態によっていろいろ、様々家庭状況によっても違います。

 そういった中で、パンフレット等もこれから配布していくというふうなことも伺いましたけれども、これはやはり生きた学びの中で、今、親になるための教育、学び、ペアレントトレーニングの取組とか、そういうことがありますが、非常に大切だなというふうに思います。

 法務省としても、子供の権利という角度というか切り口で、しっかりそういったことにも参入していっていただいて、保護者に対するそういういろいろな言葉のキャッチボールの中で、そういうしつけの問題、体罰の問題等、分かりやすく広げていっていただければというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、改正法案の八百二十一条に、「親権を行う者は、」「監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、」とございます。

 私は、「子の人格を尊重する」というこの文言は非常に重要だと思います。全ての人の人格の尊重が大切なことは言うまでもないことですが、まだ言語能力、判断基準や能力も備わっていない、肉体的にも精神的にも未熟な子供に対する人格の尊重とは、何を言わんとしているのか、大臣に御所見をお伺いしたいと思います。

葉梨国務大臣 親権者による虐待の要因ですけれども、親が自らの価値観を不当に子に押しつける、そういったことや、子の年齢や発達の程度に見合わない過剰な要求をする、そういったことがあるという指摘がございます。

 これを踏まえて、親子関係において、独立した人格として子の位置づけを明確にするとともに、子の特性に応じた親権者による監護及び教育の実現を図る観点から、子の人格を尊重する義務並びに子の年齢及び発達の程度に配慮する義務を今回規定することとしたものです。

日下委員 子の人格の尊重というのもなかなか難しい言葉ではございますけれども、今回、こども基本法が公布されましたけれども、基本理念には、全ての子供について、年齢及び発達の程度に応じ、意見の尊重、最善の利益が優先して考慮されることというふうにございます。意見の尊重ということが書かれておりますけれども、本当に、子供の声をきちんと聞くということが非常に大事だというふうに思います。それによって、子供の信頼感というのも、親に対して深まるというか、強まるというふうに思いますので、しっかりそういった社会を築いていけたらというふうに思います。

 次に、児童虐待を未然に防ぐためには、我が党がこれまで主張し続けているように、中心となる児童相談所が、市町村や学校といった様々な関係機関と機動的に連携していくことが重要であると考えます。その意味からも、今回の法改正の趣旨を、いち早く関係機関及び広く国民に周知、浸透を図ることが大事だと考えます。

 さらに、この度の総合経済対策にも示されました、妊娠から出産、育児へと続く伴走型支援、妊娠時、母子手帳をもらうときから、個別に出産や育児の相談に乗り、支えていける体制、そうした導入も大きな役割を果たすものと考えます。

 まず、後段の伴走型支援について、その趣旨や、児童虐待を未然に防ぐことに関する役割について、厚労省にお尋ねいたします。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 核家族化が進んでおりまして、地域のつながりといったものも薄くなってきているという中で、子育てについて気軽に相談をしたりあるいは頼ったりすることができる、そういったようなつてがないという中で、子育てについて孤立感や不安感を抱いておられる方も多くなってきているという状態でございます。その結果としてやはり虐待につながってしまうというような事例も間々あるところでございます。

 そうしたことから、御指摘のように、先般まとめられました経済対策に基づく二次補正予算の中では、出産・子育て応援交付金といったものを創設をいたしまして、妊娠期から出産、子育てまで一貫して身近なところで相談に応じて、そしてそのニーズに応じて様々な支援につないでいく伴走型の相談支援というものを充実をしていく、これを継続して実施していく、そうしたことを通じて、こういった子育てあるいは出産といったものについて安心できるような環境づくりを進めていきたいと考えております。

 こうした取組が広がることによりまして、妊娠期から相談をできる機関につながることで、妊婦さんあるいは子育て家庭が抱きがちな不安感、孤立感が緩和をされるということ、さらに、その相談を通じて必要な支援メニューにつながっていくこと、こういったことを通じて、児童虐待を未然に防止する効果にもつながるものではないかというふうに期待をしているところでございます。

日下委員 ありがとうございます。

 一番最初にやはり接するのがそこをサポートする方々だと思うので、しっかり児童虐待の兆候を見逃さないようにしていただきたいなというふうに思います。

 さらに、法務省には、児童虐待の対応に関わる関係機関や、国民に対する周知について、お聞きいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待に関して、その原因等に触れることのある関係機関も幾つかあると思います。この点は、委員御紹介されたとおりでございます。また、子育てをされる親御さんの相談に乗っているような関係機関もございます。そういうところともきちんと連携していくことが児童虐待の防止に向けては非常に重要であるというふうに認識しております。

 また、児童虐待の防止をより一層推進していくためには、厚労省等とも連携しまして、国民一般に対しても適切かつ十分な周知広報活動を行ってまいりたいと考えております。

日下委員 続きまして、嫡出推定制度の見直しについてお尋ねしたいと思います。

 無戸籍者の多くは、自らに何ら落ち度もないのにかかわらず、社会生活上、様々な不利益、不利な状態に置かれております。

 昨日の大口委員の質問にも関連いたしますけれども、今回の改正によって、女性の再婚禁止規定が廃止され、嫡出推定規定に基づく父子関係を否定できる嫡出否認の規定について、その否認権を夫だけでなく母子に広げたことは大きな前進であると評価します。

 そこで、現在、我が国には、分かっているだけで七百九十三名の無戸籍者がいるとされておりますが、このうち、嫡出推定制度の下、子が夫の子と扱われることを避けて出生届を出さなかったという人が五百七十二名、約七二%とされています。その掌握はどこでどのように行っているのか。

 昨日、大口委員に対する答弁でも、法改正後に、対象となる方々に個別に通知をする旨発言がございましたが、いち早く知らせていくことが必要かと思います。どのような通知方法が考えられるのか、また考えておられるのか、大臣の御所見をお伺いいたします。

葉梨国務大臣 しっかりと無戸籍の方を把握する努力を続けなければいけないと思います。

 法務局に無戸籍だということで届け出てくるというのは本当にまれだろうと思いますので、やはり、市区町村の戸籍や住民票の窓口に相談に来られた際、あるいは、福祉担当部署や教育委員会、そこら辺にも御相談、無戸籍の情報に接するということもあろうかと思います。ですから、そういう部署にお願いをして、市区町村の戸籍担当部署又は法務局、こちらに情報提供していただくよう、引き続きしっかり努力をしていかなければいけないと思います。

 特に、この法律を成立していただいた暁には、施行は一年六か月以内、それから、施行後一年間の出訴期間というのがございます。しっかり急いでいくことが必要だと思います。施行までの準備期間の間、できるだけ早くやはり無戸籍の方々に個別に通知することも含めて、その通知の方法等についても、今後十分に検討をしていきたいと思います。

日下委員 ありがとうございます。

 その後の手続についても丁寧に、説明も含めてお願いしたいというふうに思います。

 次に、先ほども谷川委員からも質問がございましたが、無国籍者の問題について質問させていただきます。

 今回の改正に伴い、国籍法第三条に関する規定の確認的追加が三項としてなされたと理解しております。すなわち、認知について反対の事実があるときは、国籍取得の規定を適用しないと明文化されたわけでございます。その子は遡って日本国籍を失うことに変わりはございません。要するに、誤った認知後、不法滞在していたことになります。そのような子が他国の国籍を取得することが困難な場合、結果的に無国籍となるケースが想定されます。

 また、実際にあったケースとして伺ったのですが、四歳の連れ子がいるフィリピン人女性が日本人男性と結婚し、その男性に認知され、日本国籍を得た子の話でございます。実際の父親は別の日本人男性で、いわゆる虚偽認知でした。その後、両親の離婚によって、二十八歳のときに父方から認知無効の裁判を起こされ、日本国籍まで奪われました。遡って国籍を失うわけですから、不法滞在、オーバーステイとなり、強制退去の対象となりました。この青年は職を失い、精神的にも追い詰められながら、認知を拒否する実際の父親と裁判を争い、その男性の子だと認められるまで、およそ四年半もの間、無国籍のまま、壮絶な苦労をされましたと伺いました。

 無国籍者を出さないという国際的な取組の中で、国籍喪失の例外規定、すなわち、十八歳に達した者とか五歳に達した後には国籍は喪失しないといった規定を設けている国もあります。また、ドイツやスペイン、フランスなど多くの国で、一定期間、例えば十年、十二年、誠実にその国の国民として生活してきた者に対して、国籍を剥奪しない、また、国籍を取得できるとしています。

 我が国においても、入管当局がこうした事例に対して特別在留許可を与えるなど、柔軟に対応いただいていることは承知しておりますが、親による虚偽によって何も知らない子がその責めを負うということは、児童の最善の利益という観点からも回避されなければならない事案だと思います。

 さらに、悪意や虚偽とも言えない、よく分からない、そう信じていた場合も考えられ、結果的に国籍を失ってしまう者に対して、身分回復に至るまでの手続に要する期間、また、その間に失う社会的損失を考えれば、特別在留許可や帰化申請など裁量に若干幅のある措置による救済ではなくて、これは昨日も大臣が説明されておりましたが、法律のたてつけとか法体系との整合性もあろうかと思いますので、今後の議論として、公平で公正な救済ルール、例外規定を設けることも検討していく課題ではないのかなと私自身思うところでございます。

 法務大臣の御所見を伺えればと思います。

葉梨国務大臣 日下委員が御指摘された例、昨日、近藤参考人からもお話ございました。個別のケースについては、プライバシー等の関係もありますのでなかなか触れることはできないんですが、それなりの事情があって、時間がかかってしまったというようには聞いております。

 しかしながら、やはり先ほど申し上げましたように、日本人と思って、本人に帰責事由がなくて、日本で生活をし、日本で教育を受けて、そういうような子供については、早急に、無戸籍、無国籍であるということの不利益、これは私どもの責任としてしっかり解消していかなければいけないというふうに思います。

 法律の関係では、昨日も御説明しましたが、法制審でも議論があったんです。民法の規律を国籍法に取り入れる、これについては、議論を尽くした上で、今回は切り離していきましょうということになりました。

 これはどういうことかと申し上げますと、帰化、あるいは他の外国籍を取るというような方法がある中で、民法の血統主義、それから例外的な出生地主義、これの更なる例外をつくるということについては、現行、今これを提案するということはなかなか難しいのではないかという観点から、切離しがされたというふうに思いますけれども、御指摘があることは受け止めたいというふうに思います。

日下委員 ありがとうございます。

 続きまして、生殖補助医療に関しての嫡出否認制度の見直しについてお伺いしたいと思います。

 この度の法改正に伴い、生殖補助医療に関して、妻が夫の同意の下、第三者から提供された精子を用いた生殖補助医療によって懐胎、出産した子については、夫に加え、子及び妻も嫡出を否認することができないとされております。妻も嫡出を否認することができない。

 また、この生殖補助医療に関する基本理念や当該医療により生まれた子の親子関係等について定める法律が議員立法として成立したのが令和二年十二月でございまして、附則には、おおむね二年を目途として、検討が加えられ、その結果に基づいて法制上の措置等が講じられるものとするとされています。

 ちょうど今、二年がたとうとしているわけでございますが、生殖補助医療については、生殖補助医療そのものに対する規制もまだ定まっておらず、精子の提供やあっせんに関するもの、生まれた子に関する情報の保存、管理、また開示等に関する制度も定まっていません。子の出自を知る権利についても議論中でございます。検討事項は多岐に及び、生命倫理も絡んで、集約も簡単ではないと考えられます。

 この度の生殖補助医療に関する法改正によって、妻が夫の同意の下、二人が同意して出産したという前提を考えると、従来の夫に加え、妻についても嫡出を否認することができないということは普通に理解できます。また、子にとっても、早期に父子関係を確定し、子の地位の安定を図ろうという意味では理解できますけれども、子に対しても嫡出否認ができないという法改正の意義について、法務当局にお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 御夫婦で話合いをされて、夫ではない第三者の提供精子を受けてお子さんをもうけるという決断をされ、それに基づいてお子さんが出生された場合、もとより、父と子の間には遺伝的なつながりがないということになります。そういうような状況でもお子さんを持ちたいという方についてはそういう機会を与えるということで、第三者提供精子による生殖補助医療というものを社会的に認めるという決断をしたということになります。

 したがいまして、父子間に遺伝的なつながりがないということを理由に嫡出の否認をするということは、これは誰からも認めるべきでないという考え方に立つのが相当だと思います。社会として認めたということになりますので、これについては、元々遺伝的つながりがないので、DNA検査をすれば、それは父子関係がないということは当然なんですけれども、しかし、それでも父子関係をきちんと認めるというのがこの法律の趣旨だと思います。

 したがって、今回、嫡出否認の訴えをできる人を広げましたが、その広げた部分につきましても、やはり、お子さんも含めて、遺伝的つながりがないことを理由に嫡出否認を認めるということは相当ではないということで、お子さんも含めて否認権の行使を認めないということとしたものでございます。

日下委員 ありがとうございます。

 いよいよ、生殖補助医療について今まさに議論中で、これからもいろいろな議論が積み上がっていくものと思いますが、しっかりこれも見守っていきたいというふうに思います。

 ちょっと、私、発言時間が少し残っておりますが、これで予定終了ということで、終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 立憲民主党の吉田はるみです。先週に引き続き質問、どうぞよろしくお願いいたします。

 先ほどから、大臣の力強いお言葉も聞いて、非常に心強く思っています。

 今日は、百二十四年ぶりになる、親子関係に関して非常に重要な法案の審議になるんですけれども、私のような法律の専門家ではない国民の皆さんにとっては大変分かりにくいところもありますので、ちょっと事例を使いながら確認をさせていただきたいと思います。

 今回の法改正によって、嫡出子の推定規定、つまり、子供にとって父親が誰になるかというような重要な規定が変わることになります。これまであった女性の再婚禁止期間、これは百日間あったわけなんですけれども、これも廃止されます。これは私、歓迎したいなと思っているんですけれども、ちょっと一言だけ、女性の立場として、やはり百日間あったというのは、とても現代において違和感のあるところでした。まだまだこの法律の中にも封建的、家父長的な面がないのかなというところで今日は質問させていただきたいと思います。

 では、お手元に、皆様、資料をお配りさせていただいているんですが、ケース一を御覧ください。

 まず、ケース一です。離婚後、離婚をした後、再婚せずに出産した場合、このお子さんの父親は誰になりますでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 離婚から三百日以内にお子さんが出生していれば、この図で言う前夫が父親になります。

吉田(は)委員 そうなんですよね。再婚しない場合には、いまだ三百日ルールが適用されて、前の夫の子供となります。

 ちょっとこれも、いやあ、ちょっとここをやはり解決できていないのかなと思うんですが、この法律でもこの三百日ルールを残したのは、父親を残しておく、父親を規定しておくということが主眼かと思うんですが、父を規定することによって子供にはどのような利益があるとお考えでしょうか。

金子政府参考人 推定規定が置かれることによって、それが覆されるまではその推定どおりに父親になるということになります。

 そのルールがあることによって、子供が生まれたときに誰が父親か、つまり、子の養育義務を負う父親が誰かということが決まるということになりまして、子供にとってのメリットがあると考えられているところでございます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 養育費に関しては、この後、後ほど触れたいと思うんですが、もう一つ、相続権の発生ということもあるかと思うんですけれども、この点もちょっと私の方でつけ加えさせていただきたいと思います。

 こうして父親を規定することによって、養育の面から、そして相続の面からメリットがあるということだと思うんですけれども、ちなみに、このケース一の場合、今回の法改正で三百日ルールが適用になりますけれども、否認することも可能ですよね。これ、否認できるのは、今の法律ですと前の夫しか子の嫡出否認ができなかったわけですが、ここの表で言う前の夫、母、子供、この三者が否認できるという理解でよろしいでしょうか。

金子政府参考人 今の委員の御指摘のとおりでございます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 先ほど、ちょっと私の気持ちを思わず吐露してしまいましたけれども、再婚可能期間に関してのところなんですけれども、今回撤廃されて、例えばこんな例がありますよね。今日、離婚届を出します、同時に再婚の婚姻届を出す、これも可能になるという理解でよろしいでしょうか。

金子政府参考人 離婚した後であれば、再婚できます。

吉田(は)委員 画期的だなと思います。というか、こうあってほしいなというところなんですけれども。

 大臣、これ、ちょっと済みません、また女性の立場からの気持ちになるんですけれども、現行法の場合には、例えば年齢的に出産するのが難しい女性が再婚する場合でも、この規定があったんですよ。何か、どうなんだろうと私は思っていたんですけれども。

 その場合、こういうケースがあるそうなんですが、妊娠検査をして妊娠していないことを証明できたら、再婚届を出せる。これ、私、ちょっと屈辱的な感じがするんですよ。なぜ女性だけがこういう、妊娠しているかしていないかとか調べられていたと。今回はそれがなくなるということなんですけれども、この大きな変化に対して、大臣、どのようにお感じになりますか。

葉梨国務大臣 前回の再婚禁止期間の短縮というのは、最高裁で違憲判決が出まして、とにかく急いでやらなければいけないというような事情もあったわけですが、本当に家族法制の話、いろいろな御指摘がございまして、やはり、親子法制ということなんですけれども、それと密接に関わる再婚禁止期間、これもしっかりトータルで議論をしていただこうということで今回提案をさせていただいたわけで、これはもうしっかりした議論を踏まえての提案であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 では、今度、ケース二に移ります。このケース二は、離婚をして、そして、その後再婚をして子供が生まれたケースです。

 例えばこの場合、母というところを私に置き換えますけれども、私が再婚をして、一か月後に子供が生まれたとします。この子供の父親は誰になりますでしょうか。

金子政府参考人 前夫と離婚をして一か月後に生まれたお子さんについては、今、ケース二を前提にされているようですので、子の出生までに母が再婚していたという場合だと思いますが、その場合には再婚後の夫の子と推定されます。

 ちなみに、再婚していなければ前の夫の子と推定される、これは先ほども申し上げたとおりです。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 そうなんですよね。今回のこの法改正で、今の夫、再婚後の夫ということになるわけですけれども、妊娠期間からいうと前の夫との婚姻期間中に妊娠しているという形になって、生物学的な父が誰かという議論も巻き起こるところなのかもしれないんですけれども。

 例えば、今、親子関係も様々になっている中、この中で、今新たに現在の夫の子供だとなりましたけれども、現在の夫の子供だというふうに、否認できる人は、この図でいうと誰になりますでしょうか。

金子政府参考人 母、現夫、それから子、それに加えまして、再婚していなければ前の夫の子と推定される期間にお子さんが生まれていれば、前夫も否認の訴えを提起できるということになります。

吉田(は)委員 そういうことで、ここの図に書いてある人みんなが否認権があるということなんですけれども、こんなケースはないでしょうか。例えば、前の夫が、私が新たに再婚して、子供と今の夫と幸せに暮らしているのを見て、何か悔しいな、あの家庭を壊してやろう、嫌がらせをしてやろうと思ったときに、今のお話でいうと否認できるということになりますよね。また、逆に、前の夫が、とても家を継ぐとかいうことを大事にする夫で、しゅうとめも含め、いやいや、あの元嫁が産んだ子はうちの子よということで、前の夫がそういうような訴えを起こすことも可能だという理解なんですが、まずこの点、今の理解が正しいか、お答えください。

金子政府参考人 ちょっとどこまで踏み込んでお答えするのがいいのか分かりませんが、一般的には、今のような例でも前の夫が否認をするということは可能です。ちょっと例外的な措置はつくっておりますけれども、そこまで、お尋ねであればまたお答えします。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 念のための確認ですが、そうして、再婚相手の子供じゃないよ、私の子だよと前の夫が言って、その否認が認められて、自動的にそれは今度、前の夫の子供になると思うんですけれども、これ、いや、自分の子でもないですというようなことはできませんね。自動的に前の夫の子になった場合には、その訴えを起こした人が、自分の子でもないという否認はできないということでよろしいでしょうか。

金子政府参考人 前夫が、現夫と子供との間の嫡出否認を自ら起こした結果として、それでそれが認められた結果として、今度は自分が推定を受けるという立場に立った前夫は、その推定を自ら覆すことはできないというふうに今回の新法で規定をしています。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 本当に何か頭がだんだんこんがらがってくるんですね。もう少し複雑なケースをもう一つ、ケース三、こちらを御覧ください。

 こちらは、離婚をして、ちょっと母というのを私と置き換えますね、私は、再婚せずに出産します。その後、前の夫が別の方と結婚して、その別の方と結婚した間にもお子さんがいるという仮定で伺いますが、前の夫が生きている間、私が産んだ子供の嫡出否認をできるのは、この図でいうと誰になりますか。

金子政府参考人 ここで言う前夫が生存している場合に、否認ができるのは、前の夫と、それから母と、子、といってもこの右側ですね、前夫とお母さんとの間に生まれた子供ということになります。

吉田(は)委員 これ、問題になるときには、今、私、再婚していないんですよ。ですので、離婚して生まれても前の夫の子というふうになるわけですね。でも、前の夫の新しい奥さんにしてみたら、あの子はうちの夫の子じゃないわよと言いたくなるときもあるかなと。

 それが問題になるのが、夫が亡くなって、前の夫の新しい奥さん、ここで言うところの、その奥さんが、あら、うちの夫の相続が来たわと。うちの子、つまりこの図でいうと左側の子供に全相続をしたい。でも、うちの夫は前、結婚していて、その人が産んだお子さんがいる。再婚していないから自動的にうちの夫の子供になっているけれども、これを否認したいというふうに言った場合、この奥さんは否認できますか。

金子政府参考人 前婚の解消から三百日以内に生まれ、再婚後の夫の子と推定される子について、再婚後の夫が死亡したとしても、推定される父との間の父子関係を否定する実益が存することから、子と母と前夫が嫡出否認の訴えを提起することができるわけですけれども、再婚後の夫が嫡出否認の訴えを提起することができる期間内に死亡してしまったというような場合は、その子のために相続権を害される者その他再婚後の夫の三親等内の血族は、再婚後の夫の死亡の日から一年以内に限り、嫡出否認の訴えを提起するということができるとされておりまして、ケース三の図に当てはめますと、お子さんは間違いなくここに当たるんですけれども、妻につきましては、相続分が影響するかどうかという辺りはちょっと微妙な問題がありまして。ただ、できないとされることが多いと思います。

吉田(は)委員 じゃ、ここで言う前の夫の奥さんの子供はできるけれども、前の夫の新しい奥さんの方は難しいよという理解でしょうか。ごめんなさい、念のために。

金子政府参考人 ここで言う後妻につきましては、相続分に影響がある場合には否認権を行使できることに争いはないんですけれども、相続分に影響がなかったとしても、三親等内の血族に準ずるとして認めるという説もございます。

吉田(は)委員 済みません、私はなかなか理解が追いついていないんですけれども、こういった形で、今回の、やはり親子関係を考えていくって、それこそ大臣がおっしゃいましたように哲学的で、そこにどう法律を当てはめていくかってとても難しい問題なんだなということを実感しています。

 今回の法改正なんですが、そもそも、親子関係の規定を見直すことになったわけなんですが、これは、無戸籍者を生まない、新たに無戸籍者が発生しないようにという趣旨であったかと理解しているんですが、今回のこのケースのように、再婚しない場合にはやはり三百日ルールが適用になっており、再婚を選ばなかった女性にとってはまだこの点を解決できないという、ある意味法の不備というところを私は指摘させていただきたいなというふうに思います。

 ここもやはり、何なんでしょうね、ちょっと女性として感じる違和感は、自分の子供を何か、いろいろな生物学的なDNAで証明したりだとか、妊娠検査薬とか、何だか女性の扱われ方がどうも納得しかねるところがございますということを申し上げたいなと思います。

 具体的に先ほど御答弁いただいたんですが、もしこの法律が通りましたとして、実際に施行されるその日にち、ざっくりで構いませんので、来年の何月とか、そのような形で御答弁いただけないでしょうか。

金子政府参考人 この改正法案が国会で御承認いただき、法律となって、公布されることになります。これはいろいろな法律を作るときのやり方としてよくあるんですが、具体的な日は確定せずに、施行準備も考えて、公布日から一定の期間経過するまでの間で政令が定める日という定め方をすることがありまして、この法律においては、準備期間を考え、それもそう長くは必要ないだろうということで、公布から一年半以内で政令で定める日ということになりますので、どんなに遅くても公布から一年半後ということになります。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 一年半、準備期間があって、今現在無戸籍で苦しんでいらっしゃる方が、その後一年間訴えが起こせるということで御答弁いただいているかと思うんですが、この二年半ですよね。

 大臣、これはちょっと提案なんですけれども、どうやって通知するかというところで、先ほど、各行政機関や、そして直接通知ということもあったんですが、何か一説には千人以上、あるいは万単位でいるとも言われている無戸籍の方々なんですが、たくさんの支援団体もありますし、実際、無戸籍で御苦労されている方の是非声を聞いて、こういうところにアクセスしたらみんなに伝わるんじゃないかと、多分現場の人がよく御存じだと思うんです。そういったところのコンタクトもしていただいて、やはり誰も取り残さないという形で、この無戸籍問題に本気で取り組んでいただけたらなと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 先般も、先ほども答弁させていただきましたけれども、まず、市区町村の窓口、福祉、教育も含めて、よく連携を取るということを考えていますが、私どもよりも市区町村の方の方が、そういった支援団体とか、そういったところとのつながりもあろうかと思いますので、しっかり情報収集をしなければいけないと思います。

 そして、個別の通知を検討しております。その通知の仕方についても、やはり、一年半という準備期間、長いようで短いので、スピード感を持って対応したいと思います。

吉田(は)委員 是非、法務大臣のリーダーシップの下、こちらを進めていただきたいなと思います。

 昨日、来日されているUNHCRの皆様もこの問題に大変注目していますし、昨日の山田委員からも、グローバルスタンダードという意味では、まだまだ日本がこの点に積極的ではないんじゃないかという評価を受けるのは、私としても大変残念だなと思いますので、是非、法務大臣のリーダーシップでこれを進めていただきたいと思います。

 では、最後に、こんな話があるんですね。先ほど、子供の父親を規定することの利点の中に、養育費の話がありました。これ、実際は、養育費を払っていただいているのが、昨日厚労省にも確認したんですけれども、平成二十八年で二四・三%。これ、悔しいですね。せっかく決まっても、本当に、四分の一しか支払っていただけない。一番最初は支払っていても、お父さんが仕事場を替わるともう追えなくなってしまうんですね。それで泣き寝入りになるというケースが多くて。

 これ、大臣、何かマイナンバーカードにひもづけて、マイナンバーカードはもうその人固有のものなので、どこに仕事が替わっても養育費が、いわゆる取りっぱぐれないということで、こういうのはどうだろうかというような御意見もあるそうなんですけれども、この辺の議論というのは何かなされていますでしょうか。

葉梨国務大臣 マイナンバーカードのひもづけについては、まだマイナンバーカードが五割程度しか行き渡っていないということもございますが、この養育費の問題につきましては、今現在、家族法制の関係で、法制審議会で、親権の問題、養育費の問題、それから面会交流の問題、そういったことを幅広く今議論をいただいています。

 養育費がなかなか支払われない、それが子供の貧困の大きな原因になっているという問題意識は私どもも共有しておりますので、是非、制度的に幅広い議論をいただきたいなというふうに思っています。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 そもそもマイナンバーカードにいろいろな懐疑的な御意見や御不安が国民の皆さんから出ている中、こういうことを解決する、本当に苦しい立場にいる方に寄り添った形での活用を是非考えていただきたいなと思います。どうせ、ある意味すごい予算をつけてこれをやるわけですよね。ああ、そうか、こういういい点があるんだということを国民の皆さんに感じていただけるような、私は施策が必要ではないかということを思います。

 では、後半の方は、先週、寺田学委員が質問し、大変重要な点が出てきました、神戸の児童連続殺傷事件の記録に関してお伺いしたいと思います。

 今回、神戸児童連続殺傷事件の全記録が廃棄されたわけなんですけれども、そのほかにも大きな少年事件がありました。長崎県佐世保市の女子児童殺害事件、これは二〇〇四年六月一日に起こったものです。また、法改正にもつながった二〇一二年四月二十三日に起きた亀岡の暴走事故、こういったことも、無免許運転でしたね、この裁判記録、事件記録、これはございますでしょうか。

氏本最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員から今御指摘いただいた記録については、廃棄されていることが確認されております。

吉田(は)委員 そうなんですよ。少年Aの記録、もちろん大事なんですけれども、そのほかにもこういった重要な裁判記録がなくなっているというのは、先週、寺田委員からの質問で、この記録は誰のものですかというところでお答えがありました。裁判所が保有しております記録は国のものでありまして、それはすなわち国民のものということだというふうに理解していますというような御答弁をいただいています。

 これは本当に国民の財産なんですね。私、国民の財産ということは公文書です、歴史的な公文書だという位置づけになると思うんですけれども、こういった大きな事件の裁判記録がなくなるということは、遺族の方は本当にお悲しみが深いですよ。もう何もないのか、私の子供がどういう思いで現場にいただろうかと、本当に苦しい思いだと思うんですけれども、御遺族の方に対して、こういった書類がなくなりましたという御説明や、破棄してしまった経緯などの調査、これの報告はなさいましたでしょうか。

氏本最高裁判所長官代理者 今委員御指摘の関係についての調査、報告等は、現時点ではまだしていない状況でございます。

吉田(は)委員 今後、やる予定はございますか。

氏本最高裁判所長官代理者 委員御指摘の点につきましては、今後、検討させていただきたいというふうに考えているところでございます。

吉田(は)委員 検討する項目と時間軸、必要だと思います。

 今回、やはり、ここは大臣にお伺いしたいです。これは行政文書ですから、国民の皆さんの財産のところなので、裁判実務とか、そこと関係ないです。

 このような状況で、やはり伝わっていないこととか多いと思うんですが、公文書という、行政文書という位置づけから、今回のこの文書がなくなってしまったことに関して、大臣、どのようにお感じになりますか。

葉梨国務大臣 御案内のように、いわゆる少年事件ですとか民事事件の記録、これについては最高裁で判断するということで、なかなか私の立場からコメントしづらいところはあるんですが、ちょうど私も少年Aの事件がありましたときに、警察庁の少年課というところで、非常にあの事件、重大な事件であるということはよく認識をしておりますので、そういう意味での感慨はございます。

吉田(は)委員 私たち国会議員の責務は、国民の命そして財産を守ることです。この点から、私は、これは私たちの責務だと思いますので、決して国民の財産が失われないように、私たちは努めなければいけないと思います。

 今、最高裁の方からは、検討していただくということだったんですけれども、検討すると誰でも言って、検討した結果やりませんでしたとか出てくるわけなんですね。

 でも、これ、今、所有者は国民の皆さんです。国民の皆さんに対して、やはり主体的に、最高裁の方が、こういう形でこの問題を取り上げて、そして国民の皆さんに示していくということがどうしても必要なんだと思うんですけれども、是非もう一度、どのような時間軸で、遺族の方に対しての御説明、そして国民の皆さんに対しての説明、これをいつ行っていただけるか、御答弁いただけないでしょうか。

氏本最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 最高裁といたしましては、今回の事態を受けまして、改めて、特別保存の運用が、在り方が適切であったのか等、第三者の目から客観的に評価していただき、将来にわたって管理の適切な運用を確保していく必要があると考えておりまして、外部の有識者意見等を踏まえまして、今後、検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

吉田(は)委員 外部の有識者の方、第三者委員会、もちろん諮問していただきたい。でも、今、国民の皆さんが見ているのは、最高裁の主体的な、自主的な取組だと思います。

 どうしても、この事件の破棄の経緯が分からなかったり、国民の皆さんには、政治の現場もそうです、司法の現場もそうだと思うんですけれども、やはり積極的に、国民の皆さんに私たちの責務はこうだという姿勢を見せていくというのがとても大事だと思いますので、お願いします。

 その意味で、まず一つ御提案します。

 このなくなってしまった記録ですが、例えば、当時事件を担当していた弁護士、あるいはそこには事件記録があるんじゃないかなとか、少年の精神鑑定だとかそういうことをやっていらっしゃった医師又は病院にカルテが残っている場合もあります。こういった、何か残っているんじゃないかということを洗い出して、そして、少しでもリカバリーしようと、私だったら思うんですけれども、そのような対策は取られましたでしょうか。

氏本最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘の記録の復元ということでございますが、現時点で資料がどの程度残っているのかといった問題、あるいは、仮に資料が残っていたといたしましても、一部にとどまるといたしますれば、特別保存に付すべき史料としての価値があると言えるかどうかといった、検討に当たって難しい問題を含んでいるものと考えているところでございます。

吉田(は)委員 積極姿勢を是非示していただきたいですね。やはりこれは、国民の財産というのは、こういった様々な事件の記録からいろいろなことが分かってきますし、今後の捜査や、そして将来にわたる少年犯罪の防止にもつながるような、とても大事な記録だと私は思いますので、是非それをお願いしたいと思います。

 では、ちょっとここで、今回のその破棄に至ったところの責任の所在ってどうなるのかなと思うんですけれども、この記録は一審が行われたところにおいて保管されるということですので、今回のこういった少年犯罪の記録破棄のものは家裁の責任ということでよろしいんでしょうか。

氏本最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、当該記録の保存に付しておられたのは当該家庭裁判所でございますが、今回、個別の記録が特別保存に付されなかった理由あるいは廃棄された当時の状況が明らかではないものの、特別保存の適切ではない運用に起因するものであると考えておりまして、庁全体あるいは裁判所全体の問題であるというふうに認識しているところでございます。

吉田(は)委員 裁判所全体というお言葉がありましたが、裁判所法第八十条には、「最高裁判所は、最高裁判所の職員並びに下級裁判所及びその職員を監督する。」というふうに書かれております。

 今回のこの件、本当に二度と起こさないための対策、やはり積極的な姿勢、失われたものは復元できないというような、何というんでしょう、しようがないんだではなく、こんな努力をしているという点を是非見せていただきたいのと、責任の所在をはっきりさせていただきたいと思います。

 この点、最高裁判所が上級裁判所として責任を負うという理解でよろしいでしょうか。

氏本最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所といたしましては、今回の経緯、必ずしもはっきりしないところはございますけれども、委員御指摘のとおり、繰り返しで恐縮でございますが、将来にわたりまして同様の事態が生じないように、外部の有識者の意見を踏まえましてしっかりと検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

吉田(は)委員 国民の財産のところなので、責任の所在が曖昧というのはちょっとあり得ないかなと思うんですが。

氏本最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 御指摘の事件記録の廃棄が行われた当時は、特別保存を適切に行うための仕組みが整備されておらず、規程、通達の趣旨に沿った適切な運用がされていたとは言い難い状況であったものであり、それをもちまして、先ほど、庁全体の問題、さらには裁判所全体の問題であるとお答えしたとおりでございます。

 下級裁を指導する最高裁判所といたしましても、今回の事態は大変重く受け止めているところでございます。

吉田(は)委員 はっきり言っていただきたいんですけれども、ちょっとこれは、うやむやにすることはやはりできません。国民の財産に関して、私たちは責任があります。

 是非この点、明らかにしたいというのと、もし問題があるとしたら一緒に考えましょう。本当に、最高裁を何かやり込めようとか、そんなつもりではなくて、やはり国民の財産を守るためにはどうしたらいいのか、新たな部署が必要なのか、デジタル化が必要なのか、一緒に考えたいという気持ちですので。でも、やはり責任はどこにあるかというのははっきりしないと、国民の皆さんにも説明ができませんので、是非その点をはっきりしていただきたいということを申し上げて、最後、これ、大臣、行政文書ですので、今のやり取りを聞いて、ちょっと大臣の所感をお伺いして終わりにしたいと思います。

葉梨国務大臣 今、行政文書というお話がございましたけれども、あくまでも司法権の中の文書だと。刑事の記録、刑事裁判の記録ですとか、あるいは民事裁判の判決書等については今データベース化のことを我々はしているんですが、政府の一員、内閣の一員として、裁判所について、ああせいこうせいとか、あるいはコメントを出すというのは、なかなか立場としては難しいんです。

 三権分立の中で、私自身も国会議員の一人ですから、是非、今日のような闊達な議論を、国会からも裁判所に対してなされるように期待をしたいというふうに思います。

吉田(は)委員 国民の財産を守る、私たち国会議員としての仕事を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介です。よろしくお願い申し上げます。

 まず、嫡出推定制度について伺わせてください。

 今回の改正の趣旨ですが、確認ですが、いわゆる無戸籍問題の解決を図るということが大きな目的の一つということでよろしいでしょうか。

金子政府参考人 本改正法案の大きな目的の一つは、無戸籍者問題を解消する観点から、嫡出推定制度等に関する規律を見直し、ひいては子の利益の保護を図ることにございます。

鈴木(庸)委員 それで、三百日というところがちょっとひっかかっておりまして、婚姻の解消又は取消しの日から三百日以内に生まれた子について、前の夫の嫡出子と推定する制度を維持した理由はまず何でしょうか。また、そのような子の血縁上の父親が前の父親である可能性が高いと考えているんでしょうか。

金子政府参考人 お答えします。

 現行法では、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定することとした上で、懐胎から出生までの一定の期間を要することから、婚姻の解消又は取消しの日から三百日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定することとしています。

 このような推定制度の趣旨は、第一には、一般的な妊娠期間からしますと、婚姻の解消等の日から三百日以内に生まれた場合は、婚姻中に懐胎した可能性が相当程度あるということでございます。

 我が国では、協議離婚制度の下、離婚に先立って一定期間別居していることは離婚の要件とされていないため、離婚に至る前の時期において、離婚後に出生した子の懐胎の契機としての夫婦の性関係の基盤が失われていたとは一概に言えないので、婚姻中に夫の子を懐胎し、子の出生前に協議離婚に至り、しかる後に子を出生するといった事案が一定数存在するものと考えられます。

 それから、嫡出推定制度の趣旨の二番目として、生まれた子について、早期に父子関係を確定して、子の地位の安定を図るということがございます。

 仮に、婚姻の解消後に生まれた子については、前夫の子と推定されないものというふうな制度としますと、実際には前夫の子である場合であっても、前夫の認知等によらないと直ちに子の法律上の父が確保されないことになり、子の利益を害するおそれがあるというふうに考えております。

 そこで、取消しの日から三百日以内に生まれた子についての現行の規律を維持するということにしたものでございます。

 ですので、今までの御説明のとおり、パーセンテージで、離婚後に生まれたお子さんについて、血縁上は前夫のお子さんであるという確率を示すことはできないんですけれども、先ほどのような、夫婦であればその間同居するというのが通常、しかも別居することが離婚の条件になっているわけでもない、それから、懐胎期間が、三百日よりは短いですけれどもその程度あるということを勘案してみますと、前夫の子であるという可能性もそう低くはないというふうに考えています。

鈴木(庸)委員 それを裏づける調査をしたことはありますでしょうか。要は、離婚後三百日以内に生まれた子が実際に前の夫の子である割合、今、一般的なとか相当程度というお言葉をいただいているんですけれども、これは調査しましたでしょうか。

金子政府参考人 離婚後三百日以内に生まれたお子さんが前夫と血縁上の親子関係があるかどうかについては、外形上明らかでない上に、プライバシー等の問題がございまして、調査を行うことは困難であり、法務省として御指摘のような調査を行ったことはございません。

鈴木(庸)委員 そうなんですよね。調査をしないで三百日というものを残しているというところが一つちょっと問題意識としてございます。

 あと、離婚となったケースというのは、離婚より相当前から夫婦関係、先ほどの答弁もいただきましたけれども、悪化していることが多いわけですから、三百日以内に生まれた子が実際に前の夫の血縁上の子供である可能性というのは低いという意見もある中で、この推定の実質的な根拠が、調査も取っていないということなので、かなり低いのではないかと思うんですけれども、その辺はどう思われますでしょうか。

金子政府参考人 直接的なエビデンスにはならないのですが、令和二年の人口動態統計によりますと、令和二年中に離婚した夫婦のうち、離婚前一か月以内に同居をやめた夫婦が約五二・八%、それから、離婚前五か月以内まで遡りますと、この期間に同居をやめた夫婦は八〇・五%、先ほどの一か月以内というものを含みますが。

 ですので、かなり、この人口動態統計の信用性の問題はあるのかもしれませんけれども、信用性というか、実態を本当に把握しているのかという問題はあるかもしれませんけれども、これを前提にしますと、離婚前の比較的近いところまでは同居しているという御夫婦も結構いらっしゃるので、先ほどの、推定の基盤がないというような評価は当たらないのではないかと思っています。

鈴木(庸)委員 この数字の評価が僕と局長では違うということになってくるのかもしれないんですけれども、今回の法案では、婚姻の解消又は取消しの日から三百日以内に生まれた子について、前の夫の嫡出子と推定する制度は維持した上で、例外的に、妻がほかの男性と再婚した後に出生した場合には再婚後の夫の子と推定すると。

 しかし、法務省の調査、これは実際、法務省は調査されているんですけれども、無戸籍者の約五二%は離婚後三百日以内の出生により前の夫の嫡出推定を受ける子であって、また、無戸籍の理由の約七一%は嫡出推定を避けるためとされているわけですよね。

 そうすると、この三百日以内の嫡出推定の制度自体を廃止しなければ、無戸籍問題というのは解消できないのではないでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 本改正案では、御指摘のとおり、離婚等により婚姻を解消した日から三百日以内に生まれたお子さんの場合も、母が子の出生のときまでに再婚している場合は、再婚後の夫の子と推定することとしています。

 法務省が令和二年に実施した調査の結果によりますと、離婚後三百日以内に出生した無戸籍の方のうち、母の再婚後に出生した方が約三五%いらっしゃいます。これらの方は本改正法案によって再婚後の夫の子と推定されることになりますので、これらの方が前夫の嫡出推定を避けるために無戸籍となっていたとすると、その解消が見込まれるということになります。

 また、この改正法案では、再婚禁止期間を廃止しますので、再婚がしやすくなります。したがいまして、再婚後の夫の子と推定される場面が増加するということが見込まれます。

 また、前夫のみならず、母や子にも否認権を認めることとしておりまして、否認権が適切に行使されることによって、母が再婚していないために前夫の子と推定される場合におきましても、無戸籍の解消が一定程度図られるというふうに考えております。

 もとより、これによって全部が解消されるとは考えておりませんが、相当程度の解消を見込んでいるところでございます。

鈴木(庸)委員 否認権がお子さんと奥さんにもあるというのは一つの大きな前進だと思うんですけれども。

 法案では、離婚後三百日以内に生まれた子でも、先ほどおっしゃっていただいたように、妻がほかの男性と再婚した場合で出生した場合には再婚後の夫の子供と推定する。

 また、これも法務省の調査なんですけれども、母の離婚後三百日以内に生まれた無戸籍の子のうち、母の再婚後に生まれた子は三五・八%にすぎず、残りの六四・二%はこの法律では救済されない。

 今、結婚についての価値観というのはかなり多様化していると思うんですけれども、離婚の際のトラウマから、当分再婚はしたくないという女性も少なくないですよね。

 出産までに再婚しなければ前の夫との嫡出推定をなくせないということは、否認するということはできるんですけれども、でも、本意でない再婚を強いるということ、そういったリスクというのはないのでしょうか。

金子政府参考人 委員御指摘のその六四・二%につきましても、母子に否認権を認めることによって一定程度の無戸籍者問題の解消が図られると考えておりますけれども、前夫の嫡出推定を避けたいと考える女性に本意でない再婚を強いることになるという懸念については受け止めなきゃいけないとは思いますけれども、問題はその対応ということになります。

 離婚後は、再婚していなくても前夫の子としないとすることも考えられるところですけれども、今度、そうしますと、真実は前夫の子である場合であっても、前夫の認知によらなければ子の法律上の父が確保されないというふうな事態が生じて、子の利益を害するおそれがあると考えています。

 その懸念はございますけれども、その対策として離婚後であれば前夫の子と推定しないという措置を取ることは非常に困難であるというふうに考えております。

鈴木(庸)委員 先ほどの吉田委員からもあったんですけれども、やはりちょっとマッチョというか、そんな感じがしているんですけれども。

 再婚しない場合には前の夫に対する嫡出否認などの裁判手続を必要とするというところなんですけれども、無戸籍の母親の多くが、前の夫と何らかの関わりを持つこと自体を恐れているというところで、手続を行えず無戸籍になっていることというのも法制審議会のヒアリングの中で出てきていると承知しております。

 ですから、離婚後は母親が、前の夫が関与しない手続で、前の夫の子であることを否認できるような制度ができるならば、無戸籍はなくせるのではないかなと思うんですけれども、例えばですよ、実の父親が任意認知した場合には、前の夫の嫡出推定を維持することは不要なのではないでしょうか。

金子政府参考人 先ほども申し上げましたが、嫡出推定制度は婚姻関係を基礎として父子関係を推定するものでありまして、その趣旨は、当該婚姻の夫の子であるという蓋然性が高いことや、生まれた子について、逐一父との遺伝的なつながりの有無を確認することなく早期に父子関係を確定して、子の地位の安定を図ることにあります。

 このような制度趣旨に照らしますと、裁判手続によることなく嫡出推定の例外を認めることとする場合におきましても、高度の蓋然性を持つ資料によって嫡出推定の例外的事情が認められる必要があると考えられます。

 他方、任意認知は、認知者の意思表示によりされるものでございますので、必ずしも母や子の同意は必要でなく、任意認知がされたからといって、認知者の子である蓋然性が高いとは言い難い状況にあります。

 したがって、任意認知がされたことをもって嫡出推定の例外的な事情と認めることは相当でないと考えております。

鈴木(庸)委員 任意認知が余りにも簡単にできるから、ちょっとこの制度は厳しいなというところかとも思うんですけれども。

 問題意識としては、とにかく前の御主人とは会いたくないというところで何かやっていかないと、この無戸籍問題というのはなくせないのかなというところでございます。

 また、離婚後三百日以内に出生した場合でも、離婚前に妊娠していなかったことを医学的に証明できれば、前の夫を父とせずに出生届を出すことが、法務省の通達で、これは通達で認められているわけですけれども、現状、別居等によって離婚前に前の夫の子を妊娠できなかった事情がある場合には、親子関係不存在確認などの裁判手続を取る必要がありますけれども、このような事情を証明すれば裁判手続をしなくても済むようにするというのは、法務省の通達では可能ではないのでしょうか。

金子政府参考人 御指摘のようなことは、法制審議会の親子法制部会でも議論になったことがあります。無戸籍者問題を解消するための方策の一つとして、子の懐胎時に夫婦が別居していて夫の子を懐胎することを困難とする客観的な事情があるときは、嫡出否認の訴えによらず、戸籍窓口において、子の懐胎時期に関する証明書と懐胎時にそのような事情があることを示す資料等を提出することで、夫の子でない出生届の提出を可能とする方策が法制審でも検討されました。

 もっとも、この部会では、戸籍窓口における形式的審査でそのような事情を適切に判断することができる資料の内容や、それから、届出がされた時点で夫に対して子の出生等の事実を通知するか否かといった重要な論点について一定の方向性を見出すことができず、結果として、そのような方策は要綱案に盛り込むには至らなかったということでございます。

 そのため、本改正案においてもそのような方策は採用しないという対応を決定をしたわけでございます。

鈴木(庸)委員 窓口で分かりやすくするというところに力点を置くというのも分かるんですけれども、ちょっと議論がいまいち足りなかったのかなと思います。

 このまま法案のままで改正する場合、無戸籍を解消するためには、母親に対して、今までとは異次元の、法的な、また精神的なサポートが必要になるのではないかと考えるんですけれども、法務省には、どのような措置を講じて無戸籍を解消する決意と具体的な方策があるのか、これは大臣に伺わせていただければと思います。

葉梨国務大臣 今、民事局長からも答弁いたしました。法制審でもいろいろな議論が行われたわけなんですが、なかなか、今は判例法理の話を民事局長は説明したんですけれども、身分関係ということになりますと、やはり裁判所の判断というのは、昨日も議論がありましたけれども、非常に大事なことになると思います。

 まずは、そのために私たちでやらなければいけないことは、無戸籍の方をしっかり把握するということ、その方々に対して、民事法律扶助といいますか、法律の専門家の方々をしっかり紹介して、それで司法に対するアクセスをしやすくすること、この二つだろうと思います。

 まずは、無戸籍の方の把握という意味では、市区町村から把握した情報に基づいて、法務局や市町村の職員が無戸籍者の母親に定期的に連絡したり戸別に訪問するなど、一人一人に寄り添って、これは把握をした上で、戸籍の記載に必要な届出や裁判上の手続が取られるように支援をする。そして、各法務局で、特に裁判費用、これについて相談があった場合には、法テラスの民事法律扶助制度を案内する。また、法務省に無戸籍ゼロタスクフォースを設置するとともに、各法務局で、市区町村、弁護士会等の関係機関と協議会を設置する。そういった、一人一人に寄り添った支援を今まで以上にしっかり行っていくことが必要になろうかと思います。特に、この法律が成立して施行になるというまでの間は特に大事だというふうに思います。

 今後も、そういうことで、法務省のホームページや無戸籍解消の流れに関する動画などウェブコンテンツの充実や、裁判手続等の情報を分かりやすく提供するなどしていきたいと思います。

 そして、今も申し上げましたとおり、施行日前に生まれた無戸籍者やその母親に対して、新たに自ら嫡出否認の訴えを提起することができるようになったことを個別に通知することも含めて、その機会を逸することのないように取り組んでいきたいと考えています。

鈴木(庸)委員 個別に取り組んでいただけるということなので、是非是非、丁寧な御説明、よろしくお願いを申し上げます。

 では、認知に関する国籍法の改正について伺わせていただきたいと思います。

 まず、確認なんですけれども、今回の改正法案では、認知が事実に反する場合に認知無効の訴えができる期間を民法で制限する一方で、認知が事実に反する場合に認知による日本国籍取得ができないという国籍法の定めには、民法のような期間の制限がありません。

 そうすると、認知及びそれによる日本国籍取得の後、長期間が経過して認知無効の訴えができなくなった後に過去の認知が事実に反していたことが判明した場合には、認知による民法上の親子関係はなくならないが、日本国籍は届出の時点に遡って消滅する、そういうことでよろしいでしょうか。

金子政府参考人 国籍法第三条の届出による国籍取得は、その届出のときに日本国籍を取得するとされているところ、事実に反する虚偽の認知に基づく国籍取得の届出は効力を生じないため、その届出の当初から日本国籍を有していなかったということになります。

 したがいまして、その結果として、認知による民法上の親子関係の発生は認められるものの、しかも、長期間経過して認知無効の訴えが提起ができなくなった後であっても、国籍法上の国籍取得の効果は発生しないということが生じるということになります。

鈴木(庸)委員 その辺のことがここまでもるるいろいろあったんですけれども、戸籍上の処理がどうなるのかをちょっと伺わせていただきたいと思います。

 認知の事実が父と子の戸籍に記載された後に、認知が事実に反することが判明した場合の戸籍上の処理はどうなるんでしょうか。特に、長期間が経過して民法上は認知が無効とできなくなっている場合には、戸籍上も特段の配慮がなされるんでしょうか。

金子政府参考人 戸籍に関しては、お子さんの戸籍の取扱いと、それから父の戸籍の取扱いがあります。認知が事実に反することが明らかになった場合には、子は当初から日本国籍を有していなかったことになるため、戸籍は日本人について作られるものですので、子の戸籍を全部消除する訂正を行うということになります。

 それから、お父さんが日本人という前提ですので、改正法施行後は、民法七百八十六条による出訴期間を経過した場合には、民法上、事実に反する認知の無効を主張することができなくなることから、虚偽認知を理由として父の戸籍の認知の記載を職権で消除することはなくなるということになります。

鈴木(庸)委員 ちょっと、済みません、理解できなくて申し訳なかったんですけれども、戸籍、全部消去されてしまうということなんでしょうか。

金子政府参考人 お子さんにつきましては、一旦、作られている戸籍を全部消除するという訂正を行うということになります。

鈴木(庸)委員 そして、特段の配慮もされることはなく、そのままの状態になってしまうという理解でよろしいわけですね。

金子政府参考人 戸籍上の取扱いとしてはそうなります。もちろん、帰化等がされれば、また別の取扱いということになります。

鈴木(庸)委員 改正法案で認知無効の訴えができる期間を制限したのは、親子関係を早期に安定させるということで、子供の利益を守ることにあると思うんですけれども、早期化、安定化で子供の利益を守るということは、国籍についても当てはまるのではないかと思います。

 民法上の認知無効の訴えによって親子関係が否定された場合に国籍取得も否定するということで十分で、国籍に限っては何年遡っても否定できるというのはちょっと行き過ぎかと思うんですけれども、その辺の解釈はどうでしょうか。

金子政府参考人 できるだけ無国籍となる者の発生を抑止するような配慮をすることが重要であるとは認識しておりますが、我が国の国籍を取得することを目的とする虚偽の認知が行われるということがあってはならない、これも重要な要請だと考えております。

 改正法案では、認知による国籍の取得に関する規定は、認知について反対の事実があるときは適用しないとして、虚偽の認知がされた場合には国籍の取得を認められないとの従前の確立した規律を維持することを明らかにしたものでございます。

 一定の期間が経過すれば認知が事実に反する場合でも日本国籍を取得できるとすることは、結果的に、真偽を問わず認知さえあれば日本国籍を取得することができるということになるため、国籍の付与という公法上の法律関係について言えば、虚偽の認知を容認して認知の無効に期間の制限を設けることは適切でないものと考えております。

鈴木(庸)委員 この辺も、これまでの山田委員とかからの発言の繰り返しになるんですけれども、日本国籍取得が無効になることによって無国籍となる。無国籍者の発生防止というのは国際的な要請である。同様の立法例が世界中にある中で、結局、救済措置というよりは、新たにまた、帰化とか、改めて手続を取ってくださいということなんですけれども。

 実際に、認知が事実に反していることというのを、認知されている子供というのは知らないことがほとんどだと思うんですね。日本で生まれて日本しか知らない子に、日本国籍を喪失して不法滞在者になるという大きな不利益を負わせるというのは、重ねてになるんですけれども、余りにも酷であると思います。

 また、少なくとも、認知から長期間が経過して認知無効の訴えができなくなったときには、民法上の親子関係が有効に存在している以上、日本人の子としての在留資格を与えて、本人が希望すればそのまま帰化を与えるような制度をつくるべきかと、立法でも、思うんですけれども、いかがでしょうか。

西山政府参考人 認知が事実に反することが明らかになって日本国籍が認められなくなった者は退去強制手続を取ることになりますけれども、退去強制事由に該当する場合でも、法務大臣の裁量により在留特別許可をされる場合がございます。

 一般論としてでございますが、在留特別許可の許否判断は、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、人道的な配慮の必要性など、諸般の事情を総合的に勘案して行っているところでございます。

 その判断において、認知無効により日本国籍を認められなくなったことに帰責性がない場合ということでございましたら、例えばですが、その子供が本邦に滞在中に学校教育を受けているなどの事情も積極要素として考慮して判断していくということになります。

鈴木(庸)委員 この問題については、法制審議会でも十分深い議論がなされたのかなというのは、ちょっと疑問が残るところもございます。このような国籍法上重大な問題は、親族法改正のついでで改正するべきではなくて、改めて国籍制度の改正を正面から議論する中で適切な制度を設けるべきではないかなと考えております。

 最後に、大臣に伺わせてください。

 改めてなんですけれども、この国籍法三条の三項の新設を見送るべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 お答えします。

 今、新設という委員からの御発言ございましたが、これによって、先ほど来、民事局長も答弁しておりますが、新たな規律を設けるというものではございません。現在の規律を確認的に書いたということでございます。そこで、ついでというふうに今おっしゃられましたけれども、ついでって、新しい規律を設けるというようなそういうことじゃなくて、今の規律をそのままにしておるということです。

 そして、法制審の議論、結構な議論が行われておりまして、民事法制の認知、これを国籍法に取り込むということについては、意見を一致することがなかったんです。そして、最終的には、この国籍法の世界、公法の世界と、それから民事法制の世界は切り分けて考えよう、そういう結論になったわけです。

 先般来お話のあります認知無効、これと結びつけたらいいんじゃないかというお話について申し上げますと、虚偽の認知を明確にした、そういうような男性が、果たして、認知無効、七年といって、認知無効の訴えというのを本当に提起するんだろうか、むしろ、提起しない方の方が多いんじゃないか。

 そういった場合には、認知無効の訴えではなくて、刑事事件等々によってそういったことが立証されて、そして国籍を失わせるというようなこともあろうかと思いますので、やはり、私自身も、この民法の規律を国籍法に取り込むというのは、なかなか難しいところがあるかなというふうに思っています。

 ただ、しかしながら、先般来申し上げておりますけれども、そういったような規律を新たに作るということではなくても、やはり、帰責性もなく、日本で生活をし、そして教育も受けているような子供が不利益を受けるようなことがあってはならない、そういった意味で、先般来申し上げておりますけれども、在留特別許可、さらには帰化、あるいは他の国の国籍の紹介等々、できる限りのことをやっていかなければいけないというふうに思っています。

鈴木(庸)委員 ありがとうございました。是非、周知と救済、この辺を徹底していただきたいと改めて申し上げたいと思います。

 懲戒権に関する規定の見直しについても伺わせてください。

 改めて、本改正における体罰とは、どのように定義されていますでしょうか。

金子政府参考人 本改正法案における体罰は、子の問題行動に対する制裁として、子に肉体的な苦痛を与えることを意味するものとしております。

鈴木(庸)委員 民法の懲戒権規定は、子供の虐待に対する親の弁解に利用されてきた、虐待防止の支障になってきた、そういう指摘もあるのは御案内のとおりかと思います。

 その点では、今回の改正で懲戒権を廃止するということは大きな意義があると思うんですけれども、しかしながら、この法案の中にある、子の心身の健全な発達との文言の解釈次第では、新たな児童虐待の口実とされるおそれがあるのではないのかという、そういった懸念もあるんですね。

 今回、この改正によって、しつけと称して児童虐待が行われる事態も起こるのではないかと考えてしまうんですが、そのことについてはどういうお考えをお持ちでしょうか。

金子政府参考人 御懸念は、親が、自分のすることは、これこそ子供の心と体の健やかな発達のために重要なんだという主観に基づいて、何かこの法案で禁じられているようなことをするのではないかというような御懸念ではないかと思います。

 子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動に当たるか否かというのは、その行為者の主観を基準として判断されるものではなく、親権者が子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼさない行為であると考えていても、客観的に監護教育権の行使として相当でないと認められる場合には、この要件に該当すると考えております。

 したがって、子の心身の健全な発達を口実にしたり、しつけと称するなどして、児童虐待が行われるようなことは当然許されないことになりますが、ただ、委員御指摘のとおり、この改正案の内容が不当に又は誤って解釈されることがないようにするということは極めて重要であると考えておりまして、この法案の意義について適切、十分な周知、広報を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 済みません、ちょっとこれは通告にないですけれども、適切、十分な周知、広報というのは、具体的に何か決まっていることというのは今あるんでしょうか。

金子政府参考人 今具体的に何かということが決まっていることはございませんが、法律ができたときに、その趣旨をきちんと国民の皆さんに理解していただくような工夫はこれまでもしておりますが、今回は特に、それぞれの御家庭全てに関係するような法改正になりますので、例えば、こういうケースは禁じられているんですよというようなことを分かりやすくビジュアルに示したようなパンフレットを作って広く配布するとか、そういうことが考えられていくと思います。

鈴木(庸)委員 まあ、決まっていない段階でなかなかこれと言うのは厳しいところもあるかと思うんですけれども、ちょっとそういった懸念がありますので、是非是非そこをしっかりやっていただければと思います。

 あと、この有害性というものについての社会的な考え方というのは、当然、時代とともに変わっていくわけなんですけれども、明治時代の常識が今では通じないことというのも当然たくさんあると思います。ですから、心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす行動に当たるか否かというこの判断を一義的に明確にすることというのは大変困難である。

 個別の事案ごとに監護教育権の行使として妥当かどうかが判断されるかということになるとは思うんですけれども、やはり、重ねてになるんですけれども、そうすると、親権者に対する行動規範の明確性というものが全く担保されていないのではないかと思うんですが、その点はいかが思いますでしょうか。

金子政府参考人 お答えします。

 法律の文言にどこまで細かく書けるかという問題がございますが、監護教育権の行使として許容される行為であるか否かの判断が、専ら子の心身の健全な発達を害するかどうかという観点から行われるべきものであることを示したという意義があると思います。

 したがって、御家庭においても、判断基準としてはそういうものだということで御理解いただきたいとは思いますが、いずれにしても、御指摘のような意見があることも踏まえまして、その法案の趣旨について周知、広報に努めてまいりたいと思っています。

鈴木(庸)委員 最後の質問、大臣に伺えればと思うんですけれども、厚生労働省の令和二年子ども・子育て推進調査事業で、体罰等によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査事業報告というのがありまして、そこでは、国民の約四割が体罰が場合によっては必要と考えて、三割以上が過去六か月以内に体罰を行ったとされているところであります。

 こういった事情を鑑みると、今、行動規範が曖昧な中で法改正を行っただけでは、なかなか意識の変化までは起こらないような気もするんですけれども、その辺りはどのように考えられていらっしゃいますでしょうか。

葉梨国務大臣 今民事局長から答弁ございましたけれども、これは分かりやすく広報しなければいけないと思いますが、これはなかなか難しいところがございまして、つまり、この行為は駄目だよというふうに言いますと、じゃ、それ以外の行為はいいんだというふうに誤解される形であってはいけない。

 少なくとも、やはり体罰、これは定義が明確であろうかと思いますが、さらに、今、虐待で非常に問題となっているような、実際に傷害とか暴行になるとか、あるいはPTSDというのも傷害になるわけです。そういったものはもう明らかに間違いなんですが、そういったものを核としながら、だけれども、じゃ、それ以外はいいんだよというのも、これまた、やはりそれぞれの子の事情というのがそれぞれ変わっています、違います。ですから、それに応じて本当に考えていかなければいけない。だから、親御さんとして、そういうのを核としながら、しっかりと子供の利益に立って判断をしていただく、子供の、さっき、個別の、人格の尊重、こういったことについても判断をしていただく。

 その基本理念があった上で、具体的にこういうような行為はというのを、これからちょっと広報の仕方は工夫しなければいけないと思います。核になるものは当然あるんですけれども、それを、先ほど局長も申し上げましたとおり、物によっては、じゃ、これ以外はいいんだねというふうに取られてしまっても、なかなかこれは難しいところがある。

 ですから、そういった意味で、また工夫もさせていただきたいと思いますし、また今後、そういった広報資料、こういったものを作りましたら、この委員会でもいろいろな形でまた御指導を賜るような機会もあるかも分かりません。

 いずれにしても、今の厚生労働省の調査、こういったものもしっかり受け止めながら、私ども、民法を変えたからといって意識が変わるわけではないので、やはり、その民法を変えたという趣旨をいかに徹底をしていくかというのは極めて大きな課題だというふうに考えています。

鈴木(庸)委員 是非広報、周知を徹底していただければと思います。

 終わります。

伊藤委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 よろしくお願いいたします。

 金子局長、お疲れですね、相当。答弁を聞いておりますと、声はちっちゃいし、よく聞こえないし。済みません、一番前に座っているんですけれども、相当お疲れなんだな。まあ、疲れさせている原因になっているかもしれませんけれども、大事な、大きな民法の改正案の審議ですので、是非最後までしっかり、お互いに、よろしくお願いしたいと思います。

 済みません、これはちょっと冒頭になんですけれども、今、鈴木委員との質疑で、やり取りで、ちょっと気になったところがあったので、これは通告はもちろんしていないので、答弁、明確にきっちりみたいなのは求めませんが、冒頭ちょっとお尋ねします。

 先ほど鈴木委員が、こういうケースになった場合には戸籍はどうなりますかといったときに、消除になるという表現があったんですが、消除というのは破棄ですか、どういうふうな行為になりますか。

金子政府参考人 一旦記載された戸籍の部分にたすきがけの記載、ちょっとバッテンというのはいけないんですけれども、たすきがけの記載をすることによって消除をするということですので、最初からなかったことになってしまうわけではないということになります。

鎌田委員 そこをちゃんと確認したかったんです。消除というと、もうなくなっちゃう、存在が、破棄されて、消えてなくなっちゃうのかなと解釈する方もいると思うんです。

 というのは、前回、大臣所信のときに、私、谷間世代で粘りますからねと言ったときに、戸籍法の改正が二年半かかってしんどかったという話をしたんですけれども、でも、日本には戸籍制度という世界に冠たる制度があって、これは非常に重要で、原戸籍、同保存期間百五十年だった時代、それから五十年物、八十年物、百年物と。

 私が当時戸籍法の改正にこだわったのは、結婚していないのに、女子大生が知らない人と結婚したということになっていて、留学するに当たってパスポートを取る、じゃ、法務局に行って戸籍謄本を取ろうとしたら、知らない人と結婚したことになっていて、自分の名前のところに、まさに今おっしゃった、そのたすきがけでバツがついていたんですよ、結婚もしていないのに。それで、お父様は、娘のそのバツを絶対に消したいんだ、元に戻したいんだ、戸籍を。でも、原戸籍は八十年保存されて、裁判所がこの婚姻は無効だというふうにこの戸籍に書いたとしても、子供や孫が八十年以内の間に、あら、自分の母親やばあちゃんが実は十八歳で結婚していたんだということが、後々なるのは嫌だから、戸籍法を改正したいという要望を受けて、それで、戸籍法は、本当に与党の皆様も御協力をいただいて、成立をして、その被害に遭われた方の戸籍は元のきれいに戻ったんですね。

 だから、それだけやはり戸籍って重いし、その取扱いだったり手続だったりというのは、なかなか私たち一般市民には、ちょっと遠いところにあるんだけれども、実際、何かの出来事や事件に遭遇したときには、その重みというものは本当に重いものだということだったので、この消除というところで、決してなくなるわけではなくて、たすきがけ、世間でよく言うところのバツがつくということで、今、民事局の方、うなずいていらっしゃいますので、消除は、消えるんじゃなくてバツがつくということでございますので、そのことをちょっと冒頭確認させていただきました。

 まず、私、今日、午前中十分間ですので、通告している二番目まで行きたいものですから、よろしくお願いします。

 それで、一番目の懲戒権の規定の見直し、この懲戒規定の削除については多くの方が質疑をされていますので、私は本当に簡単にいきたいと思います。

 先ほど来話題になっています、やはりその周知徹底なんですね。民法で変えたからどうなるという話ではないという大臣の御答弁、本当にそのとおりだと思います。

 私、今日、資料を皆様に配付をさせていただいております。まず資料一なんですが、これは皆様も取り上げていらっしゃいました、学校教育法の第十一条のところには、これは教育現場の先生方に参考例として示されていて、あくまで本当に参考例ですということで、先生方はこれを基に注意をなさっている、日々子供たちと向き合っていると思うんですが、これはもう皆様取り上げているので、文科省さん、いらっしゃっているんですけれども、ごめんなさい、済みません、いいです。

 資料の二に目を通していただきます。ほかの方も質問されていました。厚労省の令和二年の調査なんですが、体罰を禁止する法律の認知度や体罰に対する意識なんですね。

 私、モノクロで、これを資料で提出しているので、見にくいと思うんですけれども、一番最初のところは、結局、内容まできちっと知っているというのは二割の方しかいない。聞いたことはあるけれども詳しい内容は知らないというのが六〇・二%、それから、知らない。ほとんどの方が知らないんですね、法律で禁止されているということを。

 さらに、子供に体罰を与えることは、場合によっては必要だと思うかというのは、今の鈴木委員もなさっていました、多くの方も質問されていました。国民全体への調査だとすると、必要だと思う、非常にそう思う、ややそう思う、合わせると四〇・二%なんですよ、しつけのためならば、体罰を与えることは。さらに、今度は養育者のところに目を向けますと、四一・七%の方が、子供に体罰を与えることは、場合によっては必要だと思うというのが、これは令和二年の調査で明らかになっているんです。

 私ごとなんですけれども、子供に手を上げたこと、あります。つい、子供と本気で向き合うと、真っ暗い洗面所に、ここに入っていなさいと言ったこともありました。大昔になりますが、子育て最中。その後、必ず自責の念に駆られるんですけれども。

 でも、やはりここで多くの国民の皆さんにきちんと、体罰は一切駄目なんだということを、周知徹底はきちっとやっていかないといけないと思いますので、体罰の定義を示すという考えがおありになるかどうか、そこだけちょっとお聞きをしたいと思います。

金子政府参考人 委員御指摘の、学校教育法十一条に規定する参考事例として、体罰も挙がっているような、このような形での具体例を示したようなものについては、検討をすべきだろうというふうに思っていますけれども、先ほど、私も、あるいは大臣からも答弁ございましたが、これが当たりますという説明は比較的容易で、しかも分かりやすい例を出すという、意義があると思いますけれども、逆に、どこまでなら許されるかという、ここを示すのはなかなか難しいという問題もありますが。

 ただ、いずれにしても、きちんと今回の法改正の趣旨を理解してもらうということが、民法に書いたら終わりというわけではなくて、ここが出発点ですので、そのようなつもりで、きちんと理解をいただくべく、周知、広報に努めていきたい。その中で具体例を示せるかどうか、その辺の工夫はしていきたいと思っております。

鎌田委員 私が譲ります。

 次、嫡出推定の見直しについて伺います。

 今回の改正では、再婚した場合だけが出生の直近の婚姻における夫の子と推定されるとされているんですけれども、実際、離婚の事情も人それぞれなんですよ。女性の中には再婚はしたくないという人も少なくないと思うんです。どう捉えていらっしゃいますか。

金子政府参考人 再婚までされた方については、再婚後の夫の子と推定するのが、その蓋然性からいってもいいだろうという趣旨で、今回は、再婚後の場合に再婚後の夫の子との推定を優先させるという法改正にしましたが、おっしゃるとおり、再婚に至らない方の事情は様々あろうと思います。したくない方、あるいはしたくてもできない方とかいらっしゃると思います。

 その意味では、その部分については、救済措置として、再婚後の方と比べると限定的になるということは否定はできないとは思いますけれども、ただ、それでも、嫡出否認をする方の範囲を広げるなどの工夫をしておりますので、それを適切に使っていただくのがいいかなと思っております。

 それもなかなか難しいという方がいらっしゃるということは、ここの委員会の質疑を通じてよく認識しているところではございますが、その場合でも、できるだけ接触がない形で手続が進められるような工夫は、今後も、法改正等あるいは運用等を通じて進めていかなきゃいけないと思っているところでございます。

鎌田委員 午後、資料三からまたお願いします。

 終わります。

伊藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鎌田さゆり君。

鎌田委員 よろしくお願いいたします、午後も。

 午前の終わりは嫡出推定の見直しのところの一つ目で終わっておりますので、午後、スタートは、資料、お手元の三を御覧をいただきながら始めさせていただきます。

 この資料の三なんですけれども、無戸籍者に対する調査結果ということで、法務省民事局民事第一課による調査の結果がここに表れております。

 ここで皆様に共有していただきたいのは、3の1ですね、3に調査結果というところがあります。その1に、離婚後三百日以内に生まれた子の数というのが、右側に行って八百八名というふうにあります。そしてその次、2なんですけれども、1の離婚後三百日以内に生まれた子の八百八名のうち、離婚後三百日以内に婚姻し、その後に出生しているものの数、生まれた子の数ですね、これが二百八十九名で三五・八%という結果になっているんです。

 もちろんこれが全てを表しているとは言いません。この資料のずっと下を見ていただくと、令和二年九月末日時点で法務省が把握していた無戸籍者数は合計三千二百三十五名というふうにも書いてあります。これの倍か三倍ぐらいは見積もっておかないといけない、これが現実的だと思うんです。

 それで、今回の再婚した者だけに認められる嫡出推定の見直しのところなんですけれども、この調査結果から見ても、そこに限るということは無戸籍者対策としての効果は限定的ではないかという意見は、これは法制審でも出されています。そのことについてどのように払拭されるお考えなのか。

 併せて伺います。

 離婚後三百日以内に生まれた子供に対する前の夫の嫡出推定の規定を廃止することの方が、無戸籍者問題の解決には一番効果があるんじゃないかという御意見をおっしゃる方もいます。それらの声にも応えていかねばなりません。どのように御説明されますか。伺います。

金子政府参考人 今の御提示いただいた資料で三五・八%、この部分につきましては、今回見直しの対象になるということになります。

 さらに、この2の離婚後三百日以内に婚姻しというケースが、今は当然、百日間は、離婚後、婚姻できないので、百日以降で三百日以内に婚姻した数ということになりますが、これが、百日という再婚禁止期間が撤廃されますので、2のボリュームが少し、どの程度か分かりませんが、ある程度増えることによって見直しの対象に入ってくるということも見込まれると思います。

 それでも前の夫の子と推定される、三百日の推定ルールを残していますので、その方については、今までは推定される父の方からしか否認することができなかったところ、子供とかお母さんからも否認することができるようにすることである程度の解消が図られるんじゃないかと思っています。

 それから、三百日ルールそのものを撤廃するという、前の夫の子との推定をやめてしまうということについては、やめた後、じゃ、どういうルールで父を定めるのかという問題も併せて考えないといけないと思います。

 お子さんにとっての利益というのが基本的な視点ですけれども、それを、推定を、前の夫の子として扱うか、あるいは前の夫の子としないかというのを、例えばお母さんの届出に委ねてしまっていいものだろうか、それをお母さんが決めてしまっていいんでしょうか、それが本当に子供のためになるかどうかという観点が要るのではないかということと、それから、前の夫の利益というのも考えなきゃいけないんじゃないか。

 一応のルールを、婚姻中に懐胎した子については前の夫の子と推定するという一応のルール、一応のルールというか、通常、婚姻中に懐胎して出産するというケースもこのルールにのっとってできているわけですけれども、そういうルールを撤廃することによって、例えば前の夫は、自分の子供でなくなってしまうということになることの利益も考えなきゃいけない。

 その辺りを調整する方法としては、やはり個別事情を見ていかなきゃいけない。個別事情を見つつ、かつ、その辺の、何といいますか、子供を誰の、親として、例えば父親の、前の夫の子としたくないという母親の立場と、逆に、自分の子であってほしいという方もいるかもしれない。その辺の個別の事情を考えつつ、その辺の利益の調整をするというのは、やはり裁判所が適していると思っています。

 ですので、ルールを撤廃するとか、あるいはルールの中で窓口だけでするとかいうことについては、やはり慎重に臨まないといけないというふうに考えています。

鎌田委員 委員長、ごめんなさい、答弁長いので、長いとき、委員長、済みませんが議事をよろしくお願いいたします。

 端的にお答えをいただきたいと思います。何というかとかというのは、もう私だけで結構ですから。

 離婚後三百日以内に生まれた子に対する前の夫の嫡出推定の規定を廃止することの方が無戸籍者問題の解決につながりますということは、これは現場の声なんですよ。現場の声。

 今局長が答弁の中で、前の夫の方の利益という言葉もありましたけれども、私たちが一番考えなくちゃいけないのは、とにかく子の利益なんですね、子供。子供を誰が保護して、守っていって、それで教育を受けさせて、育てていくかということなんですよ。そのときに、お母さんが決めて何で駄目なんですかと私は答弁を聞いていて思いましたので、これは引き続き議論すべき内容だと思います。私一人が言っている話じゃないので。

 次に質問しますが、離婚後三百日以内に生まれた子供の出生届なんですけれども、父親の欄を空白にして提出すること、これも認めても私はいいんでないかと思うんですね。

 子供の戸籍の作成をとにかく優先する。子供の戸籍の作成を、単独戸籍として優先して、そして無戸籍者をなくしていくということも考えなければいけないと思うんです。これは、絶対これから議論をしなくちゃいけないと思います。

 これについてお考えありますか。

金子政府参考人 父親を空欄とする戸籍を認めるということは、お母さんの戸籍に入るということでよろしいですか。お母さんの戸籍に入れるということでいいですか。(鎌田委員「単独戸籍」と呼ぶ)単独の戸籍。子供の単独戸籍を作って、父親欄は空欄。ですと、お母さんのところはどういう前提で……(鎌田委員「子の単独戸籍」と呼ぶ)何もないということですね。父母が空欄のお子さんの単独戸籍ということですか。

 これは相当大きな問題です。民法によって定まる身分関係を登録、公証するという戸籍制度と整合しないという制度になりますので、これはかなりハードルが高い話になると思います。

鎌田委員 あくまで、嫡出というのは、これはずっと原則として推定なんですよね。嫡出推定ということで来ているわけです。ですので、いろいろな事情を抱えていて、父親の欄に名前が書けない、書くことができない、だけれども、この子の戸籍はちゃんと作らなくちゃいけない、そういう事情を抱えている方々も大勢いらっしゃるんです。

 ですので、今、非常にハードルが高いというお話でしたけれども、それこそ、それぞれ子供たちの、一人一人の事情をちゃんと丁寧に見て、その子を保護、そして保育、教育を受けさせる、そういう人たちが周りにちゃんといるというのであれば、その子の単独戸籍ということも私は議論をしていくべきだと考えている一人ですので、そのことだけは申し述べさせていただきたいと思います。

 次に伺います。

 再婚後の夫を、再婚した後の夫を子の父親として推定していたとしても、前の夫との父子関係が復活してしまう可能性、これは残っていますね。

金子政府参考人 恐らく想定していらっしゃるのは、前の夫の子であるという推定は、なお三百日以内に生まれたということで働いているので、後の夫の子との推定が上にかぶって優先しているとしても、その前の夫の子であるという、推定が覆れば、前の夫の子であるという推定が表に出てきますので、それを復活というのであれば、先生の御指摘は正しいと思います。

鎌田委員 ありがとうございました。今、答弁いただいて、この可能性があるとすると、その子は、無国籍であることで悩んでいる母親にとって、あっ、無国籍と私、今言いましたね、それは間違いです。失礼しました。今、可能性があるという御答弁によって、母にとって、自分の子が無戸籍であることで悩んでいる母親にとっては、前の夫に対する法的対応を取らねばならない状態に置かれちゃうんですよ。そうすると、母は、子の出生届の提出をためらうことにつながるおそれは、私、大いにあると思うんです。そこは想定していませんか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 前の夫の子にも、今回、否認権を認めました。それは、再婚後の夫の子として扱うとしても、離婚から比較的近い時期に出生したお子さんについては、前の夫にとって自分の子だと言える機会もきちんと与えないといけないという発想の下で作りました。

 それが、例えば前の夫からのDVで悩んでいる方にとって、前の夫から今の夫の子であることが否認される余地が出て、それがためにその対応を迫られるのではないかという、いわばおそれの中で生活しなきゃいけないというようなことではないかと推測しますが、これは、結局、何というんですか、お母さんのみの利益を考えるわけにもいかず、前の夫の子の可能性もある以上は、前の夫が自分の子であると主張する機会はきちんと確保しないといけない。それをせずに、再婚後の夫の子として扱うのみで、それを否定する機会が前の夫の方にはないとするのは、やはりバランスを欠くんだろうと思います。

鎌田委員 そういう大人のやり取りと大人の事情、大人の都合の中で、ダメージを受けて不利益を被るのは誰ですか。

金子政府参考人 どういう状況をもって子に不利益があるかというのは、これは見方によっても変わると思います。それは一概に言えないと思います。

鎌田委員 いや、私は、先ほど可能性があるとおっしゃったそれに基づくと、子供を無戸籍のままで、その状態のままで置いている母にとっては、前の夫と何らかの法的対応を取らなくちゃいけない状況になっちゃう、それを想定して出生届の提出をためらうことにつながる、そういうお母さんが、母が、女性が、多くいるんですよ。その現場を分かってほしいんです。手続と法律を作るときの、様々なところの利害関係を調整して条文を作るだけじゃなくて、現場のお母さんたち、子供たち、もちろんお父さんも含まれますよ、そういう現場の実際に起きている出来事に目を向けていただきたいんです。だから、私は、済みません、語気を荒げていますけれども、お尋ねをして、申し上げました。

 次に移ります。嫡出推定の例外について伺います。

 別居後です。別居後に妻が懐胎した子について伺います。裁判手続などにおいて、前の夫と関わりを持つことを避けたい母の立場にある当事者が少なくないんです。これが無戸籍の要因となっているという認識は共有いただけますでしょうか。

金子政府参考人 そういう面はあるというふうに思います。

鎌田委員 共通の認識を持っていただいてありがとうございます。

 別居について何か言及があるかと思ったらなかったので。別居ということは、単に別居というふうには、別居もまたいろいろな事情がありますので、単身赴任で別居している人だっているわけだし。局長には私の言いたいことが伝わったのかなということで今の御答弁だったということで、非常に歓迎して今の答弁を受け入れたいと思います。

 法制審においても、母が前の夫と関わりを持つことがなくなって、前の夫と関わりを持つことなく、前の夫との嫡出推定を否定する規律を求める意見が出ていたと思います。嫡出推定の例外として、夫婦が別居をした後に妻が懐胎した子について明文化すべきじゃないかという御意見が多く寄せられていると思います。この課題については積み残しで、今後の議論対象になるというお約束をいただけますでしょうか。

金子政府参考人 法制審でも議論はされたところですが、結局、別居等の要件とか効果をどのように定めるかといった議論が十分に成熟していないというふうなことから見送ることにしました。

 今委員御主張のとおり、別居というのはいろいろな形態があって、別居が性関係がなくなる一つの徴憑ではあるとは思いますが、これはイコールでもなく、かつ、別居というものを外形的、客観的に認定するというのは案外難しいという面があります。それを戸籍の窓口で判断するというふうなこともなかなか難しいと思っています。

 別居を法制化しますと、例えば、いつから別居ということを登録したりしますと、これが可視化されますので、そういう制度を持っている国もあるようですけれども、それが何年続くと離婚原因になるとかいうようなこととセットで考える余地は今後もあると思います。

 そういう意味で、およそ別居を理由とする、別居後は嫡出推定を及ぼさないというような制度があり得ないというまでは考えていなくて、そういう意味では、今回の改正法案の実施状況等も見ながら、今後の検討課題というふうに受け止めています。

鎌田委員 今、局長の答弁のとおりです。そういう仕組みをつくればいいんですよ。

 懐胎時期の証明、それから別居時期が分かる資料等々を整えた上で、別居後に懐胎したことを戸籍の窓口で確認できるような仕組みをつくればいいんですよ。それで、別居している夫の子ではない出生届の提出が認められれば、今回の法改正の範囲の外に置き去りにされている、再婚していない場合の無戸籍者の解消につながります。うなずいていただいています。ありがとうございます。

 この実現を望んでいる人は非常に多いです。ですから、今回法案には盛り込まれなかった嫡出推定の例外について、今後、是非議論をしていただきたいと思います。後で、これはまとめて大臣に伺います。

 次に、嫡出否認制度の見直しについて伺います。

 DVの被害から逃れるために、子供を連れてひそかに生きている母と子はいます。それはもう事実です。前の夫に居場所が知られてしまうかもしれないから、母は、子の出生届を出さないで、あるいは出せないままで。

 その母には、嫡出否認権を、これは行使しようとすればできます、権利はあります。だけれども、そういう事情を抱えている方にとっては、相手方に住所を知られたくないし、いろいろな個人情報を知られたくない。はっきり言えば、DV夫から逃げて幸せに暮らしたいと思っている母と子にとっては、これは非常に切実な課題なんですね。

 ですから、これは司法の問題だと思うんですけれども、母の住所など個人情報を知られずに否認の訴えを起こせるような方法を今後考えていかなければならないと私は考えている一人なんです。DVを原因とする無戸籍者事案で悩んでいる母親にとっては、今回の法改正は、はっきり言って悪いですが、一筋の光にもなっていません。

 先ほどの懐胎時期の証明等々、別居の話、そして、今DVで逃げて暮らしている母と子、こういったところに光を当てていくという点について、大臣、御所見をお伺いできればと思います。

金子政府参考人 今いただいた御意見の中で、少しコメントしておかないといけない部分がありましたので、先に手を挙げさせていただきました。

 民事訴訟法等の一部を改正する法律が、この五月に成立させていただきました。嫡出否認の訴え、これは人事訴訟になりますけれども、この場合も、一定の要件を満たす場合には訴状等の現住所を記載せずに提起するということが既に可能になっていますので、相手方に住所等を秘匿するまま嫡出否認の手続を進めることができるということだけは、まだ施行はされていませんが、法律としてはそのような規律が整っているということは申し上げておきたいと思います。

葉梨国務大臣 先ほど来、委員と局長の議論を非常に興味深く聞かせていただきました。

 いろいろな御意見、現場の御意見を踏まえて、私もいろいろと感ずるところはあるんですが、ただ、嫡出推定制度と申しますと、離婚というのは、もう顔も見たくないという形で離婚する方もいれば、円満に離婚する方もいらっしゃるんです。ですから、数的なものがあるわけではありませんけれども、では、円満に離婚した方に、嫡出推定、前夫の嫡出推定を外してしまうと、認知という手段によらなければ子の父が確定しないという不利益が起きてしまう。嫡出推定を外してしまうとですね。

 ですから、そういった意味で、今回は、そういうケースについては、今局長も申し上げましたけれども、その嫡出否認についても住所も秘匿できるというような形で対応していこうということになったわけですけれども、それについても、今後不断に状況を、現場の声をしっかり聞きながら、これでワークしているのかどうかということもしっかり見ていきたいというふうに思います。

 また、前夫、つまり再婚した後に、前夫の推定が、前夫の方が嫡出否認を、訴えをすることはできます。ただし、それについても、子の利益を害するとき、つまり本人が養育するつもりも全くないで嫌がらせのためにというような訴えは、今回の法改正でもそれはできないという形にしておりますので、今後とも、いずれにしても現場の声を大切にしていきたいと思います。

鎌田委員 葉梨大臣から、現場の声を大事にするということでございましたので、そして、ワークを今後チェックしていく、ウォッチしていくということでございますから、その言葉を信じますので。

 取り残される人、法改正の枠の外で置き去りにされる人、そして、幸せを追求することができない人、そういう人には、是非、手を差し伸べられる法務省、日本であってほしいと思いますので、大臣、今の言葉、信じていますから、よろしくお願いします。

 最後の時間を使って、私は、また国籍法三条三項の改正について伺います。

 お手元の資料は四番目でございます。一番最後のページになりますが、昨日ちょっと紹介しました、UNHCRからの見解ということで、今日、改めて資料としてお手元に配らせていただきました。ありがとうございました。

 そこで、一番下のところです、主要な提言というところで、一行目は、昨日も申し上げましたけれども、戸籍のない日本国民の生じている状況に終止符を打つための日本の取組、これが今回の民法改正ですね、ここは歓迎するとUNHCRは正式にこれを表明しています。だから、我々も、私は個人的に、今回の採決のときがやってきたらですよ、反対するつもりはありません。

 ただ、ここに書いてある提言なんです。四行目の後ろの方から、国際法に基づいて無国籍及び国籍の恣意的剥奪の防止を確実にするため、以下の検討を提言させていただきますと、非常に下から目線で、この国際機関が。すばらしいですね。その一の一行目、中頃なんですけれども、例外を設けることによって、認知について反対の事実があり国籍の喪失が起こる際に無国籍を防止する仕組みを強化することと、これを下から目線で、日本に対してUNHCRが提言をしているわけですよ。

 ですので、私がこの委員会の場で提言をさせていただきたいと思います。UNHCRじゃないんですけれどもね。

 国籍法三条、これに基づいて国籍を一旦取得していた方、この方は、まず十八歳未満であること、それから今回の改正民法七百八十六条に基づいて認知無効の裁判が確定したということ、このどちらも該当する場合に限った方が、私は、この提言にも沿って、なおよろしいんじゃないかと思うんですけれども、大臣、御見解いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 最前来、例えば改正民法第七百八十六条に基づいた認知無効の裁判が確定したことということを要件とすると、先ほど申し上げたような、偽装認知の場合に認知無効というのを訴え出ないというケースが相当想定されますので、制度的にはなかなか難しいということは申し上げてまいったわけなんですが。

 いずれにしても、無国籍者、帰責事由がなくて、日本で生活をして、日本で教育を受けているような子供たち、こちらが不利益が起きないようなことを、やはり運用の面でも、しっかりと確立した運用をできるように、関係省庁とも連携を強めていかなければいけないと思います。

鎌田委員 大臣のその決意は、今日はもう朝から、自民党さん、公明党さん、与党の委員の先生方がこの件について触れられて、絶対に子が不利益な状況に置かれてはならないと、連続して、元法務大臣も質疑に立たれていますので、同じ、共通の理解をいただいているものと私は解釈をして拝聴させていただいておりました。

 そこでなんですけれども、やはり昨日も申し上げましたけれども、今回のこの法改正で非正規滞在とさせないように、極力短時間での在留特別許可。ただ、在留特別許可と在留資格というものは違いますので、そこら辺をきちっと整理をして、さらに、円滑に帰化できるように、これは法務省さん、入管庁さん、是非、対象になる人が出た場合には、たらい回しにしないでいただきたいんです。あっちに相談したらあっちさ行けと言われて、それで外国のそっちの領事館に連絡したら、今度は、いや、それは日本でしょうとまた戻されて、そういうケースが多発しております。たらい回しにせずに、是非ここは円滑に、その方の身分をちゃんと保障するように進めていっていただきたい。そのことを申し上げて、時間が来ましたので終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 民法の質疑を行いたいと思います。筆頭理事ですので、委員会の運び等々にちょっと専念していた部分があって、他の委員の皆さんに広範な質疑をしていただきました。今日質疑していただいた方々の通告の範囲で、結構自由に聞きたいと思いますので、局長なり大臣なり、よろしくお願いします。

 つまるところ、今回、もちろんどの部分に絞るかによりますが、無戸籍で生まれてしまう背景をどれぐらい本気で捉えて、想像して、対応しているのかと。もっと具体的に言えば、DV被害に苦しまれている方も含めて、その立場の方がどのような状況に置かれているのかということを踏まえた上で、何度も答弁あるとおり、子の利益を最優先して、制度設計し、運用しようとしているのかが問われていると思います。

 そういう意味において、るる議論されていますけれども、疑問が残るところもありますので、質問したいと思います。局長は答弁、丁寧にされていますけれども、端的に聞きますので、是非端的にと思います。

 これは通告していませんけれども、当たり前のことなので、ちょっと局長にまず聞きますけれども、無戸籍者をゼロにするということが、法務省として、局長としての目標であり、使命である、これはそれでいいですよね。

金子政府参考人 それはもちろんでございます。

寺田(学)委員 聞くまでもないですけれども、大臣、その決意でよろしいですよね。

葉梨国務大臣 ゼロを目標として頑張りたいと思います。

寺田(学)委員 目標であり、使命だと思うんですよ、当たり前ながら。

 局長に聞きますけれども、今回の法改正でゼロになると見込んでいますか。

金子政府参考人 これは、制度によって全部対応できているとは思っていません。どうしてもお母さんの、お母さんがイニシアチブを取って裁判を起こしてもらうというところを前提にしている部分があって、それをしていただけないような状況を除去できなければ、これは無戸籍のまま残ってしまうというところは否定できないと思います。

寺田(学)委員 なぜならないのかということを含めて御答弁いただきましたけれども、今回の法改正でやはりゼロを達成するというのは難しい認識があるということを含んでいるということでよろしいですよね。大臣でも局長でもいいですけれども。大臣、どうぞ。

葉梨国務大臣 今回の法改正、制度的に解消する仕組みは整備をさせていただきました。

 ただ、今局長からもお話ありましたけれども、なかなか裁判を起こすのをちゅうちょするという方も中にはいらっしゃる。いろいろな事情があろうかと思います。ですから、なかなかこれをゼロにするというのは難しいとしても、できるだけゼロにしていくための、例えば民事法律扶助とか、あるいはこちらとして把握をする努力とか、あるいは裁判費用を心配している方に対しては今の法テラスの制度をしっかりと周知するとか、いろいろな方法を試みていきたいと思います。

寺田(学)委員 ゼロにするのが使命であって、ただ、今回の法改正で全てをカバーするのは難しいという認識があって、その認識の基は何かといえば、母親側がイニシアチブを取って裁判をやることに困難があるだろうということまで想像できているわけですよね。局長、いいですよね。

 じゃ、もっと具体的に聞きますけれども、女性がイニシアチブを持って裁判で解決していくことが難しい、ちゅうちょしてしまう、大臣のお言葉ですけれども、その原因は何だと理解していますか。

金子政府参考人 これは、例えば、DVを受けた女性がそのDVの加害者と接触することを恐れるとか、あるいは経済的な問題もあるかもしれない、それから、裁判所自体の敷居の高さみたいな、これは社会的な問題なのかもしれませんけれども、というふうな問題もあるかもしれないと思います。

寺田(学)委員 分かっているじゃないですか。当然そういうことを踏まえて考えてやっていると思うんですよ。言うとおり、使命としてゼロにしなきゃいけない。

 今回の法改正ではゼロにはできないだろうということは内々分かっておる。それができない理由は何かといったら、やはり裁判をやるのにちゅうちょする。何で裁判をちゅうちょするのといったら、やはり、DV被害を受けて、前の夫ともうコンタクトも取りたくないし知られたくもないという状況に置かれている方々は多いし、経済的な問題で踏み出せない方がいる。言ってみれば、今の答弁、論理的に言うと、今回ではゼロにはできないけれども、問題点は分かっていると言っていることですよ。

 事前に局長にダイレクト通告していましたけれども、究極的な意味でですよ、究極的じゃなくてもいいですけれども、父親不在で母親の戸籍に入る、三百日過ぎたらそれをやれていますよ、現行法でも。その父親不在のまま戸籍を届けるのと、そういう認識している問題点があった上で、今回の法改正にも、同じように、利用することができず無戸籍で残ってしまう、この二つのケースを子供の利益から考えた上でどっちがふさわしくない、望ましくないものだと思いますか。父親がいないで母親の戸籍に入る、推定は及ばなくていいですよ、本当。父不在のままで母の戸籍に入るのと、無戸籍のまま放置される、どっちがいいですか。

金子政府参考人 お答え、難しいです。

 というのは、無戸籍にならないようにするというのが我々の使命であり、責任であるところを、無戸籍であることを前提にして、それとの比較ということは、それはお答えが難しいです。

寺田(学)委員 使命を聞いたじゃないですか。はっきり答えていたじゃないですか。無戸籍をなくすんでしょう、それが使命なんでしょう。それ以上に勝るような何かがあるんですかというんですよ。

 ここがネックだと思うんです。はっきり言って、どういう形であれ戸籍にちゃんと載ってもらって、国内として、戸籍がある者として様々な利益を得てほしい、それが子供のためだと、それは当たり前のことじゃないですか。

 今おっしゃっていることは、三百日過ぎたら父不明のまま母の戸籍に入れるわけでしょう、それと無戸籍のままが同等の価値だと言っているに近いですよ。どっちか分からないと言っているんだから。どっちかは簡単でしょう。

 父親がいないまま、それでも母親の戸籍に入ってしっかりと子供が戸籍として認知される、認識されることと、無戸籍のまま、どっちがいいですかといったら、戸籍を持った方がいいに決まっているでしょう。大臣、違いますか。

葉梨国務大臣 先ほど私が申し上げたのは、制度的に無戸籍を解消する仕組みは今回御提案を申し上げています。

 といいますのは、三百日、つまり嫡出推定ですね、嫡出推定について三百日を維持した理由というのは、先ほど鎌田委員にも申し上げましたが、その嫡出推定を嫡出否認によって解消することができる、その道を開いているわけです。ですから、その裁判を起こしていただくかどうか、これを起こしやすくするような援助というのはしっかりやっていくし、また、それがワークするかどうかというのを、先ほども申し上げましたが、しっかりウォッチをさせていただくということは申し上げたとおりなんです。

 ですから、私どもは、今提出している法案、これを最大限活用するということによってゼロに近づけるということをしっかりやっていきたいというふうに思いますが、今の元々の御質問ですね、今の制度的な対応ができているというようなことで、新しい、単独戸籍を作るとかそういうこと、それを考えているわけではないです。あるいは、嫡出推定をなくすというようなこともまた考えているわけではありません。

寺田(学)委員 局長、何回も聞きたくないですよ、時間が少ないんですから。

 父空欄のまま母親の戸籍に入るというその子供と、それすらもなく無戸籍になる子供、子の利益から考えたらどっちがいいですかと言っているんです。これ、どっちかでしょう。

金子政府参考人 どうも一定の前提を置いた御質問のような気がするんですけれども、どんな形であれ戸籍があった方がいいんじゃないかというのは、いわば戸籍制度の根幹に関わる問題で、そう一概に、どんなものでも戸籍があった方がいいということを、所管する法務省としてなかなか申し上げるわけにいかないと思います。

寺田(学)委員 じゃ、あれなんですか、三百日過ぎた後だって、現行法ですけれども、母親の戸籍に父空欄のまま入りますよね。そういう方々に対しては、いや、別に、法務省としては、入っても入らなくてもいいですよという話をしているんですか、局長。大丈夫ですか。

 ちょっと時間がないのであれですけれども、ここからはさっきまでの答弁も含めて踏まえて言いますけれども、嫡出推定、三百日のやつ、やった方がいいのか廃止した方がいいのかという話のときに、いや、前夫の利益もあるでしょうという話がありました。

 ここの部分に踏み込んで話しますけれども、これは昨日、大口先生が議論されている中で答弁としてありましたけれども、離婚後三百日に生まれた子供というのは離婚が成立する前に懐胎しているのが相当数ですよという話をされていました。それは生物学的にそうだと思うんです。

 さっき鈴木さんも質疑していましたけれども、じゃ、離婚後三百日以内に生まれた子供が前夫の子であったということが大宗であるような証拠はあるんですか。そういう証拠があるからそういう推定をさせているわけでしょう。何かあるんですか、そういうファクトは。

金子政府参考人 それは、数字として何かデータがあるというわけではないです。

寺田(学)委員 いや、数字じゃなくてもいいですけれども、説得力があるもの、何か言ってくださいよ。

金子政府参考人 これは別の委員の方にもお答えしましたけれども、離婚前に常に別居しているわけではない。大臣からもお話がありましたが、円満に過ごされている方もいらっしゃる。いろいろな夫婦の在り方がございますので、かつ、夫婦であれば、同居しているという姿が一応想定される。これもある種、そういう制度になっているということを前提に議論した場合、離婚後に間もなく生まれたお子さんについては、婚姻中に懐胎した、婚姻中に懐胎している以上、前の夫の子であるという蓋然性があるだろう、こういうことになります。

寺田(学)委員 いや、まず、まともな理由を言えていないですよ。そういうケースがあるとか、そういうことが想定されていると言っているだけであって。

 もうちょっと聞きますけれども、一緒に住んでいるケースが多いですよね、さっきの委員だと多分パーセンテージまで言っていましたけれども。

 じゃ、まず前提として、離婚に至る上での、女性が自由に別居を選べるほどの経済的な余裕を今持っている、大概の人は持っているんだ、別居というものは女性側にとって普通に別に苦もなく選択できる状況にあるという認知に立っているんですか。だとしたら、一緒に住んでいるというケース自体が何かしらの意味を持つと思いますよ。別居したいけれどもできない人が山ほどいることぐらい、周りを見れば分かりますよ。経済的な理由で、女性の賃金は低いですし。

 局長、聞きますけれども、これはイエス・オア・ノーですよ。

 女性は基本的に、別居しようと思ったら別居できるような経済的な状況にあると思っていますか、一般的に。

金子政府参考人 一般的に、ある、ないと、私はちょっとそこはよく分かりません。

寺田(学)委員 だったら、それも言えなかったら、一緒に住んでいるから、じゃ、その場合に懐胎した可能性が高いだろう、だから推定しますなんていう理屈が立たないじゃないですか。まともな理屈ができていないですよ、事実ベースでも、推測でも。因果関係はおろか相関関係すらほとんど今説明できていないですよ。

 それで、言いますけれども、この間の質疑で五〇パーだか何とかと言っていましたから、その中に、一般的に年齢として子供を産むことができないような高齢の熟年離婚の方々も入った上でのあの数字なんですか。数字を言われていたので。

金子政府参考人 ちょっと年齢別の統計は取っていないんですが、あの数字自体は全部を含んだ形のものです。

寺田(学)委員 なおさら信憑性がないじゃないですか。何にもないですよ、言っていること、説明の。

 それでね、そういう状態の中で三百日推定を置いているんですよ。さっき言ったとおり、もうとにかく無戸籍者をなくしましょう、今回の法律改定では無理です、分かっています、その事情は何ですか、やはりDVで苦しまれた方々が裁判を起こしにくいですよね。そういうことを自ら分かった上でこれは設定しているわけですよ、三百日。その三百日の、せめて相関関係ぐらい言えるかと思ったら、相関関係すらほとんど言えませんと言って、今腕組んでいるわけですよ。いや、理屈が成り立っていないですよというの。

 根本的に、本当に子供の利益だと考えるんだったら、やはりその大本のところを考えなきゃいけないですよ。後でちゃんと議論しなきゃいけないと思いますけれども、戸籍に全員入ってもらうことということを、はっきりと民事局長としていいというふうに言えませんねみたいなことを言ったこと自体、これから残っていくのはどうかなと思いますけれども。

 それで、二〇〇七年の通達、先ほど鈴木議員も言われていましたけれども。二〇〇七年通達、ちょっと配れればよかったんですが、当時の長勢甚遠さんが大臣のときの民事局長通達で、当時の法的な枠組みの中で、いわゆる前夫による推定を窓口で形式的になくして、後夫と言っていいんですかね、本当の、後の方との戸籍を作れるというのは、二〇〇七年の局長通達であると思います。これは一つの私は道筋だと思っていますよ。

 本当は僕は、三百日推定って本当に必要なのということに対して答えられていない以上、それを必要だという前提に立てないですけれども、今回法改正しますから、これで。

 その上で、皆さんが認知しているように、今回の法改正をやった上でも、裁判に出ることに対してちゅうちょされる方々が存在するということを分かっているわけですから、その方々にとってみると、何かといったら、とにかく前の夫と関わりたくない、前の夫に知られたくない中において、しっかりと子供の戸籍を確保したい、そう思っているんですよ。その上で、二〇〇七年の自民党政権の中でやられたこの通達というのは、一つの在り方だと思うんですよね。

 この通達自体、お詳しい方もいらっしゃると思いますけれども、改めて言えば、お医者さんの証明書、要は、離婚成立後に懐胎したということを証明するようなお医者さんの証明書があったら前夫推定を外しますという話です。その上で、レクで聞きましたけれども、前夫推定を外した上で、前夫に対して推定がなくなったことも通知しない、まさしくそういう仕組みだと。事実が間違っていたらレクが違っていますので、言ってほしいですけれども。だったら、この仕組みをやっていけばいいと思うんです、大臣。

 それで、DNA鑑定の話を出すと、いざ国籍の剥奪とかその手の話のときには議論が出てきますけれども、DNA鑑定の中でそういう形になったので、親子関係がなくなって国籍がなくなりましたという話もありましたし、何かあったらやはりDNA鑑定の話は出てきます。もちろん、検体自体がちゃんと確保されているかどうか、その人のものかどうかということを確認しないと、そのDNA検査自体の信憑性というのは大きく変わってくると思うので、そこら辺は大事だと思いますよ。

 それで、これは公証人役場とかでもいいですよ。僕はお医者さんでもいいと思うし弁護士さんでもいいと思いますけれども、その方の検体によってしっかりと行われたDNA鑑定であるというような証明書を形式的にある程度用意できれば、それをもって、窓口としては、そういう書類があれば、一回、二〇〇七年にそういう通達を出しているわけですから、そういうふうに、皆さんが認識している、この法改正では救い切れない、前の夫にDVで苦しめられて裁判すら起こすことが物すごく大変だという方々も、前夫に知らせず、知られることなく、戸籍をしっかりと確保することができると思います。

 こういうこの二〇〇七年通達を、十五年過ぎましたし、様々な形、技術的なものもあると思いますし工夫もあると思います、こういう形で何か充実させて、さっき言ったとおり、法務省としての使命の無戸籍者をゼロにするということの達成はできないですかね、局長。ちょっと考えましょうよ、局長通達を出せるんだから。

金子政府参考人 まず、二〇〇七年通達は、離婚後懐胎だということを客観的に認定できる場合ということになりますので、離婚後三百日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものとするという、その推定の外側の問題として処理しています。つまり、離婚後に懐胎したケースなので、婚姻中懐胎ではないということが分かっているケースです。

 DNA鑑定の問題は、行き着くところ、婚姻中の夫婦の間で懐胎、出産した場合にも、一定数は父の子でない場合が入っているかもしれない。制度をつくるのには、ある一般的に通用するルールということを前提に考えなきゃいけないので、それを個別の事情に立ち入って処理するというのは、行政の難しいところということです。

 DNA鑑定のような個別の、いわば家庭のプライバシーの塊のようなものを扱うということについては相当やはり慎重でないといけなくて、裁判所が関与して裁判所の鑑定人が行うとか、そういうような場面においては有用かと思いますが、余り一般的に、それを活用するということについては相当慎重論もあり、これは法制審の部会でも慎重論が述べられているところでございます。

寺田(学)委員 二〇〇七年通達の件が婚姻中のものじゃないんだ、婚姻後の話なんだと。そのとおりですよ。そのときにそう改正。

 今回の法改正で、離婚前に懐胎しているものであっても、離婚後に生まれる前に結婚したのであれば、推定を外すんでしょう。だから、離婚前の懐胎のことを今回前提にしているわけですよ。そうでしょう。だから、違うんですよ。当然ですよ。だって、法改正するんだもの、今回。

 二〇〇七年のときには確かに、離婚後に懐胎したことを、その通達の中で、何々していくという話だったんですけれども、今回は、離婚が成立前に懐胎したものであっても、離婚成立後結婚して生まれたものであれば後夫の子供になるという仕組みをやっている以上、離婚成立前の懐胎を前提にしたことをやるんですよ、今回。

 なので、通達自体が、二〇〇七年のときはそうですからと、それはそうですよ。だけれども、今回、皆さんが提案してくる中で、離婚成立前の話を前提とした仕組みをつくるんだから、それは関係ないです。

 あと、DNA鑑定に関して一般的じゃないとかなんとか言っていましたけれども、裁判所の中で一つの大きな基幹的な証拠になっているでしょう。確かに、一般的じゃなくてもいいですよ、こんなの国民全員にやらせるわけじゃないんだから。今、八百人だ何百人って、本当に見えている氷山の一角はそれぐらいでしょうけれども、とはいえ、全国民にやらせるわけじゃないでしょう。全夫婦にやらせるわけでも、全子供にやらせるわけじゃないんですから。本当に今回の法律でも救われない、今回の法律の中で皆さんが認知している、裁判を起こすこともためらわれる、身の危険を感じて、安全のためにはできない、だからこそ無戸籍になっているんですけれども、そういう方々のために道を開いたらいいじゃないですかと言っているんです。

 今、何か難しい顔をされていますけれども、ちょっと、ちゃんと検討しましょうよ。民事局長通達を出せるんだから、過去に出しているんだから。

 これ、問題点とか懸念点とかクリアすべき点、どういうところがあるかというのをちょっと委員会の理事会の方に報告してください。

 委員長、取り計らいをお願いします。

伊藤委員長 それは理事会で取り計らいます。

寺田(学)委員 薗浦さん、よろしくお願いします。

 なので、まず、このいわゆる通達で、一般的には法律でつくった仕組みの中でやってもらいますけれども、大臣も御承知のとおり、局長も御承知のとおり、今回の法改正だけでは救えない子供はいるんですよ、認知している、皆さんが知っているとおり。その方々をしっかりと、しかも任意認知じゃないですよ、しっかりとした形で、それはどのような形がいいのかというのは今後議論しましょう。それはちゃんと理事会を含めて協議しましょうよ。そういうのをちゃんとやって、理事会の中で議論し、また大臣も中に、機会あれば、御指導いただきながらというふうに思います。この二〇〇七年民事局長通達をモデルとした、これからの法改正後の在り方はしっかりと引き続き協議したいと思っています。

 このことを含めてですけれども、今回の法改正によって、御存じのとおり、全員の無戸籍を救うことができないというのはあらかた想像されているんだと思います。これはどのタイミングがいいか分からないですけれども、附帯決議の案の中にも入れてもらいましたけれども、しっかりとこの法改正自体がどれぐらいの実効性を持ったかということを丁寧に調べて、必要な措置があるのであれば、それを今端的に三百日の話はしませんけれども、必要があればしっかりとまた改めてやっていくということは、大臣、お誓いいただけますでしょうか。

葉梨国務大臣 本当に今の議論、非常に興味深く拝聴しておりました。

 先ほど円満離婚の話、ちょっと申し上げたんですが、一つ、いろいろ今後また皆さんで御議論する上で、婚姻中の不貞行為というのは、今の民法では不法行為になり得るんです。ですから、婚姻中にも不貞行為は自由だという形にはなっていないので、やはり三百日という推定はあるんですよ。

 ただし、再婚した場合については、いろいろな夫婦の在り方があるので、再婚後の夫と推定するという規定になっているということを付言した上で、ですから、そういう意味では、二〇〇七年通達とDNAの鑑定とはいささかちょっと、次元が多少違うのかなというふうに私自身はちょっと思いますが、昨日も答弁しましたが、身分関係の確定については、やはり現状では裁判の手続というのは必要だし。

 それで、二つ申し上げると、一つは、私ども御提案している嫡出否認の訴え、これをDV被害を受けた女性等々にしっかりワークする仕組みとして御提示できるかどうかというのは、しっかりウォッチをしていくことは必要だと思います。

 それから、委員会の中で、今後の在り方ということについて、私ども、問題点を提示することはやぶさかではございませんので、またいろいろと御議論賜れればというふうに思います。

寺田(学)委員 僕は法曹界の人間じゃないですけれども、今回の法改正は、じゃ、今の大臣の言う不貞行為を織り込んだ上での法改正ということになるんですか。そういう整理、民事局長、それでいいですか。

葉梨国務大臣 いや、私申し上げましたのは、婚姻中は不貞行為は駄目よという規律がもう一つ民法の中にあるものですから、婚姻後三百日で再婚をしていないという方については、嫡出推定を前夫の子とするというのには一定の合理性があると思います。

寺田(学)委員 後で結婚するかどうかが、その不貞行為というものをどう捉えるのか分からないですけれども、不貞行為が阻却されるのかどうか、俺は分からないです。

 ただ、今、多分、言われながら、何か変な泥沼に入っていっちゃったような雰囲気がありましたので、それは後々整理してほしいですけれども。ちゃんと見直しを考えてくださいということです。そこの約束をしてほしいんです。

 それとともに申し上げますけれども、とはいえですよ、法務局において、この法改正を実効性たらしめるために、どんどん、ちゃんと嫡出否認の調停だ、裁判を起こしてくださいよということを、DVで苦しんでいる方々、及びもう前夫とはとにかくコンタクトを取れないというふうに思っている方に強要することだけはないようにしてほしいというのがあります。

 大臣に聞くと、大体、前しゃべったことに対しての弁明から入って、本体の答弁が取れない感じになるので、まずここの部分、強要はしないように周知徹底してください。

葉梨国務大臣 強要はできません。ですから、しっかり寄り添って対応します。

寺田(学)委員 嫡出否認の訴えをしないという判断に関してもちゃんと寄り添えますよね、その事情を理解して。だって、そういう事情でできない人がいると思うと想定しているんですもの。そこにはちゃんと寄り添ってくれますよね。

葉梨国務大臣 よくその立場を理解して、しっかりと御相談に応じていく、そしていろいろな方法を提示する、これはしっかりやってまいりますが、強制するということはできません。

寺田(学)委員 しっかりと寄り添った上で、この法改正自体が、実効性がいかほどのものなのか、やはり三百日推定があることによって、又は違う理由によって、結局のところその当事者たる方及びその子供さんが戸籍を得るという行動に移し切れなかったということはフラットにちゃんと見詰めた上で、今後、必要であれば、必要だと僕は思っていますけれども、必要があればしっかりと見直しをしていく、そういう方向性に変わりはないということで、大臣、よろしいですか。

葉梨国務大臣 しっかりこの運用状況をウォッチをしていくことはもちろんのことですけれども、こういったような親子関係、家族関係の法律については、皆さんのコンセンサスを得ながら、本当に不断に必要な検討を行っていく必要があると思います。

寺田(学)委員 改めて聞きますけれども、無戸籍者をゼロにする、それが法務省、法務大臣としての使命だと。よろしいですか。

葉梨国務大臣 その考えです。

寺田(学)委員 そのために必要な法改正だということも理解しています。ただ、それだけでは救い切れない人がいるという皆さんの考え方とも同じです。その中の一つの解決策として、民事局長通達のようなやり方は検討に十分値し得るというふうに思っています。もちろん、できないことが多い、難点が多いというのは十分分かっています。だからこそ、今できていないんだと思います。

 ただ、それを、国会としてもしっかりと検討の主体に加わって、できる限り、無戸籍の方、できる限りじゃないです、無戸籍の方、無戸籍者をゼロにするためにやっていきたいと思いますので、局長の頭はもしかしたら固いかもしれませんから、大臣からしっかりと、検討、懸念事項はしっかりピックアップするようにということを御指示いただけますか。

葉梨国務大臣 検討検討と言って、やらないということになっても困るわけですから、しっかり論点を整理させていただきます。

寺田(学)委員 それを理事会の方に御報告いただければというふうに思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹であります。

 まず、懲戒権の見直しについて、ヨーロッパのドイツやフランスなどと比較した質問をさせていただきたいと思っています。

 皆さんもう御承知のとおり、親の権利というものは、縮小あるいは弱化する傾向に新憲法下ではあります。また一方で、子供の権利は強化するという法の原則は徐々に強まっていっているわけでございます。

 懲戒権については、様々な国がなくしたというふうに言われておりますが、実は、ドイツは全てをなくしたわけではなくて、屈辱的な教育処置は許されない、父親の、親の権利の中で。そのようにうたっていながら、最近は、屈辱的ではない教育処置、懲戒を許すという逆説的な方法で再規定されているということでございます。

 私は、今回の法改正を見て、ははあ、八百二十一条というのは、親権の、権利の規定なんだなというふうに思ったわけで、八百二十二条で懲戒権は削除されてありますが、実は、親が子供を教育する、しつけをすることというものは、この八百二十一条で居所の指定とともに指定してあるのかというふうに勝手に解釈したわけでございますが。

 まず、局長に、ドイツの、通告してありましたよね、勉強会のときにしっかり言ったんですけれどもね、まず、そもそも、ドイツの民法典ではこの権利と義務が法改正によって逆になったというところについて、どういう認識であられるか、お答えください。

金子政府参考人 大変申し訳ないんですけれども、ドイツについて、いわば親の義務あるいは親の責任的な規定ぶりの方にシフトしたかというところまで、今ちょっと資料がなくて分からないんですが、一般的に言うと、親の権利、日本は親権という言葉を使っているんですが、その中に当然、義務、責任を含んでいるんですが、法律の用語としても、親の責任というような用語を使うヨーロッパの国などは比較的多いものというふうに承知しています。

阿部(弘)委員 出典まで御説明して勉強会を開いたのに、なかなかしっかりお答えができないというのは残念でございます。

 別に批判しているわけではないですよ。日本も、親権の、権利とそして義務というものがある。そういうものを、古い時代の、ナポレオン法典から取ったボアソナードの民法から比べると、徐々にその順番が逆、まず義務から、そして権利へと変わっていっているんじゃないかということを言いたかったわけなんです。

 ボアソナードさんが日本のお抱え法律家として来られたときに恐らく読んだであろう、ジャン・ジャック・ルソーの「エミール」という教育論の本があるわけです。そこでうたってあるのは、子供の頃は感覚や感情を育む教育、おむつがぬれれば子供は泣く、おなかがすけば食事を与える、当たり前のこの行為が非常にその人格形成に大きく役立つと。

 ですから、私は精神科の医者でもありますが、その時代での虐待行為というのは、子供にとって人格を形成する上で非常に大きなものになってくる。その子の人生が非常に精神的に不安定であり、人格形成に支障を来すということでございます。

 ちなみに、久しぶりに読んでみますと、歩き始める幼稚園ぐらいの時期に、これは、感覚と知覚を、そして感触を、こうあるべきだということで社会的な正解を子供に押しつけない。この頃まで、子供にとっては、手に触れるもの、そして聞くもの、そういったものが人格形成にとって非常に重要であるというふうにうたっているわけでございます。

 そして、小学校の前期ぐらいになりますと、好奇心や有用性、太陽はなぜ沈むのか、森はなぜ生まれるのか、魚は地上では暮らせないのかという好奇心を育む。そして、中学生以降の青年期になって初めて、自然に生きる自然人だけではなくて、社会の一員としての素養を導くべきだと。

 恐らく、そういうジャン・ジャック・ルソーの「エミール」を見ながら、ボアソナード、お抱えの法律家が、最初の、ナポレオン法典の影響を受けた日本の民法を作ったんだと思われるわけでございます。そのときには既に懲戒権は入っている。

 ここで勘違いされてはいけないのは、懲戒権は、ヨーロッパでなくなった、なくなった、なくなったと言っていますが、このような、八百二十一条にあるような、親権を行うに当たっての要諦はなくしていないんですよ。でなければ、子供を正しく教育する、あるいは、社会人としての、自然人としての成長を送らせるためには何らかの親の導きが必要ですから、八百二十一条の、新しく新設された意味というものは、局長、お願いします。

金子政府参考人 御答弁いたします。

 これは、懲戒権の規定の削除と併せてされるものでございますけれども、親権を行う者がその親権を行使するに当たっての、いわば考え、考えるというか、考慮しなきゃいけないことですね。元々、子の利益のために行使するとなっておりますけれども、その子の利益というのが非常に抽象的な概念なので、もう少し具体的にする必要があるだろうということで、八百二十一条に、人格の尊重とか、年齢、発達の程度に配慮するとか、それから、懲戒権の規定を削除しつつ、さらに、体罰とか、子の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない、こういうことをうたうことで親権を行使する際のメルクマールとする、こういう趣旨のものでございます。

阿部(弘)委員 いや、別に反対しているわけじゃないですよ。要するに、しつけというもの、あるいは子供をしっかり導いていくということは、家庭の中の教育で、私も子育ての経験がありますから、そういったものは往々にしてある。

 そういったものまで、ヨーロッパの、懲戒権の削除ということで、しつけまで全くなくしたわけではないということをしっかり、局長、改めてお話しいただけませんか。

金子政府参考人 今回、八百二十二条の懲戒の規定は削除しましたが、もとより、親が子の利益のためにする監護、教育という中で、適切なしつけ、子供がきちんと社会生活が送れるようにルールを身につけるとか、そういうことはもとよりできるという解釈を前提にしております。

 ですから、八百二十二条を今回削除することによって、その理解に変更はない、監護、教育の一環として行うことができるという理解に立っております。

阿部(弘)委員 私は、冒頭、何で「エミール」の話をしたかというと、その時代も、その「エミール」の中身というのは非常にはっとするものがあるわけでございますが、そういったものの中にも、子供を導いていく、巣立っていく、育んでいくということを非常に強調しているわけでございまして、懲戒権の削除という言葉だけが世間で独り歩きしてしまうと、しつけもしてはいけないのか、あるいは、教育、導きも禁止されるのかと国民に誤解を与えてはいけないので、そういったお話をさせていただきました。

 まず、この点について、大臣、御感想を。

葉梨国務大臣 今局長からも答弁をさせていただきましたが、八百二十二条は削除をさせていただきましたけれども、八百二十一条でしっかり、監護、教育を行うということは規定されておりますし、その上で、子供の人格の尊重、あるいは体罰などの心身に有害な影響を与える言動、これはいけないよということで、バランスの取れた形での子供の導きというのが親には期待されるというふうに思います。

阿部(弘)委員 よかったなと思っております。この二十一条が入ったことで、親の権利あるいは義務、双方の一つの指標になりながら、その行為が行えるということは、大切なことだと思います。

 次に、被虐待児の虐待の通報についてお伺いいたします。

 これは、フランスの文献を、もう文献名もお話しして、議論、勉強会をさせていただきましたが、私が、八九年、九一年までウィーンに住んでいた頃、ちょうど、オーストリアは通報システムが始まっておりました。子供が大声で泣いたりすると、一一〇番を通報を受けた方が、警察官がドアをノックするという話を、日本人社会の中でもよく聞いておりました。

 フランスの民法の中では、法的根拠として、民法典の三百七十五条などで、国民や施設、県議会の議長などが、その通報の義務を負うということがうたわれておりますが、この点について、日本はどういう通報システムがあられますか。

金子政府参考人 これは必ずしも法務省所管法律ではないんですが、我が国においても、児童虐待防止等に関する法律第六条が、国民一般の義務として、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者に、市町村等への児童虐待に係る通報義務を課しています。我が国もこういう状況にあると理解しております。

阿部(弘)委員 厚生労働省も児童虐待防止法などを所管してありますが、一般国民からの通報というのはどのくらいあるのか。その通報のシステムについてお伺いいたします。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 今し方の法務省の民事局長の答弁とも重なりますけれども、御指摘のように、児童虐待防止法の中で、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、児童相談所、市町村あるいは都道府県が設置する福祉事務所などにこれを通告しなければならないというような規定がされておりまして、この規定に基づいて、一般市民からも通告が寄せられているところでございます。

阿部(弘)委員 一般国民からの通報が寄せられているというのは、具体的にどのくらい寄せられているんですか。恐らく、私の感覚からすると、児童相談所、あるいは警察からの通報が主にあると思いますが、当時、ヨーロッパのドイツでも、アパートに入っていたら、隣人が警察に通報すると。ですから、子供を余り泣かせないようにということをうたっているわけでございますが。まあ、件数が分からないなら分からないで結構ですけれども。

野村政府参考人 失礼いたしました。

 令和三年度の通告件数ですが、全体で、児童相談所などで受けた相談件数というのは二十万を超える件数でございますけれども、そのうち、近隣住民、知人は、これが一般の方々ということになろうかと思いますけれども、二万八千件というような件数になってございます。

阿部(弘)委員 いろいろな自由論文を読みますと、こういう懲戒権を削除する、あるいは、児童虐待防止を願う上で、民法の条文の中にも、その通報の義務といいますか、通報する仕組みをうたうこともあるということでございますが、局長、いかがでございましょう。

金子政府参考人 通報義務、今、児童虐待防止法にございますけれども、民法上規定することを検討すべきかということをお問合せかと思います。

 民法という性質に親しむかどうかということも含めて、一般的には、民事基本法制というのは国民の意識や社会情勢の変化等に対応した見直しを図っていくということが必要であるとは思います。

 フランスは、先ほど御紹介、三百七十五条ですか、というような御指摘もございまして、ある種、民法に規定があるということでございます。ちょっと外国の法制度等も勉強させていただいた上で、必要な検討を行ってまいりたいと思っております。

阿部(弘)委員 日本の司法、原則的に、親が刑法上の違反者であることとすることに逡巡があるようにこの論文では書いてありますし、私もそう思います。

 児童虐待に対して、フランスは異なり、介入に極めて積極的です。児童の尊厳、人権尊重を規定に置いた上で、刑事制裁の基本理念を考える。刑罰法定主義を要請する。

 刑罰制裁、司法介入を重点に置いた民法作りも今後議論になっていくというふうに、私は、件数が余りにも多くて、そして乳幼児の虐待というものが本当に目に余るものがあるということでございます。

 大臣、いかがでございましょう。

葉梨国務大臣 多分、委員の御指摘は、もっといろいろな広い意味で、単に虐待の通報義務をどの法律に規定するかということだけではなくて、子供の利益をどういう形で、社会が、みんながですね、親子、親だけじゃなくてみんなが守っていくために何をしたらいいのか、そういう御関心だと思います。

 ですから、民事基本法制、これは本当に、国民意識、社会の変化に合わせて、そういった不断の検討を加えていかなければいけないと思います。

阿部(弘)委員 ありがとうございます。

 次は、嫡出推定についてということでございますが、大きな議論を行っていきたいと思っております。

 日本が、太陽暦、太陰暦、変えたのは明治七年。同じく、医法、医制、医者の、西洋医学の制度、法制、西洋の法律制度、それと義務教育、学制、この三つを行ったのも明治七年でございます。

 何を言いたいかというと、明治の二十年代の国民の生活、まだまだ太陰暦を使って生活していた時代、近代医学はまだまだ漢方医学が主流だった時代でございます。そういう時代、産科学はどうだったかというと、シュルツ先生の産婆学という本が当時は有名で、やっと産婆さん、助産婦の資格、学校ができた頃でございます。

 私は昭和三十六年生まれですが、私は産婦人科、医院で生まれてはおりません。畳の上で生まれております。公衆衛生の統計でいいますと、私の昭和三十六年頃が自宅出産と病院出産の境だそうです。ですから、私より上の年齢の方々は恐らく自宅の出産、そして、私より若い方々は病院での出産が多いんだと思います。

 明治時代の妊娠というのは、つわりを感じて、そして月経が起きなくなって、そしておなかが大きくなる、その頃に初めて女性が懐妊したことに気がつく。三百日、太陰暦でございますから、十月十日というのは、正月、元旦から数えて十月十日。正確には九か月と十日のことでしょう。満月になる少し前のこと。それがおおよそ三百日に相当するということで、三百日というものは、子供が、懐妊して、そして生まれるというものに非常に理にかなった数字であると。どなたか局長がおっしゃったと思いますが、理にかなったもの。当時、医学技術がない明治時代の、江戸とそんなに遜色がない暮らしぶりの時代ですから、国民が広く懐妊というものを理解する上では、三百日という日数は理にかなったもので、それが今日までつながるというのは納得いくところでございます。

 日本には不思議な風習が残っております。男性がつわりを感じたり、あるいは妊娠と同じような現象を起こす、男のくせやみというもの、柳田国男先生が一九五一年に発行された本にも書いてありますし、東北地方、そして福島県、奈良県にもそういう現象があり、そういう妖怪神話もあるということでございます。くせやみという妖怪が、何度も男性がそういう現象を行うと女性のつわりが和らぐ。恐らくそのつわりの期間が過ぎていくんだと。それが百年以上前の国民の生活だったと思うわけでございます。

 では、本題に移らせていただきます。

 全く三百日とは関係ないところですが、GHQで働いた女性が、産んだ子供を児童福祉施設の前に置き去りにして、トンネルを駆け抜けた。お母さん、お母さんと子供が呼んでもお母さんは振り向かない。次に、赤ちゃんポスト。法律用語では棄児というわけでしょうけれども。また、内密出産、秘密出産です。こういうことも起きてきているわけでございます。

 最初にちょっとお聞きしておきますが、出産準備金や出産一時金というのは赤ちゃんポストや内密出産では支給されますか。

日原政府参考人 まず、出産育児一時金についてお答えをさせていただきます。

 出産育児一時金でございますけれども、こちらは、被保険者やその被扶養者の方が出産をされました場合に保険者がその被保険者の方に対して一時金を支給する制度でございまして、支給に当たりましては、出産の事実、それから被保険者等記号、番号、氏名などの情報が必要でありますことから、保険者がこうした情報を把握できない場合は出産育児一時金を支給することは困難であると考えられるものでございます。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の出産準備金、報道等でそういうような名前で出ておりますけれども、これは過日の経済対策の中で盛り込まれました伴走型相談支援とそれに伴う経済的支援のことかと存じます。ちょっと名称等、まだ確定しておりませんので。

 今回の二次補正予算の中に盛り込む予定でございます出産・子育て応援交付金、この中では、妊娠期から出産、子育てまで身近なところで相談に応じる、それでもって、様々なニーズに即した必要な支援につないでいくという伴走型の相談支援の充実をさせるということ、それと併せまして、妊娠の届出や出生の届出が行われた際に経済的支援を一体的に実施をする事業を創設していこう、これを継続していくことによって、安心して出産、子育てができるようにしていこうというものでございます。

 具体的な事業の中身につきましては、こういった妊娠届あるいは出生届の機会を生かして支援をしていこうということの趣旨なども踏まえつつ、現在検討中ではございますけれども、こういった伴走型相談支援、あるいはそれに伴う経済的支援、こういったものの充実を図ることによりまして、妊娠届の段階から相談実施機関につながることによって、妊婦さんあるいは子育て家庭が抱きがちな不安感や孤立感が緩和されるとか、あるいは必要な支援メニューにしっかりとつながっていく、こういったことを通じまして、いわゆる内密出産でございますとか、あるいは赤ちゃんポスト、そういったものを利用せざるを得なくなるような妊婦さんのケースをしっかりと早めに支援をして、そういったことの発生を未然に防止するといったような効果も期待できるのではないのかなというふうに考えてございます。

阿部(弘)委員 お答えにならなかったけれども、もらえないんでしょう。もらえないんでしょう、今のところ。ちゃんと答えてくださいよ。

野村政府参考人 具体的な事業の中身については検討中ではございますけれども、妊娠届出あるいは出生届という機会を捉まえて経済的支援を行うということになりますので、そういう意味では、この届けをなさらないという場合には、なかなかどのように対応するのかというのは難しいところがあろうかと考えております。

阿部(弘)委員 内閣総理大臣の支持率はどんどんどんどん下がってきている。こういう恵まれない立場に置かれている母子に対しても冷たいということは、何度も厚労省がお答えになられた。冷たいですよね。四十三万円から四十七万円に上がるお金も、十万円の補助も、このような方々には支給されない。もっと温かい日本国であった方がいいんじゃないですか。大臣に聞くとあれでしょうから、厚労省の話です。厚労省、冷たいな、本当。どんどん支持率が下がっていきますよ、そんなことじゃ。

 じゃ、次に行きます。

 私は、就籍ということ、新しく戸籍を作るというお話をさせていただきました。そのGHQの、働いていた女性が子供さんを福祉施設に置き去りにして。そして、赤ちゃんポストに預けた場合、あるいは内密出産に出産した場合でも、全て恐らく日本国籍が得られるわけでしょう。

 ちょっと私も就籍という仕組みが、最初存じ上げなかったものですから、就籍とはどんな仕組みか、民事局長、お願いします。

金子政府参考人 就籍というのは、戸籍法百十条に根拠がございます。本籍を有しない方が家庭裁判所の許可を得て届出をすることによって作られるものでございます。

阿部(弘)委員 今般の無国籍問題についても、法制審議会では就籍と、無国籍に、無戸籍になるんだったら就籍をすればいいじゃないかという議論があったんじゃないですか。

金子政府参考人 就籍による対応をすればいいというような議論があったものとは承知していません。

阿部(弘)委員 鎌田委員の質問を聞いていて、母親と子供がいるのは分かる、父親を空欄にしたままの就籍というのが可能ではないかという議論があったということを私は聞いたんですが、いかがでございましょうか。

金子政府参考人 済みません、ちょっとそのような問題意識で法制審議会の記録を確認したことがないのですが、記憶によると、そのようなことがあったとは承知していません。

阿部(弘)委員 棄児の場合、いわゆる捨て子の場合、あるいは戦災孤児の話は、この法務委員会で前の国会のときにさせていただきました。いずれにしても就籍でございます。戸籍を新たに作る。それは市町村長が作っていく。そして、名づけ親も市町村長です。

 私は、渋沢栄一先生の養育院というところに、研修医の頃、二年間ほど附属病院におりましたが、終戦間際に多くの戦災孤児がその施設で暮らし、そして巣立っていったと。名前は、当時の都知事が名前をつけて、その子たちを送り出していったということでございます。

 あるいは、樺太五村の就籍事件は御存じですよね、民事局長。旧樺太の方々がサンフランシスコ講和条約で無国籍になった。その方々を、戸籍を国の権限で復活させて就籍した。いかがでございますか。

金子政府参考人 今のような状況に対応するために就籍によったということは承知しています。

阿部(弘)委員 私は精神科医でございますが、記憶喪失ということがまれに起きます。日本のある海岸で、ある男性が発見された。しかし、記憶喪失のためにどこの誰かを特定できない。そして、もちろん家庭裁判所の許可を得て、戸籍を復活した。昭和六十三年の事件でございます。いかがですか。

金子政府参考人 その具体の事件については承知しておりませんけれども、お話を聞く限り、就籍という方法によったのではないかと思います。

阿部(弘)委員 いや、私が言いたいのは、就籍というものは、もちろん、局長の立場から、ハードルは高いとおっしゃいますが、実は、内密出産を実際に認めたということは、その就籍の門戸を大きく開いたというふうに私は考えるわけでございます。実際は、その人が氏素性を秘密にする。ですが、出生地は日本であるから戸籍は作れる。だから、就籍というハードルは、今般の無国籍問題についても非常に解決の糸口になるんじゃないかというふうに考えておりますが、局長、いかがでございますか。

金子政府参考人 済みません、お尋ねの趣旨が、内密出産のお子さんについて戸籍が作られるということが、そういう扱いが可能だということがきっかけのようにお伺いしましたが、この場合は、就籍の方法ではなくて、職権で戸籍を作っているということになります。

 その上で、また御質問があればいただきたいと思います。

阿部(弘)委員 市町村の職権かもしれませんが、ある意味では、戸籍が新たに作られるという点では、私は似たようなことだと思っております。

 また、時間がなくなってまいりましたので、厚労省の方がお見えになっています、大臣にもちょっと聞いていただきたいことです。

 おなかが痛くて踏ん張ったら赤ちゃんが出てきた、怖くなったから何にもしなかったと、出産後の母親が、十九歳の女性が殺人容疑で逮捕されました。赤ちゃんはトイレに溺死して、そのままお亡くなりになられた。知人男性が通報されたということでございます。

 私は、短い期間でしたが、都立病院の産婦人科に在籍しておりまして、知的障害者の出産というものに立ち会ったことがございます。五十過ぎだったと思いますが、五人か六人ぐらいのお子さんをお産みになってあった。盛んに産婦人科の医師は不妊手術をお勧めになってありましたが、結果については忘れました。産んだときのパートナーの男性については、分からぬ、忘れたといつもおっしゃってありまして、そういう知的障害のある方の出産というものについては、国はどういうふうな取組をなさってありますか。

野村政府参考人 御指摘のとおり、妊婦となられる方の中に知的障害がある方が含まれるというのは多分にある話だと思います。そうした中で、往々にして、十分に予期しない状態で妊娠されてしまうということもあろうかと思います。

 こういった予期せぬ妊娠ということに対応するために、やはりしっかりと行政とかと着実につながって、それで必要なサポートを受けていただくようにしていくというのがまず第一かなということと、それぞれの方の心身の状態とか生活上の課題、あるいは、出産後どういった展望を持っていくのかという、養育に関する方針とか希望とか、こういったものに関して必要な支援というのにつなげていくというような必要があるのかなと考えております。

 そういう意味では、出産に関する相談支援ということで、こういった予期せぬ妊娠を含め、妊娠といったことに悩む女性が安心して相談できる窓口の整備でございますとか、なかなか居場所が見つからないといったような妊産婦さんの方に対しまして、妊娠時から出産時までの包括的な支援の推進ということで、訪問サービスであるとか宿泊場所を提供するとか、そういったものを提供するのを、事業を取り組んでおります。

 また、障害のある方々にということに特化したという形であれば、その障害のある方や家族の方に対する相談支援体制というのも構築をしておりますので、こういった妊娠に関する相談体制と、障害のある方々に対する生活上あるいは抱える様々な課題に対する相談体制、こういったところについてそれぞれ周知をする、なおかつその相談機関同士が連携をしていく、こういったところがまずは必要かなというふうに考えております。

阿部(弘)委員 終わりますが、最後に、国民に対して温かい日本国であってほしいと願っておりますので、大臣の御感想を聞かせてください。

葉梨国務大臣 国民に対しては常に温かい日本国であるようにしっかり心がけたいと思います。

阿部(弘)委員 ありがとうございました。

 終わります。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 懲戒権削除について幾つかお伺いさせていただきます。

 今法案の懲戒権削除の趣旨は、児童虐待の防止に向けた明確なメッセージを国民に向けて発し、児童虐待の防止を図ることと大臣はおっしゃいましたが、本改正案の意義の周知、広報を具体的にどのように広く国民に行っていくのか、お伺いいたします。

金子政府参考人 葉梨法務大臣が答弁いたしましたとおり、本改正法案の懲戒権削除の趣旨は、児童虐待の防止に向けた明確なメッセージを国民に向けて発し、児童虐待の防止を図るということにあります。

 したがいまして、民法に規定したというだけでは目的を達しませんので、この改正法案の意義について広く国民に周知、広報していくことが極めて重要であると考えております。

 具体的にどのような方法を取るか等について、まだ申し上げられる段階にはございませんけれども、今日の質疑にもございましたとおり、例えば分かりやすいパンフレットを作るなりして、国民に対して訴求できるような形でその趣旨について十分な周知、広報に努めてまいりたいと考えております。

漆間委員 周知に関しましては、参考人招致でも、福祉や教育としっかり連携してやらなければならないということが言われていたと思いますので、是非そのようにお願いいたします。

 周知、広報と併せて、児童虐待の防止に向けた実効的な取組が必要だと思います。児童虐待の防止の取組の最前線を担う自治体では、こども家庭センターの設置や訪問家事支援の拡充、児童相談所の開設など、児童福祉法改正に伴う様々な取組を行っているところです。

 その上で、国は、自治体から、特に児童福祉法改正における取組としてどのような要望があると認識し、要望にどのように応えていくのか。今日は厚労省の参考人にお越しいただいておりますので、お答えをお願いいたします。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 さきの通常国会で成立をさせていただきました改正児童福祉法の施行の準備、これを今、自治体の方からもいろいろ御意見、御要望をいただきながら進めているところでございます。

 この法律の中では、御指摘のこども家庭センターの設置でございますとか、あるいは要支援児童を対象に、訪問によって家事支援などを行う子育て世帯の訪問支援事業の創設、さらには一時保護所の設備・運営基準の策定などを内容とするものでございました。

 この改正法の中身につきましては、御指摘のように、確かに、児童相談所、あるいは市町村の体制、あるいは取り組んでいただく事業、こういったものにも影響するものでありますことから、各地自治体から、例えば、このこども家庭センター、あるいは子育て世帯訪問支援事業などなどといった新しく創設された事業について、人員配置などの具体的な基準を早く示してもらいたいということであるとか、あるいは、それらを実施するに際しての財政支援などを行ってほしいといったこと、さらには、児童相談所に設けられます一時保護所の基準、こちらにつきましても内容を早期に示すことなどの御要望、御意見を頂戴をしているところでございます。

 これの施行が令和六年の四月ということになりますので、今、各自治体から頂戴している要望内容も踏まえつつ、自治体に対する支援策なども検討してまいりますとともに、自治体向けの説明会の開催などを通じまして、こども家庭センターの体制であるとか各事業の運用方法、さらには一時保護所の運営基準の内容等について可能な限り早期にお示しをしてまいりたいというふうに考えてございます。

漆間委員 できるだけ基準も早期に示していただきまして、財源措置や人の配置もよろしくお願いいたします。

 続きまして、文科省の方にお伺いいたします。

 今改正では、親権者が、監護及び教育に当たり、体罰その他、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない旨の規律がある一方、学校教育法では、校長及び教員は体罰を加えることはできないとあるのみで、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動に関する規律についての文言がないところです。

 今法案のみならず、児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法も、体罰のみであったのが、法改正で、児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない旨の文言が加えられたところです。

 学校教育法においては、心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない旨の追加は今後もなされないんでしょうか。また、理由などありましたら、よろしくお願いいたします。

寺門政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の改正案につきましては、委員御紹介のとおりでございまして、親権者等と子の関係に着目をして、親権者等による、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動を禁止するという規定が新たに設けられるものというふうに承知をしてございます。

 当該規定を盛り込む趣旨につきましては、体罰、暴言等の、子に不当な肉体的又は精神的な苦痛を与える行為が子の成長や発達に悪影響を与えるものであることに鑑みまして、親権者の監護教育権の行使の場面において、このような行為を防止して、心身の健全な発達という、子にとって極めて重要な利益の実現を図ろうとするというふうに承知をしてございます。

 他方、学校教育法におきましては、学校という教育機関におきまして、校長及び教員と児童生徒の関係におきまして、校長及び教員が行う懲戒権について、学校の教育目的を達成するために、教育上必要な範囲内で、叱責、注意ですとか、退学、停学等を行うことができると規定しているものでございまして、また、体罰も従来から禁止してございます。

 したがいまして、今般の民法等の改正案とは趣旨、目的が異なることから改正を行ってございませんし、一介の参考人が法改正について云々することは僭越でございますけれども、この解釈の限りにおきましては法改正を行う予定はないと事務方としては承知をしてございます。

漆間委員 分かりました。大体、沢田委員が質問したときと同じような回答だと承知しております。もうこれ以上は特に質問させていただくことはいたしません。

 次の議題として、国籍法三条三項がもたらす影響への対応について、これまで様々に、本当に多く御答弁いただいておりますが、我が党からも改めて質問させていただきます。

 国籍法三条三項によって、無国籍者の発生や、日本国を、喪失した方が不法滞在となって強制退去とならないよう、法の運用の中で柔軟かつ人道的な対応をすべきだと思いますが、法務省の認識、見解をお伺いさせていただきたいと思います。

西山政府参考人 日本国籍が認められなくなった者は退去強制手続を受けることになりますけれども、退去強制事由に該当する場合でも、法務大臣の裁量により在留特別許可がなされる場合がございます。

 その判断において、認知無効により日本国籍を認められなくなったことに帰責性がない場合であれば、例えばその子供が本邦に滞在中に学校教育を受けている場合などの事情は積極要素として考慮されることになると考えております。

 また、在留特別許可にするまでの期間につきましては、個別の事情にはよりますものの、可能な限り、本人に不利益な取扱いとならないよう、迅速な処理に努めてまいりたいと考えております。

漆間委員 ちょっと通告にないんですけれども、今後また、法改正に向けて何か検討を行っていく予定などあったりするんでしょうか。お伺いいたします。

西山政府参考人 今後の法改正につきましては、ただいま検討中ですので、それについての言及は差し控えさせていただきたいと存じますが、参考までに、昨年提出させていただいた入管法改正法案におきましては、今御答弁申し上げました在留特別許可、これにつきまして、申請手続を創設をすることによって、より迅速にそのような対応ができるような、可能な制度を取り込んでいたところでございます。

漆間委員 承知いたしました。

 続きまして、ちょっと法案からは外れるんですが、障害児者に対する性犯罪についてお伺いしたいと思います。

 十月二十六日の大臣所信でも、公明党の日下正喜委員より、障害児者に対する性犯罪に関する質問がございました。大臣からも、対策に向けた積極的な御答弁があったと認識しているところであります。

 障害に乗じた性犯罪並びに障害を知り得る立場に乗じた性犯罪の処罰規定については、早急に、できるだけ早く創設するべきだと考えておりますけれども、今後のスケジュール等、何か答えられることがございましたら、よろしくお願いいたします。

川原政府参考人 お答えいたします。

 性犯罪に対処するための法整備につきましては、現在、法制審議会の部会におきまして調査審議が進められているところでございまして、十月二十四日の部会では、これまでの御議論を踏まえた、今後の検討のためのたたき台として試案が示されたところでございます。

 試案におきましては、障害を有する被害者に対する性犯罪への対処として、相手方の脆弱性や地位、関係性の利用を要件とする罪の創設という諮問事項ではないものの、暴行、脅迫要件、心神喪失、抗拒不能要件の改正という諮問事項に対応して、心神喪失、抗拒不能に代わる被害者の状態を規定するに当たり、その原因となる行為や事由として、心身の障害や、社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益の憂慮を列挙する案が示されており、今後、試案を基に、更に御議論が行われるものと承知をしております。

 法制審議会におきまして充実した御議論が行われますよう、引き続き適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。

漆間委員 当事者の団体の方からは、やはり遅くなりますと将来にわたって被害者がまた発生してしまうので、被害者が一人でも少なくなるよう、早期の創設を望むといただいておりますので、是非よろしくお願いいたします。

 続きまして、また法案の方に戻らせていただきます。

 父であることが否認された者が負担していた子の監護の費用の償還に関して質問させていただきます。

 本改正は、嫡出否認がされた後、父が負担していた子の監護のための費用に関して、嫡出であることが否認された場合であっても、子は、父であった者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わないこととしております。

 否認権の行使により父であることが否認された者が負担していた子の監護のための費用について、本来の扶養義務者、父や母に対する請求は可能なのか、お伺いいたします。可能だとして、本来の扶養義務者が償還を命じられた場合、子に償還を求めることはできないとした本規定を置いた趣旨が損なわれるのではないでしょうか。併せてお伺いいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 本改正法案、民法第七百七十八条の三におきまして、父であることが否認された者が子の監護のために支出していた費用に関して、子は父に対して償還義務を負わないこととしております。

 その趣旨は、子が監護費用の償還を恐れて否認権の行使をちゅうちょするというようなことは望ましくないことなどを踏まえまして、子の利益を保護する観点から、政策的に設けた規定ということになります。

 このような規定があるにかかわらず、父であることが否認された者が子を扶養したことによって、本来子を扶養すべき者がその扶養義務を免れたと言える場合には、父であることが否認された者から本来子を扶養すべき者に対する不当利得の返還請求が問題となり得ます。もっとも、この点は、現行法の下でも解釈が分かれておりまして、確立した裁判例や学説もない状況でございます。

 また、返還請求の可否につきましては、子の利益を保護するという、委員御指摘の本規定の趣旨との関係や、子の監護に要する費用が支出された経緯等の諸般の事情を考慮する必要があるとも考えられることからしますと、今後の個別事案における判断の積み重ねを待つことが妥当であるというふうに今のところは考えております。

漆間委員 じゃ、今後の個々の事例で、実際、これが、趣旨がしっかり損なわれないかどうかということを判断していくということですね。はい、分かりました。

 続きまして、次の議題に移らせていただきます。

 生殖補助医療における子供の出自を知る権利についてお伺いいたします。

 我が国も批准をしている子どもの権利条約では、子供が出自を知る権利が掲げられております。先日の委員会では、我が党の阿部委員から、赤ちゃんポストなど、母親が認知をしないところでどこまで親の情報を取るかについての議論があったところです。

 今法案の生殖補助医療に関連した嫡出否認の規律の見直しは、民法の否認権の拡大に合わせて、母及び子も嫡出否認できないとするところにとどまっているところでありますが、生殖補助医療については、精子と卵子の情報を詳細に出さなければならないとすると提供者が減るのではないかという議論もなされているところでございます。

 そこで、子供の出自を知る権利がどの程度まで担保されるべきかということについて、厚生労働省と法務省の認識をお伺いいたしたいと思います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、先日、阿部委員との間で、赤ちゃんポストあるいは内密出産の際の親に関する情報の保存、管理ということで、御質問というか何というか、あったところではございます。

 こういった子の出自を知る権利といったものを、どこまで厚労省が専ら関わっているかというのはなかなか難しい面もありますけれども、ただ、御指摘のように、生殖補助医療の中でも、生殖補助医療により生まれてくる子の出自を知る権利といったものを始めとして、御指摘のように、その提供者をどう確保するのかとか様々な論点があって、今議論されているところというふうに承知をしております。

 この生殖補助医療の規制の在り方でございますとか、あるいは提供者の情報の開示、すなわち子の出自を知る権利との関係、こういったところにつきましては、現在、生殖補助医療法の附則に基づきまして、超党派の議員連盟の方で議論がされているところであると承知をしております。厚労省としては、こうした状況も引き続き注視をしていきたいというふうに考えてございます。

金子政府参考人 大変恐縮ですが、子供の出自を知る権利について法務省は直接的な所管ではございません。ただ、恐らく、この問題はいろいろな立場の方の、何といいますか、利害といいますか、絡む点もございまして、多角的、多面的な検討が必要になってくるんだろうと思います。

 法務省は民事基本法制を所管しておりますので、そこに関わってくる場面においては必要な協力を差し上げたいと思いますが、現段階で子供の出自を知る権利についてどの程度まで担保されるかというお尋ねについては、法務省としてお答えすることが困難でございます。

漆間委員 ちょっと時間は早いですけれども、通告を全て終わりましたので質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 昨日に引き続きまして質問をしたいと思っています。

 自分もそうなんですけれども、人って、気持ちが変わったり、感情もそうなんですけれども、ずうっと生まれてから死ぬまで一緒ということはあり得ないのかな。それと、あと、考え方もやはり途中で変わるんじゃないか。変わらない人もいるんだろうし、私は、自分自身を振り返ってみて、やはり変わるなと。その時代時代に経験してきたこと、人と接していろいろ刺激をいただいたことで、自分の中で考え方を少しずつ変えてきているんじゃないかというふうに思います。

 その中で、いろいろな方がこの日本社会にいらっしゃる中で、制度をつくっていって、今日の議論でもあったように、全てをサポートできる、また全ての方を、目標としてはいいんですけれども、でも、やはり、法律はある程度レギュラーのところを主体にしてやって、そこからちょっと外れてしまった人にどう対応するかということに尽きるのかなというふうに思っております。

 今、前任の方からも補助医療のことがあったんですけれども、今までほとんど補助医療についての質問がなかったので、前後しますけれども、先にそちらの方を質問させていただきたいと思います。

 婚姻中の夫婦間の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子の父子関係についてお尋ねします。

 まず初めに、生殖医療の提供の特例法十条の同意について。

 第三者の提供精子による生殖補助医療を受けることについて、今回の民法でも、同意をしたら否認はできませんよということがうたわれているんですけれども、同意だけで足りるのかという考え方です。まずお尋ねしたいんですが。

金子政府参考人 大変恐縮ですが、同意だけで足りるというのは、ほかに、例えばどういうことが必要かというお尋ねでしょうか。大変恐縮です。申し訳ありません。

鈴木(義)委員 例えば、次の質問にも絡んでくるんですけれども、同意の立証責任について、生殖補助医療によって生まれた子は、年長になるまで自身が生殖補助医療によって生まれたことを知らされない場合が多いんだと聞くんです。それはそうですよね。言わないと思うんですよ、基本的には。

 証拠資料の収集が極めて困難であることから、訴訟などにおいて、子に、生殖補助医療により生まれたことであること及び母の夫が生殖補助医療の実施に対して同意を与えたことを、立証責任を負わせるのは酷じゃないかというのが意見としてあったと聞いています。

 このような観点からは、母の夫が生殖補助医療の実施に対して同意を与えていないことの立証責任は夫が負うこととするのが望ましいというふうに考えられているとこの方は言っているんですね。

 他方で、同意の不存在の立証責任を夫に負わせることは、夫に消極的事実の証明を求めることになるとの指摘があり、いずれによるべきかについて結論が一致していないという考え方です。これは男女も入れ替わると思うんですね。精子と卵子というのも、先ほどもありました。

 こういった難しい問題を内包していると思うんですけれども、それについて、法務省民事局の方の御見解をいただきたいと思います。

金子政府参考人 生殖補助医療、第三者の精子の提供を受けて、お子さんが生まれたけれども、その後、同意があった、なかったかをめぐってトラブルになったケースを想定すればよろしいんでしょうかね。

 その場合に、同意があったかどうかの立証責任をどちらが負うかということについては、御指摘のとおり、様々な見解があるのだろうというふうに思います。実務上も学説上もなかなか定説があるとは言えないように感じておりまして、ちょっとこの場で見解を述べるということは適切でないのではないかなと思います。

 そういうことで、お答えを差し控えさせていただければと思います。

鈴木(義)委員 私の質問で前任の大臣も、あんたの質問の趣旨がよく分からないといって答弁されたことがあったなというふうに記憶しているんですが。

 では、もう一点。

 子が生殖補助医療により生まれたことを立証することが困難であることから、夫が提供精子による生殖補助医療に同意した事実を立証したときは、子がその生殖補助医療により生まれたものであることを推定することができるとすべきとの指摘があったというんですね。同意の方法を書面や電磁的記録によることを求め、最低、それはやらなくちゃいけないだろう。その法的効果やリスクを正しく理解した上で、御両親にですね、当たり前の話だと思うんですけれども、行うことを求める観点から公証人の関与や、当事者間の具体的事情を考慮した後見的な関与を求める観点から家庭裁判所の関与を求める、公的な関与を入れた方がいいんじゃないかという考え方です。

 ですから、同意だけで足りるのかというのが、当事者間なのか、誰を入れるかによって、それの信憑性というんですか、後々の、裁判やる、否認する、何するということにつながっていくんじゃないかと思うんですけれども、その辺のお考え、今お示しできますか。

金子政府参考人 ちょっと委員の御質問を正確に理解しているかどうか自信がないのですが、お子さんが、自分が生殖補助医療で生まれたということを何らかの事情で立証したいという場面を想定されているように思いますが、この問題はそもそも、生殖補助医療を使って生まれたお子さん、それから、それを利用した親ですね、お父さん、お母さん、要は家族の問題として、お子さんに生殖補助医療によって生まれたという事情をどのようにお話しするのかという、まず家庭の中の問題があろうと思います。

 委員が、しかし、例えば、お父さん、お母さんはそれを告げてくれないけれども、子供が何か、生殖補助医療により生まれたということを知りたいというような場面のようにちょっと拝察しましたけれども、同意という意味では、父母の同意があればいいというのが法律上の要件になります。あとは、その同意を、その後確実な形でどのように残していくのが相当かという、その同意を裏づける徴憑ですね、証拠をどのように残していくかということについては、いろいろなありようがあろうかと思いますけれども、将来の証明に備えて何か形を残しておくべきでないかという辺りも、定説があるとはちょっと思えない、どのような議論がされているのかということも私どもとして承知していないので、ちょっとコメントは差し控えたいと思います。

鈴木(義)委員 難しいことを聞いているので、今みたいな答弁になっちゃうんでしょうけれども、結局、小さいうちは余り分からないんですけれども、だんだんだんだん大きくなっていくと、何か違うなというのが、本能的に出るのか、容姿がちょっと変わってくるのか、それが分かって、テレビドラマとか映画じゃないんですけれども、何となく感ずるものがあったとき、この人、本当に自分のお父さんなのかな、お母さんなのかなと疑問に思う年代。先ほど前提で申し上げたように、気持ちって変わるんですよね。幾ら愛情を注いで子供を育てたとしても。

 例えば、次の質問に移るんですけれども、昨日、途中で終わってしまったんですけれども、子が二十一歳に達するまで嫡出否認の訴えを提起することができる、今回の補助医療とはちょっと違うんですけれども、生物学上の父でない夫は、将来的に子から嫡出否認の訴えによって父としての地位を失う可能性がある、今回の法改正でそれが認められるわけですね。そのために当初から子に対して適切な養育を行う意欲に欠けるんじゃないか、この結果により子の利益にならないのではないか、こういうことなんです。それについて御見解をお尋ねしたいと思います。

金子政府参考人 委員御指摘のとおり、生物学上の父子関係がないことが判明した父につきましては、将来子から否認されるおそれがあるとすると、子の養育をする意思を失うなど、かえって子の利益が害される事態が生ずるおそれもあるということは認識しております。

 そのようなおそれがあるということを踏まえまして、改正法案の民法七百七十八条の二の第二項におきまして、子の嫡出否認の訴えの出訴期間の特則として、子がその父と継続して同居した期間が三年を下回ることを要件としまして、これにより、子による否認権の行使が、生物学上の父子関係がないことに加えて、社会的な実態としても親子と言えるような関係がない場合に限ることとして、御指摘のような懸念にも対応することとしているものでございます。

鈴木(義)委員 昨日は時間切れで、大臣に、三年、五年、七年、二十一歳、こういう数字だけ並べてお尋ねしたんですけれども。

 例えばゼロ歳から三歳まで同居していました、まあ、四歳でもいいんですけれども、そういう幼児のときに一緒に住んでいたことをもって、先ほども申し上げましたように、二十歳とか二十一まで訴えの提起ができるとなっていれば、そのときの記憶が子にどこまであるのかという話なんです。それをもって、社会通念上、父子関係が成立していたんでしょうということを言えるのかということなんです。

 それについて、もし、もう一回御答弁いただければ。

金子政府参考人 これは専門家の意見を法制審議会でも聞いた事柄だったと思いますけれども、三年という期間を設定した理由の一つに、子供が親のことをきちんと記憶して思い出に残るというようなことが言われているというような御意見が開陳されたことを受けて、三年というふうに設定したものと承知しています。

鈴木(義)委員 その三年のときにも、五年という話もあったやに聞くんですけれども。

 ただ、自分を振り返ってみて、局長もそうだと思うんですけれども、ゼロ歳とか一歳、二歳のときの記憶って本当にあるのかといったら、大きくなってから自分の小さいときの写真を見せられているから、それが記憶で残っているだけの話だと私は思うんですね。いや、そうじゃないよ、ゼロ歳のときから全部頭に入っているよという人もいるけれども、通常、人間社会の中で、言葉を覚えられるようになってからじゃないと記憶はインプットされていないというふうに私は聞くんです。

 そうすると、ああ、うう、ええと言うぐらい、あと、ぎゃあぎゃあ泣くとかというしぐさが言葉なのか、親とすれば、それは言葉だと思って、乳が飲みたいのかな、おしめが湿っているのかな、何かな、おなかが痛いのかなと、これは推測するだけの話で、記憶が残っているかどうかというのはなかなか、専門家の意見も聞いて三年としたと言ったので、それ以上の答弁はできないですものね。じゃ、話が終わっちゃいますよ、それで。

 じゃ、次に、例えばですね、お願いしたいのは、三年というふうに今回の法律改正ではうたっているんですけれども、やはり、大臣がいつも言うように、不断の見直しをしていくというのは、そういった、年齢を切るとか年数を切るとかということが、今の時点では最善だと思って、その年数を設定したり上限を決めたりするんだけれども、やはりこれは、運用していった中で不具合が出たら直すべきだと思うんですよね。その辺はどうですか、局長。今日、何かずっと、局長、局長ってね。

金子政府参考人 お答えいたします。

 まず、三年ということを一つの原則として置きましたが、これも更なる例外を設けていまして、例えば、子が父と継続して三年以上同居していなくても、父が継続して養育費の支払いをしているときとか、断続的に同居と別居を繰り返しているときなど、父による養育の状況に照らして、社会的な親子関係の実態があると言えるような場合も想定し得ることから、このような場合については、子による否認権の行使が父の利益を著しく害するものとして、これを認めないというような手当てもしております。これは御紹介です。

 もちろん、運用していく中で不都合が顕在化するようなことであれば、それは不断に見直していくというのは、民事基本法制を所管する立場でも当然のことと考えております。その点は、今後運用してみて、その状況を検証しながら考えていくということになろうかと思います。

鈴木(義)委員 昨日御質問しようと思った、親権と監護権という考え方、これで裁判になったときに、自分の方は親権を取る、自分の方は監護権を取る。でも、それでも結局、家庭裁判所に訴えたとしても、それがまたトラブルの元になったりするんですけれども。結局、子供を最大限にといいながら、例えば、同棲関係で子供ができて婚姻をする人もいるだろうし、中には、婚姻をしないで子供を出産させて、後から認知をする、しない、これでももめる話も聞きます。

 ですから、そうはいいながらも、この世に生を受けて生まれてきた子供をどう育てていくかということを国がどこまでサポートしてあげられるかということに尽きるのかなと。結論を言っちゃったんじゃ質問者にならないんですけれども。

 それでは、民法の七百七十二条の、昨日も途中で止めてしまったんですけれども、推定の及ばない子というのが実在したときに、昨日も御答弁いただいたんですけれども、裁判に訴えなければ何にも解決しない制度になっちゃっているんです。

 でも、どう見ても、例えば妻が婚姻中に懐胎した場合であっても、ほとんど、妻が子を懐胎すべき時期に、既にもう夫婦関係が破綻してしまっていて、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らか。ということは夫の子じゃないというのが幾らでも証明できたとすれば、やはり、推定が及ばないとするんだったら、規定をきちっと設けた方がもっとすっきりいくんじゃないかと思うんですけれども、またそれは裁判に訴えないと。いや、これもそうだ、あれも、法テラスがあります、弁護士の費用はサポートします、何しますと、付随的にそれをやるんじゃなくて、元々の前提条件をきちっとした方が問題の解決を図れるんじゃないか。

 これも、民法の七百七十二条の推定が及ばないといって、いわゆる外観説というんですか、難しい言葉なんですけれども、外観上そうなんだろうというふうに見解が示されて、判例もこの立場によると聞くんです。裁判をやったときに、それで、外観説に基づいて、まあそうですねというふうに判決を出している。であるならば、基の前提として、推定が及ばないということはこういうことですというのをきちっと規定化した方がいいんじゃないかという考え方です。いかがでしょうか。

金子政府参考人 委員御指摘のとおり、形式的には嫡出推定が及んでいるという場合でも、懐胎時期と思われる時期に、既に夫婦が事実上の離婚をしていて夫婦の実態が失われているといったことが明らかであるような事情が存するときには、嫡出否認という非常に制限の厳しい訴えの方式ではなく、別の方式での手続が、裁判の手続が認められている、これは委員御指摘のとおりです。

 ただ、これは判例法理になっておりますけれども、これは、裁判所がこの法理を使う場合には非常に有力な方法だと思います。というのは、明らかだというのが誰にとって明らかなのかというと、例えば、これを裁判を経ずに戸籍の窓口でするといったときに、今、質問の前提は、明らかだということを前提に置いておりますけれども、明らかかどうかというのを、じゃ、どうやって出生届を受ける場面において認定するのかという難しさがございます。

 判例法理自体は明確で、じゃ、それを裏づけるものを制度化するということに考えられますけれども、その制度化が非常に難しい。しかも、それがきちんと運用できるように、戸籍の窓口で困らないような形で要件化をする、ここの部分がなかなか難しかったがために、法制審議会でもこの判例法理の制度化は、議論しましたけれども、いわば断念したということがございました。

 やはりその難しさというのは、客観的に見てそういうことが明らかな場合があるというのはそのとおりなんですけれども、それを誰が認定するのかということと切り離しては制度化ができないという問題です。

 裁判所であれば、個別の事情を双方から話を聞いたりということで判断する道がありますけれども、それを、そういう手間をかけずに、ある程度誰にでも適用される客観的な資料からそれを認めるという、戸籍の窓口でも認めるような制度を仕組むというのがなかなか難しいという点を御理解いただければと思います。

鈴木(義)委員 理解しないから質問しているんだけれども、まあいいですよ。

 例えば、昨日の議論も今日の議論もそうなんですけれども、紙に、婚姻届、署名を書いた後、たしか二人ぐらい、成人の人の保証人を書いて紙を出せば、それで婚姻届を受理すれば、もう後は全然分からない、婚姻関係が破綻しているかも分からない、その後ですね。

 私の知人でもやはり、結婚はして、私も結婚式に呼ばれました。子供を身ごもったんだけれども、何が原因かは分かりませんけれども、離婚するんです。それは分からない。二回目の招待状が来て、私、行きましたよ。余計なことを言うんじゃない、だって、それだっていろいろ事情があるんでしょう、家庭によっては。新しく結婚された奥様の子、三人、子をもうける人がいましたけれども。家庭の中というのはいろいろ、男と女の関係というのは難しいと思うんですね。それを制度にはめ込もうとするから、余計そこからはみ出ちゃう人が出てきているのが今の現状じゃないかと思うんです。

 やはり、子を授かったら、親が一義的には子育てをする、成人までは責任を持ってやるというのが前提だと思うんです。それを何か、こっちの、前の夫がこうだ、後の、一緒になった人が、養育権がどうだこうだというから、両方で、じゃ、ちゃんとお金を出して子供を育てるというんだったら円満にいくんじゃないかと思うんですけれども、それを何か、家庭の、まあ、婚姻というところに縛りつけるという言い方はちょっと語弊があるんでしょうけれども、その中に子を入れれば何か幸せに育つような答弁にしか聞こえないんですけれども、その辺のところをもう一回ちょっと確認をしたいんですけれども、局長でいいですか。大丈夫ですか。

金子政府参考人 恐縮ですが、委員がまさに今おっしゃったとおり、家庭の中はそれぞれ千差万別なんです。例えば、そこからお子さんが生まれたって、それを実際には、客観的には、誰が父かというのはなかなか分からない問題だ。

 しかし、制度をつくる以上は、ここは夫婦である以上は、そこにお子さんが生まれる性関係というのが想定できて、そこで生まれたお子さんについては、そこで懐胎したお子さんについてはこの夫婦のお子さんとして扱うということにします。その上で、しかし、違う場面も起こり得るので、嫡出否認という方法で、実は夫の子ではないというようなことができるようになっている。

 ただ、これは、家庭の中が千差万別である以上、個別の事情をいろいろ考えてみないとなかなか判断がつかないので、そういうことをするに適している裁判所で判断してもらいましょう、それがいいんじゃないかという建前で今できているわけです。それを別途の機関がするとなると、いろいろな、調査能力の問題やらもあり、難しい問題が出てくるということを申し上げたかったんです。

鈴木(義)委員 私も家内によく言われるんですけれども、だまされたと。いや、まあ、そうはいったって、まだ婚姻関係が続いていますから。でも、そんなはずじゃなかったよと。

 誰でも、結婚したとき、空手形をいっぱい切るんですね。手形をいっぱい、おまえを幸せにするからと言って大体一緒になるんですけれども、結婚式を挙げる挙げないは別にしてですよ。空手形を切るんだけれども、日付が入っていないんだ。いつそれが履行できるか、自分も自信がない。だから、日付の入っていない空手形をどんどん出す。いつかは、いつかは。でも、そういうふうに言いながらも、お互い言える間柄はまだいいんでしょうね。もうにおいも嫌だとか、せき払いもくしゃみも嫌だとかと言われちゃうと、もうこれはなかなか一緒に暮らすというのは難しいのかなと。これは個人差があるんだと思うんですけれども。

 じゃ、例えば、もう一つ、確認の意味でお尋ねするんですけれども、これも前にお尋ねしたかもしれません。法律上の父と血縁上の父子関係が存在しない場合において、当該子と法律上の父など、一定の当事者間の関係に合意が成立しているときは、嫡出否認の訴えによらないで父子関係を否定することができるようにした方がいいんじゃないか。前夫がいて、自分がいて、子がいて、きちっとここが合意形成ができていれば、わざわざ裁判所に訴えて、嫡出否認の訴えを起こさない。だって、利害関係人はこの二人しかいないわけだから。

 実際、そうですよね。法務省が間に入って何かするわけじゃないと思うんですよ。前夫と今の夫の間で合意がきちっと形成されて。まあ、いいでしょう、公正証書を組むのなら公正証書を組んだって、そういう手続を踏んだら訴えによらなくても認めてあげるということはできないものなのか。

金子政府参考人 委員が今当事者として想定されているのが、前夫と後夫というお話だったと思います。

 当事者間の合意によって父子関係を否定することができるというふうにすれば、裁判の手続を取るという当事者の手続負担が軽減されるという問題もあろうかと思います。

 ただ、今、前夫と後夫が観念されるような場合に、どちらにも推定が及んでいるということではなくて、再婚後の夫の方の子として推定します。ですので、この場面において、前夫がこの状況に納得していれば、後夫と子供の間の嫡出否認の訴えをわざわざ提起するわけはないので、ここに実際にはそういう形で紛争が起きないという形になると思います。前夫と後夫の間の話合いで合意すれば後の夫の子とするというような場面が、ないといいますか、放っておいても後の夫の子とされるという状況にございますので、合意で定めるというようなことは考えなくていいんじゃないかなと思います。

鈴木(義)委員 昨日も御質問したときに申し上げたように、最後は裁判に訴えるということは、日本の、法治国家である、私たち国民一人一人の最後の手段だと思うんですね。そこに至る前に何か対応できるような制度をつくってあげた方が、ハードルが低くて、問題解決、最終的には問題の解決を図るためにどうすればいいかということだけですね。だから、争いがあるということは、なるべく早く解決をするということが大事だと思うんですけれども、最後、意気込みだけ大臣に聞いて終わりにしたいと思います。

葉梨国務大臣 今、民事局長がるる答弁しました。時間もないので簡潔に申し上げますけれども、やはりある程度の推定を利かせながら、それで、個別の事情を勘案しなければいけないものについては、身分関係は裁判の手続でというのが今のやり方ですし、また、それが原則だろうというふうに私自身は思います。

 いかに裁判にかかる負担を軽減していくか。こちらの課題はまたしっかりやっていかなければいけないと思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、昨日に引き続き、国籍法の三条三項の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 参考人の近藤先生のお話では、ほとんどのケースで、当の本人である子供は、認知が偽装であることも知らないし、国籍の不正取得の意図もない。認知が事実に反することについても何も責任を負うことができない立場にあるにもかかわらず、突然、父を失い、日本国籍も失う。子供が一番の被害者なのに、一番の非難の対象となり、最も大きな不利益を被る、こういうふうにおっしゃっておりました。

 この子供というのは、十八歳未満の方だけではないと思います。近藤先生のあの資料の中にも、二十代の方のお話もありました。

 やはり、こうした理不尽なことに対して、人道に反することに対して、しっかりと日本の国として、日本の政府として対処をすることが必要だというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 各党の質問者に対して全てお答えしているとおりなんですが、やはり、先ほど御質問あって、日本政府は、国民に対して、国民というかそういった無戸籍の方もそうなんですが、温かさが求められているという中で、帰責事由もなくて、そして生活もしている、それから教育も日本で受けているような、子供といいますか、二十歳以上の方も当然含むわけですが、そういう方が不利益を被らないようにしていくということは、私どもの責任だというふうに思っております。

本村委員 それを前提としてお伺いをしたいというふうに思います。

 大臣、無国籍の方を出さないために国籍法の八条四号というところを例として出されておりましたけれども、その八条四号のところは、まず、日本で生まれということが前提になるわけです。

 日本国籍の男性と、そして日本国籍以外の女性のケースで、外国で生まれた子。その後、日本国籍の男性が認知をし、その後、日本に来て、その子供さんも日本に来て、その後、認知が事実に反するとなって無国籍になった子供さん、成人も含む子供さんはどういうふうに救済していくのか。外国で生まれた子も救済するべきだというふうに考えますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

葉梨国務大臣 八条の四号を申し上げましたのは、あくまでもこれは簡易の帰化ということです。それ以外の方にも、国籍法に基づく要件が合えば、帰化という道は、国籍を取りたいということであれば、開かれております。

 それから、やはり無国籍という状態を解消するということは物すごく大事なことです。ですから、日本国籍を必ず取らせるのか、あるいは、元々の国の国籍のままでいていただいて日本で暮らしていただくのか、そこら辺のところは個別の事情によろうかと思いますけれども、いずれにしても、先ほど言いましたけれども、帰責事由がない場合、生活も、教育も日本で受けられているというような方、これが不利益を被ることがないように、いろいろなケースが考えられますが、しっかり個別の状況に応じて対応していきたいと思います。

本村委員 引き続き日本国籍を取って生きていきたいというふうに希望される方へのしっかりとした手厚い支援が必要だというふうに思っております。

 国籍法三条三項で国籍を失う人だけの問題ではなく、その人の子供、その人の孫なども、国籍取得の要件を満たさなければ国籍を失ってしまう可能性がございます。

 国籍を失う効果を遡及させることは、影響が大き過ぎるというふうに、これは子の権利利益に反するということも考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 この点につきましても、最前来答弁をさせていただいておりますが、遡って国籍を失わせるということについては、これは今の現状の規律ということでございます。

 ですから、実は昨日も議論あったところなんですけれども、お子さんとかお孫さん、ここら辺にも影響があるということは、ただ、ここはもう血統主義と例外的な出生地主義、そこの哲学的な議論との絡みになってくるんですが、お子さんとかお孫さん、特にお孫さんなんかの場合は、遡って失わせると、八条四号の対象となることも、簡易帰化ですね、ということも非常に多いだろうと思います。日本で生まれて、しかも無国籍の方の子供であるという、そういったこともしっかり活用して、そこら辺のところが、変な影響が出ない形をしっかりつくっていきたいと思います。

本村委員 支援をされて、近藤先生もそうなんですけれども、弁護士の方からお話を伺いますと、窓口に行って、制度を知らない職員さんがいる、この八条四号さえも知らなくて、無理だと言われて帰されてしまうというケースがあったそうです。

 この支援されている弁護士の方々あるいは支援者の方々と、是非膝詰めで、全ての皆さんを救済できるようなフローチャートのようなものを、やはり支援者の方々が一番、具体的事例を知っていて、レアケースも知っている、そこもこぼれ落ちないように、是非、フローチャートのようなものを各窓口に置いていただくための、膝詰めのそうしたことをやっていただけないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 昨日も私、近藤先生のお話を拝聴いたしましたけれども、必要があれば、私自身もお会いすることは全くやぶさかではございません。また、そういったフローチャートも、しっかり検討していきたいと思います。

本村委員 ありがとうございます。

 是非、支援をされている弁護士の方や支援者の方に会っていただいて、実効ある救済策を取れるようにということをお願いしたいというふうに思います。

 昨日も議論がありましたけれども、この無国籍の発生の防止と解消というのは国際的な要請であるということで、無国籍者の地位に関する条約や無国籍の削減に関する条約は年々締約国が増えていると参考人の方の資料にもありました。国連の難民高等弁務官事務所は、二〇二四年までに無国籍者をゼロにするキャンペーンを行っております。

 親子関係が無効となることによる国籍の喪失を定める国籍法を持つ国は、通常、無国籍となる場合には国籍の喪失は生じないという配慮をしているという指摘もございます。こうした措置を日本も取るべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 そういった制度的な対応については、現在の国籍法が血統主義と例外的な出生地主義を取っていること、そこの例外ということになってまいりますので、今、現段階ではなかなか制度的な対応というのは難しい面があるかな、ただし、個別的な対応はしっかりやっていきたいと思います。

本村委員 罪のない子供、成人を含む子供に対して国籍を剥奪しないことを強く求めたいというふうに思います。

 もしも、一旦無国籍になって、改めて国籍を取得するとしても、帰化するということにしても、子供さん、成人を含む方ですけれども、子供さんが国籍を取得したり帰化の手続を一人でする、あるいはその御家庭でするというのは困難がつきまといます。ですので、無料で支援する施策を講じるべきだというふうに思いますし、法務局が最後まで支援をする、法務局が同行支援ですとかアドボケーターの役割を果たすことなど、支援策を強化することが必要だというふうに思っております。

 また、法テラスも使えないというふうに近藤弁護士もおっしゃっていたんですけれども、今は弁護士さんが支援をしているんですけれども、日弁連の皆さんの、弁護士の方が会費を出して、それで基金をつくって、少しの弁護士費用を肩代わりする制度があるんですけれども、しかし、それはほとんど持ち出しだというお話もございました。

 無国籍になってしまう方の支援をする弁護士の方を始め支援団体、個人が安定的に支援ができるように、家賃ですとか人件費ですとか交通費ですとか通信費ですとか運営費などが賄えるように、しっかりと国が支援を行うべきだというふうに思いますけれども、大臣、見解を伺いたいと思います。

葉梨国務大臣 どこまでというのはなかなか、段階を追ってやっていかなければいけないところはあるだろうと思いますが、まずは、法務局に対して、その取扱いの徹底、これは私どもからもいろいろな形の、留意事項ということを出させていただいておりますが、これもしっかりやっていかなければいけないと思います。

 弁護士会、法テラスとの連携ということでは、これは無国籍とまた対応はちょっと違うんですが、今回、旧統一教会の関係で、法テラスの霊感商法の窓口、そういったものも充実をさせていただきました。そして、これから、予算も関わる話ではありますけれども、私ども、法テラスの民事法律扶助体制、これはしっかりと充実をさせていかなければいけないし、また弁護士会の皆様からも、この件に関して、もし機会があれば、どういうことがお困りなのかということもお聞きしていきたいと思います。

本村委員 是非支援をしていただきたいというふうに思います。

 無国籍になりますと、不法滞在になる、退去強制の手続に入るということですけれども、在留特別許可が認められる前は必ず不法滞在の期間ができてしまうようなことを伺っているんですけれども、不法滞在の期間をつくらないように、結局、法務局と出入国在留管理庁が連携すればできるわけですよね。是非連携して、不法滞在の期間をつくらないように。そうしないと、働いていた人は辞めなければいけない。正社員、あるいは非正規かもしれないんですけれども、働いていて辞めないといけない。もう人生がめちゃくちゃにされてしまうということになってしまいます。

 働き続けることや健康保険証の問題もありますので、是非、法務局と出入国在留管理庁がそうした連携をして、不法滞在の期間をつくらない配慮をしていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 先般も答弁させていただきましたが、法務局それから入国管理庁、これの連携、情報交換、非常に大切だと思います。またあわせて、関係省庁とも連携した取組をしていきたいと思います。

本村委員 よろしくお願いいたします。

 やはり、この国籍法の三条三項、私どもも削除をするべきだというふうに考えております。是非、今後も議論していきたいと思っております。

 今度は、無戸籍の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 本会議でも質問させていただきました。DVの前の夫から逃げて、離婚手続が長引き、別の男性の子を産んだ場合、前の夫の子となるというようなものでは、やはり出生届を出すことができずに無戸籍になるということに関して質問をさせていただきました。

 そのときの大臣の答弁は、本改正法案では、前夫の子と推定される子については、前夫のみならず、子及び母にも否認権を認めることとしており、否認権が適切に行使されることによって、無戸籍者問題の解決が図られるものと考えていますと述べられました。

 DV夫から逃げて、そして生活も困難を極めている母親にとって、嫡出否認の訴えを起こすことはかなりハードルが高いというふうに思っております。嫡出否認の訴えができるといっても、実際に使うことができない、ハードルがあるということであれば、やはりこの無戸籍の問題は解決できない、解決には遠いということになってしまうと思いますけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

葉梨国務大臣 制度的には、さっきも申し上げましたけれども、嫡出否認の訴えを母も子もできるようになりますし、また、施行前の方についても施行後一年は訴えることができるということなんですが、まず、制度を知らないということであったらまずは訴えることはできません。それから、訴えるためには一体どういうようなことを、法律知識、これも持っていなければいけない、そこの相談に応じる体制をしっかりつくらなければいけません。そしてさらには、費用のことも心配されている方、非常に多うございます。ただ、法テラスの無料法律相談あるいは裁判費用の立替え、これについては、四人家族で月収二十九万以下、それから財産が三百万以下ということで、かなり多くの人が救えるようになっている。このことすらやはり知られていないということ、これはやはり問題だと思っています。

 ですから、そういう制度、本当に利用しやすい制度があるんだということをしっかり周知徹底をしていく。さらには、我々としても、体制強化のためにどういうことができるのか検討していく。そういったことをしっかり進めていかなければいけないと思います。

本村委員 住民登録をするということで行政サービスを受けられるということですけれども、大概、出生届を出すことによって行政サービスとつながるということになってくるかと思いますが、その出生届が出されない中で行政サービスと結びつくことが困難になる、困難を抱えている方がますます困難になるということをどうしても避けなければいけないと思っております。

 子供の個人の戸籍を創設するということが必要だと私は思っております。

 熊本市にあります慈恵病院が内密出産をされました。その子供さんは、子供さん単体で戸籍を熊本市さんの職権で作ったということを聞いております。それは、もちろん法務省の皆さん方と相談をしてそういうふうになっているわけですけれども、やはり、それは子供の権利利益を考えて、子供の利益があるからこそ、そういう職権で単体の戸籍を作ったのだというふうに思います。

 現行でもこういうふうにできるわけですから、先ほど挙げたDVケースなど、こういうときにはそういうことで対応していただくということはできないでしょうか。

葉梨国務大臣 内密出産、それから先ほどもお話のありましたいわゆる棄児、こういったケースについては、戸籍法上、職権で市町村長が戸籍を作ることができるというのは、もう御指摘のとおりでございます。

 ただ、先ほど民事局長からも御答弁させていただきましたけれども、戸籍というのは、やはり、身分関係をしっかりと公的に認証して登録するというような性質を持っていますので、母親が明らかである、さらには、お父さんというか、推定される父がいるというときに、子供単独の戸籍を作るということには極めて慎重に対応しなければいけないのではないかと思います。

本村委員 先ほどの寺田議員の議論では、無戸籍でいるか、作るかということで、どっちが子供にとって利益になるかということをお答えにならなかったんですけれども、現場の熊本市さんは、単体で戸籍を作ることこそがやはり子供の利益に即しているということを判断されたのだというふうに思います。やはり、こういう現場の判断も尊重して、子供単体の戸籍を作るということも是非前に進めていただきたいというふうに思っております。

 無戸籍者の方が一万人という数字も出ております。それは、この無戸籍に関わる調停を、年間五百件ぐらいある、それを二十年積み上げると大体一万人だという計算のようですけれども、こうした無戸籍に関わる調停ですとか裁判の事例を検証、分析し、支援に結びつける必要があると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

金子政府参考人 これまでも法務省におきましては、無戸籍者問題の解消のために、無戸籍者ゼロタスクフォースを設置するとともに、法テラス、弁護士会等、関係機関との連携の下に、一人一人に寄り添い、戸籍の記載に必要な届出や裁判上の手続が取られるように支援する寄り添い型の取組を実施してきたところでございます。

 委員御指摘の観点も踏まえて、引き続き、無戸籍状態の解消に向けて可能な支援を行ってまいりたいと考えております。

本村委員 じゃ、調停と裁判の事例の検証はやってくださるんですね。以前聞いたら、まだやっていないというお答えでしたので。

金子政府参考人 調停、裁判の事例というのは、これは多くは家庭裁判所で扱われている事件だと思います。法務省といえども簡単に見られるようなものではございませんので、どのような形で検証していくかという問題は、別途考えていかなきゃいけない問題だとは思いますので、そういう点も併せ考慮しながら、どのような形での検討ができるかは、今後、不断に検討していきたいと思います。

本村委員 是非やっていただきたいんです。刑法の、性犯罪刑法の場合も、なぜ不起訴になったのか、起訴になったのかとか、刑事裁判とかではあるんですけれども、そういう分析をしていただいていますので、できると思うんですけれども、是非やっていただきたいというふうに思います。

 無戸籍の問題についても、メディアでも報じられていますけれども、自治体の行政の窓口で、それはできないというふうに、帰されてしまったりですとか、そういう実態がございます。

 行政の窓口の研修を強化するということと同時に、今日も傍聴されておられる支援者の方がいらっしゃいましたけれども、無戸籍の方々を支援する団体、個人が安定的に支援活動を続けることができるように、先ほども無国籍の問題でも申し上げましたけれども、家賃とか人件費とか交通費とか通信費とか運営費などの全面的支援が、国として行うべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 先ほど無国籍ということでお話し申し上げましたけれども、無国籍と比べて、無戸籍の場合はやはり数がすごく多くなってきます。

 ですから、その意味では、先ほども申し上げましたけれども、自治体の窓口との連携、これは非常に必要だと思いますし、最前、答弁をさせていただきましたが、自治体の窓口を通じて、いろいろな団体の方々とも情報を、やはり、こちらとしてはまず把握をするということが必要ですから、いろいろな形で情報をいただきながら、支援の検討、これをしていきたいと思いますし、先ほどのように、法テラスにおける民事法律扶助の強化とか、そういった関係団体等々とも連携を進めることで無戸籍状態の解消にしっかり対応していきたいと思います。

本村委員 子供さんが、不安定な状況、心理的な負担、こういうものがかからないように、是非引き続き、この無戸籍の問題についても、法務省としても全面的に支援を行っていただきたいというふうに思っております。

 次に、嫡出の問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 十一月一日の本会議で、嫡出という用語は、家督制度、家督相続の下、正統な血統かどうかという差別的な概念で用いられてきた、この嫡出推定制度と戸籍の制度を根本的に見直すべきだということを質問させていただきました。

 これに対して大臣の答弁は、具体的な立法事実や国の意識等を踏まえた検討が必要だ、法令用語については、社会情勢の変化等を踏まえ見直しを要するものと考えており、法務省としては引き続き検討を進めてまいりますというふうに述べられました。

 引き続き検討ということですから、今までもやってきたし、これからもやっていくということだと思いますが、この検討というのは具体的にどのようなことでしょうか。

葉梨国務大臣 用語について申し上げますと、嫡出子と嫡出でない子、これについては、最高裁も、かつては相続なんかの不利益等ございましたので差別的な取扱いがあったんですけれども、取扱いとしてはもう全然差別ではない。ですから、用語として、じゃ、差別かというと、たしか答弁をした覚えがございますけれども、必ずしもそうでもない。

 ただし、その用語が本当に適当かどうかということなんですが、ただ、この嫡出子というのを、推定によって親の子とした子供としても、後で嫡出否認の訴えということで、そういうような形で定義することもなかなか難しいところもございます。あるいは、嫡出でない子というのを、例えば、認知とか嫡出否認の訴えにより子とされた子供としても、これもやはり過不足がどうしても生じてしまうということもございます。

 ですから、今回、ここのところは、用語としては嫡出子という用語を使わせていただいたわけですけれども、いろいろな御意見を踏まえて、どういう切り分けが可能なのか、もしかして委員の方からも何らかの御提案がありましたら、是非御提示いただければというふうに思うんですけれども、本当に、社会情勢の変化に応じて、こういった法令用語については、国民のしっかり理解が得られるように、不断の検討をしていきたいと思います。

本村委員 差別のない、子という表現ですとか、そうした、差別的であるというふうに、正統な血統かどうかというようなことを言われないような表現に是非していただきたいというふうに思っております。

 個人の尊重の観点から、嫡出制度そして戸籍の制度を抜本的に見直すべきだというふうに私は思っているんですけれども、是非、そのための研究会ですとか検討会、開催をしていただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 まず、この法律を是非、御審議の上、成立をさせていただきたいと思います。

 そして、親子の関係あるいは家族の関係については、これまた、親権の議論等々も含めまして、現在、法制審議会で今並行して議論をしている。ですから、そういった中で、まさに子の利益を図る観点から、不断の検討を進めていきたいと思います。

本村委員 是非お願いしたいというふうに思います。

 最後に、選択的夫婦別姓について伺いたいというふうに思います。

 本会議でも求めさせていただきました。コンセンサスを得ていただくため、法務省としては、引き続き積極的に情報提供を行ってまいる所存ですというふうに大臣は本会議で答弁をしていただきました。

 コンセンサスを得るための法務省の情報提供というのはどういうものか、お示しをいただきたいというふうに思いますし、やはりこの選択的夫婦別姓は人権の問題であるという認識に是非立っていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

葉梨国務大臣 まず、情報提供としては、法務省として、ホームページ等において積極的広報を行っているわけですが、その内容ですが、平成二十二年に政府において準備した法案の骨子、あるいは現行法、それから選択的夫婦別氏制度に関する戸籍の記載例、こういったものの情報を提供しています。

 平成八年ですか、法制審の答申がございました。その内容について、一般質疑の中でも御議論がありましたけれども、私どもは、あの答申というのはしっかり踏まえなければいけない、その上で国民のコンセンサスをしっかり得なければいけないというふうに思っておりますので、これに加えて、さらに、国民に対するアンケート調査の内容、できるだけその判断の材料をしっかり提供していきたいというふうに考えています。

本村委員 選択的夫婦別姓は人権の問題ですから、たとえマイノリティーであっても、人権でしたら救済しなければいけないということになると思います。是非そういう観点からも進めていただきたいということを強く求め、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、宮崎政久君外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。宮崎政久君。

宮崎委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 嫡出の推定が及ぶ範囲の見直し及びこれに伴う女性に係る再婚禁止期間の廃止など本法による改正内容について十分な周知に努めること。特に、本法の施行の日前に生まれた子に適用される子及び母の否認権の行使については本法の施行の日から一年間に限り認められていることに鑑み、対象となる無戸籍者等に対する周知が遺漏なく行われるよう努めること。

 二 本改正が無戸籍者対策として行われることに伴い、無戸籍者が司法手続を利用しやすくするための支援や、行政サービスを受けられるよう、関係機関が綿密な連携に努めること。

 三 母や子が父を相手に否認権を行使するに当たり、DVや児童虐待等がある場合があることを踏まえ、相手方と対面することなく、また、相手方に住所等を知られることなく手続を行うことができる措置を講じるなどの柔軟な運用について周知すること。

 四 本法施行後も、本改正が無戸籍者問題の解消に資するものとなっているかを継続して検証し、必要に応じて、嫡出推定制度等について更なる検討を行うこと。

 五 国籍法第三条の改正により、国籍取得後に事実に反する認知が明らかとなった場合には、認知の無効を争うことができなくなった後であっても当該認知された子の国籍取得が当初から無効であったこととなり日本国籍が認められなくなることを踏まえ、無国籍者の発生防止の観点や日本人として生活していた実態等を十分に勘案して、帰化又は在留資格の付与に係る手続において柔軟かつ人道的な対応を行うこと。

 六 民法の懲戒権の規定に関しては、児童虐待の口実として使われることを防止するために当該規定の削除等が行われることを踏まえ、体罰等は許されないという認識を社会全体で共有するために積極的かつ細やかな広報活動を行うなど、本改正の趣旨についての周知徹底及び関係機関との連携に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。葉梨法務大臣。

葉梨国務大臣 ただいま可決されました民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十三分散会


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