衆議院

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第9号 令和4年11月16日(水曜日)

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令和四年十一月十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 薗浦健太郎君 理事 谷川 とむ君

   理事 藤原  崇君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    今枝宗一郎君

      岩田 和親君    上杉謙太郎君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      熊田 裕通君    島尻安伊子君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    津島  淳君

      中川 郁子君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      三谷 英弘君    八木 哲也君

      山下 貴司君    鈴木 庸介君

      中川 正春君    馬場 雄基君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   デジタル大臣政務官    尾崎 正直君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長)   松浦 克巳君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 友井 昌宏君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            川崎  暁君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   村上 敬亮君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   菅原  希君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       吉川  崇君

   政府参考人

   (法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           押切 久遠君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    花村 博文君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  松下 裕子君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    春名  茂君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    田野尻 猛君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 今福 孝男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           野村 知司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           原口  剛君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  熊田 裕通君     八木 哲也君

  津島  淳君     今枝宗一郎君

  鳩山 二郎君     中川 郁子君

  深澤 陽一君     上杉謙太郎君

  吉田はるみ君     馬場 雄基君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     島尻安伊子君

  上杉謙太郎君     深澤 陽一君

  中川 郁子君     三谷 英弘君

  八木 哲也君     熊田 裕通君

  馬場 雄基君     吉田はるみ君

同日

 辞任         補欠選任

  島尻安伊子君     津島  淳君

  三谷 英弘君     鳩山 二郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長松浦克巳君、警察庁長官官房審議官友井昌宏君、金融庁総合政策局参事官川崎暁君、デジタル庁統括官村上敬亮君、デジタル庁審議官菅原希君、法務省大臣官房政策立案総括審議官吉川崇君、法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官押切久遠君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長川原隆司君、法務省矯正局長花村博文君、法務省保護局長宮田祐良君、法務省人権擁護局長松下裕子君、法務省訟務局長春名茂君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、公安調査庁次長田野尻猛君、外務省大臣官房審議官石月英雄君、外務省大臣官房参事官今福孝男君、外務省大臣官房参事官松尾裕敬君、厚生労働省大臣官房審議官野村知司君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君及び厚生労働省大臣官房審議官原口剛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局家庭局長馬渡直史君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。岩田和親君。

岩田委員 おはようございます。自由民主党の岩田和親でございます。

 本日、この法務委員会が開催をされ、そして質疑となりましたのは、齋藤大臣の就任を受けてということなわけでありますが、大変残念なことに、お祝いを申し上げられるような雰囲気ではありません。大臣にとって極めて厳しいスタートであるというふうに、まず申し上げます。

 葉梨前大臣の大変残念な発言があり、辞任となりました。法務行政という法秩序の維持や国民の権利を守るなどの極めて重要な使命を帯びた任務を軽んじ、国民からの信頼を揺るがせたというような状況でございます。このような発言は、我が国の国民生活の基礎を担う法務省のトップとして、到底認められないものであります。

 そもそも、法務大臣は、死刑の執行の命令を始めとして極めて重大な職責を有し、また、現在、「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議の主宰者として被害者の救済に取り組むという立場です。さらには、家族法制の見直しや入管法の改正、そして司法外交といった重要な課題に取り組む立場でありまして、その責任は極めて重大なわけです。このような法務大臣が、先ほど述べた発言によって、辞任に至ってしまいました。

 その後を引き継ぐことになった齋藤大臣におかれましては、もちろん、様々な意気込みや決意、こういったものもあられるとは思いますけれども、まず大前提として、国民からの信頼をしっかりと回復をしなければ、様々なこういった課題に立ち向かっていくことはできない状況なわけです。

 葉梨前大臣の辞任について、国民に対しての信頼回復をまず果たしていくべきだと考えますが、法務大臣のお考えをお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 委員御指摘のように、一番大事なことは、国民から信頼される法務行政の実現であると考えています。

 法務省は、基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護など、重大な使命を帯びております。

 私は、法務省がその重大な使命を一つ一つしっかりと果たすことによって国民の皆様からの信頼を得ることができればと、努力していきたいと思います。

岩田委員 もう一点、この信頼という言葉において心配をしておることがございます。葉梨前大臣の発言、これが法務省の職員、また関係者に対してどのような影響を与えているのかという点であります。

 葉梨大臣の発言は、死刑という極めて重たいテーマに関わる発言であったということ、そしてまた、発言の中には、地味な役職という、このような言葉もありました。こういった言葉が、法務省の職員、また、それに関わる方々に対して、やはり極めて残念な言葉であっただろうと、そのように私も大変心配をしているところであります。

 もちろん、死刑という、それに関わる業務をされておられる皆さんは、本当に重たい責任、その職務の重さを感じながらされているんだということは言うまでもないと思いますし、全国各地、津々浦々で、法務行政を忠実に、着実に果たすべく努力をしている皆さん、そして、保護司の方々を始めとして民間の方々にも御協力をいただいている状況。こういった皆さんが重要な法務行政を執行するに当たって、その士気ややる気、こういったものが落ちてしまうというふうなことはもちろんあってはならないわけでございます。

 この点、齋藤大臣も大変御心配なんだというふうに思いますけれども、改めて、職員の皆さんに対しての法務大臣としての姿勢や今後の取組、この点についてお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 葉梨前大臣の発言について、これは御本人がしっかり説明をするべきだと思っておりますので、私の方からコメントは差し控えますが、ただ、二度とこのようなことを起こしてはいけないという決意だけは持っております。

 その上で、職員の皆さんとの関係なんですけれども、私は、二十三年間、官の世界におりました。その後、浪人も含めて十六年、政の世界におりました。官から政を見、政から官を見るという経験をしてまいりました。その中から、官の皆さんに申し上げたいことはいろいろあるということで、この間、訓示で申し上げました。

 それは、萎縮をしないでほしいということでありました。今、日本は大変大きな曲がり角にあって、官の能力と献身的な貢献が今ほど必要とされているときはない、そういうことであるので、皆さんは国家的見地に立って堂々と仕事をしてほしいと。それから、大臣とは気軽に、そして、お互いの思うところをぶつけ合うような、そういう風通しのいい組織にしていこうじゃないかと。そういう趣旨のお話をさせていただきましたので、それに沿って行動していきたいと思っています。

岩田委員 大臣の決意、御答弁をいただきました。

 最初に法務省の職員に対しての訓示の中で今御答弁いただいた内容をおっしゃったということは私も賜っておりまして、まさに大きくうなずくところがございました。齋藤大臣のリーダーシップで、是非、職員の先頭に立って、様々な課題が今山積しておりますけれども、法務行政を着実に前に進めていただきたい、このように願っておるところであります。

 その中で、改めてといいますか、きちんと確認をしなければいけないこと、それは、法務大臣の死刑制度そして死刑の執行についての考え方でございます。

 法務大臣の重要な職責である死刑について、前大臣が軽々しくこれを扱っていたんじゃないか、このような今声があるわけでございます。そしてまた、先ほども申し上げましたが、職員の皆さんの士気にもこれが影響しているんじゃないか、こういう心配もしております。

 齋藤大臣の、死刑制度及び死刑の執行についてどのような考えを持たれているのか、お尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 死刑制度に関しましては様々な議論があることは承知をしておりますが、死刑制度の存廃は、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題でありまして、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等、様々な観点から慎重に検討すべき問題だと考えています。

 国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えておりまして、多数の者に対する殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等を鑑みますと、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては死刑を科するということもやむを得ないのであり、私は死刑を廃止することは適当ではないと考えています。

 死刑の執行についてもお尋ねがありましたが、死刑が人の生命を絶つ極めて重大な刑罰であることから、その執行に際しては、慎重な態度で臨む必要があると考えています。

 それと同時に、法治国家においては、確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないことも言うまでもないところであります。特に死刑の判決は、極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対し、裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものでありますから、法務大臣としては、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って、慎重かつ厳正に対処していきたいと考えています。

岩田委員 今、大臣のお言葉から、慎重、厳正というような言葉の下で、死刑の制度そしてまた死刑の執行についてお答えをいただきました。本当に極めて大事な職責、大変だとは思いますけれども、果たしていただきたい、このように思います。

 では、続きまして、旧統一教会の問題についてお聞きをいたします。

 政府では、法務大臣を議長とする「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議を設置をして、これまで関係省庁の連携による合同電話相談窓口における相談対応等の取組を行ってきました。

 これらの取組を踏まえ、寄せられた相談状況の分析等に基づいて、今月十日の第三回連絡会議において、被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化のための方策が取りまとめられたところでございます。

 この問題について、今後、具体的にどのように取り組まれるお考えか、法務大臣にお聞きします。

齋藤(健)国務大臣 先日、「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議の第三回会議を開催しまして、先生御指摘のとおり、関係省庁において、被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化のための方策を確認して、申し合わせました。

 具体策ということでしたが、その方策の一つとして、法テラスにおきまして、合同電話相談窓口の機能等を継承した対応窓口である霊感商法等対応ダイヤルを新設しまして、金銭的トラブルに限らず、心の悩み、生活困窮等、旧統一教会問題やこれと同種の問題に関する相談に幅広く対応するとともに、心理専門職等を配置した対応部署を新設しまして、専門的知見を活用しながら、相談事例の分析や支援策の企画立案等を実施していくということといたしまして、十一月十四日、霊感商法等対応ダイヤルの業務などを開始をしたところであります。

 また、法務省としましては、関係省庁との緊密な連携の下に、寄せられた相談等の必要な情報の共有を図りまして、法テラスを中核として、関係相談機関等を互いにつなぐネットワークを強化するなどして、相談対応の充実に努めていくこととしたところであります。

 今後とも、申し合わせた方策について関係省庁と連携しながらしっかりと推進するとともに、被害者の実効的な救済に向けた取組というものを強力に推進していきたいと考えています。

岩田委員 この点も今、大変重大な課題でございますし、法務大臣はこの関係省庁会議の議長でありますので、是非リーダーシップを発揮していただいて、またスピード感、これを持って取り組んでいただきたいというふうにお願いをいたします。

 この後、ちょっと順番を変更しまして、入管問題についてお聞きをしたいというように思います。

 大臣は、所信表明におきまして、名古屋入管で発生をしたウィシュマ・サンダマリさんの死亡事案を重く受け止めなければならない、調査報告書で示された改善策を中心として改革を更に進めると述べられました。まさにそのとおりであるというふうに思っております。

 そこで、まず確認をさせていただきたいのですが、この改善策を進める前提として、名古屋入管におけるウィシュマ・サンダマリさんの死亡事案を踏まえた課題とその改善策、そしてその実施状況について、法務当局にお答えいただきたいと思います。

西山政府参考人 委員御指摘の名古屋局におけますウィシュマさんが亡くなられた事案、これを受けまして、入管庁におきましては、外部有識者に客観的、公正な立場から御意見、御指摘をいただきつつ、問題点を広く抽出して検討を行い、その結果として、十二項目の改善策を含む調査報告書を取りまとめ、その着実な実施に取り組んでいるところでございます。

 具体的には、職員の意識改革を進めるため、出入国在留管理庁職員の使命と心得を策定いたしました。その上で、調査報告書で示された改善策について、名古屋局における非常勤医師の増員や情報共有体制の構築、救急対応に係るマニュアルの策定、過去の死亡事案における再発防止策の実施状況の点検と再徹底の指示などを行ったほか、医師による診療時には原則通訳人を手配すること、被収容者からの体調不良の訴えを職員が聞き取る際には機械翻訳機器を活用するなどして意思疎通を図ることに関する通知等の発出や、要領の改定などの措置を講ずるなどして実施してきたところでございます。

 さらに、本年二月の医療体制の強化に関する有識者会議からの提言で示されました庁内診療体制の強化や各官署の診療室間の連携強化などの取組につきましても、全国診療室連絡会を開催するなどして具体化を進めております。

 また、被収容者に対しては、全ての新規入所者に対し入所後原則十日以内の健康診断を実施いたしております。

 引き続き、入管庁の全ての職員とともに、入管収容施設における医療体制の一層の強化など、被収容者の命を守るための不断の努力をしっかりと積み重ねてまいりたいと考えております。

岩田委員 今、着実に改善策、これに取り組んでおられるというふうな話を承りました。

 では、大臣にお聞きしたいと思いますが、被収容者の人権に配慮した適正な処遇の実施を徹底するため制度の整備を行うことも必要だ、このように述べられております。ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事案を踏まえて行っていかれるんだと思いますが、今後の入管行政の在り方について、法務大臣のお考えをお聞きします。

齋藤(健)国務大臣 まず、入管収容施設に収容されている方が亡くなられたということについては極めて重く受け止めなければいけないと認識しています。

 被収容者の健康を保持するために必要な診療その他の措置を講ずること、また、死亡事案が生じないよう処遇全般を適切に行っていくことは、私は入管行政の責務であると認識しています。

 今後の入管行政の在り方ということでありますが、この調査報告書では、医療的対応のための体制整備やその運用が十分でなかったこと、人権意識に欠ける不適切な発言など、職員の意識の問題などが指摘をされておりまして、入管庁では、令和三年八月以降、調査報告書で示された改善点を中心に、組織、業務の改革を推進をしているところであります。

 また、外国人の人権に配慮した適正な処遇等の実施を徹底するための制度の整備が必要だと考えておりまして、現在検討を進めているところで、昨年の通常国会において提出をしました入管法改正法案においても、収容せずに退去強制手続を進め、監理人の監理の下で社会内での生活を認める監理措置の創設、あるいは、入管施設における適切な処遇の実施、入管施設における医療の充実などの規定を設けているところであります。

 他方で、人道上の危機に直面する真に庇護すべき方々をより確実に保護する制度の整備もまた早急に対応すべき重要な課題でありまして、長期収容及びその原因となっている送還忌避の問題と併せて、これらの課題を一体的に解決し、出入国在留管理制度全体を適正に機能させるための法整備を速やかに検討していきたいと考えています。

岩田委員 ちょっと時間的に最後の質問になるかと思いますが、国際化、国際貢献の推進について、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

 大臣は、旧通産省、そして国会議員として、国際関係にも高い御見識をお持ちだというふうに賜っておりますが、そういった中で、法の支配の推進、そしてルールに基づく国際秩序、これをしっかりと日本がリーダーシップを取ってやっていかなければいけないということは、目下のロシアによるウクライナ侵攻を言うまでもなく、極めて重要な課題であると考えております。

 そういった中で、先週の十二日、カンボジアにおいて開かれた日・ASEAN首脳会議において、岸田総理が、アジアの未来を考えるときに最も重視しているのが日・ASEAN関係である、そして、日・ASEAN友好協力五十周年を迎える二〇二三年の十二月をめどに東京で特別首脳会議を開く、このように発言をされたところであります。

 大臣、大臣の挨拶の中での、ASEANにおけるルールに基づく国際秩序の維持強化のための取組として、来年開催予定の日・ASEAN特別法務大臣会合、このことについて触れられたわけですけれども、この開催の意義をお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 法務省では、法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的価値を国際社会に推進するための取組であります司法外交をこれまで展開してきております。

 その柱の一つとして、長年にわたり、ASEAN各国を含むアジア諸国を主な対象といたしまして、法制度整備支援や、国連アジア極東犯罪防止研修所、UNAFEIの国際研修を実施をして、法の支配の浸透に貢献するとともに、ASEAN各国と確固たる信頼関係を構築してまいりました。

 この実績を踏まえて、来年、日・ASEAN友好協力五十周年の節目を迎える機会に、ASEAN各国の法務大臣を日本に御招待いたしまして、日・ASEAN特別法務大臣会合を開催することとしております。

 本会合では、ASEAN各国との間で法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的価値の共有を確認しまして、ASEAN地域におけるルールに基づく国際秩序の維持強化にリーダーシップを発揮するとともに、法制度整備支援等の取組を更に深めて、戦略的な司法外交を推進していきたいと考えています。

 本会合の開催につきましては、ASEAN各国からも強い歓迎の意と期待が示されております。本会合の成功に向けて、全力で取り組んでまいりたいと思います。

岩田委員 最後に、重ねて、信頼回復のために全力を尽くしていただくことを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 前大臣が急遽辞任という極めて残念な事態に陥ったことを受けて、新たに大臣になられた齋藤法相にお伺いします。

 民法改正という大事な法案審議のさなかでの大臣交代となられたわけですが、当然ながら、国会も行政も一刻たりとも停滞は許されません。法務省は、言うまでもなく、法治国家としての我が国の法をつかさどる大切な行政機関です。ところが、この度の事案によって、法務行政に対する国民の信頼感や、法務省職員の使命感やモチベーションが大きく揺らぐことになってしまったのではと危惧しております。

 大臣も所信の中で決意を述べられておりますが、改めて法務行政の重責を担い、五万人を超える法務省職員のトップとして、いかに法務行政への国民の信頼を回復させるのか、また、いかに法務省職員のモチベーションを維持向上させていくのか、齋藤大臣の御決意を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 法務省は、基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護など、重大な使命を帯びている役所であります。

 私は、その法務省が重大な使命を一つ一つしっかりと果たすことによって国民の皆様からの信頼を得ることができればと考えています。

 前大臣の発言につきましては、私の方からコメントをすることは差し控えたいと思いますが、二度とこのようなことがないように、私は肝に銘じて職務に邁進していきたいと考えています。

 法務省職員のモチベーションの維持につきましては、私が範を示しながら身を律していくことに加えまして、私がたまたま官と政の両方を経験している立場から、今の日本が置かれた状況において、官の高い能力と献身的な貢献が今求められている、だから一緒に汗をかいて、国家的見地から国民に貢献していこうじゃないかという雰囲気を努力してつくり上げていきたいと考えています。

日下委員 今回の民法改正を含めて、これからも重要な法律が審議されていくと思います。本当に停滞は許されない今状況でございますので、大臣の大きなリーダーシップを御期待申し上げたいと思います。

 次に、死刑制度というか、死刑について、少しお話を伺いたいと思います。

 今回、死刑に関しての失言、むしろ、その根っこにある認識に対して、多くの国民が疑念を抱いたと思います。

 私がこの夏、死刑制度を考えようと読んだ本に、ノンフィクション作家の堀川恵子氏が書いた「教誨師」という本があります。

 教誨師とは、各宗派の教義に基づき、死刑囚や受刑者に向き合い、心の豊かさを説き、改善更生に努める活動をボランティアで行う宗教家のことです。

 この教誨師は、長年にわたり、幾人もの死刑囚と向き合い、寄り添い、刑の執行に立ち会い、今は直前でカーテンで仕切られるようになっていると書いていましたけれども、現実を見詰めてきた方の実話です。教誨師には守秘義務がありますから、自分が死ぬまで表には出さないという約束の下に書かれた本でございます。

 その中に、著者が法務大臣経験者から聞いた話として、

 在任中、死刑の執行業務を管轄する矯正局長を大臣室に呼んで、「死刑制度について検討したいので、執行に立ち会った経験のある職員に話を聞かせてほしい」と頼んだ時のことだ。高級官僚と呼ばれる人々は、たとえその命令を断らなくてはならないことが分かっていても、一旦は命令を持ち帰り検討するふりをする。ところが局長は、その時だけは「それだけはご容赦下さい、誰も思い出したくないのです」ときつい口調で即答したという。現場を知る者はみな、口をつぐんでしまう。

  死刑執行を行うのは、どこにでもいる普通の人間だ。たまたま刑務官という仕事に就いたばかりに、我が子を抱くその手で、今、目の前で生きている人間を処刑しなくてはならない。衣食住になんの不自由もなく、不条理な身分制度という鋳型もなくなった現代社会にあっても、いまだ「死刑執行人」という仕事が存在し、有無を言わさずそれをやらされている人たちがいる。

と。

 また、著者は、この教誨師がふとつぶやくようにその口から漏れた言葉が忘れられないと。それは、本人が執行されても、死刑が執行されてもという意味だと思いますが、本人が執行されても、幸せになった人間は誰一人もいませんと。

 著者は言います。教誨師に限らず、死刑という難題に真剣に向き合ったことのある者なら、その立場を問わず、誰もが共通して胸に感じる虚無感のようなものがある。社会事件について遠く忘れ去った頃、死刑は執行される。世間で言われるような、とうとう敵を取ったとか、正義が貫かれたなどという勇ましい感慨も、達成感も、そこにはない。被害者遺族も、もろ手を挙げて喜んでいるわけではないだろうと。そして、私たちは死刑のある国に生きている。いかなる事情があるにせよ、生身の人間をくびり殺すことが合法とされる現場について、もっと現実を知り、想像力を働かせ、その結末がどんな社会的な利益をもたらしているのか、いないのかを考え続ける義務があると言っています。

 齋藤大臣は、在任中に死刑執行に係る決裁をする場面があった場合、その手続にどのような心構えで臨まれる覚悟か、お考えをお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 今のお話は、本当に私の責任の重大さを改めて感じさせるものでありました。

 死刑は人の命を絶つ極めて重大な刑罰でありますので、その執行に際しては、慎重な態度で私は臨む必要があると考えています。

 ただ、それと同時に、法治国家においては、確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないということも言うまでもないところであります。死刑の判決は、極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対し、裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものでありますので、法務大臣としては、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って、一つ一つ、慎重かつ厳正に対処していきたいと考えています。

日下委員 死刑制度は、今国際的に廃止されている潮流の中で、国内においても、その存廃については、一部に根強い廃止論もあり、議論が分かれております。今後も真剣な議論の積み重ねが必要だと思いますので、是非よろしく検討をお願いしたいと思います。

 次に、再犯防止対策についてお尋ねいたします。

 現在、法務省においては、再犯防止のために、再犯防止推進計画加速化プランなどに基づいて、更生保護施設退所者等に対する訪問支援事業、満期釈放者等に対する地域における支援ネットワークの整備等を行う更生保護地域連携拠点事業、地方公共団体における再犯防止の取組を促進するための知見の共有や協議などを行っております。

 先日も当委員会でお尋ねいたしましたが、現在も満期釈放者の再入率が仮釈放者の二倍を超えており、再犯防止にとって、この満期釈放者の再犯、再入をいかに食い止めるかが重要な鍵を握っていると思います。

 満期釈放者の再入率を減らすために、満期釈放者に対する就労支援を始め、より高いケアが必要であり、それらを実行するには、より身近に暮らす地域社会の理解と協力が欠かせません。法務省は令和五年度の概算要求で都道府県が再犯防止に取り組むための予算措置を盛り込んでおられますが、地方自治体への支援については、地方財政措置も含めしっかり取り組んでもらいたいと思います。

 改めまして、再犯防止対策に取り組む法務大臣の所見をお尋ねいたします。

齋藤(健)国務大臣 新たな被害者を生まない安全、安心な社会の実現のためには、犯罪をした者などの改善更生、再犯防止を図ることが重要であります。そのためには、刑事司法手続終了後も地域社会の中で孤立することなく生活していくことができるよう息の長い支援を行うことが必要でありまして、住民に対する様々な行政サービスを提供する地域公共団体や、保護司を始めとする地域の民間協力者の役割が不可欠であります。

 これまで法務省は、地方公共団体における再犯防止の取組を促進する観点から、モデル事業の実施や、その成果などの横展開等を行ってきたところであります。

 地方公共団体からは、再犯防止の取組をより持続的かつ的確に進めるために、国と地方公共団体の役割分担を明確にしてほしい、あるいは国からの財政支援が必要であるなどの御意見を数多くいただいているところであります。

 法務省では、現在、次期再犯防止推進計画の検討を進めておりまして、これまでの取組や地方公共団体の御意見、あるいは保護司などの民間協力者の活動や御意見などを踏まえて、更なる施策の充実を推進していく所存であります。

日下委員 やはり、各自治体、保護司を始め地域の方の協力が本当に大切だと思いますので、是非取組の方をお願いしたいと思います。

 次に、難民支援についてお尋ねしたいと思います。

 ウクライナからの避難民受入れについて、我が党がウクライナ避難民の積極的な受入れをいち早く政府に申し入れたことなどを受け、身元保証人の有無にかかわらず、出入国管理庁においても柔軟な対応をいただいております。

 これまで何名のウクライナ避難民が入国され、現在、何名の方々が日本に在留しておられるのか、まずその実態について出入国管理庁にお伺いいたします。

西山政府参考人 避難を目的として本邦に入国された方は、総理がウクライナ避難民の受入れを表明された三月二日以降十一月十四日までで、速報値ですけれども、二千百二十四人となっております。

 また、避難された方のうち本邦に在留する方は、十一月十四日時点で、これも速報値で、二千三十一人となっております。

日下委員 また、入国に伴い、日本語教育や医療、就労支援など様々な生活支援も行っています。日本には多発する自然災害を乗り越える中で培ってきた被災者支援のノウハウがあり、ウクライナ避難民への支援とも重なる部分が少なくありません。こうした経験も生かして、今後も政府、自治体に更なるきめ細かな支援をお願いしたいと思います。

 一方で、我が国においてウクライナ人以外の難民については認定されたケースは極めて少なく、その理由の一つは、我が国の難民に係る厳しい認定基準にあると言われています。アフガニスタンなどから逃れ、日本に助けを求める難民もおり、さらに、混迷する世界の中で、今後、難民、避難民が増えることも想定しなければなりません。

 今回のウクライナ避難民の受入れの状況を踏まえながら、難民認定の運用基準の見直しや、二〇一〇年から実施している第三国定住、これは難民キャンプ等で一時的な庇護を受けた難民を当初庇護を求めた国から新たに受入れに合意した第三国へ移動させることでございますが、を拡充するなど、人道国家日本として立つためにも、難民受入れにもう少し幅を持たすことはできないのかと考えますが、大臣のお考えをお聞きいたします。

齋藤(健)国務大臣 我が国において難民認定申請がなされた場合は、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づいて、難民と認定すべき者を適切に認定しており、その定義を離れて難民の範囲を拡大することはできないことになっています。

 他方で、出入国在留管理庁では、現在、難民該当性の判断に当たって考慮すべき点である規範的要素について、我が国の実務上の先例等を踏まえながら明確化する作業を進めておりまして、これによって、近時の情勢等に応じた一層適切な難民認定に資するものになる、そう考えています。

 委員御指摘の第三国定住による難民の受入れの将来的な受入れ人数、在り方につきましては、政府全体で検討していくべきものと考えておりまして、法務省としても引き続き関係省庁と連携して対応してまいりたいと思います。

日下委員 規範の明確化ということを言われましたけれども、しっかり、その中に少し幅を持たせていけるような検討も是非お願いしたいと思います。

 日本では、難民の受入れを審査する入管庁が警察、検察、司法の三役を担っていることや、在留特別許可の基準が不透明であることなどが指摘されています。

 人道的支援を進めなければという立場と、規制を強くして安全、安心を守るという立場が同居する状況では、むしろ審査が厳しくならざるを得ないのではないかと思います。

 出入国及び在留の管理を担う入管庁が、より人道的な観点を必要とする難民認定業務を適切に行うことができるのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 難民認定手続とその他の出入国在留管理行政上の様々な手続、この二つは密接に関連していると思います。そのため、難民の認定に関する業務を出入国在留管理庁において行うことには合理性があるのではないかと考えています。

 その上で、入管庁におきましては、制度と運用の両面から難民認定手続の適正性を確保しているところであります。

 制度面におきましては、不認定処分に対する審査請求では、外部有識者である難民審査参与員が三人一組で審理を行って、法務大臣はその意見を必ず聞いた上で判断をしているところであります。さらに、難民には当たらないとの判断に不服があれば、裁判所に訴えを提起し、司法判断を受けることも可能であります。

 運用面におきましては、難民該当性に関する規範的要素の明確化、先ほど申し上げましたが、それから、難民調査官の能力向上、出身国情報の充実の三つを柱として、運用の一層の適正化に取り組んでいるところであります。

 法務省としては、引き続き、国際機関と協調しながら、真に庇護を必要とする外国人の迅速かつ確実な保護に取り組んでいきたいと考えています。

日下委員 続きまして、犯罪被害者への支援についてお尋ねいたします。

 齋藤大臣は所信の中で、犯罪被害者の方々への支援について触れられました。

 犯罪被害者への支援については、我が党が推進した犯罪被害者等基本法に基づいて、現在、第四次犯罪被害者等基本計画が進められております。

 計画には、犯罪で生じた損害の回復や経済的な支援、精神的、身体的な被害の回復と防止、被害者の刑事手続の関与拡充、被害者支援のための体制整備、国民の理解の増進などを重点課題と定めておりますが、特に、今はSNSを介した非難中傷など犯罪被害の実態も様々になっております。また、周囲の心ない言動などによる二次被害で苦しむ被害者もおられます。

 前国会においても刑法改正を行い、侮辱罪の厳罰化を進めましたが、手軽にネット上でツイートしたりできる時代に、そういった行為がいかに被害者を苦しめるか、広く国民に啓発することが必要であると考えます。また、市民に身近な市町村が条例を作ることも重要であると思いますが、都道府県に比べて市町村の取組が遅れているとの指摘もあります。

 こうした実態を踏まえ、犯罪被害者支援に対する齋藤大臣の御所見をお聞きします。

齋藤(健)国務大臣 犯罪の被害に遭われた方やその御家族、御遺族が被害から回復し、平穏な生活を取り戻せるよう、きめ細やかな支援を行っていくことが大変重要だと考えています。

 法務省では、御指摘の第四次犯罪被害者等基本計画などに基づきまして、法テラスにおける法律相談援助の利用促進ですとか、御指摘のSNSを含むインターネット上の誹謗中傷等に関する相談窓口の周知、総務省及びSNS事業者団体と共同した人権啓発サイトの開設などに取り組んでいるところであります。

 さらに、刑事手続等においては、犯罪被害者等の方々への適切な情報提供を含めまして、その権利利益を保護するための様々な取組を行っているところであります。

 また、現在、刑事手続を通じて、犯罪被害者の氏名などの情報を保護するための法整備について検討を進めているところであります。

 今後も、警察庁等の関係府省庁と連携しながら、犯罪被害者などの方々を支援する取組の更なる推進、充実に努めていきたいと考えています。

伊藤委員長 日下正喜君、時間が来ております。

日下委員 はい。時間が来ましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属の鈴木庸介です。齋藤大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 また、四十分のお時間をいただきました理事の皆様への配慮に感謝を申し上げたいと思います。

 今日は、まず、技能実習と特定技能についてお伺いをさせていただきたいと思います。とりわけ、技能移転のところに絞らせてください。

 これは、釈迦に説法でございますけれども、実習の受入れ側が、技能実習生への日本の技術を伝える目的を忘れて、安い賃金で働いてくれる労働者と認識して取り扱っているような現状がある。

 問題は、どの会社も最低賃金で働かせようとしているところだと思うんですね。ほとんどの実習生は、職歴も学歴もない中で借金を背負って日本に来るわけで、特にコロナ禍で結構受入先の企業が潰れたようなケースもありまして、そうすると、向こうで喧伝されている、三年働けば百五十万稼げるよといったジャパニーズドリームというのは、残念ながら雲散霧消してしまっているのではないかというところも考えております。そして、結果的には、一部は犯罪に手を染めてしまう。

 これは、改革が必要なことは誰しもが認めるところだとも思うんですけれども、この技能実習という言葉、この言葉自体が多くの制度的矛盾をはらんでいる。今日は、この技能実習という言葉が持つ矛盾を、少しでも解消へ向けて前へ進められればいいなと考えております。

 早速、大臣にお伺いをさせていただきます。

 技能実習制度は本当の意味での技術移転とお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 技能実習制度は、技能等の移転を通じた国際貢献というものを目的とする制度であって、実習実施者は、計画に基づく実習を実施し、技能検定などにより習得した技能の評価を技能実習生に受けさせることが義務づけられている、そういう制度であります。

 他方で、一部の受入れ企業などにおきましては、この制度趣旨が必ずしも十分に理解されず、労働関係法令違反や技能実習生の失踪などの問題が生じているというのも事実であります。

 平成二十九年十一月に施行された技能実習法に基づいて、制度の適正化の取組を徹底していかなくちゃいけないというふうに考えています。

鈴木(庸)委員 同じ認識でよかったと思います。

 では、制度が持つ数々の建前が実際に多くの人を苦しめているというところを御指摘させていただきたいと思います。

 技能実習生が特定技能に在留資格を変更した後も、例えば、そこから経営とか管理とかいう起業ビザに在留資格を変更しようとすると、技術移転を求められて帰国を迫られるケースというのがあるんですね。

 これは、既に特定技能に変更しているのに、その前のビザである技能実習の建前を持ち出してくる不合理性というのは、入管庁はどう捉えていますでしょうか。

西山政府参考人 技能実習制度は、技能等の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度でございますために、技能実習生には、実習終了後、日本で習得した技能等を母国に帰って生かすことが求められているものでございます。

 この点、特定技能一号による在留は上限五年と定められておりますことから、特定技能一号により在留した後には、技能実習制度等で培った技能等を母国に持ち帰って、その後、本国で必要な技能移転を行っていただくということになっております。

 他方で、技能実習生が、特定技能一号により在留した後に、母国に帰国せず、そのまま在留期間の上限が定められていない他の就労目的の在留資格に変更しようとする場合にあっては、将来的に習得した技能等の本国への移転が行われることを担保する必要がありますところ、審査の過程におきまして、他の在留資格をもって入国、在留しようとする目的等から、技能実習制度の趣旨に反していないことを個別に確認し、変更許可するかどうかを判断することになります。

鈴木(庸)委員 そうなんですよ。今、担保のお話がありましたよね。これはどうやって担保を測定しているんですか。

西山政府参考人 お尋ねの点、すなわちは、技能移転の方法あるいはその程度についてどう判断するかという御質問かと思いますけれども、これにつきましては、個々の職種、あるいは個別のそれぞれの状況等により様々でございますために、技能移転を行ったと認められる程度の基準を一律に定めることは困難であると考えております。

 その上で、お尋ねのように、他の在留資格での再度の入国を希望する場合にあっては、技能移転だけではなく、技能実習の趣旨に反しないことを、先ほど申し上げたように、個別に確認をしているところでございます。

 具体的には、例えば、技能実習生のうち、特に優秀だった方が、所属していた監理団体や実習実施者において、技能実習により習得した技能等を活用して、在籍する技能実習生を指導等する業務に従事するとして、他の在留資格による再度の入国を希望する場合にあっては、技能実習制度の趣旨に沿うものであるとして認められる余地があると考えております。

 入管庁といたしましては、厚労省や外国人技能実習機構と連携し、委員御指摘の点も踏まえまして、技能実習制度の適正な運用のための方策について検討を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 御案内のように、問題は、適切に適切にやるというのが何年も何年も続いて、多くの人が苦しんでいるというところなんですけれども、本気で向こうの技術移転の現状について調べていないと思うんですよね。

 私もちょっといろいろ調べて、技術移転について、例えばベトナムの中でどうやって考えられているのかという、そういったアンケートもあるんですけれども、これだけ人がいっぱい来ているのに、サンプルが僅か二千五百で、対象も監理団体等がメインになっている、本人たちに直接アンケートが行っているかどうかも分からないといった、そういう状況の中で、技術移転というものの建前があることによって、結局、一度帰国した人たちが、同じビザで再入国することもできなくなっている。この建前をどうにかしないと、この問題というのは一切解決をしないと思うんですね。

 ですから、お願いしたいのは、技術移転をできて、例えば、何年以上とか、何年以上でこんなことをやればというモデルがないと、ベトナムの皆さんというのは日本に来て何のキャリアもこの先築けない。

 御案内のように、日本で技能実習をした後に、イギリスに渡り、コンテナの中で亡くなった方もいらっしゃいました。なぜそんなことが起きるのかというと、この国が搾取しているからなんですよ。これじゃ、この先、絶対にもっと、今度は来てくれないんですよね。

 本当に、モデルを示していただくことというのはできないんでしょうか、何をもって技術移転なのか。

西山政府参考人 先ほど申し上げましたように、個々の職種、あるいはそれぞれの置かれた状況等に応じて、技能移転というものについての評価なりというのは様々でございまして、先ほど申し上げましたが、その基準について明確に示すということはなかなか困難であるとは考えてございますけれども、ただ、委員御指摘のとおり、技能移転の評価やその方向について、技能実習生にとっても、その透明性や予見可能性を高めるということは、技能実習生の帰国後のキャリアステップを見出すためにも重要であるという認識は持ってございます。

 引き続き、厚生労働省や外国人技能実習機構と連携しながら、運用の適正化に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 重ねてになるんですけれども、まずモデルを示してください。日本に来ればどうなれるのか、そして技術移転とは何なのか。これがない限りこの問題は解決をいたしません。

 こうした中で、最も日本に対する印象を悪化させているのは、最大の送り出し国であるベトナムであります。

 日本で働くベトナム人実習生の実情を記した「アインが見た、碧い空。」という本からちょっと抜粋させていただくんですけれども、在留ベトナム人が約四十五万、半数の二十一万人が技能実習生で、これは全外国人技能実習生の約半数に当たります。また、出稼ぎ目的などではないかと推察できるベトナム人学生も六・五万人いるわけですから、つまり、四十五万人いるベトナム人のうち三分の二ものベトナム人が短期間で帰国する状況にあるんですね。言い換えれば、例えば、在日中国人、在日インド人、こうした安定したコミュニティーがあります、こういったコミュニティーの形成がベトナム人にとっては全くできていない。

 そんな中、二〇二一年には、ベトナム人の海外労働者派遣数は、日本が一位だったのが、去年、台湾に抜かれてしまいました、一時的ですが。

 九月四日の農業新聞によると、こうした事態の背景には、円が当初から二〇%安くなった一方で、ベトナムの最低賃金は五・九%から六・一%上昇している、日本との格差が急速に縮小している中で、さらに、ベトナムとオーストラリアは、今年、農業労働者の派遣、受入れ協定を結びました。積極的にベトナム人の労働者を受け入れようという話なんですけれども、これは本当に条件がいいんです。一年のうち九か月働いて三か月は自由行動、月給は三十万円から三十八万円、ベトナムの月収の十倍ですよ。日本の給料から見ても見劣りしない。

 何を申し上げたいかというと、もういつまでもジャパン・アズ・ナンバーワンの時代ではなくて、日本は多くの国から追いつかれて追い抜かれている、こういった現状があると私は考えています。

 そして、今のこの日本離れにどんどんどんどん拍車がかかる中、いかに最低賃金で働かせようかと腐心している日本の状況を、経済からも待遇からも変えていかないと、日本に来てくれる人たちはもういなくなってしまうんですよね。

 ですから、頑張っていかないといけない、本当にこの法務委員会が中心に頑張っていかないといけないと思うんですけれども、こうした状況について、齋藤大臣はどのような認識でいらっしゃいますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 日本が選ばれなくなってきているということについては、委員と危機感を共有するところであります。

 それで、御案内だと思いますけれども、今、技能実習と特定技能、二つの制度があるわけでありますが、法律の規定によりますと、検討の時期に差しかかっていると認識をしています。両制度の在り方につきましては、今、内閣官房長官と法務大臣、私が共同議長を務めます外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議の下に有識者会議を設けまして、各界の有識者の方々に御議論いただこうと会議の開催に向けて今準備を進めているところであります。

 このような段階でありますから、現時点で検討の方向性とか結論を私がこうだ、ああだと申し上げるのは差し控えたいと思いますが、問題意識は共有しておりますので、委員の御指摘の点も含めて、有識者会議において様々な視点から御議論いただいて、政府全体で丁寧に議論を進めていきたいと考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 最近、よくテレビで、海外に出稼ぎに行った日本人の方が結構そこそこの成功を収めて、日本に帰りたくないみたいな、そういった番組が極端に増えてきている感じがするんです、僕ね。これは、本当に円安の影響だけじゃないと思います。

 先ほど申し上げたコンテナで亡くなったベトナムの方の姿というのは、いよいよこちらの、我々から海外に出稼ぎが始まった時代に入った日本の将来像というものを少し暗示しているような気がして、正直怖いところがございます。

 技能実習生の制度を一日も早くまともなものにしていただけるよう、齋藤大臣に重ねてお願いを申し上げます。

 続いて、ウクライナ避難民の支援についてお伺いをさせてください。

 今朝、ポーランドにミサイルが着弾してお二人が亡くなられたという報道がありました。心からお悔やみを申し上げたいと思います。

 私は、この法務委員会で発言の機会をいただくたびに、ウクライナで起きていることというのは、そのまま台湾有事の際の教科書であると述べております。台湾有事というと、どちらかというと防衛費の増額の問題といったことの議論が多い印象なんですけれども、実際には、台湾から大量の避難民が来たときの対応とか、あと、いざ紛争になったときの権利関係とか、こうしたことは全く議論されていないんですね。緊急時にいろいろなものがめちゃくちゃになりますから、それが、なってから右往左往する前に、ウクライナで起きていること、そして周辺国に派生していることを観察して、日本で起きた場合の想定というものを進めていかないといけないと私は考えております。

 三月二日に岸田総理がウクライナ避難民の全面受入れを表明して、先ほど西山次長からもありましたが、二千三十一人が来たということ、これは本当に大変評価をしております。

 ウクライナ情勢をめぐっては、現在も東部で戦闘が続いているほか、戦術核の使用についてもロシアで議論が行われていると。さらには、先ほど申し上げましたけれども、今朝も、キーウの住宅をミサイルが直撃したり、あとポーランドまでミサイルが着弾したりという事態となっております。

 そういう状況の中で、この三月二日の発表を受けて日本に到着した人たちは、当初一年間とされていた特定活動の終わりがいよいよ半年を切っています。

 教えてください。政府は、ウクライナにおける情勢が改善されていないと認められる場合には在留期間更新許可申請が可能としています。現在の認識として、ウクライナにおける情勢は改善されているという認識でしょうか。

西山政府参考人 私どもの認識としては、現在、ロシアの攻撃により、ウクライナ各地において多くの市民が犠牲になっているなど、ウクライナ情勢は依然として不透明でありまして、本邦に避難を希望する避難民も相当数おられるものというふうに考えております。

鈴木(庸)委員 となると、改善されていないということでよろしいわけですよね。

 ならば、改善されていないと認められる場合には更新が可能なわけですから、基本的に今、日本にいるウクライナ人は在留資格の延長ができるという理解でよろしいですか。

西山政府参考人 今委員御指摘のように私どもとしても考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 今の西山さんの答弁で、今、二千人の日本にいるウクライナ人の皆さんが一安心したと思います。ありがとうございます。

 その一方で、受入れの状況なんですけれども、ウクライナからのビザの申請件数と発行数について、資料をお配りをさせていただいております。

 ちょっとその資料の前に教えていただきたいんですけれども、当初の方針では、身寄りのない方も含めて全面的に受け入れるということだったんですけれども、引き続き、その方針に変更はないんでしょうか。

西山政府参考人 方針に変更はございません。

鈴木(庸)委員 それで、この資料を見ていただいても分かるんですが、ウクライナの避難民というのは、十月に過去最少の百八人になりました。この数字についての分析を教えていただきたいんですね。

 今、方針に変わりはないということだったんですけれども、現地から聞こえてくる声だと、なかなかビザが下りにくくなったとか、下りるまでに時間がかかるようになったというような声も、大分多く聞こえてきております。これは実質的に数量規制を導入しているという理解になるんでしょうか。

 これは、いいとか悪いとかいう論点ではなくて、現地にいるウクライナ人や現在日本にいるウクライナ人の皆さんが、日本政府の方針というものを確認することが必要かなと思っておりまして、これは数量的に規制しているということになるんでしょうか。それとも、いつもの答弁ですけれども、個々のケースにという話になってしまうんでしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、受入れの対象となる避難民であるか否かは、あくまで渡航目的等を踏まえた上で個別に判断しているところでございまして、数量規制などは行っておりません。

鈴木(庸)委員 分かりました。

 もうちょっと確認させていただきたいんですけれども、引き続き特定活動による裁量行政というのを続けるのかどうかというところも伺いたいんですね。

 この特定活動というのは、先ほども申し上げたように、いつ帰国しろというのが、法務大臣の命令一つでいつ退去させられるか分からないという極めて不安定な状況を含んでおります。今、日本にいらっしゃるウクライナの皆さんは、聞くところではホテルの清掃の仕事に就いたり、あと、各地の、日本全国で商店街とかありますよね、そこでフェスティバルをやっていますよね、そういうところのフェスティバルに出店して、ウクライナ料理を売ったりと、本当にたくましく、少しずつ日本社会に浸透するよう頑張っているんだなということを感じております。

 しかしながら、国の支援については検証が必要かと思います。私の支援と申し上げるのは、金銭的な支援ということではなくて、彼らが日本で仕事を手にして、税金の払い手として社会に受け入れてもらう、これをもって支援と考えているんですけれども、政府のウクライナ支援について伺わせてください。

 入管庁にウクライナ避難民の情報登録サイトがありますけれども、このサイト、まず予算は幾らぐらいで作っていますか。

西山政府参考人 委員お尋ねのウクライナ避難民支援サイトでございますけれども、これは、ウクライナ避難民受入れ支援事業を委託しております公益財団法人アジア福祉教育財団、いわゆるRHQが運営しているところでございまして、その経費は予備費、これが令和三年度で約五億二千万円、令和四年度で約十九億四千万円でございますけれども、この予備費からRHQに支出した委託費でRHQがその運営サイトについての支払いをしているということでございまして、その個別の経費について私どもで申し上げることは困難でございます。

鈴木(庸)委員 登録者数ぐらいは把握していますか。

西山政府参考人 支援サイトでIDを出しておりますけれども、十八歳未満の未成年者を除くウクライナ避難民に順次発行をいたしておりますところ、本年十一月一日時点で約一千六百人のウクライナ避難民にIDを発行している状況でございます。

鈴木(庸)委員 一千六百人って、全然肌感覚と違うんですけれども。実は五、六人の避難民の皆さんと一緒にこのサイトをやったんですけれども、誰も登録している人はいなかったんですよ。西山次長のおっしゃっている千六百人というのがどこの登録なのか、多分僕の言っている登録と違うと思うんですよね。

 何を申し上げたいかというと、要はこのサイトが機能していないということを申し上げたいんです。サイトに行くと、ウクライナ避難民の皆さん、ここに登録してくださいと来るんですね。登録するとIDが発行されるのかと思ったら、IDは発行されないで、確認のメールが来るだけで、そこには何も書いてない。サイトに戻ってIDとパスワードを入れるところに何を入れていいか分からないので、みんなそこで、何だこれと言ってやめちゃうんですよ。

 僕も、飯田橋のハローワークとかウクライナ避難民の仕事の受入れを積極的にやると言っているところも、いろいろなところも勝手に視察に行かせていただいているんですけれども、やはり情報の横の共有が全く難しいという話で、国がこれをやることの意味というのはすごく大きく考えているんですけれども、全然サイトが機能していないというイメージがあるんですが、ここはちょっと、かみ合っていなかったらしようがないんですけれども、何かありますか、今、所管の方か何かから。

西山政府参考人 先ほど私が答弁いたしましたIDですけれども、これはなぜ発行するかといいますと、やはり真に支援が必要なウクライナ避難民の方に支援サイトに入っていただいて支援を受けられるようにするということのために、避難民の方にはお手紙を送ってIDとパスワードを通知しておりまして、それを使って支援サイトにウクライナ避難民の方に入っていただく、そういう仕組みにしてございます。

鈴木(庸)委員 なるほど。広報が全然という話だったんですね。恐らく、これは通告していないので聞かないですけれども、多分そのサイトのアクセス数から伺えば、大体どんなもの、どの程度のサイトかというのが分かったのかもしれません。

 申し上げたいのは、何とか日本で頑張って、税金の払い手として社会に受け入れられたい、ここで頑張っていきたいと思っている人たちが、なかなかやはり仕事を見つけられない現状もあるんですね。それを是非是非、国の力でサポートしてあげて、新たな税金の払い手、彼女たち、ほとんど彼女たちですけれども、彼女たちも仕事をしたいという気持ちはすごく強いので、よろしくお願いします。本当に不断の改善をお願いしたいと思うんですね。本当にどんな仕事でもいいから働かせてほしいと。

 ただ、現状として、日本のウクライナ支援というのは、今、日本財団の支援がないと、避難民の支援というのは成り立っていないと思っています。先日、日本財団さんに伺ったら、当初五十億円だった予算、これを百億円に増やして、千人対象だったものを二千人まで対象を増やして、これで三年間対応できるということなんですね。毎月の支払いとか、あと航空券まで、本当にいろいろなものを支援されているんですけれども。ですから、実質、ここの支援がないと、なかなか日本では生活できないという現状がある。

 重ねて申し上げるんですが、ウクライナ紛争は台湾有事の際の教科書と私は考えております。

 最後に大臣にお伺いしたいんですけれども、今後、国として、ウクライナ避難民についてどういう姿勢で支援をしていくか、改めて確認をさせていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 ウクライナのような悲惨な状況において、日本を頼りにして来られた方々については、やはりその期待に応えていくことが必要であると思っています。

 政府では、官房長官を議長といたしますウクライナ避難民対策連絡調整会議というものを司令塔にしまして、政府一体となってウクライナ避難民の円滑な受入れと生活支援等を行っており、これまで、身寄りのないウクライナの避難民の方も含めて、その円滑な受入れ支援を行ってきているわけであります。

 委員のように様々な御意見があることは承知をいたしております。

 引き続き、今後のウクライナ情勢や避難民のニーズをきめ細かく把握した上で、関係省庁と連携を取りながら、政府全体で避難民の方々に寄り添った受入れ支援を行っていきたいと考えています。

鈴木(庸)委員 フェーズが完全に仕事を探すフェーズになっていますので、その辺りを是非よろしくお願い申し上げます。

 同じウクライナつながりで、ウクライナの義勇兵として行かれている方々についてお伺いをさせてください。

 先日、御案内のように、ウクライナで戦闘に参加されていた日本人の方が亡くなりました。心からお悔やみを申し上げたいと思います。

 こうした義勇兵の方々というのは、一説には日本から七十人近くが行っているとも言われています、正確な数を把握することはできないんですけれども。ネット上には、こうした方々が開設しているだろうというアカウントが複数確認できるんです。

 まず、法務省と外務省、それぞれに伺いたいんですが、義勇兵という言葉について、日本では法律上何らかの定義があるんでしょうか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 我が国の国内法上、刑法その他の刑罰法令におきまして義勇兵という用語を用いている例はなく、義勇兵について定義したものはないと承知しております。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 国際人道法等について定めましたジュネーブ諸条約を含め、国際法においては、義勇兵、この言葉を明確に定義したものはないと承知しております。

鈴木(庸)委員 定義がないというところで、そういった義勇兵ですけれども、邦人保護の対象となりますでしょうか。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は政府の最も重要な責務の一つであり、渡航、滞在の目的のいかんにかかわらず、邦人の安全確保に取り組むこととなります。

鈴木(庸)委員 となると、現地で死亡した場合、御遺体はどういった手続と経緯で日本に戻ってくるんですかね。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナで邦人が死亡した場合、邦人保護の観点から、在ウクライナ大使館が、御家族の意向も踏まえ、ウクライナ政府との間で必要な調整等を行うこととなります。

鈴木(庸)委員 資料の二番目なんですけれども、これは契約書です。ウクライナの各地に徴兵というか軍の連絡所があって、そこで書き交わされるものなんですけれども、ウクライナ軍に所属する場合は軍所定の契約書にサインする必要があります。

 例えば、ここには、今一ページ目だけ、ちょっとコピーでお渡ししているんですけれども、本当は全部やると一センチぐらいの分厚い紙になります。その一センチの中には、例えば、勤続十年以上軍隊にいると三十五日間の休暇を取れることとか、外国人でも無国籍の人でもウクライナ軍に参加できることなどが記されているんですね。また、裁判所で死亡が認定されたときは家族がこういった形でお金をもらえるとか、そこまで具体的なことが書いてあります。

 正直申し上げて、日本から行った義勇兵の皆さんがこの膨大なウクライナ語の資料を読み込んでサインをしているとはちょっと考えづらい部分はあるんですが、いろいろな方のサイトを見ると、軍隊に組み込まれて活動している人が多いということは、サイン自体はしているんだろうなと推察されるところでございます。

 じゃ、ここで何が問題になってくるというと、サインをした段階で、当然、ウクライナとしては軍に所属していると解釈するわけですよね。そうすると、ロシア軍との戦闘において起こることについて国際法上の規定が適用されるのかというところになってくるかと思います。

 教えてください。日本人義勇兵を殺害したロシア軍に、いわゆる国外犯規定、これは適用されるんでしょうか。また、同じ属人主義の視点から、ロシア軍の兵士を殺害した日本人の義勇兵についても、日本において殺人罪で訴追される可能性はあるんでしょうか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御質問は、我が国の外、外国で犯罪が行われた場合に、我が国の刑法の適用関係でございます。委員は二つの例を申されました。日本人が被害者になった場合、それから日本人が加害者になった場合でございます。

 委員の御質問は、一般論として申し上げますと、想定される罪は刑法第百九十九条の殺人罪であろうと思います。これにつきましては、刑法三条によりまして、日本国外においてこの罪を犯した日本国民について、すなわち加害者が日本国民の場合について国外犯規定がございます。また、刑法三条の二によりまして、日本国外において日本国民に対して、これは日本国民が被害者の場合でございますが、日本国民に対してこの罪を犯した日本国民以外の者についても国外犯規定がございます。

 ただ、その上で、具体的な事案における犯罪の成否につきましては、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断されるべき事柄であるために、一概にお答えすることは困難でございます。

鈴木(庸)委員 そうなんですよね。結局、サインをした段階で軍隊であり、軍隊と軍隊が戦闘している中での殺し合いが起きている。それについての判断と日本の国外犯の規定と、この辺の整理が結構ぐちゃぐちゃになってしまっているような気がするので、是非是非、法務省については、何でこういうことを申し上げているかというと、やはり、帰っていいのか帰ってはいけないのかみたいな、そんな議論も今向こうで起きているみたいで、やはり邦人保護という観点からいうならば、そういったことについても耳を傾けていかなくてはいけないのかなというところで、この質問をさせていただきました。

 もう一つ、この絡みで質問させてください。

 刑法九十三条に当たる私戦予備及び陰謀罪、これは外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者に対し、三か月以上五年以下の禁錮に処するという罪でございますけれども、これも国外規定はあるんでしょうか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの刑法九十三条の私戦予備及び陰謀の罪でございますが、刑法二条の全ての者の国外犯、あるいは刑法三条の日本国民の国外犯の対象となる罪には含まれていないところでございます。

鈴木(庸)委員 分かりました。含まれていないということですね。どうもありがとうございます。

 最後に、レーシャルプロファイリングについてお伺いをさせてください。

 このレーシャルプロファイリングというのは、これは最近出てきた言葉で、古くて新しい言葉という感じなんですけれども、警察官といった法の執行者が特定の人種や肌の色、民族、宗教、言語などに基づいて個人を捜査の対象とすること。最近では、NHKで特集されたり、東京弁護士会でもこの件についての調査も行ったりということで、少しずつ関心が高まっている分野かと思います。実際、アメリカでも、ニューヨークのジュリアーニ元市長の時代に行われたとされていて、これが治安の改善効果があったとはされるものの、実際には大きな社会問題も引き起こしている、それがレーシャルプロファイリングでございます。

 そこで、教えていただきたいのは、外国人というのは在留カードを持っていますよね。警察官の職務質問の際に、不審事由がない外国人に対しても在留カードの提示を求めることができる、そういった解釈をされていますでしょうか。

西山政府参考人 ただいま委員からは、警察官ということで御指摘になりました。私どもとして申し上げられることで、入管法上どうなっているかということでございます。

 入管法上、入国審査官、入国警備官、警察官、海上保安官その他法務省令で定める国又は地方公共団体の職員が、その職務の執行に当たり、中長期在留者である外国人に対し、在留カードの提示を求めることができることとされております。

鈴木(庸)委員 提示を求めることができると。

 では、職務質問を行うに当たって、不審事由について、人種差別を防止するためのガイドライン等といった客観的に検証可能な指針というのは存在するんでしょうか。

友井政府参考人 鈴木委員の御質問にお答えをいたします。

 警察官による職務質問は、警察官職務執行法第二条に基づき、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し又は犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者等に対して行われるものであります。

 職務質問の要件はこれに尽きており、職務執行に当たっては人権に配慮した適正なものとなるよう、警察官に対する教育を繰り返し徹底しているところであります。

 具体的に申しますと、新たに採用された警察職員や昇任をする警察職員に対しまして、警察学校において人権尊重に関する教育を実施しておりますほか、警察署等の職場においても適正な職務質問の実施に関する研修等を行っております。

鈴木(庸)委員 是非徹底していただきたいと思います。

 最後の質問になるかと思いますけれども、今年三月の参議院の内閣委員会、ここで、我が党の石川大我議員の質問に対して、当時の二之湯国家公安委員長が、レーシャルプロファイリングについて全国的な調査をしていくということについて前向きな方針を見せたということです。

 あれから半年以上がたった今、現況について教えていただけますでしょうか。今後、人種差別的な職務質問がされないよう、記録の義務づけとか、実態調査とか、調査結果の公表といったことが求められると思うんですけれども、この辺についての取組について教えてください。

友井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の調査の関係でございますが、警察庁におきまして職務質問に関する調査を実施した結果、人種や国籍等への偏見に基づく差別的な意図は持ってはいないものの、不適切、不用意な言動があった職務質問が令和三年中に六件あったことが分かりました。

 これを受けまして、全国警察の幹部が参加した会議の場におきまして、人種、国籍等に対する偏見や差別との誤解を受けることのないよう、職務質問の際における不適切、不用意な言動を厳に慎むよう指導を徹底することを指示し、あわせて、該当した都府県警察に対しましては個別に指導を行ったところであります。

 また、職務質問等の職務執行につきましては、当事者等から要望等を受けた場合には、事実関係を正確に把握した上で、組織的に対応しているところであります。

 警察におきましては、引き続き、法に基づいて適切かつ的確に職務質問が行われるよう、しっかりと教育や指導を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 六千万人という観光客の目標がある今この国で、外国人に対する対応というのは、特定技能からこの警察官の職務執行まで、本当に幅広くなるかと思います。

 齋藤大臣の強いリーダーシップに期待をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 立憲民主党の吉田はるみです。

 齋藤大臣、このような経緯で大変な時期の御就任でございますが、お祝いを申し上げます。

 そして、この間、本当に法務省の皆さんは、今日の委員会もそうですけれども、様々なこの国会の対応で大変御苦労なさっていらっしゃると思います。改めまして、法務省の皆様、お疲れさまと申し上げさせていただきたいと存じます。

 それでは、早速質問に移らせていただきたいんですが、まず最初に、大前提として、今回、齋藤大臣、御就任されまして、法務省という役所にいらっしゃって、どんな点が課題かなとか問題かなと。多分、問題ない省庁はないと思うんですね。齋藤大臣から見まして、法務省、今解決すべきこと、問題点、また、その優先順位も含めて教えてください。

齋藤(健)国務大臣 まず、うちの職員に対してねぎらいの言葉をかけていただきましたことに感謝申し上げたいと思います。

 私も、官の世界に二十三年おりまして、いろいろな思いを持って仕事をしてまいりましたので、今の法務省の皆さんが感じておられるようなことは大体推測がつくわけでありますが、今回の件は、法務省の職員の皆さんに何かあったわけではなくて、政治サイドの責任だったろうと思っていますので、この点については、政治サイドでしっかり解決をしていくことが大事なんだろうと思っています。

 取り組みたいことにつきましては、所信表明でお話ししたことに尽きるわけでありますが、ただ、急がなくちゃいけない案件もたくさんあるんだろうと思っております。

 例えば、今お願いしております民法等の一部を改正する法律案などにつきましては、今国会でとにかく成立をさせたい。あるいは、旧統一教会の問題について、被害者の救済に向けた取組を強力に推進していきたい。あるいは、出入国在留管理制度全体を適正に機能させるための法整備についても速やかに検討していきたいですとか、喫緊の課題については、そういったところに力を入れていきたいというふうに考えています。

吉田(は)委員 齋藤大臣、ありがとうございます。

 民法の一部改正に関しては、本当にもう待ち望んでいた方が、今日採決かというときにこのような事態になりまして、本当に心かき乱されることだったと思いますので、是非これは進めるべきだと私も思います。

 また、旧統一教会の問題に関しても、時間をかければかけるほど被害が拡大していきますし、今、また新たな、海外にいらっしゃる邦人の保護という問題も出てきていますので、是非これは、大臣、網羅的な救済の方法、着手していただきたいなと思います。

 また、出入国の件に関しましても、先ほど鈴木委員がお話しになりましたけれども、本当に、なぜかジャパン・アズ・ナンバーワンという意識がまだ強い。でも、本当に、コンテナ船に乗っていかれる、そして亡くなられるという、イギリスではボートピープルと言われていましたけれども、それが明日の日本になっちゃ絶対いけないと思うんですね。是非この辺りも真剣に議論させていただければと思います。

 その上で、大臣、今回、五万人を超える法務省のリーダーということになったわけなんですけれども、私は、やはり女性の立場から、女性の働き方、また、女性の職員さんたちにどのように能力を発揮していただくかというところに大変関心があるんですけれども、まず最初にお伺いしたいと思います。法務省の大きな部署の中で、人数、そして女性割合を教えてください。

吉川政府参考人 お答えいたします。

 正確な数字として持ち合わせております令和三年七月一日現在で申しますと、検察官を除きます法務省全体の在職者数は四万九千七百七十三人であり、女性割合は二二・五%でございます。このうち、外局を除いた法務省職員の在職者数は四万二千四百一人であり、女性割合は二一・三%でございます。主な組織で申し上げますと、出入国在留管理庁の在職者数は五千八百二十一人であり、女性割合は三二・〇%、公安調査庁の在職者数は千五百四十七人であり、女性割合は一八・一%でございます。

 また、検察官について申し上げますと、時点は異なりますが、令和三年三月三十一日現在で、検事の在職者数は千九百六十七人であり、女性割合は二六・〇%、副検事の在職者数は七百五十四人であり、女性割合は四・二%でございます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 法務省全体では女性割合が二二・五%ということでしたが、まず一点、ほかの省庁と比べてこの割合は高いのか低いのか、ほかの省庁の女性割合の数値があれば教えていただきたいというところが一点と、それから、部署を見てみると、出入国在留管理庁が三二%と、ほかの部署よりも一〇%、ポイントが高いというのは、これは何か職種に由来するものでしょうか、この理由を教えてください。

吉川政府参考人 政府全体の職員に対する女性の割合でございますが、令和三年七月一日現在で二二・一%と承知しておりまして、法務省全体における女性職員の割合は政府全体の女性職員の割合を若干上回っているというものでございます。

 また、入管職員の女性割合が多いことにつきまして、済みません、直ちに私の方から何らかのクリアなお話ができるわけではございませんが、そこは採用活動もございますし、働き方の面で女性が入りやすいという職場であることも影響しているのではないかと思われます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたように、やはり働き方が、働きやすいかどうかというのは女性の職員さんの割合と私は密接に関わっているなというふうに感じている一人ですので、是非ちょっとその部分の御質問をさせていただきたいんですが、私、ちょっと意外だったんですね。ほかの省庁より法務省は女性割合は低いのかなと思っていたんですよ。そうしましたら、政府全体で二二・一%で、法務省が二二・五%ということになっています。

 ただ、この数字自体は、私の感想で申し上げますと、国の政府で働く女性割合としてはいまだ低いと言わざるを得ないと思うんですね。政治の分野も、女性の進出、特にこの衆議院では九・六%という、本当に、ジェンダーギャップでいうと世界基準からはるか遠いわけですけれども、大臣、こうした女性の割合、どのような目で、どのような感想を持っていらっしゃいますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 就任間もないので感想になってしまうんですけれども、私の大臣秘書官が女性だったということに、まず、法務省はすごいなと思いました。経済産業省で私は大臣秘書官をやっていましたけれども、過去、女性の秘書官いたかななんて思い返しますと、法務省は進んでいるんじゃないかという感想を持ちました。

 詳しくはまだ、これからいろいろ把握していきたいと思っています。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 本当に、女性秘書官というのは大変だと思います。私も法務大臣の政務の秘書官をやらせていただいていたので、もうどれだけ、昼夜問わず、休日問わずお仕事をされていらっしゃると思いますから、ちょっとその御苦労も半分代弁できたらという気持ちでここに立っているところもあるんですけれども。

 大臣、これは、女性が女性のことを言うと、時々、女、女と言うなと言われることもあるんですね。私、これはちょっと違うと思っていまして、なぜ女性が多い職場がいいかなと思うのは、女性が働きやすい職場というのは男性も働きやすいんですよ。いろいろなやはりプライベートのこと、お子さんのこと、家庭のこと、ありますけれども、そこに配慮した働き方を進めていくということは、これは女性だけではなくて男性にも働きやすい職場にする。

 そして、この法務省はやはり法を管轄するところの大変重要な省庁で、そこで働く職員の皆さんが生き生きと働いてもらうのは、これは結果、仕事の質を高め、国民の皆さんのための仕事ができるというふうに考えるからでございます。

 では、ちょっとお伺いしたいんですけれども、女性の働く環境に関してなんですけれども、刑事局長にちょっとお伺いします。

 特に検察という仕事は、それこそ本当に昼夜問わず、休日問わずというところの仕事になるかと思うんですけれども、例えば転勤とか介護、家庭の状況、いろいろなことがありますけれども、そういった声を何らかきちんと聞くようなシステムというのはございますでしょうか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 委員の御質問は、検察官を含めた検察職員のその個人的な事情について、ちゃんと組織的に把握しているかということだと思います。

 委員御指摘のとおり、特に検察官は全国転勤をすることでございまして、その他の事務官等の職員も転勤がございます。そういった転勤をするということもございますので、個々の職員につきまして、男女問わず、必要な個人的な事情をきちんと把握しているところでございます。

吉田(は)委員 やはり検察官の方は、司法試験を通って、そして検察官に任官されて、相当な御努力の末、任官されるわけですし、そして非常に、私なんかから見たら超エリートでいらっしゃいます。

 その方々が、例えば、結婚相手、境遇によって、お互いに検察官である、ばらばらに転勤になる、じゃ、どっちかが仕事を諦めなきゃいけないのかというふうになったときに、これはすごくつらい。御本人もつらいですし、その能力を発揮していただけないという事態がもし生じたら、それは国家の損失だとやはり思いますので、今、刑事局長、聞く体制があるというふうにおっしゃっていたんですが、例えば、ちょっと提案してもよろしいでしょうか。

 女性の検察官の方から、以前質問させていただいたときに、妊娠中、特に重い事件になると、見るもの、聞くものが、本人は全然平気であっても、おなかの子供に影響してくるんじゃないかというやはり心配が出てくるのは、これは検察官であっても同じなのかなという気が私はするんですね。ちょっとそのような声もいただいたものですから、例えば、女性検察官同士が女性同士で本音を話せるような時間や場所をつくるということは可能でございましょうか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと委員のおっしゃっているイメージに沿っているのかどうか、あれなんですが、当然、職場で、最近コロナでリモートワークがございますが、基本的に検察庁の仕事というのは実際職場に出てきてやることが多うございますので、男である私の経験からしましても、いろいろな事柄について、同僚あるいは先輩、後輩と、職場で自由になる時間を使って、様々な意見交換であるとか、いろいろな話合いはしているんだろうと思います。

 それを超えて、組織の方からそういった場を設定する必要があるかどうかというのは、もし本当にそれが必要だということになれば、そういった議員の御指摘の観点からも含めて考えていくことになろうかと思います。

 取りあえず、現状としては、今私が申し上げたような感覚を私自身が経験から持っているところでございます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。是非、一つの可能性として考えていただけたらと思います。

 これも葉梨大臣にもちょっとお伺いして、ようやく大臣に伝わったかなと思ったところだったんですけれども、今回、齋藤大臣になりました。改めて、マミーギルトの話をちょっとさせていただきたいと思います。

 齋藤大臣、マミーギルト、聞いたことはございますでしょうか。なくても全然構わないです。

齋藤(健)国務大臣 正直に申し上げれば、聞いたことはありませんでした。

吉田(は)委員 これは、多分どの仕事をしている女性でも感じられるんじゃないかと思うんですが、私も一政治活動をしてきた母として感じるのは、国家国民のためにと思って、志を立て、政治を志して、その活動をしていく上で、自分自身、もちろん納得していますし、あらゆる犠牲を払ってでもという気持ちでやっています。

 大臣も同じだと思うんですけれども、また、検察官やそれぞれの法務のプロフェッショナルの方もそうだと思うんですが、とは思っても、やはり、いつもどこかで、子供を犠牲にしているんじゃないか、私が母親じゃなかったらもっといい人生がこの子にはあったんじゃないかという罪の意識ですね、ギルトというのはそういうことなんですけれども、それを持っていらっしゃる方は私は多いと思います。これを、やはりプロだからという気持ちもあるんですが、でも、人間の本音としてそれがあるとしたら、私はそれを分かっていただきたいなという気持ちなんですね。

 大臣には、こうした、今、女性秘書官でいらっしゃいますし、女性の活躍という言葉が適当か分かりませんけれども、思う存分その能力を発揮していただくということは、結果、あのジャパン・アズ・ナンバーワンじゃないですけれども、もう一度日本が生き生きと再生していくためにはとても必要なことだと思いますので、是非それを検討していただきたいと思います。

 ここまでで、大臣、どうでしょうか。ちょっと、女性の働き方に関して何か思いがございましたら、一言いただけたらと存じます。

齋藤(健)国務大臣 今、マミーギルトの話がありましたけれども、実は、私も、子供が一番微妙なときに落選をしておりまして、いまだに子供に済まなかったという思いが消えないで現在に至っています。多分、女性も同じような思いを男性以上に持つんじゃないかなというふうに思います。

 また、私の事務所は、公設、私設合わせて、顧問で手伝ってくださっている方も含めて八名いますが、うち五名が女性でありまして、別に女性だから男性だからということではなくて、気持ちよく一緒に仕事をしてくれる方ということでお願いしたら、結果としてそうなっていたということであります。

 御質問について答えますと、私は、女性の活躍を促進して、社会や組織のダイバーシティー・アンド・インクルージョンというのを進めていくことは、おっしゃるように、社会や組織の活力のみならず、イノベーションの創出にもつながっていくのではないかと考えています。会社なんかでは、女性の発想が実は大きく展開していったということも数多くあります。

 また、全ての職員がその能力を最大限に発揮して、限られた時間で効率よく高い成果を上げるということによりまして、政策や行政サービスの質が向上していくということもありますし、職場環境を整備し、働き方改革を推進していくことは、本当に重要な課題だと考えています。

 法務省におきましては、現在、アット・ホウムプラン・プラスワンに基づいて、女性職員活躍推進に向けて積極的に取り組むとともに、性別を問わず全ての職員のワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組を推進しているところであります。

 法務省一丸となって、女性職員活躍を推進するとともに、女性に限らず全ての職員が生き生きと活躍できるように、働き方改革を前進させていきたいと考えています。

吉田(は)委員 是非お願いしたいと思います。

 その上で、活躍していく上で、今、人生百年時代と言われる中で、大学でもキャリア教育が非常に活発に取り上げられる時代となりました。キャリアパス、これはとても重要なところだと思うんですけれども、ちょっとその件に関しましてお伺いしたいと思います。

 最初に一つ、これは私がちょっと聞いただけなので現実は違うのかもしれないんですけれども、やはり妊娠、子育てという期間がある女性にとってみると、それ自体は本来は全然マイナスではないはずなんですね。お子さんを産むことは本当にすばらしいことで、また、子育てをすることはすばらしいことなんですけれども、仕事から見ると空白期間になってしまう。あるいは、それによって、仕事が何か簡単なものを回されるというようなこともなきにしもあらずという気がするんですけれども。

 ちょっと聞いたところによると、女性の検察官の方は、いわゆる大きな事件とかではなく、性犯罪の案件や、もちろん性犯罪も大きい事件ですけれども、いわゆる社会の耳目を集めるような大きな事件というのはなかなか回ってこないんじゃないかという話を聞いたりしたんですね。これは、結果、その方の仕事の評価にもつながるところで、ジレンマを感じるところでもあると思います。

 私も、女性の政治家として、もちろん子育てには関心はありますし、子育て政策はやりたいと思うんですけれども、私の専門分野は経済の方であり、経済の方の話をしたい、女だから何とかと見られるのはやはりちょっと私は違うなと。その職種の、検察官であるからこの仕事、私たちは政治家である、また専門がこれであるからこの仕事という形で、まさに男女というものを超えていけたら、私は、すばらしい、皆様の能力が発揮されるのではないかと思っているんですが、その上で、先ほどのキャリアパスです。

 法務省は、ある意味、特殊な省庁だと思います。法曹出身の方、大臣もこの組織図をお持ちだと思うんですけれども、この中で主要な職員さん、また幹部は法曹出身者の方が多いと思います。また一方で、国家公務員試験の総合職という形で法務省に入省される方もいらっしゃると思います。それぞれのキャリアパスとして、簡単なことでいうと、法曹出身者は法曹出身者のキャリアパスがちゃんとあって、試験合格組の人は試験合格組できちんとキャリアパスがあるのかどうか、その二つがきちんと融合して今法務省で働けているのかどうか。担当の方に聞いた後に、その後、大臣からお話を伺いたいと思います。

吉川政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、検察に関することを所管する刑事局の事務や、複雑な専門的知見を要する民事、刑事の基本法律の立案などにつきまして、これらに的確に対応するために、検事等の法曹有資格者を配置しております。

 一方で、国家公務員採用総合職試験等によりまして採用された一般の行政職職員等が、様々な経験を積んで、法務省が所管する基本法の立案等の専門作業にも従事し得る能力を十分に備えることはもとより望ましいことでございまして、そのような職員を育成すべく努めているところでございます。

 具体的には、各職員に対しまして年次に応じた各種研修等を実施しているほか、若手職員のキャリア形成支援として、自身のキャリアデザインを実現するために必要な知識やスキル、職務経験を蓄積できるよう、留学、出向といった自主的に挑戦できる機会の提供、上司による面談の場を活用して、職員のキャリア形成に係る助言を行うなどの取組を行っております。

 また、女性職員に対するキャリア形成支援として、活躍する先輩女性職員が歩んできたキャリアパスモデルの提示や、先輩女性職員に気軽に相談できるよう、メンター制度の活用などを推進するなどの取組を行っております。

 委員御指摘のキャリアパスという観点でございますが、今申し上げたような形で、適材適所という形での人事の結果としてそのようなパスが見えるかもしれませんが、理想といたしましては、検察官であろうと、あるいは一般職の職員であろうと、様々な持てる力に応じてその職に就いていくというものが理想と考えておりまして、そのような方向を目指しているところでございます。

吉田(は)委員 最後の一言を聞いて、とても私も共感するところであります。

 やはりそれぞれの能力というのはそれぞれ違うところであり、相反するような、あるいはどちらが上、下というふうになるとどうしても萎縮してしまいますし、私、一説では、いろいろな省庁、どこに行くというふうになったときに、法務省は最後と聞いたことがあるんですね。それはやはり、キャリアパスに私は関係するのかなというふうに感じたところもあったので、それはちょっと悔しい。法務省には優秀な方が集まっていただいて、本当に国の根幹を担われる省庁ですので、その点、是非大臣も問題意識を持っていただけたらということでこの質問をさせていただきました。

 私は、なぜ多様な人材を活用、能力を発揮していただきたいかというと、これはこの間、十一月十一日のこの委員会で津島委員もおっしゃったんですね。法務省はこれからは経済省庁だ、もうそういう側面があるんだよ、だから頑張ってこいということを申し上げてきたんですねというふうにおっしゃいました。

 経済省かどうか、ちょっと私はそこは合意しかねるんですけれども、ただ、所管する中には、やはり経済分野の知識や、このデジタル化において、本当に激しい社会変動がある中で、そういったことに明るい、また、それをきちんと追うという職員の方も必要だと思うんです。

 これは、現場を経験していらっしゃった刑務官や検察官、また、裁判官の方、皆さんは法曹の専門家でいらっしゃいます。なので、こういった経済や法曹、いろいろな力が相まって、しっかりとした法務省の力になっていくのではないかなと思いましたので、どちらがどっちという感じで、厳しい国家公務員の試験を通って、志に燃えて法務省に入られた方々も多いと思いますので、皆さんそれぞれが尊重し合いながら力を発揮していただきたいなというふうに思います。

 では、ここで一つ、私の問題意識にもあるんですけれども、今回、葉梨大臣の辞任につながりました死刑制度に関してお伺いしたいと思います。

 私自身はこの死刑制度は反対の立場でありますが、先ほど大臣は、死刑制度は必要だということをおっしゃいました。その上でお伺いしたいと思います。

 まず、一番、私は、死刑を執行する際に絶対あってはいけないのは、無辜の人、犯罪を犯していない方、その方を処罰してしまうことだと思います。

 これは、大臣、私も専門家じゃないので教えていただいたんですけれども、冤罪という言葉は法律用語じゃないそうなんですけれども、私、冤罪と言った方が話が早いかなと思ったら、法律用語ではないという御指摘をいただきましたので、無辜の方というふうにこの後申し上げたいと思うんですが、この無辜の方、罪を犯していない方、それを罰しないため、また、その方を、死刑という本当に極限の刑罰でございます、それを避けるためにはどうしたらよろしいでしょうか。担当部署の方、そしてまた、その後に大臣のお考えを聞きたいと思います。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 我が国の裁判の実務におきましては、令状主義及び厳格な証拠法則が採用されておりまして、また三審制が保障されるなど、捜査、公判を通じて慎重な手続により有罪が確定され、さらに、確定した裁判に対しても再審、非常上告等の救済制度が設けられておりまして、これらは、誤った裁判、誤判を防止するために有効に機能しているものと承知をしております。

 その上で、一般論として申し上げれば、死刑に関しましては、個々の事案につき、関係記録を十分に精査し、刑の執行停止、再審事由の有無等について慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に初めて死刑執行命令を発することとされてきたものと承知しております。我が国では、死刑は、今申し上げたような厳格な制度の下において極めて慎重に運用されているものと承知しております。

吉田(は)委員 ということで、今刑事局長からお話をいただいたんですけれども、本当に何度も何度も考え、そして記録を見直しという作業がもちろんあるんだと思うんですけれども、今現在、百六名の死刑囚の方が収容されています。それに加えて、お一人、収容されていない死刑囚の方がいらっしゃいます。そのお一人、収容されていない死刑囚の方、袴田さんです。

 本当に、あの袴田さんが保釈された日のことを私は忘れられません。彼が保釈されて、その弁護士の方が、袴田さん、これからはケーキ食べたっていいよ、何食べたい、好きなもの食べれるんだよというふうにおっしゃったときに、そんな自由も奪われていたのかと。本当に、人権ということを考えたときに、袴田さんだけではなく、御家族皆様、本当にこの間翻弄されたんだと思うんですね。まだこれは結審していませんから、いまだ死刑囚の中に数えられているわけですけれども、こういったことを考えると、私は本当に胸が痛くなります。

 こうした、今、死刑のことに関して言うと、無辜の人を出さない、犯罪をしていない方を誤判しないためには、捜査の段階と、そして執行時とそれぞれ、それを防ぐための何らかの方策があると思うんですけれども、捜査、取調べのときにはどんなことが行われて、こういった誤判を防ぐものがあるのか、また、執行時にはどのような形で二重三重にチェックをされていらっしゃるのか、御答弁をいただきたいと思います。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 一部、先ほどお答えしたことと重なる答弁もございます。

 まず、主に重点は、刑の確定までのことに御指摘はあるんだと思います。まず、捜査を行って起訴をして裁判を行うということですから、その裁判の過程におきましては、先ほども申し上げましたように、厳格な証拠法則の下に三審制が保障されて、裁判所による裁判がなされ、さらにその裁判に対する救済手続もあるということでございます。

 捜査におきましてであります。捜査におきましては、適正に捜査を遂行して真実を発見するというところで捜査当局がやっていることでございます。

 委員の御質問を拝聴しておりますと、捜査の中で取調べということの御指摘があろうかと思いましたので、その上で、特に取調べについて御説明、お答え申し上げます。

 取調べが適正に行われなければならないということは当然のことでございまして、検察の精神及び基本姿勢を示す「検察の理念」におきましても、取調べにおいては、供述の任意性の確保その他必要な配慮をして、真実の供述が得られるように努めるとされているところでございます。

 その上で、取調べの適正を確保するための具体的な取組について申し上げますと、検察当局におきましては、取調べの全過程を録音、録画することを含め、積極的に録音、録画を実施しており、取調べの適正確保にこれは資するものと考えております。

 また、最高検察庁は、取調べの適正を確保するための通達等を発出しておりまして、例えば、取調べに当たっては深夜又は長時間にわたり取調べを行うことを避けるべきこととされているほか、取調べに対する不満等に対して適切に対応すべきこと、被疑者と弁護人等の間の接見に対してより一層の配慮を行うべきことなどを定めているものと承知しております。

 検察当局におきましては、事件処理に当たりましては、こういったことを踏まえて、信用性のある供述の確保と、さらに、その供述のみにとどまらず、その裏づけ捜査の徹底、証拠物やその鑑定等の客観的な証拠の十分な収集及び検討等に一層の意を用い、適正な捜査処理に努めているものと承知しておりまして、今後も引き続きこれらの取組を着実に進めていくものと承知しております。

吉田(は)委員 刑事局長、ありがとうございます。

 この百七名の中にも、絶対、無辜の人がいてはいけません。この中で無辜の人を執行してしまうなんということがあったら本当に取り返しがつきませんので、この点は本当に重大に受け止めていただきたいと思います。

 その上で、今刑事局長おっしゃいました、厳格な証拠保存に基づいてというところですが、これは死刑の案件ではありませんけれども、最近でも無罪判決が出たものがございますよね。二〇〇九年に起きました村木厚子さんの冤罪事件。これは、その後、大阪地検の特捜主任検事さんが、証拠改ざん、フロッピーディスクを改ざんしたということで、二〇一〇年、この事件が起きています。

 それを受けて、二〇一六年、今刑事局長がおっしゃっていただいた取調べの可視化につながっていったわけですが、やはりこれも最近なんですよね。そう考えると、この百七名の死刑確定囚の中には、その取調べの可視化以前の方々もたくさん含まれていらっしゃるんだというふうに私は認識しているんですけれども、やはりこれは本当に本当に重要な点でございます。

 大臣には是非それを私はお伝えしたいのと、それと、検察の皆様も社会正義のために闘っていらっしゃるわけですけれども、大臣、秋霜烈日という言葉を聞いたことはございますでしょうか。あるということで、検察官の方は、秋の霜の厳しさで罰し、そして、日の、烈日というところですけれども、社会正義のために本当にそれを貫くということで日々お仕事されていらっしゃると思いますので、それを本当に支える上でも、本当の正義を私は求めていきたいと思いますので、最後、この件に関しまして、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 刑事局長から死刑についての発言をされました。私もそれをなぞるわけでありますが、私の責任としては執行の問題があります。裁判で確定したものについては、それは厳粛に受け止めていかなくてはいけないと思っておりますけれども、この執行の段階におきましても、私としても慎重かつ厳正に判断をしていきたいというふうに思っています。

吉田(は)委員 齋藤大臣には、様々な、この時期での御就任ということで、たくさんの課題がある中、御苦労も多いかと思いますけれども、是非、法務省の皆様と力を合わせて、そしてまた、私たちも委員会の中でいろいろな知恵やアイデアを出しながら、よりよい法務行政を進めていかれることを御期待申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦でございます。

 齋藤大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

 前大臣との入管行政や民法改正についての議論の中で、これまで確認したことや、特に重要な、大臣からいただいていた答弁内容について、幾つか改めて確認をさせてもらいます。

 まずは、民法改正についてです。

 子供への体罰が禁止され、女性の再婚禁止期間が廃止されました。また、無戸籍対策については、課題は残しつつも確実な前進だと捉え、本委員会で法案に賛成いたしました。

 しかしながら、十一月八日の質疑の中で、国籍法三条三項について、重大な問題、指摘と改善案を示させてもらいました。無国籍問題については前進どころか後退をしており、大変残念であります。

 前回も指摘しましたが、無国籍の子供が発生してしまうことは明確な国際法違反です。にもかかわらず、わざわざ国籍法三条三項を新設し、改正案において、親の虚偽認知が判明すれば、何年経過していても国籍取得日まで遡って子供の国籍を奪うことが可能であることを強調しております。とても信じ難い法律の中身であると感じております。国際的な流れからも大きく逸脱しています。

 資料の一枚目から三枚目にあるように、諸外国ではこのような扱いは一切していない。同様のケースがあっても、無国籍になってしまう場合は国籍を喪失しないことが法律で明文化されています。さらに、一定期間当該国民としてその国で扱われてきた者は国籍を剥奪されることがないことが法律で保障されています。

 このような議論も踏まえ、無国籍を解消していくための附帯決議が本委員会でもされました。

 そこで、齋藤大臣にお尋ねいたします。

 今後、多大な不利益を被る無国籍者が生じないように、無国籍の防止や国籍喪失の期間制限について、諸外国の取組を十分に調査研究し、国内法を整備していくべきではないでしょうか。お答えください。

    〔委員長退席、藤原委員長代理着席〕

齋藤(健)国務大臣 恐らく過去も累次御答弁をしていると思うんですけれども、今、認知が事実に反する場合でも日本国籍を取得できるということは、結果的に、真偽を問わず父の認知さえあれば日本国籍を取得することができることになるため、国籍の付与という公法上の法律関係について、虚偽があった場合の認知を容認してその認知の無効に制限を設けるということはやはり適切ではないと考えています。

 このケースにおいて、父が虚偽の認知をした事案におきまして母側の国籍も認められないといった場合には子供が無国籍となるケースも生じ得るわけでありますけれども、そのようなケースの中にも、両親とも虚偽の認知であることを知っていた場合ですとか、母親が虚偽の認知であることを知っていた場合など、様々な類型がございます。また、認知された子の年齢とか生活状況なども様々でありますので、国籍の取得に関して要件を設けて一律の対応をするということも困難である現実があります。

 他方で、子供が無国籍となる場合であっても、国籍法第八条第四号等によって、帰化による日本国籍を認められる余地もございます。帰化を許可するか否かの審査に当たっては、帰責性ですとか定着性ですとか個別の事情が考慮されることになりますが、また、所定の手続を取ることで母側の国籍が認められることもあり、無国籍となった子の置かれた立場に配慮しながら、何とか無国籍状態の解消に向けて対応してまいりたいと考えています。

山田(勝)委員 今お話があった帰化では、一時的に国籍を失ってしまうことは変わりません。そういう状態であれば、大変な負担、精神的なことも経済的なことも、医療にアクセスできないかもしれない、様々な不利益を一時的に与えてしまうことは変わりませんので、是非ともこの問題、そもそも無国籍を防止するための法整備、今後も積極的に提案して、提議していきたいと思っております。

 続いて、入管行政についてです。

 齋藤大臣は所信の中で、ルールに基づく国際秩序と述べられています。国際ルールからほど遠い日本の入管行政によって、多くの外国人の方々の貴い命と人権が奪われ続け、大変な社会問題となっています。人としての当たり前の人権が尊重されるために、抜本的な改革が必要です。

 十月二十六日の質疑で、私は、入管センターに収容されている当事者の方々や、現場で長年そういった方々を支えている支援者の皆さんの声を直接大臣に聞いてもらいたいとお願いしました。前大臣は、検討させていただきますと御回答されました。

 齋藤大臣におかれましても、現場の声、特に遺族の方々も含め、こういった悲痛な声を直接聞いてもらえないでしょうか。

    〔藤原委員長代理退席、委員長着席〕

齋藤(健)国務大臣 お尋ねの、前大臣が検討するという旨の答弁をされたことは承知をしております。ただ、今私がこの瞬間において、私自身が直接対応するかどうかについては、白紙ではあります。

 いずれにしても、現場で対応を行う職員に、外国人やその支援者としっかり向き合って、人権の尊重という意識を持って執務に当たってもらうことは督促していきたいと思っています。

山田(勝)委員 齋藤大臣になられて、この件、後退してしまったこと、大変残念でございます。

 岸田首相も、旧統一教会の問題において、被害者の方と面会される予定があります。本当にこの入管行政の問題について改善を、改革をなされるお気持ちがあれば、まずは一番被害を被っている方々、その声を直接聞いてもらうべきだと強くお訴えさせていただきます。

 次に、日本の難民認定の在り方について伺います。

 欧米諸国は約二〇%から五〇%の難民認定率に対し、日本は〇・四%。日本は難民条約を批准しているにもかかわらず、なぜこんなに圧倒的に低いのかと委員会で前大臣に尋ねたところ、日本のこの法律というのは、難民条約を忠実になぞっているものですから、難民の範囲というのがいささか狭いのかなということで、もうちょっと庇護する方を広げてもいいんじゃないかという印象を私自身は持っていますと正直に御回答いただきました。

 齋藤大臣は、日本の〇・四%という極めて低い現状の難民認定率、どのように受け止めていらっしゃるでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、御指摘があった葉梨前大臣の答弁についてですけれども、これはいろいろな受け止め方があるかもしれませんが、入管法上の難民は、難民条約の適用を受ける難民といい、具体的には、迫害を受けるおそれがある理由が難民条約に定められた五つの理由である者に限られており、庇護すべき者の範囲との関係ではいささか限定されているということを答弁されたのではないかと認識をしておりまして、この認識であれば、私も共有をするところであります。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 続いて、配付資料の四枚目を御覧ください。

 在留ミャンマー人への緊急避難措置についてです。

 昨年二月、軍によるクーデターが発生し、ミャンマーにおける情勢不安を理由に日本での在留を希望するミャンマー人について、二千八百八十九人が難民認定申請を行っているうち、九〇%に当たる二千六百五人が緊急避難措置として在留資格、特定活動が認められました。しかし一方で、百九十二人もの方々が難民申請中にもかかわらず非正規在留者とされており、今なお働けない、医療も受けられない、生活不安が続いています。

 クーデターから二年近く経過しているにもかかわらず、なぜ審査結果がいまだに出ていないのでしょうか。お答えください。

西山政府参考人 手続の面から御説明をさせていただきたいと思います。

 あくまで一般論で申し上げることではございますが、難民認定手続では、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき難民該当性の判断をすることに加えまして、過去に申請したことがある者についてはその申請状況や、非正規在留者の場合には在留資格に係る調査、判断も難民該当性に係る判断と併せて行うこととされておりまして、手続には一定の時間を要するところでございます。

山田(勝)委員 一定の時間を要するのは理解できます。しかし、もう二年近くたっている。どう考えてもかかり過ぎではないでしょうか。非正規滞在の方々は、自ら生活費を稼ぐことも許されず、保険適用外のため、病気やけがをされたとしても医療にアクセスできない。この日本社会の中で、人としての当たり前の生活ができない、とても困窮されています。一刻も早く保護しなければなりません。

 大臣、これは大臣にお尋ねしております。年内中には審査の結果を出すこと、お約束いただけるでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 ミャンマーの情勢は引き続き不透明な状況でありますところ、ミャンマーの方々が難民認定申請などを行った場合、その審査を迅速に行うということは、私は極めて重要だと認識しています。

 他方で、一般論として申し上げれば、難民認定手続では、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づいて難民該当性を判断することに加えまして、非正規在留者の場合には在留資格に係る調査、判断も難民該当性に係る判断と併せて行うこととされておりまして、そのため、手続に一定の時間を要するということになっています。

 その上で、難民認定がなされない非正規在留者に対する在留特別許可の諾否判断というのがあるんですけれども、収容中又は仮放免中にかかわらず、個別の事案ごとに、在留を希望する理由、家族関係、素行、当該外国人の本国情勢等、諸般の事情を総合的に勘案して行うこととなっています。

 ただ、先生御指摘のように、ミャンマーの方々からの難民認定申請につきましては、現在、順次手続を進めているところではありますけれども、私からも事務方に迅速な処理について指示をしていきたいと思います。

山田(勝)委員 齋藤大臣の力強い決意、ありがとうございます。是非とも、一刻も早く、母国に帰れないことは誰が考えても明らかですので、迅速に対応していただきたいと強くお願いいたします。

 このように、日本の難民認定の在り方については、様々、国際的な機関からも指摘があります。その認定基準について大幅な改善が求められているところです。十一月三日に発表された国連自由権規約委員会による総括所見では、国際基準に沿った包括的な庇護法を早急に採択することを日本政府に求めています。

 大臣、国連からのこの要求、どのように受け止められているでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の国連自由権規約委員会の指摘でありますが、難民認定制度に関して、国際基準に沿った包括的な庇護法令等について言及があったというふうに承知しています。

 これは十一月三日になされた発表でありますので、現在、総括所見の内容を精査しておりまして、その趣旨を尊重しながら、我が国の実情等を踏まえ、適切に対処していきたいというふうに考えております。

山田(勝)委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。

 国際基準に沿った難民認定基準の策定が重要です。

 昨年、入管庁は、政府提出の入管法改正案が廃案となった後、UNHCRと覚書を交わしています。そこでは、難民認定制度の質の向上に資する施策を実施するために必要な相互の協力がうたわれています。

 このような経緯を踏まえ、現在、入管庁が策定を進めている難民該当性に関する規範的要素の明確化については、UNHCRの意見に沿った内容であると理解してよろしいでしょうか。お答えください。

西山政府参考人 委員御指摘のUNHCRと交換した協力覚書は、難民認定制度の質の向上に資する施策を機動的に実施していくために、出入国在留管理庁とUNHCRとの間の協力に係る基本的認識を確認し、協力する分野をあらかじめ定めたものでございます。

 具体的には、協力覚書の下において、難民該当性に関する規範的要素の明確化、難民調査官の能力向上、出身国情報の充実に関して、UNHCRの協力も得ながら取組を行い、難民認定制度の運用の一層の適正化を図っているところでございます。

 引き続き、国際機関と協力しながら、真に庇護を必要とする外国人の迅速かつ確実な保護に取り組んでまいりたいと考えております。

山田(勝)委員 是非とも、国際基準に沿った難民認定に改めていただくことを強くお願いいたします。

 続いて、在留資格についてお尋ねします。

 十月二十六日の委員会質疑で、入管収容中に重篤な病気を患ってしまった場合、医療の在留資格を受け、手術などの医療行為の後、人道的配慮が必要だと判断された場合にあっては、個別の事情に応じて在留資格を新たに付与することは考えられると政府答弁がありました。

 その場合、どのような在留資格が与えられるのでしょうか。また、その在留資格は生活保護の受給が可能なのでしょうか。お答えください。

西山政府参考人 委員御指摘のような事案に関して、個別についてお答えすることは困難でございますが、一般論として、当該特定の活動を終え、在留期間が経過した場合は、退去強制手続を受けることになります。

 もっとも、退去強制事由に該当する場合でも、人道的配慮が必要なときなどには、法務大臣の裁量により在留が特別に許可されることがございます。在留特別許可に当たりましては、当該外国人が行おうとする活動や、当該外国人が有する身分若しくは地位に応じて在留資格を個別に決定しているところでございます。

山田(勝)委員 答えていないんですけれども、生活保護が受けられるのか。つまり、こういった医療行為の後に、自立していくことが困難である、人道的配慮が必要である、そういった場合に与えられる特別な在留許可、こういったものに対して、生活保護の対象になるのかと聞いております。

本多政府参考人 お答えいたします。

 生活に困窮する外国人の方につきましては、日本人と同様に、日本国内での活動の制限を受けない永住者、定住者等の在留資格を有する方については、生活保護法に準じた保護の対象としているところでございます。

 御質問の外国人の方が生活保護を受けることができるかどうかは、こうした保護の対象となる在留資格を有するか否かによって左右されるものでございます。

山田(勝)委員 事前に担当部局と確認しております。このようなケース、活動に制限のない方に与えられる在留許可があり得て、また、その場合は生活保護の対象にもなり得るということを事前に確認させていただいております。

 続いてのテーマに移ります。

 ホームページでも公表されている在留特別許可のガイドラインについてお尋ねいたします。

 申請者の人生を左右する在留許可の審査が極めて不誠実で、当事者の方々から入管庁に対する怒りや悲しみに満ちた声が多数寄せられています。この現状の恣意的で不透明な仕組みを改善すべきと考えます。

 ガイドライン上で規定されている、日本人との婚姻という積極要素があり、犯罪歴という消極要素がないにもかかわらず、在留許可が認められていない実態が多数存在しています。ガイドラインがガイドラインの意味を成していません。日本人との婚姻事実があり、かつ犯罪歴がない外国人の方に在留特別許可が与えられない理由とは何でしょうか。許可基準を明らかにすべきではないでしょうか。大臣、お答えください。

齋藤(健)国務大臣 委員御指摘の在留特別許可の許否判断というのは、当然のことながら、個別の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、素行、人道的な配慮の必要性など、諸般の事情を総合的に勘案し、行われているものであります。

 したがいまして、婚姻しているかどうかや犯罪歴があるかないかという事情も当然考慮することになっていますが、それはあくまでも考慮事項のうちの一つということになっているということでありますので、御答弁申し上げます。

山田(勝)委員 考慮事項の一つという、極めて不透明というか、はっきりしないガイドラインの内容である、その実態が今の答弁でも明らかになりました。

 実際、許可をお願いして、出てくる答えが、総合的所見、そういった説明で不許可通知が出されています。これは本当に問題だと思うんですよ、大臣。

 それぞれの方々は人生を懸けて申請しております。夫婦でこの先、日本社会で暮らしていくことができない納得のいく理由があれば、それは伝えることが誠実さではないでしょうか。しかし、不透明で恣意的な判断が繰り返され、窓口でも担当者から不誠実な対応をされる。入管行政への不信感を募らせていくばかりです。こういう状況では、出口の見えないトンネルの中にいつまでもいる状態で、未来に希望を見出せない、そういった方々が多数いらっしゃることを知っていただきたい。

 なぜ不許可の理由を正確に、丁寧に伝えないのでしょうか。恣意的判断がないと言われるのであれば、堂々と不許可理由を述べるべきではないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 委員のお気持ちも分からないわけではないんですが、残念ながら、現行法上は、不許可理由を説明する規定というものは存在していない。ただ、退去強制手続においては、その外国人が、自らの容疑事実を争ったり、あるいは在留を希望する場合などに、十分に自らの言い分を主張できるようにして、慎重な判断がなされているというのも現実でございます。

 なお、廃案となった改正法案では、在留特別許可に当たって考慮すべき事項を明確化した上で、在留特別許可の申請手続を創設し、在留特別許可をしない処分をするときは、申請者が主張した事情も踏まえ、その理由を書面で通知することとしております。

山田(勝)委員 この在留特別許可、強大な権力が法務省の担当者や法務大臣に与えられています。このような実態、多くの人たちが不満や怒りを抱えているこの実態、一国民としても到底納得できません。

 私たちは、既に議員立法で国会に入管法の改正案を提出しております。この問題、許可基準を法律に明文化することにしています。現状のガイドラインでは何の法的拘束力も持ちません。法律に明記することで、より遵守されるようになります。さらに、不許可の場合の理由の通知も法律上義務づけています。法律に書き込まれる以上、不許可の場合には、当然ながら、相当な理由が求められます。

 大臣、難民認定同様に、この在留特別許可の在り方、大いに改正が必要ではないでしょうか。お答えください。

齋藤(健)国務大臣 私の答弁は先ほど申し上げたとおりなんですけれども、議員立法につきまして、私がここでコメントするのはちょっと控えたいなと思います。

山田(勝)委員 しっかりと、私たちが提案している内容も大臣も確認いただいて、取り入れていただくべきことは多いと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 続いて、技能実習制度について、残り時間議論したいと思います。

 技能実習生を実際に受け入れている地元長崎の農業関係者から直接ヒアリングを行いました。外国人の労働力なしでは今の農業の生産規模を維持していけない、特に、人材不足の地方にとって生命線とも言える大事な制度であることを改めて感じました。

 しかし一方で、強い違和感も同時に覚えました。技能実習という名称です。本音と建前があからさまで、余りにも実態とかけ離れています。受入れ側は、技術の伝達ではなく労働力の確保を目的に、外国人は、技能の習得ではなく出稼ぎを目的にしてあります。名は体を表すといいますので、是非、今後、この名称変更を行っていくべきだと考えます。

 また、名称だけではなく、約三十年前に始まったこの制度は、大きく見直す時期に来ているのではないでしょうか。

 現場で話を伺い驚きました。資料五枚目を御覧ください。左上の農業分野です。

 同じ畜産であっても、養豚や養鶏は二号に移行でき、原則三年間働き続けられるのに対し、肉用牛は一号までしか認められていないため、一年間しか働けない。一年間では、日本語を覚えてこれからというタイミングで祖国に帰ってしまう。余りにも現場の実態にそぐわない運用がなされています。

 技能実習制度における一号と二号の線引き、一体誰が、どのような基準で定めているのでしょうか。

西山政府参考人 技能実習制度におきましては、その実習期間として、第一号技能実習について一年以内、第二号又は第三号技能実習について二年以内であることが求められておりますところ、次の段階の技能実習に移行するためには、技能実習法上、前段階で到達目標とした技能検定等に合格していることを要件といたしております。

 委員御指摘の肉用牛の畜産などにつきましては、現状、技能検定等の公的評価システムが整備されているなどの要件を満たしておりませんで、第一号技能実習のみが可能となっているものでございます。

 なお、移行対象職種の追加に関しましては、同一作業の反復のみではないこと、送り出し国の実習ニーズに合致すること、実習の成果が評価できる公的評価システムがあることが要件とされておりますところ、これらの要件を満たした上で、専門家会議におきましてこれらの要件に合致していることの確認、それから技能実習法施行規則の改正といった手続を行うことにより、現在移行対象でない職種、作業であっても、二年目以降の技能実習を実施することができる移行対象職種、作業となることは可能でございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 つまり、例えば今回のケース、肉用牛であれば、現場の生産者の皆さんが全国の肉用牛の協会へ声を上げ、肉用牛の協会が正式に農林水産省へ二号への移行を要望することで、公的な審議会がなされ、肉用牛も他の職種同様に三年間働いてもらえる可能性があるということでした。

 しかし、これはすぐに実現されることでは到底ありません。例えば、一生産者が全国組織の業界団体へ声を上げ、業界を動かし、更に政府まで動かす、これを実現するには相当ハードルが高いように感じます。

 この生産者の方が私に教えてくれました。来年四月からカンボジアの子がうちの農場に来てくれる。日本での一年間の滞在期間中に特定技能の試験に挑戦し、何としても合格したい。そして、一年以上日本にい続けたい、そう言われているそうです。しかし、もしこの特定技能の試験に合格できなければ、今の制度上、一年後にはカンボジアに帰国しなければなりません。

 この制度、受入れ側も、働く側も、誰も得をしない技能実習生一号。人口減少のスピードが当初よりも早く進行している我が国において、全国各地様々な職種で深刻な人手不足に陥っており、せっかく来てくれた外国人労働者を僅か一年の期間で制限することに一体どのようなメリットがあるのでしょうか。また、長らく続く円安も、この問題、逆風となっているのは確かです。外国人との真の共生社会を目指し、海外から選ばれる日本であるために、時代の変化に合わせた制度改革が今必要ではないでしょうか。

 私は、現場の声に基づき、技能実習一号と二号を統合し、どの職種であっても三年間の労働環境を保障すべきと提案いたしますが、大臣、いかがでしょうか。最後の質問になります。

齋藤(健)国務大臣 私も農林大臣をやっていましたので、肉用牛の皆さんの現状というものはそれなりに把握しているつもりでありますので、気持ちにおいては共感を持てるところがあるわけでありますが、ただ、技能実習制度に関しましては、委員のような御意見も含め、様々な御意見があることは承知をしているところであります。

 先ほどの御答弁でも申し上げましたが、技能実習制度については、法律の規定による検討の時期に差しかかってきておりますので、有識者会議を設けて各界の有識者の方々に御議論いただくべく、現在会議の開催に向けて準備を進めているところでありますので、今後開催するこの有識者会議において様々な御意見を伺いながら、政府全体で丁寧に議論していきたいと思っています。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 有識者の意見も大切です。しかし、国民の代表である私たち国会議員とも、この未来志向の外国人労働者受入れ制度について大いに議論をしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、立憲民主党から、米山から質問いたします。

 今ほど時間がオーバーしていますが、それは私の時間を削らせていただきます。

 まず、齋藤大臣、まずは御就任、大変おめでとうございます。

 私、実はといいますか、知っている人は知っているんですが、自民党に所属しておりまして、二〇〇九年の政権交代選挙では共に一回落選経験のある新人として立候補しておりまして、そのとき大臣は当選されて、私は落選して、今に至っております。その間、大臣とは地元の会合などで何度かお会いしているほか、私の友人が奇遇にして大臣の、農林大臣だったときの部下であり、その御人格、御見識は聞き及んでおり、畏敬の念を抱いている一人であると申し上げさせていただきます。

 一方で、恐縮ながら、大臣は今まで、農林大臣を含め、基本的には経済畑でキャリアを積んでおられて、法務に関しては非常に豊かな経験があるというわけではないものと存じます。しかし、経験がないということは、従前の常識にとらわれず、新しい判断ができるということでもあります。

 特に、刑事司法の在り方や、さらに、今ほどずっと議論もありました外国人に対する行政の在り方については、日本の常識は世界の非常識とやゆされることも少なくありません。

 是非、従前の在り方にとらわれずに、高い御見識、御人格、そして海外経験もおありのことでございますので、国民から信頼されるのみならず、世界からも信頼される法務行政を実現していただけますことを御期待申し上げ、質問を始めさせていただきます。

 なお、先ほど鈴木議員、山田議員からありましたベトナム技能実習生の件につきましては、私、質問はしないんですけれども、一つお話しさせていただきます。

 十一月十二日、十三日に、私の地元の新潟県で、各国外交使節団を招いて世界錦鯉サミットというものを開催したんですが、このとき、私、夕食のレセプションでベトナム大使館の方と隣席になってお話ししました。非常に和やかな会話だったんですけれども、やはり技能実習制度については改善を要請されました。この問題は日本の世界的評価に関わるものであることを、この場をかりてお伝えさせていただきます。

 それでは、まず、大臣は昨日の所信におきまして、昨年三月、名古屋入国在留管理局において収容中のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなられた事件を取り上げて、調査報告書で示された改善策を中心として、出入国在留管理庁の組織、業務の改革を更に進めるとともに、被収容者の人権に配慮した適正な処遇の実施を徹底するための制度の整備を行うことが必要ですと述べられました。

 そこで伺います。

 ウィシュマさんの事件に先立つこと七年、平成二十五年十一月六日から法務省入国収容所東日本入国管理センターに収容されていたカメルーン人男性が平成二十六年三月三十日に死亡した事件がありました。この事件、国家賠償請求の訴訟になりまして、本年九月十六日、水戸地裁で国に百六十五万円の賠償を求める判決がなされ、現在、双方が控訴して高裁で係争中と把握しております。

 この件につきまして、カメルーン人男性がのたうち回ってアイム・ダイイングと叫んでいるにもかかわらず、何もされずに放置されているという映像が原告代理人弁護士提供の画像として報道されておりますが、死の直前の一定期間について防犯ビデオが存在するということでよろしいでしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘の事案につきまして、亡くなられた方の状況が撮影されたビデオ映像は存在いたします。

米山委員 この件につきまして、平成二十六年九月二日付で、法務省入国管理局東日本入国管理センターにおける被収容者死亡事案に関する報告書という報告書が出されているものと承知しておりますが、私が一生懸命グーグルした限りというか、法務省のホームページを調べた限りでは公開されておりません。これはなぜでしょうか。

西山政府参考人 死亡事案の発生等を踏まえまして実施した調査の結果については、個人に関する情報等を含むものでもございますので、報告書を世間一般に対して公表するか否か、あるいはいかなる方法で公表するかについては、事案に応じ、公表による公益性の観点を踏まえて判断しているところでございます。

 御指摘の事案につきましては、当時の入国管理局において、事案の発生を受け、処遇上の問題点の有無や医療体制の在り方等について検討する必要があると思料されたために調査を行ったところでございます。

 その上で、事案についての説明責任を果たすという観点から、調査結果の概要を報道機関等に配付して公表したものの、詳細な個人に関する情報等が記載された報告書については、ホームページ上での公表は行わなかったものでございます。

米山委員 ウィシュマ・サンダマリさんの件は、詳細にわたって、かなり詳細なところまで公表されているんですよ、現時点で。この二つの違いは何ですか。カメルーン人の方の方は公益性が低くて、ウィシュマ・サンダマリさんの方は公益性が高いんですか。それとも、ウィシュマ・サンダマリさんの方は非常に問題になったから出していたけれども、カメルーン人の方は問題にならないからそのままほっておこう、そう思ったんですか。御意見を。

西山政府参考人 もとより、委員の御指摘のような事案の比較をしているわけではございませんが、先ほど申し上げたとおり、報告書を世の中に公表するか否か、あるいはその方法、いかなる方法で公表するかについては、あくまで事案に応じ、公益性の観点をも踏まえて判断をしているところでございます。

米山委員 通告があったのかなかったのか微妙ですが、齋藤大臣に伺います。

 齋藤大臣、これは公表すべきだと思いませんか。

齋藤(健)国務大臣 よく精査して判断したいと思います。

米山委員 ちなみに、判断されるということですので、齋藤大臣、この報告書を読まれているんでしょうかね。読んでいるならば、この報告書の内容は正しいと思っておられますか。

齋藤(健)国務大臣 質問通告が昨日あったものですから、私はまだ報告書自体は読んでおりません。

 正しいか否かについては、この報告書は、本事案が発生した平成二十六年当時、関係資料の確認や関係職員からの聞き取りによって、死亡に至るまでの事実関係、これを明らかにするとともに、司法解剖医や外部医師二名から意見を聴取するなどして、緊急救命対応や受診対応等の妥当性を調査してまとめられたものであるというふうに理解をしておりますが、現在、国賠訴訟が提起されて訴訟が係属中でありますので、この調査報告書の内容も含めまして、私がどうこうと言うのはちょっと差し控えたいというふうに思います。

米山委員 差し控えると申しましても、これは公式に出された報告書、公開されていないとはいえ公式に出されていますので、特に、先ほどお話があったように報道陣にも公開されていますので、それは法務省の文書なわけですよ。

 法務省の文書である以上は、大臣もそれは正しいと思っていなければ困るといいますか、裁判に出ているから正しいかどうかは言えないなんというのは、それは不可解な話で、裁判に出ていようが出ていまいが、公式文書は正しいと思っていなければ困ると思うんですけれども、そういうことではないんですか。公式文書では、何か裁判にかかった途端に、それはもう法務省として見解が正しいと思っているか思っていないか言えないことになる、そういうふうにおっしゃられているんですか。

齋藤(健)国務大臣 現在、訴訟において、事実関係を含めて争われているんだろうと思います。

 したがいまして、その報告書の中身について、ここが正しい、正しくないみたいなことを予測するようなことを私が申し上げるのは、適切ではないんじゃないでしょうか。

米山委員 それはおかしくて、これは訴訟の前なのか後なのか分かりませんけれども、公式に出した文書ですよ。公式に出した文書というのは、法務省として正しいと思っているんでしょう。そうでしょう。

 では、公式に出した文書に関わるようなことで、後から何かの関係ない訴訟が提起されたら、突然、それについて大臣はそれが正しいか正しくないか言えなくなるんですか。何でしたら、そうしたら、ありとあらゆることについて法務省に対して、それこそ極論かもしれませんけれども、ばんばん訴訟を起こせば、どの文書も正しいか正しくないか言えませんとなっちゃいますよ。

 それは、いや、おかしくないじゃないですか。やはり出した文書は、出している文書は正しいと思っていなければ困るし、正しいと思っていないなら、これは撤回する必要がありますよ。どちらなんですか。

齋藤(健)国務大臣 当然のことながら、当時の調査については適切に行われて、その結果が報告されたというふうに認識しておりますので、この点については明言をしておきたいと思います。

米山委員 では、それはもう繰り返しませんけれども。

 ちなみに、この報告書を見ますと、三月十九日、三月二十七日に、診療所で、糖尿病の悪化はもう、私、一応医者ですから、少しでも、医者であれば、糖尿病の専門医じゃなくても、悪化は明白という状況かと思います。そして、診療に当たった医師がこれに対処しているようにも見えません。ところが、この医師に関して何の言及もないんですよ。

 それでも大臣は適切にやられたと言われるんですけれども、ちなみに、このお医者さん、どのような経歴のお医者さんだったんですか。そして、このお医者さん、何にも責任を問わない、そういうことでいいんでしょうか。

西山政府参考人 庁内医師の勤務状況や経歴につきましては、一般に公表するものではなく、また、公表すべき特別の事情等も見当たらないため、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

米山委員 さらに、この調査報告書は、事実関係や医師の意見書だけではなくて、最後に、調査結果として法務省の見解が書いてあるんです、結論部分が。

 結論部分。一方、血圧が正常な数値の範囲外に変動している期間が長いものの、勤務員らが医学的な専門知識を有するわけではないため、本事案が救急要請をするほどの状態と認識しなかったのもやむを得ないと思われると書いてあるんですね。

 つまり、血圧が通常の範囲を外れている状態が長い期間あったんだけれども、何の医学的知識もない勤務員らがそれを見て異常じゃないと思って放置したのはやむを得なかった、そう公式に法務省の報告書に書いてあるんです。これは正しいと思われますか。

西山政府参考人 今委員が御指摘になった点も含めまして、当時の調査を適切に行われた結果として報告されたものというふうに理解しております。

米山委員 当時の報告、それはもう当時の報告としていいですよ。

 現時点で、この件を離れてお聞きします。

 収容者の血圧は勤務員が測っているわけです。その人は別に看護師でもなければ医者でもありません、測っています。そして、正常値を外れている期間が長いです。それに対して救急要請をしなくていい、それはやむを得ない、結果は問われない、それが法務省の見解だということでよろしいですか。

西山政府参考人 今委員がお尋ねの点は、まさしく現在訴訟が係属中であって、裁判所の判断の対象となり得るものでございますので、司法への影響に鑑み、お答えを差し控えさせていただきます。

米山委員 今の、それはひどいと思いますよ。だって、それは裁判が終わるまで、血圧測定して異常値があっても何にも救急救命しなくていいということをペンディングし続けるんですか。それはおかしいでしょう。それは裁判とは関係ないことですよ。

 それは一般的医療として、若しくは収容者の、だって、大臣、収容者の処遇改善に努めるんでしょう。しかも、常識的なことですよ。常識として、血圧なりなんなり、素人でも判断できるようなバイタルサインが基準外の数値が出ている。それは一瞬なら分かりませんよ。でも、一定期間続いたら、それは救急要請しなきゃ駄目でしょう。だって、何で救急要請しなくていいということを素人が判断できるんですか。

 素人でも判断、救急要請、おかしいぞと思えるために基準値というのは決まっているんですよ。その基準値が外れているのに、それを救急要請しなくていい、しかも、そういう文書があって、それについて聞かれたら、裁判中だから答えられませんと。では、職員は何も分からないです。どうするんですか、裁判が終わるまで。これはどっちなんですか。

 結局、では、職員は救急要請しないということでいいんですね。これは齋藤大臣にお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 委員は一般論としてお聞きになっていると思うんですけれども、名古屋出入国在留管理局における例の事件を踏まえて、収容施設の医療体制を強化するために有識者会議の提言が取りまとめられておりまして、それをしっかり今取り組むところであります。

 一般論として言えば、やはり重篤な状態とかになれば救急要請するのは当然でありますけれども、この事件についての適否については、ちょっと、訴訟中ですので、コメントは差し控えたいと思います。

米山委員 では、この事件はいいので、そうしましたら、血圧が正常な数値の範囲外に変動している期間が長い場合には救命救急要請するんですね。

齋藤(健)国務大臣 個々の事案についてする、しないというのは、ちょっと私は判断しかねます。現場ですね。

米山委員 それは個々の事案とか言いますけれども、では、職員に個々に判断しろと言うんですか。職員はどうやって判断したらいいんですか。基準として、職員の行動規範として、基準値の外れた値が長く続いたら救命救急要請してくださいと言うか言わないかは、大臣が五万五千人の職員のボスとして言わなきゃいけないことですよ。それとも、それを言わないでそのまま続けるんですか。どちらなんですか。

西山政府参考人 委員の御指摘の点につきましては、もとより、名古屋のウィシュマさんの亡くなられた事案の後にでも、調査報告において問題点として指摘され、改善策を提示されたところでございまして、必要な医療体制をしっかり強化する、それから、職員が、緊急な場合といいますか、その判断について職員で自分で判断せずに、医師にしかるべく連絡を取ってしかるべき緊急搬送等の措置を講じるということにつきましては、改善策の中で盛り込まれ、また、それについては全庁を挙げて取り組んでいるところでございます。

米山委員 そうでしょう。そのとおりです。つまり、もうそう言っているんですよ。だから、この報告書は矛盾した内容を含んでいるんです。でも、そういった矛盾した内容を含む文書を放置したら、職員さんはどうしたらいいか分からないでしょう。それをちゃんと整理するのが上司の仕事じゃないですか。

 今ほど、自民党の皆さんから、そんなものはこっちで答えろとか言っていましたけれども、本当に志が低過ぎるといいますか、これはやはりちゃんと問題点を整理して、同じことが起こらないようにしなきゃいけないでしょう。それをするのが、ちょっと、ああって何ですか。自民党の人たちは、結局、これを放置したいんですか。本当にがっかりするというか、それで誇りのある国なんてよく言えたものだと思いますよ。

 次の質問をさせていただきます。

 裁判における国の主張、これは既に第一審判決が出ておりますから誰でも閲覧できるわけですが、今まで申し上げましたとおり、死亡の前日の午後七時四十六分、このときに、アイム・ダイイング、アイム・ダイイングと言っているんですけれども、のたうち回っていると言うのが正しいと思うんですが、このときにカメルーン人男性を救急搬送すべき注意義務があったかなかったかと争点になっているんですけれども、国はなかったと主張しているものと把握しております。裁判所は、これはありましたと認定しております。

 防犯ビデオがなかったらまだしも、そういうのは分かるんです、当人というのは、それは望ましくないにせよ、自分に寄せた表現をしますからね。でも、あの防犯ビデオを見て、それは裁判の主張だから自由だといったら自由かもしれませんけれども、救急搬送すべき義務がなかったとなったのはちょっと信じ難いんですが、なぜこのような主張になったと認識しているのか、御所見を伺います。

西山政府参考人 今回の判決は、国の主張が一部認められなかった結果となっております。

 そして、本件訴訟については、国は一審判決を不服として控訴しているところでございます。お尋ねの事項につきましては、訴訟係属中の控訴審において判断を仰ぐことになるものであるため、お答えは差し控えさせていただきます。

米山委員 それも相変わらずそうおっしゃるんでしょうけれども、あのアイム・ダイイング、アイム・ダイイングと言ってのたうち回っている画像はもう公開されているわけですね。報道されているわけです。それに対して国が相変わらずそういう主張をされているということは、あれを放置していいんだというメッセージを職員さんに送るんですよ。送りますでしょう。だって、あれを放置しているのは、救命救急義務はなかったといって、国は控訴までしてやってくれているんだから。そうしたら、それはまた同じことが起こると思いますよ。

 そして、このビデオなんですけれども、私、恐らく三日間分ぐらいあるんだと思うんですよ。しかも、死亡三日前ぐらいのところから、データを見る限り、報告書を見る限り、もう随分悪そうなんです。

 この三月二十七日から二十九日の間の入管職員に対する対応やカメルーン人男性の状況について、全く原告、被告の主張は食い違っていますので、このときの監視カメラの映像を本委員会で確認すべきと考えますが、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の監視カメラ映像につきましては、収容施設内や被収容者等の具体的状況の記録であるため、情報公開請求に対しましても、情報公開法に基づき、基本的に不開示情報として取り扱っております。

 具体的には、保安上の問題に加えて、亡くなられた方の名誉、尊厳等の観点からの問題もあるため、監視カメラ映像を公開することは適当でないと考えています。

 その上で、国会における対応につきましては、国会の御判断も踏まえつつ、適切に対応していきたいと思います。

米山委員 それは是非御対応いただきたいと思います。ウィシュマ・サンダマリさんのビデオも見ていますのでね。保安上のといいますけれども、もう既に、そもそも映像はマスコミに流れていて、しかも、それを見る限り、単に部屋の中が見えるだけで、保安上何かなんて到底分かりようがないということだと思いますので、それは是非公開していただければと思います。

 この事件では、今ほど来お話ししましたけれども、被収容者であるカメルーン人男性の体調が非常に悪化し、私も医者ですから、私の目から、医療従事者の目から見たら治療、救急措置の必要性が明らかだし、恐らく、これは別に医者でなくても、大半の常識的な人が見ても明らかであるにもかかわらず、素人である入管職員が判断して放置しています。そして報告書では、これをやむを得ないと思われるとして、しかも、その報告書は別に撤回もされていません。

 しかも、この裁判が九月にあったんですからね。九月にあるまでこの問題は放置され、しかも、アイム・ダイイングと言っているのを放置したのも、特段の問題、誰も責任を問われていないということが七年間放置されてきたわけです。

 その七年間放置されてきたことが、ウィシュマ・サンダマリさん事件が起きたというふうに認識しているんですけれども、大臣、この七年間の法務省の取組に対する御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 カメルーンの事件について、係争中であって、その結論が出ていない七年間だったろうと思っております。

 私は、この事件について、裁判所が適切な判断をされることを望んでいるのみであります。

米山委員 そうしますと、控訴審があと五年続いたら、五年間また結論を先送りするということですか。その間また、ああいう対処をし続けて、その間また、血圧が変動した場合に、基準値を外れた場合にどうするかもはっきり言わないということをまた五年間続ける。更に上告されたら、更にそこで五年間たったら、更に五年間続ける。あと十年何にもしないでこの状況を続けるということですか。

西山政府参考人 委員御指摘の亡くなられた事案につきましては、先ほど申し上げた、平成二十六年当時に行った調査の結果、委員御指摘の部分もございますが、他方で、休日、夜間等において容体観察の経過が不良な場合について、事前に医師から具体的指示を受けておくなどの対応が必要である旨の指摘もなされているところでございまして、その上で、この調査報告書では、常勤医師の確保、受診手続の見直し、検査結果の迅速な回付、容体観察中の対応について改善すべき点として掲げ、改善策の実現に取り組んできたところでございます。

 具体的には、特に東日本センターでございますが、平成二十九年に常勤医を確保し、受診手続の見直しを行い速やかな診療実施を可能とし、急を要する場合には血液検査結果をファクス受信して遅滞なく回付できるよう運用を改め、常勤医等に対する夜間、休日の相談体制を構築するなどして改善に取り組んでいたほか、全官署に対して、被収容者の健康状態の把握や動静監視の徹底を指示するなどしていたところでございます。

 ただ、委員も御指摘のとおり、名古屋でウィシュマさんが亡くなられる事案が発生して、医療的対応のための体制整備やその運用が十分でなかったことなど、更なる改善策が指摘されたところでございます。

 この点、過去の死亡事案について改善策が示されたにもかかわらず、結果として名古屋入管で死亡事案が発生したことは反省すべき点でありまして、今後、入管収容施設に収容されている方が亡くなる事案が二度と起こらないよう、医療体制の強化等の取組をしっかり進めてまいりたいと考えております。

米山委員 時間があと二分ですので手早く言いますけれども、これはずっとこうなんですよ。それは、実のところ、言っていることが矛盾しているんです。

 既に、以前やったことは間違いだった、それは言っているのは分かりますよ。そして、以前やったことは間違いだから新しく対策しました、そう言っていますでしょう。そう結局言っているんです。でも、それは必然的に、以前のことは間違いだった、過失があったという結論になるんですよ。ところが、それをずっとずっとずっと否定している。自分たちは間違っていなかった、自分たちは適正にしていた、無理がなかった、そう言うから論理矛盾し続けるんです。

 大臣、こういう部下の論理矛盾を正すのは大臣の役目です。ちゃんと過去にあったことの問題点を認めて、責任者に責任を取らせて、その上でそれと整合する対策を取るのがトップたる大臣です。御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 入管収容施設は、大切な命を預かる施設でもあります。被収容者の健康を保持するために必要な診療その他の措置を講ずること、また、死亡事案などが生じないよう処遇全般を適切に行うことは、出入国在留管理行政の責務であると認識しています。

 その上で、入管収容施設における死亡事案の状況や経緯は様々でありまして、その原因、理由については個別具体的な事情を踏まえて把握する必要があると思っています。

 現在、入管庁では、名古屋局における死亡事案を真摯に受け止めて、調査報告書で示された改善策の着実な実現に尽力している最中であります。法務大臣としても、今後もしっかりとリーダーシップを発揮して、入管庁の全ての職員とともに、この改善策の着実かつ継続的な実行を含めて、私は取組を更に加速させていきたいと思います。

米山委員 大臣のリーダーシップに御期待申し上げて、私の質問を終わります。

伊藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鎌田さゆり君。

鎌田委員 齋藤大臣、この度の重責を担う覚悟をお持ちになられたこと、その御心境、私なりにお察しをいたします。

 過ちを改めざる、これを過ちという。広く知られている、孔子が語ったとされている言葉であります。自身の過ちを認め、わび、大臣の職を辞した人に対して、私はもう一切責める言葉も何も持っておりません。本会議場でも葉梨代議士を拝見する、姿を見るのは、私は正直つらかったです。事実を事実としてどのように処していくか、処していけるかということに向き合っていきたいものだと思っております。

 齋藤法務大臣は、死刑が確定をした一人の人間に死刑執行の印を押す立場に就かれました。

 そこで、実は、先週の金曜日、更に問いをすることは私はあえて避けたんですけれども、今日は確認をさせていただくことから、質問させていただきます。

 先週、前大臣からの御答弁の中で、死刑執行までの流れにおいて、執行指揮検察官が属する検察庁の長、ここから法務大臣に、死刑執行上申書、刑事確定訴訟記録、これらが届けられて、そして多くの多くの人たちの徹底した読み込み、これが始まっていくと。大臣のところにも同じようにその資料が届くのでしょうかとお尋ねをした際に、前大臣は、副大臣として決裁に関わったことがある、自分の元に来たのはエッセンスであったという御答弁だったんです。

 エッセンスとは何ですかということを実はそのときに更に問いたかったんですが、あえてやめました。今日はそれを確認させていただきます。エッセンスとはどういうものなんでしょうか。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 葉梨前大臣がエッセンスという言葉で何を御表現されようとしたのかは、ちょっとそれ以上の御説明がなかったものですから、それはさておきまして、一般的な手続という観点で私から御説明申し上げます。

 個々の執行に際してどういったことがあったのかという詳細につきましては、申し訳ありません、刑の執行の判断に関わる事柄でありますので、お答えを差し控えたいと存じますが、その上で、一般論として申し上げますと、先ほど委員も御指摘になりましたが、まず、上申がございますと、私ども刑事局など、それぞれの担当部局が大臣を補佐する専門的な立場から関係記録を精査いたします。その上で、大臣に御報告をいたします。その際は、大臣に対しまして必要な資料を持って御報告するということでございます。

 その上で、一般論として申し上げれば、大臣は、齋藤大臣を始めいろいろな大臣がおっしゃっておられますが、極めて慎重に御判断されますので、その慎重な御判断に必要な資料をきちんと差し上げて、更に御必要な説明をするということでございます。

鎌田委員 済みません、ここで更問いさせないでくださいよ。

 必要な書類を持ってと。個別の案件に関わることだから出せない、話せないと。必要な書類を持ってという言葉で片づけないでください。

 我々は、ベールの向こう側にある、しかし一人の命を国家が殺す、その行為について、個人のプライバシーを侵害しないように、きちんと議論をして、果たして死刑制度とはどういうものなのかというのを議論していきたい、しなければいけない。なのに、大臣に上がる書類というものは、皆様がお読みになる、精読される書類とは違う、まとめられたものだと。それがしかも今の表現だと、必要なものというふうに、何が基準で、どうなっていてそれが作られているのか、今のじゃ全く分からないので、これは引き続きこの委員会で質問をさせていただきます。

 大臣、私自身、先週から、久しぶりになんですが、「十三階段」という映画を久しぶりにまた見ました。

 死刑執行というのは、本当に我々はよく分からない。どのように行われて、どのような背景があって。現場の刑務官、特に警備の方々、日々、確定者と毎日会っているような警備課の人たちは、情も移るでしょう。改心をして、一生懸命遺族の方に、被害者の方にわびの手紙を書いている確定囚と毎日会っていると、それは人間ですから。でも、そういうところが全く分からない。

 でも、議論をする際には、最低限、私たちは、制度のこと、仕組みのことを知る必要はあると思うんですね。一般的には、憲法を見れば、刑法を見れば、刑訴法を見れば、刑事収容施設法などを見れば、死刑に関係する法律を読めば、何となく分かってきますけれども、でも、なかなかこれは難しいです。

 大臣に伺います。第四審とまでやゆされるほどに慎重に行われる死刑執行の法手続。これについて、死刑制度の存否も含めて、多くの国民の皆さんが議論を、実効性あるものとして議論をしていくということは、これは大臣も、必要だということは共有認識でよろしいでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、改めて、鎌田委員のお話を聞きながら、私が法務大臣として人の命に関わるいかに重大な任務を負ったかということを再認識をさせていただきました。

 従来、答弁も申し上げているんですけれども、死刑制度の存廃につきましては、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題でありまして、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等、種々の観点から慎重に検討すべきものであると考えています。

 ただ、現在、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑はやむを得ないと考えていることもあり、また、多数の者に対する殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪はいまだ後を絶たないという現状に鑑みますと、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ないというふうに考えておりまして、廃止することは私は適当ではないと思っています。

 御指摘の、私の、死刑の存廃に関する国民的な検討みたいなものをする考えにつきましては、今そういう考え方をしているものですので、その考えはないんですけれども、死刑の在り方については、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる問題でありますので、多くの国民の皆様がその必要性を感じて自ら議論に参加する形で、幅広い観点から議論がなされることがまず前提にあるんだろうというふうに理解をしているところでありますので、そのような動向については私としてもしっかり関心を持って注視をしていきたいというふうに思っています。

鎌田委員 共に是非、国民の皆さんが様々な情報を基に議論ができる環境が大事ですので、是非注視をしていただきたいと思います。

 再び刑事局長に伺います。確定者と日々向き合う警備隊の職員、これは、執行の際、ボタンを押す役割も任ぜられますか。

川原政府参考人 申し訳ございません、私、刑事局長でございまして、今のお尋ねの件は刑事施設における職員の任務でございますので、私、ちょっと、所管しておりませんので、お答えすることはできません。

鎌田委員 それでは、刑務官、警備課の職員に対する、死刑執行に従事することでの心身、あるいは、法務省の中で大変な量の書類を読むことにおけるメンタルのダメージ、それらをケアをするということは私は大事だと思うんですけれども、前半の部分は刑事局長は承知をしない、後半の部分は御承知だと思うんですけれども、メンタル面でのケアというものはなされていますか。

川原政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねは、法務省刑事局における刑事局職員の、執行に当たっての検討の際だと思います。

 これも御案内と思いますが、法務省刑事局の職員は、検察官あるいは検察庁職員であった者がほぼ全員でございまして、こう申し上げるとあれかもしれませんが、検察官は、実は私も検察官なんですが、委員がおっしゃっているようなことが実は日常の業務でございまして、もっと申し上げれば、現場の検察官であるならば、殺人の現場に臨場し、御遺体を直接拝見し、あるいは御遺体の解剖に立ち会い、あるいは被疑者本人、目撃者、被害者の御遺族等からお話を伺うといった、まさに実はこの問題が、業務として、朝から晩まで常にこれと向き合っておりますので、まず、そういう意味で、そういった立場でない方と、こういったことに対する、関係性が違うということを御理解いただいた上で、そうは申し上げましても、そのことだけではないかもしれません、ちょっと話が広がってしまいますが、職員のメンタル、様々な事情でメンタルに問題を生じた職員については必要なケアをしているところでございます。

鎌田委員 今、死刑制度の話をしているので、日常の検察官としての業務の話じゃないんですよ。死刑執行までの流れの話を聞いているんです。ですから、そこに特化してお答えをいただきたかった。今後にします。

 再審請求権について伺っていきます。これは通告をしていますので、大丈夫だと思いますけれども。死刑確定者に対して、再審請求権、保障されていますよね。確認をさせてください。

川原政府参考人 お答えいたします。

 死刑の確定者であっても、再審請求の申立て権者でございます。

鎌田委員 続けて伺います。再審請求中に死刑が執行された確定囚は何名いましたか。お答えください。

川原政府参考人 お尋ねの再審請求中に執行された死刑確定者の数につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

鎌田委員 固有名詞を言うわけじゃないんですけれども、数だけなんですけれども、それも答えられないんですか、この法務委員会で。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 今委員が、固有名詞を言うわけじゃないんだからとおっしゃっていただきました。

 実は、再審請求の手続というものは、御案内のとおり、非公開の手続でございます。さらに、それに加えまして、死刑確定者によっては、再審請求している事実自体を公表することにより、死刑確定者や被害者の御遺族の感情を害するおそれも懸念しますことから、個別の死刑確定者の再審請求の有無については明らかにしていないところでございます。

 そして、再審請求中に執行された死刑確定者の人数をある時点で明らかにいたしますと、その後、死刑が執行されるたびに、その公表人数が変動することがございます。そうしますと、その変動によりまして、死刑を執行された者が再審請求をしていたかどうかが推知されるということになってしまいますので、大変申し訳ございませんが、お尋ねについてはお答えを差し控えさせていただいた次第でございます。

鎌田委員 済みません、説明にもなっていないのに、そんなに時間を使わないでください。

 死刑執行するたびに、法務大臣が記者会見を開いて、そして名前を公表し、その方が再審請求中だったかどうかなどということは皆さん御存じですよ。ネットを見ればすぐ分かります。様々な勉強会に出ればすぐ分かります。何でその数すら言えないんですか。

 一九九九年、平成十一年から今年の七月二十六、あの秋葉原の加藤死刑囚、ここまで、二十名、再審請求中だったにもかかわらず、二十名、死刑執行されているじゃないですか。

 二十名であったことは正しいですか、間違いですか。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 個々の死刑の執行に際しましては、当該執行を受けた者が再審請求中であったかどうかということはお答えを差し控えさせていただいているところでございますので、繰り返しでございます、先ほど申し上げたような理由から、今のお尋ねにつきましてもお答えを差し控えさせていただきます。

鎌田委員 局長、死刑執行の法手続は、闘病中、精神障害、妊娠中、心神喪失状態になっているなど刑の執行を停止しなければならない場合や、非常上告の有無、再審請求中、恩赦に相当するかどうかを慎重に確認しなければならない。そして、先ほども、再審請求は認められている。

 一定の時期までは、再審請求されていた確定囚は執行が見送られてきた。ところが、科学技術の進歩とともに、DNA鑑定、新たな証拠、そして、残念ですけれども、取調べをする際の警察官の誤った誘導尋問等々で、再審請求の数が増えてきているのは事実です。

 でも、誤判はあるんです。ないとは言い切れないでしょう。誤判でもってその人の命を奪っては絶対ならないんですよ。

 だから、再度伺いますが、再審請求中の死刑の確定囚、これの死刑の執行は、ここ数年確実にあります。これを改めるべきだと思います。まず局長に伺います。

川原政府参考人 お答えいたします。

 誤判の危険ということから、御質問がございました。

 我が国の裁判の実務におきましては、令状主義及び厳格な証拠法則が採用され、三審制が保障されるなど、捜査、公判を通じて慎重な手続により有罪が確定され、確定した裁判に対しても再審、非常上告等の救済手続が設けられており、これらは誤判を防止するために有効に機能しているものと承知しております。

 さらに、死刑の執行に関しましては、個々の事案につき、関係記録を十分に精査し、刑の執行停止、再審事由の有無等について慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に初めて死刑執行命令を発することとされてきたものと承知をしております。このように、我が国では、厳格な制度の下において死刑は極めて慎重に運用されているところでございます。

 その上で、再審請求をしているという事実自体は、刑事訴訟法で死刑の執行停止事由とはされていないところでございます。そして、その上で一般論として申し上げますれば、死刑確定者が再審請求中であったとしましても、当然棄却されることを予想せざるを得ない場合もございまして、そのような場合は死刑の執行を命ずることもやむを得ないと考えておりまして、再審請求中であるということのみをもって死刑の執行をしないということは考えていないところでございます。

鎌田委員 今年の七月時点で死刑が確定していて再審を請求している方は、お答えいただけないんだろうなと思って調べてまいりました、六十一名いらっしゃいます。

 誤判から自分の身を守るために。裁判官だって、検察官だって、誰だって、人間、完璧な人なんかいません。誰だって過ちを、ミスをしてしまうことがあります。誤判からその命を救うために、弁護人の方たちは、弁護権も行使をするために再審を請求するんです。私は、再審請求はきちんと認めて、その方々に対して再審の公判を受ける道を閉ざしてしまうようなことは、私は絶対すべきじゃないと思うんです。これは大臣に伺ってもよろしいでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、委員御指摘のように、無実の者が死刑を執行されるというようなことはあってはならないというふうに考えています。

 そのために、裁判の実務においては、令状主義及び厳格な証拠法則が採用されて、三審制が保障されるなどして、捜査、公判を通じて慎重な手続で有罪が確定をされ、確定した裁判に対しても再審、非常上告等の救済制度が設けられていて、これは誤判を防止するために有効に機能しているんだろうと考えております。

 それで、刑の執行につきましては今刑事局長が答弁したとおりなんですけれども、その上で申し上げれば、再審請求中であることは、答弁したように、死刑の執行停止事由とはされていないところでありますし、一般論として申し上げれば、死刑確定者が再審請求をする場合もいろいろなケースがありまして、当然棄却されることを予想せざるを得ない場合もその中にはあるということでありまして、そのような場合には死刑の執行を命ずることもやむを得ないのではないかなというふうに一般論としては考えておりますが、いずれにしても、死刑執行の判断は法務大臣の果たすべき重要な職責であると認識していますので、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って、慎重かつ厳正に対処してまいりたいと思います。

鎌田委員 齋藤大臣、精いっぱい、ありがとうございました。済みません。ありがとうございました。

 私は、再審請求が出されている確定囚を執行してしまうということには、私は反対の立場に身を置いております。

 再審請求権の行使の目的は、やはり、誤判認定、ここからの匡正です。間違っても、その「十三階段」の映画の中で、てっきり自分が今日執行だと思って、わなわなわなわな体を震わせていた確定囚が、刑務官から、安心しろ、大丈夫だ、違うんだ、真犯人が自首をしてきて、おまえの再審請求が出たんだ。その場面は本当に、また再び見て、映画ですから、作られたシナリオですから、感動するように作られているとはいえ、ぎりぎり、その日に実は、本当は執行するはずだったんです、その登場人物は。ところが、前の日に真犯人が自首をして、再審請求が出されて、執行を免れたというもので、本当に、我々不完全な人間の集合体ですから、このようなことは映画や物語の話じゃなくて本当にあり得る。でも、絶対にやってはいけないのは、無実の人間を、命を奪って、取り返しのつかないこと、これだけは絶対にやっちゃいけないということは重ねて申し上げたいと思います。

 国際人権規約委員会からの勧告について伺います。国際人権規約委員会への法務省としての見解、それから、この委員会からの日本に対する勧告の内容、どのようになっているでしょうか。

柴田政府参考人 勧告の内容についてお答えします。

 先月十三日、十四日に、スイス・ジュネーブで、自由権規約に基づいて我が国が提出した第七回政府報告について自由権規約委員会による審査が行われ、今月三日、同委員会の総括所見が公表されております。

 再審請求中の死刑確定者の死刑執行の在り方に関しては、委員会から、再審請求に死刑の執行停止効果を持たせ、死刑事案における義務的かつ実効的な再審査制度を創設することの勧告がなされております。

鎌田委員 御説明ありがとうございました。

 今の答弁のとおりなんです、大臣。国際社会からは、日本の死刑制度に対して、死刑事件の再審請求や、恩赦の出願による執行停止を確保すべきであるという人権規約委員会からの勧告になっているんです。

 恩赦出願の回数制限には、これは言及されています。恩赦を連発する、出願を連発するのはよくないと。しかし、再審請求の回数は触れられていないんです。つまり、疑わしいときには誰の利益にすべきかということを、国際機関からのメッセージとして私たちは真摯に受け取らなくちゃいけないんです。

 ですけれども、日本としては選択議定書には批准をしていないと思いますが、日本の対応。これは法務省からの見解でも結構です。お願いします。

石月政府参考人 事実関係についてお答え申し上げます。

 我が国は、自由権規約を一九七九年六月に締結し、同規約は同年九月に我が国に対して効力は生じているところでございます。

 この自由権規約には、個人通報制度について規定した第一選択議定書及び死刑廃止について規定した第二選択議定書がございますが、我が国はいずれの選択議定書も締結してございません。

鎌田委員 大変残念ですよね。お粗末ですよね。世界から何周遅れているんだという話になります。是非ここのところ、大臣、これから大臣としてお仕事に当たられる際に、頭の片隅で、いや、真ん中に置いて、国際社会からこのような勧告を受けているということを是非御認識をいただきたいと思います。

 また、済みません、死刑制度に戻りますけれども、もしかしたら刑事局長が答えられないものがあれば、それはそれで結構です。

 執行のボタンなんですけれども、またこれは収容施設だからそっちの方だと言われるかもしれませんが、多くの人がボタンは三つだと思っていると思うんですよ。ですが、昨日、我が党の会派の部門会議で、四つのボタンの施設もあるんですという回答があったんです。統一されていないんですか。執行のボタンを押す、三つだと思っていますが。

川原政府参考人 お答えいたします。

 大変申し訳ございませんが、それは矯正施設の、施設の中の構造に関わる話でございますので、私、所管外で、お答えすることができません。

鎌田委員 それでは、昨日、私、打合せのところで、最後に再び日本の死刑制度及び執行について具体的に細かいのを聞くからねとお伝えしたんですけれども、今日はお答えできる方はいらっしゃらないということで、今後に積み残しにさせていただきます。

 今日確認したかったのは、死刑の執行のボタンを押すのは三つだと多くの方が認識をしていると思うけれども、三つではなくて、四つのところもあったり、もしかしたら五つのところもあったりするかもしれない、刑場の仕様が一定になっていない。それから、リハーサルをするのか。自分はするという認識でありますけれども、執行のリハーサルをするのか。遺族が処刑にしないでくれと嘆願書を出しても執行されるのか。刑務官の中には最後の最後にボタンを押せずに、押せずにしまう、そして隣にいる刑務官が代わりにボタンを押す、そうなった場合、押せなかった刑務官は懲戒になってしまうのか。死亡が確認された後、縄が解かれるまで何分間そのままにしなければならないのか。最後に遺書のようなものを書く場合があるのか、家族への伝言を書くようなことがあるのか。

 局長、死亡が確認された後、五分間はそのままにしておかなければいけないという、これもまた所管の法律が違うからお答えになりませんか。

川原政府参考人 済みません、死刑の実際の執行手続でございますので、私どもの所管でないところでございます。済みません、お答えをすることができません。

鎌田委員 刑事収容施設法を読みますと、死亡が医官によって確認された後、その後五分間まだ縄を解いてはいけないという法律の定めになっています。

 私は、日本の死刑制度がいかに残虐性を持っているかということを、冷静に、なるべく感情的にならずに、その事実、何が起きているのかということを国民の間で広く議論ができる環境が私は必要だと思っています。

 そして、先ほど来申し上げています再審請求中の確定囚への執行は、私はですが、憲法の三十一条「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」、憲法三十二条「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」、この憲法から基づいて、そして刑事訴訟法の様々な条文に照らし合わせると、再審請求というものはきちんと尊重されて、その間、請求が出されている間は執行してはいけないということを、私は解釈をしておりますので、今後、この委員会で、是非、齋藤大臣、御議論をこれからのということでさせていただければと思います。

 以上で私の質問は終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。三十五分間、よろしくお願いします。

 まず、齋藤大臣、御就任、大変だと思いますが、おめでとうございます。素直に期待している部分がありますので、よろしくお願いします。

 今日、三十五分いただいて、大臣にはぎちぎちの追及とかはしないです。素直に目的を言うと、今、相当レク漬け、特に民法の改正案を含めて、レクでがあっとやられている中で、頭がいっぱいだと思いますが、これから指摘する四点、四つの項目に関して、是非、頭の優先順位の引き出し、高いところに入れていただきたいということで、余り答弁書を御覧にならずに、是非聞いていただければと思いますし、問いに関しても素朴なものを問いたいと思いますので、よろしくお願いします。

 二週間前に、前大臣に、私としての所信的な質疑をしました。二週間たって大臣が代わりましたので、内容に関しても、大部分、同じ質問になります。恐らく役所としては同じ答弁書を出していると思いますが、それでも同じことを問いたいと思うのは、やはり、大臣の感覚であったり指示というものは大きいものがあると思っていますし、物事を進めていくと思っているので、聞きたいと思っています。

 お会いしたときにもお話ししましたけれども、齋藤大臣の経歴を含めて、非常に法務大臣になるというのは異例だと思います。かなり遡って法務大臣の歴任者を見てきましたけれども、大臣のような御経歴を持たれている方はいなかったです。一言で言うと、経済に明るい法務大臣が誕生するというのは物すごく異例なことだというふうに思っていますし、その部分に期待をしているんです。

 先日の金曜日、すごい重苦しい委員会質疑でしたけれども、津島委員の方から、法務省も経済官庁だという、あの局面においては結構チャレンジングな質問だったんですけれども。私自身としては、経済官庁だとは思っていませんけれども、津島委員言われるとおり、経済にはかなり影響を及ぼす役所だと思っています。もっとありていに言うと、法務省が経済的な感覚が乏しいがゆえに、経済に物すごく影響を与えているケースが多いというふうに思っています。

 今日、質問する項目は四つです。一つは、一番最初は、入管の興行の問題、これは引き続き、前もここでやっていますけれども、やります。あと、商業登記に経営者の住所が載っているんですが、それが公開され続けているという問題。この二つは本当に経済に対して著しく影響を与えていると思います。残りは、性犯罪の刑法改正と、家族に関する民法の改正の、この四つです。

 一つ目ですけれども、在留資格の興行の話です。

 同僚の、うちの鈴木議員が、もうジャパン・アズ・ナンバーワンじゃない、ベトナムからもだんだん距離を置かれ始めているよというのはありますけれども。今回、私がまた引き続き取り上げる在留資格の興行、言ってみればアーティストです、ミュージックの、がかなりの部分を占める部分はあるんですけれども。アーティストが海外から来る際に、興行の在留資格を取って、ビザを取って来るんですけれども、さんざんここでもやっていますし、内々、入管ともやっていますが、興行ビザ、興行の在留資格自体が、以前問題となったフィリピンパブでのホステスのそういう社会問題を解決するために設定したものでもあるので、今、アーティストが来日する際には、およそ必要のないような要件まで設定されて、アーティストも大変だし、招き入れる、招聘側も大変だし、そして、入管の職員たちも、そのルールに縛られて、相当な負荷をかけられて、ひいひい言っている。なので、誰にとってもよくないことを変えていかなきゃいけないねという話をしているんです。

 現状を言うと、昔は、大物アーティストであれば、日本を基軸にアジアツアーを組んでいました。ただ、どんどん円も安くなっていますし、日本の面倒くささもあるし、十五日間で入ったときに観光しちゃ駄目とか内々言われていたりとか、物すごくいろいろかちかちしているんです。かつ、ほかの国が伸びてきているので、やはり、シンガポールとか、今、中国は閉じているからいいですけれども、中国。そこら辺をちゃんとブッキングした上で、じゃ、日本も寄ろうかなというレベルに落ち続けていて、これから一層落ちると思います。

 なので、それのネックになっている一個のこの興行の在留資格の要件をより合理的なものにするというのは大事だと思っているんです。前大臣からは、答弁として、しっかり取り組みますという答弁をいただきました。これは通告していると思いますので、改めて大臣からも、しっかり当事者意識を持って、問題意識を持って、改善に取り組むというようなお話をいただければ。

齋藤(健)国務大臣 在留資格、興行の現行の上陸許可基準は、人身取引等の不適切な事案を防止するために、人身取引に関与した者の排除や報酬支払いの確保などの厳格な基準を設けています。

 他方で、公的機関が主催する興行や高額な報酬を受け短期間行われる興行など、不適切な事案が発生するおそれが少ないと考えられるものについては基準が緩和されている、これが現状であります。

 在留資格の上陸許可基準については、まさに委員御指摘のように、我が国の産業ですとか、及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して定めるものであって、実情等を踏まえて、必要に応じ改正が行われるべきものだと考えています。

 外国人アーティストのような、様々な文化芸術分野の外国人を受け入れることは、私は、国際的な文化交流の発展や我が国の経済や社会の活性化に資するものであることから、在留資格、興行の上陸許可基準の改正について、しっかりと検討を行った上で、できるだけ早急に結論を出したいと思います。

寺田(学)委員 我々永田町にいると、余り音楽業界のことというのは、そんなに頻繁に触れることはないですけれども、結構悲惨ですよ、どんどん大変になってきている。ですので、スピード感を持ってやりたいなと思いますし、大臣からも言っていただきましたし。入管も逃げずに頑張りましょうね。逐一、二週間に一回ぐらいレクして、一緒にやりましょう。

 今お手元に配りましたけれども、入管だけの問題じゃないということを示したくてやったんです。

 この一枚目の上の図の右のフローチャートですけれども、入管は入管で、いわゆる在留資格、COEを出すんですけれども、その後、それを在外公館、ニューヨーク総領事館でもいいですし、ほかの大使館でもいいです、そこに出して、ビザをもらって、アーティストは、及び関係者全員ですけれども、来る。なので、これは入管だけ変わったってしゃあないんです。

 外務省の所管の在外公館も、お世辞にもよくできていると言えない状況があって、大変な苦情が来ています。そもそも電話をかけて予約を取ってくれと言うらしいんですけれども、その電話が半日かけ続けてもつながらないとか、電話がようやくつながったら、あなたの枠は三週間後ですと言われたとか。アメリカに関して言うと、ニューヨークとヒューストンとロサンゼルスで言っていることが全然違って、求められる資料も違うとか。

 今、日本で、在留資格、法務省から、入管からもらったそのCOEをフェデックスで送っているんですよ、この御時世。パスポートを持って、在外公館に預けて。パスポートを預けられ続けると、アーティストというのはワールドツアーをやっていますから、そんなに長くパスポートを預けられたら困るわけですよね。

 僕、聞いたところによると、結構、国として、パスポートを二枚渡している国もあると言っていました、アーティストのために。それぐらいやはり機動的に、産業的にもやっているところはあるけれども。

 外務省、昨日、レク聞きましたけれども、一生懸命やっていますと言うんですけれども、ほかのところとはばらばらだし、迅速でもないし、問題点はたくさんあると思います。何とかしてください、外務省。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 在外公館では、円滑な査証発給に取り組んでいるところでございますけれども、治安、テロ対策などの観点から、厳格な査証審査を行うことも必要でございます。

 こうしたことから、査証申請に必要な書類は査証の種類や申請者の国籍などによって異なり、また、個別の審査において追加書類が必要になる場合もございます。

 査証発給に要する日数については、申請内容に特に問題がない場合には原則五営業日以内で発給することとしておりますが、査証申請数が多数に及ぶ場合や、追加書類の提出など更なる確認が必要な場合などにおいては、五営業日を超える時間を要することがございます。

 御指摘の査証業務の電子化については、本年、米国、カナダ及び台湾で、査証のオンライン申請及び電子査証の発給の試験的な運用を行ったところであり、今後も段階的に導入していく考えでございます。

 外務省といたしましては、引き続き、申請者の利便性と適切な水際対策の必要性のバランスを取りつつ、査証発給について、電子化を含め、更なる円滑化に取り組んでまいります。

寺田(学)委員 ここは大臣の所管じゃないですけれども、この調子ですよ。

 入管も、最初はやはりちょっと腰が重かったですけれども、いろいろな与党の先生方も含めて御協力いただいて、かなり動いてきてくれていると思っています。

 今、隣で薗浦さんと話していましたけれども、アーティストだけじゃなくてスポーツ選手も含めて、興行的なことをやるときに大変だったみたいです。やはり、これでどんどん日本は面倒くさいから行けないよねと。

 結構、アーティストも含めて、日本に対する魅力は物すごい理解しているんですよね、大臣御存じだと思いますけれども。日本食は食べたいし、気候はいいし、いろんなところに行きたいといって、行きたい意欲はあるんだけれども、さっき言ったとおり、円安も含めて様々な件があって、どんどんどんどん劣位になっているというのは、それが役所の事務的な問題、必要なものであればいいですけれども、必要以上なものによってそうなっているとすれば、どんどん是正しなきゃいけない。

 これ自体、昨日入管から聞いて初めて分かったんですけれども、電子申請、やっているというけれども、実態的にはほとんど、みんな参加していないらしいです。

 事業者にも聞きましたけれども、電子申請するためには事業者登録をしなきゃいけなくて、それを紙でやるそうです、一回来てくれと。とか、そういうレベルから始まって、今説明しましたけれども、外務省を含めた、在外公館も含めて、紙ベース、実物を持ってきてください、五日間かかります、それ以上ですというレベルでやっていて、外国籍の事業者の方々に聞きましたけれども、本当に日本って遅れているよねというお叱りをたくさん受けています。

 なので、昨日、河野大臣にも言ったら、それは絶対やるという話をしてくれましたけれども。今日、政務官に来ていただいています。デジタル庁、頑張ってください、どうですか。

尾崎大臣政務官 お答えをいたします。

 行政手続のデジタル化、これは、利用者の利便性の向上を図ることを目的として行っていくことが非常に重要だと考えております。

 そういう中で、まず、出入国在留管理庁の在留資格認定証明書の申請につきましては既にオンライン化をされているところでありまして、交付についても令和四年度中にオンライン化される予定と承知をいたしております。

 また、外務省の査証の申請や発給については、これは段階的なオンライン化が検討されていると承知をしているところです。

 今後、デジタル庁といたしましても、関係省庁と連携をいたしまして、御指摘の手続について更なる利便性の向上を図るために、利用者の多い手続など、利便性の向上につながる手続から優先的にデジタル化を推進してまいりたい、そのように考えるところです。

寺田(学)委員 デジ庁としてはかなり見ていると思いますけれども、やっているからそれでよしじゃなくて、そのやっていること自体が本当に有効なものなのか、実用的なものなのか、ユーザーたちにとってフレンドリーなものなのかということをやって、やっているという建前だけで終わらないでほしいなと思いますし、お尻をどんどんたたいてほしいと思います。

 本当に、添付資料をいろいろつけましたけれども、トミー・ゲレロという、この間の質疑でもやったのであれですけれども、アーティスト本人から、何やっているんだよ、こんなに日本が好きなのに、今まで二十年も通ってきたのに、何で今回蹴られるのという話の連絡が来ました。

 そういうことを含めて、私は、対外的にどう見られるか、それは外務省も含めてそういう役割があると思いますけれども、しっかりと進めていただきたいと思います。

 大臣、この件に関しては、入管と綿密に議論しながらやっていきたいと思いますので、後押しをよろしくお願いします。

 もう一点の方に行きます。

 今の入管のことも省令でできますし、次も省令の問題なんですけれども、資料二枚目、「社長住所、ネット公開続く」とあるので、率直に言うと、この記事自体の質は僕はよくないと思っています。ネット公開が続くとあるのであれですけれども、紙ベースはずっと続く前提で、ネット公開だけが、やめることになりそうだったけれども、やっぱりやめないみたいな話で、デジタル庁が出てきて横やり入れたみたいに言っていますけれども、横やりという話でもなかった。

 ただ、残っているのは、大臣も経済に詳しいからあれですが、僕は正直分からなかったです。商業登記をするときに、名前だ、住所だ、様々なことを登録するのはいいんですけれども、それ自体が紙ベースとネットベースで公開され続けていたと。記事中にあるんですけれども、特に女性の方なんて、自宅住所を載せなきゃいけなくて、公開されているので、そこに対して怖い思いをたくさんしているという話です。

 民事局で預かってやっているんですけれども、悪い言い方はしませんけれども、やる気はないんですよ。言ってみれば、当事者じゃないというか、何か問題意識を強く感じていないんです。

 私が説明を受けた限りだと、経団連は非公開にしてくれと。ただ、日商さんは様々な理由から公開を続けてほしい、弁護士会も公開を続けてほしいと、利害対立しているんですよね。

 なので、当事者意識、当事者というか管理者だけれども、変えようとするインセンティブを民事局は持っていないので、ぽかんと浮いている。結構これは難儀ですよ。

 だけれども、これはまず大臣にお願いしたいのは、当事者意識をちゃんと持ってほしいと。これこそ僕が冒頭申し上げた、経済に対して物すごく親和性のある大臣、法務大臣がやれることだと思うので、このことの当事者意識をまず持ってほしいというところですが、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 おっしゃるとおり、本件、経済あるいは中小企業も含めて大きな影響を与える可能性のある問題だと思っていますが、ただ、経済界においても意見が割れているということもあります。よく両者の意見を聞きながら決着させていかなくちゃいけないと思っているところであります。

寺田(学)委員 結論として、非公開以外ないと思いますよ。必要な場合に限って、その必要な方に対して公開をするというか、情報を伝える。

 公開し続けているということ自体、我々も今選挙やっていますけれども、昔まで候補者自体の自宅住所を出していましたよね。どう考えてもおかしいですよ、危ないですし。そこはやめましたけれども、いまだ、まだ、これはもう本当に企業界からもかなり声が大きいです。特に若手の企業経営者たちからも私言われてあれだったんですけれども。

 この中で、政府の中で、もちろんその当事者としていろいろな意見があることを踏まえなきゃいけないのは分かるんですけれども、やはりスタートアップに一番響くと思うんです。

 今日は英敬さんにも来てもらいましたけれども、スタートアップを担当する側としてこの問題をどう捉えているか、御答弁ください。

鈴木大臣政務官 お答え申し上げます。

 スタートアップの育成は、日本経済のダイナミズムと成長を促し、社会的課題を解決する鍵であり、岸田政権においてはスタートアップへの支援策を抜本的に強化しているところであります。

 御指摘の商業登記における会社代表者住所については、法務省において改めて検討が進められているものと承知しておりますが、他方、スタートアップ創業者の方々から見直しを求める声があり、私自身も直接お聞きをしています。

 例えば、低年齢の子供を持つスタートアップ経営者が、住所が公開されることで子供に危害を加えられたり、あるいは極端な場合は誘拐とかにもつながりかねないのではないか、そのような懸念の声を私も耳にしております。

 そういうことで、内閣官房としましては、本件の法務省やデジタル庁における検討において、スタートアップの創業者や経営者の懸念に寄り添う、スタートアップの育成、こういう点にも留意されるよう求めるとともに、引き続き、起業のハードルを下げる取組を含め、スタートアップの挑戦を全力で後押ししてまいりたいと思います。

寺田(学)委員 ありがとうございます。

 政府の中でもそういうふうにちゃんと旗幟鮮明にして旗を振ってもらう人がいないと、法務大臣としても、様々な声を聞かざるを得ない立場とすれば、そういう声があるのは心強いと思います。

 昨日のレクの段階で、スタートアップ担当に聞こうとしたら、申し訳ないですけれども本件と我が方で何の関係があるんでしょうかというふうに聞かれました。僕も正直そんなこと聞かれると思わなかったのであれですけれども、いや、記事中には確かにスタートアップとありますが何か関係あるでしょうかと言われたので、そういう態度が岸田政権のスタートアップかと非常にがっかりして、いろいろな経営者にこんな状況だったという話をしたら、多分逆流して、英敬さんのところにも行ったと思いますけれども。

 大臣、いずれにせよ、これは省令でやれることなんです。なので、お忙しいし、優先事項はいろいろあると思いますが、是非、当事者意識を持って、説得をして、非公開の方に導いていただきたい、そう思っています。

 本件はこれで終わりたいと思います。

 一番目と二番目の項目で御答弁いただいた方々も、委員長のお許しがあれば御退席いただいて結構です。

伊藤委員長 それでは、御退席お願いします。

 御苦労さまでした。

寺田(学)委員 次は、刑法と、残り時間で民法に行きますけれども。

 これも、前大臣のときに出した資料そのままです。三枚目です。この資料自体は、様々ある判決の中からヒューマンライツ・ナウの方々がピックアップして法制審に出していただいた資料を、そのまま転載です。

 これはどういう判決かというと、これは性犯罪についての議論です。男性と女性がいて、女性側が嫌だというふうに意思を示し、裁判上でも、嫌だとあなたは言ったね、同意していないねということが認定されながらも、いわゆる罪に問われなかった裁判ケースです。

 葉梨さんの場合は、SNSに御自身で娘さんのことを言われていたので、娘さんにどう説明されますかという話を聞いたんですけれども、大臣についてはちょっと家族のことをお伺いしていないのであれですけれども、もし娘さんがいらっしゃったとしたら、ノーと言うだけでは罪に問われないんだというこの現実に対して、どのように大臣として、御家族がいらっしゃったら説明されますか、女性に対して。

齋藤(健)国務大臣 実は私も娘がいるんですが、ただ、個別のこのケースがどうということについては、ちょっと所見を申し述べるのは差し控えたいと思いますが。私は、一般的な考え方としては、性犯罪というのは被害者の人格や尊厳を著しく侵害しますし、その心身に長年にわたる重大な苦痛を与え続けることがあります。決して許されるものではないと思っておりますので、当然、厳正に対処すべきものだと思っています。

寺田(学)委員 娘さんにどう説明しますか。

齋藤(健)国務大臣 予断を持って言うことは差し控えたいですけれども、今、性犯罪に対処するための法整備については、現在、法制審議会の部会において調査審議が進められているところでありますので、お尋ねの点についても議論が行われているということであります。

 一人の父親としてこの議論をしっかり注視していきたいというのが、今の時点での私のあれでございます。

寺田(学)委員 一人の法務大臣としてですけれども。まさしく法制審で議論しています。意見が分かれていますよ、やはり。刑法学者の方々と被害に遭われた当事者の方々、それをサポートされる方々とで意見が分かれていて、どういう形で上がってくるか分かりませんけれども。法務省として、法制審で出された内容を一言たりとも変えちゃいけないわけではないですから、そこは大臣としての感覚が問われることだと思います。まさしく、同意をしていないにもかかわらず、そういうことを無理やりされたことに関して罪が問われないということへの強い問題意識が議論されているところですので、是非頭の引き出しに入れておいていただきたいというふうに思います。

 もう一点ですけれども、性交同意年齢の引上げの議論がされている中で、いわゆる実質要件、例外要件をどうするかという議論になっています。

 この間の質疑でも上げさせていただいたんですけれども、その中において、刑法学者の方から、性交同意年齢を十三歳から十六歳に引き上げるということ、及び年齢差を、五歳でまとまっていると、私が聞いている限りではないですけれども、五歳ということ及び三歳にしてほしい、様々議論ありますけれども、そういう年齢差の話をされている中で、いやいや、成人と一般的に言う女子中学生の間にも真摯な性的同意が成り立ち得るのではないかということを刑法学者の方が言われております。それに対して物すごく強い反発や疑問の声が出ているんですけれども。

 これもまた同じ御答弁をされるかもしれませんが、引き出しに入れていただく上でしっかりと問いたいと思いますが、まだ働くこともできない女子中学生が成人との間で真摯な性的同意が成り立つということは、およそ僕は想像はできません。

 その中で刑法学者の方が言われているのは、避妊をするなど、そういう寄り添った、格差を埋める努力というものを外形的に測れば、真摯な性的同意があったかどうかということが測れるんじゃないかというような趣旨のことを言われていました。

 それも、僕は、一子供を持つ親として考えると、物すごく気持ちの悪い発想だなと思いました。男性の年長者側が中学生の女性に対して避妊をしてあげるということが格差を埋める努力なのかということは、私は甚だ賛同できないなというのを議事録で見ているところです。

 こういう成人と女子中学生、一般的には女性でしょうから女子中学生に関して、真摯な性的同意があるのではないかという声が出ていることに対して、大臣、どうお考えですか。

齋藤(健)国務大臣 まず、先ほど申し上げましたが、性犯罪に対処するための法整備については、現在、法制審議会の部会で調査審議が進められていますし、十月二十四日の部会においては、それまでの御議論を踏まえた、今後の検討のためのたたき台として、試案が、言及されましたが、その後、試案を基に更に議論が行われているという状態であります。

 これまでの議論の中でも、お尋ねのいわゆる性交同意年齢の引上げについても、実際に幅広い、いろいろな意見がありまして、幅広い観点から議論がなされています。

 諮問している立場である法務大臣として論評というものを今するのはちょっと控えたいと思っていますが、刑法の改正は広く国民一般に大きな影響を与えるものであって、幅広い観点から御議論が極めて重要であって、そのためには、様々な立場から、委員の意見も踏まえて、多様な意見が示され、自由で活発な意見交換が行われることが極めて重要だというふうに考えています。

 私としては、引き続き法制審議会において充実した御議論が行われることを期待していますが、委員の問題意識はしっかり受け止めました。

寺田(学)委員 様々な立場の方が法制審に参加されて、その立場、専門性に基づいた意見を出し合われていると思うんです。

 ですので、もちろん、刑法学者の方は刑法学者、検察官の方は検察官、弁護士は弁護士の立場、被害に遭われた被害経験者はその立場、その方々を支えている臨床心理の方々はその立場でお話をされているのを、是非ともしっかりと、その立場の専門性に立って留意したものを出していただきたいし、それに対してトス、トスというか、議論のための試案を上げる刑事局としても、是非そういうところは、重々承知とは思いますが、理解した上で、法制審の充実な審議、納得できる結論のために頑張っていただきたいというふうに思います。

 刑法は以上にしたいと思います。

 民法です。

 これは、この間まで、それこそ葉梨前大臣と議論したところなんですが、民事局長といろいろ議論させていただきました。

 離婚後三百日以内に生まれた子供は前の夫の子であると推定する三百日推定が残っている。そこは、僕、この間、局長とも議論させていただいて、すごく素直に御答弁いただいたと思うんですよ。無戸籍者をゼロにすること、これは今更ひっくり返すことではないというのはそのとおりだと思います、無戸籍者をゼロにすること。

 じゃ、何でゼロにならないのと言ったら、やはり、裁判やら何やらで確定させるということに、前夫との関係、DVも含めてあるので、ちゅうちょされる人が多い。なので、今の法律よりも前進はさせるけれども、無戸籍者をゼロにするという目標達成はなかなか難しいよねということは素直に答弁で認めていただきました。反論があるなら手を挙げていただきたいですけれども、そこは大丈夫ですよね。

 何で三百日推定するのという話をするときに、本番、委員会もそうですし、レクのときもそうですけれども、前の夫の子供である高い蓋然性があるんだという話があったので、じゃ、その蓋然性って何なのって聞くと、いや、離婚する日まで一緒に住んでいる割合が高かったからって話で、そんなの何の因果関係もないじゃん、相関関係すらあるかどうか証明できていないじゃないかと。高齢夫婦まで入っている統計だったので。

 なので、じゃ、蓋然性をちゃんと証明してみてくださいよという話をレクでもしていました。実態調査をやりませんかという話をこの間レクに来たときにも聞いたんです。

 実際、三百日以内に生まれた子供が前夫の子であったかどうか、どういう傾向なのかということは、一緒に住んでいたかどうかということよりも、もっといろいろ実質的に調べられると思うんです。

 自治体の窓口業務では、三百日以内に生まれた子の出生届に関してはちゃんとチェックをして、その推定が及んでいることを含めてチェックしているので、自治体側は、離婚後三百日以内に生まれた子供であるかどうかというのは、その窓口でしっかりとチェックして把握しているんです。

 一方で、裁判側の方は、専門的な言い方はいろいろあると思いますけれども、推定を取り消す、いやいや、一応仕組みとしてそうなっているけれども、前夫の子じゃないので取り消しますというような裁判をして、取り消されているケースは出ていると思います。

 なので、自治体の方には、三百日以内に生まれた子供の数は、統計を取ろうと思えば、材料として、チェックも何もしていないなら分からないですけれども、ちゃんとチェックしているんですから、自治体側には、いわゆる分母となる数字は持ち得ていると思うんです。それを集めて統計化しているかはまた別として。

 裁判側の方は、父親ではないというふうに取り消した様々な形も司法記録の方で持っているはずです。これも統計化されているかどうかという問題はありますけれども。裁判側で、いや、この人は、前夫の子と推定されていたけれども、それを取り消しましたということは裁判上で決着がついているわけですから、様々持っていると思います。

 この分母と分子を、自治体と裁判所側の方で、及び法務省の方でしっかりと把握して、三百日推定の根拠となる、立法事実となる、推定を及ぼすに十分な高い蓋然性たる証拠をちゃんと集めてみてくださいよと。余りそこを言うと、偏った言い方しますけれども、本当に離婚後三百日以内に生まれた子供は前夫の可能性が高いのかどうかということをちゃんと調べましょうよという話をレクでしたんですけれども、めっちゃ嫌がられました。

 それは、空を飛んでくれという話は無理だと思いますけれども、やろうと思えばやれるわけですよ。どれぐらいの負荷がかかるかどうかはありますけれども。局長、そこで首を振らないでくださいよ。

 だから、本当に皆さんが三百日推定を置いているんだとしたら、その高い蓋然性を証明する何か持ってきてくださいよ、一緒に住んでいるからなんていう話じゃなくて。自治体にせよ司法記録にせよ、その足がかりはあるわけですから。そんな嫌な顔しないで。やってくださいよという話。

 局長、どうですか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、戸籍等の調査によりまして、離婚後三百日以内に生まれたお子さんの数を把握することはできます。

 じゃ、そのお子さんが、推定どおり前の夫の子であるのかどうかということについては、そのお子さん全体に対して血縁関係があるかどうかの調査をしなきゃいけないことになります。

 でも、裁判になっているケースは多くないんですよ。前の夫の子として届けられているケースがみんな裁判になっているかというと、そのままになっているケースも多いわけで。

 そうすると、裁判の記録を調べても、あるいは裁判上の統計を調べても、三百日以内に届けられた子について前の夫かどうかの血縁関係がどれくらいの割合があるかを知ることはできないということになります。

寺田(学)委員 三百日以内に生まれた子全員の白黒つけろなんて言っていないですよ、傾向を見なきゃいけない。だって、何にもないんだから、今。

 それで、今何か数字は持っているという話を言いましたね、局長が言っている範囲の中で。それはちょっと理事会の方に出してください。

 ちょっと時間がないのであれですけれども、大臣、ここはこれから参議院でも聞かれることだと思うので、お耳に入れておいてほしいです。大丈夫、秘書官の人。

 いわば、無戸籍者がなくならないのは、前夫との関係を持ちたくない、知られたくない、DV様々含めてそういう懸念があるから、それはもう局長も含めて認知しているんですよ。

 なので、これは以前局長だった方が言われたアイデアだと僕が聞いたんですけれども、離婚される際の離婚届に、これから生まれて、今後、離婚後生まれてくる者に対しての推定は及ぼさないと、それは夫側としてチェックを入れるというのは、その後何か起きたときに、もちろんそれが法的効果としてどれぐらいあるかどうかといろいろ議論はあると思いますけれども、大きな有用性を持つと思うんです。

 繰り返しになりますけれども、無戸籍者が減らないのは、前夫と関係を持ちたくない、知られたくない、怖い、安全のためだという方が多いとすれば、離婚する際の離婚届に、前の夫、その瞬間の夫が、これから生まれてくる子に対しては推定を及ぼさないと意思表示を何かしらの形で入れるとしたら、それが有用になって、その後のことに関しても様々解決するすべがあると思うんです。

 ちょっと局長、検討してくれないですか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 その前提として、三百日推定の規定を残した上でということかどうか、ちょっと今の御質問だけからは分からないんですけれども、三百日推定が残っているという前提の下では、覆すには嫡出否認の裁判によるということが法律で決まっているので、これは当事者の意思によってでも覆すことはできないということになります。

 また、法律上、誰の子として扱うかという問題は、本人たちだけで決められないという、公益性があると言われる世界ですので、ちょっと、御夫婦で、チェック欄を設けて、それに従うというのも、その観点からもなかなか難しいものと思っています。

寺田(学)委員 終わりますけれども、今、難しいと言われたこともしっかりと理事会の方で御報告をいただければと思います。

 委員長、よろしくお願いします。

伊藤委員長 はい。

寺田(学)委員 終わります。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。齋藤法務大臣に初めてお会いするし、また質問させていただきます。

 私は、法務委員会で、内密出産や棄児、あるいは子供たちの質問も様々させていただきました。

 今般、大臣に就任されましたので、最初にお聞きしておきたいなということがございます。それは、旧統一教会との関係について。

 大臣は、ネットなどで様々書いていただいておりますが、大臣の口から、旧統一教会とどういう関係があったか、お話しいただければ幸いでございます。

齋藤(健)国務大臣 お尋ねの件ですが、自民党でも調査をしましたが、実は私は、自民党が調査をする前に、この問題、ホームページで、自分との関係について公表すべきだろうと思ったので、自主的に公表してあります。

 それをきちんとお話しした方がいいと思いますので、申し上げますと、多くの方々からお問合せがあることもあり、これまで調べた範囲で至急御報告しますということで、まず、十六年にわたる政治活動において、私が、挨拶とか演説、ビラや個別の面会において、同連合やその関係団体について言及したことは一切ありません。

 また、政治資金収支報告書を含む関係資料を確認したところ、寄附を受けたり、会費を払ったりしたこともありません。

 同連合やその関係団体の会合への参加につきましては、私自身はありませんでしたが、秘書が認識をせずに一度だけ関係団体の会合に顔を出したことがあることが判明いたしました。

 そのほか、選挙での応援につきましては、同連合やその関係団体から組織として支援を受けたことは一切ありません。これまで十六年間で、数百人の方々にビラ配りや集会などのお手伝いをしていただいておりますが、その中に、お一人御関係の方がおられ、個人としてお手伝いをいただいたのではないかということが分かりました。なお、事務所のスタッフとしてお手伝いいただいたことはありません。

 以上、これまで分かった範囲で御報告いたしました。短時間で調べた限りですので、漏れがある可能性もございますが、早く報告した方がよいと判断し、御報告させていただきましたというのを八月四日にホームページで公表しております。

 現在においても、この見解に変更はございません。

阿部(弘)委員 ほぼ旧統一教会との関係はないというような御説明だと受け取っております。

 様々な、法務大臣としての役職として、これから役割を果たしていかれるんでしょうから、是非ともよろしくお願いしたいと思います。

 質問通告したところ、夜の、昨晩のNHKの番組に、統一教会の家族間の養子縁組ということが起きておりました。このことは質問はしませんけれども、養子縁組を家族間で行って、その数がかなりの数に上るということでございます。教団がそのあっせんを行うということは、有償、無償にかかわらず、厚生省の規則からいうと、それは好ましいことではないということでございます。

 局長は、その番組は御覧になられましたでしょうか。御覧になったかどうかだけお聞きしたいと思います。

金子政府参考人 執務をしながらではありましたが、局長室でクローズアップ現代の番組をつけておりましたので、おおよそ把握しております。

阿部(弘)委員 特別養子縁組という仕組みを行いながら、子供たちが温かい家庭で育っていくという仕組み、今までこの委員会でも質問させていただきましたが、教団のことでございますが、こういうこともあるんだなということで、この質問は、また後、後回ししたいというふうに思いますが、是非とも大臣には、旧統一教会の問題について、様々な役割があるわけですから、頑張っていただきたいと思いますので、その意気込みだけをちょっとお聞かせ願いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 当然、事柄の重要性に鑑みまして、しっかり取り組んでいきたいと思います。

阿部(弘)委員 次に、質問に移ります。

 成年後見制度の見直しについて、これは平成十一年だったと思いますが、成年後見制度が、民法の改正でその仕組みが始まったわけでございます。私、精神保健課におりました頃に、当時の厚生大臣と一緒に、最後の質問は参議院だったと思いますが、その質問を大臣の後ろで答弁をもって参加させていただいたのを記憶しております。平成十一年でございますから、随分時がたつなと、二十年以上、二十年近くたつんだなと思いました。

 そしてまた、同じような番組で、九月、ジュネーブにおいて、国連の障害者の権利委員会の総括所見が公表されました。日本の成年後見制度については、本人の意思がしっかりと反映されていない差別的な制度であり、廃止すべきであるというような意見をいただいたわけでございます。

 この点について、このジュネーブの会議、障害者の権利委員会の議論というのをどなたか説明いただけますか。

金子政府参考人 本年の八月二十二日及び二十三日、ジュネーブにおきまして、障害者の権利に関する条約に基づいて我が国が提出した第一回政府報告につきまして、障害者権利委員会による審査が行われ、九月九日、同委員会の総括所見が公表されました。審査の場においては、委員からの質問に対して、法務省としても我が国の制度等について説明を行ったところでございます。

 総括所見におきましては、法務省に関連する事項に関しても委員会の見解及び勧告が含まれておりますので、御紹介しますと、障害者権利委員会の総括所見では、成年後見制度につきまして、意思決定を代行する制度を廃止する観点から、全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、全ての障害者が法の前にひとしく認められる権利を保障するために民法を改正すること、必要とし得る支援のレベルや様式にかかわらず、全ての障害者の自主性、意思及び選好を尊重する、支援を受けて意思決定をする制度を設けることなどの勧告がされたものと承知しています。

阿部(弘)委員 この後見制度の廃止ということについて、テレビ番組が特集を組んでおりました。そこで、私もうなずけるような点、幾つかあるというふうに承っております。

 まず、後見の申立ては、親族であり、あるいは施設の職員であり、できるわけでございますが、当初は、後見人は、家族が後見人というふうになっていたものでございますが、現在は法律的な資格者、有資格者がなっているというふうに聞いておりますが、その実態というものはいかがでございましょうか。

金子政府参考人 恐縮ですが、具体的な数字を把握していませんが、司法書士、弁護士、社会福祉士などの資格者が成年後見人になる割合がかなり高いというふうに承知しています。

阿部(弘)委員 制度創設時の場合、ほとんどが、家族が後見人などになることが多かったんですが、今や有資格者、弁護士さん、あるいは司法書士さん、あるいはNPO法人など様々でございます。

 まず、今日は触りでとどめておきますが、まず、後見申立てのときには、医師が、当然、認知症であると、認知症であるというか金銭管理能力がないというふうに判断するわけでございます。その際に、長谷川式スケールモデルや、ミニメンタルステートエグザミネーション、MMSEなどで行っていくわけでございますが、どういう医師がこれを行っていくかは、現状、御存じでしょうか。

金子政府参考人 何分、家庭裁判所における運用となりますけれども、法律上は医師の資格に制限はないものと思います。

阿部(弘)委員 そうなんですよね。成年後見人になる方の資格も、国家資格などが列挙してあるだけなんです。あるいは、後見に該当するかどうかの医師の診断も、特に医師の経歴とかも何もない。

 ある老人保健施設では、外科の先生がちょろちょろちょろっと検査するわけですよ。外科の先生、もちろん、老健施設におられますから、分かりますが、そういうのが現状であるということを御理解いただきたいと思いますが、いかがでございますか。

金子政府参考人 精神上の障害があるという前提で、そこを判断するに、事案によってですけれども、ふさわしい鑑定あるいは診断書が提出されているというものとして理解しておりますけれども、例えば、別に主治医がいらっしゃって、改めて精神科のお医者さんの判断を待つまでもないというようなケースもあるやには聞いておりますけれども、詳細につきましてはよく分からないところでございます。

阿部(弘)委員 局長、正直だから、非常にいいですよ。実態が分からないんですよ。ですが、見て、経験してみると、そういうケースもある。

 でも、これからが本題ですよ。後見が認められて、専門職が後見人になる。今現場で何が起きているか。そうすると、今まで被後見人をお世話していた人たちを訴えるんですよ。訴えるという言い方は、全てが訴えるわけじゃないですが、お金の使い方がおかしかったでしょうと。

 そういう訴訟の件数について、非常に増えているというのは法曹界では有名な話ですが、家庭裁判所、御存じですか。

馬渡最高裁判所長官代理者 成年後見人として選任された専門職が被後見人御本人の財産の回復のために必要であると判断して、その代理人として御本人の親族に対して損害賠償を求める訴えを提起する場合があるということは承知しておりますが、お尋ねのような民事訴訟、具体的な件数等については統計を取っておりませんので、統計についてはお答えすることはできません。

阿部(弘)委員 多分、こういう指摘をするのは私が初めてじゃないかなと思いますので、これから統計を取ってみてくださいよ。

 成年後見の申請の数も非常に増えてきますので、そうすると、どういうことが起きてくるかというと、成年後見制では、その後見人、例えば有資格者の方がどれだけ後見人の手数料を月々いただいてあるか。あるいは、その裁判で、恐らく、家庭の中ですから、そんなに厳密なお金のやり取りはしない、それまではお母さんやお父さんがいいよ、いいよと言って上げていたものが、損害賠償請求として、額として上がってくる。そうすると、一定の額があれば、その中から後見人は、弁護士さんなら弁護士さんとして弁護士報酬をもらうわけなんです。

 本来は相続人に分配されるはずの費用が、有資格者が訴えることによって、一定の額が弁護士さんに支払われる。あるいは、後見人の額が不明で、家族が問い合わせても答えない。いかがですか、その実態。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 成年後見人等、専門職が選任される事案が増えている中で、専門職後見人が成年後見人として事務を行った場合には、民法の定めに従って報酬が付与されるというところでございますけれども、中には、財産管理等の報酬をめぐって対立が生じたり、コミュニケーションが十分できていなかったという事案もあることは承知しております。

 いずれにいたしましても、家庭裁判所は、成年後見人の選任、解任等の判断性を背景に、成年後見人の事務を監督する立場にありますので、各家庭裁判所において適切な制度運用がされますよう、最高裁としても必要な支援をしてまいりたいというふうに考えております。

阿部(弘)委員 初めてこういう指摘をするわけでございますから、これからも実態把握というのは、特に、後見人の報酬額というものはある程度裁判所の方で、後見監督人というのがありますから、その仕組みでも結構ですし、何らかの処置を講じていただきたいというふうに思っておりますが、いかがでございますか。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 報酬の在り方につきましては、基本的には裁判官の判断事項というところでございますけれども、現在、その報酬の在り方については様々な検討がされているところでございます。引き続き、家庭裁判所として、また最高裁としても検討してまいりたいというふうに考えております。

阿部(弘)委員 何か、この国会では、神戸の小学生殺人事件、いわゆる酒鬼薔薇事件のことで家庭裁判所の裁判記録を破棄してしまった事件など、家庭裁判所に御質問することがこれほど多いとは、本当に奇遇でございます。是非ともよろしくお願いしたいと思います。

 もう一つは、最初に外科医が診断して、後見制度が始まるということでございますが、私はまだ病院の医師をしておりますが、医師をしている感覚からすると、確かに金銭管理はできない、ですが、そのほかのことは、息子が来たら笑顔で応える、そして、何かをしたいとか、何かを食べたいとかいうことは、ほとんどの高齢者というのはできるんですよ。もう何もできない人になってしまうというような制度ではない。まさに国連が言わんとするところは、本人の人格としてはかなり保たれている、ただ、お金の管理という点では難しいですよということで後見人制度はあるんでしょうけれども、それ以降も全く、本人のお金で食べたいものを買うこともできない、どこかに行くお金の支弁もできない、それは後見人が駄目だと言えばできないわけです。

 テレビの番組で言っていましたよ。御夫婦の方で、御主人が認知症になった、後見人をつけました、そうしたら、奥さんの生活にも支障が起きている。同一の家計を維持していれば、お父さん名義で通帳を作っていたりすれば、それは非常にお困りになるわけでございます。

 まだまだ後見制度、もう平成十一年から随分たっておりますが、その制度の見直しについて、議論はあってしかるべきじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 この成年後見制度に関しましては、成年後見制度利用促進基本計画というものがございまして、一期を五年とした計画でございますが、本年三月に第二期の計画が閣議決定されました。

 この計画では、本人にとって適切な時期に必要な範囲、期間で制度を利用できるようにすべきであるといった指摘も踏まえて、成年後見制度の見直しに向けた検討を行うものとされています。

 つまり、一度成年後見が開始したら、ある特定の人がずっと後見人になり続けるというのではなくて、本人の必要性等に応じて、あるいは期間を区切ったような利用の仕方、こういうものも考えてはどうだということになっておりまして、そのような基本計画、閣議決定された基本計画を受けまして今検討しておりまして、今年六月に成年後見制度の見直しについて検討する研究会が立ち上げられておりますが、法務省からもこの研究会に担当者を参加させております。

 この研究会による議論に積極的に参加しまして、制度の見直しに向けた検討を深めてまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 今般、初めて様々な問題点、もう遠い昔に、私が若かりし頃に関与した制度でございますから、こういうところがいけないんじゃないかなということはよく分かるわけでございます。何よりも、後見制度を始めたら、もうやめられない。病気の種類にもよりますが、一般的に、高齢に伴う認知症であれば、もうやめることはないんです。もう一つは、この人は合わないから替えてくれといっても替えられない。ですから、ずっとその人で後見を続けていかなきゃいけない。先ほどの、家族が温泉が好きだから温泉に連れていきたいと言っても駄目だと。ですから、本人の意思を反映できない差別的な制度が日本の後見制度では残っている。

 何度も言いますが、最初の長谷川式にしても、MMSEにしても、それはレベルが落ちているというだけで、金銭管理能力はないかもしれませんが、そのほかの意思発露はできるわけなんですよ。だから、その点をしっかり改正に盛り込んでいただきたいなというのが私の意見でございます。

 では、次の質問に移ります。

 これは、私は宮城刑務所に視察に行って、非常によくなって、建物がきれいになっていて、大臣、初めてでございますが、私は、有事の際の難民受入れとして刑務所を使ってはどうかということをお話しさせていただいております。もちろん、友好国だけの難民じゃないですから、非友好国の方からも難民は当然押し寄せるかもしれない。そういったことも踏まえて、刑務所というのは、お風呂があり、寝具があり、そして給食施設があり、何よりも法務省の施設ですから。

 今度の補正予算、非常に私は、災害に屈しない強靱な法務関係施設等の整備とありますが、このことについて御説明いただけませんでしょうか。

花村政府参考人 お答えします。

 刑事施設の環境整備は、被収容者の逃走防止、平穏な収容の維持等のため、また再犯防止施策の実現のための基盤として非常に重要なものと捉えております。

 しかしながら、全国百八十二の刑事施設のうち、約四二%の七十六施設が現行耐震基準が定められた昭和五十六年以前に建設されたものであるなど、老朽化が著しく、特に災害時に刑事施設の機能維持を図り、国民の安全を確保するといった観点からも、その対策が急務となっております。

 刑事施設は、被収容者の収容を確保し、再犯防止のための各種取組を進める施設であることに加え、近年、自治体等と防災協定を結び、災害時には職員の鍛錬場等を地域の方に避難所として開放するなど、防災拠点としての機能も備えております。

 今後も、耐震化等の安全確保を早期に実現し、これらの機能を安定的に確保するため、それぞれの施設の置かれた状況に応じて、建て替えや耐震改修などの所要の整備に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

阿部(弘)委員 そうなんですよね、災害の自治体との協定。特に、熊本地震のときに地域住民を受け入れたというのは非常にすばらしいことです。その災害連携の実例がございましたら、お話しください。

花村政府参考人 お答えします。

 刑事施設につきましては、災害時における自治体等との協力体制を構築することを推進しておりまして、令和四年十月末時点におきまして、刑事施設、本所七十三庁中六十三庁が所在地自治体等との防災協定を締結をし、主として鍛錬場や職員待機所など、また、刑事施設敷地内の一部建物や土地を避難場所として提供することとしております。

 例えば、平成二十八年四月の熊本地震においては、熊本刑務所の施設の一部を避難所として開放し、近隣住民の方を最大約二百五十名受け入れましたほか、本年九月の静岡市での台風十五号の被害に際しましては、矯正局特別機動警備隊を派遣して、入浴支援等を実施したところでございます。

阿部(弘)委員 是非とも、更生保護施設も非常に老朽化しておりますので、併せて整備されるというふうにお聞きしておりますが、災害時やあるいは有事の際にこういう法務省の矯正施設を利用してはいかがかという提案を、前の大臣にはちょっと聞きそびれましたが、齋藤大臣、いかがでございましょう。

齋藤(健)国務大臣 刑事施設は、被収容者に対して、その法的地位に応じて必要な処遇を行う施設であることは言うまでもないわけでありますが、一方で、災害時においては、国民の安全、安心確保、地域の一員としての役割を果たすなどの観点から、所在地自治体等と防災協定などを締結するなどしてニーズ等を受け止めて、刑事施設の機能等と両立させつつ、災害時の地域支援として、刑事施設施設内の一部を避難所などに利活用しているところであります。

 引き続き、所在自治体等と連携して、災害発生時の地域支援について前進させていきたいと考えています。

阿部(弘)委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、有事の際は大村の入管施設だけでは足りないというふうに皆が思っているところでございますが、是非とも法務省の施設も活用いただくようにお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 まず、冒頭となりますが、葉梨前大臣の発言から始まりました大臣交代までに、伊藤委員長、薗浦与党筆頭、寺田野党筆頭、また、関係省庁そして委員部の皆様の大変な御尽力の中、法務委員会では三時間近い委員会が開催されました。私もその中で三十分時間をいただき、やり取りさせていただきました。

 葉梨前大臣からの謝罪の中にも、警察庁から始まり、法務畑でキャリアを築かれ、法務大臣となった葉梨前大臣の法務行政の知見と問題意識の高さを痛感できました。そして、法務行政にはまだまだ向き合っていかなければいけないことがあるということも強く感じました。

 委員会後に、急転直下、辞任となり、新大臣が決まりましたが、議論が必要なこと、先に進めていくべきことは変わらず残っております。正直、今回の交代劇に思うことは、いろいろな思いがございますが、私も頭を一気に切り替えて、前向きに本日は質疑をさせていただきます。齋藤大臣、そして委員長、関係省庁の皆様、委員部の皆様、本日もよろしくお願いいたします。

 まずは、齋藤大臣、大変難しい局面ではございますが、御就任本当におめでとうございます。

 大臣は二〇〇四年に埼玉県の副知事を務められていたとのことで、埼玉県で活動している私にとっては、勝手に親近感を持っております。副知事時代の直接の担当分野である産業振興について、女神の前髪作戦と銘打って、幸運の女神に後ろ髪はない、チャンスを確実に生かす意欲的な取組をしていたとも伺っております。

 平成十二年には、内閣官房の行政改革推進事務局に出向し、当時、小泉改革の政策課題であった道路公団の民営化などの特殊法人改革に取り組んだり、平成二十五年、自民党農林部会長時代には、難題の一つでもあったJA改革で、一般社団法人化への道筋をつけるなどの成果を上げたとも聞いております。

 ほかにも経歴を拝見しますと、やはり特に農水分野での御活躍が目覚ましく、僭越ながら、今回については法務ということで、やはりどういったふうに今後大臣とやり取りができるのかということも楽しく思いながらも、現実的に、軸足をぶらさずに議論をさせていただければというふうに思っております。

 大臣所信こそが齋藤大臣の意思であることは当然分かっているんですけれども、葉梨前大臣からの踏襲も多くありましたので、是非このタイミングで、法務大臣を打診されたときの正直な思い、そして、特に力を入れたいことについてありましたら教えてください。

齋藤(健)国務大臣 打診されたのは金曜日でした。四時過ぎぐらいに電話がありまして、五時に官邸に来いと。それで、六時十五分には宮中にということでありましたので、青天のへきれきとはこういうことを言うんだなというぐらいの衝撃を受けながらも、ただ、あの局面において、やはりいろいろ御迷惑をかけたものを挽回しながら全力を尽くさなくちゃいけないということは瞬時に覚悟をいたしました。

 私としては、葉梨前大臣の所信からまだ間がなくて法務行政における施策等に大きな変更がないこともありますし、臨時国会期間中の交代でもありますものですから、法務行政の継続性を重視することが大事だろうということで、施策等を引き継ぐ形で所信表明はさせていただきました。

 何に重点を置くのかという御質問がありましたが、やはり、喫緊の課題としては、民法等の一部を改正する法律案などにつきまして今国会で何としても成立をさせたいと思っていますし、旧統一教会の問題につきまして被害者の救済に向けた取組を強力に推進していきたい、それから、出入国在留管理制度全体を適正に機能させるための法整備について速やかに検討を進めたい、こういったことが当面力を入れていくべき課題だろうと認識していますが、いずれにしても、所信表明で申し上げました課題は全て重要な課題でありますので、迅速かつ着実に取り組んでまいりたいと考えています。

沢田委員 どうもありがとうございました。

 今回の大臣御就任のタイミングは、まさに法務大臣というポストへの、国民の皆様は一旦落胆とか不信感というものを持っている状態の大変厳しいスタートとなりますが、是非、信頼回復でとどまらずに、法務行政の前進に、女神の前髪作戦のような実行力を示していただけるように期待しております。よろしくお願いいたします。

 また、続きまして、午前の岩田委員の質疑でも御返答なさっておりましたが、官の能力と献身的な姿勢が必要という視点は、私もこの国難の中、大きく求められていると感じます。

 先日の法務省の幹部職員に向けた訓示においては、萎縮しないでほしいという言葉であったり、皆さんと一緒に大いに汗をかいていく決意ということは述べられているんですが、今回の大臣の所信の方を拝見しますと、前大臣の所信を踏襲している中で、職場環境については特段の言及がありませんでした。それはなぜなのかなということと、また、埼玉県の副知事など官の御経験も豊富な大臣として、特に職員の皆様とのコミュニケーション、こういった部分で今までも含めて気をつけていることとかがありましたら、教えてください。

齋藤(健)国務大臣 まず、職場環境について言及をしなかったとお話がありましたが、私はもう当然のことだと思っておりまして、トップに立つ者がそれに心がけないということはあり得ないと思っていたので、あえて言う必要はないかなと判断しましたが、当然のことながら、大事なことだというふうに認識をしております。

 あと、萎縮せずにということを申し上げましたが、私はやはり、官の世界に長くいて、官の人たちの能力、それから献身的に働いていこうという姿勢は肌で感じていましたし、それを法務省の皆さんも持っているところでありますので、これは大事にしていきたいと思っていますし、そのためには、私は、大臣だからということではなくて、こうあるべきだというような思いを直接ぶつけてくれ、その代わり、私もがんがん言うからと、そういうやり取りの中から、困難に立ち向かっていくチームとしての一体感が生まれてくるのではないかというふうに考えていますので、そういうことを心がけていきたいなと思っています。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 まさに当たり前という流れなんですけれども、結構我々、私が所属しています日本維新の会も、質疑とかを二日前までに出しましょうとか、そういったところから、やはり仕事されている公務員の皆さんと連携を図っていけるところ、信頼関係を築くところをやっておりますので、そういった細かい部分も含めて是非いろいろな議論をさせていただければと思います。

 昨年の通常国会では、ちょっと話は変わるんですけれども、入管法が廃案となりました。二月に法案が国会に提出され、名古屋入管での死亡事案が発生したのが三月六日のことでした。この法案では、送還忌避者への対応、長期収容問題の解消、収容者の適正な処遇についても手当てがされる予定だったと伺っております。

 これらの問題解消に向けて法案が仮に成立していれば、法案提出後すぐに起きてしまった名古屋入管の事案には間に合わなかったとしても、同様の事案を防ぐことができていたと感じる部分も多分にあります。法務省としてはどのようにお考えでしょうか。

西山政府参考人 まず、委員御指摘の改正法案におきましては、長期収容の解消のため、全件収容主義を改め、収容に代わる選択肢として、監理人による監理の下、収容せずに退去強制手続を進める監理措置を創設することといたしておりました。これによって、退去強制手続対象者を収容する機会が減少し、長期の被収容者数も減少することになるものと考えていたところでございます。

 次に、被収容者の人権を尊重しつつ適正に処遇を行うことなどの処遇の原則を定めた上で、常勤医師の兼業要件の緩和、治療拒否者に対する必要な医療上の措置などの収容施設における医療を充実させる規定を整備しておりました。これによりまして、被収容者の処遇を一層適正なものとすることができると考えていたところでございます。

 このように、廃案となった入管法改正法案は、今申し上げたような点で、収容施設における死亡事案の発生の防止にも資するものであったというふうに考えております。

 今後、着実な法改正の検討を進めるとともに、組織、業務の改革を進めまして、収容施設における死亡事案が二度と発生しないよう努めてまいりたいと考えております。

沢田委員 御答弁ありがとうございました。

 廃案となった入管法が成立していれば、同様の事案を防ぐことにある程度の効果があるのではないかという御答弁をいただきました。

 昨年の法案は成立しませんでしたが、出入国管理の現場では、送還忌避者への対応、長期収容問題の解消、収容者の適正な処遇といった改善すべき問題を改めず、そのままで運用されている現実というものが今まさに続いております。

 私は、一日も早く改正入管法の審議をすべきと個人的には考えておりますが、大臣、どうお考えでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 現行入管法下で生じている長期収容問題及びその原因となっている送還忌避問題は、早期に解決すべき喫緊の課題であると思いますし、他方で、真に庇護すべき者を確実に保護する制度の整備もまた重要な課題だと考えています。

 入管制度全体を適正に機能させ、保護すべき者を確実に保護しつつ、ルールに違反した者には厳正に対処できる制度とするためには、こうした現行入管法下の課題を一体的に解決する法整備を行うことが必要不可欠であると考えています。

 法務省としては、必要な法改正を早期に実現できるように、着実に検討を進めていきたいと考えています。

沢田委員 大臣、御丁寧にありがとうございました。

 続きまして、法教育の推進についてお伺いいたします。

 所信において、大臣は、共生社会実現のため、その基礎となる諸原理や法の役割を理解し、法的な物の考え方を身につける法教育を一層推進していくと述べられました。

 法教育という言葉は、私は学生の頃に聞いた記憶は余りなくて、今更、大人になって思うことは、なぜ法律の中に生きているのに法律を知らないで生きているのかなと。ただ、私も、六法全書が全部分かるか、覚える気があるかというと、この政治という立場にあってもやはり分からないものが多くあるというような状況でもございます。

 今現状、法務省さんの方でやられております、具体的に、この法教育というものに対する取組、どんなことをやられているのか教えてください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現代社会における法教育が非常に重要だと認識をしておりまして、法務省といたしましては、これまで、法教育教材の作成、配付、教員向け法教育セミナーの開催、それから法律専門家による出前授業の実施など、学校現場において、より充実した法教育が実践されるよう取組を進めてきたところでございます。

 また、本年四月の成年年齢や裁判員年齢の引下げを踏まえまして、契約や私法、これの基本的な考え方などについて分かりやすくまとめました高校生向けの法教育リーフレットを作成、配付するなどしているほか、小中高校の授業に取り入れやすい模擬裁判用教材の作成も進めているところでございます。

 法務省といたしましては、引き続き、関係機関等と連携しながら、法教育の浸透に向けて取り組んでいきたいと考えております。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 いろいろな取組をやられているなということなんですけれども、ちょっとやはり、法教育、まだまだ宣伝が足りないのかなと思うのが、最近は金融庁さんで金融教育というものが、いろいろなところで声が出てくるようになりました。私もいろいろな方に会ったときに、子供に金融教育したいなという親御さんが、私も子供が十歳と八歳でして、いろいろなところで聞くということも含めるんですけれども。

 本日は金融庁からも来ていただいているんですけれども、今年の四月から家庭科の授業に金融教育というものが入ったと思います。それについて、先生が教えやすくやっているとかいうことも含めて、今実際に金融教育がどうやって始まるという、学校での金融教育が始まるに当たって、どのような経緯で取り組んできたかということであったり、特に、実際に現場で動き始めてみての課題、子供たちが楽しく遊べるような工夫とか、そういったものがありましたら教えてください。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁といたしましては、個人が自らのニーズやライフプランに合った適切な金融商品・サービスを選択し、安定的な資産形成を実現するためには、金融経済教育が果たす役割が非常に大きいというふうに考えておりまして、文部科学省と連携しながら取り組んできたところでございます。

 委員御指摘のとおり、学習指導要領につきましては、平成三十年に改訂されまして、本年四月から年次進行で実施される高等学校学習指導要領において、金融に関する内容の充実が図られております。

 例えば、先生御指摘のように、家庭科におきましては、家計の構造や生活における経済と社会との関わり、家計管理について理解することとされておりまして、その学習指導要領の解説においても、家計管理については、資産形成の視点にも触れるようにすると明記されております。

 これを踏まえまして、金融庁それから財務局におきましては、職員による出張授業とか教員向け研修会を実施しております。その他、文部科学省と連携しながら、学習指導要領に対応しました指導教材を作成、公表しまして、各都道府県の教育委員会等を通じて周知をしているということ、様々な取組を行っております。

 また、先般閣議決定されました総合経済対策におきましても、金融経済教育等の充実に向けて、国全体としての推進体制を整備していくということを盛り込んでおります。

 引き続き、文科省を始めとします関係機関と連携しながら、資産形成を含めた金融経済教育のより一層の推進に取り組んでまいりたいと思います。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 金融庁より、金融教育についての課題や工夫も出ると同時に、学習指導要領が入ってくるというのが、やはり多く答弁に入っていたんですけれども、学校の教育にしっかりと入っていくということも、やはり法教育、私、とても大事なことだと思っています。

 特に、法教育というものについて考えると、答えのない問題を自分の力で考えていくというところに、私は教育的な意義があると思っています。

 そのような自分の力で考えるための教育は、今までの日本の学校現場において、私は正直、重視されてこなかったのかなと。特に、諸外国における民主教育というものにおいては、答えをつけない、点数をつけない、そういった授業をしている国は、スウェーデンとか結構あるんですけれども、日本は基本的には暗記ものであったりとか記憶してやるということが、やはりこういったところで問題になっているのではないのかなというふうに思っておりまして、先ほど法務省さんの方からあった模擬裁判、こういったものが、まさに子供たちが実体験としてやっていくことを、私はどんどんどんどん進めていくべきなんじゃないかなというふうに考えております。

 この模擬裁判など、裁判官、検察官、弁護人の役割を疑似体験することで、それぞれの立場や考え方が理解できる、いろいろな価値観を聞くことができるということは、思考力を養ったり、又は自分たちが生きているこの法務行政の上を子供たちが疑似体験することで、大変いい取組だというふうに思っております。

 現在も、法的な思考や民主主義の仕組みなど、学校教育の中に組み込まれている部分も当然あるとは思いますが、さらに、中心的な科目として各学校が取組を進められるよう、金融教育のように学習指導要領に盛り込むことも視野に入れて、更なる法教育の推進を目指すべきと私は考えているんですけれども、大臣、どうでしょう。

齋藤(健)国務大臣 委員から教育の在り方についてお話ありましたけれども、それについてちょっとお答えする立場にありませんが、ただ、法教育は、基本的人権や法の支配など、法や司法制度の基礎となっている価値を理解し、法的な思考を身につけるためのものとして重要だと思っています。

 複雑多様化する現代社会におきまして、法教育を通じて、自らの考えをしっかりと持ち、多様な考え方、生き方を尊重し、社会の一員として共に協力して生きていく力を身につけることは、共生社会を実現する上で極めて重要だと考えています。

 そうした考えで、法務省では、法教育の意義を踏まえて、これまでも、法教育教材の作成、配付や出前授業の実施など、様々な取組を進めて法教育の浸透を図ってきたところですが、御指摘の模擬裁判につきましては、課題に対して子供たちが異なる立場からそれぞれ主体的に向き合って考える力を養っていく、こういう観点から極めて意義深いものと考えておりまして、これまで、子供たちが参加する模擬裁判に法律実務家が指導助言するなどして、法務省も関与をしてきております。

 さらに、法務省では、研究者、法律実務家、現場の教員等にも検討に参加をしていただいて、小中高校の授業で活用いただく模擬裁判用教材の作成を進めているところです。

 指導要領にというところまでは行っていませんけれども、かような努力をしておりまして、関係省庁や研究者、法律実務家だけでなく、学校教育の担い手である現場の教員の皆さんらともしっかり連携して、法教育の一層の浸透に向けて積極的に取り組んでまいりたいと思います。

沢田委員 大臣、御丁寧にありがとうございました。

 続きまして、前回の葉梨前大臣の所信質疑でも、公安調査庁の強化、また政府全体としてのインテリジェンス強化について触れさせていただきました。私は、大変重要な役割であるからこそ、更なる増員、予算増額を求めたのに対して、葉梨前大臣からは、公安調査庁を督励して連携を図るだけでなく、そういった体制面、底上げの整備、そこに努力をしていきたいといった御認識をいただきました。

 齋藤大臣は、このインテリジェンス部門、特に法務省の所管する公安調査庁の重要性について、どのような問題意識をお持ちですか。

齋藤(健)国務大臣 我が国を取り巻く国際情勢は、極めて不確実性が増してきております。我が国の国益を守り、国民の安全を確保するためには、情報の収集、集約、分析が極めて重要であると認識しています。

 私は、このような認識の下、平素より、公安調査庁において、内閣情報調査室を始めとする情報コミュニティー省庁と緊密に連携をして情報収集、分析活動に当たっているというふうに認識をしておりますが、私は、この活動は極めて重要だと思っていますので、公安調査庁における情報収集、分析能力の一層の充実強化に向けて取り組んでいきたいと考えています。

沢田委員 ありがとうございます。

 ちなみに、公安調査庁の令和五年の予算要求と令和四年の予算額について、法務省、教えてください。

田野尻政府参考人 お答えを申し上げます。

 令和四年度予算額、公安調査庁の予算額でございますが、デジタル庁計上分を除きまして、総額百五十九億五千万円でございます。

 令和五年度概算要求額は総額百六十九億一千万円でありまして、対前年度予算と比較して、九億六千万円、六・〇%の増となっております。

 来年度概算要求におきましては、我が国の安全、安心を支える法務、司法の基盤整備といたしまして、経済安全保障体制及びサイバー関連の調査体制等の充実強化に必要な経費を計上いたしておるところでございます。

沢田委員 予算が十億円近く増えたというお答えでした。もちろん少ない金額ではありませんが、あえて言わせていただくならば、たった数%です。

 大臣も重要性を御認識なさっていると感じました。私は、本当にこの部分には問題意識を超えて危機意識を持っております。例えば、防衛費のGDP比一%から二%といった数字が今大変現実的な議論をされておりますが、インテリジェンスの分野に関して、予算規模だけ考えたら、問題意識があるとは全く感じません。幾ら優秀な人材がいても、人員と予算含めてしっかりと注目を浴びる状況をつくっていかなければ、活躍できる状況もできません。

 その点で、是非大臣にも意識を共有したいと思っておりますが、今後、公安調査庁の体制面、底上げの整備、葉梨前大臣が努力していきたいと言った部分についてどのようにお考えか、教えてください。

齋藤(健)国務大臣 大変重要な御指摘をいただいていると認識しています。

 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している中、情報の収集、分析等は様々な対策を考える上で極めて重要な活動だと認識しています。引き続き、公安調査庁における情報収集、分析能力の一層の充実強化、これに必要な予算、人員の確保にしっかり取り組んでいきたいと考えています。

沢田委員 大臣、心強いお言葉、ありがとうございます。

 続きまして、司法外交について質問させていただきます。

 今までの日本の外交の形は、政府開発援助等の経済外交が主流でした。しかし、他国に対する支援の中核となるODAに関しては、二〇二二年度における政府全体のODA予算は五千六百十二億円であり、一九九七年度の一兆一千六百八十七億円と比較すると半減ということになります。

 更に言うと、田中角栄首相が中国を訪問した一九七二年以後、日中関係の安定を図るため、日本は、ODAを活用して中国との経済関係を強める政策、いわゆるエンゲージメントポリシーを基軸としていましたが、結果的には、中国共産党の強権的支配はむしろ強まってしまい、経済の結びつきを強めることで中国がより自由な社会に変わっていくというエンゲージメントポリシーの期待は無残にも裏切られた形になっております。

 円安による経済情勢の変化、ウクライナ侵略等、日本を取り巻く環境は大きく変化をしています。内閣府が昨日、十五日に発表した七月から九月期の国内総生産速報値によると、交易損失は年率換算で十九・七兆円になり、前の期に比べて三・六兆円悪化したとのことです。我が国の厳しい財政状況を考えれば、ODAの減少はやむを得ないと考えます。すなわち、外交戦略としての経済協力には限界が来ていると感じております。それを補う可能性を持っているのが司法外交だと私は思っております。

 しかし、私は、現在の政府の取組、方向性に対して、問題に対して、疑問に思っていることが何個かございます。

 五十年ぶりに日本で開催された京都コングレスの成果を具体化と大臣は所信でおっしゃっていますが、日本を取り巻く近隣諸国の様々な行いは、国際社会が確認した法の支配の重要性や、結束した国際社会のコミットメントを台なしにしているのではないでしょうか。

 今日は、委員の皆様にこういった資料をお配りさせていただきました。

 これは、自民党のホームページにも掲載されております提言の概要です。今から六年以上前の二〇一七年六月に出た提言となります。司法外交の新基軸として、五つの方針、八つの戦略が記されております。中身を拝見しましたが、大変バランスがよく、正直、すばらしいという内容と感じました。

 ただ、外交という言葉が使われている以上、外務省に大きな方向性の権限があるというのは分かるんですけれども、法務省が、司法外交ということを真に進める、前進させるだけの状況にないのではないのかということを少し心配しております。

 平成三十年四月に法務省大臣官房国際課と課になりまして、いろいろと頑張っておられるとは思いますが、外交という言葉を使われる以上、成果がもちろん大切ですし、外務省主導の外交で、私は、日本の安全保障環境が劇的によくなっているということはやはり感じていません。私には、どんどん危機が高まっているとしか感じません。五つの方針の一番最初に、国の施策に司法外交を明確に位置づけるとあればこそ、国際課の立場強化や予算増額含めて、長い目で見たキャリアアップ、人材育成もしていかなければならないと感じます。

 外務省が出しています外交青書二〇二二年版でも、国際社会における法の支配という記述がほんの少ししかないことも大変残念でなりません。特に、日本を取り巻く安全保障環境は日々悪化しています中だからこそ、外交への期待値は高まっております。今から六年前に作られた最終提言には、開催済みのコングレス二〇二〇の記述が残っております。

 司法外交の中心を担う法務省国際課の人材育成や権限強化など含めた組織体制の文言を入れた新しい提言を作成し、行動すべきと考えますが、大臣、どうでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 今委員が御指摘された調査会の提言が出て以降、私は、日本の安全保障環境は更に厳しくなって、法の支配や基本的人権の尊重といった基本的価値を日本から世界に発信し、世界各国に浸透させていくことの重要性はますます高まってきたなと思っておりますので、司法外交の意義はますます高まっていると思います。

 委員御指摘のとおり、司法外交を戦略的に推進し、外務省と連携しつつ、国際社会の平和と安全の構築に法務省としてもしっかり寄与していきたいというふうに考えています。

 それで、宣伝ですけれども、法務省では長年にわたり、ASEAN各国を含むアジア諸国を主な対象として、法制度整備支援や、国連アジア極東犯罪防止研修所、UNAFEIの国際研修を実施してきました。それにより構築した信頼関係を土台として更にASEAN各国との連携を強化して、我が国がASEAN地域におけるルールに基づく国際秩序の維持強化にリーダーシップを発揮すべく、来年、日・ASEAN特別法務大臣会合を開催することにしました。

 このように、法務省においても戦略的に司法外交の推進に取り組んできたところでありますし、これからも戦略的、積極的に取組を進めて、確実に成果につなげていきたいと考えています。

沢田委員 大臣、御丁寧にありがとうございました。

 自民党、公明党でも今年の三月に、法の支配を推進するため、司法外交を展開する議員連盟というものが設立されたと伺っております。しっかりと、私も党の中から声を上げて、動いていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 時間となりましたので、一つ質問をなくさせていただきます。準備いただいた方、申し訳ありませんでした。どうもありがとうございます。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 まずは、入管法改正法案についてお伺いいたします。

 入管施設での収容の長期化への取組であったり、被収容者の人権に配慮した適正な処遇の実施に関して、昨年提出された入管法改正法案がどれだけ資するものなのかということに関しては、もう既に質問で出ておりまして、お答えになられておりますので、ちょっと飛ばさせていただいて、次、先週、民法の改正法案における国籍法三条三項がもたらす影響への対応について、私の質疑の中で、西山次長より、入管法改正法案におきましては、在留特別許可について、より迅速に対応できる制度を取り込んでいたとの御答弁がございました。この詳細についてお伺いいたします。

西山政府参考人 昨年提出いたしました入管法改正法案におきましては、御指摘の在留特別許可制度につきまして、まず申請手続を創設するとともに、その考慮事情を明確化することなどによりまして、庇護、在留を認める者を迅速かつ適切に判別することといたしたところでございます。

 法案の具体的な内容について、今回は、現在、検討中のところでございますけれども、必要な法改正を早期に実現できるように、着実に検討を進めてまいる所存でございます。

漆間委員 国籍法三条三項がもたらす影響への対応についても、入管法改正法案が資するということで御答弁をいただきました。

 これも踏まえた上で、また同じ答えになるかもしれませんけれども、入管法改正法案を進めることに関しての齋藤大臣の意気込みをお伺いいたしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 現行入管法下で生じている長期収容問題及びその原因となっている送還忌避問題は、早期に解決しなければならない喫緊の課題であります。他方で、真に庇護すべき者を確実に保護する制度の整備もまた重要な課題というふうになっております。

 入管制度全体を適正に機能させ、保護すべき者を確実に保護しつつ、ルールに違反した者には厳正に対処できる制度とするためには、こうした現行入管法下の課題を一体的に解決する法整備を行うことが必要不可欠であると考えております。

 法務省としては、必要な法改正を早期に実現できるように、着実に検討を進めていきたいと考えています。

漆間委員 ありがとうございます。

 次に、父母の離婚後の子供との交流、親子交流、いわゆる面会交流についてお伺いいたします。

 先般、国連人権保護委員会、CCPRから日本政府に対して、日本における親による子の奪取、実子誘拐問題に適切に対応するために必要な措置を講じ、国内、国際間の事例を問わず、子の監護に関する決定が子の最善の利益を考慮し、実務上、完全に履行することを確保するよう勧告があったところです。

 現在、離婚や別居中の子の養育の在り方について法制審において議論がなされているところでありますが、中間試案の進捗具合と今後のスケジュールについてお伺いいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 父母の離婚等に伴う子の養育の在り方につきましては、子の最善の利益を確保する観点から、法制審議会家族法制部会において調査審議が進められております。

 その第二十回会議が昨日に開催されまして、中間試案が取りまとめられたところであります。この取りまとめられた中間試案につきましては、今後、パブリックコメントの手続に付しまして、国民から幅広く意見を募集する予定でございます。そして、このパブリックコメントの結果を踏まえて、法制審議会家族法制部会において更なる調査審議が進められる予定となっております。

漆間委員 離婚に関係なく、親やその他の親族が子供とお互いに会ったり、お互いの情報を得たり、あるいは人的な交流をする権利は、現在の民法で保障されているのでしょうか。お伺いいたします。

金子政府参考人 民法第七百六十六条第一項及び第二項によりますと、父母が離婚をする際には、親子交流に関する事項につき、父母の協議又は家庭裁判所が定めるとされています。この規定は、父母の離婚前で父母が別居しているような状態にあるなど、個別具体的な事案に即して類推適用される場合があるものと承知しています。

 また、親子交流に関する事項について調停や審判等で定められた場合には、家庭裁判所による履行勧告や、一定の要件を満たせば間接強制の方法により履行を強制することができるなど、親子交流の履行を確保するための仕組みも整備されているものと認識しています。

漆間委員 間接強制のお話がございましたが、法務省や厚労省の調査によれば、取決めがあっても履行されないケースが多いということです。

 面会交流が履行されない場合、間接強制によって義務者に心理的圧迫を加え、自発的な履行を促すことが想定されますが、その際、間接強制が認められるための要件は何でしょうか。お伺いいたします。

金子政府参考人 親子交流の不履行に対して間接強制決定が認められるかどうかは、個別具体的な事案に即した裁判所の判断に委ねられるものであり、一概にお答えすることは困難でございます。

 その上で、一般論として申し上げますと、この点につきましては最高裁判所の決定例がございまして、これによりますと、親子交流を命ずる審判において、親子交流の日時又は頻度、各回の親子交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど、監護親がすべき給付の特定に欠けることがないと言える場合には間接強制決定をすることができるとされておりまして、現在の裁判実務上も、基本的にはこの決定を踏まえた運用がされているものと承知しております。

漆間委員 日本の離婚のうち約九割が協議離婚であり、そうした方に離婚後の子の養育について取決めをしてもらうため、民法七百六十六条が改正され、法務省や厚労省あるいは自治体などによって、様々な方法で取決めを促す取組がなされております。そうした取組が功を奏し、公正証書で取決めを交わす当事者も増えてきております。これによって、養育費に関しては受給率も伸びたという自治体もあり、不履行があった場合でも、強制執行や保証事業によって債権を回収できるようになっております。

 一方で、面会交流の場合、間接強制を申し立てる要件を満たす債務名義に公正証書が含まれていないため、不履行が続き、間接強制を申し立てるには再び調停や審判などによって取り決め直さなければならず、それには年単位の時間を要してしまうという問題があります。また、面会交流をしなくてよくなるまで調停の手続が繰り返されるといった問題もあるところです。

 早期に親子の交流が実現できるような制度の見直しをすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げれば、父母の離婚等に伴って父母の一方と子が別居することとなった場合において、適切な形で親子の交流の継続が図られることは子の利益の観点から重要であると認識しております。

 法務省では、離婚後の親子交流の在り方も含めて、法制審議会家族法制部会において調査審議を進めているということは先ほども申し上げたとおりでございます。

 養育費の問題は非常に重要ですが、事はお金の問題であるのに対して、親子交流につきましては、お子さんが実際に同居していない親と会うというその行為の過程に、いろいろな人の協力、例えば一緒に住んでいる人の協力が要るというような問題もございます。

 そこで、例えば、親子交流の取決めをきちんと事前にしましょう、離婚をするに際してはきちんとしましょうとか、あるいは、実際にどういう場合であれば親子交流の実施の有無とか方法を判断するための考慮要素として重要だとか、こういうことをきちんと議論する必要があると思っていまして、この点を含めて今法制審議会で検討しているところでございまして、今後とも、事務局を担う立場から、充実した調査審議が行われるように対応に努めていきたいと考えております。

漆間委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 離婚届と一緒に配付されている「子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」に、子供の養育に関する合意書とその記入例が添付されておりますが、子供の養育に関して、養育費と面会交流以外にも、後の係争にならないよう取決めをした方がよいものや、面会交流の間接強制の要件のように、取り決める際の注意点が多くあると思いますが、法務省として、そのガイドラインのようなものを作成し、現在のものと差し替えて配付すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

金子政府参考人 法務省は、これまでも、今御紹介いただきました養育費及び面会交流に関する合意書のひな形を掲載したパンフレットの作成や、それ以外にも、夫婦が離婚する際に考えておくべき事項をまとめたウェブページの公開などの取組を行ってまいりました。

 このパンフレットでは、間接強制を含め、相手方が親子交流の約束を守らなかったときに取ることができる手続を説明しているほか、法テラス等の相談窓口へのリンクを掲載しておりまして、その内容も随時更新しているところでございます。

 また、ウェブページにおいては、離婚時に取り決めておくべき代表的な事柄として、養育費及び面会交流に加え、財産分与や年金分割等を紹介しているところでございます。

 このパンフレットについて、いろいろ不足がある点もあろうかと思いますが、不断に見直し、更新してまいって、内容の充実に努めていくとともに、この周知活動をしっかり取り組んでいきたいと思っております。

漆間委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 最後に、面会交流、親子交流の在り方について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 父母が離婚した後であっても、父、母のいずれもが親であることに変わりはありません。したがって、一般論としては、父母の離婚後も適切な形で親子交流が実施されることは、子の利益の観点から非常に重要であると認識しています。

 法制審議会家族法制部会では、安全、安心な親子交流の実現も含めて、父母の離婚後の子の養育の在り方等について様々な角度から調査審議が進められておりまして、十一月十五日、昨日ですね、中間試案の取りまとめがされて、今後パブリックコメントの手続に進む予定と承知しています。

 引き続き、法制審議会においては、子の最善の利益を確保するという観点から、充実した調査審議が行われることを期待をしています。

漆間委員 平成二十三年の民法七百六十六条改正の審議の際、面会交流の必要性について、亡くなられた江田元法務大臣が、離婚といえども、父であること、母であること、これは変わらないので、子のためを考えると、やはり、私のお父さんはあそこにいる、私のお母さんはあそこで見てくれている、これは大切なことなので、基本的には、いろいろな個別の事情はあると思うけれども、やはり面会交流というのは子の福祉にとって大切なことだ、これを奪うのはよほどのことがないとやってはいけないことだとおっしゃっており、続けて、家裁調査官が、最後に離婚がきっちり成立する、あるいは調停の場合もあるでしょう、そういうときに、一応そのいろいろな記録を作りますので、これは想定の中には何もないんですが、そうしたものが児相その他にちゃんと引き継がれるというようなこともあるいは考えた方がいいのかなとも答弁されておられました。

 現在は、調停や審判が終わった後のフォローがなく、先ほど申し上げたように、面会交流をなくしてよくなるまで調停の手続が繰り返されるといったこともございます。そうしたことがなくなるように、調査研究も兼ねて、こども家庭庁なりがそのフォロー体制を検討すべきだと思います。

 養育費は自治体が保証したり、あるいはいろいろな手当てでカバーしたりできますが、親や親族との交流は代わりが利かないものであり、過ぎた時間や思い出は取り返すことのできないものであります。親や親族との交流が断たれることのないよう、制度面のみならず、運用面の対応についても早急に改善をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 続きまして、海外サーバーを起点とした一種の治外法権状態を防ぐための国際捜査共助や人権侵害対応等の推進についてお伺いいたします。

 先日も質問させていただきました、海外サーバーを起点としたオンラインカジノなどの賭博、人権侵害、誹謗中傷の書き込み、アダルトビデオ放送などの一種の治外法権状態への対応として、質疑の中で、総務省の方からは、サイトのブロッキング、中国がやっているようなグレートファイアウォールのようなサイトブロッキングは法的には難しい、ですので、国際捜査共助やユーザーへの意識啓発によるアクセスの抑制、プラットフォーム事業者による自主的な取組の促進、国際的な対話、協力を進めていくべきだとの御答弁をいただいているところです。

 しかし、現状としては、インターネット上の、特に、日本では犯罪とされていても海外では犯罪とされていない行為、当時の御答弁にもありましたが、いわゆるインターネット上の双罰性を欠く行為については、例えば、インターネット上ではスポーツベッティングが現状として堂々と放送されたり、大阪府からは人権侵害を防ぐためのサイトブロッキングの要望があったり、AV新法が先般成立いたしましたものの、アンダーグラウンドへの移行で余計に出演者が守られないのではないかという懸念の声も聞かれるといった状況であります。

 これは、現在の取組、国際捜査共助やユーザーへの意識啓発によるアクセスの抑制、プラットフォーム事業者による自主的な取組の促進、国際的な対話、協力など、総務省が言うところの現在の取組が功を成していないことが原因であると思いますが、その中でも、特に、法務省の取組であります双罰性を欠く場合の国際捜査共助やインターネット上の人権侵害対応について、大臣、どう思われているか、御所見をお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 法務省の人権擁護機関におきましては、インターネット上の人権侵害を未然に防ぐため、総務省と協力をして、SNS事業者団体と連携した人権啓発サイトを開設をし、誹謗中傷などを行わないよう呼びかけるとともに、違法な投稿に対するプロバイダー等による自主的な取組を促すための意見交換の場として、実務者検討会を継続的に開催するなどの取組を行っているところであります。

 その上で、インターネット上の人権侵害について相談があった場合には、相談者の意向に応じ、違法性を判断した上で、プロバイダー等に対して投稿の削除要請をするなどを行っているところであります。

 今後とも、こうした取組を通じて、インターネット上での誹謗中傷への対応をしっかりと進めていきたいと思っています。

 双罰性についての御質問につきましては、刑事共助条約の締結により、我が国と相手国との間の刑事共助の一層確実な実施を確保できるということと同時に、両国で中央当局を指定し、中央当局間で直接連絡を行うことによって、共助の実施の効率化及び迅速化を図ることができる。我が国は、これまで、米国、韓国、中国、香港、EU、ロシア及びベトナムとの間で刑事共助条約、協定を締結をしております。

 法務省といたしましては、近年の国際犯罪の増加に伴いまして、捜査、訴追その他の刑事手続に関する国際的な協力の重要性が高まっているということに鑑みまして、外務省等関係省庁と協議しつつ、先ほど述べた国や地域以外の国や地域との間の刑事共助条約等の締結について積極的に検討してまいりたいと考えています。

 また、刑事共助の効率的かつ迅速な実施を図るため、中央当局間でも一層緊密に連絡を取り合ってまいりたいと考えております。

漆間委員 双罰性を欠くものについては、個人的には、人権侵害の書き込みのように、他国に単に法整備がない、遅れているからという理由と別に、例えばスポーツベッティングなど、国の価値観の違いによる理由のものがあると考えられます。特に前者の方については、しっかりと法秩序を日本の方にも守っていただくような取組をよろしくお願いいたします。

 続きまして、児童虐待防止に向けたメッセージ発信における法的なアプローチと非法的な福祉や教育等のアプローチの連携についてお伺いいたします。

 民法改正法案の質疑の中で、懲戒権削除の趣旨は、児童虐待の防止に向けた明確なメッセージを国民に向けて発し、児童虐待の防止を図ることであり、明確なメッセージを国民に向けて発する際には福祉や教育との連携が必要であると私から申し上げたところです。

 本改正法案の参考人質疑においても、久保野参考人より、法的なアプローチと非法的な福祉や教育等のアプローチの連携が重要であるとの御発言がありました。

 本改正法案における法的なアプローチと非法的な特に福祉のアプローチの連携について、法務大臣の見解をお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 委員御指摘のとおり、児童虐待の防止に向けて、関係機関の連携は、私は極めて重要であると認識しています。

 私の地元である千葉県野田市では、平成三十一年一月、当時小学四年生のお子さんが苛烈な虐待を受けた末に亡くなるという大変痛ましい事件が発生をいたしました。

 そのような事情もあり、私自身、児童虐待の問題については人一倍関心を持っているところであります。

 児童虐待の防止をより一層進めていくため、本改正法案の意義、民法改正法案の意義について、厚生労働省等と連携をして、適切かつ十分な周知、広報を行ってまいりたいと考えています。

漆間委員 ありがとうございます、大臣。

 大臣の見解を受けまして、本改正法案における法的なアプローチと非法的な福祉のアプローチとの連携について、特に法務省の方から、認識や具体的な方向性をお伺いいたしたいと思います。

金子政府参考人 本改正法案における懲戒権に関する規定等の見直しが、懲戒権を児童虐待の口実とする親権者が存在する旨の児童相談所の関係者からの指摘等を踏まえたものであり、また、本改正法案においては、民法のみならず、児童虐待防止法等におきましても、人格の尊重、年齢や発達の程度への配慮、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動の禁止が規定されたということに鑑み、本改正法案の意義について、児童やその親権者に直接対応する児童相談所等の児童福祉の現場に周知すること、これが極めて重要であり、福祉との連携の一歩ではないかと考えております。

 この児童相談所への周知につきましては、先ほども申し上げたような連携の重要性を踏まえて、法務省としましても、厚生労働省と連携しながら、今後具体的な方策を考えていきたいと思っております。

漆間委員 以上で質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 これから、法務大臣として、齋藤大臣の御活躍を御祈念申し上げたいと思います。

 先日、昨日ですか、おとといになるのか、大臣の所信をお聞かせいただいたんですが、約一か月前に葉梨大臣が発言されたこととほとんど変わらないなというふうに感じた一人であります。

 それで、組織というのはやはり継続性が大事だ、おっしゃられるとおりだと思いますし、組織は組織の目的が、法務省は法務省の目的があるんだと思うんですけれども、そこで働いている人間はやはり人でありますから、ファイトを持ってやる、日々やっているとは思うんですけれども、より一層、この人の下で働いてみたいというふうにして初めてモチベーションが上がるんじゃないか。

 様々な制度を駆使して、この間も給与法の改正とか、いろいろ、処遇の改善等、働き方改革もやるんですけれども、そうはいいながらも、自分の上司になる人の心意気だったり考え方を示すことがやはり大事なことなんだと思うんです。

 それで、最初にお尋ねしたいのは、齋藤大臣の法務行政に対する取組と、前大臣との、もしここが違うんだというのがあったら、お聞かせいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 葉梨前大臣の所信と余り差がないというお話がありましたけれども、委員御指摘のように、あの所信からまだ間がなくて、法務行政における施策に今大きな変更がないということを考えますと、臨時国会の期間中の交代でもありますものですから、法務行政の継続性を重視するということから私の所信は構成されているということであります。

 法務省につきまして、私は、国民の生活の基盤をつくるような重要な法行政を行っている役所だと思っております。そういう意味では、国民の生命とかに直結する法制度をやっているわけですから、国民の信頼を失ってはいけない、そういう役所だと思っております。

 私のリーダーシップにつきましては、生意気なことを申し上げるつもりはありませんが、職員と一体となって必死に汗をかいていきたいなという気持ちだけは強く持っておりますので、それが伝わったらいいなというふうに思っております。

鈴木(義)委員 私もなるべく我慢、我慢と思ってやっているんですけれども、余りしつこく言われると、かっとするときがあるんですね。自分がかっとしたこと自体は、後からそれを思い返すだけの話で、その瞬間は分からないんですよね。それをどこまで自制できるかというのが、トップに立つ者の一つの役目というんですかね、役割としてやらざるを得ないのかなというふうに思います。

 過去に、もう七年か八年ぐらい前に、国会の各連絡室を介して、今ある法律が生きているのか生きていないのか、例えば、予算化しているとか、刑法であれば刑罰を与えているとか、そういうことが行われているのか。

 調べていきましたら、当時で、法律自体で二千、まあ、憲法を入れれば二千を超えているんですけれども、毎年毎年、国会で審議される閣法と議法で、大体、法律の改正と新法を入れて八十本から百本の法律が制定されていきます。毎年毎年ですね。

 でも、私たちは、その二千の法律が全部頭の中に入っていなくても生活はできちゃうし、仕事ができちゃうんです。仕事の中でも、許認可権を得なければ仕事ができないような事業者の場合は、自分の所管せざるを得ない法律は熟知していないと法律違反になってしまうんですけれども、どんどんどんどん、毎年毎年いろいろな法律ができていくんです。周知徹底はします。啓蒙啓発もします。でも、それが、国民が全部のみ込めているのかどうかというのが、私は、今が一番過渡期に来ているのかなというふうに思います。

 ネットでいろいろな情報を取れる時代ですから、じゃ、それを取り締まる警察官の人が、あなたは何々法の何条の違反ですからといって取り締まれているのかといったら、過去に警察官の方から相談したいんだという案件が幾つかありましたけれども、マニアックなところに関しては警察の方も全部は分からないですよ。

 それが今の日本社会にあるし、前任の方が御質問されたときに、学校教育の中でもきちっと法務行政を教えていった方がいいというんですが、例えば小学校の先生が、高学年、低学年は別にして、物を取っちゃいけないと言ったときに、刑法の窃盗罪だから取っちゃいけないと子供に教える先生が大半なんだそうです。でも、実際は、人の物を取っちゃいけないということは、自分の物も取られると嫌な思いがするだろうということで、あくまでもそれはしないようにしようという。だから、何とかの法律があるから、そこに抵触しているから、やる、やらないじゃなくて、人間として、どうこの社会の中で関わっていく、生きていく上で、これはお互い嫌だよねといったことはしないようにしましょうと。

 それを、法律を作ったからそれでいいのかといったら、例えば、埼玉県だって、空き缶のポイ捨て条例というのを、早く、全国に先駆けて都道府県で作りました。私の地元の三郷市も、それよりも前に空き缶のポイ捨て条例ができました。罰金も三万円です。いまだに空き缶のポイ捨てはなくならない。取り締まっている人を見たことがない。そのときだけなんです。

 それではやはり実効性が伴わないんじゃないかということの問題意識について、もしコメントいただければ、大臣として、いただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 環境の変化に応じて、新法を作ったり、法改正をしたりしていくということは当然やっていかなくてはいけないことだと思いますけれども、作った以上は、きちんとした施行というものをやっていくことは言うまでもないことでありますので、一つ一つ、条例については、私はどういう施行状況になっているか分かりませんが、作った以上はしっかりと施行し、運用していくということが当然のことじゃないかと考えています。

鈴木(義)委員 是非、法務省の大臣として、各省庁に、今私が申し上げたような、実際に生きている法律ならいいけれども、廃止法案を出さなければ法律はそのまま生きちゃっているわけじゃないですか。でも、誰も使っていない。

 そういうものが幾つあるのか調べたくてお願いしたら、分からないと。自分の担当課は分かるけれども、隣の課は分からない。隣の部はもっと分からないし、局はもっと分からない。隣の省庁は、じゃ、誰が分かっているんですか、誰も分からない。でも、世の中は回っていくんです。

 私は、もう少し法律の体系というのはすっきりした方が、国民にも理解してもらいやすいんじゃないかなと。是非御努力をお願いしたいと思います。

 また、大臣は、所信において、国民が日々、安全に、そして安心に暮らすためには、その基盤である法秩序が揺るぎなく維持され、国民の権利がしっかりと保全されなければならないと国民の権利の重要性を述べていらっしゃるんですけれども、確かに、権利の重要性は分かります。

 私だけですかね、最近、義務という言葉が、余り聞かなくなったなと思うんです。権利の裏返しはやはり義務というのがあったと思うんですけれども、この権利に対する義務について大臣はどうお考えになるか、お尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 権利は権利、義務は義務でそれぞれ存在していると思いますが、権利に対応する義務というのがちょっと具体的に何を指すのか、必ずしも明らかではないので、法務大臣としてこの場で答弁するのはなかなか難しいなと思っているんですけれども、ただ、あくまで一般論として申し上げれば、ある権利を主張する者はある義務を果たさなければならないというような大きな観点から御議論があり得ることは理解できるところでありますが、この点については、ケースによっていろいろな考え方があろうかと思われます。

 私は、権利があろうとなかろうと、義務は義務でしっかり果たしていかなくちゃいけないんじゃないかなというふうには思っています。

鈴木(義)委員 例えば、分かりやすい言葉で言うと、義務教育って誰に義務があるんですかといったら、親に一義的には義務が生じるんですよね。それがいつの間にか、学校に義務があるような言い方をしたり、国にその責任があるような言い方をするんだけれども、やはり、親が自分の子をきちっと教育するというのが一義的な考え方じゃないか。是非それも議論の中でお考えいただけたらありがたいなと思います。

 三番目。経済活動の国際化を支える環境整備のうち、対日投資の促進が重要と述べていらっしゃるんですね。問題の本質というより、この九年、十年振り返ってみて、投資を呼び込む国にするんだというふうになったときに、果たして、投資を呼び込むのはよかったんですけれども、私たち日本人が働いて得た富を、海外にどのぐらい出ていっちゃっているのかというのも把握しなくちゃいけないんじゃないかということです。

 昔、これも八年ぐらい前に麻生財務大臣にお尋ねしたんですが、例えば、株の取引で、株を持つということはその会社に投資をするということです。本来であれば、投資をして配当金をもらうということでリターンがある。それが本来の資本主義社会にもかかわらず、今は、その日、売ったり買ったりしただけで、さやを取る。ですから、それを悪いと言っているわけじゃないんですね、いろいろな金融商品を開発して今日まで来ているんですから。でも、バブルを経験した日本は、土地に対して、高騰したから総量規制をかけてバブルをはじかせたわけです。

 これは日本ばかりじゃなくて、アメリカでもヨーロッパでもどこの国でも、大体バブルが起きる元の材料というのは、大体土地絡みが多い。だから、リーマン・ショックも土地に関わるものでしたよね。それを金融商品化して、最後は信用不信になってそれが売られて、世界経済が混乱したわけです。日本も大きな影響があったと思うんです。

 その教訓があるから、五年以内に土地を売ったときに利益が出れば高額な税金を納めてもらう、五年を超えたものに関しては長期譲渡という形でタックスを低くする。それと同じようなことを株なり金融商品にできないだろうかという提案をしたら、日本だけじゃできないというんですね。

 じゃ、今東証の株の七割は外国人投資家の方がお持ちなんです。結果的に、六割ぐらいだったのが今七割。日本で一生懸命働いて、知恵を出して、いろいろな働く環境はありますけれども、そこで生み出された利益の七割が、単純に言えば外国に行ってしまう。これをこれからもずっと促進することで日本に富が残るかということなんです。

 その点について、ちょっと、経産省と違うので、法務大臣だから、まあ、こういう所感を述べられているからお尋ねするだけなんです。経産省のお仕事も長くされていたと思うので、御所見をいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 日本経済の成長のためには、私は、海外から豊富な資金などを我が国に呼び込む対日投資という施策を推進することは重要であると考えておりまして、具体的に、いろいろ思うところはここまで出かかっているんですが、私の所管ではありませんので。ただ、委員の御指摘には傾聴すべき点があるとは考えています。

 法務省としては、国際商取引に関する国際ルールの形成への貢献を始め、所管事項についての取組、これを着実に実施することで、対日直接投資の促進に貢献をしたいというふうに考えています。

 いずれにしても、様々な問題意識があろうかと思いますので、しっかり耳を傾けつつ、必要な政策を進めてまいりたいと考えています。

鈴木(義)委員 先日、日銀だったですかね、発表されて、ちょうど私が衆議院議員にお世話になった九年ぐらい前のときの個人金融資産というのが一千四百兆、今二千兆円を超えたというわけですね。それに基づいて、たしか去年だったと思いますが、岸田総理が、所得倍増、途中から言い直して、資産倍増という言葉に。現預金が一千兆円、株式が三百兆だったと思います。有価証券が四百兆ぐらいだったかな。それでトータル二千兆あるうち、だから、この一千兆円をもっと投資に向けてくれないかという思いだというふうなコメントだったように記憶しているんですが。

 だから、今申し上げたように、かの中国が世界中から投資を呼び込んだ時期がありました。でも、そこで、どんどんどんどん物を作って、日本にも含めて、いろいろな国に売ったんです。そこで利益があったときに何をやったかといったら、お金を持ち出すのは駄目ですと言ったんです。自分のところでどんどんどんどん富を蓄積していって、今、二大、三大大国というふうに言われたんです。

 隣の国はやっているんですよ。なぜ日本だけが行儀よく、対日投資を促進すればみんな豊かになるのか。知らないうちに全部富が外に出ちゃっている。それはちょっと考え方を、まあ、所信で述べていなければ私はここでお尋ねすることじゃないんですけれども、そういうつもりでお尋ねしました。

 では、もう一点。共生社会の実現のうち、外国人との共生社会の実現において、大臣は日本国民に向けて発信されているかなと文脈を見ると思われるんですけれども、やはり、私たちもそうなんですが、受け入れる日本人のみならず、来日する外国の方にも、日本社会というのはどういう社会なのか。

 日本は、やはり、空気を読むのがいいか悪いか分かりません、あとは社会規範みたいなのがあって、先ほど申し上げたように、法律にはなっていないんだけれども、隣近所のつき合いだとか村のつき合いだとかという中で、PTAもあるでしょうし、いろいろな団体もあるでしょう、そういった中で秩序が形成されているという国なんだと私は思っているんですね。

 だから、日本社会に来て、働くとか、そこで暮らすとなったときに、やはり、そういうことも理解してもらうような、お願いというんですかね、努力もしてもらった方が、私はもっと共生社会に近づくんじゃないかと思うんですけれども、その辺の取組をお示しいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 委員御指摘のように、共生社会実現のためには、受け入れる日本人のみならず、来日外国人の理解も不可欠であると考えています。

 本年六月に決定されたロードマップにおいては、全ての人が安全に安心して暮らすことができる社会、全ての人が社会に参加し、能力を最大限に発揮できる、多様性に富んだ活力ある社会、全ての人がお互いに個人の尊厳と人権を尊重し、差別や偏見なく暮らすことができる社会を目指していくこととしております。

 このような外国人との共生社会を実現するためには、外国人を含む全ての人が、多様性を尊重し、共に社会をつくっていくことの意義を理解することが重要ですので、このことは日本人、外国人問わずということだろうと思っています。

 法務省におきましては、ロードマップなどの政府における取組について、来日前を含む外国人への多言語での広報、周知の準備ですとか、共生社会実現に向けた意識の醸成、理解を促進していくための、外国人との共生に係る啓発月間というものの創設ができないかという検討を今行っているところであります。

鈴木(義)委員 例えば、先ほど例示で申し上げた空き缶のポイ捨てみたいなものは、日本人はよしとしないわけですね。お互い汚すのはやめよう、きれいな社会、町、村も含めて、そういったところで暮らしていきたいというのがあるから条例化していくんですけれども、そういうのがなかなか、自分の母国で経験がない人に教えるというのは、これは至難の業だと思うんです。

 私たちの社会はそれを価値としているんだというのを、私は幾つもの外国に出たことはありませんけれども、ある国に行ったら、私、年なんですけれども、海パンとゴーグルを持って海で泳ぎたいと言ったら、やめた方がいいと案内してくれた日本人の人に言われたんです。朝起きたら、遠浅の、潮がずっと引けていた。ヘドロが一メーター以上たまっているんだそうです。きれいな観光地ですよ。

 その後、じゃ、朝飯食べに行こうということで、地元の人がやっている、地元の食堂みたいなところへ行って食べましたけれども、そこでいろいろなものを洗って、側溝からそのまま、川から海に流している。これはもうちょっと環境にお金を使ってもらえればもっと外国の人が来てくれるんだろうなと思いながら、そういう価値観がない、そこのところを申し上げたいんです。区別だ、差別だとか、そういうつもりで言っているわけじゃないんです。

 でも、やはり、日本に来たいというのはどういうことなのかというのは、目的があるはずなんですね。そこのところを、是非、今後も鋭意努力していただけたらと思います。

 もう一つ、これも所信に書いてあったんですけれども、オウム真理教の事件があって、団体規制法に基づく観察処分の適正かつ厳格な実施等を通じて公共の安全確保に努めているというふうに述べられているんですね。

 私の選挙区の地元でも、オウムの残党がつくっている団体の施設が二か所ぐらいある。四月に、公安調査庁から、具体的にどういう対応をされているのかというのを聞き取りをさせていただきました。

 今回問題になっている統一教会や霊感商法で世間をお騒がせしている団体等が、被害が大きいだろうと、小さい、大きいというのはいいか分かりませんけれども、物理的に公安調査庁の人数というのは決まっているでしょうから、こういった団体を公安調査庁の観察対象になっているのかどうか、お尋ねしたいと思います。

田野尻政府参考人 公安調査庁の調査対象についてお尋ねをいただいたところでございます。

 ただ、特定の団体について調査をしておるかどうかを明らかにすることは、今後の業務遂行に支障を来すおそれがありますので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

鈴木(義)委員 今日の議論を聞いていても、総合的に判断するとか、基準を設けられないというような仕事に従事している職種の方もいらっしゃると思うんですけれども、なかなか、政治の立場からいえば、説明責任といったときに、やはり、それに応えるような形を、形は変えたとしても出していかなければ、じゃ、予算が足らないから対象が増やせられないのか。

 先ほど申し上げませんでしたけれども、北朝鮮の拉致の関係も、所信の中に書いてあるんですからね、私が勝手に作ったんじゃなくて、所信の中に書いてあることを対応しているんですよねということなんだから、そこのところを、じゃ、予算を増やしてほしい、いや、こんなたくさん要らないよ、もっと出さなくちゃいけないよという、その根拠になるものがないと、やはり認める、認めないというジャッジができないんじゃないかと思うんですけれども、その辺はどうでしょう。もう一回だけお尋ねしたいんですけれども。

田野尻政府参考人 改めてのお尋ねでございますが、具体的にどのような場合に公安調査庁において調査を行うか、これについてお答えすることは差し控えたいと存じますが、公安調査庁は、無差別大量殺人行為を含む暴力主義的破壊活動を行うおそれのある団体につきまして、当該団体の組織及び活動並びに当該団体の活動に影響を与える内外の諸動向につきまして、鋭意調査に努めているところでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 じゃ、次の質問で、三年前の法務委員会で質疑があった会社法についてお尋ねいたします。

 先般の通常国会で、私どもの党も賃金を上げるというのが一つの命題だったわけであります。この法務委員会でも、検察官また裁判官、それとあと一般の行政職の方も、期末・勤勉手当の、勤勉手当というのかな、そこのところが〇・〇五か月上がった。それも、人勧によって、民間の賃金なりボーナスが上がったり下がったりしたのに連動して、人事院勧告で出してくるわけですから。

 じゃ、民間の企業が上がらなくちゃしようがないだろうと、先ほどもお尋ねしたところに結局絡んでくるんですけれども、株式を保有している外国人の比率が、東証の株主の約七割が外国人投資家だと聞きます。国内では賃金が上がらず、非正規労働者が四割と、幾ら汗を額にしても実入りが増えていない。これが、賃金が上がらない、実質賃金が三十年間上がらないところにずっと、過去にはいろいろな、経営破綻したことに端を発していたりしているんですけれども、一方で、外国人投資家の七割があるとすれば、先ほども申し上げましたように、七割の日本で得られた利益を海外に出していっちゃっているんじゃないかということなんです。

 それに付随して、会社を規律する会社法は、国内における経済の状況を踏まえた、それで三年前に会社法が改正になったんだと思うんですけれども、このままで、日本の経済の衰退の一因になっているんじゃないかと言われている会社法を改正しないでうまくいくのかということなんですが、その辺のもしお考えがあれば。政務三役もせっかくお越しいただいているので、副大臣でも政務官でもお答えできれば。

 大臣の所信なんですけれども、副大臣、サポートするって、政務官もサポートするって、葉梨大臣のときはおっしゃったんですけれども、齋藤大臣のときにはおっしゃっていない。

 じゃ、齋藤大臣、答えてくれますか。

齋藤(健)国務大臣 まず、外国人等の株式保有の話がありましたけれども、外国人や外国法人などの株式保有比率は、委員がおっしゃるように、中長期的に見て増加傾向にあると認識しています。株主に配当などがされることによりまして、国内企業の利益の一部を株主である外国人等が取得することになるということは、御指摘のとおりだと思っています。

 他方で、外国人などが国内企業の株式を保有することは、外国資本が我が国の資本市場に投資を進めているということでもあり、このことによりまして、企業活動が活性化をしたり、企業価値の向上につながるということも期待できる面があります。そのため、株主構成の変化については、その当否を、いいとか悪いとか、私は一概に述べることは困難であると思っております。

 会社法の御指摘がありました。

 今申し上げたように、当否を一概に述べることは困難でありますが、御指摘の会社法については、令和元年十二月に改正されて、令和四年九月にその全てが施行されたところであります。

 この改正は、株主総会の運営や取締役の職務の執行の一層の適正化等につながるものであり、中長期的な企業価値の向上に資するコーポレートガバナンスを前進させるための基盤を整備するものであったと認識しています。

 このようなコーポレートガバナンスの強化に向けた取組は今後も継続して行っていく必要があるものと考えておりまして、改正会社法を踏まえた実務の動向等を注視しながら、関係団体、関係省庁とも連携し、企業価値の向上に資するあるべきコーポレートガバナンスについては検討を続けてまいりたいと考えています。

鈴木(義)委員 経産行政に長くいらっしゃった方でなければお尋ねすることではないんですけれども。

 例えば、資本金十億円以上の企業を見ると、この二十年で経常利益は三倍になったと言われています。従業員の平均給与も設備投資も微減、売上高はほぼ横ばいである。そして、配当は六倍になったと言われているんです。つまり、従業員の給与や設備投資を減らして利益を出して、更に配当に回しているということを如実に物語っているんじゃないかということなんです。

 だから、しつこいように言っているように、外国から投資を呼び込むのはいいんです。でも、前段で申し上げた、個人金融資産が二千兆円もある国ですよ。わざわざ外国からそんな呼び込む必要はなくて、それを国内の中でうまく使える仕組みをつくればいいだけの話じゃないですか。

 それと、時間がないので、もう一つだけお尋ねします。

 岸田総理は、今年の初めに新しい資本主義を打ち出し、配当を優先する過度な株主資本主義を是正し、従業員や取引先など幅広いステークホルダーに目を向けた経営をすべきだという考え方を示されたんです。この点について、会社法を所管する法務大臣として、もしお考えがあれば。役所の方でも、お答えいただく人がいれば。

金子政府参考人 新しい資本主義という考え方の下で、株式会社が、株主のほか、従業員とか顧客、取引先、それから場合によっては地域社会、こういった多様なステークホルダーに配慮すべきということは、現行法の下でも非常に重要なことだと認識しております。

 もっとも、株式会社が自律的な存在であることに鑑みれば、自らの経営判断により持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現し、結果として、従業員その他、先ほど述べたようなステークホルダーの利益にもつながるような、そういう存在となるということが望ましいものと考えています。

 もっとも、中長期的な企業価値の向上に資するコーポレートガバナンスの強化に向けた取組は今後も継続して行っていく必要があると考えております。改正会社法を踏まえた実務の動向等を踏まえながら、関係団体、関係省庁とも連携し、企業価値の向上に資するあるべきコーポレートガバナンスについて検討を続けてまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 ここは経産委員会じゃないので、これ以上は御質問することはないんですけれども、ここのところ立て続けにアメリカの大手IT企業は、経営者が大手さんを買収して、自分が大株主になったら取締役を全部解雇して、自分が社長でいたら、その後、矢継ぎ早に一万一千人を解雇する。アマ何とかという会社も一万人解雇する。結局、もう成長の伸びが見込めなくなってきたから、縮小しながら利益を出そうというふうに。それを価値としている国と、日本はそれができる国じゃない。それを同列に議論する必要は私はないと思うんです。日本は日本のいいところで、家族経営的なことがいいか悪いかはあります。でも、それで今日の繁栄を築いてきたのであれば、もう一回、日本のいいところを見て、やはり制度をつくり直すのが大事なんだと思うんですけれども、大臣のお考えを最後にお聞かせいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 方向としては、私は鈴木委員と同じ考えを持っていまして、それぞれの国の慣習なり、それが力点の置き方によって資本主義の在り方はいろいろあろうかなと思っておりますので、我が国は我が国の国益が最大化されるような資本主義の在り方を追求をしていくべきだろうと思っています。

鈴木(義)委員 改正をしたときに、今まで経産委員会にも私は所属しているものですから、かぶったような質問になっちゃうんですけれども、前提がずるずるでやってきました、下請の関係も含めて。ほとんど契約書を交わしていない。事が起こるとどうするという話になるんですけれども、古い商慣習の中でよくないところはやはり直させるし、いいところは残していくし、そういう形での改正をしていかないと、みんな中小零細、個人も含めて、やはりどんどんどんどんへたるだけだと思うんです。

 その利益が、しつこく言うようですけれども、七割外に出されてしまったのでは、次の事業展開、次の人材育成につながっていかない。是非お考えいただいて、今後やっていただきたいと思います。

 終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず最初に、前大臣の、とりわけ死刑についての発言について、大臣の御所見を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、葉梨前大臣の発言については、葉梨前大臣自身が説明責任を果たすべきものだと認識していますので、私がコメントをすることは差し控えますが、私自身については、自分が果たさなければならない職責に影響が出るような発言は厳に慎まなければならないと考えています。

本村委員 死刑に関しましては、誤判によって罪のない人が死刑と判決を受け、真実が闇に葬り去られるという問題や、真犯人が分からなくなってしまうという問題もございます。そして、私は、国家が人をあやめるということを容認することはできません。引き続き、この問題、再審法の改正等含めて議論をしていきたいというふうに思っております。

 別のテーマに移りますけれども、法務大臣というのは、統一協会の被害者の方の救済と被害の根絶、先頭に立っていただかなければいけない大臣でございます。

 そこで、先ほども議論がありましたけれども、改めて、統一協会、統一協会関係団体と推薦確認書や別の政策での類似の確認書を交わしたことがあるかどうか。また、自民党への自己申告、報道などで明らかな、御自身が把握していること、公になっている関係以外に、統一協会、統一協会関係団体との関係はほかにないかという点、伺いたいというふうに思います。また、なぜ関係を断ち切らなければいけないのかという点も是非御答弁いただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、旧統一教会又はその関連団体との間で推薦の確認書ですとかあるいは別の政策での類似確認書みたいなもの、こういうものを交わしたことはございません。

 それから、大事な話なのでしっかりとお話ししたいと思いますが、自民党の調査が始まる以前の八月四日の段階で、私のホームページで、多くの方々からお問合せがあることもあって、これまで調べた範囲内で至急報告をいたしますということで報告をいたしておる内容を御紹介したいと思います。

 十六年にわたる政治活動において、私が、挨拶や演説、ビラや個別の面会において、同連合やその関係団体について言及したことは一切ありません。

 また、政治資金収支報告書を含む関係資料を確認したところ、寄附を受けたり、会費を払ったりしたこともありません。

 同連合やその関係団体の会合への参加につきましては、私自身はありませんでしたが、秘書が認識をせずに一度だけ関係団体の会合に顔を出したことがあるということが判明をしました。

 そのほか、選挙での応援につきましては、同連合やその関係団体から組織として支援を受けたことは一切ありません。これまで十六年間で、数百人の方々にビラ配りや集会などのお手伝いをしていただいておりますが、その中にお一人御関係の方がおられ、個人としてお手伝いいただいたのではないかということが分かりました。なお、事務所のスタッフとしてお手伝いいただいたことはありません。

 以上、これまでに分かった範囲で御報告をいたしました。短時間で調べた限りですので、漏れがある可能性もございますが、早く報告をした方がよいと判断し、御報告させていただきました。

 この判断に現状においても変更はないということを御答弁させていただきたいと思います。

 統一教会との関係については、法務省として、被害者に寄り添って、しっかりした対応をしていきたいというふうに考えております。

本村委員 なぜ関係を断ち切らなければいけないと考えているかの点を是非お伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 旧統一教会につきましては、悪質商法に関する問題、親族の入信に起因する家族の困窮等の問題等、様々な問題が指摘されていると承知をしております。このような状況を踏まえ、社会的に問題が指摘されている団体だというふうに認識をしています。

 こういった社会的に問題が指摘されている団体との関係は、国民に疑念を抱かせるものであり、国民の政治に対する信頼を傷つけるものと認識しております。また、そのような団体との関係性によっては、当該団体の活動を箔づけすることになりかねないという指摘もあり得るところでございます。こういったことから、関係を断つべきだろうというふうに考えております。

本村委員 統一協会との関係を断ち切り、被害者の救済、そして、被害の根絶を本気になって進めていただきたいということを強く求めておきたいというふうに思います。

 次に、子供の人権について質問をさせていただきます。

 今、政治の下で犠牲になっているのは子供たちであるということを私は痛感しております。

 子供の貧困は約七人に一人。そして、全国の児童相談所が相談を受けて対応した児童虐待の件数は二十万七千六百五十九件。不登校の小中学生の人数は二十四万四千九百四十人。そして、いじめの認知件数は六十一万五千三百五十一件です。

 小中高生で、自ら命を絶つ子供たちも相次いでおります。二〇二〇年一年間で四百九十九人、二〇二一年四百七十三人ということで、毎日、どこかで、自ら命を絶っている子供たちがいるということを私たちは認識しなければいけないというふうに思っております。ユニセフの子供の精神的幸福度、三十八か国中、日本は三十七位、下から二番目となっております。これは私は政治の失敗だというふうに思っております。

 法務省は、子どもの人権一一〇番など、子供の権利を守る行政を担っておりますけれども、子どもの人権一一〇番にはどんな声があり、どういう対応をしているのか、見解を伺いたいと思います。

 そして、今、対策を強化しなければいけないということを思いますけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 子供に関する人権問題は重要な人権課題の一つでありまして、法務省の人権擁護機関では、子供が相談しやすい体制づくりのために、様々な取組を行っております。その一つとして、御指摘のフリーダイヤルの専用相談電話、子どもの人権一一〇番を設けており、相談を受け付けています。

 内容ですが、子どもの人権一一〇番には、いじめ、虐待等の様々な相談が寄せられているところ、例えば、いじめに関する相談については、相談内容に応じた助言を行うほか、相談者の意向に応じて学校等との関係を調整することや、学校がいじめを把握していない場合は、学校と連携して更なるいじめの防止を図るなどの調査救済活動を実施し、被害の救済に取り組んでいます。

 法務省の人権擁護機関においては、このような相談対応や調査救済活動を充実強化して、関係省庁と連携しながら、実効性のある人権救済、子供の救済にしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。

本村委員 個別の相談を集めて、やはり子供さんの命や人権を守るために何が必要なのかという点を法務省から政策提言、発信していただきたいということも切にお願いを申し上げたいというふうに思います。

 具体的な事例でお話をさせていただきたいと思うんですけれども、十一月七日、名古屋市内に住む十五歳の女性が児童相談所の窓から転落し、翌日、十一月八日、お亡くなりになりました。心から哀悼の意を申し上げたいと思います。

 名古屋市にも聞き取りに行きましたけれども、今年三月から九月に児童相談所で一時保護をされ、その後施設に入所をし、そして十一月三日、施設を退所ということになり、自宅に帰されました。そしてその翌日、十一月四日、家出をし、そして十一月七日、保護に至り、警察とともに児童相談所に来た九分後には、三階から転落をし、お亡くなりになりました。

 子供の家庭の環境や子供への支援はどうだったのか、家庭、保護者への支援はどうだったのか、精神的、心理的を含む児童虐待の有無や、学校での様子、一時保護所の状況や体制、施設での状況や体制、施設から自宅に帰すことの判断、そして児童相談所の在り方、警察の対応など、第三者委員会をつくって、周りの子供たちの声も聞き、総合的に十分に検証し、国として二度とこうしたことを起こさせない、総合的に再発防止策をつくるべきだと考えますけれども、今日は厚生労働省から副大臣に来ていただきました。是非御答弁をお願いしたいと思います。

伊佐副大臣 名古屋市の児童相談所の窓から一時保護した子供が転落してお亡くなりになったということ、心からお悔やみを申し上げたいというふうに思っております。

 本来、子供の安全が確保されるべき児童相談所で起こったという痛ましい事案でありました。再発防止を図ることは重要だというふうに考えております。

 今、厚労省としましては、現在、名古屋市で、先ほど本村委員がおっしゃっていただいたような様々な要因も含めて、今回の事案に関する第三者も含めた検証を実施するというふうに伺っておりまして、厚労省としては、この検証の動向を注視して、この結果を踏まえまして必要な対応を検討していきたいというふうに思っております。

本村委員 ありがとうございます。

 早急に、今やらなければいけない、今できることをすぐにやらないといけないというふうに思っております。

 家に居場所がない若年女性を始め、若者に寄り添う支援体制を公でつくる必要があるというふうに思います。

 厚生労働省は既に若年女性の支援事業をやっておりますけれども、東京では民間団体の皆様が非常に献身的な取組をやっておられます。今回の痛ましいこの事件を受けて、もし名古屋に、愛知にColaboさんのような取組があれば救えたかもしれないというふうに私は思いました。

 本来、公がやらなければならないところまで、民間の心ある方々が若年女性に寄り添った取組をやってくださっております。厚生労働省としても横展開をしたい、全国展開したいということをいつも言われるわけなんですけれども、いつも、では愛知に、名古屋にというお話をしますと、受皿がない、受皿がないというお話で終わってしまうわけです。いつまでも受皿がない、受皿がないといって全国での支援体制の構築が先延ばしされるということが、もう許されない段階だというふうに思っております。

 女性支援法も作られておりますけれども、施行が二〇二四年の四月ということで、私は遅過ぎるというふうに思っております。やはり、名古屋市でのこの子供さんの死があり、もう待てない状況だというふうに思います。

 とても重要な活動をされておられます民間団体の皆さんから学びながら、早急に行政で若年女性支援のそうした受皿をつくってください。そして、その上で、きめ細かな多様な支援をするためにも、公プラスきめ細かな支援をするために、民間団体の皆様の力が必要だというふうに思っております。やはりそこに対しても、民間団体に対しても国の支援を強めていかなければいけないということも思っております。

 国で責任を持って、公でシェルターなどの居場所の確保や、アウトリーチ、カウンセリングの強化、就労支援、金銭給付などを行うことが必要だ、これは現場から求められております。是非やっていただきたいというふうに思いますし、名古屋市からお話を伺ったところ、特に年齢の高い保護が必要な子供たちが暮らす居場所がないという問題も伺っております。

 早急に国として、居場所の、住まいの確保も対策を打つべきだというふうに考えますけれども、是非御答弁をお願いしたいと思います。

伊佐副大臣 女性の抱える問題、現在、本当に多様化もしております。また、複雑化もしております。こういう中で、それぞれの背景あるいは心身の状況に応じて、適切な支援というのを包括的に受けられるような体制整備というのは重要だというふうに考えております。

 これまでの取組に加えて、今回、来年度の取組として更に充実また強化していきたいという事項が幾つかございまして、例えば、五年度の概算要求で、先ほど本村委員がおっしゃっていただいたような、今頑張っていただいている民間団体、アウトリーチをやっていただいているとか居場所の確保をやっていただいている、こういうところをしっかりと支えていく、支援をしていくというような予算でありますとか、あるいは、心理療法担当の職員を例えば婦人保護施設に配置した場合にはしっかりと加算をしていく取組でありますとか、あるいは、就労支援を含む自立支援、例えばDVシェルターで就労支援を行った場合には国庫補助していく、また、婦人保護施設入所者に対する生活費の支援というものも盛り込ませていただいております。

 さらに、今現在、先ほど言及いただいた本年五月に成立しました困難女性支援新法というものを踏まえまして、更にこの全国の体制整備をどう強化していくかという議論につきまして、その具体的な在り方について、つい今月、有識者による検討の場を立ち上げさせていただきました。ただいま議論を進めておりまして、今、二〇二四年四月の施行では何か、まだ時間が大分あるんじゃないかというようにおっしゃっていただきましたが、これも今年中に国の指針をまず示していきたいというふうに思っております。

 引き続き、困難な問題を抱える女性に寄り添った支援体制、自治体、関係者の皆さんと連携しながら取り組んでまいりたいというふうに思っております。

本村委員 名古屋市からの聞き取りでは、夜二十二時十分、宿直体制のときに、警察とその亡くなられた十五歳の女性が到着をした。二十二時十二分、トイレに行きたいと言われたそうです。男性の職員の方がそのときに担当されたそうなんですけれども、女性のトイレの中に入ることはできないと、ずっと出てこないですけれども、待っていたそうです。でも、出てこないので、残業していた女性の職員の方を呼んで確認してもらったところ、転落をしていたということでございました。

 児童相談所の職員体制を抜本的に増員し、そして、宿直体制でも女性トイレの対応は女性職員ができるようにするなど、きめ細かく対応できるようにしなければいけないというふうに思っております。

 名古屋市の児童福祉司の一人当たりの担当している子供さんの数は、四十二・四人というふうになっております。国が四十人ということを目標としているというふうに思いますけれども、それに近いものではありますけれども、しかし、夜二十二時まで残業しているという実態がございます。

 名古屋市の状況を見てみれば、やはり四十人でも多いというふうに私は思っております。もっと担当の子供さんの数を減らすためにも、児童福祉司、児童心理司、児童相談所の職員の方を正規で、会計年度任用職員も多いというふうに伺っておりますけれども、正規で抜本的に増やすことが必要だというふうに考えますけれども、厚生労働副大臣、お願いしたいと思います。

伊佐副大臣 先ほど、困難女性支援新法の国の指針、私、今年中と言ったようでありますが、今年度中、度でございます。失礼いたしました。

 また、今御質問いただきました児相の体制整備につきまして、これは急を要する事案もいろいろ対応していただいておりまして、こういうものに対ししっかりと対応できるような、夜間、休日を含めて適切に対応できる体制確保をお願いしているところでございます。

 その中で、先ほど、正規のということを強調しておっしゃっていただいておりました。これについても、まずは適切な体制をしっかりと確保するために、本年度末までに児童福祉司を全国で五千二百六十人の体制とするということを目標としてこれまで進めさせていただきました。これは一年前倒しで令和三年度に達成をいたしまして、最終的には、四年度末では五千七百八十三人と、当初の目標よりも五百人多く整備できるということになっております。

 今後の、来年度以降の増員については、年内にも新たなプランの策定をしっかりと目指していきたいというふうに思っております。

 さらに、これは正規ではございませんが、夜間、休日を問わずに相談に応じられる体制の整備という観点から、例えば相談援助活動経験のある児童相談所のOBの皆さん、こういう方々に非常勤でも来ていただいて配置をするための費用を、都道府県に対して財政支援も行わせていただきたいというふうに思っております。

 引き続き、児童相談所における体制の整備、しっかりと行ってまいりたいというふうに思います。

本村委員 また、もう一つ全国的にやらなければいけないのは、名古屋市の当該児童相談所の窓は既にもう転落しない仕様に取り替えられておりますけれども、全国の児童相談所の窓の総点検を行い、転落しない仕様に国が財源をつけて替えるべきだというふうに思いますけれども、副大臣、お願いしたいと思います。

伊佐副大臣 名古屋市自体は今検証を行っているというふうに申し上げましたが、一般論としてという話で申し上げれば、児童相談所の設備については、各自治体において改修工事等の適切な対応を行っていく必要があるというふうに認識をしております。

 ちなみに、本事案においては、この事案のあった児童相談所は、この事案が起こった後に、トイレの窓の改修工事を既に行われているというふうに伺っております。

 国としては、児童相談所の設備に要する経費というのは、児童相談所の運用に関する経費について地方交付税措置で既に一般財源化されておりまして、その中で支援を行うことになっております。

 まずは、名古屋市の今回の検証結果を踏まえて、厚労省として必要な対応を検討してまいりたいというふうに思っております。

本村委員 転落は、ほかの児童相談所でも実際は起きております。是非、全国でそうした対策を打っていただきたいというふうに思います。

 二度と今回のような悲し過ぎる事件を起こさせないためにも、きめ細やかな対策、若年女性を始め、子供、若者の支援の強化、そして、子供に関わる職員を正規で、抜本的に増やしていただきたいというふうに思います。この御家庭のことを考えますと、もっともっと早い段階で支援ができていれば、違う状況になっていたのではないかというふうに思っております。

 先日も名古屋で保育士の皆さんからお話を伺って、保護者の方にもお話を伺いましたら、産後うつだったかもと思う時期があるという方が四八・六%もいらっしゃる。保育士さんに声をかけたいけれども、保育士さんが忙し過ぎて声をかけることができないというお話もお伺いしました。

 これは配置基準を抜本的に変えないといけない、改善しないといけないというふうに思いますので、子供に関わる職員を抜本的に増やして、こうした事件が二度と起こらないように、国としても抜本的な対策を打っていただきたいというふうに思っております。

 これでこのテーマは終わりますので、副大臣、御退席を、委員長の御許可でお願いしたいと思います。ありがとうございました。

 次に、名古屋入管でのウィシュマさんの死亡事件についてお伺いをしたいというふうに思います。

 この衆議院法務委員会の前の理事会の参加者と法務委員の有志は、この間、名古屋入管のウィシュマさんの映像記録、一回目は六時間半、二回目は約二十六分、二回視聴をさせていただきました。前大臣も当時与党の筆頭理事でございましたので、視聴をされました。是非、齋藤大臣にも視聴をしていただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 見るべきだと考えていますので、適宜準備を進めていきたいと思います。

本村委員 名古屋入管のウィシュマさんの死亡事件に関し、どのような問題があったということを認識されておられますでしょうか、大臣。

齋藤(健)国務大臣 まず、前提としまして、入管収容施設に収容されている方が亡くなられたということは、大臣として重く受け止めなければならないと認識しています。被収容者の健康を保持するために必要な診療その他の措置を講ずること、また、死亡事案が生じないよう処遇全般を適切に行うことは、入管行政の責務であると認識しています。

 調査報告書では、可能な限り客観的な資料に基づき、医師、弁護士等の外部有識者の方々に御意見、御指摘をいただきながら、事実を確認し、考えられる問題点を幅広く抽出して検討がされております。そうした検討の結果として、御指摘の事案に係る調査報告書では、医療的対応のための体制整備やその運用が十分でなかったこと、人権意識に欠ける不適切な発言など、職員の意識の問題などが指摘されたものと承知をしております。

 入管庁では、令和三年八月以降、調査報告書で示された改善点を中心に、組織、業務の改革を推進しているところであります。入管庁として、調査結果を踏まえた改善策を着実かつ迅速に実現していくことが何より重要であると認識をしています。

本村委員 報告書が昨年の八月十日に出されておりますけれども、それ以後の進展がございます。

 九月一日の報道なんですけれども、名古屋地検の依頼で作成された鑑定書二通のうち一通にウィシュマさんの死因が記載されていたという報道がございます。その死因についてお示しをいただきたいと思います。

西山政府参考人 御指摘の報道については承知しておりますが、他方、調査報告書におきましては、各要因がどの程度死亡に影響を及ぼしたか、また、死亡に至る具体的な経過、機序を特定することは困難であるとしているところ、この報告書は、可能な限り客観的な資料に基づき、医師、弁護士等の外部有識者の方々に御意見、御指摘をいただきながら、事実を確認し、考えられる問題点を幅広く抽出して検討を行ったものであり、本件については十分調査が尽くされているものと考えております。

 なお、検察当局においては、所要の捜査の結果、ウィシュマさんの死因や、死亡に至る具体的機序を特定するには至らなかった旨、判断したものと承知をいたしております。

本村委員 この記事では、死因に記載がされていたのは二〇二二年の二月二十八日付の鑑定書である。食思不振、食欲の低下による脱水と低栄養に、血液中のリンパ球が異常となる血球貪食症候群が合併した多臓器不全というふうに書かれております。

 資料一にも出させていただいておりますけれども、以前もほかの委員から御指摘がありましたけれども、この出入国在留管理庁の調査チームの昨年八月十日に出したウィシュマさんの死亡事件の調査報告書は、死因のところに特定することは困難というふうに書き、その注として、司法解剖の鑑定書の入手、解剖医からの聴取はできなかったというふうに書かれています。

 調査報告書は不完全なものであるという認識を大臣に是非持っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

西山政府参考人 先ほどの委員の御指摘の点に関連しましては、調査におきましては、司法解剖の結果を踏まえつつ、司法解剖の鑑定書の内容を確認した専門医である大学教授二名からの聴取を実施しているところでございまして、その上での、先ほど御説明したような調査結果ということでございます。

本村委員 この出入国在留管理庁の主張をうのみにするだけの大臣にならないでいただきたいということをお願いしたいと思うんです。命と尊厳と真実を何よりも重んじる大臣であっていただきたいということを強く求めたいというふうに思います。

 西山次長に改めてお伺いしたいんですけれども、この二月の鑑定書の検証、鑑定書を書いた医師からの聞き取りはやられましたでしょうか。

西山政府参考人 聴取してございません。

本村委員 是非、鑑定書の検証、そして解剖医からの聞き取りをやっていただきたいというふうに思いますけれども、鑑定書を書いた医師からの聞き取りをやっていただきたいと思います。そして、それを国会に報告していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

西山政府参考人 私どもといたしましては、先ほども答弁いたしましたとおり、調査報告書の結果については、十分な調査をして、検討を尽くされた結果であるというふうに認識しておりますので、現在のところ、今委員が御指摘のような調査を行うことは考えておりません。

本村委員 私は、この報告書を見ましたときに、やはり出入国在留管理庁の保身というものがあるというふうに思います。本気になって命とか尊厳を守る、そういう組織にしようという本気度を感じませんでした。

 大臣に認識していただきたいのは、先ほど、映像を見ていただけるというお話がありましたけれども、映像を見た上で調査報告書を見ていただきますと、映像と食い違っている点がございます。真実に反することがあるということを是非御自身の目でチェックをしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私としては、これだけの事件があったわけですから、調査の過程において、各要因がどの程度死亡に影響を及ぼしたかですとか、それから、死亡に至る具体的な経過を見た上で、特定することが困難であるということを、この調査の過程におきまして、可能な限り客観的な資料に基づき、医師、弁護士等の外部有識者の方々に御意見、御指摘をいただきながら、事実を確認し、考えられる問題点を幅広く抽出して検討を行ったものであって、本件については十分に調査が尽くされているのではないかと認識していますが、ビデオはしっかり見ていきたいと思っています。

本村委員 私どもは、この報告書では全く納得できないというふうに考えております。

 完全な第三者による検証を行うべきだということをずっと、ほかの党の委員からもずっと求められてきている問題であり、今、ビデオも見ていないのに、十分な調査というふうに言われること自体がおかしいと思いますけれども、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 繰り返しになりますけれども、これだけの事件でありますから、この調査の過程においては、私は、ベストを尽くした検討を行ったはずであるというふうに認識しております。

 確かに、医師や弁護士の御指摘も受けながら、事実確認を、一つ一つ確認していってでき上がった調査結果だと思っておりますので、本件については十分に調査が尽くされていると認識はしています。

 だけれども、ビデオについては、私は、やはり責任者として、しっかり拝見していきたいと思っております。

本村委員 是非、事実に反することが書かれていますので、そこも細かくチェックをしていただきたいと思います。

 資料二枚目を見ていただきたいんですけれども、ウィシュマさんが亡くなったのは二〇二一年三月六日です。その前の二〇二一年の一月二十八日、ウィシュマさんは、血が混じった嘔吐物を吐き、体調不良を訴え、外の病院に連れていって、今日の医師は私の話を聞いていない、ここまで体調が悪くなったのに病院に行けない、私が死んでもいいのかと泣きながら看守勤務員に訴えておりました。

 そして、一月三十日、入国者収容所等視察委員会宛てに手紙を投函しております。その手紙は、亡くなった二日後に視察委員会で開封されましたが、遅過ぎるわけです。

 その手紙は、出入国在留管理庁が本物あるいは写しを持っているというふうに聞いております。しかし、いまだに国会に提出をされておりません。是非、国会に提出をしてください。大臣、お願いしたいと思います。

西山政府参考人 御指摘の手紙につきましては、入管庁が作成した調査報告書において、ウィシュマさんが訴えていた体調不良の内容や、ウィシュマさんに対する処遇上の対応の問題点等を明らかにするため、必要な範囲でその内容を記載しているところでございますが、手紙そのものは個人の情報に該当しますほか、これを公にすることにより、今後、入国者収容所等視察委員会における被収容者からの意見聴取等の活動に支障を来すことになりかねないことなどから、情報公開法上の不開示情報に該当するものと考えているところでございます。(発言する者あり)

伊藤委員長 静かに。

齋藤(健)国務大臣 この手紙につきまして、国会における閲覧をするかどうかについては、国会の御判断を踏まえて対応していきたいと思います。

本村委員 委員長、是非、この一月三十日に投函されたウィシュマさんの手紙、委員会に提出を求めるお取り計らいをお願いしたいと思います。

伊藤委員長 ただいまの件につきましては、理事会にて協議をさせていただきます。

本村委員 終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十分散会


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