衆議院

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第2号 令和6年3月13日(水曜日)

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令和六年三月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 武部  新君

   理事 熊田 裕通君 理事 笹川 博義君

   理事 仁木 博文君 理事 牧原 秀樹君

   理事 道下 大樹君 理事 米山 隆一君

   理事 池下  卓君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      斎藤 洋明君    高見 康裕君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      中野 英幸君    西野 太亮君

      平口  洋君    藤原  崇君

      三ッ林裕巳君    山田 美樹君

      おおつき紅葉君    鎌田さゆり君

      鈴木 庸介君    寺田  学君

      山田 勝彦君    阿部 弘樹君

      斎藤アレックス君    美延 映夫君

      日下 正喜君    平林  晃君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         小泉 龍司君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   外務副大臣        辻  清人君

   厚生労働副大臣      宮崎 政久君

   法務大臣政務官      中野 英幸君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局人事局長            徳岡  治君

   最高裁判所事務総局経理局長            染谷 武宣君

   最高裁判所事務総局民事局長兼最高裁判所事務総局行政局長           福田千恵子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 伊藤 哲也君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 親家 和仁君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          藤本 武士君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 山碕 良志君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     木村 公彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       上原  龍君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          坂本 三郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    花村 博文君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    押切 久遠君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  鎌田 隆志君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 丸山 秀治君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           淵上  孝君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文部科学戦略官)       中原 裕彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 直樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           泉  潤一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (国土交通省不動産・建設経済局次長)       川野  豊君

   政府参考人

   (環境省環境再生・資源循環局次長)        角倉 一郎君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     西野 太亮君

同日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     中曽根康隆君

    ―――――――――――――

三月十二日

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

武部委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官伊藤哲也君、警察庁長官官房審議官親家和仁君、消費者庁政策立案総括審議官藤本武士君、総務省大臣官房審議官山碕良志君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長木村公彦君、法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、法務省大臣官房司法法制部長坂本三郎君、法務省民事局長竹内努君、法務省刑事局長松下裕子君、法務省矯正局長花村博文君、法務省保護局長押切久遠君、法務省人権擁護局長鎌田隆志君、出入国在留管理庁次長丸山秀治君、文部科学省大臣官房審議官淵上孝君、文部科学省大臣官房文部科学戦略官中原裕彦君、厚生労働省大臣官房審議官宮本直樹君、厚生労働省大臣官房審議官泉潤一君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、国土交通省不動産・建設経済局次長川野豊君及び環境省環境再生・資源循環局次長角倉一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君、人事局長徳岡治君、経理局長染谷武宣君及び民事局長兼行政局長福田千恵子君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。英利アルフィヤ君。

英利委員 おはようございます。自由民主党の英利アルフィヤです。

 大臣の所信に対して、本日は会派を代表して質問させていただきます。機会をいただきまして、ありがとうございます。

 我が国は今、緊迫した国際情勢の中にあります。ウクライナ侵攻も続いており、ガザでの情勢も悪化する一方でございます。台湾有事も目先にあるかもしれません。国際的な情勢を鑑みると、人権のスペースというものも国際的にも縮小していて、特に法の支配というものも揺らいできています。

 こんな中、法の支配に基づく国際秩序を揺るがす、力による一方的な現状変更の試みに直面しているという国際情勢を鑑みると、法の支配の促進という観点で、外務省はもとより法務省の役割も重要になっていると考えます。

 昨今の国際情勢の中で、日本として国際社会における法の支配の維持強化に向けてリーダーシップを取っていくため、法務省はどのような施策に取り組んでいるのか、法務大臣にお伺いしたく存じます。よろしくお願いいたします。

小泉国務大臣 御指摘のとおり、法の支配に基づく国際社会の維持強化に向けて我が国がリーダーシップを取っていくこと、これは非常に重要なことであると認識しております。法務省としても、司法外交という活動としてこれを総括し、強力に進めてきています。

 中身は二つあると思うんですよね。一つは、理念の共有です。これは、法の支配、基本的人権の尊重といった価値をできるだけ多く国際社会に発信をし、浸透させ、これを国際社会のフレームワークとしていく、価値観のフレームワークとしていくという意味での理念の共有に向けた我が国のリーダーシップが求められており、その中の法務省のリーダーシップが求められている。これが一点目ですよね。もう一つは、各国の司法制度、司法インフラの整備、これも進めていく必要があります。

 理念だけでは進まない面があります。理念と制度、この両面において、我が国がやるべきことをしっかりやりたい、このように考えて取り組んでいるところであります。

 この司法インフラという点では、もう三十年にわたって、アジア諸国を中心に、法制度整備支援というものが底堅く形成されてきています。実施されてきています。

 一方で、これは理念の面に近いと思いますけれども、昨年、G7司法大臣会合、日・ASEAN特別法務大臣会合、後ほどお話があるかもしれませんが、G7、ASEAN、これの懸け橋になっていくという取組も進めているところであります。

 世界的な潮流の中で、我が国が、我が国の中で法務省が取るべきリーダーシップを深く自覚して取り組みたいと思います。

英利委員 大臣、心強いお言葉、ありがとうございます。

 先ほど、アジア、ASEANに関しても言及がありました。理念の共有、そして司法インフラの整備、大臣がおっしゃるこの二つの論点におきましても、日本は特にアジアで大きな役割を担えるかと思います。

 日本は、最近、国際情勢の中でも中国と比べられることがよくあると感じます。その中で、日本は中国とどこが違うのか。そして、最近は、中国にGDPも追い越されてしまった、ドイツにも追い越されてしまったと、日本にいるとちょっと後ろ向きなニュースが多い感じがしますけれども、国際的に見ると、まだまだアジアで最も経済力の高い民主主義は日本であるわけでございまして、アジアでその立ち位置としてのリーダーシップが今も求められる環境にあると思います。

 その中で、先ほど少しお話もありましたけれども、法務省では、法務、司法分野における国際協力の取組により、アジア諸国における法の支配の確立に貢献し、相手国からも高い評価を得ているとお伺いしております。

 具体的な成果について、法務当局にお伺いしたく存じます。よろしくお願いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 法務省では、関係機関と協力しながら、長年にわたって、アジア諸国を中心に、基本法令の起草、司法制度の整備、運用、司法関係人材の育成等に関し、寄り添い型の法制度整備支援の実施、それから、法務省が運営する国連アジア極東犯罪防止研修所、UNAFEIの国際研修を通じた犯罪防止や犯罪者処遇等に関する各国の取組の支援などを通じて、法の支配の促進に貢献してきました。

 具体的には、ベトナム、カンボジア等十か国以上に法制度整備支援を実施し、これらの国において民法や民事訴訟法などが成立するなどしたほか、UNAFEIにおいては、百四十四の国及び地域からの六千五百人以上の刑事司法実務家に対しこれまで研修を実施し、これらの国の刑事司法制度の発展に貢献するなどの成果を上げております。

 これらの取組は各国から高い評価を得ており、例えば、一九九四年から三十年にわたり支援をしているベトナムからは、昨年十一月の日・ベトナム首脳会談においてトゥオン国家主席が、日本の長年にわたるベトナムにおける法制度整備支援を高く評価する旨述べるなど、ハイレベルでの謝意が示されているところでございます。

英利委員 ありがとうございます。

 私も、元国連職員でして、国連時代、特に、アジア諸国における日本の役割というものが国際的に評価されていること、重宝されていること、肌で感じてきました。法務省の方々のこのような取組もその一環だと思います。感謝申し上げるとともに、引き続きよろしくお願いいたします。

 そして、先ほどASEANに対する言及がありましたけれども、日本はG7のメンバーでもあります。そして、G7の中で日本は非常にユニークだなと思うところが、唯一、G7の中で欧米系の国ではない国であるのが日本であり、キリスト教文明でもない国が日本であります。そして、唯一アジアの国でもあります。

 そのような中で、日本だからこそ代表できるアジアの考え方、ないしは別の、欧米以外の諸国の考え方というものもあると思いますし、このような間にある立ち位置である日本であるからこそ取れるリーダーシップというものがあると思います。

 その中で、法の支配に基づく国際秩序を維持し、更に強化していく上では、G7を始めとする先進国とASEANなどを始めとする新興国とが対話を通じて連携していくことが不可欠と考えます。

 法の支配の推進のためのASEANとG7の連携における日本のリーダーシップについて、法務大臣にお伺いしたく存じます。お願いいたします。

小泉国務大臣 委員まさにおっしゃるとおりでありまして、先進国の中の我が国の立場、それはアジアの諸国とのプラットフォームを持っているという強みがあります。比較優位性があると思います。そこを生かして、法の支配、国際秩序を強化する上で、我々が懸け橋になって、G7とASEANをつなぐ会合を昨年開催いたしました。ASEAN・G7法務大臣特別会合、こういう懸け橋をつくりました。ただ、これを継続する必要があります。時間をかけて深めていく必要もあります。

 そこで、この会合の中で合意されましたのが、ASEAN、G7の若手法務職員等が定期的に集い、意見交換を行うネクスト・リーダーズ・フォーラムの創設を提案いたしまして、各国から大きな支持が寄せられたわけであります。

 未来の各国の司法制度あるいはその国の民主主義を担うであろう非常に有望な、有能な若手が若いうちから交流をする、友達になる、人間関係をつくる、そうして醸成された信頼関係というのは簡単には崩れないだろうという長期的な視野を持ってこれを進めていきたいと思います。この六月に第一回フォーラムが開催される予定でありますので、しっかりと取り組みたいと思います。

英利委員 ありがとうございます。

 ネクスト・リーダーズ・フォーラムは非常に画期的なプログラムだと思います。一回目の開催ということで、成功を祈るとともに、我々議員も応援していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 また、ASEANとの連携は今後、より重要となってくるところ、昨年、司法外交閣僚フォーラムの一連の会議の一つとして日・ASEAN特別法務大臣会合を開催した意義と、今後のASEAN地域における司法外交の展望についても、法務大臣にお伺いしたく存じます。お願いいたします。

小泉国務大臣 今のお答えと若干ダブりますけれども、ASEANというのは、自由で開かれたインド太平洋の要ですよね、要。非常に重要なポジションにあり、しかし、多様な国々であり、多様なんだけれども固まっている、そういう大切なパートナーだと我々は思っています。

 これまでのアプローチが十分であったかどうかということもありますが、是非、我々と一緒にやりましょう、イコールパートナーシップでやりましょうという、ラブコールではないんですけれどもメッセージを一生懸命送って、一緒にやりましょう、イコールパートナーシップでやりましょう、こういう働きかけを法務省としてもさせていただいているところであります。この努力を続けたいと思います。

英利委員 ありがとうございます。

 まさに先ほど申し上げたとおりだと思うんですけれども、日本のよさというのは、各国と上から目線で対話するのではなくて、イコールパートナーシップでやっていこう、寄り添おう、各国々の文化を尊重しながら、意見を尊重しながら、相手を尊重しながら、外交や、それこそ法務外交もそうですけれども、担っていこうというところだと思いますので、引き続き日本のよさが見えるような形でリーダーシップを取っていただければと思います。お願いいたします。

 司法外交閣僚フォーラムのもう一つの重要な会議としてG7司法大臣会合が開催されました。法務、司法分野におけるウクライナの復興支援について議論されたとお伺いしております。この議論の概要についても、国民の関心も高いと思います、概要と成果について法務副大臣にお伺いしたく存じます。お願いいたします。

門山副大臣 G7司法大臣会合におきましては、ウクライナの司法大臣や関係する国際機関の長等も交え、委員御指摘の司法インフラ整備等を通じたウクライナ復興支援を始めとする三つのテーマについて議論し、成果文書として東京宣言を採択いたしました。

 とりわけ、司法インフラ整備等を通じたウクライナ復興支援のテーマに関しましては、我が国が提唱したウクライナ汚職対策タスクフォースの設置が決定されたことは大きな成果であると認識しているところです。汚職対策は、健全な経済活動の基盤となるだけではなく、ウクライナが復興するに当たり、公平公正、透明な資源の活用を行う上で重要でございます。さらに、汚職対策は、ウクライナがEU加盟に向けて取り組むべき課題とも位置づけられており、同国の安全保障の観点からも極めて重要なものです。

 本タスクフォースは既に二回の会合を重ねており、引き続き、次回会合に向けて準備を進めるとともに、G7と密接に連携して、法の支配や基本的人権の尊重といった価値を国際社会に推進するべく取り組んでまいります。

英利委員 副大臣、ありがとうございます。

 私は、副大臣御存じのとおりですけれども、千葉五区という、市川市、浦安市の選出なんですけれども、私の選挙区でも本当に、ウクライナの情勢、そしてガザもそうですけれども、昨今の人道状況、人権状況に心を痛めている方々が多くいらっしゃっており、引き続き日本が、人道的な立ち位置から、そして付加価値を与えられるような立ち位置から、このような問題解決に貢献していくことを願っている方々が多くいらっしゃいます。地元を代弁する形としましても、引き続き、この取組、そしてほかの人道状況の中でも、日本のリーダーシップが見えるようお願い申し上げます。ありがとうございます。

 そして、先ほど、日本はG7の中で唯一アジアの国であるというお話と、その中での役割というお話がありましたけれども、ASEANだけではなくて、それは世界中のほかの国々にもレレバントなお話なのかなと思います。国際社会における法の支配の推進の上では、もちろんASEANやG7だけではなく、そのほかの地域の国々とも連携を進める必要があると思われるところ、そのための具体的な取組について法務大臣にお伺いしたく存じます。お願いいたします。

小泉国務大臣 先ほど申し上げたような取組をASEANと進めていけば、当然のことながら、ASEANの外側にある、周辺にある国々とも同じ関係をつくりたいというふうに我々も考えているわけでございます。

 幸い法務省は、これまで様々な実務的な支援をしてきています。各国の司法制度あるいは司法制度の運用に関わるアドバイス、人材の派遣、研修の受入れ、そういう地道な長い長いおつき合いがかなりありますので、それを生かすチャンスが来たんだろうというふうに思いまして、太平洋の島嶼国と中央アジア地域、両地域とも大きく地政学的に変動しています、そういうところに、戦略的な対話をしましょう、戦略的という意味は、継続的な、そして深い、今だけではない、表面だけではない、戦略的な、長い、深い、そういう対話をしましょう、価値観を共有しましょう、こういうメッセージを送り続けながら、お一人お一人の外務大臣とお会いする、司法大臣とお会いする、そういう努力を今始めているところでございます。しっかり取り組みたいと思います。

英利委員 ありがとうございます。

 そして、次に経済活動の国際化についてお伺いしたく存じます。

 日本企業が海外に進出し、その競争力を発揮する上では、特に特許や著作権といった知的財産権が適切に保護されている必要があり、とりわけ、日本企業の進出が著しいASEAN諸国において、公正かつ予測可能性のある知的財産法制度や運用の改善に日本が貢献することが重要でもあると存じます。

 ASEANにおける知的財産権制度やその運用の改善支援の取組について、法務当局にお伺いしたく存じます。お願いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 日本企業が海外でビジネスを展開する上では、特許や著作権、商標といった知的財産権が適切に保護される法制が整っていることが重要であると認識しております。また、知的財産法制の整備や運用能力の構築を支援することは、相手国においてルールに基づく公正な民商事取引や投資の基盤を整備し、法の支配の推進や持続可能な発展に資すると言えます。

 そこで、法務省は、とりわけ日本企業の進出が著しいASEAN諸国における知的財産制度や運用の改善を支援するため、二国間及びASEAN地域全体を対象とした多国間の相互の枠組みで、知的財産法制の整備及び運用能力構築を支援する取組を行っています。

 例えば、二国間の取組としては、インドネシアにおいて、知財紛争解決能力向上を目的としたプロジェクトをJICA等関係機関と連携しながら実施しています。また、ASEAN地域全体を対象とした多国間の取組としては、知的財産権保護に関する各国の課題解決をバックアップするための国際知財司法シンポジウムの開催やそのフォローアップ会合を、最高裁や特許庁、日弁連等と連携しながら実施しているところです。

 引き続き、これらの取組を通じて、ASEAN地域を含むアジア諸国の知財紛争処理能力の向上を図るとともに、知財に携わる実務家や、ビジネスの海外展開を進める企業等に最新の知財情報を提供することで、日本企業の海外進出を後押ししてまいりたいと考えています。

英利委員 ありがとうございます。

 最初にお話があったとおり、国際情勢が乱れる中、一つの国に対して経済パートナーとして依存しない、多くの国々とパートナーシップを取ることができる、これは、法の面でも外交の面だけでもなくて、経済面でもそうだと思いますので、そのインフラ整備というものを担っていらっしゃるとお話をお伺いして思いました。本当に感謝申し上げるとともに、引き続きこのような取組が、ASEANだけではなくて、世界各国とも行われることを願い、次の質問に移りたいと思います。

 国境を越えた経済活動が活発に行われることに伴い、それに伴う国際的な法的紛争も増加します。国際的な法的紛争の解決手続としては、契約の一方当事者の国の裁判所による裁判ではなく、契約の当事者同士が選んだ仲裁人に判断してもらう国際仲裁がグローバルスタンダードとなっていますが、我が国においては、その活用がかなりまだ低い状況に止まっております。

 政府として、国際仲裁の振興に取り組んではいるものの、昨年、港区虎ノ門に開設していた国際仲裁専用施設が閉鎖となるなど、必ずしも順調ではない部分もあるかと思います。日本企業の海外進出に当たっては、国際仲裁の振興、大変重要であると考えるところ、今後の展望について法務当局にお伺いしたく存じます。お願いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 国際仲裁は、契約当事者が選んだ仲裁人の判断に従うという私的自治を尊重した公平公正な紛争解決手段であり、国際商取引における紛争解決のグローバルスタンダードとなっています。国際仲裁の活性化は、国際的な法の支配の促進や日本企業の海外進出の支援等の観点から重要であります。

 法務省は、令和元年六月からの五か年の事業として、人材育成、広報、意識啓発、施設整備といった各施策を包括的に行いながら、国際仲裁の活性化に向けた効果的な施策の在り方について調査分析する業務を民間事業者に委託して実施してきておりました。

 この調査等委託事業が今月末に終了することに伴い、現在、内閣官房に設置された国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議において、同調査等委託事業の結果や民間有識者から構成された研究会の提言も踏まえ、新たな政府の方針を策定中であります。

 この民間有識者から構成された研究会の報告書においては、これまで五年間の取組により、広報、意識啓発や人材育成は一定程度進んできているとされている一方、日本商事仲裁協会、JCAAを始めとする我が国を拠点とする仲裁機関の国際的な認知度及び評価を向上させる必要があるとの指摘や、国際仲裁の活性化は短期的に成果が上がるものではなく、長期的視点に立って進めていくべきなどといった指摘もあったところでございます。

 法務省としては、今後、関係府省連絡会議が示す予定の新たな方針に基づき、関係府省、団体と連携して、我が国の仲裁機関の国際的な認知度等を向上させるための取組や、国内外の企業や仲裁関係者等に対する広報、意識啓発、人材育成など、国際仲裁の活性化に向けた各種取組を長期的視点に立って推進していきたいと考えております。

英利委員 ありがとうございます。

 次の質問なんですけれども、昨日、財務金融委員会でも同じ質問をさせていただいたんですが、法務省管轄にも同じ質問をさせていただきたく存じます。

 訪日外国人旅行者が増加する中、外国人旅行者が最初に接するのは入国審査官であり、日本への好印象を持ってもらうためには、外国人旅行者がストレスを感じないようにするための円滑な入国審査も必要だと存じます。

 一方で、国民の安全、安心を確保するためには、テロリストなどの問題のある外国人の入国を未然に防ぐ厳格な入国審査も同時に行わなければならないと思います。

 今後、大阪・関西万博といった大規模な国際イベントも控えている中で、円滑かつ厳格な入国審査の両立に向けて入管としてどのように取り組んでいくのか、法務当局にお伺いしたく存じます。お願いいたします。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 コロナ禍の水際措置の終了に伴い、訪日外国人旅行者数が増加しており、令和五年の年間の訪日外国人旅行者数はコロナ前の八割程度まで回復しております。

 このように人の往来が活発化している中において、出入国在留管理庁では、デジタル技術等を活用して、本邦渡航前の事前スクリーニングを強化することにより、テロリストなどの問題のある外国人の入国を未然に防ぐとともに、到着空港における円滑な入国審査を実現する施策について検討を行うことにより、円滑かつ厳格な入国審査の両立に努めているところです。

 具体的には、海外の空港での航空機搭乗前に、本邦に渡航予定の外国人の事前スクリーニングを可能とする相互事前旅客情報システム、いわゆるiAPIの導入に向けた準備を進めております。また、省庁の枠組みを超えた新たな取組として、入管、税関手続に必要な情報を同時に提供することを可能とする共同キオスクの実証実験を開始しているところです。

 出入国在留管理庁としましては、引き続き、これらの取組を進めるとともに、アメリカなどに代表される電子渡航認証制度を含む事前スクリーニングの更なる強化のための施策等について不断に検討してまいります。

英利委員 ありがとうございます。

 先ほどおっしゃっておりましたiAPIを導入することによってどのような効果があるのか、いま一度お伺いしたく存じます。お願いいたします。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国にとって好ましくない外国人が本邦に向けて航空機で出発した場合、テロ等の我が国の安全、安心を脅かす事態や、本邦に上陸できない外国人が本邦からの退去命令に従わず、その対応のため官民問わず多くの時間や労力が割かれるなどのリスクがあります。

 iAPIを導入することにより、こうした外国人はそもそも本邦に向けて出発することができないため、こうしたリスクを未然に防ぐことができるほか、通常の何ら問題のない外国人の方の審査に要する時間や労力が縮減されることにより、円滑な入国審査の実現も期待できると考えております。

英利委員 ありがとうございます。

 昨日も財務金融委員会で、税関のお話で同じようなお話をさせていただいたんですけれども、私も海外経験が多くある中、各国の空港に行くのと日本の空港に行くのでどこが違うか、日本に帰ってきたときに、あっ、自分の国に帰ってきたんだなと思えるのがどこなのかというと、やはり入管の方々、そして税関の方々の丁寧さ、優しさ、そして日本に着いた瞬間に感じる安心、安全という環境だと思います。

 私も、両親が元々外国人として日本に来日して、日本が大好きになって日本人になったという経緯があります。その中で、いろいろ言われているような入国管理局への批判もありますけれども、私個人としては入管で嫌な思いをしたことが一度もありません。そのようなことも踏まえて、記録に残させていただきたいなと思うとともに、いろいろな方々が日本に上陸された際に、日本人もそうですけれども、外国人の方々も到着した瞬間に日本のよさが見えるという体制があるのが日本の入管、税関だと感じておりますので、引き続き取組を進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 そして、最後に、大臣の所信において、今後、外国人支援コーディネーターの育成、認証制度を実施されるというお話がありました。先ほどもお話ありましたとおり、私の両親も元々外国人です。日本に二十代の頃に来て、日本の方々に支えられ、日本が大好きになって日本人になったという経緯があります。

 私自身は日本で生まれたので、両親と比べると日本に対するアプリシエーションが余りないのかもしれないと思うときもありますけれども、両親を見ていると、本当に周りの人たちの支援があって、そして、たまたまいろいろな御縁や運に恵まれて、いろいろないい環境で日本にいれたからこそ、日本で安全で安心した暮らしを送り、そして、日本で、二十代に来て、今もう六十代ですけれども、キャリアを積むことができて、私のような娘を育てることができて、国会議員にまでなってしまいました。そのような環境が日本にあるということももっともっと海外に発信していくべき、誇るべき状況なのかなと思います。

 そのような観点からも、この外国人支援コーディネーター、非常に画期的だなと思っておりまして、ほかの海外でも、来てくれる外国人を支援しようというような取組を余り聞いたことがありませんけれども、そもそもどのような役割を担う人材なのか、改めて法務大臣にお伺いしたく存じます。お願いいたします。

小泉国務大臣 外国人支援コーディネーターですね、これは、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップで取り上げられ、そして具体化を今進めようとしているところであります。

 全国の自治体で、外国人の方々の様々な相談を受けます。そして、親切に対応できていると思いますが、一定の専門知識がないとかえって遠回りをするというようなこともあって、イメージとしては、各自治体の外国人対応窓口のリーダーを国が養成するというイメージです。

 令和八年までに約三百人の方々に専門的な知識を習得してもらって、そして、市役所ごとに扱いが違ってもこれもおかしなことになりますから、扱いを統一する、様々な失敗事例、成功事例を共有する。情報の共有、取扱いの統一化、そして専門性を磨く、こういったことを中身として今法務省がカリキュラムを作りまして、そして人材育成をしていく。三百人をまず育てようということでございます。

 市役所の立派なリーダーをつくる、そういうイメージで捉えていただければと思いますが、我々も初めての取組なので、またいろいろ試行していきたいと思います。

英利委員 ありがとうございます。

 本日、国際情勢から入管そして外国人支援コーディネーターまで、多岐にわたって法務省管轄のお仕事についてお伺いさせていただきました。

 関連する、一貫性のあるテーマとしましては、我が国で私も生まれ、ここで育ち、そして海外のルーツを持っている立場として、そして海外で様々な経験をしてきて帰国してきた立場として、本当に今の時代こそ、日本の優しさ、思いやり、そして、この国がいかに安全で安心できる国であるか、相手を尊重する国であるか、そして、今、世界で対極化が進む中、権威主義と民主主義の争いのような状況が進む中、日本にある優しさ、日本にある思いやり、そして日本的なリーダーシップこそ世界に求められていることだと感じております。

 このような取組についても引き続きお願い申し上げるとともに、本日は皆様に感謝申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

武部委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 まず冒頭、元旦に発生しました能登半島地震において亡くなられた方、御遺族の方に哀悼の意を表したいと思います。また、被災された全ての皆様に心からお見舞い申し上げます。

 今回の能登半島地震においては、多くの住家、建物が被害を受けました。石川県の資料によりますと、石川県の全壊、半壊の被災建物は、能登三市三町で四万六千百九棟、これは二月二十九日の段階ですが、また、石川県全体で五万六百四十四棟となっています。さらに、損壊家屋等の解体想定数は約二万二千棟でございます。

 能登半島地震の復旧復興には、倒壊してしまった建物等の解体撤去を円滑に行うことが必要不可欠でございます。住家等の建物解体撤去は所有者の申請に基づく必要がございます。公費解体においても同様であります。しかし、倒壊した家屋の中には、所有者が分からないもの、また所有者の所在が分からないものがあります。このような建物において解体等を円滑に行うことは困難が生じます。被災地の復旧復興を阻害しかねません。

 政府におきましては、被災者の生活となりわい支援のためのパッケージにも記載されているとおり、令和三年の民法改正によって設けられた所有者不明建物管理制度、これを活用することが非常に効果的であるというふうに考えており、積極的に推進する必要がございます。

 熊本地震の対応を行った経験を持つ熊本県司法書士会におきましては、市町村職員向けの相談窓口を設置して、また、石川県や富山県や新潟県の各県各管内の出張所の職員からこの制度についての相談を受け付けていると聞いております。

 この制度を所管する法務省においても積極的に所有者不明建物管理制度の利用を促進する必要があると考えますが、現在の対応状況について法務大臣にお伺いいたします。

小泉国務大臣 委員御指摘のとおりでございまして、被災地の円滑な復興を促進する観点から、所有者不明建物管理制度、裁判所により選任された管理人が所有者の所在等が不明である建物の管理、処分を行うことができる制度でございますけれども、これを最大限活用して、解体撤去が必要な建物を処理をしていく、促進していく、非常に重要なポイントだと思います。

 法務省民事局においても、環境省等々の関係府省と連名でこの制度に関する事務連絡を全国の自治体に発出しまして、所有者が不明である空き家の解体にはこの制度を用いることが可能なんだということの周知を重ねて進めているところでございます。

大口委員 よろしくお願いしたいと思います。

 また、この制度は、相続人が多数であり、一部の相続人の所在が分からず同意が得られない場合にも有効であると考えます。

 他方で、能登六市町の中で、三月七日時点、珠洲市、輪島市、能登町、志賀町の二市二町では二次災害につながるおそれがある建物の公費による緊急解体が始まっています。輪島市におきましても、三月九日、坂口市長とも懇談してまいりましたけれども、七百二件の個別相談があり、そのうち三百八十九件を緊急解体の対象としています。例えば、倒壊の危険性があり、所有者不明建物管理制度を活用する時間がない場合に、相続人代表者の申請により迅速に公費解体を行えるようにするなど柔軟な対応が必要となります。

 環境省として、現場の実情を踏まえつつ、どのように公費解体を、撤去を進められていくのかについてお伺いします。二月二十四日、石川県の司法書士会の方々とも懇談して同様の要望がございました。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお話しいただきましたとおり、能登地域におきましては既に公費による緊急解体が始まっているところです。環境省といたしましても、こうした取組を全面的に支援することとしております。

 解体に当たっては、解体が私有財産の処分であることから、公費で行う場合であっても、所有者自らの申請又は所有者の同意を得てから進めることになります。所有者の全員又は一部が特定できない損壊家屋等については、お話しいただきました所有者不明建物管理制度を活用することで解体を実施することができます。

 他方で、御指摘のように、倒壊の危険性があるなど、所有者不明建物管理制度を活用する時間がなく、一部の所有者の意向確認ができない事情や、家屋の状況等を勘案してやむを得ないと判断される場合には、相続人代表者等から所有権に関して責任を持って対応する旨の宣誓書等の提出を受けることにより解体を行うことも考えられます。環境省が作成いたしました被災自治体向けの公費解体・撤去マニュアルにおきましてもその旨を記載させていただいているところでございます。例えば、平成二十三年東日本大震災での仙台市、平成二十八年熊本地震での熊本市、平成三十年七月豪雨での倉敷市では、宣誓書等の提出を受けて解体を行った事例もございます。

 環境省では、災害廃棄物に関する知見、経験を有する環境省職員や自治体職員の現地派遣による技術的支援等も実施しており、現場の実情を十分に踏まえながら、石川県が示した令和七年十月までの解体撤去の完了を目指し、緊急解体の加速化も含めて全力で支援してまいります。

大口委員 マニュアルどおりいけば本当にこれほど簡単なことはないんですけれども、実際、現場においてしっかりこのことが徹底されるようにお願いしたいと思います。

 また、所有者不明土地対策の中核を成す相続登記の義務化の施行まで残り三週間を切りました。国民に大きな影響を与える制度改正であって、昨年実施した認知度調査では相続登記の義務化を詳しく知っている、大体知っていると答えられた方が約三二%にとどまる。認知度がなお不十分であると考えます。認知度を向上させるため、例えば、相続に関心の高い層に焦点を当てるなど、めり張りがある周知、広報を実施するべきと考えます。

 また、石川県の司法書士会の方々との懇談の際も、毎日のように被災者から相談を受けておられるわけでありますが、その被災者から、四月に入ると、直ちに相続登記をすることは無理だと思うがどうなのかというような相談もございます。不動産を相続で取得したことを知った日から三年以内にやればいいとか、あるいは正当な事由だとか、こういう正しい内容の周知も必要であると考えるわけでございます。

 法務省として、相続登記の申請義務化が被災者を含む国民に広く定着するよう、国民各層に応じた効果的な周知、広報を展開していくべきと考えますが、法務大臣の所見をお伺いします。

小泉国務大臣 所有者不明土地対策の中核を成します相続登記の申請義務化、来月から施行されます。今御指摘がありましたように、相続により取得したことを知った日から三年以内に相続登記を申請することを法律上の義務とするものであります。

 そしてまた、御指摘のとおり、なかなかこれが周知が進んでいないというのも実態でございまして、大体知っている、詳しく知っている、合わせて三割強にとどまっています。

 我々もそこを何とかしたいということで知恵を絞っていますが、おっしゃるように、やはり、相続というのは二十代、三十代の頃は余り意識がなくて、四十、五十、六十になると相続というものが現実化してくる、そういう世代をターゲットにして絞って、広くというよりもむしろ絞って、深く突き刺さる広報のやり方がないのかということを、ここ数か月、一生懸命検討しています。専門家の知恵を今かりようとしているところでございまして、そういう新しいPR、CM、広報の在り方、何とか編み出したいというふうに思います。

 被災地の方々には、履行期間は三年間だということを、この制度内容をしっかりとやはり周知しなければいけない。努力を続けたいと思います。

大口委員 今、社会経済のデジタル化が進んでいます。不動産取引においても、非対面による電子契約も行われています。不動産取引を完成させるのは不動産登記であることは言うまでもありませんが、不動産登記のオンライン申請を進めていくために、不動産取引全体のデジタル化を図る必要があります。

 しかし、現在の不動産登記のオンライン申請は、物権変動を証する登記原因証明情報、司法書士への委任状、住民票、印鑑証明といった添付情報を書面で作成、入手した上で、司法書士がこれをスキャンしてPDF化し、デジタルデータで作成した申請情報にPDFを添付して登記所にオンラインで申請を行い、書面の原本を登記所に別途送付するという、いわゆる別送方式を取ることが多いと聞いています。

 そこで、不動産登記のオンライン申請の現状はどのようなものか、また、なぜ別送方式が取られることが多いのかについて、法務省にお伺いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 不動産登記の申請につきましては、全体の約七六%がオンラインにより申請されていますが、そのほとんどは、委員御指摘の、いわゆる別送方式により行われているものと承知をしております。

 このような方式が用いられることが多い理由は、実務上、登記申請に必要な登記原因証明情報や委任状が書面で作成されることが多いことから、登記所に書面を郵送又は持参してもらう必要があるためと承知をしております。

大口委員 不動産の権利を確定させる意義がある不動産登記において、当事者の真意に基づいて取引がなされることを厳格に確認する必要があるため、従来、登記原因証明情報や委任状が書面で作成され、これに実印で押印がされ、その印鑑証明をもって文書作成の真正が確認されてきました。

 しかし、デジタル社会が進展して、文書データにマイナンバーカードで電子署名することにより、実印での押印に代えることができる時代になりました。今や、二月一日時点でございますが、国民の七三・三%がマイナンバーカードを保有しております。これからもこの保有率は高まっていくと考えます。

 今後は、不動産登記においてもマイナンバーカードによる電子署名を用いて添付情報を作成し、紙ベースでのやり取りのない完全なオンライン申請、フルオンライン申請を普及させ、真の意味でのオンライン化を図っていく必要があります。

 私は、日本司法書士連合会や日本司法書士政治連盟の方々とフルオンライン申請の促進について勉強会を行い、電子署名以外に実務において何が問題になるのかについて検討した結果、次のような課題があることが明らかになりました。

 例えば、売買に基づく所有権移転登記においては、登記原因証明情報として、売買契約が締結されることと代金が支払われることを売主自身が認めているという情報が必要になります。

 そのため、登記原因証明情報は代金決済後に売主が作成することになりますが、紙ベースの登記原因証明情報であれば、日付が空欄の登記原因証明情報の原案を用意しておき、売買契約締結時に売主がこれに実印で押印し、書類一式を司法書士に預けてその後の手続を任せてしまい、後日、代金決済されたときに司法書士に日付を記入してもらって、登記原因証明情報を完成させることが可能になっています。

 これに対して、登記原因証明情報を電子データで作成しようとすると、日付を空欄にして電子署名することが不可能であるため、売主は必ず代金決済後に自ら電子署名をしなければならず、司法書士に任せることはできません。そのため、登記原因証明情報は、電子データよりも書面で作成する方が売主にとって利便性が高い状態になっていることが判明しました。

 そこで、登記原因証明情報を電子データで作成する場合であっても、売主が紙ベースの場合と同様に司法書士に手続を任せるようにすれば、フルオンラインの登記申請が促進されると考えます。

 もちろん、登記原因証明情報の作成の真正を確保する必要があるため、具体的な運用方法は慎重に定めなければなりませんが、司法書士が不動産取引に立ち会った上、当該司法書士が売主から当該取引についての登記原因証明情報を電子データで作成することにつき具体的な委任を受けているような場合には、代金決済後に売主自身が電子署名するのではなく、司法書士が電子署名をして登記原因証明情報を作成することができると考えられるのではないでしょうか。

 このように、売主の具体的委任に基づいて司法書士が電子データで作成する登記原因証明情報を適法なものと認め、フルオンラインによる登記申請を促進する方策を取ることについて、不動産登記制度上問題がないか、法務省にお伺いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、不動産登記法の解釈として、登記原因証明情報は権限を有する作成者により真正に作成されたものである必要があり、売買による所有権移転登記の場合には、一般に売主が登記原因証明情報を作成する必要があると解されております。

 もっとも、売主自身が自ら作成していなくても、売買契約による所有権移転の事実があり、司法書士が売主本人からその所有権移転の登記をするための登記原因証明情報を電子データで作成することについて具体的な委任を受け、その委任に基づいてこれを作成した場合には、売主が登記原因証明情報を作成したものと評価することができると解されます。

 そのため、委員御指摘のような方法で作成された登記原因証明情報を適法な登記原因証明情報と認める余地はあるものと考えられます。

大口委員 一方、オンライン申請の促進に関しては、いわゆる資格者代理人方式の導入をめぐって司法書士の皆さんの間でも賛否両論がありました。大きな議論になりました。

 先ほど私が提案した方法は資格者代理人方式とは異なるものと考えておりますが、法務省の見解をお伺いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる資格者代理人方式とは、司法書士が登記権利者及び登記義務者から登記原因証明情報等の添付情報を受け取り、それが原本であることを確認した上で、添付情報をPDFファイル化し、当該司法書士の電子署名を付してオンライン申請をするというものでございます。

 この資格者代理人方式の導入につきましては、本来添付情報の作成の真正を確認すべき登記官がこれを行わず、司法書士にその確認の負担を課すことが適当かといった課題が指摘されているものと承知をしております。

 これに対しまして、委員御指摘の方法は、司法書士が登記義務者である売主から委任を受けて、売主に代わって登記原因証明情報の原本を作成し、登記官がその作成の真正を確認するものでありまして、資格者代理人方式とは異なるものと理解をしております。

大口委員 以上のように、不動産登記のフルオンライン申請を促進するため、売主の具体的な委任に基づいて司法書士が電子データを作成する登記原因証明情報を適法なものと認める仕組みを提案をしまして、民事局長から前向きの答弁をいただきました。

 不動産登記申請のフルオンライン化を推進すれば、ペーパーレス化という法務局の行政の効率化と、PDF化作業の手間が不要になるという司法書士業務の効率化が図られ、最終的には不動産登記制度を利用する国民の利益につながると考えます。

 私の提案に対する検討を早急に進めていただいて、この不動産登記申請のフルオンライン化を強力に推進していただくべきであると考えますが、法務大臣の決意をお伺いします。

小泉国務大臣 法務省としましても、不動産登記申請をオンラインで完結させる、いわゆるフルオンライン化の促進は、手続の円滑化、業務の効率化の観点から重要な課題であると認識しております。

 その中で、委員から貴重な御提案をいただきました。今事務局からも答弁させていただいたように、検討の余地が大いにあると思います。不動産取引と司法書士業務の実情を踏まえた、非常に綿密に分析された、大変有意義な提案であるというふうに受け止めております。委員の御提案については、関係団体と連携して、実現に向けた具体的な検討を進めてまいりたいと思います。

大口委員 大臣、よろしくお願いしたいと思います。

 本年二月、大臣は法制審議会に成年後見制度の見直しに関する諮問をされました。現行の成年後見制度は、民法を改正して、平成十二年四月に施行されたわけでありますが、その後、その成年後見制度については、自己決定権の尊重を重視するために本人の意思決定の支援に取り組むべきであること、また、障害者権利条約第十二条に抵触するのではないかとの指摘もある中で、私も法案提案者の一人となりまして、平成二十八年には議員立法として成年後見制度利用促進法が成立しました。

 この利用促進法第三条一項で、基本理念として、成年後見制度の利用の促進は、成年被後見人等が、成年被後見人等でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてのその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障されるべきこと、成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと及び成年被後見人等の財産の管理のみならず身上の保護が適切に行われるべきこと等の成年後見制度の理念を踏まえて行われるものとすると規定されております。

 政府におきまして、これらの理念に沿って、厚生労働省、成年後見利用促進専門家会議において様々な検討が行われ、成年後見制度利用促進基本計画の第一次、そして第二次が制定され、令和四年三月に閣議決定された第二次成年後見利用促進基本計画では、この成年後見制度の見直しに向けた検討を行う、こういうことが定められておって、令和四年六月に成年後見の在り方に関する研究会が設置され、本年の二月、報告書を作成していただいたわけでございます。

 今後の成年後見制度の見直しをする際にも、基本的な理念として、自己決定権の尊重の理念と本人の保護の理念との調和を図っていくことが一層重要であると考えますが、この点について大臣の所見をお伺いします。

小泉国務大臣 成年後見制度は、判断能力が低下した方の権利利益を擁護するための制度であり、まず、本人の保護の理念、これが出発点になります。

 他方で、委員御指摘のとおり、成年後見制度においては、本人の自己決定の尊重の理念や身上の保護の理念、こういったものとの調和を図っていく、そして、更に申し上げれば、後者に更に重点を置いていく必要があるのではないかという指摘も行われているところであると承知しております。

 今回の成年後見制度の見直しに当たっては、そのような様々な御指摘があることを踏まえ、本人の尊厳にふさわしい生活の継続やその権利利益の擁護などを一層図る観点から検討を進めていく必要があると認識しております。

大口委員 それこそ、我が国において高齢化が進んでいる。身寄りのない単身の高齢者も増えておられます。また、認知症の方の支援の問題、そしてまた、知的障害のお子さんを持つ親御さんが、親のその死後において子に対する支援体制をどうするのかという親亡き後の問題、そのほか様々な障害により判断能力の不安を抱えている方の保護と支援の問題に取り組むことが極めて重要でございます。

 そういうことから、私も、それこそ議員立法として平成二十八年、田村先生、盛山先生、勇退しました高木美智代議員等々と本当にこの法案を成立させて、そして、やっと成年後見の制度の、この制度自体を見直す、民法の改正がいよいよ視野に入ってきたということで、これまで取り組んでこさせていただいて、感慨深いものがございます。

 これらの方々がどこに住んでいても地域において尊厳のある自分らしい生活を継続することができるように、社会全体で本人の権利擁護の実現をすることが重要であります。そういう点で、しっかり、この権利擁護は、成年後見制度だけで実現することではなくて、地域連携のネットワークを構築をして、そして地域共生社会の実現を目指して、地域で、チームで実現していくということが重要であるわけでございます。

 成年後見制度は、権利利益の擁護においても重要なものであると位置づけられるべきでございます。しかし、令和四年の成年後見制度の利用者の合計は二十五万人弱にとどまっております。更にこの利用促進を図る必要がございます。しかし、なぜその利用が進まないのかというと、いろいろな問題があるからでございまして、そこをやはり制度改正で対応していく必要があるわけでございます。

 現在、成年後見制度については、後見、保佐、補助のうち、後見の類型が圧倒的に利用されているわけでございます。しかし、成年後見人に広い、広範な代理権、取消権を付与する後見型に過度に依存するということは、これは本人の自発的意思の尊重という観点から問題が多いわけでございます。やはり自己決定ということをどう支援していくかということが大事でございまして、本人の権利擁護のために、その判断能力や制度の利用の必要性に応じて、必要な範囲で制度を利用したいというニーズ、これに応えていく制度にすることなども検討する必要があると考えます。

 いずれにしましても、この二月の在り方研究会の報告書、本当にいろいろな御努力の結果、こういう形の整理になったわけでございますけれども、それを本当に法制審議会におきましてしっかり検討していただくということを期待したいと思います。

 成年後見制度の見直しは、喫緊の課題でございます。これらの点につきまして、法務大臣の所見をお伺いしたいと思います。

小泉国務大臣 先生のこれまでの御尽力、御指導に心から敬意を表したいと思います。

 その上で、今御指摘がありました様々な問題点、例えば、遺産分割のために利用したいというときでも、分割の後も、判断能力が回復しない限り利用をやめることができない、あるいは、本人の状況が変化しても後見人の交代が実現しない、そういった問題点も指摘されております。こういった点を大きなポイントの一つとして踏まえながら、見直しを進めたいと思います。

 第二期成年後見制度利用促進基本計画に見直し検討の記載がございますが、これは対象期間が令和八年度までとされておりますので、こうした期間の記載なども踏まえて、現行制度に対する指摘を含め、幅広い議論がスピード感を持ってなされるよう努力していきたいと思います。

大口委員 それこそ世界の潮流というものもございます。それこそ、やはり自己決定権の尊重、それから障害者権利条約の第十二条に基づく指摘もございます。一方で、やはり、対象となる方々の権利擁護、これをいかに行っていくか。虐待の問題もあるし、また様々な面で被害を受ける対象にもなってくるわけでございます。そういう点で、それをいかに調和していくかということは非常に難しい課題があるわけでございます。そういう点では、令和八年度という目標に向かって、これから私どももしっかりこの議論を進めてまいりたい。

 また、やはり現場の様々な皆さんの声を聞いていくことが大事だと思います。当事者の方々の声、そしてまた、それを支えておられる方々の声、あるいは、いろいろな専門職の方々の声もしっかり承って、そして議論をしてまいりたいと思います。では、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 おはようございます。よろしくお願いいたします。

 通告に従いまして、早速質疑に入らせていただきます。

 法務大臣、二階派の志帥会の資金パーティー及び政治団体について伺っていきますが、ノルマを超えた分、過去五年間で幾らだったか。あわせて、今回のキックバック問題が表面化しなかったら派閥を抜けることはしなかったという認識でよろしいでしょうか。

小泉国務大臣 いろいろ前置きはありますが、端的に、私自身についてのことでございますので御答弁申し上げます。

 派閥のパーティー券の目安というふうに私どもは呼んでいましたけれども、それを超えた部分については、こういった金額については派閥から寄附を受けるという形が取られていました。具体的な金額を申し上げますと、令和四年が二百十八万円、令和三年が同じく二百十八万円、令和二年が二百万円、令和元年が百九十四万円、平成三十年が二百四万円、五か年合計額が一千三十四万円でございました。

 ただ、私に対する志帥会、二階派からの寄附については、支出側、収入側のいずれにおいても収支報告に記載され、私自身、収支報告書について、法令にのっとり適正に処理しているものと認識しております。

 また、今回の問題が表面化しなければ志帥会を退会しなかったのではないかというお尋ねについては、仮定のお尋ねであり、お答えすることは難しいですが、私は、検察に関することを含む法務行政全般にわたって、常に厳正公平、不偏不党の立場を求められているものと考えております。そして、私自身、法務行政のトップとして、これまでその考えをひとときもゆるがせにせず、全身全霊を懸けて法務行政に取り組んできております。そのことを御理解いただきたいと思います。

鎌田委員 タイミング的にどう見ても、この問題が明らかになって、表面化をして、志帥会を抜けられたんだろうというのが大方の国民の皆様の見方だと思います。あわせて、捜査が続いている中で、そういう方が法務大臣にいらっしゃるというのはどうなのかという疑問も大臣の耳にも届いていると思います。ですが、今の御答弁で、清廉潔白に当たっていくということですから、それはそれとしてお聞きをさせていただきます。

 私、先日、参議院の予算委員会で、小泉法務大臣が我が党の蓮舫議員からの質問に対して御答弁を幾つかされているんですけれども、聞いていて、非常に驚きというか、そういう御答弁をされるのかと。正直といえば正直なんでしょうけれども、余りに生々しいというか露骨というか、そういう御答弁が続きましたので、その辺、確認させていただきたいんです。

 まず、小泉龍司後援会というその他の政治団体がありますが、これは資金集めの団体ではなくて、票集めに御尽力されている団体であるかということ。それから、龍の会、これは大臣が御答弁でおっしゃっていましたが、資金集めのチームとおっしゃっていました。これは間違いない、よろしいんですね。

小泉国務大臣 はい。後援会は、政治活動をサポートしてくれる、そういう団体、集まりでございます。一方で、私は、個人的なことですけれども、過去九回選挙を戦いまして、うち七回は無所属で戦いましたので、もう個人献金が命でありました。そして、その状態は今も変わっていませんけれども、その個人献金を募ってくださる方々がいるわけです。それが龍の会。そこに会長さんがおられ、幹事がいる。そういう活動をしてくれる方々、個人献金を募ってくれる方々、これを龍の会として活動していただいています。

鎌田委員 あのときの答弁を聞いていた多くの方々は、龍の会のチームがお金集めをして、そして、龍の会からその他の政治団体に多額に寄附されていますよね。こちらの方はその他の政治団体ですから、領収書の添付ですとか、それから何に使ったかというものも制限がされています、違いがあります。

 そうすると、金集めするところで金集めして、票集めしてくれるところで票集めして、こっちからこっちにお金が渡っている、還流されているんですよね。そうすると、票集めしてくれる人たちのところに、使い道が分からない、記載がされていない収支報告書があって、何に使ったか分からなくて票集めをしていると。済みません、これはネット上で多くの方が、法務大臣のあの答弁を聞いて、金で票を買っているの、あの答弁を聞いた方々はですよ、そういう誤解を、多分、大臣にしたらそんな本意ではなかったと思いますけれども、そういう誤解を招くような、参議院の予算委員会で答弁が残っているわけですよ。

 ですので、その点について、大臣、改めて、あの当時の答弁を振り返って、金集めのチームと票集めのチームとある、そして、金集めのチームからは、私は後援会三つがあって、そこにお金を流しているんですというような趣旨をおっしゃっていました。その辺、ちょっと振り返ってみて、あの答弁を私は撤回された方がいいんじゃないかなと思うんですけれども、いかがですか。

小泉国務大臣 ちょっと説明を急ぎ過ぎて、舌足らずだったかもしれません。

 政治活動をする団体がありまして、そして三地区に事務所があります。その事務所の経費、こういったものがかかります。後援会自体は資金集めをしていませんので、個人献金を募ってくださる龍の会で集めていただいた献金の中から、後援会活動に使われる事務所経費、そういったものが多いわけでありますけれども、封筒代とか国政報告の印刷代とか、そういうものもありますけれども、正当な政治活動に使われるものとして龍の会から後援会に寄附をしていただいて、それによって賄うわけであります。それをちょっと縮めて言い過ぎたために誤解が生じたのかもしれませんが、実態はそのままであります。

 そして、それをそのまま収支報告に書いているわけであります。この団体が集めました、この団体からこちらの団体に資金を寄附しました、この団体ではこういうことに使いました。これは、法律に基づいてしっかりと処理をしているわけであります。

鎌田委員 改めて聞きますけれども、龍の会というところが資金集めのチーム、役割を担ってくださっている。ほかにはないですか。

小泉国務大臣 限られた時間の中でしたので、我が政治活動に関わる全体像を申し上げる時間は、あの予算委員会ではありませんでしたけれども、本庄市には、本庄の後援会、そして本庄泉の会、こういう団体はございます。仕組みは同じです。同じように役割を分担していただいています。

鎌田委員 ちょっとよく分からないんですけれども、調べると、国会議員政治関係団体というのは、樹の会、それから今おっしゃった泉の会、そして龍の会、これが国会議員の政治関係団体として登録されています。今の、その中にある泉の会、泉の会というのは参議院の予算委員会でも今もおっしゃらなかったんですが、この泉の会というところは、令和四年の収支報告で、去年選管に収受されていますけれども、四百四十四万四千五百六十八円の収入があるんですね。この泉の会から龍の会に三百五十万円寄附されているんですよ。だから、お金の流れが、大臣の周りで、大臣を支えるためとはいえですよ、お金の流れがいろいろなところからいろいろなところに流れ流れているんです。

 この泉の会というのは国会議員政治関係団体ですから、きちんとこれもお金集めの団体だということでよろしいんですね。龍の会一つだけじゃないですね。

小泉国務大臣 それは、今申し上げたとおり、本庄市の後援会と、本庄市にはもう一つ、泉の会がありますと先ほど御答弁申し上げたとおりであります。後援会と龍の会、全体の後援会、龍の会の役割分担と同じ、本庄市だけは、独自性が強く言われる地域でございますので、龍の会ではなくて、泉の会、本庄の後援会、こういう形で活動が成り立っているわけであります。

鎌田委員 小泉龍司女性の会もございますよね。こちらの方は、三百四十九万何がしというお金がずっと使われないで、そのまま余り出入りがないようなんですけれども、結局のところ、大臣の国会議員政治関係団体は、樹の会、泉の会、龍の会、この三つ。それ以外はその他の政治団体……(小泉国務大臣「もう一つあります」と呼ぶ)どうぞ。

小泉国務大臣 国会議員関係団体、もう一つ、埼玉県自由民主党十一区支部があります。

鎌田委員 ですので、そうすると、その自民党の総支部さんは私は今ちょっと取り上げていないんですけれども、参議院の予算委員会のときに、龍の会でお金を集めて、そして、ほかにお金を流してそっちで票集めをしてもらっているという、言葉足らずというふうにおっしゃいましたけれども、大臣の周りでお金集めをしている国会議員政治関係団体が三つあって、そして、そのほかに、その他の政治団体というものが更に幾つもあって、お金が行ったり来たりしているわけです。

 その他の政治団体のところは、先ほども申し上げたとおり、収支報告に記載をするというところでまた違いがありますので、例えばなんですけれども、小泉龍司後援会、これはその他の政治団体。公職の候補者の氏名もございません。大臣の名前、ないです。小泉龍司後援会さんというのがあります。ここは収入が年間にして八百万を優に超えているところなんですけれども、これが、大臣がおっしゃった、票を集めてくれるチームだとおっしゃったんですよ。これを、私は蓮舫さんと同じ考えで、その他の政治団体にしておきますと、この中身を見ると、支出の欄が空欄が非常に多いんですよ。収入が八百万を優に超えているところで、支出で何に使われているか分からないというのが多いんです。これはやはり、このままでは私はよろしくないと思います。

 参議院の予算委員会でも大臣は、それは検討する余地はある、一回検討はしたこともあったけれども、なかなか今できていないんだという答弁でした。でも、このように多額のお金が入ってきて使われているわけですから、票集めとして。これは改めるべきじゃないですか。国会議員関係の政治団体に改めるべきじゃないですか。

小泉国務大臣 そうしようとしますと、その後援会長さんに、あのときもそういう議論になりましたけれども、後援会長さんに降りていただいて、私がその後援会の代表者になれば、即、国会議員関係団体にはなりますが、そうなると、龍の会で浄財を募らせていただいて、そして、こちらの後援会で草の根の政治活動をするときに、それを移動して賄っているという資金の流れが消えてしまうわけですよね。消えてしまいます。それで、私はジレンマだというふうに申し上げました。何とかそれを解決する方法がないのかなというふうには思いますけれども。

鎌田委員 ですから、ジレンマという言葉は私はふさわしくないと思いますよ。

 これは小泉龍司後援会のところで、私も、例えば資金管理団体、それから後援会があります。ただ、資金管理団体の方は、寄附をいただいたりしたら、そこで必ず領収書も発行して、寄附控除の対応もする。でも、私の鎌田さゆり後援会というのはお金の出入りはありませんので、領収書は必ず資金管理団体の名前でもって切っています。

 大臣のような、こういうお金の出入りというのは、私からすると、これは疑惑を、ただ疑いを受けるだけで、こうやって一万円単位で寄附してくださっている方が大勢いらっしゃる中なのに、支出のところで不明なところがあると、この方々にだって申し訳ないと思いませんか、大臣。

 だから、私が申し上げているのは、この小泉龍司後援会というものを、八百万を超える収入があるんですから、何に使ったかが分かるように、別に後援会をつくって、今、後援会長をされている方、代表者の方の名前がありますけれども、その方には、疑惑を持たれるような会じゃないところでしていただいて、そして、こちらはこちらで、きちんと国会議員政治関係の団体として登録をして、そしてお金の使い道が一〇〇%明快になるように、そういうことをすべきじゃないですか。そうじゃないと、これは引きずったまま、疑惑のままでいくんじゃないでしょうか。

小泉国務大臣 繰り返しになってしまいますが、資金を募ってくださる団体とサポートしてくださる団体があって、こちらの資金がこちらに移動しているということは実態そのものなんですね、そのもの。ですから、それを見えなくするということはできないわけであります。

 一方で、では、そのまま、後援会を残したまま、これを国会議員関係団体にすればいいじゃないか、後援会の会長に私がなるというのもちょっとトートロジーでおかしなことなんですが、私が代表者になればいいじゃないかという御議論はありますが、それは、これまで頑張ってきてくださった、今も頑張っていらっしゃる後援会長さんたちとのやはり意見のすり合わせは必要になります。また、そういった方々の心情を思うと、機械的に整理をするというわけにはいかない。そこで、ジレンマという言葉を使わせていただいているわけです。

鎌田委員 今日、資料配付、お許しをいただきましてお配りをさせていただいているんですけれども、これは、大臣の龍の会それから小泉龍司後援会の住所のところをグーグルマップで見てみますと、司法書士さんと行政書士さんの事務所はこちらですという矢印の下に大臣の看板が立っていて、その先のところに白い一軒のお宅があって、これはちょっと暗くてよく見えないんですが、よく目を凝らして見てみますと、この白いうちの一階部分に小泉龍司後援会という、ちゃんと標識がありますね、表示が。それから、ポスターらしきものもあります。

 自宅兼事務所というふうに伺っておりますが、ここは、龍の会の住所、それから小泉龍司後援会の住所、ここなんですね。そして、あと、この司法書士さん、行政書士さんの住所も同じなんです。これは自宅兼事務所なんですけれども、これはお借りになっているんですか。

 併せて伺いますが、収支報告の中に、有限会社キタボリさんというのが、毎月五万円支出されているんですね、龍の会から。この五万円というのはこの事務所家賃なんでしょうか。

小泉国務大臣 はい、そうです。その五万円は家賃として支払っています。この建物の二階部分が私の後援会事務所になっています。一階は、司法書士の事務所になっています。二階部分の家賃ですね。

 住居は、深谷市にある私の住居は、住居兼、一階が事務所、二階が私の自宅というふうになっています。

鎌田委員 この点についてはもう最後にしますけれども、改めて、重ねて申し上げます。

 大臣のいわゆる収支、お金の流れを記載、収支報告書として提出をしている様々な書類を見ますと、やはりこれは、国民の目に、いやしくも政治資金規正法にうたわれている、予算委員会でも大臣はおっしゃられました、そういう疑義を持たれないようにするために、早急に、どこからどう見ても大丈夫ですというような形に、これは何に使いましたとか言えるようにしないといけないと思いますので、そこのところをちょっと改めて伺ってよろしいですか。参議院の予算委員会では、検討の余地あります、検討しますということを重ねて発言されていましたので。

小泉国務大臣 私の例でお話をさせていただいていますが、この制度は広く各議員の先生方にも関わっていることであります。どういう議論が行われているのか、そういったものも注視しながら、私自身は考えを巡らせたいと思います。

鎌田委員 これ以上はやりませんが、考えを巡らすんじゃなくて、とっととやっていただきたい。早急にやっていただきたい。法務大臣ですから。

 私たちはそういう国民の監視の目にさらされています。ですから、私のことになりますが、私の立憲民主党の宮城県第二区総支部は、一円以上の領収書の開示請求が出ました。日々それをやっているので、出されてもすぐ出せます。だから、大臣もそうされているとは思いますけれども、この状態では分かりません、全く。一千万近いお金が何に使われたか分からないというのはおかしいですよ。ですから、考えを巡らすのではなくて取り組んでいただきたいと思います。

 では、次に……(小泉国務大臣「ちょっといいですか」と呼ぶ)しゃべりたい。どうぞ。

小泉国務大臣 済みません、短く。

 私も、二〇一七年以降は、一円以上の領収書は全て取ってあります。保管してあります。

鎌田委員 であればなおのこと、小泉龍司後援会というのを政治関係の団体に私は早急になさった方が、大変不遜ですけれども、大臣のためにも、それから法務大臣としてのお立場にある方ですから、なさった方がよろしいかと存じます。一円以上、お疲れさまです。あれ大変ですからね。

 今日は大臣の所信への質疑ということですので、また通告に従っていきますが、性同一性障害特例法の違憲決定について大臣は所信で述べられていらっしゃいます。性同一性障害特例法の違憲決定への対応について、厳粛に受け止める必要がある、関係省庁と連携して引き続き所要の検討に入ると所信にございました。

 これまでの受け止めと違憲の決定が出た後の受け止めは違うんでしょうか。あわせて、具体に何をどのように検討するのか、お知らせください。

小泉国務大臣 この受け止め方は、それぞれの皆さんの心の中でどう受け止められるかということでありますけれども、私は大変深く受け止めました。また、真摯に受け止めなければいけない、そういうインパクトを受けたことは事実であります。

 また、これは議員立法でなされてきた仕組みでもありますので、立法府での議論、また立法府での考え方、そういったものもしっかりと踏まえながら、法務省としても検討を進めなければいけない、このように思っております。

鎌田委員 議員立法だということはもう皆様御存じです。立法府の動向を注視しつつというのは、私はちょっといただけないなと思うんですね。別に、議員立法ででき上がった法律であっても、今大臣がおっしゃったとおり、これは重くて真摯に受け止めなくちゃいけないということで、そうしたら、法務省として、大臣として、これを重く受け止めた以上、この特例法の要件のうちの特に四番目、生殖機能の除去、ここについての最高裁の違憲決定ですから、自らここのところについて、もちろん、これは実務上混乱が起きる可能性もありますので、大変な作業になると思いますけれども、そこにこれから着手をしていくということが、司法の判断を受けて、法務省からそういうメッセージが出されても私はいいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 法改正に取りかかる以前にということですよね、その間の対応として。

 それは、法務省としましては、昨年十月二十六日付で、法律の改正までの間は、違憲とされた要件を満たしていない場合であっても、その余の要件を満たすとして性別の取扱いの変更を認める審判がされていることが明らかなときは、戸籍上の性別の変更を可能とするとの内容の事務連絡を発出し、法務局、地方法務局を通じ、全国の市区町村に広く取扱いを伝達したところでございます。

 今、違憲とされた生殖不能要件がないとした場合の実務的な課題や対応等について、こうした最高裁の違憲決定を受けて、引き続き関係省庁において必要な検討を進めたいと思います。

鎌田委員 多くの方々、トランスの方は一割いるとも言われています。十人に一人ですよね。その方々が日常生活を送っていく上で、生きづらい、それから幸せを追求できない、そんなことがあってはならないわけですよ。

 まして、この特例法に定められている要件に基づいて、それを満たさないと性別が変更できない、そういう時代を生きてきた方々は、もしもあの時代にあの要件がなければ、自分の体にメスを入れることは絶対にしなかった、したくなかったということを私は多くの方から伺っています。

 今日はこれは質問しませんが、要望にとどめますが、その手術を受けたことによって身体的にどのようなダメージを受けているとか、それから精神的なダメージ、さらには、その後ホルモン注射を打ってホルモン治療をなさっている方々の財政的な負担ですとか、これは恐らく法務省としては私は調査はなさっていないというふうに認識しています。これからでも結構です。最高裁での違憲決定が出たんですから、当事者の方々から、どのような負担が発生していて、心身共にどのようなダメージを受けているのか、これから是非調査をしていただきたいという要望を述べさせていただきます。

 次になんですが、関連して、いわゆる誰でもトイレ。

 男性トイレ、女性トイレ、それから障害のある方が車椅子で使用する大きいスペースの多目的トイレというものは一般的に我々目にすることがありますけれども、トランスジェンダーによって、男性用のトイレに入りたくても入れない、入るところがない、そういう方々も含めて、誰でもトイレというものを法務省がまず率先して、法務省の本省でもいいです、法務省の関連施設でもいいです、どこからか率先して誰でもトイレを造って、そして、トランスジェンダーは、お互いそれぞれの性自認の違いですから、WHOのICD11でも、もうこれは病気じゃありません、それぞれその人の状態ですということを発表されています。今、厚生労働省は和訳で一生懸命ですけれども、そういった空気醸成というものを法務省からつくっていかれませんか。いかがでしょう。

小泉国務大臣 前提として、この一つ前の御質問にありましたように、最高裁の違憲決定がありましたので、その当事者であられた方々に対して我々が思いをはせるということは大切なことだと思います。その思いのはせ方の一つとして、誰でもトイレという御提案が今あったと思います。

 今日初めて聞いた言葉なので、不勉強で申し訳ありませんが、研究したいと思います。

鎌田委員 大臣、もう一回聞きます。

 是非研究してください。初めて知った、新鮮だと思います。誰でもトイレというのは、いわゆる多目的トイレとは違っていて、例えばパスポートでいうと、男性、女性、海外ですとそのほかにXとあって、男性でも女性でもないその他の性別というパスポートがあるんですが、それと同じように、日常生活、公園とかにいっぱいトイレがありますけれども、まず法務省関係のところから、研究していただいて、是非、一気にやってなんて言いません、どこからか、まず法務省関係のところで、誰でもトイレ、是非ちょっと研究して、更にその次、実施に向けて、お考えがあったらうれしいなと思うんですが、いかがでしょう。

小泉国務大臣 真摯に研究します。

鎌田委員 真摯に研究して、是非、第一号の法務省からの誰でもトイレができたという報道に触れることを期待したいと思います。分かりました。

 続きまして、再犯防止に向けた取組と総合法律支援の充実強化について伺います。これも所信で述べられていらっしゃいました。

 まず、併せてちょっと二つ伺います。再犯の原因として最も大きな課題、これは何だと法務省として認識していらっしゃるか。あわせて、再犯者のうち、何らかの障害のある人、あるいは年齢層別、これの割合を教えてください。

小泉国務大臣 再犯に至る原因は様々考えられますけれども、あくまで参考になる統計データとしては、刑務所に再び入所した者のうちの約七割が再犯時に無職であった、また、適当な住居を確保せずに釈放された方の二年以内再入率、これは住居確保をしていた方の約二倍であること、三番目に、高齢者の二年以内再入率は他の世代に比べて高く、知的障害のある受刑者については一般に再犯に至るまでの期間が短いというような統計はございます。

 こういったものから、ある程度の推測になりますが、就労や住居を確保するに至っていない、必要としている福祉的サービスに到達していないなどが再犯の大きな原因になっているものと考えられます。

鎌田委員 ありがとうございます。きっちり、法務省の方、ちゃんと大臣にお伝えをいただいて、ありがとうございました。

 おっしゃるとおりで、やはり仕事がない方、刑を終えて出てきても仕事がない、それから家がない、そして年を取っている、それから、知的が多いんですけれども、やはり何らかの障害を持っている、そうすると、また同じ、万引きだったり窃盗だったりしてしまう。そのデータは、私も犯罪白書を拝見をして、きっちりデータを取っていらっしゃるのも見ました。

 その認識も大臣はお持ちですので、そこでなんですが、今大臣の答弁の中で福祉という二文字がちゃんと入られていて私はよかったなと思うんですが、地域生活定着支援センターというものがございます。こことの連携強化を図っていかないと、無職、家がない、高齢者、知的障害、この方々の再犯というものはやはりまた横ばいで、減っていくということはなかなか難しいと思うんですね。この地域生活定着支援センターとの連携の強化、これを今後どうやっていくかということをまず伺います。

 あわせてなんですが、刑事裁判の中で、地域生活定着支援センターの協力を得て、更生支援計画書を作成するなどして、福祉的な支援を可能にするべく、福祉関係者も関わりを持つように努めているんですけれども、裁判で実刑になると、そこでその視点はもうどこかに行っちゃって、刑事の処遇の現場に引き継がれることがない可能性があって、更にその先の出所後の福祉関係者にも刑事裁判の内容について知らされることがなくて、そこに断絶が起きているという認識は、法曹関係の方々からも指摘を受けているところであります。この引き継いでいる制度、令和五年度から、どうするかということも併せて伺いたいと思います。

 前半の部分と後半の部分と。

小泉国務大臣 犯罪者に対して福祉的なアプローチをかけていくということは大変重要なことであり、また、現場で大きな力を発揮してきていると思います。それを制度的に定着させようというのが地域生活定着支援センターの考え方だというふうに思います。受刑者の福祉的支援等の処遇に活用する取組が、令和五年度から全国の刑事施設において始まっています。

 こういった取組をしっかりと進める中で、今おっしゃった、断絶が起きているのではないか、刑の確定後には基本的にこの概念が及んでいなかったために、結局、外へ出たところで切れてしまう、これも大きな反省点だと思います、要改善点だというふうに思います。

 いずれにしましても、この更生支援計画書、刑事施設の中で手当てをしていくということも含めて、また、我々の新しい拘禁刑、こういったものとの接続、そういった多面的な検討を含め、腰を入れてしっかりと取り組みたいと思います。

鎌田委員 ありがとうございました。

 更生支援計画書がきちんと、ずっと引き継がれて生かされていくように、法務省の中でもあるいは検察庁の中でも福祉の関係者の方々から研修を受けたりしている、そこに努力をしていることは犯罪白書を見ても私たちは読み取ることができます。だから何もしていないなんということは指摘をしません。ですけれども、やはり再犯を防ぐという観点で、大臣がおっしゃったとおり、この四つのところの方々、どうしても再犯が多いですから、今、腰を入れてやるとおっしゃったとおりに、是非やっていただきたいと思います。

 最後に一つ、谷間世代のことについては、こちらにいらっしゃる牧原筆頭も我々の仲間の山田衆議院議員も、私もですけれども、再三、谷間世代を救済してほしいということはこの委員会で声を上げています。それで、昨年の六月の骨太の方針に入りました。それは私は一定の評価をしているつもりです。

 それで、伺います。今年も骨太の方針が出ますよね。是非、今年のその骨太の方針にもきちんと入れて、そして日弁連で考えている基金の制度とうまく連携をして、谷間の世代にある方々が社会で法曹として活動していく、そこにきっちり背中から押していける、そういう予算あるいは政府の方針というものを、大臣、持っていらっしゃるかどうか、確認させてください。

小泉国務大臣 一番重要な点を最後におっしゃったのかもしれませんけれども、しっかりと受け止めて、また理解を深め、御意見に沿えるように努力をしたいと思います。

鎌田委員 終わりますが、意見に沿って努力という言葉、信じておりますので、頑張ってください。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介です。よろしくお願い申し上げます。

 まずは、収容男性が低体温症によって死亡したと疑われる事案について伺わせていただきたいと思います。

 このニュースを聞いたときに、刑務所の独房の中で寒かったんだろうな、つらい思いで死んでいったんだろうな、そういうことは絶対あってはいけないわけで、法務省さんから御説明をいただいていることと、私も、実際、今この瞬間服役していらっしゃる皆さんから、間接的にではございますが、どういった状況に中はなっているのかというお話も少し伺うことができていますので、ちょっと矛盾点があるなという気もしているので、それを少しずつ確認をさせていただければと思っております。

 まず、御案内のように、去年十月、須坂市にある長野刑務所で収容されていた当時六十二歳の男性が亡くなり、司法解剖の結果、低体温症で凍死した疑いがあるという事案なんですけれども、この事案について、まず概要について御説明をいただけますでしょうか。

花村政府参考人 お答えします。

 その前に、まずお亡くなりになりました方に謹んでお悔やみを申し上げたいというふうに思います。

 概要でございますけれども、収容中の労役場の留置者が死亡したというふうな事案でございます。令和五年十月三十日、これは月曜日になりますけれども、午前六時四十五分頃、長野刑務所単独室に収容中の六十代の男性労役場留置者につきまして、職員の呼びかけに反応しない状態でありましたため、直ちに救命措置を講じますとともに、救急車の出動を要請し、外部の医療機関に搬送いたしましたが、同日午前七時三十五分、同医療機関医師により本人の死亡が確認されたものでございます。

 なお、同日、長野地方検察庁及び須坂警察署に長野刑務所から通報が行われたというものでございます。

鈴木(庸)委員 まず伺いたいのは、通常の管理体制なんですけれども、囚人という言い方が正しいのか、受刑者という言い方が正しいのか、留置でございましたので、この方に対しては、通常はどういった形の管理体制で臨まれていたんでしょうか。

花村政府参考人 お答えします。

 まず、刑務所におきましては、被収容者が二十四時間三百六十五日生活をしておりますので、様々な場合に備えまして、一定の時間、間隔を置きまして職員が被収容者の動静を巡回して観察をしておりまして、異常などがあった場合には速やかに職員が対応できる体制というふうにしております。

 長野刑務所における管理体制のうち、職員の被収容者に対する巡回につきましては、夜間などにおける昼夜単独室は、原則として、おおむね二十分に一回、巡回視察する取扱いとしているところ、当該被収容者がお亡くなりになった令和五年十月三十日におきましても、適切に巡回視察がなされていたものというふうに承知をしております。

 また、同所における収容居室を含めた収容棟の室温につきましては、同日まで測定されておりませんでしたが、その後、本件事案を受けまして、同年十一月一日以降、当該被収容者を収容していた居室と、これとは別の居室の室温を測定し、これはあくまでも推測とはなりますけれども、長野刑務所の所在地である長野県須坂市に隣接する長野市の気象庁公表の気温と居室の室温との両方を調査しております。

 その結果、長野市の令和五年十月三十日の気温は、午前一時が摂氏九・七度、午前六時が同九・三度であり、十一月二日の午前一時が同八・七度、午前六時が同七度でありました。一方、十一月二日の当該被収容者が収容された居室の室温を午前六時に計測した結果、同二十二度でありましたので、本件事案がありました十月三十日の同室の室温も同二十二度程度はあったものと推測されます。

 また、例年、長野刑務所における暖房の使用基準につきましては、室温が二十度以下のときに使用を開始するというふうなことになっているところ、本件同日の居室棟内における室温は、ただいま申し上げましたように、二十度以上あったものと推測されますことから、暖房の使用は行っていなかったものというふうに承知をしております。

鈴木(庸)委員 基本的な御説明の趣旨としては、問題はなかったというところになってくるかと思うんですけれども、長野刑務所のまず冷暖房設備について伺わせていただきたいと思います。独房の近くの冷暖房というのはどうなっていますでしょうか。

花村政府参考人 お答えを申し上げます。

 長野刑務所における収容棟につきましては、各居室に天井から暖気、暖かい空気を送風する暖房設備がありますほか、居室の前の通路と各階の外窓と居室との間に刑務官の巡視路がそれぞれ設置されている二重の構造となっておりますところ、この巡視路にも冷暖房設備を整備しているものというふうに承知をしてございます。

鈴木(庸)委員 これは実際今入っている方からの証言なんですけれども、部屋は気密になっている、廊下に十五メートル置きに暖房が一つずつあって、長い廊下にストーブが一個だけある、寒くてたまらぬという話なんですね。

 今、冷暖房施設については、部屋の上に暖気があると言ったんですけれども、そこは、先ほどの御説明からいくと、二十度を下回ったときに多分そこから出てくるようなイメージになるかと思うんですけれども、二十度の基準をどこで測るかというところを、済みません、ちょっと想定と違う答えが返ってきたので、二十度の基準をどこで測るのかというところから伺いたいんですが、温度計はどこにつけていますか。部屋の中につけていますか、ふだん。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるお尋ねの部屋の中というふうなことではなくて、収容棟の通路のところに職員が、担当する者がおるんですけれども、そこの担当する者の付近の場所に温度計があるというふうなことでございます。

鈴木(庸)委員 そういうことなんですよ。実際入っている方の証言だと、ストーブの上についているらしいんですよね。これはちょっと、私、直接目で見ていないので、確認していないんですけれども、ストーブの上にそれがついているから、当然のことながら常に二十度の温度というのは担保されているだろうと。

 済みません、今瞬間に確認できないとは思うんですけれども、月曜日に我々視察もするんですが、ストーブの上に温度計がついていて、そこで二十度だから問題がありません、十一月一日以降、寒い中で測りましたけれども二十二度ありましたという話だと、ちょっと御説明の趣旨と違ってきてしまうのかなという気は正直しておりますが、それを今確認、この瞬間でできますか。できなければ全然いいんですけれども。暖房と温度計のある位置なんですが。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 済みません、ちょっと確認ができておりません。

鈴木(庸)委員 じゃ、是非その点については確認をお願いしたいと思います。

 何を申し上げたいかというと、堀江貴文さんとかも長野刑務所に入っていて、大変寒かったというのをXに流していたり、今実は入っている方々も、取りあえず息を吐くと白くなるんだよというようなお話がある中で、なかなか今、二十度以上あったという御説明については、もう少し根拠をいただけるとありがたいかな。かつ、先ほども申し上げたように、暖気はあるという話なんですが、十五メートルというと結構ですよね、十五メートル、どれぐらいの機能のエアコンか分からないですけれども、それが二つあって、廊下に一個ストーブとなると、やはり寒いんじゃないかな。

 ですから、管理体制に何も問題がなく、結局、なぜ、ただ、解剖したときにそういう所見は出ているということ、凍死の所見というと大体幾つかしかないですけれども、その所見が出ているという話も聞いていたので、今の段階から全く体制に問題がなかったと断言するのは是非おやめいただきたく、いろいろと調査の方もしていただければなというのがまず一点目として申し上げたいところでございます。

 ちなみに、部屋の中に報知器、押すとビーンと鳴る報知器があるということで伺っているんですけれども、この報知器ってどういう報知器なんでしょうか。

花村政府参考人 お答えします。

 報知器とは、鍵のかけられた居室内で生活をしている被収容者が職員に対して用件がある際に、職員に対応を求めるための合図として各居室に備えつけられた機器でございます。

 具体的な仕組みといたしましては、被収容者が居室の中にある報知器のボタンを押し下げすることで、廊下側にプレートが出る仕組みのものですとか、ランプが点灯する仕組みのものがございます。巡回している職員は、そのプレート又は点灯を認知して、その被収容者の対応に当たることというふうにしております。

 長野刑務所におきましてはランプ型の報知器を設置しておりますが、本件では、当該被収容者の異常を発見するまでの近接した時間帯におきまして故障はしておらず、当該被収容者の居室から報知器による合図がなされた事実はなかったものというふうに承知をしております。

鈴木(庸)委員 そのランプも含めて、亡くなる直前とか前日に、まあ入るときには健康診断をしているという話があるんですけれども、亡くなる直前とか前日に本人からの申出というものは何かなかったんでしょうか、体調が悪いとか。

花村政府参考人 個別の被収容者の病状や経過等の子細につきましては、プライバシー保護の観点から、お答えは差し控えたいというふうに思います。

 ただ、そういったプライバシー保護等の観点も含めまして、その上で、本件に関しましてお答え可能な範囲で御説明をいたしますと、死亡する直前でございますとか前日には本人から体調不良に関する申出はなかったものというふうに承知しております。また、職員におきましても、本人の動静に特段の異変は認めていなかったものというふうに承知してございます。

鈴木(庸)委員 亡くなる二十分前に呼吸をしているのを、毛布が上下しているのをもって確認したという話であり、あと、前日には、横になりながらまばたきをしていたのを確認したというような、そんな御説明もいただいているんですけれども、当日の確認体制については、二十分前に呼吸をしているのを確認して、二十分後に来たら、今度は、おやっという感じ、起きてこなかった、そういう理解でよろしいんでしょうか。

花村政府参考人 お答えします。

 夜間などにおける昼夜単独室の被収容者につきましては、原則として、おおむね二十分に一回巡回視察する取扱いとしておりますことは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 長野刑務所におきましても、職員が、亡くなった被収容者の異変を発見した約二十分前にも、当該被収容者の居室の前に立ち止まって、直接居室の中を視察をしておりまして、その際、当該被収容者が布団の中であおむけになり、その腹部付近のかけ布団が上下していたのを確認したものというふうに承知してございます。

鈴木(庸)委員 個別ということなんですけれども、これは一般論として伺いたいんですが、この労役場留置の受刑者、受刑者という言い方が正しいのかどうかも分かりませんが、労役場留置の方々というのは、一人部屋になるケースというのがどういったケースがあるのかというのと、あと、どういった作業をされていらっしゃるんでしょうか。

花村政府参考人 お答えいたします。

 刑法第十八条では、罰金又は科料を完納することができない者は労役場に留置する旨規定し、刑事収容施設法第二百八十七条では、労役場について、法務大臣の指定する刑事施設に附置する旨規定しております。附置するというふうになっておりますけれども、刑事施設とは別の労役場という建物があるわけではなく、刑事施設の単独室の一部を労役場とし、労役場留置になった者を収容しているのが実情でございます。

 労役場留置者の処遇につきましては、刑事収容施設法第二百八十八条において、その性質に反しない限り、懲役受刑者に関する規定を準用する旨規定をされているところ、一般に、労役場留置者は、その留置期間中、単独室において紙袋等製作作業などに従事をしておるところでございます。

鈴木(庸)委員 ありがとうございました。

 長野刑務所については、ちょっといろいろ現地のお話を聞くと、これを私も検証できたわけではないので、ある証言ということで御紹介させていただくことになるんですが、例えば、受刑者の方を病院に連れていく、その病院の部屋の中で受刑者に対してどなっていたとか、結構厳しい話も聞こえてまいります。ただ、私自身が確認したわけではないので、それは何とも言いようがないんですけれども。

 先ほど来申し上げていますように、まだ我々の体制に問題がなかったとおっしゃるには早いのかなという気がしている中で、刑務官の皆さんへの教育体制というのは一体どういった形でやっていらっしゃるんでしょうか。

花村政府参考人 お答えをいたします。

 刑務官につきましては、新たに採用された全ての者に対しまして、矯正に関する法規、矯正護身術など、刑務官として必要な知識及び技能を習得させるための基礎的な教育訓練を約八か月間実施しております。

 刑務官に実施するこれら研修の中で、刑務官の適正な勤務態度を保持するための取組として、職業倫理や職員不祥事防止を講義するなどし、被収容者の人権を十分に尊重した取扱いがなされるよう指導しているところでございます。

 同様に、被収容者の人権の尊重を図る観点から、憲法及び人権に関する諸条約を踏まえた被収容者の人権に関する講義ですとか、社会福祉施設における介護等体験実習の実施に加えまして、行動科学的な視点を取り入れた教育を実施しておるところでございます。

 さらに、例えば、長野刑務所におきましては、特に採用五年未満の若年職員を対象とし、不適正処遇防止研修を令和五年二月から七回にわたり実施をしておりますほか、全職員を対象に職員不祥事防止研修を計画的に実施しておりまして、不祥事を自分事として捉え、未然防止を図るよう指導しているものというふうに承知をしております。

鈴木(庸)委員 不適切防止研修、七回にわたりということはすばらしいことだと思うんですけれども、こんな証言もございます。毎日の運動時間も、例年は体育館だったけれども、今年から外の運動場に出されて、血圧の高い方はちょっと心配になっているというようなお話があるんですね。

 この辺はどういった理由でそうなっているのか、また、この証言の信憑性については僕は直接確認していないので、何とも申し上げられないんですけれども、これは通告していないので分かればで結構なんですけれども、こうした形で、今年から寒さに対する取組、変わったというような、そういった報告というのは上がっているんでしょうか。

花村政府参考人 それはちょっと突然なお尋ねでございますので、お答えすることは難しゅうございます。

鈴木(庸)委員 そうですね。ありがとうございます。

 いろいろな証言を伺っていると、やはりちょっと寒いんじゃないかなというのが正直浮かび上がってくるというところでございます。ですから、この質問ではもうこれ以上言わないんですけれども、先ほどのストーブの話については、どこで温度を測って、その上で二十度なのかということについては、是非御確認をいただければと思います。よろしくお願いを申し上げます。

 その一方で、高齢者や障害をお持ちの方の場所にはエアコンがついているということも聞いておりますし、刑務官の方の裁量でストーブをつけたり、つけなかったりということもできるということは聞いているんですけれども、寒いという点については、ちょっと、現場にいる方と、やはり実際に起こったことと、法務省の皆さんのおっしゃっていることの食い違いが生じているので、そこに関しては、是非私どもも納得いくところまで検証させていただきたいなと思っております。

 検察の対応についても伺わせてください。

 糖尿病とか腎臓病とかいった疾患がある中で、このような中でも労役につかせたこの検察の判断は正しいと思われますでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねにつきましては、個別事案における刑の執行に関する事柄でございまして、お答えは差し控えたいと存じますが、あくまでも一般論として申し上げますと、刑事訴訟法上、労役場留置の執行に当たりましては、これは検察官が指揮をするということとされておりまして、その指揮に当たりましては、対象者の病歴などを踏まえて、刑の執行によって著しく健康を害するときなどの刑事訴訟法上の刑の執行停止事由というものがございますが、その有無を確認した上で執行の指揮を行っているものと承知しております。

鈴木(庸)委員 そうはおっしゃいますが、実際に亡くなっていますので、是非検察の中でも、高齢者や障害のある方々に対して、労役の在り方についても議論をしていただければと思っております。

 この低体温症、全国の刑務所で寒い寒いという話があるんですけれども、低体温症として報告されている刑務所の死亡件数というと、この数年でどれぐらいの数に上るんでしょうか。

花村政府参考人 お答えいたします。

 死因としての低体温症につきましては、一般に、死因の分類においてその他の不慮の事故に該当すると考えられます、雪山で遭難した場合のように過度な低温環境への暴露によるもの、いわゆる凍死と、死因の分類において病死及び自然死に該当すると考えられます、外界の低温状態に関連せず、内分泌系の疾患などの原疾患の影響等により生じるものがあるものというふうに承知をしております。

 この点、いわゆる凍死に当たる事例につきましては、過去五年間には発生していないものというふうに認識しておりますが、原疾患などの影響等による低体温症による死亡は一件あったものというふうに承知をしております。

鈴木(庸)委員 低体温症の死亡が一件あったということなので、またちょっとそれについても改めて伺わせていただければと思います。

 こうした管理体制についてちょっと検証が必要なポイントが残る中で、今度、長野の少年鑑別所が長野刑務所へ移転して、同じ敷地になるということなんですけれども、これは完全に別組織で運営されるという認識でよろしいんですよね。

花村政府参考人 お答えします。

 長野少年鑑別所につきましては、昭和五十一年の建築であり、老朽化が進んでいることから、適正な収容環境を確保する必要があることや、長野刑務所との業務連携の取組、施設運営の効率化を図るため、長野刑務所の敷地内に移転を予定しております。

 長野刑務所は、法務省設置法第九条に定められる刑務所であり、主に受刑者を収容し、矯正処遇等の必要な処遇を行うことを目的とした施設でございます。

 一方、長野少年鑑別所は、法務省設置法第十一条に定められる少年鑑別所であり、主に観護の措置が取られ、少年鑑別所に収容される者を収容し、これらの者に対し必要な観護処遇を行うことなどを目的とした施設でございます。

 したがいまして、それぞれの設置根拠及び目的が異なりますことから、別組織で運営することというふうにしております。

鈴木(庸)委員 ちょっと最後に伺いたいんですが、これはウィシュマさんのときも調査資料を出していただいたんですけれども、この問題については警察に話が行っているということではあると思うんですけれども、今後更なる調査を行う御予定というのはあるんでしょうか。

小泉国務大臣 現在捜査が行われておりますので、まずは、この段階では捜査への協力を優先するということが必要でありますが、当然、今日の御議論も含めて、我々としても調査したことを深掘りしていく、そういったことは必要だというふうに感じております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございました。是非よろしくお願い申し上げます。

 済みません、ちょっと一つ、拘禁刑の件を飛ばして、外国人の社会保険料の脱退一時金についてお伺いをさせていただきたいと思います。最後、時間が余ったら拘禁刑の方に戻りたいと思うんですけれども。

 外国人に聞くと、出稼ぎ先を選ぶ最大の理由はやはりお給料ということになるわけですね。よく話を聞くのは、日本に最初に来るときはそれなりの額面のお金をもらえると聞くんだけれども、実際お金をもらうと額面からかなりのお金が引かれている。例えば、オーストラリアはワーキングホリデーの人たちに特別な税額をかけていたり、イギリスもワーホリに来る年齢によって最低賃金を変えるといった形で、出稼ぎというか、あえてもうワーホリ、出稼ぎという言い方をさせていただきますけれども、出稼ぎに来た人たちに対してできるだけ分かりやすく、細かく対応しているというのがあるんですね。

 日本についても、多くの外国人に働きに来ていただくためには、細かい説明と、少しでも手取りを上げる政策が必要かと思うんですけれども、まずこの脱退一時金の概要について御説明をいただけますでしょうか。

泉政府参考人 お答えをいたします。

 日本の年金制度におきましては、日本に居住する外国人に対しても日本人と同様に年金制度の適用を行っております。このため、日本に居住したことがある外国人につきましては、日本人と同様に、十年の受給資格期間を満たせば老齢年金を受給することができることとなります。

 一方で、外国人につきましては、在留期間が短い方も多く、保険料納付が老齢年金に結びつきにくいという特有の事情があることを踏まえまして、日本国籍を有しない方が、日本国内に住所を有しない、また、老齢年金の受給資格期間十年を満たしていないなどの要件に該当した場合には、本人からの請求に基づき、被保険者であった期間に応じた額を一時金として支給する脱退一時金制度が設けられております。

鈴木(庸)委員 今御説明いただいた本人からの請求というところがちょっと肝だと思っておりまして、これは、実際には、当然実習生の皆さんも払っているということなんですけれども、どうやって、海外から短期、十年以下で来る皆さんに対して教えているというか広報というか、やっていらっしゃるんでしょうか。

泉政府参考人 お答えいたします。

 脱退一時金の実務を行う日本年金機構におきましては、英語を始めとした十四か国語で作成したリーフレットなどを日本年金機構ホームページに掲載しております。また、各地の年金事務所や市区町村においても入手できるようにしております。

 また、厚生労働省のホームページにおきましては、技能実習を実施する事業主に対して公的年金制度への加入の必要性をお知らせするとともに、技能実習生に脱退一時金を御案内するリーフレットを作成し、公表しております。

 これに加えまして、入管庁のホームページで公表する外国人向けの生活・就労ガイドブックや技能実習生に配付される技能実習生手帳において、脱退一時金の支給要件、支給に当たっての注意点、請求手続などについて記載されているというふうに承知しております。

鈴木(庸)委員 これは実際、手続は簡単なんですか。例えば書類一枚とか書類二枚とか、どれぐらいの難しさなんでしょうか、難しさの評価というのは難しいと思うんですけれども。

泉政府参考人 お答えいたします。

 脱退一時金の請求手続につきましては、日本に住所を有しなくなった日から二年以内に行っていただく必要がございます。請求書に基礎年金番号、氏名、生年月日、帰国後の住所などの必要事項を記入いただきます。また、それにパスポートの写しや日本国内に住所を有しなくなったことが確認できる書類などを添付していただき、日本年金機構に提出していただくことになります。

 日本年金機構では、英語を始めとした十四か国語に対応した請求書を用意しておりまして、ホームページ等で入手できるようにするとともに、年金事務所の窓口などでは十か国語の通訳サービスを利用した相談を可能とし、申請者となる外国人の方々が円滑に手続をできるよう取り組んでおります。

鈴木(庸)委員 そうなんですよね、そんなに難しくないんです。

 ちなみに、令和三年度の技能実習生の平均月収、十六万四千百円とされているんですけれども、これは例えば三年間働いたとすると、脱退一時金の金額というのは幾らぐらいになりますでしょうか。

泉政府参考人 御質問の月収が十六万四千百円の方につきましては、これ以外に賞与がないと仮定いたしました場合、厚生年金保険の被保険者期間を三年間有するとして推計いたしますと、脱退一時金の支給額は約五十三万円となります。

鈴木(庸)委員 五十三万円というお金、実習生の皆さんには相当大きいお金だと思うんですね。

 これは何件申請されているかというと、何と国民年金で千件、千二十六件、まあ厚生年金になると九万五千件になるんですけれども、実習生の皆さん、三十万人いますよね。言い方を変えれば、ほぼ、ほとんどが脱退一時金をもらわずに帰ってしまっている。

 帰ったら、いや、日本ではお金をもっともらえるはずだったんだけれども、もらえないとぶつぶつぶつぶつ言われてしまい、さらに、次に来る人、ううん、日本だったら手取りが低いから、やはりやめようかななんて、そういった形の悪循環を生んでしまっているのではないのかなという大変強い問題意識がございます。

 伺いたいのは、五十三万円ももらえる脱退一時金、これは先ほどの前提ですけれども、その一方で、たった千二十六件しかこの脱退一時金の申請件数がない、まあ厚生年金に関しては九万五千件あるんですけれども、この数字に対する評価といいますと、どういう評価をされていますでしょうか。

泉政府参考人 お答えいたします。

 脱退一時金の申請件数でございますが、ただいま御案内のとおり、厚生年金につきましては九万五千七百一件、国民年金については千二十六件という数字になっております。

 こうした数字が多い、少ないということにつきましては、そもそも、脱退一時金が、将来の年金を受け取る可能性も考慮して、外国人の方が自らの意思でその申請を判断されるというものでございますので、件数がこの九万五千件、あるいは一千件であったということをもって、多い、少ないということを評価するには難しい問題があると考えております。

鈴木(庸)委員 いや、少ないですよ、明らかに。だって、皆さんお金稼ぎに来るわけであって、永住的に日本に暮らしながら、将来的にここで生活の基盤をつくろうという、そういう人がいないから、今度、新しい育成とかに制度を移行するわけですよね。特定技能の皆さんにその理屈を持ってくるのはちょっとおかしいと私は思います。

 要は、何を申し上げたいかというと、ちゃんと広報をすることによって、もっとみんな日本に来たいなと思っていただけるんじゃないかなと思うんですね。つらい思いをして三年間いて、最後、五十三万円戻ってくるんだとなれば、最後まで頑張れるんじゃないかなと僕なんかは個人的に思うんですけれども、是非、多くの外国人にもっと来ていただくために、この手取りを増やすということについて、今の制度の枠組みの中で我々も一生懸命考えていかなくてはいけないのかなと。

 その、一番分かりやすく、かつ手っ取り早くできるのが、この脱退一時金について、例えば、これから入れる、その仲介業者とかでも何でもいいんですけれども、代理店でも何でもいいんですけれども、これから来る方々の間に入る業者さんとか監理団体とかに、この脱退一時金についてしっかりと説明をさせる。千件しかないということは、多分、本人、分かっていないからこうなってしまうわけなんですよね。ですから、そうした、丁寧に、これから来る皆さん、そして今いる皆さんに対して、この脱退一時金というものがあるから、出るときにはしっかりお金をもらって、幸せになって帰ってくださいねというお話をしていただければなということを強く要望させていただくとともに、そういった手取りを増やすという、そして外国人に、優良な外国人に来ていただくということについての法務大臣の見解を伺いたいと思います。

小泉国務大臣 日本は選ばれる国にならなければならない、これが基本でございます。そういう観点から考えますと、先生御指摘のこの問題は、大変鋭い、いい切り口だと思います。既にある制度を活用してもらう、そのことによって手取りが増える。千二十六件が少ないかどうかは別として、五十三万円は大きいですよね。非常に大きい金額だと思います。これを知らせてあげる、手取りにしてあげる、それは我々の責務だと思います、選ばれる国になるためには。

 今、御議論を聞いていて思ったのは、先ほど御説明しました外国人支援コーディネーター、こういった方々がこの問題にも寄与できる余地があるなということを感じました。カリキュラムの中にこれは取り入れたいと思います。

 また、関係省庁とも連携を取って、できることをやりたいなと思います。

鈴木(庸)委員 大変前向きで力強い御答弁、どうもありがとうございました。

 本当に、今御案内のように、オーストラリアが年収を確定させて、何百、六百万ですか、何か確定させて、ベトナムの人を来させる。日本よりも台湾の方が選ばれるようになっている。いろいろ何か、いずれはコンビニで働いてくださる人もいなくなってしまうのではないのかな、お弁当の総菜を載せてくれる方も間もなくいなくなってしまうんじゃないかなという大変強い危機感を私は持っております。

 そういった中で、是非、今ある枠組みの中で、法務省さんとして、新しい育成とか、こういった新しい取組をされているということも重々承知しているんですが、即効性のある、今ある枠組みの中でできることを厚生労働省さんと一緒に取り組むことによって、もっと外国人が来たい国にしていただければなと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 終わります。ありがとうございました。

武部委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 お時間をいただき、ありがとうございました。今日は、三つの項目について質問したいと思います。

 最初の二つは、何年かかけて、ずっとこの法務委員会で働きかけてきたことが動き出していること及び改正したことについてです。

 まず、一つ目は、民事局ですけれども、商業登記における代表者住所の公開制度の見直しについて、この場でしつこくしつこく、毎回、四、五回ぐらいやったんですかね。登記簿に会社の社長の住所が公開をされていて、それを基に様々なプライバシー侵害及び身の危険を感じるようなことがあった、これを非公開にするべきではないかと働きかけておりましたし、私のみならず、与党の先生方も含めて働きかけていただいたことで、いわゆる会社の代表者、社長の住所を非公開にする改正を、パブコメをかけて終わったというところまで来ました。

 ちょっと派生していろいろ聞きたいことはあるんですが、まず、パブコメ自体が十二月二十六に開始して、明けて一月二十五に締め切りましたけれども、施行日はいつになるんでしょうか。パブコメのときには六月三日を予定していると明記をされておりますけれども、この予定どおりでよろしいですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、令和五年十二月二十六日から本年一月二十五日までの間にパブリックコメントを実施いたしました商業登記規則等の一部を改正する省令案につきましては、パブリックコメントを開始した当初には本年六月三日の施行を予定していたところであります。

 しかしながら、パブリックコメントにおいては多くの御意見が寄せられたところでありまして、その中には施行日に関する御意見も見られたところでございます。これらの御意見の内容も踏まえまして、現在、施行日をいつにするのかの点も含めて、円滑な実施のための改正内容を検討しているところでございます。

寺田(学)委員 いや、慎重意見があること自体は当然分かっていたでしょう。だって、初めてのパブコメじゃないでしょう、これをやっているの。当然ながら、予想されているパブコメは、量の多寡は別として、寄せられたわけですよ。新たな視点が寄せられたというよりは、従前から民事局の中で頭を悩ませていた、一方では、いや、公開のままにしてほしい、いや、非公開にするべきだという話のある中で、非公開にするということでパブコメもかけて改正して、そのパブコメの中に施行日を、別にそれで拘束されるわけではないですが、六月三日と入れているわけですよ。

 それで、パブコメをやってみたら、予想どおり、慎重な意見が寄せられた部分も、多寡は別として、あったことを考慮することはいいですが、このような形でパブコメに載せている以上、よほどのことがない限り、私はこの六月三日を移動させるということはおかしいなと思うんです。

 もちろん、行政がどういう形で改正をしていくのか、それは、改正されるまで、公布されるまで、施行されるまで難しい部分があるということは含みながらですけれども、ずっと自分の住所をさらされていた会社の方々、代表者の方々にとってみると、六月三日というのは一つの大きな節目で、自分自身として、住所を移動させる、引っ越しさせるとしたら、それを一つまたいだらやろうということを考えながら様々な事業をされている方々は多いと思うんです。

 そう簡単に、六月三日と言っていることを、いろいろな御意見がありましたからといって寄せるというのは、私は軽率だと思うんです。六月三日から少し移動させようというような御答弁の雰囲気を感じましたけれども、大きな変更をするつもりですか。局長、いかがですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、この件に関しましては、会社代表者の方のプライバシー等に配慮をして検討するということで進めてまいったものでございますが、パブリックコメントの中では、この非表示措置の導入が与える経済取引等への影響が大きく、現場の混乱が予想されるというような御意見もございましたので、その御意見も踏まえまして施行日について検討しているところですが、大きく後ろ倒しにするようなものではなく、少し検討時間をいただきたいということでございます。

寺田(学)委員 検討時間は持っていいですけれども、六月三でいいじゃないですか。

 今御紹介された様々な混乱が何とかだというのは、それは非公開にすることによって起こり得ることへの指摘はあるとは思いますが、後ろに倒してくれ、後ろに倒してくれということを趣旨としているものではないと思いますよ。

 大臣、大きな法改正ではないですし、パブコメをかけてやっている一つの、全体から見ると、具体的な改正の部分、小さな改正のように思われるかもしれませんが、当事者たちにとっては物すごく大きい話ですので、今、施行日の話がありました、私はこれを、六月三日でパブコメ時にお話をしている以上は基本的にはこの路線でいくべきだと思いますが、大臣、御答弁をお願いします。

小泉国務大臣 今、事務局、事務方からも御説明しましたし、先生御自身もおっしゃいましたけれども、大きなステップを踏んできています。その方向性、目的地は変わりません。それが六月三日なのかというそこの詰めの部分ですけれども、かなり反対論があったので、事務局としてはそれを精査したいということを言っているだけでありまして、後ろへ大きく延ばすということを言っているわけではありませんし、今日の御指摘も踏まえて適切に対応したいと思います。

寺田(学)委員 ちゃんとやってください。

 今回のパブコメの間に、自分の望む改正が行われると喜んだ方と、ぬか喜びした方の両方に分かれました。会社の代表者に関しては、この登記においては非公開の方向性の改正でしたので、喜んでいる方が多かったんですけれども、その他の団体の方々、NPOの代表者の方々は引き続き非公開の対象に含まれず、公開され続けたままになっている。これは何でそういうやり方をしたんですか、局長。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 商業登記制度における代表者住所の公開の在り方につきましては、法制審議会の附帯決議ですとか政府方針におきまして、株式会社を前提として見直すこととされておりましたところでございます。そのため、今回の改正案についても、株式会社を前提として制度設計をしたものでありまして、法務省といたしましては、まずニーズの強い株式会社での対応を目指したいと考えておるところでございます。

寺田(学)委員 今、まずと言いましたので、今回の会社の代表者の非公開を踏まえた上で、それがまずでしょうから、NPOの代表者の方々の検討も入るということでよろしいですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたパブリックコメントでございますが、これにおきましても、今回の改正案の規定を株式会社以外の会社や法人にも拡大すべきとの御意見が寄せられたところであります。

 法務省といたしましては、今回の改正案については、まずはニーズの強い株式会社での対応を目指すこととしておりますが、パブリックコメントにおいて寄せられた御意見を踏まえつつ、また、改正案の施行状況も勘案しながら、今後とも、登記上の代表者住所の公開の在り方について検討を行ってまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 順序立ててやるということ自体には、まあ私は一括でやるべきだと思いますよ、会社の代表者とNPOの代表者が、公開されるされないの差がつくことに合理的な理由というのはほとんどないですから。取りあえず、公開されている方々の中で声が上がっていた会社の代表者の部分を非公開にするという、単なるそういう順番だけの話ですから。早急に、本件整い次第検討し、実行に移してほしいと思いますし、私がこの場にいることができる限りにおいてはしつこくしつこくやりますので、是非取り組んでください。

 もう一点の方です。これも数年間かけてこの法務委員会でやった性犯罪刑法についてです。

 前の齋藤大臣のときでしたけれども、かなり大きな改正でしたので、議論を踏まえながら、当時、私は筆頭理事でしたので、牧原筆頭と、あと、今はいなくなっちゃいましたけれども、宮崎君と、その他、公明党の先生、維新の先生方、皆さんでとにかく知恵を絞って、固い固い刑事局の皆さんのお考えも踏まえながら合意点を見出して採決に臨んで成立をしたのが、それで施行したのが去年の七月ですかね。

 その中で、いわゆる附則、附帯決議ではなく附則の二十条に、今後見直しをちゃんとやりましょうということを記載、附則として法的拘束力を持って定めることになり、その二十条の二で、政府は、前項の検討がより実証的なものになるよう、ここから大事ですね、性的な被害を申告することの困難さ、これは時効のことを指しています、その他性的な被害の実態について必要な調査を行うものとするということで、附則の方で、調査を行うことを政府に義務づけております。

 いかがですか、どうなっていますか、今、調査は。

小泉国務大臣 附則の二十条は大変重要な規定だと思います。特に、五年経過後でありますけれども、速やかに施策の在り方について検討を加える、現状を変えていくんだ、よりよきものにしていくんだということが前提の文脈にこれは捉えることができます。それに資するために実証的な検討を行う、実証的な実態調査を行うということが書かれており、特にその中で、申告の困難さ、そういったものをフォーカスして調べなさいということがしっかり書いてあります。

 これをしっかり我々も踏まえて取り組んでいきたいと思っています。

寺田(学)委員 当時、牧原さんを含めてやっていますけれども、去年の改正自体がどのように運用されているのか。当時、私もさんざんやりましたけれども、五歳差の年齢差要件というのは余りにも現実とかけ離れている部分が多いんじゃないかということはありましたけれども、それはまず施行してみて、実態を見て、五年後、見直しを含めてやろうという話でしたけれども、時効の問題に関しては、そもそも政府としても、参考にすべき、そういう調査がないのだというところからあったので、それはそれでちゃんと調査しましょう、施行状況は別としてということで、与野党で話合いをしてこの附則が盛り込まれた。

 今、大臣御答弁されましたけれども、調査はやるんですという意気込みは、まさしく附則の中で政府に対して義務づけていますので、当然のことであって、調査についての今の歩みはどうなっていますかという現状をお伺いしているんです。大臣、いかがですか。

小泉国務大臣 まず、実態を把握する必要があると思います。項目によって施行日はばらばらでありますけれども、おおむね一年弱経過した段階、これを、状況をしっかり踏まえていくことも必要です。

 また、諸外国における調査の実態、ドイツの例がよく引かれますけれども、諸外国でどういう調査が行われ、どういう改正が行われてきたのか、そういったことも我々は今検討の俎上にのせているところであります。

 まだ外に公開できるような段階ではございません。

寺田(学)委員 時効の調査、時効がどうあるべきかということをやる上で、附則にも書いているんですけれども、性的な被害を申告することの困難さ、まさしく自分自身が被害に遭ったということを訴えるにはどれぐらいの時間がかかっているのかということ自体は、去年やった法改正は、要は性交同意年齢がどうこうとかそういう話ですから、まず、時効の問題もやりましたけれども、そもそも政府としてその調査自体持っていないからということで、与野党で話し合って、ちゃんと時効の調査をやるようにと話をしているんです。

 なので、実態の把握、その施行状態がどうであるかということではなくて、そもそもとしても、この時効の在り方について検討する上での調査をちゃんとやってほしいということを言っているんです。今どういう状態にあるのかということを聞いているんです。ちょっと大臣、やっているんでしょう、調査のための作業は。それをちゃんと答えてください。

小泉国務大臣 この附則二十条は大変重い条文でありますので、我々もこれはしっかり踏まえております。

 そして、具体的な調査をどうやるのか、ドイツの例も見ながら、施行状況も見ながら、検討しています。

松下政府参考人 公訴時効の延長の関係も前回の改正においてしていただいたところでございますけれども、前回の改正法によりまして、公訴時効期間が五年間ずつ延長されまして、また、被害者が十八歳未満である場合には、更に公訴時効期間を十八歳に達してから始まるという形で延長することとされましたので、それによって、その申告がどのような申告状況になっているかというところを施行状況としては見ていく必要があると思っております。

 それで足りるのか足りないのかというところも見る必要がまずあると思っておりますが、そのほかに附則で検討しろというミッションを与えられているということは十分に我々も理解をしておりまして、具体的なその調査の在り方ですとか時期、方法等につきまして今検討しているところでございまして、今どうなんだということを、確たることを、スケジュールを申し上げることは困難でございますけれども、それに向けての検討はしております。

寺田(学)委員 今局長が言った、足りる、いわば改正のとき、去年の改正で行われた内容に対して、公訴時効に関しても、どのように施行状態がなっているのか、そのことはちゃんと検討はするけれども、それで足りるのか足りないのかということも考えなきゃいけないという御答弁が今あったんです。その結論はいつ出るんですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げたとおりでございまして……(寺田(学)委員「よく分からない、もう一回言ってください」と呼ぶ)はい。

 施行後の状況を見た上で、その今の公訴時効期間、延長したもので十分であるのか、それともそれでは足りないのかということを見ていかなければなりませんし、それにはそれ相応の年数がかかるというふうに思っておりますが、それと併せて、その検討ということも、調査ですね、調査ということも求められていることも理解しておりますので、ただ、そのスケジュールが今申し上げられる段階にないということでございます。

寺田(学)委員 そのスケジュール、今、前段と後段の話をした上で、その後段のスケジュール感はいつぐらいに分かりますか。

松下政府参考人 恐縮ですが、重ねてでございますけれども、それは今確たることを申し上げられませんけれども、必要な時期にきちんと関係省庁とも連携して対応していきたいと思っております。

寺田(学)委員 関係省庁にはもう働きかけているんですか。どういうふうな調査をしましょうかということを関係省庁ともう協議を始めているんですか。

松下政府参考人 関係省庁とは話をしておりますけれども、それも含めて、具体的に、何をどうということを今申し上げられる段階にないということを御理解いただきたいと思います。

寺田(学)委員 そんなもの、詰めれば詰めるだけ、幾らでも時間をかけようと思えばかけられるし、ある程度の区切りの中で物事を判断するというのもあるでしょうから、もうそれは政治判断でしょうね。

 大臣、早くやりましょうよ。それに対して、少し考え方を述べてください、大臣として。

小泉国務大臣 施行後五年を経過した場合にというのがキーワードになっていますが、五年を経過した場合に、そこから調査をするのではなくて、速やかに施策の在り方について検討を加える、五年経過した段階で速やかに変更の検討を加えるということが書いてありますから、しかるべき期間を遡ってスタートを切らなければ、それは間に合わなくなる可能性もあります。

 しっかりと取り組みます。こうした趣旨をしっかり踏まえて取り組みたいと思います。

寺田(学)委員 今大臣がお話しされたのは、二十条の一項の、いわば法改正の仕込みをいつからやるのか、それは五年後に見直すためには前から仕込まなきゃいけないという話を今されているので、それなりの意味のある話だと思いますけれども、調査をいつやるのかという話をして、今、局長自身が、調査自体は、今関係省庁といろいろ話をしているけれども、スケジュール感自体も述べることができないという話をされていたので、それはもちろん、調整をかければかけるほどそれなりの成果があるとはいいながら、ずっと調整をかけ続けるわけにはいかないでしょうから、ある程度区切りを持ってやらなきゃいけないと思うので、大臣として御判断いただきたいという、調査の話です。

小泉国務大臣 ですから、我々は二十条一項を強く意識しています、スケジュール感の形成において、二十条一項を強く理解して、また意識してスケジュール感をつくっておりますという御趣旨を申し上げたかったわけであります。

寺田(学)委員 局長、もちろん、お時間がかかるのは分かりますし、他省庁の方々の温度感とかもあるでしょうし、省内の人事とかもあるのかどうか分からないですけれども、せっつき続けないとやってくれないんじゃないかという恐怖感があるわけですよ。恐怖感というか、焦りがあるわけです。

 この手の問題というのは、大概、それは一般的に役所として面倒くさがりますから。とはいえ、物すごく大事な話だし、今まで内に秘めて声を出せない方々の本当に苦しい思いをどう外に出すことができて、適正な処罰を受ける道筋が開けるかどうかの問題ですから、法案が通ったら急にやる気をなくすみたいなことじゃなくて、まさしくあのとき修正協議をして与野党で合意した内容ですから、しっかりと調査をやってください。局長、お願いします。

松下政府参考人 お答えします。

 御指摘のような調査を行うということについては、改正法を成立させていただいたときにも御指摘を受けて、それをしますということで、私どもも承っているところでございまして、調査をしないなんということは全く考えておりません。(寺田(学)委員「早くやろう」と呼ぶ)はい、分かりました。

 ということで、関係省庁とよく相談をして、適切に対処していきたいと考えております。

寺田(学)委員 早くやってください。調整に時間がかかるとは思いますが、よろしくお願いします。

 もう一個は、新たにお話を受けてこの場で質問することなんですが、いわゆる人質司法というものに対する問題意識を持っている方は多いです。(発言する者あり)大問題ですよね。まだ質問していないですけれども。

 まず、やってもいないのにやったと言われる、自白をすること、虚偽の自白は検察にとって望ましいことだと思いますか。

小泉国務大臣 刑事訴訟法第一条は、刑事手続の目的の一つとして、事案の真相を明らかにすることを規定しています。

 「検察の理念」、よく御存じのものでありますけれども、この中においても、取調べにおいては、供述の任意性の確保その他必要な配慮をして、真実の供述が得られるよう努めることとされています。

 虚偽の自白は真相の解明の妨げになるものであり、検察当局もそのような認識の下、真実の供述を得るよう努めているものと承知しております。

寺田(学)委員 それは、検察にとっても望ましくないわけですよね。

 虚偽の自白が行われたケースというのは何がありますか。

小泉国務大臣 あくまで一例として申し上げますと、例えば平成十九年に再審無罪判決が確定したいわゆる氷見事件や平成二十二年に再審無罪判決が確定したいわゆる足利事件の再審無罪判決、ここでは、捜査段階で元被告人の方々が行っていた自白について虚偽である又は信用性がない旨の判示がされているものと承知しております。

寺田(学)委員 大臣、何でそんなことが起きたと思いますか。

小泉国務大臣 事案ごとに様々でありますが、一概にお答えすることはなかなか難しいのでありますが、その上で、過去に検察当局による個別事件の検証を通じて把握された取調べにおける問題点としては、例えば、一番目、取調べを行った警察官、検察官が誘導的な聴取を行ったとうかがわれる場合、二番目、被疑者の性格等によっては、犯人でないのに、想像により自ら経験したことであるかのように供述してしまう場合があり得ることへの配慮が足りなかった、三番目、取調べを行った検察官において、警察での供述内容を否定しても差し支えないことを十分に理解してもらう配慮を怠ったこと、また四番目、取調べにおいて細心の注意を払い、様々な角度から問いを発するなどして慎重に心証を形成する必要があったにもかかわらず、これが不十分だったことなどが挙げられております。

 検察当局では、ここで把握された問題点を共有し、「検察の理念」にもあるとおり、被疑者の主張に耳を傾け、積極、消極を問わず十分な証拠の収集、把握に努め、多角的に評価を行うこと、取調べにおいては、供述の任意性の確保その他必要な配慮をして、真実の供述が得られるよう努めることなどを通じて、事案の真相の解明に努めているものと承知しております。努めております。

寺田(学)委員 いろいろ理由を述べられましたけれども、何かちょっと、聞いていて、私、素人ですし、取調べを受けたこともないんですけれども、取調べを受けている人の性格によって虚偽なことを言っちゃいましたという判断って何なんですかね。いや、それは性格は多少みんなそれぞれ違いますよ、僕と牧原さんだって違いますけれども。

 ただ、身柄を取られて、誰とも連絡できず、今局長とかは穏やかに座っていますけれども、検察になったらどうだか分からないですけれども、いやいや、本当に、僕は国会議員ですけれども、国会議員として聴取を受けることがあったとしても、一般の人としてあったとしても、それは身柄を取られて、誰とも連絡できず、その中で誘導的な質問をされて、否定してもいいということが伝わらなくてとか、まあよう言うなと今聞いていて思いましたけれども、そんなもの、性格いかんを問わずして、虚偽の自白をしてしまうような環境を検察自らが取調べで、警察も含めて、つくっちゃっていることがあるわけじゃないですか。それをどう是正していくかという話じゃないですか。

 いろいろ聞いていますけれども、僕、聞いてびっくりしたのは、取調べを受けているときにメモを取っちゃいけないらしいんですよ。何でと僕は思うんですけれども。聞くと、いや、それは一律に別に禁止しているものではありませんとはいいながら、運用上、かなりのところでメモを取ることを禁止されているそうですよ。

 大臣、メモを取っちゃ駄目なんですか、取調べを受けている人が。

小泉国務大臣 刑訴法上は、任意の取調べや逮捕後の取調べにおいてメモを取ることは禁止されておりません。禁止する規定はございません。

寺田(学)委員 じゃ、僕がそういう、将来、予測したくないですけれども、僕がメモを取るときに止められることはないんですよね。ですし、今、これから取調べを受ける人がメモを取るときに、おい、メモを取るなと言われることは、大臣として、ないということですよね。取っていいということでしょう。

小泉国務大臣 検察官による取調べ時にメモを取ることを認めるかどうかは、取調べを行う検察官において、取調べの機能に対する影響等も考慮して、事案に応じて適切に判断をしております。

寺田(学)委員 何で検察官がメモを取ることを止める権利があるんですか。あるなら、それを大臣が説明してくださいよ。

小泉国務大臣 これはあくまで一般論でありますけれども、検察官による取調べにおいて自由にメモを取ることを認めた場合、検察官の問いに答えることよりもメモを取ることに集中してしまうなどして、必要な説得、追及を通じて被疑者からありのままの供述を得たり、その供述態度をつぶさに観察をすることによって真実に、真相を明らかにするという機能が難しくなるということがございます。

 また、取調べでは、捜査の秘密や関係者の名誉、プライバシーに関わる内容にも言及したりします。そうした事項が記載された証拠を示したりすることもあり得ますが、こうした取調べが行われているまさにその場で、それを詳細にそのままメモに取ることを認めれば、そのメモが流出することによって、取調べ中に示された捜査情報がそのままの形で外部に流出するおそれが高くなるなどの影響が考えられます。

寺田(学)委員 それは作られた答弁を読んでいるのかもしれない。正気ですか。集中力がなくなる、メモを取っていると。そんな、黒板で、授業中メモを取っている人間、全員集中していないことになるじゃないですか、小学校で。

 それは、自分が何をしゃべったか、及び、僕も、ここにいる人たちみんなそうですけれども、どこかの式典で挨拶するときに、自分で集中しながら、自分で何をしゃべるかというメモを書きながら、及び、会議の中でメモを取りながら、自分がどういうことをしゃべったか、及びどういうことをしゃべるべきかというのを頭の中で整理しながらやっているとしたら、別に普通の行為じゃないですか。

 大臣、本当に、メモ、取調べ中、受けていたら、集中力がなくなって本当のことを言わなくなると思いますか。

小泉国務大臣 あり得ると思いますね。メモを取ることは非常に集中力が必要です。頭に入れ、整理をし、文字に起こす、その間ちょっとコミュニケーションが取りにくくなるのは事実ですよね。

寺田(学)委員 じゃ、そのとき聞かなきゃいいじゃないですか。メモを取っている間待っていてくださいよ、取調べするときに。駄目なの、それは。

 僕は、今回、この件に関して、人質司法という問題意識を持って、いろいろな方から働きかけを受けて、真っさらな気持ちでいろいろな話を聞きましたよ。いや、検察は検察で僕は大変だと思うんですよ。今回の裏金の問題にしても、何であそこの人たちを立件しないんだみたいなことを強く言われながら、とはいえ、法と証拠に基づいてやっていくんだという姿勢は大事だと思うし、取調べの中で様々な御苦労はあるとは思いますが、一方で、自分がその立場になったことを考えたら、身柄を取られて、誰ともお会いできず、誰とも連絡することもできず、メモすら取れない。

 今、大臣、メモを取っている間は集中力が落ちると話しましたが、その間待ってくれたらいいじゃないですか。何かしら問いかけますよね、取調べする方が。それで、取調べに答えて、答えている内容を自分でメモする、及び、ちょっと待ってくださいと、メモしながら自分で整理をして答える。何の問題があるんですか。むしろ資するじゃないの、そんなの。それは駄目なの。どうぞ。

小泉国務大臣 取調べの現場の話なので、断定的なことは申し上げられませんし、あくまで一般論なんですが、取調べというのも、やはり流れがあるんだと思うんですよ。やり取りの流れの中で、メモを取ることによりそれが中断される、また、どういうことを書いているのか、お互いがそこで意識をそらしてしまう、そういうことが起こり得ると私は思います。

寺田(学)委員 いや、だって、僕は取調べを受けたことがないから分からないですけれども、検察官の方だって何か書いているんじゃないんですか。

 僕は難しい話はしていないですよ。正直、こんな、何があるの、検察に。メモを取るぐらい、別にいいでしょう。

 大臣、いいでしょう、これから僕が万が一取調べを受けたときにはメモを取りますよ、そのときに、大臣が別に問題ないと言っても。大臣、メモを取っていいでしょう。

小泉国務大臣 現場で、全員メモを取ってはいけない、百人中百人駄目ですという取扱いはしていないようであります。その現場の検察官の判断、そして被疑者の方とのやり取りの流れの中で、個々の、ケース・バイ・ケースでメモ取りを認めるケースもあるわけです。そのことも理解していただきたいと思います。

松下政府参考人 先ほどの、メモを取ると集中力がそがれるかどうかという話なんですけれども、取調べというのは、人の話をわあっと聞いていて、自分が言いたい意見を、何を言おうかなというふうにメモをするというものとは違いまして、質問を受けたらそれに対して答える、またそれに対して質問が来るという一連のやり取りでございまして、その質問に、質問をまず書き取り、そしてその上で答えて、自分の答えもまた書き取るというと、流れがあるんですというふうに大臣がおっしゃったのは、そういう意味で、その一つ一つの間にインターバルが生じてしまうということによって、先ほど大臣が御答弁申し上げたような、供述態度そのものを観察するでありますとか、その問いに対してどのような応答をしているのかということについてを観察したりですとか、それから、その質問に対してありのままの供述を得るということが難しくなるという面があるということを申し上げているところでございます。

寺田(学)委員 その流れというのが、何かさっきの反省点の誘導に近いですよ。流れの中でいろいろやっているのに、取調べを受けている人間がメモを書くとその流れが途絶えるんだと。そんなの、物すごい取り調べる側からの発想じゃないですか。自分自身が何をしゃべったかぐらい書きたいですよ、僕。

 それで、ここまでかけ離れた答弁が来ると思っていなかったのであれですけれども、いや、言われるとおり、局長が、あなたは今取調べの実態は分からないでしょうと言われたら、それは分からないし、体験したくないですよ、そんなもの。ただ、ちょっと法務委員会でやりませんか。模擬取調べでもいいですよ。全員どこか身柄を捕らえて、メモを取ることによってどうなるか。いや、笑い事じゃなくて、取調べを受けている人たちは、そういう環境に皆さん置いているんですよ。ちょっと委員会で企画してくださいよ。

 本当に、もう誰とも連絡取れません、相手にはきっちり、僕は分からないですけれども、取調べをする人と書記官とかがいて、があっと言われて流れをつくられて、性格はどうか僕は分かりませんけれども、そういうことをやっていたら、冒頭聞きましたけれども、皆さんが望んでいない虚偽の自白が出るんですよ。そういうふうに分析したじゃないですか。性格によってはなんて、何かすごく人に責任をなすりつけているような言い方はちょっとよくなかったですけれども。

 検察の皆さんの苦労も知っています。知っていますというか、それは理解します。ただ、アンフェアだと言っているんですよ。アンフェアだからこそそういうことが過去実際に起きたでしょうということです。メモですよ、メモ。それを一生懸命、大臣まで巻き込んで鉄壁に守るということ自体、僕は理解ができない。

 ちょっと、牧原さんも道下さんも含めて、取調べの在り方とかを含めて一回ちょっと委員会で何かやりましょうよ。委員長、御検討ください。

武部委員長 理事会で協議させていただきます。

寺田(学)委員 終わります。

武部委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 今ほどのやり取りを実は私も非常に興味深く伺ったので、ちょっとそのまま追加でお伺いしたいんですけれども、今ほど、大臣、メモを禁じるというその刑事訴訟法上の規定はない、そうおっしゃられましたよね。いや、ないわけですよ。まさに、じゃ、全くその規定がない中で、はい、取調べですよと行く、それで、ちゃんと自分でメモを取り出した、その人が、何も断らずに被疑者がメモを取り出した、それをどうやって止めるんですか。何の規定もないわけでしょう。それを、何で、どういう根拠に基づいて、おまえ、メモやめろとおっしゃるんですか。お答えください。

小泉国務大臣 検察官には、その事案の真相を明らかにするという責務がございます。そして、非常にそれは困難なタスクだと思います。その困難さを克服する手段として、被疑者の方に協力を求めて、メモは後にしてください、今は私の話を聞いてください、私に真っすぐ答えてください、そういうやり取りをするためにこのメモの禁止というのを執行というか、実行しているというふうに私は理解をしております。

米山委員 だから、答えになっていないんですけれども。

 いや、お願いはしていいと思います、それは、人間ですから、人間同士ですから、どんなお願いだってしていいわけですよ。でも、それは逆に、どんなお願いも、それはお願いである以上、拒否していいわけですよ、嫌ですと。それを拒否させないには法的根拠が要るわけですよね。ないとおっしゃられたわけじゃないですか。法的根拠がない以上、それはメモしていいわけですよ。違うんですか。

小泉国務大臣 行政権の執行というのは、この条文でこれをやります、この条文で、やはり、そういう条文対応の権限ももちろんあろうかと思います、行政権の執行としては。だけれども、大きく検察に課された目的、真相を明らかにするという目的を淵源とする行政的なアクション、これは許されると私は思いますし、非常に困難な作業です、真実を明らかにするというのは。机上のことではありません、生身の人間を相手に真実を明らかにしていくわけでありますから。そういうやり取りを検察官はやっているわけです。その中から、こういうことが必要だという結論に達しているわけであります。全員じゃないですよ、百人が百人、止めるわけではないですよ。しかし、必要な措置としてこれを今まで実行してきているわけであります。そのことを御理解いただきたい。

米山委員 今、大問題発言だと思うんですよ。法務大臣が、法的根拠なく行政権を執行していいとおっしゃられたわけですよ、今。驚きですよね。(小泉国務大臣「いやいや、法律の」と呼ぶ)だって、根拠はないと言ったじゃないですか。根拠はないんでしょう。

 法律ですから、何かの根拠をちゃんと示してもらわないと困るんです。大枠でも何でもいいので、根拠を示してもらえますか。メモをしたいと言う人にメモをしてはいけないと、要請はいいですよ、要請してもそれを断っている人に対して、そこから強制的にメモをやめさせる根拠をおっしゃってください。それがなくてもできるというなら、それはもう法治主義の破壊なので、法務大臣、辞任してください。

小泉国務大臣 刑事訴訟法の第一条に、刑事手続の目的の一つとして、事案の真相を明らかにすることを規定しております。これが権限の基です。

松下政府参考人 お答えいたします。

 取調べは、供述の任意性や信用性が損なわれないように、もちろん、取調べをすること自体、法律で認められていることでございまして、法令の範囲内で実施しているものと承知をしております。

 そして、先ほども申し上げたように、メモを取らないでくださいというのはお願いでございます。ですので、法的な強制力のある禁止ではないというところも御理解いただきたいと思います。

 その上で、こういう必要があるので取らないでくださいということを申し上げて、それがあくまでも受け入れられない場合にどうするのかというところについては、法律上の根拠があってしていることではないというところで、先ほど申し上げた任意性であるとか信用性であるとか、あるいは取調べの中で出てくるほかの方々のプライバシー、あるいは捜査の秘密、そういったこととの兼ね合いで、じゃ、メモをどうするのかというところを個別に判断するということでございまして、大臣が答弁されたのもその趣旨でおっしゃっているものと理解しております。

米山委員 いや、その趣旨、今食い違っていますよ、言っておきますけれども。全く食い違っています。刑事局長はさすが御存じなんだと思うんですけれども。

 まず、そもそも、刑事訴訟法第一条は、「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」ですので、調べるためなら何でもいいなんて言っていないです。

 しかも、刑事局長もおっしゃられたように、あくまで任意です。あくまで任意のお願いしかできないので、嫌です、ひたすら私はメモします、それによって検事さんの何か心証が悪くなるとかそういうことがあったって、それは仕方ありません、それは全責任を私が負いますよ、でも、法令上、何も禁止されていないんですから、それは私はひたすらメモしますよと言ったら、それは禁じられないということでいいですね。

小泉国務大臣 それは、御本人の意思を通されるということであれば、強制的には止められません。

米山委員 そうだと思います。

 これは国会での質疑ですから非常に重要です。これは、要するにこれから、私も弁護士ですので弁護士会にも御報告させていただきますので、今後ひたすら、やはりメモは禁じられないです、ということで、よろしくお願いいたします。しかも、一部の人にメモを許しているんだから、許している以上、ほかの人に何か任意、恣意的に禁じるなんて、それはむちゃでしょう、ということで、メモは禁じられないということを確認できて、それは大変よかったと思います。

 それでは、質問に移らせていただきます。

 長野刑務所についての事案、先ほど鈴木委員からも質問ありましたので、事案そのものについては繰り返さないんですけれども、これもちょっと、鈴木委員への回答と、そのまま引き継いでお伺いしたいんですが、これは、事前に我々が長野刑務所の方々から聞いたところでは、実験した、同じ日では実験できっこないですけれども、実験というか実測といいますか似たような気温の別の日、事件があってから別の日に測ったら室温が二十度ぐらいだったから、それはなかなか、大きな問題はないんだとおっしゃられたんですが、一方、今のお話で、その二十度というのは、何かストーブの近くみたいな話も、ちょっと答えられたように聞こえたんですけれども、それはそういうことなんですか。それだとほとんど意味はなくて、我々が受けた説明は、ちゃんとその部屋のいらっしゃるところの室温を測ったという意味だと捉えたんですよ。

 そうなのか、そうじゃないか、それを答えてください。

花村政府参考人 お答えします。

 当日の室温を測定していなかったというふうなこと、それから、当日暖房を使用していなかったというふうなことでございます。

 事案を受けまして、十一月一日以降、当該被収容者を収容していた居室、それからこれとは別の居室の室温を測定し、このときも暖房は入っておりません。

 その上で、近接する長野市の気象庁公表の気温というふうなところを調査したというふうなところでございます。(米山委員「どこに温度計を置きましたかという質問です」と呼ぶ)部屋の中、部屋の温度を……(米山委員「居所の辺り、いた場所の辺り」と呼ぶ)はい、そこを測らせていただいたところです。

米山委員 それでは、じゃ、そのいた場所の辺りで測ったということで結構です。

 でも、これは、結構、ちょっと不思議な話でございまして、まず、低体温症と診断されたということで、そんな、低体温症って、ちょっとあれですけれども、例えば縊死とかの場合には、首つりとかの場合は、そこにはっきりと縊死の跡が残りますのでそれは縊死でしょうと分かるわけなんですが、低体温症って、別に何かすごく証拠が残るわけじゃないんです。

 ただ、一方、誰がどう考えたって当たり前なんですけれども、それは低体温症で、体温が低下しているわけですよ。亡くなられて直ちに体温を測っていらっしゃるんだと思います、通常、体温って測りますから。人間の体温って、亡くなられてからそんなに急速に落ちるものでもないんですね。これは法医学ではよくやる話ですけれども、だから、死亡推定時刻は大体推定できるみたいな話でして、一時間に一度から〇・五度ぐらいで、最初は早く下がって、徐々に落ちていくというようなことになるわけなんですが。

 そうしますと、二十分ごとに巡回していて、二十分前にはちゃんと息をして生きていらした。そのときの体温が正常な体温であるなら、それで、その間に亡くなったのであるなら、死亡時にはそんなにやはり体温は下がっているはずがないわけです。

 逆に、低体温症で亡くなったと言われたからには、やはりそれは死亡時には相当程度に体温は下がっていて、そこから逆算すると、どうしたって数時間前からそういう体温であったとしか考えられないというようなことが起こっているんだろうと思うんですね。

 それを聞いてもきっと分からないのかもしれないんですが、その低体温症と診断された、診断というか、解剖ですから診断じゃないですけれども、解剖報告書で言われたその根拠は何なのか、それを分かる範囲でお聞かせください。もし分からないのであれば、解剖の報告書、それは是非この国会に、この委員会に提出していただきたいんですが、それについても、どうされるのかお聞かせください。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 低体温症と診断された根拠についてお尋ねでございますけれども、そもそも低体温症と判断された理由については承知をしていないため、本件御質問にお答えすることは困難でございます。

 解剖報告書の提出につきましては、一般論としてでございますけれども、司法解剖は捜査機関が捜査活動の一環として行うものであるところ、委員御指摘の事案につきましては現在捜査機関において捜査中であると承知していることから、解剖報告書の存否、それからその提出の可否についてお答えすることは困難でございます。

米山委員 いつもそうやって、捜査中は駄目だ駄目だと言いますけれども、いや、別に捜査中だって出していいわけですよ。ウィシュマさんのときもありましたけれども、それは刑訴法四十七条で、公判前は公開してはならないとありますけれども、ただしとただし書はちゃんとあって、「但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」という条文が、ちゃんとしっかり条文があるんです。だから、別に、捜査中だって、その証拠は出せるんです、公益上の要請があれば。

 しかも、本件、公開して何か困ることって、別段、全然、どこにもないわけですよ。亡くなられた方は亡くなられて、恐縮ながら、それは亡くなられているわけです。何というか、被疑者と言ったら恐縮ですけれども、関係しているのは刑務官だけであって、その方々も、別に、何というか、何をしたかにをしたということに関して、何かごまかそうとか逃亡しようなんということははなからないわけでして、この解剖報告書を出して悪いことなんかどこにもない上に、公益上は非常に重要な意義があるわけですよね。

 だって、これはみんな、日本だけじゃないですよ、それこそ世界から疑いの目で見られるわけですよ。日本という国は、受刑者をすごい息が凍るようなところでほっておくような国なのか、そんなとんでもない国なのかと疑われていて、でも、それに対してきちんと、いや、そうじゃありませんよと言うためには、それはやはり証拠を示していくことが大事じゃないですか。その大きな証拠の一つがやはり解剖報告書なわけです。

 これを隠して出さない、ひたすら出さないで、それを隠すというのか出さないというのか分かりませんけれども、公開しない状態を続ければ、疑いはずっとずっと残るわけですよ。

 そんな状態をするよりも、きちんと出された方が日本の司法行政の信頼のためにもいいと思うんですけれども、これを出す意思、おありになりませんでしょうか。大臣、いかがですか。

小泉国務大臣 現時点では捜査が進行しておりますので、それは並行してできるんだという御指摘もありましたが、現実問題としては捜査を優先させなければいけないと思います。

 ただ、その上で、法務省として、矯正施設の在り方として、特に、寒冷地だと言われるところの処遇等についてもう一度やはり深掘りをする、そういう調査は必要だというふうに思っております。

米山委員 これは是非お出しいただきたいです。本当に、別にそれ、今コピーできますからね。別に、こっちに出したら捜査が進まないなんということは全くないわけですから、是非お出しいただくこと、これを委員長にお願いいたします。

 それでは、時間が終了しましたので、次はまた午後にお願いいたします。

武部委員長 ただいまの請求については理事会で協議させていただきます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。米山隆一君。

米山委員 それでは、午前に引き続いて御質問させていただきます。

 長野の刑務所の事案で、もう一つ質問させていただきたいんですけれども、やはり持病に対してどのような診療をしていたかというのは極めて重要といいますか、決してうのみにするわけじゃないんですけれども、しかし、刑務所の皆さんの御説明を前提とするならば、やはり持病が一つの原因となって低体温を生じたんじゃないかということは、それは考えざるを得ないわけです。そうでもないとちょっと、なかなかそんなことは起こり得るのかということもありますので。

 さらに、その持病のところは、事前の御説明で、それほど食欲がなくて、そして、エンシュアとかいう商品名を出すのもなんでしょうけれども、高カロリーの一ボトルのものなんかを飲んでいたみたいな、缶ですよね、高カロリーの缶の飲物を飲んでいたみたいなことを伺っております。じゃ、これは意外に、高カロリーのあの飲物というのは皆さん、すごく高カロリーだと思っていますが、それほど高カロリーじゃなくて、高カロリーは高カロリーですけれども、あれは三百とか四百とかしかないので、実は、あれだけで頼っているとそれはカロリー不足じゃないですかというようなところもあり、結局、カルテをちゃんと見るというのは大事だと思うんです。

 そのカルテ、まず、その前にお聞きしようと思いますけれども、適切な服薬、診療はなされていたんでしょうか。また、食事は一体、きちんと取られていたんでしょうか。知っている範囲でお答えください。また、カルテを提出できるかどうかについてもお答えください。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の被収容者の病状や経過等の子細につきましては、プライバシー保護等の観点からお答えは差し控えさせていただきます。

 また、一般論でございますけれども、各刑事施設におきましては、被収容者の健康状態に注意を払い、医師による診療や治療薬の処方等必要な医療措置を講じているものというふうに承知をしております。

 その上で、本件に関しましてお答え可能な範囲で御説明をさせていただきますと、入所時健康診断や本人からの聞き取りによりますと、代謝疾患や腎尿路生殖器系の既往が認められたことから必要な検査を実施したほか、食欲不振も認められたため医師の指示により経口栄養剤の投与を行うなどしていたものというふうに承知をしております。

 また、当該被収容者の診療録の提出につきましては、診療録そのものが個人に関する情報を内容とし、情報公開請求に対しましては不開示情報に該当するとして取り扱っているものでございまして、診療録の提出については差し控えさせていただきます。

 いずれにしても、本件につきましては、捜査機関による捜査が行われているものというふうに承知をしております。捜査機関の活動に全面的に協力をしていきたいというふうに考えてございます。

米山委員 でも、これも毎回そうおっしゃられますけれども、信用性は大事なわけですよ。本当に、先ほどと同じ話になりますけれども、日本の刑務所というのは、ちゃんと薬も飲ませてくれないのか、診療もさせてくれないのか、カロリーが足りない人に対してカロリーが足りない状態でほっておくのかという、それは疑念を持たれるわけです。だって、基本的には、ほぼ外傷もない、想定できる疾患もない中で突然亡くなられて、しかも低体温症ではないかと言われているんだから。そうすると、それは、かなり寒かったか、若しくはかなりカロリーが不足していたか、若しくは、そのほかの疾患はちょっと考えづらいですけれども、そのどっちか、相当程度に疑われるわけです。やはりその疑いを晴らすというのも、司法行政の信頼を確保する重要なことだと思うんですよ。

 何かいろいろなことがあったときに、いや、プライバシーです、いや、捜査です、いや、できません、できませんと言ったら、ずっと疑われ続けるわけですよね。それは全く、司法行政にとってはプラスにならないと思いますので、カルテの提出、別に、もちろん、そんな、個人を同定するようなのは黒くすればいいんですよ。全然していいので、でも、カルテを御提出いただけないか、法務大臣の御見解を伺います。

小泉国務大臣 捜査当局の調査が進みつつありますけれども、我々は我々の視点で本件についてしっかりと現状を把握し、原因を究明し、我々自身が事の次第を全部把握する必要がまずあると思います。

 その後、国会にどのように御報告をするか、これはまた別途検討させていただきたいと思います。

米山委員 これは比較的前向きといいますか、ちゃんと調査した後、それはカルテを出してくださるんだろうと思いますけれども、しかし、カルテの御提出、お取り計らいの方、お願いいたします。

武部委員長 理事会で協議いたします。

米山委員 それでは次に、生活保護不当減額訴訟について伺います。資料二から資料三―六のところになります。

 この訴訟は、二〇一三年から二〇一五年の間、厚生労働省が自前で開発した物価指数、生活扶助相当CPI、すごいですよね、というのを用いてデフレ調整というものを行って、またさらに、社会保障審議会の生活保護基準部会において、世帯類型ごとのゆがみ調整の調整の増減率を減じて、生活扶助基準額を年平均で六・五%、最大一〇%も引き下げたという事案です。

 これに対して、幾ら何でもひどいだろうということで、その受給者が自治体の減額処分の取消しを求めた訴訟が全国で行われ、さらに、二月二十二日、三重県の津地裁では、減額の背景に自民党の選挙公約への忖度があった、この頃、自民党の先生方はひたすら生活保護バッシングをされたもので、それに合わせて何と厚生労働省が勝手に指数をつくって勝手に減額した、それは幾ら何でもおかしいですよということで、違法ということで、そういった判決が出されております。これ自体、極めてゆゆしい事態なんですけれども、基本的には、これ自体は厚労委員会で扱うことであろうかと思います。

 ところで、この裁判は先述のとおり全国で行われていて勝訴が相次いでいるんですが、一方、敗訴判決もあり、それは裁判ごとに違って、裁判官も違いますから。昨年四月、奈良地裁が奈良市の原告二人の訴えを退けたことから、原告側、国側の双方が大阪高裁に控訴しております。

 ところが、この控訴審を担当する、これは別にもう報道されているので名前を出していいと思うんですが、大阪高裁第六民事部の堀部亮一裁判官、これは、令和五年四月十三日に原告敗訴が言い渡された大津地裁での同様の裁判を担当していたことから、弁護団が、裁判の公正を妨げるとして、民事訴訟法の忌避事由に該当するということで大阪高裁に忌避を申し立てております。これは裁判ですから、忌避は高裁で判断すべきことだと思いますよ。しかし、結構これは重要な論点を含むといいますか、司法行政上の問題点を含むことだと思います。

 このように、実質的に同一の争点について、というのは、これはもちろん、何でもかんでも争点が一緒なら、裁判官が同じ争点をやったら駄目だと言うつもりはないんですよ。もちろん、例えば過払い金訴訟とかで、一審でAさんの過払い金訴訟をしました、その人が高裁でまた過払い金訴訟を担当、裁判官が過払い金訴訟を担当しました、それは別に悪くはないわけです。幾ら争点が同じだって、それは全然別の訴訟ですから。

 でも、こういう国の処分取消し訴訟みたいなものは、実は原告の属性ってほとんど関係ないわけです。ほぼほぼ争点は国が何をしたかだけなんですよね。公害訴訟なんかでもそういうことはありますけれども、それは公害企業や国の対応だけが問題であって、被害者たる原告の属性はほぼ関係ない。

 そうすると、やはりそれは、同じ裁判官が一審と二審を両方審議してしまったら、三審制を受ける権利を侵害するのではないかというのは私は当然の論点だと思うんですけれども、これについての最高裁判所の御見解を伺います。

福田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今委員御質問の件につきましては、現在係属中の個別事件の判断に密接に関わる事柄でありますことから、事務当局としてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

米山委員 私、別に、先ほどわざわざ、そう言われないように前提として、個別はしようがないわけですよ。この事案そのものは我々が口出してはいかぬというか、それは大阪高裁できちんと審議していただければいいんですけれども、同様の事案ってあるわけですよね。

 これに限らず、国の処分とか、若しくは公害事例とか薬害事例だってそうですよね、そういうものに関しては、被害者が原告になるわけですけれども、被害者の属性なんというのは、ほぼ関係ないですよ、ゼロとは言いませんけれどもね。ほぼほぼ同じなんだから、それはちゃんと考えるべきじゃないですかということを私は問いたいと思うんですが、ちなみに、最高裁は一切それを言わないらしいんですけれども、小泉法務大臣、法務大臣としてはいかがですか。

小泉国務大臣 我が国の裁判は、審級制度として三審制を採用しております。その目的は、慎重な裁判を行うことで裁判の誤りを防ぐところにあります。これを受け、訴訟法上、第一審の裁判に関与した裁判官は同一事件の控訴審の審議に加わることができないと定められておりますが、このような訴訟法上の制約を除き、裁判官がどの事件を担当するかについては、各裁判所において定められた事務分配に従って決められるものと承知しており、法務省としてお答えする立場にはないと思っております。

米山委員 これも実は大分がっかりする御答弁なわけですよ。

 まあ、慎重に、ミスをしないようにダブルチェックです、そういう部分もありますよ。それはそうです。でも、同時に、私も弁護士でありますけれども、裁判って人が人を裁きますから、何というか、裁かれる側にしたら、自分の訴えが全部認められればいいですけれども、認められなかったら承服できない思いが残るわけですよ。おかしい、この裁判官はおかしいじゃないか、この人の判断だから間違っているんじゃないかと思うわけです。それは裁判官だって常に正しいわけじゃないし、裁かれる側からしたらもろにそうなんですよ。自分の言っていること、自分が正しいと思って訴えていること、それと違うことを言うわけですから。

 でも、だから別の人に裁いてもらうわけですよ。別の人に裁いてもらうからミスもなくなるというのもあるでしょうけれども、ああ、この人が判断してもそうなんだ、この人が判断してもそうなんだ、更に別の人が判断してもそうなんだ、だったらそれは妥当な判断なんだ、それが三審制というものじゃないですか。だから、やはり、ちゃんと別々の人が別々にやるということが大事なんだと思いますよ。

 今の御答弁について確認させていただきたいんですけれども、三審制というのは、単にダブルチェック、トリプルチェックの意味なんですか、それとも、ちゃんと裁判に対する信頼というものを維持するために別の人が審議することが大事なんですか。もう一度御答弁をお願いいたします。

小泉国務大臣 そこは正確な境目はないと思いますけれども、ダブルチェックをかけることによって信頼性を高め、その信頼性によって出された判決に対する信頼性が高まる、こういう一連の動きの中で、繰り返し審査を行う審級制度、これが生まれてきたんだというふうに思います。

米山委員 そうすると、今ほどお話にも出てきましたけれども、同じ人がやったらダブルチェックにもならないし、信頼性も上がらないわけですよ。だから、まさに、おっしゃることは、こういうことをしてしまったら三審制の意義が失われるということだと思います。

 ちなみに、そもそもこの件は、堀部裁判官は第六民事部に属していたものの、事件当初、係属当初はこの事件を担当していなかったんです。ところが、第六民事部内の裁判官の異動によって、恐らく、ここからはちょっと推測が入りますけれども、裁判官の異動によって裁判体を構成する裁判官数が不足になって、まあしようがない、不足だ、でも裁判官がもういないし、取りあえず明文規定には反しないから担当してもらおうかというふうに担当したと推測されるわけなんです。

 でも、このような場合、そもそも決まりとしてありますね。裁判官の配置、事務分配、開廷日割り及び代理順序の定めという決まりがちゃんと裁判所にはあるんですけれども、この第四条二項において、「特別部以外の各部の陪席裁判官に差し支えがあるときは、あらかじめ長官が定める順序により、他の部の陪席裁判官がこれを代理する。」という規定があるので、別に人が足りなきゃ、ほかの部から人を借りてきて、その人にやってもらうということができるわけなんです。

 これは先ほど、事務として、いや、言えませんとか言いましたけれども、最高裁は明らかに、三審制に対する信頼性とか、三審制に対する過ちを減らすことよりも、部としてさっさとできる、要するに事務手続として簡単な方を優先したということなんです。しかも、恐らく、最初はやはりこれをやらないようにしようと思っていたんです。やはりそれは、同じ人にしないようにしようと思ったけれども、まあそんなことに気を遣うよりも最高裁の中の事情を優先しちゃえとしたんだと思いますよ。そういう疑念を持たれることは、それは最高裁の事務としてちゃんと答えるべきことじゃないですか。こういうことに対しても、それは個別だから答えられません、そうやって常にやっていたら、それこそ裁判に対する信頼性って失われるじゃないですか。

 ですので、もう一度最高裁にお伺いいたしたいと思います。こういう、やはり、それは明文では違うかもしれない、明文では禁じられていないかもしれないけれども、しかしほとんど争点がかぶるような事件については、それは一審を担当した方はなるべく、何かの事情でどうしてもというなら、それは明文に反しないでしょうね、絶対駄目と言うこともそれはできないですけれども、しかし、可能な限りちゃんとほかの部から裁判官を借りたりして、同じ人が担当しないようにする、ちゃんと三審制を実質的に保障される、そういう運用をする、そういう意思があるかないか、お伺いいたします。

福田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 個別の事件における裁判体の構成をどのようなものにするかにつきましては、個々の事件処理に密接不可分なものでありますことから、事務当局といたしてはお答えを差し控えさせていただきます。

米山委員 今、全く個別のことは聞いていないです。一般論です。

 しかも、ちゃんと、結構それなりに気を遣って質問しているんですよ。それは、明文規定にないものを絶対しろなんて言えませんから。だけれども、そういう努力はすべきでしょうと言っているんです。ちゃんと明文規定になくたって、しかし、普通に考えて、この手の事案はほぼ争点は同じなんです。しかも、同じ人が担当したら、先ほど小泉大臣が言いましたよ、ダブルチェックにならないじゃないですか。信用も得られないじゃないですか。それをちゃんとするのが最高裁の事務担当の方のやるべきことでしょう。それはまさに皆さんのお仕事そのものなんです。それについて答えられませんというのは、それは答弁拒否じゃないですか。

 少なくとも、やる気があるのかないのか、どっちか答えてください。そういうことに関しては、最高裁は一切気にしません、ひたすら、もう規定どおりだから、一審と二審が同じでも全然気にしませんなのか、いや、なるべくそれは重複しないようにしますなのか、どちらなのか答えてください。

福田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、個々の事件処理に関連することにいたしましては事務当局としてはお答えを差し控えたいとは思いますが、裁判の公平を保つことが重要であるということについては、委員御指摘のとおりだと思っております。

米山委員 事務の御回答としてはこれでよしとしなきゃいけないんだと思いますが、是非そこは、そういう視点も持って、きちんと裁判官の配置といいますか、していただきたいと思いますし、そういうふうに事務として指示していただきたい、事務担当としては、皆さんそういうふうにちゃんとやってくださいねと指示していただきたいと思います。

 そして、ちょうど時間が中途半端に余っているので小泉大臣にももう一度伺いますけれども、それをしようと思ったら、それは一定、裁判官の数というのは要るわけですよ。裁判官が足りなくなるとどうしてもそういうことになるわけですから、きちんと三審制を保たれる、裁判官、そして更にそれをサポートする事務の体制を整えていただけるということを御質問させていただきたいと思います。

小泉国務大臣 もちろんおっしゃるとおりです。

 裁判の仕組みだけではなくて、それを執行する体制、マンパワー、裁判官の数、こういったものまでしっかりと整えて初めて裁判の公平が維持されると思います。我が国の司法制度がそれで成り立つのだと思います。

 根本的なところもしっかりと努力をいたします。

米山委員 それでは、一分ほど時間が残っていますが、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会の美延でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 早速質疑に入らさせていただきます。

 フェイスブックなどのSNSで、企業や個人に成り済まして、最終的にお金をだまし取ろうとする、いわゆる詐欺広告が後を絶ちません。二〇二〇年に閉店した東急百貨店東横店の閉店処分セールを装って偽りの買物サイトに誘導する広告が多くのフェイスブック利用者の画面に表示され、話題になったのは記憶に新しいところですが、SNS上におけるこのような詐欺広告が目立つようになったのは二〇二二年の春頃からです。

 最近では、SBIグループ傘下企業や野村証券、みずほ証券など、金融・証券関連の大手企業を装う偽広告が増加の一途です。本物の企業ロゴのコピーを無断で使用しており、一見見ただけでは、これは本物と間違いかねません。

 また、これは企業だけではなく、昨日、我が党の共同代表である吉村大阪知事が、これは成り済ましのXだということで、御本人が、成り済ましで詐欺の可能性があるのでということで注意喚起をされておられました。

 こういうケースでは、別サイトに誘導して、情報商材などの代金などとして送金を求めるケースも多いと聞いております。詐欺広告を出している主体は実態不明の海外組織であることが多く、広告主の実在や広告内容の確認など、広告媒体側の審査が不十分だと言わざるを得ません。フェイスブックを運営するメタ社は、自動審査システムの改良を重ねているらしいということですが、根本的な見直しが必要かと思います。

 詐欺は当然のことながら犯罪であり、成り済ましは個人や企業の信用を毀損するものであります。詐欺広告を放置し続けるSNS企業には司直による対応も必要だと考えます。

 フェイスブックを運営しているメタ社は、広告のポリシーで、詐欺的又は誤解を招く方法を用いている製品、サービスなどの宣伝を禁止としており、閲覧者からの報告ツールを通じて違反の可能性がある広告を検出し、適時措置を講じているとしています。

 しかし、SNSへの広告が詐欺としてSNS運営企業に認定されて削除に至るには複雑な手続が必要であり、削除に至るまで時間がかかることや、削除をしても次々と新たな成り済ましが発生することが指摘をされています。

 また、SNS運営企業は、自国の、欧米諸国が多いと思うんですけれども、価値観やマーケットの事情を優先し、日本を含めた他国への対応を後回しにすることに加え、問題投稿のチェックや広告審査を行うための予算、人員を削減していることから、対応が進まないとも指摘されています。

 そこでお伺いしたいんですが、企業側が自社の論理を優先してこのような状況を放置することは適切でないと思いますが、政府の御見解はいかがでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 SNS等のプラットフォームサービス上で、本人や組織の許可を得ずに、本人であるかのように加工、編集された成り済まし型のいわゆる詐欺広告が流通していることは承知しておりまして、大変遺憾であるというふうに思っているところでございます。

 こうした詐欺広告は、閲覧者に財産上の被害をもたらす場合があるほか、成り済まされた方の社会的評価を下げるなど、権利を侵害する可能性もございますので、適切な対応が必要というふうに考えているところでございます。

 総務省におきましては、これまで、プラットフォーム事業者に対しまして、利用規約等を踏まえた適正な対応を求めてきたところでございますけれども、今般、プラットフォーム事業者に対しまして削除対応の迅速化や運用状況の透明化を求める法律案、プロバイダー責任制限法の改正案になりますけれども、これを今国会に提出したところでございます。

 総務省としましては、こうした取組を通じまして詐欺広告の流通への対応を図ることとしているところでございます。引き続き、関係省庁とも連携して必要な対策に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

美延委員 それは是非、前に進めていただきたいと思います。

 次に、ある弁護士は、SNS運営企業により偽広告を長期間放置しているのであれば、民法上の不法行為に当たるほか、詐欺広告の目的が刑事罰に当たる行為であれば共犯を構成する可能性があることを指摘しております。

 このような行為を取り締まる法的規制についてお伺いいたしますが、偽広告を出している企業による成り済ましは、個人や企業の信用を毀損し不当な利得を得ていることから、刑法上の詐欺罪に当たると思われます。SNS運営企業側は、詐欺の不作為の共犯になるとも考えられます。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、詐欺広告を放置し続けるSNS運営企業には司直による対応も必要かと思われますが、現行の刑法上の規定でこのような行為を取り締まることができるのかどうか、取り締まることができるのであればどのような罪になるのか、大臣の御所見を伺います。

小泉国務大臣 委員の御指摘は、デジタル化によって新しいタイプの詐欺が構成される、そのリスクですね、我々もそれは十分警戒しなければいけないと思っております。総務省とも連携をしなければいけないと思います。

 ただ、個別の犯罪の成否そのものについては、法務大臣として、こうですと、これはお答えを差し控えざるを得ません。

 ただ、関係する条文として、あくまで一般論でありますけれども、刑法二百四十六条一項の詐欺罪、また刑法六十二条一項の幇助犯、こういった条文に関わる問題だということであると思います。

 ただ、これも一般論ですが、検察当局では、法と証拠に基づいて刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処しており、また、これからも適切に対処していくものと承知しております。

美延委員 大臣、これは本当に、適切にというか、これは今はもうかなり社会問題になって、いわゆるマスコミの報道なんかも増えてきておりますので、しっかり適切に対応していただきたいと思います。

 次に、本件のような事例の多発を踏まえ、消費者庁では、消費者の利益の保護を図るため、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案を国会に提出して、令和三年に成立しております。本件のような事例への同法の適用の可能性、同法成立時の衆議院消費者問題に関する特別委員会において付された附帯決議において、SNSを利用して行われる取引に関する実態把握を行い、必要に応じて所要の措置を講ずることとされていますが、この点について、どこまで進んでいるのか、政府の対応をお伺いいたします。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の附帯決議の八に関しまして、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法では、何人も、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、内閣総理大臣に対して申出ができるとされております。SNSを利用して行われる取引につきましては、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法に基づく申出がなされた事案の分析などを通じた消費者被害の実態把握を行いますとともに、消費者安全法に基づく注意喚起も継続的に行っております。

 引き続き、附帯決議の内容も踏まえまして、消費者被害の実態の把握などを継続しつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

美延委員 是非、よろしくお願いいたします。

 日本弁護士連合会は、昨年の三月に、総務省、消費者庁及び内閣府消費者委員会に対して、SNSを利用した詐欺行為等に関する調査・対策等を求める意見書を提出しております。意見書の趣旨は以下のとおりになります。ちょっと読み上げます。

 一つ、総務省、消費者庁及び内閣府消費者委員会に対し、以下の点につき調査するように求める。小さな一番、ソーシャルワーキングサービス、SNSですね、特に利用者の登録時に本人確認を十分に実施していないものが詐欺行為や消費者被害の誘引手段として使用されている実態。小さな二は、SNS事業者による本人確認の実態及びその記録の保管状況。小さな三番、SNS利用者を特定する情報について、弁護士法二十三条の二に基づく照会がなされた場合のSNS事業者の対応状況。大きな二番で、総務省に対して、上記一記載の調査を踏まえ、SNSを詐欺行為等のツールとして利用させないための被害予防及び被害回復に向けた実効性のある対策を講じるように求める。大きな三番、消費者庁及び内閣府消費者委員会に対し、上記一記載の調査を踏まえ、総務省が上記二記載の実効性のある対策を速やかに講ずるべく、総務省に対する適切な働きかけ又は意見表明を実施するように求める。

 つまり、SNS事業者に対する本人確認の法規制が不十分であるため、SNSが詐欺行為や消費者被害の誘引手段として利用されていることから、SNS事業者への本人確認、本人確認記録の保管の義務づけ、被害者が加害者の特定に必要な情報を容易に確認できるようにすることを求めています。

 この意見書に対する政府の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 SNSを利用した詐欺につきましては、消費者に対して被害をもたらすものでありますことから、許されない行為であると考えております。

 その上で、委員御指摘の本人確認につきましては、大手のSNS事業者においては、携帯電話番号やメールアドレス、そういったものとアカウントのひもづけが行われるなど、一定の自主的な本人確認が行われているものというふうに承知しているところでございます。また、本人確認記録の保管等につきましても、関係のガイドラインがございまして、そちらに沿って各事業者において適切に取り扱われているものというふうに承知しているところでございます。

 他方、SNSの利用に際しましては、一律に利用者の本人確認あるいはその記録の保存を法律上義務づけることにつきましては、これは表現の自由やプライバシーとの関係で慎重な検討が必要であるというふうに認識しておるところでございます。

 いずれにいたしましても、御指摘の意見書の趣旨も踏まえまして、関係省庁とも連携して、SNSを含めた電気通信サービスの不適正利用対策に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

美延委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 次に、技能実習生のことで少しお伺いしたいんですけれども、技能実習生の保護に関する法案が閣議決定されていない中で、技能実習生の失踪について質問をさせていただきます。

 厳しい職場環境に置かれた技能実習生の失踪や犯罪が後を絶ちません。現行制度を廃止し、人材の確保と育成を目的とした育成就労制度の創設で転籍制限の緩和が決まっておりますが、単に転籍制限の緩和で技能実習生の失踪や犯罪という問題が解消できるのか、非常に疑問であります。

 私の近しい知人の実家に数年前に空き巣が入り、実際に犯行が行われた約一年後に犯人が逮捕されたと警察から報告を受けたそうです。犯人はベトナム人の技能実習生の二人組であり、逃亡の末に空き巣を繰り返し、余罪は実に二百件近くあったということを聞きました。

 国内のベトナム人犯罪の摘発件数は、二〇一三年に千百九十七件だったのが、二〇二二年には三千五百七十九件にまで急増しております。この背景には、技能実習生として来日するベトナム人の増加があると思われます。

 少々古いデータで恐縮ですけれども、法務省の資料によると、二〇二二年に失踪した技能実習生は九千六人に上り、二〇二一年の七千百六十七人から約二六%増加しています。また、この九千六人のうち、ベトナム人が六千十六人、次いで中国人が九百二十二人、カンボジア人が八百二十九人、ミャンマー人が六百七人となっており、何とベトナム人が全体の三分の二を占めております。

 現在、技能実習生として日本に在留する外国人は約三十二万人。つまり、一年間でその三%近くの技能実習生が失踪しているということになります。この一年間で三%近くもの技能実習生が失踪した現実について、政府の御所見を伺います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の技能実習生の失踪割合につきましては、様々な算出方法が考えられますところ、入管庁でお示ししているものとしましては、令和三年末の在留技能実習生と令和四年に新たに入国した技能実習生の合計数に対する令和四年の失踪技能実習生数九千六人の割合を約二%という計算もしているところでございます。

 ただし、いずれにしましても、技能実習生の失踪者が相当数発生していることについては重く受け止めております。

 技能実習生の失踪原因を明確に特定することは困難な面もございますが、一部の実習生への不適切な取扱いや、当初見込んでいた入国後の収入額が実際と異なり、入国前に支払った費用を返済するため新たな就労先を求めるなどの技能実習生側の経済的な事情などがあるものと考えております。

美延委員 そのとおりなんですよね。ベトナム人技能実習生が犯罪に走る主な原因は、技能実習生が抱える百万円以上の借金、そして仲介業者による搾取というような事情が挙げられます。

 技能実習制度では、送り出し機関、そして監理団体、受入れ企業のように、最低でも二つの人材事業者が介在するのが一般的です。送り出し機関側の責任、監理団体の責任、受入れ企業の責任と、それぞれの側が責任を負う必要があると思いますが、政府の御所見はいかがでしょうか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 技能実習生の失踪に関しまして、令和四年七月に入管庁が公表しました技能実習生の支払い費用に関する実態調査の結果からも、失踪割合が高い国は来日前の支払い費用や借金の平均額が高く、失踪割合が低い国は支払い費用や借金の平均が低い傾向が見受けられるところでございます。

 技能実習制度では、技能実習生から不当に高額な手数料などを徴収するなどの不適正な送り出し機関の排除を目的として、送り出し機関と、二国間取決めを作成しており、日本側が不適正な事案を把握した場合には、相手国政府に通報し調査を依頼した上で、その結果に基づき、指導や送り出し機関の認定取消しを求めることとしております。

 その上で、送り出し機関に対しては、技能実習生の失踪の発生が著しい場合、技能実習生の新たな受入れを停止する措置も講じているところでございます。

 また、技能実習生が失踪した場合、外国人技能実習機構が、当該技能実習生を受け入れていた監理団体等や他の技能実習生から事情を聴取することによって、監理団体等の責めに帰すべき事由の有無について確認した上で、過去一年以内に監理団体又は実習実施者の責めに帰すべき事由がある場合には技能実習生の新規の受入れを一定期間停止する措置も講じているところでございます。

 さらに、当該事由によって技能実習計画の認定が取り消されることになった場合には、五年間、技能実習生が受け入れられないこととなっております。

美延委員 今、五年間ということで、これはやはり厳しくやってもらわないと。

 私も思うんですけれども、本当に、外国人労働者の犯罪の背景には、その人たちの個人の資質というよりも、やはりこれは、申し訳ないんですけれども、日本側の制度や企業側の対応に問題がある可能性が私は高いと思うんです。

 日本で働く外国人には日本の労働関連法が適用されますし、当然のことながら、日本人従業員と同様に尊重しなければならない存在、当たり前のことです。違反行為が原因で失踪や犯罪などにつながれば、日本人従業員の離職だけではなく、これは企業イメージの失墜も免れません。これからの社会を生き抜くためにも、企業側には、しっかりとした人権意識を持って外国人労働者を雇用する責任があります。

 最後に、育成就労制度の創設において、この失踪問題の解消について小泉大臣の御所見をお伺いいたします。

小泉国務大臣 間もなく閣議決定して、国会でも御審議をいただこうかと思っております。

 今回の見直しでありますけれども、方針としては、監理団体、受入れ機関に関して、その役割や要件を適正化すること。さっきおっしゃった、当事者一つ一つを適正なものにしていくという努力が必要です。また、外国人の送り出し機関に支払う手数料等を受入れ機関と外国人が適切に分担をする、過重な負担にならないようにするための仕組みを導入します。また、転籍制限。これは、本人の意向による転籍を一定の範囲で認め、また、やむを得ない事情がある場合の転籍の範囲も明確化します。こういうトラブルになることを事前に解消する仕組みも広げていくわけであります。最後に、ブローカー等の排除を担保するため、不法就労助長罪の法定刑を引き上げる。ブローカーの排除。

 こういったものを組み合わせることによって、失踪等の問題を、課題を何とか解決に導けるのではないかというふうに考えております。

美延委員 そうなんですよね。結局やはり、そういうことをしっかりやっていかないと、今度は、先ほども同じ議論がありましたけれども、日本、我々の国が選んでもらえない国になってしまう可能性があるわけです。

 だから、そこはしっかり、法的なところは法的なところでしっかり決めていただいて、やはり日本にどんどん来てもらえるような体制を整えていくということが私は必要だと思いますので、この質問に関しては、法案が出たときにまた続きでさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 次に、ちょっと順番を変えまして、間もなく提出予定の裁判所職員の定数法の一部を改正する法律案について少し伺わさせていただきます。

 本日法案が提出されますが、法案の概況としましては、裁判所事務官を四十四人増員するとともに、裁判所の事務を合理化し効率化することに伴い、技能労務職員等を七十五名減員し、この増減の中で、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十一人減少するというものですが、技能労務職員七十五人の職種をまず教えていただけますでしょうか。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 まず、今回お願いをしております定員法の改正によりまして減員する七十五人の内訳でございますが、庁務員等の技能労務職員について十八人、それから、裁判所事務官を五十二人減員するものでございます。また、このほかに裁判所速記官五人を減員することといたしましたが、これは事件処理の支援のための体制強化のための裁判所事務官に振り替えるものでございます。

 以上が、今回の定員法改正における減員でございます。

 他方で、先ほど御指摘もいただきましたが、裁判所事務官につきましては、事件処理の支援のための体制強化及び国家公務員の子供の共育て推進等を図るため、四十四人の増員をお願いしているところでございます。

美延委員 これらの減員する職種に関しては、これからアウトソーシングするという理解でよろしいんでしょうか。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 まず、今、減員について内訳を申し上げましたが、この中の技能労務職員、ここの部分が、先ほど申し上げましたような、庁舎の清掃や警備、電話交換といった庁舎管理に関する業務、あるいは自動車の運転等の業務を行う者ということになります。これらの者につきましては、合理化を進めていく。定年等による退職に際しまして、裁判所の事務への支障の有無を考慮しつつ、外部委託による合理化等が可能かどうかを判断し、後任を不補充ということにより生じた欠員について、定員の合理化をしているというところでございます。

美延委員 例えば運転する方とか庁舎管理をされる方をアウトソーシングするという答えだと思うんですけれども、それであるならば、今、いみじくも不補充でということを言われましたけれども、これは何年ぐらい移行するのにかかるのか、そして、アウトソーシングすることによって年間どれぐらいの経費の削減になるのか、併せて教えていただけますでしょうか。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 アウトソーシングへの移行期間というお話でございました。技能労務職員の業務のアウトソーシングでございますけれども、技能労務職員の定年等の退職に際しまして、裁判所の事務への支障の有無を考慮しつつ、これが可能か判断していることに加えまして、技能労務職員は定年で退職する以外にも、自己都合等で定年前に退職することなどもございますので、技能労務職員の後任を不補充にして技能労務職員の業務をアウトソーシングに移行することに要する期間というのを明確にお示しすることはなかなか難しいところでございます。

 もっとも、令和五年十二月一日現在の技能労務職員は二百五十九人おりまして、その平均年齢は約五十九歳というところでございます。

染谷最高裁判所長官代理者 経費節減効果についてお答えを申し上げます。

 技能労務職員につきましては、令和元年度を基準といたしまして、その後、令和六年度予算案までの五年間で合計百十六の定員を合理化しております。

 技能労務職員の業務は多岐にわたるものである上、これら業務の全国での外注化の状況等を最高裁で全て把握しているわけではございませんので、アウトソーシングによる経費節減効果というものを正確に申し上げるのは難しいところがございますが、一例として、最高裁で把握をしております全国の清掃業務、それから警備業務、これらの予算額を合計した金額の推移を見ますと、先ほどの五年間で一億円余りの増額にとどまっております。

 先ほど申し上げました百十六人という減員数に対しまして、清掃、警備の予算の増額幅が一億円程度ということでございますので、これは一部ということではございますが、アウトソーシングによる経費節減効果は一定程度あるというふうに認識をしているところでございます。

美延委員 今のお答え、ちょっと私は腑に落ちぬのですけれども。やはり、まず合理化する際に、例えばアウトソーシングしたらどれぐらい費用の削減効果がある、これは全部、当たり前のことで、税金なんですから、それを計算して当然やるけれども、今何か聞いていたら、一概に言えませんみたいな、その答えはちょっと私には理解できないんですけれども。

 やはり、しっかり計算して、これぐらいの削減効果がありますということをしっかり出すべきだと思うんですけれども、もう一度お答え願います。

染谷最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、技能労務職員の業務は多岐にわたっておりますので、そこを正確な数字等出すというのはなかなか難しいところではございます。

 その前提でございますが、先ほどの御答弁申し上げました五年間での技能労務職員百十六人の定員の合理化、これを人件費の削減額ということで見ますと、六億円余りということになります。

美延委員 六億円の削減というのは大きいですからね。やはり、そういうのもしっかりやっていただきたいと思います。

 最後に大臣にも伺いたいんですけれども、私が何でこの質問をさせていただいたかと申しますと、私の前職、大阪市会議員時代にも同じようなことがあり、その際は、いわゆる退職不補充だけではなくて職種の転籍などで早めていったという経緯があるんですけれども、そのような努力が、今日は裁判所の方ですけれども、行政改革の一環としてやはり法務省も進めていくべきだと私は思うんですけれども、大臣の御所見をいただけますでしょうか。

小泉国務大臣 現行の定員合理化計画というのがまずございます。令和二年度から六年度までの五年間で、五千三百七十二人を合理化するということでありますが、これはこれとして、不断の見直しをする、仕事のやり方、効率化、そういったものに不断の見直しを加えていくということは非常に重要な取組だと思います。

 法務行政は非常に裾野が広くて、仕事がどんどん増えますけれども、じゃ、それに従って人をずっと永久に増やし続けていけるかというと、限界があるわけですね。そういう問題意識の下で、まずデジタル化をどれだけ活用できるかどうか。それから、ワーク・ライフ・バランスの徹底というのも、生産性の向上につながるというふうに私は思っています。そして仕事のやり方、これも変えられる余地があるんじゃないか。

 そういったものを組み合わせながら、この合理化計画に載っかっている五千三百数十人の更にその奥に、定員の合理化というものを目指して努力する、これが必要なことだと思います。

美延委員 大臣、これはしっかりやっていっていただきたいと思います。

 それから、先ほども申し上げましたように、最高裁の方も、もう少ししっかり、これぐらいということを答弁できるよう、また是非、これに関してはしっかりとした金額をお示し願いたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

武部委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部弘樹でございます。

 時間がありますので、しっかりお聞きしたいと思います。

 まず、今回の裏金問題についてお聞きします。

 神戸の大学の先生が刑事告発したことからこの裏金問題は露見することとなったわけでございますが、二階派、安倍派の国会議員、大臣も告発の対象となっておられます。今回は起訴ということにはなっておりませんが、大臣自身も検察の調べを受けたんでしょうか。

小泉国務大臣 これはまさに捜査機関の活動内容に関わる事柄でございます。お答えを差し控えるべきであると思います。

阿部(弘)委員 大臣の秘書、それと政務官の秘書、本人、いずれも調べられたんじゃないですか。

小泉国務大臣 同じお答えの繰り返しになって恐縮でございますけれども、まさに捜査の内容そのものでありまして、捜査機関の活動内容に関わる事柄であり、お答えは差し控えたいと思います。

阿部(弘)委員 刑事告発されていて、調べもしないで不起訴にするんですか、刑事局長。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねは捜査機関の活動内容に関わる事柄でございまして、法務当局としてお答えすることは差し控えたいと存じます。

阿部(弘)委員 残念ですね。一般論しか聞いていないんですけれどもね。

 調べられたら調べられたでいいんですよ。全部記載していましたと。だって、誰かがマスコミにそのように、報道していたじゃないですか、リークしていたじゃないですか。安倍派は記載していない、二階派は全部記載している、実は、その後のことで、二階派の幹部と宮内秀樹さんは裏金をもらっていた、そういうことがリークの段階からいろいろあったんじゃないですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 捜査の内容に関わる事柄がみだりに部外に明らかになれば、捜査、公判の遂行に重大な支障を生じたり、関係者の名誉、プライバシーに重大な影響を与えたりすることになりかねません。捜査上の秘密について、これを外部に漏らすことはあってはならないものでございまして、検察当局においてもそのような認識の下、厳正に対処しているものと承知しております。

 様々な報道があったことは私も報道を見聞きして承知しておりますけれども、検察においては今申し上げたような方針に基づいて厳正に対処しているものと承知をしております。

阿部(弘)委員 もうここは結構です。

 昨日、BSのテレビを見よりましたら、脱法三兄弟というのが出てきたんですよ。脱法三兄弟、大臣が二人いて、そして自民党の幹事長がいて。

 御承知ですか、大臣。脱法三兄弟と言われているんですよ。

小泉国務大臣 いや、存じ上げません。

阿部(弘)委員 昨日、BSで流れていて、私も何げに見て、おやっと思ったですよ。つまり、政治資金団体、大臣でいえば龍の会、十年間で七千八百万、これは参議院でも同じように指摘されましたですね。同じように、新藤大臣は二億六千万円、茂木幹事長は三億二千万円。そこに移すことで、五万円以下は領収書の提示が必要なくなってくる。それは脱法ですから。違法じゃないですけれども。

 すごい方法を考えつきますね。そんなのでセクシーダンサーを呼んでも、分からないじゃないですか、国民は。

小泉国務大臣 問いだと受け止めさせていただいてお答えを申し上げますが、龍の会は個人献金を募る団体でございます。そして、後援会というのは私の政治活動を支援してくれる団体でございます。ダブる人もいますけれども、その生い立ちがそれぞれ違います。

 私は、政党の公認を得て選挙したことは二回しかなくて、あとはずっと無所属でありますので、この龍の会というのはもう命綱みたいな、また後援会も命綱であります。大事な大事な政治の同志たちであります。そういう方々の力をいただいて、御支援をいただいて、御支持をいただいて、政治活動を二十四年間続けてきたわけであります。

 そのことを収支報告にそのまま記載をしたわけでございます、しているわけでございます。龍の会で、こういう方々から、固有名詞も載っています、こういう方々から個人献金をいただきました、そしてそれを後援会に、支援のための資金として送りました、そのとおり現実が動いているわけでございます。その結果として透明度が薄まったのではないかという御批判があることは承知をしておりますけれども、この資金の流れをなかったことにはできない。

 こういう資金が現実に動いているわけですから、どこでお金が、皆さんが資金を募ってくださり、それがどこの団体に行って、そこでどう支出されたのか、全体の動きを報告することも政治資金規正法の趣旨だと、私はそのように考えております。それをバイパスするということはできません。

 そういうことを是非御理解をいただきたいと思います。実態に即した記述をしております。

阿部(弘)委員 僕が言っているんじゃないですよ。昨日、BSのニュースで小泉大臣のことを論評してありましたから、国民が見ておりますから、ああ、そうなんだ、領収書は見れないんだ、何に使ったかも分からないんだ、そういう脱法三兄弟の一人に指名されてありますよ。

 じゃ、ちょっと時間がありませんので、次のことを伺います。

 指揮権のことは、ちょうど一か月前の予算委員会でお聞きしました。大臣にお聞きしますが、指揮権、私は、伊藤栄樹元検事総長の逐条解説を読んでおりましたら、当時、指揮権、十四条のことですよ、十四条、法務大臣は、四条及び六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮することができる、ただし、個別の事件の取調べ又は処分については、検事総長のみを指揮することができる、これがいわゆる造船疑獄の指揮権ですね。

松下政府参考人 検察庁法十四条については、今読んでいただいたとおりでございます。

 そして、今お尋ねのいわゆる指揮権、造船疑獄事件のお話をされましたけれども、それは、いわゆる検察当局の意に反した形で法務大臣の指揮権が行使されたと言われている例として承知をしております。

阿部(弘)委員 当時、造船疑獄事件で大野伴睦さん、まさに今回在宅起訴された大野さんの御親戚ですね、大野伴睦さんを始め五人の政治家が逮捕、そしていよいよ幹事長の佐藤栄作さんが逮捕される、そのときに犬養健さんは、検事総長に対して、捜査をやめろとおっしゃった。だから、捜査はやめた。この話は面白いですよ。佐藤栄作さんは、造船疑獄では逮捕はされませんが、政治資金規正法では在宅起訴されています。

 伊藤栄樹さんの逐条解説に戻りますよ。指揮権とは、法務大臣が持つ権限です。それについては、それをはねつけるか、受け入れるか、あるいは職を辞するか、その三つしかないと。諸君、しっかり、このことを聞いて、正義のために闘えということを僕はその文章から読み取りましたが、大臣の指揮権の解釈は、十四条に関してはいかがですか。

小泉国務大臣 検察権は、まず第一に、行政権の一部を構成しています。そして、その行政権の執行については、法務省のトップである法務大臣が国会に対して説明を行う責任を負っております。

 一方で、検察権は、司法の現場においては、司法というものの一角を形成しています。検察が起訴しないものについては裁判が行われません。検察が起訴した案件については全て裁判が行われます。検察の存在を欠くと、司法制度が回っていかない。司法というものの一角に、車の両輪のように組み込まれているのが、もう一方の検察権という存在であります。

 その調和を取るために検察庁法十四条が構成されているわけであります。一般的な指揮権は法務大臣は検察に対して有しますが、個別案件に関しては検事総長のみに話をすることができる。その検事総長は、指揮権を行使しようとした法務大臣をいさめることもできる、説得することもできる。そういうふうに書かれております。そういうのが全体の仕組みだと思います。

阿部(弘)委員 造船疑獄のときの犬養健氏は、後の文芸春秋のインタビューに対して、検察官を免職することも考えていたとおっしゃってある。あるいは、当時の秦野法務大臣は、指揮に反するものについては、そういうことはあってはならないと、真っ向からこの伊藤栄樹元検事総長の逐条解説に反論してあります。

 今はこのことの議論をすることはほとんどありませんが、私は、海外に目を向けたときに、いわゆるウォーターゲート事件、ニクソン大統領が失脚する事件です。敵対する民主党の本部に盗聴器を設置して、そして、当初は分からなかったが、裏金が使われてあった。何よりも決定的になったのは、ニクソン大統領の執務室でその録音が取られ、捜査妨害あるいは特別検察官の罷免、そういう謀議が行われて、そしてそれが露見したことで、現職大統領の辞職という歴史始まって以来のことが起きた。

 世界の常識は不党派なんですよ。不党派というのは、アメリカの大統領が共和党がなろうが民主党がなろうが、多くの幹部職員は替わりますが、検察や警察など、あるいはFBI、CIAなど、一部の部署ではその方々が残っていく。そういう方々が正義を、巨悪を見逃さないというために働く。それが近代国家ではないでしょうか。

小泉国務大臣 ちょっと議論が戻りますが、政治による介入、それを拒否する必要性、そのための検察庁法の規定、それはそのとおりだと思いますが、じゃ、なぜ検察権を一般的とはいえ法務大臣の指揮下に置いたのか、なぜ憲法上検察は法務大臣の下にあるのか。それは、民主的に選ばれる、民主的なプロセスを経て選ばれた政治家がバランスを取る、民主的な抑制を利かす、そういう根本的な考え方がございます。そのことも我々はよく胸に置く必要があろうと思います。

 政治イコール悪ではない。政治は、民主的なプロセスを経て選ばれてくる我々は、国民の負託を受けて、検察を一般的な指揮権の下に置いて、民主的に運営されるよう指揮する義務が、一般的な指揮権の義務があると思います。

阿部(弘)委員 それは検察の暴走を止めるためだというような文章を書く人もいらっしゃいますが、一方で、今の社会は、公益通報、正義を貫く、その法律もあるわけでございます。ですから、先ほどのウォーターゲート事件は、結果として、世論が味方して、ニクソン大統領が辞めることになった。

 今回の法務大臣の方に戻りますが、私は、法務大臣が二階派を、派閥をおやめになるときのお言葉が非常に残念でなりません。二階派をやめますが、大臣を続けなさいというお言葉をいただいた。続けるかどうかは、岸田総理でしょう。お言葉というのは、任命権者ですか、派閥の長が。

 私は見ましたよ、裏金問題。大野泰正氏、五千百五十四万円、在宅起訴。池田佳隆氏、四千八百二十五万円、逮捕、起訴。谷川弥一氏、四千三百五十五万円、略式起訴。二階俊博氏、三千五百二十六万円、梅沢修一秘書、略式起訴。ここで起訴するか起訴しないかが決まったんじゃないですか。

 この梅沢修一さんという方は、法務大臣、御存じですか。

小泉国務大臣 今、前段の御質問と後段の御質問ですか。

 後段の梅沢秘書は、もちろん知っています。二階衆議院議員の秘書であります。

 前段の質問は、済みません、何でしたっけ。

松下政府参考人 お答えいたします。

 前段は金額の問題でお尋ねなのかなというふうに理解をいたしましたけれども、どういう判断でどなたをどのように処分したかということについては、検察当局の個別事件における事件処理に関する事柄でございまして、お答えは差し控えたいと存じます。

 あくまでも一般論として申し上げれば、検察当局においては、お尋ねのような事案の処理に当たりましては、動機や犯行態様、虚偽記入の額、被疑者の供述内容、ほかの事案との比較、また、逮捕するかしないかは、逮捕すべき要件があるかどうか、そういった様々な事柄を総合的に考慮して事件処理の判断をしているものと承知しております。

阿部(弘)委員 このことは前回の予算委員会でもお話ししましたので、また続きは後日ということにいたしますが、いずれにしましても、国民は、なぜここのラインで線引きがされたのかと。恐らく、予算委員会で答えられたように、逮捕のことについては三長官会議で法務大臣に報告があるんですよ。ですから、大臣は正直だから、その報告は受けたということをおっしゃってあるから、逮捕を受けるんだったら、梅沢さんに、知り合いの梅沢さんに、おまえ逮捕されるぞとおっしゃったんじゃないですか。

小泉国務大臣 全くそういうことはしておりません。

阿部(弘)委員 そういうことを大臣が言うものだから、ますます政治不信が高まるじゃないですか。言っていませんて。お答えできませんと言うんですよ、普通は。

 じゃ、いいです。ですが、ロッキード事件もそうですが、やはり国民はしっかりといろいろなものを見ていますので、是非とも信頼を高める法務行政に尽くしてほしいと思います。

 私は、三番目の質問で、人はどう生きるかという、先ほどアカデミー賞の長編制作部門で賞を取ったことについてもお聞きしますので、そこでまた尋ねていきたいというふうに思います。

 次に、方言札のことをお聞きします。方言札、法務省はどなたかお答えできますか。

中原政府参考人 近代国家の形成におきまして国語が重要な役割を果たすということから、明治の初めから、共通語、当時の言い方では標準語をどのように定めるかという議論がございまして、少しずつ現在のような共通語の姿が形成されていったというふうに認識しております。

 例えば、明治三十五年に、当時の文部省は、国語に関する調査結果を文部大臣に具申するため、国語調査委員会を設置しまして、その調査方針の一つとして、方言を調査して標準語を選定することを挙げております。

 また、明治三十七年に、文部省は、教科書の在り方を定める尋常小学読本編纂趣意書を示しましたが、この中では、教科書で使用する言語について、主として東京の中流社会に行わるものを取り、かくて国語の標準を知らしめ、その統一を図るとしておりまして、東京で使用される言語をその標準として採用をしております。

 その後、学校教育などを通じまして共通語が広がってまいりましたが、過去に、一部地域におきましては、方言の使用を禁ずるため、方言札が使用される場合があったということも承知しております。

 現在におきましては、方言の文化的価値やその継承の重要性が改めて見直されておりまして、文部科学省におきましても、アイヌ語や各地域の言語を保存、継承するための取組を積極的に進め、その周知に努めておりまして、学校におきましても、共通語と方言のそれぞれの果たす役割について指導することとしているところでございます。

阿部(弘)委員 いや、肝腎の方言札のことを説明してほしかったですけれども、日本語教育のことはよくお話しいただきましたけれども。

 方言札というのは、かまぼこ板みたいなもので、私は方言をしゃべりましたといって、例えば沖縄県の第一旧制中学校ですか、ある先生は、方言を使うと方言札を首にかける。あるいは、東北のある地域でも同じように、方言を使いました、共通語を使いませんでしたといって札をかける。

 同じような言語の同化政策は、南方の国でも、旧日本領のところでも、北海道でも、同じような同化教育を戦前は行っていたんですね。戦後は行っていますか、そういうことを。

中原政府参考人 私どもの文化庁委託事業、危機的な状況にある言語・方言の実態に関する調査研究事業報告書、平成二十三年二月の国立国語研究所にある調査におきましては、沖縄県におきましては昭和四十年代まで、奄美群島では昭和五十年代まで使用されていた実績があるという事実は把握をしております。

阿部(弘)委員 方言札という言い方はいいんですけれども、方言札、罰という言葉までつくんですよ。ペナルティー。

 私は九州の福岡出身ですけれども、上京は、東京に暮らすのは三回目ですけれども、最初の頃は共通語を使おうと一生懸命努力しましたよ。役所に勤めたこともある、厚生省に勤めたこともありますので、標準語を使おうとした。もう今は使わないんですよ。もう疲れました、標準語を使うことは。

 ただ、テレビの番組で、沖縄出身の女優さんをアナウンサーに使って、沖縄の言葉で、ウチナーグチで質問してウチナーグチで答えたら、みんなで笑うんですよ。そういう番組があるというのは御存じですか。

山碕政府参考人 お答え申し上げます。

 委員がただいま御指摘されました番組につきましては、報道により総務省としても承知しております。

阿部(弘)委員 金曜日の夜会とかいう番組ですね。TVerで見たら、すぐに翌日にもう消去してあったんですよ。どうしてですかね。BPOに電話したら、ああそうですかと、がちゃんと切られまして、全然取りつく島がないんですけれども、同じように、お答えください。

山碕政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省といたしましては、個別の番組に係る問題につきましては、放送事業者による自主的、自律的な取組により適切な対応が行われることが重要であるというふうに考えてございます。

 また、御指摘がございましたBPO、放送倫理・番組向上機構でございますが、この機構は、NHKと一般社団法人日本民間放送連盟が自主的に設置した第三者機関でございまして、放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三の立場から迅速的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的として活動しているものと承知しております。

阿部(弘)委員 いろいろな方から御意見をいただいても、それを届けるすべがないんですよ、総務省さん。

 人権擁護局、日本国憲法で生まれや育ちで差別を認めていますか。大臣でも。お願いします。

小泉国務大臣 法務省の人権擁護機関では、いじめ事案を含めて人権相談に応じております。人権相談等を通じて、人権侵害の疑いがある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じているところでございます。

 方言を使うことをきっかけとしていじめや差別に遭うことはあってはならないものと認識しております。

 法務省として、引き続き、相談者に寄り添った人権相談の実施、人権擁護活動にしっかりと取り組んでまいります。

阿部(弘)委員 では、もうこれはこの辺にして。

 じゃ、この委員会で方言を使ってもいいですか、大臣。質問に方言を使ってもいいですか、大臣。

小泉国務大臣 これは、国会、委員会に関する事柄でありまして、法務大臣としてコメントする立場にはございません。

阿部(弘)委員 それは想定内でございますので。でも、もう直りませんので、これからも方言を使った質問は行っていきたいと思います。

 少し時間が迫ってまいりましたので、ちょっと順番を飛ばして、本当は安楽死のこと、さきの裁判のこともお聞きしたかったんですけれども、ちょっと、是非とも聞いてくれという話がありましたので、障害者の年金のことを聞きます。

 障害者の年金、六十五歳以上になったら年金がもらえるわけでございますが、障害者が障害者年金をそれ以前にもらっていた場合、手続を取ったらその支給額が大幅に減るんじゃないですか。

辺見政府参考人 厚生労働省の障害保健福祉部長でございます。

 大変申し訳ございません、障害年金に関することについて、ちょっと事実関係を確認をしないと御答弁ができませんので、改めて確認をさせていただきまして、事実関係をまた御説明をさせていただきたいと存じます。

阿部(弘)委員 いや、勉強会にも来ていたじゃないですか、年金局の方が。六十五歳以上になったら、障害者の年金の受給額は減るんですよ、手続を取ったら。そういう年金制度はやめてくださいと言ったじゃないですか、僕は。ひどいな。

 じゃ、もう一つお伺いしますね。心身障害者扶養保険制度、掛金は、二十年間掛けた場合に四百五十一万二千円、でも、もらえる額は三百六十万円、これについて説明してください。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 心身障害者扶養保険制度は、障害のある方の保護者の相互扶助の精神に基づきまして、保護者が亡くなった後の生活の安定と福祉の増進を目的とした任意加入の保険制度でございます。本制度に関しましては、独立行政法人福祉医療機構が運営しているところでございます。

 阿部先生からは、障害種別による受給期間等の差についての御指摘を受けているところでございますけれども、身体障害者で二十三・七年、知的障害で二十一・九年、精神障害で二十一・八年となっておりまして、障害種別の平均受給期間には大きな差が見られないところでございます。

 一方で、加入時における保護者の方の平均年齢は、身体障害の方は四十五・三歳、知的障害の方は四十五・二歳に対して、精神障害の方は五十七・一歳となっておりまして、精神障害の方については加入時の保護者の方の平均年齢が高いといった特徴は見られるところでございます。

 本制度は、保護者の方が亡くなったときが年金の支給要件となっておりまして、保険上のリスクが高くなるため、加入時の保護者の年齢が高いほど掛金を高くする、こういった仕組みを設けているところでございますけれども、障害種別による区分は設けておりません。基本的に、任意加入の保険制度でございますので、そうした趣旨も生かしながらの運営をしていきたいと考えております。障害のある方の生活の安定や保護者の不安軽減に資する制度であるという点について御理解いただければと思います。

阿部(弘)委員 いや、理解できないから質問しているんですよ。四百五十万払って三百六十万しかもらえない、そういう制度がいまだに市町村主体で存在していること自体が私は不思議でならぬ。どんどんどんどん加入者が減っているじゃないですか。貯金して、そして生前贈与した方がいいわけじゃないですか。

 特に、精神障害者の場合は、発症が思春期以降ですから大学生ぐらいと大体思っていただいて結構なんですけれども、そうすると、親も相当年を取っている、掛金の掛けれる年齢も限られているから、この制度、一時期、掛金は安かったけれども、掛金を高くしたがために誰も入らない制度をずっと続けているということに私は問題だと言っているんですよ。

 先ほどの、六十五歳に老齢年金の手続を取ったら後戻りできない、老齢年金の制度を取ったら障害者の年金額ががたっと減る。おまけに、政府が用意しているこういう保険制度がありますよ、もらえない。それは社会不安を助長しますよ。特に、障害者差別だと思いますよ。

 法務大臣、私はこのことは重大な障害者差別だと思っておりますので、差別がない社会に向けての意気込みを、これに限らなくていいですよ、お願いします。

小泉国務大臣 差別の解消というのは、現代の日本の社会において最優先で対処すべき、実現すべき基本的な価値であると思います。各行政分野にそれはまたがっておりますけれども、そういう複雑な糸を解きほぐしながら、的確に現場に我々の意思が通じるよう、差別の撤廃また改善に向けて全力を尽くしたいと思います。

阿部(弘)委員 所管省庁の大臣ではないかもしれませんが、今、その事実を国民に、白日の下に知らしめたわけですから、是非ともよろしくお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

武部委員長 それでは、速記を止めてください。

    〔速記中止〕

武部委員長 速記を起こしてください。

 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 小泉法務大臣は所信表明の中で、法の支配や基本的人権の尊重といった価値を国際社会に浸透させるべく、司法外交を一層強力に展開しますとおっしゃいました。

 今、法の支配、基本的人権の尊重が深刻に脅かされているのが、パレスチナ・ガザ地区です。十一日、国連グテーレス事務総長が改めて停戦を呼びかけ、防げる死を増やさないためにあらゆる行動をすることを呼びかけております。日本政府の一員として、大臣にも呼びかけに応える責任があるというふうに考えております。

 一月二十六日、イスラエルに対し、国際司法裁判所は、ガザ地区の住民の大量虐殺などを防ぐためあらゆる手段を尽くすこと、ガザ地区に確実に人道支援が届くようにすることなどを命じました。これは法的拘束力のある命令です。これを実行させなければなりません。

 ハマスによる無差別殺りく、これも国際法違反であり、人質を取るなど、これも絶対に許すことはできません。けれども、イスラエルによる入植、占領、封鎖、空爆、歴史的な深刻な人権侵害、そして、イスラエルによってガザで子供たちを始め民間人が大規模に殺され続けている。この人数は、昨年十月以降、三万一千人を超えております。事態は深刻化する一方で、子供の餓死も今相次いでいると報告をされています。国連人権理事会の中で、イスラエルはガザ地区の食料システムを破壊している、イスラエルはガザ地区のパレスチナ人に対する飢餓作戦を実施していると人権理事会で特別報告者が述べたとの報道もございます。

 この国際司法裁判所の暫定措置、国際法、国際人権法を守るよう、ラファへの総攻撃をやめるよう、イスラエルに強く繰り返し求めるべきだというふうに思います。ラマダンに入っても殺りくは続いております。グテーレス事務総長が停戦を呼びかけ、改めてあらゆる行動を呼びかけている今、今まで以上の取組を日本政府として行うべきではないですか。これは法務大臣にもお伺いしたいと思いますし、外務副大臣にもお伺いしたいと思います。

小泉国務大臣 先生のお話、今、しかと承りました。大変厳しい状況にあるということも改めて認識をいたしました。

 ただ、御指摘の、お尋ねの国際司法裁判所、ICJが発出しましたイスラエルに対する暫定措置命令に関わる事柄につきましては、外務省の所管でありますので、法務大臣としてこの場でお答えをすることは差し控えたいと思います。御理解いただきたいと思います。

辻副大臣 大変重要な御指摘、ありがとうございます。

 委員御指摘のように、一昨日からイスラム圏では断食月であるラマダンが始まりましたが、ラマダンを迎えてもなお戦闘が今ガザでは継続しておりまして、連日、多数の子供や女性、高齢者を含む死傷者が残念ながら発生していることに大変心を痛めております。

 ガザ地区の危機的な人道状況を、我々今、これも委員から御指摘ありましたが、ICJの暫定措置命令が出ております、イスラエルに対して。これはどういうことかというと、ガザ地区のパレスチナ人との関係において、ジェノサイド及びその扇動を防ぐための措置をイスラエルに取ってくださいと。緊急に必要とされる基本的サービス及び人道支援をガザの方々に届けられることを可能とする措置を取ることを命じるものでございまして、国連の主要な国際司法機関であるICJの暫定措置命令は、委員がおっしゃったように、当事国を法的に拘束するものでありまして、誠実に履行されるべきものであります。

 我が国としても、ハマス等によるテロ攻撃をもちろん断固として非難しますが、イスラエルに対しても、こういった国際人道法を含む国際法を遵守してくださいと求めてきています。

 引き続き、人質の即時解放もそうですが、人道状況の改善、そして、実際、現地に餓死をしている方々がいるので物資を届けられる状況をつくってほしいということを、我々としても、つかさつかさでイスラエルに対しては訴え続けておりまして、それもこれからも続けていく所存でございます。

本村委員 法務大臣には、基本的人権の保障の問題でもございます、ガザの人々の人権救済のためにも司法外交をやっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 まず、我々が今基本的に目標としているものは、人権、基本的人権、あるいは、法の支配に対する国際的な共通認識を広げよう、それを深めようという段階でございます。また、それに見合う司法制度の個別国における整備支援、こういったものも具体化していこうということでございます。それが少しでも世界全体の平和につながること、人権につながることを願っておりますが、外交政策としての人権の問題については外務省のまた所管でありますので、我々も、しっかりそこを認識しながら、認識を持ちながら対応していきたいというふうに思っております。

本村委員 是非、人権救済のために法務大臣としても動いていただきたい。今、あらゆる行動を行うことが必要なのだと世界中に呼びかけられているわけでございます。

 政府は、人道支援ということを言いながら、国連パレスチナ難民救済事業機関、UNRWAへの拠出を停止してしまいました。ガザでは七十万人が深刻な飢餓に直面していると言われており、UNRWAに代わる機関はないと本当は分かっているはずです。にもかかわらず拠出を停止したということは、私は人道に反しているというふうに思います。

 欧州委員会がUNRWAへの拠出を継続するということを発表をし、カナダも三月八日に拠出を再開すると決め、三月九日にはスウェーデンも拠出を再開すると発表をいたしました。日本も今すぐUNRWAへの拠出を再開するべきだというふうに思います。

 UNRWAへの拠出停止というのは、パレスチナの方々への集団懲罰だというふうに言われています。集団懲罰などあってはならないというふうに考えますけれども、これも法務大臣そして外務副大臣に伺いたいと思います。

小泉国務大臣 この問題の重要性もよく分かります。ただ、UNRWAへの拠出については外務省が所管するところでありまして、法務大臣としてのコメントは差し控えたいと思います。

辻副大臣 委員御指摘いただいたUNRWAと我が国とのつながりは実は七十一年目になりまして、我が国は、国連に加盟する以前から、このUNRWAを通して地域の紛争に対して援助をしてきた。これは、ありていに申し上げれば、UNRWAは地域に根差している、そういった機関でございまして、ここに対して、テロに関わった方々がいるんじゃないかという疑惑があって、我が国を含めて十六か国が、我が国においては、令和五年度の補正予算で三千五百万ドル分を一時停止させていただいています。

 一方で、委員が今おっしゃったように、カナダやスウェーデンは資金の提供再開を決めております。

 実は、先月の二十八日に私自身が副大臣としてパレスチナを訪問した際に、こちらのUNRWAのラザリーニ事務局長と会談をさせていただきました。その際に、いかにUNRWAが重要な機関で、そこに対する資金の停止がいかに深刻なことかということは重々議論をさせていただきまして、承知しております。

 また、委員もお会いしたというふうに伺っていますが、UNRWAの厚生局長ですか、清田さんという日本人の方がいらっしゃるんですが、先月、一時帰国した際に私も面会をさせていただいていまして、我が国としては、汚職があったということに対して、国連を通じて原因究明と中間報告を今待っている状況でございますが、この疑惑が晴れた後にすぐに再開をできるような段取りも併せて取っていますので、重ねてこの点については我々もしっかりと対応してまいりたいと思います。

本村委員 実質的には今パレスチナの方々への集団懲罰になっているわけですから、こういう状況を一刻も早くなくしていただきたいというふうに思います。

 そして、法務大臣にお伺いしたいんですけれども、以前、UNHCR、難民高等弁務官と会談をされたときのお話は答弁をいただきました。私も議連の方でこの高等弁務官にお会いしたときに、議員側からガザの問題について質問があったときに、この高等弁務官が、ガザの問題はUNRWAの方と役割分担をしているんだというふうにおっしゃっておりました。

 そういたしますと、当然UNRWAについても、法務大臣としてもコメントできないわけではなく、するべきだという状況になっていると思います。今の現状だと、パレスチナの問題だけ法務省の事項から抜け落ちている、すっぽりと抜け落ちているということになるんじゃないですか。

小泉国務大臣 意図的に除外をするという意思は全くないんですけれども、今、外務省を中心に、政府が一つの方針を決め、対応しております。我々も、それと認識を同じくしつつ、行動を共にしていく必要があるというふうに考えております。我々、独自に歩みを進めるということはできないわけであります。

 ただ、先生おっしゃるように、深刻な事態が急速に進んでいるということについての認識はしっかりと持って、対応を考えていきたいと思っています。

本村委員 ロシアによるウクライナの侵略のときは、法務省の職員の方が現地へ行って、避難民の方の支援に尽力をされたということも聞いております。ガザの人々の人道支援のためにも、法務省としても動いていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 先生のお考えとその強いお気持ちは、しっかりと受け止めます。

本村委員 イスラエルによる即時停戦を繰り返し政府として要請すること、そして、UNRWAへの拠出を今すぐ再開することを強く求めたいと思います。

 次の質問に移りますので、外務副大臣、そして外務省の方は御退席をお願いします。ありがとうございました。

 続きまして、性的な被害を申告することの困難さに関する被害当事者の実態調査についてお伺いをしたいと思います。

 昨年、性暴力被害当事者の方々や多くの皆さんの声で、刑法が改正されました。これは、被害当事者の皆さんからも大きな希望だという声が聞こえてまいります。国会での議論によって、附則には、「性的な被害を申告することの困難さその他性的な被害の実態について、必要な調査を行う」と明記をされました。法改正後、新しい大臣になっておりますので、小泉大臣とも認識を共有したいというふうに思っております。

 資料の一、出させていただきましたけれども、被害当事者と支援者の皆さんの団体、Springの皆さんの要望書です。そこにも書かれているんですけれども、大人ももちろんですけれども、とりわけ幼少期に性虐待、性暴力の被害に遭った方々は、甚大な精神的外傷により記憶を喪失してしまうなどの理由で、訴え出るまでに二十年から四十年かかる場合もありますと。しかし、法改正では、公訴時効のところでその被害実態が反映されなかった。調査がないからということで、法務省の方に切り捨てられてしまったのではないかというふうに被害当事者は実際に泣いておられました。そのくらい重い問題です。そうしたことから、国会では、党派を超えてこの附則には強い思いがあるというふうに思います。

 性的な被害を申告することの困難さに関する被害当事者実態調査の方法についてお約束をいただきたいんですけれども、既に前の法務大臣にはお約束していただいているんですが、必ず被害当事者の方の声を聞き、これは一回だけではなく、繰り返し、これでいいか、これはどうだろうかということを相談しながら聞いていただきたい。それを反映した調査を早急にやっていただきたい。そして、予算も早く確保をしていただいて、所信表明の中に入っていなかったものですから、余計に心配しているわけでございます。スケジュールを早急に明らかにするべきだというふうに思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

小泉国務大臣 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律の附則の二十条、大変重たい、また重要な、皆様方の、立法に携わった方々、大勢の方々の思いがこもった条文だというふうに受け止めております。したがって、しっかりと、この条文に則して法務省としても対応を進めなければならないというふうに思います。

 まず、第一項ですけれども、施行後五年を経過した場合に、文章にありますが、速やかに施策の在り方について検討を加えるという具体的な見直しの条項が入っています。また、そのためには、申告の困難さその他性的な被害の実態について必要な調査を行う、これを前提として見直しを速やかに行う、こういう項目が入っていますので、前回の改正のときに十分対応できなかったという思いを持っていらっしゃる方も大勢いると思います、そういった方々の声にももちろん直接耳を傾け、また、諸外国の調査の在り方もよく我々も検討して、そういったものから得るものがあればそれを加味して、実態に即した実証的な検討そして調査をしたいと思っています。

本村委員 ありがとうございます。

 次の質問のお答えまでいただいたのかなというふうに思っておりますが、資料の一、めくっていただいて、ドイツにおける性被害の実態調査をSpringの皆さんが調査を独自にやってくださったんですけれども、この調査をするに当たってもかなりの時間がかかっているそうです。そして、実際に調査をするという段階で、被害を受けた方々からお話を聞くときに、そのお話を聞く方は必ず専門性のある、二次被害なんかは絶対にあってはいけませんし、正しく被害当事者の方の状況がつかめるような方にお願いをしているということです。

 こういうことを必ずやっていただきたいというふうに思いますし、諸外国の実態調査のやり方も、是非、今からすぐ予算を取ってやっていただきたいと思いますけれども、大臣、お願いします。

小泉国務大臣 確かに、おっしゃるとおり、調査というのは当事者に触れるわけですから、そこでまた新たな被害のようなものが生じないとも限らない。そこに細心の注意を払う。また、その知見は諸外国にあるだろうと思われますので、怠りなくそういったところにも目くばせをしながら、できるだけ早く調査に着手したいと思います。

本村委員 是非、被害者、被害当事者の方々や、専門家の方も参議院の参考人質疑の中でいろいろ御示唆をいただいておりますので、それも含めて、調査をすぐに着手をしていただきたいというふうに思っております。

 続きまして、外国人技能実習生と外国人労働者の問題についてお伺いをしたいと思います。

 能登半島地震でお亡くなりになられたお一人お一人に心から哀悼の意を申し上げたいと思います。そして、被害に遭われた全ての皆様に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 そこで、能登半島地震によって被災をした外国人技能実習生、外国人労働者、外国にルーツを持つ方が何人いらっしゃるのか、一人一人の状況は今の段階でどうつかんでいるのか、法務大臣に伺いたいと思います。

小泉国務大臣 令和六年能登半島地震に被災された四県に居住地を有する在留外国人数ということになります。約七万六千人の方々が居住地を持っておられますので、たまたま遠方へ出かけた方もいらっしゃるかもしれませんが、概数として約七万六千人の方が地震による被災を受けたというふうに推測をしております。

 その中で、永住者、技能実習、こういった方々の内訳も各県ごとには把握をしております。

 ただ、どれほどの負傷を負われたのか、不幸にも亡くなられた方がいるかもしれない、そういった個々の方々の消息については、必ずしもまだ全容が把握できておりません。

本村委員 是非、アウトリーチを行い、能登半島地震によって被災した一人一人の外国人技能実習生、外国人労働者、外国にルーツを持つ方々の状況を把握し、今後の支援につなげるべきだというふうに思っております。

 それで、昨日も技能実習生の方の監理団体の方とお話をさせていただいたんですけれども、みなし仮設住宅なども利用できるということが、認識がなかったわけでございます。まだ罹災証明書も取っていないということです。

 外国にルーツを持つ方々であっても、やはり災害救助法の対象になるということは、私も熱海の土石流の被害に遭われた方を支援したことがあるんですけれども、それはそういう制度になっておりますので、是非、罹災証明の交付を受けることや、仮設住宅、みなし仮設住宅を含む住宅確保など、災害救助法の対象になることを含めて、支援の周知徹底を是非やっていただきたいと思いますけれども、法務大臣、お願いしたいと思います。

小泉国務大臣 非常に重要な点だと思います。

 日本人の被災者においても、情報の入手、大変な苦労があると思います。混乱の中で御自身の行動範囲も限られる、ましてや外国人の方々ですから、正しい情報に触れることがなかなか難しいということが容易に想像できますので、我々もそういったところをよく考え抜きながら、細かく情報が伝わるように全力を尽くしたいと思います。

本村委員 是非、その全力がどういうものかということを、これからも注視していきたいというふうに思っております。

 今まさに困っている外国人労働者の方々、そして困っている受入れ企業の方々、困っている監理団体の方がいらっしゃいます。支援制度の情報が届いていない方々にしっかりと伝わることに全力を挙げていただきたいというふうに思っております。

 やはり、チームもつくって、災害時の対応を法務省としてもブラッシュアップしていただきたいということを強く求めたいと思います。

 被災した中小企業の皆さんの中には、生活保障、雇用維持のために、技能実習生に対して一〇〇%賃金を保障している会社もございます。実際にお話を聞かせていただきました。

 雇用調整助成金は、コロナ禍の際は、日額上限一万五千円で十分の十、中小企業の皆さんには助成がされておりました。しかし、能登半島地震の被災中小企業の皆さんには、日額上限八千四百九十円で、中小企業の場合、五分の四しか助成をされません。

 抜本的に日額上限と助成率をコロナ禍並みに引き上げるべきだと、これは再三、厚生労働省に繰り返し各党から求めていると思います。是非御決断をいただきたいと思います。

宮崎副大臣 私も、この日曜日、月曜日、能登半島の被災地に行ってまいりまして、発災二月余りでまだまだ非常に厳しい状況で、例えば、あの有名な和倉温泉は、全ての旅館がまだ休業している最中であります。

 馳知事も当初から、必ず戻れるように、必ずするからとおっしゃっておられることからも分かるとおり、その後の生活をつくるなりわいという意味でいえば、今先生御指摘のように、中小企業を始めとする地元の企業のお仕事がしっかりと成立すること、また、そこで雇用が維持されるということは、大変重要な問題でありまして、厚生労働省としましても、雇用調整助成金について、助成率や支給日数を引き上げるなどの特例措置を講じさせていただいているところでございます。

 ただいまお尋ねをいただきましたコロナ特例との関連でございますが、コロナの流行下におきましては、国から事業者や国民に対して感染防止対策への強い要請を行う中で実施をさせていただいたものでありまして、具体的には、今御指摘もありましたが、日額上限額の特例につきましては、休業手当が支払われることを前提とした雇用調整助成金とは別に、休業手当が支払われない場合でも労働者に適切な支援が行われるよう新型コロナウイルス感染症対応休業支援金という特別な仕組みを創設した際に、休業を余儀なくされる労働者の雇用の維持を支える両制度のバランスを確保する、この観点から雇用調整助成金の日額上限の引上げを行ったものであります。

 また、助成率の特例につきましても、企業が休業手当を十分に支払える状況にないと労働者が安心して行動抑制をすることが困難であるという趣旨も踏まえまして特例的な助成率の引上げを行ったという事情がございまして、今回の災害への対応とは、必ずしも状況が同一に論じられるものではないと考えております。

 ただ、今般の特例措置におきましても、過去の災害時の対応を参考としながら、休業による雇用維持だけでなくて、二次避難を行っている場合などの出向を活用した雇用維持も助成の対象とする、これは外国人技能実習生の場合は若干当てはまらないかもしれないですけれども、こういうこともやり、また、被災企業がより制度を活用しやすいように、休業規模要件を小さくしまして助成の対象とするという形できめ細かい対応をしているところでございまして、今後の取組も被災地にしっかり寄り添うという形で行わせていただきたいと考えているところでございます。

本村委員 是非、能登半島の復興のことを真剣に考えていただきたいと思います。本当に、外国人技能実習生の方々を含め、地域になくてはならない存在となっております。能登半島は地理的な条件もいろいろあって、本当に様々な、困難な状態の中でも必死に再建をしようとしている、そういう事業者の方々、外国人労働者の方も含めて本気で考えていただき、雇用調整助成金の拡充を含めて、抜本的な支援の強化をお願いしたいと思います。

 副大臣は御退席いただいても構いません。

 そして、今、外国人技能実習法の改定ということが言われているわけですけれども、外国人技能実習生に関し、今でもやむを得ない事情がある場合の転籍は可能となっておりますが、実際は転籍できなかったり、帰国をさせられる実態があるわけです。

 愛知で働いていた外国人技能実習生は、機械加工、数値制御旋盤作業の職種で技能実習生として働いておりましたが、実習期間中に重度の刺激性接触皮膚炎が発症してしまいました。労災の疑いがあるのに、受入れ企業からは特別な対応はなされなかったと聞きます。また、その患者さんを医師の方が診たわけですけれども、医師から受入れ企業に対して薬品名を教えてほしいということで問うたそうですけれども、回答はなかったそうです。結局、労働災害ということで認定をされ、そして、回復後、外国人技能実習機構の方に転籍先を探してもらうことになりました。そのときに、この資料の二が示されました。そこには、新しい実習先を見つける支援というのは原則三か月で終了、見つからない場合は在留期間が残っていたとしても帰国ということに、理解してサインをしろということでサインをさせられてしまったということでございます。

 まさに二十四日には帰国させられようとしているわけですけれども、この文書を含め、このやり方は間違っていると思います。是正をするべきだと思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

小泉国務大臣 結論から申し上げますと、法務省としては、まずは事実関係を確認したいと思います。

 その上で、制度を共管する厚生労働省と連携しつつ、必要な対応を講じていきたいと思っております。

本村委員 この文書は間違っていますね。そのこと、是正するということをお約束をいただきたいと思います。

小泉国務大臣 必要な対応を講じてまいります。

本村委員 間違っていますね。出入国在留管理庁が機構の方に渡した文書とは食い違っていますね。間違っていますね。

小泉国務大臣 それはちょっと確認をさせてください。

本村委員 昨日の段階では、出入国在留管理庁から、これは間違っているので是正をしますということがございましたので、既に確認済みでございますので、大臣、そうしていただけますね。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 外国人技能実習機構において、個別の実習先変更支援を終了した際に、在留期間の満了日までの期間に関係なく速やかに出国することを案内することは適切ではなく、その点については是正をする必要があるとは考えております。

本村委員 本人に帰責性のないこうした事態に対しては、しっかりと、在留資格の配慮を含めて、転籍先が見つかるまで支援をするべきだということを、最後に大臣にお願いしたいと思います。お答えいただきたいと思います。

武部委員長 小泉法務大臣、答弁は簡潔にお願いします。

小泉国務大臣 現在でも三か月で機械的に切っているわけではなくて、見通しがあれば、またいい結果が得られそうな場合には延長して支援をしていますが、今回の先生の問題提起を踏まえて、よりよい道を、よりよい改善策を考えたいと思います。

本村委員 是非お願いを申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

武部委員長 次に、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。小泉法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小泉国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を減少しようとするものであります。

 これは、事件処理の支援のための体制強化及び国家公務員の子供の共育て推進等を図るため、裁判所事務官を四十四人増員するとともに、他方において、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、技能労務職員等を七十五人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十一人減少しようとするものであります。

 以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

武部委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三分散会


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