第5号 令和6年3月27日(水曜日)
令和六年三月二十七日(水曜日)午前九時三十二分開議
出席委員
委員長 武部 新君
理事 熊田 裕通君 理事 笹川 博義君
理事 仁木 博文君 理事 牧原 秀樹君
理事 道下 大樹君 理事 米山 隆一君
理事 池下 卓君 理事 大口 善徳君
東 国幹君 五十嵐 清君
井出 庸生君 稲田 朋美君
英利アルフィヤ君 奥野 信亮君
斎藤 洋明君 高見 康裕君
谷川 とむ君 中曽根康隆君
中野 英幸君 平口 洋君
藤原 崇君 三ッ林裕巳君
山田 美樹君 おおつき紅葉君
鎌田さゆり君 鈴木 庸介君
寺田 学君 山田 勝彦君
阿部 弘樹君 斎藤アレックス君
美延 映夫君 日下 正喜君
平林 晃君 本村 伸子君
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法務大臣 小泉 龍司君
法務副大臣 門山 宏哲君
厚生労働副大臣 宮崎 政久君
法務大臣政務官 中野 英幸君
最高裁判所事務総局行政局長 福田千恵子君
最高裁判所事務総局家庭局長 馬渡 直史君
政府参考人
(内閣府地方分権改革推進室長) 恩田 馨君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 親家 和仁君
政府参考人
(こども家庭庁長官官房審議官) 黒瀬 敏文君
政府参考人
(法務省大臣官房政策立案総括審議官) 上原 龍君
政府参考人
(法務省民事局長) 竹内 努君
政府参考人
(法務省刑事局長) 松下 裕子君
政府参考人
(法務省矯正局長) 花村 博文君
政府参考人
(法務省保護局長) 押切 久遠君
政府参考人
(出入国在留管理庁次長) 丸山 秀治君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 熊谷 直樹君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 高橋美佐子君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官) 青山 桂子君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 原口 剛君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件
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○武部委員長 これより会議を開きます。
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府地方分権改革推進室長恩田馨君、警察庁長官官房審議官親家和仁君、こども家庭庁長官官房審議官黒瀬敏文君、法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍君、法務省民事局長竹内努君、法務省刑事局長松下裕子君、法務省矯正局長花村博文君、法務省保護局長押切久遠君、出入国在留管理庁次長丸山秀治君、外務省大臣官房審議官熊谷直樹君、外務省大臣官房参事官高橋美佐子君、厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官青山桂子君及び厚生労働省大臣官房審議官原口剛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○武部委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局行政局長福田千恵子君及び家庭局長馬渡直史君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○武部委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。おおつき紅葉君。
○おおつき委員 おはようございます。立憲民主党・無所属のおおつき紅葉と申します。
早速質問に入らせていただきたいんですけれども、まず最初に、今日は、日本版DBS法案が先週十九日に閣議決定されて、ようやく今国会に提出されることと決まりました。昨年の十月の予算委員会に、私、岸田総理に対して直接、この法案、議論すべき点が数多くありますので、是非早めに国会に出してほしいということを要望させていただいて、ようやくこの国会にまでたどり着いたということ、これは私は歓迎すべきことだと思っております。
実は、この法案に私自身が取り組もうと思った点は、前の仕事、この国会の中で私は政治部の記者として働いていたんですけれども、コロナ禍で、皆さん、テレワークになった方々、役人の方々も多いと思います。その中で、ある事件が発生しました。共働きの家庭の女性の方が仕事をしている隣の部屋で、保育しに来られたベビーシッターの方が子供に性的な、わいせつな行為をしていたということです。
私自身、人ごととは思えませんでした。やはり今、こういう共働き家庭も多く増えている中で、ベビーシッターの方々にもクーポン券が出されている。チルドレンファーストの社会が広がってきていると思います。だからこそ、子供たちと接する人物が安全であるということが求められているんだと私は思っております。
だからこそ、こういった人たちを、どういう人たちを対象にするのか、しっかりと議論をしていきたいと思いますので、これはこども家庭庁だけの問題ではございません、情報を共有しなければなりません。
この基になりましたイギリスでは、もう二十年間この制度を使っているイギリスでは、既に対象の範囲の幅、そして調査すべき範囲が広がっていて、警察の懸念事項にまでチェックが及ぶシステムが構築されております。まだまだ日本は、これから始まるところなのでそこまでは遠い段階ですし、このDBSのCEOの方も、小さいところから始めていった方がいいというアドバイスもありますので、その観点も踏まえて、今日は、子供に対する性加害の防止について伺いたいと思います。
まずは、昨年の刑法の改正の観点から伺いたいと思います。
この改正について確認いたしますが、性犯罪に係る公訴時効について、強制わいせつ致傷そして強制性交等罪など、それぞれ五年延長することとした趣旨について説明をお願いいたします。また、被害者が十八歳未満であるときは、被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間、更に公訴時効を延長することとした趣旨についても併せてお願いいたします。
○松下政府参考人 お答えいたします。
性犯罪につきましては、昨年六月に成立した刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律におきまして、性犯罪が一般に、その性質上、恥の感情、恥ずかしいといった感情や自責感、自分が悪かったのではないかというような、そういう感情によって被害申告が困難であるということなどから、ほかの犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすいといったことを踏まえまして、訴追の可能性を適切に確保するため、公訴時効期間を従来の時効期間から更に五年延長することとされました。
また、若年者につきましては、心身共に未熟なため、知識経験が不十分であるということや、社会生活上の自律的な判断能力、対処能力が十分ではないといったことから、性犯罪の被害に遭った場合、大人の場合と比較して類型的に性犯罪の被害申告がより困難であると考えられます。そこで、被害者が十八歳未満である場合については、その者が十八歳に達するまでの期間に相当する期間、性犯罪の公訴時効期間が更に延長されたものでございます。
○おおつき委員 まさに、今おっしゃったように、性犯罪というのは潜在化しやすい性質があるんですよね。
さて、昨年の議論の中では、学校の先生やスポーツチームの監督、コーチという地位、関係性に乗じた子供への性被害も指摘されていたと思います。
そこで、十六歳以上の方が学校の先生やスポーツチームの監督、コーチという関係性に乗じた性被害に遭った場合、改正によって、これは処罰され得ることもあるということと思いますが、まず、その点について確認をさせていただきたいのと、あわせて、社会関係上の地位に乗じた性犯罪を明記することとした趣旨を、法制審議会の意見も含めて説明をお願いいたします。
○松下政府参考人 お答えいたします。
まず、犯罪の成否ということにつきましては、恐縮ですが、個別の事案において、収集された証拠によって判断されるべき事柄でございますので、今お示しされたスポーツクラブの関係ですとか、具体的に申し上げることは困難で、成立するかどうかということを一概にお答えすることは困難でございますが、その上で、あくまで一般論として申し上げますと、刑法第百七十六条第一項及び百七十七条第一項は、自由な意思決定が困難な状態で性的行為を行うことというのが性犯罪の本質的な要素であるという考えの下に、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態であることを中核的な要件として定めまして、そういった状態の原因となり得る行為や原因となり得る事由を具体的に列挙することといたしました。
そして、刑法第百七十六条一項第八号は、今御指摘の条文だと思いますけれども、今申し上げた原因行為又は事由の一つといたしまして、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していることを規定しておりますところ、同号の社会的関係というのは、例えば教師と生徒、コーチと教え子といった社会生活における人的関係も広く含むものでございます。
したがいまして、そうした関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又は憂慮していることにより、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じてわいせつな行為又は性交等をした場合には、不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪が成立し得るということとしたものでございます。
○おおつき委員 これが昨年の刑法の改正だったと私は思っております。
さて、これはまた別の観点です。次は、性犯罪に係る再犯防止プログラムについてお伺いしたいと思います。
刑務所の職員の皆さんが日々受刑者の改善更生に向けて御尽力されていることは重々承知しておりますし、敬意を表するところでございます。しかし、残念ながら、実刑判決を受けて服役して刑期を終えると、自動的に受刑者の全ての方が更生して二度と犯罪を行わないということではないと思います。
この点は、来年六月から施行される拘禁刑の導入にもつながっていると思っておりまして、この拘禁刑によって服役中に再犯防止、改善更生を行っていこうとすることを刑法に明記するものであったと理解をしております。実際に、刑務所では、各種の犯罪傾向に沿った改善更生のための指導を行っておりまして、その一つとして、性犯罪者に対する特別改善指導を実施していると聞いております。
そこで、伺います。この特別改善指導の具体的な内容と再犯防止に対する効果及び課題等、特別指導の対象となり得る者のうち、どの程度の受刑者が実際に受講しているのか、その割合もお願いいたします。
○花村政府参考人 お答えします。
刑事施設におきましては、不同意性交等、不同意わいせつなど性犯罪を行った者の中で、性犯罪の要因となる考え方に偏りがある者、あるいは自己の感情や行動を管理する力に不足がある者などに対して、再犯につながる問題性の大きさを判定し、その度合いに応じて刑事施設の職員や処遇カウンセラーが認知行動療法に基づく性犯罪再犯防止指導を行っております。
具体的な内容としては、受刑者にグループワークの中で性犯罪につながる要因を検討させるとともに、その要因に対処するための知識やスキルを身につけさせ、それらを出所後の生活で実践するための再発防止計画を作成するなどしておるところでございます。
性犯罪再犯防止指導の受講の開始人員でありますが、令和四年度の数字でございますけれども、五百五十三人というふうになってございます。
それから、性犯罪再犯防止指導の受講率の関係でございますけれども、私ども、処遇調査を実施しまして、性犯罪再犯防止指導の対象に選定された者につきましては原則当該指導の受講を義務づけておるというふうなものでございます。
刑事施設における性犯罪再犯防止指導につきましては、その効果検証を行った結果、一定の再犯抑止効果があることが統計的に認められております。当局におきましては、この結果等を踏まえ、再犯抑止効果がより一層高まるよう、処遇プログラムの内容等を一部改定し、令和四年度から実施しているところでございまして、今後も引き続き、時期を捉えて効果検証を行いつつ、同プログラムの充実を図ってまいりたいと考えております。
○おおつき委員 是非検証は続けていただきたいと思います。
一定の抑止効果があったということなんですけれども、さらに、大阪府や福岡県などの一部地方公共団体では、性犯罪から子供を守るための条例を独自に制定して、性犯罪の防止に取り組んでいると伺っております。そこで、このような取組に対して法務省はどのような協力を行っているのか、また、再犯防止に資する取組の効果というのは、今、一定の抑止効果があるとは言っていますけれども、この自治体の取組についてはどのような効果があると認識しておりますか。
○花村政府参考人 お答えをします。
平成二十四年十月の大阪府子どもを性犯罪から守る条例、令和二年五月の福岡県における性犯罪を根絶し、性被害から県民等を守るための条例の施行に当たりまして、大阪府及び福岡県からの依頼を受け、法務省では、大阪府及び福岡県に対し、出所者の情報を提供しております。
各条例に定める罪名により受刑し、刑終了日から五年を経過しないうちに大阪府又は福岡県内に住所を定めた者は、大阪府又は福岡県に氏名、生年月日、住所、罪名等を届け出る義務があり、届け出た者に対して大阪府又は福岡県は社会復帰に向けた支援を行うものというふうに承知をしております。
法務省としては、大阪府又は福岡県から届出者の同意を得て釈放施設に照会があった場合には、届出者の罪名、刑終了日等を記載した在所証明書を大阪府又は福岡県に送付しております。そのほか、大阪府から届出者の同意を得て釈放施設に照会があった場合には、性犯罪再犯防止指導の実施結果等を大阪府に送付しているところでございます。
また、地方公共団体の性犯罪者に対する取組に関する評価についてお尋ねがございました。
お尋ねの大阪府子どもを性犯罪から守る条例などは、大阪府などがその自治権に基づき制定したものでありますため、見解を述べることは差し控えたいと思いますが、その上で、一般論として申し上げるならば、性犯罪者の再犯を防止するためには、刑事司法手続の終了後も地域社会において必要な支援が受けられるようにすることが重要であると考えております。その観点からいたしますと、大阪府などは、性犯罪者の再犯を防止するため、大変意欲的な取組をされているものというふうに認識をしてございます。
○おおつき委員 やはり効果の検証というのは必要だとは思います。
それでは、日本版DBSの法案について、子供に対する性被害の抑止についてお伺いしたいと思います。
まず、DBS法案で対象とされている性犯罪なんですけれども、条例で規定されている痴漢行為や淫行罪が含まれることとなったということは非常にいいことだと思います。
しかしながら、モデルとなったイギリスのDBSのCEOによりますと、昨年、このCEOが朝日新聞の取材に答えておりまして、例えば、現在、二十年続けてきたイギリスの目下の課題の一つとして、規制対象の活動の線引きをどうするか、そしてどこまで活動に線引きをするのか、これは常に議論をし続けなきゃいけない課題だという話もございます。
そこで、伺います。DBS法案について、対象とされている刑法の犯罪類型を他人に対するわいせつ行為や性交等を伴う犯罪に限定している趣旨をお伺いしたいと思います。特に、下着泥棒とか公然わいせつ、未成年者略取、そしてわいせつ目的誘拐などが除外されているのであれば、その趣旨も併せて伺います。
○黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。
子供性暴力防止法案における対象性犯罪の考え方ということでございます。
こちらにつきましては、児童対象性暴力等が児童等の権利を著しく侵害することに着目をするものでございますため、対象性犯罪についてもそうした観点から定めているものでございます。
この点につきまして、令和三年の国会で成立をいたしましたいわゆる教員性暴力等防止法がございますけれども、こちらにおきましても同様の観点から児童生徒性暴力等という概念を定義をいたしまして、これを同法における制度対象としておりますので、本法律案におきましても、それらの行為に相当する罪を対象の性犯罪としているところでございます。
なお、こうした観点から、例えば、今御指摘もいただきましたけれども、公然わいせつ罪といったものにつきましては、これは法律の性質上という整理といたしましては、保護法益として、健全な性秩序、性的風俗というものを保護法益としているというふうに整理をされているところでございまして、一般に人に対する行為ということは言えない。それからあと窃盗罪等につきましても、対象物ですとか動機が様々であるということから、今回の本法案の対象にはならないものというふうに整理をしているところでございます。
○おおつき委員 さて、さらに、DBS法案の今回の対象となる従事者数について伺いたいんですけれども、二〇二二年の調査でいくと、日本は就業者が約六千七百万人いるということを承知していますけれども、対象となるのは、想定としているのは、大体何人ぐらいを対象としていて、何割ぐらいがカバーされることとなるんでしょうか。
○黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。
本法案は、教育、保育等を提供する業務に従事する者を対象とするものでありますので、このような者のうちには、教員や保育士のほか、学習塾といった様々な現在規制が及んでいない業種で働く者も含まれ得るため、全体の数を把握するといったことは困難な部分がございます。
その上ででございますけれども、このうち、本法案によって、子供に対する性暴力等を防止するための措置を講じることを法律上直接義務づける学校設置者等という概念がございますけれども、この業務に従事する者に限りますと、少なくとも二百三十万人に及ぶというふうに想定をしているところでございます。
○おおつき委員 去年は、皆さんもよく御存じのとおり、ジャニーズ事務所の問題なんかもあったと思います。やはり、こういう芸能養成事務所とかも含めて、民間がどのぐらい参入するかという問題はあるとは思うんですけれども、是非、しっかり各省庁が連携をしてそういったところの取組もしていただきたいと私からお願いを申し上げます。
さて、先ほど申し上げましたイギリスのDBSのCEOのエリック氏によりますと、課題の一つとしてもう一つあります。次に、DBS法案と少年法の関係について確認をさせていただきたいと思います。
保護処分となった少年というのは今回のDBSの対象になるのかどうか、まず確認させてください。
○黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。
少年に対する保護処分についてでございますけれども、家庭裁判所が刑事処分に処するのではなく保護処分に付するという判断をした者について、本法案の確認の対象にして、将来に向かって事実上の就業制限を課すことが適当と言えるかといった課題もあると考えられますことから、少年に対する保護処分につきましては本法案の対象にしないということで整理をしているところでございます。
○おおつき委員 まさに、ここの議論は結構大事だなと私は思っているんです。
なぜかというと、このDBS法案というのは、過去に罪を犯して前科のある人の更生、社会復帰と、子供への安全対策という点での課題というのがすごく大きいですし、それぞれの方々、意見が異なると思うんですね。特に、今言った、若年者の方々の社会での更生、社会復帰をどのようにできるようにするのか、それと、反面、子供たちが安全だと思える、そういった環境を整えることこそもやはり政治の責任でありますし、そういった制度を整えなくちゃいけないので、これはもう少し細かく、こども家庭庁のほかの委員会でも議論を深めていただきたいと思っている点であります。
さて、次に起訴猶予についてお伺いしたいと思います。
御存じのとおり、我が国では起訴便宜主義が取られておりますが、刑事訴訟法第二百四十八条で、検察官は、犯人の性格、年齢及び境遇、そして犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができるとされています。つまり、犯罪の事実があっても全てが起訴されて裁判になっているというわけではありません。
そこで、令和三年における起訴猶予率について、強制性交等罪が三七・八%、そして強制わいせつ罪が四八・九%となっています。起訴猶予となる理由は様々だと理解していますが、このように起訴猶予となった方というのはDBSの対象としないということでいいのか、疑問がありますので、確認をさせてください。
○黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。
子供性暴力防止法案の確認対象となる性犯罪歴につきましては、この制度が憲法で定められた職業選択の自由を事実上制約することになりますため、その根拠は正確な事実に基づくものでなければならないであろうということで、厳格な手続に基づき裁判所が事実認定をした前科を確認の対象にすることとしております。
検察官による不起訴処分は、公正な裁判所の事実認定を経ておりませんし、また、処分を受けた者がこれに不服を申し立てることができずに、事実認定の正確性を担保する制度的保障がないということから、本法律案の対象には含めないというふうに整理をしているところでございます。
○おおつき委員 それでは、法務省に伺います。
今国会でDBS法案が成立すれば、検察官が起訴するか否かの判断というものはより重いものになってくると思います。そこで、このDBS法案の成立に関連して、特に子供に対する性犯罪に係る起訴判断の重要性、適切性が今後は更に増していくものと思われますが、法務省の見解をお願いいたします。
○松下政府参考人 お答えいたします。
一般論として申し上げますと、性犯罪は、被害者の尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたって重大な苦痛を与え続ける悪質、重大な犯罪であると認識しておりまして、厳正に対処することが必要な犯罪であるというふうに認識をしております。
そして、あくまで一般論として申し上げますけれども、検察当局におきましては、性犯罪に関するものも含めまして、事件の捜査処理をするに当たりましては、個別の事案ごとに、犯罪の軽重及び犯行後の状況などといった様々な事情などを総合的に考慮した上で、起訴するか不起訴とするかを適切に判断してきているものと承知をしております。
今後も、引き続き、検察当局においては適切に対処をしていくものと承知をしております。
○おおつき委員 是非、これからこのDBS法案が始まったときにはしっかりと協力をしてやっていただきたいと思っております。
次に、DBS法案に係る対象期間について伺いたいと思います。
この対象期間に関する議論については、刑法で刑の消滅を十年と定めていることから、DBSの対象期間もそれを超えることはできないという意見があったということを聞いております。
そこで、まず法務省に確認をいたします。
刑法第三十四条の二が定める刑の消滅の規定はどういう趣旨の規定なのか、また、刑の執行が終わって十年たったら改善更生したと取り扱うべきとの規定なのでしょうか。お願いします。
○松下政府参考人 お答えします。
刑法第三十四条の二は、昭和二十二年の刑法改正で設けられたものでございます。それ以前は、個別の法律で資格制限として刑に処せられた者と規定されている場合には、刑の言渡しを受けますと、その後、恩赦などを受けない限り、当該資格の取得と回復が永久に制限されるということとなっておりました。しかし、これは刑の言渡しを受けた者の更生意欲を損なうものであるというふうに考えられたことから、刑の言渡しを受けた者につきまして、一定期間の善行の保持を条件として、前科のない者と同様の待遇を受けるという原則を樹立することによってその更生を促すという趣旨で同条が設けられたものと承知をしております。
○おおつき委員 では、こども家庭庁に伺います。
先ほどの法務省の見解を踏まえて、刑法において刑が消滅するとされる十年を超えてDBSの対象期間を最長二十年と定めることができるとした理由は何になるんでしょうか。
○黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。
刑法三十四条の二との関係についてでございますけれども、こちらは昨年の法案策定に向けた有識者会議においても議論をされまして、また、こども家庭庁においても検討を重ねてきたところでございます。
今回の法案におきましては、刑に処せられたことを欠格事由とするのではなくて、事業者が従業員を雇う際に考慮すべき要素として位置づけることで、刑法三十四条の二の規定が直接適用されることにはならないというふうに整理をしたところでございますけれども、ただ、この場合であっても、前科を有する者の更生を促すという刑法三十四条の二の規定の趣旨を踏まえる必要がございますし、また、本法案に基づく仕組みが事実上の就業制限でございますので、憲法上の職業選択の自由を制約することとの整理も踏まえて、本法案における確認の対象期間については、子供の安全を確保するという目的に照らして必要性と合理性が認められる範囲とすべきというふうに考えたところでございます。
具体的には、再犯に至った者の実証データに照らしまして、再犯に及ぶときはおおむねこの期間内に及ぶことが一般的だと言える期間に着目をしまして、本法案の、先ほど御紹介いただいたような年数を決めたものでございます。
○おおつき委員 やはり大切なのは子供を危険から守ることだということは皆さん承知の上だと思います。では雇った人が安全な人なのかどうかということを判断するのが、今おっしゃった、事業主の人たちがそういった情報を基に判断していくということになると思うんです。
さて、これから運用していくに当たって、やはり子供を持つ母親として、足らない点というのはまだまだあるとは思うんです。その対象の範囲では、再犯が、子供の性被害につながるような犯罪行為が網羅的にカバーができているのか。そして、今おっしゃったように、対象期間も二十年と延長されたことは私は一定の評価をしております。ただ、九割の再犯はカバーができていても、残り一割の再犯で被害に遭う子供が出てきてしまうのではないかなという心配は、周りの親世代も含めて心配は尽きません。だからこそ、対象者であっても、被害申告があって捜査して送検されたものの不起訴又は起訴猶予になった者の取扱いは適切なのかどうかというところは、正直疑問が残るところでございます。
この性加害というのは密室で行われることが多くて、そして客観的な証拠を得ることも難しいと言われています。ましてや子供なんですよ。子供が被害に遭った場合、証拠がその子供の証言しかないということもあると思います。そのため、訴訟を維持できないから起訴ができないということもあるでしょう。しかし、このような場合であっても子供を性加害から守るという必要性は変わらないと思いますし、やはり、子供たちの周りにいる人がいかに安全であるのか、これをつくっていく社会が、これから一つ一つ日本で積み重ねられていくものだと私は信じております。
そこで、最後、時間がないので質問を飛ばして、大臣に伺いたいと思います。
さて、子供に対する性加害の根絶に向けた質問をしてきましたが、この課題、やはり単純なものじゃありません。そして、もちろん職業選択の自由もありますし、これから大切なことは、集約する情報の範囲と期間、そしてアクセス権がどこまでか。そして、法務省の中でも、更生プログラムと社会復帰とのバランス、これは、こども家庭庁と法務省がしっかりと連携をして進めていかなくてはいけない課題だと私は感じております。
そこで、大臣、今までの議論も踏まえて、法務省としてどのように関与していくのか、是非、一言お願いいたします。
○小泉国務大臣 貴重な質疑、大変ありがとうございました。
まず、性犯罪、性暴力、これは、被害者の尊厳を著しく傷つけ、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続ける悪質、重大なものであり、これを許さない社会を構築する、これが出発点だと思います。
加えて、子供は非常に弱い存在であります。何としても子供たちを守らなければいけない、そういう観点に立って、政府は、令和五年に性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針及びこども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ、これを取りまとめました。そして、これに基づいて性犯罪、性暴力対策を進めているところでございます。
この政府方針には、法務省関連施策としては、改正刑法等による厳正な対処、取締りの強化、性犯罪者に対する再犯防止施策の更なる充実、SNS等による子供の人権相談の推進などの施策が織り込まれておりますが、法務省としては、これらの政府方針を踏まえ、関係省庁とも緊密に連携しながら、引き続き、しっかりと粘り強く、性犯罪、性暴力対策を進めていきたいと思っております。
○おおつき委員 ありがとうございます。
これで質問を終えますが、最後に、やはり、今日ここにいらっしゃる皆さんたち全員が責任感を持ってこの法案に取り組まなくちゃいけないと私は思っております。法務省においては、起訴の判断の重要性、適切性が更に増していくもの、この責任感を持ちつつ、そして、国会議員として活動している私たちは、社会をこれからもずっと議論し続けなきゃいけません。それは、境界線についてです。誰を含めて、どういう制度にしていくのか、引き続き議論を進めていくことをお願いいたしまして、私の質問といたします。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、鈴木庸介君。
○鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介です。今日もよろしくお願い申し上げます。
まず、埼玉県川口市と蕨市の外国人のお話から伺えればと思っております。
御案内のように、川口市と蕨市に多くの外国人の皆さんがいらっしゃって、現地で地域の皆さんと一部あつれきを起こしているというような報道が散見されるんですが、私も、現場に行きまして、実際、外国人の皆さんとか地域の住民の皆様にお話を伺ってまいりました。
この件は、地域住民とのあつれきの問題と、入管行政の問題と、さらにはトルコの国内政治の問題が本当に混在しているので、全体像が分かりにくくなっていて、解決を妨げているのではないかなと感じております。今日は、一つ一つ整理しながら伺わせていただければと思います。
まず、埼玉県川口市から法務省に要望書が出されているということなんですが、三点、要望が出されています。
それぞれについて検討の状況や対応について伺いたいんですが、一点目、まず、外国人が集住するとほぼ間違いなく起こってしまう近隣とのトラブルについてなんですが、病院に数十人の外国人が集まり、病院の機能が一時停止されたり、騒音やごみ出しなどのトラブルなどが報告されている中で、本来は日本にいる資格のない外国人が、現地の習慣のままに振る舞ってトラブルを起こしているといった指摘もされております。
その上で、この川口市からの要望の一点目にありました、不法行為を行う外国人においては、法に基づき厳格に対処していただきたいというところなんですが、そのことについての対応、今どのようになっていますでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
入管庁におきましては、安全、安心な社会の実現のため、これまでも、警察等の関係機関と緊密に連携を図り、不法滞在者等の取締りに取り組んでおり、このような取組を引き続き適切に行ってまいります。また、退去強制令書が発付されたものの退去に応じない外国人、すなわち送還忌避者についても、法令に基づき、必要な送還を積極的に実施してまいります。
○鈴木(庸)委員 そういった答弁になるかと思うんですけれども、この外国人と地域住民のあつれきという点だけ考えると、今回の問題というのは、これまで日本全国で起きてきたことだとも言えると思います。九〇年代は、入管法の改正で南米から多くの労働者が来まして、多くの人々が工場のラインなどで働いていた。私も、今ちょっといらっしゃらないですけれども、笹川委員の選挙区でもあります群馬県の東部に一年間住んでいたことがありまして、その状況を間近で見ておりました。
まず、地元との、ごみ出し、騒音、軽犯罪のトラブルが顕在化した後で、そこから少し日がたつと、元々少し出稼ぎして帰ろうという考えだったため、子供を地元の学校に行かせないで、子供が日本語もポルトガル語も読み書きできないままで、結果、非行化が進んでいく。実際、一時期、群馬県大泉町では、人口当たりの犯罪発生率が群馬県でトップだったこともあるわけですね。
それを解決するために、外国人集住都市会議のような会議体がつくられて、町がお金をかけて、日本語教育に時間をかけて、また、こうした外国人を対象としたビジネスもたくさんありますので、こういう運営の皆さんも強引に引き込みながら、何とか町づくりに参加してもらって、ようやく地元になじんでもらって、地域が落ち着いてくる。この一つの大きなサイクルがあるんだなと感じております。
ただ、今申し上げたようなプロセスを経るには、本当に地元の皆さんの尋常じゃない努力があるわけなんですけれども、言い方を変えれば、外国人の対応というのが完全に自治体任せになっているのではないかなということも感じております。
仮放免で例えば現地に滞在している人の数とか、国と川口市、蕨市はどの程度情報は共有されているんでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十四年六月以降、入管法改正法附則に基づき、正規に在留することができる外国人以外の者のうち、仮放免された者については、引き続き行政サービスを受けられるようにするとの観点から、本人が希望する場合には、国籍、氏名、性別、生年月日、仮放免した日、住居、仮放免の失効及び住居変更などの情報を住居の所在する市町村に通知しております。
お尋ねの川口市や蕨市に居住する仮放免された者についても、本人の希望を適切に聴取した上で、通知を行っているところでございます。
○鈴木(庸)委員 大泉町といった先駆的な自治体もございますので、法務省として、どういった政策を取れば自治体が動きやすくなるかといったことを、要望を放置しないで、マニュアル化していただければと思います。
まず、この川口、蕨の話を、クルド人云々ではなく、地元とのあつれきという一般のこととして伺わせていただきました。
ここからクルド人について伺います。
地域には、約千四百という話もあるんですけれども、それぐらいのクルド系の方がいらっしゃるとされていますが、ここでまず、クルド人についての政府の認識を改めて伺わせてください。
トルコは、人口八千五百万の人口のうち、千五百万人程度がクルド人と呼ばれていますが、このクルド人の定義について、明確なものはないと外務省から御回答をいただいております。しかし、政府として、この千五百万のクルド人が迫害を受けている、そういった認識はあるのでしょうか。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
クルド人は、統一国家を持たない民族であり、トルコ、シリア、イラン、イラク等複数の国にまたがる地域に居住しているほか、欧米を始め、中東域外にも居住しており、こうしたクルド人には、かつて居住していた国等における紛争等の様々な理由から国外に逃れている方々もいると承知しております。
トルコ国内におけるクルド人の扱いについて、政府として、判断、評価することは差し控えます。
なお、トルコ国内では、クルド系の国政政党があるほか、クルド系の閣僚、国会議員、判事、幹部公務員などの要職に就いている方々も多数いると承知しております。
○鈴木(庸)委員 そうですね。トルコの内政の問題なので、なかなかコメントしづらいところがあると思うんですけれども、一般として、クルド人が差別を受けている、居住地を奪われていると指摘があるのは御案内のとおりかと思います。
例えば、こちらの、イギリスの内務省の二〇二〇年の報告書になりますけれども、今おっしゃっていただいたように、トルコの人口のマックス二〇%ぐらいがクルド人で、イスタンブールやアンカラといった大都市では政府の要職にも就いている。既にクルド系言語使用禁止令は廃止、撤廃をされていまして、かつトルコ系以外の言語は、クルド語を含め、私立学校では任意の学習課程として選ぶこともできるようになっている。さらには、ネウロズというクルド人の分離主義と関連していると捉えられることの多い新春祭のイベントも、警察が厳重に警戒するということではありますが、おおむね許可をされているということなんですね。
ただ、その一方で、クルド系言語の報道機関に勤務している複数のジャーナリストが訴追、拘留されたり、二〇一五年から二〇一六年にかけては、数百人もの人々の不法殺害疑惑の捜査も僅かしか行われていなかったと、この報告書は示しております。
アメリカのニュース誌のフォーリン・ポリシーというのがあるんですけれども、二〇一九年の記事の中で、トルコでは、トルコ政府とアメリカ政府がテロリスト集団と捉えているPKKに対する支持が長年にわたり解雇又は収監の理由とされている、しかし、支持を構成する要素は正確に何であるかという疑問は国家の裁量権の対象であり、路線は全く固定されない、むしろ、それは満ち引き、盛衰を繰り返し、政府とクルド系分離主義者との間で続く対立の進展あるいは選挙のサイクルによって決定づけられるとしております。
つまり、クルド人という定義も、彼らが迫害を受ける基準も極めて曖昧な中、やはり日本は、諸事情を鑑みて、トルコ政府の立場には一定の理解と配慮を示しながらも、守るべき人はしっかり守る、そういった態度を明確にしていただきたいと改めて思います。
こうした中、埼玉にいらっしゃる方々の中には、トルコ本国からパスポートを取り消された人が三十人ぐらいいるというようなお話をおっしゃっていましたが、トルコに限らず一般論として、本邦滞在中にパスポートが本国政府によって取り消された人たちの扱いというのは一体どうなるんでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
一般論として申し上げますと、我が国に在留資格を持って在留中の外国人が有効な旅券を所持しなくなったとしても、そのこと自体が当該外国人の法的地位に影響するものではございません。
なお、入管法施行規則上、在留期間更新許可申請などを行う場合には旅券等を提示しなければならないとされております。ただし、外国人が申請時に旅券を提示することができない場合であっても、有効な旅券等を所持していない理由を記載した書類を提出いただき、その理由に合理性があれば、申請を受け付け、許可することも当然ございます。
○鈴木(庸)委員 パスポートを取り消されても在留する資格があれば引き続き在留できるということで、安心をいたしました。
こうした守るべきクルド人が一定数いながら、違う懸念も私は持っております。
一般に、クルド人の皆さんも、最初、トルコのパスポートを持って日本に査証免除で来日して、その後、難民申請するケースが多いということで聞いていますけれども、今、トルコからの難民申請自体は何件出ていますでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
令和五年中の難民認定申請者数のうち、トルコ国籍の方は二千四百六人となっております。
○鈴木(庸)委員 そうなんですよね。先ほど、この地域に大体千五百、マックスでも二千ぐらいと言われている中で、難民申請が二千四百出ているとなると、その内容については御開示いただけないということだったんですけれども、かなりの部分がクルド人として迫害を受けているみたいな、そういった申請ではないかと推察されるんですが、そうすると、このギャップから推察されるのは、クルドに関係のないトルコ人もクルドとして難民申請をしているのではないかということについて、私は疑問を持っております。
一方で、本当に助けを必要としている人もいるわけですから、この区別というのを入管庁にはしっかりとやっていただきたいと思っております。
どうやら、やはり働くために来ている人と、本当に庇護が必要な人たちが混在している状況があの地域にもあると思うんですけれども、私自身、直接どこまで合法かは確認しておりませんが、多くの人が既に地域の会社で働いていたりしております。
そういった事情がある中で、この地域にはクルド系の方が経営する会社が、結構大きな会社が幾つもあったり、クルドの本国の同族系のグループですか、ファミリーみたいな感じで大きいグループが幾つかあったり、これからもこうした人々を頼って数が増えることはあっても減ることはないと思っております。
そうした中、結局、日本に来て、資格があろうがなかろうが仕事を探し続けるという人も、当然ながら、残念ながら一定数出てきてしまうんですけれども、こうした人たちは恐らくまた、査証免除、入国、難民申請のパターンを繰り返していってしまうのではないかとも思っております。
そこで、川口市からの要望の二点目について伺います。監理措置制度と同様に就労を可能にする制度を構築していただきたいというのが川口市からの要望の二点目にあるんですが、この件についての対応状況はいかがでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
一般論としましては、法令に違反し、法令に基づく手続の結果、退去強制が確定した外国人については速やかに日本から退去することが原則であり、仮放免中の外国人について、退去強制という立場に鑑み、基本的に就労を認めるということは困難でございます。
○鈴木(庸)委員 とはいっても、実際なし崩し的になって、それを十分に取り締まれていないという現状もあると私は思っておりまして、様々な在留資格の人が今混在していると思います、あの地域には、仮放免も含めてですね。働くのならやはり納税もしてもらわないといけないし、一部の人たちは、クルド人の中で足下を見られて最低賃金よりはるかに低い金額で働かされている人も少なくないと聞いております。
本人の社会保険といったことも議論の俎上に上ってくるんですけれども、実際こういう方々は国民健康保険も入っていないので、病気をしても当然全額負担であったり、一部、払えない人は地元の病院が肩代わりしていたりとか、そうした話も聞こえてまいります。
その上での川口市の三つ目の要望なんですけれども、健康保険その他の行政サービスについて、国からの援助措置を含め国の責任において適否を判断していただきたい、このことについては現状どうなっていますでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
繰り返しとなり恐縮ですが、一般論として、法令に違反し、法令に基づく手続の結果、退去強制が確定した外国人は速やかに日本から退去することが原則であり、仮放免中の外国人については、退去強制する立場に鑑み、入管行政の一環として国費による支援を行うことは困難でございます。
なお、公的社会保障制度につきましては、入管庁の所管外であり、その在り方について言及することは差し控えますが、入管庁では、仮放免中の外国人に対し定期的に出頭を求めており、適宜相談に応じ、人道上の配慮もしつつ、個別に対応しているところでございます。
○鈴木(庸)委員 そうなんですね。恐らく、仮放免の方をどうこうするという観点だともう議論が永久にかみ合ってこないと思うので、こういう様々なことへの一つの解決策として検討に値すると思うのが、私は、去年から施行された補完的保護対象者であると思っております。
まず、この補完的保護対象者の制度の簡潔な説明をお願いできますでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
補完的保護対象者は、難民以外の者で、難民の要件のうち迫害を受けるおそれのある理由が人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見という難民条約上の五つの理由であること以外の全ての要件を満たすものでございます。
補完的保護対象者と認定した場合には、原則として定住者の在留資格を付与するなど、難民同様に保護することとしております。
本制度は、昨年十二月一日から開始されているところ、難民条約上の難民に該当しないものの、人道上真に保護を必要とする方々がより安定的に我が国に在留することが可能となるとともに、制度的な裏づけのある支援を行うことも可能となっているところでございます。
○鈴木(庸)委員 その補完的保護対象者の国別の申請者数、今現在どんな形になっていますでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
令和五年十二月一日から令和六年二月末までの三か月間における補完的保護対象者認定申請者数は、速報値で千百十人でございます。その国籍別内訳につきましては、ウクライナ国籍の方が千百一人、ロシア国籍の方が五人、ウズベキスタン、英国、シリア、スリランカ国籍の方が各一人となっております。
○鈴木(庸)委員 圧倒的にウクライナの方が多いんですけれども、これは当たり前といえば当たり前の話なんですが、改めて、ウクライナの人々に補完的保護対象者として定住者ビザを出している直接的な理由は何になりますでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
補完的保護対象者に該当するか否かは、申請者ごとにその申請内容を審査した上で個別に認定すべきものでございます。
具体的には、御指摘のウクライナ避難民も含めまして、申請者ごとに、国籍国等における一般的事情、申請者に関する個別的事情の一切を総合評価して、補完的保護対象者の要件に該当するか否かを判断しております。このように、ウクライナ避難民の方が補完的保護対象者として認定されているのは、申請者ごとにその申請内容を審査した結果でございます。
なお、令和五年十二月一日から令和六年二月末までの三か月間に補完的保護対象者として認定された方は、速報値で六百四十七人であるところ、このうち六百四十四人がウクライナ避難民の方でございます。
○鈴木(庸)委員 そうなんですよね。その国にいる、その地域にいると危ないから、当然、東側、ロシアが一方的に併合している地域の方々もいらっしゃるのではないかと思いますけれども、その地域に住んでいる、その地域にいると危ないからということで補完的保護対象者ということで申請するんですけれども。
この理屈でいくと、例えばイラクとの国境付近に住んでいるクルド人の皆さんと状況が似ていると思うんですけれども、当然のことながら、この人たちも補完的保護対象者と認定される可能性があるという理解でよろしいのでしょうか。これはたしか大臣に通告でお願いしております。
○小泉国務大臣 ただいま御説明しましたように、補完的保護対象者に該当するか否か、これは申請者ごとに、国籍にかかわらず、申請者ごとに個別の事情を認定してまいりますので、今御指摘のトルコとイラクの国境側に住んでいる方々について該当するかどうか、これは個別のマターでありますので、一概に申し上げることはできません。
ただ、先ほど次長から申し上げた昨年十二月一日から今年の二月までの三か月の間に補完的保護対象者として認定された方々の中にスーダン国籍の方が三人いらっしゃる。大宗はウクライナの方でございますけれども、国籍は当然交ざってくるわけですね。結果としての姿であります。
○鈴木(庸)委員 ありがとうございます。
そうなんですよね。ウクライナの方もいける、ロシアの方もいける、スーダンの方もいけるというところの中で、元のクルドの話に戻りたいと思うんですけれども。先ほど来、現地で近隣住民とのトラブルの問題、また入管行政の問題、そしてトルコの内政の問題、三つが混在してしまっていると思うんですけれども、御案内のように、仮放免の方が大変多いということも御案内のとおりだと思います。
そこで伺いたいのは、この仮放免中の皆さん、仮放免中の皆さんというのは、当然のことながら、既に難民申請したりとか、いろいろなことを二回も三回も四回も、マックスで六回も難民申請している方が数人いるということも理解しておりますが、理屈としてはこの皆さんも全て補完的保護対象者の認定の申請をすることはできるんでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
補完的保護対象者認定申請をするに当たりましては、在留資格の有無などの外国人の法的立場は問わないこととしており、したがいまして、仮放免中の者であっても申請は可能でございます。
○鈴木(庸)委員 そうなんですよね。法的立場を問わないで、今どんな状況にある外国人でも申請をすることはできる、補完的保護対象者の申請をすることができる。
補完的保護対象者の真の目的は、労働者の確保とか権利保持ではないということは当然承知はしておりますが、出てくるビザは定住者ビザ、ある意味、最高のビザですよね、日本にいる上で最高のビザの一つだと思うんですけれども。この五年の定住者ビザを彼らに出した後、しっかり納税して、犯罪を犯すといったことがなければ、一つ永住権に道を開いてあげて、そういうちゃんと、素行が悪ければ五年でもう更新をしない、そういった対応を取ることというのを少しでも検討をしていただければと思っております。
御案内のように、労働力を補うために、育成就労とか様々なメニュー、努力されているかと思うんですけれども、こうして新しい労働者を迎え入れようとしているならば、それならば、原則論はあるにしても、柔軟な発想で、今いる人たちの中でまともな人たちに、社会の枠組みに労働者、納税者として組み込むことについても検討する時期に来ているのではないか。
ただ単に仮放免だから駄目だ駄目だと言っていても、この先間違いなく増えますから、川口、蕨のクルド人の皆さん。それも加速度的に増えてくると思います。
そのときに、いや仮放免だから駄目と原則論だけ振りかざしていても地域の問題は一切解決しないと思いますので、是非納税者として組み込むことについても何らかの検討をお願いしたいということを申し上げるとともに、それが今後も間違いなく多発する、日本中で多発する外国人集住問題への一つの解決策になるのではないかということを御提案をさせていただいて、次の質問に行かせていただきたいと思います。
デジタルノマドのビザについて、これは新しく出るということなんですけれども、この概要について教えてください。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
いわゆるデジタルノマドと呼ばれる国際的なリモートワーカーの呼び込みに向け、今般、新たな在留制度を創設することを考えております。
新制度の内容としましては、在留資格、特定活動により、最長六か月間デジタルノマドの方が外国の公私の機関との契約などに基づいたリモートワークを行うことをできることとする予定です。
また、新制度の要件としましては、本邦での滞在期間が一年のうち六か月を超えないこと、査証免除対象で租税条約等を締結している国、地域の国籍等を有していること、年収が一千万以上となる見込みであること、民間医療保険に加入していることなどを満たしていただくことを予定しているところでございます。
○鈴木(庸)委員 これは大変ちょっと厳しい物言いで申し訳ないんですけれども、正直、デジタルノマドとして日本に来るインセンティブ、ゼロですよね。
元々百八十日ルール、前回の質疑でも、外務委員会の質疑でもやらせていただいたんですけれども、短期滞在で査証免除国なら運用面で百八十日は元々滞在することができると。
多くの人たちは、バリ島というのはデジタルノマドの皆さんの中でも聖地と言われている、それで、バリ島なんかに滞在しながら、いろいろなところに行ったりしながら、世界中旅行しているのが彼らの姿だと思うんですけれども、まず、大使館に申請しに行かなくてはいけない、デジタルノマドビザを日本で取る場合は。大使館に申請に行って、そのときに一千万の収入証明も持っていかないといけない、そんな面倒くさいこと誰もやりませんよ、やりません。
だって、三か月間いて一日、これも御指摘させていただいたんですけれども、例えば、特定の地名は出しませんけれども、北海道のスキーリゾートとか、あと六本木ですよね、こういったところで、それこそ先ほどのクルド人の皆さんの話でもないですけれども、違法に働いている連中、いっぱいいます。短期滞在のビザで本来働いてはいけないところで働いている、六本木で短期滞在のビザでホステスをやっているような人たち、いっぱいいますと断言してしまうとまずいので、いっぱいいると聞いております。
こうした皆さんについては、大体、例えば、北海道から違うところに一日出て、また戻ってきて継続で働く、そうすることによって百八十日マックスで働くようなことをやっていると聞いておりますが、結局、そういうふうにやればビザなんかなくても普通にデジタルノマド的な人たちというのはどこにでも行けちゃうわけですよね。
でも、このデジタルノマドビザの本来の目的というのは、そういういろいろな先進的な能力を持っている人たちにできるだけ日本にいてもらって、地域なり、同じような仕事をしている日本人に刺激を与えてもらって、あわよくば消費もしてもらおうというところだと思うんですけれども、正直、もっとインセンティブを与えていただきたいと思っております。
もう一度改めて伺いますが、この陣容でスタートするとは思うんですけれども、今後何かそれ以外のインセンティブ的なものというのは考えておりますでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
在留資格が短期滞在の場合は、許可される在留期間が最長九十日である一方、新制度においては在留期間更新許可申請をせずに六か月間本邦に在留できることが可能となります。また、一般的には、六か月間本邦に在留する際は住居地届出が必要となるところ、デジタルノマドの方については住居地届出などの手続を不要とするなど、負担を軽減して使いやすい制度となるようにしたいと考えております。
いずれにしましても、今回の要件につきましては、諸外国の類似の制度も参考にしながらも検討したところでございますが、デジタルノマドの呼び込みを促進していく観点から、制度の開始後も、実際の活用状況などを踏まえ、不断に見直しを行うことが重要と考えております。
○鈴木(庸)委員 少なくとも、ネットでこの手続を完結させられるようにするというのは最低限のところだと思います。それぞれの在外公館に行って、一千万円の収入証明を持って、何とか何とか何とかという時点で、広報も、余り皆さん、この話というのはまだ余り知られていない話なので。
私の周りなんかでもぽつぽついますけれども、二か月ぐらい日本にいて、次にバリ島へ行って、次に韓国へ行ってなんて、みんなやっていますよ。その人たちに半年いてもらうわけですから、半年いてもらうには、やはり、例えば先ほど申し上げたようなネット上で申し込めるというものは最低限やる、手続的には簡単にするということをまずやっていただいたその上で、何らかの措置、更なる措置を御検討いただければと考えております。
ちなみに、デジタルノマドの皆さん、半年間日本にいて日本のインフラを使うわけですけれども、所得税等、各種税とか社会保険、この辺の扱いというのはどのようになるんでしょうか。
○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
新制度の創設に当たりましては、関係省庁とともに検討を行ってきたところです。
国税庁及び総務省からは、新制度の対象となるデジタルノマドについて、租税条約上の要件等を満たす場合に、日本への所得税等の納付が免除されることとなると聞いております。また、厚生労働省からは、新制度の対象となるデジタルノマドは、例えば、医療保険について加入対象外となるため、医療保険料の納付は不要となると聞いているところでございます。
○鈴木(庸)委員 とにかく外国人で働いてくれる人を探してくる、持ってくるということで、いろいろなメニューをまた引き続き出していただければと思うんですけれども、先ほど申し上げたクルドの話、このデジタルノマドの話しかり、やはりもう少し検討と改善の余地、多々あると思いますので、是非是非、この国会の場、また様々な場で議論させていただければと思います。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、寺田学君。
○寺田(学)委員 寺田です。三十分のお時間をいただきました。
まず最初は、前回の一般質疑でも取り上げた取調べのことについてです。
今、連日報道にもなっていますけれども、大川原化工機事件の件を見るにつけて、ひどいですね、どなたに言うべきなのか分かりませんけれども。
私、実は自宅でネットフリックスとかを見ているんですけれども、是非、ここに御参集の皆さんに、「黒い司法」という数年前に出たアメリカの実話に基づく映画を見てほしいんです。
それはどういう内容かというと、アメリカの田舎の州で、黒人の死刑囚がいるんですが、同じように死刑囚に対する司法サービスをしたいということで、ハーバードを出た青年が立ち上がって、死刑囚に対して聞き込みをしていくんですが、余りにも冤罪が多くて、その内容を調べていくと、全く事実と関係ないところで、でっち上げの供述を現地の保安官ですかが取って、結果、全く無実の人が死刑に、刑罰を宣言されて、その方を救うんですけれども、その最後のところに出てくるのは、どのタイミングを切っているか分かりませんが、十人に一人の死刑囚が冤罪、そういう疑いがあったみたいなことを描かれていました。
こんなひどい司法というか取調べが行われているのかと思っているときに、うちの国でも、正直、ひどいひどいことが起きていたんだなということを今見ているところです。
前回、メモの話をしました。取調べを受けている人がメモを取ることに対しては法的根拠はないということにはなりましたけれども、取調べの録音、録画の方をちょっと取り上げたいんです。
まず、身柄拘束されている被疑者の取調べの全過程を録画することを義務づける法改正が二〇一九年施行であると思いますが、これの実施状況がどうなっているか、御答弁ください。
○松下政府参考人 お答えいたします。
令和元年六月に施行された刑事訴訟法三百一条の二第四項は、いわゆる裁判員裁判対象事件、また、いわゆる検察官独自捜査事件につきまして、逮捕、勾留されている被疑者を取り調べるときは被疑者の供述及びその状況を録音及び録画しなければならない旨を規定しております。
最高検査庁が公表している資料によりますと、検察当局において、刑事訴訟法により取調べの録音、録画が義務づけられた事件についてこれを実施した件数は、裁判員裁判対象事件では、令和二年度が二千四百七十三件、令和三年度が二千百九十四件、令和四年度が二千四百九十八件でございまして、検察官独自捜査事件では、令和二年度が六十七件、令和三年度が六十件、令和四年度が九十七件でございます。
○寺田(学)委員 件数をお伺いしたのでそうなりましたけれども、法的に対象となっている件数の中で録音、録画されているものの割合がお手元にあれば御答弁いただきたいと思います。
○松下政府参考人 お答えいたします。
正確な数字はございませんけれども、ほぼ一〇〇%でございます。
○寺田(学)委員 今日、警察の方も来られていると思います。義務づけられたものの全過程の録音、録画というのは、実施状況、今お答えできるのであれば、御答弁できますか。通告は包括的にしていると思いますが。
○親家政府参考人 お答えいたします。
警察におきましては、刑事訴訟法第三百一条の二の規定に基づき、裁判員裁判対象事件等で逮捕、勾留中の被疑者の取調べ等について録音、録画を実施しているところでありますが、この制度対象事件について、直近の令和四年度に録音、録画を実施したのは二千六百二十八件となっております。
○寺田(学)委員 割合をちょっと、お手元にあれば、後ろの方と御相談しながら、後で御答弁いただきたいと思うんですが。
さっき大川原化工機事件の話をしましたけれども、ああいうことが起きないように様々なことを刑事訴訟法の中で定めて、録音、録画というものを義務づけながらやってきたにもかかわらず、ああいうことが起きたわけですし、ああいうふうに話題にならないものでもそういうことが起きていることは想像がつくんですが、局長にちょっと聞きたいんですけれども、何でこういうふうに録音、録画を義務づけながらもああいうことが起きちゃうんですかね。御所見を。
○松下政府参考人 恐縮でございますが、個別の事件についての内容に関わる事柄でございますし、ああいうことというのがちょっと具体的に分からないというところもありまして、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
○寺田(学)委員 個別の事件についての評価を聞きたいというよりも、一般的に起こっていることに対して、個別の事件を想起しながら一般的なお答えを聞きたいというところですけれども。
大川原化工機事件の話、時系列的に見ますけれども、もう最悪ですよ、聞こえてくるものに関しては。動機やら何やら含めて、全部最悪ですよ。あんなことが何で起きるんだろうと。いや、録音、録画やっていますよ、全件やっていますよといいながら、警察も、後で分かれば、ほぼやっているでしょう、義務づけられているものに関しては。それでもあんなことが起きるということは、義務づけの範囲を含めてやはり十分じゃないということになると僕は思うんですけれども。
局長、いいですか、もう一回聞きますけれども、何であんなことが起きちゃうんですかね。
○松下政府参考人 お答えいたします。
個別のことはおきまして、一般論として申し上げますけれども、取調べが適正に行われなければならないというのは当然のことでございまして、そのように、検察の精神や基本姿勢を示す「検察の理念」におきましても、取調べにおいては、供述の任意性の確保その他必要な配慮をして、真実の供述が得られるように努めるというふうにされているところでございまして、検察当局として、取調べを適正に行うということについて強い意識を持っているということは前提としてございます。
それが徹底されるように、検察官に対する教育でありますとか、あるいは一部の重要な事件についての録音、録画といったことが行われているわけですけれども、その中で、取調べについて問題が指摘される例があることも事実でございますが、そういったものについても、決して許容しているわけではございませんので、そういうことが行われないように、様々な形で、法律に従って、また憲法にも規定されているところでございますけれども、そういった規定に即して適正な取調べが行われるように、今後とも検察当局としては努めていくものと考えております。
○寺田(学)委員 警察にもちょっとお伺いしたいんですけれども、さっきの割合も含めて、お分かりになったらその御答弁を欲しいんですけれども、大川原化工機事件そのものについての評価を聞くつもりはありませんが、あのようなことが起きてしまうことは何でなんですかねということは、ちゃんと警察からも聞きたいんですけれども、どうですか。
○親家政府参考人 お答えいたします。
まず、録音、録画の実施率の方でございますけれども、先ほど御答弁申し上げた制度対象事件に加えまして、取調べが制度対象事件に及ぶ見込みがある場合にも録音、録画は実施しておるところでございますが、いわゆる見込み事件と呼んでおりますけれども、こういったものも含めたものの実施率について申し上げますと、令和四年度は対象事件のうち九七・三%を実施しているところでございます。
また、取調べについて、個別の事件についてはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に、私ども、取調べが適正に行われなければいけないというふうには重々承知しておりますので、これはいろいろな機会を捉えて各都道府県警察を指導していきたいというふうに考えております。
○寺田(学)委員 当然、法律ですから、制度で定められた部分は基本的には実施されているんでしょう。ただ、実施されてもあんなことが起きているという現状があるわけで、それを踏まえて、じゃ、その制度自体どうなんだろうという考え方を行政としてもしなきゃいけないでしょうし、立法府側としてもしなきゃいけないと思うんです。
もちろん法律で定められた部分は義務づけとしてされていくんだと思いますが、取調べを受ける側が、いや、取らないでくれと言う人も、お立場を含めて、いるとは思います、証拠が残ることを嫌がる方もいると思いますが、ただ一方で、自分の取調べのときにはちゃんと録音、録画してくれと、それを求めたときに、拒否する根拠というのはあるんですか。検察も警察も。
○松下政府参考人 お答えいたします。
刑事訴訟法百九十八条一項は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」と規定をしつつ、取調べの具体的方法については定めておらず、一般的に、取調べ方法の選択や実施は、憲法や刑事訴訟法等の関係法令に反しない限り、取調べを行う捜査官の裁量に属するものであると解されております。
刑事訴訟法上、被疑者、被告人に取調べの録音、録画を実施するよう求める権利を認めた規定はございませんし、刑事訴訟法三百一条の二第四項に規定された録音、録画義務の対象事件以外の事件については録音、録画は義務づけられておりませんので、当該事件の取調べで録音、録画を実施するかどうかは、取調べを実施する検察官において、その裁量に基づいて、取調べを録音、録画することの有用性や問題点を踏まえ適切に判断することとなると承知をしております。
なお、申し上げれば、検察当局においては、法令により義務づけられた事件の録音、録画に加えまして、取調べを録音、録画することの有用性や問題点を踏まえて、事案の内容や証拠関係等に照らし被疑者や参考人の取調べを録音、録画することが必要だと考えられる事件については、積極的に実施しているものと承知をしております。
○親家政府参考人 お答えいたします。
法的な根拠のところにつきましては、先ほど法務省の方から答弁があったとおりだと考えております。
警察におきましても、制度対象事件や、あるいは、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範に基づきまして精神に障害を有する被疑者に係る取調べにおいて録音、録画を実施をしているところでございますが、これ以外についても、個別の事案ごとに、被疑者の供述状況、供述以外の証拠関係等を総合的に勘案しつつ、録音、録画を実施する必要性がそのことに伴う弊害を上回ると判断されるようなときには録音、録画を実施しているところでございます。
○寺田(学)委員 法律で義務づけられた録音、録画に関してはほぼ実施されているにもかかわらず、ああいう事件が最近起きたわけですし、いろいろ長々と答弁いただきましたけれども、検察にせよ警察にせよ、つまるところ、裁量権というか、録音、録画するかどうかは、法律で義務づけられていないところに関しては警察と検察が持っているわけですよ。結果的に、大川原化工機事件みたいなのが起きたわけですよね。任せちゃいられないよと。いつ何どき、国民の一人として、政治家の一人としてもそうですけれども、あんなことをされるか分からないという恐怖感があるわけで、それに対する対抗措置として、録音、録画してくれと言った人に対してはしっかりとする環境を整えないとフェアじゃないですよ。
これは多分、答弁はすごく、ずっと固いと思うので、前回も委員長に申し上げましたけれども、僕は冗談で言ったつもりじゃない、模擬的に、取調べも含めてですけれども、やはり、大川原化工機事件の経緯をもう一度丹念に見直しましたけれども、最悪ですよ。こんなことが起きていることに対して法務委員会として何も対処しない、何もアクションを起こさないというのは私は怠惰だと思いますので、それは別に、集中審議なのか、別建てをした上で何かしら問題点を洗った上で、どういう解決策があるとか対処があるのかというのを、法務委員会としての、与野党を交えて何かしら答えを出していくぐらいの能動性がないと、私は国民に対して示しがつかないと思いますので、是非、筆頭理事お二人を含め、委員長には御高配いただきたいと思います。
○武部委員長 理事会にて協議させていただきます。
○寺田(学)委員 ということで、この件に関しては、委員会のマターということで是非やっていただきたいと思いますので、理事会で協議していただければと思います。
一転変わって、大臣に質問させていただきますが、大臣のホームページを拝見したんですよ。めっちゃ格好いいお写真とともに、「小泉りゅうじ動きます」というので、そして、一番直下に、「いま一番お伝えしたいこと」というので、若者への幸せ支援、ゴー・トゥー・マリッジ政策を提唱したいと。
英語なのであれですけれども、結婚しよう、結婚を後押しするゴー・トゥー・マリッジ政策を提唱、これは何なんですか。悪い意味で言っているんじゃないです。是非、大臣が今一番伝えたいことで、動きますと言っているわけですから、これはどういう政策なんですか。
○小泉国務大臣 何と申し上げていいのか、取り上げていただいたことはありがたく思いますが、私の私的な政策提言であります。
しかし、この場は法務大臣としてのお答えを求められておりますので、私的なものでありますし、所管でもありませんので。
まあ趣旨は、長い間少子化が問題にされていますけれども、その中で、子育て支援とか、修学支援とか、教育費の支援とか、様々な経済的な支援策はあるんですが、一番大本の、結婚するというカップルに対する支援というのが非常に手薄になっている、そういうことを、経済的な支援の必要性の観点から問題提起をしたものであります。概要はその程度のものです。
○寺田(学)委員 所管外のことは大臣なので話されないということであれば、所管のことについては是非とも御答弁をいただきたいんですが。
通告しているとおり、選択的夫婦別姓、別氏制度自体も、婚姻したい、結婚したいと思いながらも踏みとどまる、特に女性、主に女性の要因の一つだと私は思っているんですが、認識としてどうですか。選択的夫婦別氏制度が導入されていないことが婚姻を妨げる一因になっているかと問われた場合、法務大臣としてどうお考えか、お聞かせください。
○小泉国務大臣 家族法制の在り方とそして少子化の問題、これはどちらの側からもまだ十分に議論がされていない分野だと思うんですね。我々が家族法制の議論をするときに、少子化が頭にあるわけでもない。少子化の議論の中では、家族法制の議論はほとんど聞いたことはありません。そこはまだクロスをしていないと思います。したがって、改めて整理をする必要はあろうかと思います。
○寺田(学)委員 ごめん、何を言っているか分からなかったんですけれども。選択的夫婦別氏制度が導入されないことが婚姻を妨げる一因となっているか。僕はなっていると思いますよ。なっている人もいる。私、知っていますし、そんなもの、幾らでも声は上がっているわけで。賛成意見も慎重意見もあるわけですよ。それは、存在すること自体は、認めること自体は何ら、別に大きな問題ではないので。
私は、単純に、選択的夫婦別氏制度が導入されないことが婚姻の妨げの一因となっていると思うかと、ゴー・トゥー・マリッジを個人的に提唱されている法務大臣にも聞きたいわけです。一因になっていると思いますか。認識ですよ。
○小泉国務大臣 婚姻を考えていらっしゃる当事者の双方が共に氏を変えたくないという理由で、法律婚をすることを断念して事実婚にとどまっている方がいる、そういう御意見があることは承知をしております。
○寺田(学)委員 いや、一因になっているんですよ。それはどれぐらい全体の中でどうかということは別として、一因にはなっているわけです。別氏制度は賛成意見も反対意見もあるわけで。
もうすごい素朴な問いにはなるんですが、この選択的夫婦別氏制度の導入に関しては、法制審の結論も出て、要綱案も出ているのに、なぜ法案提出しないんでしょうか。
○小泉国務大臣 何度も申し上げていることかもしれませんけれども、直近の令和三年の世論調査を見ても国民の意見は分かれております。また、家族の在り方の根幹に関わる、また国民の家族観に関わる、家族法制にも関わる大きな問題であると思います。最高裁においても、国会で論ぜられる、判断されるべき事柄であるとの御指摘もいただいております。
国民の間はもちろん、国会議員の間で、またこの国会の場においてしっかり議論していただき、より幅広い理解を得ていただくために、法務省としても引き続き積極的に情報提供してまいりたいと思います。
○寺田(学)委員 法案提出するのかどうかという話をしているときに情報提供という話は、全然逃げていて。
法務省のホームページを見ると、本件に関していろいろあって、選択的夫婦別氏制度とは何ですかとか、QアンドAがいろいろあって、もう一つに、選択的夫婦別氏制度の導入に対する賛成意見や反対意見はどのようなことを理由とするものでしょうかと法務省の中にはあって、反対意見の中に三つぐらいあって、夫婦の同氏が、同じ氏であることが日本社会に定着した制度だと言っている人もいる。個人の自由の問題じゃなくて公的な問題なのだと言っている人もいる。三つ目に、家族が同じ氏となることで夫婦、家族の一体感が生まれ、子の利益にも資することなどが理由なのだと言われているんですけれども、この反対理由の、名字が同じであることが子供の利益に資するということは、大臣としてどのように捉えていますか。
○小泉国務大臣 子供の利益に資する、同氏である場合、あるいは氏が違う場合、それぞれ利益の態様というのは変わってくると思います。ちょっと具体的なことで申し上げにくいんですけれども。
○寺田(学)委員 めっちゃ具体的に聞いていますよ、俺。法務省に書いて、紹介している内容なんですよ。これを基に結構いろいろなところから議論はされていて。
だから、反対理由に、名字が同じであることが子供の利益に資するんだという意味で選択的夫婦別氏に慎重な立場を取っている方々がいるわけですよね。そういう意見があるわけですよ。この意見に対してどのようにお考えですかと聞いているんです。
○小泉国務大臣 これはまさに国民の意見が分かれるところだと思います。司法の判断の中においては、子供の利益とはまたちょっと違う観点でございますけれども……(寺田(学)委員「いや、子供の利益を聞いているんです」と呼ぶ)
まあ、しかし、その家族というもの、これが構成されていて、家族が社会の基本的な単位として有機的に機能していて、その家族が同一の姓を名のっていることに一定の社会的意義はあるという判示も行われています。また一方で、両親の名前が同じでなければ子供の利益も図れない、そういう御議論もあります。そういった様々な御議論を調整していく、それが、相互に御理解をお互い深め合って、一定の収束を目指していく、そういうことのために法務省も努力をしたいと思っています。
○寺田(学)委員 問いに対して違うことを答えないでくださいよ。子供の利益に資するかどうかということを聞いているわけですよ。
これは何で聞いているかというと、皆さん御承知のとおりで、今回、共同親権の中でその文言が出てくるわけですよ。そこに対して、皆さんが法律の中で書いて価値判断を取っているわけですよ。子供の利益に資するかどうかというところが。
婚姻中に名字が違う者同士が親権を行使することが子供の利益を損ねるかと問われたら、どう答えますか。
○小泉国務大臣 それはケースごとに違うと思います。
○寺田(学)委員 損ね得るかどうか。損ねる人もいるということですか。
○小泉国務大臣 損ねることもあるでしょう。損ねないこともあるでしょう。
○寺田(学)委員 名字が違うことによって、親権を行使する際に子供の利益が損なわれるケースがあると今お認めになりましたよね。まあそれをそういうふうに言うかどうかは別として、共同親権を導入して、名字が違う者同士が親権を行使することになりますけれども、子供の利益を損ねることがあるわけですね。
○小泉国務大臣 申し上げたのは、具体的な状況を念頭に置いたものではなくて、論理的にはあり得るということを申し上げたわけです。
○寺田(学)委員 論理的にあり得るというか、論理の話を今しているわけで、まさしくこれから出される共同親権の法律の中においては、子供の利益というものを物すごく大事にしているわけですよ。そのときに、一方で、選択的夫婦別氏制度のときには、はっきり言いませんでしたけれども、導入に反対する声の一部の中に、親権を行使する者自体の名字が違っていたらそれは子供の利益を損なうのだという意見があることを法務省として認めているわけですよ。その上で、今、大臣も、そういうことになったら子供の利益を失うこともあり得ると言っているわけですよね。
なので、もう一回聞きますけれども、共同親権を導入して、名字が違う者同士が親権を行使することになりますから、子供の利益は損なわれることがあり得るんですね。
○小泉国務大臣 損なわれることが絶対ないとは言えない、そういう趣旨を申し上げたわけであります。
○寺田(学)委員 じゃ、離婚後、名字が違う者同士になった場合には、当然ながら、今の大臣の御推測があるわけですから、子供の利益が損なわれることがあり得るという前提の中で、子供にとってどのような利益が、利益を得るのか得ないのか、損なわれるのかというような議論がまさしくされるわけですよね。結構大きい話だと思いますよ。
僕、牧原さんとか物すごい推進しているから言いたいんですけれども、一方で、選択的夫婦別氏のときには、導入に関しては、党内において、名字が違うんだったら子供にとってよくないのだとぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあと、ぎゃあぎゃあと言うとまずいか、すごい声高に言う人がいるわけですよ。それで止まっているわけですよ。いや、だって、共同親権は出てきましたけれども、もう選択的夫婦別氏なんてとっくの昔に法制審も通り、要綱まで出て、それなのに通していないわけですよ。
僕、共同親権に対しての賛否は、それはその法律のときに申し上げますけれども、ちゃんと夫婦別氏のときにも、子供の利益みたいなことも要素として考えておきながら、そっちを放置しておいて、共同親権のときだけ出てきて、子供の利益に資するかどうかの判断なんだという話になっているのは、ちょっと整理できていないですよ。
はっきり言って、公明党さんもこの間、予算委員会で、導入せよという話を大臣に対して石川さんがされていましたけれども、あとは自民党の問題なんですよ。党内でちゃんと整理してくださいよ。一方で、共同親権のときにはこういうふうに整理をやってきているんですから。いや、だから僕は共同親権に賛成だとか言っているわけじゃないですよ。部会長、ちゃんと整理してくださいよ。
僕、大臣は結構大きい話をしたと思いますよ。要は、離婚後共同親権を導入して、名字が違う者同士が親権を行使することになると子供の利益が損なわれることに対して否定しなかったわけです、そういうケースもあり得るというわけですから。私は、これは大きい話ですし、今後もし、共同親権の法律が可決をされた後に、もちろんその中の議論もありますけれども、判断をされるときに、大臣の御発言というのは大きいですからね。そういう価値判断の中でやっていくわけですから、議論はあると思います。
共同親権を出したからと僕は連鎖的に言うつもりはないですけれども、選択的夫婦別氏制度ももう一回法務省で出すべきですよ。あと自民党だけですから。その中で相当な議論を、後ろで秘書官が今、そこを読めと言っているかもしれませんけれども、大臣、一番最初、ゴー・トゥー・マリッジですよ。僕は結婚だけが若者の幸せなんて全く思っていませんけれども、確かに、言われるとおり、結婚を望みながらちゅうちょされている方に対して、その障壁を取り除いてあげたい、あげたいというのはおかしいですね、取り除くべきだと立法府の人間の一人として思います。
これは、出す検討を始めませんか、選択的夫婦別氏制度。検討です、出す検討。民事局は大変かもしれませんけれども、もう一回自民党と勝負したらいいですよ。もうここだけですから。検討してみてください。どうですか。
○小泉国務大臣 国民の各界各層の意見、それを背景とした各政党の、国会の御議論、そういったものをやはりよく見極める必要はまだあると思います。
○寺田(学)委員 いや、共同親権の方が割れていますよ。選択的夫婦別氏制度なんて、自民党の中でも賛成の議連があるんですから。はっきり言って、よっぽど共同親権よりも世論の方向性はほぼ確定的ですよ。もうその理屈は成り立たない。答弁書を書くんだったら、違う理由で書かなきゃいけないですよ。
だから、出す努力をしたらいいんですよ。その検討をしませんか。
○小泉国務大臣 常に、不断にそういう判断はしております。この国会の御議論、また国民の御議論、各政党、また経済団体、様々な御意見が、今受け止めているわけでありまして、その中で日々判断をしているわけであります。止まっているわけではありません。
しかし、この段階で、立法化ということを申し上げる段階にはないと思います。
○寺田(学)委員 共同親権なんて、国会でそんなに大きい議論になっていないですよ、質問回数を調べてみれば分かりますけれども。それでも出してきているんですから。世論調査でいったら、全然、選択的夫婦別氏の方が賛成の人たちの数は多いですよ。もうその理屈は成り立たないですよ。それでも、法制審で結論が出て、要綱案まで出ているにもかかわらず、法務省として出さない理由があるとしたら、ちゃんと答えてほしいと思います。
これは次に持ち越したいと思います。
時間が参りましたので、以上で終わります。
○武部委員長 次に、池下卓君。
○池下委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の池下卓でございます。
先ほど寺田委員からも、別氏の制度、そしてまた共同親権のお話も出ました。私も、先日の本会議場の中で代表質問、家族法制の改正がありまして、いよいよこれからこの議論が本格化していくということになるわけなんですけれども、その前に、今回の国会の議論がこの後の法の執行に際しましてどのような影響を与えていくのか、閣法の審議が始まる前に一つ議論をさせていただきたいという具合に思っております。
今回の家族法の改正、共同親権の導入に際しまして、これは非常にセンシティブな問題になっているかと思います。子供に会えない親御さん、そしてDV等の被害を訴えられる方々、そういう方々の非常に思いがあるからこそ、この議論につきましてもしっかりとやっていかなければならないという具合に考えております。
ただ、今回の家族法の改正といいますのは、民法の改正、基本法の改正ということでありますので、やはり、DV等のことに関しましても、これから事情が変わってきますので、DV法若しくは刑法等の改正も別途しっかりとやっていかなければならないのかなという具合に思っております。
そこで、一方、子供の利益という話が先ほど寺田委員の方からもありましたけれども、これは本当に誰のための利益なんでしょうか。大人のための利益になっては本当にいけないという具合に思っています。
そこで、子供は、父母が、双方が離婚したとしても、当然親子関係は変わらないわけですので、双方から愛情を持って育てられる権利があります。今回の法案では、先ほどもありましたように、子供の利益という定義が明確になっていないこと、これは一つ問題だと思います。
そして、離婚の際に両親の、双方の協議が調わない場合には家庭裁判所で判断が下されることになるということなんですけれども、その判断の基準がこれまた明確ではないこと、いわゆる裁判官の自由裁量になるのではないか、こういうことが共同親権の推進派若しくは反対派、両方の方々から心配の声が上がってきているという具合に承知をしています。
ただ、これまでは単独親権の制度というものが長年続いてきましたので判例というのがあるわけなんですけれども、今度、共同親権になった場合に、判例等の蓄積というものがありません。そこで、今国会での議論や指摘、そして立法趣旨が裁判所の判断に与える影響についてお伺いをしていきたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 お尋ねにつきまして、仮に家族法制に係る民法の一部の改正がされた場合における施行後の裁判所の運用について、現時点で申し上げることは困難でございますが、お尋ねについての一般論を申し上げますと、裁判官は、法を解釈、適用するに当たりまして、法の趣旨を適切に踏まえることとなるところでございまして、法の趣旨を明らかにするものとして必要に応じて国会での議論を参照することもあるというふうに考えているところでございます。
○池下委員 今御答弁いただきました。個別の話は当然挙げておりませんので全体の一般論ということになりますけれども、今国会の議論や法の趣旨をしんしゃくしてやっていただけるということは当然のことだと思いますし、当然、文言の部分については、これから本格的に審議が始まりましたら指摘もさせていただきたいと思うんですけれども。
そこで、ちょっと資料の方を見ていただきたいなという具合に思います。こちらの方は平成二十三年八月三日付最高裁判所事務総局家庭局第一課長の書簡ということで上がってきているものなんですけれども、そのほかに同じような書類が幾つかあります。中身を、ちょっと一部割愛して、五行目からですけれども、読ませていただきたいと思います。
衆議院法務委員会の会議録を送付します。離婚後の面会交流の在り方、親権停止制度の運用、児童相談所と家庭裁判所との連携強化、児童福祉法二十八条事件における保護者指導勧告の在り方など国会審議における主要な議論の内容が含まれています。裁判官、裁判所書記官、家庭裁判所調査官等の関係職員に回覧するなどして、その趣旨を周知していただきますようお計らいください。
ということで、わざわざ出されているわけなんですよね。
そこで、お伺いをしていきたいと思うんですけれども、司法は立法から独立して運用されているということは承知をしております。裁判官は立法者である国会が定めた法律に従って、先ほども言われましたように、審判するということになるかと思うんですけれども、裁判所は立法者の意図を無視して法解釈することはないと考えますけれども、これらの文書を発出した目的と、これを発出した後の効果及び検証方法についてお伺いをしたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
委員御指摘の文書につきましては、御指摘の記載内容を前提といたしますと、法改正に伴って、裁判官等の関係職種において、立法の趣旨の理解に役立ててもらう目的や、改正法の施行を踏まえた各庁における検討に資する情報を提供する目的で文書を発出したものと考えられるところでございます。
その上で、委員御指摘の文書の発出の効果やその検証につきましては、一般的に、法改正に伴って、その立法の趣旨の理解に役立ててもらうなどの目的から、各庁に対して様々な内容、方法で情報提供を行うということは家庭局等でございますが、個別具体的な事案においてどのような判断がされているかは個々の裁判体に委ねられるものでございまして、最高裁判所事務総局家庭局におきまして、委員御指摘の文書の発出に関して、御指摘のような効果の検証は行っていないところでございます。
○池下委員 今御答弁をいただいたんですが、今回の資料にちょっと添付はさせていただいておりませんけれども、ちょっと私、手元に記事を三つほど持っておりまして、これは記事なんですけれども、子供の連れ去り審判の際の記事が手元にあります。この記事が出た後に、先ほど見ていただきました発出した文書が出ているということになるんですが、それをちょっと読ませていただきたいと思うんです。
この審判、子供連れ去りの審判ということなんですが、審判を担当した、名前は伏せます、判事に対し、W氏、民法改正の議論に沿った適切な対応をお願いしたところ、判事は、法務大臣が国会で何を言おうと関係ない、国会審議など参考にしたことは一度もないと言い放ったとあります。このことが最高裁に行ったからか、国会の審議録を回覧するようにとの異例の通知が全裁判所に発出されたというのが、一応、手元に、三つほどあるんですけれども、出させていただきました。
これは、平成二十三年、ちょうどこれの発出の前になるんですけれども、民法の七百六十六条が改正されて、子供の利益を優先させ、子供の面会交流や養育費を定めることが明記をされています。ただ、その実効性が低いのではないかという声も当然たくさんあるわけなんですけれども。
その効果、先ほど見ていただいた通知がどれほど効果があるのか検証していないということで言われましたけれども、最初の答弁にありましたように、国会審議の趣旨がしっかりと裁判所で判断の基にならないといけないと思いますので、これはちょっと通告にはないんですけれども、改めて、この家族法制の審議が終わった後に、これは時間も大分たっているということで、平成二十三年ということで大分たっているということを聞いておりますので、改めてこの通知を発出していただけるかどうか、お伺いをしたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 まず、立法趣旨の理解というのは大切なことだと思っております。
今後、仮に家族法制が改正された場合に、そういった家族法制の趣旨も含めて、立法趣旨等をどういうふうに現場に周知していくかというのは、引き続き適切に考えていきたいというふうに思っております。
○池下委員 考えていただきたいということで、通告がなかったので明確にお答えしていただけなかったのかなということで思うわけなんですけれども。
当然、非常に議論が、両方サイドの議論があります、白熱してくるかなと想定しております。ただ、今回の国会の審議というのは非常に立法府の中で大事な議論になってくるかと思いますので、その趣旨、裁判所の皆さんに理解していただく。本当にこの通知一枚出せば済むのかどうか、それは非常に問題なところだとは私は思っております。研修等々で済むのか、そもそもそのマインドがあれなのか、経験がどうなのかというところら辺もあるかと思いますけれども、そこも踏まえて、しっかりと通知も含めてやっていただきたいという具合に思います。
それでは、ちょっと共同親権の議論はまた審議が始まってからにさせていただきたいと思いますけれども、次の項目に行かせていただきたいと思います。
次に、地方分権改革に関する提案募集の制度について、ちょっとがらっと変わって行かせていただきたいと思うんです。
我々日本維新の会といいますのは、そもそも、二〇一〇年の四月にできましたけれども、東京一極集中を打破して、そして地方分権を進める統治機構改革を進めていくということを党是にしておりまして、しっかりと自立する地域を確立していくことが非常に大事であると考えております。
地方分権改革につきましては、内閣府を中心としまして、これまでも地方公共団体への事務、権限の移譲、地方に対する規制緩和を進められてきたと認識しております。全国の自治体から国へ寄せられる地方分権改革に関する提案募集、まさにこれは、地域の自治体が自立する地域を目指して思いを寄せられている、そして新しいアイデアであると思っております。
私も、先日の二月二十八日に、予算委員会の第五分科会におきまして、狂犬病のワクチン接種の時期、これが今決まっているわけなんですけれども、これを柔軟にしてくださいねという質疑をさせていただいたところ、これも地域の声を聞いてやったわけなんですけれども、よい御回答をいただきました。
そこで、この地方分権改革に関する提案募集の制度について更に進めるべきだと考えますが、この制度についてお伺いをしていきたいと思います。
○恩田政府参考人 お答えいたします。
地方分権改革におきましては、平成二十六年から、提案募集方式を通じまして、地方の現場で実際に困っている具体的な支障を踏まえ、多数の提案をいただき、その解決と実現に向けた調整を行ってきているところでございます。
具体的には、導入から令和五年までの十年間で約三千五百件を超える提案を地方からいただき、このうち、内閣府で調整を行った約二千三百件のうち八割以上につきまして、提案の趣旨を踏まえた対応等を行ってきたところでございます。
地方分権につきましては、地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図り、質の高い行政サービスを実現するための基盤でございますので、今後とも着実に進めてまいります。
○池下委員 着実に進めていただけるというお言葉をいただきました。これは本当にたくさんの御意見が地方から上がってきているかと思います。我々も、先日も大阪府からの意見書をいただいたりとかしておりますので、国会の審議でも取り上げてはいきつつも、やはり内閣府さん始め様々関係省庁があるかと思いますので、しっかりと取組をしていただきたいと思います。
そこで、ちょっと具体的な話を一つ二つさせていただきたいなという具合に思うわけなんですが、私、かつて、大学を卒業した後に専門学校の講師をしていた経験があります。その中で、民間の専門学校、民間の学校といいますのはどこも生徒募集で取り合いになっているという状況というのは知っております。
公の機関が民業圧迫するようなことはいけないという具合に考えておるものの、一方で、今回、宮城県、三重県、広島県など複数の自治体から、職業能力開発校における留学生の受入れと在留資格の提案がございました。令和五年四月現在、全国の都道府県で百四十五校の職業能力開発校が存在しますが、この提案について民間学校からの意見聴取は行われているのか、また、そこから見えてきた課題は何なのかにつきまして、お伺いをしたいと思います。
○原口政府参考人 お答えいたします。
今お話がございました職業能力開発校でございますが、労働者に対しまして、段階的かつ体系的に職業に必要な技能及びこれに関する知識を習得する職業訓練を行うことを目的として、都道府県が設置しているという施設でございます。
当該施設が職業訓練を実施するに当たりましては、公共の施設という性格上、お話がございましたとおり、官民の役割分担に十分配慮して、民間の教育訓練機関との競合を避ける必要があると考えているところでございます。
このため、お尋ねの地方分権改革に関する提案につきましては、関係省庁とともに、民間の職業訓練団体に伺ったところ、民間におきましても現に外国人留学生を受け入れていることから、競合が生ずることとなる旨を懸念をする御意見を頂戴したところでございます。
このような状況を踏まえまして、昨年十二月でございますが閣議決定されました、令和五年の地方からの提案等に関する対応方針におきましては、民間の職業訓練機関との関係性に留意しつつ検討し、令和六年中に結論を得るとされたところでございまして、引き続き、官民の役割分担などを踏まえつつ、提案県や関係省庁と検討してまいりたいと考えているところでございます。
○池下委員 しっかりと検討していただきたいんですが、その地方からの声なんですけれども、今回の提案なんですが、日本での就職を希望する留学生の方を地方にやはり就職を促進させたいというお考えなんですね。
そこで、まず、留学の在留資格を職業能力開発校にも広げたり、卒業生に技術・人文知識・国際業務の就労資格を付与するとしてはどうかという御提案でありました。今回の国会では、人材確保のために育成就労の制度についても議論されると思いますけれども、地方のアイデアを生かした外国人材の受入れと育成は地域活性化の可能性を秘めていると考えておりますけれども、その地方のアイデアをどのように活用されていくのか、お伺いをしたいと思います。
○門山副大臣 お答えいたします。
職業能力開発校において留学生の受入れができるようにし、また受け入れた外国人が在留資格、技術・人文知識・国際業務へ在留資格変更することを可能にしたいという御指摘の地方分権提案につきましては、民間の教育訓練機関との関係性に留意しつつ検討するということにしているところでございます。
法務省といたしましては、引き続き、関係府省庁とともに検討を進めてまいります。
○池下委員 公が民業を圧迫するということは当然いけませんので、それは承知しているものの、しっかりと推進も検討していただきたいなと思います。
時間もなくなってきましたので、最後に一問だけ、これに関連して御質問させていただきたいと思うんですけれども、今度は、住民票等各種証明書や戸籍に関する証明書の公用請求について、請求書様式の統一化についてお伺いをしていきたいと思うんです。
全国で、いろんな自治体がありまして、戸籍であったりとか、引っ越しのときに住民票等々を使うわけなんですけれども、それぞれの自治体の中で、住民票の様式が違ったり戸籍の様式が違ったり、中に書いている内容は一緒なんですけれども、様式が違うという場合があります。そういうときに、役所の方々は、いろんな役所間で書類をやり取りするわけですので、非常に見にくい、実務をする際にも非常に間違いやすいし時間もかかるということで、非常に困惑をされているということがあります。
令和五年七月に、総務省自治行政局の住民制度課、また法務省民事局から、公用請求に係る様式の統一化に関する検討指針というものが出されているんですけれども、この統一様式の設定につきましてどのように検討されているのか、また、検討状況、スケジュール感、各関係機関への支援、通知、通達など、どのようにされるのか、お伺いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、令和五年の地方分権改革に関する提案募集におきまして、請求書の様式の統一化が提案されたところでございます。
法務省といたしましては、これまでに、本件に関する提案団体のヒアリングを実施いたしまして、請求を受けた市町村における事務処理の支障となっているとの実情等を把握したところでございます。
この点につきまして、法務省としては、請求書の様式を統一化する方針としておりまして、総務省などの関係府省と協議し、また、公用請求をする行政機関の意見等も踏まえながら、市町村の負担の軽減に資する対応となるよう、令和六年度中の統一化に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
○池下委員 ありがとうございます。
地方がしっかりと仕事をしやすい環境をつくっていただきたいと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○武部委員長 次に、斎藤アレックス君。
○斎藤(ア)委員 教育無償化を実現する会の斎藤アレックスでございます。
日本維新の会の皆様との統一会派を代表して質問をさせていただきます。
本日、私からは、性同一性障害という言葉に関連して、何点か質問をさせていただきたいと思います。
まず、この問題に入る前に、心と体の性が一致をしない状態は、私は、精神疾患でもないし、障害でもないというふうに考えております。そういった認識は世界中で一般化がだんだんとされてきて、国内でもそういった認識が広がっていると思いますけれども、その認識は、今、政府の方で、また、大臣そして副大臣、どのように持たれているのかということ、まず議論に入る前にできればお答えをいただきたいと思うんです。
いわゆるトランスジェンダーの方々というふうに言われますけれども、体と心の性が一致しない状態は、精神疾患であったりとか、障害であるというふうなお考えであるのか、それとも、私と同様、いや、今の認識ではそういうことではない、これはある種の、一種の状態であって、病気であったりということではないというふうに考えていただけているのか、大臣は、それはいかがでしょうか。また、副大臣にもお答えをいただければと思います。
○小泉国務大臣 端的に申し上げますけれども、先生と同じ認識です。
○宮崎副大臣 様々なものがあると思っておりますが、委員の御指摘については尊重すべきものと思っております。
○斎藤(ア)委員 ちょっと、厚労副大臣のお答えは、少し前提条件があるようなお答えだったと思います。
いろいろな意見が国内にあるとは分かっていますけれども、個人個人が、心と体が一致をしていないという方が実際に存在していて、その方々を尊重していくということは、日本の憲法の人権尊重に当たっての、私は、今の考え方に基づけば、しっかりと尊重していくべき状態だと思いますので、病気であるだとか何か治療が必要なものであるというふうな考え方は、これはもうやはり変えていかなければならないと思っていますし、それに応じて、法律の名称であったり、あるいは厚労省の統計上の名称というものも変えていく必要があると思っているんですね。
そういった私の考えの前提に基づいて質問をさせていただきたいと思っています。
まず、これは、この委員会でも、またほかの委員会でも議論になっていますけれども、昨年十月の最高裁大法廷での性同一性障害特例法に関する違憲判決を受けて、法律の改正について検討しますかという質問をされると、今回の委員会の所信質疑でもありましたけれども、検討を行っている、立法府の状況を見ながらというようなお答えを昨年から法務大臣は繰り返されているわけでございます。
そもそも、この法律、性別変更を認められるための要件として、生殖機能を喪失していること、そしてもう一つ、身体的特徴が変更先の性別に類似する特徴を持つことということで、性転換手術、手術を受けなければ性別変更をすることができないという法律になっている。そのこと自体、私は、人権尊重にもとる、日本国憲法にもとる規定だと考えておりますけれども、最高裁では、性転換手術のうちの一つ、生殖機能を喪失していることという要件については、まず違憲判決が出たということでございまして、早急にこの違憲判決を受けて法改正をしていくべきだと考えているんです。
改めて法務大臣に伺いますけれども、法改正は必要だという立場にもちろん立たれていると思うんですけれども、その検討状況というか、早くしなければならないという思いがあるのか、検討状況はどうなのか、まずお答えいただきたいと思います。
○小泉国務大臣 この最高裁の違憲決定については、もちろんでありますけれども、厳粛に受け止める必要があると思います。その上で、これは議員立法で構成されておりますので、改正に向かっていかなければならないわけでありますけれども、立法府のお考え、こういったものも踏まえていく必要があります。
閣法なのか、議員立法なのか、そういった検討も必要となります。関係省庁とともに必要な検討を行い、立法府とも十分に連携して引き続き適切に、適切の意味の中には遅滞なく対応していきたい、そういう考え方でおります。
○斎藤(ア)委員 この立法府での議論も重要になりますし、立法府とどのようなコミュニケーションを取っているのかということは、教えていただけないとは思いますけれども、その中身は大変気になるわけでございます。どのように、言ってしまえば、公明党の皆様は前向きだと思うんですけれども、自民党の中に様々な意見があるというふうに私は理解をしております。
その中で、もう一つの手術要件である外観要件についてもこれは見直していくことを検討すべきだということを公明党の議員の皆様はおっしゃっていますし、それは、性別、この転換手術、つまり、生殖機能を喪失させる手術とその外見を変える手術、切り分けて考えるのはちょっとおかしいと私も思いますし、この生殖不能要件を違憲とするのであれば、当然、外見を変えなければならないという規定についても違憲となる可能性は極めて高いと思いますし、それを待たずして立法府が判断をして、あるいは省庁の方で動いて法改正を行っていくということが私は行政府、立法府の責任だと思うんですけれども、この手術要件のもう一つの外観要件については高裁に差し戻されてその審理が行われるということですけれども、これを待ってから法改正を検討する、これを待ってから法改正をするということなんでしょうか。
もう生殖機能喪失要件については違憲だという判断が出ているので、外観要件についての議論、高裁、裁判所の判決を待たずにこの法改正の議論というのは進めていくべきだと思っているんですけれども、その差し戻された外観要件の審理を待つという考え方があるのかないのか。待つべきではないと思うんですけれども、その点、法務大臣、いかがなんでしょうか。
○小泉国務大臣 この問題は行政府の立場においての様々な検討も行いますが、また、立法府の皆様方との意見の調整、意見の交流、そういったものも前提になります。その中で、この差戻し、高裁に差し戻された外観要件、結論を待つのかどうかでありますけれども、今それについて特段の議論というものは行われていないと私は認識しております。その点も含めて、待つのか待たないのかも含めて立法府と行政府で意見を調整していくという段階だと思います。
○斎藤(ア)委員 繰り返し紹介していますけれども、公明党さんは改正に前向きだと思うんですけれども、自民党さんの中に様々議論がある。
これは、私は今年の二月十五日の日経新聞の記事から引用するんですけれども、昨年のLGBT理解増進法の成立が自民党の支持率下落の要因、原因となっているので、性同一性障害特例法の改正はリスクであり、急ぐ必要はないといった意見があるといったようなことがこの日経新聞の記事で紹介をされています。
これは、それが事実かどうかを確認する質問をするわけではないですけれども、これも法務大臣に確認したいんですけれども、政治的な理由や選挙対策的な理由でこの違憲判決が出ている法律案の検討、改正といったところが影響されることはないと理解してよいのか。その点、改めて御回答いただきたいと思います。
○小泉国務大臣 それは、当然、影響を受けることはない、事柄の性格上、この問題は真摯に受け止める必要がある、そして遅滞なく進める必要がある、それが基本だというふうに思っております。
○斎藤(ア)委員 是非、小泉大臣は冒頭の御答弁でも、体と心の性の一致をしていない状態は疾患ではないというふうなことをおっしゃっていただきましたし、重くこの違憲判決を受け止めていただいているということは所信質疑の中でも御答弁をいただいておりますので認識は一致をしていると思うんですけれども、更に検討はやはり早くしてもらわなければならないし、一部、自民党の中にはこれは急ぐ必要がないというような意見が出ているというような報道は大変私は懸念をしておりますので、違憲状態を放置するようなことがあってはならないとも思いますし、また、トランスジェンダーの方々の人権にも関わる問題でございますので、早急な検討というのを与党の中でも議論をして進めていただきたいと思っておりますし、我々立法府の立場からも責任を果たしていきたいと考えております。
この性同一性障害という言葉に関連して、厚労省に次お尋ねしたいんですけれども、これも既に昨年の国会でも議論されていますけれども、世界保健機関の国際疾病分類で、ジェンダーアイデンティティーディスオーダーという元々病名だったもの、精神疾患だったものが、精神疾患ではないということで名称が変わって、ジェンダーインコングルエンスと変更されて、今月、日本の性同一性障害学会、GID学会も名称変更を総会で決め、発表されました。名称をGI学会、性別不合学会にすることを発表されて、世界保健機関の疾病分類の変更に応じて日本国内の学会も名称変更を決めたし、また、障害ではないという認識も広がっていると思いますので、この統計上の分類、国内での厚生労働省のこの分類、和訳の変更を早く進めるべきだと思うんですね。
昨年の質疑の中では、令和九年度以降の対応に向けて検討を加速するような、そういった御答弁だったんですけれども、令和九年はまだまだ先でございますし、もう学会の決定も出ているわけでございますから、先倒しでもこの部分、名前、名称、統計上の分類、邦訳を変えていくべきだと思うんですけれども、副大臣、いかがでしょうか。
○宮崎副大臣 御指摘をいただきましたとおり、令和四年、二〇二二年の一月に発効しましたICD11において、今までの性同一性障害の名称がジェンダーインコングルエンスというふうな形に変更になっております。これは仮訳も発表しているんですけれども、仮訳に従えば性別不合という表現になるかと思っております。
これは和訳を正式に決めないといけないということであります。現在、厚生労働省で日本医学会など関係学会の意見等を聞きながら調整を進めさせていただいているところです。
速やかにということについては、私どもも同じ認識でおります。ただ、これは、やはり統計分類ということもございまして、様々な項目がございます。実はこのICDの10から11では、ICD10のときは一万五千項目であったものが、11になると三万五千項目というふうな形で倍増以上に項目が増えているということもございまして、WHO加盟国でその決議をした際にも、少なくとも五年間の移行期間を設けるようにということで事務局長への要請も同時に決議をされているという状況でございます。
今この作業をしっかり進めながら、この後、社会保障審議会などの審議も必要となってまいりますが、先生御指摘のような、移行期間を踏まえつつも、それを待っているというわけではなくて、速やかな移行手続はしっかりやってまいりたいと思っております。
○斎藤(ア)委員 ほかの分類変更とか名称変更と違って、精神疾患ではないというものをこれまで精神疾患としていたので、それを変えて、これは病気ではないというふうに変更した重大な変更だと思います。そして、当事者の方々の心情的な面とかあるいは社会的な影響とかも含めると、この部分は特に急いで対応するということを私は検討すべきだと思います。いろいろ実務上の問題もあるということは今お答えをいただきましたけれども、人権問題でもあると思いますので、そこは特別な対応を是非お願いをしたいというふうに考えております。
この問題で最後の質問にさせていただきたいと思うんですけれども、時期を前倒しにしていただきたいということと別に、名称を変えるということは統計分類上ではそれは間違いないということだと思いますけれども、であるのであれば、当然ですけれども、冒頭の議論に戻りますけれども、性同一性障害特例法に関しても、やはり中身の検討と同時に、この名称、この障害という言葉を使うこと自体の変更もしていくということに当然なると思うんですけれども、その点、法務大臣の御認識はいかがなんですか。
つまり、性同一性障害という用語が厚生労働省でもこれから和訳が変わっていくわけでございますし、心と体の性が一致しない状態は病気、障害ではないということだと思いますので、この名称を変えていくということに当然なると思うんですけれども、大臣の御所感というかお考えはいかがでしょうか。
○小泉国務大臣 まだ私の立場で確定的なことは申し上げにくいんですが、認識が変わったということです。認識が変わったのであればそれに伴って用語が変わる、これが自然な流れだということだけ申し上げたいと思います。
○斎藤(ア)委員 かつては差別とみなされなかったことも、時代が変わって認識が変わって、これはやはり差別だ、変えなければならないという問題は、このトランスジェンダーの問題にかかわらず、これまでもたくさんあったわけでございます。
社会が変わって理解が広まるのに応じて、やはり、我々が使う言葉、法律上の言葉も変えていくのは、これは当然のことだと思いますので、性同一性障害の特例法の改正に当たっては、しっかりとこの用語も変えていくということは当然だと思いますけれども、我々からもチェックをさせていただいて、実現をしていきたいというふうに考えておりますので、とにかく早く、違憲状態でございますので、検討を進めていただきたい。
特に与党の中の自民党の議員の皆さんも、いろいろ意見があるんでしょうけれども、もう違憲でございますので、早く対応を進めていただくように、検討、議論を進めていただきますように求めて、この性同一性障害の点に対する質問を終わらせていただきます。
厚労副大臣に関しては御退席いただいて結構でございます。
残りの時間で、ちょっと時間が余りないんですけれども、保護司制度に関して質問させていただきたいと思います。
保護司の今高齢化が問題になっていて、人員確保が問題になっているので、第二次再犯防止推進計画によって保護司の待遇面での検討というものが今進められています。
私は、保護司の方々が善意に基づいてボランティアで活動していただくというのはすばらしいことだし必要なことだと思うんですけれども、ボランティアが無給である必要はないと思うんですね。やはり、ボランティアであっても有給で働いていただいて、時間を使っていただいているわけですから、何かしらの報酬を支払うということは、私は善意に反するような行動でもないと思いますので、しっかりと報酬を支払っていくことも検討すべきだと思うんですけれども、今、保護司の待遇や活動環境の検討に当たっては、報酬を支払う形への変更も検討対象だというふうに認識してよいのでしょうか。
どのような検討状況かつぶさにお答えいただく必要はないですけれども、報酬を支払う形への変更も検討対象に入っているかどうか、お答えをいただければと思います。
○小泉国務大臣 これは今、法務大臣の下につくりました検討会で検討を進めております。
やはり、沿革から来るものでありますけれども、無償性、非常に困難な問題に対して無償で取り組んでいくそのすばらしさ、そういったものを中心に据えた立法になっていますので、無給でというふうに今書いてあるわけですよね。ただ一方で、そうすると入ってこられる人が限られてしまう、門戸が狭くなる、もっと多くの人に活躍してもらいたい、そのためには報酬を支払って当然ではないか、こういう議論もございます。両方ございます。まだちょっと結論が出る状態ではないんですけれども、これを煮詰めていきたいと思っています。もちろんこれは重要な審議対象です。
○斎藤(ア)委員 報酬を支払う形にするかどうかも検討の対象に入られているということだと思います。
無償で何かするのがすばらしいというのは、一面ではそうだけれども、それを強調し過ぎるというか、お金をもらったら、報酬をもらったらいけないということでは全くないと思います。やはり、しっかりとある程度、たくさん報酬を支払えるわけではないでしょうけれども、報酬をお支払いしていくということは善意を否定することでは全くないと思いますので、是非とも、保護司の方々の仕事は大変重要でございますので、人員がしっかりと集まるよう、そして安心して活動していただけるように、そのことも検討していただきたいと思います。
関連して、最後に、保護司が今は無給のボランティアとなっているんですけれども、それにもかかわらず、保護司の方々は保護司会の会費を支払わなければならなくなってしまっている。無給であるのにもかかわらず、社労士さんとか税理士さんとか弁護士さんとか、給料をもらってお仕事をする方々がそれぞれの会の会費を払うのは分かるけれども、無給なのに更に会費を払うというのは明らかに善意に頼り過ぎてしまっているのではないかと思うんですけれども、会費を支払わなければならない点については、この点、大臣、どう思われていますでしょうか。
○小泉国務大臣 これもまさに検討会で今両論出ているところでございます。したがって、私から今意見を申し上げる段階ではないと思いますが、熱心な御議論をいただいております。
○斎藤(ア)委員 時間が来ましたので終わらせていただきますけれども、保護司会の方からも私もいろいろ御意見をいただいています。大変すばらしい仕事だし、続けたいけれども、給料もないし、そして会費も払わなければならない。負担ばかりあるということは明らかにちょっとひど過ぎるのではないかなと思いますので、その点も踏まえて検討を進めていただければと思います。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、本村伸子君。
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
結婚の自由を全ての人に保障すること、そして、同性愛の方々の個人の尊厳を保障する立場で質問をさせていただきたいと思います。
昨日、最高裁で、二十年間一緒に暮らしたパートナーが殺害をされるという本当につらいことがあったときに、そのパートナーが同性であることを理由に犯罪被害者給付金が支給されなかった男性が、決定の取消しを求め、愛知県を訴えていた裁判で、同性カップルは法律の婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者に含まれるという初の判断がなされました。そして、名古屋高等裁判所に差戻しということになりました。
ちょうど昨日、この委員会で私、この国会に出されている犯罪被害者支援のための総合法律支援法の改定案で、事実婚のカップルとか同性カップルが対象外になっている問題を質問させていただきました。この最高裁の判断では、同性カップルも法律婚のカップルと同様の生活をしているのだということを認めているということを着目しないといけない、この点、大事な点だというふうに思っております。
改めて、事実婚カップル、同性カップルを今回の法テラスの犯罪被害者支援の対象にすることを冒頭強く求めたいと思います。昨日の最高裁の判決を受けて、これを求めておきたいと思います。
さて、結婚の平等の保障に関しまして、三月十四日、結婚の自由を全ての人に保障することを求める裁判で、札幌高等裁判所が判決を出しました。私たちはこの判決から様々学ばなければならないというふうに考えております。
そこで、同性の方を愛するということに関し、判決では大事な指摘がございます。札幌高等裁判所の判決の中で、性的指向に関しての判決の部分、資料にも出させていただいておりますけれども、判決十二ページ八行目から十三ページ七行目、最高裁にお示しをいただきたいと思います。
○福田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分、判決文十二ページ八行目から十三ページ七行目までを読み上げます。
性的指向とは、人が情緒的、感情的、性的な意味で、人に対して魅力を感じることであり、このような恋愛、性愛の対象が異性に対して向くことが異性愛、同性に向くことが同性愛である。性的指向が決定される原因、又は同性愛となる原因は解明されておらず、遺伝的要因、生育環境等複数の要因が組み合わさって作用している可能性が指摘されているが、精神医学に関わる大部分の専門家団体は、ほとんどの人の場合、性的指向は、人生の初期か出生前に決定され、選択するものではないとしており、心理学の主たる見解も、性的指向は意思で選ぶものでも、意思により変えられるものでもないとしている。性的指向が障害や疾患の一つであるという考えは受け入れられなくなった(認定事実(一)ア)。
以上のような性的指向の性質を踏まえると、人は生物学的に男か女かのどちらかで出生するけれども、どちらであっても、生物学的な機能の存在とは別に性的指向を有することがあるのだから、異性を愛する場合と同性を愛する場合を比べると、生まれながらの指向の違いがあるにすぎないといえる。そうすると、恋愛や性愛は個人の尊重における重要な一要素であり、これに係る性的指向は、生来備わる人としてのアイデンティティであるのだから、個人の尊重に係わる法令上の保護は、異性愛者が受けているのであれば、同性愛者も同様に享受されるべきである。したがって、性的指向は、重要な法的利益であるということができる。なお、同性愛のみならず、対象が異性と同性の双方の場合、自身の性を自認できない場合なども同じように考えることができるが、本件では、控訴人らの主張に基づき、同性愛と異性愛、同性婚と異性婚について検討する。
以上のとおり、性的指向は生来備わる性向であり、社会的には異性愛者と同性愛者それぞれの取扱いを変える本質的な理由がないといえ、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成し得るものというべきである。
このように記載されております。
○本村委員 ありがとうございます。
非常に大切なことが判決の中で述べられているというふうに思います。
そこで大臣にお伺いをしたいと思います。
同性を好きになるということは本人の意思で変えられるというふうにお考えでしょうか。
○小泉国務大臣 今御指摘の札幌高裁判決にありますように、性的指向、これは人生の初期か出生前に決定され、選択するものではない、あるいは、心理学の主たる見解も、これは、性的指向は意思で選ぶものでも、意思によって変えられるものでもない、こういう記述が行われております。
そのことを私も深く認識をしているところでございます。
○本村委員 法務大臣がそうした認識をしていただいているということは非常に重要なことだというふうに思っております。
札幌地裁の判決でも、同性愛は、自らの意思に基づいて選択、変更できないことは、現在は確立した知見になっていると明確に書かれております。そして、圧倒的多数派である異性愛者の理解又は許容がなければ、同性愛者のカップルは、重要な法的利益である婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の一部であってもこれを受け得ないとするのは、同性愛者の保護が異性愛者と比して、余りにも欠けると言わざるを得ないというふうに書かれております。
保護が余りにも欠ける状態の中で、同性愛の方が置かれた状況、これも札幌高等裁判所の判決の中では、同性愛の方々が、自分の存在の意義を失うという喪失感にさいなまれているとの指摘がございます。ここの部分は、原告の主張に裁判官が耳を傾け、心を寄せているというふうに言われているところです。
是非、この部分も御紹介いただきたいと思います。判決の十四ページ九行目から二十三行目、最高裁、御紹介をいただきたいと思います。
○福田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分、判決文の十四ページ九行目から二十三行目までを読み上げます。
もっとも、性的指向及び同性間の婚姻の自由は、人格権の一内容を構成し得る重要な法的利益ということができる。性的指向は、社会的には異性愛者と同性愛者を本質的に区別する理由がなく、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の一要素でもあることから、社会の制度上取扱いに不利益があれば、そのことによりいわゆるアイデンティティの喪失感を抱き、人としての存在を否定されたとの思いに至ってしまうことは容易に理解できることである。
控訴人らは、人として、同じく人である同性パートナーを愛し、家族としての営みを望んでいるにもかかわらず、パートナーが異性でなく、同性であるという理由から、当事者以外の家族の間で、職場において、社会生活において、自身の存在の意義を失うという喪失感に苛まれているのであって(甲B四〜九、原審原告番号一、二、四、五及び六の各本人尋問の結果)、個人の尊重に対する意識の高まった現在において、性的指向による区別を理由に、このような扱いを受けるいわれはなく、これは憲法が保護する個人の尊厳にかかわる問題であるということができる。
このように記載されております。
○本村委員 個人の尊厳に関わる問題であり、この喪失感というものを一刻も早く政治の力でなくさなければならないというふうに痛感をしております。
札幌高裁は、憲法に関わっても重要な判断をいたしました。札幌高裁の判決の中では憲法二十四条一項に対してどのような判断をされたのか、判決十七ページ二十一行目から二十五行目、お示しをいただきたいと思います。
○福田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分、判決文十七ページ二十一行目から二十五行目までを読み上げます。
性的指向及び同性間の婚姻の自由は、個人の尊重及びこれに係る重要な法的利益であるのだから、憲法二十四条一項は、人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨を含み、両性つまり異性間の婚姻のみならず、同性間の婚姻についても、異性間の場合と同じ程度に保障していると考えることが相当である。
このように記載されております。
○本村委員 ありがとうございます。
もう一つ、憲法二十四条について総合的にどのように判断をされたのか、判決二十二ページの二十三行目から二十三ページ三行目までお示しをいただきたいと思います。
○福田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分、判決文二十二ページ二十三行目から二十三ページ三行目までを読み上げます。
以上の点を総合的に考慮すると、本件規定は、異性間の婚姻のみを定め、同性間の婚姻を許さず、これに代わる措置についても一切規定していないことから、個人の尊厳に立脚し、性的指向と同性間の婚姻の自由を保障するものと解される憲法二十四条の規定に照らして、合理性を欠く制度であり、少なくとも現時点においては、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っていると認めることが相当である。
したがって、本件規定は、憲法二十四条に違反する。
このように記載されております。
○本村委員 この札幌高裁の判決は、憲法二十四条一項にも反するし、二項にも反するということを判断したということで、非常に重要な判決となっております。
憲法十四条一項についても判断をされております。判決二十六ページ十八行目「婚姻による効果は、」から二十七ページ一行目までお示しをいただきたいと思います。
○福田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分、判決文二十六ページ十八行目「婚姻による効果は、」から二十七ページ一行目までを読み上げます。
婚姻による効果は、民法のほか、各種の法令で様々なものが定められており、代替的な措置によって、同性愛者が婚姻することができない場合の不利益を解消することができるとは認め難い。
以上からすれば、国会が立法裁量を有することを考慮するとしても、本件規定が、異性愛者に対しては婚姻を定めているにもかかわらず、同性愛者に対しては婚姻を許していないことは、現時点においては合理的な根拠を欠くものであって、本件規定が定める本件区別取扱いは、差別的取扱いに当たると解することができる。
したがって、本件規定は、憲法十四条一項に違反する。
このように記載されております。
○本村委員 札幌高裁のこの判決は、長い長い同性愛の方々の訴え、声によってこういう判決が出されたという、その重みを私たち国会議員は受け取らなければいけないというふうに思っております。
札幌高裁の判決で付言がつけられております。資料の一番最後につけさせていただいておりますけれども、対策を急いで講じる必要があるという付言がつけられております。
同性カップルが婚姻の平等保障がないために、当事者の方々が自分の存在意義を失う、喪失感にさいなまれていることについて、その苦しみを私たち国会議員あるいは政府の側が理解をするという努力をすること、そして、制度を改善してこの苦難をなくしていくという必要性を、大臣としてはどのようにお考えになっておられますでしょうか。
○小泉国務大臣 こうした判決で述べられていることをまずしっかりと把握し、理解をしたいと思います。そして、制度の改正については、大勢の方々が関わっていて、大きな国で、大勢の方々がいて、様々な御意見がありますから、しっかりその中で国民的なコンセンサス、理解が得られるように、法務省としても力を尽くしていきたいと思っております。
○本村委員 先ほども、札幌地裁の方の判決、紹介させていただきましたけれども、普遍的価値を持つ個人の尊厳、人権は、多数派の理解、許容が必ず必要なんでしょうか。どうでしょうか。多数派の理解や許容がなければ認められないものなんでしょうか。
○小泉国務大臣 何をもって多数派ということになるのか、様々な御意見があるということを申し上げています。特定の意見ではなく、様々な意見がまだありますので、そういった方々の理解、コンセンサス、これもやはり求めていく必要はあると思いますが、先生がおっしゃる救済をする、苦しんでいる方々と思いを同じくしていく、そういうことも非常に大切な行政の在り方だと思いますし、また立法の在り方だとも思います。
○本村委員 もう一度お伺いをいたします。
普遍的価値を持つ個人の尊厳、人権は、多数派の理解、許容が必要なのでしょうか。
○小泉国務大臣 多数派が人権を否定しているわけではないと思います。具体的な多数派のお話がないので……(本村委員「一般論、これは一般論の話です。人権とか個人の尊厳は」と呼ぶ)一般論ですね。
私の考え方では、人権の尊重を否定する多数派というのは、どういうケースを考えていらっしゃるんでしょうか。
○本村委員 札幌地裁の方では、圧倒的多数派である異性愛者の理解や許容がなければ、同性愛カップルは、重要な法的利益である婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の一部であってもこれを受け得ないとするのはというふうに書かれておりまして、多数派である異性愛者の理解や許容がなければ、同性愛者の個人の尊厳や人権は認められないと考えているのかという点をお伺いしているんです。
○小泉国務大臣 婚姻制度という社会制度の在り方が今問われているわけです。そして、それに関わる様々な国民の方々がいらっしゃり、様々なお考えの方がいます。しかし、その中で人権を正面から否定する方はいないと思います、我が国においては。
ですから、今先生がおっしゃりたいのは、何というんですかね、そこに焦点を絞るとそういうお尋ねになるんだと思いますけれども、みんな人権を守りながら、しかし、社会制度の在り方として何が適切かという議論は、これは、意見はお持ちでありますから、そういう方々の意見にも耳を傾ける必要はあると思います。
○本村委員 是非、憲法違反であるという指摘を重く受け止めていただきたいというふうに思っておりますし、当事者の苦しみなどを理解するために、同時に法律婚をしている異性カップルと変わらない生活を同性カップルも送っているということを理解するために、まず、大臣、当事者からの聞き取りなど、実態調査、実態把握を法務大臣として行っていただけないでしょうか。そして、同性カップルに婚姻の平等を保障するべきだと、一歩を踏み出していただきたいというふうに思いますけれども、大臣、御答弁をいただきたいと思います。
○小泉国務大臣 御指摘の実態調査でありますが、引き続き、国民の代表者である国会議員の方々の議論の状況等も注視しつつ、総合的に判断してまいりたいと思います。
○本村委員 是非大臣が直接同性カップルとお会いになっていただき、お話を是非聞いていただきたいと思います。最後にお答えいただきたいと思います。
○武部委員長 申合せの時間が経過しておりますので、質問を終えてください。
最後に、小泉大臣。
○小泉国務大臣 適切に対応したいと思います。
○本村委員 是非会っていただきたいということを強く求め、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
――――◇―――――
○武部委員長 次に、内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。小泉法務大臣。
―――――――――――――
民法等の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○小泉国務大臣 民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益を確保する観点から、民法等の一部を改正しようとするものであります。
その要点は、次のとおりであります。
第一に、父母の離婚等に直面する子の利益を確保する観点から、民法等の一部を改正して、婚姻関係の有無にかかわらず、父母が子を養育するに当たって遵守すべき責務を明確化することとしております。また、父母が離婚する場合にその双方を親権者と定めることができるようにする規定を設けるほか、親権の行使について父母間の意見が一致しない場合における調整のための裁判手続を創設することとしております。
第二に、養育費の履行を確保する観点から、民法等の一部を改正して、養育費等の債権に一般先取特権を付与するとともに、父母が養育費の支払いについて合意することなく離婚した場合においても父母の一方が他方に対して所定の額の養育費の支払いを請求することができる旨の規定を設けることとしております。また、養育費等の債権に基づく民事執行について、一回の申立てにより複数の手続を連続的に行うことができる旨の規定を設けるなど、裁判手続の利便性を向上させるための規律を整備することとしております。
第三に、安全、安心な親子交流を実現する観点から、民法等の一部を改正して、父母が婚姻中に別居する場面における親子交流に関する規定を設けるほか、家事審判等の手続において裁判所が当事者に対し親子交流の試行的実施を促すための規定を設けることとしております。
このほか、民法の一部を改正して、養子縁組がされた場合の親権者に関する規定を整備するほか、財産の分与の請求をすることができる期間を五年に伸長するとともに、その請求において家庭裁判所が考慮すべき要素を具体化する規定を設けることとしております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○武部委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○武部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本案審査のため、来る四月三日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、来る四月二日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時九分散会