衆議院

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第7号 令和6年4月3日(水曜日)

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令和六年四月三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 武部  新君

   理事 熊田 裕通君 理事 笹川 博義君

   理事 仁木 博文君 理事 牧原 秀樹君

   理事 道下 大樹君 理事 米山 隆一君

   理事 池下  卓君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      井出 庸生君    上杉謙太郎君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      岸 信千世君    斎藤 洋明君

      柴山 昌彦君    高見 康裕君

      谷川 とむ君    中野 英幸君

      平口  洋君    藤原  崇君

      三ッ林裕巳君    山田 美樹君

      おおつき紅葉君    鎌田さゆり君

      鈴木 庸介君    寺田  学君

      山田 勝彦君    阿部 弘樹君

      斎藤アレックス君    美延 映夫君

      日下 正喜君    平林  晃君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣政務官      中野 英幸君

   参考人

   (慶應義塾大学名誉教授) 犬伏 由子君

   参考人

   (#ちょっと待って共同親権プロジェクトチームリーダー)          斉藤 幸子君

   参考人

   (一般社団法人りむすび代表)          しばはし聡子君

   参考人

   (関西学院大学法学部教授)            山口 亮子君

   参考人

   (学習院大学法務研究科教授)           大村 敦志君

   参考人

   (弁護士)        原田 直子君

   参考人

   (民間法制審議会家族法制部会部会長)

   (弁護士)        北村 晴男君

   参考人

   (弁護士)        岡村 晴美君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三日

 辞任         補欠選任

  谷川 とむ君     岸 信千世君

  中曽根康隆君     上杉謙太郎君

  三ッ林裕巳君     柴山 昌彦君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     中曽根康隆君

  岸 信千世君     谷川 とむ君

  柴山 昌彦君     三ッ林裕巳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)


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     ――――◇―――――

武部委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、午前の参考人として、慶應義塾大学名誉教授犬伏由子君、#ちょっと待って共同親権プロジェクトチームリーダー斉藤幸子君、一般社団法人りむすび代表しばはし聡子君及び関西学院大学法学部教授山口亮子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 なお、参考人のプライバシー保護の観点から、斉藤参考人の席にはつい立てを設置し、同参考人の発言の際はボイスチェンジャーの使用を許可することといたしておりますので、御了承願います。

 また、報道関係者におかれては、当該参考人の撮影を禁止するとともに、追従取材は行わないようあらかじめ要請いたしておりますので、これを遵守願います。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、犬伏参考人、斉藤参考人、しばはし参考人、山口参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず犬伏参考人にお願いいたします。

犬伏参考人 おはようございます。慶應義塾大学名誉教授の犬伏由子と申します。

 現在、東京家庭裁判所の調停委員を務めております。本日は、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、家族法を専門として教育、研究に携わってまいりましたが、今回の法案につきましては前向きに受け止めております。また、法制審議会において五項目にわたる附帯決議がなされたことにつきましても歓迎しております。

 なお、今回、何点かの資料を添付させていただきましたが、資料一といたしましたのは、昨年十一月二十日に、家族法研究者を中心とする呼びかけ人が法務大臣宛てに、離婚後の共同親権導入に伴う法制度整備についての要望書を提出し、今年一月までに呼びかけ人及び賛同者を合わせて九十名となっております。また、賛同者の中には、泉徳治元最高裁判事、武川恵子元男女共同参画局長、林陽子元女性差別撤廃条約委員会委員長など、幅広い方々が含まれております。

 本日は、法制審での附帯決議及び要望書にもある法制度整備や支援体制について、以下三点にわたり発言させていただきます。

 まず、第一点、情報提供及び相談体制の必要性でございます。

 今回の法改正は、広く私たちの家族全体に関わってきます。資料二の離婚に関する統計を御覧いただいても分かるとおり、婚姻件数の減少とともに離婚件数も減少傾向にはありますが、それでも婚姻の三組に一組が離婚しており、離婚は少数の家庭にのみ起こる特別な問題ではありません。また、父母の離婚を経験する子供たちは、離婚件数自体が減少している、それから少子化でもあるということで減少傾向にあるとはいえ、二〇二二年には十六万一千九百二人の子供たちが含まれており、この数字は毎年累積してまいります。父母の離婚を経験する子供が多数いるという中、子供の利益に十分に配慮がなされるべきだと考えております。

 なお、家事調停の現場では、同居中の夫婦が当事者であるというケースも経験しております。資料三の家事調停・審判事件の統計を御覧いただいてもお分かりになると思いますけれども、婚姻中の夫婦間の事件、例えば婚姻費用分担事件であるとか面会交流事件など、一定数ございます。別居前後の段階から、情報提供、相談体制の整備が重要となってきます。

 今回の法案には、別居中の夫婦間の意見対立の調整も含まれており、紛争予防の観点からは、早い段階で父母が葛藤を高めないようにすることが子の利益にもつながると思っております。家庭裁判所には、もう既に高葛藤になってしまってから訪れるという人たちがいっぱいいて、私どもも、そこのところから始めなければいけないという苦労がございますので、やはり父母が高葛藤にならないようにするということは重要と思っております。

 そこで、具体的には、まず、今回の法改正の目的、趣旨について周知を図ること。特に、民法八百十七条の二に親の責務の規定が設けられ、親は、子の人格を尊重し、子の養育及び扶養の義務があること、父母は子の利益のためお互いの人格を尊重し協力しなければならないことがうたわれております。このことは広く私たち一般の人々に理解される必要があると思います。

 さらに、今回の法案の内容を踏まえますと、別居時、離婚時にどのようなことを決めておく必要があるかということを、適切かつ正確な情報の提供を行うということが必要になってきます。こうしたことは、国レベルで実施するだけではなく、住民の生活に密接に関わる基礎自治体が実施している取組を支援強化するという形で応援していくということが大切です。

 当事者が利用しやすい形で、法的な相談だけではなく、心理相談なども含めた相談体制を整えるということによって、当事者のエンパワーメントにつなげていただきたいというふうに思っているところでございます。

 第二点目、協議離婚に関する法制度整備です。

 離婚に関する統計を見て分かるとおり、二〇二二年では、離婚の八七・六%が協議離婚となっております。圧倒的多数の夫婦は協議離婚を選択しております。

 他方で、令和三年全国ひとり親世帯等調査によりますと、離婚母子世帯について、協議離婚のケースでは、面会交流を現在も実施している者が三四・二%、父から養育費を現在も受給している者が二六・一%と、ほかの離婚のケースよりも低くなっております。

 この点、例えば、私どもも韓国に訪問調査に行くことがございますけれども、韓国では、日本と同様に協議離婚という制度はありますが、協議離婚についても、家庭裁判所である家庭法院が関与し、子供の養育に関する合意書の作成を支援し、家庭法院の確認が必要とされております。

 今回の法案においては、協議離婚に関して、公的関与の手続については見送られましたが、今後の検討課題となると思います。当面は、協議離婚の際に、離婚後の子の養育に関する適切な情報提供を実施し、受講を促進すること、例えば、離婚届出用紙に、最高裁や法務省などが提供している動画などのQRコードを掲載し、チェック欄を設けるというだけでも、そんなに予算もかからないことですし、実現可能ではないかというふうに考えております。

 第一点と重複しますけれども、戸籍を担当する市区町村など地方自治体での取組を支援し、当事者間での合意形成を支援する。また、民間団体も面会交流支援や養育費相談を実施しております。こうした民間団体を助成することも重要で、紛争予防の観点からは、合意形成支援は非常に重要だと考えております。

 こうした点につきまして、本日は詳しく述べることはできませんので、二宮論文を参考資料四として提出しましたので、お時間があるときに是非御参照いただきたいと思います。

 第三点目でございますけれども、家庭裁判所の整備、充実と運用の改善でございます。

 今回の法案の内容からは家庭裁判所の役割が増大することが見込まれ、これに伴い、家庭裁判所の人的、物的整備、充実が必要で、予算措置が講じられるべきと思います。

 家庭裁判所が扱う事件は実に多様でございます。いわゆる家事事件だけではなく、児童福祉法上の児童虐待事件、少年事件などがございますが、資料五を御覧いただきたいと思います。大部の資料を出してしまいましたけれども、資料五によりますと、家庭裁判所の事件数は、少年事件は減少しておりますものの、全体としては増加傾向にあります。しかし、次の資料六を御覧いただくと、家庭裁判所の裁判官、調査官の人数というものは多くはありません。

 例えば、資料七によりますと、東京家庭裁判所の裁判官一人当たりの担当事件数は五百件と言われております。また、子どもの権利条約やこども基本法及び二〇二二年民法改正後の民法八百二十一条や今般の法案にもありますとおり、子供の人格の尊重のためには子供の意向や意思を十分に把握する必要がございますが、その点では、調査官調査が活用されるべきです。しかし、調査官の人数も限られております。

 ちなみに、東京家裁の調査官の数は百十名となっておりますけれども、首席調査官一名のほかに、少年事件担当調査官が三十名、家事事件担当が七十九名となっております。しかも、家事事件の担当でも、成年後見事件、遺産分割担当の方もおられますので、七十九名の家事事件調査官が全て子の監護の事件を担当するというわけではございません。

 さらに、その上に地域差というものもございます。地裁、家裁の兼務、裁判官が常駐していない支部、調査官が常駐していない支部もございます。子の監護事件に調査命令が出された事件についての割合は、調査官常駐庁では四四・五%でありますが、非常駐庁では三七・一%と、開きがあります。また、子供の意見聴取や試行的面会交流を実施するためには児童室が必要でございますが、児童室が設置されていない庁舎もございます。

 家庭裁判所の施設面につきましては、私の調停委員としての個人的経験ということでございますけれども、調停室が不足していて次回期日を先延ばしにせざるを得ない場合があること、当事者である申立人及び相手方双方の待合室が不足して、廊下などに長椅子を置いて待機していただいているという状況がありますので、例えば、特に配慮を必要とする事案で当事者を調停室まで誘導しなければいけないというときに、非常に遠回りをして調停室まで連れていく、できるだけほかの人たちにお会いしないように、非常に調停委員としては苦労するというようなこともございます。

 また、ウェブ調停も進んできてはおりますけれども、これに対応する調停室が不足しております。書記官に、次のウェブ調停はどこの調停室が使えますかと言うと、ちょっと待ってください、探してみますというような状況であります。また、ウェブ調停をするためのノートパソコンを書記官の方が調停室までかばんに入れて運んできて設置するという状態もあります。

 そういう点を考えますと、設備の充実は非常に重要なことだと思いますけれども、家庭裁判所の整備、充実や運用の改善についても、三点ほど述べておきたいと思います。

 1、家庭裁判所の人的充実、裁判官の増員とともに、家事事件についての専門性を高めていただく必要があります。調査官の増員も必要です。

 家庭裁判所の実務運用につきましては、附帯決議にもありますとおり、当事者の安全確保が必要ですので、調停期日が開始する前に、DV、児童虐待に関するスクリーニングを実施する必要があります。子供の利益の確保の観点から、子供の意思を尊重すべきであり、調査官調査の活用、充実、より丁寧な子供の意向調査、身上調査の実施が必要であるとともに、子供の手続代理人の積極的活用も同時に必要です。なお、資料八を御覧いただいても、まだ手続代理人の選任件数が少ない状況ですので、子供の手続代理人の報酬についての公的助成も必要と思います。

 家庭裁判所の物的充実につきましては、まず、調停室や待合室、面会交流試行室などの物的体制の拡充が必要です。特に、法案では、家事事件手続法百五十二条の三に、審判前の親子交流の試行的実施の規定が新設され、これに対応する面会交流試行室の拡充が必要となってきます。家庭裁判所の建物内にスペースがないというような場合は、公的機関あるいは民間機関の建物の借り上げ等も検討いただくことは可能ではないかと思います。また、IT化に対するインフラ整備も必要と思われます。

 最後になりますが、諸外国では、家族法が改正されることに伴い、制度の整備、支援体制が急速に進んだとも言われております。日本でも同様に進むことを期待して、私の発言を終わらせていただきます。(拍手)

武部委員長 ありがとうございました。

 次に、斉藤参考人にお願いいたします。

斉藤参考人 参考人の斉藤と申します。

 まず初めに、DV被害者としてこの場に立つに当たり、顔を出さない遮蔽措置、ボイスチェンジャーで声を変えること、そしてインターネット審議中継で顔を映さないことなど、特段の配慮をくださった議員の皆様、衆議院職員の皆様に深く御礼申し上げます。

 こうした特別な措置が必要なのは、私が住所を秘匿して暮らしており、夫がいつ居場所を突き止め、目の前に現れるか分からない恐怖と隣り合わせの毎日を送っているからにほかなりません。今この瞬間、ネットでは、私が誰であるか犯人捜しのようなことが起こっているはずです。実際に、離婚後共同親権に懸念があると発信している人に対して、共同親権を望む人たちがその人の名前や顔をSNSなどでさらし、職場や実家に嫌がらせをしているということを知っています。もし私の身元がばれてしまったら、私と子供はおびえながら再び転居、転校、転職をしなければなりません。今日、この場に立つことはとても怖いです。ですが、声を上げられない日本中のたくさんのDVの被害者の仲間たちの応援を受けて、勇気を振り絞って、国会という公の場で思いを仲間の声も含めて伝えることに決めました。

 私は、離婚後の子育てを両親そろってできることは理想的ですばらしいことだと思います。そして、現時点でもできている人たちがたくさんいることを知っています。しかし、離婚後に協力し合えない人たちにも協力し合うことを強制しようというのが今回の法改正です。DV、虐待を除外すると言われていますが、実際にDV被害を受けた者としては、現状の仕組みや社会の理解度を考えると安心はできず、毎日不安な思いで子育てしています。

 まず、私の経験をお話しします。

 私は、入籍直後、夫より遅く帰宅したことを理由に殴られました。それからは、殴る、蹴るはありませんでしたが、物を投げる、壊す、罵倒、監視、お金の制限、同意のない性行為といった暴力を受け続けました。

 私は、夫を怒らせてしまうのは自分の頑張りが足りないんだと思って、耐えながら過ごしました。妊娠が発覚した後も、夫の暴力はやみませんでした。夫が暴れ、ぐちゃぐちゃになった家の中を、妊娠した大きなおなかで片づけ続けました。このまま産んでいいのだろうか、不安でいっぱいでした。

 里帰り出産をしましたが、その後、子供に障害があることが分かりました。夫は私にこう言いました、障害はおまえのせいだ。その後も夫は、子供の前でも怒鳴り、育児は何もしませんでした。このままでは私が壊れる、子供を守れない、そう感じ、里帰りのまま別居しました。

 別居後、友人に恥を忍んで夫が怖いことを相談すると、それはDVだよと言われ、DVを知りました。同居していた頃は自覚できませんでした。自覚していたとしても、自分を守るのに必死で、録音やメモを残せる状況ではありませんでした。もし録音がばれたら、激怒され、暴力がエスカレートするからです。今になってDVの証拠を出せと言われてもできません。

 その後、夫は面会交流調停を、私は離婚調停を申し立てましたが、夫が、面会できなければ離婚しないと強く主張したので、家庭裁判所では面会交流の話ばかりが進みました。私は、手元に僅かに残っていた夫からの脅迫メールや配偶者暴力相談支援センターの記録、子供の主治医の意見書などを提出しました。そこにはこう記されています。妻は配偶者によるストレスで重度のうつであり、障害のある子供の監護に悪影響になるので、面会の負担を考慮すべき、子供は障害の状態から、面会交流は控えるべきだ。しかし、調停委員や裁判官は、それは離婚事由で、面会では理由になりませんねと言い、調査官も、子供に障害があっても、親がうつでも、面会には関係ないとはっきり言っていました。さらに、子供を別居親に会わせないなら親権は取れませんよとも言われました。恐怖と不安、絶望感でいっぱいでした。

 私は、子供に無理をさせることはできないと訴え続け、争いました。面会交流を決めるだけで高裁まで行き、五年かかりました。弁護士費用や慰謝料など百万円以上かかりました。離婚は今もまだ成立していません。

 離婚後共同親権導入の法案が成立し施行されたなら、また子供のことで裁判の毎日でしょう。子供を安心して育てたいだけなのに、別居親の同意を得るために裁判をし続けなければなりません。肉体的にも、精神的にも、経済的にも更に追い込まれます。弁護士費用が用意できなくなったら、夫の要求を拒否できる自信はありません。本来であれば、その時間、お金を子供に費やしたいです。子供の利益とは一体何なのでしょうか。

 こうした経験は、決して私だけに限ったことではありません。ここから先は、ほかの方の経験談なども含めてお伝えします。

 まず、お伝えしたいこと、それは、そもそも社会的にDVについての理解がないと感じます。実際に、グーではなくパーで殴られたのだからDVではない、血が出ていないからDVではない、しつけや教育のためだと言っているからDVではない、保護命令が出ていないからDVではないと思っている人がたくさんいます。一般の人だけではありません。裁判官や調停委員はDVの理解が乏しい、被害当事者の仲間たちは必ずと言っていいほどそう口にします。

 DVの認定という意味では一番心配なのは、精神的DV、いわゆるモラルハラスメント事案です。現状、裁判所は事情を考慮してくれていません。誰のおかげで生活しているんだよと非難する、無視する、朝までの説教を続け反省文を書かせるDVもあります。さらには、親族や友人との連絡を取ることも認めない、生活費をくれない、性行為の強要もあります。これがずうっと続きます。これは単なる夫婦げんかではなく、人格否定、破壊です。

 DV被害をやっとの思いで相談しても、あなたが選んで結婚した相手でしょうと理解してもらえず、二次被害を受けることが多いです。挙げ句の果ては、虚偽DVと言われたり、逃げたことを連れ去りと言われたりします。

 そして、子供の気持ちが理解されていません。子供たちの意思やその子の生活を無視した面会交流が行われています。

 私の知人は、離婚が成立し、裁判所から、養育費とバーターに面会交流を命じられました。そして、面会前後に子供が精神的に不安定になり、爪や指をかむ自傷行為をするようになってしまったという話を聞きました。この知人は、元夫から突き飛ばされたり壁を殴られたりするDVを受けており、子供もおびえていましたが、証拠が十分でなかったのか、家裁はそうした事情を酌み取ってくれず、面会交流を命令されたのです。

 ほかには、同居中に乳児が骨折するまで暴行を受けたのに、面会を命じられた子供もいます。面会交流中に帰りたくなったのに、第三者機関の付添人に体を押さえられ帰れなかったことで、傷ついた子供もいます。面会交流中に父親から性的な虐待を繰り返し受けている子供もいます。

 今でさえ、面会交流の場でつらい思いをしている子供がいることを知ってください。

 法案では、父母が合意できない場合でも、家裁が共同親権を決定できる内容になっています。ですが、同居中ですら意見が合わない夫婦が、家裁に強制されて親権を共同行使できるのでしょうか。子供のためにと意見を合わせられるのでしょうか。

 ある知人は言います。子供に療育を受けさせたかったが、夫が子供の障害を認めたがらず、療育を受けられなかった、子供は不登校になってしまい、育て方が悪いと責められた、離婚できたからこそ、今、子供が元気に特別支援学校に通えていますと。

 離婚後も、子供の進学、海外旅行、ワクチン接種や病院での手術など、子供の成長の節目節目で別居親の同意が必要になります。これの一体どこが子供の利益になるというのでしょうか。

 日本では、協議離婚が九割以上を占めます。協議離婚は話合いができる関係だと思われがちですが、DV事案も多く含まれています。当事者夫婦だけで決めているので、DVがあったとしても、第三者は、協議して離婚したんだとしか判断できません。離婚してほしいなら親権を譲れ、養育費を払わなくていいなら離婚してやってもいいと加害者に言われて、とにかく一日も早く別れたい一心で、相手の言い分を全部のんで離婚した話もよく聞きます。

 離婚後共同親権が導入されれば、加害者は共同親権を交渉材料に利用して、離れてもDV、虐待が続き、逃げ場がなくなります。まさに今、離婚をめぐる協議の現場では、二年後に法が施行されたなら共同親権を主張してやるぞと夫から言われている当事者も存在します。

 この法案で大変懸念される箇所がございます。単独での親権行使が可能な要件の一つに、急迫の事情があるときというのが挙げられています。急迫の事情がない限り、子の居所指定、つまり引っ越し先を夫婦で一緒に決めなければならないということだと思いますが、このままでは、DV被害当事者が子供を連れて避難することができなくなってしまうのではないでしょうか。離れたい相手からの許可を得てから逃げるなど、あり得ません。

 DVは、一発殴られたから、はい、DV被害に遭いましたというわけではありません。継続した暴力に耐えられなくなり、ある日逃げようと決意します。着のみ着のまま逃げる人もいますが、多くは、子供の安全を確保するため、計画した上で逃げています。計画して逃げる場合も急迫に当たると判断してもらえるのでしょうか。私はこの法改正に反対ですが、せめて急迫の事情という一文は削除してください。

 今後のDV被害者らの支援についても心配があります。両方の親が親権を持っている場合、相手の同意があるかどうかをめぐったトラブルを避けるため、学校や病院、行政や警察を含む支援機関が及び腰になることも予想されます。私たちDV被害当事者は、そうした方々に支えられています。ですが、親権の共同行使が明確化されると、支援関係の方々が親権の侵害だと訴訟を起こされ妨害を受けた結果、DV被害者と子供たちは誰も頼れず、孤立させられます。

 あと二点、お伝えしたいことがあります。

 一つ目。資料一を御覧ください。

 兵庫県伊丹市では、二〇一七年、面会交流中に四歳の女の子が父親に殺害される事件が起きました。この子の母親は、DV被害を受け離婚、その後、面会交流調停を申し立てられました。調停でDV被害があったことを訴えましたが、調停委員から面会交流を勧められました。元夫につきまとわれる恐怖にさらされながらも、面会交流に送り出された日に娘さんは殺害されました。

 そのお母さんが、法案審議の様子を知って、こうコメントを寄せてくださいました。

 法律の知識がないまま、調停委員の方々の言うことを聞いて、面会交流を言われるままにするしかないと思いました。ですが、DVの証拠の写真を提出していたんだから、ちゃんと判断してほしかった。DVなどの声を上げられない人たちの事情を知って、ちゃんと理解してほしい。目の前の案件を片づけるんじゃなくて、DVの本質、実情を見てください。私は電話番号まで変えて逃げていたんです。

 今も彼女の心には、四歳のままの、かわいい笑顔の娘さんが生き続けています。そして、自分のような被害者を二度と生んでほしくない、そう切に願っておられます。

 この方のように、面会交流中に子供たちが命を落とすケースは、既に共同親権を導入している国では、これまでに九百八十五件報道されています。お手持ちの資料二を御覧ください。この事実をしっかりと検証する必要があると強く思います。

 二つ目。

 先週、三月二十九日の金曜日の夜には、共同親権の廃案を求める集会で、国会前に約七百人が集まりました。そこに集まったDV被害者の仲間たちは、夜にもかかわらず、みんな、マスクや帽子、サングラスなどで変装していました。警備員も依頼しました。それは、加害者が来ているかもしれませんし、共同親権を望む人たちが顔をSNSなどでさらし、嫌がらせするのが怖いからです。それでも、自分たちの声を何とか必死に伝えるために集まったのです。みんなで一生懸命書いた導入反対のパブリックコメントが無視されたので、もう表に出るしかないとせっぱ詰まっているのです。

 皆様に心からお願いしたいです。この法案には、子供たち、私たちの命が懸かっています。もっともっともっと、慎重な御議論をお願いいたします。

 以上です。(拍手)

武部委員長 ありがとうございました。

 次に、しばはし参考人にお願いいたします。

しばはし参考人 皆様、おはようございます。一般社団法人りむすび代表のしばはし聡子と申します。

 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私からは、共同養育の支援者の立場として、離婚で悩む父母そして子供と関わる中で見えている景色を踏まえた上で見解を述べさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、私がなぜこの共同養育支援というものを行っているかといいますと、実は私自身が離婚経験者で、共同養育に非常に後ろ向きな母親でした。当時、夫と関わりたくないという思いがありました。調停で非常にもめました。ですので、夫と関わりたくないから、息子と父親を会わせることに後ろ向きでおりました。その関係で、息子が非常に気持ちが不安定になってしまった。その後悔をきっかけに、私のような、子供を量産させてはいけない、そんな思いで、離婚した後も親子関係、そして親同士の関係も続いていくんだということを世の中に広めたい、そんな思いがありまして、この団体を立ち上げて活動しております。

 子供が望むのは、何よりも親同士が争わないことです。そのために、私どもは、争うよりも歩み寄りをということをモットーに、もちろん離婚しないにこしたことはありませんが、争わない離婚、そして争わない共同養育に向けて、別居前から離婚後、そして再婚後までの親御さんに向けたサポートを行っております。

 今回、共同親権導入に向けた議論がされている中で、まず大前提として、子供にとって父母であることは離婚しても変わらない、そして親子関係は続くという観点から、共同親権というものを導入することで、世の中、離婚すると一人親だと思われがちなんですが、まずは、離婚しても二人が父母なのだ、二人親なのだということが、固定観念として変わっていく。そのことも踏まえて、共同親権というものの導入をされることは私は賛成をしております。そして、共同養育が円滑に、スムーズに実践されるきっかけにもなるというふうに考えております。

 とはいえ、離婚するほどの夫婦です。共同親権で共同に権利を行使することなんてとても難しいとおっしゃられる方がいらっしゃるのも当然だと思います。

 今からちょっと三ケースほど、我々のところに来られるケースを御紹介いたします。

 まず一点目、いわゆる高葛藤ケースというものです。主に奥様が夫からの精神的DVと言われるもので非常に高圧的な思いをされてしまって、子供を連れて出ざるを得ないという状況まで追い込まれてしまって、夫と関わりたくない、関わることが困難だということで、子供を会わせることも非常に怖いというふうに思われている、主に同居親の女性ですね。

 その一方で、ある日突然、妻子が家からいなくなり、子供はどうなってしまったんだろうと非常に不安な思いをし、子供に会わせてほしいと主に調停や裁判などで訴える、そのような方々は別居親さんなんですが、連れ去りという用語を使われて、連れ去りは誘拐だなんというようなことを発信されたりしています。当然、このケースですと、同居親の方は絶対に単独親権、そして、別居親の方は共同親権を導入してほしい、まず、ここは一番の対立構造があるケースです。

 そして、二点目なんですけれども、共同親権で共同養育をして離婚をしたいというような御夫婦も最近は増えています。夫婦は破綻しているんですが、親子関係は継続したいですし、父母として育児分担を行っていきたいというようなケースです。

 しかしながら、話合いがうまくできない、そして、一つ司法の場に乗ってしまうと争いになりかねないというような方々も多くお見えになられています。このような方は、共同親権になるまで離婚を棚上げされるか、又は、単独親権の中離婚をされて、共同親権が導入されたら親権者変更を行うというような合意書を交わしていらっしゃるような御夫婦もいらっしゃいます。

 そして、三点目ですね。共同親権を持って、相手にきちんと親の自覚を持ってもらいたいというようなケースです。主に女性の同居親の方が、相手にきちんと子供と関わってもらいたい、そして、養育費も支払ってもらいたいという思いがおありです。

 一方で、無関心層といいますか、お子さんのことは関わりたいと思いつつも、妻から解放されたいなんという思いから子育てを放棄しよう、無関心な方というのも一定数いらっしゃいます。

 これらの方々は、共同親権というのを非常に求めていらっしゃるというケースになります。

 そんな中、今回の議論の焦点というのは、共同親権、単独親権、父母で意見が分かれたときにどのように判断をしていくのかというところになるかと思うんですが、法案を拝読しますと、裁判所での裁量になってくると。そこで私たちも非常に関心があるのは、精神的DVというところをどのような評価基準で見極めていくのかというところですね。

 法案を拝見しますと、父母はお互いに人格を尊重し協力する必要がある、そして、親子関係のみならず、父母の関係その他のこと一切の事情を考慮して判断していくという中で、この見極めというのをどのように行っていくかというところなんですが、我々、高葛藤な同居親、別居親の数々の支援を通している中で、このような方ですと共同親権ないしは共同監護が可能、いや、このような方はなかなか難しいんじゃないかということを、あくまで現場レベルではありますけれども、是非共有させてください。

 まずもって、平易な言葉ですが、協力的か協力的ではないかというところに分類されると思います。もう少し分解してお話ししますと、まず協力的な同居親がどのような方かと申しますと、夫とは関わりたくない、離婚するほど嫌いな相手でも、夫婦の感情と親子関係を切り分けることができる方、そして、感情としては嫌かもしれないんですけれども、きちんと相手との親子交流というものを自主的に行おうとされている方、そして、相手と関わることが難しいのであれば、上手に支援なども活用を試みようとされているような方ですね。

 一方で、では、協力的な別居親はどのような方かと申しますと、主に高葛藤ケースですと、ある日突然妻子がいなくなるというようなケースが多いわけなんですが、相手が出ていったときに、なぜ出ていったと相手を責めるのではなく、自分が何が至らなかったかと自責の念、自分にちゃんと向き合って、そして相手に謝罪をしたり、改善をされるような方も一定数いらっしゃるんです。そのような方は、例えば、相手がどうしても離婚したいというのであれば、子供と会えることはもちろん条件になるかと思うんですが、相手の意向を受け入れる、そして、係争を長期化させないというような方もいらっしゃいます。そして、相手の意向を尊重していく。必要に応じて、相手が支援を使いたいという場合には支援団体を利用するということも受け入れるというような方が協力的な別居親というふうに我々は感じております。

 一方で、非協力的な方、非協力的な同居親がどのような方かと申しますと、父母の感情面の関係と親子関係をなかなかやはり切り離すことが難しい。そして、つい子供に悪口を言ってしまったり、できるだけ自分自身が関わりたくないから子供も関わりたくないのだということで、子供を比較的、ちょっと所有物化といいますか、そのような観点になってしまっているような方もいらっしゃいます。

 一方で、非協力的な別居親ですね。これは、例えば妻子が家を出てしまったときに、相手が悪い、自分は何も悪いことをしていないという他責の念、相手が悪い、相手の代理人が悪い、社会が悪い、法律が悪い、そしてひいては自分の代理人が悪いと他責の念にとらわれ、誰かを攻撃、支配しようとする。そして、自分の思いどおりにならないことによって係争を長期化させてしまって、ともすれば、支援を拒絶するなんということもございます。そのような方々は非協力的なタイプの方なのではないかな、そうしますと、なかなか共同親権というのは難しいのかなと思います。

 ただ、一つ言いたいのが、離婚するほどなので、最初は非協力的な思いがあっても致し方ないと思うんですね。ただ、別居、離婚を通して、お子さんのことを考えたり、相手の立場を尊重するような気持ちに変容していく方も一定数いらっしゃるということはお知りおきいただければいいなというふうに感じるところです。

 では、共同親権を導入するに当たって課題もあると感じております。司法の改革と支援の強化になります。

 では、まず一点目、司法ですね。

 ここはちょっと三点申し上げたいんですけれども、御相談者の中にも、司法のレールに乗って、本当は謝りたかっただけなのに、なぜか争いになってしまう、そのような方が多くいらっしゃったりもしています。是非、悪化させない、争わせない離婚協議ができるような司法改革をしていただきたいなと思っております。

 構造上の問題なのかもしれませんが、いきなり条件を決める、そこによって葛藤はより上がっていきます。ではなく、例えばカウンセリング前置主義を取るですとか、調停の一回目はわだかまりを解消することに特化するですとか、そのことによって、例えば、悪かった、至らなかったことを謝るですとか、何かそのような機会が一つあるだけでも条件を決めやすくなると思います。

 そして、何より争わせない協議をできるように司法関係者が導いていただけるようなお立場になっていただきたい、司法関係者、弁護士も含めてですね。子供がいる限りは、父母であって、関係が続いていきます。であれば、司法の場で争わせて、離婚した後にいきなり円滑な共同養育をせよ、それは無理な話なんです。ですので、話合いの時点でいかに争わせないかということが非常に肝になっていきます。

 そして、協議の方法の選択肢ですね。当事者同士で協議ができない場合に、弁護士をつけてすぐに裁判所なのかというと、その間、当事者以上裁判所未満といいますか、ADRという方法がございます。皆さん御存じかと思います。我々も行っておりますが、カウンセリングを重視した後に条件を決めていくと、非常に有意義な話合いが行われて、父母の関係性を構築しやすくなっております。

 そして、最後、どうしてもやはり葛藤が上がるのが、長期による親子の引き離しなのではないかなというふうに見ています。どうしても、調停ですと、お金のことですとか条件を決めることを先に話し合って、その間に子供に会えない側の別居親というのはどんどん葛藤が上がって、条件ものまなくなっていく。同居親側は何で私の条件をのんでくれないのと、お互い、どちらが悪いということではなく、話合いの進め方によって葛藤が上がってしまっているんです。

 お子さんに身体的な暴力があったりするときにはもちろん更生が必要になります。ではない場合、夫婦の問題で長期化してしまっているのであれば、いち早くまずは交流をする、その後にいろいろ条件を決めていくという順番でお話合いをされた方が建設的なのではないでしょうかと思う次第です。

 そして、次は支援の強化ですね。これは、夫婦から父母になっていく関係性を構築していくための支援を強化していただきたい。

 まず、別居中は、弁護士がいたり、裁判所で調停委員がお話をしてくれるので、何とか自分の意見を書面で通すことができますが、離婚した後にいきなり当事者同士でお話合いをすることが非常に困難になっていきます。

 我々は、離婚後も父母のお話合いの仲介の支援などを行っております。もちろん非弁はできませんので、交渉はできないんですが、伝え方を少し柔らかくするなどをして相手に伝える、そのような相互のことを行っていることで、比較的わだかまりが解消し、ひいては支援を卒業することなどもできます。

 離婚後にちょっとした変更を行いたい、例えば面会交流を、二回を三回に変えるだとか、そのようなことを私たちはできないんですよね。かといって、また弁護士をつけて裁判所に戻る、また葛藤が上がってしまう。であれば、全国で、ADRのようなお話合いの場。もしかしたら、ADRを使わなくても、お互いで、第三者が入ればお話合いができるような夫婦だっていらっしゃると思います。

 ですので、我々も行っておりますが、ペアカウンセリング。ないしは、お話合いがスムーズに進まなければ、弁護士を介したADRなどもあるんだよということを国を挙げて普及をしていく必要があると思います。

 そして、二つ目、共同養育。

 この言葉というのは、共同という言葉で非常に懸念される方が多いと思います、仲よくやらなきゃいけないのと。そんなことはなくて、高葛藤で没交渉の方々も支援などを使うことによって共同養育というのはできるんです。子供にとって大事なのは、相手の悪口を言わずに自由に会える環境を整えること。であれば、親同士が仲悪くても、やり取りしなくても、共同養育というのはできるわけなんですね。

 ただ、なかなか、共同養育は大事です、子供のためにやりましょうというような知識だけ植え付けられたとしても、うちは違うからできないというふうに他人事になってしまいがち。ではなく、いろいろなフェーズの共同養育という形があるんだよという実践的なものを学ぶ場、我々は提供しておりますが、幾つもいろいろな形がある多様化なんだよということを離婚前、ないしはできれば別居前ですね、に知っていただくような機会をつくられてはいかがでしょうか。

 そして、我々は行っているんですが、共同養育を行うのに大事なのは、相手側を知ることなんです。世の中には、同じ立場の人で集まる別居親団体、同居親団体、たくさんあります。もちろん、自助作用としては大事なんですけれども、ともすれば、相手が悪い、自分たちはかわいそうねと被害者意識になりがち、これでは共同養育というのはできないんですね。

 相手の側の立場を知ること、これは何が大事かといいますと、かといって、自分の配偶者に直接お話を聞くことはできない。であれば、自分の配偶者と同じ立場の他者と交流するわけです。我々は、同居親と別居親を集めたコミュニティーを運営しております。中には、非常に妻に対して怒り、そして夫に対して嫌悪感を持たれているような方々もいらっしゃいますが、相手側の立場を知ることで、いや、もう少し子供を会わせてみようかなですとか、余り妻を責めるのはやめようですとか、そのような作用が行われるということで、このような支援というのも必要になってくるのではないかと思います。

 そして、最後、行政ですね。

 一人親支援、非常に特化されてされている。これは非常に大事だと思います。被害者支援そして経済的支援、就労支援、もちろん大事です。ただ、共同養育をしたいと思われている方でしたり、共同養育をできるんじゃないかなというような方が御相談に来られたときも、一人で育てるためのことだけのアドバイスだけではなく、もう少し引き出しを持って、この方々には二人親支援を、どのように二人親で育てていくかをアドバイスできるような、そのような引き出しを持つための知見を行政の方も、支援員でしたり職員でしたり相談員ですかね、が知っていただくような機会ですね、研修制度などを用いられるのがよろしいのかなと思います。

 最後になりますが、もう一度申し上げますと、子供が望んでいることは、両親が争わないことなんです。共同親権導入の旗を掲げることによって、もしかしたら、当事者は協力し合わないといけないというような意識改革が進むかもしれません。そして、司法も、争わせてはいけない、争わないような話合いをしなくてはいけないということでスキームが確立するかもしれません。そして、何より社会が、離婚した後も一人ではなく二人なんだ、親は二人なんだということは浸透するでしょう。これって、子供が望む、親が争わない社会を実現できることになると思われないでしょうか。私はそう思います。

 もちろん、非協力的な、攻撃的な方も一定数いらっしゃいます。変わらない方もいらっしゃいます。そのような方々は単独で、一択でいいですし、監護者になれなくても致し方ないと思いますが、グレーゾーンというか、争うつもりはないけれども、いつの間にか争ってしまったという方を引き上げるような支援強化、司法改革を是非していただくことが必要かと。

 今、この法改正という潮目に私も僭越ながら立たせていただいておりますが、離婚は争いだというこのあしき文化をここにいる私たちのこの世代で変えることによって、次世代が、結婚というのはいいものだな、子供を産むのもいいことだな、万が一離婚になっても、このような形もあるんだなということを是非引き継いでいきたいという思いを私は強く抱いております。それは、子供にとって一番の、子の福祉に資することなのではないかなと思う次第です。

 御清聴いただきましてありがとうございます。私からは以上となります。(拍手)

武部委員長 ありがとうございました。

 次に、山口参考人にお願いいたします。

山口参考人 おはようございます。関西学院大学の山口亮子と申します。

 本日は、参考人として意見を述べる機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、法学部において民法を担当しておりますが、研究に関しましては、アメリカの家族法と日本の家族法の比較検討を行っております。

 今回の民法改正におきましては、法務省法制審議会家族法制部会におきまして、専門家の先生方によって長期間にわたり多方面から非常に詳細で緻密な法的議論が交わされ、法律案に至りましたことに、心より敬意を表します。

 そこで、一研究者の私が意見を述べることは僭越ではありますが、ここでは、主に、婚姻外の共同親権について、四十年以上前に成立させ、定着させてきたアメリカ法の議論を参考に、本法案の特徴と課題点について述べさせていただきます。

 まず、これまで、婚姻外において単独親権しか認められておりませんでした民法で共同親権が立法化されることについて、大変好意的に受け止めております。

 アメリカ合衆国では一九七〇年代後半から、ヨーロッパ各国では児童の権利条約を批准した二〇〇〇年前後から、婚姻外の共同親権に関する法律が成立しました。

 その根拠となった思想は、夫婦の関係と親子の関係は別物であり、子は親の離婚にかかわらず、両親と関係性を保ち、監護、教育され、扶養される権利と利益があるとする子供の権利利益観と、もう一つは、離婚により当然に権利を失う一方親の不条理であったと思います。

 共同親権の法律は、各国で様々なタイプがございます。ドイツ法やフランス法などは、両親は、子に対する権利義務を、婚姻や離婚にかかわらず、変化せず持ち続けます。これに対し、アメリカ法は、両親は、子に対する法的監護権と身上監護権を、離婚後、共同で持つか、単独で持つか、選択する形態となっております。

 今回の我が国の法律案でも、離婚後も共同で親権を持つことが選択できるようになりました。これにより、親権の内容である監護、教育を共同で行使することが可能となります。例えば、子の教育や医療等の重要な決定に際し、両親が責任を持ち、協議の上、決定することができ、日々の子の養育の責任を両親が互いに持つことができます。

 そして、七百六十六条で、監護の分掌という取決めをすることが今回新たに加わったことで、具体的に離婚後の子の養育について、各家族がある程度自由にカスタマイズできる方策となっております。これにより、選択肢が広がりました。

 例えば、子の進学決定は双方で行うが、塾や課外活動は同居親が決める、又は、手術等の医療に関しては双方で決定するが、最終的にはどちらが決定権を持つかということを決めるということができます。そして、子との同居の交代もここで決めることになろうかと思います。

 両親がこのような取決めを行うことは、離婚後も自分のために環境を整えてくれるという子供の信頼感につながりますし、両親との関係性を維持し続ける上で、子供の利益にかなうものになると言えると思います。

 そしてもう一点、特徴的なところは、八百十九条の七項で、父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときと、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがあるときには、単独親権にしなければならないと定めたことです。

 共同親権が一般的なアメリカでも、DVや虐待を行う親には監護権を制限していますが、我が国でもこれは、子を守ることに配慮した規定と言えると思います。

 以上が、婚姻外の共同親権の法案について私が考える主な評価点です。

 次に、これらがどのように運用されるのかという懸念点とアメリカにおける実情を御紹介いたします。

 我が国の今回の法改正では、離婚後の親の権利義務は重層構造になっておりまして、DV等がなく共同親権にしたとしても、一方の親が監護者となることを求めることができます。

 法案は、八百二十四条の三におきまして、子の監護をすべき者は、第八百二十条から八百二十三条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する、この場合において、子の監護をすべき者は、単独で、子の監護及び教育、居所の指定及び変更並びに営業の許可、その許可の取消し及びその制限をすることができるとしています。

 すなわち、監護者は親権の中でほぼ重要な部分を占める監護教育権を持ち、居所指定権を持つことになります。これにより、共同親権であっても、実質的には、これまでの単独親権と変わらない状況になってしまいます。

 問題は、監護者が子の居所を決められるため、合理的な理由もなく、他方の親に連絡せず自由に転居すると、面会交流を行っていた親子を急に引き離すことになりかねず、新たな紛争が生じるおそれがあるということです。

 共同親権であっても単独親権であっても、面会交流は親と子に認められる権利です。監護者を指定するということは、単に同居親を決めるということではなく、父母間の関係性において極めて限られた状況での選択であるという認識が必要になってまいります。また、どのような指定であれ居所指定権が認められても、これまでの面会交流を妨げないような調整が必要になってまいります。

 そこで、一括して監護者を決めるというのではなく、七百六十六条にあります、その他子の監護についての必要な事項として、あるいは、監護の分掌として、離婚する両親は、子の養育について柔軟な取決めをすることが重要になってきます。ここで、同意なく転居をしないということや、再婚や転居など事情の変更が生じたら再度養育計画を策定し直すということを取り決める又は審判で定めるということが必要になってきます。

 しかし、その他子の監護についての必要な事項も、新しい制度である監護の分掌というのも運用に任せられておりますので、実際、何をどのように取り決めればよいのか、いまだ明らかにはなっておりません。また、それを協議で取り決めた場合、法的にどのように担保していくのかの課題も残っております。

 したがって、これらを養育計画の策定として、共同親権行使を補完するものとして活用していくためにも、これから、その中身を詰めていき、国民に周知していくことが非常に重要になってまいります。

 では、アメリカではどのような共同監護を行っているのかといいますと、家族法を定めますのは州によりますのでその内容に差はありますが、多くは、共同法的監護にするか、共同身上監護にするか又は単独監護にするか、選択式になっております。

 立法過程の中で、訴訟に持ち込まれたとき、裁判所は共同監護と単独監護のどちらを優先的に考慮するかについて議論がありましたが、多くの州は、いずれかが優先することはない、また、両親のどちらかが優先することはないと中立的に規定しています。

 しかし、現実的には、親子は面会交流を通して関係性を続け、両親が子の主要な法的決定について協議して決定する共同法的監護は六割から八割、子が両親の家に少なくとも一対三の割合で住む共同身上監護も、一割から三割程度あります。現在、共同監護はアメリカで標準的になってきていますが、このような運用ができている理由は、次の、主に三つあります。

 まず一つ目は、監護法制に対する州の方向性が立法で明示されていることです。多くの州法では、頻繁かつ継続した親子の交流を促進することを州の政策と位置づけています。また、DVや虐待の証拠がない限り、共同法的監護が子の最善の利益にかなうと推定するという規定を置いている州もあります。

 現在、アメリカで発表されております心理学や精神医学の研究では、離婚後に共同監護を通して両親との関係が継続している子の方が、抑うつ状態やストレス関連の疾患が低いとしています。また、子供は基本的に双方の親から愛情と関心を得ることを求めています。

 子供の利益を守ることは州の責務ですので、このような認識を踏まえ、州が子の利益について一定の方向性を示すことにより、人々はどこを目指して協議すればよいのかの行為規範が見えてきます。また、行政や司法も、どのような支援を行えばよいのかの指針を見つけることができます。

 二つ目は、離婚時に親教育を行っていることです。

 アメリカでは、ほぼ全州で離婚後の親教育がありまして、各州の大学の心理学大学院等で開発されたプログラムが用いられております。体験型の教室では、心理学や精神保健の専門家が子の忠誠心を試す行動や子を個人的な相談相手にするなど、親の間違った行動を示し、その後に適切な行動をロールプレーなどします。

 料金をかけて行うものですのでプログラムは年々改善され、その検証も行われております。ある調査では、受講前の参加者の知識、態度、共同監護ができる可能性への変化について、いずれも有意な効果が示されたとしています。

 また、離婚で傷ついた親にとっても、同じ仲間と時間や悩みを共有できることは大切なことではないかと思います。

 三つ目は、養育計画書の作成です。

 今日では、多くの州で、監護権や面会交流という画一的な決定を行うのではなく、離婚後にどのように子の養育を行っていくかを両親が十数ページ相当の養育計画書により具体化いたします。

 アメリカは裁判離婚ですが、ほぼ九割が協議や調停により書類を作成して裁判所に提出し、裁判所がこれを承認することにより、離婚が認められます。訴訟自体は、我が国と変わらない一、二%ほどになっております。

 裁判所が用意している書式には、まず、親の責任として、主要な法的事項である子の教育、医療等の決定を両親が共同で行うか、共同で行うにしても、合意できないときは最終的にどちらが判断するか、あるいは全て単独で行うかという法的監護権について記載します。

 続いて、学期中の学校への送り迎え、年間の祝日、長期休暇中に子はどちらに住まうかなど、そのときの費用や受渡し手段も記載します。学期中の面会交流としましては、一週間に一、二回の食事及び一週間置きの週末に別居親の家へ子が宿泊することが一般的ですので、あえて共同身上監護にはこだわっておりません。

 また、子が連れ去られて新たな紛争が生じないように、他方親に監護権があるかなしかにかかわらず、旅行時には、場所や連絡先を必ず相手方へ届け出ること、転居を計画している場合は、六十日前に連絡し、再度養育計画を立て直すことなども書面にて合意します。これについては、全ての州で立法化されておりますので、必ず行わなければならない重要な取決めになっております。

 転居が合意できない場合には裁判所で争うことになりますが、そのとき裁判所では、悪意のある転居ではないか、不合理な反対ではないか、そして養育計画の代替案は可能なのかなどが審査されることになります。

 養育計画書の作成に当たっては、DVにも配慮し、両親間で協議ができない場合は、双方が計画書を書いて裁判所に提出し、裁判所の判断に委ねることになります。養育費については別の書類の提出がまた必要になりまして、これもかなりの分量の記載内容がありますが、インターネットで税金や補助金、保険等の控除が自動計算できるようになっています。

 なお、アメリカでも、各州で養育計画書の作成が広がったのは、最初に共同監護が法制化されて十年近くたってからです。州の基本政策に従って、司法、行政、民間の支援も徐々に発展してきました。弁護士の役割も大きいです。

 その結果、両親は、夫婦の問題と子供の問題を切り離し、家族を再編するために努力し、単独監護制度に後戻りしているということはありません。

 今回の我が国の法案は、子の利益のために作られた規律であることを踏まえますと、親子の関係性において何が子の利益なのかといった基本軸について、今後も議論が進むことを望んでおります。また、新たに規律化された共同親権及び監護の分掌は、運用次第で大きく発展するものと思います。法律案に賛成するとともに、大きな期待を持っております。

 以上でございます。(拍手)

武部委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

武部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 冒頭、本日九時前、宮古、八重山地方で発生した地震により、沖縄本島を含め、三メートルの津波警報が出ており、一部では既に津波が到達しているようです。政府には、情報収集を含め、大きな被害が出ないよう万全の体制で対応してもらいたいと切に要望いたします。

 それでは、参考人への質疑に入らせていただきます。本日は、御出席をいただき、本当にありがとうございます。

 まず、斉藤参考人にお話をお伺いします。

 改正法八百十九条では、裁判所が離婚後単独親権とする場合に、父母の一方が他方からDVを受けるおそれがあることを要素の一つとして掲げており、かつ、これは精神的DVを含むとされていますけれども、これについてどう評価されますか。

斉藤参考人 裁判所がちゃんと判断してくれるとは思いません。

柴山委員 この後、午後に参考人として来られる北村晴男弁護士は、新聞のコラムで、子に暴力を振るう親は親権を失って当然だが、母親に対する父親からのDVのおそれを理由とするのはナンセンスであると主張されておりますけれども、この主張についてはどう思われますか。

斉藤参考人 失礼ながら、DVの種類を存じ上げないからそのような発言になっていると思います。

柴山委員 犬伏参考人にお伺いします。

 今も斉藤参考人からお話があったように、DVのみならず、またそのおそれについて裁判所は的確に判断できないんじゃないかという懸念があります。そして、一方、逆の立場からすれば、このDVのおそれという文言があると、証拠がなくても片方の言い分のみでそれが認められる可能性が否定できないのではないかとも主張されております。また、新しいパートナーと一緒になって、そのパートナーから子供が虐待をされ、そして別居親がそういった方々をしっかりとチェックをできないのではないか、こういうことも懸念をされております。

 果たして裁判所は、今お話があったようなそれぞれのケースについて適切な判断をしていくことができるんでしょうか。

 先ほど、犬伏参考人は、裁判所の人的、物的整備、充実についてはお話をされておりましたけれども、審理のプロセスですとか、あるいは裁判の質の向上、証拠の収集等についてどのように改善をすればよいのか、また、このDVのおそれという文言はこのままでいいのか、それぞれ御意見をお伺いしたいと思います。

犬伏参考人 多岐にわたる御質問、ありがとうございました。

 私自身は裁判所を代表するという立場ではございませんけれども、今、この法案が成立するということに向けて、家庭裁判所としてもかなり、この法案に基づく、今御指摘のような、特に単独親権にすべき事案というものについては慎重に検討をされていることと思います。

 確かに、今の状況におきましては、先ほど言いましたように、リスクアセスメントであるとか、DV、児童虐待について十分にそれを判断するというところまでスクリーニングができているかというと、まだそこまでいっていないかもしれません。

 しかしながら、私ども調停委員としましては、事件配填の前に、そういった危険があるということについては十分に、一応、進行についての照会等が出てきておりますので、この事案についてはDVが主張されている、あるいは児童虐待のおそれがあるというような事件につきましては、それから、精神的な課題を抱えている人たちも実は今増えております。したがいまして、医務室技官の立会いであるとか調査官の立会いというのが、既に事件の当初から、調停事件において、調査官及び医務室技官の配填というものがございます。

 もちろん、過酷なDV事案というのは調停にはなじまないということはございますので、私どもは、調停にもなじまないケースというものをやはりきちんと峻別すべきだというふうに思っておりますし、そういう事案につきましては調停なしに、監護者指定だったら審判、それから離婚事件だと訴訟というふうになるわけですけれども、家庭裁判所としても、今後慎重に、やはりDV事案につきまして、当事者が非常に不幸な目に遭わないような運用というものに心がけて、今、家庭裁判所としては努力しているというふうにお聞きしております。

 今後の運用につきましては、家庭裁判所というのは非常に裁量性、柔軟性があるというメリットもありますけれども、やはり裁判所によって違うとか調停委員によって違うといったようなことで当事者が非常に傷つくということは避けるべきだと思いますので、調停委員に対する研修というものも十分行わなければいけない。

 今、調停委員というのは非常にいろいろ批判も受ける立場でございますので、研修であるとかDVに対する理解というのはかなり丁寧に、私どもも研修を受けるということですし、調停委員が自主的に研修を行っている。最近の調停委員さんは非常に真面目でございまして、自主研修というものを非常に行っており、外部の人たちのお話を聞くというような形で、私どもも、この法案が成立することになるということで、内部の研修であるとか家庭裁判所の研修によって、本当に十分にこの法案を前提とした努力というものを重ねなければならないというふうに今から心しているところです。

 まだまだ家庭裁判所の内部事情というものを私自身が深く存じ上げない立場でございますけれども、家庭裁判所としては、皆様の期待に応えるべく努力して、研修を受ける、それも外部の方々からいろいろDV被害のお話も聞くという形で努力していくというふうに私どもも心しているところでございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 裁判官そして調停委員も含めて、仮にこの法律が成立をした場合にしっかりとした研修を行うということ、それから、調停プロセスには必ずしもなじまないような案件もあるので、しっかりとその見極めをしなければいけないということなどについて御説明をいただきました。

 共同親権導入に慎重な方々は、単独親権制度の現行法の下でも別居親との交流は確保できていると主張されています。しかし、令和三年度全国ひとり親世帯等調査結果によりますと、我が国で月二回以上の親子交流ができているのは、別居父について約四・二%、そして別居母については約一一・四%にすぎません。一方、例えば共同親権国のイギリスでは、月二回以上の交流は七一・九%にも上っています。

 今回の法改正によって、先ほど裁判所の期日の問題についても御指摘をしてくださいましたけれども、本当に子の利益にふさわしいケースで親子交流の推進というものが担保できるのかということについて、犬伏参考人にいま一度お話を伺いたいというふうに思います。

犬伏参考人 私どもは、調停においては非常に当事者の声、当事者の主張を双方から丁寧に聞くということをまず心がけていて、調停委員としては傾聴というものを尊重しております。

 そういう中で、子供さんがどういう状況にあるのか、そしてやはり親子の交流というものの重要性というものを考えて、丁寧に丁寧に、面会交流がどういう形であればできるのか、できないという心情についてはどうなのかということを丁寧に聞いております。

 その結果、若干調停期日を重ねるということはあろうかと思いますけれども、調停の中で、調停で合意が形成する前の段階で試行的に面会交流をできないかというようなことも実施しておりますので、調停の期日が入らないとか、回を重ねなければいけないということによって親子の交流が長期間できなくなるということについては、私どもも心がけて、できるだけ調停の期日間で試行的にやっていただけないか。それは、ケース、ケースによって、やれるかやれないかというものを十分に見極めながら、調停委員が働きかけたり、当事者の代理人双方が期日間に具体的な面会交流をセッティングするというようなことで、できる限り、当該事案にふさわしい形で、私どもは、期日間にも面会交流ができるような働きかけというものをしております。

 決して、合意が成立できない、あるいは期日がなかなか入らないということで面会交流が行われないというようなことがないように配慮しております。

 先日も、手紙をお子さんが書いて、パパに会いたいというようなお子さんの手紙もありましたので、そういう心情はやはり大事にしたいと思いますし、調査官調査が入って、やはり調停での合意が成立する前に面会交流を実施できないかというような働きかけをしております。

 そのために、やはり庁舎内に試行面会ができるような部屋を確保していただきたい。しばらく前に、裁判所が、なかなか面会交流室、難しいんだよね、日比谷公園でやったらどうかというふうに言われたような例もありますので、庁舎内でできない場合も、支援団体もございますし、面会交流について、できる限り、可能なケースにおいては、長期にわたって断絶しないような努力というのを調停委員もしているというところです。

 お答えになったかどうか分かりませんけれども、以上です。

柴山委員 今回、試行面会について明文化されましたので、そういったこともしっかりと実践してほしいというふうに思います。

 続いて、しばはし参考人にお伺いします。

 養育費の支払いも含め、円滑な共同養育を実現するために、仲介機関、ADRなどの役割が大きいという主張はよく分かりました。しかし、先ほどデータでもあったように、親権を行う子がいるのに夫婦が離婚する件数は年間約十万件にも上るわけです。未婚の一人親の子供が十六万人に上るというデータもあります。果たして、そういったADRなど、十分ニーズに応えられるんでしょうか。自治体窓口や法テラスとか児童相談所のような役割も大きくなるというふうに考えるんですけれども、こういったニーズに本当に的確にこれから対応できるのかということについてお話を伺いたいと思います。

しばはし参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 ADRの認証団体、法務省での認証を受けた団体が行うことができるものになります。我々も、その中でも、離婚の担当になるのか、不動産なのかとか、いろんなADRの担当というのがあると思うんですけれども、結論から言うと、まだまだ団体としては足りないのではないかなと思います。

 ただし、弁護士会でも、弁護士のお立場の方というのは、ADRといいますか、仲裁を行うことができるというふうにはお聞きをしています。ADRを普及した上で、これは、私が普及というよりも、法務省さんになってくるのかと思うんですけれども、ADRという方法があるということをまず認知させていくこと、そしてADRという方法を行っていこうという弁護士の方が増えていくことということの取組になっていくのではないかなと思います。

 現状でいいますと、我々のところにも多く御相談者が見えていますが、今後、ADRをより使われたいという方の受入先ということがまだまだ足りていないというふうには考えておるところではございます。

 御回答になっていますでしょうか。

柴山委員 それと、しばはし参考人がおっしゃったことで、私、ちょっと重要だなと思った点が、司法改革のあるべき姿として、まずは、条件の取決めよりも先に、別居直後から速やかに親子交流をしていくべきだという御主張をされたかと思うんです。

 先ほど、事態の悪化を避けるためにも、まずは面会交流を、もちろんできる場合に限ってだと思いますけれども、速やかに行っていくことが必要だというふうにおっしゃったんですけれども、どのような根拠というか視点でそういう主張をされているのかということをいま一度教えてください。

しばはし参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 我々、面会交流の支援も行っておりましたり、同居親の方、別居親の方それぞれの個別の相談なども受けている中、特にやはり葛藤が上がるのが、別居親の方が長期にわたってなかなか子供と会えない、それが、面会交流調停を申し立てたとて、そこから、では実際何回やっていきましょうみたいなことを、月一回ないしは二か月に一回という調停の中で牛歩で決まっていく。あっという間に半年ぐらいたっていく。その間に、お金のことですとか、あと、あなたが悪いから離婚しましょうみたいなことを相手から一方的に言われていく。それで、より葛藤が上がっていき、だったら離婚をしないみたいになっていくケースが非常に多いです。離婚したいという同居親に対して、子供に会えないから離婚しないというような対立構造になっていくわけなんですよね。

 なぜ子供に会えないから離婚しないとおっしゃるのかというと、やはり子供に会えるという担保がない、不安だから、離婚、親権を失ってしまうと会えなくなってしまうのではないかというような、不安になられている方が多くいらっしゃいます。それが、一度でもといいますか、割と初期に会える、そして定期的に会える、相手も会わせる意思があるということがある程度見えてくれば、きちんと子供と交流ができるのであれば、離婚したくないけれども、離婚という選択肢もあるのかなということで、だんだん葛藤が下がっていきやすくなるというケースはよく見ております。

 一方で、争いの姿勢で相手を責めれば責めるほど相手側は逃げていくというような法則もありますので、別居親の方が葛藤が下がった方が相手も会わせやすくなる、鶏と卵ではないですけれども。というところからも、初期に子供との交流をしていくことによって、お互いの葛藤が下がりやすくなるというよき循環が巡ってくるのではないかなというふうに感じております。

柴山委員 山口参考人にお伺いします。

 先ほど、アメリカ、また韓国の事例について犬伏参考人からも御紹介があったんですけれども、離婚にはもちろんいろいろなケースがあるんですけれども、離婚するに当たって、養育計画書を作る、あるいは、そのための講座、カウンセリングを受けさせる、これを要件化するということ、今回の法改正では、本当にいろいろなケースがあるということで見送られたんですけれども、こうした制度を将来日本に導入するために何が必要だと考えられますか。

山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 最後に述べましたが、アメリカでも養育計画書が発達していったのは、共同監護の法制ができて十年たってからということですので、徐々に広がっていったということで、やはり探り探りだったと思います。

 しかし、どうしてそういうことを決めなければいけないのかというと、監護権や面会交流など画一的なものではなく、一緒にどうやって子供を育てていくか、やはり中身が重要なことだと思いますので、その中身を実行に移すために、それはやはり計画書という文書で、協議をし、合意をし、そしてそれを実行していく、そういうことが重要なんだ、そういうことが徐々に分かってきた。

 私たちは、そういう前例がありますので、日本でもこれを取り入れれば、共同親権を選択した家族にとっては非常に有益なものになると思います。

 それをどういうふうに広げていくかですが、それは、子供にとってどういう教育を親が責任を持って行うのが子の利益にかなうのかといった、やはり子供の利益観ですとか権利観を国民に周知し、例外はありますけれども、そういう共通観念の下に従って進めていくということが重要になると思いますので、やはり子供の利益とは何なのかということの議論、そして日本全体が考える基準というものを考えていくべきだと思います。

 以上です。

柴山委員 時間なんですが、最後にどうしても一点だけお伺いしたいことがございます。

 山口参考人、同じくアメリカでは、一方親による子供の連れ去りというものは、正当な理由がないものであれば、刑事事件、民事事件とも大変厳しく制限をされております。また、委員からは先ほど、今回の改正法案八百二十四条の三で、監護権、特に居所指定権の濫用についての懸念もお示しをいただきました。

 アメリカの裁判所であれば、裁判所が認めた面会交流や監護権や養育費などを……

武部委員長 時間が超過しておりますので、端的にお願いします。

柴山委員 はい。無視すると、裁判所侮辱罪が適用されるんですけれども、この担保の仕組みについて最後にお伺いしたいというふうに思います。

武部委員長 山口参考人、端的にお願いいたします。

山口参考人 最後の裁判所侮辱について、決められたことを守らなければ、裁判所侮辱として課金、拘留ができるということで、刑罰をもって履行、執行を担保するということになっております。決められたことは守らなければいけないという制度です。

 以上です。

柴山委員 ありがとうございました。

武部委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 本日は、犬伏参考人、しばはし参考人、山口参考人、そして斉藤参考人、本当に貴重な機会を与えていただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 そういう中で、今回、民法の改正におきまして、共同親権を導入するという中身が今非常に大きな家族法の改正ということで、国民の皆様が大変な関心を持っております。そこで、皆さんから御意見をお伺いしたいと思います。

 まず、犬伏参考人と山口参考人にお伺いをいたします。

 昨年十一月の二十日に、離婚後の共同親権導入に伴う法制度整備についての要望書、これを法務大臣に提出をしていただきました。山口亮子参考人がこの四人の中に入っておられますし、また、賛同者として犬伏参考人も入っておられます。この趣旨について、それぞれお伺いしたいと思います。

犬伏参考人 取り上げていただきまして、どうもありがとうございます。

 私どもは、法制審議会の議論の状況を見守っておりましたけれども、この法案につきましては、賛成、反対の議論が非常に強いということと、きちんと議論していただきたいということ、そういうこともありますし、この法案につきましては、家族法サイドの研究者からすると、やはり進めていただきたいという気持ちもございました。

 そこで、呼びかけ人の方々が、やはりここは冷静に法制審議会で議論をいただけるように要望書という形でお願いしたい、ただし、法案を実現すればいいということではなくて、今回の法案というのは、大口議員も御指摘いただいたように、大きな変化をもたらす可能性もございます。そういう点では、かなり国として、そして司法機関としても覚悟の要ることだと思いますので、それを支えるための制度整備というのが共に進んでいただきたいというふうに思う、そういう期待を込めて、法制度整備をやはり十分に検討いただきたいということで要望した次第です。

 それが附帯決議にも参考になったのではないかというふうに思いまして、一定の役割は果たせたのではないかというふうに考える次第でございます。

山口参考人 山口でございます。御質問ありがとうございます。

 私も、犬伏参考人が言われたことと全く同じでございますけれども、家族法の研究者としては、親権という面から、やはり離婚によって自動的に一方の親権が失われるということについて、法的にどのように理解すればいいのか、それはずっと議論してきたことでございますので、共同親権を選択できるということは家族法学者からしても賛成できることで、多くの賛同を得ました。

 そして、犬伏参考人も言われましたけれども、やはり法律を作ってそれで終わりというわけではありませんし、法律を作るに当たって整備ができているのかということも問題になるところであります。

 ここに書いてありますように、法務省やこども家庭庁、関係省庁、裁判所などが離婚手続前、離婚手続中、離婚後の支援体制、また家庭裁判所の役割について更に検討を進めていただきたいということ、やはり周辺の整備を進めていただきたいということがこの要望書の一つの主張したいところであったと思います。

 以上です。

大口委員 斉藤参考人にお伺いをいたします。

 本当に日々大変な思いでお暮らしになっておる、DVの深刻な被害ということをお伺いさせていただきまして、本当に身の引き締まる思いでありますし、また、DVとかあるいは児童虐待について我々は戦っていかなきゃいけないということを本当に改めて決意をした次第でございます。

 そういう中で、一つは、裁判所の在り方について問題提起をしていただいたのかな、こう思います。それについては、裁判所の体制をしっかり、この民法の改正を機に大きく改革をしていかなきゃいけないと思います。

 そういう点で、裁判所に対する斉藤参考人の思いをお伺いさせていただきたいとともに、医療でありますとか福祉でありますとか、あるいは学校関係でありますとか様々なところで、共同親権ということとの関係で、あるいは面会交流等との関係もありますが、支援機関が及び腰になるということの御心配が御指摘されました。ここはしっかり、やはりこの法改正に伴って、様々なDVあるいは児童虐待の被害者の方々を守る体制というのはむしろ強化をしていかなきゃいけないわけでありまして、それが弱くなるということはあってはならないことだと思うんですが、その点についての御意見を賜れたらと思います。

斉藤参考人 先ほど私も発言いたしましたが、まず、DVへの無理解が本当に全ての問題であると思います。やっとの思いで別居して、子供のこと、生活のこと、何とかやりくりしている中で、裁判所で事務的に事が進み、宗教のごとく、親子はすばらしいものという考えを押しつけられます。

 別居するまでに様々な葛藤があります。いっときの感情で逃げているからではないからです。しかし、このままこの家にいては危険だと思って、やむにやまれず別居しています。

 私だけでなく、ほかの被害者らと話していても、直接お子さんを殴ったわけではないですよね、殴ったとしても常にではないですよね、DVは夫婦の問題であり、親子の問題には関係ないですよねと、調停委員、調査官から言われたとたくさん聞いています。

 裁判所の書面で住所を秘匿できても、DVを訴える同居親、子供の安全面を配慮していないと思います。DVについてもっとまずは理解してほしいです。現場に来てほしいです。実際に見てほしいです。当事者の話をもっと聞いてほしいです。DVに対して、裁判所の中でDVに特化した方々を是非つくっていただきたいです。

 お答えになっていますでしょうか。(大口委員「あと、済みません、支援策との関係ですね」と呼ぶ)

 済みません、お答えになっているかあれなんですけれども、実際は、周りの人たちが訴えられる、自分以外に、関わった人たち、人によっては、裁判官だったり弁護士だったり、自分がかかっている病院の先生だったりが訴えられているという、又は行政の窓口で何で住所を教えないんだとどなっている人がいるというのが今の実際の問題だと思うので、そこを是非クリアにしてほしいです。

大口委員 濫訴については断固として対応していかなきゃいけない、これはこの委員会でも議論になっているところでございます。

 それから、高葛藤の夫婦がそれをどう低葛藤にしていくのか、そして、夫婦間のいろいろな対立はあるんですが、子供の利益のために、子供の方に目を向けて、そして前向きにしていくことが非常に大事だと思っていますので。

 しばはし参考人は、御自分の体験もある、それから、裁判所ではなかなか高葛藤を低葛藤にという部分でまだ様々な課題もある。ですから、御自分がそういう事業を立ち上げられて、今実践をされているわけでございます。そういう点で、争わない離婚といいますか、あるいは共同養育といいますか、そこに向けて、ADRでありますとかカウンセリングでありますとか、様々な形でいろいろなことを取り組んでおられると思います。そういう取組について、やはり今の司法また行政に対していろいろな思いもあると思うんですが、その点についてお伺いしたいと思います。

 それから、あと、犬伏参考人、山口参考人には、やはり、高葛藤を低葛藤にということにおいて、親ガイダンスといいますか、これが非常に大事だと思うんですね。

 その点について、総合的な施策の中で、これは犬伏参考人にお願いしたいんですが、家事調停手続における親ガイダンスの実施等ということで、父母の対立から子の利益に目を向けてもらう工夫をこれからやっていきますと最高裁も言っているわけであります。この点についてどうなのか、どうやっていくのか、どうやっていけばいいのか。

 そしてまた、それこそ、山口参考人には、アメリカにおきまして、親ガイダンスというもの、これを離婚する方については義務化して、一からの親教育をしていこう、そこら辺についての参考になることをお伺いできればと思います。

しばはし参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 まず、ちょっと自分の経験から先に申しますと、初めての離婚は弁護士を頼りまして、調停というところにいつの間にか運ばれてしまったというようなところがあります。そこで相手に謝ってもらえるものだと思っていたんですね。しかしながら、感情の面を仲介する場ではなく、条件を決める場だということで、まずお金のこと、そして、弁護士からもお金の何か表を出しなさいと、そういった条件ばかりでした。

 その中で、私はずっと、夫と直接やり取りをして、こんなことがつらかったんだということを伝えたかった、そして相手に分かってもらいたかったというような気持ちがありました。

 そんな中、御相談者の、夫と関わりたくないという同居親の方のお話を聞いていると、やはり、夫から、すごくつらい思いをされて、この気持ちを分かってほしい、どれだけつらい思いをさせられたのか分かってほしいというような思いが、多くいらっしゃいます。

 そんな中、別居親側の面会交流支援などですと、その対になる別居親側の支援も行うことができます。我々、すごくメリットがあるといいますか、両方と関われる、そして、お子さんと関わっている姿、全てを見られる面会交流支援者というのはすごく醍醐味だというふうに思っております。

 そうしますと、面会交流の現場では、比較的、別居親側にも、穏やかにしましょう、お相手にありがとうと伝えましょうというようなことで仲介をする中、わだかまりを解消しながら支援をしているんですが、面会交流は、現場はうまくいったのにもかかわらず、事また離婚調停に戻ると、そこで条件の闘争になるわけなんですね。せっかくうまくいっているのに、またこちらで争いの火種になり、相手に疑心が深まり、そうすると、やはり面会交流に後ろ向きになっていってしまう。後ろ向きになった同居親に対して、別居親がまた憤りになるという悪循環を繰り返して、非常にもったいないことだというふうに思っております。

 しかしながら、私たちが条件を決められる立場ではないというところなんですね。ですので、司法の方でまずは争わないような話合いをしていただくということがもちろんなんですけれども、何か、弁護士でしたり司法関係者と民間団体がうまく連携をできるような、そういったことがあることによって不要な争いが防げるというふうに常々感じているところです。

犬伏参考人 御質問ありがとうございます。

 調停委員の中にも、心理関係の人たち、多様なバックグラウンドの方々がおりますので、やはり調停委員にどういう人を選ぶかという、調停委員の人材についても重要なことだと思っております。

 今、東京家裁に限りますと、非常に事件数も多くありまして、午前一期日、午後二期日入っております。そして、やはり、めり張りのある調停進行を心がけてほしいという中では、私どもはかなり苦労をしながら進めているところでございます。

 そして、親教育のガイダンスも、前は、その期日ごとにこの時間帯を利用してくださいということでありましたが、今はそういうことをやっていられないので、ずっと親ガイダンスの部屋でビデオを流しているという状況でございます。

 それでも、視聴された方に感想を聞くと、子供の前で大声でけんかして、やはり子供を非常に傷つけたのではないかというお母さん、それからお父さんがおられます。その発言を聞きますと、家庭裁判所で行っている親ガイダンスについても一定程度は効果を上げていると思っておりますが、より丁寧な親ガイダンスというものができればいいかというふうに思います。

 そもそも、家庭裁判所で調停にやってくるということ自体が、当事者にとっては非常に緊張感が漂っていることでございます。そういう中で進めているということもありますし、そして、調停で丁寧に行おうといってもなかなか難しいというところがあります。

 というのは、一つだけの申立てではなくて、婚姻費用の分担、面会交流、そして離婚というふうに三点セットでやってくると、どの事件をうまく調停で話合いを進めるかということが非常に苦労しておりますけれども、私どもは、生活費というのが日々の糧になりますので、生活費や面会交流について重点的に進めるといったようなこと。そして、離婚の条件というのは、離婚するかどうかということにも影響しますので、そういう複合的な事件を抱えながら、やはり当事者にとってどういうゴールを目指すべきかということについて話し合う。そして、子供さんがいる事件においては、子供さんをどういうふうに当事者が考えているか。

 そういったようなことに配慮しながら、頭の中でぐるぐるぐるぐる回しながら、相調さんと相談しながら、今日はどういう話を進めていくか、子供さんはどういうふうにして暮らしているんだろうか、日々の経済的な生活はうまくいっているんだろうか、そういう複合的な問題を抱えている当事者が調停にやってきているという中で、私どもは最善を尽くすということに心がけているという次第です。

山口参考人 御質問ありがとうございます。

 アメリカにおける親ガイダンスの御質問です。ここにちょっと資料がありますので活用いたしますと、アメリカでは、コロナによってオンライン学習もありますが、対面で行われているところで、イリノイ州で開発されたチルドレン・ファースト・プログラムというものが、現在、五州と百二十九郡で取り入れられているというところです。

 裁判所でやるのではなく、裁判所が外注してやりますので、そこの教室で、精神保健や心理学の修士号以上を持った専門家が講師として行います。

 まず、第一セッションでは、親が自分自身をいたわること、そして、離婚に対する子の年齢別による典型的な反応と警告サインというものを学ぶ、離婚に関して、子供たちが抱く一般的な質問に対する答え方というものも学ぶということと、あと、離婚について互いが経験したことをディスカッションで語り合うということが、まず第一セッションで行われます。

 第二セッションでは、親や子供たちが直面する問題として、具体的に、他方の親の悪口を言う、子供を使って他方の親の情報を得る、子供を通じて他方の親にメッセージを送る、子供に金銭的な問題を話す、子に個人的な相談をする、子の目の前で親同士がけんかする、子の忠誠心を競い合うようなことに関するというものをビデオで見せたりロールプレーするなどして、そして講師がそれに代わる適切な養育行動を説明する実地型になっております。

 これは外注しておりますので費用もかかりまして、大体五十ドルから百ドルというのが、幅があるみたいですけれども、各裁判所がどういうプログラムを選択するかというのは、非常に、外部の大学などのプログラムを使って、頑張っているというようなところです。

 以上です。

大口委員 ありがとうございました。また、家庭裁判所は人的、物的に整備をしっかりやっていかなきゃいけないということも学ばせていただきました。

 本日は誠にありがとうございました。以上で終わります。

武部委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党の道下大樹でございます。

 今日は、大変お忙しいところ、四名の参考人の皆様にこのようにお越しいただいて、先ほど意見陳述をしていただきまして、本当にありがとうございます。

 それでは、それぞれの皆様に質問をさせていただきたいと思います。

 まず、斉藤幸子参考人に伺いたいと思います。

 お話しされている中で、面会交流を含めて、高裁まで五年かかったということでございますが、ただ、離婚はまだ終わっていないということでございます。どのような今不安をお持ちでしょうか。

斉藤参考人 裁判が続くことが不安です。

 DVを理由に離婚したいですが、DVを認められるのに時間がかかるので、早く終わる性格の不一致で離婚したいと思っています。

 しかし、離婚が成立しても、相手が面会交流を再度申し立てるかもしれません。私が通院しているクリニックにも、うその診断書を発行していると訴訟を起こす可能性もあります。私や家族、私に関わる全てを裁判に巻き込んでいくのではないかという不安があります。

道下委員 ありがとうございます。

 今回の民法改正案では、子の利益、子の最善の利益ということが繰り返し出てきます。今回、参考人の中で唯一でしょうか、DV被害の、今離婚協議をしている当事者という立場から見た子の利益というものをどのように感じていらっしゃいますでしょうか。どうやったら子供の利益を重視できるというふうに思われますでしょうか、斉藤参考人に伺いたいと思います。

斉藤参考人 子の利益が、人それぞれの価値観で判断されていると感じます。

 今でさえ、裁判所はDV、虐待を見抜けていません。共同親権が導入されたら、今よりも裁判所が忙しくなるので、一つの事案にしっかり時間をかけてもらえず、適当な扱いになってしまわないかという不安があります。

 私の場合もそうですが、面会に応じないと親権を失うよと調停委員や調査官から言われたり、さらには、面会に応じないなら養育費減額に応じなさいと、代理人がついていない同居親に強く迫った裁判官もいたと聞いています。

 裁判所に対する不信感は、みんなが思っているよりずっと根深いです。裁判所が、裁判官や調査官、調停委員に対して、DV研修をしっかりと義務づけてほしいなと思います。

道下委員 ありがとうございます。

 そこで、今、裁判官や家裁の調査官、そして調停委員の方々の話にもなりました。もし、この民法改正案が成立、そして公布、施行され、斉藤参考人の一方の配偶者が共同親権への親権変更を家庭裁判所に申し立てたと仮定した場合、DV被害を受けたということをどのように家庭裁判所の裁判官や調査官、調停委員の方々に説明できると思われますでしょうか。そして、家庭裁判所、それらの裁判官の皆様などがDV被害を認めてくれるというふうな自信はお持ちでしょうか、伺いたいと思います。

斉藤参考人 私を人格否定するメールのスクショを数枚しか、記録で残っていないのですが、それで説明するしかないなと思っています。

 ほかの方もなんですけれども、調停でDVの記録を提出しても、夫婦げんかのいっときの暴言ですねと判断されてしまった、受け取られたというのを聞きますので、裁判所がDV被害を認めてくれるという自信はありません。

道下委員 ありがとうございます。

 ちょっと、そういう自信が持てないということは、これは斉藤参考人のみならず、今、実際にDV被害を受ける、また、これから、今は結婚して仲むつまじい関係かもしれませんが、今後離婚するかもしれないという子を持つ父母、そして、これから結婚しようかな、子供を産み育てようかなというふうに思っている若い皆さんにも大変大きな、ショッキングなお話かというふうに思います。

 斉藤参考人、とはいえ、家庭裁判所の裁判官、調査官、調停委員の方々に、このようになってほしいという、例えば、先ほども話がありました、更なる、犬伏参考人からは講習を受けるだとか、そういったことがありましたけれども、何かこのように是非とも取り組んでいただきたいという御意見は、お考えはありますでしょうか。

斉藤参考人 実際に現場の支援をしてもらうというのを実施したらいいと思います。

道下委員 ありがとうございます。

 次に、山口参考人に伺いたいと思います。

 日米家族比較法の研究をされてきたということでございます。私もいろいろと調べてみますと、欧米諸国の離婚後の養育法制というもの、家族法については、法律用語としては、親権ということでペアレンタルオーソリティーという言葉が使われてきたということでございますが、その後、カストディーということで、これ、ペアレンタルオーソリティーのオーソリティーが権限であって、カストディー、監護という言葉に変わり、そしてさらに、今現在では、ペアレンタルレスポンシビリティー。レスポンシビリティーというのは親の責任というんですね。権利からだんだん親の責任なんだというふうに変わってきているというふうに思います。

 日本の法律との対比で考えると、権利、権限から子供の監護、保護、そして、責任、さらに、養育といった大きな流れで欧米諸国が来ているのではないかなというふうに思うんですね。

 だから、先ほどもしばはし参考人も、共同養育というお話、これを非常に重要視されています。

 なので、私自身は、このような、今のような親権という言葉、これはオーソリティーという、ペアレンタルオーソリティーよりも、海外はだんだん日本のような形というか、何でも親権、ペアレンタルオーソリティーというよりは、だんだん日本の法律などに近づいてきたのではないかなというふうに思うんですね。

 アメリカの一つの州であるルイジアナ州では、婚姻中は共同親権なんですけれども、離婚したら、まず、親権がなくなるということなんですよね。親権がない。オーソリティーがない。その後どうなるか。監護とか養育とか、あとは親の責任であるレスポンシビリティーに変わってきているんです。その上で、元々、離婚前、離婚協議中、そして、離婚後の様々な相談支援体制などが充実している。ちゃんと契約するというものがあって、だんだん、親の責任をどうするのかということに変わってきているというふうに思うんですが。

 そう考えますと、共同親権という、ペアレンタルオーソリティーを今、日本が、ちょっと、欧米とは一周回って、遅れて、共同親権、ペアレンタルオーソリティーというものを導入する必要があるのかなというふうに思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

山口参考人 御質問ありがとうございます。

 非常に多方面から御指摘いただいて、必ずしも私の理解と一致しているかちょっと分かりませんけれども、私が今まで、ちょっと、学んできたところを申し上げますと、まず、カストディーという言葉でアメリカは来ておるということなので、離婚後は、ここでも、意見陳述では、親権ではなく監護権という言葉で説明させていただきました。ですから、カストディーという言葉はありました。

 でも、これに関しましても、やはり保護とか管理ですとか拘束というような言葉の意味がありますので、おっしゃられたように、ペアレンタルレスポンシビリティーとか親責任、そして、具体的に何をするのかということで、養育時間とか養育計画という言葉に変わってきたというのは御指摘のとおりでございます。

 しかし、アメリカでは、ペアレンタルライツという、これが法律用語としてあるんですけれども、これが憲法上の権利として一つ存在していますので、あえてこれは親権ではなく親の権利と言って、監護権とは分けて私は考えておりますが、この憲法上の親の権利とは何なのかというと、やはり、国家からむやみに権利が制限されないというところで、非常に強い権利を持っております。ですから、日本よりもちょっと保守的ではあるとは思いますが、第三者からもそして国家からもむやみに権利を制限されないという意味では、アメリカは依然としてペアレンタルライツは持っているというふうに思っております。

 しかし、私人間におきましては、御指摘のように、親の義務ということ、あるいは、具体的に養育ということに変わってきていますので、これは、おっしゃられたとおり、実態を表すというものでいいと思います。

 日本の親権についてですけれども、やはり、同じように、日本は憲法上の権利とは議論されておりませんので、私法上で、第三者に対する親の権利ですとか国家に対する親の権利という意味も含めて、親権というものが残ったと思っておりますので、親の責務、義務、親権ということも含めて親権というふうになっていると理解しております。

 以上です。

道下委員 ありがとうございます。

 日本の、今、我々も含めてかもしれません。私は、このペアレンタルオーソリティー、カストディー、それからレスポンシビリティー、しっかりと分けて議論しなきゃいけないというふうに思うんですね。

 法務省が外務省を通じて海外の親権についての調査を行ったものも、ちゃんと詳細な文章を、調査結果を見ると、ちゃんとレスポンシビリティーだとか分けられているんですけれども、その調査結果を法務省がまとめた概要については、もうそれを全部ひっくるめて共同親権と言っちゃっているんですよね。だから、その概要だけ見た場合には、ほかの海外では共同親権をやっているんだ、だから日本も導入しなきゃいけないんだというように受け止める方々が多くなっているんじゃないかなというふうに思っていまして。

 今山口参考人がおっしゃったように、本当にそれは、だんだん、先ほども、共同親権の今日はお話なんですけれども、共同監護ということで、やはり言葉を分けて、使い分けて使われたということで、これはしっかりと認識されているんだなと思うし、この点も我々は意識して、共同親権が外国では当たり前なんだではなくて、だんだんそれが監護や又は親の責任とか養育とか、これは、今の現行法制度でも監護とか共同養育とかはできるわけですので、私は、そういった意味では、私の立場として見れば、共同親権は導入しなくても皆様がやろうとされていることはできるんじゃないかというふうに思っています。

 次に、しばはし参考人に伺いたいと思います。

 同様のお話なんですけれども、今本当に取り組んでおられることで、一つ、共同親権で、共同養育ということなんですけれども、また支援の強化ということですけれども、私自身は、法律を変えなくても、そうした皆様の活動だとか、本当に、離婚後も何とか、親が争わないことということで、子供の望むことを進めることは今の現行法でもできると思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

しばはし参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 共同養育を行うには、まず、離婚した後二人で育てるんだという価値観が世の中にまだ浸透していない、これが、恐らく単独親権制度ということが根強くあるのかなというふうに思っております。

 共同親権が導入されることで、御不安な方はもちろん単独親権という選択肢が残っている中で、共同親権導入という、ソーシャルインパクトと申し上げてよろしいのか分からないですけれども、大きく、離婚した後も二人がきちんと親権を持って関わらなきゃいけないんだよということをここで潮目として変えていくことで、共同養育をするのが当たり前なんだという、共同養育がデフォルトの状態から話合いが進むことができるというふうに考えております。

 という意味で、共同親権と共同養育は別物だよねという議論もあるんですけれども、極めて相関性があるものだというふうに私は考えております。

道下委員 ありがとうございます。

 共同養育というか、そう考えると、親の共同の権利というよりは、親の共同の責任ということなのかな、だから、先ほど申し上げたとおり、オーソリティーじゃなくてレスポンシビリティーなんじゃないかなというふうに思うんですよね。だから、そういった点が海外では、しばはし参考人がおっしゃるようなことを広めるためには、しっかりと親が離婚後もこういうことをしなきゃいけないんだよという親の責務を今いろいろと法を改正したりなんかしてやっていると思うんですよね。それでも、共同親権というものにこだわられるんでしょうか。

しばはし参考人 御質問ありがとうございます。

 いろいろな、親の責任ですとか親権の行使というようなところの、切り分ける、責任の方でいいのではないかという御質問だと思うんですけれども、まず、先ほども申し上げたように、お互いがきちんと責任を、責任といいますか、権利を持って親権を行使したい、その上で離婚をしたいという方も多くいらっしゃっています。お互い親権を持つことが今できない法制度だからこそ、離婚はお互い合意しているのにできないというような方も当然いらっしゃっています。ですので、難しい場合には単独親権という選択肢がある上ですので、きちんとした親権という行使をするものを、親が共同親権ということを選べる、共同親権で離婚はできるというような制度というのが必要だというふうに感じております。

道下委員 選べる制度であればいいということですね。分かりました。

 次に、犬伏参考人に伺いたいと思います。

 今、慶應義塾大学名誉教授であられるとともに、東京家裁の調停委員もされているということでございます。

 この法律、民法改正案が仮に成立された場合、公布後二年以内に施行されるということが記載されております。法の公布後、いろいろな準備などが必要になってくるというわけでありますが、先ほども斉藤参考人のお話がありましたし、犬伏参考人からも、家裁の人員の増強だとか施設の拡充というものが必要であろうというふうにおっしゃいました。

 その点についてなんですけれども、施設に関しても、今、建設費が高騰したり、人材が不足しているということ、それから、裁判官を増員すること、調査官は今、裁判官よりも少なくて、千五、六百人ということ、非常駐のところもいる。調停委員の講習も、結構、人々の考え方を変えるのは大変重要かと思いますが、時間がかかると思います。

 公布後二年以内で施行するということは、この時間というのはこれで十分というふうにお考えでしょうか。

犬伏参考人 直ちにその御質問に答えるということは難しかろうと思いますけれども。

 コロナ禍のときに、東京家裁の場合は、下の方で庁舎がつながっているんです、ですから、高裁などの建物とかそういったところを使うということは行っておりました。ですから、やはり庁舎を融通するとか、公的な機関というものがあるということを利用するということでやっていくというふうにしなければならないというふうに思っております。

 それから、別に二年後に始まるという話ではなく、常日頃から、調停委員や裁判所の裁判官は様々な共同した研修であるとか研究というものを続けておりますので、これからも私どもは、やはりDVに対する理解であるとか、様々なケースについてのケース研究というものを、調停委員も、それから調査官も裁判官も続けております。そういう中で法案の施行を迎えるということについては、十分に対応していくというふうには思っております。

道下委員 四名の参考人の皆様、本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

武部委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会、教育無償化を実現させる会の美延映夫でございます。

 今日は、四人の参考人の皆様、貴重な御意見ありがとうございます。

 まず、四名の皆様全員にお伺いしたいのですが、子の利益について私、質問させていただきます。

 賛否はあるとしても、子の利益が重要であるということは、これはもう異論のある方は一人もいらっしゃらないと思うのですが、そこで、離婚後の親子関係を考える上で子の利益はどのようなものか、お考えか、それぞれの御意見をいただけますでしょうか。

犬伏参考人 なかなか難しい御質問だと思いますけれども、私ども、子供の成長、発達する権利というものを尊重するという子どもの権利条約の理念というものがやはり具体的に子供たちの生活に落ちていく、根差していくということが重要だと思います。そして、安心して日々を送れるということをやはり尊重しなければいけませんし、子どもの権利条約上の発達する権利であるとか意見表明権であるとか、そういったものをやはり私どもが受け止めるということが子供の利益につながるというふうに考えております。

 非常に抽象的かもしれませんけれども、やはり日本において子どもの権利条約を批准した、今年は三十年になる、そのことをかみしめながら、子供の利益というものを考えていきたいというふうに思っております。

 それから、親権という言葉についても今回の法制審では、やはり婚姻中の親権という言葉も見直さなければいけない、親権という概念自体もやはり見直さなければいけないということもあります。いかに子供の利益を尊重する、親の責務でありますとか、親がやはり子供を育てることに喜びを感じられるような、そういった仕組みというものは必要だというふうに思っております。

しばはし参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 子供の利益、何度も申し上げておりますが、子供にとって大事なのは、親が争わないこと、そして、親が争わない中で子供が自由に発言をして、親の顔色を見ずに両親と関わる機会を持てること、それによって子供が親から愛情を受けているんだということを確信できるようなこと、それが子の福祉だというふうに考えております。

山口参考人 山口です。

 子の利益というもの、多面なところから考える必要はあると思いますけれども、私の見解では、子が双方の親から愛情と養育を受け交流し続けることが、まず第一原則的な子の利益だと考えております。そして、親の関係が悪化しまして、これまでどおりに一緒に過ごせなくなるにしても、離婚は自分の責任ではないのかと子供が思うこともありますので、そういう、離婚は子供の責任ではないということ、そして、離婚をしても子供に関心を持ち続け、子供の養育には責任を持ち続けるということを、親が環境を整え、子に言動で示すということが子の利益につながるのではないかと思います。

 また、子供は、離婚の紛争があるときには蚊帳の外に置かれているということについて不満といら立ちを持っているというふうに言われておりますので、今何が行われているか説明することが、やはり子供の意見を聞く前に重要なことだと思いますが、それでも、紛争の一つ一つ、激しい争いを知らせるのではなく、また、子供に相談相手として自分の気持ちを吐露することは、子供にとってはよくないというふうに言われております。

 そして、子供の意見を聞くということがよく言われますけれども、子供にどちらかを選ばせるとか忠誠心の葛藤を起こさせるということは子供の利益にはならないと思いますので、離婚に際する子供の利益というのは、慎重に多方面から考えていく必要があると思っております。

 以上です。

斉藤参考人 子供の利益は、安心、安全が守られることだと思います。また、その子供を育てている同居親の安心、安全が守られているという環境でいることが、子供にとって大事だと思います。それにプラスして、父母だけじゃない、子供を助けてくれる人がいるというのが大切だ、大事だと思います。

 以上です。

美延委員 ありがとうございます。

 次に、山口参考人、お伺いいたします。

 現在示されている改正案では、父母の合意が調わない場合は、裁判所が命じる要件には、父母の関係、それからDV、虐待のおそれなどが示されております。

 DVや虐待は別として、父母の意見が違った場合、つまり、一方親が拒否した場合も米国では共同監護を認めることが一定以上あるとお聞きしましたが、なぜ米国ではそのような考えを取っているのか、教えていただけますでしょうか。

山口参考人 ありがとうございます。

 日本の例につきましては、しばはし参考人がよい御説明をされたので、非常に私も参考になりました。

 アメリカでは、おっしゃるように、父母の意見の相違があったとしても、合意ができていないとしても、裁判離婚で一定数、共同監護を認める場合があるようです。

 条文には、親の協力体制があるということを絶対条件にしているという州は極めて少ないですし、そもそも合意がないため訴訟に持ち込まれますので、そこで切ってしまっては裁判になりませんので、一方親が共同監護をしたい、しかし他方がしたくないというときに裁判所は何を見るのかといいますと、やはり子供と両親の関係性を見るということです。

 子供が、従来、両親との良好な関係性を保ち、離婚後もそれを継続していくということが、子供のニーズにかない、子供の利益にかなうと裁判所が認めると、共同監護が認められることもあります。そして、親が、自分たちの争いを切り離すことができる能力があるかとか、また、親教育や弁護士等の仲介によって、これから協力し合う素質があるのかということも見られるということです。

 裁判官にインタビューをした研究の、アメリカの調査によりますと、当初はうまくいっていない父母間でも、徐々にビジネスライクに協議し合うようになったというケースもありますので、一九九八年の調査と二〇一一年の調査では、二〇一一年の調査で、裁判官は、共同親権が合意がなくともそういうことを付与するということを認めているという結果が出ております。

 また、二〇一七年に、ニューヨーク州の判例がありますけれども、これは、親子関係は良好で、大筋では子の養育決定に合意しており、そして、細かい子供の課外活動や生活について合意していない。なぜかというと、相手に権利を渡したくないということが主な争点というところになりまして、裁判官は、父親の監護権をゼロにするのではなく、子供の人生において両親が役割を果たすことが重要だということで、共同法的監護と面会交流を付与しました。

 先ほども述べましたけれども、アメリカも、裁判離婚ではありますが、九割は合意して養育計画書を作成するということですので、一、二%の訴訟離婚になった場合には、やはり高葛藤で共同監護は無理なケースが多いのではないかと私も思っております。では、九割近くがどの程度合意しているかというと、やはり六から八割が共同法的監護に合意していますので、ここに立法の意義があるのではないかと思っております。

 条文は、裁判規範ではありますけれども、共同監護法制というものがあるということで、人々の行為規範になってきますので、それを目指して、高葛藤以外の親にとっては合意を目指すという有効な立法になっているのではないかと思っております。

 以上です。

美延委員 ありがとうございます。

 次に、転居、居所指定権についてお伺いをいたします。

 今回の改正案では、子の監護をすべき全ての者が指定された場合、居所指定権は監護者に属するため、監護者となった一方親の独断で引っ越し、つまり連れ去りにより子供に会えなくなるのかというような懸念、意見が出ておりました。他方、具体的には、子を連れて転居する場合、六十日前に他方親への通知義務や同意が必要であること、つまり監護者が居所指定権を持つわけではないと理解をしております。

 子の略奪に関しては、居所指定権が父母のいずれかにあるかを問わず、今後、我が国でも紛争が生じる可能性が高いと考えております。転居に関して父母が合意できない場合、裁判所が定める場合に米国の裁判所はどのような観点で判断を下すのか、それを教えていただけますでしょうか。

山口参考人 御質問ありがとうございます。

 アメリカでも、転居によって子の連れ去りという事件は起きておりますので、やはりそれの防止策として、旅行するとき、転居する前六十日には届けなければならないというふうになっております。

 では、どういう場合に裁判に持ち込まれるのかといいますと、転居はしたいけれども合意が取れないというときですね。そういうときには訴訟になりますので、転居したい親が子の利益になるということを証明するか、あるいは、転居させたくない親が転居することが子供の不利益になることを証明するかという基準がありますので、各州ではそういう基準を取っております。いずれも証拠の優越により証明すればいい話なんですけれども、転居する親に証明責任を課すということは非常に転居がしにくくなります。

 ここは訴訟上の問題ですけれども、では、裁判でどのようなところが主に見られるのかといいますと、転居する親がその転居の理由に、転居理由の誠実さがあるかというところが見られます。例えば、別居親と子供の間を引き離したいがために転居をするんだ、そうではなくて、転職や再婚でやむを得ず転居をしたいんだと。ですから、その理由が見られます。

 そして、このように転居の制限があるというのは、今まで面会交流を別居親と行ってきた親子に関して、それを保護するためですので、六十日間の間にそれの代替策、転居した後でも面会交流が充実して履行されるのかということを計画し直すという選択肢が与えられておりますので、そういうことが確実にできても、残された親が不合理に反対しているのではないかということが争われまして、アメリカでは訴訟上厳しい基準はありますけれども、全く転居が許されないわけではないということです。

 ただし、悪意のある転居をする親がいる場合には、別居親が監護者変更の申立てをするという争いにまで発展していきます。予防という意味では、転居をすることについては同意を得るということは、非常に、アメリカではいい制度ではないかと思っております。

 以上です。

美延委員 次に、親教育についてお伺いしたいんですけれども、アメリカでは、ほぼ全州にわたって親教育のプログラムがあると伺っております。裁判所はそれらの教室の受講を指示すると伺いましたが、それはどのような場合で、どのような講師の下、そして何回ぐらい受講するのか、もしそれを受講しないとなると共同監護ができないのか、もう少し具体的に教えていただけますでしょうか。

山口参考人 ありがとうございます。

 先ほど、親ガイダンスについては少々御説明しましたので、その概要といたしましては、全州で義務づけてはいるといいましても、裁判所がこの親教育プログラムを受けろというふうに指名しますので、それは裁判所の裁量によっておりますし、全て未成年の子がいる親にプログラムを課すところと、紛争している親に限り課すというふうな違いがあります。

 そして、簡単なところですと、オンラインで受講して、四時間ですとか十時間ですとか、そういうプログラムを受講し、そして受講した証明書を裁判所に出すということによって離婚が認められるというようなケースを取っているフロリダ州もありますし、あるいは、実地として、対面でやることを求めているところもあります。それも、一時間のものから八時間、又は十時間以上のものもありますし、先ほど申し上げました、料金もかなりかかるというところで、各州各郡で違いはございます。

 以上です。

美延委員 共同親権及び監護の分掌が運用次第で大きく発展すると先ほど山口参考人は述べられておられましたが、具体的にどのように運用すればよいか、お考えを聞かせていただけますでしょうか。

山口参考人 ありがとうございます。

 監護の分掌と言いましたけれども、七百六十六条には、それ以外にも、その他子の監護についての必要な事項ですとか親子の交流ということも決められておりますので、それについてやはり取決めをするということが非常に重要になってくると思います。

 これまで単独親権でしたので、何も取り決めずに離婚することができた。そして、子供も、一体これからどうなるのだろうという、方針も指針も見えない中で過ごすことになっていたところ、親がやはり環境を整えて、自分のためにこれからの生活を計画してくれるんだという意味では、協議し計画書を作るということは非常に重要になってくると思います。

 監護の分掌は新しくできましたものですので、先ほどしばはし参考人も言われましたけれども、共同ではなく分掌ということなので、分担してやればいいんだということで、何か一つ、教育をとっても、教育全体を母親が担当するとか、あるいは医療は父親が担当するとか、いや、そうではなくて、教育の中でも、進学や塾や課外活動や留学、一つ一つを分担するのか共同でやるのか、そういうことを決めるということになろうかと思います。

 いろいろなものが、考えがあると思いますけれども、これからの計画書のサンプルの作成や、手引書をどのように日本の政府が作っていくかというところに関わってくるのではないかと思います。

 そして、やはり、転居に関しては、無断転居をしないということも、七百六十六条の親子の交流というところの協議で決められるのではないかと思っております。

 以上です。

美延委員 次に、しばはし参考人にお伺いをいたします。

 夫婦の感情とそれから親子関係を切り分けて考えること、子供にとっては双方とも親であるということをマスコミのインタビューで、私も拝見しました。私も、実際そのとおりだと思います。

 ただ、そうはいっても、夫婦の感情と親子関係を分けて考えるのはかなり難しいと考えますが、その辺り、どうほぐしていけばよいのか、お考えを聞かせていただけますでしょうか。

しばはし参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 同居親側の葛藤をどのように下げるかという御質問かと思うんですけれども、まずは、圧倒的にその思いには共感をもちろんいたします。会わせたくないほどにつらい思い、相手と関わりたくないほどにつらい思いを同居時にされていたという、その事実は事実です。ですので、そこをきちんと共感した上で、ここはちょっと若干正論にはなりますが、御自身がお子さんだったらどんな気持ちかなというようなことを問いかけてみたりですとか、自分自身がお子さんに何か相手の悪いことを言っていたりとかしたら、自分自身がもしお子さんの立場だったらどうですかみたいなことを、やり取りをしていくというところが一つです。

 一方、同居親側だけで葛藤が下がるわけではなく、やはり対になる別居親側への伴走というのも必要になってきます。相互作用してくるわけですね。とはいえ、自分自身が、では、子供のためにやらなきゃと思っていても、別居親側がすごく攻撃的でというようなことになると、やはりその気持ちがうせてしまうということがあります。ですので、願わくば、面会交流支援なども通して相手側と関わることができるのであれば、お相手側もきちんと同居中の葛藤とは切り分けて親子交流を頑張ろうとされているのであれば、まず、そこに対して、ありがとうを一言言うだとか、何か、共同養育をしづらい相手に御自身がなられているんですよということを提言するようなこともあるんですね。

 ですので、どちらかの肩を持つというわけではなく、どちらともの味方であろうというようなことをすることで葛藤を下げるということを行っております。

美延委員 ありがとうございました。

 終わります。

武部委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今日は、四人の参考人の皆様、お忙しい中、本当にありがとうございます。質問をさせていただきたいと思います。

 まず、斉藤参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほどのお話の中で、パブリックコメントのみんなの声が消されてしまったというふうに感じているんだというふうにおっしゃられておりました。その点について是非もう一度意見を教えていただきたいというふうに思っております。そして、消さないでほしいということで取組も行われているというふうに思いますけれども、その点、お示しをいただきたいと思います。

 また、私も、このパブリックコメント、個人情報をマスキングした上で公開をしてほしいということを何度も求めているわけですけれども、まだ私どもの手元にも来ておりません。法務省の説明では、意見の概要、暫定版というものにまとめたんだからいいんだという話があるんですけれども、その点、当事者としてどのような思いか、教えていただければというふうに思っております。

斉藤参考人 私のようなDV被害に遭った人たちは、本当に日々隠れて生活しています。なので、少しでもパブリックコメントを書けば、自分たちがこういう部分で苦しんだり、私のように、裁判所でDVや虐待が見抜かれていません、そんな中で、形だけ親子が一緒に仲よくすることが子供のためだということの一辺倒だけでどんどん話が進んでいくということにすごい恐怖を持って、みんな一生懸命自分の具体的な事例を、パブコメなので、自分の内容が公表されてもいいという覚悟で書きました。

 しかし、今おっしゃっていただいたように、公表されておらず、私たちが書いた言葉というのはどこに消えてしまったんだろうという気持ちで、とても落胆しています。

 現行法でも、離婚後、共同養育、共同監護できるという内容になっています。親が子供のために責任を持つために、意識を変えるため、共同養育、共同監護できるために共同親権を入れるんだというのがとても納得がいっていません。親権と面会交流と養育費は全く別物です。

 戻ってしまいますが、パブコメで約八千件の意見が寄せられて、個人の意見では三分の二が、共同親権になるのには反対だ、慎重にしてほしいということを伝えています。

 中間試案を読むこと自体がとても難しかったです。皆さん、フラッシュバックを起こしながら、寝る間を惜しんで書いたものを無視することは、国民を無視しているのと同じなので、とても許せません。

 以上です。

本村委員 ありがとうございます。

 今日も、様々な恐怖の中、こうやって、同じ思いをされている方々の声を届けようということで来てくださったことに、本当に心からの敬意と感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 昨日の法案審議の中でも、この法律によって、例えば、単独行使、急迫の場合はどういう場合かということも含めて、様々、紛争が多くなるのではないかというふうなことが法務大臣からも認められました。

 裁判所がDVや虐待を軽視するという被害当事者の声は今日も聞かれたわけですけれども、そういう現実がある。そして、裁判所の今の体制、施設、全く不十分だと。そして、子供パートナー弁護士制度、公費の弁護士制度ですとか、あるいは、訴えられた側、例えば経済的に困難な方が訴えられた場合に、民事法律扶助を使ったらいいじゃないかと言われるんですけれども、それは本当にハードルが高い。

 こういう中で、今回、この法案によって、拙速な場合、新たな人権侵害、命のリスクが起こってしまうのではないかというふうな私は危惧を抱いているんですけれども、これについては四人の参考人の皆さんにお伺いをしたいというふうに思っております。

犬伏参考人 ありがとうございます。

 今の御指摘を非常に重要なことだと思っておりますけれども、私としては、非常に今の現状が不足しているということを訴えておりますけれども、しかしながら、やはり家庭裁判所の人的あるいは物的整備というものについての御理解をいただきたいということで、若干お話をしたという面もございます。

 しかしながら、今、家庭裁判所では、やはり安全を非常に重視していると思いますので、取組は進んできております。

 今後も、やはり、安全、人の命が危険にさらされるようなことというものについては、今も配慮していますし、今後も一層配慮しなければならない。とりわけ、今、障害を抱えている高齢者の方々も来ておりますし、様々な人たちが来るというところが家庭裁判所である。その家庭裁判所の役割というのを十分に果たせるようにというふうに考えておりますので、裁判所において、危険な状況が発生するということについては、極めて、私どもとしては、そこを防止しなければいけないということを今も十分に心がけておりますし、今後もやはりその点については家庭裁判所の役割を十分果たさなければいけないというふうに思っております。

しばはし参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 裁判所の運用のところのお話ではあったかと思うんですけれども、必要に応じて、DVで相手と関わることが難しいというようなときには、適切に支援の利用ということを裁判所の方から御提案いただくというようなこともあろうかとございます。

 ですので、裁判所だけ、調停委員だけということではなく、支援団体、そして、私が提言したいのは、弁護士の立場の方が、やはり依頼者ファーストということは、それが責務なので致し方ないなと思うんですけれども、子供を会わせたくないという同居親についている代理人は、できるだけ会えないようにするだとか、一方で、攻撃的と言うと語弊があるかもしれませんけれども、連れ去りは誘拐だと相手を罵るような別居親に対して、いや、もう監護者指定をして、三点セットをして、相手をやっつけましょうみたいな感じで、お互いに火をつけてしまうようなことがより対立構造になって、よりDVが深まってしまう、よって、予期せぬ形でよりお互いが傷つくというか、憤りが増してしまうというような構造になってしまっているのではないかなと思っております。

 調停委員の方々も、今おっしゃられたように、できる限りのことをされていると思うんですが、そこだけではなく、司法関係者、そして民間団体、皆さんで取り組むべき課題なのではないかなというふうに考えます。

 以上です。

山口参考人 御質問ありがとうございます。

 DVにつきましては、まだまだ日本の制度は足りていないと私も思っております。これは裁判だけではなく、協議中、同居中ですとか別居中においても、被害者が安全、安心に暮らせるようにするには、裁判以外でも何か制度をつくらなければいけないと思っております。

 そして、離婚にかかわらず、DVに関して、緊急保護命令ですとか臨時のもの、そして継続的なもの、分けて、裁判所で的確に迅速にされるような制度がつくられるといいと思いますし、シェルターもまだまだ足りていないと思います。

 シェルターにおきましても、非常に制限が強くて、スマートフォンなども預けられたりする、非常に厳格な中で生活をしなければいけないというところで、そういう、人が生活できるような十分なシェルターというものもつくっていただきたいと思っております。

 アメリカの例ですけれども、シェルターに行っても親子の面会交流が行われている場合があるようですので、それは、安全を確保して、そして親子の交流を絶やさないようなことというものは、シェルターでもできる人たちもいるのであれば、やっていくことも方策として考えるべきではないかと思います。

 それともう一つ、子供の苦悩について、先ほど親教育というものがありましたけれども、子供に特化した、子供の意見を聞く、どうしてほしいとかではなく、子供が今何に悩んでいるだとか、これからどうなるのか不安だとか、日本の制度はどうなっているのかとか、そういうことを知らせたり、子供が自由に語られる場があって、そこでDVなどの発見だとか認定だとかが行われればいいのではないかなというふうに考えております。

 以上です。

斉藤参考人 このまま共同親権になると、本当に人権侵害になると思います。子供の利益である子供の安心や安全が損なわれることがとても心配です。

 実際に、六年間の間に十六個の裁判を起こされた人がいます。裁判官を訴えたり、診断書を書いた医師を訴えたりすることも珍しくありません。自分自身が訴えられることはもちろん苦痛ですが、助けてくれた人が訴えられることは、そのうち誰も助けてくれなくなるのではないかと思うと、絶望的に苦しい思いだそうです。

 誰のための法改正なのかを改めてしっかりと考えてほしいです。

 以上です。

本村委員 ありがとうございます。

 山口参考人にお伺いをしたいんですけれども、私の手元にアメリカ上院下院両院の一致決議というものがあるわけですけれども、そこの中に、アメリカでは二〇〇八年以降、少なくとも六百五十三人の子供が離婚、別居、監護権、面会交流、養育費などの手続に関与した親によって殺害されており、多くの監護親の反対を押し切って家庭裁判所が面会交流を認めた後に殺害されたものであることが分かっているというふうに両院一致の決議の中で指摘をされておりまして、それで、子供の安全は監護権及び面会交流についての司法判断における最優先の事項と決議をされておりますけれども、その後どうなっているのかという点、お示しをいただけたらというふうに思っております。

 そして、先ほども被害者の方から濫訴のような形のお話があったんですけれども、その対策についてアメリカではどうなっているのかという点、教えていただければと思います。

山口参考人 御質問いただきましたけれども、私はそのところは存じ上げておりませんので、申し訳ございません、お答えしかねます。失礼いたします。

本村委員 先ほども、被害者の斉藤さんが、世界ではこういう事例があるから、それをしっかりと検証するべきだというふうにおっしゃっておりました。

 そういう中で、先ほども資料を斉藤参考人からお示しいただきましたように、日本でも面会交流の中で子供が殺害される、妻が殺害される、あるいは性暴力、性虐待を受け続けていたという事例があるんですけれども、この点に関して、最高裁などに、やはりこういう点をちゃんと日本としても検証するべきではないかということを申し上げているのですけれども、それはしていないというようなお話を聞いているのです。この点について、日本のこういう事件についてしっかりと検証するべきではないかというふうに思いますけれども、四人の方にお伺いをしたいと思います。

犬伏参考人 今の御指摘については受け止めたいと思います。

 なかなか、裁判所というのは、裁判所を出た後のアフターフォローまではできにくい部分がございます。しかしながら、他国におきましては、そういった裁判所で合意をした後についての事件、もちろん、日本においても面会交流の再調停の事件といったようなものがありますので、そういった形で関わるということは今後ともありますし、やはり裁判所としてももう少し間口を広げるということの御指摘だというふうに受け止めておりますので、そういった点については、いろいろな意見交換会もありますので、上げていかせていただければと思います。

しばはし参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 裁判所内の仕組みについては、私は専門ではないのでお答えできないんですが、DVをされたといったことに対して、大事な根源といいますか、よく虚偽DVなんという言葉があるかと思います。相手はやっていない、でも、こちらはやった、そこにおいて、より葛藤が上がるのは、やられたのに謝ってもらえない、やっていないと言うことなんですね。

 ここは、ケースにはよるとは思うんですけれども、明らかに、されてしまってつらかったということを発信をされているのであれば、自分はもしかしてやった覚えはないのかもしれないけれども、そのような思いをさせてしまったんだねということを、きちんと振り返って謝罪なり歩み寄りなりをするというようなことが非常に大事であって、これをされたから最高裁に上げて裁く必要があるというような、結果論といいますか、最後の策というよりは、その前に、やられたことをきちんと伝え、相手がそれを受け止める、そのような仕組みというのも裁判所の中でやれることも大事なのではないかな、ちょっと話がそれましたが、そのようなことも大事だと思ったので、提言させていただきます。

山口参考人 御質問ありがとうございます。

 DVや虐待事件、それを講評していくべきだという御質問だったと思いますけれども、私も確かにそのように思います。

 離婚にまつわって虐待やDVが出てきた事件、また、離婚はしていなくてもそういう事件もある、また、同居親からの虐待、別居親からの虐待、そういうものも、やはりこれからは双方が親としての養育の責任を果たしていかなければならないというところで、離婚した後も、別居後も、やはり双方が子供に対して関心を持ち続けるということが重要になってくるかと思います。

 そして、斉藤参考人が言われましたように、父母以外の親族の監視というか養育というものも非常に重要になってくると思いますので、面会交流にしても、危険性があれば親族がフォローするなり、また全体で見守っていくなり、子供を安心、安全にするために、社会全体で、そして親族全体で守っていくということが、今回の法案でも審議の中で議論されたところだとは思いますけれども、これからも進めていくべきことだと思っております。

 お答えになっているか分かりませんけれども、以上です。

斉藤参考人 まず、交流できる親子と、交流してはいけない親子を分けて議論していただきたいです。全て交流できるんだを前提に話を進めるのはとても問題だと思います。

 別居の前から高葛藤が多いです。その中で、別居するときが一番大変です。別居してすぐに、連れ去り、誘拐と言われると、更に高葛藤になります。

 失礼ながら、親以外の大人が必要だとは思うのですが、監視ではなく、子供にとっての安心が欲しいと思っています。

 以上です。

本村委員 ありがとうございます。

 それで、子供の権利、一人一人の子供にとって何が最善の利益なのかということに関して、私はもう少し丁寧なプロセスが必要なのではないかというふうに考えております。児童心理の方ですとか児童精神科の専門家ですとか、そうした方々もしっかりと踏まえたプロセスが必要なのではないかというふうに思いますけれども、犬伏参考人と斉藤参考人にお伺いをしたいと思います。

犬伏参考人 家庭裁判所でやるべきことかということについての御質問ではなかったかと思いますので、やはり法律だけでは解決できない問題というのは多々ございますので、いろいろな、うまくいかないという段階から、当事者は非常に心理的にも疲弊しますし、これからのことについて不安も感じます。そこの中で、激しい言葉をかけられたり、暴力を振るわれたりということがあるかもしれません。そういう意味では、今の御指摘のように、精神的なケアができるような相談体制というのは重要ですし、何よりも、子供の気持ちを理解できるような心理的なケアであるとか、行動科学の知見を持った人たちが関わるということは、十分に重要なことだと思っております。

 そういう点では、家庭裁判所も、司法機能だけではなくて、福祉的、後見的機能を果たす裁判所という役割を持っておりますので、そういった点について、どこまで裁判所の中でやれるか、あるいは民間との協力ができるかというようなことについて、より開かれた裁判所という方向性も重要かと思っております。

斉藤参考人 私たちのような当事者の声をもっと聞いていただきたいです。

 こちらの本日参加されている参考人の方々、子の利益に対しても様々な意見がありました。皆さん違う意見を持っているからこそ、しっかりと時間をかけて審議してほしいです。すぐ法案を作るのではなく、本当にみんなのためになるんだという法改正を望みます。

 以上です。

本村委員 貴重な御意見、本当にありがとうございました。

武部委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、本案審査のため、参考人として、学習院大学法務研究科教授大村敦志君、弁護士原田直子君、民間法制審議会家族法制部会部会長、弁護士北村晴男君及び弁護士岡村晴美君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、大村参考人、原田参考人、北村参考人、岡村参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず大村参考人にお願いいたします。

大村参考人 学習院大学で民法を担当しております大村敦志と申します。

 本日は、このように意見を申し上げる機会をいただきまして、ありがたく存じます。

 私は法制審議会家族法制部会の部会長を務めておりましたけれども、本日は、その審議に参加した一研究者としての個人的な意見を申し上げます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今回の民法等の改正案は、離婚に伴う子供の養育に関する見直しを中心としつつ、あわせて、関連する諸制度の見直しを行うことを内容とするものでございます。

 以下、三つのことを申し述べます。第一に、主な改正項目のうち、民法に関するものを取り上げて、その特色であると私が考える点を指摘いたします。第二に、今回の改正の全体としての特徴、そして第三に、二〇一一年以来の家族法改正の流れの中での位置づけにつき、私の考えるところを申し述べます。

 あらかじめ一言で申しますと、今回の改正案は、全体として、子供の立場を重視するという観点に立った上で、父母と子供の関係に関する民法上の規律につき、個々の親子が置かれた状況の多様性に対応できる形で見直しを行うものであると理解しております。

 初めに、第一点の改正項目の主な特徴についてでございます。五つの点を挙げさせていただきます。

 一つ目は、親子関係の基本原理を明示した点です。

 従来から、未成年の子供に対する父母の養育義務は、親族間の通常の扶養義務、例えば兄弟姉妹の間の扶養義務に比べると程度の高い義務であるとされてきましたが、これには条文上の明確な根拠がありませんでした。今回、明文の規定を置いて、未成年の子供に対する扶養義務が他の扶養義務とは性質を異にする義務であることを宣言したことの意味は非常に大きいと考えております。また、扶養だけでなく、養育全般につき責任を負うことを示したことも意義深い点です。

 あわせて、子供の人格尊重、父母相互の間での人格尊重を求めるとともに、子育てに当たる父母の協力義務を定めたことも重要な点です。さらに、親子交流を親子関係一般の問題として捉えたことの意義も大きいと考えております。金銭面だけではなく人格面についても、重要な規定が提案されていると言えます。

 二つ目は、親権、監護権につき従来不明確であった点を明確に規律した点です。

 婚姻中、離婚後を問わず、父母が親権を共同行使することとされている場合、しかし、実際には共同で行使することが期待できないという場合にどのように対応すればよいのかということを示すとともに、監護を行う親、行わない親、それぞれの権限について整理がなされております。

 三つ目は、父母が離婚した場合、あるいは、そもそも結婚していない場合の親権の行使に関するルールを従来よりも柔軟なものとした点です。

 従来は、離婚後には、父母のどちらか一方が単独行使をするという選択肢しかありませんでしたが、これに父母の双方が共同で行使をするという選択肢が加わりました。あわせて、この選択肢を加えるに当たって、父母の一方か父母双方かという決定が適切になされるような工夫がなされております。すなわち、協議離婚については、不適切な選択がなされたときには裁判所に変更を求めることができるようにし、裁判離婚については、どの選択肢を選ぶかを決める際の判断要素を提示しております。

 四つ目は、養育費支払いの実効化につき、幾つかの制度が設けられている点です。

 まず、標準的な養育費相当額につき先取特権を付与するという形で強制執行を容易にし、次に、養育費支払いの合意がなされていない場合には法定養育費の請求ができることとし、さらに、裁判で養育費の額が争われている場合に、当事者の資産状況等につき裁判所は開示命令を出すことができるとしております。

 五つ目は、関連の諸制度として、養子と財産分与につき一定の見直しをした点です。

 今日では、離婚した父母の一方が子供を伴う形で再婚し、その子供と再婚相手が養子縁組を行うことが少なくありません。今回の改正において、離婚後の親子関係の在り方を見直すのであれば、その関係が子供と再婚相手との養子縁組によりどのような影響を受けるかという点までを視野に入れる必要があります。特に、養子の親権は養親が行うという規定はありますものの、子供を伴って再婚をした実親が養親とともに親権を行使できるかどうかは明らかではありません。今回、明文の規定によって、この点が明確化されております。

 また、離婚後の親子の生活は、金銭面では、養育費だけではなく、離婚の際の財産分与によって大きく影響されます。今日、実務上は、いわゆる二分の一ルール、すなわち、結婚した後に相手の協力によって得た財産については、離婚に当たって、原則としてその二分の一を分与すべきであるという考え方が定着していると言われております。今回の案は、このルールの出発点となっている一九九六年の民法改正案、提案はされたものの実現を見なかったその際の分与規定を立法化することによって、実務の扱いを確認しております。

 次に、第二点、今回の改正の全体としての特徴に触れさせていただきます。

 今回の改正の経緯に関わる特徴といたしましては、親権、監護権の在り方をめぐって、様々な異なる意見が主張されたという点があると思っております。とりわけメディア等では、単独親権か共同親権かという対立図式が強調されることもありました。

 しかしながら、一方で、現行法の下でも、離婚後に、父母の一方が親権、他方が監護権を有するということは可能であり、離婚後の親権は既に完全な単独行使となるばかりではなくなっているとも言えます。また、婚姻中は共同行使であるといっても、単独で行使することができる場合も定められております。

 他方、学説等には様々な考え方はありますけれども、離婚後の親権を共同行使にするとしても、全ての事柄につき全ての場合に共同行使とするわけではなく、共同行使の対象となる事項、場面の設定には幅があります。どのような考え方に立つにせよ、単独行使となる場合を全く認めないということは考えにくいところです。つまり、ここで問われているのは二者択一ではなく、程度の問題であるということでございます。

 法制審の部会では、最終的には、少数の委員が要綱案に反対の態度を崩しませんでしたが、様々な角度からの検討をした上で、異なる立場の意見を調整した案ができたというふうに思っております。今回の改正案はそうした検討を踏まえたものであると理解しております。

 結果としてできた案のもう一つの全体的な特徴は、父母と子供との関係は、離婚の際に一度決められてそのまま固定するというものではなく、その後の状況の推移の中で変化することを前提に考えられているということでございます。父母の間で離婚時の緊張関係の下で共同行使と決めても、後になってこの決定が適切でなかったといたしますと、裁判所を通じて変更することが可能です。あるいは、当初は単独行使が適当であるといたしましても、時間がたって父母の関係が安定してくれば、共同行使への変更も可能になってまいります。

 こうした制度は、変化する状況に柔軟に対応することを可能にいたしますが、当事者にとっても裁判所にとっても、適切に運用するのが難しいところもございます。そこで、一方では、当事者の決定をサポートする仕組みが様々な形で設けられることが期待されます。他方、裁判所は、特に制度のスタート時からしばらくの間、運用には慎重を期していただきたいと考えているところでございます。

 最後に、第三点といたしまして、今回の改正案を二〇一一年以来の家族法改正の流れの中に位置づけておきたいと思います。

 一方で法制審での議論に基づく改正といたしましては、二〇一一年の児童虐待関連の親権制度の改正、二〇一八年の相続法改正及び成年年齢引下げに伴う婚姻法の改正、二〇一九年の特別養子制度の改正、二〇二二年の実親子法及び親権に関する改正がございます。他方、それとは別に、二〇一三年の最高裁の違憲判断に基づく非嫡出子相続分の平等化、二〇二〇年の生殖補助医療特例法による親子法の特則導入などがございます。

 これらに加えて、更に今回の離婚後養育を中心とした改正が実現いたしますと、二〇〇〇年代後半に民法学界において想定されていた範囲については、改正はほぼ一巡りしたことになります。一連の改正は、親子関係を軸に、カップルの在り方にも及ぶものでしたが、そうした構造を端的に示しているのが今回の改正案であると考えております。この改正が実現いたしますと、平成期の家族法改正はひとまず完成し、家族法改正は次のステージに入ることになります。その意味で、今回の改正は非常に重要な改正であると位置づけております。

 また、今回の改正論議の中には、家族の将来像を探る視点も含まれていたように思います。

 例えば、親一般の責務に関する規定は、差し当たりは父母のうち親権を持たない者も親としての責任は負うことを確認する規定として設けられておりますが、どの親も同等の責務を負うという規定は、実親二人、養親二人、合計四人の親がいるときに、養親二人だけではなく実親二人も養育の権利義務を同等に有するのではないかという問いを引き起こします。実際のところ、法制審の部会ではこの点に関わる議論も交わされました。また、子の養育以外の目的による養子縁組をどの程度までどのようにして認めるのかという問題もございます。

 一言で申しますと、養子というものを通じてこれからの家族の在り方を考えていくということが将来の課題の一つとして残されているように思います。

 この点はおきまして、十五年に及ぶ国会の内外での継続的な検討を通じて、試行錯誤を重ねつつ、家族法に順次改正が加えられて、現代の家族の状況に対する対応が図られてきたことの意義は非常に大きいと考えております。この先も、新しい時代の要請に応じながら堅実な改正の歩みが続くことを期待しております。

 私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

武部委員長 ありがとうございました。

 次に、原田参考人にお願いいたします。

原田参考人 こんにちは。福岡県弁護士会の弁護士をしております原田直子と申します。

 本日は、意見を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、法制審議会家族法部会の委員としてこの議論に参加してまいりました。今日は、部会という形で表現させていただきますが、ただいまの大村参考人、委員長の発言を否定するものではありませんけれども、法文上、部会で合意した趣旨を明確にするためには必要な修正を行うべきであるという意味で意見を述べた上で、それでも現時点で共同親権の導入は危険であるという趣旨で意見を述べさせていただきます。

 まず、全体の、親権という言葉ですけれども、諸外国では共同親権と言われていますが、親権ではなく親責任とか配慮義務が主流です。今回、八百十七条の十二として親の責務が明記されたことは歓迎いたしますが、親権という言葉が残り、包括的な子に対する親の権利があるかのような誤解を生む可能性があります。権限は、義務を遂行するために必要な範囲での権限であるべきで、親権という言葉を使わなくても、例えば、居所指定権とか法定代理権とかいう形で、権限ごとに明確にすればよいのではないかというふうに考えます。

 次に、八百十七条の十二に関して、親の責務についてですけれども、今回の法案では、「その子の人格を尊重するとともに、」となっていますが、子の意思の尊重という言葉にはなっていません。

 部会の補足説明では、子の人格の尊重の中に子の意思の尊重も含まれるというふうに説明されましたが、子どもの権利条約の表現と合わせて、子の意思の尊重という言葉をきちんと入れるべきだと思います。

 あっ、ちょっと言い忘れましたが、私が提出いたしました意見の趣旨の資料の一に、このように改正すべきだということをまとめておりますので、御覧になりながらお聞きいただければというふうに思います。

 先頃改正されました民法八百二十一条に、同様の文言、つまり、人格の尊重という言葉が入っているのですが、八百二十一条に人格の尊重という言葉が入ったのは、懲戒権との関係で、子に体罰を与えてはならないということが主な趣旨でした。意思の尊重とは趣旨が違います。

 子供は、自分のことが決められるに当たって、状況の説明を受け、十分に意見を聞いてもらい、そのとおりにならない場合には、その理由をきちんと説明してもらうことによって納得感を得られますし、それが子の利益につながるものと考えます。人格の尊重という言葉ではなく、意思又は心情の尊重とすべきだというふうに思います。

 次に、八百十二条の十二の二項についてですが、さらに、父母は、「互いに人格を尊重し協力しなければならない。」という条文も提案されています。この条文は、フレンドリーペアレントルールを取り入れたものだと解釈される議員さんがいらっしゃいますが、それはその議員さん独自の解釈であり、法制審の部会の合意ではありません。

 今回の法改正全体では、DVや虐待から子供を守るという視点が重要であるということは部会全体の一致点で、それをどのように条文にしようかということが議論され、お互いの人格の尊重という言葉を入れて、一方配偶者の他方に対する攻撃が違法であるという、裁判の際の規範にもなり得るような条文の作りにしてはどうかという意見を受けて盛り込まれたものと理解しております。

 そもそも、フレンドリーペアレントルールというのは、相手の親と友好的な関係を築くべきというものです。別居、離婚の理由が、DVや日々どなり散らされるような精神的ハラスメントをしているような親であっても、例えば、年間百日面会交流させると主張した親に親権者を与えるといった極端な判決に見られるような考え方です。ひどい身体的暴力を受けていた場合はもちろんですが、毎日のようにどなられたり、監視されたり支配されたりしていたDV被害者に、子供のためとはいえ、友好的な関係を築けと言えるでしょうか。

 このルールは、DV加害者に親権をよこせと言うためのルールにほかなりませんので、解釈上のみならず、法文上もこのルールを採用したものでないことを明らかにしておいていただきたい。例えば、DV、虐待等の父母間に生じたことの主張を妨げるものではないなどのただし書を入れるなどですね。昨日の答弁の中でも、一義的には言えないという言葉が何度も出てきましたけれども、DV被害者に加害者と仲よくしなさいなどと言うことがないように、明確にしていただきたいというふうに思います。

 次に、八百二十四条の二、親権の行使についてですが、共同か単独かは、どちらが原則でもない。つまり、共同が原則ではないということを条文上も明確にしていただきたいと思います。

 改正案の条文について、離婚後も共同親権が原則であるとされたと主張される方がおられます。昨日の議論の中での大臣の答弁に対しても、私とは反対の立場の方の御感想ではありましたけれども、中途半端ですよねというような感想を述べられました。そう、中途半端なんです、この条文。

 この条文は、婚姻中の親権は共同とされていた条文について、婚姻中という文字を取ったものにすぎません。にもかかわらず、提案されている条文では、ただし書として、「その一方のみが親権者であるとき。」と書かれているので、単独親権が例外規定にも読めてしまい、共同親権を原則とするかのような誤解が生じています。

 しかし、法制審議会の部会では、共同親権を原則とすべきとの意見では一致しませんでした。共同親権が原則だという発言に対しては、そこまで合意した覚えはないという明確な反対意見も出されましたし、私、共同親権を原則とするものではないですよねという発言をしまして、どなたも反対意見を述べられませんでした。

 ですので、誤解を引き起こさないように、あくまで単独か共同かは選択になるということを明確にするためにも、親権は父母双方が親権者である場合は共同して行うというふうにすべきだと思います。

 次に、共同親権を選択しても一方の親が単独で親権を行使できる例外規定として、「子の利益のため急迫の事情があるとき」という文言が提案されています。これは何度も議論されているようですが、私はこれを改める必要があると思います。これでは、DV等の被害者が安全に逃げることができなくなってしまい、子供も危険にさらされます。

 急迫という文言から皆さんはどのような印象を受けられますか。目前に迫った危険があるという場合というのが一般的ではないでしょうか。法制審議会では、父母の協議や裁判所の判断を経ていては適宜の親権行使が行えず、結果として子の利益を害するおそれがある場合となっており、暴力を振るわれたそのときという限定的な時間だけではなく、もっと広い概念とされていました。

 部会の補足説明にはいろいろ書かれていますが、現在、最も論争になっているのは、離婚前に一方の親が子供を連れて家を出る場合です。この点、部会では、DVや虐待からの避難が必要な場合には、DVや虐待があった直後でなくても、別居のための準備をした後の別居でもよいとされています。つまり、別居するための協議、提案することすら困難なDVや虐待がある場合や、話合いができないような緊張関係がある場合、あるいは、子供の転校の時期などを考慮して準備の上別居する場合も急迫に含むとの合意があったと認識しています。しかし、急迫という文言では、このような事態を含むかどうか疑問となり、DVの場合には到底被害者や子の安全の確保はできません。

 現在の実務では、一方の親権者が子を連れて別居しても、子を連れて家を出た場合と子を残して自分だけが家を出た場合とではどちらが子供のためになるか、あるいは協議の実現可能性があったかどうかという二点で判断されています。子を連れて出た方が子供の主たる面倒を見ていた人であって、子供を連れて出た方法が問題なければ違法とならないとされています。子供を連れた別居ができなくなれば、危険にさらされるのはDV等の被害者と子供です。急迫との言葉は狭過ぎるので、その文言を変えていただきたいと思います。

 さらに、そもそもDVや虐待は、身体的な暴力だけでなく、大声でどなるなどの精神的DVやモラルハラスメントも含まれるというのが一般です。精神的DVでも保護命令が出せるようにDV保護法が改正されました。そして、保護命令は被害者が逃げるということを基本としていますので、共同親権の間は子供を連れて逃げられないということになったら、DV法との整合性が取れなくなってしまいます。このようなDV法の仕組みと整合性を明確にしておかなければ、行政やその他の支援者が支援する場合の判断基準に大きく影響し、支援が滞る可能性があります。

 特に、同居のまま裁判で協議するとした場合、最も被害を受けるのは子供です。家庭内別居状態の子供の生活、親の顔色をうかがい、会話のない冷たい家庭内での生活であり、それがお子さんにとってよいはずありません。済みません、何か想像してしまうと涙が出てきます。双方の親のメッセンジャーのような位置にある子供も珍しくありません。別居を決意される方は、親の紛争下に子供をさらすことがよくないと考える方も多くおられます。両親間の葛藤が子の利益に反することは一致した認識だと思います。午前の面会交流支援を行っていらっしゃる方も、子供の望みは親がけんかしないことだというふうにおっしゃっていました。

 したがって、急迫ではなく、父母の協議や裁判所の判断を経ていては適宜の親権行使が行えず子の利益を害するおそれがある場合というふうにすべきだと思います。

 もう一つ、DVは立証が難しいという問題があります。DVは、家庭内という狭い空間で行われ、被害者も自分がDVを受けていると分からないまま体調が悪化したり、病気になる人もいます。加害者から離れて初めて異常なことだったと分かるのです。とすると、そもそも証拠を確保することが難しいです。そんな場合にも、証拠がないからといって、子供を連れて避難できなかったり、裁判所により共同親権を強制されたりすれば、被害者はおろか子供も大変つらいことになります。したがって、家庭裁判所の充実と科学的知見を備えた専門家の配置が必要となることをつけ加えさせていただきます。

 そして、八百二十四条の二、二項ですけれども、共同親権でも単独で行使できるとされているもう一つの場合、監護及び教育に関する日常の行為については親権を単独で行使することができるという案が示されています。しかし、まず日常行為というものの範囲が明確ではありません。日常行為が何かということをめぐって争いになるでしょう。それぞれの親が、それぞれ勝手に、子供の習い事とかの契約をすることになり、子供はどうしたらいいんでしょうか。学校や医療機関など第三者は、父母の同意をどう得たらいいのでしょうか。クレームを恐れてあらゆる場面で父母の同意を求めるようになれば、子供は当たり前の教育や医療も受けられなくなりかねません。

 この点をめぐっては昨日も何度もやり取りがありましたが、国会でもはっきりしないで、そんなやり取りをいっぱいしないといけないような状況で、子に関わる第三者が慎重になり、その影響を受けるのは子供であり、それが子供ファーストなのでしょうか。

 さらに、離れていても日常行為であれば単独で行為できるとすると、子や子の世話をしている監護親の知らない間に、何らかの行為がなされる可能性があるとも言えます。

 この点、法制審の部会では、例えば、面会交流中の飲食などが例示されていました。つまり、継続的にでも一時的にでも、現に監護している親に関しては単独行使を認めるという趣旨でした。誤解なきように、現に監護している親と入れるべきだと思います。

 そのほか、共同親権でも、監護者を決めて、共同親権者の意見が分かれたときに、家庭裁判所に行かなくても決めることができる人を決めておくということも、子供が生活上の不自由を来さないという意味で重要ではないかと思っています。

 一方の親が反対するということは、拒否権を与えるということです。そして、裁判所を経なければ何も決められなくなり、一番困るのは子供です。

 日本の裁判所は、非常に、人的、物的な体制が整っておりません。

 附帯決議でも述べられていますが、現在でも、二百三ある支部のうち、四十四の支部に裁判官が常駐していません。大規模庁でも事件の審理に時間を要し、調停では裁判官がかけ持ちしているので、なかなか進行しないという実態があります。

 調査官は本庁や支部でも大きなところにしかいないので、子供の調査に関する家庭訪問などの時間には制限がありますし、子供が家庭裁判所に呼ばれるときは学校を早退して行かなければならないという場合も多いんです。現在でもこのような状態で、今回の改正案で新設される家裁の役割を果たせるのか、本当に疑問です。

 日本で九割を占める協議離婚、これに対する対策は何もありません。ここで全ての方たちが真摯な合意ができるのでしょうか。離婚しようとしている両方の父母が、対等、平等に協議して、共同親権を選択できるのでしょうか。選択だからいいとは言えない実態があることも是非考えていただきたいというふうに思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

武部委員長 ありがとうございました。

 次に、北村参考人にお願いいたします。

北村参考人 まず、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。

 今回の法案につきましては、新聞等で原則共同親権になどと見出しを打っているものがありますが、この見出しは誤りでございます。共同親権も選択可能にというのが正解です。

 この法案は、海外に向けて、我が国も共同親権にしましたよというアピールができるという意味では意味があるのかもしれませんが、原則共同親権とはほど遠い内容であり、その実態は骨抜き共同親権、まやかし共同親権でございます。

 では、まず最初に、大事なことですので、なぜ私が原則共同親権にすべきと申し上げるのか、この理由を御説明します。

 説明の便宜上、大部分の子供や親に当てはまる理由や事情についてお話しします。立法行為というのは、最大公約数にまず寄り添って、そして例外的なものを十分救済する、これが当たり前のことですので、これを先に申し上げます。

 これまで我が国が採用してきた離婚後単独親権という制度は、子供も親も不幸のどん底に突き落とすとんでもない悪法でございます。

 子供たち、子供は、親が離婚するとそれだけで大きな悲しみを味わいます。のみならず、単独親権の下では、親が離婚すると自動的に大好きな親を一人失います。そして、それに連なる祖父母、親戚も全て失います。

 子供にとって、双方の親から、双方の祖父母から、双方の親戚から愛情を持って育てられ、見守られ、重層的に見守られながら成長すること、これが極めて重要である。そもそも、そういう生活を子供は望んでいます。子供は、パパにもママにも、父ちゃんにも母ちゃんにも、しょっちゅう会いたいんです。

 離婚後単独親権は、こうした当たり前の幸せを奪う、とんでもない悪法です。

 子供は無力であり、両親の離婚を止めることはできません。だから、両親と一緒に住むことはできないけれども、せめて日常的に二人の親とそれぞれ一緒に生活する時間を十分に取ってあげなければいけない、これが社会の義務であり、国の義務でございます。

 これまでのように、例えば、母親と一緒に暮らす子供が、父親とは一月に一回、監視付面会交流施設でしか会えないなどというのは、子供や父親の人間性を無視した間違った制度です。離婚後単独親権という制度は、子の幸せと成長の機会を同時に奪うとんでもない悪法なのでございます。

 加えて、例えば、親権を獲得した母親は、自分が嫌いになった元夫に我が子を会わせたくないと考える、そういうケースが多いです。そのため、父親と会ってきた我が子が楽しそうに父親について語ると、顔を曇らせ、不機嫌になります。子は母親の感情を敏感に感じ取り、父親の話をしなくなるばかりか、間もなく、大好きだった父親に会いたくないと言い出し、父親を嫌悪し、激しい誹謗中傷を繰り返すようになる、これが片親疎外症候群です。一緒に暮らす母親の愛情を失わないための子供の生存戦略であります。気の毒としか言いようがありません。こうした中での子供にかかるストレスや子供に及ぼす悪影響は計り知れないものがあります。

 では、親にとってはどうでしょうか。単独親権制度では、離婚すると必ず一方の親は愛する子を失い、それに連なる祖父母、親戚は孫と二度と会えなくなります。これによる悲劇は全国各地で起きており、子供に会えない絶望から自殺される事例も少なくありません。弁護士をしていれば、子に会えない親、孫に会えない祖父母の嘆き悲しむ姿に心を痛めたことのない人は少ないでしょう。

 そのために、必然的に親権争いは苛烈になり、父親、母親はそれぞれ本来全く必要のないはずの多額の弁護士費用を払うことになり、もうかるのは弁護士だけというとんでもない事態を生んでいます。

 不心得な弁護士は、どこの夫婦にでもある取るに足らない程度の夫婦げんかでさえ、DVがあったと主張し、DV主張合戦に発展することも多い。それが親権獲得のための法的テクニックであるとか、あるいは、虚偽DV訴訟と言われて社会問題化しており、我々弁護士が認識するだけでなく、裁判官も異例の指摘をするに至っています。

 資料一を御覧ください。このような事態は、現に世の中に存在する救済可能な深刻なDVを埋もれさせてしまう、そういうおそれすらあるのです。つまり、子にとっても親にとっても人間性に反するとんでもない悪法が離婚後単独親権、そういう制度です。

 これに対し、離婚後も、父親と子供、母親と子供、それぞれの交流を十分に行うことができる離婚後共同親権制度は人間として当たり前の制度であり、先進欧米諸国では、早くから単独親権の非人間性に気づき、共同親権制度に移行して三十年、四十年の実績を積み重ねています。海外の映画やテレビドラマを見れば、父親、母親、子供、双方の祖父母、父親や母親の再婚相手などが当然の制度として受け入れ、社会に浸透していることが分かります。

 日本で一部主張されているような、共同親権になれば元配偶者による暴力が防げないであるとか、子の虐待につながるなどという実態はありません。この主張は、日本人だけが、共同親権の下では元配偶者による暴力を防ぐ制度設計ができない無能な者であるというふうに言っているのに等しいものです。

 他方、日本では、両親の離婚後に母親の恋人や再婚相手から子供が虐待され、死亡にまで至るという悲惨な事件が後を絶ちません。心に問題を抱えた母親が単独親権者となり、子供に手をかけてしまった事例もあります。

 資料二を御覧ください。これらの事件は、共同親権制度の下で、父親による日常的な見守りがあれば、早い段階で子に対する虐待の痕跡などを発見することができ、これらを防ぐことができた可能性は十分にあるのです。そのところをよくお考えいただきたい。

 では、原則共同親権とすべきとの立場から、この法案がいかに骨抜き法案なのか、まやかし法案なのかについて御説明します。

 そもそも、政府が共同親権の検討を法制審議会に促したのは、国際結婚での子の連れ去り問題で、日本が国際社会から子供の拉致国家という不名誉極まりない非難を繰り返し受けたこと、これが原因です。これが契機です。

 国際結婚で海外に居住していても、長年にわたる悪法、離婚後単独親権に慣れ切った日本人の妻は、夫と別れたいと考えると、全く罪の意識なく突然子供を連れて帰国し、居住国の司法当局から拉致誘拐犯として逮捕状を発行され、国際指名手配を受けることになります。これは、日本人の妻が悪いのではありません。長年の悪法によって国民を洗脳し続けた法律の問題です。法律が悪いんです。

 日本はハーグ条約加盟国ですから、こういった場合に直ちに子供を元の居住国に返せば何の問題もない。しかし、日本はハーグ条約の国内実施法に巧妙かつ不合理な抜け穴を用意し、子供を返さない。その抜け穴とは何かというと、子供を連れ去った者が連れ去られた者から暴力などを受けるおそれがある場合、この場合には子供を返さなくてもいいという返還拒否事由です。

 この規定を潜り込ませたために、日本の裁判所がこのおそれを簡単に認めてしまうために、子を返さないのです。子供を返さない。これはハーグ条約にはない条項です。ハーグ条約では、DVとの関係では、子供が虐待を受ける重大な危険がある場合しか返還を拒めないんです。これは当たり前なんです。

 なお、この抜け穴条項の「暴力等」には、子供に心理的外傷を与えるような暴力等というもっともらしい限定が付されていますが、この限定は日本の裁判官には判断不能なんです。だから結局、このおそれは裁判所が簡単に認めてしまって、機能しませんでした。そのため、拉致された子供を返そうとしない日本は、子供の拉致国家という極めて不名誉な非難を浴びることになったのです。

 連れ去った者に対する暴力のおそれがある場合、そういう場合には、警察の助力を得るとか、親族などの第三者が元の居住国に子を連れていくとか、連れ去られた側に日本に迎えに来てもらうなど、工夫次第でいかようにも対処可能であるにもかかわらず、返還拒否事由に強引に入れてしまっています。不合理極まりない。これは、女性を暴力から守るという誰もが認める大義名分を必要以上に、過度に強調することによって本来の立法目的をゆがめてしまった例です。

 そして、このハーグ条約骨抜き条項と全く同じ条項がこの法案にも盛り込まれています。それは何かというと、この法案によれば、例えば、母親が自分だけを親権者にしてほしいと主張、父親が共同親権にしてほしいと主張した場合、こういうケース、裁判所がこれをどちらか決めるわけですけれども、その判断基準の中に、父母の一方が他の一方から暴力などを受けるおそれがあれば単独親権とせよという規定があるんです。

 もっとも、その場合に、共同親権とすると子の利益を害すると認められるときという限定条項はついてはいますが、裁判所にはこれも判断不能です。これは、ハーグ条約骨抜き条項と全く同様で、歯止めには一〇〇%なりません。これは、単独親権誘導条項ともいうべきものです。

 母親が父親から暴力を受けるおそれがあれば、子供の受渡しは親戚などの第三者に任せるとか、第三者機関に委ねるとか、場合によっては警察の助力を得る、弁護士の助力を得るなど、工夫次第でいかようにも防ぐことが可能です。にもかかわらず、女性を暴力から守るという大義名分を過度に、不必要に強調した結果、この共同親権が骨抜きになっているんです。

 ハーグ条約では、そもそも、ハーグ条約加盟絶対反対という活動家の方々がおられ、その方々の強力な工作によって、意図的に国内実施法に抜け穴が作られましたが、この法案の場合も、共同親権絶対反対という活動家の方々、その方々の強力な工作によって、この骨抜き条項、単独親権誘導条項が設けられています。

 そして、この単独親権誘導条項を含めた法案全体にはびこっているのは、あるとんでもない認識です。これは誤った認識です。それは、共同親権制度はそもそも仲のいい元夫婦同士でしか機能しないんだ、高葛藤のすごく仲の悪い元夫婦間では単独親権がいいんだ、この誤った認識が原則共同親権の実現を阻んでいます。

 しかし、かなり仲の悪かった夫婦でも、知恵と工夫次第で円滑に共同親権を行使できる制度を設計することが可能です。そして、それこそが、これまで親の離婚によって取り残されてきた子供の福祉にかなうのです。欧米によい模範となる国が数々あるのですから、制度設計は実に簡単です。

 我々民間法制審議会は、欧米の専門家も委員に迎えて、次のような共同親権の制度設計を行い、改正条文案も作成しました。

 一、未成年の子供がいる夫婦における離婚の届出に当たっては、共同監護計画の提出を義務づける。その際、子供の進学先などで両親の意見が異なる場合の決定方法をあらかじめ決めておく。

 二、未成年の子供がいる夫婦の離婚に当たっては、両親に、離婚による子供の心身に対する影響や子供を傷つけないために注意すべき言動などについて学ぶガイダンスの受講を義務づける。

 三、共同監護計画の作成やその変更などについて両親の協議が調わない場合に気軽に利用できるADRを整備する。裁判所に一々頼る必要は全くありません。

 四、子供を傷つけるおそれのある親と子の交流については、監視付面会交流施設の利用を促す。

 五、元配偶者に対する暴力などのおそれがあると懸念される場合には、共同監護に必要な子の受渡しに当たって、第三者機関を利用し、場合によっては警察の助力を得る。

 共同監護計画の義務づけに関しましては、共同親権制度を中身あるものにするために極めて重要であると我々は認識しています。共同監護計画というのは、離婚する夫婦が行う子の養育に関する取決めのことです。養育費も当然含まれています。私たち民間法制審議会は、離婚の際に共同監護計画を作成し、これを離婚届に添付すること、これを義務づける制度を提案しました。

 共同監護計画の作成は他の先進諸外国では当たり前の制度ですが、我が国ではこれまで存在しないどころか、議論さえほとんどされていません。残念ながら、今国会では、我々の案は議論の俎上にさえ上がっていませんけれども、共同監護計画作成の義務づけこそが、真に子供の利益を第一に置いた共同親権制度の肝なのです。

 考えてみてください。我が国においては、協議離婚は、夫婦が署名、押印さえすれば、紙切れ一枚で簡単にできます。裁判所も含めて誰もが、離婚の際に一番重要なのは子供の福祉だと口にします。にもかかわらず、離婚の九〇%を占める協議離婚において、子供のことについては何にも決めなくても紙切れ一枚で離婚できてしまう、こんな矛盾、理不尽はありません。

 今法案で、この共同監護計画作成に関する条項が一切盛り込まれなかったことは、我々民間法制審議会だけでなく、広くこの問題に関心を寄せてこられた国民にとって痛恨の極みです。願わくば、この法案が成立し施行されたその実施状況に鑑み、早い時期に、改めて、この共同監護計画の義務づけ導入について議論していただきたいと強く希望しています。

 ちなみに、我々民間法制審議会の案では、例外的に単独親権にする必要がある場合、ハーグ条約では、子が虐待を受ける重大な危険がある場合に該当するんですが、その場合に、現行に規定されている、しかし現在ほとんど死文化している親権喪失又は親権停止の規定を積極的に活用することで対応するべきだと考えています。親権喪失や親権停止に該当する事由もなく、ただ離婚しただけで親権が奪われる現行制度の制度としての大変なバランスの悪さ、これも是正していただきたいというふうに考えています。

 いずれにしても、最初に申し上げた、原則共同親権こそが、子の幸せのために、親や祖父母が人間らしく生きるために取り得る唯一の制度であるということを御理解ください。そして、離婚によって親子のきずなまで断ち切るという愚かな行為をもうやめ、本当の意味で子の幸せを一番に据えた民法改正をお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

武部委員長 ありがとうございました。

 次に、岡村参考人にお願いいたします。

岡村参考人 名古屋で弁護士をしております岡村晴美と申します。

 弁護士になって十七年目になります。取扱分野は、DV、性虐待、ストーカーの事件が八割、残りの二割で、職場のパワーハラスメント、セクハラ、学校のいじめの事件を担当してまいりました。

 離婚事件に関しては、これまで千五百件ほどの相談を受け、受任した事件は六百件ほどです。DV事件を担当してきた弁護士として、今回の改正に反対の立場からお話しいたします。

 ここ数年、困難女性支援法の成立、DV防止法の改正、性犯罪に関する刑法改正など、困難や暴力にさらされている女性の支援法の整備が進められてきました。しかし、支援の現場にいる私たちは、それを実感できてはいません。

 現在、DV被害者は受難のときを迎えています。日本では、まだまだ男女の賃金格差が大きく、ワンオペ育児という言葉に象徴されるとおり性別役割分業意識が残り、経済的に劣位に置かれる女性の多くは、家庭の中でDVを受けても、子供を育てるために我慢を重ねるという現状があります。

 DVには、身体的暴力はもちろん、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力、社会的隔離などの非身体的暴力を含みますが、それが社会に周知されているとは言い難く、身体的暴力が重いDVで、非身体的暴力は軽いDVであるという誤解があります。

 DVの本質は支配です。暴力は手段。海外では、ドメスティック・バイオレンスという言葉を改め、ドメスティック・アビューズという言葉が使われるようになっているそうです。

 DVに関する無理解の下、子連れ別居をしたことを、そこだけ切り取って、連れ去り、実子誘拐などと非難する風潮が生まれています。DV被害者に対して誘拐罪での刑事告訴や民事裁判、被害者側弁護士に対する懲戒請求、自分こそが連れ去られ被害者である旨をSNS等で発信し、配偶者や子供、その親族の写真や個人情報を公開するなど、加害行為が別居後にも終わらず、むしろ復讐にも近い形でエスカレートするケースが増えています。

 離婚や別居でDVが終わるという時代はもう終わりました。適切な言葉がないのですが、海外ではポスト・セパレーション・アビューズと言うそうです。日本においても非常に深刻な被害が生じていますが、世間に知られていません。離婚後もパパもママもという言葉は心地よい響きですが、離婚後も子供を紛争に巻き込み続ける危険性について真摯に受け止めなくてはいけません。

 共同親権制度の導入を求める人たちの中に、離婚後の子供に対する養育責任を果たすことを目的としている方もいるでしょう。しかし、親権を権利と捉え、強く親の権利を主張して、自分の思いどおりに子供に関われないのは単独親権制度のせいであるという誤解に基づいた主張も散見され、家事事件の現場で紛争性を高めているという実態があります。

 例えば、未成年者等の健全な育成を監督するために別居親が面会交流を求め、面会交流の不実施について違約金を定めるよう主張するなどした事案では、監護状況の監視を目的とする面会交流は、必要性がないばかりか、子を別居親と同居親との間で精神的に板挟みの状況に置きかねないとして、子の利益に反すると判断されています。

 また、別居親が同居親に対し、父子断絶をもたらした、しつけもできず監護親として不適格などと非難を繰り返し、年三回、一回二から四時間の面会交流を認めた審判を足がかりに、間接強制を繰り返し申し立てるなどした事案では、その抗告審において、別居親と子との面会交流は禁止されています。

 これらの事案は、共同親権制度が導入された場合に、共同から除外されるのでしょうか。共同親権制度の必要性について、不信感を根拠に監視し合うということにあるようにも解されており、不安でなりません。

 二〇一〇年代以降、家庭裁判所は、面会交流について積極的に推進してきました。二〇一一年の民法改正で面会交流が明文化され、二〇一二年、裁判官が論文を発表すると、面会交流は原則実施論と呼ばれる運用となりました。調停の席で、どんな親も親は親、虐待があったからこそ修復をしていくことが子供のためという説得がなされ、DVはもちろん、虐待も、子の拒否すらも軽視されて、同居親にとっても子供にとっても非常に過酷な運用がなされてきました。

 法制審議会では、二〇一〇年の調査に基づいて、離婚直後は紛争が激しいが、三年とか五年で落ち着いてくるということが紹介されていましたが、二〇一一年以降、実務は様変わりしています。

 家族の問題の根本は、人間関係です。離婚後に面会交流ができる人は自分たちで自由にやれています。規律とか約束とかなく面会がやれているのがベストなんです。それができない人、つまり自分たちで決められない関係にある人たちが法律、裁判所を使います。その結果、困難な事案ほど、面会交流の細かい取決めが求められ、審判で命じられるということになりました。面会交流時の殺人事件や、面会交流中の性虐待事件も起こっています。これは極端な事件ではありません。氷山の一角です。

 このような実態を踏まえ、二〇二〇年、家庭裁判所は、運用を改め、ニュートラルフラットの方針を示しました。原則、例外ではなく、ニュートラル、フラット、そういう公平な言葉を二個も重ねて、事案に向かうということが提案されたのです。

 面会交流は子供のためによいものという推定の下、DVや虐待などの不適切ケースは調査によって除外できるという考えで、弊害を生じさせてきました。これは、共同親権制度の導入を考えるときにも参考にすべき経験です。親権の共同は子供のためによいもの、そういう推定に基づいて原則共同親権と解釈することは、子供の利益を害します。

 共同親権制度の賛否が聞かれることがありますが、私は、共同親権か単独親権かという問題の立て方に違和感があります。離婚後の父母と子の関わりをどう考えるかという問題であり、法制度の在り方にはグラデーションがあるはずです。

 現行法では、離婚後の同居親が親権を行使する場合、つまり子供のことを決める場合、単独でもできるし、別居親と一緒に決めることもできます。一人で決める、つまり単独親権と、相談して決める、つまり共同親権、これを選択して行使することができます。

 しかし、共同親権制度が導入され、共同親権が適用されれば、単独で行使することは、例外事由に当たらない限り許されなくなります。つまり、同居している監護親が一人で決めることができなくなるということです。他方の親に拒否権を与えることになるのです。単独行使ができるのか、単独で行使すると違法になるのかというのが共同親権問題の正しい捉え方です。父母の意思疎通の困難さを軽視して共同親権を命じれば、子に関する決定が停滞し、裁判所がDVや虐待を見抜けずに共同親権を命じれば、DVや虐待の加害が継続することになるということを深刻に捉える必要があります。

 他方で、日常の監護に関する共同の規定は、現行法においても、民法七百六十六条という規定が既に存在しています。共同養育に関しては、当事者間で協議ができないときには裁判所が審判で命じることができます。親権の有無と面会交流の実現とは別の問題です。面会交流については、非合意型の審判制度を認めつつ、親権という子供に関する決定に関わる規律については、父母双方の合意がある場合のみ共同行使を選択できる現行法こそ、子供のために最善で最適解の落としどころだと考えます。

 今回の法改正は、子供の養育責任を果たさない親に責任を果たさせるものではありません。子供が別居親に会いたいときに会える手続を定めたものでもありません。同居親の育児負担を減らすものでもありません。男女共同参画を進めるものでもありません。選択肢が広がって自由が増える制度でもありません。父母が協議して共同親権を選べるようになるという説明がなされることがありますが、それは論点ではありません。それに反対している人はいないんです。共同親権制度は、自由を広げる制度ではありません。相談して決めることができそうな人たちにとっては必要がなく、相談することができない対立関係にある人ほど強く欲する制度、それが共同親権制度です。

 親権の共同行使の合意すらできない父母に、それを命じたところでうまくいきません。第三者機関がサポートできるのは、双方に合意がある面会交流に限られていることに留意する必要があります。DVや虐待が除外されなければ、共同親権は支配の手段に使われる可能性がありますが、改正法に抑止策はないに等しいのが現状です。

 法制審議会の家族法部会で要綱を決議した際には、三名の反対、一名の棄権があったものの、多数決で採決されました。これは、多様な意見を取り入れてということが先ほど大村先生から言われましたが、端々にある極端な意見を切って中庸を取ったというのではありません。DV被害者やシングルペアレント支援者の意見がただ単に切り捨てられたということになります。どうか、国会で慎重に議論してください。

 法制審議会で中心的な役割を果たした棚村政行委員は、取材に対し、共同親権が望ましい場合の基準や運用については十分な議論ができなかったと述べています。結論ありきで、議論が不十分なまま推し進めるのは絶対にやめてください。

 反対や慎重な検討を求める声はたくさん上がっています。二〇二四年一月、弁護士有志から法務省に対し、慎重な議論を求める申入れを行いました。その際にも多数の切実な声が寄せられました。代表的なものを二つ御紹介します。

 一つは、ごく普通の離婚の場合でも共同親権制度の導入は子供のためにならないという点。離婚というものの本質は元夫婦間の信頼関係の決定的な破綻。信頼が破壊された父母間が法的手続を利用している。信頼関係にない父母による共同親権は子供のためにならない。

 二つ目、共同親権制度に対する深刻な懸念の声を届けても真摯な対応はなく、皆、失望していますという点。現行法でも何ら共同養育をすることに問題はない。相談者、依頼者から深刻な懸念の声を聞いている。フォロー、ケアの担保なくして法制化はあり得ません。

 二〇二四年二月に実施された弁護士ドットコムのアンケートでも、要綱案に八割が反対という結果が出ています。法案提出前の議論についても、八割が議論は尽くされていないと回答しています。離婚の現場はどう変化するかという問いに対しては、紛争が長期化する、対立が深まる、取決めが細かくなる、トラブルにつながる、結婚や離婚を諦める人が増えるという声が寄せられています。子供にプラスになるという意見は、子供の養育に共同していく意識が醸成されるという理念的なものにとどまるのに対し、子供にマイナスになるという意見は、保育園入園妨害など、子の福祉に反する状況が発生する、養育親が進学や病気の際に速やかに方針決定できないなど、子供の生活に直結しています。

 導入されようとしている改正案は問題が山積みで、十五分の間に指摘し尽くせるものではありません。

 最も懸念されるのは、共同親権制度が適用された場合、同居中であっても別居後であっても、他方の親の許可が必要となり、許可を取らなければ違法とされ、慰謝料請求されるということになることです。これを抑止する手当てがありません。ポスト・セパレーション・アビューズの武器が無限に加害者に与えられます。対策なく法改正されることになれば、家族法は、ストーカー促進法、嫌がらせ支援法となりかねません。

 裁判所の人的、物的の資源の拡充もなく、規定が先行することに対しても大きな懸念があります。現在でも家裁はパンクしています。二か月に一回も期日が入りません。共同親権制度が導入された場合、共同親権か単独親権か、共同親権にした場合、監護者を定めるか定めないか、監護者を定めなかった場合、監護の分掌、教育は父だが医療は母など取決めをするのかしないのか、はたまた、平日は母、休日は父などの監護の期間の分掌をするのかしないのか、複数申し立てられた項目の採否を家裁が全て判断することになります。これは多様性の反映ではありません。制度の複雑化です。

 そして、せっかく決めても、共同と決まった場合に問題が生じれば家裁に持ち込んで決めてもらう必要が生じ、今後に備えて、単独親権を求める申立ても併せて起こることでしょう。そして、単独と決まっても、また今度は共同への親権者変更が起こされる可能性があります。

 祖父母等、第三者の面会交流が認められたことによる面会交流事件の件数の増加、審理の長期化も避けられません。

 中間試案に対する各裁判所の意見にも、争点が複雑化し、審理が困難で長期化し、申立てが濫用されるという意見が随所で上がっていました。これは容易に推察できる具体的かつ深刻な懸念です。

 現場の感覚で申し上げるなら、裁判官、調査官の増員は二倍、三倍では足りません。過重な事件を抱えた家庭裁判所が迅速に審理を進めようとすれば、原則共同親権の運用に流れ、説得しやすい方、つまり弱い方に痛みが強いられ、子供やDV被害者の意見が封じられることになるでしょう。

 現場から声を上げても意思決定機関に届くすべがなく、今回、このような機会を賜りましたこと、本当にありがたく思います。今回お出しした資料が百六十六ページにも及んでおりまして、議員の皆様におかれましては、大変御迷惑なことかもしれません。しかし、この半分は、私ではない、現場の弁護士の切実な声を集めたものになっています。すごく大切な法案です。是非お目を通していただきたいと心より思います。

 以上が私からの報告です。ありがとうございました。(拍手)

武部委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

武部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。斎藤洋明君。

斎藤(洋)委員 自由民主党の斎藤洋明でございます。

 参考人の先生方には、本日、御出席いただきましたこと、私からも感謝申し上げます。

 早速質問に入らせていただきます。

 午前中の質疑におきましても、条件付賛成、反対も含めて、様々な参考人の先生方がおられましたが、調停委員や家裁調査官、あるいは裁判所の設備について不安を訴える声がございました。

 そこで、改めて、御出席の四人の参考人の先生方にそれぞれ、今申し上げた調停委員、家裁調査官、あるいは裁判所の設備といった環境は、この法改正後の対応として、十分に対応できる体制になっているとお考えになっているかどうか、もし不十分だとお考えになるとすれば、どういう対策が考えられるか、それぞれお考えをお聞かせください。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 家裁の体制が十分であるかどうかという点につきましては、法制審の部会でも再三にわたって議論はされたところでございます。

 私自身も、現在の体制について、十分かどうかということについては、更なる充実というのが必須であろうというふうに思っております。家庭裁判所はその方向で御尽力をいただければというふうに考えているところでございます。

 以上です。

原田参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、先ほど述べましたけれども、全国の裁判所、各県に本庁というのがありまして、あと、支部が二百三ありますが、そのうちの四十四は裁判官が常駐しておりません。調査官はもっと少なくて、本庁か大きな支部にまとめていて、小さな支部で事件があったときに出張していくというような体制です。かつ、調査官も、まだ定員、全員を満たしておりません。

 それから、誤解をされるといけないんですけれども、調査官というのは女性が多いものですから、時短を取っていらっしゃる方もいらっしゃって、例えば、福岡の家庭裁判所では、昔、私が若い頃は、五時までぎりぎり調停があったりしていたんですけれども、今は、四時半に終わるように努力してくださいというふうに言われています。そういうような状況です。

 家庭裁判所は、裁判官が常駐していないとか、あるいは出張所で事件を行わない、受付だけ行うようなところに、もっと充実してくれと言いますと、いやいや、事件数がそんなに多くないんだから、事件数に合わせて配填していますよというふうに最高裁は多分おっしゃると思います。

 ただ、そういう人口が少ない、事件数が少ないところにも子供はいるんです。過疎地にいる子供は待たされるのか、あるいは本庁まで行きなさいというのか、大きな支部まで行くのかというような問題があって、そういう経済効率だけではない体制の充実というのが、本当に子供のためを思うなら、是非国家予算をそういうふうに考えていただきたいというふうに思うんですけれども、そんなふうにしていただけるようなめどが私どもには見えておりません。

 なので、本当に家裁の充実ということをしっかりやっていただきたいし、それから、調査官だけではなく、調査官には専門的な知識を持っていらっしゃる方がいらっしゃるというふうにはなっておりますが、例えば児童精神科医とか、そういう外部の方に、子供さんが本当にどういう気持ちでいるのかとか、子供さんやお母さんが、あるいはお父さんがどういうことでこんな紛争に巻き込まれて困っていらっしゃるのか、何をカウンセリングなどしたらいいのかということを、意見を言っていただけるような専門家を是非使えるようにしていただきたいし、今は、そういう意見書を書いていただくのに、当事者がお金を払って診断書を書いてもらわないといけないんですよ。そういうときに、やはり公費でそれができるような仕組みをつくっていただきたいというふうに思います。

 以上です。

北村参考人 この法案が通ったことが前提の御質問だと理解しています。

 恐らく、先ほど私が申し上げた苛烈な親権争い、これは今裁判所を悩ませております。多数の事件があります。それとほぼ同じ、同数が、恐らくですけれども、私がさっき申し上げた、片方が単独親権にしてほしい、自分だけの親権にしてほしいというふうに御主張される争い事になっていくんだろうなというふうに思います。だから、その意味では余り変わらない可能性があります。

 ただ、それ以外で、共同親権をそもそも最初から選択したケース、その場合の運用の場合に、様々悩みが出たときに必ず裁判所に駆け込むか、ほかにADRなどの施設が整っていないからそこしか行き場がないとすれば、裁判所にはかなりの負担になると思います。ですから、是非ともこれは、現時点からそういった、共同親権を運用していく場合のガイダンスもそうですし、多分一定程度は選択されると思うので、それの運用の仕方のガイダンスも必要ですし、それから、全国各地にADRを整備する必要があると思います。

 今現在、監視付面会交流の施設が全国にたくさんあって、これが一つの利権になっていますけれども、そういうところが、その代わりにというか、ADRで様々な細かい相談に乗っていく、そもそも日本人は余り裁判所に行くのを好みません、元々。ですから、多少の争い事であれば、ADRでささっと解決できるような仕組みを是非つくっていただきたいというふうに思っています。

岡村参考人 この家裁のマンパワーなどに関しては、お配りした資料十五の五枚目に、現状、このときは要綱のたたき台という、アンケートだったんですが、たたき台どおりに改正された場合、八割が家裁はうまく機能しないというふうに答えておりまして、うまく機能するといった人が一・一%しかいなかったというぐらい、家庭裁判所は現時点でパンク状態にあります。

 お尋ねしていただいたものは、法制度が実施された後ということでしたが、私の考えは、まずこれを改善することによって、法制度が必要だという人もさほど不満がなくなるということがあり得るのではないかというほど、現在家庭裁判所に向けられている家事事件に対する不満のかなり大きな要因は、家裁のパンク状態というものが原因となっていると思います。

 ここに、寄せられた声として最も目立ったものは、家裁は現状でもマンパワー不足であり、今以上に役割を増やすのは対応が難しいのではないかということが懸念の声とあります。ここにも書いてありますが、マンパワー不足で事件が滞留すると、結局、面会交流と同じで、原則実施ということにして、丁寧に事件を見ずに、DVや虐待も除外されない、高葛藤で、とても子供が忠誠葛藤でピンポン球のように行き来させられるようなことも防げないみたいなことになりかねない。

 共同親権に関しても、今までは親権を、どちらが同居する親としてふさわしいかぐらいの感覚でしかありませんよ、実務は。親権争いが過酷だといいますけれども、離婚するんですから、どっちかの親と暮らさなきゃいけないわけですよね。それを、どっちの親が適切かなということで審理していただけだったのが、今後は、更に共同が不適切な親かもしれないということを審理しなければいけない、それがかなり長期化に結びつくというふうに思いますので、まずは先に、制度の前にというのが私の一番の気持ちですが、仮に制度どおりになったとしても、もう本当に二倍、三倍ではとても足りない、家庭裁判所のマンパワーを早急にもう五倍とかそれぐらいしないと追いつかないだろうというふうに思います。

斎藤(洋)委員 ありがとうございます。

 次にお尋ねをいたしますが、DV事案に対する対応ということが、賛成派、反対派いずれの方々からもお寄せいただいております。

 そこで、まず大村参考人と北村参考人にお伺いしたいと思いますが、DVが密室で行われるために見えにくい、これは指摘されるところであります。DVのおそれがあり、かつ、共同親権を選択することで、結果としてDVのリスクが増してしまうというような事例があり得るという指摘がありますが、それに対してはどのように対応していくことが適切と考えられますでしょうか。

大村参考人 ありがとうございます。

 DV事案への対応ということは、今回の改正案にとって非常に重要な問題であるというふうに考えております。法案の中には、DVに対応するための規定というのが置かれております。それ自体非常に、この規定が置かれたということの意味は大きいというふうに考えております。

 まず、父母間の尊重や協力についての規定が置かれましたけれども、尊重というのは、やはり、DVのようなことがないということが求められるということであろうかと思います。その上で、個別の規定にDVについてかなり詳しいことを書き込んでおります。ですから、裁判官は、このように書き込まれた規定というのを前提に対応をするということになるんだろうというふうに思っております。

 その上で、やはり、見えない問題があるというのはそのとおりで、そういうふうな問題はあろうかと思います。これについては、先ほどから出ておりますけれども、調査官の増員等を図るなどによって実態の把握に努めるということが望まれるのではないかというふうに考えております。

 私からは以上でございます。

北村参考人 DVについて証拠がつかみにくいという今御意見もありましたけれども、我々の実感としては、今、あらゆる機器が整備されていまして、スマホを持っていない人はほとんどいない、携帯を持っている方、録音機能、動画撮影機能等、大変持っておられる。なので、密室で行われているから証拠が本当にないんだというケースというのはさほど大きくないと思います。少なくとも、DV被害者を救済しようとして啓蒙活動をするのであれば、常にスマホで、多少の暴言等があっても全部録音しておいてほしいという啓蒙活動が行われれば、証拠がつかみにくいということはなかなかないのかなというふうに思います。

 逆に、DVがありましたと言うだけで証拠が出されてこないケースで、裁判所がDVはなかったというふうに認定するケースも多いんですけれども、これは、実際、簡単に証拠をつかめるにもかかわらず出さなかったというケースというふうに判断されているわけで、その判断が必ずしも間違っているとは私は思っていません。

 もちろん、さっき別の御意見があった、知らないうちにDVになっていたんだ、これは確かに証拠をその場で押さえることはできなかったでしょう。しかし、そういうケースは、ある程度、その後に、一旦弁護士さんのところに相談に行って、ああ、これはDVですよね、ああ、なるほど、そうなのか、その段階以降で証拠を押さえるというようなことになろうかと思っています。

 以上です。

斎藤(洋)委員 関連してお尋ねいたします。今度は原田参考人と岡村参考人にお尋ねしたいと思います。

 DVが見えにくいということのリスクとして、一つは、共同親権がDVの一つの温床になりかねないという指摘もある一方で、虚偽のDVの申立て、ないしは、連れ去りをすることによって既成事実をつくってしまう、あるいは、本来父母で子を監護するはずが単独親権の方向に持っていかれているケースもあるのではないかという指摘もあります。

 この指摘に関しましてはどのようにお考えなんでしょうか。

原田参考人 御質問ありがとうございます。

 少なくとも私は経験していません。

 私どもも、私、四十二年弁護士をやっていますけれども、おいでになったときに、その方から詳しく話を聞いて、その方の話が、整合性といいますか、どこかにうそがあると、やはり、前に話したことと今度話したことが矛盾していたり、えっ、何でそうなるのということが必ず出てくるんですよ。そういう意味では、写真とか診断書がなくても、裁判所がDVを認定する場合は、その供述の信用性ということで同じような判断をされるのではないかというふうに思います。

 逆に、相手方から虚偽だというふうに言われることもありますけれども、じゃ、例えば、こちらが五発殴られましたというときに、全く殴っていませんと言う人は少ないです、一発しか殴っていませんとか振り返ったら当たりましたとかいうふうにおっしゃる方がいらっしゃるんですね。それは、でも、受けた人にとって、相手方が故意かどうかという問題と、受けた人がそれによって打撃を受けたというのをどう評価するかという問題だと思うんです。

 私は、虚偽DVだからというふうに言われて虚偽だと裁判所に認定されたことはありませんし、御本人のお話を聞いて、それに何らかの矛盾があるなと思う場合は、主張しません。それは、やはり、立証するという、私たちの職業的な勘といいますか、そういうものからすると、やはりお話を聞いて、その方のお話に矛盾がなければ、それはそのとおりだなというふうに思っていますし、どちらかというと、虚偽だとかうそだとかいうふうに言われる方の方がうそをついているのではないかと、私は印象を持っています。

 以上です。個人的なお話でごめんなさい。

岡村参考人 お尋ねいただいてありがとうございます。

 虚偽DVと連れ去りという問題に関して、子供の親権争いという点にフォーカスしますと、私が個人的に言っていると思われても嫌なので、新日本法規の「離婚事件における家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点」という現役の裁判官の書いた本から読みますけれども、日本は、親権争いといっても調停前置主義が取られておりまして、親権を争う前にまず調停をやらなければいけないので、この百九十五ページにこう書いてございます。

 実務上、親権について真に争いがある事案では、離婚訴訟に先立ち、子の監護者の指定、引渡審判を経ていることが多く、その中で監護者指定について裁判所の判断が示されている場合云々かんぬんとあります。

 ですので、監護実績を積むために子供を連れ去って有利にするということが実態上あり得ない。あり得ないことが広まっている。それは、私が共同親権制度の導入に反対する大きな原因の一つでもあります。すごく実務感覚と、どこの国の話をしているんだろうというぐらい、私が見ている実務と違っている。でも、私が見ている実務は、この裁判官の書いている本と同じです。だから、すごく、それはうそだというふうに思っています。

 虚偽DVといいますけれども、実際にDVを主張する場面などありません。まず、親権争いは、今申し上げたように、監護者指定の争いになり、監護者指定の争いで一番重要なのは監護の実績です。その実績は、同居中の、おぎゃあと生まれてから、どちらの親が結びつきが強かったかということによって決められています。

 余り長くならないように、ちょっと一点だけ申し上げますと、例えば、最近ですと、両方の親とも、夫婦の生活スタイルの多様化で共稼ぎもあるじゃないかというんですけれども、この裁判官の本には、百二十三ページにこう書いてあります。

 そういう多様化がされているというふうにいっても、結びつきが強いこと、いわゆる保活や入園後の保育との対応、子の衣類や持ち物の準備、発熱時の預け先の確保、発育上の問題についての相談、習い事の選定、調査、調整、判断を要する事項を担い、育児の司令塔的な役割を果たしていたのはどちらの親か。

 そういったことで、どちらがアタッチメント、すごく深い結びつきがあったかということを判断して、残念ながら離婚する場合にはどちらの親と同居するかという観点で見ているので、そこに、DVかDVじゃないかは、ほとんど論点になっていないというところがあります。

 ですので、よほど慰謝料請求をするという事案でなければ、面会交流を原則実施で円満にやりたいので、できるだけDVの主張はしないようにしてきました。私はそうです。ですので、連れ去りとか虚偽DVなんて、そんな何かリスクのあることをアドバイスしたってしようがないし、仮にそういう弁護士がいるとしても、その弁護士に対する批判じゃないんです。虚偽DVとか連れ去りと言われているのは、DV被害者のためにやっている弁護士が言われる言葉です。そういうことに是非思いを致してほしいなというふうに思います。

斎藤(洋)委員 ありがとうございます。

 ほとんど時間がありませんので、お一方にだけ、最後、お尋ねして終わりたいと思いますが、今のお尋ねしたことの関連で、共同親権か共同監護か、あるいは、もう少し同居じゃない方の親のコミットがあれば、同居親あるいは同居親の配偶者等による虐待死等が避けられたのではないかという御指摘もされることがあります。この点についてどういうふうにお考えなのか。それでは、大村参考人から最後にお伺いしたいと思います。

大村参考人 ありがとうございます。

 今の御質問の点ですけれども、議員御指摘のような場合、避けられるという場合もあるんだろうというふうに思います。

 他方で、しかし、双方の関与が増えることによって虐待の危険が増えるというような指摘もされておりまして、そういう場合もあるのではないかと思っておりまして、どちらというふうな判断はなかなか難しいというふうに感じております。

 以上です。

斎藤(洋)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

武部委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。

 本日は、参考人の皆様から貴重な御意見をいただきました。本当にありがとうございます。

 それでは、私の方からは、基本的なことを伺いたいというふうに思います。

 慎重派の方、反対派、また推進派の皆さんからいろいろな話を聞きまして、私自身も、両方とも合っているんだろうなというふうに思います。それぞれの、どこの、誰の代弁者になっているのか、また、自分が実感する部分、そういった意味で、どこを取っていくのが一番正しいのか。非常に悩ましい話でございますが、今回、子の最善の利益というふうなことをテーマに進めていくということで、そういう理解で私も今議論に参加しているわけでございますけれども。

 これは岡村参考人と北村参考人にお尋ねしたいと思うんですが、今回、慎重派の方からは、現民法においても、離婚後でも良好な関係にある夫婦、普通に会話ができる関係の夫婦については既に共同で監護できているというケースもある、改めて共同親権制度を導入する必要もないのではないかというふうな御意見を伺ったことがありまして、ただ、私自身、いや、そうだろうかと。

 私が別居親だったとしたら、やはり親権は持ちたいと思います。親権というのは、法的な権利であり、義務であり、また、社会的に是認された存在というふうな位置づけになってくると思うんですね。例えば、子供が地域や社会で活躍する姿を見て、あれは私の息子だ、娘だと誰に対しても胸を張って言えるということも大切なことではないのかなと。子供の立場から見ても、自分を育ててくれた親に親権を持ってもらいたいというふうに思うのは自然な感情だというふうに思います。

 元夫婦の間には様々な事情があるけれども、子供のことでは話合いができ、子供を大切に考える両親には両方に親権を与えることという考え方、現行の民法ではそれもできないということなんですけれども、この点を踏まえて、今回の共同親権を導入しようとする民法改正の意義について、岡村参考人と北村参考人から御意見を伺いたいと思います。

岡村参考人 ありがとうございます。

 先ほどおっしゃっていただいた、親であれば当然、何というか、親としての名目的なものであれば、私もこんなに反対はしていないんです。

 私自身、事実婚でして、私の単独親権で、夫は親権者ではありません。ただ、子供は今二十歳で、十八歳まで何も問題なく、学校のPTAの行事にも一緒に参加して、胸を張って、娘の父親であるというふうに思っています。親権者であるから、父親じゃない、母親じゃないということにはなっていないというふうに思います。

 話合いができる人でなくても面会交流、監護については強制する裁判所の審判ということで、意に反してもやらなければいけないというのが今の現行法です。

 私が反対だなと思っているのは、私は、離婚した後の父母が、連絡を取るのも苦痛で、文字を見ただけでも怖いとか、何か、てにをは一つ取っても、お互いに、何でそんな言葉を使うんだろうということが非常に多くありましたので、これは私の全くボランティアで、離婚後もずっと私が仲介して、私が受け取って受け流すだけという離婚後業務というのをやっておりました。それはすごく有用で、葛藤を下げて面会交流も非常にうまくいくとか、関わりを持つということがありました。ただ、それは弁護士しかやれないのと、私はいいですよ、夫もフルタイム勤務で、事務所もそういうのをやればいいよと言ってくれるからいいけれども、一般的には、お金もなく、そういう業務をやれるような体制にとてもないんですね。

 だから、私は、何というか断絶するのを勧めているわけじゃなくて、むしろ権利性をすごく主張することによって、非常に萎縮して更なる断絶を招くよりは、やはり親権の共同という決定という場面においては必ず意思疎通が必要で、もし本気でこの国が共同親権を導入しようとするならば、弁護士の数をすごく増やして、例えばもう離婚制度自体から見直すとか、そういうことをしていかないと無理であろうと。親権の共同をぽんと丸投げして、おまえら、やっていけよと当事者に丸投げしても、うまくいかないというふうに思っているので。

 私は、民法七百六十六条に関して、審判制度を否定するものではございませんので、その点がすごく、昨日の質疑でも今日の午前の質疑でも、めちゃくちゃ曖昧になっていると思いますので、議員の皆様におかれましては、共同親権の問題と、面会とか監護とか民法七百六十六条の問題は分けて考えていただきたいなというふうにこの機会に申し上げます。よろしくお願いします。

北村参考人 今御指摘の、まず、仲のいい元夫婦は十分会えるじゃないかということが、確かに、一定程度あります。

 ただ、これは、私も、正直なところ、当初、今御指摘のあったような、親権の問題と共同養育、共同監護の問題は別なんじゃないのか、理論的には全く別なんじゃないのというふうに考えておりました。

 しかし、実態は、親権をこっちが取って、こっちがなくなったからもう会わせなくてもいいよねという、何の問題もないのに、暴力も何もないのに、会わせる必要はないよね、なぜなら嫌いだから、これはおかしいでしょうという話ですね。そういう意味で、やはり親権があってこそ、本来会うべき親子が会えるという実態があると思っているんですよ。それが一番重要だなというふうに思っています。

 どうも反対される方は、DVがあるからとおっしゃるんです。DVが本当にあるならば、それはそれに対する対策は十分しなきゃいけない、当たり前なんだけれども。これは、数でいうと、大部分は暴力等がなかった離婚、これが大部分でございます。統計上もこれは明らかなんです。暴力等は一切ありませんでしたという離婚は、世の中、大変多い、八五%とか八割とか、いろいろ言われています。

 そういう人たちが、それでも、やはり余り好きじゃないから、特に私、再婚するから前の夫や前の妻と自分の子が会うのは嫌だ、だから会わせないでおこうという運用が実際になされていますので、それを考えると、やはり親権を持つということが、当たり前の親子の交流につながるというふうに思っています。

 以上です。

日下委員 ありがとうございます。

 次に、今回、子の利益ということなんですが、子供の幸福度の大切な指標というんですか、自己肯定感、それと親子交流の意義についてお聞きしたいと思います。

 私は、子にとっては、父と母は自分をこの世に生み出した直接のルーツであり、自身のアイデンティティーの形成にも深く関わっていると思います。本来、子供は、父、母との交流、触れ合いを求めるものだと思いますし、離婚後も、子供はできるなら両親からの愛情を感じながら成長してもらいたいと考えております。

 幸福感というか、自己肯定感というのは、自分が必要とされているのか、いてもいいのか、あと、役に立つ存在なのか、自分に満足しているかというふうなことなんですけれども、DVや虐待を考えると様々な状況や意見の違いもあると思いますが、適切な親子交流は子供の自己肯定感の形成にどのように影響するものか、それぞれが私見で論じるよりも統計的に調査することも必要ではないのかというふうにも感じております。

 これについて、北村参考人、そして原田参考人の御意見を伺いたいと思います。

北村参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 我々も、検討の中で、諸外国の統計資料、調査結果を確認しました。今は手元にありませんけれども、後でお送りすることは可能です。

 それによりますと、別居親と月に一回しか会えないお子さんと、月に四回あるいは半月近く継続して会えるお子さんとを比較すると、自己肯定感がやはり継続的に会えるお子さんの方がはるかに高いという調査結果が出ております。これは後でお送りさせていただきます。という意味で、大変重要だと思っています。

原田参考人 私自身も、子供さんが、お父さんやお母さんから愛されるということが実感できるということはとても大事なことだと思っています。でも、今日の議論の中でも出てきましたけれども、それを共同親権にしないとできないのかという問題はまた別の問題だというふうに考えています。

 そういう、お子さんに対してお父さんやお母さんが責任を持って関わり、愛情を示し、子供さんを大事にするということが大事だということであれば、それができるような制度をどんどんつくればいいじゃないですか。

 今、それがない状況で紛争が起きているということが一番問題で、諸外国でも、共同親権や共同養育制度を導入しているところは、今日、午前中の山口先生もおっしゃっていましたけれども、十年後に共同養育計画、そういうものを作るようになったとおっしゃっていましたけれども、共同養育ということをつくっただけではそれが進まなかったということだと思うんです。イギリスでもそうですし、フランスでもそうですし、そういう制度をつくってもうまくいかないから、どんどん制度改革を重ねて、その制度改革の中心は支援なんですよ。

 それを先にやらないで頭だけつくるというのは、私は、国が責任を放棄しているんじゃないかというふうに思いたいぐらいで、本当に、そういう支援の制度が、子供さんがそれを実感できるためにはどうすればいいのか、親の葛藤を下げたり、面会交流の支援のために、お金をかけないでできるとか、そういう制度をつくっていただくということが先ではないかと思いますし、そうすることによって、共同でできるということが進んでいき、子供さんが幸せ感を感じられるようになるんじゃないかというふうに思います。

日下委員 ありがとうございます。

 私が質問したのは、自己肯定感と共同親権の話じゃなくて、自己肯定感と親子交流、触れ合いというか、父親から声をかけてもらう、別居の母親から声をかけてもらう、また、子供もいろいろなことを親に伝えられる、そういうような交流が、果たして自己肯定感の醸成にどうつながっていくのか。また、そういったことは個々に論じるんじゃなくて、一度やはり統計を取るということも必要ではないのかというふうなことで質問をさせていただきました。

 改めて、何かありますか。

原田参考人 統計を取ることは必要だと思いますし、私もそうしていただきたいと思います。

 以上です。

日下委員 次に、今、女性が同居親、大体八二%とか三%になっているというふうなことがあって、父親の場合は一七・二%とか、非常に少ないわけなんですね。

 これは、昭和の時代、平成、今は令和でございますが、今は男性の育児参加とか女性の社会進出も目に見えて進んできておりますし、政府としてもそれをしっかり後押ししていこうということで今進めております。まさに共働き、共育ての時代に入った。

 私も息子が二人おりまして、孫もそれぞれにおりまして、本当に時代が変わったなと。息子たちが普通に育児休業を二か月取って、そして子育てに頑張るというような、そういう姿を見ながら、今議論している共同監護とか共同養育というのもこれからは普通になっていくのかな、離婚したとしてもですね、というふうに感じております。

 こうした時代の変化に合わせて、養育、監護の在り方、変化もしていくと思います。民法改正、前回から七十七年ですかね、ずっとこういう民法で来たんですけれども、これからもやはり長い目で見ないといけないなというふうにも思うんです。

 そういった意味では、離婚後の親子交流とか共同監護ということを、今の時代、父親が子供と小さいとき、ゼロ歳、一歳のときにも触れ合いがあって、元妻の苦労もよく分かるというふうな時代に入ってきたと思うんですけれども、そういう親子交流や共同監護をこれからどういうふうに考えていかないといけないのか。恐らくボリュームが、頻度が増えていくんだろうというふうに思うんですけれども、この件に関して、これは大村参考人と北村参考人にお聞きしたいと思います。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 御指摘のように、習俗や意識というのは、この先どんどん変わっていくものだというふうに理解をしております。

 今回の改正は、いわばその習俗や意識の変化を後押しするような、あるいはこの制度の下で何かよいプラクティスが生まれるような、そういうものであってほしいというふうに思っております。

 様々な意見がありますので、それを調整した案になっているかと思います。この制度の下でこういうこともできるんだというふうなことを示していただくということによって、御指摘のような共同養育というのが進んでいくようになる、そういうことを期待しております。

北村参考人 御指摘のように、共育てとおっしゃったんですかね、夫婦共に、赤ん坊が小さいときから一緒に育てるという状況になりつつあるなと、私も、子供、孫を見ていてそう思っています。

 そういう時代というのは、反面、共働きの時代とも言えますよね。そうしたときに、統計資料で大変興味深いものがありまして、諸外国、欧米諸国、共同親権制度に移行した後で、いわゆる同居している母親、子と同居している母親のキャリアアップが格段に進んだという研究資料がございます。つまり、夫が、例えばですけれども、三分の一、子供を見守ってくれる状況に、共同親権になったことによって、そういう状況が生まれた。そのことによって、シングルマザーと言われる母親が会社でのキャリアアップを非常にしやすくなって、年収も格段に上がっているという統計資料もございます。

 そういう意味で、この法案は、先ほど申し上げたように、不十分だとは考えていますけれども、まずは共同親権に一歩進むということは大変重要だというふうに思っております。

 以上です。

日下委員 今回の法改正で大きな論点になっているのは、DVや虐待への対応であると思います。

 特に、証拠が残されなかったグレーの部分でありますけれども、夫婦げんかをすれば、時に大声を出してしまうということもありますし、また、長年連れ添った妻に一度だけ手を上げてしまったというふうな話を先輩から聞いたこともあります。反省しながら、一度だけ手を上げてしまったことがあるんだというような話も聞いたことがあります。また、そうしたことが継続的に行われているという悪い事例もあります。

 こうしたことは、離婚時というより婚姻中から起きていることで、DVを受けた、虐待を受けたと感じた際にすぐに相談に行ける、DV相談センターや婦人相談所、性被害ワンストップセンター等々、昔は、隣近所の仲のいい友人や先輩に相談に乗ってもらったり、間に入ってもらったり、お互い夫婦をよく知っておる人に間に入ってもらって、話を聞いてもらって、葛藤を静めてもらうというか、お互いに反省する部分を指摘してもらって、そして少し考え直すというようなこともあったと思うんですけれども、これからは、ますますこうした公的機関やNPOの相談支援、対応によって問題を解決することが増えていくのかなと感じております。

 そこで、参考人にお聞きしたいのは、これは原田参考人にお聞きしたいと思いますが、こうした民法の枠外の支援の意義、また、この法律が成立した場合には、こうした支援をより拡充していくことが必要になると考えるんですが、御所見をお聞きしたいと思います。

原田参考人 御質問ありがとうございます。

 今、先ほどの、午前中の、りむすびの方とか面会交流支援機関の方、費用が高いんです。公的な支援がありません。FPICという、前に調査官をされていた方たちがつくられていたNPOがありますが、私の地元の福岡では支援がなくなりました。相談はやっているんですけれども、やはり利用者が多いということと、それから、維持ができない。ずっと弁護士の中でカンパを求めたりとかをされてきましたけれども、維持が難しいということで、面会交流支援は取りやめになりました。

 全国的にも、そういう支援団体がないところも結構ありますし、それから、あるとしても、一回当たり一万円とか一万五千円とかを負担しなきゃいけない。しかも、その前に、葛藤を下げるためのカウンセリングがあって、そのカウンセリングにも費用がかかる。それはとても一人親では負担できません。

 ですので、そういう支援機関に対する支援、今、そういう認証団体をつくろうという動きがありまして、支援を求めるということがありますけれども、是非、無料、無償でそれができるという制度が必要だと思います。

 それから、もう一つ。今、行政の現場で、女性相談員とかあるいは子供家庭相談員とかと言われている方は、非常勤であったり期限付であったり、そういう方が多いんですね。そうすると、そこで専門的な経験を積んだり、知識を醸成するということが難しかったり、もちろん研修を受けられていますけれども、それとか、やはりトラブルに対応するということがとても難しい。

 今、例えば、行政機関を訴える人がいますけれども、そういうものの当事者にもし任期つきの人がなったとしたら、その方たちはそこで勤めていくことがとても難しくなるんじゃないかと思うんですね。ですから、そういう相談を受ける人たちについて、安定した雇用とそれから専門的な知識、そういうものをきちんと配置できるようにしていただきたいというふうに思います。

日下委員 時間も参りましたので、終わりたいと思います。大変にありがとうございました。

武部委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、御質問いたします。

 まずもって、皆さん、本当にお忙しい時間、ありがとうございました。

 もう何度もそれぞれの参考人からお話しされているところではあるんですけれども、やはりこの改正の核心だと思うのでお伺いしたいんです。大村参考人と原田参考人にお伺いしたいんですけれども、これは、共同親権がそもそも原則なのか、それとも原則とは定めていないのか。お二人は法制審議会の委員でございましたので、法制審議会の中での議論と、また現在法案として上がっている条文からどう読み取れるのかということを、それぞれ御意見を伺えればと思います。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 共同親権が原則なのかそうでないのかということは、よく尋ねられます。

 私は、研究者としては、原理、理念としての共同親権というものは、一九四七年に、戦後に民法が改正された際にこれが導入されたというふうに考えております。ただ、それを実現する制度としては、婚姻中は共同行使とする、しかし、離婚後は単独行使とするということで従来やってきたというのが基本、出発点かと思います。

 では、実現する制度として、今回の改正はどちらを原則にしているのかということになるかと思いますけれども、私、先ほどの陳述の中でも申し述べましたように、二者択一ではなく程度の問題として捉えているということでございます。

 私は、法制審の議論の中でも、共同親権、単独親権という言葉遣いはできるだけ避けていただきたいというふうに皆さんにお願いをしてまいりました。どういう場合に共同の行使を認めるのか、どういう場合に単独の行使を認めるのかということで具体的に議論することが重要だというふうに考えてまいりました。そのように受け止めております。

原田参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、今のお話がちょっとよく理解できなかったんですけれども、離婚後は親権は共同でする場合もあれば単独でする場合もあるというふうに、どちらも原則とはしないというふうに部会では議論したというふうに思っております。

 ですから、条文上もそれがはっきり分かるようにしていただきたいということで先ほど述べました。

米山委員 ありがとうございました。

 次に、今度は弁護士の御三人にそれぞれお伺いしたいんですけれども、ちなみに、私も弁護士で、一応、知人から頼まれたぐらいなんですけれども、離婚訴訟はいたします。いろいろな御意見があった中で、私の感覚では、私は裁判になるような方しかしたことがないので、そういう方で、共同親権なんてもう最初から私の中でちょっと無理だよなという感覚なんですけれども、それぞれ件数も違えば、またクライアントの層も違うとは思うんですけれども、それぞれお三方から、御自分の経験の中から、一体全体、共同親権をちゃんとできそうな人というのは何割ぐらいおられるのか、それはいろいろな設定の仕方によって違うでしょうから、それぞれ御自分で設定していただいて、御経験を伺えればと思います。

原田参考人 御質問ありがとうございます。

 何割と言われるとちょっと難しいかなと思うんですけれども、裁判になるような例では難しいかなというふうに思っております。今、協議離婚が八七か八%ぐらいで、そのほかが調停、審判、裁判離婚だと思いますが、裁判所に来るようなケースというのは、やはり葛藤が高くて、すぐその場で共同はちょっと難しいだろうと思います。

 面会交流の取決めについて、協議離婚の場合と裁判離婚の場合では、裁判離婚の場合が取決めが高いと言われていますが、じゃ、何年後かに継続して行っているのはどうかというと、協議離婚の方が高いんです。つまり、お互いに話し合って決めたという場合はできるけれども、裁判所からやりなさいと言われた場合は難しいということだろうと思います。

 そういう意味で、私どもは、裁判の例だけではなくて、協議離婚を協議するための仕事もしております。その中でも、やはり弁護士のところに来るような方は自分たちではなかなか決められないということなので、難しいかなと思うこともありますが、でも、私どものところに来られたときに、子供さんのことをどう考えるかということで話合いをした結果、面会交流はできていくとか、あるいはいろいろなことを決めるときに共同でしようという可能性がある方はいらっしゃいます。

 それでも、全体の協議離婚の中で弁護士のところに来るのがどれくらいかという割合はちょっと私は分かりかねますが、私どものところに、弁護士のところに来られる方で、半分ぐらいは、一緒に話し合って決めようというふうになる可能性はあると思います。ただ、もめたときにどうするかということが決まっていないと難しいので、共同親権というふうに決めて、もめたときは裁判所に持っていきましょうとなると、やはりなかなか難しいかなというふうには思います。

 以上です。

北村参考人 私の実感、私は三十五年弁護士をしております。離婚訴訟も含めて、相談も含めて考えると、ざっと一千五百件ぐらいは御相談及び離婚訴訟、いろいろな審判、離婚に関わる審判をやっていると思っています。そういう中で、自分が見聞きした人だけでいいますと、少なくとも、私の依頼者の層を見ていますと、大変常識的なので、もう離婚が決まった以上は、話し合って十分に共同親権をやっていける人たちだなと、ほとんどがですよ、一〇〇パーとは言いませんけれども、九五%ぐらい。

 じゃ、相手方の方はどうかというと、まれに理不尽な主張と思われるようなことを繰り返される方もおられるので、そういう人は単なる話合いでは難しいだろうな、やはりADRを通した調整が必要だろうなと。

 という意味で、八割ぐらいの人たちは、共同親権ですよと言われれば、言われなければ自分だけが親権者だと多分主張をされるんですけれども、共同親権でいいですよと言われれば、同じ方向を向いて、子供のために理性的に話合いのできる方が八割ぐらいなのかなというふうな認識を持っております。

 以上です。

岡村参考人 ありがとうございます。

 私の感覚ですと、どちらかというと、弁護士を通じてしか話ができないようなケースでは、一〇〇%に近く協議を丸投げするというのは無理で、ADRというのが、何か結構簡単にそういう言葉が使われているんですけれども、実際の実績がないものを今言っていてもしようがないというふうに思っておりまして、今現状、面会交流じゃなく、親権の共同、決定権の共同ということになりますと、それを仲介できるのは弁護士しかいない、非弁行為になりかねないというふうに思っていることを考えると、裁判になるケース、弁護士が関与しているケースというのは、ほとんど一〇〇%に近く親権の共同を丸投げするというのは難しくて、まず支援からやる必要があるだろうということ。

 あと、離婚後の話合いというところが、何かわがままでできないわけではなくて、本当に話が通じないんですね、お互いに全然。それは誰が悪いとかいう以前の問題で。そういう人たちに決定権を委ねると本当に子供が迷っていきますので、DVを除外するとかどっちが悪いという以前に、話合いができない関係で親権の共同は難しいだろうというふうに思います。

米山委員 ありがとうございます。それぞれの御経験だと思います。

 そんな中、本法案では、八百十九条二項で、双方の合意ができないときに裁判所が適切に共同親権か単独親権か判断できるかに始まり、八百十九条七項の親権変更の訴えや、八百二十四条の二の第三項の単独親権の行使の定めを適切かつ迅速にできるか等々、何せ裁判所の役割が非常に大きいんだと思うんです。

 先ほど来、たくさん、裁判所のマンパワーということに関してはいろいろ御質問があり、御回答もいただいたんですけれども、これは、私の経験からして、余りそういう能力みたいな話をするのはちょっと恐縮なところはあるんですけれども、正直、今の家庭裁判所のスタッフの方々の、何というか、能力という言い方はちょっと違うと思うんですけれども、専門性というべきか何というべきか、それを本当にきちんと判じることができますかねと。

 さらに、細々したことに関して次々と、しかも結構迅速に決定していかなきゃならないわけなんですけれども、そんなことができると余り私は思えないんですが、これも、ちょっと恐縮ながら、弁護士のお三人に、それぞれ参加している中で、御自分が見た家庭裁判所の体制であり、若しくは、何でしたら、自分だってもしかしたら調停委員とかになるかもしれないわけですから、そういう視点から、今の裁判所で本当にここで求められているような判断というものをきちんとできるのかということに関しての御所見を伺えればと思います。

 御三人に、済みません、大村参考人には大変恐縮です、原田参考人、北村参考人、岡村参考人にお願いします。

原田参考人 ありがとうございます。

 人的、物的に非常に大変だということはさっきから何回も申し上げておりますが、今、家庭裁判所は、家事事件手続法で、主張の透明化といいますか、そして双方の主張を相手にも伝えるという形で、昔は、家庭裁判所では調停をして、訴訟は地裁に持っていくというふうにしていたのが、訴訟も家庭裁判所でするというようになって、調停の延長のような訴訟ではなく、訴訟も当事者性を重視するということが進められてきております。そういう意味では、葛藤を下げる手段ではなくなっているというふうに思うんですね。

 そういう意味で、今回、もっと事件が増えたときに、人的、物的にも大変だし、その中で、葛藤を下げてお互いの話合いが推進できるようにするというふうなつくりになっていないのではないかということを感じております。

 以上です。

北村参考人 御質問のお答えになるかどうかあれですけれども、仮に裁判所が大変になるとすれば、まず、調停前置ですので、調停委員の方が大変忙しくなるのかな、調停委員の人がたくさんいないといけないのかなというふうにまず思いました。

 裁判所が判断するときに判断ができるのかというような御質問だったかと思うんですけれども、私の実感で申しますと、例えばDVのおそれがあるとなると、先ほど申し上げたように、単独親権に誘導されていくわけですが、その際に、やはり裁判官も結果を心配しますので、DVのおそれがあるとなって、何らかの証拠に近いようなもの、例えば、友人に相談しました、夫のDVがあって、あるいは妻のDVがあって友人に相談しましたというような証拠がぽこっとあったときに、DVのおそれは認められないと言ってしまうと、もし責任を問われたら困るよね、道義的なという意味ですけれども、責任を問われたくないねとなって、どちらかというと、迅速に判断しなきゃいけない場面では単独親権を選択する、そういう判断になるのかなというふうに思っています。

 以上です。

岡村参考人 私は、裁判所は非常に真面目にやろうとしていると思います。真面目な人ほど権力の弱い側にも耳を傾けてやろうとするので、すごく時間がかかるというふうに思っていて、先ほど申し述べたように、早く終わろうと思えば、説得しやすい方を説得するという、調停前置を早く終わらせて、なるべく裁判に上げないということではないかなというふうに、そういう運用になるのが非常に危ないなというふうに思っています。

 それで、裁判所ができるだろうかという点に関して言うと、先ほど大村参考人がおっしゃった、制度がいろいろ、チャンネルが多くなったというか、すごくいろいろ選べる選択肢が、たくさん選べるんだ、単独か共同だけじゃないという話は、合意がある人たちにとってはすごくいいことだと思うんですけれども、それを裁判所に決定を委ねるという場面になると、必ず審理が長期化して争点が複雑化する。

 この人は単独にしておいて監護の分掌をした方がいいのか、共同にしておいて監護の分掌をした方がいいのか、そんなことを決めるというのは非常に時間がかかるというふうに思っていて、やはり協議ができる関係性なのかどうかということが非常に重要であることと、共同親権の関係でいうと、監護の分属というのがありますよね、一緒に住んでいない人が親権を持つというやつ。それは、合意があるときには別に今でもできると思うんですけれども、裁判所がそれを命じたのはもう何十年もあるうちで一件あるかないかぐらいだと思いますので、そういう観点で見ていかないと、裁判所ができるかできないか、増員をしてもですね。

 本当にすごくたくさん事件が増えていくことと、先ほど大村参考人がおっしゃった、エラーケースが入ったときには単独に直せるということで是正するんだというのがありましたけれども、それを許すと、単独にしたものも共同にする是正がといって、エンドレスに、単独になったら次は何年後かに共同の申立てがみたいなことにも、やはり起こりかねないと思うので。

 裁判所はすごく真面目にやっていただけると思いますが、やれなくなれば、説得しやすい方を説得する方に流れやすくなり、そして、到底さばき切れる数ではない上に、一件一件の審理時間が長くなるので、とても難しいのではないかというふうに思っています。

米山委員 ありがとうございました。

 これも再三言われているところからの質問で恐縮なんですが、私、子供の連れ去りということに関してはちょっと非常に違和感を感じていて、これはいろいろな御意見はある前提なんですけれども、先ほど来、原田参考人、岡村参考人が言ったように、基本、実務は、誰が面倒を見られるかというか、誰が見ているかということだと思うんですよね。

 その中で、それはもちろん、先ほどお話があったように、日下委員からのお話もあったように、随分時代も変わってきて、男性も関わるようになったとはいえ、日本の文化においてはやはり母親がやることが現実として非常に多い。正直、子供を置いていかれたらお父さんは何もできないという、実際問題、なかなか大変でしょうということが多々あり、逆に、お母さんの側からしても、それは、もうどうしても別居したい中で、じゃ、連れ去りと言われるけれども置き去りはいいのかという話になっちゃうんだと思う。この子を置いていって、じゃ、誰が面倒を見るんですかということになっちゃうんだと思うんです。

 そんな中で、やはり私なんかの感覚でも、これはどうしても、共同親権が前提で、急迫でないならば連れていっちゃいけないということになると、なかなかそもそも別居できなくなってしまうんじゃないか。要は、子供は連れていっちゃいけない、置いていってもいけない、だから、いなきゃいけないけれども、いるのは大変だみたいな。

 それは、明らかにDVであるかないかはまた別として、でも、別居をせざるを得ないようなことはあるんだと思うんですよね、話合いのときに別居した方がいいでしょうみたいなところはあって、それを妨げる可能性があるのではないかということで。

 ちょっともう時間がないので、答えが決まっているようで恐縮ですが、原田参考人と岡村参考人に聞くんですけれども、二問一遍に聞かせていただいて。

 それと同じコンテクストで、社会の変化というお話が出てきたんですけれども、これは確かに、私、社会の変化は誘導するんだろうと思うんですが、同時に、逆に言うと、今、社会はそうなっていないですよねだと思うんです。共同親権を導入している国として言われているドイツというのはジェンダーギャップ指数が六位、イギリスが十五位、オーストラリアは二十六位、フランス四十位で、日本は百二十五位なわけです。これから変わるかもしれないけれども、少なくとも、現時点において、なかなか、実のところ、本当のところ、そんなに男性、女性、共同じゃない。

 ちなみに、自分の話をして恐縮ですけれども、うちの妻なんかは非常に自由人に見えると思うんですけれども、あの妻が非常に妻としての役割、母としての役割に、ある種、僕から見たらとらわれているように見える。それができないとすごく気に病むみたいなところがあって。

 そういうこともある上での単独親権といいますか、逆に言うと、そういうところを先に解消していった方がむしろスムーズなんじゃないですかと。何か、そういうジェンダーギャップみたいなものをおいておいて、何か共同親権の部分だけを先に進めるのは、むしろ順番が逆ではないんでしょうかと思うんですが、恐縮ながら、時間がないので、原田参考人と岡村参考人にお伺いいたします。

原田参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、今先生がおっしゃったような、本当に実感しております。

 お父さんが家事、育児に参加するといっても、何をしているんですかと聞いて、布団を上げています、ごみを捨てています、保育園の用意をしていますと、何をしていると挙げている間は私は共同ではないと思います。やはりマネジメント全体として、そして、何が足りないか、何をやっているかということをトータルして誰が責任を持ってやっているかというところが主たる監護者の問題だというふうに思っています。私も、今の点は自分の夫に言いたいようなところでございますが。済みません。

 それで、質問の答えがちょっとあれですけれども、そういう意味では、変わりつつあるとしても、本当に今変わっているのだろうかという問題と、それから、殴られたりしていなくても、やはり、けんかがあったり、それから冷たい関係であったりしているときに、子供をそこに置いていいだろうかということを本当に皆さん悩んでいて、それができなかったら、私はずっとここで我慢しなくちゃいけないというふうにおっしゃいます。私は、そういうとき、あなたが幸せじゃなくて子供を幸せにできますかというふうに言います。

 そういう意味では、子供をそこに置く環境がいいのかどうかということと、冷静にお互いに話合いができないような状態、そういう緊張関係があるときには連れて出てもいいというふうにみんなが思える、あるいは、そういうことを全くしないで突然出ていったというようなことであれば、それは、その後の監護者指定というものを、置いていかれたお父さんないしはお母さんが申し立てられて、そこでどういう状況が子供のためにいいのかということを家庭裁判所で話し合うということがいいのではないかというふうに思います。

岡村参考人 ありがとうございます。

 連れ去りという言葉が当たり前みたいに使われることに非常にどきどきしておりましたので、大変、質問自体ありがたいなというふうに思いました。

 すごく責任感を持って子育てしている人が子供を連れて出ていく。置いて出ていくというのは、なかなか心情的に難しく、私は必ず、相談を受けたときに、子供は連れて出ていくことも置いて出ていくこともできますよと言うようにしていますが、置いて出ていくこともできますよなんて言うと、非常にびっくりするお母さんがすごく多くて、何を言っているんだこの弁護士というぐらい、この国は元々、女性にすごく育児や家事の責任感を持たせている国だなというふうに思っています。

 子供を連れていけば連れ去り、置いていけば置き去りと言われ、そして、一緒にいた場合に、DVかDVじゃないか確信が持てないと出ていっちゃいけないということになると、DVというのはどんどんどんどん深まって、虐待を併存して、そして、すごく、虐待死みたいな事件の背景にDVがあって、そうすると、何で早く逃げなかったんだと言われるんですよ。子供を連れて何で逃げなかったんだ。でも、それはヒヤリ・ハットで逃げないと分からないということと、あと、子連れ別居というのは、意外にその後家に戻る人も本当は多いのに、何か連れ去ったみたいな形に最初からなっている。弁護士に相談する時点で、妻が子供を連れて出ていってしまいましたという相談が、昨今、連れ去り被害に遭いましたという相談になっていて、それが葛藤を高めるということも非常に危惧されています。

 それから、もう一点のお尋ねの、世界で、ジェンダーギャップとの関係ということなんですけれども、やはり、ジェンダーギャップ指数が低いことの表れとして、家事と育児の分担というのが、それこそワンオペ育児、私は、イクメンという言葉があるうちは全然駄目だと思っていて、ちょっと手伝えばすばらしいねとなっているという、ワンオペ育児、イクメンという言葉がある以上はなかなかちょっと難しいのと、時代の変化により男性が育児、家事に関与するようになりましたという、関与している人たちは余り離婚していないんです、私の感覚だと。していなかった人が、していなかったのに、急にすごく父親の権利だみたいな形でわあっと言い出して、時代はすごく子育てをする男性も増えてきたというんですけれども、余り私の感覚では一致していない。それができている人は余り離婚しなくて、何かそれができていない、若しくは家族のニーズに合っていない押しつけをしているというようなことが散見されるかなというふうに思っております。

 もう一点、さっき私が申し上げた、子供の監護者というものは責任感があるんだというのは、日本の裁判所もそれはすごく感じているところで、先ほどから引用しています裁判官の書いた本にも、育児の司令塔的な役割を果たしているのはどっちかという観点で監護者を決めているというところがありますので、それ自体は社会の反映なのではないかなというふうに思っています。

米山委員 大変ありがとうございました。

武部委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の池下でございます。

 本日は、四人の参考人の皆様、長時間にわたりまして本当にありがとうございます。

 これから早速質問の方をさせていただきたいと思うんですけれども、今日お伺いをしていると、いろいろな委員からも、参考人からもお話を聞かせていただきまして、DVに遭っている女性、そして面会交流ができない男性みたいなイメージが、ちょっとお話を聞いていてあったわけなんですけれども、私も、この半年間の間、本当に多くの皆さんからお話を聞かせていただきました。実際にDVに遭っている男性もいらっしゃいますし、面会交流ができない女性も当然いらっしゃいます。ですので、両方の立場から私は考えていかなければならないのかなと思っております。

 早速ですけれども、北村参考人にお伺いをしたいと思うんですが、今日のお話の中でも、単独親権制度では、親が離婚すると自動的に大好きな親を一人失い、それに連なる祖父母、親戚まで失う、例えば別居親が一月に一回、監視つきで面会交流施設でしか会えないというお話を今日ちょっと冒頭いただきました。

 私もこれまで、家裁の調停、審判で親子交流が認められているにもかかわらず全くできないという方々が多数いらっしゃることを承知しております。また、非常に多くのケースで紋切り型で、一月に一回、数時間程度の面会交流が多いという具合に考えているんですが、これまでも法務大臣が家族の形態は多様という言葉を何回も言われているわけなんですけれども、家族の形態が多様ということであれば、親子交流であったり面会交流の在り方も、紋切り型ではなくて、同様に多様であるべきだと考えますけれども、北村参考人の御意見を伺いたいと思います。

北村参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 家族の態様が多様というのは、これは離婚後に限定して申し上げますと、離婚後、例えば父親、母親が車で一時間とか二時間ぐらいのところに住んでいて、双方が少しでも子供と接していたい、見守っていたい、会っていたいというふうに考えているケースであれば、できる限り、五〇%、五〇%に近いような、あるいは四〇%、六〇%に近いような面会交流、別居親が面会交流をすることが適切なケースもあるでしょうし、他県に住んでいる、あるいはかなり遠方に住んでいるようなケースだと、例えば、面会交流に当たっては、お子さんの長期休みだけ別居親のところに行ってというような形が適切なケースもあるでしょうし、あるいは、週一回、土日だけ別居親の父親に会うというようなことにするのが適切なケースもあるでしょうし。もちろん、その場合に、双方の親がどれだけ子と関わりたいか、お子さんがどう思っているか、様々な要素はあると思いますけれども、そういう意味で、多種多様だと思っております。

 そういう意味で、共同親権となって共同監護計画を作るときには、当然ながら、双方の、父親、母親が自分の置かれるであろう立場も十分理解した上で調整していくわけですから、そういう意味で、多種多様な在り方があるのかなというふうに考えております。

 以上です。

池下委員 ありがとうございます。

 私も、お子さんの年齢であったりとか、小さいときにはできるだけ頻繁に会った方がやはり親のことを覚えていますし、ある程度年齢が大きくなれば長期休暇とか、それぞれあるかと思いますが、本当に、紋切り型、月一回だけというのはちょっとおかしいのじゃないかなと思っているんです。

 では、同じく北村参考人と、次に大村参考人の方にもお伺いをしたいと思うんですけれども、先ほどからもちょっと議論があったんですが、DVのおそれにつきましてです。

 三月十四日に、日本維新の会の代表質問におきましてこの質問をさせてもらったんですが、大臣の答弁が、当事者の主張のみに基づくものではなく、DV等のおそれを基礎づける事実とそれを否定する事実とが総合的に考慮されて判断するものとするということでお答えがありました。

 このおそれを、どのように証拠づけて判断するのか。

 また、北村参考人からも、一部の弁護士が偽装DVを指南するビジネスモデルがあるということも先ほどお話ししていたかと思うんですけれども、おそれという文言によって、推定無罪であったり、偽装による親子の引き離しがあり得るかと思うんですが、これを防ぐ手だてはどうなのか、北村参考人にお伺いしたいんです。

 一方、大村参考人の方には、このおそれの件につきまして、法制審の方でどのような議論と防ぐ手だてというのがされたのか。それぞれお伺いをしたいと思います。

北村参考人 おっしゃるとおり、どのように判断するかというのは、裁判所にとっても大変難しい問題だと思っております。

 裁判所は証拠裁判主義で、元々長いこと専門家として働いていますので、まず証拠を見るわけですけれども、証拠の中に当然ながら供述もあります。それ以外に、では客観的証拠は何かあるのかという話になったときに、これはハーグ条約との関係でもよく指摘されていますが、警察に一度相談したことがあるとか、あるいは第三者機関に相談したことがあります、つまり夫のDVについて相談したことがありますという証拠を出すことが可能になりますね。これについて、こういう証拠さえあれば返還拒否できますよというふうに指南している弁護士がいるというような話もあります。

 つまり、もうちょっと分かりやすく言いますと、ある機関に相談はしたという実績さえつくれば、一定の証拠ができますので、それが一つの判断材料になって、この人はDVのおそれがありますよねというふうにされてしまうケースがあり得るということです。

 それを防ぐ手だてがあるかといいますと、さっき私は裁判所には判断不能であるというふうに申し上げたんですけれども、まさにそういうところが、日本の中でも簡単に判断できることではなくて、例えば日本でも、警察に一回電話して警察官に来てもらいました、その結果、警察官が普通の夫婦げんかにすぎないよねというふうに仮に判断したとしましょう。でも、そのことは証拠に残らずに、ただ単に警察を呼んだという事実だけが残って、これを証拠として出すということはあり得るわけです。

 これはあり得るということであって、本当にDVがあったケースは、もちろん、そこから先、警察官がDVがあったというふうに認定して、それについて刑事告訴なりすれば実際に処罰する場合もあり得るわけで、その証拠の重さではかなり幅があるわけですけれども、いざ裁判所がDVのおそれを判断しようとしたときには、一定の証拠があれば判断するということになりますので、そういった虚偽のDVなどを防ぐ手だてはあるかと言われると、それは簡単ではない。

 むしろ、ここで言うDVのおそれ、しかも、お子さんに対する暴力のおそれというのを要件にすればいいんですが、それを要件にしないで単独親権に誘導していくというこの法律は、非常に欠陥が大きいなというふうに思っています。

大村参考人 御質問ありがとうございます。

 DVのおそれをどう判断するのか、総合的に判断するという答弁がなされたというふうに承りました。答えとしてはやはり総合的に判断するということになるんだろうと思いますけれども、その点について法制審でどのような議論があったのかという御質問だったかと思います。

 総合的に判断するといったときに、幅があります。それで、その幅をどちら寄りに判断するのかというところがやはり意見の分かれるところなんだろうと思います。この点につきましては、法制審で、事実についてどういうふうに評価するのかということについては何度も話題になったというふうに了解をしております。

 原田参考人を始め弁護士の委員の方々は、御自身の経験に基づいて、具体的な例を挙げて議論をされておられました。また、当事者の方々のヒアリングをしたこともございますが、その中でも、具体的なケースの中で御経験や御意見が述べられ、それを踏まえて、DVのおそれをどのぐらいの幅で考えるのかというふうに議論をしてきたものというふうに受け止めております。

池下委員 ありがとうございます。

 幅の問題と言っていただきましたし、非常に難しいのではないか、実務的、運用上の問題というのは非常に難しいんじゃないかというのは改めて認識をさせていただきました。

 あとはまた、ちょっと時間がなくなりますので、次の質問をさせていただきたいと思うんですが、昨日の当委員会の方でも監護の分掌について質疑がありまして、その中で、修学旅行のパスポートの発行をどうするんだとか、医療を受ける際はどうだとか、いろいろ御意見があったという具合に思っております。

 ごめんなさい、先に大村参考人にさせていただきます。お願いします。

 ですが、やはり私は、個人的にもそうですし、これまでいろいろ議論の中でもさせていただいたんですけれども、そういうときに、離婚後にしっかりと共同で監護の計画を作っていくことが非常に大事だと思っておりますし、また、父母が葛藤があるのであれば、今日もお話がありましたけれども、ADRであったりとか第三者の弁護士であったりとか、そういう方々を入れる。やはり離婚したときに、初めて離婚する場合もあるし、何回目かもあるかもしれないんですけれども、離婚後の子供の育て方、育成の仕方というのが分からないので、やはり離婚後の親の講座、親のガイダンスというのが必要だと思っております。

 そこで、大村参考人にお伺いをしたいと思うんですが、この法制審議会の中で、共同の養育、監護計画、また離婚後の親の監護講座、どのような議論があったのか。本来であれば私は義務化すべきだと思う方の論者でありますけれども、法制審案に入らなかった理由、これについてお伺いをしたいと思います。

大村参考人 ありがとうございます。

 法制審議会では、今御指摘のあった監護の計画等について話合いをするというのを確保すべきではないかということは議論の対象になりました。今おっしゃったような一定の形で計画を作るということを義務づけるというようなことも検討されました。最終的には、様々な形でサポートは必要であろうけれども、そうしたことを義務づけるというところまではいかないということで、意見の取りまとめをしております。

 ただ、法案の中でそういうことが全く表れていないかと申しますと、先ほどエラーのチェックという話がありましたけれども、夫婦の間で、父母の間で親権者を定めたのだけれども、後で見直すという場合につきましては、夫婦が定めたそのプロセスを判断材料にする。そのプロセスの中に、御指摘のあったADRを経ているかどうかとかというようなことが含まれておりますので、事前にそのような形で協議をするということが想定されており、そうしたものがあれば、それはそういうものとして考慮するという形で、この法文の中にも間接的に取り込まれているというふうに受け止めております。

池下委員 ありがとうございます。

 大村参考人、もう一度、更問いということでお伺いしたいんですけれども、義務化というのは今回入っていないですよということでありましたけれども、監護の分掌で、当然、いろいろ分けて決めていかなきゃいけないということなので、そこの分には家裁も入ってということになるかと思うんですけれども、義務化ではないけれども、つくっていくべきですよみたいな感じのイメージでよろしいんでしょうか。

大村参考人 そういうものができれば、それは望ましいことであるというふうな認識は皆さん持っているのではないかと思います。

池下委員 じゃ、ちょっと関連して、原田参考人にもお伺いを一つさせていただきたいと思うんです。

 さっき別の委員さんからの御質問で同じように、こういう監護の分掌であったりとかという話もあったかと思うんですけれども、原田参考人も、共同監護計画であったりとか親の講座ですかね、これにつきましても、サポートがあれば、支援があれば、行政の支援があればということでさっき言われていたのかなと思うんですけれども、そういうものがあればつくるべきだと考えられているのか、お伺いをしたいと思います。

原田参考人 どういう場合のことを想定していらっしゃるのかというのがちょっとよく分からないんですけれども、私も、そういうものは、今でもできるのではないかと思っていて、やってほしいと思っています。

池下委員 ありがとうございます。

 義務化というのはちょっと今回外れているということですけれども、できるのであればということになるのかなと思います。そういう体制づくりというのは当然必要だとは思っております。

 次に、親権変更の申立てについてお伺いをしていきたいと思います。これは北村参考人と大村参考人の方にお伺いをしていきたいと思うんですけれども。

 先日、私、裁判所職員の定員法の閣法の議論があったときに、そのときちょっと、資料、尋ねたわけなんですけれども、現在の成人年齢というのは十八歳ですけれども、法務省でしたかね、厚生省が調査した段階で、子供が二十歳までの母子、父子家庭というのが百万世帯あるという具合に聞いております。

 改正後に共同親権になった場合、過去に離婚した夫婦の一方が親権変更の申立てを多数される可能性が高いと思うんですけれども、家裁の中で明確な基準がない中で、仮に、離婚後もう十年たちました、あなたは継続性が全然、大分離れているので、もう一切、親権の変更の申立ては駄目ですよとばさっと切られてしまうと、今いろいろな方が希望されている中で、本当に幻になってしまうのかなという具合に考えております。

 そこで、仮に法案成立した後、親権変更の申立てについて今後どのようになるのか、予想されているのか、また、親権の変更の申立てについてどうあるべきなのか、お伺いをしたいと思います。

北村参考人 私の先ほど申し上げたところの前提からすると、大変多くの被害者がおられるわけです、親権を失ってしまった被害者の方々。この人たちは親権変更の申立てを皆さんされるでしょう。その場合にどういう対応をされるか。申立ての前提として、元配偶者の方がそれをオーケーすれば、それはスムーズにいくわけですが、嫌だ、別れた元の配偶者の親権復活は嫌だということになると、裁判所で親権の深刻な争いになるということになります。

 そういう場合に、恐らくですけれども、先ほど意見陳述の中で申し上げた、恐らく裁判所は、DVのおそれがありますか、あなたに対するDVのおそれ、つまり元配偶者に対するDVのおそれはありますかということで、それがありますよということになると、これが蹴られるのかな、親権を得られないのかなというふうになる可能性がかなり高いのかなというふうに思っています。

 どういうふうにあるべきかということでの御質問でしたけれども、明確な、子に対する、配偶者はもう離婚していますので、親権を回復したからといって配偶者に対するDVをするおそれというのは一般的に余りないわけで、一般的にはですよ、それについては、仮にそのおそれがあるなら、先ほど申し上げたように、警察の助力を得る、弁護士の助力を得る、あるいは第三者機関の助力を得るなどして、子の受渡しのときだけ注意すれば十分なわけです。そういう手だてさえ講じているならば、基本的には、子に対するDV、子に対する重大な危険を及ぼすような、そういうおそれがないのであれば、原則共同親権を認めていくという運用があるべき姿だというふうに考えております。

 以上です。

大村参考人 ありがとうございます。

 御質問の点は、現行法の下で、離婚後は親権は単独行使をする、その制度の下で、時間が経過している親子について申立てがされた場合はどうか、こういう御趣旨だったのではないかというふうに理解をいたしました。

 そうしたケースについては、これまでの扱いが単独行使であるということを前提にしていたということを踏まえた上で、これまでにあった事実というのが評価されるべきだろうというふうに思っております。

 もう一つは、新しい規定、変更なんですけれども、変更については、これは前の規定からもそうですけれども、子の利益のためにというのが入っておりますので、最終的にはやはり子の利益というのを重視して判断がされるべきであろうというふうに考えております。

 以上です。

池下委員 ありがとうございます。

 ちょっともう時間がありませんので、最後に一つだけ、これはまた大村委員の方にお願いしたいと思うんですが、DV等の事案に関しましては当然着実に対応していかなきゃいけないんですけれども、一方で、例えば離婚して裁判所が単独親権とした場合、同居親が死亡して、親族に子供の引取りがなかった場合なんかというのは、その子供といいますのは、単独親権になっていますので、養護施設に行かなければならなくなるケースもあります。また、今日、北村委員からも例示がありました、離婚後単独親権で、同居親が再婚し、それこそ再婚相手等に児童虐待されて子供が亡くなっても、親権を持たない別居親には知らされないケースもあると聞きますけれども、単独親権下における弊害などは法制審で議論されたのか、また、今後の対応につきまして、改正後、対応をどうされるのかについてお伺いをしたいと思います。

大村参考人 ありがとうございます。

 幾つかの例を挙げての質問でありましたけれども、最初の例を取り上げさせていただきますと、現行の下で、単独親権であって、その親権者が亡くなったときにどうするのかということで、後見人が立つとか、あるいはもう一人の方が親権者になるのかということで、考え方には争いがあるところでございます。

 同じ問題が共同親権の下でも生じますので、そこのところを、従来にも増して考えていく必要はあるものというふうに了解をしております。

池下委員 ありがとうございます。

 時間になりましたので、終了します。皆さん、ありがとうございました。

武部委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 先ほども大村参考人の方から、今回の法改定の趣旨は、やはり子の利益を確保するということが目的であるということもおっしゃられたんですけれども、そこで、ちょっとお伺いをしたいんですけれども、岡村参考人と原田参考人にお伺いをしたいと思います。

 一人一人の子供の最善の利益に関して、今現状ではどういうふうに判断されているのかという点をまずお伺いをしたいと思います。

岡村参考人 ありがとうございます。

 子供の最善の利益の今の現状ということですけれども、面会交流に関しては、先ほども申し上げましたとおり、いっとき原則実施論に流れたものの、現在は、安全、子の状況、親の状況、親子関係、親同士の関係、環境の六つのカテゴリーに属する事情を含めて、その一切の事情を的確に把握して、最初は広く浅く、状況が分かってきたら掘り下げて、児童虐待やDVが問題になるような事案では安全の確保を第一に考えようということで、ニュートラルフラット、同居親及び別居親のいずれの側にも偏ることなく、先入観を持つことなく、ひたすら子の利益を最優先に考慮する立場でやっていこうというふうに裁判所が決めて、二〇二〇年から運用が変わって、何となくそれを感じつつあるというところがあります。

 子供の最善の利益という言葉、どちらがというところが、今、共同親権に関しては、今私は面会交流の裁判所の宣言について言ったんですけれども、親権争いに関しても同様に、そういう子供の立場というのを一番最優先して考えていくことが望ましいというふうに思っています。

 あと、子供の立場を考えるときに、ちょっと私、今日の議論をずっと聞いていて、子供の最善の利益を考えて計画を最初に立てるのがよいものであるということが、何となく皆さん前提で思っているかもしれませんけれども、紛争の現場にいると、事細かく最初に決めると二つの弊害があって、一つは、それに従わせるのは子供であり、大人の決めた約束によって、例えば、来年の何月何日には父親と過ごし、何月何日は母親と過ごしみたいなものを決めると、それはすごく子供に対して私は虐待行為に近い。

 しかも、ウォラースタインさんというアメリカのたくさんの事案を研究した方が、事細かに決めた面会計画に従って面会を続けた子供は一人残らず親を恨んだというふうに言っています。

 子供にとって一番よい面会は、会いたいときに会うという子供の意思を尊重するものになりますので、そのことがちょっと、決めればいいということではないというのが弊害の一つ。

 もう一つの弊害は、計画と違うと裁判をするみたいなことが、今すごくネットでも勧める人がいますし、裁判というのが、全体的にですけれども、気軽なものだみたいな形で、それは裁判所で決めればいいことだ、そこで子供の利益を図るんだというんですけれども、私は、たくさんの事件を、段ボール一箱、二箱、記録があって、弁護士が引き受けてくれなくて、それが最後のとりでで私に来たような事件を幾つも受けているから思うんですけれども、裁判沙汰というのは、普通のお母さんにとっては極めて苦労するんですよ。だから、裁判所で決めればいいでしょうというのは、お母さんにとっては、お父さんでもそうですよ、シングルで育てている人にとってはかなりの苦労で、それを繰り返すことが子供にとっては養育の質を下げているんですよ。だから、そのことをもうちょっと、子供の最善の利益というときには考えてもいいんじゃないかなと。何となく、裁判所で適切に決めるからいいでしょうと気軽な感じで進んでいるのは、非常に違和感があります。

原田参考人 どの場面で子の最善の利益というのかによって違うと思うんですけれども、今回問題になっている家事事件においては、今、家庭裁判所で、一定の類型においては子供の意見を聞くというふうになってはいますが、実際は、例えば、十五歳以上の子供であれば子供に何か書面を出させるようなことで終わってしまっているというようなこともあって、親権の争いになったときは調査官が子供さんに話を聞くということになっているんですが、小さい子供さんの場合は、一回例えば家庭訪問をして、今度このおばちゃんとかお姉ちゃんが聞くからねみたいな話をして、仲よくなってからもう一回聞くというやり方で、多分、小学校高学年ぐらいになったら、最初から家庭裁判所に連れてくる、ほとんど一回ぐらいしか会わない。

 だから、そういう意味では、私は、本当に子供さんに、今どういう状況で、何で今日は家庭裁判所に来て、あなたたちがどんなふうなことを思っているのかちゃんと聞きたいよというのをきちんと丁寧に説明して話をするという意味での手続が必要で、そういう手続をされることによって、子供が、親の紛争は自分のせいではない、そして、これから自分はどうなるのかについて不安を持たずに進めるというのが子供の最善の利益なんじゃないか。もちろん、その前提としては安全、安心というものがありますが。

 なので、私は、ちゃんと子供の人格ではなくて意思を尊重してほしいということを入れてほしいというふうに言っております。

本村委員 ありがとうございます。

 子供の意見表明、意思の尊重ということで、非常に重要な点だというふうに思います。この点に関して、岡村参考人はどのようにお考えでしょうか。

岡村参考人 お尋ねいただいた子供の意思の聞き方というのは、今、原田参考人がお答えになったことに全く異存がないです。

 基本的には、子供に一度会うだけで意思の把握について十分されているというふうには、私は余り思いませんし、今回の改正で子供の人格を尊重するという言葉が入ったんですが、法制審議会の議論を見ておりますと、それは意思を尊重するという、特に弁護士を中心とした意見が出ていたにもかかわらず、それを切り捨てる形で人格を尊重する、その人格の尊重の中には当然意思の尊重も入っているんだみたいなことになっていたので、それは非常に問題があるというふうに思います。

 子供は理路整然としゃべれる子ばかりではありません。そういう子供の声が切り捨てられないかがとても心配です。

 私の経験でも、幼少の子供が大変かわいがられていて、すごく面会をしたがるんじゃないかとほかのきょうだいは思っていたけれども、すごくかたくなに拒んでいた。たまたまですけれども、半年たった時点で、親しくしゃべるようになった心理士の人に話ができたからよかったんですけれども、実は同居中に性虐待に遭っていたことが発覚した。でも、それはすぐには言えない、別居して大分たってからようやく言えたというようなこともあります。その子からしてみると、大人が寄ってたかって、会いたくないと言っているのに、何で、かわいがられていたじゃん、こんな写真もあるよとか言われたことが恐怖でならなかったと。

 だから、何で会いたくないかとか、そういったことを理路整然としゃべれる、そんなに合理的にしゃべれる子ばかりではないということをやはり考えますと、子供の意思を尊重するということは非常に重要なことだというふうに思っています。

本村委員 ありがとうございます。

 原田参考人にお伺いしたいんですけれども、原田参考人は家族法制部会の最後のところ、棄権ということがございましたけれども、その理由について教えていただければというふうに思っております。

 もしよろしければ、ほかの反対された方の理由についても教えていただければというふうに思っております。

原田参考人 やはり、反対された方は共同親権ありきの議論だったというふうに、大村先生に申し訳ないですけれども、共同親権に、今導入することはやはり時期尚早だ、反対だということだったと思います。私もそれは同じ思いでした。

 ただ、やはり、あそこで議論をして、法文上、要綱の解釈について、議事録できちんと残せばそんなふうになるんだというふうに説明を受けて、それで私は、ここはこう解釈するんですね、こういう意味ですねと何回も言いました。それに対して、余り反論されることもなかったです。そうすると、ここで私が反対すると、その議事録に残ったことにも反対したことになってしまうのではないかという懸念がありまして、でも賛成はできなかったので棄権しました。

 以上です。

本村委員 ありがとうございます。

 続きまして、岡村参考人にお伺いしたいんですけれども、DV被害者の方が子供さんを連れ去られてしまったケースに関しまして、今回の法案、共同親権との関係について御見解を伺いたいと思います。

岡村参考人 私はDV事件を中心的にやってきましたので、子供を連れ去られてしまったりとか、あと追い出されてしまって別居親になっているDV被害者の事件を幾つもやっています。別居親となってしまったDV被害者というのは、これは一番激烈なDV加害、子供と引き離されるということになります。

 ただ、私の依頼者は共同親権を望んでいるかというと、共同親権の導入に反対している私の活動にすごく賛成してくれています。というのも、結局、監護者指定の申立てをすることになるんですよ。子供を連れ去られたり、追い出されたときに自分で育てたいといったら、それはむしろ単独親権を求めるんですよ。そんな人と共同でやっていけないんですよ。

 それを功を奏しない場合というのは、私が見たところ、主に一つ、子供の意思に反する場合です。子供の意思に反するという場合は、当然ですけれども、同居親に忖度している場合もあります。ただ、同居親と全く一体化して、加害的になっている子供もいます。DVというのはすごく深いので、子供に与える影響というのは非常に大きいというところがあります。それを、共同親権にしても、全然救えません。

 面会交流を、私は小さく産んで大きく育てるというふうに言いますけれども、子供との一点の関わりを確保したいというふうにDV被害者の多くは言っています。面会もできないのに共同親権が与えられて、同居親と子供が決めたことにノーと、私の意見を伝えられるのかといったら、そんな権力関係はないんですよ。拒否権の発動なんてできないです。何なら、同居親から、判こが要るから、これに同意してくれということで、説明を聞かされることもなかなか苦痛だろうということが多いです。

 一人の依頼者が、子供に拒否されている状態で、私は、何とかちゃんに、ずっとあなたの味方だよ、応援するよと言ってきた、その子が今私を拒否しているなら、その拒否しているあなたに寄り添いたいということで、身を引くということがあります。とても悲しいことだけれども、では、そこで、連れ去りだ何だかんだ、刑事罰だというふうにやってみたところで、子供の意思に反することを続けたら、子供の気持ちはどんどん離れて、断絶する一方なんですよ。だから、それは、今何々ちゃんはそう思うんだねというところで、ぐっと、一点、ここだけというところを守って、そこから、必ずチャンスはあります。

 私は、すごく長く寄り添って、そういう人たちの事件を本当にやってきた。弁護士は私以外にもいるんだけれども、そういう弁護士に対する攻撃がすごいから、もう本当に、みんな続けられない。どうか、きれいごとじゃなくて、弁護士も生の人が動いていて、どういう人が連れ去りの弁護士だとか言われているかというのも、本当によく調べてほしいし、すごくそれはそう思います。

 DV被害者にとって、共同親権というのはほとんど役に立たないし、むしろおびえています。そのことだけは申し上げたい。

本村委員 続きまして、DVは除外できるという話がありますが、その点、どうかという点、これも岡村参考人にお伺いしたいと思います。

 ポスト・セパレーション・アビューズということで、日本語で言うと、離婚、別居後の様々な嫌がらせとか虐待行為ということなのでしょうか。そういう実態、どのような今扱われ方になっているかという点、御教示をいただければと思います。

岡村参考人 共同親権をやっていこうという場合で、除外すべき事案が、まず、DVを除外するという話が当たり前みたいに出てくるんですけれども、一番除外した方がいいのは、DVじゃなくて、話合いができない関係性のケースです。DVがあっても、そのDVをすごく悪かったなと思って、被害者の方も、そうかそうか、では、今から関係をやっていこうということであれば、共同はできるんですけれども、話合いがもうほとんどできないということが一番問題かなというふうに思っています。

 そんなところで、DVを除外すると言ってみたところで、DVが何なのかによって、共同親権を推進したい人は、DVをすごく狭く理解するところがあります。やはり、共同することが一番いいことだと思っていると、それに邪魔なものはなるべくない方がいいかなというところで、軽視するというのが問題だというふうに思います。

 ポスト・セパレーション・アビューズというのは、結局、DVの中の、バイオレンスというVの部分も、ドメスティックの、家庭内という部分もなくて、離れてもずっと暴力が続くんだというものです。それについて、全然DV防止法では全く手当てもされていませんし、この問題の解決、対応なく共同親権制度を導入することにすごく懸念を持っています。

本村委員 先ほども、岡村参考人から、弱者側が説得されやすい実態があるということで、そこで、DV事件などを含めて、担当する弁護士の皆様の力が必要だというふうに思うんですけれども、そこの弁護士さんは十分足りているのかという点、あるいは、法テラスの実情について御教示をいただければと思います。

岡村参考人 先ほども言いましたけれども、弁護士がDV被害者側につく障壁は、やはり非常に値段が安くて経営が困難になりがちであるという点と、それからやはり業務妨害です。

 業務妨害については、SNSなどで実子誘拐ビジネスモデルの弁護士だみたいなことを言われて、非常にそれにたきつけられた人が苦情を言ったり懲戒請求をしたりということもやはりある中で、それにおびえて、なるべくそういう事件を受けたくないなと、真面目な弁護士ほど、もし共同親権制度が導入されたらもう撤退しようと、離婚事件から。そういう声がすごくたくさん上がっていて、やはり加害的な人を何とかしてもらわないと、私はそういうことがきちっとやっていただけるのであればこんなには反対しないです。やるべきことがやれていないのに、それで結局、共同親権制度がもし導入されて一番頑張るのは誰ですか。そのことを考えていただきたいなというふうに思っています。

 お答えになったかどうか。

本村委員 もう一つ岡村参考人にお伺いいたします。

 海外では共同親権がスタンダードだというふうに言われることについて、御教示をいただきたいと思います。

岡村参考人 海外が共同親権制度であると言われることについては、最近、現代思想の四月号に掲載された憲法学者の木村草太先生の指摘を見て、なるほどなと思った部分がありました。

 一つは、日本は子供を産むときの婚姻率が非常に高い。授かり婚という言葉がある、これをフランス人の人としゃべったら何それと言われました。子供ができたから結婚する、子供のためにならないから離婚するという考えがなくて、フランスでは愛が冷めたら離婚するという、私から見ると驚愕な、そんなことを言ったら離婚家庭だらけになっちゃうんじゃないと思ったら、そうしたら、フランスは離婚家庭だらけだ、何なら結婚もしませんと言われたんですよ。

 それで、木村先生が何とおっしゃっているかというと、日本は非常に婚姻共同親権率が高い国である、そして子供が十八歳になるまでに離婚する人が他国に比べてすごく少ないのである、そうすると、子供の立場になって考えたときに、親が共同親権であるという確率は世界に比べてむしろ高いのだと。なるほどなと思いましたね。

 だから、他国は離婚が結構たやすく、一人が、嫌よ、あなたの愛が冷めたのと、嫌いじゃないんですよ、愛が冷めて離婚している。だから、子供のためにやれる人はいっぱい残っていて、でも日本は、そんなことでは余りみんな離婚しなくて、何とか子供が大学卒業するまでは離婚せずに頑張るのとかいう人がいますと言ったら、フランス人の人が、何それ、本当に話が通じないねというふうになったんですよ。

 だから、何かパッチワーク的に離婚後共同親権というものを当てはめられても、海外と婚姻の状況も制度も文化も違う、離婚に対する考えも、日本では、お互い丸と丸で結婚して、ペケとペケがそろわないと離婚できないんですよね、基本的には、よっぽど何か事情がないと。だけれども、海外では、一人が嫌と言ったら、丸と丸の、丸の一個がペケになったから離婚できるという、そういう状況で、共同で子育て、共同親権で子育てできる人たちの割合というのは、日本でいう婚姻中共同親権の割合と似てくるというふうに思いますし、例えばフランスなんかだと、親権制限の割合が、人数が十万件ある。日本なら二十万件ないといけないということなんですけれども、日本の場合だと百件とかそれぐらいしか親権制限なんてないわけで、離婚件数が二十万件だと。

 なので、各国の制度でそれぞれ、子供を共同親権の下でできる人とできない人の割合というものがあって、それを日本は婚姻というものでやっているという面があるので、世界は共同親権というからには、共同親権状態で育てられている子供の割合で見るという視点も必要なんじゃないかなというふうに思いました。

本村委員 貴重なお話、本当にありがとうございました。審議に生かしていきたいというふうに思っております。聞けなかったお二人、大変申し訳ありません。ありがとうございました。

武部委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、来る五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十四分散会


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