第8号 令和6年4月5日(金曜日)
令和六年四月五日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 武部 新君
理事 熊田 裕通君 理事 笹川 博義君
理事 仁木 博文君 理事 牧原 秀樹君
理事 道下 大樹君 理事 米山 隆一君
理事 池下 卓君 理事 大口 善徳君
東 国幹君 五十嵐 清君
井出 庸生君 上田 英俊君
英利アルフィヤ君 大西 英男君
奥野 信亮君 岸 信千世君
斎藤 洋明君 島尻安伊子君
高木 啓君 高見 康裕君
谷川 とむ君 中野 英幸君
藤原 崇君 古川 直季君
本田 太郎君 三谷 英弘君
三ッ林裕巳君 山口 晋君
山田 美樹君 おおつき紅葉君
鎌田さゆり君 鈴木 庸介君
寺田 学君 山田 勝彦君
山井 和則君 阿部 弘樹君
斎藤アレックス君 美延 映夫君
日下 正喜君 平林 晃君
本村 伸子君
…………………………………
法務大臣 小泉 龍司君
法務大臣政務官 中野 英幸君
最高裁判所事務総局総務局長 小野寺真也君
最高裁判所事務総局家庭局長 馬渡 直史君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 小八木大成君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 和田 薫君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 親家 和仁君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 千代延晃平君
政府参考人
(こども家庭庁長官官房審議官) 野村 知司君
政府参考人
(こども家庭庁長官官房審議官) 高橋 宏治君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君
政府参考人
(法務省大臣官房司法法制部長) 坂本 三郎君
政府参考人
(法務省民事局長) 竹内 努君
政府参考人
(法務省刑事局長) 松下 裕子君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 長徳 英晶君
政府参考人
(文部科学省大臣官房学習基盤審議官) 浅野 敦行君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 奥野 真君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官) 青山 桂子君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 宮本 直樹君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 辺見 聡君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
―――――――――――――
委員の異動
四月五日
辞任 補欠選任
東 国幹君 岸 信千世君
稲田 朋美君 古川 直季君
中曽根康隆君 本田 太郎君
平口 洋君 島尻安伊子君
三ッ林裕巳君 三谷 英弘君
山田 勝彦君 山井 和則君
同日
辞任 補欠選任
岸 信千世君 東 国幹君
島尻安伊子君 山口 晋君
古川 直季君 稲田 朋美君
本田 太郎君 高木 啓君
三谷 英弘君 大西 英男君
山井 和則君 山田 勝彦君
同日
辞任 補欠選任
大西 英男君 三ッ林裕巳君
高木 啓君 中曽根康隆君
山口 晋君 上田 英俊君
同日
辞任 補欠選任
上田 英俊君 平口 洋君
―――――――――――――
四月五日
刑務所内だけではなく、拘置所内の未決拘禁者でも運転免許の更新ができるよう法律で認めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八五五号)
同(笠井亮君紹介)(第八五六号)
同(穀田恵二君紹介)(第八五七号)
同(志位和夫君紹介)(第八五八号)
同(塩川鉄也君紹介)(第八五九号)
同(田村貴昭君紹介)(第八六〇号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第八六一号)
同(宮本岳志君紹介)(第八六二号)
同(宮本徹君紹介)(第八六三号)
同(本村伸子君紹介)(第八六四号)
外国人住民基本法と人種差別撤廃基本法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第九四五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)
――――◇―――――
○武部委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官小八木大成君、警察庁長官官房審議官和田薫君、警察庁長官官房審議官親家和仁君、警察庁長官官房審議官千代延晃平君、こども家庭庁長官官房審議官野村知司君、こども家庭庁長官官房審議官高橋宏治君、総務省大臣官房審議官三橋一彦君、法務省大臣官房司法法制部長坂本三郎君、法務省民事局長竹内努君、法務省刑事局長松下裕子君、外務省大臣官房参事官長徳英晶君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官浅野敦行君、文部科学省大臣官房審議官奥野真君、厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官青山桂子君、厚生労働省大臣官房審議官宮本直樹君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○武部委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君及び家庭局長馬渡直史君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○武部委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。
○大口委員 公明党の大口でございます。
一昨日、そして昨日は参考人、そして本日と、連日本当に充実した審議である、こういうふうに思っております。
まず、養育費の関係でございます。
令和三年度全国ひとり親世帯等調査によれば、養育費の取決め率は母子家庭で四六・二%、父子家庭で二八・三%、受給率は母子家庭で二八・一%、父子世帯で八・七%であります。
養育費は、子供の養育ということで極めて大事でございまして、我が党も、令和二年十二月に、公明党不払い養育費問題対策プロジェクトチームにおいて、不払い養育費問題の抜本的解決に向けた提言を取りまとめ、法務大臣へ申入れをいたしました。
この提言では、子供の福祉と未来を第一にしていくために、養育費が重要な債権であって、特に優先されるべきものであること、様々な事情で離婚時に養育費の取決めができなかった場合には、離婚時から子供のための養育費が確保されるような制度の在り方を検討すること、また権利者の裁判手続の負担を軽減すること、また親ガイダンスの実施などを盛り込んだところでございます。
我が党は、また、本年二月にも小泉大臣に提言を出させていただき、一人親家庭の貧困を解消するため、法定養育費制度の速やかな創設、そして養育費の支払い確保等の各種支援策を拡充することを求めました。
今回の改正の中でも、改正案民法第八百十七条の十二第一項において、親の子に対する生活保持義務が明確化されたことに加え、七百六十六条の三において、父母の取決めがなくても離婚時から発生する請求権を認め、また最低限度の生活維持に要する標準的な費用の額等の規定が設けられ、法定養育費制度が創設されること、そして、そのことは、離婚時に父母が養育費の取決めをすることが困難なケースにおいても、子供に生ずる不利益に対応するのは大変重要であり、そしてその意義は大きいと考えますが、法務大臣の認識をお伺いします。
○小泉国務大臣 現行の民法によれば、養育費の支払いを具体的に請求するためには、父母の協議又は家庭裁判所の手続による養育費の取決めが必要であります。しかし、例えば、DVなどの事情により、離婚の際に養育費に関する協議や家庭裁判所に対する手続の申立てをすることが困難な場合があるとの問題、この指摘がございました。
こうした問題点を踏まえ、また御党からいただいた御提言も踏まえ、法定養育費制度の創設は、こうした養育費の取決めが困難な場合に子に不利益が及ぶことを避けるため、養育費の取決めを補完する趣旨から設けることとしたものであります。
本改正案においても大変大きな意義のある、改正の柱の一つであると認識しております。
○大口委員 この法定養育費制度が創設されましても、やはり、父母の協議によって、その収入等の個別的な事情を踏まえて養育費の取決めをすることの重要性は変わりません。
我が党の提言でも、養育費取決めの促進支援策の重要性を指摘したところでありますが、離婚時の養育費の取決めを促進するため、政府はどのような取組を実施しており、また今後どのようにこれを拡充していくのか、民事局長、そしてまたこども家庭庁よりお伺いします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
法務省では、養育費の取決めを促進するため、養育費に関する合意書のひな形を記載したパンフレットの配布や、養育費の取決めの重要性を説明した動画の配信など、様々な取組を行っているところであります。
また、養育費の不払い解消に向けて、複数の自治体と協力して実証的な調査研究を実施したところでありまして、効果があった施策については横展開できるように、こども家庭庁等と協力、連携しているところでございます。
今後、更なる調査研究を予定しておりまして、引き続き、関係府省庁等と連携してこの課題に取り組んでまいりたいと考えております。
○野村政府参考人 お答え申し上げます。
養育費の取決め、受領の状況については、先ほど先生から御指摘のあったとおりでございますけれども、養育費の取決めを促進する、そしてその履行を確保していくということは非常に重要な課題と考えております。
こども家庭庁では、離婚前後親支援事業というものをやっておりまして、この中で、養育費確保に関する弁護士などによる相談支援でございますとか、公正証書の作成支援などの、履行確保に資する取組を行う自治体の支援を行っているところでございます。
さらに、令和六年度予算におきましては、この事業の中で、養育費の受取に係る弁護士費用の支援についても補助対象ということで、拡大をしたところでございます。
引き続き、法務省とも連携しながら、履行確保に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。
○大口委員 また、今回の改正法の民法三百六条、三百八条の二では、養育費債権に先取特権を付与するということにしたわけで、一般債権者に優先をして弁済を受けることができるわけで、養育費の履行確保には重要な意義があるわけでございます。
そして、他方、同居親が別居親に対する養育費請求権を有して、それに基づいて別居親の給与の差押えをすることができる状態になった場合に、現状は、差押手続のハードルが高く、同居親にとっての負担が大きいということでございます。
この改正法案では、執行手続をより利用しやすくするためどのような改正をしているのか、また、法務省として今後執行手続を更に利用しやすくするためどう取り組むのか、民事局長にお伺いします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
現行民事執行法の下では、財産開示手続、第三者からの情報取得手続、これらの手続によって判明した財産に対する差押えの手続について、それぞれ別個に申立てをしなければならず、このことが一人親家庭にとっての負担となっているとの指摘がございます。
そこで、本改正案では、民事執行手続の申立ての負担を軽減するため、一回の申立てで、財産開示手続、第三者からの情報取得手続、これらの手続によって判明した財産に対する差押えの手続を連続的に行うことができる仕組みを導入することとしております。
また、法務省としては、本改正案が成立した際には、改正法の施行状況を注視しつつ、今後も引き続き、養育費の支払いを必要としている一人親家庭にとって民事執行の手続を利用しやすくするための運用上の取組について、関係府省庁等とも連携して、必要な調査研究を進めてまいりたいと考えております。
○大口委員 養子縁組関係についてお伺いします。
本改正案では、養子縁組について見直しがなされているわけであります。
本改正案の民法八百十八条第三項によれば、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合、共同親権を定めた場合ですね、その一方が再婚し、その再婚の相手とその子との間で養子縁組がなされた場合、いわゆる連れ子養子とされた場合でありますが、子に対する親権は、養親とその配偶者である実親のみが親権を行うことになり、他方の親はその子に対する親権を行うことができなくなります。
このように、養子縁組の効果は子にとっても極めて重要でございますので、この点について、更に条文を読み解きますと、民法七百九十七条第一項によれば、十五歳未満の子の養子縁組については、その親権者が代諾することができ、これまでのように、離婚後、父又は母の単独親権であれば、その代諾は親権者である父又は母が単独で行います。他方、離婚後、父母双方が親権者となった場合に、一方の親権者の再婚相手と子との間で養子縁組をしようとする場合には、養子縁組の代諾は父母双方が共同してこれを行う必要があります。ここが今回、共同親権が認められることで変わったところであります。
その場合、父母の意見が対立した場合、本改正案の民法七百九十七条第四項により、家庭裁判所は、養子縁組が子の利益のため特に必要があると認めるときに限り、その一方が単独で代諾することができる旨の審判をすることができるものとしています。
そこで、こういう一連の流れについての確認と、養子縁組が子の利益のために特に必要があると言えるか否かについてどのように判断をされるのか、法務大臣にお伺いします。
○小泉国務大臣 離婚後の父母双方が親権者となった後の養子縁組の代諾に関する本改正案の規律の内容は、委員の御指摘のとおりでございます。
改正案の民法第七百九十七条第四項に言う、子の利益のため特に必要があるの解釈に当たっては、養子縁組が成立すると実父母が親権者としての権利義務を失うことを考慮してもなお、養子縁組を成立させることが子の利益の観点から必要である事情を要すると考えられます。
そして、この判断においては、子の意見、意向を踏まえつつ、それまでの実父又は実母による養育費の支払い状況や、養親となる者の扶養能力等も考慮されることになると考えられます。
○大口委員 子供の視点に立って、これはしっかり判断をしなければならないことでありますし、この改正案で共同親権が導入されることによって、また、これまでは、それこそ単独親権の方が、知らないうちに養子縁組がなされるということでありますが、今回、代諾について共同行使ということになりますので、これは手続上必ず、別居親が、知らない間に同居親が再婚された場合の子の養子縁組について関与する形になってまいりますので、しっかり、いろいろな御不安もございますので、どういう場合はどうなるのかということを明確にする必要があると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
次に、昨日の参考人の質疑においてもほとんどの参考人が、裁判実務の改善が今後の課題となるということで、やはり家庭裁判所の人的、物的拡充というのは非常に大事でございます。我が党の提言においても、裁判所における専門性の充実及び安全、安心の確保や、当事者の目線から利用しやすい裁判手続の実現及び体制の充実、抜本的強化を求めてまいりました。
また、参考人質疑では、父母の葛藤を低下させることの重要性と、そのための工夫の必要性の観点から、親ガイダンスの実施等の有効性を指摘する意見が述べられております。また、最高裁も約束してくれていますように、家事調停手続における親ガイダンスにおいても、父母の対立から子の利益に目を向けてもらう工夫も重要であります。
そこで、裁判所における親ガイダンスの実施を含めた家事調停の運営改善等に関する今後の取組について、最高裁にお伺いいたします。
○馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
子をめぐる紛争のある家事調停におきまして、子の利益にかなう紛争解決をするためには、委員御指摘のとおり、調停の当事者である父母の葛藤を低減させることが重要でございます。
家庭裁判所では、調停期日において、調停委員会が父母双方の話を十分に傾聴し、子の利益にかなう紛争解決に向けて、必要な時間をかけて調整を行い、父母の葛藤の低減に努めているものと認識しております。あわせて、いわゆる親ガイダンスを実施し、父母が両親の紛争下に置かれた子の心情等に目を向け適切に配慮できるよう、働きかけを行っているものと認識しております。
今後、改正法が成立した場合におきましても、よりよい家事調停の運営に向けて、改正法の趣旨等も踏まえ、親ガイダンスや研修の在り方などにつきまして、しっかりと検討してまいりたいと考えております。
○大口委員 しっかりお願いをしたいと思います。
質問はこれで終わりとしたいと思いますけれども、今回の改正案は財産分与の見直しについてもなされています。現行上の財産分与の請求権は二年の期限制限があるわけでありますが、それが五年になる。我が党も、令和二年十二月に法務大臣に、財産分与請求期間の伸長を求める提言を出したわけでありまして、五年に伸長されるということは非常に大事なことである、こう思います。また、財産分与の考慮要素の明確化ということで、婚姻中の財産管理、維持に対する寄与の割合を原則二分の一ずつにする、これも判断要素を明確にするということで意義のある改正であると思います。
こういう様々な改正案についてやはり分かりやすく丁寧に解説をし、そして周知をしていくことが大事である、その意見を付しまして、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、三谷英弘君。
○三谷委員 神奈川八区、衆議院議員の三谷英弘です。
本日は、質問の機会をいただきましたことにつきまして、まずもって、理事の先生方、そして委員の皆様に心から御礼、感謝を申し上げたいと思います。
二〇一三年から十年以上にわたりまして、共同養育支援議連、当時は親子断絶防止議連でございましたが、その一員として、そしてこの数年はその事務局長として、夫婦が離婚した後も親子のきずなが切れることのない社会の実現に向けて取組を進めてまいりました。
この間、子供に会えずに苦しんでいる方々からの声をたくさん伺ってまいりました。子供に会えない苦しさから自ら命を絶たれる、そういった方もいらっしゃいました。お父さんやお母さんに会いたくても、会いたいと言えなかった、大きくなってから会って、ずっと自分のことを愛してくれていた、そういうことを知って胸のつかえが取れた、あるいは欠けていたピースが埋まった気がした、そういった子供たちの声も多数伺ってまいりました。そういった方々の顔を思い浮かべながら、今日は質問をさせていただきます。
まず、大臣に伺います。
今回の法律改正が行われるまで、現状ですけれども、離婚後は単独親権しか認められないため、親権をめぐる争いが必ず引き起こされる仕組みとなっています。最近では、イクメンとか、お父さんもお母さんも子供の養育に一生懸命携わる、そういったことがあるわけでありますから、離婚をした段階で突如どちらかしか親権者でいられないというような仕組みになれば、当然ながら、我こそが親権者でありたいということを、一生懸命その離婚の話合いあるいは裁判手続の中で主張、立証していく。そういった中には、自分が親権者であるということを一生懸命主張、立証するだけではなくて、相手方が親権者として不適格であるということを一生懸命主張、立証せざるを得ない、そういった活動を強いられるのが現行の法制度であります。
そういった中で、自分が相手方の嫌なところに一生懸命目を向けていく、あるいは向こうからも自分のそういった部分についていろいろと言われていく、そういったことを繰り返す中で、どんどんどんどん必要以上に葛藤が高まっていくというのが現在の法制度であります。
今回の離婚後の共同親権というものを導入するということによって、まずはそういった今の制度が、葛藤を引き起こしていくというような仕組みがまずなくなるということだけでも大きな一歩だと思っています。
そして、それに加えまして、夫婦は離婚したとしても、親子の関係が切れることはありません。自分にとっては嫌な相手でも、子供にとっては大切なお父さんであり、またお母さんです。そういったことを前提に話合いを続けることは不可欠であるということを前提に、質問させていただきます。
離婚後にも共同親権を認めるというのは、親のための改正ではなく、子供のための改正と理解しています。今回の法改正は、もちろん、両親が共同親権でいこうということを合意したときには当然ですけれども、たとえ一方の親が単独親権を求めたとしても、離婚後も両方の親が親権者として子供に関与することが子供の利益の観点から望ましい場合がある、そういう理解でよいか、お答えいただきたいと思います。
○小泉国務大臣 まず、お尋ねのうち、本改正案の趣旨、目的につきましては、御指摘のとおり、本改正案は子の利益を確保することを目的とするものであります。
次に、どのような場合に父母双方を親権者とするかについては、本改正案では、離婚後の親権者の定めについて父母の協議が調わないときは、裁判所が、子の利益の観点から、親権者を父母双方とするか一方のみとするかを判断することとしております。
その際の判断の問題でありますけれども、法制審議会の議論の過程では、裁判所が父母双方を親権者と定める要件に関し、その旨の父母の合意がある場合に限定すべきとの意見もございました。
しかし、父母の協議が調わない理由には様々なものが考えられます。したがって、合意がないことのみをもって直ちに父母双方を親権者とすることを一律に許さないのは、かえって子の利益に反する結果となりかねない。そのため、本改正案では、裁判所は、父母の協議が調わない理由等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であるかなどの観点を含め、親子の関係、父母の関係その他一切の事情を考慮して実質的、総合的に判断すべきこととしており、そのことが全体として子の利益の確保に資すると考えております。
○三谷委員 ありがとうございます。
もちろん、夫婦が高葛藤になっているケースの中には、当然ながら共同養育をやろうといっても不可能であるというふうになるものがあることは否定をいたしません。しかしながら、話合いができない方が単独親権をかち取れるということになれば、話合いをする努力をしない方が得をするような間違った理解というものが広がってしまうおそれがございます。
これまでも、裁判を通じて、あるいは手続を通じて葛藤を下げる取組というものを裁判所の方でも行っていくという話もありますけれども、しっかりと話合いをする方向に努力をさせるためには、今回の法改正に当たって、法務省から裁判所に対して、あるいは当事者に対して適切なメッセージを発出していただく必要があると考えますが、どのように考えておりますでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案では、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないことや、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化することとしております。
また、本改正案によれば、親権者の指定の裁判においては、裁判所は、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととしており、あくまでも一般論としてお答えいたしますと、父母相互間の人格尊重義務や協力義務を遵守してきたかも考慮要素の一つであると考えられます。
法務省といたしましては、改正後の民法の趣旨や内容、解釈について、裁判所と適切に共有することも含め、関係府省庁等とも連携して適切かつ十分な周知、広報に努めたいと考えております。
○三谷委員 ありがとうございました。
今お答えいただきました中に、夫婦の協力義務という言葉があります。これは本当に大きな言葉だろうというふうに思っています。
子供の連れ去りについて伺います。
子供の連れ去りと刑法の関係につきましては後ほど谷川委員から質問されると承知をしておりますので、それはそちらにお任せさせていただくといたしまして、民事上の質問をさせていただきます。
これまでは、親権を獲得するためのある意味必勝パターンというものが存在いたしました。その最たるものが、子供の連れ去りであります。子供と一緒に家を出て、別居を始めるということで事実上の監護状態をつくり出す。そうすると、継続性の原則が適用されて、そのままの事実状態が裁判所に追認をされることが非常に多くありました。
ある意味、これまでは連れ去った方が得をするという運用がありまして、それを踏まえて、弁護士も、離婚をされるなら子供と一緒に出てくださいというようなアドバイスが行われることが多かったと承知をしております。
そういった中で、今回の法改正を踏まえて、その以降、理由なく子供を連れ去り、あるいは相手方と会わせないということは、先ほどお話しいただいた親権者間の協力義務に違反する行為となりますので、やはり親権者の判断においてマイナスに働き得るということでよいか、お答えいただきたいです。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案では、父母の離婚後もその双方を親権者とすることができることとしたほか、婚姻中も含め、父母双方が親権者である場合は、子の居所の変更を含めて親権は父母が共同して行うとした上で、急迫の事情があるときは父母の一方が親権を単独で行うことが可能であるとし、父母の意見対立を調整するための裁判手続を新設することで、親権行使のルールを整理しております。
また、本改正案では、子に関する権利の行使に関し、父母が互いに人格を尊重し協力しなければならないとしており、父母の一方が何ら理由なく他方に無断で子の居所を変更するなどの行為は、個別の事情によっては、この規定の趣旨にも反すると評価され得ると考えております。
そして、あくまで一般論としてお答えいたしますと、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合、親権者の指定、変更の審判において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えております。
○三谷委員 ありがとうございます。
そして、もう一つ加えてお伺いします。特段の理由なく子供を連れ去って相手方に会わせないということ、これ自体は、引き離された側に対する精神的なDVに該当するというふうに理解をしておりますが、それでよいのか、お伺いします。
それからもう一つ。子供を理由なく引き離して相手方に会わせないということが仮にDVに該当するということであれば、親権者を決定するという判断において極めて不利益に考慮される事情となるというふうに承知をしておりますが、その点についてお答えいただきたいです。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
まず、お尋ねの前段の部分でございますが、無断で子供を転居させ、特段の理由なく別居親と一切交流させないというような場合は、個別の事情にもよるものの、これにより心身に有害な影響を及ぼしたと認められる場合にはDVに該当する可能性もあり得ると考えられます。
後段についてですが、本改正案では、先ほど申し上げましたような夫婦相互の人格尊重義務や協力義務を規定しているところでございまして、お尋ねのような行為は、個別の具体的な事情によりましては、この義務に違反すると評価される場合があるものと考えられます。
また、本改正案によれば、親権者の指定の裁判においては、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないとされておりまして、これらを踏まえ、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、親権者の判断におきましては、父母の一方が子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかや夫婦相互の人格尊重義務や協力義務を遵守してきたかも考慮要素の一つであると考えられます。
○三谷委員 ありがとうございます。
そういったお答えをいただきましたが、ただ、だからといって、直ちに連れ去りというものがなくなるとまでは楽観視してはおりません。
といいますのも、私がもし弁護士として実務に携わるのであれば、離婚に至る間に夫婦間にあった様々な口げんかを含めたいざこざに着目いたしまして、その際の言動というものを殊更に強調して、それがDVとか虐待に当たると主張して子供を連れて出ていくように指導するだろうと思います。
もし、裁判所がそういった主張を漫然と認めるということはないと思いますけれども、そうだとすれば、結局、今巷間に言われておりますような虚偽DVの被害と言われるものが形を変えて増えるだけでもありますし、結局、連れ去った方が有利という事態を防ぐことはできません。
だからこそ、伺います。まず、単にDVや虐待があるという主張が行われただけでは単独親権は認められないし、そういう主張が行われたとしても、しっかりと裁判所が事実認定を行って、その有無を含めて、子供の利益のために有益であれば共同親権が認められるという理解でよいか、お伺いします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案では、裁判所が親権者の判断をするに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないものとした上で、必ず父母の一方を親権者と定めなければならない場合の例として、虐待等のおそれがあると認められるとき、DV被害を受けるおそれ等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときを挙げております。
虐待等やDV被害を受けるおそれの有無や、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるかどうかは、裁判所において、個別の事案ごとに、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とが総合的に考慮されて判断されるものでありまして、当事者が虐待やDVの存在を主張していることのみによって直ちに認められるものではないと考えられます。
したがって、当事者が虐待やDVの存在を主張しているとしても、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情が考慮されて、父母の双方を親権者と定められることもあり得ると考えられます。
○三谷委員 ありがとうございます。
もちろん、DVですとか虐待というのは重大な事柄ですから、そういった主張が行われたときには、裁判所は当然ながら慎重にその有無を審理するというのは当然のことでもありますし、その分だけ審理に要する時間というのは長くなるということは避け得ない、それはもう理解をしています。
ただ、だからといって、その間、一方の親のみとの同居状態というものが長期化するということによって、別居親との関係が薄くなってしまうことは容易に想定されるわけです。それを防ぐためには、こういった長期にわたる調停や裁判手続の間も、子供と別居親との間の親子交流がしっかりと実施されることが不可欠であると考えますが、どのようにお考えでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
裁判手続中に親子交流が行われずに長期間が経過いたしますと、親子関係に影響を与えかねないとの指摘があることは承知をしております。
本改正案では、適切な親子交流の実現のため、裁判所が、裁判手続中に、事実の調査のため、当事者に対し親子交流の試行的実施を促すことができる仕組みを設けることとしております。この試行的実施は、親子交流の調停、審判事件のほか、離婚調停、離婚訴訟においても可能なものとしております。
また、離婚調停や離婚訴訟が係属中でありましても、親子交流の申立てがされた場合には、離婚調停と並行して親子交流の手続が進められることとなり、事案によりましては、離婚訴訟の判決に先立って親子交流についての取決めがされることもあり得るものと考えられます。
○三谷委員 ありがとうございます。
それから、共同親権の行使の在り方についてお伺いします。
そこで言う単独で行使し得る急迫の事情というものについて、様々な意見があることは承知をしております。もちろん、急迫の事情における急迫性というものを余り狭く解釈すると、なかなか急迫の事情が認められないという懸念の声もこれまでたくさん頂戴をしてまいりました。
一方で、親権者の合意が必要な場合であっても、裁判所の判断に時間がかかる場合には、結果的に、急迫の事情によって、一方の親権者の判断により物事がどんどんと進んでいく事態が想定されるわけです。共同親権をといったところで、絵に描いた餅で終わってしまうということにもなりかねません。
だからこそ、裁判所において、適切にあるいは適時に急迫の事情を判断していただく必要がございますが、この点、迅速な判断を得るための仮処分的な手続の活用を含め、裁判所の機能強化が必要と考えますが、この点についてどうお考えでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案では、父母双方が共同で親権を行うべき事項についての父母の意見対立に対応するため、家庭裁判所が父母の一方を当該事項についての親権行使者と定めることができる手続を新設しております。
また、家事事件手続法第百七十五条におきまして、家庭裁判所は、親権行使者の指定の審判又は調停の申立てがあった場合において、審判前の保全処分として、子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができることとしております。
○三谷委員 ありがとうございます。
続いて、養育費と親子交流についてお伺いします。
両親から愛情を持って育てられることは子の利益に資するものでありまして、それを形にするのが養育費の支払い、そして親子交流だと考えています。これらは車の両輪であるということを前提に、以下の質問をいたします。
今回の改正では、養育費の支払いにつきましては、履行確保の観点から先取特権を認める内容が入っております。他方で、親子交流については履行確保の手段というものが特段入っておらず、しっかりと親子交流の履行を確保することについては別途考えなければなりません。
その中で、特段の理由なく親子交流を拒む場合、親権者の変更を求める、あるいは居所指定権者の指定を求めて子供の居所を変更する、つまり、それまでの別居親の側に子供を移すことも可能だという理解でよいか、お答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案では、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないこと、また、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化することとしております。
父母の一方が特段の理由なく親子交流に関する協議を拒んだり、親子交流について取り決められたものの特段の理由なくその履行を拒む場合、個別具体的な事情によりましては、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価される場合があると考えております。
そして、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合には、親権者の指定、変更の審判や子の居所の指定に関する親権行使者の指定の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性がございます。
その上で、本改正案では、裁判所は、親権者の指定、変更の申立てや親権行使者の指定の申立てにおいて、別居親からの申立てに理由があると判断する場合には、当事者、同居親に対して、他方の当事者、別居親に子を引き渡すことを命ずることもできることとしております。
○三谷委員 ありがとうございます。
ただ、もちろん、それはもう究極的な場合でありまして、できることならばしっかりと自発的に親子交流が行われるにこしたことはありません。そういう意味では、親子交流の支援というものが地方自治体ですとか民間団体によって行われることが重要であるというふうに考えています。また、親子交流の重要性の理解を深めるためにも、こども家庭庁が実施をしております離婚前後の親支援事業が少しでも多くの自治体において実施されるように取り組んでいくべきと考えます。
これらの親子交流の促進と円滑な共同養育を進めていく上で、地方自治体の役割は大変大きいものと考えておりますが、こども家庭庁としてはどのようにお考えでしょうか。
○野村政府参考人 お答え申し上げます。
こども家庭庁におきましては、離婚前後親支援モデル事業という形で、令和元年度から、親支援講座であるとか、あるいは養育費の履行の確保、さらには親子交流の取決めの意識を持ってもらうとか、こういった取組をするような自治体への支援を行っているところでございます。
これは先ほど先生から御指摘がありましたけれども、六年度からは、モデル事業というのを位置づけを改めまして、離婚前後親支援事業という形で、意欲を持つ自治体がしっかり取り組んでいただけるようにということで、一自治体当たりの補助金額を増額するといったこと、さらには、モデルという位置づけからいわゆる一般の事業に変更して、より普及を図っていくというような位置づけの見直しを行ったところでございます。
さらに、親子交流支援事業というものももう一つやっておりまして、自治体における親子交流支援員の配置を促進し、離婚した夫婦間における親子交流の支援などを行っているところでございます。
一般論として、親子交流が離婚後も適切な形で実施されることは、子供の立場から望ましいことであります。一方で、児童虐待、DVなどによって実施がなかなか難しいという場合もあって、安全、安心な親子交流の実施に当たって、より専門的な支援が必要となることもございます。
こうした専門的な支援に関して、例えばですけれども、法務省さんの方でも、親子交流支援団体の活動支援とか、親子交流について説明する動画、パンフレットなどによる周知などを図っておられるものと承知をしております。
このため、法務省さんとも連携しながら、地方自治体において、民間親子交流支援団体あるいは地元の弁護士会などの協力を得ながら、こういった取組を実施していけるようにしっかりと支援をしていきたいと考えております。
○三谷委員 ありがとうございます。
本当にこれからは地方自治体の役割というものも大きくなってまいりまして、実は、親子の関係に関しては、地方議員の方々の議員連盟というものも存在します。これも共同養育支援議連と同じように超党派で組成しているものですけれども、これから全国で地方自治体の各級の先生方が親子交流をしっかりと促進、推進していくための取組を進めていただくことを期待をしたいというふうにお願いを申し上げます。
それでは、続きまして、次の質問に移らせていただきます。
親子交流の頻度ですけれども、現在は月に一回が相場だというふうに言われています。しかしながら、離婚後の共同親権を導入した後は、重要な事項の決定に関与するということであれば、子供の得意とか不得意、性格その他特徴を親権者がしっかりと理解していないことには、子供の最善の利益に資する判断は行い得ません。とすれば、それに伴って、親子交流の意味ですとか目的も何らか変わってくるというふうな理解ですけれども、それでよいでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
父母の離婚後の子と別居親との親子交流は親権の行使として行われるものではありませんで、別居親の親権の有無の問題と親子交流の頻度や方法をどのように定めるかといった問題は別の問題として捉える必要がございます。
その上で、親子交流の頻度や方法については、安全、安心を確保して適切な形で親子の交流の継続が図られることは子の利益の観点から重要であるということを前提として、子の利益を最も優先して考慮して定めるべきであります。
離婚後の父母双方が親権者である場合には、親子交流の機会を通じて別居親が子の様子を適切に把握することが円滑で適切な親権行使のために有益であることも一つの視点として考慮されることになると考えられますが、いずれにしても、適切な親子交流の在り方は、親権行使の在り方とは別に、子の利益の観点から個別具体的な事情の下で検討されるべきものと考えられます。
○三谷委員 今答弁の中にいただきましたその視点というのが極めて重要になりますので、これから裁判所実務の中で、そういった視点を大切にしながら質とか量を決定をしていただきたいということを心からお願いをさせていただきます。
また、法定養育費について一点お伺いします。
今回、法定養育費制度が認められました。実は、これについては、別居親と話合いの機会も持とうとしない、あるいはひたすら関わりも絶とうとする、そういった親であっても法定養育費制度が、払われる、支払う側からすると、全く話合いにも応じてくれないにもかかわらず、養育費の支払いのみが強いられるのではないかといった不安の声も一部ではあると承知をしております。
もちろん、親である以上、養育費を支払うのは当然のことでありますので、それに対してノーと言うことはあってはならない。ただ、やはり親権者間で協力義務の履行をするということをやってほしいわけです。そういったときにも、親権者の判断において、親の動きといいますか、そういったものがマイナスに働くということでよいか、一点、簡潔にお答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案において新設をいたします法定養育費制度は、父母が養育費の取決めをせずに離婚した場合に、養育費の取決めを補充する趣旨で、父母の生活水準に即した養育費の取決め等がされるまでの当面の間、父母の収入等を考慮せずに離婚時から一定額の養育費を請求することができるというものであります。
他方で、父母双方が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが望ましく、養育費や親子交流を含めた子の養育に関する事項を取り決めることは、子の利益にとって重要であります。このため、父母の一方が養育費や親子交流など子の養育に関する事項についての協議を理由なく一方的に拒否する場合、個別具体的な事情によりましては、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価される場合があると考えております。
そして、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合、親権者の指定、変更の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えております。
○三谷委員 ありがとうございます。
続きまして、裁判所の体制整備についてお伺いをします。
現在既に、コロナ期以降、期日がなかなか入らない、今なお二か月に一度しか期日が指定されない、審理の進行が遅くなっている、そういった声、批判というものが強いところでございます。それに加えまして、今回の改正によって、親権者間の意見に相違が生じた場合ですとか、あるいは改正民法の施行前に離婚した夫婦から親権者変更あるいは指定が求められる場合など、多数の案件が新たに裁判所に持ち込まれることが想定されています。
司法が国民にとって利用しやすく、かつ頼りがいのあるものとするためにも、今後、改正民法が施行されるまでにどのような体制整備を行う予定か、裁判官や家事調停官の増員への意識も含め、現在のお考えを伺います。
○小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
裁判所はこれまでも、事件動向等を踏まえまして着実に裁判官を増員してきたところでございます。とりわけ、平成二十五年以降は、民事訴訟事件の審理充実を図るほか、家庭事件処理の充実強化を図るために、事件処理にたけた判事の増員を継続的に行ってまいりました。また、各裁判所におきましても、家事事件を担当する裁判官等を増員するなど、事件数増も見据えて、家事事件処理のために着実に家裁の体制を充実させてきたところでございます。
委員御指摘のとおり、家事調停の審理期間につきましては、コロナ禍で長期化した面もありますところ、かねてより、各家庭裁判所において問題意識を持ち、裁判官の効果的関与、調停室の有効活用等を含む調停運営改善の取組を進めてきたところでございますし、また、最高裁判所におきましても、問題意識を持って取組をしているところでございます。
本法案により家族法の改正があった場合には、施行に向けて、引き続き、裁判所に期待される役割を適切に果たせるよう必要な体制の整備に努め、家庭裁判所の事件処理能力の一層の向上を図ってまいりたいと考えております。
とりわけ、家事調停におきましては、裁判官による調停運営だけではなく、弁護士としての一定の職務経験を有する者を家事調停官として任命をし、裁判官と同等の権限を持って、弁護士としての知識や経験等を活用した調停運営を行っているところでございます。
家事調停官は、これまで大規模庁を中心に一定数を配置してきたところでございますが、本法案により家族法の改正がされた場合には、本改正が各家庭裁判所における事件処理に与える影響を考慮しつつ、家事調停官の配置数の増加、あるいは、これまで家事調停官の配置のなかった庁に新たに配置をするなどの調停官制度の更なる活用により、家庭裁判所の事務処理能力の一層の向上を図っていくことを含め、検討してまいりたいと考えております。
○三谷委員 ありがとうございます。
時間も大分なくなってまいりましたので、一点だけ、事実関係だけ確認させてください。
拙速な議論だというふうに言われることもあります。しかしながら、前回の、平成二十三年の民法改正の採決の際にも、共同親権制度の導入についても一定の検討がなされた上で決議が付されたというふうに理解をしています。共同親権及び共同監護について、それを検討するという内容が附帯決議で付されているというふうに承知をしております。そして、その附帯決議については、全党一致で賛成をしたという記録がございます。それからもう既に十数年たつ中で、決して拙速な議論ではありません。
そして、最後に、今回の質疑で浮き彫りになりました親権者の協力義務の重要性、しばはし参考人も話されておりましたけれども、これまでは、離婚イコール争いだというあしき文化というものがありました。しかしながら、今回の法改正のタイミングで……
○武部委員長 申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。
○三谷委員 はい。我々の世代で変えていき、よりよい社会を次の世代に引き継ぎたいということを思っております。しっかりとその思いを形にしていくべく進めていくことを祈念させていただきまして、質疑を終えさせていただきます。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、谷川とむ君。
○谷川委員 おはようございます。自由民主党の谷川とむです。
本日は、民法等の一部を改正する法律案、いわゆる家族法制の見直しについて質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
ある日突然、家に帰ったら、愛する子供がいなかったら、皆さんはどのように感じるでしょうか。また、それから何年も何年も愛する子供に会えなかったら、どのような気持ちになるでしょうか。胸が締めつけられるように苦しくて悲しくて、そして、何とも言えないような混乱した複雑な気持ちになります。そして、絶望した気持ちにもなります。
子供の方も、特に小さい頃だと、訳も分からずにお父さんやお母さんのどちらかから引き離されて会うこともできず、同じようなつらい思いをしている子供もたくさんいます。本当に、現実、このようなつらい思いをしている子供や親が全国にはたくさんいます。
家族というものは、伝統的な家族の形態でいえば、一人の男性と一人の女性がお互い好きになって結婚し、子供を授かり、生活を営みます。子供の最善の利益といえば、両親から愛情いっぱいに育つ、そして、祖父母や親戚縁者からも愛情いっぱい育てられて生活ができる、そのような生活環境がずっと続いていくことが私は子供の最善の利益だというふうに思っています。
しかしながら、夫婦間には様々な問題が生じることもあって、残念ながら離婚することもあります。しかしながら、子供にとっては親は親。(発言する者あり)縁は切れない、そのとおりです。親同士は、言葉を選ばずに言えば、勝手に好きになって、結婚して、子供をつくって、嫌いになったら離婚する。しかし、子供にとっては親は親です。両親共に、大好きなお父さん、お母さんがいる子供も本当に多くいる。子供のことを思えば、親がしっかりと責任を持ち続けないといけないというふうに思っています。
親の都合で子供を振り回して、そして家族の分断につき合わせることが絶対にあってはならないというふうに私は思っていますし、子供の最善の利益を考えるためには、離婚しているときであろうが、結婚しているときであろうが、子供のことをやはり一番に考えて生活を持続していくことを考えないといけないというふうに思っています。
本改正法案は、これまで我が国は、離婚後の父母の子の養育について、単独親権、単独監護制度一択を取ってきたものを、共同親権、共同監護も選択可能にできるようにするということです。
私は、かねてより、離婚後の単独親権、単独監護を定める現行民法の規定は、離婚後も父母の双方が子の養育に責任を負うべきであるという原理原則に反するものであり、父母が離婚した場合、原則として、父母がそれぞれ引き続き、子に対して親としての責務を果たすため、離婚後、共同親権、共同監護を導入すべきであると取り組んでおりましたから、一応歓迎すべきことではあります。
ただ、中身について、私の考える家族法制からすると、百点満点ではありません。しかしながら、本改正は、つらい思いをする子供や親を減らし、家族の分断を生じさせない、何より、子の最善な利益を確保するための一歩となるのではないかと思っていますし、そうなるような法改正にしなくてはならないと考えています。今回の質疑を通して、より一歩踏み込んだ、よりよい家族法制となるように提案をしながら、質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
まず、実子誘拐とも言われる子の連れ去りの問題について質問をします。近年、子の連れ去りが社会問題となっています。現行民法下で子の連れ去りが生ずる原因は何と考えているか、答弁を求めます。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の子の連れ去りとは、父母の一方が他の父母の同意を得ることなく子の居所を変更する行為を指しているものと受け止めたところでございますが、父母や子が置かれた状況等は個別具体的な事情によって様々であるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難ではございます。
その上で、一般的には、例えば、いわゆる離婚後単独親権制度を採用している現行民法下では、親権争いを自己に有利に進めるという目的で子を連れ去っているのではないか、現行民法では、どのような事情があれば父母の一方が子の居所の変更を含めた親権行使を単独で行うことができるのかが不明確である、現行民法では、子の居所の変更を含めた親権行使について、父母の意見対立を調整するための裁判上の手続は設けられていないといった指摘がされているものと認識をしております。
○谷川委員 ありがとうございます。
この文言なんですけれども、子の連れ去りというのとDVや児童虐待をやっている家庭で子が避難するというものは、私は違うというふうに思っています。今答弁もいただきましたとおり、子を連れ去って親権争いに有利に持っていくというところも、現実的には残念ながらあるのも私も認識していますし、子の連れ去りというものはあってはならないというふうに思っていますので、引き続き、この問題に関しては、皆さん協力していただきながら、子の連れ去りが起きにくくするようにしていただきたいなというふうに思っています。
そして、現在、婚姻中の父母のどちらかが子を連れ去っても処罰されず、連れ戻した場合には刑法二百二十四条の未成年者略取誘拐罪に該当し、処罰されます。それってちょっとおかしいなというふうに僕は思っています。連れ戻しだけではなくて、連れ去り行為も刑法二百二十四条の未成年者略取誘拐罪に該当するのではないかと考えていますが、中野政務官、御答弁いただきたいと思います。
○中野大臣政務官 犯罪の成否は、捜査機関が収集した証拠に基づき個別に判断される事柄であります。法務大臣政務官としましては、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
その上で、あくまで一般論として申し上げれば、刑法二百二十四条の未成年者略取誘拐罪は、未成年者を略取し又は誘拐した場合、すなわち、暴行若しくは脅迫又は欺罔若しくは誘惑を手段として、未成年者を保護されている状況から引き離して自己又は第三者の事実的支配下に置いた場合成立されるものとしております。
なお、最高裁判所の判例においては、親権者による行為であっても刑法二百二十四条の構成要件に該当し得るとされており、行為者が親権者であることなどは行為の違法性を阻却されるか否かの判断においては考慮されるべき事情とされているものと承知をいたしております。
捜査機関においては、こうした判例も踏まえ、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処していきたいと承知しております。
○谷川委員 ありがとうございます。
該当し得るという答弁をいただきましたが、政務官、普通に考えて、連れ去った側は処罰されずに連れ戻した側が処罰されるというのはおかしいというふうに思いますよね。だから、しっかりと、立件もされていないところもありますから、やはりこの辺は見直しをしていただきたいなというふうに思っています。
子の連れ去りに関して警察庁及び検察庁はどのような対策を講じているのか、御答弁を願います。
○親家政府参考人 お答えいたします。
お尋ねのような事案につきましては、重大な被害に発展するおそれもありますので、警察に届出等がなされた場合は、要件を満たしている限りこれを受理して捜査を尽くし、その上で、個別の事案ごとに必要な対応を行っているところでございます。
この点、昨年、令和五年三月には、配偶者間における子の養育等をめぐる事案について都道府県警察に通達を発出しておりまして、この種事案への適切な対応について徹底を図っているところでございます。また、都道府県警察の捜査幹部を集めた会議の場などにおきましても、累次にわたり必要な指示を行ってきたところでございます。
引き続き、この種事案において適切な対応がなされるよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。
○松下政府参考人 お答えします。
検察当局におきましては、今御紹介ありました警察庁における通達の発出を受けまして、法務省において全国の検察庁に対して事務連絡を発出しております。この事務連絡におきましては、警察庁発出の通達の内容を周知するとともに、先ほど政務官の答弁でも言及された関係する最高裁判例の内容に留意しつつ、この種事犯の事件相談への対応や、事件の捜査処理に当たり適切に対処すべきということを周知したところでございます。
この事務連絡につきましては、検察官等に対する研修の場など様々な機会を捉えまして周知に努めてきたところでありまして、今後も引き続き必要な周知、情報提供に努めてまいりたいと考えております。
○谷川委員 ありがとうございます。
警察においても、検察においても、引き続きこの問題に関しては周知徹底をしていただきまして、できるだけ子の連れ去りがないようにしていただきたいというふうに思っています。
本改正によって子の連れ去りが起こりにくくなるのか、御答弁をいただきたいというふうに思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
現行民法では、どのような事情があれば父母の一方が子の居所の変更を含めた親権行使を単独で行うことができるのかが不明確であり、また、親権行使について、父母の意見対立を調整するための手続を設けていないといった指摘がされております。
これに対し、本改正案では、父母の離婚後もその双方を親権者とすることができることとしたほか、父母双方が親権者である場合は、子の居所の変更を含めて親権は父母が共同して行うとした上で、急迫の事情があるときは父母の一方が親権を単独で行うことが可能であるとし、父母の意見対立を調整するための裁判手続を新設することで、親権行使のルールを整理しております。
また、本改正案では、子に関する権利の行使に関しまして、父母が互いに人格を尊重し協力しなければならないとしており、父母の一方が何ら理由なく他方に無断で子の居所を変更する行為は、個別の事情によりましては、この規定の趣旨にも反すると評価され得ると考えております。
これらのことから、本改正案は、委員御指摘の子の連れ去りの問題の改善にも資すると考えております。
○谷川委員 ありがとうございます。本改正によって子の連れ去りが少しでも改善できるということが理解をできましたので、引き続き対策を講じていただきたいと思います。
次に、養育費の問題について御質問をします。
養育費については、その取決め率、受給率が低いと指摘をされていますが、そのような事態になぜなっているのか御答弁いただきたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
養育費の取決めや支払いがされない理由につきましては、様々な事情が関連しておると思われまして、一概にお答えすることは困難ではございます。
その上で、厚生労働省において行われました令和三年度全国ひとり親世帯等調査では、養育費の取決めをしていない理由として、例えば、相手と関わりたくない、相手に支払う意思がないと思った、相手に支払う能力がないと思ったなどという回答がございました。
また、法務省が令和二年度に実施をいたしました協議離婚に関する委託調査では、養育費の取決めをしたものの、その支払いが途中で途絶えた理由については、例えば、支払うお金がなかったから、支払いたくなかったから、子供との親子交流が、面会交流ですが、実施されなかったからなどという回答がございました。
○谷川委員 ありがとうございます。養育費の取決め率、受給率が低いので、できるだけ本改正によってそれが履行できるように、しっかりと対策を講じていただきたいなというふうに思います。
時間がだんだん迫ってきていますので、ちょっと飛ばさせていただいて、親子交流の質問に移らせていただきます。
親子交流の取決め率、実施率も、養育費の問題と一緒で低調との指摘がありますが、法務省としてはどういうふうな認識をしているか、御答弁いただきたいと思います。
○竹内政府参考人 父母の別居後や離婚後も適切な形で親子の交流の継続が図られることは子の利益の観点から重要と考えておりまして、現状の親子交流の履行率は決して高いものであると認識はしておりません。
○谷川委員 ありがとうございます。
また、親子交流を取り決めたにもかかわらず、同居親がその履行を不当に拒絶しているケースの場合、その後の親権停止、親権者変更の申立てがされたときに、その事情が同居親に不利益に考慮されるべきではないかと考えていますが、いかがですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案では、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないこと、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化することとしております。
親子交流について取り決められたものの、父母の一方がこれを履行しない場合、個別具体的な事情によりましては、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価される場合があると考えております。
そして、あくまで一般論としてお答えいたしますと、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合、親権者の指定、変更の審判や親権喪失、親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えております。
○谷川委員 済みません、前後しましたけれども、本改正によって、親子交流の履行確保のためにどのような対策が講じられ、またどれだけの効果が期待されるのか御答弁いただきたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
父母の別居後や離婚後も適切な形で親子の交流の継続が図られることは子の利益の観点から重要であると考えておりまして、本改正案では、こうした観点から、婚姻中の父母の別居時における親子交流に関する規定や、家庭裁判所が当事者に対し親子交流の試行的実施を促すための規定、あるいは父母以外の親族と子との交流に関する規定を新設することとしております。
これらの改正は、親子交流の履行率等の上昇に寄与するものと考えております。
○谷川委員 ありがとうございます。親子交流の履行確保が少しでも向上できるように本改正案が提出されているということですので、引き続きよろしくお願いいたします。
家庭裁判所の調停や審判で親子交流が認められるに至った事件のうち、親子交流の頻度について御答弁をいただきたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
令和四年に終局した面会交流申立て事件のうち、申立てが認容された審判の件数及び親子交流を実施する旨の調停が成立した件数は合計八千三百四十五件でありますが、そのうち、親子交流の頻度が月一回以上月二回未満とされたものが三千七百二十五件、月二回以上週一回未満とされたものが七百七十八件、週一回以上とされたものが百二十八件でした。
また、その他、申立人が子と面会することを妨げない、あるいは随時子と面会することができるという趣旨の条項により合意が成立した事件が一定数存在するものと承知しております。
○谷川委員 ありがとうございます。
御答弁によると、大体月一回というのが平均だということで、私は何か少ないかなというふうに思っています。だから、できるだけ親子交流が進んでいけるようなことも考えていただきたいなというふうに思っています。
次、ちょっと質問を飛ばさせていただきますけれども、監護者について質問させていただきます。
本法律案では、協議離婚の際に監護者を定めないこととしています。一方で、監護者が指定された場合でも、その監護者が何らかの制限なく自由に子を転居させること等ができるのではなくて、子の利益の観点や父母の人格尊重、協議義務の観点から一定の制約があるのではないかと考えますが、いかがですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、本改正案では、離婚後の父母の一方を監護者と定めることを必須とはしないこととしつつ、監護者が定められた場合には、監護者は単独で子の監護及び教育や居所の指定等をすることができることとしております。
もっとも、子の居所の指定も含めまして、親権の行使は子の利益のためにしなければなりません。また、本改正案では、父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを定めております。
したがいまして、父母双方を親権者としつつその一方が監護者として指定された場合でありましても、監護者は、子の利益のため居所指定権を行使しなければならず、その権利の行使に関し、監護者でない父母の人格を尊重し協力しなければならないこととなります。
このように、監護者の居所指定権の行使には何らの制約がないということではないと考えております。
○谷川委員 ありがとうございます。
この共同親権、共同監護制度を導入するというときに、共同親権だけれども監護権をどうするかということが、我が党でもいろいろと議論がありました。監護権争いになっても駄目なので、しっかりとそこの辺は担保しておいていただきたいなというふうに思っています。
次に、共同養育計画、また、離婚後の養育講座の問題について質問します。
共同養育計画については山口参考人や北村参考人からも御提案がありましたが、共同養育計画というのは、離婚する夫婦が子供の養育に関する取決めをすることです。他の先進諸国では当たり前のこの制度ですが、これまで我が国ではそれを導入していません。
我が国の協議離婚制度は、夫婦が署名、押印さえすれば、離婚届一枚で簡単に離婚できてしまいます。北村参考人もおっしゃっていましたが、裁判所を含め、誰もが、離婚の際に一番重要なことは子供の福祉と言いますが、離婚の約九〇%を占める協議離婚が、子供のことを何ら決めることなく離婚届一枚でできてしまうなんて、これほどの矛盾はないと私は考えています。子供のことなどほったらかしで、離婚届であっという間に離婚ができる我が国の協議離婚制度を改めて、離婚するなら、子供のことをしっかりと考えて、責任を持たせてからでないと離婚できないようにすることが、子の最善の利益を確保するために必要であると私は考えています。
そこで、父母が離婚する場合、父母が共同して子の養育に責任を持ち、適切に行うために、父母の監護割合や養育費、親子交流などについて定める共同養育計画書の作成や、いろいろな夫婦間の問題もありますし、子とどうやってこれからつき合っていったらいいかというのも分からない家庭もあると思いますので、離婚後の養育講座の受講など、本法律案に追加で盛り込んで義務化すべきであると考えますが、いかがですか。
○中野大臣政務官 お答えいたします。
離婚をする父母が子の養育に関する事項を取り決め、養育計画を作成することや、子の養育に関する講座を受講することは、一般論として、子の利益にとって望ましく、こうした取組の促進は重要な課題であると認識をいたしております。
他方で、離婚時に養育計画の作成や養育講座の受講を必須とすることは、結果的に離婚が困難となる事案を生じさせ、かえって子の不利益に、反するという懸念もあり、慎重に検討すべきものであると考えております。
そこで、本改正案では、養育計画の作成を必須としてはおりませんが、離婚時に父母の協議により養育計画の作成ができることを明確にするため、離婚時に父母の協議により定める事項として、監護の分掌を追加することといたしました。また、法務省では、専門家の協力を得て、養育講座の実施、また必要なコンテンツを作成をし、複数の地方自治体と協力をし、適切な講座の在り方を探るための実証的な調査研究を実施いたしております。
引き続き関係各省と連携を深め、検討してまいりたいと存じます。
○谷川委員 ありがとうございます。
私は、今の御答弁、いただいていますけれども、特段の事情、DVや児童虐待がない限り離婚しづらいような社会になる方が僕は健全だというふうに思っています。やはり離婚して誰も得しないです、みんな傷つくんです、子供も親も。だから、できるだけ仲よくできるようにしていくのが一番のあれですけれども、やはり子供のことを考えれば離婚しづらい世の中の方が、それはみんな仲よくという意味ですけれども、いいと思います。
先ほど申しましたけれども、DVや児童虐待があって残念ながら離婚するというものは否定するものではありませんけれども、できるだけ離婚ができないような社会になっていく方が僕はいいと思っていますので、その旨をお伝えさせていただきたいというふうに思います。
山口参考人も言っていましたが、アメリカでも、共同監護を導入するときに、やはり共同養育計画、大体十年ぐらいかかったというふうに言っていましたので、これからしっかりと、それも義務化に向けて取組をどんどんどんどん進めていってほしいなというふうに思っています。
施行時期について質問させていただきますけれども、本改正案では施行時期を二年以内としています。しかし、なぜそれほど時間が長時間かかるのか、施行時期を一年以内に短縮してできるだけ早く施行すべきと考えますが、いかがですか。
○中野大臣政務官 お答えいたします。
離婚する父母が子の養育に関する事項を取り決め、養育計画を作成することや、子の養育に関する講座を受講すること等が重要な課題であると認識をいたしておりますし、本改正案は、公布から二年以内において政令で定める日を施行日といたしております。
このような施行日を定めたのは、子の利益の確保をするために速やかな施行が必要である一方で、その円滑な施行のため、国民に対する十分な周知や関係機関における準備を要する事情を総合的に考慮し、相当な期間を確保する必要があると考えたことでございます。このような総合的な判断について、是非御理解をいただきたいと存じます。
○谷川委員 ありがとうございます。
今回、本当に大改正なので、時間がかかるのは分かりますけれども、この共同養育、共同監護制度を導入する法改正、心待ちにしている人たちもたくさんいますので、是非頑張ってやっていただきたいなというふうに思っています。
本改正後、子の最善の利益が確保できる法律、運用になっているかを検証して、問題があれば必要に応じて見直しも検討すべきであるというふうに思っていますが、いかがですか。
○中野大臣政務官 法務省といたしましては、本改正案が成立した際には、施行までの間にその趣旨が正しく理解されるよう適切かつ十分な周知、広報に努めるとともに、改正法を円滑に施行し、子の利益を確保するための環境整備についても関係各省としっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
その上で、お尋ねにつきましては、まず改正法の施行状況を注視をしてまいりたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○谷川委員 よろしくお願いします。
最後に、家庭裁判所の体制整備について質問させていただきたいと思います。
家事事件の審理期間の長期化や事件の困難化傾向が指摘される中、家庭裁判所には本法律案により新たな事件類型や意見調整すべき事項が追加されることとなりますが、大変な状況が待ち構えているというふうに私も思っていますので、その体制整備についてはどのように考えているのか、御答弁いただきたいと思います。
○小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
御指摘もありましたけれども、家事調停の審理期間につきましては、コロナ禍で長期化した面もあります。かねてより、各家庭裁判所において問題を持ち、裁判官の効果的な関与や調停室の有効活用等を始めとする調停運営改善の取組を進めてきたところでございます。
最高裁におきましても、家事調停の期日間隔の長期化の点に着目をして、近年の各家庭裁判所における期日間隔の改善状況に違いがあることを踏まえ、幾つかの庁からその長期化要因に関して実情等を聴取するなどし、その結果を分析して、各家庭裁判所に対して一層の調停運営改善の取組のために必要な情報提供をすることを検討しております。
本法案が成立し、施行ということになりますと、新たな裁判手続等の創設に伴い、家庭裁判所に申し立てられる事件数の増加が見込まれることは裁判所としても認識しているところでございます。
裁判所といたしましては、裁判所に期待される役割をしっかりと果たしていくためにも、新たに創設される裁判手続等を含め、改正法の各規定の趣旨、内容を踏まえた適切な審理運営が着実に行われるよう、裁判所全体として適切な審理運営の在り方を検討していくことが重要であると考えており、こうした適切な審理運営の在り方に見合った体制の整備にも努めていく必要があるものと考えております。
○谷川委員 ありがとうございます。
時間が参りましたので質問を終わらせていただきますけれども、子の連れ去りがなくなって、また養育費や親子交流がしっかりと履行確保できるような共同親権、共同監護制度になることを願いまして、皆さんの協力をいただきますようによろしくお願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、日下正喜君。
○日下委員 公明党の日下正喜でございます。よろしくお願いいたします。
共同親権の導入を柱とした民法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。
三組に一組の夫婦が離婚すると言われる今日にあっては、父母の離婚後の子の養育に関する法制度の見直しは、我が国の結婚観また家族観にも大きな影響を与えるものであり、また、各種の支援策の拡充は大変重要な政策課題と言えます。
これまで、この家族法制の改正をめぐって大きな危惧を持たれている慎重派、反対派の方、そして、推進派でも、これでは足りないという意見を持たれる方、両方の意見をお聞きする中で感じることは、どちらも体験また経験に基づいて意見を言われておりまして、これは両方ともやはり尊重していく面があるなということでございます。
大切なことは、多様な離婚の状況があり、国民の間にも様々な考え方がある中で、子の最善の利益というテーマを軸に、安心と安全を前提とした上で、今回の議論を進めていくことが求められていると思います。
本日は、公明党法務部会として、二月二十九日、小泉法務大臣にも提言をさせていただきましたが、その提言も踏まえまして質問を行わせていただきます。
まず、子の利益を確保するための環境整備でございます。
子が人格的な権利主体であるとの認識の下、子の養育に関する事項の決定の場面において、どの地域であったとしても、子が自らの意見や意向を安心して伝えることができるよう、専門家による聞き取りなど必要な体制を整備すること、あわせて、親の離婚を経験した子供自身が、その年齢及び発達の程度に応じて相談したり、サポートが受けられる相談支援体制の整備も重要であります。
そうした必要な支援の在り方を検討するため、法務省、こども家庭庁、厚生労働省、内閣府、文部科学省等、関係府省庁を構成員とする検討会を是非立ち上げていただきたいと要望いたしますが、小泉大臣の御見解を伺います。
○小泉国務大臣 御党からは、子の利益を確保するための環境整備について御提言をいただきました。
本改正案が成立した際には、御指摘のような、父母の離婚等を経験した子に対する必要な支援の在り方を検討することを含め、改正法の円滑な施行に必要な環境整備を確実かつ速やかに行うべく、御提言も踏まえ、関係省庁等との連携協力体制の構築に向けて、検討してまいりたいと思います。
○日下委員 ありがとうございます。
子の人格と申し上げましたけれども、大人と子供がございますが、私は日下正喜でございますが、もう生まれたときから日下正喜でございまして、何の変化も、表面は細胞も生まれ変わっていますし、顔かたちも変わっていますが、やはり、一つの人格としてはそのままつながっていくのが人間だ、全てそうだと思いますので、本当に、子の人格を尊重するということは、今の大人の人格も尊重することにつながっていくということにもなろうかと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
次に、家裁調査官及び調停委員への研修や、調査の充実を図るとともに、弁護士による子供の手続代理人を積極的に活用するための環境整備を図るなど、子供の意見表明権を実質的に担保する措置が必要になってまいりますが、その点についても、答弁を求めたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
まず、家裁調査官の専門性向上に関しましては、これまでも、子の監護者指定や親子交流などのテーマを取り上げて、事例に基づく研修をしてきており、そのほか、海外の知見を獲得するための研究者による講演や、行動科学の知見や技法を活用した調査実務に関する研究なども実施してきております。また、適切な調停運営を実現するためには、調停委員に対する研修も重要でありまして、各家庭裁判所においては、様々な研修が計画的に実施されているほか、調停委員による自主的な研修も実施されているものと承知しております。
この改正法が成立した場合には、改正法の各規定の趣旨、内容を的確に周知するとともに、家庭裁判所調査官や調停委員に対する研修の実施についても、しっかりと対応してまいりたいと思います。
また、手続代理人に係る点につきましては、まず、家事事件手続法六十五条は、家庭裁判所は、子に影響を与える一定の事件類型につきまして、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないと規定されておりまして、各家庭裁判所におきましては、家庭裁判所調査官による調査など、事案に応じた適切な方法により、子の意思を把握しているものと承知しております。
未成年者の手続代理人につきましては、申立て又は職権により必要な事案において選任されているものと承知しておりますが、法の趣旨を踏まえ、引き続き適切な運用がされるよう、事務当局としても支援してまいりたいと思います。
○日下委員 ありがとうございます。
次に、安全かつ安心な親子交流の支援体制の整備について質問します。
私の子供時分の感覚ですが、病気になったとき、学校で叱られたときなどは母性を求め、何かにチャレンジするとき、勝負事をするときはやはり父性を求めていたというふうに思います。私は、九つで父を亡くしましたが、部活動での試合、進学、そして就職の際など、父が生きていたら、どんなに声をかけてくれるか、また喜んでくれるか、また、経済的にはどうだったんだろうというふうに思います。私は中学校に入るとすぐに新聞配達と豆腐配達をしまして、経済的に父がいたらどんな感じになっているのかというふうに折に触れて考えていたと思います。
子供の利益を考えた場合、父や母との触れ合い、交流は貴重で大切なことだと思います。別居後、離婚後の安全かつ安心な親子交流に関して、子の利益を最も優先し、どこに住んでいても適切、十分な支援が得られるよう、行政及び民間等による情報共有や支援員の拡充など支援体制の整備も必要です。また、養育費や親子交流等を定める共同養育計画については、できる限り離婚前に策定することが望ましいと思います。
民間団体や海外の取組を参考にしながら、我が国の最適な養育計画の在り方を子の利益の観点から調査研究する必要があると思いますが、親子交流支援について法務大臣の御所見をお聞きします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
父母の離婚後も適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から重要であると認識をしております。また、離婚時に、養育費や親子交流も含めた子の養育に関する事項を取り決める養育計画を作成することも、子の利益の観点から重要であると認識をしているところでございます。
法務省といたしましては、適切な親子交流の実現に向けて、その支援を担当する関係府省庁と連携して取り組むとともに、養育計画の作成を促進するための方策についても、関係府省庁と連携して引き続き検討してまいりたいと考えております。
○日下委員 私は、本会議で、子の最善の利益について、父母からの愛情を注がれていると子供が感じること、それは子供自身の自己肯定感の涵養にもつながるのではないかと申し上げましたが、実際にはどうなのか。
日常的に親子交流ができている子と片親と会えない子で自己肯定感の形成に違いがあるのかないのか、これは様々な御意見があろうかと思いますが、統計的な調査があればお示しいただきたいのですが、なければ、これは子の利益、親子交流の在り方を考える上でも大切な指標になると思いますので、是非、調査研究の中に加え実施していただきたいというふうに思います。先日、参考人質疑でも、その旨、原田参考人、また北村参考人も是非それは進めてほしいというふうな御意見でございましたので、これについて大臣の御所見を伺います。
○小泉国務大臣 親の別居、離婚を経験した子供を対象とした心理学分野の複数の研究結果がございます。それによりますと、DV等がある事案を除いて、親子交流が継続して行われている群の方が、親子交流が行われたことがない又は親子交流が中断した群と比べ、自己肯定感が高く、親子関係も良好であることが指摘されています。
今後、御指摘のような調査を行うかどうかについては、本法案の施行状況等も注視しつつ、適切に対応したいと思います。
○日下委員 ありがとうございます。
今回の法改正の結果として、DV、児童虐待案件で、被害者が逃げにくくなったり被害者支援を行うことに支障が生じたりすることがないよう、配偶者暴力相談支援センターや自治体窓口、警察等の関係機関や団体等との連携に万全を期していただくことを求めますが、法務大臣の御決意を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
改正法を円滑に施行し、子の利益を確保するためには、一人親家庭支援、共同養育支援、裁判手続の利便性向上といった支援策や体制整備を図るとともに、DV及び児童虐待等を防止して安全、安心を確保することが重要となってまいります。
法務省といたしましては、御指摘のとおり、法改正の結果として、DV、児童虐待案件で、被害者が逃げにくくなったり被害者支援を行うことに支障が生じたりすることがないよう、本改正法案が成立した際には、施行までの間にその趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知、広報に努めるとともに、先ほど申し上げた環境整備につきましても、関係府省庁等としっかり連携して取り組んでまいりたいと考えております。
○日下委員 次に、民間ADRの活用についてお尋ねします。
民間ADRは、平日の夜や土日祝日にも対応してもらえ、裁判所に比べ垣根が低く、フランクに話ができると聞いております。早期解決も期待できます。離婚後の子の養育に関する父母の協議をオンラインで行ったり、関係機関、団体との一層の連携強化を図るなどして、どこに住んでいても適切にADRを利用できるよう、環境整備を行うことも大切になると思います。御所見を伺いたいと思います。
○坂本政府参考人 お答えいたします。
認証ADRを始めとする民間ADRは、紛争当事者の実情に即した紛争解決手段を提供するものであり、特に、デジタル技術を活用して行われるODRは、時間や場所の制約を受けることなく利用できること、非対面で手続を進められることなど、厳格な裁判手続とは異なる特徴があることから、委員御指摘のような事案の紛争解決を図る上で利用者が大きなメリットを得ることが期待できるというふうに考えております。
法務省は、ODRを一層推進するための環境整備に向けた取組を行っておりまして、その一環といたしまして、昨年から、養育費を含む金銭債権に関するトラブルを解決するODRの実証事業を行い、先月、報告書を公表したところでございます。この実証事業では、オンライン面談のみならず、チャットを利用した手続も実施し、調停を担当した弁護士からは、チャットについて、双方の要望をタイミングよく調整できる、双方顔を合わせたくない当事者にとって有益であるといった御意見をいただいたところでございます。
法務省といたしましては、こうした実証結果を踏まえまして、引き続き、関係機関、団体と連携いたしまして、より利便性の高いODRの導入が進められ、これが国民の皆様にとって紛争解決を図る上で魅力的な選択肢となるよう、環境整備に必要な取組を積極的に進めてまいりたいというふうに考えております。
○日下委員 ありがとうございます。
私も、このADRの存在を知ったのは、本委員会に入ってこういう議論を聞く中で知ったわけで、本当に、国民の皆さん、こういう悩みを抱えている方、こういう存在を知っているのかどうなのかということ、非常に疑問を持っておりまして、これからしっかりこういう制度があるということを周知、広報することも必要かと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
それと、先ほど大口委員からも、親講座、親ガイダンスの充実というか、その質問があったと思うんですけれども、ガイダンス形式とか講座形式でいきますと、やはり何人かの人を集めてそこで講座を行うという形になるんだと思うんですが、離婚前後、高葛藤である場合も少なくないと思います。そうした場合は、講座というより個別のカウンセリング支援も必要になると思います。きめ細やかな対応ができるよう、体制の整備拡充を進めていただきますよう要望いたしますが、これについて御所見、御見解をいただければというように思います。
○小泉国務大臣 御党からいただきました今年の二月の御提言にも、そのことが中心的な課題として掲げられております。法案というのは骨格でありますけれども、それを肉づけしていく、本当にそれが血流となって動けるかどうか、様々な支援措置が適切に稼働できるかどうか、それにも大きく関わっておりますので、今おっしゃいましたようなサポート体制、そういったことも含めて子供を支えられる仕組み、そういったことも含めて、この法案成立後、並行しつつ検討し、また実現に努力をしたいと思います。
○日下委員 時間も来ましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
○武部委員長 次に、山井和則君。
○山井委員 委員外でありますが、三十分間質問をさせていただきます。誠にありがとうございます。
最初に申し上げますが、まだ最終的には我が党も私も法案の賛否は決めておりませんし、是非とも今日は前向きな答弁をいただければと思います。また、失礼ながら、今日はもう小泉法務大臣のみに質問通告をさせていただいておりますが、二十二問通告を、いやいや、基本的なことしか質問していませんので、そういう意味では、それに基づいて質問をさせていただきたいと思いますし、通告どおりさせていただきたいと思います。
それで、私がなぜ委員外であるにもかかわらず今日質問に立たせていただいたかということは、私は政治家になる原点がDV被害と極めて密接に関係しておりますので、誠に失礼ながら、私が学生時代に経験したことにもちょっと触れながら、法案に直接関係することですので、お話をさせていただきながら、質問に入らせていただきたいと思います。
私、大学院まで酵母菌、バイオの研究を理系でやっておりました研究者でした。ところが、たまたまというか、同時に、母子生活支援施設、簡単に言いますと、DV被害のお母さんとお子さんが逃げ込んでくる、駆け込んでくる、三十人規模の京都の駆け込み寺で、水曜日と土曜日、二、三時間ずつ、子供とドッジボールをしたり、勉強を教えたり、折り紙をしたり、小学生、中学生、高校生もおられましたけれども、遊ぶボランティア活動を六年間やっておりました。
そして、やはりその中で非常に考えさせられたのが、例えば、その施設には、二十世帯ぐらいですか、入口のところに標識があるわけですけれども、ほとんど偽名なんですね。本名じゃないんです。それは、やはり逃げてきているからなんですね。だから、言っちゃ悪いけれども、ちょっと頭が混乱するんですよね。井上さんといったけれども、お子さんは本当は井上じゃなかったりしたり。そういうことで、何で名前を隠しているのかなといったら、これはDV夫から逃げてきているという理由でした。
あるとき、大変やと、こういう三階建ての建物でしたけれども、DV夫が来て、うちの嫁さんおるやろ、出せと言って石をばあんと放って、それで母子生活支援施設の窓ガラスが割れそうになったりして、これはちょと大変やな、押しかけてきたら、みんなでお母さんと子供を守らなあかんなというふうなことで、私たちも、ただ単に子供と遊ぼうと思っていたわけですけれども、なかなか大変だなと思ったこと。
それと、やはり多くのお子さんが非常にメンタルで傷ついておられて、ちょっと不登校になったり、一言で言うと対人恐怖症で、何でかなと思ったら、要は、自分は直接に殴られていないんですけれども、目の前で夫が妻を殴ったり暴言しているのを見て育つ中で、結局、メンタルがやられちゃって。
私は議員になって二十四年ですけれども、一つ取り組んだのは、児童虐待防止法の中に面前DVというのを入れるということをやりました。何でかというと、手出しをされなくても、DVを目の前で小さいときにずっと見せられると、子供の精神状態が崩れてしまうんですね。ですから、両親が一緒にいた方が幸せなケースもあれば、今言ったように、下手にDVを見せられちゃうともう非常に大変なことになっちゃう。
だから、例えば、大人の男性が声をかけるともうびびっちゃう子供たちがいて、何でなのと言ったら、お父さんがお母さんをどなったり殴ったりしているのを見て育ったから、大人の男性は怖いのとか言われて。そういう意味では、私も、そういうことをしながら遊びをしていました。
その中で、私が実は忘れられない出来事がありまして、数年間やって、そろそろ私も就職を決めないと駄目だなとか思っているときに、ある事件が起こったんですね、その施設で。
というのは、何と、そのDV夫が、門を突破して施設の中に乱入してきてしまったんですよ、包丁を持って。そのとき私はおりませんでしたけれども、乱入してきてしまった。それで、大変だということになって、女性の六十代の小柄な職員さんが、お母ちゃん、大変や、お父ちゃんがナイフを持ってきた、絶対出たらあかんでと言って電話をしたわけですね、当然。そうしたら、そこに乱入した男がぶすっとその職員さんを刺してしまったという事件が残念ながら起こってしまった。
私はその場にいなかったんですけれども、私も大変ショックを受けて、その職員さんに、大丈夫でしたかと聞いたら、もちろん病院に行かれたんですけれども、その職員さんが、いやいや、山井さん、刺されたのがお母さんや子供じゃなくて私でよかったとおっしゃったんです。私は、その話を聞いて非常にショックを受けまして、はっきり言って、六十代の小柄な女性職員さんでした。
私は、本当に頭が下がって、それまで数年間、ボランティア活動で遊び相手をしていたけれども、やはりこの職員さんは命懸けで、人生を懸けて子供やお母さんを守ろうとされている、遊び相手に専念していた自分はちょっと取組が甘かったなと非常に考えさせられまして、僭越ながら、微力ながら、自分もそういう困っている子供やお母さんの盾となれるような生き方がしたいなと思って、理系をやめて、実は政治を志したんです。
だから、そういう姿を見ていますから、まさかと思いますが、今回の法案で、同じように、DV夫から刺されたりするお子さんたちが、守るために法律があるわけですから、そういう弱い立場のお子さんやお母さんの命や生活を守るために法律があるわけですから、間違っても、この法改正でそういう、今みたいなね。
共同親権になってハッピーになる方も私は十分おられると思いますよ、もちろん全否定はしません。ただ、運悪く審判とかでDVが認定されなくて結局あってしまったら、実際、過去にも起こっていますけれども、命を失うとかそういう被害を受けられる方が、今回の法改正によって出ませんか、増えませんか。
まず、その基本認識、小泉大臣にお願いします。
○小泉国務大臣 まず、家族というのは、夫婦関係と親子関係が合成されて、たて糸、よこ糸ででき上がっていると思うんですよね。これまでの親権制度というのは、夫婦関係が破綻すると、親権者は一人ですから、やはり片親と子供の関係は自動的に切れてしまうというところに少し疑問があって、そして、その次に、子供の幸せということを考えなきゃいけないという判断が入ってきて、でも、子供の幸せというのは、子供が置かれた状況は千差万別、様々な状況によって子供の幸せの在り方は形が変わってくると思うんです。したがって、この制度を柔軟なものにしていこうという考慮が働いていると思うんです。
先生がおっしゃるように、本来、子供の利益のための法改正でありますので、いろいろな事情があるにせよ、結果として、法改正した結果、不幸な子供が増えたんじゃ、それは全く本末転倒であります。それは間違いのない事実であり、そう判断しなければいけないわけです。
ただ、全体は、柔軟性を持って、様々な状況に置かれた子供の幸せというものを、夫婦関係及び夫婦関係の破綻に従属させるのではなくて、子供の幸せという観点から再構成していこう、状況が様々でありますので柔軟に選べる形にしていこう、でも本末転倒になってはいけない、それは本当にそのとおりだと思います。
ですから、こういう国会の審議において、様々な御経験をされた、様々な御経験を代弁できる委員の方々から様々な御議論をいただく、それは非常に重要なことだと思います。先生も、学生時代からボランティアとして児童福祉施設で働かれ、そこでまたそういうショッキングなことがあり、またそこから国政を目指してこられたというふうに今伺いました。そういう中からいただいたお話は大変貴重なものだと思いますので、共有をさせていただきたいと思います。
まずは私の所感でございます。
○山井委員 先日の参考人質疑、もちろん賛成派、反対派、両方おられまして、例えば犬伏参考人は、この法案については前向きですということで、ただ、家庭裁判所の人的充実、裁判官の増員とともに、家事事件についての専門性を高めていただく必要があります、調査官の増員も必要ですということを、前向きに捉えながらも提案をされています。恐らく、この法案に賛成されている方々も、このことに関しては、増員が必要だよねという共通認識を持っておられるんじゃないかと思います。
そして、慎重派である斉藤参考人、もちろん皆さんもお聞きになったと思いますが、DV被害の方でありますけれども、ちょっと繰り返すのは釈迦に説法かと思いますが、あえて、重要なことなので申し上げたいと思います。議事録を読み上げます。
この知人は、元夫から突き飛ばされたり壁を殴られたりするDVを受けており、子供もおびえていましたが、証拠が十分でなかったのか、家裁はそうした事情を酌み取ってくれず、面会交流をされたのです。ほかには、同居中に乳児が骨折するまで暴行を受けたのに、面会を命じられた子供もいます。面会交流中に父親から性的な虐待を繰り返し受けている子供もいます。
配付資料の六ページです。議事録です。
伊丹市では、二〇一七年、面会交流中に四歳の女の子が父親に殺される事件が起きました。調停でDV被害があったことを訴えましたが、調停委員から面会交流を勧められました。元夫につきまとわれる恐怖にさらされながらも、面会交流に送り出された日に娘さんは殺害されました。DVの証拠の写真を提出したんだから、ちゃんと判断してほしかった。面会交流中に子供たちが命を落とすケースは、既に共同親権を導入している国では、これまでに九百八十五件報道されています。
こうなっているんですね。
もちろん、面会交流はよくないというわけではありません。ただ、現時点でも、家裁や調停の中で、やはりDVだと主張しても認められずに面会交流した結果、お子さんがお亡くなりになられたという痛ましい事件が起こっていて、現時点でも起こっているけれども、今回、この法改正によってそういう痛ましい被害が増えないかということなんです。
改めてですけれども、小泉大臣、理論上はDVの人は除外されますと。それはそうなんですよ。問題は、調査員の方も人数に限りがあるし、時間にも限りがあるから、それが見落とされて今回みたいな、命が失われるとか、そういうことにならないかということなんですけれども、それについても御答弁をお願いします。
○小泉国務大臣 確かに、おっしゃるように、その仕組みとして、DVあるいはDVのおそれがあるときは単独親権あるいは単独行使、そういう道筋があるわけでありますが、その判断が甘くなれば、それはおっしゃるようなことにつながってしまうリスクというのはあるわけですよ。
ですから、この法改正を一つの契機として、DVに対して裁判所がどうあるべきか、こういった観点からの、我々がそういう議論をすることによって、こうやって立法府で御議論いただくことによって、それは司法権も注視をしております、どういう議論があるのか、どういう事実があるのか。また、それを行政としては司法と共有する考えでございます。
ですから、こういう議論を通じてその実効性を高めていかなければいけないと思うんですね。DVから子供を守るということをより丁寧に着実に進める、その努力を、この法案というものを一つの大きな契機として、我々は、立法も行政も司法も一体となって議論し、進めなきゃいけないと思うんですね。それが私の考えです。
○山井委員 今おっしゃったことは私はそのとおりだと思うんですけれども、問題はスピードだと思うんですね。
例えば、法改正が実現した、みんな思いは一緒だ、子供に幸せになってほしい、でも、いざやってみたら、調査員の方が足りなくて十分にチェックできなくて被害者が出ちゃったよねということでは、はっきり言いまして、賛成した議員も反対した議員も含めて、これは賛成者が悪いとかという話では私は済まないと思うんですよ。
これはもう国会で審議している以上は、ここにいる国会議員全員が反省せねばならなくなるし、そういう被害が出て、数年後にやはり法改正をもう一回しましょうとなったら、繰り返し言いますけれども、これは賛成、反対は私は関係ないと思うんですよ。やはり審議に参加した議員みんなの連帯責任になってしまうというふうに、私は自戒も込めて申し上げたいと思います。
そういう中で、例えば私もボランティアをしている中で小学生の女の子とかから言われたことがあるんですよね、お父さんに会いたい、お父さんに会いたいと。でも、お母さんを殴ったりどなっているお父さんは嫌いやと。この子供の揺れ動く思いとか、そういうことをやはり聞いたことがあります。
それで、先ほどの斉藤参考人の話の中でも、ちょっと妻の発言はさておき、お子さんがやはり怖いと言う、会いたくない、例えば今まで何らかの虐待を受けたりして、もう怖いから会いたくないと言っているという気持ちは非常に尊重すべきだと思うんですが、私たち、今後、米山理事、道下理事を中心に修正案を提示して、修正協議もお願いすることになるんじゃないかと思うんですけれども、もちろん、それを十分にのんでいただいたら賛成しやすくなるし、全くのんでいただけなかったら賛成しにくくなるし、そういうことだと思うんです。
私も、個人的な意見を申し上げるわけではないですけれども、今言ったような、子供の意見を尊重してほしいという意味で、通告の十七になりますが、離婚等の場合の親権者の定めに関し、意見聴取等により把握した父母及び子それぞれの意思の考慮の明記の修正ですね、子供の意見を尊重するというふうに修正をしていただけないか。ここで、はいとか言いにくいのは分かるんですけれども、要望として。
八百十七条の十二の「その子の人格を尊重する」だけではやはりちょっと弱いと私は思いますが、子供の意見を尊重というふうな形に修正をしていただくというのはいかがでしょうか。
○小泉国務大臣 子供の人格の尊重の中には、子の意見、意向を適切な形で考慮する、尊重する、そういう意味は間違いなく含まれています。
そして、もう一点申し上げれば、親権者の変更について子供は申立てをすることができます、自分が言い出すことができる。自分の父親を親権者にする、母親を親権者にする、そういう意見がもし子供から出てくれば、それは当然尊重されることになっていくと思います。
ですから、この両方の規定から、この法律は子供の発言というものを非常に重く見ている、このことは司法においても理解をしていただけるものだというふうに思っておりまして、法案修正までは必要ないかなというふうに思います。
○山井委員 まだ、前向きに御検討いただければと思いますが。
次の論点で、私もボランティア活動をする中で、やはり非常にメンタルが傷ついて不登校になってしまうお子さんたちも残念ながら多いんですね。つまり、両親のいざこざに子供が幼いながら巻き込まれちゃうわけですよね。
通告七ですけれども、例えば、今回、保育園、幼稚園、小学校、中学校で、例えば公立に進学するか私学に進学するかも、別居している親の同意が必要なのか。つまり、大学まで言わなくても、もう保育園、幼稚園、小学校、中学のときにも公立と私学がありますから、このときにも、別居している親、別にこれは妻であっても夫であっても、別居している側の同意はやはり必要になるんでしょうか。
○小泉国務大臣 厳密にはその子が置かれている具体的な状況によると思いますが、教育理念の特色や学費等も様々であって、その中でどの学校を選ぶか、どの保育園を選ぶか、これはやはり進学先、子供の進路に影響するような事象であるというふうに考えられます。基本的に父母が共同して決定すべき事項ではないか、基本的にはそのように考えております。
○山井委員 いや、だから、私も、ある離婚された家庭のお子さんの声を聞いたことがあるんですけれども、何年も同居していない、別居している親から急に進路について了解してほしいとかと言われるのはやはり困ると。それは子供も困りますよね。仲がよかったらいいんですよ。それがもう何から何まで大げんかして、すれ違うに決まっているというのに、幼稚園、保育園から相談しないと駄目になっちゃうと、繰り返し言いますけれども、夫婦間で闘うのはしようがないじゃないですか、離婚ですから。子供が巻き込まれるのがかわいそうだと思うんです。
そこで、残念ながら、別居している親が反対したとしますよね。そうしたら、例えば分かりやすく大学入試にしましょうか、子供は高校生で、進学したいと思っている、同居している親は一緒に頑張って勉強しようねと言っているけれども、何年間か別居している親が共同親権になって、いきなり、金がかかるから進学は駄目だと言い出してしまった。そうなったときには、審判をすると大体何か月ぐらいで結論は出ますか。進学できるかできないか、別居している親の答えが。これはもう質問通告に入れておりますので。何か月ぐらいか、何年ぐらいですか。
○小泉国務大臣 それはちょっと個別具体的な事情によりますので、また司法の問題でありますから申し上げられませんが、今の事例であれば、何年もケアしていない、養育費も払っていない、コミュニケーションも取っていない、だけれども、共同親権になった途端に介入をしてくる、あるいは妨害的なことをしてくるということになれば、それはそもそも共同親権者としてふさわしくない、あるいは共同親権を行使するにふさわしくないという判断が十分裁判所において成り立ちますので、そこに判断を預ければ、いや、あなたは何も、お金も出さずに口だけ出しているんですよねという形で排除することはできる仕組みになっていると思います。
共同親権者だから何でもできるんだ、いや、そうはいかない。ちゃんとやることをやっていなければ、裁判所は共同親権者としてふさわしい人として認めてくれないわけでありますから、それが基本的な歯止めになっているわけですよね。そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
○山井委員 おっしゃる趣旨はよく分かるんです。ただ、小泉大臣も具体的に明確には答えられないとおっしゃられているぐらいだから、お父さんやお母さんや子供さんからすると、より予見が不可能なんですよね。もしかして進学にかかっちゃうんじゃないかしらと思ったりして、子供は不安になりますよね。
それで、そのことに関連して、私もボランティアをしていて、子供たちを見てつらいなと思ったのは、一番つらいのは、不登校になってしまうお子さんとか、非行に走って事件を起こしちゃうお子さんが残念ながらおられるんですよ。僕らからすると、あんないい子供が何でこんな事件を起こしてしまったんだと大ショックを受けるんですよね、いつもドッジボールを一緒にしていたのにとか。そんなときに、いやいや、実は家庭が今、お父さん、お母さんで大もめにもめていて、その両親の争い、不安が子供に出て、やはり子供が不登校になっちゃった、あるいは事件を起こしちゃったと。
それぐらい敏感なものですから、今言ったように、例えば進学するつもりだったのに、何か共同親権になっちゃって、もしかしたら別居をしている親からブレーキがかかるかもしれない、ブレーキがかかって、一週間でそれは却下となるんだったらいいけれども、いや、半年か一年、宙ぶらりんになるかもしれないよといったときに、受験勉強に身が入らない危険性があって、何が起こるかといったら、そんなんだったらもう進学やめるわ、それでまたお父さん、お母さんがけんかするならもうやめるわとなっちゃって、要は、命を失うとかということじゃなかったとしても、共同親権騒動に巻き込まれて進学を断念する子供が出てきてしまうんじゃないかと思うんです。例えば二か月以内に結論が出るとか、高二の夏休みまでには決定するんですとかというのがないと。
その辺り、例えば大学受験だったら、高三の四月、高二の夏、やはり勉強が必要ですから。直前に進学していいですよと言われたって、もう間に合わないからね。例えば、急迫の事情というのがありますけれども、大学進学だったら、今回の共同親権の場合はいつぐらいまでにさすがに決定をしていただけるんでしょうか。
○小泉国務大臣 これは、法案審議の過程で、こういう切実な御議論があり、また、私としても、それは適切な期間の間に審判が下されることが当然望ましい、そういうふうに思い、そういう答弁をする、御議論いただき答弁をする、これが議事録に残り、法案が通していただけた暁には司法も共有することになります。彼らが、司法が適切に対応してくれると私は期待するし、望みたいと思います。それが一点でございます。
二点目は、離婚のとき子供が傷つく、別れたんだけれども、また共同親権で接点を持つから、またそこでいがみ合い、もう一回子供が傷つくという御議論だったと思うんですよね。二回目に子供が傷つくような場面が続くようなそのお二人を共同親権に私はできないと思います。ならないと思います、その手前のところで。それは単独親権に収まっている話だと思うんです。
共同親権まで行くには、様々な、ありとあらゆる事情を考慮して、この二人ならば、二人のよりは戻らないけれども、子供のためには協力できる余地ありと、さすがに万全な、一〇〇%の、機械的な答えは出せませんけれども、蓋然性においてうまくコミュニケーションが取れるだろうという方々を共同親権にしよう、希望があればという制度でありますので、その点を二点目として申し上げたいと思います。
○山井委員 私、大臣のおっしゃる趣旨はよく分かるんですよね。そんなトラブルになるようなケースはそもそも共同親権になりません、私もその答弁を信じたいんですけれども、大臣ももう真心でその答弁をしてくださっていると思うんですけれども、ここの七ページにもありますように、「家裁の態勢「増員も必要では」」、裁判所は今まで以上に難しい判断を迫られるようになり、今の裁判官や調査員の人数では足らず、増員も必要になるのではないかと。
趣旨は分かりましたよ、趣旨は共有しますけれども、幾らしたいといっても、現場が、調査員が足りないということでワークしないリスクというのがあると思うんですけれども、今日の質問通告にも入れていますが、二十一ですね、家庭裁判所の人的体制の整備等についての規定を修正により法文に盛り込むべきではないか、いかがですか。
○小泉国務大臣 裁判所との間では、日常的に法務行政あるいは司法に関する情報交換と意思疎通をしております。
今回のこの法案の策定に当たっても、最高裁と、マンパワーが足りるかどうか、数だけではなくて機能として十分応えられるかどうか、そういうことを是非考えていただきたい、そういう要望、我々の考え方は最高裁にお伝えし、最高裁もそこは真摯に受け止めていただいております。
御指摘の点は非常に大事なところだと思いますので、法律を作ったけれども実際は動いていないということになれば、それは大変なことですから、そこはしっかりと責任を持って私は対応していきたいと思います。
法案に書くところまでは必要はないと思います。済みません。
○山井委員 今後、ちょっと引き続き検討していただきたいんだけれども。言っちゃなんですけれども、私、大臣の発言を疑っているわけじゃないんです、でも、担保というか、歯止めというか、何かやはり欲しいわけです。
それで、もう一点、それに関連して、質問二十、一応、施行までの期間は二年となっているんですけれども、今の答弁をお聞きして、信じたい気持ちはやまやまなんだけれども、万が一、都道府県によっては調査員が足りなくて、十分な調査ができなくて子供が亡くなっちゃったとか、みんな進学断念しちゃったとかだったら、大変なことになって、子供の不利益になりかねませんから、この法案を修正して、施行までの期間を五年とする修正を行うべきではないか、いかがですか。
○小泉国務大臣 まずはこの委員会において議論を尽くさせていただきたいと思います。
今の時点で、我々、二年の法案を出していますが、三年延ばすというそこまでの必要性を判断するには至っておりません。
○山井委員 時間が来ましたので終わらせていただきますが、ここは、もちろん法務省さん、政府の判断、大臣の判断もあると思いますけれども、やはり今後、我が党としても修正案を提示しますし、与党や他の野党の方とも議論をしながら、とにかく、最後に申し上げますが、この法改正によってハッピーになる方も私はもちろんおられるとは思いますが、万が一、この法改正の結果、お亡くなりになるお子さんとか、そのせいでもう進学断念したのという子供が出たら、これは賛成の方も反対の方も誰も望むことではありませんので、そうならないように、修正協議、是非頑張っていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、鎌田さゆり君。
○鎌田委員 おはようございます。よろしくお願いいたします。
早速質疑に入らせていただきますけれども、まず大臣に確認をさせていただきたいことがございますので、二点伺います。
大臣は、いわゆるDV避難した方々と直接会って現実のお話をお聞きになったことがございますでしょうか。あわせて、大臣が認知するDVとは、今回の法改正の議論に当たって、DVとはどう認知されているでしょうか、伺います。
○小泉国務大臣 DVの被害に遭われた方とお会いし、お話ししたことはございます。真摯にお話を承ったことがございます。
それから、DVとは一般には配偶者など親密な関係、間柄にある者からの暴力をいい、しばしば身体的暴力のほか精神的暴力や性的暴力等も含んだ意味で使われているものと承知しております。
DVは、被害者に深刻な精神的苦痛や肉体的苦痛をもたらすとともに、その尊厳を傷つけるものであり、決してあってはならないものと認識しております。
○鎌田委員 ありがとうございました。
私は、今、もし、何かしらの方法でこの審議を視聴されている方がいたら、当事者だろうとなかろうと、この国に、DVから逃げて身を潜めて必死に生きている人や子供たちを守る体制をつくってこられなかった、今現在不十分であるということを非常に申し訳ない気持ちでこの場に立っています。だから、今回のこの法律の改定においては、将来、後悔する法案にしては絶対にならないんです。私はそういう気持ちでおります。
一昨日の参考人質疑、陳述で、改めて痛感させられました。耐えられるDVなんてないんです。スマホの時代だからDVの証拠は取れるでしょうなどという認識ではいけないんです。私はそう痛感しました。当事者にとっては、ほぼ不可能なんです。スマホで証拠が取れるでしょうと言われても、不可能なんです。当事者にとっては、生き死にが懸かっているこの法律の改定案なんです。命が脅かされる人がいるという法案だという認識を我々立法府の人間は持たなければならないんです。
大臣、現場の声を聞いたとおっしゃいました。現場の当事者の認識、共有していただけますか。
○小泉国務大臣 本改正案については、DVを経験されたことがある方々などから不安な声が出ていることは重々承知をしております。
本改正案は、DVの場合のように、父母双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、裁判所が必ず単独親権と定めなければならないとするなど、DVのある事案などに十分配慮した内容となっています。その上で、国民に不安が広がることなく本改正法の内容が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知、広報に努めたいと思います。
また、先生がおっしゃるDVで苦しんでおられる、不安を持っておられる方々のことを忘れることなく取り組んで、様々な支援策も含めて取り組んでいかねばならないと思っております。
○鎌田委員 済みません、大事なことなのでもう一回お尋ねします。
今回のこの法改定の審議いかんによっては、命が懸かっている、生き死にが懸かっている、そういう目でこの法案の審議の行方を見守っている、見詰めている人がいるんだ、命に関わる法案なんだという認識をお持ちですかと聞いたんです。いかがですか。
○小泉国務大臣 改めてそのことを共有させていただきました。
○鎌田委員 ありがとうございました。
法案の具体的な審議に移る前に、看過できないこと、ちょっと苦言を呈する意味を込めて、法制審議会家族法制部会の審議過程について伺っていきたいと思います。
配付のお許しをいただきました今日の資料の一番であります。
見出しには、いわゆる法制審議会の家族法制部会の中間試案に自民介入、異例修正、識者は手続を問題視という見出しが載っております。この新聞の中に私の事務所の方でマーカーを引かせていただきましたけれども、そこを読んでいただきたいと思います。
そこで伺います。
二〇二二年の八月三十日、第十九回家族法制部会で取りまとめ予定だった中間試案を延期していますよね。その四日前、八月二十六日、自民党法務部会にいわゆる法制審による中間試案の案を説明したけれども、その際、紛糾して持ち帰ったということは事実でしょうか。さらに、併せて伺いますが、その際、その法務部会で、法制審に基づくポンチ絵は示されたでしょうか。伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
御指摘の自民党法務部会に法務省担当者が出席し、家族法制部会の議論の状況を説明したことは事実でありますが、出席議員の発言の内容につきましては、一般に公開されていない会議におけるものであるため、お答えを差し控えたいと存じます。
令和四年八月三十日の第十九回会議では、家族法制部会の十九回会議でございますが、当初、中間試案の取りまとめを予定しておりましたが、各委員から様々な意見が示された結果として、中間試案の取りまとめには至らず、引き続き議論することとされたものでございます。
それから、ポンチ絵に関しましてでございますが、法制審議会家族法制部会の第二十回会議で示された中間試案の案でございますが、令和四年八月三十日に開催された第十九回会議で示された資料につきまして、部会委員から示された意見を踏まえて、分かりやすさの観点から表現の修正を施したものでありまして、その中身を実質的に変更したものではございません。
第二十回会議におきまして、第十九回会議の資料からの変更点が分かる資料を部会委員、幹事にお示ししたところでございまして、この資料は法務省のホームページでも公開しているところでございます。
○鎌田委員 済みません、ちょっと分かりづらい答弁だったんですけれども、まず、二〇二二年の八月二十六日、自民党法務部会に、法制審でまとめられた中間試案、これを説明をしに行った、それは事実だと分かりました。その際に、法制審でまとめられた中間試案を基に作られたポンチ絵は示したんですかと聞いています。そこをちょっと明確に。
○竹内政府参考人 失礼いたしました。
令和四年八月二十六日の自民党法務部会における法務省の説明内容や説明資料につきましては、一般に公開されていない会議におけるものであるため、お答えを差し控えたいと存じます。
○鎌田委員 何でですか。何で差し控えるんですか。
○竹内政府参考人 自民党法務部会が一般に公開されていない会議でございまして、その会議において説明した内容や説明資料に関わるものでございますため、お答えを差し控えたいと存じます。
○鎌田委員 法制審でまとめられた中間試案を説明しに行って、そこで、中間試案を基に、法制審の方々が議論したものを基に、文言だけの紙じゃなくて、そこでポンチ絵も説明に使ったんですかということを、何でここで答えるのを差し控えるんですか。法制審での議論が基になっているんでしょう。おかしくないですか。
○竹内政府参考人 繰り返しになり恐縮でございますが、自民党法務部会は一般に公開されていない会議でございますので、そこでの説明内容や説明資料については、私からお答えは差し控えたいと存じます。
○鎌田委員 だとしたら、私から申し上げますけれども、法制審議会で中間試案がまとめられました、それを法務省のあなた方は自民党法務部会に説明に行った、そのときにポンチ絵も示したけれども、この新聞報道のとおり、その法務部会で、共同親権という、今回の法改定の趣旨に当たりますけれども、それが色薄い、そのような怒号も飛び交う、もちろん非公開でした、存じ上げています、マスコミも部屋から出されています、存じ上げています、でも、外まで聞こえるくらいの怒号が飛び交う中で、あなた方法務省の方々はそこで持ち帰っているじゃないですか。
だから、次の質問に続くんですけれども、八月三十日の第十九回の家族法制部会で、法制審の委員の方々は、議事録にも載っていますよ、政治が介入している、この法制審に対して特定の政党の意見で法制審の意見が左右されることはあってはならない、非民主的なこのやり方はおかしいと、第十九回の八月三十日に、二十六日の自民党の法務部会の四日後の家族法制審議会で多くの委員が、六割を超える委員が、二枚目の資料にも載っていますが、政治介入だと異論を述べているじゃないですか。そこの経緯をきちんと説明してください。何があったんですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
令和四年八月三十日開催の法制審議会家族法制部会第十九回会議におきまして、委員からどのような発言がされたかにつきましては議事録を公開しておるところでございますが、一部の委員からは、この部会が法務大臣からの諮問を受けて、学識経験を有する委員が議論する場である旨や、中間試案は、この部会の中での議論に基づいて取りまとめられるべきである旨、家族法制の在り方を検討する際には、国民の声に耳を傾けるという姿勢が重要である旨などの発言がございました。
このような発言は、その当時、父母の離婚後の子の養育の在り方などについての家族法制の見直しに対して、国民の間に様々な意見があったことを前提として、家族法制部会における中間試案の取りまとめの在り方や、基本的な姿勢に関する意見を述べるものであるものと理解をしております。
○鎌田委員 八月三十日の第十九回の会議が終わるまでは公表が不可とされているポンチ絵、これは八月三十日の第十九回の法制審の家族法制部会の後は公表されていますから、それは私は今持っています。手元にあります。
ですけれども、そこからおよそ四か月後、中間試案は、まとめるに当たり、ずれにずれまくって、十一月十五日の第二十回の家族法制部会でまとめられた中間試案、これはパブコメ用で、今おっしゃったホームページでも公開されていますよね。内容が違いますよ、全く。
じゃ、ちょっと違うことを聞きますが、この内容が違っている、八月三十日の家族法制部会以降は公開してもいいとされたポンチ絵、このポンチ絵は、家族法制部会の審議の委員の方々にちゃんと見せていますか。
○竹内政府参考人 委員御指摘のポンチ絵につきましては公開をしておりますので、もちろん、部会委員、幹事にもお示しもしておるところでございまして、第二十回の会議におきまして、第十九回会議の資料からの変更点が分かる資料を部会委員、幹事にお示しし、この資料は法務省のホームページでも公開しているところでございます。
○鎌田委員 いや、私が今聞いたのは、八月三十日まで公表は不可だと、それ以降は公表してもいいというポンチ絵を言っているんですよ。それも法務省のホームページに載っているんですね。再度伺います。
○竹内政府参考人 失礼いたしました。
八月三十日の部会では、特にポンチ絵は作っていないということでございます。
○鎌田委員 今の民事局長の、ちょっと今の数分間、返していただきたいくらいなんですけれども、結局、ポンチ絵を示していないでしょう、法制審の方々に。自民党の部会には持っていったけれども、法制審の方々にはポンチ絵を示していないじゃないですか。
今の答弁、委員長もお聞きになっていておかしいとお感じになっていると思うんですけれども、法制審の方々には、自民党の法務部会に示したポンチ絵は、法制審の部会の委員の人には示していないんですよ。それでよろしいんですよね。
○竹内政府参考人 はい。それは委員御指摘のとおりでございます。
○鎌田委員 だとすると、この新聞の見出しに躍っているとおり、皆さんが八月の二十六日に特定の政党で説明をした中間試案に基づくポンチ絵、これに対して異論が多く唱えられて、それを持ち帰って、そして法制審の方々には、実は、こういうポンチ絵を示したんですけれども、与党の方々から御理解を得られなくて持ち帰ってきましたのでという結果、法制審の方々は政治介入だという意見を述べているわけですよ、議事録に。
委員長にお願いします。
二〇二二年の八月二十六日、自民党法務部会、非公開であったということですけれども、でも、八月三十日の火曜日、これは家族法制部会、開かれています、第十九回。この会議終了後までは公表が不可、それ以降は公表はいいという、このポンチ絵の資料を理事会に提出されることをお取り計らいいただきたいと思います。
○武部委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。
○鎌田委員 大臣、今のやり取りを聞いていて、異論を感じていただけたらありがたいんですけれども。
法制審議会という大臣が諮問するその部会です、そこに政治介入だと取られるようなことがあったと言わざるを得ない事実なんです。これは決して前例としてはならないと考えますが、大臣のお考え、いかがでしょうか。
○小泉国務大臣 法制審議会は、それぞれの委員がその学識経験に基づき調査審議を行う場であり、この調査審議の過程で様々な御意見に耳を傾けることは重要なことでありますが、法制審議会の議事は、委員以外の特定の政党あるいは団体の意見に拘束されるべきものではないと考えております。御指摘のような今回の件については、また詳細を精査したいと思います。
○鎌田委員 法案、具体に伺います。
大臣、今回の共同親権導入の法改定審議は、今まさに命懸けでDVやハラスメントから逃れて、パートナーだった人間に住んでいるところや子供の学校、保育園が知られないように行政や支援団体から守られて生きている親子にとっては、毎日が不安な状況に立たせてしまっているんですね、今回のこの法改定の審議。
だからこそ、我々立法府の人間は、この法案が当事者を更に苦しめたりおびえさせたりするものにしてはならないんです。この審議がその不安を残したままでは絶対にいけないんです。我々は払拭していく責任があるんです。この認識は大臣も持っていただけますか。
○小泉国務大臣 その不安を持っていらっしゃる方々の不安を取り除いていくことは重要な責務だと思います。
○鎌田委員 具体にまた伺います。
DVやモラハラなどによって、いわゆる子連れ避難、子連れ避難の別居は違法行為には当たらないということでよろしいでしょうか。
あわせて、逃げるための準備期間、この証拠を集める、証拠を保全するその期間というのは人によって様々です。逃げるための準備期間もDVに該当するという解釈でよろしいですね。確認です、伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案では、父母双方が親権者である場合には、子の居所の変更を含めて親権は父母が共同して行うとした上で、子の利益のため急迫の事情があるときは父母の一方が親権を単独で行うことが可能であるとしております。
親権の単独行使が認められる、子の利益のため急迫の事情があるときとは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時に親権を行使することができず、その結果として子の利益を害するおそれがあるような場合をいいます。そのため、DV被害を受けている場合はこれに当たると考えております。
また、個別の事案にもよりますが、御指摘のモラルハラスメントについても、いわゆる精神的DVに当たる場合などには、親権の単独行使が可能な場合に当たる場合があると考えております。
そして、法制審議会家族法制部会におきましては、急迫の事情が認められるのは、加害行為が現に行われているときやその直後のみに限られず、加害行為が現に行われていない間も、急迫の事情が認められる状態が継続し得ると解釈することができると確認をされております。したがいまして、暴力等の直後でなくても、急迫の事情があると認められると考えております。
このように、本改正案は、DV等からの避難が必要な場合に、子を連れて別居することに支障を生じさせるものではないと考えております。
○鎌田委員 ありがとうございました。
資料の四を御覧いただきたいと思うんですが、大臣に伺います。
共同親権導入によって、訴訟のリスクを考えて医療現場が萎縮してしまって、適切な場面で適切な医療が提供できず、子供の命や健康が脅かされることは絶対にあってはならないことだという認識、これは共有していただけますか。
○小泉国務大臣 委員御指摘のとおり、適切な医療が適時に子に提供されることは、子の利益、この法案の目的でありますが、子の利益にとって重要な要素であります。
そのため、医療現場も含め、国民に不安が広がることなく本改正法の内容が正しく理解され、執行されるよう、関係省庁と連携して適切かつ十分な周知、広報に努めたいと考えます。
○鎌田委員 この記事にもありますとおり、医療機関からも懸念の声は、もう既に昨年の九月、日本産科婦人科学会、日本小児科学会など四つの学会から重大な問題が発生することを懸念する旨の要望書が法務省に提出されていると思います。
緊急か否かにかかわらず保護者の同意が求められます、この法改定の結果ですよ。そこで、単独か共同かの確認方法、双方の意思が一致しなかった場合の調整方法はどのような対策を想定していますか。これは厚労省さんになるのでしょうか、伺います。
○宮本政府参考人 お答え申し上げます。
医療は、患者、家族と医療等の信頼関係の下で提供されており、こうした関係性の中で、医療行為に関する手続については、それぞれ個別の事案に即して判断されることになるため、一概にお答えすることは困難でありますが、一般論として申し上げれば、御指摘の手続が必要となった場合には、父母双方が親権者であることについては来院した親に確認を取り、双方が親権者である場合には、同意を取得できていない親に対して、事情を説明した上で同意書を送付するなどの対応は考えられるものと承知しております。
その上で、父母双方が親権者である場合に父母の意見対立が生じたときは、今回の民法等改正法案において新設される父母の意見対立を調整するための新たな裁判手続を利用することや、患者の病態等から緊急に医療行為が必要となる場合には父母の一方が単独で親権を行うことができることは明確化されていると認識しており、こうした手続を適切に運用していくことが重要であると考えております。
厚生労働省としては、今後、法務省とよく相談しながら、医療機関等の実務の状況も踏まえ、医療機関等に対して今般の制度改正の趣旨について適切かつ十分な周知、広報に努めてまいりたいと考えております。
○鎌田委員 今度は法務省に伺います。一つ飛ばします。
両親の意見が一致しない場合、例えば医療行為ができないとします。患者である子供に不利益な結果が生じた場合、医療機関は免責される保証はありますか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
どのような場合に医療機関が不法行為あるいは債務不履行責任を負うか否かにつきましては、個別具体的な事情に基づき判断されるものでございますので一概にお答えすることは困難でございます。
他方で、子の心身に重大な影響を与え得る治療でも、緊急を要するものにつきましては急迫の事情があると認められ、また、子の心身に重大な影響を与えないような治療については監護に関する日常の行為と認められ、親権の単独行使が可能になると考えられます。
法務省といたしましては、こうした解釈について、各医療機関が困惑することがないよう、所管省庁、厚生労働省でございますが、とも連携協力して医療機関等への十分な周知、広報に努めたいと考えております。
○鎌田委員 これは、間違いなく、私の地元の病院は、DVでネグレクトで、二十四時間三百六十五日人工呼吸器を装着している、一歳半で入院してきて今三歳までになっているけれども、その入院先の病院を秘匿している病院、その病院も恐れているんですよ。万が一共同親権になったら、共同親権を獲得した、それまで監護に携わっていなかったもう一方の親が病院に侵入してくるんじゃないかと。そうなると、この患者さんだけじゃなくて病院も危険な状態になるということを非常に危惧しているんです。
ですから、これは厚労省さんもお困りだと思います。全国の病院も困っていると思いますよ、この問題で。法務省がきちんとそこを責任持って、医療機関が目の前の命を救うために徹底して医療行為ができるように、万が一にもその子供が適切な医療を受けられなくて、滋賀県で起きていますけれども、片方の親に説明が不十分で訴えられて慰謝料が請求された、そういうようなことが起きないようにしないと、この法案は不安を残すだけになると私は考えております。
私の質疑時間が終了しましたので、これで終わりにいたします。
最後に一つ、別居や離婚後に行われる暴力、暴言、メール等での嫌がらせ、それから濫訴、こういった行為は、互いに人格を尊重し協力しなければならない、この趣旨には反するという解釈でよろしいかどうか伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の、本改正案の民法第八百十七条の十二第二項は、「父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。」としております。
どのような場合にこの義務に違反したと評価されることになるかは個別具体的な事情に即して判断されるべきであると考えておりますが、あくまでも一般論として申し上げれば、暴力や暴言、濫訴等は、これらの義務違反と評価され得ると考えております。
○鎌田委員 審議時間は絶対に多く必要だと思います。そのことを述べて、終わります。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、寺田学君。
○寺田(学)委員 寺田です。
早速始めます。
この民法の改正案の提出には、法制審を含めて相当多くの議論が費やされて、また、与党内においても、慎重派、賛成派、両方から意見があって、それを何とかまとめなきゃいけないという目的のもので、相当な部分が玉虫色の法案になっている。このままであれば、立法者の意思というものが全く示されないまま裁判所に丸投げするということになってしまうことを大変危惧しております。
そのような事態になったら、私は立法府の一員ではありますけれども、立法府の怠慢そのもので、職務放棄に近いと思っていますので、いろいろな御事情はあると思いますが、その責務を果たすために十分な質疑時間を取ることを、委員長を含め各理事にはお願いを申し上げたいというふうに思っています。
そのような大事な法案ではあるんですが、一言苦言を申し上げたいんですけれども、この委員会の環境というものは、先日までを見る限り、本当にふさわしくないと思います。
先日、参考人質疑を行いましたけれども、この二列目、誰もいなかったですよ、途中で。何を考えているんですか。我々委員会側が、お忙しい中、頭を下げて来ていただいてお話をしていただいているにもかかわらず、離席をしている。一瞬ならいいですよ。誰もいなかったですよ、この二列目、自民党も公明党も。
そういう態度でこの法案に向き合っているということに、私は甚だ大きな、問題点を抱えているというか、そういう態度でやるんだったら、一回引っ込めて違う法案をやった方がいいですよ。もっともっと時間を取ってやれるような環境で、真摯に向き合う態度が私は欲しいと思っております。
中野さんにも聞いておきますが、あなたは政務官ですよ。法案の提出をお願いしている立場にもかかわらず、参考人質疑のときにどんな態度でしたか。ずっと寝ていましたよ。たばこも何度も吸いに行っていましたよね。そんな態度で政府がいるんだったら、立法府として受け止めて審議したくないですよ。どういう自覚をしているんですか。
○中野大臣政務官 ただいま、私が委員として法務委員会に出席する際の行動について御指摘をいただきました。私の立場を踏まえ、自らの行動を正してまいりたいと存じます。
また、貴重な審議時間を使って御質問をいただいたこと自体、国会議員として真摯に受け止めなければならないと認識をいたしております。大変に申し訳なく存じます。
改めて、自らの重責に思いを致し、このような御指摘をいただくことが二度とないように、緊張感を持って職務に向き合ってまいりたいと存じます。
大変に申し訳ございませんでした。
○寺田(学)委員 再三、与党の皆さんも野党の皆さんも、それぞれの価値観を持ちながら、物すごく大事な法案で、誰かを救ってあげたいとして本気でやっている審議ですし、それぞれの悩みを抱え、代弁しながらやっていると思いますので、大事だと思うんです。なので、そういう環境を整えることは、この委員会、この法案に対しても本当に大事だと思いますので、よろしくお願いします。
いろいろな価値観があるので余り申し上げたくないんですが、先ほどから自民党さんの質疑を聞いていて、その家族観やその視点というものに強く違和感を持ちました。とむさん、いらっしゃいますかね。後でちゃんと機会を設けながらお話があってもいいと思うんですが、先ほどの発言の中で、DVや児童虐待がなければ離婚しにくい社会がいいというのには、甚だ強い違和感を私は持ちました。
DVがなくても、両親の不仲や対立関係によって子供に相当な影響を与えることは、先日の参考人の質疑の中でもはっきりとお述べになられている方がいらっしゃいましたけれども、離婚することで守られる子供の利益だってたくさんあるわけで、もちろん、子供がいなくても、共にいることがつらい夫婦関係ということも、継続することがどれだけつらいことかということは、自分の周辺の友人たちの悩みを見てみても思います。
それと、自民党の先生から、子供を連れて主にお母さんが逃げたことに関して、子の連れ去りと表現されていること、一般的に使われていることにも違和感を持っています。
まず、いろいろなケースがありますので全てが全てとは私は申し上げませんが、一般論として、何の理由もなく、一度築いた生活の基盤を全てなげうって、子供を連れて逃げていくことがどれだけ大変なのかということを本当に理解されてその用語を使われているのかなと私は思います。生活の基盤というのは何か、皆さん想像できますか、ちゃんと。
一個一個分解して申し上げたいんですけれども、保育園を選んだり、幼稚園を選んだり、学校の先生やその友達との関係を一生懸命つくったり、どんな塾がいいだろう、どんな習い事がいいだろう、その習い事をやっているようなクラブはどういうところなんだろうということを情報収集して、ようやく選んで始まっている習い事や塾、困ったときに頼ることができる、いわゆるママ友、パパ友、近所との子育ての関係のための人間関係、子供のことをよく知って長年ずっと診てくれている小児科医だったり歯医者さん、使い慣れた公園だったり、何が危険かどうかということをよく分かっている公園だったり、そして日常的に通っているスーパーとか、そういうものが生活基盤であって、これらを築くのにどれぐらいの苦労をしているのかということを本当に分かって言っているのかと私は思います。
これらの全てのものをリセットしてやり直すということ自体がよほど、相当大きな決意だということを私は理解した上で言葉選びをするべきだと思います。そんな大変なことをリセットしてまでも逃げる大きな理由があるということは、私は一般的に想像がつきます。こういうことを、恐らく子育てに本当に主体的に関わっていないと理解できないですよ。やっていますか。
私も今、子供がバスケットボールクラブに通うために様々探して、それがどのような会場で、どのような頻度でやられ、どういう人が集まっていて、それに通わせることによってどれぐらいお金がかかって、どういう人間関係ができるのかということを一個一個、時間をつくりながらやっていますよ。皆さんはそれをやっていますか、本当に。
そんなことも分からないで、その生活基盤を全てなげうって出ていかざるを得ない環境を子供の連れ去りと一般的に使っていることに私は強い違和感を覚えます。
具体的な質疑に入ります。
八百十九条、今日、お手元の方に資料を配りました。条文を並べたことと、簡単な絵を示しているんですが、最初に大臣にお聞きすること、ちょっと時間の問題があるので飛ばしますけれども、離婚後の親権の指定、判断において、一般的に、単独の指定よりも共同親権の指定の方が認められやすいというような話が流布されています。
局長、この単独親権の方よりも共同親権の方が認められやすいんだというような見方に対して、どのようなお考えをお持ちですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案では、裁判所が離婚後の親権者を判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととしております。また、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、裁判所は必ず父母の一方を親権者と定めなければならないこととしております。
本改正案の趣旨でございますが、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益の観点から重要であるとの理念に基づくものでございます。
その上で、離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかについては、個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をすべきものでありまして、本改正案もこのような考え方に沿ったものでございます。
したがって、父母双方を親権者とするか、その一方とするかについては、個別具体的な事情によって判断されるものでございますので、どちらが認められやすいということは一概には言えないと考えております。
○寺田(学)委員 重ねて聞きますけれども、共同親権の方が認められやすいというような見方と同様の立場に立ちますか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案の理念でございますが、先ほど申し上げましたとおり、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、責任を果たしていただくこと、その理念に基づいて、子の利益の観点から最善の判断をすべきと考えておるものでございまして、そのどちらかということについては一概に言えないと考えております。
○寺田(学)委員 どのような価値観を持って見るかではなくて、法文を素直に読んでいくと、私自身は、親権者を決める判断に当たっては、単独親権よりも共同親権を判断する際の方が考慮要素が多いと思うんです。
そのために、すごい当たり前のことですが、簡単な絵を作りました。単独の親権を判断する際には、例えば、父と子の1番及び母と子の2番、この1番と2番が、どちらが親権者としてふさわしいのかということを判断の基本的な要素にすると思うんですが、共同親権になると、当然ながら、父母間の関係が、この八百十九条にも書かれているとおり、重要視されるわけですよね。
これは、単純なたてつけの説明の話ですけれども、親権者の判断に当たって、単独親権よりも共同親権の方が判断の際の考慮要素が多いという考え方について、どうお考えですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案におきましては、裁判所が父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たりましては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととしております。そこで、離婚後の父母の一方を親権者と定める場合でも、父と母との関係が考慮されないこととなるものではないと考えております。
したがいまして、個別具体的な事案に応じて一切の事情が考慮されることとなりますので、裁判所が離婚後の父母の双方を親権者と定める際の考慮要素と離婚後の父母の一方を親権者と定める際の考慮要素の多寡について、一概にお答えすることは困難でございます。
○寺田(学)委員 多寡。いや、どう考えても。どういうふうな説明をされるのかなと思って聞いていましたけれども。
ただ、共同で認める限りにおいて、法文に書かれているとおり、父母が共同して親権を行うことが困難かどうかということが要件になって問われているわけですから、この3番に関しては、当然ながら、共同親権を認める際に当たっては一番重要視される、単独親権を判断する際よりも重要視される、そういう理解でよろしいですよね。
○竹内政府参考人 委員御指摘のとおり、共同親権、父母双方を親権者と定めるに当たっては、父と母との関係が重要な一つの要素になってくるかと思われます。(寺田(学)委員「単独親権に比べて」と呼ぶ)
比べるとどうかというのは一概には言えないとは思いますが、双方を親権者と定める場合には、父と母との関係というのが重要な考慮要素になってくるとは思います。
○寺田(学)委員 私、法曹家でも何でもないのであれですけれども、子供にとってどちらが親権者としてふさわしいのかという一方を決める際においては、当然ながら、父親と子供の関係、母親と子供の関係、母親と父親の親権者としてのふさわしさというものを子供と照らし合わせながらやるでしょうから、父母間の関係というものがそれ以上に優先して評価される対象にはならないはずですよ。
ただ、今回の法案の規定の中において、まさしく、この二号に書いているとおり、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときは単独にしますと言っているわけですから、この3番自体は、単独親権を決める際よりも物すごく重要視されますよね、共同親権を考える際にはと言っているんです。これは当たり前のことじゃないですか。
○竹内政府参考人 父母双方を親権者と定めるに当たっては、委員御指摘のとおり、この資料の3番でございますか、父と母との関係が重要視されることはそうだろうと思います。
○寺田(学)委員 だから、単独親権と比べてと言っているんです。
○竹内政府参考人 単独親権になる場合、父母のどちらか一方を親権者とする場合と比べますと、父と母双方を親権者とすることを考える場合の方が、父と母との関係は重要視されるかと思います。
○寺田(学)委員 それで終わりのはずだったんですけれども、長かったですね。
あと、先ほどからDVの話も出ていますけれども、先日のしばはし参考人が言われていたことは非常に示唆に富んでいるんですが、親が争わないことがとても大事で、それが子供の福祉であり、子供の利益だということを言われていました。
DVのような関係ではなくても、いわゆる不仲、不和、実例として私の周りであるのは、食卓を囲んでも父母間が全くしゃべらないとか、あからさまにお互いが冷たい対応をし合っているということ自体は、幼児であれば別として、一定程度の物心がついた子供であれば、夫婦間がおかしいことはよく分かって、通じるし、それ自体が物すごく子供の心理に与えることは、これは子供を育てたことがある人は、当然、目の前で見ているでしょうし、周りの方から聞く機会もあると思います。
DVのみならずです、父母の関係が不和、不仲、今申し上げたような冷戦関係も含めて、DVはしていないですよ、ただ、完全に不仲の場合においても共同親権が認められる余地はあるんですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
個別具体的な事情によるため一概にお答えすることはなかなか困難ではございますが、父母同士のけんかによって、子の心身の健全な発達を害するような場合には、子の利益を損ねるという意味で、単独親権になる場合があると考えられます。
○寺田(学)委員 想像するんですよ。お互いが、この八一九条の二号の中で、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき、これはちょっと、来週の火曜日にも質疑に立ちますので、もっとブレークダウンしてやりたいと思うんですけれども、一般的に、私はまだ、まだと言ったら駄目だな、離婚したことがないので、どういう関係の中で物事を話し合っていくのかというのは当事者として分からないんですけれども、多分相当な、お互いの中での葛藤というか対立がある中で話合いが進められていくと思うんです。その中において、お互いが、調停に入りました、調停委員の方々を含めて、背中をさすられながら、お互い、子供のため考えようよということを言いつつも、それでも調わないものが審判として上がってくると思うんですよね。
私は、そういう状況の中で、この八一九条の二号の、父母が共同して親権を行うことが困難でないと審判できるケースはどれぐらいあるんだろうと思うんです。
本当に父母が共同して親権を行うことができるような環境であるならば、審判になる前に、お互い話し合って何か決めているはずですよ。それか、一定程度、いや、それは片方だというふうな話で決まっているのかもしれません。
本当に、これがこういうふうに上がってきたときに、どのようなケースが想像されて、そこに対してどういう判断を下すべきかというのは、冒頭申し上げた、立法者としての意思をちゃんと定めておかないと、余りにもその部分に関して裁判所に丸投げするのは私は問題があると思っています。これは来週含めてやりたいと思います。
既に離婚が成立されている方にも、当然ながら、今もありますけれども、親権を変えるという申立てが行われる中で、共同親権というものが施行されれば申し立てられますが、これは、離婚後に関しては、昨日もいろいろお話を聞きましたが、離婚直後が最も葛藤が高い、お互いが、離婚するという大きな決断をする上で対立しているわけですから。ただ、時間を置いたら少しずつカームダウンしていくというのが一般的な傾向だと思うんですが、それでもなお、お互いの対立、お互いが合意点を見出せず、審判まで上がってくるというのは、離婚時よりも相当、もう根本的に難しい間柄なんだろうなと想像できます。
制度的には、離婚後の人に対しても、共同親権に親権変更する申立てができるように、成立すればなるんでしょうけれども、これは本当に認められるケースはあるんですかね。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の、親権者変更の申立てでございますが、子の利益のため必要がある場合に認められるという要件になっております。
そして、本改正案におきまして、親権者変更の裁判において考慮すべき事情や単独親権を維持しなければならない場合につきましては、親権者指定の場合と同様としております。
したがいまして、御指摘のように、例えば、単独親権を共同親権に変更するというような場合には、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮した結果、親権者を父母の双方に変更することが子の利益のために必要であると認められることが必要となり、また、DVや虐待のほか、父母が共同して親権を行うことが困難である場合は、親権者を父母の双方に変更することはできないこととなります。
○寺田(学)委員 一般論を述べていただきましたけれども、普通に運用を想像していて、離婚の直後というか、離婚の話合いをしている最中は最も高葛藤ですよ。それで、時間を置いているにもかかわらず、調停でも落ち着かず、当然ながらお互いの合意も調わず、審判まで上がってくるレベルのものが、改めて、五年たって、お互い争って調停でもうまくいかなかったけれども、裁判官として、やはりこの人たちは二人でやった方がいいよねという結論になるには、どういう要素なんだろうと、逆に探し切れないので思うんです。これは来週含めてやりたいと思います。
残り三分なのであれですけれども、八百二十四条、裏側の方にその条文だけ載せていますけれども、一方の親が単独で行うことができる行為の範囲について、先日はパスポートの取得を枝野委員がやられていましたけれども、人工妊娠中絶の手術に関して、一方の親が単独で行うことができる行為かどうか、御判断をお示しください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
まず、現行民法でございますが、父母の婚姻中、すなわち父母の双方が親権者であるときは父母が共同して親権を行うと定めてはおりますが、親権の単独行使が許容される範囲についての明文の規定がなく、解釈に委ねられているところでございます。
本改正案では、この点を明確化するため、父母双方が親権者であるときは父母が共同して親権を行うこととしつつ、子の利益のため急迫の事情があるときは親権の単独行使が可能であるとしております。
この急迫の事情があるときでございますが、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時に親権を行使することができず、その結果として子の利益を害するおそれがあるような場合をいいまして、緊急の医療行為を受けるため医療機関との間で診療契約を締結する必要がある場合はこれに該当すると考えられます。
そこで、御指摘のような中絶手術につきましても、母体保護法によってこれが可能な期間が制限されていることなどを踏まえれば、急迫の事情に該当し得ると考えられます。
いずれにしましても、父母双方が親権者である場合であっても、現行民法において親権の単独行使が認められるときは、改正法案によりその範囲が制限されることはないと考えております。
○寺田(学)委員 一般原則を並べていただいて、最後に当てはめをいただいて、最後は一般原則をお話しをされましたけれども、一方の親の判断で、急迫というその部分に依拠しながらできるということでよろしいですよね。
○竹内政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。
○寺田(学)委員 ワクチン接種はいかがですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案では、父母の双方が親権者である場合には、親権は父母が共同して行うとした上で、監護又は教育に関する日常の行為をするときは親権を単独で行使することができることとしております。
どのような場合にこれに当たるかについては、個別具体的な事情に応じて判断されるべきではありますが、一般論として申し上げれば、通常のワクチン接種であれば、監護又は教育に関する日常の行為として単独で行うことができると考えております。
○寺田(学)委員 時間が来ました。
先ほど与党議員の出席の態度やら政務官の態度について言及もしましたので、時間が足りなくなりました。牧原さん、ちゃんと弁償してくださいね。
本当に質疑時間をちゃんと取らないと、これは本当に現場が困りますよ。裁判官たちも困るでしょうし、もちろん裁判官たちによって判断される御家族、お子さん、お父さん、お母さん、全員困りますよ。立法者の意思をちゃんとこの審議の中で示すべきです。
様々な事情があると思いますが、しっかりと質疑時間を取っていただくことをお願いして、終わります。
○武部委員長 この際、暫時休憩いたします。
午前十一時五十三分休憩
――――◇―――――
午後一時五十分開議
○武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。おおつき紅葉君。
○おおつき委員 立憲民主党・無所属のおおつき紅葉です。
先ほどの同僚議員の質問に続いて、今回の民法改正案について質問させていただきたいと思います。
冒頭に、私からも、寺田委員も申し上げましたが、先ほど午前中に話があった家族観について、私自身も今回の共同親権の議論をするに当たって、世界標準に合わせるために世界各国が導入している制度について議論をするというお話なのにもかかわらず、私、やはり偏った家族観に基づいて議論がされているんじゃないかなということに、極めて違和感を感じました。
そういった考えがある方も、この国にはいらっしゃるのかもしれません。でも、私自身、新人議員で今四十歳で子供を二人育てる身としては、先ほどから言われている、例えば連れ去り前提の議論ですとか、あとは、離婚をしない家庭、家族観があるというのは、やはり時代から遅れている家族観ではないかと思いますし、この観点に沿って自民党が政権運営をしているということに関して、やはりこの制度のかじ取りをするというのは、極めて偏っている議論であると思いますので、私自身のこれからの考えも申し上げ、そして、それが社会へ向けての選択肢だと思って受け止めていただきたいと思い、質問に入らせていただきたいと思います。
この制度の創設に当たっては、私、親にとっては、やはり、親と子供が安心して暮らせるように、そして孤立しないように必要な支援が措置されて、たとえ一人親だとしても、本来持っている力を取り戻して、社会で活躍できる観点を鑑みていかなくちゃいけないし、子供にとっては、親がどんな道を選んだとしても、子供が幸せに笑って暮らせる社会にしなくちゃいけない、そして、私たちが、社会をつくる立場としては、願わくば、その子供たちが大人になったときにも、自分もやはり子供を産んで安心して暮らせるんだと感じられる、そういう制度に、つくっていくために導入するのかどうかをやはり議論をしなくちゃいけないと思って、この観点に沿って今日は質問に入ります。
さて、日本では、今、九割が協議離婚なんです。その原因の一位というのが性格の不一致なんですけれども、二位以降というのが、身体的暴力だとか精神的暴力、そして子供への暴力など、DVが原因となっています。この性格の不一致の中でも、現に夫婦間の力関係が存在しておりまして、十分に話合いができていない状況で離婚に至ることも多いというのが現状です。
今回の改正案では、一方が単独親権を望んだとしても、合意ができない場合は家裁の判断に委ねられることになりまして、決して選択できるわけではありません。
だから、伺いたいと思います。今回の改正案では、協議離婚の際に監護者を定める旨の規定を一律に設けることは見送られております。そもそも規定を設けないこととした理由を伺いたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
父母の離婚に直面する子の利益を確保するためには、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要であると考えております。
父母の離婚後に子の身上監護をどのように分担するかは、それぞれの事情により異なるものと考えられます。そのため、個別具体的な事情にかかわらず離婚後の父母の一方を監護者と定めることとするのは相当ではなく、本改正案では、監護者の指定を必須としていないものでございます。
○おおつき委員 でも、やはり私は、この今回の共同親権導入に当たっては、監護者が指定されないと、日常の生活拠点をどこにするのか、例えば、今日はどっちのおうちに泊まるのかとか、子供の日常生活に大きな影響を与えるんじゃないかなと懸念しております。日頃の同居親が子供の健康状態や子供の意思で行いたいことも、別居親の同意が必要となってくるんですよね。
それで、本改正案の日常の行為とか急迫の事情とか、同僚議員も聞いておりましたけれども、この定義がなくて、狭義としての捉え方をされてしまって大きな混乱を招くんじゃないか、ひいては、例えば、家裁の現場に全ての責任を押しつけられるんだとかというのが想定されるんじゃないかと思うんです。
また、DVで避難されて、子供を連れて家を出る場合も、急迫の定義がなくて、例えば、殴られてすぐじゃなくて、子供のために、子供が夏休みに入ったら避難しようかなと思って考えている方も、これまで我慢できたのだから急迫には当たらないと判断されるということも、子供と避難することが結局できなくなってしまうんじゃないかなというおそれがあるという声が数多く届いております。だからこそ、先日、枝野委員も申し上げておりましたけれども、離婚するときは、監護者の指定、これをしっかりと入れ込むことによって、そうすることで、単独でかなりのことが可能になるんじゃないかなと思っております。
さて、ここからは、共同親権が導入されるとどう変わっていくのか、不安の声が多く寄せられておりますので、これまで届いてきた一つ一つの声について伺いたいと思います。
まずは、養育費です。養育費の支払いについてです。
養育費は、別居親が子供の監護者に支払うんですけれども、共同親権になると養育費の支払いが促されるという意見があります。その一方で、共同で養育しているから、その間の養育費を減額するということが主張されるおそれがあるのではないかという声が届いているんですけれども、これについてはどうなるんでしょうか、伺います。
○小泉国務大臣 養育費の履行確保、これが子供の健やかな成長のために重要な課題であります。
そこで、本改正案では、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならないこと等を明確化することとしております。
したがって、親権の有無によって子に対する扶養の程度に違いが生じるものではなく、養育費を含む子の監護の在り方についても、改正法の趣旨を踏まえて父母の間で適切な協議がなされることが期待されますが、いずれにせよ、合理的な理由のない減額の請求は認められないと考えます。
法務省としては、施行までの間に本改正案の趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知、広報に努めてまいりたいと思います。
○おおつき委員 大臣から明確な答弁がありました。
実は、本当に、今おっしゃったとおりに、養育費というのは、共同親権とは全く別の問題なんですよね。全く別の問題であることをしっかりと周知させなければいけません。なぜかというと、共同親権の議論が始まるという段階で、物すごく多くの方々がこれについてすごく心配をしております。そして、これに関連して減額をしようという考えを持っている方が少しずつ出てきているからなんじゃないかなという懸念がありますので。
実際に、取決め率と受給率、これは差があることを大臣も御存じかと思います。これは、母子世帯で取決め率が四六・七%なのが、実際に受給率であると二八・一%に下がっていますよね。父子世帯では、取決め率が二八・三%なのが、受給率では八・七%に下がっているんです。こういったことが、共同親権が起きたからもっと下がるようなことがないように、少なくともちゃんとしっかりと支払いができるような体制を整えるように、周知徹底もお願いしたいと思います。
次に、共同親権の導入に係って、既存の社会保障制度への影響について伺いたいと思います。
これは、現在の社会保障制度のうち、原則、全ての家庭の子供に支給される児童手当は所得の多い方に支給されることになっていますし、一定収入以下の一人親家庭への児童扶養手当は監護者に支給されることになっています。
そこで、伺います。
児童扶養手当は事実婚には支給を停止するとあるんですけれども、共同親権になった場合、収入の算出はどうするんでしょうか、そして、共同で養育しているのなら、婚姻中や事実婚と同じという理由で停止されてしまうのでしょうか、これを伺います。
○野村政府参考人 お答え申し上げます。
お尋ねは、児童扶養手当の支給に際して収入がどう扱われるのかということと、それと、事実婚認定が共同親権になるとされてしまうのか、この二点というふうに理解をいたしました。
まずは、収入の方からお答え申し上げますと、児童扶養手当でございますけれども、これは先生からも今御指摘ございましたように、子を監護している実態があるかどうかで支給対象者を判断をさせていただいております。つまり、民法上の親権とかあるいは監護者の定めがあるかどうかにかかわらず、その子を監護している実態があるかどうかということが判断のポイントというふうになっております。そのため、離婚後の父母が共同して親権を行使するというようなことになった場合でありましても、子を監護している実態があるかどうかで手当の支給対象者を判断することとなりまして、実際に子供を監護している方が引き続き手当を受給することとなります。
そうなりますので、児童扶養手当受給の可否でございますとかその額は受給資格者本人の方の収入や所得によって決まるということになってまいりますので、共同親権になることが児童扶養手当の収入の算定方法に影響を及ぼすものではないというふうに考えております。
それともう一点、事実婚との関係でございますけれども、児童扶養手当、確かに、御指摘のように、事実婚になってしまった場合には児童扶養手当の支給というのは止まります。なんですが、この事実婚につきましては、当事者間に社会通念上夫婦としての共同生活と認められるような事実関係が存在するかどうかということによって判断することとしております。
そのため、離婚後の父母が共同して親権を行使することとなった場合であっても、共同親権であることを理由に事実婚の認定がされるというふうな関係にはないというふうに考えております。引き続き、子を監護している実態があるかどうかとか同居の有無であるとか生計関係などを照らし、事実婚と判断されるような関係にあるかどうかで支給が判断されることとなると思います。
こうした事実婚に当たるかどうかといったことについては、個別の事案によって事情がそれぞれございますので、先ほどの収入の関係もそうでございますけれども、支給実務を担う地方自治体に対しては、こうした実態に応じての判断になっていくということについては、また引き続き周知をしていきたいというふうに考えております。
○おおつき委員 その周知というのは本当に大切なことになりますので、是非お願いしたいと思います。
また、子の監護という観点では、先ほども申し上げましたが、やはり離婚するときに監護者の指定をするのが一番分かりやすいんじゃないかなというような答弁であったと思います。
さて、次に行きます。共同親権が導入されたら、じゃ、次、教育支援制度の影響について伺いたいと思います。
現在の教育支援制度には、高校等の就学支援金又は大学などの修学支援制度について、親権者が二名の場合は二名分の収入証明が必要となります。では、離婚後の共同親権の場合、高校の場合又は大学などの高等教育の場合、これはそれぞれ同じ扱いになるのでしょうか、伺います。
○奥野政府参考人 お答え申し上げます。
まず、御質問いただいた中で、大学等の高等教育に係る奨学金の取扱いについてお答え申し上げます。
日本学生支援機構の奨学金制度におきましては、家計基準、いわゆる収入要件をもちまして、生計維持者の収入等の状況に応じてその支給等は判断することとしております。生計維持者につきましては、原則として父母の二名となっております。
ただし、現行におきましても、離婚等により父又は母と本人が別の生計になっている場合などにつきましては、これまでも、親権の有無にかかわらず、学生等の実情に応じて判定することとしております。したがいまして、共同親権の導入によりまして大学等の奨学金につきましては制度上の取扱いが変わることは想定されないものと考えております。
まず、大学等について御説明申し上げました。
○浅野政府参考人 お答えいたします。
高等学校等就学支援金につきましては、保護者等の収入に基づき受給資格の認定が行われますが、保護者の定義は、法律上、子に対して親権を行う者と定めております。そのため、共同親権を選択した場合には親権者が二名となることから、親権者二名分の所得で判定を行うことになります。
しかしながら、就学支援金の受給資格の認定等に当たっては、親権者が二名の場合であっても、親権者たる保護者の一方がDVや児童虐待等により就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合には親権者一名で判定を行うとしておりますので、共同親権か否かにかかわらず、同様の判定を行うこととなります。
○おおつき委員 では、確認なんですけれども、共同親権になっても変わらないということでよろしいですよね。はい、ありがとうございます。変わらないと。
じゃ、あわせて、その場合、別居親から入学時の必要書類を受け取るのに、例えば、やはり時間がかかる場合とかが出てくると思うんですよ。この時間がかかる場合でもまた例が変わってくると思うんですけれども、嫌がらせとかで、これを渡さないと、おまえ、できないんだろう、だったらこれは渡さない、例えば、ほかの条件と併せてこれを渡さないぞという話などが出てきた場合、渡してくれない場合、本改正案の急迫の事情の扱いになるのか、伺いたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本改正案におきまして離婚後の父母双方を親権者とすることができることとしているのは、離婚後の父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことを可能とすることで子の利益を確保しようとするものでございます。
また、本改正案では、父母間の人格尊重義務や協力義務の規定を新設するとともに、親権は子の利益のために行使しなければならないことを明らかにしております。
そのため、離婚後の父母双方が親権者となった場合におきましても、別居の親権者が同居親による養育に対して嫌がらせのような不当な干渉をすることを許容するものではございません。
こうした法改正の趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知に努めてまいりたいと考えております。
○おおつき委員 そうですね。せっかく経済格差をなくして、子供が希望すれば高等教育へ進学できる修学支援も、この共同親権の導入でどうなるのかが分からず、こうやって不安を抱えている方々は多くいらっしゃいますし、そういった声はもちろん役所にも私たちの各事務所にも届いておりますので、そういった不安を一つ一つ是非払拭するようにお願いしたいと思います。
では、大臣、こうやって各省庁をまたいでいるこういった制度を、現在の一人親支援については、離婚後の共同親権、共同監護の導入によって子供に不利益が生じることがないよう、今後、立法措置を含めて、関係省庁において連携、調整はやはり必要ですよねと思うんですけれども、大臣の御見解をお願いいたします。
○小泉国務大臣 まさにおっしゃるとおりだと思います。
細かい規定は様々ありますので、また、各省庁の行政の観点が必ずしも同じではない部分が重なっています。でも、受け取る人にとっては同じ国からの施策でありますので、そういう点を踏まえて、関係省庁間の密接な連携、これを図っていきたいと思います。
○おおつき委員 では、次に、法定養育費制度の導入について伺いたいと思います。
本改正案では、法定養育費の額は、法務省令で定める方法により算定することとして、金額が決まっているのではなく、また、支払い能力を欠くこと等を証明した場合には、法定養育費の全部又は一部の支払いを拒むことができることとしています。これでは、現在の養育費の受給率、先ほども申し上げましたが、大きく変わるとは思えません。
そこで、家族法制部会では、今回の法定養育費制度の導入に際して、公的な養育費の立替え払い制度が必要であるとの意見が出されましたが、今回導入が見送られた理由を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
養育費を必要とする一人親家庭への公的支援として、公的機関による立替え払いや強制徴収の仕組みの導入を期待する声があることは承知をしております。
もっとも、そのような仕組みの導入につきましては、償還の確実性も見込まれない中、本来当事者が負担すべき養育費を国民全体で負担することが合理的と言えるか、当事者のモラルハザードにつながらないか、他の公的給付との関係をどのように考えるかなどといった観点からの慎重な検討が必要になってくるところでございます。
なお、法制審議会家族法制部会の議論の過程におきましては、一定の公的給付を前提とするような支援の仕組みを検討することは民事基本法制について調査審議をする法制審議会の諮問の範囲を超えるのではないかとの指摘もされたところでありまして、法制審議会総会で採択された要綱や、これを受けて立案された改正法案においても公的徴収制度の導入は含まれていないものでございます。
○おおつき委員 それは、再度検討する可能性というのはまだあるんでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
繰り返しになり恐縮でございますが、家族法制部会におきましては、民事基本法制について調査審議をする法制審議会の諮問の範囲を超えるのではないかという指摘もされたところでございまして、公的徴収制度について、この家族法制部会の中で再度検討するということは今のところ考えておりません。
○おおつき委員 ここはこれから政治判断になってくると思います。私は必要な声は高まってくると思いますよ、制度が始まったら。これはまた引き続き、制度が始まるかどうかまだ分からないですけれども、私は議論を続けていくべき問題だと思っております。
さて、次に、DV等の被害者の避難に係る住民基本台帳制度の支援措置について伺います。
DVやストーカー行為等の児童虐待及びこれらに準ずる行為で避難した場合、当該の住所地の役所に、加害者の相手方に住所を知られないようにするために住民基本台帳の支援措置を申請することになっております。
こちら、家裁で保護命令が出るのは本当に刑事事件相当の傷害があった場合で、精神的なDV等ではほぼ保護命令は出ません、現時点で。唯一、子供の安全を守るための支援が住民基本台帳の支援措置となっております。
ただ、今回の民法改正に歩調を合わせたものなのか、いつの間にか、今年の一月三十日付で総務省から自治体に通知が出ておりました。つまり、支援措置を申請しても、その後、加害者である別居親が役所窓口で住民票の閲覧を希望した場合に、支援措置で閲覧できないことを伝えるときに、必要に応じて不服申立てをすることができることを示せたりとか、その教示を文書によって行うこと等、追記改正されております。
そこで、まず総務省に伺いますが、なぜこのような通知を出したんですか。
○三橋政府参考人 お答えいたします。
住民基本台帳事務におきましては、DV等の被害者の相手方が住民票の写し等の交付等を不当に利用して被害者の住所を探索することを防止するDV等支援措置を実施しております。
御指摘の通知につきましては、国会等での御議論におきまして、DV被害に関する虚偽の申出により、このDV等支援措置が濫用されている場合があるのではないか等の指摘があったことを踏まえ、より適切な制度運用を行うため、実務を担う市区町村の意見を踏まえながら、関係省庁とも協議を行い、発出したものでございます。
当該通知におきましては、住民基本台帳の一部の写しの閲覧の請求又は申出に対しまして不許可決定を行う場合等において、相手方に対し反論機会を確保するため、必要に応じて不服申立てをすることができる旨を教示することや、その教示を文書により行うことが考えられる旨を示すとともに、DV等支援措置の実施に当たっては、専門的知見を有する警察、配偶者暴力相談支援センター等の相談機関からの意見を聴取することが重要であり、より適切に意見を聴取する観点から、相談機関が申出者に対して対応した内容を新たに記載事項に加えるなど、本措置の申出書様式や手続の流れを変更することとしたものでございます。
○おおつき委員 審議官、しかし、やはり裁判になった場合に、言葉とかの精神的なDVなど、証拠提出が難しい場合は支援措置を受けられなくなるのか、また、継続申請の場合、離婚して数年たったから別居親からの危険性はないと判断されて支援措置が受けられなくなるんじゃないかという、危惧される声はたくさん届いているんですよ。
だから、総務省にもう一回伺います。今回のこの通知発出を踏まえた上で、今後の支援措置の在り方についてお願いいたします。
○三橋政府参考人 お答えいたします。
今般の民法改正法案により、離婚後に父母双方が親権者と定められた場合におきましても、婚姻中における取扱いと同様に、支援の必要性が認められる場合には支援措置を実施するという基本的な考え方に変更はないものと考えております。
今後、本改正によるDV支援措置等に係る課題を把握した場合には、同制度をより適切に運用を行う観点から、実務を担う市区町村の意見も聞きながら、法律を所管する法務省など関係省庁と協議、検討してまいりたいと考えております。
○おおつき委員 審議官、これは、各自治体、大変なことになっていくと思いますよ。本当に、窓口に出て対応する方は、これから負担が増えるんじゃないかとまた不安になっちゃいますよ。当事者だけじゃありません。窓口で対応する方々の気持ちも是非考えていただいて制度設計をお願いしたいと思います。
さて、時間もだんだん少なくなってまいりましたので、最後に、今回、共同親権というのは原則ではないんですよね。原則ではないということを改めて、最後に、大臣、原則ではないかどうかだけでいいです、答弁をお願いいたします。
○小泉国務大臣 これは制度全体にかぶる話ですが、子供の利益のためにつくられる制度でございます。何が原則ということを定めているものではありません。
○おおつき委員 共同親権は原則じゃないということを改めて確認いたしました。
これは、済みません、時間が来たので終わりますが、聖書のソロモンの審判とか、江戸時代の大岡裁きの子争いのように、当時は女性同士だったんですけれども、今は、この制度の導入によって、父母双方の真摯な同意がない場合、こういう引っ張り合いになっちゃうんじゃないかと懸念しております。だからこそ、真摯な同意がある場合に限って共同親権ができるということをお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、米山隆一君。
○米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。
最初に、余り言いたくもない話題なんですけれども、自由民主党の杉田水脈議員が、今まさに我々が審議している民法改正案について、この法改正の肝は、ある日家に帰ったら突然妻(夫)と子供がいなくなっていた、その後、幾ら捜しても会えない、養育費だけ取られている事例が後を絶たないことから、どうすればそれが防げるのかというところにあります、この法改正で本当にそんな事例がなくなるのかと。
そこまではいいと思うんですよ。問題提起として、それはどう考えるのも自由ですから。でも、ここからが問題で、私はなくならないと思います、なくすためにはそこにうごめく離婚でもうける弁護士、左翼活動家をリストにして国民に知らしめるくらいやらないと、そして、法案を議論する有識者会議に極左活動家を入れるようでは絶対に駄目です、公安の協力を得て締め出せと、この二点、法務省に意見しました、これは法務省だけではなく、今回中国の資料を利用した委員がいた内閣府を始め全ての省庁に徹底してほしいですと。
これを現X、旧ツイッターでおっしゃられたわけなんですよ。これは自由民主党の議員ですからね、自由民主党の。しかも、法務省に言っているわけですから、さすがにこれを捨ておいていいのかと。だって、こんなだったら、私、あしたから公安につけられちゃうかもしれませんよ、杉田さんが言ってね。米山なんてやつはけしからぬ、極左活動家だから、あいつをちゃんと公安で、国民に知らしめて、締め出せと言われちゃうかもしれないわけですよ。
これは幾ら何でもきちんと否定してもらいたいと思いますので、まず警察庁にお伺いいたします。
そもそも、公安警察というのは、国家体制を揺るがすようなこと、それはテロとかそういうことに対応する組織であって、法案の議論に何を言っているかなんてことを調べる機関じゃないですよね、改めて聞きますけれども。そして、そういう何か都合の悪いことを言っている人を排除するような機関ではないですよねということを確認させていただきます。
○千代延政府参考人 お答えいたします。
警察は、警察法第二条により、公共の安全と秩序の維持に当たることをその責務としております。こうした責務の遂行に当たりましては、警察法第二条第二項にございます「不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」との規定にのっとって警察活動を行っているものでありますので、御指摘のような御懸念は当たらないものと考えております。
○米山委員 安心しました。
次に、これは法務大臣にも伺わせていただきたいと思いますが、この杉田議員が言っている有識者会議というのは、これはどう考えても法制審議会の家族法制部会のことだと思うんですよ。私、別に極左活動家だろうが極右活動家だろうが、そこでテロをしたら困りますよ、それは当たり前ですけれども、テロをするんじゃなくて、別に、その中の議論で、言論で戦われるなら、それは誰がいたっていいじゃないですかと。それは、頼むのに適正かどうかは別として、だって、いるのは別に構わぬわけですよ、意見を言うのは。
それはそうなんだけれども、それはそれとして、法制審議会の家族法制部会の皆さん、極めて見識高い識者でございまして、排除しなければならないような方はいらっしゃらないというふうに考えておりますが、これもそういう御認識でよろしいですか。
○小泉国務大臣 法制審議会の委員及び臨時委員は、学識経験のある者のうちから法務大臣が任命する者とされており、家族法制部会の委員についても、いずれもそのような方が任命されているものと認識しております。
個別の人事に関する事柄について答弁することは差し控えますが、一般論として申し上げれば、充実した調査審議のためには各委員が様々な角度から忌憚のない意見を述べていただくことが重要であり、その意見の内容によって不利益な取扱いがされることは考え難いことでございます。
○米山委員 安心いたしました。これは当然だと思うんですけれども。
次に、今度は、また似たようなお話で恐縮なんですが、これは、でも、議論の中の一つだと思うんですが、私、午前の三谷委員、谷川とむ委員の質問についてはちょっと違和感をやはり感じざるを得ないということで、通告していないんですけれども、同内容の中で質問させていただきたいと思います。
まず最初、三谷委員の質問に対する答弁で、連れ去りは親権の取得にとってマイナスという御答弁がございました。極論的に言うなら、それはそれであると思うんですよ。それは、本当に何の瑕疵もないというか、昨日まで仲がよかったのに、突然いなくなっちゃって、しかも連れ去っていったというなら、それは問題があると思うんですけれども、しかし、そうじゃないものってすごくいっぱいあると思うんです。だから、単にこの言葉が独り歩きするのは、本当にたった今、離婚やDVで苦しんでいる方々にとって非常にマイナスだと思いますので、それを質問させていただきたいと思います。
そもそもなんですが、先ほど来、特に自民党の委員の方々から、連れ去りという言葉が非常に、何かカジュアルに出されていることに私は本当に違和感を感じております。しかも、DVだったらそれはしようがないんだみたいな言い方をしますけれども、しかし、DVじゃなくたって、そういう場面はそれなりにありませんかだと思うんです。それがDVなのか、また、夫が、仮にしているのが夫側だとして、している側がそれを認識しているかどうかはともかくとして、されている側、ここでは仮に妻としますけれども、妻側は、DVとまでいくかいかないか分からないけれども、当面、夫の顔を見たくない、だから家を出ていく、それはあるわけですよ、別に。
私、本当に、冗談を言いたいわけでも何でもないんですけれども、うちの妻なんか、しょっちゅう家出するわけなんですよ。しかも、愛が足りないみたいな、そういう理由で家出するわけなんです。うちは未成年の子供はいませんから、妻は一人で出ていきますけれども、仮に未成年の子供がいたら、あの妻ですから、もう成人した子供はいるんですよ、子供に対する愛の深さを見ると、それは間違いなく連れていくだろうなと思うんです。私は特段非がないと思っているんですけれども。
でも、さらに、世の中によくある話として、ちょっと非のある夫がいる、ちょっと申し訳なかったということをして、そして家に帰ったら、もう実家に行きましたと妻が書いて、しかも子供も一緒に実家に連れていったなんというのは、巷間、正直よくあることじゃないですか。妻の側だって、けんかして、家を出たいことだってあるでしょう。家を出るんだったら、その旦那さんがまさか全部できるわけじゃなし、それは子供を連れていくでしょう。それをそこまで、何か連れ去りだの未成年者略取誘拐だのと言うのは、それは違うと思うんですよ。
しかも、最初はそんなつもりもなかった、ほとぼりを、冷めるつもりだと思ったけれども、どんどんこじれていって、実家に行ったまま離婚したという例だって、それはあると思うんです。それをそんなふうに悪く言うのって、かえって、妻にとってみたら、じゃ、ずっと我慢しなきゃいけないのか、むしろ、そんなのちょっと行った方がいいじゃないかと。行った結果、駄目なときは駄目であるけれども、それは冷却期間を置いたっていいじゃないかということだってあると思うんですね。
ですので、ちょっともう一度お聞かせいただきたいんですけれども、先ほど竹内民事局長は、子の連れ去りは人格尊重義務に反し、親権取得についてマイナスになる、またDVになることもあるとおっしゃられましたけれども、それはあくまで極端な例であって、例えば、今ほど申しました、奥さんとけんかしたり、それは夫とは限らないですよ、片方の配偶者に一定の非があって、でも、そんなひどいことをしようと思ったんじゃなくて、子供を連れて実家に帰りました、そういうような世の中によくあるような事案は、それはそんな、人格尊重義務に反するとか、親権の取得にマイナスになるとか、DVになるとかということはないということを確認させていただきたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
午前中の私の答弁でございますが、無断で子供を転居させ、特段の理由なく別居親と一切交流させないというような場合は、個別の事情にもよるものの、これにより心身に有害な影響を及ぼしたものと認めるときにはDVに該当する可能性があり得、個別具体的な事情によっては、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価されることもあり得るという趣旨のものでございます。
このように、あくまでも個別具体的な事情の下で判断されるものであるため、委員御指摘の、今挙げられたような、どのようなケースであればDVに当たるか否か、あるいは父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価されるか否かについて、一概に申し上げることはなかなか困難なところでございます。
○米山委員 そういう御答弁になるんだと思うんですけれども、やはり、何せ、何でもかんでも連れ去りで、何でもかんでも人格侵害だみたいなことをおっしゃるのは、何か余りにも現実離れしていると思うんですよ。大体そんな、人間同士がいたら、それは仲よくしたくたってけんかしちゃうでしょう。けんかしちゃったら、それはたまにはぷいっと出ていったりするでしょうということだと思います。
さらに、やはり同じコンテクストで、今ほども言いましたけれども、子の連れ去りはDVになり得る、略取誘拐になり得るという御答弁がありましたが、これも、今度は刑事局の方に、これはもう極端な例ということであって、何も、今言ったみたいな、いや、実家に行きました、そういうようなことまでは入らないんだということを確認させていただきたいと思います。
○松下政府参考人 お答えします。
お尋ねは、谷川委員の御質問に対する政務官の答弁に関するものだと思われますけれども、政務官の先ほどの答弁の趣旨は、親権者であっても、子を自己又は第三者の事実的支配の下に置く行為の態様等によっては未成年者略取誘拐罪が成立する場合があり得るということを申し上げたものと承知しておりまして、委員御指摘の事案におけるような、その犯罪の成否については、恐縮ですが、捜査機関が収集した証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄なので、直接のお答えは差し控えさせていただきますけれども、先ほども申し上げましたように、これを極端な場合と表現するかはおくといたしまして、未成年者略取誘拐罪の構成要件に該当するには、略取又は誘拐、その手段として、一般的には、暴行若しくは脅迫又は欺罔若しくは誘惑を手段として用いることが必要であると解されているところでございます。
○米山委員 これも、そういう御答弁になるんだろうなと思いますけれども。そうなんだと思いますよ。だから、略取誘拐ですからね、暴行、脅迫、欺罔というのが必要であって、お母さんかお父さんか分かりませんけれども、仮にお母さんとして、いや、お母さんはお父さんとけんかしたの、もう実家に行くからあなたついてくると言ったら、それについてくるような、そんなものを略取誘拐とかDVとか、そんなことをいうものではないということは確認させていただきたいと思います。
済みません、これは大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほど、これも私は非常に違和感を感じたのは、共同親権こそが幸福な離婚みたいなことを前提とした御質問があったんだと思うんですよ。なるべく幸福になれるように共同親権を、幸福な離婚ができるようにするための法律だみたいなことをおっしゃられていたかなと思うんです。共同親権こそが幸福な離婚で、単独親権は不幸な離婚というような思い込みの下にちょっと質問されたと思うんですけれども、私はそれは全然違うと思うんです。
何せ、本当に人によって、それは確かに、共同親権によって、より幸福な、まあ幸福な離婚生活というのもなんですけれども、より、比較の上では、共同親権がない場合よりも共同親権があった方が幸福になる離婚した夫婦というのはおられることは否定しないんですけれども、しかし、共同親権よりは単独親権の方が幸福な生活を送れる離婚した夫婦、それは絶対いると思うんです。どっちかが前提なんてことはないと思うんですね。
さらに、この法制は基本的には、これは谷川委員の御意見に対する、質問でもあるんですが、この法制は、離婚後いかにうまくやるかというお話ですよね、その一部は。離婚後にどう対処するかということで、離婚というのは別に、結婚に対して不幸ではないと思うんですよ。いや、別に、結婚が幸福で離婚が不幸だと、さらに、先ほど来ずっと言われている、両親が仲よくしているのが一番子供の幸せだというのも、それが幸せの一形態であることは認めますよ、それが一形態なのは間違いないけれども、いや、そうでない幸せだってあるでしょうだと思うんです。
いや、別に、お父さんとお母さんはもう別れたの、いいじゃない、私はあいつのことなんか憎いのよ、いや、私はあいつのことが憎いよと。でも、それはそれ、これはこれ、俺はあなたを愛しているし、あの人はあの人で人間として立派だよという、それだって別に幸福の一形態じゃないですか。だから、何か政府が幸福の形態を決めて、離婚よりも結婚の方がいい、離婚なら単独親権より共同親権の方がいいみたいなことは、私は非常に間違っていると思うし、この法制がそういうものであってはいけないと思うんですね。
あくまでそれはどちらでも自由であり、結婚するも離婚するも自由であり、そして、単独親権も共同親権も、それは自由というよりは、裁判所も、自分たちで決められなかったら。逆に、決めるのは自由なわけですね、決めるときは自由だし、決められなかったら裁判所が決めるけれども、それもどっちがいいとかじゃなくて、どれが最適か、その当事者にとってどれが最適かということで決めるんだということを確認させていただきたいのですが、大臣の御答弁を伺います。
○小泉国務大臣 ざっくり申し上げれば、そういうことになると思うんですよね。もうそれに尽きます。余計なことを言わない方がここはいいと思います。ここでお気持ちを伝えて。
○米山委員 それでは、お認めいただいたので、次の質問に移らせていただきたいと思います。
それでは、八百十九条二項、七項で共同親権を定めるときをお伺いしたいんですけれども、ちなみに、これは確認的にちょっと伺うんですが、共同親権を定めるときには監護者というのは裁判所は必ず定めるんですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
監護者につきましては、民法第七百六十六条第一項、第二項により、父母の協議又は家庭裁判所の審判により定めることとされております。
本改正案におきましては、父母双方が親権者となる場合について監護者を定めることを必須とはしておらず、裁判所が父母双方を親権者と定める場合についても、監護者を必ず定めるものではありません。
○米山委員 御質問としては、必ず定めるものではない、そうすると、基本的には、それは、どっちも望まない、どっちもそれを求めていないときには定められないということでいいんですかね。どちらかが申し立てたときだけ定められるということでいいんですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
監護者は、まずは父母の協議により定めることとなりますが、父母間に意見対立があって協議が調わないときは家庭裁判所が父母の申立てに基づき監護者を定めることになります。その際、家庭裁判所は、子の利益を最も優先して考慮して、監護者を指定すべきか否かを判断することとされております。
○米山委員 つまり、申し立てなければ特段それは決められない、監護者は定められないということかと思います。
また、これも確認的にお伺いしたいんですけれども、八百十九条二項、七項で母が単独親権、父も単独親権を主張して折り合いがつかない場合に裁判所に持ち込まれたという場合で、この場合、突然、裁判所が共同親権を決定するということはあり得るんでしょうか。これは、つまり、父母それぞれの主張に一定程度拘束されるのか。それとも、そういうことは一切関係なく、父母双方それぞれが単独親権を求めているだけなのに裁判所が突然共同親権だと言うことはあり得るんでしょうか。御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかにつきましては、個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をすべきでありまして、本改正案もこのような考え方に沿ったものでございます。
その判断の際には、裁判所が各当事者の主張内容も考慮することとなると考えられますが、本改正案では、各当事者が単独親権を主張していることのみをもって裁判所が父母双方を親権者とすることを一律に許さないこととはしておりません。
もっとも、父母がいずれも単独親権とすることを強く主張する事案においては、その背景に、配偶者間の感情的な問題に基づいて親権の共同行使が困難な事情があるのではないかとも考えられます。本改正案によれば、このように配偶者間の感情的問題に基づいて親権の共同行使が困難な場合には、事案によっては裁判所は必ず単独親権としなければならないことがあり得ると考えられます。
○米山委員 これは、法律のたてつけの中では結構なことを言ってくださったというか、法律のたてつけとしては、それは裁判所は全てを決められるんだけれども、しかし、基本的にはかなり当事者間の意見に拘束されるんですよとおっしゃってくださったんだろうと思います。おっしゃったんだと思いますね。
ただ、さはさりながら、最初の冒頭の前提であったように、とはいえ、これはやはり裁判所が自由に決められるわけですよ。そうすると、裁判所は、実は、先ほどの親権の訴えがなされたとき、1は母単独親権、2は父単独親権、3は共同親権で、かつ監護者の定めなし、4は共同親権で母監護者、5は共同親権で父監護者という、これは五つの選択肢があるんですよね。この五つの選択肢の中から子の利益のために一切の事情を考慮して決定しなければならないというのがこの法のたてつけなわけです。
これ、裁判官というのはそんなスーパーマンですかと。いや、できるんだと言い張られたらそれはなかなか困りますけれども、でも、だって、裁判官というのは別にここにいる皆さんと余り変わらないわけですよ。人間はそもそもそんなに変わらないわけです。人間は大体、AとBの比較はできるけれども、五つ比較されると、えっ、決められないという人は非常に多いし、なかなか大変だと思うんですよ。
これは、本当に、裁判官はそんなのを託されて大丈夫なものですか。御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかや、監護者の定めをするかなどにつきましては、個別具体的な事情に即しまして、子の利益の観点から最善の判断をすべきものでありまして、本改正案もこのような考え方に沿ったものでございます。
御指摘の本改正案民法第八百十九条第七項では、裁判所が離婚後の親権者の定めをする場合に考慮すべき要素を明らかにしているところでございます。
この法案が成立した際には、裁判所において適切な審理が行われるよう対応されるものと承知をしており、法務省といたしましても、国会審議の中で明らかになった解釈等について裁判所と適切に共有することも含めまして、裁判所の取組に協力していきたいと考えております。こうした裁判所との連携を通じて、各裁判官が本改正案の趣旨に沿って適切な判断をすることが可能になると考えております。
○米山委員 随所にちょっといい答弁も入っているんですが、この国会審議で明らかになった解釈も裁判所にちゃんと共有しますよと言っていただいたので、しかも、最初の方の答弁で、結構、当事者の意思を尊重しますという御答弁もあったので、それもきっと共有していただけるんだと思います。
そういういい答弁をいただいた上でまた御質問させていただきたいんですけれども、さはさりながら、やはり今言ったとおり、五つも選択肢があって、しかも子の最善の利益のためにぼんと決めろとか言われたら、それは普通に考えて非常に判断はばらつくと思うんですよ。だって、逆に、裁判官の自由に決められるんだから。裁判官だって個性がありますから。
しかも、A、Bどっちかぐらいのやつだったら大体一定の判断に収束していくと思うんですけれども、五つも選択肢があったら、なかなかそんな、ばらつくのは、裁判官によってどこに落ちるか全然違いますみたいなことになって、結構、申し立てる方も困るし、裁判官も困るし、一体全体、日本の裁判はどうなっているんだということになりかねないんだと思うんですよ。
一方で、じゃ、それを防ぐために基準を作ろうとかといって、裁判所の中で基準を共有するということはあり得るんでしょうけれども、それって裁判所に法を作らせてしまっているじゃないですか。おかしいですよね。法はこちらで立法をするしかないわけなんです。
我々の主張としては、そこはもっとはっきりと、両親、さらに子供の意思を尊重するという条文を入れればいいじゃないですかと。だって、今ほど答弁もあったじゃないですか。そういう条文を入れて、いや、別に、双方が合意したらいいんですよ、両親の双方が合意したら共同親権をしたらいい。でも、何も、合意しなければ共同親権はしてはいけないと書く必要もないのかもしれないですけれども、ともかく、合意したときにできる、若しくは合意しなければできない、そういった当事者の意思を尊重するという規定を入れた方がよっぽど正直じゃないですか。
逆に、それをしないで、いつまでもばらばらとした状態にしておいたり、若しくは、裁判所に委ねるといいながら、結局実は最高裁が立法をしているなんて状態をつくるよりも、はるかにその方が自然だし、その方が皆納得いくんじゃないかと思うんですけれども、大臣の御所見を伺います。
○小泉国務大臣 離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするか、あるいは監護者の定めをするかなどについては、個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をすべきである、本改正案はこのような考え方に沿ったものでございます。
父母の協議が調わない理由には様々なものが考えられますので、合意がないということのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないというのは、かえって子の利益に反する結果となりかねないと判断しております。
そのため、本改正案では、裁判所は、父母の協議が調わない理由等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であるかなどの観点を含め、親子、父母の関係その他一切の事情を考慮して実質的、総合的に判断すべきものとしているところでございます。
一定の判断の蓄積というものがおのずとできていくんだろうと思います。それによって運用することが立法だという御議論もありますけれども、それは、現実に法律の運用を当てはめたときの様々な経験値として、大勢の方々が共有できるものが私はできてくるというふうに思うんですよね。それまでの間、なるべく努力をしっかりとしなきゃいけない、そういう点は確かにあろうと思いますけれども、その点を御理解いただきたいと思います。
○米山委員 あと数秒だけ。
では、そこで蓄積していく過程において、一番穏当なやり方は、やはりそれは当事者の意思を尊重することだと思うんですよ。それがむしろ、結局、子の利益、最善の利益といったって分からないじゃないですか、それであれば、基本的には、それはもう解釈論でいいですよ、今ほど言われた中に、当事者の意思というものは強く入っている、強く入れるべきだと私は思うんですが、最後に大臣の御所見を伺います。
○武部委員長 答弁は簡潔に。
○小泉国務大臣 それぞれの状況に適した選択をしていただく、その状況の中には当事者の意思は当然入ります。入っていると思います。要素としては入っていると思います。
○米山委員 ありがとうございました。
以上です。
○武部委員長 次に、斎藤アレックス君。
○斎藤(ア)委員 教育無償化を実現する会の斎藤アレックスでございます。
日本維新の会との統一会派を代表いたしまして、民法改正案について質疑をさせていただきます。
まず、裁判所にお伺いをしたいと思います。
先日の参考人質疑において、本法案に対する賛成の立場、そして反対する立場の双方から、家庭裁判所の業務が既に逼迫をしている、本法が成立をして運用が始まれば更に業務量が多くなるといった指摘がありました。
これは、我が会派からも懸念を繰り返し表明してきた点でもございますし、そもそも本改正案に関しては裁判所に丸投げしているというふうに批判をされるぐらい裁判所に判断を委ねる部分が多過ぎて、具体的な運用は現時点で分からないという点でも問題があるし、裁判所にとっても負担になるかと思います。参考人もそのような意見であったと思います。
実際に本法が施行されて運用が始まったときに、家裁がパンクして調停が進まない、審判が進まないということは当然防いでいかなければならないわけでございます。
もう既に、この点、本日質疑がありましたので、改めてお答えは求めませんけれども、しっかり体制整備を進めていただきたいと思いますので、その点、またよろしくお願いをいたします。
質問はこれからなんですけれども、同時に、体制整備においては、法の趣旨や、あるいは、国会、これからこの法務委員会でも採決に当たって附帯決議が付される可能性もあると思いますし、また、質疑の内容などもしっかりと裁判所の皆様にも見ていただいて、法の趣旨、これをしっかりと裁判官や調停委員など担当者の方々に周知をしていただく、そしてその法の趣旨にのっとって案件を処理をしていただくということがとても重要だと思っております。
本改正の立法趣旨である子の利益のために、父母間の婚姻関係の有無にかかわらず、父母には子を養育する義務があり、互いに尊重し協力しなければならないといった、こういった部分を特にしっかりと調停委員の方々、裁判官の方々には理解していただいて、尊重していただいて案件を処理をしていただきたいというふうに思っております。
逆に、それができないと、法律はできたけれども、この法の趣旨がしっかりと理解をされていないと、例えば、離婚後に同居していない方の親と子が会うのは子の負担になるからいけないとか、そういった考え方で裁判官や調停委員の方が審理を行ってしまえば、結局今と変わらない、単独親権の状況と同じになってしまうと思いますし、逆に本改正案でも、DVのおそれがあって共同した親権行使が困難な場合は共同親権としない、そういったたてつけになっているわけですけれども、そういったところの、DVに関する適切な理解というものがもし担当者になされていなければ、暴力等の被害を継続させてしまう危険性もあるわけでございますので。
こういったところも含めて、しっかりと裁判官の方々、調停委員の方々に本法案の趣旨、それをしっかりと周知をしていただいて、研修などもしていただいて、その上で運用を始めていただくということがとても重要だと思うんですけれども、その点、裁判所の御認識を伺いたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、改正法案が成立し施行された場合には、各家庭裁判所において、改正法の各規定の趣旨、内容を踏まえた適切な審理がされることが重要であると認識しております。
事務当局といたしましては、この法案が成立した場合には、全国規模の検討会や協議会の機会を設けるなどした上で、これらを通じて、各家庭裁判所に対し、改正法の趣旨、内容を的確に周知していくとともに、改正法の下で、法の趣旨にのっとった審理運営の在り方の検討を促すなどするほか、調停委員への研修を含め、各家庭裁判所において施行に向けた準備や検討が適切にされるよう、必要な情報提供やサポートを行うなどして、各家庭裁判所に対する支援をしっかりと行ってまいりたいと考えております。
○斎藤(ア)委員 大変重要な答弁だと思います。しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。
次に、法務省、法務大臣に伺ってまいりたいと思います。
ちょっと私の方から、まず少しお話をさせていただきますけれども、この民法改正案がなぜ今日の、今この国会で取り上げられているのか、どのような社会情勢が背景にあって、この法改正によってどのような社会を目指しているのかというところをまず少しお話をさせていただきたいと思っております。
皆様御承知のように、離婚はもう決して珍しいものではなくなっています。日本における毎年の婚姻数と離婚数を比べると、三組に一組が離婚をしているということに、単純計算しますと、そうなりますし、婚姻数のおよそ三割は再婚ということになっています。離婚する夫婦の割合が増加するのに応じて、毎年二十万人近い未成年の子供が親の離婚に直面をするということになっています。今の日本の出生数は約七十五万人ですから、これも、約二割から三割の子供が親の離婚を経験するということになります。
そして、単独親権制度の下で、離婚後の子供は、親権を持っていない一方の親との関係が希薄化してしまっていることが、面会交流の割合や養育費の支払い割合が少ないことからもうかがえるというふうに思います。
今の単独親権制度が、片親の喪失、そして貧困につながってしまっている、そういった問題意識を私としては持っております。
子の最善の利益のためには、精神的にも経済的にも、父母両方が子の養育に責任を持って離婚後も関わり、取り組んでいくことが重要だと私は思っておりまして、そのための共同親権を導入する今回の法改正だろうというふうに理解をしております。
いろいろ本日も議論、議論というか話がありましたけれども、当然ですけれども、夫婦が離婚するのは致し方ありません。愛が薄れてしまって、愛していない人と一緒に暮らすのは苦痛ですから、それは、離婚になるケースもありますし、ほかの人を好きになってしまって、愛してしまって、それで別れるという選択をすることもあると思います。これは、個人の選択ですから、他人がどうこう、国家がどうこう言うべき問題ではありませんので、そこはもちろん関係ない話なんです。
要は、これは、未成年の子供のために何がいいのかということを議論しているわけですけれども、そのためには、しっかりと親の責務を記載をして、子の養育に両親が、親が関わっていくことがとても重要だということで、そういった意味で、親の責務を規定しているこの法改正は大変重要な法改正だと私は考えております。
今から質問することは、法務大臣の所管でないかもしれないし、ちょっと、そういう趣旨ではないとおっしゃるかもしれませんけれども、私は、もう一つ、この法改正には意味があると思っておりまして、この日本でこれから男女共同参画社会を進めていく、つくっていくことが大変重要になっております。
子育てはこれまで母親の仕事、母親の責任という認識が大変強くて、今でもその状況はなかなか変わっていないという日本の社会の問題があると思っているんですけれども、そういったかつての観念はしっかりと捨てて、父母が共同で子育てをしていく、そういった、子の養育に父母が、父性も母性も、両方責任を持っていくんだということに、そういったふうに社会を変えていかなければならないと思いますし、それが今の日本の社会全体の方向性ではあると思うんですね。
そういう社会変化、まだ十分にもちろん変化はしていませんけれども、そういうふうに男女共同参画社会に変えていくんだという趣旨にも今回の法改正、共同養育というのは私は合致している法改正だと思って、重要な法改正だと思っているんですけれども、そういった部分を含めて、もし法務大臣から御所見をいただけるのであれば、よろしくお願いいたします。
○小泉国務大臣 法改正によって社会を一定の方向に持っていくという踏み込んだ考え方はしていないわけでございます。
ただ、子供の利益を守るために、子供の利益を確保するためにできるだけ、それぞれ事情が異なる御家庭、子供たちがいるので、それはそれぞれに一番ふさわしい、一番役に立つ制度というものを選んでもらえるような仕組みをつくろうと。ここまでが法制審で議論されてきた議論の、私は、凝縮するとエッセンスだろうというふうには思っています。
その中で、前へ進もうとすると、結局、逆により子供を苦しめることもあり得る、様々な不安というものも今表明されているわけでありますので、そういったものを解決しながら、種々ばらばらな状況にでもそれぞれできる限りフィットする、そういう民法の規律、これをきめ細かく作っていこう、裁判所の判断もしていただきながら作っていこう、そういうものであるというふうに私は捉えております。
○斎藤(ア)委員 承知しました。
法務省、法務大臣としてはこの法改正でそういった社会の変革を目指しているわけではないということだと思いますけれども、間違いなくこの法がしっかりと施行されて、運用をされて、そして基本的に共同親権ができる家庭では共同親権を取っていくということになれば、これは大きく社会が変わっていくことになると思いますので、このことは、この法改正、そういった意味で、私は、大変大きな変化を社会にもたらすので、だからこそ、国民に対する周知ですとか、この法改正でどう運用が変わるのかというところは当然ですけれども、この法改正が一体何を意味するのかというところはしっかりと周知をしていくということが大変重要だと思っています。
次の質問に移らせていただきたいと思うんですけれども、これまでは、親が離婚すればどちらかの親が子の親権を持つ単独親権だったわけですから、社会の考え方もそれに基づいて今でき上がっている状況でございます。離婚すればどちらか一方に親権はしなければならないし、大体の場合母親になるというのが社会一般でございますので、それに基づいて皆様の考え方も今決まっていっているんだと思うので、これを共同親権にできますよ、共同親権にした方がいいですよということになれば、大きな変化になると思うので、国民に対する周知とか説明というのは、これは大変な作業、業務になると思うんですね。
特に、離婚は九割が協議離婚でございますから、たとえこの法律にのっとってしっかりと裁判所が運用していただいたとしても、協議離婚をする九割の方々がこの法改正の趣旨を理解できずにというか、この法改正の趣旨である共同で養育するというところが国民になかなか理解されないで結局単独でどちらかが養育するような状態になってしまえば、この法の趣旨は実現できないわけですから、国民にこの法の趣旨をいかに理解をしていただくかというところがとても重要になると思いますので。
まず、ちょっとざっくりした質問ですけれども、国民に対する周知、広報、こういったものはほかの省庁との連携も重要になると思いますけれども、法務省として、法務大臣としてどのように取り組んでいかれるのか、お伺いをしたいと思います。
○小泉国務大臣 制度というのは常にそういうものだとは思いますけれども、制度とそれに対する国民の理解、この二つで成り立っているんですね。
特に、今回のこの制度は家族法です。家族が関わる法改正でありますので、国民の理解、そのための周知、また、司法への、共通認識を持ってもらうこと、周知、こういったことは非常に重要だと思います。この法案が成立させていただいたその瞬間から、今度は、実施に向けて周知、あるいは国民、司法への周知、関係省庁との連携、全力を尽くしたいと思います。
○斎藤(ア)委員 特に、実際にどのような運用になるのかという部分も含めて、積み残しの課題がたくさんある状態に法律が成立してもなってしまうということが懸念されますので、この委員会での質疑をしっかりと尽くしていただくと同時に、この法律が仮に成立した後も、その点も含めてしっかりとコミュニケーションを我々も取らせていただきたいと思いますので、是非よろしくお願いをいたします。
この周知を行っていく上で、やはり、共同親権に対するイメージというか、そういったものが悪くなってしまったり、共同親権になったら大変だというような認識が広がってしまうと、これもまた、この法律の趣旨というのは実現できないということになってしまうと思います。
本法改正が施行されて運用が始まる、あるいは施行された後に運用がうまくできなくて、そういったことが原因で共同親権が広まらないとか、結局単独親権ばかり選択をされてしまうということではいけないということなんですけれども、そういったことを防ぐためには、しっかりと運用を円滑に行っていくための体制整備は大変重要になってくると思っております。様々な取組があると思うんです。
先ほどちょっとざっくりお伺いしたんですけれども、具体的に何か、こういった取組を行って共同親権の新たな制度が円滑に運営されるように、こういった取組をしていかなければならない、こういったことが有用だというところで、何か現時点で法務省の方で考えてお答えできることがあれば、教えていただければと思います。
○小泉国務大臣 改正法を円滑に施行し、子の利益を確保するためには、こうした法改正に加えて、一人親家庭支援、共同養育支援、裁判手続の利便性向上といった支援策、また、体制整備を図る、そのほか、DV及び児童虐待等の防止、安全、安心を確保する、こういったことが重要になると思います。
さらに、改正法が成立した暁には、その趣旨を踏まえた円滑な施策に必要な環境整備を確実かつ速やかに行うべく、関係省庁等との連絡、協力体制をつくり上げる、構築する、これも重要な課題かと思います。
○斎藤(ア)委員 また、今おっしゃっていただいたこと、大変重要かと思うんですけれども、先日の参考人質疑の中でも、共同養育計画を作ることが有効ではないか、あるいは、講座を、ガイダンスを受講することが有効ではないかというお話がありました。これは私も強くそう思いますので、その点、何点か質問をさせていただきたいと思います。
本日の質疑でもありましたけれども、離婚した後に、父母の意見が調わずに対立をしてしまうと、子の利益を害する事態が生まれかねない、生じかねないというのは、それはそのとおりだと思いますので、だからこそ、事前に計画を定めておいて、そういった意見の対立があったときの解決手段というか、解決者を、誰が決定権を持っているのかも含めて、決めておくということがとても有効だと思っております。
水曜日の参考人質疑で御紹介いただいたアメリカの例では、居住地をどうするかとか、同居していない一方の親との交流はどうやってやるかとか、学校の長期休暇中についてはどちらがどの期間その子供を預かるというか一緒に過ごすのかといった、そういったところも含めて、また、日常の監護に関しても様々取決めをしておいて、意見が調わない場合には、決定権者はこの件に関してはこちらですよということを決めておいて、スムーズに共同養育が行えるようにしていく共同計画を、アメリカでは今義務であるようなお話を先日伺いましたけれども、こういった計画を作ることは私は有効だというふうに思っております。
今回の法律にはそういったことは盛り込まれていませんけれども、計画を作ることの有用性について、改めて、法務大臣におかれましてはどう思われているか、お答えをいただきたいと思います。
○小泉国務大臣 父母の離婚時に養育費や親子交流を含めた子の養育に関する事項を取り決めることは、子の利益にとって望ましく、このような養育計画の作成促進は重要な課題であると思います。
また、父母が離婚する際、父母が養育費や親子交流を含めて子の養育に関する適切な知識を持った上で協議することも、子の利益を確保する観点から重要であると認識しております。
そのため、法務省としては、関係府省庁等と連携して、委員御指摘の養育計画の作成や、ガイダンス、講座の実施、受講を促進するための方策、これを検討していきたいと考えております。
○斎藤(ア)委員 こちらも大変重要な御答弁かと思います。計画を作ったりとかガイダンスを受けていただくことが望ましいというお考えかと思いますので、望ましいのであれば、それをどう促していくのかというのが大変重要になってくるというふうに思います。
先日の参考人質疑では、参考人の方から、離婚届にチェックボックスを設けて、計画を作りましたかとか講座を受けましたかという意味だと思いますけれども、そういったチェックボックスを設けて促していくというような案もお示しをいただいたわけですけれども、どのような方法でこのような望ましいとされている計画の策定や講座の受講を促していくのか、法務省の方で今お考えがあれば、伺いたいというふうに思います。
○小泉国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、父母の離婚時に養育費、親子交流を含めた子の養育に関する事項を取り決めること、これは子の利益にとって望ましく、養育計画の作成の促進は重要な課題です。
そこで、法務省は、養育費や親子交流も含めて、子の養育について離婚時に取り決めておくべき事項を定めた養育計画の作成に関する調査研究の実施、これを検討しております。この取組を通じて養育計画の作成を促進し、進めていきたいというふうに思います。
様々な御意見があろうかと思います。そういった皆さんの御意見も踏まえて、適切な養育計画の在り方について具体的に検討してまいりたいと思います。
○斎藤(ア)委員 今ちょっと触れられたかもしれないんですけれども、改めてお伺いをしたいんですけれども、例えば、離婚後の養育計画に関しては、このようなことを取り決めることが望ましいとか、取り決めるときに考えるべきことはこういうことですよみたいなガイダンス、指針を示した資料など、これをしっかりと、離婚を検討しているというか離婚に直面する御夫婦に見ていただけるような状況をつくることが大変重要だと思っているんですね。
実際に離婚届などを配付するのは地方自治体になると思いますけれども、法務省が主導していくべき点だと思いますので、まず、このモデルケース、様式、あるいは共同養育計画を作る上での指針などをまとめたそういった資料、様式、フォームなど、こういったものを作っていく必要があると思うんですけれども、その点、現時点での法務省の御認識、そういう認識を持っていただいているかどうか、お答えをいただきたいというふうに思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
法務省におきましては、令和六年度に、養育費や親子交流も含めまして、子の養育について離婚時に取り決めておくべき事項を定めた養育計画の作成に関する調査研究を実施予定にしております。法学者や心理学者等の協力を得まして、我が国に最適な養育計画の在り方を検討して、自治体や民間団体と連携して効果検証することを想定しておるところでございます。
○斎藤(ア)委員 ちょっと関連して、もしお答えいただけるなら伺いたいんですけれども、モデルケースなり様式なりを作ったとしても、離婚をする方々、離婚を検討している方々の目に触れない状態であれば、結局離婚届だけで、今の、この法改正が実現しても、離婚届だけで離婚ができてしまうわけでございますから、なかなか計画の策定が広がらないとか、それで結局、共同親権にしたらもめてしまって、共同親権のイメージが悪くなって、共同親権は嫌だねみたいな感じになってしまったら全て元も子もなくなってしまいますので、今やられている調査研究は大変重要だと思いますけれども、しっかりと、その成果というか、共同養育計画とかあるいはそういったところは、今お話しいただいたところは、国民に目に見える、すごい分かりやすい話でいえば、離婚届と一緒にくっついてくるみたいな、そのガイダンスの資料が、そういったことも重要だと思いますし、今はダウンロードされる方も大変多いと思いますので、そのダウンロードのボタンのところにはその部分もしっかりと書いてあって、目に入るようにしておくということも重要だと思いますので、是非そういったところも御検討いただければと思うんですけれども、法務大臣、御検討いただけますでしょうか。
○小泉国務大臣 せっかくそういういいコースを作り、形を作っても、フォーマットがなければ伝わらない、伝わって初めて活用してもらえる、そこを十分注意したいと思います。
○斎藤(ア)委員 よろしくお願いをいたします。
関連してもう一つ、子の養育に関するガイダンスに関してお伺いをしたいというふうに思います。
こちらも先日の参考人の方から御紹介をいただきましたけれども、離婚後の共同での親権の行使という新しい経験をしていくわけになりますから、しっかりとガイダンスを行って、特に、離婚のせいで子供が傷つく事態というのはよく起きると思いますので、そういった事態を防ぐとともに、円滑に共同養育を離婚後もできるようなガイダンス、講座などを受講していただいて知識を身につけていただくということはとても重要だと私も考えております。
特に、これはアメリカの例で御紹介いただいたのは、実際のロールプレーなども、実際の事例を提供しながら、こういったときにはこういったことを言うと子供は傷ついてしまうよとか、こういったふうにしたらいいよという、本当に、実務に即したというのは変ですけれども、子育ての実務、実態に即したそういったプログラムを提供しているような御紹介もありましたので、それは大変いいな、有効だなというふうに思いました。
この部分についても、今ガイダンスの内容を実証研究をされて、これから精緻化をしていくというふうなことを伺っておりますけれども、今行われているガイダンスの内容と、この今研究をされている新しいガイダンスの内容、こういったところを見直していくとか、こういったふうに力を入れていくというところが、現時点で何かお示しをいただけるものがあれば、よろしくお願いをいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
離婚する際に、父母が子の養育に関するガイダンス、講座を受講することなどを通じて、子の養育に関する適切な知識を得た上で協議していただくことは、子の利益を確保する観点から重要な課題であると認識をしております。
法務省におきましては、法律や心理学の専門家の協力を得まして、離婚時に知ってもらいたい情報をまとめました離婚後養育講座の実施に必要な動画等のコンテンツを作成いたしまして、複数の地方自治体と協力をして、離婚当事者に実際に視聴していただき、その効果を検証するなど、適切な講座の在り方を探るための実証的な調査研究を実施しているところでございます。
引き続き、関係府省庁や地方自治体等と連携して取り組むとともに、離婚後養育講座の受講を促進するための方策について検討してまいりたいと考えております。
○斎藤(ア)委員 是非、いいプログラムを作っていただきたいと思います。
アメリカの方では、研究機関で作られたプログラムを専門家が外注で受けて、それで講座を実施するということを行っているということも御紹介をいただきました。
実際のプログラムの提供のところも含めて、言い方は悪いですけれども、よく公の何か免許講習みたいなところで受ける、ビデオをみんなぼおっと見て、それで受けたみたいな話では決してないと思いますので、しっかりと、ロールプレーも含めて、また実際に必要な知識を身につけていただけるような、本当に離婚する方が受けた方がいいと思っていただけるようないい講座内容にしていただきたいと思いますので、その点も、是非、法務省を挙げて取り組んでいただきたいというふうに考えております。
今回の法案質疑において、大変私も意見の対立が起きてしまって懸念を感じているところであって、ちょっと話の、この法案改正の趣旨がずれてしまっているんじゃないかなというふうなことも、本日も感じました。これは離婚がいいのか悪いのかを話している法案では当然ないわけですし、それに加えて、親の関係が悪い、親の仲が悪いからどうしようという法案でもないわけでございます。
離婚していようがいまいが、子供にとって一番いいのは何なのかということを考えたときに、精神的にも経済的にも、やはり父母が両方とも養育に関わるというのは、特殊な事例を除いて好ましいということは私は間違いないと思いますので、そういった趣旨の法改正だと思いますので、その法改正の中身をどうよくしていくのかということをこれからも議論していきたいというふうに考えているんです。
一方で、確かに不安の声が多いのも事実ですし、賛成派、反対派から、両方からこの中身では駄目だというお話もあるし、また、これは私も思いますけれども、余りにも裁判所に委ねられている部分が多くて、実際の運用が始まってみないとこの法改正がよかったのか悪かったのか分からないとか、これから、運用だけではなくて、法務省の今お話しした国民への周知とか理解を求める活動なども経て、本当に理解をいただいた上で運用していかないとうまくいかないと思います。
そういったところも含めて、法改正の審議、今回の審議の中でこういったことを言うのはおかしいかもしれないですけれども、今回、法改正をして、運用を始めて、それでしっかりともう一度再検討をして、運用の改善だけで無理な場合であったら、法改正の議論も速やかに行っていく必要があるのではないかと思っているんですけれども、実際の運用の中で問題が生じた際の更なる運用の改善、法改正の必要性について、是非法務大臣にも御検討いただければと思うんですけれども、御答弁いただけますでしょうか。
○小泉国務大臣 法務省としましては、本改正案が成立した際には、施行までの間にその趣旨が正しく理解されるよう適切かつ十分な周知、広報に努めるとともに、改正法を円滑に施行し、子供の利益を確保するための環境整備についても関係府省庁としっかり連携して取り組んでまいります。
お尋ねの点は、まず改正法の施行状況、これを注視したいと思います。ただ、大きな視野で申し上げれば、粘り強く関係者が知恵を絞り続ける、その必要はあると思います。
○斎藤(ア)委員 ありがとうございます。
最後にさせていただきますけれども、この法案の質疑、法案の審議が、しっかりと十分な時間が取られて議論をしていくと同時に、やはり、冷静な環境下で、子の利益のためにどういったところが重要なのかということを是非今後とも考えて議論をさせていただきたいというふうに思っております。
そのためには、やはり、こういったケースではこういった状況になる、こういった判断になるというQアンドAのようなものが出てくるといった情報提供がないと、なかなか判断がつかない、親御さんはもちろんですけれども、我々も難しい部分があると思いますので、来週も質疑は続いていくことになりますけれども、是非とも分かりやすい答弁に努めていただきますようお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○武部委員長 次に、阿部弘樹君。
○阿部(弘)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部弘樹でございます。質問させていただきます。
この法務委員会の質疑を拝聴しておりますと、離婚の大多数は協議離婚、性格の不一致などの離婚でございます。一部には裁判による調停などもあるわけでございます。その中で、特にDV、配偶者暴力による問題がある事案もあるということを様々な議員の方々が指摘いたしております。
私は、配偶者暴力防止法、DV防止法というのが改正を重ねて現在あるわけでございますが、それの概要について、所管省庁、御説明いただけますか。
○小八木政府参考人 お答え申し上げます。
配偶者暴力防止法におきまして、今般改正されましたが、重篤な精神被害を受けた場合にも接近禁止命令等の対象を拡大することを始めとする保護命令制度の拡充や、被害の発生から生活再建に至るまで切れ目ない支援を行うための多機関連携、こういったことを強化する仕組みを設けるなどの改正を行ったところでございまして、今月から施行したところでございます。
また、被害者の心理的な安定の観点におきまして、各地域におきまして、被害者の方々が地域での生活を送りながら身近な場所で相談等の援助を受けられるよう、配偶者暴力相談支援センターにおきましてカウンセリングを行ったり、精神保健福祉センター等による支援を活用したりするなど、関係機関が連携して対応していくこと、こういったことをできるようにしておるところでございます。
○阿部(弘)委員 通告していなかったんですが、このDV防止法、配偶者暴力防止法の中では、保護命令の申立て、それを地方裁判所に申し立てれば、当然、保護命令というものがあるわけですが、保護命令の説明は法務省じゃ無理でしょうね。いいです、いいです。
保護命令を読みますと、被害者への接近禁止命令や、あるいは、被害者への電話等禁止命令、子供への接近禁止命令、子供への電話等禁止命令、親族等への接近禁止命令、退去命令と。今般、法改正では、この期間が原則二か月から一年あるいは六か月というふうに変わったというところですが、その点は、内閣府、いかがでございますか。
○小八木政府参考人 お答え申し上げます。
保護命令につきましては、今委員のおっしゃったとおりの改正を行ったところでございます。
○阿部(弘)委員 保護命令違反の罰則も変わりましたね。そこのところの説明をお願いします。
○小八木政府参考人 お答え申し上げます。
保護命令違反に対する罰則でございますけれども、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金というふうになってございます。
○阿部(弘)委員 このように配偶者暴力防止法も法改正が行われまして、四月一日から充実してきたというところでございます。
ですから、配偶者が離婚後もこの法律は使えるんですか。
○小八木政府参考人 お答え申し上げます。
離婚前から継続している場合は使えるということでございます。
○阿部(弘)委員 婚姻関係にあって、そしてまた離婚後においてもこの法律が使えると。
そういう配偶者暴力あるいは子供への暴力などは、警察に相談することもできるんでしょうか。警察庁、お願いします。
○和田政府参考人 警察におきましては、配偶者からの暴力について相談等を受けた場合、相談者のお気持ちに寄り添いつつ、事件化すべき事案につきましては必要な捜査を行うとともに、被害者の安全確保を最優先とした措置を講じているところです。
また、警察以外の関係機関による対応がふさわしいと考えられる場合には、相談者に対し、配偶者暴力相談支援センター等の関係機関の業務などについて御説明し、これらの機関に円滑に引き継ぐこととしております。
いずれにいたしましても、DV事案につきましては、警察が認知した段階では危険性やその切迫性を正確に把握することが困難である一方、事態が急展開して重大事件に発展するおそれが高いことから、被害者の安全確保を最優先に、関係機関と連携しつつ、組織的な対応を図っていくこととしております。
○阿部(弘)委員 ありがとうございます。
いつもこの法務委員会で感ずることは、こういうDV防止法あるいは配偶者暴力相談支援センターの仕組みがあるんですが、家庭裁判所とあるいは法務省と連携がなかなかできていないなというような気がするわけでございます。後で聞きますけれども。
では、配偶者暴力相談センターが相談を受けた場合には、厚生労働大臣が定める基準を満たす者が民間シェルターに避難することができるわけですが、そういった点は厚労省はいかがですか。
○辺見政府参考人 DV被害者に対しての支援といたしましては、地方公共団体に設置されている女性相談支援センター及び女性相談員において、DV被害者等からの相談に応じるとともに、相談内容等に応じて、心理的支援を含めた一時保護などの必要な支援を行っているところでございます。
○阿部(弘)委員 今度の法改正で守秘義務が課されましたよね。そのことも言ってほしかったんですけれども。
でも、アメリカは、ここのところに精神科医療が加わってくるわけなんですよ。何度もいろいろな委員が指摘してあるように、DVやあるいは離婚に伴って精神的なトラウマを引き起こす。精神的なトラウマの結果、子供が不安定になったり、当事者が抑うつ状態になったり、あるいは精神的に不安定になる。アメリカでは、こういう離婚ケースあるいはDVケースに心理カウンセラーや精神科医の介入があるわけですが、日本はどうなっていますか。
○辺見政府参考人 お答え申し上げます。
離婚等により心のケアが必要な方に対しては、精神保健福祉センター等の地域における相談機関において専門的な相談が可能であるとともに、精神的な疾患が認められる場合は、精神科の医療機関等において必要な治療が行われているものと承知をしております。
一方で、離婚した事実をもって、そういった相談の必要性、治療の必要性ということにかかわらず支援をするといった、家族に対してのケアといった取組は行われていないところでございます。
○阿部(弘)委員 では、法務省にお聞きします。
養育講座、あの視点では、子供がこういうふうになるから家族支援プログラムを行うということですが、そこに精神科的な視点、あるいは、必要に応じて精神科療法や、眠れないなど、抑うつ状態には薬が有効なんですが、そういうことの支援をアドバイスすることは想定していないですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
一昨日の参考人質疑におきましては、関西学院大学の山口亮子教授から、アメリカにおける親ガイダンスといたしまして、心理学の専門家や精神保健医によるプログラムの紹介があったものと承知をしております。
法務省におきましては、法律や心理学の専門家の協力を得まして、離婚後養育講座の実施に必要な動画等のコンテンツを作成し、複数の地方自治体と協力して、離婚当事者に実際に視聴していただいた上でその効果を検証するなど、適切な講座の在り方を探るための実証的な調査研究を実施しているところでございます。
委員御指摘の離婚後の子の養育をする父母の支援策につきましては、引き続き、関係府省庁や地方自治体等と連携して取り組んでまいりたいと考えております。
○阿部(弘)委員 大変いい答弁だと思います。関係省庁と連携して、アメリカでもやっている仕組みですから、日本でも是非とも連携をやっていただきたいと思いますよ。家族支援プログラム、そういうものが必要になってくる。
やはり、人生の中で、愛する人を失う、あるいは離婚をするなどというものはトラウマとしては非常に大きなものでございますから、それは、個人の能力、個人の力ではなかなか回復できない、病的な状態になることがありますので、是非とも、そういうときには科学の力をかりながら、省庁と連携しながら、精神医療あるいは心理学の力をかりていくというのは一つの方策だと思いますので、アメリカはやっていますよ、是非ともそういう連携をやっていただきたいと思います。
では、次の質問に移らせていただきます。
家族の在り方、養育の多様化についてなんですが、フランスは、一九九三年、合計特殊出生率が一・六六と非常に低下しまして、婚姻の、夫婦の在り方、家族の在り方について様々な取組を行いました。その結果、二〇〇五年には、未婚のカップルの子供が、生まれてくる子供の四八・三%、半分近くが、僕は法律の専門家じゃないですけれども、結婚をしないカップルの子供だと。
でも、最近は、やがてそれが低下してきたんですね、直近では三八・六%まで下がってきた。その理由というのは、大きくは経済問題。将来への不安と、子供を育てるためにはお金が必要になってきますから、だから、そのことに不安があって、アンケートではですよ、婚外、未婚のカップルの率は少し下がってきていますが、それでも三八・六%と非常に高い。
今度の共同親権の民法の改正で、事実婚で、認知した一人親の男性の親権というものはどのようになっているでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
婚姻関係にない父母間の子につきましては、父の認知前は法律上の親子関係が母子間にのみ存在することから、その親権を行使することができるのは母のみであります。
現行民法の八百十九条第四項におきましては、父の認知により父子間に法律上の親子関係が生じた場合には、父母間の協議で父を親権者と定めることができ、この協議が調わないときは家庭裁判所が親権者を定めることとされております。
本改正案におきましては、婚姻関係にない父母間の子につきましては、現行法と同様、母が親権者でありますが、父が認知した場合には、父母の協議により父母の双方又は父を親権者と定めることができることとし、この協議が調わないときは家庭裁判所が親権者を定めることとしております。
○阿部(弘)委員 そのことを事前のレクで知りまして、非常に画期的だなと思ったわけでございます。
何が画期的かというと、要するに、未婚のカップルの間に生まれたお子さんについても、身上監護や財産管理等の行使が、女性は妊娠、分娩を行いますから親権を持つということでありますけれども、男性については、認知ということを行うことにより、母親とともに親権を取れるようになるということでよろしいんでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、本改正案におきましては、まず、婚姻関係のない父母の子については母が親権者でございますが、父が認知した場合には、父母の協議によりまして父母の双方又は父を親権者と定めることができることとしております。
○阿部(弘)委員 ですから、この法改正が成立した暁には、要するに、フランスのような家族形態についても、夫婦間の相続については、財産分与についてはいろいろ、未婚ですから、フランスとは違うわけですけれども、日本も、そういう未婚のカップルというものが子育てがしやすくなるということも考えられると思っております。
実際に、日本の婚姻率あるいは婚姻数というのは、厚労省の統計部がやってありますが、婚姻率低下、離婚率がありますね。そして、あわせて、離婚によって生じる子供たちの数というものも、これは統計がなければ僕が言いますので、婚姻、離婚についての統計をお願いします。
○青山政府参考人 お答え申し上げます。
まず、婚姻の数でございます。婚姻率というよりも、婚姻数で申し上げますと、婚姻の数につきましては、令和四年人口動態統計によりますと、令和四年は三年ぶりに増加しましたけれども、ここ数年の傾向としては減少傾向となっております。
また、離婚率、具体的には、結婚に対する離婚の割合のことかと存じますが、そういうことでありますれば、令和四年度離婚に関する統計によりますと、今言いました、結婚に対する離婚の割合は男女共〇・三二となっておりまして、すなわち、およそ結婚した三組に一組が離婚することとなります。
あと、恐縮ですが、離婚による子供のデータというのは持ち合わせておりませんし、ちょっとそういうデータは思いつきませんので、恐縮でございます。
○阿部(弘)委員 厚生省の人口動態調査に基づいて作成された資料では、親が離婚した未成年の数は、二〇二二年で十六万千九百二人ということで、非常に高い数字であるということです。
何が言いたいかといいますと、少子高齢化もありますが、若い方々が経済的な理由とか様々な理由で結婚しない、できない、そういう状況が統計学的には表れてくる。また、結婚されても三分の一の方々が離婚する。
しかし、私は精神科の医者ですから、若い方々、十代から二十代、それ以上の方々も、やはり人を好きになることというのは、そして、愛し合えば、男女であれば子供が生まれるという行為は変わらないというふうに考えておるわけでございます。先ほどの未婚カップルについても、親権が与えられれば、生まれてくる子供にとっては非常に利益があるんじゃないかということでございます。ちょっと、大臣は後で質問しますけれども。
じゃ、次に質問しますよ。
私は、この法務委員会で、赤ちゃんポストやあるいは内密出産のことについてお聞きしたことがございます。赤ちゃんポストあるいは内密出産についての親権は、どなたがどのように行使されますか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
いわゆる赤ちゃんポストに預けられた子につきましては、その後に父母が判明しない限り、戸籍の子の父欄及び母欄は空欄となりまして、親権者はいないことになります。
また、いわゆる内密出産により出生した子は、子の父母を把握することができないため、市区町村長が職権で子の戸籍記載をする場合には、やはり子の父欄及び母欄は空欄となり、親権者はいないことになります。
○阿部(弘)委員 この法務委員会でもお話ししましたが、まずドイツで内密出産が非常に増えた、そしてフランスでも同様に増えていったわけでございます。その結果、行政は、その内密出産について、あるいは赤ちゃんポストについて、後追いの形で仕組みをつくっていった。その歴史的な経緯は、以前にお話ししたんですが、十八世紀、十九世紀初頭ぐらいまでですかね、農村地帯では、やはり子供を育てられないと、教会の前にポストに相当するものがあって、教会に育ててもらう、公で子育てをしてもらうという仕組みがあるから、そういうものがスムーズに移行していったということでございます。
次の質問に移行していきますが、日本も合計特殊出生率は令和四年で一・二六でございますよ。もうはるかにフランスのショックのときよりも低い。このままでは子供の数がどんどん少なくなっていきまして、そして人口はもちろん減っていくわけです。今般、子供、子育てに様々な政策を行われるということで、今審議入りしておりますが、どういう政策をなさいますか。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
昨年末に政府として取りまとめましたこども未来戦略におきまして、若い世代の所得を増やす、社会全体の構造や意識を変える、それから、全ての子供、子育て世帯を切れ目なくライフステージ全体を俯瞰して支援する、この三つの理念を掲げまして、三・六兆に及ぶ前例のない規模で、スピード感を持って子育て支援を抜本的に強化するということといたしました。
それを受けまして、今、子ども・子育て支援法案、ちょうど今国会でも審議していただいているところでございますけれども、具体的には、児童手当の抜本的拡充でありますとか、あるいは出産・子育て応援交付金の制度化、さらには育児休業給付の充実など、長年指摘を受けながらも実現することができなかった施策を盛り込んでおるというところでございます。
○阿部(弘)委員 ちょうど一九九三年のフランスの特殊出生率の一・六六ショックのときと同じ、後追いの政策をやっているように私は見えてくるわけでございます。この場は共同親権の話ですから、話が脱線しましたけれども、ですが、婚外子も含めて、未婚のカップルのことも含めて、そういう社会に未来がなっていくのではないかということを非常に私も想像しながらこの場に立たせていただいております。
今般の法改正の意義について、大臣のお言葉、お言葉と言ったらいかぬですね、お願いします。
○小泉国務大臣 これは何度も同じ話の繰り返しになるかもしれませんけれども、家族法制の中で、今回は、子供の利益、これを確保するための法改正というふうに我々は位置づけております。
父母が離婚することが多くなりました。今までは、親子関係もありますが、夫婦関係が破綻するとそのまま、親権者一人でありますから、単独親権しかありませんから、父母のどちらかと子供の縁は切れてしまう。そこを何とかできないかという発想もあります。
しかし、置かれた状況は個々それぞれ別々でありますし、また、何が幸せかということもそれぞれの考え方でありますから、これが正しい、これが原則だという決めつけはできないわけでありまして、柔軟に、裁判所の知恵もかりながら、本人の意思も確認しながら、また、父母そのものが子供に対する責任を、責務を負う、お互いに尊厳を認め合う、子供についても子供の尊厳を認める、こういった基本的な価値で包み込みながら、柔軟性を持った、個々の子供にとって一番幸せな道が見つかるような、そういう仕組みをつくろうというふうに今考えているところでございます。
○阿部(弘)委員 是非ともよろしくお願いしたいと思います。
もう一つ、あと五分ほどありますので、民法七百七十条の規定、離婚の事由について、「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」という事由を削除いたします。そのことについて御説明いただけますでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
現行民法第七百七十条第一項各号は夫婦の一方が離婚の訴えを提起することができる離婚原因を定めておるものでございますが、同項第四号は、配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないことを挙げております。
この第四号の規定は、実務上も用いられておらず、また、精神的な障害を有する方に対する差別的な規定であるとの指摘もされていたこと等を踏まえ、これを削除することとしたものであります。
○阿部(弘)委員 これは、昨年の国連の障害者権利委員会で、日本が差別的だという指摘を受けたからじゃないんですか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の総括所見、国連の障害者権利委員会による日本の第一回政府報告に関する総括所見というのが二〇二二年九月に出されております。これは、現行民法第七百七十条第一項第四号が障害者に対する差別的な規定であるとして、これを削除すべきであるとの勧告がされたものでございますが、法務省の法制審議会におきましても、この総括所見以前にこの議論がございまして、今回削除することにしたものでございます。
○阿部(弘)委員 この委員会で指摘されたのは、日本の成年後見制度が差別的であるということと精神障害者が離婚の事由になるということが、私が知り得る大きなものだと思っております。
実際は、離婚の原因として精神病が原因となることはないということですが、五号の事由はどういうふうに記載してありますか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
七百七十条第一項五号の規定でよろしいでしょうか。婚姻を継続し難い重大な事由があるときに離婚原因を認めるものでございます。
○阿部(弘)委員 病気を理由に夫婦が離婚する、その事由になってはいけないと思いますが、さはさりとて、長年回復の見込みがない配偶者について離婚を選択するというのは、私は、病院の中ではたまに見かけられます。その大きな理由は、生活保護を取得するために、世帯分離を行うことで経済的な負担が配偶者に及ばなくなるということが理由であることもあります。
そういった点は、障害保健福祉部長さん、厚労省、そういう事案はありますか。
○辺見政府参考人 個別の世帯における離婚の状況や生活保護の取得状況について、詳細に把握しているデータを持ち合わせておりませんので、ちょっとお答えは控えさせていただきます。
○阿部(弘)委員 事前にいろいろお話はしておったんですが、うまく通じていないみたいですね。
ですが、いろいろな事情がいろいろなところであるというのは事実だと思いますので、また今後ともよりよい運営が裁判所でなされますよう祈念申し上げます。決して病気は離婚の理由とはなりませんが、夫婦間で様々な考え方があるのは事実であるというふうに思っております。
以上で終わります。ありがとうございました。
○武部委員長 次に、本村伸子君。
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
子供の安全、人権、最善の利益についてお伺いをしたいと思います。
試行的面会交流は、既に家庭裁判所の現場では行われておりますけれども、試行前の子供の意向、心情に関しては、どのような調査、配慮がなされているか、まず最高裁、お示しをいただきたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
試行的面会交流を実施するに際しましては、調停委員会として、子の安全、安心を最優先に、子の利益に反する事情がないか、子の利益の観点から試行的な面会交流が相当であると言えるかなどを検討いたします。
これらの検討のためには、調停期日における当事者双方からの事情聴取のほか、調停委員会の判断により、家庭裁判所調査官が父母双方の意向調査を行ったり、子の意向や心情の調査を行ったりしています。
こうした事情聴取等の過程において、例えば、同居親の心身の不安や、別居親に対する子の拒否的な心情などを把握した場合には、そうした状況や事情の把握に努めるとともに、当事者双方と子のためにそれぞれが配慮すべきことなどを検討して、必要な働きかけを行って、同居親の不安の低減等ができるかどうかを見極めます。その結果、試行的な面会交流を実施するための環境が備わったと言える場合に、試行的面会交流を実施しているというところでございます。
○本村委員 実際にやられている方のお声を聞いてみましたところ、子供さんが強く面会を拒否しているということを伝えても、実際にはやるということになり、試行的な面接の場で、三十分間あったそうですけれども、ずっと沈黙の時間が続いたと。子供さんは、ずっと拒否の姿勢を示したということだったそうです。その後なんですけれども、子供さんが通う、小学生が通う通所のところで、ふだんない乱暴な行動が最近急に増えているけれども、何かありましたかというふうに言われたそうです。子供にとっては、すごくストレスだったのだというふうに思います。
乳幼児から思春期の精神医学の学会ですけれども、一般社団法人日本乳幼児精神保健学会の二〇二二年の六月二十五日の声明なんですけれども、そこでは、今日ちょっとお配りをできていないんですけれども大臣には渡してほしいということで法務省にお願いしたんですけれども、臨床現場では、家庭裁判所で面会交流を決められた子供たちが、面会交流を嫌悪し、面会をめぐる別居親との紛争にさらされ、あるいは過去のトラウマからの回復が進まず、全身で苦痛を訴え不適応を起こして、健康な発達を害されている事例が増えているというふうに書かれておりますけれども、この点は認識をされておりますでしょうか、最高裁。
○馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
今委員が読まれた文献については承知しておりませんが、先ほど申し上げたとおり、双方の親の子に配慮する姿勢や、子の意向、心情等を慎重に考慮した結果、父母の紛争下に置かれる子の負担や、別居親と子との関係がかえって悪化する可能性等に照らして、試行的な面会交流を実施するための環境が十分に備わっているとは言えないような場合には、その実施を見送る結果となることがあります。
一方で、安全、安心の点を含め子の利益に反する事情がないか、子の利益の観点から試行的な面会交流の実施が相当と言えるか等を検討した上で、試行的な面会交流を実施するための環境が備わったと言える場合には実施することができるときがあると思われます。
このような考え方で実務を運用しているというところでございます。
○本村委員 健康な発達を害されている事例が増えているということを、学会のそうした見解を重く受け止めなければいけないというふうに思います。
先ほど、試行的な面会交流の後に、ふだんない乱暴な行動が最近急に増えているという指摘があったというふうなお話を伺ったわけですけれども、この学会の声明の中には、面会交流前後の情緒、行動、身体症状ということで、いろいろあって、かんしゃくですとか、恐怖、怒り、乖離ですとか、乱暴、お漏らしですとか、睡眠過少過多等は、面会交流が子供に過大なストレスを加え、心的外傷、トラウマをもたらした症状として出現している疑いがあり、軽視してはならないというふうに書かれております。
子供の意思に反して無理やり行かせ、子供につらい思いをさせることがあってはならないと思いますけれども、お答えをいただきたいと思います。最高裁。
○馬渡最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げたところと重なりますが、父母の紛争下に置かれる子の負担というのは、慎重に見て、負担をかけてはいけないということは、その意味で委員の御指摘のとおりだと思っております。
○本村委員 それで、子供の意思を尊重するということが非常に重要だということでございます。とても丁寧で専門的な子供へのケアも必要だというふうに思います。
今の家裁の体制では、現場の調査官が幾ら頑張っても難しい現状がございます。先ほども、少し精神医療という点でお話がありましたように、特にDV、虐待が疑われるケースですとか、子供が嫌がるケースなどは、やはり、精神医学、あるいは児童心理司、こういう専門家にまず子供の意思を確認する、司法の判断に先行させるということが必要なのではないかというふうに思いますけれども、大臣と最高裁、お願いしたいと思います。
○小泉国務大臣 子供に接する際に、その専門的な知識をもって接し、また、子供の本当の意味での声、コミュニケーションを取れる、それは重要なことであることは間違いないと思います。
ただ、それを今の裁判所の仕組みの中でどういうふうに実現していくのか、これは少し検討を要する点が幾つかあると私は思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 家庭裁判所では、家事事件手続法に基づいた手続の中で事件処理をしていくというわけでございますけれども、家事事件手続法第六十五条、二百五十八条一項で調停事件に準用されておりますが、この規定に基づいて、家庭裁判所は、未成年の子がその結果による影響を受ける事件におきまして、適切な方法により、子の意思を把握するよう努めており、その方法の一つとして、専門知見、専門的な知識を持った家庭裁判所調査官の活用というのも行っているところでございます。
○本村委員 それが不十分だということなんですけれども。
大臣に後で法務省の方から届くというふうに思いますけれども、この日本乳幼児精神保健学会の「離婚後の子どもの養育の在り方についての声明」を是非読んでいただき、最高裁にもそして法務省にも、それを踏まえた施策を科学的な知見で実行していただきたいというふうに思います。そこには、現在の司法制度において軽視されている科学的、実証的な視点を反映させてほしいのだということを、日々、面会交流後の子供たちを見るなどしているその学会の皆様からの大事な大事な提言だというふうに思いますので、是非反映をしていただきたいと思います。
面会交流に関わりまして、資料一で出させていただいておりますけれども、その下の方の記事でございます。元夫のDV被害で離婚をしたケースで、親権は母親、復縁を迫る元夫は娘さんとの面会交流を家裁に申し立てた、女性は必死にそろえたDVの、もう本当に半年間かけて何とか少しだけ、証拠と言えるようなものをそろえて出した、でも、元夫側はこの写真は合成だということでDVは認めない、面会交流をめぐって、調停委員から、子供のことを考えたら父母なんだから連絡を取らないといけないのではというふうに言われ、元夫と仕方なくLINE交換をした、調停委員も交えた口頭のやり取りの中で面会交流の実施が決まった、元夫と四歳の娘さんとの面会を始めた最初の日に娘さんが殺害をされ、そして元夫も自死をしたという事件でございます。これは何回もこの委員会でも紹介をされているというふうに思います。
このほかにも、岡村参考人が資料十二で出していた信濃毎日の記事、今日は出しておりませんけれども、記事ですけれども、DVで離婚、調停で家裁が関わって面会交流、そして、一緒にお風呂に入らせた、性暴力と発覚して家裁が調査に入って間接交流になったという記事がございました。私は、この記事を見て、DVがあった、そして、父親が子供に性加害をしても、それでも間接交流で関わらないといけないのかと暗たんたる気持ちがいたしました。
これまでの家庭裁判所の調停、家庭裁判所で面会交流を決めるときに、そういうときに、その後殺害ですとか性暴力など重大事件に関し、法務省や最高裁はどういうふうに検証し、方策に生かしてきたのか、その点をお示しをいただきたいと思います。
○小泉国務大臣 これまでに親子交流中に殺人などの痛ましい事件が起きたことがあることは、報道を通じて承知をしております。こうした事件等について、法務省において網羅的に調査、検証したことはないものの、法制審議会家族法制部会では、このような事件があるとの認識の下で安全、安心な親子交流の在り方についての議論が行われてきたものと認識しております。
本改正案においても、親子交流の実施に当たって安全、安心を確保する観点からの規定も盛り込んでおります。例えば、親子交流の試行的実施については、子の心身の状態に照らして相当ではないと認める事情がないことをその要件とする、こういった規定も盛り込んでいるところでございます。
御指摘を踏まえて、なお注意深く現状を把握し、また問題意識を持ち、取り得る対応があれば取っていきたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
家庭裁判所に係属する事件に関して重大な危害が生じたような場合におきましては、当該家庭裁判所において、関係職員や関係者から事情を聴取するなどして、その結果の教訓を得るように努めることも必要に応じてしているところでございます。
最高裁としても、面会交流事件について、安全、安心ということが最も重要であるとの認識の下、様々な職種の研修等の場におきまして、まずは、現実に、委員御指摘のような事件が発生していることを繰り返し伝えてきておりますし、これとともに、実際の事故が発生した家裁における振り返りの結果から得られた教訓を共有することを継続的に行うなどしてきているところです。このようなことは、親子交流において、安全、安心を第一に考える現在の実務の運用につながってきているものと考えているところでございます。
最高裁といたしましても、今後とも、適切な審理運営がされるよう、家庭裁判所に対する適切な支援に努めてまいります。
○本村委員 ほかの事件もございます。
面会交流中に性虐待が起きた事例に関して、最高裁に上げるように担当弁護士は言っているというふうに思いますけれども、最高裁にはそうした事案が幾つぐらい上がっているのでしょうか。そうした事件や懸念がある事案で、面会交流の決定の決め直しというのは何件ぐらいあるのか、調査をしているのかという点、そして、もししていないのであれば、調査をして、検証して、教訓を導き出すべきではないかというふうに思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 重大な事案が起きたときには、必要に応じて、最高裁にも報告が上がってきますし、まずは、当該家裁においての検証ということになっていくと思います。
今委員の御指摘の点については、その必要性を含めて検討したいというふうに考えます。
○本村委員 お伺いすると、家裁での検証ということですけれども、第三者性はないわけです。やはり、第三者性のある検証委員会などで検証を行うべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○馬渡最高裁判所長官代理者 繰り返しになりますけれども、まずは、当該家庭裁判所における検証、さらに、そこの関係職員や関係者からの聴取というのが基本になろうかと思います。
○本村委員 こういうこともまだまだ十分共有していない中で拙速に進めるというのは、やはり子供の命や安全に関わることですので、やはり慎重の上にも慎重にやらなければいけないというふうに思っております。
それで、水曜日の参考人質疑では、諸外国の状況を検証する必要があるということで、斉藤参考人が言われました。そのときにも、参考人質疑のときにも指摘をさせていただいたんですけれども、資料の2、御覧いただきますと、二〇一八年、アメリカの下院、上院の決議の資料、和訳と英語で出させていただきました。
そこの2の、一番下の段落に書いてあるんですが、米国では二〇〇八年以降、少なくとも六百五十三人の子供が、離婚、別居、監護権、面会交流、養育費などの手続に関与した親によって殺害されており、その多くが、監護親の反対を押し切って家庭裁判所が面会交流を認めた後に殺害されたものであることが分かっていると分析し、その次のページになるというふうに思いますけれども、下院は決議する、上院もこれに同意するということで、議会の意見は次のとおりである、(一)子供の安全は、監護権及び面会交流についての司法判断における最優先事項であり、裁判所は、ほかの最善利益要因を評価する前に、まず基本的な配慮事項として、安全上のリスクやドメスティック・バイオレンスの主張を解決するべきであるというふうに書かれております。
他国の状況も分析して、虐待やDVの被害を受けた子や親の安全が最優先に考えられるような対策を取るべきじゃないかというふうに考えますけれども、これは法務大臣と最高裁にお願いしたいと思います。
○小泉国務大臣 親子交流の実施に当たっては、その安全、安心を確保すること、これが重要であると認識をしております。
ただ、個別の事案において親子交流を実施する旨を定めるかどうかは、それぞれの事案における具体的な事情を踏まえて、家庭裁判所において適切に判断されるべき事項であるため、法務大臣として具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。
その上で、一般論として申し上げれば、家庭裁判所においては、親子交流の安全、安心を確保するとともに、子の利益を確保する観点から適切な審理が行われることが期待されます。
他国の状況の分析でありますけれども、これまでも法務省は、必要に応じて外国法制等の調査を行ってまいりました。今後も、必要に応じ、適切に対応してまいりたいと思います。
○馬渡最高裁判所長官代理者 離婚調停事件や面会交流事件などの家事事件につきましては、子の利益を最優先に考慮して判断されているものと承知しております。
裁判官を始めとする関係職員は、家庭裁判所調査官等が子の利益の判断に資する事実の調査の方法及び分析、評価の在り方について行った研究、こういうものがありますが、この研究を参考にするなどして研さんを深めております。それらの研究結果においては、海外における知見等も引用されているものと承知しております。
その上で、委員御指摘のDVや虐待といった安全、安心に関する事情は、面会交流事件等において最優先に考慮されるべきものであるとして現在運用されているものと承知しているところでございます。
○本村委員 面会交流中の子供たちが命を落とすケース、諸外国のケースの分析について、資料を全部、最高裁も法務省も出していただきたい、次の質疑の前までに出していただきたいということを強く求め、質問を終わらせていただきます。
○武部委員長 次回は、来る九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時二分散会