衆議院

メインへスキップ



第10号 令和6年4月10日(水曜日)

会議録本文へ
令和六年四月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 武部  新君

   理事 熊田 裕通君 理事 笹川 博義君

   理事 仁木 博文君 理事 牧原 秀樹君

   理事 道下 大樹君 理事 米山 隆一君

   理事 池下  卓君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      井出 庸生君    上杉謙太郎君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      斎藤 洋明君    高見 康裕君

      谷川 とむ君    中川 貴元君

      中川 郁子君    中曽根康隆君

      中野 英幸君    平口  洋君

      藤原  崇君    三ッ林裕巳君

      柳本  顕君    山田 美樹君

      おおつき紅葉君    鎌田さゆり君

      鈴木 庸介君    寺田  学君

      吉田はるみ君    阿部 弘樹君

      斎藤アレックス君    美延 映夫君

      日下 正喜君    平林  晃君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         小泉 龍司君

   法務大臣政務官      中野 英幸君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 門脇 仁一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長徳 英晶君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    田原 芳幸君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     中川 貴元君

  英利アルフィヤ君   柳本  顕君

  中曽根康隆君     上杉謙太郎君

  山田 勝彦君     吉田はるみ君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     中曽根康隆君

  中川 貴元君     中川 郁子君

  柳本  顕君     英利アルフィヤ君

  吉田はるみ君     山田 勝彦君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     稲田 朋美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

武部委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人としてこども家庭庁長官官房審議官野村知司君、総務省大臣官房審議官三橋一彦君、法務省民事局長竹内努君、外務省大臣官房参事官門脇仁一君、外務省大臣官房参事官長徳英晶君及び国税庁課税部長田原芳幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局家庭局長馬渡直史君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鎌田さゆり君。

鎌田委員 おはようございます。鎌田でございます。よろしくお願いします。

 まず、述べておきたいことが私はございます。

 幸せの形は、人それぞれだと私は思っています。国家権力から法律で定められるものではないと思います。今回の法改定は、決して、DVや虐待以外は離婚禁止のような条文や運用ではいけないと思っております。そのことをまず述べておきたいと思います。

 それでは伺っていきます。戸籍制度と子の氏について。

 裁判所の判決によって共同親権となった場合、両親は別の戸籍になって、中には別々の氏となる方もいると思います。その際、子の氏の変更申請は、法定代理人となる両親の意見が一致しなければ子の氏の決定も裁判所が判断するのか、伺います。政務官、いかがでしょうか。

中野大臣政務官 お答えいたします。

 婚姻によって氏を改めた者は離婚によって婚姻前の氏に復し、婚姻前の戸籍に復籍いたしますが、その戸籍が既に除かれているとき又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製することとなります。

 この場合、婚姻中の該当夫婦の子については、離婚により、それだけではその氏に変動は生じないことから、戸籍に変動はなく、婚姻の際に氏を改めなかった親の戸籍にとどまることとなります。

 本法案は、こうした取扱いを変更するものでないことを是非御理解をいただきたいと存じます。

鎌田委員 現行法とその手続を変更するものではないということなんですけれども、現行法の場合ですと、単独親権でしたらば、親権者が申請して、即日で審判、許可が出て、そして役所に届出をして、それで完了になります、氏の変更。

 ですが、共同親権の場合、何日、何時間、この手続にかかる時間というものが私は増えると思うんですけれども、その増えるということが子の不利益になる可能性を私は危惧しています。政務官、いかがでしょうか。

中野大臣政務官 お答えいたします。

 婚姻をしておりますお二人の合意があれば、特に現行法では変わりがないと存じます。意見の不一致があれば、裁判所の手続が必要になると考えております。

鎌田委員 その最後の、裁判所の手続が必要になるということで、現行法と、共同親権になった場合と、時間がどうしても増えると思うんですね。それが私は子の不利益になるのではないかと心配しております。そこは、不安は払拭していただけますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、氏の変更の手続でございますが、先ほど政務官も御答弁なされたように、子が父又は母と氏を異にする場合には、民法第七百九十一条第一項の規定によりまして、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届けることによって、その父又は母の氏を称することができるとされております。

 また、子が十五歳未満であるときは、同条三項の規定によりまして、その法定代理人がすることができるところ、父母の双方が親権者であるときは父母の双方が法定代理人となり、父母が共同して行うこととなります。委員御指摘のとおりですが、この場合において、父母の意見が対立したときは、改正民法第八百二十四条の二第三項の規定によりまして、家庭裁判所が父母の一方を当該事項についての親権行使者と定めることができるとされております。

 なお、本改正案では、子の氏の変更に関する親権行使者の指定の裁判は離婚訴訟の附帯処分として申し立てることができることとしておりまして、そのような申立てがあった場合には、離婚判決におきまして親権行使者が定められることとなると考えます。

鎌田委員 ありがとうございました。

 その最後の附帯処分のところなんですね。そこを、附帯処分ではなくて、私は、ちゃんと本文、条文の方で定めるべきではないかなと思うんです。何を定めるべきかといいますと、共同親権となっての離婚成立の場合、両親は別の戸籍、別の氏、子は元の戸籍のまま。同居している親と戸籍は違う、氏も違う、こういうケースも起こり得ると思うんです。

 子の成長に伴って、三歳だったら自己の意思表明ができなくても、八歳とか十歳とか十三歳とか、成長するにつれて、どちらかの氏に変更したいと表明すると、その意思というものに基づいて、その都度、氏の変更という手続を親も子もやっていかなくちゃいけないわけで、ですから、私は、附帯処分じゃなくて、ちゃんと離婚のときにそのこともきちんと話合いで決めておくべきだ、そういう保障をされるように条文の方で明確にしておくべきだと私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 子の氏の点についてお尋ねで、先ほど申し上げましたように、仮に父母双方が親権者であるとして、父母の意見が対立したときには、改正法の八百二十四条の二の第三項の規定によりまして、家庭裁判所が父母の一方を当該事項についての親権行使者と定めるということになります。

 子の氏が父母の氏と同一であることが子の利益かという御視点からの御指摘かというふうに思いますが、その際、先ほどの家庭裁判所の審判におきまして子の利益の観点からそれが適当かどうかということを判断されることになると思われますので、なかなか一概にお答えすることは困難ではございますが、家庭裁判所におきましても、一般論といたしましては、親と共同生活を営む子の社会生活上の必要性等を考慮するほか、子の年齢及び発達の程度において子の意思等を考慮することになると考えられます。

鎌田委員 子の氏の変更の審判は毎年およそ十二万件と、司法統計資料を最高裁からいただきました。子の氏をめぐっては、現在も両親の間で鋭い対立が起きています。だから、離婚裁判後に更に難しい裁判が残るということを、私は、懸念としてここで議事録に残しておきたいと思います。裁判所任せにしないで、法務省民事局さんの方できちんとこの辺のところを整理をしていただきたいと思います。

 次に、行政による支援措置について伺います。

 共同親権の導入は、自治体でDV被害者への支援措置担当にとっても懸念が残っています。

 現在、支援措置の更新を許さないといって役所の窓口に来るケース、これは総務省さんとして統計は取っていますでしょうか。伺います。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 住民基本台帳事務におきましては、DV等の被害者の相手方が住民票の写しの交付等を不当に利用して被害者の住所を探索することを防止するDV等支援措置を実施しております。

 本制度の運用実態を把握するため、毎年度、DV等支援措置の実施件数及び支援を受ける者の対象者数などについて調査、集計を行っておりますが、委員御指摘のような、支援対象者の相手方からの支援措置に対する御意見などの件数については、把握はしておりません。

鎌田委員 統計を取っていらっしゃらないということです。

 そうなると、次の質問に移るんですが、DV支援対象者の一方の共同親権者となった方が、別居親が役所を訪ねてきて、自分は共同親権者なんだからと自分の子の住民票写しの交付を求めたら、自治体の役所はどういう対応を取ることになるのか。共同親権者だということで訴訟を起こされることへの役所の窓口が萎縮をするというリスク対応、これは全国的に周知はもうされているんでしょうか。

三橋政府参考人 住民基本台帳事務につきましては、先ほど申し上げましたとおり、DV等の被害者の相手方が住民票の写し等の交付等を不当に利用して被害者の住所の探索をすることを防止するDV支援措置を実施しております。

 この措置は、住民基本台帳法第十二条第六項の規定を根拠に、住民票の写し等を制限できることとしているものでございます。

 本支援措置の実施に当たりましては、専門的知見を有する警察、配偶者暴力相談支援センターなどの相談機関から支援の必要性を確認することとしておりまして、DV等を受けた申出者が子供とともに同一の住所に避難している場合に、申出者の相手方が当該申出者の住所を探索する目的で子供の住民票の写しの交付の申出等を行うおそれがあると認められる場合には、当該子供についても支援措置を実施するということにしております。

 現在婚姻中の場合におきましても、申出者の相手方への住民票の写しの交付制限等の措置は行われているものでございまして、今回の民法改正により、離婚後に父母双方が親権者とされた場合におきましても、DV支援措置の必要性が認められる場合にはこれを実施するという基本的な考え方に変更はないものと考えております。

 また、交付制限等を受ける場合につきましては、住民票の写し等の交付をしないという決定に対しまして、御質問のように、審査請求でありますとか処分の取消しなどの訴えなどが提起されることはあり得るものと考えておりますが、この場合におきましては、当該DV支援措置が適切に運用されたか否かが問われることとなりますため、本措置の実施に当たっての専門的知見を有する警察等の相談機関からの意見聴取等による支援の必要性の確認が重要でございまして、総務省としては、引き続き、各自治体に対して必要な助言等を行い、制度の適正な運用に努めてまいります。

鎌田委員 申し訳ございませんけれども、大変恐れ入りますが、私はなるべく端的に質問しているつもりなので、御答弁の方も端的にお願いをしたいと思います。済みません、お願いします。

 私が聞きたかったのは、今、自治体の職員の方々が、こういう事例で訴訟を起こされるかもしれないということで役所窓口で萎縮をしてしまう、この間は医療のことでも聞きましたけれども、そういうことがあってはならないわけですので、全国的に周知されていますかとお聞きしたので、もうされているんだ、大丈夫ですというんだったら大丈夫ですとおっしゃっていただいて、いや、まだ不十分なんですというんだったら、これから不十分なところをちゃんとやっていきますというふうにお答えをいただきたいと思います。

 でも、今の御答弁だとまだ不十分なようですので、これは徹底していただかないと自治体の窓口が本当に困ってしまいますので、総務省さん、是非肝に銘じていただきたいと思います。

 総務省さんの方はこれであとは予定がないですので、よろしかったら御退席いただいて結構です。

 続いて、七百六十五条の離婚の届出の受理及び七百六十六条、離婚後の子の監護に関する事項の定め、これについて伺っていきたいと思います。

 七百六十五条なんですけれども、ここに、離婚届出の受理の改定、成年に達しない子がある場合、親権者の定めがされていること、親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがなされていることが認められなければ受理されないこととされています。

 ただ、今我々が審議しているのは、大体もめているケースなんです。大体、うまくいかない、話合いもうまくできない、それでもうお別れしなければいけないという方々で、今の届出の受理のこの条文の規定のままだと、話合いができない、離婚ができないまま時間だけが経過してしまうというおそれがあると思うんですが、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行の民法の規定ですと、離婚届出の親権者の指定について決めないと離婚が受理されないということになりますが、今回の改正案で、その手続の申立てをしていればそれで離婚は成立するということにしておるものでございます。

鎌田委員 私がお聞きしたのは、話合いもできない、それから親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てもすることができない、お互いに。じゃ、もう裁判所に行きましょうとか、ちゃんと話合いしましょうとか、そういうこともできない、そういう父母にとって、離婚が成立しないまま時間だけが経過してしまうとなると、父母にとっても子にとっても、これは私は不利益になると思うんですよ。

 それで、次の質問に行きますね。続けてなんですが、七百六十六条のところも、皆様もう御存じのとおりだと思いますが、父母が協議上の離婚をするときは云々と書いてあるんですが、最後に、その協議で定めるとなっています。

 つまり、離婚の届出の受理とか、離婚後の子の監護に関する事項の定め等についてなんですけれども、これは両方とも結局、白地規定ですよね。父母の双方を親権者と定める場合においては子の監護をすべき者を定めなければならない、こういう一言、文言を加えて修正しておかないと、父母にとっても子にとっても不利益になると私は思うんです。

 結局、これは白地規定で、はい、話し合ってください、はい、駄目なら裁判所へ行ってください、裁判所に行けない人は離婚ができないまま、そういう白地規定のままでは、私は、子にとっても父母にとっても不利益のままが続くんじゃないかと思います。

 今質問したところ、修正をすること、これは子の利益にとって重要なことではないかと思いますので、大臣に伺いたいと思います。

小泉国務大臣 父母の離婚に直面する子供の利益、これを確保するためには、父母が離婚後も適切な形で子供の養育に関わり、その責任を果たすことが重要であります。

 その中で、父母の離婚後に子の身上監護をどのように分担するか、これはそれぞれの事情により異なってまいります。そのため、離婚後の父母の一方を監護者と定めることを必須とするとの規定を設けることは相当ではないと考えております。

 監護者を定めることを必須とした上で、その定めがなければ離婚の届出を受理できない制度を設けることについては、協議離婚が困難となる事案を生じさせ、かえって子の利益に反するとの懸念もあり、慎重に検討すべきと考えます。

鎌田委員 これは見解の相違として済ませていいのかどうか、私は大いに疑問なんですけれども、先ほどから申し上げているとおり、この白地規定で、はい、お互いで話し合ってください、話合いができないなら裁判、裁判にも持っていくのが嫌だといったら時間だけが経過する。結局、七百六十六条で、このままの条文ですと。父母の双方を親権者と定める場合においては子の監護をすべき者を定めなければならないと加えておけば、修正することができれば、これは私は、最初にちゃんとそういうことを決めておけば、子にとっても父母にとっても不利益は少なからずとも減っていって、利益につながると思うんですね。

 宙ぶらりんのまま、子供も父母も、離婚も成立しない、届出もできないという状況を私は回避すべきだと思うんです。そのことは大臣にも是非御理解いただきたいと思うんですが、重ねて御質問しても同じ御答弁ですよね、なんですね。私は、ここの修正は非常に重要だと思っております。

 今、国会のすぐ前で、当事者の方々、顔も名前も、今自分が住んでいるところも絶対に、DVの加害をした元パートナー、離婚が成立していませんからまだパートナーと呼んだ方がいいかもしれませんけれども、その方々は今国会の前で集まって、行動で。身の危険があります。だけれども、今のままのこの民法の改定の条文のままでは、その方たちの命の危険だとか、不安だとか、おびえだとか、そういったものが消えないんです。払拭されないんです。

 ですから、私は、大臣におかれては、かたくなにならずに、お互いに歩み寄って、修正をするべきところはする、そして、子の利益、父母の利益、私たち政治がきちんと守っていく、確保していくというお考えは、ちょっとでも心の中にお持ちいただきたいんです。いかがでしょうか。

小泉国務大臣 修正協議については、国会の場で、また党間の協議の場でお話しをいただくということだと思います。

 制度の在り方については、先ほど答弁させていただいたとおりでありますけれども、先生が真剣にこの問題を考え、そして被害者の側の立場に立って懸念を持っておられるということは重々伝わってまいりますし、私の心にもそれは入ってきていますので、しっかりそれは受け止めていきたいと思っております。

鎌田委員 精いっぱいの答弁だったのかなと思います。ありがとうございました。

 八百十九条の離婚等の場合の親権者の定めに関する条文についてです。

 八百十九条、これに基づきますと、例えばですが、父又は母が共同親権は嫌ですと表明しても、夫婦間で不同意であっても、裁判所からの強制的共同親権はあり得ると思うんです。これは、私は子の利益になるとは言い切れないと思うんです。はっきり言って、これは不同意強制的共同親権だと私は思います。子の利益になると思いますでしょうか、大臣に伺います。

小泉国務大臣 父母の合意ができない理由は様々なものがあると思われます。おっしゃったように、共同親権、そしてそれを共同で行使することについて意見がなかなか合わない、調わない、そういう場合には共同親権にならないケースの方がもちろん多くなると思いますが、しかし、その時点でそのことだけをもってもうこれは単独ですという結論を出すのではなくて、その調わない理由なりをしっかりと裁判所も把握して、そして子供の利益という価値をもう一つそこへ持ってきて、どっちを選ぶかという判断をやはり丁寧にするべきであるという考え方でこの立法は成されようとしているわけでございます。

 ケースからいえば、圧倒的に単独親権に行く可能性の方がそれはもちろん多いわけです。でも、それが子供の利益だということであれば、もう一回、その内容に入り、理由に入り協議をする、調停をする、そこで親の考え方も変わる可能性もあるかもしれない、そこを丁寧にやっていきたい、いこう、そういう考え方でございます。

鎌田委員 ちょっと具体に伺っていきます。

 人によっては、一子目の父、それから二子目の父が違っていて、三子目の父と今世帯を営んでいるという方もいるとは思うんですね。これは父、母どちらでも。そういう場合、それぞれ、一つの家庭の中に共同親権導入によって親権者が違う、一番目の子はあの親権者、二番目の子はあの親権者、三番目は今同居している、そういうことが起こり得ると思うんですけれども、それって、とても複雑な、まれなケースだと思うんですが、もちろん起こり得ますよね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行法の離婚後単独親権になる制度の下でも同じだと思いますが、改正法の下でも現行法の下でも、そのような事態は起こり得ると思います。

鎌田委員 じゃ、次に、母の浪費が原因で離婚をして、三人の子を今単独で育てている、穏やかに親権を行使をしている父。浪費が原因で離婚した母が共同親権を申立てしてきたら、今穏やかに三人の子供の親権者として育てているその父は裁判に臨まなければならないということでよろしいですよね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 親権者変更の審判の申立てについて御言及をいただいているものと思います。

 もし元の妻からの申立てがあれば、それは審判に臨むということになろうかと思いますし、実際に親権者の変更がされるかどうかということについては、子の利益のため必要があるときという要件がありますので、その要件に当てはまるかどうかということになろうかと思います。

鎌田委員 今の御答弁のように、いろいろなケースがそれぞれの御家庭であるんです。そのいろいろなケースの方々が、DV被害ではない、虐待もなかった、モラハラもなかった、だけれども、あれ、うちの場合どうなんだろうかということで、いろいろなケースの方々がこの民法の改定というものを非常に注視をしています。

 そこで、更に伺いますが、私は、この法律、もし成立したらですが、すごく矛盾に感じていることがあるんですね。DVで、半年、一年、子連れ避難をしていた例えば母親がいるとします。その人にとっては、法定養育費の遡及は認められませんよね。だけれども、共同親権は遡及して、共同親権の申立ては、それには応じなくちゃいけない、裁判に応じなくちゃいけない。これは私はすごく矛盾に感じるんですが、法務省さんとしては、ここら辺の矛盾については何か感じられますか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、法定養育費につきましては、既に離婚した方に対してこれを適用いたしますと、その制度がない条件の下で離婚をされた方に対して予測可能性を害すということで、遡及的な適用はしないということにしております。

 他方、親権につきましては、委員御言及のように遡及をするというわけではございませんで、既に決められた親権者が当然に何か変更されるというものではございません。ただ、親権者変更の審判の手続がございますので、現行法でもある手続ではございますが、それを使って、子の利益のために必要があるときという要件に当てはまるかどうかということで審理がされるものと考えております。

鎌田委員 そこが私は、この法律が寄り添っていないなと思うところなんです。DVで子連れ避難して、もう六か月も一年もたっている。今相手に知られないところで静かに暮らしている。でも、その間、もちろん離婚は成立していませんから、法定養育費が出ているわけではない。だけれども、その後、共同親権だといざなりました。そうすると、離婚するために共同親権を選ばなくちゃいけない。だけれども、これまでの六か月、一年間は、法定養育費とされる定めのあるものは何の保障もなく、静かに必死に生きてきた人たちにとっては、この法律は寄り添っていないと私は思います。

 更に伺いますが、親権者変更、これは、家庭裁判所は家庭裁判所はと、ずっと八百十九条に、家庭裁判所がすごく重い役割を担わなければいけないことが明文化されているんですが、「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。」などなどと書いてあります。このおそれというのはどうやって見抜くんでしょうか。法務省さんはその辺、裁判所とはどのようにすり合わせしていますか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、改正法の八百十九条七項のおそれという言葉でございますが、これは、その具体的な状況に照らしまして、そのような害悪や暴力等を及ぼす可能性があるということを意味しておる言葉でございます。

 このおそれにつきましては、裁判所において、個別の事案ごとに、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とを総合的に考慮して判断されるということになっております。

 裁判所からは法制審議会にも御参加いただいて、この法律の運用について協議をしてきたところでございますし、今後もしっかりと連携をしてまいりたいと考えております。

鎌田委員 はっきり言って、申し訳ないんですが、裁判所に丸投げの状態だと私は言わざるを得ないと思います。人が足りない、場所も足りない、年間十二万件の氏の変更の審判もある。そして、子連れ避難で、この対象になり得るんじゃないかという子供さんも十五万人を超えているという推計も出されています。

 今のこの法律のままでは、私は、裁判所に丸投げでというふうに取られるような状況が続いている中では、とても今のこのままでは、なかなか我々、賛同しにくいという気持ちを拭えないということは申し上げておきたいと思います。

 それで、八百二十四条なんですけれども、ここで親権の行使方法を定めているところがあります。八百二十四条の二ですが、これをそのまま読みますと、「親権は、父母が共同して行う。」というふうにまず頭に書かれているんですね。「親権は、父母が共同して行う。」ということを最初に書かれていると、これは原則共同親権というふうに読めてしまうんです。

 法務省の方々は、原則共同親権ではないとおっしゃいますけれども、八百二十四条でこのように書かれてあって、そしてその次に、次の三つに当たるもの、あるいはそれ以外のここに書かれているものは、それは単独親権ですというふうに書いていますが、八百二十四条の二のこの条文の書きぶりでは、どうしても原則共同親権というふうに読めます。

 そこのところ、誤解を招かないためにも、この条文の修正、例えば、八百二十四条の二を、父母の双方が親権者であるときの共同親権行使と、父母の一方のみが親権者であるときの単独親権行使と、分かりやすく、誤解を招かないためにも、条文の修正は欠かせないと思いますが、大臣、御見解がありましたらお願いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 改正民法の八百二十四条の二の第一項の規定ぶりについてのお尋ねであると思います。

 本改正案でございますが、全体として、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益の観点から重要であるという理念に基づくものでございます。

 父母双方が親権者である場合の親権の行使方法につきましては、現行民法におきましても、親権は父母が共同で行うこととした上で、一定の場合にはその一方が単独で行うことができるという枠組みの規定となっておりまして、本改正案はこのような現行法の枠組みを変更するものではございません。

 その上で、現行民法におきましては、親権の単独行使が許容される範囲が解釈に委ねられているため不明確であることから、本改正案におきましては、その解釈を明確化するために、子の利益のため急迫の事情があるときや、監護又は教育に関する日常の行為をするときは親権の単独行使が可能であるということを定めておるものでございます。

 このように、本改正案は現行民法の枠組みを維持した上でその内容を明確化するものでございまして、文言を改める必要はないと考えておるところでございます。

鎌田委員 修正の意思は法務省さんにはないということは分かりますが、でも、このままでは誤解も招くし、そして不安材料も払拭できません。

 今おっしゃったとおり、急迫の事情、それから日常の行為、それから特定の事項など、条文には書かれてありますけれども、ちょっと具体的に伺っていきますね。

 医療受診の場面についてなんですが、例えば、障害児の療育、治療、児童精神科などの受診、服薬治療の決定は日常の監護に入るということでよろしいですね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案におきましては、父母の双方が親権者である場合には、親権は父母が共同して行うこととした上で、監護又は教育に関する日常の行為をするときは単独で親権を行使することができることとしております。

 どのような場合がこれに当たるかにつきましては、個別具体的な事情に応じて判断されるべきではありますが、一般論として申し上げれば、子の心身に重大な影響を与えないような受診、治療、日常的に使用する薬の決定については、基本的には監護又は教育に関する日常の行為の範囲内であると考えられます。

鎌田委員 じゃ、ぜんそくやアレルギーなど、それの治療の医療受診、また、障害のある子供さんは、毎日が保護者として本当にあらゆる判断をしなければなりません、これらも日常の監護の解釈でよろしいかということ。

 それから、あわせて、進学先の決定について、先日、本村委員も質問されていたと思うんですが、特別支援学校に入学するという申込期限、これが一か月後に迫っているような場合は、これは急迫の事情なんでしょうか、日常の監護に当たるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、委員御指摘の、ぜんそく、アレルギー等の治療のお話でございますが、これは日常の行為として捉えられるものだというふうに一般的には考えられると思います。

 それから、先ほどの進学先の決定で申込期限が迫っているという状況ですが、本改正案におきましては、先ほど申し上げましたとおり、父母双方が親権者である場合でも、子の利益のため急迫の事情があるときには親権の単独行使は可能であるというふうにしておりまして、特別支援学校への入学手続等の期限が間近に迫っているような場合には、子の利益のため急迫の事情があるときに当たり得ると考えます。

鎌田委員 ありがとうございます。

 大臣、このように、本当に、具体的にこの条文に基づいていろいろなケースを確認していかないと、当事者の方、あるいは当事者じゃないとしても、これから結婚する若者、これから子供を産もうという、世帯を組もうという人たちにとっても、これは重大に関わってくる法律の改定なんですね。

 ですから、私は、重ねて申し上げますけれども、特にこの急迫のところ、ここは、私たち立憲民主党が修正案として提案をしていますけれども、急迫状態というのは、辞書で引けば、事態が差し迫ることとか、せっぱ詰まることとか、あるいは敵などが急速に迫ってくることを指すわけですよ。ですから、この急迫の事情というところは、子の利益のために必要かつ相当である場合には父母の一方が単独で親権を行使できるという規定に修正すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 御指摘のように、急迫の事情を必要かつ相当に修正することについては、その結果として、これまで御説明させていただいた場合、ケースに加えて親権の単独行使が可能な場合を拡大し、子の養育に関し父母双方が熟慮の上で慎重に協議する機会を狭めることになるため、子の利益の観点から相当ではなく、御指摘のような修正は難しいと考えております。

鎌田委員 私の質疑時間がもう終了しておりますので、おおつき委員に御配慮いただきまして、最後一つで終わりにいたしたいと思います。

 施行期日、これなんですけれども、施行期日について、公布の日から二年というふうに定められています。ですが、この委員会でも様々な問題が指摘されています。家裁の件、調停委員、調査員への研修、DV加害者の濫訴防止。何より、DVの加害者が加害の自覚を持てていないというところも非常に大きい問題なんです。

 いや俺は、俺はと言ったらこれは片方になりますから偏見になるので、例えば俺は、例えば私は、例えば自分が、DVなんて、モラハラなんてやっていない、けれども、相手が勝手に子供を連れていなくなっちゃったんだというケースも非常に多いんです。だから、加害の自覚がない。つまり、加害を更に生んでいく可能性がある、含んでいるこの法案なんです。

 ですので、大臣、これは、二年ではなくてせめて五年、公布の日から五年、準備が必要じゃないですか。

武部委員長 小泉法務大臣の前に発言の訂正がありますので。

中野大臣政務官 冒頭の私の答弁につきまして誤りがありましたので、申し上げます。

 冒頭、婚姻をしている二人の合意があれば現行法とは変わらないでよいと申し上げましたが、離婚した二人のと修正させていただきたいと存じます。

小泉国務大臣 本改正案の円滑な施行のためには、おっしゃるとおり、国民の十分な周知、関係機関による理解、準備、これは必要です。重々それは承知をしておりますが、一方で、子供の利益、これを確保するためには、速やかな施行も必要であるという考え方もございます。これを総合的に考慮して、公布の日から二年以内において政令で定める日というふうに考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。

鎌田委員 私は、お言葉ですが、理解できません。とてもじゃないけれども、二年では時間が足りないと思います。せめて四年、五年が駄目なら四年ということも質問したかったんですが、もう終わりにしたいと思います。二年では足りない、そのことを申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、おおつき紅葉君。

おおつき委員 立憲民主党・無所属のおおつき紅葉です。

 早速質問に入りたいと思います。

 さて、今回の改正案では、離婚後の子供との面会、いわゆる親子交流とか面会交流と言われているんですけれども、この子供との面会の履行を確保するための改正は盛り込まれておりません。しかし、子供との面会に関する取決めが確実に実行されて、安全かつ平穏に実施されるための方策を今後やはり検討する必要があると私は思っております。

 そこで、子供との面会について、今後ますます第三者の支援が必要になると思いますので、まずは、例えば公的な、無料だとか低額で利用できる安心、安全な交流支援の整備を推進することが必要だと思いますが、法務省とこども家庭庁に伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、父母の別居後や離婚後も適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から重要であると考えております。また、親子交流の実施に当たりましては、その安全、安心を確保することも重要になってまいります。

 法務省では、これまでも、親子交流に関する合意書のひな形を記載したパンフレットの配布ですとか、親子交流の取決めの方法に関する動画の配信などを行ってまいりましたほか、親子交流支援団体向けの参考指針を作成いたしまして、ホームページ上で公開するなどの取組を行ってきたところでございます。

 親子交流に関する支援の在り方につきましては、こども家庭庁等、親子関係府省庁等と連携しつつ検討してまいりたいと考えております。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 親子交流でございますけれども、御指摘ございましたように、一般論としては、やはり離婚後も適切な形で親子交流が実施されるということから、子供の立場からも望ましいことであると考えております。

 こども家庭庁といたしましても、当事者のみでは親子交流を実施することが困難な場合もあるということでありますので、親子交流支援事業というものを実施をしております。具体的には、自治体における親子交流支援員の配置をするなど、離婚した夫婦の間において親子交流の取決めに基づいて親子交流を実行する、実施するための支援を行っている、そういう事業でございます。

 この事業の利用者の方でございますけれども、従来は一定の所得の基準を設けておりました。具体的には、児童扶養手当の受給対象となり得るような所得水準の方を対象としてまいりました。ですが、冒頭申し上げたような親子交流の趣旨に鑑みますと、そこを、親子交流というものは親の所得にかかわらず重要なものであろうということで、今年度の予算からは、この事業の利用者の所得要件につきまして、撤廃することを盛り込んだところでございまして、引き続き、自治体に対しましてもこの事業の活用などを促して、普及に取り組んでまいりたいと考えております。

 その一方で、児童虐待であるとかあるいはDVなどを背景として、親子交流がなかなか難しい、困難だというような場合もあるというふうにお聞きをしております。安全、安心な親子交流の実施に当たり、一人親支援の枠組みなどとは異なる、より専門的な支援が必要となることもあろうかと考えております。

 こうした専門的な支援という観点からも、先ほど法務省さんからも御紹介ありました、親子交流支援団体の活動支援であるとか、あるいは、親子交流についての説明をする動画、パンフレットなどによる周知、普及などを行っていただいているものと承知をしております。

 こうした法務省さんの取組とも連携しながら、地方自治体において、民間の親子交流支援団体あるいは地元弁護士会などの協力を得ながら、この事業が実施していけるように支援をしてまいりたいと考えております。

おおつき委員 是非そういった事業を、省庁を横断して、皆さんで協力して、無料又は低額、これはかなり大事ですので、所得要件は撤廃されたということですけれども、それがしっかりと自治体で運用できているかどうかの確認も含めて、お願いしたいと思います。

 さて、この延長で、先週、山井委員の質問の中にも子供の意見の尊重についての質問がありましたが、離婚後の子供との面会において、親に会いたいという子の意思というのは尊重されるようなんですけれども、会いたくないという子の意思についてはどのように尊重されるのでしょうか。これは、どちらも子供の意見表明として尊重されるべきだと私は思っております。

 そこで、面会交流、親子交流に係る裁判で、子供に対してどうして会いたくないのかということを丁寧に聞き取る必要があると思いますが、最高裁に伺います。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 家事事件手続法六十五条、調停に二百五十八条一項で準用されておりますが、この規定におきましては、家庭裁判所は、未成年の子がその結果により影響を受ける事件において、適切な方法により、子の意思を把握するように努め、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないものとされております。

 家庭裁判所では、親子交流の事件におきましても、事案に応じて家庭裁判所調査官による事実の調査その他の適切な方法により、子の意思を把握しているものと承知しております。

 その上で、子が別居親との交流について示す意向や感情は、肯定や拒否といった二者択一的で明確なものではなく、複雑なものである場合が少なくないところでございまして、この拒否的な面も含めその真意を慎重に分析し、これを通じて把握した子の意思を十分に考慮して、交流をするかどうかや、その方法、内容を含む親子交流の在り方について検討しているものと承知しております。

おおつき委員 審議会の中でも、かたくなに子供に選ばすのは酷だという意見がたくさん出ていたのは承知をしております。

 ただ、参考人の意見陳述の中でも原田弁護士が、子供の人格の尊重とは違って、子供の意見の尊重というお話をされていました。子供の意見を聞くのと子供にどっちの親を選ばせるのかというのは、これは違う問題だということを、今日、皆さんで是非共有をしたいと思います。

 私は小学生の子供が二人いるんですけれども、その小さい子供が幼稚園のときから、例えばどこかにお出かけするのだけでも、どうして自分の意見を聞かないで決めるんだというような感じになっております。きっとこういう経験をされた人もいるんじゃないかなと思うんですけれども。

 今の時代は、昔みたいに、どんどんどんどん親の言うことを聞く、言うことを聞いてくれという時代じゃなくて、自分の意見を持ってそれを表明する、そして、周りもその意見を尊重してどういったことをするのかと決めるような形になってきていると思います。

 そして、私は、世界標準に合わせるのであれば、こういった標準の上に立って、子供の意見を聞くということを是非これからも十分に議論していただきたいと思いますし、本来なら、こども基本法の中にある子供の意見の表明権についても、今回の改正案の審議や改正案の中身にもできれば含まれてほしいなと思っておりますので、これからも十分な議論が必要であることを改めて表明をさせていただきたいと思っております。

 では、次の質問に行きます。

 先週の質疑に関連して、共同親権導入に係る既存の税制度への影響について具体的に伺いたいと思います。

 離婚についての住宅ローン減税の在り方について私のところに声が寄せられました。離婚前は住宅ローンで購入していた家に住んでいて、離婚の後、一方は実家に移り住んで、元配偶者と子供たちは購入した家に住み続けている場合なんですけれども、これは、名義は変更せずに、住宅ローンの残高払いを含めた養育費を実家に移り住んだ方が払っているという事例なんですね。これは、しかし、居住しなくなってしまったので、いわゆる住宅ローン控除が適用されなくなったという現実があるんです。

 そこで、例えばこのようなケースにおいて、離婚後の共同親権の場合、単身赴任者と同様に住宅ローンの控除が適用されることになるのか、伺います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 住宅ローン控除でございますが、原則といたしまして、その年の十二月三十一日まで引き続きその居住の用に供している年に限り控除の適用があることとされておりますが、委員御指摘のように、転勤などのやむを得ない事情により納税者自身が一時的にその住宅に居住できないこととなった場合で、その配偶者、扶養親族などの納税者と生計を一にする親族がその住宅を引き続き居住の用に供しており、そのやむを得ない事情が解消した後はその納税者が共にその家屋に居住するものと認められるときに関しましては、納税者自身が引き続きその住宅を居住の用に供しているものとして、控除の適用があるものとして取り扱ってございます。

 御質問いただいた例のように、御夫婦が離婚した後、例えば、元夫の方が実家に移り、購入した住宅に居住しておらず、元妻と子供が購入した住宅に居住し続けているケース、こうしたケースにつきましては、その元夫につきまして、納税者自身の事情により実家に移っているということでございますので、やむを得ない事情により納税者自身が一時的にその住宅に居住できないこととなった場合、こちらには該当しないということになります。

 また、一般的には、その後にその住宅に居住することを予定しているものとは考えにくいことから、そのやむを得ない事情が解消した後は、その者が共にその家屋に居住するものと認められるとき、こちらにも該当しないものと考えられます。

 したがいまして、その住宅に居住しないこととなった年以降は、その住宅に係る住宅ローン控除の適用は受けられないものと考えてございます。

 なお、この取扱いにつきましては、親権の有無を要件としていないことから、今般の民法改正後に離婚後の父母双方を親権者と定めたことをもって具体的な変更を生ずるわけではないと承知しております。

おおつき委員 元夫か元妻かは分からないんですけれども、一方によって、居住の有無とやむを得ない事情をどう考慮するかという点だったかと思います。

 これは、改正する余地というのはあるんでしょうか。共同親権をやむを得ない事情に入れられる余地というのはあるんでしょうか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになって恐縮でございますが、この取扱いにつきましては、親権の有無を要件としてございませんので、今般の民法改正後に離婚後の父母双方を親権者と定めたことをもって具体的な変更を生ずるわけではないというふうに承知してございます。

おおつき委員 大臣、こういった事例がたくさん出てくるので、大臣と財務大臣と、是非この件についても話合いを行っていただきたいと私からお願い申し上げます。

 次の質問に行きます。

 離婚後の共同親権導入に係る監護者の定めの義務づけについて伺います。

 この件に当たっては、本改正案によって、離婚後の父母の双方を親権と定めるに当たって、父母の一方を子供の監護者に指定することを必須とはしないこととしておりますが、監護者の指定がされないと、養育費の請求権者や児童手当等の受給者が不明確になって、現実に子を監護している方の親が経済的に困窮し、子の生活基盤が脅かされる懸念があることは、この委員会の中でも再三指摘をさせていただきました。

 例えば、別居中の児童手当なんですけれども、離婚後も別居親が親権を持っている場合、児童手当受給事由消滅届の提出をしてもらえずに、実際に監護している同居親に支払われないことが今でも起きています。

 共同親権になって監護者の指定がなければ、実際には子供と住んでいる親に児童手当が支払われず、このようなことが増えるのではないかという懸念の声が多く寄せられております。

 やはり、離婚後の父母双方が親権者となる場合においては、必ず父母の一方を監護者とする旨の定めをしなければならないものとするということを本改正案に明記すべきなんじゃないかなと思いますが、法務省の見解を伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母の離婚に直面する子の利益を確保するためには、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わっていただいて、その責任を果たすことが重要であると考えております。

 父母の離婚後に子の身上監護をどのように分担するかということにつきましては、それぞれの御家庭等の事情により異なるものと考えます。そのため、離婚後の父母の一方を監護者と定めることを必須とするという規定を設けることは相当でないと考えております。

 なお、先ほど委員が御指摘になったような児童手当等の行政手続につきましては、関係省庁としっかり連携して、この法案の趣旨の正確な周知に努めていきたいと考えております。

おおつき委員 私は、やはり、離婚したら監護者を指定をすることでかなりの方々が守られると思うんですよ。離婚後の関係が良好でない多くの父母は、緊密に連携を保って子の利益にかなう形で共同監護を実施することはほぼ不可能です。

 監護者の指定がされなければ、更なる父母間の意見対立を招いて、その解消のために家庭裁判所の判断にも時間を要するなどの理由で監護権行使に停滞が生ずることが予想され、子の利益の観点からも義務づけは必須であることを改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 さて、次の質問に行きます。

 昨日、我が党の鈴木庸介委員も申し上げましたが、不払い養育費の立替え払い制度について、この質問に対して大臣は、しかと承りたいという答弁をされていました。

 そこで、今回の本附則に、公的機関による不払い養育費の立替え払いや、これに要した費用の求償に関する法制度の在り方についての検討を義務づける規定を政治判断で追記し、その結果に基づいて必要な措置を講じませんか、大臣。伺います。

小泉国務大臣 養育費を必要とする一人親家庭への公的支援として、公的機関による立替え払い等の仕組みの導入を期待する声があることは承知をしております。

 ただ、このような仕組みの導入については、国民負担が生ずる、当事者のモラルハザードが生ずる、また、他の公的給付との関係をどう考えるか、こういった観点からの課題がございます。慎重な検討が必要だと思われます。

 この立替え払い、法制度の在り方について検討を義務づける規定を設けることは適当ではない、相当ではないと考えております。

 なお、養育費の立替え払い制度とは異なりますが、一人親が養育費を請求するために民事法律扶助を利用した場合には、償還等免除の要件を緩和するなどの運用改善、これを四月一日から開始をいたしました。

 本改正案では法定養育費を新設するなどの措置を取っておりますので、まずはこうした改正の施行、その後の養育費に関する履行状況の実態を注視をしていきたいと思います。

おおつき委員 大臣、ただ、先週私は民事局長にも質問したんですけれども、仕組みの導入については、この立替え払いも含めて、養育費に関してなんですけれども、償還の確実性も見込まれないと答弁していて、国ですら償還の確実性が見込めなくて今尻込みしている状態だと思うんですよ。こういった問題を同居親である個人に全部負担を強いるというのは、やはり私は、こどもまんなかじゃないんじゃないかなと思っております。

 その一方で、養育義務である養育費でさえ遂行させられない国が、昨日の大臣の答弁にもありました、私もそのときいましたけれども、養育費、母子世帯だと、今、取決め率が四六・七%にもかかわらず、受領率が二八・一%なんですよね。三分の一以下の方しか受領ができていない。日本というのは今こういう国なんですよ。

 これが、共同親権という法律で、制度だけ先行させていくということに対してやはりみんなまだまだ不安の声があるので、大臣、この懸念の声、どうやって払拭されていくおつもりか。今答弁もありましたけれども、もう一歩踏み込んで、是非強い決意をお願いいたします。

小泉国務大臣 民法に子供の利益を中心に考えましょうという大きな条項が入り、一つの考え方が大きく展開されたわけでございます。子供の人格の尊重ということもあります。また、この法案の審議を通じて、様々な子供たちを守るための、健全に育てるための必要な措置、様々な御議論もありました。養育費の問題も含めてありました。

 こういったことは、この法案を施行していく中で、全体として大きな課題として我々は捉えていかなければならない。政府においても、国会においても、それは同じだと思います。

 そういう意味で、委員の皆様方ともコミュニケーションを取りながら、大きな課題として、この法案の施行後、様々な支援については検討していきたいと思います。

おおつき委員 では、その様々な支援の中にこの不払い養育費の立替え払い、今各自治体で取り組んでいるところもたくさん出てきておりますが、是非、これも検討の一つに入るということでよろしいですか。

小泉国務大臣 恐縮ですけれども、検討の対象に入ります、ただ、慎重な検討が必要だということを申し上げているわけであります。

おおつき委員 是非積極的にお願いしたいと思います。

 次の質問に行きます。

 離婚等の場合の親権者の定めについてです。

 今回の改正案では、現行の離婚後の単独親権制度が見直されて、父母の協議又は裁判で共同親権とすることが可能になる改正案となっております。

 これは、日本国憲法の第二十四条第一項で婚姻の成立に両当事者の合意を要求していることを鑑みますと、共同の親権は婚姻の効果の一つであると考えられて、両当事者の合意が大前提だと思います。

 そこで、両当事者たる父母双方の合意がない場合には、裁判所は父母の双方を親権者と定めることができないものとすることを本改正案に明記すべき、例えば附則だとしてもです。こういったことに関してはどのようなお考えですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案におきましては、離婚後の親権者の定めについて、父母の協議が調わないときは、裁判所が、子の利益の観点から、親権者を父母双方とするか、その一方のみとするかを判断することとしております。

 御指摘のように、父母の双方の合意がない場合には共同親権を認めないことにつきましては、父母の協議が調わない理由には様々なものがあると考えられますことから、合意がないことのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないというのは、かえって子の利益に反する結果となりかねないと考えております。

 そのため、本改正案では、裁判所は、父母の協議が調わない理由等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であるかなどの観点を含め、親子の関係、父母の関係その他一切の事情を考慮して、実質的、総合的に判断すべきこととしております。

おおつき委員 今の答弁を聞いていると、無理やりということ自体が起こり得るんじゃないかなと思ってしまいます。是非、父母の同意があるときにのみ共同親権が実施されるような方向性でこの法案の改正案を理解していきたいと思いますので、こういったことも配慮していただきたいと思っております。

 次の質問に行きます。

 親権者変更の厳格化についてです。

 さて、ほとんどの委員から質問がやはりあります、急迫の事情や日常の行為の範囲が不明確であるため、現実に子供を監護している親は、裁判所により適法と判断される親権の行使についても、他方の親の同意を得ない違法なものであるとして他方の親から裁判を起こされて、応訴負担を強いられるなどの状況にさらされるおそれがあるという声が寄せられております。これでは、ただでさえ経済的、精神的負担の大きい一人親が更に追い詰められることとなり、子の生活の安定が損なわれて、本末転倒の結果になりかねないんじゃないかなと懸念をしております。

 そこで、離婚の際、親権者となってから継続的、安定的に子を監護してきた父又は母からの親権者変更が安易に認められないようにするため、親権者変更の要件を、子の利益のため特に必要があると認めるときに限定するとともに、その判断に当たっては、これまでの子の監護の状況を特に考慮しなければならないものとすることを本改正案に明記又は附則に追記すべきだと思いますが、法務省の見解を伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案では、親権者変更の裁判において考慮すべき事情や単独親権としなければならない場合につきましては、親権者指定の場合と同様としておるところでございます。そして、本改正案は、子の利益の観点から、一切の事情を考慮して親権者を定めることとしておりまして、御指摘のような親権者変更の厳格化をすることは、子の利益の観点から相当でないというふうに考えております。

 また、父母と子との関係や父母間の関係が様々であることからいたしますと、親権者変更の判断に当たりまして、継続的、安定的に子を監護してきたかという従前の監護の実績のみを重視することとして御指摘のような変更の厳格化をすることは相当でないと考えているところでございます。

おおつき委員 では、併せて伺いたいんですけれども、裁判所が親権者の指定又は変更について判断するに当たっては、父母及び子供の意見の聴取等により把握したそれぞれの意思を考慮しなければならないことも明記すべきなんじゃないでしょうか。お伺いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、親権に関する事件における子の意思の把握及びその考慮の明文化につきましては、現行の家事事件手続法におきまして既に規定が設けられているところでございます。また、本改正案におきましては、父母が子の人格を尊重すべきことを明確化することとしております。ここに言う子の人格の尊重には、子の意見、意向等が適切な形で考慮され、尊重されるべきであるという趣旨も含むものであります。

 次に、父母の意思の把握及びその考慮の明文化に関しましては、父母が親権をめぐって争う事件において、家庭裁判所が事件の当事者である父母の意見や主張を聴取し、考慮することはいわば当然でありまして、このことを明文で設ける必要性はないと考えております。

 以上から、御指摘のような規定を設けることは相当でないと考えているところでございます。

おおつき委員 子供の意見を聞く、本音を引き出すことというのは、私も昔記者だったんですけれども、人の本音を聞き出すのはすごく難しい作業だと思うんです。特に、ふだん大人の方々を相手に本音を引き出すお仕事をされて、裁判所で働く方々もそうだと思うんですけれども、それと子供の本音を聞き出すやり方というのは違うと思うんですよね。

 そういったときは、そういう専門家しかり、そういったことにたけた方々の配置と人を増員していくことを是非検討していただきたいと思います。それがマストだと思います。

 さて、次に、先ほど鎌田委員の質問にもありました、施行期日の修正について伺います。

 今回、本改正案では、附則において、施行期日を、公布の日から起算して二年を超えない範囲、つまり、二年以内に政令で定める日としておりますが、これを二年以内とした理由をまず法務省に伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、本改正案は、公布の日から二年以内において政令で定める日を施行日としているところでございます。

 このように施行日を定めましたのは、子の利益を確保するために速やかな施行が必要である一方で、その円滑な施行のためには国民に対する十分な周知や関係機関における準備を要するという事情を総合的に考慮をいたしまして、相当な期間を確保する必要があると考えられたためでございます。

おおつき委員 共同親権の導入については、DV被害者等の相談支援体制、そして、養育費の支払いの実効性の確保を始めとする一人親世帯に対する相談支援体制、家庭裁判所の体制の充実強化等、関連する諸制度が整備されてから施行すべきであると考えておりますが、施行期日の五年を超えない先送り修正については、法務省の見解をお伺いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案の円滑な施行のためには、国民に対する十分な周知や関係機関における準備を要する一方で、子の利益を確保するためには速やかな施行も必要であると考えているところでございます。

 本改正案では、こうした事情を総合的に考慮をいたしまして、公布の日から二年以内において政令で定める日を施行日としたものでありまして、委員御指摘のように、施行日までの期間を延ばすことは相当でないというふうに考えておるところでございます。

おおつき委員 先ほど鎌田委員もおっしゃっていましたが、五年が駄目なら四年。しっかりとこれからの運用をしていくに当たっては考慮しなくてはいけない点であると思います。

 最後の質問に行きたいと思います。

 さて、本改正案の施行までの間に、改正法の趣旨や内容、そして裁判手続、関連する各種の支援制度について政府がどのように周知、広報を行っていくのか、甚だ疑問であり、まだまだ懸念の声が多く上がっております。だからこそ、本則に、政府に対して親権者の定めの規定を始めとする新民法等の規定の趣旨及び内容の周知を義務づける規定を追記すべきと考えますが、見解を伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母の離婚後の子の養育の在り方は、子の生活の安定や心身の成長に直結する問題でありまして、子の利益の観点から大変重要な課題であると認識をしておるところでございます。

 本改正案は、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や、子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑みまして、子の利益を確保するために民法等の規定を見直すものでございまして、委員御指摘のとおり、国民の本改正案に関する理解も重要と考えております。

 御指摘のような規定を設けるか否かにかかわらず、法務省といたしましては、施行までの間に本改正案の趣旨及び内容が正しく理解されるよう、関係府省庁等としっかりと連携しつつ、適切かつ十分な周知、広報に努めてまいりたいと考えております。

おおつき委員 私は、規定を追記することによって、親権者を定める協議に資する政府からの情報提供は担保されると思います。そのことを申し上げて、私の質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 まず、四月二日の法務委員会で我が党の枝野議員が質問しました八百二十四条の二、一項、二項及び八百二十五条、これについて、パスポートの取得の件について御質問があったんですが、少々これはお話が混乱していたかなと思います。

 まず、民法五条は、未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる行為については、この限りではない。第二項で、前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができると定めておりまして、ここで言う法律行為というのは、それは法によって定義はいろいろですが、おおむね、人が私法上の権利の発生、変更、消滅を望む意思に基づいてする行為であり、その意思表示の求めるとおりの法律効果を生じさせるものとされております。

 パスポートの取得は、実はこれは公法上の行為ですので、民法とは独立に外務省が定めていいものであろうと思われるんですが、ただ同時に、一方で、枝野議員が言ったとおり、海外旅行に行くという民法上の行為と密接に関わっているので、外務省においても、恐らくは民法の規定に準拠して運用を定めており、その中で、現在、民法では親権の共同行使を前提としておりますので、両親の同意を前提としながら、しかし、片方の親の署名があれば両親の同意があるとみなして、片方の親の署名でパスポートの申請を認めているという運用をされていると私は理解しているんですが、それでよろしいでしょうか。

長徳政府参考人 お答えいたします。

 未成年者に係る旅券発給申請につきましては、現状におきましては、親権者である両親のいずれか一方の法定代理人署名欄への署名をもって、両親の同意を代表するものとみなして、申請書を受け付けることとしております。

 ただし、署名を行っていないもう一方の親権者から、あらかじめ子の旅券申請に対する不同意の意思表示が示されるという場合がございます。その場合は、その当該親権者からの同意書の提出をもって旅券を発給するというふうにしております。

米山委員 余り質問には答えていないんですが、二問目があるのでそこで答えてほしいんですが。

 要するに、その運用をしているのは分かるんですけれども、それは民法に準拠して、双方の同意が必要と準拠しているんだけれども、実はそれは外務省が独立に定めていることであり、別に定め得るということだと思うんですね、パスポートの発給というのは公法上の行為ですから。そして、枝野委員への質問の回答も恐らくそういう趣旨だったと思うんですけれども。

 この民法改正案が成立しますと、婚姻中であっても、別に実は離婚と無関係に、共同で親権を行使する場合と、単独で親権を行使する場合が明文で定められるわけですよね、今までそこは漠然としていたものが。もちろん、離婚後は共同親権の場合と単独親権の場合ができるんですけれども。

 そういう改正はあるけれども、別段、外務省は、それにかかわらず、片方の親の署名をもって、要は、共同親権の親にとってみれば、片方の親で両方を代表しているとみなし、もちろん、それは事前の反対があれば反対なんでしょうし、片方の単独親権だったら、別に、もちろん単独親権でいいということで、外務省としてはその運用は変えないという予定だと伺っていたんですけれども、そういうことでよろしいんですね。

長徳政府参考人 お答えいたします。

 外務省といたしましては、未成年者の旅券取得については、本改正案を十分踏まえて対応したいと思います。

 具体的には、法務省を始め関係府省庁と連携し、本改正案との整合性が確保された手続ということを定めてまいりたいと思います。

米山委員 非常によく分からないんですけれども。

 というのは、なぜかというと、別に外務省の肩を持つわけじゃないですけれども、今の状態でほとんど、割に準拠されているんですよ。だって、今の状態で片方の親で申請ができて、共同親権を持っている場合は、相手の親が事前に駄目と言ったら駄目という状態ですよね。その状態を維持して、仮に本法案が改正できたとして、別に共同親権の場合はそのままでいいわけじゃないですか、ほぼほぼね。だって、片方の親でよくて、共同で駄目と言ったら駄目という話なんだから。

 だって、単独親権で行使できる場合は、それはさすがに単独親権でいいわけでしょう。それは単独親権で悪いわけがないわけだから。そうすると、要は、現行で、取りあえず、単独親権できちんとそれは受理できますよ、共同親権で片方が駄目ですよと言ったら、それはなかなか受理できません。そこは離婚後共同親権のときにどうあるべきかというのは、確かに検討していただいてもいいと思うんです。離婚後共同親権で、特に、監護している方がいたら監護親の方でいいじゃないかというのはあると思うんですけれども。

 全体に、少なくとも片方の親の申請で取得できる、その運用は変えるつもりはないということでいいんですか、そこは。

長徳政府参考人 お答えいたします。

 未成年者に係る旅券発給申請があった場合ですけれども、現行の民法におきましても、婚姻中は共同親権という前提で手続を取っておりますが、これについては、改正後も、当然、共同親権が法的に維持されている場合は、変えることにはならないんだろうというふうに思います。

 ただ、今回は、民法の改正の趣旨というものがございますので、離婚後の共同親権の際のパスポートの発給手続に関しては、民法の改正案の趣旨をきちんと踏まえて、いろいろな整合性が確保された形にしていきたいというふうに考えております。

米山委員 では、もう一回。

 整合性は分かりました。大体法的な枠組みは、多分、明言してくれないけれども、整理されてはいるんだと思うんですよ。

 その上で、整合性で一番今問題になっているのは、思い切り共同なら、それはそれでいいとは思いますよ。特に婚姻中なら、それは全然今までと変わらないわけです。

 でも、離婚後の単独親権で、例えば監護が片方の親にある場合、さらには、そのパスポートの、どのパスポートとは言えないでしょうけれども、それはほぼほぼ日常の範囲と思っていいじゃないかというような場合。もちろん、確かに、おっしゃるとおり、少なくとも、この改正案ができた前提なら、かつ共同親権となった前提なら、片方の親が強硬に反対しているのに、それはできないとは思いますよ。

 でも、同時に、特にそれを強硬に反対していない、それがない。その上で、片方の親が出したらそれは通るというのが、恐らく今までの連続性としてもいいし、この法の趣旨として、明示的に言っているなら違うでしょうけれども、明示的でない場合にまで、一々、離婚後共同親権で、必ず両親の署名を取ってこいとかと言われちゃったら、非常に大変なわけですよ。

 そういうことはなくて、きちんとこの趣旨を理解して、基本的には、離婚後共同親権というのは、共同親権ではあっても、逆に、監護が定められていなくても、基本的には片方の親が恐らくは同居しているわけですよ、多くの場合。そんなに行ったり来たりというのはめったにないわけですから。

 そういう事情もきちんと反映した運用になるということでよろしいですか。

長徳政府参考人 繰り返しになりますけれども、離婚後の共同親権の場合というものについては、改正案の趣旨がちゃんと反映されるように、整合性は確保していきたいというふうに思いますが、確かに、委員御指摘のとおり、共同親権が離婚後も維持される場合、片方からの署名だけをもって発給をしていいかどうかということについては、やはり慎重に検討したいというふうに思っております。

 現行のルールとしましては、冒頭申し上げましたとおり、事前に、署名を行っていないもう片方の親権者が不同意をあらかじめ提示する場合があるんですけれども、こういった手続がそのままでいいのか。つまり、民法改正後も。

 今回、民法の改正において、共同親権であっても、親権の単独行使ができる範囲が明確に定められるというふうに承知をしておるんですけれども、そういう中においても、一律、不同意書の手続というものを維持していいかどうか、ここは慎重に検討していきたいという考えでございます。

米山委員 これは、要は決まっていない。しかも、どっちもどっちみたいな回答で、非常に、どんどんといこうと思ったら、ここはちょっと、より確認させていただきたいんですけれども。

 今、両方のことをおっしゃられたわけですよね。要するに、離婚後共同親権で、しかも、パスポートの発行というのは、それ自体は公法上の行為ですけれども、それが果たして単独親権の対象なのか、共同親権の対象なのかというのは、そんなに明確じゃないわけですよ。法律行為の取消し、取り消せないというのは親権から出てくるものですけれども、同時に、パスポートを取らせる、取らせないというのは、それは恐らく親権の範囲内なんですね。親の監護の範囲内であるわけです。

 結局、外務省としては、取り消せる、取り消せないとは別に、親権の行使、親権の範囲としてそれを許すか、認められているか、認められていないかということでそれはおっしゃられていると思うんですけれども、今は単独でもよくて、反対がいたら駄目という運用をしている。

 今後、離婚後共同親権が出たときに、今ほどおっしゃったのは、単独だけでいいという運用でいいのかとおっしゃられたので、その回答は、では、これからは、結局、離婚後共同親権にした人は必ず二人の署名が要るのかというふうに取れる答弁をされたわけです。

 一方で、それは教育の範囲とみなしたり、若しくは監護者が定まっていて監護の範囲と定まったりしたら、今度は、特に監護者が定まっていたりしたら、監護者の同意があれば他の親権者が反対してもいいとも取れる答弁をされたわけですよ。

 そうすると、どっちなんですか。しかも、それを現実的には一つの申請書に書き入れなきゃいけないわけでしょう。そんなにいろいろな、毎回毎回、いや、あなたはどうなんですか、あなたのうちの監護者は誰なんですかなんて決められない、言えないわけだから、それに対して統一的なやり方を決めなきゃいけないじゃないですか。

 さすがに、これから趣旨に沿ってやりますじゃなくて、大きな方針としてどうするつもりなんですかというのは、それは今お答えになれないと困るんじゃないですか。大きな方針を伺います。

長徳政府参考人 お答えいたします。

 まさに委員御指摘の大きな方針につきまして、法務省を始めとする関係省庁とよく協議をし、連携して対応していかないといけないというふうに思っております。

 これはまた、パスポートの取得の際の手続に限らないというふうに思うんですね。ほかのいろいろな諸手続との運用の整合性というものも大事だというふうに思っておりますので、そこはしっかり対応していきたいと思います。

米山委員 全くまとまっていないので、これはさすがに、ちょっと文書にしていただいて出していただけるように、委員長、お取り計らいをお願いいたします。

武部委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。

米山委員 これはやはり大きな問題ですので、是非そこは、せめて大方針は示していただきたいと思います。しかも、そんな個別になんかできっこない話ですからね。

 大分時間を取りましたけれども、次に、今度は、住所変更の届出ですね。

 これについても、今度は総務省にお伺いしたいんですが、こちらの現在の運用は、住民票は、十五歳未満の人は親権者の届出のみを受け付けている。要は、十五歳未満の人は自分で移転とか転居届を出せない、ただし、出すのは一方の親権者でよろしいというふうになっておるわけです。

 これも、恐らくは、親権の行使としては共同親権を前提で、でも、単独親権、片方の親権者がやっていることをもって両方の合意があるとみなしているということだと思うんです。これも、もしこの改正案が成立した場合にはどのように運用されるおつもりなのか、御所見を、今の見解を伺います。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 住民基本台帳制度におきましては、住所は、客観的居住の事実を基礎といたしております。これに当該居住者の主観的居住意思を総合して決定する、こういうこととされております。

 その上で、住所に関する市町村長への転入又は転居の届出は、転入、転居した日から十四日以内、転出届は、転出することが確定した後、その住所を去るまでの間にその事実を届け出るなどとされております。

 未成年者に係る届出につきましては、転入転出等の事実や現に届出を行っている者の代理権等を確認し、転入転出等の処理を行っておりますが、現在の婚姻中における共同親権者であっても、父母双方の同意は求めておりません。

 今回の民法改正後における転入転出等の届出につきましても、現行の共同親権である婚姻中における取扱いと同様と考えておりまして、基本的には、現在、現行の事務の取扱いを変更することは想定をしておりません。

米山委員 それはそうなんだと思うんです。それならそれで結構です。

 要は、それは単独親権の場合は結局単独で出せるし、共同親権の場合もどっちかで単独で出せるということで、もし仮にクレームがついても、確かに、住所の変更に関してはもう事実ですからね、おっしゃるとおり。クレームがついたら、では、どこに住んでいたやつかと確かめてやるということでしょうから。結局は、申請者はそれほど、クレームがあった後は問題にならないわけですよね。

 でも、実は意外に、やはり出すときにはどうなるかと決まっているべきだと思うので、それは現行のとおりのままで維持されるということで結構かと思います。

 次は、やっと民法に戻れるんですけれども、今ほどあったように、実は共同親権とはちょっとまた独立な話で、そもそも婚姻中の親権行使に関しても、今まで共同行使なのか単独行使なのか漠然としていたものを共同行使というふうに明文化して、でも、それは全部共同行使では難しかろうということで、単独行使できる例外を、これは別に婚姻中もですよ、何も離婚に限らないですけれども。婚姻中を含めて、八百二十四条の二の一項、二項、さらに、これは離婚後ですけれども、八百二十四条の三の監護者で定めています。

 そうしますと、先ほど民法五条のところで言いましたけれども、法定代理権の取消権、同意権というのが民法五条で決まっているんですが、こういうふうに親権の共同行使と単独行使を分けた以上は、この取消権、同意権も、それぞれに応じて共同行使、単独行使になるということでいいんですね。逆に、単独で行使できる親権というのは、日常の教育なんかは単独で取り消せる、単独で同意できるということでよろしいですか。確認です。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 少し説明をさせていただければと思いますが、まず、現行民法の第八百十八条及び八百二十四条によりますれば、父母双方が親権者である場合は、法定代理権の行使を含め、親権は父母が共同して行うこととされており、その法定代理権の単独行使が認められる範囲につきましては、明文の規定がなく、解釈に委ねられているところでございます。

 本改正案では、民法第八百二十四条の二第一項及び第二項により、親権の単独行使が許容される場合を規定しておりますが、この規定は、現行民法の解釈も踏まえて、親権の単独行使が許容される場合を明確化する趣旨のものでございます。

 その上で、その規律の内容を御説明申し上げます。

 まず、民法第八百二十四条の二第一項第三号では、子の利益のため急迫の事情があるときは、法定代理権の行使を含め、父母の一方が単独で親権を行うことができることとしております。

 また、民法第八百二十四条の二第二項では、監護又は教育に関する日常の行為については、親権の単独行使をすることができることを定めております。

 この規定について、法制審議会家族法制部会におきましては、子の日常の行為に法定代理権の行使を含むかどうかは、現行民法と同様に、解釈に委ねられるとされましたが、このような日常の行為に際しては、一般に、親自身の名義で法律行為を行うことができるほか、親権者が未成年者に自由に処分を許した財産を処分するときなどは、子が親権者の同意を得ることなく法律行為をすることができることが確認をされたところでございます。

 さらに、民法第八百二十四の三第一項では、民法の規定により定められた監護者の権利義務を規定しておりますが、監護者の権利義務につきましては、現行民法の解釈として、法定代理権は監護者に帰属しないとされており、本改正案は、このような解釈に変更を加えるものではございません。

 本改正案のこれらの規定は、現行民法の解釈を明確化するものでありまして、いずれにしましても、父母双方が親権者である場合に、現行民法の下でその一方による親権の単独行使が認められるものについて、本改正案により親権の単独行使が認められる範囲が制限されるものではないと考えております。

米山委員 全然答えになっていなくて、余り関係のないところは言わなくていいんですが、関係ない解説とかは本当に不要なので、それはやめてください。

 その上で、言っているのは、では、単独で行使できるときに単独で取り消せますかと聞いているんですけれども、それだけ、イエスかノーかで答えてください。

竹内政府参考人 先ほど申し上げましたように、日常の行為について、法定代理権を含むかという話になってくるかと思いますが、含まないという解釈によりますと、単独の行為について単独で取り消せるかという御趣旨ですか。(米山委員「そうです。もう通告もしているよ。文書に書いて出しているでしょう」と呼ぶ)済みません。

 日常の行為について、単独行使はできますが、それを単独で取り消せるかということについては、法定代理権を含むかどうかという話になってくるのかなと思います。

米山委員 逆に、それも決まっていないなら、この法律は執行できないですよ。

 だって、単独で親権行使できて、それが、例えば病院で、この後質問しますけれども、いろいろな法律行為ができるのに、それを取り消せるのかどうかが決まっていないんですか。それはひど過ぎるでしょう。しかも、これは僕は通告していますからね。答えてください。

竹内政府参考人 失礼しました。

 単独で行使できるものについては、単独で取り消すことができます。

米山委員 それはそうでしょう。最初からそうだと思うんですよ。さっさとそう言ってください。

 要は、単独行使なら単独で取り消せるし、単独で同意できるわけですよね、それを単独行使と言うんでしょうから。

 それを前提に、例えば、今度は、事例になりますけれども、未成年の子が、自分で携帯料金を払いますよということで、自分名義で携帯電話の契約をするという場合を考えます。

 これは、八百二十四の二第二項の監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使に係る親権の行使なのか、それとも、それを超えるものなのか。結構限界的な、今どき携帯電話なんて日常だと言う人もいれば、いやいや、携帯電話はやはりお金がかかるからそれは日常じゃないと言う人もいるんだと思うんですよ。

 これは離婚後でも婚姻中でもいいんですけれども、いずれにせよ共同親権で、母親が、いや、これは日常に係る行為だということで、自分は単独で親権を行使できることだと考えて、母単独名義で同意しました。同意したんですよ。でも、それはあくまで子供が契約している。母は同意しました、それで契約しました。携帯電話会社も、単独でできるのなら、では、単独でいいんですねと思って契約しました。ところが、父は、いや、違う、俺は了解していない、これはそもそも日常の範囲を超えると。裁判に訴えたら、裁判所も、いや、これはやはり日常を超えますねと言った。

 この場合、母はあくまで単独名義で同意していますので、民法八百二十五条の、父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのために効力を妨げられないというのは適用にならないはずなんです、これは共同の名義じゃないから、単独の名義でやっているから。先ほど来、単独で行使ができるものは単独でできるはずだから。

 そうすると、これはどうなるんですか。父親の方は、いやいや、違うと。結局、裁判所もこれは単独じゃなかったと言ったので、では、俺の名義で、俺が取消権を行使して取り消せますと言えるのか。また、取り消せないとしても、今度は父が、携帯会社に、賠償を求めます、あなたは俺に確認しなかったでしょう、ちゃんと共同親権を確認しなかったでしょうといって賠償を求められるのか。さらには、父が母に、おまえ、勝手なことをしやがってと賠償を求められるのか。御所見を伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行民法五条によりますれば、未成年者が法律行為をするには、法定代理人である親権者の同意を得なければならないとされておりまして、その同意がない法律行為は取り消すことができるとされております。

 委員御指摘のとおり、民法八百二十五条を適用するためには共同名義で行うことが必要になってまいりますが、委員の御指摘のケースですと単独名義ですから、八百二十五条そのままの適用にはならないというふうに考えられます。

 この場合、現行民法の解釈として、親権者である父母の一方が単独名義で法定代理権を行使した場合において、例えば、取引の相手方において当該親権者に権限があるものと信ずべき正当な理由があるというときには、民法第百十条の表見代理により取引が保護され得ると解釈されるところでございまして、この点は本改正案による改正後も同様であると考えられます。

 加えて、親権者による取消権はあくまでも子の利益のために行使すべきものであることから、その取消しにより子が被る不利益の内容や程度、法定代理人の取消権行使の目的などの諸事情に照らしまして、法定代理人による取消権の行使が権利の濫用に当たるという場合が考えられるところでございます。

 本改正案では、親権を子の利益のために行使しなければならないことや、父母が子の意思を適切な形で尊重することも含む趣旨で、子の人格を尊重しなければならないことを明確化することとしておりまして、法務省といたしましては、濫用的な取消権の行使がされることがないよう、適切かつ十分に周知することとしたいと考えております。

 それから、責任のところでございますが、不法行為に基づく損害賠償の可否でございますが、これは個別具体的な事情にもよるところでございますが、あくまで一般論としてお答えいたしますと、故意又は過失により他人の権利又は法律上保護される利益を侵害し、これによって損害が生じた場合に、損害賠償請求権が発生いたします。

 御指摘の事案におきましても、取引をした企業、携帯会社でございますが、これに故意又は過失がない場合や、この取引によって別居親に権利侵害や損害が発生していないような場合には、損害賠償請求は認められないものと考えます。

米山委員 法律の実際の運用というのは、確かにおっしゃるとおり、表見代理であったり権利濫用みたいなものを使うから、大体、非常識なことというのは余り起こらないのは、それはそうなんですけれども。でも、今の御答弁からは、やはり理屈上は表見代理ですとか権利濫用ですとかという一般条項を持ち出さなきゃいけないじゃないですかということになるわけですよね。結局持ち出しているじゃないですか。

 そうすると、やはりこれは携帯会社としては怖いでしょう。逆に、今度、例えば私がその携帯会社の顧問弁護士だとしたら、やはりそれは怖いですよね。単独ではなかなか難しくないですか、それは必ず両親の同意を求めることに、求めた方が安全ですよとなっちゃうと思うんです。

 これは別に、携帯会社なら、せいぜい契約した携帯が解約されるだけだからいいんですけれども、先ほど鎌田委員からも質問があった医療とかになっても、同じことが起こり得るんだと思うんですよね。本当に子供だったら、それは確かに、親がこの子に医療をしてくださいと契約しているから取消しみたいな話じゃなくなるのだと思うんですけれども、やはり、子供がもはや中学生ぐらいになったら、子供が実は契約しているみたいなことだってあり得ると思うんですよね、子供が払っていますみたいな場合だって。

 そうすると、やはりこれは、枝野委員も言いましたけれども、共同親権なのに、それを片方の親が単独で行使できると誤認して単独でした場合の第三者保護規定というのをちゃんと作っておくべきじゃないですか。先ほどの八百二十五条、実際に八百二十五条があるわけですよ。今まで共同親権であって、やはりそういうことがあるから八百二十五条を作ってある。今回、単独をわざわざ明記したのに、単独に対する保護規定がないから、やはりみんな、結局、単独の場所は作ったはいいけれども、それは結構混乱しませんかというのが、先ほど来ずっと言われているわけなんです。

 なので、これは法務大臣にお伺いしたいんですけれども、たった今、それは間に合わないのかもしれませんが、でも、共同を単独と誤認した場合の第三者保護規定というのを作るべきじゃないですか。かつ、作った方が、単独で親権を行使する場合も安心して行使できるし、受ける側もそれはちゃんと受けられるし、社会的にも、片方の親の署名でいいですということになって混乱がなくなると思うんですが、御所見を伺います。

小泉国務大臣 父母双方が親権者である場合において、その一方が単独で親権を行うことができると誤信して親権を単独の名義で行使してしまうことは、現行の民法の下でも生じ得る問題であります。

 この問題については、現行民法の下でも、解釈により、取引の保護が図られ、他方の親権者からの取消しができる場合が制限される、こういうことでございます。

 この点は、本改正案による改正後も同様であり、御指摘のような第三者保護規定を作る必要があるとは、現時点では考えておりません。

米山委員 それは、今までの答弁を全く引いてくれなかったのかなと思って、ちょっと残念なんですが。

 そうじゃないですよ。だって、今までは、基本的に単独で行使というのが明文でなかったから、だから第三者保護規定もあるんですよ。今だって、共同名義でやった場合の第三者保護規定は、ちゃんと八百二十五条があるわけですよ。整合的に考えるんだったら、単独で行使できることを決めたんだから、それに対する保護規定だって本来あるべきだと思います。

 ですので、今後、そこは法改正まで行くかどうかは、法改正は私は検討してほしいと思うし、同時に、今ほど言ったように、それは結局、いろいろな解釈で手当てされているわけなので、そうすると、単独で行使できる場面というのを相当きちんと周知しないと、一体どう解釈されるのか、どう対応されるのか分からなくなって本当に世の中が混乱しちゃうので、是非それはきちんと御対応いただければと思います。

 では、次に行かせていただきます。

 質問をちょっと飛ばさせていただきまして、資料の二を御覧ください。

 これが先ほど、これも随分お話になっているところの離婚届なわけでございます。紙切れ一枚で離婚できる、これを出せばできるわけなんですよ。

 資料四の方にあるんですけれども、我々はずっと裁判離婚のことをお話ししているんですけれども、実は、裁判離婚は基本的には一割。協議離婚が九割。九割の人は、この紙切れ一枚を出して離婚されているわけなんです、資料二の。しかも、今どき年間二十万組、四十万人ほど離婚しておりますから。なので、この緑の紙切れは、年間四十万の人が御署名される、結構使われている書式なわけなんです。

 これを見ていただけると、未成年の子の氏名、夫が親権を行う子、妻が親権を行う子と書いてあるだけでして、当然、このフォーマットを変えないと、それは共同親権、単独親権、さらには監護者の定めがある中で、大混乱といいますか、になり得るんだと思います。

 そもそも、ここに、今このフォーマットのままで、親が親権を行うことだけ、例えば花子さんとかと書かれたとして、本当にそれは単独親権なのか共同親権なのか分からぬという状況になってしまうんだと思うんです。

 これは時間もないので、この質問はちょっと、もはや私が答えて飛ばさせていただこうと思うんですが、当然ながら、このフォーマットはきちんと変わる、それは何を選んでいるのか分かるということだろうと思います。

 それと同時に、何せ皆さん、この紙、フォーマットがきちんとしたとしても、それに書いたら離婚できちゃう。中身なんて、正直、余り理解していなくてもできちゃうわけですよ。今まで、そういう言い方がいいかどうかはまた別として、今までは基本的に単独親権ですから、同居親の方が、ちゃんと私はこの子供の親権者としてしっかり育てていくんだという覚悟さえあれば、親権のない親の方は、覚悟があればもちろんいいけれども、なくたって何とかはなったんだと思うんですよね。

 でも、これが今後共同親権になって、共同親権が選ばれる。ところが、同居親の方はすごく覚悟を持っているけれども、別居親の方は、そんな、自分が共同親権を選ぶことによっていろいろなことを、何か義務があったり権利があったり、同意できたり拒否できたりすることを全く理解もしていない。離婚が始まってから、突然、何の理解もしていなかった別居親の方からいろいろなことを言われて大混乱ということは非常に起こり得ると思うんです。

 ですので、離婚の九割を占める協議離婚において、フォーマットとしてはもちろんきちんと誤解がないようにというのは当然ですけれども、ちゃんとこれを書く人が中身を分かっている、共同親権というのはこういうことであり、監護者を決めるというのはこういうことであり、監護者を決めないというのはこういうことだと。しかも、それが、夫も妻もちゃんと自分で考えて同意しているということを確認する手続というのはあるべきだと思うんです。特に、何せ日本は裁判が必要ないわけですから。

 それについての大臣の御所見を伺います。

小泉国務大臣 子供の利益の確保を中心に考えれば、離婚する両親が、今後の子供の養育について、様々な考え方、あるいは覚悟、知識、そういったものを確認し合い、共有していくということは、子供の利益のために非常に重要なことだと思います。まず実体的にそれを進めていかなければならないというふうに思います。

 先生がおっしゃったのは、それを制度的に何か担保するものという御議論でしょうか。(米山委員「そうです」と呼ぶ)そうなると、今度は、それが調わない限りは離婚ができないという制約もかかってくるわけです。それは子供の利益にならない、そこをどう考えるかという問題が出てくると思います。

 簡単に結論がまだ出せる状況ではないと思いますので、この法律を施行し、共同親権、あるいはそういったものがどういうふうに理解され、実施されていくのか、そういう実態も見ながら、問題意識は持って対応を考えていきたいと思います。

米山委員 それは、制度をつくれば制約になる、それはそうですよ。でも、今だって、もちろん離婚届を出さなければ離婚できないという明らかな制約があるわけじゃないですか。結局、制約というのは、範囲の問題なわけですよ。何の制約もなく、勝手に、何の届けも出さないで離婚されたってそれは困りますでしょう。これだって制約の一つなわけです。

 それで、例えば共同親権を選んだときに、しかも監護者がないときに、それは両方が提出しなければいけませんとか、両方が来て提出しなければいけませんとか、両方がちゃんと合意していることを確認するために、せめて両方の身分証明書を添付してくださいというような運用をすることは、定めることは大いにあり得るじゃないですか。逆に、通常の契約を考えたら、むしろその方が普通だと思うんですよ。二人の義務者がいるのに、片方が何にも、ただ自分で書いたかもしれない署名みたいなものを持ってきて、でも、それで出せるなんて契約というのはめったにないでしょう。二人義務者がいたら、大体二人ともちゃんと来るか、少なくとも一人の免許証の写しは要りますよ、契約だったら。

 ところが、離婚届に関しては、現行の運用では一人で出せちゃうわけですよ、署名さえあれば。今まではまだしも単独親権だったけれども、これからは共同親権の場合だってあるのに、一人で出せちゃう、相手の同意なんかまるで分からないとなるわけですから、それはきちんと対応しなきゃいけない。何とは言えないですけれども、いろいろな方法があるのでね。

 それはきちんと御対応いただく、少なくともそれに対してしっかりと検討していただくということを言っていただきたいと思うんですが、大臣の御所見を伺います。

小泉国務大臣 法の執行に関わる部分でありますので、裁判所の手続、考え方もこれは徴する必要はあると思いますが、重要な問題だという問題意識を持って、今後の施行後の状況を丁寧に注視していきたいと思います。

米山委員 では、以上で終わります。ありがとうございました。

武部委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 教育無償化を実現する会の斎藤アレックスでございます。

 日本維新の会との統一会派を代表して、質問をさせていただきたいと思います。

 まず一点目として、監護者の権利義務に関して何点か御質問をさせていただきたいと思います。

 今回の法改正案において、特に私も疑問として感じているところが、これまでも監護者の指定というものはありましたけれども、今回、改めて、監護者の権利義務が八百二十四条の三に明確にされています。「子の監護をすべき者は、単独で、子の監護及び教育、居所の指定及び変更並びに営業の許可、その許可の取消し及びその制限をすることができる。」こういった規定が新たに設けられているわけでございます。

 これまでの、本日のやり取りを聞いていても、これまでもそういった権利が監護者にあるとみなされていたけれども、そのことを明確にする文言なんだということで御説明をされていると思いますが、一方で、今回、共同親権を選択可能とする、そういった法改正案である。そこの部分に、同時に、監護者の権利がこういうふうである、親権者と別に監護者というのはこういう権利を持っているということを明確にするということは、何かより特別な理由、元々あった権利を書いただけですという説明ではなかなか理解し難いというか。

 共同親権が可能となっていることと監護者の権利が明確にされたことというのは、特別な理由、意味があると思っているんですけれども、その点、まずお伺いをしたいというふうに思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行民法には、監護者の定めがされた場合における監護者や親権者の権利義務について明文の規定がなく、その解釈が必ずしも明らかでないという指摘がございました。

 そこで、本改正案の民法第八百二十四の三第一項は、現行民法の解釈も踏まえつつ、民法の規定により定められた監護者が単独で子の監護及び教育をすることができることを明確化したものでございます。

斎藤(ア)委員 そういった御答弁、本日も伺っているんですけれども、ちょっとそれだけだと分からない。例えば、今回、共同親権になって、親権を持っているけれども監護権を持たない、そういった父母は生まれるという可能性が当然ありますけれども、そのことが何を意味するのかということを聞きたいんですね。

 ちょっと、質問としてはこういうふうに聞きたいんですけれども、離婚後の親権に関し、裁判所が親権については共同親権ですよというふうに定めた一方で、監護者に関しては、父母どちらか一方だけを定めるケースというのも当然想定をされているんだとは思うんですけれども、どういった事由があればそういった特殊な状況になるのか。共同親権だけれども監護者はどちらか一方だけですというのはどういったケースが考えられるのか、なかなかちょっと想像しづらいんですけれども、それについて教えていただければというふうに思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母の離婚後に子の身上監護をどのように分担するかはそれぞれの事情により異なるため、本改正案では、離婚後に父母双方が親権者となった場合において、監護の分掌の定めをすることができることとしているほか、父母の一方を監護者と定めることもできるとしております。

 どのような場合に監護者の定めが必要となるかは個別の事情によって様々でありますので、一概にお答えすることは困難なところでもございますが、一般論として申し上げれば、監護者指定の要否を判断するに当たっては、子の利益を最も優先して考慮しなければならないということになろうかと思います。

 その上で、法制審議会家族法制部会における議論の過程におきましては、委員等から、例えば子の居所や同所からの進学先の決定など、子の身上監護に関する包括的な事項をめぐる将来の紛争が生ずる可能性がある場合には、離婚後の父母双方を親権者とする場合であっても、その一方を監護者と定めることが子の利益にとって望ましい場合もあり得るのではないかとの指摘があったところでございます。

斎藤(ア)委員 これはちょっと明確に通告をしていないんですけれども、その包括的な、居所の指定などについて紛争が生じる可能性があるというのは、国際結婚のような場合を想定されているんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 必ずしも国際結婚の場合を想定しているわけではございませんで、委員先ほど御指摘になられたとおり、監護者が指定されますと、改正法の八百二十四条の三で、監護者が教育及び監護に関して包括的な権限を取得するということになります。したがいまして、監護者が指定される場合としては、父母間で子の監護についてそのような必要性がある場合というふうに考えておるところでございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 やはり、なかなかちょっと、具体例も、もちろんこれから法改正の採決がなされて、可決をされて運用が始まれば、これから運用がされるということなので事例はないんでしょうけれども、明らかに分からないですね。どういった状況で、親権者が、親権を持っているけれども監護者に指定されなくて、監護の一切のことに関して関与ができなくなるような状況がどういった場合だったら正当化されるのかというのは、なかなかちょっと想定というか理解がしづらいので、その点、特に丁寧な説明が今後もなされなければならないというふうに思っております。

 今回、監護者を必ず指定するべきではないかという意見も出されているかというふうに思います。まず、監護者の定めを必須としなかった理由について、改めてお伺いをさせていただきたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母の離婚に直面する子の利益を確保するためには、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要であると考えております。

 ただ、父母の離婚後に子の身上監護をどのように分担するかは、それぞれの御家庭等の事情により異なるものと考えます。そのため、個別具体的な事情にかかわらず離婚後の父母の一方を監護者と定めることとするのは相当ではなく、本改正案では、監護者の指定を必須とはしていないところでございます。

斎藤(ア)委員 ちょっと法務大臣にお伺いしたいんですけれども、これは、本会議でもこの委員会でも繰り返し御確認をさせていただいていて恐縮なんですけれども、今回の民法改正案というのは、子の利益のためには、婚姻関係の有無にかかわらず、父母がお互いの人格を尊重して、協力をして子に関わっていくことが重要だという立場に立っているということであって、そうではない考え方、例えば、離婚後に関しては父母どちらかに養育の権限などを集中させた方が一般的に子の利益になるんだという考え方ではなくて、離婚後も、婚姻関係の有無にかかわらず、父母が連携協力をして、人格を尊重しながら一般的には子のために関わっていった方がいい、そういった考え方に基づいている法改正であるということでよいのか、改めてお伺いをしたいというふうに思います。

小泉国務大臣 まず第一に子供の利益の確保を図ること、そして、それを実現するために、子供の人格の尊重あるいは夫婦の協力義務、こういったものが定められております。その中で、多様な家族形態、多様な価値観がありますから、それぞれの状況、考え方、価値観に一番ふさわしい形を離婚後の養育の在り方としては定めることが望ましい、こういうふうに考えているわけでございます。

 その中で、もしそれが許されるならば、可能であるならば、父母が子供の養育に関わるということが子供の利益に資するものであるという考え方もそこには織り込まれています。

斎藤(ア)委員 今のお話にもあったように、可能であるならば、父母が離婚後、婚姻関係の有無にかかわらず、子の養育に関わっていけることが一般的には子の利益につながるんだろうという考え方があると思いますし、私もそうだというふうに思っているんですけれども、もし仮に監護者の定めを必須としてしまった場合、今回、八百二十四の三に監護者の権利義務が明確に書かれていまして、子の監護に関する身上監護の部分に関しては一切監護者が単独で決められてしまうということになってしまうので、それを踏まえると、監護者の定めを必須としてしまった場合、それはもう単独親権と変わらなくなってしまうんじゃないかなというふうに感じているところなんですけれども、その点、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

小泉国務大臣 監護者は単独で子の監護及び教育をすることはできますけれども、子供の財産管理をする、これはできません。代理して契約をする、締結する、これもできないわけであります。

 ですから、監護者の定めを必須とした場合においても、これは単独親権の状況とは異なると思います。

斎藤(ア)委員 親権に関して全て、財産権を含めて監護者が管理をできるというわけではないという御答弁だったんですけれども、身上監護、日々どういった生活を送るのかとか、居所に関してどうするのかとか、どういった学校に行くのだとか、そういったことに関しては監護者が単独で決定をできるということだと思いますので、もし監護者の指定を必須としてしまえば、共同親権になってもどちらか一方が監護者になってしまうので、それは、父母がお互い協力をして、子のための養育に努力をするということが実現できなくなってしまいますので。

 必ず指定をするということであれば、今回の法改正の理念といいますか、親の責務をしっかりと定めて、両親が、父母が婚姻関係に関係なく子の最善の利益のために尽くしていくということが私は実現できなくなってしまうと思いますので、その点は確認をしていきたいというふうに思っております。

 今回の法改正の審議では、大変価値観が、反対派、賛成派で対立をしてしまっているというふうに思います。

 一方は、私もそうなんですけれども、子の最善の利益のためには、一般的には、離婚後も父母がしっかりと子供に関わっていくことが子の最善の利益につながると考えていますけれども、そうではない考え方も当然あります。子の最善の利益のためには、離婚後は父母のどちらかにその親権を単独で持たせて、それが子の利益のためになるんだと考えている方も当然いらっしゃるわけでございますので、大変価値観の対立が鋭い法案になっているなというふうなことを感じます。

 今回、法務省からこういった法改正が出てきた。内容については様々なバランスを取ったものだと思いますけれども、父母の連携、婚姻がなくても、しっかりと子の利益のために協力をして子の養育に取り組んでいかなければならないという法の趣旨に関しては、私は、これは時代にかなった、そしてこれからの日本に必要な法改正だというふうに考えておりますので、様々な運用の問題が出てくるかもしれませんけれども、そういったところをどう解決していくのかというところで、前向きに、引き続き採決まで議論をさせていただきたいというふうに考えております。

 今回の議論の中で、先ほども少し、監護者と親権者が別に指定をされた場合、なぜそういった理由でそういったことになるのかといったことで分かりづらいということを申し上げたんですけれども、そのほかにも、様々な疑念というか、これは実際の運用はどうなるんだろうかということで、全く見えない部分が大変この委員会でも議論になっていますので、改めて、その部分を何点か今の法務省の見解を聞いていきたいというふうに考えているんですけれども、裁判所が判断するときの事由とか考え方に関して、何点か聞いていきたいと思っております。

 父母が共同して親権を行うことが困難な場合はどちらか一方を親権者とする、そういった今回の規定となっていますけれども、そもそも裁判所に持ち込まれるような案件では、父母の協議が調わないわけですから、父母間の葛藤は相当高まっているということを当然考えるべきだと思います。

 葛藤が高まっているからという理由で親権者をどちらか一方に定める、共同親権とせずに単独親権としてしまうのでは、これは本法案の趣旨が生かせないというか、全く実現できないというふうに思うんですけれども、こちらも繰り返しの議論になると思いますけれども、こういった指摘、高葛藤であるということを理由に単独親権にするということではないと思うんですけれども、改めて、そういったところ、法務大臣の御所見を伺いたいというふうに思います。

小泉国務大臣 何度か御答弁させていただいておりますけれども、高葛藤である、あるいは合意が調わない、それは大きなマイナス要素ではありますが、しかし、それでもって一律に単独親権とするという結論に直結するのではなくて、様々な理由がそこにはあると思われますので、そういった理由に関わり、中に入り、また、調停という形で両親の考え方も改めるような促しができる、そういった丁寧な努力をした上で、最終的に、総合的に判断をするという形が望ましいと思います。

斎藤(ア)委員 いわば葛藤を解きほぐしながら、何とか両者が合意できるところを模索をしていくということになるんだということだと思います。大変なことだと思いますけれども、それが法の趣旨にのっとった運用かと思います。

 父母間の葛藤が高い案件に関して、当然、DVや暴力、そういったものが伴えば、判断というのはやりやすいわけです。その事実認定が難しいという話は、その後、またさせていただきますけれども、こういった明確に白黒つくような案件ばかりではなくて、お互いがお互いを非難して、お互いがお互いを責めて、責任はお互いにあると言っているケースがほとんどだと思うんです。そういった場合、白黒つけられない場合でも、高葛藤であったりとか、その他様々な理由で共同親権が難しい、単独親権にせざるを得ないというときは、どっちが親権を取るのかということで、これも大変な議論になるというふうに思うんです。

 どちらかに責任が明確でない場合ばかりだと思うんですけれども、そういった場合でも、DVや虐待がない場合でも、当然、共同親権ではなくて単独親権に定める場合があるというふうな理解でよいのか、ちょっと改めてお伺いしたいと思います。

小泉国務大臣 これはまさに個別具体的な事情によりますので、本当に一概にお答えすることはできませんが、子供の利益というところに立脚した場合に、そういう葛藤があり、またそれぞれに責任があるんだけれども、どちらかの親に親権を委ねるという判断はあり得ると思います。

斎藤(ア)委員 参考人の方からの御意見でもありましたけれども、ある種、ビジネスライクに養育計画などを定めて、もうビジネスライクに父母は関わってもらって、何とか共同親権で子供に両親が関わっていくような形も考える必要があるのではないかという話があって、私も、そういった意味で養育計画というのはすごい重要だと思うんです。もうお互い愛していないし、お互いのことが憎くてしようがないわけですから、普通に、何の取決めもなく協力をすることはやはり難しいと思いますので。

 こういった高葛藤の案件でそういった親権をどっちにするのかみたいな問題が、ちょっとこれは質問ではないんですけれども、問題が生じるからこそ、養育計画の策定などは特に重要だと考えておりますので、また引き続き検討、取組をしていただきたいと思います。

 次に、DVのことについてお伺いをしたいと思います。

 八百十九条の七項に、DVを受けるおそれがある場合などが単独親権となる例として明記をされているわけでございますけれども、まず、DVの事実認定が難しいということもあります。これを誰がどのように行うのかということを改めてお伺いしたいのと同時に、DVを受けるおそれ、おそれをどう判定するのか、これは更に難しいと思うんですね。DVがあった事実とDVを受けるおそれはどのように異なって、どうそれを裁判所が判断していくことになると法務省は想定をされているのか、こちらも御答弁をお願いしたいというふうに思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案の民法第八百十九条第七項第一号に言う「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれ」や、同項第二号に言う「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれ」とは、具体的な状況に照らしまして、そのような害悪や暴力等を及ぼす可能性があるということを意味しております。

 このおそれにつきましては、裁判所において、個別の事案ごとに、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とを総合的に考慮して判断するということになると考えております。

 そして、このおそれの認定につきましては、過去にDVや虐待があったことを裏づけるような客観的な証拠の有無に限らず、諸般の状況を考慮して判断することとなると考えております。

斎藤(ア)委員 こちらに関しても、裁判所の判断というか、調査というか、事実認定、大変裁判所に委ねられる部分が大きいということを改めて今の答弁を聞いていても感じます。

 続けて、次は、八百二十四条の二の三項の特定の事項。

 日常の監護に関しては、親権者が、父母どちらか一方が行う、行使をすることができるという規定の後に、特定の事項に係る親権の行使については、父母が協議を行って、協議がまとまらない場合には裁判所が判断するような、そういった規定になっているんですけれども、この特定の事項が何なのかということは、これも繰り返し議論されていて、本日も議論をされております。

 特定の事項を具体的に示していかないと、共同親権になったらどういう生活になるのかということがイメージできないということでございますので、この特定の事項については具体的にどういった考え方で定めていくのか、できれば具体例を早く出していただきたいと思うんですけれども、その点も御答弁をお願いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、改正民法八百二十四条の二第三項の特定の事項でございますが、これは、父母が単独で行使し得るものを除いた、父母が共同して決定すべき事項のうち、具体的に意見の対立のある事項を指しておりまして、例えば、子の進路に影響するような進学先の選択等がこれに当たり得るものと考えております。

斎藤(ア)委員 学校に、ここに入るとか、重要な選択だと思いますので、想像しやすいと思うんですけれども、例えば、日々の暮らし、何を食べるとか、日々の、一般のワクチン接種であったりだとか、病院にかかるとか、それは日常の監護のことに該当すると思うんですけれども、例えば、父母どちらか一方とだけ旅行に行く場合。国内旅行であれば、何か日常の監護な感じがしますけれども、例えば、韓国に行って何かお買物をどちらか一方とだけ、お母さんと子供で行って買物をするとか、海外に行く場合とか、そういった場合は日常の監護に当たるのか。海外留学をするというのは、これは特定の事項に当然当たると思うんですけれども、親が一緒についていって旅行するのは日常の監護になるのか。

 一方で、親がついていかずに、子供だけ旅行に行かせるような家庭もあると思うんですね。高校生のときにサマースクールに行かせるだとか、何かそういった場合もあると思うんですけれども、いろいろちょっと例があって、個別具体的にお答えできないと思うんですけれども、海外に行く場合、それは必ず毎回親の承諾、両親が協議をして必ず合意に至らないと海外に旅行にも行けないのかというところ、ちょっと具体例として一つお答えいただきたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、改正民法第八百二十四条の二第二項の日常の行為の解釈でございますが、これは、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないものを指しております。

 お尋ねの子の海外旅行につきましては、同行者の有無ですとか、その目的、期間等、様々でありまして、一概にお答えすることは困難ではございますが、一般論としてお答えをすれば、短期間、観光目的で海外旅行をするような場合には、通常は日常の行為に当たり得るものと考えております。

斎藤(ア)委員 これは一例ですけれども、様々な、生活の中ではいろいろな意思決定をする場面がありますし、いろいろな行動を取るわけでございますから、そういったところは具体的に例示をされていかないと、離婚後の監護、離婚後の共同しての親権の行使というのがなかなかイメージできなくて、本法案の施行に向けての課題になると思いますので、その点、是非よろしくお願いをしたいと思います。

 最後に、まとめでお聞かせいただきたいんですけれども、私の今日の質問もそうですし、そして本日の各委員の質問もそうですし、これまでの委員会の質疑でもそうですけれども、皆様が気にされている様々な点、監護者と親権者が違うのはどういった事由でなるのかとか、DVはどう判定するんだとか、日常の監護は何で特定の事項は何なのかとか、そういった課題、問題がたくさんあるわけでございまして、協議が調わない場合は裁判所の判断にそれはもう丸投げのような状態になってしまっているというふうに私も思います。

 そのせいで法案の賛否の決定がしづらいとか、あるいは、裁判所に判断を委ねられる部分が余りに多過ぎるというのは立法府の責任としてどうなのか、法治主義にそもそももとるんじゃないか、そういった厳しい批判もあるというふうに思っているんです。

 このような状態で審議をしなければならないということは、これは致し方ないことなのかもしれませんけれども、大変重要な法案で、生活に関わる法案でございますので、私は、少し丁寧さに欠けるのではないかな、様々な例示や様々な具体例を出していくということが本当は少しでもあればよかったのかなというふうに思います。

 そもそもこれは法治主義にもとるのではないか、立法府の責任を果たせていないような中で法案審議をしなければならないのではないか、そういった批判について、法務大臣はどのように感じていらっしゃるでしょうか。

小泉国務大臣 多様な家族の形態があり、また、そこに多様な幸せを感じ取る価値観があります。それぞれを立てながら、そこに一番ふさわしい規律というものを作っていこうという考え方でございますので、やはり、中心的な考え方はしっかりと立てていますけれども、最終的な具体的妥当性については裁判所の判断を知恵としておかりせざるを得ない、これは先生も御理解いただいていると思います。そういう判断を立法府でしていただきたいということで法案を出させていただいています。

 ですから、大本の判断は立法府の判断、そして個々の判断は裁判所の知恵をかりますけれども、大枠は国会において御議論をいただくことが一番の中心的な根っこになるわけですね。そういう対応で、我々も行政府としてベストを尽くしていきたいと思っております。

斎藤(ア)委員 今回の法改正の趣旨は我々は重要だと思っておりますので、それに沿った運用はされるのか、そうでなければ、更なる法改正も含めてしっかりと立法府が責任を果たしていくべきだと思いますので、そのことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部弘樹でございます。

 今般の法改正、様々なテーマについて、課題について解決を図ろうということでございます。

 レオナルド・ダビンチ、ルネサンス時代の芸術家、様々な才能を持った方でございます。この方のお父さんはセル・ピエロ・ダビンチ、有名な公証人であられた方です。法の番人であった方。そして、お母さんはカテリーナという、農夫の、女性と書いてあります。非嫡出子であったわけでございます。

 ダビンチの幼少というのはどういう幼少期だったかというと、フィレンツェの近郊に住んでおりましたから、メディチ家の支配下にある地域に生まれましたけれども、当時の貴族の方々というのはラテン語の学校に行くのが常でしたけれども、そういうものに行けなかった。

 では、当時の非嫡出子の権利というのはどうだったのかということで、余り勉強はしていないんですけれども、イングランドなどでは、コモンローとカノン法というのが当時ございまして、土地の権利の相続だけはできたけれども、貴族の相続はできなかったということで、ははあ、そうすると、これは結局は共同親権ではないんだなというふうに自分なりに解釈したわけでございます。そうすると、共同親権でなくて、やはり貴族社会を維持するための社会だ。その後、御承知のとおり、レオナルド・ダビンチはすばらしい才能を発揮して、そして、自ら自分の人生を切り開いていったということは皆さん承知のことと思います。

 さて、この度、民法改正、非常に様々な課題を解決した法改正だと思っております。

 子供の連れ去りを、国際社会において、民法上、配慮をする条約、ハーグ条約というのがございますが、そのことについて、解決の一助となるわけでございますが、ハーグ条約について、外務省、御説明願えますでしょうか。

長徳政府参考人 お答え申し上げます。

 ハーグ条約は、監護の権利の侵害を伴う国境を越えた子の連れ去りが子に有害な影響を与え得るという認識に立ち、その子を子が元々居住していた国に戻すための国際協力の仕組みなどについて定め、もって子の利益に資するということを目的としております。

 ハーグ条約は、一九八〇年十月二十五日にハーグ国際私法会議において作成され、一九八三年に発効いたしました。我が国については、二〇一四年にハーグ条約の締約国になったところでございます。

 ハーグ条約の締約国の数は、本年、今月現在でございますけれども、我が国を含め百三か国でございます。

阿部(弘)委員 ハーグ条約に基づく実施件数というのは、直近で、インカミングが二百六件、アウトゴーイングが百七十四件、これは返還ということですね。面会交流も行われておるわけでございます。

 もちろん、国際結婚の離婚というものが必ずしも紛争になっているわけじゃないですから、何らかの話合いでそれが実現できているということです。

 最後に後でまた大臣には聞きますが、ハーグ条約において、この法改正が果たす役割というものが非常に大きなものがあるかどうか、まとめて聞きますので、大臣、答えてください。

 次に、国際結婚の中でも、特に、婚姻上、離婚が認められない国、先ほどレオナルド・ダビンチのお話をしましたが、バチカン市国、聖職者が多くお住まいの国でございますが、カソリックの国ではやはり、結婚というのは神創造への協力である、そのために離婚は認めないという国があるわけです。カソリックの国の中にも、人工中絶などは非常に厳しい国もあるわけでございます。

 身近なところではフィリピンという国があります。ここは離婚を認めない国でございますが、その婚姻やあるいは離婚手続というものはどのようになっておりますでしょうか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、フィリピンにおいて日本人とフィリピン人の間の婚姻が成立するためには、基本的に、まず、日本人が在フィリピン日本国大使館等で婚姻要件具備証明書を入手し、それをもってフィリピン人婚約者の住所地の市区町村役場で婚姻許可書を申請し、これを入手した上で、牧師や裁判官など定められた婚姻挙行担当官及び成人二名以上の証人の前で婚姻の宣誓を行い、そして、婚姻当事者と証人が署名した婚姻証明書を婚姻挙行担当官が認証するといった一連の手続が必要になると承知しております。

 また、委員御指摘のとおり、フィリピン家族法において離婚の制度は定められておりません。このため、フィリピンにおける婚姻関係を解消するためには、婚姻取消し又は婚姻無効を求める裁判上の制度が利用される必要がある、このように承知しております。

阿部(弘)委員 離婚の手続も、アナルメントがありまして、そもそも結婚が成立していなかったという建前で手続を取ることで、非常に金銭的にも、あるいは年月もかかるというふうにお伺いしているわけでございます。

 では、フィリピンと日本の間で、フィリピン女性との間で非嫡出子が誕生し、そして日本に来日された場合には、今般の共同親権の場合、どのようになっていくか、お答えいただけますでしょうか。

小泉国務大臣 フィリピン人の母と日本人の父親との間の嫡出ではない子供につきましても、子供が日本国籍を取得した場合には、父及び子の本国法がいずれも日本法となり、親子間の法律関係について日本法が適用されることとなります。

 そのような場合には、改正民法八百十七条の十二の親の責務に関する規定や、また、認知した子の親権者に関する規定の適用を受けるものと考えております。

阿部(弘)委員 二〇二一年のフィリピンと日本人の国際結婚、夫、妻、合わせて言いますが、約三千件、離婚の件数も千八百件程度というふうに、私が調べますと、そういうこともあるわけでございます。国際化というのは待ったなしの日本でございますので、国際結婚、そういった点でも、是非とも、法務省、対応を願いたいと思います。

 二〇一九年、平成三十一年二月の国際連合児童の権利委員会は、日本の第四回、第五回国際報告に関する総括所見において、児童の最善の利益である場合に、外国籍の親を含めて児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子関係について定めた法令を改正し、また、非同居親との人的な関係及び直接の接触を維持するための児童の権利が定期的に行使できることを確保するため、十分な人的資源、技術的資源及び財源に裏づけられたあらゆる必要な措置を取るよう勧告したと。

 これは課題でありますが、これが今般の法改正でどのように改善されてきたか、大臣、お答えできますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の児童の権利委員会による勧告でございますが、児童の権利の尊重及び確保の観点から、児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子関係について定めた法令を改正し、また、非同居親との人的な関係及び直接の接触を維持するための児童の権利が定期的に行使できることを確保するため、必要な措置を取ることを勧告したものと承知をしております。

 本改正案では、現行民法を見直しまして、父母の離婚後もその双方を親権者とすることができることとしているほか、婚姻中の父母の別居時における親子交流に関する規定や、家庭裁判所が当事者に対し親子交流の試行的実施を促すための規定を新設することとしておりまして、児童の権利委員会による勧告の趣旨に沿ったものと考えております。

阿部(弘)委員 この項では、ハーグ条約について、今回の民法改正がどのようにいい結果を及ぼすか、お答えいただけますでしょうか、大臣。

小泉国務大臣 ハーグ条約、これは、監護の権利の侵害を伴う国境を越えた子供の連れ去りが子供に有害な影響を与え得るとの認識に立って、その子を子が元々居住していた国に戻すための国際協力の仕組みであると承知をしております。

 我々の今回のこの改正案は、子供の利益を中心に民法の規律を考えていこう、こういう考え方でございまして、いずれも、子供を守ること、子供の幸せを確保する、そういう目的にはそれぞれ沿っています。

 ただ、内容的には全く、これは国際的な話、こちらは国内の法制でございますので、直接の関わり合いはない、別々のフレームワークだと思いますが、目的においては共通するものがあるというふうに認識しております。

阿部(弘)委員 ありがとうございました。

 では、次の項目に移らせていただきます。

 出自を知る権利について御質問させていただきます。

 まず、私も当法務委員会でも質問させていただきましたが、熊本県で行われている、ある医療機関で行われている赤ちゃんポストあるいは内密出産などへの、生まれてきた子供の出自を知る権利について、現状はどのようなことが検討されておりますでしょうか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございました、熊本県で取り組まれている赤ちゃんポストあるいは内密出産という取組でございますけれども、子供の出自を知る権利ということで、これは、子どもの権利条約において、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有するというふうにされております。

 そうした中で、内密出産についてでございますけれども、このガイドラインを一昨年提出をさせていただいたところでございます。

 そのガイドラインの中では、やはりこういった出自を知りたいというようなことを、後日、そのお子さんが成長した後に思われたとき、考えられたときに備えるという意味で、まずは、内密出産を希望する母親の方に対して、子供への身元情報の開示の意義をお伝えをすること、さらに、母親の氏名などの身元の情報について、病院の規程に基づいて適切に管理をしていただくこと、そうした身元情報の開示の方法でございますとか開示の時期など、こういったものが子供にしっかり伝達されるように医療機関や児童相談所において対応することなどを定めているところでございます。

 このように、現状といたしましては、こういった出生前後の経緯といいましょうか経過によって実父母とは異なる方に養育されるようなことになったお子さんが、成長した後に自分の出自について知りたいとなったときに備えて、その経緯に関わった機関、この場合でいうなら内密出産を取り扱った医療機関ということになりますけれども、関連する情報を管理していただくということを基本として進めているところでございます。

阿部(弘)委員 出自を知る権利というのは、当然のことながら、子供にとっては、親権を行使する男親、女親というものが当然存在するわけでございますから、それぞれの親から、今般の改正法が通りますと、当然、幸せを享受する権利を受けるわけでございます。そのためにも、いつのときか、その父親について出自を知る権利を認めることは、国際社会の中でも、特にフランスやドイツ、ヨーロッパの社会では当然のことでございますから、国がその出自を知る権利を保障するというのは、これからの法律的な課題でもあるというふうに思っております。

 それは法務省だけが負うのではなく、関係する、内閣府のこども家庭庁でも、あるいは厚生労働省でも、関わるべき省庁がしっかりとそのことを自覚して法整備に邁進するべきだというふうに思っておりますが、大臣は今いらっしゃいませんけれども、法務省、いかがでしょう。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、子供の出自を知る権利については大変重要なものだというふうに認識をしております。

 先ほどこども家庭庁からも御答弁申し上げましたとおり、法務省も、内密出産に関するガイドラインを連名で発出したところでございまして、戸籍を所管する立場からこの件に関わってはおりますが、子の出自を知る権利自体につきましては所管をしていないところでございます。

 ただ、その中身については重要なものだというふうに認識をしておりますので、関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 赤ちゃんポストで生まれた赤ちゃん、あるいは内密出産で生まれた新生児、それぞれ、その後の法的手続についてはどのようなことになっていきますか。法務省、お願いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 済みません、ちょっとつまびらかではございませんが、恐らく戸籍を作る必要があるというふうに思われますので、権限のある方から申請をしていただいて戸籍を作るということになろうかと思います。

野村政府参考人 恐縮です。内密出産の関係で、連名通知を出しておる立場もありますので、補足的に申し上げます。

 内密出産であったり、あるいは赤ちゃんポストに預けられたお子さんについては、子の母親が事実上親権を行使することは不可能でございますので、親権という観点で申し上げれば、児童相談所長が親権を行うことになる。その後、それが施設とか里親に託された場合には、その施設であったり里親であったりが親権を行うということになってまいります。

 その一方で、戸籍の手続などは、いわゆる内密出産のガイドラインのときには、市町村長職権で戸籍を作っていただくということになっております。

阿部(弘)委員 市町村長の職権で戸籍を作るということでございますので、名前も当然市町村長の職権でできるわけでございます。私もかつて町長をしておりましたので、そういう戸籍事務についても、内密出産や赤ちゃんポストはありませんでしたが、そういう事務に関わることもございました。そして、戸籍を作る、これは就籍ではなくて職権で戸籍を作って、そして、その後に、児童福祉施設の方でお預けして育てていただく。

 そうすると、特別養子縁組という制度がありまして、お子さんを養子にしたいという御夫婦が現れた場合には、その制度に、養子縁組に乗っかっていくわけでございますが、特別養子縁組、今般、法律改正はないと思いますが、離縁はできないんですよね、赤ちゃんにとっては勝手に離縁されたら困りますから。その点についてお願いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 民法が規定しております養子制度につきましては、いわゆる普通養子の制度と特別養子の制度がございます。

 特別養子と申しますのは、家庭裁判所の審判によって縁組が成立しまして、縁組が成立すると、養子と実親及びその血族との親族関係が終了するという養子縁組でございまして、実の親子関係となるべく同等のものを築いていただくという趣旨になっております。

 したがいまして、委員御指摘のとおりでございまして、離縁が制限をされております。養親からの離縁ができず、離縁の事由としては、養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があることと実父母が相当の監護をすることができることのいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときに限り、家庭裁判所の審判によってのみすることができるものとされております。

野村政府参考人 誠に申し訳ありません。

 先ほどの戸籍の手続の関係のところで、ガイドラインの御紹介を申し上げた際に、児童相談所から委託を受けて乳児院、里親に移行したときの親権につきましてですが、施設の方はこうなんですけれども、申し訳ございません、里親は親権は持たない。親権は、里親の場合には児童相談所長の方に保持されるということです。誠に申し訳ございません。

阿部(弘)委員 いずれにしましても、親権者、親からの親権を、また保護を受けるのは、赤ちゃんの、子供の権利でございますから、国を挙げてそのことについてお守りいただくというのが今回の法改正の趣旨だと思いますので、是非ともよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、もう残りは少ないんですが、財産分与についてお尋ねいたします。

 平成八年の法制審の答申でも課題として上がっておりました民法七百六十八条の二項ただし書の制限の年限については、今般の法改正でどのように変わりますか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の民法七百六十八条二項の家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる期間として、現行法では「離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。」とされておりますが、これを五年に延ばすことを法案の中身としております。

 これは、元々、二年ということで早期に法律関係の安定を図る趣旨であったとは思いますが、余りに期間が短い、実務的に二年では財産分与の請求はするのが困難であるという御指摘もございましたので、この期間を延ばすことにしたものでございます。

阿部(弘)委員 様々な書物では、夫婦関係でDVなどがあった場合にはなかなか二年では紛争解決ができないということでございます。様々な関係機関からも御指摘を受けていることなんですが、そのことについてはどうでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、特にDV等が御家庭にあったりいたしますと、離婚から二年で財産分与の請求をするのは非常に困難あるいは不可能であるという御指摘もございましたので、期間の伸長を、延ばすということにしたものでございます。

阿部(弘)委員 時間が参りましたので、これで終わります。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今日も資料を出させていただきました。一般社団法人日本乳幼児精神保健学会、「離婚後の子どもの養育の在り方についての声明 人格の土台を作る乳幼児期の重要性を踏まえて」ということで、二〇二二年六月に出された声明です。これに基づいてまず質問をさせていただきたいと思います。

 それで、五ページ目を見ていただきたいんですけれども、「専門家による子どもの意思の聴取の必要性」ということで書かれております。

 そこには、読み上げさせていただきますけれども、DV事例(面前DV)の場合、子供が暴力を目撃しているうちに、母親に対する父親のゆがんだ見方に同化したり、虐待を受ける環境で生き抜くための心理的背景から、虐待を否認することがある。すなわち、権力と支配による支配、被支配の関係は、子供の意思形成過程と意思表明に大きな影響を及ぼす場合がある。ゆえに、DV、虐待家庭で育った子供の複雑な心理を理解するためには高い専門性が求められるというべきである。

 また、子供の意思を確認するためには、言葉だけに頼るのではなく、情緒、行動、身体も入れた柔軟な子供の全体像の受け止めや理解も必要である。面会交流が試行的に行われる場合などは、面会交流の場面だけではなく、その前後の時期における生活や身体に現れた影響を観察する必要もある。

 よって、DVや虐待の疑いがある事案で、加害親と主張される親との面会交流はDVや虐待の被害者支援の経験を有する児童精神科医や児童心理司等の専門家による子供の意思の確認を、司法の判断に先行させるべきであるというふうに書かれております。

 これも先日求めさせていただいておりますけれども、しかし、私、納得できる答弁がなく、繰り返し行わせていただいております。

 もう一度お伺いをしたいと思いますけれども、専門性のある方から、やはり子供たちの意思、心情の聴取を必ず行うようにしていただきたいというふうに考えますけれども、見解を法務大臣と最高裁にお伺いしたいと思います。

馬渡最高裁判所長官代理者 お尋ねは、いかなる法的手続を想定したものであるか必ずしも明らかではありませんが、家事事件手続法六十五条におきまして、家庭裁判所は、未成年の子がその結果により影響を受ける事件において、子の利益に配慮した解決を図るために、適切な方法により、子の意思を把握するように努めるものとされておりますところ、裁判官又は調停委員会において、その事案に応じた適切な方法により、子の意思を把握し、審理運営に当たっているものと承知しております。

 その上で、調停委員会等が、子をめぐる紛争の有無や内容、子の状況その他の事情を踏まえ、子の意思や心情を把握するために行動科学の専門的知見や技法を有する家庭裁判所調査官の関与が必要であると判断した場合には、家庭裁判所調査官が、最新の心理学、社会学、社会福祉学、教育学等の行動科学の専門的知見や技法を活用し、子の意思及び心情を把握するための調査を行っているところでございます。

竹内政府参考人 お答えをいたします。

 個々の事件における専門家の関与の在り方等につきましては、家庭裁判所において適切に判断されるべき事項でありますため、法務省として具体的にコメントすることは差し控えたいのですが、一般論として申し上げれば、家庭裁判所においては、子の利益を確保する観点から、適切な審理が行われることが期待されるところではございます。

本村委員 調査官を抜本的に大幅に増やして、専門性を更にブラッシュアップしていただくということは非常に重要だというふうに考えております。

 今度は、この資料の三ページを見ていただきたいんですけれども、三ページから四ページ、「子どもには意思がある」という部分です。

 子供の意思は、別居親を拒否するものである場合にも、その子自身の実体験に基づく意思として尊重されるべきであるというふうに書かれております。

 そこには、現在の家庭裁判所の実務では、子供が別居親を拒否すると、根掘り葉掘り拒否の理由を尋ねたり、どういう条件であれば会ってもよいかというような聞き方で、直接の面会交流が実施されるように誘導し、あるいは、子供が別居親を拒否するのは同居親の刷り込みであると評価して、子供の意思を尊重しないという扱いが見られる。

 しかし、子供の意見を反対方向に誘導するやり方は、子供の意思を拒否することに等しい。面会交流を拒否する場合でも、そのほとんどは子供の主体的な意思に基づいており、子供なりの理由や根拠がある。

 例えば、別居親が忘却していても、子供には、同居中に別居親が威圧的だった記憶が焼き付き、そこで自分の主体性を奪われ、自尊心を損なってきたという心の傷を抱えている場合がある。そのような心の傷は、会いたくないというその子なりの意思表明を否定され、面会を強いられることで一層深まる。その結果、別居親とのよい関係は始まらず、親子関係の改善が困難になるだけではなく、大人不信、社会不信を募らせるリスクも持つ。子供の意思を否定して子供の福祉は図れないというふうに書かれております。

 こういう実態があるという御指摘については、家庭裁判所、家庭局長はどういうふうに受け止めておられますでしょうか。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 様々な指摘がされるところについては、真摯に受け止めたいと思っております。

 その上で、子が別居親との交流について示す意向や感情といったものは、肯定や拒否といった二者択一的で明確なものではありませんで、複雑なものである場合が少なくないところでございまして、家庭裁判所としては、拒否的な面も含め、その真意を慎重に分析し、これを通じて把握した子の意思を十分に考慮して、交流をするかどうか、また、するとした場合のその方法や内容を含む親子交流の在り方について検討をしているものと承知しているところでございます。

本村委員 それで、今度は八ページですけれども、臨床の現場では、家庭裁判所で面会交流を決められた子供たちが、面会交流を嫌悪し、面会をめぐる別居親との紛争にさらされ、あるいは過去のトラウマからの回復が進まず、全身で苦痛を訴え不適応を起こして、健康な発達を害されている事例が増えているというふうに書かれています。

 この増えているという状況を改善していくために、どういうふうにしていくつもりなのか。これは法務大臣、責任があると思います。法務大臣、そして最高裁、お答えをいただきたいと思います。

小泉国務大臣 親子交流の実施に当たっては、子供の安全、安心を確保すること、これは極めて重要であると思います。

 ただし、個別の事案において、親子交流を実施するかどうか、また、どういう形でそれを行うか、これは、それぞれの事案における具体的な事情を踏まえて、家庭裁判所において適切に判断されるべき事項であるため、法務大臣として具体的なコメントをすることは差し控えたいと思います。また、裁判所において適切な審理が行われるよう期待をしております。

 ただ、今後、引き続き、裁判所において適切な審理が行われるよう、そういう対応がなされるよう、法務省としても、国会におけるこういう御審議で指摘された事項については、裁判所と適切に共有することも含め、裁判所の取組に協力をしてまいりたいと思います。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 親子交流により、子の健全な成長に悪影響が生ずる事態を避けるべきであるということは、委員御指摘のとおりであると考えております。

 例えば、親子交流により同居親の心身の安全、安心が脅かされる場合には、同居親と長い時間を共にする子にとっても否定的な影響が大きく、同居親の安全、安心を確保することは、子の安全、安心を図る上で重要であるものと認識しております。

 また、DVが問題となっている場合には、子が父母の争いにさらされ続けたり、別居親により再度トラウマを受けたりする可能性があることなどから、親子交流が子に及ぼす潜在的なリスクがあるものと認識しております。

 各家庭裁判所においても、このような認識を踏まえて、必要な事案で家庭裁判所調査官が行動科学の専門的知見や技法を活用して調査をするなど、親子交流が子に与える影響について十分に検討されているものと承知しております。

 最高裁におきましても、引き続き、子の安全、安心を最優先にして、子の利益を適切に考慮した事件の解決が図られるよう、各家庭裁判所の取組を支援してまいりたいと考えているところでございます。

本村委員 各裁判所で統一した何かがあるわけではないというふうなお答えだったというふうに思うんですけれども、日本乳幼児精神保健学会を始め、専門性のある、DV、虐待事案を取り扱ったことのある児童精神科医ですとか児童心理司などの皆様も寄せて、子供の意思、心情の確認の方法ですとか判断への反映の方法もいま一度検討をし直して、こうした健康を害するようなものが増えている、子供たちに害が増えているということだというふうに思いますけれども、そこら辺を見直していただきたいというふうに思いますけれども、最高裁、お願いしたいと思います。

馬渡最高裁判所長官代理者 子の利益にかなう親子交流の在り方につきましては、様々な立場からの様々な御意見があるものと承知しております。

 家庭裁判所においては、研修等の機会を通じて、国内及び海外の最新の知見を取り入れて、子の安全、安心を最優先にした親子交流の解決が図られるよう努めているものと認識しておりますが、最高裁といたしましても、引き続き、子の利益を適切に考慮した事件の解決が図られるよう、各家庭裁判所の取組を支援してまいりたいと考えます。

本村委員 今の現状が改善されるのかが大変不安なわけでございます。その点も改善することが大前提であるというふうに思います。

 次に、リーガルアビューズと言われるような状況について質問させていただきたいと思います。

 参考人質疑でも、DV被害を受けて逃げておられる斉藤参考人の方からも御指摘がありました。

 そのときに、斉藤さんは、このまま共同親権になると、本当に人権侵害になると思います、子供の利益である子供の安心や安全が損なわれることがとても心配ですというふうに言われ、そして、実際に、六年間の間に十六個の裁判が起こされた人がいます、裁判官を訴えたり、診断書を書いた医師を訴えたりすることも珍しくありません、自分自身が訴えられることはもちろん苦痛ですが、助けてくれた人が訴えられることは、そのうち誰も助けてくれなくなるのではないかと思うと、絶望的に苦しい思いをされているということを表明されておられました。

 また、岡村参考人も、DV被害者に対して誘拐罪での刑事告訴、民事裁判、被害者側の弁護士に対する懲戒請求、SNS等での発信、写真や個人情報の公開など、加害行為が別居後にも終わらず、むしろ復讐にも近い形でエスカレートするケースが増えていますと。

 こういう実態についてどういうふうに把握をしているのか、法務大臣、お答えをいただきたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法制審議会での議論の過程におきましては、各委員や参考人から、DV加害者が元配偶者やその代理人弁護士に対して様々な形で攻撃的な言動を繰り返す事例の紹介がございまして、それを踏まえた議論が行われたところでございます。

 四月三日の参考人質疑、私も拝聴いたしましたが、実際に様々なDVを受けられた経験を有する参考人や、そのような方々の代理人の弁護士である参考人のお声もお聞きすることができたものと受け止めておるところでございます。

 身体的暴力あるいは精神的暴力、あるいは性的暴力を含むあらゆるDVは、被害者に深刻な精神的苦痛や肉体的苦痛をもたらすとともに、その尊厳を傷つけるものでありまして、決してあってはならないものと認識をしているところでございます。

 本改正案におきましては、父母相互間の人格尊重義務や協力義務の規定を新設しているところでございますが、御指摘のような行為も、事案によりましてはこの義務に違反することがあり得ると考えているところでございます。

本村委員 今、協力義務の話がありましたけれども、今回の法案を施行するということになれば、例えば情報提供義務違反とか協力義務違反とか、そういうことで訴えられるという可能性はないでしょうか。局長、お願いしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 一般論としてお答えを申し上げますと、先ほど申し上げましたような夫婦相互の人格尊重義務ですとかあるいは協力義務に何かの行為が違反するとして、訴訟が提起されるおそれというのは、それはあり得るところかとは思います。

 ただ、現行法の下でも、そのような、そのようなと申しますか、訴えの提起が濫用的にされたような場合、自分の主張が全く根拠がない、法的に根拠がないということを知りながらあえて訴えを提起したような場合には不法行為に該当するというような判例もございますので、そのような対処が可能かと考えているところでございます。

本村委員 また訴えられる要素が増えてしまうのではないかということも、また大きな懸念の一つでございます。しっかりとした対策を取らなければ、DV被害者を守る弁護士がいなくなってしまうのではないか。斉藤参考人が言われましたように、誰もそのうち助けてくれる人がいなくなるのではないか。

 こういう状況は絶対につくってはならないというふうに考えますけれども、これは大臣、お答えをいただきたいと思います。

小泉国務大臣 今回、子供の利益を中心に考える、そして夫婦相互の尊重義務、また、子供の尊厳を守る、こういう条文を入れました。これに違反する場合には法義務違反ということになりますが、そのことを我々が社会全般に対してしっかりと周知をしていく、まずそれが必要なことだというふうに思います。それがそういった行為を抑止する効果を持ち得るというふうにも考えます。

 その上で、法施行後の状況を丁寧に注視して、必要な対応があれば検討していきたいと思います。

本村委員 是非、DV被害者支援を行っている弁護士の実態調査を行っていただきたいと思います。弁護士自身も、心身への影響がございますし、経済的な持ち出しもかなり多いわけですので、その点もしっかりと実態調査をしていただきたいというふうに思います。

 そして、そうした被害の、リーガルアビューズと言われるような被害の実態を調査し、対策を是非検討していただきたいというふうに思いますけれども、法務大臣、お願いしたいと思います。

小泉国務大臣 そういう状況におられる弁護士の方々の実情を法務省としてお伺いする機会、これは必要だというふうに思います。

本村委員 いつも、網羅的には把握していないとおっしゃることも多いわけですけれども、網羅的にしっかりと調査をして対策が打てるようにしていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 それは、まず代表的な方々のお声を聞いて、その状況をしっかり把握させていただいてから検討したいと思います。

本村委員 是非お願いしたいと思います。

 法案によってポスト・セパレーション・アビューズのきっかけを無限に加害者につくってしまうのではないかという懸念に対して、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の別に、対策をどう考えているのか。そして、急迫の事情の判断でも十分配慮されるべきだというふうに考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案におきまして、離婚後の父母双方を親権者とすることができることとしておりますのは、離婚後の父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことを可能とすることで、子の利益を確保しようとするものでございます。また、本改正案では、父母間の人格尊重義務や協力義務の規定を新設するとともに、親権は子の利益のために行使しなければならないことを明らかにしているものでございます。

 そのため、離婚後に父母双方が親権者となった場合におきましても、別居の親権者が同居親による養育に対して違法、不当な行為をすることを許容するものではございません。こうした法改正の趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知に努めてまいりたいと考えております。

 委員お尋ねの協議離婚、調停離婚、裁判離婚の場合でございますが、まず、協議離婚につきましては、協議離婚の際に、委員御指摘のようなDVなどを背景とする不適切な形での合意によって親権者の定めがされた場合には、子にとって不利益となるおそれがありますので、それを是正する必要がございます。そこで、本改正案では、家庭裁判所の手続による親権者の変更を可能とするとともに、その際に、家庭裁判所が父母の協議の経過その他の事情を考慮すべきことを明確化することとしております。

 調停離婚、協議離婚につきましては、裁判所が必ず父母の一方を親権者と定めなければならない場合の例として、虐待のおそれがあると認められるときと、DV被害を受けるおそれ等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときを挙げております。

 したがいまして、子への虐待のおそれ、あるいはDV被害を受けるおそれがある場合には、父母双方が親権者と定められることはないと考えております。

本村委員 是非、子供とDV被害者を守っていただきたいというふうに思います。

 続きまして、今結婚している方も、そして、離婚をした後に共同親権になった方、この法案の場合についてお伺いしたいというふうに思います。

 資料で出させていただいております。これは「親権概念の整理等」ということで、法制審の家族法制部会に出されたものですけれども、ここの中に、「親権に基因するもの」ということでいろいろ書かれているわけですけれども、これでお伺いをしたいと思います。表でいろいろまとめられて、分かりやすいというふうに思いますので。

 そこで、三ページのところから進みたいと思いますけれども、教育に関する場面の例ということで、子供にどのような習い事をさせるのかですとか、幼稚園や学校の選択、進学か就職かの選択。次に、宗教に関わることを申し上げます。子にどのような宗教を教育するのか。その次、宗教学校への進学。

 この点も、これは日常的なものなんだということで、日常の行為ということで考えられるのかという点をまずお伺いしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、前提でございますが、委員が今回参考資料として御提出になりました資料でございますが、これは、法制審議会への諮問前に行われた研究会というのがございまして、そこでの議論のたたき台とする目的で出されたものになっております。したがいまして、本改正案自体の説明をするものではないということを御理解いただきたいと思います。

 その上で、委員お尋ねのところが、主に日常の行為に当たるかというところかと思います。

 監護及び教育に関する日常の行為とは、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないというものを指しております。

 その上で、委員御指摘の参考資料に記載されたもののうち、日常の行為に該当するものの例としてお示しをいたしますと、例えば、ある日に子供にどのような服装をさせるかや、子にどのような習い事をさせるか、あるいは、風邪の診療等日常的な医療行為などのように、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で子に対して重大な影響を与えないものは、日常行為に該当するものと考えております。

 他方で、委員御指摘の参考資料に記載されたもののうち、日常の行為に該当しないものの例をお示しいたしますと、例えば、幼稚園や学校の選択や、進学か就職かの選択、それから、生命に関わる医療行為、子の妊娠中絶、子の住居の決定、長期間勤務する会社への就職の許可などのように、子に対して重大な影響を与え得るものについては、日常の行為に該当するとは言えないと考えております。

本村委員 例えば宗教に関しては、子にどのような宗教を教育するのか、そして、宗教学校への進学、これについてはどうでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 なかなか網羅的にお答えすることは難しいところでございますが、委員御指摘のような行為につきまして、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で子に対して重大な影響を与えないというものであれば、日常の行為に該当し得るものと考えております。

本村委員 日常の行為かどうか分からなかったら、訴えられるリスクがあるわけですよ。だから、これをしっかりと明確にする必要があるというふうに考えます。

 今日、資料に出させていただきましたけれども、この全てにおきまして、日常の行為とは何なのか、これは全部、マル、ペケとか書いていただきたいというふうに思いますし、日常の行為とされない場合でも、急迫だから単独行使はできるんだというケースもあるというふうに思います。

 それぞれのケースでどういう場合が急迫と認められるのかという点を一覧表にして、この委員会に提出をしていただきたいと思います。委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。

武部委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。

本村委員 終わります。ありがとうございました。

武部委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.