衆議院

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第11号 令和6年4月12日(金曜日)

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令和六年四月十二日(金曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 武部  新君

   理事 熊田 裕通君 理事 笹川 博義君

   理事 仁木 博文君 理事 牧原 秀樹君

   理事 道下 大樹君 理事 米山 隆一君

   理事 池下  卓君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      斎藤 洋明君    高見 康裕君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      中野 英幸君    平口  洋君

      藤原  崇君    三ッ林裕巳君

      山田 美樹君   おおつき紅葉君

      鎌田さゆり君    鈴木 庸介君

      寺田  学君    山田 勝彦君

      阿部 弘樹君  斎藤アレックス君

      美延 映夫君    日下 正喜君

      平林  晃君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         小泉 龍司君

   文部科学副大臣      あべ 俊子君

   法務大臣政務官      中野 英幸君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 小八木大成君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          坂本 三郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文部科学戦略官)       梶山 正司君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)


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     ――――◇―――――

武部委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、笹川博義君外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。米山隆一君。

    ―――――――――――――

 民法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

米山委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 第一に、附則において、政府は、改正後の各法律の円滑な施行のため、新民法第七百六十六条第一項又は第二項の規定により子の監護について必要な事項を定めることの重要性について父母が理解と関心を深めることができるよう、必要な広報その他の啓発活動を行うものとしております。

 第二に、附則において、政府は、改正後の各法律の円滑な施行のため、新民法第八百十九条各項の規定による親権者の定め方、新民法第八百二十四条の二第一項第三号の急迫の事情の意義、同条第二項の監護及び教育に関する日常の行為の意義その他の改正後の各法律の規定の趣旨及び内容について、国民に周知を図るものとしております。

 第三に、附則において、政府は、施行日までに、父母が協議上の離婚をする場合における新民法第八百十九条第一項の規定による親権者の定めが父母の双方の真意に出たものであることを確認するための措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとしております。

 あわせて、附則において、政府は、この法律の施行後五年を目途として、改正後の各法律の施行の状況等を勘案し、父母の離婚後の子の養育に係る制度及び支援施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしております。

 以上であります。

 何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

武部委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

武部委員長 この際、お諮りいたします。

 本案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官小八木大成君、こども家庭庁長官官房審議官野村知司君、法務省大臣官房司法法制部長坂本三郎君、法務省民事局長竹内努君及び文部科学省大臣官房文部科学戦略官梶山正司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君及び家庭局長馬渡直史君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。笹川博義君。

笹川委員 自由民主党の笹川博義であります。

 本日まで、それぞれの価値観と夫婦観、そして子育ての悩みを持ちながら、子供の将来を憂い、窮地を救いたいと思い、DVで苦しむ人々、そして愛すべき子供と会うことができない人々の思いなどを代弁をし、議論を積み重ねてまいりました。本委員会における議論を政府と裁判所はしっかりと受け止めて、特に本当に重く受け止めていただきたい、そのことをまず申し上げたいというふうに思います。

 また、修正協議においての米山理事を始め各党の皆様方の御尽力に心から感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、質問をさせていただきます。

 政府は、この委員会の審議を受け止め、子供の利益、私は、子供の利益とは、学ぶ機会、そして様々な経験、体験の機会を確保することであるというふうに考えております。子供の最善の利益へと導く責任が政府にはあるわけであります。だからこそ、子供の最善の利益へと導く様々な施策が展開されなければなりません。本改正における一つ目の大きなポイントでもあります。

 法務大臣にお聞きします。法務省は、やはり、この施策を展開するに当たって、司令塔機能を発揮し、各省それからまた自治体との連携を深化をさせていく責任があるというふうに思いますので、その責任を果たしていくということでよろしいんでしょうか。

小泉国務大臣 本改正案、これは、子供の利益を確保する観点から、父母の離婚後の子の養育に関する民法等の規定を見直すものでありますが、他方で、本改正案に対しては、DVや子の虐待の懸念など、様々な御指摘があることも承知をしております。

 こうした点を踏まえて、本改正案が成立しました際には、まず、一人親家庭支援、共同養育支援、裁判手続の利便性向上といった様々な支援策や体制整備を図るとともに、DV及び児童虐待等を防止して安全、安心を確保する、こういった措置を取ることがまず優先されるべきだと思います。

 それに加えて、法改正の趣旨を国民に周知、広報していくことも重要な課題であり、さらに、委員御指摘のように、改正法の円滑な施行に必要な環境整備を図るべく、関係省庁との、地方自治体を含む関係機関との連携協力体制の構築、これを行うことも非常に重要な課題だと思います。

 その中で、法務省は、少なくとも法制の面においてはリーダーシップを取れる、そういう意気込みで頑張って取り組みたいというふうに思っています。

笹川委員 今、大臣、法制においてリーダーシップとありました。しかし、我々がここで議論をしているのは法務委員会であります。そして、ここの議論を真正面から受け止めるのが法務省であります。ですから、一番この問題について熟知し、そしてまた問題を受け止めなきゃいけないわけでありますよね。ですから、全般にわたって法務省自身がしっかりとリーダー的司令塔機能を発揮することは物すごく大切なことだというふうに思うんですが、よろしいでしょうか。

小泉国務大臣 確かに、その気持ちはあります。その意欲もありますが、こども家庭庁ができ、スタートしていますので、省庁間のその所管というところの在り方、これはもう一回議論をする必要があると思っています。

 ですから、まずは少なくとも法制面でのリーダーシップと先ほど申し上げたのはそういう意味でございまして、行政面、予算面、様々な措置については、非常に多様な子供支援の策があり、また足りない部分もたくさんありますね。そういったものの全体像を我々も見てやりたいわけですが、権限としてそれを全部包括できる司令塔になり得るかどうか、これはちょっと詳細な検討が要るなと思います。ただ、その意欲は十分にあります。

笹川委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、先ほどの修正案の中でも触れられておりましたけれども、制度の改正の趣旨、改正内容について、期待とそしてまた危惧の念が交錯をしている現況から考えれば、やはり周知、広報というのは物すごく大切な観点だ、重要だというふうに思います。

 今後の取組についてでありますが、具体的に、この周知、広報、今までこうだったからというのではもう納得はできないわけですよね。更に何かをやっていかなきゃならない。そのことによって、国民の皆さんの理解も深まってくるし、そしてまた期待も大きくなるだろう、危惧が小さくなるだろう、こういうことが大事だというふうに思うんですが、その取組について大臣にお伺いいたします。

小泉国務大臣 多様な家族の形態にそれぞれふさわしい体制をつくろう、規律を作ろうということで、国民の側からすると、様々な点が分からなかったり不安であったり、そういった問題点も様々あると思います。そういう中で、国民にしっかりと趣旨を伝える、いろいろな具体例を伝える、例示をする、非常に大事な作業はこれから行わなければならないと思っております。

 具体的に今我々がリストアップしている幾つかのものを申し上げますと、まず、分かりやすい解説、QアンドA、これを作り、できるだけ多くの方に見ていただくべく公表する、インターネットを通じた広報にも力を入れたい、また、離婚というフェーズに差しかかる方、また差しかかった方に対する説明、また説明のためのパンフレット、また、離婚届出書に記載する説明内容、これを拡充すること、こういったことを考えておりますが、さらに、関係省庁にも呼びかけて、関係省庁のまた知恵もかりながら、周知、広報の輪を広げていきたいと思っております。

笹川委員 何となく想定されたような対応だというふうに思うんです。我々も、実は私も、青年会議所で何か対外的な事業をやるというときに、広報をやるときに、例えば、行政センターにチラシを置きましたとか、駅にお願いしてポスターを貼ってもらいましたとかとやりますよ。でも、その結果というのは大体芳しくないんですよ。今、例えばネットで公表しますといっても、これは結局、受け身な話なんですよね。それから、QアンドAのパンフなりなんなりを作るといっても、どう配布するのかということになると、本当に手元に届くのか。

 実は、この手の広報活動、周知活動というのは今までずっと政府はやってきたんですよね、あらゆる場面で。しかし、それが本当に成功だったのかということを言われると、やはり疑問符がつくわけだというふうに思うんですね。そうなったときに、では、もう一味、もう一工夫するためにはどうしたらいいんですかということが、これは知恵を使わなきゃいけないんじゃないのかなというふうに思うんですね。その点についてはいかがですか。

小泉国務大臣 これは全くそのとおりだと思います。ですから、今までやってきた広報の媒体、やり方について、もう一度精査をして、問題がどこにあったのか、あるいは十分な効果がそもそもあったのか、なかったのか、その理由は何か、それを細かく精査をしていく必要があると思います。

 もう一つは、広く広報する方法と、広報の対象者をぐっと絞り込んで、狭く絞り込んで深く入る方法と、組合せだと思いますが、離婚という問題を意識される、あるいは現実になろうとしている方々にきちっと、離婚届出あるいは解説、そういったものが行き届くということも大事なことだと思うんですね。

 ですから、法案を作り、通していただくのが半分とすれば、残り半分、大きなそういう課題が残っているというふうに認識をしておりますので、是非また委員のお知恵もおかりしたりしながら進めたいと思います。

笹川委員 大臣が問題点について共有をしていただいたことは大変ありがたいというふうに思います。省内でも、大臣のこの思いを共有をしながら、周知、広報についての工夫を是非重ねていただきたいというふうに思います。

 それでは、次に裁判所にお聞きをいたします。

 我が党内の議論も昨年から積み重ねてまいりました。残念ながら、現況の家事裁判や、特にDV関連、親子交流について、出席の議員から厳しい指摘が毎度のことながらありました。ある意味、大変恐縮な話なんですけれども、裁判所それから調停の在り方について、これほど不信と疑念が寄せられるとは私自身も想定はしておりませんでしたが、しかし、それも事実な話であります。この法改正に伴って、なお一層、裁判所それから調停の役割というものは重くなるわけでありますね。

 加えて、家族観、社会の価値観の変化、多様化。本当に、二昔なんというのは、男子は厨房になんというのは当たり前のように言われていて、今、朝ドラでもそうですよね。女性の弁護士の話であります。非常に女性の地位が全くもって反映されていない、尊重されていない、そういう時代の中で生きてきた人の教育なりなんなりを受けている世代も続いているわけでありますので。

 この委員会の中でも、子育てについての話もありましたよね。私も、別に寺田委員ほどではございませんが、家事については私も、妻が評価しているかどうかは別としても、自分としては家事に携わる機会もつくっているというふうには思っております。

 そういった中での、価値観の変化と言われるもの、それから、今申し上げましたが、社会的な流れ、さらにはまた、夫婦の間の中でのそれぞれの立場の尊重というのは、それぞれの夫婦によって違いはあるというふうに思います。ですから、逆に言うと、こういう社会的な流れができたからといって、それを一つ升の中に全部入れていって、それ以外は駄目だということも、これも実は間違いなんですよね。だから、そういった多様な考え方をどう酌み取って対処をしていかなきゃならないのか。

 もう一つは、これはやはり、我々は、日本人同士だけじゃなくて、外国の文化、異文化の中の人とも婚姻をし、家庭を持つということももう身近なものになってきたわけでありますから、更に多様化していくわけですよ、考え方が。

 だから、それに対して、裁判所の対応と呼ばれるものが実はこの法改正の二つ目の大きなポイントだというふうに思いますので、様々な厳しい指摘について、この委員会でもそうだったんですが、どう受け止めて、判事、調停委員、調査官へどういう対応をしていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 この委員会を含めて、今委員が御指摘のような様々な御指摘をいただいたところでございまして、最高裁事務当局としても真摯に受け止めているところでございます。

 今後、我々がどういうふうに取り組んでいくかということについてですが、まず、この改正法案が成立して施行された場合につきましては、各裁判所において、改正法の各規定の趣旨、内容を踏まえた適切な審理が着実にされることがまずもって重要であると認識しております。

 そのために、改正法施行に向けて、裁判官、調停委員、家庭裁判所調査官に対し、改正法の各規定の趣旨、内容を的確に周知するとともに、研修の実施といったことについてもしっかりと対応してまいりたいと考えております。

 また、裁判手続の利便性向上や事件処理能力の一層の改善、向上に努めることも重要でありまして、調停の期日間隔等の短縮化に向けた取組やウェブ会議の活用の拡充などを含む各家庭裁判所における調停運営改善の取組を支援するほか、調停委員の研修体系の見直しを図っていくことも検討しております。

 また、委員御指摘あった、その背景にある社会の変化、家庭の多様化といったことに我々は対応していかなきゃいけないというのは、この法律の前後を問わず、近時の長期的な課題というふうに考えております。我々が、例えば研修を含め、そういった社会の変化にもしっかりと対応できるような取組を引き続きしていきたいというふうに考えております。

 また、これらに加えまして、裁判所に期待される役割を適切に果たせるよう、必要な体制の整備にも努めてまいりたいと考えているところでございます。

笹川委員 是非よろしくお願いします。

 特に、もう一点つけ加えるならば、やはりDVと呼ばれるもの、身体的なもの、それから精神的なもの、こういうところについての専門性を高めていく、これは判事だけじゃなくて、調停の方もそうですからね。だから、そういった新しい要素についてどうやって専門性を高めていくかということは大きな課題である、そして、厳しい目が注がれているということもつけ加えさせていただきたいと思います。

 そしてまた、法改正、裁判所の対応とともに大事なことは、子供たちの最善の利益を確保するための様々な支援策、特に、やはりこの改正の大きな三つ目のポイントは、私自身は、外的環境の整備、これが大事なんだということを党内の議論でも申し上げてきました。

 もちろん、公的窓口の充実も大切なんですが、外的環境整備において貢献をしている親子交流の支援団体、DV被害者の支援団体、シェルターの運営団体など、やはり民間の団体との関係、この連携を更に深めていかなきゃならないし、例えば運営の補助、支援の拡充も必要ではないのかというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 民間団体の知恵、力をおかりする、連携する必要性というのは、法務行政全般にわたって非常に強い要請があると思っています。十分な取組がまだできていない部分もあると思いますが、特に、今回は新しい仕組みができ上がりますので、我々だけで、あるいは関係者だけで進むのではなくて、裾野の広い現場で力を発揮していただいている様々な方々との連携、これも、言葉だけではなくて具体的につくり出していく必要は痛感をしております。

 今日御指摘いただきましたので、改めて具体的な方策を検討していきたいと思います。

笹川委員 ありがとうございます。

 本改正がうまくいくいかないは、やはり大きなポイントは、この民間団体の皆さん方の力をどう活用していくかということに懸かっておりますので、行政だけではとてもじゃないですけれどもこれを支え切れないところがありますので、そこは是非しっかりとやっていただきたい。

 時間の方もだんだん少なくなってまいりました。法テラスの運用、また次回の審議の中でもあると思いますけれども、いずれにしても、この法テラスの役割というのは物すごく大きくなりますから、それについてやはり法務省も、その運用、運営について、弁護士の先生や司法書士の先生方が思い切って法テラスの中で活躍したいという思いになるように、是非、改善すべき点は改善をしていただきたい、このことはお願いいたします。

 そして、最後でありますが、夫婦関係が終えんに至る理由も様々でありますけれども、それぞれ、この委員会の質疑の中で、私も本当に勉強不足だったんですけれども、やはり親子ガイダンスそれから加害者プログラムの大切さ。特に親子ガイダンスにおいては、やはり一回振り返る、そして気づきの点がある。そして、もう一つの加害者プログラムについては、再犯防止というのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、私も超党派で再犯防止活動をやっていますけれども、基本的には、やはり次の悲劇を生まない、そういうことが実は大事だと思うんですね。

 そういった意味では、気づくきっかけをつくることになる親子ガイダンス、そしてさらに、悲しい思いをする人たちを、連鎖を断ち切るための加害者プログラム、これは物すごく大切だというふうに私自身も気づきましたので、改めて御所見をお伺いしたいというふうに思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 離婚をする際に、父母が子の養育に関するガイダンスや講座を受講することなどを通じて子の養育に関する適切な知識を得ることは、子の利益を確保する観点から重要な課題であると認識をしております。

 法務省におきましては、法律や心理学の専門家の協力を得まして、離婚時に知ってもらいたい情報をまとめた離婚後養育講座の実施に必要な動画等のコンテンツを作成し、複数の地方自治体と協力して、離婚当事者に実際に視聴していただき、その効果を検証するなど、適切な講座の在り方を探るための実証的な調査研究を実施しているところでございます。

 また、本日、委員から、子の養育に関するガイダンス等を通じまして相手の気持ちなどに気づくきっかけになるのではないかという貴重な御示唆もいただいたところでございます。

 引き続き、委員からの御示唆も踏まえて、子を持つ父母に対する情報提供の在り方について、関係府省庁等と連携して適切に検討してまいりたいと考えております。

笹川委員 もう時間も来ました。ただ、ガイダンスもプログラムもそうですけれども、やはり海外の知見、更にまた検証する、そのことが大事でありますので、常に改善をしていくということが私は大事だと思いますので、以上、そのこともお願いをしたいというふうに思います。

 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

武部委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜です。

 本日提出された修正案及び原案について確認させていただきたい点について質問させていただきます。

 本委員会でも触れられてきた数字でございますが、離婚の種類別に見た離婚件数の割合は、直近二〇二二年の数値で、協議離婚が八七・六%、約九割に上ります、裁判離婚が一二・四%となっており、これまでは単独親権制度の下で協議離婚が行われ、未成年の子を持つ親は、どちらが親権を持つかを自分たちの判断で決めてきたということであります。

 本委員会においても、親権の意義、監護の意義についてもこれまで議論されてまいりましたが、今後、改正後は、約九割を占める協議離婚の中においても、親権について、また子の監護について、これまで以上に踏み込んだ協議が行われていくものと思われます。

 離婚後の子の監護に関して、新民法第七百六十六条第一項には、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」とされています。子の利益の確保ということを考えた場合、子の養育費の問題も含め、監護について必要な事項を定めることの重要性は明らかでございます。

 四党修正案には、附則第十七条として、子の監護について必要な事項を定めることの重要性について父母の理解と関心を深めるために、必要な広報その他の啓蒙、啓発活動を行うものとすることが加えられております。

 公明党としても、二月二十九日に法務大臣に提出した提言の中で、改正法の周知、広報を訴え、また質問もしてまいりましたが、子の監護に関して、これまで行われてきた協議離婚の実態と今後の課題をどのように考え、この文言を加えられたのか、提案者の大口委員に伺います。

大口委員 まず、この修正案を立憲さん、また維教さん、そして自公、四者、四党で合意ができたということは、非常に、この審議を大事にするということで、成果をつくることができたのではないかと思います。

 その上で、父母の離婚に当たって、子の利益を確保するために、養育費や親子交流を含めて子の監護に関する事項を取り決めておくことが重要であるとの認識をしております。これまでの法案審議の中でもおおむね異論はなかったと理解しております。

 もっとも、現状では、養育費や親子交流の取決め率や履行率は、御指摘のとおり低い値にとどまっている。その背景には、離婚に当たって、子の監護について必要な事項を取り決めておくことの重要性について、いまだ十分な理解と関心を得られていないということと考えられます。

 また、本改正案により、父母の離婚後もその双方を親権者と定めることができることになるところ、各家庭の事情に応じて監護者や監護の分掌について定めることがますます重要になってくると考えます。

 そこで、離婚を考える父母が、子供の目線に立って、子の監護について必要な事項を取り決めることができるよう、必要かつ十分な周知、広報を行うことが求められております。

 我が党も提言や質問でも要請しておりました、親講座、親ガイダンス等の取組の充実を含めて、必要な啓発活動を行うことが必要である、こうした点で修正を提案したものでございます。

日下委員 よく分かりました。

 また、附則第十八条として、これまで議論を重ねてまいりました共同親権の下でも単独行使が認められる急迫の事情とはどういう状況を指すのか、また、監護及び教育に関する日常の行為についても、日常的行為がどの範囲にまで及ぶのか、その趣旨及び内容について国民に周知を図ることが加えられております。

 親権の共同行使について、子の利益のためであればと消極的に受け入れたという同居親については、この急迫の事情、日常の行為とは具体的にどういうことを指すのか、非常に気になるところだと思います。

 大口委員に伺います。

 これも公明党の提言の中で、親権に関する明確な基準と透明性の確保を法務大臣に要請し、また、質問でも取り上げてきたところですが、国民への周知を図るとは、当事者はもとより、いつ身内が、また自身が当事者になるかもしれないという国民に対して、具体的にガイドラインのようなもので分かりやすく例示していく、予見可能性を高めていくという趣旨でよろしいでしょうか。確認させていただきます。

大口委員 本改正により、父母の離婚後もその双方を親権者と定めることができることになりますが、離婚後の親権者の定めに関する判断を適正に行うことができるように、我が党も提言や質問で要請をしておるとおり、その判断基準や具体的な事例等を明確に示す必要がございます。

 本改正により、父母双方が親権者である場合であっても親権の単独行使が認められる場合が明文で規定されることとなったわけでありますが、その要件のうち、子の利益のため急迫の事情があるとき、監護及び教育に関する日常の行為について、必ずしも意義が明確でないとの指摘が委員会審議でもなされているわけであります。

 これらの意義については、これまでの審議でも様々な具体例を挙げて質疑され、答弁により、その解釈がかなりの程度明らかにされたと考えておりますが、法施行までに国民に対する周知が不可欠であると考えます。

 具体的には、我が党も提言や質問で要請しておるとおり、当事者である父母等はもちろんのこと、学校や病院といった関係機関や民間団体も含め、広く国民に対しQアンドA、ガイドライン、資料等を作成し、このような解釈の指針を、具体例も挙げつつ分かりやすく示していくべきであると考えております。

 そういうことで、本修正案附則第十八条は、今申し上げた趣旨で提案させていただいたものでございます。

日下委員 先ほど、協議離婚が八七・六%という数字を申しましたが、父母が互いに協議して離婚及び親権の取決めを行ってきたということになります。しかし、これは両親の真意から出たものなのか、単独親権制度の下で不本意な決着、妥協するしかなかったという場合も少なくなかったのではないかと思うわけです。

 修正案附則の十九条には、改正後の新民法第八百十九条第一項の規定による親権の定めが父母の真意に出たものであることを確認するための措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとするとございます。

 これは、協議離婚で親権者を決める際に、DV等の事情によって、父母間の支配、被支配関係によって不適切な合意がされてしまうおそれに対応するために設けられたものだと考えますが、この法制上の措置その他の措置について、どういうことを指しているのか、分かりやすく説明していただきたいと思います。

大口委員 協議離婚の際に、親権者を定めるに当たって子の利益を確保するためには、例えば、DV等の事情がある場合、あるいは、父母の力関係によって支配、被支配の関係等の事情によって、真意によらない不適切な合意がなされることを防ぐことが必要でございます。

 本改正案では、親権者変更の際に、裁判所が協議の経過を考慮することとされ、不適切な合意がなされた場合には事後的に是正することとされています。また、現行法においても、当事者の真意を確保するため、離婚届には、成年の証人二人以上の署名が必要とされています。

 本修正案の附則第十九条は、これらに加えて、例えば、離婚届出書の書式を見直し、離婚後も共同で親権を行使することの意味を理解したかなどを確認する欄を追加することなども含めて、親権者の定めが真意に出たものであることを確認するためにどのような措置があり得るのかについて検討を加え、必要な措置を講ずることを求める趣旨でございます。

日下委員 これまでの協議離婚においても、両者の力の不均衡によって判断がゆがめられ、片親にとっては不本意な結果になってしまったということもあろうかと思います。

 力の不均衡には、経済力や養育力、社会的な力、法的な知識、そして腕力や言葉による攻撃力も含まれると思いますが、こうした不均衡を事前に補う支援、法テラスやその他の府省庁が行う支援等によって、互いが対等な立場で協議できる環境を整えることも重要だと考えますが、法務省の御所見を伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 協議離婚の際に、不適切な形での合意によって親権者の定めがされた場合には、子にとって不利益となるおそれがあるため、それを是正する必要がございます。そこで、本改正案では、家庭裁判所の手続による親権者の変更を可能とするとともに、その際には、家庭裁判所が父母の協議の経過その他の事情を考慮すべきことを明確化することとしております。

 その上で、離婚する父母が対等な立場で協議できる環境を整えるといった点も含め、改正法を円滑に施行するためには、法テラスにおける民事法律扶助を適切に御利用いただけるよう努めるほか、一人親家庭支援や裁判手続の利便性向上といった支援策や体制整備を図るとともに、DV及び児童虐待等を防止して、安全、安心を確保することが重要であると考えております。

 法務省といたしましては、本改正案の内容の適切かつ十分な周知、広報に努めるとともに、環境整備につきましても、関係府省庁等と連携して取り組んでまいりたいと考えております。

日下委員 次に、改正法の施行期日に関して、家庭裁判所の機能の強化、すなわち、人的体制の整備、その他、児童室や物的環境の整備拡充、さらに、民法の枠外における支援体制の整備などを考えると、二年を超えない範囲内で定めるということですが、果たして目指すべき体制が取れるのか。法務大臣及び最高裁判所の御所見をお聞かせください。

小泉国務大臣 今回の改正によりまして、裁判所の果たす役割、これは非常に質的にも量的にも広がってまいります。そして、多くの方々から御指摘をいただきましたが、果たしてそれがちゃんとできるかという大変大きな課題だと思いますが、委員会でも最高裁から御答弁をしていただいていますけれども、裁判所においてしかるべき対応をしていただけるものと我々は考えております。

 ただ、法務省としても、国会での議論をしっかりと裁判所と共有する、意思疎通をする。体制整備については、予算の獲得も含めて法務省が協力をしていく。一生懸命取り組みたいと思っております。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 本法案が成立し、施行となりましたら、裁判所に期待される役割がこれまで以上に大きくなるほか、新たな裁判手続等の創設に伴い、家庭裁判所に申し立てられる事件数の増加が見込まれることは、裁判所としても認識しているところでございます。

 裁判所といたしましては、裁判所に期待される役割をしっかりと果たしていくためにも、新たに創設される裁判手続等を含め、改正法の各規定の趣旨、内容を踏まえた適切な審理が着実に行われるよう、裁判所全体として適切な審理運用の在り方を検討していくことが重要であると考えており、こうした適切な審理運用の在り方に見合った体制の整備に努めていく必要があると考えております。

 したがいまして、裁判所といたしましては、委員御指摘の児童室等の点も含め、このような検討をしっかりと行い、本法案の施行に向けて、必要な人的、物的体制の整備に努め、家庭裁判所の事件処理能力の一層の向上を図ってまいりたいと考えております。

日下委員 二年しかございませんので、大臣も予算の獲得についても触れていただきました、しっかりと取組をお願いしたいと思います。

 現行制度におきましても、家庭裁判所が子の監護者の指定などを行う場合、平均審理期間は昨年の数字で九・一か月を要しており、年々長期化傾向にあります。また、養育費に関する平均審理期間は六・二か月かかっております。

 子の最善の利益を考えた場合、また、共同親権が選択肢として導入されたときには、これまで以上に考慮要素が増えることから、子の親権及び監護者の指定や養育費に関する案件が複雑になり、件数も増えるのではないかと思うのですが、そうした状況の中においても、更なる審理のスピードアップが求められております。特に、急迫の事情や日常の行為等に関しては、申立てから迅速に対応、判断を得ることができるように、調停、裁判期日の充実や、保全手続の活用なども必要になろうかと思います。

 さらに、そのためには、当事者の目線から、利用しやすい裁判手続の実現、体制の強化も必要です。オンライン申立てやウェブによる記述、ペーパーレス化などを行い、利便性の高いものとすることや、夜間や休日における手続なども必要ではないかと考えます。

 この審理のスピードアップ及び裁判手続の利便性のアップについて、最高裁としてどのような御所見をお持ちか伺います。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 家事調停の審理期間につきましては、各家庭裁判所において問題意識を持ち、裁判官の効果的関与、調停室の有効活用等を含む調停運営改善の取組を進めてきているところでございます。

 現在、最高裁においては、各家庭裁判所における調停運営改善の取組の支援の一つとして、家事調停の期日間隔の長期化の点に焦点を当てて、その長期化要因の分析や、あり得る対策を提示するなど、各家庭裁判所に対して一層の調停運営改善の取組のために必要な情報提供をすることとしております。

 また、裁判手続の利便性の向上につきましては、例えば、各家庭裁判所では家事事件手続におけるウェブ会議の運用を順次拡大してきておりまして、本年度中には、支部、出張所を含む全ての家庭裁判所において、ウェブ会議による家事事件手続への参加が可能となる予定でございます。

 最高裁としても、その他の施策も含め、裁判手続の利便性をより一層向上させることに向けて、引き続き検討を進めてまいりたいと考えています。

日下委員 次に、本委員会の議論でも取り上げてきましたDV及び児童虐待の防止施策について確認させていただきたいと思います。

 共同親権導入に危惧を持たれている方々のお声で大きかったのは、DVや児童虐待への判断と対応に対する不安の声でありました。婚姻中におけるこうした暴力について、日本は先進諸国と比べ、そもそもその取締りや対応が甘い、弱いというお声を伺うことがあります。

 DV防止法については、昨年、令和五年にも、保護命令制度の拡充、保護命令違反の厳罰化を始め、地方公共団体や民間団体との連携協力、そして、関係機関等から構成される配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する協議会の法定化などを柱とする改正がなされたところでございます。また、児童虐待防止についても、随時法改正が重ねられ、強化されてまいりました。

 こうしたDVや児童虐待については、密室である各家庭の状況は見えづらく、児童虐待に気づいた隣人からの通報制度でどこまでカバーできるのか。また、本人が、母子が、勇気を出して警察や相談所に助けを求める、逃げ出すまで誰も気づかないということも少なくないのだろうと思います。そこまでいかないけれども、まだ離婚には踏み出せないけれども、そういう身体的、精神的暴力を受けている方々をどのように救済、援助していけるのか。

 まず、内閣府そしてこども家庭庁より、それぞれ現状と課題についてお聞きしたいと思います。

小八木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、配偶者からの暴力は、外部からの発見が困難な家庭内において行われるため、潜在化しやすい傾向にございます。このため、周囲も気づかないうちに暴力がエスカレートし、被害が深刻化しやすいという特性があると理解しております。

 委員からも御紹介ございましたけれども、DV防止法につきましては、重篤な精神的被害を受けた場合にも接近禁止命令等の対象を拡大することを始めとする保護命令制度の拡充や、被害の発生から生活再建に至るまで切れ目ない支援を行うための多機関連携の強化の仕組みを設けるなどの改正を行いまして、今月から施行したところであり、その円滑な運用に努めているところでございます。

 また、被害を受けた方がためらうことなく相談することができるよう、殴る、蹴るといった身体的暴力だけが暴力ではなく、心を傷つけることも暴力であることなどのホームページやSNSを通じた周知啓発、それから、配偶者暴力相談支援センター等の相談窓口について、より一層の周知など、被害者が相談しやすい環境の整備に向けた取組を着実に実施し、被害者に対する相談支援の更なる強化を図ってまいります。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、やはり、周囲の方々が虐待の疑いがある子供を見つけたときであるとか、あるいは子供自身、あるいは子育てに行き詰まって親御さん自身が悩んだときなど、ためらわずに関係先に通告であったり相談ができるような環境をつくっていくことが大事であると考えておりまして、こども家庭庁におきましては、児童相談所虐待相談ダイヤル、これは電話でございますけれども、「いちはやく」というものを普及させたり、あるいは、親子のための相談LINEとして、SNSを活用した相談体制の整備などに取り組んでいるところでございます。

 こうした、いわば声を上げるルートについて普及に努めているところでございますけれども、御指摘のように、それを活用する際の心理的ハードル、こういったものもございましょうから、こういったハードルをなるべく低くしていけるように、より一層の浸透でございますとか、意識の啓発を図っていくことが重要だと考えております。

 あわせまして、今年四月から施行されておる改正児童福祉法において、各市町村にこども家庭センターを整備していこうということを進めているところでございます。このセンターにおいて、子供の異変を察知した学校であるとか保育所などから、ちゅうちょなくこのセンターに情報が寄せられるように、日常的な連携関係の強化に取り組んでいくこととしておるところでございます。

 こうした取組を通じまして、児童虐待の早期対応でございますとか、その未然防止に資する子供、子育て家庭への支援、こういったものの強化に努めてまいりたいと考えております。

日下委員 ありがとうございます。

 DVも虐待も、新しい改正法がこの四月から施行されるということですので、しっかりまたこのタイミングから力を入れて進めていただきたいと思います。

 最後、質問できませんでしたが、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

武部委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 立憲民主党会派の寺田です。

 採決を前に、最後の質問となりますので、合意した修正案について、そしてまた、今まで重ねてきた質疑の答弁について、今日、お手元の方に事務所の方でまとめた答弁資料、ピックアップしたものがありますので、是非とも御覧いただきたいと思うんですが、それとともに、非常に大きな法案、価値観が分かれる法案、懸念が多く寄せられた法案でもありますので、最後に一言述べたいと思います。時間どおり終わりたいと思いますが、そういう機会でもありますので、柔軟に御対応いただけたら幸いです。

 まず最初に、今回、修正案を我が党含めて合意をしました。幾つかありますが、その中でも、やはり大事だと思われる子の監護に関する広報啓発についてと、私はより大きいものだと思っていますが、この検討事項の中にある一つ、父母の双方の真意に出たものであることを確認するための措置、これを修正合意した趣旨というものを提出者に御説明いただきたいと思います。

米山委員 それでは、修正案十七条と十九条の一項ということでございますので、それぞれについて趣旨を説明いたします。

 まず、附則第十七条についてですが、民法第七百六十六条第一項で、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と定め、また、第二項で、「前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。」と定めております。

 しかし、民法施行時においても、親権者を定めた上で、更に監護者や監護の分掌を定められること、また、監護者や監護の分掌を決めることの意義といいますか、メリット、デメリットを知らない方が多数おられるだろうと思われますので、まずもって、父母の離婚に当たって、改正民法における監護者、監護の分掌についての制度をきちんと伝えることそれ自体に大きな意義があると考えております。

 その上で、父母の離婚に当たって、子の利益を確保するためには、監護者又は監護の分掌、さらに、養育費、親子交流といった子の監護に関する事項を取り決めておくことが極めて重要です。

 そこで、離婚を考えている父母が、子の目線に立って、各家庭それぞれの事情に応じた子の監護についての必要な事項の取決めを行うため、その重要性について父母が理解と関心を深めることができるよう、政府に対し、必要な広報啓発活動を行うことを求める趣旨でございます。

 次、附則第十九条第一項についてですが、民法改正案第八百十九条第一項は、「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。」と定めます。この協議離婚の際に、親権者を定めるに当たっては、子の利益を確保するため、例えば、DV等の事情や経済的に強い立場の配偶者が他方配偶者に強制的に迫ることによって、真意によらない不適切な合意がなされることを防ぐ必要があります。また、どのような親権を定めるにせよ、父母双方の真意による合意があってこそ、それを子の利益にかなうように適切に実行することができます。

 そこで、政府に対し、親権者の定めが父母の双方の真意に出たものであることを確認するためにどのような措置があり得るか検討を加え、必要な措置を講じることを求める趣旨です。なお、提出者としては、具体的な措置として、例えば、離婚届の書式を見直して、離婚後も共同で親権を行使することの意味を理解したかを確認する欄を追加すること等を想定しております。

 以上です。

寺田(学)委員 ありがとうございました。

 短い時間ですので次に進みますが、さきの質問でも申し上げましたけれども、今回の法案の製作過程というか成り立ちは、本当に、法制審の中でも大きな意見対立がありましたし、与党の中でも大きな意見対立がある中で、賛否がある中で、ある種、玉虫色にするところで合意点を見出して、提案を国会にされたというものでした。ですので、玉虫色がゆえに、様々な独自の解釈をして、拡散をし、それを知ることになり、誤解が進んだということも懸念事項の一つでした。ですので、この国会の審議を通じて、この法案の立法者の意思をしっかりと示していくということが何より大事だということで、多くの議員が時間を割いて、大臣及び民事局及び最高裁も含めて御答弁いただいたものだと思います。

 ですので、全ては拾えませんでしたけれども、これまでの主な委員会答弁ということで、事務所の者に協力してもらってピックアップしました。衆議院においては最後の機会ですので、是非ともお手元を見て振り返ってほしいんです。大臣も振り返ってください。全ては拾えませんでした。

 例えば、一個目、共同親権と単独親権のどちらが原則かということに関しても、子供の利益のためにつくられる制度でございます、何が原則かということを定めているものではありません。次も、父母双方を親権者とするか、その一方とするかについては、個別具体的な事情によって判断されるものでございますので、どちらが認められやすいかというのは一概には言えない、とか。

 あと六個目、番号を振っていなくて済みません、何年もケアしていない、養育費も払っていない、コミュニケーションも取っていない、だけれども、共同親権になった途端に介入してくる、あるいは妨害的なことをしてくるということになれば、それは共同親権者としてはふさわしくない、あるいは共同親権を行使するにふさわしくないという判断が十分裁判所では成り立ちます。その下の下も、父母同士のけんかによって、子の心身の健全な発達を害するような場合には、子の利益を損ねるという意味で、単独親権になる場合があると考えています。

 次のページも含め、二個目です、子供の利益のためにということについて、幾ばくかの理解が双方に成り立つのであれば、共同して親権を行使するための最低限のやり取り、最低限のコミュニケーションがありますねと、最後で、そのコミュニケーションというのは、子供の親権の行使に関わるコミュニケーション(何かをちゃんと決めていく)が取れる状態、これは括弧にしましたけれども。さっきのは私がした質問なんですが、大臣自身に、コミュニケーションというものの含意、最低限のコミュニケーションというものの含意は、お互いが子供のことについて話合いをする中において、親権を共同して行使していくわけですから、何かをちゃんと決めていく、そういうことができる環境にあるのを最低限のコミュニケーションと言われているのでよろしいですかと言って、はい、そう思いますとお話がありました。

 その次もそうですけれども、いろいろあります。養育費、五番目ぐらいですかね、養育費の支払い実績があるという事実のみをもって裁判所が父母双方を親権者と認めるというわけではないとか。

 あと、大口先生のやつですね、三ページ目の三つ目ぐらい。別居親が本来であれば支払うべき養育費の支払いを長期間にわたって合理的な理由もなく怠っていたという事情は、親権者変更が認められない方向に大きく働く事情であると考えられます。

 ここ数日間、いろいろな懸念、ずっと寄せられているんですが、養育費ももらっていないのに共同親権に指定されて所得制限がかかってしまうのではないかというような不安を抱かれるような声は多くありましたが、一番最初のときの質疑だったと思いますが、大口先生が、こういうことで、そもそも養育費を払っていないという中において、もちろん、制度的には最終的に総合勘案して裁判所が決めるという仕組みですので、断定できるのはDVやDVのおそれというところだけだったと思いますけれども、大きく働く事情だというふうに書かれているので、立法者の意思というのはかなりはっきりと示されていると思うんです。

 子供の意見とかに関してでも、最後のページの下から三つ目ぐらい、例えば親権者を変更するような手続の場合、子供の人格尊重権というのがありますので、子供がこちらの親を親権者にしたいという強い声があれば当然それは聞き入れられるというふうになるという形で、この趣旨がしっかりと生かされていけば、多くの子供の意見を徴することが可能になると思います、これは本村さんの質問でした。

 多くの議員の皆さんが、この法案、玉虫色の法案において、立法者の意思、もちろん、国会として、政府としてどういうものなのかということを築き上げていった一部の例です。

 これは事務的に取り出したものですが、これは局長に聞きますが、この答弁、大臣や局長の答弁ですけれども、間違いはないですよね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 間違いございません。

寺田(学)委員 こういう立法者の意思に基づいて今後もろもろの運用がなされていくわけで、最高裁にも聞きます、この答弁及び、今回、附帯決議も出ますし、附則の修正もありますけれども、それの取扱いについて御答弁ください。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 最高裁として、この改正法案が成立した場合には、これまでの委員会での質疑によって明らかにされた改正法の各規定の趣旨、内容を、事件担当裁判官を始めとする関係職員に的確に周知し、裁判所においてその内容を踏まえた適切な審理が着実にされることが重要であると認識しております。

 そのために、条文や仮に今後附帯決議がされたら、その内容も含め周知することはもちろんのこと、例えば、改正法施行後の運用に関する大規模庁での集中的な検討や全国規模の検討会において、本委員会での質疑によって明らかにされた改正法の各規定の趣旨、内容はもとより、質疑において問題になった具体的な事例などにつきましても、きちんと情報提供し、これを踏まえた裁判所内での検討を行うために、我々としてもしっかりとしたサポートをしてまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 やはり本当に、国会の質疑と答弁というものが立法者としての趣旨、意思を指し示し、それ自体が裁判の中で適用されていくという流れだと思います。

 紹介し切れないんですが、私自身、この間の質疑の中でも、相手を犯罪者と罵るような形の場合では人格尊重義務を損なっているということの御答弁もありましたし、DVのみならず、父母同士のけんかによって、子の心身の健全な発達を害するような場合には、子の利益を損ねるという意味で、単独親権になる場合があると思いますと。これは、四月五日、局長が答弁されていますけれども。

 ここから大臣に聞きたいんです。

 別に何も難しいことを聞くつもりはないんですが、今回の法案の様々ある大きい争点、論点のうちの一つが、この法案が設計をした共同親権の決め方に関して、父母双方の同意のみならず、最終的に裁判所が子の利益の観点から総合的に判断をするという仕組みを入れたことに対する、大きな懸念であったり、解釈の在り方を問うものが続いたと思うんです。思うんですけれども、幾ら聞いても、聞いたものの列挙ではありますけれども、断定的に言えるのは、先ほども申し上げたとおり、DVやDVのおそれがあった場合には単独親権にしなきゃいけないということを明文化していますけれども、それ以外は基本的に、方針や要素を積極、消極含めて取り上げているということです。

 今私がピックアップしたこの委員会答弁というもの、ある程度ピックアップをして、どういう場合に今申し上げた父母の同意ではなく裁判所が共同親権と認め得る環境になるのかというのがどういうものなのかというのが、答弁を総合的に見ていくと見えてくる感じがするんです。

 今から申し上げますけれども、これらの答弁を総合して考えると、父母の合意がなくても裁判所が共同親権を認め得る場合というのは、この答弁の様々なものの総合的な答えとして、そもそも、離婚協議中も、そして離婚後も、父母間に子の心身の健全な発達を害するような不和がなく、仲たがいですね、これも答弁にありました、当然、相手側を犯罪者等と誹謗中傷することもなく、これも答弁にありました、親権の行使について話合いのみならず共同して決定していけるような関係で、それまでの子の養育に適切に関与し、養育費の支払いを履行し、父母間のみならず子にも共同親権に強い拒否感、抵抗感がないというような場合が、ある種、一つ、この質疑の中で答弁を重ねていった中で見えてきた、裁判所が父母の合意がなくても共同親権と認め得る場合の一つのモデルなのかなというふうに、答弁から見て思いました。

 そんな形で解釈してよろしいですか。

小泉国務大臣 判断材料になり得る要素としてそういうものがあることは答弁の中で述べさせていただいています。

 ただ、もう一方で、同じく考慮要素になり得るであろう要素として、法制審の中で弁護士の方が述べられたポイントがありますが、それは、同居の親とその子供の関係が必ずしもうまくいっていない場合もある、また、その同居の親による子供の養育に不安があるという場合もある、そういう場合には共同親権が認められる余地があるのではないかという意見陳述もございました。それも申し述べておきたいと思います。

 そういった要素をもろもろ組み合わせての判断になっていくと思います。

寺田(学)委員 最終的には総合的な判断ではありますから、もろもろの要素があるとは思うんですよね。

 ただ、冒頭から申し上げているとおり、玉虫色に、ある種、最初の頃は、裁判所に丸投げじゃないかというような批判すらあった状態の中において、本当に、与党、野党の皆さんが質疑を重ねた上で出てきた答弁が方向性であり、その方向性自体をもってこの法案自体への評価となると思います。

 もちろん、今大臣が御紹介されたようなお話はあると思いますが、繰り返し申し上げますが、一つのモデル及びどういうものがこの法案が趣旨した、父母の同意がなくても、合意がなくても裁判所が共同親権と認め得る場合なのかというのは、父母間に子の心身の健全な発達を害するような不和もなく、当然、相手側を犯罪者等と誹謗中傷することもなく、親権の行使について話合いのみならず共同して決定していけるような関係で、これも大臣が言われたことです、当然、養育費の支払いも履行し、これまでも子の養育に対して適切に関与し、父母間のみならず子供の意見というものをしっかり尊重した形、そういう要素を含めて御判断していくという方向性でよろしいですよね。

小泉国務大臣 判断に当たり、そういった要素が勘案されることは間違いないと思います。それ以外の事情が生ずることもあろうかと、それにふさわしいまた要素が出てくる可能性もあります。

寺田(学)委員 本当に、この部分に対して多くの方々が不安を持っています。ようやくいろいろなことがあって離婚したにもかかわらず、この共同親権の制度が入ったことによって、また当時相当いろいろあった一方の父母から働きかけがあって、もちろん、働きかけのみならず、訴訟まで起こされるようなことになるのではないかということの不安に対して、今まで述べていただいたものがある種指針となって、自分自身と照らし合わせて、その一方の父母の方が、私が今申し上げたような要素に、どのように当てはまるのか当てはまらないのかということをしっかり考えてもらって、余計なことが起きないようにしなきゃいけない、そういうことも広報しなきゃいけないと私は思っています。

 一点細かいことを民事局の方にお伺いしますけれども、フレンドリーペアレントルールの話も大きくいろいろな方々から御不安の声がありました。現在の家裁の面会交流は、いわゆる原則実施論を改めて、ニュートラルフラットという方針、同居親及び別居親、いずれの側にも偏ることなく、先入観を持つことなく、ひたすら子の利益を最優先して考える立場が取られているようであるけれども、今回の法改正によって、父母相互の人格尊重義務や協力義務を根拠として原則面会交流に変容するというものではないですよねということに関して確認の答弁を取りたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案は、子の養育に当たっては、父母が互いに人格を尊重し協力して行うことが子の利益の観点から望ましいと考えられることから、父母相互の人格尊重義務や協力義務を定めているところでございます。

 委員御指摘のニュートラルフラットの考え方につきましては、家庭裁判所における親子交流の調停運営において、同居親及び別居親のいずれの側にも偏ることなく、ひたすら子の利益を最優先に考慮するというニュートラルフラットな立場から調停運営に当たるという考え方が一部の裁判官から提唱されているものと承知をしております。本改正案における父母間の人格尊重義務や協力義務の規定は、このような調停運営の考え方を変更しようとするものではありません。

寺田(学)委員 時間がなくなりましたので、最後にちょっと一言私も申し上げたいと思うんです。

 今回、我が党が修正合意をしたことについて大きな批判を受けていることは事実で、その批判をされる方々は、多くの方が共にこの本改正案に対する問題意識を指摘し合った同志の方々からでもあって、本当にそれはつらいです。

 法案に反対の姿勢を貫いてほしいという声もあることも事実で、当事者たちを不安に陥れるなという気持ちも十分、本当に分かります。そして、確かに、反対の姿勢を貫くということ自体に潔さだったり格好よさがあるというのも分かっていて、党内で方針を悩む方々は本当に多数いたと思いますし、私もそのうちの一人です。

 でも、今日、この過程、今日を迎えるに当たって、数日前ですかね、附帯決議案に虚偽DVという言葉や不当な連れ去りという、国会決議には私はふさわしくないような一方的な見方による攻撃的な言葉が盛り込まれたことがありました。正直、目を疑いました。それと同時に、私や多くの同僚は確信したと思うんですけれども、これは申し訳ないですけれども、自民党や維新の皆さんに任せていたら、こんなことが次々と起こるんじゃないかなという危機感を覚えました。

 今般、最終的に附帯決議案からそのような言葉は全部削除されて、我々も同意できるような内容にはなっておりますが、我々が反対を貫いて、何より姿勢というものを重視していたら何が起こったのかということは、正直怖いものがあります。

 だからこそ、関与し続ける必要性を私たちは強く感じています。我々は、苦渋の判断ながら、修正案に賛成して、協議の枠組みに引き続き関与し続けて、この法案の運用に影響を続ける道を選ぶことになると思います。それ自体は、多くの支援者の方々からいっときの怒りや誤解を受けても、それでもしぶとく、粘着質を持って、積極的にこの法律の解釈と運用に関与していくためだ、自民党や維新の皆さんには好き勝手させないよという強い意思表示だということは、私は議事録に残しておきたいというふうに思っております。

 そういう強い責任感と姿勢というものを最後に申し述べて、終わりたいと思います。

武部委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 教育無償化を実現する会の斎藤アレックスでございます。

 日本維新の会との統一会派を代表し、本日も質問させていただきます。

 今回の民法の改正案、大変重要な、そして大きな変化を及ぼす法律案となっております。私もこの委員会で繰り返し紹介をさせていただきましたけれども、親の離婚を経験する未成年の子供の比率は年々高まっている状況です。少子化によって、子供の数、離婚を経験する子供の数自体は減っていますけれども、比率的には高い状態になっています。三組に一組のカップルが離婚をし、そして、毎年二十万人近く、十数万人、十万人後半台の子供たちが親の離婚を経験をする。今、毎年の出生数が七十五万人程度でございますから、三割から二割の子供が親の離婚に直面をするという状況になっています。

 そんな中、単独親権制度が、親と子の断絶であったり、また、子の貧困、シングルペアレントの家庭の貧困につながっているという指摘もかねてからなされておりましたので、今回の共同親権を導入する、可能とする法改正によって、このような問題の解決、子の最善の利益の実現に向けて日本の法制度が整備をされるということで、私は大変前向きに捉えております。

 この法改正については、繰り返しになりますけれども、日本の家族の在り方に対して大変大きな変更を及ぼす法案でございますので、様々な立場から不安の声、批判があるのも事実でございまして、そのような双方からの意見を調整をし、そして法律案を作るという困難な仕事に取り組まれた法務省の担当者の皆様に心から敬意を表するとともに、また、余り答弁案を見ずに、自分の言葉で答えていただいた法務大臣にも心から敬意を表したいというふうに思います。

 今回、与野党の各党が集って修正協議が行われて、そして修正案に合意をされたこと、これは私は大変すばらしいことだと思っております。様々な意見が対立ある中で、そして、お互いに妥協すべき点は妥協し、よりよいものを作っていくのが国会の協議の在り方だと思いますので、こういった形で今回修正案がまとまったことは大変すばらしい、よいことだというふうに思っております。

 本日は、まずこの修正案について、提出者の池下代議士に何点かお聞かせいただきたいというふうに考えております。

 この修正案の附則に法律の施行後五年をめどとした見直しの検討条項、こういったものが追加をされましたけれども、これを追加をした理由、狙いなどを教えていただければと思います。

池下委員 斎藤アレックス議員にお答えいたします。

 本改正案は、離婚後の子の養育に関する法制度を大きく見直すものでありまして、国民に与える影響も重大であります。また、本改正案を円滑に施行するためには、様々な支援策が適切に運用されることも必要であります。

 したがって、法律の施行後も、その施行状況を勘案し、父母の離婚後の子の養育に関する制度や支援施策の在り方について検討を加え、必要があるときは検討結果に基づき様々な措置を講ずることが、子の利益に資することと考えております。

 こうしたことから、法律の施行後五年を目途とする検討条項を追加する修正案を提案させていただきました。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 この委員会、本日もそうですけれども、様々なこの法案に対する不安点であったり、疑問点があり、指摘をされてきた中で、様々な答弁が積み重ねられてきたところでございます。また、本日は、附帯決議に関しても採決に至るということでございますので、裁判所に、改めて本日は質問はしませんけれども、附帯決議の内容も含めて、そしてこの法案の中身の審議の答弁なども含めて、そして大臣の答弁もそうですけれども、そういったものをしっかりと各関係機関、特に裁判所などが理解をいただいて、その下に運用していくことが大変重要だと考えているんです。

 この不安点、特に、今後も更に運用を見ながら検討が必要になる項目というのは、様々念頭に置きながらこの附則の条項を追加したんだと思いますけれども、どういったことを、今後更に検討が必要だというふうなことを想定されているのか、こちらに関しても、池下代議士からお答えいただきたいと思います。

池下委員 父母の離婚に直面する子の利益を確保するためには、離婚後も養育費の支払いや親子交流等が適切に実施されることが重要であると考えております。このことは、委員会質疑の中でも繰り返し指摘がされたと存じております。

 そこで、具体的に、例えば、離婚前後の子の養育に関する講座の受講や、共同養育計画の作成を促進するための措置について検討が必要になると考えております。

 また、親子交流については、子が両親からの愛情の下で養育、監護を受けることが子にとって望ましいことは当然であるため、離婚後も適切な形で親子の交流を継続することが子の利益にとって重要であると認識しております。したがって、こうした点については、十分な周知、広報や啓発のための措置について検討を行うことが必要であると考えております。

 加えて、以上のような様々な課題を検討するに当たって、関係府省庁等の連携も重要であると考えております。

斎藤(ア)委員 私も大変同意をするところなんですけれども、御紹介をいただいた、子の養育に関する講座の受講であったり、共同養育計画の作成の促進のための措置について、こういったところもお答えをいただきました。

 これは、改めて私からも申し上げたいんですけれども、やはり今、日本国内の中でもいろいろな考え方、考え方が多様化していると思います。家族の在り方も多様化しているし、また、この法務委員会でこれから入管法の改正についても議論されますけれども、海外から日本にお越しになって日本で暮らし、共に働き、生活をする方々も増えているわけですから、これまでの日本では大体社会通念が決まっていて、こういった枠の中で考えるから、何か取決めをしなくても、わざわざ契約を結ばなくてもそれでいいんだという、そういった社会の運営ができたかもしれませんけれども、日本人だけで見ても、考え方が本当に多様になっているわけでございます。

 夫婦であっても他人でありますし、離婚すれば更に他人に戻るわけでございますから、やはり取決めをして、計画を作って、そして子の養育に当たっていくということが改めて重要だということをこの場で申し上げたいというふうに思いますので、そのことは是非周知徹底をしていただいて、また、運用を見ながら、必要であるのであれば、更に促進策を考えていく。我々も御意見させていただきたいと思いますので、その点は、是非よろしくお願いをしたいと思います。

 もう一つ、池下代議士にお伺いをしたいと思います。

 この見直しの条項に関しては、施行後五年を目途としていらっしゃる、修正案ではそうなっていますけれども、子に関わる、家族に関わることでございます。子は、一年たてば一歳年を取って、あっという間に大人になってしまうわけでございますから、子供の期間は本当に貴重なわけでございまして、必要な見直しに関しては、更に短い期間で、五年と言わずにやっていくことが必要ではないかということで、もっと短い年数にすべきではないかという意見もあったかと思うんですけれども、最終この五年と落ち着いた理由を伺いたいというふうに思います。

池下委員 お答えいたします。

 本改正により、父母が離婚する場合に、その双方を親権者と定めることができるようになりますが、協議離婚による親権者の定めの傾向や家庭裁判所による親権者の判断傾向を見るためには、ある程度の期間が必要であります。そこで、改正法の施行状況について十分に検証できるだけの期間を確保するため、施行後五年を目途とする検討条項を設ける修正案を提出させていただきました。

 もっとも、御指摘のとおり、子の利益を確保するためには、改正法の運用状況等について不断に検討することが重要でありまして、五年を待たずとも、必要な運用上の措置について各関係府省庁が連携して取り組むべきであると考えております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 様々な運用の結果、裁判所の判断の結果がある程度出てこないと、五年ぐらい設定をしないと運用の改善の判断が難しいということは、私も理解するところでございます。

 この点に関して、ちょっと通告の順番が前後するんですけれども、法務大臣にもこの修正案の附則の部分についてまずお伺いをしたいんですけれども、施行後五年を目途として見直しの検討条項がこの修正案で追加をされるということになりました。

 もちろん、法務省の立場として、本来的には今回提出をされている法案を見直すことを前提として提出されるということはなかなか考えづらいのかもしれませんけれども、これだけ様々な不安、また検討すべきものがこの委員会の議論でも出てきた中で、こういった修正案、附則がついたわけでございますので、この附則に対する修正、見直しの検討条項に関する受け止めを伺いたいということと、あと、ちょっと追加でお答えいただければと思うんですけれども、今、池下代議士からお答えをいただいた、五年を待たずして可能な運用の見直し等については進めていくべきだ、そういった提出者さんの意見がありましたけれども、この点に関しても併せて法務大臣の御所見を伺いたいというふうに思います。

小泉国務大臣 この改正民法を所管させていただく法務省の立場としては、法の執行については、常に現状を見て問題点を把握し、またその改善ということを常に念頭に置きながら、日々の業務を執行していくことになります。その中で、五年の検討条項ということを国会でお示しいただいたならば、我々はその趣旨をしっかりと踏まえて、関係省庁とも連携して対応していく、適切に対応したいと思います。

斎藤(ア)委員 五年という期間が定められているけれども、そこは不断の検討を行っていくという御答弁だったと思いますので、その点はよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 今回の修正案については、もう一つ、これはもう既にお話、他の委員から出ていますけれども、重要な部分があると思っております。啓発活動のところで、「子の監護について必要な事項を定めることの重要性について父母が理解と関心を深めることができるよう、必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。」ということも加えられています。

 こちらも私、当委員会で申し上げましたけれども、皆さん御承知のように、離婚の九割近くは協議離婚でございますので、離婚当事者の父母の間で、子の監護についての理解であったり、また父母が協力をして子の養育に関わっていくことの重要性、子の利益になるんだというところを理解いただかないと、この法案が可決したとしても、なかなか共同親権のところが増えないであったりとか、あるいは親と子の断絶が続いてしまったり、あるいは子の貧困が続いてしまうということになりかねないと思っておりますので。ここを改めてお尋ねすることはもう質疑がありましたのでしませんけれども、この広報活動、養育計画を作ることの重要性、親子ガイダンス、講座、こういったところの促進、啓発、大変重要な役割をこれから法務省が担われていって、それがこれから日本で育っていく子供たちの幸福を左右することになると思いますので、これからもどうかよろしくお願いしたいというふうに思います。

 今いろいろ修正案についてお伺いをしましたけれども、この法改正全体の意義について、修正案の提出者の池下代議士とそして法務大臣両者に伺っていきたいというふうに思います。

 私は、共同親権、一般的に、一般というと難しいですけれども、特殊な事情がない限り、共同して父母が離婚後も子の養育に関わっていくことが子の最善利益につながることが多いというふうな立場でございますので、この法案、大変意義深いものだと考えています。

 その結果として、貧困に直面する子供たちや親との断絶に直面する子供たちが減っていって、よりよい養育環境が日本全体で実現できる、そのことを祈念しておりますけれども、本民法改正案で、親の離婚を経験する子供たちを取り巻く環境、状況、どう変化、改善することをそれぞれ期待されているか、お伺いしたいと思います。

 まず、法務大臣、お願いできますでしょうか。

小泉国務大臣 まず、この法案では、子供の最善の利益を中心に考えようということでございます。また、父母は子供の人格を尊重してその子の養育をしなければならないと定められ、また、父母は子の利益のために互いに人格を尊重し協力しなければならないと定められました。

 こういう形で、子供の利益と子供の人格の尊重が明確に規定された、その意義は大変大きいものがあると思います。多くの国民にこのことを是非御理解をいただき、子供の安全と安心を守り抜きながら、本法が子供の健やかな成長に資することを期待したいと思います。

池下委員 お答えいたします。

 親の離婚を経験する子の利益を確保するためには、離婚後の父母が適切な形で子の養育に関与し、その責任を果たすことが重要です。また、離婚後も養育費の支払いや親子交流等が適切に実施されることも重要であると考えております。

 本改正によって、このような認識が国民に広まり、父母の離婚や別居後も子の利益が十分に確保されるような環境が整備されることを期待しております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 この本日の委員会の採決を経て、修正をされた上で、引き続き参議院の方では審議が行われるということになりますけれども、一定の、今回の法改正の方向性、趣旨というものは議論がされたというふうに考えております。

 これは繰り返し指摘せざるを得ないことですけれども、不安の声というのは、当然、解消できたとはとても言えないと思います。それは実際に運用が始まってみないと仕方ない面があるかもしれませんけれども、それでも、不安が高まっていて、DVの被害に遭われて、何とか命からがら逃げてきて子供と暮らしている方々のお声もたくさんいただきましたし、一方で、子とずっと会えない状態で、本当にこの法改正でもう一度愛する子供に会えるのかということを確信を持てなくて、まだ不安を抱えていらっしゃる方々もいらっしゃいます。

 こういった実際の運用に関する疑問点などに関しては、実際に運用が始まって、二年たちました、施行されましたというところまで分からない状態、二年間更に不安を与えるということは、私は、行政としては是非避けていただきたいというふうに思っております。

 具体的にどのような取組を行うのか、繰り返し繰り返しお伺いしてきて恐縮でございますけれども、施行に向けた今後二年間の取組について、改めて法務大臣に、その内容であったり意気込みについてお伺いをしたいというふうに思います。

小泉国務大臣 施行までの二年間、その後も含めてでございますけれども、国民の不安を何とか緩和したい、本当にそう思います。

 それには最低限二つ必要なことがあって、国民によく説明をすること、理解をしてもらうこと、周知すること。先ほど笹川委員から具体策も問われてお答えをいたしましたけれども、なおそれを突き詰めていかなければならないというふうに思います。もう一つは、裁判所にやはり同じ意思を、立法意思を共有していただくこと。これも大事なことです。

 国民に対する働きかけ、裁判所に対する働きかけ、これを中心に法務省も全力を尽くします。

斎藤(ア)委員 大変重要な御答弁だと思いますし、是非、この法案を作るに当たって、そしてこの法案審議に当たって、法務省の皆様には真摯に御対応いただいて、私も大変感謝をしております。これからは、審議はまだ参議院の方で続きますけれども、しっかりと運用に向けた取組を加速をしていただいて、施行に向けて不安を解消していただく、そして、施行後もこの立法の趣旨に基づいたしっかりとした運用が行われるということを求めていきたいというふうに考えております。

 本日も御紹介がありましたけれども、養育計画の重要性をしっかりと認識をしていただく、養育計画をどう作ったらいいのか、養育計画を作るときのフォーマットも含めてしっかりと国民に届けていく。それが、ホームページに、どこかに載っているということでは、これは活用されないというふうに思います。そういったところをしっかりとサポート、フォローしていくことも重要だと思います。

 また、監護の講座に関しても、専門家の意見を聞きながら今検討が進められている、そして実証研究が行われていると伺っております。こちらも、諸外国の例なども参考にしていただきながら、より実践的なものにしていただくなどして、離婚を経験する父母の葛藤を静め、また、子がその葛藤で苦しむことがないよう、そして、子がよりよい環境で、父母の離婚を経験したとしても育っていけるような日本社会にしていただきたいというふうに思っておりますので、繰り返しになりますけれども、最後、それでお願いをさせていただきまして、私からの質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 この法案に関しましては、中間試案のパブリックコメントの段階から大きな懸念の声が多く出されておりました。とりわけ、DV、虐待の被害当事者の方が命の危機、新たな人権侵害のリスクを感じたからだというふうに思います。法案に対してはまだまだ、国民、住民の皆さん、知られていない現実がございます。それでも、反対だという声が急速に広がり、オンラインの反対の署名は十万を超えるなど、急速に世論が動いております。

 重大な懸念の声がある中で採決が強行されようとしている、また、先ほども与党の方から、質問したかったけれども今回できなかったというお話がありましたけれども、審議が尽くされない中で採決はするべきではないということをまず冒頭申し上げたいというふうに思います。

 懸念の声に対して、立憲民主党の皆様から出された修正項目案では、父母双方の合意がない場合には共同親権を認めないこと、子供の意見聴取ですとか、DV被害当事者の方々が望んでおられた親権者の変更の厳格化、そして、共同親権の場合、必ず父母の一方を監護者とすることなどを定める修正項目案が出されておりました。これは私どもも評価をしていたわけですけれども、この四党提案の修正案の検討条項にはこうした項目は入らなかったわけですけれども、なぜでしょうか。米山議員、お願いしたいと思います。

米山委員 まず、なぜかということに関しましては、それは各党の折衝の中でということでございますので、何といいますか、まず、全てが入らなかったということではないんですけれども、この結果になったということに関しましては、それは各党の様々な議論の結果ということとお答えさせていただきたいと思います。

 その前提で、幾つかの点については私は反映されていると考えております。

 まず、父母双方の合意がない場合には共同親権を認めないことということに関しましては、附則の十九条で、これは真意を確認するということで反映させていただきました。

 また、必ず父母の一方を監護者とすることということに関しましては、もちろんそのとおりではないんですけれども、附則の十七条におきまして、それぞれ、監護者についての周知徹底を図るということで、それをよく分かった上で判断していただくというところで反映されているというふうに考えております。

 また、親権者変更の厳格化ということに関しましては、これは確かに明文規定はないところではございますけれども、そこは、双方の合意であり、またそれぞれの当事者が様々な趣旨を理解していること、そういったことによって、それは間接的になってしまうかもしれないんですけれども、間接的に反映されるものというふうに理解しております。

 修正案というものがもちろん我が党の全ての要望をかなえているものではございませんけれども、それは実は他党にとっても同じことでございまして、それぞれ立場の異なる党が合意したということは、それぞれの党がそれぞれに、自分の思いの中で、それは反映できなかったものもあるということではあると思います。しかし、その中で、我が党としては、この修正案を出し、そしてこの法案に積極的に関与し、その施行をしっかりと見守っていきたいというふうに考えております。

本村委員 大きな懸念の声に応える部分が入らなかった、四党協議の中で盛り込まれなかったというのは非常に残念に思っております。

 次に、大臣にお伺いをしたいと思います。

 この法案の影響を受ける方々は、全ての子供とその子供の父母を始め何人ぐらいいらっしゃるというふうに考えているのか。そして、この民法の改定案は多くの方々に関わる法案であり、国民的議論がやはり必要なのではないかというふうに考えますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

小泉国務大臣 近年では、毎年十数万人の子供が父母の離婚を経験しております。また、子供がいる父母の離婚件数も毎年数万件ございます。

 本改正案は、おっしゃるように、父母の離婚を経験する子供に加え、父母が婚姻中の子供にも影響があり、また、父母や親族のほか、子供の生活に関わる方々にも影響がある、そのことは十分認識しております。

 ただ、法制審議会においては、子供の意見も含め、国民の様々な御意見に耳を傾けながら、丁寧に議論が行われてまいりました。この間、三年にわたり議論が行われてまいりました。世論調査を踏まえた議論、様々な立場からのヒアリングを実施するパブリックコメント手続における意見募集なども行ってまいりました。国民的な議論、幅広い議論が行われてきたというふうに考えております。

 国会の御審議においても、八名の参考人の質疑を含め、十分な時間をかけて御丁寧に御審議をいただいていると受け止めております。

本村委員 パブリックコメントでは多くの懸念の声が出されておりましたし、もう多くの人が知っているようなお話がありましたけれども、なかなか知られていない実態があるということはつい先日のテレビ報道でもございました。大きな影響があるにもかかわらず、国民的議論も合意もないまま強行ということは絶対に駄目だというふうに私は強調したいというふうに思います。

 この法案については様々な影響がございます。

 影響の一つですけれども、高等学校等就学支援金、高校の学費への補助の影響もございます。様々な教育、社会保障、税制への影響も懸念をされております。

 先日、審議の中で、おおつき議員の質疑に対して文部科学省はこういうふうに答弁をしております。高等学校等就学支援金については、保護者等の収入に基づき受給資格の認定が行われていますが、保護者の定義は、法律上、子に対して親権を行う者と定めております、そのため、共同親権を選択した場合には親権者が二名となることから、親権者二名分の所得で判定を行うことになりますというふうに答弁をしておりました。

 この答弁に関して、共同親権下では、父母の生計は別という証明をしないとやはり両方の所得で判定されてしまうのでは、それ自体が大きな負担、今と変わらないと言えないのではないかとの声や、共同親権になったら教育無償化ではなくなるのかという不安の声も出されています。

 現状より、子供とともに暮らす一人親世帯への経済的な負担が増えたり、労力が増えたり、こういうことは絶対にあってはならないというふうに考えますけれども、これは文部科学副大臣にお願いしたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えさせていただきます。

 委員がおっしゃってくださったことの繰り返しになるところでございますが、高等学校の就学支援金に関しましては、保護者の収入に基づいて受給資格の認定が行われるところでございまして、保護者の定義、法律上、先ほど委員がおっしゃってくださったように、子に対して親権を行う者というふうに定めているところでございます。

 このため、今回の民法改正後に共同親権を選択した場合においては、その親権者が二名となることから、親権者二名分の収入に基づいて判定を行うことになります。

 他方で、委員が御懸念のところでございますが、この就学支援金の受給の資格の認定に当たって、親権者が二名の場合であっても、親権者である保護者の一方が、DV、ドメスティック・バイオレンス、また児童虐待等によって就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合においては、親権者一名で判定を行うこととしておりまして、これは、共同親権か否かにかかわらず、同様の取扱いをさせていただくことになります。

 これらの判定に当たりましては、個別のケースに応じて判断することになりますけれども、法務省とも連携させていただきながら、適切な認定の事務に努めてまいります。

本村委員 やはり、離婚後共同親権ですと、親権者二人分の所得で計算されてしまう場合があるわけです。DV、虐待ケースだけではない、高葛藤で話もしないというような形で離婚をする場合など、二人の親権者の所得で計算されてしまう。やはり現状よりも、子供とともに暮らす親御さん、一人親世帯への経済的負担が増えたり、労力が増えるということになるんじゃないですか。これは副大臣にお願いしたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えさせていただきます。

 繰り返しになるところでございますが、高等学校等の就学支援金の判定に当たりましては、個別のケースに応じて判断する必要があるところでございまして、子の教育費の負担軽減を図ることができるよう、繰り返しになりますが、法務省ともしっかりと連携をさせていただきながら、適切な認定事務に努めてまいります。

本村委員 文部科学省と話をしておりましたら、単独親権か共同親権か選べると聞いているので、もめそうなときは単独親権でというようなことを法務省が言っているということですけれども、それは事実ですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案の理念でございますが、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わっていただくことが子の利益になるというものでございまして、先ほど委員がおっしゃったようなところは、本改正案の理念に入っておりません。

本村委員 こういう部分で経済的負担が一人親世帯の方、子供さんと暮らす親に増えたりするわけですよ、この問題は。

 それで、高校の学費の補助だけではなく、税金の控除ですとか保育園の費用ですとか修学援助、児童扶養手当あるいは母子父子寡婦福祉資金の貸付け、奨学金、様々な一人親支援の制度、これはどういう影響が出るのか、ちゃんと調べて、ちゃんと検証をしているのか。これは法務省民事局にお願いしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の扶養控除ですとか児童手当あるいは児童扶養手当、保育所の利用申請などにつきましては、これらの制度の根拠となる各法令の規定に基づいて判断されるべきものでございまして、一次的には当該行政手続の根拠となる法令を所管する各府省庁において検討されるべき事項であると考えますが、その上で、御指摘の扶養控除等につきましては、いずれも、親権の有無や民法上の監護者の定めの有無をその要件としているわけではないと承知をしておりまして、こうしたことを踏まえますと、今般の民法改正後に離婚後の父母双方を親権者と定めたことをもって具体的な変更を生ずるわけではないと承知をしております。

本村委員 様々な一人親支援の制度に関しまして、あるいは税金控除に関しまして、どういう影響があるか、全て網羅的に書いた、それを資料として提出をいただきたいと思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

小泉国務大臣 努力したいと思います。

本村委員 離婚後共同親権が各一人親世帯へどういうふうに経済的な影響が及ぶのか、労力がどう増えるのか、こうした影響もこの委員会の中ではまだまだ十分に議論できていないのに採決を強行しようとしていることは、私は絶対に駄目だというふうに思っております。

 ほかにも様々な懸念が出されております。共同親権の場合、急迫でない手術で医療機関が双方に合意書を送付すると考えているのか、伺いたいと思います。また、DV、虐待ケースで、別居親にどこの病院に入院するかが分かるということになり、子供、同居親の安心、安全が図れないという心配の声が出されておりますけれども、その点、大臣、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行民法の下におきましても、父母が親権を共同して行使する場合において、子が医療行為を受ける際に医療機関が父母に求めている手続は個別具体的な事案において様々でありまして、別居親への合意書の送付が一律に行われているわけではないと承知をしております。

 この点は本改正案においても同様でありまして、現状と異なる対応を必要とするものではありません。

 また、本改正案によれば、例えば、裁判離婚をする場合において、御懸念のようなDV、虐待を受けるおそれがあるときには、裁判所が父母の一方のみを親権者と定めることになります。

 本改正案が子や同居親の権利利益を不当に侵害する危険を生じさせるようなものではないということについて、引き続き丁寧に御説明してまいりたいと考えております。

本村委員 DV、虐待ケースで逃げている場合、今、婚姻中で逃げている場合も大丈夫ですね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行の取扱いに大きな変更を生ずるものではないと考えております。

本村委員 現場にどうやって徹底されるのかも不安でございます。

 そして、もう一つ、急迫かどうか、日常行為かどうか。進学、医療などの、共同親権の父母が合意しない場合、家庭裁判所に持ち込まれることになります。そうしますと、調査報告書が製作をされて、それが相手方に開示をされ、子供の現状が別居親に伝わることになるのではないか、特にDV、虐待ケースの被害者の方々が非常に心配をしております。ここは大丈夫なのか、大臣にお答えをいただきたいと思います。

小泉国務大臣 家庭裁判所の調査官に事実の調査をさせるか否かについては、個別の事案の具体的な事情に即して、裁判所において適切に検討されるものと思います。

 その上で、現行法においても、当事者が家庭裁判所調査官が作成した調査報告書を閲覧するには、家庭裁判所の許可を要するものとされております。例えば、家事審判手続に関しては、家事事件手続法第四十七条第四項で、家庭裁判所は、事件の関係人である未成年者の利益を害するおそれ等があると認められるときは、記録の閲覧を許可しないことができると定められております。

 このような規定に基づいて、家庭裁判所においては、記録の閲覧許可について、個別具体的な事案の内容を考慮した上で適切な運用がなされていると承知しております。

本村委員 DV、虐待が家庭裁判所の中で軽視をされているということは、参考人質疑の中でも明らかだというふうに思います。ここでも家庭裁判所の判断次第ということです。今でも心配なわけですけれども、家庭裁判所に持ち込まれるものが多くなるということで、更にその心配が増えていくわけです。

 様々訴えられるリスクも高まってまいります。六年間で十六件もの裁判を抱えるDV被害者の方々、これはもっと激烈になるのではないかという懸念があるわけです。

 福岡県の弁護士会の会長声明、離婚後共同親権の導入について、十分に国会審議を尽くすことを求める会長声明がございますけれども、その中で、どこまで単独で決定できるのかが明確でなければ、後に親権行使の適法性が争われる等の心配により適時適切な意思決定ができず、かえって子の利益を害するおそれがあるということが指摘をされております。

 どこまで単独決定できるのか、単独行使できるのかを明確にする必要性については、大臣、どうお考えでしょうか。

小泉国務大臣 現行民法においては、父母双方が親権者である場合は親権は父母が共同して行うこととされており、親権の単独行使が認められる範囲については、明文の規定がなく、解釈に委ねられているんですよね、現行民法では。

 本改正案は、このような現行民法の解釈も踏まえて、親権の単独行使が許容される場合を明確化するものであります。これまで定められていなかったものを明確化する、そういう改正でございます。

 こういった本改正案の内容については、国会における法案審議の中で明らかになった解釈等を含め、関係府省庁等と連携して適切かつ十分な周知に努めてまいりたいと思います。

本村委員 それで、採決しようとしている附帯決議案では、この明確化について、ガイドラインというふうに書かれておりますけれども、国会審議の中でしっかりと議論しなければいけないというふうに考えております。それがまだまだできておりません。

 今日、資料を出させていただいておりますけれども、どういう場面で、これが日常行為なのか、日常行為以外だけれども急迫の事情なのか、こういう一覧表がなぜ今の段階で出ていないんでしょうか、大臣。

小泉国務大臣 これはいろいろな、様々なケースがやはりありますので、どれほど精査してみても全体を押さえるということはなかなか難しいと思っています。

 基本的な考え方の御議論を国会でしていただいて、その考え方に沿って具体例を下に下ろして考えていくという順番だと思うんですよね。議論をここでしていただいて、方針が決まれば、それに見合う個別例というものを我々は提示することができます。そういう一番根幹の部分を御議論いただいているのがこの委員会だと私は思います。

本村委員 先ほど中絶の話がありましたけれども、中絶は日常の行為ではなく、急迫の事情がある場合にこれは単独行使が認められるということですので、その点も申し上げておきたいというふうに思います。

 まだまだ審議は尽くされておりません。採決を強行することなく審議を続けていただくことを委員長に強く求め、質問を終わらせていただきます。

武部委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

武部委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。熊田裕通君。

熊田委員 自由民主党の熊田裕通です。

 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました民法等の一部を改正する法律案につきまして、賛成の立場から討論させていただきます。

 現在、父母の離婚が子の養育に深刻な影響を与えるとの指摘や子の養育の在り方が多様化しているとの指摘がされております。

 そのような中で、父母の離婚に直面する子の利益を確保することは非常に重要な課題であり、そのためには、離婚後も父母が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすこと、また、親権や婚姻の有無にかかわらず、養育費の履行を確保することや、安全、安心な親子交流を実現していくことが重要であります。

 本法律案は、これらの課題に対応するため、子の利益を確保する観点から、父母の責務等を明確化し、親権等に関する規定を見直すとともに、養育費の履行を確保する方策や、安心、安全な親子交流を実現するための規定等を設けるなどしております。

 本法律案に対しては、DVや子の虐待等の困難な状況にある方々を懸念する意見もございましたが、本法律案においては、単独親権としなければならない場合や、父母双方が親権者となった場合において単独で親権を行使し得る場合を明確化するなど、これらの課題に対応するための規律を設けております。

 また、そのような困難な状況にある方々に対しては、本法律案の成立後も、その円滑な施行に向けて、関係省庁等が連携し、子の利益が損なわれることのないよう、必要な支援策や体制整備を図っていくことが確認されました。

 全ての子の人格が尊重され、その心身の健全な発達が図られ、子の利益が図られるようにすることが非常に重要であり、そのためには、本法律案の一日も早い成立、施行が必要です。

 委員各位の賛同をお願い申し上げて、私の賛成討論といたします。

 なお、本法律案については、十五時間を超える委員会質疑、二回の参考人質疑を行い、慎重かつ丁寧な議論を経て、四党による修正が加えられ、附則において、その円滑な施行のために広報啓発、周知を行う旨の規定や、政府が更なる検討を行い必要な措置を講じる旨の規定が追加されました。

 修正された法律案については、子の利益のため、一日も早い成立、施行を強く求めるものであります。

 委員各位の賛同をお願い申し上げまして、本修正案についても、私の賛成討論といたします。

武部委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました民法等の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成、修正部分を除く原案に反対の立場から討論いたします。

 法制審議会家族法制部会は、離婚後の共同親権導入などをめぐり三年近く議論した末、民法改正要綱案を賛成多数で了承しましたが、参加委員二十一人のうち、三人が反対。また、慎重派委員の訴えを受けて追加したDV、虐待を防ぐ取組の必要性などを盛り込んだ附帯決議は、内容が不十分だとして二人が反対しました。

 家族法制部会長は、全会一致が望ましかったが、今回は異論が残り採決になったほか、通常では余り実施しない附帯決議もつけた、異例だと思っているとの所感を述べられました。

 その部会長の異例という所感や、反対、棄権した委員の懸念は残念ながら的中し、これまでの審議内容やパブリックコメント、要綱案、附帯決議は必要十分には反映されず、さらに、関係府省庁などとの事前協議や検討が不十分なまま、生煮え、玉虫色のこの民法等の一部を改正する法律案が今国会に提出されたと言わざるを得ません。

 法定養育費制度の導入など一定評価する部分もありますが、この改正原案の肝である離婚後共同親権の導入は、賛成派と反対派の双方の意見が存在し、慎重な議論を進めてきました。しかし、我が会派が指摘する問題点や懸念は、委員会審議を通じても多く残されています。

 原案は、子の利益を最優先するとしていますが、裁判所が親権の指定又は変更について判断するに当たって子の意見を尊重するという規定がありません。子の意見表明権の確保は欠かせません。

 共同親権下でも親権の単独行使ができるとする急迫の事情の急迫とはどれくらい差し迫った時間的範囲を指すのか、監護及び教育に関する日常の行為の日常の行為とは何が当てはまるのかは、曖昧であり具体性がありません。

 離婚後共同親権における監護者の定めの義務づけがなされていないデメリットや、子に対する支援が減少するなど不利益となるおそれがあります。

 協議離婚により共同親権を選択する合意型共同親権であっても、DV、子の虐待、父母の葛藤が激しいケースが紛れ込む危険性があります。

 さらに、裁判上の離婚の場合に父母双方を親権者と定める非合意型強制共同親権は、子や父母一方を危険にさらすリスクが高まる可能性があります。

 子供とともに逃げて恐怖におびえながら何とか生活しているDV被害者は、共同親権が導入された場合、DV加害者と共同親権となり、再びDV被害を受けるおそれ、裁判所がDV被害を認定してくれないおそれなど、更なる恐怖にさらされてしまうと先日の参考人質疑でDV被害者が悲痛な訴えを陳述されました。

 共同親権導入に伴い、共同親権をめぐる裁判や調停が発生することとなります。家庭裁判所の裁判官及び調査官などの人員、体制、施設は今でさえ十分と言えない状況です。

 以上のことから、修正部分を除く原案に反対します。

 次に、民法等の一部を改正する法律案に対する修正案については、これら問題点、不安や懸念を払拭すべく、私ども立憲民主党が求めた十一の修正項目案を反映したものとは言えませんが、最低限盛り込まれたものであり、原案のまま運用されることによって生じる被害を少しでも減らせることができると判断し、賛成します。

 以上で討論を終わります。

武部委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 私は、日本共産党を代表し、民法改定案に反対の討論をいたします。

 本法案は、離婚後共同親権を導入するものです。この問題では様々な意見があり、本委員会審議では重大な懸念が浮き彫りになりました。

 それに対して、立憲民主党から、修正項目案として、父母の双方の合意がない場合には共同親権を認めない、離婚後の父母双方が親権者となる場合には必ず父母の一方を監護者とするなどが提案され、日本共産党は積極的に評価をしていましたが、四党合意の修正案には盛り込まれませんでした。

 慎重かつ丁寧な議論によって、新たな人権侵害を生じさせることなく、国民的合意をつくることが求められています。重大な懸念の声がある中で、審議を尽くさないまま採決することは認められません。厳しく抗議をいたします。

 本法案に反対する理由の第一は、親の子に対する権利という認識が色濃く残る親権という用語をそのままに、離婚後共同親権を導入していることです。

 参考人からも、包括的な子に対する親の権利があるかのような誤解を生む可能性があると指摘されました。本法案で子の人格の尊重の親の責務が明記されたことは重要ですが、日本国憲法の下では、親権とは、親の支配権ではなく、子供が安心、安全に暮らせるようにするための親の責務であり、社会による子供の権利と福祉の保障であるべきです。再定義を求めます。

 第二に、子供の意見表明権が明記されていないことです。

 離婚等に伴う環境変化は子供の人生にとっても一大事であり、子供が意見を聞かれる権利を保障することは、一人一人の子供の最善の利益のために必須の手続です。親権者の決定時にとどまらず、監護や面会交流など親子法制に関わる手続のあらゆる場面で子供の意思、心情が尊重されることを明記するべきです。

 第三に、裁判所によって、当事者に不本意な共同親権が強行され、一方の親、子供の利益が害される懸念があることです。

 共同親権になった場合、子供に関わる重要な決定は元配偶者の同意が必要となります。法務大臣も、裁判所で判断がなされるべきことが増えるかもしれませんと答弁したように、合意が得られなければ、そのたびに裁判所の判断を求めることになります。急迫の事情、日常の行為の場合は単独行使できますが、解釈の違いが生じた場合は紛争となります。不当な協力義務違反などで訴えられることも予測されています。六年間に十六件もの裁判を抱えるDV被害者のように、リーガルアビューズが深刻化することの大きな懸念もあります。医療現場、行政、学校、支援の現場からも懸念の声が出されています。

 第四に、家庭裁判所の人的、物的体制と総合的な施策が極めて不十分なことです。

 裁判官、調査官の大幅増員など、家庭裁判所の人的、物的体制を増強すること、子供の安全、安心を最優先にした、子供の意思、心情の尊重をするための徹底した研修、特にDV、虐待ケースでは、児童精神科医や児童心理司等の専門家による子供の意思の確認を行う仕組みをつくることが必要です。公費による子供パートナー弁護士制度、給付制への民事法律扶助制度の大幅拡充、養育費立替え払い制度の創設など、総合的な施策を本気で取り組むべきです。高等学校等就学支援金制度や税金控除、各種一人親支援制度が使えなくなることがないようにするべきです。

 以上、申し上げ、反対討論といたします。

武部委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

武部委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、笹川博義君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

武部委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

武部委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、笹川博義君外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。米山隆一君。

米山委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 施行後の本法の運用状況について公表するとともに、諸外国における子の養育に関する法制の動向等も踏まえ、本法による改正後の家族法制による子の利益の確保の状況、親権者の指定等における父母の真意の反映の程度、DVや児童虐待等を防止して親子の安全・安心を確保するものとなっているか等について不断に検証し、必要に応じて法改正を含むさらなる制度の見直しについて検討を行うこと。

 二 子の権利利益を保護するための父母の責務の明確化等の本法の趣旨及びその内容について、国民、関係府省庁はもとより、児童扶養手当等の事務を行う地方公共団体及び共同親権の導入により大きく影響を受ける関係機関等に正確に伝わるよう、周知広報の徹底に努めること。特に、親権の単独行使の対象となる民法第八百二十四条の二各項の「急迫の事情」、「監護及び教育に関する日常の行為」、「特定の事項」及び第七百六十六条第一項の「子の監護の分掌」等の概念については、その意義及び具体的な類型等をガイドライン等により明らかにすること。

 三 子の利益の確保の観点から、本法による改正後の家族法制による子の養育に関する事項の決定の場面において子自身の意見が適切に反映されるよう、専門家による聞き取り等の必要な体制の整備、弁護士による子の手続代理人を積極的に活用するための環境整備のほか、子が自ら相談したりサポートが受けられる相談支援の在り方について、関係府省庁を構成員とする検討会において検討を行うこと。

 四 父母の別居や離婚に伴う子の養育をめぐる事件の審理に関し、特に子の権利利益を保護する観点に留意し、子の監護の安全や安心への配慮のほか、当事者の意見を適切に聴取しこれを尊重することを含め適切な審理運営がされるよう必要な研修その他の取組を行うこと。

 五 離婚後の養育費の受給や親子交流等が適切に実施されるよう、我が国における実状調査のほか、諸外国における運用状況に関する調査研究等を踏まえ、養育費・婚姻費用について裁判実務で用いられている標準算定表を参照して取り決められる額が適正なものとなるための配慮等を含め、国自らによる取組の在り方に加え、民間の支援団体や地方公共団体の取組等への支援の在り方について検討を行うこと。また、調査研究に当たっては、公的機関による養育費の立替払い制度など、養育費の履行確保のさらなる強化について検討を深めること。

 六 父母による子の養育が互いの人格の尊重及び協力関係のもとで適切に進められるよう、離婚前後の子の養育に関する講座の受講や共同養育計画の作成を促進するための事業に対する支援、ADRの利便性の向上など、関係府省庁及び地方公共団体等と連携して必要な施策の検討を図ること。

 七 改正法により家庭裁判所の業務負担の増大及びDV・虐待のある事案への対応を含む多様な問題に対する判断が求められることに伴い、家事事件を担当する裁判官、家事調停官、家庭裁判所調査官等の裁判所職員の増員及び専門性の向上、調停室や児童室等の物的環境の充実、オンラインによる申立てやウェブ会議の利用の拡大等による裁判手続の利便性の向上、子が安心して意見陳述を行うことができる環境の整備など、必要な人的・物的な体制の整備に努めること。

 八 司法手続における利用者負担の軽減を図るため、法テラスによる民事法律扶助、DV等被害者法律相談援助や地方公共団体における支援事業など、関係機関との連携を一層強化し、必要な施策の充実に努めること。

 九 DV及び児童虐待が身体的な暴力に限られないことに留意し、DVや児童虐待の防止に向けて、被害者支援の一環としての加害者プログラムの実施の推進を図ることを含め、関係機関と連携して被害者の保護・支援策を適切に措置すること。また、居住地や勤務先・通学先等が加害者に明らかになること等によるDV被害や虐待の継続、SNSなどインターネット上の誹謗中傷や濫訴等の新たな被害の発生を回避するための措置を検討すること。

 十 親権者の指定や親子交流等が子の利益のため適切に行われるようにするため、DV及び児童虐待の被害又はそれらのおそれの有無についての認定が適切に行われるよう、必要な研修その他の取組を行うこと。また、父母が互いの親子交流を尊重し、これを妨げる行為を防止する措置等について検討すること。

 十一 本法の下で新たな家族法制が円滑に施行され、子の利益を確保するための措置が適切に講じられるよう、関係府省庁等が連携して必要な施策を実施するための体制整備を進めること。また、本法の施行に伴い、税制、社会保障制度、社会福祉制度等への影響がある場合には、子に不利益が生じることはないかという観点に留意して、必要に応じ関係府省庁が連携して対応を行うこと。

 十二 改正法が国民生活へ多大な影響を与えることに鑑み、本法の施行に先立って、子の利益の確保を図るために必要な運用開始に向けた適切な準備を丁寧に進めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

武部委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

武部委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小泉法務大臣。

小泉国務大臣 ただいま可決されました民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

武部委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

武部委員長 次回は、来る十六日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十六分散会


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