衆議院

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第19号 令和6年5月15日(水曜日)

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令和六年五月十五日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 武部  新君

   理事 熊田 裕通君 理事 笹川 博義君

   理事 仁木 博文君 理事 牧原 秀樹君

   理事 道下 大樹君 理事 米山 隆一君

   理事 池下  卓君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      斎藤 洋明君    高見 康裕君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      中野 英幸君    平口  洋君

      藤原  崇君    三ッ林裕巳君

      山田 美樹君   おおつき紅葉君

      鎌田さゆり君    酒井なつみ君

      鈴木 庸介君    山田 勝彦君

      阿部 弘樹君  斎藤アレックス君

      美延 映夫君    日下 正喜君

      平林  晃君    本村 伸子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       岸田 文雄君

   法務大臣         小泉 龍司君

   法務大臣政務官      中野 英幸君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 丸山 秀治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       巽  慎一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           武藤 憲真君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           原口  剛君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十五日

 辞任         補欠選任

  寺田  学君     酒井なつみ君

同日

 辞任         補欠選任

  酒井なつみ君     寺田  学君

    ―――――――――――――

五月十五日

 民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を求めることに関する請願(前原誠司君紹介)(第一三二五号)

 同(玉木雄一郎君紹介)(第一四二四号)

 性虐待・性搾取等子供への性加害を根絶するためサバイバーの声を生かした施策強化と関係法規の更なる改正に関する請願(大河原まさこ君紹介)(第一四二二号)

 民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正に関する請願(寺田学君紹介)(第一四二三号)

 同(野田聖子君紹介)(第一五〇六号)

 同(岡本あき子君紹介)(第一五三一号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(柚木道義君紹介)(第一四七八号)

 元々日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(柚木道義君紹介)(第一四七九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)

 出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)

 外国人一般労働者雇用制度の整備の推進に関する法律案(階猛君外九名提出、衆法第一〇号)


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     ――――◇―――――

武部委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案並びに階猛君外九名提出、外国人一般労働者雇用制度の整備の推進に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として出入国在留管理庁次長丸山秀治君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官巽慎一君、厚生労働省大臣官房審議官武藤憲真君及び厚生労働省大臣官房審議官原口剛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 これより内閣総理大臣出席の下、質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 本日は、総理出席のこの委員会で質問ができますこと、本当にありがとうございます。

 まず、総理にお伺いをいたしたいのは、外国人労働者問題について最も重要なことは、私は、長期的で一貫した国家戦略を持つことだと思っております。何のために外国人労働者を受け入れ、またどのような日本の社会を目指すのか、そういった大きな国家戦略に基づいて制度をつくり、そして環境を整備すること、これが最も重要だと思っております。

 国家戦略という意味で、二つの側面を指摘をしたいと思います。

 一つは、外国人労働者を日本社会に受け入れることによってどのようなメリットがあるのかというその一環として、例えば、なかなか進まない日本の労働市場改革にどのようなよい影響を与えるのか。例えば、年功序列の弊害をなくすとか、賃金上昇、それから価格への転嫁、さらには雇用の流動性の確保など、日本の経済の成長、そして活力ある生産性の高い日本経済をつくっていく、そういうことが、外国人労働者を受け入れることによって、どんなメリットが生じるのか。

 反対に、外国人が増えることによって、日本のよさとか地域社会のきずなや国柄を壊さないか。また、公共の秩序、国家の安定という意味から問題はないのか。欧米に見られるような国民との分断を生じさせないためにどのようにするのか。

 こういった点も含めて、総理の外国人労働者政策の目指す国家戦略、そしてどのような社会を目指していくのか、その点についてお伺いをいたします。

岸田内閣総理大臣 外国人材の受入れのメリット、デメリット、さらには国家戦略について御質問いただきました。

 我が国への外国人材の受入れについて、委員御指摘のような労働市場改革という点についての影響については、一概に申し上げることは難しいと思いますが、しかし、少なくとも、一般論として申し上げるならば、外国人材の受入れの拡大、これは、深刻化する人手不足の解消、あるいは我が国の経済、産業自体の活性化、こういった点においてメリットがあるということは十分考えています。

 他方で、外国人材の受入れを拡大した場合、本人や家族の社会保障等に係るコストの増大、あるいは言語、生活習慣の相違に起因する日常生活上のトラブルの発生、こういった懸念もあり得る。

 よって、こうしたメリット、デメリット、これはバランスを取りつつ制度の在り方を検討する、これがあるべき姿勢であると考えております。

 その中で、国家戦略ということで申し上げるならば、政府としては、国際的な人材獲得競争が激化する中で人手不足の課題に対応するため、我が国が魅力ある働き先として選ばれる国となるよう、外国人材の受入れ制度の魅力向上に取り組んでいく、こうした方向性を追求するとともに、日本人と外国人が互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現していくため、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ、これらに基づいて、受入れ環境の整備等、外国人との共生社会の実現に向けた取組を着実に進めていく、この二つの大きな方向性、これを政府として追求することが重要であると考えております。

稲田委員 ありがとうございます。

 今までどちらかというと安価な労働力というふうに考えられていた技能実習制度を抜本的に改革する、そして外国の方にとっても選ばれる国、そして日本人にとっても労働環境がよりよいものになっていく、そういったことが求められているというふうに思います。

 法務委員会に来られた参考人の中には、日本は有数の労働移民受入れ国になっている、そしてこういった傾向が強まるというような発言もございました。人手不足という観点から外国人労働者の数を増やしていくとすれば、また欧米のような問題も生じてくると思います。

 今回の入管法の改正で、永住外国人の在留資格の取消し事由を明確化する、また、故意に公租公課を支払わないこと、これは二十二条の四、八号ですけれども、これが取り消すことができる事由として追加されます。私は、これは適正な改正だと評価をいたしております。

 その趣旨からいたしますと、永住外国人は日本に永住することが前提ですから、年金を解約して母国に帰るということを前提とした、一時金が取得できる外国人の脱退一時金制度とは矛盾をすると思います。

 今回のこの公租公課の中にももちろん年金は含まれるわけでございます。日本人は年金を途中では解約はできません。その日本人との公平、それから在留外国人の無年金を防ぐという意味から、永住資格を維持する外国人の方々は脱退一時金の対象外とすべきだというふうに思いますが、この点を含め、今回の年金制度改革において、年金一時金制度の検討状況を総理にお伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 まず、滞在期間が短い外国人の場合は、年金保険料の納付が老齢給付に結びつきにくいという特有の事情を踏まえて、一定の要件を満たした場合には脱退一時金の受給が可能となっています。その一方で、長期間日本に滞在することが見込まれる永住者の方については、委員御指摘のとおり、将来の年金受給権を確保するという観点も重要であると考えます。

 本年三月に厚生労働省の社会保障審議会年金部会において、脱退一時金に関する議論、これを開始いたしましたが、その中で、この年金部会の中では、日本に生活基盤を持つと考えられる永住者資格の方について脱退一時金の支給を制限していく方向性は賛成という意見があった一方で、現行制度において、永住者は海外在住期間が合算対象期間として老齢年金の受給資格期間にカウントされることから、脱退一時金を受給するケースはそもそも限定的であり、必ずしも改正の必要はない、こういった意見もあったと承知をしております。

 引き続き、次期年金制度改正に向けて、必要な検討は続けていきたいと考えております。

稲田委員 ありがとうございます。

 この問題は、昨年の臨時国会冒頭の私の代表質問でも指摘し、また、総理おっしゃいましたように、今、年金部会でも検討されていて、おっしゃいましたように、日本に生活基盤を持っておられる永住資格の方に支給を制限していく方向、また、再入国が予定されるような場合には永住者は脱退一時金を請求できなくするのがよいのではないかといった意見も出されております。今総理も、そもそも限定的だとおっしゃるのであれば、やはり対象外にすべきだと私は思います。

 今回、永住資格取消しに故意による年金不払いも含まれるわけですから、無年金の原因になる年金の解約は永住資格の人には適用しないというのが一貫した考えだと思うことを申し上げたいと思います。

 本日は、どうもありがとうございました。

武部委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 今日は総理、よろしくお願いいたします。

 今、国際的な人材獲得競争は激化しております。そして、我が国が外国人から選ばれる国であり続けるためには不断の努力が必要でございます。

 そういう中で、参考人や地方公聴会の御意見というのは、選ばれるのはやはり賃金が一番だ、こういうふうに言われているわけでございます。ですから、外国人労働者を安価な労働力として安価に受け入れることについては問題がある、やはりこれを改革しなきゃいけない、これは一つあります。

 それから、やはり今の技能実習制度については、人権保護に欠ける悪質な監理団体だとか受入れ企業を排除することができない。そのために、ネガティブなイメージが先行している。しかし、優良な事例もあるし、また、例えば、受入れ企業が送り出しの国に行って、機関が不適当なところは変更するとか、いろいろ従業員、外国人労働者の相談を丁寧にする、こういう優良事例もある。こういうことをしっかり実態を示していく必要がある。

 さらに、今回の改正におきましては、スキルアップ、そしてキャリアアップ、この仕組みが盛り込まれている。これは大きな改革であり、やはり参考人も、ここは非常に重要なところだ、こういうことでございます。

 そういうことから、これらの観点を踏まえて、人材不足の解消と、日本人、外国人を問わず、日本で働く方の賃金上昇を実現できるバランスの取れた外国人労働者の受入れをどう行っていくのか、また、技能実習制度におけるネガティブなイメージを払拭して、技能実習制度における人材の優良事例等を含む実態をしっかり発信していくこと、そして、今回の改正のキャリアアップの仕組みを国際社会にどう発信していくか、これについて総理にお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 特定技能制度及び育成就労制度においては、まずは、受け入れる分野において生産性向上及び国内人材確保に向けた取組を尽くしていること、これが前提となっています。まずは、こういった取組がなされているかを慎重に確認した上で受入れを行うこと、これを予定しています。

 その上で、今回の法案では、受け入れた外国人材の人材育成や、日本人と同等の待遇確保がしっかりとなされるよう、監理支援機関の要件の適正化、また外国人育成就労機構の監督機能の強化を行うこととしており、外国人が安価な労働力として使い回されるといったことがないよう、この制度を運用していかなければならないと考えています。

 また、現行の技能実習制度でも、技能を修得した外国人が本国で活躍するなどの好事例がある、このように承知しており、さらに、この育成就労制度では、キャリア形成プログラムの策定等により、外国人のキャリアアップの道筋をより明確化すること、これも予定しているところです。

 こういった点について積極的な情報発信を行うべきである、委員の御指摘はそのとおりだと思います。我が国が選ばれる国になる観点からも重要であると認識しており、今後は、技能実習制度での好事例や今後のキャリア形成の仕組みについて、関係省庁のウェブサイトやSNSを活用した広報、また在日大使館等の協力を得ながら国内外の外国人への広報等を行い、一層の積極的な情報発信に政府としても努めてまいりたいと考えております。

大口委員 また、現行の技能実習制度では、送り出し機関が徴収する高額手数料による多額の借金等が技能実習生の失踪の原因となっているとの指摘、また、監理団体が受入れ機関から徴収する監理費が高額かつ不透明であり、その負担が外国人の待遇等に転嫁されているのではないかという指摘があります。

 魅力ある制度を構築して、我が国を選ばれる国とするためには、こういった費用等について透明化や適正化を図ることが必要不可欠と考えます。

 今回の制度見直しにおいて、送り出し機関が外国人から徴収する手数料や、監理支援機関が受入れ機関から徴収する費用について、どのような適正化方策を講じる必要があると考えておられるのか、総理の見解をお伺いします。

岸田内閣総理大臣 外国人の労働者としての権利保護や制度の魅力向上といった観点からは、関係機関が徴収する手数料等について一層の適正化を図っていく必要がある、このように認識をしています。

 この点、育成就労制度では、来日に当たっての外国人の負担を軽減するため、海外の送り出し機関が外国人本人から徴収する手数料に上限を設けるとともに、送り出し国との二国間取決めにより、悪質な送り出し機関の排除に向けた取組、これを強化することとしています。

 また、監理団体に代わる監理支援機関が受入れ機関から徴収する費用については、これまでと同様に実費に限って徴収可能とすることに加えて、運用要領等で費用の算出方法の考え方を明確化し、各監理支援機関での算出方法や基準を公開させる、こうしたことによって費用の透明化を図った上で、外国人育成就労機構による確認、指導を徹底していく、こうした方針であり、この一層の適正化を政府としても図ってまいりたいと考えております。

大口委員 永住許可制度の適正化につきまして、これは共生社会の実現のために必要な規定と御説明をいただいております。

 ただ、永住者の方からは、収入減少や手続ミスで税金、社会保険料を滞納することなどは誰にでも起こり得ることであり、そのことによって許可が取り消されるのでは安心して生活できない、例えば在留カードを携帯することを失念した場合でも許可が取り消されるのかといった懸念が示されております。

 こうした懸念に対してどのような配慮がなされているのか、総理に御見解をお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 今般の永住許可制度の適正化は、永住者について、永住許可後に在留審査の手続がないことから生じている課題に対応するというものであります。

 すなわち、適正な在留管理の観点から、永住許可後に故意に公的義務を履行しないなど、永住許可の要件を満たさなくなった一部の悪質な場合について、その在留資格を取り消すことができるとするものであり、適切に公的義務を履行して日本で生活している大多数の永住者に影響を及ぼすものではないと考えています。

 その上で、本法案による改正後の永住許可後の在留審査に当たっては、従前の公租公課の支払い状況や現在の生活状況など、対象者の置かれている状況を十分に考慮し、個別の案件ごとに悪質性を判断する、このようにしておりますし、また、永住者の在留資格の取消しをしようとする場合であっても、原則として、法務大臣が職権により定住者の在留資格への変更を行うなど、慎重な運用に努めてまいることが重要であると考えております。

大口委員 日本語の学習についても国がしっかり支援をしていくということも質問させていただく予定でございましたけれども、これにつきましては、時間も参りますので、ただ、意見といたしまして、やはり、日本語教育機関認定法の仕組みを活用した日本語教育の質の向上、日本語学習のためのオンライン技術の活用による負担軽減、母国語による日本語学習支援としての日本語教材の開発といった取組をしっかりしていただきたい、こう意見を述べさせていただきまして、質問を終わらさせていただきます。

 今日はありがとうございました。

武部委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党の道下大樹でございます。

 早速、総理に質問いたします。

 技能実習制度をめぐりましては、労働ではなく研修の目的で来日しているはずの外国人を実質的に低賃金労働者として扱う実態が広がっていることや、転籍を制約し技能実習生の権利主張を抑制してきたことなどがあり、アメリカ国務省による人身売買に関する年次報告書の中で強制労働などと繰り返し批判を受けてきた経緯がありますし、また、各国からも厳しい批判を受けているのは御承知だというふうに思います。先日のバイデン大統領の、日本は外国人嫌いという発言にも表れているのではないでしょうか。

 そう思われないためにかどうか分かりませんが、また、外国人の方々に選ばれる国ということで、政府は、技能実習制度を廃止して育成就労制度に移行する法案を今回出しましたけれども、私は、これは、そのような内容になっていない、単なる看板のかけ替えにすぎないというふうに思っております。

 そこで、先ほど来お話が出ています永住許可の取消しについて伺いたいと思います。

 閣法では、有識者会議での十分な議論もないまま、自民党が昨年十二月に提言を出したということを受けて、突然、永住許可制度の適正化という名の永住許可取消し制度がこの法案には盛り込まれています。

 これまでの委員会質疑でも明らかになりましたけれども、入管庁に我々が質問したときには、外国人の方の未納についての調査はしていないと言ったのに、その後の自民党の委員による質問に対して、自治体からのサンプル調査でこれだけありました、一千八百件ほどから、二百三十五件の未納がありましたとありましたけれども、結局は、十分なデータがないまま、しかも、この前の法務と厚労の連合審査のときには、実は外国人の未納よりも日本人の未納の割合の方が高いことが分かりました。そうした、立法事実がないのは誰もが認めるところなんですよ。

 そうした中で、外国人の永住許可制度に係る許可要件の明確化という名の下の取消しと取消し事由の追加の規定は即刻削除すべきだと思いますが、いかがでしょうか。そして、永住権剥奪の前に、まずは、やはり、言葉が分からないとか、制度がなかなか分かりづらいとか、そういう方々のために、外国人の方々のために、納付の方法や又は督促に関して分かりやすい説明や周知、広報を徹底することが先ではないでしょうか。総理に伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、今般の育成就労制度の創設によって、特定技能制度を通じて、最終的には永住者の在留資格を取得する外国人が増加し得る、このように考えております。

 そして、永住者については、永住許可後に在留期間の更新といった在留審査の手続がないため、一部において、公的義務を履行しない場合があるといった指摘があります。このような状況を容認すれば、適正に公的義務の履行をする大多数の永住者や地域住民との間で不公平感を助長するなどのおそれがあると考えています。

 そこで、永住許可制度を適正化し、受け入れた外国人と日本人が互いを尊重して生活できる共生社会の実現を目指すための改正をする、このようにしたものであります。これら一連の状況が立法事実であると認識をしています。

 そして、委員の方から周知、広報が重要であるという御指摘、これはそのとおりだと考えます。公租公課の支払いに関し、本邦に在留する外国人やその関係者に周知、広報する、これは既に外国人の国民年金被保険者に対し、年金制度に関する多言語を用いたパンフレット等による周知徹底を図るとともに、保険料の納付勧奨を行っていると承知しており、引き続き、こういった周知を適切に行いつつ、本法案についても、永住者の本邦への定着性にも十分配慮して適正に運用してまいりたいと考えております。

道下委員 これがある限り、選ばれる国ではなくて、選ばれない国になってしまいますよ。

 ちなみに、立法事実があるとおっしゃいましたが、様々な外国人の方が未納のおそれがある、そのおそれって何ですかね、データとしては。入管庁が先日、後で答弁されたことは、実は家族が増えたということで新たに申請して、そして詳しく調べてみたらその未納が分かったというものであって、外国人の方々を全てを調査したものというデータはないんですよ。それから、国税庁に我が会派の委員が質問しましたけれども、国税庁は、国税などの未納の部分の督促に関しては、日本人も外国人もこれは差別なく、関係なく、それぞれにちゃんと督促していると言っているんですよ。

 それでいいじゃないですか。今の現行法をしっかりと運用すれば、外国人の方も日本人の方も同じように、年金保険料や健康保険料、税金を未納だったら、今の現行制度でしっかりと納めてくださいと言えばいいんですよ。なぜこれが、永住許可取消し制度、この中に入れなきゃいけないんですか。私は納得できません。

岸田内閣総理大臣 本法案を検討する中で、実際、この未納の事態が発生している現実がある、これは確認をしたところであります。その上で、今後、この育成就労制度を創設し、そして、技能制度を通じて、永住者は最終的には増加し得る、こういったことを想定をしています。

 こういったことから、今回、こうした永住許可制度の適正化の仕組みを考えたわけでありますが、いずれにしろ、この制度を適用するに当たって、個別の事案をしっかりと検討した上で判断をするということでありますし、いきなり、法務大臣にしても、この取消しを行うということについても、十分定着性に配慮して慎重に検討するなど、運用においてもこの制度を理解されるものにしていく、こういった取組が用意されている。こういった点についても説明をしていくことが重要であると考えています。

道下委員 まずもって、外国人労働者の方々、永住者の方々に対する未納がどれだけあるかの具体的な調査を行っていない中で、立法事実があるとは全く言えません。だから、現行の制度を運用した上で、そして実態に即して、そして調査を行った上で、こういう永住許可の適正化に関する法律案は別個に出すべきだと強く申し上げたいと思います。

 次に、派遣形態導入について伺いたいと思います。

 この閣法では、育成就労において、季節性のある分野での派遣形態を可能としており、特定技能では農業と漁業で派遣形態可能としておりますけれども、産業分野や業務が季節によってころころ変更されてしまうのであれば、これは単なる労働力としての扱いでしかないんじゃないでしょうか。母国で農業を学びたいと言った人が、夏は農業、いや、冬は漁業ですよとか、そういうふうに季節性の関係で、いや、言われたことと違うよと、若しくは、事前に言われていても、元々学びたかったことと違うことに派遣されるということは、これは、単なる労働者扱いでしかなくて、育成就労という今回の改正案の趣旨とは全くそぐわないと私は思います。

 派遣形態は導入すべきでないと思いますが、総理、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 今回の育成就労制度では、季節性のある分野においても通年での育成就労の実施を可能とするため、農業、漁業分野に限り労働者派遣を活用した受入れを認めること、これを予定しています。

 具体的には、これは、一般的な労働者派遣と異なり、業務の繁閑等も踏まえた派遣先をあらかじめ特定をし、季節ごとの派遣先や業務内容を含めた三年間の計画を派遣元と派遣先が共同で作成をし、認定を受けた上で、当該計画に従って育成就労を行わなければならないこととし、無制限に就労先を変更することは認めない、このようにしております。また、期間中は一貫して同一の業務区分内での業務に従事すること、このようにしています。

 こういったルールを定めることによって、これは、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度の趣旨に沿ったものになっていると考えております。

道下委員 これは、何度もやり取りしている中で、派遣と派遣の間の給与の負担だとか誰が面倒を見るかというのは、まだ決まっていないんですよ、実は。そんな不十分な中で派遣を導入して、いや、天候が崩れました、若しくは漁ができません、そうしたところで、若しくは会社が受け入れられませんとなったときに、計画は変更するとか、その受け入れた企業に対して処分が下されるということになっていますけれども、海外から日本に来た育成就労の方々、どうすればいいのかというのはまだ決まっていないんですよ。

 それに、まあ、百歩譲って、じゃ、夏は北海道での農業、冬は九州での農業というのはあるかもしれませんが、そうしたことも、もっと限定的に、今この議論をしている中で、どのような主務省令が出てくるのかということも具体的に答弁がないと、この派遣を導入することは、やはりこれは、外国の方を単なる労働者扱いにしているということで、海外からの批判も受けるし、低賃金のおそれも出てくるんじゃないか、私はそのように思います。強くこれは訴えたいと思います。

 次に、家族の帯同、滞在について伺いたいと思います。

 この家族の帯同、滞在というのは、長年、我々も今の技能実習制度に関して、八年家族を帯同できないのは、ホームシックだとか家族と会いたいだとか、これは技能実習生プラス特定技能ですけれども、本当に、こういった点では、家族の帯同の制限をもっと短縮すべきだと訴え続けてきました。

 残念ながら、今回の閣法でも、育成就労と特定技能一号までの合わせて八年間、家族の帯同ができないというふうになっているんですよ。

 ちょっとこれは、総理、もし八年間、家族がたまに来るとか自分が母国に帰るとかはできるんですけれども、八年間一生懸命仕事をしても日本で一緒に暮らせないというのは、どう思われますか。寂しいと思いませんか。一生懸命仕事できますかね。

岸田内閣総理大臣 家族の帯同期間についての質問ですが、一定期間の在留期間後、出国することが予定されている外国人に家族帯同を認めるか否か、これについては、本人の扶養能力、あるいは医療、あるいは子女教育の受入れ環境、こういった視点も踏まえる必要があると政府としては考えています。

 この点、育成就労及び特定技能一号の在留資格については、技能等を身につけてステップアップしていかない限り帰国していただくこととなる制度である、こういった制度でありますので、これは、家族帯同についてもその点を考慮する必要がある、このように考えたわけであります。

 ただし、現行制度でも、人道上の配慮の観点から、個別事情に応じ、特定活動の在留資格を付与して在留すること、これは認められております。育成就労制度においても、個別事情に応じた人的な配慮、これは当然行われていくものであると考えております。

道下委員 ちょっと今、総理から、僕、びっくりした答弁が来ましたね。ステップアップしないと日本で働き続けられないという趣旨の答弁を今されましたよね。

 これは本当に、今の、労働力が不足しているだとか選ばれる国になるという法改正の趣旨に全く逆行する。以前と同じような、単に、海外から一時的に技能実習という形で、そして数年後に帰ってもらうというような、単なる労働力扱いでしかないというものも、結構中身がまだ残されているんじゃないですか、今回の法案では。

 総理、これは、我々としては、もっとしっかりと、もちろん、働きに来てもらって、そして能力を身につけてもらって、日本語能力も身につけてもらって、ステップアップもしたいという人もいるんですけれども、日本で働き続けたい、暮らしたいという外国の方も、労働者の方もいらっしゃるんですよ。そうした方々の思いも含めて、一生懸命日本で働いてくださる外国人の方々には、ずっと定住、定着していただいて、永住していただくような法案じゃないといけないんじゃないですか。

 それで、我々としては、今回、せっかく技能実習制度から育成就労制度に変わるんでしたら、今までの技能実習制度と同じ八年間じゃなくて、私ども立憲案は、まず、外国人一般労働者一号というこの二年間は家族帯同、滞在は不可能としていますけれども、一般労働二号以降は家族帯同を認めているんですよ。そうすることによって、家族滞在ができる、帯同ができることによって、外国人労働者の地域定着、定住促進になるのではないでしょうか。

 家族帯同の制限期間を、閣法の八年間ではなくて、二年は短いと思われるかもしれませんが、その間を取って五年とか三年とか、そういうふうに緩和すべきではないですか。見解を伺います。

岸田内閣総理大臣 先ほど答弁させていただいたのは、本制度の趣旨、人材育成と人材確保、これを進める上での考え方を申し上げたところでありますが、その中における家族帯同の在り方について、先ほど申し上げたような考え方に立っているわけですが、その中にあっても、人道的な配慮、これは政府としても考えていかなければならない、このように申し上げています。

 個別具体的な案件に応じて、政府として適切に判断をいたします。

道下委員 その人道的配慮というのは、総理の考えている人道的配慮の定義と欧米で考える人道的配慮というのは全く違うと思います。その点を変えないと、やはり選ばれない国のままだと僕は思います。

 最後に、来日前初期費用と送り出し手数料について伺いたいと思います。

 先ほども大口委員からもお話がありましたけれども、これはまだまだ、閣法においては、来日前の初期費用と送り出し手数料、これは禁止することにはなっていません。初期費用も、抑えられることにはなっていません。

 特に、送り出し手数料というものは、私は、これは即刻禁止をすべきではないかというふうに思っています。来日前初期費用が高いことによって、高い借金をしなきゃいけない。借金が高ければ高いほど失踪率も高いというデータが出ています。

 ですので、閣法では、送り出し機関への送り出し手数料と高額な初期費用を禁止する内容にはなっていません。日本の法律でも、ILO条約でも、労働者から紹介手数料を徴収することは禁止されています。送り出し国や送り出し機関に対して、高額な初期費用を取るなら、今の技能実習生と、これから法案が成立した場合の育成就労者をその国から、機関から受け入れないというふうに日本政府がしっかりと通告すること、来日後の送り出し手数料は禁止すること、これを決めるべきだと思います。

 そして、それによって技能実習生や育成就労者と受け入れる企業の負担軽減が図られます。特に企業の負担が軽減されると、今でも受入れ企業は年間、安いところで一万円とか一万二千円なんですけれども、高いところは三万円とかそれ以上、払っているんですね、この企業の負担が軽減されると育成就労者の給与の上乗せにも使われるんですよ。これはどうですか。やりましょう。よろしくお願いします。

岸田内閣総理大臣 まず、現行の技能実習制度では、高額な手数料を徴収するなどの悪質な送り出し機関が存在し、技能実習生が借金等を負った状態で入国することで、失踪事案等を発生させている、こういったことが指摘をされてきました。委員の御指摘にあったとおりであります。

 そこで、育成就労制度においては、まず、送り出し国との二国間取決め、MOCを新たに作成し、悪質な送り出し機関の排除に向けた取組等を強化するとともに、原則として当該取決めを作成した国の送り出し機関からのみ受入れを行うものとしております。

 また、外国人が送り出し機関に支払う手数料の上限に係る基準を設けて、外国人の負担軽減を図ることとしています。

 その上で、MOCにおいては、送り出し機関の認定基準として、手数料の上限等に係る基準を遵守することや監理支援機関等に対する供応、キックバック等をしないこと、これを新たに盛り込むこと、これを予定しているところです。こうした取組によって悪質な送り出し機関等の排除を徹底する、また、外国人の負担軽減を図っていく、こうした結果につなげていきたいと考えております。

道下委員 総理の答弁が想定どおりになるか、私は甚だ疑問でありますし、まだまだ質問しなければならないことがありますので、今日は時間が来ましたけれども、また委員会質疑をしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

武部委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の池下卓でございます。

 本日は質問の機会をいただきましてありがとうございます。

 それでは、順次、総理の方に質問させていただきたいと思いますが、明治五年の日本の人口は約三千四百八十万人で、日本の人口のピークは平成二十年の約一億二千八百八万人、そして二〇六〇年には人口減少し八千六百七十四万人と、これからどんどんどんどん減少をしていきます。これから高齢化、人口減少の社会を迎えるに当たって、国民の皆さんは、これから日本の経済、日本の国体の在り方というのはどうなるのかということは非常に心配をされているかと思っております。

 今回の技能実習の法改正といいますのは、これまでのいわゆる国際貢献という建前から、人材育成に加えて人材確保、つまり、労働力の確保を目的とされました。

 また、入管法の改正については、永住許可の要件の明確化と要件を満たさなくなった場合の取消し事由などを定められております。

 しかしながら、今回の法案以前に、目的以前に、日本の進むべき方向というのをしっかりと明確にしていかなければならないと思っております。人口減少対策をするのか、移民対策をするのか、労働力確保なのか、それとも、日本の社会機能を維持していくためなのか。

 まず、岸田総理には、人口減少に直面する日本の現状について、外国人材にどのようなものを求めておられるのか、お伺いをしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、外国人材の受入れについては、我が国として、専門的、技術的分野の外国人については経済活性化の観点から積極的に受け入れている、こうした方針で対応しています。

 また、それ以外の外国人については社会的コスト等の幅広い観点から国民的コンセンサスを踏まえつつ検討する、これが方針であり、今般創設する育成就労制度では、人材育成と人材確保を目的として一定の条件の下で受入れを行う、このように考えております。

 いずれにせよ、外国人材の受入れの方針、今申し上げた政府の考え方を説明をしながら、今後とも多様な意見、御指摘に耳を傾け、幅広い検討を行っていく必要がある課題であると考えております。

池下委員 今御答弁をいただいたわけなんですけれども、先日、今週の月曜日ですね、委員会の方で群馬県の高崎市の方に、技能実習生を受け入れている三進工業さんというところに視察に行かせていただきまして、技能実習生の当事者の方から御意見を伺いました。また、その後の参考人、地方公聴会におきましても、現地の市長さん、そして有識者の方からどういう問題があるのかというところを聞かせていただきました。

 今回の法改正を含めて、技能実習や特定技能といった在留資格、また、それ以外の資格の外国人の方々も増えてくると考えております。そのような中で、多くの皆様から、日本人が外国人との共生、これを行っていくには、地元住民である日本人側にも相互理解をしていただくことが必要じゃないかということも言われておりましたし、日本語教育の重要性、加えて、犯罪の増加や、公租公課、税金とか社会保険料等になりますが、加えて、医療費の未払い、こういうところも問題があるということを懸念をされておりました。

 しかしながら、これらを解決していくには、今のところ、地元の自治体であったりとか民間のボランティア任せになっていると言わざるを得ません。こういったところに国としてしっかりと支援の手を差し伸べるとともに、先進事例を各都道府県に対して周知させるというのも国の役目であるかと思います。

 先ほど、別の委員さんの御答弁の中で、人手不足、産業活性化、また、今私が申し上げたトラブルの発生等、バランスを取りつつ検討していくと、また、先ほど私の答弁に対しても、国民的コンセンサスを取っていくんだということを総理は発言されましたけれども、これはいつまでに検討するのかということもちょっとお聞かせ願いたいと思います。

 加えて、我々維新の会としましては、日本の国益に資する人材、例えば経済成長につながるような方は、先ほど総理言われましたように、積極的に受け入れていくべきだと考えておりますけれども、一方で、国益を損ねるような人材については、一定、御遠慮願う部分もあるかと思います。

 当然、外国人の方々の人権というのはしっかりと守っていかなければならないと思いますけれども、これは改めて、我々は、外国人基本法などの日本の将来の外国人の受入れの方法について、先ほど総理が言われましたような国民的な議論をして、政府が主導して示していくべきと考えますけれども、総理の考え方を改めてお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、外国人材の受入れについて、政府としては、専門的、技術的分野の外国人については、経済活性化の観点から積極的に受け入れていく一方、それ以外の外国人については、社会的コスト等の幅広い観点から国民的コンセンサスを踏まえて検討する、こうした方針であるということであります。

 その中で、委員の方から今、いつまで、タイムスケジュールについてのお話がありましたが、政府においては、令和四年六月に決定した外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ等に基づき、外国人との共生社会の実現に向け、外国人の受入れ環境整備を着実に進めてきているところであり、引き続き、様々な議論に耳を傾けつつ、このロードマップに基づいて、外国人との共生社会の実現に向けて取組を進めていきたいと考えております。

 そして、外国人基本法について御質問がありました。

 今後の外国人材の受入れについて、多様な意見、議論に耳を傾け、政府全体で幅広い検討を行っていく必要がある、このように考えているわけですが、御指摘の外国人基本法について、その具体的な内容は明らかでないですので、こうした幅広い意見を聞くという観点から、御指摘のような法律の要否も含めて幅広い検討を行っていく、こうした必要があると政府としても考えます。

池下委員 令和四年度のロードマップに基づいて多様な意見をということで、幅広い意見というのもありますけれども、今日、先ほど道下委員の方も言われておりました、幅広い意見というのもありますけれども、やはり当事者の方の困難な部分もあるかと思いますし、これは、実態調査しながら検討していただけるということでよろしいですか。総理、お答え願えればと思います。

岸田内閣総理大臣 この法案の準備の段階で、有識者の皆さん等から様々な御意見を承りました。その中でこういった法案の準備をしたわけでありますし、それから、今後とも、今申し上げたように、幅広い御意見を承りながら対応を考えていくことが重要であると考えております。

 改めて実態調査をするかという御質問でありますが、今具体的な実態調査を予定しているものではありませんが、実態把握、それから関係者の意見を聞くということはこれからも重視していかなければならないと思いますし、先ほど申し上げましたロードマップに基づいて、こうした姿勢で、この課題について、政府としても、引き続き、共生社会の実現に向けてどうあるべきなのか、こうした検討は続けていきたいと考えております。

池下委員 ありがとうございます。

 時間がなくなりましたので、最後、一問だけ質問させていただきたいと思います。

 日本のプロ野球であったりとかサッカーのプロの選手さんなどといいますのは、海外にスカウトの方が行かれて、インセンティブをつけて招聘されてまいります。他国においても、研究者等に対してかなり高い処遇を保障することで、自国内での研究開発をすることで、将来の経済成長のための投資をしている国もたくさんあると思います。

 我が党の外国人共生タスクフォースにおきましても、高度外国人材を政府が戦略的に日本に招くことによりまして、多くの経済成長を見込めるような受入れ目標などをつくりまして、積極的な体制づくりをすべきと考えますが、いかがでしょう。また、検討されているのであれば、具体的にどのような方法で高度外国人材の受入れを進めていくのか。まさにこの分野については他国との競争になるかと思いますが、見解の方、お伺いをいたします。

岸田内閣総理大臣 政府においては、我が国の経済社会の活性化、また一層の国際化、これを図る観点から、専門的、技術的分野の高度外国人材の受入れについて積極的に推進しているところです。

 御指摘の受入れ数目標、こうした数の目標は設けていませんが、私も総理になってから後、直接指示をさせていただいて、令和五年四月に、一定の学歴、職歴と年収を有する者を優遇する特別高度人材制度、これを創設しました。また、海外の有名大学の卒業生を優遇する未来創造人材制度、これも創設をいたしました。こうした制度を運用することによって、高度人材の受入れを進めているところです。

 引き続き、世界の人材獲得競争に負けないよう、また、人材受入れ制度を世界に伍する水準に改革していくよう、必要な措置を講じてまいりたいと考えています。

池下委員 今進められているということなんですけれども、やはりこれは、受入れ目標の数値であったりとか、具体的にどういう指標を持ってやっていくのかということをしっかり計画していかないと絵に描いた餅になりますので、PDCAサイクルをしっかりと回していただきながら取組の方を進めていただきたいと思います。

 以上で質問の方を終わらせていただきます。ありがとうございました。

武部委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私は愛知県の豊田市出身でございます。最上位の大企業の下請中小企業の方からお話をお伺いをいたしました。少し長いスパンで見てみますと、下請単価が引き下げられる中で、日系ブラジル人の方だったものが、人件費がネックとなり、中国の技能実習生となり、そしてベトナムの技能実習生と変わってきたというふうに言われました。下請単価が引き下げられ、抑制される下で、より安い労働力として国籍が変わってきたのだというふうに痛感をいたしました。

 日本が経済格差を利用し人を安く使う、そういう構造、これは、低賃金の非正規雇用の問題と併せて、日本の低賃金構造の原因ではないかというふうに考えております。このままでは、また安い労働力へシフトしていくのではないかという懸念もございます。人権をしっかりと保障をしていくこと、そしてディーセントワーク、働きがいのある人間らしい仕事を実現をしていくということが、喫緊の課題だというふうに思っております。

 技能実習生、これから育成就労を受け入れる中小・小規模事業者の皆様も、賃上げをしたい、労働条件をよくしたいというふうに思っていると思います。しかし、今、喫緊の課題でいえば、原材料費の高騰、エネルギー価格の高騰、そういう下で、最上位の企業からきちんと補償されていないという問題がございます。

 資料をお配りをしておりますけれども、三ページを見ていただきますと、自動車・自動車部品でいいますと、原材料費の高騰、エネルギー価格の高騰分がどのくらい補償されているか、下請価格として、取引価格としてどのくらい補償されているかということですけれども、四四・六%しか補償されておりません。

 ここに下請Gメンのヒアリングの生の声が載っておりますけれども、発注企業を複数回訪問して、コスト上昇分の証拠書類を提示した上で価格交渉、転嫁を要望しているが、検討するという回答が返ってくるばかりで、結局転嫁が進んでいないという声です。そしてもう一つ、価格交渉を申し出たところ、コスト上昇の根拠資料を求められたため提出したが、回答期限までに回答はなく、その後、音沙汰なしとなっているという声です。

 そして、実習生の方が多い建設ではどうかということで、前のページを見ていただきますと、建設では、下請さんに対して四五・一%しか補償されていない。生の声として、価格交渉を申し入れたところ、交渉には応じてくれたが、コスト上昇分の価格転嫁は一切認められなかった、価格交渉を行ったが、五年前からの単価と変わらず、全く値上げに応じてもらえない、こういうお声でございます。

 これでは、技能実習生や日本の労働者の賃金を上げるということに対して足を引っ張るというふうに考えております。建設の場合は、発注者、元請、ゼネコンがちゃんと下請に、法定福利費、安全衛生経費も含めて、原材料費の高騰分、エネルギー価格の高騰分、一〇〇%支払う仕組みをつくるべきだというふうに思います。

 アメリカでは、不公正な取引による損害額の三倍賠償請求できる仕組みがあるというふうに聞いております。日本でも、下請いじめ、不公正な取引に対して、下請代金法の罰金額を引き上げる、課徴金を設ける、あるいは、被害額の三倍などの被害救済の違反金の制度、そういう制度を創設するなど、不公正取引が割に合わない、そういう制度にするべきだ、そういう改革を行うべきだというふうに考えますけれども、総理大臣、お願いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 委員の方から、下請代金法の罰則等を引き上げる、課徴金を設ける、こういった御指摘がありましたが、政府としては、下請代金法とそして独占禁止法、この組合せによって具体的な成果につなげていく、こういった基本的な考え方に立っています。

 下請代金法には、注文書の交付義務等に違反した事業者に対する最大五十万円の罰金、買いたたき等を行った親事業者に対する下請代金の減額分の返還等の勧告、これを規定しております。これらは、違反行為の類型を具体的に法定することで迅速かつ効果的に下請事業者の利益保護を図る、こういった考え方に立っています。そして、親事業者が下請代金法上の勧告に従わなかった際には、独占禁止法に基づき、より厳格な措置である課徴金の納付命令等を講ずることが可能となる。

 このような組合せによって違反事案に厳正に対処していく、現行の枠組みの下で最大限の取組を講じていくことが重要である、このように政府としては考えております。

本村委員 今の政府の取組では遅々として歩みが本当に遅いわけでございます。やはり抜本的な対策を取って、単価、しっかりと一〇〇%、物価、原材料の高騰分、エネルギー価格の高騰分を乗せて大企業が払うように対策を強化していただきたいと思いますけれども、もう一度お答えをいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、政府としては、中小企業、小規模事業者が持続的な賃上げを行うことができるように適切な価格転嫁を実現しなければならない、総合的、多面的な対策を講じているところであり、下請法の執行強化はもちろんでありますが、労務費転嫁のための指針の徹底、そして年二回の価格交渉促進月間における発注企業の価格交渉、価格転嫁の状況の公表、これをあえて公表することによってこうした取組を徹底する、こうしたことを進めています。

 その上で、先ほど申し上げた下請代金法とそして独禁法の組合せによって厳正な対処を行っていく、こうした取組を進めています。

 是非これを徹底することによって価格転嫁の実効性を高めていくことが重要であると考えています。

本村委員 韓国では、低熟練の労働者、製造業でいうと二十七万円、平均賃金があるそうです。だから韓国に行きたいという技能実習生の方の声も聞いております。是非、日本でも大幅な賃上げを実現していただきたいと思っております。

 そして、人権侵害も引き起こす永住許可の取消し、これで眠れない、しんどい、つらいという声が私どものところに届いております。永住許可の取消しの撤回、これを強く求め、質問を終わらせていただきます。

武部委員長 これにて内閣総理大臣出席の下の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三分散会


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