第2号 令和7年3月12日(水曜日)
令和七年三月十二日(水曜日)午前九時四分開議
出席委員
委員長 西村智奈美君
理事 小泉 龍司君 理事 津島 淳君
理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君
理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君
理事 金村 龍那君 理事 円 より子君
井出 庸生君 稲田 朋美君
上田 英俊君 上川 陽子君
神田 潤一君 河野 太郎君
棚橋 泰文君 寺田 稔君
平沢 勝栄君 向山 淳君
森 英介君 若山 慎司君
有田 芳生君 篠田奈保子君
柴田 勝之君 寺田 学君
平岡 秀夫君 藤原 規眞君
松下 玲子君 萩原 佳君
藤田 文武君 小竹 凱君
大森江里子君 平林 晃君
本村 伸子君 吉川 里奈君
島田 洋一君
…………………………………
法務大臣 鈴木 馨祐君
法務副大臣 高村 正大君
法務大臣政務官 神田 潤一君
最高裁判所事務総局総務局長 小野寺真也君
最高裁判所事務総局人事局長 徳岡 治君
最高裁判所事務総局民事局長 福田千恵子君
最高裁判所事務総局家庭局長 馬渡 直史君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 大濱 健志君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 松田 哲也君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 阿部 竜矢君
政府参考人
(法務省大臣官房政策立案総括審議官) 上原 龍君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 堤 良行君
政府参考人
(法務省大臣官房司法法制部長) 松井 信憲君
政府参考人
(法務省民事局長) 竹内 努君
政府参考人
(法務省刑事局長) 森本 宏君
政府参考人
(法務省矯正局長) 小山 定明君
政府参考人
(法務省保護局長) 押切 久遠君
政府参考人
(法務省人権擁護局長) 杉浦 直紀君
政府参考人
(出入国在留管理庁次長) 杉山 徳明君
政府参考人
(公安調査庁次長) 霜田 仁君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 門脇 仁一君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 三宅 浩史君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 町田 達也君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 今井 裕一君
政府参考人
(文化庁審議官) 小林万里子君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
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委員の異動
三月十二日
辞任 補欠選任
上川 陽子君 向山 淳君
同日
辞任 補欠選任
向山 淳君 上川 陽子君
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三月十一日
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件
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○西村委員長 これより会議を開きます。
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官大濱健志さん、警察庁長官官房審議官松田哲也さん、警察庁長官官房審議官阿部竜矢さん、法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍さん、法務省大臣官房審議官堤良行さん、法務省大臣官房司法法制部長松井信憲さん、法務省民事局長竹内努さん、法務省刑事局長森本宏さん、法務省矯正局長小山定明さん、法務省保護局長押切久遠さん、法務省人権擁護局長杉浦直紀さん、出入国在留管理庁次長杉山徳明さん、公安調査庁次長霜田仁さん、外務省大臣官房参事官門脇仁一さん、外務省大臣官房参事官三宅浩史さん、外務省大臣官房参事官町田達也さん、文部科学省大臣官房審議官今井裕一さん及び文化庁審議官小林万里子さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○西村委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也さん、人事局長徳岡治さん、民事局長福田千恵子さん及び家庭局長馬渡直史さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。黒岩宇洋さん。
○黒岩委員 おはようございます。立憲民主党の黒岩宇洋でございます。
済みません、早速で恐縮ですけれども、質問の順番、1、二を変えて、ここのところ、近年散見される検察の取調べの不適正事例について質問をしていきたいと思っております。
まず、政府参考人にお聞きしますけれども、とみに、報道ベースも含めて、近年の不適正事例、これについての簡単な紹介と、そして、特に近年、なぜこういった事案が起きているのか、事件が起きているのか、それについて原因分析を説明してください。
○森本政府参考人 お答えいたします。
近時、報道等におきまして、検察の取調べが不適正である旨指摘されている事例といたしましては、まず、平成三十年の元弁護士による犯人隠避教唆事件に関しまして、被疑者である元弁護士に対する取調べにおいて、餓鬼だよね、あなたってなどと発言したと報道された事例、令和元年の河井元法務大臣らによる公職選挙法違反事件に関し、元広島市議に対する取調べにおいて、不起訴処分をちらつかせて供述誘導をしたと報道された事例、それから、令和元年のいわゆるプレサンス事件に関しまして、共犯者に対する取調べにおいて、机をたたいたり、検察なめんなよなどと発言したと報道された事例、それから、令和三年の太陽光発電事業等を営む会社の代表取締役らによる詐欺等の事件に関しまして、同代表取締役に対する取調べにおきまして、検察を敵視するってことは反社やなどと発言したと報道された事例などがあるものと承知しております。
その上で、その原因等につきましては、事案に応じて様々なものがあり得るため、一概にお答えすることは困難で、かつ、個別事件における具体的内容についてはお答えを差し控えますけれども、例えば、取調べ担当官の行き過ぎた責任感、それから、取調べ担当検察官の取調べ能力を評価されたいという功名心、検察官や主任検察官が自白という結果に固執し、結果として供述が得られることを高く評価するというようなこと、あるいは、検察独自捜査において、自分たちのみで捜査を行うため、その過程を法律家として検証するという客観的な視点が希薄になりがちであるというようなことが、昨年十二月に最高検刑事部長から発出された指示によれば、そういったものが考えられるというふうになっておるものと承知しております。
○黒岩委員 私は、今紹介していただいた事例で、確かに録音された音声なんかも聞きましたけれども、正直、こんなひどい取調べがまだ行われているのかと。相手の、ある意味人格も否定するような、今のこのハラスメント社会の中でも極めてある意味悪質なハラスメントを検察が行っているということは、非常に私は憂慮することだと思っております。
それを、私もその理由を事前に聞いたときに、最初に出てきた理由が責任感というのは、これはやはり甘いと思います、身内に甘いという。そんな正当化するような話じゃないですよ。森本刑事局長もその録音を聞いていると思いますよ。これを責任感という言葉ですり替えるようだと、私は、今後、こういった事例を解消し、そして、その体質を改善していくという、そういった意味で、やはり反省の度合いがしっかりないことには先に進めないという、この点は大きく指摘をしていきたいと思いますし、ただ、これはなかなか分析していくというのは難しいんですけれども、ちょっと幾つかこれからつまびらかにしていきたいと思います。
じゃ、原因分析しましたということで、検察として今後の対策、これもいろいろあるかもしれませんけれども、余り大部におっしゃらなくて結構ですので、端的な、効果が見られる対策はどういったことをお考えなのか、お聞かせください。
○森本政府参考人 最高検察庁におきまして、昨年十二月に、先ほど申しました刑事部長名の指示の中で、取調べにおいて相手方の主張や弁解に十分耳を傾け、自白という結果に固執しないこと、それから、在宅の被疑者や参考人の取調べにおいても事案に応じて柔軟に録音、録画を実施することなどといったことについて各地検に指示したものというふうにまず承知しております。
また、今年二月十九日に開催された検察長官会同、全国の地検のトップ等が集まる会議でございますが、そこにおきまして検事総長が、取調べの適正確保にも資する取組の一つとして、一定の在宅事件の検察官による被疑者の取調べについて録音、録画を試行するということを考えている旨の発言をしたものというふうに承知しております。
○黒岩委員 これは、大きな視点でいうと、調書主義から客観司法へという、ここの転換がやはり遅いんだと思います。どうしても自白偏重、調書主義ということになっている。これはかなり根源的な話なので、今後も当委員会でもこの議論を進めていきたいと思います。
そこで、一点。畝本検事総長が録音、録画、可視化の範囲を広げるということなんですが、これは具体的には、今は身柄事件について一定の四類型プラス試行ということで可視化していますけれども、これに加えて、要は、軽微な交通違反等でなくて、公判が見込まれる事件の、そのうち身柄は今ほとんど可視化していますけれども、在宅まで広げるということですね。
あえてお聞きしたいんですけれども、今現実に行われている、身柄の録音、録画を行っている件数というか事件数、身柄の事件数と、今後、録音、録画をし得るであろう、まだ確定はしていませんけれども、その対象となり得る在宅の事件数、それぞれ幾つで幾つで、これからどれだけ録音、録画の対象が割合として広がる可能性があるのか、それについてちょっとお示しいただけますか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
まず、身柄事件の関係でございますが、最高検察庁が公表した資料によると、令和四年度から令和六年度までの事件数で申し上げますが、令和四年度が、身柄事件数が九万八千三十五件、そのうち録音、録画の実施件数が九万二千三百七十九件、実施率は九四・二%でございます。令和五年度が、身柄事件の数が十万五千百五十八件、録音、録画の実施件数が十万一千四百二十一件、実施率は九六・四%。令和六年度につきましては、半期分の数値となりますけれども、前半の半期分で身柄の数が五万八百九十三件で、録音、録画の実施件数が五万五百九十二件、実施率は九九・四%となっております。
在宅事件の録音、録画の、今後どうするかということについて今検討中でございますので、その範囲というのはまだ分かりませんけれども、在宅事件がおおむね、大体四、五十万件ぐらい年間にございます。そのうち身柄事件と同じように公判請求された事案ということで申しますと、自動車による過失運転致死傷及び道路交通法違反事件等の被疑事件を除きますと、公判請求時に被疑者が勾留されていなかった事件というのは、ちょっと一年時点がずれて恐縮でございますが、令和三年が二万七千三百六十八件、令和四年が二万四千三百七十件、令和五年が二万七千七十七件が公判請求された事件の数というふうになっております。
○黒岩委員 ありがとうございます。
私もいい意味で驚いたのは、十万件の身柄のうち、もう今では九十九万件録音、録画が実施されている。それ以外の、今後拡大の対象となり得るのが、おおむね、この数年ほとんど二万七千件ということで、簡単に言うと二五%、二七%これから増していきますよということで、それだけ聞くと、私も、一定の効果がこの取組をすることによって見込まれるのかなと思っております。
それで、改めて、録音、録画の今の現状ということで、ちょっと追加で聞きますけれども、今、九九%、件数でいったら録音、録画が進んでいるということなんですが、全過程の実施率というのは、今のおっしゃった全録音、録画、まあ、ほとんど、九九%ですけれども、その事件数のうち何%ぐらいが今、全過程録音、録画されているんですか。
○森本政府参考人 同じように令和の四年、五年、六年ぐらいでよろしゅうございますか。
令和四年、五年、六年度でいいますと、先ほど言いました実施率九四・二%のうち、全過程のものが九〇・二%、それから、令和五年度が、九六・四%の実施率のうち、全過程のものが九三・六%、それから、令和六年度、半期分で九九・四%の実施率のうち、九七・二%が全過程の録音、録画となっております。
○黒岩委員 私もちょっと五年ぐらい法務委員会を離れていたこともあって、法務行政もずっとチェックはしていたんですけれども、十五年前の民主党政権時の、本当に検察が崩壊に近いかと、そのときに録音、録画というものを、相当強い要請の中で遅々として進んできたものが、ここのところ、今お聞きすると、ほとんど、全体の九五パーぐらいが全過程やっている。私も、まだ十期目ぐらいの検察官に聞くと、要は任官したときから録音、録画は当たり前だったと。というと、あのときの抵抗というのは一体何だったのか。別に皮肉を込めて言っているわけじゃありませんよ。
その後、刑訴法の改正にしても、じゃ、客観司法の武器として、要するに通信傍受が必要とか、あとは、日本版司法取引と言われる合意制度が必要とか、もちろんその効果もあったかもしれないけれども、ただ、あれだけ騒いだ割には、いざやってみれば、我々は言っていたんですよ、いざ録音、録画をやってみればみんな慣れますよ、そんなものはと。私は、それはいい意味で我々が楽観視していたものが現実になったし、そして今それが行われているということは、私は大いに評価します。
それで、ちょっと今回の不適正事例との兼ね合いで聞きたいんですけれども、そうすると、今森本局長がおっしゃった幾つかの事例というのは、ほとんどは身柄事件で録音、録画されていると思うんですが、ただ、事件のどのくらいの部分が在宅だったのか。
というのは、今回、在宅に広げるというわけだから、在宅の部分がなければ、この対策をしても、正直言って、この事例に対しての善後策としてはほとんど意味を持たないわけですから、じゃ、今紹介された幾つかの事案のうち、在宅での取調べというのはどのくらいあったのか、ちょっとお聞かせいただけますか。
○森本政府参考人 先ほど四件の事例について御答弁申し上げました。そのうち、河井元法務大臣らによる公職選挙法違反事件に関する事例につきましては、身柄拘束されていなかった下での取調べが問題視されたものでございます。残り三件については、身柄拘束下の事件でございます。
○黒岩委員 これは大事なところで、大臣と議論したいと思うんですけれども、私は、てっきり、録音、録画されていなくて、この不適正事案がほとんど。だから、やはり録音、録画すれば非常に効果的な抑止力になるというか、適正化へのすべだと私は思っていたんですが、お聞きすると、身柄はもうほとんど、ほぼ録音、録画している。この不適正事例は、実は、その河井元法務大臣の事件以外は録音、録画の下で行われているんですよね。私も、幾つか録音した、確かに、考えたら、これは隠し撮りじゃないわけだから。
そうすると、録音、録画が進んだことによって、あの頃考えていなかった新しいフェーズになったと私は思う。どういうことかというと、あの頃は、録音、録画さえすれば、とにかく、どんどんどんどん数を増やして全過程録音、録画すれば、不適正な取調べがなくなり、ひいては冤罪事件がなくなるんだ、そういう議論だったんだけれども、逆に言うと、これが徹底化されて、これはちょっと推測だけれども、ある意味慣れが生まれているのか、以前は、当初は、ここにカメラがあるというだけで、かなり緊張して本音が聞けなかったとか、そのことによって真相解明機能が低下するとか、こんな議論をしていたんだけれども、それをはるかに超えちゃって、今はもう慣れちゃって、こんなものでは要は適正化への担保にならないというぐらいまでになっているのではという、そういう今、時期に来たんだなということをつくづく今回の不適正事例で気づいたんですよ、私も。
そこで、大臣にこれはあえてお聞きしたいというか、では、今言ったように、録音、録画さえしていけば、だって、全過程までの、ほとんどもう九十何パー、事案にして九九パー以上、全過程で九七・何パーだから、掛け合わせたって九六パーぐらいですから、これをどんどんどんどん一〇〇まで近づけていったって、せいぜいたかが知れている。では、今言った不適正事例だとか、ましてや冤罪を防止するための録音、録画だったんだけれども、それだけではやはり今このフェーズだと足りないんだということが、私はこの質疑の中で一定程度明らかになったと思っています。
そこで、こういう状況の中で、では、今言ったように、もう平気で、録音、録画されていても、なめんなよだ、めちゃくちゃなことをやっている、これを適正化していくにはどういった方策が考えられますか。是非そこをお聞かせいただきたい。
○鈴木国務大臣 この不適正なものをどう解消をしていくのか、これは解消しなきゃいけない話です。当然適正化していかなきゃいけない中で、録音、録画をしていく、その範囲を広げる、もちろんこれは一定程度、おっしゃいました、やはり抑止力にはなると思いますが、それだけでは十分ではない、これはまさにそのとおりだと思います。
そういった中で、先ほど刑事局長からもお話がありましたけれども、例えば、最高検において、昨年の十二月、昨今、特に検察官の独自捜査事件に関する取調べについての様々な問題が指摘をされている中で、主に検察独自捜査を念頭に、不適正な取調べが行われている原因の分析、これは当然、身柄の話は録音、録画されている中で起こっているケースでありますから、その対策についての指示を各地検に行ったというふうに承知をしているところであります。
具体的な話で申し上げますと、録音、録画を実施をした取調べについては、決裁官らにおいてその記録媒体を視聴する等々、適宜の方法によってできる限り速やかに内容を確認するということ、さらには、その確認に際しては、任意性の有無という刑事訴訟法上の視点のみならず、取調べ中の個々の言動の適正さ、これについても厳しくやはりチェックをしていくということ、そして、さらには、取調べに不適正な点があることが判明をした場合には、直ちにその原因を解明をして、取調べ担当検察官自身に問題があれば、本人に厳しく自覚を促していくとともに、決裁官さらには主任検察官の言動等に問題がないかについてもやはり真摯にこれは振り返っていかなくてはいけないということ、そういった指示がされたと承知をしています。
今後の検察当局ということでいえば、こうした指示を踏まえて適正確保に努めていくと承知をしておりますけれども、私も、法務大臣として、やはりこの適正化の問題は極めて大事だと思っていますので、こうした検察当局における取組、これをしっかりと見ていきたいと思っております。
○黒岩委員 私は、大臣が今おっしゃった録音、録画についての改善策という意味では、簡単に言ったら、撮りっ放しでは全く意味がないわけですよね。撮ったはいいけれどもお蔵入りというんだったら、今言った不適正事例が露見しないわけだから。考えたら、私たちもそこまでは考えていなかった。今言ったように、件数を増やして、その過程をもっともっと伸ばしていくということだったんだけれども、これは確かに、これを見なかったら、正直言って、ほとんど意味がないかもしれない。だから、ともすると、取調べ官もそれが分かっていて、こう言ってはなんだけれども、ここまでひどい取調べが今常態化している、常態化とは言わないけれども、でも非常に散見されているわけです。
そこで、今後、大臣、こうしてもらったらどうですかね。今まで、録音、録画の件数、そして全過程の件数というものを統計化していたんですけれども、次は、再生件数。全部で十万件の事件だけれども、そのうち再生する件数が何件あって、現実に、では全部見るとなったら二倍の時間が要るわけだから、それは非現実的だと思いますよ。ただ、中には全過程もやってみる。
これはちょっと適切じゃないかもしれないけれども、ドーピングチェックみたいな形で、やはり常に、自分の取調べの録音、録画というものは、これはどこかで再生されるんだ、チェックを受けるんだ、こういう制度をつくっていく。そうすれば、やはりこんな、録音、録画で、まさに監視カメラに囲まれた部屋の中であれだけの悪態をつける、私はそういったことが防げると思うんですよ。
これは今言った録音、録画のですけれども、ただ、本来は、先ほど申し上げた、私は、我が国の精密司法は精密司法でいいと思っていますよ。イギリスとかみたいにざくっと起訴してざくっと無罪も出るというのも一つの考え方だけれども、ただ、それに対して、自白主義、自白偏重、ここもやはり見直していくという不断の努力が必要です。
ただ、これは難しいのは、十五年前の、我々が政権のときに作った「検察の理念」という、理念というのは立派なんだけれども、その理念だけでこれが本当に改善していけるか。でも、やはり理念は常に言い続けなきゃいけない。だけれども、今も申し上げた具体的な手段として、録音、録画を含め、その再生、チェックも含め、そういう策を講じていく。この二本立てというものをしていかないと、やはり、検察の信頼はどこか気づくとまた失われて、それは積み木崩しみたいになっては私は非常に我が国の国民にとって不利益だという、こういう立場で御提言させていただきます。
その点、大臣、もう一度御答弁ください。今言った具体策について是非受け止めていただきたいので、よろしくお願いいたします。
○鈴木国務大臣 今おっしゃいましたように、やはり、例えば録音、録画についても、当然、撮りっ放しということではいけないんだろうと思います。そういった中で、どのようにしてこの適正化を図っていくのか。当然、検察への信頼というもの、これは極めて大事でありますから、どのようにしてそうした信頼の確保を図っていけるのか、具体的な方法についてもこれは検察の方でしっかりと検討をしていただけるように、しっかりと見守っていきたいと思っています。
○黒岩委員 それだとちょっと抽象過ぎて、私が具体的に今言ったように、再生件数、チェック、全過程についても、いわば不作為にでも抽出して行うという、こういったことを、まあ、これはまだ法務委員会も長いので、是非大臣が在任中にこういった姿勢を示していただきたいと思います。そんな難しいことじゃないから、お金がかかるわけでもないし、時間も全部見てくださいと言っているわけじゃないので。是非お願いいたします。
じゃ、次の、ちょっと順番を変えた、法曹の適正配置というところでお聞きするんですけれども、もう時間がないので、私は弁護士の偏在から入ろうと思ったんですが、済みません、後段の、裁判官の任官状況についてだけお聞きしたいんですけれども、今、裁判官の志望人数が減ってきているというのと、あとは、ちょっと統計で出るかどうか分からないんですけれども、やはり退職者が増えているということを聞くんですね。その現状を簡単に。それと、じゃ、理由も幾つかあるんでしょうけれども、最大の理由は何なのか、ちょっとその点について最高裁の方から説明していただけますか。
○徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
まず採用の関係でございますが、御指摘のとおり、新任判事補の採用数が伸び悩んでいたという認識はございます。理由でございますけれども、なかなか一つに絞るというのは難しいのでございますが、やはり判事補の給源となる司法修習終了者の人数が減少してきたことが背景にございます。加えまして、やはり大規模法律事務所等との競合が激化していること、あるいは大都市志向の強まりや、配偶者が有職であることの一般化に伴って異動への不安を持つ修習生が増えていることなどが理由であるというふうに認識をしております。
退官の関係でございますけれども、これは、依願退官はなかなか、個々人の個別事案とされるもので、その事情も様々でございまして、退官を決意する理由も必ずしも一つではないのでございますけれども、事情を聞きますと、転勤があることを理由に挙げる者も相応にいると承知をしているところでございます。
○黒岩委員 五大事務所が、言葉は悪いんだけれども、本当にこの僅か十年とかでも、約十年で法曹の伸びが一三〇%ぐらい伸びていますけれども、五大事務所だけで、これは採用人数という形じゃないんだけれども、事務所に所属する弁護士数は一七〇%に、七〇%伸びているということで、どんどんどんどん大手志向、都会志向というのが法曹全体で含まれて、その余波は、弁護士だけじゃなくて裁判官にも余波を被っているということはあると思います。
ただ、一つ一つ分析することは難しいんだけれども、転勤が大きな理由だというのは、私は、実際に裁判官から、ないしは民事局の人からも多く聞いたんですよ、この間。やはり全国転勤、転勤を告げられると、その時点で退職すると。不明を恥じて言うと、そのときには、裁判官という重責と考えて、転勤で辞めちゃうのかと思っていたんですけれども、ただ、私は、それ自体は考えを改めます。
というのは、これは大臣に聞いてほしいんですけれども、やはり、ある程度三十代になると、御夫婦でもう今二人ともお仕事をされている、裁判官の妻もキャリアの仕事をしている、こういう夫婦が増えていますよね。それで、子供を育てている。
この家庭を考えると、じゃ、東京からでもいいんですけれども、北海道に転勤するということは、実はその後、二者択一を迫られるんですよ。一つは、単身で赴任して、この家庭はワンオペ、一人で子供を育てる。ないしは、配偶者、男性が行く場合は妻が転職してついていく。
こう考えると、これは物すごい過酷なことで、裁判官に限らず、結局、今まで、昭和のスタイルだったら、妻が専業主婦だから、じゃ、一緒に行きましょう、ないしは、単身赴任しても、元々男性は育児に関わらないから、ワンオペ当然。今、そんな時代じゃないことは、自分も子育てして重々分かりますよ。キャリアを重ねてきた妻に、転職してキャリアを途絶えさせる、逆に言ったら、じゃ、夫が妻の転勤につき合って自分の仕事を辞める、こんな選択を迫られるなんて、やはり正直言って過酷過ぎますよね。
だから、これは私は、裁判官に限らず、どんな民間だろうが、もちろん検察官だろうが、正直言って、全国転勤というもの自体がもうかなり限界のある仕事のモデルだということに改めて気づかされるんですよね。裁判官という重責だからこそ、私もヒントをもらって。でも、考えたら、人間の生き方として、単身、ワンオペか、ないしは配偶者のキャリアを途絶えさせるのかという、こんな選択を迫るということを考えたら、やはり転職というのは非常に大きな障害だと思っています。
そこで、最高裁にお聞きするんだけれども、その転職に対して、何か指導しているとか聞くんだけれども……(発言する者あり)ああ、転勤に対してね。
じゃ、済みません、いろいろなアドバイスもしているというんだけれども、大臣、お聞きしますけれども、今、私の考えについてどうお考えになるか。それと、全く転勤というものをなしということができるかどうか分からないんだけれども、エリアごとの、例えば十年、十五年は近いエリア、通えるようなところでのエリア転勤とか、そういったものを考えないととても続かないんだと思いますけれども、それについて、ちょっと踏み込んで、御所見をお聞かせいただきたいんですよ。そのぐらい転勤というのは大変なことだということをやはり受け止めていただきたい。
○鈴木国務大臣 なかなか、裁判所の人事ということで、私は物を申せる立場にありませんけれども、一般論として申し上げれば、やはり二つの恐らく要請があって、一つは、全国、どう均質にそうした司法というもの、こういったことをきちんと国民の皆様に提供できるのか。同時に、ただやはり、今御指摘があったように、転勤が多いということで、そういった人材がという問題もありましょうし、あるいは、それぞれの個人の生活ということについてのいろいろな懸念もあると思います。
まさに、どうそこのバランスを取っていくかということになるんだと思います。恐らく、これは、裁判所であれ、あるいは検察当局であれ、これは霞が関も含めてですけれども、それぞれが人事の在り方として、そのバランスをどう両立するのか、これをしっかりと模索をする必要があると思いますし、当然そこは、今おっしゃったような状況というものを無視していい話では当然ないと思っていますので、そこは適切な形で模索ができるように、私としてもしっかりそこは見守っていきたいと思っています。
○黒岩委員 急遽ちょっとかなり深い話を振ったので、なかなか即応ということは難しいかもしれませんが、ただ、私はやはり、女性活躍とか少子化対策、子育て支援と、華やかな言葉は躍りますよ。でも、やはり、もちろん裁判官だろうが検察官だろうが、人の暮らしなわけだから、その暮らしに着目しなかったら、今言った輝かしい言葉だけでは世の中が解決していかないんだという、私は大きな事例だと思いますので、判事の転勤についてはどうこうは言えないでしょうけれども、検察官を含め、もちろん法務省の職員もですよ、どこも、これは自分の人生のプロセスにおいて直面する課題ですので、是非そのことをしっかり受け止めていただく。そして、是非在任中にやはり何らかの具体策を示していただきたい。このことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
よろしくお願いいたします。
○西村委員長 次に、藤原規眞さん。
○藤原委員 立憲民主党の藤原規眞です。
鈴木大臣は、衆議院の比例南関東ブロックの御選出でございます。一月下旬、法務省の職員さんに月餅を配られましたよね。その崎陽軒の月餅、三個入り箱、メッセージつき、これは何個配られましたか。崎陽軒さんには総額幾ら支払われましたか。政治資金で買われたんですか。まず、大臣に伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 今御指摘の件ですけれども、この国会が始まるに当たって、当然、これは職員の皆さんにも大変ないろいろな御負担、御苦労をおかけするということであります。そういった中で、どうにかして、こうした慰労をしていきたい、激励をしたいということで差し入れをさせていただいた。そのとおりでございます。
その中で、個数ということ等々の話がございますが、私として、やはり全ての職員の方に行き渡るようにということでさせていただいたところでありまして、これは会見等でも述べておりますけれども、その費用については私費で行ったところでございます。
○藤原委員 ですから、何個ですか。
○鈴木国務大臣 政治資金ではなくて私費での処理でありますので、そこについてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
○藤原委員 何個かも答えられないんですか。
でも、全職員に行き渡るようにというから数個では済まないと思うんですけれども、数百以上の話になってくるかもしれないんですけれども、それでもお答えできないんですか。
○鈴木国務大臣 差し入れということで、税込みで百七十円ですかね、そのぐらいの額だと思いますけれども、その菓子を三つか、というものでお配りをさせていただいたというところであります。
その数ということで、これは全ての職員に行き渡るということで、そこはそういった激励ということでやっておりまして、幾つということで厳密に今申し上げられることは持ち合わせておりません。
○藤原委員 全てというのは、じゃ、どの範囲ですか。本省だけですか、検察官を含むんですか。
○鈴木国務大臣 繰り返しになりますが、私の立場として、大臣ということで、国会対応等々も含めて、あるいは法令作業も含めて、いろいろと御苦労をかけるということであります。そういった中で、組織の長としてそういった激励をしたい、そういった趣旨でありますので、そこは、そこの中で、全ての職員でありますので、そこに行き渡る。これは当然、我々として言うと、ここに出してここに出さないみたいな話にはなりませんから、そこは全ての職員の方に行き渡るようにということでさせていただいたということであります。
○藤原委員 では、全てということは、余りが出ないように購入するわけですから、個数も全部ちゃんと事前に把握して買って、配っているわけですよね。その個数も言えないですか。
その職員さん、御苦労をかける職員は、みんな御苦労していますけれども、苦労をかけていない職員なんていないと思うので全員に配ったはずなんですが、その全員の範囲を教えてください。
○鈴木国務大臣 正直言って、そういった差し入れということで、こういった、そもそも追及をされるようなことを想定していませんから、その段階で、幾つとかそういったことを厳密に私としても管理をしてはいなかったということであります。
○藤原委員 購入するときに当然レシートもあると思いますし、追及されることを想定していないから丼勘定で買ったという説明はつかないと思うんですけれども。
では、今日政府参考人でいらっしゃっている方は、その月餅、受け取っていますか、食べていますか、おいしかったですか。ちょっと教えてください。
○上原政府参考人 お答えいたします。
この場で個人的なことをお答えするのはできれば差し控えさせていただきたいところでございますが、あえて申し上げますと、私自身も受け取りまして、ありがたくいただいたところでございます。
○藤原委員 大臣は、衆議院比例南関東ブロック御選出です。冒頭申し上げたとおりです。そこに居住する、神奈川県、千葉県、山梨県に居住している職員さんに配られていた場合、公職選挙法百九十九条の二、政治家が選挙区内の有権者に寄附することを禁じているということに抵触するおそれが出てまいります。あまつさえ、大臣が小選挙区を戦われている神奈川七区、横浜市都筑区の住民がいたら、一層問題になるわけです。
これについて質問主意書を私は提出しましたけれども、資料一です。法務省本省に勤務する職員さんのうち、神奈川、千葉、山梨に住所がある職員さんの割合を問うたところ、驚くべき答弁が来たんですね。把握しておらず、お答えすることは困難であると。
これは、おいおいおいという感じなんですけれども、法務省というお役所は、職員さんがどこに住んでいるか把握せずに運営されているんですか。
○上原政府参考人 お答えいたします。
まず、個人個人の住所については、それはそれとして、個人の住所は様々な手続の中で把握させていただくところではございますが、大臣の選挙区内にどのような職員がどの程度いるか等について調査するということにつきましては、職員がその調査をどのように受け止めるかどうか、あるいは、そういったことを明らかにすることはどうかということも配慮しなければならないことでございまして、お尋ねのような調査を実施することについては極めて慎重であるべきと考えておりますし、そういった形から答弁をさせていただいたものでございます。
○藤原委員 そんな詳細な調査をしなくても、神奈川、千葉、山梨に住んでいる職員さん、一人はいますよね。
○上原政府参考人 お答えします。
個別の住所を私自身が把握しているわけではございませんし、手持ちではございませんが、可能性としてはあるとは思いますが、ちょっとそこは把握はしておりませんし、恐縮でございます。
○藤原委員 では、せっかくですから、上原さん、この三県に住民票はありますか。
○上原政府参考人 済みません、個人的な情報でございますから、本来であれば差し控えさせていただきたいところでございますが、あえて申し上げますが、私、東京都内に居住しております。
○藤原委員 ところで、法務省でも、通勤手当や地域手当は人事院の定めに従って内容が決せられて支給されているんですよね、国家公務員ですから。お答えください。
○上原政府参考人 お答えします。
そのとおりでございます。
○藤原委員 人事院の定めでは、通勤手当は、公共交通機関利用の場合、定期の価額による支給、上限一か月五万五千円。あるいは、地域手当は、支給額は、東京都特別区で一級地、神奈川七区のある横浜市は二級地、千葉市は三級地、甲府市は六級地。
これは、職員さんの住所を把握しなければ、計算もできなければ支給もできないんじゃないですか。
○上原政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたように、個々人の職員の住所ということでは把握しておりまして、その点は先ほど申し上げたとおりでございます。
○藤原委員 把握しているということであれば、大臣が月餅を配ったその対象者がこの三県にいるかどうか、立ち所に分かるんじゃないですか。
○上原政府参考人 お答えいたします。
個々人の職員が受け取ったかどうか、そして、その職員が実際に住所をどうかという調査はしておりませんので、その点からちょっと把握しておらず、お答えは困難でございます。
○藤原委員 全員に配ったと言うんですよ、大臣は。今この場で、大臣が全員に配ったとおっしゃっているんですよ。受け取ったかどうか調査していないとか食べたかどうかじゃなくて、受け取った、渡しているわけですよね。
それは、もう三県にいる人がいたら、立ち所に先ほどの公選法違反になると思うんですけれども、それについてどうお答えになりますか。
○上原政府参考人 お答えいたします。
個々人の職員がそれを実際に受け取ったかどうか、そういったところについては確認はしておりません。
○藤原委員 大臣は配ったとおっしゃっているんですよ。上げる方ともらう方、片方が上げたと言っているんですから、受け取ったかどうか確認しておりませんは通用しないと思いますけれども。
○上原政府参考人 お答えいたします。
職員に行き渡るようにということでいただいたこと、それも事実でございます。
他方で、個々人の職員が実際に受け取ったかどうかという調査を行っていないということでございまして、その点の調査まで行っていないため、お答えが困難であるということでございます。
○藤原委員 じゃ、受け取らずに、その大量の月餅、三個入り、崎陽軒の箱が大量に廃棄されたんですか。受け取られずに大臣に戻されたとか、そのまま廃棄されたとか、そういうことは確認できているんですか。現に、上原さんは召し上がった、ありがたくいただいたとおっしゃっていますけれども、ほかの職員さんが食べていない、受け取っていない、確認できていないから公選法違反は成立しない、そんな説明、法務省として成り立つと思っていらっしゃいますか。
○上原政府参考人 お答えいたします。
その点につきましては、職員に行き渡るようにいただいたということにつきましては、大臣からお答えがあったとおりでございます。
その上で、配付の状況とか、あるいは個々人が受け取ったかということについては、我々、調査もしておりませんし、そのため、責任を持ってお答えできる内容がないため、把握しておりませんとお答えさせていただいているところでございます。
○藤原委員 公選法の百九十九条の二、これは有権者に寄附することを禁じているんですね。なので、実際にゲットしなくても、提供した段階で違反になるんですけれども、大臣、これは提供したんですよね、全職員に、御苦労をかけているから。
○鈴木国務大臣 先ほど来の話で申し上げれば、一つは、例えば、私が、仮にですよ、仮に、自分の選挙区に住民票がある人間は誰なのか、そういったことを聞くというのが果たして許される話なのか、多分それは違うんだと思うんですね。そういった意味でいって、住民票がどこにあるかという調査は恐らくしていないんだと思います。
その上で、先ほど配付がという話がありましたけれども、その点について、公選法云々の話はさっきの質問主意書の中でのお答えに尽きるとしか私の立場からは申し上げられませんけれども、そういった意味で、職員全体に行き渡るようにということで私としては差し入れを行ったということであります。
○藤原委員 ちょっと、この件について、理事会に調査報告をお願いしたいと思います。
○西村委員長 委員長に対する要請ということでよろしいですか。(藤原委員「はい」と呼ぶ)
後刻、理事会で協議いたします。
○藤原委員 物を配るときに、あなたの住民票はどこですかと普通聞かないですよね。もしいる余地、可能性があったら、そもそも配らないのが普通だと思います。あるいは、法務大臣という、法をつかさどる官庁のトップであれば、なおさらそうすべきだったと思っています。
法務省設置法三条は、法務省の任務として、「基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護」、るる書かれていますね。このようなトップの姿で、今の状況で、法務省設置法三条の大切な任務を全うできるのか、私は甚だ不安に感じつつ、次に移りたいと思います。
次に、社会問題になっている闇バイトについて伺おうと思っています。
二〇一五年以降、毎年の検挙数は二千人超です。受け子の二割は少年、これは資料二に記載しています。十代から三十代が全体の八割を占める、二年で少年の強行犯が倍増、これは資料三と四です。
大臣は、この事態の深刻さ、SNS対策や再犯防止策の重要性、これは理解なさっていますか。
○鈴木国務大臣 当然のことながら、理解しています。
○藤原委員 勧誘は非常に巧妙です。
資料五、ちょっと今回配付は認められなかったんですけれども、かなり巧妙に、悪いこととは分からないような形で勧誘がなされている、そんな状況があります。
要は、悪いことをすると理解せずに、いわゆる、おいしいな、そんな仕事だなという広告に本当に吸い寄せられて闇バイトに手を染めてしまう若者、とりわけ少年が一定数いるということでございます。
私も、闇バイトの末端の国選弁護や国選付添いをした経験があるんですけれども、思慮浅く、軽率にエントリーした者、あるいは知的障害を持った方も中にはいらっしゃいます。これらの者は、まずいと途中で気づいていても引き返せないケースが多いんですね。犯罪組織のトップに住所や生年月日を含む個人情報を把握されて脅される、もうどうなっても知らないぞ、あるいは親もどうなっても知らないぞといった脅迫がされるわけです。
法務省として、このような形態、すなわち抜けたくても抜けられずに深みにどんどんはまっていく人が一定数いるということは認識されていますか。厳罰化以外に、犯行に加担させないための対策というのは考えているんでしょうか。お答えください。
○森本政府参考人 まず、こうした若者が闇バイトに手を染めているという事態につきましては、大臣も御答弁なさったように、法務省としても、この問題に対処することは喫緊の課題であるというふうに考えております。
現在、警察庁中心ではございますけれども、闇バイト対策ということで様々な施策を進めておりまして、例えば、仮装身分捜査でありますとか、あるいは銀行口座の取扱いをどうするかというようなことを政府全体として進めておりますので、法務省もそれに併せて、一緒に協議しながら対策を進めているところでございます。
○藤原委員 仮装身分捜査は、検挙する方法論としての、大変有効な手の一つだとは思っていますけれども、そもそも犯行に加担させないための対策というのは、具体化はしていないですか。ただ頑張りますと言うだけなんですかね。犯行に加担させない、巻き込ませないということについての対策について伺いたいと思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
犯罪の予防の部分に至るところの所管が、恐縮でございますが、警察庁が中心でございますので、そこのところで啓発とかも含めてどうするかということを政府全体として考えておりまして、もちろん私どもも一緒に協議等はしておりますけれども、基本的には、どういうふうに発生させないのかというところは、警察を中心に、今、政府全体で取り組んでいるものというふうに承知しております。
○藤原委員 法務省は、誰一人取り残さない社会というのを標榜しています。更生ペンギンのホゴちゃん、サラちゃんも、大変いろいろな場所で活躍中でいますけれども。
犯罪を犯してしまう傾向、犯罪に対する親和性、いわゆる犯罪性向が進んでいない者をどう更生させて、社会に迎え入れるかというのが一つの鍵だと思いますけれども、法務省はそれについてどのような認識を持っていますか。具体的な対策についてお答えください。
○押切政府参考人 お答えいたします。
私ども法務省保護局においては、犯罪予防活動を所管しておりまして、特に、社会を明るくする運動などの様々な、犯罪を予防するための活動を、保護司などの民間協力者の方々とともに行っているところでございます。
その中では、犯罪や非行した人の立ち直りについて地域の理解を求めるという活動、あるいは、青少年の健全な育成を推進して、そこでやはり犯罪に手を染めないような思いを持ってもらう、そういった活動なども行っているところでございます。
○藤原委員 若干抽象的で、ちょっと不安を抱かせるんですけれども。
例えば、犯罪にどの程度なじんでいるかの度合い、先ほどの犯罪性向にも含まれますけれども、あるいは、知的障害を有するか否かを問わず、一回の過ちで社会から完全に排除するという傾向が今の日本社会にはあると思っています。預貯金の口座が持てない問題というのもその一つだと考えています。
例えば、協力雇用主、刑事施設の出所者や保護観察者などを雇用する意思があるとして保護観察所に登録した事業主さんはその事情を理解しています。だから、預貯金通帳を持てないということで、現金払いというふうにやっています。ただ、その協力雇用主さんの登録は全国で二万五千社、事業所を超えていますけれども、実際に雇用している事業所は一千社超、登録の四%にとどまっているというような実情があるわけですね。
この協力雇用主という制度が、これはすばらしい制度なんですけれども、宝の持ち腐れになってしまっているというふうにこのデータからは考えるんですけれども、法務省としては改善策というのは用意されているんでしょうか。
○押切政府参考人 お答えいたします。
実際に雇用している協力雇用主の数がそのような状況になっている理由の一つとして、協力雇用主の約六割が建設業であるなどの業種の偏りがあるため、刑務所出所者等と協力雇用主との適切なマッチングが困難であるということが考えられます。
このような課題に対応するため、経済団体や業界団体等への働きかけを行うとともに、民間の立場から協力雇用主の活動を支援する各都道府県就労支援事業者機構等とも連携し、多様な業種の協力雇用主の確保と適切なマッチングが図られるよう、引き続き努めてまいります。
○藤原委員 更生したくても、今の時代、やはり預貯金の口座がないと何もできないという指摘が、協力雇用主の会長さん、野口義弘さんという方ですけれども、からの指摘もあります。預貯金口座が持てないという問題がかえって、更生を試みる、必死に更生しようとしている者の更生の障害になってしまっているという事実があると思っています。
協力雇用主は現金払いですね。法務省のホゴちゃんも、協力雇用主のアシカ親方から現金で受け取っています。その他の事業所というのは、現金払いを認めていないというところが圧倒的です。預貯金口座が持てないという者が真っ当に働くためには協力雇用主に頼るしかないというのが現状なんですけれども、しかし十分に機能していないというのは先ほど御回答のとおりです。
厳罰だとか自業自得、自己責任という声もあります。それは現場にいた弁護士として私も理解するんですけれども、しかし、更生した彼らを再び社会に迎え入れなければ、再度悪の道に向かってしまうという実情もあると思っています。実際に、就労環境が整わずに、令和四年に刑務所に再入所した者八千百八十人のうち、七割が無職なんですね。これは犯罪白書にも書かれています。資料六です。
例えば、法務省と金融庁が令和六年の四月に、一定の保護観察対象者について預貯金口座の開設を支援する旨の周知依頼をした、その成果を質問主意書で問うたんですけれども、これは資料七です、政府答弁は、承知していないというものだったんですね。
これら要請の成果を政府としては把握していない、あるいは今後も把握するつもりはないということなんですかね。現状、データをお持ちなら教えていただきたいと思います。
○押切政府参考人 お答えいたします。
現に協力雇用主の下で就労し、社会復帰を目指しているものの口座開設を拒否されている保護観察対象者等に対し、令和六年四月から、法務省と金融庁が連携して口座開設支援策を実施しております。具体的には、金融機関に対して、過去の前歴等だけではなく現在の状況も踏まえた口座開設の判断がなされるよう、保護観察所の保護観察官等が金融機関の窓口に同席するなどして、保護観察等に係る事項や就労状況等について情報提供を行うこととしております。
今委員から御質問ございましたが、令和六年四月一日から令和七年一月二十八日までの保護観察所における本支援策の実績を確認したところ、本支援策によって口座開設に至った事例はこれまでのところございませんでした。
法務省としましては、これまで、保護司、協力雇用主などに対し、本支援策の周知に努めてきたところではありますが、必ずしもこれが十分でない面もあると考えております。引き続き、会議や研修等の機会を捉えて、更生保護関係者、協力雇用主等への本支援策の更なる周知に努めるとともに、金融庁とも連携しつつ、支援実績を積み重ね、一人でも多くの保護観察対象者等が円滑に社会復帰できるよう、本支援策の活用を進めてまいりたいと存じます。
○藤原委員 必ずしも十分でないという御回答なんですけれども、一年たってゼロ件ですよね。ここまで鳴かず飛ばずですと本当に改善の余地が大ありだと思うんですけれども、具体策は何か考えていらっしゃらないんですか。頑張りますだけじゃ通用しないと思うんですけれども。
○押切政府参考人 お答えいたします。
この周知につきましては、私ども、様々な、保護観察所等の、全国から集まった保護観察所長に対する会議ですとか、あるいは保護観察所が実施している新規の登録協力雇用主に対する研修、あるいは保護司の方々への周知、特に、私どもとしましては、保護司の方々が処遇の参考資料として「保護司のてびき」というのを持っておりますが、この支援制度について新規に掲載してまいりたいというふうに思っておりまして、そのほか、あらゆる手段で周知に努めてまいりたいというふうに存じております。
○藤原委員 具体的な策について何も答えていただいていないんですけれども。
実際に、金融庁と連携してというふうにおっしゃいますけれども、でも、現に去年の四月一日が法務省で、四月二十六日が金融庁、それぞれ依頼しているわけですよね。それで鳴かず飛ばずなわけですよね。これは、全く新しい対応をしなければ、口座開設に全く至らない、このゼロ件というのが延々続くとしか思えないんですけれども、新しい施策というのは全く考えていないということでよろしいんですか。
○押切政府参考人 この施策につきましては、複数の保護観察所から本支援策について協力雇用主に説明を実施したり、あるいは実際に金融機関に働きかけを行ったりしたという事例もございますが、残念ながら口座開設に至っていないという現状でございますので、こういった事例等を分析をして、様々なことをまた私どもとしても考えてまいりたいというふうに思っております。
○藤原委員 残念なのは、開設に至らなかったじゃなくて、その努力の足らなさだと思うんですけれども。
じゃ、次に移りたいと思います。
先ほど来申し上げているとおり、例えば闇バイト一つ取っても、能動的にこれでもうけてやろうと考えている者と、あるいは、ふらふらっと広告に釣られて、巻き込まれて抜け出せなくなった者、いろいろな個性、特性があると思っています。
例えば、法務大臣は大臣所信で、第二次再犯防止推進計画に基づいて対応するというふうにおっしゃっています。その第二次再犯防止推進計画には、例えば、きめ細やかな指導とか、特性に応じた対応というのを書かれているんですね。それを本来徹底すべきだと思うんですね。そのためには、犯罪に至ってしまった者の主体、どんな特性を持っているか、そのデータをフルに活用しなければならないというふうに考えているんですけれども、しかし、どういう属性か、あるいはどういう行動形態だったか、それを分析、調査していますかということを問うたところ、これは資料七ですね、質問主意書です、全く調査は検討していない、これからもするつもりはないという回答でした。
これは、全くデータに基づいた対応をする気がない、ただ頑張りますと言っているふうにしか見えないんですけれども、具体的な調査検討、これからやらないですか。お答えください。
○西村委員長 どなたが答弁されますか。時間を止めますか。
時間を止めてください。
〔速記中止〕
○西村委員長 速記を起こしてください。
森本刑事局長。
○森本政府参考人 お待たせして申し訳ございません。
政府答弁におきまして御回答したところの闇バイトの社会的背景等の特性については、現在のところ、それについての質的な、量的な分析の調査を行ったことはございませんと申しておりますし、今後についても、そういった観点での調査をする予定は、現時点のところでは政府として持ち合わせておりません。申し訳ありません。
○藤原委員 どうしてやらないんですか。例えば警察が、検察が取った供述調書とかはもう宝の山だと思うんですね。そこから必要なものを抽出して今後の対策に生かすということは十分できるし、そんな大した労力も要らないと思うんですけれども、それでもこれからそういうことはやる気はない、意思はない、ただ頑張ります、そういうことですか。
○森本政府参考人 済みません、闇バイトについてはもちろん私ども問題意識は持っておりますし、それについての対策というのは進めていかなければならないと思っております。
そういった観点では、原因分析したりとか、それから様々な調査等は必要であると思いますので、いろいろなことをやっていくことは必要だと思っておりますけれども、質問主意書で聞かれたそういった観点での質的、量的調査については、その時点では分析をする予定はないというふうに申し上げました。
今後また、委員の御指摘も踏まえまして、警察等とも相談しながらよく考えてまいりたいと思います。
○藤原委員 期限はいつまでか、あるいはどの程度のことをやるのか、今、簡単でいいので答えていただけますか。
○森本政府参考人 申し訳ございません、私どもだけではこの調査はなかなか、正直言って難しいところがございますので、その点について、時期等については申し上げられませんが、また後ほど政府部内で検討いたしまして、いきたいというふうに思っております。申し訳ございません。
○藤原委員 必死の努力で闇バイトを根絶するというのが大臣の思いにもあるわけですから、努めていただきたいと思います。
終わります。
○西村委員長 次に、有田芳生さん。
○有田委員 有田芳生です。
三月二十日で地下鉄サリン事件から三十年になります。しかも、この三月には統一教会に対する解散命令が出される可能性が極めて高い。そういう観点から、二つの団体についてお聞きをしたいと思います。
まず、オウム真理教ですけれども、オウムの後継団体も含めてですけれども、様々な活動をやっているということを考えれば、大臣所信の中で、いわゆるオウム真理教についてはたった二行、まあ風化したなという印象を持ちましたけれども、しかも統一教会については三行、しかし様々な問題点があるということを今からお聞きをしたいと思います。
大臣、御存じでしょうか、足立区がオウム真理教については風化をさせてはいけないということで、地下鉄サリン事件風化防止啓発推進条例というものを二月二十八日に公布、施行しております。現場、つまり施設があるところではまだまだ終わっていない。これは施設があるところどころか、後でお聞きをしますけれども、全国で、報道はほとんどされていないけれども、非常に重要な動きがある。この問題について、まず大きなくくりとして大臣、この地下鉄サリン事件というのは一体どのような内容だった、その認識をまずお聞かせください。
〔委員長退席、鎌田委員長代理着席〕
○鈴木国務大臣 地下鉄サリン事件、今御指摘のように、今度の三月二十日でちょうど三十年というところであります。オウム真理教が当時の営団地下鉄の霞ケ関駅に向かう三路線五方面の電車内において化学兵器であるサリンを散布し、多数の一般市民の方々をまさに無差別に殺傷した未曽有のテロだと私は考えておりますし、このテロ事件はまさに日本のみならず全世界に衝撃を与えたものであります。
先ほど風化ということをおっしゃっていましたけれども、やはりこれは今まだまだ現在進行のところもございます。この後継団体ということで、アレフあるいは山田らの集団、ひかりの輪等々が主要な団体として活動をしていて、依然として首謀者である麻原彰晃、これは松本智津夫ですね、の絶対的な影響下で活動しているなど、まだまだ無差別大量殺人行為に及ぶ危険性も有していると認識をしております。
そういった中で、現在進行形の脅威であり、また問題との認識の下で、やはり風化防止ということもしっかりやっていかなくてはいけないとも思いますし、特に若い世代の方々、そういった記憶であったり、あるいは認識がやはりまだ弱いところもありますので、そこはしっかりと啓発をしていく中で、今後、絶対に犠牲者を出させない、そしてそういった事件を絶対に起こさせない、テロを起こさせないということ、これはまさに公安調査庁の方でその取組を進めておりますし、私としてもそういった認識であります。
〔鎌田委員長代理退席、委員長着席〕
○有田委員 三十年というと、もう新聞記者さんの中でも、生まれていませんでしたとか、そういう時代になってしまった。ましてや、この問題のどこに、例えばオウム真理教などに入ってしまうんだろうかということがこの三十年間はほとんど日本社会として検証されていない状況の下で、後で公安調査庁にお聞きしますけれども、特に若い人たちがいまだ後継団体に入ってきているという現実がある。
地下鉄サリン事件というのは、一言で言うならば、人類史において初めて都市部でサリンがまかれた。あのヒトラー、ナチズムがサリンというものを開発したにもかかわらず、これは使っちゃいけないということでヒトラー、ナチズムでさえ使わなかったものが、確かにフセイン政権の下でクルドに対して使われたという歴史的な事件はありましたけれども、都市部においては初めてなんですよね。それがどう検証されたかというのは、非常に重要な、深刻な問題を抱えていると思います。
そして、次にお聞きをしたいんですけれども、警察庁にお聞きをするんですけれども、事件は果たして食い止めることができなかったのかという重大問題なんですよね。
例えばオウム真理教についての事件でいえば、一つ挙げるとすれば、一九八九年の十一月四日午前三時頃、オウムの信者たち六人が坂本一家、坂本堤弁護士一家の自宅に侵入をして家族三人を殺害した。でも、その三か月後には、オウム真理教の信者だった、幹部だった岡崎一明という元死刑囚が神奈川県警に手紙を出して、写真と地図、ここに龍彦ちゃんが眠っていると言う。神奈川県警は二回捜索をしたんだけれども発見することができなかった。だけれども、九五年三月二十日に地下鉄サリン事件が起きて、その年の九月には三人の遺体が発見されるということがあった。この一つの問題、どういう捜査をやっていたかということ。
あるいは、二つ目の問題として、一九九四年の六月二十七日、松本サリン事件が起きましたよね。あのときだって、警察は努力をされて、すぐにサリン残滓物というものを発見しているんですよ。だから、松本サリン事件についても、やはりオウムだろうということは九四年の十一月の段階でそう見られていた。
あるいは、三つ目、もう一つだけ挙げておきますけれども、九五年の一月四日に、オウムの被害者家族の会の永岡弘行さんがオウムの信者によってVXで殺されかけた。救急搬送されて重体になったんだけれども、病院がサリンを検出されなかったということで、当時の警視庁は農薬による自殺じゃないかという判断を下しているんですよね。
九四年の十一月には、実は、国松孝次、当時の長官を始めとして、オウムに対する一斉捜索をやろうと、九四年十一月ですよ、地下鉄サリン事件の何か月も前に一斉捜索をやろうと検討したんだけれども、時期尚早という結論を出してしまった。
だから、結論的に言えば、地下鉄サリン事件を食い止めることができたのではないかと私は思っているんだけれども、警察庁はどのような総括をされているでしょうか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの点につきまして、地下鉄サリン事件を始めとする一連のオウム真理教関連事件につきましては、閉鎖的な集団による計画的な犯罪で、組織的に証拠隠滅が図られるとともに、高度な科学技術が悪用されまして、全国規模の広範囲な区域にまたがっていたこと等から、当時の捜査には多くの困難があった中で、警察として、当時の証拠関係を踏まえ、可能な捜査を尽くしたものと認識しております。
以上でございます。
○有田委員 聞いているのは、地下鉄サリン事件を食い止めることができたのではないですかという問いなんです。お答えください。
○松田政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの点につきましては、特に上九一色村の教団施設に対する捜索がもっと早く行われていれば地下鉄サリン事件を防ぐことができたのではないかという御指摘かというふうに承知しておりますが、先ほどお答えしたとおり、一連のオウム真理教関連事件、非常に当時の捜査に多くの困難があった一方で、捜索につきましては、犯罪の嫌疑が存在するとともに、その必要性が認められる場合に裁判官から令状の発付を得て行うものであるところ、当時の判断として、地下鉄サリン事件の発生前に捜索までに至らなかったものと承知しております。
○有田委員 立花隆さんが事件から二十年後に月刊文芸春秋で「三月二十日」というエッセーを書いている中で、警察は非常に努力をされていたと。これはNHKスペシャルなんかの当時の報道を見ても分かるんだけれども。だけれども、例えば当時の警察庁の刑事局長だった垣見隆さんが最近朝日新聞出版から本を出されました。事件は食い止めることができなかったのかという、非常に詳細な歴史的な貴重な証言になっているんですけれども、その中でも反省を何度も何度も述べられているんですよね。
じゃ、質問を変えますけれども、一九九五年三月二十日に地下鉄サリン事件が起きたそれ以降、松本サリン事件、あるいは内部の信者殺害事件、そして坂本弁護士一家殺害事件などなど、オウム真理教の信者たちが行ったということはもう既に歴史的な事実として明らかになっているにもかかわらず、警察庁はどのような総括をこれまで公にされましたか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
地下鉄サリン事件を含めまして、一連のオウム真理教事件を総括いたしまして得た教訓といたしましては、一つには、高度な科学技術についての知識の不足、特殊な閉鎖的犯罪組織についての情報不足、そしてまた、都道府県警察の管轄区域外の権限についての制限等があったものと承知しております。
警察といたしましては、これらを踏まえまして、警察法の改正や資機材の整備等によって広域組織犯罪に対する指揮連携体制の強化、科学捜査、情報収集体制の強化、サリン等の規制等の各種対策を講じたところでありまして、その後の警察捜査や捜査指揮に生かしてきたものと考えております。
○有田委員 管轄権の問題で確かに改善が図られたことは事実で、それは非常に重要なんだけれども、宗教団体がテロ組織になってしまったという総括はあるんだけれども、宗教団体が暴発する可能性についての分析というのは行われていますか。
○松田政府参考人 警察といたしましては、御指摘のオウム真理教による一連の凶悪事件に対する捜査の経験も踏まえまして、将来テロ行為を行うなど公共の安全を害するおそれのある集団を早期に発見し把握するための情報収集、分析を行うとともに、違法行為が確認されれば、法と証拠に基づいて厳正な取締りを行うなど、必要な措置を的確に推進しているところと承知しております。
○有田委員 当時も警察庁の中では大本事件についての検証がなされたんだけれども、それは、宗教団体が暴発するのはなぜかというような検討、分析ではなくて、宗教団体に対して捜索をするには何が必要だろうかという視点だったんですよね。ですから、そういう意味では、まだまだ十分な検証はなされていないと私は判断しているんですが。
今にもつながる問題だということで、これは公安調査庁にお聞きをしたいんですけれども、現状の後継団体の問題点というのはどういうところにあるでしょうか。
○霜田政府参考人 お答え申し上げます。
現在、オウム真理教と同一性を有する団体というものにオウム真理教が分かれて活動しているところでございます。彼らは麻原彰晃こと松本智津夫の絶対的な影響下にいまだにあるというふうに私ども認識しておりますので、したがいまして、再び無差別大量殺人行為に及ぶおそれというものがあろうかと認識しております。
以上です。
○有田委員 つまり、危険だという認識を、特に後継団体のアレフについて認識されているという理解でよろしいんですか。その理由を教えてください。
○霜田政府参考人 委員御指摘のとおり、危険性につきましては私ども認識しておるところでございます。
その理由でございますけれども、ただいま申し上げましたように、松本智津夫の絶対的な影響下にいまだにある、彼らはいまだにいろいろと秘匿する部分が多うございまして、例えば、私どもが立入検査等に入りましてもなかなかスムーズに協力を得られない、また、被害者賠償につきましてもいまだに支払いをしていない等々、事件当時と体質的にはほとんど変わっていないという認識を持っておりますゆえ、危険性がいまだに続いているということでございます。
○有田委員 三月九日付の読売新聞が一面トップで、「オウム後継 資産隠しか 関連法人移転 七億円未報告」と。これは、十億円ほど賠償に充てなければいけないんだけれども、資産隠しを行っている。
統一教会の問題にも関わってくるんですけれども、この資産隠しの現状というのは、公安調査庁、どのようにつかまれたんですか。
○霜田政府参考人 御指摘の読売新聞の報道、ございまして、アレフに対して、いわゆる団体規制法に基づく観察処分といたしまして私ども立入検査を実施するなどした結果、アレフが実質的に経営しております収益事業等に資産を移転させている事実を確認したものでございます。
○有田委員 これは、賠償に約十億円を充てなければいけないにもかかわらず、資産隠しを七億円ほどやっているわけでしょう。これを取り返すというか、賠償に充てる方法はないんですか。
○霜田政府参考人 お答え申し上げます。
地下鉄サリン事件等の被害者遺族への支援活動を行っておる団体といたしましてオウム真理教犯罪被害者支援機構というものがございまして、こちらに対する情報提供等々を行っているところでございます。
○有田委員 つまり、どうすればいいんですか。隠しているわけでしょう。だけれども、賠償しなければいけないんですよ、十億ほど。だけれども、手がつけられないんですか、この現状は。何か方法はないんですか。例えば一案として国が立て替えるとか、いろいろな方法があると思うんですけれども、どうされるつもりですか。
○霜田政府参考人 私ども公安調査庁におきましては、アレフに対しまして、観察処分に基づきます任意調査ですとか立入検査によってその資産等の実態の把握に努めておるところでございまして、また、彼らは資産等を不報告というものがございますので、それに対しまして再発防止処分の請求を行うなどしているほか、先ほど申しました犯罪被害者支援機構からの照会を受けまして情報提供を行うなどの対応をしているところでございまして、現状のところ、私どもめはそこまでということでございます。
○有田委員 つまり、公安調査庁のみでは手がつけられないという現状をやはり考えなければいけないということ。
時間との関係で次に行きますけれども、そういう資産隠しを含めた、あるいは、正体を隠した勧誘が続いてきたということを含めて、こういうアレフの危険性の背景にあるもの、そこはどう考えていらっしゃるんですか。いわゆる麻原家族の存在というものがあると思うんですけれども、どうつかんでいらっしゃいますか。
○霜田政府参考人 ただいま御指摘ございました、いわゆる麻原ファミリーと言われる方々でございます。
松本智津夫の例えば次男のアレフの組織運営の関与などにつきまして、インターネット上などでいろいろ書き込みなどがあることは私どもも承知しております。
また、アレフ内におきまして、松本智津夫の子息のうち次男を後継者として待望する声があるという認識も持っておるところでございます。
○有田委員 二代目の教祖として位置づけられていて、本人もそういう自覚があり、昨日が彼の誕生日なんですが、そのホーリーネームなんかは当然つかんでいらっしゃいますね。つまり、ホーリーネームというのは教団名ですけれども。
○霜田政府参考人 私ども把握しておるところでございますけれども、調査の具体的な内容につきましては、詳細について御回答は控えさせていただければというふうに存じます。
○有田委員 そのホーリーネームも、ここでは言いませんけれども、その宗教的な意味というのは、それは言っていただけますよね。
○霜田政府参考人 委員もよく御存じのとおり、教団内でホーリーネームを持っているということは、それなりに高い地位にあるというふうに認識しております。
○有田委員 つまり、アクショーブヤという法則だと、悪業を積んだ者はその命を奪っていいという、そういう内容なんですよね。だから、地下鉄サリン事件など一連のあの凶悪事件につながるような内容を持った教団名を持っている次男が今第二の教祖としているという、そういう理解をしているんですけれども、そういう状況の下で、やはりもっともっと社会が、問題、事件を風化させることなく、更に監視を強めていかなければいけないと思っているんですよ。
ですから、あの資産隠しだって、指示があってやっているんだから、その指示をやったのは誰かということを明らかにすれば、これは刑事的な対応だってできると思うんですよ。そうすれば、その背後で動かしていた者は誰かということも明らかになってくるというようなところで、もっと詰めた対応をしなければいけないというふうに私は考えております。
そして、先ほどオウム真理教の事件についてお話をしましたけれども、警察内部で非常に努力をされる中で、一九九四年の九月の段階、地下鉄サリン事件の前の年の九月の段階で、実はオウム捜査班というのができていたんですよ。そのときに、オウム捜査班の会議の中で、次に統一教会の問題に行くんですけれども、実は、警備局長が報告をしている中で、九四年ですよ、九四年の段階で、宗教団体に対してもっと干渉を強めなきゃいけないという発言。そのときは、統一教会だったんですよ、実はオウムじゃなくて。と同時に、オウムという名前は出さないけれども、実質、オウム、注目しなければいけないという評価だった。だから、統一教会の問題というのはその時点からやはり警察内部では監視の目が強まっていたんですよね。
その統一教会の現状について、まず、警察庁、事件についてどういうことがこれまであったのか、お伝えください。
○大濱政府参考人 お答えいたします。
旧統一教会や同団体と関連を有する会社が関わった事件につきましては、全てを網羅的に把握しているわけではございませんが、同団体と密接な関係にある販売会社が行った特定商取引に関する法律違反の検挙事例が、平成二十一年五月から平成二十二年三月までの間に六事例ございます。
また、全国の都道府県警察で受理いたしました旧統一教会に関連する相談につきましては、令和四年九月五日から令和七年一月三十一日までの間に八百六十五件あると報告を受けております。
○有田委員 二〇〇九年に、いわゆる新世事件、統一教会の信者たちが行っていた印鑑販売で検挙されるという、それから二〇一〇年までそういうことがあった。
当時の新聞を見ますと、例えば霊感商法容疑、女を逮捕、これは福岡、県警、統一教会を捜索、あるいは、不安をあおり印鑑販売、容疑の社長ら逮捕、統一教会捜索、あるいは、統一教会会員夫婦、印鑑押売容疑、霊感商法四人逮捕、特定商取引法違反容疑、統一教会の関連会社。そういったことがあって、統一教会はそれ以降、コンプライアンス宣言を出して、霊感商法はやっていないという主張をしているんだけれども、一般的に霊感商法ができなくなった現状があっても、それからは信者たちに高額献金をさせるというふうに変わっていった。
だから、それが今、この二年間問題になってきたんですけれども、そういう現状がある下で、そういう統一教会の組織の今について、文化庁はいろいろな報告を受けていると思うんですけれども、統一教会は昔から六十万人いるというふうに言っているんですけれども、そんなにいるはずがなくて、文化庁はどのように今捉えていらっしゃいますか。
○小林政府参考人 お答えいたします。
旧統一教会の現状につきましては、宗教法人法や令和五年に制定されました特定不法行為等被害者特例法に基づきまして提出されました財産書類等を通じまして同法人の財政状況を把握しておりますが、その詳細につきましてはお答えを控えさせていただきます。
なお、昨日確認いたしました旧統一教会のウェブサイトによりますと、「家庭連合の歴史」と題するページでは、二〇一七年時点で教会数が二百八十四教会と記載されておりますが、現在活動している全国の教会を紹介しているページに記載されている教会の総数は二百八十一教会となっているところでございます。
○有田委員 細かく聞きたいんですけれども、時間が迫ってきているので、大事なことに行きたいと思います。
じゃ、文化庁に、今、統一教会の解散命令請求について、どういう現状にあるんでしょうか。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
旧統一教会に対する解散命令請求は、報告徴収、質問権の行使により得た情報等に基づきまして、所轄庁として、宗教法人法の解散命令事由に該当すると判断し、令和五年十月十三日に請求したところでございます。
具体的には、宗教法人法第七十八条の二の規定に基づきまして、旧統一教会に対して、令和四年十一月から七回にわたりまして報告徴収、質問権を行使するとともに、全国弁連や百七十人を超える全国の被害者等の方々から、旧統一教会の業務の実態等を把握するための資料、情報を収集し、分析することによりまして、宗教法人法第八十一条第一項第一号及び第二号の前段の事由に該当すると判断したものでございます。
現在、東京地方裁判所において審理が進められておりますが、非訟事件手続法の趣旨を踏まえまして、具体の裁判の状況につきましては、大変恐縮ながら、申し述べることは控えさせていただきます。
○有田委員 何度も質問をしたけれども、答えなかったわけですよね。どういう項目かというのは明らかにできないというのはよく分かる。例えば韓国の教団に幾ら送っているんだろうかとか、そういう質問をされたのかなと推測はできるんだけれども、だけれども、文化庁として、統一教会、家庭連合に質問をして、何回答えなかったんですか。
○小林政府参考人 お答えいたします。
文部科学省は、先ほど申し上げましたように、令和四年十一月以降、規定に基づきまして七回にわたり報告徴収、質問権の行使を行ったところ、同法人の業務又は事業の管理運営に関する質問事項につきまして、全体の質問事項の約二割に当たります合計百項目を超える不報告が認められましたことから、過料事件通知をしております。申し訳ございませんが、どのような問いについて不報告であったか等の詳細につきましては控えさせていただきます。
また、文化庁は、同法人の不報告につきまして、代表役員に過料を処する旨の東京地裁の決定、それから、これを適法として維持する東京高裁の決定、この過料を処する判断を確定させた最高裁判所の決定を踏まえまして、各決定後に催告を行っているところでございます。
○有田委員 私が持っている内部資料でも、統一教会は二〇〇五年の段階で毎月十五億数千万円を韓国の教団に送っているという事実があるんですけれども、とにかく海外送金が、今、安倍元総理銃撃事件以降は止まっているんだけれども、とにかく送金が行われていた。だけれども、そういう質問をしても恐らく答えなかった。だから、過料十万円。
最高裁の決定が行われましたよね。最高裁、事実だけ教えてください。
○福田最高裁判所長官代理者 今御指摘のとおりでございまして、最高裁判所において、令和七年三月三日第一小法廷において決定がなされております。
○有田委員 つまり、宗教法人法八十一条一項に基づいて、法令に違反して、著しく公共の福祉を害することが明らかと認められたときには解散命令を出すことができるんだけれども、これまでは、オウム真理教、明覚寺の場合は教祖などが刑事事件に問われたんだけれども、一般の報道でも明らかなように、今度は刑事事件だけではなくて民事も問われているという理解をしているんですけれども。
大事なことは、最後にお聞きをしたいんですけれども、最高裁決定の三ページ、「解散命令は、宗教法人の法人格を失わせる効力を有するにとどまり、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わない」、つまり、法人格は失うけれども、信教の自由はある、そういう理解でよろしいわけですね。答えにくい。
じゃ、そこのところに、「前掲平成八年第一小法廷決定参照」と。この決定というのは何に対する決定なんでしょうか。
○福田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
お尋ねのありました最高裁平成八年一月三十日第一小法廷決定は、宗教法人オウム真理教に対する解散命令請求事件の特別抗告審の決定でございます。
○有田委員 つまり、オウム真理教は解散になったんだけれども、解散になっても、今、後継団体が活動している。それと同じく、統一教会が解散に仮になったとしても、信者たちの信仰は守られるという、そこのところははっきりさせておきたいと思います。
終わります。
○西村委員長 次に、米山隆一さん。
○米山委員 それでは、立憲民主党、米山です。会派を代表して御質問いたします。
私、一番目の質問は飛ばすつもりだったんですけれども、先ほど大臣が藤原委員の質問に答えられませんでしたので、そこはやはり、大臣が就任の際に、職員に配った月餅についてお伺いせざるを得ませんということで、御質問させていただきます。
大臣、先ほど、金額と人数、またその総額を言わなかったんですけれども、今どき、インターネットを調べれば大体当たりはつくわけなんです。報道されている崎陽軒の月餅三個セットというのは、五百九十円で売っているわけですよ。
法務省の職員というのも、内部部局の職員が八百十六人でございますので、ここまでだと総額四十八万千四百四十円です。これが、いや、そうじゃないとおっしゃるんでしたら、法務省総合研究所等、施設を入れると二万二千五百七十四人ですので、何と千三百三十一万円になりますし、検察まで入れると四万九千八百十五人なので、総額二千九百三十九万で三千万円になってしまうんですね。
そうすると、それは普通に考えて、五百九十円で八百十六人に、四十八万一千四百四十円払ったのかなと思うんですが、それはどちらなんですか。それを否定されるんですか、それともそうなんですか。お答えください。
○鈴木国務大臣 先ほど御答弁申し上げたところでありますけれども、日夜職務に精励する職員全体に向けてということで差し入れをしたということに尽きるわけであります。そういった中で、私費でも行っているところでもありますし、その個数であったり、あるいはというところは差し控えをさせていただきたいと思います。
○米山委員 大臣、お伺いしたいんですけれども、この行為は違法なんですかね、違法じゃないんですかね。
というのは、お答えにならない理由がよく分からないんですよ。だって、大臣はもう月餅三個を贈っていますと言っており、法務省職員全員に贈っていると言っている。そして、何の問題もないんだったら、誰がどう考えて、普通に考えて、五百九十円で八百十六人で四十八万千四百四十円なんでしょうと思うわけですよね。だって、そうじゃない理由が余りないですから、おっしゃるとおりなら。なのに、なぜかおっしゃらない。
それはつまり、何かそれを言ったらいけないことがあるからなんですか。何でそれを否定される理由があるんですか。お答えください。
○鈴木国務大臣 私費で行った差し入れということで、そういった趣旨に尽きるということでありまして、例えば、政治活動で政治資金を使ってということであれば、当然そこは公開の義務があろうと思いますけれども、そういったことでもないということの中で、そういったコストであったりとか、そういったことについては差し控えたいということであります。
○米山委員 非常に不思議なことなんです。わざわざ隠す理由はどこにもないんだと思うんですけれどもね。
ちなみに、二月二十一日の予算委員会で、我が党の小川幹事長の質問に対して石破総理は、鈴木法務大臣を強く叱責しました、注意しましたというふうに言われて、そこの隣に座っていた鈴木大臣は、うんうんと神妙な顔でうなずかれたわけなんですけれども、私費で、そして全然何の問題もない行為であったら、一体何を注意されたんですか。何を反省したんですか。お答えください。
○鈴木国務大臣 先ほど、若干お答えしていなかったところもあろうかと思いますので、若干補足も含めて申し上げますけれども、さきに、政府に対する質問主意書の中で、法的なところというところで、答弁書の中でこのように書かれております。「お尋ねについては、個別の事案に関することであり、お答えを差し控えたいが、一般論として、公職選挙法第百七十九条第二項において、「この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。」と規定されており、」、そして、その上で、「個別の行為が「寄附」に該当するか否かについては、個別具体的な事実関係に即して判断されるべきものと考える。」と答弁されておりまして、私としては、内閣の一員としても、それ以上にお答えすることは差し控えたいというところは、まずその法的なところということであります。
その上で、石破総理からのということでありますけれども、石破総理から注意されたその理由ということで、これは石破総理でないので、そこは私からお答えすることは正直難しいわけでありますが、私としては、不適切であるというような、そういった趣旨の指摘を受けることがないように、襟を正してしっかり職務に精励していきたい、そういったことで受け止めております。
○米山委員 法務大臣がそんな答弁でいいんですかねと思うんですが、総理大臣が法務大臣に注意しているのに、法務大臣は理由は分からないんですね。びっくりしましたけれども、それがこの自民党内閣のありようなんですね。
総理大臣は内閣を掌理しているんだと思うんですけれども、総理大臣が法務大臣に注意するというのは結構大きなことだと思うんですが、理由は言わないんですね。法務大臣は分かっていないけれども、その理由は分からないけれども聞かない、推測しているだけだ、こんな内閣、機能していないでしょう。びっくり仰天というか、そう今、しかも大臣は公式に答弁されたので、もう石破総理が大臣に何を言ったって、理由は何にも大臣は聞いていない。それはびっくりなんですけれども、それでいいんですね。
しかも、法務大臣でありながら、個別具体的には分かりませんと言いますが、自分の行為ですよ。自分の行為で、しかも、多分それは、どうやら分からないらしいけれども、恐らくは、それは総理大臣が注意している内容の行為ですよね。それについて、個別的にそれが法に当たるか当たらないか分からないわけですね。
ただ、法務大臣が問題だと思っているのは、週刊誌に指摘されたことだけが問題なのであって、週刊誌に指摘されないようにすればそれでいい、そういう御趣旨で答弁されたわけですね。つまり、大臣、月餅を贈ることが週刊誌に指摘されなければいいんですね。お答えください。
○鈴木国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、この趣旨としては、職員の皆さんにも、いろいろ、国会あるいは法律等々の作業も含めて大変な御負担をかけるということで、慰労したい、激励をしたいということで差し入れをした、そういったところであります。
その上で、石破総理からの注意ということの背景ということでありますけれども、そこはまさに、不適切であるというような、そういった趣旨の指摘を受けることがないように、私自身はやはりしっかり襟を正してやっていかなくてはいけない、そういった趣旨での注意というふうに私は受け止めております。
○米山委員 押し問答ですから、時間がもったいないのでこのぐらいにしますけれども、でも、もう一つ最後に御指摘させていただきますけれども、例えば私が、長岡の事務所で職員さんに、職員さんというか秘書の方にケーキの一個を買ってきて、それは文句言われないですよ、さすがに。それは社交儀礼の範囲でしょうと。多分、それが五百九十円の月餅一個でも、それは誰も何も言わないですよ。それに対して何か買収なんということを、寄附ということもないと思いますよ。
だけれども、先ほど来申し上げているとおり、大臣のおっしゃっていることを前提にすれば、普通に、どう考えても、八百十六人に四十八万千四百四十円、贈っているんです、一回で。それは、通常の感覚なら社交儀礼の範囲を超えているんですよ。だって、一回五十万ですよ。しかも、私はポケットマネーで出しましたと、どれだけお金があるんですか。
だって、我々は、いろいろなことを言われますけれども、そこそこ税金を控除されて、いろいろな、立法事務費とか引かれて、手取りというのはそんな、六十、七十とかそんなものじゃないですか。そのうちの五十万、ぽんと払えるんですね、大臣というのは。ほかは一体どうやって生きているんですかと思うわけですよ、それは。
だからこそ、一体全体、総額幾らなんですかと聞いているのに、それは頑として答えない。誰がどう考えたって、普通に考えたら五十万でしょう、幾ら何でも三千万じゃないでしょうと思っているわけなんだけれども、それは答えないわけですよ。だからみんな疑っているわけじゃないですか。それを法務大臣たる者が全く自ら言わない。
だって、本当に、大臣が言うとおりにそれが問題ない行為なら、いやいや、問題ありません、私はポケットマネーで五十万払いましたけれども、私にとってははした金です、私にとっては社交儀礼の範囲です、だから何の問題もありません、寄附に当たりませんと言わなきゃおかしいでしょう。言うべきですよね、だって、あなたは法務大臣なんだから。
そうおっしゃるんですか、おっしゃらないんですか。それとも、相変わらず最後まで曖昧にして、この質問をやり過ごすんですか。最後に教えてください。
○鈴木国務大臣 正直、私費でというところで、別に私もお金があるわけでも何でもなくて、そこは大変厳しかったですよ、それは。ただ、そういった中でもやはり慰労したいじゃないですか、それは、頑張ってもらっているわけですから。私は組織のトップとして、差し入れをするということ、私は、今回の件で申し上げれば、そういったことに尽きる、そこは申し上げたいと思います。
その上で、例えば、様々な法解釈ということについて申し上げれば、公選法の解釈ということで申し上げれば、そこは、先日、私も内閣の一員として、質問主意書というところで政府として答えをしておりますので、そこ以上のことを申し上げる立場にはないということで申し上げたいと思います。
○米山委員 これで終わりますけれども、よく分かりました。ともかく、自民党政権においては、大臣に就任したら五十万円をポケットマネーで払える人じゃないと大臣になれないということでしょうかね。そして、それについて疑義が言われても、それに対していいか悪いかも言わない。それが自民党内閣であるということを申し上げさせていただきたいと思います。
次に、選択的夫婦別姓についてお伺いいたします。
これは、二月二十六日の予算委員会で、自民党の元法務大臣、これは元法務大臣ですよ、山下貴司議員が、事実上の家族別姓だ、親の一方は必ず子と別姓になる、子も別々の姓が使えるようになるので、親子、兄弟、姉妹で姓がばらばらという事態が発生する、別姓を選択すれば家族姓は使えない、旧姓も家族姓も使いたいというニーズに対応していないとおっしゃっており、にわかに家族の姓が違うということを問題にされた。子供の姓が違うのが非常に問題だとおっしゃられたわけですし、またそれに、にわかに同様のことを言い出す野党の方も出ているという状況でございます。
ところで、大臣御承知のとおり、日本人と外国人が結婚した場合は原則的にそもそも夫婦別姓になりますから、どちらかの親と子は別姓になります。また、原則として、子供は日本人の親の戸籍に入り、日本人の親と同姓になりますけれども、民法七百九十一条による氏の変更許可申立てによって外国人の親と同姓になることも可能ですから、そういうことをある子供が選んだとしたら、兄弟の一人が選んだとしたら、ほかの兄弟がそうしなければ、当然兄弟別姓もあり得るわけなんです。国際結婚のカップルというのは、片方は日本人ですからね。
そこで御質問いたしますけれども、現在、国際結婚している夫婦の数、国際結婚している親に生まれた未成年の子供の数、これらの子供について、親子若しくは兄弟別姓であるために生じたトラブルの相談の数を教えてください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
法務省といたしましては、国際結婚している夫婦の数及び国際結婚した親に生まれた未成年の子の数はいずれも集計をしておりませんで、把握をしておりません。
したがって、これらの子について、親又は兄弟と氏が異なるため生じたトラブル及び相談の数についても把握をしていないところでございます。
○米山委員 全く把握していないわけですよ。
でも、これは民間の調査といいますかで、大体、そもそも法務省で出している調査で、今、一年に出ている結婚届の三から四%は国際結婚ですと出ています。
あと、国勢調査等で、現在、夫婦だけの世帯が千百十五万九千世帯、夫婦と子供がいる世帯が千三百九十四万九千世帯、合計で二千五百十万八千世帯ありますので、これに三%、少ない方で見て三%掛けたとして、夫婦だけの国際結婚の世帯が三十三万四千七百世帯、お子さんがいる世帯が四十一万八千四百七十世帯、合計七十五万三千二百四十世帯が夫婦別姓なんですよ、基本的に。それは同姓になっている人もいるかもしれませんけれども、夫婦別姓で、お子さんと親が別姓な世帯、これはもう何せ、お子さんがいる世帯になりますとこれは四十一万世帯、四十万世帯ぐらいは親と子供は違う姓ですというのがいるわけなんです。
それに対して、全然法務省は把握しておりませんということだったんですけれども、重ねて御質問しますが、このことに対して、にわかに問題視し出した自民党から、今まで、調査の依頼、また、若しくは何かの関係団体からのいろいろな対応の御依頼などございましたでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のような意見、申入れ、あるいは要望等につきましては、法務省としては、現時点においていずれも承知をしておりません。
○米山委員 そうなんですよ。四十万世帯も恐らく推計で親子別姓、兄弟別姓はいるだろうに、今まで自民党は一回も問題にしていません。
次に、離婚した場合、親が旧姓に戻っても子供の姓は自動的に変わりませんので、これは、手続しなければ実は別姓になるんですね。複数の兄弟がいる場合、子供の姓を親と同じにするかどうかは子供ごとに決めますので、こちらも兄弟別姓になり得ます。
そこで、お伺いいたしますけれども、現在、離婚後、未成年の子供を育てる親の数、そのような未成年の子供の数、これらの子供について、親子若しくは兄弟別姓であるために生じたトラブル、相談の数を教えてください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
法務省といたしましては、離婚後、未成年の子を育てている親の数及びそのような親に育てられている未成年の子の数について調査をしたことはありませんで、具体的な数は把握しておりません。
したがって、これらの子について、親又は兄弟と氏が異なるために生じたトラブル及び相談の数についても把握をしておりません。
○米山委員 これも、今どき、法務省が分からなきゃ正確な数は分かりませんけれども、三件に一件は離婚するというお話の中で、世帯というのは合計二千五百十万世帯あるわけですから、その三分の一ぐらい、八百万世帯ぐらいは離婚した世帯があるわけですよ。その中では、親子別姓とか兄弟別姓というのは何にも別に珍しくないというか、何せ、原則、旧姓に復さなければ、むしろ最初は別姓なんですから。相当数の別姓がいると思われるんです、百万単位で。にもかかわらず、全然調査していないわけですよ。
これも重ねてお伺いしますけれども、にわかに問題視している、非常に問題だとおっしゃられている自民党の方から、この問題について調査をしてほしい、そういうような御依頼はありましたでしょうか、今までに。また、何かその旨、関係団体からの対応の依頼はありましたでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のような調査の依頼等については、法務省としては、現時点においていずれも承知をしておりません。
○米山委員 そのとおりなんです。
国際結婚であれ離婚後であれ、夫婦別姓も兄弟別姓も親子別姓もあるんです。あるのに、しかも相当数、何十万、何百万という単位であるのに、今まで自民党の先生方は、一切合切、何の問題にもしていなかった。また、もちろん、関係団体からも特段それについて何か対処してくれと依頼が来ていたわけでもない、我々のところにも。にもかかわらず、にわかに問題視しているわけなんです。
次に、また今度、別の質問をさせていただきますけれども、山下議員は、夫婦仲が悪いと子供の氏が延々と決まらないことが起こるというような質疑をされておりました。でも、夫婦仲が悪かったら決まらないのは、別に姓だけじゃなくて名前だって一緒なわけですよね。
夫と妻でそれぞれ名前を主張し合って、なかなか決まらないということは時に見聞きするわけなんですけれども、このような事態に対して戸籍法四十九条は、出生の届出は、十四日以内にこれをしなければならないと定めて、第百三十七条で、正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、五万円以下の過料に処すと定めております。
そこで、法務省に伺いますが、この出生届の遅れで過料に付された人、これは年間何人ほどおられますでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
戸籍法に基づく届出又は申請の期間の徒過により令和五年度に市町村が簡易裁判所に対して行った違反通知は、五千七百十八件でありました。
もっとも、これは出生の届出に係るもののみではありませんので、出生の届出期間を徒過したことにより過料に処せられた者の数は把握をしておりません。
○米山委員 これもそうなんですよ。名前だって、それはもめそうなものだけれども、今の五千七百十八件というのは、相当数は多分、これは死亡届を出していない方ですよね。そっちの方がいかにも遅れそうですから。出生届は喜んで出すけれども、死亡届はなかなか出さぬというのはありそうな話なので。しかも、これは単に簡易裁判所に出しただけで、本当に過料になった人の数じゃないわけです。別に、夫婦仲が悪いところだっていっぱいあろうに、ちゃんと名前を決められているわけですよ。なのに、何で姓は決められないとにわかに思うのか。
かつ、名前を決められない人たちだって、さはさりながら、決められないで過料になる人もいるんでしょう、きっとそれは百人や二百人は。でも、それは、何のかんので過料の制裁を科されて、ちゃんとできているわけです。なのに、何で姓だけはできないと思うのか、にわかに。これも非常に謎なわけです。どうしても仲が悪くて決められないのが困るというんだったら、この名前を決められない方だって何かもうちょっと対処すればいいのに、そっちは放置しておいて、なぜか姓の方だけは非常に問題視される。これは非常に疑問です。
さらに、山下議員は、選択的夫婦別姓を導入すると戸籍のデータベースの大改修が必要になる旨質疑をされました。しかし、これは、二〇二三年六月二日に成立し、本年五月二十六日に施行される改正戸籍法によって、個々人の名前に今までなかった振り仮名をつける改修が行われており、その費用は百三十億円ほどであるというふうに伺っております。
戸籍に編さんされた個々人の名前に振り仮名をつける改修ができるのですから、振り仮名じゃなくて姓をつける改修をしたってほぼほぼ同じでしょう、何が違うんですかと思うんですが、もちろん細かいその要件定義がされていませんから、それはいろいろ違うところだってあると思いますよ。全く同じなんと言うつもりはないですよ。片仮名は五十何種類だけれども漢字はいっぱいあるんだみたいな話をされれば、それはそうですけれども。だけれども、ほとんど変わらないでしょうと思うんですが、これはそういう認識でいいのか確認させてください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
現時点で選択的夫婦別氏制度を導入した場合の戸籍証明書の記載事項が定まっておりませんので、戸籍関係システムの改修の内容も定まっていないため、同制度を導入した場合の戸籍関係システムの改修費用を試算しておりませんで、その費用規模をお答えすることは困難であります。
○米山委員 これは困難で、それはいいんですけれども、どう考えたって百三十億と大差ないです。やったのと大差ないはずです。そんな違いっこないです、デジタルなんだから。
ここで鈴木大臣にお伺いしたいんですけれども、鈴木大臣も大臣個人としては選択的夫婦別姓に御賛成と、私は、様々なデータ、それこそネットの履歴から把握しておるわけなんですが、しかし、答弁としては随分煮え切らない答弁なんですけれども。しかも、その中で、親子別姓、兄弟別姓について考えなければならないようなことをおっしゃられているわけなんですが、もしそうだとするなら、まず、じゃ、質問の第一として、鈴木大臣は、この選択的夫婦別姓について、今までの答弁どおり、やはり兄弟別姓になったり親子別姓になったりするのが問題だから考えなければならないと思っておられるのかどうか教えてください、まず第一に。
次に、一緒にお答えを聞きます。第二問目として、もしそうであるなら、もしそれが問題で選択的夫婦別姓ができないのであれば、先ほど聞いたとおり、だったら国際結婚の親子別姓、離婚時の親子別姓も同時に対処しなければならないはずなんですけれども、じゃ、そちらについても新たに御検討するということなんですか。
その二点をお聞かせください。
○鈴木国務大臣 選択的夫婦別氏の問題についてですけれども、今お話しされましたような兄弟間であったり、あるいは親子間ということ、そういった御意見があるということは承知をしていますということで、その上で、これは、その一方で、様々な不都合があるということで、これはしっかり変えていかなきゃいけないという御意見があるのも承知をしております。そういった中で、私どもとしては、国会の場で、あるいは国民の間でしっかりとした議論が進んでいくということが望ましいということを思っているということであります。
後段の話でありますけれども、様々な背景で実際にそうした氏が違う状況が現実にある、これは事実だろうと思います。その上で、私どもとして申し上げるとすれば、日本人が外国人と婚姻した場合、日本人の夫婦が離婚した場合等々の、そうした夫婦や子の氏に関する規律について、現時点で、私どもとして、改正の検討を要するような立法事実があるとは承知をしていません。
○米山委員 おっしゃるとおりなんですよ。別に、親子別姓だって兄弟別姓だって、改正の必要がある立法事実はないんです。だから、国際結婚も離婚後の姓もそのままにされているんです。にもかかわらず、何で選択的夫婦別姓のときだけにわかにそれが問題になるのか、それは非常に疑問である。
やはり、それはいろいろな意見があっていいですよ。でも、私は思うんですけれども、選択的夫婦別姓が気に入らないなら、気に入らないと言えばいいじゃないですか。選択的夫婦別姓が本当は気に入らないくせに、それを言わずに、子供がかわいそうだ、夫婦ばらばらじゃおかしいと言うのは、それはおかしいですよ。そういう借りてきたような理屈を言うのは、それは厳に慎んでいただきたい。ちゃんと議論を闘わすというんでしたら、本当に正直な理屈を言っていただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。
次に、刑事記録の閲覧についてお伺いいたします。侮辱罪については飛ばします、時間がないので。しかも、あと六分ですが。
刑事記録、訴訟法五十三条一項は、「何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。」と定めておりますので、確定刑事記録は原則として閲覧できるということであると思うんです。
ここで、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときというのは、これは一体どんなときなのかお伺いいたします。
○森本政府参考人 お答えいたします。
まず、訴訟記録の閲覧につきまして、保管検察官は、刑事被告事件の訴訟記録について閲覧の請求があったときは、原則として閲覧させなければならないということになっております。
ただし、制限事由に該当するときには閲覧を許可しないこととなりまして、その中に委員御指摘の、裁判所若しくは検察庁の事務に支障があるときというものがございますが、これは、例えば、休日や裁判所又は検察庁が勤務時間外の場合、多数の者が入れ替わり立ち替わり閲覧を申請して、裁判所又は検察庁の執務に差し支えが生じる場合、現に当該訴訟記録を使用中である場合、関連事件の捜査、公判、裁判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合などをいうものというふうにされております。
○米山委員 そうすると、最初の三つは、それはそうだろうというところですよね。それは、そんなお忙しいときに見なくたっていいと思います。次の、一番最後の関連事件にというのは、それはどうなのかなとは思いますけれども。
ちなみに、私は、清和研究会の刑事記録の閲覧申請をしたんですよ。そのときに、そもそも申請のときに、職業は何ですかと聞かれるわけです。国会議員ですと。そうしたら何て聞かれたかというと、どの政党に御所属ですか。答えなきゃいけないんですか。聞かせてください。立憲民主党ですと言ったんですけれども、一体全体、何で政党を聞かれなければならなかったのか。
さらに、これは別の事件ですけれども、うちの地方議員がこの申請をしたときに、許可が出るまで六か月から四か月かかった。私も、実はこの申請をしてからもう二週間音沙汰なし。しかも、その間、一体いつぐらいになったら分かるんですかと聞いたら、いつになったら分かるかも言えません、何を検討しているかも言えません、ともかく、いつか連絡が行くから待っていてください、こうなんですよ。これはおかしいでしょう。
先ほどおっしゃられたように、事務的に忙しいときは駄目です、それはそうでしょうね。ほかの人が見ているときは駄目です、それはそうでしょうね。そうしたら、大体何人待っていまして、大体一週間後ぐらいには空くと思いますよ、それで十分できるはずじゃないですか。わざわざどの党に所属するかまで聞いて、しかも、一体期間がどのくらいかも分からなくて、何を検討するかも教えなくて、しかも現実には四か月から六か月かかっている。これは一体何をされているんですか。
○森本政府参考人 まず、保管記録の閲覧が制限される場合として、先ほど言いました事務支障のほかに二項がございまして、関係者の名誉等のものがございますので、そういったものについてはまずマスキング等の作業が必要になるわけですけれども、そういったことも踏まえまして、一般的に申し上げますと、まず、閲覧の対象となる個々の書類の請求がなされると、どういうものをまず閲覧に供するのかという選定、その後に、先ほど言った事務支障の点等の一項ただし書によるもの、それから五十三条の二項も、それから四条の二項も同じですけれども、閲覧制限事由に該当する部分の確認の検討、そして、それがあった場合には、そこについて、個人名とかもそうですけれども、全部マスキングするというような作業をしておりまして、そういったことに時間を要しているということでございます。
○米山委員 これはおかしいんですよ。なぜなら、私が申請した記録は、その前に東京新聞の記者が見ているからです。東京新聞の記者が見る時点で既にマスキングは済んでいるんですよ。東京新聞の記者に見せられているのに、なぜか立憲民主党の米山さんには見せられないといって、また何週間も、一か月も検討されるわけですよ。おかしいでしょう。影響があるとかないとか、プライバシーとか、そんなものは東京新聞の記者に見せるときに分かっているはずじゃないですか。なぜこんなことをされているのか。
これはもう時間がないので、最後に大臣に聞きますけれども、ともかく、刑事記録の閲覧というのは本当に面倒なんですよ。ひたすらこういうことをされて、四か月、六か月と待たされて、全然、時間がもう終わってから来るみたいなことなんです。これは事実上の閲覧制限じゃないですか。法律上は何人も見れるはずなのに、それをこういうふうに事務的にハードルを立てて、しかも、だって、細々、検察からあなたの職業は何なんて言われたら嫌ですよ、みんな。そういうことをして制限しているのかと思うんですけれども、そうじゃないんですか。
それとも、ちゃんと改善して、原則どおり何人もちゃんと見られる、それも現実的な期間内でちゃんと。しかも、別に一定かかったっていいんですよ、一か月かかったっていいけれども、一か月かかるなら一か月ぐらいですよというめどぐらい言ってくれますか。そういう常識的な対応に改善されるように御指示する気があるかないか、御質問させていただきます。
○西村委員長 鈴木大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。
○鈴木国務大臣 一般論として申し上げれば、当然、意図して不必要な個人情報を求めたり、あるいはいたずらに閲覧の許否の判断を遅らせたりしていることはないと承知をしています。
当然、裁判の公正性、これは先ほど局長からも答弁させましたけれども、その担保は大事ですが、同時に、裁判に対する国民一般の理解を深めるという目的達成のためには、やはりでき得る限り迅速に閲覧の判断はして、閲覧を認めるべきものは認めるということもまた大事だと思っておりまして、私も、検察当局もそういったことで判断していると思いますけれども、しっかりそこは御趣旨も踏まえてきちんと見ていきたいと思います。
○米山委員 質問を終わります。ありがとうございました。
○西村委員長 次に、萩原佳さん。
○萩原委員 日本維新の会、萩原佳でございます。
まずは、鈴木大臣は、所信の中で、犯罪被害者の方々に寄り添うということでございましたので、これに関連して質問いたします。
具体的には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律、通称、自動車運転処罰法の、まずは過失運転致死傷罪についてお伺いいたします。
検察統計によると、過失運転致死傷罪の令和五年の件数は二十八万一千三百四十六件、うち不起訴件数が二十四万一千九百八十五件、結果、起訴件数は三万九千三百六十一件で、起訴率は約一四%となっている状況であり、起訴率はそれほど高くない状況です。
資料一を御覧ください。
これは最高裁判所の資料を基にしております。令和四年に過失運転致傷罪で第一審で有罪となった件数のうち懲役、禁錮になった件数は二千百三十五件であるのに対し、罰金にとどまった件数は九十六件、同じく過失運転致死罪のうち懲役、禁錮になった件数は一千二件、罰金にとどまった件数は八件となっています。
先ほどの起訴件数からすると、有罪になった件数が少ないので、裁判にならずに略式起訴になっているケースが多いと考えています。検察官は、様々な要素を考慮して起訴か不起訴かを決められておられると思います。しかし、死亡した御遺族の方からすれば、突然家族がいなくなるという喪失感や悲しみがあって、処罰感情、これは非常に強いものと考えております。
先日、当時十六歳の娘さんを交通事故で亡くされた御遺族の方とお会いしました。この事故は、自転車で通学途中の娘さんが後ろから来たトラックにはねられ、お亡くなりになられた痛ましい事件でございました。当初、検察は、過失が認められないとしてトラック運転手を不起訴処分にしました。しかし、御遺族の方が証拠を収集し、検察審査会に審査を申し立て、ようやく運転手は略式起訴され、罰金刑となっています。
御遺族の方の思いとしては、不起訴は無罪と変わらないというお考えであり、被害者が死亡した事案では、起訴を原則としていただきたいと考えていらっしゃいます。そして、略式起訴よりも正式な起訴、これを原則にしていただきたいともお考えです。
ここでお伺いいたします。死亡という結果の重大性、これを考慮して、過失運転の場合でも起訴を進めていく方向について、鈴木大臣はどのようにお考えか、お考えをお示しください。
○鈴木国務大臣 今、起訴率が低いという話をおっしゃいました。そういった中で、これは一般論にはなりますけれども、検察当局において、個別具体的な事案に即して、法と証拠に基づいて判断した結果の集積と、私としては、やはりそれはそう存じています。
そうした中で、これまでについても、恐らく適切に起訴そして不起訴の判断をしていると私としては承知をしているということでございます。
○萩原委員 個々の事案ごとにケースは異なるでしょうけれども、今回のケースのように、事実、証拠収集するとその判断が変わっていくようなこともあろうかと思いますので、個々についての対応というのは慎重な対応が必要ではあるものの、適宜対応していく必要があるのかなと考えています。
不起訴になった場合、この場合は理由が示されますが、書面に言う理由は、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予になっていて、その理由というのは明確になっておりません。関係者の名誉、プライバシー等を侵害するおそれや、捜査、公判に支障を生じるおそれがあるということで、刑事訴訟法四十七条で、公開しないことが原則となっているためだとは理解しております。
とはいえ、不起訴で抽象的な理由しか明らかにされないとすれば、御遺族の方としては納得できないと思います。名誉やプライバシーを侵害するおそれや、捜査、公判に支障を生じるおそれがないと認められるのであれば、書面で、不起訴の理由、これを詳細に示すことというのも考えられる、認められると思います。
ここでお聞きしますが、検察は、不起訴の理由について、御遺族の方に基本的にどのようにお伝えしているのか。不起訴理由を現在よりも詳しく書面で示すことについての考えはどのようなものか、お示しください。
○森本政府参考人 まず、犯罪被害者等の希望に応じまして、委員御指摘のとおり、関係者の名誉やプライバシー等の保護の要請に配慮しつつ、不起訴処分の内容及び理由を丁寧に説明し、犯罪被害者等のお気持ちにできるだけお応えできるように努めているという対応を取っているものというふうに承知しております。
今後とも、犯罪被害者等の心情等に配慮して丁寧な説明を行っていく必要があるというふうに考えておりますが、書面の交付の点につきましては、刑事訴訟法上、一定の定められた要件がありまして、そこのものについては書面で回答するということでございますが、それを超えてかなり詳しい内容となっておりますと、先ほど御紹介された四十七条との問題が生じますので、そこはそのバランスを考えながら、詳細な説明は口頭で行っているというのが実情でございます。
○萩原委員 書面は簡略的な形、そして、その分、口頭で細かく説明しているというのが原則であるという趣旨だと思います。果たしてそれが守られているのかなというのは非常に疑問に思っております。もしそうであるのであれば、私の方にそういう声というのが届くのかなというところ、疑問に思っています。この点について、また後ほどお伺いします。
次に、仮に不起訴になったときの刑事記録閲覧についてもお伺いいたします。
過失運転致死傷罪で不起訴処分の場合、刑事記録を御遺族の方が全て見ることはできません。現在、もしかしたら同じ回答になるかもしれませんが、御遺族の方にどの程度刑事記録を開示されているのか、これもお示しください。
○森本政府参考人 先ほど申しました四十七条の定めを念頭に置きながら対応しているということは変わりませんけれども、不起訴記録の閲覧等に関する取扱いにつきましては、記録を保存する検察官において、基本的には、繰り返しになりますが、関係者の名誉、プライバシーを害するおそれの有無、程度などに伴う弊害を考慮しつつ、事案に応じて、通知を出しておりまして、その通知に基づきながら、関係証拠について閲覧を認めるかどうかを個別に判断して対応を行っているというところでございます。
○萩原委員 個別対応ということで、ケース・バイ・ケースということだとは思います。
ですが、基本的にはこの場合、見せていただけるのが、実況見分調書などの客観的証拠に限られると理解しています。釈迦に説法ですけれども、起訴されることで、供述調書、主観的証拠ですね、それも開示されます。この点について、御遺族の方、お話をお伺いしましたけれども、やはり、起訴されないと証拠がなかなか開示していただけないということは不満に思っていらっしゃいました。そして、この御相談いただいた御遺族の方、元々不起訴になっていたところ、検察審査会で略式起訴となって、その起訴で証拠が開示されて、その結果、供述調書に食い違いがあったこと、これが判明したことで、不起訴であればその食い違いも分からなかったとのことでした。
この点、プライバシーに配慮しつつも、供述調書なども積極的に開示の対象にしていく方向もあり得るのではないかと考えておるんですけれども、それに関してのお考えをお示しください。
○森本政府参考人 供述調書等の取扱いについて申し上げますと、まず、裁判になって公判に提出された場合には、訴訟記録の中で提出証拠として出ている場合がございます。そういったものについては閲覧の対象となるんですが、不起訴の場合には、先ほども言いましたとおり、公判に出ていないので、四十七条ただし書によって、刑事訴訟法上の定めによって、公判提出されていないものについては公にしてはならないというのが訴訟法の規定としてあるものですから、そこにまず大きな違いがあるということになっております。
○萩原委員 今るるおっしゃいましたけれども、その対象、ただし書の書きぶり、どう運用していくかというところの問題かなと思っております。
供述調書関係は了解いたしました。
続きまして、過失運転致死傷罪の法定刑についてもお伺いいたします。
先ほど、御遺族の方は、過失運転致死傷罪の罰則が七年以下の懲役となっているのは余りに刑が軽いのではないかと考えられておられます。この点、自動車運転による死傷事犯に係る罰則に関する検討会の取りまとめ報告書では、過失運転致死傷罪の法定刑の引上げについては、その上限が平成十九年に懲役七年に引き上げられており、量刑傾向が法定刑の上限付近に集中している状況にないことや、業務上過失致死傷罪等の他の罪の法定刑との均衡の観点から、慎重な検討が必要であるとされております。
もちろん、他の類型の犯罪との法定刑の均衡を考慮していく必要はあると思いますが、先ほども申し伝えましたが、そもそも起訴率が低過ぎるのではないかと考えています。加えて、過失運転致傷罪、致死罪が、起訴されたとしても、執行猶予がつくケースが一定ある状況です。先ほどの資料一でも書いてございますが、令和四年で過失運転致死罪で懲役三年になった九十五件のうち九十二件、九十五件中九十二件が執行猶予となっています。これはなかなか御家族を亡くされた御遺族の方からすると納得できない結果じゃないのかなと考えておりますが、この点についてどのように考えられているのか、大臣のお考えをお示しください。
○鈴木国務大臣 過失運転致死傷罪の法定刑の引上げの議論ということについての御質問だと思います。
遺族の方々のそうした心情、これは本当に大変なものがあると思っていますし、そこにしっかり寄り添っていくことが極めて大事だ、そこは大前提として思っております。
その上で、それぞれの案件については、法と証拠に基づいて、それぞれが適切な判断、それを積み重ねをしてきていると承知をしておりますが、具体的な法定刑の引上げという議論について申し上げれば、先ほど委員からもお話がありましたように、検討会でもそうした議論、遺族の皆様方の御要望も踏まえてそうした議論が行われたところであります。
その中で、まさに先ほどおっしゃいましたけれども、平成十九年に法定刑の上限が懲役五年から七年に引き上げられたところでありますけれども、そうした様々な積み重ねの結果としての、この刑の量刑の傾向が法定刑の上限付近に集中している状況ではないということ、やはり、それを考えると、今現時点でそうした刑の引上げをすべきだという立法事実があるかというと、そういったことには正直これはならない、それはファクトとしてならないんだろうと思います。
ただ、その一方で、やはりこれから、そうした量刑の傾向がどう推移していくのかも含めて、それはしっかり我々としてもきちんと注視をしていく必要があると思っておりますし、そうした変更が実際に必要な状況になっていけば、それは当然検討がされるものだと思っております。
○萩原委員 今の引上げの点は、そのように今現時点ではお考えになっているというのは理解をしたんですけれども、執行猶予が余りに多いんじゃないのかと考えているんですけれども、これについてはどう考えられていますか。
○森本政府参考人 仕組みの問題ですので、言わずもがなの点もあるかもしれませんが、執行猶予がつくかどうかということにつきましては、もう純粋に裁判官の御判断でございますので、世論とか世の中の状況を踏まえて、これは実刑に処すべきだというふうに裁判官が判断すれば実刑は多くなっていくでしょうし、そこのところにつきましては、やはり司法権の独立の観点から、法務当局として御説明申し上げるのは適当ではないというふうに考えております。
○萩原委員 裁判所の判断というところで、なかなか意見を言うのは難しいということですけれども、やはり、執行猶予がついてしまうと、その後何か起こった場合というところは別の話はあろうかと思いますが、実質、無罪と変わらないと考える方が多いというところだけは、是非この場で申し上げさせていただきたいと考えております。
そして、事件、こういうふうな死亡事故を起こしたにもかかわらず、そもそもその後自動車を運転できるというのはおかしいんじゃないのかという声もあります。ある意味、死亡事故の場合、過失であっても十五点で、免許取消しになる点数がつきます。しかし、死亡事故を起こしながらも、当日に車を運転して帰宅することがあるというケースも聞いております。
ここでお伺いいたしますけれども、通常、死亡事故から免許の取消しまではどの程度の期間がかかるようなものなのか、警察庁、お答えください。
○阿部政府参考人 お答えいたします。
運転免許の取消処分に当たりましては、捜査を通じて明らかとなった当事者の過失の程度、被害の程度、具体的な違反行為といった事実に基づき、点数で評価を行い、公安委員会において処分を決定することとなります。その際、本人の弁明を聞く事前手続である意見の聴取を経た上で取消処分を執行することとなります。
お尋ねの、事故発生から運転免許の取消処分を行うまでの期間につきましては、これら一連の手続を行うために一定の期間を要することは御理解いただきたく存じます。
一方で、道路交通法におきましては、死傷の結果を伴うひき逃げ事故や酒酔い運転といった悪質、危険な交通事故が発生した場合には、警察署長が、速やかに、三十日間に限って当該運転者の運転免許の効力を停止させることができる免許の効力の仮停止の処分を行うことができることとされており、警察では、同制度を適切に運用して、悪質運転者の早期排除に努めているところでございます。
○萩原委員 そういう意味では、仮停止処分ができるのであれば、このように、死亡事故のように免許取消しになるような事案があれば、即座にその処分というのは行うべきだと考えていますが、実際のところ、そうやって運転して帰っているという人も一定いるということでいうと、やはりそれは徹底されていないというふうに思うんですけれども、それについてはどのように考えられていますか。
○阿部政府参考人 個別の事件ごとに対応はケース・バイ・ケースだとは思いますが、悪質運転者を早期に道路交通の場から排除するということは非常に重要であると認識しておりまして、仮停止を含めた運転免許の行政処分制度が適切に運用されるように、都道府県警察に指導に努めているところでございます。
○萩原委員 個別の事案にはというところでしたけれども、本当に、事故で亡くされた方からすると、しかも、後々起訴等々してやっとそういう事案が分かってきて、その日に運転して帰ったんだと、そういう話を聞くと、その御家族の方の気持ちを考えると、その気持ち、なかなか代弁できないようなことになっていると思いますので、このような事案というのが一件でも起こるということ自体が間違っていると思っておりますので、是非その徹底というのは行っていただきたいと考えております。
また、免許の取消しによって免許を取ることができない期間、いわゆる欠格期間は、一般違反行為と特定違反行為によって基準が異なっているということですけれども、故意での運転致死、飲酒運転、危険運転致死傷罪、救護義務違反については、いわゆる特定違反行為に含まれていて、最低でも三年を経過しない限り免許を再取得することができないとなっております。
他方、過失運転致死に関しては一般違反行為となっていて、前歴がなければ、免許が取り消されてから最短で一年で免許が再取得できるようになっております。
死亡という結果、これを起こしながらも、過失運転致死罪が特定違反行為に含まれていないというのは、これはどうなのかなとはちょっと理解に苦しむところなんですけれども、その点についてお考えをお示しください。
○阿部政府参考人 お答えいたします。
平成二十一年六月に施行された道路交通法改正によりまして、危険運転致死傷、酒酔い運転、麻薬等運転、ひき逃げといった、特に悪質、重大な違反行為につきまして、それ以外の一般違反行為と区分し、特定違反行為と位置づけられたものでございます。これにより、従来一年から五年とされていた運転免許の取消処分の後に免許を取得することができない欠格期間について、特定違反行為に該当する場合には三年から十年の範囲内で指定することが可能となったものでございます。
一方で、自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪に該当せず、かつ特定違反行為を伴わない過失運転致死罪につきましては、その悪質性が特定違反行為と同様のものとは言い難いことから、一般違反行為として、取消処分の欠格期間について、一年から五年の範囲内で指定を行っているところでございます。
○萩原委員 今お答えになりましたけれども、御遺族からすると、人が亡くなっているわけですから、それが特定行為に入らないというのは、やはりなかなかおかしいんじゃないかと考えてしまうのは当たり前かなと思ってます。
故意犯ではもちろんないんですけれども、人を死亡させて免許が取り消されて、それでも一年で運転できてしまう、これはやはり短過ぎると考えています。死亡という結果の重大性からすると、これは特定違反行為に含めてもいいんじゃないのかと考えておりますけれども、この点について、再度お伺いします。
○阿部政府参考人 お答えいたします。
特定違反行為に該当しない過失運転致死罪に当たる交通死亡事故につきましては、捜査を通じて明らかとなった当事者の過失の程度、被害の程度、具体的な違反行為といった事実を評価し、一年から五年の欠格期間の指定を行っているところでございます。
例えば、酒気帯び運転を伴う交通死亡事故が発生した場合、危険運転致死罪に該当しないときであっても運転免許の取消処分の欠格期間は五年となるなど、事案の内容に応じた欠格期間を指定しているものと認識しているところでございます。
警察としましては、交通死亡事故が発生した場合には、現行制度を適切に運用して、捜査により事実を明らかにし、事案に応じた厳格な行政処分を行うよう努めてまいりたいというふうに考えております。
○萩原委員 事案に応じたということですけれども、それに関してはちょっと理解が難しいなと思っています。やはり人の死をどう考えられているのか、捉えられているのかというところに関して、免許停止期間という話かもしれませんけれども、そこに関しては、大臣の方も今回所信の方でもおっしゃっていましたけれども、是非、犯罪被害者の方々に寄り添った形での法整備、起訴、不起訴に関する詳細な説明内容とか対応、これを含めて行っていただきたいことを要望して、私からの質問とさせていただきます。
○西村委員長 次に、藤田文武さん。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。
今日は、鈴木大臣、どうぞよろしくお願いします。
今日は、人口政策と外国人の話をしたいと思います。二月末の予算委員会で、鈴木大臣もそうですし、それから石破総理とも議論させていただいた内容を、ファクトを、今日、法務委員会は初めてですから、少しおさらいした上で、少し各論に、特に法務行政に関わることについても聞いていきたいというふうに思いますので、お願いをいたします。
今日はパネルを何枚か用意しまして、予算委員会で出したのと同じなんですけれども、ちょっとファクトをおさらいすると、まず、年金の財政検証を参照しました。
なぜならば、年金の財政検証にも外国人の将来的なボリュームというのは相当影響していく。これはたまたま年金を引いたんですけれども、それだけじゃなくて、ほとんど全ての政策に外国人のボリュームというのが関係してくるという絵姿が予想されています。
財政検証は様々な諸前提を置いてやるわけでありますけれども、その中で、これがいろいろな諸前提を置いているものなんですが、赤で囲っているところが、主に人口に大きく関係するものを二つ、代表的なものを抽出しました。
それでいくと、合計特殊出生率、どれぐらい子供が生まれるかという指標でありますけれども、これは、二〇二〇年の実績が一・三三だったことを基に、高位で一・六四、中位で一・三六、つまり中位が二〇二〇年に近づけているわけですけれども、それから低位が一・一三というふうに前提が置かれています。
それと同時に、入国超過数、これは主に外国人がどれぐらい増えたかということが把握できる指標の一つでありますけれども、これは、五年前の財政検証では六・九万人を中位に置いていたのが、これが、中位だった六・九万人が低位になり、中位が十六・四万人、そして高位が二十五万人というふうな形で、かなり五年前の財政検証からすると上振れしている。これは、二〇一六年から一九年の実績の平均を中位に置いたということで、ここは、私はコロナの前の実績を取るというのは妥当だというふうに思うんですが。
ここで、この中位推計で試算すると、これは国立社会保障・人口問題研究所の推計が基になっておるわけでありますけれども、そうすると、ちょっとグラフ、二枚目を見ると、二〇七〇年には外国人の人口が一〇%を超えるという計算になるというわけです。
人口ピラミッドを見ると、社会保障の支え手として、今ほとんどの方が、外国人、外国人労働者は、ある種、年金財政も含めて貢献するというふうになっているんですが、高齢者層に差しかかってくるわけです。つまり、いわゆる社会保障の主な受け手にもなってくる、そういう絵姿が見えるわけなんですね。
そこで、法務省出入国在留管理庁は外国人の生活や今後の絵姿というのを所管する官庁でありますが、いわゆる量的な話で、外国人人口が一〇%を超えるという試算がもう年金の財政検証に使われていますから、ある種の政府のコンセンサスなのかなというふうに受け取れるわけでありますけれども、まず、人口動態の変化のスピードについての見解を大臣から聞きたいと思います。
○鈴木国務大臣 人口動態、極めてこれは社会政策上もあるいは経済政策上も大事だと思っています。
特に、今お示しをいただいたこのグラフの中でも、ある意味、分母の人口が恐らくかなり我々が考えている以上に減ってしまう可能性が高いという状況、それを考えれば、やはり数以上に率というものが、我々考えていかなくてはいけないことだと思います。
同時に、ここでも示していただいているように、六十五歳以上の外国人の方、先ほど社会保障の受け手という話をされましたけれども、そういった方のボリュームも増えていく、まさに、こうした人口動態がどうあるのか、これは当然、推計をどう取るかにもよりますけれども、やはりそこはある意味で悲観的なシナリオをしっかりと我々としても考えながら、対応を政府全体としてしていかなくてはいけない問題だと思っています。
○藤田委員 ありがとうございます。
問題意識は、鈴木大臣とも前回もやらせていただいて、共有していることだと思います。
その中で、ちょっと法務省の見解を聞きたいのが、入国超過数、つまり外国人のボリュームが、どれぐらい入ってくる数が多いかということというのは予測すべきだと思うんですね。
その中でちょっと見ていただくと、これが実際の足下の数字でございます。折れ線グラフは特殊出生率なんですけれども、これはどんどん下がっていって、実はさっき御紹介させていただいた低位推計に近い一・一五というのが昨年の推計値であります。それから、棒グラフの方は、二〇二〇、二一年はほとんどゼロに近いんですけれども、これはコロナなのでしようがないとして、右肩上がりにずっと上がっていって、中位推計でベースの設定をされている十六万四千人をもう大幅にこの過去三年は超えていて、直近の二〇二四は、公式発表されていないのかな、ないけれども、数字から計算式で出すと、ほとんど計算できるので、三十三万八千ぐらいの方が、増えているというふうになるわけです。これは高位推計の二十五万人を更に超えて、中位推計の倍ぐらいの形で外国人が増えている。
そこで質問なんですけれども、法務省が想定する、今年、二〇二五年の入国超過というのはどれぐらいになるかということは把握しておられますでしょうか。
○杉山政府参考人 御指摘いただきました入国超過数につきましては、入国者数と出国者数の差を基礎として計算するものと理解しております。
入管庁におきましては、入国者数及び出国者数のそれぞれにつき統計上把握し、公表しているところではございますが、それぞれの数値について将来の予測というものを行っているものではございません。
○藤田委員 ありがとうございます。
入管庁には情報分析官という仕事があるみたいですね。そこで統計を取って、どのように推移しているかというのをチェックしていただいたりしていると。それを聞いてみると、それは過去のデータを、ファクトを整理するというお仕事みたいでして、私はやはり、どれぐらいが今後推移していくかという機能を、それは出入国在留管理庁なのか又は内閣府なのかは別にして、それは公式に持たなければならない、そういう認識を持っております。
その上で、ちょっと追加で、これは問取りのときも議論させてもらったんですが、確認ですが、直近の、三十万人を超えている二〇二四年の入国超過というのはイレギュラーな数字なんですかね。要するに、ベースとしている十六・四万人という中位推計でありますけれども、そこから倍以上に上振れしていますよね、高位推計を超えて。これというのは、例えばコロナで激減したとかというのは外的要因だからよくある話、よくあるというか、納得感のある話だと思うんですが、でも、普通に考えている、ベースで考えていた想定よりも倍以上増えているというのは、何か去年は物すごいイレギュラーなことがあったんですかね。それか、なかったのか。ちょっと、ごめんなさい、通告をしていなくてあれですけれども、答えていただけますか。
○杉山政府参考人 委員御指摘のとおり、入国者数はそもそも非常に増加傾向にございます。また、就労等で中長期の在留者数も増加傾向にあるところでございます。
イレギュラーな事態が起こったかというのは評価の部分にわたるかとは思いますが、例えばコロナのような形での大きなイレギュラーな形ではないものと理解しているところでございます。
○藤田委員 そうなんです。つまり、平常運転で増えていっているということなんですよね。
これも予算委員会で話をしましたが、私も、多分大臣も、地元で企業さんに行ったら、外国人労働者は物すごい頼りにされていますよね。介護もそうだし、工場なんかでもそうですし、いわゆるブルーワーカーの需要というのも非常に多いので、経済界からはやはりどんどん緩和してほしい、増やしてほしいという要請があるのは、経済活動としては当然だし、そこは納得できるところだと思うんです。
ただし、それを分野分野で緩和し、無制限に増やしていくとなると、更に速いスピードで人口の比率が変わっていく。気づけば、そこに戦略がなく、かなり想像していたものと違うということが起こり得るということを私は危惧しているわけでありまして、改めて、これがさっき出したグラフのアレンジバージョンなんですけれども、実態により合わせたものであります。特殊出生率を低位の一・一三に設定し、さっきよりも下げました。それから、入国超過数を高位の二十五万人、この二十五万人でも昨年の数より相当少ないんですけれども、低位と高位に合わせ直すと、二〇五〇年過ぎ頃には一〇%を超えるという形で、二〇七〇年には一六・二%、こういう絵姿が容易に想像できるわけであります。さっきの、昨年は恐らく三十三万人ぐらいなんですけれども、これに合わせると、もう少し前倒しされますね。二〇四〇年代半ばから前半かもしれません、ぐらいに一〇%を超えていくということなんですね。
この現実に対して、やはりもう一度、ちょっと大臣の見解を聞きたいと思います。
○鈴木国務大臣 まさに、非常に外国人比率というものが上振れる、その可能性、これは当然我々は所与に、ある意味考えにしっかり入れておく必要があると思っています。特に、我が国の国内労働市場、あるいは社会保障制度、教育、治安等に対してもいろいろな形での影響を与えるものだと思います。
同時に、ポジティブな面ということで申し上げれば、恐らく、高度人材も含めて、あるいは先ほどおっしゃった一般労働者も含めて、それはそれぞれ制度も違いますけれども、どういう形で一番日本の経済力の向上に寄与するか、そういった論点もあるんだと思います。
まさにその両方のある意味でのトレードオフという中で、どのようにして社会の安定、安全というものをしっかりと維持をしながら、必要な受入れはしていくことができるのか。まさにそのことを考えていく上で、やはり外国人の比率、一定以上、これは当然コミュニティーによってかなり偏在することもありますから、そういった意味で、摩擦が起こり過ぎることがあっては断じていけませんし、そういったことをしっかりと考えていく必要がある状況になり得るというふうに我々としては考えています。
○藤田委員 まさに今大臣がおっしゃっていただいたように、偏在するんですよね。偏在し、集住する。これはいろいろな要素があると聞きますが、例えば、すごくお世話が細やかにできる宗教寺院があったとして、そういうところを頼りに、同じ国の母国の方の口コミでそこに集まるとか、そういうようなことが行われるわけなんですね。
それは決して否定されるものではありませんが、何を申し上げたいかというと、この一〇%に二十年から二十五年後ぐらいになるという状態のときには、実は私の地元の大阪でも、もう既に一〇%を超えている、又は二〇%に近い区なんかもあるんですね。市区町村なんかもあるんです。そう考えたときに、全国平均が今三%弱なんですよ。クルドの問題で話題の川口市は今七・三%ぐらいというふうな形で聞いていますので、川口市でも二・五倍ぐらい。全国平均の二・五倍とか三倍とか四倍ぐらいの市区町村というのがどんどん続出するということは容易に想像できるわけでありまして、まさに現役世代の半分が外国人という市町村がこの十年、二十年、三十年ぐらいのスパンで出てくるということなんですね。
そこで、考えたときに、量の話はちょっとやはり大臣の見解を聞きたいなと思って、私は、質的に管理していくということはもう既に入管庁でも相当やっていただいているし、それに知恵を絞っていただいているというのは敬意を払いたいと思います。まだまだ足りず、補おうと進化させていくというのは私たちも指摘させていただきたいと思いますが、一方で、質的なものと併せて、量的な管理というのは私は非常に重要じゃないかなというふうに思うんですね。
将来的に、さっきメリットもあると。経済活動においては確かに、人口動態は経済動向に影響してきました、これまで。今後のAIの時代は変わるかもしれませんが、この量的な管理というのをやはり方針を決めるということは私は必要じゃないかなというふうに思っていまして、現状、外国人の全体数の増減に関して、そもそも、政府の方針はあるのか。もっと増やせ増やせという思想なのか、又は一定で抑制すべきなのかというのが、現状のところで方針があれば教えていただきたいと思います。
○鈴木国務大臣 今、外国人の方の受入れということでいうと、恐らく御承知のように、例えば、今の技能実習、これから育成就労ということになりますけれども、あるいは特定技能等、それぞれの産業ごと、分野ごとの、ある意味での需給というところから一定の枠を設けている、そういった形というものはあります。
ただ、その一方で、そうではない、そういった受入れ資格も当然、居住資格もあるわけですから、そういったことで、全体としての量というものを今管理をしているのかということでいえば、それは管理をする仕組みは今のところはないというのが正直なところだと思います。
その一方で、量ということに加えて、例えばこれが、働く方として来ていただくのか、あるいは、場合によって、将来的に居住者という方も増える可能性がありますから、そういったことでも恐らく社会の負荷というものは変わってきますので、これは、教育であったり社会保障であったり、様々な点を様々な視点から当然考えていかなくてはいけないことであろうと思っております。
○藤田委員 今、分野ごとの在留資格、業種、業態とかに伴って、在留資格の数的な管理というのは現状でも一定あると。それの分野を全部足し合わせたり、又はそこにひもづく御家族とか、それから数年たつとどうなるというのは多分、実績値で予測できると思うんですね。そうすると、やはり、例えば経営者でも、今年の数字、予測どうなんねんというのは絶対気になると思うんですよ。過去こうなってきて、去年は、このベースで使っている中位推計、いろいろな指標で使われている中位推計の倍ぐらいだったよ、じゃ、今年はどうなるんだろうということは、大臣、気になりますよね。
それは恐らく、各分野分野の数値は設定しているんだから、だから予測できるはずなんですよ。そこは全く、やろうという発想はないんですかね。私、是非、裁量でできると思うので、やっていただいた方がいいかなと思うんですけれども、そこはどう思われますか。
○鈴木国務大臣 もちろん、正確な予測というのは難しいと思います。ただ、その一方で、いろいろな社会への影響も含めて、国全体でということの予測も恐らく必要になってくることもあろうかと思いますし、同時に、先ほど、偏る可能性もあるということを申し上げた中で、例えば、一番外国人が集中するようなところでどういった状況になり得るのか、例えば五年後、十年後どうなるのか、そういったことをこれから考えていく必要は恐らくあるんだろうと思っています。
それは当然、法務省、入管だけということではなくて政府全体の取組になる可能性もありますけれども、今まさにそうした、社会学的にどうなのか、あるいはマクロ経済的にどうなのか、そういった様々な側面からきちんとこうした整理をする必要がある、それはまさに私も問題意識は一緒でありまして、今後、大臣の下での、まずは勉強会、研究会という形でそういったことをしっかりと検証していこうと考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。
先日の予算委員会で、総理からも、やはりこの問題は非常に重要で、人口庁という形か、まあネーミングは別にして、そういう人口戦略をやはり所管する、そして外国人の方の問題を所管するヘッドクオーターが必要じゃないですかという問いに対しては、それは必要だろうという前向きな御答弁もいただいて、私、これは本当に最上位に位置づけてやるべき問題だろうというふうに思います。
というのは、ちょっと誤解がないように申し上げたいんですが、私は、外国人の方を排斥してみんな出ていってくれという立場でも全くありませんし、そういう方々にお力をかりながら、この社会でちゃんと共生していきながら日本のこの絵姿を考えていくべきだと思う一方で、やはり、ヨーロッパ諸国の例を見れば、先日のドイツの選挙もそうですけれども、移民の問題が、又は社会の分断の問題が相当、選挙にも影響するぐらい深刻な話になっていて、移民については、政策が、今まで緩和的に許容していたものが相当逆振れしている、そういう先行事例をしっかりと把握した上でやらないと、私は、気づいたときにはそういう激しい分断や排斥みたいなものが生まれてしまうという危惧を持っているんですね。
ですから、今のうちに質的にも量的にも管理をしていく、そしてその司令塔機能をつくるという必要性を、さっき、必要性が多分あるというお気持ちの中で答弁していただいたと思いますが、私は、今の一番の問題は、分野分野で部分最適で、産業界からの要請で数を増やし、緩和的に受入れを進めていくというのは、部分最適ではあると思うんですよ。それは人手が足りませんから。ただ、それが、一旦マクロで見たときに物すごい分量になる、そういう視点は誰もが思いつきますよね。でも、それを管理しよう、又は戦略を組もう、どこに派生するかということを研究しようという、一元的に考える機能がないというのが今の我が国にとって深刻な問題だということを指摘したいと思います。
その点について、最後にお考えをいただけますか。
○鈴木国務大臣 今まさに御指摘のとおりで、日本以外のG7において、かなり、非常に深刻な問題になってきています。
そういった中で、我が国としてもどうあるべきなのか。正直、これまで、どうしても労働市場の需給というか、それぞれ分野ごとの労働市場の需給が主導している形になってきたのは否めませんので、そういった中で、どのようにして日本として、ある意味で、将来、自由で開かれた日本であるためにも、そこはしっかりと全体のペースというものをきちんと考えなきゃいけないし、あるいは負荷というものも最小限にしていくことは当然必要だと思いますので、しっかりと検討してまいりたいと思います。
○藤田委員 ありがとうございます。
この問題は、つまるところ、法務省や出入国管理庁のキャパを超える話で、各分野横断的にいくので。ただ、一番それに近いのが法務大臣でありますから、是非取り組んでいただきながら、これは、数年かけて日本の絵姿を考える、そういう機能をこの日本国に持つということを是非やりたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
以上です。
○西村委員長 次に、小竹凱さん。
○小竹委員 国民民主党の小竹凱です。
本日、質疑の時間をいただき、ありがとうございます。早速質問に入ります。よろしくお願いいたします。
まずは、震災発生被災地における窃盗等の犯罪に対して質問いたします。
参考資料の一を御覧ください。昨年の元日、能登半島地震発災以降、被災地域での窃盗や空き巣といった犯罪被害が報告されているとお聞きします。多くが震災の混乱に乗じた犯罪と考えられ、避難により無人となった民家や商店などが狙われています。震災につけ込んだあらゆる火事場泥棒は、被災者の気持ちを踏みにじる卑劣な行為であり、取締りの徹底を強化し、地元住民の安全、安心の確保が最優先だということは共通の認識かと存じます。
そこで、まずは被害状況についてお伺いします。
一月一日の能登半島地震発災以降、被災地域における窃盗等の犯罪発生件数及び摘発件数、摘発率についてお聞きします。また、関連して、その被害額はどのような程度に、どのような規模になるのか、把握しているか、お聞きいたします。
○松田政府参考人 お答えいたします。
警察庁でまとめている犯罪統計で見ますと、能登半島地震発生以後、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の被災地域における令和六年中の刑法犯認知件数等は、認知件数が二百二十九件、検挙件数が八十四件、検挙率が三六・七%となっております。
うち窃盗犯につきましては、認知件数が百七十八件、検挙件数が五十五件、検挙率が三〇・九%、被害総額は約三千万円となっております。
○小竹委員 ありがとうございます。
三千万円ということで本当に大きな額が、そして、検挙率も三割、三件に一つしか検挙されていないということに関しては、引き続き、厳罰化してほしいというふうに思います。
私たち国民民主党は、発災以降、様々な街頭で募金活動、募り、全国の多くの方々が、能登へ、復興に向けて募金に応じてくださいました。その額が金額にして八百六十九万八千二百九十二円。これの四倍に近い金額を、本当に、心が弱っているときに奪い去っていくということは到底許されませんし、いまだに摘発率が三割ということに関しては、更に厳罰化してほしいということを改めてお願いいたします。
また、昨年の三月、愛知県警が、能登半島地震の被災地で空き巣を繰り返したとして、十六歳から十九歳の三人を住居侵入、窃盗の疑いで逮捕したというような報道が発表されております。被害品にはカフスや指輪など、故人の形見も含まれていたといいます。また、逮捕されたのは名古屋市の無職の少年、ブラジル国籍で派遣社員の少年、中国籍で住居不定の少女。そのほかにも、ベトナム国籍の男五人組が、能登に行けば取り放題だなどと言い、被災した住民が不在だった石川県や富山県の住宅に侵入し、犯行に及んだなどという事件も確認することができております。
能登半島市外の在住者や外国人による犯罪実例も存在すると言われておりますが、その実情について、また、被災地を狙った犯罪行為は主にどういった手口で行われているのか、政府の見解を伺います。
○松田政府参考人 お答えいたします。
石川県輪島市、珠洲市、穴水町、能登町における令和六年中の刑法犯検挙件数八十四件について、その主な手口からお答えしますと、避難中の家屋や一般家屋、空き事務所等を狙った窃盗事件であると承知しております。
その上で、検挙した八十四件の被疑者についてお答えいたしますと、そのほとんどが日本人被疑者によるものでありますが、外国人被疑者による犯行も見られるところであります。
また、被疑者の居住地に関する正確な数値は把握しておりませんが、石川県内在住の者による犯行、同県外在住の者による犯行の双方が見られるところであります。
引き続き、捜査を徹底いたしまして、被災地の安心、安全の確保に努めてまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
そのとおりで、本当に安全、安心のために、引き続き取り組んでいただきたいと思います。
能登は元々過疎化が進んでおり、今回の地震は半島地震という特殊な事情でした。半島であることで幹線道路が限られており、一つの道路が寸断されると、交通インフラが事実上として成り立っていない、そういったところも多くあり、その結果、集落ごとの集団避難を多くの方々に協力していただいたということもございます。
ふるさとを離れる本当に苦しい選択だったと思いますが、そんなところを無人だと狙って犯行に及ぶ人たちというのは本当に信じられませんけれども、これまで大規模な自然災害が発災するたびに、こういった事案が起きていたことも事実であります。
そこでお聞きしますが、被災地の窃盗等の犯罪に対し、取締りや警備体制はどのようにして行われているのか、発災直後から現状までの変化も含めて、政府の見解をお聞きします。
○大濱政府参考人 お答えいたします。
令和六年能登半島地震の被災地においては、石川県警察に加えまして、全国警察から派遣された応援部隊により体制を構築いたしまして、犯罪被害の防止や被災された方々の不安の解消を図ってきたところでございます。
具体的には、被災地の安全、安心を確保するための警戒、取締り活動といたしまして、四十五都道府県から派遣された特別自動車警ら部隊が石川県警察と一体となりまして、一日当たり警察官最大約五百人、パトカー最大約九十台の体制で、被災地域や避難所周辺の警戒、警らを行ったところでございます。
また、四十三都府県警察から派遣された女性警察官を中心とした特別生活安全部隊が、石川県警察の部隊とともに避難所を訪問いたしまして、防犯チラシを活用した広報啓発や相談対応等、被災者の方々に寄り添った活動を実施してきたところでございます。
加えまして、被災地の犯罪抑止を図るため、石川県内に約千台の防犯カメラを設置いたしまして運用をしております。現在においても、石川県警察では、二十四時間体制で被災地における警戒、警ら活動を実施しているほか、仮設住宅への戸別訪問等により犯罪被害防止に関する広報啓発を実施するなど、対策を強化しております。
今後とも引き続き、被災地における安全、安心を確保するための取組を的確に推進いたしまして、犯罪被害の防止や被災された方々の不安の解消を積極的に図ってまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
私も発災以降、何度も能登に入っておりましたので、全国からの都道府県警が応援に来ていただいたというのは目にしております。本当にありがたかったと思っています。
犯罪件数の変遷を見ると、最近は、犯罪件数自体は減ってきてはいるものの、それは母数となる住宅の数も減ってきておりますので、これからも引き続き、防犯対策、パトロール、そして、それぞれの役割といいますか、それぞれの強化をしていただきたいというふうに考えます。
また、能登の被災地の窃盗以外の犯罪実例についてはどのような事例が報告されていたのか、また問題になっていたのか、お聞きいたします。
○大濱政府参考人 お答えいたします。
令和六年能登半島地震の被災地においては、発災直後から、窃盗犯以外にも、災害に便乗した詐欺、悪質商法等に関する相談が寄せられていたところでございます。
警察では、このような災害に便乗した悪質事犯に関しまして、避難所等での注意喚起や、政府広報、警察庁ウェブサイト、SNS等を活用した被害防止のための広報啓発活動等を行うとともに、取締りの徹底を図ってきたところでございます。
具体的には、警察庁では、昨年一月五日付で全国の都道府県警察に対しまして、こうした災害に便乗した悪質事犯に関する情報収集と取締りの推進等を指示しており、例えば昨年二月には、石川県警察におきまして、ブルーシートの取付工事に関する契約締結に際しまして、法令で定める事項が記載されていない不備書面を交付するなどした事案で、被疑者四名を特定商取引に関する法律違反により逮捕したところでございます。
今後とも引き続き、この種事犯に対しまして厳正な取締りを行うなど、被災された方々の不安を解消し、安全、安心の確保を積極的に図ってまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
今言っていただいたブルーシートの訪問販売といいますか押売というか、昨年二月、三月と報道されたと思っています。
今回私が取り上げたいわゆる火事場泥棒は、今回の能登半島地震だけでなく、過去の東日本大震災や熊本地震、大規模な自然災害のたびに発生しております。本当に今、怒りを抑え込んで質問させていただいておりますけれども、弱ったところに追い打ちをかける窃盗や空き巣というものは本当に許してはならないと思いますし、国民の多くの方がこの心情をお持ちでないかというふうに思います。
窃盗犯罪を許さないという抑止の観点からは、例えば震災発生地における窃盗罪等の法定刑を引き上げるなどといった検討もされていいのではないかと考えますが、見解をお聞きします。
○鈴木国務大臣 被災地で、ある意味そうした非常に厳しいところに便乗してのそうした窃盗等の犯罪、これは断じて許せないものだ、そういった感情について私も大いに共感をするところでありますし、これはしっかりと対応していく必要があると思っております。
そういった中で、厳正に対処すべきということの中で申し上げたときに、今の現行刑法において、窃盗罪、これは十年以下の懲役ということになっています。これは重い刑ということであろうと思いますけれども、そういったところに加えて、今御指摘のような窃盗の加重類型、これを新設するかどうか、この議論においても幾つかのポイントが恐らくあるんだろうと思います。
例えば、具体的にどのような行為を切り出してその検討の対象とするのか。実際にそうした犯罪の中でも、先ほどおっしゃったような例えば外国人によるもの、あるいは外の地域から来ているもの、これは本当に、そういった極めて悪質な事案もあります。同時に、ただ、犯人自身が被災者であって、あるいは被災による困窮の末といったようなことも当然そこにはあることも想定はされます。そういった中で、どのような行為をその対象にするのかというのは、一つ考えていかなくてはいけないポイントだろうと思います。
また同時に、例えば、その対象地域、これをどのように設定をするのか、これも恐らく、検討する中では大きな課題になるんだろうと思います。
同時に、先ほど十年以下の懲役ということで申し上げましたけれども、現行、実際にそれぞれの案件で申し上げると、現行法の法定刑、すなわち十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金ということでありますけれども、そこで賄えない案件が実際にどのぐらいあるかというと、例えば、地裁の通常第一審における窃盗犯による懲役刑科刑の状況という、これは一般的な話でありますけれども、そこでいっても、やはり十年以下七年超というものは極めて限られている状況もあります。そういった様々な観点から、その要否についても、やはりこれはそういった慎重な検討をきちんとしていく必要があると思います。
まさに今申し上げましたような観点からの検討、これをしていく、その結果というものをしっかりと我々としては考えていかなくてはいけないと思っております。ただ、いずれにしても、検察当局においては、被災者の方々の窮状に乗じて及ぶなど悪質と認められる事案については、厳正に対処をしてきているものと私も承知をしております。
○小竹委員 ありがとうございます。
今御説明いただいたとおりの事情だとは思いますが、実際には、量刑の範囲内でこれを、特別刑のようなものをつくっていくというところは十分理解できるところではございますが、初犯の窃盗など、こういった刑量が軽くなりやすいという事情もございます。
今、エリアについて判断が難しいということもおっしゃられましたけれども、例えば、昨年閣議決定された石川県地域福祉推進支援特例給付金に関しては、はっきりと能登地域の六市町に限定をして支援をしているわけであって、例えば、今回の件におきましては、この六市町の中で起きた事案に対しては悪質性が高いというような判断もすることも可能だと思います。
こういったことも様々な見方ができますので、これからも、まず第一に被災者の安全、安心というところを努めていただきたいと思いますし、いわゆる窃盗罪の扱いになると言いましたが、例えば、自宅を離れている現状で精神的に弱っているところに窃盗をして、更に精神面としてダメージを与えられたということに関しては、体調が物すごく悪くなってしまうとか、そういう生理的機能も害するようなことにもつながってくるという可能性が高いと判断ができれば、精神的苦痛を与えたという意味での傷害罪なども見方によっては考えられるのではないかというふうに感じますので。
是非、この能登の件において、能登の方は本当に優しい方が多いので我慢強くされていますけれども、ここに甘えることなく、政治が責任をしっかり持って、まず防犯面の、パトロールなどの防犯面と、法定刑の引上げなども、様々な面で今後の対策に当たっていただきたいというふうに感じております。
次は、ちょっとSNSの規制と表現の自由に関して質問をいたします。
今回の話に関連しますが、今回の能登地震の発災直後、SNS上で、外国人系窃盗団が能登に集結しているかのような偽情報が拡散されました。X上で根拠のない情報が一週間で四百万回以上閲覧されたり、ほかにも、外国人による炊き出しを怪しいと疑ったり、井戸で水を飲む際は毒に気をつけてなど、関東大震災時の朝鮮人虐殺のきっかけになったようなデマもほうふつとされるような悪質な投稿も見受けられております。結果として、どれも事実に基づかないものでございました。
今回のみならず、SNS時代のこの有事の偽情報拡散について、また、今回のような特定の人たちを名指しするような偽情報が拡散されたことについてどのように認識しておられるか、また、発信側、そして受信側の意識として何が重要と考えられるか、お答えください。
○杉浦政府参考人 お答えいたします。
震災等の大きな災害の発生時におきまして、不確かな情報に基づき、他人を不当に取り扱ったり、偏見や差別を助長するような情報を発信したりするなどの行動を取ることは、重大な人権侵害になり得るだけでなく、避難や復興の妨げにもなりかねないものと認識しております。
こうした事態を防ぐためには、情報の発信者や受信者の一人一人が、正しい情報と冷静な判断に基づきまして、思いやりの心を持った行動を取ることが必要であると考えております。
そのような考えの下、法務省の人権擁護機関では、インターネット利用者等に対して、人権やインターネットの安全な利用に関する理解等を深めるため、啓発動画の配信や啓発冊子の配布など、各種人権啓発活動に取り組んでいるところでございます。
今後も、こうした取組を通じ、災害発生時も含めたインターネット上の人権侵害の予防に努めてまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
まさに、これに関しては、規制のしようも現実問題難しくて、まずはリテラシーの向上によるそれぞれの自己防衛というところから始めなければならないというふうに考えております。
ただ、現実、ネットの誹謗中傷によって追い詰められる方がいたり、根も葉もないようなうわさが、虚像ばかりが大きくなって、最近ではもう何を信じればいいのか私自身も分からなくなるような、そういった事案が多発しているのが昨今だと思います。表現の自由を確保しつつも、余りにも個別の事案に対して度が過ぎている場合によっては一定のチェックが必要だ、そういうふうにも考えます。
次に、参考資料の二を御覧ください。
自民党は選挙のSNS規制へ検討を進めているという報道が先日ございました。私は、このような規制に対してまず反対ですし、結果として余りうまくいかないというふうに思っています。
現行でも、SNSの規制ではありませんが、選挙活動なのか政党支部の活動なのか、皆様、様々な工夫をして、うまく抜け道を探していると存じます。ネットのよさというのは、何でもありなところが、ある意味、よさでもあると思います。それはもちろん、いい面、悪い面、両方あります。
自民党が今回検討項目に挙げているSNSの規制に関して、憲法の表現の自由の違反に当たるのではないかと私は考えますし、先ほども申したとおり、発信側ではなくて、受け手が成長する必要があるのじゃないかというふうに感じますが、大臣個人の見解を是非お教えいただきたいと思います。
○鈴木国務大臣 今お尋ねの点でありますけれども、それぞれの政党における様々な議論について、私の、大臣の立場で何らか申し上げることは控えたいと思います。
そして、同時に、政治活動あるいは選挙活動の在り方についての問題について、まさに法務省の所管ということではないという事柄上、また同時に、選挙制度の根幹に関わる事柄でありますので、これは各党各会派において是非議論をいただきたいというふうに考えているところでございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
ネット選挙が導入されて十二年たちますが、こういったところによって、今回、こういうSNSの規制の案ですが検討がされているということに関しては、本当にすごく怖く思いますし、例えば、検討案の中には偽情報、誤情報に対して取締りなども考えられているような話もお伺いしましたが、これはそもそも誰がファクトチェックをするのでしょうか。もし行政が行うのであれば、これは本当に言論統制に捉えられかねないというふうに思いますし、それこそ本当に、民主主義の根幹である選挙というところを、一人一人の意思が公正かつ適正に反映される選挙を第一に取り組んでいただきたいというふうに考えております。
次のテーマに移ります。次は、共同親権について質問させていただきます。
昨年五月に、共同親権を含む民法改正が成立、公布されました。公布から二年以内に施行予定とのことです。
日本は、先進国で唯一、単独親権制が取られてきました。その結果、離婚後、親子が会えないことが当然視されている現状がございます。令和三年度全国一人親家庭調査によりますと、子のいる離婚世帯の七割が離婚後に親子の交流がないとしています。
また、子供の連れ去りが深刻化しており、日本はハーグ条約締結国として国際的にも非難されている面が存在します。もちろん、虐待、DV被害のケースは除きます。
こうしたことも踏まえて今回の法改正につながったこと、父母の親権や婚姻の有無にかかわらず子供を養育する責務を負うことなどが明確化されたことは評価しております。
大臣に改めてお伺いしますが、今回の民法改正の一番の目的は何でしょうか。
○鈴木国務大臣 今回の令和六年民法等一部を改正する法律でありますけれども、一番のその趣旨というかポイントというのは、やはり何といっても子の利益の観点ということだろうと思います。
父母の離婚後の子の養育の在り方、まさにこれは、子の生活の安定であったり、あるいは心身の成長に直結をする問題であります。そういった観点から、子の利益の観点から、大変重要な課題であります。また、父母の離婚に直面する子の利益の確保のためには、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすということが重要と考えております。
今回の改正法、まさにそういった意味で、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響であり、あるいは、子の養育の在り方の多様化等の社会情勢の変化に鑑みて、子の利益を確保するためにこの規定の見直しを行ったものであります。
○小竹委員 ありがとうございます。
大臣の言っていただいたとおり、心身の安定に直結するというのは、私も、一番には、子供たちのためにこの法律があってほしい、そういうふうに思っています。
共同親権、共同養育で育った子は、子の精神的幸福を示す自己肯定感や他者に対する信頼感などが、単独養育で育った子と比べ良好な傾向にあるというのは、海外の研究でも明らかになっています。
様々なポジティブな要素がある一方、一番難しい判断になるであろうポイントが、DVや虐待被害に対してだと思います。親権がスムーズに決まらず、調停による判断が必要となった際のこのDVや虐待のおそれに関しては、どのような観点で判断されることになるんでしょうか。見解をお聞きします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
令和六年改正後の民法第八百十九条七項には、おそれという言葉が出てまいります。父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれ、あるいは、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力等を受けるおそれという要件でございます。これらは、具体的な状況に照らして、そのような害悪や暴力等を及ぼす可能性があることを意味しております。
このおそれについては、裁判所において、個別の事案ごとに、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とが総合的に考慮されて判断されることとなると考えておりますが、どのような場合に御指摘のおそれがあるかについて、当事者の方々等に適切に理解していただくことが非常に重要になってまいります。
そこで、現在、関係府省庁等の協力も得ながら、抽象的な条文の解説にとどまらず、本改正法の法案審議において御質問いただいた点等を中心に、具体的に問題となる場面を想定したQアンドA形式の資料の作成を進めているところであります。引き続き、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
余りにも抽象的にならざるを得ない部分も多少あるかと思いますが、今回、QアンドAを積み上げていって、これから様々な、ある程度の指針といいますか、具体的な目安が見えてくるのかなというふうに思っています。
例えば、通告した個別の事案について、ちょっと時間の関係でお聞きしませんが、共同親権でスタートしたものの、単独親権になる際、子が幼少で子供の自己主張をできない場合など、子の利益と親の意向というのは、どのような観点で、バランスで判断されるのか、判断基準はございますでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の親権者変更の申立てでございますが、令和六年改正後の民法第八百十九条六項によりまして、子の利益のため必要があるという場合に認められるものであります。
そこで、同条の第七項では、家庭裁判所が離婚後の親権者の変更を裁判するに当たって、子の利益のため、父母と子との関係や、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととしておりまして、その際、家庭裁判所は、家庭裁判所調査官の調査等によりまして、子の意思を把握するよう努めなければならないということにされております。
家庭裁判所において、幼少である子の意思を把握する場合には、例えば、必要に応じて、家庭裁判所調査官が家庭訪問や子との面接を行うことですとか、あるいは、子のふだんの様子を見ている父母あるいは保育所、学校の職員等の陳述を聴取したりするなどして、子の意向や心情の把握に努めているものと承知をしております。
委員御指摘の養育についての親の意向でございますが、同条、八百十九条の六項及び七項の、子の利益の判断に係る一つの事情として考慮されることになるものと考えられます。
○小竹委員 ありがとうございます。
今いただいたように、家庭に行ったり、また違うところに尋ねたり、様々な要素を勘案して子の利益というのを判断されるということだと思いますが、同時に、かなりの労力もかかることとなってくると思います。
そこに関して、続いて、調停制度のキャパシティーが足りているのかということについてお聞きいたします。
今度、法務委員会で取り扱うであろう裁判所定員法の一部を改正する法律案の中では、家庭裁判所調査官を五名、裁判所事務官を九名増やす等のことでしたが、先ほどの答弁から、かなり難しい判断が求められ、そして労力も同時にかかってくるというふうに思いますが、今回の法改正によって、家庭裁判所は様々な多様な判断が求められることと思います。裁判官、家事調停官、家庭裁判所調査官等、裁判所職員は十分に確保されているのでしょうか。
○小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
裁判所といたしましては、期待される役割をしっかりと果たしていくためにも、施行に向けましてまずは適切な審理運用の在り方を検討していくことが重要だというふうに考えており、こうした適切な審理運用の在り方に見合った体制の整備に努めていく必要があるというふうに考えております。
これらの検討等の中心になる裁判官につきましては、これまで着実に増員をしてきたところでございます。司法制度改革以降の平成十四年から令和二年までの間に相当数を増員するなど、着実に体制を充実させてきたところであります。
また、家裁調査官につきましても、事件動向や事件処理状況等を踏まえて必要な体制整備に努めてきたところでありますが、令和七年度におきましては、今回の検討等を一層加速させていくなどのため、五人の増員をお願いしているところでございます。さらに、家事調停官につきましても、これまでも増員に努めてきたところでございますし、引き続き増員に努めているところでございます。
一方で、近年の裁判所全体の事件動向につきましては、成年後見関係事件などの一部の事件を除きまして落ち着いた状況が続いており、民事訴訟あるいは刑事訴訟事件につきましては、長期的に見て減少の傾向にあります。また、少年保護事件につきましても、大幅に減少の傾向にあるところであります。
このような状況を踏まえますと、令和七年度につきましては、これまでの増員分を活用するなどして、審理運営の改善、工夫等も引き続き行うことで、改正家族法の施行に向けた円滑な検討、準備を含め、家庭裁判所の紛争解決能力の一層の改善、向上を図ることができるものと考えておりますが、引き続き、各種の検討、準備の状況を注視しながら、適切な審理運用の在り方に見合った体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
今の五人、九人というのが果たして本当に適正なのかというところが、これからの運用もしてまた再検討ということだと思いますが、私は少ないのではないかというふうに感じております。また、裁判官の質の向上も更に求められる、本当に難しい現状だと思います。ここに関しては引き続き取り組んでいただきたいというふうに思います。
また、ちょっと最後にですが、親子交流についても質問したいと思います。
近年、調停の申立てなどが増加している親子交流ですが、子供の成長にとって重要とされているものの、実際には親子交流が実施されていない実例も多く存在します。
法務省のホームページによりますと、親子交流を支援する団体は令和七年二月時点で全国で僅か六十四団体にすぎず、公的補助もかなり乏しいことから、活動の多くをボランティアが支えています。民間任せにするのではなくて、国がしっかりと予算をつけて、適正な親子交流を推進する上での体制整備をする必要があると考えますが、大臣の見解をお伺いします。
○西村委員長 時間が来ていますので、簡潔答弁でお願いします。
○鈴木国務大臣 適切な形での安全、安心な親子交流は、子の利益の観点から極めて大事、重要だと考えております。
当然、ここのことについては、まずは、父母間の協議又は家庭裁判所における調停等の適切な取決めに基づいて行われるのが理想だと思っておりますが、支援を必要とされている方がいるのも御指摘のとおりでありますので、これからもしっかり適切に進めてまいりたいと思っております。
○小竹委員 まずは、子の利益を第一に頑張っていただきたいと思います。
質問を終わります。ありがとうございました。
○西村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時二十四分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○西村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。本村伸子さん。
○本村委員 日本共産党、本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
選択的夫婦別姓について質問させていただきます。
名字と名前がセットの氏名は、人格権、人権の問題です。そのことは最高裁の判決の中でも明確になっているというふうに考えます。一九八八年二月十六日の最高裁の氏名に関する判決を御紹介いただきたいと思います。理由の二行目「氏名は、」から四行目「というべきである」まで御紹介をいただきたいと思います。
○福田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分を読み上げさせていただきます。
「氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であつて、人格権の一内容を構成するものというべきである」、このように記載されております。
○本村委員 今の最高裁の判決のように、名字と名前がセットの氏名は、人が個人として尊重される基礎、その個人の人格の象徴、人格権の一内容を構成するものと指摘をされています。名前だけよりも、名字だけよりも、高度に個人を識別する機能を持っているのが氏名です。
名字と名前は、個人にとって別々のものではなく、一体のものだというふうに考えますけれども、大臣の御認識を伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 今御指摘ありました昭和六十三年の最高裁判決、これは氏名を正確に呼称される利益に関する判断を示したものと承知をしておりますが、氏と名について、夫婦同氏制度が合憲であると判断した平成二十七年の最高裁判決においては、氏が、名と相まって、個人を他人から識別し特定する機能を有するほか、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格を一体として示すものであるとされていると同時に、他方で、氏に、名と同様に個人の呼称としての意義があるものの、名とは切り離された存在として、夫婦及びその間の未婚の子や養親子が同一の氏を称するとすることにより、社会の構成要素である家族の呼称としての意義があると判示をされていると承知をしているところであります。
○本村委員 個人にとって、名字と名前がセットである氏名は、名字だけよりも、そして名前だけよりも、より高度な個人識別機能を持っておりますし、人が個人として尊重される基礎であると。
二〇一五年の最高裁の判決も言われましたけれども、そこでは、名字だけを取り出して多数派意見は書かれているわけです。名字と名前がセットである氏名に関する人格権の議論は土俵の外に置かれてしまっているのが、二〇一五年の最高裁判決だというふうに思います。
二〇一五年の最高裁判決は、家族の呼称として合理性があるですとか、強制されるというものではないというふうに言いますけれども、生まれ持った名字と名前で生きたいと思う方々にとっては、夫婦同じ名字は、そうやって自分の生まれ持った名前で生きたいと思っている方々にとっては、夫婦同じ名字ということを強いることは真の同意とは言えないわけです。ですから、事実上の強制である。一方だけが人格的な不利益を被る、犠牲を強いられる、これは平等とは言えません。泣く泣く、アイデンティティーの喪失感を伴いながら、名字を変えている現実があります。その多くが、女性が背負っている。
法的な保護を受けたいなら名字を変えるように、国が迫っているわけです。あるいは、名字を変えたくないということで、事実婚で法的保護がないままに過ごしておられる方々もいらっしゃいます。
事実婚での不利益ですけれども、NPO法人のmネット・民法改正情報ネットワークの皆さんのシンポジウムの資料の中に、第二次の選択的夫婦別姓の訴訟の原告の方の資料がありましたけれども、そこには、事実婚では配偶者控除がないとか、結婚お祝い金の不支給ですとか、パートナーの生命保険の請求人になれないですとか、不妊治療の助成金の対象外ですとか、医療の同意ができない可能性もある、海外赴任の場合、パートナーは配偶者ビザを取得できないですとか、住宅を購入するときペアローンが組める金融機関が限定的で、金利が上乗せされてしまうということもある、そして法定相続人にはなれない、そして配偶者の死去後の様々な手続ができないこともあるんだと、事実婚ではこういう不利益が今はあるわけです。そこは是正するべきだというふうに思いますけれども、今あると。
カップル二人とも生まれ持った氏名で生きたいというふうに考える場合、法律婚を選んでも、事実婚を選んでも不利益があります。法律婚を選べば、自分が自分でなくなってしまう、そういう喪失感があります。そして、事実婚を選べば、法的保護がない、こういう不利益を被ることはおかしいというふうに思います。選択的夫婦別姓を実現すれば、こうした問題は解決できます。
今年三月八日の国際女性デー、私も愛知のウィメンズマーチに参加をさせていただきましたけれども、今年は特に選択的夫婦別姓を求める声が本当に大きかったんです。大臣への期待も大変大きいわけです。「あすには」の皆さんや新日本婦人の会の皆さんや個人の方々、選択的夫婦別姓を実現してほしいという女性たちの声が本当に多かったんです。
この法務委員会にも本当に大きな、西村委員長にもかなりの期待が寄せられているというふうに思いますけれども、この法務委員会への大きな期待の声が寄せられて、注目をされております。
資料をお配りをいたしましたけれども、三月八日、国際女性デーの日本経済新聞の記事です。
結婚している働く女性の半数以上が別姓を選択したかったと調査結果が出ております。生まれ持った氏名で生きたいという方は、もちろん働いている方々だけではありません。こうした願いを踏みにじっていることに関して大臣はどういうふうにお感じになっておられますでしょうか。
○鈴木国務大臣 今資料で提示をいただきましたこちらの調査結果、こちらについて、報道は承知をしておりますけれども、そのそれぞれの調査結果についてのコメントということは控えたいと思いますが、こうした様々な御意見、実際の不利益等々もある、そういったことも、私も十分承知をしております。
そういった中で、一方で逆の立場からの様々な御意見もあるのも事実でありまして、そこは、私どもとしては、この国会を中心に国民の多くの皆様方で、様々な情報も共有いただきながら、しっかりとした議論が進んでいくことを我々としては期待をしたいと思っております。
○本村委員 日本は世界最後の夫婦同姓強制国だというふうに言われております。
女性差別撤廃条約十六条では、締約国は、婚姻及び家族関係に係る全ての事項について女性に対する差別を撤廃するための全ての適当な措置を取ることとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保するというところで、夫及び妻の同一の個人的権利、姓及び職業を選択する権利を含むということで書かれておりまして、明確にこの女性差別撤廃条約十六条に反しているというふうに思います。だからこそ、女性差別撤廃条約の委員会、撤廃委員会から四回も勧告を受けているわけです。ここも真剣に受け止めていただきたいというふうに思っております。
加えて、女性差別撤廃委員会に関しまして一言申し上げておきたいのは、日本政府が一月二十九日、国連の女性差別撤廃委員会の事務を担う国連高等弁務官事務所へ毎年拠出をしている日本の任意拠出金の使途から女性差別撤廃委員会を除外する、そして二〇二四年度に予定されていた女性差別撤廃委員会の委員の訪日プログラムを見合わせるということを発表した、このことを私は撤回するべきだというふうに思っております。
勧告の内容が日本政府の意に沿わないからと拠出をやめることは、国連の人権理事会の理事国として本当に恥ずべきことだというふうに思います。そのことも強調したいと思います。
次に、先ほども議論がありましたけれども、夫婦が別の名字だと子供がかわいそうという論についてです。
まず、確認ですけれども、日本社会の中には、親と子で名字が違う、そういう子供さんは多くいらっしゃるということを、先ほども議論がありましたけれども、親と子で名字が違う子供さん、どのようなケースがあるというふうに認識をしているのか、大臣に伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 親子の間で氏が異なるケースということでありますけれども、これは例示になりますが、例えば、父母が婚姻をしていない場合、あるいは、父母が離婚してその一方が婚姻前の氏に復氏をした場合ということもありますし、あるいは、氏の継承のために例えば養子に入ったとか、そういったケースについても、親子の間で氏が異なる場合ということでいえば、挙げられるかと思います。
○本村委員 先ほどもありましたけれども、外国籍の方と日本国籍の方が結婚するケース、事実婚のケース、未婚のケース、離婚したケース、再婚したケース、こういうことで様々な、子供たちが親子で名字が違うという現実があります。
大臣は、こういう親子、子供さんに関して、名字が違うということで、かわいそうという認識なんでしょうか。
○鈴木国務大臣 これは一般論ということで申し上げることになろうかと思いますけれども、個々の御家庭で当然状況というものは違うと思います。そういった中で、選択的夫婦別氏制度の導入に反対をする意見の中では、家族が同氏となることで夫婦、家族の一体感が生まれ、子の利益にも資することを理由とするものがあるといったことも承知をしております。
ただ、今の御質問にお答えをするとすれば、それは、個々の家庭家庭で状況は異なると思っております。
○本村委員 親と子供が名字が違う子供さんは、この日本社会の中に既に多くいらっしゃいます。その子供さんをかわいそうと蔑む、侮辱する、その見方、感覚こそ問題であり、是正をされなければならないんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 もちろんそれは、感じ方というのはそれぞれあると思いますし、一概に外から、かわいそうだとかそういったことを言うつもりはありませんけれども、それは当然、個々のケースということで、恐らく違うのであろうというふうに思います。
○本村委員 家族が、親子が同姓であろうと別姓であろうと、まず前提となるのは、身体的、精神的、経済的、性的暴力を受けることなく、個人として尊重され、個人の尊厳が大切にされること、これが子供にとっての幸せの大前提だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 もちろん、その点は御指摘のとおりだと思います。
一般論ということになりますけれども、子供にとって、暴力を受けない生育環境あるいは個人の尊厳の尊重等といった事柄、これは極めて大事、重要なことであります。
○本村委員 ここのところが基礎で考えなければいけないというふうに思っております。
新日本婦人の会の皆様が選択的夫婦別姓に関するアンケートを取られ、予算委員会でも質問させていただきましたけれども、今年一月の二週間の間に三千九百七十九人の回答がありました。予算委員会で紹介したのは、三十代の方。
いろいろな場面で自分の名前を新しい姓で呼ばれることが続き、自分が自分でないような気がして、精神的に不調を来すようになりました。現在、結婚十三年になりますが、いまだに自分が夫の姓であることに違和感がありますという声を御紹介いたしました。
今日は、子供の立場からの声も書かれておりましたので、御紹介をさせていただきたいというふうに思います。二十代の方です。
私の両親は、私が生まれる前から事実婚の関係を築いていました。しかし、数年前、私が大学院に進学をする際の学費を工面するため、父が姓を変更し、法律婚を選択するという苦渋の決断をしました。この経験を通じて、私は、改めて夫婦のきずなや家族の在り方について深く考えるようになりました。世間では、選択的夫婦別姓制度に反対する理由として、夫婦が同じ姓を名のらなければ、きずなが薄まりやすいといった意見がよく聞かれます。しかし、私の両親は、事実婚の間も法律婚に移行した後も、私自身や周囲から見ても、理想的で仲のよい夫婦と評され続けています。一方で、法律婚で夫婦同姓を選んだ方々の中にも、離婚に至るケースや夫婦関係が良好ではないケースが少なからず存在します。もし、夫婦同姓が必然的にきずなを深めるものであるならば、夫婦間で深刻な対立やDV、離婚といった問題は起こらないはずです。事実、夫婦のきずなの強さや関係の質は、姓の統一といった形式的な要素よりも、お互いの信頼や尊重、コミュニケーションといった本質的要素によるものではないでしょうかというふうに言われております。
こうした意見について、大臣、どのようにお感じでしょうか。
○鈴木国務大臣 今御指摘のような、本質的な、様々なとおっしゃいましたけれども、いろいろそういったことが夫婦のきずなであったり家族のきずなということに寄与している、そういった面があるのは当然のことというか事実だろうと思います。
その一方で、家族の一体感、あるいは子供への影響などの観点から、家族の間で氏が異なり得る制度に懸念を持っていらっしゃる方がいらっしゃるのもまた事実であろうと思います。
まさにそうした双方の考え方があるのは事実でありますから、そういった中で、是非、国会を中心に、あるいは国民の幅広いところで御議論いただきたいというのが今の政府の私どもの立場でございます。
○本村委員 もうさんざん議論はずっとされ続けているわけですけれども、やはり、そうしたいろいろな疑問を払拭しなければいけないというふうに思っております。
日本弁護士連合会の皆さんの資料の中にも、選択的夫婦別姓・全国陳情アクションによる座談会の際に、両親、親子の姓が異なる家庭の子供さんから、いじめられた経験もありませんという声や、家族の一体感もあって幸せですという声、かわいそうという意見は的外れですというような声が紹介をされております。また、選択的夫婦別姓制度が導入されれば、両親、親子は同じ姓が当たり前という意識も変わっていくでしょうということも書かれております。
選択的夫婦別姓の導入は、個人の尊厳を大切にする社会への一歩ですから、このことは子供の将来にわたる幸せにつながるというふうに思いますし、カップル双方がアイデンティティーを喪失することなく、いろいろな不利益を被ることなく、一人一人の可能性を花開かせることにつながるというふうに考えます。
選択的夫婦別姓制度、ある方は、夫婦同姓、別姓選択制度と言った方が分かりやすいんじゃないかというふうにおっしゃっていましたけれども、結婚する二人どちらの思いも尊重し、個人の尊厳と本質的平等を保障する、それが選択的夫婦別姓だというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 御指摘のように、いわゆる選択的夫婦別氏制度は、現行の夫婦同氏制度に加えて、夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認めている、そういった制度でありますと承知をしております。
まさに我々として考えていかなくてはいけないことは、やはり、それぞれの一人一人がしっかりと活躍をできる、そういった社会をしっかりつくっていかなくてはいけない。そのために、当然、障害となるようなことについては解決をしていかなくてはいけないと思いますし、そういった様々な困難がある実態もあろうと思います。
ただ、先ほど来申し上げておりますように、一方で、家族の一体感、子供への影響などの観点から、夫婦の間で氏が異なり得る制度に懸念を持っていらっしゃる方がいるのもまた事実であります。必ずしも、私は、氏の問題が子供がかわいそうだという話にはならないと思いますけれども、ただ、そういった中で是非議論をいただきたい、それが我々の立場であります。
○本村委員 最高裁の判決では、選択的夫婦別姓の制度について、そのような制度に合理性がないと断ずるものじゃない、この制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべき事柄にほかならないと言うべきであるというふうに書かれております。
もう一つ、最後だけ申し上げたいんですけれども、法制審の選択的夫婦別姓制度の案は、戸籍を壊さないですよねということを確認をさせていただきたいと思います、大臣。
○西村委員長 鈴木大臣、時間が来ていますので、答弁は簡潔にお願いをいたします。
○鈴木国務大臣 戸籍ということでありますけれども、戸籍を壊すのかどうかということでありますが、戸籍については、その本質的な機能、これは真正な身分変動の登録、公証であるところでありまして、平成八年度の法制審の答申に基づく選択的夫婦別氏制度が導入された場合でも、その機能あるいは重要性が変わるものではなく、そのことによって大きな問題が生ずるものではないと考えております。
○本村委員 ありがとうございました。
個人の尊厳が何よりも大切にされる制度の実現のために、是非、委員長も、そして大臣も御尽力いただきたいということを重ねて申し上げ、質問とさせていただきます。ありがとうございました。
○西村委員長 次に、吉川里奈さん。
○吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。どうぞよろしくお願いいたします。
一昨年六月、LGBT理解増進法が成立、施行されましたが、私はこの法律の成立過程に強い疑問を抱いております。
日本では、西洋と比べ、性的指向や性自認による深刻な差別は少ないと言われ、法律がなくても不都合はない、この法律が性的少数者に対する差別を助長するという当事者の方からの反対意見もありました。にもかかわらず、G7広島サミット前に、駐日米大使の働きかけもあり、衆議院内閣委員会では僅か実質二時間程度の審議で成立いたしました。
理念法であり、新たな権利を生じさせるものではないとの答弁もありましたが、実際には、理念法を根拠に税金投入や関連施策が進む現実があります。女性スペースの問題などからも分かるように、むしろ新たな混乱や社会の分断を生んでいるのではないかと懸念をしております。多様性尊重の名の下に、生物学的な性を重視する考えも同様に尊重されるべきではないでしょうか。
今、世界では、行き過ぎた配慮を見直す動きが加速をしております。本年一月二十日に発足したトランプ政権は、バイデン前政権の政策を全面否定し、不法移民への寛容、DEIやLGBTQ政策を違法で道徳に反する性差別的プログラムと批判し、廃止する方針を示し、政府機関や民間企業にその推進を停止しております。
ここで、大臣に伺います。
アメリカでのこれらの動きを受け、日本において、LGBT理解増進法に基づき、人権擁護行政を担う法務大臣として、これらをどう受け止め、どのような対応を行っていくのかをお聞かせください。
○鈴木国務大臣 アメリカでの状況という話をされましたが、他国の内政に関わる事項ということで、その点についての直接のコメントについては控えさせていただきたいと思います。
その上で、先ほど、理解増進法の話もされました。もちろん、混乱が起こるような事態は避けていかなくてはいけなくて、そのためにも理解の増進をしっかりと図っていく、これは極めて大事なことだと思っております。
同時に、不当な差別があってはならないものとの認識の下で、法務省の人権擁護機関では各種人権啓発活動等を実施しているところでありまして、そこはしっかり適切な形で進めていけるようにと我々としては考えております。
○吉川(里)委員 また、法務局が取り扱う人権侵犯事件の統計によると、令和五年の取扱総数が九千九百七十九件のうち、性的指向や性自認に関する新規受理件数は二十六件となっております。このうち、人権侵害の認定がされ、勧告などの措置が講じられた例はございますか。
○杉浦政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、令和五年に法務省の人権擁護機関が新規に救済手続を開始した性的指向及び性自認に関する人権侵犯事件の件数は二十六件でございます。そのうち、同年中に処理をした件数は十三件ですが、人権侵犯事実を認定し、勧告等の措置を講じたものはございません。
○吉川(里)委員 人権侵犯事件の数を見ても分かるように、本当に我が国にこの法律が必要なのか、私は疑問に感じております。
LGBTや同性婚、そして、今国会で争点とされている選択的夫婦別姓は、急進的なリベラル思想に基づいて推し進められているように感じます。しかし、日本には、戸籍制度や皇室の在り方など、日本独自の伝統文化や制度があります。押しつけられた外来の価値観が果たして日本の社会に適するのか。DEIやSDGsといった概念は、世界経済フォーラムなどを通じ、多国籍企業や各国の政府に影響力を及ぼしているように見られます。これらの取組が我が国の伝統文化や国益と調和するのか、議論が必要であると考えております。
さて、選択的夫婦別姓の議論に移ります。
前回の質問では、アンケートの選択肢が二択と三択では結果が大きく異なる点を指摘し、メディアでも情報公開を訴える発言をしたところ、その影響もあったのか、最近では、マスコミで三択方式が採用される例が増えております。この傾向は、国民の意見をより適切に反映する点で望ましいと考えております。
本年二月二十二日、二十三日の産経・FNN合同世論調査では、選択的夫婦別姓を求める声が減少し、同姓を維持しつつ旧姓使用を拡大すべきという意見が過半数を占めました。国民の多くが旧姓使用の拡大を支持していることからすれば、その意見を尊重することも大切だと考えます。
令和五年三月に公表されました男女共同参画社会に関する世論調査では、夫婦の姓の在り方をめぐる議論について、考えたことがない人が過半数を占める結果が示されています。前回の質疑におきましても、大臣から、情報提供を行っていくと答弁をいただきましたし、先日の大臣所信においても、夫婦の氏の在り方について、多様な考え方があることを踏まえ、国民の間はもちろん国会でも御議論いただけるよう、情報提供を行うと述べられました。
しかしながら、法務省のウェブサイトを拝見いたしますと、QアンドAの情報も文字が中心となっており、視覚的に分かりやすい資料が不足していると考えます。これでは国民に対する情報提供が不十分なのではないかと考えますが、今後、どのように改善をするお考えがあるのか、大臣に伺います。
○鈴木国務大臣 この別氏をめぐる議論でありますけれども、やはり、例えば通称使用とおっしゃる方、拡大をおっしゃる方の中でも、様々な恐らく御意見があって、いろいろな論点があります。同時に、選択的夫婦別氏とおっしゃる方でも同様だと思います。
そういった中で、やはり、しっかりとした議論を進めていただくために、何が問題であるのか、あるいは、どういった課題解決の方法があるのか、そういったことをしっかり議論いただくためにも、おっしゃるように、情報提供は極めて大事だと思っています。
その中で、今、ホームページについて、なかなか分かりづらいではないか、そういった御指摘をいただきました。
我々としても、しっかり改めるべき点は改めていきたいと思いますし、何より、国民の皆さんに幅広くこの議論をしていただくための環境整備、それは我々としても責務だろうと思っておりますので、改めるべきところはしっかり改めていきたいと思います。
○吉川(里)委員 ありがとうございます。
実際、十二月以降、情報発信に関して、法務省として具体的に何かブラッシュアップされたものがあるのか、お聞かせください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
従前より、ホームページにおきましては、平成八年の法制審議会の答申の内容ですとか検討の経過、それから、我が国における氏の制度の歴史、平成二十七年及び令和三年の最高裁判所大法廷の判断、あるいは、内閣府において令和三年に行われた世論調査の結果などを紹介しておるところでございましたが、さらに、ホームページにおきましては、令和三年に行われた世論調査の結果をまとめたグラフですとか、それから、内閣府大臣官房政府広報室ホームページのリンク、あるいは、現行法や、選択的夫婦別氏制度に対応する戸籍の記載例を掲載するなどをしておるところでございます。
○吉川(里)委員 選択的夫婦別姓と検索をしますと、一番上位に法務省のサイトが表示されます。しかし、実際サイトを開いても、先に進んで見てみようというふうに思えないような状況があります。これは法務省にかかわらないのではありますが、ネットを通じて、世界中、どこでも誰でも情報が手に入る世の中にもかかわらず、非常に分かりにくいところが多いというふうに考えます。いろいろとサイトをクリックしていっても、一般の国民がエクセルの数値やデータを見て内容評価は難しく、ホームページに書いてあります、情報公開していますという姿勢では不十分であると考えますので、引き続き、情報発信について行っていただきたいと思います。
というのも、総理は、余り時間が残っていないというふうに発言をされていました。ですので、このように、国民に十分な情報提供がなされないまま、時の政権の権力により、この審議が推し進められることに強い懸念を抱いておりますので、法務省にかかわらず、内閣府であったり、あるいは文部科学省、こども家庭庁であったり、各省庁が連携し、より効率的で合理的な情報発信を行っていただきたいと思います。
さて、国民の間で議論を促すには、当事者である若年層の考え方や影響を適切に把握することが重要かと考えます。子供の意向や心理的影響について、子供を対象にしたアンケートを含め、政府として実態把握をする調査を行うべきではないかと考えますが、法務大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 今御指摘の令和四年三月のこの調査については、全国十八歳以上の日本国籍を有する者を対象として行われたものでありまして、十八歳未満の者はその対象には含まれていなかったものであります。
民間の調査等々もありますので、そういったものも当然我々としては参考にしていきたいと思っておりますけれども、また同時に、我々法務省といたしましても、年齢等を問わずに、やはり幅広い層の国民の皆様方の御意見を注視していく必要はあると思っておりますので、お尋ねの子供の意向であったり、あるいは心理的影響の観点も含めて、国民意識の動向を適切に把握していくための調査の在り方、これは不断に検討していく必要があると考えております。
○吉川(里)委員 是非、親のアイデンティティーを守るという主張の妥当性を検証するためにも、子供のアイデンティティーについても実態を把握していただきたいと思っております。
最後に、旧姓の通称使用拡大では不十分である理由として、海外では旧姓の併記が通用しにくい、又はトラブルの原因になると指摘があります。パスポートも、日本のパスポートでは旧姓の併記が既に可能であり、外務省でも、海外での対応として英文の説明書を発行しているということですけれども、実際、在外公館から、旧姓併記のパスポートが原因で入国できなかったなどの具体的なトラブルは生じておりますでしょうか。外務省に確認いたします。
○町田政府参考人 旅券の旧姓併記でございますけれども、令和の三年から、括弧書きで印字された旧姓の上に旧姓、サーネームの記載をつけ加える、あるいは、旧姓併記の旅券を所持した方が出入国の現場で説明を求められた際に御活用いただけるよう、英文つきの別名併記リーフレットなどを配布しております。
委員お尋ねの海外のトラブルでございますけれども、旧姓併記を分かりやすくした令和三年四月以降、これまでのところ、在外公館からの報告事例はございません。
○吉川(里)委員 様々な、現行の制度でいろいろと不都合が生じておられる方もいらっしゃるかと思いますけれども、現行の制度は、婚姻時に夫婦どちらかの氏を協議の上、自由に選択することができる選択的夫婦同姓であります。また、最高裁判決においても、氏は家族の呼称として意義あるものだと。社会全体で育んでいくべきものは、日本の宝である子供たちの権利であります。かつては当たり前だった家族の価値観や社会の最小単位である家族の在り方をわざわざばらばらにする必要はないと私は考えます。
同じ意見の人の声を聞くことだけが政治家の仕事ではありません。大きな声だけを拾い集めるのではなく、全ての国民のしっかりと意見を聞いていただいて議論をいただいていくこと、そして、守るべきものは日本の国益であるということを主張いたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、島田洋一さん。
○島田(洋)委員 日本保守党の島田です。
まず、難民認定制度に関してお伺いします。
去る二月二十七日に、大阪高裁において非常に重要な判決が出ました。簡単に経緯を述べると、北アフリカのチュニジア出身の男性が、自分がホモセクシュアルだという理由で、母国に帰ると迫害を受けるおそれがある、難民認定してほしいと申請したわけですよね。それに対して、国、入管庁は、この男性はホモセクシュアルであるという理由で家族から暴力を受けたと主張しているけれども、国、政府から迫害を受けたという証拠は認められない、したがって難民認定できないという判断をしたわけですけれども、それに対して男性が裁判に訴えて、一審の大阪地裁は、国の難民不認定は取り消せ、また、難民認定しろという判決を下して、それに対して国が控訴して、その控訴審の判決が先月の二十七日に出て、男性の言い分を認めて国側の控訴棄却ということになったわけですね。
言うまでもなく、LGBT、性的少数者であるという理由で差別や迫害がなされてはならないと、言うまでもないことですけれども、一方で、日本に行って、私はLGBTで迫害のおそれがあるんだと言えば難民認定してもらえるとなれば、潜在的には何億人という人が日本に押しかけてきかねない、その中には偽装LGBT難民も含まれるでしょう、そうなると、日本の出入国在留管理制度は崩壊するということになりかねない。
大臣は、この大阪地裁、高裁の判断に納得しておられるのか。この上告の期限が、あしたですね、あしたが期限です、上告されますか。
○鈴木国務大臣 今お尋ねの判決でありますけれども、そもそも、私どもとしては、LGBTであることのみを理由にチュニジア政府による迫害を受けるおそれがあるとは認められないということであり、あるいは、家族から迫害を受けているということに疑問があり、仮にこの点をおいたとしても、国籍国の保護であるチュニジアの保護を受けることができないとは認められないということで、控訴をしたところでありました。
お尋ねの判決、国の、私どもの主張が認められなかったということであります。先ほど、明日が上訴期限ということをおっしゃいましたけれども、現在、判決の内容を精査をいたしまして、上告又は上告受理申立ての理由があるのかどうか、そこについて、これは当然最高裁への上告ということになりますので、そこの理由があるかどうかについて慎重に検討しているところでありまして、上訴期限である明日の三月十三日木曜日までに適切に対応してまいりたいと考えております。
○島田(洋)委員 これは結構、世界から注目されていますから、難民認定に関する法務行政の立場というのを明確にする意味でも、私は、上告して、しっかり議論してもらいたいと思っています。
この男性のチュニジアという国は、これは、アフリカはたくさん国がありますけれども、その中で、三つの国だけ日本はビザ免除しています、その一つがチュニジアなんですよね、あとはモーリシャスとレソトですけれども。ビザ免除しているということは、相対的に見て信頼できる国だという判断があるからでしょう。その信頼できるチュニジアから、チュニジア政府のパスポートの発給を受けて、航空券も買えて、そして空港から何の問題もなく日本に来れている。私はこの段階で、難民と認定すべきじゃないという外形的な条件が全部そろっていると思うんです。
そして、チュニジアという日本がビザ免除している国の国民を難民認定したとなると、これは日本とチュニジアとの外交関係にも悪影響が及びかねないと思いますが、この辺り、外務省の判断、お聞きしたいと思います。
○三宅政府参考人 お答え申し上げます。
難民認定申請がなされた場合は、法務省において、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定していると承知しております。
こうした個別の事案が二国間の外交関係に影響を与えるとは考えてはおりません。
○島田(洋)委員 ついでに言うと、クルド系の方々の、要するに、実質的には出稼ぎなのに、難民申請を繰り返して滞在期間を延ばしている、これも問題になっていますけれども、トルコもビザ免除国なんですよね。私はやはり、これは、外務省と法務省がもっと連携して、その辺りの対処を考えるべきじゃないかと思います。
この、LGBT難民と一応言っておきますけれども、これはちょうど二年前には、ウガンダ人のレズビアンだという女性に関して同じような判決があったんですけれども、これは、大阪地裁において、このウガンダ人の女性はレズビアンで迫害を受けているというんですが、国側の主張は、ウガンダ刑法には自然の摂理に反する性交渉は違法だという項目があるけれども、実際、それで有罪になった人はいない、また、反同性愛法というのが二〇一四年にできているんだけれども、これはウガンダの憲法裁判所が違憲判決を下して、再びこういうものが作られる余地もない、かつ、ウガンダでは、LGBTデモが行われている、それを警察が保護している、そういう実態があるから、この方は難民に当たらないということを国側が主張した。私は、これは合理的な主張だと思います。
ところが、大阪地裁では、このウガンダ人女性に関して難民認定しろという判決が下された。問題は、控訴しなかったんですよね、法務省は。当時は齋藤健法務大臣ですけれども、この大阪地裁の判決が納得できるものだと思ったから控訴しなかったんですか。
○鈴木国務大臣 お尋ねの判決でありますけれども、これも国の主張が認められなかったものと承知をしております。
個別の敗訴判決について、控訴をしなかった理由の詳細については、将来の同種の訴訟に与える影響に鑑み、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、本国の情勢や原告の個別事情等を慎重に検討した上で、控訴をしないという判断を行ったものと承知をしているところであります。
○島田(洋)委員 今の答弁、納得できませんが、ちょっと時間の関係もあるので。
ともかく、LGBT偽装難民がどんどん押し寄せるという事態を防ぐために、是非、今回のケース、チュニジアのケースですね、上告してしっかり議論してもらいたい。これは法務大臣に強く要請しておきます。
次の問題として、大臣の所信の中で、北朝鮮による日本人拉致問題に関して、関連情報の収集、分析を進めるというのがありました。ところが、我が国の外交に関して重大な情報欠落があるわけですね。
これは、私、最近質問主意書で明確にしましたけれども、つまり、小泉第一次訪朝の直前に田中均当時の外務省の局長が北朝鮮で行った極めて重要な二回の交渉の記録が欠落している。これは、初めて日本政府が、ありませんということを認めました。これはとんでもない話ですね。後任に引継ぎもできませんし、一体何を合意したのか、変な裏合意をしたんじゃないか、そういう疑惑を持たれても仕方がない。
この田中均さんというのは、石破首相のブレーンですよね。石破さんが主張している連絡事務所を設置して、いわゆる日朝合同調査なるものをして、そして、類推できるところでは、北朝鮮も誠実に協力してくれて調査しました、その結果、残念ながら皆さん亡くなっていた、残念だけれども、日朝国交正常化という名前で利権正常化を進める、私の言い方によればですね、という方向に行くんじゃないかと。拉致被害者家族会の人たちなんかも非常に心配しているわけですが。
これはまず外務省に聞きますけれども、その重要な交渉記録二回がないというのは、これはそもそも、作るなと田中均局長が命じたのか、作ったものを破棄したのか、それとも誰かが持ち去ったのか、どういうことなんでしょうか。
○門脇政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の、当時、安倍総理あるいは岸田外務大臣が国会で存在しないと答弁した日朝交渉の記録が存在しない理由については、当時、平成二十八年当時ですけれども、岸田外務大臣が国会で答弁しておりますけれども、分かりかねますということでございます。
○島田(洋)委員 これは、分かりかねますでは話にならないんですよ。外務省の中のことでしょう。では、田中均さんはまだ存命なんだから、まず田中氏、それから彼の部下であった平松さん、その辺りの人に聞くべきじゃないんですか。
ところが、ごく最近、岩屋外務大臣に対して産経新聞社の記者が質問しました、私の質問主意書を受けて。その交渉記録がないということがはっきりしたんだから、一体、何でないのか、破棄したのか、持ち去ったのか、岩屋外相が田中均氏に事情聴取すべきでしょう、こういう質問をしたところ、岩屋氏は、いや、事情聴取するつもりはないと答えているんですよね。一体どういうことなのか。
大臣、鈴木大臣も、今後、司法外交を一層強力に展開しますと所信で言っておられましたけれども、その司法外交を担当する実務レベルの局長あたりが交渉記録を作っていない、大臣が見せろと言っても、ありません、こういう状態を大臣は許しますか。
○鈴木国務大臣 法務省においてということになりますけれども、公文書管理法等の関係法令に基づき、職員が外国当局とした協議について記録する文書を適切に作成、保存をさせております。
○島田(洋)委員 では、時間が来たので。
これは大臣からも、やはり法務省としても、日本人の拉致問題に関して様々情報を収集すると言う以上は、重要な話合い、何が行われたのか把握しておく必要があるでしょう。だから、岩屋外務大臣に対して、はっきり、聴取すべきものは聴取するとか、要請してくださいよ。
○鈴木国務大臣 私どもとして、これは内閣としてもでありますけれども、拉致、核、ミサイル、なかんずく拉致の問題は、主権の明らかな侵害であります。そういった中で、これは最重要課題でありますので、当然、どういった形で私どもがその情報収集を行っているかということはなかなかこの場で申し述べることはできませんけれども、政府全体としてしっかりとした対応を進めていきたいと思います。
○島田(洋)委員 それでは終わります。どうも。
○西村委員長 次に、津島淳さん。
○津島委員 自由民主党の津島淳でございます。
本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
昨日三月十一日で、東日本大震災発災から十四年ということになりました。震災、そしてその後の災害で犠牲になられた方への鎮魂の祈りと、そして復興への決意を胸に質問を進めてまいりたいと存じます。
東日本大震災では、宮城県女川町と南三陸町及び岩手県陸前高田市と大槌町で戸籍データが滅失いたしました。被災自治体による自力でのデータ復元というのは極めて困難な状況でありましたので、法務局がデータを提供し、復元されたということがございました。
現在、我が国では、千島海溝地震、南海トラフ地震、首都直下地震といった大規模地震及び津波の発生が高い確率で予想されております。そこで、災害での滅失に備え、戸籍抄本や登記のデータなど、民事情報のバックアップをしっかり強化する必要があると思うんです。これまでの災害を教訓として、今いかなることに取り組んでおられるか、民事局長にお答えいただきたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、国民の身分関係や財産に関する戸籍や登記といった民事情報が災害により失われる影響は甚大でありますことから、法務省では、これらの情報を取り扱うシステムについて遠隔地でバックアップを保管しておりまして、被災時にデータを復旧することができる体制を整えております。
例えば、戸籍に関しては、東日本大震災において、市町村が管理する戸籍の正本と管轄法務局が保管する副本とが同時に滅失する危険が生じた経験を踏まえまして、法務省が構築した戸籍情報連携システムにより、全国の市区町村の副本データを保管することとしております。そして、戸籍情報連携システムは、東日本と西日本のそれぞれにサーバーを設置しておりまして、一方の地域が被災した場合であっても、もう一方の地域のサーバーが保管しているデータに基づいて復旧することを可能としております。
○津島委員 ありがとうございます。
今、民事局長がおっしゃられたことは、やはり、自治体において平時から共有されていることが私は肝腎だと思っています。有事というのは、突然やってくるんじゃなくて、平時の延長線上に突如としてやってくるもので、よって、平時においてそういう認識を持っていること、何か事が起きたときには速やかにデータの復元をお願いするということに思いが至るようにしていただきたいと思いますので、周知の方をしっかりとお願いをいたします。
もう一問、災害対策に絡んで質問させていただきます。
水などの基幹インフラの復旧や復興推進のための整地に取り組む際に、全壊、半壊家屋の撤去の遅れが支障になることが指摘されております。
能登半島地震、現在、石川県などの法務局で、公費解体を進めるために、倒壊家屋などの職権による滅失登記を進められていると承知をしております。
東日本大震災、まだ福島県は復興途上であります。そして、能登半島地震及び奥能登豪雨の被災地の復興のため、職権滅失登記を推進と大臣所信にございますが、今の取組、現状と、これからの推進に係る決意を是非大臣にお願いいたします。
○鈴木国務大臣 今、津島委員御指摘の職権滅失登記の件でありますけれども、法務局では、被災地の負担軽減のために、災害により滅失した建物につきまして、登記官による職権滅失登記を実施をしております。御指摘のような東日本大震災、あるいは熊本地震、さらには能登半島地震においても、この職権滅失登記を行ってきたところであります。
令和六年について申し上げれば、能登半島地震さらには奥能登豪雨の被災地において、公費解体、今お話ございましたけれども、この円滑化を進めるために職権滅失登記を推進をしているところでありまして、輪島朝市の焼失エリアにおいて、輪島市の協力を得て、二百六十四棟の職権滅失登記を速やかに実施をするなどして、公費解体の迅速化に寄与したものと承知をしております。そして、既に公費解体がされた建物についても、地元自治体と連携をして、職権滅失登記に鋭意取り組んでいるところであります。
法務省といたしましては、被災地さらには被災者の皆様方に寄り添って、一日も早い復旧復興につながるよう、引き続き必要な取組をしっかり進めてまいりたいと思いますし、また、様々な今後起こり得る災害の際にも、そこについてはしっかりと迅速に対応を進めていきたいと思っております。
○津島委員 大臣、ありがとうございます。
参議院予算委員会の対応があると承知をしております。御退出、どうぞ。退出してください。
今ほど大臣からお話がございました、輪島朝市という具体の地名も出てきましたけれども、公費解体を進めて、土地がまず整地をされ、朝市の関係者の皆さんは、青空市でもいいから物を売りたい、そこがなりわいの再生の第一歩だということを直接お聞きして、まさにそのとおりだと思います。
ということで、復興の基礎をつくるのがまず法務局の営みだ、そういう思いを持って取り組んでいただきたいと思います。
では、次に、困難を抱える子供たちへの取組について伺ってまいりたいと思います。
相次ぐ児童虐待をなくし、全ての子供が健やかに育つことができる家庭環境の提供というのは、我々大人の責務です。子供の立場から考えると、離婚時の親権選択の場面で虐待の事実が判明している場合は、その親権の選択について慎重に考えるべきであります。一方で、離婚後に虐待の事実が判明した場合、里親、養子縁組の活用も積極的に肯定されるべきだと私は考えております。
この点につき、共同親権など民法等改正法施行に向けた準備の中でいかに検討されているか、考慮されているか、民事局長さん、お願いします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、児童虐待を防止するとともに、全ての子供に適切な養育環境を提供するのは極めて重要なことであると認識をしております。
父母の離婚後にも父母の双方を親権者とすることができる制度を導入いたします令和六年民法等の一部を改正する法律におきましては、父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときは単独親権としなければならないこととしておりまして、児童虐待のある事案においては、虐待を行った親が親権者となることがないような規律を設けているところであります。
このような規律の趣旨ですとか具体的な適用場面について、離婚をする当事者や関係諸機関に十分に御理解いただくことが重要であると考えております。そこで、法務省においては、改正法について、ホームページにおける改正法の周知や、改正内容を解説する動画やポスターを作成するなどして周知、広報を行っているところでございます。
また、改正法の施行準備は関係府省庁等において連携して取り組むべき問題であることから、関係府省庁等連絡会議を開催をしております。そこでは既に、関係府省庁等が連携して、改正法の内容を説明するパンフレットを作成して市区町村等に配布しておりますほか、現在、具体的な事例を想定したQアンドA形式の資料の作成にも取り組んでいるところでございます。
引き続き、改正法の円滑な施行に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。
また、夫婦の離婚等の場面に限らず、虐待等の様々な原因によって家庭において適切な養育を受けられない子供たちがおり、そういった子供たちにとっては、里親委託や特別養子縁組も適切な養育環境を提供するための選択肢になり得ることも委員御指摘のとおりでございます。
特別養子縁組につきましては、令和元年民法等の一部を改正する法律によりまして、対象となる子の年齢の引上げですとか、養親となる方の負担を軽減するための裁判手続の見直しを行ったところでございます。
引き続き、こども家庭庁とも連携しつつ、特別養子縁組制度の適切な利用の促進にも取り組んでまいりたいと考えております。
○津島委員 ありがとうございます。
省庁が幾つかまたがるということ、厚労省やこども家庭庁に。省庁の壁が、この問題で対応の遅れなどあってはならぬ、私はそのように思いますので、連携をより強化していただきたいということ。
そして、やはり、市町村への周知というところでは、地元に帰ったときに市町村の議会議員さんなどにもしっかりとこのことについてお知らせをしたい、私自身、そのように受け止めております。
この改正法の施行では、午前中、小竹委員でしたか、家庭裁判所のことをお触れになっておられたと思います。おっしゃるとおり、家庭裁判所の役割は極めて重要であります。
この家庭裁判所の設立に尽力したのは、皆さん御存じ、三淵嘉子さんであります。三淵さんは、「法律のひろば」一九四九年四月号「愛の裁判所」の中で、その目的は法律の擁護以上により建設的な社会的なものを持っています、今、地方裁判所を正義の裁判所とすれば、家庭裁判所は愛の裁判所と言うことができましょうと宣言されております。
愛のある家庭を子供に届けるため、家庭裁判所の奮起を促したいと思いますし、実際の人員体制については、目的を達するためにどのような業務が必要なのか、じゃ、その業務はデジタル化などでどれだけの効率化を図れるのか、でも、それをもってしてもなお人員が足らぬとすればいかなるどれほどの人員が必要なのかということをしっかりと定量的に検証していただいて、また我々と議論をしていくべき課題だと考えます。こういった点で、今後の同僚議員の議論につないでいきたい、そのように考えてございます。
次に、拘禁刑時代の新たな処遇と再犯防止について伺ってまいります。
拘禁刑時代の新たな処遇の実現には、矯正施設内での取組と、保護司、協力雇用主、BBS会、更生保護女性会、医療、介護関係者や民間NPO等々の多職種連携を進めていく必要があります。さらに、それらの取組のシームレス化が必要になる、そのように考えます。
この点、新たな処遇の実現に向けて様々今検討されておると承知しておりますが、その過程でいかに考えられておられるでしょうか。矯正局長さん、お願いします。
○小山政府参考人 拘禁刑の目的でもございます受刑者の特性に応じましたきめ細やかな処遇や社会復帰支援を効果的に実施するためには、まさに今委員が御指摘なさいましたように、刑事施設内の多くの取組に多職種が関与し、そこで得られました知見などにつきまして、必要に応じ、施設外の多職種にも切れ目なくつないでいくということが重要であると認識してございます。
具体的に申し上げれば、例えば、高齢の方、それから知的な制約のある方、発達上の課題のある方、薬物に依存のある方といった特性に配慮した処遇を行う必要があると施設の中では考えておりまして、そのためには、まず多職種による複層的な処遇調査を実施することとしております。
これによりまして、お一人お一人の支援ニーズを的確に把握した上で、御本人の意向も踏まえまして、刑が執行開始時の段階から釈放後の社会での生活を見据えまして、必要な矯正処遇や社会復帰支援を行うこととしております。
さらには、支援のニーズを踏まえまして、刑事施設の長の直轄として設けます個別支援処遇推進チームによります多職種の職員でのチーム処遇を実施いたしまして、本人に寄り添った柔軟な対応を図ることも考えております。
また、社会復帰支援につきましては、先ほど申し上げましたような、生きづらさのある方々など釈放後の自立した生活が困難な受刑者に対しましては、これまでも同様でございますが、更生保護官署等の関係機関と連携した上で、帰住先の調整や、社会内における福祉的機関、支援団体への橋渡しを行ってきております。
今後は、例えば薬物依存のある方やその疑いのある受刑者に対しましても、出所後も医療機関や自助グループなどの民間団体といった立ち直りに必要な社会資源に継続的につながっていくことができますよう、一層の社会復帰支援の充実を図ってまいりたいと考えております。
○津島委員 ありがとうございます。
チーム処遇によって一人一人に寄り添った処遇というものを実現していくという基本的な考え方ということであるならば、一人一人のパーソナライゼーションといいますか、それぞれのパーソナリティーや、それから犯した罪、そしてそれに対する本人の考えなど、様々、千差万別、人それぞれであって、それぞれを踏まえた処遇を行っていく中で、日々の処遇の中で得られていく知見、そしてそれらを普遍的な一つのデータの塊として考えたときに、導き出せる、これからの処遇に生かせる、いわば一つの法則といったもの、こういったものも、データをうまく活用することで更なる処遇の改善につなげていただきたいと思うことと、矯正施設内でのそういう処遇の営みが、保護司などの更生保護施設、関係者に共有されるということも今後シームレス化を進めていくということの中での鍵だ、そのように考えますので、よろしくお願いいたします。
そして、今、保護司の名前を出しましたが、やはり再犯防止の取組の核となるのは保護司の皆様であります。新任保護司の確保、育成と活動の安全確保のため、様々取組がなされております。
今日は資料一枚、表裏で、私の地元、東奥日報の記事を、これは非常に問題を端的に指摘している記事だと私は思いましたので、参考に皆様にお配りをさせていただきました。
「県内「保護司」確保 希望と懸念」と題する記事の中では、自宅以外での面談というものが新任保護司さんが引き受けるきっかけになったということや、家族に心配されたということに対して、安全対策などを説明して、家族の理解を得て新任保護司になったということや、やはり、犯罪、非行をなくす広報活動も保護司の役割、巡り巡って自らの地域の安全につながるとやりがいを語っておられる方、そして、保護司の皆様が自らの居場所として、その保護司活動を行う場を仲間と交流する居場所として位置づけてもいいのでは、そういう声もあるということです。
そして裏側、安全対策強化ということで、大変痛ましい事件でありました滋賀県大津市のあの事案を受けて、安全対策を強化しているという記事であります。
こうした地域地域での取組、そして、法務省においては、持続可能な保護司制度の確立のための検討会が報告書をまとめられ、それを受け取られていると承知しています。今後法改正を検討されるかもしれませんが、それを待たずして今取り組んでおられる対策について、是非保護局長さんからお聞かせください。
○押切政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、第二次再犯防止推進計画において、持続可能な保護司制度の確立に向けた検討、試行が盛り込まれたことに基づき、令和五年五月から持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会を開催し、保護司の方々からの多様な意見を踏まえながら検討が重ねられ、令和六年十月には報告書が取りまとめられました。
報告書には、同年五月に滋賀県大津市の保護司が亡くなられた事案の発生を受けた保護司の安全確保に関する取組を含め、今後講じていく施策等として七十八の取組が盛り込まれております。
報告書の内容等も踏まえ、これまでも、保護司の不安の解消や安全の確保を図るため、自宅以外の面接場所の確保や保護観察官による直接関与の強化などの取組を進めてきているところでございます。
現役世代を含む保護司の方々に、安心して、仕事をしながらでも長く保護司活動を続けていただくためには、保護司活動の安全を確保しつつ、その負担を軽減するなど、保護司の活動環境を整備していくことが重要であると考えております。
令和七年度予算政府案においては、保護観察官の増員に加え、更生保護サポートセンターの運営経費の拡充、サテライト型更生保護サポートセンターの設置、自宅以外の面接場所の確保、保護司複数指名制の積極活用など、持続可能な保護司制度の確立や保護司の安全確保に係る経費を計上しており、これらの施策を着実に実施してまいりたいと考えております。
○津島委員 ありがとうございます。
今行われている取組、とりわけ、安全を確保するためと、それから保護司活動の充実をもってして立ち直りを支援、それがより実効性あるものにしようという、そういう営みが行われているということをお聞きしました。
面接場所についても様々確保をしていく必要があろうかと思いますし、そして、保護司の活動、それぞれ地域差があると思います。より広いエリアを担当している方自体、そのエリアをカバーするということも御負担になっている、そういう側面もあるということは是非御理解をいただきたい。地方においては、やはり移動とかそういったことも負担になっているという現実もあるということは是非受け止めていただきたい、そのように思います。
さて、ちょっと話題を、ウクライナ避難民のことについて質疑をさせていただきたいんですが、今日は高村副大臣においでをいただきました。私だけ指名したので何だか申し訳ない気持ちでありますが、よろしくお願いいたします。
ロシアによるウクライナ侵略が始まって三年がたちました。その侵略が始まったとき、私は法務副大臣を務めておりまして、ウクライナ避難民のことでポーランドに行って、実態というものを見て、聞いて、避難民の方ともお話をさせていただきました。あのとき見た、命からがらお母さんと逃げてきた少女、今どうしているだろうか。確かめたくても、あちらに行くことはかなわず、なかなかもどかしい思いがあるわけであります。やはり日本に来られた方の、避難民に対する心をずっと寄せ続けるということが、せめて自分に今できることだろうと思っているところです。
その日本には、今年の一月末時点で累計二千七百四十七人の避難民がいらっしゃっております。彼らは、これから本当に、特に日本にいるという選択をした避難民の方々に、なおさら自立支援ということは大きな課題になるわけであります。
その一方で、昨今、避難民支援への関心が薄れているという感じを持っていることに、非常に危機感を覚えております。
副大臣に是非伺いたいんですが、我が国で受け入れているウクライナからの避難民について、制度改正して補完的保護対象者、そしてその対象者として自立に向けた支援を継続していく必要があると思いますが、法務省の見解を是非副大臣からお願いいたします。
○高村副大臣 津島先生、ありがとうございます。
委員御指摘のとおり、ウクライナ避難民が我が国で自立していくためには、就労支援や日本語教育を含む自立に向けた支援を継続して実施することが重要であると認識をしております。
私自身も、私の友人の奥さんがウクライナ人で、その親戚を日本に受け入れるお手伝いをしたり、本当に、ウクライナの方々が日本で苦労している現状もしっかりと見させていただいております。
そして、政府としては、ウクライナ避難民の方々に対して様々な支援を行ってまいりましたが、令和五年十二月の補完的保護対象者の認定制度の創設後は、補完的保護対象者として認定されたウクライナ避難民に対し、自立に向けた継続的な支援を行っております。
具体的には、令和六年四月から補完的保護対象者に対して、五百七十二時限の日本語教育や百二十時限の生活ガイダンスを受講できる定住支援プログラムを提供しております。
また、就労支援については、厚生労働省所管のハローワークにおいて、全ての地域でではございませんが、ウクライナ語を含む外国語による職業紹介や雇用主に対する助成金による雇入れ支援を行っていると承知をしております。
法務省といたしましては、引き続き、ウクライナ避難民の方々が安心して我が国で自立した生活を送ることができるよう、適切に支援をしていきたいと思っております。
○津島委員 副大臣から力強い決意が述べられました。私自身も、ずっと心を寄せ、また、どういった支援が有効なのかということは、様々意見を聞いて提案してまいりたい、そのように思います。
あと二問、最後までたどり着けるかどうか微妙になってまいりましたが、スピードアップします。在留外国人支援について伺います。
今ほど申し上げたウクライナ避難民も含め、在留する外国人支援の一元的窓口としてFRESCがございます。その役割は今後ますます重要になると考えます。私は、このFRESCというもの、そういう新しい建物を造れということではなくて、そういう横串を通した、省庁をまたいだ機能が各道府県にできるということが望ましいと考えています。そういった意味での水平展開について、入管庁次長さんから伺いたいと思います。
○杉山政府参考人 委員御指摘のFRESC、外国人在留支援センターでは、外国人の在留支援に関係する法務省、外務省、経産省、厚労省、四省庁の八機関がワンフロアに集まり、必要に応じ複数の機関の担当者が同席するなどして、外国人からの相談等に対応しているところでございます。
こうした地域における一元的相談対応の水平展開ということにつきましては、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップや外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策におきまして、関係機関の連携、協力を推進し、地域における外国人向けの相談体制等を強化するとされていることを踏まえ、地方出入国在留管理局等が関係機関と合同相談会を実施するなどの取組を行っているところでございます。また、東京出入国在留管理局の横浜支局におきましては、横浜市のみなとみらい地区に、在留相談室、Y―FORAというものを設置いたしまして、神奈川県や横浜市を含む地域の関係機関と相互に連携協力して相談対応等に取り組んでいるところでございます。
入管庁におきましては、引き続き、FRESCでの取組を参考として、地域における関係機関との連携協力関係を強化していくこととしているところでございます。
○津島委員 引き続き、出入国においては適正な出入国、そして在留管理も行っていただくと同時に、やはり、共生社会というものを実現するためにしっかりバランスを取った行政ということを望みます。
最後まで行けそうでございます。最後の質問であります。司法外交について。
現在の世界情勢、とりわけアメリカの動きなどを見ていると、今こそ、法の支配という価値が、国際社会にそれらを浸透させていくということは本当に重要なことだと私は認識しております。先ほど触れたウクライナの復興ということも考えたときにも、法制度整備支援ということをEU諸国と連携して行うということが大事なことなんじゃないかと私は考えるんですが、この点について国際課の方ではどのように考えておられるか、担当審議官の方からお答えいただきたいと思います。
○堤政府参考人 お答えいたします。
法務省では、法の支配や基本的人権の尊重といった価値を世界に発信し、浸透させていく司法外交を展開しておりますところ、現下の国際情勢に鑑みますと、その重要性は一層増していると認識しております。そして、司法外交を更に推進する上では、EU加盟国を始めとする法の支配等の価値を共有する国や国際機関との連携が効果的であると考えております。
御指摘のウクライナに対する法制度整備支援を含む法務、司法分野における協力は、復興に当たって必要な資金の公正かつ効果的な活用などのために重要な意義を有しております。
そこで、法務省は、令和五年から、EUを含むG7メンバー及び国際機関により構成されるウクライナ汚職対策タスクフォースを事務局として運営して、EUを含む各参加国、機関間の連携の強化とウクライナにおける効果的な汚職対策の実現にリーダーシップを発揮しております。
また、昨年八月に当時の小泉法務大臣がウクライナを訪問した際に当省とウクライナ司法省との間で署名、交換した協力覚書に基づき、法務総合研究所では国際協力部、ICD、及び法務省が運営する国連アジア極東犯罪防止研修所、UNAFEIにおきまして、汚職対策、司法改革のほか、人材育成を含む法務及び行政分野における法制度整備支援について、ウクライナ当局や国連薬物犯罪事務所、UNODC等の関係機関との間で協議、調整を進めております。
引き続き、EU加盟国を始めとする価値を共有する国や国際機関等と連携しながら、効果的な支援を実施してまいりたいと考えております。
○津島委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございます。
○西村委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後二時十六分休憩
――――◇―――――
午後三時十五分開議
○西村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。平林晃さん。
○平林委員 公明党の平林晃です。
本日最後の質問ということで、大臣始め皆様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
まず、またちょっとバックグラウンドに基づいて、技術系のことをお聞きできたらというふうに思います。
昨年のノーベル平和賞、日本被団協の皆様の受賞については秋に大臣に見解をお尋ねさせていただきましたけれども、そのときの物理学賞、これは機械学習の基礎に関わったジョン・ホップフィールドという方とジェフリー・ヒントンという方が受けられたんですね。化学賞は、AIでたんぱく質の構造解析で顕著な業績を上げられた三人の研究者の方に贈られたということでございます。
私、化学賞はちょっと専門外なのでよく分からなかったんですけれども、物理学賞の一報に接した瞬間に、本当に驚きました。これは私だけではなくて、多くの情報系の研究者にとっても大きな驚きであったということでございました。
これは、我々、我々というか情報系の研究者にとってホップフィールドとかヒントンという研究者は神様みたいな存在の方で、誰でも知っています。なんですけれども、情報関連という認識が強いので、物理学賞を取られたということで非常に驚いたわけですけれども、でも、元々物理学者であり、その研究をAI分野に広げて、現在これだけ広範なAIの広がりが得られているということを考えれば、もう当然ノーベル賞、こういうことになるということでございます。
これも広く言われていることでございますけれども、受賞の背景とされるノーベル委員会が出されているドキュメントには、関連する重要な研究内容として、日本の甘利俊一先生でありますとか福島邦彦先生、こういった日本の、これまた我々にとっても本当に偉大な先駆の研究者なんですけれども、そういった皆様の業績が引用されているということも言及をさせていただきたいというふうに思います。
大事な点は、物理学賞と化学賞を比較したときに、物理学賞の受賞理由というのは、物理学がAIに与えた貢献なんです。でも、化学賞は逆なんですね。AIが化学、ケミストリーに与えた貢献ということで、AIに向かっているのかAIから向かっているのか、こういう逆方向の業績に対して与えられているということで、非常に興味深いというふうに思うわけですけれども、今後は、後者の化学賞の、要するに、AIが多分野に貢献する、こういった研究が世界的潮流により一層なっていくというふうに考えられております。
この点、我が国も極めて積極的に取り組んでおられまして、理化学研究所、理研と言っていますね、が進めるプロジェクトのAI・フォー・サイエンスというものは、たんぱく質の構造解析、今回の化学賞の対象になりますけれども、それに限らず、原子レベルのシミュレーションでありますとか、高性能の材料開発でありますとか、気象予測、こういった様々な分野での研究をAIを使って行っていこうということで、チャットGPTというのはもう汎用モデルでいろいろなことを対応しますけれども、こういった科学分野においては、その分野専用のモデルの開発に取り組むということをされているということで、今後こういったものがより今までになかったような研究成果を出していくということが期待をされているということでございます。
これと全く同じ発想なんですけれども、司法の分野においてもAIの活用の可能性が大きく広がっていくというふうに考えられるわけでございます。これまでに積み上げられた判例をAIに学習させることによって、高度な司法分野専門のAI、これは民事に限ってもいいわけです、刑事に限ってもいいわけですし、本当に様々な工夫が考えられるわけですけれども、そういったことを、AIを構築することが技術的にはもう全然可能な時代に入ってきているというふうに考えているわけでございます。
こうしたAIシステムの可能性やシステムへの期待、またそのシステムの開発について法務省としてどのように関わって支援をしていかれるのか、この点について法務大臣の御見解を伺います。
○鈴木国務大臣 法務、司法分野でどう、こうしたAI、人工知能というものを活用し、ある意味での様々な付加価値をつけていくのか、これは極めていろいろな可能性が高くある分野と思っております。
当然、AIの開発あるいは活用ということであれば、そこの基のデータですよね、データをどうきちんと整備をするのか、まさにデータをたくさん読み込ませなければ適切な解は当然求められないわけですから、そういった意味で、どのようにそうした環境整備をしていくかというのが、恐らくは、一義的には私どもの役割ではないかと思っております。
まさに、そうした基盤整備ということ、その基盤整備の上で、いわゆるリーガルテックとか、そういった様々な民間部門の創意工夫であったり、あるいは様々な価値創造を通じて、どうそこのところを大きくしていくかということだと思いますけれども。
そういった意味で、基盤整備ということでいえば、今般、法務省において、今後、電子データとして作成されるようになる民事訴訟の判決書等の内容を民事裁判情報として適正かつ効果的な活用を促進するために新たな制度を創設する、そういった法案を提出したところであります。これからこの委員会でも御審議をいただくわけでありますけれども、この法案が成立できれば、その暁には、法務大臣の指定する法人によって整備、提供される基幹データベースを通じてより多くの民事裁判情報を利用できるようになる、そして、民間におけるAIの研究開発を含む様々な活用が行われるものと考えております。
法務省といたしましては、当面この基盤整備ということでいえばこの法案がまずは一丁目一番地ということでありますので、この法案について国会において十分に御審議をいただいた上で、速やかに御可決いただけますよう、我々としても努力をしてまいりたいと思っております。
○平林委員 ありがとうございます。
その法案に関しましては本当にしっかりと議論をさせていただいて、前に進めさせていただきたいと思いますし、やはり、こういうシステムを開発していくときに、どうしても、法律、司法分野を分かっている人とやや分かっている人、このコラボレーションというものは絶対大事になってきますので、そういうところも是非進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。ありがとうございます。
続きまして、所有者不明土地問題、ちょっと全く話ががらっと変わりますけれども、地元からいただいている案件で聞かせていただきます。
地元の中国地方でもそうなのでありますけれども、農地や山林を中心にこの問題が非常に深刻化しているということを聞いておるところでございます。
具体的には、登記簿上の所有者が死亡して相続手続がされていないとか、あるいは、相続人が多数に分散していて誰が正式な所有者か追い切れないとか、あるいは住民票が移転されて所有者の居場所が不明といった状況によって特定が困難になっていく。こうなってしまうと、本来何かしたかったにもかかわらず手がつけられず、管理が放置されて荒廃が進行してしまう。耕作放棄地とか放置された山林が増えて、雑草や害獣の温床にもなっていくし、台風とか土砂崩れなど、そういう災害時にも危険が高まるということでございます。空き家問題とも絡んでくるかというふうに思います。
そこでお聞きしたいと思います。
こうした困難な状況に直面した、こういう事業者を、打開して進めていっていただくために支援することも重要なことなのではないかと考えますけれども、法務省の御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、土地の所有者について、相続が発生しているが、不動産登記簿上そのことが明らかでないため公共事業等の実施に支障が生じているという御指摘がございます。
こうした御指摘を踏まえまして、全国の法務局では、平成三十年十一月から、地方自治体の求めに応じて、公共事業等の実施地域内の長期間にわたって相続登記がされていないという土地について、その登記名義人の法定相続人を探索し、その成果を自治体に提供するという長期相続登記等未了土地解消事業を実施しております。
また、令和八年四月から、先の話になりますが、登記官が他の公的機関から取得した所有権の登記名義人の死亡情報に基づきまして、不動産登記にその死亡の事実を符号で表示するという制度がスタートいたします。これは、登記記録から登記名義人が死亡していることが直ちに分かるようにすることで、事業用地の候補地の所有者の特定や、その後の交渉に係るコストの予測を可能にするというものでございます。
法務省といたしましては、これらの制度を着実に実施し、引き続き所有者不明土地の解消にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○平林委員 様々御支援をいただいているということで、引き続き進めていただきたいというふうに思いますけれども、この所有者不明土地問題解決のために専門的な知識を御活用いただくということも非常に大事だというふうに思っております。その点、司法書士の皆様は、相続人調査等において豊富な経験や実績をお持ちであられるということでございますので、更なる活用を図っていくということは有効なのではないかなというふうに考えておるわけでございますけれども、この点に関しましても法務省の御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
所有者不明土地を解消するためには、その主要な発生原因である相続登記等の未了に対応し、所有者不明土地の発生を予防するとともに、土地の利用を円滑化することが重要になってまいります。
委員御指摘のとおり、司法書士の方々は、その専門的知見を生かし、相続登記の前提となる相続人の調査を行うとともに、所有者不明土地管理制度等の財産管理制度の担い手となっていただくなど、所有者不明土地の解消に向けて重要な役割を果たしていただいているものと考えております。
令和六年には相続登記が義務化をされまして、また令和八年には住所等変更登記が義務化をされます。このことなど、様々な新制度が開始される中で、司法書士等の専門資格者の更なる活用を図っていくことが所有者不明土地の解消のために重要であると考えており、法務省、法務局としても、引き続き、司法書士の方々としっかりと連携してまいりたいと考えております。
○平林委員 これまでもしっかり活躍いただいているということでございますけれども、今後もより一層御活躍いただいてこの問題をしっかりと解決をしていくとか、より一層、この問題がなくなっていくということを実現していけたらというふうに思います。よろしくお願いいたします。
続きまして、先ほど黒岩筆頭理事の方から様々深掘りの質問があった検察の取調べ関連について、私の方からも少しお聞きをさせていただけたらというふうに思います。
これも、ちょっと御相談いただいたことがございましてお聞きさせていただく部分があるんですけれども、取調べの対象が未成年である場合、このような場合は何か配慮されていることがあるのかということなんですけれども、ネットで調べる限り、済みません、専門家じゃないのでちょっときちっと専門文献に当たれていないんですが、穏やかで分かりやすい対応を取るとか、長時間に及ぶ取調べを避けるとか、弁護人や親権者などが関与できることがあるなんというような、こういったことがちょっと出てきたわけですけれども、こういったことが実際どうなのか、法務省の御見解を教えていただけたらというふうに思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
取調べにおいては、その取調べを受ける方の年齢、境遇、性格、性別等の諸事情を考慮して適切に対応することが肝要であるというふうに考えておりまして、検察当局におきましても、そうした特性を踏まえて適切に対処しているものと承知しておりますけれども、特に少年につきましては、そのような観点を踏まえまして、各庁に少年係検事というものを配置しておりまして、その者を中心に対応しております。そして、成長度合いによりまして少年の場合にはコミュニケーション能力等にも大きな差があることから、そうした特性を踏まえまして、供述の任意性や信用性の確保に十分配慮しているというような対応を取っているものと承知しております。
○平林委員 今、最後の部分でも、供述の任意性に対して十分配慮していただいているという御説明でございました。
私が伺った、これは中学生の案件なんですけれども、御本人の認識と異なる説明を受けて同意をさせられたというようなことがあったり、あるいは、同じ、同一の件ですけれども、調書への記載を依頼した内容が記載されていなかった、こういったことをお聞きしたということがございました。これがもし事実であるならば、ちょっとやはり今の御方針と相反する部分もあるのではないかなというふうに考えます。
やはり、未成年においては、原則、全件送致主義ということなんですね。これもつい先日知ったことなので、専門の方はたくさんいらっしゃると思いますけれども、これが取られているというのは、どのような事件であっても、家裁でしっかりと審理をして、未成年が非行に陥った原因を探求し、それを取り除くことによって更生を図る、やはりこの更生を図るというところを非常に重視をしておられて、こういう全件送致措置等々の対応が取られているということなんだろうというふうに思います。
そういった意味におきまして、やはり相手に寄り添っていく、これはもう本当に大事なことだというふうに、罪は罪として、当然のことだと思いますけれども、きちっとした取調べをしていくということはやはり非常に重要だ、相手に寄り添ってやっていくということは非常に重要だと思いますので、この点、是非とも確認をしていただきたいというふうに思いますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。これがやはり更生の余地を与えていくということになると思いますので、お願いをしたいというふうに思っております。
この後、昨年の年末に最高検察庁から出された通知のことに関してちょっとお聞きしたいと思ったんですけれども、先ほど黒岩筆頭理事の方から様々深掘りの話がありましたので、ちょっと私の元々の質問趣旨とは少し変えさせていただきまして、録音、録画の件が、話がございました。
今、全件の確認はされていないようなお話だったというふうに思うんですけれども、やはり、ここは、技術を使って対応していくということが僕の発想的にはすぐ出てくるわけでございます。
いろいろな研究をなされていまして、例えば保育の現場であるとか、あるいは介護の現場であるとか、そういったところで何か不適正事案がないかというのは、やはりこれは同じようなテーマとして、画像を使って、動画を使ってそれを検出していくなんということは普通にやられている研究でございまして、やはり、特にこういった分野に、こういった状況に特化していくことによってより高い技術を開発していくという、これは十分可能性があるというふうに考えますので、ちょっとその辺に関して見解を聞かせていただけたらと思います。
○森本政府参考人 現在、刑事手続につきまして、デジタル化を実現するための法律案を今準備させていただいて、閣議決定、国会の方に提出させていただいたところでございます。それに合わせて様々な手続をオンライン化していくというところで、刑事手続の特性に鑑みて高い情報セキュリティーの確保が大前提となるわけですが、そのシステム開発を今進めておるところでございます。
そうしたシステム開発の中で、先生御指摘のとおり様々な情報通信技術を今後使っていくことが必要になると思いますので、先ほど言及のありましたAIの活用の在り方も含めて、どういったものが使っていけるのか、今御指摘の点につきましても、使えるものは使っていきたいというふうに思っております。
他方で、取調べ手続の中で実際にどういうものが不適正だったかどうか、見てみないと分からないところもございますので、午前中の質疑にもありましたが、現在も、それを例えば抜き打ちでチェックするとか、そういうことについては始めております。
黒岩先生から御指摘がございましたとおり、当初想定していたよりもかなりの件数があるものですから、全部見切るというのはなかなか難しいところがあるかもしれません。その中でどういったことが可能か、情報通信技術の活用も含めまして検討してまいりたいというふうに思っております。
○平林委員 技術は本当に使いようですので、今のお話の中で、見てみないと分からないということで、候補を抜き出すということに使うというのも本当に十分ありというふうに思いますし、その辺も含めて、全体観を持って、何かしらその方向性を見出していただけたら、その方向性にのっとって技術というのはやはり進んでいくと思いますので、是非その辺の見定めをお願いできたらというふうに思います。よろしくお願いいたします。
続きまして、外国人就労に関してお聞きできればというふうに思います。
入管庁の統計で、特定技能一号への移行の際の都道府県をまたぐ住居地の異動における転出・転入状況、ちょっと長い名称で恐縮ですけれども、こういう統計によりますと、これは暫定値ですが、三大都市圏で転入が超過している、それ以外の地域で転出超過の傾向が表れている、これは結構本当にクリアだなというふうに絵を見ている限りは思うところでございます。
この傾向は、外国人労働者が生活環境や就労条件の整った都市部を選ぶというのが一因として考えられるわけではありますけれども、これによって、逆に地方の方では、せっかく来ていただいて育成してきた人であるにもかかわらず人手不足が深刻化していってしまう、地域経済や社会経済にも影響を与えていってしまうということでございまして、やはり地方として、非常に残念な傾向にあるなというふうに感じてしまうところでございます。
地元広島におきましてもこの点に関する問題意識は非常に強くありまして、何とか是正していけないかと。
地方は地方でいろいろな取組を進めるわけではありますけれども、是非、政府においても支援をより一層お願いできたらというふうに思いますけれども、御見解を伺います。
○杉山政府参考人 育成就労制度の創設等によりまして人手不足の地域で必要な人材が確保できるようにするとともに、当該地域におきましてしっかりと地域住民と外国人が共生していくことが重要と認識しております。
この点につきまして、育成就労制度及び特定技能制度では、各地域の特性等を踏まえた人材確保という観点から、各地方自治体において、地域協議会に積極的に参画して業所管省庁等との連携を強化しつつ、共生社会の実現や地域産業政策の観点から、外国人相談窓口の整備を始めとした受入れ環境を整備するための取組を促進することとしておりまして、これらにより地域への定着等を促進することとしております。
また、外国人相談窓口の整備に当たりましては、入管庁が実施しております外国人受入環境整備交付金等を活用することも考えられるところでございます。
加えまして、育成就労制度におきましては、大都市圏に過度に外国人材が集中しないよう、人材流出の懸念が大きい地方の受入れ機関において、一定の要件の下、大都市圏以外の受入れ機関における受入れ人数枠を拡大することなども検討しているところでございます。
これらの措置により、地域において必要な人材が確保できるよう、適切に対処してまいりたいと考えております。
○平林委員 受入れ人数の幅を広げていただくようなお話もございました。本当に地方はひいひい言っておりますので、是非、御対応をしていっていただきたいというふうに思います。
これは、東京一極集中の問題とやはり軌を一にしているというふうに思うんですよね。地方創生二・〇、これを政府として進めるということでございますので、日本人、外国人を問わず、この流れを変えていっていただきたい、その取組を是非していただきたいというふうに思いますので、是非大臣も含めてお願いできればというふうに思います。よろしくお願いいたします。
関連して、これも地元広島で寄せられた要望になりますけれども、日本語学習に対する支援の充実を求める内容です。
昨年五月八日の、これは育成就労法関連の御答弁になりますけれども、日本語教育機関認定法の仕組みを活用した日本語教育の質の向上でありますとか、日本語学習のためのオンライン技術の活用による負担軽減、あるいは母国における日本語学習支援としての日本語教材の開発、こんな取組を行う予定という御答弁がございました。
これらの取組、現在、どんな状況にあるのか、教えてください。
○杉山政府参考人 日本人と外国人が互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現していくために、日本語学習を含む外国人の受入れ環境整備は極めて重要であると認識しております。
このような観点から、政府においては、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップにおきまして、円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組を重点事項の一つとして掲げ、各種取組を進めております。
御指摘いただきました施策の進捗状況でございますが、日本語教育機関認定法の仕組みを活用した日本語教育の質の向上につきましては、文部科学省が令和六年十月に日本語教育機関の初回の認定を行いましたほか、十一月には初回となる日本語教員試験を実施いたしました。
次に、日本語学習のためのオンライン技術の活用による負担軽減につきましても、文部科学省が、オンラインを活用した日本語学習教材として、日本語学習サイト「つながるひろがるにほんごでのくらし」を公開いたしまして、在留外国人の増加や学習ニーズの高まりを踏まえ、対応言語や学習コンテンツの追加を行っております。
また、母国における日本語学習支援としての日本語教材の開発につきましては、外務省が海外における日本語教育支援のため、国際交流基金を通じて、日本語教材「いろどり 生活の日本語」や、同教材を活用したいろどり日本語オンラインコースの内容拡充、多言語化の推進等を行っております。
入管庁におきましては、引き続き、関係省庁等との連携を一層強化いたしまして、ロードマップ等に基づき、外国人との共生社会の実現に向けて、日本語学習支援を含む取組を着実に進めてまいりたいと考えております。
○平林委員 本当に着実に進めていただいているようで、ありがたく存じます。是非、引き続き、取組をお願いできればと思います。
続きまして、大臣の所信にもございました法教育に関してお聞きできればというふうに思います。
私はもうずっと理系分野でやってきて、今、この年になって法律に関して学びの一歩を踏み出させていただいているところでございまして、子供の頃にこういう法教育があったら何かちょっと違ったのかなみたいなことも感じたりするわけでございます。
今、既に行われているということでございますけれども、現在の法教育がどんな学年でどんな内容が実施されているのか、ざっくりで結構ですし、また、今後どんな検討がなされていくのか、この点を教えてください。
○松井政府参考人 お答え申し上げます。
法教育については、法務省としてはこれまで大別して、小中高の各発達段階に合わせた各種の法教育教材の作成、提供、教員や教職課程の大学生を対象とした法教育セミナーの開催等を通じた担い手の育成と広報、法務省職員等を講師とする出前授業など、法教育の実践やその状況の調査という三つのアプローチを中心に進めてきたところです。
このうち教材については、学校関係者の皆様の御意見もいただきながら、小中高の各段階別の冊子教材と視聴覚教材を開発、提供してきたところでして、例えば、小学校向けには、三年生、四年生向けに友達同士のけんかとその解決などのテーマ、五年生、六年生向けには裁判所の仕組み、働きなどのテーマ、中学校向けには私法と消費者保護などのテーマ、高校向けの教材では、裁判所による紛争解決手続の模擬体験などのテーマを取り扱っております。
また、GIGAスクール構想に対応するためのデジタル教材や模擬裁判用の教材も開発、提供しているところです。
法務省としましては、今後、関係機関等との連携を強化するとともに、教職員の方々の御意見等も踏まえて法教育教材を改訂することなどにより、学校現場での御負担にも配慮しながら、法教育の更なる浸透に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
○平林委員 ありがとうございます。
本当に、是非受けてみたいというふうに思うところでございますけれども。
その一方でなんですけれども、いつもこういうお話をお聞きすると、懸念として思うのが詰め込みですね。本当にこれだけいろいろな段階に押し込んでいくという言葉がいいかどうか分かりませんけれども、適正なのかどうかということを懸念するところでございます。
今、学習指導要領の改訂の議論も進められておりますけれども、こういった点について、詰め込み、厳選、精選、この点についてどのように考えておられるのか、文部科学省の見解を伺います。
○今井政府参考人 お答え申し上げます。
議員御指摘のとおり、学校教育を通じて、子供たちが法に関する基本的な見方や考え方を身につけるとともに、法や規範の意義及び役割について理解を深めることは重要であると認識をしております。
そうした法教育も含め、質の高い教育を実現していく上では、子供の学びや教師の指導の実態も踏まえつつ、教育課程の実施に伴う負担への指摘へも真摯に向き合っていく必要があり、その検討に際しましては、負担や負担感が生じている構造を丁寧に議論することが重要と考えております。
学習指導要領の改訂に向けた昨年十二月の中央教育審議会諮問では、年間の標準総授業数は現在以上に増やさないことを前提としつつ、学習指導要領やその解説、教科書、入試、教師用指導書等の影響も含めた授業づくりの実態を全体として捉えながら、過度な負担や負担感が生じにくい在り方の検討をお願いしたところでございます。
今後、具体的には中央教育審議会で議論していただきたいと考えておりますが、文部科学省といたしましては、諮問に示した視点を基に、全体として教育の質の向上につながるよう、丁寧な議論を行ってまいりたいと考えております。
○平林委員 本当に、しっかりと検討していただいて、人がしっかり育っていく、このことを是非お願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいというふうに思います。
ありがとうございました。
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○西村委員長 次に、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。鈴木法務大臣。
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裁判所職員定員法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○鈴木国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を減少しようとするものであります。
これは、家庭事件処理の充実強化を図るため、家庭裁判所調査官を五人、事件処理の支援のための体制強化及び国家公務員の子供の共育て推進等を図るため、裁判所事務官を九人それぞれ増員するとともに、他方において、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、技能労務職員等を六十一人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を四十七人減少しようとするものであります。
以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。
○西村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、来る十四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時四十六分散会