第10号 令和7年4月16日(水曜日)
令和七年四月十六日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 西村智奈美君
理事 小泉 龍司君 理事 津島 淳君
理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君
理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君
理事 金村 龍那君 理事 円 より子君
井出 庸生君 稲田 朋美君
上田 英俊君 金子 容三君
上川 陽子君 神田 潤一君
河野 太郎君 土田 慎君
寺田 稔君 平沢 勝栄君
若山 慎司君 篠田奈保子君
柴田 勝之君 寺田 学君
平岡 秀夫君 藤原 規眞君
松下 玲子君 萩原 佳君
藤田 文武君 小竹 凱君
大森江里子君 平林 晃君
本村 伸子君 吉川 里奈君
島田 洋一君
…………………………………
法務大臣 鈴木 馨祐君
法務大臣政務官 神田 潤一君
外務大臣政務官 松本 尚君
最高裁判所事務総局総務局長 小野寺真也君
最高裁判所事務総局刑事局長 平城 文啓君
最高裁判所事務総局行政局長 福田千恵子君
最高裁判所事務総局家庭局長 馬渡 直史君
政府参考人
(警察庁長官官房総括審議官) 重松 弘教君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 松田 哲也君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 石川 泰三君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 堤 良行君
政府参考人
(法務省民事局長) 竹内 努君
政府参考人
(法務省刑事局長) 森本 宏君
政府参考人
(法務省矯正局長) 小山 定明君
政府参考人
(法務省人権擁護局長) 杉浦 直紀君
政府参考人
(出入国在留管理庁次長) 杉山 徳明君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 町田 達也君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文部科学戦略官) 今村 聡子君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 田中 一成君
政府参考人
(経済産業省貿易経済安全保障局貿易管理部長) 猪狩 克朗君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
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委員の異動
四月十六日
辞任 補欠選任
棚橋 泰文君 金子 容三君
森 英介君 土田 慎君
同日
辞任 補欠選任
金子 容三君 棚橋 泰文君
土田 慎君 森 英介君
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四月十六日
選択的夫婦別姓制度を直ちに導入することを求めることに関する請願(本庄知史君紹介)(第八四八号)
同(渡辺創君紹介)(第八七八号)
同(松下玲子君紹介)(第九六二号)
外国人住民基本法と人種差別撤廃法、難民保護法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第九一七号)
国籍選択制度の廃止に関する請願(柴田勝之君紹介)(第九七五号)
元々日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(柴田勝之君紹介)(第九七六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)
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○西村委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房総括審議官重松弘教さん、警察庁長官官房審議官松田哲也さん、警察庁長官官房審議官石川泰三さん、法務省大臣官房審議官堤良行さん、法務省民事局長竹内努さん、法務省刑事局長森本宏さん、法務省矯正局長小山定明さん、法務省人権擁護局長杉浦直紀さん、出入国在留管理庁次長杉山徳明さん、外務省大臣官房参事官町田達也さん、文部科学省大臣官房文部科学戦略官今村聡子さん、経済産業省大臣官房審議官田中一成さん及び経済産業省貿易経済安全保障局貿易管理部長猪狩克朗さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○西村委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也さん、刑事局長平城文啓さん、行政局長福田千恵子さん及び家庭局長馬渡直史さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井出庸生さん。
○井出委員 おはようございます。
今日も私は大臣には答弁を求めませんので、今後に備えていただければと思います。
前回の続きからですね。前回の最後に、私は刑訴法の一条を取り上げまして、公共の福祉や個人の基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法規を適正かつ迅速に適用するということを触れました。刑訴法の一条は、公共の福祉や個人の基本的人権の保障、この二つを全うすることを求めております。
そこで、まず配付資料の一でございますが、これは、二〇二〇年の八月に、今日答弁に来ていただいている森本刑事局長が津の検事正に着任をされたときの恐らく着任の会見だったと思います。その記事を見ておりますと、最後の段落ですね、これまでに印象に残る事件の一つとして、検事として最初に起訴した窃盗事件を挙げられた。その中で、先ほど御本人に伺ったところ、自分に課せられた職責の重さ、このことに恐れを感じながら対処をした、そのことは今も焼き付いていると。五年前のことでございますので、当然現在も焼き付かれていると思いますが、この職責の重さの恐れというところについて、御本人からもう少し詳しくその思いを語っていただきたいと思います。
○森本政府参考人 この場には刑事局長として立っておりますので、個人的なことをどこまで述べるかというところはございますけれども、お尋ねの点につきましては、一言一句そのとおりかどうかはちょっと記憶しておりませんけれども、趣旨といたしましては、刑事事件に携わる者といたしまして、今先生が御指摘になった刑事訴訟法一条の目的を達するために法律上検察官に与えられた役割と、そのための権限の重さとか大きさとか、そういうものに恐れ、畏怖を感じながら職務に当たっているという趣旨のことを述べたつもりでございます。
○井出委員 その権限の大きさ、重さに畏怖を感じながらと、そういうお話がございましたが、捜査機関、検察官に与えられている大きな権限というものは、やはり、それがあるから何でもやっていいとか、当然そういうことではなくて、森本刑事局長がおっしゃった話のその恐れというところは、権力を使い間違えるようなことがあればそれはあってはならないことだ、そういう恐れなのかなと私は思ってこの質問をしているわけですが、やはりそういう理解でよろしいか、もう少し聞きたいと思います。
○森本政府参考人 刑事手続におきまして、検察官には、例えば強制捜査をする権限であるとか、そういう権限が与えられております。もちろん、刑事訴訟法には、あわせて、謙抑性の原則でありますとか、任意捜査が原則である、そういった原則もございますので、やはり先ほど先生が御指摘になられましたように、公共の福祉の維持と基本的人権の尊重を全うしつつ、権限行使に当たっていかなければいけないという趣旨でございますので、先生御指摘のとおりかと存じます。
○井出委員 そこで、今回の法案の提供命令に係るところでございますが、一連の審議を通じて問われてきたのは、刑訴法で公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障との両方を全うすることが求められている、その中で、提供命令によってより多くの情報が、それから媒体を介さずに、利便性を持って取れるようになってくる。そのことに対して、やはりその情報の取扱い、無制限に取らないようにするですとか、取った後の取扱いというところが厳しく一連の質疑で問われてきた。
そのことは、まさに刑訴法の個人の基本的人権の保障に対する法務省の意識そのものがこの質疑で一貫して問われ続けてきていると思います。修正協議も進んでいると聞きますが、改めて、個人の基本的人権の保障、これを全うしつつ、職責を果たしていくということに対する刑事局長の見解をいただきたいと思います。
○森本政府参考人 繰り返しになりますが、まさに我々、刑事事件に携わる者は、刑事訴訟法一条の目的を達成するということを念頭に置きながら仕事をしておりますので、公共の福祉の維持と基本的人権の尊重を全うしつつ、その上で事案の真相を明らかにして、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現するということが大切、肝要であるというふうに考えております。
○井出委員 公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障との両方を全うをし、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することを目的とする。提供命令が実施されることになれば、事案の真相を明らかにするですとか、刑事法令を迅速に適用実現する、その辺りは期待できるのかなと思います。
しかし一方で、個人の基本的人権の保障というのは、森本刑事局長が初めて窃盗事件をやった、そのとき、捜査という権限に対する、強制捜査もある、そういう権力に対する恐れ、畏怖というものを感じられたというお話がありました。それは、一検察官として大変重要なことだと思います。
しかし一方で、個人の基本的人権の保障、これも公共の福祉の維持とともに両立するためには、その個人の基本的人権の保障という部分を、単に森本さんの最初の窃盗事件のように、現場の一検察官に求めるのみにとどまらず、やはりこのことも、個人の基本的人権をいかに保障していくということをいかに刑事訴訟手続の中にしっかり制度として入れていくかということが今回特に問われていますし、これまで、これに限らず、近年の刑事訴訟法それから刑法改正の中でこのことをしっかりと制度で担保していく、制度によって個人の基本的人権の保障を全うしていくということが求められ続けてきているし、提供命令についてもまさにそのことが問われていると思いますが、そのことについてはいかがでしょうか。
○森本政府参考人 委員御指摘のとおり、刑事訴訟法におきまして、基本的人権の尊重を全うすることは大切な理念であるというふうに考えております。
特に刑事訴訟法上問題になりますのは、被疑者、被告人の人権保障ということになりますので、その人権保障を全うしながら、その中でどうやって真相解明して、さらに、刑事訴訟法の目的を達成していくのかという姿勢で臨む必要があって、その点については委員と同じ考えでございます。
○井出委員 個人的人権の保障を現場の検察官のその人の人格識見に委ね続けるのではなくて、やはり法令、制度できちっと担保していくことが必要だと思います。そこを改めて伺いたいと思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
刑事訴訟法は、まさに先生がおっしゃったような考え方の下で、法律上、例えばこういうものは捜査できる、こういうものは裁判官の令状がなければならない、さらに、この委員会で繰り返し御答弁申し上げておりますが、捜索という仮に強制手段を取るとしても、例えば憲法上、包括的な差押えは禁止されているというような形で、憲法、刑事訴訟法は、まさにどこまでが許されるのかということをきちんと制度として縛るというふうな規定ぶり、たてつけになっておると思っておりまして、そのことは大切なことというふうに考えております。
○井出委員 今回の刑事デジタル法案というのは、やはり時代の変化、技術の変化に応じて刑事手続をそれにかなったものにしていくという意味では、大きな意義があると思います。
しかし、一方で、個人の人権を保障するというところを、そこも、時代に応じて刑事手続のものを変えていくのであれば、その一方で担保が必要とされている個人的な人権の保障についても、ブラッシュアップといいますか、やはり新しいものを追加していかなければいけないと思うんですね。ですので、今まさに修正協議が行われていると思いますが、その点の認識はいかがでしょうか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
立案当局といたしましては、今先生が御指摘のような観点も踏まえて、バランスを取って立案したつもりでもちろんございますし、これがベストだというふうには考えて立案をいたしました。
他方で、この委員会の中で様々な御指摘をいただきましたので、その御指摘に従って今修正協議が行われているものだというふうに当局としても認識しております。
その上で、法案がどのような形になるかは委員会でお決めになって、成立した暁には、その中で行われた議論や経過等も含めて現場の検察官にも周知徹底して、こういう考え方の下でこういう制度は運用していく必要があるというようなことについても徹底していくことが大切であるというふうに考えております。
○井出委員 修正協議の方は私は概略程度しか存じ上げておりませんので言いませんが、こんなことがありまして、昨年、なかなか検察庁においても取調べで不適切な事例が見られる、前にそこに座っておられた松下さんのお名前だったと思うんですが、全国に通知が行った、適正にやっていこうと。その通知の中に、現場の検察官の功名心というか、手柄を、成果を上げたい、そのことが行き過ぎているんじゃないかというような話があって、それは一つあるのかなとも思わなくもない。
しかし、先日、村木さんが参考人でいらっしゃったときに、村木さんが、法務省か検察官の人か分からないんですが、最近の検察はどうですかと言ったら、その法務省か検察の人は、若い人は変わってきている、若い人はよくなってきている、しかし点々々というような話だったとあります。
私はその通知を見たときに、現場の検察官のそういう成果をという思いもあるかもしれないが、やはり、それを指揮する管理職、上司の側に成果を求めよというような点も、そこはしっかりと読まなければいけないのではないか。そうするときに、先ほど、立案の段階で適正なもの、バランスと認識して提出をしたということをおっしゃられましたけれども、捜査の利便性、データを送ってくれ、それから、その情報をたくさん取るのではないかという御意見、御指摘、そのことにきちっとやはり制度で応えていくべきだろう。
今回、修正の協議は行われていますけれども、これからも刑事訴訟法に関係するものはいろいろ変わっていくんだろうと思います。それを、捜査機関の真相究明に資することをこれからも追加していく際であれば、やはり、今度は修正をいただかなくてもいいように、是非、提案の段階で、個人の人権保障というものもきちっとセットで制度として取り入れてやっていただきたいと思いますが、最後にコメントをいただきたいと思います。
○西村委員長 森本刑事局長、時間になっていますので、簡潔にお願いします。
○森本政府参考人 今後のことは、今後の別の法案のことは今後どうなるか分かりませんけれども、今先生から御指摘いただいたようなことを留意しながら、これからの作業に当たっていきたいと存じております。
○井出委員 しっかりやっていただきたいと思います。
終わります。ありがとうございました。
○西村委員長 次に、平岡秀夫さん。
○平岡委員 立憲民主党の平岡秀夫でございます。
今日は、この法案については二回目の質問ということでございますけれども、前回ちょっと積み残してしまったような話もありますので、まずそこから入っていきたいというふうに思います。
前回積み残しになったのは、仮装身分捜査についてなんですけれども、前回の委員会で私の方から、具体的な実施状況といいますか、どういう実施状況かというのを示せということで申し上げたら、答弁としては、具体的な実施状況、取組状況を明らかにすることは、犯人に手のうちをさらすことになりかねないため、差し控えさせていただくというような答弁になってしまっているんです。
通信傍受法ですら、国会報告ということでいろいろなことが義務づけられているわけでございまして、こういう通達的なものに基づいて行われることについては、やはりしっかりとした監視をしていかなければいけないという意味において、通信傍受法並みの、罪名ごとの件数などを示していくということは必要ではないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
○松田政府参考人 お答えさせていただきます。
仮装身分捜査につきましては、本年一月二十三日に実施要領を発出いたしまして、必要な取組が進められているところであり、その具体的な状況を明らかにすることは差し控えさせていただきますが、国民に対しまして、仮装身分捜査の実施状況を明らかにする必要性というところは認識しているところでございまして、一定の時期に実施状況を取りまとめて公表することについては検討してまいりたいと考えております。
○平岡委員 一定の時期にと言われたけれども、どういう時期にということをちゃんと明言することはできないんですか。全くもうこれは警察庁の判断に委ねられているというふうに思っているんですか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、本年一月二十三日に実施要領を発出して必要な取組を始めたというか、そういった状況でございまして、いつの時期にということはなかなか申し上げられませんが、捜査上の支障がないよう、若しくは犯人側の対抗措置が取られぬようにしながら、一定の時期、一定程度の取組が進んだ時期で公表したいというふうに考えております。
○平岡委員 今示せないというのならそれは仕方ないんだけれども、私としては、しっかりと監視を続けていきたいというふうに思いますので、この委員会でまた取り上げていきたいというふうに思います。
どういう問題かということをこの前はお示ししないままに質問してしまって、同僚委員の人たちには何のことかよく分からなかったかもしれないので、今日は、資料を用意させていただいて、警察庁の刑事局長から今年の一月の二十三日に出された通達をお手元に配らせていただいております。これを皆さんも見ながら、この問題についてしっかりと国会として何をすべきなのかということも一緒に考えていただきたいというふうに思います。
そこで、二〇一一年の、国家公安委員長主催の有識者による研究会があって、捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会という研究会なんですけれども、この中間報告で、諸外国、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、アメリカなどでも仮装身分捜査、厳密な意味での仮装身分捜査というよりは何か潜入捜査というふうに一般的には言っていたようですけれども、を実施している旨が報告されているけれども、これらの国はどういう法的な枠組みに基づいて潜入捜査あるいは仮装身分捜査というのをやっているんですか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
御指摘の捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会は、平成二十二年から二十四年にかけまして開かれたものでございまして、同研究会に報告するため、警察庁において諸外国の仮装の身分を用いて行う捜査活動について調査したものであります。
これによれば、諸外国においては、法令やガイドライン等に従って、例えば捜査員が仮装の身分を用いて経済活動等を行うことや、犯罪組織に一定期間潜入して組織の情報を収集し、必要に応じて犯罪行為を行うといった捜査活動が行われているとの調査結果が報告されたものと承知しております。
こうした諸外国の捜査も仮装の身分を用いて行われているものではありますが、今回実施することとしている仮装身分捜査は、仮装の身分を用いて一般社会で経済活動を行ったり、犯罪組織に一定期間潜入して必要に応じて犯罪行為を行ったりするようなものではなく、あくまでも、インターネット上における犯罪実行者募集に応募する捜査を行う際に、犯人に架空の身分証を提示するなど、任意捜査の範囲内で実施することができるものに限定して行うこととしているものであります。
○平岡委員 今、一定の範囲に限定して行っているものですとかと言われたんだけれども、それはあくまでも警察庁がそう思ってやっているだけであって、第三者は誰もそんなことをチェックもできないし、誰もそんな枠でとどまっているということが検証できるわけでもないので、やはり諸外国でも法的な枠組みをつくってやっているというところもあるというふうにちょっと聞いていますので、やはりこの仮装身分捜査については、法的な枠組みをつくらなければいけないのかどうかということをしっかりと検証していきたいというふうにも思います。
そこで、ちょっと仮装身分捜査における問題点としては、仮装身分表示文書等というのを作る、だから免許証とか身分証明書を仮装で作るわけですけれども、その作成とか提示が公文書の偽造とか偽造公文書の行使という形になって、違法な行為になるのではないかというふうに思うんですけれども、この点についてはどう考えているんですか。
○松田政府参考人 お答えさせていただきます。
架空の身分証明書を作成、使用することは、形式的には虚偽公文書作成等の構成要件に触れ得る行為ではありますが、他の方法では犯人の検挙等が困難であるなど高い必要性が認められる上、作成した架空の身分証明書は原則として犯人以外の者に提示しないことなどから、犯人以外の者や一般社会への影響もほとんど生じることはないものと考えております。
このため、仮装身分捜査は任意捜査として適法に実施できるものと考えておりまして、架空の身分証明書を作成、使用することは、刑法第三十五条の規定による法令行為として違法性が阻却され得るものと考えております。
○平岡委員 今、法令行為だというふうに言われたんですけれども、私が聞いたときとか、あるいはほかの記事なんかを見ても、正当な業務に当たるんだというような位置づけで説明されていたと思うんですけれども、いつからこれは法令行為だというふうに警察庁の方では整理してきたんですか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
いつからというのはちょっとなかなか難しいんですけれども、我々としては当初から、刑事訴訟法の任意捜査として行うものでありますので、その刑事訴訟法に基づく法令行為だというふうに整理しておるというふうに理解しております。
○平岡委員 ということは、法律の中に明確にこれが、こういう行為をやってもいいんだということが書いてあるわけじゃなくて、警察庁の方で、刑訴法に基づく任意捜査として法令行為だというふうに解釈しているということですよね。でも、その解釈が本当に妥当するかどうかというのは、最終的には裁判所で判断してもらうしかないんじゃないかと思うんですね。
警察庁が一方的に判断できる話じゃないと思うんですけれども、どうでしょうか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、実施した仮装身分捜査の適法性について、最終的には裁判所において判断されるものと考えておりますが、繰り返しになりますが、警察庁としては、他の方法では犯人の検挙等が困難であるなど高い必要性が認められる上、作成した架空の身分証明書は原則として犯人以外の者に提示しないことなどから、犯人以外の者や一般社会生活への影響もほとんど生じることはないということで、任意捜査として適法に実施できるものと考えておるということでございます。
○平岡委員 警察庁がそう考えているというのは分かりましたけれども、仮に裁判所で、これは法令行為に該当しないんだというようなことになったときには、どんな問題が生じるというふうに認識をしているんですか。そういう問題が起こったときのためには、どういう対応を考えているんですか。
具体的に言うと、そういう違法行為をした捜査官についての刑事責任とか、あるいはそういう行為をしようというふうに命令をした上司、先ほど井出委員も、何か検察官も、上司が大体焦って、いろいろやっちゃいけないこともやったりするというようなこともありましたから、上司が成果を焦って、何か違法な行為でもどんどんやれというふうな感じになっちゃうおそれもなきにしもあらずだと思うんだけれども、そういう上司の刑事責任とか政治責任といったようなものについてはどう考えているんですか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、実施した仮装身分捜査の適法性につきましては、最終的には裁判所において判断されるものと考えております。
お尋ねの、警察の行った捜査について適法性が認められた場合でございますけれども、まず、刑事裁判への影響につきましては、他の刑事事件と同様に、捜査によって収集された証拠の評価を含め、これも最終的には裁判所において判断されるものと承知しております。
さらに、お尋ねの、上司、捜査指揮官等が刑事責任を負うのかというお尋ねであるというふうな点でございますけれども、この点は、個別具体的な事情により判断されるところでございまして、一概に申し上げることは困難であります。
いずれにしましても、警察といたしましては、そのようなことにならないよう、仮装身分捜査を実施する際には、お示しもいただいている実施要領に基づくなどして、適切に実施してまいりたいと考えております。
○平岡委員 通達が出されている、その根底にある社会的状況とか問題意識というのは私も理解できるんだけれども、だからといって警察が何をやってもいいということじゃなくて、やはりちゃんと、警察の活動については、法令に根拠を持って、警察というのはある意味では実力組織ですから、根拠を持って行動するということが必要であるというふうに思います。
その点から見ますと、実は、私もこれはある人から教えてもらったんですけれども、警察研究第十九号、これは二〇一六年に出されているものですけれども、そこで、警察政策フォーラムというのが紹介されていまして、その中で、丸橋昌太郎という信州大学の経済学部の准教授が、ナンバープレートのつけ替えとか仮装身分証明書の作成といったような違法行為については、しっかり法令行為として行うべきだということを発言していました。
それから、これは警察の内部の組織の方々でありますけれども、猪原誠司警察庁刑事局組織犯罪対策部暴力団対策課長、当時ですね、ですけれども、特に実務としてはしっかりとした法令の根拠があった方がいいのではないかと発言をしていますし、それに続いて、筒井洋樹警察庁刑事局刑事企画課刑事指導室長も、捜査の必要性ということで個別の事案ごとに正当行為として認められるということでは、現場の立場からすると非常に怖い、類型的に想定されるような事案については、何らかの裏づけがあった方がいいと私も感じるというふうに発言している。
このように、警察の内部の事情をよく知った人も、ちゃんとした法令の根拠とか裏づけとなるような枠組みというものがあった方がいい、必要だというふうに言っているわけであります。
更に言えば、この警察が行っている捜査の正当性を第三者がチェックする体制をつくっていくためにも、また対象犯罪とか対象行為が恣意的に拡大されないためにも、仮装身分捜査は法律でしっかりと枠組みを定めて実施すべきではないかと思いますけれども、どうですか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
済みません、その前に、先ほどの答弁で、適法性が認められなかった場合の刑事責任と言うべきところを、適法性が認められた場合の刑事責任というふうにお答えしたみたいですので、済みません、訂正をさせていただきます。(平岡委員「了解」と呼ぶ)申し訳ございません。
その上で、お答えをさせていただきます。
御指摘の警察政策フォーラムにつきましては、平成二十七年三月六日、「組織犯罪対策のための秘匿・仮装を用いて行う警察活動について」、これをテーマにいたしまして、秘匿、仮装を用いた様々な態様の警察活動についての議論がなされた中で御指摘の発言がなされたものと承知しております。
先ほど諸外国の捜査に関しましても申し上げたとおりでございますが、仮装の身分を用いて行う捜査活動にも様々なものがあり得るところであります。例えば国民の社会生活に影響を与えたり、権利利益を侵害するような影響を行うものについては、現行法下で全て実施できるとは考えておらず、そのような捜査手法を導入する際には、法整備の必要性についても議論していく必要があると考えております。
その上で、今回実施することとしている仮装身分捜査は、仮装の身分を用いて行われているものではありますが、仮装の身分を用いて一般社会で経済活動等を行ったり、犯罪組織に一定期間潜入して必要に応じて犯罪行為を行ったりするようなものではなく、あくまでも、インターネット上における犯罪実行者募集に応募する捜査を行う際に、犯人に架空の身分証明書を提示するなど、任意捜査の範囲内で実施することができるものに限定して行うこととしているものであります。
このため、今回実施する仮装身分捜査は、現行法下において実施可能な範囲で行うものでございまして、したがって、新たな立法措置がなければ実施できない捜査であるとは考えていないところであります。
警察としては、仮装身分捜査を実施する上での留意事項等を示した実施要領に基づきまして、これを適正に実施してまいりたいと考えております。
○平岡委員 例えば運転免許証の偽造なんかは、犯罪の構成要件に該当するような行為ですよね。そういうことを任意捜査でやってもいいんだというふうに言われたら、もうこれは、どこにその限界があるのかというのは非常に分からなくなってしまうような気がするんですよね。
私としては、そういう犯罪の構成要件に該当するような行為を捜査活動の中で行っていくということについては、やはりしっかりとした法的枠組みが必要だと思っていますので、このことは、これから警察庁がいろいろ実施状況について報告をしていただくようでございますので、その実施状況も見ながら、引き続き、法的枠組みを作ることを追求していきたいというふうに思います。もう答弁は要りません。
次に、これも積み残しになっている話なんですけれども、昨年の十二月に、袴田事件の再審問題について検証を行うという話がありまして、私は、第三者がしっかりと検証すべきだ、内部でやるのではお手盛りになってしまうし、調査される側が調査をするというのも変な話だから、ちゃんと第三者が検証するという意味で、第三者機関というのを設けて検証すべきだということを申し上げました。
その際に、刑事局長さんからも、ちゃんとしたチームをつくってやるんだというふうに言われましたけれども、そのチームというのは、昨年の十二月二十六日に最高検が公表した検証結果報告書で、まあ、チームで行っているんだと思いますけれども、私は、裁判手続が再審手続も含めて非常に時間がかかったことについては、ちゃんと事実関係も明らかにしているというふうには思うんですけれども、証拠捏造問題については、どうもちょっと不十分じゃないかというふうな気がするんですよね。
そういう意味で、このチームでは、証拠捏造問題について検証できるチームだったのかどうか、答弁してください。
○森本政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの検証につきましては、最高検察庁におきまして、刑事部に設置されたチームで行われたものと承知しております。
最高検察庁の刑事部は、再審事件を含めまして、事件の捜査及び処分の決定に関することや事件の公判の遂行に関することを所管しておりまして、本件の経緯や事実関係を把握しているため、検証の主体として適切であることから、最高検察庁刑事部において検証を行ったというものだと承知しております。
○平岡委員 今の答弁は、このチームは犯罪の捜査時点のところから検証できるようなチームであるというふうに答弁されたと思うんですけれども、それであるならば、本来、この証拠捏造問題についてもしっかりとした文書が出てきてしかるべきだとは思うんだけれども、どうも、見ますと、証拠捏造があったという検証結果は全く私の目では出てきていないように思うんです。結局、この最高検の検証結果では、証拠捏造があったということはなかった、つまり証拠捏造はなかったという検証結果になっているということですか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
静岡地裁の判決におきましては、三つの証拠の捏造というものが指摘されました。そのうち、五点の衣類それから共布というものにつきまして捜査機関が捏造したものと断定した理由については、この検証結果報告書では、客観的事実関係と矛盾する旨を、また、検察官調書を捏造としている点につきましては、検察官の取調べがそれ自体として袴田さんの供述の任意性を失わせるものとまでは評価できないが、被疑者の弁解に耳を傾ける姿勢が十分でなかったことは否定できない旨を、それぞれ検証結果として公表しているものと承知しております。
○平岡委員 私も報告書を読みましたけれども、この報告書の第六の3の(2)の、ウの「また、」以下の第二文で、こういうふうなくだりがあるんですね。その他令和六年静岡地裁が、これは、この静岡地裁というのは再審の中で無罪判決を出したやつですけれども、この令和六年静岡地裁が、「ねつ造は不可能であるとする検察官の主張を排斥している判示については、いずれも合理的な根拠を欠いていると評価せざるを得ない。」というふうに記載しているんですけれども、でも、何ら具体的な理由とか根拠は挙げられずに、何かその捏造はあったという静岡地裁の判決については合理的な根拠を欠いていると言っているだけで、外部の人にとってみれば、これでは検証のしようがない、再検証のしようがないんじゃないかと思うんですけれども、どうですか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の箇所につきましては、まさに御指摘のとおり、詳細は記載がなされていないのはそのとおりかと存じます。
その上で、検証結果につきまして、その前でいろいろなことを詳しく書いてきて、最後、そのほか、その余の点についてはという形で明示している部分でございまして、捜査、公判上の問題点を検討するための前提となるところについては厚く記載してきて、他方で、最後のところ、その他のところを取りまとめておるという事実関係になっておりますが、分かりにくい記載になっているのはそのとおりかと存じます。
○平岡委員 何か自分たちのための検証結果になっているような気がするんですよね。やはりそれは第三者が、外部の人から見て、ちゃんと検証したというのが分かるような検証結果でなければいけない。そんな、根拠も理由も何も示さないで、捏造はなかったというふうに判断していると言われたって、そんなの、調査される人がそういうふうに勝手に言っているだけじゃないかというふうに思うんですよね。
それはそれとして、今、森本局長が言われたように、検証内容とか検証結果に自信があるなら、外部の専門家等から成る第三者機関によって検証を行っても何の問題もないんじゃないか、むしろ、そうすることによって国民が納得いく検証になると思うんですけれども、法務大臣、どうですか。
○鈴木国務大臣 今御指摘の点、第三者機関ということでございますけれども、刑事事件の手続、これは、裁判所の訴訟指揮の下で、裁判所を含む訴訟関係者によりまして遂行されるものでありますので、いわゆる第三者機関、これを設置をして検証を行うことについては、まずは、司法権の独立の観点から問題が生じるという点。さらには、検察当局自身が一連の刑事手続を訴訟関係者の一員として遂行してきたということでありますので、その経緯や事実関係、この把握をしておりますので、そういった意味では、検証の主体ということでいえば検察当局というものが適切であるという点。さらには、この検証は基本的、客観的な事実関係を前提としたものでありまして、検察当局において検証を行うことはその適正さに疑いを生じさせる事情にはならないと考えられるという点。さらには、第三者機関ということになりますと、関係者の名誉、プライバシー、この侵害のおそれがあるという点。
こうしたことから考えまして、第三者機関ではなくて最高検において検証を行ったということで、我々としては適切だと考えております。
○平岡委員 私は、別に、最高検の外につくれというんじゃなくて、最高検がやるにしても、内部の刑事局みたいな人たちがやるんじゃなくて、ちゃんとした第三者的立場として考えられるような人を呼び込んで、そこでやったらいいんじゃないかということを言っているのであって、司法権の独立とかといって言われたような話については影響のないような形でやれば済む話だと思うし、今法務大臣が言われたようなできない理由は、それは克服できる理由だと思うので、私は、引き続き、これはちゃんとした第三者的機関で検証を行うということを要求し続けたいというふうに思います。
ちょっと時間がなくなったので、本題の法案の質疑に入りたいとは思うんですけれども、時間も余りなくなりました。前回ちょっと積み残した話で、オンライン勾留質問なんですけれどもね。
実は、この報告書の中でも裁判官による勾留質問の話がちょっと出ていまして、何を言っているかというと、本来なら裁判所によって勾留質問しなきゃいけないんだけれども、清水警察署で行われたことについて、こういうくだりがありました。「検察官としては、被疑者にとって場所的移動がない場合には特に、警察と検察との区別が分かるように伝える工夫をするとともに、」云々とあるんですよね。つまり、場所的移動がないときには、勾留質問の中立性、公正性が損なわれる、あるいは被疑者の防御権が侵害されるというようなおそれがあることが認識されていたわけであります。
オンライン勾留質問を実施するに当たっては、今回の法案の中でも、裁判所があらかじめその旨を被告人に告げるということにはなっているんですけれども、それだけでは十分ではないような気がするんですけれども、これは、先ほど言いました勾留質問の中立性、公正性を維持するために、何かほかに考えていることはないんでしょうか。
○森本政府参考人 勾留質問は、裁判官が被疑者等を勾留するか否かを判断するに当たりまして、被疑者等から直接被疑事件等に関する陳述を聴取する機会でありまして、そのような聴取については、裁判官等が他の機関とは別個独立の中立的な立場であるという形で行うことが望ましいというのは委員御指摘のとおりかと思います。
この改正法が成立した場合には、裁判所において、個々の被疑者等の年齢、性格等の特性をも踏まえた上で、ただいま申し上げた告知を適切に行うものと考えておりまして、裁判所が適切に告知を行うことによって、画面越しに映し出された相手が裁判官であって、中立的な立場で勾留質問が行われることを十分に認識できるというふうに考えております。
○平岡委員 それだけで十分だというような答弁だったとは思いますけれども、いろいろ問題点を指摘している方々がおられますので、十分に実質も確保できるように、検察官としても対応していっていただきたいというふうに思います。
時間がなくなりましたので、最後の質問ですけれども、ちょっと本題とはそれる質問で大変恐縮ですけれども、実は、モンゴルは二〇一七年に死刑を廃止したんですけれども、その死刑廃止に最も貢献したのが、当時のモンゴルの大統領のツァヒャー・エルベグドルジ大統領なんです。
このエルベグドルジ元大統領が、現在、死刑廃止国際委員会委員を務めているんですけれども、来月の、五月の十六日から二十日の間に日本を訪問する予定であると聞いています。法務大臣は、日本の死刑制度を所管する大臣として、エルベグドルジ元大統領と面談して意見交換してはどうかというふうに思うんですけれども、もし法務大臣が都合が悪いのであれば、法務副大臣はどうかというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
○鈴木国務大臣 今御指摘のモンゴル元大統領ということでございますけれども、死刑制度について様々なそうした御見解を展開をされていると承知をしております。
法務省といたしましても、死刑制度の存廃、これを含む法務、司法分野における施策の立案、実施においては、関連する国際的な動向、これも踏まえながら検討するということは大事だと承知をしております。
ただ、今回来日をされるということで、私どもとしては、これは先方の日程ということでもございますし、そこについて私どもとして特段の情報を持ち合わせていない状況でありますので、そこは、そうした情報収集は適切に対応していきたい、そのことを申し上げたいと思います。
○平岡委員 時間が来ましたので、是非、エルベグドルジ元大統領に会っていただいて、見識を広めていただくことを要望して、私の質問を終わります。
○西村委員長 次に、藤原規眞さん。
○藤原委員 立憲民主党・無所属の藤原規眞です。
違法収集証拠排除法則が電磁的記録提供命令について抑止になるとは考えないというふうに、政府参考人たる森本刑事局長は言明されました。
具体的には、四月九日の私の質問に対して、一つ、違法収集証拠排除法則が抑止になっているという趣旨で申し上げているというつもりはございません、二つ、違法収集証拠排除法則があるからいいんだというふうに申し上げているわけではございません、三つ、違法収集証拠排除法則につきましては、この電磁的記録提供命令を創設するに当たって、これがあるからいいんだと申し上げているわけではなくてと繰り返し答弁されています。
大事なことだから二回言いますと、よく学校の先生に言われたものですけれども、森本刑事局長は実に三回おっしゃっているんですね。
一方で、同じく四月九日、藤田委員の質問に対し、森本刑事局長は、電磁的記録提供命令により収集された証拠についても、いわゆる違法収集証拠排除法則が適用されるところでございます、令状主義の精神を没却するような重大な違法があれば、それは証拠として許容することが相当でないと認められて、証拠能力が否定されることになります、このような事後の規律も電磁的記録提供命令の適正な実施に資するものと法務省としては考えておりますと答弁されています。
これは矛盾じゃないですか。
○森本政府参考人 私の答弁が分かりにくくなっていますことについては、申し訳ありません。
藤原先生にお答えしたときには、四月一日の答弁を受けてという形で御質問があり、四月一日の時点で違法収集証拠について言及したものが、この前も述べたんですけれども、そのときの答弁が、この電磁的記録提供命令の抑止に役立つかどうかという観点のものではなくて、証拠の収集、保管の在り方との関係で答弁したものだったものですから、その趣旨を、そのことを申し上げたつもりで、もう一度言いますと、違法収集証拠排除法則があるからこの制度はいいんだ、あるから大丈夫なんだということではないということで申し上げたんですが。
他方で、分かりにくくて申し訳ないんですが、じゃ、何も関係がないのかといえば、先ほど委員から御紹介があったように、藤田先生の御質問に対して御回答したように、一定の役割は果たすものというふうに考えておりまして、もう一度、済みません、そこについて、私の考えを述べてもよろしいでしょうか。
まず、我が国におきましては、判例上、違法収集証拠手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されることになっております。これは先生御紹介いただいたとおりでございます。
この違法収集証拠排除法則は、電磁的記録提供命令により収集された証拠につきましても適用されることから、電磁的記録提供命令の適正な実施に資するものであるとは考えております。このことにつきましては、先日の参考人質疑におきまして、池田参考人も、違法収集証拠排除法則の適用を通じて、電磁的記録提供命令に係る違法捜査の抑止を図っていくということもあり得る旨を発言されたものと承知しております。
以上のことからしまして、電磁的記録提供命令の適法性を確保するための規律が、事前の令状審査と事後の不服申立てだけ、それだけだと考えているわけではなくて、今申しました違法収集証拠排除法則もそれに資するものであるとは考えております。
以上でございます。
○藤原委員 私は揚げ足を取りたいのではなくて、この法案の許容性といいますか、適法性を支える根拠について、この排除法則一つ取っても非常に場当たり的な説明をせざるを得ない、そういう完成度の低い危うい法案じゃないですかというふうに問うているんですね。
今、森本局長が説明されましたけれども、結局、議事録を読んでも、後でチェックしても、これははっきり言ってよく分からないんですね。私、一応弁護士をやっているんですけれども、弁護士をやっている私から見ても、非常に場当たり的に見える。
例えばさっきも、四月一日の質疑、これを受けての回答だったら、ちょっとニュアンスが異なることをおっしゃる。これは非常に完成度の低い法案だと、この説明一つ取っても思わざるを得ないんですけれども、そこについてどうお考えですか。
○森本政府参考人 完成度が低いとは思っておりませんで、私の答弁が分かりにくいものだったことについては、もう一度、申し訳ございませんでしたと謝罪したいと思います。
その上で、二つを整理してきちんとした形で述べれば、今申しましたように、電磁的記録提供命令の適法性を確保するための規律としては、まず、事前の令状審査と事後の不服申立てがございます。さらに、違法収集証拠排除法則につきましても、その適正な実施に資するものとは考えておりますというのが、まず一つのパッケージとしてありまして、それとともに、証拠を消去しなければならないかどうかという規律を考える上で、違法収集証拠排除法則との関係で、電磁的記録提供命令で受領したものを消去すべきか否かというところに関する説明としても、違法収集証拠の排除の法則の考え方が当てはまるところがあって、それに基づいて説明をした、この二点があるということでございます。
○藤原委員 四月九日の質疑で森本刑事局長は、例えば、違法収集証拠排除法則の事案が仮にあったとしても、その事案におきましては、裁判所の手続の中で、この覚醒剤が違法と認められたということになれば、押収経過とかそういうものは残っていくわけで、そういったところに残しておく必要があるという趣旨で、すぐに消去というわけにはいかないという文脈で、違法収集証拠排除法則について御説明させていただいているというふうに答弁をなさっているんですね。
これは文字で見ても、私、ちょっとよく分かりにくいんですけれども、仮にこの意味が通ったとして、例として挙げられた覚醒剤ならそうかもしれません。しかし、今回は電磁的記録ですね、情報です。法禁物の覚醒剤とは根本的に違うわけですね。
情報を取られた者としては、これは一刻も早く消去してほしい、特に捜査機関に見られる可能性をゼロにしたいという思いが強いはずなんです、覚醒剤と違って。
事後の検証が必要だから持っていなければならないというふうにおっしゃいますけれども、その説明というのは、被処分者やあるいは本来の情報主体にとって納得できるものだと思われますか。
○森本政府参考人 まず、押収の処分がどういう場合に取消しがなされるかと。それもいろいろなパターンがありますので一概に言えるものとは考えていないんですけれども、例えばですけれども、現行の刑事訴訟法の下では、捜査機関が押収をした場合に、この電磁的記録提供命令と離れて、現行法下において証拠を押収した場合に、その押収処分が事後的に取り消されたとしても、その段階で例えば、当該証拠の複製等を作成して、あるいはそれが捜査報告書になっていたという場合に、これを直ちに廃棄、消去することとはされていないところでございます。
じゃ、例えば、その写しを作って捜査報告書にしたものを、証拠物はお返ししたとして、どうするかという点については、これはこれとして、その捜査の過程の中で押収した証拠の例えば写しを作って、それで、それのうち必要な部分を捜査報告書化した、その捜査報告書については、後に、弁護人の閲覧に、開示の対象になるものかもしれないという意味では、捜査の一連の過程の中で作成された証拠書類等については、適正に保管し、管理しておく義務がやはり捜査機関側にはあるんだろうということですので。
そういう意味で、電磁的記録提供命令で受け取った電磁的記録につきましても、仮にそれが取り消されて、というかお返しすることになったとしても、それが直ちに全部消去しなければならないかというと、今言ったような規律との関係でもそうはならないのではないかということを申し上げたということでございます。
○藤原委員 いや、事後の検証とおっしゃいますけれども、じゃ、事後の検証というのは何のためにあるんですか。何のために何の目的で実施するものですか。
○西村委員長 森本刑事局長、申し訳ありませんが、大変重要なところなんですけれども、答弁が非常にやはり分かりにくくて、どっちなんだろうとここで聞いていても思うことが結構ありますので、明確に答弁をお願いします。貴重な委員会の時間ですので、お願いします。
○森本政府参考人 お答えいたします。
事後といいますのは、捜査が行われて例えば起訴されましたといったら、その後、起訴した後、その証拠について、裁判になればそれを開示するか否か、それから確定記録になった場合にも、その後に例えば、後で、再審のためとか、それから国家賠償請求訴訟に備えるとか、もろもろいろいろな手続がその後続いてまいりますので、そういったところに利用されるかもしれない証拠につきましては、何というんですか、捜査機関がすぐに廃棄するという形には、すぐに消去するという形にはなっておらず、一定期間、法令に従った形で保管、保存するという決まりになっているということを申し上げております。
○藤原委員 例えば、再審のためとか、あるいは国賠のためというふうにおっしゃいましたが、ということは、結局、人権のためですよね、人権保障の目的で事後の検証を行うわけですよね。今うなずいていらっしゃいますけれども。
じゃ、人権保障のためとうたいながら、その事後の検証、そのために、結局、消去しないと。消去してほしいと思うのは、それは人権ですよね、押収された側からしたら。結局、人権の目的とうたいながら、結果的に人権を制約していることになりませんか。結局、自己矛盾していませんか。
○森本政府参考人 ある証拠がどのような証拠価値を持つのかということは、捜査、公判の進捗段階に従って見方が変わり得る場合があると思います。例えば、当初の段階ではこれは無関係だと思っていた証拠が、後に例えば、被告人のアリバイを、主張を裏づけるものであったということもあり得るわけです。
それで、電磁的記録提供命令の場合に、誰から提供を受けるのか、情報主体が誰か、被処分者じゃなくて情報主体が誰かということとの兼ね合いになるかもしれませんけれども、先ほど先生がおっしゃった例ですと、例えば、Aさんという情報主体が提出したものが、Bさんという人が被疑者、被告人になって、その公判で、Bさんにとって必要な証拠になる場合もあり得るということですので、Aさんにとっては取り消してもらいたいものかもしれないけれども、Bさんとの兼ね合いで、本当に取り消してしまって、なくしてしまっていいのかという問題があるというふうに考えております。
○藤原委員 違法収集証拠を前提に、森本局長が例として挙げられているんですよ。それでもAさんとBさんで違うから、Bさんで使うかもしれないからって、今、同じこと言えますか。違法収集証拠の例ですよ。しかも、私が出した例じゃなくて、森本局長が出された例ですよ。
○森本政府参考人 済みません。違法であったというものにつきましても、いろいろな段階、いろいろな、軽微な違法から、例えば、手続違反的なものから……(藤原委員「いや、令状主義を没却するような重大な違法ですよ」と呼ぶ)いろいろなものがありまして、その全体につきまして、今の刑事訴訟法の体系がそういったものを消去するという体系になっていない。
ここにつきましては、参考人質疑のときに池田参考人、言っておられたのは、そういった問題についてはもちろん将来の課題としてはあるかもしれないというふうにおっしゃっておられましたけれども、この電磁的記録提供命令にかかわらず、現行刑事訴訟法の体系といいますか考え方、判例に基づいて我々がやってきた実務というもの全般がそういう形になっていますので、その中で、この電磁的記録提供命令だけに特化する形、あるいは電磁的記録だけに特化する形でそういった規律を設けるのが妥当なのかどうかという議論があるということだろうと思っております。
○藤原委員 今の体系だったらというふうにおっしゃいますけれども、その今の体系の下で森本局長が出された例は覚醒剤なんですよ。法禁物なんですよ。情報だけ特化するわけにいかないとおっしゃいましたけれども、覚醒剤と電磁的記録の中に入っている情報は価値が違うのは当たり前じゃないですか。だから、特化すべきだというふうに考えがあってもおかしくないと思うんですけれども、それでも法禁物たる覚醒剤と情報は同じだ、特化する必要は全くないんだ、そう考えていらっしゃるということですか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
済みません、覚醒剤という例を出した私が悪かったのかもしれません。違法収集証拠排除法則に関する判例が覚醒剤に関するものが多かったので、それを典型的な例として出させていただいたわけですが、法禁物と比較しようとしたわけではなくて、別に覚醒剤じゃなくても、普通のどんな書類とか、それから、何でも証拠物でも構わないんですけれども、そういったもの、要は、法禁物でない一般的な証拠物、証拠書類について、それが仮に違法収集証拠、違法として収集された証拠であったとしても、その違法にもいろいろな段階がございます。そういうものについて、違法収集証拠排除法則という判例法則は確立しておりますけれども、それについて、例えば、違法だから消去しろという形の刑事実務の体系にはなっていないので、それと同様に電磁的記録提供命令についても考える必要があるのではないかという趣旨で申し上げたものでございます。
○藤原委員 さっぱり分からないんですけれども、じゃ、もう一回。
捜査報告書の話をされましたけれども、消去したとしても、捜査報告書に添付する場合はあり得るというふうにさっきおっしゃいましたけれども、これ、捜査報告書に添付されたら、消去する意味なんかないんですよね。より分かりやすい形でずっと残ることになるわけですよね。これは、捜査報告書の場合も同じだというふうに言えるんですか。
○森本政府参考人 先ほど申し上げましたのは、押収いたしまして、押収物を分析等する中で捜査報告書がもう作成されてしまっている、作成されている、その作成された捜査報告書とか、あるいは複写があって、その複写を消去するという体系になっていませんということを申し上げました。
他方で、今回、先生が御質問の、電磁的記録提供命令で受領したものについて、どの時点で押収処分が取り消されるかというのはあるんですけれども、それが、仮に、取り消されて返還した後に、その証拠を本当に裁判に使ってよいかどうかということについては、それは後の裁判の中でこんなものは使うべきじゃないよねというふうに規律されることもあり得るでしょうし、それは、捜査機関としても、じゃ、その取り消されたものを証拠としてすぐに使おうという発想になるかというと、基本的には、それは、取り消された以上は、まずは使えるのか使えないのか慎重に判断して、仮に、本当に軽微な違法で形式的な違反であった場合にはとか、何かの事情があれば使う場合もあり得るでしょうし、これはさすがに使っていけないよねという場合は使わない場合もあるでしょうし、それは、最終的には裁判所の判断で決まっていく、そういうことになるのではないかというふうに思っております。
○藤原委員 証拠として使われるかどうかという話をしているわけじゃないですよね。
ちょっと、御自身、分かりにくいとか例が下手というふうにおっしゃっていますけれども、鈴木大臣、今の森本局長の話、分かりますか、説明。広く国民が納得できる内容だと考えられますか。私にはさっぱり分からないんですけれども。
○鈴木国務大臣 委員の持たれていた、そういった懸念について、私も最初この法案について説明を受けたときにそういった感触を持ったのは事実であります。
ただ、その一方で、やはり例えば、先ほど局長からも答弁しましたけれども、再審の状況であったりとか、あるいは国賠であったりとか、そういったところで使う可能性があるという中で、これまでの刑訴法の体系の中でもそういった消去をするということになっていないという状況の中で、この電磁的記録命令についても同様の取扱いをするということ、そのことについて私も理解をしたという経緯があります。
そういった経緯から、今のいろいろな答弁、やり取りということを聞いている中では、私としては、これは理解ができないということではない、理解はできるのではないかと思っておりますが、もちろん、なかなか難しい話ですので、すぱっと理解できるかということでいうと、それはなかなかそうだとは言い切れませんが、私は違和感があったという状況ではありません。
○藤原委員 森本刑事局長、元々検事さん、検察官ですね。井出委員が配付された資料にあるとおりなんですね。
捜査、公判手続の現場のプロとして、違法収集証拠排除法則には極めて精通しておられるわけですね。そんなプロ中のプロが、議事録を読んでもよく分からない説明をされる、同じ日の同じ委員会で自己矛盾していると言われても仕方がないようなことをおっしゃる。また後で述べる、時間があるか分からないですけれども、秘密保持命令ではとっぴな具体例を挙げたりもされる。このこと自体、電磁的記録提供命令が法理論上も完成度の低い代物だと私は再度指摘したいと思います。
排除法則についてはここまでにして、次に移ります。
手続に違法があったとして、電磁的記録提供命令が取り消された場合、一旦移転された電磁的記録については、当該電磁的記録提供命令を受けた者に対してこれを移転、要は返却することにより原状回復が図られるというふうに理解していいんですよね。
○森本政府参考人 御指摘の場合には、当該命令により提出させた電磁的記録について、被処分者への返還に応じることになると考えております。
○藤原委員 では、例えば、これは、捜査の現場にも周知徹底されるというふうに理解していいんですね、どのように周知徹底するかも含めてお答えください。
○森本政府参考人 捜査機関の活動が適正に行われなければならないということは当然でございまして、本法律案が改正法として成立した場合には、電磁的記録提供命令が適正に運用されるよう、捜査機関に対しまして、今御指摘の電磁的記録提供命令が違法である場合として裁判所により取り消された場合には、提供させた電磁的記録について被処分者への返還に応じることも含めまして、その制度内容につきましては、通常でありますと通達等の形になろうかと思いますけれども、そういった形で適切に周知してまいりたいと考えております。
○藤原委員 次、被疑事件、被告事件との関連性のない個人情報その他の秘密情報等について伺いたいと思います。
捜査機関が収集した情報に被疑事件、被告事件と関連性のない個人情報や、あるいは企業情報、労働組合の秘密情報が含まれていた場合、捜査機関においてその情報が不適正に利用されないよう、適正かつ厳重な管理が当然必要になってきます。
第三者機関の設置や別途立法の必要性というのはこの委員会で私は再三問うたんですが、どうやら法務省にはそのつもりは全くないようなんですけれども。
そこで、伺います。どのように適正かつ厳重な管理を行うんですか。
○森本政府参考人 捜査の過程で作成、取得した電磁的記録につきましては、刑事訴訟法あるいは刑事確定訴訟記録法といった法令や法務大臣訓令であります記録事務規程等の各種事務規定に従って、適正に取り扱うということが必要となります。
ですので、それらの法令や規定では、まさにその目的のために保管しなさいよということになっておりますので、そういった規定に基づいて記録の適正な管理に努めていくことになろうかと承知しております。
○藤原委員 秘密保持命令について伺います。
前回、四月九日の質疑で森本局長は、現行法の下で森本局長御自身が悪いことをしたケースを想定して説明なさいました。まず、森本局長が御友人に盗品を預けている、御友人がその盗品の押収を受けた、その上で、現行法では、御友人が押収を受けた旨、森本局長には連絡してくるかもしれない、しかし森本局長に直接連絡が来るわけでないから、現行法のたてつけと変わりはない、以上が要諦になります。
しかし、秘密保持命令ができると、森本局長が捜査機関から連絡を受けられないのはもとより、御友人から連絡が来る可能性すらなくなる。連絡したら罰せられるわけですから。私は、不服申立ての権利、これは、事前の令状審査と並んで、電磁的記録提供命令の適法性を支える重要な根拠だと思うんですけれども、その例での森本さんは、概念上は権利を持っていますけれども、実際に行使できないんじゃないですかというふうに申し上げたんです。行使できない権利は意味がないんじゃないですかと申し上げたんです。
これに対して森本局長は、全ての人が、全員が十全にその権利を行使できなければ意味がないという立場には立っていないとおっしゃったんですね。私は、何も、全員に十全に保障しろなんて言っていないんです。ここに言うところの森本さんに保障しないのが問題じゃないですかというふうに申し上げているんですね。
具体例で、現行法では御友人が、連絡が来るかもしれないが、秘密保持命令で封じても問題はない、捜査の必要性と人権保障のバランスから、これは人権保障を後退させてもやむを得ない、法務省ははっきりそう考えているということですか。これは比較考量の結果だということですか、それが。
○森本政府参考人 お答えいたします。
それこそ、まさに事案によるのだと思いますけれども、例えば、ある特殊詐欺の事件で、いわゆる出し子と言われる方の証拠を分析している中で、上位者ないしはその組織に関する証拠がある、Aさんに関するどうも証拠がありそうだということで、Aさんに関する情報について電磁的記録提供命令を発してもらって、それを証拠収集したという段階がまずあったとします。
その場合に、Aさんが、ここで、被処分者、提供してくださった方に秘密保持命令がかかってしまったら、情報主体であるAさんに連絡が行かないから、事実上、一定期間、秘密保持命令がかけられている期間、不服申立てがなされないということが考えられます。
その場合に、その期間、不服申立てができないから、それは不当で、おかしいのか。それを保障しなければならないという立場に立つのか。あるいは、今出した例でいいますと、この組織を解明して、組織犯罪をきちんと解明して、適正なる処分をするためには、一定程度、Aさんには情報が行かない、Aさんに行かないことによって組織にも情報が回らないという状況をつくって、秘密保持命令でそういう状況をつくって捜査を遂行していくのがいいのかという問題になろうかと思います。
○藤原委員 森本局長は、四月九日の柴田委員の質問に対する答弁で、情報主体が、事実上、電磁的記録提供命令による不服申立てがしにくくなるということを認めつつ、不服申立て権はあるので、どういう形か分かりませんけれども、それを知り得ることはあると答弁なさっているんですね。
これは、どういう形か分かりませんけれどもというのは、どういうことですか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
度々で恐縮でございます。私の答弁が拙いものであることについては、おわび申し上げます。
その上でですけれども、事案によっていろいろなケースがありますし、どこまでつまびらかにして、どういうケースを出して答弁するのがいいかということがございましたので、そのような答弁になってしまいましたけれども、じゃ、どういう場合が考えられるかというふうに申し上げれば、今申しましたように、秘密保持命令がかかっていて、それが必要がなくなったら取り消されるので、取り消された場合には本人に通知が行くという場合もあります。
それは、被処分者、これもいろいろな場合がありますので、ケース・バイ・ケースで、ちょっと余り詳しく述べられないところもあるんですが、例えば、事業者によっては、本人に通知しなければならない契約上の義務を負っている、情報主体にですね、ような業者もあります。他方で、そうでない業者もあります。
そういう場合に、秘密保持命令がかかっていて、それで提供義務があるという業者であれば、秘密保持命令が必要がなくなったということで、秘密保持がなくなれば、そうすると、事業者から本人に契約上の義務に従って情報が提供されるというような場合があるということが想定されるものと考えます。
○藤原委員 先ほど局長の答弁で、一定期間と、秘密保持命令について、おっしゃいました。これは、おっしゃったのか口が滑ったのか分からないんですが、何らか期間を限定するという必要があるともう法務省は考えていらっしゃるということですか。
○森本政府参考人 一定期間と申しましたのは、まずは、立案当時におきましても、必要がなくなったときには取り消さなければならないものとしております。
他方で、必要がなくなったときに取り消しますので、今の法律案のままの形であったとしても、期間を定めること自体は許容されていて、裁判官によっては、令状を出すときに、いつまでもというわけにはいかないから、これぐらいの期間でいいですよねというようなことを言ってくる場合というのも想定されますので、そういった場合には期間が限られますし、あるいは、必要がなくなったら取り消されるということでございます。
そういったことについては、事案によっては期間が一定期間になるというか、少なくとも必要がなくなれば取り消されなければならないということで、一定期間というふうに申し上げました。
○西村委員長 藤原さん、時間が来ています。済みません、御協力をお願いします。
○藤原委員 答弁が拙いと局長はおっしゃいましたけれども、これは国民の人権に関わる法律ですので、拙いから分かりにくいでは済まないと思うんですね。どうか、人権に造詣の深い鈴木大臣の下で、国民にも分かりやすい、そんな説明がこれからなされることを心から期待いたしまして、終わります。
○西村委員長 次に、篠田奈保子さん。
○篠田委員 今回の質疑については、オンライン接見の必要性については皆が認めているところだというふうに認識をしております。しかしながら、今回の刑事手続のIT化、残念ながらオンライン接見の制度が盛り込まれておりません。
しかしながら、これをやはり目指していくということが必要であることは間違いがないと思っているので、まずは、今回はオンライン接見のことについて再度お伺いをさせていただきたいというふうに思います。
まず、前提として、被疑者、被告人の身柄拘束を行う場所について、現状がどうなっているのかということを確認させていただきたいと思います。
まず、過去十年間、拘置所や拘置所の支所、全国で何か所が統廃合などで減少していますでしょうか。
○小山政府参考人 主に未決拘禁者を収容する施設でございます拘置所及び拘置支所につきまして、過去十年間で、拘置支所十五施設を廃止をしております。
○篠田委員 十年間で十五か所の拘置支所が廃止ということになっています。
では、過去十年間に、警察署の留置施設の数はどうなっていますか。
○重松政府参考人 お答えいたします。
全国の留置施設につきましては、平成二十七年に一千百五十八施設であったところ、令和六年には一千六施設になっており、過去十年間で百五十二施設が減少しております。
○篠田委員 このような形で、拘置支所も警察署の留置施設も減少が続いているということになっていますが、この被疑者、被告人の身柄拘束の施設の減少の理由と今後の方向性について、どのような形になるか、お答えいただけますか。
○小山政府参考人 私の方から、刑事施設に関しましてお答え申し上げます。
拘置支所を含む刑事施設の統廃合につきましては、施設の老朽化の進行状況、現下の収容状況等を勘案しつつ、効率的な組織運営及び再犯防止施策の重点的な取組など、矯正行政の更なる充実強化を図ることを目的として実施しているところでございます。
収容状況等につきましては、景気や社会情勢等に左右される面もあると考えられまして、その予測を行うことは困難でございますけれども、拘禁刑の円滑な導入を図る中で、少子高齢化など様々な要因を踏まえながら、今後も引き続き、統廃合を含め、収容定員の削減を検討しながら施設整備を進めてまいりたいと考えております。
○重松政府参考人 警察関係についてお答えいたします。
各都道府県警察におきましては、その実情に応じて、各留置施設の収容率や警察署の体制等を考慮し、警察本部が管轄する留置施設又は複数の警察署の被留置者を一括して留置する施設の拡充を進めているところでございます。これによりまして全国の留置施設の数が減少しているものというふうに認識をしております。
引き続き、適切な処遇を行うという観点から、各都道府県警察の実情に応じた取組を進めてまいる所存でございます。
○篠田委員 今の答弁で、少子高齢化など地域の状況も含めて、これからどんどんと地方から人が減っていくという状況の中で、被収容者も減っていくと思うんですね。ですので、拘置支所の廃止や警察署の留置施設の統廃合などの減少のトレンドは続いていくと思います。それに伴って、刑事弁護を担う法律事務所の所在地といわゆる留置施設の距離がどんどん遠くなっていく。そういうことは、結局はオンライン接見の必要性が今後ますます高まっていくのだろうなというふうに思っております。
次に、女性被疑者、被告人の留置施設の集約化についてお伺いをいたします。
今回、留置施設の集約化についての記事を資料として配付をさせていただきました。
女性専用留置施設を、集約化が進んでいるということは事実でしょうか。
○重松政府参考人 お答えいたします。
各都道府県警察におきましては、女性の被留置者に対してより適切な処遇を行うという観点から、女性の被留置者のみを留置して女性警察官が常時看守業務に従事する女性専用の留置施設の設置を推進しております。
これによりまして、全国の女性専用の留置施設につきましては、平成二十七年の八十八施設から令和六年の百三施設に、過去十年間で十五施設が増加しているところでございます。
○篠田委員 女性の専用の留置施設を推進して、それを増やしているということは大変に喜ばしいことだなと思いますけれども、一方で、地方によってはそれによって集約化されているという事実がこの新聞記事で読み取れるかなというふうに思っております。この記事に書かれているように、弁護士が接見に行くのにより長時間の移動が必要になって接見回数の減少につながっている、また、負担の大きさから、女性の弁護を今後は受任しないという声も現場から上がっているというふうに書かれております。憲法上の弁護人の援助を受ける権利が適切に確保できない状況が進んでいるのかなというふうに思います。
今後も、こういった人口減少、集約化により、更に統廃合は避けられない状況かというふうに思いますし、女性の被疑者、被告人だけが一方的に不利益な取扱いになるということは大変大きな問題かなというふうに思っています。
そこで、改めて確認なんですけれども、刑事訴訟法第三十九条一項は、対面でない、オンラインでの弁護士との接見を禁止する規定ではないということの理解でよろしいでしょうか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
刑事訴訟法第三十九条第一項に規定する接見は、被疑者、被告人が収容されている刑事施設等に弁護人等が赴いた上で対面で行われるものを意味し、いわゆるオンライン接見は同項の接見には含まれないと解されていますが、他方で、委員御指摘のとおり、刑事訴訟法上、オンライン接見を禁止する規定はないものと承知しております。
○篠田委員 答弁ありがとうございました。
先ほど、留置施設が減少されているという点を確認させていただきましたが、やはり接見を対面のものだけとすれば、接見が減るわけですね、距離がありますから。片道三時間、二時間、北海道では当たり前にかけて接見に行きます。被疑者が特に事実関係を否認している場合には、刑事弁護人としては、基本的には、毎日接見に行って、状況を確認するというのが刑事弁護人としての基本的なルールだと私は思っているんですけれども、このような形で、片道二時間、三時間かかるということになりますと、毎日の接見というのはほぼ不可能な状況になっていきます。
その意味で、オンライン接見については、認める方向で少しずつ、今回のデジタル化を契機にして、一歩でも前進をしていかなければならない状況です。これについて法務大臣の見識を確認をさせていただきたいと思います。
○鈴木国務大臣 今先生御指摘の弁護人との接見でありますけれども、まさに被疑者、被告人の防御権、この保障の上で極めて重要な意義を有するものと考えております。そして、委員との質疑の間でも様々御指摘いただきましたけれども、オンラインによる外部交通の実施、このニーズが高い地域がある状況、これも重々承知をしております。
その上で、法務省におきましては、刑事訴訟法上の権利という位置づけではないものの、やはり実務上の運用上の措置として、従来から一部地域において検察庁や法テラスと拘置所等との間のオンラインによる外部交通を実施をしてきたところでありますけれども、まさにこれを弾力的にこれからも実施を拡大をしていくことができるように、今、関係機関や、あるいは日本弁護士連合会との間での協議を実施をしているところであります。
以前にも答弁を申し上げましたけれども、こうした関係機関と連携をしながら、一層の拡大強化、拡大に向けての取組をしっかりと加速をしてまいりたいと思っております。
○篠田委員 法務省の方でそういったいわゆるテレビ電話による非対面の外部交通を現実的に実施をしていただいているということは大変ありがたいとは思っているんですが、やはり私たち弁護士、弁護人が求めているのは、完全な秘密性が保持された接見であり、時間制限のない接見であり、今、接見交通でありますと、土日も、そして祝日も、夜間も接見が可能なんですね。だけれども、この今行われている非対面の外部交通というのは、あくまでも時間が制限されていますし、日中である、土日もこれが利用できないということで、大変制限的なものであることを指摘させていただきます。
完全な秘密性がやはり確保されたオンライン接見を、全国的な導入に向けて、ロードマップをしっかりと作り、日弁連とも協議して策定すべきというふうに考えているんですが、今後について、法務大臣のお考えはいかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、弾力的にオンライン外部交通、これを実施を拡大をしていけるように関係機関あるいは日本弁護士連合会との間で協議を実施をしておりまして、その協議において、日本弁護士連合会を通じて各単位弁護士会から設置場所の要望等を聴取をしているところであります。
この協議の結果も踏まえまして、法務省といたしましては、本年度、この令和七年度に、オンラインによる外部交通を実施するための環境整備経費を計上しておりまして、今後も各地域の実情に応じて順次拡大をすることとしております。
お尋ねのロードマップの策定を含むスケジュールにつきましては、各地域どの程度のアクセスポイントを設置をするかによって、拡大に要する期間は異なってまいります。あるいは、設置に当たって必要な費用は、各アクセスポイントやあるいは接続先の刑事施設によって、この状況によって異なります。あるいは、余剰スペースがない施設においては大規模な施設工事が必要なケースもございます。
そうしたことから、現時点では、具体的にこのロードマップの策定を含むスケジュールということで申し上げること、これはなかなか困難でありますが、必要が高い地域においては迅速に環境整備を行うことが必要であると考えておりますし、日本弁護士連合会等とも連携をしながら、一層その取組を加速をしていきたいと思っております。
○篠田委員 御答弁ありがとうございました。
しかしながら、本来の秘密性が確保されて時間の制限のないオンライン接見とはやはり異にするわけなんですよね。非対面の外部交通を、今行われている外部交通を推進するということは、一つ方策としてあり得るんですけれども、この今行われているものは完全な秘密性がやはり確保されていないですよ。
そうすると、どういうことになるかというと、例えば今行われている非対面の外部交通では、被疑者の後ろに警察官が監視をしている中で行われている。そうすると、取調べに対する警察署の不適切な対応があったりとか、そういったことを被疑者、被告人が話しにくかったり、留置施設で様々に、精神的に肉体的にひどい仕打ちを受けていて、それをちょっと弁護人に訴えたいと思っても、後ろで警察官が監視して立ち会っている状態で、そういったことを弁護人に対してしっかりと訴えていけるのかというと、必ずしも私はそうじゃないと思いますので。
今後も非対面の外部交通を確保される、それを推進することをまず前提としているのであれば、やはり秘密性を確保するために何らかの方策を取っていただきたいと思います。
これに対しては、秘密性の配慮について、現場ではどのような配慮がなされているのか、お答えいただけますでしょうか。
○小山政府参考人 私の方からは刑事施設に関しまして御答弁申し上げます。
刑事施設におきましては、未決拘禁者が弁護人等と面会する場合は専用の個室で実施されまして、刑事施設の職員は立会い等を行わないため、面会の際の発言の内容を確認することはできず、秘密性への配慮は行われているものと承知をしております。
刑事施設において未決拘禁者が弁護人等とテレビ電話を含みます電話による外部交通を行う場合も同様の環境で行われますため、秘密性には配慮しているものと承知をしてございます。
○篠田委員 秘密性にしっかりと配慮をしているという現場のお声でありました。しっかりとそこは確保していただきたいというふうに、よろしくお願いを申し上げます。
今回の刑事デジタル法の中でオンライン接見が入らなかったということは、やはり大きな問題であります。ですので、私としては、しっかりとこのオンライン接見の実現に向けて取組を推進をする、そしてそこに予算措置をしっかりと講じるためには、やはり附則にこういったことを盛り込む必要があるのかなというふうに考えていますが、その点について、法務大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 この取組の推進をしっかりしていく上でということでありますけれども、先ほど申し上げましたが、やはり、日本弁護士連合会あるいは関係機関との協議、この結果として、令和七年度予算におきましても、環境整備の予算計上を行っているところであります。
そういった中においては、十三か所ですね、そういったところで予算計上しておりまして、例えば、先生御出身の近くだと思いますが、釧路地方検察庁の北見支部、そして網走刑務所間であったりとか、そういったところで、必要性が高いというところでそういった措置を講じております。
同時に、附則においてということでありますけれども、こうした政府の取組の推進を法律に何らかの規定を設けるということについての意義、我々もそれは承知をしております。そういった中で、いずれにいたしましても、実務的な運用上の措置としてのオンラインによる外部交通につきまして、この推進をしっかりとしていく、そのことについて申し上げたいと思います。
○篠田委員 法務大臣から、何らかの規定をということで、前向きな御発言をいただきました。大変ありがとうございます。
次に、弁護人と面会するだけじゃなくて、身柄を拘束された被疑者、被告人にとっては、家族や自分の雇主、そして支援をする福祉関係者などの専門家と面会をすることも大切だというふうに思っております。私も、知的や精神的にハンデを抱えている多くの被疑者、被告人に対応して、支援者を同行して面会を行ったことなども何度もあります。
しかしながら、拘置所や留置施設の集約化によって、こういった方々を同行して面会をしてもらうということもなかなか難しい状況が、いわゆる過疎地、地方ではあります。家族らとの面会もやはり難しくなれば、精神的な支えを失って自暴自棄になったりもしますし、冤罪が生まれる理由にもなっています。都会で留置施設が居住地の近くにある被疑者と地方の格差、こういったことの問題なんだというふうに思います。
被疑者、被告人の今後の更生にもやはり影響が大きいと思います。ですので、将来的には、是非、オンラインの弁護人の接見に限らず、家族や関係者とも電話やテレビ電話などで被疑者、被告人が面会ができるようになればなというふうに願うところでございます。是非、将来に向けて検討をいただきたい、ここは私のお願いでございます。
また、近年、少数言語も含めた通訳事件の増加によりまして、なかなか地方では通訳が確保できず、弁護人が通訳を同行できないことによって、接見がなかなかままならないことも生じております。この場合に、通訳さんについてオンラインを利用できるようにする必要があると思うのですけれども、これに対しての御見解を伺いたいと思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
今御説明しておりますオンラインによる外部交通につきましては、従来から、弁護人等がオンライン外部交通を行うアクセスポイントで外部交通を行われる場合には、通訳人が同席することができるものというふうにされております。
更にどのような取組を行うことができるかにつきましては、今後、関係機関とも協議をしながら、引き続き検討してまいりたいと思います。
○篠田委員 是非御検討ください。通訳さんが弁護人と同行して一緒に行けなくて、また、違う場所にあるという可能性もありますので、そういったところも是非オンラインを利用できるようにしていただきたいと思います。
次に、話題は変わりまして、刑事デジタル化法においては、電磁的記録提供命令の議論などで、裁判官がしっかりと令状で対象を限定して審査をするから問題がないというような答弁が繰り返しなされております。確かに、しっかりとした令状によるチェックが行われていればそうなのですけれども、現状において果たしてそうなのかという疑問が、実務に携わってきた私にはございます。
現状において、年間、裁判所の令状は何件発付されているのか、却下されている件数はどのぐらいあるのか、おおよその数字をお知らせいただきたいと思います。また、準抗告がなされた件数と準抗告が認められた件数についても併せてお尋ねいたします。
○平城最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
令和五年度における令状の発付件数は四十六万二千七百九十一件、却下件数は五千六百四十四件でございます。
準抗告の申立て件数は一万五千二百二十二件でございまして、準抗告の申立てを認容した件数、すなわち原裁判を取消し又は変更した件数でございますが、これは二千七百六十件であると把握しております。
○篠田委員 年間四十六万件の令状が出ていて、却下されたのが五千件。これが適切と見るのかそうではないのか、いろいろ議論があるところだとは思いますけれども、しっかりとした令状の審査、そして発付がなされていると願いたいところです。
また、準抗告についても、四十六万件の令状の発付がある中でのその準抗告の数ということで、しっかりとしたチェックが本当に現場でなされているのかなというところを危惧するところでございます。
これに関連して、やはり裁判所の質の確保ということが大変大切だなというふうに思うんですが、この委員会でも再三指摘をされております裁判官のなり手不足の問題です。
今回、四月十四日の日経新聞の朝刊の記事を資料として出させていただきました。この冒頭に、私が所属している釧路地裁本庁の裁判官人事で地元で波紋が広がったということ、私のいつも使っている裁判所のニュースがトップに出ているんですけれども、本当に、現場で感じているのは、裁判官の数が足りなくて多忙を極めているのではないのかなというところでございます。
釧路地裁本庁については、刑事部の裁判官三人が裁判員裁判で取られてしまうと、家庭裁判所の調停の期日が入らないとか、調停が成立しても、なかなか、裁判官が刑事の法廷にいるので、調停を裁判官の立会いで成立させられないので、長時間当事者が待たされるとかということが本当にあるんですね。こういった中で、この記事にもありますけれども、法曹の人口はどんどんと増加をしているのに、裁判官、いわゆる判事補が特に足りないという状況になっています。
裁判官が多忙を極めれば、やはり令状の審査にも時間と労力がかけられなくなってしまって、勢い、流れ作業になっていくのではないかなという懸念もあります。確かに私たちは法律のプロですから、そこについては、自戒、自省があるのかもしれないですけれども、人間ですから、多忙によって様々にそういった懸念があるのかなと思います。
この状況について今後どのような対策を取っていくおつもりなのか、改めて対策をお聞きをしたいと思います。
○小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
今委員の方から、とりわけ判事補に関する数についての御指摘、御懸念をいただいたところでございます。
採用数、あるいは行政官庁等への勤務等による出入りが常にありまして、それは常に同じ数というわけではございません。欠員が全くないとなりますと、人事上、問題が生ずるということもあり得ることも考えますと、ある程度の欠員を抱えておく必要はあるということはあるものの、判事補について相当数の欠員が生じているということは、私どもも認識しているところでございます。
裁判所といたしましては、裁判官にふさわしい資質、能力を備えている者に任官してほしいと考えているところではございますけれども、判事補の給源となる司法修習終了者の人数が減少してきたことに加えまして、弁護士として活躍する分野が広がっているだけではなく、大都市志向の強まりや、配偶者が有職であることの一般化に伴って転勤への不安を持つ司法修習生が増えていることなどが理由となりまして、新任判事補の採用数が伸び悩んでいたところでございます。
その対策といたしましては、これまでも、実務修習の指導担当裁判官や司法研修所教官から、司法修習生に対して、裁判官のやりがいや魅力、異動、転勤ですね、の希望や負担にはできる限り配慮していくことを伝えるなどしてきたほか、若手裁判官にその仕事内容や司法修習生へのメッセージを話してもらう企画を実施するなど、裁判官の仕事の実情とその魅力が司法修習生に伝わるよう取り組んできているところでございます。
近年の判事補任官者数は、令和三年に任官した七十三期は六十六人ということでございましたけれども、その後任官した七十四期は七十三人、七十五期は七十六人、七十六期は八十一人と増加してきているところでございます。
引き続き、裁判官にふさわしい人に任官してもらえるよう努めてまいりたいと考えております。
○篠田委員 御答弁ありがとうございました。
根本的な解決には、私は、なかなかその方策だけでは結びつかないのかなと思いますので、是非是非、全国に多くいる弁護士から弁護士任官を募る、それも転勤がなかなか難しいのであれば、高裁管内に限定して弁護士任官を募るなどの新たな方策を講じていただければと思います。
済みません、最後に残された時間で、度々聞いておりますいわゆる離婚後共同親権制度について、QアンドAの解説資料の作成状況をお聞かせいただければというふうに思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のQアンドA形式での解説資料につきましては、本年一月二十一日に開催をされました関係府省庁等連絡会議幹事会の第二回会議において意見交換を行いまして、関係府省庁等の意見も踏まえて更に検討を進めているところでございます。
具体的には、法務省において作成した民法に関する問い立ての案につきまして、その相当性や追加すべき問いの有無等について意見交換を行いまして、関係府省庁等連絡会議に参加している各省において、必要な問い立ても含め、関係機関とも協議しているものと承知をしております。また、法務省におきましても、関係団体等と個別に協議を行っております。
当事者の方々や関係諸機関の方々にとって役立つものとするため、抽象的な条文の解説にとどまらず、改正法の法案審議において御質問いただいた点等を中心に、関係府省庁等の意見を踏まえ、具体的に問題となる場面を想定したQアンドAとする方向で検討を進めているところでございます。
○篠田委員 施行までもうあと一年しかないんですね。様々な教育現場、学校現場、そして自治体の現場からも、早くその運用の指針のQアンドAを出してほしい、議論させてほしい、勉強会をさせてほしいという話が出てきていますので、是非迅速に御対応いただくように最後にお願いを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、柴田勝之さん。
○柴田委員 立憲民主党・無所属の柴田勝之です。
先ほどの藤原委員への御答弁について、一点、ちょっとよく分からなかったんですけれども、藤原委員の質問は、電磁的記録提供命令が取り消された場合、移転された電磁的記録については提出者に対し移転してもらえるのか、そういう質問でございました。
要するに、移転というのは、元々提出者のところからデータを消して捜査機関に移すということなんですけれども、取り消された場合に移転してもらえるのか、すなわち捜査機関のデータを消して提出者に戻してもらえるのか、そういう質問だったんですけれども、御答弁が、移転じゃなくて返却しますとおっしゃったので、そこを確認させてください。
○森本政府参考人 お答えいたします。
被処分者への返還に応じることとなるというふうに申し上げました。具体的には、電磁的記録の複写をして返すというか返還するという形になろうかと考えております。
○柴田委員 要するに、移転させた場合にも、返すときは移転じゃなくて複写ですよ、自分では持っていますよ、そういう御答弁なわけですね。はい、そこは確認いたしました。そこはおかしいと思っておりますが。
電磁的記録提供命令については、もう私は大分伺いましたので、今日は、ほかにもいろいろ問題点があると思いますので、それ以外の点をまず聞いていきたいと思います。
前の二回の委員会で時間切れで聞けなかった点なんですけれども、本会議で答弁された身体拘束中の被告人等による電子データの受領、閲覧を認められない三つの理由のうち、一つ目、電子機器を用いた自傷他害のおそれについては、防止策として機器を壁に固定するなどといった措置が考えられるという御答弁をいただいたと理解しています。
二つ目の不正な通信等の防止について、私から、外部との通信は刑事施設の電子機器で行うことにして、被告人等が使う電子機器には通信機能を持たせなければよいのではないかとお伺いしたところ、外部から受領した電子データに不正なデータが混入していないかなど検査が必要、そういう問題が残りますというお答えをいただきました。
これは結局、三つ目の理由に帰着するんじゃないかと思っておりますが、その三つ目の理由である、電子データの検査のため刑事施設等の業務全体が圧迫されるおそれがあるという点は、私としては、実際にやる前に心配し過ぎなのではないかなという気がしております。
まずは、業務に大きな支障がない範囲で、できるところから始めてみるということはできるのではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
○小山政府参考人 関係法令上、刑事施設におきましては、電子データを記録した記録媒体につきまして、被告人等を含む被収容者が自弁できる物品とはされておりませんため、一般論といたしましては、電子データを記録した記録媒体を刑事施設収容中の被告人等に差し入れることはできず、被告人等が当該電子データの内容を閲覧することもできないということになってございます。
したがいまして、弁護人等から刑事施設収容中の被告人等に対しまして電子データを記録した記録媒体が送付された場合に、被告人等の防御権への配慮といたしましてその閲覧を裁量的に認めることにつきましては、個別具体的な事情を踏まえ、施設の規律、秩序の維持や管理運営上の支障の程度につきまして慎重に検討する必要があると思っております。
かかる観点から、例えば、刑事裁判の遂行上、必要不可欠であると認められる場合などにおきまして、刑事施設の体制上の支障の程度が小さいときには、その閲覧を一時的に認める余地もあるというふうに考えております。
いずれにいたしましても、個別具体的な事情を踏まえ検討、判断することになりますけれども、矯正局といたしましても、可能な範囲で被告人の防御権にも配慮した対応がなされますよう、引き続き、運用上の検討を行ってまいりたいと考えております。
○柴田委員 ありがとうございます。
ちょっと、私の弁護人としての経験では、結構、刑事施設の場合、画一的、硬直的運用でいつも撃退されていますので、是非、今おっしゃったような、前向きかつ柔軟な対応をお願いしたいというふうに思います。
次に、改正案の刑訴法五十四条の三第一項は、検察官及び弁護士である弁護人は、裁判所又は裁判官に対する申立て等を、原則として電磁的記録により行わなければならないとしておりますけれども、この電磁的記録によらなければならないという申立て等には、弁護人による控訴、上告とか準抗告、即時抗告の申立てといった重要な弁護行為も含まれるという理解でよろしいでしょうか。
また、同項一号ないし三号で例外を認めている趣旨、三号はどのようなものを想定しているのかについてもお答えをお願いいたします。
○森本政府参考人 本法律案による改正後の刑事訴訟法第五十四条の三第一項の申立て等とは、申立て、請求その他裁判所若しくは裁判長又は裁判官に対してする申述を言うとされておりまして、委員御指摘のような申立てとかは入るものというふうに考えております。
同項におきましては、検察官及び弁護士である弁護人に対し、口頭でする場合を除き、申立て等について、原則としてオンライン等の方法によりすることを義務づけた上で、各号におきまして、刑事手続の実情に照らし、一律の義務づけによってかえって非効率となる場合が生じ、手続の円滑化、迅速化の実現を阻害する結果となりかねない申立て等を義務づけの例外とすることとしております。
まず、すなわち、第一号でございますけれども、令状の請求につきましては、その疎明資料の入手や作成が様々な場所、環境で行われ、紙媒体等で入手、作成される場合も少なくなく、迅速性が要求される中で、疎明資料を紙媒体等のまま裁判所に持参しなければならない場合も十分に想定されること。
二号に規定しております、一定の事件に係る略式命令の請求及びこれと同時にする公訴の提起につきましては、交通事件に係ります、いわゆる三者即日処理の運用の実情に照らしまして、オンライン等の方法によらず紙媒体で申立てをすることとした方が円滑、迅速で効率的な場合があると考えられること。
三号に規定する、裁判所の規則で定める申立て等につきましては、ただいま申し上げたもの以外の申立て等であってオンライン等の方法によることを義務づけることが相当でないものを義務づけの対象から除く余地を残しておく必要があることから、それぞれ例外としております。
その上で、御指摘の三号の例でございますが、ちょっと細かい例になりますけれども、留置施設での勾留中に保釈された被告人が、実刑判決が言い渡されて保釈が失効した場合には、当該被告人を拘置所等の別の刑事施設に収容するために行う収容場所の変更に係る裁判官の同意というものを求める必要があり、それは判決のその場ですぐに求める必要があるということから、こういったものが考えられるところでございます。
○柴田委員 私に言わせますと、この一号も二号も、例外として認めているのは検察官による申立てなんですね。だから、この条文も、要するに、捜査機関の便宜とか迅速性には今おっしゃったようにいろいろ配慮しているんですけれども、弁護人の便宜への配慮がちょっと不十分なんじゃないかなという気がしております。
それで、改正後の刑訴法五十四条の三第二項は、その責めに帰することができない事由があるときには、電磁的記録によらずに申立てをしてもよいという趣旨の例外を認めているものですけれども、ここにある、その責めに帰することができない事由の意義、また、その事由を認定するのは誰か。さらに、弁護人が電磁的記録を作成する時間がない、迅速にやりたい場合、あるいは弁護人の電子機器の故障の場合はこれに含まれるのかという点についてお答えください。
○森本政府参考人 お答えいたします。
まず、一号、二号について検察官の便宜のためというふうに先生おっしゃいましたけれども、一号の例えば令状の請求とかの場合には、アルコール検知とかして、そのアルコール検知のものが電子化できないとか、そういうようなものも想定されておりますということと、それから、二号の略式請求のうち、三者即日処理と申します警察と検察庁と裁判所が一括でいて、その場で一気に処理をしなければならないという、同日に対象者の方の便宜のためにやるという制度でございますので。
そこの点は留保させていただきたい上で、五十四条の三第二項のその責めに帰することができない事由とは、申立人等をする検察官や弁護士である弁護人に帰責性がない事情を意味いたしますが、御指摘の、弁護人が電磁的記録を作成する時間がない場合や弁護人の機器の故障の場合を含め、その責めに帰することができない事由に当たるかどうかについては、個々の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断されるものであることから、一律にお答えすることは困難でございますけれども、その事由に当たるかどうかにつきましては、まずは、検察官や、弁護人の場合では弁護士である弁護人が申立てをするに当たって判断することになり、最終的には裁判所がその申立て等の効力を判断する中で認定するという形になろうかと考えております。
○柴田委員 この規定の実務上の運用については、被告人の防御権あるいは弁護人の弁護権、不当に制約することのないような運用が必要ではないかと考えますが、その点について大臣の見解をお伺いします。
○鈴木国務大臣 改正後の第五十四条の三でありますけれども、先ほど局長から答弁させていただきましたとおり、この電子情報処理組織による申立て等の義務づけの例外として、一項、二項、それぞれ規定をしているわけであります。
御指摘の、その責めに帰することができない事由ということでありますけれども、これは申立て等をする検察官、弁護士である弁護人に帰責性がない事情を意味するということでありまして、不当に制約することがないように、これはまさにそういった趣旨になろうかと思います。
その責めに帰することができない事由に当たるか否か、これは当然、個々の事案ごとに具体的な事情に基づいて、裁判所において、円滑、迅速な手続を実現するという法の趣旨を踏まえつつ、適切に判断をする。すなわち、それは、不当にそうした防御権あるいは弁護権が制約されることがないようにということでございます。
○柴田委員 ありがとうございます。
では次に、検察官の弁護人に対する証拠開示について伺います。
一般的な場合の定めは、刑訴法二百九十九条一項ということになりますけれども、この条文には開示の方法としては閲覧という定めしかなくて、謄写とか複写については検察官の裁量によるというふうに理解される規定になっています。
また、公判前整理手続での証拠開示について定めた改正案の刑訴法三百十六条の十四第一項一号ロなどには電磁的記録については複写との定めしかなく、その複写の具体的方法については検察官の裁量によると解される定めになっています。
これらのいずれの場合においても、電子データについてオンラインによる証拠開示、これも検察官の裁量により可能という理解でよろしいでしょうか。
○森本政府参考人 委員御指摘の規定は、検察官の弁護人等に対する検察官証拠の開示の方法について規定しておりますところ、これらの規定は、証拠書類や証拠物が電磁的記録である場合に、オンラインの方法によりその開示を行うことを禁止してはおりません。
そのため、本法律案による改正後は、証拠書類や証拠物が電磁的記録である場合に、検察官がオンラインの方法により弁護人等に対して検察官請求証拠の開示を行うことも可能となります。
○柴田委員 本法案については、法制審の前に刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会というものが行われておりましたが、その取りまとめ報告書では、弁護人へのオンラインでの証拠開示に当たっては、その流出などを防ぐ情報セキュリティー確保のための技術的措置の規律が必要であるが、その具体的な内容が防御権や弁護権を不当に制約するものとなることがあってはならないことはもとより当然であると指摘した上で、法律では基本的部分を定めるとともに、技術的、細目的事項については政省令や規則に定める規律によることが考えられるというふうにされておりました。
特に、さっき篠田委員も言っていましたけれども、弁護人の事務所が裁判所とか検察庁から遠隔地にあるような場合には、証拠をオンラインで閲覧、謄写できるということは非常に重要だと思っております。
その一方で、流出などを防ぐ情報セキュリティー確保はもちろん必要なんですけれども、そのときの技術的措置について、大きな、国の組織である裁判所や検察庁と同じレベルの措置を個人である弁護人に求められると、大部分の弁護士は対応できない、結局、オンラインで閲覧、謄写ができない結果になってしまうということが懸念されます。この点、裁判所にある証拠の弁護人によるオンラインでの閲覧、謄写について定めた改正案の刑訴法四十条の二第二項については、その電磁的方法については裁判所の規則で定めるとするとともに、閲覧、謄写については裁判長の許可に係るものとしております。
また、先ほど申し上げた検察官から弁護人への証拠開示について定めた条文については、謄写の方法などについて検察官の裁量に係るということになっております。
結局、法律は、この改正法は、弁護人がオンラインで証拠の閲覧、謄写ができるかどうかは裁判所や検察官が決めるという部分が大きい規定になっておりますけれども、先ほどの検討会の報告書に述べられたような防御権や弁護権を不当に制約するものとなることがあってはならないということは、政省令とか裁判所規則によってしっかり担保をしていただけるんでしょうか、そこを確認させてください。
○森本政府参考人 まず、弁護権、防御権の重要性につきましては委員御指摘のとおりでありますが、こういった規定ぶりになっている趣旨といたしましては、電磁的記録である訴訟に関する書類等の閲覧等や証拠開示をオンラインの方法によりすることには、紙媒体の場合とは異なる情報流出のリスクがある上、一旦流出した場合には、電磁的記録は複写が容易であるために、インターネットなどを通じて際限なく拡散されて回収困難となるおそれがあることが挙げられます。
閲覧や開示の対象となるものは様々でありますけれども、例えばですけれども、性犯罪の被害状況が撮影された動画のようなものが一たび流出した場合には、関係者の名誉、プライバシーに甚大な影響を及ぼすこともあります。
そのために、本法律案による改正後の刑事訴訟法におきましては、オンラインの方法による訴訟に関する書類等の閲覧については裁判長の許可を要することとし、オンラインの方法による証拠開示については検察官の選択によることとしておるところでございます。
その上で、訴訟に関する書類の閲覧等や証拠開示についてのオンラインの方法によるかどうかということにつきましては、個別の事案において、対象となる訴訟に関する書類や証拠の内容、性質、これが流出した場合の影響等に加えて、委員御指摘の弁護人の防御準備上の便宜等を考慮しつつ、裁判長や検察官において適切に判断することとなるものと考えております。
そしてまた、その方法につきましては、委員御指摘のとおり、裁判所の規則で定められることともなっておりますので、本法律案が改正法として成立した場合には、最高裁判所におきまして、法律の趣旨を踏まえ、訴訟に関する書類等が流出した場合の影響や弁護人の防御準備上の便宜等を考慮して、その具体的な内容を検討することになろうかと考えております。
○柴田委員 オンラインでの証拠開示、非常に、是非お願いしたいので、大部分の弁護人がそれが対応できないというようなことにならないように、裁判所と検察庁には対応をお願いしたいと思います。
それで、次に、今回の改正が施行されると、裁判所の法廷においても、電磁的記録として作成された証拠又は紙などから電磁的記録に変換した証拠を取り調べることになると考えられますが、その際、その証拠が真正なものであることはどのように担保されるのでしょうか。
○森本政府参考人 電磁的記録である証拠書類の作成の真正を担保する措置といたしましては、例えば公開鍵暗号方式による電子署名など、技術的には様々な方策があり得るところでございますが、最高裁判所、検察庁等の関係機関や開発業者と現在検討を重ねているところでございまして、引き続き、緊密に連携しつつ検討を進めてまいりたいと思います。
○柴田委員 次に、改正案による刑訴法六十三条二項二号などでは、電磁的記録による令状について、裁判所の規則で定める記名押印に代わる措置を取ることとされていますが、具体的にどのような措置が想定されているでしょうか。また、現行法においては、令状を提示された者は、裁判官の印影といわゆる契印ですね、あるいはパンチ穴によって令状の真正性と一体性を確認することができますが、令状が電磁的記録による場合、何が裁判官の印影及び契印、パンチ穴と同様の機能を有することになるのか、お答えください。
○森本政府参考人 お答えいたします。
まず、改正後の刑訴法の六十三条第二項第二号等の裁判所の規則で定める記名押印に代わる措置としては、先ほども申し上げましたが、例えば公開鍵暗号方式による電子署名など、技術的には様々な方策があり得るものかと考えております。
また、続きまして、記名押印に代わる措置につきましては、令状には裁判長が記名押印することとされておりますところ、その措置を取らなければならないこととされておりまして、それは裁判長等の印影と同様の機能を有することとなりますから、それについても同じような技術的措置が考えられるところでございます。
また、契印につきましては、これは、一つの書類が数枚の紙から成る場合、数個の書類を一つのものとして用いる場合にその旨を証する機能を有するものと承知しておりますけれども、現行の刑事訴訟法におきましては、書類に契印し、又はこれに準ずる措置を取らなければならないことは、刑訴法ではなくて、最高裁判所規則である刑事訴訟規則において規定されているところでございますので、今申しましたような方法が考えられるところではございますけれども、それらの技術的方法を踏まえながら、今後、最高裁判所において検討されることになろうかと考えております。
○柴田委員 令状を提示された人がちゃんと確認できる措置を取っていただける、そういうふうに理解いたしました。
次に、改正案による刑訴法二百八十六条の三第一項、これは、一定の場合には被告人を裁判所に出頭させず、ビデオリンク方式により公判手続を行うことができると定めております。この規定は、一号又は二号の例外的事由に該当する場合であって、かつ諸事情を考慮した上でやむを得ない事由があり、かつ被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがないという要件になっておりますが、被告人は公判廷に出頭するのが大原則、この規定が適用されるのは極めて例外的な場合であるという理解でよろしいでしょうか。
○森本政府参考人 刑事訴訟法は、被告人の権利保護及び公判審理の適正確保の観点から、原則として、被告人が公判期日に出頭しないときは開廷できないと規定しておりまして、被告人の出頭を開廷要件としており、この出頭はまず現実の在席を意味するものと解されております。
その上で、本法律案におきましては、裁判所は、公判期日における手続を行う場合において、公判廷が開かれる裁判所と同一の構内への出頭に伴う移動に際し、被告人に身体の加害行為等がなされるおそれがあるかどうか、それから、先ほど委員御指摘のような厳格な要件を満たす場合に限って、当事者の意見を聞き、同一構内以外にある場所で適当と認められるものに被告人を在席させて行うことができるという規定ぶりとなっておりまして、被告人を公判廷が開かれる裁判所以外の場に在席させてビデオリンク方式で公判期日の手続を行うことは、厳格な要件の下で例外的な場合であると考えております。
○柴田委員 この要件について安易な認定がなされると、被告人が公判廷に出頭しないまま手続が進められるという異常な刑事裁判が行われるということを懸念しております。
これらの要件は極めて厳格に認定されるべきものと理解しておりますが、この点について大臣に御見解を伺います。
○鈴木国務大臣 この法律案におきましては、原則として、被告人が公判期日に出頭しないときは開廷することができないということは維持をした上で、裁判所が公判期日における手続を行う場合において、先ほど刑事局長から申し上げましたように、厳格な要件を満たす場合に限って、公判廷が開かれる裁判所と同一の構内以外にある場所であって適当と認めるものに被告人を在席をさせ、ビデオリンク方式によって手続を行うことができるものとしております。
もちろん、この要件を満たすかどうかについては、裁判所において、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聞いた上で、法の趣旨を踏まえつつ厳格に判断をされるものと考えております。そういった意味で、これは極めて厳格に行われると承知をしております。
○柴田委員 ありがとうございます。
刑事弁護士としては、無罪を主張している被告人が公判廷に出頭しないまま手続が進められて有罪判決が言い渡されるようなことがあってはならないというふうに考えております。
被告人が無罪を主張して、公判廷に出頭することを希望している場合、これは、公判廷に出頭させないことは被告人の防御に実質的な不利益が生ずるおそれがあるという要素として考慮されるというふうに理解してよろしいでしょうか。
○森本政府参考人 御指摘の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれの有無につきましては、裁判所において、個々の事案ごとに審理の状況、弁護人の数、事案の軽重その他の事情を総合考慮した上で判断されるものであることから、一概にお答えすることは困難でありますけれども、一般的に、御指摘の、被告人が無罪を主張して公判廷への出頭を希望しているという事情は、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認められる方向で考慮されるものと考えております。
また、一度、仮にそういった形でビデオリンク方式の期日が行われたとしましても、審理の状況等の事情が変化すれば、ビデオリンク方式によるか否かの判断も変化し得ることから、その後の公判期日においても当然にビデオリンク方式によることとなるものではないとも考えております。
○柴田委員 その条文の一号が、公判手続が行われる裁判所と同一構内への出頭に伴う移動に際し、被告人の身体に害を加え又は身体の拘束を受けている被告人を奪取し若しくは解放する行為がなされるおそれがあるときと定めていますが、この一号が定めるような立法事実、すなわち被告人の出頭に伴う移動に対して被告人が奪取等をされた事例があるのかどうか、お伺いします。
○森本政府参考人 お答えいたします。
御指摘のような事例自体は、当局としては把握しておりません。
もっとも、実務上、例えば、被告人が凶悪な犯罪組織の首領である場合などにおいては、裁判所への出頭に伴う移動に際し、被告人を奪取する行為がなされるなどの事態に備えて厳重な警備が行われているものと承知しており、そのような行為がなされるおそれがあることは現実的に想定されているものと考えております。
○柴田委員 それで、先ほども触れました刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会では、外国に所在する証人のビデオリンク方式による証人尋問を可能とすることについて賛成意見が多数であって、検察官の委員のみが反対していたというふうに伺っております。
ただ、法制審の要綱案及び改正案の刑訴法百五十七条の六第二項は、ビデオリンク方式による証人は国内にいる者に限る旨を定めております。外国所在証人のビデオリンク証人尋問を可能としなかった理由は何か、最後にお伺いします。
○森本政府参考人 御指摘の点につきましては、法制審議会で議論がなされました。
国外に所在する証人についてもビデオリンク方式により尋問できることとするべきとの御意見があった一方で、証人が国外に所在して証言をする場合には、当該証人が偽証したとしても、その所在国に存在する証拠の収集を我が国の捜査、訴追機関が行うことは通常困難であるため、偽証の立証に困難を生じる上、仮にそれが可能となったとしても、その者が我が国に入国するなどしない限り、我が国での公判への出頭や裁判の執行を確保できないことから、偽証による訴追、処罰は現実的に困難であるということ。
このように、偽証の威嚇力が劣るため、類型的に虚偽供述がなされるおそれが大きく、しかも、国外にいる者の証言の信用性を適切に評価するための証拠を収集するのが基本的に困難であることから、その証言は事実認定を誤らせる危険があるなどといった問題点が指摘されて、答申には盛り込まれなかったものと承知しております。
○柴田委員 この点については今後の検討課題であるということを指摘させていただいて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、藤田文武さん。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。
今日は、前半、刑事デジタル法、特に電磁的記録提供命令についてお聞きしたいと思います。大臣、聞きませんので、トイレとか行くんだったら行ってください。
まず、記録命令付差押え及び捜査関係事項照会等との関係性について今日は聞いていきたいと思います。
まず、基礎知識として、大規模通信事業者等に対する記録命令付差押え及び捜査関係事項照会は年間でそれぞれ何件程度実施されているか、また、それを把握されているかをお答えいただけますでしょうか。
○森本政府参考人 法務当局として、お尋ねのような観点から統計を取っていないことから、お答えするのは困難でございます。
○藤田委員 これはちなみになんですけれども、特に統計を取らずに来たんでしょうけれども、取らない理由とかというのは、あえて言うとあるんですか。
○森本政府参考人 まず、捜査関係事項照会になりますと、もう多分、数は取っておりませんが、膨大でございまして、ちょっと数えるにはという感じだと思いますということと、それから、個々の事件によって事情が違いますので、その一件一件の刑事事件の性格を把握する上でこれまで必要となる統計でなかったというようなところがあろうかと思います。
○藤田委員 ありがとうございます。
記録命令付差押えは今後なくなるということで、置き換わるんでしょうけれども、確かに、捜査関係事項照会は現場でかなり柔軟に運用されていて、それをマクロ統計するのが果たして価値的かどうかというのは議論はあると思うんです。ただ、記録命令付差押えは、今後、この電磁的記録提供命令とともに令状によるものになりますから、取ろうと思えばできると思うんですけれども、その効果とか、またその使用をマクロである種分析するという意味で、後でフィードバックするという意味で、あってもいいのかなということは思いました。ちょっとこれは指摘だけです。
それから、従来の記録命令付差押えは、通信事業者の任意の協力を前提としており、命令に従わない場合には罰則は設けられていないわけであります。一方で、電磁的記録提供命令では、命令に応じない事業者に対して罰則を科すことができる、つまり強制なわけでありますけれども、これに対して、事業者側が適切に、今までは差押えで受け身で任意だったものが、適切にデータを切り出して実施をするという必要性があって、企業側にも様々な負荷がかかるわけであります。
例えば、通信の秘密の保護ですとか、法人自身に対する処罰もセットされるわけでありますから、そういった事業者側への様々なコストが発生することについて、改めてもう一度見解を聞きたいと思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
まず、事業者側のコストの点で、一つ目といたしましては、この制度を設けますことによりまして、これまで、処分者が被処分者のところへ赴いて、そして対面で手続をしていたという形のものがなくなる点は、事業者にとってはコストが減るところで利便性が増すところかと思います。
他方で、委員御指摘の点につきましては、捜査機関による電磁的記録提供命令については、令状で、その被疑事実との関連性を含めて令状に記載、記録したものに対象物が、対象の電磁的記録が限定されることになりますが、その処分と申しますのは、被処分者、事業者側にとって、提供を命じられる処分なので、一般的には、そうした処分の性質上、被処分者、事業者側が何を提供すればいいのかが分かるように書いていないと提供できないということになりますので、令状においては、提供させるべき電磁的記録が事業者に分かるように具体的に特定されることが考えられますので、被処分者はそれに従って選別して出せばいい、そういう提供をするということが考えられるところでございます。
その上で、本法律案が改正法として成立した場合には、捜査機関においては、令状請求の際に提供させるべき電磁的記録等をできる限り具体的に特定するとともに、通常、協力的な事業者でありますプロバイダーとかそういう事業者との間では、これまでも、御社の持っておられるものとかフォーマットだと、どういう形で請求して、どういう形の回答を求めればできますかということを事前にすり合わせたりした上で、それに合わせた形で記録命令付差押えの令状をもらうとか、あるいは捜査関係事項照会をかけるということをやっておりまして、今後も、そういった事前の調整などを通じまして、適正かつ円滑な運用に努めていくものと承知しております。
○藤田委員 ありがとうございます。
いずれにしても、今までどおり、いわゆるこれまで任意だったものが罰則つきになるということで、趣旨の転換はあるわけですが、その大規模通信事業者等との信頼関係とかそういうものが必要だという認識はお聞きできました。
というのも、要するに、捜査側は、その事業者側に、どういう、そのデータがどこまでの範囲であるかということが分からないわけですよね、まず最初に見れるわけじゃないので。そうすると、それを事業者側が切り出すという行為が適切に行われるかというプレッシャーがかかるわけなんですよ。なので、その辺りというのは、非常にコスト、事業者側からするとコストであるという認識は持っていただきたいというふうに思います。
それから、クラウドサービス等では、利用者に提供されたストレージ領域の管理権とか、ある種の所有権というんですかね、というのは利用者に属していて、サービス事業者であっても自由にアクセスできない場合があります。
例えば、データの範囲は特定できたとしても、パスワードがかかっている場合というのは、提供命令に従う上で、事業者側の対応というのに少し悩むところがあるかと思うんですけれども、そういったことに対しての適切な対応についての見解があれば教えていただけたらと思います。
○森本政府参考人 まず、電磁的記録提供命令により電磁的記録を提供させる方法としては、電磁的記録を記録媒体に記録させて当該記録媒体を提出させる方法等がありますところ、ここに言うところの「記録させ」には、暗号化された電磁的記録を復号させた上で、これを他の記録媒体に記録させるというようなことも含まれます。
そのため、捜査機関としては、パスコードがかけられている電磁的記録について、電磁的記録提供命令により、パスコードを解除して内容を知ることができる状態で提出するということを命ずることはできることとなります。そのようにして提供を命じたにもかかわらず、パスコードを解除せずに当該電磁的記録を提供し、提供を受けた者において内容を知ることができない場合には、必要な電磁的記録を提供したことにはならないということには考えられます。
もっとも、そのような場合に電磁的記録提供命令違反の罪というのが例えば成立するか否かということにつきましては、個別具体的な事案ごとに判断されるべきものでありますけれども、一般的には、命令の履行が物理的、客観的に不可能である場合には正当な理由に該当し、同罪の成立が否定され得るものと考えます。ですから、分からないものを出せといってもそれは出せませんので、その場合には命令違反の罪は成立しないというふうにも考えられます。
いずれにいたしましても、捜査機関におきましては、先ほど申しましたとおり、電磁的記録提供命令を発するに当たりまして、少なくとも協力的な、一般的な事業者との間では、必要に応じて、事前の調整を行って、どこまでのものが出せて、どこまでのものは出せないのか、パスコードを把握していないにもかかわらず、それを解除した状態で提供を命ずるといったような事態は、一般的には生じないというふうに考えております。
○藤田委員 ちょっと今の話、確認したいんですけれども。
要するに、クラウドサービス等でストレージ領域を一般利用者に提供していた、そこに対しては、個人のパスコードやパスワードが全部ひもづいていたり、又は、やり取りについては、暗号化されたりしているものも混在していると。それを、ある種、ここからここまでを出してくれという命令を出してやる場合に、暗号化されたものや、又はパスコードがかかっているものは、可能なんだったら、全部解除して見れる形にして出すのが筋ですよねというのが原則という意味ですか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
それは、最初に裁判官から令状をもらうときにどういった書き方がしてあるか、そういったものを、暗号化されたものは復号化して出してくださいというところまで令状請求の段階で疎明して、そこまでの内容が令状に記載されている場合には、復号化して出すところまでの義務が生じるということになろうかと思います。
他方で、一般的なものにつきまして、取りあえずこの範囲のものを出してくださいというだけの電磁的記録提供命令だった場合には、かつ、事業者側としては、自分が設定したわけではないものが、パスワードとかパスコードとか、幾つもあるでしょうから、そういった場合には、事業者側でも開けないということもあるでしょうから、そういった場合には、基本的には、そういったものを解除して出しなさいというような命令が出ていない限り、そのままのものを出せばいいと。
問題は、そういったものを解除するというものが一般的になるかというと、そこは捜査機関側にとっても、事業者側がどんな状況でお持ちなのかを確認しないと、裁判所にもそれを説明しないと、これは本当に復号できるんですか、事業者が、ということは裁判官からも問われることになりますので、事業者側に確認して、事業者側が出せる範囲のものを令状請求するというのが一般的な取扱いになろうかというふうに現時点では考えております。
○藤田委員 なるほど。
それというのは、これは価値判断なのかもしれないんですけれども、例えば、一般利用者等が、今このネット時代に、プラットフォーマーとかに自分のデータなんかを上げながら、使いながらやり取りをするということが、世の中の全員が知っていますよね、今でいうと。
それは、暗号化されたりして送られたりするというのは、まず、プラットフォーマーの企業側の従業員とかにも分からないために暗号化されていたりするというのがあって、それも含めて、命令でそういうものを解除したり、又は可視化できるようにしてやれというようなことについては、そもそも限界もあるんだろうし、そこがどこまでプッシュするのかは多分現場実務の話なので分からないですが、そういう構造に違和感を持つ方というのは多くおられるんだろうということは指摘をしておきたいと思います。
それから、海外、外国との法制度との関係性について少し聞いておきたいと思います。
一部の通信事業者とか又はグローバルプラットフォーマーは、サーバーはもう国内になく、海外にあるということが一般的でもあります。これの、国内だけの場合は、日本企業、そして、日本人であり、日本にデータが全てあって、サーバーも日本にあるという場合については全く問題ないと思うんですが、それがファジーな時代です。その場合、例えば外国の法制度との整合性に整理が一定必要なのではないかという疑問が生じるわけであります。
例えばEUでは、GDPR、ゼネラル・データ・プロテクション・レギュレーション、二〇一八年にできていますけれども、これはプライバシー保護の観点から、EU域外へのデータ移転に厳しい規制がかけられているというふうなものがあったりですとか、例えば、アメリカのCLOUD法、これはちょっと逆ですけれども、アメリカ企業が保有するデータを、たとえ海外に保存されていても取得できるようにするといった、こういった法整備が諸外国でも進んでいるわけであります。
例えば、日本にある、外国、それこそ分かりやすいところでいうとアマゾンとかメタとかグーグルとか、そういう日本法人がありますよね。日本法人に対して命令を出す。親元は海外であります。そのときに、いわゆるその命令をした範囲の、提供命令が課せられた範囲のデータが、海外にサーバーが設置されてそこに保管されている等の事象というのは、恐らく、どういう基準で対応したらいいのかというのが、事業者側にもちょっと悩ましいところもあると思うんですよね。そういったところの整理というのはどのようにされているか、又は議論がこれまであったかということをお聞きしたいと思います。
○森本政府参考人 外国の法制度を網羅的に把握して、それと整理しているというところまでは進んでおりませんけれども、基本的には、我が国に所在する者なり企業なりに対して命令をかける、日本支社なりにですね、ということになろうかと思いますが、その我が国に所在する者が、対象となる電磁的記録を保管し、又はそれを利用する権限がある、アクセスできる権限があるという限りにおいて、仮に、当該電磁的記録が外国に所在するサーバーコンピューターなどの記録媒体に記録されている場合であっても、当該電磁的記録を提供する行為は、我が国に所在する命令を受けた者によって正当な権限に基づき行使されるものであって、これによって提供された電磁的記録を捜査機関が受領したとしても、外国の主権を侵すことにはならないものというふうに考えております。
その上で、情報の域外移転等々のものにつきましては、EUとの関係でいいますと、刑事の場合には、日・EU刑事共助協定に基づいて今運用がされているところでございまして、そういったものの中で運用されているものの実務等を踏まえながら今後やっていくということになろうかと思っております。
○藤田委員 実際にそれを取得しても恐らく問題ないだろう、適切な範囲であればという御見解だったと思うんですね。
それは捜査側からの論理なんですが、これは提供命令なので、事業者側は、こういうプライバシーとか情報については抑制的に扱いたいわけですよ。そうすると、本国又は本社の意向でプライバシーポリシーとかは割とかちっと決まっていて、その中で、そういうことを理由に、例えば拒否したり、抵抗するというか協議するという局面というのは来ないのかなという疑念、疑問があるわけでありますけれども、その可能性というのはあるんですかね。
○森本政府参考人 御質問が具体的な事件で、実際、今、日本はどういう捜査をしているのかにかなり近くなっておりますので、なかなかお答えしにくいところはあるのでございますが、現実問題として、それぞれの事業者さんによって、やはりプライバシーポリシー等がありまして、これは出しますけれども、もうここから先は出しません、あるいは、これはありませんと、本当にあるのかないのかは分からないですが、ありませんと、こういうふうにおっしゃられる事業者さん、まちまちでございます。
他方で、これなら任意で出しますけれども、ここから先はこういう令状じゃないといけないし、あるいは、こっち側の情報はあるけれども、こっちの情報はありませんよと。例えば、電話会社だったら、通話した方の履歴は、課金されますのでそっちでありますけれども、受けた方のはありませんよとか、もろもろありまして、そういったものにつきましては、こちらも無理を強いても仕方がありませんので、実務上は、事業者さんとすり合わせして、何を持っておられて、この範囲内は出るかどうかをやって、その事業者さんが出せると言ったものについて令状請求をしているというのが現在でも一般的でございまして、電磁的記録提供命令になったからといって、その実務を変えて、例えば何でもかんでも裁判所に請求したら、こんなの出るんですかということに裁判所がなりますので、そこにつきましては、これまでの運用を踏まえた形で、事業者さんたちと丁寧に会話しながらやっていくということになろうかと思います。
他方で、全く非協力的な事業者さんがいた場合、仮に、児童ポルノを掲載していて、それについて全く協力しないというような場合には、それらの事案において、分かる範囲内で疎明して請求するということもあろうかと思いますので、非協力的な事業者さんとの間ではなかなか話が進まないということもあろうかと思いますけれども、委員御指摘のような事業者さんとの関係では、今のような話をした上での今後の実務の運用になるのじゃないかなというふうに今のところ考えております。
○藤田委員 なるほど、分かりました。
いずれにしても、その提供側との信頼関係とか事前の調整というのがあった中で協力をしてもらうという、これまでの任意からの経緯も踏まえた対応になるということと理解をしました。
それから、秘密保持命令についてなんですけれども、これってそもそも必要なのかということをシンプルに聞きたいと思います。必要だとすれば、理由は何かということをおっしゃっていただきたいんですが、記録命令付差押えには秘密保持要請がなく、今回の電磁的記録提供命令にはあるということなんですけれども、これがそもそも何で付加されているのかというのをもう一度確認したいと思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
秘密保持命令は、電磁的記録提供命令の被処分者として捜査に協力的でない者等も想定される中で、そのような者が、命令を受けたことや、命令により電磁的記録を提供したことなどを犯人等に伝えることにより、犯人等が罪証隠滅行為や逃亡に及ぶおそれがあることに鑑み、捜査に重大な支障が生じることを防止するために創設することとしているものでございます。
現行の記録命令付差押えは、立法当時でございますけれども、被処分者として通信事業者等の捜査に協力的な者を想定して設けられたものでありますが、近時、クラウドの利用が一般化し、個人による利用も広がっていることなどに伴いまして、そうした捜査に協力的でない者からも刑事手続に必要な電磁的記録の提供を受けることを可能とする必要が高まっており、電磁的記録提供命令について、そのような捜査に協力的でない者も被処分者として想定しております。
そして、そのような捜査に協力的でない者が、捜査機関から電磁的記録提供命令を受けたことなどを犯人等に伝え、それに起因して行われる罪証隠滅行為や犯人等の逃亡を防止する必要があることなどから、電磁的記録提供命令については秘密保持命令を設けることとしているところでございます。
○藤田委員 今の説明はよく分かるんですけれども、要するに、非協力的な人に対して抑止機能を働かせたいということだと思うんですけれども、前段の、その前の問いでいうと、いわゆる大規模通信事業者等が、電磁的記録提供命令の主な多分お願い先というか命令先に想定されると思うんですけれども、その人たちも一律にこれは負荷がかかりますよね。その場合、この秘密保持って結構難しくて、要するにぺらぺら言うなよという話だと思うんですけれども、それって、例えば記録命令付差押えとか、実際に現場がある場合は、たまたま通りかかった人とか、隣の部署の人が見るみたいなことって、何か一〇〇%避けられるかというとそうでもないと思うんですけれども、この場合、電子上のやり取りでするので、要するに、企業のガバナンス的に、これは罰則つきの秘密保持命令が付加されていて、あなたは退職後もそれを負うんだよということをかなり認識させないといけないという、そういう話だと思うんです、多分、一般企業実務でいうと。
それって結構大変なんじゃないかなというふうに思うんですが、果たして、その悪意ある、又は非協力的な人たちの行動を抑止するために秘密保持命令が全てに網がかけられるということで、しかも罰則までついているというのって結構大変だなと思うんですが、もしお考えがあったら。
○森本政府参考人 通信事業者等の中で、捜査に協力的な方々の中にも、先ほども少し申し上げたのですが、契約上の義務として、捜査機関から電磁的記録提供命令を受けたこと、そして、提供を命じられた電磁的記録を提供したことを、ある意味顧客へ連絡しなければならないというふうに、企業側のポリシーによってなっているところもございます。そうしたところにつきましては、具体的な企業との話はなかなかしづらいところもありますけれども、もし、それを通知して駄目だというのであれば、あるいは、その罪証隠滅とかを防がなければいけないというのであれば、そこは何らか、たてつけとして、そういうことはしちゃ駄目という、強制的に、それは駄目よという制度がないと、なかなか我々は契約上の義務を逆に履行しなければならないというお話などもございまして、そういった意味では、そういった事業者の方々に義務を履行していただく上でも、契約上の義務との関係で通知をしなければならないというところから別に悪気がなくても通知が行ってしまうというところを防ぐためにも、必要がある場合もあり得ると思っております。
他方で、この命令自体は、これまでも繰り返し答弁しているところでございますけれども、自己負罪特権との関係で問題が生じるものではないという整理をしていることから、両方とも同じような形で、電磁的記録提供命令について秘密保持命令まで含めて制度を設けているところでございます。
○藤田委員 ありがとうございます。
次に行きたいと思います。
捜査関係事項照会が、任意での照会でもあるんですが、実質的には強制に近いと批判する意見もあった中で、令状によるこの制度が新設されるということは、見方によっては、法的安定性とか抑制力が向上するとも言えるわけであります。
今後、任意照会が行われる場合でも、例えば、証拠の信用性の観点から、なぜ電磁的記録命令ではなく任意照会だったのかとかが問われるというケースがあるかもしれない。実務上の照会手法の精査が進んでいくという可能性があるのかないのか。そして、そうなった場合、捜査関係事項照会の運用の見直しみたいなものは想定されているのか。又は、捜査事項関係照会が、母数はちょっと分からないのであれなんですけれども、減少して、電磁的記録提供命令の件数に置き換わっていくというようなことが想定されるのか。その関係性について教えていただきたいと思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
まず、捜査関係事項照会につきましては、原則として報告すべき義務があると法的には解釈しておりますけれども、強制する方法はございませんということでございまして、任意でございます。
参考人の質疑の中で、実質全部、強制に近いんだというお話もありましたけれども、実務的な感覚でいいますと、やはり、各事業者さんもそうですし、いろいろな法務省側の団体等もそうですけれども、個人情報保護とか、それから皆さんの権利意識の高まりの中で、なかなか任意だと回答できないよというケースも実際かなり増えてきております。
そういった意味では、逆に言いますと、令状を持ってきてくれれば出すけれども、令状を持ってこないと出さないよという事業者さんも多いですので、そこのところは、任意でできるものは任意でやる場合もありますし、令状がなければやはり取得できないというものは令状を取得する。
他方で、令状を取得するに当たっては、それまでの収集してきた証拠から裁判官にその疎明をして、それで令状を出していただくという手続が必要になりますけれども、やはりここは一段ハードルが、一段というか、かなりハードルが任意の捜査関係事項照会と比べると上がるというふうに考えております。
そういったことを考えますと、今後の推移は予断できませんけれども、相手方が任意に応じることができる場合であって、捜査関係事項照会で十分足りるなと思うものであれば、捜査の大原則でもある任意捜査の原則に従って任意でやるという場合もありますし、それでは目的が達しなくて、やはり令状がないと取得できないという場合には電磁的記録提供命令を用いるといった形で、状況に応じて両者を使い分けていくというような実務の運用になるのではないかというふうに考えております。
○藤田委員 分かりました。ありがとうございます。
電磁的記録提供命令の大きな論点の一つは、この提供命令が新設されることによって、電磁的記録なので、データなので、桁の違う多大な情報量を取得できるように飛躍的に捜査手法のオプションが拡大するんじゃないかという懸念だと思うんですね。多大な情報量が一手に、一気に取得できるがゆえに、電磁的記録提供命令は抑制的に運用されるべきなんじゃないかという意見もあるわけであります。ここについての見解を改めて聞きたいと思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
まず、原則論的なところで申しますと、憲法の三十五条一項で、そもそも包括的な押収が禁止されております。これを受けまして、改正後の刑事訴訟法では、裁判官が発する電磁的記録提供命令の令状に、提供されるべき電磁的記録等を具体的に特定、記録しており、そして、捜査機関が提供を命じることができる電磁的記録というのは、制度上、裁判官が関連性を認めて令状に記載、記録されたものに限定されるというのは、これまで述べているとおりでございます。
したがって、裁判官の判断手法というのはこれまでと変わらないということになると思われますので、電磁的記録提供命令の創設によって捜査機関側による情報の取得が現行制度下よりも格段に広範に行われるようになるかという点については、そうではないのではないかというふうに考えておりますけれども、もとより、電磁的記録提供命令の運用が憲法や刑事訴訟法の規定にのっとって適正に行われるべきものであることは当然でございまして、そうした適正な運用に努めていく必要があり、そういったことにつきましては、国会審議の状況も踏まえて、捜査機関に通達等において適切に周知してまいりたいというふうに考えております。
○藤田委員 ありがとうございました。
ちょっと刑事デジタル法はここまでにして、先週に引き続いて、外国人問題についてやりたいと思います。
まず、直近の、二〇二四年の難民申請者数を確認したいと思います。
○杉山政府参考人 令和六年の難民認定申請者数は一万二千三百七十三人であります。
○藤田委員 ありがとうございます。
一万二千三百七十三人の難民申請が二〇二四年にはあったと。二〇二三年は一万三千八百二十三人なんですね。
これは、先週の質疑で、二〇一〇年、平成二十二年に難民認定申請から六か月経過後に一律に就労を認める運用が開始されて、そこから七年後の二〇一七年には一万九千の大台まで到達して、約十倍、七年で十倍になった。そこから、運用を厳しくして、一律に就労は認めないよということをやったら、半減して一万ぐらいになりましたということなんですよね。
これは、私が申し上げたのは、そういう、制度の運用とか、ある種のインセンティブが働いてしまって増加したり減少したりするというのは、政策によってそういうエフェクトが出ちゃうよということを申し上げたかったんですね。
その上で、二〇一〇年の水準は千人強なわけでありますが、コロナ中は二千人、三千人台に落ちているのは当然のことなんですけれども、一旦一万九千まで上がって、一万まで下がったんですが、そこから、コロナが明けた後は一万三千、一万二千という数であると。
今後どういうふうに推移していくかは分からないですが、これは、十年前、十五年前の水準から比べると十倍ぐらいの数なんですよね、そもそもでいうと。これは、もうこの水準に慣れよということで受け取った方がいいのか。つまり、端的に言うと、この数字というのは恐らく、イレギュラーで何かもう物すごい数の大量の難民が押し寄せて増えているということではないと思うんです。つまり、言い方が合っているのか分からないですが、イレギュラーではなく、平常時の数字だと思うんですけれども、その認識でよいのか。これを、そもそも多いと捉えるのか、もっと抑制すべきというふうに捉えるのかの見解があれば、お答えいただきたいと思います。
○杉山政府参考人 御指摘いただきましたとおり、令和四年の難民認定申請者数は三千七百七十二人であったのが、一年後、令和五年は一万三千八百二十三人と、急増しているところでございます。
ただ、この点につきましては、御指摘いただきましたように、令和四年三月以降に新型コロナウイルス対策としての水際制限が段階的に緩和されたことによって、令和五年に新規入国者数が急増したことが影響しているものと考えられるところでございます。
その上で、一般論として申し上げますと、難民認定申請者数の増減につきましては、申請者の個別の事情や各国の情勢等に影響されるものでありまして、入管庁といたしまして、御指摘の、平常時の数字がどのくらいであるという評価、あるいは、令和五年の難民認定申請者数が多いかどうかという評価をすることは困難であると考えているところでございます。
もっとも、入管庁としては、現在の難民認定申請の中にも、引き続き、一定程度の誤用、濫用的な申請が含まれているものと考えているところでございます。
○藤田委員 最後に、非常に抑制的な答弁ながらも、誤用、濫用もありますよということをお答えいただきました。
この難民の定義を改めて整理すると、条約に規定されていて、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員、又は政治的意見、こういったことを理由に迫害を受けるおそれがあるという人たちが難民というふうに定義されているわけでありますが、確かに、そういう人たちを保護するということを拒否したり、何か嫌がる理由は私はないとまず思うんです。その上で、誤用、濫用や、又は全体的な母数とかということが政策判断とどう関連性があるかということについてはしっかりと見ていかないといけない、そういう立場です。
その上で、先週もお聞きした、これはちょっと法律改正があって制度が変わりますが、仮放免者の身元引受人のケースをお聞きしました。そこで、事例を調べてみると、二百八十人ぐらいの身元引受人に一人がなって、そのうち八十人ぐらいが逃亡したという、明らかにこれはもう恐らくビジネススキーム的に使われていて、しかも、意図的にそういうことが入口、入ってきているんじゃないかと予想される事案ですよね。
これが、改正入管法においては監理措置になって、法的に位置づけられた監理人というものが責務を果たしてもらうというふうに変わったというふうなんですが、多数の方を受け入れるというようなことは、要するに類似制度でありますから、それが引き継がれて、いわゆるスキームが引き継がれてそういう悪用、濫用というのはやはり抑止した方がいいと思うんですけれども、そこについて、多数の方を引き受けるということについて是正すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○杉山政府参考人 改正前の入管法下の仮放免者における身元保証人は、運用上求めていたにすぎず、法令に基づく義務を負うものではございませんでした。
改正入管法で創設された監理措置では、監理人による監理の仕組み、監理人に対する被監理者の逃亡等を疑うに足りる相当の理由がある場合等の届出義務、監理人に対して監理措置条件等の遵守状況等の報告を求める権限、任務を継続させることが相当でないと認める監理人の選定を取り消すことができる権限等を規定するとともに、監理人の義務違反に対する罰則等を設けたところでございます。
また、監理人については、その任務遂行の能力を考慮して適当と認められる者でなければならず、例えば、監理人になろうとする者が、先生が御指摘いただいたように、多数の被監理者の監理人である場合ですとか、多数の被仮放免者の身元保証人である場合には、通常は、任務の遂行能力に支障があり、被監理者の逃亡を防げないと判断され、監理人として選定されることはないものと考えております。
また、こうした規定や仕組みは被監理者の逃亡の防止に資するものと考えておりまして、実際に、令和六年の末現在でありますが、監理措置決定を受けた者で所在不明になっている者はおらず、逃亡事案の発生の抑止という観点でも、改正入管法が意図したとおりの運用がなされているものと考えているところでございます。
引き続き、監理措置制度を適切に活用してまいりたいと考えております。
○藤田委員 上に政策あれば下に対策ありみたいな形で、要するにそれは、そういう制度になって、例えばそういう二百八十人とか百人を超える人らというのは、要はプロですよね、行政書士の方とか、例えばですけれども。となったときに、ある種、ここまではいけるのかという形の感触の探り合いみたいなものがあって、増えていかないように是非気をつけていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
それから、二〇二三年、二四年の難民申請者を国別で見ると、令和六年、直近は、スリランカ、タイ、トルコが一位、二位、三位なんですね。比率でいうと、全体が一万二千三百七十三人のところ、スリランカが二千四百五十五名、タイが二千百二十八名、トルコが一千二百二十三名で、上位二つが二〇%弱で、三位のトルコは一〇%ぐらい、全体の母数で。全体でいうと、そこだけで四分の一ぐらいを占めるということなんですけれども。タイについては、しかも、令和五年には十二位で、令和四年には二十五位以下のかなり下位だったところが、令和六年には一気に、前年度からすると十倍ですか、十倍ぐらいに伸びている、こういうことがあるんですけれども、スリランカ、タイ、トルコが多い理由というのはどのようにお考えかというのを聞かせてもらいたいと思います。
○杉山政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、一般論として申し上げますと、難民認定申請者数の増減につきましては、申請者の個別の事情や各国の情勢等に影響されるものでございます。そのため、各国別に申請者数が多い理由を一概にお答えすることは困難であります。
もっとも、入管庁としては、先ほど申し上げたとおり、現在の難民認定申請の中にも、引き続き一定程度の誤用、濫用的な申請が含まれているものと考えているところでございます。
○藤田委員 なかなかこれの理由で増えたというのは言えないところではあると思うんですが、一つの指摘される事項においては、やはりビザ免除措置の話があると思うんですね。
トルコはよく言われていますけれども、タイもビザ免除措置国なんですね。ビザ免除国は、今、現段階では約七十か国あるわけでありますけれども、この他国とのビザ免除措置を締結する際の主な基準というのをまず確認したいと思います。
○町田政府参考人 お答えいたします。
委員が御指摘のとおり、我が国は現在七十一の国、地域に対して短期滞在を目的とした査証免除措置を導入しているところでございますけれども、これは、相手国、地域との関係強化、人的交流促進による経済波及効果や相互理解の促進、その一方で、我が国の出入国在留管理や治安への影響などを勘案し、関係省庁間で緊密な調整を行い、政府として最終的な可否を判断しているというものでございます。
○藤田委員 ありがとうございます。
このビザ免除措置をする理由があれば、それを例えばちょっと厳しめに対応を変えていくということも、それは入れる理由があれば出る理由もあってしかるべきだと一般論として思うんですね。
その中で、これは、予算委員会の分科会で塩崎議員が質問して松本政務官が答えられていて、ビザ取得勧奨措置の話の可能性について言及がありました。私は、これは外交問題でもあるし、一面的に捉えて、すぐにそうせよというふうに決断するのはなかなか難しいのは理解していますけれども、オプションとしてはあり得ると思うんですね。
ビザ免除の一時停止はパキスタン、バングラデシュ、イラン、今、勧奨措置、取得勧奨は、ペルーは今年解除される予定みたいですけれども、ペルーやコロンビアといったところがそういうカテゴリーに入っているということなんですけれども、私が申し上げたいのは、先ほど来、なぜ増えたのかというのでいうと、個別の積み上げがあるから、一般論としてなかなか答弁はしにくいという話だったと思うんですけれども、その積み上げがスキームとなり、そしてマクロの数字が、こういう統計で見て、目に見えて明らかに増加しているとかというのには、やはり敏感に対応してその元を断つ政策判断をやらないと、一番最初に質問させていただいたような、もう七年で十倍に申請が増える、政策を一つ変えたら半減するということが起こり得るんじゃないかということで、非常にナーバスにこの日々数字を見ていかないといけない問題なんじゃないかというのが私の意見なんですね。
その上で、ビザ免除の一時停止やビザ取得勧奨というのは、私はオプションとしては手放すべきじゃないし、あり得るんだろうと思うわけです。なぜならば、タイやトルコが急増していて、特にトルコ籍の方でいうと、今もう報道にもかなり出ていますけれども、短期ビザで来て難民申請をして、申請には数年かかる、その間に就労できるようになり、その子供も来ていたら子供は学校に行くという事例があって、そのある種の先行事例で、母国からお友達が来る、そういうふうにして増えていき、集住するという事例が起こっているところもあるわけなんですよね。
そうしたときに、何かやはり対策を、どこのステージで対策を打つかというのは政策判断があると思うんですけれども、ありとあらゆる可能性をオプションとしては持ちながら、誤用、濫用を抑止していくという姿勢が必要だというふうに思いますが、ビザ免除の件についてお聞きしたいと思います。
○町田政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、査証免除措置を一時的に停止した事例というのはこれまでにもございまして、その際、不法残留の増加を理由にしたものというものはございます。
ただし、申し上げましたとおり、査証免除措置は、相手国、地域との関係強化等を目的に導入しているものでもございますので、その停止については慎重に検討する必要があると思っております。
それから、御指摘がございました査証取得勧奨措置でございますけれども、こちらは、そうした査証免除をしている国、地域からの観光客あるいは短期商用旅行者であっても、日本の空港などにおいて入国審査の際にトラブルが発生することを防止するために、前もって日本の大使館又は総領事館で査証を取得することを推奨する、そういう枠組みでございます。
こちらについても、御指摘のとおり、不法残留の増加を理由に導入した例はございますけれども、申し上げましたとおり、その意義、効果については、査証免除措置の一時停止と同様、慎重に考慮する必要があるというのが基本的な考え方でございます。
○藤田委員 そういう答弁なのはしようがないと思うので、分かるんですけれども、やはりオプションとしては持っておいていただきたいというふうに思います。
大臣のところまでたどり着けず、済みませんでした。また次回以降、お願いします。
以上です。
○西村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時一分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○西村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。小竹凱さん。
○小竹委員 国民民主党の小竹凱です。
本日、また質疑の機会をいただき、ありがとうございます。それでは、質問に入らせていただきます。
まずは、電磁的記録提供命令に焦点を当てて質問を行いたいというふうに思います。これまでの方とちょっと重なる点があるかもしれませんが、改めてお伺いしたいというふうに思います。
本制度は、紙や物理的物体を介さずにクラウド上のデータまさにそのものを提供し、直接命ずるという新しい仕組みであり、従来の捜査手法と比べてもより強い権限を認めるものと言えると認識しております。
特に注目すべき点、午前中もたくさん出ておりましたが、秘密保持命令、付随し得る点があるかと思います。これが一度付されれば、命令を受けた者は、命令の存在自体やそれに基づきどのような情報を提供したか、今、現行ですと命令にも期限がなく、それが半永久的に情報提供の事実が隠されるという可能性があるというように認識しております。これは度々議論されておりますけれども、捜査の効率化という点では一定の意義がある一方で、プライバシー保護や知る権利とのバランスにおいて極めて繊細な判断が求められる領域だというふうに理解しております。
秘密保持命令について順次伺っていきますが、刑事訴訟法の新設された二百十八条の三項、読み上げますが、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、電磁的記録提供命令をする場合において、必要があるときは、裁判官の許可を受けて、電磁的記録提供命令を受ける者に対し、点々々というふうにありますが、この際の必要があるときはというのは改めてどういうケースか、お答えいただきたいというふうに思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
本法律案による改正後の刑事訴訟法第二百十八条第三項の必要があるときとは、捜査の目的を達するために電磁的記録提供命令を受けたこと等の漏えいを防止する必要がある場合をいいます。
どのような場合が必要があるときに当たるかについては、個別の事案ごとに具体的な事実関係、証拠関係を踏まえて判断されるべき事柄ではございますが、例えば、通信事業者等が顧客の通信に関する情報を第三者に提供したときに、当該顧客にそのことを通知すべき契約上の義務を負っており、その義務の履行として、捜査機関から電磁的記録提供命令を受けたこと及び提供を命じられた電磁的記録を提供したことを顧客に通知することによって罪証隠滅行為等が行われるおそれが大きい場合などは必要があるときに当たり得ると考えております。
○小竹委員 午前中の質疑にもありましたけれども、この必要があるときというのは、例えば、非協力的な方であったりとか証拠隠滅の疑いがある場合ということを指していると思いますが、これの全てに網をかけるというのはいま一度バランスを取って考え直さなきゃいけないなというふうに感じているところでございます。
また、同二百十八条の七項についても伺います。検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第三項の規定による命令をした場合において、その必要がなくなったときは、自ら又は当該命令を受けた者の請求により、これを取り消さなければならないとあります。
この際のその必要がなくなったときというのはどのような状態を指しているのか。例えば、不起訴になった場合でしたり、そういったケースが考えられるかと思いますが、これもちょっと、個別であったり、抽象的な必要の有無ではなくて、国民に是非納得感のある明確な基準の提示がある程度重要だと思いますので、重ねて説明をいただきたいというふうに思います。
○森本政府参考人 同条第七項におけるその必要がなくなったときとは、電磁的記録提供命令を受けたこと等の漏えいを秘密保持命令により防止する必要がなくなった場合をいいます。
どのような場合がその必要がなくなったときに当たるかは、先ほどと同じように、個別の事案ごとに具体的事実関係、証拠関係を踏まえて判断されるべき事柄ではございますが、例えば、先生御指摘のように、捜査、公判が進展し、電磁的記録提供命令を受けたこと等を被処分者以外の者に知らせても罪証隠滅行為等が行われるおそれがなくなった場合などは、その必要がなくなったときに当たり得ると考えておりまして、捜査、公判の進捗状況等を踏まえて判断する事柄というふうに考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
例えば公判で証拠開示が行われた場合ですとか、こういった場合も必要がなくなった場合というふうに認定されるのでしょうか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
ケースによっていろいろございまして、今の、現行の制度の下でも、公判段階に至ってもなお証拠隠滅のおそれがあるということで、例えば保釈後の関係者との接触が禁止されるとか、そういう場合もございますので、単独犯なのか、それから共犯関係なのか、事案によると思いますけれども、時点時点としては、強制捜査が行われたとか、逮捕が行われたとか、それから第一回公判が開かれたとか、その進捗状況に応じて、裁判官において適宜判断されるということになろうかと思っております。
○小竹委員 ありがとうございます。
これもまた重ねてですけれども、午前中にもたくさん質疑されておりましたが、是非、ここは納得感のある明確な基準の提示というのが必要だと思いますので、重ねてお願いしていきたいというふうに思います。
次に、自己負罪拒否特権の関係についてお伺いしていきます。
本法案では、命令の対象がIT事業者のみならず、被疑者、被告人にも及ぶことになるというふうに認識しております。そして、従わなければ罰則も設けられております。ここで懸念されるのは、憲法第三十八条に定められた自己負罪拒否特権との整合性であると思います。
先日の本会議で鈴木大臣が、電磁的記録提供命令について、既に存在している電磁的記録の提供を命ずるものにとどまり、供述を強要するものではないため、自己に不利益な内容が含まれている電磁的記録の提供を命ずる場合であっても、憲法で保障されている自己負罪拒否特権と抵触するものではないと考えておりますという御答弁がございました。
既に存在する記録の提出だから問題がないということですが、これは供述の強要と紙一重でないかというふうに考えておりまして、特に対事業者と対個人では意味合いが大きく変わってくると思いまして、事業者に対してですと、電磁的記録提供命令をすることが自己負罪拒否特権に直接抵触する、ケースにもよりますが、というのはなかなか考えにくいところが一部あるかと思いますが、個人に対して電磁的記録提供命令をすることは、供述に代わるデジタル情報の強制提出というような解釈もできるのではないかというふうに考えております。
企業と個人、情報の性質も提出の義務の重みも異なってくると思いますが、同一の制度設計で一律に適用してよいのか、ここは慎重な議論が必要だと考えますが、また見解をいただきたいというふうに思います。
○森本政府参考人 確かに、企業の場合とそれから個人の場合とで、委員御指摘のとおり、事件への関係性とか、異なってくるものではございますが、これも何度も御答弁申し上げているところでございますけれども、電磁的記録提供命令につきましては、被処分者が事業者であるか個人であるかを問わず、自己に不利益な内容が含まれている電磁的記録の提供を命ずる場合を含めて、憲法第三十八条の自己負罪特権に抵触するものではないというふうに考えておりまして、そういった意味では、制度設計として、同一の形の制度設計になっていることについて問題があるというふうには考えておりません。
それと、なお、先ほどの答弁で、済みません、私、なくなったときの判断権者として裁判官というふうに申してしまったかもしれませんけれども、なくなったとき判断するのは検察官等でございますので、大変失礼いたしました。
○小竹委員 ありがとうございます。
ここが再三にわたり議論されているところとしまして、いろいろな論点が、懸念点ですね、あるかと思いますが、そこを一つ一つちょっと整理していきたいというふうに思います。
一つ目は、デジタルデータの性質上、情報が混在しているというのが常であるということでありまして、クラウドに保存されたデータには、本人だけじゃなくて、家族や取引先や他者のプライベート情報、全く関係のない情報も含まれている可能性があります。
先日の委員会で我が党の円議員が例を挙げたように、また、参考人質疑の際に、村木厚子参考人や大川原化工機事件の島田参考人などからも、答弁から明らかになったように、結果として、事件と関係のないデータまで収集され、捜査の名の下で目的外使用、いわゆる人質司法のようなことを助長させるリスクがあるのではないかという懸念から、この点が長く指摘されていると思います。
そこで、お聞きいたしますが、捜査と関連性のない個人情報は極力収集しないというように留意するような規定を設けることに対して、鈴木大臣、御見解をお聞かせ願えますでしょうか。
○鈴木国務大臣 関連性のない情報を極力収集しないように留意するといった規定を設けるべきではないかということでございますけれども、改正後も含めて、刑事訴訟法におきましては、その大前提として、裁判官が発する差押許可状あるいは電磁的記録提供命令の令状に、差し押さえるべきもの、さらには提供させるべき電磁的記録等を具体的に特定をして記載、記録をすることとされています。
捜査機関が差し押さえることができる記録媒体あるいは提供を命じることができる電磁的記録、これは制度上も、司法である裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録されたものに限定をされるということとなっております。
まさにそのところをしっかりとそうした判断がされる、我々としてはそう考えておりますし、あるいはまた、付随的な規律としては、御指摘のような規定、更にそれを付随的に設けるかどうかということでありますけれども、刑訴法自体に設けるということにつきましては、ほかの強制処分、これとの関係もあります。ほかの強制処分に関する規律との整合性、これは問題になり得るかとは思いますが、ただ、やはり、御指摘いただいたような規定の趣旨というか、関連性のない個人情報を極力収集しないようにするべきではないか、そういった問題意識については、今申し上げた、現行あるいは改正後の刑訴法のそうした考え方、これに沿うというふうには我々も考えております。
そうした中で、その内容、趣旨を十分に周知をすることによって、捜査機関による差押えであったり、あるいは電磁的記録提供命令の適正な運用に資するものになるのではないかと我々としては考えているところであります。
○小竹委員 ありがとうございます。
続きで、集められたデータが、極力、今の答弁で、収集しないように留意するということでしたが、集められたデータが消去されずに蓄積されていくという点についても複数回にわたって指摘されているというふうに思います。
例えば、通信傍受法と比較しますと、検察官や司法警察官は、傍受をした通信の内容を刑事手続において使用するための傍受記録を作成しなければならず、傍受記録は、傍受した通信の記録をした記録媒体等から傍受すべき通信に該当する通信等以外の通信記録を消去して作成するものというふうにされておりますが、一方で、電磁的記録提供命令については、そういった記録の消去に関する規定はありません。
また、違法に取得された情報に対しても、通信傍受法では、消去を命じなければならないことや、三年以下の懲役、百万円以下の罰金など様々な刑があるのに対して、電磁的記録提供命令については特別の罰則規定は設けられていない。
こういったことが挙げられておりまして、あくまでも捜査上関連性の高い情報を抽出し、それ以外は消去するであったり、提供命令が取り消された場合は記録を消去することが国民のプライバシーの観点から当然として必要かと考えますが、この点についても大臣の見解をお聞かせ願えますでしょうか。
○鈴木国務大臣 これまでも、この委員会、委員も含めて様々な委員の方々との審議の中でも何回か指摘をされ、答弁申し上げたところでありますけれども、現行の刑事訴訟法の下においては、捜査機関が証拠を押収した、そういった場合に、その押収処分が事後的に取り消されたとしても、当該証拠の複製等を廃棄、消去することとはされておりません。直ちに裁判において証拠として利用することができなくなるということともされていないところであります。
むしろ、最高裁の判例により、令状主義の精神を没却するような重大な違法があって、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合に初めて証拠能力が否定をされるという取扱い、これは確立をされているわけであります。
こうした我が国の刑事法の基本的な考え方に照らしますと、電磁的記録提供命令が取り消された場合であっても、それによって得られた電磁的記録について、証拠としての使用が直ちに否定をされるというものではないと考えております。
そして、捜査あるいは公判に必要なものとして作成、取得された書類、捜査中から刑事事件終結後に至るまで、刑事手続の適正かつ円滑な遂行のためにありのままの記録として保管、保存されるべきものである、これが現行制度の基本的な考え方であります。
そういった中で、やはり、こうした考え方にのっとり、また、あるいは先ほども質疑の中で申し上げましたけれども、これは、例えば、国賠であったりとか、あるいは再審の場合とか、そういったところで使われる可能性も当然あるということを考えれば、御指摘のような規定を設けるべきかということで申し上げれば、それを刑事法の基本的な考え方と整合する形で設けるということはなかなか難しいのではないかと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
デジタルデータというのは余りにも莫大なものになりますので、すぐに消したり、すぐ本当に関連性が濃いものだけを抽出するというのは難しいとは思いますが、その背景には、この間の参考人質疑にもありましたけれども、そういったこれまでの取調べの現場でやってきたことであったり、そういったことが国民の不信感、不安につながっているというところを是非大臣にも改めて意識していただいて、取り組んでいただきたいというふうに思います。
そして、秘密保持命令に、先ほども申し上げましたが、また、期限が設けられていないという点についても、私からも指摘させていただきたいというふうに思います。
本来、捜査上、支障が解消された時点で秘密保持命令は解除されるべきだと思いますし、これも、必要がなくなったときとの先ほどの答弁と同様に、客観的な基準と運用体制が不可欠だと考えます。
秘密保持命令に期限が設けられていない点について、鈴木大臣にお伺いしますが、期限を設ける方向での制度見直しの可能性について御見解をいただきたいというふうに思います。
○鈴木国務大臣 私どもで提案をしています本法律案におきましては、電磁的記録提供命令は、捜査の初期段階、これで利用され得るものでありますので、将来の捜査の進捗を見通して秘密保持命令の期間を適切に定めること自体も困難な場合が少なくないと考えられております。
そして、同時に、秘密保持命令の期間を定めて被処分者に通知することといたしますと、それによって、被処分者あるいは犯人等が捜査の見通しを推測をすることも考えられますし、それに基づいて罪証隠滅行為等に及ぶ等々、捜査に支障が及ぶということもあり得るということ、こうしたことを考慮いたしまして、秘密保持命令については、あらかじめ期限、期間を定めなければならないということとはしていない、これが私どもの今提案している法律案であります。
ただ、この委員会においても様々な議論がありました。秘密保持命令が発せられた場合には、電磁的記録提供命令によって提供された電磁記録に記録をされている情報の主体は、事実上、電磁的記録命令に対する不服申立て、これがしにくくなるという、実際そういった可能性、これは重々指摘をされてきたところであります。こうした点について、やはり我々としても真摯に受け止める必要があると考えております。
その上で、秘密保持、提供命令、これにつきましては、あらかじめ適切な期間を定めることができるかといった点、ここはいろいろ困難な面があるわけではありますが、様々な御指摘をいただいた、この委員会でもたくさんの委員の方々からそうした御指摘もいただきました。そうした御指摘を踏まえた対応の余地、これがあるのかどうか、ないのかどうか、そういったことについては、我々としても、そうしたことをきちんと検討することが必要であると考えているところであります。
いずれにいたしましても、この法律案が改正法として成立をした場合には、捜査機関による秘密保持命令の適正な運用、この確保は大事でありますし、そういったことをしっかりと確保できるように、捜査機関に対する制度の内容、趣旨の十分な周知を行っていくということ、これは必要な方策もしっかりと講じてまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
もちろん、本法案が掲げる手続の迅速化であったり円滑化、あと、時代に合わせて、この変革というのは、理念にはもちろん賛同していますが、それがゆえに、プライバシーの無制限な収集とか目的外使用につながっては本末転倒でありますので、先ほど大臣もおっしゃられたように、不服申立てがしにくいこと、知る権利、こういったところのバランスを是非取っていただいて、法務大臣として厳しく、運用に向けて管理していただきたいというふうに思います。
続きまして、ちょっとテーマを変えまして、刑事デジタル法案の電磁的記録提供命令について、私がちょっと個人的に期待しているところといいますか、児童ポルノやダークウェブ事件への効果、そういったところ、課題、こういったところを伺っていきたいというふうに思っています。
これらの犯罪は、被害児童の保護が急務であり、国民の関心も高い一つであります。例を一つ挙げますけれども、ウェルカム・トゥー・ビデオ事件の例を挙げます。
二〇一九年十月に、世界最大級の児童ポルノサイト、ウェルカム・トゥー・ビデオの運営者である、当時二十三歳の韓国人、ジョン・ウー・ソン氏が逮捕されました。当事件では、捜査機関の国際協力体制が組まれ、コンテンツ投稿、購入していたイギリス人、ドイツ人、サウジアラビア人など、全世界三十八か国、三百三十七人が一斉に逮捕されたということが記憶に新しいかと思います。
ソン氏の自宅寝室から、動画二十五万点、データ容量にして八テラバイトの児童ポルノを収めたサーバーが押収されました。捜査を経て、アメリカ、ヨーロッパ当局が、サイト利用者に虐待されていた少なくとも二十三人の児童を保護、被害児童の中には、生後六か月の赤ん坊までいたというように報道されています。
この事件では、国際協力の下、三十八か国で一斉逮捕が行われましたが、捜査当局がサーバーを確保して、そこから大量のデータを解析、突き止めるという、まさに国際的かつデジタル技術を駆使した捜査の成果というふうに考えると思います。
こうした事例に鑑み、電磁的記録提供命令がもたらす迅速な証拠確保の意義は大きいものと私も考えています。
こうした被害はネット上の写真や動画で行われ、昨今、特に被害が大きくなっていっています。スピード感を上げていくために、こういった今回の法改正が有用に働くのではないかと期待している部分もありまして、今回の法改正によって、その効果、また、ほかの事案に対しても今回の法改正が有用に働くのか、法務省としての見解がありましたら、是非教えていただきたいというふうに思います。
○森本政府参考人 現行の差押えや記録命令付差押えですと、有体物、記録媒体を差し押さえる必要があるわけですが、今回の電磁的記録提供命令によることができれば、電子データそれ自体を取得できる場合もございます。そうした場合には、捜査の目的、証拠の収集目的からしたら、電磁的データそれ自体を取得できればいいというときには、有体物であるところの記録媒体等がなくても、データでまず証拠収集ができるということ。
さらには、電子データがクラウドサーバーに保存されている場合などで、現行法の下で、現在の実務の状況ですと記録媒体の差押えが困難な場合というようなものがございます。このような場合に、御指摘のように、電磁的記録提供命令であれば、例えば、児童ポルノのような事案も含めまして、様々な事案、場面での活用が考えられるところでございまして、例えば、捜査に必要な電子データがクラウドサーバーに保存されているなど、記録媒体の差押えが困難である場合に活用することが考えられますし、また、児童ポルノのサイト関係者等で電子データの保管をする者等が任意でのデータを拒んでいるような場合に、それにつきまして提供命令をかけていくというような場合において活用ができるのではないかというふうに考えておりまして、それにつきましては、そのほかにも、電磁的記録が犯罪に用いられている場合には活用の余地があるものというふうに考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
まさに任意の、これまでの提供に協力しなかった非協力的な事業者に対してのそういった権限を強めていくという点においてはいいかと思いますが、今回の場合ですと、この事件の場合ですと、アメリカの捜査機関がおとり会員になって、金銭というか、細かく言うとビットコインなどを出し入れして、そこから逆をしてサーバーの位置を突き止めたというようなことで、韓国のある箇所を特定できたというふうに理解しております。
こういった児童ポルノであったり闇バイト、こういった非協力的であるだろう事案に対して、今回、サーバー等について今聞きましたが、P2Pネットワークのようなユーザー同士が直接ファイルを交換する仕組みでも、この電磁的記録提供命令がどういうふうに役立つのか、教えていただきたいというふうに思います。
○森本政府参考人 あくまで一般論という申し上げ方になりますけれども、捜査機関による電磁的記録提供命令は、捜査に必要な電子データを保管する者又はそれを利用する権限を有する者に対してできるものでございまして、御指摘のように、P2Pのようにユーザー同士がデータをやり取りするような場合におきましても、そのデータや、それから、それを保管し、利用している権限を有する者を特定した上で、その者に対して電磁的記録提供命令をすることによりまして、それらの者から捜査上必要な電子データを取得できる場合があると考えておりまして、御指摘のような事案であっても活用が可能というふうに考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
こういったところというのは本当に高度化、複雑化していますので、是非、捜査機関能力としても高めていただきたいというふうに思います。
まさにダークウェブのやり取りといいますか、実際、このウェルカム・トゥー・ビデオの事件についても、児童ポルノサイトが普通の方法ではアクセスできないインターネット領域、ダークウェブで運営されていました。ダークウェブの多くは、海外サーバーやトーアネットワークを使い、匿名性が高いというふうに運営されています。トーアというのは、ネット上の端末をランダムに三回から五回から経由しながら、暗号化された通信が分からないようにして発信元の特定を防ぐという、昔の感覚でいいますと、運び屋が物を町の各種ポイントに隠して受け渡していったような、こういうことがもうサーバー上で行われているというのが今の技術でございます。
ダークウェブ上のP2Pでは更に誰か分からないようになっておりまして、国民は、こういった、特に被害の大きい、そして日本人は比較的こういう分野において狙われているところでもありますので、隠れた犯罪を本当に止められるかというのが心配であると思いますが、こういった犯罪は日々高度化している中、今後どのような対策をしていくのか、回答できる範囲で構いませんので、是非お答えいただきたいというふうに思います。
○森本政府参考人 委員御指摘のように、ネット空間における犯罪状況といいますか、サイバー犯罪というのはかなり、我々が思っている以上に進展しておりまして、そういったものへの対応は政府を挙げて全力で取り組むべき課題であるというふうに考えております。
他方で、委員御指摘のダークウェブ等につきまして、それはほぼ犯罪目的で使われているというような状況等々も踏まえて、日本の捜査機関がそれをどこまで踏み込んでいってやっていいのかということはまた別途の法的問題があると思いますし、どこまでの捜査ということをつまびらかにできるわけではございませんが、私どもも、そういった犯罪については緊張感を持って注視しているところでございまして、そのために、そういったものも含めまして、デジタルフォレンジックに関する人的、物的体制の整備であるとか、あるいは知識習得であるとか、それから、デジタルフォレンジックにつきまして最新の技術を有するような機器を更新、整備したりしていくとか、そういった形で犯罪組織がやっていることに対応できるように日々研さんを積んでいく必要があると考えており、今後もそのように進めていく必要があるというふうに考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
どこまで踏み込んでいくかというのは、海外等の国際的な場合において国家主権を害さない程度にという、どこまで踏み込んでいくかという理解でよろしいですか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
その問題があるとともに、委員御指摘、御紹介いただいた事案でいいますと、なかなか日本では認められていない捜査手法を諸外国で使われていてというところがございますので、そういったところを、どこまでお互いに捜査協力しながらやっていけるのかという点が、日本の場合には限界もあろうかと思いますが、そういったところも含めて、様々な国と情報交換しながら検討を進めてまいりたいというふうに考えておりますということでございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
もちろん、各国の法体系がありますけれども、デジタル上でいくと、アクセスする側からしたら、世界どこにでもアクセスできますので、そこはある意味一律でといいますか、そこはスタンダードに合わせていただきたいというふうに思いますし、本当に、今言いましたけれども、年々この技術が高まり、高度化、複雑化している中ですので、電磁的記録提供命令で一部捜査の有用性が向上する点はあるかと思いますが、いまだに、捜査機関能力の向上という点では、これまで以上に、変わらず、日々取り組んでいかなければならないかと思いますし、一個人の努力で限界がありますので、ここはまさに、鈴木大臣も法務省の更なる予算確保に向けて頑張っていただきたいというふうに申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、本村伸子さん。
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
今日は、捜査機関による個人情報の取得、蓄積、利用に関する濫用防止に関して質問をさせていただきたいと思います。
まず、大前提で伺います。憲法十三条についてです。
個人の情報をみだりに第三者に開示又は公表、提供されない自由のみならず、その前段階とも言える個人情報の収集及び保有についても、個人の私生活上の自由を侵害するようなものは許されないと言うべきであって、そのような個人情報の収集及び保有がみだりにされない自由もまた憲法十三条により保障されていると解すべきと考えますけれども、見解を伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 今、本村先生おっしゃいました憲法十三条でありますけれども、これは、全ての国民は、個人として尊重される、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とすると規定をされているところであります。
これは、最高裁の判例等々におきまして、この憲法第十三条につきましては、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解されると判示をされているところであります。
ただ、もっとも、そうした個人の私生活上の自由というものも、もちろんこれは絶対的に無制約ということではなくて、例えば、犯罪捜査といった公共の福祉の要請に基づいて、憲法及び刑事訴訟法の規定等の下で一定の制約を受ける場合というものはあるのではないかと我々としては認識をしております。
○本村委員 捜査機関が犯罪に関して個人の情報を収集することはあり得るというふうに思うんですけれども、それでも、濫用がないように、例えば全く関係のない情報を収集するなどがないように、本来は法的な根拠をもって律すべきだというふうに考えます。
先日、参考人質疑をお伺いをいたしましたけれども、現行法上の捜査機関は、令状を取っていますけれども、犯罪と関係のない個人情報を取得しているということがはっきりといたしました。
その現行法上の問題をそのままに引き継ぐ形で、電磁的記録提供命令、そして、命令に従わない場合の罰則、捜査機関に提供したことを漏らしてはいけないという秘密保持命令、そして、その秘密保持命令に違反した場合の罰則が法案で盛り込まれております。プライバシーの侵害、そしてプロファイリングの規制もない中で、更に個人情報の不当な収集と蓄積、利用ということにつながるのではないかという懸念があるわけです。
ある参考人の方は、やはり現行法が問題なのだということを実際に参考人としておっしゃられた方もおられますし、平場で、こういう場でそういうふうに私におっしゃってくださった方もおられます。
ですから、現行法の問題もしっかりとこの場で議論しなければいけないということで、今日は、その観点から質問をさせていただきたいというふうに思っております。
以前も取り上げさせていただきました大垣警察の市民監視事件、名古屋高等裁判所の判決の中で、警察が違法行為を行っていたことが断罪されました。何の罪もない、むしろ、市民活動をして、より透明性のある、そして公共の場での実質的な議論が可能になるような、関心が高まるような、そういう社会的に望ましい活動をされていたということが判決の中でも評価されている、そういうお一人お一人の個人情報を取得、保有、利用していたことが違法とされたわけです。
これまでの国会答弁では、当時の国家公安委員会委員長が、通常行っている警察業務の一環であるというふうに強弁をしていたわけですけれども、それが違法とされました。
違法とされた通常行っている警察業務の認識が正されているのか、通知や通達などで全国の警察職員にその認識が正されるような広報をしているのかという趣旨で四月一日に私が質問をしたところ、警察庁長官官房審議官からこのような答弁がありました。結果といたしましては、今回の判決により大垣署員の活動は違法との判断が示されたところでございまして、岐阜県警察におきまして、この判決を重く受け止め、判決確定後は速やかに判決で示された原告らの情報を抹消したところでございます。いずれにいたしましても、警察活動が警察の責務を果たす上で必要な範囲で行われるべきものであることは当然のことでございまして、今後とも、不偏不党かつ公平中正に職務を執行するよう、引き続き都道府県警察を指導してまいりたいというふうに考えておりますというふうな答弁が返ってまいりました。
でも、私が問うたことに関して、正面から答えていただけなかったというふうに思っております。通常行っている警察業務が違法とされた、そういうことから、全国の警察職員の認識を正すために、個人情報の取得、蓄積、利用に関する濫用を防ぐルール、これを通知や通達などで知らせる必要があるというふうに思います。今までどのようなことを警察庁としてはやってきたのかという点、お示しをいただきたいと思います。
○石川政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの件につきましては、昨年九月の名古屋高裁の判決を受けまして、警察庁から各都道府県警察に対しまして、昨年十月三日に、「適切な情報収集活動について」との通達を発出しております。
この通達におきまして、警察法第二条に基づく情報収集活動における目的の正当性、行為の必要性及び相当性という基本原則の遵守でありますとか、個人情報保護法等の関係法令に基づく個人情報の適正な取扱いについて改めて指示をしているところでございます。
また、これに加えまして、全国警察の警備部門の責任者を集めた会議でありますとか、あるいは、警察庁担当者の出張による指導の機会におきましても、都道府県警察に対しまして、こうした基本原則や個人情報の適正な取扱いについて重ねて指導しているところでございまして、引き続き、様々な機会を捉えまして、都道府県警察を指導してまいりたいというふうに考えております。
○本村委員 そうしたことをやっていただいているんですけれども、法文上にはしっかりとした明記がないという中で、濫用を防ぐことができていないわけです。
この大垣警察の市民監視事件に関しまして、判決でとても大事な点があるので、これも紹介をしていただきたいと思います。憲法上の人格権としてのプライバシーの部分であります。
判決の四十六ページ二十六行目の「公権力が、本人の知らないまま、」から、四十七ページの十九行目、「弊害も生じ得るのである。」というところまで御紹介をいただければと思います。
○福田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分、裁判所ホームページ掲載の判決文の四十六ページ二十六行目から、四十七ページ十九行目までを読み上げます。
公権力が、本人の知らないまま、特定の個人に関する個人情報を、その要保護性の高低、推定的同意の有無、収集方法の強制処分性又は任意手段性の如何、正確性の有無や程度等にかかわらず、多数収集してこれらを集積し、分析し、保有するなどすれば、当該個人の実際の人間像(人物像)とは異なる人間像がその中で形成され、これが独り歩きして、誤った個人情報に基づく措置等を行ってしまう可能性がある。また、保有する情報が不十分なもの(重要な意味を持つ関連情報が欠落する場合などもあり得る。)である場合は、本来であれば考慮すべき情報を考慮せずに意思決定し、それに基づく措置等を行ってしまう危険性も生じ得るのである(部分的情報によって、当該個人に関する虚像が形成され、そのような予断に基づく意思決定がされる恐れがある。)。しかも、このような個人情報の収集及び保有等を警察組織が行った場合には、その利用のされ方(本件ではこの点自体も明らかではないが。)によっては、正確性を欠く情報(誤った情報、不十分な情報、最新のものではない古い情報等)に基づき、監視の対象とされたり、犯罪捜査の対象として取り上げられたりして、誤認逮捕等の身柄拘束が生じる可能性も否定できないのである。
さらには、公権力から誤った情報(部分的情報のみが提供されることも含む。)が当該個人に関係する第三者に提供されれば、当該第三者は、誤った情報に基づく意思決定(部分的情報に基づいて虚像が形成され、これに基づいて意思決定されることも含む。)をし、当該個人に対して行動することになってしまうという弊害も生じ得るのである。
このように記載されております。
○本村委員 ありがとうございます。とても大事な視点が書かれた判決だというふうに思います。
今、最高裁に紹介をしてもらったこの判決文のような視点をしっかりと持って、捜査機関が個人情報の扱いについて、濫用がないよう慎重に扱うことが必要だというふうに考えますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 御指摘の事案は捜査機関ということで、警察の活動内容に関わる事柄ということで、個別の事件で、個別のことで、法務大臣として所見を述べることは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げますと、捜査機関が犯罪捜査を行うに当たっては、個別具体的な事案に応じ、刑事訴訟法を始めとする法令であったり、あるいは判例等の趣旨を踏まえて、個人情報の取扱いについて適切に対処をしているものと承知をしておりますし、まさに今御指摘のように、こうした濫用であったりとか、そういったことはあってはならないということでありますし、これは慎重に取り扱う必要がある、そう私どもとしても考えております。
○本村委員 今日皆さんにお配りをした資料の中に、判決の、憲法上の人格権としてのプライバシーの部分の一部を抜粋したものを配らせていただいております。先ほど最高裁に紹介していただいた部分は、ここの一ページ目のところです。
次に、二ページ目の部分に入りたいというふうに思いますけれども、この下線を引いた部分ですね、以下のような記述がございます。
「一審原告らが主張するように、警察による情報収集活動について、どのような場合に、どのようなものが収集、保有及び利用の対象となるのか、どのような場合にこれが許されないのか、どのように利用され、どのような場合に抹消されるのか、正確性をどのように担保するのかなどを明確に規定する具体的な法律上の根拠があることが望ましいことは明らかである。」と。ないということですね。
次に、「情報収集活動については、法律上の明文の根拠がないのであり、基準となるべき具体的な規律がない」。
次、「警察による情報収集活動について、どのようなものが収集、保有及び利用の対象となるのか、どのような場合にこれが許されないのかなどを明確にした法律上の規律はないし、捜査機関の情報収集活動が恣意的なものとなって、国民の権利、利益や自由を侵害しないように、一般的な監視、監督だけではなく、個別的、具体的なケースについても監視、監督を行う、捜査機関から完全に独立した公平、公正な判断ができる第三者機関も存在しない」。
次、「捜査機関による情報収集について、現状は、個人情報を安全かつ適正に管理するための何らの規制もないし、取得、保有及び利用について濫用防止のための何らの制度的保障もない状態なのである。」というふうに書かれております。
現行法上でも、全くこうした法的な保障がないと。そして、今回の法案においても、現行法の問題をそのまま内在したまま、電磁的記録提供命令という、よりリスクが高まるものが盛り込まれている。
そして、任意のときでも、令状を求めて令状を出された段階でも、あらゆる段階で濫用が起きないように、この捜査機関の情報収集活動について、どのような場合に、どのようなものが収集、保有及び利用の対象となるのか、どのような場合にこれが許されないのか、どのように利用され、どのような場合に抹消されるのか、正確性をどのように担保するのかなど、明確に規定する具体的な法律上の根拠が必要だというふうに考えます。
また、取得した個人情報の本人への通知ですとか消去などのルールを作ることや、捜査機関の個人情報の扱いの濫用を防ぎ、チェックする、独立した第三者の機関が必要だというふうに考えますけれども、こういう判決を真摯に受け止めるのであれば、やはりこういう法的な保障が必要だというふうに思いますけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 こうした濫用を防ぐ、あるいは適正さを担保する、まさにその方法論、どうするのかという話だろうと思います。
我々としては、捜査、これは、特定の犯罪の嫌疑が存在する場合に、その犯人及び証拠を対象として行われるものでありまして、強制処分については、原則として、司法審査を経て行われるということであります。まさに捜査機関がそうした捜査の過程で収集する証拠、これは、特定の事件との関連性を有して、捜査目的の達成に必要なものとして収集、利用されているものと我々としては考えております。
また、捜査あるいは公判に必要なものとして作成、取得をされた書類、これは、捜査中から刑事事件終結後に至るまで、刑事手続の適正かつ円滑な遂行のためにありのままの記録として保管、保存されるべきものということで、現行法においては、こうした観点から、記録の保管、保存について適切な規律、これが設けられていると私どもとしては考えているところでございます。
法律上の根拠あるいは独立した第三者機関の設置ということでありますけれども、我々としては、現行法の規律ということでそれは十分に対応できていると考えているところでございます。
○本村委員 先日の参考人質疑でも、日弁連の坂口参考人は、実務上、電磁的記録が入った携帯電話機やパソコンが差し押さえられる場合、令状に、本件に関係あると思料されるといった文言や、これらに関連する文書、物件といった包括的な記載があるということで、被疑事件と関連性の乏しい電磁的記録の差押えが行われているという現状があると。そして、指宿参考人も、包括的な差押えがなされている、現状が問題なのだというふうに言われているわけです。でも、大臣の認識は今でいいんだということで、やはりその認識を正していただきたいと思うんです。こういう判決もありますし、そして参考人の方々からも言われているわけです。
捜査機関の個人情報の扱いについて、濫用についてはどういう中身なのか、これは駄目ですよということも含めて、限定されるようにしっかりと法律で書いて、収集されて被害が出てしまった場合に、それを回復する措置、通知、消去、第三者機関、こうしたものをしっかりと明記をするべきだというふうに、是非、もう今すぐ検討を始めていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 先ほど来申し上げておりますけれども、当然、濫用、これはあってはならないという中で、これは様々な捜査等々においても、司法における裁判所、そういった判断の下でのある意味で限定というものをかけている状況というものがあります。まさにこうした現場現場で、しっかりそういったこの趣旨というものを踏まえて、そういった執行をされることが肝要ではないかと考えております。
○本村委員 是非今言ったものを早期に検討して、法律上、明記をしていただきたいというふうに思います。
次に、オンライン接見について伺いたいというふうに思います。
オンライン接見について、ニーズが高い地域から弾力的に実施していくことが妥当ということですけれども、ニーズの高い地域はどこだというふうに考えているのか、また、一施設当たりどのくらいの予算と増員が必要と考えているのかという点、伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 そのニーズが高い地域ということでありますけれども、今、関係機関あるいは日弁連と協議をしているところでありますが、どういった地域ということでいえば、被告人等が収容されている刑事施設等が遠方の地域、あるいは管内の弁護士数が少なくて、遠隔地の弁護士が受任せざるを得ない地域等々、そうした必要の高い地域からそうした場所というものを具体的には選定していくということになろうかと思います。
そして、一件当たりのそうした予算ということでありますけれども、それぞれ違う状況もありますので、これは一概に申し上げることは困難でありますけれども、例えば令和七年度の予算におきましては、九道県の十三地域で、こうした回線工事経費等の環境整備経費を計上しております。ならすと、一地域当たり平均三百万円程度ということであります。
○本村委員 三百万円ぐらいだということで、予算的にはそれほど大きくかからないのではないかというふうに思っております。国家予算からしたら余りかからないというふうに思っております。
やはりこういうオンライン接見ができるように、被疑者の方の権利もしっかりと守っていただかないと変な方に誘導されるということが、これも参考人質疑でも明らかになりましたので、そうしたことを早急に進めていただきたいということを強く求め、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、吉川里奈さん。
○吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
本日も刑事訴訟法の改正案について質問してまいります。
まずは予算についてです。
先日、データセンターの視察がありまして、費用について尋ねたところ、セキュリティーレベルによって金額が異なるというような意見をお伺いしました。
配付した資料の一枚目、ガバメントクラウドの先行事業におけるランニングコストの内訳なんですけれども、御覧のとおり、ランニングコストの多くは、システム運用費、ソフトウェアのレンタルや保守費、そしてクラウドの利用料です。
刑事手続ではクラウドは使わないとのことでしたが、高度なセキュリティーが必要であるということで、サーバーのセキュリティー費用もかかるということで、運用コストは高額になるかと思います。
政府として、ランニングコストはどれほど見込んでおられるのか、五年後、十年後を見据えた中長期の財政負担をどのように見積もっているのか、御説明をお願いいたします。
○森本政府参考人 お答えいたします。
現在、令和八年度からの一部運用開始に向けて、刑事手続における書類の電子データ化、発受のオンライン化等を可能とするための新たなシステムの設計、開発をしているところでございますが、新たなシステムの開発に当たっては、委員御指摘のとおり、機微な情報を取り扱う刑事手続の特性に配慮した上で、可能な限り、後年度負担を削減できるよう検討しながら進めているところでございます。
現時点において、財政負担の程度について確定的なことをお答えするのは困難でありますけれども、刑事手続のDX実現後につきましても、財政負担の在り方について随時必要な検討を行いながら、安定的にシステムが稼働できるように予算執行に努めてまいりたいと考えております。
○吉川(里)委員 デジタル化による効率化は、人口減少と人手不足が進む日本にとっては不可欠かと思います。しかし、見通しのないコスト増や場当たり的な増税が起こるようでは、国民の理解は得られないかと思います。
先日の質疑では、運用も管理も国内で完結すべきだというふうに申し上げましたが、政府からの答弁は、適切に運用するよう検討するといった一般論にとどまり、国内事業者で運用するとの明言はいただけませんでした。刑事記録には、防衛や先端技術などの国家機密が含まれることもあります。
以前、質問でも取り上げましたが、過去には産総研の中国籍研究員による機密漏えい事件や大手通信会社元社員によるロシアへの情報漏えい事件も起きています。サーバーが国内にあったとしても、運用国外試験が介入可能な体制に委ねれば、情報流出のリスクだけでなく、国民の税金が継続的に海外企業に支払われる構造となり、極めて危険だと言わざるを得ません。これはまさにデジタル植民地化と思います。刑事手続のデジタル化は、効率化の問題だけではなく国家主権の問題を含んでいるかと思いますので、必ずこの運用は国内で完結をさせていただくことを強く要望いたします。
次に、現場での運用について伺います。
今回の法案には、令状の発付が電子化されるということが盛り込まれておりますが、例えば、離島など電波が届きにくい地域での令状執行や山間部での通信トラブルなど、現場での運用に支障が生じる可能性について、政府はどのような運用を考えているのか、教えてください。
○森本政府参考人 本法律案による改正後の刑事訴訟法におきましては、令状については現行法と同様に紙媒体で発付することもできるほか、令状について電磁的記録で発付することができることとなり、その執行につきましては、紙の場合には紙媒体の令状を提示して執行する方法、それから、電磁的記録の場合には電磁的記録で発付された令状をタブレット端末等に表示して提示して執行する方法、あるいは、電磁的記録で発付された令状を紙媒体に印字してこれを提示して執行する方法などを取り得るところでございます。
そのため、御指摘の離島など電波の届かない場所等におきましては、紙媒体の令状又は電磁的記録で発付された令状を印字したものを用いることができるほか、あらかじめタブレット端末等に電磁的記録で発付された令状をダウンロードしておくなどの方法を取ることによっても令状の執行に支障がないようにできるものというふうに考えております。
○吉川(里)委員 お手元の資料の二枚目を御確認ください。
先日、マイナ保険証のコピーは無効との、四月十三日、共同通信社の記事なんですけれども、従来は学校行事や保育施設などで保険証のコピーを提出することができたんですが、マイナ保険証には資格情報がなく、写しは代用できないとされています。これは、国民から前より不便になった、使いづらいという声が上がっています。こうした混乱は、刑事デジタル化でも起こり得るのではないかと懸念をしております。
例えば、登記・供託オンライン申請システムは、平日の八時半から二十一時のみの利用に限られており、土日祝日は使えない。前回の衆議院選挙では、公示日の直前の限られた時間の中で供託がスムーズに進まず、現場から非常に不便だったとの報告も聞きました。また、民事裁判で使われているウェブ会議システムのTeamsにおいても、弁護士から、利用時間が平日朝八時半から夜八時半までに制限されており、時間外には連絡や資料確認ができず不便だとの声が寄せられています。
さらに、今回の法案では、記録がデジタル化されても、被疑者に記録を渡す際には紙に印刷して差し入れる必要があるなど、アナログとの併用は避けられないという点も問題です。このように、かえってデジタル化が手間や制約を増やすようになってしまうと本末転倒かと考えます。
こうした現場の混乱を防ぐために、政府はどのような運用を想定しているのか、また、具体的にどのようなトラブル対策を講じるのか、教えてください。
○鈴木国務大臣 デジタル化しても手間や制約ばかりが増えるようでは本末転倒、そのとおりだと思います。
そうしたことを踏まえまして、今回、まさに法律の趣旨としていえば、手続の円滑化、迅速化、あるいは国民の手続の軽減、これは刑事手続等の各場面で図っていく、これが趣旨であります。そうした趣旨、目的を実現をするために、機微な情報を取り扱い、あるいは犯罪事象への迅速な対応が常に求められるという刑事手続の特性を踏まえながら、そして、御指摘のように、利用する国民の皆様方やあるいは職員等に無用な負担、混乱が生じるようなことがあってはなりませんので、そうしたこともやはり重要でありますから、そうした観点を踏まえて、今、関係機関あるいは設計、開発業者との検討も進めているところであります。
また、同様の観点から、その円滑な運用に向けた研修等々もしっかりと行っていきたいと考えております。
○吉川(里)委員 ありがとうございます。
刑事手続におけるトラブルは、我が国の法務行政における信用問題につながるかと思います。トラブル対策について、しっかりと国民にも周知徹底をお願いいたします。
最後に、法案とは離れて恐縮なのですが、国民に分かりやすく説明をしてほしいという点で、刑事デジタル化と通じる観点から、子供たちが日々触れる教科書の在り方について質問をさせていただきます。
資料の三枚目を御覧ください。
四月十二日、産経新聞社の論説です。高校教科書の検定結果では、家庭科など複数の教科書で選択的夫婦別姓制度が取り上げられていたとのことです。
まず、文科省に伺います。
高等学校の公民科や家庭科の学習指導要領に選択的夫婦別姓制度についての記述はあるんでしょうか。
○今村政府参考人 お尋ねの選択的夫婦別姓制度につきましては、高等学校学習指導要領の公民科や家庭科に記載がないところです。
○吉川(里)委員 ありがとうございます。
記事にも記載がありましたが、そもそも、学習指導要領に記載がないということは教える必要があるのかという懸念もございます。夫婦別姓は導入されておらず、国民の間でも賛否は分かれております。こうしたテーマを教科書でどう扱うかは極めて慎重な判断が求められると考えます。
検定に当たって、文科省は、記述の可否や妥当性をどのような視点、基準で判断をしたのでしょうか。
○今村政府参考人 教科書におきまして、学習指導要領を踏まえ、どのような事柄を取り上げ、どのように記述するかにつきましては、欠陥のない範囲において民間の各教科書発行者の判断に委ねられるものとなっております。
教科用図書検定基準におきましては、例えば、児童生徒が学習内容を理解する上に支障を生ずるおそれがないよう、特定の事柄を特別に強調し過ぎていたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げていたりするところはないことと規定されております。
教科書検定は、学習指導要領や教科用図書検定基準等に基づき、客観的な学問成果や資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として実施するものであり、御指摘の記述につきましても、同基準等に基づきまして、教科用図書検定調査審議会において学術的、専門的見地から慎重に審議された結果、合格と判断されたものであると認識しております。
○吉川(里)委員 慎重に判断されて合格したとのことですが、選択的夫婦別姓は、国会の中では三十年の課題だとお聞きすることもありますが、つい最近まで私は普通の国民でありました、その国民の感覚からすると、喫緊の課題でもなく、議論すら知らなかった方が多いということというのは、私の質疑の中でも訴えさせていただいてまいりました。先日、大臣も、論点整理が必要と答弁されたとおり、国会でも方向性は定まっておりません。教科書は、特定の立場に偏るのではなく、多様な視点を示し、子供たちが自分で考える力を育てるものであるべきかと考えます。
しかし、一部の教科書では、別姓制度を導入していないのは日本だけといった断定的な表現、令和三年ではなく、平成二十九年の古い世論調査の引用、そして、統計的根拠が不明な、別姓が使えない事実婚を選ぶ人が多いとの記述もありました。
こういった情報の提示の仕方は中立性が損なわれていると言わざるを得ないかと思いますが、こうした記述に対して検定意見を付することは可能であったと考えますが、文科省はどのように評価されているのか、端的に教えてください。
○西村委員長 今村大臣官房文部科学戦略官、時間が迫っていますので、簡潔にお願いします。
○今村政府参考人 繰り返しになりますが、教科書におきまして、学習指導要領を踏まえ、どのような事柄を取り上げ、どのような記述にするかにつきましては、欠陥のない範囲において民間の各教科書発行者の判断に委ねられております。
個々の審議内容についてはお答えは差し控えさせていただきますが、御指摘の記述につきましては、検定基準等に基づきまして、検定調査審議会におきまして学術的、専門的に慎重に審議された結果、欠陥とは判断されなかったものと認識しております。
○吉川(里)委員 ただ、先ほどおっしゃられた検定基準には、二章の2の(11)、「統計資料については、原則として、最新のものを用いており、生徒が学習する上に支障を生ずるおそれのあることはなく、出典、年次など学習上必要な事項が示されていること。」というふうに記載がございます。ですので、議論がそもそも委員会の中でもまだ議場に上がっていないことに関しては、しっかりと検討していただいて、文科省には取り組んでいただきたいと思います。
大臣にお伺いしたかったことは、次回に持ち越させていただきます。
本日はありがとうございました。
○西村委員長 次に、島田洋一さん。
○島田(洋)委員 日本保守党の島田です。
刑事デジタル法の運用に当たっては、情報セキュリティーの確保、これは非常に重要なわけですけれども、そして、外部からの攻撃あるいはヒューマンエラーによって情報が漏えいしたとか、そういった場合、迅速かつ適切に対処しないといけない。その点、私は、これまでの審議を通じても、石破内閣の基本姿勢、内閣の対処能力には重大な懸念を抱いております。
一例として、今年一月の下旬、衆議院赤坂宿舎の岩屋毅外相の部屋に何か訳の分からぬ女性が入っていて、訪米から帰った岩屋外相と鉢合わせした、こういう事件がありました。これは単に間の抜けた話で済ませるわけにはいかない。岩屋さんの部屋に盗聴器が仕掛けられたり、あるいはパソコンからデータを抜き取るような機器が設置されたりということがなかったのか、専門家による専門的な機材も使った徹底調査が行われたんですか。
○松本大臣政務官 お答えいたします。
情報セキュリティー等々の危惧に関しては委員おっしゃるとおりだろうと思いますけれども、今年一月の外務大臣の宿舎の中で自室に見知らぬ方がいらっしゃったということは事実でございまして、現場において大臣は、当該人物と二言三言、会話を行って、そのままお帰りいただいたというふうに承知をしております。
その後、今御質問の内容については警備上の理由がありますので答えは差し控えたいと思いますけれども、今回の事案を受けて、中に見知らぬ方がいらっしゃったのは間違いありませんので、警戒の強化を含めて適切に対応しているというふうに承知をしているところです。
○島田(洋)委員 松本議員とは以前からいろいろなやり取りもあって、今の外務政務官三人の中では唯一信頼している方なので更なる答弁を求めたいんですけれども、私が聞いたのは、しっかりした、盗聴器がないかとかデータを抜き取る機器はないか、ないんだったら、調査の結果なかったというなら、はっきり発表した方が諸外国も安心するわけで、スパイ行為はなされないなと。黙っていたら、いまだに徹底調査をしていないんじゃないかと思われかねませんよ。
だから、盗聴器等があるかないかという調査が行われたのかどうか、それをまずお願いします。
○松本大臣政務官 二月四日の予算委員会で外務大臣は答弁されているんですけれども、一応、何の被害も中にはなかった、部屋の中も自分で調べましたけれども、何の変化もなかったというふうにお答えになっております。
今委員御指摘の点については、警備に支障が及ぶということで、お答えは、申し訳ありません、差し控えたいと思います。
○島田(洋)委員 警備に支障が及ぶとは全く思いません、外交には支障が及びますよ。だって、岩屋さんの部屋にまだ盗聴器があるかもしれないと私だって思っているので、誰だって思うでしょう。これは調べるのが当たり前じゃないですか、盗聴器等があるかないか。
鈴木大臣、いかがですか。法務省の有力幹部、大臣も含めて、誰か見知らぬ女性が入っていた。それは、法務大臣だったら、しっかり盗聴器等がないか調べろと指示されますよね。
○鈴木国務大臣 仮定のお話ですので、なかなかお答えしづらいところでありますけれども、適切な対処ということをするのではないかと考えております。
○島田(洋)委員 岩屋さんは、先ほど松本さんもちょっと言われましたけれども、何の被害もなかったと。そんなもの、素人が見て分かるはずがないじゃないですか。それから、ちょっと話をしたけれども要領を得なかったとかいうんですけれども、この女性、一体どういう人物だったんですか。
○松本大臣政務官 この女性の方に関しては、個人情報等々ございますので、ここでお話しするというわけにはいかないと思いますが、大臣の過去の答弁によりますと、二言三言、会話をした中においては、非常に精神的に不安定だったということは、大臣はお察しされていると思いますので、それでお帰りいただいたということでございますので、これ以上のことは私も存じ上げませんし、大臣答弁を参考にするということしかなかろうかというふうに思います。
○島田(洋)委員 二言三言、話した結果、精神的に不安定な感じがあったと。これは一層懸念があるんですよね。
というのは、松本さんも含めて、非常に経験ある医師ですけれども、ちょっとスパイ小説等の読まな過ぎじゃないかと。世界の情報機関は、工作活動にあって、軽度の知的障害があるような人を、使い捨て、切捨て用の現場工作員としてよく使うんですよね。というと、そういう人は、拘束されても、背後の組織的な問題とかが分からない、だから、単純に、盗聴器をぺたっと貼ってこいとか、そういうのにはそういう知的障害があるような人を使うというのはある話なんですよね。
だから、今、世界中が岩屋さんの部屋に盗聴器があるんじゃないかと、常識がある人間はそう感じるので、調査を行ってくださいよ。行わないんですか。
○松本大臣政務官 委員の懸念は十分承知をしておりますけれども、侵入した方について詳細を述べるというか、臆測を持っていろいろお話しするということは、これは控えたいというふうに思っております。
また、調査するかどうかについては、これは、省庁としては、それも含めて何も言わないというのが、ある意味、秘匿というか、手のうちを明かすということになりますので、もう何も語らないというのが、この場合は一番国際的には正しいというふうに思っております。
○島田(洋)委員 それは全く間違いだと思いますけれどもね。盗聴器がない、あるいは、あったけれども撤去したと言った方が、世界中は安心するじゃないですか。
それで、この問題を更に追及したいと思いますが、今日は経産省の方にも来ていただいているんですね。情報漏えい、岩屋さんのルートだと特定はしませんけれども、情報漏えいが日本政府はあるんじゃないかと思わせる話を日米外交筋から聞くので。
その一例として、最近、韓国・ソウルにおいて、日中韓の貿易大臣会合というのが開かれました。その中の共同声明の第十項に、日中韓は、サプライチェーンに関する協力を強化するというのがある。この文言に関して、いわば裏合意みたいな了解覚書が日中韓にあって、アメリカが牽制してストップしてきている最先端半導体材料の供給で、日本が中国に協力する、その代わりに、中国は日本産の水産物の禁輸を解禁する、そういう了解覚書、裏合意があるんだという情報があって、私はこれを経産省の担当者に聞いたら、そんなものはありません、アメリカ側が中国に関して相当な締めつけに走っている、そこに日本が抜け駆けして抜け穴を作るようなことをするつもりはないんだ、そういうことで聞いていますけれども、改めてその点、確認したいと思います。
○田中政府参考人 お答え申し上げます。
今の委員の御指摘のような事実は断じてございません。
○島田(洋)委員 それでは、情報の漏えいがあったりとか不適切な発信があった場合に速やかにリカバリーできるかどうかという点に関して、私、これまで何度か、英利アルフィヤ外務政務官による、日本保守党、私もそこに所属していますけれども、世界中の人権団体は日本保守党との関係を切れと、この発信をいまだに続けている。ここに本人に来ていただいて聞いたときも、それは政務官に就任する数日前のことだと。だけれども、Xの名前を外務大臣政務官英利アルフィヤに変えたままその発信を続けている。そのせいで、私と北朝鮮問題、拉致問題を扱っている海外の人権団体との関係に支障が生じたりということもあるわけですよ。
鈴木大臣、聞きますけれども、外務大臣政務官英利アルフィヤというタイトルで、英語で、日本保守党との関係を切れという発信が現在も行われている。これを普通の人が見たら、外務大臣政務官英利アルフィヤさんによる発信だと思いませんか。
○鈴木国務大臣 以前のやり取りでも申し上げましたけれども、法務大臣として私はここに立っておる状況でございまして、そういった中で、国会議員、個々の政治家として行っているインターネット上の発信、私として見解を述べるという状況ではありませんので、御理解をいただきたいと思います。
○島田(洋)委員 外務大臣政務官という肩書で、内閣の一員として発信している。これは、同僚として、松本政務官、適切だと思われますか。
○松本大臣政務官 確かに私は同僚でございますけれども、個人でどういうふうに発信していたか、どういう思いを持って発信していたかというのは、これはもう本人にしか分かりようがありませんので、私の方からこれについてのコメントは、この場ではお話をすることは控えておきます。
○島田(洋)委員 この間のやり取りを通じて、石破内閣は拉致問題解決のために国際連携を深めようという動きを妨害するつもりなんだということが明確になったと言わざるを得ないですね、こういう答弁だと。
時間も来たようなので、今日はこの辺で終わります。どうも。
○西村委員長 次回は、来る十八日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後二時十八分散会