第21号 令和7年6月10日(火曜日)
令和七年六月十日(火曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 西村智奈美君
理事 小泉 龍司君 理事 津島 淳君
理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君
理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君
理事 金村 龍那君 理事 円 より子君
井出 庸生君 稲田 朋美君
上田 英俊君 上川 陽子君
神田 潤一君 工藤 彰三君
河野 太郎君 柴山 昌彦君
棚橋 泰文君 寺田 稔君
平沢 勝栄君 森 英介君
若山 慎司君 有田 芳生君
篠田奈保子君 柴田 勝之君
寺田 学君 平岡 秀夫君
藤原 規眞君 松下 玲子君
萩原 佳君 藤田 文武君
石井 智恵君 大森江里子君
平林 晃君 本村 伸子君
吉川 里奈君 島田 洋一君
…………………………………
法務大臣政務官 神田 潤一君
参考人
(元東京新聞編集委員)
(皇學館大学特別招聘教授) 椎谷 哲夫君
参考人
(日本労働組合総連合会総合政策推進局長) 小原 成朗君
参考人
(作家) 竹田 恒泰君
参考人
(日本経済団体連合会審議員会副議長/ダイバーシティ推進委員長) 次原 悦子君
参考人
(文教大学人間科学部教授) 布柴 靖枝君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
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委員の異動
六月十日
辞任 補欠選任
井出 庸生君 柴山 昌彦君
棚橋 泰文君 工藤 彰三君
小竹 凱君 石井 智恵君
同日
辞任 補欠選任
工藤 彰三君 棚橋 泰文君
柴山 昌彦君 井出 庸生君
石井 智恵君 小竹 凱君
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六月十日
再審法改正(刑事訴訟法の一部改正)を求めることに関する請願(田村貴昭君紹介)(第一九三〇号)
性虐待・性搾取等子供への性加害を根絶するため関係法規の更なる改正とサバイバーの声を生かした施策強化に関する請願(寺田学君紹介)(第一九三一号)
裁判所の人的・物的充実に関する請願(斎藤アレックス君紹介)(第一九三二号)
同(櫻井周君紹介)(第二〇六八号)
治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(松木けんこう君紹介)(第二〇六七号)
同(市來伴子君紹介)(第二一六八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
民法の一部を改正する法律案(黒岩宇洋君外五名提出、衆法第二九号)
婚姻前の氏の通称使用に関する法律案(藤田文武君外二名提出、衆法第三〇号)
民法の一部を改正する法律案(円より子君外四名提出、衆法第三五号)
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○西村委員長 これより会議を開きます。
黒岩宇洋さん外五名提出、民法の一部を改正する法律案、藤田文武さん外二名提出、婚姻前の氏の通称使用に関する法律案及び円より子さん外四名提出、民法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
本日は、各案審査のため、参考人として、元東京新聞編集委員、皇學館大学特別招聘教授椎谷哲夫さん、日本労働組合総連合会総合政策推進局長小原成朗さん、作家竹田恒泰さん、日本経済団体連合会審議員会副議長/ダイバーシティ推進委員長次原悦子さん、文教大学人間科学部教授布柴靖枝さん、以上五名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。よろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、椎谷参考人、小原参考人、竹田参考人、次原参考人、布柴参考人の順に、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず椎谷参考人にお願いいたします。
○椎谷参考人 トップバッターですので、ちょっと御挨拶を。
西村委員長始め皆様、おはようございます。ちょっと声がかれておりまして、ちょっと事情がございまして、お聞き苦しいと思いますが、よろしくお願いします。
まず、今回の、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の各党各位が法案を提出されまして非常に熱心な議論がなされていることに対して、大変これは評価したいと思います。
そして、このような参考人の陳述の機会が与えられましたことを大変うれしく思っております。ありがとうございます。
ただ、いきなりちょっと冷や水をかけるようですけれども、五月にJNNが行った世論調査によりますと、来る参議院選挙で最も重視する政策を挙げていただいたところ、減税や物価高対策が二八%、トップでしたけれども、選択的夫婦別姓は僅か一%でした。そして、今の国会で結論を出す必要はないという人が半数を超えました。これは、国民がこの問題を非常に冷静に考えているんだということのあかしかもしれませんし、ある意味では、国民はさめているのではないかという気もいたします。
この問題でいろいろ、三党から法案が出ていまして、それぞれ微妙に、あるいは根本的に内容は違います。でも、私はそれでいいと思っています。一緒になるはずがない。一緒になるんだったら最初から一緒に出せばいいわけですから。だから、当然、三党の法案の中身が違うのは当たり前であって、私はそう思います。
かつて、ある会合で、経済界のトップの方が、この問題で大同団結してやるとおっしゃいましたけれども、私は、大同団結なんかする必要はない、それぞれ、根掘り葉掘り、お互いに出し合って議論をしていけば、おのずと、時間をかけてやっていけば、一つの方向に収まっていくというふうに思っております。それが私の一つのスタンスでございます。
この問題で、私は非常に残念なことがあります。特に、夫婦別姓を推進する立場の方々から、三十年間議論ばかりしていて結論が出せなかった、それから、周回遅れの議論をしている、マスコミも含めて、そういう意見があります。まるで、もう言い訳は聞き飽きた、いいから早く結論を出せと言われているような気がしますけれども、少し違うんではないかと。
今回、立憲民主党さんも、法案の提出の直前の四月になって、子供の姓を決める時期を変えられました。国民民主党さんも、三年前の共同で出したときの法案とは、子供の姓をめぐって、随分変えた法案を出されました。そのことを批判するつもりはありません。
しかし、人によっては、そんなことは分かっていたことではないか、子供の姓がどれだけこの問題の核心であるか、あるいは要諦であるかということは分かっていたはずだろうという意見もございます。その意見については謙虚に耳を傾けていただきたいと思います。
言い方を変えれば、非常にきつい言い方ですが、三十年間議論ばかりしていたんじゃなくて、三十年間子供の姓の問題を何にも議論してこなかったんではないか。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、私はそんな印象も持っております。
それから、ここで申し上げたいのは、経団連が昨年六月に、「選択肢のある社会の実現を目指して」という提言を出されました。
その中に、通称使用によるトラブル事例というのがございまして、例えば、その筆頭にあるのが、「多くの金融機関では、ビジネスネームで口座をつくることや、クレジットカードを作ることができない。」という表記があるんです。実際には、七割の銀行で通称での口座利用が可能ですし、信用金庫も五八%が対応しております。ところが、あえてそのことに触れないで、多くの金融機関では、そういう文言で書かれました。
それに対してはいろいろな指摘がございましたが、ずっとそのままになっておりまして、実は、五月の七日に経団連さんは、「選択肢のある社会の実現を目指して」というその提言を改訂されました。余り御存じない、先生方も御存じないかもしれませんけれども、五月七日付です。さらりと書いてあるだけです。記者会見もしていなければ何の説明もしておりませんので、ほとんどの国民は知らないと思います。
どういう改訂かといいますと、このトラブル事例なんですが、トラブル事例に、いろいろな意見があったものですから、いろいろつけ足して、実はこうだ、実はこうだと、修正とはお認めにならないと思いますけれども、つけ足して、今私が申し上げたようなことを書いてある。
ただ、この問題がずっとこういう表現で一年間来たということは、それが独り歩きしているんですね。それが、いろいろ又聞きあるいは複製されて飛んでいって、何にもしていない、国も政府も役所も何もしていないではないか、そういう印象を持っている国民が多いと思うんです。実態は違う。これは本当に、この問題は、ここで別に追及するつもりもありませんが、非常に責任の重いことだなと思っております。
それから、実は、世論調査のことなんですが、世論調査では御存じのように二択と三択がございます、一般的にですね。
昨日、夕方の七時のニュースで、NHKさんが世論調査の発表をしました。私、これは物すごく驚いたんです。
中身も驚きましたけれども、中身は、選択的夫婦別姓を導入すべきは二五%、夫婦同姓を維持し旧姓の通称使用を認める法制度を拡充すべきが三一%、何と、今の夫婦同姓の法律のままでよいが三七%でした。私は大変驚きました。
実は、私が知っている範囲では、NHKがこの三択の調査をするのは初めてなんです。今まではずっと二択でした。直近ですと、去年の七月に賛成か反対かを聞きました。賛成が五九%、反対が二四%、分からない、無回答が一七%。約十一か月ぶりに世論調査をされたわけですね。
この中身もそうですけれども、私は何が一番驚いたかというと、NHKが三択の調査をしたということなんです。
実は、まだ二択の調査にこだわっている、三択をやっていないところはいっぱいあります。賛成か反対か、随分結果は違います。それぞれを否定するつもりは全くありません。
ただし、私、個人的考えを言えば、三択の方が広く裾野を広げて拾い上げているんではないかという気がします。そういう意味で、私は、いろいろな文章で、NHKは三択にすべきじゃないか、三択も考慮すべきじゃないかと書きました。ようやく、私が言ったからではありませんけれども、初めて三択を出された。この影響は大変なものがあると思います。
そして、いろいろな、政党の議論でもそうですが、団体もそうですが、賛成か反対かの結論しかいろいろな文章で使わないところが多いです。でも、実際はそうじゃないんですね。その辺は、マスコミも含めて、やはり反省が必要ではないかと私は個人的に思います。
そこで、またNHKの、持ち上げるわけじゃありませんけれども、今年の一月に「クローズアップ現代」で、「令和のいま“名字”を考える どうなる?選択的夫婦別姓」というタイトルで番組がございました。
そこに、北海道医療大学薬学部の助教の女性の方が登場されまして、こうおっしゃいました。仕事とプライベートの気持ちの切替えが、名前を使い分けることでしやすい、家族全員が同じ名字で一体感を持てますし、自分も結婚して家庭を持っているという実感も持てる、私にはベストな状態だと思っている。その前に、司会者に対して、仮に選択的夫婦別姓が認められたとしても旧姓の通称使用という形を選ぶとおっしゃっています。
実は、私の友人で、男性ですけれども、自分の姓を奥さんの方の実家の姓に変えた人がいます。彼はこの番組を見て物すごくうれしかったと。彼は、姓を変えたことによって、自分が何となく後ろめたい気持ちもあったし、非常に人前で言いにくい気持ちもあった。だけれども、その友人は、実家の姓も大事にしたい、改姓した新しい姓も大事にしたい、どちらも大事にしたいんだという意見をこういう場で聞いたのは初めてだと言って、本当に泣きそうな顔で、本当に自分はうれしかったと言っておりました。
恐らくこういう意見は、非常に冷静な発言でしたけれども、こういう意見はなかなか出てこない、テレビでも新聞でも。そういう意味では、恐らく多くの人がこの番組には感じ入るものがあったのではないかと推測いたしております。
まだよろしいですか、あと一、二分。済みません、時間の配分が難しくて。
○西村委員長 御協力をお願いできればありがたいです。
○椎谷参考人 私は、はっきり申し上げて、同一氏同一戸籍の維持、そして旧姓使用の法制化を自分の持論としております。これには、日本維新の会の方も若干近い内容はありますけれども、若干の少し違いはありますが、いろいろな意見が出ております。
私は議員立法で皆さんが頑張っていらっしゃることに非常に敬意を表しております。しかし、ここまで来たら、本当に国民の分断を避ける意味でも、そして、法律が、あるいは省令、政令がいろいろなところへ及んでおりますから、役所の協力がないととてもできない、どういう内容にしたって。だから、一つの方法として、これは閣法で、内閣立法でやるのも一つの方法ではないかと個人的には思っております。具体的なものは分かりませんが。
それを申し上げて、終わりたいと思います。ありがとうございます。(拍手)
○西村委員長 ありがとうございました。
次に、小原参考人にお願いいたします。
○小原参考人 ただいま御指名をいただきました連合の小原でございます。
本日は、このような場で、連合の意見を表明する機会をいただき、感謝申し上げます。
連合は、働くことを軸とする安心社会を目指し、働く者、生活者の立場からの政策、制度提言集である、要求と提言や、その中から重点項目である重点政策を策定し、毎年、政党、省庁に対して要請を行っています。
選択的夫婦別氏制度の早期実現は、働く仲間からの、結婚後も自分の名前を名のり続けたいという声や、氏を変更することに伴うキャリアの分断などの不便、不利益を訴える声を受け、長年重点的に取り組む要求項目として、この要求と提言と、重点政策に掲げ、取り組んできた経緯があります。また、直近では、芳野会長自らが各党に対し緊急要請を行いました。
ようやく国会での法案審議が行われることになりました。法案を提出された立憲民主党、日本維新の会、そして国民民主党の議員の皆さんに敬意を表した上で、連合の意見を述べさせていただきます。
資料一ページから、連合が実施した夫婦別姓に関する調査二〇二五の報告書をお示ししています。
三ページの、夫婦の氏の在り方に対する考えは、「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」が「夫婦は同氏がよい」を大きく上回り、夫婦の氏の在り方について国民の皆さんの考え方が多様化していることを確認できました。
六ページを御覧ください。二十代の男性の五人に一人が、婚姻の際いずれか一方が氏を改めなければならないことが婚姻の妨げになると回答しています。
先日、合計特殊出生率が一・一五と過去最低を更新したことを受け、石破総理大臣が、少子化に歯止めがかかっていない状況を重く受け止めなければならないと発言されました。連合は、婚姻しなければ子を持てないとは考えておりませんけれども、若い世代の未婚率と出生率には相関があるとの指摘があると承知してございます。政府が少子化の現状を重く受け止めているのであれば、婚姻の妨げとなる可能性があるものを取り除くべきだと思います。
連合とNPO法人mネット・民法改正情報ネットワークが実施した制度実現を求める請願署名は、連合に届いた分が、昨日までの速報値で、衆議院議長宛て三十一万三千四百九十一筆、参議院議長宛て三十一万六千三百筆となりました。これだけ多くの方が選択的夫婦別氏制度の実現に期待しているということです。
連合ホームページ上の特設サイトを通じ、一般の方々にも協力をお願いしたところ、たくさんの署名とともに、実現を待ち望む方々の声や連合への応援メッセージが同封され、送られてきています。
中には、プロポーズされたがお互い一人っ子で、結婚するとどちらかの姓を継ぐ人がいなくなってしまう、墓守がいなくなってしまう、本家を潰すなどあり得ないと、双方の両親から反対され、結婚するなら絶縁するとまで言われている、選択的夫婦別氏制度実現を待っているという切実な声もありました。
また、地方連合会が実施した街頭での請願署名活動では、準備段階から自ら署名をするなど、若い方を中心に関心があることがうかがえると報告を受けています。
希望する人が自分の氏を名のり続けられるかどうかは、個人の尊厳や人権に関わる重要な問題です。政府が進める旧姓の通称使用では、国際社会に通用しないだけでなく、人権尊重という要請に応えられません。
一九九六年に法制審議会が選択的夫婦別氏制度導入の提言を含む民法の一部を改正する法律案要綱を答申してから、三十年がたとうとしています。制度を待ち望む方々は三十年もの間待たされています。
資料十五ページ目以降が、四月十七日の第十九回中央執行委員会で確認された、選択的夫婦別氏制度の早期実現に向けた連合の考え方です。
昨年十月に国連女性差別撤廃委員会から選択的夫婦別氏制度導入を求める四度目の勧告が行われたことや、自民党の総裁選、衆議院議員選挙の論戦などから、選択的夫婦別氏制度導入に向けた機運が高まり、各政党のプロジェクトチームなどにおいて選択的夫婦別氏制度に関するヒアリングや検討が行われたと承知してございます。
連合も二月中旬から三月初旬に幾つかの政党からヒアリングをお受けし、その際の質疑やマスコミ報道、国会質疑などを踏まえると、子供への影響、それから戸籍制度への影響が論点として絞られてきたと考えました。そこで、検討、議論を重ね、この考え方が確認されました。
議論の中では、例えば、航空関連産業からは、国際線の客室乗務員は、入国審査でパスポートと社員証を提示して本人確認しており、戸籍名であるパスポート名と社員証名とが異なる旧姓の通称使用では業務に支障が出るとの意見がありました。また、学校現場からは、外国にルーツを持つ家族や事実婚など、家族の形は既に多様化しており、親の氏と子の氏が異なることに対する違和感はなくなっている。また、幸せに暮らしている夫婦、家族、子供に対し、一体感が損なわれている、子供がかわいそうなどと、当事者でない外部がレッテルを貼るような言動は慎むべきと声が上がりました。
十五ページの三、選択的夫婦別氏制度の早期実現に向けた連合の考え方を御覧ください。第三項では、子の氏を定める時期について、子の出生の際と、法制審議会の夫婦が婚姻の際には、それぞれ一長一短あるため、子が自らの意思による届出により父又は母の氏に変更することを担保できれば、子の氏を定める時期については国会審議に委ね、選択的夫婦別氏制度の導入を優先するとしました。
また、十六ページの第四項では、参議院法務委員会における法務省竹内民事局長の御答弁を引用し、選択的夫婦別氏制度は戸籍の機能に影響を与えるものではないということも示し、確認されました。
反対する声が非常に大きくなっていますが、現実に困っている人がいます。
これまで、選択的夫婦別氏制度が実現するきっかけは何度かありました。その一つが、二〇二〇年十二月二十五日に閣議決定された第五次男女共同参画基本計画です。
二十五ページ目を御覧ください。
計画の策定に向けて、パブリックコメントで寄せられた意見などを踏まえ、さらに議論が進められ、十一月の十一日に計画実行・監視専門調査会から男女共同参画会議に、第五次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方が答申されました。答申には、働く意欲を阻害しない制度等の検討というタイトルの下、選択的夫婦別氏の導入に関し、検討を進めると明記されていました。
しかし、十二月に閣議決定された第五次男女共同参画基本計画では、タイトルが、家族に関する法制度の整備に変更された上で、夫婦の氏の具体的な制度の在り方に関し、夫婦同氏制度の歴史を踏まえ、家族の一体感、子供への影響や最善の利益を考える視点も考慮し、更なる検討を進めると、大きく後退した内容となっていました。
この大きな変更に対し、選択的夫婦別氏制度実現を願う人々の落胆が当時のマスコミで報道されました。
それ以降、この五年間、男女共同参画会議や女性版骨太方針の議論を行う計画実行・監視専門調査会において、連合を始め多くの委員が女性活躍を進めるには選択的夫婦別氏制度実現は必須と何度も発言していますが、女性版骨太の方針二〇二五も第五次計画の記載からほとんど変更されない見込みとなっています。
希望する人が自分の氏を使い続けられるようにする制度が、選択的夫婦別氏制度です。あくまで選択制であり、夫婦別氏を強制するものではなく、夫婦同氏を排除するものでもありません。
制度に反対する人は、第五次計画の記載のように、家族の一体感、子供への影響を主張されますが、それは夫婦別氏を選ばない人にとっては関係のないことです。夫婦別氏を選んだ家族の一体感や子供のことはその家族に任せ、その他の論点とは分けて議論すべきです。
立憲民主党が提出した民法の一部を改正する法律案と国民民主党が提出した法律案は、いずれも連合の考え方に沿っていると考えます。国会審議などを通じ、一本化していただき、速やかな成立を求めます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○西村委員長 ありがとうございました。
次に、竹田参考人にお願いいたします。
○竹田参考人 御紹介いただきました竹田恒泰です。
時間が限られていますので、早速本題に入らせていただきます。
先ほど、最初の参考人の椎谷先生がお示しになった、昨日のNHKの世論調査の結果でございます。選択的夫婦別姓賛成が二五%という数字でございました。これは、三択の世論調査の場合は大体三割未満になるというのがこれまででございます。この参考資料にも幾つも世論調査の結果が入っていますけれども、内閣府調査、読売の世論調査、産経の世論調査でも、いずれも……
○西村委員長 竹田参考人、恐れ入ります。資料の掲示は事前に許可を得てからお願いしたかったのでございますので、ちょっとお控えいただければ。
○竹田参考人 分かりました。承知いたしました。
大体三割以下ということでございます。
特に、この参考資料にいろいろ入っていますけれども、朝日新聞は、自由に選べるようにすることに賛成ですかと聞いたら、それは多くの人が自由に選べるのは賛成だろうと思いますでしょう。それで六三%賛成となっております。それから共同の世論調査では、導入に賛成ですかだけですと、やはり賛成六一%となります。連合の調査結果も、選択できる方がよいかと聞かれれば、それは多くの人が選択肢が広がるのはいいだろうといって四六・八%賛成と、そうなるわけなんです。ですから、三択で聞くということが大変重要だということは一言申し上げておきたいと思います。
ちょっと冒頭に申し上げるのを忘れましたけれども、法律用語では同氏、別氏と申し上げるところ、一般的に使用されている同姓、別姓を織り交ぜて使わせていただくことを申し上げておきたいと思います。
これまで、長年この点は議論されてきました。確かに、結婚して姓が変わることによって苦しんでいる人はいました。しかし、長年、旧姓の通称使用を拡大するということで政府がこれを整えてきたということがあります。そして、ここ十年においてはかなり進みまして、国家資格のほぼ全て、それから金融機関でも大方使えるようになりました。そしてパスポートでも旧姓の併記が行われるようになったというふうに、かなり拡大しています。まだ困っている人がもしいたとしたら、そこに手当てをすればよいということでございます。
そもそも、政策を実行するときには、それを進めようとする人がその理由を述べるべきなんですけれども、私、よく、この議論で、何で反対するんだ、反対する理由が聞きたいというふうに言われることがあるんですよね。これは、進める人が、今どんな問題があるのか、そしてこれは解決しなくてはいけないという立法事実を述べるべきであります。
そして、この立法事実なんですけれども、ちょっと、今回、三つの党の法案が審議されるということなんですけれども、維新が提出したものは、現在の婚姻制度を守るというものであります。それに対して、その他二つの、国民民主、それから立憲民主が出したものは、家族の在り方を大きく変える、そして選択的夫婦別姓を導入するということですので、この三党、何か似たようなものだと思ったら大間違いでございまして、家族制度を守るか守らないか、大きな違いがあります。
そして、今困っている人が本当にいるのかという点なんですけれども、先ほど椎谷参考人が指摘したように、経団連が旧姓の通称使用によるトラブルの事例を挙げました。十一例あります。これは、ここで言うところの百二十九ページですね、参考資料の百二十九ページに十一項目あるんですけれども……
○西村委員長 竹田参考人、物品の掲示は事前の許可が必要となっておりますので。
○竹田参考人 これは配られているものだと思うんですけれども。
○西村委員長 ただ、そこで掲示していただくには、委員長の許可を。
○竹田参考人 分かりました。では、ページ数だけ申し述べます。百二十九ページにあります。
そこで、たくさんの、十一項目書かれているんですけれども、ほとんどがもう手当て済みだったということで、国会の審議でも明らかになったわけです。そこで、四月十五日付の産経新聞は、社説で、経団連は提言を取り下げるべきだという趣旨の記事まで書いたほどであります。
そして、これはどういうことになっているかといいますと、要するに、アンケートを取ったときに、こんな問題があったというふうに言う人がいるんですけれども、それは手当てする前だったりして、ほとんど解決済み。そして、私が精査したところ、十一項目の中でまだ手当てされていないのがパスポートですね。パスポートは、旧姓との併記によって、飛行機に乗れないなどという問題があるということが指摘されています。
そこで、私、調べたんですけれども、実際、パスポートを使ってこういうお困り事の人は何人いるのかと計算してみました。令和元年の日本人の出国者数は二千八万人、そのうち出張、業務目的は四百三十八万人。これは出入国管理統計から分かります。このうち、海外出張に行く女性は一九・五%ですから、掛けると八十四・四万人。出典は日本産業衛生学研究論文です。次、海外出張の平均回数は同論文によりますと一・七回ですので、加重平均一・七回、これで割ると四十九・六万人。そして、自ら別姓を選ぶ人の割合は二八・九%、実際に別姓を希望する人の割合は三〇・四%、これは令和三年の内閣府世論調査です。これによりますと、掛け合わせると四・三万人。つまり、パスポートが旧姓が使えないということで不便を感じている人は四・三万人ということになります。
これは、決して少ないとは申しませんが、決して多くはない。家族制度の変更をするほどのことなのかということを問いたいと思います。
そして、五月には、当時の経団連の十倉会長が、経団連の提言は便利、不便の議論が本質ではないと述べるんですね。アイデンティティーの問題だと言うわけですよ。つまり、これだけ指摘されて、便利、不便ではないと、ここで開き直ったわけであります。でも、アイデンティティーというのは、つまり、自分の名前で仕事を継続できないとか、そういうことによってアイデンティティーの問題が生じるわけですから、そういうことをしっかり手当てすれば、アイデンティティーの問題もおのずから改善されるというふうに言えます。
そもそも、その点は、平成二十七年の最高裁判決にあります。婚姻によって氏を定める者にとって、アイデンティティーの喪失を抱く者があると言いつつ、氏の通称使用が広まることによって一定程度は緩和され得る、これが最高裁の判決の中に入っています。
ですから、通称使用の拡大、若しくはそれに一定の法制化をしていくということはこの最高裁の示した方向にも合うわけでして、困っている人がいるならば、通称使用の拡大、そして法制化によって全て乗り越えていくということができる。
つまり、家族制度の変更というのは、かなり大きな社会的コストを生むわけなんです。金銭だけではありません。例えば社会的コスト。システムを改修するだけでも何千億円とも言われていますけれども、日本中の事業所は八百五十万事業所あるんですね。病院、学校その他で、例えば、面会制限時の家族関係確認、手術の同意書、そんなので、本来であれば、同姓であれば夫婦であることが推認されるところ、戸籍の提出を求めて確認をするという事務作業が現場で生じるわけなんですね。なので、社会的コストが一定数ありますので、かなり大きな利益がなければ問題外。先ほどの四万人程度のパスポートの不便であれば、旅券法改正によって乗り越えることも可能ではないかと思います。
そして、私は、この選択的夫婦別姓を導入すると少子化が加速すると考えています。なぜかといいますと、結婚というのはいろいろと合意しなくてはいけないことが多いですよね。そこに同姓か別姓かという選択肢が増えるわけです。何とか別姓ということで二人が合意したとしても、じゃ、子供の姓はどうするかということで、二人で話し合わなくてはいけない。
とすると、例えば、恋愛関係になってプロポーズして、結婚してください、分かりました、やったと思ったときに、ところで、同姓、別姓どっちがいいと思う、私、別姓がいいわと言われて、うわあ、来たということになって、えっ、別姓じゃなきゃ駄目かという話になる。じゃ、別姓だというけれども、だって、別姓がいいという女性は、自分の子供は夫の姓でいいとは多分言わないでしょう。本来結婚できたカップルが結婚できなくなる。
つまり、選択肢が多いということは苦しいことなのであり、特に結婚に関しては、スムーズに進むためにはこれは障壁になると私は考えております。
それから、家族の概念が崩壊しという話がありますけれども、これは、大人が言うことよりも子供に聞くのが一番確実でございます。この委員会の参考資料三十三ページにありますけれども、子供に対するアンケート結果、家族が違う名字になったらどうですかといったら、ほとんどが嫌だと答えているんですね。賛成するというのは一六・四%です。子供は同姓がいいと言っているんですね。
つまり、選択的夫婦別姓というのは強制的親子別姓なんですね。ですから、アイデンティティーであるとか自分の自由がとか言っている人が、自分の子供の権利に関しては何も目を向けようとしない。これは大きな矛盾があります。
それから、先ほど小原さんが言いましたけれども、家を継がなければならないと言われて結婚を断念したという例がありました。ところが、この選択的夫婦別姓というのは、家とか何々家という概念そのものをなくすものであります。したがって、もしAという氏、Bという氏が保たれたとしても、じゃ、子供はどっちかになるわけですから、結局どっちかの家は絶家になるわけですよね。ですから、そもそも、選択的夫婦別姓は家という概念を薄めていく、抹消するという概念ですから、それをもって家が守られるというのは詭弁であると私は考えております。
そして、結論ですけれども、困っている人はいない、若しくは、いたとしても少数である。したがって、家族制度を変更するという大きなことをすることなく、本当に困っている人がいたならば、きめ細かく対応すればいい。そして、それは、現在のように通称使用の拡大をしていくのか、若しくは維新が示すように法制化していくのか、この考えはあろうかと思いますけれども、少なくとも立法事実がない。大きなお金をかけて、社会的コストをかけて実行することはないと考えております。
そして、先ほど小原さんが、結婚の妨げになると思うと答えた人が一一・四%いると言いましたけれども、これは私はおかしいと思っています。妨げになると思うかと聞かれたら、妨げになるんじゃないかなと想像する人がいてもおかしくないです。あなたは妨げになったのかと既婚者に聞かなければ、この一一・四%は全く意味のない数字だと考えております。
それから、ちょっと掲示できないということなんですけれども、もし選択的夫婦別姓を導入したらサザエさん一家はどうなるか。磯野波平、奥さんは石田フネ、子供は石田カツオ、石田ワカメ、石田サザエ、そしてフグ田マスオ、フグ田タラオと、これはもう表札もかけられないし、磯野一家というふうに言うこともできない。例えば、ファミリーレストランで呼ばれて、例えば、竹田さん、どうぞといったときに、竹田のうち、俺は竹田じゃない、私は竹田じゃないと、要するに呼ぶこともできない。お墓も造れなくなるでしょう。つまり、伝統的な家族観を守るのか守らないのか、これが問われているのであります。
本当に困っている人がいるのか、私も多くの番組で、この話題になると必ず聞くんです。具体的にどういう人が困っていますかと聞くと、しどろもどろになって一つも出てこない。どうでしょうか、皆さんの周りに本当に困っている人がいるでしょうか。(発言する者あり)まあ、それは後で言ってください。
○西村委員長 御静粛に願います。
○竹田参考人 つまり、政府が仕事の継続から何から、金融機関からパスポートまで手当てしているわけです。ですから、それでもし不便があるというならば、そこに少し手を加えて、多くの人が不便を感じないようにすればいい。そもそも、名前を自由に述べるという人権があるのかということも併せて考えていただければと思います。
私からは以上です。(拍手)
○西村委員長 ありがとうございました。
次に、次原参考人にお願いいたします。
○次原参考人 おはようございます。
冗舌な竹田先生の発言の後では非常にやりづらいものがございますけれども、おつき合いくださいませ。
経団連審議員会副議長並びにダイバーシティ推進委員長を務めさせていただいております、サニーサイドアップグループの次原悦子でございます。
昨年六月に、前経団連会長であります十倉会長の方から、ダイバーシティーの第一歩としまして、選択的夫婦別姓の実現を政府に提言をし、取組を進めてまいりました。本日は、貴重な機会を頂戴いたしましたので、経団連からの考えを述べさせてください。
企業にとって、ダイバーシティーはイノベーションの源泉であり、持続可能な成長のためには欠かせないものでございます。特に、人口の半分を占め、消費購買決定の約七割にも関与しております女性の活躍というのは、企業の成長そのものと深く関わっておりまして、経団連としても長きにわたり真摯に取り組んでまいりました。
しかし、企業の努力だけでは乗り越えられない壁も存在いたします。その一つが、現行の夫婦同姓制度です。
提言に先立ち経団連が実施した調査によりますと、九一%の企業が旧姓の通称使用を認めている一方で、税や社会保障の手続や、結婚や離婚などのプライバシーに関わる情報管理におきましては、企業としても大きな負担が生じているという声が寄せられております。さらに、女性役員の八八%が、通称使用が可能であっても何かしらの不便や不利益があると回答しております。
私自身が、ビジネス上使い続けてきた名前と戸籍名が違うという、それによる不都合、不利益を長年感じた経験を持つ一人でございます。少しだけ、ここで個人的なお話をさせてください。
私は、十七歳でこの会社を設立しました。そのときに、両親とは異なる母方の祖母の姓、次原を名のることにしました。祖母は、二十六歳から戦争未亡人で、三人の娘を女手一つで育ててくれた人です。たった一枚の写真でしか知ることはないのですが、三十歳という若さで戦死した祖父の名前が祖母で途絶えてしまうという、そんなことに何とも言えない寂しさを感じまして、祖父母の姓、次原、この名前で仕事人生を歩むことを決意しました。
その名前とともに仕事に没頭し、時を重ね、二〇〇八年、会社がいざ上場するというときに、申請は戸籍名しか認められないという制度の壁に直面いたしました。結婚により改姓していた私は、次原悦子の名前では上場ができなかったのです。結論から言いますと、私はこのタイミングで離婚を選びました。
その後に通称の併記が認められるようにはなりましたが、旧姓の括弧書きや戸籍姓を注釈で記載されるといったもので、生来の名前を単独で使えるものではございません。銀行口座、パスポート、航空券、セキュリティーチェック、通称名を選んだ人にとっての不便というのは、一つ一つがとても小さくて、不都合は自分たちが選んだ問題なのだから仕方がないことなのだと多くの女性たちが諦めてきたと思います。
しかし、この数年で、まさに先生方の御尽力で通称使用は大幅に拡大されました。これは感謝しかございません。ただ、私自身も、経団連の会員企業の女性たちと交流を重ね、ミッションで共に海外渡航する中で、今でも幾つもの小さな不便に直面している女性たちが実は多くいるのだという、その現実を知りました。このことは決して個人の問題にとどまることではなく、企業活動にも少なくとも影響を及ぼす構造的な課題であると、経団連としても考え始めたのです。
通称というのは法的な氏名ではございませんので、税、社会保障といった行政手続や海外でのビジネスなど、多くの場面で旧姓の単独使用は認められておりません。また、仮に旧姓の通称使用が法定されたとしても、一人に対し戸籍姓と通称姓の二つの法的な姓が誕生することは新たな混乱を招きます。とりわけ海外では、セキュリティーの厳しい現代、身分を証明するのはパスポートというのは基本でございますので、全ての国でダブルネームという存在の意味を理解していただくのは極めて困難です。
そして、何よりも不便の解消だけでは解決できないことがございます。氏名は、自分自身を表すものです。その名前で私たちは生きています。そこに思いのある人にとっては、姓が変わってしまうということによるアイデンティティーの喪失感を拭うことはできません。
通称使用の拡大と選択的夫婦別姓は、二者択一の問題ではございません。通称使用の拡大では解決できない課題やその思いがあるということを是非とも御理解いただきたいと思います。
これを解決するためには、一九九六年の法制審答申は、現在におきましても社会の実情を踏まえた極めて妥当な内容であると経団連は考えております。戸籍制度の崩壊を懸念する声もありますが、この案であれば、いずれも夫婦が同一戸籍内に在籍することを前提としておりまして、制度の根幹やその機能、重要性を揺るがすものではないと理解しております。
他方、旧姓に法的根拠を与えるという案についてですが、ダブルネームの回避のために、旧姓使用の届出をした人は戸籍上の姓は公的に使用できなくなる、もしそういうことであれば、そもそもの戸籍制度の存在意義が薄れてしまうのではないかなと思います。
家族の一体感が薄れてしまうという声もありますが、現に、離婚や再婚、国際結婚等により親と姓が異なる子供は珍しくなく、それによって愛情やきずなが失われることではありません。私は、離婚を経験し、二人の子供がおりますが、姓が違っております。ただ、その異なる姓について違和感を告げられたことは一度もございません。女系家族ですから、家族旅行も家族全員名字が違うというのも何回もございますが、これは当たり前のことです。
とにかく、家族の在り方というのは様々です。家族というのは、姓に規定されるものではなく、それぞれの背景と尊重の下で築かれるものでございます。選択的夫婦別姓を望む方には、それぞれに異なる事情や思いがあります。事業継承、アイデンティティー、尊厳、中には姓名判断の画数、そんなこともございます。その理由は本当に様々です。でも、そのどれもが人生を真剣に生きる人たちの大切な選択なのです。
好きな人と同じ名字になりたい、通称使用で十分という方もたくさんいらっしゃいます。その方の方がとても多いと思います。私たちが求めているのは、あくまでも選択の自由です。誰かの価値観を押しつけるのではなく、全ての人の価値観がひとしく尊重される社会をつくるための制度改革です。
最後に、改めて言わせてください。
名前とは、性別にかかわらず、その人の人格そのものでございます。とりわけ職業人にとりましては、これまで積み重ねてきたキャリアや信用、人脈と密接に結びついております。希望すれば生来の姓を維持できる、そんな制度を設けることは、自分らしく誰もが生きていくための大切な選択肢なんだろうと思います。価値観の押しつけではなく、多様な価値観を受け止める制度へと進化させることは私たちの世代の責務なのだと思います。
どうか、党派を超えた建設的な議論が重ねられ、前向きな結論に至ることを、経済界の立場より心より願っております。
以上です。清聴ありがとうございました。(拍手)
○西村委員長 ありがとうございました。
次に、布柴参考人にお願いいたします。
○布柴参考人 文教大学の布柴と申します。
まず、長年の懸案事項であった選択的夫婦別姓、氏と言わずにここでは姓と言わせていただきます、選択的夫婦別姓制度がようやく実質審議に入ったことを大変喜ばしく思い、その御尽力に対して感謝申し上げます。
この法案は、これ以上先送りはできない喫緊の課題と考えています。早期に審議を進め、是非とも超党派で実現に持ち込んでいただきたく、切に願っております。
私は長年、様々なことで悩んでおられる御家族の心理的援助をしてまいりました。約四十年間です。本日は、私の専門領域の家族心理学の立場から、そして、悩みを抱えておられる多くの方々の心の声の代弁者としてお話をさせていただきたく思います。
私は、仕事柄、若い方の声を聞く機会が多いのですが、最近、結婚したくない、子供は欲しくない、一人っ子だから不利益を被っても事実婚をするしかないと思っている、姓を変えるのが嫌だから結婚をちゅうちょしている、ただでさえ女性が不利な状況にある中で、選択的夫婦別姓も認めてくれない日本には失望だ、もう住みたくない、同姓を強いられる今の状況では到底子供を持ちたいとは思えない、アイデンティティーを失うリスクを考えるとパートナーとの人生設計を前向きに考えられないと語る若い女性、そして若者の声を聞く機会が最近とみに増えてきたと思っています。
これらの言葉は、本当は、好きな人と一緒に住みたい、結婚したい、可能なことなら子供も欲しい、自分らしく、自らの能力が生かせるなら、もっと日本という国を慈しみ、誇りを持って住み続けられるのに、それができないことへの失望、生きづらさ、怒りを通り越した諦めを持つ若者の悲痛な心の声と受け止めています。
選択的夫婦別姓制度の審議が棚上げされてきたこの約三十年間に、日本の家族や社会の在り方は大きく変化し、多様化してきました。家族は社会の鏡です。家族は、変わり行く社会経済の変動の中で、最適化して何とか生き延びようとして変化してきました。その結果、子供を持たない、結婚しないという選択をする人が増え、少子化、未婚化、非婚化が進んでいるということを私たちは重く受け止めるべきだと思っています。
少子化は進み、御存じのように、合計特殊出生率も下降の一途です。一人っ子は今や約二〇%に達しています。高度経済成長期には多くいた専業主婦世帯も大幅に減少し、バブル崩壊を境にその数は逆転し、現在は共働き世帯は専業主婦世帯の二倍以上の数に上っています。
ところで、皆様は、家族というとどのようなイメージをお持ちでしょうか。先ほどサザエさんのお話も出ましたが、サザエさんのようなほのぼのとした三世代の家族をイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。けれども、資料にもございますように、今や三世代家族は全世帯の七・七%です。もっと今は下がっているはずです。マイノリティーなんですね。
そして、じゃ、今どんな世帯が多いかというと、単身世帯で、三八%です。そして、一人親世帯も全体の九%になっています。離婚は結婚件数の約三分の一、再婚は約四分の一になっています。
このような大きな変化の中で、私たちのライフサイクルも大きく変わってきているということを認識する必要があると思います。夫は仕事、妻は専業主婦の家族モデルは、高度経済成長期には最適化した家族モデルだったかもしれませんが、生産労働人口が減ってオーナス期に入った現在では、女性も働くことが求められているのと同時に、キャリアを積み上げたいという女性も増えてくるのは当然のことかと思います。
しかし、一方で、働く女性の約七〇%が非正規雇用であり、男女間の賃金格差も約二〇%近くあります。日本の女性の地位は、二〇二四年のグローバルジェンダーギャップ指数によると、百四十六か国中百十八位という惨たんたる数字になっています。G7はもとよりOECDでも、本当に先進諸国としては最下位のランクになっている現状にあります。
多様化している家族に見合った施策を進め、そして不利益を被って困っている女性たちを救う法律制度を導入していかないと、今後の日本の未来に大きな危惧を覚えています。選択的夫婦別姓制度もその例外ではないと思っています。今まで女性が我慢を強いられてきた家族観の上に成り立った法制度は、人権の観点からも改正すべきであると考えています。
慎重派の方の中には、家族の一体感や伝統が壊れるのではないかと懸念する声も聞きますが、そもそも、家族の一体感は氏のみで規定されるものではなく、もっと深い心の交流のきずなの中で培われるものです。また、家族の伝統をどう捉えるかは、その方の御経験や、よって立つ歴史観、価値観によって多岐にわたると思います。どれが正しくて、どれが間違っているというものではないと思っています。
大切なのは、意見や価値観は異なっていても、一人一人の尊厳が認められ、多様な意見を包含できる仕組みとして法律制度を整えていくということが必須だと思っています。簡単でないことは百も承知ですが、当事者の声を聞き、真に国民のニーズに寄り添った、多くの方が納得できる法制度を一刻も早くつくっていただきたいと心から願っている次第でございます。
さて、導入に慎重派の方が理由によく挙げることが、親子で姓が異なれば子供に悪影響を与えてしまうのではないかという考えですが、結論から言えば、親子や兄弟で姓が異なることだけが、それだけが理由で子供の心の成長に悪影響を与えるということは、私の四十年間の臨床ではございません。夫婦同氏を法律で強制している国は今や日本のみになっていますが、既に導入された海外では、別姓であっても家族愛や夫婦愛は何ら変わることはなく、ましてや家族の一体感を失うとか子供の精神に悪影響を与えるという報告は、私が聞いたところではございません。
また、既に国内でも親子別姓の家族は存在します。例えば、国際結婚、事実婚、離婚、再婚をしたケース等です。今まで多くの御家族の相談に乗ってきましたが、夫婦、親子が別姓であっても家族のきずなが大変強く、とてもすてきな御家族はたくさんいらっしゃいます。そういった方にも多く出会ってきました。また、一方で、名前が一緒で、同姓であっても家族の心がばらばらで、とても悩んでいる御家族の相談にもたくさん乗ってきています。
ですので、選択的夫婦別姓導入と家族のきずな、帰属感、子供への悪影響を理由に導入に反対するというのは、私の観点からは全く理由にはならないというふうに感じております。
大切なことは、別姓を選ぶ場合は、子供の発達に応じて、なぜ我が家は別姓なのかを理解できるように説明することが重要です。夫婦や親子で話し合い、お互いが納得する過程を通じ、むしろ家族としてのアイデンティティーや家族のきずなは深まると考えています。
姓が異なるために学校でいじめに遭うのではないかという懸念も指摘されますが、そもそもいじめ自体が、どんな理由があろうとも許されないものです。親と姓が違ってかわいそうという見方もありますが、かわいそうというのはその人の価値観の物の見方です。一歩間違うと価値観の押しつけになり、逆に、言われた子供の自己肯定感を下げかねません。
子供は何か違うことがあると、素朴に、なぜ、どうしてと質問するので、大人がしっかりと説明する必要があります。納得し、周囲に同じような子供が多くなれば、これが普通だと受け止められるようになるでしょう。
さて、今回提出された案を見ますと、いずれも現戸籍制度を維持することを前提にした上での案、そして議論になっているかと思います。ここは少なくとも合意形成されているのかというふうに私は理解しています。
一方で、旧姓の通称使用拡大で不便は解消されるのではないかという意見もございます。それも一つの在り方であるとは思いますが、内閣府、二〇二一の調査では、不便、不利益があると答えた方の五九・三%の人が、たとえ通称を使うことができても、それだけでは対処し切れない不便、不利益があると思うと答えています。そういう方々にとって、通称名は所詮通称名なのです。戸籍に記載されて初めて、法的にも心理的にも一貫性を持ったアイデンティティーが認められたと思うのです。
旧姓使用拡大は、一部の方の困り感を和らげても、選択肢がないことによる不利益の根本的な解消にはつながらないと思っています。選択できるということは、心理学の中でも、幸福感を高めるということは実証研究でも実践研究でも明らかになっています。
人権尊重という意味でも、戸籍制度の運用を柔軟に、現在のニーズに合ったものにしていくということは必須であると思っています。そういう意味でも、選択的夫婦別姓制度が一日も早く成立することを願ってやみません。
以上で私の意見陳述を終えます。御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)
○西村委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○西村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦さん。
○柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。
参考人の皆様、今日は貴重な御意見の御開陳、誠にありがとうございました。
まず、次原参考人にお伺いしたいと思います。
現在、立憲民主党や国民民主党から出ている法案については、親子別氏、そして夫婦の別氏は認めておりますけれども、兄弟の別氏は認めておりません。この制度の在り方について、次原参考人は、将来にわたってこのような制度であり続けてよいとお考えになっているのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
○次原参考人 御質問ありがとうございます。
経団連としましては、法制審等をベースに組まれました立憲民主党様、国民民主党様の法案に関しまして、支持はしております。
その際の、兄弟姉妹の姓は一緒ということでございますけれども、これは、まずこの法制審をベースに、ここから皆様にどんどん議論をしていっていただきたいというふうに考えております。様々な意見は経団連の中にもございますが、あくまでもここをスタートとして、小さく始め、今後の議論に発展していっていただきたいというふうに考えております。
よろしいでしょうか。
○柴山委員 まずここからスタートで、これから更に議論ということだったかと思います。
その上で、布柴参考人にお伺いしたいと思いますけれども、家族の在り方の概念は変化しているというふうにおっしゃいました。
直近の世論調査において、夫婦別氏になることについては、家族の一体感やきずなが弱まるのではないかとの回答が四割に上っているほか、最高裁判決の時点においては、夫婦同氏制度を合憲とする判断において、家族の呼称を一つに定めることには合理性があるということが理由とされています。
また、委員から御提示された、これまでの婚姻の在り方についての資料四につきましては、離婚件数が、一九六〇年代の約六万人から、直近ですと十八万人と大幅に増えているというデータも示されております。
このような形で、現在の家族制度が変化していくに当たって、それを家族の根幹たる制度が後追いをそのまましていくということは本当によいのか、改めて御意見をお伺いしたいと思います。
○布柴参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。
家族とは何なのか、家族の概念とか家族の制度というのがこの中で飛び交っていますけれども、そもそも、家族という定義は今の民法ではございません。ましてや、家族の概念といったときも、それは何をもって概念というのか、ここもしっかりと押さえていく必要があるかと思います。
私も家族心理学を研究していますけれども、家族の研究は、家族心理学でなく社会学とか宗教学とか文化人類学でも研究されていますが、今や、家族とは何ぞやということを一つの概念にまとめましょうというのは無理ですねといったところが合意点に達しております。そのぐらい、実は家族の捉え方というのは非常に多様化しているということになります。
ですので、家族の制度とは、家族の概念が崩れていくといったときに、何をもって家族の概念と捉えているのか、そして、何をもって家族の制度と捉えているのか、そういったことをしっかりと押さえて発言しないと、議論がなかなかかみ合わないのがとても残念だなというふうに思っております。
以上でございます。
○柴山委員 変化していることは事実だけれども、それが家族という概念でくくれるのかどうかということはいま一度検討すべきだというのがお答えだったかと思います。
その上で、それでは、家族という概念を、例えば夫婦と子供という極めて狭い形で捉えたと仮定をしたときに、先ほどもお話があったように、例えば姓名判断で必ずしもよくないから別氏を選ぶというような形で、家族の姓がどんどん変わっていくというようなことを後追いすることが本当にこれからの夫婦あるいは子供の氏の在り方としてふさわしいのか、これは竹田参考人に是非お伺いしたいと思います。
○竹田参考人 その点につきましては、元々、家族の在り方といいますのは、伝統、慣習の上に成り立つものであります。ですから、民法典、いろいろありますけれども、債権法、物権法は社会の変化に合わせてかなり頻繁に変え得るものですが、家族法というのは、目先のはやりによってころころ変えるものではないと考えております。
一例を申し上げます。
我が国が韓国を併合したとき、韓国には、大韓帝国には元々ちゃんとした民法典がありませんでした。そこで、日本民法を直接適用しました。しかし、そのときに、日本民法はやはり日本的な家族の在り方が書かれていますので、これを朝鮮民族に押しつけるのは申し訳ないということで、朝鮮の家族の在り方を研究して、朝鮮民族向けの家族法を作ったという経緯があります。
そのぐらい伝統に根差したものでありまして、民法が、これまで、それぞれの改正がどれだけされてきたかを比較すれば、家族法の改正というのは慎重に行うべきものであり、憲法改正とまでは言わないにしても、目先の風潮によってころころ変えるものではないと考えております。
○柴山委員 次に、小原参考人にお伺いしたいと思います。
小原参考人からは、いろいろと詳細な世論調査についての御紹介もいただいたんですけれども、これは椎谷参考人からも御紹介があったんですが、例えば、昨日のNHKの世論調査ですと、御紹介をいただいたとおり、選択的夫婦別氏に賛成が二五%、旧姓の通称使用を進めるべきだが三一%、今の制度のままでよいというのが三七%と、恐らく聞き方によっても、随分世論調査には幅ができるんだろうというように考えます。
また、今国会で提出されている法案も実に三本に上っております。このような中で、あえて採決を性急に進めることによって国民の分断を進めるよりも、本当に不便を感じておられる女性の方々のために、その不便をなるべく早くしっかりと解消することに国会は注力すべきだという考え方について、小原参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○小原参考人 御質問ありがとうございます。
先ほど私が最後の方に申し上げたとおり、この議論は、別氏、ごめんなさい、同氏を先に言った方がいいですね、同氏対別氏の議論をしているわけではありませんで、同氏と別氏を選べる選択制の議論をしているというふうに理解しています。ですので、アンケート結果で、例えば選択的夫婦別氏が少数だからといって、私としては、だから何なのかというふうに理解しています。
それから、法案が三本もある、国民の分断とおっしゃいましたけれども、それにつきましても、同じく、家族の話や子供への影響につきましてはその家族が考えればよいことで、選ばない方々が選んだ方々の家族に対してまで言う必要はないんじゃないかなというふうに考えてございます。
以上です。
○柴山委員 名字は、あくまでも個人のアイデンティティーであり、ほかの方々の個人のアイデンティティーについては別の方が云々するのはおかしいというような、そういう御意見だったかと思います。これは、先ほどの、その地域の習俗については、しっかりと習俗として尊重をしてきたという竹田参考人の考え方と、恐らく真っ向から衝突をする部分だと思うんです。
そのような中で、椎谷参考人にお伺いしたいのは、今現状で日本の戸籍というものが、家族を、特に夫婦と子供を中心に編製されているというこの事実について、日本の戸籍の優れた部分というものがもしあれば、是非御意見をお聞きしたいというように考えております。
○椎谷参考人 これも、日本の戸籍の優れた点におきましては、言うまでもなく、日本の戸籍は一覧性、全てを一覧で見ることができる、そしてたどっていくことができるということでありまして、それ自体が本当に、例えばヨーロッパのある国では、生まれたときの帳簿、結婚したときの帳簿、ばらばらになっていますから、それが日本では一覧性になっていますので、非常に分かりやすいということです。
私は、それもそうなんですが、では、一体戸籍をどうしようとしているのかということが問題だと思うんですね。だから、我々は、戸籍を守るという一点では、我々というか、私は思っていますけれども、戸籍を一体どうしようというのか、非常に心配しております。
だから、個人籍という言葉も出てきますけれども、個人籍というのは戸籍を廃止するものではないといいますけれども、実際に選択的夫婦別姓を声高に叫んでいらっしゃった識者の方が、将来的には今の戸籍を個人籍にするのが望ましいということをおっしゃっているわけですね。だから、そういうことを聞けば我々は不安にならざるを得ないのは当然でありまして、ちょっと話がずれちゃいましたけれども、そう思っております。
○柴山委員 私からの質問は以上です。
どうもありがとうございました。
○西村委員長 次に、米山隆一さん。
○米山委員 それでは、御質問いたします。
まずもって、参考人の皆様には、本当に貴重なお話をありがとうございました。
まず、小原参考人にお伺いいたします。
選択的夫婦別姓、姓を選択できないことの不都合性や、必要性ということはもう先ほど来お話があったわけなんですけれども、現在、実際のところ、夫婦別姓、親子別姓という方はおられるんだと思います。
現在、働く現場におきまして、恐らくですけれども、国際結婚で夫婦別姓の方もおられると思いますし、また、離婚等で親子別姓の方もおられると思います。そういった働く現場で、そのような夫婦別姓、親子別姓の方がおられるのか、また、おられるなら、何らかの不都合が生じているのか、また、そのような方々と周囲の方々はどのように接しているのかについて御教示いただければと思います。
○小原参考人 御質問ありがとうございます。
離婚などで夫婦別姓の方も当然いるとは思いますけれども、我々のところに、働く現場での不都合ということは聞いてございません。あと、国際結婚で夫婦別姓の方は当然おりまして、全員に確認しているわけではございませんが、何も不都合はないというお話は直接聞いたことはございます。
以上でございます。
○米山委員 働く現場からということで、そのように伺いました。
では、次に次原参考人にお伺いしたいんですけれども、経団連でございますので、今度は雇用する側ということで御意見を伺えればと思います。
雇用する側ということになりますと、より広くといいますか、もちろん、今言った働く現場における国際結婚の方もおられるでしょうし、また、離婚等による夫婦別姓の方もおられるでしょうし、さらには、海外に事業所を持っていて、その国は、基本夫婦別姓ですというような国で事業所を持っている方も、国もまたあるんだと思うんですね。
そういった経団連の会員企業の現場で、夫婦別姓若しくは親子別姓の方が、おられるんでしょうけれども、おられるのか、また、おられるとしたら、何か不都合が生じているのか、また、そのような方々と会社はどのように接しているかについて御教示いただければと思います。
○次原参考人 まずは、経団連に関しましては、個人の情報に関しては知る由はございませんが、まさに最近では、離婚、結婚だけではなく、国際結婚も含めて、社員さんの御家庭の事情というのは様々だというふうに認識をしております。
弊社の場合でいいましても、六割以上が女性、管理職も五割が女性という状況ではございますが、この女性の中でも非常に多様でございます。今日の私のように、いろいろなプライベートを堂々と話す、そんな女性もいれば、とにかく自分のプライベートは一切知られたくないという思いを抱えていらっしゃる方もおります。
企業で働く以上は、様々な管理の問題で、戸籍が変わるというのは会社の方には伝えなくてはいけないことではございますが、それでも、その辺のことを確実に守っていただきたい、守秘義務を守っていただきたい、誰にも、結婚でさえも伝えていただきたくない、そういうふうなナーバスな思いを持たれていらっしゃる方も実際におります。
そのためにも、この選択肢というのは、そういう方の気持ちを救うためにも必要なものではないかなというふうに考えております。
○米山委員 今ほどの御回答で、働く現場においても、今度は雇用する側から見ても、特段、現に夫婦別姓も親子別姓も存在し、かつ、何らの不自由、不都合は生じていないということが実情なのかと思います。
今ほど次原参考人から、プライベートを堂々と話すというお答えがありましたので、ちょっと遠慮なく伺わせていただこうと思うんですけれども、離婚後、シングルマザーとして二児を育てられた、離婚の事情はちょっとまたあるんだと思うんですけれども、というふうにお伺いしましたので、御反対の方からよく言われている、お子さんたちとのあつれきとか、ファミリーネーム等々によって一体感が保てないというようなことはあったのか、ないのか。差し支えない範囲で結構ですので、お伺いできればと思います。
○次原参考人 御質問ありがとうございます。
離婚に関しましては、またゆっくりお話をさせていただくとしまして。
私の場合は、父と母の名前が違うということを、子供が小さなときからそのように育ってきておりましたので、本当に成人するまで一度たりとも違和感を唱えられたことはないんですね。
ただ、確かに、離婚によって名前が違うことによって、子供がいじめを受けるというような、世の中的にはそういうものもあるのだと思うのですが、そもそも、いろいろな家庭があって、父親、母親の名前が違う、これさえも当たり前なんだ、いろいろな家族があるというのが、みんな違うのと同じように、家族の在り方も違うんだよ、そんなふうに子供が育っていけば、逆に、名前が違ったからといっていじめられるような、もちろん、いじめというのは許せないことではございますが、そういうこともなくなるのではないかなというふうに思っております。
○米山委員 大変ありがとうございます。
次に、布柴参考人にお伺いいたします。
ちょっとおっしゃられたことそのままになってしまうので、かぶってしまうのかもしれないんですけれども、布柴参考人は、ハーバード大学の精神科の研修病院となっているケンブリッジ大学のカップル・ファミリーセンターで家族療法のトレーニングを受けられたほか、今ほどお話があったように、様々な日本での臨床といいますか、日本での御経験も積まれたというふうにお伺いしております。
先ほどお話がございましたけれども、もちろん、アメリカでは当然、日本でも、国際結婚、離婚後、事実婚などで夫婦、親子別姓がある御家庭に接する機会は非常に多いと思うんですけれども、それ自体が家族の不和の原因になっているというようなことはございましたでしょうか。
○布柴参考人 全くございません。
○米山委員 これもそうだと思うんですよ、そういうお話でしたしね。
その上で、今度は竹田参考人にお伺いしたいんです。
民法をそんなに変えるものじゃないとおっしゃられてはおられるんですけれども、現行民法の元と言っていいのかどうかちょっと分かりませんが、まず、最初の民法は明治三十一年、一八九八年に作られ、そして昭和二十二年に、これは敗戦によって大きく書き換えられ、平成十六年には、これは文章を口語体にしたみたいなところですから、平成十六年はそれほどではないのかもしれませんけれども、平成二十九年にもまた、債権法等々についての改正があり、さらに、まだこれは施行されていませんけれども、令和六年に、共同親権を導入するという極めて大きな改正がありまして、都合五回ほど、もはや改正はされているわけでございます。
また、日本の伝統、家族観ということも非常におっしゃられるわけなんですけれども、日本の伝統はいつから始まるのかということはなかなか難しい問題ではあるんですけれども、あらかじめ、ちょっと竹田参考人の出している資料などを拝見したところ、神武天皇は実在されるということですので、その説に乗りますと、紀元前六百六十年から、皇室の歴史といいますか日本の歴史は、百二十六代、二千六百八十五年に上ることになります。
その間、夫婦同姓が定められたのは、明治三十一年、一八九八年からの百二十七年間にすぎませんので、これは二千六百八十五年間の歴史のうちの四・七%ほどにすぎません。かつ、その前は、当然日本は夫婦別姓でございまして、また、戸籍も、明治四年には戸籍はあるんですけれども、それは別姓を前提とした戸籍でございまして、同姓の戸籍というのは明治三十一年、一八九八年にできているわけなんですね。
ですので、これを総合しますと、竹田参考人の御意見によりますと、夫婦が別姓であり戸籍がなかった百二十一代、二千五百五十八年間、九五・三%の日本の歴史は、家族の伝統が壊れていて、かつ、家族のきずなもなく、さらに、竹田参考人は、夫婦別姓を導入しますと皇統が揺るがされるというようなこともおっしゃられておりますので、この間、皇統は揺るがされていた、そういう御認識でよろしいんでしょうかね。
○竹田参考人 まず申し上げます。
神武天皇の実在に関しましてですけれども、神武天皇とは、初代天皇につけた名称です。したがって、何世紀の人物かに関しましては、かなり議論のばらつきがあります。現在、天皇陛下がいらっしゃる以上、誰かが初代だったわけです。当初は、大王、大君などと言われた時代がありますけれども。
ですから、いる、いないに関して言えば、私は二千六百年とは思っていません。私の著書には何度も書いていますけれども、神武天皇は、恐らく紀元前後、つまり、二千年ぐらい前の人ではないかと書いています。
そして、この委員会の資料にも、法務省のまとめで、徳川時代には、一般に農民、町民には名字、氏の使用は許されなかったと書いてあるんですけれども、これは半分正しいですが、半分間違っています。つまり、公式に使うことは許さなかったんですけれども、江戸時代では、一般的に町人、農民がかなり広く氏を使用していたことが分かっています。それは、お寺の過去帳、お墓の墓誌、それから神社の奉納帳などから明らかでございます。そして、江戸時代を通じて、庶民も普通に氏を使っていました。その流れ、明治時代に、全くなかった家族法をいきなりぼんと作ったわけではなくて、日本人の家族観にのっとったものを作ったわけであります。
そして、何回か改正されているということですけれども、一言一句変えてはいけないなどと言うつもりはありません。物によっては変えてよいと思いますし、慎重な議論の下で変えていくのは賛成です。
ただし、修正は小幅修正であるべきだと思います。なぜならば、家族法をもし間違った方向に改正してしまいますと、どのような悪影響が起きるか想像しかねるからです。
そして、ちょっと話は戻りますけれども、平安時代には既に庶民が氏を広く使っていたということが分かっています。その後、鎌倉時代に入りましてから衰退するんですけれども、室町の後半からまた氏を使うようになりました。そして、戦国時代も広く使われるようになったということで、それは、権力者が氏の使用を禁止するという場面が起きると公的には使えなくなるというものですけれども、元々、日本人の家族観が二千年にわたってころころ変わってきたということを示すものではないと考えています。
○米山委員 要は、質問にお答えいただけなかったというふうに私は理解しております。
それでは、椎谷参考人にお伺いいたします。
二択か三択かという問題は非常にあるんだと思うんですけれども、ただ、私は、選択的夫婦別姓の賛否を問うのであれば、それは賛成か反対かの二択というのが通常だと思うんですね。
選択的夫婦別姓、旧姓の使用拡大、現状維持の三択というのは、それは今まさに我々がこの法務委員会で議論をしているところなんですけれども、選択的夫婦別姓の立憲案、旧姓の使用拡大の維新案、そして恐らくは現状維持の自民党ということで、それは、結局、全く別々の案なわけですよね。
その三つを選択して、かつ、旧姓使用の拡大と現状維持をまとめるとそっちの方が多いというのは、それはそれで事実なんだとは思うんですが、でも、二択だったら賛成が多いというのを、両者を考えると、通常の解釈なら、それは旧姓の使用拡大と答えている人に、選択的夫婦別姓は賛成の人も反対の人もいるということだと思うんですよね。それが一番普通の解釈じゃないですか。
ですので、椎谷参考人がおっしゃられるように、確かに、三択で質問をしたときに、選択的夫婦別姓賛成と旧姓の使用拡大をまとめて賛成というのは、それは違うという御意見は理解できるんです。でも、それであるなら、全く同様に、旧姓の使用拡大と現状維持の二つをまとめて反対だというのも、それは違いますよね。
要は、三択のときに、二つの回答をまとめて何かの結論を導いては、それはいけません。選択的夫婦別姓に対する賛否は、二択で賛否を問うて、そして賛成が多いんだから、賛成が多いんですということかと思うんですが、御所見を伺います。
○椎谷参考人 質問が分かったような分からないような、済みません、頭が悪いのかもしれないけれども、ちょっと分かりにくいんですが。
取りあえず、賛成か反対かを、別に私は否定しているわけじゃないんです。どっちも正しいでしょう、質問としては。ただ、賛成ですか反対ですかというのは、当事者としてのスタンスが入らないというか、非常に離れた目で見ている感じがするんですね。
そういう意味では、三択で突きつけられるというか、出されると、自分はこうなんだという、より自分が当事者になった意識で答えることができるというのはあるんですね。そういう感じだと思うんです。
ただ、私が一番懸念しているのは、先生がおっしゃるように、どちらも否定しているわけじゃないんですよ。いろいろな議論があったときに、いろいろな団体とか政党でも、この令和三年の内閣府の調査を一言も入れないで、自分たちがやった調査だけを、これはどうだと書くんですね。全く無視なんですよ。しかも、例えば、朝日や毎日は使っても、産経、読売は使わないとか、恣意的にやっていると思います。
そういう意味では、今回の、NHKがどうして二択から三択に変えたかということを聞いてみたいんですけれども、これは、やはり広く国民の声を聞きたいという気持ちからそうなったんじゃないかという気はします。
お答えになっていないかもしれませんが。
○西村委員長 米山さん、終わってください。
○米山委員 大変ありがとうございました。
○西村委員長 次に、藤田文武さん。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。
今日は、お忙しい中、五名の参考人の皆さんにお運びいただきまして、ありがとうございます。
まず、竹田先生にお聞きしたいと思います。
先ほどより、家族法制について改正の慎重さが必要であるというところについては、私もやはりそこは賛同する部分でございまして、我が党の案につきましては、戸籍法の改正で、小幅修正によりまして、現在も既に広がっている旧姓使用に安定性を持たせようという、こういう案でございまして、したがいまして、民法の改正を伴わず、子供の議論になりません、現行どおりということであります。
そういう、合意形成を含め、そして家族法制への影響への配慮を考えました我が党の案につきまして、率直な御評価をまずいただきたいと思います。
○竹田参考人 選択的夫婦別姓に賛成している参考人の皆様方がいろいろな不便のお話をなさったと思うんですけれども、私は維新案によって全て解決すると考えております。ダブルネームの混乱という点のみが検討すべき項目だと思いますが、旧姓単独でパスポートも持てるということになりますので、全て解消できると思います。
法改正を伴わずに旧姓の通称使用の拡大のみで乗り切れるのであればよいですけれども、もし、それが遅い若しくはなかなか普及しないということであれば、一定の法制化をして実施するというのは私も賛同するところであります。
なので、維新の法制化のやり方は、その一つの種類だと思いますが、一番確実に、瞬時にして、あまねく、多くの苦しんでいる方がいらっしゃるとしても解消できる、そしてそれは、家族制度を変えることなく戸籍法の小幅修正によって行われるということで、上策であると考えます。
○藤田委員 ありがとうございます。
その上で、布柴参考人、そして、次原参考人、小原参考人にお聞きをしたいと思います。
選択的夫婦別姓を求める、そして賛同するお声の理由として、大きく私は二つに分けられるのかなと思っておりまして、一つは、いわゆる社会生活における不便というものをやはり解消してほしいんだと。先ほどの、次原参考人からも、小さな不便がたくさんあるんだということは、実社会として、それは私たちも認めるところでありまして、そこは解消したいという思いが強くございます。加えて、戸籍名であれ通称であれ、やはり名前というのはアイデンティティーに関わるということで、仮に私たちの維新案でも、そこは完全には解消されないんだよという御主張と。いわゆる不便の解消とアイデンティティー、こういう話かなというふうに思います。
ちょっとだけお話しすると、私たちの案は、前段の不便の解消というのは、法的に通称使用をしっかりと規定することによって、単独使用をほとんど一〇〇%認め、もちろんパスポートも含めてするものでありまして、現在の通称使用って使いにくいよねとよく言われるんですけれども、それは、拡大してきたから喜ばしいことではありますが、課題が残っているということなんですが、それさえ全て解消しようということであります。
先ほど、布柴参考人のお言葉の中に、通称使用ができるようになったとしても、それでも残る不利益、不便がまだ存在するといった引用がございました。
私は、いろいろ勉強させていただいたり制度設計を考える上で、果たして我々の案でそれが残ったものはあるんだろうかと、いろいろ探し回っても見当たらないんですね。アイデンティティーという話は少しおいておきまして、実社会における不便の解消でなお残る不便というのは、あれば御紹介をいただきたいんですが。
布柴参考人、次原参考人、小原参考人の順に、お答えいただけたらと思います。
○布柴参考人 戸籍をどこまでいじるかいじらないかというところ、民法をどこまで、そういった議論があるかと思うんですけれども。戸籍法が大事だというのであるならば、なぜ戸籍法のもっと門戸を開いて、現在困っている人たちの姓も、別姓も認められないのかなというのは常々疑問に思っております。
私は心理学が専門でありますので、アイデンティティーの問題、アイデンティティーの問題と、すごく軽い言葉で言われて、特に慎重派の方は、たかが、たかがとは言いませんけれども、アイデンティティーがなぜそこまで問題なのかというふうな疑問を聞くこともあるんですけれども、心理学的にアイデンティティーを脅かされるということは自分らしさを否定されることになりますので、本当に生きていくのが苦しくなるということを知っておいていただきたいと思います。
今、若い人たちで、アイデンティティークライシスで、自分がどう生きていったらいいのか分からない、自分は生きている価値があるのかどうかすらも分からないと。そういった人たちの声を聞くと、やはり、皆さん、アイデンティティークライシスを味わっているわけです。
ですから、維新さんが出された案は、結局、二つの姓を維持することになります。そして、通称名を使っていくということで、逆に戸籍の方の姓は使えないということになるんでしょうか。ということで、ちょっとその辺が、運用が非常に、より固くなってしまうのではないかなということを懸念しております。
ですから、私が言いたかったことは、別姓を希望する人が、なぜかというと、戸籍にやはりちゃんと自分の姓をしっかりと載せてほしい、そういうことなんです。通称名は、所詮、通称名なんですというふうに私は感じております。
以上でございます。
○次原参考人 御質問ありがとうございます。
本当に、維新さんにおきましても、我々がさんざん言ってまいりました幾つもの不都合、不便に関しまして真摯に向き合っていただき、取りまとめをしていただいたことに感謝します。
まさに、おっしゃられましたアイデンティティーの問題はどうしても別のことというふうにされてしまいますが、先生同様、我々も同じ気持ちでございます。なので、この問題を語るに当たっては、アイデンティティーということはやはり別にはできない問題なのではないかなというふうに感じております。
あと、もう一つ、維新案のものに関しては、ダブルネームの問題というのがやはりございます。そこに関しましては、混乱を来すというような、招くというような、そういうおそれもございます。そこに関してはもう少し慎重に進めていっていただきたいなと思います。
あと、さらに、実際には、仮に旧姓の通称使用の届出を出した場合、戸籍上の姓が公的に使用できなくなってしまうという、そこの問題でございますが、そこに関しましても、かえって戸籍制度の存在意義が薄れてしまうのではないかというのは懸念するところでございます。
さらに、法制審案でありましたらば関連四法案の改正で済むことで、至ってシンプルなのではというふうに我々は認識しております。
そういう意味では、維新案の場合は、大量の法改正等や官民共にシステムの修復を要し、膨大なコストや時間がかかるのではないかというふうに懸念はしております。
是非よろしくお願いします。
○小原参考人 皆様方と相当程度重複しますので、端的に述べたいと思います。
まず、藤田議員が前提条件としてお話しされたように、個人のアイデンティティーの問題は、残念ながらこれは解消が難しいのではないかというふうに思っています。
その上で、御質問の不便については、相当程度解消できるような御努力をされたというふうに理解してございます。
その上で、前々回のこの委員会でも御議論があったと思いますけれども、法制審のいわゆるC案にかなり似ている案だと存じておりますので、C案が採用されなかった理由と、維新の皆様方が御提出された案との差、そしてC案が採用されなかった理由が解決しているのかどうかをこの委員会で議論する必要があるんじゃないかというふうに思います。
○藤田委員 ありがとうございます。
まず、法制審の件は、いろいろ御意見はあると思うんですが、あれは選択的夫婦別氏を導入するのであればどの制度がいいかという発問による回答でありますから、社会制度としてどうするかという発問であれば少し違う見解が出る可能性もあるというのは他の委員も指摘されていて、私はそれはフェアな見方だとまず思います。
その上で、私は決してアイデンティティーの問題を無視して進めようとは申し上げていません。その上で、要望の解像度を上げると、実務的な話といわゆるメンタリティーの、アイデンティティーの話があるというふうに分類していまして、その上で、実務上の問題というのは果たして我々の案であるんだろうかということを今日もお聞きしたんですが、お答えはなかったんですよね。
だから、つまり、それでもなお残る実務上のお困り事というのは私はないというふうに、それから、先日もこの委員会で私も答弁席に立っていろいろ質疑を受けましたが、基本的には存在しないだろうということで進めているわけなので、私は何を申し上げたかったかというと、フェアな議論をしたいなと思うんですね。旧姓使用を拡大又は法制化する我々の案は、いや、それでもお困り事はむちゃくちゃ残るんだよというのはうそなので、冷静な議論をした上で、制度論を闘わせたいと思うわけです。
その上で、アイデンティティーの問題は、これは恐らく、私らの案では、例えば免許証やマイナンバーカード、パスポートといった日頃持ち歩く証明書も含めて、銀行の口座もそうですけれども、全て単独使用ができるようになるということで、日常生活で触れる名前は、そのお名前になるわけです。
これは、ふだんの不便をすごく痛切に感じておられて、アイデンティティーを毀損されたり、さっきの実務的な話とアイデンティティーというのはリンクしていると思うんですよね。その上で、我々の案が一切アイデンティティーは解消されないんだというのもちょっと暴論かなと思っていて、私は大多数の方が解消され得るんじゃないかと、私もいろいろな方に話を聞いているんですが、思っています。それでもなお残る問題というのはあるというのは、それはそのとおりだと思うんですね。
その上で、個人の要望や希望、熱望されている案件をどこまで取り入れ、そして社会制度全体に取り入れるかというのは、合意形成の話だと思うんですね。全ての国民の希望を、例えばいきなり私が、今日、明日、名前を変えたい、誰にも文句を言われませんよね、なのでいいですかといったら、それは社会制度の中でやりましょうという、社会制度というのは合意形成が必要だと思うんですね。
その上で、最後に一問聞きたいと思います。
やはり、二択、三択問題というのは非常に大きいなと思って、これも私は、フェアに、解像度を高く、国民議論を喚起するためにやっていただきたいと思う方なんですが、今回、椎谷参考人からもありましたように、NHKが三択をやりました。政党にも二択で来るんですよね。私は、政党で二択で来たら、賛成と答えています。ただ、それをちゃんと解像度を上げてやると、いわゆる三択の真ん中なんですね。なので、私は三択の方が正しいと思うんですが。その上で、社会の制度として全体設計をやっているわけなんですが、合意形成をする上で、三択の真ん中、旧姓使用の法制化というのが一番多いんだという現実は、やはり賛成派も反対派も受け止めて冷静に議論すべきだと思うんですね。
その現実につきまして、次原参考人と小原参考人にお聞きしたいと思います。
○西村委員長 では、まず次原参考人、時間が限られていますので、簡潔にお願いできますか。
○次原参考人 釈迦に説法ではございますが、まさに世論調査というのは、設問の仕方によったり分母によりまして様々ございます。ただ、少なくとも、たくさんの御意見があるということは非常に大切なことでございます。
私どもの提案というのは、あくまでも、それぞれにある提案というのを、そこを選択する、まさにそれぞれの価値観というのをリスペクトして、それを選択できるような社会にしようというものでございますので、小さくとも様々な御意見というのをもう一度改めて検証していただいて、法案をまとめていただけたらなというふうに思っております。
よろしくお願いいたします。
○小原参考人 先ほども申し述べたとおりなので、簡潔に。
同氏か別氏かを問うているのではなくて、選択できるかどうかを問うていただいているというふうに考えてございますので、二択、三択かということではなくて、別氏も選択できます、同氏も選択できます、同氏の中の旧姓の通称使用も拡大します、これでよいのではないかというふうに考えてございます。
○藤田委員 いろいろ幅広くお答えいただきまして、ありがとうございます。
時間なので、終わります。
○西村委員長 次に、石井智恵さん。
○石井委員 国民民主党・無所属クラブの石井智恵です。
参考人の皆様には、貴重なお話を聞かせていただきまして、誠にありがとうございます。
今、選択的夫婦別姓を望んでいる方々、長年ずっと待ち続けている方々がいらっしゃいます。そして、私自身もその当事者の一人であります。今回は、選択的夫婦別姓を望んでいる方々のその思いをしっかりと受け止めて、この場に立たせていただいております。何とぞよろしくお願いいたします。
今、選択的夫婦別姓の議論については、民法において、まずは、結婚する際に夫婦のどちらかが改姓をしなければならないということが問題になっているわけです。私も戸籍上の名前を変えることはできません、相手に変える強要をすることもありません。夫婦どちらも、これまでの名前を使って婚姻をしたい、婚姻届を出したい、その制度を整えていくことが選択的夫婦別姓制度であるということであります。これが大前提ですね。
しかしながら、女性の九五%が改姓をしてきたということが今問題になっているということであります。これは、男女平等、ジェンダー平等の問題でもありますし、そしてまた、名前を変えるということは非常に大きな影響があります。社会生活においても非常に大きな影響があるということです。
今日は、労働界からは連合の小原参考人、そして経団連からは次原参考人が来ていただいております。このように、経済界から同じように声を上げている。ふだんは相対する方々と思いますけれども、こうやって、労働界からも経済界からも、これは何とかしなければならないということを、警笛を鳴らしているということは、日本社会にとってはゆゆしき事態だというふうに私は考えているわけです。特に、経済においてもそうです。この問題は、選択的夫婦別姓、氏名だけの問題ではなくて、日本社会全体の経済に対して大きな問題があるというふうにも思っております。
その上で、質問をさせていただきます。
まず、連合の小原参考人にお伺いいたします。
労働界を代表して、選択的夫婦別姓が導入できなくなった場合、様々なやはり不利益が生じてくるわけですね。やはり、労働界にとっても働く環境にとっても不利益が生じる、そして経済損失もある、そういったことも考えられると思いますけれども、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○小原参考人 御質問ありがとうございます。
先ほど発言させていただいた部分と重複しますけれども、制度が先送りされる場合、氏を変更することに伴うキャリアの分断、旧姓の通称使用が国際社会に通用しないという不便、不利益は解消されませんので、労働環境への影響、発言もありましたけれども、女性の活躍推進、ジェンダー平等が進まない要因になるというふうに考えてございます。
○石井委員 ありがとうございました。
先ほども、竹田参考人からも、また日本維新の会の方からも旧姓の使用拡大というお話がありましたけれども、やはりそれでは、私のように戸籍名を変えて結婚することができない人たちにとってみれば、婚姻ができない、こういったお困り事はあるわけですね。そうやって事実婚を選ばなければならない方々というのは何十万人というふうに今既にあるわけです。
その上で、やはり今後、今までは女性が改姓をしてきたということがありました。これは社会風潮の中で、女性が当たり前のように名前を変えなければならないというような社会風潮があったわけでありますが、これからの若い人たちがこれから結婚をするに当たって夫婦どちらか改姓しなければならないんですよというふうなことになったときに、若い方々が、じゃ、どっちの名前にするというふうに話し合ったときに、なかなか婚姻に結びついていかないということも、私は、これは少子化対策についても影響してくると思いますし、こういった問題がやはりどうしてもついてくると思うんですね。
連合では、一方が名字を改めないといけないということが婚姻の妨げになると思うかという調査をされていると思います。この中で、二十代の男性は、二〇・八%が妨げになるというふうに回答されている。これは非常に衝撃的な数字であるというふうに思います。この二〇%の男性、若い男性が、どちらかの姓を選ばないといけないことが婚姻の妨げになるんだというふうに思っている。
そういったことも、今の段階でこういった数字が出ているということはやはり私は問題であるというふうに思いますが、このことについて御見解をお伺いしたいと思います。
○小原参考人 ありがとうございます。
これも先ほどの発言と繰り返しになってしまって恐縮なんですけれども、今の御指摘のとおり、二十代男性の約五人に一人が今の制度は婚姻の妨げになるというふうに発言してございまして、特に、若い世代の婚姻率の低さ、低下が少子化の要因になっていくというのは否定できないというふうに考えてございますので、解消すべきであるというふうに考えてございます。
○石井委員 ありがとうございます。
選択的夫婦別姓を私が賛成したいというふうに申しますと、今論じるべきではない、そういったことも言われてきました。もっともっと時間をかけるべきだ、慎重であるべきだということも、ずっと言われ続けてきました。
しかしながら、これは本当にゆゆしき事態だと、やはり、少子化の問題にしてもそうですけれども、経済界からも労働界からもこうやって声が上がっているということは非常に重く受け止めていかなければならないというふうに思っております。
次に、次原参考人にお伺いしたいと思います。
今、やはり同じように、経済界からもこれは何とかしてほしいというお声をたくさん聞かれていると思いますけれども、実際に、具体的にどういう経済的な損失があるかということをお伺いさせていただきたいと思います。
○次原参考人 御質問ありがとうございます。
まさにおっしゃるとおり、本当にたくさん経済界も問題がございます。これだけに時間を費やしている暇はございません。数々ある問題も全て解決していかなくちゃいけません。ですが、だからといって、この問題をまたたなざらし、これは違うかというふうに考えております。
そこの重要性に関しましては冒頭の私の発言で御説明をさせてはいただきましたが、少しここで、実際に経済界が考えている不都合、我々みたいな働く女性が今もなお抱えている不都合というのを少しだけシェアをさせてください。
もちろん、この数年で通称使用の拡大は大幅に広がりました。でも、基本は、今はまだ通称の併記という形なんですね。これではやはり、法的なものではございませんので、数々の問題はございます。
ただ、どこも小さなものなんです。例えば、ミッションで海外に行きます。確かに、併記であることについて、今は括弧書きであったり、どうにか交渉すればそこをくぐり抜けることはできます。空港もできます。そして、セキュリティーも通ることもできます。でも、みんな必ず一度は止められるんです。もちろんスルーできるような国もございますけれども、中には、英語圏でないがために、この意味は何だというような足止めというのを食らうことは、もう本当に多くございます。
小さなことです。関係ない方から見ればそんなことと思うかもしれませんが、そういう小さな積み重ねが私たちの毎日なんですね。集団行動でいなくちゃいけない、クライアントと出かけなくちゃいけない、上司と移動しなくちゃいけない、その際の二、三分の足止めというのは、これは本人にすれば大きいことなんですね。
我々が申しております不都合というのは、いわゆるそういうことです。全て解決しただろうというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、一生懸命交渉すればどうにか解決は大抵できるものかもしれませんが、まだまだそのような小さな不便というのは多くあります。
それが小さく小さく積み重なった、その女性たちの集団というのが今の経済界なんですね。そういう意味で、経団連も、企業としてもその不都合というのをきちんと改善をしていく必要があるというふうに考えております。
また、先ほども冒頭でもお話ししましたが、実際に企業としては、名寄せの問題も含めて、プライバシーの情報管理も含めて、決して今の状況というのは労務としては簡単なものではございません。そこを解消するためにも選択的夫婦別姓ということを提言させていただいたというのが背景でございます。
よろしくお願いします。
○石井委員 ありがとうございました。
まさに、これが現場の声なんです。当事者の声なんです。この当事者の声がずっと排除されてきたということが、私はこれが日本の政治の大きな問題であるというふうに思っています。
女性が九五%改姓をし、その中で様々大変な思いをされてきました。言い換えれば、九五%の男性の方々はこの手続をした経験がないということになるわけです。こうやってこの国会という場で女性の声をしっかりと届けていく。
そして、今まさに、今ここにいらっしゃる皆さん、自分事と思って考えてみていただきたいんです。海外に行ったときに何度も何度も呼び止められる、離婚届を出さないともう解消ができない。こういったことをずっと耐え忍んでやってきて、ようやく今、何とか選択的夫婦別姓、自分たちの戸籍の名前で結婚ができる、このことが、まずは現場の声として、私は、国会議員として、しっかりとその当事者の声を受けて、それをどう解決していくのか、これが国会じゃないかというふうに思っているわけです。
私は新人議員ですけれども、今の国会、当事者の声、現場の声、全く届いていないというふうに感じております。しっかりとこの現場の声を皆さんお聞きいただいて、考えていただきたいというふうに思います。
そして、最後に、私は戸籍名を変えずに婚姻をしていきたいというふうに考えている一人でありますが、今は結婚することができません。事実婚しか選ぶことはできません。今、実際に事実婚で非常に困っている方がたくさんいらっしゃるわけですね。
例えば、配偶者の法定の相続人になれないであったりとか、また、別居の場合死亡届が出せないであったりとか、夫婦の名義で住宅ローンも組めない、そういった問題、様々あるわけです。
そして、人生百年時代、やはりもう一回、再婚したいと思っている方々もたくさん増えてくるというふうに思います。
私はこれまで角田智恵という名前で政治家をやっていましたが、いろいろな理由で旧姓に戻して石井智恵になりました。その際、子供と分籍をして、子供たちとそれぞれ籍を分けて、そして旧姓を戻すことができました。私、今はたった一人の戸籍なんです。個人の戸籍なんです。でも、今は結婚したいと思っているわけなんです。そうやって夫婦として戸籍を届けたい、そういうふうに考えている方がたくさんいらっしゃると思います。
最後に、布柴参考人にお聞きしたいと思います。
これから、やはり、高齢になっても結婚したいという方がたくさん出てくると思うんですね。そういった方々はやはりこの選択的夫婦別姓は必要だというふうに考えているわけですけれども、どのようにお考えになっていらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか。
○布柴参考人 大変パワフルなお言葉に聞き入っていましたので、ちょっと全く心の準備ができていませんでしたけれども。
私の資料にもありますけれども、今、男女の寿命というのは非常に延びてきています。そして、平均寿命ももちろん延びてきているんですが、最も亡くなりやすい死亡最頻値というのは、男性は八十八歳、そして女性は九十三歳といったデータが出ております。
となりますと、結婚は、もしかしたら離婚するかもしれない、あるいはパートナーに先立たれるかもしれない、あるいは自立した子供の方がもしかしたら先に亡くなってしまうかもしれない。本当に、まだ私たちが経験したことのないような老後が待っていると思います。
そういったときに、もう一度、第二の人生を歩みたいということで、今、パートナーを探している高齢者が非常に増えてきているんですね。ただ、そういったときに、籍を入れると、また遺産相続が云々とか、いろいろなことがあって、なかなか思いどおりにいかない。実際はやはり事実婚を選ばれている方が圧倒的に多いかなというふうに思います。
ですので、もちろん若い人たちの問題でもあるんですけれども、こういった、どんどん寿命が延びてきた中で、やはり高齢者のことも念頭に置いて、高齢者も、もう一度結婚したいという方にはそういった道が開けるような制度になっていくと、なおのこといいのではないかというふうに思いました。
以上でございます。
○西村委員長 石井さん、時間ですので、御協力お願いします。
○石井委員 本当に、貴重な御意見、ありがとうございました。是非、この選択的夫婦別姓の導入に向けて今後も働きたいと思いますので、また引き続きよろしくお願いします。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、平林晃さん。
○平林委員 公明党、平林晃と申します。
本日は、五人の参考人の皆様におかれましては、御多忙の中、国会までわざわざ足をお運びいただき、貴重な御意見を頂戴をいたしましたことを心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。
その内容に基づきまして、私の方から質問をさせていただければと思います。若干ちょっと重複する部分も出てくるかもしれませんけれども、御容赦いただけたらと思います。
まず、冒頭お聞きしようとしていたことは、まさに重複してしまったので、なしにしますけれども、現状の通称使用制度においてどういった御不便があるのかということ、この部分を小原参考人、次原参考人、布柴参考人にお聞きしようかなと思っていたんですけれども、先ほどからさんざん、次原参考人も、ミクロのこととか、お話をしていただいておりまして、何というんですかね、私も男性で、どっちかというと社会的強者というような立場にいる中で、感じてこなかったことというのが本当にやはりあるのかなということを様々学ばせていただいているなということ。妻と話をしましても、私の妻は、改姓してもらっていますので、やはりそのときの様々な苦労みたいなものも話を聞かせていただいて、ああ、そうだったのかと。知らないわけですね。そういうこともございまして、いろいろと考えるところがあるなというふうに思っているところでございます。
その上で、その上でというか、若干話が変わりますけれども、どっちかというと、どっちかというとというか、選択的夫婦別氏制度に反対をしておられる椎谷参考人、また竹田参考人に、ちょっとディスカッションをさせていただけたらうれしいなというふうに思うわけですけれども。
どうしてもやはり、私自身の考え方としては、現行制度は夫婦が強制的に同氏となります。夫若しくは妻どちらかが旧姓を変えなくてはいけないという状況になって、通称使用制度が拡張してきているというのは、それは当然あるわけですけれども、令和五年という極めて新しい統計においても、婚姻の九四・五%は夫の氏を称することとしている、これも本当に現実としてあるということでございます。
地元紙なので、若干ちょっと地域的な偏りがあるかもしれませんけれども、新聞に掲載されていた声、少しだけちょっと共有をさせていただきますと、自分の氏が変わる違和感をパートナーにぶつけたけれども、しようがないねと言われて悲しかった、娘が生まれて、この子にも違和感をのみ込ませてしまうかもしれないと考えると、私たちの時代で別姓が選べるようにしておかなければならないな、このように三十二歳の女性の方が言っておられるという声があったり、あるいは、パートナーは自分が変えると言ってくれたんだけれども、パートナーの御両親が妻が変えるのが当たり前と反対されて、関係性を悪くしたくないので強く言えずに、仕方なく婚姻届を出す予定だ、これも女性、三十一歳の方です。結婚を見据えていた男性に氏を変えたくないと伝えたが、理解してもらえずに交際を終了した、これは女性、二十九歳の方だそうです。
こんな話が載って、様々な状況で、女性が受け入れたり、それができなければ結婚を諦める、そんな様子が伝わってくるということでございます。
また、ちょっと私にとってはショッキングなこともこの記事には書いてあったんですけれども、二十五歳の女性はくじ引で姓を決めた、福山の方は、三十三歳の男性ですけれども、じゃんけんで決めた、こういうことも書いてあって、ちょっと驚いてしまったところがございます。自分がこれから生きていく氏をこういうことで決めるというのは、私自身にとってはちょっと受け入れ難いなということでございます。
こういった、どうしても不利益を被っている人に対する選択の自由があってもいいんじゃないかな、私はこう考えるんですけれども、二人の先生方の御意見、ちょっとここは議論をさせていただきたいと思いまして、お聞きできればと思います。よろしくお願いいたします。
○椎谷参考人 議論というか、私がどう考えているかということですね。もっと具体的に聞いてもらった方がいいんですけれどもね。まあ、いいですわ。
その九五%の話があるんですが、実は、少しずつパーセントが変わってきているんですね。例えば、さっき出ました、子供の姓が違うことによって子供が差別されるんだったら、それはそういう世の中がおかしいんだと。そうかもしれません。子供の姓が違うことによって子供が差別されることがあるとすれば世の中がおかしいんだということであれば、例えば、夫婦のところ、これは、はっきり言って選択的同姓制度ですから、ですよね。俗に、私が名づけたんですけれども、そういう言い方もあるわけじゃないですか。(発言する者あり)
○西村委員長 御静粛にお願いします。
○椎谷参考人 だから、私は、友人はいっぱいいます、男の方が奥さんの方の姓に変えるということもあるわけですよ。それが当たり前になってほしいなという個人的気持ちはありますね、あります。それは、もしかしたら、いろいろなしがらみが強過ぎるのかもしれません。だけれども、そのための民法改正であったわけですから、男の方がもっと変えれば、別に養子に行くわけでも何でもないんですよ。養子に行くのと勘違いされているのもあるんですね。それも一つ思っています。
それから、やはり考えなくちゃいけないのは、子供の権利だと思うんですよ。子供の姓の問題。さっきどなたかが、そういう、子供が差別されているとか問題があると聞いたことがないと、海外では。だけれども、果たしてそれで国民が、一般の人は納得するでしょうかね。
例えば、令和三年の内閣府の世論調査で見ますと、六九%の人が、親子別姓になることによって子供に何らかの悪い影響があると言ったようで、それはやはり素直な気持ちだと思うんですよ。それをもっと、選択的夫婦別姓をおっしゃるのであれば、もっとそれが分かるような形で伝えてもらわないと、今の議論は、あなたたちが言っているのは時代遅れだ、さっき私が言いましたけれども、周回遅れだみたいな、早くやれという議論ばかりが先行しているので、ちょっと、私はすごく違和感を感じるんですよ。
例えば、これは言っちゃいけない、タブーかもしれませんけれども、公明党さんは、産経新聞の世論調査ですよ、支持政党別に見たら、公明党さんの支持率は、ほぼ、四五と四八ぐらいで同じで、通称使用の法制化でいいという人がほぼ拮抗しているんですよ。ところが、国会においては、まあ自民党も若干割れていますけれども、どうして公明党さんはこんなに一枚岩になれるのかな、非常に、失礼な言い方かもしれませんけれども、不思議でならないんですけれどもね。これは質問じゃありませんから、答えなくていいです。
○竹田参考人 やはり九五%近くが男性の姓を名のるというのは、私はもっと変化があってもいいとは思っております。
私のすごく近い親戚で、男なんですけれども、完全に主夫をしている者がいます。炊事、洗濯、教育、全て男子が担っているんですが、とてもいい家庭だと思います。なので、女性が積極的に社会に出る以上、男性も積極的に家を任せろと言う人が同じぐらい出てくるとバランスがよくなるのかなと思います。
ただし、これは男女関係なしにちょっとイメージしてほしいんですけれども、この人と結婚したい、でも、旧姓を使い続けたい、仕事のキャリアもそのまま続けたい、子供と同じ姓がいい。男女全員がそれを一歩も譲らなかったら、誰も結婚できないんですね。
これは、自由があるわけですよ。本当に結婚したいと思ったら、本来自分の旧姓を守りたいけれども、この人と結婚できるんだったら姓を変えてもいいと思うのか、若しくは、自己実現のために、姓を変えるんだったらこの人との結婚をやめようと思うのか、これも自由です。
そして、同姓だとしても、どっちの姓を名のるのかは自由ですよ。本当に自分の思いがあるんだったら、相手にぶつければいい。それを理解してくれる人なのか、理解してくれない人なのか。少なくとも、今は同姓ですけれども、選択的同姓ですからね。なので、私はバランスが取れていると思っています。
そして、少子化の関係でいえば、先ほど申し上げたとおり、結婚というのは非常に厳しくて、一個でも基本事項が合意しないと成立しないんですね。例えば、どこに住む、仕事をどうする。例えば、子供が欲しい人と欲しくない人は結婚できないですよ。その上で、同姓か別姓かということで選択肢が増えるということ。これは、親御さんだって、別姓を認める相手を探してこいとか言い始めたら更に混乱。
ですから、確かに結婚しやすくなるという半面があったとしても、それと同等若しくはそれ以上に結婚を阻害する要素にもなるという私が述べたことに関しては、これまで誰も批判、反論はしていないと思います。
不便があるという話ですけれども、維新案で具体的な不便があるかということで三人の方が御説明されましたけれども、一人も具体的な案をお示しになっていない。すなわち、現状のままではまだ問題があるのは分かります、ただし、維新案に関して、アイデンティティーという部分を除いて具体的な問題があるということを示した方は一人もいらっしゃらないと思います。
○平林委員 ありがとうございます。
世の中が変わってきている、また変わっていくべきであるという思いを共有させていただきましたが、ただ、やはりこのしがらみというか世の中の難しさ、それによって受けている女性の不利益というものも考えていくべきことはあるのではないかな、このように考えているところであります。
また、決して公明党はタブーはございませんので、全然言っていただいて構いません。サブチャンネルも今やっていまして、タブーに挑戦しているというところもございます。この法案に関しての支持率に関しましては我々も認識をしているところでございます。その上で、我々としては、今の世の中を考えたときに、将来の先を考えたときにこれは進めるべきである、こう思ってこのように進めさせていただいているということでございまして、その点は明快にさせていただきたいというふうに思います。
続きまして、布柴参考人に、ちょっと時間が大分なくなってしまったんですけれども、先ほどからも話がいろいろ出ていますけれども、海外の事例ですね。
例えば、竹田参考人が、コストであるとか混乱であるとかそういったことを御指摘されました。その点に関しまして海外がどうであるのか、また、子供の氏の決め方、この部分に関しても海外はどうであるのか、この点について教えていただきたいと思います。
○布柴参考人 ありがとうございます。
選択的夫婦別姓を、行っているのは日本だけで、海外は先んじてもう進んでおりますけれども、実は中身をよく見るとかなり違います。ですので、いろいろなパターンがあるということを知っておいていただけるといいのかと思います。
例えば、イギリスとかは、お父さん、お母さんが本当に自由に名前がつけられますし、十八歳からは本人の意思で親のつけた名前とは違う名前に変更できるといった制度にもなっています。スイスとかでは、婚姻時に父若しくは母の姓に決めるけれども、一年以内に他の姓に変えられるケースもございます。デンマークとかの場合は、出生後六か月以内にもし決められなかった場合はお母さんの姓になるというふうな決め方をしているところもございます。
あるいは、同じ両親から生まれた複数子の場合は、第一子で決めた姓に統一している国というのは、フランスとかドイツとかベルギーとかスペインとかスウェーデン等がございます。
長い間一人っ子政策をしてきた中国では、結婚して姓がどんどんなくなっちゃって困ることになって、ついに複氏制度ですね、お父さんとお母さんの名前を合体した名字をつけようといった動きもございます。
○平林委員 ありがとうございます。
続きましてなんですけれども、もう時間がなくなってまいりました、最後、一点だけ。
先ほどから出ております親と氏が異なる子への悪影響を懸念する声に関しまして、これはなかなか全部が全部、証明するのは難しいので、例えば、布柴参考人がこれまでいろいろな皆様と関係をしてこられた、そういうミクロな例でもいいので、こういう例がある、参考になる部分があるということがありましたら、御共有いただけたらと思いますけれども、いかがでございましょうか。
○布柴参考人 ありがとうございます。
私は家族支援をしているんですが、最初は子供の支援をしていたんですけれども、いろいろな子供の悩みを聞いていくと、子供が幸せな人生を選んでいくためには親の支援は欠かせないということが分かりました。子供は、親が幸せに暮らしているのかどうなのかというのを非常によく見ているんですね。
中には、自分は子供を持ちたくないと。何でそんなふうに思うのと聞くと、その子は、だって、自分は親の重荷になってきた、お母さんがとても苦労した、そんな子供は自分はとても持てる自信がないとか、そういった答えを聞くことがあります。
要は、この制度に関しましても、やはりアイデンティティークライシスというのはとても大きな問題ですので、やはり親が自信を持って働いている姿、生きている姿というのを子供に見せること自体が子供の人権を守っていくことになるというふうに思っています。
それと、選択、選択という言葉を言っていますが、心理学の中でも、選択したことは自分で責任を取ることができるようになるんですね。たとえ自分が選んだことで困難が生じても、それは自分が選択したことだからということで責任が取れるようになります。主体的に変わっていきます。確実に、与えられたパッシブなハピネスよりも、自分が選んで獲得した幸せの方がより人の心を幸せにする、これはもう長年カウンセリングをしていて感じることです。
以上でございます。
○平林委員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。
○西村委員長 次に、本村伸子さん。
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
参考人の皆様、今日は、お忙しい中お時間を取っていただき、こうして御発言いただきまして、本当にありがとうございます。
この委員会、開かれているわけですけれども、毎週、国会の議員会館の前では、選択的夫婦別姓を求める皆さんが声を上げ続けておられます。先週ですけれども、ある若い方からこのようなお話がありました。結婚したいと思える好きな人に出会うことができました、でも、どうしても名字を変えたくなくて、相手にも変えることを強制したくない、だから結婚することができないでいます、私の思いを尊重してもらえないでしょうかというお話でした。
結婚したいと思う、そういう好きな人に出会うということは、私にとっては奇跡のようなことだというふうに思います。そういう方と出会って、その方と幸せに結婚ができるようにということを応援することが政治として必要なのだというふうに私は感じております。
別姓を得られなくて結婚できない方々がいらっしゃいます、現実に。選択的夫婦別姓がなくて具体的に誰が何に困っているのか分からないという方も、様々なSNSのコメントですとか、いろいろなものを読みますと、そういう方もおられます。
しかし、裁判で、第三次訴訟も行われておりますけれども、裁判で訴えておられる方々、ビジネスパーソン、そして学者、研究者の方々、各種アンケートの声、様々示されているというふうに思うんです。でも、見えないのか、見えなくさせられているのか、あるいは、小さなことだと捉えられてしまっているのではないかというふうに思います。
今日も様々言っていただいたんですけれども、いま一度、具体的に誰が何に困っているのか、困っていることを見えなくさせられているのは何かという点、小原参考人、次原参考人、布柴参考人に伺いたいというふうに思います。
○小原参考人 御質問ありがとうございます。
具体的にというのはなかなか難しいんですけれども、まさにおっしゃったとおり、困っておられる方がいるということと、困っていることについて分からない方がいるというのは、まさにそれが事実でありまして、困っていることが分からない人は、どうぞそのまま同氏を選択してください。困っている人は別氏を選択できるようにすればいい。事例じゃなくて申し訳ないんですけれども、そういうことがまさにこの制度に求められているというふうに思いますし、政治に求められているというふうに考えます。
○次原参考人 熱い御質問、ありがとうございます。
経団連に関しましては、困っている、不便ということに関しては、様々な細かい意見というのが出ております。実際に、ビジネスネームでない本名を周囲が知らないがために、スタッフが予約してくれた氏名とカード決済時の氏名が違う、そういうこともございますし、銀行口座とクレジットカードなど、戸籍上の氏名の変更の手続が非常に煩雑になるということもございます。又は、先ほども申しましたが、やはりビジネスネームと企業で使います戸籍名が違うがために、プライバシーに関わることで嫌な思いをされていらっしゃる方もおります。
キャリアの影響に関しては、随分使いやすくなられたとはいいながらも、先ほども申しましたが、一々やはり、説明をすれば御理解はいただけますけれども、絶えず絶えずそういう細かい説明をしないと御理解がいただけないというような、そういうものの連続でございます。
ちょっと細か過ぎるものでございますので、お手元の資料にもあるかとも思いますので、是非御参考にしていただけたらと思います。
ありがとうございます。
○布柴参考人 次原参考人がおっしゃってくださいましたように、小さな不便な体験が、実はボディーブローのように利いて、その人のアイデンティティーを揺るがしていっています。
そうこうしているうちに、麻痺してくるんですね。そうしたら、自分が困難に向かい合っていても、こういうものなんだということで、怒ること、おかしいと思うことすらも分からなくなってくることがあります。それはとてもゆゆしき事態だというふうに思っているんですね。本当は、おかしい、何でこういうふうにしなくてはいけないんだという健康な主張をしていいところまで、自分が悪いからかもしれない、でも人生はこんなものなんだという諦めの中で、そういうふうになっていってしまっている可能性があると思います。
ですから、困っているのが分からないという方がいらっしゃるということ自体が、そういうふうにさせた世の中というのを私はとてもとても残念に思います。
以上でございます。
○本村委員 ありがとうございます。
先ほど来お話がありましたけれども、アイデンティティーの問題です。
私も様々な皆さんのお声をお伺いするんですけれども、新日本婦人の会の皆様のアンケートの中には、結婚して名字を変えて自分が自分でなくなった気がして体調を崩してしまったという方も、前の質問でも御紹介をしたんですけれども、実際におられます。
名字を変えることによってアイデンティティーの喪失を感じるということについて、大げさだという声がありますけれども、アイデンティティーの大切さについて、是非三人の方にお伺いをしたいと思います。小原参考人、次原参考人、布柴参考人に是非伺いたいと思います。
○小原参考人 また繰り返しになってしまっているんですけれども、我々の資料の中の六ページ目に、夫婦のいずれか一方が氏を改めないことが婚姻の妨げになるかの、なぜなるのか、自由記述欄がございます。そこの中に、女性ばかり変えないといけない現状は理不尽だとか、一方だけが手続に追われるのは納得がいかないからという手続に加えて、今の自分の名字が気に入っている、自分の名前に誇りがある、別な人になったように感じるというアイデンティティーの課題を挙げている方がございます。
ということで、アイデンティティーの問題は、お分かりにならない方にはお分かりにならないかと思いますけれども、大事な人にとっては大事な問題で、先ほどお話しになっていたような、裁判に訴えて人生を懸けて改善しようとしている方もいらっしゃるということを付記したいと思います。
以上です。
○次原参考人 アイデンティティーというのは、本当に人それぞれでございます。椎谷先生にも竹田先生にもアイデンティティーはございますし、それぞれだろうと思います。そのどれもが自分にとって物すごく大切なものです。氏名というのはまさに人格を表すもので、私の場合もそれがアイデンティティーとして生きてまいりました。
この議論をずっと続けてきても、きっと誰も同じ答えはないと思うんですね。だからこそ、選択的である、これが何よりも大切で、今日、参考人の方の皆様の御意見もお聞きしましたが、皆様も、皆様がお持ちになられる価値観だとも思いますし、私どもの価値観もございます。その価値観をとにかく、強要するのではなくて、それを受け入れる、そんな社会をつくろうよという、それに尽きるのではないかなというふうに思います。
ありがとうございます。
○布柴参考人 アイデンティティーは、自分とは何者であるかという感覚、意識、理解のことです。これはまさに、簡単に言うと、自分らしさというのを自分でしっかりと感じられる心、そして行動できる力になってきます。ですので、アイデンティティーがないと今の世の中は生きていけません。
そして、ちょっと昔の歴史を振り返ると、日本人というのは、アイデンティティーを持たなくても、ぼんやりとコミュニティーの中で過ごせてきたという歴史もあるんじゃないかなというふうに思います。その中の一つで、家制度で同じ氏を保つことによって、その中で、自分はこうですよと言わなくても、家というそのものに守られてきたかもしれません。
けれども、今は世の中が変わっています。今、世界でも本当に、一緒に仕事をしたりとか、グローバル社会の中で、いろいろな人たちとコミュニケーションを取りながら、日本だけでは経済社会は成り立っておりませんので、そういった時代にあって、今、アイデンティティーがないと生きていくことができません。
そして、そのアイデンティティーをクリアにするためにも、選択するというのが、実は、選択をするということは簡単じゃないですよ、いっぱい話し合わなくちゃいけないし、いっぱい違う価値観の人と話し合って、それでも、価値観が違っても一緒にやっていける力をつくっていくというのが本当の意味での私はアイデンティティーであるというふうに思っています。
以上です。
○本村委員 続いて、また布柴参考人にお伺いしたいんですけれども、自己選択をできることはその人の幸福度を高めるという結果が研究で証明されているということで、インタビューにもお答えになっていると思うんですけれども、そのことについて詳しく教えていただければというふうに思っております。
○布柴参考人 ありがとうございます。話し出すと、授業一こま分、かかります。
これは、私が長年カウンセリングをしていて、悩んでいた人が、自分は本当はこう思っているんだ、こうなんだということに気づいて、じゃ、今の目の前にある問題をどう乗り越えていったらいいのかということを自己選択するのをサポートしているのが私のお仕事なんですね。そして、本当にやはり、自己選択された方というのは、悩む前の御自身よりもうんと成長をされていっています。
私は、四十年の中で、自己選択というのは本当に大事なんだということは分かっているんですが、これは、実証研究で、二万人の調査で、八木先生たちが調査をした結果、学歴とか所得よりも自己決定権の方が実はその人の幸せ感に大きく影響を与えるという結果が出ました。
以上です。
○本村委員 ありがとうございます。
続きまして、選択的夫婦別姓と子供の権利に関してですけれども、子供の権利が侵害されるのではないかという言説に関して、小原参考人、次原参考人、布柴参考人に御意見を伺いたいと思います。
○小原参考人 ありがとうございます。
冒頭の発言でも申し上げましたけれども、そのような発言そのものが、現時点で幸せに暮らしている家族、それから御夫婦、子供たちに対して妙なレッテルを貼るというか、そういうことになりますので、現場からは慎んでほしいという意見があるというふうに、ちょっと逆説的な答弁になりますけれども、あるんだということを御紹介させていただきたいと思います。
○次原参考人 ありがとうございます。
残念ながら、今の日本では三組に一組が離婚する、そういう現状でございます。冒頭から何度も申しておりますけれども、さらに、国際結婚ですとか再婚、事実婚というふうにいいますと、本当に、子供と親の名前が違うというのはもう当たり前なんですね、当たり前の世の中になってきております。そういうことも含め、全てそれが当たり前の世の中だというふうにやはりお子さんたちにしっかり教育をすることにより、そこの問題は解消されていくのではないかというふうに考えております。
とにかく、家族の一体感というのは、姓、そういうものの一致ということだけではなく、日々の関係性や信頼性に基づくものでございます。姓が異なるということが理由で家族のきずながなくなるということは決してないというふうに考えております。
○布柴参考人 私の周りでは、親が別姓をしているからといって、子供が精神的に何か問題を抱えるとか、あるいは、子供自身が、何で私だけこんな姓なのなんて文句を言われたというのは、聞いたことがないです。当然のように受け止めている。そして、やはりそういった親御さんというのはしっかり説明しているんですね。そして、お父さん、お母さんはこうこうこうだからこういうふうにしているんだよということを言ったら、それを当然のように受け止めております。
私の友人も言っていたんですけれども、その子供の友達に、うちのお母さんはね、子供の頃の名前を使っているんだよと、何かすごく明るく説明していたというような話もございます。
ですので、これは、親御さんがしっかりと説明をする、そして、そのことに関してやはり自信を持って。それで、よく話していらっしゃいます、本当によく話していらっしゃいます。私は、別姓を選んでいる御家庭、親子関係というのは非常によく、会話がいっぱいあるな、何かとても楽しそうだなというふうに思う機会が大変多くあります。
以上でございます。
○本村委員 貴重な御意見を本当にありがとうございました。終わらせていただきます。
発言していただけなかった方、大変申し訳ございませんが、本当にありがとうございました。
○西村委員長 次に、吉川里奈さん。
○吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。どうぞよろしくお願いいたします。
まずは、参考人の皆様、本日は御多忙の中、こちらに来ていただいたこと、心から感謝申し上げます。
先ほど新人議員として現場の声を訴えるというような発言がございましたが、私も新人議員として一言訴えたいことがございます。
私は、結婚して三人の子供がおりますが、結婚したときに夫の姓を押しつけられたと感じたことは全くなく、そもそも違和感を感じたこともなく、自然に夫の姓を名のるということを受け止めてきた人間です。結婚した九五%、九六%の女性が夫の姓を押しつけられているという発言については、非常に、どういう考え方なのかなと私は懸念を抱きました。
そもそも、私は、夫と姓を一つにする、家族になった喜びを感じることが普通の国民の感覚である、その立場として、今日質問をさせていただきたいと思います。
夫婦別姓が導入されれば、例えば、先祖代々○○家という家の墓の継承が曖昧になったり、地域の氏子集団など、家の単位で参加してきた祭祀、共同体というものの意味が薄れることなど、夫婦別姓を前提とした社会になっていくことは様々な影響があるのではないかと心配をしています。
ここで、椎谷参考人、竹田参考人に、そういった見えにくい文化的な断絶についてどのような懸念をお持ちか、お考えをお聞かせください。
○椎谷参考人 見えない文化的な断絶ということで、非常に高尚な質問だったので、ちょっと私が答えられるかどうか分かりませんけれども、断絶といいますか、ちょっといいですか、私の持論を申し上げて。
アイデンティティーの問題は、アイデンティティーと言われると、それを否定することは全くできないし、私も、椎谷さんも持っていますよねとどなたかからさっきつけ足しで聞かれましたけれども、それは持っているに決まっていますよ。
ただ、では、夫婦別姓の夫婦の間に生まれた子供のアイデンティティーはどうやって育っていくのかという問題が私は非常に気になるんですね。その前に、では、夫婦別姓を選んだ人のアイデンティティーはどこから生まれたんですかと聞くと、それは、自分の家族、同姓の家族、同姓の子供たちと一緒に育んできて、生まれてきた。だから、その辺がちょっと余り整理されていないで、言葉だけがアイデンティティー、アイデンティティーと言われている気がして、ちょっと私は合点がいかないところがあるんですね。
そういう意味では、それは文化的な側面にもつながると思うんですけれども、文化的といいますか、日本人はちっちゃな子供をちゃんづけしますよね、君づけします。外国人はそんなことはしません。やはり子供を大事に大事にしてきたんですよ、日本人は。そういう意味では、選択的夫婦別姓なりこの問題を考えるときには、子供をどうするかという視点は絶対忘れてはいけないと思うんですね。
済みません、ちょっとお答えになっていないかもしれませんけれども、長くなるので、終わります。
○竹田参考人 選択的夫婦別姓を進めていきますと、従来の家という概念はどんどんなくなっていくと言えると思います。例えば、お墓の継承。何々家の墓という概念はなくなりますので、自分がどこの家に所属しているかという概念もなくなっていきます。
もちろん、別姓の家族がいるという御家庭もあるでしょう。その人たちを不幸だと決めつけるつもりもありません。幸せな人もいるでしょう。同姓の家族でも不幸な人はたくさんいます。
ただ、今後、日本の家族がみんな、家族としての一体感を一億二千万人がどんどん失っていくということになったらどうでしょうか。例えば、国号のない国があるでしょうか。私たちの国の名前はありません、若しくは、私たちの生まれ故郷の地名はありません。では、例えば、学校の名前がない、そういうところのチームが甲子園で、どうでしょうか、学校としての一体感とか、何か背負うものはないですよね。なので、名前がある、だって、名前にこだわっているからこそ、選択的夫婦別姓なんですよね。
ところが、選択的夫婦別姓を進めていきますと、今度は家の名前というものがなくなっていくという問題があるわけなんです。それがどういう影響が表れるのか、これが予測できない部分が大きいから怖いわけです。できれば、家族制度というのは、本当に困っている人がいれば小幅修正によって手当てしつつ、大きな制度はできるだけ変えずに進めていくということです。
ですから、利益とリスクのバランスを考えていただいたときに、利益利益といいますけれども、では、維新案で具体的にどんなお困り事があるのかという話がさっきから何度もあります。
私は、お三方は具体的なことは一つも言わなかったと言った。そうしたら、次の共産党でしたか、同じことを聞いたんですよ。そうしたら、またお三方とも、具体的なことは誰もおっしゃらなかった。つまり、小原さんは、具体的には申し上げられないと言った。次原さんは、一個だけ言いましたね。カード名義と言いましたけれども、今、カードは旧姓のまま作れますから、これはもう全く意味のない話ですね。ですから、結局は、小さな不便はあると言いますけれども、具体的には何もないわけです。布柴さんもおっしゃったわけですね。ですから、具体的に出てこないわけですよ。
具体的にというと、私は全部メモしているんですけれども、変更の手続が煩雑だと言いますけれども、それは、結婚したらいろいろな手続をするわけですから、そんなのは煩雑に決まっているわけですよね。
そういうわけですから、旧姓の通称使用が拡大してきているということ、そして、それを法制化するということも今議論されているわけですから、それに対して払うべき代償というのが余りにも大きいということを申し上げているわけであります。
これだけ申し上げたいんですけれども、アイデンティティー、アイデンティティーといいますけれども、マーフィーの法則というのは皆様は御存じでしょうか。人生というものは、こうなってほしくない方向に必ず行く。つまり、小さいときから、この学校に行きたい、こんな職業に就きたい、政治家になりたい、いろいろあるでしょう。それをかなえていく人もいれば、一部かなえる人もいる。では、例えばこの学校に入りたい、それが自分の生きる道なんだというアイデンティティーを持っている人全員に行きたい学校に行かせるんでしょうか。全員に行きたい会社に行かせるんでしょうか。思ったとおりにいかないのもまた人生なんですね。
ですから、アイデンティティーで本当に困っている人がいたとしたら手当てすべきですけれども、家族制度を変えてまでやる必要があるのか。利益とコストのバランスを考えていただきたいと思います。
○吉川(里)委員 熱く語っていただいて、ありがとうございます。
引き続き竹田先生にお聞きしたいんですけれども、我が国の皇室制度は、長く家を単位とした継承を重んじてきました。戸籍制度や婚姻制度の根幹が変われば、皇室の継承やその安定性に影響が及ぶのではないかという心配の声を聞いています。
この点についてどのようにお考えか、お聞かせください。
○竹田参考人 選択的夫婦別姓を賛成する方たちは、ほぼ例外なく、女性天皇、女系天皇を主張します。(発言する者あり)
○西村委員長 御静粛にお願いします。
○竹田参考人 その理由を聞いてみますと、大体同じようなことがあろうかと思います。
もし皇室で選択的夫婦別姓というものが具体的に選択されたらどうなるのかということですよね。それから、例えばLGBTにしても、とことん尊重するということになったら、女性なのに私は内面が男だ、将来そういう皇族が誕生したときに、では、皇位継承権はどうなるのかとか、いろいろなことがあるわけなんです。ですから、皇室に選択的夫婦別姓若しくはLGBTなどを持ち込んでいけば、それは混乱することになりますね。
なので、そういう意図があっておっしゃっているかどうかは分かりませんけれども、大抵は、選択的夫婦別姓に賛成する方は、皇室に対して、女性天皇、女系天皇を述べる方が多いという感触であります。
○吉川(里)委員 ありがとうございます。
私も、そして我が党も男系の皇室の維持が必要であると思っておりますので、お聞きをさせていただきました。(発言する者あり)静かにしていただいていいですか。
○西村委員長 御静粛にお願いいたします。
○吉川(里)委員 次に、次原参考人に伺います。
現在、各地方議会からは八十七件の夫婦別姓を求める意見書が国に提出されており、その多くに、旧姓使用の不便を訴える貴団体の過去の主張が引用されております。
しかし、貴団体は、最近になって、旧姓使用に関する不便の多くが既に解消されていたにもかかわらず、情報の更新が不十分であったことを認め、インターネット上のニュースでも謝罪がありました。
こういった貴団体の発信内容は、地方議会や政策判断に与える影響の大きさを踏まえると、過去の主張に誤解や過度な一般化がなかったか、いま一度御検討いただきたく思っておるところがあります。
また、先ほど椎谷先生のお話にもありましたが、旧姓と家族姓を使うということで、このままでいいとおっしゃられている、私もそうなんですけれども、サイレントマジョリティーの声にも丁寧に耳を傾けていただきたいと思っております。
今後も地方議会や報道の場で貴団体の見解が引用される可能性を踏まえ、誤解を招かない正確な情報発信と整理、そして、夫婦同姓を望む声も含めた多様な立場を反映した提言作りが求められると考えますが、この点についての御所見を伺います。
○次原参考人 御意見ありがとうございます。
まさに先生の御意見、そのためにも更新しましたのが、今回我々が併記したものでございます。
お手元の資料にもあると思いますので、そこは御覧になっていただきたいのですが、少しだけちょっとつけ加えさせていただきますと、いろいろと誤解をされているのではなかったかなというふうに思っております。
もちろん、政府の努力で、通称の併記というのは認められております。でも、それで全てが解決されたということではございません。通称は法的に認められていないことから、社会保障や行政等の手続の多くの場面では戸籍姓が求められております。ですから、通称の単記というのは認められていないというのが事実なんですね。そのために、様々な場面で、先ほどから何回も申しておりますが、単記が認められていないがための不便というのが現実的にあるというのが我々の訴えでございます。
また、アイデンティティーに関わる問題に関しましてもあり、根本的な解決にはそこは至ってはおりません。
もちろん、提言の公表から一年がたちました、その間にも随分とアップデートされているものもございますので、その後の動きも踏まえまして、経団連のスタンスを改めて正確に発信する、それを目的に注釈を付記いたしました。御理解ください。
○吉川(里)委員 ありがとうございます。
もちろん、単記での使用ができないという御不便があるということは承知をしております。
しかしながら、別姓を名のりたいという方のアイデンティティーを保たれたとしても、その御家庭に生まれた子供のアイデンティティー、あるいは家族一体のアイデンティティー、名前が変わったときの喜びを感じる方のアイデンティティー等々も考えますと、一概に、そもそも、あと、家族の一体感に関しても、令和三年内閣府の世論調査におきましても、別姓を選ぶことによって夫婦の間の子供への影響は、好ましくないというお答えをされる方が六九%おりますので、そういった点も踏まえた上で、しっかりと情報発信をしていただきたいというふうに考えます。
時間がなくなってきましたが、竹田参考人に伺います。
夫婦別姓は、単に選べるようにするだけの制度と説明されることがありますが、実際には、制度導入によって社会の前提が変わり、これまで意識されてこなかった場面で氏の選択や親子関係の証明を求められるなど、望まない人にも影響が及ぶのではないかと私は懸念しております。
かつての発信で竹田参考人が述べられていた、夫婦別姓が導入されれば夫婦別姓を前提とした社会になるというような御指摘はまさに本質をついていると思いますので、その辺り、どういった社会的変化が生じるか、お答えください。
○竹田参考人 よく言われるのは、選択なんだから自由にさせればいいではないか、私は関係ないというんですけれども、今御指摘のあったとおり、社会に大きな変更があります。
例えば、私ごとですけれども、昨年、二人目の子供が生まれました。産気づいて急に妻が運び込まれたものですから、すぐに病院に駆けつけたんですね。そして、竹田ですと言ったら、一応、念のため免許証を見せてください、見せたら、分かりました、どうぞと。つまり、同じ姓であれば、夫婦であるということが推認されるわけですよね。
もしここで、今は多くないかもしれませんけれども、今後、選択的夫婦別姓が導入されて、多くの別姓夫婦が、日常的に、何割も出産するようになったら、看護師さんは、これまでやらなくていい手続をしなくてはいけない。つまり、夫婦関係の証明を求めるわけですけれども、これは免許証では確認できません。戸籍謄本の提出を求めるということになります。
それが、例えば親子関係だったらどうなるか。緊急手術が必要だったらどうなるか、これは、医療機関は全国に十一万施設あるわけです。学校でも、親子関係の証明、例えばお父さんが迎えに行ったときに、あなたは誰ですかということにもなるわけですね。学校は五万あるわけです。サービス業も、それから、夫婦別姓を前提とした労務管理システムも、全事業所が入れるということになりますので、これは社会的にかなり大きな負担になります。
あと、心理的な、社会的なコストというのもあります。例えば、飲み会に行ったときに、いろいろなカップルがいて、別姓だった場合に、この人たちは別姓の夫婦なのか、若しくは未婚なのか、不倫なのか、分からないわけですよね。これが同姓だと、この人たちはカップルなんだとすぐ分かる。
つまり、自分はどうでもいいよと言っていながら、今言ったのは小さいことですけれども、日常的にこれまで……(発言する者あり)だから、そうやって心配すること自体は小さいことかもしれない。でも、そういう、これはどっちだろうとか、会社でも、結婚したのかなとか、いろいろと影響があるということですね。
そして、これは法改正自体にもコストがかかります。システム改修だけではありません。民間事業所が全て選択的夫婦別姓を前提とした管理体制に行かなくてはいけない。なので、それをしてまで求めたい法益があるのか、これを考えていただきたいんですね。
アイデンティティーといいますけれども、例えば、結婚して、自分の旧姓で研究ができない、若しくは仕事ができないということであれば、アイデンティティーの問題になるでしょう。でも、それは今はできるんですね。維新案であれば、単独名でパスポートも取れるわけなんですよ。なので、それでもなお残るアイデンティティー問題というのは何なのかということですね。それは、とてつもない費用をかけ、社会が負担をしてまで実現しなきゃいけない利益なのか。
具体的なことと言いましたけれども、結局、経団連の十一の項目の中で、いまだ問題として残っているのは、パスポート関連の五項目だけです。あとは併記によって乗り越えられているわけなんですね。
○西村委員長 竹田参考人、時間が来ていますので、御協力をお願いいたします。
○竹田参考人 済みません。
これも維新案でもって解決するわけですから、維新案でもってまだ残る具体的なことというのは、まだお三方はどなたも具体的に一つもおっしゃっていないということです。
○西村委員長 吉川さん、時間ですので、終わってください。
○吉川(里)委員 時間なので、終わります。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、島田洋一さん。
○島田(洋)委員 日本保守党の島田です。
まず、維新案に賛成と言われた竹田参考人に伺います。
維新案は、すなわち、旧姓の通称使用、これを法制化するのが必要であり、かつ、それで十分だというものですけれども、私及び日本保守党は、基本認識は共有する部分は多いんですが、法制化というところは異論があって。
というのは、我々の考えでは、家族が同一の姓の下にあるという法的枠組み、これは民法、戸籍法を含めて、しっかり維持されるべきだと思っています。同時に、結婚後も職業に就き続ける女性に特化する格好で、様々な不便、不利益があった。それはかなり解消されていますけれども、まだ残る部分がある、その解消は加速化させないといけないと思います。
そのためには、議論の分かれる法律改正じゃなくて、国会決議という格好でやるのが最も迅速であり、かつ、現実的だと思っています。要するに、旧姓の通称使用を望む者に関しては、官公庁や各企業等はそれが可能になるよう必要な措置を講ずるよう努める、そのために国はしっかりガイドラインを作って周知する、こういう国会決議を通すというのが最もコンセンサスをつくりやすいと思っています。
そして、維新案に関しては、先ほど次原参考人も指摘されたような、やはり危ない部分があると思いますね。つまり、旧姓を法制化するということ、戸籍に書き込むということですけれども、そうなると、公的に使える姓が二つある、いわゆるダブルネームの問題。これは、単なる混乱だけじゃなくて、悪用される危険もあるし、かつ、旧姓の方だけに公的性格を持たせるとなると、戸籍上の姓はどうなるんだ、そういう問題もある。
そして、維新案については、あしたの審議で提出者の藤田議員を厳しく追及する予定なんですが、厳しく追及というのは冗談ですけれども。
維新案でも、旧姓の通称使用は努力義務なんですよね、努力義務という書き方。それなら国会決議というやり方の方がスムーズにいくんじゃないかと思うんですが、この辺り、竹田さん、いかがですか。
○竹田参考人 具体的にどういう方法がよいかというのは、いろいろな選択肢があろうかと思います。最高裁が示したように、通称使用の拡大を進めていく、これによってアイデンティティー問題、不便の問題も解消され得る、これは最高裁の判決でございます。
したがって、政府が長年通称使用の拡大を努力していましたけれども、今、どこまで解消されたのかという問題はありますね。それがどの程度のことで解消されるかということで、だから、私がさっきからこだわっているのは、具体的に誰が、どこで、どんな困ったことがあるのか。例えば、クレジットカードの問題も、発行できますよ、それからパスポートの問題も、維新案であれば解決しますし、若しくは、旅券法の改正という形でそれを達成することもできるかもしれない。
なので、本当に困っている人は誰なのか、それをどういうふうにして手当てできるのか、これを考えるべきであって、ですから、努力義務で解決するならばそれが一番ミニマムですし、戸籍に旧姓を書き加えるという形で本当に全てクリアできるということであれば、そこに踏み込むということ。
なので、結局、今の御質問の内容は、具体的に誰が、どこで困っているのか、これを正確に把握した上で、最適解が導かれてくることと思います。
これまで使用拡大は努力していましたけれども、かなり維新案は、戸籍に旧姓を書き込むという案ですので、非常に分かりやすいといいますか、逆に、それをして、まだなお困る人が一体いるんですかというところですね。なので、そこも含めて緻密な議論をしていただきたいと思っております。(発言する者あり)
○西村委員長 御静粛にお願いします。
○島田(洋)委員 平岡議員、ちょっと奇声を発するのはやめてもらえますかね。
それでは、立憲案と国民民主案に関して、女性におけるアイデンティティー喪失という観点から、この間も質問したんですけれども、より悪化させかねない面があると思うので、これをちょっと女性のお二人の参考人に聞きたいと思うんです。
つまり、立憲及び国民案では、通ったとして、経過措置として、この法律の施行前に既に結婚していた女性、既婚女性が、自分も姓を変えたい、旧姓に戻したいと思ったとき、それは認める、ただし、夫の許可が要る。要するに、合意できなければ、夫に拒否権があるわけですよね。
平成八年の法制審の議論の中でも、いやいや、それは女性の希望だけで変えられるようにすべきだという意見もあったんだけれども、今回の立憲及び国民案では、男性である夫に拒否権を与えるということになっています。
だから、今回のこの法律が通って、旧姓に戻したいという気持ちをかき立てられた女性が、夫に、変えさせてくれと。でも、夫から拒否されると変えられない。これは余計アイデンティティーの喪失感が悪化しかねないし、夫婦げんかが増えるんじゃないか、そういう懸念があるんですが、この辺り、お二人の女性の方はどう思われますかね。
○次原参考人 ありがとうございます。
そこの点に関しましては、経団連としては統一した見解を持っておりません。ですから、そこのパートに関しましては先生たちにお任せするしかないかと思います。徹底的に御議論いただきまして、意見をまとめていただけたらなというふうに思っております。
よろしくお願いします。
○布柴参考人 法案が拒否権という言葉で書かれているんですか。書かれていないですよね。合意形成ですよね。拒否権と合意形成は意味が違うと思います。
やはり大きな決定をするわけですから、夫婦で話し合って合意形成をするのは当然のことであって、ここでけんかというふうな捉え方をするとけんかになっちゃうんですけれども、これは重要なディスカッションですので。それをけんかと捉えるなら、大いにけんかをして、お互いの本音をぶつけ合って、お二人が納得して、では、こうしようということで決められる御夫婦がやはり本当に仲よくなります、将来を通して。いろいろな御夫婦を見ていますけれども、本音で話せずに我慢ばかり強いられてきた御夫婦というのは、やはり後になってからすごくリベンジされるケースをよく見ていますので。
大事なのは合意形成で、私は拒否権ということをちょっと初めて聞いたので、あれ、見落としていたのかなと。違う、首を振ってくださっていますので。
合意形成と拒否権は、全然言葉の意味合いが違うというふうに捉えています。
○島田(洋)委員 文案では、配偶者との合意に基づきということで、これは拒否権と捉えたって全然問題はないと思いますが、そこはおいておいて。(発言する者あり)ちょっと奇声を発するのは、平岡さん、やめてもらえますか。
○西村委員長 島田さん、適切な言葉遣いをお願いいたします。
○島田(洋)委員 どの辺がですか、今の。
○西村委員長 奇声ですね。
○島田(洋)委員 見解の相違ですが、それはおいておいて。
○西村委員長 不規則発言ではあるけれども、奇声ではありません。
○島田(洋)委員 見解の相違ということにしておきますけれども。
○西村委員長 御静粛にお願いいたします、場内も。
○島田(洋)委員 それで、次の質問ですけれども、あくまでこれは選択的夫婦別姓なので、いや、自分たちは従来どおり家族同姓でいきますよという人はそれでいけばいい。別姓によって、夫婦別姓は親子別姓、家族別姓につながるんですが、それで何か問題があったとしても、それはそこの家族に解決してもらえばいいじゃないか、余計なお世話だという議論があるんですが、この点に関しては、椎谷さん、どう答えられますか。
○椎谷参考人 初めに、途中でやはり不規則というか、やじが飛ぶ、僕は、法務委員会というのは物すごく上品な場所だと思って来たんですよ、そうやってやじが飛ぶのは非常に残念です。それだけは分かってください。やめてください。私へのやじじゃなかったかもしれないけれども、それはやめてほしい。もっと神聖な場所でしょう、ここは。
それで、お答えしますけれども、何でしたっけ、先生。ちょっと忘れちゃいました。
○島田(洋)委員 もう一回言いましょうか。
要するに、選択だから、夫婦別姓を選んだ家族に何らかのトラブルが生じたとしても、それはそれで。
○椎谷参考人 今回の法案には、私は選び直しという言葉を使っていますけれども、一年以内、二年以内に、現在の夫婦同姓の家族も話し合えば別姓にできるということですから、恐らく、対象としてはほとんどの人が対象になるわけですよね。だから、それも考えると、これは私たちの問題だから、関係ないということは言えないと思うんですね、みんなに影響してくるわけですから。
その辺を無視して、余りにも、私には関係ないというのは、ちょっと暴論じゃないかという気はしますので。
○島田(洋)委員 ありがとうございます。
次に、昨年出た経団連の報告書に関してなんですけれども、あの報告書の最初の方に、女性のエンパワーメントにおいて、我が国は世界に大きく立ち遅れておりとあるんですが、これは石破首相の、日本は財政状況がギリシャより悪い、それと同じだとは言いませんけれども、かなり誇張がある表現じゃないかと思うんです。
女性のエンパワーメントで日本は世界からかなり遅れている、これは具体的にどういうことを指しておられるんでしょう、この問題以外で。
○次原参考人 まさにそのとおりでございます。
残念ながら、日本のジェンダーギャップ指数は、世界百四十八か国のうちの百十八という不名誉なポジションでございます。
また、選択的夫婦別姓、この制度を導入していない国というのは、世界広く見ても日本だけなんですね。
私は、数年前にあるミッションで海外に行きました。そこで親しくなった現地の方に言われた言葉がございます。彼女との懇親会での、お酒を飲んだ席ではございましたが、私の方から、日本では三千社以上の上場会社がありますが、女性の社長というのは一%以下である、そして、日本では婚姻時にはどちらかの名前を選ばなくてはいけない、そして、九五%以上が女性が男性の姓に入っている、そんな話をしましたら、とても驚かれまして、彼女が言った言葉は、これはジョークよね、ただ、ジョークではなく、もはやホラーだわねと。本当にジョークだったとは思いますが、まさにそういう言葉なんですね。
今まで四回も国連が日本に、夫婦同姓制度に関しましては、これは人権問題だということで勧告をされています。それが全てなんだと思います。
国際社会から見れば、まだまだ日本はそういう状況に置かれているかと思います。
○島田(洋)委員 ありがとうございます。
日本のビジネス社会において、女性のエンパワーメントが世界に大きく立ち遅れているとすれば、それは実力ある女性の活躍が男の場合以上に阻害されている、これは女を下に見るというような経営者の存在などがまだある。九一%ぐらいの企業では通称使用を認められていると書いてありますけれども、九%ではまだ認められていない。とすれば、これは、私は経団連の十倉会長の指導力不足、責任が大きいとまでは言いませんけれども、そういう問題もやはり考えないといけない。
それで、なお通称使用を認めない九%の経営者というのは、これはどういう理由で認めないんでしょうか。
○次原参考人 本当に個社によって対応というのは違うことは違いますが、ある会社様は、いずれにしろ、全ての会社上の管理業務には戸籍姓しか認められない、こういう現実をもって、致し方なく認めない、そういう判断をされていらっしゃる企業が多いようでございます、その九%のうちには。
○島田(洋)委員 小原さんにお聞きしますけれども、経済界においてまだしっかり対応していない企業があるということに対して、連合の方としては、強く申入れをしたりしておられるんでしょうか。
○小原参考人 通称使用を強く申し入れているということはございません。
以上です。
○島田(洋)委員 それはなぜ申し入れておられないんでしょうか。
○小原参考人 通称使用が可能な産業と可能ではない産業も、先ほどありましたけれども、あるのではないかということもございますし、私どもの聞いた事例では、航空産業、特に海外の客室乗務員の方々は通称使用では対応できないというふうに聞いてございますので、労働組合から、一律に通称使用を拡大しようというふうな申入れをしたことはございません。
一方で、先ほどから何度も申し上げておりますけれども、選択的夫婦別氏の導入の方はずっと求めてきたということでございますので、御理解をいただければと思います。
○島田(洋)委員 それでは、時間が来たということなので、これで終わります。
ありがとうございました。
○西村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
次回は、明十一日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
正午散会