衆議院

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第22号 令和7年6月11日(水曜日)

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令和七年六月十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村智奈美君

   理事 小泉 龍司君 理事 津島  淳君

   理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君

   理事 金村 龍那君 理事 円 より子君

      石橋林太郎君    井出 庸生君

      稲田 朋美君    上田 英俊君

      上川 陽子君    神田 潤一君

      草間  剛君    栗原  渉君

      河野 太郎君    棚橋 泰文君

      寺田  稔君    長坂 康正君

      平沢 勝栄君    森  英介君

      若山 慎司君    有田 芳生君

      篠田奈保子君    柴田 勝之君

      寺田  学君    平岡 秀夫君

      藤原 規眞君    松下 玲子君

      萩原  佳君    藤田 文武君

      臼木 秀剛君    小竹  凱君

      大森江里子君    平林  晃君

      本村 伸子君    吉川 里奈君

      島田 洋一君

    …………………………………

   議員           岡本あき子君

   議員           米山 隆一君

   議員           藤田 文武君

   議員           長友 慎治君

   議員           円 より子君

   法務大臣         鈴木 馨祐君

   内閣府副大臣       辻  清人君

   法務大臣政務官      神田 潤一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 小八木大成君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            尾崎  有君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          水田  功君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 伊藤 正志君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          松井 信憲君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (国税庁徴収部長)    田島 伸二君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     栗原  渉君

  神田 潤一君     石橋林太郎君

  河野 太郎君     草間  剛君

  棚橋 泰文君     長坂 康正君

  小竹  凱君     臼木 秀剛君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     神田 潤一君

  草間  剛君     河野 太郎君

  栗原  渉君     上田 英俊君

  長坂 康正君     棚橋 泰文君

  臼木 秀剛君     小竹  凱君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法の一部を改正する法律案(黒岩宇洋君外五名提出、衆法第二九号)

 婚姻前の氏の通称使用に関する法律案(藤田文武君外二名提出、衆法第三〇号)

 民法の一部を改正する法律案(円より子君外四名提出、衆法第三五号)


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 黒岩宇洋さん外五名提出、民法の一部を改正する法律案、藤田文武さん外二名提出、婚姻前の氏の通称使用に関する法律案及び円より子さん外四名提出、民法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官小八木大成さん、金融庁総合政策局審議官尾崎有さん、こども家庭庁長官官房審議官水田功さん、総務省大臣官房審議官伊藤正志さん、法務省大臣官房司法法制部長松井信憲さん、法務省民事局長竹内努さん及び国税庁徴収部長田島伸二さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫さん。

平岡委員 立憲民主党の平岡秀夫でございます。よろしくお願いします。

 今日の私の質問は、主として政府、法務省に対して行いますけれども、是非自民党の委員の先生方にも聞いてほしいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 この法務委員会で、野党三党から夫婦の氏の在り方についてそれぞれ法案が提出されておりますけれども、今から二十九年前に法務大臣の諮問機関である法制審議会が答申を出しているにもかかわらず、ここに政府案、閣法が提出されていないのは大変寂しく思います。

 今日は、政府案、閣法が提出されていたとするならばどんな法案になっていたんだろうかということも構想しながら、これから我が法務委員会でどのような対応をしていくのがよいかを一緒に考えていきたいというふうに思っています。

 本日の質問で明らかにするように、今回の立憲民主党提出法案は政府案、閣法と言っても過言ではないと思います。本来であれば、自民党の委員の先生方には、政府案、閣法として、あるいは自民党案として法案を提出することに汗をかいてほしかったのですが、党内事情とかあるいは政府内事情もあったんでしょう、ちょっと残念な状況になっているというふうに思います。

 以上の状況を踏まえまして、与党がまとまって立憲民主党提出法案に賛成していただいてもおかしくないとは思いますけれども、せめて、法案に賛成する委員の方々が賛成票を投じられるように、党議拘束を外す努力をしていただきたいと思っております。自民党の皆さんも、選択的夫婦別氏制度というのは、ずっと以前から自民党政権時代の法務省が先鞭をつけていたという事実を踏まえて、自信を持って党議拘束を外す努力をしていただいて、立憲民主党提出法案に堂々と賛成をしてほしいと思います。

 以下、質問に入ります。

 まず、法制審議会についてでございますけれども、法制審議会の位置づけというのは、あるいは役割というのはどういうものなんでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 法制審議会は、法務大臣からの諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議することなどを目的とする諮問機関であります。

 その役割は、法務大臣の諮問に応じて、これらの事項について調査審議をし、答申をすることにございます。

平岡委員 私も、法務大臣時代に、法制審議会に諮ろうとして事務方から断られた経緯があります。どうしてかというと、法制審議会というのは、ある程度方向性が決まってから諮問するものであって、これからどうしようかというようなものについて諮問するようなことはしないんだというふうに言われて、ああ、そうですかということで、ちょっと私も諦めた経緯があるのでございますけれども、それはそれとして。

 過去三十年間の法制審答申で、具体的な法案、立法とか法律改正、あろうかと思いますけれども、具体的な法案が提出されていない例というのはあるんでしょうか。あるとすると、それはどんなものなんでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 調査、把握した限りで申し上げますと、過去三十年において、法制審議会の答申として法改正について要綱が示されたもののうち、現在まで国会に法案が提出されていないものとしては、平成八年二月二十六日付で答申のあった民法の一部を改正する法律案要綱のうち夫婦別氏制度に関する部分など、また、令和六年九月九日付で答申のあった商法(船荷証券等関係)等の改正に関する要綱があるものと承知をしております。

平岡委員 今、例として示していただいたもののうち、船荷証券関係というのは、令和六年、つまり去年出たやつですから、まだ立法作業が十分にできていなくて提出できないというのは当然あり得ることだというふうに思うんですけれども、二十九年も前に出た答申がいまだに法案提出されていないというのは、やはりちょっと異常な事態ではないかというふうにも思いますね。

 そこで、これからは選択的夫婦別氏制度に関する答申についてちょっとお聞きしたいと思います。

 夫婦別氏問題については、法制審に対しては、いつ、どの内閣のときに諮問されたんでしょうか。また、その諮問内容というのは具体的にどういうものだったんでしょうか。お聞かせください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 昭和二十二年にいわゆる明治民法が改正されておりますが、これは、民法の家族法の近代化、合理化にとって必ずしも十分な内容のものではなく、将来における更なる改正を政府の宿題として積み残したものであったと承知をしております。

 そのため、昭和二十九年七月に、法務大臣から法制審議会に対して、民法の改正を加える必要があるとすればその要綱を示されたいとの一般的諮問、包括的諮問でございますが、これがされたものと承知をしております。また、その諮問時の内閣総理大臣は吉田茂議員であったと承知をしております。

平岡委員 昭和二十九年ですから、大変昔の話でございますね。この委員会でも、多分、そのときに生まれていたのは、円先生とか私とか小泉先生とかというふうに、限られた人たちになるのではないかなというふうには思います。

 それで、この法制審は、夫婦別氏問題について、いつ、どの内閣の何法務大臣のときに答申を出したんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法制審議会において選択的夫婦別氏制度の導入等を内容とする民法の一部を改正する法律案要綱の答申がされましたのは、平成八年二月二十六日でございます。また、その答申時の内閣総理大臣は橋本龍太郎議員、法務大臣は長尾立子氏であったものと承知をしております。

平岡委員 橋本内閣だったんですよね。自社さ政権だったようでございますけれども、首班は自由民主党の橋本龍太郎さん。諮問をしたのは吉田茂さんですけれども、吉田茂さんは当時は自由党の総裁ということで、その一年後に保守大合同が行われて自由民主党になったということで、その前身である自由党の総裁であったという、このお二人が関わった答申であったということを是非皆さんにも記憶しておいていただきたいというふうに思います。

 そこで、この答申が出たとき、あるいはその後の国会答弁において、橋本内閣の法務大臣はどういう受け答えをしているのかということをお答えいただきたいんですけれども、法務大臣の答弁ですから、本来であれば法務大臣にちょっと、自分の先輩の答弁はこうだったというふうに言ってほしいんですけれども、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のような答弁の一例といたしまして、当時の長尾立子法務大臣は、平成八年三月十五日の衆議院法務委員会におきまして、委員から法制審議会の答申に基づく民法改正法案を提出するのかどうかや決意等について質問されたのに対しまして、法務省といたしましては、この答申を踏まえて、民法及び戸籍法の一部を改正する法律案を立案し、関係各位の御理解を得て今国会に提出したいと考えております、この問題は、国民の皆様に密接な関わりを有するものでございまして、法制審議会の答申がされました後も様々な御議論がされているところでございますので、法務省といたしましても、関係各位の御理解を得るため、なお一層の努力を続けてまいる所存でございますと答弁されているものと承知をしております。

平岡委員 非常に常識的な答弁だとは思いますけれども、その長尾立子法務大臣の答弁というのは、その後の歴代の法務大臣、私もその一人だとは思いますけれども、ここにも、小泉法務大臣だったとか、ほかにも上川法務大臣であったとか、いろいろな法務大臣もおられますけれども、済みません、漏れておりましたらちょっと、私もきちっとした記録を持っていないのでお許しをいただきたいと思いますけれども、そういう法務大臣によって、訂正というか別の答弁をされていますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、長尾法務大臣の答弁がその後に変更されているかにつきましては、どのような点を捉えて変更されているか、お答えするのが困難ではありますが、歴代の法務大臣は、それぞれの具体的状況を踏まえつつ、それぞれの言葉で答弁されたものと承知をしているところでございます。

 ただ、歴代の法務大臣の答弁は、夫婦の氏の在り方については、国民の間などにおいて様々な意見があるという点、そのため国民各層や関係各位の理解が必要であるという点についてはおおむね共通しているものと承知をしております。

平岡委員 今の答弁でいくと、先ほどの長尾大臣の答弁の中で、法務省といたしましては、この答申を踏まえて、民法及び戸籍法の一部を改正する法律案を立案し、関係各位の御理解を得て、今国会というか、長尾さんのときは今国会でしょうけれども、その他の法務大臣にとってみればその時々の国会ということになろうかと思いますけれども、それに提出いたしたいと考えておりますということについては、特に変更というか訂正はされていないという理解でよろしいですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘をなさった答弁部分について、明確にこれを変更したという答弁はないものと承知をしております。

平岡委員 はい、分かりました。

 それで、平成八年二月の法制審答申と今回立憲民主党が提出された法案との関係をちょっと聞きたいんですけれども、この法制審答申の内容と立憲民主党提出法案の内容との違いはどういうところにあるんでしょうか。あるいは、違いというのはあるんでしょうか。

岡本(あ)議員 平岡委員、御質問ありがとうございます。

 今回、立憲民主党の民法改正案、提出された案は、委員御指摘のとおり、一九九六年、平成八年の法制審答申要綱の内容を踏襲したものであり、内容面での違いはないものと考えています。

平岡委員 自民党の先生方にも、よく今の答弁はかみしめていただきたいというふうにも思います。

 そこで、先ほどちょっと民事局長からも答弁は一部あったんですけれども、改めてお聞きいたします。

 平成八年二月に法制審答申が出された後、この答申を踏まえての法案はなぜ政府から国会提出されなかったのか、政府、法務省内において法案提出に向けての作業はどのように進められたのかについてお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたように、選択的夫婦別氏制度につきましては、平成八年二月に、法制審議会が選択的夫婦別氏制度を導入すること等を内容とする民法の一部を改正する法律案要綱を答申をいたしました。

 その後、法務省は、平成八年及び平成二十二年に、法制審議会の答申を踏まえた改正法案の提出に向けた準備をしたところでございます。

 しかしながら、選択的夫婦別氏制度の導入につきましては、国民の間に様々な意見があったほか、当時の政権内においても様々な意見があったこと等から、改正法案の提出にまでは至らなかったものと承知をしております。

平岡委員 今、答弁の中で、平成八年というのは橋本龍太郎内閣ということだと思いますけれども、平成二十二年というのは、これは民主党政権の下における、あれは千葉景子法務大臣の時代だったというふうに記憶しておりますけれども、今の答弁で、当時の政権内でいろいろ意見があったというふうな話だったんですけれども、法務省内にもいろいろな意見があったんでしょうか。法務省内は特に意見はなくて、法務省内としては法案の準備をするということでまとまって作業をしていたんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法務省といたしましては、平成八年の通常国会に法案を提出すべく関係方面との折衝を各所行っておったものでございますが、各方面になお様々な議論があったということから、国民の意識にも配慮しつつ、更に慎重な検討を行う必要があるということで、改正法案のその国会への提出は見送るということになったものと承知をしております。

平岡委員 確認ですけれども、法務省が関係各所にいろいろ相談に行っていたという話の基となっている夫婦の氏の在り方については、平成八年の答申に沿った提案をしていたという理解でいいんですよね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、平成八年の答申に基づいた案を立案して、交渉していたということでございます。

平岡委員 これも確認なんですけれども、平成八年二月の答申が出て以降、歴代法務大臣はこの答申の見直しを諮問したことはないと思うんですけれども、そういう理解でよろしいですよね。各歴代法務大臣は、この答申を踏まえて行動するという、どこまでの決意をしていたかは分かりませんけれども、そういう意識の中で、この答申について見直しをするという諮問はしていないという理解でよろしいですよね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 平成八年二月の答申以降、法務大臣から法制審議会に対して、答申のうち選択的夫婦別氏制度の導入に関する部分につきまして、見直すことを内容とする諮問がされたことはないものと承知をしております。

平岡委員 今まで質問して答弁していただいたことを踏まえてみると、やはり、自民党政権の下でも、あるいは、民主党政権はちょっと短かったから外しておいても、法務省は一貫してこの法制審答申に基づいて立法作業をしようとしてきていたということでもありますし、歴代法務大臣もその線に乗っかってきていたというふうに私としては理解をしているのでございます。

 そこで、法務大臣にお聞きいたしますけれども、平成八年二月の法制審答申を踏まえての選択的夫婦別氏法案が二十九年以上も政府によって国会提出されなかったことについて、法務大臣はどのように受け止めておられますでしょうか。

鈴木国務大臣 今日は、平岡先生の御質疑においては、本当にこれまでの経緯について包括的に御質疑をいただいているものと承知をしております。

 まず、その上で、法制審議会、この答申ということについては私どもとしても当然重く受け止めるべきものと考えている、この前提については申し上げたいと思います。

 その上で、夫婦の氏の在り方、これは、令和三年の世論調査であったりあるいは様々な報道機関による調査、こういったものを見ても、今の段階においてもなお国民の皆様方の間にかなり多様な意見がある、こういった状況であるのは事実であろうと思います。

 そして、今まさにこの立法府の場において各党各会派から三つのそうした法案が提出をされている、まさにそういった御審議が行われている中でもそういった点ということは明らかではないかと思っております。

 私ども政府といたしましては、選択的夫婦別氏に関係するこうした様々な法案の審議が行われている中にありまして、まさに、家族の形態、国民の意識の変化、家族の一体感、あるいは子供への影響、こうした様々な点、この考慮をされた上で、まさにこの立法府において様々な観点からの議論がなされるということ、そして、そのことも含めてより幅広い国民の皆様方の間での理解が深まっていく、そういったことが極めて重要だというふうに考えております。

 そういったことの中で、現在、まさにこの立法府において、それぞれの議員の皆様方からの御提案の中での三つの法案が議論をされている。この状況を私どもとしてはしっかりと注視をしてまいりたい、そう考えているところでございます。

平岡委員 この委員会で、あるいはこの国会でいろいろと議論されていることを注視していくということは決して否定するものではありませんけれども、法制審答申が出ている中で今まで法案が提出されていないという状況を踏まえて、法務省として何をすべきなのかという点について、私は、もう少し法務省はしっかりと本来果たすべき役割を果たしてほしいというふうに思うんですよね。

 鈴木大臣としては、別に、法制審のこの答申の見直しを諮問するというふうなことはお考えにはなっていないですよね。

鈴木国務大臣 答申について見直しをするということを考えているのかということについては、私として、現在、そのことを考えているわけではございません。

平岡委員 そうだったら、法務省としては、もっともっとこの選択的夫婦別氏制度の実現に向けて努力をすべきではないんですか。どうですか。

鈴木国務大臣 まさに今、この立法府の場において、それぞれの議員の、委員の先生方、あるいは各党会派から御提案の中での議論が行われている委員会でもあります。

 そういった中で、私は、あくまで行政府の立場で今御答弁申し上げておりますので、そこにかなり影響が及ぶようなことについては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますし、まさに、私どもといたしましては、今、オンゴーイングで立法府の場で行われている議論、しっかりこれを注視をさせていただく、そのことに尽きるかと思います。

平岡委員 再審制度も何か法制審をかませるようなことも言っておられたように記憶しているんですけれども、法制審が持っている我が国全体の法制度における位置づけというのは非常に重いものがあると思うんですよね。だから、そういう制度を維持しながら、そして、その法制審が出した答申であるということを十分に踏まえて、法務省としてはしっかりと努力をしてほしい。

 逆に、法務省から与党自民党や公明党に対しても、法務省としての立場はこういうことなんだから是非理解してほしいというようなことで活動していただくことを切に要望したいと私は思います。

 これ以上言っても堂々巡りになると思いますので、これ以上は申し上げません。

 与えられた時間がちょっと残りましたので、先日、私、モンゴルの元大統領のエルベグドルジさんに是非会って見聞を深めていただきたいということで法務大臣にお願いしたところ、法務大臣の方もエルベグドルジ大統領に会う時間をつくっていただいてお会いされたというふうに聞いておりますけれども、エルベグドルジ大統領に会われて何か得るものはありましたでしょうか。

鈴木国務大臣 これは、この委員会の場でも先生からも御提案をいただいた件であります。モンゴルの元大統領の方でございます。先日お会いをさせていただいた、そのことは事実でございます。

 その中で、様々、いろいろな意見交換等々させていただきました。ただ、その内容についてこの場でつまびらかにするということは、相手方もあることでありますので余りふさわしくないかと思いますので、その点は差し控えさせていただきたいと思いますが、様々、有意義な意見交換をさせていただいたと考えております。

平岡委員 私が大臣にお願いしたのは、エルベグドルジさんは、モンゴルの大統領として、モンゴルの死刑を廃止するということに非常に尽力をされた方で、現在も国際的に、死刑廃止委員会の委員として活躍されておられる方でもございます。

 その話を聞いたからすぐにどうこうということではないと思いますけれども、そういう方ともいろいろとお話をされて見聞を深めていただきたい、このことをお願いしていたわけでございまして、会っていただいたことについては、大変私も評価をするというか感謝をしております。

 これからも引き続き、そういう見聞を深める努力をしていただくことをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

西村委員長 次に、藤原規眞さん。

藤原委員 立憲民主党・無所属の藤原規眞です。

 本年六月六日の法務委員会で自由民主党さんの山下委員が、平成二十七年最高裁大法廷判決は、氏は家族の呼称として意義がある、家族の呼称を一つにまとめることには合理性が認められるということを示したと質疑の中でおっしゃっています。

 一方で、選択的夫婦別氏制について最高裁が合理性がないと述べたこともないわけです。山下委員が引用された平成二十七年大法廷判決の十ページで、そのような制度、要は選択的夫婦別氏制度に合理性がないと断ずるものではないというふうに述べています。

 立憲民主党の米山委員は、その今月六日に、最高裁の判決を引いた上で、一つの家族において姓は異なるということもまた合理的であるというのが最高裁の判断である、あるいは、最高裁の判断から何か別姓が否定されるということは全く帰結されないと答弁されました。

 結局は、この種の制度の在り方は、平成二十七年大法廷判決の指摘するとおり、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないという令和三年最高裁大法廷決定の趣旨にのっとりつつ、同決定の深山、岡村、長嶺裁判官の補足意見、一般論として、この種の法制度の合理性に関わる事情の変化のいかんによっては、本件各規定が上記立法裁量の範囲を超えて憲法二十四条に違反すると評価されるに至ることもあり得るという指摘は強く受け止めなければならないと考えます。

 そこで、まず立憲民主党の提出者に伺います。

 夫、妻共に再婚でいわゆる連れ子さんがいるケースにおいて、立憲民主党案の別姓を選択した場合、連れ子さん同士の姓は異なることになるのでしょうか。

岡本(あ)議員 藤原規眞委員の御質問にお答えします。

 立憲民主党案も現行法と同様に、父又は母の婚姻のみを原因として、その子の姓、氏が変わることはありません。したがって、再婚に際し、夫、妻それぞれに子がいる場合、子の姓、氏は婚姻前と同じですので、結果としてその子供同士の姓は異なることになります。つまり、現行法でも一つの家族において姓、氏が異なる兄弟姉妹、また親子で姓、氏が異なる場合がありますし、立憲民主党案も同じでございます。

藤原委員 それでは、以下、日本維新の会さんの提出者の方に伺おうと思います。

 維新案では、旧姓届出者の戸籍姓を使用しない旨の条文はないわけです。これは、戸籍姓と旧姓、このダブルネームを法制化して、戸籍姓と旧姓のどちらにも同等の法的効力を持たせるものという理解でよろしいのでしょうか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 維新案は、婚姻によって氏を改めた者について、新制度に基づく婚姻前の氏の届出をした場合には、パスポート等の公的証明書の記載を始め、社会生活上の幅広い場面におけるその者の呼称をいわゆる旧氏の単独使用に統一しようとするものでございます。したがいまして、戸籍氏の記載をいわばダブルネームのように使い分けるということができるようになるものではございません。

藤原委員 維新案の三条二項に、国、地方公共団体、事業者その他公私の団体は、一の者が、職業生活その他の社会生活の幅広い分野における活動において、氏名に代えて婚姻前の氏及び名を通称として使用する機会を確保するため、当該活動の内容、性質を踏まえ、必要な措置を講ずるよう努めるものとすることというふうにあります。つまり、社会全般における旧姓運用は努力義務にとどめているわけです。

 努力義務にとどめた意図というのを教えてください。

藤田議員 維新案では、三条一項で国に対して法制上の措置を義務づける一方で、同条二項では、委員御指摘のように、広く公私の団体に対して努力義務を課しているところでございます。

 その理由は明快でありまして、事業者等の公私の団体がその事業活動等においてどのように個人の氏名を記載するかの判断は、本来、自由でありまして、法律により規制、強要、強制するということには慎重であるべきという設計思想でございます。

藤原委員 この法案では、改正の必要な法令が約六百五十と。もし法律の中の氏名を届け出た旧氏に読み替えるとする法を作ったとしても、これらの膨大な氏名の必要な場面は、全て十全に、個別に検討を済ませる膨大な作業が必要だということになるんですけれども、その認識は維新さんはお持ちですか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 維新案施行後に必要な法制の整備として、法律の中の氏名を届け出た旧氏に読み替える方法も考えられる旨、これまでお答えしてまいりましたが、その場合であっても、あらゆる個別法令について読替えの必要があるかどうかを検証する必要があるのは委員の御指摘のとおりでございます。

 この点、維新案では、その検証作業を国に義務づけており、具体的には各法令の所管各省庁におきまして検証が行われることになると思われますが、当該法令の内容を熟知している各省庁が分担して行うことになるために、迅速かつ効率的に整理されることになろうかと思います。

 ちょっと補足しますと、いずれにしましても、今、旧姓使用の拡大が進んでおりまして、各省庁ばらばらのタイミングで、又はばらばらの意思で御努力いただいている。その事務の数を数えますと相当数になる。だから、これを一括して、この法案ができた暁には六百六十全てにおいて検証するというのは当然の作業だと思います。それぐらいの変更をもって世の中の不便を解消しようという意思でありまして、何ら、膨大であるからおかしいということにはならないかというふうに思います。

藤原委員 では、膨大であることを前提に、どの程度の期間でできるというふうに考えておられますか。

藤田議員 その検証につきましては、各省庁がそれぞれ想定して検証を進めるというものでありまして、後の質問でもあるかもしれませんが、この法案はそれを義務づけるというところが施行日でありまして、そこの後から法整備を整えることが義務づけられるというものでありますから、そこをちょっと今、一概に幾ら幾らかかると。

 ただ、膨大かどうかというのは、これは言葉のあやで、議論があると思うんですね。当然行われるべき作業というのが一定発生するというのは、それは認識はしています。

藤原委員 例えば、商業・法人登記簿の役員欄に記載する役員等の氏名を挙げると、現在は旧姓のみの登記は認められていません。戸籍氏名の後ろに括弧書きで旧姓での氏名が併記されます。旧姓を届け出た者につき、これを解消し、旧姓単記にするには、商業登記規則の一部を改正する省令の改正、これが必要なわけです。

 そのほかにも、マイナンバーカードの旧姓単独使用にはマイナンバー法、運転免許証での旧姓単独使用は道路交通法、パスポートでの旧姓単独使用は旅券法、それぞれの施行令など大量の法省令の規則改正が必要となる見通しです。

 手前みそですけれども、立憲が提案した法制審議会答申に基づく案では、必要な法改正は、民法と戸籍法以外は、家事事件手続法の子の氏の変更審判に関する規定、外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律の夫婦財産契約に関する登記所に関する規定の二つのみなんですね。

 維新さんは、青柳政調会長さんが選択的夫婦別姓の導入を大げさと言われたんですけれども、維新案さんの方が結局大げさにならないですか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 ちょっと私の発言じゃないので、大げさという発言が適切かどうかはさておきまして、一旦謝っておきます。(発言する者あり)済みませんでした。

 それで、まず、維新案が成立した場合の法制上の措置については、委員が先ほどおっしゃいましたとおり、法令上の氏名を旧氏に一括して読み替える等の基盤整備をするような方法というのも考えられることから、多くの法令を改正する必要があるとは一概には言い切れません。

 他方、選択的夫婦別氏制を導入するため、民法と戸籍法を改正し、夫婦親子同氏という現行民法の原則や、同一戸籍同一氏の原則といった現行戸籍法の原則を変更することについて、制度の抜本的な又は根底の原則から変革すると考える方もいらっしゃるということの趣旨で言われたのだと承知しています。

 ちなみに、同列に並べて論じるのが正しいかはちょっと検証が必要でありますが、戸籍又は戸籍法というような文言が出てくるのを単純に検索すると数十、法令、政省令でいうと数百というのがあります。それについて、果たして本当に、全く波及効果がないかという検証は一応すべきだと思うんですね。それは氏名も同じで、全く影響がないものも多数あります。先ほど例示していただいたように、マイナンバーや運転免許証等は確実に改正が必要であります。そういった重要度の濃淡というのはあるというので、いずれにしても、全て検証するというのは、これは当たり前のことだと思います。

藤原委員 今挙げられましたマイナンバーカードの担当省庁は総務省とデジタル庁になります。維新案では、これは旧姓単記でいけるんでしょうか。

藤田議員 維新案では、あらゆる公的書類への旧姓単記を義務づけていますので、マイナンバーカードも例外ではありません。

藤原委員 マイナンバーカードの機能として、氏名を確認する官民の様々な手続において用いるというものが挙げられます。今お答えくださったように旧姓単記でいけたとしても、氏名を確認する官民の手続において、マイナンバーカードと別の公証資料、戸籍等が必要になる場合が生じるわけですよね。戸籍をもって一々身分確認、氏名確認をすると、マイナンバーカードの本来の機能が失われるんじゃないかという指摘があります。マイナンバー法一条の目的規定、「国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を得られるようにするために必要な事項を定める」と書いているんですけれども、結局、戸籍等をもって一々公証資料を出す、これはマイナンバーの機能を無意味なものにしないですか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 維新案により旧氏の単独使用が求められるのはあくまでマイナンバーの券面の記載についてでありまして、その内部データに戸籍名を記載することはもちろんのこと、マイナンバーカード内のデータを用いてほかの本人情報とひもづけること等により、あらゆる官民の手続において本人確認のため利用することを妨げるものではありません。

 なぜこういう発想にしているかと申しますと、やはり一般生活において単独使用を、例えばマイナンバーカードも運転免許証もパスポートも持ち歩く想定ですよね、そういうものについては単独使用にしてやはりすっきりさせてあげたいという思いが一つありまして、それは合理的なことだと思います。

 しかしながら、このデジタル社会におきましては、それが、戸籍名がこうで、その他の個人情報等が一括でひもづいていて、検索でひっかけられるようにするということは簡単な話でありますから、そういった意味で捉えていただけたらと思います。

藤原委員 すっきりさせてあげたいという意図は伝わるんですけれども、例えば官民で氏名を確認する際、これは券面が大事ですよね。となると、戸籍名と旧姓と、券面を示したら、結局、マイナンバーカードでこれからは本人確認できないというケースが続出するんじゃないですか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 一般社会の生活において、旧氏を戸籍に記載した上でこれに法的効力を付与し、そして使えるということでありますから、それが個人のまず特定であります。

 更に進んで、それが、戸籍名がどうか、又はその家族関係等を遡りたいという場合などは、それは戸籍謄本を見れば明らかでありまして、今でいうと、旧姓使用の拡大、例えば銀行でも七割ぐらいが単独使用できますよね。その銀行のカードが、果たして戸籍名がどうなのか。これは、今の旧姓使用の拡大は法的根拠がなく、ある種、安定性が低いファジーな状態でありますから、それを確認しようと思えば戸籍とひもづければ、今回の私たちの案でいうと、一目瞭然でこの人は旧姓の単記を選んでいる方だということが分かりますから、今よりも格段に個人の特定ができるというふうに理解していただけたらと思います。

藤原委員 維新案が実現した場合、災害時の住民の安否確認、これは、戸籍姓、それとも旧姓、どちらで管理するんでしょうか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 先ほどのお答えと重複いたしますが、維新案により旧氏を記載することになるのは、あくまでも法令の規定により氏名を記載すべきこととされている場合であります。

 委員お尋ねの住民の安否確認はそのような場合には当たらないのではないかと思われますので、各自治体において、それぞれの判断で、旧氏、戸籍姓、それぞれを実施しやすい方法で行っていただければと思います。

藤原委員 自治体がまちまちにやったら、大災害時の安否確認としては非常に心もとなくならないですか。

藤田議員 基本的にデータベースでひもづいているので、これはいわゆるデジタル社会の当たり前ですけれども、こちらを検索したらこちらがヒットし、要は名寄せできるというのは当然で、今は銀行でもされていますよ、それは。銀行って非常に厳しいので、マネロンとかそういうのがあるので、基本的に、本人がどうかとか使用意図がどうかとか、むちゃくちゃ厳しく今やられますよね。それは当然です。なので、旧氏で使ったとしても、裏で全部戸籍姓とひもづけてあるんですよ、銀行システムというのは。それと同じことで、デジタル社会においてそれがハードルになるとは私は思いません。

 むしろ、旧姓の使用に法的根拠を与えて安定性を高め、しかも検索でひもづけられる、その合理性があるということなので、例えば、災害時とかに、たまたまポケットに銀行口座のカードが入っていて、今の旧姓使用のお名前で入っていて、それを見つけたときに、これは検索してもひもづかないんですよね。でも、我々の場合やったら公証するわけでありますから、簡単にひもづけられますから、より安定度が高まる、そういう認識を持っていただけたらと思います。

藤原委員 安定度が高まるということですけれども、例えばマイナンバーや住民票に旧姓併記をしたとしても、うちは戸籍姓でしか手続できませんと断られたり、マイナンバーに併記されていても関係なく、現在の姓に至るまでの戸籍謄本を全てそろえて持ってこないと認証しないと言われたりするケースは現在も多々あるんですね。維新案の旧姓使用が三条二項の社会全般の場面では努力義務である以上、その状況は結局今後も変わらず続いてしまうんじゃないですか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 公私の団体に強制ではなく努力義務にしているというのは先ほど申し述べたとおりなんですけれども、それは当然の設計思想として、一般論としてもあり得ることだと思います。

 その上で、公的証明書のほとんど全てが、しかも、持ち歩くもの全てが単独使用である場合に、例えば、私企業で考えたときに、いやいや、あなたは戸籍姓で会社員登録をして、それを使いなさいという合理性ってどこにあるんですかね。私は全くないと思います。例えば納税等のそういう公的なやり取りの書面が全て旧姓単記でできるわけでありますから、会社がわざわざ不便な戸籍姓を用いてそれをすることを命ずる又は断るようなことが想定されるかというと、そうなりますかね。私は全くならないと思います。

藤原委員 ちょっと、期待に基づいて制度設計してはいけないと思うんですけれども、例えば、単記できても、免許証、パスポート、資格、これを立ち所にやるためには、全ての省庁の準備ができていないといけない。名義変更のタイムラグというのは本来的に許されないわけです。でも、民間は自由だ、強制になじまないというのは先ほどの藤田委員のお答えなんですけれども、例えば、日本の名義変更というのは、エストニアみたいにDXで一気呵成にはできないわけですね。

 もし維新案が通った場合、これは例えばですけれども、維新銀行というのがあって、大阪本店営業部では、マイナンバーカードで、旧姓の吉村さんで口座を開設する。同じく維新銀行の東京支店では、免許証で、戸籍姓で前原さんという名前で口座開設する。このタイムラグが生じてしまったらこういうことになり得るんですけれども、そこはどうお考えですか。

藤田議員 まず初めに、吉村さん、前原さんの例え話まで丁寧に通告していただきまして、ありがとうございます。

 その上で、維新案施行後、あらゆる公的身分証について同時に旧氏の単独使用が認められることが理想ではありますが、対応に必要な期間は法令や制度によって異なると考えられるところ、政府において可能な限り速やかに措置を講じていただければと考えております。

 なお、現行の制度においても旧姓による口座開設が可能な金融機関も多いと承知しているところ、対応している銀行とそうでない銀行によって通帳の名義が違うということは今でもございますけれども、それによって不都合が生じていることは承知しておりません。

藤原委員 維新案提出時の意図は、結婚で姓を変えた人が社会生活で不利益を受けることを防ぐためというふうにされています。社会生活で不利益を受けることを防ぐなら、なぜ一旦望まない改姓をさせて、しかる後に名義変更を大量に発生させ、そうまでして同氏同戸籍の原則というのを維持する、それを維新さんは目指すんでしょうか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 少し誤解があるように思いますが、維新案では、婚姻により氏を改めた者であっても、婚姻と同時に新制度に基づく戸籍への旧氏記載の届出を行えば、あらゆる公的書類について旧氏をそのまま使えるように設計するという想定でございます。

 したがいまして、委員御指摘のように、旧氏、戸籍氏、通称としての旧氏というように、二度、三度の、大量に名義変更が必要ということにはならず、例えば、婚姻前の氏が記載されている運転免許証等の公的身分証は婚姻後もそのまま使い続けることができるようになることと想定しております。

藤原委員 昨日の参考人質疑で、藤田委員が質問者として、不便を解消させればアイデンティティーの問題が解消する旨、質問者としておっしゃったんですね。自分が名のりたい氏名をほかならぬ国から否定される、それこそが重大なアイデンティティーの毀損ではないかと考えるんですけれども、便利、不便利で片づけられる問題でしょうか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 便利、不便利、又は不具合とか不利益とかという言葉は、私が編み出したわけではなくて、一般的に使われているので、それを踏襲したり引用したりして使わせていただいているわけでありますが、まず前提として、氏を改めることによってアイデンティティーの喪失を感じる方がおられるということについては、維新案の提出者としても十分理解しているところでございます。その点、維新案が施行されれば、婚姻により氏を改めた方が、あらゆる公的書類における氏の記載はもちろんのこと、職業生活や社会生活のあらゆる場面で旧氏を使用できるということが想定されるために、一定、その喪失感はある程度まで解消されるのではないかというふうに考えています。

 ただし、私もいろいろな方にヒアリングをしたりして、昨日の参考人の中からもありましたが、小さな不便の積み重ねがアイデンティティーを一つ一つ毀損するという、つまりそういう実務的な話とアイデンティティーはリンクしているよというお話もあります。そのとおりだと思います。ですから、逆に言うと、そういう不便が全て解消されるわけですから、一定緩和されるのは、これは当然だと思うんですね。

 ただし、やはり、理想を求めておられる方、又はそれでも納得ができない方というのは一定おられるというのは、それは承知しています。それは、制度は、全ての制度に一〇〇%がないゆえに、しようがない宿痾だと考えています。ただし、あのとき私申し上げましたが、全ての個人の御希望や御要望を社会全体の制度として取り入れるかということについては、一つ一つやはり合意形成が必要なわけでありまして、それは世論調査を参考にもするし、そして、それを、二択、三択問題もありましたけれども、より解像度の高い形で酌み取った上で、こうして国会の場で議論をし合意形成をしていくというのが本来の姿でありまして、個人の御希望というのをかなえたいという思いは、私は一にしていると思いますが、それが社会全体の制度として取り入れられるかということについては、総合的な合意形成、こういう思いでおります。

藤原委員 維新さんは、法案提出時に、選択的夫婦別姓の推進派と、戸籍制度の根幹を変えるべきではないと主張している人の両方と合意形成できる案と説明されています。これはかなり苦渋の色がにじむんですけれども、苦心の跡がにじむんですけれども。一方、法務省及び法務大臣は、国会で何度も、選択的夫婦別氏制度導入後も、戸籍の記載、機能は変わらず、仮に導入されても問題ないという答弁があるわけですね。

 維新さんのおっしゃる戸籍制度の根幹、これはどういうことなんでしょうか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 我が党は、民法改正による選択的夫婦別氏制の導入は、現行の氏の原則と戸籍制度の原則を大きく変えることになり、国民の間にもなお慎重意見があると考えて今回の法案を提出したものでございます。

 委員御指摘の戸籍制度の根幹については、法律上の確たる定義があるわけではございませんが、提出者としては、夫婦の氏が同一であり、子はその父母の氏を称するという夫婦親子同一氏の原則と、その氏を同じくする夫婦及び子を単位として戸籍を編製するという同一戸籍同一氏の原則とが戸籍制度の根幹ではないかという考えに基づきましてやっているわけでありまして、ここは御党の考え方等、米山委員からも答弁ありましたが、ファミリーネームや同一氏同一戸籍の原則というのは重要視しない、優先順位を下げて変えるということでありますから、これは考え方の違いに当たると思います。

 これは、だから、合意形成の中でどちらが賛同できるか、より幅広い合意形成ができるかということに尽きるというふうに思います。

藤原委員 五月二十七日の民事局長答弁で、戸籍は、国民の身分関係を公証し、検索するという機能という答弁があります。これに尽きると考えるんですね。

 維新さんが今おっしゃった、藤田委員が答弁くださった、戸籍制度の根幹が、夫婦が同じ氏を名のるというものというふうにおっしゃいますけれども、これは本来の戸籍の機能に独自の意味合い、味つけをしているということになりませんか。それを後生大事にしているようにしか見えないんですけれども、違いますか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 戸籍は、親族的身分関係を登録し、公証する機能を有するものであるという点については、維新案の提出者も同じ認識でございます。

 維新案により導入される新制度において戸籍に通称として使用する婚姻前の氏を記載することとするのは、そのような戸籍の機能に着目し、それを拡張しようとするものであって、戸籍が現在果たしている機能と全く異なる独自の意味合いを付与するものであるとは考えておりません。

藤原委員 維新さんの案が招来してしまう、法的効力を失ったはずの婚姻前の氏に単体で法的根拠を与える、複数の旧姓がある人は様々な氏名を法的に使い回すことも可能になる法制化というふうに言われても仕方がないんですけれども、これこそ戸籍制度の機能を揺るがす、根幹を揺るがす、そういったものになりませんか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 それは、質問の趣旨としては、旧氏が何個もある人は使い回せてしまうんじゃないかというような質問かなと理解したんですが、ちょっと誤解があるようなので。

 維新案におきましては、通称使用を希望する場合に届け出る婚姻前の氏は婚姻直前の氏に限られますので、仮に複数回結婚して複数の旧氏がある者であっても、届出が可能な氏は一つしかありませんので、使い回せるという指摘は当たらないものかと認識しております。

藤原委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

西村委員長 次に、松下玲子さん。

松下委員 立憲民主党・無所属、松下玲子です。よろしくお願いいたします。

 今日、私は、まず最初には、婚姻前の氏の通称使用に関する法律案、いわゆる維新案と以下呼ばせていただきます、最初には維新案について何点か質問させていただきます。

 この間の質疑を通じて、維新案は、社会生活上の不利益を解消しようとする目的で作られ、提案されたということが分かりました。婚姻によって九五%の女性が改姓している現状がありますが、男性でも改姓している人もいます。改姓した女性、男性共に、婚姻前の名前で仕事や社会生活を営んでいる人の不利益に着目をして、通称使用を戸籍の上でも明記する案とのことです。

 一方で、名前を変えずに結婚したい、大切な氏名を旧姓とか通称にしたくないというシンプルかつ根源的な願い、個人のアイデンティティーや人格権や尊厳を守るという観点には立っておらず、その点の問題は解消されないということも明らかとなっています。

 戸籍法を改正する通称使用の法制化で、では、本当に現状の不利益が解消されるのかという点で、その点を確認いたしたく、以下、何点か質問いたします。

 六月四日の衆議院法務委員会では、維新案提案者は、例えば金融機関の口座名義について、努力義務であるため、実際には全ての場面でというわけにはいかないかもしれませんとお答えになられています。つまり三条一項以外の、二項の様々な社会活動の場面では、必ず個人の旧姓単記が確保されるとは限らないということでよろしいですか。お答えください。

藤田議員 お答え申し上げます。

 その前に、維新案が、社会生活上の不利益を解消しよう、そういう思いと目的を持って提案しているということに理解を示していただきましたことに、まずは感謝したいと思います。ありがとうございます。そこは同じ思いだと思います。

 その上で、先ほど来答弁しているのとちょっと重なるんですが、事業者等の公私の団体がその活動においてどのように個人の氏名を記載するかの判断は、本来、自由であることを踏まえたものでありまして、委員御指摘のとおり、事業者の活動と関係する部分については個人の旧氏の単記が直ちに認められるということにはならないかもしれませんが、法律上の努力義務である以上、できる限り多くの場面で旧氏の単記が認められるようにしていただきたいと考えております。

松下委員 冒頭お話しになられたように、理解、社会上の不利益を解消したいという思いを持って、私どもとも同じような思いを持って、別の方法で法案を提案されているということには敬意を表するんですが、本当にそれで現実がよくなる、本当に不利益が解消されるという疑問もたくさん持っていますので、その疑問を一つ一つひもといていきたいなと思っております。

 次に、この法案三条二項について、例えば、事業者等がその組織における個人の通称使用を認める場合、それはあらゆる場面についてそうすべきという趣旨ですか。あるいは、事業の重要な場面とそうでない場面に分け、場面の性質を踏まえて戸籍名と通称を使い分けする現在の在り方を踏襲してもよいということですか。あるいは、当該個人の希望に基づき、場面によって戸籍名、通称を使い分けることはよいという意味ですか。教えてください。

藤田議員 お答え申し上げます。

 先ほど述べましたように、事業者等の公私の団体がその活動におきましてどのように個人の氏名を記載するかの判断は、本来的には自由であることでありますから、維新案では、これらの団体に対して努力義務にとどめているというところでございます。

 この点、提出者としては、呼称秩序の維持の観点から、社会生活上の幅広い場面において、なるべく通称の単独使用が認められることが望ましいと考えています。

 事業者等においては、これが法律上の努力義務であるということをしっかりと受け止めていただき、努力していただけるように考えておりますが、先ほども申し上げましたように、法的な公的証明書については全て単独使用が認められるという設計でありますから、持ち歩いているもの全てにつきまして、運転免許証とかを含めまして、旧姓、旧氏単記なわけですね。ですから、例えば、会社がわざわざ、戸籍名であなたは社員として活動しなさい、そういうインセンティブはほとんどないというふうに思います。だから、合理的に考えればこれが広がっていく。

 ただし、私も私企業を経営してきましたからよく分かりますが、そこまで細かいことを、例えばニックネーム同士で呼ぶとか、それを要は社員名簿に記載しておくみたいな、そういうユニークな管理簿を作っておられる企業もありますよね。ですから、そういうところまで含めて、誰がどういう運用をするかということを私企業に強制するというのは、私は少し違うというふうに思います。

松下委員 旧姓の単独使用を望ましいと思われていても、実際には、公的証明書が旧姓単独になったとしても、民間は努力義務ですから、そうじゃない場合にちょっと不都合が生じるんじゃないのというのは先ほど藤原委員が幾つか質問していましたので、そこは重ねては問いかけませんが。

 例えば、事業者、勤務先の会社が、その個人の希望に反し、旧姓ではなく戸籍名や旧姓併記で扱っても、これは法的には全く有効ということですよね。行政罰など何らかの制裁は、努力義務ですから、ないですよね。それだと、個人としては、これまで同様、私、旧姓で会社の中でも全部してほしいのに、できないなんてということは、個人個人の努力で粘り強く勤務先と交渉を続けるほかないということでしょうか。教えてください。

藤田議員 お答え申し上げます。

 素朴に思うんですけれども、私企業に強制した方がいいと思ってはりますか、皆さん。私はそうは思いません。いわゆるこれは法律のたてつけ上の話で、私企業にそこまで強制するかどうかということなので、基本的に、行政罰等で制裁をするということが似つかわしいとも私は思いません。

 一方で、先ほど来申し上げていますように、努力義務として履行していただけるように、政府や関係団体を挙げて広報、周知に努めてもらうことも重要と考えておりまして、これからの取組が通称使用を望む方々への力強い後押しになるというふうに期待をしております。

松下委員 論点がちょっとずれちゃうので。

 私企業に強制するのが、私、目的だと思っていないんですね。法律婚で結婚前の名前を使い続けたいと願う人の思いをかなえるために、日常生活においても、そして、結婚ができて、生活ができて不利益にならないということが大事なことだと思っていますので。そういう意味で、これは別に、私企業にという、そこが論点ではありませんので。そこは、本当に維新案で不利益解消されるのというときに、努力で会社に言い続けなきゃいけないということは不利益解消にならないですよねということを私はお伝えしたいということをお話ししたいと思います。

 そして、金融庁にお聞きします。

 旧姓の通称使用に対応している証券会社はありますか。また、株式、投資信託、国債、社債、iDeCoなどを旧姓口座で取引ができる金融機関はありますか。教えてください。

尾崎政府参考人 お答えいたします。

 金融庁におきまして、旧姓の通称使用に関して対応している証券会社は把握しておりません。また、旧姓口座で御指摘いただいたような有価証券の取引ができる金融機関についても承知しておりません。

松下委員 そうですよね。証券会社では、旧姓単記口座の開設は、従来の経過からしましても、マネーロンダリングや脱税対策、証券保管振替機構での複数社で取引している者等の名寄せの困難さ、海外取引での整合性などの問題があり、非常に難しいと予想されます。

 金融庁の調査に旧姓へ対応しているとお答えになった金融機関でも、ユーザーへは九割は告知しておらず、旧姓口座開設の求めがあっても断っているケースが多いと、六月五日の参議院金融財政委員会でも明らかになっています。

 そして、先ほどの藤原委員への御答弁の中に、今、でも、銀行では七割は旧姓で作れるよねとありましたけれども、それはちょっと誤解があると思うんですよ。本当に作れるか、私、やってみていますけれども、できないですよ。

 通称って、旧姓の通称ではなくて、外国籍の方の通称は認めているところもあるようですけれども、私、結婚前の旧姓に戻したいんです、通称使用しているからといっても、一部できるものはありました、振り込みをするときに、振り込みで困るから私も変えようと思ったんですけれども、店舗で振り込み用紙に口座番号と名前を書くのに、旧姓でも大丈夫ですよと。でも、ネットバンキングで口座番号を入れたら書く暇はありませんから、もう新姓、今の戸籍姓が出てくるんですね。そこは、これを七割、今でもできるから大丈夫と言うのは、ちょっと事実と異なるんじゃないかなということをお伝えしたいと思います。

 維新提案者に伺います。

 金融機関、証券会社のみならず、このように取引先の会社が拒否をしたら、個人としては戸籍名で取引するほかないと思われますが、いかがですか。これで本当に不便は解消されますか。

藤田議員 御指摘ありがとうございます。

 まさに今委員がおっしゃっていただいたのが、現行法制下で広がっている、運用の工夫による旧姓使用の拡大の一番の問題点なわけですね。ですから、それを乗り越えようというのが今回の法整備であります。なぜならば、金融機関からすると、ちなみに、私の知人では作れた方がいらっしゃいました、旧姓で作れた方がいらっしゃいましたが、それを、戸籍を見れば一目瞭然、その人が公的書類において、全ての証明書において旧氏を使うと届け出ているということが一目瞭然でありますから、これは、名寄せについてももう数秒で終わるわけでありますね。

 ですから、事業者等においてはあくまで先ほどの設計思想から努力義務ということでありますが、これは、旧氏の通称使用が確実に認められていくものと承知をしております。

松下委員 日本国内の努力だけではどうにもならない、パスポートのICチップの問題があると思います。これは日本だけでできることではないですよね。ICAO、国際規格でICチップはできていますので、どんなに旧姓使用を法制化したといっても、旧氏をそのままパスポートのICチップに使用できるようになるとは思えないんですね。

 そうしたことを考えますと、通称使用の法制化に関する政府見解というものがございます。選択的夫婦別姓制度が導入されるまでの暫定的な措置です、この政府見解をどう考えられますか。暫定的な措置として今回通称使用の法制化を提案されているのですか。お答えください。

藤田議員 お答え申し上げます。

 政府が行っている現在の通称使用の拡大措置についてはともかくといたしまして、我が党は、多くの国民が通称使用の法制化を望んでいると考え、受け止めた上で、婚姻によって氏を改めることにより直面する様々な社会生活上の不便、不利益を将来にわたって解消するため、恒久的な制度として今回法律案を提案しているというものでありまして、暫定的な措置としての認識があるかというと、私にはありません。

松下委員 政府見解とは異なるということですね。

 この間、政府見解では、令和四年二月二十八日参議院予算委員会での大臣答弁、令和四年五月十九日の参議院法務委員会での内閣府答弁で、あくまで通称使用というのは、これは暫定的措置であるというふうにお答えになられています。

 そして、今お答えの中で、多くの国民が通称使用の法制化を望んでいるんだとおっしゃいましたね。私、望んでいないんです。望んでいないんですね。多くの国民というのは言い過ぎじゃないかなと思います。

 そこは、多くの国民が望んでいるという、思いたい気持ちは分かるかもしれません、法案提出者ですから。何かお答えがあるんですか。

藤田議員 ちょっと、多くのの定義によると思いますが、先日の参考人質疑でもありましたように、二択、三択問題で、三択の場合、いわゆる私たちの案、つまり旧姓使用の法制化というのが多数を占めてくる、相当一定のボリュームを占めてくるというのは、これはどこの調査を取っても明らかな傾向なんですね。それをもって多数か少数かというのは、これは価値判断の話でありますが、私は、相当数、社会に受け入れられる、そういう案だというふうに承知をしております。

 また、暫定的な措置かどうかというのは、私、政府見解が、現在の通称使用の拡大なのか、法制化を指しているのか、どっちを指しているのかちょっと定かではないですけれども、議員立法の提案者といたしましては、これは何か一時的なものとしてではなくて、恒久的な措置として堪え得る、そういう制度設計として検証した上で提案をしたものでございます。

松下委員 暫定的な措置ではないということですから、それだと旧姓単記使用者が増えて戸籍姓の無効化が進み、戸籍姓というのは一体何のためにあるのということになると思うんですよ。そして、社会が別姓家族の存在に慣れたら、そうしたらシンプルに選択的夫婦別姓制度の方がいいと私は思うんですよね。

 三択のことを何度も出されますけれども、だからといって別姓で結婚したいと望む人を切り捨てていいことにならないんですよ。だから、私たちは、今回、民法を改正する法案を提案しているんです。分かっていただきたいですね、そこは。切り捨てちゃ駄目ですよ。数が多い少ないじゃなくて、今まさに困っている人がいたら、その困っている人を支えて、救うのが政治の役割じゃないかなと私は思います。

 質問、次に進みますね。

 そして、二十代から五十代だけでも、選択的夫婦別姓の導入を待って事実婚のままでいる人は五十八万七千人いるという調査が、この四月、公表されました。

 婚姻によって氏を改めたくない、婚姻する二人が、生まれてからこれまで生きてきた氏のまま婚姻したい、尊重し合いたいという思いをどう考えますか。

藤田議員 委員の熱い思いを受け止めさせていただきます。

 維新案が施行されれば、婚姻により改氏した方が職業生活や社会生活のあらゆる場面で旧氏を引き続き使用できることになるため、生まれてからこれまで生きてきた氏のままで生き、結婚もしたいという思いは一定程度実現できるものと考えております。

 また、結婚した際、女性、妻側が氏を改めることが一般的というか多数である我が国におきましては、特に女性の職業活動や社会生活における不利益が問題となりますが、これについても維新案の施行によりかなりの程度解消できるものと考えておりますが、先ほど来ちょっと、正直に申し上げているように、全ての方の御納得をいただけるかというのには、これは我々の案もそうですし、一〇〇%ではないというのは、それは事実、認めております。ただし、先ほど来申し上げているように、個人のそういう希望と、それから社会の全体の制度をどうするかというのは、やはり総合して考えるべきものでありまして、これは国民的理解や国会の場での合意形成が非常に重要であると思います。

 全く僕らの案が解消されないという論陣を張らないでいただきたいんですね。なぜならば、五十八万七千人の中には、私たちの案でほとんど御不便も解消、ほとんどというか全て解消されて、それで御納得いただけて、一歩前に進んで、すごく安心して前に進んでいけるという方もたくさんいらっしゃると思うんですよ。そのために僕らもやっていますし、そういう方がより多く出てきていただけるように、対立の議論ではなくて制度の根幹の部分の違いを明らかにしながら、我々の提案の思いも耳を傾けていただけたらという思いでさせていただいていますので、どうかよろしくお願いいたします。

松下委員 お気持ちは分かるんですけれども、総合的に考えて、結婚をして姓を変えたくないという人がいて、その方たちが待っているんですよ、選択的夫婦別姓制度が実現できることを。そこに応えないのはもったいないと思いますよ。そこを私はお伝えしたいと思います。総合的に考えるととおっしゃったので、今の強制的夫婦同姓制度から選択的夫婦別姓制度。そして、通称で名のり続けたいという人は通称を使ったらいいんですよ、今のまま使えますから。何も法制化しなくても、この間政府が拡大をしてきた、結婚して籍は変わった、名前は変わったけれども旧姓で仕事をしたい、こういう人がいらっしゃるのも事実なので、それも全てかなえるのが実は選択的夫婦別姓制度なんだということをちょっと私は御紹介したいと思っています。

 そして、ちょっと飛ばそうかな、時間がなくなって。

 維新案では、旧氏は、届け出ると専用して使えます、しかし、あなたの本名は別に存在しています、公文書では使わない、使えない戸籍名ですという説明を、一般の方は理解できますかね。なぜそんな複雑な制度にするのかなと思います。簡潔にお答えください。

藤田議員 お答え申し上げます。

 維新案により導入される新制度では、通称として使用する婚姻前の氏の届出をした場合には、公的書類には旧氏のみが記載されることになり、社会的に個人を識別、特定する機能を果たしているのは専ら通称使用する旧氏ということになります。

 一方、戸籍名についても、引き続き、夫婦から子に受け継がれ、家族のアイデンティティーの基礎となる家族の呼称としての意義を有するものとして残り続けることとなります。

 以上のような維新案の内容は複雑という御指摘でありますけれども、現行制度でも戸籍名の存在を前提とした上で旧氏の通称使用の範囲を拡大しているところ、維新案による旧氏の法制化につきましてはその延長線上にあるものでありまして、国民にとってもなじみやすいものではないかというふうに考えております。

 いずれにしましても、維新案による新制度が導入された場合には、政府において国民に対する十分な周知、広報等を行っていただく必要があると思っております。

松下委員 維新案の旧氏の定義も、これはちょっと通告はしていないんですけれども、実は私も、先ほどの藤原委員との質問を聞いていても、今聞いていても、ちょっと分からなくなってきてしまっているんですよ。

 人によっては、子供時代に親の離婚や再婚で氏が変わり、その後、自分の婚姻や離婚でもまた氏が変わり、複数の氏の経験を持つ人も少なくないですよね。住民票やマイナンバーカードやパスポートの現在の旧姓併記は過去の戸籍上の氏のどれを選んでも併記してよいという制度なんですけれども、維新案は、通称として届け出る旧氏も、過去の戸籍上の氏のどれを選んでもいいんですかね。そこをちょっと教えてほしいんです。

藤田議員 お答え申し上げます。

 ちょっと今、私も曖昧だったので確認しましたら、民法上、婚姻前の氏というのは直前の氏を指すようです。もし、それが、仮に選べる方がいい、ただ、届出して、それを規定するわけでありますから、最終的には一つになるわけでありますけれども、選べる方がいい、そういう御指摘は、それは真摯に受け止めたいと思いますので、是非修正案を出していただきまして、御一緒できたらと思います。

松下委員 分かりました。今の維新案では選べない、婚姻直前の氏ということが分かりました。選べないのはね。直前で、元々の、生まれたときの氏でもないということですね、場合によっては。それは分かりました。

 婚姻により夫婦の一方が改姓し、改姓した者が通称として旧氏を使用する旨を届け出た場合に、戸籍には戸籍氏と旧氏の二つの名前が生まれます。この届出は、私、気になったのが、何度でもいつでも可能ということが、この間、質疑でおっしゃっているんですね。何度でもいつでも可能とすると、一人の人が戸籍氏と旧氏という二つの名義の口座を開設できることになりますよね、一旦作った口座は銀行は勝手に消したり名義変更できないので。すると、戸籍氏で確定申告を行い、屋号欄に旧氏を記載しない場合は、税務署がこの人の税務調査をする場合にどうしたらいいのかな、必要なのを行えるのかなと思ったんですが、これを聞きたかったんですけれども、聞いても、できますと、きっと精神論で言われてしまう感じがするので。きっと企業はそんなことをしませんという、さっきからそうだったので、ここは飛ばしますね。

 そして、私は、すごく大変だと思います。地方公共団体では、日頃、税や国民健康保険料の滞納など、条例に基づいて公債権の強制徴収というのを行っています。差押資産調査のために金融機関等への照会時に戸籍氏と旧氏のどちらで調査をするか、どちらでも調査をするのか、混乱しませんか。地方公共団体は正しく滞納処分を行うことができると考えますか。お答えください。

藤田議員 お答え申し上げます。

 先ほど答弁したものと重なるかもしれませんが……(松下委員「じゃ、重なるところはいいです」と呼ぶ)いいですか。禁じているわけではありませんので、どちらでも調査しやすい方で適切に対応するということになると思います。

松下委員 そこは多分、相当難しいと思いますよ。要は、ダブルネームを管理をして、どう調査するかというのは、私自身も滞納処分を行っていた立場からすると、本当に、きっと大変じゃないかなと。地方自治体の職員の皆さんの顔がちょっと思い浮かびますね。本当に大変だと思います。

 氏名は、個人の特定、識別という重要な機能を持っています。戸籍氏と名、旧氏と名では、同一人物かどうかを戸籍により確認する以外に方法はなく、使い分けを個人の判断で行うのであれば、より混乱が起きて、本人確認に時間もかかり、不利益解消にならないと私は思いますことをお伝えをします。

 そして、維新の会さんは、二〇二二年に参議院選公約、実は、選択的夫婦別姓導入を掲げていらっしゃるんですよね。結婚で姓を変えることが女性の仕事や社会活動に不利益をもたらしており、早急な対応が必要と、もう二〇二二年に早急な対応が必要とおっしゃっています。しかし、今回、旧姓法制化法案提出に至ったのは、これは本当に何でだろうなと思っております。

 立憲民主党、国民民主党が答申案で出したこの法案、これは本当は、昨日の参考人の方もおっしゃっていました、一本化できて、そこにみんなが賛成する、みんなが乗ってきたらいいのになと私も思っているんですが、その方が早期に不利益の解消が可能となると思いますが、選択的夫婦別姓導入という考え、今もお持ちですか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 維新の会がマニフェストとしてうたっているのは、私は責任者だったからよく存じ上げていますが、維新版選択的夫婦別姓制度というふうなことで、それには、具体的には、現在の戸籍制度及び同一戸籍同一氏の原則を維持しながら旧氏の通称使用にも一般的な法的効力を与えるという文脈の中で、それを維新版選択的夫婦別姓制度というふうに銘打って、当時の政調会長と、もう今いなくなりましたが、そちらの党に行かれましたが、協議した上で、決裁を得て打ち出したものでございます。

 この制度設計の骨子につきましては、二〇二二年のみならず、二〇一九年から二度の参議院選挙、二度の衆議院選挙で同じ趣旨の、文言は少し修正しましたが、同じ趣旨のものでございます。

 したがいまして、民法を改正して選択的夫婦別氏制度を導入しようとする立憲案、国民案とは大きく理念が異なるということは認識をした上で申し上げております。

松下委員 その維新版選択的夫婦別姓制度というのをどれだけの国民の皆さんが理解をされていたのかなと思うと、ちょっとこれは名前に偽りありじゃないですけれども、選択的夫婦別姓制度とそれは呼ばないんじゃないかなというふうに私は感じましたので、お伝えを申し上げたいと思います。でも、今の、今回の法制化がまさにマニフェストの実現なんだよというお答えというのは理解をいたしました。

 次に、民法の一部を改正する法律案、国民民主党案、立憲民主党案についてお伺いしたいと思います。

 国民民主党案は、この間の質疑を通じて、子の氏の決定に関しての思い、リプロダクティブヘルス・アンド・ライツの観点から工夫されて決定したことと思いました。私自身、子供を産む、産まない、産めないなど、様々な理由があり、産みたくても産めない人がいることへの配慮が必要だと考える一人です。熟年婚もあり、婚姻が必ずしも子供と結びつかない人もいらっしゃいます。

 一方で、子の氏を安定的に確定するため、法制審案と同じく、婚姻時に子の氏を決めることが、産む、産まないのみならず、養子縁組にも対応することもあると考え、立憲案も国民案同様、子供の姓の決定をどうするか、しっかりと議論を行い、決定をしてきました。国民民主党案も、理念も内容も立憲民主党案とほぼ同様と考えます。

 そこで、制度を実現するためにも、両党、両案ができる限り歩み寄り、より多くの賛同者を得て民法改正が実現できることが望まれると思うのですが、いかがですか。

円議員 お答えいたします。

 おっしゃるとおり、立憲案と国民案の相違点は、まあ幾つかはありますが、両案とも、選択的夫婦別氏制を導入しようとする点においては同じでございます。

 また、私どもの国民民主党案は、選択的夫婦別氏制度に関する様々な意見に応えるために、また、おっしゃるとおり、子供に関しても様々な方々がおられることから工夫をいたしまして、法案として取りまとめ、提出したものでございます。

 そして、委員会での審議などを通じて私たちの案に是非御理解をいただき、より多くの賛同者を得て、必ずこの夫婦別姓の選択制、この法案を実現できる、別姓を選択できる社会にしたいと思っております。

岡本(あ)議員 御質問ありがとうございます。

 法案提出者ですので、法案の変更や、最初の姿をどうすべきかという立場ではありませんが、松下委員と考えを同じにしたいと思っております。

 要は、幅広く賛同を得て、現在不都合を感じていらっしゃる方、法律がないために事実婚を選ばざるを得ない方、アイデンティティーを大切にしたい方に一刻も早く応えることこそ私たちの願いでございます。

松下委員 本当に、この夫婦別姓、選択的ですから。待っている方がいらっしゃいます。特に若い人たち、今のままでは結婚したくてもできないと涙ながらに訴えて、事実婚を選ばれている方もいらっしゃいます。これを解消するのが政治の役割じゃないでしょうか。

 先人が、努力によっていろいろな女性の権利を獲得してきてくださいました。成人男性にはあった選挙権も被選挙権も、女性にはない時代がありました。結婚して必ずどちらかの姓に統一しなければならないという中で、九五%の女性が改姓している現実があります。生まれてから生きてきた名前で愛する人と家族になって生き続けたい、こうしたシンプルな願いをかなえるのが選択的夫婦別姓制度だと思いますので、多くの皆さんの賛同を得て、両案が私は一つになって実現することを願い、質問を終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、金村龍那さん。

金村委員 日本維新の会の金村龍那です。

 松下委員の熱量に私も感化されたような質疑をやっていきたいと思いますが、自信はありませんので、御期待はいただかなくて結構だと思います。

 その上で、まず冒頭、私から一言申し上げさせていただきます。

 六月四日に、我が党の藤田委員の質疑の中で、公明党さん及び自民党さんのいわゆる政調の部会での説明の機会をいただけていないという趣旨の発言がありました。実際には、公明党さんにおいては、部会長及び部会長代理の方が我々の法務部会の部会長のところに来ていただきまして、そこで維新案の説明をさせていただく機会はありました。少し表現が、誇張があったと思いますので、ここでおわびをさせていただきます。恐縮でした。

 ありがとうございます。

 その上で、まず初めに、維新案に対する質疑をさせていただきます。

 自民党さんの政調の氏制度のあり方に関する検討ワーキングチームのペーパー、私も拝見しました。本当に、維新が課題と思ってきたところが、幾つか羅列している中で、「今後の議論について」というところで、私も、これは、立憲民主党さんの案や国民民主党さんの案、そして我が党の案、様々ありますけれども、本来は制度設計が、この案のどれかに決まり、その後、実際に社会に実装されていくところの議論が本来は一番丁寧にあるべきだと思っているんですね。

 自民党さんの議論の中でも、「旧氏の単記も可能とする法制化を含めた基盤整備の検討を進める。」、ここ、注釈が入っているんですね。そういう意味では、維新案でもこの基盤整備という表現があると思うんですけれども、具体的にどのような基盤整備を現段階において検討しているのか、お答えください。

藤田議員 お答え申し上げます。

 維新案施行後、あらゆる公的書類における旧氏単記を可能とするための法制上の措置につきましては、例えば、パスポートであれば旅券法、運転免許証であれば道交法といったように個別の法律を改正していくことが基本でありますが、例えば、先ほど例示いただきましたように、新法を制定して一括して旧氏及び名を氏名とみなすという方法も考えられますが、検討が必要かと思います。

 その中で、具体的なイメージで申しますと、戸籍には法的にこの旧氏が明記されます。そこで確実なひもつけがなされるわけでありますが、その他、よく言われますのは、住民票、マイナンバーカード、運転免許証、それからパスポート、こういったものは、本人を特定する、いわゆる重要度の高いものでありまして、そういったものの取扱いをどうするかという階層と、それから、六百六十とよく言われますけれども、形式的に氏名が使われていて余り、波及効果が少ないというものもありますから、そういったものを読み替えるというようなことを法律を一つにまとめてやる、そういう基盤整備みたいなことが考えられるということを申し上げてきました。

 これにつきましては、先ほど御紹介いただいた、自民党の六月三日に出された氏制度のあり方に関する基本的な考え方の中の「第二 今後の議論について」の中にも出てくる考え方でありまして、「旧氏の単記も可能とする法制化を含めた基盤整備の検討を進める。」と。これは、検討を進めるだけではなくて、公式か分かりませんけれども、相当いろいろ練り上げられて検討されているということは私も承知しているし、私自身も相当勉強をさせていただいております。

 加えまして、せっかくですから、その考え方には議論の整理として五つの重要な論点が書かれておりまして。

 一つ目の戸籍制度の原則の維持。これは、私らも同じく、戸籍制度の原則の中の同一戸籍同一氏を重く見て、それを保守しようという考え方。

 それから、経済社会活動の不便の解消。これが二番目でありますが、これは従前より私たちが一番の狙いとして提案しているところであります。

 それから、子供への影響。これをやはり考えるべきだという御指摘が三つ目にあります。これにつきましては、我が党の提案については、民法の改正に至らないということでありますから、現行法どおりで、子供の名前をいつ決めるか等のそういう議論は初めからないという認識でございます。

 それから、四番目には家族の一体感の維持。これについても、家族の呼称を、我々としては、ファミリーネームとして一つに定めるということは一定の合理性がある、そういう理念の下に制度設計されておりますから、これも同じであります。

 それから、国民の意見を反映した合意形成。これは、先ほどの旧姓使用の法制化を加えた三択であれば少し結果が、維新案に非常に好意的なアンケート結果になるということについて、この五つの論点につきましては、自民党さんが維新の解説をわざわざ六月三日に出してくださったかのような、非常に賛同できる、というかほぼ同じ考えでありますので。

 一つだけ違うとすれば、維新案は提出をし、ここまで議論をさせていただいていることに対して、自民党は法案提出をせず、今日は、びっくりしたんですけれども、自民党からの質疑がありませんでしたから、是非質疑に立っていただきまして、自民党の考えを、また個人の考えをお述べいただいて、していただければというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

金村委員 図らずも、私が求めた最後の方の答弁までいただきまして、ありがとうございます。

 その上で、先ほど松下委員もおっしゃっていましたけれども、やはり立憲民主党案と国民民主党案は非常に近しいと私も思っています。確かに、それぞれ込めた子供の氏に対するアプローチというのは、制度設計上、違いはあると思いますけれども、法制審案をベースとしているところ。そして、維新案は旧姓使用の法的効力の拡大、安定性。一方で、立憲民主党さんや国民民主党さんは選択的夫婦別姓の法案を提出されている。そういう意味では、近しいところの法案同士が連携を深め、そして、ある種一本化して、維新案との違いを明確にしていくことで、より国民に分かりやすく議論を届けていく必要もあるんじゃないかなという視点で、国民民主党案の提出者に質問をさせていただきます。

 子供の氏を戸籍筆頭者の氏に統一するというのが国民民主党案の私は特徴だと思うんですけれども、これは、私の視点で見ると、家族姓、ファミリーネームを重視する価値観に立っていると感じています。そのような理解でいいのか。また、そうであるとすれば、そこを重視した理由とか根拠がもしおありであれば、お答えいただけますか。

円議員 御質問ありがとうございます。お答えいたします。

 委員の御指摘は、私どもの案において、別氏夫婦が婚姻時に、おっしゃるとおり、戸籍の筆頭に記載すべき者を定めることにしたり、また、戸籍の編製基準を維持しようとしている点を捉えておっしゃっているのかなと思われます。

 私どもは、いわゆるファミリーネームに特段の価値を見出しているものではございません。そして、あくまでも、選択的夫婦別姓制度によって戸籍制度が壊れるという懸念をお持ちの方々がいらっしゃるものですから、そうした声に配慮して、現行の戸籍制度との乖離を最小限にとどめるように工夫したものでございます。

金村委員 ということは、例えば、六月六日、米山議員が答弁の中で、立憲案では家族の単一の呼称としての家族姓は存在しないことになるという答弁をなさったと思うんですけれども、立憲案のこの答弁に近しい感覚をお持ちで国民民主党案がこの案に至っているという理解でよろしいですか。

円議員 先ほども申し上げましたように、私たちは、いわゆるファミリーネームに特段の価値を見出しているものではございませんし、選択的夫婦別姓制度により戸籍制度が壊れるという御懸念の声に配慮して、現行の戸籍制度との乖離を最小限にとどめるように工夫した形でございまして、したがって、立憲案提出者の見解に特段意見する立場にはございません。

金村委員 今の答弁を伺いまして、他党の案ですけれども、米山議員にお伺いしたいんですが、私は、戸籍筆頭者からの子の氏が定まるところについて、家族姓、ファミリーネームに価値観を置いているのかなというふうに思っていたんですが、どちらかといえば、戸籍制度がしっかり、崩壊しないんだよということを考慮した結果、戸籍筆頭者を定めた国民民主党案ということが、今、円委員の答弁で分かりましたので、あえて言えば、立憲民主党案の提出者から見ると、立憲民主党案と国民民主党案の相違点はどこにあるとお感じになりますか。

米山議員 それでは、お答えいたします。

 あくまで私の理解ということでございますが、先ほど来お話があるように、立憲案と国民民主党案は極めて似ている、これはもうそのとおりであると思います。夫婦が別姓を選択できて、子の氏は婚姻時に定める、そういう構造もほぼ同じであると言えます。

 一方、国民案は、条文上、戸籍の筆頭に記載すべき者という、恐縮ながら、聞いただけではちょっと何を意味しているのか分かりづらい文言を使う上、また、戸籍の筆頭者には特段の意味はないということではございますし、そうだとは思うんですけれども、結局のところ、戸籍の筆頭に記載すべき者の氏が子供の氏となるなど、理念上、これも少々分かりづらいというふうになっていることは否めないと思います。ただ、逆に言いますと、その分かりづらさのみが基本的には違いでありまして、実のところ、それ以外の、分かりづらさをかみ砕いて考えてみれば、結局同じことを言っているということであろうと思います。

 なお、戸籍、ファミリーネームということについてちょっと補足させていただきますけれども、私が申し上げているのは単一の氏としてのファミリーネームはないということでございまして、もちろん、姓としては、妻の姓、夫の姓、二つしかないわけでございます。

 自分の例を言って恐縮なんですけれども、戸籍上は妻は米山姓でございますが、世の中一般にはペンネームが通用しているわけでございます。妻がホームパーティーをするときは室井さんのうちに行くと言われますし、私が宴会をするときは米山さんの家に行くと言われるわけでございまして、私は、室井家にも属しているし、米山家にも属していると思っており、妻もきっとそう思っていただけていると思います。

 そういう意味では、ファミリーネームがないというよりは、二つのファミリーネームがあるという方が正確かもしれないと考えております。

金村委員 ありがとうございます。

 やはり、今の米山議員の答弁を聞いても、非常に近しい関係、根っこが一緒ですからね、当然だとは思います。

 その上で、立憲民主党さんが法案の準備ができ、我々ができ、そして国民民主党さんができた。二つの案、つまり、法制審をベースにした案と旧氏、旧姓使用の我々の案の二つの案だけで闘わせるよりも、三つ出てきたことによって、議論が深まったり、またその違いが生まれたりすることが非常にいいことだと私は当初思っていたんですね。

 ただ、終盤を迎えるに当たって、法制審案をベースとしたところから非常に近しい法案の間柄である国民民主党さんの案と立憲民主党さんの案は、やはりもうちょっと連携を深めていった方が更に議論が深まるんじゃないかと私は思っているんですけれども、法案提出者として、立憲民主党の幹部の方も、中には連携をしっかりしていきたいという発言をなさった方もいると聞いておりますので、現場の担当者として、お二人がこの二つの案の連携についてどのようにお考えか、お聞かせください。

長友(慎)議員 金村議員の建設的な、前向きな議論に敬意を表したいと思いますが、立憲案と我々の国民民主党案、相違点は幾つかはあるものの、両案とも選択的夫婦別氏制を導入しようという点においては同じであります。

 私たちの国民案は、選択的夫婦別氏制度に関する様々な意見に応えるために工夫して別案として取りまとめ、提出したものでありまして、委員会での審議を通じまして我々の案に理解を求めていきたいというふうに考えております。

米山議員 これも私の見解ということでございますけれども、私は金村委員の議論には大筋で賛同するところでございますが、これも、私ももちろん、立憲案の方が分かりやすいので立憲案を出しておりますので、まとまるときには立憲案が軸となるというのが私の立場といいますか、もとより、そうでないなら自分の案は出さないわけですので、自分の案としてはそう思ってはおります。

 ただ一方、三案で審議している以上は三案で最後まで議論するんでしょうけれども、二案になったら二案で議論して、二案で採決することが筋だろうというふうに考えているということを申し上げさせていただきたいと思います。

金村委員 ありがとうございました。

 二十八年ぶりにいわゆる選択的夫婦別姓の議論がなされていること、私はこれは議論で終えてはならないと思っていまして。それは、たまたまですけれども、私が近しい、親しくしている間柄の方から、結婚適齢期を迎えたその人が、やはり、今の国会の意思、国会でこの選択的夫婦別姓についてどのような意思が示されるのか、それをもって婚姻に踏み切るのかどうかというのを決めていきたいというお声もいただいています。その人と話すと、すごく僕は腑に落ちたんですけれども、その制度がかなわないなら、かなわないと分かって次のステップを踏みたいんですね。

 いつこの選択的夫婦別姓が、例えば、我々が提出している旧姓使用の法的効果、そして選択的夫婦別姓、そういった議論が国会でされていることは分かるけれども、国会として結論を出さなければ自分が次の人生の選択を決めるのに至らない、また先延ばし先延ばし。これはやはり、結婚適齢期の皆さんにとっては非常に、いかがなものかなと私は思っています。

 その意味で、当然、我々日本維新の会は自分たちの提出した法案で合意形成をし、私は法案が成立することを望んでおりますが、一方で、まず採決をしっかりしなければその答えにも導かれないと思っていますので、まず、立憲民主党さんの提出者と国民民主党さんの提出者に、採決は必要だと本当にお考えなのか、そこをお答えください。

米山議員 端的に、必要だと思います。

 一九九六年ですか、のときには、私も当時、まだ若かったこともございまして、今ほど金村委員がおっしゃったようなお話を、若い私や私の同級生といいますか、の間で交わしたことも記憶しております。逆に言いますと、そういう思いを持ってずっと宙ぶらりんになった方々がこの日本にもう三十年近くいるということでございますので、それは仮に、私が望むような、若しくは金村委員が望むような結果にならないとしても、きちんとした結論を出すというのは立法府としての義務であろうというふうに考えております。

 それは、私が法案提出者として決めることではなく、ここにいる委員全員が決めることですので、是非そのような結論になることを法案提出者としても祈っております。

円議員 お答えいたします。

 私のところにも、一日も早くこの法案が実現してほしい、もう待てないとおっしゃる方々の声がたくさん届いております。私も三十年来、この選択的夫婦別氏制度が実現することを、活動してまいりましたけれども、採決をして、今、この法務委員会で、私は、否決されることになると残念ながら思っております。そんなために採決をする必要があるんでしょうか。

 もちろん、自民党さんや他の反対の方々、特に今、金村さんのお話をお聞きしたら、どうも夫婦別氏制に賛成でいらっしゃるのかなというような声も、気持ちもいたしましたが、維新さんも賛成していただければ採決をしたいと思いますけれども、私は、それよりも、継続審議にして、そして参院選後の臨時国会で必ずこれを実現する方がもっと可能性が高いと思っておりまして、今採決するのはどうかなと大変危惧をしております。

金村委員 本当に正直に心の部分をお話しいただいたお二人には感謝申し上げたいと思いますが、少数与党のこういった国会の様子があったからこそこの議法が実際に委員会で議論されていることを踏まえると、採決のタイミングというのはしっかりと、理事会も含めて検討していかなければならないと思っています。

 その上で、最後、どうしても、やはりこの採決に向けた覚悟を我が党の藤田委員に問いたいと思います。

藤田議員 覚悟を申し述べる立場ではありませんが、答弁者としてですが、先ほど両者の意見を私も聞いていまして、珍しく米山議員と全く同意見でありました。円委員の方が気が合いそうな気がしていたんですが。

 というのも、国会終盤になって議員立法をやるときに必ず出るのが、時間がないだろう、議論が尽くされていないだろうと言いますが、我々は、しかもこの法務委員会の理事会のメンバーは、かなり前から、十分な審議をやろうということを呼びかけ、そして準備をし、もっと遡れば、我々でいうとこの案にたどり着いたのが六、七年前でありますけれども、三十年も議論されてきたということでありますから、直前になって時間がないと言うのは己の無能さを吐露しているのと同じだというふうに思います。

 ですから、私は、やはり、これだけ記念すべき議論が審議入りしたわけでありますし、それは一つではなくて三つも出て、まさに、本当にお互い、両者を、敬意を払いながらの議論がここで行われ、その違いが国民の皆さんにもお分かりいただける、そのために汗をかいているわけでありますから、最終、国会としての意思を是非示すということをやっていただき、また、自民党には質疑に出てきていただきまして、今日は自民党だけが出ていませんけれども、是非出てきていただいて。質疑したい先生方はたくさんいらっしゃると思いますので……(発言する者あり)今、井出先生からはしたいと、それから、稲田先生はこの問題に私よりも長く関わられてこられた、そういう先生方でありますから。

 是非とも、何かそういう訳の分からない国会運営ではなくて、どちらがいいかは公の場での議論で正々堂々と国民的合意を求めていこう、そういう議論を是非やらせていただきたいと思います。

金村委員 時間になりました。ありがとうございます。

西村委員長 次に、萩原佳さん。

萩原委員 日本維新の会の萩原佳でございます。

 まず、質疑を始めるに当たって、私の方からも、立憲民主党及び国民民主党の皆さんに、夫婦別姓というテーマに関して問題意識をずっとお持ちになられて、そして、別姓に関して議論され、法案作成、提出に至ったことに対して敬意を表したいと考えております。

 幾ら、マニフェスト等に文言や、あと、いいアイデアがあったとして、それを法案提出というところまでやはり持っていくということに関しては、特に今法案、家族の在り方に関する大きな問題でございますので、党内で様々な意見があって、その調整に関して非常に大きな労力をかけられたと考えておりますので、その御努力に関しては敬意を表したいと考えています。

 また、先週来、先ほど来でもそうですけれども、非常によい議論、これが行われているのかなと思っておりますので、是非、分かりにくい部分も含めて、法案が明らかになった部分もあろうかと思います。当方の方からもしっかりと質疑したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、質疑に入らせていただきます。

 衆議院では約二十八年ぶりの法案審議になっていることで、非常に歴史を感じております。

 これまで、通称使用の拡大、これが進んできて、不利益はかつてよりもかなり少なくなっているものの、いまだに不利益が残っているということです。

 結婚により姓を変えることについて、女性が九五%と非常に大きくなっているという現状、また、その現状の通称使用の拡大案では解消し切れないパスポートなどの問題、今国会に提出された三法案についてはいずれもそうした不利益を解消しようとするものだと考えています。

 まずは、立憲民主党の法案提出者にお伺いいたします。

 先日の質疑で、米山委員から、当初としては、子供の出生時ごとに姓を決めるという案も検討しておりまして、我々は、論理的に、兄弟の姓が変わってはいけないというふうには考えておりません、最大公約数として、まずは兄弟の姓が一致するところから始めましょうというところでこの法案を提出しておりますとの御答弁がございました。

 兄弟姉妹で姓が異なってもよいとそもそも考える理由をお示しください。そして、まずは兄弟の姓が一致するところから始めるということであれば、今後の展開として、出生時ごとに姓を決めることを考えられているように思えますが、出生時に姓を決めるという方向性については今どのように考えられているのか、お示しください。

米山議員 では、お答えいたします。

 まずもって、現行法におきましても、国際結婚や、先ほど藤原委員の話でございました離婚後の連れ子の場合など、兄弟姉妹間で姓が異なる子供というのは現に多数おられるわけでございます。

 そして、昨日の参考人質疑において、小原参考人、次原参考人、布柴参考人のいずれもが、その状況において特段の困難はないというふうにお答えされておりました。

 また、私の個人的な話で大変恐縮なんですけれども、私は、実は、生まれたときは父方の姓である愛甲隆一という名前でございました。それが、私が小学校四年生になったときに、父が母方に養子縁組をしまして、戸籍上、米山隆一になりました。しかし、小学校の途中だったため小学校の間は愛甲隆一で通したんですけれども、このとき姉はちょうど、二年上ですので、中学校になりましたので、姉は米山花子、これは本当は花子という名前じゃないですけれども、仮で、米山花子となりましたので、外からは米山花子と愛甲隆一のきょうだいというふうに見えていたんだと思うんですけれども、それは特段の問題は感じませんでした。

 もちろん、それは、父の養子縁組という、ある種誰から見ても正当な理由というものがあったので問題なかったわけなんですけれども、新たな立法ができましたら、これもまた、兄弟姉妹の姓が変わり得ることは誰が見ても正当な理由ということになりますので、全く特段の問題は生じないものと考えております。

 その上で、将来の法改正がどうあるかは私が言えることではございませんが、個人的意見としては、私は、制度というのは一度決めたらそう簡単に変えるものではないと思っておりますので、十年、二十年単位で変わるようなことは考えておりません。

萩原委員 ありがとうございます。

 愛甲隆一さん、初めて知りました。

 兄弟姉妹で氏が異なる家庭が、当然、不幸であるなどと言うつもりは一切ないというのは大前提として申し述べますけれども、国際結婚等々でいうと、推定で夫婦別姓家庭が四十万世帯ほどあるというところも承知はしております。とはいえ、家族としての一体感というのが失われるのではないのかという声にも耳を傾けるべきじゃないのかなと考えています。

 今、十年、二十年で変えるつもりはないという、あと、その後、出生時に変えるかどうかというところに関しても十年、二十年は変えるつもりはないという話はされていましたけれども、それに関して、そもそも戸籍というのは、親族的身分関係、これを戸籍簿に登録して、これを公証する唯一の制度で、家族のインデックスとしての機能がある。

 また、そういう意味では、十年、二十年、じゃ、それを超えるとまた変えていくのか。この話は、将来的には、戸籍が個人のインデックスを示すもの、いわゆる個別戸籍に移行していくための一つの通過点でしかないようにも思えるという声もあったりするんですけれども、済みません、更問いで申し訳ないんですけれども、それについてはどのように考えられているのか、お示しください。

米山議員 そういう御懸念をおっしゃられる方はおられるというのは承知しているんですけれども、そういう特段理由のない御懸念に関しては何とも答えようがないというところなのかと思います。

 といいますのは、それは、五年後、十年後、どのような法制度をするかというのは、そのときの国会が決めること、そのときの世論が決めることでございまして、そもそも私はそのときに国会議員でいられるかどうかも分からないわけでございますので、五年後、十年後の話をする、そういうつもりなんじゃないかというような議論をするのはちょっと議論として益がないのかなと思います。

 この法制度はこの法制度、我々の法案は我々の法案としてその是非を問われるべきであり、この法案の中には、決してそんな、ここに書いてある以上のことは書いていないわけでございますので、ここに書いてある以上のことをいろいろと、御心配は御心配として分かるんですけれども、それは、各自御心配されること以上に何か言えることはないというふうに考えております。

萩原委員 ありがとうございます。

 その心配、気にするなという中でも、今回、やはり、大事な家族の話だと思いますので、それを気にするなというのはなかなか難しいのかなというのが当方の所見でございます。

 じゃ、続きまして、国民民主党の法案提出者にお伺いいたします。

 内閣府の世論調査によれば、全体で、夫婦同姓制度維持が二七%、旧姓の通称使用の法制度を設けるものが四二・二%、選択的夫婦別姓制度の導入が二八・九%となっています。選択的夫婦別姓制度を導入すべきという方は二八・九というと、これは三割にも満たず、多くは旧姓使用の法制化を求められていると言ってもいいのかなと。しかも、これは五千人の方に郵送して二千八百八十四人の有効回答があった公的な調査でございます。

 EBPMの観点からすれば、多くの方が求めている旧姓の通称使用の法制化、これを進めていくことがやはり望ましいんじゃないのかと考えております。

 先日の質疑で、内閣府の世論調査について、円委員は、この世論調査だけを余り基盤にしてお話しされるのはちょっとどうかなというふうにも思っているという発言をされておりました。確かに、個別に伺うと様々な意見というのはあろうことかと思います。

 実際に、選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見が、女性の中で、旧姓の通称使用の法制化を設けるものよりも多い世代もあります。例えば、十八から二十九の年齢では、選択的夫婦別姓の導入を求める意見が四五・七%であるのに対し、旧姓の通称使用の法制化は四三・三と非常に拮抗していて、別姓の方が多いという状況ではあります。ただ、現状の制度の維持、一〇・四であると、その世代であっても五三・七%が別姓の導入を望んでいるかどうかというのはいかがなものかという意見にはなると思いますけれども、何が言いたいかというと、夫婦別姓制度の導入を求める意見はもちろんあるんですけれども、必ずしも多数派ではありません。

 以上を判断すると、通称使用の法制化を設けるという意見が最も大きくなっている内閣府の世論調査の結果について重視すべきとしか言いようがないのかなと考えているんですけれども、これを重視し過ぎるべきではないと考えられる理由をお示しいただければなと思います。

円議員 お答えいたします。

 選択的夫婦別姓に関する世論調査については、多数のものが存在し、結果も様々なものとなっているとちゃんと承知しております。

 私どもの党は、男女共同参画推進本部におきまして積極派、慎重派双方の有識者、団体からヒアリングを重ねまして、個人のアイデンティティーの重要な要素である姓を保持することがいかに大事か、また、婚姻時に姓を変えることの不便、不利益がいかに大きいか、当事者の方々から実際の経験に基づく切実な思いを伺ってまいりました。そして、様々な国民の声に耳を傾けた上で、今回の法案の形を取りまとめて提出することとしたものでございます。

 更につけ加えますならば、当事者、経験者の方々からの切実な思いに真摯に耳を傾けた結果、たとえ少数であったとしても、私は、先ほど申されたように、内閣府の、二八・九%しか選択的夫婦別姓を支持していないとおっしゃっていますが、そんなに少数とも思わないんですね。三十年前にこの法案が法制審から出されたときなんかは、まだまだ選択的夫婦別姓に対する認識が低うございました。そうしたことから考えると大変これは増えてきたように私には思われるんですが、そうした、たとえ少数の方々ではあってもその思いに応えるべきと判断したものでございまして、政治とは少数派の声にもしっかり耳を傾ける必要があるのではないかなと思っております。

萩原委員 少数派の意見に耳を傾けるべきという意見、賛成いたしますが、それを言うのであれば、まずは現状維持若しくは法制化を望む多くの声というところを聞いていくというのもやはり民主主義じゃないのかなと思っております。

 ちょっと時間の関係で一問飛ばさせていただいて、最後、ちょっと質問させていただきますけれども、選択的夫婦別姓、繰り返しになって申し訳ありませんが、二十八年ぶりの国会審議ということです。この長きにわたる間、なかなか議論が進展してきませんでした。事実、立憲案、国民案共に二十八年前の法制審案のベースのものが法案提出されていて、議論の醸成が図られてきたのかなと、なかなか疑問なところがございます。

 このように議論が進んでこなかった要因についてはどのように考えられているのか、立憲の提出者と、あと国民提出者の順でお願いいたします。理由をお示しください、端的に。

米山議員 端的に答えたいところなんですが、率直に、物すごく端的には、私は分かりませんということなんですけれども。

 ただ、その上で、正確には分からない上でも考えてお答えすれば、やはり我々、我々といいますか、今までの立法府がこの問題から逃げてきたというのが私は率直に大きいと思います。

 これだけはっきりと御要望がある中で、何か、いろいろなことに気を遣ったり忖度をしたりしてこの問題に正面から取り組まなかったということが私は大きな原因だと思いますので、せっかく今ここで議論の俎上に上ったわけでございますので、徹底的に御審議いただき、是非、恐縮ながら自民党の皆さんにも審議に参加していただいて、きちんとした結論を得るべきだというふうに考えております。

長友(慎)議員 なぜ議論が進んでこなかったのかということですけれども、法制審議会が答申を出したのでございますから、まずは法務省が責任を持って検討を進め、法案を提出するべきであったと考えています。

 また、平成八年以降、継続的に野党が選択的夫婦別氏導入法案を提出したにもかかわらず、自民党が審議に応じなかったことも要因の一つだと思います。

 さらに、今回、法務委員会で三つの法案が審議されておりますが、自民党、公明党も与党としての見解をまとめ、審議に臨んでいただくべきであったのではないかとも思います。

 これらの事情からすれば、これまでこの議論が進まなかった要因は、当時の政府・与党の責任に負うところが大きいのではないかと考えています。

萩原委員 ありがとうございます。

 お二人とも、答えは端的に、逃げてきたということだと思います。御意見ありがとうございます。

 本当の最後なんですけれども、お二方にお伺いいたしますけれども、仮に維新の今回の法案が採択された場合、国民の間で生じている不都合、事実上のお困り事とかアイデンティティーの喪失等の問題につき悩みを持つ方というのは現状よりも少なくなるんじゃないのかな、確実に不都合はなくなっていくものだと考えているんですけれども、これについては、我々の案が通った場合、今まで以上に国民の方々の悩みが大きくなるのか、それとも小さくなるものと想定されるのか、イエスかノーかだけでお願いします。

米山議員 大変恐縮ながら、私はノーと答えさせていただきたいと思います。非常に疑念があるといいますか、ダブルネームが存在することによって新たな混乱を生み出す可能性を全く否定できないというふうに考えております。

円議員 私も、通称使用の拡大ではとても婚姻時に姓を変えることの不便、不利益が解消されるとは思えませんので、残念ながらノーだと思います。

萩原委員 そう考えられると。なかなか斬新な答えだなと思いますけれども。

 ダブルネームのレッテルをすごく貼りたがっているんだなというのはよく分かります。ただ、我々がしたいのは、そういう議論ではなくて、どっちの案がよりいいのかというところで。何か、どうなのかなと。ダブルネーム、ないと何度も申し上げていますし。

 ちょっと済みません、質問できないんですけれどもね。提案者にはできないでしょう、僕は提案者。

西村委員長 提案者、駄目ですね。質問できません。

萩原委員 ですよね。という意味で言いました。分かりました。

 ということで、ノーと考えられていると思います。

 理想を持つということは非常に大事だと思っております。我々、理想をぶつけ合うというのは大事なんですけれども、理想だけでは現実は変えることはできない。一足す一イコール二みたいな簡単な世界観で我々は生きているわけではない。だからこそ、この家族の話というのは継続して続けるべきですし、戸籍上も旧姓を名のりたいという方、旧氏を名のりたいという方に対しても真摯に耳を傾けるべきだと思っていまして、アイデンティティー問題にも向き合わないといけないと思っています。

 だからこそ、我々の案だと考えています。今回の通称使用の拡大では解決できない問題を解決できるのが我々の案だと思っています。自民党の皆さんの氏制度のあり方に関する検討ワーキングチームに関するペーパーも見ましたが、結論的には我々の案とほぼ同じだと考えております。

 今回のようなケースこそ、政治的決断で現実を一歩でも前に進めていって、国民の皆様のお困り事を解消していくこと、これが必要だと感じておりますし、是非、今回、審議をしてちゃんと結論を出して、与党の皆様にも、我々の案、賛成していただくことをお願いして、私からの質疑とさせていただきます。

 どうもありがとうございます。

西村委員長 次に、臼木秀剛さん。

臼木委員 御質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 国民民主党・無所属クラブの臼木秀剛と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回、民法改正案、それから戸籍法の改正案がそれぞれ三党から提出をされておりまして、私は法科大学院で学んだときのことを少し思い出したんですけれども、家族法、民法の第四編、第五編の授業の最初に、当時の教授から、皆さん、家族って何ですかという質問をされて、その先生は、御自身は日本におられて、奥さんはヨーロッパにおられて、お子さんはアメリカにいて、別々で、年に一回会うぐらいなんだけれども、これでも家族と言えますかと最初に言われたときに、家族って何だろうと考えたことを思い出しました。

 その教授から教えていただいたといいますか、当時言っていただいたので心に残っているのは、民法、特にこの家族法というのは、不磨の大典ではもう今の現行民法ではないんだ、社会実態を映す鏡であるという要請がある一方で、社会生活を送っているわけですから、そういった手続であったり身分関係をきちんと規律することで、一定の秩序というのか、ルール等を形成するという要請もある、これを両立させていくことが大切なんだというお話を伺ったことを思い出しました。

 今回、法案を出されていますけれども、それぞれのこういった要請に応えられる法を作っていくことが必要なのではないかなと思っています。

 済みません、少し前置きが長くなりましたが。

 その中で、ちょっと順番が入れ替わりますけれども、先ほど維新の金村議員から大切なお話があったと思っています。まさに結婚適齢期、私ももう四十四歳、四十五歳になる年ですけれども、それよりももっと下の世代の人たちがやはりその結婚のタイミングで直面をする課題だと思っています。

 ただ、この三十年間、当時、平成八年の法制審案が出てきて以来三十年間、先ほど円議員からもお話がありましたが、ずっと議論がされている中で、政府は、政治、政策としては、女性活躍であったり一億総活躍ということで、女性の社会進出を促してきた。その中で、人口減少や少子高齢化、また結婚、妊娠、出産に対する意識も大きく変わってきていると思っています。それにもかかわらず、まだこの問題を解決できていない、私たちの下の世代に対して明確な答えを示せていないというのは、やはり政治の責任はかなり大きいと思っています。

 今回、各党がそれぞれ法案を出されていますけれども、この三十年間、特に、最高裁判決でも、社会の受け止め方や社会の変化、国民の意識変化などの諸事情等を考慮するという必要性も示されていますけれども、こういった事情をどの程度考慮され、また法案のどこに反映されているか、御説明をいただけますでしょうか。

米山議員 委員の御質問は、平成二十七年十二月十六日の最高裁判決が、婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく、この点の状況に関する判断を含め、この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないとし、令和三年六月二十三日の最高裁判決が、平成二十七年大法廷判決以降に見られる女性の有業率の上昇、管理職に占める女性の割合の増加その他の社会の変化や、いわゆる選択的夫婦別氏制の導入に賛成する者の割合の増加その他の国民の意識の変化といった原決定が認定する諸事情等を踏まえても、平成二十七年大法廷判決の判断を変更すべきものとは認められない、憲法二十四条違反をいう論旨は、採用することができないとしたことに対する私の受け止め方ということかと理解しております。

 まずもって、この両判決はいずれも、夫婦同姓を定める民法七百五十条及び戸籍法七十四条一号は憲法二十四条に違反するという訴えに対して、民法七百五十条及び戸籍法七十四条一号は憲法二十四条に違反するとは言えないとする判決の理由でございまして、これがこの国会において選択的夫婦別姓制度を立法するための条件では全くないといいますか、選択的夫婦別姓制度を合憲、違憲と判断する基準ということではないというふうに考えております。

 その上で、先日の公聴会で布柴参考人が述べたとおり、現代は、より一層個人の生き方が問われる社会になっており、個人のアイデンティティーの中核を成している生まれ育った氏名を使い続けることの重要性は増しているものと思います。また、小原参考人、次原参考人が述べ、さらには、今ほど言った令和三年六月二十三日の最高裁判決で述べられているとおり、女性の有業率の上昇、管理職に占める女性の割合の増加その他の社会の変化や、いわゆる選択的夫婦別氏制度の導入に賛成する者の割合の増加その他の国民の意識の変化というのは現に起こっておりまして、国会の議論によって選択的夫婦別姓制度を導入すべき必要性、妥当性は高まっているものと思います。

 ですので、我々は、そういったことをよくよく検討した上で、是非、今国会でこの法案を実現したいということで、この法案を出させていただきました。

 もちろん、中身としては法制審と変わっておりませんが、それは、社会制度を反映していないということではなくて、法案のエッセンスとしてはもう法制審案で、ある種、尽くされており、その必要性、妥当性が社会状況の変化によってより高まっているということかと理解しております。

藤田議員 お答え申し上げます。

 社会の受け止め方や社会の変化や国民の意識変化などの諸事情等、離婚や再婚が増加している現状については認識しておりますが、維新案というものは、そのような様々なライフステージの変化に応じて柔軟に対応できる制度となっております。

 具体的に言えば、例えば結婚し、離婚し、再婚した方について言えば、たとえ氏を改めたとしても、結婚前から再婚後まで一貫して婚姻前の氏を通称として社会生活上使い続けることが可能でありますし、最初の結婚では通称使用をした者が、再婚後にはそうではない選択肢を取る、通称使用をやめるなども可能となります。

 したがいまして、維新案が、最高裁判決の言う社会の変化や国民の意識変化などの諸事情等に最も適合している案であると考えております。

長友(慎)議員 臼木委員御指摘のとおり、離婚や再婚が増え、様々な事情により子を持つことができない夫婦や高齢の御夫婦、そして子を持つことを考えていない夫婦など、夫婦の在り方に多様なものがあるようになってきております。

 私たちの国民民主党案は、そのような多様な夫婦の在り方に配慮して、婚姻と出産とをなるべく切り離して考え、別氏夫婦が婚姻の際に子が称すべき氏を定めることとせず、戸籍の筆頭に記載すべき者、すなわち戸籍筆頭者を定めるべきことと工夫したものであります。

臼木委員 それぞれありがとうございます。それぞれ各党が御工夫をされて今回法案を提出するに至ったものと理解をしております。

 ただ、やはり様々な価値観や自身の経験も踏まえて皆さんがお考えをお持ちの中で、いろいろな意見が出てくるとは思うんですけれども、ちょっと確認を幾つかさせていただきたいと思います。

 まず、立憲案、国民案の提出者にお伺いをしたいんですけれども、さきの参考人質疑等でも御意見が出ていたとおり、今回、立憲案や国民案が成立するということによって、家族の一体感やきずなの維持が失われるという御意見が見られました。こういう御意見に対して、御自身の案をどのように説明されますでしょうか。

米山議員 委員がおっしゃっているといいますか、議論となっているのは、選択的夫婦別姓制度を導入しますと、別姓を選んだ御家庭では家族として一つの姓はない、二つということになるわけですが、ということになるので、家族としての一つの姓がないと家族の一体感やきずなの維持が失われるという御主張、若しくはそのような御主張があることをどう思うかということだと思います。

 しかし、昨日の参考人質疑で布柴参考人、次原参考人などがおっしゃられたように、そもそも現行制度で既に国際結婚、離婚後の家庭、事実婚の家庭などで夫婦別姓、親子別姓の家族は存在しておりますが、姓が異なることそれ自体が問題となるような例はないというふうに皆おっしゃられております。

 また、再三私の家庭のことで大変恐縮ですけれども、私は、もちろん戸籍としては同一氏なんですけれども、しかし、我が家は、私の知人、友人からは米山さんの家と呼ばれ、私の妻の知人、友人からは室井さんの家と呼ばれております。

 これ以外の様々な理由によって、時に我が家の一体感やきずなが危機に瀕してきたことを否定するものでは全くないんですけれども、しかし、米山さんの家と呼ばれるか室井さんの家と呼ばれるかで我が家の一体感やきずなが危機に瀕したことは、今までもございませんし、今後もないものと確信しております。

 私は、家族というものは、お互いの愛情と血縁、場合によっては養子縁組のような手続に裏打ちされた、日々の生活の積み重ねによって結びついているものであって、夫婦別姓を選んだことで家族に二つの姓があったとしても、それによって家族のきずなは、夫婦同姓を選んで家族に一つの姓がある家族といささかも異なるものはないと確信しております。

長友(慎)議員 お答えします。

 家族の一体感やきずなに対して、家族が同氏であることがどの程度の影響を与えるものか、必ずしも明らかではありませんが、個人的には、氏以外の要因の方が強い影響を与えるのではないかと考えます。

 そして、選択的夫婦別氏制は、夫婦別氏を強制するものではありません。したがって、そのような家族の一体感やきずなの維持が失われると考える方は夫婦同氏を選べばいいのでありまして、選択できる制度に反対する理由にはなっていないというふうに考えます。

臼木委員 ありがとうございます。

 一方で、維新の提出者の方にお伺いをしたいんですけれども、今回、先日の委員会で、公明党の大森委員からも、やはり質疑を終えた後でも、通称使用や併記では困難は解決できないという御発言もされておりましたし、一般的にもこういう御発言もあります。

 また、もう一個、済みません、これはちょっと併せてお聞きをしたいんですけれども、今回、一人っ子同士、少子化が進んでくる中で、やはりかなり珍しい名字といいますか、少ない名字の方も、私の代で終わりだというようなことも大分お聞きをするようになってきたんですけれども、こういった一人っ子同士の結婚で、両方の名字を残したいという希望を持つ方もおられますけれども、これにどう応えるか。

 二問、お答えいただけますでしょうか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 まず、一つ目の通称使用や併記では解決できないというのは、この委員会でも何度もお答え申し上げているように、現行の通称使用の拡大の大きな課題の一つであります。今回の維新案は、それを乗り越えようというものでございます。

 維新案により新制度が実現すれば、婚姻により氏を改めた方は、引き続き職業生活や社会生活のあらゆる場面で旧氏をそのまま使用できることになるために、氏を変更するためのあらゆる手続が不要となります。

 私も、何か漏れ落ちがないかなと思って、いろいろ有識者に聞いたり、昨日も参考人の方に具体例、それでも残る課題、不都合というのはありますかというふうにお聞きしたんですが、具体例はございませんでしたし、今日も立憲民主党の方々からもかなり細かい御質疑もいただきましたが、これは答弁できないなという、ごまかさないと無理だなというものは一つもございません。

 ですから、懸念はないというふうに考えております。

 それから、一人っ子のお話ですね。

 維新案では、夫婦同氏制を維持する以上、子に自らの氏を残すことができないという点はそのとおりでありますけれども、それを可能にするために、選択的夫婦別氏制度を導入するかどうかについては、様々な懸念を持つ方もおられることから、中長期的な議論を経て、国民のコンセンサスを得るべきであるというのが我が党の立場でございます。

 付言いたしますと、子の氏に関しましては、立憲案、国民案のいずれであっても、兄弟姉妹の氏は父母のいずれかの氏に基本的に統一されるということになっておりますから、両案が導入されたとしても、父母双方の名字を必ずしも後世に残していけるわけではないということで、同じかなと思っています。

臼木委員 ありがとうございます。

 維新の提出者の方に少しお聞きをしたいんですけれども、今ほどというか、先ほど来答弁をずっとされていますけれども、いわゆる戸籍名と通称名、これをどのように今後使われていくかというイメージは、なかなか私も湧きにくいなとは思っているんです。

 例えば、私生活は戸籍名で、仕事は通称名というのは、これは法律的にということですね、先ほどおっしゃったようなファミリーネームとかあだ名のような形ではなく法律的に、私生活は戸籍名、仕事は通称名などのいわゆる使い分けということは可能なのでしょうか。まず、お答えいただいてよろしいでしょうか。

藤田議員 端的に答えますと、それは自由だと思います。

 今も旧姓使用を、例えば旧姓を非公式な場又は法的な証明書が関係ない場で使うということはとがめられるものでもありませんし、又は旧氏でない通称を使うことも、法的な場でなければそれは認められていることでありますから、戸籍氏を堂々と、例えば家族の集まりとか学校現場の親の立場としてとか、そういうことに使うことについては全く問題ないものでありますから、それをどのように使い分けるかというのはそれぞれの自由であります。

 先ほども申し上げましたが、我が党の案は、現在広がっている通称使用の拡大、これの課題を全て乗り越えて法的安定性を付与しようということでありますから、多分、立憲案、国民案とは少し発想が違うものでありますが、その効果として、実務的なお困り事は全て解消するという効果は、私はほとんど同じ思いであるというふうに考えております。

 御質問にお答えすると、そこは、私生活等においては自由ということでございます。

臼木委員 ちょっと私の質問が悪かったのかもしれないんですけれども、法律的にということなので、例えば、御自身の家庭生活で使うときは戸籍名で、仕事のときに、何か公的な書類を書くときに通称名というような使い方ができるのかということで、要は、いわゆるダブルネームはないんですよねという確認をさせていただきたかったんですけれども、よろしいでしょうか。

藤田議員 済みません、私の理解が間違っていたのかもしれませんが。

 基本的に、仕事と関係なく、自分のいわゆる私生活においても公的証明書等を求めたりすることがありますよね。そういうことを指しておられるのかなと今改めて理解したんですが、それは、法的な公的証明書等は、今回の私たちの案でいうと、旧氏を届け出た者については、戸籍氏に代えて、その代わりにそれを単独使用するということでありますから、そういった場では、そのように理解していただけたらと思います。

臼木委員 ありがとうございます。

 先日の共産党の本村委員のところでお答えをされているのを拝見して、社会的に個人を識別、特定する機能を果たしているのは専ら通称使用をする旧氏であるというところで、ここの、戸籍の氏にはどんな意義が残るんですかという御趣旨だと思うんですがという御答弁を受けてちょっと質問させていただいたんです。

 私も重ねての質問になるんですけれども、今の、要は、ダブルネームはないんだということを従来御答弁をされていますけれども、そうすると、やはり戸籍の氏というものが形式的には戸籍簿には載るわけですけれども、この戸籍の氏の法的な意義ですね。先ほどのファミリーネームとか通称で使えるという、通称というかニックネーム的に使えるということではなくて、法的な意義というのは何なのかということを教えていただけますでしょうか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 戸籍上の氏は、すなわち民法の氏でもあり、子が称する氏は、あくまでもその戸籍上の氏、戸籍名となります。そして、それは社会の構成要素である家族の呼称としての意義があると言い換えることもできるかと思います。

臼木委員 ありがとうございます。

 済みません、ちょっとここからは通告がないんですけれども。

 そういう戸籍名で残る、一方で通称で使える法的な名前ができるというこのたてつけの中で、先ほど来マイナンバーのカードの記載の話はあったんですけれども、マイナンバー、いわゆる本当のナンバーの方ですね、こういったものは、今、住民基本台帳法に基づいて、それぞれ住民票に基づいて付与をされて、戸籍の方と、戸籍名とリンクをして番号が付与されていると思うんです。

 ここの関係は、仮に維新案が通った場合、マイナンバーそのものと戸籍名、通称名のつながりというんですかね、ここはどうなるのかということの御想定があるでしょうか。

藤田議員 ちょっと理解が正しくなかったら後で修正しますが、私が把握している限り、戸籍と住民票はひもづいています、そして、住民票とマイナンバーはひもづいています。

 ですから、マイナンバーも含めて、通称使用を届け出た人についてはそれがインデックスになりますが、データ社会でありますから、そこに戸籍名とひもづいているということをまとめて管理する、そういう意味合いで理解していただけたらと思います。

臼木委員 ありがとうございます。

 それから、済みません、維新案ばかりお聞きをして大変恐縮なんですけれども、先ほど来、立憲の藤原委員からも御指摘があったとおり、やはり関連法制度、システム等に大幅な改正が必要にはなってくるんだと思います。

 戸籍実務の関係は法定受託事務ですので、基本的には、自治体に財政上の負担がまずは一義的にはあるとは思うんですけれども、こういうことも含めて、地方、それから関係機関の負担であったり、また、システム改修もかなり大幅なものを要するのではないかなと思います。

 先ほど御答弁がありました、なかなか想定をし難い、ここから検討だということではあったんですけれども、それでもやはり負担は相当程度あるのではないかと私も思っているんですが、ここに対してお考えがあれば、お聞かせいただけますでしょうか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 関連する個別法の全てを改正するかどうか、又はシステム等も含めて大規模な改正が必要かどうかも含めて、政府において検討していただく必要があると思います。

 ですが、何度も申し上げていますように、非常に大きな転換でありますから、それは私は必要なコストだと思います。それが膨大かというと、それは捉え方でありまして、先ほど来申し上げているように、旧姓使用の拡大というのを御努力いただいていることは、私は、利便性が上がっている方で喜んでおられる方がたくさんいるので、非常に喜ばしいことだと思うし、各省庁のそういう御努力には敬意を表したいと思いますが、それぞればらばらにやっているんですよ。

 ばらばらの事務で、すごく創意工夫していただいているということがずっと続いてよいのかという疑問は私は残ると思っていて、それであれば、しっかりと安定性を担保するために法的効力を与え、戸籍氏と旧氏との関係性を整理し、そして一括して全ての省庁に、この問題を整理して解決していくという手順は何らおかしくないし、むしろ王道だというふうに思います。

臼木委員 丁寧な御答弁をありがとうございました。

 それでは、ちょっと国民民主党の提出者にお伺いをさせていただきます。

 今回、戸籍の筆頭に記載すべき者というものを民法上の概念に入れるということに、私も国民民主党なので、判断をしました。一方で、現在の戸籍法上も一応制度としては戸籍筆頭者というものは残っており、それは、旧民法からいろいろ変遷がある中で、いわゆる旧の家族法の制度の残滓として残っている、要は、形だけ残っているものと理解をしています。

 とはいいながら、やはり旧の制度、旧民法時代の制度とのつながりがあるのではないかという御懸念もされる方もおられるんですけれども、少なくとも、私が党内で議論していたときはそういう話は全く出てきませんでしたし、全く別のものだという理解をしているんですけれども、ここの点、御説明をいただいてよろしいでしょうか。

長友(慎)議員 お答えいたします。

 まず、国民案では、婚姻時に別氏夫婦が定めるのは、あくまでも戸籍の筆頭に記載すべき者であり、これは新設する民法七百五十条二項上の概念になります。

 この戸籍の筆頭に記載すべき者は、国民案、立憲案の共通のベースとなった平成八年の法制審案においても用いられていた子が称すべき氏と民法上の効果は同じであり、これに旧民法の戸主のような法的効果を持たせるものでは全くありません。

 したがって、戸籍筆頭者はかつての家父長制の残滓とも言える側面があるとの御指摘は全く当たらないものと考えます。

    〔委員長退席、鎌田委員長代理着席〕

臼木委員 ありがとうございます。

 私も何冊か逐条解説であったりコンメンタール、戸籍法のものを読みましたけれども、そもそも、今の戸籍筆頭者というものは形式的にただただ残っているだけであって、インデックスの機能しかないということは、これは共通の理解だと思いますし、法解釈としてもこれが通説であるとは思っております。

 その上で、さらに、我々は今回子供の姓、氏を、これは先ほど来ずっと子の姓を定めるということをおっしゃっていただいているんですけれども、我々としては、これを入れることで子の姓が自動的に定まるという解釈で今回このような工夫をさせていただいたと思っているんですけれども、ここについて、もし御説明をいただければ。

 立憲案とかなり近いんじゃないかという御指摘をいただいているんですけれども、やはり我々が工夫をした点は、子の姓を定めるということではなくて、子の姓が定まるという、要は、法的安定性を重要視した制度を、工夫をさせていただいたということだと思っておりますので、ちょっと御説明をいただいてよろしいでしょうか、済みません。

円議員 通告がなかったものですから。

 お答えいたします。

 法制審の案をベースにはしております。それで、立憲案は、その法制審をベースにしながら、子供が生まれたときにと最初はしていたのを、婚姻時にとしたわけですが、婚姻時に子供の姓を定めるといたしますと、先ほどからもいろいろな方々からお話がございましたように、今、長寿社会で熟年婚姻も多い。その方々は、元々、養子は別ですけれども、子供を持たない、持てない。それからまた、子供を持たない選択をなさる方もいる。そして、欲しいけれども、子供を持てない方々もいる。そういった方々のことを考えて、なるべく婚姻と出産というものを一緒のように考えるのをやめようというような意見が多数ございまして、そして、そうした方々に圧を与えるのではないかという考えもございまして、子供の姓は、それぞれが生まれたときに定まる方がいいねということになったわけでございます。

 でも、それは、その時々に定めるよりも、定まる形にするためには、戸籍の筆頭に記載する者をまず決めておけば、その氏が、子供が生まれたときに自然に定まるという形にしようということになって、そういう案にいたしました。

    〔鎌田委員長代理退席、委員長着席〕

臼木委員 ありがとうございます。

 済みません、皆さんのいろいろな質問を聞いていて質問に臨むと、通告にないことも聞きたくなってくるものですから。大変失礼をいたしました。

 ちょっと時間も限られてきましたので、続けてまた別の質問をさせていただきたいと思うんですけれども、今回、選択的な夫婦別姓制度を導入することによって、法的婚姻、法律婚の増加や出生率の増加にもつながり得るのではないかというような指摘もあります。

 まず、現状ですけれども、夫婦同姓、今の現行法であるがために法的婚姻を行わない者、いわゆる事実婚と呼ばれるものだと思いますけれども、これがどれぐらいの数あるのかということを、今日は内閣府ですかね、お聞きをしたいと思います。よろしくお願いします。

小八木政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府におきましては、夫婦同姓が原因で法的婚姻を行えない者の数については承知しておりません。

 なお、内閣府が令和三年度に実施しましたアンケート調査、人生百年時代における結婚・仕事・収入における調査というものがございまして、そこにおきまして、現在の配偶者等の状況につきまして、「配偶者(法律婚)がいる」「配偶者(事実婚・内縁)がいる」「配偶者はいないが恋人はいる(未婚)」「配偶者、恋人はいない(未婚)」の四つの選択肢で質問しましたところ、回答者の二・三%が「配偶者(事実婚・内縁)がいる」と回答したと承知しております。

 ただ、この方々がどのような理由で法律婚ではなく事実婚となっておられるのかといった点については承知してございません。

臼木委員 ありがとうございます。

 まさにこれは、今回、法を改正することにより法律婚の増加や出生数の増加につながるということであれば、やはり積極的に検討していく必要性というのは、我々は、政府、そしてこの政治の世界でもあると思っております。

 各法案提出者に、それぞれの提出法案が成立した場合、法律婚の増加や出生数増加などにつながると考えているか、ちょっと漠然とした質問ですけれども、お答えいただきたいと思います。

西村委員長 時間が限られていますので、簡潔にお願いします。

米山議員 民間の調査で、六十万人近くの方で、選択的夫婦別姓の成立を待つ事実婚があるとの調査もございますので、一定程度法律婚が増加する可能性は否定されませんし、また、それが一定の出生数の増加につながる可能性もあり得るものと思いますが、それについて確たることを言うのは困難だと思います。

 ただ、選択的夫婦別姓制度は、もとより法律婚の増加や出生数の増加を目的とした政策ではなく、生まれ育った姓を使い続けたいという個人のアイデンティティーの維持、結婚によって改姓することの不便を解消するための政策であって、法律婚の増加や出生数の増加はその副次的効果であり得るということにとどまりますので、法案の成否を考える上で大きな要素ではないものと私は認識しております。

藤田議員 お答え申し上げます。

 同じく、確たるエビデンスをお出しするのは、個人の御判断でありますから難しいといたしましても、我が党の案は、従前より申し上げているように、氏の変更をしたくないがゆえに事実婚にとどまっている方が法律婚に移行するケースは増えていくのではないかというふうに思っています。

 なぜならば、小さなお困り事からアイデンティティーの話にやはり影響しているということは多くの参考人の皆さんも述べられておりますから、そのようには希望しているところでございます。

長友(慎)議員 簡潔にお答えします。

 一般社団法人「あすには」が行った調査によりますと、選択的夫婦別姓が導入された場合に婚姻届を提出する人は約五十八・七万人に上ると推計されております。また、事実婚状態にある人の約一一・八%が、婚姻届を出さないことによる困り事について、子供を持つことにちゅうちょすることがあると回答しています。

 こうしたことからも、選択的夫婦別姓が成立しましたら、法律婚や出生数の数が増加につながるのではないかと考えております。

臼木委員 ありがとうございました。

 今回、法制度の議論をしておりますので、今回の改正が行われ、丁寧に真摯な議論が行われることによって、少しでもというよりも、全ての国民が幸せに、幸福感を抱きながら暮らせる国づくりにつなげていくことができればと思っておりますので、是非ともよろしくお願いいたします。

 以上で終了いたします。ありがとうございました。

西村委員長 次に、平林晃さん。

平林委員 公明党、平林晃です。

 選択的夫婦別氏制度に関連して提出されております三法案について質問をさせていただきます。

 昨日の参考人質疑は大変勉強になったわけでございます。非常に参考人の皆様に感謝しております。質問する委員、参考人の方がそれぞれのお立場で、ある人は現行制度、ある人は通称使用、ある人は夫婦別氏、それぞれのお立場から意見が述べられた、このように当然認識をしているわけであります。

 重要な点は、やはり自分と異なる立場の意見、これにどう遇していくかということではないかなというふうに思っております。私は、選択的夫婦別氏制度を導入すべき、そういう立場には立っております。その上で、現行制度がいいと思う方、あるいは通称使用を拡大すべきと考える方、それぞれのお立場を否定するものではないということでございます。尊重をしていきたいというふうに思っております。

 一方で、夫婦の別氏というものは今は選択ができないということであります。社会的に否定をされている、先ほどの藤原委員の言葉をかりれば、ほかならない国に否定されている、こんな表現もありましたけれども、このことがやはり問題ではないのかなというふうに思っております。

 だからこそ、私は、選択的夫婦別氏というのは、社会的コストの話もあったりとか、いろいろ数字の話とかもあったりはしますけれども、でも、やはりそういう議論に依存するのではなくて、導入はしていくべきではないかな、その上で、様々問題はあると認識をしておりますので、そういったことに関してしっかりと議論をしていく、こういう立場が大事なのではないかな、このように考えておりまして、そういった意味におきまして質問をさせていただけたらというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、まず立憲民主党の提出者の方にお伺いできたらというふうに思います。

 一つの論点として、やはり子の氏の決め方、先ほどからも度々質問に出ているところでございます。

 昨日、布柴参考人の御答弁、海外で様々な事例がある、こういうことがあって、非常に私も興味深く思って聞いておりました。日本における議論でも、大きく、婚姻時であるとか、あるいは出生時であるとかという、その細かい話はいろいろありますけれども、議論されてきていると思います。デンマークの例が、出生してから六か月たっても決まらなければお母さんの姓にする、こういうお話がありまして、非常に興味深いなと思って聞いておったところでございます。

 現状、立憲民主党さんの御提案は、氏を婚姻時に決定するとしておられるわけでございます。このときに、このメリット、デメリットは当然あるわけですけれども、疑念点としてどうしても出てくるのが憲法二十四条との関係で、婚姻は、両性の合意のみに基づくとしているこの条文との関係をどう考えるのか。

 また、先ほどから出ていますけれども、子を持つことが分からない夫婦や高齢になってからの婚姻などで子を持つことが現実ではないカップルへの配慮、こういった部分も考慮していくべきではないか、こういった観点もあるわけですけれども、この点に関しまして、法案提出者のお考えを確認させてください。

米山議員 お答えいたします。

 立憲案では、別氏夫婦の子の氏を婚姻時に決定するということにしております。委員御指摘のとおり、婚姻の要件を加重するものであり、憲法二十四条との関係で問題があるのではないか、また、子を持つ意思のない夫婦や高齢になってからの婚姻などで子を持つことが現実的でない夫婦への配慮に欠けるのではないかという御指摘があることは承知しております。

 しかしながら、まず、前者の指摘についてですが、現行法におきましても、民法七百五十条で、夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称すると定め、七百九十条一項で、嫡出である子は、父母の氏を称するとしておりますので、結局のところ、七百五十条の夫婦の氏の定めが基本的には子の氏の定めを包含していると言えることになりますので、別氏を選択する夫婦に子の氏の定めを要求しても、婚姻要件の加重には当たらないものと考えております。

 また、後者の指摘につきましては、子が称すべき氏の定めは、実子のみならず養子の氏の定めにもなることから、子を持つ意思のない夫婦や子を持つことが現実的でない夫婦に対してその決定を求めることも不合理とは言えず、婚姻時の定め事の一つとして許容されるものと考えます。

 なお、決して国民民主党さん案を、何か言いたいわけでもないんですけれども、国民民主党さんの案のように、戸籍の筆頭となるべき者を定めて、その戸籍の筆頭となるべき者が子の氏を決めると定めたとしても、先ほどの松下委員の御指摘にあったように、それをきちんと婚姻時に言わなければ、婚姻時に戸籍の筆頭だけだと思っていたら、子供が生まれたら、あれ、子供の姓だったのということになってしまいますので、結局、そういう定め方をしても、婚姻時に、これは子供の姓を定めるんですよということは言わざるを得ないわけです。

 いずれの方法を取っても、結局、子供の姓はどのように決まるかというのは決めざるを得ないことですので、それは制度の中の内包する制限として許容されるものと考えております。

平林委員 今、後半おっしゃられたことというのは、私も同じように疑問を持っているところでございまして、ちょっと順番は変わりますけれども、国民民主党さんにお聞きをできればというふうに思います。

 六月六日に我が党の大森委員が質問をして、円提出者が御答弁をいただいたわけでございます。あのときに、現場では、あれ、僕の理解と違うなという感じがしまして、速記録を読み返したわけでございます。結局、今は理解しております、当該法案では、戸籍筆頭者を決めるのではない、戸籍の筆頭に記載すべき者を定めるということであり、この記載すべき者というのは、戸籍法ではなくて、民法で定める概念であるということなんですね。

 よって、柴田委員から六月四日の日に御質問がありました、実体法と手続法の逆転関係が生じるんじゃないか、こういう御質問、御疑念も提示されたわけで、ごもっともだなと思ってお聞きしていたわけですけれども、それもないということになっているということは理解をいたしました。

 その辺り、ようやくなるほどというふうには思ってきたところなんですけれども。

 ただ、やはり、今、米山提出者が提示された疑問を私もちょっと共有しているところでございまして、戸籍の筆頭に記載すべき者を定めるということが、御党の案におきましては、戸籍筆頭者を定めるという効果と子の氏を定めるという効果、両方を持つことになっているのではないかな、このように今私としては理解をしておるところでございます。

 円提出者が本当にお優しいお心で、本当に様々な御配慮をしてこの提案をなされているということはよくよく理解しているつもりではございますけれども、ただ、その思いがこの御提案に、ちょっとたがえているようなところもあるのではないかな、このように感じているところがございまして、ちょっとその点に関しまして御説明いただけたら幸いです。

円議員 しっかり速記録もお読みいただき、御理解いただいて、本当にありがとうございます。

 御指摘のとおり、私たちの国民案におきましては、子は、戸籍の筆頭に記載すべき者と定められた者の氏を称することとされているため、立憲案において別氏夫婦が定める子が称すべき氏と民法上の効果は確かに同じであるということで、委員御指摘のとおりでございます。

 しかしながら、私どもの党といたしましては、たとえ民法上の効果は同じでありましても、子を望んでも持つことができない御夫婦や高齢で結婚をなさる方、また子を持つことを考えておられない御夫婦もいらっしゃる中で、立憲案のように、子が生まれることを前提とした事項を婚姻時に記載させることは酷だと考えたわけでございます。

 そこで、せめて子を持つことを前提としない決め方をすることで、多様な夫婦の在り方を尊重し、そのような方々の気持ちに寄り添うことができると考えたものでございます。

平林委員 円提出者の思い、本当に私も共有をいたします。やはりいろいろな家族というかカップルの状況がある中で、なかなか決めるということに対して抵抗を持つということは直接私も伺いましたので、それに対する配慮というのはしっかりと本当にしていかなくちゃいけないというふうに思うところでございます。

 その上で、なかなか御党の提案に対する疑問、まだまだちょっと深めたいなというところはありまして、そういった意味においては、デンマーク、先ほど申し上げましたけれども、ああいうところの案というものも参考にはなるのかな、このように考えているというところで、この話は、別に行かせていただけたらというふうに思います。

 続きまして、立憲さん、国民さんと来たので、維新さんに質問させていただけたらというふうに思います。

 六月四日の委員会、先ほどから度々出てきている論点ではございますけれども、銀行口座に関する質問が六月四日もなされて、今日も似たような話がありましたけれども、社会的混乱が生じるとは承知をしていない、このように言っておられて、実は、党に戻って、部会の中でも、またちょっと理解を深めたくて、話をしたところがございました。そういった中で、別のメンバーから出されたのは、やはりこうおっしゃっても、なかなか、本当にそうなのかなというようなところは、ちょっと疑念を提示するという方もいらっしゃいました。

 私が確認した地方の銀行で、その銀行では、通称使用では口座は今対応していない、こういうお話、七割が対応していても三割は対応していませんので、そういうところがあるのは当然だというふうには思うわけですけれども。

 ちょっとごめんなさい、これは通告した角度と若干ずれますけれども、そういう銀行においては、もし御党の御提案が成立した場合には、先ほどから私企業に対して強制するものではないという話もしておられますけれども、御党の提案が成立した場合には、こういった銀行に対してはどのような効果を与えることになるのか、ちょっとその点を教えていただいてよろしいでしょうか。

藤田議員 ありがとうございます。

 七割の銀行が今の旧姓の通称使用でも許容していて、三割が残るというのは、やはり旧姓が本当に大丈夫かなという、要するに、マネロンの懸念とかを、どう立証するかとか証明するか、銀行側として担保するかということがハードルになっているんだと想定されるんですね。

 その上で、我々は、旧姓を届出をして、戸籍にも記載されて、これが公的証明書等で使えるという安定性を付与するものでありますから、銀行が懸念するようなことが全て、現在の問題点というのが全部乗り越えられるということでありますから、多分ハードルはなくなるという理解であります。

 ただし、民間私企業が情報の取扱い、氏名の取扱いの仕方をどのようにするかというのは、最終的にはやはり自由度があるものでありますから、そこは強制はできないものの、先ほど申し上げた理由で、銀行さんや証券会社さんが旧姓使用を却下する理由というのはほとんどなくなるというふうに理解をしております。

平林委員 ありがとうございました。

 あくまでハードルをかなり、可能な限り下げているんだ、それによってどう判断していくかはその銀行次第である、こういうような理解をさせていただいたところでございます。

 これも通告はさせていただきましたけれども、似たような論点があったかもしれませんが、維新さんの話から、ちょっとまた立憲さんの方に話をさせていただけたらというふうに思います。

 私どもとしても、選択的夫婦別氏制度は導入をしていくべきだ、このように考えているわけではありますけれども、ただ、いろいろな懸案、懸念、そういったものに関してはやはり事前にしっかりと準備をして、社会的にもそういったものをきちっと理解を広めていくことは、事前の準備として非常に大事だというふうに思っております。

 ごめんなさい、ちょっと質問自体が余り、漠然とした書き方で恐縮なんですけれども、立憲民主党さんの中で、こういった懸念に対しては事前に考えていくべきではないかみたいなことを想定しておられることがございましたら、是非ちょっとお聞かせいただきたいというふうに思います。

米山議員 選択的夫婦別姓制度の導入は、社会の根幹に関わる制度変更、改正でございますので、多方面に様々な影響を及ぼす可能性をしっかりと考慮した上で議論することが重要であるということは委員御指摘のとおりかと思います。

 この点、我が党では、経済団体、労働団体、当事者団体、有識者等からヒアリングを重ねつつ、まさにおっしゃるような様々な影響、例えば、今回の案では、特に子供の氏の決定方法いかんが社会に及ぼす影響などについて議論を行った上で本法律案を取りまとめたところでございます。

 その上でなんですけれども、いろいろな選択的夫婦別姓を導入したときの社会的コスト、御懸念ということはおっしゃられる方は非常に多いんですけれども、実は、何度も申し上げているところですが、現行法上、国際結婚、離婚、事実婚などで夫婦別姓も親子別姓の家族も現に多数おられるわけなんです。つまり、夫婦別姓を導入した場合に何が起こるかという検討というよりは、むしろ実施が、現に今この社会で大規模に行われているというのが現状であろうかと思います。

 そのような現状において、昨日の参考人質疑でも各委員がおっしゃられたとおり、実は、特段の問題は生じていないんですね。

 ですので、もちろん、十分な検討を要することは全く否定しませんし、十分な検討をしたらそれはいいんだと思いますけれども、同時に、何十年にもわたって、現在、多数の夫婦別姓御家族、親子別姓御家族、また兄弟別姓の御家族で、それはほとんど問題ないということは立証されているというその事実もまた重要だというふうに申し上げさせていただきたいと思います。

平林委員 ありがとうございます。

 そのようにおっしゃられる部分もあると思いますし、慎重に議論していくということも大変重要だというふうに思います。

 充実の審議を求めて、私の質問を終わります。大変ありがとうございました。

西村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

西村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 昨日、選択的夫婦別姓を求める当事者の方のお声を紹介させていただきました。共感のお声が届くと同時に、SNSのコメントなどでは、同棲すればいいのではというコメントもございました。当事者の方々の痛みが伝わっていないのではないかということを痛感しております。

 今の日本の法制度では、法律婚をしなければ、法的な保護がなかったり制度が使えなかったり、かなりの不利益がございます。例えば、法テラスの犯罪被害者支援の点でも、これは法改正をしたわけですけれども、犯罪の被害直後から公費で法テラスの弁護士の支援を受けられるということです、殺人の被害に遭われた御遺族の方や犯罪によって心身に重大な被害がある場合にその家族が利用できるということになっているんですけれども、法律婚の配偶者、そして直系の親族若しくは兄弟姉妹のみということになっております。

 大切な人の命を失ったり、重大な被害に遭ったときに、法律婚だと被害直後から公費で弁護士の皆さんの支援を受けられるのに、事実婚だと受けられない、事実婚も認めるべきだということを私は論戦をしてまいりましたけれども、しかし、それは駄目だ、実態が分からないということで政府によって拒否をされたわけでございます。

 もちろん、これだけではございません。一般社団法人「あすには」の皆さんが慶応大学の阪井裕一郎先生と一緒に調査をされたわけですけれども、そこの中では、税の控除が受けられないですとか、配偶者として医療行為への同意ができない可能性があるですとか、相続権がない、遺言書があっても相続税がかかるですとか、あるいは、配偶者の居住権がないですとか、子供を持つことにちゅうちょがあるということや、介護施設などに夫婦として入居できないですとか、生命保険の受取人、代理人の指定ができない可能性があるとか、そういうかなりの不利益があるわけです。

 やはりこういう、法律婚ではアイデンティティーの喪失を感じる、自分が自分でなくなると感じる不利益がありますし、事実婚では法的保護が受けられず、制度も受けられないものがある、様々な不利益がある。生まれ持った氏名で生きたいと願うお二人の場合、選択的夫婦別姓制度をつくることがやはり必要だということを痛感しております。

 そこで、この三法案が当事者の思いに寄り添った法案になっているかという点、改めてお伺いをしたいというふうに思っております。

 先ほどの、一般社団法人「あすには」の皆さん、阪井先生が事実婚当事者の方々に調査をされました、そこでは、選択的夫婦別姓制度が実現しないために推計五十八・七万人が事実婚を選択せざるを得ないという結果が出ております。いわゆる結婚待機人数ということになります。この人数は、東北大学の吉田浩教授のチェックも入ったしっかりとした人数だというふうに思っておりますけれども、生まれ持った氏名で生き、結婚もしたいという当事者の思いをどのように受け止めておられるのかという点、まずお伺いをしたいと思います。

米山議員 それでは、お答えいたします。

 いろいろな思いの方がおられると思いますので、私の個人的経験、そして意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 私は五十歳を過ぎて結婚いたしましたが、妻はそもそも作家としてのペンネームの方が世の中に通用しておりましたので、改姓後もそのペンネームを使う以上、事実上の夫婦別姓になるので特段問題ないということで、妻の方が姓を変えてくれました。仮に妻が姓を変えてくれずに私が姓を変えるということになりましたら、仕事上ある程度確立した名前が変わることで大きな不利益を被ることになったと思いますし、五十年間培ってきた自分のアイデンティティーも傷つきますので、私も事実婚を選択したのかもしれません。

 また、今ほども委員から御指摘があったように、事実婚でもよいのではないかという御意見もあるでしょうし、実は、妻なども最初は事実婚でもいいと言っていたのですが、私が法律婚のメリットは大きいと説得して法律婚をすることになりました。

 その結果、先般、無事結婚五年を迎えたんですけれども、妻は、結婚して、法律婚という意味ですが、結婚してよかったよ、何かのたびにみんな祝福してくれるし、どこにでも夫婦で行けるもんねというふうに言っているところでございます。

 我が家の場合は、妻のペンネーム、非常に名の知れたペンネームということによって事実上の夫婦別姓ができて、私も妻も長年培ってきた姓のままで法律婚ができるという幸いに恵まれたということでございますが、それは今、選択的夫婦別姓制度ができることを心待ちにしている推定六十万人の方々も当然手にすることができるべき幸いだというふうに思っております。

 私、そしてまた法案を提出した我々立憲民主党は、是非、今国会でこの法律を成案させて、こういった待っている六十万人の方々にも同様に、それぞれの姓で法律婚をするということを、是非その幸いを受けていただきたいというふうに思っております。

藤田議員 お答え申し上げます。

 私たちの維新案が施行されれば、婚姻により氏を改めた方が職業生活や社会生活のあらゆる場面で旧氏を引き続き使用できることになるために、生まれ持った氏名で生き、結婚もしたいという思いは一定程度実現できるものと考えております。

 また、結婚した際、女性側が氏を改めることが多数である我が国におきましては、特に女性の職業活動や社会活動における不利益が問題となりますが、これについても維新案の施行によりかなりの程度解消できるものと考えております。

 このアンケート結果の中で事実婚を選択されている方がどれぐらい法律婚に移行するかは各々の判断に委ねられることになると思いますけれども、この委員会でも何度も申し上げているように、現実的な不利益とアイデンティティーとかそういう問題というのは非常にリンクしているということは様々な方が言われておりまして、その不利益、不具合というものがほとんどなくなるということにおきましては、それで御納得いただける方も多数いらっしゃると思います。

 ただ、何度も申し上げますように、全て一〇〇%、全て一人残さず御納得いただけるかというと、それはどんな制度でも課題が残るという認識でおります。

円議員 御指摘の調査は承知しております。

 私どもの党は、選択的夫婦別氏制度について、その導入を我が党の政策として掲げてきたところでありまして、一般社団法人「あすには」を含む様々な積極派、消極派双方の皆様から御意見を伺い、また、「あすには」の調査をした方々からも直接お話を伺いました。

 そして、五十八・七万人もの方々がこの選択的夫婦別姓を待って法律婚をせず事実婚をしていらっしゃるということで、今、藤田さんからも御答弁がありましたが、その方々全員が、この制度が導入されて事実婚から法律婚になられるかどうかはもちろん分かりませんけれども、多くの人が多分法律婚を選び、そして子供も持ちたいと思っていらっしゃるかもしれない。そういうことを思いますと、昨年七十万人を切った子供の出生数、これが、この選択的夫婦別姓制度が導入されることで子供の数も増えるのかなという期待も持ちまして、是非とも実現させていきたいと思っております。

本村委員 ありがとうございます。

 それで、確認なんですけれども、この選択的夫婦別姓を求める人の願いがかなったとして、そのことがほかの誰かの人権を侵害することになるのか、三党の皆さんにお伺いをしたいと思います。

米山議員 我が党が導入しようとする選択的夫婦別姓は、国民の間における多様な価値観を許容する観点から、あくまでも、夫婦別姓、別氏を希望する方々に対してその選択肢を認めるものにすぎず、夫婦が同姓を称することを否定するものでは全くございません。別姓を強制するものでももちろんございません。

 したがいまして、制度導入後も、これまでどおり夫婦が同じ姓を名のりたい方々は当然同じ姓を名のることもできますし、夫婦が別の姓を名のることを希望した場合には別々の姓を名のることができることとなりますので、立憲案の施行によって他の方の人権を侵害することは決してないと考えております。

藤田議員 お答え申し上げます。

 我が党の案は、選択的夫婦別氏制の導入ではございませんが、立憲案、国民案により同制度が導入されたとしても、それによって直ちに他者の人権を侵害するものではないと考えております。

 他方、そうであったとしても、選択的夫婦別氏を導入することにおきましては、国民の間に様々な慎重意見があることは事実でございまして、合意形成、コンセンサスを得るためには議論が必要というのが我々の立場でございます。

円議員 私ども国民民主党や、また立憲民主党が導入しようとしております選択的夫婦別氏制度は、婚姻によって氏を改めることによる社会生活上の不利益をなくし、併せて、個人のアイデンティティーの重要な要素である氏を保持する人格的利益をも保護するということは、本村先生もよく分かっていらっしゃると思いますが、ですから、あくまでも、夫婦別氏を希望する方々に対してその選択肢を認めるものにすぎませんで、夫婦が同氏を称することを否定するものでもなければ、別氏を強制するものでもございません。

 したがいまして、制度導入後も、これまでどおり夫婦が同じ氏を名のりたい方々にとっては当然同じ氏を名のることもできますし、そして、別々の氏を名のることを希望した御夫婦の場合は別々の氏を名のることができることとなりますため、国民案の施行により他者の人権を侵害することは決してないと考えております。

本村委員 藤田先生も、選択的夫婦別姓制度の実現によってほかの誰かの人権を侵害するものではないということはお認めいただいたというふうに思います。

 生まれ持った氏名で生きたいと願うお二人の場合、パートナーと幸せに生きることを応援する、その制度だというふうに思いますので、やはり早急に実現することが本当に喫緊の課題であるというふうに思っております。

 もう一つ、日本維新の会の藤田先生にお伺いしたいんですけれども、お互いに生まれ持った氏名で生きたいと願うお二人が結婚を望む場合、どちらか一方のみが名字を変え、アイデンティティーを喪失することは、個人の尊厳と本質的平等に立脚した制度と言えるのかという点、お伺いをしたいと思います。

藤田議員 お答え申し上げます。

 委員御指摘のアイデンティティーに関しましては、維新案提出者としても、もちろん大切な要素であると認識しております。そして、現行の夫婦同氏制度においては、女性の側の婚姻による改姓が圧倒的であるといった男女の実質的不平等の問題や、改姓によるアイデンティティーの喪失といった問題が存在することも承知をしております。

 この点、維新案が施行されれば、婚姻によって氏を改めた者が社会生活、職業生活のあらゆる場面で旧氏を使い続けることが可能になるために、アイデンティティーの喪失問題もかなりの程度解消されるものと考えております。

本村委員 ただ、名字を変えたくないという方にとっては、アイデンティティーの喪失ということになってしまうというふうに思います。

 もう一つ、日本維新の会の方にお伺いをしたいんですけれども、先日、六月四日の答弁で、最高裁判決でも認められているように、氏には、そのような個人の呼称としての意義のほか、社会の構成要素である家族の呼称としての意義も存在します、したがいまして、この場合の戸籍氏にも、夫婦から子に受け継がれ、家族全体のアイデンティティーの基礎となる家族の呼称としての意義がなお確実に存在すると言えまして、実際上も、親族の集まりなどの私的な場面においては、これをいわゆるファミリーネームとして使用することも当然に可能であります、維新案は、このような家族としての呼称の意義、つまりファミリーネームはあった方がいいんじゃないか、そういう考えを極めて重く見て立案したものでございますというふうに答弁をいただきました。

 そこでお伺いをいたしますけれども、家族全体のアイデンティティーとは何かという点、御説明をいただきたいと思います。

藤田議員 先日も御答弁させていただきましたとおり、氏には社会の自然かつ基礎的な集団単位である家族の呼称としての意義があると考えます。そして、家族を構成するお一人お一人が、このような家族の呼称としての同一の氏、いわゆるファミリーネームを称することによって、家族という一つの集団を構成する一員であることを実感するということには、一定の意義があると考えます。

 先日、家族全体のアイデンティティーという言葉で述べようとしたのは、以上のような趣旨の事柄でありまして、これは平成二十七年最高裁判決でも認められているところかと思います。

本村委員 家族全体のアイデンティティーの御説明にはなっていないというふうに思うんですけれども、いま一度、家族全体のアイデンティティーという点、もう少し詳しく教えていただきたいと思います。

藤田議員 お答え申し上げます。

 ちょっと繰り返しになりますけれども、社会の自然かつ基礎的な集団単位である家族、その呼称としてファミリーネームの意義という説明をさせていただきましたが、その集団を構成する一員であることを実感するということについては一定の意義があるということを、最高裁の判決を引きながら御説明を申し上げたということでございます。

本村委員 ただ、その最高裁の判決というのは氏と名前を別々に論じているもので、氏名はセットで、個人を他者から識別、特定する機能がより高まりますし、個人から見れば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の尊重であって、人格権の一内容を構成するものということで、氏と名前を分けてしまっている、最高裁でかなり問題がある判決だというふうに思っております。

 個人の尊重、個人の尊厳、個人のアイデンティティー、これが一番重要な価値であるというふうには、そういう観点には立っていないということなんでしょうか。

藤田議員 お答え申し上げます。

 御党や、また立憲さん、国民さんが考えておられる、そういう氏とか又はアイデンティティーの価値観を全く否定するつもりもありませんし、そういう考えもあるし、私たちのように、制度設計において、家族単位の呼称というものについて、制度設計上、それを軸に、これまで踏襲されてきた原則を変えずに制度をつくっていこうという考え方も、またこれは制度論の中であり得る話だと思います。

 それから、もう一つ付言すれば、たくさんの方が、先ほどもおっしゃられていたように、このアイデンティティーの問題から、切り口から選択的夫婦別姓を求めておられる、それは、旧姓使用の拡大や法制化によっては一〇〇%は解消されないということは私も何度も答弁で申し上げていますが、それに加えて、先ほどの御質問の中に、それがすなわちすぐに他者の人権を侵害するかというと、それはそうではないと思います。

 ただ、御本人が希望し、そして他者の人権を侵害していないからといって、すなわちそのまま直ちに社会制度全般を変更すべきかどうかというのは、これはまた違う視点、総合的な議論が必要だ、そういう立場であります。

 ですから、立憲さんや国民さんの案はそれはそれで筋の通った案だと思いますが、制度設計上の思想が違い、そしてそれがどう違うかということを明らかにしながら、合意形成、どこが得られるかということをするのがこの委員会でありますから、決して、個人のアイデンティティーを軽く見たり、否定しているものではございません。

本村委員 ありがとうございます。

 選択的夫婦別姓を求める方々の中には、例えば、歴史ある老舗の一人っ子同士で結婚をしたいというふうに思っているケースがございます。どちらも生まれ持った氏名で生きたい、歴史ある名字を残したいと願っている場合、選択的夫婦別姓の方がそれぞれのアイデンティティー、ファミリーネームを維持できるのではないかというふうに考えますけれども、その点はいかがでしょうか。三党にお願いをしたいと思います。

米山議員 お答えいたします。

 まさにおっしゃるとおりだと思います。昨日の参考人質疑で竹田参考人が、このような場合を引いて、何家か分からなくなる、若しくは祭祀ができなくなるというようなことをおっしゃられましたけれども、例えば、佐藤旅館の御令嬢の佐藤花子さんと割烹田中の御曹子の田中一郎さんが結婚した場合は、夫婦力を合わせて佐藤旅館を佐藤家として運営し、割烹田中は夫婦力を合わせて田中家として運営すればいいのであり、何も困ることはないというふうに考えております。

 祭祀についても全く同様で、佐藤家の祭祀として行うべきは夫婦そろって佐藤家として行えばいいし、田中家の祭祀として行うべきは夫婦そろって田中家として行えばよく、そしてまた、どちらでもないものに関してはどちらでも、都合のよい方でやればよいということかと思います。

 再三我が家のことを話して恐縮ですが、我が家も、妻が友達を招いてホームパーティーをするときは室井さんの家と呼ばれ、私が知人を招いて宴会をするときは米山さんの家と呼ばれておりますが、何の不都合もございません。

藤田議員 お答え申し上げます。

 歴史ある老舗、歴史ある名字とは、単に同一の名前が続いているということだけでなく、その店や家族の在り方、実態と結びついた価値観だと考えております。

 維新案では、そのような社会生活において旧氏の単独使用が広く認められることになるために、アイデンティティーの保持と家族の一体感の維持とを両立することができるものと考えております。

 なお、子供の氏に関しましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、立憲案、国民案のいずれであっても、兄弟姉妹の氏は父母のいずれかの氏に基本的に統一されるということでありますので、両案が導入されたとしても、父母両方の名字を必ずしも後世に残していけるというわけではないというふうな形で理解をしております。

円議員 委員御指摘のとおり、歴史ある老舗だけではなく、由緒ある家柄でもなく、ごく普通の御家庭でも最近一人っ子が増えております。そうした方々がやはりこの選択的夫婦別姓をとても待ち望んでおられます。

 そして、私どもの党のヒアリングの中でも、個人のアイデンティティーの重要な要素である姓を保持することがいかに大事かについて、随分、当事者や経験者の方々から切実な思いを伺いました。

 委員御指摘のような、どちらも生まれ持った氏名で生きたい、歴史ある名字を残したいとの願いにも応えられるように、選択的夫婦別氏制度について今回の法案を取りまとめて提出することといたしたことでございます。

本村委員 ファミリーネームを大切にされている方々の思いも尊重され、生まれ持った氏名で生きたいという方々の思いも尊重されるのが選択的夫婦別姓ではないかというふうに思いますけれども、三党の御見解を伺いたいと思います。

米山議員 これも、まさにおっしゃるとおりだと思います。

 家族に一つの姓としてのファミリーネームを持ちたい御夫婦はもちろん夫婦同姓を選択して、夫と妻がそれぞれ選択していただき、そして夫と妻がそれぞれ生まれ育った氏名で生きたい方は夫婦別姓を選択できるのが選択的夫婦別姓制度でございます。

 先日の参考人質疑で、これまた竹田参考人が磯野家の例というのをおっしゃっておられましたが、そもそも磯野家は、磯野家とフグ田家が同居しておりまして、波平さんとフネさんとサザエさんは親子別姓、サザエさんとカツオ君とワカメちゃんはきょうだい別姓でございます。

 選択的夫婦別姓法案が成立して、サザエさんとマスオさんが話合いの結果、磯野サザエとフグ田マスオということになったとしても何ほどの違いがあるわけでもございませんし、フグ田マスオと磯野サザエの別姓夫婦の家族と磯野波平と磯野フネの同姓夫婦の家族が同居する状態になったとしても、それによって仲が悪くなるとか、どちらの姓かでどちらかが不幸になるというようなことは全く起こらない、それぞれの家族がそれぞれのアイデンティティーとライフスタイルに従って幸福に生きられるものと考えております。

 なお、ここまでの話は夫婦別姓を選んだ夫婦はファミリーネームがない前提で話をしておりますが、これはもはや、もう一回例を出すと怒られますので言いませんけれども、二つの姓があるというときには、ファミリーネームがないのではなくて、両方の姓をファミリーネームと認識するということであろうと思います。

 最後に、さらに磯野家の話に戻りますけれども、あの漫画のタイトルは、磯野家の物語でもフグ田家の物語でもございませんで、「サザエさん」でございます。場合によっては、磯野家の方々もフグ田家の方々も、さらには周囲の中島君や花沢君や伊佐坂先生に至るまで、あの御家庭はサザエさんの家と認識していた可能性がございまして、家族のアイデンティティーというものはそのように非常に多様につくられるものだというふうに認識しております。

藤田議員 米山先生の答弁書の御準備に敬意を表したいと思います。

 維新案におきましては、子供を含めた家族の名前としてのファミリーネームをいわゆる社会制度として最大限に尊重し、夫婦同氏制を維持することとする一方で、生まれ持った氏名のままで生活したいという方々が社会生活上のあらゆる場面で旧氏を使用できるようにすることで、その不便や不利益を解消しようとするものでございます。

 したがって、委員御指摘のようなファミリーネームを大切にしている方々の思い、生まれ持った氏名で生きたい方々の思い、それぞれを同時に実現できるものが維新案だと考えております。

円議員 お答えいたします。

 サザエさんの話で話すととても説得力があっていいなと思いながら、私はごく普通にお話しさせていただきます。

 個人のアイデンティティーの重要な要素である姓を保持することがいかに大事か、また、婚姻時に姓を変えることの不便、不利益がいかに大きいか、これまで本当に当事者、経験者の方々から伺った実際の経験に基づく切実な思いに応えるとともに、選択的であることから、従来の夫婦同氏制度も選ぶことができるように、私どもの選択的夫婦別氏制度を今回の法案の形でまとめて提出することにした次第でございます。

本村委員 ありがとうございます。

 次に、戸籍の筆頭に記載するべき者についてお伺いをしたいというふうに思います。

 国民民主党の法案では、子は、戸籍の筆頭に記載すべき者の氏を称することとなっておりますけれども、五月三十日の記者会見で国民民主党の榛葉幹事長がそのことに関し、その家のチームリーダーというか責任者、かつては家長と言いましたが、その方の氏を子供はしっかり名のるとおっしゃいました。

 提出者の円より子さんの意図とは恐らく違うのではないかというふうに思いますけれども、家父長的な考えが見え隠れしている説明が公になされております。これは、法案への誤解を生むというふうに思います。法案によって家父長的な考えを植え付けることにはならないですねということを確認をさせていただきたいと思います。

円議員 そういうものが流布されていれば、本当にそれは誤解でございます。私どもの案では、別氏夫婦の子は、夫婦が婚姻時に定めた戸籍の筆頭に記載すべき者の氏を称することになります。

 何度も議論がされたんです。それは戸籍筆頭者ですかと言われました。戸籍筆頭者というと、今の民法でも、ちゃんと言われているんですけれども、戸籍法でも、ただ、どうしても旧制の戸主というイメージを持ってしまう方々もおられる。そこで、苦肉の策と言ってはおかしいですが、戸籍の筆頭に記載する者としたことでございまして、この戸籍の筆頭に記載すべき者は、立憲案やそのベースとなった平成八年の法制審案においても用いられていた子が称すべき氏と、何度も申し上げておりますように、民法上の効果は全く同じであり、これに旧民法の戸主のような法的効果を持たせるものでは全くございません。

 したがいまして、国民案によって家父長的な考え方を示したり、国民に植え付けるといったことになるとは全く想定しておりません。

本村委員 榛葉幹事長もおっしゃったんですけれども、実は玉木さんもチームリーダーということを言いまして、党内でも誤解があるのではないかというふうに思いますので、是非その点、党内でも徹底をしていただきたいというふうに思っております。

円議員 今、党内でも決定してほしいというふうにおっしゃいましたので、決定したからこそ……(本村委員「徹底」と呼ぶ)徹底、ごめんなさい。でも、徹底したからこそこの法案を出しましたので、申し添えます。(発言する者あり)

西村委員長 御静粛にお願いします。

本村委員 是非、本当に円さんの内容を徹底をしていただきたいというふうに思っております。

 日本国憲法の下で、家父長的な家制度は否定をされました。個人の尊重、個人の尊厳と本質的平等が重視されることとなりました。それぞれの法案は個人の尊重、個人の尊厳、本質的平等に合致していると考えるのかという点を三党に伺いたいと思います。

米山議員 時間が迫っているので一言で申し上げますが、全く合致している、我が党の出している法案こそが個人の尊厳と本質的平等に合致していると申し上げさせていただきます。

藤田議員 維新案は、日本国憲法制定の際、家父長的家制度が否定された結果改められた民法においてなお夫婦同氏制度が抱えていた課題に対し、現実的な解決策をお示しするものであり、個人の尊重、個人の尊厳と両性の本質的平等といった憲法の理念にも合致するものと考えております。

円議員 私どもの案は、婚姻によって氏を改めることによる社会生活上の不利益の防止が必要であること、また、氏は個人のアイデンティティーの重要な要素であり、これを保持する人格的利益を保護すべきこと、他方で、戸籍制度は国民の親族的身分関係を登録、公証する唯一の制度であること、これら三つの点を踏まえまして、現行の戸籍制度を維持しつつ、婚姻前の氏を婚姻後も氏としてそのまま使い続けられるようにすべきと考え、提案したものであります。

 このように、旧民法の家父長制を否定して整理された現行戸籍制度の原則を基本的に維持しつつ、個人のアイデンティティーの重要な要素たる氏を保持する人格的利益を保護するため、選択的夫婦別氏制を導入することを内容としておりますため、個人の尊重、個人の尊厳と両性の本質的平等の実現といった憲法の要請に完全に合致しているものと考えております。

本村委員 ありがとうございました。

 終わります。

西村委員長 次に、吉川里奈さん。

吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。

 本日は、野党筆頭理事の御提案により質疑時間をお譲りいただきましたことを、まずは深く感謝申し上げます。いただいた時間を生かして、充実した議論をさせていただきたいと思っております。

 昨日の参考人質疑では、推進派、反対派双方から様々な意見が交わされ、現在の通称使用では不便を感じておられる方がいるということは承知をしております。しかし、法改正を望まない多くの国民の声を代弁する立場として、我々は一歩も譲ることはできません。

 さて、参政党では、法改正を望まないサイレントマジョリティーの声を把握すべく、本年五月に夫婦別姓に関する党内アンケートを実施し、一万二千六百七十三名の方から回答を得ました。内閣府が令和三年に実施した調査と同一の設問に対し、夫婦は同じ姓を名のるべきであると答えた方は実に九七・六%に上りました。回答者の多くは、家族が同じ姓を名のること、これを単なる制度上の形式ではなく、生活に根づいた自然な形として受け止めていました。例えば、○○さんちのおじいさん、お孫さんという呼び方が自然、子供との一体感や子育てへの責任感が生まれる、家族の名前に恥じない生き方が子供の非行の抑止にもなる、こうしたお声が多く寄せられています。

 本日は、このような声を受け止め、我が党の立場から質問をさせていただきます。

 まずは、総務省に伺います。

 住民に課税する際の納税通知書や納税証明書などに関して、自治体から旧姓の使用によって事務処理に支障が生じたといった具体的なトラブルの報告はあるのか、またニーズはどの程度あるのか、お答えください。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 個人住民税の納税通知書などにつきましては、地方税法上、氏名を記載することとされております。一方、旧姓の使用につきましては、一部の自治体において、納税者からの求めなどに応じて、旧姓により納税通知書などを作成している場合もあると承知しております。

 委員お尋ねの旧姓の使用に伴う具体的なトラブルの報告やニーズにつきましては、自治体に対する網羅的な調査などを行っておらず、これまでのところ、そのような事案の報告等は承知しておりません。

吉川(里)委員 続いて、国税庁に伺います。

 国税の手続において、納付書や申告書には原則として戸籍上の氏名を記載するのが原則であるものの、実務上は旧姓を記載しても納付が受理されていると聞いております。還付の際には、旧姓名義の口座を指定しても還付は可能なのでしょうか。また、旧姓での手続を希望する納税者から、手続上のトラブル事例の報告があるのか、お答えください。

田島政府参考人 お答え申し上げます。

 納税者が税務当局に提出する税務書類は、国税通則法にて氏名を記載することとされており、この氏名は戸籍上の氏名を記載していただくこととしております。しかし、旧姓を記載した納付書や申告書が提出された場合でも、旧姓記載を理由に受け取らないことはなく、本人確認の上で処理を進めるなど、実務上は柔軟に対応しております。

 還付金の支払いにおいても、同様に、振り込み先として旧姓名義の預貯金口座が指定された場合であっても、申告書を提出された方の預貯金口座であることが確認できれば還付処理を進めているところでございます。

 また、国税庁においては、旧姓での手続を希望する納税者との事務手続上の大きなトラブル事例は把握していないところでございます。

吉川(里)委員 旧姓使用については、経団連の提言にも、昨日、税の手続で負担があると指摘がありましたが、本日の質疑を通じて、税務上の手続において旧姓の通称使用に実質的な支障がないということは確認できました。

 確かに、旧姓が全ての場面で自由に使えるというわけではありません。しかし、個人の希望に全て応えるために家族制度の根幹を変える必要があるのかは全く別の問題だと思います。社会全体の秩序や子供の視点も踏まえれば、個人のアイデンティティーを尊重しつつも、一定の折り合いが必要かと考えます。

 通告の三は飛ばします。先に通告五、国民民主党に伺います。

 玉木代表が、御党の提出された民法改正案に対し、動画発信の中で、現行の戸籍制度の同一戸籍同一姓的な形式を維持すると述べられておりました。この的という言葉をあえて強調された点について、私は強い違和感を持ちました。というのも、制度の根幹を実質的に変えておきながら、形式的には似ているとすることで変更の本質をごまかそうとしているように見えるからです。

 この的という表現は一体どういう意味なのか、国民案が戸籍制度の本質的な変更ではないと主張される根拠について、御説明をお願いいたします。

円議員 お答えいたします。

 私ども国民民主党は、婚姻によって氏を改めることによる社会生活上の不利益を防止するなどの観点から、かねてから選択的夫婦別氏制の導入を訴えてまいりましたが、これに対しては、我が国の戸籍制度の在り方を大きく変えてしまうのではないか、例えば、戸籍を個人ごとに編製するように変更するつもりなのではないかといったことを懸念する国民の声も聞かれました。

 そこで、我が党は、そのような御意見も踏まえまして、国民の親族的身分関係を登録、公証する唯一の制度である戸籍制度の重要性に鑑みまして、戸籍制度の変更は必要最小限にとどめるべきと考え、国民案の附則二条で、現行の戸籍の編製基準を維持すべきことを法律上明らかにするなど、現行の戸籍制度を維持する旨をより明確化する工夫を行いました。

 玉木代表は、多分、そのような工夫を行い、現行の戸籍制度を維持する旨をより明確化した我が党の案を、同一戸籍同一姓的形式と表現したものと考えております。

吉川(里)委員 ですが、同一戸籍同一氏の原則が変質してしまえば、戸籍制度の本質というものが変わり、形式が似ていてもそれは見せかけであって別の制度になる。つまり、戸籍筆頭者を残しているというごまかしの案であるということを私からは御指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、こども家庭庁に伺います。

 内閣府が令和三年に実施した世論調査では、夫婦の姓が異なることが子供に好ましくない影響を与えるとの回答が約六九%に上りました。また、産経新聞による小中生へのアンケートでも、名字の違いに対する否定的な意見が多数を占めております。親子で氏が異なることによる心理的不安や疎外感は、子供の福祉に直結する問題だと考えます。

 ここで、伺います。こうした影響が指摘されている中で、子供に関する施策については子供の意見を聞くべきではないのでしょうか。

辻副大臣 吉川委員の御質問にお答えします。

 こどもまんなか社会を掲げているこども家庭庁では、子供、若者の皆さんの声を聞き、政策に反映する取組を推進しています。

 その観点から、一般論として申し上げれば、子供に関する制度を検討する際は、当該制度を所管する府省庁において、できる限り様々な子供、若者の意見を聴取することが望ましいと考えています。

吉川(里)委員 本法案というのは、子供の氏や家族の在り方に直接関わる改正かと思います。夫婦が別姓を選べば、子供は生まれながらにして一方の親と違う姓になります。子供にとっては、選択的ではなく、強制された親子別姓となります。

 その制度の下で、これから長い人生を日本社会の中で生きていくのは、まさに子供たちであります。親がどう思うかだけではなく、子供がどう感じるのか、その声に耳を傾け、心理的影響や不安に真正面から向き合う姿勢が、真の子供の福祉を守るために必要だと私は考えます。

 議法の形であれ、本法案が提出され、委員会でこうして議論がされている中、法務省としても、子供の立場になった調査や意見の聞き取りに責任を持って取り組んでいただきたいと強く要望いたします。

 次に、国民民主党に伺います。

 国民民主党の榛葉幹事長は、子供の問題が余り議論されていない、国民の家族観に直結するので広範な国民の総意が必要だとして、子供を中心とした丁寧な議論の必要性を強調されてきました。

 しかし、国民民主党が提出された民法改正案では、夫婦が別氏を選んだ場合、子供の氏は一律に戸籍筆頭者の氏に決まる制度設計となっており、そこに子供の目線や親子別氏への影響の配慮が見られません。一体、どこで誰の意見を聞き、どのようにその議論が行われたのかについてお示しください。

円議員 国民案では、別氏夫婦は、婚姻の際に戸籍の筆頭に記載すべき者を定めることとし、子が生まれたときは、子は、その戸籍の筆頭に記載すべき者の氏を称することとしておりますことは、御存じのとおりです。

 立憲案のように、別氏夫婦が婚姻の際に子が称すべき氏を定めることとしなかったのは、子を持つことができない御夫婦や子を持つことを考えていらっしゃらない御夫婦もおられる中で、多様な夫婦の在り方に配慮し、婚姻と出産とをなるべく切り離して考えるべきだと考えたからでございます。

 あわせて、今おっしゃった、子供の立場や、親子で氏が異なる場合の影響につきましては、私ども、男女共同参画推進本部のヒアリングにおきまして、ヒアリング先の団体から、両親、親子の姓が異なる子供から、いじめられた経験もありません、家族の一体感もあって幸せです、かわいそうという意見は的外れですなどといった声が上がっていると伺い、そうした意見も踏まえました。

 また、私自身は様々な子供たちからも意見を聞いておりまして、親が同氏であるとか、それが普通だというようなことは、普通という言葉は大人が押しつけるものであって、そんな普通なんということはないんだ、それぞれの多様な家族があって当然だという子供たちが多くて、普通じゃないからと大人に言われて、それで大変だなんて思ったことはないという子供たちの声が圧倒的でございました。

吉川(里)委員 そもそも榛葉幹事長は、報道において、おおむね維新案に賛成だという発言がありました。ですので、今の円理事の発言とは乖離が生じているのではないか、党の方針が、有権者の皆さんは誤解されているのではないかと思う点を御指摘させていただきます。

円議員 先ほどから、玉木代表や榛葉幹事長のコメントがよく言われておりますが、私どもは、そうしたものを全部ひっくるめて、いろいろな意見があるのは当然なんです、どの党であっても。それをひっくるめて今回の法案を作りまして、その法案の中身については玉木代表も榛葉幹事長もちゃんとオーケーしてくれておりますので、今後そういうことは言わないと思います。

吉川(里)委員 時間が迫ってきたので、次の問題に移ります。

 立憲民主党に伺います。

 親子別姓により損なわれるおそれのある家族の一体感や子の福利、これらは、子供の人権あるいはそれに準ずる法的利益とはお考えではないのでしょうか。また、家族の一体感そのものを保護すべき重要な社会的利益と位置づける考えについて、どのように評価されているのか伺います。

米山議員 お答えいたします。

 まずもって、先ほど来、ちょっと違和感を感じているんですけれども。と申しますのは、現行法におきましても、国際結婚や離婚の家族において、親子間で姓が異なる家族、兄弟間で姓が異なる家族は多数おられます。もし、御党におきまして、それほどに子供の福祉ということをおっしゃられるのであれば、なぜ今まで、既に存在する様々な、親子や夫婦で姓が異なる家族について聞き取りをされなかったのか。今までずっとそれに対して放置されてきて、これからの疑いばかりをおっしゃられるということに私は少々違和感を感じているということを御指摘させていただきます。

 そういった、現行で既にたくさんの夫婦別姓、親子別姓の御家族がいる中で、昨日の参考人質疑におきまして、小原参考人、次原参考人、布柴参考人がそれぞれ、特段、家族の一体感が損なわれている例はないというふうにお答えされております。

 昨日の参考人質疑で布柴参考人が述べておられましたように、御両親それぞれがそれぞれの生まれ育った姓を使い続けることで確固たるアイデンティティーを持ち、生き生きと生活し、働くことによって、家族の一体感や子の福利が向上しているという御家庭も現に存在するものと私は理解しております。

 また、言うまでもないことでございますが、家族で同一の姓を持つことによって家族の一体感を維持したい御夫婦は、当然、夫婦同姓を選択することが可能でございます。

 結局、何によって家族の一体感を維持し、深めていくかというのは、家族ごとに選択すればいいのであり、我が党が提案している選択的夫婦別姓は、そのようにして、それぞれの家族が自らの選択によってそれぞれに家族の一体感の維持向上や子の福利に資する、そういう制度だと思っております。

吉川(里)委員 今、米山委員から御指摘ありましたが、私どもとしては、二択か三択かの質問で、三択の問いでいえば、反対の方が多い。そして、先ほども申しましたが、産経新聞社のアンケートでは、半数以上の子供が別姓導入について反対という意見も訴えております。

 もちろん様々な御家庭があるということも理解しておりますが、同姓を強制されない自由というのがあるのであれば、子供に、親子別姓を強制されない自由というものもあると思っております。子供は親より弱い立場で、親権は子供の利益のために行使すべきということは民法の八百二十条の大原則です。まさに親の利益と子の利益の調整が必要な場面かと思います。

 多様性や選択肢の拡大といえば聞こえはいいですが、実際には、子供に負担や分断を押しつける制度となっております。それを、選べるから問題ないというふうに、今回の別姓制度についてそう片づけるのは極めて無責任だと思います。本当に必要なのは、大人の自由ではなく、子供が安心して日本社会で育つ環境を守ることであるというふうに考えます。

 次の質問、八は飛ばして九に行きます。

 立憲に質問いたします。

 制度導入後に、私がもし旧姓に戻るという場合、そして、その次に、親が旧姓に戻った場合、やはり私も親の旧姓がよいとなった場合に、波及的なケースは制度上可能とされるのでしょうか。もし可能とするのであれば、氏が親世代の選択によって連鎖的に変動し、親の旧姓を選べるような状況になれば、氏制度自体に連鎖的な混乱が生じかねません。この点についてどうお考えなのか、見解を伺います。

米山議員 委員御指摘のとおり、親が旧姓に戻った場合には、附則の経過措置により、既婚の同氏夫婦の一方が復氏する場合を想定しておられるのだと理解しますが、その夫婦に子供がいた場合、新民法七百九十一条一項の規定により、家庭裁判所の許可を得れば、その氏を、復氏した親の氏に変更することは制度上可能でございます。

 もっとも、その場合も、子が自由に氏を変更できるわけではなく、子の福祉の観点から家庭裁判所が変更の可否を判断することになっているため、委員御指摘のような氏制度全体の混乱が生じるとは考えにくいかと存じます。

吉川(里)委員 次に、参考人からは、夫婦別姓が導入されれば、家族は同じ姓で一つの単位を成すという社会的な前提が崩れ、親子関係や家族関係の推認が困難になるだけでなく、お墓などの慣習的なつながりも薄れていくのではないか、そして、その結果として子供のアイデンティティー形成にも影響が及ぶのではないかという懸念が示されました。

 こうした家族観や文化的基盤への影響、また予測困難な変化について、制度改正の前にどこまで検討が尽くされたのか、立憲民主党にお伺いいたします。

米山議員 再三の御指摘でございますけれども、現行法においても、国際結婚の家族や離婚後の家族、また事実婚の家族などで親子別姓、夫婦別姓の家族が多数存在いたしますが、氏を通じた、親子、家族関係に不都合は生じておりません。

 お墓などにつきましても、私の家の例でまた恐縮ですけれども、私は、きょうだい、姉と妹がいるんですが、姉と妹はもう結婚して姓が変わっておりますが、非常に熱心にお墓参りをするのは、姓が同じ私ではなくて、姓が変わっている姉と妹でございますので、姓とお墓参りの慣習というものがダイレクトに結びつくということは余りないというのは、むしろここにいらっしゃる多くの方々が同意してくださることではないかと思います、現実問題として。

 昨日の参考人質疑におきましても、様々な現場の当事者であられる小原参考人、次原参考人、布柴参考人も同意見でございました。

 なお、この点について私は三月十二日に法務委員会で法務省に質問しておりますが、法務省は特段、そういった、氏が違うことによる問題点は把握しておらないということでございましたし、本当に問題があれば、とっくに、当事者団体などが出てきてそういう訴えがなされたり、政党などがそういう訴えを聞いてまたそういう主張をしていそうなものなんでございますけれども、どこからもそういった声は出ない。そのどこからもの中には、この法案に反対されている御党や態度を曖昧にしている自民党も含まれておりまして、どちらの政党も、今まで存在していた夫婦別姓、親子別姓に関して何らの訴えをされていないということを御指摘させていただきたいと思います。

 ないということを証明するのは悪魔の証明といって困難ではございますけれども、現行法において、国際結婚の家族や離婚後の家族、また事実婚の家族などで多くの夫婦別姓、親子別姓の御家族が存在するにもかかわらず、当事者からも、御党や自民党からも、今の今までそういった不都合が訴えられていないということは、基本的にそのような問題は、現行法において存在する親子別姓、夫婦別姓の家族において生じておらず、したがって、選択的夫婦別姓を導入しても新たに生じるおそれが高いとは到底言えないと考えるのが通常かと思います。

西村委員長 吉川さん、時間が参りますので、御協力をお願いします。

吉川(里)委員 今、指摘がないというお話がありましたが、我々、多くの国民の声を代弁している立場ですけれども、今のままで都合が悪くないから声を上げていないということも御指摘させていただきたいと思います。

 私の名前を守りたい、アイデンティティーの保護をという声を繰り返されますが、それほど大事にされている氏、これは御党の案では、家族の氏、田中家と吉川家、引き継ぎたいといって、今の一世代は引き継げるかもしれませんが、子供には、二つの世代を引き継ぐことはできないと思います。そうした観点から見ますと、やはり今だけ、自分だけの御意見に聞こえてしまいます。

 私は、国会議員たるものは、常に現在や過去そして未来を見据えた社会の公益性を優先にするということ、世界に例を見ない現行の戸籍制度や家族の在り方を維持しながら、家族制度を変更することなく、別姓を望まれ、旧姓の通称使用では今解決できていないお困り事に対して一つ一つ丁寧に対応するということが今最も必要なことであるということを強く申し上げ、私の質疑を終わります。

西村委員長 次に、島田洋一さん。

島田(洋)委員 日本保守党の島田です。

 今日の午前中の審議中に国民民主党の提出者の方から大変ニュース価値のある発言が出ましたけれども、今国会中に採決すべきじゃない、参議院選挙の後にしっかり合意形成を図るべきだということをおっしゃったので、その点に関して一点だけ本題に入る前にお聞きすると、今、アメリカのロサンゼルスで、いわゆる不法滞在外国人の強制送還をめぐって大変な暴動、略奪、放火等が起こっています。出入国在留管理の問題、特に不法滞在外国人に対する対策というのはこの法務委員会に託された大変重要なテーマであるわけです。

 これは時間をかけていいというんだったら、私は、今のアメリカの状況を見ていても、この不法滞在外国人の問題なんかを集中審議するというのが国民の負託に終盤国会の法務委員会が応える道じゃないかと思うんですが、円さん、いかがですか。

円議員 どうも島田委員からは再三の御指名がございまして、今、もう来週の末で実質的に今国会が終わるわけですよね。そうしますと、御指摘の案件は大変重要かと思いますが、それこそ理事会で協議させていただきます。

島田(洋)委員 それでは、維新案の提出者にお聞きします。

 維新案によると、私も同意する点はたくさんあるんですけれども、官公庁とか民間事業者に関して、あくまでも通称使用拡大の努力義務を課すという書き方になっていると思うんですけれども、努力義務を課すということであれば、維新の法案であれば、数々指摘されているように、やはりダブルネームの問題、公的な名字が二つあるという場合、混乱が生じるんじゃないか、特に、金融関係なんかで悪用されるおそれもある。

 そういうことも考えれば、我々が主張するように、国会決議といった形で事を進める方が、どうせ努力義務だというなら、そっちの方がすっきりすると思うんですが、この点、いかがですか。

藤田議員 昨日、厳しく追及するとおっしゃられていたので、ちょっと怖がっているんですけれども。

 維新案は、現行の旧氏を併記する通称使用制度によっては、婚姻後に旧氏を使用する方の不便、不利益の解消がなお不十分であるということに鑑みて、現行制度を一歩進めて、公的書類において、戸籍に通称使用する旧姓を記載した方については、戸籍氏に代えて旧氏を単独使用する法制度を導入するものでありまして、このような制度を確実に実施していくには、法的な拘束力のない国会決議によってはまだ不十分と言えまして、たとえ努力義務であっても、法律を根拠として行うべきであるというふうに考えております。

島田(洋)委員 昨日、参考人質疑を聞いていて、経団連においても連合においても、経団連の報告書では、九一%の企業で旧姓の通称使用というものが大体行われているけれども、九%ではまだ駄目なんだと。

 この点に関して、経団連自身がしっかり指導力を発揮して努力しているとは私の印象では思えなかった。連合の方からも、経団連等に対して強く申入れをして、旧姓の通称使用をしっかりもっと拡大するようにやれと言っているように私には思えなかったんです。だからこそ、国会決議という形で、国会が旧姓の通称使用、まだ不便を感じている女性が特に問題になるわけですけれども、これを拡大するんだという意思を示せば、経団連や連合ももっと腰を入れてやるんじゃないかと思うんです。

 次に、立憲案と国民案の提出者の方にお聞きしたいんです。

 これは私の勘違いもあるかもしれませんが、ただ、国民の多くにおいて同じような勘違いをしている人がいるかもしれないので、基本的なところからお聞きしますけれども、立憲案及び国民案では、経過措置とされているところが、私は何回か問題にしましたけれども、場合によっては女性のアイデンティティーの問題をより悪化させかねない。

 一つ一つお聞きするんですけれども、この法律が成立したとして、施行前に婚姻していた女性でも、配偶者との合意に基づき、この法律の施行の日から一年以内に届け出ることによって、婚姻前の氏に戻すことができる。これは、一年以内という期限が設けられている理由は何なんでしょうか。一年を超えちゃうと駄目だと、そこで切る理由はどういうことなんでしょうか。米山さん、お願いします。

米山議員 この経過措置でございますけれども、改正法施行前に婚姻した同氏夫婦につきましては、別氏を選択する機会がなかったことから、改正後に婚姻した夫婦との均衡上、別氏を希望する夫婦にはその機会を付与することが相当であることから盛り込むこととしたものです。

 そして、お尋ねの期限についてでございますが、復氏するかどうかは検討する期間を一定程度置く必要があること、ですので、それを一年としたわけですが、その一方で、呼称の早期の確定の必要性や呼称秩序の安定性の要請もあることを踏まえ、両者のバランスを取って、施行後一年以内に限り復氏できることとしたものでございます。

島田(洋)委員 同じ質問を、国民民主の提案者にもお願いします。

円議員 全く立憲案と同じでございまして、今、米山さんが答えられたとおりなのでございますが、実は、一年というと短過ぎる、子供の学校の件などもあって、本当は、復氏、元の、別姓にしたいんだけれどもと悩む方たちにとっては一年では短いんじゃないかという声もたくさんいただきました。

 ただ、これは、法案が成立してから一年の間に戸籍法やシステムを変更するようにということになっておりまして、その施行からまた一年でございますので、しっかりと周知させれば、二年間ございますので、さっきの米山さんの答弁と同じなんですが、でも、そういう二年間の猶予があるというふうにお考えいただければと思います。

島田(洋)委員 昨日の参考人質疑で、配偶者との合意に基づきという部分を、私が、男である夫の事実上拒否権じゃないのかという言い方をしたところ、拒否権という言葉には抵抗を感じられたようで、そうじゃなくて、あくまで合意形成なんだと。その言い方でもいいんですけれども。

 それでは、夫を説得して合意形成に一年数か月かかった、夫が合意してくれた。一年数か月、超えていたら駄目だとなる理屈は、米山さん、円さん、どうなるんでしょうか。

米山議員 一年話して駄目になる可能性があるかということでございましたら、それは可能性はあると思います。

円議員 拒否権という言葉はちょっと違うかなとは思いますが、おっしゃるとおり、合意形成ができない場合もございますよね。

 でも、そのことで合意形成が何年ももめるなんというのは、よほどその前に夫婦の間が、うまく、関係性がなかったかもしれませんので、どうなるかは、離婚なんてこともあり得るかもしれないと思いますが、合意形成をしっかりとやっていただけるようにしたいと思います。

島田(洋)委員 離婚なんということがあったら困るという私は立場ですけれども。

 ちょっと今、米山さんの答えだと、途中で終わったような気がするんですけれども、この法が施行されたとして、みんながすぐ認識するわけじゃないので、かなりたってから、こういう法律ができていたのかと。夫に相談したけれども、ぐずぐずされた。ようやく説得できて、見たら一年数か月たっていた。これは駄目だというその理屈を説得的に出していただけるとありがたいんですけれども。

米山議員 説得的かどうかは分かりませんが、法律には様々な期間がございまして、損害賠償も、時効や除斥期間になりましたら、有無を言わさず駄目でございますので、それはやむを得ないことかなと思います。

島田(洋)委員 これは期限を設ける必要がなぜあるんですか。

米山議員 逆に、これは時効などの議論と同じかと思うんですけれども、時効等もなくていいという議論もありますけれども、しかし、非常に古い権利関係を争うということになると、本当に争いが、分からなくなっていくわけですよね。

 それとは、旧氏に復するところは別なんだとは思いますけれども、しかし、ずっと話合いが続いていって、何十年もたってから突然戻されても、周りの人たちもびっくりするというようなところもあるかと思いますので、そこは一定の期間を取って、早期に決めてくださいというのは法制度としてあり得るのではないかと思います。

島田(洋)委員 女性のアイデンティティーということを大変重視されるというのはよく分かるんですが、そこを重視するのであれば、女性だって、いつ、どんな気分になるか分からないわけだし、期限を設けない方が、私は女性のアイデンティティーという立法者意思に沿うと思うんですが。

 もう一回確認しますけれども、円さん、期限を設けないというのは駄目なんですか。

円議員 駄目かと言われれば、いろいろ考える余地はあるかと思いますが、なぜ定めたかと申しますと、呼称の早期の確定の必要性ですとか呼称秩序の安定性の要請もあるということがありまして、このように定めたわけでございます。

島田(洋)委員 では、関連なんですが、この法の施行後、同姓を選んで結婚した、要するに、本当は別姓を選びたかったんだけれども、夫になる人を怒らせたくないという気分で、結婚したんだけれども、やはりどうしても旧姓に戻したい、別姓を選びたいという方が、結婚して一年、一年以内でもいいですよ、やはり旧姓に戻したいといったときは、これはできるんでしょうか、お二人に聞きますけれども。

米山議員 その期間内であれば、もちろんできます。

円議員 同じでございます。

島田(洋)委員 期間内というのは、法の施行後に結婚する人においても一年以内という、訂正があるのなら、どうぞ。

米山議員 済みません、質問の内容を理解しておりませんで。

 この一年以内に旧姓に復せるというのは、法施行時に既婚の御夫婦のことでございますので、そうではなくて、まず、法施行時には未婚で、法施行後に夫婦同姓を選択した方ということであれば、それは戻せません。

島田(洋)委員 ここが、私は、女性のアイデンティティーということを強調された法案にしては制度設計に問題があるんじゃないかと思いますよ。

 だって、結婚のときは、やはり女性は、男性もそうですけれども、できるだけ、相手に気兼ねして、別姓を選びたいと思っても、同姓でいいですと。でも、時間がたつにつれて、やはり自分のアイデンティティーを考えると旧姓に戻したい。これは一旦結婚してしまったら駄目なんだ、そう突き放しちゃっていいんですかね、お二人に聞きますけれども。

米山議員 そこは、ありとあらゆるものは自由と制限のはざまにあるといいますか、こういうお話ですと、もう皆さん食傷ぎみでしょうけれども、我が家の話をせざるを得ないんだと思うんですけれども……(発言する者あり)

西村委員長 御静粛にお願いします。

米山議員 要は、結婚をして、もちろん、不自由というものもあるわけでございます、これは結婚をした方々、多くの方が御理解いただけると思うんですけれども。もちろん、我が妻も、必ずしもうちの、私に対してだって、いろいろな思いはあるんだと思いますよ。こいつと思うときがあっても、夫婦でいるから仕方ないと思うこともあるんだと思いますし、私も、それはないとは言い切れないところがあるわけですし。

 それぞれの御家族に対してもそうでございますが、一回結婚した以上はその中にいるわけですよ。同じような話でして、一回夫婦同姓を選んだ以上はその中にいるというのは、制度として当たり前というふうに思っております。

島田(洋)委員 これは、私は当たり前とは全然、今の米山さんの家の話は、どう関連していたのか、さっぱり分かりませんでしたけれども。それはいいですけれども。

 では、女性が、私の言葉だと夫に拒否権を発動された、配偶者との合意が成らなかった、そういう場合に、単に、いわば泣き寝入りではなくて、家庭裁判所に調停を申し立てて、私は姓を変えたいんだ、でも、夫がオーケーしてくれないと家裁に申し立てて、その調停が不成立だったら、審判手続に行くとか、そういうことは想定されないんでしょうか、お二人に聞きますけれども。

米山議員 それは全く想定しておりません。

 例えば、結婚したいお二人が、プロポーズしてなかなか相手が同意してくれないときに家庭裁判所の調停に行くということは想定されないのと同じことでございまして、それは同意があって初めて戻れるのであって、想定されておりません。

円議員 島田先生は女性のアイデンティティーのことを随分おっしゃっていますが、選択的夫婦別氏制度が導入されていない現在、九五%の人が男の人の姓に変えている結婚が多いわけですよね。最近、男性たちから聞かれるのは、自分の氏に変えてもらって、すごく彼女に申し訳なかったと思っている方が結構いらっしゃるんですね。そして、仕事上、彼女にすごく不利益を被らせていると。

 ですから、多分、同姓の、同氏の御夫婦、既婚夫婦の場合、この法案が通りましたら、多くの場合は、先生がそんなに御心配なさるようなことはなくて、すんなりと妻の側の、別氏夫婦になるということになるんじゃないかと思います。

島田(洋)委員 今のお答えだと、法の施行後に結婚した人に関しては、その結婚の時点で決めて、後は変えられないと米山さんはおっしゃったわけですが、今、円さんが言われたように、しばらくたって夫が妻の希望をかなえてやろうと別姓にしようと思っても、これは制度的にできないわけなんじゃないですか、円さん。

円議員 先ほども申し上げましたが、法案が成立してから考えますと、二年間の間は変えることができますから……(島田(洋)委員「施行後に結婚した人」と呼ぶ)施行後に結婚して、既婚夫婦になった場合ですか、同氏の。そうですね、それはちょっと変えられるように努力いたします。

島田(洋)委員 変えられるように努力するということは、これは法案として全く不備があるということを今認められたんじゃないですか。もう一回そこのところを作り直して出してもらわないと、これは審議できないですよ。

円議員 大変申し訳ございませんでした。

 私自身はそういう方々も救いたいと思いますが、法の安定性から、変えられないことになっております。申し訳ありません。

島田(洋)委員 控えめに言っても、答弁が明らかにぐらついておられるわけで、かつ、女性のアイデンティティー、これが何よりも重要だといいながら、私が今質問した二、三のところでも、全然女性のアイデンティティーが十分確保しているとは思えないわけです。だから、これは非常に問題があるんじゃないですか。(発言する者あり)ちょっと平岡さん……

西村委員長 御静粛にお願いいたします。

島田(洋)委員 何を言うか忘れてしまうので。まあ、やじと言っておきますけれども、今日は。

西村委員長 不規則発言にはお答えにならなくて結構でございます。

島田(洋)委員 精神を乱すようなことを叫ばないようにお願いします。(発言する者あり)

西村委員長 御静粛にお願いいたします。

島田(洋)委員 これはいいんでしょうか。黒岩さん、いいんですか、これは。

 昨日、参考人の方も言っておられたけれども、法務委員会というのは非常に上品な場だと思って来たのに、何なんだ、これはと。また言われると、我々全員恥ずかしいですからね。

 これは小泉筆頭もちょっとお願いしますよ、こういうことが起こらないように。今までの時間を無駄にしちゃったので。

 それで、今のお話を聞いていて、既婚者が別姓になりたいという場合と、これから法の施行後に結婚するという方が別姓になりたいという場合と全然扱いが違う。これは、法の設計上、非常に問題があるなというのが明らかになったと私は思うので、もう一回これは練り直して出してもらえないでしょうか、米山さん。

米山議員 いや、私は全くそう思いませんでして、結婚を一回したら、結婚した、制度に一回入ったのなら、そのままなわけですよね。一年間は元に戻せるというのは、そのチャンスがなかった人、選択的夫婦別姓を選べなかった方は、やはり均衡を失するので、法施行後一年間はできるということであって、それはちょっと別の話でございますので、特段、法に不備はないものと理解しております。

西村委員長 時間ですので、島田さん、御協力をお願いします。

島田(洋)委員 それでは、子供の姓の問題も聞こうと思っていたんですけれども、この今の部分で不備があるということが明確になったので、子供の姓の問題は次回に回したいと思います。

 今日は、これで終わります。

西村委員長 次回は、来る十三日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十三分散会


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