衆議院

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第24号 令和7年6月17日(火曜日)

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令和七年六月十七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村智奈美君

   理事 小泉 龍司君 理事 津島  淳君

   理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君

   理事 金村 龍那君 理事 円 より子君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      上田 英俊君  英利アルフィヤ君

      鬼木  誠君    上川 陽子君

      神田 潤一君    河野 太郎君

      寺田  稔君    平沢 勝栄君

      向山  淳君    森  英介君

      若山 慎司君    有田 芳生君

      篠田奈保子君    柴田 勝之君

      寺田  学君    平岡 秀夫君

      藤原 規眞君    松下 玲子君

      萩原  佳君    藤田 文武君

      小竹  凱君    大森江里子君

      平林  晃君    本村 伸子君

      吉川 里奈君    島田 洋一君

    …………………………………

   法務大臣政務官      神田 潤一君

   参考人

   (麗澤大学経済学部教授) 八木 秀次君

   参考人

   (一般社団法人あすには代表理事)         井田 奈穂君

   参考人

   (事実婚当事者)     割田 伊織君

   参考人

   (第三次選択的夫婦別姓訴訟弁護団長)       寺原真希子君

   参考人

   (一般社団法人男女共同参画学協会連絡会アンケートWG委員長)       志牟田美佐君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十七日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     鬼木  誠君

  神田 潤一君     英利アルフィヤ君

  棚橋 泰文君     向山  淳君

同日

 辞任         補欠選任

  英利アルフィヤ君   神田 潤一君

  鬼木  誠君     井出 庸生君

  向山  淳君     棚橋 泰文君

    ―――――――――――――

六月十六日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二九九九号)

 元々日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(枝野幸男君紹介)(第三〇〇〇号)

 選択的夫婦別姓制度を直ちに導入することを求めることに関する請願(佐々木ナオミ君紹介)(第三〇〇一号)

 同(櫛渕万里君紹介)(第三三三一号)

 選択的夫婦別姓の導入など、民法・戸籍法改正を求めることに関する請願(伊藤俊輔君紹介)(第三〇〇二号)

 同(櫛渕万里君紹介)(第三三三二号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(坂本祐之輔君紹介)(第三〇〇三号)

 同(渡辺創君紹介)(第三〇〇四号)

 同(本村伸子君紹介)(第三二〇六号)

 同(伊藤俊輔君紹介)(第三三三三号)

 同(辰巳孝太郎君紹介)(第三三三四号)

 同(長妻昭君紹介)(第三三三五号)

 同(下野幸助君紹介)(第三四五一号)

 同(末松義規君紹介)(第三四五二号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(伊藤俊輔君紹介)(第三〇〇五号)

 同(黒岩宇洋君紹介)(第三〇〇六号)

 同(藤岡たかお君紹介)(第三〇〇七号)

 同(本村伸子君紹介)(第三三三六号)

 再審法改正(刑事訴訟法の一部改正)を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三〇〇八号)

 同(志位和夫君紹介)(第三〇〇九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三〇一〇号)

 同(辰巳孝太郎君紹介)(第三〇一一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三〇一二号)

 同(田村智子君紹介)(第三〇一三号)

 同(堀川あきこ君紹介)(第三〇一四号)

 同(本村伸子君紹介)(第三〇一五号)

 同(本村伸子君紹介)(第三二〇七号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第三三三七号)

 選択的夫婦別姓制度導入の民法改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三一七九号)

 同(新垣邦男君紹介)(第三一八〇号)

 同(臼木秀剛君紹介)(第三一八一号)

 同(大塚小百合君紹介)(第三一八二号)

 同(尾辻かな子君紹介)(第三一八三号)

 同(神谷裕君紹介)(第三一八四号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第三一八五号)

 同(坂本祐之輔君紹介)(第三一八六号)

 同(櫻井周君紹介)(第三一八七号)

 同(志位和夫君紹介)(第三一八八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三一八九号)

 同(篠田奈保子君紹介)(第三一九〇号)

 同(辰巳孝太郎君紹介)(第三一九一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三一九二号)

 同(田村智子君紹介)(第三一九三号)

 同(堤かなめ君紹介)(第三一九四号)

 同(堀川あきこ君紹介)(第三一九五号)

 同(松尾明弘君紹介)(第三一九六号)

 同(松下玲子君紹介)(第三一九七号)

 同(村岡敏英君紹介)(第三一九八号)

 同(本村伸子君紹介)(第三一九九号)

 同(森田俊和君紹介)(第三二〇〇号)

 同(矢崎堅太郎君紹介)(第三二〇一号)

 同(柳沢剛君紹介)(第三二〇二号)

 同(米山隆一君紹介)(第三二〇三号)

 同(早稲田ゆき君紹介)(第三二〇四号)

 同(渡辺周君紹介)(第三二〇五号)

 同(青柳陽一郎君紹介)(第三三三八号)

 同(東克哉君紹介)(第三三三九号)

 同(五十嵐えり君紹介)(第三三四〇号)

 同(井坂信彦君紹介)(第三三四一号)

 同(伊藤俊輔君紹介)(第三三四二号)

 同(稲富修二君紹介)(第三三四三号)

 同(岡田悟君紹介)(第三三四四号)

 同(小川淳也君紹介)(第三三四五号)

 同(河西宏一君紹介)(第三三四六号)

 同(金子恵美君紹介)(第三三四七号)

 同(亀井亜紀子君紹介)(第三三四八号)

 同(川原田英世君紹介)(第三三四九号)

 同(許斐亮太郎君紹介)(第三三五〇号)

 同(篠原豪君紹介)(第三三五一号)

 同(白石洋一君紹介)(第三三五二号)

 同(仙田晃宏君紹介)(第三三五三号)

 同(宗野創君紹介)(第三三五四号)

 同(高橋永君紹介)(第三三五五号)

 同(武正公一君紹介)(第三三五六号)

 同(長友慎治君紹介)(第三三五七号)

 同(西岡秀子君紹介)(第三三五八号)

 同(野間健君紹介)(第三三五九号)

 同(波多野翼君紹介)(第三三六〇号)

 同(馬場雄基君紹介)(第三三六一号)

 同(日野紗里亜君紹介)(第三三六二号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第三三六三号)

 同(福田淳太君紹介)(第三三六四号)

 同(藤原規眞君紹介)(第三三六五号)

 同(古川元久君紹介)(第三三六六号)

 同(円より子君紹介)(第三三六七号)

 同(三角創太君紹介)(第三三六八号)

 同(森山浩行君紹介)(第三三六九号)

 同(山登志浩君紹介)(第三三七〇号)

 同(吉川元君紹介)(第三三七一号)

 同(吉田はるみ君紹介)(第三三七二号)

 同(石川香織君紹介)(第三四五三号)

 同(今井雅人君紹介)(第三四五四号)

 同(梅谷守君紹介)(第三四五五号)

 同(尾辻かな子君紹介)(第三四五六号)

 同(長友よしひろ君紹介)(第三四五七号)

 同(本庄知史君紹介)(第三四五八号)

 同(升田世喜男君紹介)(第三四五九号)

 子どもの性被害に三年の民事消滅時効を適用させないための新しい法律の制定を求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第三四五〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 民法の一部を改正する法律案(黒岩宇洋君外五名提出、衆法第二九号)

 婚姻前の氏の通称使用に関する法律案(藤田文武君外二名提出、衆法第三〇号)

 民法の一部を改正する法律案(円より子君外四名提出、衆法第三五号)


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 黒岩宇洋さん外五名提出、民法の一部を改正する法律案、藤田文武さん外二名提出、婚姻前の氏の通称使用に関する法律案及び円より子さん外四名提出、民法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、麗澤大学経済学部教授八木秀次さん、一般社団法人あすには代表理事井田奈穂さん、事実婚当事者割田伊織さん、第三次選択的夫婦別姓訴訟弁護団長寺原真希子さん、一般社団法人男女共同参画学協会連絡会アンケートWG委員長志牟田美佐さん、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、八木参考人、井田参考人、割田参考人、寺原参考人、志牟田参考人の順に、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず八木参考人にお願いいたします。

八木参考人 麗澤大学の八木でございます。

 まず、こうして国会で議員立法という手法によって民法や戸籍法の改正が審議されていますが、果たしてここに合理的根拠があるのか、立法手続についてまず疑念があります。

 民法や戸籍法のような重要かつ基本的な法律を改正する場合、内閣提出法案とするのがこれまでの慣例となっております。議員立法での民法改正は民法八百六十条の三の新設の一例のみで、成年後見人に、被後見人宛てに届いた郵便物開封の権限を付与するという、いわば付随的な法改正です。

 これに対して、今回審議しているような、夫婦の氏、子供の氏をどのように決めていくのかという家族法制の根幹に関わる重要な規定を改正する場合は、法務大臣の下に法制審議会の部会を設置して、専門家の知見も聞きながら、数年かけて慎重に検討して、内閣が責任を持って法案として提出すべきです。今回、例外的に議員立法で改正するというのであれば、それなりの合理的な理由が必要ですが、それが明らかではありません。

 また、立憲民主党の法案は民法改正のみで、関連する戸籍法の改正は政府に丸投げしています。立法手続として不整合であると思われます。

 さて、夫婦別氏の主張は、元々は、婚姻による改氏に伴う不便、不都合の解消という主張でありました。

 昭和六十三年、国立図書館情報大学での、女性教授が職場で婚姻前の氏を通称として名のりたいとし、大学がそれを拒否したことによって生じた裁判は、その後、平成十年に東京高裁で、職場での旧氏使用を認めるということで和解が成立して、解決しました。民法や戸籍法を改正して夫婦別氏を法制化するという話ではありませんでした。民法改正や戸籍法改正へは飛躍があり過ぎると思います。

 実際、不便、不都合はほぼ解消されています。昨年六月に出された日本経団連の提言には具体的な不便、不都合が列挙されていましたが、認識不足やデータが古かったことから、誤りが指摘され、改定を余儀なくされました。

 今日、全ての国家資格、免許等で旧氏の使用が認められており、マイナンバーカード、運転免許証、住民票、旅券等においても旧氏の併記が可能になっています。更に進めて、これらマイナンバーカード等の公的証明書における旧氏併記を根拠にして旧氏の単独使用、単記を可能にすればよく、そのための法整備をすればよいというだけの話であります。

 日本維新の会の法案はその趣旨に沿ったものと思われますが、何も戸籍法を改正して戸籍に旧氏使用の旨を記載する必要はなく、既にマイナンバーカード等に旧氏の記載があるのであれば、それを根拠にすればよい。必要であれば、それを担保する法律を制定すればよいわけです。

 戸籍に手をつけるのは、戸籍制度を守る趣旨からも賛成できません。戸籍という国民の身分関係を記載する文書に通称の記載はなじまず、また、戸籍の身分事項に旧氏使用の旨を書き込むのと、配偶者欄に婚姻前の氏を戸籍名として書き込むのと、果たして質的な差はあるのか疑問です。

 不便、不都合はほぼ解消され、残るは旅券のICチップとMRZという機械読み取りコードの問題程度になっています。これは、ICAO、国際民間航空機関文書に関わることで、技術的に旧氏の併記は難しいようですが、そうであるなら、外務省は、日本国民が渡航先に出入国する際、当該国の出入国管理当局等から不利益を被らないよう、外国の政府機関等に事情を説明する等、配慮をする必要があります。既に説明文書を発行し、旅券と併せて提示するとしており、トラブルの報告は受けていないとのことです。

 こうして不便、不都合が解消されると、次には、旧氏の併記は嫌だとかアイデンティティーが喪失されるなどの問題が言われ始めました。ゴールポストが動かされたということです。

 しかし、アイデンティティーはすぐれて内心の問題であり、主観的で千差万別でもあり、例えば、妻のアイデンティティーを主張するのであれば、夫のアイデンティティーもあり、子供のアイデンティティーもあり、家族のアイデンティティーもあるということになります。

 その点、平成二十七年十二月の最高裁判決は、婚姻の際に氏の変更を強制されない自由が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとは言えないとし、婚姻前に築いた個人の信用、評価、名誉感情等を婚姻後も維持する利益等は、憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとまでは言えないと述べています。アイデンティティー喪失と称する問題までは完全に救済できないということです。それゆえ、最高裁判決は、不利益は、氏の通称使用が広まることにより一定程度緩和され得るとしたのでありました。

 不便、不都合の解消から始まった夫婦別氏の議論でありましたが、これが民法や戸籍法の改正という大きな問題に飛躍したのは、そこに生活上の問題を超えた、ある種のイデオロギーがあったと考えられます。

 ある種の思想的傾向を持つ民法学者や弁護士の中には、未完の占領改革の完遂としての民法改正という考えがありました。昭和二十二年の現在の民法や戸籍法は、戦前の家制度を廃止して、夫婦とその間の未婚の子から成る近代的小家族、核家族をその構成単位や編製単位としましたが、それは中途半端で、個人単位にすべきだと考えてきました。

 平成八年の法制審案を作成した法制審民法部会長の加藤一郎元東京大学総長は、昭和三十四年に既に夫婦別氏を主張しています。夫婦別氏の主張は、戸籍の個人籍化の主張とも一体のものであり、当時の法制審民法部会の委員は、氏ごとの編製には無理がある、本来ならば、戦後の民法改正時に個人別の戸籍に改正されるべきであったと主張しています。

 こういった主張の背景には、縦横のつながりを希薄にしたアトム、原子的存在としての個人を析出すべきとの主張があり、現行の民法、戸籍法の構成単位、編製単位である近代的小家族の中に家制度の残滓を見て、それを拘束システムだと捉えて、解体して、個人として解放しなければならない、これこそが日本の市民革命だとの考えがありました。その際、依拠したのが憲法の個人の尊重や個人の尊厳であり、個人の尊厳に言及した憲法二十四条は家族解体条項であり、家族は解体してしかるべきだとの主張がありました。

 こうして家族共同体から解放された個人の氏名の自己決定権として夫婦別氏は主張され、家族解体を志向する思想と一体のものでありました。家族を個人のネットワークの一つであるとしたり、家族解散式を公言する人が夫婦別氏の法制化を主張しておりました。

 これらは社会の構成単位を世帯から個人に移行させる主張とも軌を一にしたもので、社会保障や税制などに及ぶいわば国の形を変える発想であり、私は、近代的小家族や世帯を家族法制や社会を構成する基本単位とするのが個々の構成員を保護するためにも適切と考えますが、すなわち、夫婦別氏は、単に氏をどうするのかという小さな問題ではなかったということです。

 夫婦別氏はこうした体系的な考えの一部分であり、その導入は他の法制度にも大きく波及するもので、いわば国の形を変えるものと言えます。

 平成八年の法制審案はこのイデオロギーを若干丸くしたもので、これは当時の自社さ政権の社会党的な主張が反映されたものと考えてよく、民主党政権時の平成二十二年に準備された案も同様と思われます。

 このように、意図して家族解体を図りたいという主張が夫婦別氏の背景にはありますが、意図はせずとも、夫婦別氏は、結果として家族共同体の分解に作用いたします。

 選択的であれ、夫婦別氏を導入すれば、別氏夫婦の下では必然的に親子別氏となり、現行は一つの戸籍に一つの氏が存在しますが、一つの戸籍に二つの氏が存在することになり、家族共通の氏を持たない家族が存在することになる。これにより、制度として家族の呼称である氏は廃止され、氏名は、氏、名共に純然たる個人を表すものに変質する。これは全国民に当てはまることで、全国民から家族の呼称としての氏というものが消滅することになる。これは、平成八年の法制審案を起草した当時の法務省参事官小池信行氏が指摘するところであります。これにより、全体として家族意識、帰属意識、共同体意識、一体感を毀損し、希薄化させる効果を持ちます。

 この点について、前述の最高裁判決は、夫婦及びその間の未婚の子や養親子が同一の氏を称することにより、社会の構成要素である家族の呼称としての意義がある、家族を構成する個人が、同一の氏を称することにより家族という一定の集団を構成する一員であることを実感することに意義を見出す考え方も理解できると述べています。氏を家族の呼称とした上で、夫婦別氏、親子別氏により、家族の共同体意識、一体感が醸成されるとの認識を示しています。

 立憲民主党と国民民主党は、三年前の令和四年六月、日本共産党、れいわ新選組とともに、選択的夫婦別氏を法制化する民法改正法案を提出いたしました。子供の氏は出生時に決めるとして、兄弟姉妹の氏は、父の氏、母の氏という具合にばらばらになることもあるとするもので、さきに述べた近代的小家族を個人に分解するイデオロギーに忠実な内容であると思われますが、今回、その案ではなく、実現方法は異なりますが、兄弟姉妹の氏は統一するとの案を提出しました。平成八年の法制審案をベースにしたとのことです。

 両党が考え方を変えた理由の一つとして、兄弟姉妹の家族としての一体感に配慮したことが推測できますが、そうであるならば、夫婦別氏に伴って親子別氏になることへの懸念はなかったのか、どっちつかずの中途半端な案と思われます。

 なお、私は、その他の政策では国民民主党に大きく期待するものですけれども、今回、このような法案を提出されたことを大変残念に思います。

 親子別氏には、子供の立場から忌避感があることが指摘されています。夫婦別氏を導入した海外の例では、親子別氏となって、誘拐や連れ去りの懸念から、親子証明書の携帯が必要になった国もあるとのことです。

 立憲民主党の法案と国民民主党の法案は、共に一年間の経過期間を設け、その間に、既に結婚している全ての夫婦が同氏か別氏かを選択するとしています。その期間での混乱も予想されます。国民民主党の案であれば、戸籍の筆頭者を変更するケースも出てくるでしょうし、連動して、子供の氏の見直しも行われるでしょう。戸籍事務の負担も増えます。連動して、公私の様々な書類の氏名の変更が生じます。社会的なコストも大きいと言えます。

 そうであるなら、世論調査でも国民の七割が支持する現行の夫婦同氏、親子同氏、家族同氏を維持しながら、民法や戸籍法の改正ではなく、婚姻前の旧氏を、単独使用も含めて広く社会的に使用できるような法的措置を講ずることの方が合理的であると考えられます。

西村委員長 八木参考人、申合せの時間に御協力をお願いいたします。

八木参考人 したがって、今回提出された三つの法案には、いずれも反対であります。

 以上です。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 次に、井田参考人にお願いいたします。

井田参考人 この六年間、法改正を求めてきた当事者団体として、法案提出してくださった各党の皆様、二十八年ぶりに審議をしてくださっている衆院法務委員会の皆様に、心より感謝を申し上げます。

 全国、そして海外に暮らす千人を超えるメンバーと支援者を代表して、当事者の声を届けさせていただきます。

 まず初めにお伝えしたいのは、この度の委員会審議の中で、改姓に伴うアイデンティティー喪失を軽視するような発言、困っている人はいない、いたとしても極めて少数であるなどの発言がなされていることです。大変残念に感じておりますし、多くの当事者が傷ついております。

 私のことをお話しします。

 私は、四十代で再婚しました。お互いに改姓を望まなかったので、婚姻届を出さずにおりました。ところが、夫が手術を受ける際、法律婚でないことを理由に、病院から配偶者としての医療同意を断られました。このことをきっかけに私たちは婚姻届を出し、私が改姓せざるを得ませんでした。

 数日後、役所から、あなたの氏名の印鑑証明を無効にしましたという封書が届きます。二十数年働いて信用、実績、資産を築いてきた名前、それを国に抹消されたことに大きな苦痛を感じました。

 四十代の子連れ再婚ともなると、大量の名義変更が必要なんですね。二年かけて様々な手続を行いましたが、自分の氏名に二重線を引かれ、夫の氏で上書きをされ、そこに捺印を求められる、こういう苦痛に何度も耐えてきました。

 また、旧姓使用を試みましたが、不都合が多く、例えば、アメリカ出張の際、旧姓併記のパスポートであったことをきっかけとして、現地の警察官から取調べを受け、二時間も拘束をされました。また、法人の代表として登記する際には、戸籍名に旧姓が併記される形でしか登記できませんでした。親の成年後見人登記に当たっては、戸籍名でしか登録できません。

 このように、旧姓使用に限界を感じ、私は、婚姻から六年後にはペーパー離婚をせざるを得ませんでした。再び事実婚となり、その不安定な状況に改めて不安を感じます。

 私が会社員の傍ら当事者団体を立ち上げまして、活動していく中で知ったのは、自分が自分であることを証明し続けてきた氏名を葬り去る過程で心を病むメンバーが一定数いたことです。

 資料の二ページ目には、改姓により適応障害を発症したメンバーの事例が載っています。改姓ストレスで吐血にまで至った彼女は、ペーパー離婚で名前を取り戻すと速やかに回復をしました。これは、現在行われている第三次訴訟の原告にも同じケースがあります。

 また、通称使用をしていたある女性研究者は、在外研究をしていたオーストラリアで、現地当局から、このままではあなたは二人の人間に成り済ましていることになるので、氏名を統一してほしいと注意を受けたといいます。彼女は、女性がその能力を最大限に発揮して生涯を過ごせるような社会に変わらなければ、日本から国外への知識の流出は今後ますます進むでしょう、そう語っています。

 実際に、私たちのメンバーで、二十代の医師と助産師のカップルや研究者同士のカップルなどは、日本での妊娠、出産は難しいと考え、海外で働くことも視野に入れているといいます。

 二〇二五年一月二十日、NHK「クローズアップ現代」で、家事支援の会社を五つ経営している女性が紹介をされました。事業五つ全ての登記、銀行口座の名義変更に追われ、手続にかかった期間は三か月、費用は百万円以上に及んだといいます。その方は、想像の百倍大変でした、手続をやっている間に、女性はビジネスで、ある程度のキャリアを築いてはいけないのかなと思いましたと語っています。

 旧姓併記で登記をすると、婚姻していることや配偶者の氏という極めて個人的な情報の公開を求められます。ある社外取締役を務める女性は、株主総会の場で、戸籍名を使っていない無責任な役員がいるとおとしめられ、大変なショックを受けたそうです。

 四国に住む七十七歳と八十三歳の御夫婦は、それぞれがそれぞれの家業を継いでいます。妻が改姓し、何十年も苦痛を感じてきました。お二人は、もし今年、法改正がされないのであれば、ペーパー離婚をするとおっしゃっています。自分に命をつないでくれた先祖からもらった本当の名前で死にたい、お互いに名前を大事に思っているので、法改正がなされなければ離婚をする覚悟だ、その声は切実です。

 二十代であっても、先祖代々の名字を重んじるがゆえに、事実婚を選択するメンバーがいます。

 多くの国民の、ただ自分自身でありたい、その切実な思いを否定し、大きな喪失感を与えてきたのが現行法と言えると思います。

 ところで、両親の名字が異なることは子供に悪影響があるという意見もあるようです。

 私たちは、別姓家庭で育った子供たちの座談会を何度も行ってきました。子供たちが口をそろえて言うのは、親が夫婦別姓と意識すらしたことがなかったというものです。言われてみたら別姓なんだなというふうに思うけれども、小さな頃から両親それぞれをフルネームで認識している、何の疑問も湧いていなかったので、かわいそう、悪影響と、問題がある家庭かのように言われることを知ってショックを受けた、普通に仲のいい家族なのに、なぜ他人が決めつけるのかと口々に言います。親子別姓に問題があるかのような言説にずっと傷ついている、差別されている気分になると子供当事者からも声が上がっています。

 事実婚、国際結婚、離婚、再婚など、様々な理由で別姓となった家庭でも、幸せに暮らしている例は無数にあります。私自身も、子供と異なる名字で、二人の子供を成人させました。

 もし本当に親子別姓が子供に悪影響なのであれば、なぜ親子別姓を前提とした共同親権の制度が施行されようとしているのでしょうか。なぜ国際結婚も同姓に統一すべきと主張しないのでしょうか。現行法は、なぜ離婚後の親権者と子供の名字を同姓にするよう義務づけていないのでしょうか。別姓家庭に対する差別だけまき散らし、これらの現行法と矛盾する主張をするのはやめていただきたい、強くそう思っています。

 国会議員の皆様にお願いがあります。当事者に聞くということを制度設計の基本にしてください。

 今、国会の審議の中で、困っている人はいない、いても少数だ、政府は調査もしていないなどと決めつけるような発言がありました。しかし、第五次男女共同参画基本計画策定に当たっての公聴会、パブリックコメントには、多くの当事者から切実な事例が寄せられていました。寄せられた四百件もの声を資料二としてお送りしました。分厚くて、百六十二ページもあるんですけれども、そこに切実な声が書かれています。

 また、選択的夫婦別姓に反対する方々が引用する各種世論調査は、将来結婚しようという若者や、今まさに結婚や改姓に直面している世代の声を反映しているとは限りません。

 先日行われたNHKの調査では、現行法維持を望む声が最も多かったとされていますが、図一を御覧ください。この調査の回答者は、六十代以上が三十代以下の五倍でした。十代の回答は僅か五件、最多は七十代の二百三十八件でした。

 次に、図二は、反対の方々がしばしば引用する二〇二一年の内閣府世論調査です。この調査では、旧姓使用法制化が最も支持を集めたとされていますが、ここでも回答者の約半分、四五・一%が六十歳以上であり、二十代、三十代の回答者の約二・二倍となっています。七十歳以上の回答者は八百人、十代の回答者の十二倍もいました。

 他方、図三は、国立社会保障・人口問題研究所による第七回家庭動向調査です。こちらを見ると、これは女性だけのデータを集めているんですけれども、二十九歳以下の賛成は七五・八%、三十代の賛成は七六・三%となっています。六十代未満の単身女性で見ると、八五・三%が賛成をしています。結婚に直面している世代や改姓が身近な女性たちの多くが選択的夫婦別姓に賛成していることが分かります。

 図四、日経新聞の調べでは、既婚女性の五二・三%が、選択肢があれば別姓を選びたかったと答えています。

 また、図五、共同通信社の調査では、三十歳以下の女性の実に八五%が賛成です。改姓当事者となることの多い若年女性が選択肢が欲しいと訴えています。

 図六、慶応大学の阪井裕一郎教授と私たちの合同調査では、事実婚の人たちは、税制や相続、医療同意など、命とお金の不安を抱えながら生活をしています。

 そして、図七、氏名を維持できる選択肢さえあれば安心して婚姻届を出せると答えた人たちは、二十代から五十代だけでも五十八・七万人いることが分かりました。

 お互いの氏名を維持したい、ただそれだけの思いで待っているのです。家族解体と言われるのが、ちょっと意味が分かりません。

 法制審議会が五年の歳月をかけて練り上げられた答申案で、力を合わせて、今いる五十八・七万人の事実婚当事者と、これから結婚を考えている若い世代を幸せにできる選択肢を実現してください。

 ありがとうございました。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 次に、割田参考人にお願いいたします。

割田参考人 皆さん、こんにちは。割田伊織と申します。

 今日は、このような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。

 本日は、ここにいる妻、武井七海とともに、選択的夫婦別姓の実現を望む当事者として、香川県の瀬戸大橋のたもとから参りました。ふだんは会社員として働いており、このような場所に来るのは初めてですので、大変緊張しております。どうぞよろしくお願いいたします。

 私たちは、先月結婚式を挙げたばかりの事実婚の夫婦です。妻とは大学生のときに出会いました。

 なぜ私たちが事実婚を選んだかについてお話しします。

 私たちは、二〇二三年から一緒に暮らしています。自然と、この人と一緒に生きていくんだろうなと感じるようになりました。しばらくすると、結婚の話題も増えてきました。名字の話にもなりました。

 妻からは、武井七海という氏名を変えたくないと言われました。私は、当初、自分が名字を変えてもいいと思っていました。なぜなら、身近に、結婚して名字を変えた男性もいたからです。小学生の頃には、社会の授業で先生から、将来結婚して名字を変えてもいいと思う人と聞かれ、手を挙げたことも、おぼろげながら記憶しています。

 このように、私は、以前から、将来結婚して自分の名字が変わるかもしれない、そう思って生きてきました。ですから、名字の話になったとき、私は、僕が変えてもいいよと答えられるはずでした。

 でも、そうは答えられませんでした。妻と同じように、自分も名字を変えたくないかもしれないと気づいたからです。私は、名字で呼ばれることも多く、割田という珍しい名字を気に入っていました。名字は、自分を自分たらしめる大事な一部分でした。

 自分の名字を変えたくない気持ちに気づいた私は、しばらく結婚の話を避けるようになってしまいました。

 そんな中、妻から、どっちの名字にするか、じゃんけんで決めると言われました。はっとしました。じゃんけんで決めるということは、じゃんけんで負けたら変えなければならないということです。私は、そのとき、やはり自分は絶対に名字を変えたくない、そう確信しました。

 かつては変えてもいいと思っていたはずの自分が、いざ現実に変えるかもしれないという状況に立たされたとき、はっきりと、名字を変えたくない、そう思ってしまったのです。もしかしたら、心のどこかで、妻が名字を変えてくれるかもしれないと思っていたのかもしれません。

 しかし、自分が嫌だと思うことを妻にさせるのは違うと思いました。そして、私たちは結婚を一旦保留にしました。

 そんな中、妻から、二〇二四年三月に、香川県内全ての自治体の議会で選択的夫婦別姓についての意見書が可決されたというニュースを聞きました。

 それまで選択的夫婦別姓という言葉は聞いたことはあったものの、そういうものを求めている人もいるんだなと人ごとのように受け止めていました。それが、突然、自分自身の問題になったのです。まさか自分が今日ここでこのような話をするとは夢にも思っていませんでした。

 私と妻は、選択的夫婦別姓が実現したら婚姻届を提出しよう、それまでの間は事実婚という形を取ろう、そう話し合いました。そして、婚姻届それ自体は出せないけれども、その代わりになるような、何か結婚のあかしのようなものが欲しいと思い、インターネットで知った公正証書というものを作成することにしました。

 当初、公正証書を作成すれば、事実婚でも法律婚と同じように扱われると思っていました。しかし、作っていく過程で、それが二人だけの約束にすぎないことを知りました。弁護士に相談した際にも、そう言われました。

 実際、公正証書を作った後も、会社の慶弔休暇は取得できませんでしたし、社宅にも入れませんでした。自治体の新婚世帯向けの補助も受けられませんでした。結婚資金の贈与を受ける際の非課税制度も利用できませんでした。

 また、お互いの入院や手術など万が一のときに、事実婚では病院から夫婦として扱われないことがあるなど、様々な場面で法律婚と異なる扱いを受けるという話を聞き、ますます不安になっています。

 公正証書を作った約半年後の今年四月、一般社団法人「あすには」の事実婚当事者の意識調査が発表されました。

 調査によれば、二十代から五十代で事実婚をしている人のうち、選択的夫婦別姓が実現したら婚姻届を提出するという、いわゆる結婚待機人数が全国で五十八・七万人いると推計されるとのことでした。私たちの考えが特殊なわけではなく、全国に同じような思いを抱いているカップルが大勢いると知って、とても勇気づけられました。

 また、調査には、過去に事実婚をしていて現在法律婚に移行した人への、事実婚時代の困り事についての質問もありました。事実婚では子供を持つことにちゅうちょがあるという回答の割合が最も高く、二十代、三十代を見るとその傾向は顕著でした。

 妻も同じように感じていたそうです。将来子供を育てたいという気持ちはあったものの、このまま事実婚の状態で子供を育てていいのか、何かあったときに子供を守ってあげられるのだろうかなどと考えてしまい、無意識のうちに子供の話を避けていたことに気づいたそうです。事実婚という状態が、家族の将来を考えることへのハードルになっていたのだと思います。

 事実婚であることを周りに伝えると、割田という名字をビジネスネームにすればいいんじゃないと言われたこともあります。しかし、私にとって、割田伊織という一つの氏名が私自身を表す唯一のものであり、この割田伊織という氏名を変えたくないと思っています。

 たとえ旧姓に法的な根拠が与えられ、様々な場面で使えるようになったとしても、私は戸籍名を変えることはしたくありません。使えればいい、周りから呼んでもらえればいいというわけではないのです。なぜなら、戸籍名こそが私の本当の名前だと思うからです。

 妻も、私と同じように、武井七海という氏名を大切にしています。だからこそ、選択的夫婦別姓が実現しなければ、私たちは結婚することができないのです。

 どうか、一日も早く選択的夫婦別姓を実現してください。よろしくお願いいたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 次に、寺原参考人にお願いいたします。

寺原参考人 弁護士の寺原と申します。

 本日は、発言の機会をありがとうございます。また、今回法案を提出くださった三党の皆様には、その御尽力に心から感謝申し上げます。

 私からは、最高裁判決の位置づけ、婚姻の本質と戸籍の根幹、それから旧姓の法制化では解決しないことの三点について、いずれも感情論ではなく、法的な立場から整理して申し上げたいと思います。

 まず第一に、夫婦同氏制度に係る最高裁判決の位置づけですが、お手元の資料一ページにて抜粋しておりますとおり、最高裁は、選択的夫婦別氏制度の合理性を否定したものではなく、むしろ、改姓によるアイデンティティーの喪失感、男女間の実質的不平等、事実婚を選択せざるを得ない人々の存在を認定した上で、事情の変化いかんによっては違憲となる可能性にまで言及しつつ、議論の高まりを国会が受け止めるべきであると述べています。

 また、資料二から三ページにまとめましたように、第一次、第二次訴訟を通して合計十名の最高裁判事が現在の夫婦同氏制度は憲法に違反すると判断しており、憲法学界においても、違憲であるとの見解が圧倒的多数説となっています。

 その理由は、一言で言えば、婚姻と氏という、いずれも人にとって重要な価値を有するものの二者択一を迫るということの不合理性にあり、憲法十三条が保障する氏名権、十四条一項が保障する平等権、二十四条一項が保障する婚姻の自由や夫婦間の平等、二十四条二項が保障する個人の尊厳や両性の本質的平等がその根拠として挙げられています。

 すなわち、これは人権侵害をどう解消するかという問題であって、困っている人の数が多くないとか世論が分かれているといった観点で比較考量すべき問題ではないという点を最初に強調させていただきたいと思います。

 同時に、二〇二一年の内閣府による調査結果から試算しますと、別氏での婚姻希望者は約九百三十四万人となりますので、実際には少数とは言えない人数に及んでいるということも申し添えます。

 第二に、婚姻の本質と戸籍の根幹について法的に整理をさせていただきますと、まず、婚姻の本質は、資料四ページにありますとおり、最高裁判例によって、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあると解されています。

 つまり、同氏は婚姻の本質ではありません。二〇一五年の最高裁判決においても、木内裁判官が、同氏でない婚姻をした夫婦は破綻しやすくなる、あるいは、夫婦間の子の生育がうまくいかなくなるという根拠はないと指摘しています。

 同様に、夫婦、親子同氏が戸籍の根幹であるとの理解も不正確ないし誤りです。戸籍の本質、根幹は、法務省より繰り返し答弁がなされているとおり、親族的身分関係の登録、公証にあります。

 そのためには同氏であることは必要不可欠ではなく、そうであるからこそ、法制審案は、同氏か別氏かにかかわらず、夫婦、親子を同じ戸籍に入れて家族として登録、公証することを優先、重視したものです。

 そもそも、民法は、一九四七年の制定当初より、連れ子再婚、国際結婚など、親子別氏の家族を想定し、包含しています。親子別氏が子の福祉を害するのであれば、それを許さない制度となっているはずですが、そうはなっていません。

 資料四ページに示しましたように、令和三年の最高裁決定において、宮崎、宇賀両裁判官も、子の氏とその両親の氏が同じである家族というのは、民法制度上、多様な形態を取ることが容認されている様々な家族の在り方の一つのプロトタイプ、法的強制力のないモデルにすぎない、そのプロトタイプたる家族形態において氏が家族の呼称としての意義を有するというだけで人格的利益の侵害を正当化することはできないと指摘しています。

 第三に、旧姓の法制化につきましては、これまで世論調査において中身が明らかにされないまま賛否が問われてきた中で、今回、法案という形で内容を明らかにしてくださった日本維新の会の皆様には心から敬意を表します。

 その上で、維新案は、ダブルネームではないとの御説明もなされているところですが、法案を拝見しますと、一人の人物に戸籍姓と旧姓という二つの法的な呼称を認めるというものですから、これはどう読んでも、法的にダブルネームを認めることにほかなりません。ですので、もし世論調査をするなら、一人の人物が二つの法的な氏名を持つことへの賛否を問う必要があると思います。

 また、維新の先生の御説明では、私企業に対しては努力義務しか課せないものの、公的書類に旧姓のみが表示される中で、私企業があえて戸籍姓にこだわるとは考え難いということです。

 しかし、私は、以前、職場における旧姓使用を求める裁判の代理人を務めたことがありまして、資料五ページに抜粋しましたように、その際、裁判所は、戸籍上の氏は戸籍制度という公証制度に支えられているものであり、より高い個人の識別特定機能を有しているとして、企業側が戸籍姓に固執したとしてもそれは違法ではないとの判決を下しました。たとえ旧姓に法的根拠が与えられたとしても、企業が戸籍姓を使用するというなら、これまでどおり、それに従わざるを得ないことは変わりません。

 維新案は、戸籍姓の個人識別機能を無にしようとするものであり、その御説明とは裏腹に、戸籍制度を形骸化させるものです。これに対して、選択的夫婦別氏制度は、戸籍姓の識別機能を保ち、家族や親族を一体として表すという戸籍の本質、根幹に資するもので、改正すべき法律は四つしかなく、旧姓の法制化よりも法技術的にシンプルです。

 選択的夫婦別氏を求める人々の願いは、現在もほとんどの男性がそうであるように、シンプルに一つの名前で生きていきたいというもので、生来の氏をわざわざ旧姓にして、それに法的根拠を与えてほしいと願っているわけではありません。旧姓の法制化では、本名である戸籍姓を主に女性が失ってしまうという氏名権の侵害や平等権の侵害という状況は変わりません。

 二〇二一年の最高裁決定において、宮崎、宇賀両裁判官も、旧姓の通称使用は、実態としては婚姻した女性にダブルネームを認めるのと同じであるところ、ダブルネームである限り、人格的利益の喪失がなかったことになるわけではないと指摘しています。

 最後に、現在行っている訴訟は、夫婦同氏に価値を見出す方々を否定するものでは決してありません。ただ、法律上はどちらが改姓してもよいのに、九五%の夫婦で女性が改姓しているという、結果として男女不平等な状況が長年続いているという実態には男女の社会的、経済的格差が作用していることは、資料五ページにありますように、最高裁判決においても指摘をされているところです。

 そういった中で、十日の本委員会において、布柴教授が、自分の意思で選択するということが幸福につながるという趣旨のことをおっしゃっていました。

 令和四年の最高裁決定においても、渡辺裁判官が、個人が婚姻相手の氏に変更するとしても、選択的夫婦別氏制により選択の機会が与えられた上で、個人がその意思で婚姻相手の氏への変更を選択したものであるか、夫婦同氏制により氏の変更が事実上余儀なくされた結果であるかには大きな違いがあり、その個人の意思決定がその後の生き方にも影響を与えることに鑑みると、このような選択の機会を与えることこそ、個人の尊厳の尊重であると考えると述べています。

 同氏にするにしても、自らの意思として前向きに選択したんだと全ての人が思えるような制度、社会へと国会議員の先生方に導いていただけましたらと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 次に、志牟田参考人にお願いいたします。

志牟田参考人 よろしくお願いします。

 本日は、このような機会をいただき、誠にありがとうございます。

 私は、一般社団法人男女共同参画学協会連絡会にてアンケートワーキング委員長を務めております志牟田美佐です。よろしくお願いします。

 本日は、科学者の通称使用の実態と、その限界から見えてくる選択的夫婦別姓制度の必要性について、調査結果を基に御報告いたします。

 それでは、こちらの資料、「研究者は氏名が看板である 選択的夫婦別姓導入の必要性について」を御覧ください。手元に持ってください、見てください、よろしくお願いします。

 資料二から三を御覧ください。

 当連絡会は、科学技術系を中心とした百十七の学協会が加盟する組織です。延べ五十万人ほどの科学者が存在しております、この加盟組織の中にですね。

 そして、選択的夫婦別姓制度に関する調査は、今年の四月から五月にかけて、加盟学協会会員を対象に実施いたしました。その結果、男性五千九十四名、女性二千三百四十四名、性別を回答しない百二十七名、そのほか十七名、合計七千五百八十二名から回答を得られました。

 それでは、資料四を御覧ください。

 性別、年齢別に見た、婚姻に伴う改姓と通称使用の経験についての図になります。上が女性、真ん中は男性、一番下は性別を回答しない、その他になります。

 赤点線で囲まれました薄ダイダイ色で示される、法律婚による改姓に伴い、通称使用をした経験がある者の割合は、男女共にライフイベントが始まる時期から増加していますが、特に、キャリア形成の三十代後半から四十代の女性で顕著に増加しております。水色は、法律婚による改姓を行っていない者の割合を示しますが、その割合は圧倒的に男性に多いことが分かります。

 資料五を御覧ください。こちらはパネルでも提示いたします。

 先ほどの法律婚をした者を男女別に、改姓し、通称使用をした経験のある者を薄ダイダイ色、そして、改姓したが、通称使用をした経験のない者を青色、法律婚によって改姓していない者を水色で表しています。上が女性、下は男性になります。

 薄ダイダイ色で示される、法律婚によって改姓し、通称使用をした経験のある者の割合は、女性で七二・六%、男性で四・六%で、圧倒的に女性で多いことが分かります。また、法律婚をした者のうち、薄ダイダイ色と青で示されます改姓した者の割合と、水色で示されます改姓をしていない者の割合を比較しますと、女性の九二・四%が改姓しているのに対し、男性の九三・八%は改姓をしていないことが示されました。

 資料六を御覧ください。

 男女別に、改姓した者の中で、通称使用の経験ありを薄ダイダイ色、なしを青色で示した図です。この解析結果から、男女共に、法律婚で改姓した者の七割ほどで通称使用をしていることが分かります。

 資料七を御覧ください。こちらはパネルでも紹介いたします。

 この図は、男女別に見た、法律婚に伴う不利益について経験した者の割合を男女別に示しております。紫色が男性、緑色は女性を示していますが、法律婚による不利益は、圧倒的に女性が多く経験していることが分かります。特に、法律婚をした女性の五〇%以上は、夫婦のうちどちらかが改姓しなくてはならないという夫婦間の不平等感、また、パスポートや免許証などの名義変更についての負担感やトラブルを経験しております。

 次に、資料八を御覧ください。

 法律婚による改姓に関する自由記述の一部を紹介いたします。

 姓を奪われた思い、法律上は選べても、現実には女性が改姓するしかない、自分の姓を奪われたと感じている。プライバシーの侵害、改姓で婚姻歴が職場に漏れてしまう、夫は改姓せずに済む、その不公平に怒りすら覚える。キャリアの断絶、積み重ねてきたキャリアとの連続性を失い、別人のような感覚に苦しんでいる、論文検索でも旧姓と現姓が分断され、研究の一貫性を示すのに苦労している。また、社内システム及び有期雇用がゆえの苦労などについては、改姓のたびに社内システムを更新し、アクセス権を一時的に失うこともある、特に有期雇用では、そのたびに手続を繰り返す非効率さがある。また、別姓制度に変わるまで法律婚をしないなどの記入がありました。

 資料九を御覧ください。こちらはパネルでも提示いたします。

 左の棒グラフは、右に挙げている通称使用ゆえの様々なトラブルの項目のうち、一つでも経験があると回答した者の割合で、七八%おりました。

 項目別に見ますと、この右の方なんですけれども、戸籍姓と通称の使い分けについての迷いや煩雑さなどの負担感が最も多く、六〇%でした。そして、改姓、通称使用による事務担当者の負担への申し訳なさ、パスポート、戸籍名、旧姓併記と航空券の記載名に関する手間やトラブル、研究や学会参加についての事務、旅費関係の手続に関する手間やトラブルは四割を超えておりました。

 資料十を御覧ください。こちらはパネルでも提示いたします。

 通称使用経験者の自由記入の中から、業績に関連した内容の一部を示します。

 履歴書と業績リストの名前が一致せず書類審査に落ちたや、有期雇用で通称使用を何度もやり直さなければならない実態、また、通称使用でもよいという意見があるのは、通称では仕事の上で著しく困るという事実を知らないからにすぎないとの記述もありました。特に、赤で示しております、文部科学大臣表彰若手科学者賞という栄誉ある賞を受賞したのに、賞状は戸籍名しか記されなかったは、令和四年度の通称使用拡大以降に確実に発生した事案であります。

 資料十一を御覧ください。

 こちらは、通称使用者の自由記入の中から、行政や職場での手続関係の一部の抜粋です。先ほどの資料と同じく、赤字で示された内容は、令和四年度の通称使用拡大以降に確実に発生した事案であります。

 資料十二を御覧ください。

 こちらは、通称使用経験者の自由記入の中から、海外出張時、パスポート関係の一部抜粋です。赤字で示されました令和四年度の通称使用拡大以降に確実に発生した事案のみを読み上げます。

 海外出張では、常にリスクと隣り合わせ。空港でのセキュリティー、出国するときに審査や確認で一時間以上待たされる。セキュリティー強化の影響で、パスポートとビザの登録名と参加者名が一致しないと、学会参加のための入国を拒否される。海外に入国できたとしても、フィールド調査地の地方政府や警察に旧姓併記の説明は非常に難しい。

 以上のように、通称使用拡大がなされた現在でも、本調査では、通称使用が様々な場面で限界があることが浮き彫りになりました。

 資料十三から十五を御覧ください。資料十三はパネルにて表示いたします。

 こちらの資料は、性別で見た科学者の事実婚の割合を紫色で示しております。一般社団法人「あすには」と慶応義塾大学の合同調査、先ほど御紹介がありましたが、そちらの事実婚の割合は約二%でした。しかし、我々科学者集団においては、女性の四・九%、男性の二・七%、性別を回答しないの三・九%が事実婚を経験したと回答しており、特に女性で多いことが示されました。事実婚でのトラブルや不安としては、相続、ローンの制限、社会的偏見が記されております。

 資料十六を御覧ください。こちらは最後のデータになります。

 この資料は、性別、年齢別で見た、選択的夫婦別姓制度導入に対する意見になります。オレンジで示されます選択的夫婦別姓制度導入に賛成する割合は、二十五から三十四歳の女性で最も高く、約九割が賛成と回答しております。また、男性でも、六十五歳以上では七割以上が賛成と回答しておりました。まとめると、選択的夫婦別姓制度について、女性全体の八三%、男性全体の六一%が賛成の意思を表しております。

 資料十七を御覧ください。

 本調査のまとめです。改姓と通称使用の負担は女性研究者に偏っていることが分かりました。氏が研究業績と直結する研究者にとって、改姓や通称使用は、業績の認知、信用の面だけでなく、心理的負担や手続の煩雑さといった様々な不利益をもたらしていることが示されました。改姓や通称使用の負担回避のための事実婚という選択においても不利益が伴うことが分かりました。また、令和四年度からパスポートへの旧姓併記が可能となったものの、依然として、学会参加や空港での本人確認などにおいて不利益やリスクが存在していることが明らかになっております。こうした現状を背景に、科学者の、特に女性の多くが、選択的夫婦別姓制度の導入の必要性を認識していることが分かりました。

 通称使用の制度を整えることも大切ですが、根本的な解決には、改姓を強制しない制度、すなわち、選択的夫婦別姓制度が必要と考えます。どうかこうした現場の実情を基に制度の議論を進めていただきたく、強くお願い申し上げます。

 私の報告を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

西村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鬼木誠さん。

鬼木委員 おはようございます。自由民主党の鬼木誠でございます。

 今日は、参考人の皆様に質問をさせていただきます。

 自民党では、選択的夫婦別姓について長く議論を続けてきましたが、一つの法案として答えを出すことができませんでした。

 自民党内の議論においてこの議論を複雑にした原因の一つに、アイデンティティーという言葉の意味や用法が統一されていなかったことが挙げられると思います。それぞれの人がアイデンティティーという言葉を別々の意味で用い、同じ単語でありながら何のことを指しているのか、そもそも議論のスタートにおいてそろっていませんでした。同じアイデンティティーという言葉を使っていながら、そこで大事にされている価値観がそれぞれ別のものであったわけであります。そのため、議論がこんがらがったまま交わらなかった。これを一旦整理することが問題解決の糸口だと考えます。

 アイデンティティーという言葉のそもそもの意味は、自分自身が誰であるかを認識し、他者と区別できる状態、自己同一性、私が私であること、私はどこの何者なのかを認識することなどと言い表すことができます。

 ところが、これまでの議論の中で出てきたアイデンティティーという言葉には、私が見て大きく分けて三つの意味がありました。

 一つ目は、個人を単位とするアイデンティティーです。乙野梅子さんとして生まれ、社会的な実績を上げてきた乙野さんは、甲野義太郎さんと結婚することで甲野梅子となり、自分の半生との連続性、自己同一性が損なわれたとして苦しんでいるというときに用いられるのが、個人を単位とするアイデンティティーです。これを一つ、一とします、アイデンティティーの一。

 二つ目は、家族や先祖、ルーツを根拠とするアイデンティティーです。自分はどこから来た何者だろうという疑問に対し、自分のルーツにアイデンティティーを求める考え。

 今日の議論の中でも、アイデンティティーというものが、相対的な部分、自分が妻なのか母なのかとか、これは相対的なものなんですね。そうした中で、このルーツというもの、本当に自分は何なんだろうというときに、確かなものを探したときに、家族や先祖、ルーツを根拠とするアイデンティティーというものが出てくるということで、両親、祖父母、御先祖様、今生きている自分の存在は、過去の命の継続、連続があってこそという考え方でありますので、家族のきずなや御先祖様とのつながりを大事に考える。また、共同体としての国家や民族というものにルーツ、アイデンティティーを感じることもある。私が存在するのは私だけの命ではない、御先祖様からの生命の連続性の中で自分が存在しているのだ、そしてそれが確かなことであるというアイデンティティーであります。

 出自を知る権利というのもこのアイデンティティーからくる権利でありますので、戸籍制度を維持することとも密接に関わっております。

 この一と二の、同じ言葉でも価値観がやはり違うわけです、何を大事にしているのか。一は私自身の連続性を重視するのに対して、二は私と他者との関係を重視しております。

 そして、三つ目の意味のアイデンティティーとして、個人を特定するという意味のアイデンティティーという言葉が挙げられます。

 よく、IDというのがありますね。パソコンとかをやっていても、ユーザーID。このIDはアイデンティフィケーション、識別ということになりまして、本人を特定するという意味の自己同一性。これは社会の治安や秩序に関わるものでもあります。この人はどこの誰ですよということを証明することで、ビザやパスポートなどはこの人をこの国に入国させても大丈夫ですよということを確認するという意味で、社会の秩序や治安に関わるという価値を持つアイデンティティー。

 大きく分けて三つのアイデンティティーがあるわけですね、その価値が。

 この三つ目のアイデンティティー、具体的な例を挙げれば、背乗りという言葉があります。背乗りとは、工作員や犯罪者などが正体を隠すために、実在する他人の身分、戸籍を乗っ取って、その人物に偽装する行為を指す、いわば警察用語であります。北朝鮮の工作員などは、スパイとして韓国に潜入するために日本人を拉致し、その人の戸籍ごと乗っ取り、その日本人に成り済まして韓国に渡ったといいます。この背乗りという言葉を、日本語を英訳すると、アイデンティティーセフト、アイデンティティーの盗難となります。まさにここで言うアイデンティティーとは、本人を特定するという治安、秩序に関わる価値となっております。

 これだけ意味の違う言葉を同じ議論の中で交ぜて使っていては議論は深まっていかない。せめてこの三つを分けて、違うそれぞれのアイデンティティーというものがあるということを認識した上で、定義づけて論点整理する必要があると考えております。

 この三つのアイデンティティーという意義、そして、この言葉を整理して議論を進めるということについて、八木先生にお伺いしたいと思います。

八木参考人 非常に複雑で、どう答えていいのかちょっと分からないんですけれども。おっしゃるとおり、アイデンティティーという言葉が抽象的で、私は先ほどの発言の中でも、内心の問題であり、主観的で千差万別だというふうに言いました。

 そういったところを含めて、平成二十七年十二月の最高裁判決は、アイデンティティーという言葉は使っていないんですけれども、それに当たるような名誉感情とかそういう言葉を使って、婚姻後も維持する利益等は、憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとまでは言えないと言って、アイデンティティーの喪失の問題までは救済できません、限界はありますと言っているわけです。

 ここの限界を超えろというのが今日多くの方々の、参考人の御意見だったとは思うんですけれども、少なくとも最高裁はそのような見解を示したということだけ申し上げます。

鬼木委員 アイデンティティーという言葉の中に大きく分けて三つの価値があって、一の個人のアイデンティティーも大事であり、苦しんでいる方がおられることもよく分かっています。特に当事者の方を目の前にすると何とかしてあげなきゃということで、自民党の中でも議論は進んできました。だけれども、二番目のアイデンティティー、家族や先祖、自分のルーツとのつながりというアイデンティティー。そして、治安や秩序というアイデンティティー。この三つが全て大事であるからこそ、これらを調和させて、それぞれの持つ保護法益を調和させた法案を作りたいということで議論を進めてまいりましたが、本日までに折り合う案ができなかったということであります。

 個人の権利と、家族のきずな、先祖へのつながり、公共の治安や秩序、それらの保護法益を同時に満たすための法案を自民党でまとめようとしてきたわけです。

 野党案も拝見しましたが、立憲案、国民案は、一つ目の個人のアイデンティティーのところを解決するということに偏っているように拝見いたしました。二つ目の家族のきずなや先祖とのつながりを守るという視点、三つ目の社会の秩序や安全を守るという視点での議論が十分であったのかが懸念されます。

 中でも一番の懸念が、戸籍及び戸籍法はどうなっていくのかという点であります。井田参考人は過去にSNS上で、筆頭者の下に家族をひもづける戸籍制度を当然改定すべきと書かれております。さらに、一足飛びにはいきません、選択的夫婦別姓実現がまず第一歩と記しておられます。となれば、まずは選択的夫婦別姓を実現して、次の段階で戸籍法を改定するのだと読めるわけでありまして、戸籍法はどのように変わっていくのだろうと心配になるわけであります。

 戸籍は、家族という単位をつくり、先祖とのつながりを証明し、自らの出自を知る権利を保障するものです。また、対外的に本人がどこの誰であるかを立証し、秩序の安定にも寄与するものであります。これらの機能をつかさどる戸籍法がどのように変わろうとしているのか、ここに多くの人の心配があると考えます。

 こうした懸念に井田参考人はどう答えられますでしょうか。戸籍法をどう変えるとお考えでしょうか。

井田参考人 御質問ありがとうございます。

 鬼木先生の今おっしゃった三つのアイデンティティー、全て大事だと思うので、選択的夫婦別姓が必要なんじゃないかなというふうに考えています。

 戸籍筆頭者というのは、本籍とともに、今現在ではインデックスの意味しか持たないというふうに私は理解しているんですけれども、戸籍筆頭者というものを殊更何か家長のような、あるいは何かしらの意味を持たせてお考えになっている方もいらっしゃると思うんですね。

 ただ、これって、毎年のように戸籍法も、あとは様々な法律というのは大量に法改正をされていくので、今の運用上のものが恒久的に続くというわけでは全くないと思うんです。

 戸籍法も、例えば振り仮名をつけるとか始まりましたけれども、そういった運用で変わっていくはずのもので、じゃ、インデックスである戸籍筆頭者というものが、今後、運用上、ただのインデックスであるんだったら、例えばマイナンバーにすげ替えられて、検索をして、個人の戸籍がヒットするということが運用上可能に恐らくなるんじゃないかなというふうに思っています。

 なので、まずは選択的夫婦別姓は戸籍法上どう変わるかというのは、法制審議会でさんざんお話があって、まさにそれと同じ案を今、立憲、国民が出していただいているので、そのやり方で法改正するというのでよろしいのではないかなというふうに、それがベストじゃないかなというふうに思っていますし、じゃ、選択的夫婦別姓が導入されました、その現在の法制度というのが今後も恒久的にずっとなっていくとか思わないので、それがやはり社会事情であったり国民のニーズによって変わっていくのは当然のことだと思うんですね。戸籍だって謄本がコンビニでできるようになりましたし、振り仮名もつけられます。

 そういった改定があるのは当たり前なので、私は、戸籍法、戸籍法というか選択的夫婦別姓実現の後に何を目指しているかというと、ジェンダー平等です。ジェンダー平等を目指す上で、何にしても戸籍筆頭者というものが恒久的である必要も特にないのではないかな、これは別のやり方でも国民登録の在り方としては可能なんじゃないかなというふうに思っています。

 お答えになっておりますでしょうか。

鬼木委員 ちょっともう一問行きます。

 寺原先生から比較考量というお話が出ましたが、今私が申し上げた三つのアイデンティティー、それぞれの価値を守るということこそがこの議論の中で比較考量されるべき価値ではないかなと私は考えるわけですが、その上で全体が調和できる案を作るべきだと考えますが、いかがでしょうか。

寺原参考人 御質問ありがとうございます。

 その三つのアイデンティティーの区分けが正しいのかどうか、ちょっと私は分からないんですけれども、いずれにしても、全て重要で、それぞれが矛盾するものではないというふうに考えています。

 先生がおっしゃった個人、自分の連続性を大事にするという方も、もちろん家族も大事にしているし、ルーツも大事にしている。そのことは今の戸籍制度の中で、今、戸籍制度というものがあって、その中に家族が入っている。選択的夫婦別氏制度というのは、一個の戸籍の中から家族を出すものではないんですよね、別氏か同氏かにかかわらず、実態としている家族を戸籍の中に一つに入れるということなので、家族が自分のルーツを知ろうと思えば戸籍を使って今までどおりルーツをたどることができるので、選択的夫婦別氏制度というのは先生のおっしゃった一つ目、二つ目、三つ目のアイデンティティーと相反するものではないというふうに理解をしております。

 また、先ほど八木参考人の方から、最高裁ではアイデンティティーの喪失という言葉は使われていないという御発言がありましたけれども、二〇一五年の最高裁判決の多数意見では、アイデンティティーの喪失を抱いたりする人がいるんだと、なので、そういった人格的利益をきちんと考慮する必要があるというふうに言及をされていますことを、念のため申し添えます。

 以上です。

鬼木委員 時間が来ましたので、終了いたします。質問できなかった先生方、失礼いたしました。

 これで終わります。

西村委員長 次に、鎌田さゆりさん。

鎌田委員 おはようございます。

 参考人の皆様には、今日は朝早くから、また遠方からもお越しをいただきまして、本当にありがとうございます。感謝を申し上げます。また、割田参考人におかれましては、緊張という気持ちも吐露されまして、済みません、大役をありがとうございます。

 まず、五名の参考人の皆様全てに同じ質問をさせていただきたいと思います。

 家族の一体感、あるいはきずなともよく世間では話されておりますけれども、その家族の一体感、きずなを構築していくために、名字、氏、姓、これは一緒じゃなければ築けないものだとお考えでしょうか。私は、名字、氏が違っていても、その家族、それぞれの家族が幸せ、あるいはそれぞれに尊重し合って、認め合って、幸せをつくっていくものだという考えなんですけれども、参考人の皆様の御意見をお聞かせください。

八木参考人 お答えいたします。

 一緒でなければ築けないとは言えませんが、一緒である方が築きやすいという傾向があるということは言えると思います。

井田参考人 私は女系家族でございまして、三姉妹なんですね。姉と妹それぞれ、うちの姉は国際結婚で、別氏で結婚しているんですけれども、それぞれ名字が違います。

 ある日、うちの姉がヨガの先生を家でやってくれたんですね。そこで自分の夫とか子供とかいた中で、今日この中に名字が五つあるなというのに気がついたわけです。みんな仲よくヨガをやっているので、別にそこに、きずなが壊れるとかいうこともありませんし、今、一致団結して、うちの父がちょっと介護が必要だったりしたのも相談しながらやっているので、氏は同じでないと築けないということは全く考えていません。

 ありがとうございます。

割田参考人 私も、氏と家族のきずなは関係ないかなというふうに考えています。

 私も、母と祖父母は名字は違います、母が改姓したので名字が違いますけれども、今もすごく仲よく、ふだんから楽しそうに話をしています。本当に家族のきずなを感じているんだと思います。

寺原参考人 ありがとうございます。

 同氏に、どれぐらい重視をするかというのは各家庭によって異なるというふうに考えています。ですので、同氏がいいと思う家庭は同氏にすればよいですし、かといって、別氏でも家族のきずなを築けると思っている家族に同氏を強制する、それを正当化するということはできないというのが選択的夫婦別氏制度を求めている方々の意見かなというふうに考えております。

志牟田参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、名前を残したかったので、事実婚をしていました。息子は胎児認知をしました。

 ただ、夫が留学するときに、ちょうど私が体調を崩しまして研究者の職を一時期辞しましたので、一緒に出国するというのは、イギリスなんですけれども、渡英することができなかったので、ビザの関係で、泣く泣く籍は入れたんですけれども。その間、戸籍が別だったからといって不幸だと感じたことはありませんでしたし、すごく幸せでした。

 ただ、胎児認知をしに行ったときに、うちの村で初めての胎児認知だったので、市役所が大騒ぎで。それで、何か訳ありの人じゃないかなとか、要するに同姓じゃない、別姓だとか、他人が、不幸だとかそうじゃないというのを評価しているみたいで。

 要は、本質は、その家族自体が、各々が幸せを感じればそれでいいんじゃないかと私は思っております。

鎌田委員 ありがとうございました。

 私も、それぞれの参考人の皆様とほぼ同様で、八木参考人からも近寄れる部分があったのかなというふうな御答弁だったんですけれども。それぞれの幸せですとか、それぞれの幸福感というのは、よそからこうあるべきというふうに強制されるものではなくて、それぞれ自分自身が自己肯定感を持って、そして幸福追求権を保障されて培っていくものだと思っておりますので、その点は皆様から御意見をいただいて安心をいたしました。

 それでは、ちょっと八木参考人にお伺いしたいんですけれども、今、私の手元に令和四年六月発刊の、神道政治連盟国会議員懇談会の冊子がございます。その中に、長崎大学の池谷和子准教授を始めとした方々と、婚姻は子を産み育てるものという主張を繰り返されていらっしゃいます。

 このお考えは、選択的夫婦別姓について反対、慎重、そういうお考えにつながり得るものなのでしょうか、伺います。

八木参考人 私がそこに何か書いていましたでしょうか。どこに何を書いているのか、しっかりした記憶がないものですから、一応確認をいたしましたが。

 婚姻制度の趣旨、目的として、子供を産み育てるということが中核的な価値としてあるということを繰り返し主張してきております。

 その私の発言は、恐らく同性婚に関わる文脈の中での言及、発言だろうと思います。今日の選択的夫婦別氏との関わりについては、残念ながら、考えておりません。今のところ考えておりません。

鎌田委員 今、私が指摘をしましたこの冊子には、長崎大学の池谷准教授は、選択的夫婦別姓に言及をして、これは、先ほど八木参考人がお述べになられました家族崩壊、国家の形が変わるというような主張を展開されて、選択的夫婦別姓はいかがなものかという御意見がなされていて、そして、八木参考人におかれましては、この神道政治連盟の冊子のほかにも、統一教会の広報誌と言われています「世界思想」、こちらにも、取材を受けてお答えになっていらっしゃるんですね。婚姻、基本的には子供を産み育てるための制度が婚姻制度そのものだというふうに述べられていらっしゃいます。

 私がこれを拝見をして、これはもう八木参考人、八木先生の独自の御自身のお考えだと思いますので……(八木参考人「私の考えじゃない」と呼ぶ)お考えじゃないんですか。済みません、まず私が質問をしておりますので。

 そうすると、統一教会の広報誌とも言われている「世界思想」に、八木先生が主張を、八木先生のお名前も載っていて、そして主張が出されているんですけれども、婚姻制度というものはそもそも基本的には子を産み育てるための制度だというのは、先生のお考えではないということですか。

八木参考人 今日の審議と直接関係ないテーマですけれども、婚姻制度の趣旨、目的として、生殖と養育という、これはいまだ民法学の通説だと思いますということを紹介した、あるいはそれを踏まえて発言しているということでありまして、私個人の見解、私のみの見解ということではなくて、広く一般に民法学者たちの間で共有されている考えであり、一部裁判の判決の中にもそれらが出てまいりました。具体的に言いますと、同性婚訴訟の大阪地裁の判決の中にそれが詳しく述べられております。それらを踏まえた発言であろうと思います。

鎌田委員 それでは、寺原参考人にお伺いしたいと思います。

 八木参考人は、「ABEMA Prime」というネットの番組の中で、二〇二一年の「ABEMA Prime」に御出演時に、選択的夫婦別姓、この制度を導入するには、技術的には非常に困難だという御発言をなさっていらっしゃるんですね。

 それはもう事実として八木先生が御発言なさっていることなんですけれども、それを受けて、法律家でもいらっしゃいます寺原参考人におかれましては、この技術的に困難だということに対して、私たち今回法案を出した者にとっては、そうではないという主張をこの委員会でも展開してきているんですが、寺原参考人の御見解を伺いたいと思います。

寺原参考人 ありがとうございます。

 今回の立憲さん、国民さんの案というのは法制審案をベースにされていると思うんですけれども、法制審案については、五年の歳月をかけて、今御質問のあったような法技術的なこと、民法上は当然ながら、戸籍法の検討も十分に専門家の方々が行った上で、各省庁ともきちんと分析、検討した上で答申をされたというものがあの内容ですので、法技術的にはかなりシンプルだと思います。既に国会の答弁でも、法改正は四つで足りるということも出ています。

 比較すると、通称の拡大ないし法制化ですと、やはり今、戸籍姓とはまた別の法的な根拠を持つものが出現するということで、かなり新たな、これは私は改革だと思うんですけれども、今ある戸籍制度の中に、戸籍姓を生来の氏から変えないという方がシンプルであるというふうに考えております。

鎌田委員 ありがとうございます。

 割田参考人にお伺いします。選択的夫婦別姓制度が導入されたら、喜んで婚姻届をお出しになる御予定でしょうか。そしてまた、お二人ともお若いカップルでいらっしゃいます。これから先、子供さんを授かるということもあり得るんだと思うんですけれども、そのときの子供の姓については話し合ったことがあるか、あるいはこれから話し合いたいなと思っていらっしゃるか、伺います。

割田参考人 私は、選択的夫婦別姓が実現しましたら、喜んで婚姻届を提出したいなというふうに思っております。

 子供についてなんですけれども、漠然とですが子供は育てたいなという気持ちはありますが、正直申し上げて、まだ具体的にどうしたいとかいうのは考えられておりません。ただ、選択的夫婦別姓が実現する、法が施行されるとなったときには、妻と二人で、どっちの名字にしようかとか、楽しく決めたいなというふうに今は二人で話をしております。

 以上です。

鎌田委員 ありがとうございました。

 最後になると思います。志牟田参考人に伺いたいと思います。

 今日は、井田参考人と同じように、いわゆるデータをここで開陳をしていただきました。この委員会が開かれる前の理事会という場所では、与党側と野党側で、データが少ない、どのくらいの人が困っているんだか分からない、もっともっとデータを集めて困っている人に寄り添っていかなきゃいけないという議論もしばしばなされるんですけれども、今日、井田参考人と志牟田参考人からは、まさに最近のデータをお示しをいただきましたので、非常にありがたかったと思います。きっと自民党の法務委員の方々にも響いていらっしゃるんじゃないかなと思うんですが。

 志牟田参考人特有の、科学者としての、この選択的夫婦別姓制度、いかに日本の優秀な科学者を始めとしたそういう人材が、有為な人材が、この制度がないがゆえにどれだけ困っているかということを改めて伺いたいと思います。

志牟田参考人 御質問ありがとうございます。

 資料にありますとおり、改姓による不利益というのは主に女性が、ほとんど女性がかぶっているんですね。それで、社会圧もあって、改姓しなければいけない、無意識のうちにそういった偏見が働きまして、こういった状況が起きているわけで、じゃ、通称使用を拡大したからといって世界的に通用するかといいますと、御提示しましたように、いろいろなデータから、全然使えない、国際的には使えない。でも、世の中は、国は、グローバル社会を目指せ、研究者は国際交流を果たせと言いますが、できない状況なんです。

 結局、何が原因かというと、改姓することによって、姓が変わることによってこういった問題が生じているわけなので、通称使用じゃ結局拡大しても全く機能していないというのがお分かりいただけたと思います。

 なので、現状を、女性研究者、これは研究者に限らず、働く女性が活躍するためには、やはり選択的夫婦別姓を法律化というか法化しないとこれはかなわないんじゃないかと思っております。

鎌田委員 ありがとうございました。

 終わります。

西村委員長 次に、藤田文武さん。

藤田委員 維新の会の藤田文武でございます。

 今日は、五名の参考人の皆様に来ていただきまして、感謝を申し上げたいと思います。

 我が党の案にも複数名から触れていただきまして、ありがとうございます。その中で、ダブルネームのお話がありましたので、寺原参考人にちょっと見解をお聞きしたいと思うんですが。

 ダブルネームは結構僕らも批判されるんですけれども、そもそも、弁護士さんの立場から、ダブルネームは何で駄目なんでしたっけ。ちょっと解説を簡単にいただけますか。

寺原参考人 御質問ありがとうございます。

 私が申し上げたのは、一人の人物が二つの法的な氏名を有するということが、これまで日本の歴史の中でも、法制度上もやってこなかったことだと思うんですけれども。例えば犯罪を犯した場合とか、そこまではいかなくても、ふだんの様々な公的なもの、あるいは私的なものとの関係で、何を一番重視をして、どこと何を突合すればその人が同一人物でということの、同一性というものについてかなり支障が生じるのではないかなというふうに考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 私もダブルネームはセキュリティーの観点から余りよくないなと思っているんです。なんですが、今おっしゃっていただいたようなところでいくと、公的なものも、今、一部、いわゆる法的根拠がないけれども通称を使用できるという通知とか省令とか、かなりファジーな形で進んでいて、そこは何か、それも含めると、今のお話だったら混乱になるのかなと思ったんですよね。

 そもそも、今の通称使用の拡大というものについては、それはもっと進めるべきだなのか、それはややこしいからそれもやめてしまうべきだなのかは、どういうスタンスでしょうか。

寺原参考人 ありがとうございます。

 私は、これまでいろいろな方々が通称使用の拡大を進めてくださったことは、選択的夫婦別氏制度がない中で具体的な困り事に対応しようとした措置、応急措置だと思いますけれども、それには本当に感謝をしているところです。

 別氏制度が導入されても、例えば、同氏を選択して、旧姓は職場で使用したいという方もいらっしゃるし、逆に、別氏を選択して、ファミリーネームとして、家族の場面では配偶者の氏を通称として使用したいという方もいらっしゃると思うので、その二つは全く矛盾していないと思うんですね。なので、私は、通称拡大については懐疑的ではないです。

 ただ、通称の法制化というと、今は単なる通称なので、法的根拠がないので、どこに行っても、それがつらいところでもあるんですけれども、まずは戸籍姓で全てのことが統一をされて、手続をされる。けれども、法制化となった場合に、じゃ、どちらが主で従なのかということがどうなんだろう、そこが不明瞭かなというふうに感じております。

藤田委員 ありがとうございます。

 主と従の関係でいくと、どっちが主と従というのを何の切り口で見るかによって変わると思うんですが。

 ダブルネームでもし懸念があるとしたら、両方とも同じ効用を持つネームが二つあって、同じことをこっちでもこっちでもできる、Aという名前でもBという名前でも、戸籍名でも通称でもできるとなると私は問題だと思うんですが。

 ちょっと切り分けてやりたいのは、要するに、公的証明書のような法的場面と、それから私的な場面がありますよね。これは混同すべきじゃなくて、私的な場面は今も自由ですよね、それは。だから、私的な場面で何と名のっていようが、別にいいじゃないですか。だから、そこはダブルネームの混乱という議題からは外した方がいいと思うんです。

 その上で、公的書類に関しては、我が党は、今まで各省庁が努力でしてこられ、しかもファジーな状況で続いてきたものに、ちゃんと位置づけを与えて、戸籍名と通称を使える場面をしっかりと定義しましょうと。しかも、戸籍を見たら一発でこの人が通称を届け出ているということが分かるということで法的安定性が担保される、こういうたてつけになっているわけです。

 つまり、本質的ダブルネームの懸念を生じ得ない、生じようがないという整理をするのが、今回私たちが、ただの旧姓使用の拡大でなくて、旧姓使用を法制化する、こういう案なんですが。

 それでもなお、ダブルネームは問題なんじゃないか、そういう御指摘があったらちょっとお伺いしたいなと思って結構探しているんですけれども、余り、ああ、そうだなと思うのは聞いたことないんですが、いかがでしょうか。

寺原参考人 本当に維新の会の皆様が御尽力をして、いろいろなことを検討くださっていることは、本当に感謝を申し上げています。

 ただ、先ほど、私的な場面では自由だというふうにおっしゃったんですけれども、残念ながら自由ではないんですよね。多くの企業でも、様々なところで、やはり戸籍姓でないと通用しないということは実際生じているので、選択的夫婦別氏制度を求めているということですので。

 維新案でも、先ほども申し上げましたけれども、私企業に対しては強制はできないので、努力義務であるということですので、私企業が戸籍姓を使いたいと言ったらそれは阻止はできないと思うので、私企業でも自由に通称を使用できるということにはならないというふうに考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 私企業の強制するか努力義務か問題は、この質疑でもあったんですが、ちょっとまず前段で一つ、要は、例えばうちの法制度でいうと、私企業に対して、弁護士の観点から、強制すべきかどうか問題、私は努力義務が適切だと思っているんですが、それがどうかということを踏まえて、私企業が、もし仮に私たちの法制度が実現した世界観の後に、あなたは戸籍姓を使いなさいと言うインセンティブというのはほとんどなくなっているんですよ。

 なぜならば、納税の書類とかも、それからパスポート、海外に赴任させるんでしたらパスポートもそうだし、運転免許証もそうだし、ありとあらゆる公的書類、公的手続を代行する場面というのはたくさんありますよね、企業さんが。それが不便だから、要は実務的な話で戸籍名にしてくれと言っているところというのは多いと思うんですよ。何かイデオロギー的に、いやいや、戸籍姓じゃないと、そんなものは許さぬぞと言う企業というのは、どちらかというと、いるかもしれないけれども、相当変わっていて、ごく少数だと思うんですね。ほとんどないと思うんですけれども、合理的な企業経営においては。

 なので、企業が戸籍名をわざわざ強制して名のらせるインセンティブというのはないと思うんですけれども、そこについて、その二点、ちょっと見解をいただけますか。

寺原参考人 ありがとうございます。

 二点申し上げます。

 まず、前提として、公的な書類が全て通称で統一できて、単記にできるんだというふうな案なんですけれども、それ自体が本当にそうなのかと。裏づけとか分析とか検討というものがちょっと示されていないので。

 ちょっと官庁の方の別の書類を見ましたら、住民票とか、ふだんの人々のいろいろな確認に使う身分証明に関係するものについて、戸籍姓が別途ある中で通称を単記するということはなかなか難しいのではないかという見解も聞いたことがありますので、そもそも論として、公的書類が全て通称で統一されるということ自体がなかなか実現可能性が見えていないということがまずあると思います。

 その上で、私企業に、じゃ、強制できるかというところで、強制するのが正しいと私も思っていない、強制はできないと思います。ですので、強制ができないということ自体が、やはり、もし公的書類が統一されても私企業には強制ができないということで、そもそも法律のたてつけに穴があると申し上げますか、実行可能性がちょっと担保されていないんじゃないかなというふうに読んでおります。

藤田委員 私たちの法律は、旧姓を届け出ることによって単独使用を法的に担保しようという趣旨の法律なので、それは果たしてできるのと言われたら、ゼロに戻っちゃうので、ちょっと議論にならないんですけれども、御見解はお伺いいたしました。ありがとうございます。

 それから、志牟田参考人にお聞きしたいと思います。

 研究者のお立場で、いろいろやはり今の旧姓使用の拡大というのは非常に問題があるというのは私もよく存じ上げていまして、そこは解消したいと思うんですが。いろいろ挙げていただいた事例を拝見すると、今までも経団連さんとかもいろいろ言っておられるのと重なるところもあって、確かにそれは乗り越えるべきだと問題意識をずっと数年前から私も持ってきました。それについて、全部乗り越えよう、そして乗り越えられるという案のつもりなんです、私たちは。

 だから、前回も参考人にもお聞きしたんですけれども、選択的夫婦別姓又は旧姓使用の拡大、これをぐっと前に進めてほしいという要望の理由というのは、大別するとやはり二つに分けられるなと思っていて、一つは社会生活に対する不便の解消、もう一つは、それとも密接にリンクしますが、やはり個人のアイデンティティー、納得感、こういったものに大別されるのかなと。

 私たちは正直に、後者について、一〇〇%全ての方が解決するというふうに傲慢な態度を取っていなくて、密接に関係しているから、かなり緩和されたり、それでいいと納得いただく方も多数いらっしゃるでしょうが、課題は残る。じゃ、その前段の不便の解消については全部やはり解消したいという思いで、制度設計を細かくやってきました。

 もし私たちの案が、先ほど申し上げたように、公的書類等で全て通用する、パスポートも単記になるといった場合に、それでもなお残る実務的なお困り事というのはあるんでしょうか。想定されるんでしょうか。見解をお聞きしたいと思います。

志牟田参考人 結局、今おっしゃった内容というのは、究極は選択的夫婦別姓を認めるということだと思うんですね。その違いがよく私は理解できないというのが一つあります。

 また、確かに通称使用の努力はしていただいていますが、全く、全くとは言いませんけれども、多くで使えていない現状で、やはりエビデンスが、私は科学者なので、エビデンスがないとなかなかそこは信頼できないというのが実情です。

 だから、通称使用ができるような法改正ができるというエビデンスはどこからあるのか。それをちゃんと積み重ねて、根拠となるもの、絶対できるとおっしゃるその根拠というのが、やはり細かく示していただかないと、それはできるのかと言われれば、分からないというのが答えです。

 それと、今おっしゃった通称使用の法制化、拡大化というのは、選択的夫婦別姓との違いがよく分からない。

 もう一つは、研究者というのは生まれ育った名前でずっと業績を積み上げてきますけれども、維新案ですと、通称名は使えるけれども、結局、どこまでも通称名なわけで、戸籍名としては残らないわけですよね。私たちは、自分の名前を残して業績を残したい、それが個人的な事情、感情と言われればそれまでですけれども、評価はそれなんですね。研究者として、生まれたときからの、評価をずっと、研究者を終えるまで評価していただきたいというのが、恐らく多くの研究者の願いだと思っております。

藤田委員 一番最後のお話は、やはりアイデンティティーの話だと思うんですね。それはそのとおりだなと思います。

 ただ、立法というのは新しい法律を作ってそれを実現するという行為ですから、実現した社会の後のことを立証せよと言われても結構厳しくて、なので、そこは制度設計をよく見ていただいて御判断いただくというのが必要なんだろうと思います。

 井田さんにもいっぱい聞きたいんですが、井田さんとはこの数年間ずっと議論してきたので、お考えはよく分かっているので今日はちょっと飛ばさせていただいて、済みません。ありがとうございます。

 ちょっと最後、お二人に聞きたいんですが、さっき八木先生から個人籍の話がありましたね。私、この問題の、究極、政策思想の根源をずっとたどっていくと、国民を管理するインデックスは個人籍がいいのか家族単位がいいのか、こういう問題に行き着くんじゃないかなと思っていて、推進派の中にも個人籍派の人が結構いらっしゃるんですよ、公に発信していらっしゃる方もいらっしゃる。そこはどうなんだと。私は家族単位のインデックス又は家族単位の管理というのは優れていると思っている方なんですけれども、そこは何か今後の世界観でいうと、どう思われますか。お二人に、最後聞きたいと思います。志牟田先生と寺原先生にお願いします。

西村委員長 では、まず志牟田参考人、時間が限られていますので、済みません、簡潔にお願いします。

志牟田参考人 法的なことはよく分かりませんが、私が疑問に思っているのは、個別識別というのはマイナンバーカードでできないものなんでしょうか。なぜ日本国全員に背番号がつけられたんでしょうか。そこで識別できないのであれば、ずっと全てが識別できないのではないかと思っております。

寺原参考人 私は、個人的には個人籍にすべきとかそういう考えは特に持っておりませんで、今の選択的夫婦別氏訴訟も、今ある家族としての単位の戸籍の中に、別氏の人も入れてください、実在している家族を一つの戸籍に入れてくださいというもので、逆に言えば、今ある家族制度、家族単位の戸籍を大事にする方々が原告になっているというふうに理解しております。

藤田委員 残りの三名の皆様に質問できずに、済みませんでした。

 今日は時間なので終わります。

西村委員長 次に、小竹凱さん。

小竹委員 国民民主党の小竹凱です。

 本日は、五名の参考人の皆様、大変忙しい中お越しいただき、そして貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、志牟田参考人と井田参考人にお伺いしたいというふうに思っております。

 私も二年半ほど前に結婚しまして、その際に、妻には私の小竹という名字に変わっていただきました。妻は栄養士をしていたものですから、管理栄養士の免許証というのは戸籍名で発行されます。また、職場であったり施設に栄養士の登録がされている関係で、あと、患者さんにも、栄養士の名前が毎月載っている関係で、結婚した後も旧姓の使用を続けていた。また、銀行口座も旧姓でも使用はできるものの、銀行印が旧姓だと今度はその問題があったり、手続が煩雑だということで、一定見まして、名前を全て統一して、小竹で今は使用していただいております。

 そして、先ほどの志牟田参考人の資料の中にも、様々なトラブルのところのアンケートの項目、通称使用による事務負担への申し訳なさ、この部分がありました。私の妻も同じようなことを言っていまして、結婚を機に、こういった課題があるのか、私は氏を変えなかった側ですので、なかなか当事者にならないと本当は分からなかったところですが、こういった課題があるということを痛感して、課題認識を持っております。また、今やもう共働き世帯が主流となる中で、名前を変えることでキャリアが中断される実例が多くございました。

 制度を導入することで、こうした働く女性であったり若者、どのような希望を与えられるとお考えですか。二人、お願いいたしたいと思います。

志牟田参考人 御質問ありがとうございます。

 幾つかあったんですけれども、全てに答えているかどうか分かりませんが、最後のは若手の話ですよね。

 今、多くの方は、男性が働く社会で女性は家庭に入っている状態であったならば、ある意味、姓を、変えなくても、男性が外に出て働いてくれればいい部分もあったのかもしれません。ただ、今は女性も、国が働け働けと言っていますよね、その中で、やはり個人として出たときに、名前がやはり非常に重要になってくるというのはデータが示していると思いますので、今からの若い人には、やはり選択的夫婦別姓は非常によい制度じゃないかなとは思っております。

 それと、もう一つ。事務方への負担ですけれども、私は、先ほど話しましたように、今は籍を主人と一緒にしておりまして、夫の戸籍名になっているんですけれども、通称使用しております。大学の方でも通称使用で働くことはできますが、例えば人事に関わることとかそういった公示は、旧姓で公示されるんですね。そうすると、大学に貼り出されても、戸籍名で貼り出されているので、誰が何が変わったのかというのは分からない。そういうときに、一々事務方のところへ行って、済みません、旧姓でと、そういうやはり負担感というのは非常に感じます。お互い、申し訳なさというのはそういうところかなと思っております。

井田参考人 私、選択的夫婦別姓というのは、既婚男性にはほぼほぼ認められている、フルスペックで自分の氏名を名のる権利というのを女性に付与するかどうかというところだと思うんですよね。フルスペックというのは、やはり自分の業績の維持あるいはアイデンティティーの維持というものを希望した人たちには、既婚男性にはやすやすとできているところ、私たちでは、透明のシャッターが下りていて、ばんと毎回当たるんですよね。

 旧姓使用、併記ができるようになると手間や不便が解消するというふうに言われて、私もそれを期待していたんです、四十二で改姓したときに。でも、百以上名義変更をしていく中で、給与が振り込めなくなったり、先ほど申し上げたようなトラブルが起こったり、自分の業績を次の転職で生かそうと思って、例えば大学に学位証明をもらいに行くと、そこでもやはり、全部の戸籍謄本を持ってきてください、これまでの名字に至るまでのと。マイナンバーの併記を持っていっても何もならなかったんですね。

 では、併記で事が済むのかといったら、車の運転もできません、病院の受診もできません。できないことだらけで、たくさん穴が空いているところにどかっと落ちてしまうような日々を繰り返してきて、なので、国がもうできるよと言われて、それを信じて飛び込んだ人たち、結構な多くが、だまされたというようなことをおっしゃる方が多いわけです。

 事務方の負担というところにありますが、私の資料の一番最後の方に、フリーという会社さんが出された資料がございます。これは、内閣府の方に出されている資料というふうに理解をしているんですけれども。

 改姓の手続というのは、本人も大変なんですね。望まない改姓だと、自分で自分を穴を掘って埋めているような感覚になるようなペーパーワークが非常に多いんですが、例えば、一番最後のページですと、管理者の立場として、社員が改姓するとメールアドレスや名刺を作り直す必要があり対応コストがかかる。旧姓使用でも、行政手続によっては併記がオーケーなものと戸籍姓でないといけないものがあり、管理コストがかかっている。あとは、小規模企業共済の登録変更の際、銀行口座名義を変更すると引き落としができなくなるので、先に銀行口座の名義を変更しないと後が滞るというようなことが起こるので、非常に手間がかかった。

 ということなので、望まない改姓は、本人も望まないけれども、企業も望んでいない、何なら行政も望んでいない、コストだけかかるというふうに考えているので、これをやはり、今後、女性の役員を増やしていこうとかいうときに、一々これをやらせていく、そして社会的なコストを増大させていく。これに対しては、女性活躍というのであれば、物すごく阻害要因になるので、これが取っ払われてフルスペックで自分の氏名を名のる権利というのができたら、かなり社会的にも地位が築きやすく、あるいは働きやすく、家庭生活も送りやすくなると思っています。

 お答えになっていますでしょうか。ありがとうございます。

小竹委員 ありがとうございました。

 やはり様々なところで不都合であったりお困り事がありまして、私としても、その課題認識、ここを何とか変えていかないといけないという思いは更に高まりました。

 次は、寺原参考人にお伺いしたいと思います。

 今回、国民民主党案と立憲民主党案、両案が提出されております。その中で、我々の案としては、戸籍の筆頭に記載する者を定めることによって自然と後々の子の氏が定まるようにした法案であり、子を持つか子を持たないかの選択にも配慮をいたしました。また、子の氏は自然と定まるとしたことによって、両親のどちらかの氏を実務上定めることのないよう、別氏が選択された場合には制度上どちらかの氏を使用することにはなるんですが、その中でも、最大限、子と親の関係、一体感に配慮した法案だと我々としては認識しております。

 法律家の観点から、この立憲案、国民案、どのような違い、どのような評価があるというふうにお考えか、お聞かせください。

寺原参考人 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたような違いは、立憲さんと国民さん、あるとは思うんですけれども、いずれも法制審案をベースにしてくださっていて、事実上どちらも、婚姻するときに子の氏が決まるということは変わらない。それは現在の制度でも同じで、どちらかの、妻か夫かの氏を選ぶ際に、それはイコール子の氏になっているので、その点は現在の制度とも同じかなということで、私としては、立憲さんの案でも国民さんの案でもいずれでもよろしいので、できれば統一をしていただいて、進めていただきたいというふうに考えております。

小竹委員 ありがとうございました。

 次は、割田参考人にもお伺いしたいと思います。

 先ほど、選択的夫婦別氏制度が成立した場合には婚姻に進まれるというようなことをお聞きしました。仮に維新案が成立した場合には、今後、どういったふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

割田参考人 維新さんの案が通った場合ですけれども、私たちは、名字を変えたくないというところで、現在、事実婚をしています。なので、そうなった場合ですと、今のまま事実婚を続けざるを得ないかなというふうに考えております。

 以上です。

小竹委員 ありがとうございます。まさに当事者の声ということで、本当に重く受け止めております。

 そして、先ほどの井田参考人であったり志牟田参考人のデータが非常に、そして最近の、直近のものでありまして、やはりデータがたくさんあると議論もはかどりますので、本当にありがたいというふうに思っていまして、こういった中で、今の割田参考人のお言葉にもありますけれども、当事者である若者層ほど選択的夫婦別姓への賛成が多数を占めている中で、この将来世代の価値観というのをやはり優先的に政策に反映するべきというふうに考えておりますが、このことについて八木参考人と井田参考人に伺いたいと思います。

八木参考人 将来世代の意向、気持ちを政策に反映させるというその趣旨には大変賛成するところではありますけれども、私は、選択的夫婦別姓を法制化することに伴う弊害の方が多いというふうに考えておりますので、それよりは、現在の旧氏使用を更に拡大していく、単独使用、単記も含めて、選択的夫婦別姓という手法以外の方法で行っていくというのが適切だというふうに考えております。

井田参考人 すごくシンプルに考えて、例えば子育て支援の施策を考えるときに七十代の方に御意見を伺うでしょうか。例えば進学に関する意識であったり必要な施策に関して七十代以上の方に御意見を伺うでしょうか。

 やはりそれは、これから必要とする人、あるいは、今その制度の中で実際運用してみてどうだったかというところを政策に反映されるべきだというふうに私は考えているので、だからこそ、やはり、これから結婚する世代とか、改姓して苦痛を被ったり困り事を抱えている人の声を当事者として、皆さんが立法のための制度設計に生かしていただきたいと切に願っております。

 ありがとうございます。

小竹委員 ありがとうございました。

 最後に、また八木参考人に伺いたいと思います。

 これは私の会社員時代のときの先輩の話なんですけれども、その方は、名前を言うと特定されるぐらい、日本に六軒しかない珍しい名字でして、その方は、数軒しかない珍しい氏を受け継ぎたい、大切にしたいという思いがありました。一方で、当時つき合っておられた彼女、奥様は、珍しい氏が目立ち過ぎるということで、それが少し、言い方はあれですけれども、コンプレックスといいますか、そういったふうに捉えられて、夫婦別氏をしないのであれば結婚はできないというふうに言われていたそうです。最近連絡を取っていないので、ちょっとその後は分かりませんが。

 このように、違う氏で生きたいという希望を持つ夫婦が現行制度の下ではためらっているという現状がございます。

 先ほども鬼木委員から、同一戸籍同一氏が家系の伝統を守っているというふうなこともありましたが、これも、私はある意味、しっかりとこの珍しい氏の伝統を守りたいという意思の表れの一つとも考えておりますが、八木参考人、この辺、どういうふうにお考えでしょうか。

八木参考人 御質問の趣旨に沿うかどうかちょっと分からないんですけれども、例えば、珍しい名字とか、あるいは名家、歴史的、歴史上の名家、それらを継いでいく上では、現行法の中で養子制度を活用すればできるということですね。

 ですから、そういう珍しい名字を継承したいという思いと、でも、結婚してその名字を使いたくないという人、そういう個別の問題にまではなかなかお答えできないです。許してください。

小竹委員 その個別のことが積み上がって今の課題認識になっているということだと思いますし、今、済みません、言い忘れていたんですけれども、その方は一人っ子でして、余計にそういった思いがあったということでありました。

 ちょっと時間が来たので質問を終わりますが、しっかりとまた、今日、明日と議論して、課題認識を共有して、与野党を超えて一致いただけるように私も尽力してまいりたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

西村委員長 次に、大森江里子さん。

大森委員 公明党の大森江里子でございます。

 五人の参考人の皆様には、大変お忙しい中、国会までお越しいただきまして、誠にありがとうございます。大変貴重な御意見、また御知見を拝聴させていただけることに感謝を申し上げます。時間の関係で、五人の皆様全員には御質問できないこともあろうかと存じますが、どうか御容赦ください。

 最初に、志牟田参考人にお伺いをいたします。

 先ほどの先生のお話を伺いまして、研究者にとって氏名が大変重要であり、改姓や旧姓の通称利用は不利益や不安、また手続の煩雑さがあり、それは様々な場面で生まれているという現実、特に女性の研究者の方たちが大変御苦労されているという現実を知ることができました。

 ところで、ORCID、オーキッドと呼ぶようですが、そちらに登録をして、研究者個人を識別するための国際的なIDを利用すれば、結婚して改姓をしても個人認証などは簡単にできるとの意見もありますが、このような意見について、実際に論文発表されている先生のお立場から御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

志牟田参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほどおっしゃいましたORCIDですけれども、確かに存在します。ただ、全ての研究者が登録しているわけではございません。

 それで、研究者がいかに名前で評価されるかという事例として、資料十八を提示させていただきます。御覧ください。

 こちらは、二〇二〇年、四年前のペーパーですけれども、セルリポートのペーパーです。これは、一番最初のページがこの論文の題名、概要を示しておりまして、こういう研究をされていますと。

 見ていただきたいのは、次の二ページ目なんですけれども、こちらで、論文の題名と、ここに名前があります。この名前で、こういう人たちが研究したんだなというのが分かるんですけれども、その研究の内容、概略と、そして、どうしてこの研究をするに至ったか、着想の経緯とか、そういったものは事細かに書かなきゃいけないんですね。それで、その根拠となるものを、ここの水色で示してありますけれども、ここは、その根拠となる論文は誰が発表したのかというのを書いてあるんですが、見ていただくように名前で表記されています。

 ここの紫色に塗り潰しているところは、私が研究したことに対してこの研究者が引用してくれているわけですね。そうすると、名前がここに書いてありますけれども、こういった名前なんですけれども、最終的に、レファレンスというところで、引用した論文をこうやってまとめて書いてあります。見ていただくと、この論文に関しては全て名前で書いてあります。よろしいでしょうか。

 そして、論文によっては、最初から最後まで通し番号で、引用した論文を一番から例えば五十番までと番号が振ってあるので、先ほど名前で掲載されたところが番号で振ってある、一番の論文がこれを示していますとかと書いてあるんですけれども、そのような番号の提示はいたしますが、この論文を見ていただくと分かるように、この論文は例えば千九百八十六番さんが書いたとか、そういった表し方はしておりません。

 というので、こうやって一目瞭然で、名前で全てが評価される。この名前が何回引用されたかということで、例えば私の論文であれば、この論文の重要性というのも評価されるんですね。これが非常に重要になってきます。なので、名前というのは本当に重要なものになります。よろしいでしょうか。

大森委員 大変にありがとうございました。

 資料を用いての御説明をいただきまして、氏名が本当に大切であるということを改めて学ばせていただきました。

 続きまして、また志牟田先生にお願いをしたいのですが、先ほどの御質問の中でもございましたが、先生の大学では旧姓使用が認められているということでございますけれども、例えばほかに、旧姓使用が認められていない大学があるのかも、御存じかどうかもお伺いをしたいと思っております。また、旧姓が使えても、対外的な契約や公的書類で戸籍姓との不一致が問題となったことがあるかどうかというのも、先生御自身の御経験だけでなく、御友人や周りの方などのお話でも結構でございますので、お聞かせいただけますでしょうか。

志牟田参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど話しましたように、多くの大学は通称使用は認めているケースが多いと思います。ただ、それは、要するに公的な書類を作成するときは戸籍名になっている場合が非常に多いです。

 また、公的なというか、対外的にということでは、国立研究開発での理事を務めている方の例なんですけれども、そちらは、研究活動は通称使用が認められているんですけれども、指定職である理事長として公的な場で何かをするときは全て戸籍名で何か書類を作成しなければならないということで、研究活動とそういう公的な立場での二重生活が非常に大変だというお話を伺いました。

 もう一つは、例えば三十年前とかでしたらば、通称使用で学位論文、私もそうなんですが、博士号に関わる学位論文の登録は通称使用はできませんでした、多くは。戸籍名だったんですね。なので、三十年前から残っている研究者としては、学位論文は戸籍名、でも今は通称で、例えば私は通称で働いていますけれども、それを遡ったときは戸籍名になってしまう。幸い私は博士を取ったときは今の通称で研究をしていたので、私はそういう業績が中断してしまうということはありませんが、早くに結婚した研究者はそういった中断があるとは聞いています。

 答えになっているでしょうか。

大森委員 ありがとうございます。

 今の話のちょっと関連、続きになるかもしれませんけれども、先生の、御自身や周りの研究者の方で、研究の業績ですとか、先ほど学位論文というお話もありましたけれども、学術論文ですとか、あと学会活動などもあるかと思いますけれども、そちらにおいても、戸籍上の氏名と旧姓の不一致というのが原因で、例えば、評価、検索、先ほども少しお話がありましたけれども、引用などに支障が出たことがあるかどうか、もう少し具体的な角度で教えていただけますとありがたいです。お願いいたします。

志牟田参考人 引用についてですけれども、通称使用が余り認められていない時期に論文を出された方は業績の中断というのはあるかもしれませんが、今の若い人たちには、そういった論文での引用で何か問題になる、論文に関して言えばさほど問題は残っていないのかなと思います。

 あと、海外に関してですけれども、パスポートの旧姓併記、たしか括弧でやるんですけれども、海外では括弧は通じないんですね。何だこれという感じで、意味が分からないということで、それが旧姓とかそういうのも関係ない。それが外務省が幾ら通達してくれたとしても、地方に行ってしまえば全くそんなのは通じていない。

 なので、そういった問題で、私たちは、科学系の学会が多く存在していますけれども、研究内容によってやることが全然違うんですね。例えば生態学会なんかは、本当に僻地に行って、そこでいろいろなものを採取したりとか人の何かそういった研究をするんですけれども、そういった奥地に行けば、言葉もちゃんと通じない、片言で一生懸命みんなやっているんですけれども、そういったところで旧姓とかそういったものを説明するというのは非常に難しいし、逆に、おまえは何だ、名前が二つあるじゃないかという感じで、先ほどのダブルネームじゃないですけれども、認めてもらえない、入国、そこから先は入れないとか、あと、重要な研究施設でも、例えば宇宙科学とかそういったところでは研究施設に入れないという弊害も伺ったことがあります。

大森委員 大変にありがとうございました。

 続きまして、井田参考人にお伺いをさせていただきます。

 今年の三月に、我が党の選択的夫婦別姓制度導入推進プロジェクトチームの座長をしております矢倉克夫参議院議員が、井田参考人にお願いをさせていただきまして、別姓家庭のお子さんたち、いずれも三十歳前後の方々五名と伺っていますが、オンラインで意見交換をさせていただきました。ありがとうございました。

 協力してくださったのは、親がお互いを尊重し合うために事実婚を選択しているお子さんたちです。私もその動画を拝見させていただきましたが、親が別姓だと子供がかわいそうだという意見についてどのような意見が出たのかというのを少しお聞かせいただきたいと思います。ほかにもお聞きになっているお子さんたちの御意見がございましたら、一緒にお聞かせください。お願いいたします。

井田参考人 動画も見ていただいて、ありがとうございます。

 親が別姓であることを疑問に思わずに、意識せず育っているというような声を上げるお子さんたちが多いんですけれども、その方々はやはり三十歳前後だったので、もう大人になっているわけですよね。世の反対意見を掘り下げた結果、自分たちの存在をだしに使って両親の結婚を阻まれているように感じるというふうな意見を持つ声が上がっていました。

 また、彼らが生まれた当時は非嫡出子の相続分の差別がまだあった時代だったので、三十歳の女性は、三人お子さんがいる御家庭だったんですけれども、お父様、お母様がペーパー結婚、ペーパー離婚を繰り返して嫡出子にするということをやって育ってきたということなんですけれども、私の親はただ単にお互いを尊重し合った結果、ペーパー離婚、再婚を繰り返した、別姓だと戸籍がばらばらになると言っているような反対派の方々もいるんだけれども、うちのお父さん、お母さんのは、結婚、再婚を繰り返して、それこそめちゃくちゃになっているというようなことはおっしゃっていました。

 そうさせているのは現行法の方じゃないかと。両親は同じ戸籍にならせてほしいと言っているわけですね。彼女が八歳のときに、お父さんが、君ならもう分かると思うけれども、お父さんとお母さんはとても愛し合っているんだ、だから、今の法律では結婚できないんだよ、そういうふうに説いてくれたということです。その方が、親が仲がいいのに、何だ、国が結婚させてくれないのかというふうに告げられた方がショックだったというふうに言っていました。

 選択的夫婦別姓反対の方々が子供がかわいそう論を繰り返すんですけれども、彼女は、もしかわいそうだと思うなら、法的保障もないのに愛情一本で自分や兄弟たちが幸せと思えるような仲のいい家庭を築いてきてくれた、この両親を早く結婚させてほしい、そのように言っていました。

 ありがとうございました。

大森委員 大変に貴重なお話をありがとうございました。

 最後に、寺原参考人にお伺いをいたします。

 我が党としましては、人権上の問題から、同一姓になることが強制されている現状は変えていかなくてはならないと考えております。先ほど先生からも、人権問題の視点からの御指摘をいただきました。

 他方、両親も子供も同氏であることが子供の人権だという意見もあります。このような意見について、先生の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。お願いいたします。

寺原参考人 ありがとうございます。

 私の資料の八ページに条文を抜粋しているんですけれども、自由権規約二十四条二項と子どもの権利条約七条一項というのがありまして、ここでは、全ての子供が出生時から氏名を持つことが権利として定められています。ただ、一方で、両親と同じ氏とか特定の氏でなければならないというふうには書いておりませんで、むしろ、嫡出でない子などを念頭に置いて、氏によって子供を差別してはいけないということがこの条約の解説書において警告をされているところでございます。

 ですので、氏が両親と同じかどうかということで子供を差別するということは子どもの権利条約の下で許されないという中で、この国会という場で、両親と氏が同じでなければその子供がかわいそうだとか、何か欠けるところがあるというふうな発言が繰り返されること自体が、本当に、別氏で育った子供たちへの差別であるし、それを助長しているというふうに考えております。

大森委員 大変に貴重な御意見をありがとうございました。

 皆様の御見解を参考にさせていただきまして、これからの質疑に生かさせていただきます。大変に本日はありがとうございました。

西村委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 選択的夫婦別姓は、個人を尊重する、個人の尊厳を大事にする、そういう家族をつくろうという積極的なものだというふうに思います。

 個人の尊厳は家族解体に行き着くというような御主張もあるようですけれども、そのことに関して、選択的夫婦別姓は家族を解体するものではないというふうに当然ながら思いますけれども、井田さん、割田さん、寺原さん、志牟田さんに伺いたいと思います。

井田参考人 家族解体というか、家族にならせてほしい、法的に守られた保障のある家族でいさせてほしい、しかも同じ戸籍に載るようにしてほしい、そのように言っているわけなので、個人籍のお話が先ほどありましたけれども、全く当たらないですし、いつでもどこでも親族の身分関係を証明できるようにしてほしい、そういうことを言っているわけです。なので、全く当たらないと思います。

 ありがとうございます。

割田参考人 私は、家族解体になるかもという話が、済みません、ちょっとよく理解できていません。私は、名字が違っても家族と思って一緒に生きていきたいなというふうに思っております。

寺原参考人 ありがとうございます。

 もし本当に家族を解体しようと思っているのであれば、戸籍制度とか婚姻制度というものにこだわらずに、個人で生きていく、あるいは、自ら事実婚を選んで生きていくという方々もいらっしゃると思います。

 ただ、今ここで議論しているのはそうではなくて、今、家族として暮らしている実態がある、その実態がある方々をきちんと戸籍上も家族にして、戸籍上明らかにしてというものですので、私は、戸籍の根幹である、親族とか家族の身分関係を戸籍できちんと公証して検索できるようにするというその本質的な機能、それに逆に資するのじゃないかというふうに考えております。

志牟田参考人 御質問ありがとうございます。

 そもそも私は、事実婚をしていてそんな家族の解体とか思ったことはなく、逆に、行政で、そうしないと家族でいられないという、要するに法律婚を認めない、夫婦別姓だったら法律婚を認めないという現状が家族を解体しているのではないかと思います。

本村委員 ありがとうございます。そのことを確認させていただきました。

 次に、井田さんに伺いたいというふうに思います。

 国連の女性差別撤廃委員会でも旧姓使用に関する議論があったというふうに思うんですけれども、なかったという誤解もあるようですけれども、実際に日本審査の現場に行かれた井田さんに実際のところを伺いたいというふうに思っております。

井田参考人 御質問ありがとうございます。

 国連女性差別撤廃条約では旧姓使用の議論はなされなかったからちゃんとやるべきだったというような御意見があったんですが、これは大きな誤りです。

 私たち、二〇二四年十月、ジュネーブに赴きまして、日本審査にNGOとして参加をいたしました。旧姓使用の実態について、私たちNGOも委員に報告しましたし、日本政府代表団も、旧姓使用の拡大で、こういったこと、こういったこと、こういったことをやっていますと、不便、不利益を緩和していることというような主張を挙げて説明をしていましたが、結果、委員会からは、日本政府は民法七百五十条の改正のために何一つやってこなかったという勧告が、四度目の勧告を受けました。つまり、旧姓使用の拡大は、何の措置も取ってこなかったと一蹴されたわけですよね。

 日本審査のタスクフォースの責任者だったバンダナ・ラナCEDAWの委員はNHKに答えまして、女性の選択の問題、アイデンティティーの問題だ、日本は言い訳をやめるときだ、民意は明らかだ、もし日本が今の力やグローバルにおけるイメージを維持したいなら変化は必要だと語っておられ、これが国際人権条約に照らした、日本政府の対応への評価ですということになります。

 ありがとうございます。

本村委員 ありがとうございます。その指摘も重く受け止めなければいけないというふうに思っております。

 続きまして、割田さんに伺いたいというふうに思っております。

 選択的夫婦別姓はいつか実現すればいい問題なのかという点です。今大事なこの瞬間の人生の選択肢を、選択をさせてほしいという思いを別の方からも伺っているんですけれども、「あすには」さんのホームページに載っているんですけれども、割田さんのお気持ちを是非お聞かせいただきたいと思います。

割田参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、すぐにこの選択的夫婦別姓を実現してほしいと思っております。

 私は事実婚をしてからまだ半年です。その中で、事実婚を、もう長く事実婚の状態でおられる方々の話とかを聞いて、不安な気持ちになっています。今実現しないとすれば、そういった今のこのもやもや、不安を抱えたまま時間を過ごしてしまうというのは、非常に、ちょっと心苦しいという気持ちですので、すぐに実現してほしいなというふうに思っております。

本村委員 ありがとうございます。本当に、私たちがその言葉を国会議員として重く受け止めて、今すぐ実現しなければいけないというふうに思っております。

 次に、寺原さんに伺いたいというふうに思います。

 資料の中で、子の氏について、自由権規約、子どもの権利条約、最高裁の二人の裁判官の資料もつけていただいたんですけれども、そのことについて、恐らく時間がなかったのだろうというふうに思うんですけれども、お話をいただけたらと思っております。

寺原参考人 先ほど、子どもの権利条約についてお答えをさせていただいたので、そちらで大丈夫かと思います。ありがとうございます。

本村委員 志牟田さんに伺いたいというふうに思います。

 先ほど資料でいただきました資料の十六のところなんですけれども、選択的夫婦別姓制度について、二十五歳から三十四歳の女性では約九割が賛成、男性では六十五歳以上では七割超が賛成ということで、男性が年齢が上がれば上がるほど賛成が増えているというのは、少し一般社会の世論調査とは違う結果になっているのではないかというふうに思いますけれども、そこの点についてコメントをいただければというふうに思っております。

志牟田参考人 御質問ありがとうございます。

 このデータというか解析は、五月三十日まで回答者の回答を集めて、それで急いで解析した、本当に基本的な解析なので、どうしてかというのは私の臆測になってしまうんですけれども、恐らくこの年代というのは管理職の年代になると思います。その管理職の男性が、そういった通称使用の女性が増えている現実を見て、これは変えぬといかぬのじゃないのかなというふうに思っているんじゃないかと良心的に考えております。

本村委員 現実を見てそういうふうに思われているということは、大事なことだというふうに思っております。

 では、再び寺原さんに伺いたいと思います。

 夫婦同氏制度に例外を許さないことの合理性について、訴訟の中で国から主張をされたことがあるのかという点、伺いたいと思います。

寺原参考人 ありがとうございます。

 本委員会の中でも何度か、最高裁が、夫婦が同氏である、一つにするということに合理性があるということで、そういうふうに家族が定義をされたんだというふうな御発言が何回かあったかと思います。

 それは間違いで、最高裁は、一つに定めることにも合理性があるし、わざわざ別のところで、選択的夫婦別氏制度に合理性がないと言うことはできないということを明示しています。実際、家族の形がもう様々である中で、一つの形に決めるということはなかなか最高裁の方で言うことはできないということかなというふうに理解をしております。

本村委員 ありがとうございます。

 また割田さんに伺いたいというふうに思います。

 事実婚で、様々な法的な保護が受けられない、不利益があるということですけれども、公正証書を作ったということですけれども、これはどのようなときに生かせるのかという点、伺いたいというふうに思います。そして、その使い勝手といいますか、是非お聞かせをいただきたいと思います。

割田参考人 公正証書をどういうときに使うかという点ですけれども、正直、作ってからの半年間、どこかに公正証書を持っていって、結婚していますということを言ったことはありません。やはり、作っていく過程で弁護士さんにも言われたとおり、二人だけの約束にすぎないということが、実感したというところです。

 公正証書の意義としては、私たちがいわゆる婚姻届のようなものを作りたいと思って提出したものですので、作ったことに関しては非常に満足感がいっていますが、あくまでも私たちのものだなという実感があります。

 以上です。

本村委員 ありがとうございます。

 いま一度、寺原さんに伺いたいというふうに思います。

 国連の女性差別撤廃委員会でも、社会的圧力によって女性が多く改姓させられているという指摘がございます。これは平等に選んでいるのかという声がありますけれども、どのようにお感じになるか、伺いたいと思います。

寺原参考人 ありがとうございます。

 もちろん、夫婦間できちんと話し合って、自由かつ平等にどちらの氏にするかを決めているという夫婦はもちろんいらっしゃると思います。ただ、残念ながら、それが多い、多くのケースがそうであるというふうには言えません。

 このフリップを見ていただけますと、これは昨年十二月の調査なんですけれども、どちらが改姓するかを実際に話し合ったかどうかということで、話し合った夫婦は一七%にすぎない。話合いを行っていない夫婦は七八%。特に、妻が改姓したケースで見ると、八割が話合いを行っていないということが分かっています。

 話し合うまでもなく夫婦の意思が合致しているということはもちろんあり得るわけですけれども、九五%の夫婦で女性が改姓しているという実態には、先ほど申し上げましたように、男女間の社会的、経済的格差だとか、婚姻したら女性が改姓するのが当然であるという男女不平等な価値観、慣習というものが作用しているということは否定できないかというふうに思っています。

 別氏制度を導入することで、男女不平等な慣習の下でやむを得ず改姓をさせられるという女性が少しでも減るということになるんじゃないかなというふうに期待をしております。

本村委員 ありがとうございます。

 そうしますと、女性差別撤廃条約の中で、自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利などもありますけれども、やはり完全な合意というふうには言えないのではないかというふうに考えますけれども、その点、いかがでしょうか、寺原参考人。

寺原参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりで、本来であれば、当事者が二人で生きていくという、婚姻をして生きていくというその真摯な合意があれば婚姻ができてしかるべき、それが二十四条一項の婚姻の自由なわけですけれども、現在はそこに、婚姻の本質ではない、同氏にしなければいけないという要件が重なってきているということになります。

 最高裁の判決ないし決定でも、違憲意見をおっしゃっている裁判官の方々は、自由かつ平等な協議がなされているとは言えない、自由かつ平等な意思で決めているとは言えないというふうに指摘をされているところです。

本村委員 済みません、最後に、ジェンダーギャップ指数百十八位という問題について井田さんに伺いたいというふうに思います。

井田参考人 ジェンダーギャップ指数は、百四十八か国中百十八位という結果に今回なったということが数日前に報道されました。二〇二五年に三割のリーダー層を女性にというような、呼びかけだけは勇ましいんですけれども、望まない改姓をした人たちにとっては確実にやはり家庭生活、業務上の足かせとなっているこの改姓の問題、改善がいまだされず、更に戦わねばならない。

 役員層の方々ですと、例えば自分の、法人の登記、役員登記もそうですね、特許や投資といった場面で、女性活躍というんだったら選択的夫婦別姓はもう必要でしょうということで、ビジネスリーダーの方々も非常に多く私たちの署名に声を上げていただいて、昨年、千人を超える役員以上の方々がサインした署名を国に出しました。

 特に管理職における女性の割合というのが、百二十七位と非常に低かったんですよね。これは、先ほど女性も男性と同じく自分の氏名をフルスペックで名のる権利を取り戻す法改正だというふうに申し上げたんですけれども、やはり無駄コストが省けます。

 あとは、政治分野でも、衆議院が一六%ぐらいの女性比率ということで、官僚の少なさも指摘をされました。これも、何の届けも不要で、自分の氏名で当選証書を手にして、閣議書や外交文書や公用旅券に公私一貫した自分の氏名を使えるというなら、やはり障壁がより取り除けるのではないでしょうか。

 ランキング三位のノルウェーが選択制を導入したのは六十一年前です。六十一年。日本でも、市川房枝さんたちが婚姻改姓が必要な状況を改めてほしいと国会請願に取り組んだのは実に五十年前になるんですね。そのときに書かれていたことを見ても、今、私たちの状況と何ら変わっていないというような状況なのです。

 なので、先ほど、研究者の方々も事例としては非常に多くお困りの方がいらっしゃるといいますし、日本から永住権を取って行くランキングで三位のカナダにおいては、二〇〇一年から二〇二一年までの間にカナダに定住した人たちの女性比率が大変高いのが日本だと。七六%が女性だと。CBCというカナダの公共放送が放映しているのは、女性差別が激しいので優秀な女性たちがカナダに来てくれる、ウェルカムだというような記事だったわけですね。

 こういう流出が既に始まっているということを、優秀層からやはり取られていっているということを、やはり国会議員の皆さんも、この氏の問題を一つのきっかけとして、本当に平等に、本当に自分が自分でいられるという権利さえ阻害せずに業務上も社会生活も送れているのかと問い直していただきたいなと思います。

 以上です。

西村委員長 本村さん、時間ですので。

本村委員 貴重な御意見を本当にありがとうございました。

西村委員長 次に、吉川里奈さん。

吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。

 本日は、御多忙の中、参考人の皆様にこちらに足を運んでいただいたことを心から感謝申し上げます。

 私からは、まず、八木参考人に伺います。

 先ほど井田参考人から、戸籍筆頭者は、今ではインデックスにすぎないとの御指摘がありました。

 一方で、戸籍や筆頭者という制度は、ファミリーネーム、家族のつながり、家族の一体感を象徴する仕組みとして長年日本社会に根づいてきた面もあると思うんですけれども、この点についてお伺いできますでしょうか。

八木参考人 現行の戸籍は、一戸籍に一つの氏があります。その一つの氏がいわゆるファミリーネームとして機能をしているということですね。

 しかし、これが別姓、別氏になると、二つの氏が存在する。戸籍の筆頭者に子供を合わせるとしても、それでも一つの戸籍の中に二つの氏が存在するということになれば、全体としてのいわゆるファミリーネームは消滅する、それは別氏家族のみならず、法的には全国民からファミリーネームが失われると指摘をしたのが、平成八年の法制審案を起草した小池さんという当時の法務省参事官なんですね。

 そういう立法趣旨があるということを踏まえれば、全体として、別氏によってファミリーネームが失われるということを懸念するものであります。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 続いて、再度八木参考人にお伺いいたします。

 国連女子差別撤廃委員会による皇室典範への言及や夫婦別姓制度の導入を求める勧告について、国際的な価値観なのだから従うべきといった声も一部に見られます。しかし、私は、各国の歴史や文化に根差した家族制度に対して、国際機関が一律の基準を押しつけるような姿勢には強い懸念を抱いています。

 普遍的人権の名の下で、我が国の家族観や制度の根幹を外圧によって変えようとする動きについて、先生はどのようにお考えでしょうか。

八木参考人 普遍的な人権については尊重すべきであると思いますが、一方で、普遍的とはいえ、それぞれの国や地域においてバージョンがあるわけですね。

 その意味において、例えば、皇位継承の女系を認めないのは女性差別であるだとか、あるいは、今回の、夫婦で同氏の現行の制度がこれまた差別であるだとか、そういう指摘があるのは、それはそれとして聞きますけれども、その点は、日本政府としてしっかり我が国の事情、立場というものを主張すべきだと考えます。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 続いて、寺原参考人に伺います。

 寺原参考人のプロフィールを読ませていただきましたところ、LGBTQプラスや多様な性の在り方を擁護される立場で活動されてきたとのことですが、その中で、いわゆるトランス女性による女性スペースの利用に関して、銭湯や更衣室、シェルターなどで生物学的女性の側が不安や抵抗を感じる事例というのが多数報告されております。

 女性としての空間の安心感が脅かされると感じる人が一定数いる事実をどう受け止めていらっしゃるのか、また、少数の声を制度に反映することが結果として多数派の安心や秩序を損なう場合、どのような線引きで調整すべきとお考えなのか、教えてください。

寺原参考人 ありがとうございます。

 トランスジェンダーの方の今置かれている状況については、今回の法案との関係では全く無関係ですので、お答えする必要がないと考えております。

 私は、LGBT等についての人権についても活動をしていますけれども、同性婚訴訟にも関与しておりますが、そちらも、今の戸籍制度、婚姻制度をないがしろにするということの真逆で、今の戸籍制度、婚姻制度の中に家族として入れてほしいという方々の主張ということで、今の戸籍制度を重視する方々だということは申し上げておきたいというふうに思います。

吉川(里)委員 ですが、同様の御意見をお持ちの皆様が、ジェンダー平等の観点と同じ問題であるというふうに伺ったんですけれども、ジェンダー平等の観点からお考えになられたときに、先ほどの私の質問に対してはお答えをいただけないということでした。

 弁護士として、寺原参考人にもう一度お伺いしますが、家族間の法的なトラブルにも関わってこられた御経験から伺います。

 仮に夫婦別姓制度が導入された場合、別姓でないと結婚は認めないといった相手方の家族からの強い希望であったり、むしろ別姓を求めるような圧力が生じる可能性もあるのではないかと考えます。これは、同姓を求める夫婦、片方のパートナーが同姓を求めた場合の話ですね。

 こういう本人たちの自由な意思による結婚というものがこの制度によってかえって難しくなるような新たな悩みというものが生まれることについて、どのようにお考えでしょうか。

寺原参考人 ありがとうございます。

 現行の夫婦同氏制度の下で、今おっしゃったものと似たようなことが起こっています。

 例えば、夫と妻で別氏というか、今は事実婚しかできませんので、事実婚になっちゃいますけれども、したいと思っても、同氏で婚姻をすべきだというふうな社会的な風潮とか親族からの圧力というものがあって、なかなか夫婦だけの気持ちで決めることができないというのは現在の制度でもあります。どの制度にしても、親族と自分たち、夫婦の意思が必ずイコールになるかというと、それは各家庭、各親族で異なるというふうに考えておりますので、選択的夫婦別氏制度を導入したからといって、何かトラブルが増えるということはない。

 逆に、今の制度ですと、両方が生来の氏を維持したいと思うと婚姻ができないところを、制度を導入すれば、そういう場合でも婚姻ができるので、婚姻を自分の意思でできる人が増えるということで、プラスの方向ということはあるかというふうに考えております。

吉川(里)委員 それでは、次に、井田参考人にお伺いをしたいと思います。

 「あすには」さんの事実婚のスクリーニング調査のことについてなんですけれども、まず、「あすには」さんの調査では、一万人へのスクリーニングで、事実婚と答えた方は約二%、つまり、二百人程度になるのだと思います。ところが、本調査では、事実婚の方を五百三十二人にまで増やして、全体の三分の一を占める形で調査をされております。

 このように元々の割合より大きく事実婚のサンプルを集めているため、そこで得られた四九・一%が婚姻届を出すという数字を全国人口にそのまま掛けてしまうと、実際の事実婚者全体がそこまで高い意欲を持っているかのように見えてしまうのではないかと感じました。

 私の理解に誤りがあれば大変恐縮なんですが、この設計についての意図を教えていただけますでしょうか。

井田参考人 ありがとうございます。

 全ての成人人口のうち大体二%から三%ということも、きちんと最初にまずスクリーニングをかけて行いました。それが二%から三%であるということははっきり分かって、これは内閣府の調査とも一致するので、その中の二%の人たちがどのような意向を持つのかというような調査になりますので、五十八・七万人の人たち、事実婚は、人口統計から見ると、二%の中の何%の人が婚姻届を出せる日を待っているというようなところは、全く矛盾しない制度設計になっております。

 なお、これは、もちろん私たちだけで取ったものではなく、第三者機関であるインテージというしっかりとした調査機関で取っておりますので、何か疑義があるというようなことも私は伺っておりませんし、そのように思っておりません。

 以上です。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 法制化されたら婚姻届を出すと答えた方が実際に出すかどうかというのは、また別の問題だと思います。

 また井田参考人にお伺いするんですが、社会調査の分野では、選挙や消費行動でも、意向どおりに実行する人というのは五から七割程度にとどまると言われています。こうした差は行動転換率と呼ぶそうです。

 ところが、今回の調査では、この点を考慮せず、五十八・七万人と推計されたように見えます。行動転換率についてどのようにお考えだったのか、あるいは何か想定があったのか、お答えください。

井田参考人 法改正前の意向の調査を法改正後にどう行動するかと結びつけるというのは非常に難しくないですか。どう行動するかは、法改正後でないとやはり判断できないわけですよね。それがどういうような調査なのか。調査に疑義があるともしおっしゃるということであれば、法改正後にどう行動したのかというところをどうやって推計するのか、逆にお伺いしたいというふうに思います。

 ありがとうございます。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 続いて伺います。

 五十八・七万人という数値は、あくまで推計上の一点の数字だと思いますが、通常、こうした調査では、五十から七十万人程度といった信頼区間や標準誤差など、不確実性を一緒に示すのが統計の慣行と聞いています。

 その点、今回はそうした幅を示さず、あえて五十八・七万人と断定的に打ち出された理由があるのか、教えてください。

井田参考人 統計学上、何・何%というような小数点以下のところまで開示した方が正確な数字ではないのでしょうか。これを丸めた方がいいというような御意向がちょっと私には理解しかねます。

吉川(里)委員 こういったことを伺ったのは、我々も、党内アンケートになりますが、事実婚をされている方が一定数いて、全体の一・三%いらっしゃいました。

 事実婚の理由は、改姓を望まない以外に、子の姓への配慮、経済的事情など、別姓の問題とは直接関係ない事情というものも多く見られました。また、制度が変わっても法律婚をしないと回答された方は六割を占めて、全ての事実婚者が婚姻に移行するとの前提は慎重さが必要かと感じます。

 また、データサイエンスに詳しい教授とともに、統計学的な仮定を丁寧に設定して再推計したところ、婚姻届を出すと見込まれる人は約三・八万人から十五・八万人程度と試算され、五十八・七万人という推計とは大きな差が生じましたので、お伝えさせていただきました。

 制度設計の影響、これら民間のそういう調査というものを立法事実として入れてほしいというような御意見を伺いましたが、やはりこういう制度設計、これは民法改正、戸籍法改正という日本、我が国の重要法案の改正になりますので、精度のある設計というものが不可欠かと思います。

 最後に、志牟田参考人に伺います。

 戸籍は、人の出自や家族とのつながりを公に示す仕組みとして長く用いられてまいりました。一方で、それを個人の選択や生き方を縛るものという声もありますが、参考人は戸籍というものをどのようにお考えなのか、教えてください。

志牟田参考人 御質問ありがとうございます。

 法で縛られたものと考えております。

 ほかの話はしてよろしいんですか。

 余り平等じゃないと思うんですけれども。井田さんは、ちゃんとデータを提示してお話をされていますけれども、吉川さんは、データを口頭でしゃべる。それでお互いにそれは正当かどうかというのは競えないと思うので、こうやって話すときはやはりちゃんと図に示して、根拠を示して、母数もちゃんと話してすべきじゃないかなと私は思いました。

 済みません、違う発言をしてしまいました。

 戸籍に関しては、法的に縛られているものだと思っております、現状では。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 ですから、先日からずっと続いている質疑においても、私たちは、別に今事実婚の御家庭のお子さんであるとか国際結婚をされている皆さん、そういった方々に何か差別的な思いを持ってこういった訴えをしているのではありません。皆様のお困り事に対してどれほどの立法事実があるのかということを数字で示していただきたいということをお伝えし、また、今回のアンケートに関して、少し偏ったところがあるのではないのかということを少し訴えさせていただいた次第になります。

 時間が来ましたので、終了します。ありがとうございました。

西村委員長 次に、島田洋一さん。

島田(洋)委員 日本保守党の島田です。

 まず、我が党の立場をごく簡単に明らかにした上で質問に入りたいと思うんですが、我々は、民法、戸籍法等の改正には踏み込まず、旧姓の通称使用拡大を加速化させる国会決議、これを作って、政府にしっかりしたガイドラインを早急に設けるようにと促すのが最も現実的だし、なお残る女性における不便等も解消が迅速に進むだろう、そういう立場なんです。

 そこで、質問に入りますけれども、今回の立憲法案においては、カップルの間で夫婦別姓で結婚しようと合意できても、結婚の時点で子供の姓を全て、どっちの姓にするかを決めなければ結婚できない、こういう制度ですよね。そうなると、今回の立憲案では、子供の姓は兄弟姉妹全て同一にしないといけない、それを、別姓を選んだ夫婦は結婚の時点で決めないといけない。これが簡単に決められるのか。

 先ほど、割田さんに対して鎌田委員から若干質問があったんですが、お二人の間で結婚しようとされたときに子供の姓を決めないといけないんですが、この制度、仮に立憲案が成立した場合、子供の姓を、どっちか片方は子供全てが自分の戸籍上の姓と異なることになるので、簡単に決定できないと思うんですよね。

 だから、今、お二人の間で、こういう要素を重視してどっちの姓にしようか決めようという、何か考えておられることがあれば、多くの人に参考になると思うので、教えていただければと思います。

割田参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほどから申し上げていますけれども、ちょっと私たちは、漠然と子供を持ちたい、育てたいという思いはありますが、具体的にまだどうしようとかというのは考えてはいません。ただ、名字をどっちにしようかという点に関しては、二人できちんと話し合いたいと思っております。

 私たちは、名字を変えずに結婚したいという点において、既にもう話し合っております。私たちは、子供の姓をどっちにしたいというのは、二人とも持っていません。なので、そこは二人で相談しながら決めることになると思います。

島田(洋)委員 そこで、井田参考人にお聞きしたいんですけれども、夫婦、お互い別姓にしようねという決定は比較的簡単にできても、子供をどっちかの姓で統一しないといけないというのは、なかなか判断に迷う方も多いと思うんです。

 「あすには」を主宰しておられる立場として、そういう方から何かアドバイスを求められたときに、例えばこういう基準を考えたらいいですよとか、何か考えておられることがあったら、お願いします。

井田参考人 いつも不思議なんですけれども、多分、島田先生のお名前も、お父様方かお母様方か、どちらか一方ですものね。なので、それはもう決めておられると思うんですよ。

 米山さんが、よく数値として法務省からの答弁で引き出しておられましたけれども、名づけ紛争によって出生届が出せずに過料に付された件は、法務省としては承知していない。御存じのとおり、夫婦同姓の強制をしている国というのは世界で日本だけですけれども、日本以外の全ての国で名づけ紛争で社会問題になっているというのも私は寡聞にして存じませんので、何を前提に、やはりそういう根拠を持っておられるのかどうかというところを非常に不思議に思っている。

 まず、そのような相談はメンバーからは来ておりません。今も、父方か母方かどちらかの名字一方しかやはり受け継いでいないということもありますので。

 例えば、家名を大事にしたいとか先祖代々の名字を大事にしたいというような御家庭では、やはり一人ずつ振り分けたいという例はあると思うんですが、制度設計上、しっかりと、例えば立憲案、国民案では、特別な事情があれば、家裁の方で、例えば第二子は田中、第一子は佐藤みたいな形で、家名継承的なところもできるというようになっているというふうに存じますので、維新案よりは、家名継承というか、ファミリーネームを大事にしたいという方々もオーケーになるんじゃないでしょうか。

 以上です。

島田(洋)委員 その点に関連して、令和四年の立憲民主党等が出された法案では、別姓を選んだ夫婦の間で、子供の姓というのは、子供が生まれた時点でその都度決めるということになっていました。今回の法案では、結婚の時点で子供の姓を兄弟全てどっちかにする、どっちかの姓は外れるということを決めなければいけないとなっています。

 これはまた割田さんにお伺いしますけれども、どっちの法案の方がいいと思われますか。

割田参考人 済みません、もう一度質問いただいてもいいですか。済みません。

島田(洋)委員 ちょっと時間の関係で、理解をいただくためにほかの方にお答えを先にいただきたいと思うんですが、では、志牟田参考人、今の質問。(志牟田参考人「ごめんなさい、私も理解できませんでした」と呼ぶ)

 要するに、令和四年の立憲民主党その他が一緒に出された法案では、別姓を選んだ夫婦の子供の姓に関しては、子供が生まれた時点でその都度決めるということになっていました。今回は、結婚の時点で兄弟姉妹の姓全てをどっちかにすると決めないといけないとなっています。

 どっちの法案の方が、女性のアイデンティティーその他の点を考慮して、どっちの方がいいと思われますか。

志牟田参考人 どっちの方がというのは、それは私の個人の意見でよろしいんですか。

 私は、事実婚をしていたときには、最初は私の名字で、そして二子が生まれたらば、主人というか、夫の方の名字でというふうに考えてはいましたけれども。

島田(洋)委員 令和四年の案の方がしっくりくるという御意見だったと思います。

 同じ質問ですけれども、寺原参考人は、令和四年の法案と今回の立憲の法案、どちらの方がしっくりくるというか、いいと思われますか。

寺原参考人 ありがとうございます。

 結論から申し上げると、どちらでも構いません。

 民法ができた一九四七年からもうすぐ八十年になりますけれども、今まで本当に多くの方々がこの制度を待ち望んできていますので、かつ、別氏にしたいという方々は、自分の名前を子供に引き継がせたいとか、ちょっと話がずれました、済みません。

 いずれにしても、長い間待ち望んできたものがようやく今回法案になったので、差異を批判したり何か分析したりということよりは、速やかに実現をしていただきたい、それに尽きております。

島田(洋)委員 立憲案の提出者のお一人の米山委員は、やはりこういう民法改正とかは、一旦決めたらこれは十年、二十年動かしちゃいけないと当然のことを言っておられましたけれども、そういう意味で、やはり法案を通す段階で、いろいろな弊害があり得るところはきっちりとチェックしないといけないと思うんです。

 今と同じ質問ですけれども、令和四年の法案と今回の立憲の法案と、井田参考人はどちらの方が望ましいと思われますか。

井田参考人 私もどちらでもいいというふうに思いますけれども、合意形成上は、やはり法制審議会の答申に基づくものですとより幅広い理解が得られるということで、今回それで出していただいたんだと思うんですね。

 結果は同じだと思うんですね。例えば、お互いの氏をそれぞれ第一子、第二子につけたいという御家族だったら、家裁の許可が要るかどうかに応じてやはり違うわけなんですけれども、それはどちらも可能なわけなので。

 これは、ファミリーネームが大事、縦のつながりが大事と先ほど鬼木先生もおっしゃいましたけれども、そのような意向を持つ方にとってもやはり必要な法改正ではないかなというふうに、どちらでも本当にいいと思います。

 ありがとうございます。

島田(洋)委員 八木参考人に伺いますけれども、現在出されている法案にしても、令和四年の法案もそうですけれども、あくまで選択的であって、夫婦同姓、親子同姓、家族同姓でありたいと思う人はそれを選べる、夫婦別姓、親子別姓、家族別姓、それでいいんだという人はそれを勝手に選べばいいじゃないか、何かトラブルがあったとしても、それはそこの家庭に任せておけばいい、こういう意見に関してはどう思われますか。

八木参考人 その質問にお答えする前に、私は、令和四年の立憲案は筋が通っていると思います。反対ですけれども、論としては筋が通っている。

 それは、冒頭の発言でも言いましたが、家族解体というのは、これは私の意見じゃないんですよ、当時そういう論者がそういうことを言っていたということを御紹介しているだけで、元々、家族関係を希薄にしていこう、そういう考えの下に夫婦別氏、別姓という主張がなされてきた。

 今はそんなことを言う人はいませんよ。何かいなくなりましたよ。しかし、それは元々この主張の中に残っているということを改めて確認したいということだったんですね。

 そうなってくると、これは単に希望者がそうしたいというものを認めようという話じゃなくて、国、社会全体の問題として、制度として受け入れるべきだというふうに考えるものです。

島田(洋)委員 今回の立憲案にしても国民民主案にしても、選択的夫婦別姓なんですが、あえて言えば、一回限り選択夫婦別姓。つまり、一発勝負、結婚の時点で同姓にするか別姓にするか決めたら、後は変えられませんよと。

 この間の審議でもちょっと具体例を出して問題にしたんですけれども、別姓にしたかったんだけれども、夫の家族の誰かが強硬に反対して、やむなく同姓、夫の姓で籍に入れたけれども、その後、強硬に反対した家族が亡くなって、誰も反対する人がいなくなった、夫も、別姓にしてオーケーだよと言っているけれども、結婚時に一遍同姓と決めちゃったから、そういう状況になっても別姓にまた選び直すことができないという法のたてつけになっているんです。

 これは女性のアイデンティティーの確保という点で問題はないですか。井田さんに伺います。

井田参考人 私は、この審議の中で島田先生がよくおっしゃっている復氏、元々同姓だったけれども選択的夫婦別姓が導入されたら元に戻したいという人たちが、例えば親族とかからの反対を受けて戻せないというのは人権侵害ではないかというような御意見がございましたよね。(島田(洋)委員「そういう言い方はしていませんけれどもね」と呼ぶ)やはりそれはアイデンティティーの毀損になるんじゃないかというお話、すごく賛同するんですよね。すごく賛同しています、そうですよね。

 だったら、結婚するときにも選べないと人権侵害やアイデンティティーの毀損になるというのは御理解をされているんだということが、すごく理解ができたんですよね。そうだ、そうしたら旧姓使用でいいじゃないかとそこでなるのが、ずこっとなるわけです。なぜでしょうとなるわけです。

 なので、アイデンティティーの毀損になるかどうかというのは、他者から介在するのではなくて、例えば、憲法二十四条では両性の合意のみによって婚姻というのは決まるというふうになるので、やはりお互いの意見をどうすり合わせていくかというところが一番大事であって、親族の、周りからの圧力というところを考慮するものではないんじゃないかなというふうに思っています。

島田(洋)委員 私は、井田さんは以前から論客として尊敬していますけれども、今の話でも。

 まさに選択が非常に狭い形で、一回限りという今回の法案のたてつけはおかしい、そこは一致するわけですが、その他の部分はちょっと違う面もあるんですが。

 といったことも踏まえて、やはり今回の法案は撤回して、練り直すべきだと私は思いますけれども、その点、寺原さん、いかがですか。

寺原参考人 ありがとうございます。

 一度別氏か同氏かを決めたら変えられないというのは今の法制度でも同じで、今も同氏と決めればずっと、もちろん婚姻中は同氏ですし、ただ、本当に別氏にしたいと思ったら離婚せざるを得ないということで、今回出ている法案というのは、そこから後退するものでは全くない。法的安定性を保ちつつ、今侵害されている氏名権とか平等権を確保しようというもので、そのバランスは取れているかなというふうに理解しております。

島田(洋)委員 時間が来ました。

 大変参考になる意見を多数いただきましたので、あしたの米山さんとか円さん相手の審議に生かしたいと思います。

 ありがとうございました。

西村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、明十八日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    正午散会


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