衆議院

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第11号 令和8年5月20日(水曜日)

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令和八年五月二十日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 井上 英孝君

   理事 阿部 弘樹君 理事 木原 誠二君

   理事 高見 康裕君 理事 谷川 とむ君

   理事 藤原  崇君 理事 西村智奈美君

   理事 三木 圭恵君 理事 小竹  凱君

      石原 正敬君    井出 庸生君

      稲田 朋美君    岩崎 比菜君

      上川 陽子君    神田 潤一君

      木村 次郎君    小泉 龍司君

      河野 太郎君    世古万美子君

      武部  新君    辻  秀樹君

      辻 由布子君    寺田  稔君

      西山 尚利君    東田 淳平君

      福原 淳嗣君    藤沢 忠盛君

      藤田ひかる君    藤田  誠君

      古川 禎久君    三ッ林裕巳君

      保岡 宏武君    山本  深君

      山本 大地君    有田 芳生君

      國重  徹君    池畑浩太朗君

      金村 龍那君    井戸まさえ君

      鈴木 美香君    和田 政宗君

    …………………………………

   法務大臣         平口  洋君

   厚生労働副大臣      長坂 康正君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    松井 信憲君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           林  俊宏君

   参考人

   (日本司法書士会連合会会長)           小澤 吉徳君

   参考人

   (日本弁護士連合会日弁連高齢者・障害者権利支援センター成年後見制度利用促進法対応プロジェクトチーム座長)

   (弁護士)        根本 雄司君

   参考人

   (早稲田大学法学学術院教授)           山野目章夫君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     石原 正敬君

  辻 由布子君     岩崎 比菜君

  寺田  稔君     山本  深君

  藤沢 忠盛君     木村 次郎君

  三ッ林裕巳君     藤田  誠君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     神田 潤一君

  岩崎 比菜君     東田 淳平君

  木村 次郎君     藤沢 忠盛君

  藤田  誠君     三ッ林裕巳君

  山本  深君     寺田  稔君

同日

 辞任         補欠選任

  東田 淳平君     辻 由布子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

 民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四四号)


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     ――――◇―――――

井上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案及び民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長松井信憲君及び厚生労働省大臣官房審議官林俊宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局家庭局長馬渡直史君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。國重徹君。

國重委員 おはようございます。中道改革連合の國重徹です。

 早速質問に入りますが、大臣には大きな観点での質問を幾つかさせていただきたいと思います。

 今般の民法改正案では、成年後見制度の抜本的な見直しが行われています。この改正の目的、理念は端的に言うと何なのか、お伺いします。

平口国務大臣 お答えいたします。

 成年後見制度を利用する本人の事理弁識能力が不十分であっても、本人の尊厳にふさわしい生活の継続や本人の権利利益の擁護等を一層図る必要があり、そのためには本人の意思決定をより尊重することが重要でございます。

 民法等改正法案においては、このような理念を基本として成年後見制度の見直しを行っているところでございます。

國重委員 今の大臣の答弁の中で、本人の意思決定をより重視するというような旨のことを述べられました。

 では、なぜ自己決定を尊重し、本人の意思を尊重するのか、お伺いします。

平口国務大臣 令和四年三月に閣議決定された第二期成年後見制度利用促進基本計画において、障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活の継続等を十分考慮した上で、制度の見直しに向けた検討を行うものとされたところでございます。このことも踏まえて、令和六年二月に法制審議会に成年後見制度の見直しに関する諮問をしたところでございます。

 先ほどお答えしたとおり、本人の尊厳にふさわしい生活の継続等を一層図るためには、本人の自己決定をより尊重することが重要であると考えております。

國重委員 本人の意思を尊重するのはなぜなんですかと聞いたんですが、本人の意思を尊重するというのは、今大臣のお言葉で言うと、その人の尊厳、幸せにつながるから自己決定を尊重するんだということでよろしいでしょうか。

平口国務大臣 そのとおりだと思います。

國重委員 そうですね、要は、自己決定を尊重するというのは、よりそれが本人の幸せにつながっていくからだということだと思います。

 これまでの支援は、本人は何もできないというような前提になりがちで、本人を守ろう、これが本人のためになるだろうという、どっちかというとパターナリスティックにやりがちだったというふうに認識をしています。それを、本人にできることは本人ができるようにしていこう、保護されたレールの上を走るんじゃなくて自分で決めた道を歩いていく、それで失敗するかもしれないけれども、それでもチャレンジできるようにしていく、自分のことは自分で決めてこそ本当の幸せなんだ、こういう価値観への転換が今回の法改正の底流にある、私はそのように理解をしております。

 他方で、これまで重視していた本人保護もやはり重要であります。今般の改正案は自己決定の尊重に重きを置く内容ではありますけれども、この内容でも本人保護が不十分になることはないのか、明快な答弁を求めます。

平口国務大臣 本法案では、本人に必要な範囲で補助の制度を利用することを可能としております。申立人は制度の利用動機となる法的課題を把握しており、本人に必要な審判等の申立てをすることが期待できるところでございます。したがって、今般の改正により本人の保護に欠けることにはならないと考えております。

國重委員 自己決定は尊重しつつもやはり本人保護も図っていく、要はバランスが大事だと思います。

 この点、今般の改正案では、自己決定の尊重の表れとして、補助開始の要件の一つとして本人の同意、これが明記をされました。これについて、例えば、本人保護のためには制度利用が必要だと思われるものの本人は利用を拒否しているような場合、このような場合はどうするのか、それでもなお本人の意思を尊重するのかどうか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法では、補助人の同意を要する審判がされることによりその範囲で本人の行為能力が制限され、また、代理権付与の審判がされることにより自己決定権が一定程度制約されるとの効果を生ずる点を踏まえ、本人の自己決定を尊重する観点から、本人が補助の制度の利用に関して同意していることを要件としております。

 民法等改正法案でも本人の自己決定を尊重することとしているため、本人の同意を要件とする規定を維持し、その上で、本人が同意の意思を表示することができない場合には本人同意を審判の要件としないこととしております。

 したがいまして、お尋ねのように、本人が同意という行為をする意思能力を有している場合に制度の利用を拒否しているとすれば、本人同意の要件を欠き、補助開始の審判をすることはできないものと考えております。

 ただし、周囲の者からの虐待などの不当な働きかけがあって、これによって本人が制度を利用することを適切に理解、検討することができずに制度の利用を拒否するという意思決定に至っているような場合には、本人が同意の意思を表示することができない場合に当てはまると解する余地もあると考えられ、このような場合には補助開始の審判をする余地もあると考えております。

國重委員 今回の法改正の趣旨からするとそのようになるんだろうというふうに思います。

 人は、必ずしも合理的な判断をするだけじゃありません。愚行権と呼ばれるようなものもありますけれども、客観的に見れば最善ではないかもしれないけれども、それでも自分で考えて自分で決めていく、その自己決定を尊重すること、これがその人らしい幸福につながるんだというふうに思います。

 私はかつて総務大臣政務官を務めさせていただいたことがありますけれども、そのときにデジタル活用共生社会実現会議という新たな会議を立ち上げました。この会議は、どれだけ年齢を重ねたとしても、どんな障害を持っていたとしても、デジタル技術を活用することで誰もが豊かな人生を享受できる共生の社会を実現していこうという目的で立ち上げた会議になります。その会議の構成員には、八十歳を超えた高齢者の方にもなっていただきましたし、障害をお持ちの方、目が見えない、耳が聞こえない、あるいは知的障害を持たれた方にも構成員になっていただきました。

 そのとき、その会議の席で、知的障害を持たれた、そういうグループのリーダー格の人が、自分たちがスマホを使おうとすると、だまされるとか危ないとか言われて使わせてくれないことが多い、でも、そんなことばかり言っていたら何もできなくなる、自分たちの可能性を広げるために使わせてほしい、任せてほしい、こういう趣旨のことをおっしゃっていて、そのとき私も参加をしていて、感じるものがありました。

 当事者の声を聞いていないと、ともすれば、机上の空論で、危険性とか、守ることばかり考えてしまうことになりかねません。でも、立ち返るべきは当事者の思いであり、声であります。

 他方で、本人の意思を尊重するという今回の改正の理念、これは重要ですけれども、じゃ、実際にどうやって本人の意思、真意というのを酌み取っていくのか。これは、家族とか福祉のプロであったとしても、被補助人の意思を酌み取るというのはそうそう簡単なことではないケースもあると思います。

 補助人が本人の意思、真意を酌み取っていくためにどのような取組を今後行っていくのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 民法等改正法案では、補助人は、その事務を行うに当たって、本人の心身の状態に応じて、適切な方法によりその意向を把握するようにしなければならないこととしております。補助人による本人の意向の把握は、本人に対し補助の事務に関する情報の提供をして本人の陳述を聴取する方法や、本人との関係が良好な親族からその陳述を聴取する方法がありますが、これらに限られません。

 例えば、かねて本人について権利擁護支援の地域連携ネットワークによる支援が行われている事案においては、当該ネットワークの構成員が本人の意向を把握していると考えられることから、その者からその陳述を聴取する方法もあると考えております。

國重委員 本人の意思を酌み取るためには、もちろん御本人にしっかり聞くということも大事でしょうけれども、その周りの方ですね、チームでの支援というのも重要になると思います。

 現在でも、後見人等が入ってつくられるチームとして、中核機関、具体的には地域権利擁護相談支援センターという仕組みがあって、この設置が全国で進められています。ただ、このセンターの設置率は全市町村の七七%。これを多いと見るのか少ないと見るのか、これは人によって違うと思いますけれども、全国で見るとまだ二割以上も設置されていないと見ることもできます。しかも、あったとしても看板だけで中身が伴わないケースもあるというふうに聞きます。この運営主体となっているのは市町村また社会福祉協議会ですけれども、予算不足と人材不足で大変な状況にあります。

 そこで、長坂厚労副大臣、精いっぱい頑張っておられる現場の皆さんに新たなことで負担を押しつけるだけではなくて、厚労省としても必要な予算と人材をしっかりと確保していくべきだと思いますけれども、副大臣の見解をお伺いします。

長坂副大臣 お答え申し上げます。

 國重委員の御指摘のとおり、市町村の中核機関は、地域における権利擁護支援に関わる関係機関や専門職等のネットワークづくりや、判断能力が不十分な方の権利擁護の支援に当たる専門職等からの相談を受け、支援の内容を検討し、適切に実施するための調整を担っております。本人の支援ニーズに対応した支援が行われるために、このような役割は重要と考えております。

 このため、厚生労働省といたしましては、これまでも成年後見制度利用促進法に基づく政府の基本計画に基づいて市町村に対し中核機関の整備のための支援を行ってきており、その結果、直近の統計では約八割の市町村で中核機関が整備されるに至っております。

 その上で、こうした取組を制度上にしっかりと位置づけ、特に中核機関が整備されていないことが多い小規模市町村などの体制整備を促進する観点からも、今般国会に提出いたしました社会福祉法等の一部を改正する法律案において、判断能力が不十分な方の権利擁護支援に係る市町村の事務を明確化した上で、その中核的な役割を担う機関として地域権利擁護相談支援センターを法律に位置づけるなど、必要な制度的対応を盛り込んだところでございます。

 中核機関につきましては、小規模な自治体において設置が進んでいない現状があることから、都道府県とも連携し、設置に向けた支援を行うとともに、既に設置されている自治体におきましても、中核機関が地域において必要な機能を発揮できるよう、国における研修等において好事例の共有を図るなどによりまして、市町村における適切な支援体制の構築を支援したいと考えております。

 また、基本計画に基づく中核機関の整備に向けては、費用対効果につき不断の検討を行いつつ、必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

國重委員 現場がきちんとワークするように、必要な手はしっかり打っていただきたいというふうに思います。

 同じく現場をワークさせるという観点から、ここからは実務の運用も意識しながらお伺いしていきたいと思います。要件一つ一つ、確認していきたいと思います。

 まず、本人の意思を尊重するという理念、これが明確に表れている規定として、先ほども触れました、補助開始の要件の一つとして本人の同意のほか、補助人の選任時に本人の意見を考慮要素とするという規定があります。これは民法八百七十六条の二ですね。これにつきまして、現行法では、成年後見人等の選任時の考慮要素の最後に本人の意見がありました。これを改正案では、考慮要素の冒頭に記載するようにしています。このように、最後から冒頭に置き換えた趣旨は何でしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、民法等改正法案では、補助人の選任の際の考慮要素として、冒頭に本人の意見を規定することとしております。これは、本人にとって適任の者を選任する観点から、本人の意見を重視すべきことを明確にするためでございます。

國重委員 これは、記載順序を変えて最後から冒頭に入れ替えることによって、法的な意味、法的効果というのは変わるんでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法におきましても本人の意見は補助人の選任の際の考慮要素として規定されており、家庭裁判所では、補助人の選任の際に本人の意見が考慮されております。

 その上で、民法等改正法案では、補助人の選任において本人の意見を重視すべきことを明確にするため、本人の意見を規定の冒頭に置くこととしておりますが、このような改正の趣旨が周知され、運用に当たり十分に考慮されることに法改正の意義があるというふうに考えております。

國重委員 そのような立法者としての、これは我々が審議していくわけですけれども、そういう思いが込められているということでありました。

 とすると、今回、そのように冒頭に置いたということは、これまでは本人の意見が十分には考慮されていなかったという反省によるものなのかどうなのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法でも本人の意見は補助人の選任の際の考慮要素として規定されており、家庭裁判所は、本人の意見を考慮し、個々の事案で最も適任と認められる者を選任しているものと承知をしております。

 その上で、法制審議会の部会では、本人の自己決定をより尊重するという観点からは、誰からの支援を受けたいかという本人の意向を反映させることをより明確にするべきであるとの意見が述べられたところです。このような部会での意見を踏まえ、民法等改正法案では先ほどのような改正を試みているところです。

國重委員 改正法全体を貫く理念と整合性を図って、より明確にしていくというような趣旨であるというふうに捉えました。

 その上で、重視するという以上、実際の運用においても、これまで以上に本人の意見、これを尊重するような工夫が必要だと思いますので、この点については是非しっかりとお願いしたいと思います。

 今般の改正案による大きな変化の一つが、利用を終われるような制度にしたことです。これまでは、事理弁識能力が回復しない限り後見制度等をやめることができませんでしたけれども、改正案では、事理弁識能力が回復していない場合であったとしても、制度利用の必要がなくなったと家裁が認めれば利用を終了できるようになりました。

 まず確認ですけれども、この制度利用の必要がなくなるケースとして具体的にどのようなケースを想定しているのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 必要がなくなったと認めるときとの要件は、補助の制度を利用することによる保護の必要がなくなったことを意味しております。

 補助に係る各審判の必要がなくなったかどうかは、個別の事案における具体的な事情に即した家庭裁判所の判断によるものではございますが、補助に係る各審判をした際の保護の必要性と対照し、本人の精神の状況、生活状況、親族や自治体等からの支援の状況等を踏まえ、その保護の必要性がなくなったかどうかを判断すると考えられます。

 補助に係る各審判の必要がなくなった場合としては、補助の制度を利用する動機となった法的課題が解消した場合が考えられます。具体的には、例えば、遺産分割に対応するために補助の制度を利用して補助人に遺産分割の代理権が付与された事案では、その遺産分割が終了した場合というものが想定されます。

國重委員 制度利用の必要性がなくなったと判断するその考慮要素の一つとして、制度利用をやめたとしても、代わりに別の支援制度に引き継げるということが挙げられます。

 利用終了後の支援として想定されるものは様々ありますけれども、その一つに日常生活自立支援事業というものがあります。これは、これまで判断能力が不十分な人の日常生活支援を行ってきた事業であって、この事業では足りないような人が成年後見に流れてくるという形で、これまでも成年後見と深く関わってきました。

 今回、この民法改正に合わせて、対象者と事業内容の拡充が行われて、制度利用が終わった人の受皿としても機能していくことが期待をされています。

 一方で、この事業も、担い手である社会福祉協議会はもう手いっぱいの状況にあります。制度の見直し後は新たな第二種社会福祉事業と位置づけることによって、社協以外にも担い手を広げることを目指しておりますけれども、とはいえ、現在も相当数の待機者が出ておりまして、全国で三千近い待機者がいるとの話も伺っています。

 もちろん、制度利用を終了した人の全てを日常生活自立支援事業あるいは新たな第二種社会福祉事業で受けるわけではありませんけれども、それでも更なる需要の増加が見込まれることは確実です。ですから、これは人と予算を確保しなければ現場がパンクしてしまいます。

 そこで、長坂厚労副大臣、厚労省としてこれについても責任感を持って対応していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

長坂副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業は第二種社会福祉事業であることから、事業の経営の主体については制限を設けておらず、幅広い主体に参加いただくことを期待をいたしております。

 一方、全国どの地域でも援助を受けることができるよう、現在の福祉サービス利用援助事業と同様に、各都道府県の社会福祉協議会に対し、都道府県の区域内で着実に事業が実施されるための必要な事業の実施を義務づけております。

 その上で、社会福祉協議会が事業を実施するに当たり必要な対応につきましては、支援を担う人材育成の在り方も含めまして、同様に法律上実施義務のある現在の福祉サービス利用援助事業における取扱いも参考にしつつ、本事業が利用料収入による運営を原則としている点や、他の民間事業者も担い手になる点といった特徴も踏まえて、今後の予算編成過程で検討してまいりたいと考えております。

國重委員 現場の負担が増えることは確実ですので、必要な予算と人材の確保を是非よろしくお願いします。

 それでは、長坂副大臣はここで退席していただいて結構です。あともう関連質問はないと思いますので、執務に当たっていただければと思います。

 それでは、次に、今般の改正案では、新たに特定補助の制度も設けられています。事理弁識能力を欠く常況にある者が対象で、法定の重要な財産行為についての取消権をパッケージで設定できる制度になっています。

 まず確認しますけれども、事理弁識能力を欠く常況、この定義は何なのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 民法等改正法案では、事理を弁識する能力を欠く常況にある者については定義を置いておりません。

 法務省としては、法制審議会の部会での議論も踏まえ、事理を弁識する能力を欠く常況にある者の内容を明確にする観点から、社会生活上、人が通常経験する事務について、その内容を理解し、考えられる解決の利害得失を検討して、態度を決定することができる可能性がないことがほとんど普通の有様であるものと整理をしているところでございます。

國重委員 非常に正確なんでしょうけれども、一見、聞くと、すぐすっとは耳に入ってこない言葉の、事理弁識能力を欠く常況という定義でした。これは、できる限りこの外延をはっきりさせようというような意図だと思いますけれども。

 この事理弁識能力を欠く常況というのは、これまでも後見の要件とされてきました。その定義として、日常的な買物も自分ですることができず、誰かに代わってやってもらう必要がある者と説明されてきましたけれども、今答弁のあったこの定義の意味内容というのは、これまでのものと同じなのか、違うのか。ここは特定補助の認定に関わることなので、明快な答弁を求めます。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 事理を弁識する能力を欠く常況にある者との文言は、平成十一年の民法改正時に禁治産制度を成年後見制度に改めた際に規定されたものであり、御指摘のとおり、一般に、日常の買物も自分ですることはできず、誰かに代わってやってもらう必要がある者などと説明されてまいりました。

 民法等改正法案でも事理を弁識する能力を欠く常況にある者という文言を維持しておりまして、先ほど述べた整理は、その内容を更に明確にする観点から整理したものでございます。

國重委員 それでは、同じく事理弁識能力を欠く常況にある者であることが要件とされる後見と特定補助ですけれども、この両者の違いというのは何なのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 両者の違いについて、まず、事理弁識能力を欠く常況にある者は、現行法の下では後見の制度しか利用できませんが、民法等改正法案の下では、補助の制度のみを利用することも、特定補助の仕組みを利用することもできます。

 また、後見は、成年後見人に包括的な代理権及び取消権を一律に付与する制度でありますが、特定補助は、法定の重要な財産行為に限りいずれも取り消すことができるとするものであり、個別の代理権付与の申立てにより、本人にとって必要な範囲で代理権が付与されるにとどまるものでございます。

國重委員 今御答弁で、特定補助の利用に係る必要性の要件についても言及がありました。これに関して、特定補助はパッケージでの取消権を設定する制度であるのに対して、補助人の同意を要する要同意事項というのは個別に取消権を設定する制度になっています。

 いずれも取消権である以上、その必要性の判断においては一定の将来予測が含まれることになりますが、特定補助と要同意事項とで、必要性に関する将来予測の解像度、確実性にはどのような差があるのか、両者における必要性の違いは何なのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 特定補助人を付する旨の審判をするための要件としての必要があると認めるときとは、本人を保護するため、法定の重要な財産行為をいずれも取消し可能としておくことが必要であることを意味しております。

 他方で、補助人の同意を要する旨の審判をするための要件としての必要があると認めるときとは、審判の対象とされた特定の行為を取り消すことができることとしておくことが必要であることを意味していると解されます。

 いずれにつきましても、必要性の判断においては、本人が行為の利害得失を理解し検討することなく、その行為に及ぶ危険があるかどうかが問題とされるものであり、将来の予測を含むものであると考えております。

國重委員 将来の予測を含むんだけれども、そこにどういう違いがあるのか。じゃ、これからちょっとまた聞いていきたいと思います。

 まず、特定補助の必要性の判断における将来の予測、これには漠然とした不安感も入るのかどうか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 特定補助人を付する旨の審判をする必要性は、具体的には、本人が外形的に法律行為と見える行動を取る可能性があり、かつ、その利害得失を理解し検討することなく、法定の重要な財産行為に該当する不利益な行為をする危険があることを内容とします。

 したがいまして、御指摘のような漠然とした不安感があることのみでは、本人が不利益な行為をする危険があると言うことは困難であると考えております。

國重委員 それでは、特定補助の必要性の判断において、どの程度の時間軸における、どの程度の確実性のある必要性が要ることになるのか、これはちょっと難しいかもしれませんけれども、あえてお伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 特定補助人を付する旨の審判をする必要性は、家庭裁判所において、審判時までに表れた事情に基づき、審判時における本人の状況を踏まえて判断されるものですが、個別の事案に応じて種々の具体的な事情を考慮して判断されるため、お尋ねの時間軸の程度について一概にお答えすることは困難でございます。もっとも、相当遠い将来に危険があるとの主張がされた場合には、一般的には、それを適切に予測し審判の必要性があるとすることは困難であると考えられます。

 また、お尋ねの確実性の程度についても一概にお答えすることは困難ですが、先ほどお答えしたとおり、漠然とした不安感があることのみでは、一般的には本人が不利益な行為をする危険があるとは言えず、審判の必要性があるとすることは困難であると考えております。

國重委員 ありがとうございます。

 難しい質問だったと思いますけれども、ぎりぎりというか、精いっぱい答えていただいたとは思います。

 その上で、法務省として、特定補助の対象として具体的にどういうケースを想定しているのか、逆に、一見するとこれは入りそうなんだけれどもこういう場合は当たらないというような具体的な例としてどういうようなケースを想定しているのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 特定補助人を付する旨の審判の必要性が認められる具体的な事案としては、例えば、本人が認知症等で通院治療等を受けつつ、地域社会で生活をし、名前等を記載することができるような活動をすることができ、過去に重要な財産行為について不利益な取引をしたことがあり、特定補助人を付する旨の審判の請求権者が本人との間でコミュニケーションを十分に取れないなど、本人の行動を的確に予測することができない事案が想定されます。

 他方で、例えば遷延性意識障害にあるなど本人が事理弁識能力を欠く常況にある者であっても、その精神の状況等に照らしておよそ外形的に法律行為と評価される行為をすることがないなど法定の重要な財産行為をする可能性がない事案や、親族等の第三者の支援により本人が単独でそうした行為に及ぶ可能性がない事案では、特定補助人を付する旨の審判の必要性が認められないことがあると考えられます。

國重委員 要は、自分の名前が書けなかったりとか、会話が困難であったりとか、そもそも契約行為を行う可能性がないような場合には、もう契約をして被害に遭うような可能性もないから、特定補助の必要性はない、そういうような場合は補助の方で必要な取消権を個別に設定することで対応していく、こういうことだと思います。

 今回、特定補助の制度設計において、パッケージでの取消権の対象を法定の重要な財産行為に限ったというのは、たとえ事理弁識能力を欠く常況があったとしても、それでもなお本人の自己決定を尊重するという、この改正法案に通底する理念の表れだと理解をしています。

 一方で、これで本当に本人保護が図れるのか、いろいろなことを取り消せるようにしている方が守れるんじゃないか、こういう懸念の声もありますけれども、大丈夫なんでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法では、成年被後見人がした行為は、日常生活に関する行為以外の全ての行為を取り消すことができるとされております。もっとも、本人がした行為を取消し可能とすることは、本人が単独で確定的に有効な行為をすることを否定し、本人の自己決定を制約する側面を有します。

 そこで、民法等改正法案では、補助の制度に一元化し、本人にとって必要な範囲で取消権を付与することといたしました。その上で、事理弁識能力を欠く常況にある者については、法定の重要な財産行為をいずれも取消し可能とする特定補助人を付する旨の審判の仕組みを選択できることとし、加えて、法定の重要な財産行為以外の行為についても個別の必要性に応じて取り消すことができることとすることによって、十分な保護を図ることができるようにしております。

國重委員 これまでの後見制度の問題点として、成年後見人等の交代が困難で、本人がニーズに合った保護を受けられないという点が指摘されてきました。そこで、今回、不正行為や著しい不行跡、要は職務を継続させるのが相当でない場合、こういう場合だけじゃなくて、本人の利益のために特に必要があるときに補助人を解任、交代できるようになりました。

 ここで言う本人の利益のために特に必要があるときとは具体的にどういうケースを想定しているのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 法制審議会の部会の議論を踏まえると、補助開始の審判を受けた者の利益のため特に必要があるときに該当する場合としては、例えば、補助人が、財産管理は行っているものの、本人に面会しなかったり、本人の家族などの本人を支援するチームと連絡を取らなかったりした結果、本人や関係者と適切な関係を構築することができていない場合などが想定されます。

國重委員 その上で、この規定では、本人の利益のために特に必要があるときと、特にとの文言が入っています。単に必要があるときと比べて、特にとあることでどのような法的な違いが生じるのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 民法等改正法案は、現行法と同様に、補助人については、家庭裁判所が、個々の事案に応じて、本人の課題等を踏まえて最も適任と認められる者を選任することとしております。

 このように、本人の課題等を踏まえて選任された補助人が継続的にその事務を行うことが基本的には本人の保護に資するものと考えられますから、特別の必要性を要件とする趣旨で、新設する解任事由を本人の利益のために特に必要があるときとしたものでございます。

國重委員 それでは、私の持ち時間は四十分ということですので、次で最後の質問にさせていただきたいと思います。二問一緒にして、セットでしたいと思います。

 補助人への報酬について最後に伺います。

 現行法では、本人及び成年後見人等の資力以外の考慮要素が条文には明記されていません。そこで、改正案では、補助人が行った事務の内容等を報酬の考慮要素とすることが条文上明確化されました。

 そもそも、本来、報酬の決定は、資力というもの以上に、行った事務内容を考慮すべきだったようにも思われますけれども、なぜこれまで資力だけが考慮要素とされていたのか、あるいは条文上明記されていなくても実質は考慮されていたのか、また、今回明記したことで実務の運用に何らかの影響はあるのか、お伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法では、家庭裁判所は、本人の財産の中から相当な報酬を補助人に与えることができるとしておりますが、報酬を算定する際の考慮要素として、後見人及び被後見人の資力その他の事情を規定しており、資力以外の事情も考慮要素となることが規定されております。

 そして、家庭裁判所は、補助人に報酬を付与すべきか否か、付与するとしてその額をどのように算定するかを判断するに当たり、様々な事情を考慮しており、現在の実務でも補助人が行った事務の内容が考慮されていたものというふうに承知をしているところでございます。

 民法の規定上、後見人及び被後見人の資力だけを明示的に規定していたわけでございますが、現行民法の規定は明治民法第九百二十五条本文の規定に由来するものでありまして、報酬を与える主体を親族会から家庭裁判所に改める改正がされたほかは、基本的にその内容は改正されておりません。

 明治民法において後見人及び被後見人の資力その他の事情を考慮することとされていた理由は必ずしも明らかではありませんが、例えば、後見人が十分な資力を有しているのに対し、被後見人が資力を満足に有していない場合には、後見人に報酬を与えないことが多いなどと説明されてきたものと承知をしております。

國重委員 今回の法改正が、現場で、実務できちんとワークするように、一つ一つの法解釈についても明らかになっていく、そういう今回の法案審議になっていくことを期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 おはようございます。

 ちょっと質問の順番を変えまして、先ほど國重委員からも質問がありました特定補助についてから質問をしたいと思います。

 今回、終われる後見制度、しかも後見制度の見直しをされたものと福祉との連結、接続を今まで以上にもっとやりやすくということで法改正がなされるという中において、先ほど来質問のありました特定補助については、これはなかなかまだ議論があるところだというふうに思っております。

 それで、まず最初に伺いたいのは、この特定補助の仕組みを設けた理由について伺いたいと思うんですけれども、ちょっとまた後で細かく聞きますが、これがあることによって、特定補助人を付するというその審判が、もしかしたら多数利用されるようになるのではないかということも、少し、将来像として見込めるところがあるんですけれども、この特定補助の制度の理由について、まず答弁をお願いします。

平口国務大臣 お答えいたします。

 本法案では、本人に必要な範囲に限って個別に補助人に取消権を付与することとしております。このような保護を受けるためには、本人が不利益な行為をする危険がある行為類型を特定する必要があります。

 しかしながら、本人が事理弁識能力を欠く常況にある者である場合には、そのような行為類型を的確に予測して特定することが困難な場合がございます。そこで、そのようなものについて、重要な財産行為をいずれも取り消すことができる特定補助の仕組みを選択することとしたものでございます。

 特定補助の仕組みは、これまで本人がした法律行為の諸事情を踏まえ、本人が行う可能性のある行為類型を的確に予測することができない場合に利用されると想定されるわけでございまして、したがって、制度利用者の多数がこの仕組みを利用することになるとは考えておりません。

西村(智)委員 私は、今日は民法とそれから家事事件手続法について質問しようと思っていますけれども、もう一回質問の時間をいただけるようですので、次の機会には、消費者契約法の改正、より包括的な取消権のことについて質問しようと思っていますが、今日は、民法とそれから家事事件手続法ということで質問を進めてまいります。

 それで、先ほど國重委員とのやり取りを大変興味深くというか、本当に関心を持って聞かせていただいたところだったんですけれども、私からも一点確認をしたいと思っております。

 現行の後見制度、包括的な代理権それから取消権を有する制度という中で、その要件が、事理弁識能力を欠く常況にある者というふうに書かれているわけなんです。今回、改正民法第十条、ここにおいても、特定補助の要件として、事理弁識能力を欠く常況にある者というふうに同じ文言が記載されているわけなんですね。

 この特定補助は、重要な財産行為について取消し可能とする仕組みを選べるということで、現行の成年後見制度とは大きく異なるわけなんですけれども、それぞれどういうふうに理解をされているのか、また、特定補助の要件で、成年後見、現行の制度と同じように、ここが同じ文言なので、同じように理解をされるのかどうか、ちょっと確認の意味で質問をします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 事理を弁識する能力を欠く常況にある者につきましては、定義はされておりませんが、平成十一年の改正時には、一般に、日常の買物も自分ですることはできず、誰かに代わってやってもらう必要がある者などと説明がされてまいりました。

 もっとも、現行法の実務の下では、その運用において、その想定よりも広い範囲のものが事理を弁識する能力を欠く常況にある者に概定すると認定されているのではないかとの指摘もされているところでございます。

 民法等改正法案では、そのような指摘も踏まえた上で、事理を弁識する能力を欠く常況にある者という文言をより明確化をする、整理をするということを考えておりまして、その内容については、法制審議会の部会での議論も踏まえて、社会生活上、人が通常経験する事務について、その内容を理解し、考えられる解決の利害得失を検討して、態度を決定することができる可能性がないことがほとんど通常の有様であるものと整理していることをこの答弁で申し上げているということでございます。

西村(智)委員 文言としては、そういうふうに、言ってみれば枠を決めていただくということで、現行制度の事理弁識能力を欠く常況にある者というのとは違いますよということなんだと思うんですけれども、現に、運用ですよね、先ほど、現行制度の中でもより広く解釈をされているのではないかという懸念もあり、今回の法改正につながったというようなお話もありました。

 実際に、この事理弁識能力を欠く常況にある者というのが、どういうふうに実務上、運用上判断されていくことになるのか。家事事件手続法第百二十条三項で、家裁は、審判の場合は、市町村長その他適当な者に対し、本人の心身の状態、生活の状況その他の必要な事項に関する意見を求めることができる、こういうふうに書いてあるわけなんです。

 そこでなんですけれども、意見の聴取というのはどういう事項について聞かれるのか、またどこに対して行われるのか、それを御答弁をいただきたいと思っております。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 民法等改正法案による改正後において、本人が事理弁識能力を欠く常況にある者であるとの認定がされるのは、特定補助人を付する処分の審判をする場合でございます。その審判に当たっては原則として鑑定を必要とし、例外として、医師二名以上の意見を聞いて、明らかにその必要がないと認めるときは鑑定をすることなく審判をすることができるとしております。

 他方で、御紹介のように、民法等改正法案では、新家事事件手続法百二十条三項を新設し、補助に関する審判のうち、その必要性の有無を判断するものや適任の補助人を判断するものについて、必要な場合には、市町村長その他適当な者に対し、本人の心身の状態等必要な事項に関する意見を求めることができることとしております。

 この規定による意見の聴取として、市町村長に対し、本人のケアサービスの利用の有無等といった福祉的支援の有無及びその内容等を照会したり、日頃から本人の生活を支援している者に対し、本人の日常生活の状況等を照会することを想定しております。

西村(智)委員 ちょっと最後のところがさらっとだったんですけれども、つまり、先ほど、一応、枠ははめてもらった、定義的にはですね。なんですけれども、本人の、例えば医師の判断のときなどは、やはりその日の状態というのはあるんだと思うんですよ。たまたまその日が体調がよかったとか、あるいはたまたまその日が体調が悪かったとか、やはりグラデーションがある。そういう指摘がある中で、それに対して、例えば、日常支援をしておられる方々に、ケアサービス、どういうものを受けているかですとか、それから日頃からの状況はどうかというのを聞いた上で、それは判断をされるということでよろしいんでしょうか。確認をしたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 実務上は、補助開始の審判をする、そして補助人として誰を選任するか、それを同時に考えて判断をしていくということが通常だろうと思います。

 ですので、その場合の申立て書の中におきましても御本人の状況なども出てまいりますし、先ほど申し上げたとおり、補助開始の必要性の判断におきまして市町村長その他適当な者に対して意見を求めることができる、そのような事柄を総合的に考えていくということになろうと思っております。

西村(智)委員 それで、今度は終われる後見になるということで、終わり方といいますか、終わった後のことも含めて御本人のことを考えると、その方に、当事者に関する福祉情報の取得というのは、これはやはり丁寧にやっていく必要があると思っております。

 現在、成年後見の開始においては、最高裁が、本人シート、本人情報シートですかね、これはホームページにも掲載していて広く活用されているんだというふうに思うんですけれども、成年後見制度の開始に当たっては本人情報シートは活用されているという前提なんだが、今度は、例えば交代とか終了とか、こういったものを想定していかなければいけないわけなんです。その際、福祉の情報の取得というのはどういうふうに行うことになるのか、お答えください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法下の実務では、本人を支える福祉の関係者において、本人の生活状況等の情報をまとめたシート、いわゆる本人情報シートが成年後見の開始の場面で活用されているものと承知をしております。

 民法等改正法案では、補助人の解任事由として、本人の利益のため特に必要があるときを追加し、また、本人の事理弁識能力が回復していない場合でも、必要がなくなったときは補助に係る各審判を取り消すことができることとしております。

 これらの審判の判断に必要な資料は、福祉に関する資料も含めて、基本的には申立人において収集し、家庭裁判所に提出することが想定されておりますが、本人情報シートに必要な事情が記載されていれば、それを提出することで必要な資料の提出の目的を達成することもあると考えております。

 また、民法等改正法案では、家庭裁判所は、補助人の解任の審判や補助に係る各審判の取消しの審判をする場合に、本人や補助人から陳述を聴取したり、必要がある場合には本人の生活状況等について市町村長等の意見を聴取したりすることができることとしております。

 このようにして、審判に必要な資料を適切に収集した上で、補助人の解任の審判等に関する判断がされるものと認識をしております。

西村(智)委員 基本的にやはり家裁の方から市町村ないしは中核機関の方に問合せをするということになるんでしょうかね。

 ちょっとその中核団体の方に行く前に、御本人とそれから補助人あるいは支援をしてくださっている方、こういった方々の間で保護ないしは福祉に関する意見が分かれているときがあるかなというふうに思うんですよ。そういうときは家裁というのはどういうふうに判断をすることになるのか、御答弁をお願いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 民法等改正法案においては、補助開始の審判等をするには原則として本人の同意を要件としており、本人の支援者としての親族が本人を保護するために補助開始の審判等が必要であると考えて申立てをしたとしても、本人が同意をしなければ補助開始の審判がされることはございません。

 他方で、補助の制度の利用を開始した後、その必要性がなくなったかについて、本人と補助人などの本人を支援する者との間で意見が分かれることはあり得るというふうに考えております。

 家庭裁判所は、本人や補助人の意見の結論部分だけを基礎として判断するのではなく、その意見を基礎づける資料の有無等を確認し、さらに、必要があるときは本人の生活状況等の判断に必要な事項について市町村長等に意見を求めることができ、地域福祉が有する資料も必要に応じて収集することができます。

 一般論として申し上げれば、このようにして収集された資料を踏まえ、事案に応じて具体的な事情に即した適切な判断がされるものと考えております。

西村(智)委員 次に、そういったときのためにもといいますか、中核団体、それから今回法定化される地域権利擁護相談支援センター、こちらの方は社会福祉法の方ですけれども、そちらの方で改正されるセンター等がきちんと機能するということが必要になってくるというふうに思います。

 ここで、どういう対応が必要になってくるかなんですよね。家裁からの問合せなどに対してきちんと情報提供もするというようなことが必要だと思うんですけれども、やはり、単発で、こうですか、どうですか、どうですかというようなことを聞くというよりは、例えば受任者調整会議、こういった会議体を設けて対応するといったこと、こういったことも必要になってくるのではないかと思うんですけれども、これについて政府の側としてはどういうふうに考えていますでしょうか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、中核機関は、地域における権利擁護支援に関わる関係機関、専門職とのネットワークづくり、判断能力が不十分な方の権利擁護の支援に当たる専門職等からの相談を受け、支援の内容を検討し、適切に実施するための調整を担っております。現在、昨年四月一日時点で七七%の市町村において整備済みとなっておりまして、自治体直営のものと委託のものとおおむね半分ずつになっております。

 この中核機関が担う役割の大きなものの一つとしましては、後見人等の候補者と選任形態についての調整、いわゆる受任者調整を行うということが挙げられておりまして、中核機関設置済み自治体の約六割においてこうした受任者調整を実施するなど、本人のニーズに対応した支援の実現に向けて大変重要な役割を果たしていると思っております。

 厚生労働省としては、これまでも成年後見制度利用促進法に基づく政府の基本計画に基づきまして、市町村に対して中核機関の整備あるいは機能強化のための支援を行ってまいりました。その上で、この中核機関について制度上もしっかりと位置づけをし、また、小規模自治体を始めとして中核機関が整備されていないところもまだ多いことも踏まえまして、今委員御指摘いただきましたとおり、今回国会に提出しております社会福祉法等の一部を改正する法律案におきまして、まず、判断能力が不十分な方の権利擁護支援について、市町村が行うべき事務を法律上明確化した上で、その中核的な役割を担う機関としての中核機関を地域権利擁護相談支援センターとして法律上位置づけるなど、必要な制度的対応を盛り込んだところでございます。

 今後、こうした法改正も踏まえまして、厚生労働省としましては、都道府県とも連携して設置に向けた支援を行うとともに、既に設置している自治体においても、中核機関が地域において必要な機能を発揮できるよう、国における研修等において好事例の共有を図るなど、受任者調整も含めまして、市町村における適切な支援体制の構築を促進してまいります。

西村(智)委員 受任者調整を行っているのはセンターのうちでも六割だということですが、やはり、受任者調整会議というのは、今後、市民後見を育成していく、また受任してもらうということからいっても大事なものだと思うので、是非拡充をしていってもらいたいと思っています。

 最後に一つ。今回、補助制度は終われるわけですね、終えることができるわけですね。そうしますと、出口に当たっての支援、これを地域権利擁護相談支援センター等が行うのかどうかなんですけれども、もちろん補助制度を利用している間の補助人や本人、支援者の支援、それから補助制度を終了するに当たっての出口支援、これは含まれるということでよろしいんでしょうか。時間が来ましたので、短く答弁をお願いします。

林政府参考人 簡潔に御答弁申し上げます。

 現在御審議いただいているこの民法等改正法が成立した際には、成年後見制度の利用の必要がなくなったときに利用の終了というのが可能な制度になりますので、御指摘のような、いわゆる補助制度終了に当たっての出口支援についても、現在の中核機関の役割に鑑みれば対応するべき重要な役割になる、含まれ得ると考えております。

西村(智)委員 是非それは政府全体で共有していただいて、取組をお願いします。

 終わります。

井上委員長 次に、小竹凱君。

小竹委員 国民民主党の小竹凱です。

 本日も質疑の機会をいただき、ありがとうございます。

 本日は、今回の改正の主眼とも言えます本人意思の尊重、特に選任の部分について中心に質問していきたいというふうに考えております。

 最初に申し上げておりますけれども、私は、専門職後見を否定するものではなく、親族間に深刻な対立がある場合であったり、利益相反が強い場合、虐待や財産侵害のおそれがある場合、こういったときには第三者の専門職が入る必要性があることは当然であると考えておりまして、しかし、そのことと、本人が信頼し、現に生活を支えている家族がいるにもかかわらず、その家族の位置づけが曖昧であり、しかも、その人選に対する救済がほとんどないというこの問題に関しては、分けて考える必要があるというふうに思っております。

 まず、現行制度の事実関係について確認をさせていただきます。

 裁判所の公式な案内を見させていただきましたが、申立て書に候補者として記載された方が必ず選任されるわけではありませんと明記をされております。さらに、希望した人が後見人などに選ばれなかったとの理由では不服申立てができないというふうにも明記をされています。つまり、本人や家族が信頼して候補者として挙げた人が選ばれなくても、そのこと自体を理由に争うことはできない、これが現行制度の基本的な姿だと理解しておりますが、この理解についてよろしいか、法務省に伺います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、現行の法定後見制度においては、成年後見人等の選任の審判に対して不服申立てをすることはできないとされております。

 これは、法定後見を開始する必要がある場合には早期に本人の保護を開始すべきでありますが、成年後見人等の選任の時点では成年後見人等はまだ事務を行っておらず、その事務が不適切であるなどの評価をすることができない等の理由によるものと考えられます。

小竹委員 ありがとうございます。

 ここで問題なのは、単に家族が選ばれないことがあるということではなくて、本人の生活や尊厳に深く関わる人選について、本人やまた家族の納得可能性を確保する手続保障が十分かという点について伺いたいと思います。

 裁判所が専門的見地から人選を行う必要性は理解しますが、しかし、本人や家族から見れば、信頼していた候補者が外され、しかも、そのこと自体を理由に不服申立てもできないということであれば、この制度に対する不信感を招きかねないというふうに考えますが、この点についてはどういうふうに受け止めていらっしゃるでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 民法等改正法案では、現行法と同様に、家庭裁判所が適任の者を補助人として選任し、この補助人の選任の審判に対しては不服申立てをすることはできないこととしておりますが、他方で、選任された補助人に不正な行為がなくても、本人の利益のため特に必要があるときは補助人を解任することができるという規律を加えております。適時に本人の保護を図る必要があることを踏まえると、このような仕組みは本人の利益のために合理的な制度であると考えております。

 なお、現行法の下でも、家庭裁判所は、親族が成年後見人等の候補者として記載されている事案では、本人の課題を踏まえ、親族を選任することの適否を判断しているものと承知をしております。令和七年において、申立て書に親族が成年後見人等の候補者として記載されていた事案の約八割の事案で親族が成年後見人等に選任されているものと承知をしております。

小竹委員 ありがとうございます。

 今、例をいただきましたけれども、約八割、ほとんど選任されているということが、むしろその理由を知りたいといいますか、ちょっとそれについて次の質問なんですけれども、東京家庭裁判所の資料を見させていただきました。選任されなかった主な理由、事例として、意見対立であったり、財産運用目的の疑いであったり、健康上の問題や多忙など、いろいろと例示されておりました。これは確かに合理的な理由の一つだと思います。

 一方で、この同じ資料では、先ほど御答弁いただいたように、親族候補者が立っている案件でその候補者が選任されない案件はむしろ少数というふうにも書かれております。

 とすれば、なおさら、国民の側から、どのような場合に家族候補者が尊重されて、どういった場合に外されているのか、こういった基準というか理由をもっと分かりやすく示すべきと考えますが、この点について認識を伺いたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 民法等改正法案でも、現行法と同様に、補助人については家庭裁判所が個々の事案で最も適任と認められる者を選任することとなっており、個別の事案における具体的な事情に即して様々な考慮要素を踏まえて判断される必要があるため、明確な基準を設けることが困難で、また、画一的な基準を設けることも適切でないと考えております。

 選任理由の明示に関し、家事審判は原則として理由の要旨を記載した審判書を作成する方法でしなければならないとされておりますが、迅速な処理の要請に鑑み、即時抗告をすることができない審判については理由の要旨を記載することを要しない場合がございます。補助人の選任の審判は即時抗告をすることができない審判ですので、審判において理由の要旨の記載がされない場合があるものと承知をしております。

 理由の要旨を記載した審判書を作成するかは事案に応じた適正な運用に委ねることとされており、各裁判官において当該事案に応じて適切に判断されることになるものと承知をしております。

小竹委員 ありがとうございます。

 先ほどの二問目のところに返って、即時抗告、不服申立てができないから、それとセットというか、それに併せて理由の審判書も出されないことがほとんどというか出す必要がないというふうに理解しましたが、逆に、この審判書がされる割合というのは、これは通告していませんけれども、どれぐらいだという認識、あるんですかね。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 裁判実務に関することでございまして、法務当局としてその数字を持っているわけではございません。申し訳ございません。

小竹委員 ありがとうございます。

 する必要はないということなんですけれども、説明書きがされる場合もあるということは、なおさら、どういった理由か知りたいというのは、国民の側からすれば率直な感想というか素直なことだと思います。

 その後、統計についても確認をしていきたいと思います。

 令和七年の資料を見させていただきました。一月から十二月まで成年後見の選任された内訳、一六・四%が親族、親族以外が八三・六%であり、親族以外の専門職が大半を占めております。これは令和六年度、令和五年度も似たような数字ではありました。親族候補者による申立て自体が減っている事情があるとしても、少なくとも、現実として、本人の身近な家族よりも第三者の担い手の方が圧倒的に多い制度になっていることは事実であります。

 政府は、この現状を本人意思の尊重という観点からどのように評価されているのか。例えば、候補者自体が少ないので、本人意思の尊重という意味では不十分ですが、これは仕方ないことと捉えているのか、かえって専門的知見がある方が補助などにつくことは結果として本人意思の尊重によい影響を与えているというふうに考えているのか、素直な御意見を伺いたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 成年後見人等として誰を選任するかは、個別の事案における具体的な事情に即した家庭裁判所の判断によるものでございます。後見人等の選任の状況については家庭裁判所の判断の結果でございまして、法務省としてその評価をお答えすることは差し控えたいと存じます。

 もっとも、選任について本人の意見がある場合にはこれを尊重することが重要であると考えておりまして、現状においても、家庭裁判所は、本人の意見を考慮した上で、個々の事案で最も適任と認められる者を選任していると認識をしているところです。

小竹委員 ありがとうございます。

 本人意思の尊重は一番に置きながらも、結果として今の水準に至っているというふうに理解いたしました。

 ここで大臣にも一問お伺いしたいと思いますが、平口大臣は、四月三日の会見において、現行制度の課題として必要な範囲で制度を利用したいとのニーズに対応できていないということを掲げて、今回の改正案は本人の必要な範囲で制度を利用できるようにするものだと説明をされておりました。この方向性は重要であり、私も賛同いたします。

 必要な事項だけ、必要な期間だけ制度を使えるようにするという趣旨であれば、見直すべきは権限の範囲だけでなく、この制度を誰が担うのか、この人選にも本人の意思をより反映できる制度設計を正面から進めるべきと考えますが、大臣、この点について御所見を伺いたいと思います。

平口国務大臣 お答えをいたします。

 補助人の選任に関しても、本人の意見を尊重することは重要であると考えております。

 もっとも、現行法は、補助人の選任の際の考慮要素として複数の要素を列挙し、その最後に本人の意思を規定しているところでございます。

 そこで、民法等改正法案では、本人にとって適任の者を選任する観点から、本人の意見を重視すべきことを明確にするため、補助人の選任の際の考慮要素の最初に本人の意思を規定することとしたものでございます。

小竹委員 ありがとうございます。

 私も、この制度自体は否定しているものではないんですけれども、先ほど御答弁いただいたように、八割から九割の方は希望どおり選ばれている、となると、なおさら、一割の方がなぜそうなっていないのかとか、いろいろなところに課題が生まれているというふうに思います。

 法制審の議論の経過も確認をさせていただきました。各国の制度の比較法調査を作られていて、この議論をされていたように思います。

 この法制審の議論の中であったり、その他これまでの法務省所管内の議論の際に、各国比較を作られていましたので、今回の見直しで特に参考にした外国の制度は、これはどこを参考にされたのでしょうか。また、見直しの議論に、今回の法改正に最も近い示唆を与えた国、どちらか思いつくところがありましたらお答えいただきたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 法制審議会の部会において、諸外国における成年後見制度に関する資料等が配付され、議論がされたところでございます。

 各国において判断能力が低い方に対する保護の制度は様々でございまして、今回の見直しで特に参考にした外国の制度等についてお答えすることは困難でございます。

 その上で、あえて一例を挙げますと、ドイツの世話法は一元的な制度であると評価されておりまして、今回の改正が基本的に補助の制度に一元化しているという部分では一定の類似性があるという評価もできるというふうに考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 ドイツは補助に一元化されておりまして、世話人という言い方をしていますけれども、そこに近いというふうに例示されていたというふうに思います。それから、人選についてもドイツは割と明確に順序立てて書かれているようでありまして、納得感というか納得可能性が高いというふうに考えます。

 今回の見直しの議論、今いただいたように、まさにドイツの例というのは日本でも議論の参考にするべきだと思っておりまして、特に、ドイツの言葉で言いますけれども、世話人の人選に関する本人の希望に従わなければならないとされておりまして、つまり、本人意思が一番にあって、その上で家族というように順序立てているのがドイツだというふうに思います。抽象的な家族優先論ではなくて、本人意思というのが一番に来て家族という順序があるのがドイツで、今回の主眼である本人意思の尊重という今の我が国の理念であったりとか、昨今の、血縁家族はいても近くに身寄りの家族がいない高齢者が増えているということも鑑みると、非常にこの制度というのは親和的だというふうに思います。

 家族と本人意思を対立させていないこのドイツの制度も参考にするべきだというふうに思っておりまして、本人が信頼をできて生活実態として近くにいる家族であれば、自然とその人が第一候補に位置づいて、一方で、利益相反であったり不適格事情があればそこは排除されていくというような、本人保護であったり、家族の位置づけというところを、まさに本人の意思を起点に調整を始めているのがこのドイツの制度だと思います。

 この制度を日本でも、制度というかこの発想を本人の意思尊重というのであればもっと明確に取り入れるべきだというふうに思いまして、現行制度のように、結果として候補者を書いても必ずしも選ばれるわけではなく、そのことについて不満があっても不服申立てができない、しかも、順序についても明確に一番、二番、三番というような候補が挙がっていないというところは、制度全体に本人意思尊重を必ずしも反映できているとは言い難いというふうに思いますけれども、このドイツであったり、例えばフランスも順序は明確についています、アメリカは州ごとに違いますけれども比較的明確についている州もありますし、中国なんかも一番、二番、三番と割と明確に順序立てている中で、結果としてどなたが選ばれるかというふうに、そこは最終的には司法で選ばれるわけでありますけれども、制度をより明確にするということは、本人や申立人の希望と異なる人選をした場合に最終的に納得感につながるというふうに思いますが、こういった仕組みを整えるべきという意見はなかったのか、御意見を伺います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 法制審の部会では、諸外国の成年後見制度に関する資料等も配付された上で議論がされたというところでございます。

 その上で、我が国の法制度では、補助人については家庭裁判所が個々の事案で最も適任と認められる者を選任することとしており、民法等改正法案では、本人の意見を重視すべきことを明確にするため、補助人の選任の際の考慮要素として、冒頭に本人の意見を規定することとした次第です。

 本人が信頼する家族を補助人にすることを希望している場合には、その本人の意思は補助人の選任の際に重視されます。他方、親族間に紛争があるなどの事情により、親族が補助人に選任されない事案も生じると考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 結果として運用の中で本人の意思は尊重されていくというのであれば、制度上もより明確に、本人意思が一番に来て、その後に家族というかそういうところが来て、その後に第三者的な専門職が来るというような、よりここを明確にすることも今後の議論として可能性はあるというふうに認識していますので、また引き続きの検討のほどをよろしくお願いいたします。

 私が先ほどから申しているとおり、不服申立てを認めろということであったりとか人選争い自体を長引かせるというような意思ではなくて、本人の尊厳に深く関わる人選だからこそ、最低限の納得感というか納得可能性、それから手続保障が必要でないかというふうに申し上げているところでございまして、一問飛ばして大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の改正は、制度を必要な範囲に絞り、本人意思をより尊重するということであれば、人選についても、よりその理念を徹底して、制度に明確に落とし込めるように引き続きの議論をしていただきたいと思いますが、大臣、御所見をお願いいたします。

平口国務大臣 お答えいたします。

 民法等改正法案では、本人の自己決定をより尊重することを基本として成年後見制度の見直しを行っているところでございます。そして、本人にとって最適の者を選任する観点から、本人の意見を尊重すべきことを明確にするため、補助人の選任の際の考慮要素の最初に本人の意見を規定することとしたものでございます。また、本人の解任事由に、本人の利益のため特に必要があるときを追加することとしました。

 法務省としては、補助人の選任を含め、本人の自己決定が尊重される運用が行われるよう、関係機関と連携して、その趣旨の十分な周知に努めてまいりたいと考えております。

 なお、先ほど、質問の際に、本人の意見と言うべきところを本人の意思と表現いたしました。訂正をさせていただきます。なお、補助人の解任事由と言うべきところを本人の解任事由と申し上げましたのも、重ねて訂正させていただきたいと思います。

小竹委員 時間が来てしまいましたので、一問はまた金曜日に回させていただきたいと思います。引き続き、残された議論もたくさんございますので、また次のバトンは井戸さんに渡したいと思います。

 私の質問を終わります。ありがとうございました。

井上委員長 次に、井戸まさえ君。

井戸委員 国民民主党の井戸まさえです。

 我が家には、五歳になります重症心身障害児がいます。言葉も話せず、歩くこともできません。たとえ十八歳となり成人に達しても、自分の意思を伝えたり、判断そのものができるようにはならないでしょう。

 重症心身障害児たちは、幼い頃は親や家族、そしてもっと年を重ねても、誰かに自分の運命を委ねなければなりません。しかし、親亡き後、頼れる誰かが常に存在するかは分かりません。彼らが尊厳を保ち、一生を全うするには、彼らを守る社会的制度、仕組みが必要です。民事法制と社会福祉の一体的な改革、それが今回の成年後見制度の役割だと私は思っております。

 一方で、認知症高齢者は七百万人に達し、御高齢者はもちろん、親の世代を支える現役世代にとっても今回の制度改正は重要であるという認識から質問をさせていただきます。

 まず、障害者の成年後見制度の利用促進について伺います。

 先日、障害者団体である全国手をつなぐ育成会連合会さんにお話を伺いました。育成会さんでは、令和三年、二〇二一年に成年後見制度に関するアンケートを実施をし、その結果、後見制度の認知度については、よく知っている、ある程度知っているを合わせると八三%の方が知っていると回答しています。しかし、実際に後見制度を使っている方は一一%程度で、九割は使っていないというような状況でした。後見制度を使っていない理由は、親が元気だからというのが一位、六五%なんですけれども、一方では、制度についてよくない評判を聞くから、報酬が払えるか心配だからという声もありました。

 この結果から、制度の周知不足で利用を控えているのではなくて、一度使うと戻れないとか後見人等の変更ができないといった側面に加えて、財産管理に重きが置かれて、身上保護が不十分な割に報酬が高い、そうした印象だったり、今回改正点にもなった具体的な課題が見えたようなアンケートでした。

 そういったことを踏まえて、まず大臣に伺いたいと思います。

 今回の改正は、障害者団体などから寄せられたこうした声を十分に反映した法案になっていますでしょうか。また、改正により、知的障害者を含む障害当事者の制度利用がどのように変化する、どのように進むかというふうにお考えでしょうか。御答弁をお願いいたします。

平口国務大臣 お答えをいたします。

 民法等改正法案による改正後の成年後見制度の利用者数については、他の支援による対応の可能性にも左右されると考えられるため、現時点でその増加数を具体的に予測した上でお答えすることが困難であることは御理解いただきたいと思います。

 もっとも、本法案は、本人が判断能力を回復しない限り制度の利用を終了できないなどの課題を解消するものであることから、改正後は、これまで利用をちゅうちょしていた方による利用も進むものと考えております。

井戸委員 ありがとうございます。

 そうした障害者団体などからの提起を踏まえた対応であった、そして、これまで利用できなかった方々も、消極的だった要因というのを一定程度改善する方向であると受け止めております。利用促進については更なる御努力をお願いしたいと思います。

 続いて、身上保護について伺います。

 一九九九年の十二月、それまでの禁治産、準禁治産制度が改正をされて、成年後見制度が導入されましたけれども、その際に最もよく議論をされたテーマは身上監護でした。直系血族及び同居の親族の助け合い義務を定めた民法七百三十条、これを背景に、家庭裁判所の調停の実務では、当事者の、家庭内のアンペイドワークというのを義務づけるような条文として頻繁にこれは用いられてきたんですけれども、その先にあるのがこの身上監護や身上保護という言葉で、一人ではなかなか生活ができない高齢者や障害者に対して、誰が身近で献身的にそのお世話、つまりは家事労働だとか介護労働をしてくれるというイメージがこの言葉には今もあるように思います。

 当事者や親族の間では、この成年後見に対しても、財産管理と身上保護を両輪でやってほしいというような要望も少なくないようです。こうした制度に対しての要望からも、不満というところでは、福祉と連携もしていないとか、報酬が高いといった声も少なからずあります。

 この委員会でも指摘されていましたけれども、御家族とのトラブルについても、身上保護の内容が曖昧なために、後見人だとか被後見人双方にとって何が身上保護なのかというのが分かりにくくなっているのではないでしょうか。成年後見制度に言う身上保護とは、どのような内容を指していますでしょうか。

 また、今回の制度改正で、解約事由の中には、本人が希望したにもかかわらず面談に来ないとかといった、そこで解任の事由にもなっていくというようなことを承知もしておりますけれども、この今回の改正においての身上保護に関して、分かりやすくお示しをいただければなと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 補助人の事務として、補助人による代理権の行使の対象となる法律行為には、財産管理に関する法律行為のほか、身上保護に関する法律行為が含まれます。この身上保護は生活や療養看護のことをいうものと解されておりますが、一般的には、補助人は、現実の介護行為のような事実行為をする権限を有するものではないと解されています。

 したがいまして、改正法によって身上保護の範囲が変わるものではないと考えております。

井戸委員 今の御答弁も、ちょっと何かやはり分かりにくいと思うんですね。やれることだけれども、法律行為としてそこのところはやらないというかやれないということなので、やはり用語の整理というものもちょっと必要なのかなと思います。

 続いて、ちょっと質疑の順番を変えて、制度利用のときの費用負担について伺っていきたいと思います。

 どんなによい制度であっても、そこにアクセスができないというのであれば意味がないです。なので、特に知的障害者の方々は低所得であることも多くて、障害基礎年金のみで生活されている方も少なくありません。障害基礎年金は、障害年金生活者支援給付金を加えても、一級で月額の九万五千円、二級でも七万六千円です。一方、成年後見制度では、後見人の報酬が月額二万円となるケースなどもあって、障害を抱える当事者にとっては極めて重い負担となるので、利用ができないという方たちも多くおられました。

 報酬額について言ったならば、仕事の量や質、利用者の財産状況も基に家裁が個別に決めることになっていますけれども、最高裁の家庭局は二三年に、報酬が利用者の大きな負担になっている場合があるとの認識を示されて、二〇二五年には、利用者にとって予測可能性をできるだけ確保することが重要だとの考えを示されて、そして今年の三月には、全国の家庭裁判所が決めた後見人らへの報酬額の実績を初めてサイトで公表しました。

 こうしたことも踏まえて、特に障害者の場合もそうなんですけれども、この報酬の最適値というのをどのように判断をしていくのか、お答えをいただきたいと思います。

馬渡最高裁判所長官代理者 お尋ねは、改正法案が成立、施行された後の裁判所の運用に係るものと理解しましたが、これについては現時点で確たるお答えをすることは困難でございますが、その上で、一般論として考えられるところを申し上げれば、今回の改正法案におきましては、本人の具体的なニーズや課題に対応するための必要十分な権限が付与され、補助人等はその範囲で事務遂行を行うことが基本的に想定されているものと承知しております。

 そうであるならば、補助人等に対する報酬の在り方につきましても、包括代理権を有する現行法下の後見人に対するものとはおのずから異なるものとなることが想定されまして、例えば、補助人等が行った事務の内容をより重視したものとなることが考えられるところでございます。

 いずれにせよ、報酬算定の在り方につきましては、補助人等に対する権限付与やそれに基づく補助人等の事務遂行の在り方を踏まえて検討がなされていくはずのものでございまして、最高裁といたしましては、報酬算定の在り方を含め、改正法の趣旨や内容にかなった適切かつ合理的な運用が全国の家庭裁判所でなされるよう、必要な後押しをしてまいりたいと考えております。

井戸委員 是非お願いしたいと思います。

 ただ、一方で、専門性が高い業務なのにもかかわらず報酬が少な過ぎるというような指摘もあるわけです。

 日弁連さんの二二年から二三年の調査では、弁護士の約千二百名のうち一六・五%が、利用者の財産が少なかったために、無報酬でこの業務を経験しているというようなことを回答されています。

 そういった意味でも、仕事に対してはちゃんとした報酬が必要だと思うんですけれども、そして、いろいろなことを加味しながら、特に障害者なんというのは本当に少ない中でやらねばならないので、その報酬の額というのは妥当なところに、最適値に行くべきだとは思うんですけれども、それでもやはりなかなか難しいといったときには、助成だとか補助というのが必要になってくると思うんです。

 低所得者の利用者らに対して自治体が報酬費用を助成する成年後見制度利用支援事業というのもあるんですけれども、これも自治体のばらつきがあって、いわゆる早い者勝ち、あるところの予算のところまで行くとその後の人は使えないというようなことも指摘をされています。この助成の仕組みの見直しについても改善が求められていますけれども、対応を教えてください。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたように、厚生労働省では、低所得の知的障害者、精神障害者、認知症高齢者に対して、成年後見制度の申立て費用、後見人等への報酬の助成を市町村が行います成年後見制度利用支援事業を実施しております。

 成年後見人等への報酬助成につきましては、第二期、現行の成年後見制度利用促進基本計画を踏まえまして、自治体に対して、事業の対象として広く低所得者を含めることなどの留意事項、あるいは先進自治体における好事例を示すなど、成年後見制度の利用支援に向けた取組を進めております。

 一方で、委員御指摘のとおり、事業の実施状況に地域差があるなどの指摘があることは我々も承知しております。今後に向けましては、これまでの取組の状況、あるいはより詳細な各自治体の事業の運用実態、こうしたものも把握しながら、全国どの地域に住んでも成年後見制度の利用を必要とする方が適切に制度を利用できるように取組を進めてまいります。

井戸委員 ありがとうございます。

 まさにそこなんですよね。制度を必要とする方がしっかりとそれを受けられるようなサポートというのをよろしくお願いしたいと思います。

 次に、現行利用者に対して、今度、新制度に移行していくという中での取組について伺います。

 現在成年後見制度を利用している方々や家族からは、自分は移行できるのかとか、また移行により何かしらの不利益はないのか、また手続の負担はどうなるんだろうかというような不安の声もあるようです。

 新制度への移行対象の方々についてのバックアップ体制、これはどのように整えていくというような形で考えていらっしゃるのでしょうか。まず、法務省さんに伺います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 現在成年後見制度を利用している方々が今後どうなるのかについて申し上げますと、民法等改正法案では、施行日前に後見又は保佐の制度を利用している方は、基本的に現行法の内容でその利用を継続することができることとしています。その上で、その方が新しい補助の制度に移行したい場合には、新制度の申立てをして新制度に移行することにより、後見又は保佐の制度の利用は終了することができます。また、後見又は保佐の制度の利用を終了したい場合には、後見開始又は保佐開始の審判の取消しの申立てをすることができます。

 委員御指摘のとおり、現在後見又は保佐の制度を利用している方については、今述べたような改正法の内容を知っていただき、制度の利用を続けるかどうかを検討していただくことが重要であると考えております。法務省としては、改正法が成立した場合には、これらの方々も含め、広く国民各層に改正法の内容を理解していただけるよう、しっかりと周知、広報に努めてまいりたいと考えております。

井戸委員 まさに今利用されている方が二十六万人ぐらいいらして、その方たちがこれからその新制度に自分たちが移行していく、使うというところに関してなんですけれども、これはどのように周知徹底をしていくのか。

 周知徹底に努めますという御答弁はあったんですけれども、具体的にどうしていくのかということをちょっとレクのときにも伺ったらば、今利用していらっしゃる方々に例えば通知を出すとか、年金特急便じゃないですけれども、みたいな形で何かしらのお知らせが行くのかと思ったらば、お知らせが行ったとしても、当事者の方たちというか本人はそれを見ても分からなかったりもするので、なかなか周知をするすべというものが難しいということも伺いました。

 制度を今利用していらっしゃる方の多くは、今のままでもいい、包括の制度だけでもいいというふうなことを考えていらっしゃる方も多いとは思うんですけれども、しかし、制度変更、これは変わるんだよということを知った上で継続を選択するのか、それとも知らないまま継続が続いていくのかというのでは、大きな違いがあるのではないかと思っています。

 今回の改正は、必要なときに必要な範囲で利用するという考え方への転換でもあり、その意味では、制度利用開始時だけではなくて、今利用開始で新しくこの新制度に入られて利用される方だけではなくて、今利用継続中という方たちにも本人の意思を確認をすること、そして、契約内容や支援の在り方、これも見直していく視点が重要になってくるのではないかと思っています。

 そこで、制度の改正の周知について、対決よりも解決の国民民主党としても、私としても、一つの提言をしたいと思っています。

 それは、後見人の方々というのは、今も裁判所で年に一回の報告の機会、これがあると思うんですけれども、その機会を利用して、制度変更について説明を行ったのか、若しくは、また、現行制度を継続するのか、新制度における事項ごとの契約に移行するのかなどについて、本人や関係者と話し合った内容を報告事項に含めることも一つのアイデアなのではないかと思っています。

 裁判所としてこのような運用についてどのようにお考えか、お示しをいただきたいと思います。

馬渡最高裁判所長官代理者 お尋ねの改正法案の附則の規定に関する裁判所の運用の在り方について、現時点で確たるお答えをすることは困難でございますが、一般論として、委員御指摘のように、現行法における後見や保佐の制度の利用を終了するか否かの判断に当たって、制度利用の要否に関する御本人の意思あるいは意向を尊重することは重要であると理解しております。

 最高裁といたしましては、御指摘のような観点も踏まえて、お尋ねの附則の規定に関し、改正法の趣旨や内容にかなった適切かつ合理的な運用が各家庭裁判所でなされるよう、必要な後押しをしていきたいと考えております。

井戸委員 金曜日もまた質疑の機会があるので、ちょっと残った残余の質問についてはそこでもやらせていただきたいと思っているんですけれども、この遺言の制度もそして成年後見の制度も、単なる法的な、法律事項そして法律技術だけではないと思っています。本人の意思そして人生最後の意思というのをどう社会が支えるのかという、人権と尊厳の問題であると思っています。だからこそ、私は、この視点というのをしっかり真ん中に据えて、改正の議論というのを進めていかなければいけないと思っています。

 では、また金曜日に質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、鈴木美香君。

鈴木(美)委員 こんにちは。参政党の鈴木美香でございます。

 本日もお時間をいただき、ありがとうございます。本日、私も、成年後見制度の改正について質問させていただきます。

 成年後見制度は、民法の親族に関する分野に位置づけられており、本来は家族や親族が中心となって本人を支える制度であると考えております。しかし、現行制度におきましては、親族ではなく専門職後見人が選任されることで、本人や家族の意思が十分に反映されにくいこと、申立て手続が煩雑で利用開始までに時間がかかること、また、後見人等に支払う報酬の負担が大きいこと、家族や親族が十分に関与できないまま本人の財産処分や施設入居などの重要項目が決められてしまう場合があることなど、様々な課題が指摘されております。

 参政党といたしましては、個人の権利や自由を尊重することは当然重要であると考えておりますが、国民が安心して暮らしていくためには、家族や親族のつながりやきずなもまた大切であると考えております。

 そこで、本日は、今回の民法改正によって現行制度の課題が本当に解消されるのか、また、成年後見、保佐を廃止して補助に一本化することが本当に適切なのかという観点からお伺いさせていただきます。

 現行の成年後見制度では、事理弁識能力という、法律行為の結果を判断することができない能力ですね、の程度によって三類型に区分されています。このように、能力が常にない状態の方については成年後見、著しく不十分な方には保佐、不十分な方に関しては補助の制度が利用されていて、これについて登記されています。そして、成年後見人には、包括的な代理権、つまり、全ての行為について代理権そして取消権が認められております。

 しかし、今回の法改正では、成年後見と保佐の制度が廃止されて、補助制度に一本化され、必要に応じて個別に同意権、取消権、代理権を認める仕組みに変更されることになっております。

 そうすると、例えば、御自分で法律行為を判断できない方に関して包括的な代理権がなくなってしまいますので、緊急で入院することになった場合や手術の手続、施設に入所するに関しての契約など、申立て時は想定していなかった対応が急に必要となった場合、その都度、家庭裁判所に対して代理権の付与の申立てをしなければならなくなるようなケースが生じてしまうのではないでしょうか。

 現状でも、後見開始の申立て手続はとても手間がかかり、開始決定まで長時間かかるという声を伺っております。今回の法改正では、このような手続分担の重さや迅速性の問題についてどのような改善が図られているのか、法務省にお尋ねいたします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 申立て手続に煩雑さがあるとの御指摘があることは承知しておりますが、本人の判断能力の低下を裏づける診断書など、法定後見制度を利用するための要件を裏づける資料の提出は不可欠であり、民法等改正法案においてもそのような資料の省略が困難であることはまず御理解いただければと存じます。

 補助人の代理権につきましては、民法等改正法案では、包括的な代理権等の制度を廃止し、本人に必要な範囲に限って補助人に代理権の付与等をすることとしているため、申立人において必要な代理権を選択して申立てをする必要がございます。

 もっとも、補助の制度を利用する際には、その動機となる法的課題が存在し、その課題に対応するために複数の代理権の付与が必要である場合には、一回の申立てにおいて複数の代理権の付与を求めることが可能です。

 そして、審理期間については、現行法の下で、成年後見等の事案の約七割は申立てから二か月以内に家庭裁判所の審判がされております。民法等改正法案による改正が審理期間に影響を及ぼすか否かについては、改正法の下における制度運用の在り方にも関わるため、現時点で具体的な見通しを申し上げることは困難でございますが、仮に補助開始の審判の申立てから本案の審判の確定までの間に緊急に本人を保護する必要がある場合には、保全処分を活用することも考えられます。

 また、家事事件手続については、令和五年の改正法により、オンラインによる裁判の申立て等を実現するための規定の整備がされており、その施行後は、裁判の申立てを含む家事事件手続のデジタル化によっても申立人の負担が軽減され得るものと考えております。

鈴木(美)委員 ありがとうございます。

 本当にいろいろな諸状況が考えられる中、申立て時にあらかじめ予想、必要性を予期しておくということもなかなか難しい問題であると思いますし、また、デジタル化という、今、世の中は進んでおりますけれども、オンラインで申請できるとはいえ、そろえる書類が減るわけでもありませんし、また、そもそも不慣れな方々にとってデジタル化が逆に申請の負担をかける可能性もあったりとか、手続の煩雑さといった問題や、それに伴う本人の負担ということは増えてしまうのではないかというふうに懸念しております。

 また、成年後見を廃止することは、取引の安全と本人保護の関係についても不都合が生じるのではないかと考えます。

 現行の成年後見制度では、本人の判断能力によって成年後見、保佐、補助という区分が明確に登記されているため、取引の相手方としても、本人の判断能力の状況や契約が後に取り消される可能性についても一定の情報を得た上で、現状は取引することができます。しかし、改定法では、補助開始の審判を受けていたとしても、本人の判断能力の程度までは明らかにされておらず、相手方が本人の判断能力がないことを知らないまま取引してしまうケースも想定されます。

 また、改定法では、判断能力が回復していなくても制度利用を終了する仕組みとなっておりますので、制度終了後においても、相手方が本人の状況を知らずに取引する場合も生じ得ます。取引の相手が悪質な業者だった場合、これまでのような包括的な取消権がなくなると、本人に判断能力がなかったとしても、取引が無効であるとの主張を聞き入れてもらえないケースも考えられます。その結果として家族や御本人が泣き寝入りするとか、あるいは、意思能力がなかったと裁判で争われるようなことになる可能性も考えられます。私は、このように、本人にも家族にも大きな負担となる無用なトラブルや訴訟が今後増えてしまうのではないかというふうに懸念しております。

 自己決定権を尊重するということは本当に大切なことだと考えます。ただ、自己決定と自己責任は表裏一体であります。今回の包括的な代理権、取消権を廃止することで、本人が自己責任を負う範囲が広がり、結果として財産の被害が増えたりする可能性について、法務省としてはどのようにお考えでしょうか。対処を考えていらっしゃいますでしょうか。お願いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 取引の安全の観点から御質問がございました。

 まず、意思能力を有しなかったことによる法律行為の無効を主張するためには、行為者において法律行為時に意思能力を有しなかったことを主張、立証する必要がございます。このことは、民法等改正法案による改正の前後を通じて異なりません。そのため、そのような主張、立証の負担を負うことなく本人が保護されるためには、事理弁識能力を欠く常況にある者が法定後見制度の利用を適時に開始することが改正の前後を問わず重要でございます。

 そして、民法等改正法案では後見の制度を廃止することとしておりますが、他方で、補助人の同意を得なければならない行為の定めの審判を受けることによって、その後に本人が当該行為を補助人の同意なく行った場合には、これを取り消すことができます。また、本人が事理弁識能力を欠く常況にある場合には、特定補助人を付する旨の審判を受けることによって、法定の重要な財産行為をいずれも取り消すことができます。さらに、特定補助人を付する旨の審判を受けた者に関しては、必要に応じて、法定の重要な財産行為以外の行為についても取り消すことができる旨の審判を受けることもできます。

 このような仕組みを設けることとしておりますので、事理弁識能力を欠く常況にある者の保護を図ることができると考えております。

鈴木(美)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、法務省としては、これまで成年後見を利用してきた事理弁識能力を欠く常況にある方、常に欠けている状況にいらっしゃる方は、今後は特定補助の活用を推奨していくということになりますでしょうか。お尋ねいたします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 民法等改正法案では、事理弁識能力の程度に応じて特定の類型の保護を受けることとはしておらず、本人にとって必要な範囲で、補助人に代理権を付与することや、本人の法律行為を取り消すことができることとしております。

 事理弁識能力を欠く常況にある方であっても、例えば、補助の制度を利用する動機が遺産分割手続や預貯金取引を本人に代わって有効に行うことである場合には、補助開始の審判の申立てと併せてそれらに必要な代理権の付与の審判の申立てがされることで足り、特定補助人を付する旨の審判を利用する必要はないと考えられます。

 また、制度を利用する動機が特定の財産行為でなくても、本人が不利益な取引としてどのような行為をするかを的確に予想することができる場合には、当該行為について補助人の同意を要する旨の審判を受けることで足り、特定補助人を付する旨の審判を利用する必要はないと考えております。

 他方で、事理弁識能力を欠く常況にある者が外形的に法律行為と見える行動を取る可能性があり、かつ、その利害得失を理解し検討することなく、法定の重要な財産行為に該当する不利益な行為をする危険がある場合には、特定補助人を付する旨の審判を利用することも考えられます。

 このように、法務省としては、事理弁識能力を欠く常況にある者について当然に特定補助人を付する旨の審判の利用がされるとは考えておらず、事理弁識能力を欠く常況にある者も含め、本人の判断能力やその支援の状況等を踏まえ、必要な仕組みを選択して利用することにより、適切に本人の保護を図ることができると考えております。

鈴木(美)委員 本当にいろいろな状況があるので難しいと思いますけれども、特定補助によってこれまで成年後見が担ってきた保護を実質的に補うのであるならば、成年後見を廃止するのではなくて、成年後見の弊害部分を修正するという選択肢もあったのではないかと思います。

 ここまでお聞きして、今回の法改正によって、これまでの成年後見制度が担ってきた役割を補うためには、特定補助の仕組み以外にも新たな支援制度やサポート制度が必要になってくると考えられます。現に、厚生省では、成年後見の廃止を前提として、地域における権利擁護支援策として、第二種社会福祉事業を新設する内容を含む社会福祉法等改正案を今国会に提出されております。

 そこで、厚生省にお伺いします。

 成年後見を見直すことで新たに必要となる権利擁護支援策について、具体的にどのような事業を想定していらっしゃるのでしょうか。また、そのために必要となる予算規模について、現時点でどれくらい見積もっておられるのか、お尋ねいたします。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、民法改正法案が成立した暁には、成年後見制度の見直しに伴いまして成年後見制度利用を終了される方が出ることも踏まえますと、地域における権利擁護支援のニーズが更に多様化、増加することが見込まれ、こうした状況に適切に対応する必要があると認識しております。

 厚労省におきましては、これまで、政府の成年後見制度利用促進基本計画に基づきまして、成年後見制度を中心とした権利擁護支援策の利用促進や、福祉関係者、司法専門職等による権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり等について、施策の総合的、計画的な推進を図ってきたところでございます。

 その上で、こうした取組を制度上しっかりと位置づけ、更なる推進を図る観点から、御指摘のように、今国会に提出しております社会福祉法等の一部を改正する法律案におきまして、まず、判断能力が不十分な方の権利擁護支援に係る市町村の事務を明確化した上で、その中核的な役割を担う機関として現行の中核機関を地域権利擁護相談支援センターと法律上位置づけることによりまして、特に未整備の多い小規模市町村の体制整備を促進するとともに、次に、頼れる身寄りがない高齢者等や判断能力が不十分な方に対する日常生活や入院などの手続、死後事務の支援を行う事業を新たに第二種社会福祉事業に位置づけまして、併せて相談体制の整備を図ることなどを盛り込んでございます。

 これらに係る予算の具体的な額については、今後、法律改正後、具体的に検討していくことになりますので、現時点で明らかにすることはできませんが、今後こうした取組についてしっかりと行うことにおきまして、引き続き地域の権利擁護支援施策の総合的な充実に取り組んでまいります。

鈴木(美)委員 ありがとうございます。

 ちょっと、かなり時間が押してしまって。

 では、確認は、要は、具体的な予算とかというのが、計画はしているけれども具体的な予算をかけていないというところは、私といたしましては、法務省は必ずしも先のめどが立っていないのに、ちょっと済みません、飛ばします、先のめどが立っていないのに、法が先に先行される、そして具体的な予算は国民には知らされていないという中で、現行の体制が少しずつ改正されていく。今後、支援体制の拡大に伴って公的支援や国民負担が段階的に膨らんでいく可能性についても、本来は丁寧な国民に対しての説明とか議論があった上で、本当はこうやって、法務省が、厚労省がと進めていくべきではないかと私は考えております。

 残り少なくなったので、通告四を飛ばしまして、通告五に行かせていただきたいと思います。

 利用者団体の声もいろいろあった中での今回の法改正だと思っておりますが、どうしてこういう改定になったのかということを考えたときに、私は、国連の勧告が影響しているのではないかという疑問を持っております。

 令和四年十月、国連障害者権利委員会から、意思決定を代行する制度を廃止する観点から、差別的な法規制や政策を廃止し、全ての障害者について法の前の平等を保障するため、民法を改正することとの勧告が出されました。

 まず、差別的な法改正については、成年被後見人については、かつて存在した選挙の制度や会社法上の役員就任制限、公務員や士業に就けなかったという成年被後見人であることのみを理由とした差別的な欠格条項がありましたが、これについては令和元年の通常国会において撤廃されたと承知しております。

 また、令和八年五月十四日の参議院の法務委員会での参政党の安達悠司議員の質疑におきましても、法務大臣からも、現行の成年後見制度は障害者権利条約に違反しないという答弁をいただいております。法制審においても、当初から成年後見を廃止するという結論ありきだったわけではなく、令和七年六月の法制審の中間試案でも、成年後見を維持する案は検討対象とされておりました。

 そうすると、結果として、国連勧告を受けて廃止方向に大きくかじを切られたという流れは否定できないのではないでしょうか。法務大臣、お尋ねいたします。

平口国務大臣 お答えいたします。

 本法律案は、成年後見制度について、後見人が本人の包括的代理権を有する後見の制度を廃止して、本人にとって必要な範囲で利用できるようにするものでございます。

 本法案は、法制審議会の部会で、障害者の方やその家族等も参加して議論をした結果取りまとめられた要綱の内容を踏まえたものでございます。

 したがって、本法案の内容は、国連障害者権利委員会の勧告の趣旨も踏まえたものではございますが、国内の制度利用者の声に基づくものであるという認識でございます。

鈴木(美)委員 ありがとうございます。

 そうはいっても、事実として国連の勧告どおりに成年後見を廃止する流れになっているというわけですから、勧告を受け入れる形での法改正となっていることは否めないと思います。

 参政党といたしましては、我が国の制度は我が国の実情に即して我が国自身で決める、これが大切であると考えております。

 参政党は反グローバリズムを掲げる政党でございます。グローバリズムとは、簡単に申し上げますと、地球を一つの共同体とみなし、国境を取り払い、物、人、金を自由に動かそうとする考え方でございますけれども、価値を世界標準化して、その上に制度や政策、法律を合法的に積み上げていく。そして今、国連やWHOといった国連機関によって、ルールを、日本に勧告を押しつけられて我が国の政策が決められていっているというのが、まさにグローバリズムの流れにあると考えざるを得ないと思います。

 我が国といたしましては、国際機関の意向によって日本の家族の制度や法律が大きく変更されていくことを慎重にあるべきだと考えております。制度、理念だけではなく、実際に支援を必要としている本人や家族が安心できる制度であり、国民一人一人に寄り添える制度となりますように慎重な議論と丁寧な制度設計をお願いしたいという思いをお伝えしまして、本日の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

井上委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、民法等の一部を改正する法律案及び民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、日本司法書士会連合会会長小澤吉徳君、日本弁護士連合会日弁連高齢者・障害者権利支援センター成年後見制度利用促進法対応プロジェクトチーム座長、弁護士根本雄司君、早稲田大学法学学術院教授山野目章夫君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、小澤参考人、根本参考人、山野目参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいというふうに存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず小澤参考人にお願いいたします。

小澤参考人 皆様、こんにちは。日本司法書士会連合会会長の小澤吉徳と申します。

 本日は、このような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。

 成年後見制度の改正に関しましては、令和四年六月から公益社団法人商事法務研究会で行われました成年後見制度の在り方に関する研究会に委員として参加させていただき、研究会で報告書がまとめられた後には、法制審議会民法(成年後見等関係)部会の委員として審議に関わってまいりました。

 司法書士は、平成十一年の民法改正により禁治産制度が成年後見制度に改正されることとなった際、日本司法書士会連合会及び全国各地の司法書士会が中心となり、制度の担い手となる専門職成年後見人の養成と指導監督を主な目的として、同年十二月に成年後見センター・リーガルサポートを社団法人として設立いたしました。その後、多くの司法書士が会員として加入し、令和八年三月末現在では八千九百五十四名の司法書士が正会員となっており、現在、その会員が約六万件の事件で成年後見人等に就任しており、専門職としては最も多く成年後見人等に選任され、全国各地で高齢者、障害者等の権利擁護及び福祉の増進に取り組んでおります。

 司法書士は現場で成年後見制度の運用を担う専門職であり、また、制度を利用されている御本人や御親族の方、御本人を支える医療、福祉関係者、さらには自治体や中核機関とも深く関わっているため、専門職としての現場における運用改善はもちろん、御本人の権利擁護や意思尊重という視点からも意見を述べてまいりました。

 今回の法改正は、お出ししたポンチ絵にございますように、これまで以上に御本人の御希望を大切にし、必要がなくなれば終わることができ、必要なことだけを支え、また柔軟な交代を可能にするなど、まさに画期的な法改正となっていると考えております。利用者のためにも、できるだけ早く成立することを期待しております。

 法案では、法定後見制度の利用の必要性が失われれば制度利用を終了することができることとされております。これは御本人や御親族から強く要望されていた点でございますが、私たち専門職としましても、必要性が失われているにもかかわらず、漫然と法定後見の利用が続いていくことは望ましくないと考えています。

 また、制度利用が終わらないことにより、御本人や親族等が制度利用をちゅうちょされ、その結果として、遺産分割協議や不動産の売却手続などが進まないということも実際起こっておりますので、この法案が成立すれば、その副次的効果として、相続登記や未利用土地の活用も促進されると考えております。

 例えば、現在我が国が抱える大きな社会的課題の一つに、空き家、所有者不明土地問題があると承知をしています。そして、その問題は、端的に申し上げれば、相続登記の未了の問題であり、その理由として最大のものは、遺産分割協議が調わないことと承知をしています。

 相続人の中に判断能力が不十分な方がいらっしゃるケースというのは、私たち司法書士は、恐らくほぼ全員体験しています。このような際に、この成年後見制度が円滑に利用できれば、結果として、遺産分割協議が円滑に進むこととなり、相続登記も進み、空き家、所有者不明土地問題の解決にも大きく資することになります。

 一方で、私たち司法書士が後見人等に就任するケースの中には、御本人に関わる親族がいないなど、後見による継続的な支援が必要な方も多くいらっしゃいます。いわゆるお一人様と呼ばれる身寄りなき高齢者の問題も含まれます。

 御案内のとおり、二〇二五年で六十五歳以上のお一人様世帯数は八百十五万世帯とのことですが、極めて増加傾向にあり、二〇五〇年には一千八十三万世帯にもなると予想されているところでございます。今般の法改正は、こうしたお一人様問題の支援にも大きく資するものとなっていると考えています。

 なお、こうした関わる親族がいない方々につきましては、後見が終了してしまうと、社会生活に大きな不都合が生じることも考えられます。そのような場合には必要性が失われたとは判断できないため、後見制度の利用を継続することとなり、頼れる親族がいない制度利用者が困ることのないような提案がされています。したがいまして、本人の状況やニーズに合った支援を提供できる制度となっていると考えています。

 私たち司法書士としましては、まさに、御本人一人一人の意思や御希望や環境などを最大限に尊重し、その方に何が必要か、後見人等にふさわしい方はどなたかなどなどを丁寧に検討し、まさにオーダーメイドによる支援を選択していくことが求められていると承知をしていますし、この改正によってそれが実現可能になったものと考えています。

 また、法案では、後見、保佐、補助の三類型を廃し、補助に一元化することが提案されています。特に後見類型は事理弁識能力を欠く常況にある者を手厚く保護する制度であるため、この後見類型がなくなれば、本人保護は弱まることになるということになります。

 保護が弱まるということだけを取り出すとネガティブな印象を受けますが、本人保護を強め過ぎると、また本人の意思尊重が不十分になる側面もございますので、今回の改正案は、現在強過ぎると言われている本人保護を弱めることにより、本人の意思尊重とバランスを取ったものであり、国連障害者権利条約との関係や制度利用者の人権という視点からも評価できるものだというふうに考えています。

 端的に申し上げれば、この法改正は、本人の自己決定の尊重と本人の保護の必要性の調和という極めて難しい理念の具現化を時間をかけて丁寧に議論し、ぎりぎりのところでバランスを取ったものと考えております。

 また、法案では補助類型に一元化することが提案されているわけですが、現行法でも補助類型の利用は本人の同意が必要であり、この原則は維持されるため、改正案では基本的には制度利用に同意した人が対象となる制度となります。

 ただし、遷延性意識障害の方など同意の意思を表示することが困難な方もおられるところ、虐待のケースや相続手続などスポット的に制度を利用する必要性もあることから、そのような同意意思を表示できない方も利用できる制度とすることもまた重要であると考えています。

 この点について、法案では、同意の意思を表示できる方についてはその同意の意思を制度利用の要件としつつ、同意の意思を表示できない方についても、必要性が認められれば制度利用を可能とすることによって、本人の意思尊重の原則と制度利用の必要性のバランスを取ることができていると考えています。

 次に、法案では、後見人を交代させやすくする施策として、欠格事由の見直しが提案されております。

 本人の状況やニーズに合った後見人の交代は、御本人や親族から強く望まれているところでございます。後見人の交代を実現する方法としては、後見人自身が辞任するか、家庭裁判所が解任する必要がございますが、現行法では、解任ができるのは不正行為等がある場合に限られ、御本人の利益のために必要な場合があっても解任はできません。

 チームによる御本人の支援に支障が生じている場合など御本人の利益のために必要があるときは、現在でも、私たち専門職団体は、家庭裁判所と協力をして、この状況やニーズに合った交代を実現するべく会員への働きかけを行っておりますが、この改正案が実現すれば、今まで以上に本人のニーズに応じた交代が可能となって、御本人にとって望ましい制度となると考えております。

 また、法案では、任意後見制度についての改正も提案されております。任意後見制度は、御本人が判断能力の十分あるうちに自ら後見人を任せたい人と契約をしておく制度であり、法定後見よりも御本人の意思が尊重される制度となります。

 任意後見は、海外ではこちらが主流になっている国もございますが、残念ながら、日本ではそれほど普及しておらず、契約締結こそ令和六年度に約一万七千件ありましたが、契約が発効しているものは三千人弱で、二十五万人以上の方が利用されていると言われる法定後見よりも圧倒的に少ない件数になっております。

 私たち司法書士も、制度利用を望まれる場合は、法定後見よりも任意後見を利用される方が望ましいと考えておりますので、任意後見制度の利用を促進するため、様々な活動を行っております。

 任意後見は、任意後見監督人が選任されることが効力発生要件となっているのですが、法務省が令和三年から四年に行った調査により、この任意後見監督人の負担が、任意後見契約がなされないこと、さらには契約された任意後見契約の発効がなされないことの遠因となっていることが分かっております。

 端的に申し上げれば、任意後見契約で後見人を指定しているのに、発効段階で見知らぬ専門職監督人が登場してくるという点、そして、その監督人の報酬も発生するという点が任意後見制度の利用促進を阻んでまいりました。

 そのため、その負担を軽減する方法として、限定されたケースではありますが、任意後見監督人を選任せず家庭裁判所が直接監督する規律や、公正証書に書き記された任意後見監督人に関する本人の御希望を家庭裁判所が考慮する規律が提案されることとなっています。

 御案内のとおり、我が国の超高齢社会は日々進んでおります。二〇二五年には三千六百五十三万人で総人口の二九・六四%であった六十五歳の高齢者数は、二〇五〇年には三千八百八十八万となり、総人口の三七・一四%に達すると推定されております。

 また、認知症高齢者数につきましても、二〇二五年には一千三十五万人で、六十五歳以上の二八・三三%であったものが、二〇五〇年には一千二百十七万人で、六十五歳以上の三一・三%に達する見込みとされております。

 さらには、二〇二五年には二千二百九十六万世帯であったお一人様世帯も、二〇五〇年には二千三百三十万世帯となり、そのうち六十五歳以上のお一人様世帯は一千八十三万世帯となる見込みでございます。

 こうした我が国の現状を踏まえますと、今回の法改正は、大変意義深いものであることはもちろんのこと、これまで利用をちゅうちょされていた国民の皆様が多く利用を検討されることになろうかと考えています。したがいまして、その担い手となる司法書士、弁護士、社会福祉士等の専門職がしっかりとその相談需要に応えていく必要があると考えています。

 また、申立ての局面だけを捉えても、その必要性を申立て前にしっかり検討し、家庭裁判所における実務運用が円滑に進むよう最善を尽くすことも専門職の責任であると考えています。

 私たち司法書士としましては、同じく専門職である弁護士、社会福祉士とともに、超高齢社会における司法アクセスの担い手として、これまで以上にその使命を十全に果たしていくことをお誓い申し上げ、以上で私からの意見陳述を終わりにさせていただきます。

 本日は、このような発言の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。

 ありがとうございました。(拍手)

井上委員長 ありがとうございました。

 次に、根本参考人にお願いいたします。

根本参考人 本日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 日弁連で高齢者・障害者権利支援センター成年後見制度利用促進法対応プロジェクトチームで座長を務めており、さきの法制審議会民法(成年後見等関係)部会におきまして幹事を務めておりました弁護士の根本と申します。

 私からは、今後の課題を中心に意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 今回の改正は、国の第二期成年後見制度利用促進基本計画に基づく成年後見制度見直しの提起及び国連の障害者の権利に関する条約第十二条の求める完全な法的能力の保障の要請による代理、代行決定から意思決定支援への理念の転換の要請を踏まえたものであり、これらは二〇〇〇年から施行された現行制度の実務運用の実情からも求められてきたものであります。

 日弁連は、かねてよりその方向性について賛同し、具体的な制度改正の方策について検討を深めてまいりました。今般の改正により、成年後見制度が、本人の意思を十分に踏まえ、適切な時機に適切な範囲と期間で利用することのできる柔軟な制度へと見直されたものと考えております。

 具体的には、本人の意思を十分に踏まえ、適切な時機に必要な範囲と期間で利用できる制度に向けて、必要性の原則を採用することにより、包括的代理権等の付与を廃止して補助制度への一元化を図ったこと、必要性がなくなれば終わることができる制度としたこと、これまでの実務において指摘をされてきました課題を解消するために、本人の利益のため特に必要があるという事由を新たに設けて補助人の交代をしやすくしたこと、また、本人の意向を把握するようにしなければならないことを定め、本人の意向尊重義務をより重視することを明らかにし、そのプロセスを明示したことなどが挙げられます。

 その上で、今後の課題について大きく三つの視点から申し上げます。

 まず第一に、民法等の改正に伴い、関連法制や諸制度の整備が求められるということです。

 本改正では、例外的に、事理弁識能力を欠く常況にある者を対象に、必要性がある場合に限り、類型的な取消権を有する特定補助人を付する処分を設けました。この点、部会において審議の最終段階まで導入の是非については意見が分かれたところでありまして、限定的かつ厳格な実務運用及び同枠組みの将来的な規定の要否についても、今後、その運用状況や利用実績などを踏まえた政府における検証が求められるものと思います。

 次に、消費者保護法制についてです。

 包括的取消権が廃止されたことに伴って、高齢者の脆弱性等につけ込む消費者被害が広がることのないように、消費者保護法制の整備は欠かせません。民法等の改正は、行為能力制限を減縮させるものではありますが、本人意思の尊重を脅かす存在となり得る脆弱性ゆえの本人意思への不当な介入に歯止めをかけていくことと何ら矛盾するものではなく、むしろ、取引の場面で本人の意思決定をゆがめるような、若しくは不当に影響を及ぼすような事業者による勧誘に対しては、消費者保護法制による規制、救済はむしろ強化されるべきことが要請されるものと考えます。

 次に、整備法における後見概念の転用についてです。

 精神保健福祉法の医療保護入院に係る同意権者や心神喪失者等医療観察法の保護者に後見人等を含める規定などについて、後見制度における事理弁識能力についての類型的、定型的な認定を制度趣旨の異なる他の制度に転用する規定が整備法においてはそのまま残されることとなりました。各制度の改正時において、この転用する規定の廃止を含めた見直しが求められるものと思います。

 次に、大きく第二としまして、制度の運用や地域福祉との連携について申し上げます。

 地域共生社会実現に向けた成年後見制度を含む総合的な権利支援制度の整備のためには、民法等の改正のみで十分ではなく、意思決定支援に基づく日常的な金銭管理や生活支援を担う新たな地域福祉の仕組みが必要となります。

 第二期成年後見制度利用促進基本計画が想定する民法等と社会福祉法の一体的改革として、本国会で改正が見込まれております社会福祉法の一部を改正する法律につきましても、中核機関の法定化、新たな権利擁護の支援策の事業化が図られるところ、これらについて各市町村等において具体的な体制整備が図られるために必要な人材や財源が確保されること及び地域権利擁護の地域連携ネットワークにおいて関係機関、関係団体がそれぞれ期待された役割を果たすための推進体制を設けることが必要だと考えます。

 法改正の趣旨を実務において実現していくために、施行に向けた様々な運用体制の整備も重要です。例えば、福祉情報の取得の方法ですとかその内容、若しくは医療情報の取得についても同様ですし、審理における市区町村との連携等について、家事事件手続法の新たな規律を設けたところではありますが、これらの規律が有効に活用されるよう、家庭裁判所や弁護士会、司法書士会、リーガルサポート、社会福祉士会等を含めた各地域の関係機関を挙げて適切に取り組んでいかなければなりません。

 法改正との関係で、具体的に更に取組が必要な点について申し上げたいと思います。

 今回、補助に一元化されたことに伴いまして、経過規定を含めた制度の周知、広報は欠かせません。

 本日午前中の先生方の御審議におかれてもこの点の御指摘はあったところではありますが、引き続き、関係機関若しくは士業団体含め、この周知、広報に努めてまいる必要があるかと思います。

 次に、包括的な類型、代理権が廃止されることとの関係です。

 特定の法律行為ごとに代理権若しくは同意権、取消権を付与していく仕組みとなりますことから、申立てにおける関係機関における支援の充実も欠かせません。特に、本人の課題の抽出ですとか本人に対する課題のアセスメントを充実させるということなくして、特定の法律行為に関する付与というのはあり得ないからです。

 あわせて、三点目として、終われる制度になることとの関係です。

 終わるための法制上の要件として、必要性がなくなるということが、今回規律を設けたことになりますけれども、この必要性の始まり若しくは終了における認定のための実務運用の整理ないしその内容に関してのコンセンサスを得ていくということが今後の課題となります。

 また、終わることで御本人に対する支援が途切れることがないように、家庭裁判所が適切に判断するための、家事事件手続法に基づく自治体や中核機関との連携も求められますし、また、補助人が御本人支援を適切に御本人のチーム支援に引き継ぐことができるように、補助の制度利用中からチーム支援の拡充、充実が図られることが必要となります。また、実際に終われるようにするための選択肢の整備も求められます。地域福祉や金融包摂の観点からの様々な取組が要請されるところです。

 また、交代が認められやすくなるということに伴いまして、市民後見人や法人後見などの充実を図ることも必要です。

 後任者の適切な選任のためには、中核機関における受任者調整機能の拡充と、いまだ中核機関が未設置の地域や、若しくは十分に中核機関の機能が果たせていない地域への支援のための人的若しくは財政的支援の措置を講じていくことも欠かせません。

 また、本人同意についても、実務の中でどのように本人同意を認定していくのか、本人の意思をどのように家庭裁判所が捉まえていくのかというようなことについても整備が必要です。チーム支援の充実と浸透、また意思尊重義務の実現のために、更なる意思決定支援の取組の継続も欠かせません。

 今回の改正では、補助人による年一回の定期報告を法制上定めることとしております。必要性に関する定期的な司法審査が行われることになりますが、この司法審査が実効的に行われ、形骸化することがないようにしなければなりません。

 また、補助人がしっかりと御本人の支援を行うことができるように、報酬助成制度の抜本的な見直しや、必要性に応じた柔軟な運用を可能とする家庭裁判所の体制整備も求められます。

 任意後見契約に関する法律の改正との関係では、現在、日本公証人連合会において定められているモデル条項の見直しなど、法改正がなされた後にはこれらの見直しの作業にも直ちに着手しなければなりません。

 最後に、改正後の理念について少し申し上げたいと思います。

 第二期基本計画においては、地域共生社会の実現という目的に向け、本人を中心とした支援、活動における共通基盤となる考え方として権利擁護支援を位置づけた上で、地域連携ネットワークによる権利擁護支援策の一層の充実など成年後見制度利用促進の取組を更に進めていくものとされました。

 新たな制度に掲げられるべき基本理念として、地域福祉における権利擁護支援全体の中における成年後見制度を目指すという目標にふさわしいものであることがこの成年後見制度には引き続き求められることになります。

 そこで掲げられている理念として、代理、代行決定の廃止の方向性及びあらゆる場面における意思決定支援の仕組みの設置が勧告されていることに鑑みますと、引き続き不断の取組を継続させていくことが必要であると考えます。

 自律の保障というのは、意思を本人一人ではなかなか形成できない方も含めて、本人が自分のことは自分で考え、選択して決めていけることができるように、必要な支援を受けて生活することを社会によって保障されなければならないという理念です。ここでは、自己決定の尊重に加えて、それを可能にするための支援付意思決定の保障が含まれ、それにより、本人を中心として、本人の意思をできるだけ反映した生活を実現していくことが自律の保障であると考えられます。

 現行制度及び改正の理念とされる自己決定の尊重や残存能力の活用に比べますと、病気や障害の有無にかかわらず、あらゆる人が自分の意思を有していることを前提に社会が支援していくことにより、できるだけ本人の意思を形成、表明して実現していくことを引き続き政策目標とするべきであります。この間の権利擁護の支援の考え方の発展を踏まえ、本人中心の生活をより徹底していこうという取組を進めていく必要があります。

 また、地域社会におけるインクルージョンについては、障害のある人が障害のない人と同じように暮らすという両者の区別を前提とした考え方ではなく、様々な困難を抱えている方がお互いの多様性を認め合いながら、支え合って、包摂された社会をつくっていくという考え方に発展してきており、これをノーマライゼーションからインクルーシブな社会へと捉え直した理念として引き続き取り組んでいくことが必要であります。

 これらの理念は、自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーションの理念、本人保護との調和とされた平成十一年の民法改正の制度理念を、現在まで、障害者の人権保障の概念と実践、社会的要請を踏まえて大きく発展させてきたものです。これらの理念は、障害者基本法第三条の理念ですとか、認知症基本法の基本理念でも目指されているところです。

 今回の改正は、第二期基本計画の基本的な考え方と目標に基づき、総合的な施策の項目として掲げられています、成年後見制度等の改正に向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実が掲げられていたこれらの見直しを図るものですが、もう一つ重要な視点として設けられていました社会福祉制度における総合的な権利擁護政策の充実が、重要な柱とされていました。

 これらの成年後見制度等の改正とともに、総合的な権利擁護政策の充実において、成年後見制度と日常生活自立支援事業との連携の推進及び同事業の実施体制の強化、新たな連携協力体制の構築による生活支援、意思決定支援の検討、都道府県単位での新たな取組の検討については、来年度から予定をされております第三期基本計画での取組で引き続き進められることが期待されます。

 第三期計画が閣議決定された後においては、本改正を踏まえた、引き続き、本人にとって必要かつ望ましい支援、保護という、民事基本法制としての成年後見制度のみによって実現されるものではないこと、本人を支える他の制度との連携の上で構築され、具体的に実現されていくものであることを念頭に置きつつ、第三期計画の検討が進められることが望まれます。

 今後、御本人、家族、親族、政府、家庭裁判所、各地方自治体、社会福祉協議会、各支援者、専門職団体が連携して、引き続き本人の権利擁護が図られるように取組を進めてまいりたいと存じます。

 ありがとうございました。(拍手)

井上委員長 ありがとうございました。

 次に、山野目参考人にお願いいたします。

山野目参考人 本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。早稲田大学の山野目と申します。

 本日の議題であります内閣提出、民法等の一部を改正する法律案は、法制審議会における調査審議を経て、政府において法律案を作成し、御院に提出されたものと承知しております。その調査審議にいささか関わりました際などの経験、知見を踏まえ、この法律案に関する所見を申し述べます。

 法制審議会は、法務大臣から受けた二つの諮問、すなわち、諮問第百二十五号及び諮問第百二十六号に基づき調査審議をいたしました。本日の法律案は、これらの諮問に係る調査審議の趣旨を踏まえるものでございます。諮問番号の順に従い、所見を申し述べます。

 お手元にお届けしております表裏印刷の一枚物の資料をお取り上げくださるようにお願いいたします。表と記しておりますところからお話を差し上げます。

 まず、諮問第百二十五号は、遺言制度の見直しに関するものでございます。

 私たちが今手にしている民法は、ヨーロッパの民法などを参考として、明治の時代に作られました。そのヨーロッパのフランスの民法は、一八〇四年に作られております。およそ二百年を経る二〇二一年、ニースで催された公証人の大会において、デジタル遺言が話題とされていました。現代の情報通信技術を生かし、改ざん、過誤を防ぎ、遺言者に熟考の機会を恵む遺言の制度を新しく整え、一八〇四年の立法者の賢慮をこの時代として受け止めようという論議がされています。

 私たちも、私たちの国、社会のことを考えたいものでございます。

 現在の私たちの遺言制度には、幾つかの課題がございます。それらの課題を要約してお伝えするため、ここでは三つの道具というお話を差し上げることにいたします。

 三つの道具と申しますものは、もっと用いられてよい道具、今は認められていないが用いられてよいと考えられる道具、そして、これからは必須ではないと思われる道具でございます。

 第一の、もっと用いられてよい道具は、パソコンでございます。

 現在も、土地や建物の番号の類いや金融機関の口座番号などのリストの部分をパソコンで作ることができますけれども、そのほかの文章の部分は手書きにしなければなりません。どうしても緊張して書いていますから、幾度も書き間違えをしたりし、また、書き間違えをしてはいけないと考え、思わず筆圧も大きくなって不便でございます。今般の改革は、全体をパソコンで作成したものを法務局に持っていって手続をし、保管してもらい、遺言とすることができます。

 第二は、今は認められていないが用いられてよいと考えられる道具であり、一つの例示でございますが、スマホの通信機能がございます。

 一九八五年八月十二日、羽田空港を離陸した日本航空一二三便は、相模湾上空で機体が大きく損傷する事態となりましたけれども、機長の勇気、機転、そして客室乗務員の皆さんの懸命な努力に支えられて、群馬県御巣鷹山に至りますまで、いささかのいとまがありました。こうした際、手元のスマホを用い、地上の誰かに録画、録音を送信して、財産を処分するプランを示しますならば、後日に確認の手続を経て、遺言として整えることができるようにする施策が考えられます。

 第三に、もう用いなくてもよいものではないかと思われる道具が、判こでございます。

 パソコンもスマホも明治の先輩たちが知らなかったものであるのに対し、長く判こが用いられてまいりました。手書きをし、あるいはパソコンで作成したものを確認してもらうなどし、間違いなく本人が作ったという経緯を明らかにすることができますから、押印の要件、判こを押す要件はもう要らないと感じます。

 必ずしも要らないと申し上げるものであり、これからも判この役割がなくなりはせず、私たちの文化の一翼であり続けるでしょう。

 遺言制度の見直しについてお話を差し上げました。

 お手元の資料を返していただいて、裏と記してあるところを御覧くださるように望みます。

 あと一つの法務大臣の諮問、諮問第百二十六号は、成年後見制度の見直しに関するものでございます。

 現在の成年後見制度には幾つかの課題がございます。それらの課題を要約してお伝えするため、ここでは三つの「でも」というお話を差し上げることといたします。

 三つの「でも」と申しますものは、これまでの成年後見人の権限が、何でもすることができる、本人に無断ででも行使することができる、そして、いつまででも続くでございます。

 第一の「でも」からお話を差し上げます。

 これまでの制度における後見は、特殊な例外を除き、成年後見人は、本人の事務の何でもする権限がありました。今般の法律案は、権限の包括性を廃し、類型を一元化し、補助の下で、補助人が特定の行為について権限を与えられて仕事をします。

 第二の、無断ででものお話を差し上げます。

 法制審議会の調査審議に際し、令和七年六月から同年八月までの間、パブリックコメントの手続が行われ、個人、団体を合わせ約三百十件の意見が寄せられました。また、法制審議会の専門部会におきましては、合計五回の会議を当て、当事者団体、障害者支援団体など様々な立場の方においでいただき、ヒアリングを実施いたしました。

 それらにあって届けられた声を踏まえ、これからの補助人は、よく本人とのコミュニケーションを図り、本人に情報を提供するようにしなければならず、そして本人の意思を把握するようにしなければならないものとされ、本人の意思を尊重することが法律でうたわれてよいと考えます。

 第三の、いつまででも続くという事実上の終身性は困った問題です。

 これまで、本人の事理弁識能力が回復しない限り、後見などが終了しない仕組みでしたから、例を挙げますと、親族に亡くなった人があり、本人が遺産の話合いに参加しなければならないから、本人を助ける成年後見人が選任されたとしますと、その遺産の件が終わっても後見が続き、成年後見人が専門職ですと、本人が報酬を払い続けることになります。

 本日提案されております補助人は、特定の行為について権限を与えられますから、仕事が終わったならば補助を終了させる家庭裁判所の審判がされます。

 これまでの成年後見制度にある三つの課題を解決するための施策を申し上げました。それらの施策により、多くの課題が解決するかもしれません。けれども、それで足りるでしょうか。

 任意後見契約の仕組みの改革についてお話をします。

 本人への十分な説明という手順は、それとして望まれます。しかし、それのみでは、本人は受け身の立場にとどまります。人々が元気なうちに、将来において判断能力が衰えてくる段階に備え、あるいは判断能力の若干の衰えが始まるとしても、周囲の人たちとの相談の上で、自分の財産管理をどうするか、デッサンを描いておく能動的な備えを可能とする仕組みが望まれます。

 これまでは、将来において支援者にしようとした任意後見受任者に加え、いざ任意後見が始まりますと、必ず任意後見監督人を選任しなければならず、見知らぬ任意後見監督人に報酬を払わなければならない事態がよく見られました。

 本日の法律案に幾つかの工夫を盛り込んでおります。

 本人は、任意後見契約の公正証書を作る際、任意後見監督人の人選に関する希望を申し述べることができ、これを考慮してもらえます。また、家庭裁判所が明らかに任意後見監督人による監督の必要がないと認めるときは、任意後見監督人を選任せず、家庭裁判所が直接に任意後見人を監督することを許容する規定が本日の法律案に含められております。

 本日の議題とされております法律案を準備するため、法制審議会においては熱心な討議がされました。成年後見制度を検討した会議におきましては、合わせて三十三回に及ぶ会議、毎回おおよそ四時間から五時間にわたり法律用語が飛び交う席にあって、認知症高齢者や知的障害者の本人、家族を代表する人々が粘り強く熱意を持って審議に関わり、それらの方々が毎回発言をし、そのようにして得られた成果を本日お示ししております。法制審議会にはこのような景色もまたあることを是非御理解くださるよう、切に望みます。

 本日の法律案は、高齢者、障害者のみならず、その家族、あるいは同僚、知人など、周囲にあるこの国の全ての人々が気概、活力を持って二十一世紀後半の更なる高齢化社会の到来に備え、また、ハンディキャップのある人もそうでない人もひとしく社会に包み込まれて、それらの人々のいずれもが社会に参加することを実現すべく、発展する情報通信技術を工夫して用いつつ、この時代に挑もうとする展望をにらむものでございます。そこに残された課題を含め、是非御院において御精査、御審議を賜りますよう望みます。

 意見陳述の機会をお恵みくださいまして、誠にありがとうございました。(拍手)

井上委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 参考人の先生方、本当にありがとうございます。自由民主党の衆議院議員、阿部弘樹でございます。

 まず、国連の障害者の権利に関する委員会、この勧告を参考にしていただいたというのは、非常に私はありがたいと思っております。

 この障害者委員会は、政府を代表する方々が議論をする委員会ではありませんし、また、ともすれば、活動を中心とする方々が意見を述べる、一方的に述べる場でもあるわけでございます。

 かつては、デンマークのミケルセンがノーマライゼーションを提唱した。それは、知的障害の子供が非常に差別的な扱いを受ける、そういうのではいけないということで、戦後間もなくそういう考え方を提唱されまして、そして今や世界中にノーマライゼーションの思想が広がっていったということで、障害者がそうでない健常者の方々と同等に暮らしていける社会を実現する、その一環だと私も思っておるところでございます。

 一方で、この委員会は、成年後見制度について、理事弁識能力が欠けるというだけで全ての権限を奪い去り、自己決定権を取り去るということで、廃止の勧告をしております。

 私は、廃止というのは非常に極端な言い方だと思いますが、しかし、理事弁識能力が欠けるだけでいろいろなことができないというのは、私は、いささか、平成十一年のこの新しい制度ができるときの厚生労働省の担当でもありましたが、このようになるとは思いも寄らなかったと思っております。

 あるNHKの番組では、お彼岸になると、認知症の旦那さん、夫が、おはぎを食べたい、お墓参りに行きたいんだと。それで、後見人の人に聞いたら、駄目ですよと。お金は守らなきゃいけない、大切に使わなきゃいけない。おはぎも食べられない、そしてお墓参りにも行けない、そんな制度があること自体が私はおかしいと思っております。

 そもそも、理事弁識能力が欠けるだけで、私は精神科医でもありますけれども、どういう検査をするかというと、例えば長谷川式というのが一番ポピュラーなんですが、自動車の絵を見せて、時計の絵を見せて、リンゴの絵を見せて、それを隠して、どんなものが出ましたかと、それをお答えするんです。あるいは、百から七を引く。計算間違いをすると点数が下がる。この委員の先生方も、百から七を引くと九十三とすぐ今なら分かるかもしれませんが、そのうち分からなくなってくると理事弁識能力の疑いが出てくるわけでございまして、それは人として能力の一つであるというふうに私は思っております。

 そして、ましてや、原因は、皆さん認知症と一言に言われますが、認知症だけではないですね。例えばパーキンソン病なんかでも、非常に認知能力が低下してまいります。パーキンソン病は、今や、iPS細胞で、細胞を脳に移植することで劇的に回復するわけでございます。あるいは、うつ病の非常に進行したときでも、同じように、陰性症状が強くなると理事弁識機能が非常に落ちてきます。そうすると、今や、電子レンジの電磁波を頭に当てることで、それが画期的に、一部ですが、回復してくることがある。科学の進歩は、実は認知機能を回復させるのに大いに役立つことが分かってきている。

 その点では、今回の法改正というのは、後見、保佐人を外すことができるということではいいことだと思っています。ましてや、補助人という名称だけ残ったということは、後見人だと全ての代理権をその人に与える印象が強いんですが、補助人だと、残された機能だけを補助するということで、私は非常にいいと思っています。

 最初に、フランス民法の大家であります山野目先生にお伺いいたします。

 日本の刑法、民法は、ボアソナード先生がお抱え学者として日本に導入されました。私も何度か質問したこともありますが、「エミール」などのルソーの影響を非常に受けた民法だと思っております。

 先生は、三つの「でも」、無断でも後見人になれば財産処分もできる、何でもできるんだ、そして、いつまでもできるんだと。そのことについて、今回の法制審の議論はいかがだったでしょうか。先生、お願いします。

山野目参考人 ただいま議員からおはぎのお話を頂戴したところでございます。

 私が訪ねた福祉施設において眺めた光景におきましては、おばあちゃんがこしあんのおまんじゅうを食べたいというふうにおっしゃって、いつもこしあんじゃなくて粒あんなので悲しいわというふうにおっしゃっておられて、どうしてもうちの納入元ではこしあんは高くなるんですよというやり取りがありましたけれども、そのような折に、どうしてもお小遣いからこしあんを召し上がっていただくのには少しお金を多めに出さなければいけませんねとかというようなやり取りになっていきます。

 そういうふうな光景は今後も続くだろうというふうには思いますけれども、大きく眺めたときに、理念の観点から申しますれば、一言で言えば、保護から尊厳へということでございましょうか。保護も尊厳ももちろん大事でございますけれども、これまでは、どちらかというと本人を保護する、保護するということの延長として、なるべく財産を、なるべくならまだいいんですけれども、一円でも減らさないようにするというように、生真面目に成年後見人の方がお仕事をしてきた嫌いがあるかもしれません。

 これからは、ちょっと高くてもこしあんのおまんじゅうを食べたらいいんじゃないの、おはぎのことも考えましょうねと、おのずとそれに財産管理の観点を考えなければいけませんから限界がありますけれども、そういうふうな観点も踏まえて今後は保護を、そして保護以上に尊厳が大切ですよという観点で、これからは補助人になっていくかもしれませんけれども、仕事をしてほしいというふうに望んでおりますし、法制審議会はそういう観点から審議をいたしました。

 今、議員におかれては、障害者の権利に関する条約に御言及をいただき、誠にありがたいことでございます。同条約の十二条が定める法的能力の平等、十九条が定める、社会において包み込み、そして参加をしてもらう機会の確保という理念を常に考えて法制審議会の調査審議が進められたものと認識しております。

 ありがとうございます。

阿部(弘)委員 ありがとうございます。

 その点が、後見人という名前が変わった、でも、成年後見なんですね。そこもちょっと私は非常に気になるところでございます。

 私は、今、精神科の領域で医者もまだ続けております。そうすると、心の病の方々がたくさん入院しておりまして、そういう方々は精神障害者ということになってくるわけです。そうしますと、老人になったから、認知症になったから弁識能力が欠落しているわけじゃないですね。その病気のためになっている。でも、後見人を選任しないんですよ。

 つまり、ほとんどの方々が財産がない。財産がないのに、後見人を頼めば後見人にお金を払わなきゃいけない。だから、たくさん財産がある方は後見人を選任されまして、だから、平成十一年からずっと見ていて、法律の専門家が、特に弁護士さんが後見人になっている方というのは、被後見人の方はある程度財産がある方かなというふうに思っております。

 一方で、障害者の方々、いろいろな方々がいらっしゃいますが、そうすると、施設の方々が代行したり、あるいは市町村の社協が行ったりということもあると思います。

 そういった点で、どなたかの質問でもありましたが、報酬が、弁護士さんがついた場合に、実は家族間トラブルが原因で家族を訴えて、そして、家族間では罪には問われませんけれども、一々親子間で契約書なんか結ばない、使途不明になってしまう、そういうものはこの制度で排除されますかね。要するに、家族がばらばらになってしまうという懸念もありまして、こういった点は、根本参考人、いかがでございますか。それと、あわせて、任意後見契約の改正の意義をお願いします。

根本参考人 お答えいたします。

 まず一点目についてなのですが、先生御指摘のとおり、もちろん御家族の中で何か契約書等を交わすことがないというのは先生御指摘のとおりかと思います。

 他方で、一般論として申し上げますと、民法は、先生御承知のように、個別の財産制というのを取っておるという関係もありますので、一部の相続人の方が御本人の財産を使い込んでおられるというような場合には、御本人の権利擁護の観点から、その取戻しへ向けて、その当該御親族と任意協議などを通じて返還を求めるということは、これは現行制度においても改正後においてもあり得るところだと思っております。訴訟提起まで至るということは多くないかもしれませんけれども、任意協議などの経過を経るということはあろうかと思います。

 これらは、後見人は本人の財産管理との関係で善管注意義務を負っているということがございますので、返還を求めないということで逆に別居の別の親族から後見人の善管注意義務違反に基づく損害賠償請求を受けるリスクを有しているというようなことが影響しているというふうにも考えられます。

 後見人は、親族間紛争において、本人、同居親族、別居親族の三者の関係性調整に追われることもございまして、ここで重要になってきますのは、同居の親族と別居親族の対応について中立的に接する、そういう必要があるんだろうというふうに考えています。

 いずれにしましても、後見人は中立的でありながら柔軟な対応を行う必要があるという立場になりますので、そのような対応を専門職としては心がけていく必要があるのではないかというふうに考えております。

 また、二点目の任意後見についてですが、先ほど小澤会長や山野目先生からも御指摘があったところでありますけれども、今回の任意後見契約の法律に関する改正において、監督人は必至ではなくなるということ、それから監督人の人選の希望をお伺いできる、また補助と任意後見が併存できる、それから代理権目録の変更について変更契約で可能にする、不開始の合意と審判障害事由によっていわゆる予備的受任者というのを定めることができるというような改正を行っておりますので、本人の意思決定支援ですとか、若しくは本人の意思尊重という観点からも、任意後見契約はお元気なときに結んでいただくものになりますので、選任の、そういった先生方からの御指摘の観点からも、活用が広がるということが必要であるというふうに考えております。

阿部(弘)委員 いずれにしても、私は任意後見制度というのが非常に重要だと思っております。海外でもそれが主流でございますから。元気なうちに遺言をする、元気なうちに任意後見契約、監督人も指名する、そして財産、資産を扱う人を指名しておくということが大切だと思っております。

 今度の遺言制度、非常にいいものができようとしておりますが、小澤参考人、その意義についてお願いします。

小澤参考人 阿部先生、御質問ありがとうございます。

 今回の遺言改正につきましては、これまで自筆証書遺言が担ってきた真正性や真意性の確保をデジタル社会でどのように確保するかが課題であったと承知をしておりまして、遺言書保管官の確認、そして全文口述、適切な保管などを通じた真意性の補強というデジタル社会での課題を受け止めたものと理解をしています。

 平成二十九年度に法務省が実施した我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務では、年代によってぶれはあるものの、自筆証書遺言、公正証書遺言作成の経験に関して、全体として見ると、自筆証書遺言を作成したことがある方が三・七%、公正証書遺言を作成したことがあるという方が三・一%でありました。

 これが、令和五年の十一月のアンケートによりますと、自筆証書遺言を作成したことがある方が八・五%、公正証書遺言を作成したことがあるという方が二・七%であったというふうに承知をしています。

 数値に幅はあるものの、自筆証書遺言と公正証書遺言の作成件数に関して、同数程度、あるいは自筆証書遺言の方が作成割合が高い傾向にある。今般の保管証書遺言は、遺言書保管官の前で全文口述という要件はあるものの、手軽に作成することができるため、そのニーズというのは非常にあるのではないかというふうに考えております。

 また、所有者不明土地問題の抑止及び解消に当たって相続登記の申請の義務化がされましたが、相続登記の申請の際に重要となるのが遺言書の存在であり、自筆証書遺言は、気軽に作成することができる一方、形式上の不備を原因とした遺言無効や発見可能性の低下が課題として考えられるところでありまして、法務省の調査では、自筆証書遺言と公正証書遺言の作成について、大差ない数、あるいは自筆証書遺言の方が上回っている結果につながっているにもかかわらず、自筆証書遺言の検認件数は公正証書遺言作成件数より下回っているということで、推測の域は出ないものの、せっかく作成した自筆証書遺言が相続人において発見されず、執行手続に活用することができなかった事案も一定程度あるものというふうに考えています。

 そこで、今般の保管証書遺言は、遺言書保管官による形式不備に係るチェックがあり、また法務局で保管されることとなるため、無効になるリスクや発見可能性の低下は避けることができるということになります。結果、遺言者の最終意思を実現することが可能となり、ひいては所有者不明土地問題の解消にも資するものと考えております。

阿部(弘)委員 ありがとうございました。

 時間ですので、これで終わります。

井上委員長 次に、有田芳生君。

有田委員 有田芳生です。

 今日は、御三人の方、ありがとうございます。

 それぞれお聞きをしていきたいんですけれども、まず、小澤参考人には全体的な評価についてお聞きをして、その後に、根本参考人からはいわゆる連れ去り問題と関わって後見人がどのように関わっているのかについてお聞きをして、最後に、山野目参考人からは利用が終わるための制度について少し詳しくお聞きをしたいと思います。

 最初、小澤参考人の全体的な評価の中で、画期的だという表現をされておりました。ところが、例えば後見制度と家族の会という組織は、利用者のためには改悪だという厳しい評価をされていて、後見は悪くなる一方であると。結論的には、なぜ利用者本位の後見制度と言えるのでしょうかという厳しい評価をされている。小澤参考人の民法(成年後見等関係)等の改正に関する要綱に対する会長声明の中では、後見と保佐を廃止し、補助に一元化する、先ほどからおっしゃっているように、本人の意思を尊重すると。

 四半世紀ぶりの改正になるんですけれども、じゃ、一体この四半世紀の間でどんな問題があって、なぜ改正をしなければいけないという結論に至ったのかについて、少しお話しください。

小澤参考人 有田先生、御質問ありがとうございます。

 先ほどの意見陳述と多少重複するかもしれませんが、御容赦をいただければと思います。

 まずもって、今回の法改正、平成十一年から現在に至るまでの様々な御利用者や当事者団体の方からの御指摘というのは、先ほど来お話が出ておりますように、一旦後見人が選任されると、制度利用がその方の判断能力が回復するまで終わらないという終わらない問題、あるいは、後見人というのが包括代理権があるために、全ての代理権が、代理行為が行使可能となるという権限の広過ぎる問題、そして、三つ目としては、後見人が一旦就任されると、なかなか相性が合わない場合であっても替えられないという問題が指摘をされてきたというふうに承知をしております。

 そして、今回の改正、私が冒頭、画期的な改正であるというふうに申し上げた理由については、先ほどの三点の問題が今回の改正でクリアになっているというふうに私は理解をしているからでございます。

 繰り返しになりますが、今回の法改正によりまして、必要性が失われれば後見制度の利用は終了することになります。そうすれば、この後見制度はとても利用しやすくなると考えておりますし、権利条約が求めている、保護はより短期間によるべきであるという国連の権利条約との理念にも即した制度になると思われます。

 申立てに関わる専門職の立場から見ても、申立ての目的となった事務が終了しても制度利用が終了できないことによって後見制度の利用自体をちゅうちょされることがとても多いので、このことが遺産分割や不動産売却などを妨げるという事例がたくさんありましたが、これが解決していくというふうに考えています。

 このようなことで、私は、今回の改正については画期的な改正というふうに考えている次第でございます。

有田委員 先ほどもお伝えしましたけれども、一つの改正案を見ても、画期的だという評価をされる方もいれば、一方で、利用者のために改悪であるという受け止めをされる方もいらっしゃるということについてはどうお考えでしょうか。

小澤参考人 ありがとうございます。

 そのような御意見があるということは承知をしております。恐らくは、今回の改正については、比較的、専門職の後見人の側に寄ったものであり、そして、本来後見人は親族が担うべきだという御意見があるというふうに思っています。

 私も、もちろんケースによっては親族の方が後見人になる方がふさわしい事案というのは一定程度存在していると思います。しかしながら、現場の感覚で申し上げますと、相談を受けた際に、私も、事例によっては、まずは親族の方はいらっしゃいますか、そして後見人になっていただける方はいらっしゃいますかというふうにお伺いするのですが、実際、その後見人になれる力量あるいは背景を持っている方でも、結構断られる方が多いんです。

 あるいは、後見人になりたいと言ってくる方もたまにいらっしゃるんですが、そういったケースの背景事情を見ると、推定相続人の間で争いがあったりするケースもあるものですから、やはり、結果として、どうしても親族が後見人になるべきものと専門家がなるべきものと、私たちは選択をしながら相談に対応しているという現状があります。

有田委員 根本参考人にお聞きをしますけれども、いわゆる連れ去りは社会問題にもなっていることなので、今回の改正案と直接には関係ないように見えるんだけれども、しかし、後見人が出てくるケースというのは結構目立つ。

 例えば、昨年の三月に、江東区にいらっしゃるある女性、当時九十七歳、今九十八歳になっていらっしゃるんだけれども、警察官がいきなり家にやってきてドアを壊して入ってきて、家族三人を任意だといって連れ去っていって、それからこの九十七歳の女性と、娘さんそしてその娘さんがいまだ会えないという。だから、これまでもいろいろなケースがあって、結局、いわゆる連れ去りをされて連絡が取れないまま亡くなって、遺骨が戻ってきたというようなケースが今もあるんですよね。

 だから、ここでお聞きをしたいのは、昨日の質疑の中で三木委員がこう語っていらっしゃいます。親族が本人との面会を希望しても、後見人に断られたり妨害されたりする事例が問題になっておりますと。その続きで、今度の改正案では、補助人にはそのような権限を与えられていないという理解でよろしいでしょうか、現行法でもそういった権限を与えられていないと思うと三木委員はおっしゃっているのに対して、松井政府参考人は、そのとおりだ、御指摘のとおりで、現行法でもそういう権限を与えられていないし、今度の補助人も本人と親族の面会を制限する法的権限等を付与されていないと。

 これはそのとおりで正しいと思うんだけれども、ただ、現実に起きているケースだと、今、九十七歳の方が連れ去られて、いまだ、もう九十八歳になるのにどこにいるのか分からない、面会することもできないというケースなんかは、その該当の区役所が公式な文書で、これは後見人の判断なんだというようなことを書いているわけですよ。だから、現実にそういうことが起きているというのは、これはどう判断すればいいんでしょうか。

根本参考人 お答えいたします。

 日弁連の見解というわけではなくて、私の私見となりますことを御容赦ください。

 まず、高齢者のいわゆる連れ去りという問題に関しまして、後見人との関係につきましては、高齢者虐待防止法という仕組みと後見人との関係というところを少し整理する必要があるのではないかというふうに考えております。そういう意味で申し上げますと、いわゆる虐待という事実認定ですとか、若しくは養護者支援の問題というような形での検討というのも必要ではないかというふうに思っております。

 議員御指摘の後見人による面会制限につきまして、昨日の政府答弁においても後見人の権限ではないという答弁があり、私個人としてもその考えには同意するところです。

 いわゆる成人した親子の面会交流ということにつきまして、子が親に会う権利というのは、これは裁判例上も憲法上の人格権に基づいて認められているものというふうに承知をしておりまして、それがかつ請求権として成立するか否かにつきましては、御本人、親御さん、親御本人が同意する能力があるという前提であれば、その御本人の同意があるかないかによって決せられているものというふうに承知をしております。

 他方で、虐待を伴う事案につきましては、高齢者虐待防止法等において行政による面会制限という処分が規定をされており、また、ほかには、施設が施設として有している施設管理権というものに基づいて、当該施設で誰を面会させ、誰が当該施設に立ち入るのかについて判断をされているということだと承知をしております。

 そのような中で、後見人は、例えば虐待対応の状況を考慮し若しくは後見人が主体となって面会制限を行うということではなくて、行政が行っている面会制限に応じた対応を決めていくということはあり得るところでありますし、また、施設が有している施設管理権を施設が行使するに当たって、その契約者の代理人である後見人の意見、意向を踏まえて、若しくは自治体の虐待対応状況を考慮して判断をされるということは、これは妨げられないものであるというふうに理解をしております。

 後見人が面会制限をしているというふうな御指摘については、養護者の方からはそのように見えるということがあるのかと思いますが、今申し上げたような観点から申し上げますと、面会制限をしている主体は自治体ないしは施設管理権に基づく施設ということになるかと思いまして、後見人は後見人の権限で面会制限をしているということではなく、虐待対応の判断の中で、後見人の権限や責任において一義的に制限しているというふうに法的に構成するということではないのではないかというふうに考えております。

 その上で、例えば虐待対応において、再統合への調整過程が進んでいるのに、なお後見人が、自治体等の助言を聞くことなく、合理的な理由もないのに制限をしているという場合には、これは後見人の不法行為ないし善管注意義務の問題が生じ得るということではないかというふうに考えております。

有田委員 この問題は根が深いので、金曜日、質問する機会がありますので、そこで詳しくお尋ねしようと思っているんですけれども。

 最後に、山野目参考人、幾つかの文章を読ませていただいて、比喩がとてもよく分かるので、今日の御説明もそうでしたけれども、三つの「でも」というようなことを含めて、今日の御巣鷹山のお話もよく分かりました。

 最後にお聞きをしたいのは、真の意味で終われる制度にするために、これはこれまでインタビューに答えられた中で、地域の社会福祉の営みに委ねられる見通しがなければならない、社会福祉法の改正案とも関わってというお話ですけれども、そこをもう少し、残った時間で御説明をお願いします。

山野目参考人 終われる後見ということがキーワードになって、報道におきましても、今般、成年後見制度を象徴する言葉として時に耳にすることが多うございます。

 反面、成年後見制度はこういう方向に変わっていくのではないかというようなことを私は申し述べる機会がいろいろ講演等でございます。お話を聞いてくださる方から時に反発が出ることがあります。福祉を担っておられる現場の皆さんからは、あなたはそういうふうにおっしゃるけれども、それは理念というか、理屈の上ではそうかもしれないけれども、現場で抱える様々な事案においては、終われるというふうに言うけれども、そんなに簡単に終われないような事案というのはたくさんあるんです、そういうことを分かってやっていますかというようなお叱りを受けることもございます。

 そういうときに、私からは、それはごもっともなお話であるということを申し上げるとともに、よく話を聞いていただきたいとも望みますというふうにお願いして、終わる後見にするというお話を差し上げた覚えはありません、終わることができないという仕組みになってしまっているこの仕組みを終わらせますというふうに御案内を差し上げることにしております。最初からそう言えばいいじゃないですかとおっしゃるので、いや、最初からそういうふうに申し上げていますというふうに申し上げなければいけないんですけれども。

 現在の制度は、ほとんど終わることができない。予定された事務が終了に近づいたときに、終わることにしますか、終わらないことにしますかというようなことを一度検討していただいて、それは様々なケースがあるので、簡単には終われないケースが少なくないということはもちろん承知しております、しかし、終われるものは終わるようにしたらよいと思いますというお話を差し上げて意見交換をしたりしております。

 その際、まさに議員が御炯眼で着眼していただいたとおり、家族との関わりとか任意後見契約とかいろいろなツールがある中で、何といっても、これから地域社会福祉が充実していくかどうかということが、今般の成年後見制度改革の帰趨を握っているというふうに考えます。

 民事法制の一角を成している成年後見制度でありますけれども、民事法制の改革と地域社会福祉の改革は車の両輪であります。どっちかがつまずいたら全体のフォーミュレーションが崩れるという関係になっております。

 議員御案内のとおり、社会福祉法等の一部を改正する法律案、議案番号四五でございますけれども、ただいま御院において審議されておりまして、厚生労働委員会に付託されて審議がされております。ほぼこちらの法務委員会における民法等の一部を改正する法律案と同一のリズムで現在審議が続いているというふうに承知しております。

 もし、政府提案のとおりに社会福祉法が改正されるということになりますと、改正される社会福祉法の二条三項十二号で福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業というふうに法文には記されておりますけれども、現場においては、これまでの日常生活自立支援事業をもう少しブラッシュアップして、充実したものとして整備していかなければならないというような方向で検討が始められているところでございます。

 大きく並べますと三つほどの柱でしょうか、新しい地域社会福祉の事業の試みとして、社会生活上の意思決定支援、とりわけ日常的な金銭管理をお年寄りや障害者に対してサポートをする、二番目は、病院に入ったり施設に入ったりするときの入院、入所を支援する、それから、自分が死んだ後の死後事務について不安がある人たちは今もおりますし、これから増えてきますから、死後事務についてのサービスをしつらえる、これらの三本柱の事業をしてくださいということで、この法律案が採択される暁には、政府において鋭意そのことを進めていくだろうというふうに思います。

 しかしながら、民法の改正のような民事法制の改革と性格が異なりまして、予算をつけたり、地方公共団体の各団体の理解を得なければいけないとか、様々な手だてを講じなければいけませんから、こちらの方は法律を一本改正すると直ちに社会福祉がうまくいくというふうにはなってまいりません。そこは、今般改正に関わった民法改正に関連する法律家の人たちにも併せて協力支援をお願いすることになりますし、政府一体として進めなければいけないことであります。立法府においても、その方面に特段に御関心を払っていただきたいと望みます。

 ありがとうございます。

有田委員 ありがとうございました。

井上委員長 次に、金村龍那君。

金村委員 日本維新の会の金村龍那でございます。

 今日は、参考人のお三方の皆様、意見陳述をいただきまして、改めて感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、まず初めに、お三方からお伺いしたいんですが、最高裁判所が公表している統計によると、近年は、成年後見人に選任される者の約八割が弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職であるが、このように専門職が選任される割合が高い理由はどのようなものであるとお考えか、それぞれお答えください。

小澤参考人 金村先生、御質問ありがとうございます。

 近年、後見制度を利用される方は、頼れる親族がいない方が多くなっているというふうに承知をしています。申立て件数の約二五%が本人申立てとなっておりますが、本人自身が申し立てるケースは申し立ててくれる親族がいない場合が多く、また、申立て割合の約二四%を占める市区町村の申立ても頼れる親族がいないケースが多いと感じています。申立て割合の約四九%が親族申立てとなっておりますが、これは関与する親族がいることが明らかなケースとなっていますが、この中にも、自治体や施設、病院などからの連絡によって申立てだけは行うけれども、後見人等には就任できないよというケースも多く含まれており、後見人等に就任することを望む親族はそれほど多くないのが実情というふうに承知しています。

 後見制度等開始当初は親族による後見が約九割というふうに圧倒的多数だったと承知しておりますが、本人の財産と後見人の財産を区分して管理できていないとか、財産管理が適切にできない事案や不正事案なども多く見られたため、次第に専門職が選任されるようになっているというふうに承知をしております。

根本参考人 お答えいたします。

 昨日の政府答弁にもありましたとおり、また、今の小澤会長等からの御指摘にもありましたとおり、家裁の選任基準に照らして妥当な候補者がいる場合には、家庭裁判所は当該候補者を選任するということになっておりますので、親族が候補者となられているケースがそもそも低いというところは一つの理由であるというふうに思われますし、また、御家族や御親族が御本人を適切に支援されているケースでは、そもそも成年後見制度を利用するというニーズに欠けるということになろうかと思いますので、そうなりますと、そもそも申立てをされないということを選ばれているのではないかというふうに考えております。

 また、同時に、市民後見ですとか法人後見の拡充というのも、これが不十分であるというのもその要因ではないかというふうには思っておりますので、親族等が候補者でない事案について、若しくは候補者となっておられても選任が相当でないという事案につきまして、専門職のみならず、市民後見、法人後見が受任できる環境整備というのは、これは引き続きの課題であるというふうには認識をしております。

山野目参考人 おおむね三つの場合でしょうか、身寄りのない人であって親族に適任者が見当たらない場合、それから、親族はいるけれども親族の間に深刻な感情又は利害の対立があるような事例、それから、加えて、かなり難度の高い法律事務が要求されるような事例、こういったものについて専門家の後見人が選ばれているのではないかというふうに考えますし、背景として、ただいま小澤参考人、根本参考人から指摘されたような実態があるのではないかというふうに思料しております。

金村委員 ありがとうございました。

 やはり、制度をしっかり構築して、より専門性の高い人が従事して、安心な暮らしというか、生活を賄っていくのが必要なんだと理解をしています。

 その上で、専門職の後見人が、いわゆる通帳の管理には問題がないけれども、面会に来ない、親族や本人に何の相談もなく物事を決めてしまうなどの指摘や声をいただいております。そのような後見人には交代していただいた方がいいと私は率直に思うんですが、どのように考えているのか、小澤参考人にお伺いします。

小澤参考人 金村先生、御質問ありがとうございます。

 今先生から御指摘があったような、全く面会をしない、つまり本人の意思を軽視しているようなことが後見人として望ましくないということは、今回の法制審議会部会でも指摘のあった部分であります。私も、そのような方はふさわしくないというふうに思っています。

 ただ、一方で、親族の意見につきましては、それがもちろん御本人の意思をきちんと知るための一つの要素として重要なものではございますが、一方、本人ではなく親族御自身の利益を考えていることもないわけではないものですから、親族の意思を優先するというのは、なかなか、本人の代理人である後見人としては必ずしも適切ではないというふうに考えています。

金村委員 親族と専門性を持った人との感情的な隔たりが生まれると、やはりいい方向には、解決には向かわないんじゃないかなと思っています。

 ただ、一方で、専門性の高い人、つまり弁護士とか司法書士の皆さんとかが一方的に悪いことをしているわけではないので、何か殊更にそればかりを抽出して、こういう制度が危ぶまれていると思われるのもまた得策ではないと思っています。

 その上で、やはり親族が、そして自分自身が元気なうちに任意後見制度を使うことがこれからは最も必要なんじゃないかなというふうに私自身も考えております。

 その上で、現在は、任意後見制度を利用していても、後見や補助が開始されると任意後見が終了するとされているのに対して、この法律案では任意後見が終了しないこととされています。任意後見制度の活用にとってこれが意味があるとお考えなのか、小澤参考人にお伺いします。

小澤参考人 御質問ありがとうございます。

 先生御指摘のように、改正案では、任意後見と法定後見の双方を併存させ、双方を同時に利用することを可能としています。両方が併存するということから、一見、任意後見を優先する原則を廃止するように見えるかもしれませんけれども、任意後見契約が登記されている場合には、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り法定後見の開始をすることができることは現行法と同様でありまして、法定後見よりも任意後見を優先させる原則は維持されているというふうに思っています。

 むしろ、現行制度においては、任意後見契約が締結されていても、やむを得ず法定後見が開始した場合には任意後見が終了するという仕組みになっており、その不具合を解消するために、法定後見と任意後見を併存できる仕組みに改正しようとするものと理解をしています。そうすることで、実務現場としては、契約当時に予定していた代理権では不足した場合などに任意後見をより生かせるようになり、また、本人の望む代理権のみを付与する契約ができるようになると考えています。

 現在の任意後見制度では、本人の事理弁識能力が不十分となって任意後見が発効した後に、契約当初に予想していなかった事務、例えば想定外の相続や不動産売却などが発生した場合には、その任意後見の代理権では対応できないため、法定後見を申し立てることにより対応してきました。現在の規律では法定後見と任意後見が併存できず、法定後見が開始すると任意後見は終了するため、本人の意思による任意後見を生かすことができないということが問題でしたが、この法定後見との併存は、任意後見で不足する部分、先ほどの例でいえば、想定外の相続や不動産売却についてのみ法定後見を利用しても、任意後見を終了させず使い続けることができるという重要な制度になるというふうに考えています。

金村委員 山野目参考人にお伺いしたいんですが、いただいた資料によると、いわゆる任意後見制度の改革というのが記載されています。今回の法改正の中で積み残しの部分というのはどの辺りにあるとお考えなのか、お聞かせください。

山野目参考人 冒頭の意見陳述で御紹介申し上げましたとおり、今般、任意後見につきましては、とりわけ監督をどういうふうにしつらえるかという部分につきまして、任意後見監督人の人選について、あらかじめ述べた意見を公正証書に記しておくとか、場合によっては、明らかに任意後見監督人が要らない場合についてそれを要しない扱いにするなどの改革を提案申し上げているところでございます。

 その上で、仮にその方向で法律が改正されるということになった場合におきましても、現実には、やはり任意後見人になった方が、どう申し上げればよろしいんでしょうか、周りから支援なく、裸で任意後見の仕事に取り組まなければいけないというのは、任意後見本人にとっても心細うございますし、客観的な本人の尊厳、利益保護という観点から見ても課題が大きいんだろうと思います。

 今般もしその法律改正が成就する暁には、今度は運用の中で、任意後見人を支援したり、場合によっては監督したり、サポートする、後ろ側から見ていていろいろ支えてあげるような専門的な機関、そういうものが現実に育っていかなければいけないだろうというふうに考えます。

 既に現段階から、そういう方向についていろいろ考えていきましょうというような、幾つかの団体の検討であるとか政府における検討も始められているところでございますので、立法府においてなお注視していただければありがたいというふうに感じます。

金村委員 確かに、負担というのは任意後見人そのものにあると思いますので、そこをどうサポートし、そしてその制度がしっかり世に広まって、より安心したものになっていくのか、それは課題になると私も認識いたしました。

 その上で、遺言の関係を少し質問させてください。

 今回新たに創設される保管証書遺言は、確実に遺言者本人の最終意思を確認し、保存し、遺言者の死亡後にその内容を実現することができる仕組みとなっていると今回の改正でお考えなのか、そして、この保管証書遺言の創設によって、いわゆる所有者不明土地問題が解決に至るそのきっかけになるのか、この二つを小澤参考人に、お答えください。

小澤参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほどの回答と少し重複をしますけれども、先生の御指摘の御質問に対してはイエスということになっております。これまで自筆証書遺言が担ってきた真正性や真意性の確保をデジタル社会でどのように確保するかが課題であって、これをクリアした新しい制度というふうに理解をしております。

 したがいまして、今回の新しい制度については非常に有意義なものだと思っておりますし、そして、そもそも、その遺言が、御本人がお元気なうちにしっかり作成をしていただくということが間違いなく円滑な相続登記に資するもの、これはもう間違いないわけでございますので、したがいまして、結果的に、空き家、所有者不明土地問題の解決に大きく資するものになると考えております。

金村委員 私も地域を歩いていると、今、私、選挙区は川崎ですけれども、川崎ですら不明土地はすごく増えているんですよね。高齢化だけが原因ではないと思うんですけれども、やはり身寄りのない人は結構多いですし、そういったところを整理していけるきっかけがあれば行政も動きやすくなると思いますので、是非この制度を活用してまいりたいと思います。

 それでは、根本参考人に一つお伺いしたいんですけれども、今回の保管証書遺言が、遺言者の最終意思を確認し、保存し、遺言者の死亡後にその内容を実現することができるためには、法務局における運用上、どの点がポイントになるとお考えか、お答えください。

根本参考人 お答えいたします。

 やはり、御本人が不当な影響を受けていないというようなことをきちっと保管官において確認をしていただくということは必要なことだというふうに考えておりますし、あとは、どうしても高齢者の方ですとか障害者の方ですと、そもそもその機器をどのような形で活用できるのかという問題もあろうかと思います。

 ですので、その辺りのところの支援ということの在り方が、これは地域の自治体等も含めて連携をしながら、法務局との間で実施していただくということが重要ではないかというふうに考えております。

金村委員 時間になりました。本当にありがとうございました。

井上委員長 次に、井戸まさえ君。

井戸委員 国民民主党の井戸まさえです。

 法制審議会に御参加をいただいたお三方に今日は御意見をいただいた、非常に貴重な時間でありました。ありがとうございます。

 まず、山野目参考人に伺いたいと思います。

 先ほど阿部委員からもありましたけれども、参考人は、私たちが今手にしている民法というのは、ヨーロッパの民法などを参考にして明治の時代に作られて、そして今に至っているというふうに言及なさいました。また、二〇二一年のニースにおける公証人の大会において、一八〇四年に立法された方たちの賢慮を受け止めようということが言われたということも非常に印象的なエピソードでもございました。

 今回の成年後見人の制度を私もたどっていくと、明治の時代に、日本の民法の礎、これを近代法として築いた梅謙次郎先生だったりだとか、あと、戦後、民法を作り直すという、個人の尊厳とか家族観、この変化を踏まえて改正をした我妻栄先生だとか、あと中川善之助先生らの名前に行き着いて、非常に、まるで先人と対話をしているような気持ちにもなりました。民法というのが、その時代の社会とかまた人間観というのを映し出しながら更新され続けてきているんだということを実感もいたします。

 その上で、山野目参考人は、今回の民法改正を民事法制と社会福祉の一体的改革ともおっしゃっています。改めて、この改正を日本の民法の歴史の中でどのように評価し、位置づけていらっしゃるのか、また、明治民法以来重視をされてきた本人意思の真正性の確保という理念も、AIやデジタル技術が発展する時代においてどのように継承していくべきか、お考えを伺いたいと思います。

山野目参考人 例を一つ挙げますと、シングルマザーが自分の手元で小さな子供を育てている、しかし、若くして自分は不治の病に罹患して世を去らなければいけないかもしれない、自分が世を去った後、この子のケアは誰がしてくれるんだろうかということを考えた際に、未成年後見人にはこの人がなってほしいというようなことを遺言に記すことが、議員御存じのとおり、可能であります。

 それから、我が子であるというふうに認める、認知をするとか、それから、一旦は相続人として認めないということを自分の子供なんかにして裁判所の手続を取ったような事例におきましても、しかし、遺言に、やはり許す、裁判所で手続を取ってくださいというようなことを記すということも可能でございます。

 遺言といいますと、何か財産のことでしょうというふうなイメージが強いかもしれません。もちろん、財産のプランを示すということは重要でございますけれども、しかし、先ほど申し上げたようなことというのも遺言で行われるというしつらえになっておりまして、これは今議員がお挙げになった梅謙次郎先生が起草者としてお作りになったときから骨格があった話でありまして、その後、またお挙げになったような先達によって脈々と今日に引き継がれてまいりました。

 遺言制度は、民事法制の重要な制度装置でございます。それとともに、今日、私たちはパソコンやスマホを手にしているわけでありますから、その先達たちがここが大事だというふうに考えた本質のところを受け止めながら、しかし、情報機器を利用して、どういうふうに申し上げたらよろしいんでしょうか、遺言の制度を実質化する、あるいは現代化するというような観点からの改正が提案されているのが本日の議案でございます。

 もちろん、遺言制度の生命は、改ざんを防ぎ、本人の真意を確保するということでありますから、デジタルを用いたときにそこのところは大丈夫ですかということについては、なお対政府質疑等において明らかにしていただきたいというふうに望むものでございます。

井戸委員 ありがとうございました。

 それでは、成年後見制度について、お三方に伺いたいと思っています。

 実は私、今日はダブルヘッダーで、午前中も質疑をさせていただいたんですけれども、その際に、成年後見制度をより周知を図るために何をしたらよいのかということを当局に質問をいたしました。

 そして、そこで一つ提案をさせていただいたんですけれども、二十六万人、今利用されている方たちにこの制度が変わるんだというようなことを周知徹底をしていくためには、裁判所へ年一回報告をしている、この制度を利用して周知を図り、そして、周知するだけではなくて、制度の改正に関しての変更の説明を行ったのか、現行制度を継続するのか、若しくは新制度における事項ごとの契約へ移行するのかなどといった、本人や関係者としっかり話し合ったというような内容を報告事項に含めるのも一つではないかというようなことを提案をさせていただきました。

 これというのは、司法書士会の小澤参考人、また弁護士会の根本参考人、現場で、例えば、後見人なり補助人なりで、こういった報告の中にそうしたことを含めることに何か不具合があったりだとかということはしますでしょうか。それとも、そのことをやることによってより周知徹底が図られるとお考えでしょうか。

 また、山野目参考人には、先ほど、法制審議会で三十三回の議論、四時間、五時間というのを繰り返されて、そして当事者の皆さんとのお話も聞いてこられたと思うんですけれども、そうした当事者の視点からも、周知をしていく手段としてそのようなことが使えるのかどうかというようなことをお話しいただければと思います。

 それでは、小澤参考人からよろしくお願いいたします。

小澤参考人 井戸先生、ありがとうございます。

 まずは、周知ということでございますが、非常に大事なことだというふうに思っています。まずは、司法書士会においては、内部での研修を当然十分に行って、その司法書士が各地域の中核機関や自治体と連携し、講演などにより、利用者や関係者、さらには市民の皆様にこの制度改正を知っていただくということを考えています。また、まだ検討段階ではありますが、本や冊子やインターネット動画など、今回の法律改正を分かりやすくまとめたものを作成をしまして、これを配布するということも考えられると思っています。

 幸い、改正法の施行まで二年以上の期間がございますので、まずは会員の研修等を行って、その会員を通じて市民の皆様にも周知を図っていくということは十分可能ではないかというふうに考えてはおります。

 そして、先ほど先生から御提案があった、裁判所の報告のタイミングでという御提案に関しては、非常に効果的で効率のよいものというふうに考えておりますので、私たちも少し参考にさせていただければなというふうに思っております。

 ありがとうございます。

根本参考人 お答えいたします。

 まず一点目につきましては、今、小澤会長からありましたように、日弁連としましても同様に、会員に対しての周知、広報及び研修というのを今後行ってまいる予定でございます。

 あわせて、自治体への周知というのも非常に重要かというふうに思っておりまして、現在においても地域福祉計画等の各委員等に弁護士が就任しているケースというのもございますので、そういった自治体との連携を図りながら周知をその中でも図っていく、自治体を通じて市民の方にお伝えしていくということも重要かというふうに思っております。

 二点目の、定期報告の際にそういったことを行っているかどうかを報告するという点につきましては、私個人としましては同感できるところでございまして、特に今回、経過規定の附則の二条、三条、それぞれのところにおきまして、後見と保佐の方については現行制度をそのまま利用していただく、若しくは新制度に移行する、若しくは相当でないときを除いては取り消せるという三つの選択肢が用意をされているということになります。この三つの選択肢に対するまさに意思決定支援というのが非常に重要になるというふうに考えておりますので、そういった意味で、委員の御提案については賛成させていただきたいというふうに思っております。

 その上で、実務上の留意点といいますか懸念点といたしましては、年一回の定期報告という形の、例えば施行後一年の間にそれを全て全件やるということになりますと、これは恐らく家庭裁判所が耐えられないのではないかというふうには思いますので、二年から三年程度かけてそういったことを順次聞き取っていき、判断をしていくというような形で、少しお時間はいただくということが望ましいのではないかというふうには考えております。

山野目参考人 時間が押しております。

 議員からいただいたアイデアはグッドアイデアであるというふうに考えます。

 ありがとうございます。

井戸委員 ありがとうございます。

 これは無料でできるところでもあるんですよね。何かをするという予算が必要であるわけではないので、周知徹底を二十六万人のより多くの方たちにやるためにも、そして、これからこの制度を利用される方にも漏れなくついてくるというのでいいことかなと思いながら、先生方のお話を伺って、もっと前に進めていくように頑張りたいと思います。ありがとうございます。

 続けて、任意後見制度、先ほど金村委員からもお話があって、私もちょうど山野目先生に伺おうと思っていたところなんですけれども、その任意後見制度のところでは、今回、監督機能のところ、監督をつけなくてもいいとなったときに、その機能というのが、低下を懸念するという声もあると思うんです。

 私は、この任意の後見制度というのはもっともっと広げていくべきだと思うし、これこそが制度の肝になってくるとは思っているんですけれども、こういった懸念に対しても含めてですけれども、山野目参考人は、任意後見制度が今後どういうふうに展開していったらばよりよいかということ、お考えを伺いたいと思います。

山野目参考人 一つ強調して申し上げるといたしますと、国民各層において、よし、任意後見契約を使ってみようという気分になっていただくためには、法律改正が出発点ではありますけれども、加えて、様々な広報が必要ですし、申し上げるアイデアとして、モデル条項を、関係する専門家の団体が協力して、もちろん広く支持が得られるものである必要があるんですけれども、それを作っていって広く呼びかけたらどうかというふうに考えます。

 何でも大事なことを法律の条文に書けばいいというものではありませんし、法制的にも条文に書くことには限界がございます。しかし、モデル条項であればもう少し自由度が高まって、こういう条項で公正証書を作るといいんですよというようなことも呼びかけが可能になるのではないかと考えております。

井戸委員 ありがとうございます。

 それでは次に、地域の専門職の方々と、あと福祉関係者の連携について伺いたいと思っています。また、相談のニーズの高まりという点からも、まず小澤参考人に伺いたいと思います。

 今回、終われないとか替われないという制度が見直されることになりますが、そのことによって、現在制度を利用している約二十六万人の当事者の方々や、また専門職以外の親族後見人の方々も含めて、どうしたらいいんだろうかという相談の業務というのが大きく増えることというのが予想されると思います。また、これまで利用をためらってきた方々、例えば認知症の御高齢者の方々が、必要な場面だけスポットで利用できるんだったらちょっと利用してみようかなということもあると思うんです。

 こうしたところで、司法書士会さんへの相談のニーズというのは全体に増加をするであろうというふうに考えられているとは思うんですけれども、どのように見込まれ、それに対して、特に地域に根差した司法支援というのをやっていらっしゃると思うんですけれども、そうしたところで、地域のまたほかの専門職の方や福祉関係者との連携、これは今後どのように重要になってくるかとお考えか、伺ってもよろしいでしょうか。

小澤参考人 井戸先生、ありがとうございます。

 先生が御指摘いただいたように、これまで利用をちゅうちょされていた方が、ちょっと利用を考えてみようか、あるいは今利用されている方が、終われる後見になるみたいだよということで、相談需要はたくさん増えてくるんだろうと理解をしています。

 ですので、当然、司法書士会でも、各司法書士会あるいはリーガルサポートの相談体制を強化するとともに、先生から御指摘がありました自治体や福祉関係者との連携が極めてこれまで以上に大事になってくると思っています。市民の皆様にとってやはり一番相談窓口として敷居が低いのは自治体の窓口でございますので、そういったところとの連携を更に強化をしていく必要があると理解をしています。

井戸委員 時間的に最後の質問になるので、根本参考人に伺いたいと思います。

 弁護士の皆さんというのはいろいろ御相談が来ると思うんですけれども、実際の現場では、制度利用開始時には想定もしなかったような問題というのがたくさん出てきたりだとか、次から次へとそういうのが生じるというケースもあると思うんですけれども、今回は、補助人は、本人を代表する存在というよりも、本人の社会生活を支援する存在に変わるというふうにも指摘をされています。

 そうであるならば、本人との信頼関係とか日常的な関わりの有無というのがより重要になっていくのではないかと思いますけれども、その辺りも、支援の最前線で知見を積み重ねてこられた弁護士さんとしての御所見というのを伺いたいと思います。

根本参考人 ありがとうございます。

 まさに議員御指摘のとおりだというふうに思っておりまして、そもそもこの成年後見制度は、財産管理が中心というふうに言われていた制度から、身上保護を重視するという流れがあり、さらに、その上で、チーム支援というところの中にしっかりと後見人ないし補助人が加わっていくということの重要性が言われてきたところかと思います。

 今回の改正においては、そこに加えて、今委員からも御質問がありました、御指摘がありました、いわゆる入口の支援ですとか、あとは期中支援、それから、今日午前中の政府答弁でも厚生労働省からありましたが、出口支援も中核機関等の役割として重要になってくるということかと思います。

 そことしっかりと専門職も連携していくということも必要ですし、かつ、その中核機関の支援の中に専門職としての意見をしっかり入らせていただいて伝えていくということも重要な役割になってくるかなというふうに思っております。

井戸委員 ありがとうございました。

井上委員長 次に、鈴木美香君。

鈴木(美)委員 本当に本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

 もうほとんど先生方にお聞きしたいことを聞かれてしまったのですけれども、あえてお聞きしたいのは、やはりこの成年後見制度というのは本当に良薬にもなれば毒にもなるという、立場、度合いによって本当に様々な、だから、いろいろな方にお伺いしましたけれども、本当によしとされる方、期待する方、でも、そうではなくて、いろいろ出ておりましたような、お金の問題であったり、連れ去りの問題であるという、真逆のお話をいっぱいお伺いさせていただきました。でも、今日の皆様のお話を聞いて、ああ、そうなんだなと納得させていただいたことが多々あります。

 まず、小澤参考人にお伺いしますが、とはいえ、今回、成年後見、保佐がなくなって補助に一本化されるという、じゃ、実際、特定補助が今後中心となっていく中で、本来であるならば、七〇%を超える成年後見、保佐を残した形で、つまり、名前や仕組みを変えても現場ではこれまでの成年後見に近い運用が続くのが今後も考えられる中で、その辺の現場の対応とか、とても大変になると思うんですよね。

 本当に現場で司法書士の方々が対応していただくのは、その相手の対応とか、要は手続であったりとか、それが法廷に持ち込まれたりするようなケースも考えられるんですけれども、その辺に関して小澤参考人はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

小澤参考人 先生、御質問ありがとうございます。

 先生から今御指摘をいただいた特定補助でございますが、特定補助は、御案内のとおり、民法改正案の第九条の二の全ての行為について取消権を付与する必要性がなければ利用することができないということで、また、取消権は現在も余り多くは利用されておりませんけれども、さらに、第九条の二項の全ての取消権が必要な事案というのは、私たち司法書士の実務上の感覚では、余り、想定することが困難でありまして、そういうふうなことを考えますと、この特定補助の利用に適した事案というのはさほどないのかなというふうにも考えています。

 これまでの後見類型とはやはり要件も違っておりますし、申立てされる方が特定補助というものを現在の後見類型と同様に捉えて利用を希望されることは考えられますけれども、ここは、特定補助は今の後見類型とは異なる制度でありますので、特定補助という制度をきっちりと専門家が周知をすることにより、そのような誤解を解消し、利用に適した事案について利用をするようにしていく、そういうことが必要なんだろうなというふうに承知をしています。

鈴木(美)委員 ありがとうございました。

 続けてもう一つお伺いしたいんですが、やはり、すごく事例的には話題になっていることが実は少ないんだというふうなことでおっしゃいますけれども、やはり報酬に関してすごくそれで大変な思いをされているという、今、朝日新聞でもシリーズだったりとか、毎日この件に関して世の中の記事が出ておりますけれども、基本報酬は、弁護士の先生の報酬に比べれば、月の基本二万円とかというのは、そんなに大変な、ほかのお仕事に比べるとそんな額ではないと思うんです。でも、それプラス付加報酬というものがついたときに、当人の方たちがすごくびっくりするような、そこが事件になったりとかしています。

 ただ、今後、補助ということになると、スポットになっていくと、先生方の報酬は全体的には下がってしまうのかなという、それは現実。だけれども、当人たちにしてみれば、自分が払うお金は変わらずやはり生活の中で支払うのが大変というのが現実。その何かギャップが生まれるのかなと思うんですけれども、現場の方として、その辺、現実のところ、どうなんでしょう。

小澤参考人 ありがとうございます。

 少し答えにくいこともあるかもしれませんけれども、先生御指摘のとおり、後見人の報酬額の適切性については、支払う側である御本人と受け取る側である後見人の認識の差が非常に大きい部分ではあると思います。御本人や親族からすれば報酬額が高額だという意見があることは当然理解する部分はありますが、専門職側からは、負っている責任や行っている業務に比べて安過ぎるという意見も聞くところではございます。

 その点、今回、この報酬については、民法の改正案の八百七十六条の十九によりまして、報酬の考慮要素として補助の事務の内容を考慮することが明文化されるに至っております。報酬が高過ぎるという御意見は、事務の内容に対して高過ぎるという趣旨であると理解しておりますので、この改正は、御本人や親族の方の御期待にも沿える内容になっているのではないかなというふうに承知しているところでございます。

鈴木(美)委員 ありがとうございました。

 本当に、今後、お一人様が二〇五〇年には一千万人を超えるというような、本当にこれからたくさんの方がいっぱいいらっしゃる中で御尽力いただくと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では、次に、根本参考人にお尋ねいたします。

 身寄りのない方について、入所している施設への遺贈のお話を聞かせていただきたいんですけれども、根本参考人が執筆された論文の中で、本人の意思の尊重と、公平、適正な事業運営との調和という観念から、本人が入所している施設への遺贈自体を禁止すべきだというふうにおっしゃっていらっしゃいます。

 今回、改定法九百七十四条では、施設への遺贈そのものは禁止しないけれども、施設の役員や職員は遺言の証人になれないという規制にとどまっております。

 このところ、実際、お一人の方がそこでお世話になって優しくしていただいたら、そういう心理的な、ありがとうという気持ち、でも、実はそれを計算でとか、複雑な、やはりそれもよしあしあると思うんですけれども、根本参考人がこういうふうに禁止すべきとおっしゃったようなきっかけであったり現実のトラブルであったりとか、何かその思いの背景というものを教えていただけますでしょうか。

根本参考人 先生、ありがとうございます。

 個人としてのお答えになりますけれども、まず一つは、やはり遺言といいますのは、今先生御指摘のとおり、まさに遺言者の自由な意思で御自分の財産をどう処分されていくかを決めるというものになりますので、その行き先を何らか民事基本法制である民法等で規律を設けていくというのは、これはできないことではないかというふうには思っております。

 他方で、今まさに先生がおっしゃられたように、人が亡くなる前に、最後お世話になった方に自分の財産をお渡しされたいという、そのお気持ちというのもある種自然なお気持ちであるというふうにも言えるわけですが、それが本当にその御本人にとっての自然なお気持ちというふうに言い切ってしまってよいのかどうかというところには、非常に私個人としても迷いを感じるところです。

 実際に、私個人としても、例えば私が今担当させていただいている方の中には、最後、先生にということをおっしゃる方がいないわけではありませんが、やはりそこは私どもの職業倫理の中で、御本人にきちっとサービス提供させていただいたものについては適正な対価を受け取るというのは、これは業務として行っていることですので必要なことであるというふうに考えます一方で、そのような、業務に乗じるという言い方がいいのかは分かりませんが、そのような業務に乗じて必要以上の対価を受け取るというのは、これはやはり少し違うのではないかというふうには思っております。

 そのような中で、例えば名古屋高裁などの事例においては、対価を超えてそういったものを受け取る、しかも、かつ、受け取るということを条件にして何らか入所ですとかそういった契約を行っていくというのは、これは公序良俗に反するのではないかという指摘もあるところです。

 そういったことを踏まえますと、やはりこれは、御本人がそういったお気持ちになるということは、それは自然なことであるというふうに思いますので、それを一事業者若しくは一民間の方がお受け取りになるということではなくて、何らかそこに公的な仕組みを入れていくということはあってよいのではないかというふうには思っています。

 具体的には、例えばそういったところを基金にしていくですとか、そういった仕組みづくりを検討していただいてはどうかというふうに考えているところです。

鈴木(美)委員 ありがとうございます。

 個人の思いも含めてお答えいただき、ありがとうございました。そういった、直じゃなくて、いろいろな基金という形でということで理解させていただきました。ありがとうございます。

 山野目参考人にお尋ねいたします。

 民法学者でいらっしゃる、本当に美しい言葉、例えがとてもよく理解できました。ありがとうございます。

 そんな中でですけれども、今回、山野目参考人は、成年後見制度の見直しに当たって、民事法制と社会福祉を一体に改革することが強く求められると御指摘されていらっしゃいます。私も、後見と保佐が廃止されて補助に一本化されるということが、今後の権利擁護支援の役割は今後一層大きくなっていくと思うんですけれども、先ほどちらっと出た出口の話にもなりますが、午前中に私も厚生労働省に今後の権利擁護支援事業についての現状をお聞きしましたら、まだ定まっていないというお答えでした。

 この点に関して、山野目参考人は、今後、民事の見直しと社会福祉における支援をどのように進めたい、また、現状の不足と今後というところで、お考えをお聞かせください。

山野目参考人 法制審議会における調査審議が進んでいる過程で、既に社会保障審議会の方で検討がされた社会福祉法の改正と密接な連携、調整をして検討を進めてきたところでございます。

 両方の審議会の成果物を政府が閣議決定した日は同じ日でございます。それで、同じ日、同じタイミングで衆議院に提出され、先ほど申し上げましたように、今日までのところ、法務委員会と厚生労働委員会におかれて、ありがたいことに、ほぼ同じ歩調で、遅れなく、ハーモニーを保ってここまで進んできております。まさに民事法制の改革と地域社会福祉の改革は車の両輪であって、一体でなければならない、どちらかがつまずけば全体が壊れるということを政府として強く意識して進めてきたあかしではないかというふうに考えます。

 しかしながら、事柄の性質上、法律の条文を丁寧に美しく整えたということだけで地域社会福祉がうまくいくはずはございません。これから法律案の採択をいただくとして、いただいた後が、そこからが本番でありまして、そこはゴールではなくてスタートでございます。地域社会福祉と丁寧な対話を重ねていって、人々が各地で悩んでおられることをまた伺って、改革を続けなければいけないと思います。

 政府としては、各部署が連携を図って予算等をきちっとつけていくということが重要です。私ども民間においても、やはりそこのところを政府任せにするのではなくて、福祉は大丈夫ですかということを伺っていくべきだろうと思います。

 三月に西日本のある社会福祉協議会へ伺った折は、本当に今般の改革についてたくさんの不安と期待の声をいただきました。ちょっと時間が間に合わなかったので、私の方から質問と回答という文書をお出しして、全部で二十五問ございました。二十五問しかそのときはなかったんですけれども、これからますます膨らんでくるだろうと思います。そういうお問合せに対して一つ一つ丁寧に向き合っていくということを、一人一人がしていかなければならないのではないかというふうに感じているところでございます。

鈴木(美)委員 ありがとうございました。

 本当に、政治だけではなくて、それぞれの福祉、思いというのをつなげていくというのがすごく大切だと思います。

 質問されたので私もしたかったのが、今すごく成年後見人がどんどん増えているというところで、たった二十年前は、家族が見ていたのが九〇%だったんですよね。それがどうしてかというのを私もお聞きしたかったんですけれども、とはいえ、今は核家族であったりお一人様が多くなったという現状も分かりますけれども、あっ、終わってしまいました。済みません。

 でも、とはいえ、やはり本来の家族というものは大切なので、家族が大切である、結びを大切にしながらも、今後、本当に皆様の御活躍と御尽力が必要になってくると思いますので、よろしくお願いしますというところで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

井上委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 次回は、来る二十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


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