衆議院

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第15号 令和8年5月29日(金曜日)

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令和八年五月二十九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 井上 英孝君

   理事 阿部 弘樹君 理事 木原 誠二君

   理事 高見 康裕君 理事 谷川 とむ君

   理事 藤原  崇君 理事 西村智奈美君

   理事 三木 圭恵君 理事 小竹  凱君

      井出 庸生君    伊藤  聡君

      稲田 朋美君    今岡  植君

      遠藤 寛明君    鹿嶋 祐介君

      上川 陽子君    神田 潤一君

      小泉 龍司君    河野 太郎君

      鈴木 英敬君    世古万美子君

      武部  新君    辻  秀樹君

      辻 由布子君    寺田  稔君

      中川 貴元君    永田磨梨奈君

      西山 尚利君    福原 淳嗣君

      藤沢 忠盛君    藤田ひかる君

      古川 禎久君    三ッ林裕巳君

      森原紀代子君    保岡 宏武君

      山本 大地君    有田 芳生君

      國重  徹君    平林  晃君

      池畑浩太朗君    金村 龍那君

      喜多 義典君    井戸まさえ君

      田中  健君    鈴木 美香君

      和田 政宗君    畑野 君枝君

    …………………………………

   議員           有田 芳生君

   議員           西村智奈美君

   法務大臣         平口  洋君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平城 文啓君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 遠藤  剛君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          内野 宗揮君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    佐藤  淳君

   参考人

   (京都大学大学院法学研究科教授)         池田 公博君

   参考人

   (青山学院大学法学部教授)            葛野 尋之君

   参考人

   (桜みらい法律事務所弁護士)           上谷さくら君

   参考人

   (弁護士(日本弁護士連合会再審法改正推進室長)) 鴨志田祐美君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     鈴木 英敬君

  上川 陽子君     遠藤 寛明君

  保岡 宏武君     中川 貴元君

  山本 大地君     永田磨梨奈君

  國重  徹君     平林  晃君

  金村 龍那君     喜多 義典君

  井戸まさえ君     田中  健君

同日

 辞任         補欠選任

  遠藤 寛明君     上川 陽子君

  鈴木 英敬君     井出 庸生君

  中川 貴元君     鹿嶋 祐介君

  永田磨梨奈君     伊藤  聡君

  平林  晃君     國重  徹君

  喜多 義典君     金村 龍那君

  田中  健君     井戸まさえ君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤  聡君     森原紀代子君

  鹿嶋 祐介君     今岡  植君

同日

 辞任         補欠選任

  今岡  植君     保岡 宏武君

  森原紀代子君     山本 大地君

同日

 辞任

  福原 淳嗣君

同日

            補欠選任

             畑野 君枝君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)

 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(西村智奈美君外三名提出、衆法第九号)


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     ――――◇―――――

○井上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外三名提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、京都大学大学院法学研究科教授池田公博君、青山学院大学法学部教授葛野尋之君、桜みらい法律事務所弁護士上谷さくら君、弁護士(日本弁護士連合会再審法改正推進室長)鴨志田祐美君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、池田参考人、葛野参考人、上谷参考人、鴨志田参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず池田参考人にお願いいたします。

○池田参考人 皆様、おはようございます。京都大学の池田と申します。

 本日は、このように参考人として意見を述べる機会を与えてくださり、大変光栄に存じております。

 私は、大学では刑事訴訟法の研究、教育に携わっております。そして、今回の法律案につきましては、法制審議会刑事法部会において委員として調査審議に加わりました。

 そこでは、誤って有罪判決を受けた者を一日も早く救済するという観点から、これを妨げてきた再審手続における不透明な運用や、検察官による証拠の出し渋りを正す必要を痛感する一方で、そのような思いの実現に直結する手続に改めることが、確定判決の意義のみならず、救済手続の機能そのものを損ない得る、思わぬ反作用をもたらし得ることも認識いたしました。そして、それらのいずれも重要な要請の間でどのようにその両立を図るかは必ずしも自明ではなく、非常に重い課題として悩みながら、制度設計に係る意見を述べてまいりました。

 とはいえ、今も、一部の事案に限らず、全ての無罪となるべき者が公平かつ迅速な救済を受けられるようにすることが最優先の課題であるという認識に変わりはありません。そして、そのためには、検察官や裁判所の裁量に依存する属人的な運用から客観的なシステムへの移行を図る必要があります。

 今回の内閣提出法案は、そうした目的の達成に向けられたものであり、積極的に評価できます。そこで、以下では、内閣提出法案の内容に賛成する立場から、証拠提出命令制度の整備、開始決定に対する検察官抗告に及ぼすべき規律の在り方、そして、そのほかの手続的規律の整備等の順で意見を述べます。

 まず、現行制度の最大の問題は、審理の進捗も証拠の入手も担当裁判官の裁量次第という運用の不透明性にありました。つまり、現行制度では、裁判所ごとに審理に必要な証拠の提出を命じる権限の有無や範囲についての解釈が異なり、必要な証拠が得られないまま、例えば袴田巌さんの事件でいえば、第一次請求の第一審だけで十三年四か月もの時間が経過する事態が生じました。

 内閣提出法案は、この状況を改めるため、裁判所は、再審の請求の理由に関連すると認められる証拠について、提出を受けることの必要性の程度並びに生じるおそれのある弊害を考慮し、相当と認めるときは、検察官に対し当該証拠の提出を命じなければならないとしています。

 このうち、再審の請求の理由に関連すると認められる証拠を提出するよう命じることは、再審請求理由の存否を判断することを目的とする再審請求審の役割から導かれるものです。その上で、要件を満たす限り裁判所は提出を命じなければならないとすることで審理の迅速が確保されるとともに、明確な範囲で検察官に証拠提出を義務づけることにより、証拠を管理する検察官の裁量を排除し、隠蔽を防ぐ規律として機能します。

 さらに、その前提として、裁判官が非公開の場で、裁判所が判断に必要とする証拠やその指定する範囲の証拠の一覧表を確認するインカメラ審理を設けています。これにより、検察官の恣意的な証拠の取捨選択を許さず、裁判所が提出を命じるべき証拠の所在を迅速に特定することが可能となります。

 なお、この一覧表の提示に関しては、請求人等が裁判所に対して証拠提出命令等を請求する際の手がかりとなるものとして、検察官の保管する全ての証拠の一覧表等を請求人等に交付するよう求める意見もあります。

 もっとも、再審請求審は、請求理由と新証拠に関連する証拠を裁判所が自らの責任で取り調べるべきもので、請求人等によるその対象の選別を前提とするものではありませんので、そもそも提出命令に先立ち請求人等が一覧表を見られるようにする理由はありません。また、仮にそうするとしても、主張に関連する証拠の存否や所在を知るために必要となる証拠の範囲はおのずと限られるのであり、全証拠の一覧を知らせることは過剰であるばかりでなく、請求人からの多くの提出命令請求を誘発することとなり、これに対応する裁判所の審理の遅延ももたらしかねません。

 このほか、発せられた提出命令に不服があれば、即時抗告の申立てを通じて、提出すべき証拠の範囲が関係人の主張を踏まえて迅速に定まる規律も設けられ、これらの規律の整備を通じて、現在生じている根本的な問題への対処が図られています。

 もっとも、検察官が審理に必要と見られる証拠の開示に必ずしも前向きに応じてこなかったというこれまでの経緯に鑑みれば、検察官の保管する全ての記録の提出を義務づけるべきであるとの考えもあり得るところです。

 しかし、そのような義務づけは、請求理由の存否を判断するという請求審の構造にそぐわないだけでなく、審理の迅速を損なうおそれもあります。というのも、全記録が提出されれば、情報が多いがゆえに、かえって重要証拠が埋もれてしまい、あるいは審理の争点が拡散することともなるからです。

 その結果、先ほど一覧表に関して述べたのと同じように、当該事件の審理、判断を一層遅らせるばかりでなく、さらには、裁判制度の運営そのものを停滞させ、これから救済を受けようとする人の審理を後回しにさせることともなります。これは、全記録を扱おうとすることが構造的にもたらす弊害です。

 また、法制審では、裁判所が必要と考える証拠の提出を裁量的に命じられるようにすべきとの意見も示されました。これは、何が関連する証拠か判断がつきかねる際にも、裁判所が必要な証拠を得るための仕組みと理解されます。

 しかし、さきにも述べたように、再審請求審は請求人の主張に理由があるかどうかを判断する手続であって、裁判所が請求人の主張や新証拠の内容を離れて証拠の提出を命じることは、その趣旨に沿うものではありません。のみならず、こうした裁判所の全面的な裁量に依存する規定を設けることは、裁判所ごとの解釈の幅をもたらし、冒頭で指摘した運用の不透明性を再燃させることにつながります。

 仮に、審理の過程で、裁判所が必要性を認めるものの請求人の主張との関連が明らかでない証拠が存在する可能性に気づいたとすれば、関連性を要求する規定の下でも、請求人に主張の補充を促して関連性を認められるようにすることも可能ですから、あえて弊害をもたらすおそれのある規定を設ける必要はありません。

 さらに、提出命令制度の創設は、裁判所による開示勧告やこれに応じた検察官による任意開示といった、運用を通じた幅広い提出や開示を否定する意味を持ちませんので、改正により、現在より開示の範囲が狭まることにもなりません。

 このほか、提出された証拠の複製等の目的外使用を一律に禁止する規定を設けることは、プライバシー等の侵害への懸念に対応するものですが、同時に、検察官から、プライバシー侵害のおそれがあるといった弊害を盾とした開示を拒む口実を奪うものでもあります。

 つまり、この規律は、請求人側から見れば、請求人が必要な証拠を迅速に入手するためのてことして機能する、迅速な救済にとって不可欠の規律です。他方で、これは証拠の生データの無秩序な公開、拡散を禁じるものであって、弁護団が内容を適切に分析、整理した上で社会に訴えかけることまで妨げるものではありませんので、妥当な規律と言えます。

 以上の規律を通じて、第一審段階での迅速な紛争解決をもたらし得る内閣提出法案の方向性は適切なものと言えます。

 次に、内閣提出法案では、再審開始決定が即時抗告の一般規定から除外され、別に、当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限り、これを行い得るとされました。こうした規律となったのは、開始決定への検察官の抗告が不必要に救済を遅延させてきたとの批判に応えたものと思われます。

 もっとも、迅速な救済を徹底するのであれば、全面的に禁止すべきであるとも主張されています。こうした抗告の一律禁止を求める声の根底にある、一日も早く確実な救済をという願いは痛切なものであり、私自身もその目的に一切の異論はありません。

 しかし、再審開始の判断には、確定により社会がこれを前提として動いている判決を見直すという判断の内容自体に重大な意味があるほか、確定を待たずして刑罰の執行を裁量的に停止する契機となるなど、付随的にも重要な影響を伴うものであることなどに鑑みれば、その正しさに疑いの余地を残すものであってよいとも言えません。

 のみならず、一律禁止には副作用があります。抗告で誤りを正せなくとも、検察官は公判で有罪立証ができるのだから問題はないと述べられることもあります。もっとも、無罪を言い渡すべき明らかな証拠の存在に検証の余地が残りながら公判に移行すれば、事実認定をめぐり、第一審を超えて上訴へと争いが継続する可能性も生じます。そうなれば、争いの場を公判に移すだけであり、救済の迅速化にはつながりません。

 そうした事態を避け、開始決定が無罪の確定という本当の救済を迅速にもたらすものとなるためには、手続自体を迅速化させるとともに、請求審段階で開始決定の正しさについて多層的な確認を経た後に開始決定を確定させることも必要なのです。

 このような観点から、今回の内閣提出法案の内容を見ると、これは検察官に抗告の機会を残す一方、それが、決定が覆されることに高度の蓋然性が認められる場合に限られることとしています。これは、多層的な検証の余地を残すことによって、開始判断の、ひいては最終的な無罪判断の確実性を高めるものです。

 同時に、こうした規定があることによって、検察官が制度上は認められる抗告をその十分な根拠がないとして断念したということ自体が、開始決定の正当性を支えることにもなるのです。さらに、抗告した旨の事実及びその理由の公表義務を課すなど、他の抗告には見られない強い要請が示されたことは、実際に慎重な検討がなされることを強く促す意味を持ちます。

 その上で、前項で述べた証拠提出命令制度を介して、一審段階で必要な証拠が全て明らかになることで、抗告審での争いが再審開始事由の存否という純粋な法的評価をめぐるものに絞り込まれること、加えて、附則三条や五条により迅速審理が強く要請されていることも併せ踏まえれば、例外的な場面で抗告がなされることとなっても、多層的な検証を迅速に可能とする手段として機能することとなります。

 そのほか、内閣提出法案は、裁判官の除斥事由を拡大し、再審請求審については原判決に関与したこと、再審公判については開始決定をもたらした請求審に関与したことをそれぞれ新たに除斥事由としました。これは、一度事件の実体について判断を下した裁判官がその判断に固執してしまうことへの懸念に鑑みると、判断の公正らしさに対する信頼を守る観点から妥当な規律です。

 また、手続の明確性に資する調査手続、いわゆるスクリーニング、審理終結等の通知制度などを始めとして、手続の明確性に資する規定が多く整備されました。これにより、請求を受けた裁判所の対応が明確になるとともに、関係人の手続的権利も明らかとなり、不透明な運用を改め、再審請求審の進行の迅速化が図られます。

 さらに、附則の二条に運用状況の五年ごとの見直しを明記したことは、適正な運用を確実かつ継続的に促す仕組みとして適切であり、評価できます。

 冒頭に述べたように、一部の事案に限らず、今も救済を待っている全ての者を想定した制度設計が必要です。

 今次内閣提出法案は、対象を絞った証拠提出の義務づけ、そのほかの手続的規律によって審理の迅速性を担保しつつ、限定的な検証の余地を残すことで、全ての救済を待つ者の不利益と刑事司法制度の円滑の阻害を防ぎながら、無罪判断の確定という真の救済を迅速に実現しようとするものとして、評価すべきものです。

 以上が私の意見です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○井上委員長 ありがとうございました。

 次に、葛野参考人にお願いいたします。

○葛野参考人 青山学院大学の葛野尋之です。

 私は、再審の研究を続けてきた研究者としての立場から、再審制度の存在意義と、請求人に対する証拠開示手続、そして証拠一覧表の提出命令の新設について意見を述べさせていただきます。

 現行の再審制度は、憲法三十九条の要請により、有罪判決の確定により刑を科された本人に有利な再審のみを認めています。利益再審に純化した再審制度の目的は、端的に、誤った有罪判決という意味の誤判を発見、是正し、無実の人、無辜を救済する点にあります。

 誤判による刑罰は、国が個人の人権を正当な理由なくして奪うことにほかなりません。憲法の求める個人としての尊厳、その基礎にある人間の尊厳を侵すものです。誤判は決して許されません。

 しかし、刑事裁判は、いかに丁寧に手続を進め、どれほど慎重に証拠を評価したとしても、誤判を完全に防ぐことはできません。それゆえ、刑事司法は、誤判の防止とともに、誤判を迅速、確実に発見し是正するためのサブシステムを備えていなければなりません。このサブシステムが再審です。

 誤判が決して許されないことからすれば、誤判を迅速、確実に発見、是正するという再審が有効に機能してこそ、刑事司法は全体としての健全性を獲得することができます。通常審とのバランス、通常審の尊重という理由から再審の機能を限定するならば、刑事司法全体の健全性が低下することになります。

 時間の関係から(3)は割愛しますが、ここで言いたかったことは、確定判決の確定力、法的安定性の尊重は確かに裁判制度を維持するために重要ですが、それを理由にして、誤判の是正を抑制し、無辜の救済を怠ることは決して許されないということでございます。

 証拠開示をめぐって、法制審再審部会の多数意見は、請求審は、裁判所が請求人の主張する再審請求理由の有無を主体的に判断するという職権主義の構造を取ることから、裁判所が再審請求理由の有無を判断するための事実取調べの一形式として、検察官に対して不提出証拠の提出を命じる手続を採用すべきである、提出命令の対象は、再審請求理由に関連する裁判所の審理に必要な証拠に限られるべきだという立場を取りました。

 これに対して、請求人開示型の枠組みは、再審請求理由と関連せず、裁判所がその有無を判断するに当たり必要でない不提出証拠までをも請求人に直接開示すべきとするものであるから、請求審の職権主義構造に適合しないという意見が多数を占めました。

 こうして裁判所に対する証拠提出命令が法制審答申において採用され、閣法の中に具体化されています。

 しかし、請求審の手続を職権主義一色で性格づけることはできません。

 再審請求において、唯一の当事者である再審請求人が本質的とも言える重要な役割を担っています。

 すなわち、請求人の再審請求によって、請求審は始動します。請求人は、再審請求に際して、裁判所に対して明白な新証拠を提出し、新証拠に基づき、再審請求事由に当たる具体的な事実の主張としての再審請求理由を提示しなければなりません。請求人は、請求審において、その主張する再審請求理由の立証を求められます。裁判所は、請求人の主張する再審請求理由に拘束されて、再審請求理由が認められるかどうかを判断することによって、再審開始か請求棄却かを決定します。再審請求の過程で、請求人は、再審請求の際に提出したものとは異なる新たな新証拠に基づき、再審請求理由を追加、修正することができますが、そのときは、裁判所は、請求人が追加、修正した再審請求理由の有無を判断することになります。

 法制審の再審部会においては、請求人の主張する再審請求理由こそが、請求審の審判の対象だという理解も示されました。これらの点において、請求人は極めて重要な役割を担っています。このことは、請求人が重い負担を課されていることにほかなりません。請求人が担う役割の重要性からすれば、請求人がその役割を十全に果たすことができてこそ、請求手続は有効に機能するということになります。

 しかし、現在、請求人は、請求準備の段階でも、請求審の過程でも、捜査、訴追機関の手元に残されている不提出記録へのアクセスを厳しく限定されています。また、実際に、弁護人の援助を受けることもまれです。そのため、請求審において、請求人はその役割を十全に果たすことが著しく困難です。請求人が課されている重い負担に配慮して、請求人がその役割を十全に果たすことを担保する手続保障が必要とされます。

 このような手続保障として、閣法にある、裁判所に対する証拠提出命令には限界があります。提出命令の対象は、請求人の主張する再審請求理由に関連しており、裁判所の判断にとって必要とされる証拠に限られます。

 福井事件においては、テレビ歌番組の放映内容に関する捜査報告書が開示され、それにより、知人の目撃供述の信用性が決定的に減殺されました。この例のように、過去、請求人や弁護人が、裁判所に対して、再審請求理由と関連する範囲に限定することなく、広く不提出証拠を開示するよう勧告することを求め、裁判所がその要求に応えて、検察官に対して広く開示するよう勧告した結果、確定判決の有罪認定に合理的疑いを生じさせるような証拠が開示され、再審開始の決定を導いた実例が多くあります。関連性、必要性の限定をかけることによって、有罪認定に合理的疑いを生じさせる証拠が開示されないままに終わるおそれがあります。

 確かに、審理の経過に伴い、関連性があるとされる証拠の範囲が広がる可能性はあります。しかし、再審請求理由との関連性は、当初、請求人が再審請求に際して提示した再審請求理由を起点にして判断されます。請求人は請求準備の段階で不提出証拠にアクセスすることができず、自ら明白な新証拠を用意して再審請求理由を構成することが困難ですから、再審請求に際して実際に提示できた再審請求理由と関連する証拠の範囲はかなり限定されたものにならざるを得ません。

 さらに、請求人が弁護人を選任していない場合には、請求人が裁判所に提出された証拠を閲覧、謄写することは困難であります。

 再審請求の実務に携わった元裁判官たちの意見によれば、請求人、弁護人が実際に証拠の内容を検討してこそ、提出証拠の中に再審請求の立証に有用なものがあること、あるいは、再審請求理由の追加、変更の基礎にすべき新たな新証拠があることを正しく判断することもできます。私もそのように理解しております。

 これからすると、請求人が担う役割を十全に果たすための手続保障として、閣法にある証拠提出命令には大きな限界があると言わざるを得ません。有罪認定に合理的疑いを生じさせる証拠が開示されないままに終わるおそれが残ります。

 有罪認定に合理的疑いを生じさせる証拠は、日本も批准している国際自由権規約十四条三項により、通常審において防御の準備のために開示するよう要求されています。布川事件国賠請求訴訟の判決は、裁判結果に影響を及ぼす可能性が明白な証拠については、被告人、弁護人から具体的な開示請求がなくとも、また、その可能性が明白でない場合でも、具体的な開示請求があるときは、検察官は開示義務を負うとしていました。

 通常審において開示されるべき証拠が開示されなかった場合には、有罪判決の確定後、検察官は開示義務を継続して負うというべきです。検察官が開示義務を遵守していれば、請求人は、本来ならば通常審で証拠の開示を受けられたはずですから、検察官が義務に違反して開示しなかったときは、確定後、再審請求のために開示を受ける機会を保障されるべきです。有罪認定に合理的疑いを生じさせる証拠がより確実に開示されることを保障する手続が必要とされます。

 請求人がその役割を十全に果たすことを担保する手続保障として、請求審の過程で、裁判所が、請求人の請求又は職権により、検察官に対して、請求人が開示を受ける必要のある証拠の開示を命じることができることとすべきであります。このとき、不提出証拠の中にある確定判決の有罪認定に合理的疑いを提起する証拠は、元々検察官が通常審において開示義務を負っていたものですから、開示命令の対象となります。

 請求人は、開示された証拠にアクセスすることにより、再審請求理由の立証に役立つ証拠を獲得することができます。あるいは、新たな新証拠を発見、獲得して、それに基づき再審請求理由を追加、修正することができます。

 請求人が開示請求権を実効的に行使し得るようにするために、また、開示手続を円滑化、効率化させるために、裁判所が、請求人の請求又は職権により、検察官に対して検察官の保管する証拠の一覧表の提出を命じなければならないとする手続を設けるべきです。

 請求人及び裁判所が、検察官がどのような証拠を保管しているのかを把握できてこそ、請求人は開示請求権を実効的に行使することができ、裁判所も開示を命じるべき対象を正確に判断することができます。過去の実務が示しているように、請求人が検察官の保管証拠を把握できないまま、保管証拠を想像して、いわば手探りで開示請求をするということになると、開示まで長時間を要し、非効率であり、また、開示されるべき証拠が未開示に終わるおそれを生みます。二〇一六年の刑訴法改正により、通常審の公判前整理手続において、証拠一覧表の開示手続が設けられました。これに倣うべきです。

 法制審再審部会においては、証拠一覧表の開示手続の提案に対して、裁判所が請求人の主張する再審請求理由の有無を判断するという請求審の構造に整合しないという批判がなされ、閣法は、裁判所が提出命令を発するかどうかを判断するために一覧表の提示を命じる手続を設けるにとどまりました。

 しかし、今必要とされている一覧表の提出手続は、請求人が主張している再審請求理由と関連する証拠には限定されない、請求人のための証拠開示の手続を円滑化、効率化し、請求人の開示請求権を実効化するためのものですから、閣法の裁判所に対する提出命令を前提としたさきの批判は妥当しません。

 再審議連の法案は、請求人の開示請求の前提として、送致書類目録の開示を定めています。証拠一覧表でなく、送致書類目録の提出手続とすることも可能なように思います。

 証拠一覧表の提出命令は、実は、閣法にある証拠提出命令についても、請求人が請求権を実効的に行使することを保障し、手続を円滑化、効率化することに寄与します。この点からも、是非とも創設すべき手続であります。

 裁判長の訴訟指揮権に基づく開示命令を発することができるかについて、検察官は消極的立場を取っていますから、開示命令を定める規定を置く必要があります。

 法制審答申は、附帯事項として、裁判所に対する証拠提出命令を制度化した後も、裁判所による証拠提出、開示の勧告、検察官による任意開示が適切に行われることが期待されるとしました。このことは、法制審答申が、請求人のための証拠開示が必要、有用であって、請求人の必要に応えるための証拠開示が裁判所の判断のための証拠提出命令と併存し得ることを承認したということを意味しています。

 しかし、従前の運用から見ると、やはり大きな限界があります。請求人のために開示されるべき証拠が十分に開示されることを保障するためには、開示命令の手続が必要であります。

 実際、提出、開示の勧告に対する積極性には、裁判所により大きな差異がありました。検察官は、裁判所の開示勧告に従わないこともありましたし、任意開示の対象についても、再審請求理由との関連性を要求することもありました。閣法における証拠提出命令の存在によって、そのような限定の可能性が一層高まるかもしれません。開示命令の手続を設けることは、裁判所の提出、開示勧告、検察官の任意開示の実効的な機能を担保するということにもなるでしょう。

 新設を提案しました請求人に対する証拠開示の命令及び証拠一覧表の提出命令と、閣法にある裁判所の判断のための証拠提出命令とは、目的、根拠、対象において異なるものです。それゆえ、両者は併存が可能であり、併存させるべきものです。両手続が共に働くことによって、再審請求手続の有効な機能が保障され、再審は、迅速かつ確実な誤判の是正、無辜の救済という目的をよりよく果たすことができます。

 以上で私の意見陳述を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

○井上委員長 ありがとうございました。

 次に、上谷参考人にお願いいたします。

○上谷参考人 皆様、おはようございます。第一東京弁護士会所属、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長の弁護士の上谷さくらと申します。

 専門は犯罪被害者支援で、取扱事件の半分以上が性犯罪被害です。次に、殺人や交通死亡事故などの人が亡くなる事件を多く扱っています。また、犯罪を犯した人の更生にも関心を持っており、平成二十八年から保護司として活動しております。今年で十年になります。

 令和二年六月から令和三年五月まで、性犯罪に関する刑事法検討会の委員を務め、令和五年刑事法改正に関わりました。また、現在は、こども家庭庁のこども性暴力防止法施行検討委員会の委員を務めております。裁判所、検察庁、警察庁などで被害者支援に関する研修講師も行っています。

 本日は、私のそのような経験に基づき、被害者の観点から再審法改正について意見を述べたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、この改正案についての基本的な考え方を述べた上で、個別の論点についての意見を述べさせていただきます。

 再審制度の改正に当たっては、被害者の観点を入れていただきたいです。

 犯罪被害者は、自ら好んで被害者になるわけではなく、ある日突然、不幸にも犯罪に巻き込まれて被害者になるのです。犯罪被害に遭うと、御遺族や被害者本人は、それまでの人生が一変します。心身に強いダメージを受け、PTSDを発症して日常生活が送れなくなったり、学校や仕事を辞めざるを得なかったり、夢を諦めたり、貧困に陥ったりします。人間関係がうまくいかなくなり、孤立したり家庭に居場所がなくなったりすることもあります。被害回復には多大な困難を伴います。

 しかし、事件が起訴されて刑事事件になり、判決が確定することは、一つの区切りになります。被害者の方にとっては、有罪判決が出ても、刑が軽過ぎるということでショックを受けることはあります。しかし、刑が軽過ぎるということがあったとしても、有罪判決が出され、それが確定することは、一つの区切りにはなるのです。

 前を向いていこうと決意したときに、安易に再審開始決定がされたら、どう感じるでしょうか。また刑事事件に巻き込まれることになります。御遺族は心をかき乱されるでしょうし、被害者は、また尋問されなければならないのかという怒りや、なぜあの加害者は反省しないのか、仕返しに来るのではないかという恐怖心を抱くこともあるでしょう。いつまでも裁判が終わらないというのは、犯罪被害者にとっては大きな二次被害です。

 そして、事件の証拠が誰にでも見られてしまうようなことになれば、それは重大なプライバシー侵害であり、それ自体が犯罪被害よりも重大な問題をもたらす危険が高いのです。

 次に、検察官の抗告禁止について述べます。

 現在、検察官の不服申立てである抗告については、原則禁止とし、当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限り、例外的に認めるという方向で議論が進んでいると聞いています。また、全面禁止にすべきという意見もあると聞いております。

 しかし、私は、被害者支援の立場から、抗告禁止には反対です。

 まず、抗告禁止を主張する意見の根拠として、再審手続が長期化していることが挙げられていますが、それだけが長期化の原因とは思えません。現在の刑事訴訟法には再審に関する手続規定がほとんどないことや、争点が拡散して複雑化したり、古い事件であるため鑑定やその結果の分析、判断に時間を要するなど、多くの要素が原因になっているはずです。

 また、人は必ずミスをしますから、再審開始決定をした裁判官の判断が一〇〇%正しいことを前提とする制度には賛成できません。

 もし誤って再審開始決定がなされた場合、抗告できないと、また通常審からやり直すことになります。被害者にとっては、いつまでも裁判が終わらない事態に巻き込まれることになります。被害者が再度証言しなければならないことになれば、被害者の負担は甚大で、せっかく判決が確定して被害に一区切りをつけて日常生活を取り戻せたことが、水の泡になってしまいます。特に、幼い頃に起きた性被害の場合など、またその子を法廷に立たせて証言させることが望ましいのでしょうか。再審で証言を求められても、時間の経過により事件当時の記憶は相当減退していますから、真実発見に資することにもなりません。

 仮に冤罪であれば、確定判決で犯人とされた人は救済され、真犯人が処罰されるべきですが、既に確定した判決があり、それが正しかった可能性がある中で、十分な議論が尽くされず、不服を言う機会もなく、納得できない形で裁判を一からやり直すことが決まり、思い出したくもない記憶を再び思い起こさなければならないことは問題だと思います。

 通常審で、無罪の可能性があるから早期に被告人を手続から解放するために一審で終わるべきなどという議論はありません。もちろん無駄に長期化することは避けるべきですが、再審においては、一度は有罪の裁判が確定しているのですから、慎重に議論を尽くすことが国民の納得を得るためにも必要だと思います。

 特に性犯罪被害者は、事案の性質上、被害に遭ったことを親しい人にも黙っていることが通常です。親や配偶者、恋人にも黙っている人もいますし、親しい人に知られたくないため、被害申告せずに泣き寝入りすることを選ぶ人もいます。刑事事件の判決が確定した後、被害事実を隠して結婚する人も少なくありません。

 それが、再審開始が始まり、通常審からやり直さなければならないということで、検察から久しぶりに連絡があったときの被害者の衝撃は計り知れません。大事な人に過去の被害を知られたくないという利益は最大限保護されるべきです。

 もし、再審請求する人の多くが冤罪被害者であると考えている方がいるならば、それは実態と大きくかけ離れています。実態を正しく理解していれば、検察官の抗告を禁止するという発想にはならないと思います。

 次に、証拠開示について述べます。

 再審請求審の証拠開示の範囲を広げる点について述べます。

 刑事事件記録には、事件当事者のプライバシーが多く記載されています。事件と無関係のものもたくさんあります。被害者は、本当は言いたくないような話であっても、捜査機関から事件を立件するために必要かもしれないと言われ、犯人を検挙してほしい一心で証拠を提出しています。まさか将来それが全部開示されるなんて夢にも思っていません。

 再審請求審でそういったものまで開示せよということになれば、被害者は、確定判決が出されて被害に一区切りをつけた後に事件とは無関係なプライバシー情報まで開示されることになりますから、日常生活の平穏を害されます。そんなことになってしまうくらいであれば、事件が起きても捜査協力しないという人が増えるのではないでしょうか。また、事件と無関係な証拠が開示され、その証拠価値などについて審理することになれば、そのこと自体が再審の長期化を招くことになるのではないでしょうか。

 次に、証拠の目的外使用について述べます。

 目的外使用を認める意見には絶対反対です。

 刑事事件記録には事件当事者のプライバシーが多く記載されていますし、事件発生直後は幅広に証拠採取しますから、事件とは無関係なものも多数あります。

 特に性被害の場合、証拠として性的画像や映像が決定的証拠となっている事件が多数あります。性被害そのものよりも画像などが残り続ける方が怖い、どうしても画像を消してほしいと訴える方がとても多いのです。警察や検察がそれらを押収しても、どこか別のところに画像が隠されているのではないか、既にどこかに流出しているのではないかと不安に感じる人が多いのです。

 画像は、一旦ネットに流出すると、完全に削除することは事実上不可能です。

 令和五年刑事法改正で、検察官が行政手続によって性的画像などを没収したり消去したりできるようになりました。その趣旨は、余罪の証拠など、刑事事件では没収できないものを行政手続で没収できるようにするためですが、その規定があることで被害者はたくさんの安心を得ることができています。

 それなのに、性的画像などが弁護人や警察、検察、裁判官以外の一般の人に見られることになったら、性的画像を入手する目的で冤罪被害者の支援を装う人が出てくる可能性があります。その可能性を恐れ、被害申告自体をためらい、泣き寝入りを選ぶ人も出てくると思います。

 今、被害者の同意を得ない性的画像がネット上にあふれており、売買もされています。その画像が刑事事件の証拠であれば、通常より高く売れるかもしれません。そして、世界中にその画像などが拡散してしまったら、被害者はどのようにして生きていけばいいのでしょうか。

 そして、目的外使用がなされると、捜査協力が得られず、処罰が困難になることが危惧される可能性があることも指摘させていただきます。

 最後に、被害者も冤罪を望んではいません。犯人ではない人が処罰されても被害回復にはならないからです。

 しかし、刑事法の改正を検討する際、被害者の立場を十分に考慮しないことは問題があります。ある改正をする場合、被害者に不必要に負担がかかったり、被害者が理不尽な思いをさせられることがないかどうか、しっかりと検討していただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

○井上委員長 ありがとうございました。

 次に、鴨志田参考人にお願いいたします。

○鴨志田参考人 おはようございます。弁護士の鴨志田祐美と申します。

 意見を申し述べる前に、二つ申し上げたいことがあります。

 一つは、今日配付しているレジュメなんですけれども、緊張の余り、前の肩書を書いてしまいまして、レジュメの方には再審法改正実現本部本部長代行という一つ前の肩書が掲載されています。今日、気づきました。本当に申し訳ありません。私の今の肩書は、こちらの紙の方に書いてある日弁連再審法改正推進室長でございます。おわびして訂正をいたします。

 もう一つは、今日、配付資料としてこちらのパンフレットをお手元に置かせていただいています。これは、様々な再審事件の経緯であったり、証拠開示の経緯や抗告の実情であったり、その再審事件がどのような経緯をたどったのかという、生きた立法事実です。今日は、私は、時間の関係でこのような立法事実を全てつまびらかにお話しすることができませんので、是非こちらのパンフレットを後ほどお読みいただきたいということをお願いしたいと思います。

 それでは、本題に入らせていただきます。

 まず何よりも、本日は大変貴重な機会を賜り、厚く御礼申し上げます。

 私は、二〇〇二年十一月に司法試験に合格し、二〇〇四年に鹿児島県弁護士会に登録、現在は京都弁護士会に所属しております。司法修習生として配属された事務所が鹿児島の著名再審事件である大崎事件の当時の弁護団長の事務所だったという御縁で、弁護士登録の直後から現在に至るまで、約二十二年間にわたり大崎事件の再審弁護活動を行っております。

 再審法改正ということについても、その事件の弁護をやる中で様々な問題を知るに至ったことが契機です。特に、静岡地裁で袴田巌さんに再審開始決定がされたことがきっかけとなって二〇一四年に日弁連に設置された、再審における証拠開示に関する特別部会の座長となったのをきっかけに、このレジュメにあるような役職を経て現在に至っております。

 また、昨年四月から今年二月まで設置されていた法制審議会刑事法(再審関係)部会で、池田先生とともに委員も務めさせていただきました。

 法制審の再審部会には日弁連推薦の委員、幹事が四名おりましたけれども、実は、本格的な再審弁護の経験があるのは私一人だけでした。すなわち、この再審部会、メンバーは二十五人いたわけですけれども、再審弁護人は私だけだったということです。

 そのような次第ですので、本日も、私は再審弁護人という立場からお話をさせていただきたいと思います。

 まず、大崎事件が示す現行再審制度の問題点についてです。

 大崎事件が第二次再審を申し立てた二〇一〇年の頃から、布川事件、東京電力女性社員殺害事件、袴田事件など、証拠開示によって再審開始に至る事件が相次ぎました。そこで、大崎事件も、弁護団は繰り返し証拠開示請求を行いました。しかし、検察官は、第一次再審で任意開示した証拠以外は存在しない見込み、警察は、存在したとしても全て検察に送致したと回答し、鹿児島地裁の当時の裁判長は、その言葉をうのみにして何らの訴訟指揮もしないまま、再審請求を棄却しました。

 即時抗告審の福岡高裁宮崎支部には、袴田事件のあの五点の衣類のカラー写真などの証拠開示を実現させた当時の裁判長が静岡地裁から異動してきていました。私たちは再びこの証拠開示を強く求めたところ、弁護人の請求する証拠の存否を調査し、リストを作って弁護人に開示せよという趣旨の、書面による証拠開示勧告を出してくれました。しかし、検察官はこれに激しく抵抗し、リストの開示にはかたくなに応じませんでしたが、個別に二百十三点の証拠を開示しました。その中には、全て検察官に送致したと回答していた鹿児島県警から見つかった証拠も三十点以上含まれていました。

 この中で、証拠の標目の一点として、四十六本のネガフィルムというものがありました。検察官は、このとき、ネガの現物は開示せず、フィルムケースの中で腐食が進んで写真がプリントできないものがあったとして、ネガからプリントできた写真を五百枚程度提出してきました。そして、これらの開示の後、検察官は、大崎事件に関する証拠はもはや存在しない、不見当ではなく不存在であると公言しました。

 第三次再審において、弁護団は、第二次再審では現物の開示を受けられなかった四十六本のネガフィルムの現物の開示を求めたところ、鹿児島地裁は検察官にネガの提出を勧告し、提出されたネガの現物を直ちに弁護人に貸し出しました。弁護団が写真店にプリントを依頼したところ、ネガの全てから千二百四十三枚の写真を印画することができました。

 また、開示されたネガフィルムが入っていたフィルムケースに通し番号が振ってあったんですけれども、二十一番というのが欠けていました。これを契機として裁判所が更に証拠開示勧告を行ったところ、十八本のネガフィルムが新たに警察から開示されました。第二次再審で検察官が裁判所の勧告に従いリストを開示していれば、また、当初からネガの現物を弁護人に直接開示していれば、このような漏れはなかったのではないでしょうか。

 しかも、確定判決の事実認定と明らかに矛盾する関係者の現場再現写真のネガフィルムが、事件から三十七年の時を経て、このときに、第三次再審で初めて開示されたのです。これがもし第一次再審段階で開示されていたら、第一次再審の開始決定は即時抗告審で覆ることはなかったかもしれません。

 証拠が開示されない場合はもとより、証拠が五月雨式に開示され、長い期間を要することで、弁護人が適切な主張を組み立てられない、ひいては冤罪被害の救済が困難になってしまうという現実があるということです。

 また、大崎事件では、これまで地裁、高裁で合わせて三度、再審開始の判断がされています。しかし、その全てに検察官が抗告を申し立て、上級審で再審開始が取り消されました。最初の再審開始決定が出たのは二十四年前の二〇〇二年の三月、私が司法試験に合格するより前でした。事件当時五十二歳だった大崎事件の元被告人、原口アヤ子さんは、この六月で九十九歳になります。現在、第五次再審請求審が鹿児島地裁に係属しています。

 私は、ここで、アヤ子さんは無罪だというアピールをしたいのではありません。再審開始決定は無罪判決ではありません。確定した有罪判決に合理的な疑いが生じているから裁判をやり直すべきだという決定なのです。これまでに三つの裁判体の合計九人の裁判官が、もとい、第四次再審では最高裁で再審開始すべきという反対意見を書いた宇賀克也裁判官がおりましたので、十人の裁判官が裁判をやり直すべきという判断をしたのに、一度も自白せず、満期服役し、間もなく九十九歳になろうとする原口さんを再審公判の法廷に立たせないままでよいのかということが言いたいのです。

 大崎事件は、証拠開示のルールがないことにより、裁判官ごとの再審格差が生じ、再審開始決定が出ても検察官の抗告が可能だという、まさに現行再審制度に翻弄された事件と言うことができます。

 そこで、この再審制度の目的や立法事実を踏まえた法改正の必要性について述べたいと思います。

 私は、冤罪被害者に寄り添う再審弁護人という立場からですので、今回提出された閣法では、冤罪被害者を再審手続によって迅速かつ確実に救済することは難しいと考えています。

 では、どのような法案とすべきかということですが、まず、証拠開示については、閣法には、これまでも参考人の方々がおっしゃったように、証拠の提出命令制度というのが設けられました。一定の場合には裁判所の検察官に対する証拠提出命令が義務づけられたわけですが、その範囲は再審請求理由との関連性、必要性、相当性といったものに限定されており、再審請求人が証拠提出命令を請求する場合には、これらを疎明しなければなりません。

 しかし、実際の事件において、請求人、弁護人は、捜査機関にどのような証拠が眠っているかを把握することはできません。手探りで個別の証拠の存否を模索し、膨大な時間と労力をかけて証拠開示を実現させてきました。

 布川事件では、第二次再審だけで合計二十一回もの証拠開示請求を行って、四年以上かけて五月雨式に個別の証拠の開示を実現させました。

 東京電力女性社員殺害事件では、度重なる証拠開示請求の結果、五月雨式に開示された証拠が蓄積され、申立てから四年半以上経過してようやく裁判所が三者協議を開き、再審開始決定までに七年以上がかかりました。

 福井女子中学生事件でも、第一次再審でも九十五点の証拠が開示されていましたが、第二次再審で新たに二百八十七点の証拠が裁判所の訴訟指揮によって開示され、その無罪を言い渡すべき明らかな証拠と認定されたのは、全て第二次再審で初めて開示された証拠でした。もしこれが第一次再審の段階で開示されていれば、この事件は第一次再審の段階で解決していたのではないでしょうか。

 また、日野町事件では、ほかの再審事件とは異なり、検察官の保管証拠について第一次再審段階で証拠のリストが作成されて、これは検察官が作成したんですけれども、裁判所に提示されていました。そういう意味ではこの事件は画期的だったわけですが、第二次再審で初めて開示されたのは、警察から検察に送られていない未送致証拠でした。これによって再審が動いたという経緯もあります。

 証拠が一度に開示されなければ、請求人、弁護人は的確な再審請求理由を組み立てることができず、審理が長期化し、冤罪被害の救済の遅れを招きます。再審請求人に新証拠を提出するという重い負担を課している以上、まずは捜査機関にどのような証拠が保管されているのか、個々の証拠開示命令に先んじて、まずは証拠の全体像を把握できるリストを開示させることが不可欠です。通常審には刑訴法三百十六条の十四の規定により証拠の一覧表の交付が認められていますから、これに類する条項の追加が再審手続にも必要と考えます。

 また、布川事件で開示された取調べの録音テープを請求人本人が直接聞いたことで初めて、そのテープには多数の編集痕があるということが明らかになったように、その証拠が持つ証拠価値は請求人本人が確認しなければ分からないということもあります。裁判所への提出だけでなく、請求人への直接開示命令を定める条項も必要です。

 さらに、請求人のみならず、実は裁判所も捜査機関がどのような証拠を保有しているのかは分かりません。なので、裁判所の職権による提出命令に関連性といった要件の縛りをかけると、裁判所が必要な証拠を把握できず、開示漏れが生じるおそれもあります。実際の再審事件で再審開始、再審無罪につながった開示証拠は、請求人も裁判所も想定していなかったものであるということが多いのです。

 これらのことから、閣法の証拠提出命令の条文に、裁判所の裁量により、検察官に対し、請求人への直接開示を命じる権限を与える規定も加えるということが不可欠だと思います。

 二十七日、おとといの本委員会の質疑において、平口法務大臣は、裁判所による証拠の提出、勧告等の従来の実務運用を否定するものではなく、法制審の答申においては、そのことを前提として、従来の実務運用も引き続き適切に行われることを期する趣旨で附帯事項が盛り込まれた旨答弁されました。裁判所の広範な裁量による、また、請求人への直接開示を認める運用を否定しないという答弁なんですけれども、ということであれば、それを条文化すればよいということだと思います。明文規定がなければ、これまで同様、証拠開示は当たった裁判官次第という再審格差は解消されません。

 時間の関係がございますので、目的外使用と調査手続については、後の議員の先生方からの質問にお答えする形にしたいと思います。

 検察官の不服申立てについて、一言申し上げておきます。

 検察官の抗告によって、初めて再審開始決定がされてから最終的に再審開始が確定するまでに、袴田事件は九年、福井事件は十三年、日野町事件は七年七か月、免田事件は二十四年四か月かかっています。検察官の抗告が冤罪被害者の迅速な救済を阻んだのは、紛れもない立法事実です。

 自民党の事前審査の激しい議論において、再審の決定についての即時抗告ができる場合を定めた現行法四百五十条から第四百四十八条第一項を削除するという修正が、これは再審開始決定のことですけれども、検察官の即時抗告が制限されるということになった、これはすばらしい成果だと思っています。

 しかし、一昨日、おとといの質疑において、法務省は、例外的に抗告ができる場合、新設条文の四百五十条の二の効力について、検察官に対する行為規範である旨の答弁をされました。

 四百五十条で抗告が原則禁止となった以上、同条の二は新たに抗告できる場合を創設する規定ということになります。それが裁判規範ではなく検察官の自主規制に委ねるような行為規範であるとすれば、抗告禁止は全くの骨抜きになってしまいます。仮にこのような解釈を改めないのであれば、四百五十条の二を削除するとともに、抗告は全面禁止すべきだと思います。

 いま一度、誰のための、何のための再審法改正かということを考えていただきたいと思います。

 個人の尊厳を究極の価値に置く日本国憲法の下で、無実なのに処罰されていい人間など一人もいていいはずはないというのは当然のことです。刑事司法において、無実の人を迅速かつ確実に救済することは絶対的な正義であり、これに異を唱える者はいないでしょう。ですから、今回の法改正は、何よりもまず冤罪被害者のために、冤罪被害者を迅速、確実に救済するためのものでなければなりません。

 しかし、再審法改正は、犯罪被害者や御遺族のためのものでもあります。犯罪被害者や御遺族と冤罪被害者は対立するものではなく、どちらもゆがんだ刑事司法の犠牲者と言うことができます。犯罪被害者や御遺族の憎しみや悲しみは、誤った裁判によって処罰された無実の人に対してではなく、真犯人に向けられているはずです。冤罪は、真に憎むべき真犯人を取り逃がしているという意味で二重の不正義であり、これを解消するには、真実発見のための証拠が開示され、裁判を見直す必要が生じたならば直ちに被害者も参加できる公開の法廷で再審公判を行い、迅速に決着をつけることが必要です。再審の長期化が、時効や真犯人の死亡により真犯人の適正な処罰を妨げることがないようにするためにも、再審法改正は必要なのです。

 そして、冤罪は、いつ、誰の身に降りかかるか分かりません。自分や大切な人が冤罪に巻き込まれたとき、早く助けてほしいと誰もが思うでしょう。再審法改正は、全ての国民にとって、自分のために必要なものです。

 さらに、我が国では一般市民が裁判員として刑事裁判に参加します。自分が裁判員として関わった刑事裁判で有罪判決を言い渡した被告人が、無実であると分かったのに救済されずに何十年も獄中で苦しめられているような事態は、善良な市民であればあるほど耐え難いことではないでしょうか。

 再審法改正は、冤罪被害者を救うだけでなく、冤罪加害者になってしまうリスクを負う全ての国民にとっても福音となるものです。

 最後に、国会の皆様方におかれましては、刑訴法施行から七十七年目にして初めて再審制度にメスが入るという歴史的な重みをかみしめながら、唯一の立法機関の構成員である誇りと矜持を持って、後の世で、あのときが日本の刑事司法の転換点だったと称賛されるような改正を実現していただくことを切に願っています。

 再審法改正の議論は、再審請求手続において検察官が証拠を開示しないことにより、また、再審開始決定に対し検察官が抗告を行うことで、冤罪被害者の救済までに膨大な年月と労力を要することに対する深刻な懸念から始まったものです。そのような法改正を、いわば規制の対象となる検察官と一体となっている法務省の手に任せ切っていては、人権保障と三権分立を定めた日本国憲法の下でのあるべき刑事手続は構築できないのではないでしょうか。

 今回の再審法改正が、この国の刑事司法を法務・検察から国民の手に、そして国民の代表である国会議員の手に取り戻すための歴史的な第一歩となることを心より期待しております。

 ありがとうございました。(拍手)

○井上委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

○井上委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田潤一君。

○神田委員 自由民主党、青森二区選出の神田潤一です。

 まずは、四人の参考人の皆さん、お忙しい中、朝早くからおいでをいただき、また、貴重な御意見を我々に御教示いただきまして、ありがとうございます。

 私は、今回の刑事訴訟法の見直し、改正案につきましては、法律の構造論としても、運用実務としても、また、今御指摘のあったような、再審を請求する方のお気持ち、一方で被害者の皆さんのお気持ちなど、非常に様々な面で難しい側面があり、また、非常に難しい論点がまだ残っているというふうに感じています。

 一方で、私は法律の専門家ではありませんが、十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれという言葉は聞いたことがあります。逮捕されてから再審無罪判決の確定まで、袴田事件では五十八年、福井女子中学生殺人事件でも三十八年がかかり、また、日野町事件では、再審請求者が逮捕から二十三年後に亡くなり、それから更に十五年たった今年二月に再審開始が決定されました。そうしたことに思いを致すときに、先ほどの、十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれという言葉の重みが更に増すように感じられます。

 最初の参考人質疑者として最初の質問を伺いたいと思いますが、再審の意義についてです。これは、上谷参考人は比較的明確におっしゃいましたので、上谷参考人を除く三人の皆さんに伺います。

 そもそも、無罪となるべき無辜の者、あるいは冤罪の被害者として救済すべき者はまだまだたくさんいるんだというお立場でしょうか。それとも、これまで再審無罪になった事例など、ある程度救われてきた、一方で、時間がかかり過ぎることが問題であり、迅速に救済すべき手続を今回規定すべきというお立場でしょうか。ほかにも立場がおありになるかもしれませんが、もし、まだまだたくさんいるんだという前者のお立場の場合には、そうお考えになる理由も含めて、簡潔に伺えればと思います。

 池田参考人から、葛野参考人、鴨志田参考人にお願いいたします。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 再審の意義は、誤った有罪判決からの救済ということで、確定判決を見直すことによって、誤った有罪判決の意味を失わせるという点にあります。

 その上で、現在もなお誤った有罪判決に苦しまれている方がどの程度の規模おられるかということについては、私としては、それは知り得ない立場にある、それは事案によって様々でありますので知り得ない立場にありますが、現在の構造がそのような方々の救済を妨げているというところがあるとすれば、それは早急に除去されるべきである、そのように考えております。

○葛野参考人 ただいまの御質問についてですけれども、実は両方あるというふうに思います。

 まず、弁護人の援助を受けながら再審請求をした人が、再審開始決定を確定させ、再審公判で無罪判決を得るまでに、想像を絶するほど労力と時間がかかってしまう、そこを何とかしないといけないというのがまず一つの課題であります。

 もう一つですけれども、これはどれくらいいるかというのは分かりませんが、先ほど申しましたように、再審請求をすること、それ自体が非常に困難なことでございます。大多数の再審請求人には弁護人がついていません。弁護人の援助を実際には受けられていないんですね。

 しかも、捜査機関が収集して通常審の裁判で提出しなかった不提出記録、その中に、これまでの再審開始事例では、無罪につながるような有力な証拠が残されていたわけでございますが、そのような証拠に再審請求準備のためにアクセスすることがほとんどできません。そうすると、請求人が、明白な新証拠を自ら用意して、そしてしっかりとした再審請求理由を立てて請求をすること自体が非常に困難ですので、全ての無辜、無実の人が再審請求によって確実に救済されている、時間はかかるけれども救済されているというふうに思うのは難しいということが言えると思います。

 以上でございます。

○鴨志田参考人 私も、葛野参考人同様、両方のケースがあるというふうに考えております。

 まず、今日まさにお配りをさせていただいたこのパンフレット、一枚めくったところに日本地図がありますけれども、この地図の中で、赤い字で囲ってあるものは再審無罪になった事件です。青いものは現在もまだ係属中の事件ということになります。これらは、比較的名前が知れた、弁護団もついていて、支援者もついている、また日弁連の支援を取れているといった、そういう事件なんです。それだけでも、これだけあるということなんです。

 今、葛野参考人がおっしゃったように、日本では、再審制度に国選弁護制度の適用がありません。また、再審というのは準備段階が非常に大変なんですね。だって、新たな証拠、無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに携えて、請求人の方がその証拠を準備して裁判所の門をたたかなければいけないわけなんですけれども、では、獄中にいる人が、弁護人の援助を受けずにそのような新証拠を集める、発見するということができるかということです。

 再審の準備段階で弁護人がつけられて、ある程度の証拠に準備段階でアクセスできるという話になれば、先ほど時間の関係で割愛した調査手続というものである程度スクリーニングをかけるということにも合理性があるんですが、前提として、まだ形にならない、本人が一生懸命頑張って無実を叫びたいけれども、再審請求の形にできないレベルでとどまってしまっている事件というのは、今のたてつけの下では少なくないのではないかというふうに思います。よしんば弁護人がついたとしても何十年かかっているというのが現実なわけなので、両方のものが存在するというのは私も同意見でございます。

 以上です。

○神田委員 ありがとうございます。

 池田参考人と鴨志田参考人に伺いたいと思います。

 お二人は、法制審議会の刑事法の再審関係の部会の委員でいらっしゃいました。当初の法制審議会の議論を経て作成された法務省の当初案、改正法の案と、その後、自由民主党で三十時間以上をかけて議論をして修正された現在の内閣法案、閣法の改正案について、そのプロセスや改正内容についてどのようにお考えになっているでしょうか。簡潔に伺えればと思います。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 当初案から自民党内での議論を経て修正がかけられたものが現在提出されているということは、承知しております。民主的なプロセスですので、そのような修正は当然あり得るものだと考えております。

 我々の議論では、法理的な側面から、適切な、整合性の取れた、しかも救済に資する制度を構想してきたものですけれども、それは異なる視点から見れば異なる対処の仕方があり得るということであり、それがなお正当化できるかということは、改めて理論的な検討の余地も残っていると思います。

 私の評価は、先ほど述べたとおりです。

 以上です。

○鴨志田参考人 私も法制審の委員を務めたわけですけれども、法制審の委員、議決権を持っている委員は、委員は十四人でしたけれども、部会長が議決権を持ちませんので、十三人で、当初の答申案の多数決は十対三でした。三というのは、全員が日弁連推薦の弁護士でした。

 私たちは、今日私が皆様に申し上げたように、本当に圧倒的な理不尽な立法事実というものを、具体的な事件を通して法改正の必要性というものを法制審でも精いっぱい主張させていただいたつもりです。しかし、残念ながら、他の委員は、法的安定性、刑事訴訟全体のバランス、職権主義といったようなことを根拠に、私たちの意見はほとんど取り入れることなく答申がまとまってしまったというふうに私は認識しています。

 そのような状況から、自民党内の議論において、まさにこの立法事実を踏まえた修正ということで、特に、一番再審請求人を長らく苦しめている原因の一つである再審開始決定に対する検察官の抗告をやはり見直す、これは全く指一本触れないでいい話ではないのだということで、もちろん全面禁止が目標であったと思われますし、私もそれを望んでいましたけれども、それでも、四百五十条から四百四十八条の一項を削除したというのは、まさに国民世論といったものに裏打ちされた修正であって、非常に健全な議論の成果だというふうに思っております。

 以上です。

○神田委員 ありがとうございます。

 個別の論点について幾つか伺いたいと思ったんですが、ちょっと時間がなくなりましたので、あと二往復ぐらいしたいんですけれども、一つは証拠の開示範囲について、上谷参考人と池田参考人に伺いたいと思います。

 この開示範囲につきましては、関連性の要件を設けるかどうかということがポイントになると思いますが、この要件を設けることで、提出される証拠の範囲が限定され、従来の実務運用よりも後退するおそれがあるという意見が指摘をされています。一方で、担当裁判官の裁量に任せていては、運用の不透明性や不安定化につながるという指摘もあります。

 一覧表などを裁判官がインカメラ審理により非公開の場で確認する、あるいは、不当に狭くならないように留意すべきという附則がつけられておりますけれども、こうしたことによってバランスを取ることが可能であるとお考えになるかどうか、上谷参考人、池田参考人の順で伺えればと思います。

○上谷参考人 御質問ありがとうございます。

 関連性というものの解釈をどうするかということに左右されるような気がしております。

 したがって、先ほど池田参考人がお話しされたように、一覧表にしてインカメラ手続を取るということでそのバランスは保たれるのではないかと思っています。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 関連性の要件というものは、再審請求理由の存否の判断に資する、役立つという意味だと考えられておりまして、審理の経過に従いまして、それは相応に広がり得ると考えられております。

 このような制度を設けたことによって狭くなるのではないかという指摘がされておりますけれども、従来は、開示勧告という名の下で裁判所の運用に委ねられてきた、それに従うべきかどうなのかということについて解釈が定まっていなかったところを、この範囲では少なくとも開示を命じる義務があり、しかも命じられた側は応じる義務があるということを明らかにした点で、従来、この範囲ですら応じなくていいのではないかという解釈の余地があったとすれば、そこを消滅させるという意義がある。その意味では、これ以上後退させないラインを引いたというふうに考えております。

 その上で、先ほどの陳述中でも申し上げましたように、任意開示であるとか開示勧告の余地というものを否定するものでもありませんので、これまで以上に開示の範囲が後退するという指摘は当たらないと考えております。

○神田委員 ありがとうございます。

 それでは、最後の質問になると思いますが、鴨志田参考人と池田参考人に順に伺いたいと思います。

 全ての手続を法律で縛るということはなかなか難しいのではないか、やはり裁判所や検察における運用に委ねられる部分はどうしても出てくるのではないかという感じが私はしておりますが、一方で、これまで超党派で議論をし、また、議員立法をしようとしてきた、あるいは、法制審でそれが議論され、それが自民党の議論で修正されてきた、それが、国民の前でこうしたプロセスが行われてきたということ自体が、私は、関係者の皆さんが襟を正して、これから運用をこれまで以上に適切なものにしていく、そうしたことにつながっていくのではないかというふうに期待をしている面があります。

 このように私は考えるのですが、お二人はどのように考えているのか。もし、そうしたことが期待できない、五年ごとの見直しということも含めてそうしたことが余り期待できない、どうしてもこの点は修正すべきという点があれば、できれば一つに限定して伺えればと思います。

○鴨志田参考人 御質問ありがとうございます。

 一つというのは大変難しいので、二つ言わせてください。

 一つは、証拠開示のところでございます。

 今の提出命令と、それからもう一つ、運用で裁判所が幅広く証拠開示勧告ができる、こういうことが今の池田参考人の御意見としてあったと思うんですけれども、一つルールができると、そこが最低ラインじゃなくて、それを守ればいいというふうに人間の心理は働いてしまうということが考えられると思うのです。そうすると、今まで自由闊達にやってきた裁判所の証拠開示勧告ということが、むしろできにくくなるというところは否めないというふうに思います。

 したがいまして、今、勧告等を否定しないというのであれば、そのような提出命令とは別の、裁判所の裁量による開示命令というところも権限として認めてもらうということはどうしても必要ではないか。

 もう一つは、何といっても抗告の例外事由です。これは運用でやられてしまったら、原則、例外が逆転しかねないという非常に大きな危惧を抱いているところです。どうしても例外をというのであれば、今のような十分な根拠というところをもう少し具体的にきちんと明らかにして、それが立法解釈としてコンメンタール等に載るような形に整えていただきたいということを切望しております。

 以上です。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 鴨志田参考人が二つお答えになったので、私は一つもないということではございませんが、法制審の案は修正をされましたけれども、しかし、それは今後の運用を厳しく縛る方向の修正であって、これは五年後の見直しに向けても、今後の運用を特に注視するということを立法で担保されたものだと考えております。

 その趣旨に鑑みますと、今後五年間、五年、漫然と眺めているわけではなくて、一つ一つの再審手続の運用を厳格に見守っていく、国民の監視の下に置くのだということが今回の立法で示されることになるのではないかと考えております。

○神田委員 ありがとうございます。

 本日いただいた御意見を参考に、しっかりと最善の着地を見据えて、議論を続けてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

○井上委員長 次に、國重徹君。

○國重委員 おはようございます。中道改革連合の國重徹です。

 本日は、四名の参考人の皆様に当委員会までお越しいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。

 持ち時間は十五分ということですので、今日は、葛野参考人と鴨志田参考人にそれぞれお伺いさせていただきたいと思います。

 まず、葛野参考人にお伺いします。

 参考人は、再審請求審は純然たる職権主義ではない、再審請求人が本質的で重要な役割を担って、裁判所は請求人の主張する理由に拘束されて判断するものなんだ、こういう趣旨のことをおっしゃいました。

 政府は、再審請求審が職権主義の構造であることを根拠に、証拠の一覧表は裁判所だけが見れば足りるんだ、弁護人への開示は不要だ、そのように答弁をしています。

 しかし、裁判所が請求人の主張に拘束されるということは、請求人が何を主張できるかということが手続の帰趨を決めることだと思います。その請求人が証拠の全体像を知らないままに主張を組み立てないといけないということになれば、請求理由は必然的に限定されて、裁判所の判断もその限られた主張の範囲に縛られることになります。

 そうであれば、当事者主義的な入口を踏まえた職権主義的な再審請求審の構造というのは、証拠一覧表の弁護人への開示を否定する根拠になるんじゃなくて、むしろ開示を必要とする根拠になるんじゃないか、このように考えますけれども、参考人のお考えをお伺いします。

○葛野参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに私が申し上げたかったこと、そのとおりでございます。

 再審請求手続は職権主義だ、裁判所が再審開始、請求棄却を決定する手続だ、だから、裁判所の判断に役立つ証拠だけが提出されればそれで十分だということでは決してありません。

 何よりも、唯一の当事者である請求人が、今御指摘になったように、本質的な重要な役割を担っています。請求人が請求に際して明白な新証拠を用意しないといけません、提出しないといけません。そして、それに基づいて、再審請求理由、すなわち、再審開始の事由に該当する具体的な事実の主張をしなければなりません。裁判所が判断するのは、その請求人の主張した再審請求理由の有無なんですね。その判断によって、開始決定か請求棄却かを決めます。

 ですから、請求人がしっかりと新証拠を獲得できる、それに基づいて納得のいく再審請求理由を構成し、裁判所に提示することができる、そうしてこそ初めて再審請求手続は有効な機能を果たすことができます。それなくして、裁判所が頑張ればいいんだ、職権主義だから裁判所の責任でやってくれればいい、そうはいきません。過去の例を見ても、まさにそうであります。

 ですから、私は、まず請求人の必要に応えるために、請求人がその役割を十全に果たすための手続的な保障、担保として、証拠一覧表の請求人、弁護人への開示が必要だというふうに考えます。

 以上でございます。

○國重委員 ありがとうございます。

 次に、鴨志田参考人にお伺いします。

 これまでの再審無罪事件では、検察官が証拠を隠していたと非難されてもやむを得ない、こういった事例も散見されます。先ほど鴨志田参考人が大崎事件を通して指摘された、検察官が不見当あるいは不存在とした証拠が後になって発見されて開示されること、こういったことも少なくありません。

 袴田事件に関する検証結果報告書の中において、ネガフィルムについては弁護人から開示を求められていた、検察官が開示に向けてより積極的に行動していれば、より早期に探索が行われ、弁護人に開示することができた可能性があった、長期にわたって裁判所による審理が行われている場合における客観的な捜査資料の管理、把握が十分でなかった、こういったことが指摘されています。

 再審事件は古い事件も多くて、公判未提出記録を含めると、証拠の数は事案によって膨大になると考えられます。こうした事案は、検察官自身による保管証拠の把握にも限界があり得ることを示していると言っていいと思います。

 証拠の一覧表の作成また交付を義務づければ、検察官が自ら保管証拠を棚卸しをする契機が制度的に生まれて、少なくとも、把握している証拠については見落としを防いで、再審請求者に有利な証拠への手がかり、これを与えることもできると考えます。

 鴨志田参考人は、再審弁護人として、これまで長きにわたって現場の最前線で奮闘されてきましたけれども、実務家として、このような証拠一覧表の作成、交付制度というのはこのような問題に対する実効的な方策になり得るとお考えでしょうか。どうでしょうか。

○鴨志田参考人 ありがとうございます。お答えします。

 二つ大きな問題があって、一つは意図的な証拠隠し。これはもう検察官のある意味犯罪ですから、もちろんあってはならないですし、古い事件の場合はもう時効にかかって処罰されないということになってしまうわけですけれども、ここはやはり厳正な対応をしていかなければいけないという問題であろうかと思います。

 一方で、いわゆる過失ですね。検察官は把握し切れていなかった、なので、別のところを探したら出てきましたというような証拠。特に、警察が検察に送致をしていなかった、これは本来は法的には認められていないんですね。刑事訴訟法の二百四十六条で、全ての記録と証拠は検察官に警察は送致しなきゃいけないということになっているんですけれども、現実はそうではなく、警察の手元に残されたままの証拠物とまた記録もたくさんあります。

 特に、今般問題になっているのはネガフィルムですね。若い人は今ネガフィルムが分からない、そういう時代になっているんですけれども。古い事件の場合には、ネガフィルムが写真撮影の順番を明らかにするということで、真実発見に近づく。このネガフィルムなどは、大崎事件もそうでしたけれども、検察官は全然把握し切れていなかったということです。

 ですので、おっしゃるとおり、一つは、やはり検察官が、警察の保管している証拠についても、全部取り寄せるということではなくて、リストを作ってきちんと保管するということは当然あってしかるべきですし、それが開示されれば、先ほどのような証拠の漏れ、抜けというものはなくなると思います。

 別の考え方としては、これはやはり警察の側が全部送っていないということが問題なわけですから、警察の方が、記録でも証拠でも全て集めたら、このデジタルの時代ですから、全部リスト化した上で、最初に集めたときのリストは間違いなく、証拠の現物は全部送らないにしても、リストは送るという運用になっていけば、これが再審段階まで開示に資するということになって。このような在り方について、議員立法の方の案では、今後の見直しの中にこの項目が入っていると承知しておりますので、是非進めていただきたいと思っているところです。

 以上です。

○國重委員 ありがとうございます。

 引き続き、鴨志田参考人にお伺いします。

 先日、対政府質疑の中で、法務省は、弁護人に対して証拠の一覧表を開示しなくても、識別できる程度の特定で足りるから問題ないんだ、そういった趣旨の答弁をしています。

 証拠の一覧表なしに、識別できる程度の特定というこの政府の説明は、実務的に、これまで様々やられてきたと思いますけれども、現実的なものなのか。また、仮に概括的な特定ができたとしても、裁判所が提出命令を出した後に、検察官が命令の対象となった証拠を漏れなく全て提出したかどうかを誰がどのように確認できるのか、この点についても併せてお考えをお伺いします。

○鴨志田参考人 お答えします。

 まず、請求人、弁護人は、捜査機関にどのような証拠が保管されているか、全く手がかりがありません。

 ですから、実際にあった証拠開示をめぐる攻防の中で、このようなことを証する検証調書がないかどうかという問合せを裁判所を通じてしたところ、存在しないという回答が返ってきたんです。ところが、後でいろいろやり取りをしているうちに、検証調書はなくても、実況見分調書は全く同じ趣旨のものが証拠としてあった。

 内容を考えたら、普通は、検証調書と実況見分調書というのは非常に似ていますから、ああ、これねといって出せばいい話だと思うんですけれども、検察官はこのように、証拠の名前が違っているだけで、存在しませんという回答をしていたということがあるんです。これが現実です。

 ですから、そんなに簡単に、請求人の方で範囲を特定して、適切に自分の主張する請求と関連する証拠を、こんなものを出してくださいということが簡単に言えるかといったら、それは言えないだろうと思います。

 逆に、犯人性を争っています、私は犯人ではありません、別のところに犯人がいます、なので、私の犯人性について裏づけとなる証拠を全部出してくださいという証拠開示請求をしたときに、これがどこまで出てくるかどうかということがこの関連性議論では明確にされるべきだと思います。

 関連性の範囲というのが、程度というのが、広く見せるんですよということは前回の答弁でもされていたんですけれども、具体的な今申し上げたような事例の中で、これは出てきます出てきませんということが明らかにならないと、なかなか、にわかには信じ難いということかなというふうに思います。

 また、裁判所も実は証拠を見ていないんですよね。捜査機関にどんな証拠があるか裁判所も分からないということで、結局のところ、この関連性の判断は実際に証拠を見ている捜査機関、検察官にしか分からない、こういう制度であるということにも極めて留意をする必要があるというふうに思っています。

 以上です。

○國重委員 葛野参考人にお伺いします。

 参考人は、再審請求人は請求準備の段階で不提出証拠にアクセスできない、そのため、実際に提示できた再審請求理由と関連する証拠の範囲は限定されたものになるとおっしゃいました。

 とすると、先日の対政府質疑の中で、やり取りする中で、法務省としては、関連性は広がりを持つ、このように説明をしているんですけれども、その広がりの起点自体が請求人のアクセスできた限られた証拠に狭く限定されているわけですから、結局は狭い範囲の中での話にすぎないんじゃないかというような疑問があります。

 葛野参考人は、この構造的な問題を解決するために、どのような制度的手当てというか、どういうことをすればいいというふうにお考えでしょうか。お伺いします。

○葛野参考人 御質問ありがとうございます。

 当初、非常に苦労して何とか獲得した新証拠に基づいて、四苦八苦して再審請求理由を立てて再審請求した、それが当初の関連性判断の起点になります。広がりというのは、その最初に提出した新証拠が、有罪認定を支える旧証拠に対して一定の弾劾効果を持っていて、それが広がっていくにつれて関連する証拠というのも広がっていくだろう、その過程の中で、請求人は再審請求理由を追加したり修正したりすることもできる、それによって関連性が広がるということなんですけれども、御指摘のとおり、当初の再審請求理由にまず関連性判断が既定されますので、どうしてもそこで縛りがかかるということは避け得ないことのように思います。

 それをどう解決するか。それはやはり、請求人が再審請求するために必要な請求理由をしっかりと組み立てて、これからそれを裁判所に対して提示し、立証していく、そのために必要な証拠を請求人に対して開示する、直接開示する、そのような仕組みが必要だと思います。

 先ほども鴨志田参考人から御指摘がありましたように、実際に開示された証拠が請求人の主張する再審請求理由の立証にとって役立つかどうか、あるいは、新たな新証拠として、それに基づいて再審請求理由を追加、修正していく、そのための基礎になるものかどうかという判断は、やはり請求人、弁護人自身が確認してこそ正しく判断できる。そのような確実な、それが私は、誤判を確実に発見する、是正するために必要な手続だと思うんですね。

 それを抜きにして、重要な証拠が開示されないままに終わる。過去の例でもそうです。一次請求で開示されなかった証拠が二次請求になって開示されて、ようやく再審開始が認められた、福井事件の例が先ほど御紹介されましたけれども、そういうことがないようにするためには、やはり請求人に対して直接開示する。その前提として、請求人に対しても、裁判所に対してと同様、一覧表を交付する、開示するという仕組みが必要だというふうに考えております。

 以上です。

○國重委員 本日は、四名の参考人の皆様に貴重な御意見を賜りましたこと、重ねて厚く御礼申し上げます。

 今日のそれぞれの御意見を踏まえて、これからの質疑に真摯に臨んで、よりよいものに仕上げてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

○井上委員長 次に、三木圭恵君。

○三木委員 日本維新の会の三木圭恵でございます。

 本日は、四名の先生方、この参考人質疑にお出ましくださいまして、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 私たち法務委員会の方でも、真摯に議論をし、そして、無辜の方が無罪の罪でその人生がめちゃくちゃになるというようなことがないように、無辜の方々の救済に向けて、この再審法の質疑、しっかりと頑張っていきたいと思っております。

 その中で、本日、様々御意見を開示していただいたわけでございますけれども、私の方は、ちょっと証拠開示とは別のことをお伺いしたいと思います。

 抗告に関わることなんですけれども、当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限り、即時抗告等をすることができるものとするというふうに、今回、改正案はなされました。そして、もし抗告をするにしたとしても、再審の請求に係る決定に対する即時抗告等の提起期間を、通常三日から五日だったものを十四日に延ばすということが定められ、そして、近年における再審の手続に関する諸事情に鑑みて、再審開始の決定等に対する不服申立てについては、事件が受理された日から一年以内にその係属する裁判所の決定がされるように努めなければならないという、努力義務ではございますけれども、そういった、法案と附則の中に書かれているということでございます。

 私は、今まで、再審決定までに時間が非常に長く費やされて、無辜の方々の救済が遅れてきたという面がかなりあるとは思っているんです。それが平均六年以上かかっているんじゃないかということを聞いておりますけれども、これが努力義務とはいえ一年以内に決定するようにということで、特別抗告がなされたとしても二年以内に開始か不開始かという決定がされるということに関しまして、その効果と、デメリットというものがもしあれば教えていただきたいと思います。四人の先生方それぞれにお願いいたします。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 迅速な審理が担保されるのかという御質問でございましたけれども、私自身は、証拠開示の制度がこの度整備されたことによりまして、従来、即時抗告、特別抗告審まで引きずられていた必要な証拠の開示という問題をめぐる争いというものが、一審段階で全て処理されるということを期待しているところでございます。

 そうだとすると、上訴以降は純粋に、その前提となる証拠を見た上で再審請求理由の存否についての判断が適切になされたかという問題だけが取り扱われることになりますので、従来とは異なりまして迅速な審理を期待し得るのではないかと考えております。

○葛野参考人 非常に難しい問題だと思います。

 確かに、これらの規定が裁判所や検察官の行為に、行動にすぐに反映するならば、迅速化につながる可能性はあると思います。しかし、これまでの例を見ますと、やはり裁判所や検察官の自覚なり努力に委ねるだけでは十分な効果が得られないということが現実でないかというふうに思うんですね。

 やはり、迅速化を図るためには、まずもって迅速な証拠開示、広い範囲の証拠開示が絶対必要でありますし、抗告について申し上げると、やはりこれは単に検察官の努力義務というものではなく、行為規範というものではなくて、裁判所が十分な理由がないと判断したときには、それでもって手続を打ち切れるような裁判規範として機能をさせる必要があるように思います。例えば、検察官がこれこれこういう証拠を取り調べたら、あるいは、よくあり得るものとして、こういう鑑定、DNA鑑定をもう一度やり直せば判断が覆るはずだ、それは、十分な根拠が現にあるわけではないわけですので、もうその時点で抗告を打ち切って棄却するべきように考えております。

 以上です。

○上谷参考人 現在問題になっている再審の事件については、とても時代が古いものが多いということの特徴があると思います。そして、近年は、検察の方もかなりこの辺について対応を改めているところでありますし、今出ている案で特にデメリットがあると感じたことはありません。

 それから、今回の議論をもって非常に世間から検察や裁判所に対する目が厳しくなっているということがあって、それも大事な機能の一つだと思います。したがって、これまでのように運用によって何かなし崩しになっていくということはないのではないかと考えています。

○鴨志田参考人 ありがとうございます。

 不服申立てで何を審理するのかというところに大きく影響されると思います。

 新たな事実調べのような、まさに袴田さんの事件の抗告審のようにDNA鑑定をやり直すとか、差戻し後の即時抗告審では検察官がみそ漬け実験を一年以上かけてやるとか、こういうことになると、この規定は余り意味がないものになってしまうと思います。

 一方で、今回、そもそも検察官が抗告ができる場合が非常に例外的になるということを前提とすれば、まさに法律問題として、その抗告に法的な理由があるかどうかというところだけが事後的に、事実認定ではなくて法的な問題だけが事後的に判断の対象になるということであれば、このように早い期間で終わらせるということは可能となると思います。

 ですから、この開始決定に対する一年以内というところは、前提として、抗告審がどのような内容をどのような範囲で審理をするものなのかということについてのきちんとした合意形成というか理解がないと、一概には言えないということになろうかというふうに思います。

 以上です。

○三木委員 ありがとうございます。

 次の質問に移りたいと思います。

 証拠開示について、いろいろな御意見がありまして、上谷参考人にお伺いしたいんですけれども、上谷参考人におかれましては、被害者代理人として、様々な被害者の観点を入れてこの法律を作ってもらいたいという意見陳述をされました。その中でも、いろいろ、皆様、証拠というものの一覧表、リストの開示は、証拠そのものでないので、一覧表の開示ということについてはいいのではないかというような御意見もあるかのように思いますけれども、上谷参考人はこの点はどのようにお考えでしょうか。

○上谷参考人 リストの作り方の問題もあるかと思うんですよね。どういう標目になっているのかということがあるかと思います。果たしてそれで、事件に関係があることなのかどうか、本当に見せる必要があるのかどうか、被害者から見たらこれは全く関係ないのではないかというものまでが開示されるのかどうかという不安はあるかと思います。

○三木委員 つまり、一覧表であったとしても、被害者の方はどのようなものが開示されているかということが不安であるというふうに、特に性被害を受けた方はそうだということだというふうに理解をさせていただきました。

 意見陳述の中でも、いろいろと意見陳述していただいたわけでございますけれども、上谷参考人におかれましては、二次受傷であるとか、そういったところの研究もいろいろなされているというふうにお伺いをしております。再審請求がされ続けることについて、被害者の心情にどのような影響があるのかということをお伺いしたいと思います。

○上谷参考人 再審請求がされ続けているということは、恐らく、再審請求自体が認められない、開始決定がなされていないということが続いているのかと思われます。

 そういう場合、なぜこの人はそういうことをするのだろう、これだけ何回もはねのけられているのに再審請求を続けているということは、自分に対する恨みが非常に深い、いつか仕返しに来るんじゃないかという恐怖感はあるかと思います。

 また一方で、人間の心理として、何回も再審請求するということは本当に無罪じゃないかという心理が働いてしまって、いつかこれが認められてしまう、そういったときに検察官に抗告する権利もないということで、通常審に戻ってしまって、また一からやり直しになるのではないかというおそれを抱くということは想像されます。

○三木委員 続けて質問させていただきたいんですけれども、そもそも被害者は、捜査で証拠を提出したり事情聴取に応じたりして、公判でも証言をすることに対して、どのような心情で挑んでいると思われますか。

○上谷参考人 これは、犯罪被害の種類にも左右されるかと思います。

 例えば、通り魔的な殺人などであると、被害者側が証拠を提出することは余りないんですね。むしろ、亡くなった人がどういう人であるかを知ってほしいというので、元気であった頃の写真とか映像を出したいということがあっても、むしろ捜査機関の方で、あ、それはそんなに要りませんというふうに言われて傷つくということがあります。

 逆に、身内であったりとか親しい関係者であった場合というのは、非常に、その殺人事件の場合はプライバシーとか特殊な事情が絡んでいることが多いですので、そういったものについて証拠を出さなければならない。特に家庭内などの場合は、一つの家庭の中に加害者と被害者がいるわけですので、どういう証拠を出すべきなのかということには非常に苦しむというのが現実であるかと思います。

 性被害の場合は、性的な画像というのは決定的な証拠ではありますが、やはり警察に出すだけでも警察官何人かは見るわけです。その後、検察官も見る、いずれ弁護人も見るということになりますと、一体どのくらいの人が見るのか、本当にそういうのが必要なのかということで、非常に苦しんでおります。ただ、やはりこの被害はなかったことにしたくないという思いで一生懸命出しているというところがあります。

 それから、公判での証言ですけれども、これもやはり被害者の証言というのは非常に過酷です。特に、加害者が無罪を争っている場合というのは、日本の精密司法という公判のやり方に疑問もあるのですけれども、例えば、性被害であれば、そのとき、あなたの体勢はどうだったのか、上だったのか下だったのか、触られたのは右からか左からかというような詳しいことまで聞かれて、通常はそんなことは覚えていないわけですけれども、どうしてもそういうことを聞くというのが慣例になっておりまして、そこが答えられないと、記憶が曖昧だというので信用性がないと言われてしまう可能性があるということで、非常に苦しい尋問を強いられているというのが現実です。

○三木委員 ありがとうございます。

 事件というものは様々なものがあるというのは承知の上で、やはり性被害者のことに関しましてはより一層配慮が必要なのだなということが上谷参考人の意見陳述からうかがえるわけでございますけれども。

 証拠の目的外使用が禁止されておらず、例えば、先ほども意見陳述の中で上谷参考人がおっしゃっておられましたけれども、証拠がインターネットに掲載される可能性があるとすれば、被害者としてはどういうお考えになるのか、これも上谷参考人にお伺いしたいと思います。

○上谷参考人 ネットに流出してしまうかもしれないという恐怖心は、誰もが抱いているところです。

 例えば、捜査の結果、画像はなかったとか、あったけれども全て確認して押さえてありますということがあっても、被害者によっては、いや、それでもどこかで流れているかもしれないという恐怖心が消えない方がいます。そういう方は、毎日、自分の画像がないか、ネットを検索するわけですね。それで、見つからなかったから安心ではないんです。今日も見つけられなかった、どこかにあるかもしれないというふうに、どんどん精神的に苦しくなっていってしまうという方もいらっしゃいます。

 ですので、今、一旦そういうものがネットに流れてしまうと基本的に回収することはもう不可能という現実がありますので、この辺は非常にシビアに考えていく必要があると思っています。

○三木委員 最後の質問になるかと思うんですけれども、上谷参考人にもう一度お伺いしたいと思います。

 先ほど意見陳述の中で、検察の抗告禁止に関しては私は反対だと明確におっしゃいました。もし、不当な再審開始決定があった場合に抗告というような是正手段がないとすれば、被害者としてはどのような気持ちになるのでしょうか。性被害を受けた方の、被害者の方のお気持ちでお答えいただきたいと思います。

○上谷参考人 犯罪被害者の方がよく言うのは、なぜこの国は加害者にばかり甘いのだ、被害者はどうして守ってくれないのかということはよくおっしゃいます。

 不当な開始決定がなされると、有罪判決が確定したのにここでまた加害者を許すのか、私に罰を与えるのかという非常に強い不信感、国が私を守ってくれないという、元々、性被害に遭った人というのは社会に対する不信感が強いんですけれども、それがますます強くなっていってしまうということで、被害回復が難しい、社会復帰が難しいということになってしまうと思います。

○三木委員 質疑時間が終了いたしましたので、これにて質疑を終わらせていただきたいと思います。

 四人の参考人の先生方、ありがとうございました。

○井上委員長 次に、小竹凱君。

○小竹委員 国民民主党の小竹凱です。本日もありがとうございます。

 まずは、四人の参考人の皆様、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 聞きたいことがたくさんありますので早速入りたいと思いますけれども、まずは上谷参考人、鴨志田参考人にお伺いしたいというふうに思います。

 先ほどの三木委員の質問を延長する形になりますが、証拠の目的外使用禁止について、上谷参考人は、禁止規定を削除する方向には反対というふうにいただきました。また一方で、犯罪被害者も冤罪は望んでいないというような御答弁もいただきました。

 今回の閣法では目的外使用を一律に禁止している方向ではありますが、これが正当な活動にも萎縮効果を生むんじゃないかというふうに私は懸念しているところであります。もちろん、証拠を、営利目的であったり、個人のプライバシー保護ということを否定しているものではありませんが、正当な活動までも萎縮させるということに関しては、結果として、望んでいない冤罪までも生み出す可能性があるのではないかというふうに考えております。

 適切に運用されることを規定しながらも、正当に活動されている方々を不当に縛らないということは、犯罪被害者の観点から、こういった規定を設けていくことは両存すると考えられるのか。その上で、鴨志田参考人には、個人のプライバシー保護をしっかりと守りながらも、目的外使用禁止について、正当な活動は萎縮させないようなためにはどういった条文構成であることが望ましいと考えるか、お答えください。

○上谷参考人 正当な活動という解釈は非常に難しいと思います。それぞれの正義がありますので、冤罪を主張する方と被害者の方とは、その正当なの意味が違うと思います。そういった正当な活動をしているというふうに冤罪被害者と主張する方の弁護人が判断するのであれば、その人が直接見ていなくても、こういったものがあるんだと口頭で説明することで足りるのではないかと思います。

 そして、例えば、不当に目的外使用をしたというときに、仮に罰則をつけたとしても、余り罰則は意味がないんです。先ほど言ったように、ネットに出てしまうと、もう罰則は意味がないんですね。

 ですから、ここは厳しくする必要があって、やはり法曹資格を持った人に限定されるべきではないかなと考えています。

○鴨志田参考人 ありがとうございます。お答えします。

 私も弁護士でございまして、被害者参加の代理人をした経験も、また性犯罪の被害者側の代理人をやったことももちろんあります、複数あります。そのような中で、被害者の名誉やプライバシーの保護の必要性があるということは、本当に身にしみて私自身が実感するところではあるのです。

 ただ、何が問題かというと、それを理由として一律に目的外使用というものを禁止してしまう、目的外が何なのかということも、どうもおとといの答弁を聞いていると曖昧かもしれないというふうに、非常に危惧しています。供述調書を、要旨であれば当たらない、全部を朗読すれば当たる可能性があるというようなやり取りもされていたように思います。

 また、袴田さんの事件では、御承知のとおり、五点の衣類のカラー写真が、一年二か月みそに漬かっていたとは到底思えない非常にビビッドな色だったということから、支援者さんが弁護士と一緒に実験を始めて、その色調が全く違うということが再審開始、無罪に大きく動いた原動力になりました。

 おとといの答弁の中で、支援者さんに提供して一緒にその実験をやるということは目的の範囲内であるという答弁があったかと思うのですけれども、一方で、開示された証拠のコピーそのものをマスコミに提供すると、これは目的外使用禁止になるのだという答弁もまた別途あったように思います。

 そうだとすると、実験をしました、その実験結果がこういう色になりましたという、茶色くなっていたり黒くなっていたりするものと元々の開示されたカラー写真の色がこれだけ違うんですという形でマスコミに公表しなければ、この実験の本当の価値は伝わらないと思うんですね。こういう色というようなものを、じゃ、どうやって口で、口頭で概要を説明することができるんでしょうか。それは全くインパクトが違ってくるというふうに思います。

 ですので、私は、やはり名誉、プライバシー保護のためには、他の法律で、閲覧、謄写の制限とか一部禁止といったようなものは例えば少年審判規則等にもありますので、立法技術でそういったところを取り入れながら、一方で、目的外は全部禁止という包括的な要件ではなくて、どのような場合がこの禁止に当たるのかということをきちんと限定列挙するという形で、例えば営利目的とか、まさにわいせつ目的とかいうようなところが列挙されているという形であれば、両方の要請を満たすということができるのではないかと考えております。

 以上です。

○小竹委員 ありがとうございました。

 もう一問、鴨志田参考人に聞きたいと思います。

 今言われたように、個別に列挙して、積極要件化といいますか、具体的に書かれた上で、そういった場合に、修正をされたとしても、法務省の答弁の中で、通常審とのバランスを度々説明されております。この通常審との整合性が問われるという点に関しては、どのような理解をすればいいと思いますでしょうか。

○鴨志田参考人 そもそも論として、通常審における証拠の目的外使用禁止規定の合理性というものも議論されなければならないと思っております。

 とりわけ、国家賠償請求訴訟において、今、取調べの録音、録画を、まさに警察や検察の違法を争うために刑事事件で開示された録音、録画を民事である国家賠償請求訴訟の証拠として提出するということが目的外使用の禁止に当たるということで、両当事者が、要は、元被告人側も取り調べた警察や検察も、みんな当事者はその証拠を知っているにもかかわらず、民事裁判の証拠として原告は提出できない、こういう問題が現実にあります。

 これをやるためには、文書提出命令という別の申立てをして、その決定にもまた不服申立てがされたりとかして最高裁まで争われて、証拠を提出するということだけに民事訴訟で一年以上かかっているというような、こういう現実がありますので、目的外使用禁止規定が通常審にあるから再審にも取り入れていいのだという前に、通常審の規定がこれでいいのかということを是非とも一緒にお考えいただきたいと思います。

 その上で、通常審の規定が仮にそのままであったとしても、大きく再審と違うのは、審理の公開の有無です。通常の裁判は公開の法廷で裁判が行われますから、証拠物は、展示といって、現物が法廷で出ます。そこには、傍聴席に一般の方もいらっしゃいますし、マスコミの方もいます。しかし、再審請求の手続は、ほぼ非公開で行われます。公開しちゃいけないというルールはないのですけれども、実際には、公開を要しないということで、証人尋問であっても法廷に鍵をかけてわざわざ行うような運用がされております。

 となると、そもそもブラックボックスで請求手続が行われている、さらに、証拠も、開示証拠も見ることができないとなったときに、この再審請求がどのように進んでいるのか、この開始決定が妥当かどうかということを外から検証する機会が全くもって奪われてしまうということは、通常審と大きく異なります。

 今回、政府案の四百五十条の二に、政府は、抗告をした場合には、抗告をしたこととその理由を公表するという規定が置かれたと承知しております。しかし、これは、理由が公表されても、その新証拠が明白性があるかどうかということを一般の目で吟味をする、そういう趣旨で公表するんだと思うんですけれども、その明白な新証拠と認定されたものが開示証拠だったら見ることができないわけですから、公表されても何の判断もできないということになります。

 このような観点、公開というところとの関係で、是非、再審のところはお考えいただきたいと思います。

 以上です。

○小竹委員 ありがとうございます。

 次に、池田参考人に一問お伺いしたいと思います。

 先ほどの陳述の中で、証拠提出命令制度については、再審制度の構造上、裁判所主体でありまして、今回のつくられ方というか、インカメラ方式で足りる、適切に運用されればこれで事足りるというような説明を伺いました。

 後に、葛野参考人からは、福井事件を引用されて、「夜のヒットスタジオ」の放映日との違いであったりとか、請求人が唯一の当事者であるというような意見がありました。また、鴨志田参考人からは、布川事件のテープが編集をされており、本人は例えば三十分しゃべったテープが短くなっていたらそれは気づくわけですけれども、なかなか当事者でしか分からない部分があるというような意見陳述を重ねられたように伺いました。

 この点、後のお二方の参考人の陳述を聞いて、今の構造上というか、インカメラ方式は当事者は見えない形になりますが、どういった整理をされるか、御見解をお願いいたします。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 再審請求審の審理が、裁判所が主体になって再審理由の存否を判断する手続であることから、証拠の提出は一義的に裁判所に対してなされるべきだという考え方に変わりはありません。

 その上で、インカメラ審理に際しては、関連性が認められないかもしれない証拠も含めて点検した上で、そこで関連性の判断をするということで、一覧表の範囲も裁判所の指定する範囲とされていますけれども、それは関連性の係る範囲に限られずに、ある程度幅広な指定をされるはずですし、その上で、この範囲でということが分かれば、提出させたものは請求人に見せられる、審理の対象となる以上請求人が見ることができるということになりますので、その上で証拠を分析することは十分可能であると考えますと、このような構造を取ることが請求人の主張の妨げになるというふうには考えておりません。

○小竹委員 ありがとうございました。

 次に、もう一問、池田参考人、鴨志田参考人にお伺いしたいと思います。

 再審開始決定に対する検察官抗告の在り方について、お二方の意見が相反しているというか、対立しているように感じました。

 池田参考人からは、全て禁止となれば再審請求審が公判に場所を移すだけであって、判決にまた控訴をすれば、また結果として迅速化というか期間が短縮化されることにはつながらないというような意見を承りました。仮に期間としては同じだったとしても、期間という軸だけで見れば一緒だとしても、公開と非公開という違いがあるというふうに思います。

 鴨志田参考人からは、大崎事件を引用されまして、無実とアピールしたいのではなく、満期服役し、間もなく九十九歳になろうとしている原口さんを再審公判の法廷に立たせないままでよいのかというような意見がありました。

 ちょっとこういう方向で意見を言っていただくような形になるかもしれませんが、お互いのそれぞれの意見に対して御見解というか御所見がありましたら、お願いいたします。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 私は、手続保障が充実しているから公判に行くべきだという議論があることも承知しておりますが、そうであれば、誤って再審請求を棄却された方についても、迅速かつ公開の法廷で自分が救済を受けるべき者だということを主張させてしかるべきであるようにも思われますが、どなたもそのようなことはおっしゃっておられず、棄却決定との関係では再審請求審のフィルター機能は果たされている、正当であるということが前提となっているように思われます。

 あくまで開始決定との関係だけで、それは誤っていたとしても先に進めていいのだとおっしゃっているわけですが、その結果、棄却決定にとどめられた方が、その方の立論の前提からすると不十分な手続保障の下で複数回の抗告を強いられるということについてどのようにお考えになっているかということは、私の理解の及ばないところがございます。

 その上で、さらに、再審公判というものは相応の犯罪事実全体の立証を伴うものでありまして、先ほど上谷参考人の御意見にもあったように、今度は証人尋問なども含めて全面的な立証に至るわけでありまして、抗告審の対象が請求理由の存否という限られた範囲であるのとは異なりまして、相応のコストをかけるということでもあるわけです。そうなりますと、そのことは手続全体の負荷となりまして、真に救済を待っている方々その他の方々の審理を遅らせるという悪影響もあり得るので、開始するかどうかの判断はなお慎重にされるべきだという意見を持っております。

 以上です。

○鴨志田参考人 お答えします。

 まず、再審開始決定に対する抗告、そもそも、再審請求手続というものが、通常の控訴、上告と同じように被告人と検察官それぞれが当事者として控訴、上告をしていくというようなたてつけとはそもそも論として異なっているということを前提にしていただく必要があると思います。

 再審請求は、再審請求人のみが当事者であって、その再審請求の理由があるかどうかを裁判所が職権で判断をするという職権主義の手続であるということは争いのないところです。

 では、なぜ当事者ではない検察官がこれまで不服申立てができるということになっていたのかというと、当事者性を根拠にした主張はないと思います。言われているのは、当事者ではないけれども、公益の代表者として、再審開始決定が誤っているような場合には、自分は公益の代表者としてこれを是正するのだという、公益の代表者を根拠に抗告論を展開するというのが多いように思います。

 しかし、福井事件の例を見ればすぐ分かるとおり、証拠を一方で隠しながら、隠したまま再審開始決定に抗告をして、実際に再審開始決定を取り消させたという事例が現に存在するわけです。先ほど幾つか事件名だけは挙げましたけれども、袴田事件、それから免田事件、この福井事件、これは全て、一度再審開始決定を取り消された経験のある事件なんです。

 だとすると、元の再審開始決定は間違っていたのか、間違っていたから公益の代表者に取り消されたのは当然なのだという話になるのかということなんですね。そうではないでしょうということです。

 何度も言うように、再審開始決定というのは、有罪、無罪の結論がそこで出るという話ではないです。いろいろと新しい証拠が出た結果、これまで通常審では出されていなかった新しい事実、新しい証拠が出たことによって、この裁判、もう一度見直してみようよというレベルの決定です。

 それに対して抗告をするということは、例え話をすれば、自分がコロナにかかっているかもしれないという人が、市販の検査キットで陽性と出た、これは市販のキットだからおかしいから、もう一回別の市販のキットを試してみよう、そういう話には多分ならないと思うんですね。あくまでも中間的な、仮の判断は、その後ちゃんと病院に行ってすればいいだけのことですから。

 これは、実際に再審公判でやるということが、まさに司法の中での手続全体の健全性につながると思います。これは時間の長い短いの話ではないということを改めて申し上げておきたいと思います。

 以上です。

○小竹委員 時間になりましたので終わりたいと思いますが、四人の皆様、本日は本当にありがとうございました。

 終わります。

○井上委員長 次に、和田政宗君。

○和田(政)委員 参政党の和田政宗でございます。

 参考人の方々、ありがとうございます。

 私からは、法制審、法制審議会の再審関係部会の委員であられました池田さんと鴨志田さん、お二人に三問、できれば四問お聞きをしたいというふうに思っております。

 再審関係部会、全十八回、全部議事録を読む中で、ちょっとひっかかる部分がありまして、それについてお聞きをしたいんですけれども。

 再審開始決定に対する検察官の不服申立てについてですが、第十八回のこの最後の会議では、慎重かつ十分な検討を行うという附帯事項案について、弁護士である田岡幹事が、より慎重かつ十分に検討を行うと記載しなければ、これまでの運用と変わらないのではないかという質問をしたのに対し、法務省の玉本幹事が、よりと入れると、これまでの運用に問題があったという趣旨に読めるとして、これは拒否というか、記載されないということになりました。

 となりますと、法務省は、これまでの運用に問題がなかったと認識しているのではないかという疑問が湧きます。また、そうであれば、今後、不服申立てが制限されることにならないのではないかということについて、どう考えるでしょうか。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 法務省がどのような認識であるかというのを私からお答えする立場にはないと考えております。

 その上で、抗告の運用の在り方に対して批判があったという事実は委員全員で共有していたところでありまして、今後そのような批判が繰り返されることのないようにという趣旨で附帯事項をつけたものでございます。

 そのため、部会長からその際にもお話があったと記憶しておりますけれども、ここにわざわざ書くということは、これまでどおりでよいのではないのだということをリマインドする趣旨を含んでいるということでございますので、附帯事項に書けることとしてはそこまでが精いっぱいであったというふうに認識しております。

○鴨志田参考人 ありがとうございます。

 このときの議論は、もちろん私も出席していて記憶をしているところですけれども、やはり素朴な感情として、実はその前も、検察官の委員である宮崎委員が、これまでも慎重に個別の事例ごとに十分に検討した上で抗告をするかどうかを慎重に決めていますというふうに何度もおっしゃっていた後のこのやり取りなんですね、十八回は。そうすると、やはり、現状で問題があるという認識はないか、認識があってもそれを認めたくないか、どちらかなのではないかなというふうに正直言って思わざるを得ませんでした。

 それは、その後の自民党の事前審査においても、当初は、この抗告の禁止ということに対して、抗告を禁止すべきだという意見が自民党の党内議論でもたくさんの議員から出たわけですけれども、最終的には制限をするという方向になりましたけれども、当初はそれも全く聞く耳を持たないという議論がかなり繰り返されてきたというふうに、これは公開ではないところですから、報道の限りをもって仄聞するところですけれども、あったと。

 そのような法制審、さらにはその後の自民党の党内審査を経た中で、今のこの全面禁止ではない、制限が入っているという条文を見たときに、議員が感じておられるような不安、このまま検察官の判断に任せて、例外的に行われる場合がきちんと例外として機能するのかということに対しては、私も重大な懸念を持っているというふうに申し上げざるを得ないというふうに思っております。

○和田(政)委員 池田さんからありました部会長の発言、私も確認しておりますけれども、鴨志田さんが言われたように、これは法務省がどう考えているかというところがこういったところにも出ているというふうに思っておりますので、これは委員会の方で、対政府質疑の方で更にお聞きをしていきたいというふうに思います。

 証拠の目的外使用の禁止なんですけれども、袴田事件では、五点の衣類の変色の検証を支援者が行ったことから、捏造された証拠であるとの解明につながったわけであります。

 先ほど鴨志田さんからもありましたけれども、支援者とともに報道機関が証拠について検証することについて、証拠の目的外使用でできないということになってしまいますと、現在より後退するのではないかという指摘がございますけれども、この点については、池田さん、鴨志田さん、どのように考えますでしょうか。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 刑事手続で収集した証拠というものは、刑事手続で用いるために収集が許されているものでございまして、基本的には目的外で使用するということは想定されていないのだと思います。

 このような規定が設けられたのは、公判前整理手続が証拠開示の規定を持つに至った改正によるものですけれども、これは、従来、捜査機関だけが持っていた証拠を外部に出すに当たって、その趣旨を法律によって担保した、そのように理解しております。

 これまで、再審請求審においてはこのような規定はなかったわけですけれども、それは制度的に証拠提出命令制度が担保されていなかったことによるものでありまして、今般、証拠提出の義務づけが制度的に担保されることになりますと、同じ趣旨が妥当するということになります。

 その上で、支援者の方にどのような経緯で証拠が提示されるに至ったかということは私は存じませんけれども、法案の文言によれば、請求の手続又はその準備のために用いる、正当な目的で用いるということは許容されておりまして、何が許されないかといえば、無秩序な拡散であります。それを伴わないのであれば、何に使われるか分からない、その刑事の手続の目的に使われないような形で共有を図るということが許されていないのでありますから、報道機関に渡るということ自体が何か意味を持つというよりは、その手続の目的のために使うという範囲に収まっているかどうかということが問題なんだと思っております。

 以上です。

○鴨志田参考人 通常審の方の目的外使用禁止規定にも問題があるという意見については、先ほど申し上げたとおりです。

 さらに、その前のそもそも論というところで、証拠は誰のものかということを確認しておきたいと思います。

 証拠は、国民の税金を使って、また国民が負託した権力を用いて収集された公共の財産である、このことに異を唱える人も多分いないと思います。その公共の財産であって、真実を発見するということのために国民はそれを利用することができなければならない、そういう考えをやはり根底に置くべきだと思います。

 その上で、被害者の名誉やプライバシー、そういった弊害が生じる場合にはこれを制限をする、それは当然、制限の理由としてあると思うんですけれども、逆に、先ほど申し上げたように、一律に禁止をしてしまうということが、今のような、証拠の本来の役割ということに照らしてどうなのかということを疑問に思っているということです。

 以上です。

○和田(政)委員 まさに、鴨志田さんから、証拠は公共の財産ということがございました。これについても対政府質疑でしっかり問うていきたいというふうに思っております。

 報道、出版のことなんですけれども、袴田事件、福井事件に限らず、過去の再審無罪事件では報道や出版などが行われてまいりました。再審請求審が非公開の手続であるために、このような報道や出版によって審理の内容をうかがい知ることができました。

 目的外使用禁止規定が設けられますと、審理がブラックボックスになってしまって、再審請求者や弁護人の主張や証拠、検察官の主張、証拠の内容を知ることができなくなってしまうのではないかというところがございます。国民の知る権利、報道の自由というのが制限をされてしまうことにつながるのではないか、こういう疑問もあります。

 再審請求審が閉ざされたものになってしまって、審理の在り方を検証することすらできなくなる懸念がございますし、不服申立ての当否を検証することができなくなってしまうという指摘についてはどういうふうに考えるか、お二人、お願いをいたします。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 請求審が非公開であるために、証拠の目的外使用を禁止されるとおよそその中身をうかがい知ることができなくなるという御批判があることは承知しておりますが、公開の法廷で審理をするということが証拠を目的外使用で許すということを含むものではございませんので、公開の有無と目的外使用の禁止の適否という判断は連動しないというふうに考えております。

 その結果として、報道機関に情報が渡らない、国民の知る権利が果たされないということについては、それはそのとおりだというふうに考えておりますけれども、他方で、それは目的外使用を許す、全面的に許すことによって達成されるべきものではなく、知ることのできた範囲で報道していただく。現在の目的外使用禁止規定の下でも、証拠の概要を口頭で伝える、適切に分析して口頭で伝えるということを禁じるものではございませんので、その範囲で必要な情報を得るということが期待されるものと考えております。

○鴨志田参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げたとおり、袴田さんの五点の衣類のカラー写真の提示を支援者が受けたことで実験をして、ただし、その実験結果だけが公表されたとしても、その実験結果の有する意味というのは伝わらない。元々の開示されたカラー写真の色調とその実験結果とを比べることでしか、この実験結果の証拠価値というのは測れない。

 その意味で、やはり、そういった一人の冤罪被害者が救われるかどうかという極めて重要な問題が、報道もされず、国民の知る権利に資されることもないまま決められていくというのは、それ自体が非常に大きな問題、これは報道の自由とか知る権利という問題にも関わってくる問題であろうかと思います。

 まして、裁判がなぜ公開原則が適用されるのかといえば、やはり人が見ている、人の目があるというところできちんと公平公正というものが担保できるという、極めてこれは基本的な憲法の原則なわけですね。ところが、再審請求が、いわゆる決定手続というライトな、軽い手続だからという理由で、必ずしも公開しなくていいということになったために、まさにブラックボックス化という状況が生じているわけです。

 しかも、このことが、今回の政府案の附則によると、附則の十条で、施行前請求事件の再審の請求の手続において、つまり、施行前の再審請求事件で、裁判所が検察官から提出を受けた証拠が謄写、弁護人等によってコピーされたときの、このコピーに対しても適用されるとあります。罰則は適用されないということになっているんですけれども、この違法であるという評価は遡って適用されるということになると、これは本当に、いわゆるドキュメンタリーとか検証とか、あと、学問、学術の研究対象となったときにどうなるんだろうということを非常に懸念しておりますので、是非この点は国会の審議で明らかにしていただきたいと思います。

○和田(政)委員 私は、証拠に基づいて正々堂々やればいいと思っていますので、この点についても対政府質疑で明らかにしていきたいというふうに思っております。

 最後、お聞きいたします。

 福井事件の通常審、確定審で、検察官は「夜のヒットスタジオ」の放映日に関する捜査報告書を開示していませんでしたが、判決が確定すればこのような証拠は開示しなくてよいということにはならないわけであります。裁判所から開示を命じられなければ開示しなくていいということにもならないと考えます。もしこれらを許容するということになれば、証拠隠しはなくならず、冤罪被害者が救済されないことになるというふうに考えます。

 本来、このような証拠は、証拠を隠していたことが判明したら、検察官が自ら提出、開示すべきものではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○池田参考人 お答え申し上げます。

 御指摘はそのとおりだと考えております。発見したのであれば、それを速やかに適切に共有を図るということは、検察官の責務としても適切ではないかというふうに考えております。

○鴨志田参考人 お答えします。

 言うまでもないことですよね。やはり検察官というのは、先ほども申し上げたとおり、公益の代表者ですから、自らが無罪方向の証拠を発見したら、客観義務という言い方をすることもありますけれども、まさに真実を発見するためにその証拠をつまびらかにするということは当然の義務だというふうに思います。

 以上です。

○和田(政)委員 以上で質問を終わります。

 参考人の方々、ありがとうございました。

○井上委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時二十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

○井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外三名提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官遠藤剛君、法務省大臣官房司法法制部長内野宗揮君及び法務省刑事局長佐藤淳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

○井上委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長平城文啓君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

○井上委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井出庸生君。

○井出委員 質疑の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 早速始めてまいりたいと思います。

 まずは、証拠開示について伺います。

 証拠の提出先が政府案では裁判所となっておりますが、証拠の写しを請求人に送付するなど、これまでの裁判所の裁量を維持すること、請求人の閲覧の機会を確保することは必要不可欠であると考えております。その点を踏まえた十分な周知をまず求めてまいりたいと思いますが、刑事局長の見解をいただきます。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 再審請求者につきましては、裁判所の判断によりまして、証拠の提出命令によって裁判所に提出された証拠を閲覧することが可能でございまして、御指摘のような観点も踏まえまして、裁判所において個別の事案に応じ適切に判断されるものと考えておりますけれども、御指摘のように、関係機関、裁判所、検察当局、そういったところにちゃんと法改正の内容を周知していきたいと考えているところでございます。

○井出委員 最高裁にも伺います。

 法制審の議論でも、附帯事項に、請求人の閲覧の機会を確保することは非常に重要であると。これまでの再審請求でもそういう実務を執られてきたかと思いますが、今回法律ができることによって、改めてその必要性、重要性というものは増していると思います。最高裁の答弁を求めます。

○平城最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 本法律案におきましても、再審請求人による証拠の閲覧等を禁止するような規定はございません。文献等によりますと、刑事記録に関しては、受訴裁判所が司法行政上の措置として、明文上の規定がない者に対して閲覧等させることは可能であると解されているものと承知しております。

 このような考え方に基づけば、裁判体において、再審請求人が弁護人を通じて必要な証拠にアクセスすることができない、このような事情も踏まえ、請求人に証拠を閲覧させたり、また証拠の写しを送付したりすることも可能であると考えられ、法制審議会の議論においても同様の理解が共有されていたものと認識しております。

 最高裁事務当局といたしましては、本法律案が成立した場合には、その内容や成立に至る議論状況について現場の裁判官に対して十分に周知し、適切な運用の確保に努めてまいりたいと考えております。

○井出委員 次に、条文について伺います。

 証拠開示関係の条文の中で、政府案の、相当と認めるときとする政府案の書きぶり、それから、議連案の、相当でないと認められるときを除き、この書きぶりが議論の一つのテーマとなっておりますが、提出する証拠の範囲の違いというものがどこまで想定されるのか、答弁を求めます。

○佐藤政府参考人 両者の間で実際に提出されることとなる証拠の範囲というのが、では具体的にどのように違うのかと言われると、一概に申し上げることはなかなか難しいところではあるんですけれども、まず概念的に申し上げますと、本法律案におきましては、証拠の提出命令について、裁判所が必要性と弊害を考慮して相当であると認めるときに証拠の提出を命ずることとしているため、必要性と弊害が同程度であるか、あるいは弊害が多少上回るような場合には、相当であるとは認められないとして提出を命じないこととなると考えられるところでございます。

 他方で、御指摘のように、積極的に相当でないと認められるときを除いて証拠の提出を命ずることとした場合、必要性と弊害が同程度であるか、あるいは弊害が多少上回るような場合であっても、相当ではないと認められないとして提出を命じないこととなるように考えられるところでございます。

○井出委員 証拠を開示する必要性と弊害が同程度である、それは裁判所それぞれの御判断ですので、個人的にはどちらかの判断が出るのではないのかなというふうに思いますが、必要性と弊害性が同程度であるというような状況において、これまで実務でも認められてきた任意の開示の手続があろうかと思います。そういうところで、必要性と弊害、その弊害の部分をマスキングをして提出をする、そういうような実務は可能なのか、その点を伺いたいと思います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりでございまして、例えば、相当でないと認められるときというものの典型は、犯罪被害者のプライバシーに関する情報、手帳の全体であったり、あるいは性的な画像であったりする場合があるわけですけれども、この弊害を取り除くために、マスキングをしたりすることによってその弊害を取り除いて、必要性と弊害の勘案ということになりますけれども、そういう形で弁護人の用に供するように、そのような任意開示をするというのは、実務上、通常審でも一般に行われているということでございます。

○井出委員 次に、これまでの答弁で再三出ております、裁判所による再審開始理由についての判断に資するという意味で、相当な広がりを持つと、関連性というところについての見解だと思いますが、裁判所による判断に資するという意味であり、相当な広がりを持つ、このことを具体的に説明していただきたい。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 証拠の提出命令制度における再審の請求の理由に関連する証拠といいますのは、裁判所による再審請求理由についての判断に資する捜査書類等の書類あるいは押収物等の物を指すところでございます。これはかなり広い、再審請求理由の有無を判断するために取調べが必要なという意味でございまして、必要なものであれば関連性があると認められるところでありまして、相当の広がりを持つわけですが、今、委員の御指摘を踏まえますと、例えば、新証拠によって確定判決を支える一部の旧証拠の証明力が減殺されたような場合には、ほかの旧証拠の、その減殺された証拠以外の旧証拠の証明力に関する証拠も、再審の請求の理由に関連する証拠といたしまして証拠の提出命令制度の対象となり得るというふうに考えられるところでございます。

 また、例えば、再審請求後に裁判所に新たに提出された証拠に基づいて再審請求理由を追加した場合には、その追加された再審請求理由に関する証拠についても、再審の請求の理由に関連する証拠として証拠の提出命令制度の対象になり得ると考えられるところでございます。

○井出委員 相当な広がりと言えるかどうかは分かりませんが、一定の広がりの説明はあったんだろうと思います。

 証拠開示については現行より後退することはあってはならない、これは多くの方が意見として述べておりますし、私も全くそのとおりだと思っております。

 法務省は、この提出命令制度ができること、そしてこれまでの任意開示も否定されないこと、このことによって従来よりも後退はないんだという答弁を再三してきております。しかし、私は、今日、鴨志田参考人から御指摘がありましたとおり、法改正で命令制度ができることによって、そちらに縛られると申しますか、かえって実務が提出命令に偏る、例えば、検察側が、裁判所がこういう証拠が必要だといったときに、それは命令制度があるから命令制度で出してください、そういう実務になって、任意の開示が減少するのではないか、その点を懸念しておりますが、その懸念についての答弁を求めます。

○佐藤政府参考人 済みません、先ほどの答弁でちょっと言い間違いがございまして、先ほど、相当でないと認められるときを除いて提出、開示する証拠の話でありますが、積極的に相当でないと認めるときを除いて証拠の提出を命ずることとした場合、必要性と弊害が同程度であるか弊害が多少上回るような場合であっても、相当でないとは認められないとして提出を命じないこととなると答弁しましたけれども、これは提出を命ずることとなるの誤りでありますので、申し訳ございませんでした。

 それで、今の御質問にお答えいたしますと、本法律案における証拠の提出命令制度は、再審請求審における裁判所による証拠の提出、開示の勧告であるとか、検察官による任意の証拠の提出、開示といった従来の実務運用を否定するものではなくて、これに加えて、一定の場合に、裁判所に対して、検察官に証拠の提出を命ずる義務を課すものでございます。

 現在の通常審におきましても、このような証拠の開示命令で、関連する証拠という形で証拠開示が行われているわけでありますけれども、それ以外にも任意の開示が広く行われているところでございまして、再審請求審においても当然そのような運用がなされるというのが今の現場の実務感覚であると私は理解しておりまして、そのような懸念はないと思っておりますけれども、改めまして、今御指摘のあったような懸念につきまして、本法律案が改正法として成立した場合には、裁判所や検察庁等の関係機関に対して制度の趣旨や内容を十分に周知して、適正な運用の確保に努めてまいりたいと考えているところでございます。

○井出委員 平成十六年に通常審において証拠開示制度を創設されたときに、最初はおっかなびっくりであったけれども、その後、実務というものが大きく変わったと。その後、私がいろいろ、いろいろな方に聞いたところ、命令制度の段階に至ってしまうと、通常審においても即時抗告がお互いできるわけですし、当然長期化というものが懸念をされる、そうである前に、任意の段階できちっと請求人の御意向、裁判所の御判断、検察官の考えを調整して、任意での証拠開示というものが従前より、より活発となった、そういうことをおっしゃる方もいますが、そういうことが再審においても法改正によって見込めるのかどうか、その辺りを答弁をいただきたい。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のようなことでございまして、今回の附則におきましても、できる限り速やかに、裁判の迅速化法の趣旨が妥当するであるとか、様々な迅速化のための関係者の協力もあるところでありまして、今御指摘のあった趣旨も踏まえまして柔軟に対応していくものと承知しているところでございます。

○井出委員 通常審のケースを見れば、証拠がなかなか出てこないですとか、そういうことは、今申し上げたような長期化の懸念のみならず、裁判所の心証であったり今後の訴訟への影響というものも考えられますし、それは再審請求審においても同じだろうと思います。そういうところも踏まえて、より積極的な任意の開示が行われるべきと考えますが、いかがでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 訴訟運営について当事者も含めて迅速な進行に協力するということは大事でございまして、今回の法案の附則にもその趣旨が述べられているところでありますけれども、当然、任意開示、勧告、あるいは今回の命令みたいな、段階を追うことになりますが、できる限りこういったものは任意開示の段階で、命令を出したりするのでも一手間、二手間でありますし、お互いに心証の問題も生じるわけでありますので、任意開示が柔軟になされることというのは重要だというふうに考えているところでございます。

○井出委員 おとといの法務委員会の刑事局長の答弁の中で、通常審において、弁護人からの開示請求が類型証拠とか主張関連証拠の開示の法定要件を満たすかについて疑義がある場合であっても、証拠開示の制度の趣旨、先ほどの審理の見通しなどの実情を勘案し任意の開示をしているところである、そのような柔軟な証拠の任意開示が行われるのは公判前整理手続に付されない事件についても同様であるというふうに認識していると。

 是非、法律ができるんですが、それはあくまで証拠を開示することが目的である、命令制度を行使することが目的であるということではない、証拠が開示されることが目的であるということはきちっと御理解をいただきたいと思いますし、できれば、任意のものが否定されないというような言い方ではなくて、任意の実務についてももう少し積極的な答弁をいただきたいと思います。

 次に、証拠リスト一覧表の関係について伺います。

 再審請求者側が裁判の証拠の提出命令を請求する際の証拠の特定は、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りるため、証拠の一覧表がなくても十分に可能であるという答弁が再三されております。

 先ほど参考人質疑で鴨志田参考人の方からも、そんなに簡単なものではないというようなお話がございましたが、証拠の一覧表がなくとも十分に可能である、なぜ十分に可能だと言い切れるのか、具体的に説明をいただきたい。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 例えばということでありますけれども、仮に犯人でない人が有罪判決を受けたとして、その人が再審請求をする場合には、確定審の証拠あるいは判決の内容から、その判決のうちどの部分が誤っているかを把握しているのが通常であると考えられるところでございます。そこで、検察官に提出を命ずるべき証拠としてどのような証拠があり得るかということについては、ある程度想定することが可能であると考えられるところでございます。

 さらに、加えまして、提出命令の対象となる証拠の特定は請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りるというふうに考えていますところ、再審請求者側においてその程度の特定を行うことは証拠の一覧表がなくても十分に可能であると考えているところでございます。

 例えば、有罪認定の根拠となった目撃者の証言がある場合、この目撃者の証言は誤っているということを再審請求者側が考えている場合、これにつきましては、その有罪認定が誤っていることを示す可能性がある証拠として、犯行状況に関する別の目撃供述であるとか、当該目撃証言中の目撃日時などに関する証言と整合しない内容が記載された捜査報告書などの証拠があることが想定されるということでございます。

 再審請求者がそのような証拠につきまして提出命令の請求をするに当たっては、今の前者の例について言いますと、犯行状況に関する他の目撃者の供述調書、例えば日時とかの特定は全く要らないということでありまして、まあ日時は一定程度の枠があるんだと思いますけれども、それ以外の、例えば犯行目撃日時に関する裏づけ捜査の結果を記載した捜査報告書といった程度の特定をすれば足りますので、例えば目撃者の氏名であるとか供述調書の日付、作成者、こういったものによる特定は要しないと考えられるところでございます。

○井出委員 これまでの法務委員会の中で、刑事局長は、再審請求をする者にとってそのどこを争うかということにもよる、また、一定の区切り、見立てはつくというような話もされていて、それは誤りを把握しているから想定できるんだということと同趣旨だと思いますが、しかし、一定の区切り、見立てというものが必ずしも的確な証拠へのアクセスと一〇〇%イコール、一致するのかといえば、やはりそこはそうとは言い切れないという部分は拭い去れないというふうに思います。

 一覧表の表示というものは、通常審においても、平成十六年に証拠開示制度ができて、二十八年に一覧の法改正が行われました。したがって、今後、再審において証拠開示制度が導入されても、恐らくそうした議論というものは残っていくんだろうということは私自身強く思います。

 政府案では、インカメラで証拠の標目を出すことができるとなっている。通常審にもインカメラ規定がありまして、通常審のインカメラ規定においてどのようなものを出すかについては、刑訴規則二百十七条の二十八、証拠ごとに、その種類、供述者又は作成者及び作成年月日のほか、証拠の提出を命ずるかどうかの判断のために必要と認める事項を記載しなければならないとありますが、これは、通常審では具体的にどのような事項が記載されたものが提示をされているのか。そしてまた、法改正の暁には、再審請求審のインカメラにおいても通常審と同様の内容が提示されるという理解でいいのか。説明を求めます。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 通常審における証拠の一覧表については、御指摘のように、刑事訴訟規則において規定がなされておりまして、裁判所が証拠の提示を命ずるかどうかの判断のために必要と認める事項を記載しなければならないとされているところでありまして、例えば、供述調書における供述事項であるとか、あるいは鑑定書についての鑑定対象事項であるとか、証拠物についての被押収者の氏名や押収された場所を記載することなどが考えられるところでございます。

○井出委員 一点、これは通告をしていないので答えられればで結構ですが、インカメラで裁判所が証拠を見たときに、何人たりとも謄写をしてはいけないということなので、裁判官自体もメモを取ることはできないという理解でいいのか。前二項の場合において、裁判所は、何人にも、第一項の証拠又は前項の一覧表の閲覧又は謄写をさせることはできない。裁判所は、何人にも、閲覧、謄写をさせることはできないと。裁判所自身がメモを取るということは可能なのか。もう一つ聞きたいのは、インカメラで見た内容を裁判所が他者に口外をすることは可能なのか。ちょっとそこを分かれば。分からなければ、また後日で結構です。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 裁判官が自分でメモを取る内容を規制するものではないのではないかというふうに思いますけれども、済みません、裁判所内の規則のこともあるかもしれませんので、ちょっと確定的なお答えはできないことをお許しいただきたいと思います。

 それから、裁判所がこの内容を外に公表するかどうかというのは、今、私の理解で、もし間違いがあったら後で訂正しますけれども、裁判官は国家公務員でございますので、当然、守秘義務違反の論点が生じ得るというふうに思います。

○井出委員 口外については、例えば、請求人や弁護人に、こういうものだった、したがって関係はないと思うという説明に使うかぐらいの程度のことだったんですが、通告をしておりませんので、また後日教えていただければと思います。

 今の質問をしたのは、インカメラで物を見るというときは、やはり裁判官の判断に委ねられる。これは少し話が変わるんですが、例えば国家機密みたいな重要なもの、例えば、外国では、本当に重要なものをインカメラで国会の政治家が見る、それは野党の主要な人物も見る、しかし、見たことにおいては責任を負わなければいけない。密室で限られた情報に接するということは、その見たことに対しての責任を負わなきゃいけないという部分が少し相通ずるところがあるのかなと。それを、例えばセカンドオピニオンを求めたり、外の人に説明をできるのかな、そこのところが懸念でしたので、急ぎませんのでまた教えていただければと思います。

 次に、証拠の目的外使用について伺います。

 私は、証拠の目的外使用の禁止、その必要性自体は認めます。それは、捜査への支障であったり、ずっと言われているプライバシーというものもあろうかと思います。しかし、必要性は認めるものの、現行ある通常審の証拠の目的外使用禁止も含めてやはり問題があるのではないか、そういう認識で幾つか問題を提起したいと思います。

 高市総理が本会議において、私としても、再審請求事件における支援活動や報道の意義を否定するものではないと答弁をしています。これは当然、法務省の認識も同じだろうと思います。

 資料を配付しておりますが、法務省が二〇一八年に公開をしております法教育視聴覚教材「きめきめ王国」とは、誰にどのようなメッセージを送るために作成、公開をしたのか、答弁を求めます。

○内野政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の教材、御指摘いただきました「きめきめ王国」でございますが、法務省が平成二十五年に小学校五年生、六年生向けとして公開した冊子教材でございます「情報化社会における表現の自由と知る権利 情報の受け手・送り手として」の一部を視聴覚教材化したものでございます。

 情報化社会におきましては、情報技術が著しく発展したことによりまして、多くの国民が、インターネット等を通じて大量の情報を得ることができる一方で、情報を発信することもできるところでございます。このような社会におきましては、一般論として、よりよい生活と社会をつくるための様々な情報を交換すること、言い換えますと、知ること、そして表現すること、こういうことが重要であるとともに、情報の受信及び発信の主体として適切な行動を取ることができる資質や能力を身につけることが重要である、このような認識に基づくものでございます。

○井出委員 この「きめきめ王国」というのは、私は、動画から今日は少し資料を用意したんですが、これをぱっと見ていて思ったのが、この一枚目のイラストの三と四、「この記事はのせてよい。」「記事のこの部分はけずれ。」、これを見たときに、私が毎晩毎晩考え続けてきた証拠の目的外使用に少し通ずる部分があるなというようなところを感じました。

 証拠の目的外使用の禁止というものは、証拠の提出、裁判を迅速に進めていくという意味では効果を発揮してきた、そこは多くの方が賛同するところであります。しかし一方で、目の前の手続、目の前の訴訟を迅速に進めていくこと、そのことに裁判官、弁護人、検察官が重きを置き、そのことによって国民の知る権利が侵されていないか、そういう問題意識を私は強く持っております。

 そこで伺いますが、必要性は認める、それは繰り返し申し上げておきます。しかし、例えば、証拠を支援者が共有をすること、過去の裁判、そして再審請求審、その両方において大きな役割を果たしてきたのが証拠の支援者の共有である。そしてもう一つは、国民の知る権利に応えるマスコミの報道。この支援者の共有とマスコミの報道、この二つの目的のために証拠が使用されることが禁じられる、処罰の対象となる、このことについては、私自身もいまだ大きな懸念と言わざるを得ませんし、そういう意見が多くあるんだろうと思います。私自身は、本来、この二つについては法令違反とすべきではないと考えておりますが、少なくとも罰則の対象にはしない、このことをまず明確にすべきではないかと考えますが、答弁を求めます。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 本法律案において新設することとしている証拠の提出命令制度は、証拠の内容を広く国民に知らせることを目的とするというものではなくて、証拠に基づく適正な裁判を実現することを目的とするものでございます。すなわち、犯罪被害者を始めとする、あるいは被疑者側もそうかもしれませんけれども、これを広く国民に知らせるべく、調書とかに応じたり、あるいは捜査に協力したりするという前提のものではなくて、裁判を適正に行うということに御協力していただいているということだと理解しております。

 その上で、関係者の名誉、プライバシーの保護などを図るとともに、証拠の提出命令制度の適正な運用を確保するため、この提出命令制度が広く活用されるためにも、再審請求審で謄写した証拠の複製等の目的外使用を禁止する必要はあると考えているところでございます。

 しかしながら、そのために、証拠の複製等を支援者と共有することとか国民に公表することを一般的に目的外使用の禁止の対象から除外することは相当ではないと考えていることから、一般にというふうに言われてしまいますと、そのようなことは難しいというふうに申し上げざるを得ないわけですけれども、当然のことながら、証拠の複製等を再審手続等の準備に使用することはもとより許されておりますし、証拠の概要を伝達するなどの行為は禁止されておりません。それから、弁護人に関しましては、対価を得る目的でなければ、証拠の複製等を交付することなども全く罰則の対象にはなっていないわけであります。

 それからまた、目的外使用の禁止に違反した場合の措置につきましても、複製等の内容、行為の目的、態様等、個別様々な事案があり得ると思うのでありますけれども、こういうことを考慮して、措置を取るべき者、これは弁護士会であったり裁判所、民事の裁判所ということになるかと思いますが、こういう方々において適切に判断されるべきもの、個別の事情に応じて判断されるべきものと考えているところでございます。

○井出委員 現時点で、それを全く法令違反としないということはなかなか同意はできない、しかし、目的や態様等、考慮事情をクリアしていれば処罰の対象としないことはあり得るし、それは処罰の対象でなければ、今、弁護士会とか裁判所、裁判所というのは恐らく訴訟になったときというようなことだと思いますが、法令違反には当たるが、考慮事情をクリアしていれば処罰対象としないと。そのことについては、検察官がその事件を立件をしない、送致をしない、そのことによっても担保されるのではないかと思います。

 証拠の目的外使用禁止に違反する事件があったときに、それを検察が立件するかどうか、そこにも極めて謙抑的な姿勢が求められると思いますが、答弁を求めます。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 立件かどうかという話になりますと、例えば送致をするのは警察でございますし、例えば自分のプライバシーを外に漏らされたという方から告訴、告発などが出ることも想定されますので、そういうことがあった場合に立件されるということはそうなんだろうと思います。立件というか、送致がされたり、検察庁で事件として立件するということがあるわけでありますが。

 その上で、当然のことながら、そのような行為の態様、個別の事情に応じて起訴、不起訴の判断がなされるということでありまして、正当なものであったり、あるいは元々当たらないという場面もあって、そのときにはいわゆる嫌疑なしとか嫌疑不十分ということになるかもしれませんし、一方で、目的外使用の禁止には一応当たり得るけれども、そのような悪質性がないという場合には、当然、起訴猶予というような判断がなされるということになるのではないか、個別の事情によるというふうに考えているところでございます。

○井出委員 プライバシーの侵害ですとか捜査への支障、そしてまた公判の妨げですとか、そういうことになるのであれば、やはりそれは厳しく罰せられるべきだろうと思います。

 しかし、その証拠が、法に定められた目的外使用禁止の違反に当たる、しかし、いろいろ調べを尽くした結果、そこまで悪質性もない、そういう意図もない、そういうことであれば、検察の起訴段階において、警察の送致という話もございましたが、この法令の趣旨というのは、裁判を円滑に進めるために設けられている、一義的にはやはり、裁判がきちっと進んでいくのであれば、この法律を広くそれ以外のものに対して適用する必要は私はないんだろうと思います。

 一つ、具体的なことを聞きます。

 証拠の複製であれば法令違反に当たる、しかし、二次加工や概要であれば法令の違反には当たらない、違反には当たらないので当然処罰の対象ではないと。そこで聞きますが、証拠の複製にマスキングをして公表、マスコミに提供するということが法令違反に当たるのかどうか、伺います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 目的外使用の禁止の客体である証拠に係る複製等とは、当該証拠の全部又は一部につき加工等をすることなくそのまま記録した書面等を意味するものでございまして、加工等によって複製等に該当しなくなったものについては、これを目的外に使用することも許容されるところでございます。

 その上で、お尋ねにつきましては、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるべき事柄でございますので、一概にお答えすることは困難でありますけれども、例えば、証拠の写しについて、マスキングして加工したことなどによりまして複製等に該当しなくなったものを公表したと認められる場合には、目的外使用の禁止には当たらないということでございます。

○井出委員 一問、済みません、通告をしない状況ですので、お答えできる範囲でお願いをしたいと思いますが。

 袴田巌さんの冤罪事件の五点の衣類の写真、そこに付着しているものの色合いの違いというものがさんざん議論になってきたと思います。五点の衣類について、ポイントとなる色合いというところは、写真全体から見ればごく一部なんだろう、その部分は世の中に出して、多くの人にこれはおかしいんじゃないか、当時こう言われたようにですね。しかし、その大半の部分を今の技術でいえばぼかしを入れておくとか、そういうことであれば法令違反にはならないのか。ちょっと個別の事件なのでなかなか難しいかもしれませんが、少し見解をいただきたいと思います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほどと同じような形になってしまうかもしれませんが、お尋ねにつきましては、やはり個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるべき事柄でございまして、一概にお答えすることは困難でありますけれども、そのような様々な加工等をすることによって複製等に当たらなくなるということはあり得るものというふうに考えているところでございます。

○井出委員 本来であれば、私の立場としては、やはり公判やプライバシー、捜査への支障、そういうものに対しての禁止措置をかけるべきであって、裁判が迅速に進むのであれば、それ以外のものを法令違反に問うべきではないと思います。それはどうしてかといえば、証拠の概要が文字で出てくるのとそれが写真や映像で出てくるのでは、やはり実際、国民の受ける感覚というのは大きく異なる。

 この「きめきめ王国」にも出てくるんですけれども、情報の許可を王様が決めるのではなくて、やはり国民に見ていただく、考えていただく、それがよりよい社会をつくっていくことにつながっていくし、それはすなわち、日本の裁判においても、やはりできるだけ公開をしていく。

 公開も大事ですし、迅速に進めることも大事なんですが、迅速に進めることに固執をし過ぎて、憲法に定められた公開の部分に少しでも踏み入るようなことがあれば、それは、刑事手続法である刑事訴訟法にばかり目が行っていて、憲法をないがしろにしていると言われてもおかしくないと思うんです。もちろん、そこを分かって、口頭で伝達するのはいいとか、概要はいいとか、そういう配慮を見せているんでしょうけれども、私は、その配慮というものをもう少し考えていただきたいというふうに思います。

 次に進みます。検察官抗告について伺います。

 検察官抗告は原則として禁止をする、十分な根拠がある場合に限ってできるということを答弁をされてきていて、さらに、答弁で、より慎重で抑制的な運用を確保する十分な実効性を有するということを答弁されております。

 これまで機械的、形式的に抗告をしてきたことが批判をされてきておりますが、機械的、形式的と批判をされてきた過去の運用はこの法改正によって変わるのかどうか、まず伺います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 本法律案において規定することとしている十分な根拠の判断主体は検察官でありますけれども、その判断につきましては、結論として、今般の法改正により、これまでよりも明らかに、増して、再審開始決定の内容や具体的な事実関係、証拠関係等を踏まえて、抗告裁判所の審査に堪え得る客観的に妥当なものかという観点から、組織的に十分な検討を尽くした上で慎重に行われることになるというふうに考えているところでございます。

 例えば、検察当局におきましては、いわゆる袴田事件の再審無罪判決を踏まえて、全ての再審開始決定について、検事総長訓令により、検事正はあらかじめ検事長の指揮を受けなければならないこととするなどの取組を行っておりまして、本法律案が改正法として成立した場合には、その適切な運用により一層努めていくものと承知しております。

 そして、再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて十分な根拠がない場合には、抗告裁判所において、通常、当該不服申立てに理由がないと判断されて、不服申立てが棄却されることとなると考えられるところでございますし、その終局決定は不服申立てがあった日から基本的に一年以内になされるということでございます。

 それに加えまして、五年ごとの検討条項がついているということでございます。

 また、国賠訴訟、すなわち、国の公権力の行使に関わる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国がこれを賠償する責任を負うこととなりますけれども、改正後の刑事訴訟法四百五十条の二第一項及び第二項につきましても、当然にその場合の裁判規範となるわけでございますので、これに違反して十分な根拠なく不服申立てをしたと認められる場合には、国家賠償の問題が生じ得るということでございます。

 こうしたことから、本法律案における他の法整備と相まって、再審開始決定に対する不服申立てについて、より慎重で抑制的な運用が確保されるというふうになると考えておりまして、検察官の不服申立てが機械的、形式的に行われているといった指摘を受けるような事態は生じないと考えているところでございます。

 いずれにしましても、法務当局といたしましても、本法律案が改正法として成立した場合には、検察当局に対しまして改正の趣旨、内容等の周知徹底に努めてまいりたいと考えているところでございます。

○井出委員 もう一度、少しゆっくり読んでいただけますか。

○佐藤政府参考人 済みません、アドリブで読んだところがありまして、そのとおり読めるか、あれなんですが、どの部分がよろしいでしょうか。(井出委員「全部」と呼ぶ)

 本法律案において規定することとしている十分な根拠の判断主体は検察官であるところ、その判断につきましては、結論として、今般の改正により、これまでより増して、これまでに増して、再審開始決定の内容や具体的な事実関係、証拠関係等を踏まえて、抗告裁判所の審査に堪え得る客観的に妥当なものかという観点から、組織的に十分な検討を尽くした上で慎重に行われることとなると考えているところでございます。

 例えば、検察当局におきましては、いわゆる袴田事件の再審無罪判決を踏まえまして、全ての再審開始決定について、検事総長訓令により、検事正はあらかじめ検事長の指揮を受けなければならないこととするなどの取組を行っているところでございまして、本法律案が改正法として成立した場合には、その適切な運用により一層努めていくものと承知しているところでございます。

 そして、再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて十分な根拠がない場合には、抗告裁判所におきまして、通常、当該不服申立てに理由がないと判断されて、不服申立てが棄却されることになると考えられる上、その終局決定は不服申立てがあった日から基本的に一年以内になされることになります。

 これに加えまして、五年ごとに、このような検察官の不服申立ての状況についても考慮に入れられた上で検討が行われるということでございます。

 また、国家賠償請求訴訟においても、その裁判の規範となるということでございます。国の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国がこれを賠償する責任を負うことになりますけれども、改正後の刑事訴訟法第四百五十条の二第一項及び第二項につきましても、この違法の有無を判断するに当たっての法規範となるものでございますので、これに違反して十分な根拠がなく不服申立てをしたと認められる場合には、違法という評価を受けて、国家賠償の問題が生じ得ると考えられるところでございます。

 こうしたことから、本法律案における他の法整備と相まって、再審開始決定に対する不服申立てについて、より慎重で抑制的な運用が十分に確保されることとなると考えておりまして、この法律案が改正法として成立した場合には、検察官の不服申立てが機械的、形式的に行われているといった指摘を受けるような事態は生じないと考えているところでございます。

 法務当局といたしましても、本法律案が改正法として成立した場合には、検察当局に対しまして改正の趣旨、内容等の周知徹底に努めてまいりたいと考えているところでございます。

○井出委員 その十分な根拠、今回の法改正、即時抗告については、元々、刑事訴訟法の四百二十条で、定められたもの以外は即時抗告はできない、できるものが四百五十条に幾つか列記をされていて、そこに入っていた再審の部分を削った。このことによって、再審の即時抗告はできない部類に入った。それは一つ、できないということの大きな根拠であろうと思っています。

 それに対して、例外的に抗告をするということであれば、十分な根拠というものが本当にその根拠たるものでなければならないだろうというふうに思います。

 これまでの答弁で、その十分な根拠については、重大な事実誤認や重大な法令適用の誤り、重大な手続違反があると考える場合であって、なおかつ、これらの誤り等に関する主張が上級審において受け入れられ、再審開始決定が覆ることになる蓋然性が高い場合にこれが当たると考えられるとしております。

 おとといの稲田委員とのやり取りの中で、稲田委員は質と量という話をされまして、そこのところは、私なりに解釈をすると、決定的に非常に大きい事実誤認がある、重大な事実誤認がある、そして、その上で、それを支える証拠であったり判例、その根拠となるものがきちっと積み上がっていかなければ即時抗告というのはできないんだろうと。

 これまでの議論の中で、抗告の理由など幾らでも作文できるというような御指摘もありましたが、作文できる類いのものなのかどうか、そこについて答弁をいただいておきたいと思います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、四百五十条の二第一項、第二項の当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合とは、不服申立てにより再審開始決定等が取り消される蓋然性が高いことを裏づける合理的な根拠がある場合を意味しておりまして、再審開始決定に重大な事実誤認や重大な法令適用の誤り、重大な手続違反等があると考える場合であって、なおかつ、これらの誤り等に関する主張が上級審において受け入れられて、再審開始決定が覆ることとなる蓋然性が高い場合がこれに当たると考えているわけですけれども、作文ができるかというふうに言われてしまいますと、これは作文ではなくて、証拠に基づいた論理的な推認力などを働かせて、その論理的な主張内容が裁判所に判断されるということでありますので、それは証拠に基づくものでなきゃいけないのは当然ですし、単なる作文ではないというふうに、そういう作文ではこのような要件を満たすことはないだろう、先ほど言ったようなものでなければ、単なる作文ではそういうことにはならないだろうというふうに考えるところでございます。

○井出委員 抗告の十分な根拠、それが作文できるのか、作文なのかということについては、政府案では、理由を公表するということを本則に入れています。しかし一方で、どのような理由を公表するかについては、法の施行までに検討をするというのが現時点の答弁です。検討をしていただくのは結構なんですが、少なくとも、現時点で積み重ねてきた検討、想定というものは、はっきりと今お示しをいただかなければならないと思います。お願いいたします。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑事訴訟法第四百五十条の二第三項で公表の対象としている、抗告をした場合におけるその理由とは、検察官が原決定が取り消されるべきであるとの主張を基礎づけるものとして構成した裁判所に対する事実認定上、法律適用上の主張を意味するものでございまして、その内容としては、この規定を設ける趣旨からしますと、検察官の不服申立てが十分な根拠に基づくものであったことが分かるようなものが必要であると考えているところであります。

 具体的にどのような事項を公表するかについては、個別事件にもよるところでありますので、一概にお答えすることは困難でありますけれども、例えば、重大な事実誤認があって、これに関する主張が上級審において受け入れられて、再審開始決定が覆る蓋然性が高いと判断して不服申立てをした場合を例にいたしますと、訴訟関係者の名誉、プライバシー等にも配慮して相当な範囲内で、公表事項として、例えば、当該再審開始決定の判断のうち事実誤認があったとする具体的な箇所、それが重大な事実誤認であることを示す理由や根拠、その事実誤認により再審開始決定が取り消されるべきものと判断した理由や根拠を明示いたしまして、検察官の判断の理由や主張内容が分かる形で公表することとなるのではないかというふうに考えているところでございます。

○井出委員 単に事実誤認ということで片づけるのではなくて、その根拠や理由等、そういうものも含めて具体的にしていく、プライバシーへの配慮等はするというような話でございました。

 十分な根拠が何であるのか、そしてその公表はどのようにするのか、その辺りは、午前中、鴨志田参考人が、この部分をしっかりと定義をし、コンメンタールに詳細が載るような、そういうものでなければならないというようなお話がありましたので、是非、そこの部分は、まだ検討の部分もあろうかと思いますが、今の方向性できちっと詰めていっていただきたいというふうに思います。

 それともう一つ、本法改正によって、機械的、形式的と批判をされてきた抗告の運用は変わるということを先ほどお話がありましたが、そうなった場合に、これまでしてこなかった再審公判本番での控訴、上告というものが今後あり得るかどうか、伺いたいと思います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げれば、検察当局においては、再審公判において無罪判決が言い渡されたときは、個別の事案ごとに判決の内容を十分精査して、法と証拠に基づいて控訴の要否を判断してきたものと承知しているところでございます。

 その上で、本法律案が改正法として成立した場合においても、引き続き検察当局において適切に対応していくものと考えておりますけれども、再審公判で無罪判決が言い渡された場合の運用が変わるかどうかにつきまして、今の現段階で確たることを申し上げることは困難である、やはり個別事案によるのだろうと思いますけれども、傾向とか方向性がどうなるのかを答えるのは困難であるということでございます。

○井出委員 党内で、抗告は禁止すべきだ、再審公判で、開かれた場で争うべきだ、そういう主張をしてまいりましたので、仮に、抗告はしない、再審開始決定にあらがう十分な根拠、そういうものはない、しかし、その事件については原審の有罪を検察としては確信をしている、そういう場合については再審公判本番で控訴をすることがあり得るのではないか、そういうことを、この二か月ぐらい、いろいろな皆さんと話してまいりましたが、それはなかなか、今お話があったとおり、当局からの答弁としてお答えをするのは難しいのではないかというのが、今答弁を聞いた感想です。

 五年後の見直しではなくて、五年ごとの見直し規定をつけました。そういう中で、再審開始決定もそうそうありませんし、それに対する抗告というのもそうそうないんだろう。そうすると、五年、十年、十五年で果たして検証に足るような事件というものがどれだけあるのか、そこは、私、見当もつかないものですから、五年後の見直しではなくて、五年ごとの見直しというふうに変えてもらいましたが、その辺りは、検察、それから裁判所、そしてまた再審請求の弁護をしている弁護人にとっても、これからの運用について、御自身たちが関わっていく事件というものが、数少ない再審事例というものが、今後の法整備、それから再審請求審、再審公判を通した再審というものが本当に公平な裁判と迅速な裁判、そして再審公判においては開かれた裁判、憲法で定められたものにかなっていくのか、そこは法曹三者に尽力をしていただかなければならないと思いますし、私としても、そのことはしっかりと見守っていかなければならないというふうに思います。

 冒頭に申し上げました法務省の「きめきめ王国」、これをどうして私が、この七年前の動画を発見したのか。法務省の人に昨日お尋ねしたら、誰も知らなかった。再生回数も極めて少ない。それを私が見つけたのは、憲法に定められた公平な裁判、これは一体何なのかを調べていたときに、公平な裁判とは、まず憲法と法律、しかし、まず憲法に沿って進められるということが大事である。その中で、裁判官の独立ですとか三権分立というものがある。その中で、法務省のホームページの中に憲法についての、憲法週間という場所があって、そこでこれが出てきたんです。

 私は、このきめきめ動画を見ていて思ったのは、国民の知る権利ということを申し上げましたが、やはり、国民に考えていただく、考えていただくには知っていただかなければならないんです。国民の皆さんに考えていただく機会というものを提供していきたい、その観点からすれば、今日いろいろ申し上げました、目的外使用のところというのは非常に大きいところだというふうに思いますし、再審も、請求審においても、これは公開は禁じられてはいないんだろう、一例でしかありませんが、公開されたこともあるというふうに聞いておりますが、憲法に沿った裁判をやっていく、そのためには国民に考えていただく機会というものをより提供していく。

 裁判で早期に結論を得る、手続を迅速にする、刑事訴訟法を守ることだけに固執をして、憲法の趣旨を忘れてはいけない、そのことは切にお願いをしておきたいと思いますが、そのことについて一言お願いしたいと思います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正は、証拠提出命令の制度であるとか目的外使用の禁止も含めまして、裁判が迅速に充実して行われる、再審請求審が充実して行われるようなことを目的としたものでございまして、その中で、憲法であったり、こういう国民との関係であったり、そういうことが、再審請求審の結果によっても様々な影響が生じるというのは事実でありますので、憲法上の権利を守ることは当然でありますけれども、そのような中で、そのような憲法の観点にものっとった運用がなされるということが重要なのかなというふうに思っているところでございます。

○井出委員 ありがとうございます。

 この問題につきましては、私は、超党派の議員連盟で事務局をやって、本来であれば、議員立法の案をという思いもございました。しかし一方で、私自身は、党内議論においても非常に重たい責任をしょってここに来ております。自民党の中で私が最後に申し上げたのは、やはりきちっと議論を続けていく、そのために、閣法が不十分であっても、そしてまた、そのことによって私自身が厳しい立場に立つことになっても、閣法を提出することが議論を続けることになるんだ、そういう思いで法案の提出に賛同いたしましたし、ここにおります。

 したがって、私の閣法に対する責任というものは極めて重いということは改めてこの場で申し上げなければなりませんし、また、そのことを踏まえて野党の先生方にも熟議を尽くしていただきたい、そのことを最後にお願いしまして、質問を終わります。

○井上委員長 次に、平林晃君。

○平林委員 中道改革連合・無所属の平林晃です。

 本日は、差し替えで質問に立たせていただくことになりました。委員長を始め皆様、よろしくお願いを申し上げます。

 もうここまでずっと様々議論がなされてきているところでございますので、本当にいろいろな論点が尽くされていると思うんですけれども、ちょっと私なりに質問させていただくので、後戻りすることもあろうかと思いますけれども、御容赦いただけたらというふうに思いますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、法制審に関して、一点だけお聞きさせていただきたいというふうに思います。

 この観点からももう既に様々議論がなされてきたところでございますが、今回の再審法改正に関する法制審への諮問は昨年の三月二十八日になされたところでございまして、その答申は本年の二月十二日ということですね。閣法は、やや期限に遅れたものの、五月十五日ということでございました。諮問から答申まで十か月ちょっと、法案提出まで一年一か月余りということでございます。僕も調べて驚いたんですけれども、これまでの事例と比較して、かなり早い部類と認識をさせていただいております。

 そもそも、刑事司法に関する法制審議は数年単位を要することも少なくない。例えば、録音、録画についての諮問であれば二〇一一年六月二十九日で、答申は二〇一四年九月である。このとき、三年三か月かかっていて、法案は年明けの三月に提出をされているということでございまして、ここも、法案を作ること自体もかなり慎重にされたのではないかなと理解をさせていただいております。

 昨年成立して、そのとき私も法務委員で必死に議論させていただきました刑事デジタル法に関しては、諮問が二〇二七年七月になされて、答申は二四年二月十五日であったということでございまして、法案提出が一年後、ごめんなさい、こっちが一年後ですね、失礼しました。成立が二〇二五年五月二十三日。とにかく法制審は諮問から答申まで約一年七か月かかっている、更にそこから法案提出まで一年かかっているということで、さっきちょっと間違ったことを申し上げました、失礼しました。

 刑事司法ではないんですけれども、民法関連では、債権法は二〇〇九年から二〇一五年までかかったんですかね、かなり時間がかかっている。選択制夫婦別氏では五年かかっている。いずれにしても、数年かけて慎重に審議するということは普通にあったことだというふうに考えております。

 そういう中で、今回の再審法の改正という、これも本当に重たいテーマだと認識をしておりますけれども、たったの十か月ちょっと、まあ回数は十八回ということで非常に急ピッチで進められているわけですけれども、本当に異例という指摘もあるような急速度で行われた。また、その答申がなされたタイミングも、これも後ほどまた議法提出者にも質問させていただこうと思っておりますけれども、昨年の三月というタイミングでもあったと。なぜこのタイミングに諮問がなされて、そして、異例とも取られる短期間で審議が答申に至ったのか、この点を併せて、法務省の見解を伺います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、再審制度につきまして、これは法務省に設けられた改正刑訴法に関する在り方協議会で議論を重ねまして、令和七年二月に開催されたこの協議会におきまして、法制審議会において多角的な観点から議論を深めるべきであるとの提案がなされて、これに特段の異論が見られなかったということでございました。

 法務省では、こうした議論の動向などを踏まえまして、再審制度の在り方について多角的な観点から検討していただくため、同年三月、法制審議会に対して諮問を行ったところでございます。そして、法制審議会では、御指摘のように、刑事法再審部会におきまして、計十八回、約五十時間以上の時間をかけて調査審議が行われまして、本年二月に答申に至ったということでございます。

 これが早いということでありますけれども、この背景は、やはり、近時、再審制度に対する国民の関心が高まっていた、それを踏まえて、速やかな検討が求められていたことを踏まえて、法制審議会の部会におきましてもこれを受けて精力的かつ丁寧に調査審議を行っていただいたということによるものと考えているところでございます。

○平林委員 ありがとうございます。そういう御答弁が来ると認識をしているわけですけれども。

 一方で、議連案に関して議法提出者に伺いますけれども、再審法改正のような重要な刑事司法制度の見直しについては、政府において主体的に検討、諮問が行われることが本来期待されるところ、議法提出者の本会議答弁におきまして、内容が、議連の法案作成の取組をきっかけにこの法制審が始まったというようなことをおっしゃられたと認識しているんですけれども、このきっかけという言葉、どういう趣旨で述べられたものであるのか、超党派議連の、議法の提出者にお聞かせいただきたいと思います。

○西村(智)議員 お答えいたします。

 再審法の改正については、まず、再審請求手続に関する詳細な規定がなく、その審理の適正さが制度的に担保されていないことから、平成二十八年に制定された刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第九条第三項において、政府は、速やかに、再審請求審における証拠の開示等について検討を行うものとすると規定されておりました。

 また、令和五年三月に袴田事件の再審開始が決定されたことを受けて、検察官による不服申立てにより審理が長期化し、冤罪被害者の速やかな救済が妨げられている事実も明らかになってまいりました。しかし、そのような状況においても、政府において再審法改正に向けた動きは見られなかったわけなんです。

 このことを踏まえて、かつ、冤罪被害者の適切かつ迅速な救済が急務であるとの思いから、超党派による、えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟が設立されました。再審法改正に向けて活動が行われてきたということです。そして、その活動が大きな広がりを見せる中で、政府において法制審への諮問がなされた。こういう事実を踏まえれば、超党派議連における取組があったからこそ、政府における再審法改正に向けた動き、このきっかけの一つになったのではないかと認識をしております。

 なお、その後における議員立法提出の動きと閣法提出の動きとは別々に行われたものでありますけれども、閣法に関する自民党内の議論においては、超党派議連に所属するメンバーから、議員立法の内容も踏まえた上での御主張があったものと承知をしております。

 無辜の救済という目的のためには、これは党派性はございません。やはり重要なきっかけを議連がつくったということは間違いないと思っております。

○平林委員 ありがとうございます。

 先ほど、刑事局長の御答弁でも、令和七年二月のタイミングでなぜ始まったのかということに関しまして、再審に関する世論の高まりがあった、こういうことをおっしゃられたわけですけれども、今、議法提出者がおっしゃったとおり、その以前からその高まりというのはあったのではないかというふうに思うわけです。その高まりを受けて、議連としてはきちっとその議論を始めていかれたわけですよね。その議論があって、それでようやく政府としては腰を上げたと見られても仕方がないのではないかな、こういうふうに思うわけであります。

 といいますか、私はもっと申し上げれば、議連の議法が成立したらまずいという思いすら感じてしまうところでもあるわけです。議連の議法が成立したら法務省としては困る、こういう認識があって、それに対抗するために法制審を立ち上げて議論をしていったのではないかな、こういうことも何か感じてしまうような、こういう法制審のタイミング、また、ぎゅっとしたスケジュール感というか、異例とも取れる短期間での答申に至ったのではないかな、このように思うわけです。

 それがうそか本当かは分かりません。そんなことを法務省の方もおっしゃられるわけは、間違いなくありませんので。ただ、一つここで申し上げたいことは、私は、昨年の段階では余り状況がよく分かっていませんでした。法制審は、僕は、ちゃんとした議論をすると思っていました。なので、当時は、法制審、頑張ってくださいと、説明に来た法務省の方に申し上げました。早くやって、是非答申を早く出してください、こういうことを当時申し上げた記憶が僕の中にも鮮明にあるんですけれども、今思えば、そういうことだったのかなと。

 こういうふうに考えたときに、法制審に対する信頼が僕の中では揺らぎました。こういう国民がたくさんいるんじゃないかと思うんです、僕は。法制審に対する信頼が揺らぐようなことがあっていいのかということを、私は声を大にして申し上げていますけれども。

 そういう状況をつくって、本会議でも、私、質問申し上げました。この度の再審法改正の大事な大事な立法事実は何か。それは、再審の、迅速な救済であり、稲田委員が御指摘されているように、刑事司法に対する国民の信頼の回復ですよね。これが立法事実だと、私はその意見に賛同するんですけれども、であるならば、不信を増すような方法でやっていいのかどうかということも、事実かどうかは知りませんけれども、そこはきちっとやはりただされるべきではないかなと思うところでございます。

 この部分に関しては、最後、法務大臣にまとめて申し上げたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。本当に刑事司法に対する信頼を取り戻すためには、それに見合ったような方法でしっかりと熟議を尽くしていくべきである、このように考えているところでございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 済みません、ちょっと時間が余りないかと思います、三番を飛ばさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。四番に参りたいというふうに思います。

 この度の閣法においては、検察官による抗告が例外的に許される、十分な根拠という規定があるというのはもうさんざん議論をされてきているかというふうに思います。午前中の鴨志田参考人も、この点に関しまして、運用が逆転しかねない、こういった趣旨のことを申しておられたと記憶をしております。本当にこれはあってはならないと考えますので、関連して質問するわけですけれども。

 本会議における私の質問に対しまして、大臣は、十分な根拠がある場合というのは、合理的な根拠がある場合を意味すると。その合理的が何なのかということで、個別具体的には、証拠関係等を踏まえて判断すべき事柄とされた上で、例えば、うその供述に基づいて再審開始決定がなされている、こういう事実誤認、こういったことを例示されたと認識をしているところでございます。

 そこで、一点伺いたいんですけれども、この合理的根拠以外に、合理的根拠には事実誤認を例示されたわけですけれども、それ以外にどのような類型を想定されているのか、また、この合理的な根拠があることを判断する主体がどなたなのかということ、また、どんな資料、基準に基づいて客観性を担保しながら判断するのか、法務省の見解を伺います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 再審開始決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合とは、御指摘のように、不服申立てにより再審開始決定等が取り消される蓋然性が高いことを裏づける合理的な根拠がある場合を意味するものでございます。具体的には、再審開始決定に重大な事実誤認や重大な法令適用の誤り、重大な手続違反等があると考える場合であって、なおかつ、これらの誤り等に関する主張が上級審において受け入れられて、再審開始決定が覆ることとなる蓋然性が高い場合がこれに当たると考えられるところでございます。

 この十分な根拠の判断主体は検察官でありますけれども、その判断につきましては、結論として、今般の改正によりまして、これまでに増して慎重に、組織的に十分な検討を尽くした上で慎重に行われることとなると考えております。

 そして、再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて十分な根拠がない場合には、抗告裁判所において、通常、当該不服申立てに理由がないと判断されて、不服申立てが棄却されることとなると考えられます。その上、その終局決定は不服申立てがあった日から基本的に一年以内になされることとなりまして、さらには、五年ごとの検討条項の評価の対象になるということでございます。

 さらには、十分な根拠の有無は、国家賠償請求訴訟における違法かどうかの判断にも関わるということでございますので、こうしたことから、本法律案における他の法整備と相まって、再審開始決定に対する不服申立てについて、より慎重で抑制的な運用が十分に確保されることになると考えているところでございます。

○平林委員 ありがとうございます。

 法令が誤って適用されているとか、手続が違反がある、こういった場合も考えられるということの御答弁があったかというふうに思います。また、判断主体は一義的には検察官だけれども、組織的に判断することによって抑制的に行っていく、こういうお話だったかというふうに思います。

 いろいろな類型が広がっていくと、十分な根拠というものがかなり広がっていき過ぎかねないのかな、こういうことも少し考えますけれども、その点はまた後ほど少し議論することにして、後半の判断主体の件なんですけれども、ちょっと順番が変わっているかもしれません。四・二だったものを少し後ろに回させてください。四・三の方にちょっと行かせていただけたらというふうに思います。

 判断主体の件に関してなんですけれども、二十七日、おととい水曜日の審議の中で藤原委員が議論された部分かと思いますけれども、四百五十条の二は抗告事由を限定する趣旨かとの質問に対して、刑事局長が、検察官が不服申立てをするか否かを判断するに当たって遵守すべき行為規範を定める趣旨の規定であると答弁されたということでございます。

 この部分、さっきのところに関係するわけですけれども、こうであるならば、裁判所による直接的な統制は予定されていない、十分な根拠を結局検察官あるいは検察組織が判断をするということになるので、十分な根拠がある、ないという部分に関しては、他者の判断ではなくて、抗告をする主体者の判断に基づくものであるので、結果として抗告の手続そのものは進行することになってしまうのではないか。そうすると、この規定は、結局検察官の自律的な判断に委ねられるにとどまってしまい、抗告を実質的に抑制しようとしているこの趣旨が機能しないのではないか、こういう懸念があるということでございます。

 結局検察官の自律的な判断に委ねられることになってしまう、この懸念に関しまして、法務省の見解を伺います。

○佐藤政府参考人 先ほど申し上げたとおり、十分な根拠の判断主体は検察官でありますけれども、その判断につきましては、再審開始決定の内容や具体的な事実関係、証拠関係等を踏まえまして、抗告裁判所の審査に堪え得る客観的に妥当なものとなるかという観点から、組織的に十分な検討を尽くした上で慎重に行われることとなると考えているところでございます。

 その上で、再審開始決定に対する不服申立てについて十分な根拠がない場合には、抗告裁判所において、通常、当該不服申立てに理由がないと判断されることになると考えられる上、その終局決定は不服申立てがあった日から基本的に一年以内になされるということになると思われます。

 それから、先ほども申し上げましたとおり、国賠訴訟におきましても、十分な根拠がない場合に不服申立てをした場合には、この条文に違反しているとして違法の評価を受けるということも考えられるところでございます。こうしたところからいたしますと、本法律案の他の法整備とも相まって、再審開始決定に対する検察官の不服申立てについては、より慎重で抑制的な運用が十分に確保されることとなるものと考えておりまして、御懸念は当たらないと考えているところでございます。

○平林委員 まあ、抑制的と常におっしゃられるわけですけれども。

 あわせて、私の本会議での質問にまたこれも関連するんですけれども、検察官の抗告の運用はこれまでと変わらないのではないか、このことを平口大臣の方にお尋ね申し上げました。

 その御答弁の中で、不服申立てをした場合における理由の公表、こういった内容がありました。一瞬ちょっとどういう意味かなと思ったんですけれども、趣旨としては、今も刑事局長が言っておられた部分だと思いますけれども、国民のチェックを受けるようにするんだ、だから、その内容をしっかり国民がチェックすれば、不服申立てはより慎重で抑制的な運用になっていくのではないか、こういうことを言っておられると理解を、解釈をさせていただいておりますけれども。

 でも、そもそも検察官というのは、国民のチェックを受けなくたって、不服申立てというのは法と証拠に基づいて適切に運用してきているのではないんですか。それが本来、検察官が、私、常に法曹界の方は尊敬していますけれども、そういう、きちっと司法試験に受かって、実務を必死に頑張ってやってこられて、そういう人がやっておられる不服申立て、これはあくまで法と証拠に基づいてやっていて、抑制的とか抑制的でないとか、そんなことは本来関係ない話なんじゃないかと僕は思いますけれども。この理由を公表するということによって、本当に抑制的な運用がなされるんですか。刑事局長、お答えください。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 検察当局におきましては、これまで再審開始決定があったときは、個別の事案に応じて、再審請求審における主張や証拠関係を踏まえまして、当該決定を取り消すべき理由があると認められるか否かについて、法と証拠に基づいて慎重に検討した上で、不服申立ての要否を検討してきたものというふうに考えております。

 もっとも、近時、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが再審請求手続の長期化の原因となっているとの指摘や、検察官の不服申立てが機械的、形式的に行われているのではないかといった指摘がされているところでございます。

 本法律案におきましては、こうしたことを踏まえまして、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを原則として禁止し、当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限って不服申立てをすることができるとした上で、再審開始決定に対して例外的に検察官が不服申立てをした場合には、その理由を遅滞なく公表することとしたものでございます。もとより、検察当局におきましても、本法律案が成立した場合には、改正法の趣旨を踏まえた適切な運用に努めていくものと承知しております。

 委員御指摘のように、この公表の規定は、これがなければ抑制的な運用ができないといった前提に立つものではございませんけれども、検察官による不服申立ての在り方について様々な御意見があることを踏まえまして、より慎重で抑制的な運用を法制度として担保する趣旨で設けたものでございます。

○平林委員 そういう趣旨でないとおっしゃられたところではございますが、本当にそんなものがなくても、当然それはしかるべき運用がなされているべきものである、このことは強く申し上げたいというふうに思いますし、また、理由を明らかに、提示の仕方もそうだし、内容もそうだし、そこが本当にどれだけ実効性のあるものになるのか、国民が見て、これはしかるべき不服申立てである、これはそうではないということがきちっと分かるようなものになるのかどうかということも、ここはしっかりと問われなくてはいけない、このように考えるところでもあります。

 また、これはまたちょっと後で言いますけれども、判断するために証拠が必要になるということもあろうかというふうに思います。この抗告の理由が正しいのか、正しくないかということが証拠を見なきゃ分からないという場面もあるのかもしれません。であるならば、目的外使用が禁止されている、この部分に関しても、やはりちょっと議論をする、セットで論じる必要があるのではないかな、こんなことも感じているところですけれども。目的外使用に関しては、また後で少しだけ質問をさせていただきたいというふうに思います。

 続いて、これも本会議で確認したことではあるんですけれども、再度伺いたいと思います。

 検察官の不服申立てについては、これまでの運用についても、十分慎重に検討した上での抗告ではなかったのでしょうかということでございます。そうであるならば、今回の十分な根拠というこの規定がどれだけ実効性があるものかというか、従前と比べて具体的に何が変わるのかということが必ずしも明らかではないと私は考えているところでございます。

 二十七日の國重委員の質問に対しまして、平口大臣がこうお答えになられた。ちょっと言葉は変えていますけれども、検察官が弁護人に開示した五点の衣類のカラー写真や、弁護人が提出したみそ漬け実験報告書等を、これは袴田さん事件に関してですね、また、いわゆる福井女子中学生殺人事件においては、検察官が弁護人に開示したテレビ番組の放送日に関する捜査報告書、そして、いわゆる日野町事件においては、検察官が弁護人に開示した、死体発見現場への引き当たり捜査の過程で撮影された写真のネガフィルムを基に弁護人が作成したネガの調査報告書、こういったそれぞれの事件でそれぞれの証拠を、ここを大臣は新証拠と言っておられるわけですけれども、その新証拠を、前から提示されていた証拠、旧証拠と言っておられますけれども、それと総合して評価した結果、再審決定がなされたものと承知をしている、このようなことを平口大臣が二十七日に御答弁しておられます。

 この御答弁の中で、確かに、手続上はこれらの証拠というのは新証拠だったのだというふうに思います。一方で、実質的に新証拠だったのかということを私は問いたいと思うところでございます。

 例えば、袴田事件では、みそタンクから発見された五点の衣類について、後に再審無罪判決において裁判所から捜査機関による証拠捏造との指摘がされるまでに至っている。また、福井事件では、決定的に矛盾するテレビ番組の放映日時に関する捜査報告書の存在を検察は通常第一審の段階で把握していた、こういうことも言われている。このような状況においても、検察官は長期間にわたり再審開始決定に対する抗告を継続をしておられたということでございます。

 二十七日の審議の中で、刑事局長は、再審請求者が罪を犯していないことを明らかに表す証拠があるのに、これを裁判所に提出することなく再審開始に反対し、あるいは再審開始決定に対して不服申立てを行うことは、罪を犯していない人の処罰を求めるに等しいものであって、絶対にあってはならないこと、このように答弁をしておられるわけであります。

 この答弁に照らせば、当時の不服申立てはあってはならないことだったのではないかと私は考えるところでございます。あるいは、当時の検察官としては、十分な根拠がある、こういう判断の下で抗告していたのでしょうか。刑事局長にお伺いをいたします。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 本規定の、十分な根拠に関する規定の下で、再審開始決定に対して不服申立てをするか否かは、検察官において個別の事案ごとに、法令に従って具体的な証拠関係等を踏まえて判断すべき事柄でございまして、幾つかの事件を挙げられましたけれども、過去の個別の再審事件による検察官の不服申立てに十分な根拠があったか否かについて一概にお答えすることは困難であります。それから、いわゆる袴田事件につきましては、現在、国家賠償請求訴訟が係属中であることからも、法務当局としてお答えすることは困難であることについて、どうか御理解いただきたいと思います。

 その上で、一般論として申し上げれば、被告人と犯人との結びつきが主要な争点とされた事件の確定判決について、再審請求審において、その結びつきを立証するための主要な客観証拠に瑕疵があり、それを証拠として用いることができないような事情が明らかになって再審開始決定があった場合、検察当局において、当該再審開始理由を示した決定について取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠があるかを慎重に検討して、その結果、十分な根拠がないとして不服申立てをしないこともあり得ると考えられるところでございます。

 このように、再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて、これを原則として禁止するなどの法整備を行うことを内容とする本法律案によりまして、より慎重で抑制的な運用が確保されるのではないかと考えているところでございます。

○平林委員 一概に申し上げるのは困難ということだったんですけれども、でもやはり、ここは私、非常に大事なところだと思いますし、であるからこそ、いろいろな委員の方がこの部分に関して質問しておられるのではないかなと思うところでございます。

 やはり今回の、原則禁止、だけれどもこの場合はいいよと検察による抗告を許すこの規定が、これがどう今後の再審決定に対して機能していくのかということが明確に分からなければ、我々としても賛否が分からないということになっていくというふうに思うわけでございます。

 そういった意味において、やはり過去のこの点に関してはどうだったのかということを、きちんと評価を刑事局の方でしていただくことが大事なんじゃないかというふうに思うんですけれども、ちょっと済みません、更問いで、刑事局長、いかがでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 個別の事件につきまして、我々が目に入っているものもあるわけですけれども、法務当局はその個別の事件の証拠を見る立場にないということでありまして、その証拠評価についても、検察当局が公表した範囲で把握しているという状況でございます。

 その上で、その場合に、個別の場合に、再審開始決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠があるかどうかというふうなことを判断する主張の仕方などによっていろいろな判断の仕方があると思うんですけれども、それを今の段階で、例えば法務当局としてお答えすることは、やはり証拠を見ていない者がそれを判断するというのは大変難しいということだけは御理解いただきたいと思います。

 その上で、今後いろいろな形で、検察当局においても様々な検証などをやっていく過程で、そういうことが一定程度明らかになる事案もあるのかなというふうにも思いつつ、過去の事件を今後に当てはめて法適用ができるかどうかというのは、やはり仮定の話でありまして難しいということをどうか御理解いただきたいと思います。

○平林委員 ここは引き続き議論をしていくべきところなのではないかなというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、送致書類等目録の開示についてもお聞きをさせていただきたいと思います。

 本会議におきまして、再審請求審の在り方や手続構造との整合性に欠けると答弁がございました。この趣旨をもう一回、分かりやすく御説明いただけたらと思います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、再審請求審におきましては、職権主義の下、裁判所が主体的に事実の取調べを行うこととされているところでございまして、この送致書類等目録という書類を裁判所に提示させるのではなくて再審請求者側に開示させるという仕組みは、再審請求審の構造と整合しないと考えられるところでございます。

 また、再審請求審は、裁判所が再審請求者が主張する再審請求理由について審理、判断する手続であることから、再審請求理由との関連性が認められない証拠の標目を含む、警察から検察官に送致された全ての書類及び証拠物の標目が記載される送致書類等目録を提示の対象とすることは、再審請求審の審理、判断の在り方と整合しないと考えられるところでございます。

 そのような意味で、御指摘の送致書類等目録を再審請求者側に開示させる仕組みは、以上のような意味で、再審請求審の在り方や手続構造との整合性に欠けるというふうに考えているところでございます。

○平林委員 再審請求審は、その理由をきちっと議論するための審理の場なんだから、全体を明らかにするというところで整合が取れていない、こういう御説明であったかというふうに思うんですけれども、確かにそういうことはあるのかなというふうに思うわけですけれども、一方で、再審を請求している側としては、証拠を、全体を見た上でこちらとしての主張を展開をしていくという立場もあるということでございます。

 そういう意味におきましては、関連しての質問になるんですけれども、本会議答弁の中でおっしゃられた、証拠の提出命令の請求をする際の証拠の特定は、この一覧表がなくてもという意味だと思うんですけれども、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りるため、証拠の一覧表がなくとも十分に可能ということをおっしゃられました。

 この請求に係る証拠を識別できる程度のもの、この意味なんですけれども、例えば調書とか、もっと限定するかもしれませんけれども、こういうことをいうのかもしれませんけれども、やはり、あるかないかを知らずしてそれを言えるのかという疑問がどうしても生じてしまいます。その存在が分かれば、こういうものというのも何となく言えるのかもしれませんけれども、それがない段階で、要するに、一覧表がない段階でそういうことも言えるのかどうかということも疑問に思うわけですけれども、識別できる程度のもので足りるため、いいとするというその根拠をもう少し、刑事局長、御説明ください。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、裁判所は、証拠の提出を命ずるか否かの判断をするに当たり必要があると認めるときは、検察官に対して証拠の一覧表の提示を命ずることができるとしておりまして、その命令を受けた検察官は、裁判所が指定した範囲に属する証拠を一覧表に記載しなければならないとされているところであります。

 また、本法律案においては、証拠の提出を命ずるか否かの判断の対象となる証拠自体の提示を命ずる制度も設けることとしておりまして、これらの制度を活用することで、審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることになるものと考えているところでございます。

 一方で、証拠がどのようなものがあるか分からないではないかという御指摘がございましたけれども、仮に犯人でない人が有罪判決を受けたとして、その人が再審請求をする場合には、確定審の証拠の内容や判決の内容から、その判決のどの部分が誤っているのかを把握している、どの証拠の評価が誤っているか、そもそもその証拠は信用性がないものなのか、そういったことを把握しているのが通常でございまして、そういうことからしますと、これは通常審でも実は同じような構造があるのですけれども、検察官に提出を命ずべき証拠としてどのような証拠があり得るかについては、ある程度想定することが可能であるというふうに考えているところでございます。

 また、提出命令の対象となる証拠の特定は、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りるところ、再審請求者側においてその程度の特定を行うことは証拠の一覧表がなくても十分に可能であると考えておりまして、識別できる程度のものを弁護人として想定することは可能ではないかというふうに考えているところでございます。

○平林委員 いずれにしても、そういう構造、そういう御主張の下に一覧表というものが提示されないということなのかもしれませんけれども、請求側の立場としては、やはり全体が見られるということの価値というものも追求をしていきたい、このように考えるところですので、よろしくお願いを申し上げます。

 済みません、一つまた五・三は飛ばさせていただきますが、六番に行かせていただきます。証拠の目的外使用の禁止のところで、ここも、もう時間がないので、六・一は飛ばさせていただきますが、六・二ですね。

 本会議で、大臣は、証拠の複製などを再審の手続やその準備などに使用することや、証拠の概要を口頭で伝達するなどの行為は目的外使用に当たらないことから、目的外使用の禁止により不当な事態が生じることはないと御答弁されたところでございます。

 ここで示された二つの事例というのは、ある意味、その証拠を受け取った者が何か作業する程度の話ですので、これは当たり前に目的外使用に当たらないと考えるわけですけれども、そうではなくて、証拠の開示を受けた者が、弁護人とか、あるいは支援をしていただいている方、あるいはマスコミ、報道、あるいはSNSに開示する、こういったことがどうなのかということでございます。二十七日の審議においては、調書を口頭で、概要だけはいいけれども、全文朗読は駄目だみたいな、そんなお話もあったということもお聞きをしております。

 例えば、報道機関に証拠そのものを提示する場合に、これは条文的には目的外使用になるんであろうけれども、例えば、調査研究をするため、あるいは報道、出版、教育など、何かしら正当な目的がある場合には例外的に許される場合があるのかどうか。あるいは、被告人本人が同意をしている、そういう場合に、報道機関が取調べ録画のDVDを部分的にでも報道するというようなこと、こういったことは許されるのか許されないのか。弊害がないと考えられると思って聞いているんですけれども、そういうような場合まで一律に禁止する必要があるのかどうか。

 こうした場合も含めて、何が目的外使用で、何が目的内使用なのか、この明確な基準を刑事局長に伺います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 委員が今様々な事例をおっしゃっておられたので、やはり今のを一概にお答えするというのはなかなか難しいところはあるんですけれども、証拠の複製等とは、まずは、要約等をすることなく、証拠の内容の全部又は一部をそのまま記録した書面等を意味するものでありまして、そうでないものについては、そもそも使用に当たらないというのがまず一点でございます。それから、証拠の概要を伝達するなどの行為は複製等の提示等に当たらず、そもそも禁止されていないということであります。

 それから、罰則につきましては、弁護人につきましては、対価なくそのような目的外使用をしたという、対価を得る目的でそのような行為をしたということでなければ、そもそも罰則はかかりません。

 その上で、様々な調整規定が設けられておりまして、行為の態様であるとか、目的であるとか、実害を生じたかどうかとか、そういったことを踏まえて、違反した場合の措置は取るということになっておりまして、この措置を取るのは弁護士会であったり裁判所ということになりますけれども、その事案に応じた判断をするということになりまして、一概にお答えすることは困難ですけれども、例えば、先ほどお話のあった中でいえば、弁護人等がマスコミやSNSを利用して証拠の概要を伝達したというふうに認められる場合には、そもそも、証拠の概要である限りにおいては、目的外使用の禁止違反にはならないと考えるところでございます。

○平林委員 ここも本当に難しいというか、萎縮が起きるか起きないかということが大事かと思うんですけれども、どうしても、やはりこれは起きてしまうのではないかなというふうに考えてしまいます。

 これをしたら目的外使用になってしまうのではないか、これは大丈夫なんじゃないかと常に考えて行動しなくちゃいけない、無罪を晴らすために純粋にやりたい行動なんだけれども、でも、これはそうなのか、どうなのかということを考えなきゃいけないということは、これはもう既に萎縮になっているのではないか、こんなふうに感じているところもありますので、ここもしっかりと引き続いて議論させていただきたいというふうに思うところでございます。

 残り三分程度になってまいりまして、最後の質問を大臣に是非させていただきたいんですけれども。

 以上、様々質問をさせていただきましたけれども、再審法改正案として提出された閣法には、いろいろな、法制審の審議も含めて、先ほどの申立てあるいは開示、証拠範囲あるいは目的外使用を含めて、まだいろいろ本当に議論すべきことがあろうかというふうに思います。

 こうした中で、本改正案が冤罪被害の救済と、あるいは、併せて、刑事司法に対する国民の信頼回復に資するものとなるのか、国民の不信を下げていく、こういうことになると考えているのかどうか、この点に関しまして法務大臣の見解を伺います。

○平口国務大臣 お答えをいたします。

 本法律案は、近時の再審請求事件に関する実情を踏まえて、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能するように、証拠の提出命令制度の創設や、再審開始決定に対する検察官の不服申立ての原則禁止などの所要の法整備を行うものであります。誤判からの速やかな救済とともに、刑事司法に対する信頼確保にも資するものと考えております。

 引き続き、刑事司法への信頼確保のため、必要な取組を進めるとともに、本法律案が改正法として成立した場合には、その趣旨を踏まえた適切な運用がなされるよう、改正の趣旨、内容等について検察当局や裁判所等の関係機関への周知を徹底していきたいと考えております。

○平林委員 ありがとうございます。

 資するものと大臣はおっしゃられるわけですけれども、まだまだそういった意味においては議論は尽くされていない、このように考えるところでありますし、やはり大きな観点として、裁判官、検察、弁護人、この三者で考えたときに、この中で、今回の再審に対する問題が起きてきて議論をしているわけですけれども、ここに対して改正案を提案できるのは、検察だけなんですよね。検察がやはり問題の主体になっているのに、検察が、法務省がこの閣法を提出してきている、こういう状況があるということは若干ちょっと疑問を感じるところであります。

 であるからこそ、我々議員の議論といいますか、我々議員が矜持を持ってこの議論を進めていくことの重要性を改めて確認をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 大変にありがとうございました。

○井上委員長 次に、西村智奈美君。

○西村(智)委員 前回、私は、証拠開示のところで質問が途中で終わってしまいまして、今日は、その続きから質問したいと思っております。

 前回の質問の最後の方で、私は、法務省と警察庁に対して、袴田事件において、警察にある段ボール箱の中からカラー写真のネガフィルムが発見された等々、それから、情報の開示、証拠の開示が五月雨式で行われてきたこと、それに至るまでにも大変時間がかかったこと、こういったことを告げた上で、何でこんなに時間がかかったのかというふうに聞いたところ、法務省からは、いろいろと、客観的な捜査や管理、把握が十分でなかったことなどが指摘されているものと承知しておりますという、大変何か、他人事かと思うようなそんな答弁があり、また、警察の方からも、静岡県警察による事実確認におきましては、当時、その保管、管理に関する規定がなかったり、整理整頓されなかったまま、ほかの資料に紛れていたものと認められるとされておりますと。これは、その調査報告書を基にこういう答弁をされているんだと思うんですけれども、やはりどこか他人事に聞こえて、これで本当に大丈夫なのかなと思ったところだったんです。

 本当に反省していますか。この証拠が開示に時間がかかったということ、そして五月雨式に出てきたということ、どうですか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 検察当局におきましては、御指摘のいわゆる袴田事件における証拠の保管、管理について、五点の衣類等を撮影したカラー写真のネガフィルムやオープンリール式テープ等の保管、把握が徹底されていなかったことで結果的に証拠開示まで期間を要したことは明らかであり、こうした事態は検察官の開示に関する回答への信頼性にも関わるから、警察、検察においては、客観的な捜査資料や証拠の一層適正な管理に努め、その開示に遅れを生じさせることのないよう努める必要があると認識しているところであると承知しております。

 また、御指摘のいわゆる福井女子中学生殺人事件におきましても、検察官が関係者供述の裏づけとして主張していたテレビ番組の放送日につきまして、従前の主張とそごする事実関係を示す証拠を得ながら、その後も従前の主張、立証を維持していたことに関しまして、検察当局におきましては、信用性が争われていた関係者供述の裏づけに関する事項について、このような訴訟活動が行われるべきではなく、裁判所から当時の検察官の対応は不公正なものであったと評価されたのも当然であるとして、検察官の対応を批判する再審無罪判決の指摘を重く受け止め、真摯に反省して教訓とすべきと考え、その旨を公表したというものと承知しております。

 ということで、反省しているということでございますけれども、一つに、先ほど御指摘のあった事件、様々個別にいろいろあるのでありますけれども、昔を知る者としては、平成十六年に証拠開示制度ができ、それから、平成十九年、平成二十年に、証拠開示の対象に検察官手持ち証拠ではない警察に保管される証拠も含まれるといった画期的な最高裁の決定がありまして、平成十九年にそれがありました、それから、平成二十年には、それは警察官が作ったメモなども含まれるという最高裁の決定がございました。

 正直、検察当局においては、昔、検察官の手持ち証拠については開示対象である、開示が求められれば、自分たちが見ている証拠は開示するのであるということだと理解していたんですけれども、警察に保管されている証拠、それ以外にもたくさんあるわけであります。そういうものは開示の対象となるという認識がなかったものですから、そういう証拠の保管、管理について十分ではなかったというのは事実でございます。

 それを、その後起きた事件に、いろいろな規定やルールを作りまして、保管、管理の適正を図るようにいろいろなルールを作って、それからは運用しているのでありますけれども、それ以前の昔の事件につきましては、それが十分でない、どこに保管されているのか必ずしもはっきりしないというようなことが起きて、平成十六年の証拠開示制度ができて、その証拠開示のルール、関連する証拠などを再審請求審においても任意に開示していこうという動きが起きた後も、そのような後も、そういった混乱、見つからないものが出てきたり、途中で出てきたりというようなことがあったのは事実であります。

 その上で、今こういうような運用になってからは、検察におきましても、警察におきましても、捜査書類あるいは証拠物の保管の適正に、ちゃんとなるように、きちんとするように努めているという背景があるということを申し上げております。

○遠藤政府参考人 お答えいたします。

 前回御答弁申し上げたとおりで、ネガフィルムと取調べの録音テープにつきましては、整理整頓されないまま、倉庫の中に紛れていたということで、長期間見つからなかったという事実がございます。

 都道府県警察を指導する立場にある警察といたしましても、このことを重く受け止めて、得られた教訓を踏まえて、より一層緻密かつ適正な捜査を推進してまいりたいというふうに考えております。

 また、こういった不適切な取扱いがあった場合、随時、具体的な規律を定める通達を発出するなどして、証拠物件の保管、管理の改善に向けた取組は不断に進めているところでございます。

○西村(智)委員 ちょっと質問を途中省きますけれども、例えば、鹿児島県警が、恐らくこれは志布志事件や大崎事件を念頭にということだと思ってはいるんですけれども、何かちょっと、とんでもない通知を出していますよね。再審や国賠請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありませんという通知が出ていて、これは二〇二四年に発覚して、その後、撤回しているというふうには思うんですけれども、そういう認識のところ、地方警察があるという状況で、証拠の適切な管理や保管、そしてまた提出といったことについては、やはりちゃんとやってもらわないと。

 午前中も実は参考人質疑がありまして、証拠の開示については、本当に過失で、さっき言ったように、段ボール箱にどさっと入っていて、昔のことで、もう紛れて分からなくなっちゃっていたという意味での過失がある一方で、やはり、さっき、私、福井事件のことを聞かなかったんだけれども、局長が答弁してくださったので、ありがとうございました、福井事件なんかは明らかに意図的な証拠隠しというようなことが行われているわけなんですよね。

 私は、今、この法改正の中では証拠の開示というところが言ってみればスコープになっているんだけれども、その前の段階、警察や検察に本当にちゃんと開示されるべき証拠があるということは、やはりきちんと担保しておく必要があると思っています。それも本当は今回の改正の中で議論していくということをしないと、無辜の救済にはなかなかつながっていかないんじゃないかというふうに思って、質問なんですけれども、捜査書類それから証拠の管理、保管について、そういった内容が今回法整備の対象から外れたのはどういうことなのか。検察官や警察への運用の期待ということで、附帯事項には書いてあるわけですよ。自覚していらっしゃるんだから、何でそれを法整備の中に今回含めなかったのか、理由について答弁をください。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、捜査書類や証拠物、こういったものが適正に保存、管理されることは、適正な裁判、再審請求審も含めまして、極めて重要なことでございます。

 今回の法整備の対象に入らなかったというのは、捜査機関における捜査書類等の保存、管理につきましては、これを定める法令などが既に整備されているということでございまして、問題は、それらが適切に運用されることが重要であるというふうに考えているところでございます。

 検察当局におきましては、今後とも、捜査書類等の保存、保管につきまして、法令などの規定や趣旨に従いまして適正な運用に努めていかなければならないと思っておりまして、法務当局としてもそのように努めてまいりたいと考えているところでございます。

○西村(智)委員 法令が既にあるということなんですけれども、私が承知している限り、法令の内容とそれから運用にも極めて大きな問題があるというふうに思いますので、ここは是非その後の検討でやっていくべきだということを今の時点では申し上げておきます。

 次に、目的外使用について伺います。

 法制審の諮問事項にも入っていなかったものが、突如として、通常審並びだということで入れられたということについては、私は大いに問題があるというふうに思っております。先ほど来もいろいろ質問があるんですけれども、支援者の活動や報道機関を通じた国民の知る権利を阻害しないためにも、やはりこの目的外使用の禁止というのはやめるべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。

○平口国務大臣 お答えいたします。

 法制審議会への諮問事項には、その他の刑事再審手続に関する規律の在り方というのが含まれておりまして、再審請求審で謄写した証拠の目的外使用の禁止は諮問の範囲内であると考えております。

 本法律案においては、その諮問に対する法制審議会の答申を踏まえて、通常審と再審請求審とで関係者の名誉、プライバシーの保護などの必要性に違いはないこと、また、新設する証拠の提出命令制度の下、証拠の提出が適切に行われるようにすることを確保する必要があることなどを考慮しまして、再審請求審についても証拠の目的外使用の禁止に関する規定を整備することとしたものでございます。

○西村(智)委員 いや、諮問事項に入っていなかったじゃないですか。入っていなかったですよね。それを、今何か謄写のものについて云々というのは、ちょっと後で取ってつけたような理由をおっしゃるのはやめていただきたいですね。

 私は、この目的外使用の禁止というのはやはり萎縮効果も生むと思います。

 二〇〇四年の刑事訴訟法の改正で、検察官が弁護側に開示した証拠について、裁判手続やその準備以外に用いる目的外使用が禁止ということになりました。それ以降、弁護士が、例えば記者、ジャーナリスト、こういった方々の取材に対して資料提供を拒むようになったというようなお話を私は伺っております。やはりこれは明確に萎縮効果というのは出てくるということ、恐れております。

 仮に通常審と同じだということであれば、やはり本当の意味で通常審と、まあ、これ、違うんだけれども、横並びにして、少なくとも再審請求審の審理の公開を認めるといったことも併せて行うということが必要になるんじゃないか。あるいは、私はこっちの方をやってもらいたいんだけれども、通常審とともに見直すということが必要なのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○平口国務大臣 お答えいたします。

 まず、通常審においても、公開の法廷で取り調べられた証拠であるか否かを問わず、開示された証拠については、関係者の名誉、プライバシーを保護する必要性等からその目的外使用が禁止されているのでありまして、その審理が公開されているか否かによって目的外使用の禁止の規律を設けるべきか否かが左右されるものではないと考えられます。

 他方、再審請求審で謄写した証拠につきまして、再審の手続やその準備に使用することはもとより許される上、その概要を伝達するなどの行為は目的外使用には当たらないということから、目的外使用の禁止により不当な事態が生ずることはないと考えております。

 なお、再審請求審の審理は、現行法の下においても、裁判所が裁量により公開することができるとされております。

 次に、刑事裁判における証拠の複製等が本来の目的以外の目的で使用されるとなると、関係者の名誉、プライバシー侵害のほか、罪証隠滅や証人威迫、今後の捜査への協力確保の困難化等の様々な弊害が生ずるものと考えております。そのため、現時点において、通常審における証拠の目的外使用の禁止規定を見直す必要があるとは考えておりません。

 もっとも、証拠の目的外使用の禁止規定について様々な御意見があることは承知いたしておりまして、私としても、今後、目的外使用禁止規定の運用状況について、関心を持って注視してまいりたいと考えております。

○西村(智)委員 大臣が関心を持って注視していただくこと以上に必要なのは、目的以外の目的だというふうに判断する基準は何かということを最低限、最低限ですよ、明示していただくことだと思います。

 再審手続やその準備等の目的以外の目的だと判断する基準というのは、では、法案のどこに書いてあるのか。先日、小竹委員が本当に一つずつ事例を挙げてここで問うてくださいましたけれども、やはり法案に書いてほしいですね。どこに書いてあるんでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 再審請求審において謄写した証拠の複製等の目的外使用の禁止を規定する本法律案による改正後の刑訴法四百四十五条の五第一項については、これは、当該複製等を、開示された証拠等を、提出された証拠等を、当該再審請求に係る事件についての再審請求手続及び同項第二号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付するなどの行為を禁止しております。

 この条文は、現行法の証拠の目的外使用の禁止に関する規定に倣ったものでございまして、その範囲につきましては様々御議論があるところでありますけれども、規定上、十分に明確であると考えております。

 また、当該複製等の使用目的の判断につきましては、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるべき事柄でありまして、再審請求手続又はその準備に使用する目的というのは、行為者から見れば一定程度予見可能なのではないかというふうに思われるところでございまして、逆に言うと、これ以上細かく定めていくというのは、それを適切な形で定めることは困難であると考えておりますけれども、規定の趣旨等については改めて周知を図ってまいりたいと考えているところでございます。

○西村(智)委員 二十七日に小竹委員に、調書を全部読み上げることは目的外使用の禁止に該当し得るというような局長の答弁だったと思います。明確とは言えないんじゃないですかね。やはり、どういったものが基準に当たるのかというのを、私は通常審も含めて見直すということを主張したいですけれども、最低限、入れるということであるとしても、やはり明確にするということだと思いますよ。強く申し上げておきます。

 次に、四百四十五条の二第一項に関連して、附則の第四条について、二十七日の答弁がありましたので、それを受けてちょっと確認的に質問したいと思うんですけれども。

 附則の第四条について、私、質問していっている中で、「再審の請求の理由に関連すると認める証拠の範囲が不当に狭くならないように留意されなければならない。」というこの文言については、裁判所及び検察官の留意事項を定めるものだという答弁でした。私はてっきり義務規定かと思っていたんですけれども、これは義務じゃなくて単なる留意事項だということなんでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 本法律案の附則第四条におきましては、証拠の提出を命ずる決定につきまして、再審請求理由に関連すると認める証拠の範囲が不当に狭くならないように留意されなければならないと規定することとしております。この規定は、裁判所及び検察官に対しまして、関連性を不当に狭く判断することのないように留意することを義務づけるものでございます。

○西村(智)委員 留意ではあるけれども、義務づけるということでした。

 その際、大臣は、不当に狭くならないようにということについて、その時々の解釈であるというふうに答弁されて、一般的に広くなければならないというふうなことではございませんというふうに答弁をされました。

 改めてなんですけれども、不当に狭くならないようにという文言の意味をお伺いいたします。

○平口国務大臣 お答えいたします。

 本法律案の附則四条における再審請求理由に関連すると認める証拠の範囲が不当に狭くならないように留意されなければならないということは、裁判所や検察官において、証拠と再審請求理由との関連性の判断を適切に行わず、本来提出されるべき証拠が提出されないということがないように留意されなければならないという意味でございます。

○西村(智)委員 なるほど。非常に、前回、局長はすごく長い答弁をされたんですけれども、大臣から今シンプルにお答えをいただいた。とても長い答弁をしていただいて、訳が分からなかったんですけれども。

 ということですと、この件に関連して、私は、裁判所が証拠の提出命令を出すということと、それから、裁判所が裁量によって証拠の開示を求める、任意で求めたりするというこれまでの実務の運用と、私はちょっと違うやり方を考えてはいるんだけれども、この法律案をスタートラインにしたときに、その二つがやはりきちんとなされることが必要だと思っています。もちろん、提出命令については、関連性といったものを少し広く取るというのは当然なんですけれども。

 大臣は、本法律案における証拠の提出命令制度は、従来の実務運用を否定するものではなく、これに加えて、一定の場合に、裁判所に対して、検察官に証拠の提出を命ずる義務を課すというふうに答弁をされておりました。まずは、この従来の実務運用というのは具体的に何を指すのか、伺いたいと思います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 従来の実務運用と申し上げますのは、再審請求審におきまして、任意ではありますけれども、通常審の証拠開示のルールに倣うような形で、関連性のある証拠について開示等がなされてきたということを意味するものでございます。

○西村(智)委員 そうしますと、提出命令と、それから裁判所によるこれまでの従来の実務の運用と並行して証拠の開示については行われるということでよろしいですか。どちらかに優劣の順位があるとか、そういうことですか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 従来の運用も否定されないという意味は、両方が行われるということでございまして、どちらが優先するとか優先しないとかいうことではありませんが、先ほどの質疑にもありましたけれども、基本的には、そのような三者間で話が行われて任意開示されていくのが、多分、数としては、通常審でもそうなんですけれども、多くなるのではないかというふうには想定されるところではございます。

○西村(智)委員 ごめんなさい、ちょっと最後のところを聞き逃したんですけれども、私、心配なのは、やはり法律に書かれているのは提出命令なんですよ、裁判所に対して。今、裁量で実務の運用を、これまでの従来の運用を否定するものではないというのは、言ってみれば、附則のところであり、今の答弁なんですよ。やはり優劣がつくんだと思うんですよね。そうなったときに、今までどおりの、従来の広い裁判所による指揮命令権による証拠の開示が本当に行われるようになるのかというのは、私はやはり懸念があるということを申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

    〔委員長退席、三木委員長代理着席〕

○三木委員長代理 次に、田中健君。

○田中(健)委員 国民民主党の田中健です。本日はよろしくお願いします。

 これまで議論が相当進んできまして、課題点、また論点も見えてきまして、私も前の多くの委員の皆さんとかぶるところもありますが、大切な点ですので質問をさせていただきたいと思います。

 まず、検察官の不服申立てについてお聞きしたいと思います。

 袴田事件において、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが再審公判の開始を長期間遅らせたことは事実であります。この事実を今回の再審法改正における重要な立法事実として認識をしているのか、まず大臣に伺います。

○平口国務大臣 お答えをいたします。

 御指摘の事件を含め、近時、再審無罪判決の確定までに相当な長期間を要し、当事者の皆様に大きな負担を生ずる事態となった事件があり、再審開始決定に対する不服申立てが手続の長期化の原因となっているといった指摘がなされております。

 そうした事態や指摘は、従来の再審制度やその運用の在り方に大きな反省を迫るものでございまして、法務省といたしましては、これを真摯に受け止めた上で、速やかな対応をする必要があると考えまして、本法律案を提出させていただいたものでございます。

○田中(健)委員 立法事実としてしっかりと認めている、また大変反省もあったということであります。

 それでは、袴田事件に対する最高検察庁の検証結果では、検察官による抗告については、検察官が即時抗告を申し立てたことで不当に長期化したとは認められないというふうに結論づけています。つまり、再審手続の長期化の原因として、検察官抗告には問題はなかったということかと思いますけれども、今でもこの認識でよろしいのか、大臣の見識を伺います。

○平口国務大臣 いわゆる袴田事件における平成二十六年の再審開始決定は、五点の衣類について、DNA型鑑定等の新証拠に基づく新旧証拠の再評価の結果、袴田さんのものであるという認定に合理的な疑いが生じ、むしろ捏造された疑いがあるなどという内容であったと認識しております。

 この点、委員御指摘のとおり、検察当局が公表した検証結果報告書では、同決定に対して検察官が即時抗告を申し立てたことについて、その後の裁判でも、この再審開始決定が、DNA型鑑定の手法や結果の信用性について科学的に明らかに誤った判断を前提にしたと認められていることに照らし、必要かつ相当なもので、問題があったとは認められないなどとされているものと承知をいたしております。

 もっとも、この事件では、確定した再審無罪判決において捜査機関による五点の衣類等の捏造が認定されており、この点が検察官の活動の評価にも影響を及ぼし得るところ、この点を含め、現在、国家賠償請求訴訟が係属中であり、また、お尋ねは個別事件における検察当局の活動内容に関わる事柄であることから、法務大臣としてお答えすることは差し控えるところでございます。

 いずれにせよ、この事案については、相当な長期間にわたり袴田さんの法的地位を不安定な状況に置くこととなってしまったものであり、非常に重く受け止めるべきものと考えております。

○田中(健)委員 いや、大臣は最初、立法事実として、袴田事件の長期化、再審公判の開始を遅らせたということは事実であり、これを反省すると言ったんですよね。でも、今おっしゃったのは、いずれにせよと何か最後にまとめましたけれども、捏造とまで、そういう指摘もあったと言っているにもかかわらず、重く受け止めるというのでは、言っていることと今回立法事実に基づいて法案提出をされた立場と、違うんじゃないですか。

○平口国務大臣 現在、国家賠償請求訴訟が係属中でございまして、また、お尋ねは個別事件における検察当局の活動内容に関わる事柄であることから、法務大臣としてお答えすることは差し控えたいと思います。

○田中(健)委員 じゃ、そもそも今回の法案の立法事実が覆るというか、認められないということになりますけれども、それでよいという今の大臣の発言でしょうか。

○平口国務大臣 近時、再審無罪の判決の確定までに相当な長期間を要し、当事者の皆様に大きな負担を生ずる事態となった事件でありまして、再審開始決定に対する不服申立てが手続の長期化の原因となっているといった指摘がなされております。このようなことから、私がさっき申し上げたようなことになったということでございます。

○田中(健)委員 長期化が指摘をされたというのは人ごとで、今回、大臣が法案を提出をして、私たちはそれについて議論をしているわけですから、大前提としてそれを認めてくれなければスタートにならないと思います。これまでの議論においてもそうでありますけれども、大丈夫だと思うから大丈夫だと言ったり、また、検察と法務省の立場を一緒に答えられたり、まず、ここの原点としての立法事実をしっかりと明確にしてほしいと思います。

 そうでなければ、結局、今回、自民党案が、十三日、改正案が承認されましたその日のうちに、もう検察からは、今回に対して、理不尽だ、この改正案はと非難の声が上がっているということまで報道されているんです。これは私たち立法府に対しても大変失礼なことでありますし、そして反省の色がないということですから、あくまで今回は検察に対してどのようなことが、規制の対象ですよ、できるかということですから、そこが規制の対象である検察とそして法務省の手にだけ任せ切ってはいけないからこそ、私たちはこうやって立法府として議論をしているわけです。

 ですから、大々前提として、まず大臣がその認識を私たちと同じくしてもらわないと議論になりませんが、もう一度、最後にお願いいたします。

○平口国務大臣 お答えをいたします。

 罪を犯していない人が処罰されることがあってはなりませんし、仮に犯人でない人を有罪とする確定裁判があれば、速やかに救済されなければならないということでございます。

 しかしながら、近時、再審無罪判決の確定までに相当な長期間を要し、再審請求者等に大きな負担を生ずる事態となった事件があり、そうした事態の責任に関して、いわゆる証拠開示に多くの時間を要しているといった指摘や、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが長期化の原因になっているといったような指摘があるものと承知をいたしております。

 本法律案は、こうした事態や様々な御指摘を真摯に受け止め、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能するようにするために、訴訟法を改正するものでございます。

○田中(健)委員 同じことの繰り返しですので、ここまでにしますけれども、結局、多くの被害者たちに負担をかけたということを認めておきながら、立法事実として、袴田事件は個別具体的で係争中だから認められない、発言を控えるというのでは、私は、今回法案を出した大臣の責任が本当に問われると思いますよ。そこだけ申し上げたいと思います。

 これほどまでに抗告の維持にこだわる検察ではありますけれども、今回、その中で、原則は禁止、十分な根拠ということもさんざん議論をされてきました。

 この十分な根拠でありますけれども、それでは、飛ばしますけれども、過去の再審無罪の事件で検察官が行った抗告のうち、十分な根拠に当たるものは具体的にどれでしょうか。ないしは、逆の言い方で聞きますが、十分な根拠なしに抗告したという件はあるんでしょうか。これは一の六になります。まず、政府参考人の方からです。

    〔三木委員長代理退席、委員長着席〕

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 検察当局においては、これまで再審開始決定があったときは、個別の事案に応じて、再審請求審における主張や証拠関係を踏まえて、当該決定を取り消すべき理由があると認められるかについて、法と証拠に基づいて判断してきたものと承知しているところでございます。

 本規定の下で再審開始決定がなされた場合に検察官が当該決定に対して不服申立てをするか否かは、検察官において個別の事案ごとに具体的な証拠関係を踏まえて判断すべき事柄でございまして、過去の個別の再審事件における検察官の不服申立てに十分な根拠があったか否かについて一概にお答えすることは困難でございまして、いわゆる袴田事件については、先ほど来お話が出ていますとおり、現在、国家賠償請求訴訟が係属中であることからも、法務当局としてお答えすることが困難であることは御理解いただきたいと思います。

 その上で、一般論として申し上げれば、被告人と犯人との結びつきが主要な争点とされた事件の確定判決について、再審請求審において、その結びつきを立証するための主要な客観証拠に瑕疵があり、それを証拠として用いることができないような事情が明らかとなり、確定判決の前提とした事実関係、証拠関係が動揺したことを再審理由とする再審開始決定があった場合、検察当局におきまして、当該再審開始決定を示した決定につきまして、本法案が成立した後は、取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠があるかを慎重に検討した上、その結果、十分な根拠がないとして不服申立てをしないこともあり得ると考えられるところでございます。

○田中(健)委員 もう今言っていただきました、袴田事件における検察官抗告は、現在の政府案の基準に照らしても十分な根拠があったと言えない、言えるのかも分からないということでよろしいでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほども答弁したとおりでございまして、いわゆる袴田事件につきましては、そのような訴訟の経過も含めまして、現在、国家賠償請求訴訟が係属中であることから、法務当局としてその評価、判断をお答えすることは困難であることについてはどうか御理解いただきたいと思います。

○田中(健)委員 それじゃ変わらないですよ。私たち、この法案を通して、じゃ、変わるのかと。袴田事件で多くの人が反省の弁を述べ、大臣も反省の弁を述べていただき、みんながそう思っている中で、変わるか変わらないか分からないというのでは、私はこれは不十分だと思います。

 つまり、検察は、自分たちの考える根拠でこれまでも抗告をしてきたわけですよね。一昨日の質疑においては、法務省は、例外的に抗告ができる場合、今回は政府案の四百五十条の二ですけれども、これは検察官に対する行為規範である旨の答弁をされました。四百五十条で禁止をされている以上、同条の二が新たに抗告をできる場合の創設の規定となりますが、それが裁判規範でなく検察官の自主規範に委ねる行為規範であるとすれば、裁判所にその根拠を判断させて却下できる権限はないということですから、結果、検察にとっては法的な抗告のリスクはないですよね。だから、今までと変わらない、自分たちの思いで出すと。

 ですから、今言ったように、十分な根拠というのがこれまでの案件でどれかも言えない、袴田事件についても言えないとするならば、私、抗告禁止は全くの骨抜きではないかとさえも言えますが、どうでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 本法律案において規定することとしている十分な根拠の判断主体は検察官であるところでございますが、その判断については、結論として、今般の改正によりまして、これまでに増して慎重な、組織的に十分な検討を尽くした上で慎重に行われることとなると考えております。

 例えば、検察当局におきましては、いわゆる袴田事件の再審無罪判決を踏まえまして、全ての再審開始決定につきまして、検事総長訓令により、検事正はあらかじめ検事長の指揮を受けなければならないこととするなどの取組を行っておりまして、本法律案が改正法として成立した場合には、その適切な運用に努めるものと承知しております。

 そして、再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて十分な根拠がない場合には、抗告裁判所におきまして、通常、当該不服申立てに理由がないと判断されて、不服申立てが棄却されることとなると考えられます。その終局決定は不服申立てがあった日から基本的に一年以内になされるということであります。

 その他もろもろございますけれども、これは国賠訴訟においては裁判規範にもなり得るところでありまして、これが無意味であるということは全くないというふうに考えております。

○田中(健)委員 それは先ほども答弁していましたけれども、それも検察にも失礼だと思いますよ。じゃ、今まで慎重に、客観的に議論していなかったのかと。今回やれば、慎重に、客観的に、また組織的に十分な審議をすると。じゃ、今までそういって抗告してきたのは、そういったことは一切なく抗告してきたということですよ、今の発言ですと。

 ですから、私は、十分な根拠に当たるものは何なんですかと聞いたんです。それが答えられないんですよね。今回の法案が成れば、組織的に十分に審議しますと、慎重に、客観的に。機械的でない、形式的でないと先ほど言っていましたけれども、裏を返せば、じゃ、今まで機械的に、形式的にやっていたということになりますが、それでもいいんですか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 ここの当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合とは、不服申立てにより再審開始決定等が取り消される蓋然性が高いことを裏づける合理的な根拠がある場合を意味しておりまして、再審開始決定が重大な事実誤認や重大な法令適用の誤り、重大な手続違反等があると考える場合であって、なおかつ、これらの誤り等に関する主張が上級審において受け入れられて、再審開始決定が覆ることとなる蓋然性が高い場合がこれに当たると考えておりますが。

 これまで慎重に判断していなかったのか、これから様々な、本法案におきまして十分な根拠という要件が例外的な抗告にもつきまして、その判断は一年以内にされることとされまして、それが五年ごとの検討において評価されるという中で、検察庁におきましては、これまでに増して慎重に抗告の要否を検討することになるのはそうであろうというふうに思っておりまして、それだからといって、裏を返せば過去にそうじゃないというふうに言われてしまいますと、私も何と申し上げてよいやら答えに窮するものでありますが、更に慎重になることは事実であろうというふうに考えているところでございます。

○田中(健)委員 分かりません。

 法的にも、法律文にもそんなことはないのに、慎重に抑制的になる、なるから大丈夫だと言われても、説明になっていないじゃないですか。私たち、それではなかなか納得できないですよ。いいものを作ろうと思って今議論をしていますけれども、やはり法律に余りに根拠がない、明文化がない中で、皆さんが結局このようにして聞く中で明らかにしていくしかないというのでは、私はかなり法律的に不十分だと思っています。

 更に進みたいと思います。証拠リストについてです。

 政府参考人は、一覧表がなくても証拠の特定は可能だと何度も答弁をしています。しかし、どの委員も言っていますが、請求人側は、そもそも検察官がどのような不提出の証拠を保持しているかも分かりません。存在を知らない証拠について、どうやって具体的に特定し、開示請求ができるのかということです。

 袴田事件では、血のついた五点の衣類のカラー写真、ネガが長く開示されませんでした。しかも、一旦、ないと言ったんですよ、これ。ないと言ったにもかかわらず、後からこのネガが追加で見つかった経緯があるんです。これは、どのようにして最初から開示請求、要求ができるんでしょうか。ですから、これは、一覧表がなければ請求人側が証拠の全体像を把握できずに検察側の管理や探索の不十分さを見抜けないということを示しているんじゃないかと思います。

 特に、本日午前中、鴨志田弁護士から実際の話が出ました。実際の再審事件において、請求人、弁護人は、本当にどのような証拠が眠っているのかが把握できない、手探りだ、そして、個別の証拠の存在を模索して、膨大な時間と労力をかけてきた、布川事件では、第二次再審だけで合計二十一回も証拠開示請求を行って、四年以上かけてきた、五月雨式に個別の証拠を開示させてそこまで来たということであります。

 ここも、最高検の袴田事件検察報告書では、第一次再審請求で証拠開示が進まなかった理由は、弁護人の開示請求が抽象的だったと言っているんですね。曖昧でぼやっとしていた、ですからこちらも開示できなかったと言っています。しかし、請求人側は、検察官がどのような証拠を持っているのか分かりませんよね、今言ったように。

 証拠リストも示されない、そして弁護人に具体的に特定せよということは、無理じゃないですか。

○佐藤政府参考人 仮に犯人でない人が有罪判決を受けたといたしまして、その人が再審請求をする場合には、確定審の証拠や判決の内容から、その判決のうちどの部分が誤っているか把握していると考えられますので、検察官に提出を命ずべき証拠としてどのような証拠があり得るかについては、ある程度想定することが可能であると考えております。

 提出命令の対象となる証拠の特定は、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りることでございますので、これは証拠の一覧表がなくても十分に可能であると考えておりますが、例えば、今御指摘のような話があったことを踏まえてケース事例を挙げてみますと、有罪認定の根拠となった証拠として、犯行現場付近から発見された血痕の付着した着衣があり、確定判決において当該着衣が犯行時の犯人の着衣であるというふうな認定がされている場合において、その有罪認定が誤っていることを示す可能性がある証拠として、当該着衣の押収当時の状態を撮影したカラー写真であるとかネガフィルムがあることが想定されるわけでございます。これは弁護人としても想定できるところだと思います。

 そういう場合に、再審請求者がそのような証拠について提出命令の請求をするに当たっては、当該着衣の押収時の状態を撮影、記録した写真、記録媒体等といった程度の請求証拠の特定をすれば足りるということでありまして、弁護人の立場に立ったとしても、そのような程度の特定をすることは可能であると考えているところでございます。

○田中(健)委員 何か具体例を出して言われても、今、裁判ではないので分からないんですけれども、そもそも、冒頭に言ったように、ないと言っていたものがあったんですから、ないと言っていたものを、今言ったように血のついたTシャツ、また犯罪に関わるものと言っても、私は分からないです。

 大臣に聞きます。これは本当は大臣の答弁でしたから。

 ある程度ということを言いましたけれども、本当にある程度になりますか、これ。政府は、リストなしでも関連性を示せば開示されると言っていますよね。しかし一方、検察は、請求が曖昧だから開示しなかったということも、正当化をして言っているんですよ。ですから、つまり、政府の理論は、弁護人には不可能なことを強いておきながら、それができないことを理由にして開示を拒んできたんですよ。ですから、この矛盾というのは、証拠リストの交付がなければ証拠開示制度そのものも機能しないということを政府自身が認めているに等しいと私は思いますが、大臣、いかがですか。

○平口国務大臣 再審請求者側は、通常、再審請求をするに当たりまして、確定審の証拠や判決の内容から、その判決のうちどの部分が誤っているかを検討しているものと考えられます。検察官に提出を命ずべき証拠としてどのような証拠があり得るかについては、ある程度想像することが可能であると考えられます。

 しかも、提出命令の対象となる証拠の特定は、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りるところ、再審請求者側においてもその程度の特定を行うことは証拠の一覧表がなくても十分に可能であると考えております。

 例えば、有罪判決の根拠となった目撃者の証言がある場合には、その有罪認定が誤っていることを示す可能性がある証拠の一つとして、犯行状況に関する別の目撃供述が想定され、再審請求者がそのような証拠について提出命令の請求をするに当たっては、犯行状況に関する他の目撃者の供述調書といった程度の特定をすれば足り、目撃者の氏名や供述調書の日付、作成者等による特定までは要しないところでございます。そして、その程度の特定を行うことは証拠の一覧表がなくても十分に可能であると考えられると思います。

○田中(健)委員 ちょっと、大臣、聞いていただいたか分からないんですけれども、最高検の袴田事件の検証報告書では、つまり、弁護人、請求人の開示請求が抽象的だったと言っているんですよ。ですから出せなかったと言っているんですよ。なのに、何である程度想像をして出せるという根拠になるのかが私は分からないんですけれども。しかも、それもしっかり正式な文書で政府も認めているんですよ。なのに、一方で、リストなしでも関連を示せば出せるという。この二つが矛盾していませんかということなんです。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 済みません。私、今の御質問について答弁を準備しておりませんで、直ちに答えられないことを御容赦ください。時系列の話と送致の証拠関係と弁護側の主張との絡み合いの中でどのように評価するかということだと思いますけれども、済みません、今すぐ答弁できなくて申し訳ございません。

○田中(健)委員 じゃ、一つずつやりますけれども、最高検の袴田事件の検証報告書では、第一次請求審で証拠開示が進まなかった理由をしっかり明記していますよ。弁護人の開示請求が抽象的だった、曖昧でぼやっとしていたからこちらも開示できなかったと。できなかったと言っているんですよ。

 まず一つ目ですけれども、これは正しいですか。

○佐藤政府参考人 申し訳ございません。答弁が用意できていなくて申し訳ございません。

○田中(健)委員 でも、最高検の報告書は今回これだけの立法事実として認めるには十分だとこだわられるんですね。

 やはり、これは答えられないので、結局冒頭に戻ってしまうんですけれども。じゃ、本当に袴田事件のことを反省して、まさに今回立法事実としてこの法案を出してきたのかということで、また戻ってきてしまうんです。

 まず、この証拠開示が進まなかった理由。百ページにも及ぶ資料ですけれども、一枚ぺらでも要旨が出ていますよ、ホームページを引けば。しかも、私、これは大臣にということで、全く同じ文章ですけれども通告しております。お答えください。

○井上委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

○井上委員長 速記を起こしてください。

 佐藤刑事局長。

○佐藤政府参考人 申し訳ございません。

 私どもの理解でいきますと、請求人側は検察官がどのような証拠を持っているのか分かりません、証拠リストも開示されないまま、具体的に特定せよと求めること自体が困難ではありませんかという御質問をいただいていまして、そのような答弁書は用意していたのでありますけれども、その前段に、弁護人の開示請求が抽象的だった、裁判所の命令、勧告がなかったという御指摘があることは事実なので、済みません、ここを我々としては問いとして捉えていなかったということでございまして、誠に申し訳ございません。

○田中(健)委員 通告は出ています、説明がされていますと。じゃ、これは飛ばしたということですか。しかも、これは大臣にだったんですけれども、ちょっと大臣のフォローとして今参考人が答弁してくれているかと思っているんですけれども。

○佐藤政府参考人 申し訳ございません。

 最高検の袴田事件検証報告書について触れて、証拠開示が進まなかった理由として、開示請求が抽象的であった、裁判所の命令、勧告がなかった、当時は証拠開示が制度化されていなかったという趣旨の説明がされています、しかし、請求人側は検察官がどのような証拠を持っているのか分かりません、証拠リストを示されないまま、弁護人に具体的に特定せよと求めること自体が無理ではありませんかという御指摘をいただきまして、済みません、私どもとしては袴田事件検証報告書の詳細についての具体的な点について通告をいただいていないというふうに理解しておりまして、この場で答弁することが難しいことはどうか御理解いただきたいと思います。

○田中(健)委員 いやいや、立法事実として、袴田事件で多くの皆さんに、被害者に迷惑をかけた、長期化が進んだ、それを改善するためなのが今回の目的だというのを、だから冒頭で確認をさせてもらったんですが、それでこの報告書をまさか読んでいないとは思えませんので、最高検が出しているペーパーですし、これも今回の法律改正にしっかりと盛り込まれていると私は思っているんですが、盛り込まれていないということですかね。

○佐藤政府参考人 今、済みません、最高検の検証報告書におきまして、弁護人の開示請求が抽象的であったというその理由については記載しているようでありますけれども、一次再審請求の証拠開示につきましては、振り返ってみて消極であったことは否定できず、そのような事態を重く受け止めるべきと考えるという形で結論が示されておりまして、反省の趣旨を外に表現しているものと理解しているところでございます。

○田中(健)委員 いや、反省の趣旨ではなく、曖昧でぼやっとしていたと書いてあるんですね、この再審請求審の中でも、更に読んでいきますと。だからこちらも開示できなかったと一方で言っています。でも、今回、政府は、いや、リストなしでも関連性を示せば開示される、大丈夫ですよと言っているんですけれども、これが矛盾しませんかということなんです。つまり、関連性を示せなかったというのが、この袴田事件のときの最高検の報告書なんですよ。

 じゃ、矛盾があるかないかだけお話しください。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 袴田事件の第一次再審請求の訴訟の段階におけるお話だと理解しておりますけれども、それが消極的であった、当時の行動として消極的であったというのは、そのように最高検は評価しているものと考えます。

 その一方で、その事件の当時というのは、平成十六年の証拠開示制度、通常審における証拠開示制度の創設の前の話でございまして、そのような、それまで証拠開示については様々な争点があったわけですけれども、平成十六年に通常審で裁判の迅速化等を図るために証拠の開示制度をつくった。そこで、例えば主張に関連する証拠については開示する制度をつくった。それが、平成二十年以降になって、最初、おっかなびっくりと申し上げたことがございますが、それが徐々に現場に定着して、それに関連する証拠、疑義のある証拠も含めて幅広く弁護側に開示する運用が整ってまいりました。

 その上で、そのような運用は、再審請求審においてはそのような証拠提出命令あるいは開示命令の制度はなかったわけでありますが、通常審の運用を踏まえまして、裁判所あるいは検察庁におきましてもそのような運用を行うようになって、そのような証拠が徐々に開示されるようになった。その中で、様々な事故があったのも事実であります。後で証拠になると思っていなかったようなものが、警察にあったようなものが開示の対象になったりしたことで、そういうこともありましたけれども。

 今申し上げておりますのは、今御質問は、関連性との関連でというふうにおっしゃられますので、袴田事件のネガフィルムであったり、その他の御指摘のような証拠につきましては、当然これは再審請求理由に関連する証拠だと考えられるところでございまして、当然に提出命令制度の対象になり得るものであると考えます。

 そのような場合には、先ほど申し上げたような形で、本件犯行当時の着衣の押収時の状態を撮影、記録した写真、記録媒体等といった程度の証拠品の請求の特定で足りるということでありますので、それについては、それまで弁護人側が主張してきた内容からしますと、そういう特定の仕方というのはできるだろうというふうに考えているということでございます。

 答弁が遅くなりまして、大変恐縮でございます。申し訳ありませんでした。

○田中(健)委員 分かりにくいですね。

 今の話は、その当時のときが平成十六年の前だということで話もありましたが、私が冒頭に述べた不当な長期化は、二〇二四年十二月の時点での検証結果ですから。

 ですから、その当時とか、また、出したとき、様々なものが混在して分かりづらいので、是非、委員長、分かりやすく説明を求めたいと思います。もしもあれでしたら、ペーパーを含め説明を求めたいと思いますので、議論していただければと思います。

○井上委員長 ただいまの要求につきましては、理事会にて協議をいたします。

○田中(健)委員 ちょっと長くなってしまいましたので、最後にしますけれども。

 そうでありますれば、今、証拠提出命令の話も出ましたが、今回の証拠提出命令があれば、袴田事件の五点の衣類のカラー写真、ネガフィルムというのは開示対象になったのかということですね。なったのであれば、それはどのような形での根拠になるのか、示してください。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、お尋ねの前半部分でありますけれども、裁判所が個別事案に基づいて判断することになりますけれども、再審請求者が自分が犯人ではない旨を主張している殺人事件におきまして、確定判決において犯行時の犯人の着衣であると認定された衣類が、衣類に付着した血痕の色調が不自然である、したがって犯行時の犯人の着衣であることに疑念を抱かせるといった証拠を提出して、この衣類と犯行との結びつきを否定しているような場合には、当然、当該衣類の、衣類そのものだけでなくて、その写真それからネガフィルムなども、再審請求理由に関連する証拠、再審請求理由があるかどうかを判断するに資する証拠書類や物であるというふうに判断されると思いますので、証拠の提出命令の対象となり得るところでございます。

 その上で、弁護人側も、このような証拠を提出させるためには、先ほど申し上げたような概括的な請求をすれば証拠の提出命令の対象になるということでありまして、この内容も提出命令の中で弁護人側も見られるようになるということでございます。

○田中(健)委員 今回の質問で、少しでも前向きな答弁、また、皆さんで事実を共有できればと思ったんですが、聞けば聞くほど迷宮入りのようにしてしまって、分かりづらくなってしまって大変残念でありますが、まだこれから審議は続くと思いますので、私たちの同僚も含め、しっかりと審議をしてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

○井上委員長 次に、井戸まさえ君。

○井戸委員 国民民主党の井戸まさえです。

 今、田中委員の質問を私は切ることができませんでした。本当に重要なことを話していて、袴田事件、様々にこれが教訓となって、次にこういった冤罪事件が起きないために今議論をしているというのに、全くそうした危機感がない大臣の御答弁、そして当局側の答弁を聞いていて、本当にがっかりする思いです。

 まず法務大臣に伺いたいと思います。

 再審制度、これは誤判救済という刑事司法の根幹に関わる問題そして制度であって、憲法上の適正手続や人権保障とも深く関わる制度です。大臣は、今回の再審法の改正で冤罪は防げると思っていらっしゃいますか。

 というのは、五月二十七日のこの委員会での議論や本日の議論を聞いて、証拠の開示だとか抗告の例外規定、いろいろこういったところで問題点が出てきています。そうしたことに対しての答弁をいただいているんですけれども、答弁を聞けば聞くほど不安になります。

 大臣、本当にこのままで、こうした改正案が十分に機能するものになるんでしょうか。御答弁をください。

○平口国務大臣 お答えをいたします。

 罪を犯していない人が処罰されることはあってはならず、仮に犯人でない人を有罪とする確定裁判があれば、速やかに救済されなければならないということでございます。本法律案においては、その認識に立った上で、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能するように所要の法整備を行うこととしております。

 まず、必要十分な証拠が迅速に裁判所に提出されるようにするため、証拠の提出命令制度を創設し、裁判所は一定の要件の下で検察官に証拠の提出を命じなければならないということにいたしております。

 また、再審開始決定に対する不服申立てのより慎重で抑制的な運用を確保するために、再審開始決定に対する不服申立てを原則として禁止するなどの法整備を行うこととしております。

 さらに、再審請求者等に事実の取調べの請求権を付与することなど、再審請求者等の手続保障の充実を図るための諸規定の整備も行うことといたしております。

 これらの法整備は、誤判からの速やかな救済を図る上で大きな意義を有するものと考えております。

 もとより、その目的を達するためには、法整備を行うだけでなく、その運用が適切に行われることも重要でありまして、法務省としては、本法律案が改正法として成立した場合には、その趣旨を含めた適切な運用を確保するため、改正の趣旨、内容等について裁判所や検察庁等の関係機関へ周知徹底してまいりたいと考えております。

○井戸委員 私たちは立法者として何を正すべきなのかということを正確に判断をするためには、何が原因であったのかを政府がきっちり、きちんと言葉にする必要があると考えています。原因が曖昧なまま、看板だけ立派な改正案を通しても、第二、第三の袴田事件、福井事件は防げません。

 大臣にまた伺いたいんですけれども、この再審法というのは、昭和二十三年、一九四八年の制定から七十八年間、再審規定というのが一度も改正されてこなかったことについて、どのように総括をされていらっしゃいますでしょうか。大臣、お答えください。

○平口国務大臣 お答えをいたします。

 御指摘のとおり、刑事訴訟法の再審に関する規定は戦後一度も改正されてこなかったというふうに承知をいたしております。

 平成中期以降、捜査や通常審の手続については、誤判防止と手続保障の充実化に向けた取組を含め、時代に合わせた制度構築の観点から、例えば、証拠開示制度の拡充、被疑者国選弁護制度の導入、取調べの録音、録画制度の導入など、様々な改正がされてきたところでございます。

 他方で、再審に関する規定については一度も改正がなかったところ、近時、再審無罪判決の確定までに相当な長期間を要し、再審請求者等に大きな負担を生ずる事態となった事件がありまして、そうした事態の原因について様々な指摘がなされているところでございます。

 こうした事態や指摘は、従来の制度や運用の在り方に大きな反省を迫るものでありまして、法務省としては、これを真摯に受け止めた上で、速やかな対応をする必要があると考え、本法律案を提出させていただいたものでございます。

○井戸委員 近時、袴田事件など、長期で非常に御苦労なさった、そうした例はあるのも分かるんですけれども、しかしながら、これは別に近時だけの話じゃないんですね。

 一九六八年には、死刑の確定判決を受けた者に対する再審の臨時特例に関する法律案という、いわゆる再審特例法というのが議員立法で提出をされています。提出者は神近市子そして佐々木更三さんたちなんですね。出ているわけですよ、六八年には。

 それで、本当は、私は冒頭に参議院議員だった佐々木静子さんのお話をしようと思っていました。

 佐々木静子さんといったらば、前回、私が一般質疑で婚氏続称の話、離婚後、氏をそのまま使っていいという、あの婚氏続称を成立させた立て役者なわけなんですけれども、この佐々木静子さんは実は冤罪事件を数多くやっていらして、徳島のラジオ商殺し、これは、亡くなってから、それから再審が行われて、そして死後無罪が確定をして名誉回復をされたというケース、これを含めて十八件の冤罪事件を、参議院議員として、そして弁護士としてやられているんです。それが一九七〇年代半ばなんですよ。

 この再審についての意識というのは、そして世論というのも、当時、このラジオ商殺しもそうです、ほかのこともそうなんですけれども、たくさん小説になったりだとか、また映画になったりだとかで、世論が物すごく盛り上がったんだけれども、しかしながら、今日に至るまで再審法は改正がされてこなかった。この事実をどう受け止めるのかということを大臣にお伺いしたかったんだけれども、先ほど答弁を聞いていたら、ちょっとだらだらと長い話であって、核心のところは聞けなかったと思うんです。

 もう一度、七十八年間改正がされなかったということはどういうことなのか、大臣、その受け止めをお答えをいただきたいと思います。

○平口国務大臣 確かに、戦後一度も改正されなかったということでございます。それらを踏まえて、また近時のいろいろ問題になった事案等も含めまして、証拠開示制度の拡充とか、そういったような点に努力をしてきたところでございます。

 再審については、再審請求者等に大きな負担を生じる事態となった、そうした事態の原因について様々な指摘がなされているところでございまして、これらをひっくるめて、従来の制度や運用の在り方に大きな反省を迫るというものでございますので、そこのところは謙虚に受け止めたいと思っております。

○井戸委員 大いなる反省をなさるんだったらば、歴史もしっかり踏まえていただきたいんですよ。

 この六八年の再審特例法、議員立法ですけれども、このときにも、先ほど平林委員がおっしゃいましたけれども、ちょうど議員立法が出たから、政府が慌ててこうして内閣法を出されたというような形なんですけれども、このときも、六八年のときも、議法が出た、そうしたらば、そのときには恩赦という形で、この議法はそのまま成立しないままになって、恩赦という形で、逆に、まだ死刑、確定をしていなかったそうした方たちのことを対応するという形で、結果的には法改正がされなかったんですね。

 もしも、六〇年代、そして佐々木さんがやられた七〇年代に法改正が行われていたらば、もっと早くに救われる方たちがたくさん出たわけなんです。こうしたことの反省を踏まえて、今回、もう二度とこうしたことが起きないようにということで、しっかり、今いろいろな議論点が出ていますけれども、そうしたところも含めて、修正も含めて考えていかなければいけないのではないかと思っています。

 余りもう時間がないので、用意していた質問を飛ばしていろいろやらせていただきたいと思っているんですけれども。

 再審制度の根本の思想についてというところで、この日本の再審制度には極めて重要な最高裁判例がある。昭和五十年の白鳥決定、そして五十一年の財田川決定。これは、無罪を言い渡すに明らかな証拠、この判断に当たって新証拠と旧証拠を総合的に判断して、評価して、疑わしいときは被告の利益にという原則を適用すること、これを明らかにしました。しかし、これは半世紀近くたっても、今もなお条文は明文化されていません。

 なぜ今回、政府の案ではこうした決定の趣旨というものを明文化しなかったのでしょうか。法制審議会でも議論があったと伺っていますけれども、当局の御見解を伺います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 再審開始事由を定める刑事訴訟法第四百三十五条の第六号の無罪を言い渡すべき明らかな証拠の意味について、いわゆる白鳥決定、財田川決定、最高裁の決定でありますが、この無罪を言い渡すべき明らかな証拠とは、確定判決における事実認定に合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいい、これに当たるかどうかは、その新証拠と他の全証拠、すなわち旧証拠を総合的に評価して判断すべきである旨を判示したものでございます。

 そのような意味で、この四百三十五条六号の規定はかなり大きく、決定の中身を入れますとかなり広くといいましょうか、大きく意味が変わっているというのも事実だろうと思っています。その上で、そのような判例に従った運用がなされているという状況にございます。

 その上で、いわゆる総合評価の在り方をめぐりましては、旧証拠の再評価を行うということは前提でありますけれども、その対象となる旧証拠であったりその範囲等につきまして見解が分かれているという事情がございます。

 その上で、白鳥決定及び財田川決定の判示を明確化するために、この四百三十五条六号の文言を更に具体化できないかということについて議論が行われたわけではありますが、様々な意見とか見解が分かれているところでありまして、特定の立場に依拠しない形での明確化というのは困難であるという問題が指摘されまして、答申には盛り込まれず、その最高裁の判例などに従った運用を引き続きやっていくのが適当ではないかというような結論に至ったという状況でございます。

○井戸委員 これは最高裁判例ですから、それを法定化するというのは立法府の責任だと私は思っています。このことは言わせていただきたいと思います。

 時間が余りないので、再審の請求段階の国選弁護人の制度の整備について伺います。

 今日の参考人質疑でも、葛野参考人そして鴨志田参考人からも指摘がありました。再審請求人への手続保障の中核でもある、しかしながら、ほとんどの方が、例えば再審をやりたくても弁護士さんがついていないだとか、こういったことがあると思うんです。私は、実は本人訴訟で裁判を闘ったことがあるので、どれほど大変かというのはよくよく分かっています。

 ここについて、例えば経済的に困窮している再審請求人は、適切な弁護人の援助なしに巨大な司法組織と一人で対峙しなければなりません。これでは、準備段階も含めて、お金がなければ諦めろと、冤罪救済を求めることができないという現状が放置されたままになります。

 再審請求段階の国選弁護人制度の整備について、見解を伺います。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 再審請求審における国選弁護制度につきましては、法制審議会において議論が行われたところでございます。

 その中での意見でございますが、再審手続は、有罪判決について例外的にこれを是正する非常救済手段であることや、再審請求事件のうち本格的な審理が必要となる事件はごく一部にとどまることからすると、再審請求審において公費負担で弁護人を付す必要について通常審と同様に考えることは困難であるとの意見や、同一の者が繰り返し再審請求を行う例も見られるということから、公費支出の適正の観点からも疑問が残るといった意見が大勢を占めたということでございました。

 また、再審請求の準備段階における国選弁護制度についても法制審において議論が行われましたけれども、再審請求をしていない者について公費負担で弁護人を付すものとすると、その必要性、相当性についてはより慎重な検討を要する、すなわち、有罪判決を受けた者が再審請求を準備するというと、有罪判決を受けた者全部がその分母となり得る、全員がするということではありませんが、そのような者が皆、国選弁護をつけられるということになるのは慎重に考えるべきではないかというような御判断が、意見が出まして、そのような状況を踏まえて、国選弁護制度を設けるかというのは、これを国費で負担するかどうかということについては慎重な検討を要すると現時点で考えているところでございます。

○井戸委員 これも、資力によって冤罪が、救済の可能性が左右されるのは本当におかしなことだと思いますので、また機会があったらここもやらせていただきたいと思います。

 実は、私は冤罪事件の現場に居合わせたことがあります。村木さんのあのケースのときに、当時私は兵庫一区選出の衆議院議員でした。ちょうど石井一先生、そこにいらっしゃるんですけれども、石井一先生がまさに議員案件として村木さんにそれを言って、村木さんが、それまでの法律を犯して、やったというようなことで。

 しかしながら、当時、いろいろなことがあったときに、この石井先生のアリバイがあるかないかといったときに、石井一先生というのは、ロッキード事件で田中角栄の七奉行と言われていたところで、全てのロッキード事件は、あれは冤罪だということで、法廷でずっと聞いていたんですね。それで、先生は自分の予定をもう事細かに書いていて、しかも、それだけじゃなくて、複写もさせていて、ある意味準備をしていたので、そういう意味では、言った方が偽証していたということが分かって、村木さんの無罪にもつながっていくということになったんです。

 本当に、石井先生が言った言葉では、人がやることだから時には間違いもある、まあ冤罪は起こるでしょう、だが、冤罪はつくられもするんだ、それを許してはならぬのですよと。私は、この言葉というものをいつも心の中にありながら、やはり冤罪をしっかり防止するためには、今回の改正案も含めてですけれども、しっかりとした議論が必要だと思っています。

 またの機会に質問させていただきたいと思います。

 終わります。

○井上委員長 次に、和田政宗君。

○和田(政)委員 参政党の和田政宗でございます。

 午前中の参考人質疑を聞いて改めて思いますのは、証拠の開示については堂々とされるべきだというふうに思います。だって、その証拠に基づいて裁判が行われるわけでありますし、その証拠に基づいて検察も様々な立証をしていくわけでありますので、やはり、ここが隠されているんじゃないかとか、そういうようなことの疑念がまさにこの法案においても鍵になっているわけですね。ですので、ここを堂々とやっていただきたい。そして、そういう答弁をしていただきたいというふうに思います。

 議論がかなりぐちゃぐちゃになってきているので整理をいたしますと、この法案に対しては与党議員の中にも様々な思いのある方がいるというのは分かりますが、内閣提出法案に対して、先ほど与党の委員より、たとえ不十分であってもという発言がありました。我が国は議院内閣制ですので、与党審査を通ったものを、会派を代表して質問している与党議員に、国会の場で、たとえ不十分であってもと言われてしまいますと、我々野党側は審議にどう臨んでいいのか、こういうことにもなるんですね。思いがあるのは分かりますよ。でも、こういう発言がありますと、これは非常に野党側としては困ってしまうわけであります。

 大臣にお聞きしますけれども、内閣としては十分な法案を出しているという認識でよろしいんですね。

○平口国務大臣 そのとおりでございます。

○和田(政)委員 不十分であるというふうに思っているのであれば、私は、採決、退席なり反対すればいいというふうに思っています。私も自民党時代に、ある法案で、国民の声を聞いて、採決、退席しておりますので。やはり、これはそれだけ真剣に臨まないといけない法案です。冤罪を絶対に生まない、そのための法改正の法案であります。そういう真剣さで審議に臨んでいるわけであります。

 そうした中、刑事局長、今日も言い間違えがありました。非常に、私は、刑事局長は能力が高く、真面目であるという認識をしております。しかし、非常に能力の高い刑事局長も答弁に対して言い間違えというものがあるという中で、火、水、金が定例日なんですけれども、今どういう状態かというと、我々が聞かなくてはならないこと、確認しなくてはならないことが多くて、その答弁が出てきたことに対して更に精査をして質問に我々は臨んでいるわけですね。火、水、金、火曜日の質疑が終わった後に水曜日に質問ということになると、まともにやると深夜の通告になります。

 これは、私はやはり、我が党はまだ賛成、反対、決めておりません、充実審議の中で、じゃ、政府側の答弁がどうなのか、また議員立法案がどうなのかということを討議をした中でやっていきたいというふうに思いますので、いわゆる審議日程については理事会で決定をしていく形になりますけれども、これは理事会でしっかりと、今、私が提起したことを御協議いただきたいと思いますので、委員長、お取り計らいをよろしくお願いします。

○井上委員長 ただいまの要請につきましては、理事会にて協議いたします。

○和田(政)委員 では、質問に入ってまいります。

 前回の質問で、私は、内閣提出法案では、裁判所は再審請求者等の請求により又は職権で証拠の提出命令を出すことができるとしていますけれども、そもそも再審請求者や弁護人は検察官がどのような証拠を持っているか分かりませんので、ある意味、当てずっぽうで請求せざるを得ないということ、再審請求審にはなぜ検察官保管証拠の一覧表の交付制度、いわゆるリスト開示を設けないのでしょうかという質問に対して、通常審での審理で相当の証拠が開示されたり、明示されたりしているということで答弁をしていますけれども、検察官が証拠を隠していたら分かりません。リスト開示をすべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○平口国務大臣 証拠の一覧表が交付されなければ、証拠の提出命令が適切に行われないのではないかという御懸念があることは承知をいたしております。

 再審請求審は、職権主義の下で、裁判所が主体的に再審請求理由について審理、判断する手続でございます。そのため、本法律案では、証拠の一覧表を再審請求者側に開示する制度ではなく、審理、判断の主体である裁判所が、証拠の提出命令に係る判断に当たって必要があると認める場合に、検察官に命じて、その保管証拠であって、裁判所の指定する範囲に属するものの標目の一覧表を提示させる制度を設けることとしております。

 この証拠の一覧表には、再審請求理由との関連性が認められる可能性のある証拠を裁判所が把握できるように、結果的に関連性が認められないようなものを含め、裁判所が指定した範囲の証拠が記載されることとなるわけでございます。また、この命令を受けた検察官は、命ぜられた証拠の一覧表を整えて、裁判所に提示する義務を負いまして、これを拒否するということは許されないわけでございます。

 他方、再審請求者側が裁判所に証拠の提出命令の請求をする際の証拠の特定は、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りるため、証拠の一覧表がなくとも十分に可能でございます。

 本法律案においては、証拠の一覧表に加えて、証拠の提出を命ずるか否かの判断の対象となる証拠自体の提示を命ずる制度も設けることとしておりまして、これらの制度を活用することで、審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることとなると考えております。

 ただ、適切な運用がなされるよう、検察庁や裁判所等に対して制度の趣旨はしっかりと周知してまいりたいと考えております。

○和田(政)委員 これは、済みません、確認ですけれども、そうすると、再審請求者や弁護人にリストの開示をすることもあるということなんでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 この提出命令制度の中では、証拠の一覧表は裁判所に提示するものとして設けられているわけでありますけれども、いわゆる任意開示であるとか任意の提出というものも否定されない運用になっておりますので、例えば裁判所の御示唆が検察官に対してあって、検察官が任意に証拠の一定の範囲に属する一覧表を作成して提出、交付するということは運用上あり得るのではないかと考えるところでございます。

○和田(政)委員 局長、更に聞きます。

 一定の範囲というのは、これはどういうことなのか、改めて確認をさせていただきます。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる再審請求理由に関連する証拠かどうかというのは、従来から御答弁申し上げているとおりでございますけれども、ここで言う裁判所に提出するものは、関連する証拠かどうか分からないものも含めて裁判所に証拠の一覧表を提出するということでございまして、だから、関連するかどうかを判断するために、例えば供述調書であれば、供述事項なども書いたものを裁判所に提出する。それ自体は、裁判所はほかに見せてはならないということにされているわけでありますけれども、例えば、そういう中で、最後は裁判所の御判断ということになりますけれども、それを任意の形で示すこともあり得るのだろうと思いますし、ただ、関連する証拠、一般に、関連しない証拠になって、例えば供述者のプライバシーなどに関わることも十分あり得ますので、そういったことを例えばマスキングするといったことも、運用上はいろいろなパターンで、裁判所の判断で、あり得るのだろうということは思います。

○和田(政)委員 局長、済みません、更に聞きます。

 そうすると、裁判所が、この証拠は開示すべきではないかという示唆があったものについては拒否しないということでよろしいんですか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げますと、これは、裁判所が関連性があると判断して、必要性、相当性もあるというふうに判断して、開示すべきだというふうな姿勢を示しているときに、それを命令がなければ出さないというような運用は通常は行っておらず、通常は、そのような裁判所とのやり取りがあれば、任意の開示等で対応して、任意の提出、それと同時に弁護側にも開示するといったような運用が想定されるということでございます。

○和田(政)委員 これはちょっと重要なところなので、大臣、そのとおりですという答弁でも構わないですけれども、今の局長の発言を担保していただけますね。

○平口国務大臣 局長の答弁のとおりでございます。

○和田(政)委員 それでは、更に聞いていきます。

 これは先ほどの参考人質疑でも聞いて、参考人のお二方はまさにそうだということでありましたけれども、法務省に確認をさせていただきます。

 福井事件では、通常審、確定審で、検察官は「夜のヒットスタジオ」の放映日に関する捜査報告書を開示していませんでしたけれども、判決が確定すればこのような証拠は開示しなくてよいということには当然ならないわけであります。再審請求がなされたとしても、再審請求理由との関連性がなければ開示しなくていいということにも当然なりません。裁判所から開示を命じられなければ開示しなくてよいということにも当然なりません。もしこれらを許容すれば、証拠隠しはなくならず、冤罪被害者が救済されないことになるのではないかというふうに思います。

 本来、このような証拠は、証拠を隠していたことが判明したら、検察官が自ら提出、開示すべきと思いますが、いかがでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 罪を犯していない人が処罰されることはあってはなりません。再審請求審におきまして、検察官が、再審請求者が罪を犯していないことを明らかに示す証拠、これには事案によっていろいろな形態があると思いますし、明らかと言えるかどうかもいろいろな議論があるかと思いますが、そういう証拠を収集、把握するに至った場合には、それは再審請求者側が主張する再審請求理由との関連性が明らかでなかったとしても、これは当該証拠を裁判所に顕出する対応を取るのが検察官の責務であるというふうに考えているところでございます。

○和田(政)委員 では、その証拠の開示ですとか目的外使用の禁止について聞いていきたいというふうに思います。

 これは、午前中の参考人質疑の鴨志田参考人からの発言もありました。そもそも証拠は、国が国民の税金を使って集めたものですから、国民の共有財産であり、検察官のものではありません。なぜ証拠の開示を制限したり目的外使用を禁止できるのか、質問します。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 収集された証拠は検察官のものでないことは当然でございます。それから、証拠の収集に税金が用いられることは事実でありますけれども、これは適正な裁判を実現するために収集された証拠でございます。行政機関として、様々な個人情報を含めて収集、個人情報が収集されることは多々、法務省にも多々ございますけれども、これは、税金で集めたものであるから国民に広く知らしめるという類いのものではなくて、個人情報は個人情報として保護されなければいけないというふうに理解しております。

 それは刑事事件の過程で収集された証拠も同様というよりも、更に、刑事事件といいますのは犯罪に関するものでありまして、様々な、被疑者も含めまして、被害者も含めまして、関係者の名誉、プライバシーに深く立ち入って作成されるものでございまして、一方で、捜査機関の活動内容そのもの、なぜトクリュウのこの事件でこのような犯人の特定に至ったかということも含めまして、そういった捜査の秘密も含み得るものでございます。

 そのため、確かに、税金を使って集めたものだと言われればそのとおりかもしれませんけれども、その内容を外に顕出するということを前提に関係者の御協力をいただいているものではないというのも事実でございます。

 そういう中で、今回、本法律案においては、証拠の提出命令制度をつくるということで、そのときに、やはり提出は広く確保されたい、要するに、関係者のプライバシーがほかに漏れたりしないように、そのようなことが担保されれば広く再審請求人側に開示しやすいというふうな状況もありまして、通常審と同様に、謄写した証拠の目的外使用を禁止するという手段を選択しているということでございます。

○和田(政)委員 関連するので二つ飛ばして先に聞きますけれども、一部の証拠は被害者の名誉、プライバシーに関わるために目的外使用を禁止する必要があったとしても、一律に全ての証拠の目的外使用を禁止する必要はないのではないかというふうに思います。犯罪被害者の場合には、検察庁又は裁判所において、謄写した証拠の目的外使用は禁止されておりません。

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律、付随措置法第三条による謄写の場合には、裁判所は、「当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。」となっており、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付すことができるとされていますけれども、全ての証拠の目的外使用が一律に禁止されているわけではありません。また、罰則も置かれておりません。

 再審請求審においても同様に、弊害がある証拠に限って、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付すことができる旨の規定を置けば足りるのではないかというふうに思いますけれども、これはなぜ一律に禁止する必要があるんでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 この目的外使用の一律禁止と申しますのは、一律に禁止してはいる、ただし、それは再審手続とか再審の準備のために使う目的以外で使うことは一律といえば一律に禁止しているわけですけれども、使用の範囲も、例えば複製等の概要を伝えることはいいですし、そういった一定の範囲はあるということがまず一点であります。

 その上で、例えば、今御指摘のように、裁判所が弁護人に証拠を閲覧、謄写させるに当たって条件をつける仕組み、制度というのは考えられるところではあると思います。そういう中で、ただ、そのような場合には、目的外使用を防止するために、一定の場合には弁護人による閲覧、謄写を許可しないような仕組みというのが必要になってくるというふうに思いますけれども、どうしても全体のバランスの中でいいますと、裁判所が検察官から提出を受けた証拠であるけれども、弁護人が閲覧、謄写できないような証拠書類が生じるということになってしまいますと、再審請求者側の、弁護人側の手続保障として、自分のところに証拠がない、書類がないという事態が生じ得るということでありまして、それまた問題だということもあります。

 こういった観点からいいまして、いろいろな制度が考え得るとは思うんですけれども、一律禁止とした上で、例えば、弁護人側には対価を得る目的でなければ罰則をかけないであるとか、先ほどの行為とか態様に制約を加えるとか、違反した場合の措置に、様々な行為、態様を経て、弁護士会や裁判所における個別の事情の判断を促すというような全体のバランスの中で、コントロールというか規制をしていくという状況にございます。

○和田(政)委員 今言ったように、被害者の名誉とかプライバシーに関わる部分については、これはさすがに開示をして野方図に何かそれが独り歩きしていくとかというのはあれですけれども、私は、冒頭言いましたように、正々堂々と開示ですとか報道ですとか、そういったものによって議論が深まったりというようなこと、訴訟の議論が深まったり、審理が深まったりということがありますので。

 ちょっと聞きますけれども、これは既にほかの委員も聞いておりますが、改めてお聞きしますね。謄写した証拠を報道、出版に用いることは目的外使用禁止規定により禁止されることになるのか、また、冤罪原因の調査研究に用いることは目的外使用禁止規定により禁止されることになるのか、さらに、法科大学院の教育、弁護士、検察官、裁判官の教育研究に用いることは目的外使用禁止規定により禁止されることになるのか、以上三点、確認をします。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 本法律案においては、再審請求審で謄写した証拠の目的外使用の禁止を設けておりますけれども、その謄写した証拠の複製等を再審手続やその準備に使用することはもとより許されるわけでありますが、お尋ねのような事案は、やはり個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるべき事柄でありますが、例えば、報道、出版した人、それから教育した人という方々は、再審請求人でも弁護人でもないわけですから、そもそも目的外使用の禁止の名宛て人になっていないということでございます。

 その上で、再審請求人や弁護人がそのような方々にどのような形で複製等を提示したと言えるかどうかが、まずそこの論点に尽きるわけでありまして、その後どのように流れるかというものを、後ろの流れを規制するものではないということでありまして、言い方を変えますと、そういう形で、使うことが禁止なのではなくて、被害者のプライバシーなど様々なプライバシーを考慮して、そこで一回止めて、後のことは、表現だったり知る権利だったり、そういう自由の範疇からして、そのような目的外の使用の禁止の対象にはしていないというふうに考えてよいかと思います。

○和田(政)委員 局長、確認ですけれども、例えばそのままの証拠を、弁護人が例えば証拠のカラー写真などをそのまま報道機関に提供するというのは、これは禁止されないんでしょうか、禁止されるんでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今の事例でいきまして、再審手続やその準備に使用する目的であるとは認められない場合には、それが弁護人である場合には目的外使用の禁止違反となり得るということでありまして、報道機関にそのまま写し、要するに複製等に当たるもの、加工等をしていないものをそのまま報道機関に渡したということになれば、目的外使用の禁止の規定には違反します。その上で、弁護人であれば、それが対価を得る目的でなければ罰則には当たりません。

 それから、そのような行為の目的とか、行為とか態様とか、現に報道機関に渡った証拠の内容などを考慮して、そのような違反した場合の措置は考えるというようなことが法文上明らかにされているという状況でございます。

○和田(政)委員 確認ですが、罰則云々抜きにして、これは違法になるということですね。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 再審手続やその準備に使用する目的によるものと認められない場合で、その現物であってということであれば、それは目的外使用の禁止には、違法には当たるということになります。

○和田(政)委員 これは、そのものを複製、謄写というような形は違法になるということですけれども、じゃ、その加工というのはどこまでが加工なのか、どういう加工をすればいいのかということを突き詰めたいんですけれども、例えば、写真の角を切って、加工しましたというようなことは、これはオーケーなんですか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 角を切っただけで、少し形が変わったらそうじゃなくなるかと言われれば、必ずしもそうではないと言わざるを得ず、問題は、複製等に当たるかということに尽きまして、加工等をすることによって中身が変わったものと言えるか、そのままのものをそのまま渡したという評価を受けるか受けないかということであると理解しております。

○和田(政)委員 午前中の参考人質疑で、法制審再審関係部会に御出席なされていた委員の方からも発言がありましたが、例えば袴田事件においては、みそ漬けになった五点の衣類、これが、写真で見て、あれ、色がおかしいね、こんな色にならないよというふうに支援者の方が思って実験をしたことによって、これは明らかになったわけですね。そういったことが報道にいわゆるしっかりとなされたことによって、国民全体がこれはおかしいじゃないかということになって、最終的にあの再審無罪判決にもつながっていったというふうに私は認識をしておりますけれども。

 例えば、その弁護人、また再審請求をされている方の支援者などが報道機関と一緒になって検証を行って、裁判に臨むに当たっての準備行為を行いましたということにおいて、報道機関は、証拠というものをそのまま受けて、検証作業を共に支援者や弁護人等とした場合には、これは違法になるんでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今のような御指摘の事例におきましても、再審手続やその準備に使用する目的である、それが、主体が、報道機関も一緒に実験とか検証、実験とかをするという大前提におきまして、それは、報道機関と一緒に再審手続の準備をするのであるというふうに認められるのであれば、それはそもそも目的外使用の禁止には当たりませんし、それが支援者という方であっても、支援者という名前がつくから駄目だとかいうことではありませんで、実験をするのに協力してくれる支援者がいて、それを提示して一緒に例えば実験をやる、あるいは鑑定をするということになれば、これは、とにかく、再審手続やその準備に使用する目的と認められるということになれば、目的外使用の禁止には当たらないということでございます。

○和田(政)委員 関連して聞きますので、これは今答えられなければまた次回以降に聞きますけれども、であるならば、その検証を行ったそのものの証拠、例えば写真だとしますと、この写真を基にこういう検証を行ったらこういう検証結果が出たということで報道するときに、そのものをいわゆる報道の映像等で使用せず、何かモザイクをかけるなり、そのものずばりが分からないような加工をして放送した場合には、これは違法には当たらないということでよろしいんでしょうか。放送ないし報道ですね。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 加工等かどうかというよりも、多分それは報道機関が報道する時点での話だと思います。加工等したものを報道することになると思いますが、これは、そもそも、報道機関、その時点で目的外使用禁止の名宛て人ではございませんので、そもそも報道機関の行為が違法ということはございません。

 問題は、そこに至る経緯でありまして、先ほどの御質問の前提である、再審の準備のために一緒に検証する、実験をするということ、これを一緒にやった者が報道機関の者であったという場合には、再審手続の準備であると認められる場合もあるだろうと思いますので、その前提であれば、そこへの交付というものはそもそも違法に当たらないということになるかと思いますので。

 済みません、前提がいろいろありまして、問題は、個別事案で、そのように認められるかどうかということが一番のメルクマールになるわけですけれども、今御指摘いただいた事例であれば、そのような説明も可能ではないかというふうに思うところであります。

○和田(政)委員 時間が参りました。次回以降、更に質問をしていきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

○井上委員長 次に、畑野君枝君。

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 再審法改正について質問いたします。

 冒頭、袴田事件、大崎事件、福井女子中学生事件、日野町事件を始め、長年にわたり無実を訴えてこられた方々、その御家族、弁護団、支援者の皆さんに心から敬意を表します。

 再審法改正に関する元裁判官共同声明は、「今、再審制度について議論しているのは何のためなのか。それは、えん罪という国家による最大の人権侵害の被害者を速やかに救済するためである。」と述べています。

 ところが、今回政府が提出した法案で、本当に冤罪を救出することができるのか。五月二十日の再審法改正をめざす市民の会結成七周年集会アピールは、政府案について、検察官不服申立て禁止の例外規定が新たな抜け道となる危険、証拠開示の範囲が現状より後退する危険があり、目的外使用禁止により、袴田事件で開示されたカラー写真、ネガフィルムが支援運動、ひいては再審無罪の原動力となったような活動が今後は不可能になると、強く批判しています。

 そこで、まず検察官抗告について、平口洋法務大臣に伺います。

 検察官は、再審公判で主張、立証できるにもかかわらず、なぜ再審開始決定そのものを抗告で止める必要があるのですか。

○平口国務大臣 お答えをいたします。

 再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて、御指摘のような理由から全面的に禁止すべきであるとする御意見があることは承知いたしております。

 しかしながら、裁判は、確定により拘束力が生じ、その内容に不服があっても争えなくなるからこそ紛争解決機能を有すると考えられるわけであります。再審制度は有罪判決確定後の例外的な救済措置であるところ、誤った再審開始決定であっても一切不服申立てができず、本来やり直すべきでない裁判でも直ちにやり直しとなる制度とすると、確定の意義や裁判の紛争解決機能が損なわれると考えられるところでございます。

 また、再審開始決定は、三審制の下で確定した有罪判決について裁判をやり直すという重大な効力を持つものであるため、上級審による審査の機会を確保して、裁判所による慎重、適正な判断を制度的に担保する必要があるわけであります。

 そして、ただいま申し上げた問題点は、再審公判において検察官に有罪を主張、立証する機会があることによって解決される事柄ではないことから、御指摘を踏まえても、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを全面的に禁止することは相当でないと考えておりますが、本法案においては、その不服申立てに関する様々な御指摘を踏まえ、原則として禁止するなどの法整備を行うこととしているところでございます。

○畑野委員 冤罪被害者の人権を無視する答弁だと指摘しなければなりません。人権に関わる法務大臣として許せない答弁だと申し上げておきます。

 検察官の不服申立てについては与党内でも批判が起こり、本則には原則禁止が書き込まれました。しかし同時に、十分な根拠がある場合には抗告できるという例外規定が置かれ、新たな抜け道となる危険があります。

 今まで不当な抗告を行ってきた検察に、適切な対応は期待できません。検察官不服申立て禁止の原則と例外が逆転し得る危険性は極めて現実的だと思います。だからこそ、議員法案は、開始決定後は再審公判で争えばよい、入口で止めてはならないと、検察官の不服申立てを禁止しているのです。

 法務大臣に伺います。こういうことこそ、本当に冤罪救済を実現する方向ではありませんか。

○平口国務大臣 お答えをいたします。

 本法律案においては、再審開始決定があったときは、不服申立ての理由等を遅滞なく公表することとしております。これにより、検察官が不服申立てをした場合、その都度、十分な根拠の有無について国民の皆さんのチェックを受けることになります。

 また、施行後五年ごとの検討条項を設けることとしております。検察官の不服申立てに対しては、基本的に一年以内に裁判所の決定がなされることとなるところ、その結果も踏まえて不服申立てが適正に運用されているかが定期的に評価され、仮に問題があれば、制度の在り方が改めて議論され得ることとなるわけでございます。

 以上のことから、本法律案の規定は、検察官の不服申立てのより慎重で抑制的な運用を確保するために十分な実効性を有すると考えておりますが、改正法として成立した場合には、検察当局に対し、これらの規定の趣旨等を適切に周知してまいります。

○畑野委員 再審開始決定が出ても、本来公益の代表者であるべき検察官が有罪判決維持に固執し、再審開始決定後も七年も争い続けるという異常な事態が構造として続いてまいりました。

 政府答弁によれば、検察官の抗告禁止規定は、検察官の行為規範にすぎません。裁判規範でなく行為規範では、抗告を縛ることなどできるはずがありません。長年司法実務を担ってきた、裁判実務を知り尽くした元裁判官たちが、この制度では冤罪救済ができないと言っています。検察官抗告を全面禁止すべきだと申し上げます。

 次に、今回の政府案の証拠提出命令には重大な問題があります。

 法務省に伺います。

 袴田事件では、五点の衣類に関するカラー写真やネガフィルムが重要な意味を持ちました。布川事件でも、捜査段階の供述や証拠の問題が後に明らかになりました。福井女子中学生殺害事件では、第一次再審では九十五点しか展示されなかった証拠が、第二次再審になってから二百八十七点も開示され、その中から明白性のある新証拠と認定された決定的な証拠が発見されました。

 再審が開始され、無罪になった事件の多くにおいて決め手になったのは、捜査機関の下で眠っていて、弁護人の度重なる求めによってようやく開示された証拠です。ところが、政府案は、裁判官が関連性、必要性、相当性があると考えた場合に検察官に裁判所へ提出を命じる制度です。弁護側が無罪を証明するために必要な全ての証拠を得ることを保障する証拠開示制度ではありません。

 再審請求人側は、そもそも何が存在するか分からない、検察がどんな証拠を持っているのか分からない、一覧表もない、全体像が分からない中で再審請求理由との関連性、必要性、相当性を示せと言われる。五月雨式の開示では、的確な主張を組み立てることは困難です。

 一覧表の開示を義務づけていない政府案は、再審請求人に証拠への直接のアクセスを保障していないのではありませんか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねは、通常審における検察官保管証拠の一覧表の交付制度と同様の制度を再審請求審に設けるべきとの御指摘であると理解して御答弁させていただきます。

 通常審におきましては、検察官が公訴事実を立証し、被告人、弁護人がそれに反証を行うという当事者主義的構造の下、被告人側が証拠開示請求をするための手がかりとして検察官が保管している証拠の一覧表を交付することにより、証拠開示請求を円滑、迅速ならしめ、充実した公判審理を行うための公判前整理手続等がより円滑、迅速に行われるようにするためのものでございます。

 これに対しまして、再審請求審は、職権主義の下、再審請求者が再審請求事由の存在を主張して、裁判所が主体的に再審請求理由について審理、判断する手続でございますので、前提を異にする上、検察官保管証拠の一覧表を再審請求者側に交付する仕組みは再審請求審の審理の在り方や手続構造との整合性に問題があると考えられることから、御指摘のような制度を設けることとはしていないところでございます。

 もっとも、再審請求者側が裁判所に提出命令の請求をする際の証拠の特定は、請求に係る証拠を識別することができる程度のもので足りることから、御指摘のような制度がなくても提出命令の請求は十分に可能であると考えております。

 また、本法律案においては、裁判所による証拠やその一覧表の提示命令の制度を設けることとしているところでございまして、これらも活用することで、審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることになると考えているところでございます。

○畑野委員 いや、直接のアクセスを保障していないですよ。裁判所への提出と請求人への開示は、全く違います。

 参考人質疑でも述べられていましたが、通常審では、検察は大量の証拠を収集しているにもかかわらず、裁判に出されるのはその一部だけです。再審請求の理由と関連するといった限定や、必要性、相当性といった証拠提出の要件が設けられているのに、通常審で不提出とされた証拠の一覧の提示を裁判所限りとして、弁護人に閲覧さえ認めない、そして無罪方向の証拠が検察の手元に残される、後になってその証拠が無罪の決定打になる。これが、冤罪事件で繰り返されてきた構造ではありませんか。どうですか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 当然のことながら、処罰されるべきでない者が処罰されることはあってはならないと認識しているところでございます。

 いわゆる袴田事件や福井女子中学生殺人事件などの近時の再審無罪事件においては、再審請求審で検察官が裁判所に提出し、また開示した証拠等を新証拠として再審開始決定がなされたという経緯がありまして、その開示に至る過程におきまして、検察当局として反省すべき点があると承知しているところでございますが、個別の事件において無罪判決が言い渡される理由は様々でございますので、一概にお答えすることは困難でございます。

○畑野委員 構造について分析も反省もない、答えられないということですよね。積極的に開示する裁判所もあれば、ほとんど開示しない裁判所もあり、現実には再審格差が生まれているということです。

 裁判所と弁護側には、証拠へのアクセスについて決定的な認識の差があると言われています。それにもかかわらず、政府案は、証拠の開示を裁判所の裁量に委ねる仕組みになっています。

 本来、証拠開示とは何か。それは、弁護側、請求人側が検察の保管する証拠に実効的にアクセスできる制度であるべきです。袴田事件での約六百点の証拠、あるいは福井事件での二百八十七点の証拠のように、関連性や必要性を厳格に問わずに裁判所の勧告によって幅広く証拠が開示され、それが再審無罪に直結してまいりました。しかし、相当性という厳しい要件が法定されることで、検察官が、弊害があるということを盾に開示を拒んで、従来行われてきた広範な証拠開示の運用がかえって後退してしまう危険性が極めて高いのではありませんか。

 政府案では、必要性と弊害をてんびんにかけて相当と認めるときに開示を命じます。これにより、弁護側は、中身の分からない証拠について必要性を疎明しなければなりません。その一方で、証拠の中身を知っている検察官は、関係者の名誉やプライバシーなどの弊害を抽象的に主張して開示を拒むことが容易になります。

 議員法案が示すように、相当でないと認めるときを除き、開示するべきではないでしょうか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、今回の証拠提出命令の制度の仕組みは、再審請求理由に関連する捜査書類や物につきまして必要性、相当性があるときということで要件があるわけですが、通常、取調べの必要性があるものは関連性があるものと理解するのが正しく、かつ、そのようなものが相当性で切られていくというのは、例えば被害者のプライバシーに関する情報のためにマスキングなどをするための根拠として用いられることが通常でございまして、相当性でそれを削っていくということは通常ないというふうに、相当性がために、通常審では証拠の開示、再審請求審では証拠の提出が狭くなるということは通常は想定していませんし、現に実務の運用はそうはなっていないと私は理解しております。

 その上で、今、議員立法、議員案の話がありましたけれども、法制審におきましては、その点についても議論が行われた結果、通常審と同様に裁判所が関連性、必要性と弊害を考慮して相当と認める場合に検察官に証拠の提出を命ずる仕組みとされたところでございまして、本法案もそのような形で作成したものでございます。

○畑野委員 冤罪事件では、弁護側が想定していなかった証拠が無罪の決定打になってきました。関連性があると最初から主張できた証拠だけではありません。むしろ、検察が持っていたが請求人側が存在すら知らなかった証拠が重要だったわけです。

 ところが、政府案は、請求人側が関連性を主張できた範囲に証拠の開示を限定しようとしています。これは冤罪事件の現実に逆行しているのではありませんか。

○佐藤政府参考人 お答えいたします。

 再審請求審は、裁判所が再審請求者の主張する再審請求理由について審理、判断する手続であることから、証拠の提出命令の対象となる証拠は再審請求理由に関連すると認められるものとすることが合理的だと考えております。

 その上で、今お話がありましたように、過去にそのような証拠が開示されなかったという事実はありまして、それは、例えば平成十六年以降の証拠開示制度の創設とかその後の運用の定着などに従って、再審請求審においてもそのような形で関連性のあるものを中心に開示等がなされてきたということを指すものでございまして、再審制度も含めまして、再審請求審も含めまして、この証拠提出命令制度がちゃんと創設されて運用されれば、そのような事態はなくなるものというふうに考えているところでございます。

○畑野委員 法務大臣に伺います。

 弁護人側が証拠開示を求めるためには、どのような証拠を捜査機関側で保管しているのかを知ることが何よりも不可欠です。弁護側に一覧表を見せない理由は何ですか。

○平口国務大臣 再審請求審は職権主義の建前を取っておりまして、検察官としては裁判所の指図どおり対応するというのが原則でございます。

 証拠の一覧表には、証拠の表題、作成の年月日、供述者の氏名等にとどまらず、例えば供述調書における供述事項等も記載され得ることを想定しております。仮に再審請求者側に一覧表の閲覧、謄写を認めることとした場合、例えば供述調書における供述事項等が一覧表に記載されると、結果的に関連性が認められなかった証拠や裁判所が相当性を認めるに至らなかった証拠についても再審請求者側においてその内容を知り得ることとなり、相当でないと考えられるところでございます。

○畑野委員 議員法案は、送致書類等目録を開示対象に含めています。つまり、弁護側が証拠全体の構造を把握できるようにします。政府案は、証拠の全体像を知らせないまま、関連性を立証させる。議員法案は、まず証拠全体を把握できるようにする。どちらが冤罪を救済する制度としてふさわしいのか、明らかではありませんか。

 しかも、政府案にはスクリーニング手続が導入されています。証拠開示を限定し、関連性要件を課し、一覧表を見せず、更にスクリーニングで入口を狭める。これでは到底、冤罪を救済する法案とは言えません。

 次に、証拠の目的外使用禁止について伺います。

 政府案は、開示された証拠について目的外使用を禁止し、違反には刑事罰まで設けています。しかし、再審事件というのは、法廷の中だけでの活動で救済されてきたのではありません。

 市民集会アピールでは、袴田事件で開示されたカラー写真、ネガフィルムが支援運動、ひいては再審無罪の原動力となったと述べています。開示証拠を社会的に共有し、研究者や市民が検証し、報道機関が問題提起をする、その積み重ねが冤罪救済を前進させてきました。

 ところが、政府案は、それを目的外使用として刑事罰の対象にし得る、これは極めて危険です。開示された証拠に係る複製等の目的外使用が法律上一律に禁止され、違反した場合の刑事罰まで定められることになれば、支援者や報道機関への証拠の開示が不可能、あるいは、少なくとも萎縮効果により困難となります。

 目的外使用と刑事罰によって、支援活動や報道に重大な萎縮効果が生じる。実際に処罰されたかではなく、処罰されるかもしれないという危険があるだけで、人は行動を控えます。弁護団は支援者に証拠を見せることをためらう、研究者との共有をためらう、報道機関も慎重になる。真実を社会に知らせる力が弱くなる、これこそ目的外使用禁止の最大の問題ではありませんか。大臣、いかがですか。

○平口国務大臣 お答えいたします。

 本法律案における証拠の目的外使用の禁止について、御指摘のような御懸念が示されているということは承知をいたしております。

 もっとも、謄写した証拠の複製等を再審手続やその準備に使用することは許される上、証拠の概要を伝達するなどの行為は禁止されないところでございます。また、弁護人による目的外使用が罰則の対象となるのは、対価として利益を得る目的であった場合に限られるわけでございます。さらに、目的外使用の禁止に違反した場合の措置については、複製等の内容、行為の目的、態様等の個別の事情を考慮することとしておるわけでございます。

 したがって、証拠の目的外使用の禁止の規定により不当な事態が生ずるということはないというふうに考えておりますが、ただいま申し上げたことの趣旨については適切に周知をしてまいりたいと考えております。

○畑野委員 議員法案は、関係者の名誉やプライバシーの保護が図られる措置を講じております。

 日本新聞協会が、五月二十七日に、国民が再審事件の問題点を知る機会が損なわれると、政府案に対する反対の声明を出しました。

 まだまだ聞きたいことがございますが、時間が参りました。

 政府案は、検察官抗告については例外つきで維持する、証拠開示については限定的証拠提出命令にとどめる、証拠一覧表は弁護側に見せない、関連性要件で範囲を狭める、スクリーニングで入口を絞る、目的外使用禁止で社会的検証を萎縮させる。

 国家が無実の人を処罰し、人生を壊し、その誤りを何十年も認めない。これほど重大な人権侵害はありません。だからこそ、再審制度に必要なのは、法的安定性の名による制限ではありません。

 袴田巌さんは、無実を獲得するために五十八年かかりました。この歴史を繰り返してはならない。だから、今必要なのは、検察官抗告の全面禁止、請求人側の権利としての実効的証拠開示、送致書類等目録を含む証拠全体へのアクセス保障、目的外使用禁止規定の削除、スクリーニング手続の撤回を柱とした抜本的改革だ。

 政府案では冤罪は救えません。本当に必要なのは議員法案であるということを強く訴えて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

○井上委員長 次回は、来る六月二日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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