第16号 令和8年6月2日(火曜日)
令和八年六月二日(火曜日)午後一時三十五分開議
出席委員
委員長 井上 英孝君
理事 阿部 弘樹君 理事 木原 誠二君
理事 高見 康裕君 理事 谷川 とむ君
理事 藤原 崇君 理事 西村智奈美君
理事 三木 圭恵君 理事 小竹 凱君
井出 庸生君 稲田 朋美君
上川 陽子君 神田 潤一君
小泉 龍司君 世古万美子君
辻 秀樹君 辻 由布子君
寺田 稔君 中曽根康隆君
西山 尚利君 福原 淳嗣君
藤沢 忠盛君 藤田ひかる君
古川 禎久君 三ッ林裕巳君
保岡 宏武君 山本 大地君
有田 芳生君 國重 徹君
池畑浩太朗君 金村 龍那君
横田 光弘君 井戸まさえ君
鈴木 美香君 和田 政宗君
…………………………………
議員 有田 芳生君
議員 西村智奈美君
法務大臣 平口 洋君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 遠藤 剛君
政府参考人
(法務省刑事局長) 佐藤 淳君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
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委員の異動
六月二日
辞任 補欠選任
武部 新君 中曽根康隆君
金村 龍那君 横田 光弘君
同日
辞任 補欠選任
中曽根康隆君 武部 新君
横田 光弘君 金村 龍那君
同日
辞任
畑野 君枝君
同日
補欠選任
福原 淳嗣君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)
刑事訴訟法の一部を改正する法律案(西村智奈美君外三名提出、衆法第九号)
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○井上委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外三名提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官遠藤剛君及び法務省刑事局長佐藤淳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○井上委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。保岡宏武君。
○保岡委員 ありがとうございます。
本日、再審法改正についての質問の機会をいただきました。委員長、理事、そして委員各位の皆様にまずは御礼を申し上げたいというふうに思います。
袴田事件、福井女子中学生殺人事件を始めとして、再審開始まで数十年を要した事例が続いております。日本の再審は開かずの扉と言われてきました。私の地元鹿児島でも、いわゆる大崎事件といって、五回の再審請求をして、地裁や高裁において再審開始の決定が三回出ているのに、検察の不服申立てでいまだ再審開始に至らない、係争中の案件もあります。原告の原口アヤ子さんは現在九十八歳です。
今回の法案改正が冤罪被害に苦しんでいる多くの方々の救いとなるように、一筋の光となるように、本日の質疑に立たせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず初めに、平口法務大臣にお伺いいたします。
大臣は、これまで、冤罪被害者やその御家族の生の声をお聞きになったことはおありでしょうか。答弁をよろしくお願いいたします。
○平口国務大臣 お答えいたします。
報道の映像により、再審無罪となった御本人やその御家族の生の声を聞いたことはございます。
○保岡委員 ありがとうございます。
恐らく、今裁判などもありますので、なかなか、生の、本当に生の声というのは難しいかもしれませんけれども、そういう映像でも御覧いただいた、聞いているということで、伺いました。
大臣、併せて、率直に、御覧になってどのようにお感じになったか、感想やお気持ちなどがあればお聞かせいただけますでしょうか。
○平口国務大臣 お答えいたします。
言葉では表現し尽くせない大変な御経験に基づく、事件についての心情や、再審制度の在り方に関するお考えなどを伺いまして、そうした思いを真摯に受け止め、再審制度について、その趣旨に立ち返りつつ、速やかな改正に向けて尽力する必要があるとの思いを強くした次第でございます。
○保岡委員 ありがとうございます。率直な、お感じになられたことをおっしゃっていただきまして、ありがとうございます。
では、大臣に続けて伺います。
冤罪被害に遭われている方にとっても大変重要な今回の再審法改正ではありますが、今回政府が法案提出に至った問題意識とこの改正の歴史的な意義について、お答えいただけますでしょうか。お願いいたします。
○平口国務大臣 お答えいたします。
罪を犯していない人が処罰されることはあってはならず、仮に犯人でない人を有罪とする確定裁判があれば、速やかに救済されなければならないと思っております。
しかしながら、刑事訴訟法の再審に関する規定は戦後一度も改正されてこなかったところ、近時、再審無罪判決の確定までに相当な長期間を要し、再審請求者等に大きな負担を生ずる事態となった事件があり、そうした事態の原因について様々な指摘がなされているところでございます。
本法律案は、こうした事態や様々な指摘を真摯に受け止め、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能するようにするために、刑事訴訟法を改正して誤判からの確実な救済と手続の円滑、迅速化を図るものでありまして、再審制度を大きく前進させるものとして、歴史的な意義を有すると考えております。
○保岡委員 ありがとうございます。
この改正は、あくまでゴールではなくてスタートだというふうに考えます。大臣は、この法改正で再審制度をどのようにしていきたいか、率直にお答えいただけますでしょうか。お願いいたします。
○平口国務大臣 本法案は、誤判からの確実な救済と再審手続の円滑、迅速化を図るものでありまして、再審制度を大きく前進させるものであるというふうに考えております。
もっとも、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能するためには、今般の法整備を出発点として、まずは実務において改正後の諸規定がしっかりと運用されていくことが不可欠でございます。そのため、本法律案が改正法として成立した場合には、その趣旨を踏まえた適切な運用を確保するため、改正の趣旨、内容等について関係機関への周知を徹底してまいりたいと考えております。
その上で、本法律案においては、附則第二条において、よりよい制度とするため、五年ごとに再審制度の在り方について検討を加える旨の規定を設けることとしているところでありまして、法務省としては、改正法の趣旨を踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えております。
○保岡委員 ありがとうございます。
今大臣がおっしゃられた冤罪被害者の迅速な救済、そして適切な手続の保障というのが、この改正によって必ず実現しなければならない大きなテーマだというふうに私も思いますし、信念を持って取り組んでまいります。
しかし、正直に申し上げると、私は、最初はそんなに関心が高かったわけではございませんでした。もちろん、先ほど申し上げた大崎事件という地元の案件があるので、使命感、責任感というのはありましたけれども、実際のところ、自民党の部会で袴田ひで子さんのお話を聞いてから、私は大分意識が変わりました。
そのお言葉のどこかというよりかは、一つ一つ紡ぎ出されるそのお姿の中に、慟哭であったり、怒り、悲しみ、諦め、希望、いろいろな感情があられるのではないかな。そして、それを超越して、巌のようなことがないようにというふうなお言葉。人としてそして政治家としてはなおこの問題から、一回関わったら逃げるわけにはいかない、目を背けるわけにはいかない、そのように感じたところでありました。
この自民党の部会は十一回開催をされ、審議時間は三十二時間を超える長丁場でございました。この長丁場の中で、先輩議員から、政治家は法律に血を通わせる、なぜ立法するかがしっかりと伝わる、伝えるということが大事なんだという教えもいただきました。
今回、私は、この自民党の部会に出たり入ったりはしておりましたけれども、全ての部会には参加をいたしましたが、刑事局長、佐藤刑事局長は全ての時間そこにいらしたというふうに記憶をしております。今回、この自民党の部会に長時間出席をされて、改めて、冤罪被害に遭われた方の生の声をお聞きになって、そして、長時間検察への多くの批判的な意見を一身に浴びてこられた。佐藤刑事局長は、そのことを通じて今どのようにお感じになっているか、率直な御意見を伺えればというふうに思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘の自民党内の議論におけるものを含めまして、検察の活動に対して様々な厳しい御指摘等をいただいているところでありまして、これを重く受け止めているところでございます。
検察の活動は国民の信頼の上に成り立っており、被疑者もそうですし、参考人もそうですし、被害者もそうですけれども、そういった方々の御協力、御信頼があって成り立っているものでありまして、検察権の行使の適正さに疑いが生じるようなことがあれば、検察の活動の基盤を揺るがしかねないというふうに思うところであります。様々な御指摘を謙虚に誠実に受け止める必要があると考えているところでございます。検察に関することを所管する刑事局といたしまして、そのことを改めて痛感しているところでございます。
検察の活動が適正に行われなければならないことは当然でございまして、我が国の刑事司法が将来にわたって全体として国民の信頼の上に成り立つよう、検察当局においては適正な検察権行使に向けた不断の努力がなされることが重要であると考えておりますし、法務当局としても、その役割をしっかりと果たしてまいりたいと考えるところでございます。
○保岡委員 ありがとうございます。
死刑の恐怖や、奪われ、過ぎ去った人生の時間は絶対に取り戻すことはできません。国家が犯罪者を処罰する権限を持つ以上、冤罪は絶対にあってはならない重大な人権侵害だという大原則を何よりも共有をして臨んでほしいというふうに思います。
ちょっと重くなってまいりましたので、一つ、正直ベースで私はお話をさせていただきます。実は、刑事局長が、最近、ゴルゴダの丘に登る、十字架を背負ったキリストに重なっております。今まで検察がしてきたことというか、積み重ねてきたことをこの瞬間に全て背負っていらっしゃる、そういう厳しい重い立場ではあるかと思いますけれども、是非頑張っていただきたいなというふうに心から願っております。
続きまして、冤罪被害者の迅速な救済というこの改正のテーマにとって最も大事なことの一つ、検察抗告の原則禁止について質問させていただきます。
今回の改正で検察抗告が原則禁止となり、例外として、十分な根拠があれば抗告できるということになっています。この十分な根拠について、この委員会の中でも様々な質問がありましたが、私からも質問させていただきます。
刑事局長、五月二十七日、この委員会の稲田委員の質疑の中の御答弁で、この十分な根拠について、十分な根拠とは、再審開始決定に重大な事実誤認や重大な法令適用の誤り、重大な手続違反等があると考えられる場合であり、これらの誤り等に対する主張が上級審において受け入れられ、再審開始決定が覆ることになる蓋然性が高い場合というふうに答弁をされています。それでよろしいでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおりでございます。
○保岡委員 次に、通告をしている七の質問ですけれども、分かりやすくするために、前段と後段に分けさせていただければというふうに思います。
今回の改正で、刑訴法の四百五十条、抗告ができる規定から、法改正によって、再審開始決定に対する抗告、四百四十八条一項が削除され、原則禁止となりました。これは、従前の抗告は一旦白紙となることというふうに解されます。
したがって、今回、例外的に認められる抗告は、新設された四百五十条の二、十分な根拠があれば抗告できるという規定によってなされるもの、すなわち、この規定が抗告の要件を定めたものと解すべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案におきましては、再審開始決定に対する不服申立てについて、これを原則として禁止し、当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限ってすることができることとしておりまして、検察官は、この例外要件を満たす場合でなければ、再審開始決定に対する不服申立てをすることができないとしたものでございます。
○保岡委員 それは、つまり、単なる行為規範、訓示規定や検察官の努力義務ではなくて、実体要件であるべきというふうに考えます。また、それは抗告に対する裁判所の判断に通常及ぶものであり、本法改正は、検察官に対する実体要件であると同時に、裁判規範でもあると解すべきではないでしょうか。
十分な根拠がない抗告は違法との認識でよろしいでしょうか。お答えください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げたとおり、本法律案においては、検察官の抗告を原則禁止としたわけでありますけれども、改正後の刑事訴訟法第四百五十条の二第一項及び第二項は、単なる訓示規定や検察官の努力義務を定めたものではなく、例外要件を満たさない不服申立ては刑事訴訟法上違法となると考えられるところでございます。
また、仮に再審開始決定に対する不服申立てに十分な根拠がない場合には、抗告裁判所において、通常、刑事訴訟法四百二十六条に基づき、当該不服申立てに理由がないと判断されて、不服申立てが棄却されることとなると考えられます。
さらに、一般論として、国の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国がこれを賠償する責任を負うこととなるところ、改正後の刑事訴訟法第四百五十条の二第一項及び第二項についても、当該規定に違反した場合には刑事訴訟法上違法となり、国家賠償の問題が生じると考えられるところでございます。
○保岡委員 ありがとうございます。
ちょっと一点だけ、国家賠償の問題が生じるというふうな御答弁もございましたけれども、これはお金の問題ではなくて失われた時間の問題でもあるということも是非是非御認識をいただけたらというふうに思います。
続いて、十分な根拠がない抗告というのは、刑訴法四百二十六条、抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならないという前者、抗告の手続がその規定に違反したときに当たるとの認識でよろしいか、お答えください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
抗告裁判所としては、抗告に理由があるか否かを判断するのでありまして、仮に検察官が十分な根拠がないにもかかわらず再審開始決定に対して不服申立てをした場合には、抗告裁判所において、通常、刑事訴訟法四百二十六条に基づき、当該不服申立てに理由がないと判断されて、不服申立てが棄却されることとなると考えられるところでございます。
○保岡委員 分かりました。
つまり、私が言いたいことは、十分な根拠がある抗告というのは、検察が十分な根拠があるから抗告しますというようなことではなくて、検察から裁判所に渡された抗告が、一見して明らかにこれは十分な根拠があるよねという場合に、十分な根拠がある抗告というふうに言えると思いますが、それ以外は十分ではないのではないかなというふうに考えているというところです。
なぜそう言うかというと、上記ぐらいのことがないと、本来、審理の迅速化にはつながらないのではないか、今回の改正で時間的な制約を各審理段階において新設をされていますけれども、それを阻害する状況にもなるのではないかというふうに懸念をするからです。あとは、袴田事件のときのような、抗告だけを先にして、後からみそに漬けた実験を検察もしたりとかいうような例があってはなりませんし、いたずらに時間を引き延ばすことがあってはならないというふうに考えるからでございます。
いずれにせよ、検察抗告には今回様々なハードルを付したので、今までどおりの安易な抗告が続けられるということではないという理解でよろしいでしょうか。お答えください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
安易な抗告等がなされることはないというふうに判断しております。
本法律案における十分な根拠の判断主体は検察官ではありますけれども、その判断につきましては、再審開始決定の内容や具体的な事実関係、証拠関係等を踏まえまして、抗告裁判所の審査に堪え得る客観的に妥当なものかという観点から、これまでにも増して組織的に十分な検討を尽くした上で慎重に行われることとなると考えられます。
この点に関し、検察当局においては、袴田事件の教訓を踏まえて、全ての再審開始決定について、検事総長訓令により、検事正はあらかじめ検事長の指揮を受けなければならないこととしておりまして、組織的な判断が確保されるよう整備をしたところでございます。
その上で、先ほど申し上げたとおり、不服申立てに十分な根拠がない場合には、抗告裁判所において、通常、当該不服申立てに理由がないと判断されて、不服申立てが棄却されることとなります。また、その判断は一年以内にされることが通常であるというふうに考えられます。
それを踏まえて、裁判所の検察官の不服申立てに対する判断がそのような期間で示されるということでありまして、さらには、そのことを受けて、五年ごとにこの再審のルールについての見直しの規定が入っているということでございまして、検察当局におきましては、そのようなもろもろの今回の法整備の内容を踏まえてそのような判断をすることになるだろうというふうに考えているところでございます。
○保岡委員 ありがとうございます。
私は、自民党の審議の際、当初は、検察抗告は全面禁止をして公判の場でオープンにすればいいのではないかというふうに考えていました。ただ、守らなければならない被害者のプライバシーや立場もありますし、検察がおかしな判断をするということであれば、裁判所でもある、そういう理もあると今では考えております。
ただ、冤罪被害者の失われた時間は二度と戻らない、何度も申しますが、その視点はやはり重要でありまして、検察抗告が再審の長期化を招き、遅過ぎた正義は正義の否定であるとの厳しい批判があることも重々御承知いただけたらというふうに思います。
例外が抜け穴になって、原則、例外が逆転をして、例外抗告が広く認められれば、原則禁止の意味が失われる。政府としては、例外は極めて限定的なもの、慎重かつ抑制的なものとしていただきたいというふうにピン留めをさせていただければというふうに思います。また、我々も、そこはしっかりと今後も検証してまいりますので、決して原則、例外が逆転しない運用を強く要請をいたします。
続きまして、新設される証拠開示のルールについて伺います。
刑事局長、再審請求において、弁護側は、検察の手元にどのような証拠が存在するかすら分からない、圧倒的な情報の非対称性の中に置かれています。中身を知らない証拠について、今の再審請求の理由とどう関連するのかを説明せよと厳格にこれを求められても、それは不可能に近い。だからこそ、今回の法案では、裁判所が相当と認めるときに開示を命じることができるというふうにしたと理解しています。
確認いたします。
この関連性や相当性の判断は、冤罪救済という再審制度の趣旨に照らして、通常審における厳格な立証要件とは異なり、極めて弾力的かつ広く解釈されるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
再審請求者は捜査機関側が保管している証拠の全容が分からないというのは、御指摘のとおりだと思います。その一方で、仮に犯人でない人が有罪判決を受け再審請求をする場合には、確定審の証拠や判決の内容から、その判決のうちどの部分が誤っているかを把握していると考えられるところでございまして、検察官に提出を命ぜられるべき証拠としてどのような証拠があり得るかについては想定することが可能であると考えられるところでございます。
この点、大事なのは、提出命令の対象となる証拠の特定でございますが、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りるということでございまして、その程度で、何度かこの委員会でも答弁させていただきましたが、特定された証拠と再審請求の関連性、必要性について疎明することは十分可能であると考えているところでございます。
そもそも、証拠の提出命令制度における再審請求理由に関連するというのは、裁判所による再審請求理由についての判断に資するという意味でありまして、相当の広がりを持つものでございます。本法律案においては、再審請求理由に関連すると認める証拠の範囲が不当に狭くならないように留意されなければならないという規定も設けるところとしているところでございます。
以上、証拠の提出命令制度につきましては、要件判断が適切になされ、審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることとなると考えてはおりますけれども、法務省としても、本法律案が改正法として成立した場合には、裁判所や検察庁などの関係機関に対して制度の趣旨や内容を十分に周知して、御指摘のような趣旨で提出される証拠の範囲が狭まることのないよう適切な運用の確保に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○保岡委員 御丁寧な答弁、ありがとうございます。
個別具体的な事案に関しては、裁判所によって適切かつ柔軟に判断されるものという理解でよろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。
加えて、質問いたします。
再審請求において、弁護側が、例えば、Aという新事実があるはずだと主張をして証拠開示を求めたとします。しかし、検察が証拠を調べた結果、Aを直接裏づける証拠はなかったけれども、そもそも有罪の決め手となった検察側の見立てが間違えていたかもしれないと疑わせるような別の証拠Bが見つかるケースがあります。
弁護側のピンポイントの主張Aとは直接関連しなくとも、確定判決に合理的な疑いを生じさせる証拠Bであれば、検察官は、それこそ公益の代表者として自ら進んでこれを開示すべきではないかというふうに考えます。こうしたものも広く関連性があるとして開示対象に含まれるという理解でよろしいでしょうか。お答えください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
関連性というのは、やはり再審請求の理由との関連でその判断に資するかどうかという意味でございますので、関連性がなかった場合であるものの、それが無罪を示す証拠であるというものが検察官の手元に存在する場合ということで受け止めて御答弁申し上げますと、無罪を示す証拠というのが証拠の旧証拠と新証拠の総合判断の中でなかなか判断が一義的にできないというものであることも御理解はいただきたいと思いつつも、罪を犯していない人が処罰されることはあってはならないのは当然でございまして、再審請求審において検察官が再審請求者が罪を犯していないことを明らかに示すような証拠を収集、把握するに至った場合には、これが再審請求者側が主張する再審請求理由との関連性があるかどうか明らかでない場合であっても、当該証拠を裁判に顕出するというのが検察官の取るべき対応であると考えているところでございます。
○保岡委員 ありがとうございます。
もう一点、証拠開示について質問をいたします。
五月三十日、朝日新聞の記事にこのようなことが記されていました。
関連性を狭く捉えて開示範囲が限定され、無罪につながる証拠が埋もれる恐れが指摘されている。
新制度のもとで、袴田巌さんの再審無罪の決め手となった「五点の衣類のカラー写真」が開示されるか問われ、次のような趣旨の答弁をした。
これは佐藤刑事局長が答弁をされたということですね。
弁護側が、犯行時の着衣と認定された衣類に付着していた血痕の色が不自然だという証拠を出し、犯人ではないと主張しているような場合は、衣類そのものだけでなく写真も提出命令の対象になり得る――。
「衣類の色」に関する新証拠を出して無罪を主張していれば、写真も再審請求理由と関連性があるとみなされ、開示され得るという意味だ。
袴田さんの弁護団は、第一次再審請求中の一九九〇年に「五点の衣類のカラー写真」の開示を申し立てたが、検察側は拒否した。弁護団は当時、衣類のサイズを問題にしており、「色」は問題にしていなかった。
刑事局長の答弁を踏まえれば、新制度のもとでも、一次請求では写真が開示されない可能性がある。衣類についた血の色に関する実験結果を証拠として出し、「色」を問題にした二次請求でやっと写真が開示されるなら、従来の実務運用から改善しないことになる。
最高検は二〇二四年末、袴田さんの再審無罪を受け、検証報告書をまとめた。弁護団が一次請求では「色」に関する証拠を提出しておらず、写真との「関連性」などが判然としなかったと指摘。九〇年の時点で写真を開示することが「相当であったとまではいえない」と総括している。
という記事です。
いわゆる袴田事件の五点の衣類のカラー写真の開示は、新制度の下でも同様に開示されない可能性の方が高いのか、それとも開示される可能性が高いのか、端的にお答えいただけますでしょうか。お願いいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
結論から申し上げて、開示される可能性が高いということでございます。
先ほどの五月二十九日の委員会における私の答弁は、あくまでも、確定判決において犯行時の犯人の着衣であると認定された衣類のカラー写真やそのネガフィルムといったものが証拠提出命令制度の対象となる場合の一例を示したものにすぎませんで、それに限られるといった趣旨ではございません。
今御指摘のあったように、例えば、再審請求者が自分が犯人でない旨を主張している殺人事件におきまして、確定判決の内容で、犯行時の犯人の着衣である、被告人のものであるといった衣類について、犯行時の犯人の着衣であることや被告人のものであることについて疑念を抱かせる何らかの証拠を提出して、結びつきを否定する主張をしているような場合には、当然、当該衣類のカラー写真やそのネガフィルムといったものは、関連する証拠として証拠の提出命令の対象となると考えているところでございます。
○保岡委員 ありがとうございます。
今までの審議の中で、国民の税金で収集した証拠は検察のものではなく公共財であるというような御指摘もありました。検察は、単なる当事者ではなくて、公益の代表者でもあります。これは何度も、刑事局長からも自民党の部会で聞いたワードでもあります。無罪方向の証拠についても適切に開示するように、是非現場への徹底をこれからも図っていただけたらというふうに思います。
また、迅速性に資するためにも証拠リストというのは必要なのではないかというふうに個人的には思いますが、ちょっとこの問題は割愛をして、また次の機会に質問させていただければというふうに思います。
続きまして、新たに整備される証拠開示のルールを実効性のあるものにするためには、現場の体制整備が不可欠だというふうに考えます。来年春の全面施行に向けて、刑事手続の全面IT化プロジェクトが進んでいるというふうに伺っています。
検察庁における証拠管理のデジタル化やデータベース化は、今回の再審における証拠開示、未開示証拠の検索やリストの迅速な作成を飛躍的に後押しする基盤にも将来はなるというふうに考えます。現在のシステム整備の状況と今後の展望についてお答えください。お願いいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
刑事手続のデジタル化につきましては、令和七年五月に情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律が公布されたところでございまして、書類のデータ化などといった主な規定につきましては、令和九年三月三十一日までの間に政令で定める日から施行するものとされております。
今現在、施行に向けまして、裁判所などの関係機関と緊密に連携しつつ、新たなシステムの開発を行うとともに、運用に向けた検討を行うなどの準備を進めているところでございます。委員の御指摘のようなものも踏まえつつ、例えば再審請求手続を含む刑事手続の円滑化、迅速化につながるものとなるように、着実に作業を進めてまいりたいと考えているところでございます。
○保岡委員 ありがとうございます。
私、これは持論なんですけれども、ちょっとこれから離れますが、再審に限っては、少年法のように裁判所に全ての証拠が持ち込まれて審理をされるというようなたてつけになれば一番いいのになというふうに思っています。ただ、そんなことに言及するともっと大きな話になりますので、また別の機会にこれは回したいというふうに思いますが。裁判の迅速性に資するためにも、証拠リストの提出は今後の課題かなというふうに考えているということも補足させていただきます。
それでは、最後に、佐藤刑事局長への質問でございますが、今回の改正案には五年ごとの見直し規定も入っています。施行後の運用と検証において、不断の注意と努力で、再審法が冤罪被害者の救済に資するように挑み続けなければならないということは言うまでもありませんが、一方で、冤罪被害は再審法だけではなくならないということもまたあるかと思います。また、実際、これも自民党の部会で何度も刑事局長がおっしゃっていたことでもあります。
今後、冤罪被害が生まれないようにするためにはどのようなことが必要とされるか、これもできる範囲で、率直に、正直に、誠実にお答えいただけたらというふうに思います。お願いいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
刑事司法が、誤判防止を含めて、基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を解明し、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現するという刑事司法の役割を適切に果たしていくためには、再審制度だけではなくて、捜査段階それから通常審に関しましても、制度、運用の両面につきまして不断の検討を行っていくことが重要であると考えております。
当然、運用におきましては、取調べの適正を始めとした供述の適正の確保であったり、それ以外にも、その供述に頼らない形での客観証拠の収集が十全になされるような、そういった捜査手段の開発が必要であると思っています。
それに加えまして、今、刑事局の立場といたしましては、この五年ごとの検討も含めまして、様々な刑事司法の論点について議論を重ねていくということが重要であるというふうに思っております。
そのような形で、私どもとしても、引き続き必要な取組を進めてまいりたいと考えているところでございます。
○保岡委員 ありがとうございます。
本当に大変誠実に、正直にお答えをいただけて、ありがとうございました。是非、そのような未来が描けるように、また、私たちも精いっぱいできるところはやってまいりますので、そのような未来の実現に向けて邁進されることを心から願っております。
最後に、大臣への質問をさせていただきます。
袴田事件、福井女子中学生殺人事件を始め、再審請求人の多くは長い年月を失っています。先ほどから申し上げているように、失われた時間や命は取り戻せない。国家が刑罰権を行使する以上、誤判救済制度への信頼は不可欠であります。大臣もお話しされました。
今回の法改正を冤罪被害者救済と刑事司法への信頼回復につなげていくために、最後に、大臣の決意をお聞かせください。お願いいたします。
○平口国務大臣 近時、刑事司法に対して様々な厳しい指摘がなされているところでございますが、刑事司法制度がその機能を適切に発揮するためには、国民の皆様の信頼に支えられているということが極めて重要でございます。
本法律案は、近時の再審請求事件に関する実情を踏まえ、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能するように所要の法整備を行うものであり、刑事司法に対する信頼関係の確保からも重要な意義を有するものと考えております。
また、刑事司法が、基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を解明し、刑罰法令を適切に適用実現するという役割を適切に果たしていくためには、捜査段階や通常審に関しても、制度、運用の両面について不断の検討を行っていくことが重要であると考えております。
引き続き、刑事司法への信頼確保のため、尽力していきたいと考えております。
○保岡委員 平口大臣、ありがとうございました。
冤罪被害者の失われた時間は本当に二度と戻りません。冤罪被害者の迅速な救済、そして適切な手続の保障をこの改正によって必ず実現する。党内、党外、多くの方の協力もあり、様々な思いが自民党内にもあったが、もしかしたら今でもあるのかもしれませんが、今改正できなければいつできるのか、この一点で党内はまとまり、この法案提出に至ったというふうに認識をしております。
再審法改正案がしっかりと委員会で審議をされ、実現をした後には、冤罪被害に遭った方の迅速な救済が実現されることを、そして、実務を通じて刑事司法の信頼回復ができることを切に願って、私の質疑を終わりたいというふうに思います。
御清聴ありがとうございました。
○井上委員長 次に、有田芳生君。
○有田委員 有田芳生です。
私は、これまでの皆様方の質疑を聞いておりまして、今日質問するのは、再審法については初めてですので、何で冤罪が起きるのか、今度の法改正によってそれを防ぐことができる道に進むんだろうかという視点でお尋ねをしていきたいというふうに思います。
私の冤罪事件についての原点というのは、足利事件だったんです。菅家利和さんは、真実ちゃん誘拐殺人事件で逮捕されて、無期懲役、十七年半、獄にとらわれましたけれども、DNA鑑定の結果、無罪、冤罪だったということが明らかになった。
私は、菅家さんに何度もお話を聞いているときに、無念が晴れたのはよかったんですと、それは当然、本当に遅かったけれどもよかったんだけれども、同時におっしゃっていたのは、真犯人がどこにいるんだ、それが許せないとおっしゃっていた。これは袴田事件などなども同じなんですよね。
ですから、足利事件について今日取り上げるわけじゃないんですけれども、実は、DNA鑑定をやった、当時の筑波大学の本田克也教授は、DNA鑑定の結果、菅家さんを無罪にするその導きを実行されたんだけれども、実は真犯人がいるんじゃないかというような、取材も含めていろいろな動きがあった。それで、ある人物に対して、菅家さんを無罪に導いた本田克也教授は、ある人物のDNA鑑定をやったんです。その結果、三十数か所で一致をした、被害者の衣類についていたDNAと。結果的には、確率でいえば、四兆七千億人に一人の割合でヒットした、こういう事実があるんですよ。
私が許せないのは、この事実を最高検の幹部はもう十年以上前に知っている、真犯人についてのDNA鑑定の結果を。それがいまだ何の動きもないというようなことを含めて、私は、この冤罪問題というのは、検察の姿勢というのは、長年にわたって問題点を感じていたんです。
具体的な内容に入りますけれども、この法務委員会で再審法についての質疑が始まった一回目のとき、袴田ひで子さんがその場で傍聴されておりました。傍聴を終えて外に出て、マスコミ陣に意見を聞かれたひで子さんは、こうおっしゃった。巌の身に起きたことがこの世界から冤罪をなくすことにつながるよう切に願っておりますと語った上で、今審議をしている政府案について、証拠の全面的な開示が必要だと。もう一つ、検察官抗告の禁止が盛り込まれない場合は成立を急ぐべきではないと訴えられている。それが被害者の本音なんですよね。
袴田ひで子さんは、法制審の二回目のヒアリングの中で、西村智奈美さんが本会議でも引用されましたけれども、るる思いを語った中で、最後にこう語った。「法務省の皆様、弟、巌が四十七年七か月頑張ってきたということを、」次が大事なの、「人間として考えていただけますでしょうか。」と。人間として考えなきゃ駄目なんですよ。
この問題は、袴田ひで子さんが傍聴された、前回の法務委員会の傍聴には、あそこの席に江川紹子さんが座っていました。江川さんは、オウム事件でよく知られているけれども、実は一九九四年には名張毒ブドウ酒事件についての著作を文芸春秋から出されたんです。
名張の事件というのは一九六一年に起きた事件ですけれども、死刑の判決を受けて、九度にわたって再審請求が行われた。奥西勝さん。だけれども、奥西さんは、再審請求をずっと求めながら、二〇一五年に八十九歳で亡くなりました、八王子の医療刑務所で。再審請求をやっているから無罪だというわけではないんだけれども、本人たちは再審請求を一生懸命やっているけれども、亡くなってしまった。
この間、傍聴席に、江川さんと同時に石川早智子さんもいらっしゃった。狭山事件、一九六三年に起きた、私は差別裁判だと思っておりますけれども、石川一雄さんの奥様である石川早智子さんがいらした。この狭山事件についても、現在、第四次の再審請求が行われている最中なんだけれども、残念ながら、石川一雄さんは、昨年、八十六歳でお亡くなりになりました。
再審請求、無罪だと信じた人たちが求めて行動していても、その間に亡くなってしまうというのがこの残酷さであって、人間として考えていかなければいけないことだと思うんです。
まず、法務大臣に伺いたいんですけれども、刑事局長もそうですけれども、こんなことはあってはならないんだと、毎回毎回そうおっしゃっています。そのとおりです。
法務大臣に伺います。そのあってはならないことが、何でこれまで起きてきたんでしょうか。お答えください。
○平口国務大臣 処罰されるべきでない者が処罰されることはあってはならないということでございます。
具体的事件において無罪判決が言い渡される理由は様々でありまして、処罰されるべきでない者が処罰されるような事態が生ずる原因としてどのようなものがあるかを一概に申し上げることは困難でございますが、過去の無罪判決や検察当局による検証においては、例えば、客観資料の吟味が不十分であったこと、自白の信用性に対する吟味、検討が不十分であったこと、新たな科学的捜査手法に対する理解、検討が不十分であったことなどの理由が指摘されてきたものと承知しております。
これらを踏まえて、検察当局においては、客観証拠を適切に収集、分析すること、消極、積極を問わず十分に証拠を収集、把握し、冷静かつ多角的にその評価を行うこと、供述の任意性の確保その他必要な配慮をすることなど、「検察の理念」を踏まえ、基本に忠実な捜査、公判活動の適正な遂行に努めているものと承知しておりまして、引き続き、こうした基本に忠実な捜査、公判遂行に努めていくことが肝要であると考えております。
○有田委員 証拠をちゃんと最初から開示しないから問題が起きているんじゃないですか。
そのことをこれから具体的に伺っていきますけれども、その前に、刑事局長にお伺いをいたします。
死刑判決を受けて再審無罪だったケースというのは、これまで、一般的には四大死刑冤罪事件と言われていますけれども、ちょっと簡単に御説明いただけますか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
お尋ねは、死刑判決が確定した後、再審で無罪とされた、いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件及び島田事件の四つの事件を指すものと理解しております。
まず、いわゆる免田事件は、昭和二十三年十二月二十九日、金品強取の目的で熊本県内の民家に侵入し、被害者二名を殺害し、別の二名に傷害を負わせた住居侵入、強盗殺人及び同未遂の事案でございまして、元被告人の方が起訴され、昭和二十七年一月五日に死刑判決が確定しましたが、その後に再審開始決定がなされ、昭和五十八年七月十五日、再審公判で強盗殺人等の点につき無罪が言い渡されたものと承知しております。
次に、いわゆる財田川事件は、昭和二十五年二月二十八日、金品強取の目的で香川県内の民家に侵入し、被害者一名を殺害し、現金を強取した住居侵入、強盗殺人の事案でございまして、元被告人の方が起訴され、昭和三十二年二月二日に死刑判決が確定しましたが、その後に再審開始決定がなされ、昭和五十九年三月十二日、再審公判で無罪が言い渡されたものと承知しております。
次に、いわゆる松山事件でございますが、昭和三十年十月十八日、宮城県内の民家におきまして、家人を殺害して金員を物色しようと決意した上、被害者四名を殺害し、同所に放火した強盗殺人、非現住建造物等放火の事案であり、元被告人の方が起訴され、昭和三十五年十一月二十二日に死刑判決が確定しましたが、その後に再審開始決定がなされ、昭和五十九年七月十一日、再審公判で無罪が言い渡されたものと承知しております。
最後に、いわゆる島田事件でございますが、昭和二十九年三月十日、静岡県内において、被害者一名を姦淫し傷害を負わせた後、殺害した強姦致傷、殺人の事案であり、元被告人の方が起訴され、昭和三十六年一月二十六日に死刑判決が確定しましたが、その後に再審開始決定がなされ、平成元年一月三十一日、再審公判で無罪が言い渡されたものと承知しております。
○有田委員 ありがとうございます。
死刑判決が確定したけれども、だけれども、結論として、証拠開示で冤罪だということが明らかになったわけじゃないですか、袴田事件についても。
じゃ、次にお聞きをしますけれども、警察庁、教えてください。飯塚事件というのはどういう内容だったんでしょうか。
○遠藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘の事件につきましては、平成四年二月、福岡県飯塚市内の路上において、登校中の女児二名が普通乗用自動車で連れ出された上、頸部を絞めて窒息死させられ、同県内の山中に遺棄されたというものでございます。
福岡県警察におきましては、平成六年九月、被疑者を死体遺棄事実で逮捕、送致、同年十月に殺人事実で逮捕、送致したものと承知しております。
○有田委員 じゃ、刑事局長、その後、裁判はどうなったでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
今、警察庁の方から事案の概要がありましたけれども、この被告人については、平成六年十月十四日及び十一月五日に殺人等の事実により起訴され、平成十八年十月八日に死刑判決が確定したものと承知しております。
その後、この事件につきましては二次にわたる再審請求がなされておりますが、再審開始決定がなされたことはない状況にありまして、現在は、福岡高裁の即時抗告棄却決定に対しまして弁護人が最高裁判所に特別抗告を申し立て、特別抗告審が係属中であると承知しているところでございます。
○有田委員 今、刑事局長は御発言の中に入れておりませんけれども、この飯塚事件というのは、一九九二年に福岡で起きて、そして二〇〇六年に死刑判決が確定をして、その二年後、二〇〇八年に死刑が執行されたんですよ、死刑が、七十歳で。
逮捕されたときから一貫して、私はやっていないと言い続けてきた。だけれども、DNA鑑定とか目撃証言なんかで有罪になり、死刑判決になり、確定し、死刑が執行されたんだけれども、その後のいろいろな調査の中で、DNA鑑定の疑問点あるいは目撃証言の怪しさというものが今明らかになってきているんですよね。かといって冤罪だったというわけではないんだけれども、そういう疑問がある中で、二年後に死刑が執行されてしまった。
だから、先ほどの免田事件なども始めとして、袴田さんたちだって、死刑が確定したんだから、いつ何どき命を奪われているかも分からなかったという問題なんですよね。そこが深刻なんですよ。多くの事件、今も再審請求をやっているわけで、そこをやはりもっと真剣に考えていかなければいけないというふうに私は思っております。
前回の委員会でも、参考人の方も、あるいは、今いらっしゃらないけれども和田委員なんかも、証拠とは何かということで、公共財だということをおっしゃっておりました。捜査当局が熱心に捜査を進めて、警察、検察が集めた証拠、そして、それを全部そのまま明らかにせよというのではないのは、刑事局長も、マスキングするとかいろいろな方法があるわけだから。
だけれども、私が疑問なのは、もう一度聞いておきますけれども、証拠物。これは、検察の立場から物すごく、警察、検察は証拠を集められるわけでしょう。だけれども、それを全部公開するわけじゃないですから、結果として、冤罪事件を見てみたら、有罪にするのに有利な証拠は出すけれども、そうでない、検察に不利なものは出していないのが現実じゃないですか、袴田事件を見ても。違いますか。
証拠物というのは一体何ですか。もう一度教えていただけますか。
○佐藤政府参考人 証拠という文言はかなり多義的でありまして、例えば、普通の広辞苑などでありますと、根拠とかそういった意味で使われることもあるわけですけれども、本法律案で新設することとしている証拠の提出命令制度における証拠とは、証拠書類あるいは証拠物を意味するところであります。
証拠の収集に税金が用いられることは事実でありますけれども、これは、検察官に損か得かということではなくて、証拠は証拠でありまして、問題は、関連のある証拠かどうかが今例えば証拠の提出命令制度の中では問題になっているということだと理解しております。
○有田委員 そのとおりだということを言えないのは、例えば袴田さんの事件、確定審では五点の衣類が問題になりました。ところが、確定審では、その五点の衣類のカラー写真なんというのは全く検証されていないわけじゃないですか。初めはパジャマで犯行を行ったというのが、その後変わって、五点の衣類になったわけでしょう。
しかも、問題なのは、袴田巌さんがはいていたズボン。それを、確定審の中では、控訴審では、袴田さん、三回ズボンをはいてみろと言われて、三回はいたけれども、はけなかったわけですよね、はけなかった。そのとき、証拠は提出されていないわけだから、袴田さんが太ったんだとか、あるいは、長くみその中に漬けられていたからズボンが縮んだから、袴田さんははけなかったんだと。
もう一つ、ここが重要なんだけれども、その袴田さんが三回ともはけなかったズボンのタグに、B、ABCのBと表示があったわけですよね。そのBを、確定審の中では、肥満の人の印であるBだと。ところが、これもお聞きをするんですけれども、確定審は一九八〇年ですけれども、第二次請求審、二〇一八年、三十八年後、検察は、五月雨式だけれども六百点の証拠資料を出したわけでしょう、カラー写真も含めて。そのとき明らかになったのは、確定審でズボンのBは肥満体の印だと言っていたものは、そうじゃなかった、ズボンの色を示していた。
だから、確定審で検察がちゃんと証拠物を出していたら、裁判所の判定というのはおかしいじゃないかという判断に結びついたかも分からない。あるいは、カラー写真を最初の段階で出していたら、血液は赤だと書いてあるんだけれども、だけれども、一年漬けて赤なのかという疑問を持つ人が、後で支援者が実験をして、赤じゃないというのが明らかになって、冤罪、無罪になっていくんだけれども。
だから、最初から、確定審の段階から検察が持っている資料を全部出していたら、袴田さんはもっと早く罪から免れたと私は考えているんですけれども、違いますか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
いわゆる袴田事件につきましては、最高検におきましても、検証報告書を作成して公表するなどしまして公にしているところでございます。
その上で、当時の再審請求審というものの証拠開示というのは、検察においても、あるいは裁判所においてもその運用に消極的であったというのは、今の視点から見ると否めないというふうに思っております。
そういう観点で、先ほど答弁しましたように、平成十六年に通常審におきまして証拠開示のルールができまして、その運用が定着いたしまして、それを再審請求審の中でも、裁判所、検察官、弁護人が、そのような運用を前提に再審請求審においても証拠を広く開示すべきだという合意ができて、裁判所の勧告に従って検察官は開示するようになりまして、今の袴田事件につきましても、そのような時点でそのような広い証拠開示がなされたということであると理解しています。
その上で、では、その当時からそのように運用がなされていたらということでございますが、まさに今回の本法律案は、証拠開示におけるそのような争いに、そういうことに一定のルールをちゃんと作って、通常審と同様に、証拠提出命令制度などをちゃんと活用してそういうことに対する争点が早期になくなるようにして、したがいまして、袴田事件が今起きたとすれば、そういう証拠の提出とか開示とかいったもので時間が浪費されないような、そういうルールを策定するものだと思っていますので、早く終わるものだと、あくまで仮定ではありますけれども、早く終わるように本法律案を策定しているというつもりでございます。
○有田委員 刑事局長にここの段階で確認しておきたいんですけれども、これは、質問通告をした後、今朝早くにお伝えしたので、無理なら無理で仕方がないんですけれども。
戦前の日本では、被告人あるいは弁護士に全ての証拠が開示されていたというのは事実ですか。もしそれが事実ならば、再審について、完全に戦前は全ての証拠にアクセスできた。
もう一点。今の制度として、全ての証拠を開示するというのはドイツと台湾では行われているというのは、それは正しいという理解でよろしいですか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
戦前の刑事訴訟法というのは、現行の刑事訴訟法ではなくて、大正十一年に成立したいわゆる旧刑事訴訟法のことだと思われますので、これについて急ぎちょっと確認いたしました。
まず、旧刑訴法というのは、いわゆるGHQがやってきて、昔、職権主義といいまして、一般の通常審におきましても、例えば、検察官がいて、その証拠を全部予審判事が見て、予審判事が少しずつスクリーニングしていく、それで、有罪になる人が最後に裁判所の下で残るといったような、すごくざっくり言いますと、不正確かもしれませんが、そのような刑事裁判が戦前は行われていたということでございます。それが、GHQが来たことに伴いまして、済みません、撤回いたします。戦後、アメリカ法のいわゆる当事者主義でありまして、伝聞法則、厳格な証拠のルールを作ったり、裁判所に予断を持たせないで起訴状一本主義で裁判を進めていくというようなルールが通常審に入れられました。
したがいまして、先ほどの戦前の場合というのは職権主義のときの話なんですけれども、職権主義のときには、私の理解では、基本は全て警察から来た証拠が検察官のところにあり、検察官が捜査した証拠も全部そこにあり、証拠のルールなどはありませんので、全ての書類を裁判所が見て判断をするというルールになっておりまして、そういう前提の下に、一件記録がどこまでかというのは日本とかなり、今のルールとかなり違いますけれども、その前提であれば、それに、被告人が公判に、被告事件が付された後、裁判所において訴訟に関する書類については閲覧、謄写されることとされていたようでございますので、証拠物についても閲覧できるようでございましたので、そのような意味では、弁護人も全ての記録を見られたということのようでございます。
それから、ドイツと台湾においても、少なくともドイツは、日本が戦前に学んだ大陸法系の職権主義の国でありまして、先ほど言ったような裁判の形態があるわけですけれども、恐らくそのような形で、裁判所に存する書面とか裁判所にそのまま警察から全部引き受けたものが全て分かるという前提でありますので、これについては、一定の事由を除いて、閲覧が制限されている場合を除いてこれを弁護人は見ることができるように理解していますが、その前提が、そもそも記録とは何ぞや、一件記録とは何ぞやというところが全て分かっているわけではありませんので、一概に日本と比べるのは困難であるとは考えているところでございます。
○有田委員 時間がなくなってきましたので、もう一点確認をさせてください。
一九八六年、再審無罪事件検討結果報告書というものが作られておりますけれども、何の目的で、どういう内容で作られたんでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
検察当局においては、無罪判決等があった場合には、当該事件における捜査、公判活動の問題点を検討しまして、必要に応じて検察官の間で問題点を共有して、今後の捜査、公判の教訓としているというものでございますけれども、御指摘の資料もそのようなものでございまして、検察当局の内部資料でございますので、法務当局としてその詳細についてお答えすることは差し控えさせていただきます。
○有田委員 公表していない報告書だということですけれども、しかし、公表していなくても、どういう動機でこういう報告書を作られたんでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたように、無罪判決等があった場合に、その捜査、公判活動の問題点を検討して、必要に応じて検察官の間で問題意識を共有して、今後の捜査、公判の教訓とするためにそのようなものを作成したというふうに承知しているところでございます。
○有田委員 つまり、先ほど私が伺った免田、財田川、松山、島田の死刑再審無罪、いわゆる四大死刑冤罪事件を受けてそういう報告書を作ったんじゃないんですか。
○佐藤政府参考人 済みません、御指摘の、先ほどの四大事件であるかについて、ちょっとお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
○有田委員 要するに、この公表していない検察の報告書というのは、証拠開示を極力しないという方針を徹底するためのものだったんですよ。それが今でも生きているんじゃないかというのが、私は今日お話を伺っていて、朝日新聞の表現だと、抜け道がこの法案にはつくられているんじゃないかという思いなんです。それは、最初にお話をしましたけれども、袴田ひで子さんも、法律の専門家でも何でもありませんよ、だけれども、被害者としてずっと闘ってきて、その感覚から、これは危ないんじゃないかという勘が働いているんですよ。
だから、この問題というのは、このまま法案を通していいのかどうかということも含めて更に議論を深めていきたいと思いますし、機会があれば私もまた質問します。
取り残した問題はありますけれども、時間が来ましたので終わります。
○井上委員長 次に、國重徹君。
○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
今日は、私は、証拠の一覧表を弁護人にも開示すべきだ、この論旨で質問を重ねていきたいというふうに思います。しっかり質問を聞いて、お答えいただきたいと思います。また、答弁内容を踏まえて、また更問い等を答弁内容によってはさせていただきますので、しっかりここで生きたやり取りをさせていただきたいと思います。
これまでの再審無罪事件では、意図的な証拠隠しと評価されるものだけではなく、検察官が不見当、不存在とした証拠が後になって発見されるなど、証拠の管理、把握の不十分さが問題となった事例が少なくないと認識をしています。この点について、平口法務大臣も同様の認識なのか、また、この現実をどう受け止めているのか、お伺いします。
○平口国務大臣 お答えいたします。
御指摘のような事例につきまして、法務省として網羅的、統計的に把握してはおりませんで、その多寡について一概にお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。
その上で、例えば、いわゆる袴田事件においては、弁護人が五点の衣類を撮影した写真及びネガフィルムの開示を求めたのに対し、検察官は、五点の衣類等を撮影したカラー写真三十枚を開示した後、そのほかには五点の衣類を撮影した写真及びネガフィルムは存在しない旨を回答したにもかかわらず、その後、写真やネガフィルムが発見され、検察官がこれを裁判所に提出する事態が生じました。
その原因について、検察当局が公表した検証結果報告書においては、長期間にわたって裁判所による審理が行われている場合における客観的な捜査資料の管理、把握が十分ではなかった旨、指摘されているものと承知をしております。
検察当局においては、こうした事態を教訓として、客観的な捜査資料や証拠を一層適正に管理し、その開示に遅れを生じさせることのないよう努めているものと承知をしております。
○國重委員 私は多寡を聞いているわけではなくて、どう受け止めているのかということであります。
このような事実を本改正案の制度設計の前提としてしっかりと受け止めているということで、大臣、よろしいでしょうか。
○平口国務大臣 そのとおりだと思います。
○國重委員 再審無罪事件は古い事件も多くて、公判未提出記録を含めますと、証拠の数は膨大になる事件もあります。
そういった状況の中で、裁判所から証拠提出命令を受けた検察官が関連性のある証拠を漏れなく提出するためには、検察官自身が、まず、公判未提出証拠も含めて、証拠の全体像を正確に把握していることが不可欠と考えますが、この点、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案における証拠の提出命令制度におきまして、裁判所が検察官に証拠の提出を命じた場合、検察官は命じられた証拠を提出する義務を負うこととなるわけでございます。
その上で、検察官が裁判所から提出を命じられた証拠を確実に提出するためには、自己の担当する事件の証拠を適正に管理するとともに、命令を受けた場合に、証拠の内容を精査した上で、提出を命じられた証拠に該当するものを丁寧かつ的確に選別することが重要であると考えているところでございます。
○國重委員 ちょっと、問いに正面から答えていただけていないと思います。
私が聞いているのは、関連性のある証拠を漏れなく提出するためには、検察官自身が自ら証拠の全体像を正確に把握している必要があるんじゃないんですかと聞いているんです。だから、全体像をまず正確に把握する必要があるのかどうか、イエスかノーかでお答えください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
失礼いたしました。正確に把握していることは重要でございます。
○國重委員 検察官が証拠の全体像を正確に把握していることは前提として必要になる、これは当たり前のことだと思います。全部を把握していないと関連性のある証拠が漏れてしまいますので、これは大前提として必要ですけれども。
では、その上で、検察官が証拠の一覧表を作成することなく証拠の全体像を正確に把握して関連性ある証拠を漏れなく提出するということは、実務上、相当困難だと考えますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
様々な事件がございますので、個別事案にもよると思いますので、それが難しいかどうかという話も事案によって違うと思いますけれども、証拠の一覧表を作成しなくても、そのような選別作業については、証拠の内容をちゃんと精査した上で、該当するものをちゃんと選別することは可能であるというふうに考えているところでございます。
○國重委員 それは、私は分かりませんね。
要は、証拠の一覧表というのは単に証拠の標目を書いているだけですよね。裁判所に対する標目の一覧表は要旨とかが書いていますけれども、どんな証拠があるかということを例えばラインナップをして、番号を振って、供述調書、何月何日付があると。全体像が分からないと、何によって全体を把握するんですか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
そのような、例えば、関連性ある証拠を漏れなく提出するために選別することについては、証拠の一覧表がなければ実施が困難というわけではないというのは先ほど答弁したわけですけれども、その一方で、証拠の一覧表を作成することにより証拠の管理に資する場合があるのは、またそのとおりであると思っております。
その上で、検察官が受理する事件と申しますのは警察からの送致事件が大半でございまして、警察からの送致事件については、証拠の多くは警察において収集されて、それについて送致書類として送られてきているものと承知しているところでありまして、検察官は、例えば、送致書類等目録によりまして警察から送致された証拠の標目等を確認することができるために、別途、一覧表を作成したりする必要はないというのが通常ではないかというふうに思われるところであります。
その一方で、警察から送致された証拠とは別に、検察官が自ら収集する証拠については、その分量は事案に応じて様々でございますので、証拠の管理のために一律に一覧表の作成を義務づけるといった必要性は余りないのではないかというふうに考えているところでございます。
○國重委員 現に、過去の再審無罪事件等においても、不見当、不存在と言っていたものが後になって発見されているわけです。必ずしも意図的な証拠隠しだけではなくて、やはり過失による、不注意による証拠漏れというのがあったわけです。
ですので、やはり検察官としては、名称は別ですよ、名称は別にしても、どのような証拠があるのかということは、当然、全体を把握していないと、把握した上で、どれが関連性があるかということを選出していく、選別していくものだというふうに思います。
その上で、大臣、検察官に証拠の一覧表の作成を義務づければ、これは保管証拠ですね、警察から送られてくるものも含めて、自ら棚卸しをする契機というのが制度的に生まれます。これをやらないと、制度的にこういうものは生まれません。これは、証拠提出命令制度だけでは防ぎ切れないこれまでの不注意による証拠漏れ、こういったことを防ぐ実効的な手段になり得ると考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○平口国務大臣 お答えいたします。
検察官が裁判所から提出を命じられた証拠を確実に提出するためには、命令を受けた場合に、証拠の内容を精査した上で、提出を命ぜられた証拠に該当するものを的確に選別することが重要であります。
もっとも、御指摘のように、一覧表の作成を義務づけなければそうした証拠の的確な選別ができないというものではなくて、これを義務づけるまでの必要はないと考えております。
いずれにしましても、証拠の提出命令制度が適切に運用されることは適正な裁判の実現のために大変重要でありまして、本法案が改正法として成立した場合には、検察庁などの関係機関に対しまして制度の趣旨等を十分に周知し、適切な運用の確保に努めてまいりたいと考えております。
○國重委員 じゃ、大臣、例えば証拠が二百点あったとして、その二百点全て、どのような、一から二百まで証拠があるということを検察官は認識していなくていいんですか。大臣に今聞いています。一から二百まで二百点あったとして、そのことを検察官は認識していなくていいんですか。そこから探し出すんですか。何らかのものは要るでしょう、メモでも。どういう証拠が自分の手持ち証拠としてあるのか、警察から送られているものも含めて。これが分からないと漏れてしまうんじゃないですか。どうですか。
○平口国務大臣 検察官が受領する事件は警察からの送致事件が大半でありまして、警察からの送致事件については送致書類等目録が作成されているものと承知しております。検察官は、送致書類等目録により警察から送致された証拠の項目等を確認することができるため、別途、警察から送致された証拠についての一覧表を作成する必要はないと考えられます。
○國重委員 送致書類等目録ですか、これが警察から送られてくるということですけれども、これまでの質疑のやり取りで、全てが警察から送られてくるわけじゃないと、検察の元に。これまでの再審無罪事件等においても、そういった中に証拠漏れ、関連性のある証拠が眠っている場合もあるわけでしょう。
ということは、再審請求審等において、検察官がもう一度この事件について、証拠一覧表のようなものを、送致書類等目録等も活用していいと思いますよ、でも、いま一度、本当に証拠は大丈夫なのかということで棚卸しをすることによって、証拠漏れがなくなっていくんじゃないですか。これまでも送致書類等目録はあったわけでしょう。あったんだけれども証拠漏れがあったわけですから、何らかの新たな制度的担保というのがこれは必要なんじゃないですか。大臣、どうですか。
○平口国務大臣 証拠の整理は大変重要なことだと思いますけれども、これは一覧表に限らないわけでございます。例えば、証拠の属性、種類を分類し、管理、把握するなどの方法もあるものと承知をいたしております。
○國重委員 またちょっと後ほど法務省とやり取りしたいですが、私のイメージでは、証拠の一覧表というのは一番単純なものですよ。単純に、ただタイトルを書いて、ラベリングでも、番号をつければいい問題であって、こういった証拠が一体この事件に関しては何点あるかというような、全体像を見渡せる、要旨等は書いていない、本当に単純なメモ的なものですよね。こういうものを作ることさえ抵抗するのかということに非常に強い違和感を抱いております。また後ほどやり取りさせていただきたいと思いますけれども。
再審請求審においても、日野町事件の第一次請求審などは裁判所の訴訟指揮によって証拠の一覧表が弁護人に開示された、こういう事例があります。法務省は、これらの開示そのものによって、被害者のプライバシーの侵害や捜査情報の漏えいなど、具体的な弊害が生じた事例、これを把握されていますか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
いわゆる日野町事件の第一次再審請求審におきまして、裁判所の求めに応じまして検察官が送致書類目録を裁判所と弁護人に提出した例があるということは承知しているところでございます。
その上で、再審請求審において証拠の一覧表を弁護人に開示した事例というものを法務当局として網羅的に把握していないといいましょうか、むしろ実例としては少ないというふうに認識しておりまして、そのようなことでございますので、証拠の一覧表の開示そのものによって具体的な弊害が生じた事例の有無についてもお答えするのが困難であるということは、御理解いただきたいと思います。
○國重委員 それでは、質問を変えまして、平成二十八年の刑事訴訟法改正以降、通常審では、刑訴法三百十六条の十四第二項に基づいて証拠の一覧表を弁護人に交付する制度が実務上定着をしています。通常審で証拠一覧表を弁護人に開示したことによって、被害者のプライバシーの侵害あるいは捜査情報の漏えいなどの具体的な弊害を生じた事例を法務省は把握されていますか。把握されているのであれば、具体的に内容を明らかにしていただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えします。
申し訳ありません、法務当局としましては、通常審の公判前整理手続等におきまして証拠の一覧表が提供された状況を網羅的に把握していないということでありまして、一覧表の提供そのものによって具体的な弊害が生じた事例の有無についても網羅的に把握していないということで、お答えするのが困難であることは御理解いただきたいと思います。
ただ、一般論として申し上げますと、検察当局におきましては、証拠の一覧表を提供するに当たりましては、三百十六条の十四、四項に規定する事項、すなわち、当該一覧表に記載することにより、人の身体若しくは財産に害を加え又は人を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれ、あるいは、人の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ、又は、犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障を生ずるおそれがあると認められる事項の有無を慎重に検討して、いかなる事項について記載するかについて判断しているものと承知しているところでございます。
○國重委員 よく分かりました。四項があるから、弁護人に対する証拠の一覧表を開示したとしても、今、特段、具体的な弊害の事例というのは把握されていないということでした。だから、きちっと四項のような規定もあるわけです。にもかかわらず、こういう弊害対応の条文もきちっと規定をされている、そういうような中で、じゃ、なぜ今般の法改正で弁護人側への証拠の一覧表の交付制度を法定しなかったのか。
私は、これを作ることによって、先ほど来申し上げているとおり、検察官が自ら保管している証拠、警察から来た証拠、また警察から送られていない証拠も含めて、きちっとこの事件に関連するものは漏れがないのかというようなことを確認してですね、やれる制度的契機にもなると思っていますし、また、作ることを、交付することによって、きちっと作っているということも担保されると思います。
じゃ、なぜこれを法定しないのか、お伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
証拠の一覧表の交付制度を法定していない理由ですけれども、再審請求審は、職権主義の下、裁判所が主体的に自ら再審請求理由について審理、判断する手続でございます。そのため、本法律案においては、証拠の一覧表を弁護人に交付する制度ではなくて、裁判所が、証拠の提出命令に係る判断に当たって必要があると認める場合に、検察官に命じて、その保管証拠であって、裁判所の指定する範囲に属するものの標目の一覧表を提示させる制度を設けることとしております。
この証拠の一覧表には、結果的に関連性が認められないようなものも含めまして、裁判所が指定した範囲の証拠が全て記載されることになりますし、その命令を受けた検察官は、命じられた証拠の一覧表を整えて、裁判所に提示する義務を負うところでございます。
したがいまして、委員の御指摘のように、証拠をちゃんと的確に把握することは極めて重要であると考えておりますけれども、他方、再審請求者側の証拠の提出命令の請求をする際の証拠の特定は、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りるというふうに考えているところでございまして、このような証拠提出命令制度を設けることによりまして、審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることが担保できるというふうに考えているということでございますが、その運用に関しましては、様々な御指摘も踏まえて、検察庁や裁判所等に対して制度の趣旨等をしっかり周知してまいりたいと考えているところでございます。
○國重委員 済みません、まず、標目の一覧表と証拠の一覧表は違いますね。
今、職権主義ということもおっしゃいましたよね。まさに、今の答弁では手続の構造論のことをおっしゃったと思います。再審請求審が職権主義であることを根拠に、証拠の一覧表は裁判所だけが見れば足りるというような、そういう趣旨だと思いますけれども、ただ、職権主義といっても、裁判所は請求人が主張した再審請求理由に拘束されて判断をする。このようなことから、先日の参考人質疑で葛野先生がおっしゃったように、職権主義といっても純然たる職権主義じゃないんだとおっしゃいましたけれども、そう理解していますけれども、同様の理解でいいかどうか、お伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
参考人が言葉にしていた純然たる職権主義というものがそもそもどのようなものであるかというのを私どもで申し上げるのがなかなか難しいところでありますけれども、再審請求審は、裁判所が主体的に再審請求理由について審理、判断する手続でありまして、裁判所が手続進行について主導権を持つものであることについては、これは事実であろうというふうに考えているところでありまして、一方で、再審請求審につきましては、審判の開始が再審請求者等の請求によることとされるなど、再審請求者等にも手続進行などにつきまして一定の権利が与えられていると考えられるところでございます。
○國重委員 先日の参考人質疑において、葛野参考人は、再審請求人が再審請求審においては本質的で重要な役割を担うんだ、そういった中での職権主義であるからこそ、その前提となる請求人の主張を充実させるために、証拠の一覧表を弁護人に開示する必要があるというふうにおっしゃいました。
つまり、この職権主義という構造論だけを理由に、論理必然的に証拠の一覧表の弁護人への開示を排斥する結論が導かれるわけではない、そう理解していますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
職権主義という構造論だけで論理必然的にということではないかと言われれば、ちょっとそこの点を答えるのはなかなか難しいところではあるんですけれども。
先ほど、証拠の一覧表、ここで言っている証拠の一覧表といいますのは、裁判所に対して関連する証拠を全て提出するために、関連するかどうか分からないものも含めまして、裁判所の御指示の内容を網羅的に把握して一覧表として起こして裁判所に提出する、それの内容には供述事項なども含まれるというものでございまして、その内容を弁護人にそのまま開示する、裁判所と同時に弁護人に開示するという場合には、例えば、証拠の内容が弁護人側に渡る、それは関連性のないものであって、関連性のないという意味は、犯罪被害者のプライバシーなどに触れるものも審理に必要がないのに渡る可能性があるということを意味するのではないかというふうに考えるところでございます。
○國重委員 ちょっと多分、問いと答弁がずれていると思います。私は、裁判所に提出した標目の一覧表を弁護人に見せろなんということを言っていないんですよ。三百十六条の十四の方です。ずれたので、時間の関係で次に行きますけれども。
何か、論理必然と言い切るのはどうかというような、ちょっと曖昧な答弁をされましたけれども、葛野先生も、職権主義であるからこそ、弁護人に対する証拠の一覧表を開示すべきだとおっしゃっていて、要は、いろいろな見解があるわけですよ。論理必然じゃないんです。ここのことをまず明確にさせていただいた上で、とすれば、結局、必要性と弊害の比較考量になると考えます。
必要性については、前回の参考人質疑で鴨志田弁護士もおっしゃったように、やはり証拠を特定するに当たっては必要になってくる、これはすれ違いがありますけれども、弁護人側としてはそのような必要性を強く感じているということでした。そして、先ほどやり取りしたとおり、弁護人に開示をする前提で、四項ですよね、四項の弊害防止の規定もありますので、実際に具体的な弊害の事例が今現に示されているわけでもありません。にもかかわらず、構造論だけを理由に、大臣、証拠一覧表の開示を拒むということは、冤罪救済という再審制度の本質よりも手続上の形式論を優先させることになっているんじゃないか、そう考えますが、いかがでしょうか。
○平口国務大臣 お答えをいたします。
証拠の一覧表を弁護人に開示する制度を設けることについては、法制審議会において議論が行われたものの、再審請求権は、職権主義の下で、裁判所が主体的に審理を行う手続であり、裁判所に一覧表を提示する仕組みとすることが整合的である、また、再審請求審は裁判所が再審請求理由について判断する手続であり、裁判所がそのために必要と認めた範囲の証拠を記載した一覧表とすることが整合的であるといった意見が大勢を占め、答申に盛り込まれなかったものと承知しております。
そこで、本法律案においては、このような法制審議会の議論の状況を踏まえて、証拠の一覧表を弁護人に開示する制度ではなく、裁判所が提出を命ずるか否かを判断するに当たり必要があると認めるときに、検察官に対し、裁判所の指定する範囲に属する証拠の一覧表を提示することを命ずることができる制度を設けることとしております。
○國重委員 これも余り正面から答えていただけていない気がします。今回の本改正案の、冤罪を救済するというこの本質的な課題にどう向き合っているのか、形式論よりもそちらの方が優先なんじゃないんですかというようなことを今正面から問うたつもりなんですけれども、またこれは次回以降に。
最後に一問質問して、今日は終わりにしたいと思います。
検察官抗告の原則禁止、これは当初の政府案にはありませんでした。しかし、自民党内で非常に激しい議論を経て、再審手続の長期化という現実の立法事実を踏まえて、政府にとっては、政府にとってはですよ、法体系上極めて特殊であろうと考えた検察官抗告の原則禁止、これを政治判断で採用したと理解しています。
これと同じように、私は、証拠の一覧表の弁護人への開示についても政治決断で採用すべきだというふうに考えています。なぜか。再審無罪事件で明らかなように、意図的な証拠隠しや不注意による証拠漏れという現実の立法事実があるんです。しかも、通常審で、証拠の一覧表の弁護人への開示というのは実務上既に定着をしています。再審請求審でも開示された実例があります。開示の必要性は高い。その反面、それによる具体的弊害は示されていない。
だからこそ、大臣、再審請求審においても、弁護人への証拠の一覧表交付制度、これは政治判断として、最終的には国会でやることですけれども、ただ、大臣も政治家の一人として、大臣として、採用すべきだと私は強く考えておりますけれども、本日のこのやり取りを踏まえた上での大臣の見解をお伺いします。
○平口国務大臣 これまで申し上げてきたとおり、弁護人に検察官保管証拠の一覧表を交付する制度は、再審請求権の審理の在り方や手続構造との整合性に問題があると考えられることから、御指摘のような制度を設けることは相当でないと考えております。
その上で、再審請求者側が提出命令の請求をする際の証拠の特定は、請求に係る証拠を識別することができる程度のもので足りる上、本法律案においては、裁判所による証拠やその一覧表の提示命令の制度を設けることとしてありますことから、審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることとなると考えております。
ただし、本法案が改正法として成立した場合には、適切な運用を確保するため、裁判所や検察庁等の関係機関に対し制度の趣旨や内容等について十分に周知してまいりたいと考えております。
○國重委員 今日のやり取りを踏まえて、また引き続き質問させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、池畑浩太朗君。
○池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。兵庫県の西播磨、中播磨から参りました。
本日は、刑事訴訟法の一部を改正する法律案、いわゆる再審法改正案について質疑をさせていただきたいと思います。
何遍もこのくだりは委員会でも出てまいりますけれども、再審制度は、無辜の者が誤って処罰をされるという、刑事司法にとって最も深刻な事態を是正するための非常救済手続であります。冤罪被害者にとって再審制度は、文字どおり、時間は取り返せませんけれども、人生を取り戻す、ある意味の唯一の手段でありまして、これが適切に機能するか否かは法治国家としての根幹に関わる問題であります。
我が地元でも、姫路の郵便局強盗事件などで再審を求めている事件もありますが、私は、証拠の提出命令制度が創設されることにより、証拠の提出をめぐる実務の在り方、今日はかなり実務にこだわって質問させていただきたいと思いますが、より円滑、迅速なものに変わっていくものではないかというふうに考えております。その意味で、想定される実務の姿を念頭に置きながら議論をしていく必要があるというふうに考えております。
そこで、まず、証拠の提出命令制度の創設に伴う実務運用の変化という観点から質疑を行ってまいりたいと思います。
刑事局長、今日は丁寧に確認をしていきたいというふうに思います。行ったり来たりになってしまいますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず、前提の確認となりますけれども、証拠の提出命令制度が創設をされた後においても、これまで再審請求手続で行われてきた裁判所による提出、開示の勧告や検察官による任意の証拠提出、開示という従来の実務運用は否定されないという理解でよろしいでしょうか。刑事局長。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおりでございます。
○池畑委員 そうだといたしますと、再審請求手続における証拠の提出、そして開示の外延は変わらず、これまで提出、開示をされてきたものが、証拠の提出命令制度の創設により提出、開示がされなくなるということではないというふうに理解してよろしいでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
法務当局としても、御指摘のように考えているところでございます。
○池畑委員 証拠の提出命令制度が設けられることによって、証拠の提出、開示をめぐる運用がこれまでより柔軟になされていくという側面はないのでしょうか。
通常審において、証拠開示制度が設けられたことによって任意の証拠開示が柔軟に行われるようになったものと承知をしております。その中で、すなわち、刑事訴訟法上の制度としては、検察官請求証拠、類型証拠、そして主張関連証拠の開示という段階的な開示の仕組みが整えられているものの、実務の運用では、必ずしもそのような段階を踏まずに、いずれ開示をされることとなる証拠はまとめて任意に開示をするという任意の証拠開示が柔軟に行われて、このような運用が定着しているものと私は認知をしておりますけれども、法律案による証拠の提出命令制度の創設は、証拠開示制度の創設が実務の運用に生じさせた変化と同様の変化を、再審請求手続における証拠の提出、開示の実務の運用に生じさせることとなるのではないでしょうか。その辺りをちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
一般論として申し上げますと、検察当局におきましては、通常審において、弁護人から類型証拠や主張関連証拠の開示請求があった場合には、法律の規定に従って請求及び開示のそれぞれの要件の存否を判断した上、証拠開示制度の趣旨にのっとり、審理の見通し等の事情を勘案しつつ誠実に対応しているというものと承知しております。
また、検察当局におきましては、一般に、証拠開示制度の趣旨に沿って、証拠開示命令がされていない段階においても柔軟に証拠の任意開示を行っているものと承知しております。
このような通常審における証拠開示の運用状況を踏まえますと、本法律案が改正法として成立した後は、証拠の提出命令制度につきましても、一般に、必ずしも証拠の提出命令によるのではなくて、従来の実務運用を踏まえまして、またその制度の趣旨に沿って、裁判所による証拠の提出、開示の勧告や、それに基づく任意の証拠の提出、開示といった柔軟な対応が行われることとなるものと想定しているところでございます。
○池畑委員 ただいまの刑事局長の答弁を前提とさせていただいて、次に質問させていただきたいと思っております。
今の刑事局長の答弁は、想定される証拠の提出命令制度の運用の在り方についてお尋ねしたんですけれども、再審請求者として、検察官の手持ちの証拠の中にある自らの主張、立証に役立つ証拠を見たいと考えた場合には、直ちに証拠の提出命令を裁判所に請求するということになって、その質問をさせていただいたわけでありますけれども、それも含めて、直ちに証拠の提出命令を裁判所に請求するということになるかどうか、もう一回、確認の質問をさせていただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
お尋ねのような場合に再審請求者側が取る対応というのは事案により様々だとは思われますけれども、証拠の提出命令を請求する前に、まずは、裁判所に対して、どのような証拠を見たいのか、その理由などを伝えて、そうした要望を受けた裁判所におきまして、検察官とコミュニケーションを取った上で、検察官に証拠の提出、開示を勧告して、それを受けた検察官において、証拠を任意に提出、開示するといったケースも相応に生じるのではないか、これは、通常審でそのように行われていることが多いということでございまして、そういうことを想定しているところでございます。
もちろん、再審請求者側が直ちに証拠の提出命令を請求することも十分あり得ると考えているところでございます。
○池畑委員 冒頭申し上げたように、実務の運用を中心に今回質問させていただいておりますが、今答弁をいただきました内容のプロセスを経ずに証拠の提出命令が請求された場合には、裁判所は直ちにその当否の判断をすることになるんでしょうか。もう一回答弁をいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
お尋ねのような場合に裁判所が取る対応というのは、通常審の状況も踏まえますと、事案により様々であるとは思われますけれども、証拠の提出命令に係る判断に先立ちまして、まずは、再審請求者側に請求の意図を確認して、検察官ともコミュニケーションを取った上で、検察官に任意に提出、開示するかを確認したり、あるいは任意の提出、開示を勧告するといったケースも相応に生じるのではないかと考えているところでございます。
その結果、検察官が裁判所の意向を踏まえて任意に証拠を提出、開示した場合、これを受けて再審請求者側が提出命令の請求を撤回するといったことも、通常審のことを踏まえますと、あり得るのではないかということでございます。
もとより、裁判所が直ちに証拠の提出命令に係る判断をすることも否定されないところでありまして、裁判所において事案に応じて適切に対応されるものと承知しているところでございます。
○池畑委員 今日も三時間ぐらいの質問があります。いろいろなところで重なってくるところがあるんですが、実務の運用という部分では、余り重なっていない部分だというふうに思っています。
その中で、今答弁をいただきました証拠の提出命令を請求しようとする再審請求側としては、どのような証拠が検察官の手持ち証拠の中にあるのかが分からないなどから、具体的に特定をして証拠の提出命令を請求することは難しいように思いますが、証拠の提出命令の請求をする際は、提出を求める証拠をどの程度特定することが求められることとなるのか、伺いたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
証拠の提出命令の請求をする際の証拠の特定は、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りると考えております。
例えば、犯人でない人が有罪判決を受けて再審請求をしている場合について考えてみますと、有罪認定の根拠となった証拠として目撃者の証言がある場合には、その有罪認定の誤りを示す可能性がある証拠としては、例えば、その目撃証言中の目撃日時等に関する証言と整合しない内容が記載された捜査報告書であったりとか、犯行状況に関する別の目撃者の供述といったものが有罪認定の誤りを示すものとして想定されるわけであります。
その場合、再審請求者側がその証拠の提出命令の請求をするに当たっては、例えば、犯行目撃日時に関する裏づけ捜査の結果を記載した捜査報告書であるとか、犯行状況に関する他の目撃者の供述調書といった程度の特定をすれば足りるということでございまして、目撃者の氏名や供述調書の日付、作成者等による特定までは要しないところでございます。
確定判決に不服のある再審請求者側は、確定審の証拠や判決の内容から、その判決のうちどの部分が誤っているかを把握していると考えられるところでございまして、検察官に提出が命ぜられるべき証拠としてどのようなものがあり得るかについては想定することが可能であると考えられることから、再審請求者側において、ただいま申し上げた程度の特定を行うことは容易ではないかと考えているところでございます。
○池畑委員 今の答弁を踏まえてまた質問させていただきたいというふうに思いますが、容易にできるという話がありましたが、裁判所が証拠の提出命令を発するに当たりまして、提出を命ずるべき証拠の範囲に疑問を持った場合、どのような措置を取ることになるのでしょうか、お伺いしたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
お尋ねのような場合に裁判所が取る措置というのは、事案により様々であるとは思われますけれども、例えば、裁判所において、再審請求者側に対しまして、提出命令の請求に係る証拠について、再審請求理由との関連性や提出の必要性等に関する事情を確認したり、検察官に対しては、提出命令の対象となり得る証拠の有無や提出に伴う弊害等について確かめることなどが考えられるところであると思います。
また、本法律案におきましては、裁判所が証拠の提出を命ずるか否かを判断するに当たりまして、必要があると認めるときは、検察官に対し、判断の対象となる証拠自体であるとか、裁判所の指定する範囲に属する証拠の一覧表の提示を命ずる制度を設けることとしておりまして、裁判所としてはこれらの制度を活用することも可能であると考えているところでございます。
○池畑委員 裁判所が制度の活用ができるということも踏まえまして、ただいま御指摘をいただきました証拠の標目の一覧表の提示命令にはどのような事項が記載されていくことになるのでしょうか。
また、本法律案においては、裁判所、今お話がありましたけれども、証拠の標目の一覧表の提示命令のみならず、証拠そのものの提示命令を発することができることとしているものとも承知しております。その中で、証拠の標目の一覧表の提示命令については、裁判所が範囲を指定していくこととされておりますけれども、裁判所は、再審請求者側そして検察官の意見を聞かずに一方的に証拠の提示を命じて、又は一方的に範囲を指定して一覧表の提示を命ずることは可能なのでしょうか。
更にお聞きさせていただきますけれども、裁判所が検察官の手持ち証拠の全ての標目の一覧表について提示命令を発することも可能なんでしょうか。
改めてお伺いしたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案において新設する証拠の一覧表ですけれども、再審請求理由との関連性が認められる可能性のある証拠を裁判所において把握することができるようにするためのものでございますので、証拠の表題、作成の年月日、供述者の氏名などにとどまらず、例えば供述調書における供述事項等も記載され得ることを想定しております。
また、本法律案におきましては、証拠又はその一覧表の提示命令を発するに当たり、裁判所による再審請求者側や検察官からの意見聴取を必要的なものとしておりませんので、そのような意見聴取を行わずに命令を発することも可能でございます。もっとも、裁判所の判断によりそのような意見聴取を行うことが禁止されるものではございませんので、裁判所において個別の事案に応じて適切に判断されるものと考えております。
さらに、最後の御質問でありますが、本法律案においては、証拠の一覧表の提示命令について、対象となる証拠の範囲を、検察官の保有する証拠であって、裁判所の指定する範囲に属するものとしているところでございますので、裁判所において個別の事案に応じた検討の結果として証拠の提出命令に係る判断のために必要があると判断した場合には、検察官の保有する全ての証拠を指定してその一覧表の提示を命ずることも可能であると考えているところでございます。
○池畑委員 ありがとうございます。
今の答弁を踏まえまして、これは最後になります。行ったり来たり、ありがとうございます。
確認であります。裁判所が証拠又はその一覧表の提示命令を発した場合、検察官はこれを拒むことは可能なのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案における証拠又はその一覧表の提示命令を受けた検察官は、命ぜられた証拠又はその一覧表を裁判所に提示する法的義務を負い、これを拒むことはできません。
○池畑委員 ありがとうございます。できませんということであります。
これまでの質疑を通じて、証拠の提出命令制度の創設によって実務の運用によい影響が及び、証拠の提出、開示によって柔軟な対応がなされること、そして裁判所が再審請求理由を判断する上で必要かつ十分な証拠提出、開示がされるようになることが、私たちとしては確認ができたというふうに思っておりますが、是非その方向で適切な運用が行われてほしいというふうに思っています。
一番最初の質問者でありました保岡委員が言われておりましたけれども、大臣に、現場の声を聞いたのかという質疑がありました。そこで、最後に、それも踏まえた上で、証拠の適切な提出、開示に基づく再審制度の適正な運用の実現に向けた決意を平口法務大臣にお聞かせいただきたいと思います。
○平口国務大臣 お答えをいたします。
再審制度が非常救済手続として適切に機能するためには、審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることが重要であります。これまで刑事局長が答弁してきたとおり、本法律案が改正法として成立した場合には、証拠の提出命令制度と、これまで実務で行われてきた裁判所による勧告や検察官による任意の提出、開示が共に活用され、必要かつ十分な証拠が迅速に提出、開示されることとなると考えております。
本法律案が成立した場合には、裁判所や検察庁などの関係機関に対し制度の趣旨や実務上想定されるところを十分に周知し、適切な運用の確保に努めてまいりたいと考えております。
○池畑委員 法務大臣、ありがとうございました。
日本維新の会は、本法律案による改正の後も、引き続き、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能しているかという観点から、今日こだわりました実務における運用を注視していきたいというふうに思っております。
これは重要広範でありますから、最後は総理が出てきて質疑があるというふうに思っております。しっかりと、これからどうなってくるかということをこの委員会で、皆でいい方向性にやっていきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
私の質疑を終わります。ありがとうございました。
○井上委員長 次に、小竹凱君。
○小竹委員 国民民主党の小竹凱です。本日もありがとうございます。
今日の理事会で、先日の田中健委員の質問事項について、協議事項について資料が配られましたけれども、前回の田中健委員の質問としては、最高検の袴田事件の検察報告書では、第一次再審請求のときに証拠開示が進まなかった理由に関して、弁護人の開示請求自体が抽象的だったというふうに言っております。しかし、政府答弁では、証拠リストがなくても請求人や弁護人側が必要な証拠に適切にアクセスできるというふうに言っておりまして、この整合性について質問をされておりました。もちろん通告も出ていたというふうに認識をしています。
そして、今日資料が配られましたけれども、今日、口頭でちょっと、もらったばかりなのであれですが、まず当時と現状では前提が違うということでありましたけれども、この説明は私は不十分だと思いますし、先ほどの國重委員の質問を聞いていても、この説明、中身についてはあした触れたいと思いますが、平成十六年の証拠開示というのが具体的に出てきて、再審の方では、法律ではないが運用の方で明確に証拠開示の方が、公判の方でも、公判前整理のときにもしっかりと導入されていったというようなことを言われていますが、やはり、今回の法案についても、関連性とか必要性とか、またいろいろな弊害を見て、結局、裁判官次第というか、こういった裁量が大きく残るということは、運用の裁量が残るということに関しては、前提が異なるというふうに言い切れないと思いますし、今回のことで証拠開示というのがまた大きく変わるというふうには思っていません。やはり、裁判官によって、裁判官ガチャというか、そういったところで変わらないように、証拠開示の在り方というところは、今日ペーパーをいただきましたけれども、なかなかこれは説明として不十分だというふうに思います。
その上で、これに関してはあした質問をさせていただきたいというふうに思います。
今日は、まず、再審開始決定に対する検察官抗告について伺いたいと思います。
再審開始決定に対する検察官抗告によって、初めて再審開始決定がされた後、最終的に再審開始が確定するまでに、先日の鴨志田参考人から個別事件で例示いただきました、袴田事件は九年、福井事件は十三年、日野町事件が七年七か月、免田事件は二十四年四か月というふうに、長期にわたって妨げられてきたということが再審法改正の最も重要な立法事実の一つであるということは皆さん認識かと思います。
その上で、今回、自民党の党内の審査において、刑訴法四百五十条から四百四十八条の一項の決定を削除して原則禁止としたということは大きな前進ではあると思いますが、五月二十七日の藤原委員に対する質疑であったり、それ以外の質問でも、検察官に対する行為規範であるということが同一項の十分な根拠のところで示されております。そうすると、結局、この四百五十条で抗告が禁止になった以上、この二項は例外的に抗告できる場合を改めて規定しているものでありまして、その規定が裁判規範ではなくて、ある種自主規制と見られるような行為規範にとどまるとすれば、本来の禁止の実効性に重大な疑問が生じているというふうに思います。
その上で、順次伺いたいと思いますが、まず大臣に一問伺いたいと思います。
本法施行後、仮に検察官が再審開始決定に対して不服申立てをした場合、裁判所は四百五十条の二に言う十分な根拠の有無を独立の判断要素として審査することになるのか、それとも、実質的に裁判所は従来の抗告審査と変わらないのか、この点を明確にお答えください。
○平口国務大臣 十分な根拠の判断主体は検察官でございますが、本法律案においては、再審開始決定に対する不服申立てについて原則として禁止するとともに、これを担保するための様々な規定を設けることとしておりまして、それらによって不服申立てのより慎重で抑制的な運用が確保されることとなると考えております。
その上で、不服申立てがされた場合には、抗告裁判所としては、検察官の不服申立てに理由があるか否かを判断することとなりますが、仮に十分な根拠がなく不服申立てがされた場合には、通常、当該不服申立てには理由がないとして棄却することとなると考えられるところでございます。そのため、十分な根拠の有無については、検察当局においても、抗告裁判所の審査に堪え得る客観的に妥当なものかという観点から、組織的に十分な検討を尽くした上で慎重に判断することになると考えられるところでございます。
○小竹委員 裁判所は変わらないということでよろしいんですか。
○平口国務大臣 刑事訴訟法の一部を改正する法律案においては、従来の再審開始決定に対する不服申立てや通常審における不服申立てと異なり、再審開始決定に対する検察官の不服申立てについては、これを原則として禁止し、ただいま申し上げた、十分な根拠がある場合に限って不服申立てをすることができるとした上で、例外的に検察官が不服申立てをした場合は、その理由を遅滞なく公表することとしており、これにより、検察官の不服申立てが十分な根拠に基づくものであるかどうかについて、その都度国民のチェックを受けることとなります。
○小竹委員 少し質問がかみ合っていないように思いますが。
前回の藤原委員の質問の際に、検察官が即時抗告をする際に、その旨と理由を政府として遅滞なく公表しなければならないというふうに取り上げた上で、その抗告が棄却をされて、その後に再審開始決定がされた場合に、そこの際には特段の見解の公表義務等は条文上明記されていないという点について問題提起がされておりました。私もこれは同じ意見だというふうに思います。
政府は、十分な根拠を、裁判規範ではなくて検察官に対する行為規範と整理しているわけでありますから、裁判所に抗告が棄却された場合、これを単なる敗訴事例として整理するのか、それとも、検察官の行為規範、適合性、それ自体が厳しく問われる事態であり、棄却後の検証や説明責任が必要になると考えておるのか、政府の整理をお示しください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案においては、再審開始決定に対する不服申立てについて、これを原則として禁止し、当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限ってすることができるとしているところでございまして、この例外要件に当たらない限り不服申立てをすることはできませんし、そのため、例外要件を満たさない不服申立ては刑事訴訟法上違法になると考えられるところでございます。
仮に、検察官として十分な根拠があると考えて不服申立てをしたにもかかわらず不服申立てが棄却された場合、検察当局におきましては、抗告裁判所の認定判断との相違点等について検討、分析することとなると考えられるところでございますが、この法律案におきましては、施行後五年ごとの検討条項を設けることとしておりまして、その際、検察官の不服申立てが適正に運用されているかが定期的に評価される、仮に問題があれば、改めて、不服申立ての提起それ自体が厳しく問われることになるというふうに考えているところでございます。
以上のとおりでありまして、再審開始決定に対する不服申立てが棄却された場合には、これを単なる敗訴事例と整理するにとどまらない効果があるというふうに理解しているところでありまして、その後の対応が迫られることになるだろうというふうに理解しております。
○小竹委員 ありがとうございます。
是非、五年ごとの見直し条項もありますから、もちろん、例外的に十分な根拠があると思って検察官が抗告して、それを棄却された場合には、これを相当重く受け止めて、単なる反省ではなくて、検証していく仕組みというのを現状から構築していくような検討を始めていただきたいというふうに思います。
国家賠償請求訴訟との関係についてちょっと伺いたいと思います。
再審確定後に国賠訴訟となった場合について、政府は、裁判所に棄却された検察官抗告について、国賠法上の違法性判断の対象となり得る行為だと考えるのか、それとも、単なる訴訟活動として原則としてその対象外と考えるのか、法的整理をお答えください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
国家賠償法第一条第一項におきまして、国の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国がこれを賠償する責任を負うこととされているところでございます。
その上で、一般論として申し上げますと、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが十分な根拠に基づくものであったかどうかは、国家賠償法上の違法性判断の対象となり得ると考えているところでございます。
○小竹委員 今いただいたのは、違法となり得るということでありますが、行為規範である以上は、裁判規範になっていないということは、判例上、いわゆる職務行為基準説が取られており、ここで、その時点で判断した検察官が相当の合理性があったかどうかという観点が争えるというふうに思いまして、やはりこの行為規範ということが抽象的な行為規範にとどまるのであれば、国賠訴訟になったときも、結局、検察官は当時の判断としては相当であったと主張することができてしまうんじゃないかというふうに思うんですが、この点、どういうふうに思いますでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
国家賠償責任については、やはり個々の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるべき事柄ということではございますけれども、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが十分な根拠に基づくものであったかどうかは、やはり国家賠償法上の違法性の判断の対象となり得るというふうに考えているところでありまして、また、従来から答弁しているとおり、十分な根拠があったと、ないのに不服申立てをした場合には、通常、その抗告は理由がないとして棄却されることになります。
したがいまして、そのような中で裁判所のチェックが行われるということでもございまして、結果がそういうふうになった場合には厳しく検察当局は問われることになるだろうというふうに考えているところでございます。
○小竹委員 国賠との関係もそうですけれども、十分な根拠があるという例外規定を残した意味について今は問いませんが、これが棄却されたときには、それ自体が、違法となり得るじゃなくて違法に当たらないと、厳しく取り締まれないと思いますし、そういうことを例外的に残していく、その道がどんどん広がっていけば、結果として、先日の私への答弁を聞いていても、大臣も抗告を全て禁止すると困難が生じるというふうにおっしゃったりとか、やはり、現状から変わらない、むしろ後退することも可能性としてあり得るんじゃないかと思いますので、今局長が答弁いただいたように、棄却された場合には、違法になり得るではなくて、もうその時点で国賠上の違法になるというような強い認識を持っていただきたいというふうに思っています。
そして、次に目的外使用禁止規定についても伺いたいと思います。
まず第一問、ちょっと確認のような質問をさせていただきたいというふうに思いますが、袴田事件では、いわゆる五点の衣類のカラー写真が開示され、その色調が一年二か月みそに漬かっていたものとは到底思えないほど鮮やかであったことから、弁護団と支援者が実験を重ね、実際の変色状態であったり、そういったものと大きく異なることが明らかになり、これが、再審開始、そして無罪方向に向かう大きな原動力となったことは、先日来、共通認識としてあるかというふうに思います。
そして、五月二十七日の稲田委員の質疑に対する答弁では、支援者に証拠の複製を示して一緒に実験すること自体は、再審請求の手続の準備という目的の範囲であり、目的外使用禁止規定には当たらないとの答弁がされたと理解をしております。他方で、提出命令又は開示を受けて、手元にある証拠そのものをそのまま公表することについては、目的外使用禁止規定の規律がかかり得るというような答弁も示されたと理解しております。
仮に、当時、今回のような目的外使用禁止規定が既に存在したとして、この袴田事件におけるいわゆる五点の衣類のカラー写真について、弁護人がその複製等をそのまま報道機関に提供する場合には、目的外使用禁止規定に違反するという理解でよろしいでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案においては、再審請求者や弁護人等が再審請求審で謄写した証拠の複製等を再審手続等やその準備に使用する目的以外の目的で人に交付、提示等することを禁止することとしております。
その上で、お尋ねの事例につきましては、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるべき事柄ではございますけれども、例えば、弁護人が再審請求審で謄写した証拠の複製等そのものを報道機関にそのまま提供する行為につきましては、再審手続の準備に使用する目的によるものと認められない場合には、目的外使用の禁止違反になり得るということは、そういうことになるだろうと思っております。
もっとも、前回の質疑等でもありましたが、謄写した証拠の概要を伝達するなどの行為は証拠の複製等の提示には当たりませんし、例えば、加工等した場合に、証拠をそのまま提示したというふうに認められない場合もあると思いますので、それは様々工夫の余地があるのではないかというふうに思います。
その上で、弁護人による目的外使用が罰則の対象となるのは、対価として利益を得る目的であった場合に限られますし、そういった様々な状況、行為の結果、あと、現に示される証拠の中身、そういったものによっても、違反した場合の措置については、そういうことを考慮するということになるかと思いますので、当該措置を取るべき者について適切な判断がされることになると私どもとしては考えているところでございます。
○小竹委員 答弁、長く薄く伸ばしたような感じですけれども、結局、今私は仮にと置いていますので、袴田事件において、この場合、目的外使用禁止規定が存在したとしたときに、結局、禁止規定に違反する可能性があるということは局長の答弁の中に含まれるというふうに思います。
やはり立法事実として、袴田事件であったり福井事件というのは切っても切り離せないわけでありまして、袴田事件、特に検証が必要な事件、そして、検証があるということは、二つを見比べて、こういったものがあるから正しくないんだということを証明していくときに、一般論ではなくて、しっかりと、この部分から逃げずに答弁をいただきたいというふうに思います。
今局長言われたように、伝達する際にはと言いましたけれども、やはり袴田事件においては口頭説明でき切るのかというところは大きな疑問でありまして、立証及び社会的検証の実効性について次に伺いたいと思います。
五月二十九日の参考人質疑で、鴨志田参考人から、実験結果だけを示してもその意味は十分に伝わらず、元の開示証拠と比較して初めてその証拠価値が明らかになる、すなわち、証拠そのものを見せなければ伝わらない価値があるというような趣旨の発言がありました。
これは、五点の衣類の写真の問題を見ればまさにそのとおりでないかというふうに思いますし、実験の結果、みそに長期間漬かった血痕は茶色又は黒っぽく変色するのに対し、元の開示写真にはまたそうではない色味が残っていたという、差異というか違いが非常に重要だったというわけであります。
そうであるにもかかわらず、元の写真を示すことは違反になり得る、そして、口頭で、色が違うとか、もっとこっちの方が赤かったんですとか、そういうことを説明するのにはやはり限界があると思いますし、袴田事件のように検証型の活動の本当の価値というのは、報道にも、社会的共有もされないのでないかというふうに考えます。
局長にお伺いしたいと思いますけれども、証拠の内容を口頭で説明すること、また、複製等そのものを提示することでは、立証や社会的検証の実効性にどれだけの差があると考えておられるのか、また、口頭説明で足りるというのであれば、袴田事件をどのように、実験結果を比較して説明をしていくべきと考えるのか、具体的に説明をいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
証拠そのものを見せなければ伝わらない価値がある証拠というのはあります。これは、様々な刑事事件の証拠の中にはそのようなものがございますし、むしろ、そうでありますので、裁判所においては、そのような直接証拠になるような写真とかそういったものを裁判官に見てもらい、判断してもらうということが行われているわけでございますので、当然、そういう中で、支援の重要性であるとか、報道の意義も十分理解するところでありますので、そういう方々に見せなければいけない、そのものを見せなければ伝わらない価値があるというふうな御意見については、それは理解しているつもりでございます。
その上で、概要を伝えればいいというふうに申し上げられない、今の案件だとそういう部分があるのだと思います。そういう中で、例えば、今の事例ですと、弁護人がということでございましたので、そもそも罰則に当たらないとか、そういう目的で、伝わって、やりますので、違反をした場合の措置につきましては、措置を取るべき人におきまして、違反はしているけれども、そのような措置は取る必要がないと判断する場面があり得るのではないか、今の御指摘のようなものについてはというふうに思うところでありますし、また、もちろんそういう中に様々な被害者のプライバシーなどが含まれる場合もありますので、例えば加工等の仕方にもよるかと思いますし、様々なやり方があるのだと思います。
そういう意味で、被害者を始めとする関係者のプライバシーの保護というのも重要でありますし、裁判のために使われるだろうと理解して、できる限り広く弁護人側に提出したり開示したりする運用を確保すべく、目的外使用の禁止というものも設けられているところでありますので、それをしゃくし定規にやらないことそのものが重要なのではないかというふうに思うところでありまして、私どもとしてはそのように理解しているところでございます。
○小竹委員 局長の御答弁をいただきまして、まさにそのとおりなんですよ。様々なケースがありますし、今言われたように、違反ではあるけれども罰則には当たらないというケースもあります。
でも、違反に当たるということは、これは、先日、弁護士会側のと言われましたけれども、懲戒請求される可能性を、根拠を残していることにはなりますので、それをやはり嫌がって萎縮効果を生むということなので、明確に、どういった場合が違反に当たるのかという、この違反と、その上で罰則があるという、この二層構造じゃなくて、明確にその基準というのを設けていく、そしてまた、そこで二つの線引きの境界線というか曖昧なところが発生するのであれば、それはまた個別の事案に委ねていくという、やはり立法府ですから、全てを運用に委ねるのではなくて、明確な線引きというのは設けていく必要があると思いますし、答弁から見ても、そういった、ある種、認識は一致しているんですよ、だったら、それを明確に明記すればいいんじゃないですかということをずっと申しているのであって。
その次の質問に行きたいと思いますけれども、範囲についてお尋ねしたいと思います。
五月二十九日の参考人質疑の中で、性的画像などの高度に秘匿性の高い証拠であったりとか、それ以外の写真、図面とかそういったものの証拠では大きな違いがあるということが認識されました。局長も認識されているというふうに思います。被害者の名誉であったりプライバシー保護、これは極めて重要であると私ももちろん考えております。とりわけ、性的画像等についても、流出による被害が深刻かつ回復困難であるという先日の参考人の答弁も十分に理解をしております。
であれば、結局、今、一律に禁止の規定を及ぼしていることが適切なのかというような疑問が残りまして、政府としては、性的画像などのように名誉、プライバシー保護の観点から特に厳格な配慮を要する証拠についても、結局、写真や図面とかその他の一般的な証拠と区別することなく一律に禁止の対象としている現状ではありますけれども、これはなぜ、こういう考え方というか、包括的な一律禁止が必要というふうに考えるのか、改めて御答弁いただけますか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
目的外使用の禁止によって守ろうとしているものは何かという話の裏返しなのかと思って御質問をお聞きしておりました。
一つには、証拠の開示であるとか証拠提出に当たって、関連性を広く認めて開示するに当たって、目的外に使用される危惧を持たずに広く開示することを確保するというのがまず一点ございます。
一方で、現に弊害が生じるおそれがあるということなんですけれども、これは、被害者を始めとする関係者の名誉、プライバシー、それだけに限りませんで、例えば、捜査上の秘密であったり、罪証隠滅とか証人威迫であったり、かなり、加害者と被害者とされる者、それぞれ、される者ですけれども、そこには感情的な行き来があって、それ自体を、現場の状況そのものを外に漏らされることについては抵抗のある被害者などもいるわけであります。
そういう意味で、弊害というのは、名誉、プライバシーだけじゃなくて、それ以外の、捜査の秘密であるとか様々な、被害者から見てそれはプライバシーだと思うものは、我々がプライバシーだと考えるものに限らず、自分がどのように行動して、どのような証拠を提出したかとかも含めて、そういうのはやはり、どんな捜査協力をしたかも含めてプライバシーだったりするわけです。そういう形の様々な弊害等のある証拠の範囲を過不足なく明確な形で類型化して、法文上限定するというのは、いろいろ考えてみるのではありますが、なかなか困難であるというのが私どもの結論でございます。
そのような意味で、本法律案におきましては、通常審で検察官が開示した証拠についてと同様に、提出証拠一般について目的外使用を禁止した上で、違反した場合の措置については、複製等の内容であるとか行為の目的、態様とか、そのもたらす結果であるとか、個別の事情を考慮することとしているという状況にございます。
○小竹委員 いや、その上でも限定列挙することは可能だというふうに思います。
どういうふうに明記すればいいか分からないから今のような一律禁止になったというふうに受け取ったんですけれども、じゃ、例えば、請求人側も、犯罪被害者側も承諾というか了承を得られれば目的外使用禁止規定は外すというような、そんな考えもあったということですか、法制審のときには。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
済みません、今全て覚えているわけではないのですけれども、例えば、被害者から自分の出した証拠について了承が得られるならば目的外使用の禁止が外されてもいいのではないかという議論が行われたことは、あるように思います。
様々議論が行われたところでございますけれども、その禁止の規範を明確に、法律ということでございますので、明確に書く、個別の事案を離れて明確に書くというのが難しいという議論が行われた結果、また、例えば被害者が了承していればそれでいいのかという話になりまして、被害者にそれを、了承を自分が出すか出さないかを判断させる、それは人によっては苦痛な場合が多々あるわけであります。自分の出した証拠、画像を見せていいかどうかをその都度確認するということも、被害者にとってはかなり痛い事情になることもございます。そういうことも含めて、それは適切でない、一旦明快に禁止した上で、あくまで裁判のために使うなら自由に使って構いませんけれども、裁判以外のところに使うのは一律禁止した上で、その措置については、状況、個別の事情を捉えましょうという結論になったということでございます。
○小竹委員 その上で、これは常々、通常審との均衡というかバランスも言われていますけれども、通常審の方の中身についても伺いたいと思います。
今回の目的外使用の措置に対する考慮要素のときに、公判期日において取り調べられたかどうかという部分が含まれておりますけれども、この部分というのが、私が懸念しているのが、この考慮要素というのが再審制度の構造と整合しているのかという点でありまして、再審開始決定の要件では、刑訴法の四百三十五条の六号という、無罪を言い渡すべき明らかな新証拠が要件の必要性としてありまして、つまり、明白な証拠の存在が必要であるということで、そして、それを、この判断が行われるのは非公開を基本とする再審請求審の段階であるということがここにかかってくるわけであります。
つまり、再審請求のために検察官から開示される証拠の多くは、元の確定判決の公判では取り調べられなかった検察官手持ち証拠であり、これらが新証拠としての意義を発揮するのは、まさに再審請求審という非公開の段階であるということであります。
それにもかかわらず、本条項では、公判期日において取り調べられたかどうかを措置判断の重要な考慮要素として掲げておりまして、この公判期日における取調べの有無を考慮要素として掲げた立法趣旨というか理由というのはいかなるものなのか、お答えいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
公判で取り調べられた証拠といいますのは、通常審におきましては、証拠開示などを含めまして、それぞれが、証拠法則といいましょうか、通常審の証拠の提出のルールに従って取り調べられた証拠ということでございますので、それ以外に、関連する証拠として、ほかの、現に取り調べられなかった証拠に比べますと、比較的、もう既に開示されていて、法廷で要旨の告知などが行われている証拠関係だということが多いものですから、ここで書く意味は、公判で取り調べられた証拠というのは、それ以外に比べますとやや情状が軽いのではないか、使用の禁止違反がですね、という趣旨で書かれているものと理解しているところでございます。
○小竹委員 今回の、通常審に書かれた条文をこちらの方にも、再審の目的外使用禁止規定にも書かれているわけでありますけれども、再審請求審の場合は基本として非公開であるということがありますので、公判という期日の射程というのはどの場所を指しているのかというところをちょっとお聞きしたいんですが、公判期日において取り調べられたものであるかどうかというのは、通常審の確定判決に至る公判も指すのか、それとも再審開始決定後の再審公判を指すのか、あるいはその双方を示しているのか、この点、教えていただけますでしょうか。
○井上委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○井上委員長 速記を起こしてください。
佐藤刑事局長。
○佐藤政府参考人 大変失礼いたしました。
再審公判を念頭に置いているものというふうに聞いております。
○小竹委員 ということは、再審請求審の段階で証拠を目的外使用禁止規定に違反する形で口外したとして、その後の再審公判で取り調べられた場合には、当初の違反評価というのがぐっと引き下がるというようなことなんですか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
今のような様々な事情を考慮して、個別事情を判断していきましょうというものがこの条文の趣旨でございますので、再審請求審で開示された証拠を、その後、再審公判で調べられたということになれば、それ自体が、まさに関連性があって、裁判所で取り調べるべき証拠だったということでございますので、そういう意味で情状が軽くなっていいのではないかというふうに考えることもできる一事情になるということであると理解しております。
○小竹委員 これは非常に難しいと思いますよ。再審請求審の段階で、目的外使用禁止に違反して外に出した、その後に開始決定されて、再審公判に移ったときには、公判で取り調べられた証拠に関しては、違反の評価が下がるというか、違反の成否自体に影響するというようなことだと、かなり法の理解として難しくないですか。まあ、成否に影響するかは分かりませんが、その重さは引き下がるというふうに思いますけれども。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
目的外使用の禁止違反に当たるかどうかというのは、そのまま開示するかとか、再審の準備のためかとかということで、これは一定程度、一律に決まっているものでございまして、ここの条文は、本当にそれぞれの個別事情をちゃんと見て、違反した場合の措置については取りましょうということを記載している中の一つの例示でございまして、例えば、今言ったような事情が、違反した場合の措置を軽くする方向に働く場合があるので、あるから直ちに軽くなるんだとかいうのではなくて、そういうもろもろの事情を全部考慮して、違反した場合の措置を取りましょうということを法定している趣旨でございますので、一点だけを取ってお答えするのがちょっと難しいということは御理解いただければと思っております。
○小竹委員 通常審における開示証拠の目的外使用禁止は、刑訴法の二百八十一条の四ですけれども、同二項が、今言ったように、公判期日において取り調べられたものであるかどうかという、この考慮要素を書かれている部分に関しては、通常審においては公判が前提であるということが予定されておりまして、該当証拠の公開性の程度を評価している手続構造であるため、こういった条文が書かれているというふうに思っています。
これに対して、再審請求審が非公開を基本としているので、法文上も、裁判所はまず請求について調査を行い、事実の取調べは審判開始の決定後でなければできないというふうなことだと思いますので、そうだとするのであれば、再審における目的外使用禁止規定の考慮要素として重視されるのは、通常審のまま反映するのではなくて、再審請求審においても、裁判所に提出され、再審請求の理由を基礎づける証拠として判断資料とされたかどうかという部分に関してはつけ加えるべきというふうに思いますが、この再審請求審の手続構造上のことを考慮して、こういった条文を修正する必要に関してはどういうふうに理解されているでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
ちょっと済みません、今、突然の御質問でございまして、私、検討できているわけではないのでありますけれども、少なくとも、今の条文でも、その他の事情としていろいろなものが読み込めるところでありますので、御指摘のような内容もここに含んで読むということは可能であると考えております。
○小竹委員 でも、条文には公判というふうに書かれていますので、再審請求審が公判でなければ、この公判で取り調べられたかどうかというのは考慮要素に入ってこないんじゃないんですか。
○井上委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御理解ください。
佐藤刑事局長、答弁は簡潔にお願いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
済みません、突然のお尋ねでございますので、お答えが準備できているわけではありませんけれども、その他の事情には当たるということは、繰り返しになってしまいますが、恐縮でございます。
○小竹委員 最後の方に関しては、今、流れで、答弁の中で更問いをさせてもらいましたので、また後日やりたいと思いますが、一律に禁止をしていて、いろいろなことを勘案して評価されると言われても、これが萎縮効果を生まないように、やはり明確に書いていただきたいということを改めて申し上げまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、和田政宗君。
○和田(政)委員 参政党の和田政宗でございます。
この質疑で、いわゆる解釈についてこれだけやはり担保しなくてはいけないという状況が生じております。政府参考人として佐藤刑事局長が座られておりますけれども、検察官としても優秀なキャリアを積み重ねてこられている方であります。その刑事局長の横に、さらに、刑事局長が分からないことを、分からないというか、すぐ答弁できないということについて、法務省の人間がついて、そして局長にささやくというような状況を含めて、これは実際に検察官が運用において判断がしっかりできるのかというところもしっかり我々考えていかなくてはならない。この審議において、答弁として余りに担保を引き出さなくてはならないことが多過ぎるというのがこの刑訴法の改正案であるということを一番初めに申し述べておきたいというふうに思います。
まず、証拠の目的外使用についてお聞きをいたします。
これは通常審になりますけれども、過去には、弁護士が取調べの映像などを公益目的だとしてテレビ番組に提供した際に、検察から、弁護士の品位を失うべき非行に当たるとして、弁護士会へ懲戒請求される事例が起きています。再審請求審において証拠の目的外使用が行われたとして、同様のことが起きるのではないかという危惧がありますが、これは、大臣、いかがでしょうか。
○平口国務大臣 お答えをいたします。
本法律案においては、目的外使用の禁止に違反した場合の措置について、再審請求者の再審請求に係る利益や再審における被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、私生活、業務の平穏が害されているかどうかなどを考慮する旨を明文で規定することとしております。この規定は、弁護人による違反についての、検察官が弁護士会に対する懲戒請求をするか否かを検討するに当たっても適用されることとなるわけでございます。
その上で、お尋ねについては、一概にお答えすることは困難でありますが、本法律案が改正法として成立した場合には、適切な対応がなされるよう、検察当局に対し規定の趣旨等についての十分な周知を図ってまいりたいと考えております。
○和田(政)委員 完全に否定をなさっていないということですので、これは起きる可能性があるということでよろしいでしょうか。参考人で構いません。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
やはり、大臣が答弁したとおり、お尋ねについては個別の事案ごとに具体的な事実関係等を踏まえて判断されるべき事柄ということでありまして、この条文にあるような事情を考慮して判断していくということでございまして、一般に、先ほども御指摘のあった事例などが適切かどうかということについては、いろいろな御意見があることは重々承知しているところでありまして、そういった意見も踏まえて判断していくことになるのだろうというふうに理解しているところでございます。
○和田(政)委員 これは、可能性があるということになるとどういうことになるかというと、前回の質疑の中で、弁護士が報道機関に提供した証拠、これは報道機関が証拠について報道しても違法にはならないということでありますけれども、弁護士については違法であり、対価として利益を得る目的でなければ罰則はかからないということでありますけれども、検察が懲戒請求をするとなると、懲戒の審査というのは弁護士会においてそれなりの期間がかかるわけですね、半年ないし一年、若しくはそれ以上の事例もあるんだというふうに思いますけれども、弁護士に対しての様々な規制だとか萎縮効果だとか、そういったものもかかってきちゃうわけでありますけれども、これは否定をしないということですね。いわゆる個別事案ごとにやるということなんでしょうか。何で懲戒請求しないと言えないのか、その点、お聞きをしたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
そのような事例が幾つか起きて、報道で取調べの状況等が、マスキングがあったりなかったりということはあるでしょうけれども、そういうふうな報道がなされていることは承知しているところでございます。
そういう中の様々な事案があるんですけれども、刑事訴訟手続における目的、そこで開示を受けた証拠をそのまま流したのか、それとも、訴訟を起こして、そういった国賠訴訟等の中で証拠開示を受けてそれを提出したのかとか流したのかとか、様々な事案があったり、そこの中で、例えば裁判所との関係でそれまでどのようなやり取りがあったのか、これはもう外には出しませんという中身だったのかどうかとか、そういう意味で、いろいろな状況が個別事案ごとにあって、私が今申し上げられるのは、そういった個別の事情を勘案して判断していくことになるだろうと思っておりますけれども、今、現に、国賠訴訟が起きている中で、取調べの状況等がああいう形で出ているのは事実でありまして、じゃ、それに関して懲戒請求が行われているかというと、そうではないように思うんです。ちょっとこれは出方が違うものですから。
ですから、それを一概に申し上げることは困難だというふうに申し上げているつもりでありまして、ただ、少なくとも罰則には当たりませんし、そういう提示の仕方、開示の仕方によって当たらないこともあるでしょうということを申し上げるというのが今の現状でございます。
○和田(政)委員 更に突っ込んで聞きますが、ということであれば、これは原則やらないということでよろしいんですね。
○佐藤政府参考人 お尋ねは原則と言えるかどうかという話でありますが、原則か例外かではなくて、個別の事情によるというのがお答えであるということを御理解いただければと思います。
○和田(政)委員 これは更に次回以降聞いていきますね。
次に、再審開始決定に係る不服申立てについてお聞きをしたいというふうに思いますけれども、そもそも論になるんですが、再審開始決定に対する不服申立てを認める必要があるのか、なぜ一律禁止ではないのか。検察官は再審公判において有罪を立証する機会があります。さらに、無罪判決に上訴することもできます。再審開始決定に対する不服申立てを認める必要がないのではないかという問いについて、大臣、改めてお願いいたします。
○平口国務大臣 お答えいたします。
再審開始決定に対する不服申立ての全面禁止については、これまでも当委員会でるるお答えしてきたとおりでございますが、本来やり直すべきでない裁判についても直ちにやり直すこととなり、裁判の確定の意義などが損なわれること、裁判のやり直しという重大な効力を持つ再審開始決定について上級審による審査の機会がなくなり、裁判所による慎重、適正な判断の制度的担保がなくなることなどの問題点があると考えられるところでございます。
これらの問題点は、再審公判における有罪立証等によって解決される事柄ではなく、再審開始決定に対する不服申立てを全面的に禁止することは困難であると考えております。
もっとも、再審開始決定に対する不服申立てを全面的に禁止すべきとする御指摘は、その不服申立てにより手続が長期化しているという問題意識も踏まえたものと思われるところ、そのような問題意識は真摯に受け止めているところでございます。本法律案では、その上で、検察官の不服申立てを原則として禁止するなどの法整備を行うこととしております。
○和田(政)委員 まあ、原則なんですけれども。
これは私も繰り返し述べていますけれども、正々堂々とやればいいじゃないですか。その中で最終的に決定がなされるわけでありますので、公判の中でやればいいというような状況だというふうに思うんですけれども。ここの部分が与党内の審査でもひっかかる部分だったということを聞いておりますし、これはもう正々堂々やるということを決めてしまえば、ずっとこれだけの審議時間をかけてここの解釈について聞いていくわけですよね、これもクリアをされるというところで、まさに内閣提出法案に対して議員立法案も出ているという状況でございますけれども。
十分な根拠についてお聞きをしたいというふうに思います。
内閣提出法案では、十分な根拠でなければ不服申立てをしてはならないこととされておりますけれども、十分な根拠とは具体的に何を意味するのか、他の法律には十分な根拠という文言が用いられている例は、私が調べたところでは見つけられませんでしたけれども、なぜ再審開始決定に対する不服申立てについてのみ十分な根拠という文言を用いたのか、答弁を願います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案による改正後の刑訴法四百五十条の二第一項の当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合とは、不服申立てにより再審開始決定等が取り消される蓋然性が高いことを裏づける合理的な根拠がある場合を意味するものでございます。
同様の文言としては、現行の刑訴法二百十条第一項ですけれども、緊急逮捕の要件に、十分な理由というものがございます。
十分性というのは、刑訴法でいいますと、そのような緊急逮捕の要件に使うような高度の蓋然性を意味するわけでありますが、その上で、十分な理由と規定することも考えられたところであったんですけれども、判断根拠として客観性のあるものを必要とする趣旨を含めまして、ただいま申し上げた趣旨を明確に表現する観点からは、理由というよりは根拠と表現、文言を用いる方がより適切ではないかと考えられたことが一点であります。
加えまして、理由という文言を用いた場合に、抗告自体の理由、これは意味がかなりちょっと違うんですが、理由という言葉は一緒なんですが、抗告自体の理由と混同されるおそれがあるだろうということから、本法律案においては十分な根拠という文言を使ったということでございます。
○和田(政)委員 その十分な根拠についてお聞きしますけれども、十分な根拠の有無は誰が判断をするのか。検察官が判断するというのであれば、これまでと変わらないのではないか。検察官はこれまで十分な根拠なく抗告を行ってきたのかということになります。もし実例があるのであれば、具体的に挙げていただきたいというふうに思います。もし、これまでは十分な根拠がないのに不服申立てをしてきたのであれば、それこそが問題なのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
過去の事案を挙げて、仮定的に、そのときにこの十分な根拠の要件があったならば抗告ができたのかどうかということを当てはめを行うということは、済みません、法務当局としては大変難しいことでもございますし、お答えしづらいところではあるのですけれども、十分な根拠の判断主体は検察官ということは、答弁しているとおりでございます。
その上で、検察官が判断することになって一緒なのではないかという指摘があるのは重々承知しておりますけれども、抗告裁判所としては抗告に理由があるか否かを判断するものでございまして、仮に検察官が十分な根拠がないにもかかわらず再審開始決定に対して不服申立てをした場合には、抗告裁判所において、通常、当該不服申立てに理由がないというふうに判断されることでありまして、不服申立てが棄却されることになると考えているところでございます。
その上で、従来と同じではないかというふうな御質問がございましたけれども、このような重大な結果をもたらす抗告でございますので、十分な根拠の内容を遅滞なく国民に公表して、それから一年後にはその決定が裁判所のチェックという形で出る。それが、例えば検察官の抗告が、不服申立てが蹴られたというふうになった場合には、先ほど来の質疑にもありましたけれども、検察は様々な判断を迫られることになるわけでありまして、五年ごとの検討におきましても、そのような実例としてこのような結果が残って、後々国会の判断も踏まえて様々なことが想定されるわけであります。
したがいまして、これまでどおりにやるのではないかということではありまして、慎重に判断しなきゃいけないと思いますけれども、これまでにも増してそのような判断を慎重に、抑制的にやることは、これはこの法案の趣旨でありまして、それはそのようになるというふうに考えているところでございます。
○和田(政)委員 更に聞きますけれども、福井事件の第一次再審請求の即時抗告については、十分な根拠がなかったということになるのかどうか。もし十分な根拠があるというのであれば、改善されないのではないかというふうに思います。具体的に事例を挙げて、どのような事例が十分な根拠のない即時抗告であり、今後は禁止されることになるのか、これを明らかにしていただきたいというふうに思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
過去の個別の再審事件における検察官の不服申立てにつきまして、十分な根拠があったか否かについて一概にお答えすることは困難であるということはどうか御理解いただきたいと思いますけれども、少なくとも、十分な根拠としてここに条文で上がっていることでいえば、例えば、当たらないということが明らかな事例といたしまして、原決定の結論に影響しない証拠評価あるいは事実認定の誤り、決定の総体に関しては誤りがあるとしても、それは結論に影響することに十分な根拠があるということをしなきゃいけないものでありまして、そういう原決定に影響しないものについては十分な根拠として許されないことは明らかになるだろうというふうに思います。
それから、福井女子中学生事件については、第一次再審請求審におきましては客観的証拠とその評価が主な争点となりまして、再審開始決定におきましては、客観証拠や主要関係者の供述等を総合的に評価した結果、関係者供述の信用性に疑問が抱かれ、請求人が犯人であると認めるには合理的な疑いが生じたなどと判示された一方で、あの例のテレビ番組の放送日に関する捜査報告書につきまして、従前の検察官の主張、立証の内容とそごしていたにもかかわらず、開示等の適切な是正措置が取られていなかったことが明らかとなっており、仮に適切な是正措置が取られていたとすれば、それを契機として主要関係者の供述の信用性が中心的な争点となり、ひいては有罪認定に動揺が生じたなどとして再審開始決定がなされていた可能性もあるというふうに考えられるところであります。
このような、再審請求審におきまして、その供述内容が客観的事実とそごすることが判明したことなどによって、確定判決が前提とした関係者の供述の信用性判断に疑義が生じて、ひいては有罪認定に動揺が生じる事態となれば、これに基づく再審開始決定につきまして、検察当局において、十分な根拠があるかを検討して、その結果、十分な根拠がないとして不服申立てをしないこともあり得ると考えられるところでございます。
すなわち、個別の事案について直ちに仮定的なことを申し上げるのは困難でありますけれども、福井事件のような経過をたどって、このような最後の再審開始決定が確定した事案につきまして、今の目線でこの法案に従えば、不服の申立てがされないこともあり得るだろうということを答弁しているということでございます。
○和田(政)委員 これが最後の質問になると思いますが、法制審議会の再審関係部会で鴨志田弁護士が提出した資料によりますと、日弁連の再審支援事件十九件のうち、不服申立てを行わなかったのは三件でありまして、十六件では不服申立てがなされています。うち六件では特別抗告がなされています。五件では再審開始決定が取り消されておりますが、これはその後の質問にも関わってまいりますので、今時間が参りましたので、この質問は次回に回させていただきます。
次回以降もこの再審開始決定に対する不服申立てについては更に聞いてまいりますので、真摯な答弁を願いたいというふうに思います。
以上で終わります。
○井上委員長 次回は、明三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十七分散会

