第19号 令和8年6月10日(水曜日)
令和八年六月十日(水曜日)午後一時開議
出席委員
委員長 井上 英孝君
理事 阿部 弘樹君 理事 木原 誠二君
理事 高見 康裕君 理事 谷川 とむ君
理事 藤原 崇君 理事 西村智奈美君
理事 三木 圭恵君 理事 小竹 凱君
井出 庸生君 稲田 朋美君
上川 陽子君 神田 潤一君
小泉 龍司君 世古万美子君
武部 新君 辻 秀樹君
辻 由布子君 寺田 稔君
西山 尚利君 福原 淳嗣君
藤沢 忠盛君 藤田ひかる君
古川 禎久君 三ッ林裕巳君
保岡 宏武君 山本 大地君
有田 芳生君 國重 徹君
平林 晃君 池畑浩太朗君
金村 龍那君 喜多 義典君
高見 亮君 井戸まさえ君
鈴木 美香君 和田 政宗君
…………………………………
議員 有田 芳生君
議員 西村智奈美君
内閣総理大臣 高市 早苗君
法務大臣 平口 洋君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 遠藤 剛君
政府参考人
(法務省民事局長) 松井 信憲君
政府参考人
(法務省刑事局長) 佐藤 淳君
政府参考人
(法務省訟務局長) 坂本 三郎君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
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委員の異動
六月十日
辞任 補欠選任
國重 徹君 平林 晃君
池畑浩太朗君 喜多 義典君
金村 龍那君 高見 亮君
同日
辞任 補欠選任
平林 晃君 國重 徹君
喜多 義典君 池畑浩太朗君
高見 亮君 金村 龍那君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)
刑事訴訟法の一部を改正する法律案(西村智奈美君外三名提出、衆法第九号)
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○井上委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外三名提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官遠藤剛君、法務省民事局長松井信憲君、法務省刑事局長佐藤淳君及び法務省訟務局長坂本三郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○井上委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。平林晃君。
○平林委員 中道改革連合・無所属の平林晃です。
本日も差し替えで質問に立たせていただくことになりました。よろしくお願いを申し上げます。
昨日の三名の参考人の皆様の御意見、私も拝見をさせていただきました。大変示唆に富むものであり、勉強となったところでございます。
とりわけ村山参考人のお言葉は、三十九年間の実務経験に基づくこととともに、現役の裁判官の皆様の声も集めておられるということで、極めて重要だと思って受け止めさせていただいております。最後の言葉にもございましたけれども、今このときに国会に身を置き、しかも、この法案質疑に加わらせていただいている重大な使命を厳粛に受け止めながら質問させていただけたらと思っております。
私がこれまで一貫して申し上げてきたこと、それは、再審法改正に限ったことではなくて、刑事司法に対する国民の信頼が今大きく揺らいでいるということであります。
袴田事件などの冤罪、大川原化工機事件のようなでっち上げと長期勾留、プレサンス事件のような不適正な取調べ、大阪地検幹部による部下への性加害事件、そして佐賀県警のDNA型鑑定不正問題など、枚挙にいとまがない。そして、これらの事案では、事後対応がまた警察や検察の組織への不信を深めることになっている。
問題が起きた後に組織が自らを十分に検証できているのか、国民の信頼を回復するものになっているのか。私は、残念ながらそうなっていないように感じております。組織の体質を温存したままで、内部で対応を済ませようとしている、こう感じているところでございます。そうであるからこそ、深く関与した職員が辞職せざるを得なくなっているのではないか。
実際、大川原化工機事件では、警察内部の捜査に疑念を抱いた警察官が、この春、退職に追い込まれている。大阪地検の北川被告による部下の女性への性加害事件では、被害者が職場を去らざるを得なくなりました。これは最悪の状況ですよね。こういう事件において、こういうことがあってはならない。これを恐れて被害者の方が泣き寝入りをする、こういうことがあるわけであって、そんなことがこの検察の組織に絶対にあってはならないと思うわけですけれども、それが起きてしまっている。余りにおかしいと感じているところでございます。
そこで、まず伺います。
法務省及び警察庁は、こうした不祥事の原因がどこにあると考えているのか。事後対応の在り方はこれでいいのでしょうか。それぞれの認識を伺います。大臣、お願いします。
○平口国務大臣 お答えいたします。
検察の活動は国民の信頼の上に成り立っておりまして、検察権の行使の適正さに疑いが生ずるようなことがあれば検察の活動を揺るがしかねないというところ、近時、刑事司法、とりわけ検察の活動に対して様々な厳しい御指摘、御批判があることは私も痛感しておりまして、重く受け止めております。
御指摘のような事態の原因等については、個別事件の評価にわたり得るものであり、また一概に申し上げることも困難でありますが、検察当局においては、例えば、不適正な取調べが行われる原因を分析し、最高検刑事部長名で対策を指示する、また、近時の再審無罪事件における捜査、公判上の問題点等について検討、検証し、反省点を含めてその結果を公表するなどの対応を取ってきたものと承知しております。
個々の捜査、公判活動が適正に行われるべきことや個別事件の裁判結果を受けた対応の在り方について、まずは検察当局において適切に対応を検討していくものと承知をいたしておりますが、私からも、会同の場で、「検察の理念」にのっとった検察権行使が徹底されることが重要であることを説くなどしており、引き続き、法務大臣として検察当局の活動を注意深く見守っていくこととしたいと考えております。
○遠藤政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、近時、警察の捜査活動について様々な厳しい御指摘があることは、警察庁としても重く受け止めているところでございます。
その上で、不適正事案等の要因につきましては、その態様が様々であるため、一概にお答えすることは困難でありますけれども、警察捜査は国民の信頼の上に成り立つものであり、これまでも、個別の不適正事案に応じて反省すべきは反省し、得られた教訓を踏まえて必要な再発防止策に取り組んできたところでございます。
警察庁といたしましては、今後とも、緻密かつ適正な捜査が徹底されるよう、都道府県警察に対して必要な指導を行ってまいりたいと考えております。
○平林委員 今の御答弁を伺っていても、どうしても内部からの視点を出られていない、こう感じるわけですけれども、個別のことを聞かないと具体的には答えられないということですので、佐賀県警のDNA型鑑定の問題に関してお聞きしたいと思います。
この問題に関しましては、警察庁による特別監察が行われていて、その内容が報道されていますけれども、そこは省略しますが、これは本当に、この特別監察の結果は正しいんでしょうか。二百三十九件と、百十件追加されたりとかですね。あるいは、誤認逮捕や誤った有罪判決は本当にないのか。そんなことがあればまさに冤罪ですので、あったなんて言えるわけがないですよね。他の都道府県警の警察本部では本当にこれは大丈夫なのか。疑問は幾らでも湧いてくるわけでございます。これは、特別監察とおっしゃられても、やはり警察内部で調査しているにすぎないということ、すぎないはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが。
日弁連は、会長声明において、独立的な第三者機関による検証を求めておられます。佐賀県議会においても同様の決議が採択されている。新聞各紙もこぞって同様に指摘をしておられます。
要するに、国民は口をそろえて第三者機関による検証を求めているわけです。にもかかわらず、警察はなぜ第三者による検証を行われないのでしょうか。警察庁は内部監察だけで国民の理解と納得が得られると考えているのでしょうか。お答えください。
○遠藤政府参考人 お答えいたします。
DNA型鑑定は、警察が取り組む客観証拠に基づく緻密かつ適正な捜査の重要な柱の一つでありまして、その適正と信頼を確保することは極めて重要であると考えております。
お尋ねの佐賀県警察科学捜査研究所の職員がDNA型鑑定作業において不適切な取扱いを行った事案につきましては、DNA型鑑定に対する国民の信頼を損なうものであり、警察庁としても重く受け止めているところでございます。
警察庁におきましては、昨年十月八日から、佐賀県警察に対して、国家公安委員会の指導の下、DNA型鑑定の実施体制とその実施状況及び不適切事案の原因究明とそれを踏まえた再発防止策の二点について特別監察を実施したところでございます。
本件について調査を実施するに当たりましては、関係する事件や変死体の取扱い、行方不明者の届出等に関して、捜査書類や写真、届出等の資料等を詳細に確認する必要があり、個人のプライバシーや具体的な捜査内容に深く関わるものであることに特段の配意が必要であったところでございます。
その上で、警察庁の特別監察においては、専門性、客観性、透明性に配意し、国家公安委員会の指導の下、警察庁の附属機関である科学警察研究所のDNA型鑑定の専門家や警察庁においてDNA型鑑定に携わる職員によって鑑定の実施状況の確認を行ったほか、確認手順等について外部の有識者から意見を聴取した上で実施するとともに、佐賀県警察に県警内に保存されている書類や電子データ等を提出させた上で、警察庁刑事局及び科学警察研究所の職員が全ての書類とデータを一から確認したところでございます。
また、特別監察の実施結果については、国民の皆様に具体的かつ詳細にお伝えできるよう、報告書の作成に当たって、対象職員が単独で実施した全ての鑑定について、特別監察で確認した事項を一件ずつ個別に記載した補足資料を作成し、また、国民の皆様にこれを広くお伝えするため、報告書全体をウェブサイトに公表するなどしたところでございます。
以上のとおり、特別監察におきましては、本件の調査内容が関係者のプライバシーや具体的な捜査内容にわたることを踏まえながら、専門性、客観性、透明性に配意して実施したところであり、警察庁といたしましては、今回の特別監察を踏まえた再発防止策を徹底し、DNA型鑑定の適正な実施を確保するとともに、国民のDNA型鑑定に対する信頼回復に努めてまいりたいと考えております。
○平林委員 質問に全然答えていないですよね。私は特別監察の中身なんか聞いていないんですよ。何で第三者による検証を行わないんですか、こう聞いているんです。質問に答えていないです、もう一回答えてください。短く答えてください、長過ぎますよ。
○遠藤政府参考人 お答えいたします。
特別監察において、本件の調査内容が関係者のプライバシーや具体的な捜査内容にわたることを踏まえながら、専門性、客観性、透明性に配意して実施したところでございまして、必要な調査を行ったものと考えております。
○平林委員 第三者委員会に頼んだって、プライバシーに配慮することなんか幾らでもできますよ。(発言する者あり)そうですよ、ほかの組織はやっているんですよ。おっしゃるとおりです。まあ、何遍聞いたってこういう話なんでしょうから。
今、後ろからお話がございましたけれども、大阪地検の事件については、昨日、森元法務大臣を会長に、また、稲田委員も含まれる自民党の皆様が会合を開かれ、残念ながら私の参加は認められなかったんですけれども、第三者委員会を求める会を立ち上げたということが報道されております。すばらしいなと思って拝見しているところでございます。佐賀県警の事案に関しましても、我々議員こそが同様の動きを取っていかなければならない、このように強く感じているところでございます。
済みません、ちょっと熱くなってしまいました。落ち着いて、次の質問に移らせていただきます。
続きまして、共同通信及び朝日新聞の報道によれば、本年二月二十四日付で検察国賠訴訟における基本的な方針なる通知が発出され、元被告らが検事から違法な取調べを受けたとして国を訴えた国家賠償請求訴訟で取調べの映像などを提出する際には、マスコミなどの第三者に提供しない旨の誓約書を原告側に求めるなどの検討をすべきだ、こういったことが記されているということでございます。この通知の存在は、委員会でも、あるいは理事会でも確認をされたということを聞いているところでございます。
実際の事案として、検察庁を敵視するってことは反社やなどと言って、時折大声でどなりつけるような取調べで国が損害賠償を求められた訴訟においては実際に誓約書を求めていた、こういうことが報道されているというところでございます。
この通知、そもそも何のためにやったのか。それはプライバシーが侵されないということが理由であると法務省の方は御説明されるわけですけれども、本当にそれだけなのかというふうに私は少し疑問を持つところでございます。同様の運用が、誓約書を取るという運用が、違法、不当な取調べなどを隠蔽するために利用されることはないのでしょうか。法務省に見解を伺います。
○坂本政府参考人 お答えいたします。
法務省訟務局におきましては、先ほど御指摘いただきましたとおり、本年二月二十四日付で検察国賠訴訟における基本的な方針と題する文書を各法務局に通知いたしました。
その中には、取調べの録音、録画記録媒体を証拠として裁判所に提出するに当たっては、その証拠を第三者に提供しない旨の誓約書を求めるという対応を検討すべきである旨の記載がございます。
この点につきまして、まず前提といたしまして、この記載は、取調べの録音、録画記録媒体を裁判所に提出する、そういう場合を想定して記載したものでございます。
その上で、この文書において誓約書を求めることを検討すべきといたしましたのは、第三者のプライバシー情報等を適切に配慮する必要があるためでございまして、検察にとって不都合な証拠を隠すためというものではございません。
○平林委員 取調べの可視化、私も公明党時代からずっと取り組んできたところでございまして、当時の法務大臣に対して申入れもしたことがございます、大川原化工機事件に関連して。任意の取調べも含めて録音、録画対応を広げる方向で回答があったと認識をしているところでございまして、その取扱いに制限が不当にかけられるようなことはないように今後の運用を是非していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
関連してになりますけれども、再審法における証拠提示についてお伺いをさせていただけたらと思います。
現状の政府案は、裁判所に対する証拠の提出であって、再審請求人に対する証拠の開示ではない、このことは昨日の村山参考人からも明確に指摘があったところでございます。この説明はとても分かりやすかったわけですけれども、裁判官のお立場から、裁判官が御覧になられると関係が薄く見える証拠であったとしても、請求人が見ることによって再審の開始の決め手となる証拠が見つかる例も少なくない、このように御説明をいただいておりました。さらには、証拠の価値は当事者でなければ分からないとして、改ざんされた録音テープ、これは御本人が聞かれて分かったというようなことだったと思うんですけれども、これも本当にそのとおりだなと思ったところでございます。
現状の政府案におきましては、再審の請求の理由に関連すると認められる証拠について、その関連性の程度その他の再審の請求についての裁判をするための必要性と弊害を考慮して、相当と認めれば提出を命じなければならないとされているわけでございますが、何度も論じられているように、これでは、関連性規定の制限によって、これまで出てきた証拠すら出なくなると危惧されているところでありまして、であるから本改正は後退である、改悪である、こういう批判が後を絶たないわけでございます。
それでも法務省は、今回の法改正によって証拠開示は前進するとおっしゃられる。その理由は、平成十六年の刑事訴訟法の改正によって通常審で培われた証拠開示の運用がある、それが再審請求審でも維持されるのであるから、これからはいろいろなものがどんどん出てきますよ、心配なさらないでくださいよ、こういう御説明があるわけであります。でも、その運用自体は法文上何ら保障がされていない、このように認識をしております。
昨日の村山参考人も、証拠開示を命じる条文を設ける必要があると明確におっしゃっておられるわけであります。さらに、裁判所に証拠提出命令権を与える一方で、証拠開示命令権を認めないというのは不合理とも指摘をされました。その理由は、現実の裁判実務を考えても、裁判官がどのような証拠が存在するのか分からない状態で自ら探索的に証拠を探し出すのは不可能であり、むしろ、請求人側が証拠を確認し、その中から必要なものを選び出して裁判所に提出するという現在の実務運用の方がよほど合理的ではないかと。極めて適切な御指摘と拝しております。
法務省が御説明されるように、これからは運用で出てきますよ、そう本当に思っておられるのであるならば、このことを条文化しても全く問題ないのではないでしょうか。証拠開示についても制度上明確に位置づけると考えますが、法務省の見解を伺います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、平成十六年の改正によりまして証拠開示のルールができまして、それ以降、通常審におきましても、再審請求審におきましても、まあ、再審請求審においては徐々にということもあったかと思いますけれども、柔軟な証拠開示が行われてきたところでございます。
その上で、本法律案における証拠の提出命令制度は、裁判所による勧告や検察官による任意の提出、開示といった従来の実務運用を否定するものではありませんで、本法律案が改正法として成立した後も、従来の実務運用は引き続き行うことができるところでございます。
他方で、従来の実務運用といいますのも、今、通常審でも、同じような条文で、例えば主張関連証拠といった形で規定されているわけですけれども、その中で、当事者間の協力とか様々なコミュニケーションの上で、事案によって個別、柔軟にやっているというような状況でありまして、今、従来の実務運用といいますのも、明文の規定がない中で、個別の事案に応じて行われてきたということでございまして、法制度として位置づけるということはなじまないのではないかなと思っているところでございます。
そのような意味で、御指摘のような制度化をすることは考えておりませんけれども、近時、本法律案における証拠の提出命令制度につきましても、委員の御指摘を始めといたしまして様々な御懸念が示されているところでございますので、法務省としては、本法律案が改正法として成立した場合には、裁判所や検察庁等の関係機関に対しまして、制度の趣旨や実務上想定されるところを十分に周知して、適正な運用の確保に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○平林委員 刑事局長が真摯に御説明いただくと、何か僕も何となくそうなのかなと思うところなんですけれども、ただ、現実のこれまでの流れを見ていると、なかなかそうも言えない部分があるからこそ、弁護人の皆様あるいは裁判官の皆様は危惧を持っておられて、明文化を求めておられる、このこともやはり大事な観点なのではないかな、こういうふうに思うところでございますので、是非、ここは我々としても引き続き強く訴えてまいりたいというふうに思うところでございます。
続きまして、目的外使用禁止規定に関しましてお伺いをさせていただきます。
法務省からは、目的外使用禁止規定に違反したとしても直ちに処罰や懲戒請求がなされるわけではなく、事案ごとに判断する、このように御説明をいただいておりますが、ただ、これだと基準が明確にされていないので、多くの国民は不安を感じるのではないかと思うところでございます。
村山参考人も、被害者の方の名誉、プライバシーは本当に大事である、しかし、そのために一律に広範な禁止規定を設けるという必要があるのか、そのような立法事実はあるのかとの問いを投げかけられておられました。少年審判のように、裁判所が個別的に対応するということは十分あるとも述べておられます。
再審事件は、市民の支援や報道機関による検証が極めて重要な役割を果たしてきたことは周知の事実でございます。弁護人が専門家に証拠を見せて鑑定を依頼する場合、あるいは支援者と共有して検証活動を行う場合に、後から目的外使用だと指摘されるのではないかという不安が生じれば、それ自体が萎縮効果になってしまうのではないかと危惧するところでもあります。
法務省は、このような指摘を受けたとしても萎縮効果は生じないと考えているのでしょうか。御見解を伺います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案におきましては、委員御指摘のとおり、証拠の複製等の目的外使用の禁止に違反した場合の措置につきまして、複製等の内容や行為の目的、態様等の個別の事情を考慮することとしておりまして、当該措置を取るべき者において適切な判断がされることを期待した条文となっております。
目的外使用の禁止に違反した場合における懲戒請求等の措置の必要性につきましては、個別の事案ごとに様々な事情を総合的に考慮して判断されるべきものでありまして、本法律案の規定以上にその基準の明確化を図ることは困難であると考えているところでございます。いろいろな、プライバシーであるとか、捜査の秘密であるとか、その後の被疑者側と被害者側の関係であるとか、様々な事情がある中で、この条文を明確に書き切るというのは大変難しいというのが我々の結論でございます。
その上で、本法律案におきましては、個別の事情を見て、違反した場合の措置については取るという結論を取ったわけですけれども、これは通常審のときと同じでありますけれども、それでも、本法律案におきましては、謄写した証拠の複製等を再審の手続やその準備に使用することはもとより許されるところでございますし、証拠の概要を伝達するなどの行為は禁止されませんし、弁護人による目的外使用が罰則の対象となるのは、対価として利益を得る目的であった場合に限られるわけであります。
そのような意味で、本法律案による目的外使用の禁止によりまして不当な萎縮効果が生じることはないものと考えているところでございますが、ただいま私が申し上げたことの趣旨については、今後適切に周知していく必要があると考えているところでございます。
○平林委員 非常に運用は難しいのではないかなと感じるところでございます。であるからこそ、どうしても、やはり、本当にいいのか悪いのかということを考えてしまう、結果として萎縮効果は生じてしまうのではないかと懸念を強くするところでございます。
続きまして、抗告の抑制的運用ですけれども、今回の改正案においては、検察官による不服申立てについて、再審開始決定が取り消されるべきと認めるに足りる十分な根拠、こういう場合に規定、限定されているわけですけれども、その十分な根拠は、重大な事実誤認等があって、上級審において再審開始決定が取り消される高度な蓋然性が認められる場合をいって、その上で、検察官が組織として慎重に判断した上で不服申立てを行うことにより抑制的な運用が図られる、こういう御説明をいただいているわけですけれども、そもそも、冒頭に申し上げましたとおり、今、国民の不信は、特定の検察官個人に向けられているということよりも、検察という組織そのものに対して向けられている。この不信の対象となっている組織が慎重に判断すると言われても、我々はどう理解すればいいのか、本当に難しいと思うところでございます。
不服申立てを行うかどうかの判断も、その理由の作成も、結局は検察自身が行うものであり、そこに裁判所その他の第三者による事前の関与は予定されていない。そうであるならば、この制度は検察組織に対する国民の不信に応える仕組みにはなっていないのだと考えますけれども、法務省の見解を伺います。
○佐藤政府参考人 検察に対する不信の御指摘につきましては、真摯に受け止めたいと思います。
本法律案における十分な根拠の判断主体は検察官でございますけれども、その判断につきましては、再審開始決定の内容や具体的な事実関係、証拠関係等を踏まえまして、抗告裁判所の審査に堪え得る客観的に妥当なものかという観点から、組織的に十分な検討を尽くした上で慎重に行われるということは考えられるところでございます。
この点、検察当局におきましては、袴田事件の再審無罪判決等を受けまして、全ての再審開始決定につきまして、検事総長訓令により、検事正はあらかじめ検事長の指揮を受けなければならないなどとしたところでございます。
その上で、仮に再審開始決定に対する不服申立てに十分な根拠がない場合には、抗告裁判所において、通常、当該不服申立てに理由がないと判断されて、不服申立てが棄却されることとなるということでございます。
検察の権限というのは、最終的には多くが裁判所によってチェックされるという枠組みになっているということでございます。また、一般論として、刑事訴訟法上違法となり、国家賠償の問題も生じ得ると考えられております。
その上で、検察官の不服申立てが十分な根拠に基づくかどうかに関して国民がチェックできるようにするために、不服申立ての理由等を遅滞なく公表することとしているほか、検察官の不服申立ては基本的に一年以内に裁判所の決定がなされることとなるわけですけれども、施行後五年ごとの検討条項により、裁判所の決定の結果も踏まえて不服申立てが適正に運用されているかが定期的に評価され、仮に問題があれば、制度の在り方が改めて議論され得ると考えております。
そのような意味で、本法律案によりまして、検察官の不服申立てがより慎重かつ抑制的に行われることは担保できているのではないかと考えているところでございます。
もっとも、そのような御指摘、御批判があることは承知しておりますので、法務省といたしましても、検察当局に対しまして、通達の発出等によりこの制度の趣旨であるとか内容を十分に周知して、適切な運用が確保されるよう努めてまいりたいと考えているところでございます。
○平林委員 冒頭申し上げましたとおり、今の刑事司法に対する国民からの不信、こういったものを考えたときに、今の御提案のようなこの改正案、これで本当に国民の思いに応えているのかどうか、この部分はどうしてもやはり疑問に感じるところがございます。
最後に大臣に伺いたいんですけれども、今回の法案には、不服申立て理由の公表であるとか、証拠提出命令制度でありますとか、五年ごとの見直し規定など、いろいろな措置が盛り込まれているのは分かります。ただ、こうした措置は、検察が信頼に足る組織であってこそ機能する制度であると考えるわけでございます。検察組織への信頼が今失墜している中、これらの制度改革が本当に機能するのかどうか、疑問を感じるところでございます。
国民はこの法案によって刑事司法への信頼を取り戻せるとお考えでしょうか。私にはなお疑問が残りますが、大臣の御見解をお聞かせください。
○平口国務大臣 お答えをいたします。
先ほど申し上げたとおり、近時、刑事司法、とりわけ検察の活動に対して様々な厳しい御指摘、御批判があることは私も重く受け止めておるところでございます。法務大臣として、引き続き、検察当局の活動を注意深く見守ることとしたいと考えております。
その上で、本法律案は、近時の再審請求事件に関する実情を踏まえ、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能するよう所要の整備を行うものでありまして、再審制度を間違いなく大きく前進させるものでありまして、刑事司法に対する信頼確保の観点からも大変重要な意義を有するものと考えております。
もとより、本法律案の趣旨を全うするためには、法整備を行えば足りるというものではなくて、実務においてしっかりと運用されていくことが不可欠であります。そのため、本法律案が改正法として成立した場合には、その趣旨を踏まえた適切な運用を確保するため、通達の発出等により、検察庁等に対し改正の趣旨、内容について周知を徹底してまいりたいと考えております。
○平林委員 冒頭の御答弁もそうだったんですけれども、見守るということをおっしゃられますけれども、是非、大臣のリーダーシップで法務省、検察をしっかりと御指導いただきたいなというふうに思っております。
最後、三十秒程度なんですけれども、東住吉事件で無期懲役となって再審無罪となった青木恵子さんという方が御支援をしておられる、今まさに無罪を訴えておられる、そういう方々のお手紙を拝見をさせていただきました。本当に今、刑務所の中で、苦しい、先の見えない日々を送っておられるということも、時間がないので読み上げませんけれども、ということを拝見をさせていただいて、こういった人たちのためにもしっかりと今回の改正は頑張ってやっていかなくてはいけない、我々の思いに立ってしっかりと取り組ませていただきたい、このことを申し上げまして、私の質問を終わります。
大変にありがとうございました。
○井上委員長 次に、有田芳生君。
○有田委員 有田芳生です。
昨日の参考人質疑を、食い入るようにお聞きをしておりました。特に、冤罪被害者のお姉さんである袴田ひで子さんのお話というのは、誰が聞いても、こんなとんでもないことが起きていたのかということを、本当に切実な言葉で表現されておりました。
特に、逮捕されて拘置所に入って、そして死刑の執行があるかも分からない、これは袴田巌さんだけではなくて、多くの冤罪被害者、特に死刑判決を受けた方、四大死刑冤罪事件の方々も同じなんだけれども、いつ死刑の執行がされるか分からない、夜寝る前もそう思えば、朝起きてまずそのことが頭に入る。昨日、ひで子さんはおっしゃっておりましたけれども、巌さんは心が壊れてしまった、今もそれが続いているということ。
こんなことを絶対許してはならないということが前提なんだけれども、本当に今度の法改正でそれを食い止めることができるのかという疑問がまだ払拭されておりません。
死刑判決を受けた人だけではありません。多くの方々、例えば、私は何度も言いましたけれども、足利事件、菅家さんは十七年半も身柄を拘束されておりましたけれども、DNA鑑定の結果によって冤罪、無罪だったということをおっしゃっておりました。
繰り返しますけれども、袴田事件もそうなんだけれども、真犯人はどこかでのうのうと暮らしているわけですよ、あるいは暮らしていた。北関東連続幼女誘拐殺人事件の犯人、これだって、菅家さんが犯人じゃなかったから、どこかに暮らしている。何度も何度も言いますけれども、DNA鑑定も行われた、四兆七千億人に一人のぴったりと合った人物がいるんだけれども、いまだ捜査は進んでいない。
死刑事件だけではないですよ。痴漢冤罪事件でも同じでしょう。私はやっていないと言ったって、証拠があるんだと、追い詰められて自白をして、認めざるを得なかった。そのことによって、本人の社会的評価は地に落ちるだけではなくて、袴田ひで子さんを始めとして、御家族の方々も、長い長い年月、苦しんでいらっしゃる。
大臣にお聞きをしたいんですけれども、大臣に、何で冤罪事件が起きるんですかと私は先日お聞きをしました。刑事局長も大臣も、冤罪はあってはならないことだと。当たり前の話ですよ。だけれども、冤罪は起きていた、起きている。中には、死刑判決を受けて、一貫して私はやっていないと言いながら死刑の執行をされた福岡県の飯塚事件もある。取り返しがつかないことなんですよ、死刑問題だけじゃなくて、痴漢問題にしたって。
だから、そのことでまず大臣に伺いたいんですけれども、傍聴の方々、昨日もそうだけれども、刑事司法の専門家の方もいらっしゃる、冤罪だと主張されている方もいらっしゃる。昨日も傍聴されておりました。今日も傍聴されております。と同時に、この法務委員会を中心とした質疑については、多くの国民の方々が関心を持って聞いている、見ている。この傍聴席にいらっしゃる方だって、専門家ではない方、いらっしゃるでしょう。そのときに必要なのは、専門性、正確性を前提にしながらも、分かりやすい言葉で語っていただきたいんですよ。
作家の井上ひさしさんは、難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを愉快に、そして愉快なことを真面目にと、小説などを書くときの心構えにしていたんだけれども、これは多くの分野でも当てはまることであって、専門性、正確性を基本にしながらも、多くの国民に何が起きているのかということを明らかにしなければいけないのが私たちの責任だと思うんですよ。
大臣、何で冤罪事件というのは起きたんですか、起きてきたんですか。そのことを一般国民に、大臣のお父さん、お母さんが聞いても分かるような言葉でまず説明してください。
○平口国務大臣 お答えいたします。
当然のことながら、処罰されるべきでない者が処罰されることはあってはならないという認識をしております。
具体的事件において無罪判決が言い渡される理由は様々でありまして、処罰されるべきでない者が処罰されるような事態が生ずる原因としてどのようなものがあるかを一概に申し上げることは困難でございますけれども、過去の無罪判決や検察当局による検証においては、例えば、客観証拠の吟味が不十分であったこと、また、自白の信用性に対する吟味、検討が不十分であったこと、さらには、新たな科学的捜査手法に対する理解、検討が不十分であったことなどの指摘がされてきたものと承知をしております。
これらを踏まえまして、検察当局においては、客観証拠を適切に収集、分析すること、消極、積極を問わず十分に証拠を収集、把握し、冷静かつ多角的にその評価を行うこと、供述の任意性の確保その他必要な配慮をすることなど、「検察の理念」にうたわれておりますことを踏まえて、基本に忠実な捜査、公判活動の適正な遂行に努めていきたいというふうに考えております。
○有田委員 大臣、今読まれていたのは、私が六月二日のこの場で大臣に聞いた答弁と全く一緒じゃないですか。同じことを答えている。私の質問は、基本はこれで間違っていないと思いますよ、でも、それを誰にでも分かるような易しい言葉で答えてくれと言って、そういう質問なんですよ。何で同じ言葉を繰り返しているんですか。もう一度答えてください。
○平口国務大臣 おっしゃることを私なりに理解しますと、証拠というものを十分にわきまえて理解することというような指摘がされると思います。
いずれにしましても、検察の公判活動について、きちんとした遂行に努めていきたい、このように考えております。
○有田委員 例えば、大臣がおっしゃった、新たな科学的捜査手法に対する理解、検討が不十分だったというのは、それは足利事件についても同じでしょう。DNA鑑定のやり方が格段に進歩したんだから、MCT一一八型法からSTR型になったとか、いろいろな科学技術の進歩がある。
だから、大臣が今説明してくださったことでは、大臣のお父さん、お母さんは理解できないですよ。一般の方々は、何か難しいことを法務委員会でやり取りしているけれども、本当にこれで冤罪を防ぐことができるのか。被害者の方々というのは、直感でこれは危ないぞということを気づくんですよ。あるいは被害者は、例えばヘイトスピーチ解消法のときだって、最後に私たちが判断したのは、被害当事者の方々の意見を聞くことで私たちは考え方も変わっていった、判断も変わっていった。
だから、袴田ひで子さんがおっしゃっていたように、今の政府案では賛成しかねるとおっしゃっている、最後に袴田さんはおっしゃった、せめて八十点のところまでは持っていってほしいと言うから、私たちは、後でもお話をしますけれども、修正しなければいけないということを今提案をしているわけなんですよ。
そのことは後でお聞きをしますけれども、大臣、さっきの御答弁の中の客観資料の吟味ということ、不十分だったと。客観資料の吟味が不十分だったんじゃなくて、客観資料の提出が全く不十分だったんじゃないですか。
○平口国務大臣 客観資料の多角的な検討、そして、それに対する答えが国民に納得するものであるかどうかという点についての吟味、こういったものが不十分であったということでございます。
○有田委員 違うでしょう。この法案で多くが議論してきたのは、客観資料の吟味もあるけれども、吟味する資料を全面開示していないから冤罪事件が多々発生してきたんじゃないんですか。これは基本じゃないですか。違いますか。
○平口国務大臣 過去の無罪判決における検察当局における検証においては、客観資料の吟味が不十分であったと指摘されているものもあるというふうに承知をいたしております。
また、ただいま申し上げたとおり、いわゆる袴田事件や福井女子中学生殺人事件などの近時の再審無罪事件においては、証拠等を新証拠として再審開始決定がなされたという経緯がありまして、検察当局として、証拠開示に至る過程に反省すべき点もあるというふうに考えております。
個別事件において無罪判決が言い渡される理由は様々でありまして、御指摘のような、証拠開示が不十分であったことがより直接的な原因であると断ずることは困難でありますが、検察当局としては、ただいま申し上げたような点をそれぞれの事件における反省点として考えているものと承知しております。
○有田委員 大臣、昨日、参考人質疑を聞いていらっしゃったでしょう。袴田巌さんのお姉さんは何と言っていましたか。再審の中で、新しい証拠が六百点出てきた。これも一挙に出たんじゃないですよ、五月雨式に出てきて。だけれども、袴田さんはおっしゃっていたじゃないですか、ほとんどが無罪の証拠だったって。聞いていなかったですか。
証拠開示が決定的なんじゃないんですか、吟味の前に。吟味するには証拠が必要じゃないですか。
○平口国務大臣 お答えいたします。
昨日の袴田ひで子さんに対する参考人質疑の様子については、国会中継の映像を視聴いたしました。そこでは、多年にわたる大変な御経験を踏まえた事件への思いや、現行の再審制度に関する率直な御意見が述べられたというふうに承知をいたしております。
いわゆる袴田事件のように、再審請求から再審無罪判決の確定までに長期間を要する事態が二度と起こることがないよう、再審制度の速やかな改正が必要であるとの思いを強くした次第でございます。
○有田委員 私が大臣に伺いたいのは、証拠資料の吟味の前に、まず証拠がちゃんと出されていれば、袴田さんの事件についてだけではなく、多くの事件について、もっと早く冤罪だったということが明らかになったのではないですかという質問なんです。
資料の吟味の前に、証拠の幅広い提示、それが必要なんでしょうと聞いているんですよ。違いますか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
委員の御指摘のように、平成十六年の改正、いわゆる通常審における証拠開示のルールができる前は、証拠開示であるとか、それに伴う裁判の長期化であるとか、様々な論点があって、いろいろな議論があったところでございました。
その上で、そのような証拠開示に対して、その当時、裁判所からの勧告等がなければそれに対応しないといった運用が行われたのは事実でありまして、その当時のことでありまして、今の目線から見ると証拠開示が消極的だったというのは事実でございます。
その上で、先ほど来、委員も御質問の前提としておられますように、平成十六年以降、証拠開示制度ができたことに伴いまして、再審請求審においてもそのような形で広く証拠を再審請求人側に開示する運用が、徐々にではありますけれども、定着いたしまして、そのような中で、いろいろな、様々な証拠が再審請求側に開示され、袴田事件もそうでありましょうし、福井女子中学生事件もそうであったというふうに理解しておりますけれども、そういう中で開示された証拠の中に、いわゆる新証拠として再審開始決定の根拠となった証拠が含まれていたというのは事実でございます。
そのようなことを踏まえますと、証拠開示、再審請求審におきましても、今回、しっかり、証拠提出命令制度の創設を始めとして、そのルールを作ることによって、そういったことで時間を使わない、しかも証拠を見せる範囲は柔軟に幅広く運用することを前提とするといったことで、そういった事態が起きることを防ぎたいというのが我々の思いでございます。
○有田委員 大臣に伺ったんだけれども、刑事局長が答弁されたので、引き続き具体的なことについてお聞きをしたいんですが、これは繰り返しにもなるんだけれども、例えば、袴田事件のときに、確定審の中で五点の衣類のカラー写真がずっと出されなかったわけですけれども、だけれども、確定審の中では、袴田巌さんは犯行時の着衣としてズボンをはかされたわけですよね。三回はかされた。三回はかされたんだけれども、はけなかった。なぜはけなかったのかというと、袴田さんが肥えたんだ、太ったんだという言い方と、みそ漬けにされていたからズボンが縮んではけなかったんだという点と、もう一つ、ズボンのタグがBだった、そのBが確定審の中では肥満体のBだったということなんだけれども、実は違った。当時、検察がお持ちだったズボンのタグ、Bというのは、肥満体という意味じゃなくて、ズボンの色だった。だから、その証拠物が確定審の段階で提出されていたら、全然違った展開になっていたんじゃないかと私は思っているわけ。
だから、袴田事件の確定審のときだって、主任裁判官は、袴田さんは無罪だと心の中では思っていたけれども、死刑判決を書かざるを得なかったわけでしょう。とんでもない話があったわけですよ。これは合議の問題は別のことでしょうけれども、死刑判決を書いた人が、実は心の中では無罪だと思っていた。
袴田さんが昨日おっしゃっていたように、五十八年闘ってきたわけですよ。袴田事件だけじゃないですよ。今でも冤罪だといって闘っている方々が多くいらっしゃる。だから、あのとき、ちゃんと証拠物として提出されていたら、袴田さんやその御家族や支援者などなどのとんでもない苦悩や苦痛や人間的尊厳の辱めとか人権問題というのはなかったんじゃないですか。今だったらそういう証拠はスムーズに出されるんですか。お答えください。
○佐藤政府参考人 お尋ねについてお答えする前に、本年六月三日の法務委員会における委員からの御質問に対して、私の答弁に誤りがございましたので、まずはこの場をおかりして、おわびの上、訂正させていただきたいと思います。
その委員会で、有田委員から、再審無罪事件検討結果報告についてお尋ねをいただいた際、私が、既に保管期間は経過していますので、現状として残っているわけではないなどとお答えしましたが、この答弁は誤りでございまして、正しくは、現在も検察当局において行政文書として保有されているということでございますので、私の勘違いでございまして、その旨訂正いたします。申し訳ございませんでした。
その上で、今、袴田事件において問題となった五点の衣類のうちズボンの話でありますけれども、検察当局が公表した検証結果報告書によりますと、五点の衣類のうちのズボンにつきましては、確定審第一審において、検察官の証拠調べ請求により取り調べられたものでございます。
その上で、一般論として申し上げますと、現行の刑事訴訟法の下で仮にこの事件が審理された場合には、通常、今のルールでいきますと、強盗殺人等により起訴された事件が公判前整理手続に付された場合には、犯行時に被告人が着用していた衣類として押収された証拠物につきましては、検察官や被告人側の訴訟活動に応じまして、検察官の請求証拠、そのまま公判に出す証拠、あるいは、検察官請求証拠の証明力を判断するために重要な一定の類型の証拠、これはいわゆる類型証拠と呼んでおります、それから、被告人側が予定している主張に関連する証拠、いわゆる主張関連証拠と呼んでおりますけれども、そのいずれによりましても被告人側に開示され得るものと考えているところでございます。
さらに、今御指摘のように、五点の衣類のうちのズボンのBという表記であるとかサイズに関する証拠につきましては、検察官におきまして、再審請求審における再審請求者の主張内容や具体的な証拠関係等を踏まえて開示の要否を判断してきたものと考えておりまして、現行の刑事訴訟法に当てはめて、しかも今どうなるかというふうな仮定の質問についてお答えすることは基本的には困難であることは御理解いただきたいと思いつつ、とはいいながら、これが公判前整理手続に付された場合には、犯行時に被告人が着用していた衣類として押収された証拠物に関する供述調書、Bの意味であるとかですね、そういったものについても、検察官請求証拠に当たる場合には当然被告人側に開示されることになりますし、検察官請求証拠でない場合であっても、そのようにサイズの問題なのかどうかといった争点が被告人側の請求や主張にあるということであれば、いわゆる類型証拠であったり主張関連証拠として被告人側に開示され得るものであるというふうに考えているところでございます。
○有田委員 だから、証拠が決定的なんですよ、証拠が。全面的に開示しなければいけないのに、今の政府案の中では。
次の質問に行きますけれども、証拠の目的外使用の禁止規定について、これをちょっと細かく伺いたいんですけれども、私たちは、再審法改正案に対する修正を今検討しておりますけれども、その一つとして、目的外使用の禁止規定及びその違反に係る罰則規定を削除をする、そうしなければいけないと検討しているんですけれども、この私たちの主張に対して、いかがですか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
再審請求審でそのように悪用された事例があるのかという質問であるというふうに、なぜ必要なのかという趣旨でお答えいたしますと、現実には、通常審における証拠の目的外使用の禁止に係る罰則が適用された事案として、強制わいせつ被告事件の被告人であった者がその犯罪に係る事件の捜査報告書の内容をインターネットに掲載したことについて有罪判決が確定した事案であったり、いわゆる児童買春等処罰法違反の被告事件の被告人であった者がその犯罪に係る事件の供述調書の抄本に関する複製の一部が閲覧可能なURLをインターネットサイトに掲載したことにつきまして有罪判決が確定した事案があるところでございます。
そのような意味で、通常審ではそのような事例が現に生じているという状況にございまして、一方で、現在は、再審請求審における検察官提出証拠についてはそのような規律が設けられていないところでございます。
そのような意味では、関係者の名誉、プライバシーの保護というのは通常審と再審請求審とでは変わりがないものと考えておりまして、例えば、今申したような事案が、再審請求をした上で証拠の開示を受ければ処罰を免れられる、そのようなことができるようになるといったようなことになりますと、様々な意味で被害者のプライバシーの保護の観点からも問題があるというふうに考えております。
また、そういうことがあり得るというふうに考えますと、先ほど来、証拠の開示は広くやるべきだということが大事だと思っているんですけれども、そういう弊害があり得るとなると、証拠の開示の範囲がどうしても狭くなるということでございまして、一つ一つ見ていかなきゃいけなくて、柔軟に開示することは困難になるということでありまして、我々としては、目的外使用の禁止に関する規定を整備することは必要であると考えているところでございます。
○有田委員 局長、質問は、通常審のことを聞いているんじゃないんですよ。通常審でどうかという話ではない。
もう一度伺います。再審請求事件の証拠開示で損害を受けた立法事実はあったんですか、なかったんですか、一言で答えてください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
お尋ねのような具体的事例は承知していないのは事実でございますけれども、先ほど申し上げた理由で、再審請求審におきましても目的外使用の禁止は必要だと考えているというところでございます。
○有田委員 おかしいでしょう。通常審の話をしているんじゃないんですよ。どうして従来の実務になかった新たな規制を持ち込むんですか。これは改悪じゃないんですか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
この法案そのものの話になるわけですけれども、本法律案を作成する中で、要するに、従来からいわゆる証拠開示の論点があって、証拠を開示、今再審請求審にはそのような規定がないということで、裁判所やそれぞれの関係者の判断がまちまちになっているというような御指摘もあった中で、こういう制度をしっかりつくろう、通常審並みにつくろうということになったわけであります。
そういう中で、証拠を、現に提出命令を広く運用してもらうためには、かつ、その中で関係者のプライバシーを守っていくためには、通常審と同様の保護の必要があるというふうに判断したということでございます。
○有田委員 いや、保護するのは前提でしょう。それは日本新聞協会もそう主張しているんだけれども。
そうじゃなくて、今お聞きしているのは、再審と通常審、通常の公判とは違うわけでしょう。だから、袴田事件を見たって、五点の衣類のカラー写真、そして自白と言われたテープが出てきて、市民の人たちとの協力によって、メディアも報道をして、それで冤罪、無罪が確定したわけでしょう。だから、再審と通常審、違うわけですよ。何でそこを一緒にして、こういう目的外使用の禁止規定を一般的に入れるのか、それを私たちはおかしいと言っているんですよ。意見の違いかも分からないけれども。
だから、そこをちゃんと区別しないと、検察はやはり最後の最後まで自分たちの都合のいい証拠を隠すんじゃないか、そういう疑惑が晴れないから、私たちは、最後の最後まで修正を求めて闘っていきます。
終わります。
○井上委員長 次に、國重徹君。
○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
再審無罪となった袴田巌さん、そのお姉さんであるひで子さんは、昨日の参考人質疑で、人間として法律を改正していただきたいとおっしゃいました。この言葉を大臣はどう受け止めているでしょうか。
○平口国務大臣 お答えいたします。
私も、昨日の袴田ひで子さんに対する参考人質疑の様子については、国会中継の映像を聴取したところでございます。そこでは、長年にわたる大変な御経験を踏まえた事件への思いや、現行の再審制度に対する率直な御意見などが述べられたというふうに承知をしております。
私としては、人間として法律を改正してほしいなどの御意見を真摯に受け止め、いわゆる袴田事件のように、再審請求から再審無罪判決の確定までに長期間を要する事態が二度と起こることがないよう、再審制度の速やかな改正が肝要であるとの思いを強くした次第でございます。
○國重委員 生活の息遣い、社会の片隅で悲鳴を上げている人たちの思いを踏まえて、人間として血の通った法律に仕上げる、この使命と役割を担っているのは我々政治家です。
大臣、今日は、冤罪被害者やその御家族の思いに、そのことに思いをはせながら、是非、人間味のある、血の通った答弁をしていただきたい、そう思いますけれども、まず冒頭、よろしいでしょうか、一言。
○平口国務大臣 その御趣旨はよく分かっております。
○國重委員 その上で、私も昨日の参考人質疑を再度ちょっと夜に聞いて、基本的なところなので、別にテクニカルなところではないので、大臣に一問お伺いしたいと思います。
昨日の参考人質疑で、袴田事件を担当した元裁判官の村山弁護士はこうおっしゃいました。公費を使い、捜査機関が強制力を用いて集めた証拠によって被告人は有罪とされました、しかし、同じように収集された証拠の中に、被告人を無罪とする証拠が眠っているかもしれません、にもかかわらず、検察官がそれを提出しないために無実の者が救済されない、このようなことが許されていいんでしょうか、私は、このような事態はまさに正義に反する不条理です、無罪証拠があるかもしれないのに、それを再審請求人に見せない、利用させない、このようなことを許す法律を作ってはならない、このようにおっしゃっています。
平口法務大臣は、被告人を無罪とする証拠が眠っているために無実の者が救済されない、そのような事態は正義に反する不条理だとお考えでしょうか。
○平口国務大臣 それは御指摘のとおりだと思います。
○國重委員 その前提で今日はやり取りをさせていただきたいと思います。
今日、私が求めること、若干時間を使ってここで申し上げます。もうシンプルな話であります。大臣、よく聞いていただきたいと思うんですけれども。これまでいろいろ議論したんですけれども、整理し切れていないところがありますので、ここで整理をさせていただきたいと思います。
証拠の一覧表あるいは送致書類等目録を弁護人が確認できるように政府案を修正すべきだ、私が求めているのはこれです。
再審請求審において、弁護人側、裁判所が証拠提出命令やその請求をするために、また、証拠の提出漏れを一定程度防ぐためには、まず、検察官の手元にどのような証拠があるのか、その存在や輪郭を知る手がかりが必要です。その手がかりが証拠の一覧表です。これは、証拠書類であれば、標目、作成の年月日、供述者又は作成者の氏名、証拠物であれば、品名、数量などが記載されている、証拠の存在や輪郭を示すリストです。
そして、警察から検察官に送致された証拠については、これまでのやり取りで明らかになっているとおり、検察官の手元に送致書類等目録があります。これは、証拠の一覧表とほぼ同内容です。仮に、政府が、再審請求審は職権主義だ、裁判所が主体だという理由で弁護人にこの証拠の一覧表などを直接交付することに慎重な態度を崩さないのであれば、譲歩して、裁判所が必要と判断したときに、裁判所に提出させた上で、弁護人が裁判所で閲覧、謄写できる仕組みでもいいと私は思っております。
要は、証拠の中身を全て開示しろと言っているわけではありません。袴田ひで子さんは、いい証拠も悪い証拠も全部明らかにすべきだという趣旨のことをおっしゃっていますし、昨日の村山参考人も、本来はそうすべきだ、そのようにおっしゃっていますけれども、私は、証拠の中身を全て開示しろと言っているわけじゃありません。まずは、証拠の存在や輪郭を示す基礎資料を確認できるようにすべきだということであります。国家による最大の人権侵害である冤罪を救済するために、これは当たり前のことじゃないでしょうか。
審議も大詰めで、これは大事な局面ですので、これまでの大臣の答弁で混乱が見られる、整理がし切れていない二つの一覧表、すなわち、証拠の一覧表と標目の一覧表について、議論が混線しないようにここで整理をさせていただきます。
一つ目は、政府案で導入されている標目の一覧表。これからこれを証拠の一覧表と言わないで、標目の一覧表ときちっと言っていただきたいんですが、これは裁判所が見るためのリストです。証拠の表題、作成の年月日、供述者の氏名等に加えて、供述調書であれば供述事項、つまり、内容の要点まで記載され得る、情報量の多いリストです。ただし、この標目の一覧表は、裁判所だけが見るものであって、弁護人は閲覧も謄写もできません。
二つ目は、私が求めている証拠の一覧表です。これは、先ほど申し上げたとおり、証拠の中身の詳細は全くなくて、証拠の存在や輪郭を示すリストで、弁護人に直接交付されるものです。
簡単に言えば、政府案の標目の一覧表は、情報量は多いけれども裁判所止まり、私が求めている証拠の一覧表や送致書類等目録は、情報量は非常に限定的ですけれども、弁護人が証拠の存在を把握して請求していく端緒となり得るための基礎資料です。
通常審では、平成二十八年以降、刑事訴訟法三百十六条の十四第二項でこの証拠の一覧表を弁護人に交付する制度が認められ、実務で定着をしています。つまり、平成二十八年以降に有罪、無罪が争われた事件であれば、ほぼ全ての事件で証拠の一覧表は弁護人に交付されており、再審請求審においても、事実上、弁護人はそれを活用することができます。
であれば、それ以前の事件についても、冤罪被害の救済という大目的からして、再審請求審でも証拠の一覧表等を弁護人が確認できるようにすべきじゃないのか。本法案の質疑において、今、そうだと声を上げていただいた稲田議員を始め与党議員の方々からも、この証拠の一覧表を弁護人に確認させるようにすべきだという声が上がっております。
袴田ひで子さんの言葉、人間として法律を改正していただきたい、皆様にお任せしておりますので期待しています、もう助けていただくのは国会議員の皆様しかございませんと。この切実な魂の叫びを受けて、与野党を超えた立法府の矜持で、政治決断でこの修正を私は何としても成し遂げていきたい、心からそう願っております。
それでは、具体的な質問に入ります。
通常審における三百十六条の十四第二項の証拠の一覧表の弁護人への開示、また、再審請求審において送致書類等目録が弁護人に開示された実例がありますが、それらの開示そのものによって具体的な弊害が生じた事例を法務省は把握していないということでいいかどうか、お伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
前回御答弁申し上げたとおり、具体的な弊害が生じた事例の有無については網羅的に把握しておらず、お答えすることは困難でございます。
○國重委員 そのような具体的な事例は把握していないということでありました。
次に、証拠の一覧表の作成、これは昨日、村山参考人もおっしゃいましたけれども、一定程度、手間暇がかかるものだと。その一方で、警察から検察官に証拠が送致された際に送致書類等目録は検察官に届けられていますので、送致書類等目録を提出することの事務負担は証拠の一覧表に比べて相当軽減されていると考えますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御提案は、証拠の提出命令の請求についての手がかりであるところの証拠の一覧表ということだと思いますけれども、御指摘の事務負担についてだけ申し上げますと、警察から送られてきた目録そのものを開示、交付する仕組みとした場合には、証拠の提出命令の請求についての手がかりとしての機能が求められるにもかかわらず、その記載内容が不正確であってもそのまま再審請求者側に開示、交付されることとなりますので、そのようなものとして出すからには、警察から送致されてきた送致書類等目録の標目を、正確に記載されているかどうかを、検察官において、目録と実際に送致されてきた捜査書類とを照らし合わせて、目録の記載に過不足や誤りがないかを確認した上で、必要に応じて警察にその修正を依頼するといった作業を要することにはなると考えられるところでございます。
○國重委員 ただ、証拠の一覧表に比べれば、現実的な負担というのは相当軽減されるというふうに思います。その確認作業すら負担だというのであれば、再審請求審で関連証拠を漏れなく提出する体制が本当に整っているのかと私は疑問に思います。
検察官抗告を全面禁止ではなくて原則禁止、また証拠の目的外使用の禁止、これらを規定した理由は、主として、それぞれに被害者の利益など他方利益があるからだというふうに理解をしています。また、そのように答弁をしています。
これに対し、証拠の一覧表等の弁護人への開示を拒む積極的な理由というのは、他方利益というよりも、別の理由、手続の構造論になるという理解でよろしいでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案におきまして、まず前提から申し上げますと、再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて全面的な禁止としなかったのは、仮に誤った再審開始決定であっても一切不服申立てができず、本来やり直すべきでない裁判でも直ちにやり直すこととする制度とすると、裁判の確定の意義や裁判の紛争解決機能が損なわれるなどといった刑事司法制度の根幹に関わる問題が生じるためでございます。
また、本法律案において証拠の目的外使用の禁止の規定を設けることとしたのは、関係者の名誉、プライバシーを保護する必要があるだけでなく、今後の捜査、公判への協力確保の困難化や捜査の秘密の漏えいを防止するなどして、刑事司法制度が適切に機能することを確保する必要があるためでございます。
その上で、今御指摘の証拠の一覧表の話でございますけれども、本法律案におきましては、再審請求審が、職権主義の下、裁判所が主体的に事実の取調べを行う手続であることを踏まえて証拠の提出命令制度を設けているわけですが、これに加えて、御提案のような、通常審における当事者主義的構造を前提とした証拠の一覧表の制度を設けることとした場合には、再審請求審の構造と整合しない制度を導入することとなり、裁判所における証拠の提出命令制度等の解釈に混乱が生じ、再審請求審における適切な運用を確保することが困難となるなどのおそれがあると考えられておりまして、必ずしも反対利益といったものではなくて、ただいま申し上げた制度全体としての理由であるとかバランスを考えて、御提案の制度は設けないこととしたところでございます。
○國重委員 要は、手続の構造論、職権主義ということだと思います。
再審請求審が職権主義一色で性格づけることができないことなども理由に、証拠の一覧表の弁護人への開示を認めるべきという、再審法を専門とする刑事法学者、当委員会にもお越しいただいた葛野参考人のような御意見があることは、もう十分法務省も分かっていると思います。
であれば、再審請求審が職権主義であることと、証拠の一覧表や送致書類等目録を弁護人が確認することを認めない、これは論理必然とは言えない。間違いないですね。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
証拠の一覧表を弁護人に開示する制度を設けることについては、法制審議会において議論が行われて、再審請求審は、職権主義の下、裁判所が主体的に審理を行う手続であり、裁判所に一覧表を提出する仕組みとすることが整合的であるなどといった意見が大勢を占め、答申に盛り込まれなかったものでございます。
そこで、本法律案においては、このような法制審議会における議論の状況等を踏まえまして、証拠の一覧表や送致書類等目録を弁護人に開示する制度ではなくて、裁判所が必要であると認めるときに、検察官に対して、裁判所の指定する範囲に属する証拠の一覧表を提示することを命ずることができる制度を設けたものでございます。
○國重委員 私の質問に正面から答えていません。
論理必然ではありませんねと聞いています。いかがですか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
論理必然かという、手続構造論の話が一つあるかというのは大きいところだと思っています。
加えまして、一つ申し上げるとすれば、通常審と再審請求審のそれぞれにおける被告人と再審請求者側における証拠の把握という観点から申し上げますと、通常審におきましては、通常、検察官の起訴によりまして、被告人は、自分の供述を除いて、基本的には手元に証拠がない段階で自己を防御すべき立場に置かれるわけでございます。
公判前整理手続におきましては、被告人が、現に検察官が有罪を立証するために提出する証拠のほかに、検察官請求証拠の信用性や証明力を吟味するために必要な一定の類型の証拠、類型証拠でございます、それから、被告人が公判で予定している主張に関連する証拠の開示を受けることができる制度といたしまして、その開示請求を、受けるに当たっての手がかり、何もない中での手がかりとして、証拠の一覧表の交付制度が設けられたという状況にございます。
これに対しまして、再審請求審におきましては、通常審における三審制の下で既に審理が行われているものでございまして、検察官の手持ち証拠についても通常審の段階で刑事訴訟法の規定に従って既に開示を受けているという状況にありまして、加えて、確定判決において有罪認定の根拠となった証拠についても明らかにされているといった状態から始まるものでございます。
そのような状況において、犯人でないのに有罪判決を受けた者からしますと、確定判決のどこに問題があるかは十分把握しているのが通常であると考えられる上、どのような証拠があるのかといった、検察官に提出を命ぜられるべき証拠として、自分の主張を立証とか、あるいは減殺すべき対象の証拠としてどのようなものがあるのかというのは、通常、どのような証拠が収集されるかを念頭に置いて想定することが可能であるという状況の違いがございます。
その上で、今の、手がかりとしての証拠の一覧表の必要性といったものについても違いがあるのではないかと考えているところでございます。
○國重委員 私が聞いたのは、論理必然かどうかということなんです。
じゃ、葛野参考人は全く何も分かっていない学者だということをある意味言っているわけですよ、今の答弁だと。昨日、村山参考人も同趣旨のようなことをおっしゃいましたけれども、多くの方がそうじゃないというようなことをおっしゃっています。
法制審の多数意見云々と言われましたけれども、西南大学の福永俊輔教授は、法制審の再審法部会には再審や誤判に関してこれまで積極的に研究してきた方が選ばれていない、このように苦言を呈されています。
また、再審や誤判に詳しい刑事法研究者ら百四十二人が、今回の法制審の答申の内容は重大な問題をはらんでいるとして、四月六日、反対の緊急声明を公表されています。この中のお一人である明治大学の石田倫識専任教授は、法制審にも研究者が入っているが、今回の百四十二人とは正反対の意見で、学界の通説、多数説ではない、このように指摘をされています。
職権主義は、弁護人が入口資料を確認する制度を論理必然的に排斥するものじゃありません。ただ、私は、これは本当に冤罪被害者のための修正、法案にしていかないといけないということで、百歩譲って、そこまで声高に職権主義というのであれば、譲歩して、次のような制度ではどうかと。
具体的には、裁判所が再審請求についての裁判をするために提出を受ける必要があると認めるときに、検察官に対して、その保管する証拠の一覧表あるいは送致書類等目録の提出を命じる制度にすれば、裁判所が主体という職権主義の構造を維持できる、そのため、職権主義の構造を理由にこれを否定することはできない、そのように考えますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
手続構造論の話と、再審請求人あるいは被疑者、被告人が置かれた立場の違いということで、その手がかりとなる証拠の一覧表ということについての違いはあると思っておりますけれども、済みません、先ほどの問いで、論理必然かどうかという問いに答えていないということでありましたが……(國重委員「もういいです、それは」と呼ぶ)済みません。
その上で、証拠提出命令制度の運用の中で、裁判所がそのような標目の一覧表を検察官に作成して提出させることはできるわけでありまして、そこの中には弁護人側に直ちの開示になじまないものというのは当然入っているわけで、委員は御案内のとおり……(國重委員「もちろん、これはやっちゃいけないんです」と呼ぶ)そういうことになっているわけです。
その上で、じゃ、どのような範囲で裁判所が標目の一覧表を作るかというのはまさに裁判所の御判断なわけでありますので、その中で、そういうふうにできてきた標目の一覧表のうち、そのような中で、弁護人への開示にも、開示といいましょうか、裁判所として弁護人に見せてもいいと判断するものが、便宜上、その運用の中であり得るのではないかとは思います。
例えば、関連する証拠の標目などを、証拠の一覧表などを、これと併せて、裁判所への提出の中から関連する証拠と認めたものについては、弁護側にも検察官から提示するようにといったことは例えば考えられる……(國重委員「標目の一覧表を」と呼ぶ)標目の一覧表そのものは駄目でありますけれども、ただ、部分を抜き取ったり、証拠の一部を抜き取ったり、あるいは供述の要旨などが書かれている部分、そこを削除したものを、例えばこういう形で弁護人の側にも、訴訟の運営として、訴訟準備の中で示すことを前提に議論しましょうといったことを裁判所から提案を受けるというのがあり得るのではないかというふうに思います。
そこで、今申し上げているのは、関連しない証拠も含めた全ての一覧表を提示するというのはなかなか難しいという話と、時期の話がありますのと、そういう中で、そういう全体としての裁判所のコミュニケーションの中で、様々な現場での工夫とか運用があり得るのではないかとは思っているところでございます。
○國重委員 要は、関連性を問わずに証拠の一覧表を提出させる、そういう制度は整合しない、また、標目の一覧表が、制度があるから足りるというような、要点を言えばそういうことだったと思います。
ただ、私が求めているのは、関連性を問わず何でもかんでも出させる、そういう制度ではありません。あくまで裁判所が主体になって、裁判所が必要と認める場合に、証拠の所在、輪郭を示す資料を取り寄せて、必要に応じて請求人側にも確認させる制度です。
職権主義とは、裁判所が審理を主体的に進めるという意味だと私は理解しています。裁判所が必要と判断して、資料を取り寄せて、請求人側に的確な証拠提出命令の請求とか主張の具体化を促すというのは、まさにこれは職権の行使であって、職権主義に反しないと考えます。
また、標目の一覧表というのは、先ほどもやり取りしましたけれども、裁判所の判断資料であって、弁護人は閲覧も謄写もできません。裁判所が見る資料があるということは、請求人側が証拠の所在を知る入口資料を持たなくていいという理由にはならないと考えます。
私は、あくまでも裁判所が、請求人がじゃないですよ、裁判所が必要と認めるときに、関連性を的確に判断するための入口を設けるべきだと言っているわけです。標目の一覧表だって、関連性があるところだけを出すわけじゃないじゃないですか。それよりも広い範囲を出すわけでしょう、裁判所でおいてすら。
であれば、本当に簡易な、証拠の所在とか輪郭しか分からない証拠の一覧表、しかも、関連性は広いと言っているわけですよ。相当な広さを持つと言っているのであれば、その端緒となる証拠の一覧表を出すということは、私は、これは何も職権主義を崩すものではなくて、裁判所の職権判断をより実施するものであるというふうに考えています。
その上で、ちょっと時間の関係で行きますけれども、再審請求者側の証拠の提出命令の請求をする際の証拠の特定というのは、政府は、請求に係る証拠を識別できる程度のもので足りるから証拠の一覧表は不要なんだ、このように繰り返し答弁をしています。
ただ、冤罪被害者とか、それに寄り添って、そのために闘ってきた弁護士、また学者、こういった方々は、やはりこれは極めて貴重な資料であって、必要なんだというふうに訴えられています。昨日の村山参考人もそのようにおっしゃっていました。
これについては、大臣、どのように受け止めているんでしょうか。
○平口国務大臣 御指摘のような御意見を含め、本法律案に対していただいている様々な御意見については真摯に耳を傾ける必要があるというふうに考えております。
もっとも、再審請求者側が提出命令の請求をする際の証拠の特定は、請求に係る証拠を識別することができる程度のもので足りるということからしますと、提出命令の請求に際しての証拠の一覧表の有用性は相当に限定的なものであるように思われるわけでございます。
その上で、再審請求者側に証拠の一覧表を交付する制度については、再審請求審の審理の在り方や手続構造との整合性の問題もあることから、慎重な検討が必要であると考えております。
○國重委員 全く人間味のない、血の通った答弁ではないと思います。
大臣、特定することはもう十分に可能だみたいなことをずっと法務省側として言っているわけです。私は、それを聞くたびに、何かすごい上から目線の答弁だなと感じるわけです。再審請求人や弁護人等がやはり必要だというふうに訴えている中で、それを、いやいや、これは十分に特定できるから不要なんだということを繰り返されている。
私は事前にちょっと法務省に確認しましたけれども、法務省刑事局に勤務する職員の方、これは応援職員の方を含んで、どういう人員構成になっているか。検察庁出身者百四十六名、そのうち法曹有資格者四十九名、裁判所出身者二名、弁護士出身者ゼロ名、そのほか十七名、合計百六十五名。百六十五名のうち、検察庁出身者は百四十六名なんです。
それで、これで足りるんだというその答弁をしているのは、ある意味、一方当事者である検察官の方が、これで足りるから十分だろう、そんなものは不要だというふうに私は聞こえるわけであります。大臣、これについてはどのように思われますか。
○平口国務大臣 個別の組織の中についての答弁はしかねると思います。
○國重委員 何か意味が分からない答弁ですね、今。
圧倒的多数の検察庁出身者がいる、そういうことも踏まえて、謙虚にやはりこの法案にも当たっていく、また答弁していく必要があるんじゃないか。一方当事者である検察の組織が多い者で構成されている法務省は、やはり、もう片方の当事者である弁護人、再審請求人、もちろん職権主義ですけれども、そういうことを踏まえて答弁すべきなんじゃないか。そうでないと、袴田ひで子さんの言葉はどうなるんですか。
冒頭に人間味のある答弁を是非していただきたいと言いましたけれども、これ以降、是非そういう答弁をいただきたいと思います。
ちょっと時間が迫ってきましたので。
大臣はこれまでの答弁で、本法案について、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能するようにするためのものであって、誤判からの確実な救済と再審手続の円滑、迅速化を図るものだと繰り返し述べてこられました。
証拠の一覧表あるいは送致書類等目録は、どのような証拠が存在するのか当たりをつける参考資料になって、証拠提出命令やその請求を、より的確に請求をするための端緒となるものであります。その結果、裁判所、検察官、弁護人とのやり取りが円滑になって、手続の円滑、迅速化に資する有用な資料になると考えます。これは、私は日野町事件の弁護人にもお話を聞きましたけれども、それはあるとないとでは全然違うというようなことをおっしゃっていました。
大臣、こういったことに関する証拠の一覧表あるいは送致書類等目録の有用性、これまで否定するお考えなのかどうか、お伺いします。
○平口国務大臣 お答えをいたします。
御指摘の証拠の一覧表として、証拠の内容や要旨等の記載のないものを想定しているんだとすると、裁判所、検察官、弁護人が証拠の提出、提示、開示に関するコミュニケーションを取る場合においても、そのような証拠の一覧表や送致書類等目録の有用性は相当に限定的なものにとどまると考えられます。
以上でございます。
○國重委員 現場の弁護人等も有用であると言っているわけですから、ちょっと、これについても是非そういった声も踏まえて答弁をいただきたかったというふうに思います。
もう時間が少ないので。
再審法改正に至ったこれまでの苦い立法事実や、また、それらによって生じた国民の検察不信を踏まえて、検察の活動が国民の信頼の上に成り立つようにするために、出せるものは出していく。とりわけ、証拠の一覧表や送致書類等目録が弁護人らの手元に届くようにするための制度設計に自ら強い姿勢で臨むことは、私は、法務省、大臣の当然の責務ではないかと考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○平口国務大臣 お答えをいたします。
近時、とりわけ検察の活動に対して様々な厳しい御指摘、御批判があることは私も重く受け止めております。法務大臣として、引き続き、検察当局の活動を注意深く見守っていくこととしたいと考えております。
その上で、再審請求者側に証拠の一覧や送致書類目録を交付する制度については、証拠の提出命令の請求等に際して証拠の一覧表等が効果的な場面は限られていると思われる一方で、再審請求審の審理の在り方や手続構造との整合性に問題があるということから、慎重に検討を要すると言わざるを得ないことを御理解いただきたいと思います。
○國重委員 慎重に検討ということは、全否定じゃないわけですよ。検討なんだから、検討の余地はあるわけです。
大臣は、冤罪被害者、その御家族の思いを真摯に受け止め、再審制度について、その趣旨に立ち返り、速やかな改正に向けて尽力する必要があると述べられております。是非、こういったことも踏まえていただきたいと思います。
冤罪によって失われた歳月というのは取り戻すことはできません。人権、命の問題に与党も野党もありません。党派の違いを超えて、より実効性ある再審法改正を共に実現していきたい、そのことを心から願いまして、私の質疑を終わります。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、和田政宗君。
○和田(政)委員 参政党の和田政宗でございます。
繰り返し当委員会で私も述べてまいりましたけれども、これはもう正々堂々とおやりいただく法律にしていただくことが重要で、何を恐れているのかが分からないです。
昨日、参考人として来られた袴田ひで子さんが、よい証拠も悪い証拠も全て開示をしてほしいということをおっしゃいました。その上で、有罪であれば有罪の立証というものをしっかりしていただいて、法改正はもうあの袴田事件のような冤罪というものを絶対に生み出してはならないという観点でありますので、先ほど國重委員からちょっと上から目線なのではないかというような話もございましたけれども、まさに、こういう冤罪を生み出さない、生み出してはならないんですけれども、もしそういう方がいた場合には、速やかに再審において無罪が言い渡されるということが重要であるわけであります。
昨日、村山参考人が、袴田事件に裁判官として携わり、今、弁護人として当時の心境を振り返ったときに、日本でこういうような冤罪事件が起きているということは本当に恐ろしいというふうに実感をしたということを言っておりました。
まさに、これは裁判官、また本来は検察官もそうであるべきであるというふうに思いますけれども、証拠、実はこんなのがあって、これが分かったときには、これはやはり無罪だということが分かったときには、速やかにそういう証拠を出していただく。絶対にそれが証拠隠しであったり証拠の中に紛れることはあってはならないわけですよね。
だから、再審請求審においても一覧表を出すべきだというようなことも含めて、これはまた次回の質疑のときに改めてこれまでの審議を振り返ってやっていきたいというふうに思いますけれども、野党側が今、与党側に、今日の質疑も含めて、こういう修正をすべきではないかということで提起をしていることは、ごくごく当たり前のことだと思うんですよね。これを修正したから検察側が何か困るということも私はないと思うんですよ。手間がかかる、でも、これは裁判ですから、そこはやはり頑張っていただいて、証拠を洗いざらいやはり出した上で、有罪であれば有罪、無罪であれば無罪ということが重要であるというふうに私は考えております。
それでは、事前に通告をした質問に沿ってお話を聞いていきたいというふうに思います。
まず、証拠の提出命令、証拠の開示などについてお聞きをしていきたいというふうに思っております。
佐藤局長、政府参考人の答弁では、福井事件の「夜のヒットスタジオ」の放映日に関する捜査報告書のような、再審請求者が罪を犯していないことを明らかに示す証拠を把握しましたら、当然、検察官は裁判所に顕出する責務があると答弁をいたしましたけれども、刑事訴訟法四百三十五条六号の無罪等を言い渡すべき明らかな証拠があると判断した場合に限る趣旨なのかどうか。
再審開始事由がある場合に、検察官が自ら再審請求をするのは、これは当然のことであります。検察官が再審請求者が罪を犯していないことを明らかに示す証拠でないと判断しても、再審請求人、弁護人が見れば、無罪等を言い渡すべき明らかな証拠に当たるかもしれません。実際に、福井事件の第一次再審請求では、検察官は「夜のヒットスタジオ」の放映日に関する捜査報告書を提出していませんでした。これは、検察官が無罪等を言い渡すべき明らかな証拠に当たらないと思っていたからではないか。答弁を願います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
私が、無罪等を言い渡すべき明らかな証拠があると判断した場合にはそのような証拠を当然に自分から提出すべきであると答弁したのは、前回申し上げたとおりでございます。
その上で、特定の証拠が被告人や再審請求の無罪を示すものであるかどうかであるとか、その推認力の程度というのは一義的に定まるものではなくて、個別の事案に応じて判断されるべきものであるので、一概にお答えすることは困難であります。
その上で、いわゆる福井女子中学生殺人事件における検察官の対応につきましては、現在、検察当局において、事件に関与した検察官のヒアリングなどの調査が進められているものと、調査しておりまして、御指摘の点、すなわち、その捜査報告書をどのように理解していたのかといった点も含めまして、この調査の中で可及的に明らかにされるものと承知しているところでございます。
○和田(政)委員 局長、今のところで聞きますけれども、刑事訴訟法四百三十五条六号の無罪等を言い渡すべき明らかな証拠があると判断した場合に限るということではないということでよろしいんですか、そうしますと。限る趣旨ではないということでよろしいんでしょうか。広いということでいいんでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
新規性、明白性の判断というのは、やはり大変難しいものでございまして、新証拠が出たことに伴いまして、旧証拠、全ての証拠を総合的に判断して、その上で、合理的な疑いが生じ得るか否かといった判断をするわけでございます。
それで、例えば、犯人のものとされていた遺物のDNA型鑑定が違っていた、あるいは、時の経過とともに、新しくなってみたら違っていた、こういったものは、比較的、すごく事例として挙げやすいところではありますけれども、個別の事例になっていきますと、そのような、推認力の程度というか、新証拠の旧証拠との総合評価というのは大変難しゅうございますので、そのような意味で、ただし、そういうものも含むものではあるだろうと。再審の、何といいましょうか、再審請求中に、これで合理的な疑いを入れない程度のというふうな心証を裁判所が持つに至らないという判断をすることに、するという判断に至ることはあり得るというふうに考えているところでございます。
○和田(政)委員 聞いている人が今の答弁ですとどうなのかというところで、私もお聞きをしたいんですけれども、すなわち、無罪等を言い渡すべき明らかな証拠、何か新しい証拠が出てきちゃったんだけれども、これはかなりあれだよね、どうしよう、提出しようか提出しまいか、でも、これは新証拠で重要だけれども、本来は提出しなくてはならないかなと思うんだけれども、無罪等を言い渡すべき明らかな証拠じゃないという判断もできるよね、じゃ、ちょっと出さないで待とうかということができちゃうということですか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
先ほどとちょっと繰り返しになっちゃうんですけれども、特定の証拠が被告人の無罪を示すものであるかどうかであるとか、その推認力の程度というのはどうしても一義的に定まるものではありませんので、個別の事案ごとに判断されるべきものであるということがまず第一点であります。
その上で、罪を犯していない者が処罰されることはあってはならないことでございます。検察官が再審請求審において再審請求者が罪を犯していないことを明らかに示す証拠を収集、把握した場合には、これは関連性が必ずしも明らかでない場合であっても、当該証拠を検察官の方から裁判に顕出するなどの適切な対応をすべきであるというふうに考えているところでございます。
○和田(政)委員 関連して聞いていきますけれども、名古屋高検は、令和七年八月四日に、いわゆる福井女子中学生殺人事件の再審判決について、これは通知になりますけれども、これを発出して、証拠に反する事実を主張したり、誤った事実関係を前提としたまま公判を遂行させたりすることなどあってはならないのは言うまでもなく、検察官としては、従前の主張や証拠に誤りがあることが判明したならば、速やかにそれを撤回し、必要に応じて裁判所や弁護人に経緯の説明や関係証拠の開示を行うなど、適切な是正措置を行う必要がありますとしています。
そうであるならば、確定判決の認定した事実や検察官の従前の主張や証拠に誤りがあると判明した場合には、是正措置を講じる義務があるのではないでしょうか。お聞きをいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のように、適切な是正措置を講ずる措置があると法務当局としても考えているところでございます。
○和田(政)委員 更に関連して聞きます。
裁判所に顕出するということですけれども、いまだ再審請求がなされていない再審請求の準備段階では、どのように適切な是正措置を取るのか。検察官が再審開始事由があると判断した場合には、検察官が自ら再審請求をすることになると思われますが、仮に再審開始事由があると判断しなかった場合でも、元被告人に開示して説明すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
毎回前提をつけて大変恐縮でありますけれども、特定の証拠が有罪の言渡しを受けた者の無罪を示すものであるかどうかや、その推認力の程度は一義的に定まるものではなくて、個別の事案に応じて判断されるべきものであるため、一概にお答えすることは困難でありますけれども、したがいまして、御指摘のような証拠を収集、把握するに至った場合において、再審手続を離れて、有罪の言渡しを受けた者に対していかなる対応を取るべきかについて一概にお答えすることは困難でありますというのが答えでございます。
○和田(政)委員 質疑をずっとやっていますと、それであるならば、もう証拠を全部出しましょうよという話になっていくんですね。
更に質問いたしますが、福井事件の第一次再審請求では、検察官は「夜のヒットスタジオ」の放映日に関する捜査報告書の存在を把握していたのに、裁判所に提出していませんでした。福井事件の弁護団は、捜査側に不都合な証拠を隠した警察や検察の行為は証拠隠滅罪に該当すると。これは判例時報を見ましたら、そのように指摘をしておりました。
検察官が「夜のヒットスタジオ」の放映日に関する捜査報告書を提出しなかった行為は、証拠の隠滅に当たるのではないでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
犯罪の成否は捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄でありまして、法務当局としてお答えすることは困難でございますけれども、一般論として申し上げますと、証拠隠滅罪は、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅した場合に成立するものでございまして、隠滅とは、一般に、証拠そのものを滅失させる行為のほか、証拠の顕出を妨げ又は証拠価値、効力を滅失、減少させる全ての行為をいうと解されているものと承知しているところでございます。
○和田(政)委員 これはそういう答弁になるんだと思うんですけれども、証拠の隠滅にもし当たるのであれば、これは刑事訴訟法四百三十五条七号の職務犯罪、原判決の証拠となった証拠書類の作成に関与した裁判官又は原判決の証拠となった書面を作成し若しくは供述をした検察官、検察事務官若しくは司法警察職員が被告事件について職務に関する罪を犯したことが確定判決により証明されたときに当たって、再審開始事由に当たるのではないでしょうか。七号に当たらないというのは、検察官が証拠の隠滅をした警察官、検察官を起訴しないために有罪の確定判決が得られないからにすぎないと考えますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、刑事訴訟法四百三十五条七号本文は、原判決の証拠となった書面を作成するなどした検察官が被告事件について職務に関する罪を犯したことが確定判決として証明されたときを再審開始事由として規定しているところでございます。
その上で、御指摘のような犯罪の成否というのは、先ほどと同様の答弁になることを御容赦願います。
○和田(政)委員 それでは、再審開始決定に対する不服申立て、いわゆる検察官抗告についてお聞きをしていきたいというふうに思います。
証拠が隠れていることだとか、そういったことがあってはならない。ですので、繰り返し言っていますけれども、証拠を全部出して正々堂々とやっていれば、いわゆる冤罪は起きにくくなるわけですよね。そういった観点からお聞きをしていて、不服申立てについても、まさにそれによって見えるべきものが見えなくなってしまう、こういうような観点からもお聞きしていきたいというふうに思うんです。
近時の再審無罪事件では、確定審において捜査機関の不正があったということが判明していると断言できるわけです。福井事件では、「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書が隠されていました。袴田事件では、五点の衣類のカラー写真、録音テープなどが隠されていた。再審無罪判決では、五点の衣類と共布及び自白は捏造と認定をされております。
検察官は、証拠隠しや証拠の捏造があった場合には、無罪等を言い渡すべき明らかな証拠に当たるか否か、明白性の審理に時間をかけるべきではなく、裁判のやり直し、再審公判をして正々堂々と決着をつければいいのではないかと思いますが、これはいかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
個別の再審事件における検察官の活動内容、裁判所の判断に関わる事柄について、法務当局としてお答えすることは困難であることは御理解いただきたいのですけれども、当然のことながら、証拠を改ざん、捏造したりするようなことはあってはなりませんし、仮に不正行為が行われた場合には、別途、厳正に対処されるべきであると認識しております。
その上で、証拠を改ざん、捏造したということが、そのことが明らかになって、それが無罪を示すことが明らかであった場合には、当然、検察官としても再審請求をするなり、そういったことを粛々としていくということになるかと思うわけでありますが、その一方で、では、それが必ずしも、捏造であるかどうかが必ずしも、意見の相違があるといった場合も当然あり得るわけでございます。
その上で、捏造とかはさておきまして、一般論としては、趣旨として、全面禁止にした上で再審公判をやるべきではないかという御質問だと理解するんですけれども、全面禁止としない理由については、これまで何度か、裁判の紛争解決機能であるとか、三審制まで行ったものを一回の裁判で覆せるというのでは、やり直すべきでない裁判をやり直すことになりかねないという意味において法的安定性を害するといった趣旨で申し上げてきたところでございます。
その上で、では、もう一回公判をやればいいではないかといったことについては、様々な議論があり得るのですけれども、ただ、現実問題としては、例えば、十年、二十年たった後に再審開始決定が出て、それを、例えば間違っている、今回は十分な根拠がなければ抗告できないわけでありますので、その後、再審公判が始まるということになるかと思いますけれども、例えば、十年前のことについて覚えておられる方というのはどれだけおられるだろうかと。
日本の刑事裁判は、ドイツ、フランスなどと異なりまして、要するに、公判で、書類の作成者であるとかそういった者が供述を基本的にしなければ、その証拠が採用されないというルールを取っているわけでございまして、それを、例えば十年後にそのような裁判を現実にできるのであろうかといったことは若干疑問に思うところでありますが、一方で、そういうことができる事件もあるかもしれませんし、そういう事件になじまない事件、要するに、供述で犯罪者と被害者が直接の対応をしていて、供述が基本的な事件であるといった事件もございますので、そういった中で、やはり我々としては、やり直すべきでない裁判については、直ちにやり直して裁判をやれば、もう一回裁判をやり直せばいいんだとは言い難いという立場、スタンスでいるということでございます。
○和田(政)委員 十年前のことをどれだけの方が覚えているのかというのは、私の今の質問以前にもたしか局長はお話しになっていたというふうに思うんですけれども、十年前、覚えていると思いますよ、皆さん。
極めてやはり、こういう何かしらの事件に絡むこと、また、冤罪の被害者となって、冤罪事件のいわゆる被告ないし被告であった方は、そういうことを捜査によって突き詰められる中で、明確に覚えていると思いますし、目撃する方も、極めて印象的なことであれば、私はそれは覚えていると思うんですね。私も額に傷、おでこのところにあるんですけれども、これは三歳か四歳の頃に家の前の砂利道でこけてできた傷なんですけれども、もう四十八年前とかになりますけれども、それを明確に、こけたときのシーンなども覚えていますので。
ですので、私は、そういう答弁は曖昧だと思うんですよね。曖昧だとか主観だとか、そういったものでいわゆる証拠というものが出てこなかったりですとか不服申立てをやるとかということがやはり排除されなくてはならないというふうに普通は考えるわけですね。
局長も、この法文に基づいて懸命に答弁されているというのは分かるんです。これは閣法として今審議をしていますけれども、私も、議員立法案を見ましたし、そもそも、我々立法府ですので、今回、この審議が最終的にどういう形、この法案がどうなるかというのは分からないですけれども、冤罪を絶対に生み出してはならないということと、冤罪被害者がもし存在するならば速やかに救っていかなくてはならないということでありますので、私は現在野党ですけれども、これは与野党の各議員が責任を持って、さらに、この議員立法案を超える、もっと総体的な、根本的な、そういう法案もみんなで作って、やはりそういうことで審議をしていかなくてはならないのではないか、この閣法の審議の中でそういうふうに考えております。
大臣にお聞きをいたします。
今月二日の質疑で、私の質問に対し平口法務大臣は、本来やり直すべきでない裁判についても直ちにやり直すことになり、裁判の確定の意義などが損なわれるなどと答弁をいたしておりますけれども、証拠隠しや証拠の捏造などの不正があったにもかかわらず、不正をしなくても有罪になっていたかもしれないなどという理由で裁判のやり直しを認めないことの方が、刑事裁判に対する信頼が失われることになるというふうに私は思います。
本来、法的安定性というものは、十分に審理を尽くしたのだから蒸し返すことは許されないということであって、そもそも証拠隠しなどの不正があった場合には、審理を尽くしていませんから、法的安定性の前提を欠くことになるのではないでしょうか。大臣にお聞きをします。
○平口国務大臣 お答えをいたします。
裁判は、確定により拘束力を生じ、争えなくなるからこそ、紛争解決手段として機能するわけでございます。そのため、本来やり直すべきでない裁判でも直ちにやり直すこととなるような制度とすることにはやはり問題があり、再審開始決定に対する不服申立てを全面的に禁止することは困難であると考えております。
他方で、言うまでもなく、証拠を改ざん、捏造したりするようなことはあってはならず、仮にそうした行為が行われた場合には、別途、厳正に対処されるべきであるというふうに認識をしております。
その上で、検察当局においては、起訴後に被告人が罪を犯していない人であることを明らかにする証拠を収集、把握するに至った場合には、公判の進捗状況に応じて、その証拠を裁判に提出した上で公訴の取消しや無罪論告を行うほか、有罪判決が確定した後にそのような証拠の収集、把握に至った場合には、その証拠を裁判所に提出して検察官自ら再審請求をするなどの対応を取るべきであるとの考え方の下、適切な対応に努めているものというふうに承知をしております。
そして、一般論として申し上げれば、被告人と犯人との結びつきが主要な争点とされた事件の確定判決について、再審請求審において、その結びつきを立証するための主要な客観証拠に瑕疵があり、それを証拠として用いることができないような事情が明らかとなって再審開始決定があった場合、検察当局において不服申立てをしないこともあり得ると考えております。
○和田(政)委員 ルールがやはり分かりにくいし、客観的というよりも主観的な判断というものがなされるおそれがあるのではないかというところが、やはりこの質疑でも果たして明瞭になっているのかというところは私は思います。
この後、総理質疑もございますので、これは恐らく聞いている国民の皆さんも、私もかなり難しい法律用語を使って申し訳ないんですけれども、こういうようなより難しい用語の中で更に解釈が難しくなっているということがあると思いますので、総理質疑のときに、ちょっとスポーツの試合の例に例えて分かりやすくお聞きをしたいというふうに思いますので、また改めてそのときに明瞭な答えを政府側からもいただければというふうに思います。
三審制の下で確定した判決だから安易に再審を認めるべきではないと言いますけれども、福井事件では第一審は無罪判決です。控訴審がそれを破棄自判して有罪判決を言い渡したから、有罪判決が確定判決になりました。東京電力女性社員殺人事件も第一審は無罪判決、名張事件でも第一審は無罪判決です。
三審制の下で確定したというと、三回有罪判決を受けたかのように言われますけれども、これはそもそも誤りです。直接証人尋問、被告人質問をした第一審判決より、原則として書面審理である控訴審及び上告審判決の方が正しいと言えるのかという指摘もあります。
諸外国では、無罪判決に対する検察官の上訴を禁止している国も多いと承知をしております。我が国では無罪判決に対する検察官の上訴を認めておりますけれども、現在では、控訴審が第一審判決を破棄できるのは経験則、倫理則違反の場合に限られるべきだと言われております。
かつては控訴審が安易に破棄していたために誤った有罪判決が確定している場合があるのではないかという指摘もありますが、これはどうでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
個別事件における裁判所の判断に関わる事柄について、法務当局としてお答えすることは困難であることは御理解いただきたいと思いますが、我が国の刑事裁判制度におきましては、裁判所の判断の慎重さ、適正さを確保する観点から、上訴制度を設けて、三審制を採用しているところでございます。
このような審級制度の下においては、下級審裁判所の判断に対する不服申立てを可能とした上で、上級審裁判所が下級審裁判所の判断の当否を審査し、その判断が下級審裁判所の判断に優先し、より正しいものとして取り扱われるところ、そのような取扱いは裁判制度が紛争解決手段としてその役割を果たすために必要不可欠なものではないかと考えているところでございます。
○和田(政)委員 では、お聞きをいたしますけれども、五月二十九日の参考人質疑で、鴨志田参考人は、これまでに三つの裁判体の合計九人の裁判官が、もとい、第四次の最高裁で再審開始すべきとの反対意見を書いた宇賀裁判官を入れれば十人の裁判官が裁判をやり直すべきという判断をしたのに、一度も自白せず、満期服役し、間もなく九十九歳になろうとする原口さんを、これは大崎事件の元被告人、原口アヤ子さんですけれども、再審公判の法廷に立たせないままでよいのかと言いたいのですと訴えておられました。
新たな証拠が発見されたことは事実です。国もこれは争っていないというふうに承知をしております。問題は、新たな証拠が無罪を言い渡すべき明らかな証拠と言えるかどうかという点ですね。
これは本来、公開の法廷で、弁護人と検察官が正々堂々と争って決めることではないかと考えます。なぜ再審公判を開くことに抵抗するのかが分からないです。検察官は、再審公判を開くと無罪になることを恐れているのではないか、不正があったというのであれば、潔く再審公判に移行すればそれでいいのではないかということをお聞きをしたいというふうに思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のいわゆる大崎事件につきましては、これまで二度、再審開始決定があったものの、いずれも上級審で取り消され、直近の最高裁決定においても、本件各再審請求において提出された各新証拠を併せ考慮してみても、各確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生ずる余地はないなどと判示されているものと承知しております。
その上で、今の御質問に対しては、お尋ねでありますけれども、現在、再審請求審係属中の個別事件に関わる事柄でございますので、法務当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
○和田(政)委員 時間が来たので終わりますけれども、正々堂々とすべきだということをまた改めて次回以降質問していきたいというふうに思います。
ありがとうございます。
○井上委員長 次に、小竹凱君。
○小竹委員 国民民主党の小竹凱です。
昨日、参考人質疑、袴田事件で再審開始決定を出された元裁判長であります村山参考人から御意見いただきまして、私は、本当にこのタイミングで村山参考人にお越しいただいたことは大変喜ばしいことだと思います。
といいますのも、やはり、この改正案、どうしても私から見ると、裁判所の方にしわ寄せをしているようにも見えてしまいまして、真に再審法改正と言えるのかという部分がありました。その中で、裁判官の目線が抜けていた部分に関して、裁判官だからこそ見える視点で御意見いただけたということは、議論を深める意味で大変すばらしい指摘だったというふうに感じております。
昨日の参考人の方から、袴田事件の第一次再審請求審では、地裁だけで十三年、高裁で十年、最高裁で四年、合計二十七年を費やし、その二十七年間に検察官から開示された証拠がゼロであったということが明言されております。つまり、再審無罪を決定づけた五点の衣類のカラー写真も、当初は手元になかったというわけであります。二十七年間開示ゼロ、こういった事実を今回の立法に生かさずして、真の再審法改正とは言えないというふうに考えております。
裁判官の裁量に委ねられ、明確な条文がないこと自体が問題であり、今回のルールの条文化こそが無辜の救済の大前提であります。この認識を共有していただくために、具体的に質問に入っていきます。先ほどからの答弁で、職権主義ということは、そういう構造へのこだわりといいますか、十分によく分かりましたので、私もこの職権のところは十分に配慮しながら質問に入っていきたいというふうに思います。
提出命令と開示は別物だということを昨日御意見いただきましたので、ここに関して伺いたいというふうに思います。
四百四十五条の二の部分で、証拠提出命令について、政府答弁はこれまで、裁判所に提出された証拠は事実上請求人にも届くであったり、実質的に開示の機能を果たすといった旨の答弁がなされてきましたが、参考人からは、政府案が定めたものはあくまでも裁判所の事実取調べの一環として裁判所へ証拠を提出させる手続にすぎず、本来の証拠開示ではないというような否定がなされておりました。証拠開示は、請求人側が請求理由を基礎づける事実の存否や新証拠の信用性を確認するために行う準備行為でありまして、証拠の提出は、裁判所が請求人の主張が正しいかを判断するために検察官からの証拠を出させる行為だというふうに、その違いを説明されておりました。
つまり、主語が違いまして、視点が違います。そうなれば、当然に必要性の判断も違ってくるわけであります。当然に、開示される範囲は証拠開示の方が広いというふうに理解できると思います。
これは技術的差異ではなくて構造的な違いだというふうに説明されておりましたが、そのまま受けるとすれば、政府はこれまで、この違いを認識、理解した上で閣法を設計されたのか、それとも、裁判所への提出、また請求人への開示を同じものとして包んで答弁されてきたのか、具体的に見解をお願いいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、本法律案におきましては、証拠の提出命令制度を創設して、裁判所が、一定の要件の下で、検察官に命じて裁判所に証拠を提出させる仕組みを設けることとしております。
今、包んで答弁してきたのかというお話でありますけれども、これは私が答弁にもしかして語弊があることもあったかもしれませんけれども、証拠の提出命令と証拠の開示命令は分けて答弁しているつもりでございます。
一方で、いわゆる弁護人であるとか再審請求者側への証拠の、検察官、警察に保管されている記録がその人に見れるようになるかという観点から、いわゆるという文言を使って、その証拠開示の問題と証拠提出の問題を一緒に議論、一緒に議論というか、いわゆる証拠開示という形で言葉を使ったこともございましたので、そういう語弊があるかもしれませんが、少なくとも、ここの点は法制審議会でも強く議論されて、大きな論点としてあった問題でありますので、意図的に同じものとして包んだとか、そういうことは全くございませんし、これが裁判所に提出されれば、再審請求人側、弁護人はこれを謄写する権利を持ちますので、そのような機能を果たすということは事実であるというふうに考えております。
○小竹委員 いわゆるということを使ったとかそういうことを言っているわけではなくて、しっかりとそこの違いを認識された上で立法に当たられたという前提が理解できました。
その上で、裁判官であった村山参考人からは、裁判官の思考特性について述べられておりました。
裁判官は、通常審でベストエビデンスの取調べに慣れており、重複する証拠であったり証明力の弱そうな証拠は却下する運用に身を置いていると指摘をされております。これは、元裁判官だからこそ語れる、極めて重い内部からの証言だと受け止めております。
つまり、閣法のように、裁判所が認める範囲に限って提出を命じる仕組みであると、裁判所のフィルター段階で、請求人にとって実は決定的な証拠が落ちる構造的リスクが高いということだと私は考えております。例えば、布川事件の取調べ録音テープの改ざんのように、請求人本人でなければ重要性を見抜けない証拠こそが再審を動かしてきた、こういった事実があります。
政府は、この思考特性から招かれる、裁判所のフィルターによる重要証拠の取りこぼしリスクを立法事実としてどのように検討されてきたのか、お答えください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
再審請求審は、通常審と異なりまして、裁判所が主体的に再審請求理由について審理、判断する手続でございますので、裁判所は、そのことを前提として証拠の提出命令についての判断を行うものと考えております。また、本法律案における証拠の提出命令についての裁判所の判断に不服があれば、不服申立てもできるわけでございます。
その上で、村山参考人の御発言のフィルターというお話でありますが、ちょっと私は、法務当局の立場で、裁判官にそのような思考があるなどということについての評価を申し上げるのは大変難しいということをお伝えした上で、この証拠の提出命令制度については、裁判所により適切に運用されていくものと考えているところでございます。
○小竹委員 であれば、四百四十五の三の三項では、提出された証拠というのが裁判所だけに見えるインカメラ方式でありますよね、今回の条文だけでいうと、このインカメラ方式が設けられたわけでありますけれども、改ざんされた録音テープなどは、請求人本人が聞き直す機会というのは設けられていないわけでありまして、請求人本人への情報提供にはならないということにはどういうふうに反論されますでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
まず、大前提といたしまして、どの事件かということは抜きにいたしまして、例えば、供述人の供述の信用性が争いになっている事件におきまして、その録音テープを検察ないし警察が保管しているという状況が判明したとして、再審請求人側がその供述の信用性を争うので、それに関する供述調書あるいは録音テープその他一切といったような特定をして証拠提出命令制度を使えば、当然それは関連性がありますし、取調べの必要性、相当性も通常はあるというふうに考えられるところでございます。
したがって、それを、裁判所が再審請求人側の請求を受けて、取り調べて、検察官に出させれば、当然それは関連性があるものでありますので、提出されることが普通ではないかというか、普通と言ったらあれですが、まさにそれこそがベストエビデンスなのではないかと思われるところでございまして、そうしますと、それを当然、再審請求人側、弁護人側は謄写できるわけでございますので、その内容を確認できるということになるかというふうに思っております。
○小竹委員 今の答弁に対する反論といいますか、その後ちょっと一問お聞きしたいと思いますが、この後大臣に一問お聞きしますが、これまでの証拠自体が、関連性とかそういった、請求人が特定できたものではなくて、偶然その証拠が出てきたということが事実上たくさんありますので、ちょっとそこについて一問伺いたいと思います。その前提の質問をします。
次に、命令の条文化が必要な理由を是非御理解いただきたく、質問します。
今日の、先ほど國重委員は、私はこれをしたいんですと言っておられましたが、私は、職権での証拠開示命令を条文化してほしく、今日はこの質問をしております。
政府は、これまでの審議で、運用で対応可能だということを何度も言っております。現行の訴訟指揮で足りるというふうに答弁をされております。
しかし、参考人からは、裁判所に対する証拠提出命令は義務づける一方で、裁判所が裁量で証拠開示命令を出せないとするこの論理は不合理であるというふうに反論されております。しかも、訴訟指揮に基づく証拠開示命令は判例でも認められておりますし、答弁でも認められております。
何で閣法はこの条文化を避けておるのか、お答えいただけますでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
再審請求審は、とにかく、再審請求理由について、裁判所が主体となって事実の取調べを進めたり判断していくという手続なのでございます。
そういう意味において、先ほど来の議論にもありましたけれども、裁判所が、証拠の提出命令の前提としての例えば証拠の標目の一覧表であるなどを出させたり、その内容を議論したりする中で、例えば、それに更に検察官に開示させたいとなれば、弁護人側がこういう再審請求理由を立てれば、更に新たな再審請求理由を追加すればこういった関連する証拠も開示の対象になるといったようなことを判断するのであれば、裁判所から再審請求人側に対して、再審請求理由をこのように追加したらいかがかといったことも、コミュニケーションとしてできるわけであります。これは、裁判所が主体となる手続でありますので、当然でございます。
そういった中で、裁判所が再審請求者側の御意向も踏まえて、どこを争点にしているのかということも踏まえて自ら主体的にやっていきますと、多くのことは裁判所の判断でできるというふうに考えているところでございまして、それは、開示を望んでいないというのではなくて、というよりは、裁判所が主体的にやることが大事。その結果として、証拠が弁護側に見れるようになったり、リスト的なものが、結果として、弁護側に見えるリストが弁護側に渡ったり、裁判所を通じて渡ることもあるのだろうというふうに考えているところでございます。
○小竹委員 裁判官は条文によって運用しているわけなので、私は、ここは条文化してほしいというふうに思いますし、今回、提出命令ができることによって、むしろ、裁判官にとっては、開示が任意の勧告なのか強制力のある命令なのかという、ここを求められるんじゃないかというふうに思います。検察官が任意にこだわっているのは、出したくない場合を、拒む余地を残しているのではないかと私は察するところであります。
例えば、袴田事件で五点の衣類のカラー写真までにこれほど時間がかかったことであったり、福井事件では、第二次再審請求で、裁判所が開示命令に踏み切る用意があると明言したときに一気に二百八十七点もの証拠が出されてきた。こういった歴史が何よりも雄弁にこれを語っているというふうに思います。
この任意の部分を残しているケース、開示命令を残しているところが、今後もこの条文ができたことを盾に開示を拒むケースがあるというふうに考えておりまして、条文上明確な命令権限を裁判所に与えなければ、現状維持、場合によっては後退もあり得ると私は考えております。それでもなおこのままで、この閣法で足りると言い切れるのか、お答えください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
検察がといいますか、法務当局、我々として、なぜ開示命令ではなくて提出命令という制度を創設したかと言われれば、法制審における議論を経て、手続構造論としても、様々な意味からも、再審請求審というのは、まさに裁判所自身が要するに再審請求理由があるかどうかを判断する手続でありますので、そうである以上、裁判所が主体的に証拠を調べていくというのが原則であるということを申し上げているだけでございまして、そこは、だから、任意だから出したくないとか、そういう趣旨では全くないと。
裁判所からしますと、関連するかどうかを判断するに当たって、例えば、弁護人に再審請求理由を追加させれば、関連する証拠の範囲が広くなって、自分がインカメラで見た証拠も再審請求側に提示できるようになる、提出命令制度の枠内でですね。したがって、検察官に義務を負わせられるわけであります。
ですから、検察官が得だとか損だとか、そういうことではなくて、先ほど昔の事件を御指摘されましたけれども、繰り返し申し上げておりますけれども、平成十六年改正以降の証拠開示のルールの制度、通常審の変更に伴いまして様々な運用が変わった結果として、再審請求審においても様々な任意の開示が行われるようになったということでありますが、繰り返し申し上げたいのは、これは裁判所が主体的にやる手続なんだということを申し上げているだけでございます。裁判所がその関連性を広げれば開示させられるわけでございますので。
○小竹委員 分かりました。
大臣に一問お伺いします。
袴田事件では五点の衣類のカラー写真、福井事件では二百八十七点もの新証拠、布川事件では三十年以上開示されなかった多数の未提出証拠が再審開始の決め手となりました。これらは、請求人が当初から狙って請求できた証拠というより、ある種、偶然開示されたことによって、初めて決定的意味を持つことが分かった証拠であったと思います。後からこれは関連性があったというだけであって、当初から関連性という枠でこれを狙えて請求できたとは私は考えられません。
大臣は、過去のこの現実をどのように受け止めますか。
○平口国務大臣 お答えいたします。
御指摘の村山参考人の御発言は、個別事件における検察当局や再審請求者側の訴訟活動の内容の評価に関わるものであると理解いたしております。したがって、再審請求者側が特定の証拠の開示を求めた意図についてはお答えする立場にはなく、御発言自体についての所感をお答えすることも差し控えたいと思います。
その上で、一般論として申し上げれば、検察当局は、再審請求審において、再審請求者側からの証拠開示命令の申立て等を受けて、個別の事案ごとに、裁判所の意向を踏まえつつ、弁護人が提出した新証拠の明白性を裁判所が判断するため必要性、関連性があり、かつ弊害がなく相当と考えられる場合には、検察官の手持ち証拠を裁判所に提出するということなど、裁判所の判断に必要な証拠を柔軟に提出しているものと承知をいたしております。
○小竹委員 ちょっと時間がなくなってきたので、一問飛ばします。
四月十二日の朝日新聞朝刊にも掲載されておりましたが、職権による証拠開示命令を否定することは再審事件に真摯に向き合おうとする裁判官の手足を縛ることとなり、元裁判官や現役の裁判官からも懸念が出ているということであります。これは、私は異常なことだというふうに思います。
政府は法案作成時に、最高裁、また現場の裁判官との実質的なすり合わせ、こういったものを行ったのか、行ったならどのように意見聴取をしたのか、お答えいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の村山参考人の御意見は、裁判所の職権で、再審請求理由との関連性を問わず、検察官に対して証拠の提出、開示を命ずることができる制度を設けるべきといったものであったと承知しております。
村山参考人が委員を務めていた法制審議会の部会では、村山参考人のほかに、東京地裁の部総括判事、最高裁事務総局刑事局長、最高裁事務総局刑事局二課長、元裁判官の研究者が委員、幹事を務めておりました。それから、第三回会議において元刑事裁判官に対するヒアリングを実施されたところでございます。その上で、村山参考人以外の裁判官、元裁判官からは、関連性を問わない証拠の提出、開示命令制度について支持する御意見は示されなかったところでございます。
さらに、法制審の部会におきましては、東京地裁部総括判事の委員から、東京地方裁判所本庁と同裁判所立川支部の部総括判事らによる証拠の提出命令に関する勉強会の議論におきまして、これまで複数の重大再審請求事件に関与してきたが、これまでの実務でも裁判所が関連性のない証拠について開示を勧告したという事例を見たことがなく、そのような規定が必要であるとも思われないとの意見が紹介されたところでございました。
本法律案は、このような法制審における議論や答申を踏まえたところでございます。
○小竹委員 では、なぜこのような懸念というか、意見書のようなものが出ているのかと私は謎なんですけれども、福井事件においては、裁判所が可能な限り幅広い証拠開示を求めたのは裁判所が職権で開示を促すべき局面が存在するという、この実証だというふうに思います。
第二次再審で二百八十七点出てきた経緯を政府はそもそもどういうふうに総括しているのか、これが一点。また、裁判所の積極的な訴訟指揮があったからこそ動いたというこの事実を踏まえてもなお、この閣法に職権の証拠開示命令を書き込まないのか。是非お答えください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のいわゆる福井女子中学生殺人事件の第二次再審請求審において合計二百八十七点の証拠が任意開示されたのは、弁護人が検察官に対し広範な証拠開示をするよう求め、裁判所においても、弁護人からの求めを踏まえ、検察官に対し広範な証拠開示をするよう求めたことから、検察官が裁判所の意向を踏まえ、開示すべき証拠を広範に探索して、その上で任意開示したことによるものというふうに認識しているところでございます。
再審請求審においては、職権主義の下、裁判所が必要な審理を主体的に行うものでございますので、本法律案における証拠の提出命令制度では、裁判所が、今、先ほど来答弁しているとおり、一定の要件の下で、請求により又は職権で、自ら検察官に対し証拠の提出を命じなければならないということとしておりますので、職権においてもそのような請求は、開示をさせること、開示じゃないですね、提出をさせることはできるということでございます。
○小竹委員 では、やはり関連性とかそういうことを抜きにした職権開示を、義務ではなくてできる規定で設けることには何ら不備はないんじゃないかなと思います。
法務省としては、これまでも、判例とか運用でなされてきたものを明文化規定する整備というのは、この再審法に限らず行ってきたと思います。例えば昨年の譲渡担保契約、所有権留保の法律というのは、まさに運用でやってきたものを条文化するということをして、法律の予見可能性とか、関係する取引の安定性を高めるという目的でやってきたというふうに思います。
であれば、これはまさに今回は同じだというふうに思いまして、これまで裁判官格差、再審格差が指摘をされてこの再審の改正につながったんじゃないかというふうに思いますし、これまで再審に関する刑訴法はたったの十九条しかなかった、ほとんどを運用に委ねていたということであれば、これを変えるのが今回の再審法改正なんじゃないかと思います。
私はやはり、条文に書き込んでいく、これはできる規定だったらいいんじゃないですか、職権証拠開示命令。運用を否定しない。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
結論として、今回は証拠の提出命令制度を創設いたしましたので、これは裁判官が主体的に調べる仕組みでありまして、それは職権でも使えますし、請求人の請求に基づいてもできますし、そこは広くできるわけでございますので、これはまさに、裁判所の御判断に懸かっているということはこれまでどおりということだと理解しております。
○小竹委員 局長も私も、全く別方向へ行っているわけじゃなくて、同じことを、できるとは言っているので、であれば、そこをしっかりと条文化してほしいというのをずっと、前回から、前々回からも言っているんですけれども、引き続き求めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、井戸まさえ君。
○井戸委員 国民民主党の井戸まさえです。
先日、狭山事件の第三次再審請求中に亡くなられた石川一雄さんの妻、石川早智子さんのお話を伺いました。一雄さんは、長年にわたり再審を求め続けながら、その願いがかなわぬまま亡くなられました。
再審制度は、誤った裁判によって人生を奪われた人を救済するための最後のとりでです。だからこそ、生きているうちに救済できる制度にしなければなりません。その思いを念頭に、そして皆さんと共有しながら、今日は三つの柱から政府案について確認してまいりたいと思います。
まず一つ目は、誤判を受けたかもしれない人をどのように支えるのか。再審請求段階における国選弁護人の問題です。
五月二十九日の法務委員会でもこの問題を私は取り上げましたけれども、政府からは、再審手続は確定有罪判決を例外的に是正する非常救済手段であること、本格的な審理が必要になる事件は一部にとどまることを理由に、再審請求段階において公費で弁護人を付する必要性を通常審と同様に考えることは困難であるという答弁がありました。しかし、私はこの考え方には強い疑問を持っています。
まず、前提を確認させてください。
刑事被告人に国選弁護人制度が設けられているのは、資力の有無にかかわらず、十分な弁護を受ける機会を保障し、防御権を実効的に確保するとともに、公正な裁判を受ける権利を保障するためという理解でよろしいでしょうか、大臣。
○平口国務大臣 お答えいたします。
被告人の国選弁護制度の趣旨は、被告人が貧困等の理由により自ら弁護人を選任し得ない場合において、弁護人依頼権を実質的に保障することにあると考えております。
○井戸委員 今の趣旨に照らせば、私は、再審請求段階、さらには再審請求前の準備段階こそ、弁護人による支援が必要なのではないかと考えます。この点について、鴨志田参考人も、大崎事件の経験を踏まえて、再審請求人は捜査機関にどのような証拠が眠っているのかも分からない中で手探りで証拠開示を求めざるを得ない、そして、本人だけで巨大な司法組織に向き合うことの困難さを示されました。
国選弁護人制度の趣旨が、資力の有無によって公平な裁判を受ける権利が左右されないようにすることであるならば、その必要性は、再審請求の場面においても少なくとも同様に、あるいはそれ以上に認められなければならないのではないでしょうか。誤判を受けたかもしれない人こそ、そして再審請求前の最も困難な段階だからこそ、国選弁護人による支援が必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘の再審請求審また再審請求の準備段階における国選弁護制度につきましては、法制審議会で議論が行われまして、今委員が一部御紹介していただいたとおり前にも答弁したところでありますけれども、再審手続の位置づけや再審請求の実情を踏まえると、再審請求審において公費負担で弁護人を付す必要性について通常審と同様に考えることは困難である、公費支出の適正の観点から疑問が残るといった意見が大勢を占め、再審請求の準備段階における国選弁護制度に関しても、いまだ再審請求すらしていない者について公費負担で弁護人を付すものであることから、その必要性、相当についてより慎重な検討を要するといった意見が大勢を占めたところでございまして、いずれも答申には盛り込まれませんでした。
その結果、法制審における議論の状況を踏まえますと、御指摘のような制度を設けることについては慎重な検討を要するものではないかと考えているところでございます。
○井戸委員 本当にその再審請求人の方々の状況というのを分かっていらっしゃるんでしょうか。
そして、これは、弁護人が早い段階から関与することで、請求内容や争点の整理が進んで、再審請求として例えば十分に理由があるという事件とそうでない事件というのを適切に見極めることが可能になる、結果として、裁判所や関係機関の負担軽減にも資すると思うんです。
しかも、統計資料を見れば、再審請求を行う、そうした方々は、受理総数でここ数年を見ていくと、大体四百件前後なんです。そして、既済人員は二百から二百五十人程度なんですよ。うち再審決定するのが年間ゼロから四程度という形なんですけれども、対象者が無限に広がるわけではないんですよ。手続保障としてこれはやらなければいけないと思っています。
仮に一律の制度導入は難しいというのであれば、例えば、死刑事件とか無期懲役事件、これを対象に限定するとか、あるいは活動の時間、費用に一定の条件を設けるなど、段階的な導入というのも考えられると思うんです。こうしたことを検討すべきではないかと思いますけれども、改めて答弁をお願いいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
現在の再審請求の請求数であるとか既決に至る件数というのは、委員御指摘のとおりでございます。
その上で、一方で、例えば、再審請求をする前に国選弁護制度をつけようといった場合には、これは分母は相当な数に及ぶ。例えば、一年間に二十万人が有罪判決を受けるわけでありますが、この人たちに国選弁護が全てつくといった場合にどのぐらい増えるのかといったことは、結構増える可能性もないではないということは、可能性としては考慮しなきゃいけないということだと思っています。
その上で、準備段階において、いまだ再審請求がされていない段階で、再審請求がされるかも不明ということでございますと、例えば、事件を限定すべきという考えもあるかと思うんですが、これを的確に選別することはなかなか困難でありまして、実際、本格的な審理がなされる事件というのはほんの一部にとどまっていて、実は、同一の者が繰り返し再審請求をしている場面というのも結構あるわけでございます。
こうしたことからすると、再審請求の準備段階における国選弁護制度については、事件の限定や上限額の設定をするとしても、なかなか、その必要性であるとか公費支出の適正の観点から疑問が残ってしまうところでございまして、慎重な検討を要すると考えているところでございます。
○井戸委員 しかしながら、やはりこれは、本当に巨大なそうした司法組織に対して闘っていくという意味では、全く、例えば本人訴訟でそれができるかといったら、できないわけですよね、事実上は。なので、やはりそこは、冤罪の人たちがその中に含まれている、そして、当然ですけれども、自分は冤罪だという方たちに対してアシストしていくというのは、それは責務だと思います。なので、引き続きこのところは検討を続けていただきたいというふうにお願いをいたします。
昨日、村山参考人が、一九七〇年代、八〇年代、冤罪がいろいろあって、そして、支援活動も含めて歴史があって今があるというようなお話をなさっていました。そして、あの頃にこういった再審法が改正されていたならば、今、違った状況になっているのではないかと。前回の質問で私もそう言ったんですけれども、同じ思いをいたしております。
そうした中で、先日の質疑でも触れた佐々木静子元参議院議員が弁護を務めた事件について触れたいと思います。八海事件について触れたいと思います。
八海事件というのは、一九五一年に、山口県の田布施町といえば岸総理だとか佐藤総理の御地元なんですけれども、そこで発生した強盗殺人事件です。今回、この度の再審法の改正で注目されて、近年テレビで特集が組まれたりなどしていたので、見ていらっしゃる方もおられるのではないでしょうか。余りの悲惨な現場で、単独犯とは思えなかったことから、複数犯と断定して捜査が進んでいきます。真犯人による虚偽の自白などを契機として、無実の四人が逮捕され、死刑そして無期懲役の判決を受けていく。こうしたことで、無罪が確定するまでは十八年、七度の裁判を要した、有名な、ある意味著名な冤罪事件になっています。
問題は、その過程で何が起こってきたかです。弁護人だった佐々木静子弁護士の手記によれば、弁護団が、真犯人が単独犯であることを示す文書が存在するという情報を得る。しかし、その情報を得たとしても、その文書があるということが分かっても、現物にはたどり着けないんです。そこで、弁護団は何をやったかというと、その受刑者がいる広島刑務所の近くのところで、差し入れの販売店の二階に部屋を借りた。中にいた出所者が、そうした、真犯人からいろいろな情報を聞いて、そして、実は単独犯だったという手紙を最高裁だとか検察だとかに書いて送って、その数十八通。しかしながら、刑務所内でそれを留め置かれて、ある意味、先ほどの和田委員のお話じゃないですけれども、隠蔽が行われていたわけです。隠蔽が行われていたけれども、その情報を更に知りたいと思って、その刑務所の前のところに部屋を借りて、朝、そこから、ずっと、出所される方を一人一人インタビューをして、そして、実際にその文書がその刑務所内にあるんだ、そして、その受刑者の方も本当に反省をして、自分が単独犯だったということを何度も何度もそうやって言っているにもかかわらず、ずっとそれが知られずにいた。
結果、どうなったかというと、それは国会なんですよ。参議院の法務委員会で、これは昭和四十三年のことなんですけれども、亀田得治議員というのがこれを追及をいたしまして、犯人が最高検察庁や裁判所などに送っていた十八通の文書、これがその質問によって矯正局から最高裁に出される、提出をされる。それで、死刑判決者が無罪をかち取るということになるわけなんです。
そして、亀田参議院議員はこのように、そのときの議事録を読みますとおっしゃっています。法律の世界で一番大切なのは真実だと思う、事実、真実に関する文書があれば、弁護側に有利か検察側に有利かは二の次であって、その存在そのものが大切にされなければならない。まさにこれは、昨日、袴田ひで子参考人がおっしゃった、よい証拠も悪い証拠も全部出して裁判をやっていただきたいという願いにも重なります。
さらに、亀田議員は、こうした文書の目録、つまりリストの必要性も指摘していました。まさに、昨日、村山参考人が必要だと述べられたのもこの証拠の一覧表であり、鴨志田参考人は、大崎事件で検察官が不存在と説明していた証拠が後に発見されたことや、証拠リストがあれば開示漏れを妨げた可能性を指摘されておりました。
昭和四十三年に亀田得治議員が求めたことが、通常審では、平成十六年の改正以降、一定程度制度化がされた。しかしながら、再審ではいまだに十分に実現されていない。何が存在するのか分からない状況からいまだに出発をしていかなければいけない。そして、当時と同じように、刑務所の前で張り込みしたり国会で証拠を出させたりしなければ真実にたどり着けないというのは、今も同じ状況。そのような制度で本当にいいんでしょうか。
この問題から、証拠の目的外使用禁止規定について伺っていきたいと思っています。
先ほどの事件も含めてですけれども、村山参考人もおっしゃっていましたけれども、目的外使用禁止規定について強く問題提起されて、やはりマスコミ、メディアがいろいろとこういった事件の詳細をやる。そして、八海事件においては、映画も作られるんです。そして、物すごい世論喚起がされて、それが後押しになって、その参議院の質疑につながって、証拠が開示をされていく、そして死刑判決から無罪になっていく、こういったことが起こってくる。多くの方々が協力をしながら、冤罪事件では、こうした市民活動もそうですけれども、著名な作家、ジャーナリスト、様々な発信、映画も含めてですけれども、これが再審そして無罪につながっていくということになっていきます。
再審請求人の支援活動、専門家への意見照会、報道、研究、出版、映画化など、冤罪の実態を社会に伝えるための活動において証拠資料が活用される場合、それが目的外使用に当たりますでしょうか。映画や書籍化をして得られた報酬、その一部をその弁護士も所属する支援団体が得たりした場合は対象となるのか、お答えをいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
ちょっと今かなり広く一緒に御質問を受けましたので、一概に答えるのはあれなんですけれども、難しいのですけれども、本法律案は、証拠の目的外使用の禁止の下でも、謄写した証拠の複製等を再審手続やその準備に使用することはもとより許されるものでございます。ですから、今、先ほどお話のあったような事例のうち、これは再審手続の準備に使用するものであるというふうに認められるものであれば、もとよりこの禁止には当たらないということでございます。
その上で、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるということでございますけれども、違反した場合の措置については、複製等の内容や行為の目的、態様等の個別の事情を考慮することとしておりまして、それぞれ当該措置を取るべきものについて適切な判断がなされるべきものと考えているほかに、罰則についてですけれども、弁護人につきましては、営利目的ではなくて、この複製を交付することについての対価として利益を得る目的が認められる場合に限るものでございますので、そのような場合でなければ罰則の対象にはならないということでございます。
○井戸委員 ということは、映画化されたりそうした書籍の利益で、売上げでそうした活動に寄附をされたところを得たとしても、それは当たらないということで一応確認をさせていただきました。それでよろしいですね。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
そのように、映画であるとか書籍であるとかというふうに一般化された上で、それがどういう事案であるか分からないで当たるか当たらないかを答えるのは大変難しゅうございますけれども、いずれにしましても、弁護人について、先ほど最後のところで申し上げたところでいきますと、その複製の目的外使用の対価として利益を得る目的でなければ罰則には当たらないということでございます。
○井戸委員 今、冤罪事件でいろいろそうした映画が作られて、自主上映というのをやっているんですよ。そういったことで、こういったこともその対象になったら、非常に、ある種、抑止になってしまうというか、だと思うので、そうしたところを確認をさせていただきました。世論の後押しは本当に大事なところなので、今確認できてよかったです。
ちょっと時間がないので、通告を飛ばしまして、質問の八に行きます。
政府案では、再審開始決定に対する検察官の不服申立てに対して、原則禁止としつつも、十分な根拠がある場合に限って例外的に認めるとされています。
この点について、先般の質疑で、小竹委員の質疑で、検察官の不服申立てが棄却された場合の取扱いについての質問がありました。これに対して、例外要件を満たさない不服申立ては刑事訴訟上違法になると考えられること、また、検察官として十分な根拠があると考えて不服申立てをしたにもかかわらず棄却された場合には、裁判所の認定判断との相違点について検討、分析をするなどということが答弁されています。さらには、再審開始決定に対する不服申立てが棄却された場合は、これを単なる敗訴事例と整理するにとどまらない効果があるという答弁もありました。単なる敗訴事例にとどまらないというのであれば、具体的に、誰が、どのような基準で、どのような手続によって検証していくのか。
そして、とりわけ再審開始決定に対する抗告というのは、単なる訴訟上の一手段ではない。その抗告によって、無罪を訴える人たちの救済が更に何年も遅れる可能性もある。場合によっては、生きているうちに救済するという再審制度の理念そのものを失うことにもなると思います。
さらに、先日の質疑では、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが十分な根拠に基づくものかどうかに関しては、国家賠償法上の違法性判断の対象にもなり得るという答弁もありました。
しかし、ここに私は大きな問題があると思う。仮に、十分な根拠を欠く検察官抗告によって再審開始や無罪の判定が遅れ、最終的に国家賠償責任を認められた場合、その賠償を負担するのは国、すなわち国民なんです。本来、違法又は不適切な抗告によって救済を遅らせたのであれば、その判断を行った検察組織自体が厳しく検証されるべきです。ところが、結果として、賠償金は国民の税金から支払われる。これでは、冤罪被害者は二重に苦しみ、国民もまた負担を負うことになります。
検察官抗告を制度として残すのであれば、少なくとも、抗告が棄却された場合の検証手続、責任の所在、再発防止策をあらかじめ明確にしておく必要があるのではないでしょうか。国家賠償で国民が負担すれば済むという話ではありません。不適切な抗告によって救済が遅れた場合、その責任をどのように検察組織として明らかにするのか、見解を伺います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
今、たくさんの御質問が入っていたように思いますので、もし答弁が足らなければ教えていただきたいと思いますけれども、まず、再審無罪に限らずですけれども、無罪判決等があった場合には、事件における捜査、公判活動の問題点を検討して、必要に応じて検察官の間で問題意識を共有して、反省すべき点については反省して、今後の捜査、公判の教訓としているものでございます。
その上で、今回の本法案におきましては、再審請求に対する抗告、検察官の不服申立てを原則禁止とした上で、今委員から御紹介のあったような、それを実効性を担保する措置を、法案として、一年以内にするとかそういったことも含めて手だてを講じているところでございます。
その上で、そのような事件があって、そのような、先ほど申し上げたように、無罪等があった場合には検察部内で検討しているわけでありますけれども、それが、事案によって、国民にとって、例えば耳目を集めるような形で、国民の信頼を確保する観点から必要だと考えられる場合には、これを検証結果として対外的に公表することもあるものと考えております。
今現在、福井女子中学生事件につきましては、今まで公表していた内容に加えて、関係者のヒアリングなどの調査を継続しているところでございます。
その上で、それに関与した検察官が懲戒に当たるのではないか、あるいは犯罪に当たるのではないかといった御指摘もありましたけれども、これにつきましては、やはり個別事案ごとに、国家公務員法に定める職務上の義務に違反したことなどの懲戒事由に該当するか、あるいは、個々の事案に応じて、法と証拠に基づいて、検察官の活動が犯罪に該当するか否かを検討した上で決すべきものでございまして、一概に申し上げることは困難であることを御理解いただきたいと思います。
○井戸委員 今、問題点を共有して反省をするとおっしゃったんですけれども、それだけなんでしょうか。
そして、先ほど、実際に問題があったならば、その検察官に対して、どういったことで罪に問えるかどうかということをやられるとおっしゃったんですけれども、これまでに検察官の中でこうした冤罪事件に関して罪に問われた方というのはいらっしゃるんでしょうか。大阪地検の特捜部の証拠改ざん事件では、証拠データを書き換えた検察官の刑事責任が問われたけれども、ほかでは、同じようにこういったことというのは問われたことがあるんでしょうか。その数というのを私は事前に伺っていますけれども、改めて教えてください。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
まず、冤罪という言葉が法務省は使わない言葉でございまして、いわゆる無罪が出たときに、その主任検察官であるとかそういった者を懲戒処分したことがあるかといいますと、済みません、私は、今現在、数字を持っていないというのが現状でございます。
それから、いわゆる厚生労働省の元局長の無罪事件につきましては、関係者、とりわけ起訴時の主任検察官であって証拠隠滅事件の行為者である検察官については、懲戒免職処分とともに刑事事件の立件がなされたものというふうに認識しているところでございます。
○井戸委員 私が事前のレクで聞いたのは、こうしたことで検察官が罪に問われたケースというのはないということで、大阪のケースは別ですよ、それ以外について言ったらば、ないということでお答えをいただいたんですけれども、それはそのとおりでよろしいでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
網羅的に把握していないということでございまして、いずれにしても、先ほどの一件以外は、現時点で承知しているものはないということでございます。
○井戸委員 網羅的に把握してくださいよ。これだけ冤罪があるわけじゃないですか。そして、それが立法事実として、今これで再審法を議論しているんじゃないですか。どうなんですか。その態度でいいんでしょうか。冤罪はなくなるんでしょうか。
もう一回ちょっと、そのところ、どうですか。納得いかないですよ。調べなきゃ駄目でしょう。そもそも立法事実なんですから、この法律案を作る前にそうしたことは確かめて、そして、それこそ共有と反省をしてくださいよ。
○佐藤政府参考人 改めてお答えします。
冤罪という定義、冤罪という表現でありますけれども、様々なものがございまして、再審無罪に至ったものを冤罪と言う方もおられますし、一般の事件で、通常審で無罪になった方も冤罪と呼ばれますし、例えば先ほどの痴漢冤罪なんというのも、例えば警察に逮捕されたことをもって冤罪という表現をしたりするのは一般でございますので、我々として特定の定義を持っているわけではないんですけれども、ただ、相当数、一審、二審、三審と、通常審でも無罪事件が確定しているのは事実でございます。
無罪事件が確定する、そういう中で、いろいろあるわけです、無罪に至る理由には様々なものがあるわけでありまして、ただ、やはり、有罪を認定するだけの合理的な疑いを入れる程度の立証ができなかったという事案におきまして、当該検察官にどのような、それは必ず処分すべきかどうかといったことについては様々な御議論があり得るのかもしれませんが、ただ、あくまで、例えば否認する被告人に対して、事件によって、個別事情によって異なりますけれども、有罪を主張したことが、それは結果的に無罪だったから犯罪であったり懲戒処分を負わせるべきだということであれば、それはなかなか困難であるというふうに考えているところでございます。
○井戸委員 全てのことに言っているのではなくて、やはり、証拠隠滅をしたりだとか、ある種意図的にやっているのではないかと思われるようなものがたくさん出てきているわけじゃないですか、これだけ。それに対して、しっかり処分も含めてやってもらわないと、結局は、いいや、国賠なんだ、自分たちは関係ないと。だから、ある種やりたい放題になっちゃうわけじゃないですか。
そして、法務省としても、再審無罪となった事件とか、裁判所から捜査、公判活動について厳しい指摘を受けた事件について、どのような基準と手続で検証を行うのがいいのかというのはちゃんと検討していただきたい。その結果として検察官の職務上の問題が認められた場合はどのような形で責任を取るのか、これも明確にしておかないと、本当に、いわゆるですね、言葉の定義は、冤罪と言うとまた定義から始まりますからいわゆると言わせていただきます、いわゆる冤罪事件、これは再発防止ということにはつなげていけないのではないか。
そして、郵便不正事件でいわゆる冤罪事件になった村木厚子さんは、法制審議会の委員を務めた経験から、法制審では裁く側の論理が強くて、裁かれる側の視点というのが十分把握されていない、そして、裁判というもののエンドユーザーは国民であるということも述べられています。
再審制度の見直しに当たってはとか、こうして無罪判決が出たとかいう事案については、内部だけの検討では結果的には再発は防止できないと思うんです。これで、第三者や、また当事者の皆さん、こういった方々を入れて、しっかりと検討していく、こういったことをやっていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げたとおり、検察当局においては、無罪判決等があった場合には、捜査、公判活動の問題点を検討し、必要に応じて問題意識を共有して、反省すべき点については反省して、今後の捜査、公判の教訓としているところでございまして、先ほど御指摘のあった厚生労働省の局長の事件につきましても、一審で無罪判決があった後、これが一審で確定いたしまして、その後、検証を行って公表したという経緯があったものと承知しております。
事案に応じて、そのような対応をしているということでございます。
○井戸委員 生きているうちに救済をする、この理念を実現するために、しっかり私たちも修正を求めながらやっていきたいと思っています。
終わります。ありがとうございます。
○井上委員長 これより内閣総理大臣出席の下、質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。谷川とむ君。
○谷川委員 自由民主党の谷川とむです。
本日は、高市総理出席の下、刑事訴訟法の一部を改正する法律案、いわゆる再審法改正について、本会議に引き続き、本委員会でも質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。十分という短い限られた時間でございますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
本再審法改正の究極の意義を一言で表すならば、無辜の人を一日も早く救済し、刑事司法に対する国民の信頼を回復することだと考えております。
また、再審制度については、三審制の下での確定判決による法的安定性の観点も重要であります。制度が悪用され、安易な裁判のやり直しにより真犯人が処罰を免れるような事態も防がなければなりません。さらに、犯罪被害者や御遺族、関係者に寄り添った法改正でなければならないと考えております。
言うまでもなく、我が国は三審制を採用しております。被告人には、第一審、控訴審、そして上告審という三度にわたる審理を受ける機会が保障されています。
再審制度が最後の救済手段であるならば、私は、そもそも再審を必要とする事案を生まない努力こそが最も重要ではないかと考えています。そのためには、誤判の発生を最大限防止するために、捜査段階から公判段階に至るまで、制度、運用の両面について不断の検証と改善を重ね、真相解明機能を強化していくことこそが、まさに刑事司法に求められる基本的な姿勢ではないかと考えますが、高市総理の御見解をお伺いをいたします。
○高市内閣総理大臣 刑事司法は、基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を解明し、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現するという極めて重要な役割を担っております。
刑事司法がこうした役割を適切に果たしていくということのためには、おっしゃるとおり、まずもって捜査や通常審が十分に機能するということが重要です。まさにそうした観点から、これまで、証拠開示制度の拡充、被疑者国選弁護制度の導入、取調べの録音、録画の導入、情報通信技術の進展への対応など、様々な法整備が進めてこられました。
安全、安心な国民生活を実現するため、刑事司法がその機能を十全に発揮できるよう、制度、運用の両面について不断の検討を行ってまいります。
○谷川委員 ありがとうございます。
誤判がなければ冤罪も生まれません。冤罪を生まない三審制の実現に向けた取組も総理を先頭に引き続き進めていただきますように、よろしくお願いいたします。
冤罪はあってはならない、みんながそう思っているはずです。しかし、非常に残念ながら、冤罪事案が存在してまいりました。近年においても再審無罪が確定した事案があり、とりわけ袴田事件は、国民の刑事司法に対する信頼に大きな問題提起を行った事案であったと考えます。
今日も、袴田巌さんのお姉さんである袴田ひで子さんも傍聴に来られています。昨日は参考人、そして我が党の党の部会でもお越しいただきましていろいろとお話を伺いまして、本当にありがとうございました。
袴田事件を始め、過去の再審無罪事案を振り返りますと、後に無罪の重要な根拠となる証拠が開示されていなかった事例や、再審開始まで長時間を要した事例もありました。私は、これらの事案は、裁判所のみならず、捜査機関そして検察を含む刑事司法全体として真摯に受け止めるべき教訓を示していると考えます。
もちろん、検察は、公益の代表者として法と証拠に基づいて職務を遂行しており、その役割は極めて重要であります。しかしながら、結果として再審無罪が確定した事案が存在する以上、刑事司法全体として過去の経験を検証し、不断の改善努力を積み重ねていくことが国民の信頼回復につながるのではないかと考えますが、平口法務大臣の御見解をお伺いをいたします。
○平口国務大臣 お答えいたします。
刑事司法制度がその機能を適切に発揮するためには、国民の皆様の信頼に支えられることが極めて重要でございます。
近時、とりわけ検察に対する国民の不信が非常に強いということは私も痛感しており、委員の御指摘は重く受け止めなければならないと考えております。
法務省としては、近時の再審無罪事件における様々な指摘を真摯に受け止め、その反省の下で、再審制度が非常救済手続としてより適切に機能するよう、本法律案を提出させていただいたところであります。
その上で、刑事司法制度に対する国民の信頼を確保するためには、再審制度のみならず、捜査や通常審に関しても、制度、運用の両面について不断の検討を行っていくことが重要であると考えており、引き続き必要な取組を着実に進めてまいりたいと考えております。
○谷川委員 ありがとうございます。
国民から信頼される刑事司法の構築に向け、平口大臣が先頭になって取組をより一層進めていただきますようにお願い申し上げます。
これまでの審議で、審理の長期化の一因である特に証拠の開示、検察官の不服申立て、証拠の目的外使用など、様々な観点から議論を積み重ねてまいりました。
例えば、本法律案において、我が党の議論を踏まえ、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを原則禁止とした上で、十分な根拠がある場合に限りすることができることとしております。
この規定に対しては、裁判官も誤ることがある以上、不服申立ての余地を残す原則禁止とすることには理由があるという意見が示されている一方で、十分な根拠を判断するのは検察官であることから、再審開始決定に対する不服申立てが慎重で抑制的な運用になるのかについて疑問を呈する意見もあります。
また、証拠の提出命令制度の創設により、検察官は任意の提出、開示に応じなくなるとの懸念が示されている一方で、通常審においては、証拠開示制度が設けられて以降、任意開示が柔軟に行われるようになったのと同様に、再審請求審においても、証拠の提出命令制度が設けられることで、証拠の提出、開示の実務運用が柔軟に行われるのではないかとの意見もあります。
さらに、証拠の目的外使用の禁止の規定に対しては、目的外使用の禁止により、マスコミや支援者に証拠を示せなくなるため、罰則をもって一般的に目的外使用を禁止することは過剰ではないかとの意見もある一方で、画像は一旦インターネットに流出すると完全に削除することは事実上不可能であることなどから、証拠の目的外使用を一般的に禁止すべきであるとの御意見が犯罪被害者側の参考人から示されております。
このような指摘を踏まえまして、今回の法改正により、これまで以上に誤判からの速やかな救済を実現するとともに、手続の円滑化、迅速化に資するものとして再審制度を大きく前進させるものである、そう考えますが、改めて最後に高市総理の御見解をお伺いをいたします。
○高市内閣総理大臣 今日は袴田さんがお見えということで、もう本当に長年にわたって、大切な大切な人生の時間、筆舌に尽くし難い御苦労、御苦悩の中にあったと存じます。
再審制度につきましてですが、近時、再審無罪判決の確定までに長時間を要して、当事者の皆様に大きな負担を生じる事態となった事件があることなどを真摯に受け止め、その反省の下に必要な改善を行うということが現下急務であると考えております。
本法律案に対して様々な御意見があるということは承知しておりますが、本法律案は、犯罪被害者やその御遺族の立場や心情にも配慮しつつ、誤判からの確実な救済と再審手続の円滑、迅速化を図るものでございますので、間違いなく再審制度を大きく前進させるものです。
本法律案については、今国会で早期に成立させていただきますように、どうかよろしくお願いを申し上げます。
○谷川委員 ありがとうございました。
冤罪を生まない社会の実現のために、私も不断の努力を積み重ねてまいりますが、高市総理もリーダーシップを発揮していただきますように、よろしくお願いいたします。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○井上委員長 次に、西村智奈美君。
○西村(智)委員 西村智奈美です。
本来、私が取り組んでまいりました再審法の質疑を始めたいのですけれども、誹謗中傷動画作成疑惑に関する先週の予算委員会の同僚の質問にお答えいただいていないものがありますので、何点か確認をさせてください。
週刊文春に掲載され、現在無料公開されている音声記録につきまして、発言者が総理の公設第一秘書である木下氏本人であるか否か、木下氏御本人に確認を取っていただいたその結果を御答弁をお願いいたします。
○高市内閣総理大臣 秘書本人に音声を確認させましたところ、自分の声に似ているように思うが、編集されて発言が細切れになっていることなどから、内容も含め確信は持てないということ、そして、ただ、昨年、信頼できる方から紹介を受けた企業とのグループオンライン会議に参加し、そこで国民の声を広く聞くために検討しているという企画の紹介を聞いたことはあるということでございました。
○井上委員長 西村筆頭、ちょっとお待ちください。
本日の委員会は刑事訴訟法の改正二案が議題ですので、その範囲の中で質疑をお願いしたいと思います。
○西村(智)委員 はい。もう一点だけお伺いいたしまして、その後、再審法の質問をさせていただきます。
もう一つ、週刊現代の記事に関しまして、五日の日、総理は国会答弁で、四月三日付の回答については内容が事実と違うと述べられましたけれども、具体的にどの部分が事実と異なるのか、御答弁をお願いいたします。
○高市内閣総理大臣 これは改めて秘書に確認しましたところ、週刊現代に引用されている四月三日付の回答については、高市事務所から回答した内容であるということでしたので、その点は訂正します。
なぜそういうことが起きたかなんですが、六月五日の予算委員会での答弁に先立ちまして、当日未明、深夜から朝にかけてずっと秘書に電話を続け、未明にようやく出ましたので、確認しました。その際、秘書は自宅で就寝中でもあり、手元に回答文もなかったです。私が電話で回答文の一部が引用された週刊誌の記事を読み上げて、確認をいたしました。そして、二か月も前の回答文であり、元々会議について詳細を覚えていなかったこともあって、ごく一部抜き出されたところを私が電話で読み上げたものですから、回答した内容と違うと勘違いをしたということで説明がございました。
○西村(智)委員 回答したところ、違うというところがなかったということでよろしいんでしょうか。
○高市内閣総理大臣 高市事務所から出した回答文、それは、誠実にお答えしたものであるということでございます。
違うというところは、先ほど説明したとおり、私が未明に電話で、しかも週刊誌に一部切り取られた部分だけを秘書に確認をしたら、大変長い回答文を出しておりましたので、全体の趣旨と違う、彼はそう思ったということでございました。
○西村(智)委員 引き続き、この点については真相解明のための質疑がなされることと思います。
それでは、再審法について質問をいたします。
今回は、本当に大事な再審法の改正ということで、総理も本会議から答弁をしておられました。五月の二十六日の本会議で、再審制度の見直しにつきましては、私自身、非常に強い思いを持って取り組んでまいりました、また、再審制度については、近時、長時間を要したり、それから当事者の皆さんに大きな御負担をかけたりする事態となっているといったことを真摯に受け止めて、その反省の下に必要な改善を図っていく必要がある、こういうふうに答弁をされております。
非常に強い思いとはどのようなものなのか、また、反省とは具体的に何についての反省を言っておられるのか、答弁をお願いいたします。
○高市内閣総理大臣 まず、誤判により無実の方が処罰されることがあってはならず、万が一そのような事態となれば、一刻も早く救済されなければなりません。しかし、近時、再審無罪判決の確定までに相当な長期間を要し、再審請求者などに大きな負担を生じる事態となった事件があり、その原因として様々な指摘がなされております。
私としましては、そうした事態が二度と起きないようにしなければならないという非常に強い思いを持って、再審制度の見直しに取り組んでまいりました。
その上で、御指摘の反省というのは、政府は、これらの事態や様々な指摘を真摯に受け止めて、まさにそれらを生じさせた制度や運用への反省の下で、速やかに必要な対応をする必要があるという考えを述べたものでございます。
○西村(智)委員 制度や運用、どちらにもその問題があるという御認識で反省だというふうにおっしゃったという答弁だと受け止めました。
昨日、参考人質疑が行われまして、袴田ひで子参考人からは、人間が作った法律である、人間として改正をしていただきたいという強いお言葉がありました。
制度の方に今回は関わるところが多いわけなんですけれども、やはり、この後、総理からの御答弁で、本当に反省を踏まえた上で制度を見直していこうとしているのか、この再審が速やかに制度として見直され、そして速やかな救済につながっていくのかどうか、そこを一つずつ問うていきたいと思います。
まず、検察官抗告についてです。
自民党内の審査の段階で、本則に原則禁止、ただし、十分な根拠がある場合は抗告が可能ということになりました。その後の委員会質疑におきまして、実は、この十分な根拠というものが検察官の行為規範にとどまるということが明らかになったんです。これは大きな驚きでした。自民党内の審査において、行為規範であるという説明は、実は法務省からなかったということなんです。
即時抗告を原則認めないというふうに変更した点は、これは本当に、自民党の皆さん、頑張られたということで敬意を表するんですけれども、しかし、例外規定の説明を行わなかった法務省の姿勢というのは、これは決して褒められるものではないというか、大変遺憾なものでありますし、そして、そういった中で行われた党内審査のありようそのものが、やはり、私は、他党の議員ですけれども、自民党議員に対するだまし討ちではないかというふうに思うんです。
党内審査をやり直すのが私は筋だと思います。ですけれども、それができないということであれば、今法案の審査中でありますので、これを見直すことはできます。検察官抗告は禁止すべきだと思いますが、自民党総裁としてそのような判断をしていただけないでしょうか。
○高市内閣総理大臣 まず、自民党内の審査は、頭撮りはありますけれども、非公開の審査、手続でございますから、そこでの議論の状況の詳細についてはお答えは差し控えます。
もっとも、本法律案は、十分な説明を尽くした上で、しかるべき手続を経て国会に提出させていただいたものでございますので、その手続に瑕疵はないと考えております。
とにかく、この法律案については幅広い御理解を得て何とか今国会で成立させていただけるように、これからも丁寧な説明を尽くしますけれども、よろしくお願いをいたします。
○西村(智)委員 私たちは、閣法として法が国会に提出されてからの審議ですので、ここから先は、提出されてからはいろいろ言いたいことも言わせていただきました。だけれども、与党の皆さんは、この閣法でいいですよというその審査をする段階でやはり十分に説明を受けておられなかったということなんです。これは、私は、手続的には瑕疵はなかったかも分かりません、だけれども、やはり内容として説明が不十分であったということは大きな問題だというふうなことを是非指摘をさせていただきたいと思っております。
そして次に、証拠のことについてです。
証拠の開示というのが、やはり今回、再審制度の中でも大きな課題の中の一つであるということは言うまでもありません。袴田ひで子さんは、よい証拠も悪い証拠も全部出して裁判するのがフェアではないかというふうに昨日もおっしゃっておられました。
再審開始、なかなかやはり大変なんです。まず、再審開始のためには新規性と明白性を備えた証拠が必要です。しかし、そのほとんどが警察や検察に眠っております。証拠提出命令の対象となる証拠というのは、再審請求理由との関連性や必要性が問われます。更にそこに相当性という縛りもかかります。何重にもこうやって縛りがかかってきますが、実は、その証拠が本当にどういう意味を持つのか、無罪方向の証拠があるのではないかということ、その証拠の本当の価値を分かっているのは請求人なんですね、当事者なんです。
ですから、当事者中心で再審請求審が行われるということを本来であればきちんと制度の中で確保しなければいけないんですけれども、法務省は、この間、裁判所の職権主義だという前提をずっと崩さずに答弁をしてきております。
一方で、平口大臣は、職権主義なんだけれども、従来から実務運用として行ってきた証拠開示が否定されるものではないということで、度々答弁をしておられるわけでもあります。であるとすれば、職権による証拠開示命令を明文化したとしても困ることはないんじゃないかと。先ほど、これに先立つ質疑でもどなたかがおっしゃっておりましたけれども、本当に、こうやって法定化して明文化して何か困ることはあるのか。
昨日も村山参考人の方から、やはり現役の裁判官がきちんと義務規定として明文化してほしい、そういった困惑の声が現役の裁判官から上がっている、そういうふうにお話があったんです。
やはり、無辜を救済するために証拠開示命令制度を明文化する、ここは本当に肝だと思うんですけれども、総理の決断を求めたいと思います。
○高市内閣総理大臣 御提案は、裁判所が、再審請求理由との関連性を問わずに、検察官に対して証拠の提出、開示を命じることができる旨の規定を設けるというものと今理解したのですが。
そのような規定におきましては、再審請求審の審理の在り方ですとか手続構造と整合するかという点、それから、請求理由との関連性を問わずに提出、開示の要否を判断するということは実務上困難ではないかといった懸念も示されていると承知しています。
他方で、証拠の提出命令制度における関連する証拠の範囲というのは相当の広がりを持つものでございます。同制度は、裁判所による証拠の提出、開示の勧告といった従来の実務運用を否定するものではないということで、これは法務大臣が答弁をしたということでございますが、それを否定するものではないので、審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることとなると考えております。
制度の運用について御懸念が示されているということは承知しておりますが、様々な御意見がある中で、再審制度を確実に前進させるためには、本法律案の導入する仕組みというのは十分に合理性を有するものだと考えております。
もとより、本法律案が改正法として成立した場合には、制度の趣旨ですとか内容を十分に周知して、適正な運用の確保に努めてまいります。
○西村(智)委員 昨日、元裁判官であった村山参考人が、政府案が成立すると確実に証拠の開示の幅は狭まる、明確に自分はそうだと言えるというふうにおっしゃっていました。それは、法務省の方は、確実な広がりを持つものだということをおっしゃったり、あるいは、従来の運用は否定はされないというふうに言うんですけれども、また、それを周知するというふうに言うんですけれども、本当にそういったことが周知だけでできるのかどうかなんですよ。
やはり、裁判官は、法律によって規定されたそのルールによって、証拠を出してください、あるいは命令をしたりするわけなんです。従来であれば、これも裁判官格差というふうに言われますけれども、裁判官がこれは出したらどうですかといって勧告をする中で出された証拠によって、偶然、無罪方向での証拠が出てきて、それで再審無罪をかち取れた、そういうケースがすごくたくさんあるということも、私たちは、この間、質疑の中で、また参考人質疑の中で、本当にたくさんのお話を聞いてまいりました。今のままだとやはり証拠提出の幅は狭くなる、実際に実務に携わっている方々がそのようにおっしゃる。もう一回これは、私は検討してもらいたい。
ちょっとまだ質問がありますので先に進みますけれども、あと、提出されることになるというのも、それは法務省、検察の言い分であって、実際の裁判官はそうは言っていない方が多くいらっしゃるということ、これはよく自覚をしてください。
次に、目的外使用について伺います。
袴田ひで子さんは、支援者の方が五点の衣類の色を見て疑問を感じて、みそ漬け実験を行って、そして、メディアによる報道があったから巌さんが無罪になったというふうにおっしゃっておられました。さっきも質疑があったんですけれども、再審の目的外使用によって、名誉やプライバシーなどで問題になったケースはないと法務省は答弁をしました。
また、罰則がなくても、禁止されれば、これはやはりどうしたって、法務省は否定していますけれども、萎縮効果というのは生まれるというのは目に見えているわけなんです。一律に広範な禁止規定を設ける必要は、私はないと思う。一律ではなくて、例えば条件を付すとか、そういった方が理にかなっているのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○高市内閣総理大臣 私としましても、再審請求事件における支援活動ですとか報道の意義の重要性などについては十分に認識をしております。
他方で、通常審においては、例えば、強制わいせつ被告事件の元被告人が捜査報告書などの内容をインターネットに掲載して有罪判決が確定してしまった事案などが現に存在しています。
このように、刑事手続の過程で収集される証拠が本来の目的以外に使用されてしまいますと、関係者の方々の名誉、プライバシーの侵害、また罪証隠滅、証人威迫、今後の捜査への協力確保の困難化など、様々な弊害が生じ得ます。
本法律案では、証拠の目的外使用を一律に禁止した上で、違反した場合の措置について、複製等の内容、行為の目的、態様などの個別事情を考慮することとしております。
議員の御提案もとても貴重なものであると思うのですが、その具体的な条件の在り方ですとか、実効性の担保をどのようにするのかといった点のほか、通常審の取扱いとの整合性も含めて十分に検討すべきものと考えます。現時点では、再審手続について異なる仕組みとすることは相当ではないと考えています。
でも、本法律案の制度の下でも、証拠の複製を再審手続やその準備に使用することはもとより許されますし、証拠の概要を伝達するなどの行為は禁止されておりません。目的外使用の禁止によって不当な事態が生じるということはないと考えております。
○西村(智)委員 これまでの法務省の答弁を繰り返し御答弁をなさったということ、本当に残念です。
袴田ひで子さんは、昨日の参考人質疑でこのようにもおっしゃっていました。この法律、政府提出法案ですね、これが通されてしまうと、巌も助からず、処刑されてしまっていたと思います、無実の人間が処刑されているということは実際にあると思っているんです、ですから、そういうことのないように是非よろしくお願いいたします、助けていただくのは国会議員しかいません、このようにおっしゃっていました。
私たちは対案を提出していますから、現時点ではこの議員立法の対案がベストだというふうに思っています。しかし、閣法が仮に成立するとしたら、やはり、先ほど申し上げたように、証拠開示の幅が狭まるというおそれがある。ですから、これは条文の修正が必要だと考えています。
昨日、与党の方には修正案をお渡しいたしました。総理にも、お手元に渡るようにさせていただいています。修正案は御覧になっていただいたと思います。どういうふうに思ったか、何か問題があるか。これなら皆さんからも賛成していただけるのではないかと思いますけれども、どうですか。
○高市内閣総理大臣 今朝、修正案をお示しになったということで、総理室にも、午後一時半頃でしたか、届きました。拝見をいたしました。それで、再審制度をよりよいものにしたいという思いに基づく貴重な御提案だと受け止めております。
もっとも、これまでの本委員会での議論を踏まえますと、御提案につきましては、制度の必要性、合理性、また実効性といった観点から、更なる検討が必要なのではないかと考えます。
本法律案というのは、様々な御意見がある中で、関係者が知恵を絞ったものでございます。施行後は五年ごとに制度の在り方について検討するということを盛り込まれています。
まだまだ不十分との御指摘もあると思いますけれども、現時点で確実に再審制度を前進させるものと私は確信しておりますので、是非とも成立をさせていただきたいと考えています。
御党でお作りになった修正案でございますけれども、これは国会において御審議、御判断されるべき事柄でございますので、修正案の扱いについて内閣総理大臣としてお答えするということは差し控えさせていただきます。でも、その御尽力に敬意を表しております。
○西村(智)委員 貴重な御提案だというふうにコメントもいただきました。
ここの委員会での質問は、やはりみんな、再審をもっといい制度にしていく。そのために、やはり抜け道があるんだ、抜け穴があるんだということは、この委員会の中で質疑を通して明らかになった、大きな、この政府提出法案の私は欠陥だというふうに思っております。
修正がない限り閣法には反対するということを申し上げて、質問を終わります。
○井上委員長 次に、小竹凱君。
○小竹委員 国民民主党の小竹凱です。
本日は、高市総理に、再審法改正のテクニカルな話じゃなくて、この法律の根幹に関わる問題について、いろいろとお伺いしたいと思います。
総理は本会議で、本改正案について、誤判からの確実な救済を図るものであり、重要な意義があるというふうに述べられておりました。
総理に伺います。
これまでの再審制度は何が問題だったのか、本改正によって具体的に何がどう変わると考えておられるのか、条文の説明ではなくて総理御自身の言葉でお答えいただきたいと思います。
○高市内閣総理大臣 まず、何が課題だったのかということですが、近時の再審無罪事件を踏まえますと、現行の再審制度については、円滑、迅速な手続の確保の観点ですとか再審請求者などの手続保障の観点から見て課題があると認識をしております。
そこで、本法律案では、再審請求審における証拠の提出命令制度を設けるとともに、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを原則として禁止するほか、手続保障の充実を図るための諸規定の整備も行うこととしております。
こうした制度の見直しとその適切な運用によって、誤判からの確実な救済と手続の円滑、迅速化が図られると考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
ここで簡単に法務委員会の今の構図というか形を説明したいと思いますが、国会審議なので、野党が長く質問をすることは、そういう形だと思います。中道、国民、参政党と質問をしていて、一番声を出して応援してくれるのが稲田委員であり、井出委員なんです。こういった構図です。これがまさに本案の形を示しているというふうに私は思います。
内閣提出法案でありますので、提出者はもちろん総理でありますが、ベストな法案を今回出せたというふうに思っていますか。
○高市内閣総理大臣 本法律案は、法制審議会において様々な立場の専門家によって丁寧な議論が行われた結果をベースとしながら、与党審査における様々な御議論を踏まえて、よりよいものとするための修正を施したものでございます。
本法律案について様々な御意見があることは承知しておりますけれども、本法律案は、犯罪被害者やその御遺族の立場や心情にも配慮しながら、誤判からの確実な救済と再審手続の円滑、迅速化を図るものでありますので、再審制度を大きく前進させるものであると考えております。
○小竹委員 では、その当事者からやはりこの法律案では駄目だという声が上がっていることにも耳を傾けていただきたいと思います。
通告していない質問を一問しますけれども、今朝の朝日新聞で、再審法に関する記事が取り上げられておりました。自民党執行部の一人もこれ以上の修正はあり得ないとし、参院で多数派を形成できなければ衆議院での再可決か廃案の二者択一だというふうに記されております。
総理はこれまで、再審法が、これまでの反省の下に改善を行うというふうに言われておりますので、衆議院がこういった形ですから、鍵は衆議院なんですね。再可決があり得るということなので、この法律案の協議をするのは、鍵は衆議院だというふうに認識されると思います。
自民党総裁として、今回の再審法改正案を数の力で押し切ることはないというふうに明言していただけないでしょうか。
○高市内閣総理大臣 私は内閣総理大臣としてこの委員会の場に立っておりますので、自民党総裁として何かを言い切るということはございませんけれども、本法案は、様々な御意見がある中で、関係者が知恵を絞ったものでございます。また、施行後は五年ごとに制度の在り方について検討することも盛り込まれています。
今とにかく大事なのは、この再審制度の見直しについて、私も強い思いを持ってまいりました。ですから、まだ不十分との御指摘もあるかもしれませんけれども、でも、現時点で確実に再審制度を前進させるものと確信しておりますので、是非とも成立させていただきたいと考えております。
○小竹委員 我が党も、この閣法での成立を目指して、今回は議法提出には乗らず、しっかりと閣法での審議を深めていこうというスタンスでこの委員会に臨んでおります。日に日に、不信感といいますか、答弁ラインがなかなか後退していることもありまして、我が党として賛成し難いなという意見が強まっております。
そして、先日、鴨志田参考人が来られた際に、この法案に関しては、野党もそうですけれども、当事者もそうですが、日本国民皆さんの御理解がなければならないというふうにおっしゃられております。なぜかというと、この国には裁判員裁判制度がありますので、全ての方が冤罪の当事者になり得る可能性があるということでございます。そのときに、誤判からの救済、確実な救済ができる制度がつくられていなければ、この再審法改正は、真の再審法改正、冤罪被害者を救済する形にはならないというふうに指摘をさせていただきます。
次の質問に入ります。
私も、西村委員に続きまして、今回の改善の一番のポイントは、再審請求人への、本人への証拠の開示だというふうに思っています。本人にしか見えない証拠がある、この一点です。
第三者から見れば、ただの一枚の紙であったり、一文であったり、ただの記録に思えるかもしれませんが、しかし、本人が見れば重大な食い違いがあるということがこれまでも多々ありました。自分はそこにいなかった、自分はこういった記録、事実と決定的に違う、こういうことは、これまで事件は実際に起こってきたわけであります。これは法務省も認められておりますし、総理も、そのことに関しては、これまでの事件はお認めになるはずだというふうに思います。
ところが、政府案では、再審請求審において、裁判所が関連性や必要性を考慮して相当と認めるときに検察に証拠提出を命じる仕組みを取っておりますので、裁判所のフィルターを通った証拠しか本人の目に触れない形になっております。
本人にしか分からない証拠の意味がある、本人にしか気づけない視点があるという、この事の重大さを総理はどのように認識されているでしょうか。
○高市内閣総理大臣 御質問の趣旨は、関連性や必要性などについて裁判所の判断を経ずに再審請求者が証拠を閲覧、謄写できる仕組みとすべきという問題意識でいらっしゃるのかなと思います。
再審請求審は、裁判所が、職権主義の下、再審請求理由について審理、判断する手続でございますから、検察官に証拠の提出を命ずるに当たって、裁判所が再審請求理由との関連性や必要性などを判断することには合理性があると考えております。その上で、関連するというのは、裁判所による再審請求理由についての判断に資するという意味でございますから、だから相当の広がりを持つものだと答弁をいたしております。
ですから、証拠の提出命令制度によって審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることとなると考えておりますけれども、本法律案が改正法として成立しました場合には、この制度趣旨を踏まえた適切な運用がなされるように政府として万全を期してまいります。
○小竹委員 万全を期するのはもちろん分かるんですけれども、結局、司法権の独立は守られるわけなので、やはり条文にしっかり書き込んでいかなければ、正しく運用するか分からない。法務省と個別の事案に際して質疑をしても、それは答えられませんというふうに毎回答弁になりますので、我々立法府の責任として、しっかり、運用に委ねるのでなく、条文に書けるところはしっかりと記していくということでございます。
冤罪を正す制度である以上、やはりここは、法務省も従来の運用は否定しないというふうに言っておりますので、これは条文化する以外の道はないというふうに思います。そして、整合性は十分に取れているとも思います。
最後に、検察官の不服申立てについて一つお伺いします。
今回、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを、原則禁止となりましたが、十分な根拠がある場合に例外的に認めるというたてつけになっております。この十分な根拠というのは誰が判断するべきだと総理はお考えになりますか。
○高市内閣総理大臣 十分な根拠があると判断をして即時抗告を行う主体は検察官でございます。その判断については、再審開始決定の内容や具体的な事実関係、証拠関係などを踏まえて、抗告裁判所の審判に堪え得る客観的に妥当なものかという観点から、組織的に十分な検討を尽くした上で慎重に行われることになります。
その上で、検察官の判断に十分な根拠があったかどうかは、その後の裁判所の審判を通じて明らかになると考えております。仮に不服申立てに十分な根拠がない場合には、抗告裁判所において、通常、当該不服申立ては理由がないとして棄却されることになると考えられます。
また、本法律案におきましては、再審開始決定に対する不服申立ての原則禁止の実効性を担保するための様々な規定を設けるということとしておりますので、これらによって、再審開始決定に対する不服申立てについて、慎重で抑制的な運用が確保されるということになると考えます。
○小竹委員 答えているようで微妙に答えていないと思います。私は、十分な根拠は誰が判断するべきだと考えているかというふうに述べました。判断するのは検察官です、それは分かっています。誰が判断するべきだというふうに聞きました。
私はやはり、これまでも、検察官が無罪証拠を持ちながらも、それを隠して抗告をしてきた、こういったことが冤罪被害者を長年苦しめてきた、こういった反省に立った改正なんじゃないのかということを言っております。これは紛れもない事実です。なので、誰が判断するべきだと改めてお答えいただけますでしょうか。
○高市内閣総理大臣 十分な根拠というものが即時抗告を行う要件である以上、それが存在するか否かという一次的な判断は検察官が行うことになりますけれども、その後の裁判所による審理を通じて、そうした検察官の判断が正しいものであったかどうかというのはおのずと明らかになると考えます。
○小竹委員 残された時間もしっかりと審議を尽くして、いいものに仕上げていきたいと思います。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、三木圭恵君。
○三木委員 日本維新の会の三木圭恵でございます。
今日は、高市総理に初めて質問させていただきます。どうぞよろしくお願いをいたします。
再審法は、一九四八年の制定から実に七十八年を経て、この国会で改正法案が初めて審議され、可決されれば初めての改正となる。その間、冤罪が起きて、様々な課題や問題点が指摘されてきており、今国会で改正されれば、私はこれは大きな一歩、前進であるというふうに考えております。日本の再審法が大きく変わる変換点となると考えております。
無実の人が有罪判決を受け、人生の大半を失ってしまうことは、あってはならない人権侵害であります。そしてまた、犯罪被害者の方々の観点を置き去りにしてはならないと考えます。本委員会における質疑の中では様々な指摘や御意見があるところですが、それらに対する総理の見解を順にお伺いしたいと思います。
まず、質疑の過程で大きな論点となっているものとして、本法律案で創設される証拠の目的外使用の禁止の規定がございます。
この規定については、マスコミや支援者に証拠を示せなくなるため、罰則をもって一般的に目的外使用を禁止することは過剰ではないかとの意見もございます。
他方で、本委員会において犯罪被害者側の立場から意見を述べられた上谷さくら弁護士は、性被害者の声として、犯罪の証拠となった性的画像や映像などが弁護士、警察、検察、裁判官以外の一般の人に見られることとなれば、恐怖心は強く、人によっては性被害そのものよりも画像が残り続けることの方が怖い、どうしても画像を消してほしいと訴える方がとても多いという旨を意見陳述されました。万一インターネットに流出すると完全に削除もできないことなどから、証拠の目的外使用は認めるべきではないと述べられております。
改めて総理の御見解をお伺いしたいと思います。
○高市内閣総理大臣 刑事事件におきましては、事件の当事者はもちろんのことですが、御家族、御友人、また職場の同僚の方々を始め、様々な形で関わりを持たれた関係者の方々の名誉やプライバシーに関わる証拠も収集されてしまいます。おっしゃった参考人の方は性被害のケースに言及されておりましたけれども、それらが一たびインターネット上に流出するようなことがあれば、これは回復困難な被害が生じるおそれがございます。また、そうしたことによって、国民の皆様からの捜査、公判への協力を確保することが困難になることも懸念されます。犯罪被害者や御遺族の方々が証拠の目的外使用について深刻な御懸念を示されているということは、そういった意味では十分理解できることです。
証拠の目的外使用については、これを確実に抑止し、弊害の発生を未然に防ぐことが重要です。この法律案においては、まさにそのような観点から目的外使用を一般的に禁止するとともに、その実効性を担保するため、一定の違反行為に対して罰則を設けることといたしております。これは被害者や御遺族の方々の御懸念に応えるものになっていると考えております。
○三木委員 冤罪被害者の方の救済ももちろん大切ではございますけれども、犯罪被害者、遺族など、様々な視点をお持ちの方々の意見、立場などもこの法に取り込まれることがとても大切だというふうに私も思っております。
次の質問に移らせていただきます。再審開始決定に対する検察官抗告についてでございます。
本法律案においては、原則禁止することとしています。他方で、犯罪被害者側の立場から、先ほど申し述べました上谷参考人の御意見でございますけれども、誤って再審開始決定がなされた場合、検察官が抗告できないとすると、犯罪被害者はいつまでも裁判が終わらない事態に巻き込まれてしまうなどといった理由から、検察官抗告の禁止に反対する御意見を示されました。特に、性犯罪被害者は、事案の性質上、被害に遭ったことを親しい人にも黙っていることが通常であり、親や配偶者、恋人にも黙っている人もいる、刑事事件の判決が確定した後、被害事実を隠して結婚する人も少なくありませんと述べられております。
そういった事案も踏まえて、改めて、本法律案において検察官抗告を原則禁止とすることとした趣旨について、総理の見解をお伺いいたします。
○高市内閣総理大臣 今、三木委員が指摘されたとおり、犯罪被害者や御遺族の立場からは再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止について強い御懸念が示されているということも承知をいたしております。
検察官の不服申立てを全面的に禁止することについては、本来やり直すべきではない裁判でも直ちにやり直されることとなり、裁判の確定の意義が損なわれる、また、上級審による審査の機会がなくなり、裁判所による慎重、適正な判断の制度的担保がなくなるなどの課題が指摘されているということも承知しております。
他方で、近時、再審開始決定に対する不服申立てが再審手続の長期化の原因となっているという厳しい御指摘、御批判があるということも事実でありますから、これも重く受け止めております。
ですから、本法律案におきましては、こうしたことを踏まえて、より慎重かつ抑制的な運用を確保するために、再審開始決定に対する不服申立てを原則として禁止し、当該決定が取り消されるべきものと認められるに足りる十分な根拠がある場合に限ってすることができるとしたわけでございます。
○三木委員 検察官の抗告が原則禁止ということになっておりますけれども、例外的に検察官が不服申立てをするケースもあるという想定でございますので、再審についての手続をより迅速に進める枠組みをつくることができれば、無辜の救済という観点と犯罪被害者側の観点とを考え合わせて、より適切なものになると思います。
そこで、我々維新の会は、再審開始決定に対して検察が抗告するケースについては一年以内に審理が終了するようにする規定を新たに設けることを提案し、本法案にもその旨の規定が入れられています。今まで再審開始決定まで平均で六年以上かかっていたことを鑑みれば、期間短縮に大きな効果をもたらすものと思います。もちろん、このほかにも、再審の手続自体がより迅速に、よりスピード感を持って進むように工夫していくことは極めて重要であると思います。
再審の手続の迅速化についての総理の御認識と、本法案がそれに資するものになっているかについて御見解をお伺いいたします。
○高市内閣総理大臣 再審の手続に長期間を要することで再審請求者などの御負担となっている場合があるという認識は私も持っておりますので、再審手続の円滑、迅速化を図るということは大変重要だと考えております。
本法律案では、再審請求審において必要かつ十分な証拠が迅速に提出されるように、証拠の提出命令制度を設けました。そして、御党での御議論も踏まえて、再審開始決定に対して例外的に不服申立てをした場合にあっても、一年以内に裁判所の決定がされるよう努力義務を定めることとしております。また、再審請求審の審理に関するルールを明確化し、手続の適正迅速な進行や関係者の協力に関する規定も設けることとしております。
私としましては、これらの法整備とその適切な運用によって、再審手続の円滑、迅速化が実現すると考えております。
○三木委員 本当に再審の開始までに非常に長い時間が今までかかっており、冤罪被害者の方が長期間勾留されてしまうという事実がございましたので、是非とも、この法案、こういったところも併せて審議をして改正案を通していきたい、その思いで頑張ってまいりたいと思っております。
最後に、冤罪はあってはならないものでございます。再審法は最後の救済としてあるべきでございますけれども、そもそも通常審で冤罪を生み出さないことが最も大切だと考えております。通常審で冤罪を生み出さないという総理の決意をお伺いしたいと思います。
○高市内閣総理大臣 罪を犯していない人が処罰されるということは、当然あってはならないことでございます。そのようなことが起こらないように、適正な捜査、公判が遂行されるということが肝要です。
検察当局においては、過去の無罪判決や検証も踏まえて、積極、消極を問わず十分に証拠を収集、把握して、冷静かつ多角的にその評価を行うこと、また、供述の任意性の確保その他必要な配慮をすることなど、基本に忠実で適正な捜査、公判の遂行に努めていくべきだと考えております。
○三木委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
○井上委員長 次に、和田政宗君。
○和田(政)委員 参政党の和田政宗です。
昨日、参考人として当委員会にお越しいただいた袴田ひで子さんが、よい証拠も悪い証拠も全部出してほしいということを述べられていた、これは非常に重いというふうに思います。私も、当委員会の審議で、もうこれは証拠を全て出して、有罪であれば有罪、無罪であれば無罪というふうに明確に正々堂々やるべきだということを言ってまいりました。
そこで、総理に、再審請求審、再審開始決定に対する不服申立てについて二問お聞きをいたします。これは、質疑が相当難解になっておりますので、例えを用いてお聞きをしたいというふうに思います。
スポーツ、例えばサッカーに例えますと、第一戦に弁護人チームが勝利、第二戦では検察官チームが勝利したとします。第三戦は書面審理、これは最高裁ですので、憲法違反、判例違反がない限り第二戦の勝利が確定をいたします。ところが、その後に不正、例えばドーピングが発覚したという場合を想定をいたします。弁護人チームがこれは再試合をすべきだと主張しても、検察官チームが不正がなくても勝てていたという理由で再試合を認めない。これではおかしいというふうに思います。
不正があったのだから正々堂々と不正なしで再試合をすべきではないのか、そうしないと不正をした者勝ちになってしまうのではないか。どのように考えるでしょうか。
○高市内閣総理大臣 サッカーに例えられましたけれども、裁判というのは、確定によって拘束力を生じて、争えなくなるからこそ紛争解決手段として機能します。したがって、本来やり直すべきではない裁判でも直ちにやり直すこととなるような制度とするとしたら、それは問題があって、この委員会でも参考人の方からそうした観点の御意見も表明されたと伺っています。
言うまでもなく、検察による不正行為はあってはなりません。仮に不正行為が行われた場合は、厳正に対処されるべきでございます。
この法律案においては、再審開始決定に対する不服申立てについての様々な御指摘、御批判を重く受け止めた上で、再審開始決定に対する不服申立てを原則として禁止しました。当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限ってすることができることとしておりますので、その実効性を担保するために、様々な工夫も講じられています。
少し細かく言うと時間を食ってしまいますので、必要であれば後で申し上げますが、私としては、この法案によって設けられる仕組みというのは、現時点において十分に合理的なものだと認識をしております。
○和田(政)委員 我々は、しっかりとやはり条文で明快に担保してほしいというところがあるんですね。
現在、再審請求審でやっていること、これは、またサッカーに例えますと、再試合をするかどうかを決めるために、非公開の試合をしましょうと言っているようなものであります。また、ある審判が再試合を認める決定をしても、検察官チームが不服を申し立てるので、また再試合をするかどうかを決めるためにほかの審判の意見も聞きましょうというようなものであります。これでは証拠を隠した者勝ちになってしまいます。
実際に、徳島ラジオ商事件の富士茂子さんは亡くなってしまいました。死後の再審で無罪判決。袴田事件では、袴田巌さんは精神に影響が出てしまいました。何十年もたってから再審開始決定及び再審無罪判決が出ても、奪われた時間は返ってまいりません。
再審請求審が非公開であること、また、こうした不服申立てについて、総理はどのように考えますでしょうか。
○高市内閣総理大臣 現行法の下においても、再審請求審の審理を公開するということは禁止されていないものでございます。したがって、裁判所は事案に応じて審理を公開することができるんですが、現時点において、これを更に進めて、審理の公開を義務づけるような法整備を行うべき具体的な必要性があるとまでは考えておりません。
また、検察官の不服申立てについては、少し先ほど触れましたが、再審開始決定に対する不服申立てが再審手続の長期化の原因となっているといった厳しい御指摘、御批判があることも事実で、これは重く受け止めています。
よって、本法律案では、再審開始決定に対する不服申立てを原則として禁止するということにしておって、これによって、より慎重かつ抑制的な運用が確保されるべきだと考えております。
○和田(政)委員 重く受け止めていらっしゃるということ、慎重かつ抑制的な運用がなされるべきであること、それが総理の答弁として出ていることというのは非常に重いことであるというふうに思うんです。であるならば、やはり、我々が懸念として思っていることを、修正協議をしていただいて、しっかりとやはり文面として担保していただきたいんですね、法文として。
今も申し述べましたけれども、無罪の証拠を開示させるために何十年もかかるというようなことがございます。真相解明を困難にするものでありまして、これは犯罪被害者のためにもなりません。
いずれの裁判においても、証拠は弊害がない限り開示をすべきと考えますが、総理、いかがでしょうか。
○高市内閣総理大臣 弊害が生じない限り証拠を開示、提出するような仕組みとすることについては、平成十六年に、通常審の証拠開示制度が整備され、開示範囲が拡大された際にも議論がありました。その際には、事件の争点とは関係ない証拠まで大量に開示されることとなれば、かえって審理の遅延を招くこととなるといった考えから、導入されなかったと聞いております。議員の御提案も、再審、通常審を通じてそうした課題にどう対応するかという観点からの検討が必要なのではないかなと思います。
この法律案においては、再審請求理由に関係する証拠を対象とする証拠の提出命令制度を設けます。ここで言う関連するというのは、裁判所による再審請求理由についての判断に資するという意味ですから、相当の広がりを持つものだとこれまでも累次答弁があったと思います。
そのため、この制度で審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることとなると考えておりますけれども、御懸念が示されているということも承知しておりますので、この法律案が成立した場合には、制度趣旨を踏まえた適切な運用がなされるように万全を期してまいります。
○和田(政)委員 総理から、相当な広がりを持つということが、答弁が出たということも極めて重要です。であるならば、やはり法文に明快にその記載をしてほしい、こういうふうに考えます。
時間が参りましたので、終わります。
○井上委員長 これにて内閣総理大臣出席の下の質疑は終了いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時五分散会

