第22号 令和8年6月24日(水曜日)
令和八年六月二十四日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 井上 英孝君
理事 阿部 弘樹君 理事 木原 誠二君
理事 高見 康裕君 理事 谷川 とむ君
理事 藤原 崇君 理事 西村智奈美君
理事 三木 圭恵君 理事 小竹 凱君
井出 庸生君 稲田 朋美君
上川 陽子君 神田 潤一君
小泉 龍司君 今 洋佑君
坂本竜太郎君 世古万美子君
武部 新君 辻 秀樹君
辻 由布子君 寺田 稔君
永田磨梨奈君 西田 昭二君
西山 尚利君 福原 淳嗣君
藤沢 忠盛君 藤田ひかる君
古川 禎久君 三ッ林裕巳君
保岡 宏武君 山本 大地君
有田 芳生君 國重 徹君
池畑浩太朗君 金村 龍那君
井戸まさえ君 鈴木 美香君
和田 政宗君
…………………………………
法務大臣 平口 洋君
最高裁判所事務総局刑事局長 平城 文啓君
政府参考人
(警察庁交通局長) 日下 真一君
政府参考人
(法務省刑事局長) 佐藤 淳君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 原田 修吾君
政府参考人
(国土交通省物流・自動車局次長) 猪股 博之君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
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委員の異動
六月二十四日
辞任 補欠選任
河野 太郎君 永田磨梨奈君
辻 由布子君 今 洋佑君
福原 淳嗣君 坂本竜太郎君
三ッ林裕巳君 西田 昭二君
同日
辞任 補欠選任
今 洋佑君 辻 由布子君
坂本竜太郎君 福原 淳嗣君
永田磨梨奈君 河野 太郎君
西田 昭二君 三ッ林裕巳君
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六月二十三日
再審法(刑事訴訟法の一部)改正を求めることに関する請願(有田芳生君紹介)(第八九〇号)
同(西村智奈美君紹介)(第九三八号)
同(小川淳也君紹介)(第九四九号)
旧姓の通称使用法制化ではなく、選択的夫婦別姓制度を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第九四五号)
同(辰巳孝太郎君紹介)(第九四六号)
同(田村智子君紹介)(第九四七号)
同(畑野君枝君紹介)(第九四八号)
性虐待・性搾取等子供に対する性加害の横行に鑑み早急な関係法の改正と法執行強化、被害回復を図る体制の充実に関する請願(橋本岳君紹介)(第九九一号)
治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第九九二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)(参議院送付)
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○井上委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、参議院送付、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁交通局長日下真一君、法務省刑事局長佐藤淳君、国土交通省大臣官房審議官原田修吾君及び国土交通省物流・自動車局次長猪股博之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○井上委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局刑事局長平城文啓君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○井上委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。阿部弘樹君。
○阿部(弘)委員 自由民主党の阿部弘樹でございます。
今日は、三点御質問をさせていただきたいと思っております。
飲酒運転、福岡県におきましても、飲酒運転の車が家族連れの方々をはねて、一家もろとも海の中に投げ出されたという悲惨な事故がありまして、それから福岡県は飲酒運転防止のための様々な取組をしてきたところでございます。本当に悲惨な、かわいそうな事件でありましたし、また、その後、県警本部を中心に、飲酒運転防止のための取組に県民挙げて取り組んできたことに本当に敬意を表するわけでございます。
さて、今般、法改正で、アルコールの数値基準を導入することで、危険運転の数値化を図ろうということでございます。
飲酒運転については、皆さん御存じのように、ハンス・ビンダー博士がスイスでおよそ百年前に書かれた論文がございます、アルコールにおいて酩酊状態が起きる、その酩酊状態を分類して、今日、スイスの精神医学界でもその基準を採用し、世界でも基準を採用することになっておるところでございます。
しかし、その基準が、呼気による、吐く息によるアルコール度を検査する。非常に簡易で全国どこでも行えるということでは、実質的に、採血などと違って、警察官が全国津々浦々どこでも検査できるという点では非常に評価するところではありますが、また、医学の世界では、余り呼気による検査というのは行われないところでもあります。
私も、遠い昔、医学部で法医学の講義を受けていたときに、毒物を飲んだときに呼気に非常に異臭がするということを聞いたこと、講義で受けたことを覚えております。ヒ素であったり様々な、青酸であったりすると、呼気の中にその薬物のにおいが出てくるということでございます。
さて、今般、呼気一リットル当たり五ミリグラムということで、新しい基準を設けられましたが、その基準の合理性についてはいかがでございましょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案におきましては、現行法第二条第一号の正常な運転が困難な状態との構成要件をより明確化するための数値基準を設けることとしているところでございます。
判例上、正常な運転が困難な状態とは、アルコールの影響により道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいうとされているところ、この数値基準は、個別具体的な事情を問わず一律にそのような状態にあると認められる体内アルコール濃度とする必要がございます。
その上で、改正後の第二条第一号におきましては、体内アルコール濃度が血液一ミリリットルにつき一・〇ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・五ミリグラムに至っている場合には、個人差を問わず、注意力や警戒心の低下、反応の遅延といった運転に必要不可欠な能力への影響が生じているというアルコール医学の知見を踏まえると、体内アルコール濃度がそれらの数値に達している場合には、何人でも正常な運転が困難な状態であると認められる症状が生じると考えられることから、これを数値基準として設けることとしたものであり、合理性を有すると考えているところでございます。
○阿部(弘)委員 法制審議会の議論を見ておりますと、やはり、呼気においてこのように測定をして、そして公判維持をする場合に、果たしてそれで堪え得るかという議論もあり、大多数の方々はこれでいいということでございますが、飲酒の検査及び証拠の収集体制、さきの別な委員の質問の中に、例えば、旭川、それと知床、その他、北海道は非常に広い地域を所管する警察署が多いということも伺っております、集めた資料を速やかに届けるためにも相当の時間を要するというふうに伺っておりますが、飲酒検査及び証拠収集体制の強化についてはいかがでございましょうか。
○日下政府参考人 お答えいたします。
警察において、運転者のアルコール濃度を測定する方法といたしましては、交通事故現場等における測定器を用いた呼気検査や、裁判官が発付する令状に基づく血液の採取及び鑑定がございます。
警察におきましては、これまでも、迅速に事故現場等に臨場し、早期の呼気検査等に努めているところであり、また、事故等の発生から相当程度時間が経過していた場合であっても、飲酒状況について裏づけ捜査を徹底するとともに、飲酒量等から計算式により事故発生当時の運転者のアルコール濃度を明らかにしているところでございます。
それから、加えまして、体制ということでございますが、危険運転致死傷罪の適用が見込まれるような重大交通事故が発生した場合には、捜査経験が豊富な交通事故事件捜査統括官が現場に臨場し、捜査に遺漏のないようにしているところでございます。
○阿部(弘)委員 先ほどお話ししたとおり、日本は広うございます。離島もございますし、また北海道のように広い地域を所管する警察署もございますので、是非とも皆様のお力でこの法が順調に行われるように希望するところでございます。
さて、飲酒の数値基準がないために裁判では様々な議論が行われているというところで、その数値基準を設けることは非常にいいことだと私は思っております。その点、今般の法改正の意義について、法務大臣の所見、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
○平口国務大臣 お答えいたします。
危険運転致死傷罪の飲酒類型に関しては、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態との要件について、その認定に困難が生じているとの指摘や、判断にばらつきが生じているとの指摘がされております。
そこで、本法律案においては、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態との要件をより明確化して適切な運用を確保するため、体内アルコール濃度による数値基準を設け、それ以上のアルコールを身体に保有する状態で自動車を運転する行為を一律に同罪の対象とすることとしております。
これによって、危険、悪質な飲酒運転による死傷事犯について、事案の実態に即したより厳正な対処が可能となるとともに、そうした死傷事犯の抑止に資するものと考えております。
○阿部(弘)委員 是非ともよろしくお願いしたいと思います。
次の質問に移ります。速度による危険運転というところです。
今議論にしているところは四輪車の、つまり自動車の運転を想定しておるところでございますが、アルコールを飲まずに高速度で運転する二輪車あるいは原付バイク、その点については、危険運転の捉え方はどのようになっているところでございますか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
危険運転致死傷罪の対象となる自動車につきましては、法第一条第一項におきまして、道路交通法二条一項九号に規定する自動車及び同項第十号に規定する原動機付自転車をいうとされております。そして、同項第九号に規定する自動車には自動二輪車も含まれるものと考えております。
したがいまして、自動二輪車や原動機付自転車による死傷事犯も危険運転致死傷罪の対象となり得るということでございます。
○阿部(弘)委員 今般の法改正ではありませんが、アルコールと並んで薬物についても当然のことながら危険運転致死の対象となり得ると思うんですが、法改正ではありませんが、従前の解釈といいますか、それについてお答え願いたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおりでございまして、薬物の影響による危険運転致死傷の事犯につきましては、従来どおり、改正後も同様に扱われるものと認識しているところでございます。
○阿部(弘)委員 ありがとうございました。
次の質問に移ります。殊更タイヤを滑らせたり浮かせたりする走行を行う行為について、どのような走行を意味するのか、お聞かせ願いたいと思います。
昨今のニュースで、外国人が日本に来て、この行為が格好いいのか何か知りませんが、公道で行って摘発されたという事案が起きておりますが、その点についてもお願いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
改正後の法第二条六号におきましてタイヤを滑らせる行為が対象になっておりますが、これはタイヤと路面のグリップを失わせることをいいまして、例えば、タイヤと路面の接触を保ちつつ、タイヤが向いている方向とは別の方向に進行させることや、タイヤを空転させることなどがこれに当たると考えております。
また、タイヤを浮かせるとは、路面に接地しているタイヤを路面から離して宙に浮かせることをいいます。したがいまして、例えば、意図的にタイヤを空転させて車体を横滑りさせながらカーブを曲がる運転行為や、意図的に二輪車の前輪を浮かせて後輪だけで走行する運転行為などは、今回の改正後の法第二条六号に規定する行為に該当し得ると考えているところでございます。
○阿部(弘)委員 アルコールの酩酊分類、これを、百年前に論文を書いた人はハンス・ビンダー博士。そうすると、ハンス・ビンダーさんといえばF1レーサーなんですね、オーストリアの。F1レーサー、例えば、モナコ・グランプリ、公道上を高速度で走り抜ける。ああいう公道上を走るレーシングといいますか競走においては、この法律の適用は除外されるんでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
お尋ねにつきましては、個別の事案ごとに、収集された証拠に基づいて判断すべきものというふうに考えているところでございます。
その上で、現行法においても、条文上、モータースポーツにおける死傷事犯も危険運転致死傷罪の適用対象から明確に除外されているわけではございませんけれども、例えば、競技として一定のルールの下で行われ、社会通念上正当なものと認められる場合には、刑法三十五条により違法性が阻却され得るものと承知しているところでございます。
○阿部(弘)委員 もう一つは、法制審議会の中でも例が挙がったと思うんですが、例えば、公道を走行中に小動物が突然目の前に現れてきた、それを避けるために急ハンドルを切った、こういった場合はいかがでございましょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
やはり、個別の事案ごとに、収集された証拠に基づいて判断すべきこととなると思われますけれども、一つの考慮要素としては、それが過失に当たるかということもあるかと思いますが、やはり、競技として一定のルールの下で行われて、社会通念上正当なものと認められる場合には、刑法三十五条により違法性が阻却され得ると考えているところでございます。
○阿部(弘)委員 ありがとうございました。
この法改正で危険運転の定義がより一層明確になって、国民の生活、しっかり判断する基準ができたと思いますので、是非ともよろしくお願いしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、世古万美子君。
○世古委員 自由民主党、東海ブロック比例区の世古万美子でございます。
本日は、初めて本委員会での質疑の機会をいただきました。委員長始め、理事の皆様、委員の皆様、関係各位の皆様に心より感謝申し上げます。
それでは、早速質疑に入らせていただきます。
前回、平口大臣より、本法案の趣旨の御説明をいただきました。危険かつ悪質な自動車運転による死傷事犯に適切に対処することを目的として、これまで基準が曖昧とされてきました危険運転致死傷罪の飲酒類型や高速度類型に数値基準を設けるなどするものであると理解いたしました。
これは、自由民主党が、令和五年十二月に、当時の岸田総理大臣に対し、悪質、危険な運転行為による死傷事犯の根絶に向けて、最高速度を大幅に上回る異常な高速度運転による死傷事犯については、危険運転致死傷罪の拡充などの法改正を含め、被害者はもちろんのこと、国民全体の納得を得られるような処罰を可能とするための措置を早急に講ずるべきであるなどと提言したことが政府を動かし、実現した法改正であります。
私は、三重県出身、三重県津市育ちでございます。本法案の立法事実の一つでもありますが、平成三十年十二月二十九日、私の地元である三重県津市の国道二十三号線において、極めて痛ましい交通事犯が発生いたしました。時速六十キロ制限の一般道を時速百四十六キロメートルもの猛スピードで走行していた自動車がタクシーの側面に衝突し、タクシーの乗客を含む四人もの貴い命が奪われ、さらに、ほかの乗客一人にも瀕死の重傷を負わせました。
私は、当時、当然、危険運転致死傷罪が適用され、厳しい処罰がされるものと思っておりました。しかし、下された判決は、過失運転致死傷罪で、懲役七年とのことでした。私は、これほど無謀かつ危険な運転行為が過失と評価されたことが信じられませんでした。また、亡くなられた被害者の方々そして御遺族の無念さ、瀕死の重傷を負わされた被害者の方のお気持ちを察するに、胸が締めつけられるような思いがいたしました。
まず、法務省にお伺いいたしますが、危険運転致死傷罪の的確な運用を可能とするため高速度類型及び飲酒類型に新たに設けられる数値基準について具体的に御説明いただくとともに、数値基準を超えた場合であっても、個別具体的な状況によっては危険運転致死傷罪の対象とならないということがあり得るのかについてお教えください。例えば、高速度類型について、その道路の最高速度の指定が適切でなかったから、数値基準を満たしていても危険運転致死傷罪の対象とならないということがあり得るのでしょうか。
刑事局長にお伺いいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案におきましては、高速度類型につきましては、道路の最高速度が時速六十キロ以下である場合は最高速度を時速五十キロ超える速度以上の速度、最高速度が時速六十キロを超える場合は最高速度を時速六十キロ超える速度以上の速度という数値基準を設け、さらに、飲酒類型につきましては、身体に保有するアルコールが、血液一ミリリットルにつき一・〇ミリグラム以上又は呼気一リットルにつき〇・五ミリグラム以上との数値基準をそれぞれ設けることとしているところでございます。
これらの数値基準は、それを満たした場合に、一律に危険運転致死傷罪として処罰すべき高い危険性や悪質性が認められるものとして定めるものでございますので、それを満たした場合には、個別具体的な状況を問わず一律に危険運転致死傷罪の対象となることとなります。
その上で、御指摘の高速度類型について更に申し上げますと、高速度類型におきましては、最高速度が、基本的に道路の車線数や交通量などといった道路交通の状況を考慮して定められているだけでなく、自動車の運転者やその他の交通関与者にとって重要な行動の基準となるものであることなどを踏まえて、最高速度に応じて数値基準を定めることとしたものでございます。
したがいまして、当該数値基準は最高速度を相当程度超過した速度としており、最高速度を定めるに当たって、生活環境への配慮など危険性以外の要素が考慮され得ることや、最高速度が見直され得るものであることなどを踏まえてもなお、その速度以上の速度で自動車を走行する行為には一律に危険運転致死傷罪として処罰すべき高い危険性や悪質性が認められる速度であると考えているところでございます。
したがいまして、お尋ねのような、数値基準を満たす速度で自動車を運転して人を死傷させたにもかかわらず、その道路の最高速度の指定が適切でないなどとして危険運転致死傷罪の対象とならないということは想定されないものと考えているところでございます。
○世古委員 ありがとうございます。
私たちは、道路の最高速度を前提として道路を利用しており、それを大幅に超える速度で走行してくる自動車があるなんて考えもしません。突然そんな自動車が迫ってきたら、避けることもできません。最高速度を大幅に超過して死傷事犯を起こしたにもかかわらず、危険運転致死傷罪の対象から外れるようなことはあってはならないと考えております。
御説明内容を明確にするために続けて質問いたしますが、高速度類型について、時速六十キロ以下の道路においてはプラス五十キロ以上が一律に危険運転致死傷罪の対象となるとの御説明がありましたが、プラス五十キロちょうど、すなわち、最高速度が六十キロの道路において時速百十キロメートルちょうどで走行中に死傷事犯を起こした場合には、危険運転致死傷罪の対象となるのでしょうか。
また、高速道路などでは、天候や道路状況によって一時的に通常と異なる最高速度が指定されることがありますが、その場合に、数値基準の適用に当たって最高速度はどのように考えることになるのでしょうか。
刑事局長にお伺いいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のような最高速度が六十キロの道路におきましては、百十キロちょうどを含めまして、それ以上の速度で運転する行為が一律に改正後の法二条第四号の危険運転致死傷罪の対象となるということでございます。
そのため、当該道路におきまして百十キロちょうどで運転して死傷事故を起こした場合には、数値基準を満たすものとして、危険運転致死傷罪の対象となります。
また、御指摘のように、最高速度につきましては、天候や道路状況などによりまして一時的に平常時とは異なる速度が定められる場合があるところでございますけれども、これは、当該天候や道路状況などといった特性から生じる類型的な危険性を踏まえ、道路交通の安全の観点から適正と考えられる速度が定められるものというところでございます。
そのため、そのような場合には、類型的に、より低い速度で改正後の法二条四号が対象とする高速度運転の危険性が認められると考えられることから、この号における最高速度は、当該状況において適用される最高速度を意味するものとして数値基準が適用されることになるということでございます。
○世古委員 ありがとうございます。
これまで危険運転致死傷罪に当たるか否かが争われることがしばしばあったと聞いておりますので、反証の余地なく一律に危険運転致死傷罪の対象となる数値基準が設けられることは大変重要であると考えます。
危険運転致死傷罪に数値基準が設けられると聞いて懸念を抱いた点がありましたので、その点についてもお伺いしたいと思います。
犯罪として処罰するためには故意が必要となりますが、自らの体内のアルコール濃度を正確に把握しながら飲酒運転をしている者がいるのか、疑問に感じます。体内アルコール濃度を把握していないとすると、数値基準についての故意が認められないということにならないのでしょうか。数値基準を設けられたことによって、かえって処罰が困難になるのではないかと懸念するので、その点について刑事局長にお伺いいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
改正後の法二条一号の危険運転致死傷罪の故意としては、身体に数値基準以上にアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることの認識が必要となると考えられるところでございます。
とはいえ、その認識につきましては、概括的、未必的なもので足りると考えられ、もとより、個々の事案ごとの事実認定の問題ではあると思われますけれども、身体に数値基準以上にアルコールを保有する状態との認識につきましては、実務的には、検出された体内アルコール濃度に対応する飲酒量の認識があることをもってこれが認められる場合も多いと考えております。
また、身体に数値基準以上にアルコールを保有する状態の認識を欠く場合であっても、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを基礎づける事実の認識、歩くのが難しいとか、そういった事実の認識がある場合には故意が認められることになると考えております。
したがいまして、数値基準を規定することによりまして故意の認定が困難になるとは考えていないところでございます。
○世古委員 ありがとうございました。
危険、悪質な運転行為の根絶は、法律を作っただけでは実現できません。法律の趣旨に沿った確実な運用に努めていただくことが重要と思います。
法務省には、施行後、この法律の運用状況を注視し、不十分な点があれば運用を改善する努力をし、それでも十分でない場合には更なる法改正を検討していただきたいと思います。
また、こうした危険、悪質な運転行為は、運転者自身の行動一つ、自覚一つで十分に回避できるものでもあります。だからこそ、今回の法改正において明確な数値基準が設けられ、それが広く周知されることには極めて大きな意義があると考えます。
法務省始め関係省庁の皆様におかれましては、飲酒運転や高速度運転など、危険、悪質な運転行為の根絶に向けて、本改正内容の更なる周知啓発に引き続き全力を尽くしていただきますようお願い申し上げます。その際には、新たに設けられた数値基準はあくまでも危険運転致死傷罪として極めて重く処罰される基準であって、それ以下であれば許されるというわけではないということもきちんと周知していただきたいと思います。
最後に、法務大臣、危険、悪質な運転行為の根絶に向けた改正法の適切な運用や改正内容の周知啓発についての決意をお願いいたします。
○平口国務大臣 お答えいたします。
御指摘のとおり、危険、悪質な自動車による死傷事犯についてより厳正な処罰を実現するためには、もとより、本法律案によって罰則を改正するだけでは足りず、改正後の規定が適切に運用されることが重要であります。また、危険、悪質な自動車の運転による死傷事犯を抑止するため、国民の皆様に改正の趣旨、内容を正しく御理解いただくことも重要であると考えております。
法務省といたしましては、こうした観点から、本法案が改正法として成立した場合には、改正の趣旨や内容等について、関係機関に対する周知を徹底するとともに、国民の皆様への分かりやすい広報啓発に努めてまいりたいと考えております。
また、検察当局においても、改正の趣旨を踏まえ、法と証拠に基づき、悪質、重大な交通事犯に対し、刑事法規の厳正な適用実現に努めていくものと考えております。
○世古委員 ありがとうございます。
今回の法改正により、数値基準が設けられ、危険運転致死傷罪が明確化されることとなりますが、本当に大切なのは、法律が変わることだけではありません。この改正をきっかけに、車を運転する私たち一人一人が、自分の握るハンドルが誰かの大切な命を奪うかもしれないという重い責任をいま一度胸に刻み直すことだと思います。
危険運転は絶対にしない、させない、その強い決意を車を運転する全ての人が当たり前に持つ社会をここにいる皆様とともにつくっていきたい、そのことを切に願い、私の質問を終わります。
今回の質疑のために御調整をいただきました全ての皆様方に心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。
○井上委員長 次に、有田芳生君。
○有田委員 おはようございます。有田芳生です。
先日、我々の党の部門会議が開かれまして、そのときに、再審法に関わって、近く冤罪、無罪が確定するだろうと言われている日野町事件の、一貫して私はやっていないと言い続けながら無期懲役の判決が下り、残念ながら御病気でお亡くなりになった阪原弘さんの息子さんの弘次さんに来ていただきました。
同時に、片山隼君事件というのは、一九九七年十一月ですけれども、東京世田谷で、当時八歳の片山隼君がダンプカーにはねられて亡くなりました。そのお父様である片山徒有さんも出席していただきまして、片山さんは、息子さんがダンプカーにひかれて亡くなった、そのときから、検察に対する疑問も含めて、非常に様々な努力、運動をなさっていて、今は犯罪被害者支援、そして司法制度改革のために今も努力をされている。そのために我々の部会に来ていただいたんです。
そのとき、私は、この間の再審法の問題も含めてですけれども、刑事局長であったり、あるいはかつておつき合いのあった検察の幹部の方々は、個人的につき合っていると物すごくいい人たちばかりなのに、なぜ冤罪被害が起こるんだろうか。あるいは、この間、質問時間がなかったので聞けなかったんですけれども、取調べで録音、録画がなされているにもかかわらず、検察が分からないのかとどなるような検事さんが大阪にもいらっしゃって、今も問題になっていますけれども、一人一人の、佐藤刑事局長もそうなんだけれども、本当に立派ないい方々が、いざ取調べになるとそういうことになってしまうというのは、これは個人の特性なんだろうか、体質なんだろうか、あるいは何かシステムに問題があるんじゃないかなどというふうにいまだ思っているところがあるんです。
今日は危険運転致死傷罪及び酒酔い運転の改正案についての質問なので、先日私たちの部会に来ていただいた片山徒有さんの息子さんの事故のケースについて最初にお聞きをして、当時の検察の対応についても、何でこんなことが起きたんだというような疑問があるものですから、率直に御意見を伺いたいというふうに思います。
片山隼君、当時八歳、小学校二年生でした。一九九七年の十一月に、学校に行く途中でダンプカーの運転手にひかれてお亡くなりになりました。運転手は、現行犯逮捕で、その場から逃げるんだけれども、片山隼君をひいたときに、対向車からも事故が起きたぞというシグナルがあったり、あるいはバイクに乗ってダンプカーの運転手を追いかけて、窓をたたいて、事故を起こしたぞというようなことを言ったんだけれども、本人は、ひいたことは覚えているんだけれども逃げたのは気づかなかったと、何とも矛盾したような証言を当時したんですけれども、結果的に、業務上過失致死容疑で運転手は逮捕されました。
刑事局長に伺いたいのは、その事件が起きて、逮捕をされて、十日後に釈放されたんですよ。分からないのは、刑事局長も当時その場にいたわけでもないし、関わったわけでもないわけですけれども、お聞きをしたいのは、普通、示談とかそういうことをするために、検察の処分というのは大抵二、三か月ぐらいはかかるんじゃないかと私は理解しているんですけれども、当時、事故を起こして、死亡事故を起こした運転手は、十日後に釈放されて、何と、その十日後に検察は不起訴にしたんですよ。
当時ですけれども、一九九七年、だから、不処分になったのは九八年なんですけれども、こういうことは一般的にあり得たことなんでしょうか。個別の件はお答えできないというような答弁になると思うんですけれども、こういう、十日後に不処分なんということは、実際あったんだけれども、ちょっと理解できないんですけれども、どう思われますか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
個別事件における捜査や証拠の具体的内容に関わる事柄でもございますので、そこは御理解いただきたいと思うんですけれども、御指摘のように、事件が起きて逮捕されたほぼ十日後に処分保留で釈放がされて、かつ、その十日後にこの事件について一度目の嫌疑不十分の不起訴が行われているということは事実でございます。
その上で、やはり、なぜそうなったのかということについては、なかなか答弁が難しいということは御理解いただきたいと思うんですけれども、結論として、不起訴、業務上過失致死事件及び道路交通法違反事件について、これは不救護、不申告ということでございますけれども、これをいずれも嫌疑不十分で不起訴にした後、その後、事件を再起して再捜査を行った結果、約十一か月後になりますけれども、平成十年十一月二十六日に、業務上過失致死事件を公判請求するとともに、道路交通法違反事件、不救護、不申告を改めて嫌疑不十分で不起訴にしたということと承知しているところでございます。
○有田委員 先ほども伺いましたけれども、一般論でいいんですけれども、普通、交通事故、死亡事故が起きたときに、これから運転手さんと示談を進めるとかそういう形で、これまでだと、さっきも言いましたけれども、二、三か月の時間がかかって処分がなされるというふうに理解しているんですけれども、十日というのは余りにも短過ぎる。この事件じゃなくてもいいんですけれども、それはやはり一般論として異例という理解をせざるを得ないんですけれども、刑事局長はどう思われますか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
約三十年前の事件でございまして、かつ、その当時の交通事件に関する捜査というのは、今とはやや違いがあるような気もいたしまして、そのような不起訴処分というのが異例だったかどうかについて、私、今の知識や、あるいは一般的にもなかなか言い難いところではあるんですけれども、現状を申し上げれば、このような死傷事犯は重大な死傷事犯で、そのような形で早期に不起訴処分がなされるということはかなり少ないのではないかというのが印象でございます。
○有田委員 そう思います。
先ほども、最初にお伝えしましたけれども、再審法の審議も含めてなんだけれども、今度の日野町事件の、恐らく近く出る結末も含めて、検察とは一体何なのという国民の一般の疑問がやはり広がっていると今思うんですよね。
私は、さっきも言いましたけれども、佐藤刑事局長も含めて、これまでずっとおつき合いしてきた検察の幹部あるいは一般の検察官なんかも、こんな人たちがそんなひどい取調べをやるとは思えないから、だから何でこんなことが起きるんだろうかということで、今日取り上げる問題でいえば、当時、片山隼君のお父さん、お母さんは、検察が不起訴処分を僅か二十日後に、運転手さんを釈放してから十日後に不起訴処分、つまり二十日で不起訴になったことについて、当時、東京地検に連絡を取っているんですよ。どういうことですかというふうに聞いたところ、当時の地検は、教える義務はないという返事なんですよ。
このことは、当時、毎日新聞が社会面で大きく報道して、私も関わっていたテレビ番組などでも連日のように、片山隼君事件ということで、お父さん、お母さんは署名を集める、そして、そのダンプカーの運転手さんに対しては、第二検察審査会に審査を請求して、業務上過失致死で在宅起訴がされて、ひき逃げ容疑は不起訴だったんだけれども、先ほど刑事局長がおっしゃったように、東京地検は禁錮二年を求刑、東京地裁は禁錮二年執行猶予四年になるんです。
当時の警察も検察もですけれども、例えば、現場の目撃証言を捜すというようなことをやっていないんですよ。誰がやったかというと、隼君の葬儀があって、千人集まったんですよね、千人の方が集まって、その参加者一人一人を調べて、御両親が、第一発見者が誰かということを特定をして、その方から話を聞き、そして、毎朝、その事故があった時間に通行する車をお父さん、お母さんが止めて、一台一台止めて、息子が亡くなった事故について目撃した人はいませんかということで、四人の目撃証人が出てきて、そして第二東京検察審査会への審査が請求されて、先ほど刑事局長がおっしゃったような結論が出たんですよね。だから、警察も検察も現場を調べて目撃証言などを捜していない、御両親の努力だったんですよ。
当時、テレビなどでも、ワイドショーなどでも連日のようにそのことが報じられていたんだけれども、そういう出来事に対して、繰り返しますけれども、御両親に対して、東京地検は、教える義務はない、そのことを取材をした毎日新聞の記者が、事件を担当した副検事、その後、東京区検道路交通部副部長になられるんですけれども、記者が、当人の、責任ある検事さんに意見を聞いたら、答える立場にはないという返事なんですよね。
何度も繰り返しますけれども、息子さんを失った御両親に対して教える義務はない、そのことを取材している記者に対して答える立場にない、こういうことがあるから、やはり検察に対する不信感というのはずっと広がってきて、再審法の問題でもそうですけれども、こんなことでは駄目だと思うんですよ。だから、もっと丁寧に、説明できるところまでは説明をしていくのが、やはり今後も含めて検察のしかるべき対応だと思うんですが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
当然のことながら、検察当局におきましては、捜査、公判への影響もありますでしょうし、関係者のプライバシーの問題も、これは被疑者側もそうですし、被害者側もそうですけれども、そういったプライバシーなどを踏まえなければなりませんけれども、説明すべきはちゃんと説明していくということが大変重要だというふうに考えております。
そういう意味でも、この片山さんの事件の関係でそのような対応を取ったことについては、検察当局もその後いろいろ考えるところがあって、例えば被害者通知制度なども含めまして、被害者への説明を十分にするような、徐々にではありますけれども、犯罪被害者の権利が徐々に高まりを見せる中で、そのような対応を取ってきたということでございます。
○有田委員 そこで、平成十一年ですか、新しい対応が取られて、今刑事局長が言葉にしてくださったように、被害者等通知制度ができるんですけれども、この制度の趣旨、内容、少し丁寧にお伝え願えますでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
被害者等通知制度は、今委員御指摘のように、片山さんの事件も一つの契機としてつくられた、平成十一年に設けられた制度でありまして、平成十一年の刑事局長通達で設けられた制度でございます。
これは、犯罪被害者等の事件に関する関心に応えて、犯罪被害者等の方々に、その御要望を踏まえて、事件の処理結果、公判期日、刑事裁判の結果、それから加害者の処遇状況などについて通知する制度でございます。
この制度は、事案に応じて、当該事件の公判期日の傍聴であるとか、加害者に対する民事上の権利行使であるとか、こういったことを始めとする犯罪被害者等の方々の活動などに資するものとなっていると考えているところでございます。
検察当局におきましては、検察官等が犯罪被害者等の取調べ等を実施したときに、犯罪被害者等に、通知の希望の有無、通知を希望する内容等を確認して、希望する方に文書など適宜の方法で通知を実施しているところでございまして、今後とも、引き続き、御要望を十分に踏まえて対処していく必要があると考えているところでございます。
○有田委員 今日の質問の中心は交通事故の被害者なんですけれども、被害者等通知制度というのはいろいろな事件の被害者がいらっしゃるわけで、例えば、性被害者の方がいらっしゃるときには非常に微妙な通知の仕方になると思うんですけれども、どういう工夫をなさっているんでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
例えば、文書で送る場合には検察庁の庁名入り封筒を使ったりすることもあるわけでありますけれども、一方で、被害者の希望に応じまして、庁名が入っていない封筒を使ってほしいという御希望があったりする場合にはそのような対応をするということでございまして、もちろん、十分コミュニケーションが取れていない事案が過去にあったのも事実でありますけれども、そういうことを踏まえて、できる限り被害者に寄り添って、本当に被害者の方々の御希望というのは様々でございますので、そういうところに寄り添って対応することが重要であると考えているところでございます。
○有田委員 そういう細かい丁寧さというのがやはり信頼に結びつくものだと思います。
私は、法務省それから警察庁の方々に質問レクのときにお伝えしたんですけれども、全然テーマは違うんだけれども、二〇〇二年九月十七日に、小泉純一郎元総理、当時総理が北朝鮮を訪問して、金正日総書記と会談をやって、日朝平壌宣言が締結されるんだけれども、あのときに、北朝鮮側は、拉致被害者に対して、五人生存、八人死亡という通知をしてきた。皆さん御存じだと思うんですけれども。
そのとき、例えば、横田滋さん、早紀江さんたちは、外務省で待機をしていて、関係者は北朝鮮側の通知を教えられたんだけれども、驚いたのは、八人死亡ですよね、彼ら、北朝鮮側が言っている、その中に北海道出身の拉致被害者の男性がいたんですよ。その家族には封書で通知しただけなんですよ。例えば、政府が北海道まで行って、北朝鮮側がこんな発表をしていますよということをやらずに、一方的に封書が届けられた。
こんなやり方をしていては駄目だと私は思ったんだけれども、そのことも含めて、やはり責任ある官庁の対応というのは、被害者も含めて丁寧にやっていく必要があるというふうに私は思っているということをちょっとつけ加えておきたいと思います。
引き続いて、交通事故被害者が検察審査会に申し立てるケースというのは、件数については把握されているんでしょうか。これは最高裁ですけれども。
○平城最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
交通事故の被害者による検察審査会への審査の申立て件数につきましては、そもそも、申立人の属性として、被害者であるか否かという観点から統計を取っておりませんので、最高裁としては把握してございません。
○有田委員 統計はないということで、時間の関係もありますので、だんだん中心テーマに入っていかなければいけません。
次に、危険運転致死傷罪、飲酒類型についてお聞きをしたいんですけれども、佐藤刑事局長がアルコールをたしなまれるかどうかというのは私は知らないんですけれども、要するに、正常な運転が困難な状態を数値で定義するというのは、これまで適切でないとしてきたのではないかというふうに理解をしているんです。
そのことに関して、今度の改正法の二条一号では、アルコール影響正常運転困難状態で自動車を走行させる行為というのは、一つは、呼気中アルコール〇・五ミリグラム・パー・リッター以上、二番目に、その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態。
二番目があるから分かるんだけれども、例えば、これは余談になるかも分かりませんけれども、アルコールを飲んでどのぐらいの影響を受けるかというのは非常に個人差があると思うんですよね。私は、酒場評論家の皆さんをいっぱい知っていて、友人で、名前は出しませんけれども、お酒を飲むと気分がよくなって、ああ、酔っているなと分かるけれども、次の日、全く影響のない人もいる。あるいは、今月、私の知人がある新書をお酒について出したんだけれども、彼なんかも、ずっとアルコールを飲んでいても、静かに、乱れない、しかも次の日もすっきりしているという。非常に人によって違うと思うんです、影響は。
それが、今回、具体的な数値を定義をして、アルコールの影響による正常な運転が困難な状態ということになっているんだけれども、これはどういう趣旨なんでしょうか。つまり、もっと一般的な対応でよかったのが、何でこんなに細かく、個人差があるアルコール、飲酒の影響なんだけれども、その理由を教えていただけますか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
法制審議会の部会や、それに先立ちまして法務省で開催した自動車運転による死傷事犯に係る罰則に関する検討会におきましては、危険運転致死傷罪の飲酒類型の数値基準の在り方について議論を行う前提といたしまして、アルコール医学の専門家からのヒアリングが行われたところでございます。
そこでは、酒に強い弱いというのは一般的にあると思いますということなのではありますが、それは、やはり、基本的には分解能力の差によるということのようでございまして、アルコールが運転能力に与える影響の程度は体内アルコール濃度に依存する、体内アルコール濃度が同じ数値であれば運転能力の影響は同じである、呼気中アルコール濃度が一リットルにつき〇・五ミリグラムに達していれば、何人であっても注意力や警戒心の低下、反応の遅延、合理的な決断や分別ある判断能力の低下といった症状が表れ、道路交通の状況に応じた運転操作を行うことは困難になると考えられるという説明がなされたところでございました。
本法律案では、このようなアルコール医学の知見を踏まえて、個別具体的な事情を問わずに一律に正常な運転が困難な状態に当たると評価できる数値基準を体内アルコール濃度を用いて定めることとしたものでございます。
御指摘のアルコールの強さ、先ほどちょっと申し上げましたけれども、強さに個人差があることにつきましては、このヒアリングにおきまして、アルコール医学の専門家から、一般的に言うところの酒に強い弱いとはアセトアルデヒドという物質の分解能力に関するものであるとか、この分解能力には個人差はあるけれども体内のアルコール濃度が同じ場合の酒の強さと運転能力への影響との間に明確な関係はないといった説明がなされたところでございました。
こうした指摘や御意見を踏まえて議論がなされた結果、このような法案を作成したということでございます。
○有田委員 これまでの最高裁判例に加えて、数値を入れることでより明確化をしたという理解をしております。
これは質問通告していないんですけれども、もし分かれば教えていただきたいんですけれども、アルコール濃度〇・五ミリグラム・パー・リットル、これは、ビール、焼酎、ワイン、どのぐらいの量になるんですかね。
○佐藤政府参考人 一般的に、目安として申し上げますと、体重が六十キロぐらいの方が大瓶二本のビールを飲んだ場合に、その一時間後程度に出る数値というふうに承知しているところでございます。
○有田委員 今、ビールですけれども、しつこいようですけれども、ワインとか焼酎とか日本酒というのはどのぐらいなんですか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
一点訂正させてください。先ほど一時間後というふうに申し上げましたが、三十分後の数値がそのようなものであるということでございます。
ビール大瓶二本ということを申し上げましたけれども、これが日本酒でいきますと二合程度というふうにされているところでございまして、済みません、ちょっとワインについては今すぐ数字が出ませんので、御容赦願います。
○有田委員 済みません、ありがとうございます。
もう時間が迫ってきましたので、ちょっと飛ばして、やはり被害者にとって非常に大切な問題、逃げ得を許さないという問題を最後に伺いたいんですけれども、ひき逃げ事件で、やはり、事故であるとの認識がなかったという言い訳をする運転手さんがいるわけですけれども、事故であるとの認識はなかったと言って処分を免れたケースというのはどのぐらいあるんでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のひき逃げ事件などにつきましては、人の死傷を伴う交通事故に係る道路交通法上の救護義務の違反、それから報告義務違反の事件を指すものとして考えますと、そのような事件について、被疑者が交通事故により人を死傷させたことの認識がないなどとして故意を争っている場合におきまして、捜査当局が所要の捜査を尽くしたものの、証拠上、被疑者の行為を認めるに足りる証拠がないといたしまして、嫌疑不十分を理由に当該事件を不起訴処分とすることはあるというふうに承知しているところでございます。
その上で、具体的な、故意によって不起訴となったのかどうなのかということの統計はございませんので、今、御質問には直ちに答えられないことを御容赦願います。
○有田委員 引き続いて、警察庁も来ていただいているんですけれども、普通の人が聞くと、これは何だというような法律がいっぱいあるんだけれども、アルコール等影響発覚免脱罪、これは何ですか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
法四条の過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪という、ちょっと長い、罪でありますけれども、これは、いわゆる逃げ得を許さないようにするために、平成二十五年の自動車運転死傷処罰法を制定した当時に設けられた罪でございます。
これは、アルコール等の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠って、よって人を死傷させた場合において、その運転時のアルコール等の影響の有無、程度が発覚することを免れる目的で、その場を離れて身体に保有するアルコール等の濃度を減少させるなどしたときには十二年以下の拘禁刑に処するという罪でございます。
○有田委員 どこかの議員が高速道路で捕まって、雪を食べてアルコール濃度を薄くしようとしたのが報道されたこともありましたけれども、こういった免脱罪で検察の処理件数というのはどのぐらい直近であるんでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
令和六年における起訴件数ということで申し上げますと、四類型ございまして、過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪が五十六件、過失運転致死アルコール等影響発覚免脱罪が五件、それから無免許過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪が二件、無免許過失運転致死アルコール等影響発覚免脱罪がゼロ件ということでございます。
○有田委員 私たちの世代、恐らく大臣も、委員長の世代も覚えている、昔は交通戦争なんといって、一年に一万人以上の方が亡くなっていたんだけれども、警察庁、最後に、もう時間が来ましたので結論だけでいいんですけれども、今の交通事故の死亡者というのは何人なんでしょうか。そして、交通戦争などと言われていたのが何で少なくなってきたのか。その理由を端的に言ってくださって、それで終わります。
○日下政府参考人 お答えいたします。
令和七年中の交通事故死者数は二千五百四十七人でございまして、過去最悪であった昭和四十五年の六分の一以下となっています。
その原因の要因といたしましては、飲酒運転等、死亡事故となる可能性の高い悪質な違反を伴う交通事故が減少したこと、シートベルト着用率や自動車の安全性能の向上により交通事故の際の被害が軽減されていることなどが挙げられていると考えております。
○有田委員 終わります。
○井上委員長 次に、國重徹君。
○國重委員 おはようございます。中道改革連合の國重徹です。
今日、審議の対象となっています本法案、これは参議院先議で、本法案の内容そのものについては相当程度やり取りがされていると思いますので、今日は、法案の内容そのものもそうですけれども、少し角度を変えた質問もさせていただきたいと思います。
まず、高速度類型についてお伺いします。
本法案では、危険、悪質な事犯について、より厳正、的確な処罰を可能にするために、この高速度類型に新たに数値基準が設けられています。具体的には、最高速度が時速六十キロ以下の場合には五十キロ以上のスピード超過、最高速度が時速六十キロを超える場合には六十キロ以上のスピード超過の場合に、それぞれ危険運転致死傷罪が成立する、このように明確化しています。
その上で、本法案では、二条四号において、その他道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度として、これは現行法にも規定があるものですけれども、その上で、五十キロオーバー、六十キロオーバーという速度に準ずる速度も対象となると定められています。この準ずる速度とは具体的にどの程度の速度をいうのか、お伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
準ずるとは、一般に、ある基準を標準として考える、同等の扱いをするといった意味であるとされておりまして、改正後の法二条四号のイ又はロに定める速度に準ずるものにつきましては、この速度と同程度のものと言えることを意味するものとして用いているところでございます。
その上で、最高速度は十キロメートル毎時単位で定めることとされておりまして、この号のイ又はロにおきましても、そのことを前提に、十キロメートル毎時単位で数値基準を定めることとしていることからしますと、少なくとも同号イ又はロに定める速度を十キロメートル毎時以上下回る速度はこれに準ずるものには当たらないと考えているところでございます。
○國重委員 要は、時速十キロより下回るもの、これについては準ずるに当たらないということの答弁だったと思います。
今回のこの数値基準、物理モデルを用いて算出された回避限界速度、すなわち最高速度を遵守していれば回避できるはずの障害物がおよそ回避できなくなる理論的な限界速度を参考に算出されたものとされています。
この点、現行法の反則金制度においても速度の数値基準が設けられていますけれども、この数値基準と本法案で新たに設けられた数値基準とは、同じ趣旨から設けられているものなのか、あるいは別の根拠によるものなのか、お伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
交通反則通告制度は、大量に発生している道路交通法違反事件のうち比較的軽微なものを反則行為として扱うことで、これらを迅速かつ合理的に処理することを目的としているところでございます。
最高速度違反につきましては、特に処理の迅速化、合理化が必要となる類型である一方で、超過速度に応じてその悪質性、危険性が大きくなると認められることから、一定の超過速度以上のものについて反則行為から除外しているものと承知しておるところでございます。すなわち、超過速度が三十キロメートル以上、あるいは高速道路では四十キロメートル以上ということですけれども、これは反則金制度から除外されているわけでございます。
これに対しまして、改正後の法二条四号の数値基準は、最高速度を遵守していれば回避できる障害物をおよそ回避できなくなる物理的な理論的な限界速度を参考にしつつ、道路交通に関する社会通念をも考慮し、一律に道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難となる高度の危険性や悪質性が認められる速度を定めるものでございまして、交通反則通告制度による反則行為からの除外基準とは異なる趣旨によるものでございます。
○國重委員 それぞれの趣旨は違うということが確認できました。
本法案の一律に高度の危険性や悪質性が認められる速度という趣旨を踏まえて伺っていきますけれども、現在、一般道路のうち生活道路、住宅街の道ですとか学校周辺の道については、警察庁として規制速度を原則時速三十キロとする運用がなされています。特段の規制速度が設けられていない、標識のない一般の道路であれば法定速度の六十キロまでオーケーですけれども、生活道路については周辺の状況に鑑みてそのようにしているわけであります。
規制速度が三十キロということは、今回の改正法案に照らすと、八十キロ以上でなければ危険運転致死傷罪の対象にならないことになります。八十キロといいますと、規制速度の三十キロの二・六倍ということになります。これは数値基準として、倍率で見ますと非常に高いように思いますけれども、回避限界速度の観点から妥当な基準と言えるのかどうか、法務省の見解を伺います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
危険運転致死傷罪は、危険、悪質な自動車の運転行為のうち、重大な死傷事犯となる危険が類型的に極めて高い運転行為を傷害あるいは傷害致死罪に準じた重い法定刑により処罰するものでございますので、処罰対象はそのような危険性や悪質性が認められる行為に限定する必要があるという判断の下に、先ほども委員から御指摘のあるような、物理モデルに基づく理論的な限界速度を参考にしつつ、道路交通に関する社会通念をも考慮して定めたものでございます。
その上で、御指摘の点につきましては、法制審議会の部会においても議論されたところでございますけれども、道路や交通の状況には様々なものがあり得ることを踏まえますと、改正後の法二条四号に定めるものより低い数値基準とした場合には、危険運転致死傷罪として処罰すべき高い危険性や悪質性を伴わない行為が処罰対象に含まれるおそれを否定し難いといった意見が述べられまして、結論といたしまして、同号に定める数値基準とすることにつきまして幅広い意見の一致が見られたところでございました。
この数値基準は、御指摘のような意見もあることは承知しておりますけれども、法制審議会における議論を踏まえて定めたものでありまして、政策的な判断として合理性を有するものと考えているところでございます。
○國重委員 高度の危険性、悪質性が、一律にこれが認められるかどうかということ、法案の制度趣旨を踏まえて判断したということと捉えました。
その上で、先般の道路交通法施行令の改正によりまして、本年の九月一日以降は、三十キロという規制速度が特別に設けられていない生活道路についても、法定速度が三十キロまで引き下げられることになります。
確認ですけれども、このような引下げを行った趣旨はどこにあるのか。これは相当な道路が適用対象になりますので、この趣旨はまず何なのか。
そしてまた、これは国民の皆さんに大きく影響する改正になりますけれども、まだまだ周知は十分でないと思います。周知が不十分な状況で違反に問われた場合には、いや、そんなことは知らなかったというようなことで相当な反発を招くことになって、要は、交通法規を遵守するといっても、その前提自体を知らなければ、そういう周知をしなかったのが悪いんじゃないかというようなことで、これはかなりの反発を招くことになると思いますので、この周知についてどのようにこれから取り組んでいくのか、こういったことについてもお伺いします。
○日下政府参考人 お答えいたします。
自動車と歩行者、自転車との交通事故を防止するためには、主として地域住民の日常生活に利用される生活道路において、自動車の速度抑制を行うことが効果的であります。こういった趣旨から、本年九月一日から、中央線の設置されていない道路等については、いわゆる法定速度が時速三十キロメートルとなるものでございます。
議員御指摘のとおりでございまして、今回の法定速度の見直しについて、どのような道路が法定速度時速三十キロメートルとなるのか、これを国民の皆様に対して分かりやすく広報啓発を行い、理解していただいて、遵守していただくことが重要だと考えております。
警察におきましては、これまでも関係機関の協力を得つつ、ポスター、ラジオ放送、インターネット広告等の様々なメディアを活用した広報を推進しているところであり、今後、動画を作成したりSNSを活用した広報啓発等を積極的に実施してまいります。
引き続き、関係機関の協力を得ながら、国民の皆様に対する広報啓発を一層進めてまいります。
○國重委員 法の不知は罰するということになっていますけれども、ただ、やはり内容を知らずに違反に問われたということになってしまいますと、遵法意識がかえって損なわれかねないというふうに思いますので、是非効果的な周知をよろしくお願いします。
次に、あおり運転、これも社会問題になりましたけれども、こういったあおり運転をされている場合に、危険を回避するため一時的に高速度でそれを回避するというような場合もある、危険回避するために一時的に高速度になるケースも考えられます。これらの場合に、形式的に数値基準に当てはまるので処罰の対象になるというふうになるのかどうか、この点についてお伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
犯罪の成否は、収集された証拠に基づいて個別の事案ごとに判断されるべき事柄であるというのはまず前提でございます。
その上で、一般論として申し上げますと、改正後の法二条四号の数値基準は、道路や交通の状況を問わず、それ以上の速度で自動車を運転する行為を一律に危険運転致死傷罪の対象とするものであることから、数値基準以上の高速度で自動車を運転して、それにより人を死傷させた場合には、同法の危険運転致死傷罪が成立し得るというのがまず一点でございます。
その上で、また一般論として申し上げますと、今御指摘のあったあおり運転であるとか、様々なパターンがあると思うんですけれども、行為者以外の者の行為が結果発生に寄与しているような場合には、個別具体の事情に応じまして、量刑であるとか起訴、不起訴などの処分であるとか、そういった判断において適切な考慮がなされるものと考えているところでございます。
○國重委員 では、次に、飲酒類型についてお伺いします。
本法案では、飲酒類型についても二条一号で新たな数値基準を設けています。その上で、明確な数値基準に加えて、その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態、このような規定も設けられています。これは現行法と同じものだというふうに認識はしていますけれども、数値基準は満たさずに、その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態という、この要件を満たすケースというのはどのような場合をいうのか、お伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
現行法上のアルコールの影響により正常な運転が困難な状態という文言につきましては、最高裁判例におきまして、アルコールの影響により道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいうとされているところでございまして、その解釈につきましては数値基準を設ける本法律案の下でも変更はないと考えているところでございます。
具体的には、例えば、アルコールの影響によりまして前方の注視が困難になったり、ハンドル、ブレーキ等の操作の時期やその加減についてこれを意図したとおりに行うことが困難な状態であるといった場合などがこれに当たり得るというふうに考えております。
その上で、今回の数値基準は、個別具体的な事情を問わずに一律に正常な運転が困難な状態に該当することとなる数値を規定するものでございまして、その数値を下回る場合であっても、個別の事案において、例えば運転時の体調なども相まってアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であったと認められる場合には、危険運転致死傷罪が成立し得ると考えているところでございます。
○國重委員 今申し上げた二条の一号、これに関して少しお伺いしていきますけれども、私は、法案審議のときは、やはり法案の審議なので、法文を、重要な法文についてはさらっと素続をするんですけれども、そのときに、さらっと素読をしたときに、あれっと、一読して適用範囲の違いがよく分からないという条文がありました。それがまさに二条一号と三条一項なんですけれども、二条の柱書きと一号を見ますと、要は、アルコール影響正常運転困難状態で自動車を走行させて人を負傷させた場合や人を死亡させた場合、これが定められているわけです。三条を読みますと、これも端的に言うと、アルコール影響正常運転状態で人を負傷させたり人を死亡させた場合の規定が設けられているわけです。
この二つの規定、その適用範囲、一読しただけでは非常に分かりづらいものとなっています。一方で、だけれども法定刑は違うということになっています。
そこで、伺います。事件発生時に数値基準以上のアルコールを身体に保有して死傷事故を生じさせた場合で、二条一号が適用されずに三条一項が適用されるのは具体的にどのような場合か、明確な答弁を求めます。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘の法二条一号と現行法三条一項の罪を比較しますと、前者は、アルコール等の影響により正常な運転が困難な状態で、そのことを認識して自動車を運転し人を死傷させた場合を処罰対象としております。これに対しまして、後者は、アルコール等の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、そのことを認識しながら運転して、客観的に正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させた場合を処罰対象としているという違いがございます。
これを、おっしゃるように、大変読みづらい規定ではあるわけですけれども、現行法の三条一項は、アルコール等の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を運転して人を死傷させた事案におきまして、行為者にアルコール等の影響により正常な運転が困難な状態であることの認識が認められない場合であっても、正常な運転に支障が生ずるおそれの認識があればこの罪が成立するという点に意義がある規定でございます。
○國重委員 よく読めば、注意深く読めば分かるんですけれども、しっかりと答弁に、議事録に残す意味で質問させていただきました。
次に、最近、電動キックボードが町中で走行しているのを見かける機会が増えております。この電動キックボードのうち、一定の基準を満たした特定小型原動機付自転車、これに当たるものについては、十六歳以上であれば運転免許がなくても運転できます。他方で、十六歳未満の運転は禁止されていますし、飲酒運転も法律上当然に禁止をされています。
念のための確認ですけれども、特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードについても、本法案の飲酒類型の数値基準が適用されるという理解で間違いないかどうか、お伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
結論から申し上げると、御指摘のとおりでございまして、危険運転致死傷罪の対象となる自動車につきましては、法一条一項におきまして、道路交通法二条一項九号に規定する自動車及び同項第十号に規定する原動機付自転車をいうとされているところでございます。
そして、いわゆる電動キックボードに関しましては、そのうち、一定の基準を満たすものは特定小型原動機付自転車として同項第十号に規定する原動機付自転車に含まれるものと承知しているところでございます。したがいまして、いわゆる電動キックボードの運転による死傷事犯も、飲酒類型を含む危険運転致死傷罪の対象となり得るということになります。
○國重委員 対象になるということでした。
先ほど申し上げたとおり、特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードについては、十六歳以上であれば免許なしで運転ができます。その一方で、運転免許が不要であることから、交通ルール、また刑事責任についての認識が十分でない利用者も想定されます。特に、シェアリングサービス等を通じて利用する若者とか日本に来られている訪日外国人の方に対しても、飲酒運転が許されないこと、そして人を死傷させた場合には危険運転致死傷罪、こういったものの対象になり得ることについて、多言語対応も含めて分かりやすい周知を徹底することも大事だと思いますけれども、政府の見解をお伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおりでございまして、危険、悪質な自動車の運転による死傷事犯を抑止するためには、国民の皆様に改正の趣旨、内容を正しく御理解いただくことが重要であると考えているところでございます。
法務省といたしましては、こうした観点から、本法律案が改正法として成立した場合には、改正の趣旨や内容等につきまして、関係府省庁とも連携いたしまして、電動キックボードの利用者を含む国民の皆様への分かりやすい広報啓発に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○國重委員 是非よろしくお願いします。
最近、やはり、スマホ等を使用とか注視をしながら運転するいわゆるながら運転、ちょっとデータは私は詳しく見ていないですけれども、こういうものが増えている傾向にあると思われます。このいわゆるながら運転についても、検討会で新たな処罰類型として追加することの検討が行われたようですけれども、今回の法案には入っていません。なぜこれが立法されなかったのか、お伺いします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、スマートフォン等を使用したり注視しながらの運転行為等のいわゆるながら運転を危険運転致死傷罪の対象とすることにつきましては、令和六年に法務省で開催した検討会におきまして、交通事犯被害者遺族の御要望等を踏まえ、議論が行われたところでございました。
一方で、その中で、ながら運転には、危険運転致死傷罪として処罰すべき危険性や悪質性を有するものが含まれ得る、これは事実であるものの、その一方で、注視などする対象物、時間、状況などにつきましては本当に様々な態様のものがあり得ると考えられるために、危険運転致死傷罪の対象とすべき高い危険性、悪質性を有する行為を的確にそこから切り出して規定することが困難であるといったことなどから、この検討会の取りまとめにおきましては慎重な検討を要するとされたものと承知しているところでございます。
そのために、現時点では、このながら運転を危険運転致死傷罪の対象とすることについては慎重な検討が必要であると考えておりますけれども、今後とも、自動車運転による死傷事犯の実情等を注視して、必要に応じて適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
○國重委員 これについても、是非今後の検討をよろしくお願いします。
事故を防ぐためには、もちろん刑罰によって抑止力を高めていくということも大事だと思います。その一方で、やはり、事故が起きる前の段階で、運転者が危険を自覚をして運転を思いとどまったり、慎重な運転をするように促す仕組みも私は重要だというふうに考えています。危険なのは、スピード違反だけじゃありませんし、お酒だけでもありません。例えば睡眠不足についても、本人が少し眠いだけと思っていても、今はもうかなり研究も進んでいまして、集中力、判断力、反応速度を低下させて、危険の発見、回避が遅れる原因にもなります。
だからこそ、例えば、ATMに振り込め詐欺の注意喚起が表示されるように、車に乗車するときとか運転を開始する際に、飲酒運転をしていないか、睡眠不足じゃないか、体調に問題はないか、こういった注意喚起をディスプレーに表示するということも考えられるかと思います。
さらに、AIとか車載センサー、こういったものを活用して、その人の運転傾向を分析して、それぞれのドライバーに応じた注意喚起を行うことも考えられます。今AIも相当進んでいますので、このようなことも今であればそんなに難しくないことだと思われます。例えば、ふだんから急加速や急ブレーキが多い方、車間距離が近くなりがちな人、速度超過の傾向が強い人、車線のふらつきが見られる人などについて、その人の運転傾向に応じた注意を表示することが考えられます。
また、高齢ドライバーの方については、免許を返納するとかいうのもありますけれども、やはり自分は運転したいという方もいらっしゃいます。年齢だけで一律に判断するんじゃなくて、加齢に伴う認知機能や反応速度の低下、アクセルとブレーキの踏み間違いにつながり得る運転傾向、こういったものも踏まえて、発進時のペダル確認、周囲の確認を促すなど、個々の状態に応じた注意喚起を行うことも考えられます。
加えて、実際の運転中に速度超過、急加速、急ブレーキ、車間距離の詰め過ぎ、蛇行、あおり運転につながりかねない、こういった挙動が見られる場合には、アラームとかディスプレー表示などで適時に警告を発することも考えられます。
このように、車に乗る際の注意喚起、また、AIによる運転傾向の分析、運転中の警告表示などを通じて、危険な運転を早い段階で抑止していくことは、事故防止の観点から有用ではないかと考えます。
国交省、警察庁の見解をそれぞれお伺いします。
○猪股政府参考人 お答えいたします。
国土交通省におきましては、危険運転を始め、交通事故防止のため、車両側の技術的な対策として、例えば、道路上の速度制限標識を自動的に認識し、ドライバーに対して表示、警告する交通標識認識システムなどについて、これまでも普及に取り組んでおり、委員からまさに御指摘がございました、運転者に対して注意を促すなどのソフト面での対策の重要性を認識しているところです。
○日下政府参考人 お答えいたします。
議員御指摘のとおり、事故抑止の観点から、自動車にそのようなシステムが搭載されていくということは、そういったものが開発、実用化されているということは、警察としても大変望ましいことだと思っています。
警察といたしましても、いろいろ、事故の分析結果とかそういったものがございますので、そういうのを御提供申し上げて、よりよいそういうシステムが実用化されるよう、必要な協力はしていこうと思っております。
○國重委員 これは事前のやり取りで、ここについては意気投合したというか、やり取りの中で非常にこれは重要ですよねと。その上で、どういうふうにこれを形にしていくのかというのは、これは当然様々課題があることは私も認識をしています。その上で、完全な自動運転ですね、こういったいわゆるレベル5の自動運転が社会実装されるには、今なお相当の年数を要するものと考えられます。
そうであるならば、その前段階として、先ほど申し上げたようなAI等の技術を活用した事故防止の取組について、関係省庁が連携をして、民間事業者、研究機関とも協力しながら、技術的また制度的な在り方の研究を是非進めていっていただきたいと考えますけれども、国交省、警察庁、それぞれいかがでしょうか。
○猪股政府参考人 お答え申し上げます。
国土交通省におきましては、自動車メーカー、部品メーカー、学識経験者、関係省庁等が参画する先進安全自動車、いわゆるASV推進検討会を設置いたしまして、官民が連携して先進安全技術の開発及び普及促進に取り組んでまいりました。
これまでも、運転者の居眠りや脇見を検知し注意喚起を行うドライバーモニタリングシステムについて、その普及に向けたガイドラインを策定するなどの取組を進めております。
また、自動車アセスメントにおきましては、ドライバーモニタリングシステムの性能向上に向け、自動車アセスメントにおける評価についても検討を進めているところです。
国交省といたしましては、引き続き、ASV推進検討会などの様々な官民連携の枠組みを活用しながら、AI技術の活用も含め、先進安全技術の開発及び普及促進に努めてまいりたいと考えております。
○日下政府参考人 お答えいたします。
今、国土交通省から答弁がありましたASV推進検討会、これは警察庁も参画しております。こういった枠組み等の中で、我々といたしましても必要な協力をしてまいりたいと思っております。
○國重委員 期待しておりますので、是非よろしくお願いします。
以上で終わります。ありがとうございました。
○井上委員長 次に、池畑浩太朗君。
○池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。
本日は、危険運転致死罪を改正する法律案について質疑をさせていただきたいと思います。
いろいろな角度から専門家の皆さんが集まりまして、検討会を開かれ、この改正案のベースになっているというふうに思います。
現行の危険運転致死傷罪では、いわゆる飲酒類型について、正常な運転が困難、高速度類型について、その進行を制御することが困難な高速度という要件が設けられておりますが、実務上、これらの要件の認定が困難であり、判断にはばらつきが生じているという指摘がなされているものと認識をしております。
そのような指摘を踏まえて、本法律案では、危険運転致死傷罪の適用対象を明確化するための数値基準を設けるとともに、他方で、数値基準の硬直的な運用を避けるべく、実質要件が設けられているというふうに思っております。
私としても、数値基準が僅かでも下回った場合に危険運転致死傷罪が成立しないことになれば、死傷事故の被害者や御遺族の救済にならない不合理な結果を招くことになるというふうに思っております。
るる、今、委員からたくさんの事例が紹介をされました。本当に痛ましい事件というものはなくしていかなきゃいけないということを改めて申させていただきます。
実質要件を設けることは私は妥当だというふうに思っておりますが、もっとも、法律に実質要件を設けるのみでは不十分であるというふうに考えております。実質要件が適切に運用されることによって、危険、悪質な運転行為による死傷事犯に対処できるものだというふうに考えておりますが、この点は、飲酒類型の実質要件の解釈、適用の在り方に関しては、今、國重委員からも御指摘がありましたけれども、現行法と特段異なるところがないということでもありますが、高速度類型については、現行法とは異なる観点から新たな類型を設けるものであるということでありますから、法案審議を通じ、より個別具体的な事案における運用の在り方を明らかにしておくべきだというふうに思っております。
本日は、主にこのような観点から質問させていただきたいと思いますが、五人目でありますので質問が重なっている部分もありますが、見ている方は全然違うというふうに思っておりますので、あえてそのまま質問させていただきたいと思いますし、法案審議でありますから、局長には、毎回申し訳ありませんが、行ったり来たりの、理由とやはり意義について、中心に聞かせていただきますので、大変申し訳ありませんが、確認の意味を込めて質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、高速度類型の実質要件である、道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難、高速度の意義について、刑事局長にお尋ねをさせていただきます。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘の改正後の法二条第四号におきましてですが、ここに言う道路の状況とは道路の形状や路面の状況等を、交通の状況とは歩行者や他の車両の交通量等をそれぞれ意味するものであるところ、この号に言う道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度とは、こうした状況に応じまして人の死傷結果が生じるような大きな事故を生じないようにすることが著しく困難な高速度を意味すると考えているところでございます。
○池畑委員 ただいま刑事局長に意義を御説明いただきました実質基準には、数値要件に従って定める速度に準ずる速度に限るとの限定が付されています。そこで、この準ずる速度の意義について、刑事局長にお尋ねを申し上げます。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
準ずるとは、一般に、ある基準を標準として考える、同様の扱いをするといった意味であるとされているところでございまして、改正後の法二条四号におけるイ又はロに定める速度に準ずるものという文言につきましては、同号イ又はロに定める速度と同程度のものと言えることを意味するものとして用いているところでございます。
その上で、最高速度は時速十キロ単位で定められることとされておりまして、この号のイ又はロにおきましても、こういったことを前提に、時速十キロメートル単位で数値基準を定めることとしていることからしますと、少なくとも同号イ又はロに定める速度を十キロメートル毎時以上下回る速度はイ又はロに定める速度に準ずるものには当たらないと考えているところでございます。
○池畑委員 これも冒頭申し上げましたように、委員からいろいろな質問の角度がありまして、準ずる速度の意義を御説明いただきましたけれども、道路及び交通状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度で自動車を運転している以上、危険、悪質な運転でありますから、危険運転致死傷罪の対象にするべきだという意見もありました。
では、なぜ高速度類型の実質要件において、このような、準ずる速度に限るとの限定を付することにしたのでしょうか。その理由について、改めてお聞かせをいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
危険運転致死傷罪は、重大な死傷事犯を惹起する危険性、悪質性が類型的に極めて高い運転行為を傷害、傷害致死罪に準じた重い法定刑により処罰するものであることから、処罰対象はそのような危険性、悪質性が認められる行為に限定する必要があると考えているところでございます。改正後の法二条四号におきましても、このことを踏まえまして、危険運転致死傷罪として処罰すべき高い危険性、悪質性が認められるものをその対象とすることにしているところでございます。
その上で、この号のその他道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度という実質要件につきまして、具体的な数値による限定なく規定することにつきましては課題が幾つかあると考えておりまして、最高速度を超過するような速度での運転行為によって死傷結果が発生した事案の多くが、結果として重大な交通の危険を回避することができなかったものである以上、この要件を満たすと判断されかねず、危険運転致死傷罪の処罰範囲が過度に広範となるおそれがある、どのような行為がこの要件を満たすかの判断にばらつきが生じて安定的な運用が困難となるといった課題が指摘されたところでございます。
そこで、この号の高速度の実質要件につきましては、処罰範囲を適切に限定する観点から、準ずるといったような文言を用いたということでございます。
○池畑委員 丁寧な説明、ありがとうございます。
ここまで、高速度類型における実質要件に関する意義や趣旨について御説明を受けました。
その中で、本法律案が成立した後、これが適切に運用されていくためには、実質要件がどのような場合に適用されるのか、あるいはされないのか、実質要件の適用に関する具体的な事例を想定しておく必要があるというふうに考えております。
そこで、まず、高速度類型の数値基準を下回るもの、道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度に当たる場合の具体例について、刑事局長にお尋ねを申し上げます。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
改正後の法二条四号の数値基準は、その速度以上の速度で自動車を運転する行為であれば、道路や交通の状況を問わずに一律にそうした高度の危険性、すなわち対処困難性が認められるとともに、悪質性も認められ、適切な対処をおよそ放棄していると言えるような速度を定めるものでございます。
したがいまして、この号における実質要件につきましても、こうした数値基準以上の速度で自動車を運転する行為と同様に、適切な対処をおよそ放棄していると言えるような高い危険性や悪質性が明らかに認められる場合にこれを満たすと考えるのが相当であると考えられるところでございます。
そのような場合といたしましては、例えば、個別具体的な道路交通の状況に照らして、重大な死傷事故の発生を回避する観点から、最高速度を相当程度下回る速度で運転しなければならないような場合などが考えられるところでございまして、このような、道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度に該当するか否かは、あくまで個別具体的な道路や交通の状況に照らして判断されることとなるとは思われますけれども、例えばということで申し上げますと、最高速度が四十キロメートル毎時の道路を数値基準に定める速度に準じる速度で走行中、路面凍結の影響でブレーキ又はハンドルの操作を的確に行うことができず、右折しようとする対向車に衝突した場合には、路面の凍結状況を踏まえてそもそも最高速度が低く定められているような場合を除いて、この実質要件に当たる高速度に該当すると考えられるところでございます。
また、三十キロメートル毎時の最高速度が定められている道路におきまして、多くの児童が下校している中を数値基準に定める速度に準じる速度で走行して、歩行中の児童に衝突したような場合にも、そのような高速度に該当し得ると考えられるところでございます。
○池畑委員 ここまで、準ずる速度で運転しながらという部分はちょっと飛ばさせていただきまして、高速度類型と実質要件の意義や、具体的に適用する場面について質問させていただいてきました。
もっとも、本法律案が成立した後、実社会においては、本日御紹介いただいたような事案以外にも様々な事件が、事案が発生することがあり得ます。本法律案は、数値基準によって構成要件の明確化を図るとともに、実質、基準によって、個別具体的な事情に即した法適用を可能とするものでありますけれども、改正法の意義を実現できるか否かは、これは再審法のときにも質問させていただきました、やはり、実務上、どう運用していくというところが大きいというふうに私は考えております。
そこで、本法律案が成立した後に、特に、飲酒類型及び高速度類型の実質要件について、世古委員も大臣に聞いておられましたけれども、どのような意識、姿勢で適用されていくのでしょうか。世古委員に答えた以外で答えていただいても結構でございますし、そのままでも結構でございますが、思いを伝えていただきたいと思います。
○平口国務大臣 お答えいたします。
御指摘のとおり、危険、悪質な自動車の運転による死傷事犯についてより厳正な処罰を実現するためには、もとより、本法律案によって罰則を改正するだけでは足らず、改正後の規定が適切に運用されることが重要でございます。
そして、改正後の危険運転致死傷罪の飲酒類型や高速度類型については、体内アルコール濃度や走行速度が数値基準を下回る場合であっても、実質要件の下で同罪の成否を十分に検討することが重要でございます。この点に関しては、法制審議会の部会や参議院での審議においても御指摘をいただいたところでございます。
本法案が成立した場合には、こうした御指摘も踏まえ、改正の趣旨、内容について関係機関に十分に周知を行い、適切な運用の確保に努めてまいりたいと考えております。
また、検察当局においても、改正法の趣旨を踏まえ、法と証拠に基づき、悪質、重大な交通事犯に対して、刑罰法規の厳正な適用実現に努めていくものと考えております。
○池畑委員 大臣、答弁ありがとうございました。
本法律案は、今大臣からも答弁がありましたとおり、構成要件の明確化と個別具体的な事情に即した法適用を図るものであるということでありました。適切に運用されれば、危険な、そして悪質な自動車運転による死傷事犯がどんどん抑止されていくことだというふうに思っております。
私は、政府におかれましては、本法律案に改正することによって、危険、悪質な運転行為はこれからも厳しく処罰されることだというふうに思っておりますが、改正をすることによって、国民に対してもよく周知をしていただきたいというふうに思っております。
やはり、こういったことが改正されるということは、厳しくなったんだというふうに思われる方もおられるというふうに思いますが、確かに厳しくはなっているんですけれども、それだけではなく、やはり改めて、今、有田委員からもありましたけれども、一万件が二千四百件程度に抑えられている、六分の一になっているということは本当に大事なことだというふうに思いますし、この改正案が成立した暁には、更に減ったというふうに思われるような流れをつくっていきたいというふうに思いますし、各委員が悲しい事故についていろいろ具体的なお話をいただきました、少しでも根絶されることを願って、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、三木圭恵君。
○三木委員 日本維新の会の三木圭恵でございます。
今日は質問の機会をいただき、ありがとうございます。
危険運転致死傷罪が平成十三年に新設をされたんですけれども、「0からの風」という田中好子さんが主演の映画がございまして、こちらは鈴木共子さんという実際にいらっしゃる方の実話を基にした映画でございますけれども、この映画の内容が、平成十二年に、飲酒、無免許運転の車によって、当時、早稲田大学に入学したばかりの一人息子さんを亡くした鈴木共子さんの実話に基づいた映画でございます。
この映画は、飲酒、無免許、無車検、無保険、過去にも飲酒運転の違反を繰り返し、時速百キロメートルを超すスピードで、極めて悪質な運転をしていた加害者によって一人息子さんを亡くされた映画なんですけれども、当時の法律では、業務上過失致死罪で最高でも五年の刑期、映画の中では三年三か月の刑期、実際には最終的に懲役四年六か月の実刑となったというふうに調べております。そういった処罰がなされたわけでございますけれども、そういった軽い刑に憤りを感じて、同じような死亡事故の遺族や支援者の方と立ち上がって、署名活動を繰り広げ、三十七万人の署名を集めて国会に働きかけ、国民運動としては異例の速さで危険運転致死傷罪が新設されたという、実話に基づいた社会派の映画でございます。
実は、当時、私は、小学校のPTAの講演会にこの主人公の鈴木共子さんがいらっしゃって、お話をしてくださいました。子育て中の母親でありましたので、我が子を交通事故で亡くした悲しみと、人の命を奪っておきながら最高でも五年しか科せないという憤りに深く共感したことを、昨日のことのように覚えております。
飲酒運転の恐ろしさと、決して許してはならない犯罪であるということを一人でも多くの世の人に知らせていこうという鈴木さんを始めとする御遺族そして支援者の方々の思いが、新設されました危険運転致死傷罪が平成十三年でございますから二十五年前でございますけれども、その後の法改正にも生きているというふうに思っております。
そこで、質問をいたします。
平成十三年に危険運転致死傷罪が新設された以降も改正が重ねられてきたと思いますが、これまでの改正経緯についてお尋ねをいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、平成十三年に刑法に危険運転致死傷罪が新設された後、平成十六年にこの罪の法定刑の上限が二十年の懲役等に引き上げられたほかに、平成十九年には、過失致死傷事犯のうち自動車運転によるものを対象とする自動車運転過失致死傷罪が新設されまして、その法定刑の上限を業務上過失致死傷罪よりも重い七年の懲役とするなどの法改正が行われたところでございます。
また、平成二十五年には、刑法に規定されていた危険運転致死傷罪及び自動車運転過失致死傷罪を切り出すとともに、アルコール等影響発覚免脱罪、これは十二年以下の懲役の法定刑でございますが、こういったものを追加するなどいたしまして、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律が一本の法律として制定されたということでございます。そして、令和二年には、いわゆるあおり運転対策として危険運転致死傷罪の類型が新たに追加されたということでございます。
政府としては、これまで、危険かつ悪質な運転行為をめぐる諸事情を踏まえつつ、これに対処するための法整備を重ねてきたということでございます。
○三木委員 様々な法改正が行われてきたということで、ちょっと飲酒運転に限らせていただいてまた次の質問をしたいんですけれども、平成十三年以降、飲酒運転について、道路交通法の方ですね、これは主にどのような改正が重ねられてきたのかについてお尋ねをいたします。
○日下政府参考人 お答えいたします。
道路交通法における飲酒運転に対する罰則につきましては、交通事故情勢等を踏まえて、随時引上げを行っております。
まず、酒酔い運転に対する罰則につきましては、平成十三年の改正により、二年以下の懲役又は十万円以下の罰金から、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に引上げを行い、その後、さらに、平成十九年の改正により、現行の五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金まで引上げを行っております。
また、酒気帯び運転につきましては、平成十四年の道路交通法施行令の改正により、呼気一リットルにつき〇・二五ミリグラム以上とされていた基準を、呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラム以上に引き下げたほか、罰則につきましても、酒酔い運転の罰則に係る道路交通法改正と同時に引上げを行い、現行の三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金としているところでございます。
○三木委員 ありがとうございます。
道路交通法の方も飲酒運転について様々法改正を重ねてきたということでございますが、それでは、近年、飲酒運転に起因した交通事故の発生件数や死亡事故の発生件数はどのように推移してきたのかについてお尋ねをいたします。
○日下政府参考人 お答えいたします。
危険運転致死傷罪が新設された平成十三年の飲酒事故発生件数につきましては、二万五千四百件でございました。これが令和七年には二千二百八十三件まで減少しております。
また、飲酒死亡事故につきましては、平成十三年が千百九十一件であったのが、令和七年は百二十五件まで減少しております。
○三木委員 つまり、厳罰化をしていくことによって発生件数が大幅に減少しているということが読み取れるかと思います。
今回の法改正により、飲酒類型に数値基準を設けるとのことですが、少しでもアルコールが検出されれば厳罰に処されるべきという意見や、現行の酒気帯び運転に相当する呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラム以上のアルコールを保有した状態で自動車を運転すれば危険運転致死傷罪の対象とすべきというような意見が見られます。
このような中で、判断基準を呼気一リットルにつき〇・五ミリグラム以上とした理由についてお尋ねをいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案による法二条一号の改正は、現行の正常な運転が困難な状態という構成要件を、個別具体的な事情を問わずに一律にそのような状態と認められる数値基準を設けることでより明確にするものでございます。この文言は、判例上、アルコールの影響により道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいい、アルコールの影響により前方を注視してそこにある危険を的確に把握して対処することができない状態もこれに当たるとされているところでございます。
したがいまして、この数値基準といいますのは、個別具体的な事情を問わずに一律にそのような正常な運転が困難な状態にあると認められる体内アルコール濃度にする必要があると考えられたところでございます。
具体的な数値の在り方については、法制審議会の部会におきまして、体内アルコール濃度が呼気一リットルにつき〇・五ミリグラムに至っている場合には、個人差を問わず、注意力や警戒心の低下、反応の遅延といった運転に必要不可欠な能力への影響が生じているといったアルコール医学の知見を前提といたしまして、そのような影響が生じていれば危険を的確に把握して対処することは困難でありまして、道路交通の状況に応じた運転操作を行うことが困難な状態に至っていると評価できるということについて幅広い意見の一致が見られたところでございました。
他方で、当部会におきましては、御指摘のように、飲酒類型の数値基準を呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラムとすべきであるとの意見も示されたところでございました。
一方で、そのヒアリングで示されたアルコール医学の知見によりますと、体内アルコール濃度がその程度である場合には、注意力の低下とか反応の遅延といった運転を行うための重要な認知機能への影響が例外なく生じているとは言い難いために、反証を許さずに一律に正常な運転が困難な状態に該当することとなる数値基準とすることは相当でないという異論が示されて、結論に至ることはなかったということでございました。
○三木委員 法制審議会の中でそのような、検討会の中でそのような御意見の中でこの数値がまとめられてきたということであるというのは、私も十分認識をさせていただいております。
では、その数値基準とは別に定められている、その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態というのはどのような状態を指すのか、誰がどのように判断するのかについてお尋ねをいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
現行法上のアルコールの影響により正常な運転が困難な状態につきましては、先ほど答弁したとおりの最高裁判例がございまして、その解釈につきましては、数値基準を設ける本法律案の下でも変更はないと考えているところでございます。
具体的には、例えば、アルコールの影響により前方の注視が困難となったり、ハンドル、ブレーキ等の操作の時期やその加減についてこれを意図したとおりに行うことが困難な状態である場合がこれに当たり得ると考えられるところでございます。
その上で、この要件に当たるか否かにつきましては、最終的には裁判所が判断するということになると思われますけれども、その際には、事故の態様のほかに、事故前の飲酒量や酩酊状況、事故前の運転状況、事故後の言動、飲酒検知結果などの個別具体的な事情を総合的に考慮してその有無を判断していくことになると考えられるところでございます。
○三木委員 私がなぜ、平成十三年から以降、危険運転致死傷罪と飲酒運転について、道路交通法について、どのような法改正が行われ、そして、その事故件数であるとか死亡者数とかが減少してきたかということをお尋ねしたかというのは、これは、厳罰化をしていることによって、国民の中に、やはり飲酒運転しては絶対にいけないという意識が強く広まっていったりとか、飲酒運転をして死亡事故などを起こせば危険運転致死傷罪という重い罪に問われるということが皆さんに広まっていって、厳罰化した結果、やはり、この件数が減っていったのではないかというふうな思いがございますので、こちらの方の数値基準のほかにも定められている、そのほかのアルコールの影響により正常な運転が困難な状態でも危険運転致死傷罪に当たるというふうに判断ができるということは、私はよいことだというふうには思っております。
次に、危険運転致死傷罪は、交通犯罪の被害者や御遺族の悲痛な声が、国民の関心の高さも、そういったことを踏まえて改正が重ねられてきたというふうに思っております。今回の改正案はそのような方々の声を踏まえたものとなっているかについてお尋ねをいたします。
また、交通犯罪の被害者や御遺族からは、改正内容が不十分との意見もあると聞いておりますけれども、あわせて、今後、飲酒運転の対策にどのように取り組んでいくのか、決意を伺いたいと思います。
○平口国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案を提出するに至った経緯について申し上げますと、法制審議会への諮問に先立って、法務省で開催した自動車運転による死傷事犯に係る罰則に関する検討会においては、交通事犯被害者御遺族や、被害者支援に携わる弁護士にも委員として御参加いただくとともに、被害者御遺族等からのヒアリングの結果も踏まえ、御要望があった論点を幅広く取り上げて議論が重ねられたところでございます。
また、法制審議会においても、被害者御遺族や被害者支援に携わる弁護士に部会の委員として御参加いただき、検討会の結果を踏まえて、諮問事項に関して多角的かつ丁寧な議論が行われ、幅広い支持を得て答申が取りまとめられたところでございます。
今回の改正案は、そのような答申に基づいて立案したものでありまして、被害者御遺族等の御意見、御要望を踏まえ、危険、悪質な自動車運転による死傷事犯について、事案の実態に即した、より厳正な対処を可能とするものとなっていると考えております。
本法律案が改正法として成立した場合、法務省としては、まずは改正後の規定が適切に運用されていることが重要であると考えておりますが、飲酒運転を含む危険、悪質な自動車運転による死傷事犯に係る罰則の在り方について様々な御意見があることは承知しておりまして、今後とも、引き続き、自動車運転による死傷事犯の実情等を注視し、必要に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。
○三木委員 ありがとうございます。
危険運転致死傷罪にようやく数値基準が設定されることになり、また、数値基準とは別に、その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態ということもつけ加えられました。
ただ単に数値のみによって悪質性を測るということではなく、少量でも運転に影響すると本人が分かっていながら飲酒運転をしているようなケースや、再犯を繰り返しているアルコール中毒のケースなど、様々なケースがございますので、数値に縛られることなく、悪質な者には厳しく対処していただくこと、そして、必要であれば、数値改定などの法改正をまた迷わずしていただくように要望いたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、小竹凱君。
○小竹委員 国民民主党の小竹凱です。
本日の質疑の前に、一言どうしても申し上げさせていただきます。
去る六月十九日、日野町事件の再審公判をめぐり、大津地検が有罪立証を行わないと方針を表明しました。事件発生から四十二年、阪原弘さんは無実を訴えながら二〇一一年にお亡くなりになりまして、本人が再審無罪を耳にすることはもうかないません。まずもって阪原さんと御遺族の長きにわたる苦しみに深くこうべを垂れたいと思います。
その上で、今回の件に関して強い疑念を申し上げます。
公判で有罪を立証できないのであれば、なぜ検察は、七年七か月もの間、抗告に抗告を重ねたのかということであります。二〇一八年の七月、大津地裁が再審開始を決定した時点で、検察の元には文字どおり全ての証拠がそろっているわけであります。にもかかわらず、検察は、高裁への即時抗告、さらには憲法違反や判例違反の理由もないまま特別抗告へと進んでおります。最高裁が求めた確定記録の提出さえ一年近く行わず、審理を遅延させています。七年七か月を要したのは紛れもない事実であります。
特別抗告の理由に関しては、六月三日の法務委員会で、和田委員の質問に対し、佐藤刑事局長が、特別抗告の理由は、憲法違反又は判例違反に限られるというふうに答弁をしております。今回の法案に関して、半歩前進であったということで涙をのんで賛成をした参政党さんも欺くといいますか、反対のことを言っているわけであります。
当然新たな証拠が出てきたわけではなくて、第一次請求審から特別抗告審まで、弁護団には知り得ない全ての証拠は元々検察の手元にあったわけですのに、なぜ開始を争い続けたかということでございます。いざ再審公判となれば立証は困難と白旗を上げる、こういった形では、一体何のための抗告だったのか、組織的に遅らせるだけの抗告としか国民には映っておりません。
法部会におきましても、検察官出身の宮崎委員は、検察当局は既に十分かつ慎重な検討を行って対応していると明言されております。その十分な根拠を判断するのは法施行後もなお検察官自身とあれば、日野町事件のこのことこそ、検察官抗告を運用に委ねるだけでは不十分であり、法律によって明確に制限しなければならないことを示す動かぬ立法事実であることを強く指摘をさせていただきます。
その上で、参議院での議論に期待したいと思いますし、法務大臣にも真摯な対応をよろしくお願いいたします。
本題に入りたいと思います。失礼いたしました。
本日は、危険運転致死傷罪の見直しについて、本案は、平成十三年に新設された後、複数回法改正が行われたものと承知をしております。今回、飲酒類型、高速度類型に数値基準を設けるものであります。
政府は、今回、この法案の提出に当たり、構成要件を明確化し、適切な運用を確保する観点から数値基準を設けると説明してこられました。つまり、今回の改正は、単なる厳罰化というよりも、どこからが危険運転で、そうでないのかという境界を国民に説明できるように改正したというふうに理解をしております。
しかしながら、制度設計の在り方を誤れば、新たな不公平であったり、いわゆる取りこぼしを生みかねないという観点から質疑を行いたいと思います。
まず、法務大臣に一問伺います。
今回、速度や飲酒について数値基準を導入する趣旨は何でしょうか。これまで数値基準がないことでどのような事案で問題があったのか、お答えいただきたいと思います。
〔委員長退席、三木委員長代理着席〕
○平口国務大臣 お答えいたします。
危険運転致死傷罪については、近時、飲酒類型に関し、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態との要件の判断にばらつきが生じていること、高速度類型に関し、常識的に見て極めて危険性の高い高速度運転であっても、実際に進路を逸脱していない事案においては同罪の適用が否認される場合があることといった指摘がなされていたところでございます。
そこで、本法律案においては、飲酒類型について、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態との要件をより明確化するための数値基準を規定し、それ以上のアルコールを身体に保有する状態で自動車を運転する行為を一律に同罪の対象とすること、高速度類型について、道路交通の状況に応じて重大な危険を回避することが著しく困難な高速度を捉える類型を新設した上で、数値基準を規定し、それ以上の速度で自動車を運転する行為を一律に同罪の対象とすることというふうにしております。
これらによりまして、危険、悪質な自動車運転による死傷事犯について、事案の実態に即したより厳正な対処が可能となるとともに、そうした死傷事犯の抑止に資するものと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
法制審の議論を見ていきますと、部会の第一回では、現行法の問題として、飲酒運転では正常な運転が困難、高速度運転では進行を制御することが困難という、いわば実質的基準で適用の有無を分けており、これが必ずしも明確ではなく、解釈や運用に幅があるため、危険で悪質な運転を適切に捉え切れていないのではないかという問題意識が示されておりました。
その上で、伺います。
法制審の第四回、五回、七回の議論等々を見ていきますと、低めの線として、一般道路で四十キロ超過、高速道路で五十キロ超過という発想もございました。しかし、最終的には、法案では五十キロ、六十キロというふうに指定をしているわけでありまして、なぜ四十、五十ではなくて五十、六十としたのか、この理由を説明いただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案で新たに設けることとしている改正後の法二条第四号の高速度類型は、道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避する、すなわち適切な対処をすることが著しく困難となるという高速度運転の危険性を捉えるものでございまして、同号の数値基準は、その速度以上の速度で自動車を運転する場合には、道路や交通の状況を問わず一律にそうした高度の危険性、すなわち対処困難性が認められるとともに、悪質性も認められて、適切な対処をおよそ放棄していると言える速度を定めるものでございます。
その上で、具体的な数値の在り方につきましては、法制審の部会におきまして、最高速度を遵守していれば回避できる障害物をおよそ回避できなくなる物理モデルに基づく理論的な限界速度、これを参考にしつつ、道路交通に関する社会通念をも考慮して検討が行われたわけでありますけれども、その中で、御指摘のように、最高速度を四十キロないし五十キロ超える速度以上の高速度とする案を支持する意見もありました。
その一方で、道路や交通の状況には様々なものがあり得ることを踏まえると、改正後の、今、現行の法案よりも低い数値基準とした場合に、危険運転致死傷罪として処罰すべき高い危険性や悪質性を伴わない行為が処罰対象に含まれるおそれを否定し難いといった意見が述べられまして、結論としまして、今回の法案に定めた数値基準とすることにつきまして幅広い意見の一致が見られたところでございまして、こうした法制審議会における議論を踏まえて今回の法案の数値基準を定めたものでございます。
○小竹委員 ありがとうございました。よく分かりました。
次に、第五回の部会の方で、今、答弁の中にも一部ありましたが、最高速度を遵守していれば回避できた障害物を回避できなくなる物理的な限界速度というところの議論があり、最高速度に応じて定めることが合理的だという議論があります。今の答弁も含めて考えると、単なるいわゆる工学計算だけではないというふうに受け止めたんですが、この五十、六十という今回の数値は、純粋な物理的なというか工学的な数値、計算結果そのものということか、お伺いしてよろしいでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
本法律案における危険運転致死傷罪の高速度類型の数値基準は、法制審議会の部会におきまして、最高速度を遵守していれば回避できる障害物をおよそ回避できなくなる物理モデルに基づく理論的な限界速度を参考にしつつ、道路交通に関する社会通念をも考慮して検討が行われた結果を踏まえて定めたものであるということでございます。
○小竹委員 総合的に判断していろいろのものを加味した上での政策判断ということであれば、こういった中に、被害者感情であったり、社会通念であったり、先ほど質疑も出ておりました、生活道路が三十キロ化される影響とかももちろん入っているわけであると思いますけれども、こういったことをどういったように具体的に盛り込むことができたのか、議論の途中経過について教えていただけますでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
この数値基準を定めるに当たりましては、様々な議論が行われて、先ほど申し上げたように、理論的な限界速度を参考にしつつも、社会通念をも考慮して検討が行われたわけでございますけれども、その中で、議論の過程におきましては、御指摘のように、例えば、被害者感情や社会通念といった一般予防とか、立証可能性とか、規制の性格であるとか、生活道路が三十キロ化されることに伴う影響であるとか、こういった様々なことを踏まえた、様々な議論が行われた結果として、このような数値でおおむねの意見の一致が見られたという状況にございました。
○小竹委員 ありがとうございます。
被害者感情についてもう一問お伺いしますが、報道では、御遺族から、一歩前進ではあるが、数値基準を明確に作るということでかえって適用されない事例があるのではないかというような懸念の声が示されているのも事実でございます。こういった声には、どのように受け止めて今回の制度設計に反映されたのか、お答えいただきたいと思います。
〔三木委員長代理退席、委員長着席〕
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
まず、高速度で自動車を運転する行為に関しましては、現行法の二条二号におきまして、その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為が危険運転致死傷罪の対象とされているわけであります。しかしながら、直線道路で実際に進路を逸脱していないような事案におきましては、常識的に見て極めて危険性の高い高速度での運転行為であってもその罪の成立が否定されるなどしているところでありまして、犯罪被害者の皆様からも、こういうことでは適切な対処ができていないのではないかという指摘があったところでございました。
そういった声を受けまして、改正後の法二条四号におきましては、進行の制御をすることが困難な高速度といった類型ではなくて、道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避する、すなわち適切な対処をすることが著しく困難となるという危険性を捉える類型を新たに設けることといたしました。その上で、その速度以上の速度で自動車を運転する行為を一律に危険運転致死傷罪の対象とすることとしたものでございます。
その意味で、そのような数値基準を設けた場合に、また一方で、それを下回る速度で運転する行為が危険運転致死傷罪の対象とならなくなるのではないかという御懸念が示されていたことなども踏まえまして、数値基準に満たない速度での自動車の運転行為であっても、個別具体的な道路の交通の状況に照らしまして、数値基準を満たす速度と同様に高度の対処困難性又は悪質性が認められるものについてはこの罪により処罰し得ることとするための実質要件を設けることとしたということでございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
速度基準を作りながらも、実質要件というか、実際に合わせて抜け道がないように整備した上で、基準未満であったとしても、実質の要件であったり悪質性であったり、いろいろなものを勘案して、最終的に抜け穴のないように考えられたということを伺うことができました。
また、検察による起訴の部分についても聞きたいと思いますが、数値基準が導入されることで、それを満たさない事案に関しては危険性の立証がより困難となるであったりとか、結果として、検察による危険運転致死傷罪での起訴が消極化するいわゆる萎縮効果が生じるおそれはないのか、この点についての認識と対策も伺いたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
まず、本法律案における危険運転致死傷罪の高速度類型の数値基準は、個別具体的な事情を問わずに一律に危険運転致死傷罪の対象となる数値を定めるものでございまして、それに至らなくても、個別具体的な事情を考慮して実質要件を満たすと認められる場合、あるいは先ほどの進行制御困難な高速度の類型などもございますので、こういった危険運転致死傷罪の対象となることは条文上も明らかになっているということだと思います。
もっとも、御指摘のように、数値基準を下回る場合に実質要件を適用することに消極的な運用になるのではないかという御懸念が示されていることも承知しておりまして、しかしながら、一方で、法案としては先ほど申し上げたような形で引き続き対処ができるものと考えておりますので、本法律案が改正法として成立した場合には、危険運転致死傷罪の適正な運用を確保するために、警察、検察、そういった関係機関に対しまして改正の趣旨や内容の周知を徹底してまいりたいと考えておりますし、検察当局においても、この改正の趣旨を踏まえた刑罰法規の厳正な適用実現に努めていくものと承知しているところでございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
つまり、基準を超えると一律に検挙される、二層構造といいますか、それよりは上で、それ以下であっても実質の要件を見て判断されるということを理解できました。
ここからちょっと、少し変わって、実車の問題に入りたいと思います。
というのは、私は、先日、タイヤメーカーといいますか、タイヤの方とお話をしていたときに、この問題についてちょっと気になった点がありましたので、質問の七の部分に八を内包させましたので、八は省略させていただきたいというふうに思います。
質問に入りたいと思いますが、タイヤメーカーの各社は、速度記号、いわゆるスピードシンボル、スピードレンジと言ったりもしますけれども、共通して、規定の条件で負荷された状態においてそのタイヤが走行可能な最高速度を示すものが書かれています。
タイヤの側面に書かれている数字とかアルファベットとかのところがございますけれども、ブリヂストンは、ロードインデックスにより示された質量を規定の条件で負荷された状態において走行可能な最高速度を記号によって表したものと説明しております。また、ダンロップは、規定の条件下でそのタイヤが走行できる最高速度と説明しています。ミシュランは、さらに、タイヤの許容速度内であってもドライバーは法定速度を守らなければならないというふうに明記をされており、前提として、スピードシンボルというものは、その速度まで公道を走っていいということではなくて、法的な許容表示ではなく、一定の条件の下でタイヤが耐え得るという、技術的な、機械的な能力表示であるということを前提とした上で質問させていただきたいと思います。
タイヤのスピードシンボルは、タイヤが安全に使用できる最高速度を示すものであり、アルファベットのQであったりSであったりHというのがあるんですけれども、それぞれ最高速度が決められておるわけでありまして、客観的に上限が設定されている。その上で、タイヤの速度記号は単なる目安ではなく、それを超えればタイヤ自体がバーストするであったりとか、いろいろな、制御不能といった重大事故にも直結する安全の限界値であるというような見方がありますけれども、今回の法改正に関して、こういったタイヤのスピードシンボルがあるということは考慮されたのか、お答えいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
改正後の法二条四号の数値基準を設けるに当たりましては、法制審議会の部会で実施された自動車工学の専門家からのヒアリングにおきまして、車両特性やドライバー特性は様々であることから、これらを考慮して危険性の定量化をすることは困難である、危険性の定量化をするに当たっては、車両特性やドライバー特性を抽象化した物理モデルを導入することが考えられるとの知見が示されたことを踏まえまして、車両特性やドライバー特性を抽象化した物理モデルを用いて算出された、最高速度を遵守していれば確実に回避できていた障害物をおよそ回避することができなくなる理論的な回避限界速度、こういった速度を参考にしつつ、済みません、長くて恐縮です、道路交通に関する社会通念をも考慮して、一律に危険運転致死傷罪として処罰すべき高度の危険性及び悪質性が認められる速度を数値基準としたものでございます。
そのような意味で、数値基準を設けるに当たりましては、例えば御指摘のようなタイヤの速度記号等の車両特性は考慮から外したという状況にございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
車両特性だったり、運転手というかその能力も含めて様々であるから、危険性を特定することは困難であるということでございましたけれども、私が今例に出したやつは一般的な乗用車全てに対応しているわけじゃなくて、例えば、ここでいうところの軽バンであったり軽トラ、軽商用車、こういうところで使われているタイヤというのが、Nという表示なんですけれども、Nが百四十キロ毎時なんですね。
つまり、純正のタイヤのスピードシンボルが百四十キロに設定された車、ものがあるとすると、高速度類型の数値基準では、例えば高速道路百キロ区間では、今回の法改正の線引きでいうと百六十キロ以上が一律の危険区域になるわけでありますが、軽バンのNイコール百四十キロ毎時であれば、技術的な限界としては百四十キロが手前に来るわけでありまして、百四十キロを超えればタイヤの性能の面では危険性が超えているのに、法案のところでは行っていない。二層構造であるので一律にということは理解した上で質問いたしますが、そういう帯域が現実に生じるということもございます。
このずれといいますか、タイヤ、車両の面からの危険性、それから法案の数値基準からの危険性、この差をどのように考えておられるか、見解を伺いたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のように、この数値基準といいますのは、車種等の個別の事情を問わずに一律に危険運転致死傷罪の対象として処罰すべき行為を高度の危険性、悪質性が認められる速度として定めたものでございます。
そのような意味で様々な議論が行われたわけでありますけれども、物理的なモデルに基づく理論的な限界速度を参考にしつつ、道路交通に関する社会通念を考慮して検討が行われて、これより低い数値基準とした場合には、危険運転致死傷罪として処罰すべき高い危険性や悪質性を伴わない行為が処罰対象に含まれるおそれを否定し難いといった意見が述べられて、結論として数値基準としては先ほど申し上げた結果になったということでございます。
そのような意味で、政策的判断として合理性を有するものであると考えているところでございます。
その一方で、今お話にあったタイヤの限界速度、そういったものが例えば個別事案の中で生じてきたとしますと、現行法の二条二号におきまして、その進行を制御することが困難な高速度で走行という要件が別途あるわけでございます。これは、速度が速過ぎるために道路の状況に応じて進行させることが困難な状態で自車を走行させることをいうところでございます。
したがいまして、具体的には、そのような速度での走行を続ければ、車両の構造や性能などの客観的事実に照らして、自車を進路から逸脱させて事故を発生させることとなると認められるような速度で走行させることをいうところでございますので、今お話ししたような事例におきましては、例えば、対処困難の今回の新法の数値基準に当たらない場合の、また新法における実質要件に当たるかどうか、それから、それとはまた別に、進行を制御することが困難な速度の要件に当てはまるかどうか、そういった両面から検討が行われることになるのではないかと思うところでございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
今、何か次の質問の答弁まで多分されたと思うんですけれども、まあ大丈夫です。
その上で、改めてちょっと確認の一問をさせてもらいたいんですけれども、今、多分もう答弁いただいた内容を、ちょっと順番が前後しちゃっているんですけれども。
具体的な例として、今言ったような軽商用車があった、軽バンとかがあったとしたときに、百キロ区間で百四十五キロを出したとします。その場合は、タイヤの限界値というか安全限界値から超えているわけでありますので、今もう既に答弁いただきましたけれども、その速度自体が数値基準未満ではあるという点ではそうなんですけれども、当該速度が準ずる速度に当たったりとか、道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険性を回避することが著しく困難な高速度であったかなどを個別に判断していただけるということで、また、そこに関しても、更に言うと、個別の車両の性能の限界というのも考慮事項の一つに含まれるという認識でよろしいんでしょうか。
○佐藤政府参考人 申し訳ございません。
御指摘のとおりでございまして、現行法二条二号における、その進行を制御することが困難な高速度で走行といいますのは、先ほども答弁したとおりでございまして、例えば、タイヤの性能を超える高速度で自動車を運転したことによって自車を進路から逸脱させて死傷事故を起こしたような場合には危険運転致死傷罪が成立し得るというふうに考えているところでございます。
そういった意味で、この危険運転致死傷罪は様々な類型があるわけでございまして、実質要件もございまして、委員が今御指摘のような検討が行われて、悪質な事案に対処できるような形が整えられてきたものというふうに承知しているところでございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
次に、少し飛ばして十三番のところでお願いしたいと思いますが、被害者側感情に立った質問もしたいと思います。
同じように命が失われた事故であっても、僅かな数値の差であったり基準の差によって罪名が変わっているということは、先ほど来、各委員の質問の中にも含まれているわけでありまして、それをカバーするために、平成十三年に新設後、複数回法改正が行われてきたと理解をしているところでございます。
これまでも、被害者側からすると納得のいかない罪名であったり量刑であったりすることはあるというわけでありまして、この現実について、被害者側、被害者や御遺族の納得を得られるためにどのようにしていくべきと考えるか。
立法府の立場ですので、国家権力が偏って恣意的に国民を処罰することを防ぐという観点から、罪刑法定主義の観点から、国会でこうした議論をしているわけでありますけれども、非常に難しい問いであることを理解した上でお聞きいたしますが、法の公平性と被害者感情の調和について、政府の見解をいただきたいというふうに思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
大変難しい御質問でございまして、的確にお答えできるかは不安でありますけれども、まず、今回の法案につきましては、これはやはり危険運転であるとの犯罪被害者の御遺族の感情等も踏まえて、例えば過失運転に裁判所の認定が落ちたようなものも含めまして、そういうことに納得が得られていない現実を踏まえて、そのような事態に対処するという意味におきましては、数値基準を設けることなども含めまして、様々な意味で合理性があるというふうに考えているところでございます。
その上で、やはり、刑罰といいますのは、犯罪被害者、遺族の立場からしますと、失われた保護法益、とりわけ生命でありますけれども、そういったものの大きさ、数、そういったこともある一方で、刑法、刑罰法規といいますのは構成要件がありまして、故意、過失であったり、あるいはその目的であったり、そういったことによって、本人の刑事責任の重さによって法定刑が定まっているというのが実情といいましょうか、そういうふうなものとして近代国家は成り立ってきているということでございますので、そこが必ずしも気持ちが一致しないというのは、これは事実だろうと思っております。
しかしながら、その一方で、不当な処罰がなされないように、一方で、犯罪被害者たちが到底納得できないような結果が起きないように、そういったことを、様々なその時々の国民の声なども踏まえて、刑事司法全体として対処していかなきゃいけないということでございます。
済みません、それが答えになっているかどうかは不安でありますが、取り急ぎ、私としてはそのように答える次第でございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
本当に非常に難しい質問をしたのは理解した上で今お聞きしたので、分かりました。
罪刑法定主義の観点といいますか、近代刑事司法の観点から、ここのバランス、非常に片方側に立ってしまうと調和は取れていないというふうに思われるんですが、やはり客観的な観点と、実質の、実際の要件と当てはめていって、しっかりと、今回の法改正も私は大きな前進だというふうに評価をしているところでございます。
今日はちょっと四十分と長い時間をいただきましたので、関連質問として、先ほど少し出ておりましたけれども、高齢者の運転事故についても幾つか伺いたいと思います。
池袋暴走事故のように、高齢ドライバーによる重大事故が近年発生しております。そもそもとして、運転事故の中における高齢者の運転事故の割合というのはどのくらいを占めているのか、お答えいただきたいと思います。
○日下政府参考人 お答えいたします。
令和七年における全年齢の原動機付自転車以上の運転者、第一当事者の交通事故件数は二十六万四千五百九十四件でございます。
そのうち、七十五歳以上の高齢運転者の交通事故件数は三万一千九百三十六件、全体に占める割合は一二・一%となっております。
○小竹委員 全体から見てなかなか、どのくらい多いかというのは分かりにくいところなんですけれども、やはり、地域を回っていたり実際にいろいろな人の声を聞くと、あと地方、地方というか私の地元も、走っていても、この方は運転して大丈夫なのかなという方に出会うことも実際あることも事実なので、やはりそういうことを目にすると少し不安に感じるなというところがございます。
また、政府広報でも、高齢ドライバー事故の原因として、ハンドル操作ミスであったりアクセル、ブレーキの踏み間違いというのが挙げられております。交通安全白書でも、特に八十代以上では、踏み間違いによる事故、死亡事故の割合が高いということが示されております。
そこでお伺いしたいと思いますが、高齢運転者の対策、すなわち更新時の認知機能検査や運転技能検査は、こうした実際の重大事故につながる操作ミスのリスクを十分に捉えられていると考えているのか、警察としての総括をお答えいただきたいというふうに思います。
○日下政府参考人 お答えいたします。
現在、七十五歳以上の高齢運転者は、三年ごとの運転免許証等の更新時に認知機能検査及び高齢者講習を受けなければならないとされております。さらに、一定の違反歴がある場合には運転技能検査を受けなければならないとされております。
現行の認知機能検査につきましては、認知症の専門医らが診断に用いる医療検査を改良して作成したものであり、専門医でない者が一次的に記憶力、判断力等の低下の状況を見分けるための簡易な検査として専門医が認めるものでございます。この認知機能検査により認知症のおそれがあるとされた者につきましては医師の診断を受けさせることとしており、医師から認知症と診断された者については運転免許を取り消すなどしているところであります。また、免許更新時に限らず高齢運転者が一定の違反行為を行った場合にはタイムリーに検査を実施することとしております。
他方、運転技能検査につきましては、加齢による身体機能の低下等に伴う操作不適による交通事故の割合が高くなるという高齢運転者の実態を踏まえ、過去三年間に一定の違反がある者に対して実施しております。この検査につきましても、学識経験者等で構成する検討会の結果を踏まえ、一時停止とか信号通過等の課題を設定し、安全運転が期待できないほど技能水準が低い場合には不合格とする内容としており、これに合格しない限り運転免許証等の更新ができないこととしているところでございます。
この認知機能検査及び運転技能検査につきましては、高齢運転者の事故防止に一定の役割を果たしているものと我々考えておりますが、いずれにいたしましても、高齢運転者の交通事故状況等に応じ、これら制度の効果的な運用の実現に努めてまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
一般的には三年に一回、また、違反の有無に関してはもう少し短かったりとか、病院等の診断結果によってまたその期間が変わってくるということでありました。
この検査の内容に関しては不備があるとは思いませんけれども、やはり三年に一回というのは、どうしても年を重ねるにつれて突如著しく落ちることもありますし、全ての方が病院にちゃんとアクセスできているとも限りませんので、医師の診断結果が受けられている可能性も全ての方があるということではないという観点から、三年に一回という期間に関してはもう少し見直しの余地があってもいいのかなというふうに思っているところを指摘させていただきたいと思います。
その上で、先ほども少し触れましたが、現行制度では、免許返納の運動等もやっておりますが、やはり本人の自覚であったり家族の働きかけという部分にかなり依存している部分が強いというふうに感じまして、私の地元も石川県でございますけれども、北陸は特に一家族当たりの自動車所有台数が全国トップクラスに多いというわけでありまして、逆を返すと、車がないとなかなか生活が困難であるということでありますけれども、分かっていても手放せないという方も相当数いるというふうに思います。
やはり、高齢者の事故対策については、本人申告や自主返納任せでは限界があるというふうに思いますし、医療や家族や地域とどういうふうに連携をして早い段階で危険兆候を把握していくのか、この仕組みについて、政府のお考えをお伺いしたいと思います。
○日下政府参考人 お答えいたします。
議員御指摘のとおり、加齢等により運転に不安のある方は、運転免許証、これを自主返納することができることとされておりまして、警察においては、自治体等に働きかけ、公共交通機関の運賃割引等の支援措置の充実に努めるなど、自主返納しやすい環境の整備を図っているところであります。令和七年中の自主返納件数は約四十三万件であり、一定の効果があるものと認識しております。
さらに、先ほど答弁いたしました認知機能検査や運転技能検査のほか、高齢運転者対策として、認知機能検査の手続によらずとも、お医者さんが、認知症といった運転免許の取消し等の対象となる病気を認め、免許保有者であることを知ったときには都道府県公安委員会へ届け出ることができる仕組み、これが既に整備されております。
警察といたしましては、引き続き、高齢運転者による交通事故の防止と地方の移動手段の確保という二つの観点の両立が図られるよう、関係機関、団体と連携して、これらの取組を効果的に推進してまいります。
○小竹委員 ありがとうございます。
最後に、今言っていたように、移動手段の確保の観点から、自動運転バスの社会実装について伺いたいと思います。
今、全国各地の自治体が、移動手段の確保であったり、運転手の不足であったり、地域交通の維持のために、自動運転バスの実証や導入について取り組んでおります。しかしながら、現場を少し伺いますと、レベル2からレベル4に進めようとしたときに補助制度の設計がかえって壁になっているという声を先日伺っておりました。
例えば石川県の小松市ですと、JR小松駅から小松空港を結ぶ路線で自動運転バスの通年運行を行い、全国に先駆けて取組を進めておりました。現在では、レベル2で運行しながら、レベル4の実装を目指して段階的に整備を進めているというところでございます。このように、現場で着実に前進している自治体ほど、次の段階に進むための制度的な支えが重要になってくるというわけであります。
ところが、今の支援の在り方ですと、車両購入やシステム構築など初期投資への補助が中心的で、実装後に必要となる運行管理であったり保守、システム更新、専門人材の確保といった継続的な運営コストへの支援が十分ではないというような指摘をされております。
しかも、近年は、補助金について、レベル4実装を前提条件とし、未達成の場合には返還を求める仕組みまで今年から政府は掲げておりまして、これでは実装に向けて慎重に段階を踏んでいる自治体ほど財政的なリスクを背負うことになります。実際、自治体の現場では補助金に大きく依存せざるを得ない構造があり、財務省の調査でも、事業財源の大部分を国費補助が占めているという実態が指摘をされております。
補助が採択されなければ事業継続が難しくなる例も出ております。そのため、実証はできても実装後の持続可能な運営に移れない、あるいはレベル4に上がった途端に採算や維持費の問題が重くなるという矛盾が起きているわけでありまして、このため、今月の六月九日、小松市を含んだ六市長の首長らが、自動運転の社会実装に向けて、実証段階でなく実装後も見据えた支援制度の充実や見直しを国に要望しております。全国の自治体に共通する課題だというふうに思います。
国として、自動運転バスについて、初期導入支援だけでなく、実装後の運行継続、保守、人材確保も含めた支援制度に見直す考えはあるのでしょうか。レベル2からレベル4へと段階的に移行している自治体が、返還リスクを過度に恐れることなく挑戦できるように、現場実態に即した制度設計に改めていただきますよう、見解を伺いたいというふうに思います。
○猪股政府参考人 お答えいたします。
自動運転は、我が国が抱える少子高齢化による深刻な担い手不足の解決や、委員御指摘の高齢運転者による事故防止も含めた安全な自動車社会を実現する上で必要不可欠なものであると考えており、関係省庁と連携して社会実装を推進しているところでございます。
国交省では、自動運転の導入を目指す地方自治体に対しまして車両購入等の初期投資の支援を行ってきており、これらの取組を通して、これまで道路交通法上の許可を取得したレベル4自動運転サービスは現時点で十二件となります。
一方で、この事業につきましては、地域によっては、社会実装に向けて低調な取組や、取組の深化が見られないような事業があることから、これまでの実証実績を適切に評価する仕組みを導入すること等が重要と認識しており、国交省としましては、今年度の事業においては、採択に当たりまして、これまでの実証事業の実績を踏まえ、令和九年度中のレベル4自動運転の実装が具体的に計画されていること等を要件としたところでございます。
国交省としましては、こうした見直しを通じまして、より効果の高い取組への支援を重点化いたしまして、優良事例を横展開することによりまして、自動運転の社会実装を今後着実に進めてまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございました。
時間が来ましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。
○井上委員長 次に、鈴木美香君。
○鈴木(美)委員 皆様、こんにちは。参政党の鈴木美香でございます。
本日も貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。
私は、今回、危険運転致死罪に関する法改正を学ぶ中で、多くの方の、被害者や御遺族の方の手記や証言に触れてまいりました。そこには、愛する家族を突然失った深い悲しみだけではなく、なぜこのような運転が危険運転として扱われないのか、なぜ加害者よりも被害者や遺族の方が苦しまなければならないのかという切実な思いがたくさんありました。
もちろん、刑事司法は冷静かつ客観的でなければなりません。しかし同時に、被害者や御遺族の思いに真摯に向き合うこともまた司法への信頼を与える大切な要素であると考えております。
これまで、悪質な自動車運転事故によって貴い命が失われ、その教訓を踏まえて法改正が重ねられてきました。今回の法改正も、重大な交通犯罪における悲劇を少しでも減らし、被害者や御遺族の無念に応えるための法改正であると受け止めております。
しかしながら、私は、本当に大切なのは、事故が起きてしまった後に対処するのではなく、その事故を未然に防ぐということだと思います。本日は、その視点を大切にしながら、危険運転致死罪と過失運転致死罪の現状、そして今後の未然、再犯防止という観点から質問をさせていただきます。
まず初めに、アルコール数値基準においてお尋ねいたします。
過去の裁判例では、今回の法改正で示された数値基準に満たないアルコール保有数や速度であっても危険運転致死罪として起訴されて有罪になった事例がございます。先ほど小竹委員からも聞かれておりましたけれども、この数値に満たなくても、数値の一定以上でなければ、危険運転に該当することを明確化するための法でもありますけれども、実際に、実質要件が満たされなくても、数値基準を下回る場合でも起訴ができるというふうに先ほどの話でも理解できました。
更にお尋ねしたいんですけれども、今回の改正によって、そうやって数値基準に満たない事案に関して検察官が危険運転致死罪での起訴をためらうような消極的な運用になってしまうのではないかという、不安視する声も聞いております。この辺に関して、政府の見解を確認させていただきます。
○佐藤政府参考人 今委員から御説明のありましたように、本法律案における危険運転致死傷罪の飲酒類型、高速度類型の数値基準は、個別具体的な事情を問わず一律に危険運転致死傷罪の対象となる数値を定めるものでございまして、それに至らなくても、個別具体的な事情を考慮して実質要件を満たす場合に危険運転致死傷罪の対象となることは条文上も明らかでございます。
もっとも、御指摘のように、運用といたしまして、数値基準を下回る場合に実質要件を適用することに消極的になるのではないかといった御懸念が示されていることは承知しているところでございます。
本法律案が改正法として成立した場合には、危険運転致死傷罪の適正な運用を確保するために、関係機関に対して改正の趣旨や内容の周知を徹底してまいりたいと考えておりますし、検察当局におきましても、改正の趣旨を踏まえまして、法と証拠に基づき、悪質、重大な交通事犯に対しまして、刑罰法規の厳正な適用実現に努めていくものと承知しているところでございます。
○鈴木(美)委員 ありがとうございます。
検察官には広い訴追裁量があることは承知しております。しかし、重大な事故の被害者や遺族の立場からすると、危険運転致死罪で起訴された上で、裁判官を含む裁判所が審理し、その結果として危険運転に当たらないと判断されるのであるのであれば、受けざるを得ません。しかし一方で、検察官の段階で消極的な判断がなされたことによって起訴されないということになると、本当に無念の思いは計り知れないものであると思います。重ねて申し上げますが、是非、数値によってそういう消極的な運用とならないようにお願い申し上げます。
次に、飲酒運転の事故後の逃走、いわゆる逃げ得についてお伺いさせていただきます。
飲酒運転によって重大な事故を起こした後に現場から逃走し、時間の経過によって体内のアルコール濃度が低下する事案があります。飲酒運転をした場合、逃げた方が有利になるのではないか、逃げれば危険運転として立証されにくくなるのではないかという強い懸念があります。
そこで、確認させていただきます。
事故後に逃走した場合、捜査機関は事故当時の飲酒量や酩酊状態をどのような方法で認定されるのでしょうか。呼気検査や血液検査による数値が十分に確認できない場合であっても、飲酒状況、目撃証言、防犯カメラ映像、ドライブレコーダー映像、逆算計算などいろいろありますけれども、これで危険運転致死傷罪の立証は可能でしょうか。
今回の改定によって数値基準が設けられていますが、事故後に逃走した結果、立証が困難であっても、実質的な危険性を踏まえて適切に危険運転致死罪を適用する運用となるのか、お尋ねいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
飲酒運転で死傷事故を起こした者がその場から逃走した場合、捜査機関といたしましては、できる限り早期にその者を確保して体内アルコール濃度の証拠化を図るということになるということでございますけれども、しかしながら、犯行直後に体内アルコール濃度の測定ができなかった場合であっても、各種の捜査、今御指摘のような捜査によりまして飲酒量や飲酒状況、犯行前後の言動等を明らかにすることによりまして、犯行時の体内アルコール濃度を立証できる場合もございます。
一方で、犯行時の体内アルコール濃度が立証が困難であっても、犯行態様であるとか飲酒量、酩酊状況、犯行前後の言動等の個別具体的な事情から、実質要件、犯行時に正常な運転が困難な状態であったことを立証できる場合には、危険運転致死傷罪を適用し得ることとなるということでございまして、様々な捜査の中で要件の該当性を判断していくということになろうかと思います。
○鈴木(美)委員 ありがとうございます。
立証できる場合もあるということで、御尽力いただきたいと思いますが、では、これが、実際、現場から逃走し、アルコール濃度や飲酒状況の立証を困難にする行為を行った場合、それの処罰規定は設けられているんでしょうか。お尋ねします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
飲酒運転で死傷事故を起こした場合に、事故現場から逃走し飲酒の影響の発覚を免れる行為につきましては、いわゆる逃げ得を許さないよう、法四条に過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が設けられているところでございます。
この罪の内容でありますけれども、アルコール等の影響によりその走行中に正常な運転が支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転時のアルコール等の影響の有無、程度が発覚することを免れる目的で、その場を離れて身体に保有するアルコール等の濃度を減少させるなどしたときには、十二年以下の拘禁刑に処するというものでございます。
○鈴木(美)委員 次の問いも含めてお答えいただいてありがとうございました。
飲酒運転で事故を起こしたこと自体も重大ですけれども、被害者を救護せずそのまま立ち去る行為は、人命救助の機会を奪い、真相解明を困難にする、人として極めて悪質な行為であると思います。逃げた方が有利になるということが絶対にないように、法制度と運用の両面から、逃げ得を許さないという社会を実現していただきたいと思います。
次に、通告三を飛ばしまして、通告四に行かせていただきます。危険運転致死罪と過失運転致死罪の法定刑に関してお尋ねします。
この二つは、故意犯とされる危険運転と過失による事故ということで法定評価が異なるということですけれども、実際、危険運転致死罪の法定刑は最大で二十年の拘禁刑である一方、過失運転致死は七年以下の法定刑となっております。でも、この判断基準は分かるんですけれども、結果として奪われた命の貴さに変わりはないと思います。
例えば、現在公判中の今年三月に起きた東名高速道路のトラック事故では六名の貴い命が奪われましたが、運転中に十三秒間、ティックトック動画を見ていたことが明らかになっており、しかも、それが常習的に行われていたということが報じられています。この事件は、法定刑が七年以下の拘禁罪である過失運転致死罪として審理されていますが、御遺族からは危険運転致死罪の適用を求める強い声が上がっております。
このように、現実には危険運転致死罪に極めて近い悪質な事案でありながらも、法的要件や立証上の問題によって過失運転致死罪として処理されているケースがございますという状態です。
ここで、このながら運転のことに関してお尋ねしたかったんですけれども、先ほどの國重委員との質問とかぶってしまうので、携帯のながら運転に関して、先ほどの回答どおり、検討会でも審議されていたけれども見送られている、そして、いろいろな諸状況があって、カーナビとして携帯を使っていたりとか、あとは、ドライブレコーダー等が、あるによって起訴されたり、ない場合によって起訴できないというような不公平感も現状あるということだと思いますけれども、だとしたら、次に進みますが、危険運転と過失運転の法定刑の違いが大き過ぎるのではないでしょうか。
一方で、窃盗犯や詐欺犯では、その内容や金額に応じて法定刑は最高十年とされ、この二つの起訴が重なると、併合罪として、起訴されるのは十五年以下の拘禁刑となっております。
もちろん罪の性格は異なり、単純には比較はできませんけれども、しかしながら、国民感覚として、お金を盗むことやだまし取る犯罪が最高十年である一方、貴い命が、しかも多数の命が失われた場合で、過失運転致死罪で最高が七年にとどまるということは、これは大きな違和感を覚える方が少なくないんじゃないでしょうか。
私は、ただ単に罪を重くすればいいというわけではございません。自動車は、国民の誰もが日常的に利用するものでありながら、一度事故を起こしてしまえば取り返しのつかない結果を招くことになります。だからこそ、その危険性を社会全体で認識して、重大事故を未然に防ぐための抑止力として法制度が機能することが重要であると考えます。また、自動車事故は、一度に複数の貴い命が奪われる、失われるということもある重大な犯罪類型でもあります。
危険運転致死罪と過失運転致死罪の法定、これは二〇〇七年に過失運転致死罪は五年以下から七年以下に引き上げられてはおりますけれども、とはいえ、今の、結果は同じようなことであるのに物すごく内容が違うということに、差が大きいということに関してどのようにお考えでしょうか。お尋ねいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
危険運転致死傷罪は、故意に危険な自動車の運転行為を行い、その結果人を死傷させた者を、その行為の実質的危険性に照らしまして、暴行により人を死傷させた者に準じて処罰しようとするものでございますので、先ほど御指摘のように、人を負傷させた場合は十五年以下、人を死亡させた場合は一年以上二十年以下の有期拘禁刑が定められているものでございます。
他方、過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、その結果人を死傷させた場合に成立する過失犯でございまして、類型的に責任非難の程度が故意犯とは異なることから、危険運転致死傷罪よりも低い法定刑が定められているということでございます。
今御指摘のあります、法定刑が違い過ぎるのではないかという御指摘は多方面から受けているところではございますし、令和六年に法務省において開催された検討会におきましても議論が行われたわけであります。
まず一つは、過失運転致死傷罪の法定刑が平成十九年に上限が五年から七年に引き上げられたのですけれども、現時点においては量刑傾向が法定刑の上限付近に集中しているという状況ではない、それから、過失運転致死傷罪の法定刑は過失犯としてはかなり重い部類に属するところでございまして、更に法定刑を引き上げますと業務上過失致死傷罪の法定刑との差が更に広がる、それから、過失運転致死傷罪、過失犯ではありますけれども、道交法違反、飲酒運転であるとかそういったものを伴っていれば、併合罪による処断刑の上限が十年以上となることもあるといった指摘がなされまして、おおむねこれに、そのような方策を取るという結論には至らなかったということでございます。
現時点においては慎重な検討が必要であると考えておりますが、この科刑状況などにつきましても引き続き注視してまいりたいと考えているところでございます。
○鈴木(美)委員 ありがとうございます。
故意犯と過失犯との法的な違いや犯罪の均衡について考慮が必要と言えることは理解しております。また一方で、過失運転致死罪の法定刑が業務上過失致死罪との均衡との兼ね合いもあるということも理解しております。
しかし、最近、今年三月の辺野古での転覆事故であったり二〇二二年の知床での船舶事故でも見られますように、自動車に限らず、こちら、業務上過失致死となると、過失によって多くの貴い命が奪われている重大な事故も現実に起きております。そのような事案であっても現行では最大が五年という法定刑にとどまることについて、被害者や御遺族の立場から見れば、無念に十分応えられているのかというと、大変な疑問がございます。
もちろん刑を重くするだけでは解決策ではありません。しかし、人の命が失われた結果の重大性、刑を軽くするための逃げ道となるような可能性、そして再発防止の観点等から見て、抑止力という意味でも、業務上過失致死を含めた法定刑の在り方について、特に命の貴さという観点から、今後、幅広く検討していただきたいと思います。
さらに、事故を未然に防ぐという観点からお伺いさせていただきます。
これは國重委員とかなりかぶってしまうんですけれども、事前の防止策というところで、先ほどたくさんいろいろなことをお伝えして、現場での対応をよろしくお願いしますというところですが、それに加えまして、多くの危険運転の事故を起こした加害者の危険な行動は、見てみると、一度だけではなく常習的に繰り返していたという実態が浮かび上がってきます。
先ほど述べた、今公判中の新東名高速道路の事件に関しても、動画を見ていたというのは常習的だったというふうに報じられておりますし、飲酒運転も常習的行為であるということが多く挙げられております。こうした事故を見てみますと、人にはそれぞれ行動パターンや思考パターンがあって、危険行為を繰り返す人はその延長上で重大な事故を起こしているという現状が明らかに浮かび上がってきます。
現状、大きな事故が起こるたびに、それに対応する形で法改正がなされてきております。しかしながら、私は、事故が起きる前に防ぐという視点がもっと大切で重要であると考えます。
そこで、お伺いいたします。
過失犯であっても、常習的な悪質運転行為の末の重大結果である傾向が見られます。矯正施設や保護観察における再犯防止プログラムが実施されているのは承知しておりますが、これが、飲酒運転や自動車事故の罰金刑や、保護観察のつかない執行猶予判決を受けた方に対して、法務省として、再犯防止プログラム等の実施は検討されておりますでしょうか。お尋ねいたします。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
御指摘の矯正施設や保護観察所において実施されている再犯防止プログラムにつきましては、やはり、刑事施設に収容した者あるいは保護観察に付された者を対象に行っているプログラムでございまして、それ以外の者にこのようなプログラムを受講させる取組は法務省においてはなされていないということがまず一点でございます。
もっとも、検察当局におきましては、罰金刑に処された者あるいは保護観察を付さない執行猶予の判決を受けた者に対しまして、改善更生、再犯防止の観点から、その者の抱える問題の解決に適した医療機関や福祉機関につなぐといった、いわゆる入口支援を実施しているところでございまして、個々の事案に応じて、被疑者、被告人の特性に応じた措置が講じられるよう取り組んでいるところでございます。
例えば、お尋ねの、飲酒運転をした者がアルコール依存症の疑いがあると想定して申し上げますと、事案に応じまして、被疑者、被告人の同意を得た上で、これがやはり大前提ということになりますけれども、社会福祉士に被疑者、被告人やその家族などとの面談を依頼して、その面談結果に基づく助言を受けたり入通院履歴を含めた調査を行ったりした上で、その者に適した医療機関、福祉機関や支援の内容を検討して受入れ調整を行うなどすることは考えられるところでございまして、引き続き、関係機関と連携しつつ、再犯防止の取組も、そういったものに関しましても適切に行っていくものと承知しているところでございます。
○鈴木(美)委員 最後に大臣にお伺いしたかったんですけれども、質問時間が来てしまいました。駄目ですよね。済みません。
本当に、再犯防止、そして人の命を守るという前提で、この法改正、そしてその先の一人一人の命と尊厳を守るために私たちがいるということを常日頃思いながら、そのことを私の思いに変えて、今日の質疑を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○井上委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○井上委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、参議院送付、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○井上委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
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○井上委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、藤原崇君外五名から、自由民主党・無所属の会、中道改革連合・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び参政党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。井戸まさえ君。
○井戸委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 本法により新たに処罰対象となる罪の趣旨及び内容について、関係機関に周知徹底を図るとともに、その運用に当たっては、交通事犯に巻き込まれた被害者や遺族の感情にも十分に配慮し、事案の悪質性、危険性等を踏まえた適正な処罰が行われるよう努めること。
二 危険運転致死傷罪の飲酒類型及び高速度類型において新たに設けられることとなる数値基準については、本法施行後の適用状況を踏まえ、必要に応じて、更なる適正化に関する検討を行うこと。
三 飲酒運転及び高速度運転による死傷事犯の適正な処罰の実現のため、事故時におけるアルコール濃度及び運転速度について、より精度の高い認定が可能となるようその方法について不断の検討を行うこと。
四 危険運転致死傷罪の高速度類型において新たに設けられることとなる数値基準の下、その適正な処罰を実現していくためにも、各都道府県の公安委員会が指定する道路の最高速度については、道路状況や交通量等の交通実態を踏まえ適切なものになるよう適時の見直しを行うこと。
五 危険運転致死傷罪として新たに設けられる殊更滑走等類型については、「殊更に」という要件の認定に当たっては、危険運転致死傷罪の適用対象が不当に狭くならないよう、事案に応じ、適正な運用に努めること。
六 危険運転致死傷罪に匹敵するような危険かつ悪質な「ながら運転行為」に係る捜査や立証上の運用の在り方を不断に検討し、必要に応じ、危険運転致死傷罪の処罰類型への追加も含めた罰則の在り方の検討を行うこと。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○井上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○井上委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。平口法務大臣。
○平口国務大臣 ただいま可決されました自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
―――――――――――――
○井上委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○井上委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時八分散会

