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第8号 平成29年4月5日(水曜日)

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平成二十九年四月五日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 三ッ矢憲生君

   理事 黄川田仁志君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 長尾  敬君 理事 小熊 慎司君

   理事 寺田  学君 理事 岡本 三成君

      今津  寛君    岩田 和親君

      小田原 潔君    小渕 優子君

      大野敬太郎君    熊田 裕通君

      佐々木 紀君    島田 佳和君

      鈴木 隼人君    武井 俊輔君

      辻  清人君    松島みどり君

      山田 美樹君    石関 貴史君

      緒方林太郎君    吉良 州司君

      田島 一成君    中川 正春君

      原口 一博君    浜地 雅一君

      笠井  亮君    足立 康史君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        岸  信夫君

   環境副大臣        関  芳弘君

   総務大臣政務官      金子めぐみ君

   外務大臣政務官      小田原 潔君

   外務大臣政務官      武井 俊輔君

   経済産業大臣政務官    中川 俊直君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       安藤 英作君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       相星 孝一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮川  学君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 三上 正裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 四方 敬之君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山野内勘二君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  浅川 京子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中石 斉孝君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           佐藤 文一君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       渡辺 哲也君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  亀澤 玲治君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 岡  真臣君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三日

 辞任         補欠選任

  宮本  徹君     笠井  亮君

同月五日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     岩田 和親君

  中川 正春君     緒方林太郎君

  渡辺  周君     田島 一成君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     辻  清人君

  緒方林太郎君     中川 正春君

  田島 一成君     渡辺  周君

    ―――――――――――――

三月三十日

 沖縄県民の民意尊重と、基地の押しつけ撤回に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第六二二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する確認書の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 北太平洋漁業委員会の特権及び免除に関する日本国政府と北太平洋漁業委員会との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を防止し、抑止し、及び排除するための寄港国の措置に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 万国郵便連合憲章の第九追加議定書、万国郵便連合一般規則の第一追加議定書及び万国郵便条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 郵便送金業務に関する約定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)


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     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 これより会議を開きます。

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する確認書の締結について承認を求めるの件、北太平洋漁業委員会の特権及び免除に関する日本国政府と北太平洋漁業委員会との間の協定の締結について承認を求めるの件、違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を防止し、抑止し、及び排除するための寄港国の措置に関する協定の締結について承認を求めるの件、生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書の締結について承認を求めるの件、バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結について承認を求めるの件、万国郵便連合憲章の第九追加議定書、万国郵便連合一般規則の第一追加議定書及び万国郵便条約の締結について承認を求めるの件及び郵便送金業務に関する約定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官相星孝一君、大臣官房審議官宮川学君、大臣官房審議官三上正裕君、大臣官房参事官飯島俊郎君、大臣官房参事官四方敬之君、経済局長山野内勘二君、総務省情報流通行政局郵政行政部長安藤英作君、水産庁資源管理部長浅川京子君、経済産業省大臣官房審議官中石斉孝君、大臣官房審議官佐藤文一君、通商政策局通商機構部長渡辺哲也君、環境省自然環境局長亀澤玲治君、防衛省防衛政策局次長岡真臣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊田裕通君。

熊田委員 おはようございます。自由民主党の熊田裕通でございます。

 まず、質問に当たりまして、この外務委員会で質問の機会をお与えいただきました理事の皆様、そして関係の皆様に心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 条約の質問の前に、先日、韓国の駐韓大使が三カ月ぶりに韓国に帰任をしたという報道がなされました。さまざまな臆測を含めてさまざまな報道をされておりますけれども、今、なぜこのタイミングに帰任をされたのか、まず、条約の質問の前に、冒頭お聞かせをいただきたいと思います。

岸副大臣 熊田委員にお答え申し上げます。

 本年の一月から一時帰国させておりました長嶺駐韓大使及び森本在釜山総領事を四日に帰任させたところでございます。

 このような決定を行いましたのは、韓国におけます次期政権の誕生に備える必要があることや、北朝鮮問題に対処する上で韓国政府との緊密な連携を図る必要があることのほか、慰安婦像の問題について、長嶺大使から黄教安大統領権限代行に直接合意の遵守を強く働きかけ、次の政権に継承してもらう必要があること、そういった諸般の事情を総合的に検討した結果であり、さらには邦人保護に万全を期するとの観点も踏まえたものでございます。

 慰安婦像の問題につきましては、政府として、韓国側に粘り強く合意の着実な実施を求めていく方針に何ら変更はございません。帰任した長嶺大使を通じて、直接韓国側に働きかけをしてまいります。

熊田委員 今、外務省の方から、帰任をした率直な話を聞かせていただきました。

 私も、日韓合意のしっかりとした履行というのは大事なことだと思いますが、けさも北朝鮮はミサイルを発射いたしました。私ごとでございますけれども、私が防衛大臣の政務官をさせていただいたとき、昨年の正月早々には四回目の核実験、それ以降本当に、表現は悪いかもしれませんけれども、花火のようにミサイルを撃ち続ける北朝鮮。まさに総理は、新たな脅威という発言までされておるとおり、私は、この日韓の関係というのは、もちろん日韓合意の実行、これは大切なことであると思いますが、日米のみならず、やはりこの東アジアの状況を考えますと、日韓の関係をさらに深化して、さらに信頼関係を深めていく、それは本当に大切な外交の一つだ、重要な案件だというふうに思っております。

 日韓合意を実効ある形で何とか前へ進めていただきたい、その思いは、私たちもさまざまな形で御協力をさせていただきますが、政府が先頭に立ってやはりこれを進めていただきたいことを心から強く要望して、この質問は終わらせていただきたいと思います。

 今回提案されております七条約のうち、私は生まれも育ちも名古屋でございます、特にこの名古屋議定書、COP10で結ばれた名古屋議定書を中心にちょっと質問させていただきたいと思います。

 その前に、非常に基礎的なお話になると思いますけれども、まずは、一九九二年五月に採択されました生物多様性条約、この意義そして世界的な背景、そして、その後、十回目になりました、名古屋で開催された第十回の生物多様性締結国会議において、一九九二年五月に採択された生物多様性条約を引き継いで大きな成果を上げたのが名古屋議定書だというふうに承知をしておりますが、まずこの基本的なところからお示しをいただきたいと思います。

相星政府参考人 お答えいたします。

 まず、生物多様性条約について、基本的な概要について申し上げます。

 人類は生態系を食料、医療、科学といった分野で幅広く利用している一方で、生物の生息環境の悪化、そして生態系の破壊に対する懸念が深刻なものとなってきております。

 生物の多様性を包括的に保全し生物資源の持続可能な利用を行うための国際的な枠組みを設ける必要性について、一九八〇年代に国連等の場で議論されるようになりました。そうした動きを受けて、一九九二年、生物多様性条約が採択されまして、九二年の六月の、リオ・サミットと呼んでいますけれども、国連環境開発会議におきまして署名、そして翌年九三年には発効いたしました。

 この生物多様性条約は、生物多様性の保全、そして生物多様性の構成要素の持続可能な利用、さらにはその遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ公平な配分を目的としております。本年四月現在で百九十四カ国、加えてEU及びパレスチナが締結しております。

 先ほど委員から御指摘のありましたCOP10でございますけれども、これは生物多様性条約の第十回締約国会議ということで、二〇一〇年の十月に愛知県名古屋市で開催されまして、百七十九カ国、関連の国際機関、NGO等、延べ一万三千人以上が参加いたしました。

 当該会議におきましては、特に、遺伝資源の取得と利益配分に関する名古屋議定書、そして、二〇二〇年までの生物多様性に関する目標である愛知目標が採択されまして、議長国の我が国に対する取りまとめ努力に対して高い評価が示された次第でございます。

熊田委員 ありがとうございました。

 このCOP10につきましては、実は私も個人的に非常に思い入れを強く持っております。ちょっと時間をおかりして、質問をしっかりさせていただきますが、時間をお許しいただいて、ちょっとお国自慢も含めてお話をさせていただきたいなと思うんですが。

 実は、私が愛知県議会に初当選をさせていただいたのは平成七年でありました。私が初当選をしたとき、愛知県はまさに、二〇〇五年の愛・地球博、愛知万博、そしてそれにつながる中部国際空港の建設、これに向けて、県議会、経済界を含めて、非常に力を持って推進力でやっていこうという機運が大変高まった時期に初当選をさせていただきました。

 二〇〇五年、万博も国の皆さんのお力もおかりして成功裏に終わり、中部国際空港も開港をしておったとき、まさに祭りの後に、ある意味、県全体に脱力感というか無力感が生じたのが事実でありました。この先、愛知県は何を目標に持って前へ進んでいくんだろう、そんな話が出たときに、我々自民党の愛知県議団、私もまだ当時、今ではもう想像つきませんが、まだ当時若手の県会議員と言われたときでありました、若手の県会議員が中心になって愛知県に提言を出したのが、実は夢あいち21というものを提言させていただきました。

 この夢あいち21の提言の中に入っておりますのが三つの項目でありました。それはまさに、第一本の柱というのが、県民の健康な暮らしを醸成していこう。

 県民の健康を醸成しよう、これは、この時期、名古屋では名古屋国際女子マラソンというものがありました。これはトップランナーしか実は走らなかったマラソンでありますが、これを、県民のみならず、多くの方々に参加していただけるマラソンにしよう。

 実は、この提言を受けまして、二〇一二年に名古屋ウィメンズマラソンというのが初めて開催されました。ことしも三月に開催されて、一万九千八百七十五人の参加を見ることができました。そしてまた、ホイールチェア部門、いわゆる車椅子での参加も可能という、世界でもまれなマラソン大会になったわけであります。

 そして、もう一本の柱、これが、暮らしの豊かさの追求と、経済だけじゃなくて、愛知県にももっと芸術文化を広めていこう、こういった提言をさせていただきました。それを受けて、二〇一〇年から愛知県では国際的な芸術祭を開催しておりまして、いわゆる三年に一度の祭典ということで、あいちトリエンナーレというのが二〇一〇年に開催をされ、昨年、二〇一六年で三回目を迎えることができました。

 そして、もう一つの提言でありますのが、まさに二〇〇五年の愛・地球博、環境をテーマとした愛知万博のこの理念、これを継承していくために環境に特化した国際会議を誘致しようではないかということで二〇〇六年から始まったのが、まさに今条約として出されております、議案として出されております生物多様性会議、まさにこのCOP10を名古屋でやろうということで実現をしたというのが、実は話の流れであります。

 ちょっと話が長くなりましたけれども、私も、非常に思い入れのある名古屋COP10として、非常に感慨深い思いでおりますけれども。

 そういう中で、実は私は、二〇一〇年に採択をされたこの名古屋議定書、これはもう既に締結をされておるというような考えでおったわけでありますけれども、あれからもう既に六年、七年がたっておるということで、二〇一〇年に採択されたこの議定書がなぜこれまで未締結であったのか、その背景をお示しいただきたいと思います。

相星政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきましては、医薬品、食品、種苗、そして学術研究等々、さまざまな関係者が遺伝資源の研究開発を行ってきております。こうした中で、名古屋議定書の国内担保措置につきましては、産業界そして学術界といった遺伝資源の利用者にとっても、過度な負担を生じない、簡素かつ実際的なものとする必要があったわけでございます。

 こういう背景の中で、二〇一〇年の採択を受けて、翌二〇一一年以降、環境省が設置しました有識者の懇談会及び関連業界の関係者、学術関係者から構成される検討会を累次にわたり開催し、議論を積み重ねてまいりました。同時に、関係省庁におきましても、継続的に調整、検討を行ってきておりました。

 この過程で、主要国における国内措置に関する情報が十分に収集されているかどうかといった指摘が国内の関係者よりもなされまして、EUによる関連の域内規則の施行等を見きわめた上で、関連の業界、そして学術関係者に対する説明を繰り返しました。EUの規則自体は一昨年の末に施行されております。

 こういう過程を踏みまして、我が国の国内措置のあり方についての理解を得て、今般、国内担保措置の最終的な取りまとめを行うことができた次第でございます。

熊田委員 COP10で、交渉において、いわゆる先進国、それと途上国との間に対立があったということも承知をしており、合意をするのが非常に難しかった議定書だということを承知しております。

 ここまで、先ほど御説明あったように、国内関係者との調整に時間を要したということは、すなわち、本議定書はもしかしたら途上国を中心とする遺伝資源の提供国にとって有利な内容だったのではないのか、そのような中で、遺伝資源の一大利用国である我が国が本議定書を締結するメリットというのは本当にあるのかどうなのかということを言われたことがあるんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 本議定書は、遺伝資源の取得及び利用から生ずる利益を公正かつ公平に配分するための国際ルールを明確化するものであり、遺伝資源の提供国のみならず、我が国のような利用国にとっても、国際社会における遺伝資源の取得及び利用の円滑化が促進されるという利点が見込まれると認識をしています。

 また、遺伝資源の提供先を本議定書に基づく利用国措置を講ずる国に限定する動きが国際的に出てきている中で、我が国が本議定書を締結することは、海外からの遺伝資源の取得の円滑化に資することにもなります。

 また、遺伝資源を利用する国内産業の発展及び学術研究の推進に貢献し得る、こうしたこともあるということを認識している次第であります。

 メリットは何かということでありますが、こうしたメリットを感じながら、取り組みを進めている状況でございます。

熊田委員 大臣、ありがとうございました。

 今、大臣、お話がありました、遺伝資源の利用国である我が国にとってもメリットがある議定書だということでありますが、我が国の遺伝資源の利用者として、医薬、種苗、食品、大学の研究者など、さまざまな関係者がいるところであります。本議定書の締結によって、我が国の産業界や学術界への影響などがどのようにあるのか、さらに、この締結について国内関係者から十分な理解は得られておるのか、そこのところをお伺いしたいと思います。

相星政府参考人 お答えいたします。

 本議定書の国内担保措置案の検討に際しましては、産業界や学術界の意見も踏まえてきております。具体的には、例えば二〇一五年の七月には経団連から意見書が寄せられておりまして、これは本議定書の定義や適用範囲を明確化することを関係省庁に求めてきているものでございます。

 その結果、これまでこういった関係者との意見交換も十分行ってきておりまして、現在の国内担保措置案については、国内の関係者からの理解も得られていると認識しております。

 特に、国内担保措置として定める関係省庁の共同告示という形での指針におきましては、我が国の国内で利用される遺伝資源の取得者に対して、提供国法令の遵守を要請することとしておりますが、我が国の産業界や学術界に過度な負担を課すものとはなっておりません。

熊田委員 今御答弁いただいたように、我が国の国内関係者からは十分理解を得られるということを伺いました。

 さらに我が国の国内措置にしっかりと取り組んでいただきたいと思っておりますし、ぜひ、遺伝資源にかかわる国内産業、学術がさらに発展をしていく、そんなきっかけにもなっていただきたいというふうに思っております。

 ところで、国内的には問題がないということでありましたが、既に九十五カ国及びEUが締結しており、二〇一四年には議定書はもう既に発効しております。さらに、名古屋議定書の締約国会合が、もうあれから二回開催をされているということを承知しております。

 この点について、これまで我が国が本議定書を未締結であったことによる影響はなかったのか。例えば、我が国は、遺伝資源の利益配分に関する国際的議論に出おくれておるのではないかという問題はないのか、お聞かせをいただきたいと思います。

相星政府参考人 お答えいたします。

 本議定書が二〇一四年の十月に発効して以来、御指摘のとおり、締約国会合が二回実施されております。いずれも我が国はオブザーバーとして参加してきて、会合の内容をフォローしてきております。過去二回の締約国会合では、議事運営の手続規則等に関する決定はなされておりますけれども、実質的な中身を伴う決定はなされておらず、我が国が本議定書を未締結であったことで特段の支障があったとは考えておりません。

 他方、二〇一八年、来年には第三回の締約国会合が予定されておりまして、ここでは、本議定書の再検討にかかわる議論がなされることとされておりますので、我が国としても、この第三回の締約国会合には締約国として参加することが必要だと考えております。

熊田委員 ありがとうございました。

 二回はオブザーバーで参加してよかったけれども、来年の会にはさまざまな部分で、日本もさらに影響がある形で締結をして、参加をして、日本なりの意見、思いを国益のためにお話をしていただきたいと思っております。

 ところで、この二〇一〇年の十月の生物多様性条約の会合では、もう一つ、名古屋・クアラルンプール補足議定書が採択をされております。議長国である我が国は国際的に高い評価を受けたと承知しておりますが、この補足議定書締結の意義とは一体何なのか、お示しをいただきたいです。

小田原大臣政務官 お答えいたします。

 本補足議定書は、遺伝子組み換え生物による生物多様性の保全への悪影響を未然に防止する二〇〇〇年採択のカルタヘナ議定書の規定に加えられる形で、遺伝子組み換え生物の国境を越える移動により損害が発生した場合の対応措置を規定した国際約束であります。

 この補足議定書が発効すれば、遺伝子組み換え生物の国境を越える移送がもたらし得る悪影響について、未然の防止に加えて、損害発生後の対応に至るまでの一貫した国際的枠組みが完成することになります。遺伝子組み換え生物の安全な利用のための国際協力の一層の推進に資するものであります。

 また、この議定書は、二〇一〇年に、我が国が議長国となって開催したカルタヘナ議定書第五回締結国会合で採択された、我が国の都市名を冠する国際約束でもあります。我が国としては、着実に推進していくことが国際的にも求められているところであります。

熊田委員 ありがとうございました。

 まさにその我が国の都市、それは名古屋でございます。ありがとうございます。

 先ほど御説明いただいたように、我が国もこれを締結することで、遺伝子組み換え生物の安全な利用を図るための国際的な協力が一層進むものと理解をしております。

 ところで、先ほどの名古屋議定書は、くどいようですけれども、既に二〇一四年に発効しておりますが、本補足議定書は未発効であると承知をしております。

 本補足議定書の発効の見通しはどうなのか、また我が国は発効までに締結することができるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

相星政府参考人 名古屋・クアラルンプール補足議定書に関しましては、現時点で三十六カ国が締約国となっております。それで、議定書上、四十カ国が締結すれば、その九十日目から発効することとなっております。

 ということで、発効時期について、今の段階で確たる見通しを申し上げることは困難でございますけれども、残り四カ国の締結で発効のための要件を満たすこととなると考えておりますので、本補足議定書の発効に向けた国際社会の機運は高まってきていると考えております。

熊田委員 ありがとうございました。

 我が国が議長国として採択をし、そして、我が国の都市名、名古屋を冠した補足議定書でもありまして、我が国としてこれから国際的な取り組みを積極的にリードしていくためにも、早期に締結するよう、政府としてしっかり取り組んでいただきたいと思っております。

 若干時間がありますので、もう一点だけ御質問させていただきたいと思います。

 WTO譲許表の修正及び訂正に関する確認書についてお尋ねをいたします。

 本件は、WTO協定に含まれる我が国の譲許表に関し、情報技術製品の関税撤廃の対象産品が見直されたことに伴うものと承知をしておりますけれども、本件の概要そしてその意義について、お聞かせをいただきたいです。

小田原大臣政務官 お答え申し上げます。

 おっしゃったとおりに、WTO譲許表の修正及び訂正に関する確認書は、WTO協定に含まれる我が国の譲許表に関し、情報技術製品関連の関税撤廃の対象産品が見直されたことに伴う譲許表の修正及び訂正について定めるものであります。

 本件は、我が国の情報技術製品業界・団体から、情報技術製品の対象拡大の要望もあり、我が国と米国とが主導して交渉を立ち上げたものであります。二〇一五年十二月のWTO閣僚会議期間中に我が国は議長を務め、交渉の妥結に貢献をいたしました。この確認書により、情報技術製品二百一品目の関税が撤廃されることになり、我が国については有税五品目の関税が撤廃されることとなります。

 また、我が国がこの確認書を締結し、関税撤廃が実施されることによって、日本企業の国際競争力が強化されるほか、世界全体で情報技術製品の国際貿易を活発化し、経済成長を促進するとの見地から、意義があるものであります。

熊田委員 情報技術製品は、まさに我が国の得意な分野であります。この分野における日本企業の国際競争力の強化につながるものと理解をしております。

 今回は品目の拡大ということでありますが、今後も対象品目というのは拡大をしていくのか、また、このような取り組みが世界全体の国際貿易の活発化にもつながるのであれば、このような取り組みはさらに進めるべきではないかと考えております。

 このようなWTO交渉における我が国の姿勢をお聞かせいただきたいと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、情報技術製品の品目の拡大に関しましては、二〇一五年の七月に、情報技術製品の貿易の拡大に関する宣言というものが行われていまして、その宣言によりますと、遅くとも二〇一八年一月までに、技術革新等を踏まえて、対象品目の追加についての見直しを行うということになっております。我が国といたしましては、産業界からの声も聞きながら、適切に対処してまいりたいと思っております。

 WTOを中心とする多角的自由貿易体制は、ガット時代からを通じて、我が国の通商政策の主要な柱でございました。自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制こそが世界経済の成長の源泉になるという考え方から、我が国はWTOのもとでの交渉に積極的に参加してきているところでございまして、有志国の交渉は、こういった貿易自由化の推進を補完する有効なアプローチであるというふうに考えております。

 我が国といたしましては、有志国間の取り決めを含むWTOにおける交渉に引き続き積極的に参画し、WTOを中心とした自由貿易体制を推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。

熊田委員 時間となりましたので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。

 まず冒頭、岸田大臣におかれましては、NSCの会合からすぐに駆けつけていただきまして、本当にありがとうございます。

 けさも、ほかの、私、財金にも所属していますが、財金でも、六時四十二分の北朝鮮のミサイル発射というのが話題になっておりました。二月の十二日、三月の六日、そして四月の五日でございますので、毎月のように北朝鮮は弾道ミサイルを発射しておりまして、これをまず強く非難をするとともに、また、公明党としましても、北朝鮮ミサイル問題対策本部を早急に開きまして、政府とともにこの対応に当たっていきたいというふうに思っております。

 昨日、長嶺韓国大使が帰任をされるという報道がございました。公明党といたしましても、早期に長嶺大使は帰任をされるべきだということが部会等でも上がっておりましたので、この件につきましては、岸田外務大臣初め、政府の決定というものを大変高く評価したいと思っております。

 本日まで、日米韓で初めての、北朝鮮のSLBM、対潜水艦戦訓練が行われております。非常に大事な局面であるというふうに思っております。あすからは米中の首脳会談が開かれまして、報道によりますと、北朝鮮の対応について、中国に大きな前進を求めるという報道もございますので、やはりこのタイミングで長嶺韓国大使が帰任されたことは、非常に大きな局面を迎える中で重要であったというふうに思っております。

 先ほど熊田委員の質疑の中で、慰安婦像撤去につきましては、これまでどおり日本の主張を続けていくというお話でございましたけれども、やはり、三カ月戻られて帰任をされるわけでございますので、これまで以上に、この慰安婦像の撤去につきましては国と国との約束でございますので、強く主張していただきたいというふうに、まず冒頭申し上げたいと思っております。

 その上で、条約の質疑に入らせていただきたいと思っておりますが、今回は、WTOのITA交渉に基づく譲許表の修正がございます。

 WTOといいますと、三月に、アメリカのUSTR二〇一七年の年次報告書がよく話題になるわけでございまして、きょうも資料につけさせていただいておりますけれども、新聞報道によりますと、アメリカがWTOに従わないとか反旗を翻すとかといった非常にセンセーショナルな項目が躍っておりますけれども、もう一度正確にこの二〇一七年USTR年次報告のWTOの関連部分を確認しておきたいと思いまして、きょう、資料一を配らせていただきました。

 左が英語ですが、私は英語が上手ではございませんので右を読ませていただきますけれども、アメリカは何を言っているかといいますと、この線が引いてあるとおり、仮にWTO紛争解決パネルまたはWTO上級委員会が米国にとって不利益な決定をした場合であっても当該決定は米国の法律または慣習の自動的な変更にはならないというふうに書いておりまして、これはもう、国内法が自動的に変更になるということは、日本も含めて当然のことでありますので、これに対しては過剰に反応すべきではないというふうに私は思います。

 ですので、年次報告書のこの部分だけを抜き取って、そういった、アメリカ自体が、非常に強い、強硬な態度に出ているということにはならないのではないかというふうに私は感じております。

 しかし、その後続く文章においてもありますとおり、米国の主権を積極的に守っていくということでございまして、アメリカはやはり自国の利益のために、特にバイを通じて強い交渉を行ってくるのは皆様予想されるとおりであろうと思っています。

 そこで大事になってきますのは、やはりWTOという世界におけるこのミニマムルールの徹底というものが私は重要であろうと思っています。これから、アメリカも含めまして、このUSTRの、また通商のスタッフもそろう中で、あくまで国際ルールの競争の中で行うべきというものを、岸田外務大臣にはあらゆる場面でその重要性を訴えていただきたいというふうに思っています。

 その上で、WTOのルールの徹底が大事。特に紛争解決機能として、これまでこのWTOのルールは非常に実効性のあるものとして機能してきたというふうに私は思っております。

 そこで、改めまして、このWTOの紛争解決制度、この手続の特徴と、パネル、上級委員会での報告書、この効果、これがどのように国際貿易のルールの中で機能をしているのか、あわせまして、最近日本がこの紛争解決制度にかかわって解決した事例を含めて御紹介をいただければと思っております。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 WTOの紛争解決制度についての御質問でございました。

 個別の紛争処理において、WTOルールの明確化を通じて加盟国間の迅速な紛争解決を図り、WTOのもとでの多角的自由貿易体制に安定性と予見性をもたらしているという点で、WTO体制の中心的な柱というふうに我々は思っているところでございます。

 この紛争解決制度におきましては、三つの特徴がございまして、まず一番目は、パネルの設置、報告書の採択及び対抗措置の承認、こういったものに関する意思決定については、全加盟国が異議を唱えない限り可決するというネガティブコンセンサス方式を採用しておるところでございまして、仮に、訴えを受けた被申し立て国が手続の進行に反対したとしても、手続が自動的に進行するということになっているという点でございます。

 また、この制度のもとでは、パネル、上級委員会により、WTO協定に違反する措置をとっていると認定された被申し立て国は、その措置をWTO協定に適合されるよう勧告を受け、是正が行われるまでWTOの紛争解決機関の監視下に置かれるということでございます。

 また、妥当な期間のうちに是正が行われない場合には、申し立て国は、いわゆる対抗措置の承認を紛争解決機関に申し立てることができるというふうになっている、こういう仕組みでございます。

 これは、一九九五年のWTO設立以来、多くの加盟国がこの制度を積極的に活用しているところでございまして、これまでの協議件数は、一九九五年設立以来、五百二十四件上がっているということでございます。

 我が国もこの申し立てを行っておりますけれども、パネルの手続に至った事案はこれまで十八件ございます。最近では、中国が我が国の継ぎ目なし鋼管に対してアンチダンピング措置をとった事案というのがございまして、これは、WTOの紛争解決制度に基づく申し立てを我が国が行った結果、我が国の主張が認められまして、中国はその措置を撤廃したという事例でございます。

 我が国としては、貿易分野における法の支配、これは非常に重要だと思っておりまして、今後とも、ほかの加盟国と協調しながら、このWTOの紛争解決制度の効果が機能するように取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

浜地委員 ありがとうございます。詳細な説明をいただきました。

 やはりこのWTOの紛争解決手続は、マルチの世界でありますので、二国間同士のいわばドラマチックになりがちな紛争を冷静に判断できる機能というのがやはり非常に重要であろうというふうに思っています。

 また、ネガティブコンセンサスという、やはりマルチの中では非常に珍しい方法もとっておりますし、実際に中国とのこの鋼管のアンチダンピングの事例で、これは一年前ですね、二〇一六年八月に解決した事例もあるということでございますので、現在、日本もまだ係争中のものがございますけれども、しっかりとWTOのルールの中で主張を行っていただき、ルールの徹底というものを率先して行っていただきたいというふうに思っております。

 次に、今回提案になっております拡大ITA交渉、これは参加国が五十二にふえまして、対象品目も二百一品目となっております。

 まず端的に、これは我が国経済について具体的にどの程度プラスに働くのかをお聞きしたいんです。特に、今回、液晶パネル自体が対象品目から外れておりますけれども、そのことについて経済界の理解は得られているのか、この点も含めましてお答えいただきたいと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の情報技術製品の対象の拡大というものの主な分野といたしましては、新型の半導体、デジタルのオーディオビジュアル機器、医療機器などでございまして、日本の企業が非常に競争力のある品目が中心になっておりまして、これらの年間の輸出額が約九兆円に上るわけでございます。

 我が国から輸出する際に、相手国がそういった品目にこれまでは関税をかけておりまして、その関税の合計額が約千七百億円というふうに見積もられておりまして、この分、価格競争力が上がるということになろうかと思います。

 先生御指摘のとおり、今回の拡大ITAの対象の品目の中に液晶パネルは含まれておりません。今回、ITA参加国、地域への液晶パネルの輸出額は大体五千九百億円程度でございまして、そういったぐらいのインパクトでございます。入っていないということは非常に残念ではございますけれども、業界としては、今回の対象品目におおむね満足しているというふうに承知しているところでございます。

 先ほどもちょっと答弁申し上げましたけれども、二〇一八年一月までに、また品目の拡大ということを念頭にこれから我々は活動してまいりますので、具体的な方針はこれからでございますけれども、産業界からの声も聞きながら適切に取り組んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 一千七百億円のプラスの効果があるというお答えをいただきました。

 今回、液晶パネルが入ってはいないんですけれども、次の拡大に向けて努力をされるということも御答弁いただきましたし、今後は恐らく、自動運転とかそういったものが入ってこようと思っていますので、日本の得意分野をどんどん追加いただくように努力をしていただきたいと思っています。

 今回、ITA交渉は、いわゆるプルリ、WTOの加盟国全体ではなくて有志国で行われております。これのいいところは、WTOの、そうは言っても枠内で行われますので、域内生産の証明をしなくていい、輸入関税で証明する必要がないという利点があるわけでございますけれども、逆に、プルリの弱点と言われるいわゆるフリーライドの問題が言われております。

 WTOの枠内であくまでやっておりますので、このプルリ交渉、有志国の交渉に参加していない国に対しても、参加した日本のような国は最恵国待遇をWTOの加盟国に与えなければいけない。具体的に言いますと、日本が今度輸出する場合には、プルリに入っていない、今回のITAの交渉に入っていないところには、関税はかけられるけれども、日本が輸入をする場合にはこれはゼロ関税にしなければいけないという点がございます。

 しかし、今回の拡大ITAの品目におきましては、実際に日本企業にフリーライドの問題が起こっても不利益はありますかということをお聞きしたいと思っています。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 拡大ITAの関税撤廃措置は、御指摘のとおり、有志国でございます。しかしながら、その譲許表を修正する効果は、今回の措置に参加していないWTOの全加盟国に適用されるというわけでございます。

 他方、今回のITAの対象となります情報技術製品の世界貿易の約九割を占める加盟国が今回の有志国として参加しておるところでございまして、日本の輸出の九四%がこの対象国ということでございますので、フリーライドによる我が国の実質的な不利益というものはほとんどないというふうに考えておるところでございます。

浜地委員 今回の拡大ITAのフリーライドの問題もほとんど影響がないということも確認をさせていただきました。

 岸田外務大臣に、この貿易について最後お聞かせをいただきたいんです。

 WTO全体での合意というのは、今までの歴史を見ますとなかなか難しい局面がございました。一つ大きく進んだのは、一昨年のMC10での農業分野での補助金分野につきましては一歩前に進んだわけでございますけれども、他の分野につきましては加盟国の利害がかなりぶつかりまして、調整が難しいのがWTO全体のマルチでの世界だと思っています。

 現在は、そうしますと、有志国、いわゆるプルリでのサービス貿易協定、TiSAや、また環境物品交渉、GEAなど、この枠組みで行っておりまして、非常に、妥結に向けて、惜しいところまでと言ったらちょっと弊害があるんですけれども、かなりプルリは進んでいるというふうに思っています。

 このプルリ交渉を行う意義について、岸田大臣、どのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、WTOを中心とする多角的貿易体制、これはガット時代から我が国の通商政策の主要な柱でありました。そして、自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制こそが世界経済の成長の源泉であると考えています。

 こうした基本的な考え、そしてWTOの体制の重要性を認識しながら、WTOにおけるプルリ交渉、これは多国間交渉を補完するものとして、貿易自由化を進める有効なアプローチの一つであると認識をしています。

 こうした有志間交渉、プルリ交渉ですが、御指摘がありましたTiSA、サービス貿易に関する新しい協定、あるいはEGA、環境物品協定、こうした交渉も精力的に取り組んできたわけですが、目標としましては昨年末の妥結を目指していたわけですが、残念ながら、その昨年末の妥結には至りませんでした。しかし、引き続きまして、交渉の早期再開、早期妥結に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えております。

 このように、WTOを補完するものとしてプルリ交渉を積極的に活用していきたいというのが、我が国の基本的な考え方であります。

浜地委員 外務大臣、ありがとうございました。

 ぜひまた、私も御提案がありますのは、WTOの閣僚会合、また非公式会合もございます、米国のUSTRの代表も参ります、また各国の貿易の代表も参りますので、ぜひ岸田外務大臣にもこういった機会に参加をいただきまして、自由貿易の価値というものをまた訴える機会にしていただければというふうに思っております。

 続きまして、万国郵便条約についてお聞きをしたいと思っています。

 今回、到着料の引き上げが行われることが盛り込まれております。また、加盟国の分類、この改定も行われます。

 到着料は、皆さん御案内のとおり、先進国には高い料率、途上国には低い料率が課されておりますので、この加盟国の分類というものも非常に重要になってきます。

 事前に総務省からお聞きをいたしましたところ、今現在、日本の国際郵便、通常郵便は、日本が名宛て人、日本に送られてくるのが一億通あるそうでございます。逆に、日本が差し出し国、日本から出す場合は二千五百万通ということで、入荷超の状態に日本はあるわけでございます。

 その中で、特に、日本宛てに送られてくる郵便物で一番多い国はアメリカ、二番目がはや中国、三番目がイギリスというふうに聞いております。

 今回到着料が引き上げられますのは日本にとってもプラスになることになると思いますけれども、特に、先ほど言いましたとおり、日本に入ってくる郵便物の中で二番目の中国の分類が今回上がります。ですので、これまでよりもより高い料率を求めることができるという点も私は評価をしたいというふうに思っています。

 そこで、実際に今回到着料が引き上げられることで日本郵便にはどの程度プラスになるのか、これは総務省にお答えいただきたいと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の到着料の料率の調整によりまして、日本から外国宛て国際通常郵便物について、名宛て国に支払う金額も上昇するということになりますが、先ほど御指摘がございましたとおり、我が国は通常郵便物の入超国でございますので、それ以上に、我が国に外国発で送られてきます通常郵便物について受け取る金額が多くいただくという形になります。試算によりますと、七億円程度の収支の改善になるものと承知してございます。

浜地委員 七億円程度日本郵便の収支が改善するということで、これは二、三年前の議事録を見ますと六億円という答えをされていますので、そこから多分、また郵便物の量というのがふえたんですね。やはり国際郵便の取引というのがふえたんであろうというふうに私は推察をしております。

 このUPU条約発効の手続については、例えば全加盟国が批准をしなきゃいけないのかという点について、この発効の手続はどうなるのかについて改めてお聞きしたいと思います。

相星政府参考人 お答えいたします。

 今回お諮りしております万国郵便連合の関連文書につきましては、万国郵便連合のもとで、国際郵便業務及び国際郵便送金業務を実施するための基本的な法的枠組みを定める国際約束でございまして、条文の規定により、二〇一八年一月一日に発効するということが定められております。

 我が国の郵便法では、「条約に別段の定めのある場合には、その規定による。」との規定を設けておりまして、国際郵便業務及び国際郵便送金業務は、これらの文書をその根拠としております。

 したがって、本文書を今国会において御承認いただき、早期に締結することを通じまして、国際郵便業務及び郵便送金業務を実施するための法的根拠を確保し、これらの業務を円滑に実施することが可能となると考えております。

浜地委員 もう来年の一月一日からこれが始まるということでございますので、そういう意味におきましては、本委員会で早期にこれを承認し、やはり国際社会において、きちっと日本は批准したという態度を示す必要があろうかと思っておりますので、個人的には、きょうの採決が行われることを強く希望しております。

 最後に、ちょっとテーマがかわりますけれども、TOC条約について聞きたいと思っております。

 これにつきましては、今、審議入りを与党としては目指しております。公明党としましても、審議の順番等いろいろありましたが、自民党さんと、決めた以上は審議をし、そして、今国会での成立を期すのが私は与党としての役目だというふうに思っております。

 私自身、法曹出身でございまして、さまざま言われておりますけれども、いわゆる内心の自由を侵害するとか、そういった法案ではございません。準備行為というものが付加をされておりますので、いわゆる刑法の原則であります行為処罰主義、行為を罰し、心理を罰しないということは、非常に構成要件が厳格にされているわけでございますので、私について個人的に、この法案については党内の部会等でもかなり議論をしましたけれども、しっかりと承認をして、閣議決定を行っていただいたということでございます。

 きょうは法務省を当然呼んでおりませんし、まだ審議も実際に始まっておりませんので、外務省に、この国際組織犯罪防止条約の読み方について、特に我々党内で質問が多かった点が二点ございましたので、その点を最後に聞きたいと思っております。

 きょう、資料二に配っております、このTOC条約の訳文がございます。資料三は英文でございますけれども。

 まず、第五条、「組織的な犯罪集団への参加の犯罪化」というところの(a)、「次の一方又は双方の行為」云々と書いてありますが、その(1)というのが、今回閣議決定をされた、いわゆるテロ等準備罪、いわゆる合意罪の一つと言われるものでございます。しかし、この(1)の文言を見ますと、「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため」と書かれておりまして、これを読みますと、国際的な組織犯罪集団がいわゆる振り込め詐欺とかマネロンとかそういったものを行う行為を罰し、また、それを国内法に求めるように読めます。いわゆるテロ対策としては読めないように見えるというのが、一番最初、我々が党内で議論を始めたときに、特に若手の議員を中心に上がった質問でございます。

 私は、外務省から何度も説明を受けておりますが、実際、この文言では、金銭的利益や物質的利益を得ることに「直接又は間接に関連する目的のため」と書かれているのに、これがテロとどう関連するのかということについて、国際法の立場もしくは国際情勢のこれまでの議論の経緯を確認したいと思います。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一般論といたしまして、国際的な組織犯罪とテロ活動との間には強い関連性があるということが指摘されております。本条約の策定に向けた交渉過程におきましても、対象犯罪を具体的に列挙すべきではないかという議論の中で、テロ活動がその対象となっていた経緯がございます。

 また、本条約が採択された二〇〇〇年十一月の国連総会決議におきましても、国際的な組織犯罪とテロ犯罪との関連が増大しており、本条約がこのような犯罪行為と闘うための有効な手段であることが指摘されております。

 その後、アルカイーダによる九・一一テロが発生し、さらにISILのような凶悪な組織も登場しておりますが、こうした組織は、さまざまな犯罪行為で収益を上げ、それを資金源にして暴力的な活動を行っております。

 こうした状況の中で、テロ行為そのものへの対処に加え、テロ行為を可能とする資金源を断つことがテロの最終的な根絶に向けて効果的な方策となっております。

 また、現に本条約に基づき締約国間で実施されている捜査共助として、例えば、テロ資金犯罪に関する警察記録の提供要請や、テロ捜査のための記録の提供要請などがあると承知しております。

 このように、本条約につきましては、起草段階からテロ活動を対象に議論が行われてきておりまして、テロを含む幅広い国際的な組織犯罪を一層効果的に防止するための枠組みであると承知しております。

浜地委員 ありがとうございます。

 これは私は何を聞きたかったかというと、この条約ができる二〇〇〇年の当時はそうではなかったんだけれども、アルカイダのテロ等があって、後で加えられたんじゃないかというふうに理解をしていましたが、そうでなくて、起草段階からテロについては条文化しようという動きもあり、それが基本的にはテロの対策だということが最初から盛り込まれた上でこの条約がつくられているという御答弁だったというふうに思いますけれども、それでよろしいんですね。(発言する者あり)いや、無理じゃない、無理じゃないです。では、もう一回ちょっと答弁してもらっていいですか。

 要は、九・一一が起きる前からこの法案については、テロについてはもともと条文化しようという動きもあり、この条約の中に後から追加したものではないということを答弁してもらっていいですか。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたとおり、本条約策定に向けた交渉過程の中で、犯罪対象を具体的に列挙すべきではないかという議論がございまして、そういった列挙すべき対象としてテロ活動が多くの国から挙げられていた経緯がございますので、その観点から、交渉の当初からテロ活動というものが念頭にあったということが言えるかと思います。

浜地委員 ありがとうございました。

 これについては、国連決議等もございますので、また、それも確認しながら、実際の審議に入りましたら議論をしていきたいというふうに思っています。

 最後の質問にいたしますけれども、もう一つ、この条約の読み方について質問が多かったものが、この(1)の赤いところですね。「重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、」その次です、「国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの」というふうに書いてあります。

 これをそのまま読むと、いわゆる合意があって準備行為を行う団体を処罰するような国内法にするか、または組織的な犯罪集団が関与するものにするか、いずれかにしなさいというふうに読めます。しかし、今回閣議決定されたものは、主体を組織的な犯罪集団に限って、かつ合意の内容を推進する、準備行為を行うということになっておりますので、英文を見てもオアとなっておりまして、私は英語は余り得意でございませんので、どう考えても、これはTOC条約が求めている、今回の閣議決定の内容とはそごがあるんじゃないかというふうに当初思っておりました。

 そこで、この「又は」の読み方を改めて確認させていただきたいと思います。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、本条約五条1(a)におきましては、国内法上の要件として二つの要件が書かれておりますが、これらは択一的な関係にあるものではなく、双方を要件とすることも認められております。

 この条約の事実上の事務局となっております国連薬物犯罪事務所、UNODCが作成しております本条約の国内担保法モデルにおきましては、国内法上、二つのオプションを双方とも採用し得ることが示されております。

浜地委員 済みません。これもこれまで聞かれたことではございますけれども、我が党としてもしっかり御答弁をいただきたいと思って、今お答えをいただきました。

 これから審議に入りますので、またこの外務委員会の場でも質問になろうかと思っていますけれども、しっかり審議をさせていただきたいと思っています。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民進党の田島一成でございます。

 きょうは、外務委員会にお邪魔をして、三十分時間を頂戴いたしました。御理解いただきました理事ほか委員の皆様に感謝を申し上げたいと思います。

 外務委員会、大変久しぶりでございます。間口が広くて、多岐にわたる議論を短い時間でやらなければならない、大変御苦労を察するところでもございます。

 私、日ごろ環境委員会に所属をしておりますので、ちょうど先週、国内法の審議をさせていただき、賛成、可決させていただいたところでありますが、この名古屋議定書、さらには名古屋・クアラルンプール補足議定書について、大臣以下関係の皆様にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 忘れもしない、この名古屋議定書、さらには名古屋・クアラルンプール補足議定書が成立いたしましたのは、二〇一〇年の秋でありました。当時、私どもは政権をお預かりしておりまして、その前年には、私も環境省の副大臣として事前交渉等々でEU等に出張する機会も随分ありました。大変厳しい中での交渉を経て成立をさせた生物多様性条約の第十回締約国会議、今回、そのことを振り返りながら、思い出しながらお尋ねをさせていただきたいと思っております。

 今ほども申し上げたように、今回のこの名古屋議定書、さらには補足議定書が採択をされましたのは二〇一〇年の十月であります。早いもので、もう六年以上がたちました。過日の国内法の整備のときにも同僚議員から質問がありましたけれども、外務大臣、国際交渉の中では、やはりきちっと批准、また採択をしていくということが一番求められていく。とりわけ議長国であったあの当時、COP10、それからMOP5等々を考えると、なぜこんなに六年以上もおくれてしまったのか、その点についての御意見、また御感想も含めてお伺いをまずさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、名古屋・クアラルンプール補足議定書、この補足議定書は、二〇〇〇年に採択されましたバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書を補足するものであります。

 そして、そのカルタヘナ議定書ですが、これは、我が国における国内実施は、カルタヘナ法、正式には遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、これによって担保されているという仕組みになっています。そして、このカルタヘナ議定書を補足する本補足議定書ですが、この締結に先立っては、国内措置をしっかり整備しなければなりません。現行のカルタヘナ議定書の国内担保法でありますカルタヘナ法の改正について検討を行ったわけですが、改正を行うことの正否、あるいは改正を行う場合の内容、こういったものについて慎重な検討を行ってきた、その時間を要したということだと考えています。

 具体的には、専門家から構成される委員会等を通じて関係者との丁寧な調整を行いつつ、関係省庁間での検討を進めてきました。その結果、今般、国内実施を担保するためのカルタヘナ法を改正することについて、関係省庁間で最終的な取りまとめを行うに至りました。そして、今次国会に締結することをお諮りすることになった、こういった次第であります。

田島(一)委員 今回の議定書採択、そして国内法の整備の段取りからすると、去年でも十分に本当は出せたんだろうなと私は率直な印象を実は持っております。

 国内での調整に手間取ったと言えば、それ一言で片づけてしまえるわけでありますけれども、議長を務めたあのCOP10のことに思いをはせれば、やはり一刻も早くというのが私どもの正直な思い、願いでありました。とはいえ、ことし、今国会でこうして提出をされたわけでありますから、一日も早く、成立に向けた、また批准に向けた動きを加速化していただきたいという思いで、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 さて、この補足議定書のタイトルであります。

 正式名称は、ザ・ナゴヤ・クアラルンプール・サプリメンタリー・プロトコール・オン・ライアビリティー・アンド・リドレス・ツー・ザ・カルタヘナ・プロトコール・オン・バイオセーフティーという英語名がつけられているんですけれども、この英語名をどのように訳していくのか、これは外務省の専権事項であります。外務省の国語力が試されるものがこの英訳でありますが、私、どうもこの補足議定書の正式名称の訳がしっくりこないんですね。

 先ほども大臣が御説明いただいたとおり、今回のこの目標というのは、生態系の維持、回復というのが本来の目的であります。ところが、ライアビリティー・アンド・リドレスの和訳が責任と救済というふうになっているわけであります。リドレスと言われると救済というふうに私たちもかつて覚えたわけでありますが、どうも受験英語でそのまま和訳をされたのかなとさえ思う節があります。

 今回必要なのは、救済というようなニュアンスよりも、修復であるとか回復というニュアンスの方がしっくりくるのではないかというふうに思うわけであります。

 ぜひ、参考人にお伺いいたしますけれども、あえて本来のこの議定書の内容、目的にあります修復でありますとか回復という訳を避けられたのかどうか、救済という和訳に決定されたその経緯や理由をお聞かせいただけますでしょうか。

相星政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘のあったライアビリティー・アンド・リドレスという本補足議定書中の名称に関しましては、我が国が一九九三年に締結いたしました生物多様性条約にさかのぼるものと考えております。

 この生物多様性条約では、ライアビリティー・アンド・リドレスの後にインクルーディング・リストレーション・アンド・コンペンセーションという文言がございまして、要は、リストレーションそしてコンペンセーションを含む概念としてのリドレス。

 ですから、まさに今委員が御指摘のありました回復や修復、それに補償といったようなものを含む、より幅広い概念としてのリドレスということで、九三年、生物多様性条約の和訳をするに当たっては、責任及び救済と。この救済が原状回復及び補償を含むという形の訳になっているということに端を発して、それを踏まえた形での訳になっていると考えております。

田島(一)委員 今、バイオダイバーシティーの話までさかのぼっていただいての御説明をいただきました。時々に、なかなかそのワードの訳というのを変えにくいというのは理解をするところではありますけれども、どうもバイオダイバーシティーにあっては、その補償であるとか回復、そういったものも全て入っての救済であるんですけれども、この補足議定書の部分にあっては、どうも何を救済するのかというような問いになかなか答えにくいのではないかという印象を私は持ちました。

 生態系の救済とは、イメージがなかなかできないですよね。日本語が複雑過ぎる、非常に意味が多様、多岐にわたるというところに問題があるのかもしれませんけれども、この日本語の和訳一つで条約や議定書等々が持つイメージが大きく変わってしまいかねないということを、ぜひ神経をとがらせていただきたいなというのが私どものお願いであります。

 もう今さらこの和訳を変えろなんてことを詰め寄るつもりも毛頭ございませんが、やはり救済というよりは、回復であるとか修復という言葉の方が本来は適切であろうという認識を私は持ちました。これを否定されますか、お答えいただけますか。

相星政府参考人 九三年の和訳に当たっての、関係者もいろいろ知恵を絞った結果だろうと考えております。

 リドレスというのは、救済あるいは是正といった、より広い概念が適当だと思うんですけれども、ここで、原状回復及び補償を含むもので、また修復、回復ということもなかなか、それが含む概念として適当かどうかという点もあろうかという、それがゆえに、リドレスというのを救済というふうに和訳を当てたんだろうと考えております。

田島(一)委員 堂々めぐりになりそうなので、もうこの点についてはこれ以上問うことはいたしませんが、ぜひ、先ほども申し上げたとおり、和訳一つで意味が大きく変わっていく可能性もあります。先人がつけた和訳にけちをつけるつもりもありませんけれども、やはりその時々に応じた適切な言葉をぜひ当てていただきたい、そのことを強くお願いしておきたいと思います。

 さて、この補足議定書の交渉経緯を振り返ってみますと、大変な、激動と言ってもいいぐらいの足跡が残っております。

 交渉期限が二〇〇八年までというふうに定められている中で、作業部会は五回にわたって、それでも足りず一回の特別会合が開催をされましたが、交渉期限を過ぎてさらに追加会合が四回も開催をされ、やっとの思いで二〇一〇年のMOP5で採択をされた、それがこの名古屋・クアラルンプール補足議定書であります。

 当時の交渉を振り返ってみますと、遺伝子組み換え作物等を輸出する国の国家としての責任や国際的な民事責任制度などの必要性を求める途上国と、その一方で、それに対する慎重姿勢を一向に崩さなかった遺伝子組み換え作物の輸出国や先進国、その間で相当な意見対立がありました。それがゆえに、これだけもつれにもつれた交渉だったというふうに思っております。

 振り返っていただきたいんですけれども、当時、我が国はどのような立場で臨んできたのか、ぜひ皆さんにもお示しをいただきたいという思いを持っておりますので、改めて、どのような立場で交渉に臨み、どのような姿勢で臨んだのかをお聞かせいただけますか。

相星政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、名古屋・クアラルンプール補足議定書の交渉におきましては、遺伝子組み換え作物の輸出国と輸入国の間の意見の対立が深刻にあったと承知しておりますし、この交渉自体も決裂の瀬戸際までいったというような報道もあったやに記憶しております。

 我が国は、生物多様性に対する安全性を確保しつつ遺伝子組み換え作物の円滑な国際取引を実現すべきという立場から、この両者の間の意見調整に鋭意努めた次第です。

 それで、議長国として臨んだ名古屋で行われましたカルタヘナ議定書の第五回締約国会合では、実効的でバランスのとれた国際的な枠組みを構築するということで、さまざまな議論の調整、そして収れんを図り、本補足議定書の採択に議長国として貢献することができたと考えております。

田島(一)委員 議長国であったがゆえに、どちらにくみすることもなく、公平中立な姿勢を貫いた、言いかえればラッキーだったのかなとさえ実は私は思っております。

 実は、この日本、遺伝子組み換え作物の最大規模の輸入国でもあります。一方で、先進国でもあるわけでありますから、置かれていた立場というのは非常に苦しかったに違いないと推察いたします。その中で、議長国という公平中立を求められる立場がゆえに、あの当時は、調整、とにかく成立をさせる、議定書を採択するというところにエネルギーを注いできたかのように私は振り返らせていただいているところであります。

 実際に、この日本にも多くの遺伝子組み換え作物が送られてきているというふうに申し上げましたが、主要遺伝子組み換え作物の輸出国でありますアメリカ、オーストラリア、カナダ、そしてアルゼンチンなど、こうした主要国については、カルタヘナ議定書はもちろんのこと、名古屋・クアラルンプール補足議定書にも参加をしておりません。アメリカに至っては、バイオダイバーシティー、生物多様性条約すら締約をしていないという、こんな状況にあります。

 こうした遺伝子組み換え作物の主要輸出国が入っていない中で、果たして、今議論をさせていただいているカルタヘナ議定書、名古屋・クアラルンプール補足議定書が効力を発揮していくのかどうか、主要GM輸出国が参加する見通しが立たないのか、立っているのか、その点の御見解をまずお聞かせいただけますでしょうか。

相星政府参考人 ただいま委員から御指摘のありました遺伝子組み換え作物の主要輸出国に関しましては、現時点で、カルタヘナ議定書あるいは名古屋・クアラルンプール補足議定書を締結する具体的な見通しは立っていないものと承知しております。

田島(一)委員 過日、昨年にも議論いたしましたパリ協定も含め、今回、トランプ大統領が就任したことによって、こうした環境を軸とする条約、議定書等々のアメリカの批准というのは非常に、より困難をきわめ出したというふうに考えているところでもあります。

 さあ、これから日本として、かつては議長国も務め、まとめ上げたこの補足議定書であります、アメリカだけではなく、オーストラリアやカナダ等々の主要GM輸出国に対して、どのような姿勢で対応、向き合っていこうと考えているのか、また、この参加を積極的に呼びかけていくという覚悟や決意はおありなのか、大臣、お聞かせいただけますでしょうか。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、我が国は、今日まで、この課題に対して生物多様性を重視する立場から積極的に貢献を行ってきました。

 米国を含め、生物多様性条約あるいはカルタヘナ議定書の非締約国もオブザーバーとして参加する国際会議の場等において、世界の生物多様性の確保を図るためには国際的に協調して対応することが重要である、こうしたことを訴えてきました。

 我が国はこれまでも、遺伝子組み換え作物の輸出国と輸入国との間のバランスのとれた国際的枠組みの実現を目指してきました。今後も、非締約国を含む各国に対しまして、遺伝子組み換え生物の適切な管理を通じた生物多様性の保全の重要性について積極的に発信していくべきであると考えます。

 ぜひ、先ほど申し上げたように、非締約国も参加する国際会議の場等を積極的に活用しながら、我が国の立場を発信していきたい、このように考えます。

田島(一)委員 本当に、環境政策におけるアメリカの姿勢というのは、この生物多様性のみならず気候変動も含めて、非常に今危うい状況にあります。

 そんな中で、日本としてアメリカをどう諭し、どう説得し、どう理解をさせていくのかというのは非常に重要な課題でもありますし、大変御苦労をいただく話だろうというふうにも拝察をいたしますが、日本がリーダーシップをとって、アメリカを初めとする主要GM輸出国の理解、協力、参加を呼びかけていかなければ、なかなかこの正しい救済、さらには責任を果たしていくということはかなわないというふうに私は考えます。

 今、どうしてこの主要GM輸出国の協力をいただかなければならないのかについて、皆様に一つ御紹介を申し上げたいと思います。

 遺伝子ドライブ技術、ゲノム編集技術、耳にされた方、いらっしゃいますでしょうか。新しいバイオテクノロジーを用いた生物が、今、種の絶滅を招き、生物多様性に非常なる甚大な影響を及ぼしかねないという事態に見舞われております。

 皆さんも記憶にあろうかと思いますけれども、ジカ熱やデング熱など、人の命の危険にかかわるさまざまの病原体を媒介しているのは蚊であります。モスキート、蚊です。

 この蚊のいわゆる染色体さらにはゲノム等々の編集技術を使った遺伝子ドライブと呼ばれる技術を使って、蚊の雌になる機能を破壊させて、野生種と交雑を起こしたとき雄しか生まれてこない、次の世代、そのまた次の世代がゲノム編集のCRISPR・Cas9遺伝子を組み込んで、世代を超えて雌になる機能を破壊していくというのが、実はもう既に研究が進められています。雌は生まれてこない。したがって、たった数匹のゲノム編集された蚊を放つだけで、最終的にはその種は絶滅してしまうということであります。

 ジカ熱であるとかデング熱等々、人の命の危険にかかわる病原体を媒介するわけですから、遺伝子ドライブはとても効果的だと評価される一方で、この目覚ましく進歩している科学の一分野は、人の健康に関することだけではなく、自然保護の方面からも実は大きな議論を呼んでおります。これらの技術は、生物のDNAに人が手を加えてその生態系を変化させることと密接な関係にあります。

 いずれ、これからのMOPでリスク評価の議論等々が起こってくるだろうというふうに考えられていますけれども、日本でこうしたゲノム編集技術や遺伝子ドライブ技術の進歩についてどの程度対応をされているのか、非常に気になるところでもあります。

 この日本では、デング熱やジカ熱がウイルスを媒介して感染するといったようなレベルには今ありません。ですから、国内感染が拡大をするということが想定できないので、案外まだまだこの研究や省庁間での意思統一といったものの議論が進められていないのではないかというふうに類推するわけであります。

 しかし、蚊に国境はありません。パスポートなしに世界どこへでも飛んでいく可能性もあります。蚊だけの問題とも言えません。こういった研究が一方で遺伝子組み換え先進国によってどんどん広がっていくとするならば、単にジカ熱やデング熱を撲滅するという医療等々の分野だけの問題では済まなくなってくる、末恐ろしい話にまで展開するというふうに私は考えるわけであります。

 今、国内で、それこそ分野は各省にまたがっているのかもしれませんけれども、どのレベルまでこの遺伝子ドライブ技術やゲノム編集技術の知見を集積されているのか、また、各省で統一的な対応をとるという姿勢で今臨んでおられるのかどうか、その事実だけをまずお聞かせいただけませんでしょうか。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 ただいまお話のありました、新しい技術の中には御指摘のような懸念を招き得るものがある、そういう御意見があることは承知をしております。

 その関連では、昨年八月に中央環境審議会の遺伝子組換え生物等専門委員会から報告をされましたカルタヘナ法の施行状況の検討結果の中で、新しい技術の利用により得られた生物であって、現行のカルタヘナ法の規制対象とならない生物の取り扱いについては、最新の科学的な知見や国際的な動向を踏まえつつ、慎重に検討する必要があるとされたところでございます。

 このため、環境省といたしましては、新しい技術を用いて得られる生物に関しては、国際的な議論の動向にも留意しながら、最新の研究や科学的な情報の収集等をしてまいりたいと思いますし、それを通じて、生物多様性への影響の可能性があるのかないのか、そういう観点から、今後の取り扱いを、関係各省とも連携して、引き続き検討してまいりたいと思います。

田島(一)委員 何年たっても同じ答弁ばかり繰り返していては、これは本当に前に進まないんですね。そうこうしているうちに、この遺伝子組み換え技術等々は際限なく、また、皆さんが追いつこうとしてもさらにその前を走っていく、今そういう事態にあります。しかも、そういったところは、条約、議定書を批准せずに、生物多様性への影響等々も考えずに開発や研究を進めているという点を、私どもは大変末恐ろしく感じるところでもあります。

 だからこそ、外務大臣に先ほど申し上げたとおり、この主要GM輸出国また開発研究大国にしっかりとした警鐘を鳴らしていただく必要があるんだというふうに私は認識をしております。

 大臣、今私の方から御紹介をさせていただきましたこのゲノム編集技術や遺伝子ドライブ技術等々のリスクを考えると、国内でしっかりとその研究や知見を進めていくこと、また省庁間での認識を共有していくことも一方でもちろん大切でありますが、その一方で、研究をさらに加速化させていくアメリカを初めとするGM主要国に対するメッセージなるものは、メッセージを超えたいわゆる警鐘を鳴らしていく、そんな立場にあるのではないかというふうに私は考えますが、最後に、大臣、どのようにお考えか、もう一度改めてお聞かせいただけないでしょうか。

岸田国務大臣 生物多様性という観点から、遺伝子組み換え技術の大変大きな影響、そして、こうしたことへの取り組みの重要性について、委員の方からいろいろ御指摘いただきました。大変大きな関心を持って話を聞かせていただきました。

 この遺伝子組み換えの技術につきましては、生物多様性という観点のみならず、いろいろな観点から、この問題に対する関心が寄せられ、研究が行われていると思います。

 私自身も、もう二十年ほど前ですが、当時、衆議院の中に、遺伝子組み換え食品の表示問題に関する小委員会という委員会が設けられたことがありました。その際に私は小委員長を務めさせていただきまして、食の安全という切り口からこの技術について議論したのを、今改めて思い返しておりました。

 本当に、今回の議論は生物多様性という観点でありますが、この技術が我々国民にとって、いろいろな切り口から、さまざまな大きな影響を与えているんだなということを改めて強く感じています。こうした問題意識は委員と共有していると思っています。

 具体的な取り組みにつきましては、先ほど答弁の中にもありましたが、ぜひ、関係省庁としっかりと連携しながら、この問題について取り組みを続けていきたい、このように考えます。(田島(一)委員「主要国については」と呼ぶ)

 そして、その問題意識のもとに、主要国、米国を初めとする輸出国がこの問題に真剣に取り組まなければ、こうした実態は変わらないと認識をいたします。

 そういった見地から、主要国に対してどのように働きかけていくべきなのか。先ほど、国際会議等を通じて我が国の主張をしっかりと訴えていくべきだということを申し上げたわけですが、具体的にどのように働きかけていくのか、ぜひ、こういった点についても、実情をしっかり把握しながら検討を続けていくべき課題であると考えます。

田島(一)委員 大臣が遺伝子組み換え食品の表示にかかわっていらっしゃったとは存じませんでして、大変生意気なことを申し上げました。

 御承知のことと思いますが、今日本で販売されている菜種油の菜種は、九九・九%が海外から輸入されています。そして、その大半、いえ、全てと言っても過言ではありません、遺伝子組み換え菜種であります。しかし、その菜種油の食品表示には、遺伝子組み換え菜種使用とは一切書かれておりません。その点については、小委員長をなさった大臣に対して、ちょっと残念でなりません。

 今、この遺伝子組み換え菜種が、日本の主要港に水揚げをされて、製油工場にトラックで運ばれているのですが、その移動中に、遺伝子組み換え菜種が道路上にまき散らされ、ひとり生えしているケースが随分たくさん報告されています。(発言する者あり)そうです。隣の中川先生の地元、四日市港で水揚げされた菜種は、国道二十三号線沿線では、単年草であるにもかかわらず、二年物、三年物と、大きな幹で大変膨らんできております。しかも、菜種だけではなく、類の同じである種に、いわゆる交雑をもう既に図ってきています。影響はないと農水省も環境省もおっしゃいますが、この遺伝子組み換え食品、遺伝子組み換え生物の影響が不安や心配を引き起こすからこそ、今回のこの名古屋議定書、さらには、名古屋・クアラルンプール補足議定書につながってきているわけであります。

 主要輸入国である日本という立場、そして、アメリカと同盟関係にあり、きちっと意見が交わせる立場、こうした立場をフルに使っていただけるのは、遺伝子組み換え食品表示の小委員長までなさった岸田大臣だと私は信じてやみません。大臣の御活躍を心から、心から期待を申し上げて、質問を終わります。

三ッ矢委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 まず初めに、これは過日の委員会でも結局こんな感じだったんですけれども、北朝鮮のたび重なるミサイル発射は本当に許しがたい行為でありまして、大臣も、我が国を含む地域、国際社会の安全保障に対する明らかな挑発行為であり断じて容認することはできないと、けさ外務省で記者団にも語っていて、この言葉は大臣ももう何回も言って、もうすらすらと出てくるような言葉になっちゃっていますけれども、本当に北朝鮮のこうした行為というのは国際社会一体となって阻止をしていかなければなりません。

 総理におかれましても、けさほど指示として、情報収集、分析、また国民に対するしっかりとした情報公開、航空機、船舶などの安全、そして不測の事態に備え万全の態勢をとることと指示されました。

 総理の指示には具体的には盛り込まれていませんが、万全の態勢をとることということで全てを包含しているといえば包含しているんですけれども、岸田大臣におかれては、記者団に対しても、日米また日米韓との連携に言及されております。そして、日本自体でしっかりやることというのもありますが、やはりこれは、関係各国との連携といったもの、国際社会の連携が必要となってくるというふうに思います。

 その点について、しっかりとした指示が出ているとは思いますが、改めて確認をさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 北朝鮮によるたび重なる挑発行為、これはもう昨年来、新しい段階の脅威になっているという認識をたびたび示させていただいています。こうした北朝鮮の挑発行動に対して国際社会が一体となって対応しなければならない、これは当然のことであると認識をいたします。

 私もきょう、六時四十二分に弾道ミサイルが発射されたのを受けて、外務省に対して、一つは、日米そして日米韓の関係国との安全保障協力の一層の深化を指示し、二つ目として、累次の安保理決議の履行を徹底させること、そして三つ目として、安保理における強いメッセージの発出、この三点を指示したわけでありますが、その一点目として、この連携の重要性を特に強調した次第です。

 二月には、日米韓の外相会談も行いました。三月の日米の外相会談においては、北朝鮮政策を見直ししている米国との間においてしっかりすり合わせを行わせていただきました。

 そして、来週にはG7の外相会合が予定されています。もちろん、国会の状況等、お許しをいただいたならば私はぜひ出席したいと思っているところですが、このG7の枠組みにおいても、唯一アジアから出席している国の外務大臣として、アジアの情勢、特に北朝鮮問題については強く訴えていかなければならないと思います。G7の外相会合の場においても北朝鮮問題をしっかりと取り上げることによって、国際社会におけるこの問題への取り組みの重要性をしっかり確認をしてきたいと考えています。

小熊委員 大変長い、御丁寧な答弁、ありがとうございます。

 きょうは条約の審議なので、あと、この点については後日の委員会でもやりたいと思いますが、実際にはやはり中朝の間、中国、北朝鮮との間がどうなのかということもしっかり見きわめていかなければなりません。ここではいいとか悪いとかは言及しませんが、アメリカのトランプ大統領も、中国がどうするかなんだ、中国が何もしなければ我々がやるぞといったことも発言をされています。それのよしあしはまた後日、委員会で審議をしたい、議論したいというふうに思いますけれども、この点、中国と北朝鮮との関係についてもどうしていくのか、我が国が中国に対してどうアプローチしていくのかということも非常に重要な観点かと思いますし、トランプ大統領がそこに踏み込んで言っていますので、この点についても日本政府としてどう対応していくのかという点も含めて、後日の委員会で議論したいというふうに思っています。

 条約の方の審議に移りたいと思います。

 今ほど我が党の田島議員が細かくやりましたけれども、そもそもこの名古屋議定書と言われるものについては、日本がリーダーシップを発揮したすばらしい議定書であったというふうには思います。六年以上の間で既に締結している国・地域が九十を超えていますけれども、日本の取り組みが、ある意味、比較すればおくれたという点については、もちろん、この議定書の規定が曖昧な部分もあって、産業界においてさまざまな疑問といったものが生じたことによって、丁寧な説明がされる時間が必要だったということもあろうかとは思いますけれども、これだけ時間がかかったということを改めてこれは検証して、せっかく国際社会の中で日本がリーダーシップを発揮しているのに、パリ協定もそうでしたけれども、こうした環境分野において表面的にはおくれをとっているという点についてはしっかり検証しなければいけないというふうに思っています。

 改めて、時間がかかってしまった経緯、見解についてお伺いをいたします。

岸田国務大臣 我が国において、遺伝資源の研究開発を行っている関係者は大変幅広い分野にわたっています。医薬品、食品、種苗あるいは学術研究など、幅広い分野にわたっている遺伝資源の研究開発の関係者の中にあって、名古屋議定書の国内担保措置は、さまざまな関係者にとって、過度な負担を生じさせない、あるいは簡素かつ実際的なものにする、こういった必要がありました。こうしたことから、関係者から構成される検討会等を通じて丁寧な調整を行いつつ、関係省庁で検討を進めてきた、これが我が国の取り組みのありようでありました。

 そうした作業に時間がかかったということでありますが、ようやく今般国内担保措置について取りまとめを行うに至った次第ですので、まずはこの締結についてしっかりと努力をしたいと思いますし、時間がかかった経緯については、今後の取り組みの参考にする意味からも振り返ることは重要ではないか、このように思っています。

小熊委員 ちょっとうがった言い方をすれば、より丁寧にやってきた、では、ほかの国もより丁寧にやっていなかったのかといえば、私は、ほかの国だってより丁寧に、それぞれの国の産業界との意見交換とかしながらやってきて、日本より早く締結をしている、ほかの国がえいやと、丁寧にやらなかったとはやはり言い切れないというふうに思います。

 そういう意味では、国によって産業界の幅や、また数といったものは違うというのもありますけれども、ほかの先進国各国でも日本より早く取り組んでいるということを考えれば、やはりその国々だって丁寧にやってきたということを考えれば、ほかの国との比較をしながら、検証していただけるということですから、しっかり検証していただきたいというふうに思います。

 また、パリ協定と同じでありますけれども、せっかく日本がこれだけの環境分野に関して国際的な人材、能力、技術といったものを有していながら、残念ながらこの協定や条約についてはおくれをとっているという意味においては、国際社会での環境分野に対してのリーダーシップを発揮するためには、より一層の努力が必要であろうかと思います、おくれを取り戻すといった意味において。

 そういう意味でも、今後、きょうの審議も受けながら、新たな前向きな形で、しっかりと、この議定書が締結をされた後にはその国内対策、またさらには、これはいろいろな環境変化また技術革新といったものもありますので、不断の努力を続けながら、より一層この環境分野において日本が国際社会でリーダーシップを発揮して成果が上がるように求めて、次の質問に移りたいというふうに思います。

 北太平洋漁業の事務局が日本に誘致をされる段に当たって、私も数年前に委員会で議論をさせていただきました。こっちは結構率先的に、この地域、締結国のリーダーシップを発揮して、事務局が日本に決まったということは大変よかったと思いますし、こうした分野においても日本が国際社会を引っ張っていくという意味ではいいんですけれども、もう一方の、違法な漁業の方の条約は、過日、我が党の部門会議で説明を受けたときに、多少、同僚議員の質問のやりとりの中で、情勢を見ていたみたいなところがあって、本来的にはここだって日本は率先してさまざま各国に働きかけてきたというふうに私は認識していたんですが、その過日の我が党の部門会議での説明は、状況を見ていましたみたいな、俯瞰するような、一歩引いたような説明がありました。

 本当はどっちだったんですか。しっかりリーダーシップを発揮していたのか、状況を見ていたのか。どっちだったんですか。

小田原大臣政務官 お答えいたします。

 まず、IUU漁業は、海洋生物資源の保存と持続可能な利用に対する大きな脅威となっています。我が国は、責任ある漁業国として、IUU漁業対策の重要性を強く認識しています。

 このため、我が国は、従来から積極的にIUU漁業対策のための国内措置を整備するとともに、地域漁業管理機関を初めとするさまざまな機関において、保存管理措置の作成や実施などのIUU漁業対策に取り組んでまいったところであります。

 昨年四月十一日に発出された海上安全保障に関するG7外相声明においては、IUU漁業の防止に向けた対策等の重要性を強調していますが、我が国はこれをG7議長国として主導いたしました。それに加えて、寄港国措置に主眼を置いたIUU漁業対策のための初の多数国間条約である本協定の交渉過程においても積極的に議論に参加をいたしました。

 採択後も、早期締結に向け、国内法令の改正の要否も含め検討を進めましたが、本協定の義務を国内で過不足なく実施するためには、他国による本協定の解釈や国内実施措置を見きわめる必要が生じました。

 本協定採択後数年間は、締結国が極めて伸び悩んだために、かかる見きわめを行うことが困難でありました。二〇一五年から二〇一六年にかけて締結国が急増いたしました。これを受けて、これらの国による協定の解釈や国内実施措置を精査し、我が国は、既存の国内法により対応可能であることを確認の上、今回、本協定を国会に提出するに至ったものであります。

小熊委員 今の政務官の説明で、我々、部門会議で受けた説明とちょっと印象が違いましたので、これはしっかり省内で精査をして、しっかりとした説明がなされるように求めたいと思います。

 過日の中では、状況を見きわめていたというだけで、それしかなかったので、非常に後ろ向きな感じを受けました。これでは、我々も、審議の前段に当たっての説明として、間違った情報なのか、その発言によって審議をせざるを得なくなりますから、これはしっかりと、外務省は人と接する、交渉する省庁でもありますから、ある意味コミュニケーション能力が低下しているんじゃないかなと、我々の聞く能力ではなくて、あのときは全員がそう思いました。この条約に関しては様子を見ているだけの印象しか受けませんでしたので、そうではなかったということを今改めて政務官から説明を受けましたので、しっかりとこれは省庁としてもその説明を果たされるように、これから進めていただきたいと思います。

 この条約に関しては、数多くの国が参加をしていますが、肝心の中国がまだ入っていません。これはやはり、日本の近海、またさまざまな中国の事情、また経済発展を考えると、漁業分野、水産分野に関しても、中国もこういうしっかりとした国際的なルールにのっとってもらわなければ、正直者がばかを見る状況が出てきます。これは非常にいい条約だと思いますし、国際社会全体として海洋資源を守っていくということにもつながっていきますが、これだけの大国が入っていないというのは、この条約も、その成果が十分に発揮されない状況に陥ってしまうと思います。

 中国に対するお誘いというか、この締結国に参加するように、取り組みは今どうなっていますか。

小田原大臣政務官 お答えします。

 本協定の締結国は、非締結国に対し、本協定の締結や本協定に合致する法令の制定などを奨励することとなっています。我が国も、本協定の締結後、ほかの締結国とも協力し、また二国間の漁業協議などの場も活用しながら、中国などの非締結国に対して、締結国の拡大に向けた働きかけを行っていく所存であります。

小熊委員 ぜひこれは、北太平洋の方はロシアも含め比較的うまく参加国に入っていただいたなというのがありますけれども、こっちの方はまだちょっと足りていない状況でありますので、一日も早く参加国をふやすように、これはまた日本だけではなく、同じ締結国と連携をしながらしっかりとアプローチをしていって、一日も早い参加を実現できるように、ぜひ努力をしていただきたいというふうに思っているところであります。ぜひ、関係省庁との連携もあろうかと思いますけれども、しっかり政府全体として取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 次に、万国郵便条約の方に行きます。

 何年か前にもちょっとお話をさせていただきましたが、私も郵便については非常に個人的にもお世話になりまして、六年間の文通の後に結婚していますので、LINEでもなくインターネットを通じたメールでもなく、また、同僚の外務委員におかれては一緒に海外調査に行った際には毎日その訪問国から絵はがきを妻に出していて、LINEやSNSもいいんですけれども、やはり手書き、私は字が下手なんですけれども、かみさんもよく読めないと言っていますが、やはりそこから伝わるものというのは大変いいものがあるなというふうに思って、郵便については、その意味合いというのは人以上に感じているところであります。

 ただ、今、インターネットが普及している中で、だんだんそういうものが、ちょっと数が落ちているという反面、日本はすばらしいユニバーサルサービスになっていると思いますが、やはり国によっては全然違います。

 その訪問国から手紙を出すときも、それは届くかどうかわかりませんよと、現地の、外務省の勤務されている方は言われるし、二年前に行ったメキシコは結局一カ月以上かかりましたし、キューバも一カ月以上かかって、どっちかの国の名誉のために言いませんが、どっちかの国は届かないかもしれませんと外務省の方からも言われたぐらいだったんですが、無事届きました。

 各国によって状況が違うんですけれども、日本は、東日本大震災が六年前に起きたときも、この経験、知見を受けて、郵便サービスの災害対策に対しても国際的に貢献をしていく、また、これは通告に細かいところは言及していませんでしたが、いわゆる日本のインフラ輸出整備の中にも郵便も、いろいろな国に郵便システムを売っていくんだということを政府として掲げています。

 まず、とりわけ災害対策等について、国際的にも、郵便の、日本のすばらしさというのをどう売っていくのか、貢献していくのかという点についてお伺いをいたします。

金子大臣政務官 小熊委員におかれましては、日ごろから郵便サービスを積極的に御利用いただいておりますことに、まず冒頭、感謝を申し上げます。

 その上で、御質問に対して御答弁させていただきたいと存じます。

 今ほどお話がありましたとおり、我が国は幾多の災害を経験してまいりました。そういう意味では、それらの経験や、また知見あるいは教訓を生かして、防災に関する協力は特に重視してまいりたいと考えております。

 特に郵便の分野におきましては、我が国は、万国郵便連合、UPUの災害対策プロジェクトへの専門スタッフの派遣でありますとか特別拠出金の拠出を行いまして、各加盟国における災害に強い郵政事業体への移行促進への調査でありますとか各国の自主計画策定支援等、UPUの取り組みを積極的に支援しております。

 これに加えまして、二〇一六年秋の万国郵便大会議におきまして、我が国が新たな災害対策協力を行うため、開発協力分野における郵便業務の災害リスク管理の方策の促進のための勧告案を提出いたしました。そして、採択をされたところであります。

 この実施に向けまして、先日、三月末でありますが、UPU事務局との間で、災害に強い郵便事業を世界レベルで構築することを目指しまして、日本の知見と特別拠出金を用いて個別の加盟国に対して技術協力を実施するなどの新たなプロジェクトの開始で一致したところでございます。

 通告がないというお話でありましたが、郵便事業に対しての海外への支援でありますが、先般、私もミャンマーの方に行ってまいりました。まず、ミャンマー国に対して我が国の、特に日本郵便の技術協力はしてまいりました。そして、その技術指導をしている現場を私も見てまいりましたが、劇的に郵便の送達速度でありますとか送達率が向上しているということを目の当たりにしてまいりましたので、今後も各国に対して郵便サービス、郵便事業での支援をしてまいりたいというふうに考えております。

 いずれにしましても、今後とも、我が国の知見や技術を生かしながら、国際社会全体の防災能力の向上に資する協力を積極的に行ってまいりたいと考えております。

小熊委員 ありがとうございます。

 あわせて、今、あしたどうなるかわかりません、共謀罪、テロ等準備罪などのことがこの国会で話題になっておりますけれども。一方で、共謀罪云々という前に、郵便の中でもテロ対策というのはやはりしていかなければいけないというふうに思っています。

 日本は島国ですから、ある意味、人の行き来というのがほかの陸続きよりはまた制約があって、そこで安全がほかの国よりも守られているという部分も現実にはありますが、郵便はいろいろ国際的にもこうやって頻繁に移動している中で、九・一一以降も炭疽菌なども郵便でありました。

 共謀罪云々という前に、こうした、具体的に郵便の中でテロをどう防止していくんだということが話題になってきていない、非常に残念だというふうに思っています。

 世界の中で郵便事業が発展していく、これは必要なことです。一方で、その中でこうした危険を防止していく、排除していくという対策は今どうなっていますか。

金子大臣政務官 委員御指摘のとおりでございまして、国際郵便の分野におきましても、テロ対策の強化というのは大変重要なテーマだというふうに考えております。

 UPUにおきましても取り組みを進めているところでございますので、具体的な取り組みを一つ御紹介させていただきたいと存じます。

 具体的には、UPUでは、国際郵便のセキュリティー強化のため、各国の郵便事業体が差出人や受取人の住所、氏名、内容品名とその価格、重量など、国際郵便物の通関に必要な情報を電子的かつ事前に名宛て国の税関に送付する、これは通称EADと申しますが、EADと呼ばれる取り組みを進めております。総務省としましては、UPUの場において、各国がこのEADに取り組むことを積極的に推進しているところであります。

 また、日本郵便では、現在、先進各国の郵便事業体と協力しまして、EADの実施に向けた取り組みを進めているところでございます。

 いずれにしましても、国際郵便の分野におけるセキュリティーの強化というのは大変重要な課題でありますので、総務省としても引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

小熊委員 今の状況ではまだ足りていないものもいっぱいあるというふうに思いますし、これは膨大な数が行き来しているわけですから、今の書類だけでということではなくて、現実的にどう、危険物、炭疽菌とかそういう細菌類まで含めて、防止されているとは思いません。

 ですから、この点についてはしっかりと、共謀罪もいいんですが、いいというわけじゃないんだけれども、こういうことが本当のテロ対策であって、共謀罪をやることがテロ対策になるということではないというふうに私は思っております。

 最後には、政務官も含め委員各位におかれましては、それぞれ家庭内でもいろいろあるでしょうから、家庭内だけでなくて、人間関係のより一層の深い構築のためにも、ぜひ郵便を活用していただいて、やはり手書きというものは非常にいいものですから、郵便のすばらしさ、そしてその振興を図ることをお願い申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

三ッ矢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。緒方林太郎君。

緒方委員 民進党、緒方林太郎でございます。

 外務委員会、質問は今国会二回目ですが、よろしくお願い申し上げます。

 まず、名古屋議定書そして名古屋・クアラルンプール補足議定書についてお伺いをいたしたいと思います。

 この議定書を交渉したときの大臣は松本龍元環境大臣でございまして、私は今でも、同じ福岡でありますので、よく御指導をいただいております。非常に厳しい交渉の中、議長として取りまとめたことについては、折に触れ私もお話をお伺いいたしております。

 まず、この議定書、補足議定書についてお伺いする前に、これと同時に合意された愛知ターゲットというものがございます。愛知ターゲットは、二十の項目がございまして、こういう議定書とは別にこういうことを頑張っていきましょうということが二十、それぞれ書かれているわけでありますが、まず、これは外務省か環境省かわかりませんが、お伺いいたしたいと思います。

 日本はこの愛知ターゲットに現在きちんと全て取り組んでおられる、そういう御理解でしょうか。答弁いただければと思います。

相星政府参考人 お答えいたします。

 愛知目標に関しましては、その達成状況についてこれまでもレビューされてきております二〇一四年に開催されましたCOP12、生物多様性条約の第十二回の締約国会合におきまして中間報告が行われまして、一定の進展はあるものの、今後さらなる取り組みが必要であるという指摘がなされております。

 我が国も、愛知目標の達成に向けて、途上国の能力開発、キャパシティービルディングにつきましては二〇一〇年に生物多様性日本基金を通じて支援を行ってきております。既に、愛知目標の中の十六に関しましては、名古屋議定書を二〇一五年までに締結するということが定められていたわけで、その部分につきましては残念ながら調わなかった次第でございますけれども、今後とも、愛知目標におきましては、我が国として鋭意取り組んでまいりたいと考えております。

緒方委員 次の質問についても触れていただきまして、ありがとうございます。

 目標の十六のところに、二〇一五年までに、遺伝資源へのアクセスとその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書が国内法制度に従って施行され運用されると書いてあります。私は、松本元大臣から、いつになったらあれをやるんだということをいつもせかされておりました。

 愛知ターゲットもある中で、なぜ二〇一〇年にまとまったこの条約が今国会に上がってきて、それで審議をされなくちゃいけないのか、この七年かかったことの理由について答弁いただければと思います。

岸田国務大臣 我が国においては、医薬品あるいは食品、種苗、学術研究など、遺伝資源の研究開発にさまざまな関係者がかかわっています。要は、時間がかかった理由の基本は、こうしたさまざまな分野、さまざまな関係者の調整に時間を要したということだと認識をしております。

 こうした関係者にとって過度な負担を生じない、簡素かつ実際的なものにする、こういった必要性が指摘をされ、その関係者及び学術関係者など、構成される研究者、関係者を集めて検討会議を行ってきた、丁寧に調整を行ってきた、さらには関係省庁間で検討を進めてきた、こうしたことから時間を要し、そしてようやく最終的な取りまとめを国内担保措置において行うことができた、そして締結についてお諮りをしている、こうしたことであると認識をしております。

緒方委員 七年かかることの理由に余りなっていなかったような気がしますが。

 外務省から配られた資料の中に、名古屋議定書は発効済みであり、第三回締約国会合に締約国として参加することが必要だから、だから今回承認を求めているのだ、そういう説明が書かれておりました。その一方で、名古屋・クアラルンプール補足議定書は発効が間近であり、早期の締結が必要と書いてあります。

 この理屈を全部合わせると、いつ何どきであっても必要なんですよね。次、会議が行われますから、そのときまでに締約国になっていることがあって、だからやらなきゃいけない、片やそういう理屈を使い、もう一つ別の国際条約では、いや、もう発効が近いからと。

 どんなときでも必要であるという理屈がここには出てきているわけであって、こういう御都合主義的な説明をするのはやめた方がいいと思いますが、外務省、いかがですか。

相星政府参考人 まずは、名古屋議定書でなぜ七年もかかったかという点なんですけれども、実は、二〇一五年という年に経団連から意見書も各省庁に寄せられまして、具体的な国内担保措置を検討するに当たってのさまざまな検討しなければいけない課題が出てまいりました。

 と同時に、EUが具体的にどういう措置を実施するかということをしっかりと見きわめるべしという意見も寄せられたということで、二〇一五年の十一月にEUが域内規則を施行し、それを踏まえて再度国内の関係者との意見交換を行った上でということで、そういう意味で、二〇一五年末に施行されてから少し時間がかかり過ぎていたという御指摘はあろうかと思います。

 また、名古屋議定書と名古屋・クアラルンプール補足議定書に関しまして申し上げますと、まず名古屋議定書の方は、過去に二回、締約国会合が行われまして、そこはオブザーバーということで参加しましたが、これまで実質的なルールメークに関する議論等は行われてきていません。これが来年には予定されているということがやはり非常に大きな点であろうかと思います。

緒方委員 その理屈を貫くと、どこか主要な、EUとかそういうところが法制度を整えないと日本はやらないということの裏返しになるわけでありまして、そういう答弁は余りよろしくないのではないかと思います。まあ、いいです。

 次に移ります。

 今回の名古屋議定書を見ておりますと、提供者と利用者というのがあるわけですが、日本は利用する側だけなんですよね。日本は、さまざまな遺伝資源について、例えばアフリカ、例えば東南アジア、いろいろなところで利用者の立場には回っているけれども、提供する側に回っていないんですね。

 これだと、国際社会の構図として、先進国は使う側、途上国は提供する側ということで、何となく義務のかかり方が不公平なのではないか、そういう思いも持つわけでありますが、日本には世界に供する遺伝資源がないということではないんだと思います。

 なぜ今回、提供する側に日本は回らず、そのための国内法整備をやらなかったんでしょうか。これは環境省ですか、よろしいですか。

関副大臣 本議定書は、遺伝資源の提供国に対しまして、その取得の機会にかかわります事前同意制度の整備を求めておるわけでございますが、提供国が別段の決定をする場合にはこの限りではないという形にしております。

 我が国が提供国措置を講ずることといたしました場合、新たな手続を求めることになりまして、現時点では国内の研究機関へのいろいろな悪影響が大きいと判断されております。

 加えまして、遺伝資源の取引に際しましては、提供国措置を講じなくとも、取引当事者間での民事契約で利益配分の取り決めを行うことは可能でございまして、このために、現時点で提供国措置を特別に講ずる必要はないと判断しておりまして、その旨、関係省庁におけます共同告示の中で定めることとしております。

 その上で、遺伝資源の利用をめぐります国内外の情勢の変化等がございましたときには、その点は注意しつつ、今後も検討を継続してまいりたいと思っております。

緒方委員 今、国内の研究機関への悪影響という話がありましたが、ちょっとよく理解できなかったので、もう少しブレークダウンして説明していただければと思います。

関副大臣 提供国措置を講じます場合、国内におきます遺伝資源の取得や移転に一定の手続、例えば外国人への譲渡、そして輸出も対象にしなければ実効性がないと思うんですが、このような一定の手続が課されることになりますために、国内の研究開発を阻害するおそれがあると思われます。

 仮に、国外に持ち出しのみを対象とする場合でありましても、我が国で今多く行われております国際的な共同研究を阻害するおそれがあると思われます。提供国措置を講じている国々でも、内外の差別を講じて、国内の者による取得のみを対象外とする例というのは特に把握はされていないような状況でございます。

緒方委員 余りよくわからなかったんですが、議事録を見て、後でもう一回よく考えてみたいと思います。

 この条約を見ておりますと、先住民という言葉が何度か出てまいります。そこで、私、先住民という言葉からいろいろ連想してみて、では、日本のアイヌの方々についてどうであろうかと思いまして、この先住民の定義の中にアイヌの方々を含みますかという話を事前にいたしましたところ、外務省の方から、入りますという御説明がございました。

 政府は、アイヌの皆様方との間で、例えば、第五条における「公正かつ衡平な利益の配分」とか、第六条の「遺伝資源の取得の機会」とか、第七条の「遺伝資源に関連する伝統的な知識の取得」とかいうことに関して、何らかの取り決めを行うということはあり得るんでしょうか。外務省。

相星政府参考人 お答えいたします。

 我が国には古くからアイヌの方々がおられて、言語、宗教、文化、独自性を有しているということで、アイヌの方々が多く居住する社会、コミュニティーは、本議定書上の先住民の社会に該当するものと考えております。

 アイヌ社会に特有のものとして、ただ、済みません、遺伝資源に関連する伝統的な知識、これは本議定書で定義されるものでございますけれども、では、これがアイヌ社会に特有のものとして用いられていたのかというと、必ずしもそのような、利益配分の対象として考慮するべき知識は現時点では確認されていないと考えております。

緒方委員 わかりました。

 それでは、質問を移していきたいと思います。

 今回、WTOの関係の条約も入ってきておりますが、少し通商問題について議論をさせていただければと思います。

 午前中の浜地議員の質問の中でも、USTRの年次報告書で、例えば他国の不公正な貿易慣行に強力な対応策をとる方針を示して、WTOの決定が米国の主権を侵害しているとみなせば従わない可能性もあるということが示唆されていたり、あと、スーパー三百一条は有効な手段だというような表明がなされております。

 まず、岸田外務大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、今、ブレキジットであったりトランプ政権であったり、いろいろな自由貿易を推進しようという動きと、逆行とまでは言いませんが、そこに、必ずしもその方向に進んでいるかどうかということに疑義を挟みたくなるような事態があちこちで生じています。

 こういう時代だからこそ、私、個人的には、まず、現在全く動いていない、死に体となっているWTOドーハ・ラウンド交渉による世界全体の自由貿易の推進というのを進めるべきではないかというふうに思います。アメリカは、すぐにはうんと言わないと思いますけれども。

 今、自由貿易、百花繚乱でありますけれども、本来の一番底になるところの基礎的なルールというのはWTOが提供しているわけでありまして、WTO交渉を通じた世界全体での自由貿易推進を図るべきだというふうに思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、国際社会において保護主義的な傾向、内向きな傾向、こうしたものが強まっている中だからこそ、我が国として多角的な貿易体制、WTOを初めとするこうした体制の重要性をしっかり訴えていかなければならないと思います。

 その中にあって、米国は、戦後、このガットの歴史等を振り返りましても、こうした多角的貿易体制の中で重要な役割を果たしてきた国であると認識をいたします。

 ぜひ、米国も含めて、国際社会において、改めて、こうした多角的な貿易体制の重要性、自由で公正な貿易体制の重要性、これを訴える姿勢を我が国として示すことは大変重要であると認識をいたします。

緒方委員 このままだと、恐らくWTOは、今回のような条約、有志国で集まるものというのはそれは成立をすると思います、そして先般成立した貿易円滑化のようにアーリーハーベストが生じるもの、これもあると思いますが、そういったものを除くと、既存の協定の管理プラス紛争解決だけの機関に成り下がっていく可能性が極めて高い、私はそう思うわけでありまして、今こそ、WTOによる多角的な自由貿易体制をより推進していく力を働かせるべきだということを申し上げたいと思います。

 今、岸田外務大臣が発言された中で、自由で公正なという表現を使われました。まさに、この自由で公正なという言葉、この公正なという言葉というのは私はくせ者だと思っておりまして、昔から、フリートレードではなくてフェアトレードだということをアメリカはよく言います。だからこそ、例えば、先般のG20の会議でも、我々はあらゆる形態の保護主義と対抗しているという表現を落としてきたわけでありますが、あの裏には恐らく、公正な貿易を求めるべきだというその思いも一部あるのではないかと思います。

 実は、私、質問主意書で、日本はあらゆる保護主義と対抗しているのですかと聞いたら、自由貿易を推進していますという言葉が返ってきました。

 ここでお伺いをいたしたいと思います。

 我が国はあらゆる保護主義と現在対抗しておられますでしょうか、外務省。

山野内政府参考人 先生御指摘のとおり、三月の二十七日にいただいております質問主意書におきまして、あらゆる形態の保護主義に対抗しているかという御質問をいただいております。三月三十一日の閣議決定で、我が国政府としては、次のようにお答えさせていただいているところでございます。「我が国としては、現在も自由貿易の推進に取り組んでいる。」これが、先生の質問に対する現在の政府の立場でございます。

緒方委員 自由貿易を推進するというのは、恐らくトランプ大統領でも同じことを言うと思います。しかし、その後ろに必ず公正なという言葉がつきます。そして、その公正なという、アメリカ版公正のツールとして使われるのが、まさにスーパー三百一条であります。

 スーパー三百一条というのは何かというと、簡単に説明すると、この国は不公正な貿易をやっているというところを指定して、そして調査を始めて、それに対して改善が見られなければ制裁を打つ、そういうものであります。日本はこれに、一九八〇年代、九〇年代、非常に苦しんでまいりました。

 外務省にお伺いをいたしたいと思います。

 スーパー三百一条、現在失効しておりますが、こういったスーパー三百一条的なアプローチは絶対に日本は受けないということでよろしいですね、外務省。

山野内政府参考人 お答えさせていただきます。

 一般的に、我が国としては、相手国との良好な経済関係を維持発展させていく、そういう観点から、いかなる国との間であれ、問題があれば冷静に話し合い、共同作業を通じて問題解決に努力すべきであるというのが基本的な姿勢でございます。

 その上で申し上げれば、御指摘の、現在失効しておりますけれども、いわゆる米国の、通称スーパー三〇一条でございますけれども、これは、紛争解決の枠組みに基づかない一方的な措置というものがこのスーパー三〇一条でとられた場合、紛争解決に関するWTOの協定の関連規定に照らしまして問題となり得るというふうに考えております。

緒方委員 国際協定に反する形で運用されればということなんですが、これも結構くせ者でありまして、何かというと、大体これまで、スーパー三百一条で制裁が打たれたことというのは基本的にありません。それは何かというと、もう打つぞということが後ろでわかっているから、それでおどしがかかり、調査がかかった段階で、改めますということで改めてきているんですね。

 外形的に見る限りは、単におどしがかかってやめただけなので、WTO協定違反とかそういった要素はどこにもないんです。ないけれども、恐らく、制裁を打つということは、何らかの国際ルールに基づかない形で制裁を打つわけですよね。そうすると、違法な制裁をネタに他国の貿易に影響を与えようとする行為は、違法な制裁が発動されなくても私はこれは国際法違反なのではないかと思いますが、これは外務省、いかがですか。

山野内政府参考人 お答えさせていただきます。

 WTOの紛争解決了解第二十三条によれば、他国が負っているWTO上の義務の違反などについて是正を求める場合には、このWTO紛争解決了解の規則及び手続によるというふうに定められております。したがって、WTO加盟国がこの紛争解決了解に基づかない一方的措置を実際に行った場合には、具体的にとられた措置の内容にもよりますけれども、この規定との関係が問題になり得るというのが基本的な考え方でございます。

緒方委員 打たれた場合にはなんですけれども、けれども、実際打たれない、基本的に打たれないんですね。

 それは何かというと、ここで制裁を打たれてしまったらもうとんでもないことが起きるというふうなことがわかっているから、そういう法の仕組みになっているからであって、そういう違法な、WTOのDSの手続に基づかないものはだめだということですが、もう初めに調査の段階で普通はびびるわけですよね。

 それそのものの構造がやはり私は問題なんじゃないかというふうに思いますが、もう一度。

山野内政府参考人 先生御指摘のような状況のもとでのWTO上の考え方の整理というのは先ほど申し上げましたとおりでございまして、これは、実際にそういった措置が紛争解決了解に基づかない形で行われた場合には、具体的にとられた措置の内容によるということで、その規定との関係が問題になり得るということでございます。

 なお、米国の新政権の通商に対する対応ということでございますけれども、二月に行われました日米首脳会談においては、両首脳が自由で公正な市場をつくる必要性で一致しております。日米間の貿易・投資関係を深めていくということと同時に、アジア太平洋地域において自由かつ公正な貿易・投資のルールに基づいた活発な経済活動を通じた成長と繁栄を日米両国がリードしていくという意義を確認しておりまして、そういった意味で、アメリカとも協力ができるものというふうに考えております。

緒方委員 なかなか議論がかみ合いませんでしたが、スーパー三百一条、これまで結構経済産業省もそして外務省も、古い資料を見ておりますと相当厳しい姿勢で臨んできたものでありまして、しかも、これは先ほどから申し上げているとおりおどしのツールですので、実際に発動されてからということではなくて、その仕組みそのものが私は問題だということを厳しく申し上げさせていただきまして、質問を移したいと思います。

 もう一つ、先ほどから岸田大臣も山野内局長も言っておられるとおり、常に、自由で公正なという、公正が必ずつくんですね。公正な貿易を達成するための一つのツールとして、先ほど言いましたスーパー三百一条というのを彼らは考えている。もう一つ、伝統的にアメリカが公正な貿易を貫徹するためのツールとしてよく出てくるのが、アンチダンピングであります。

 これは経済産業省にお伺いいたしたいと思います。

 まず、アメリカが課しているアンチダンピングについて、いろいろな問題がある。経済産業省、WTOのDSでも相当闘っておりますが、どういう問題点があるというふうにお考えですか、経済産業省。

三ッ矢委員長 誰が答弁しますか。

 中川経済産業大臣政務官。

中川大臣政務官 アンチダンピングの措置についてなんですけれども、私たち、基本的な認識としまして、先ほどWTOの舞台というような話がありましたけれども、WTOのルール上問題がある場合にはしっかりとそちらで対応していきたいということを考えております。

 その上で、過去にもWTOの紛争解決手続への協議要請というのを日本側から五件してまいって、積極的にも対応しています。例えばダンピングマージンの算定に関する問題がある運用、いわゆるゼロイングについては、WTOの場でしっかりと提訴をさせていただいて、日本側の主張がしっかり認められたということで、今後もそのような形でしっかり対応していきたいというふうに考えております。

緒方委員 そうですね。ゼロイングの問題とか、また、専門用語ですけれどもファクツアベーラブルとか、いろいろな問題があるわけでありまして、アメリカの打っているアンチダンピングの仕組みというのは、自由で公正なという、その公正なを本当に実現しているのかというと、単なる保護主義じゃないかと思うこともあるわけでありまして、その例について、私の地元の話も含めながらお話しさせていただきたいと思います。

 私、地元福岡県北九州市、新日鉄住金八幡製鉄所、旧官営八幡製鉄所がございます。得意としている製品が、電磁鋼板というものがございます。米国において、無方向性の電磁鋼板、これは車のモーターとかに使われるものでありますが、これが二〇一四年にアンチダンピング課税をされております。二〇一三年には一万四千五百トンぐらいの輸出があって、けれども、実は、それが多いかというと、二〇一〇年ぐらいからずっと減ってきて、二〇一三年に一万四千五百トンぐらいまで減ってきている。しかし、ここでアンチダンピング課税を打たれています。

 アンチダンピングというのは何かというと、廉価販売であります、廉価販売で相手の市場を荒らす行為を取り締まるというのがアンチダンピングです。日本には今、日本から輸出している無方向性の電磁鋼板については、一三五・五九%から二〇四・七九%、最大二〇五%のアンチダンピング課税がされる。もうほとんど市場に入っていくことができないという状況であります。

 それで、実はどういう調査がなされたかというと、日本、中国、韓国、台湾、ドイツ、スウェーデン、これらの全体で調査が行われて、日本としては輸出が減っていたにもかかわらず、ある意味巻き添えを食った形になるということで、アンチダンピングが打たれています。

 私は不当ではないかと思います。いかがお考えでしょうか。不当であるとすれば、何が不当だと思いますか。経済産業省。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話のありましたとおり、二〇一四年十一月に、米国国際貿易委員会は日本製の無方向性電磁鋼板にAD措置の発動を決定しました。これに対して、日本鉄鋼連盟が、不当かつ極めて遺憾であるというコメントを発表してございます。

 他方、本調査結果に伴うAD関税は、対象となった日本企業が、損害調査には対応したもののダンピング調査には対応しなかったため、米国商務省が、日本企業のダンピングマージン算出時に、先ほどありましたファクツアベーラブルを適用したことによるものだと承知してございます。

緒方委員 ここからびっくりなんですが、韓国の無方向性電磁鋼板に同じく調査が入りました。しかし、韓国の無方向性電磁鋼板に課された税率は六・八八%であります。最大で二〇〇%近い関税の差があるわけですね。

 これは経済産業省にお伺いしたいと思います。日本の鉄鋼産業は、韓国のPOSCOとかそういった企業に比べて、二〇〇%も廉価販売をしているというふうに思われますか。経済産業省。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話がありましたとおり、米国は、本件については、日本、中国、韓国、台湾、ドイツ、スウェーデンに対してAD関税を行っており、お話がありましたように、日本に対しては一三五・五九%から二〇四・七九%、韓国に対しては六・八八%となっております。

 ただ、このAD関税というのは、対象となった企業ごとに算出するものでございまして、そのため、企業によって異なる税率となるという、そのような仕組みでございます。先ほどの繰り返しになりますけれども、この税率になった理由は、米国商務省がファクツアベーラブルを適用したことによるものと認識してございます。

緒方委員 一万四千五百トン近く輸出がありましたが二〇〇%の関税がかかって、お隣の国が六・八八%だったら、もう市場はほぼ席巻されてしまうというのは誰もがわかる話でありまして、今、経済産業省のコメント、ちょっと他人事ですよ。これによってどれだけの職が失われると思うんですか。どれだけの業績の悪化につながるということなんですか。ちょっと危機感が足らないと思いますよ。

 そして、今お話ございました、ファクツアベーラブルが適切に提供できなかったんじゃないか、事実関係をきちんとアメリカの商務省に対して提供できなかったのではないかという話でありますが、一方で、私が聞いているところでは、韓国は弁護士を張りつけてロビー活動をむちゃくちゃやったというふうに聞いています。まさに、この違いが出ているのではないかということなんですね。

 だって、最大で二〇〇%近く関税の差があくわけですね。こんな不当なことが可能であるというのは、通常の計算では、確かに韓国の電磁鋼板は安いかもしれないけれども、こんなに差はつかないですよ。これはロビーイングの力の差ではないかというふうに思われるわけでありますが、これは外務省、経済産業省、どちらですかね、答弁いただければと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 まず一般論として、在外公館では、所在国との経済関係強化、さらには、その国で活動しておられる日本企業支援のためにさまざまな活動を行っているところであります。

 アメリカにおきましても、日米経済関係の強化、さらには日本企業の支援、そういう観点から、日米経済関係上のさまざまな課題について、米国の世論の理解を深めるために種々の活動を行っておるところでございまして、今後とも、関係企業の要望をしっかり踏まえながら、米国政府に対して、我が国としての考えを伝えるなどして、適切な形で働きかけを行っていきたいというふうに考えております。

緒方委員 予算の問題もある、人の問題もあると思います。

 これは岸田外務大臣にお伺いいたしたいと思います。これは私が見る限り、明らかにロビー活動の差であります。今年度の予算は通りましたけれども、来年度予算とか今後のところで、やはり、例えば在米日本大使館の議会班がどれぐらいの数が要るのかということとか、経済班もあるでしょうし、いろいろな班、そういったところで、ロビー活動がしっかりできるように、人の配置そして予算の配分、こういったものをしっかりやるべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 さまざまな課題を通じて、我が国の考え方、立場を相手国にしっかり伝えていく、理解を得ていく、これは大変重要な取り組みであり、そのための体制、そのための人員の確保、これは大変重要であると認識をいたします。

 具体的な検討は、それぞれ丁寧に行わなければなりませんが、基本的に、こうした組織体制の強化あるいは人員の確保については前向きに努力をしなければならないと考えます。

緒方委員 このアンチダンピングについては、もう既に日本の鉄鋼品は、例えば一番長いものについては、PC鋼でありますが、一九七八年からずっとアンチダンピングが課されています。三十年以上、もう四十年近くずっと、日本は廉価販売で高い税金をかけられている。溶接管についても、もう一九八七年以来課されている。物すごく長いものが多いんですね。WTOのルールの中では、ある程度時間がたったらこれはやめましょうということで、サンセットレビューという仕組みも盛り込まれていますが、アメリカは全然やめる気はありません。全くないです。

 そういう中、TPPの交渉の中で、では、アンチダンピングがどういうふうに取り組まれたのかといえば、もうTPPのアンチダンピングの部分というのは、本当に中身は薄いですよ。何にも書いていないです。既存の仕組みをそのまま続けますということしか書いていないわけでありまして、今後の日米交渉におきまして、このアンチダンピングの不当性についてしっかりと取り組むべきであるというふうに思いますが、これはどちらですかね。外務省か経産省。では、経済産業省。

中川大臣政務官 きょうは、緒方委員から、本当に大変重要な御指摘をいただいているんだというふうに思っています。

 先般の日米首脳会談におきましては、日米双方がウイン・ウインの経済関係を一層深めるために、麻生副総理とペンス副大統領のもとで、新たな経済対話の枠組みというものを立ち上げるということで合意をいたしています。

 三本柱で、経済政策とか、また、インフラ、エネルギー、サイバー、宇宙などの分野での協力、さらには、貿易・投資に関するルールについて議論していくということで、具体的な構成とか内容というのは現在固まってはおりませんけれども、今後、麻生副総理のもとで、スケジュールも含めて日米間で調整をしていきます。

 今、本当に重要な御指摘をいただきましたし、経済産業省の方も、世耕大臣とロス商務長官ということなので、私どもの方からもしっかりと、今の御指摘、上の方に上げていきたいというふうに思っております。

緒方委員 このアンチダンピングについては、先ほど無方向性の電磁鋼板についてアメリカでAD税が課されているということでありましたが、実はもう一つ、非常に技術性の高い方向性電磁鋼板、これは変圧器とかに使われるものでありますが、これについては中国で、今度は平成二十七年に、これも品目によりますけれども、三九%から四五・七%のAD税が課されています。

 中国におけるこの方向性の電磁鋼板というのは、実は全く別のところから最近物すごく問題になりまして、何かというと、我が地元、新日鉄住金八幡製鉄所から、この方向性電磁鋼板の技術がPOSCOに流出をして、そして、POSCOから宝山鋼鉄、宝鋼集団の傘下にある企業に流出をしたと。初めPOSCOは独自技術ですとずっと言っていましたが、これはちょっとお笑い話なんですが、POSCOから中国の宝山鋼鉄に漏れたときに、韓国の国内で裁判になったときに、韓国側の人が、そんなことを言ったって、自分たちが漏らしたこの技術は、自分たちだって新日鉄住金八幡から持ってきたものじゃないかというふうに裁判で言った、そういうお笑い話があって、その結果として、実は日本から韓国、そして中国に漏れていったということがあります。

 経済産業省にお伺いいたします。今の私の認識でよろしいですか。

佐藤政府参考人 少し時系列を追って御説明しますが……(緒方委員「短くね、短く」と呼ぶ)はい。

 二〇〇七年十月に、新日鉄の方向性電磁鋼板の製造に係る同社の独自技術がPOSCOに盗用された疑いが発覚して、二〇一二年に新日鉄がPOSCO及び新日鉄の元社員を営業秘密の不正取得、不正使用を理由に、不正競争防止法に基づいて損害賠償及び製造販売の差しとめを求める訴訟を東京地裁に起こしたということで、その後、二〇一五年にこれは和解が成立してございます。

 他方で、韓国において、元POSCOの職員が方向性電磁鋼板の技術を中国の鉄鋼メーカーに漏えいしたという裁判が行われたということも承知してございます。

緒方委員 その裁判の中でそういう証言があったということもよろしいですよね。うんとうなずいているので、それでいいと思います。

 つまり、中国の宝鋼集団がつくっている方向性電磁鋼板の技術の少なくとも一部は日本から流れたものであります。これを受けて、経済産業省は不正競争防止法の改正をいたしております。数年前に行われた不正競争防止法の改正でありますが、あれはこういった形の産業スパイを防止するために十分なものであったというふうに思いますか、経済産業省。

中石政府参考人 お答えいたします。

 相次ぐ大型の営業秘密漏えい事案を受けまして、委員御指摘のとおり、平成二十七年、二〇一五年に、営業秘密の保護強化を目的とした不正競争防止法の改正を行いました。

 その中では、具体的には、まず、営業秘密侵害罪の罰金額の上限を引き上げました。それからまた、海外で営業秘密を不正使用した場合に通常より高額な罰金の上限を設定する、海外での厳罰化を行いました。さらに、今回の事案もそうかもしれませんが、民事訴訟における営業秘密の不正使用の事実に係る立証責任、これを転換いたしまして、不正取得をした後の立証の負担を軽減しました。まだの規定の創設を行いました。

 これらの改正によりまして、営業秘密侵害に対する抑止力は向上したというふうに考えておりますし、これによって、我が国産業の、例えば営業秘密を含めての知的財産の国際競争力強化を期待できるというふうに思っております。

 私どもとしましては、関係機関、特に司法当局との連携が大きいものがありますが、連携を一層深めてまいりまして、そしてまた、この制度をよく御存じで使っていただくべきだと思っていますので、周知徹底にも努めてまいりたいというふうに思っています。

緒方委員 こういう産業スパイに対応するために、今後も頑張っていただきたいと思います。

 今の話を述べた上で、最後、もう一問質問させていただきますが、皆様方、これで何となくわかったと思いますが、日本から出た技術でつくっている方向性電磁鋼板というのは非常に技術性が高いので、誰でもつくれるわけではありません。日本から出ていった技術の一部を使いながらつくっている国が、本家本元から輸出しようと思ったら、廉価販売をやっているからということでアンチダンピングを打っているんです。これは不当以外の何物でもないと思います、私は。

 これは絶対に私は許せないと思っていて、中国からすると、別に日本からもらった技術じゃない、韓国から流れてきた技術だと言うんだと思いますが、我々の側からするとそんなことはどうでもいいわけであって、流れていったルートがそうであったというだけなわけでありまして、こういったアンチダンピングの課税について、私は、中国にもっと強く言っていくべきだと思います。

 明らかに、我々側からすると納得のいかない、我々から出ていった技術でつくっている人たちが、こちらから輸出しようとすると、廉価販売をやっているからといってばんと関税を高く、四十数%まで打たれてしまうということは、これは不当ではないかというふうに思いますが、それでは、これは最後、経済産業省ですかね、答弁いただければと思います。

中川大臣政務官 今、緒方委員に御指摘いただいた件なんですけれども、これもやはり、アメリカ同様、WTOの舞台でしっかり、本当により思いを込めて伝えていかなくてはいけないと、私もきょう質問を聞かせていただいて、改めて思っているところでもあります。

 過去にも、そういった意味では、二〇一二年に損害関係の認定に問題があった日本製のステンレス鋼管に関する件をWTOに提訴いたしまして、日本の主張が認められて措置が撤廃されるなど、適切に対応してきていますけれども、今後もしっかり、もっともっと注視をして、WTOの舞台でやっていきたいというふうに思っております。

緒方委員 質疑を終えさせていただきます。ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 冒頭、北朝鮮が本日、五日朝に弾道ミサイルを発射したということでありますが、北朝鮮の繰り返されるミサイル発射は、国連安保理決議、それから六者会合、六カ国協議の共同声明、さらには日朝平壌宣言に違反する暴挙であります。我が党は、改めて北朝鮮の行為を厳しく非難して、抗議するものであります。

 こういうもとで、いよいよ、国際社会は一致結束をして、経済制裁を北朝鮮に対して厳格に実施をする、そして圧力を強めるということと一体に、外交交渉を通じて北朝鮮に非核化を迫って、核・ミサイル開発の手を縛る、放棄に向かわせることが重要だと思います。

 この点、まず岸田大臣に、どういう取り組みをするかは先ほどあったので、考え方のことで、そういう考え、どういう基本的な考え方で立っておられるか、端的に伺いたいと思います。

岸田国務大臣 北朝鮮に対しては、従来から、対話と圧力、行動対行動の原則のもとにこの諸懸案を包括的に解決するべく努力をしていく、こうした方針で臨んできております。

 対話と圧力、両方重要だと思っていますが、まず、現状においては、国際社会とともに協力しながらしっかりと圧力を強めていくことが重要であると認識をしています。

 国連安保理におきましてもしっかりとしたメッセージを発出しなければならないと思いますし、累次の安保理決議の履行を関係国とともにしっかりと行っていくことが重要であると考えます。

 その上で、北朝鮮の反応も見ながら、最も効果的な、具体的な対応を考えていく、これが我が国の基本的な考え方であります。

笠井委員 北朝鮮に核・ミサイル開発の放棄を迫っていくと。やはり今本当に大事なところに来ていると思いますが、その上でも、三月二十七日からニューヨークで始まった核兵器禁止条約の国連会議の成功がいよいよ重要であって、我が党はそのために力を尽くしたいと思っております。

 この会議は、三月三十一日まで開かれて、第一会期が行われたわけですが、我が党の志位委員長とともに私も、本会議での許可をいただいて、核軍縮・不拡散議員連盟、PNNDの一員として参加をしてまいりました。その中で、要請文の提出、それから演説、文書発言を行うとともに、国連関係者、会議主催者、参加した各国政府やNGOなどに個別に懇談、要請をして、被爆国日本の国民の声を国連に届けてきたわけであります。

 そこで、本日の議題であるマルチ関連七条約の質疑に先立って、この国連会議をめぐって、岸田大臣に何点か質問をしていきたいと思います。

 まず、一問目ですが、今回の国連会議については、事前にも三月八日の当委員会で私は大臣に質問いたしましたが、昨年末の国連総会での決議を受けて、核兵器全面廃絶につながる、核兵器を禁止する法的拘束力のある協定について交渉する国連会議ということで、その第一会期だったと。これまでにこのような国連の会議が開かれたことはあったでしょうか。

岸田国務大臣 これまでに、核軍縮・不拡散の議論の中にあって、法的拘束力を持って核兵器を禁止する、こうした条約を作成するという目的を持って開かれた会議は存在しなかったと認識をしております。

笠井委員 まさに戦後の歴史の中でも初めての会議ということでありますが、核兵器禁止条約の締結に向けた交渉が国連において開始をされたということであります。参加者からは、戦後の国際政治でも文字どおり画期的、歴史的なものということで、異口同音に語られました。そして、百十五カ国を超える各国政府と市民社会、NGOによって構成をされるという点でも、国連の核軍縮交渉の歴史で初めての会議になったということであります。

 大臣に伺いたいんですが、こういう会議が国連で開かれることになったという、その背景にはどういう要素があるというふうに大臣としては見ておられるでしょうか。

岸田国務大臣 その背景ですが、今御質問をいただいて、たちまち考えるに、まずは国際社会における核軍縮・不拡散の議論の中にあって、今、核兵器国と非核兵器国の対立が極めて深刻になってきているということが一つあると思います。そして、その中にあって、非核兵器国が現状に対して厳しい不満を持っている、こうした事情もその背景としてあるのではないか、このように認識をいたします。

笠井委員 私も実際に会議に参加をしてみて、この会議開催の背景には二つあるなというふうに感じました。

 二つの要素です。一つは、核兵器の非人道性に対する批判と懸念というのが、やはり被爆者の一貫した告発あるいは一連の国際会議などを通じて、国際社会の共通認識になってきたということであります。

 もう一つは、今大臣も触れられたことに関連すると思うんですが、核保有大国が、この間のNPT運用検討会議、再検討会議などでの、国際社会へみずから誓約をしたことに背きながら、核兵器廃絶を先送りするということで、自国の核軍備を近代化、強化する態度をとるということで、多国間核軍縮のプロセスが停滞をしている、実際停滞しているというふうに認識しているということについての強い不満ということであります。

 そういう中で、会議では、核兵器を禁止する法的拘束力のある文書について、条約にするときに、前文や目的、あるいは中核となる禁止条項の中身などについて、一つ一つ極めて真剣で集中した熱のこもった討論、そして政府間、NGOとの対話が実際議場で行われるということでありました。

 議長を務めたコスタリカの軍縮大使のホワイトさんでありますが、ホワイト議長によれば生産的、建設的、効果的な形で話し合いとなって、条約づくりが進むプロセスというのが実際に行われていて、それを私も目の当たりにしながら感動を覚えたところであります。

 広島の被爆者の方々が証言、発言をされましたが、それに対しては、議場から鳴りやまぬ拍手が起こって、各国からも共感の発言が相次ぎました。被爆者が核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶことを求めるということで呼びかけたヒバクシャ国際署名、数億を目指すということでありますけれども、これに対しても、外国の政府の代表から、強さを与えられるということで、大きな賛意も寄せられたところであります。

 ところが、大臣、この国連の初めての会議でありますが、この間も議論をやってまいりました、唯一の戦争被爆国である日本がどういう態度をとったかという問題でありますが、高見沢軍縮大使が会議の初日に出席をして演説をされました。演説しながら、その中で、交渉には参加しないということを表明して、それ以降、日本政府代表は会場から姿を消しました。この日本政府の態度は、参加者の失望と批判を招いたというのが実態だと思います。

 不在の日本政府席、プレートがあるわけですが、そこには折り鶴が置かれて、国際的なNGOの方が置いたみたいですが、そこには、あなたがここにいてほしいという、あのピンク・フロイドの歌のタイトルが書かれていて、英語でそれが書かれて、そして広島の被爆者たちは、とにかくそういう日本政府の態度に対して心が張り裂けそうだと。それから、厳しく非難するという発言まで出ました。

 大臣は、こうした被爆者の思いを、現地に参加した被爆者の思いをどのように受けとめられるでしょうか。

岸田国務大臣 こうした被爆者の方々の思いというものはまことに重たいものがあり、我々はしっかり受けとめなければならないと思います。

 そして、こうした被爆者の方々も日本国政府も、核兵器のない世界を目指すという大きな目標は共有していると信じています。そして、その共有している目標に向けて、それぞれの立場で努力をしなければならない。

 日本政府として、今現状において具体的にどう対応するべきなのか、これについて慎重に、そして十分に検討した結果、今回の核兵器禁止条約交渉会議においては、先ほど委員の方から御紹介いただきましたように、我が国の従来からの基本的な考え方、二つの大切な認識のもとに、核兵器国と非核兵器国が協力をし、現実的、実践的な取り組みを積み重ねていく、こうした基本的な考え方をこの会議の冒頭、ハイレベルセグメントにおいて主張をし、そして、この会議の実情を見るに、核兵器国はもちろん、ドイツ、カナダ、オーストラリアを初めとする中立国も出席をしていない、こういった現状にあって、我が国の主張をこれ以上通すことは難しいと判断をし、そして、これは核兵器のない世界を実現するために前向きに資さないということだけではなくして、核兵器国と非核兵器国の対立をより大きくしてしまう、逆効果をもたらしてしまう、こういった判断に基づいて、それ以後の会議への参加を見合わせたということであります。

笠井委員 今大臣からお話がありましたが、そういう日本政府の態度、そして対応そのものが根本から問われるというふうに私は思います。

 我が党の志位委員長は、国連の公式会議で初めて行った演説の中で、日本政府がこの議場にいないことは大変残念なことです、しかし被爆者の方々と日本国民の大多数がこの国連会議を支持していることは明らかですと述べて、核兵器禁止条約の実現を訴えました。本来、被爆国政府こそ交渉の議論をリードする役割を果たすべきだと強く感じたところであります。

 そこで、政府の議論に関連して、大臣に幾つか確認したいんですが、今回の国連会議は、開催を決定した国連総会決議にもあるように、全ての加盟国に参加を要請して、全ての加盟国に開かれたものであったという点では間違いありませんね。

岸田国務大臣 少なくとも全ての加盟国に参加を呼びかけたものであると認識はしております。

笠井委員 実際にも呼びかけられたということでありますが、オープンでインクルーシブ、包括的な精神で運営をされていたというのが、現場にいての実感であります。

 では、さらに経過的に見ますと、二〇〇〇年にNPTの運用検討会議、再検討会議がありました。そのときには、自国核兵器の完全廃絶を達成するという全ての核保有国の明確な約束というのを確認しております。さらに、二〇一〇年の再検討会議のときには、核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別な取り組みを行うということを確認しております。

 いずれも全会一致で決めたものだと思うんですが、その点は間違いありませんね。

岸田国務大臣 御指摘の点はそのとおりだと承知しております。

笠井委員 そこで言われた必要な枠組みというのは、事実上は核兵器禁止条約のことであります。そういうところまでNPTの枠組みの中で到達をした。全世界がここまで到達をして、核保有国も非核保有国も、核兵器国も一致して確認したわけであります。

 ところが、その後、この誓約を破ったのが核保有国の側だった。日本政府は、核保有国が参加していないもとで核兵器禁止条約をつくることは核保有国と非核保有国の溝を広げる、分断を広げるというふうに主張しておりますけれども、私は全く逆だと思います。

 深刻な分断をつくったのは核保有国の側ではないか。一致してやろう、全会一致でということで、今大臣も認められたようにみんなで決めたことについて、逆のことをやる。さらに、今やトランプ米政権などは、核兵器のない世界という目標を公然と投げ捨てて、核兵器の増強まで言い出している。誓約を破るだけじゃなくて、全く逆の方向に進み出しているというのが現実ではないんですか、保有国の側が。

岸田国務大臣 委員の方から、今、どちらが約束を破ったのかというような議論がありましたが、いずれにせよ、核兵器のない世界を目指すに当たって、結果を出すためには、現実に核兵器を持っているのは核兵器国ですから、核兵器国が行動しなければ具体的な結果にはつながらないということ、これは誰でもわかることだと思います。

 そして、核兵器国と非核兵器国の対立が厳しくなっているからこそ、ここは辛抱強く核兵器国を巻き込む努力、これをやめてはならないということを強く感じています。

 だからこそ、今回の核兵器禁止条約交渉会議に核兵器国が一国も出席をしていない、なおかつ、核兵器国のみならず、我が国とともに中立国として核軍縮・不拡散に汗をかいてきたオーストラリアもドイツもカナダも皆出席をしていない、こういった状況の中で議論をすることは逆効果であるということを感じ、我が国のこの交渉への態度を決めた次第であります。

笠井委員 私の質問に答えていただきたいと思うんですが、どちらが破ったのかという議論はあるにせよ、いずれにせよじゃなくて、二〇〇〇年と二〇一〇年に保有国を含めて全会一致で確認をして誓約したことについて、それと違うことをやったのは誰か、どちらが破ったか、誓約をたがえることをしたのはどちらかというのは明らかだと思うので、それははっきり言えるんじゃないんでしょうか、どちらが破ったかは別としてじゃなくて。

 その点はどうなんですか。ちょっとはっきりさせてもらいたい。

岸田国務大臣 その評価についてはさまざまな議論があると思います。

 しかし、核兵器国を巻き込む努力はやめてはならない、こうしたことを申し上げております。

笠井委員 保有国の参加は必要なんですよ。それはもうやろうという話になっている。だけれども、経過としてはっきりしているのは、誓約したことを守ってちゃんと条約化していこうねという非核保有国で参加した国々と、約束したのにそれをたがえて、それに反して逆のことをやっている核保有国がいる。だから、ちゃんと正そうと思ったら、約束を守らなくて逆のことをやっているそういう国々がちゃんと約束どおりやるということが必要だということだと思うんですよ。

 今回の国連会議の開催に国際社会が踏み切った理由というのは、今回の会議の中でも多くの国の代表が言っておりましたけれども、多国間の核軍縮交渉が核保有国の態度によって行き詰まっている状況を前向きに打開しようということにあると。核兵器禁止条約の締結に踏み出して、核保有国にも参加を促していく、誓約したんだからちゃんと一緒にやりましょうよ、そういう歴史的な一歩を踏み出そうというのがこの国連会議にほかならないということだと思います。私も、行って、そう思いました。本当に実感しました。

 被爆国日本こそ、その役割を、促す役割をすべきじゃないんですか、保有国に対して。

岸田国務大臣 我が国の基本的な立場は、先ほど申し上げたとおりであります。核兵器国と非核兵器国の協力のもとに現実的な、実践的な取り組みを積み重ねていくというものであります。

 核兵器国と非核兵器国の協力ということを大事にしなければ、従来までこの両者の協力のもとに積み上げてきた努力すら逆行してしまう、結果につながらなくなってしまう、こういったことになってしまってはならないと思っています。

 今回、核兵器禁止条約交渉のありようでは、従来から積み上げてきたNPTもCTBTもFMCTも、あるいはG7の枠組みも、こうしたものも、今までの積み重ねを逆に後退させてしまうことにもなりかねない、慎重でなければならない、こういったことを申し上げております。

笠井委員 協力が必要だとみんな思っているわけですよ。参加国もみんなそう思っているということなわけですが、では、大臣が言われている、積み上げてきたような努力を崩しているのは誰か、到達したことを崩しているのは誰か、逆のことをやっているのは誰かということが問われてきて、分断をつくったのは、核保有大国とそれに追随する一部同盟国だと。

 核保有国が参加しないもとで核兵器禁止条約をつくることは分断をつくるという反対論というのは、核保有国が反対することは何もするなという議論になってしまうと、私は強く言いたいと思います。

 さらに、先ほど冒頭、北朝鮮問題がありましたが、日本政府は、北朝鮮の脅威といった現実の安全保障問題の解決に結びつくとも思えないというふうに表明した上で、我が国として交渉会議に参加することは困難と言わざるを得ない、高見沢大使もそのように表明されましたけれども、私は論理が全く逆じゃないかと。北朝鮮問題が解決されるためにも、核兵器禁止条約によって核兵器を違法化して、悪の烙印を押すことが本当に大事じゃないかと思うんですけれども、その点、大臣はいかがですか。

岸田国務大臣 核兵器国の参加を得る、そして関与をしっかりと確保する上からも、厳しい安全保障環境に対する冷静な認識が重要であると我が国は考えています。こうした現実にもしっかりと対応することこそ、具体的に核兵器のない世界に向けての前進を得ることになると信じています。

 今御指摘いただいた点につきましては、今申し上げたような考え方に基づく発言であると考えます。

笠井委員 今回の国連会議の参加国でいうと、北朝鮮は、招集することについての国連決議は賛成しながら、参加をしなかった。これは、核兵器禁止条約が実際に制定される段階でこの条約に賛成するならば、みずから核兵器を放棄しなければならなくなるからだと思うんですね。

 北朝鮮は会議招集に賛成しながら参加しなかったという大きな矛盾を抱えたわけですが、これは、核兵器禁止条約が、北朝鮮に核兵器放棄を迫る上でも大きな威力を持つことを示していると私は思います。

 そういう中で、国連加盟国の多数が核兵器禁止条約の交渉に参加するという、いわば世界の本流に対して、米国のヘイリー国連大使は、イギリスやフランスなど約二十カ国の大使とともに、議場外に並んで、マスコミだけを相手にしてでしたが、異常な反対の攻撃を行うという逆流の姿をあらわにしました。これ自体が今回の国連会議と核兵器禁止条約の現実的な力を証明しているなと痛感した次第であります。

 大臣に伺いますが、日本政府もこの米国などの行動に参加、同調するように求められたんでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の米国大使の記者会見については承知をしています。

 ただ、我が国の立場は先ほど申し上げたとおりであり、唯一の戦争被爆国として、我が国は独自の判断で、米国とは異なり、会議に参加をし、みずからの考えをしっかりと述べるという対応をとった次第であります。我が国は、我が国の判断で、核兵器のない世界に向けてどうあるべきなのかを検討し、具体的な行動を行ったということであります。

笠井委員 独自の判断で参加をしと言われましたが、私も高見沢大使と直接話もしました。そして、政府の側でもはっきり繰り返し言われたのは、会議には出席して意見は言ったけれども、この交渉には参加しない、出席するが参加しないと、わけわかんないことを言っていたので、ちょっと今、その点は違うのかなと思うので正していただけると思うのですが。

 いずれにしても、独自の判断と言われましたが、私も本当に理解できなかったんですよ。出ていて発言しているのに、これは参加じゃありませんと、後からいなくなっちゃっているわけですね。独自の判断と言われましたが、要するに、米国の側から、米国大使などの行動に同調して参加するように求められたんですかということを聞いたんですが、その点はどうですか。独自の判断の以前に。

岸田国務大臣 米国との間においては、さまざまな機会にしっかり意思疎通を図っています。ただ、そのやりとりについては、詳細を申し上げるのは控えなければならないと思います。そして、結論として、具体的な行動は先ほど申し上げたとおりだと言っております。

笠井委員 さまざまなときにさまざまな意思疎通を図るはいつも大臣言われますが、その結果として独自の判断ということになると、言われたけれども独自に判断したということになるのかなと今聞いていて思いましたが、はっきりとおっしゃらない。

 では、さまざまな機会に意思疎通ということで関連して伺いますが、三月八日のときにも質問をいたしましたが、岸田大臣は、昨年の国連総会決議が採択されたときに、交渉には日本政府として参加すべきだと発言をされました。また、昨年十二月七日の参議院の拉致問題の特別委員会で質問をされて、我が国として唯一の戦争被爆国として堂々と議論に参加するべきであると私は考えていると答弁をされました。

 その後いろいろあったということでしょうけれども、その後のことになりますが、二月十日にティラーソン米国務長官と初の日米外相会談が行われました。ここで、核兵器禁止条約、そしてこの会議のことが議題に取り上げられたというふうに言われておりますが、そこで、さまざまな意思疎通の機会ということになるかもしれませんが、この会議には参加しないように求められたんじゃないんですか。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、私は、核兵器禁止条約交渉会議が開かれたならば、主張すべきことはしっかり主張すべきであるということを申し上げ続けてきました。ただ、我々の主張が、しっかり訴えることができる環境にあるのか、方式であるのか、こうしたことについてはしっかり確認した上で具体的な態度を決定するということも申し上げてきたわけであります。

 そして、我が国として、会議に参加をし、ハイレベルセグメントに出席をし、そして主張は行いました。ただ、先ほど申し上げたこの会議の実情から考えまして、その後の交渉には参加することは難しいということを明らかにした次第であります。

 そして、日米の外相会談において何か米国から求められたのではないか、こういった御質問でありますが、具体的なやりとり、これは当然のことながら、相手との信頼関係もあり、明らかにすることは控えなければなりません。

 いずれにせよ、我が国としては、我が国の判断で今申し上げたような対応を決定した次第であります。

笠井委員 二月の外相会談で議題に上って、日米の外交当局も水面下での意見調整を進めた過程で、米側は、激しい嫌悪感を露骨に示す表現を用いて日本の交渉参加への反対を表明したとされておりますけれども、そういうことじゃないんですか。

岸田国務大臣 外相会談の具体的なやりとりは控えます。

 しかし、いずれにせよ、我が国は我が国の独自の判断を行い、米国とは異なり、この会議において主張すべきことを主張いたしました。唯一の戦争被爆国としてどうあるべきなのか、これを慎重に、十分に検討した結果であります。

笠井委員 私が質問した三月八日の段階でも、日本政府は参加への態度をまだ決めていないとしておりました。

 岸田大臣は、その後、三月十六日に再びティラーソン米国務長官と都内で会談をされる、その結果を踏まえて、安倍総理と協議の上、日本の態度を最終決定する見通しだとされておりました。

 そういうやりとりの結果、核抑止力の強化を掲げるトランプ米政権からの要求があって、それに応えて政府は不参加にかじを切ったんじゃないか、こういうことが読み取れるわけでありますが、繰り返し聞いても、具体的なやりとりは信頼関係ということで言われないということであります。

 日本政府は、核兵器国と非核兵器国の橋渡し役を果たすということをしきりに言われてきました。しかし、国連加盟国の多数が核兵器禁止条約づくりの交渉を開始する中で、それに反対する核保有大国とともに、被爆国政府でありながら逆流の、まさに、ある意味ではお先棒を担ぐとも言われるような、そういったことをやってきたことによって、橋渡し論も通用しなくなったと私は言わなきゃいけないと思うんです。

 この会議は一旦閉会をしました。六月十五日から七月七日の日程で第二会期を開くということでありますが、会議のホワイト議長は閉会に当たって、五月の後半か六月一日までには条約草案を提示したいというふうに言われて、全ての参加者が条約締結への断固とした強い支持を示したというふうに言われて、七月七日、第二会期の末には条約を採択することによって仕事を終えるという議長の決意を表明したいと述べました。

 国連総会が決めたマンデートは明確であります。核兵器全面廃絶につながる、核兵器を禁止する法的拘束力のある協定について交渉をする。私は、今からでもこれに沿った行動をとって、唯一の戦争被爆国にあるまじき態度を根本的に改めるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 今回の核兵器禁止条約交渉会議には、米、英、仏、ロ、中、こうした五つの核兵器国のみならず、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮も参加をしておりません。そして、我が国がこれまでNPDI等を通じてともに中立国として核軍縮・不拡散に取り組んできたドイツ、カナダ、オーストラリア、こういった国も参加をしておりません。

 こうした中で一方的な議論を続けるということは、核兵器国と非核兵器国の対立を一層深めるという意味で逆効果になりかねないと判断しています。

 よって、この会議に今後我が国が参加することは考えておりません。

笠井委員 これは一方的な議論じゃないんですね。だから、先ほども議論をさせていただきましたが、NPTの再検討会議の枠組みの中で、二〇〇〇年と二〇一〇年に全会一致で合意した、核保有国も誓約した中身、それをきちっと守っていく、さらにこれを実らせようじゃないかという議論をして、条約づくりということで国連総会を経てやっているわけでありますから、それに約束をたがえて、約束に反して逆のことをやっているというのが核保有国の側ということになってくるわけです。

 今回の国連会議に対する我が党が要請した中心点というのは、核保有国の参加を追求する、それをやりつつ、仮に最初は核保有国の参加が得られなかったとしても、賛成する諸国の政府によって核兵器禁止条約、核兵器を禁止する法的拘束力のある協定を早期に締結すること、そして、今回の国連会議で核兵器禁止条約の早期締結に向けた国際的合意を達成することだということでありました。

 この内容は会議の目的とかみ合って、参加者、各国政府、NGOとも響き合うものになったというのが我々の確信であります。

 今回の会議参加を通じて、日本政府の不参加が多くの国々やNGOに失望を与えていると強く感じましたが、今からでも遅くありません。抜本的に再検討するということを強く求めるものであります。

 さて、きょうの議題である七条約に関連して、幾つか伺っていきたいと思います。

 まず、WTOの譲許表の修正及び訂正の問題であります。対象品目の拡大に関して伺います。

 早期締結の必要性の一つに、経済界からも対象品目の拡大について強い要望がありということで記されておりますけれども、具体的にはどのような要望が経済界から出されているんでしょうか。端的にお願いします。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 対象産品の拡大交渉の当初においては、情報技術製品の関係業界、さらには団体から、関係産品を関税撤廃の対象とすることについての要望が寄せられておりました。また、この交渉が妥結した後は、これらの業界、団体から、早期に関税が撤廃されることの要望が寄せられておりました。

笠井委員 岸田大臣に伺いますが、今の対象品目の拡大ということでありますけれども、これは決して大企業優遇措置ということではありませんね。

岸田国務大臣 大企業優遇措置というものではないと考えています。

 今般の情報技術製品の対象の拡大、いわゆる拡大ITA交渉、これは、国内産業界の実態やニーズを踏まえながら交渉を進め、合意に至ったものです。

 拡大ITA合意によって我が国から輸出する際に削減される関税支払い額は、年間約千七百億円と見込まれております。この効果は、大企業のみに及ぶものではありません。我が国の中小企業も、情報技術製品製造のためのサプライチェーン等を通じて輸出促進の恩恵を受けるものであると理解しております。

笠井委員 さらに伺いますが、現行のITA、情報技術協定では、分野を特定して、共通の関心事項を有する加盟国のみで議論するというプルリ交渉が採用されておりますが、この交渉に参加した加盟国というのは具体的にどこでしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 五十三カ国のWTOの加盟国でございますが、我が国のほかに、米国、EU二十八加盟国、中国、韓国、カナダ、台湾等のメンバーが交渉に参加したものでございます。

笠井委員 何カ国になりますか。

山野内政府参考人 五十三カ国でございます。(笠井委員「いや」と呼ぶ)済みません。五十三のWTO加盟国・地域でございます。

笠井委員 実際に、今、米国とか日本とか、あ、五十三、要するに、EUを全部入れているからということですね。(山野内政府参考人「はい、そういうことでございます」と呼ぶ)はい、了解しました。

 この交渉に参加しない国にもこれは裨益するものでしょうか。どうですか。

山野内政府参考人 御指摘のとおり、WTOの基本原則は最恵国待遇ということでございますので、今回の関税撤廃措置、これは各有志国等が自国の譲許法を修正することになりますけれども、全てのWTO加盟国に適用されるものでございます。

笠井委員 次に、北太平洋の漁業委員会特権免除協定について伺っていきたいと思います。

 大臣に伺いたいんですが、そもそも日本政府が、この北太平洋漁業委員会の事務局設置を積極的に誘致して、これを重視してきた理由というのは何か、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 委員会は、北太平洋の公海での、我が国にとって重要な水産資源であるサンマ、サバ類及びクサカリツボダイ等の保存管理を行う地域漁業管理機関です。委員会で決定される保存管理措置は我が国の漁業に大きな影響を与えるところ、同委員会の議論及び活動を主導すべく、我が国は事務局の誘致に積極的に取り組んだ次第です。

 こうした重要な地域漁業管理機関の本部を我が国に誘致したことは、今後我が国が、委員会と密接に連携しながら、対象となる漁業資源の保存管理を積極的に進めていく上で極めて有意義であると考えている次第です。

笠井委員 この事務局の設置場所を東京海洋大学品川キャンパス内に選定したということですが、この理由は何でしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、東京海洋大学でございますけれども、水産分野において非常に高い実績のある国立大学でありますので、水産関係の協力関係が非常につくりやすい環境にあるということでございます。

 もう一つ、このキャンパスが、先生御指摘のとおり、東京都内の品川にございます。そういう面で、地理的条件ということで、アクセスが非常によく、事務局が会議などを開催する際に最適であるということから、この東京海洋大学が事務局設置場所として選定されたということでございます。

笠井委員 日本政府は事務局誘致の過程において支援の用意を表明してきたと思いますが、協定発効による環境整備のほかに、具体的にどういった支援を行っていくということになるでしょうか。

山野内政府参考人 まず、誘致の段階で、我が国は、事務局設置場所を無償で提供するということ、さらには分担金として三十五万ドルを毎年拠出するということを誘致の条件として申し出たところでございます。

 我が国としては、この条件に基づく支援のほかに、北太平洋条約委員会の特権免除協定に基づくものも含めまして、我が国における事務局の円滑かつ効果的な活動が確保されるよう、今後も委員会の要望を踏まえながらやっていくということでございます。

笠井委員 この無償でという話は、何か、大体こういう国際的な事務局を設置するときだけ無償にするのか、各国ではどうなっているのかというのは、その辺はどうですか。とりわけ日本がとか、そういうことになるんですか。

山野内政府参考人 今手元に資料がございませんものですから、ほかの国際機関に関してどのような便宜、支援をしているかということを具体的には申し上げられませんけれども、本件につきましては、先ほど大臣から答弁申し上げましたとおり、非常に重要な水産資源にかかわるものでございますので、我が国としてできる限りの支援を申し出たということでございます。

笠井委員 次に、違法漁業防止寄港国措置協定について質問したいと思います。

 一つは、現在、本協定の締約国、四十三カ国一機関ということでいいのかと思うんですけれども、確認をいただきたいんですが、その現在の締約国のうち、開発途上国の中でも特に開発がおくれている後発の開発途上国というのは何カ国あるというふうになっているでしょうか。

山野内政府参考人 四月一日現在、本協定の締約国は、先生御指摘のとおり、四十三カ国及び一機関、これはEUでございます。その中で、国連総会の決議によって定められている定義による後発開発途上国、LDCというカテゴリーに属する国は十一カ国でございます。

笠井委員 本協定の第二十一条では、「効果的な寄港国の措置の実施のための法的基盤及び能力を開発するため、開発途上にある締約国(特に、後発開発途上国及び開発途上にある島嶼国)の能力を向上させること。」というふうに規定をされております。

 開発途上国の沿岸国には、資源管理や違法漁船を取り締まるための能力を十分に持ち合わせていない、それを欠く国が少なくないというふうに言われておりますけれども、本協定の実効性を担保していく上で、確保していく上で、日本として途上国に対してどのような支援を行っているということが言えるでしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 この寄港国措置を含む漁業管理能力を強化するという観点からは、こういった、先生御指摘のとおり、途上国に対する支援を行うことは非常に重要でございまして、具体的な例を四つ申し上げたいと思います。

 まず第一に、FAOへの拠出事業によりまして、後発開発途上国への法律専門家の派遣、こういうものを行いまして、国内制度の整備を支援します。

 それから、第二点として、東南アジア漁業開発センターという地域取り決めがございますけれども、ここに対して、拠出金事業によりまして漁船登録に関する取り組みを支援するといったことをやっております。

 三点目といたしまして、地域漁業管理機関としてあります中西部太平洋まぐろ類委員会、それと、あと、大西洋まぐろ類保存国際委員会、こういうところへの拠出金事業を通じまして、漁業管理措置のための人材育成措置というものを支援しております。

 四点目、最後でございますけれども、JICAの技術協力事業によりまして、東ティモールの違法漁業の抑止にかかわる政策、対策ということについての研修事業等を行っているところでございます。

笠井委員 次に、名古屋議定書関連で伺いたいと思います、岸田大臣。

 この名古屋議定書に対するアメリカの対応についてです。日本は、大規模に遺伝子組み換え作物を生産する米国から食料を輸入している。米国は、バイオ企業の知的所有権などを理由に、生物多様性条約も批准をしておりません。

 生物多様性条約及び名古屋議定書の締結についての最近の米国の対応、態度、そして米国内の議論の動向というのはどんな状況にあるか、把握されているでしょうか。また、米国に対して、生物多様性条約及び本議定書への参加を促していく必要性について、政府としてはどのように認識されているでしょうか。

岸田国務大臣 米国ですが、一九九四年に生物多様性条約の締結に向けた連邦議会での審議を開始し、上院外交委員会は通過したものの、上院本会議における可決には至らなかったと承知をしております。この議会での審議当時から、米国内では、同条約の締結により自国の関連産業等が影響を受けるのではないかとの強い懸念が存在しています。そのため、同条約また同条約に基づき遺伝資源の利益配分に関する国際ルールを具体化する名古屋議定書を米国が締結する見通しは立っていないと認識をしております。

 生物多様性を重視する我が国は、米国を含む非締約国も参加する生物多様性条約や名古屋議定書の締約国会議等の場において、世界の生物多様性の確保を図るためには国際的に協調して対応することが重要であることを積極的に訴えてきています。

 今後とも、米国等の非締約国を含む各国に対し、生物多様性の保全の重要性について積極的に発信していきたいと考えています。

笠井委員 最後の質問になりますが、万国郵便連合関連の条約に関する質問をしたいと思います。

 万国郵便連合関連の条約についてでありますけれども、日本は、外国から到着する郵便物の方が外国に差し出す郵便物よりも多いことから、他国から支払われる到着料が他国に支払う到着料よりも多いという入超国になっていると先ほどもありました。

 今回の改定によって、改めて確認しますが、郵便物の形状別の到着料の設定を含めて、全体として日本の国際郵便の収支というのはどれぐらい変わる、改善されるというふうに見込まれるのか。これが一つと、もう一つは、これまでの到着料については、先進国間に比べて、先進国と途上国間あるいは途上国同士の間で低い利率が設定されるなど、途上国への配慮がとられてきた。今回の到着料率の改定でも途上国への政策的な配慮は引き続き維持をされているのかどうか、そういうふうに理解していいのかどうか。その二点について質問したいと思います。

相星政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員から御指摘のあった第一点目でございます、到着料制度の改正による収支の影響についてでございますけれども、今回の改正におきまして、各国国内での配達コストができる限り実態に反映されるよう、到着料が引き上げられた次第でございます。加えて、郵便物の形状別の到着料率というものも新たに設定されまして、加盟国の分類もまた見直され、より実態に即した到着料収入が得られることになりました。これを受けて、我が国の到着料収入は七億円程度増加するということで、全体の国際郵便の収支の改善につながっております。

 二点目の御質問でございますけれども、これは委員御指摘のとおり、途上国同士の間、そして、あるいは途上国と先進国の間での到着料は、以前から、先進国同士に比べて低い料金水準が設定されております。これは先進国と途上国との経済社会状況の違いを踏まえたものでございますけれども、今回の到着料制度の改正に当たりましては、全体の料率は引き上げられますけれども、途上国については引き続き低い料金水準の適用を維持しております。具体的には、国の人口、国民一人当たりの総所得等々のさまざまな要素を勘案しまして、加盟国を四つのグループに分類して、到着料を設定しております。

 この引き上げに関しましては、途上国側の賛同も得た上で条約の改正が採択されておりますので、途上国側の理解も得られる内容となっていると理解しております。

笠井委員 終わります。

三ッ矢委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 きょうは、WTOの譲許表を初め七つの協定についての審議ということでありますが、私は、協定はもう大体わかっていますので、若干関連ということで質問させていただきます。事務方の皆さんには、またきのうもちょっとばたばたしていまして、十分なレク、事前の通告が、紙ではやっていますが、不十分であったところがありますので、もし準備不足とかありましたらこちらの責任でありますので、気楽にやっていただければいいと思います。

 まず、WTOについては、先ほどから各委員の皆様からも話が出ていますが、私は、WTOの話をするたびに思い起こすのは、やはりTPPですね。あれだけみんなで頑張ってきて、政府も、たくさんの官僚たちが命をかけて作業を進めてきた。余り他党のことを言うとまた嫌われますが、やはり、委員会質疑を聞いていて、民進党さんとか共産党さんが余りWTOの話をすると、特に民進党ですよね、あのとき一体どういう議論をしていたんだ、TPPのときに、そういうふうに私は思わざるを得ません。

 我が党は、日本維新の会は、TPPはとにかく推進だと。明らかにTPPを前に進めておくことが国益だということは誰でもわかる話であったわけでありまして、それが今、大変苦労しながら、先般も日米議連の超党派の先生方が訪米されて、甘利前TPP担当大臣、元担当大臣と議連との関係は、全く一つなのか別なのか、ちょっと十分私は調べずに来てしまいましたが、甘利元、前かな、TPP担当大臣初め、アメリカに行かれて大変重要な意見交換をしてこられたと思います。

 その中で、報道されているベースですと、TPPについて米側から、十一カ国でもまとめれば、要はアメリカを抜いて、いわゆる米国抜きのという議論です、アメリカを除く十一カ国でもまとめれば、米国が何らかの形で加わる後押し材料になるとの話が米側からかなりあったというような報道もございます。

 TPPが、そのまま、またどうなるかというのは予断を持って議論できるような状況ではもちろんないわけですが、ある種の、我が国がTPPを国会でしっかり議論して批准したわけですから、批准したことが、だから私は、交渉責任者だったわけですから甘利大臣の存在も重要だということを予算委員会でも申し上げてきたわけでありますが、こういう米国抜きの形でも、TPPを諦めずにちゃんと関係国としっかり前に進めていく努力をやめないということが大事だという指摘、大臣はどんなふうに受けとめていらっしゃるでしょうか。

岸田国務大臣 TPPに関しては、今現在も米国内においてさまざまな意見があると承知をしています。我が国は米国に対しまして、TPPの戦略的あるいは経済的な意義について説明をしてきました。二月の日米外相会談においても、私の方からティラソン国務長官に説明をしたところです。米国がすぐさまTPPに対する態度を変えるということはなかなか考えにくいとは思いますが、ただ、我が国がTPPを推進する意図、これについては米国側も理解をしていると考えています。

 こうした日米の間の議論とあわせて、TPPについては、先月チリでTPP閣僚会合が開催されました。TPPの戦略的、経済的意義を再確認したわけですが、今後、五月にベトナムで、APEC貿易担当大臣会合の際に関係閣僚が再び集まって議論をする予定になっていると承知をしています。こうした議論を通じまして、我が国は、TPPにおける我が国の求心力を生かしながら、何がベストなのか、これを引き続き議論していかなければならないと考えます。

足立委員 ありがとうございます。

 甘利前TPP担当大臣に係る報道で、ちょっとこれは通告が十分できていなかったかもしれませんので可能であればで結構ですが、マスコミのインタビューに答えられて、こういうふうに報道されています。二十二日ということですが、甘利前大臣は、トランプ政権が日米二国間の自由貿易協定、FTA交渉を求めてくれば日本は拒めない、アメリカが二国間協定の交渉を求めてくれば日本は拒めないという認識を示されたというふうに報じられているわけです、仮定の話をしても仕方ありませんが。

 本当にアメリカが二国間協定を求めてくれば、私もそれを拒むことは日本の国益にとって一番いいとは思いませんが、拒むということではないだろうなと思いますが、その辺、今おっしゃっていただける範囲内で、アメリカが二国間協定を求めてきた場合の対応を教えてください。

岸田国務大臣 今現在、米国から二国間協定を求められているということはないと認識をしておりますが、先般の首脳会談において、日米の間においては、麻生副総理とペンス副大統領の間で、新しい経済対話の枠組みをつくるということで合意をしています。その議論の中で、どんな議論が出てくるのかということであります。

 これから議論が始まるところですから、最初から何かを排除するものではないと思いますが、この議論の中で、両国の立場を踏まえて、よく理解を深めた上で、あるべき姿を議論していくことになると承知をしています。

足立委員 ありがとうございます。

 経済対話の話はちょっと追ってやりたいと思いますが、もう一つ、報道の続きがありまして、アメリカ側が自動車とか農業の市場開放で過大な要求、過大な要求というのは、私が主観的に捉えれば、TPPで合意した枠があるわけですから、TPPで合意した枠から余り外れると、それはもう国内の合意形成も難しい。この報道でも、アメリカが自動車や農業の市場開放で過大な要求をしてきた場合は与党の理解を得られず国会は通らないと甘利前大臣がおっしゃった、こう報道されているわけで、これは当たり前といえば当たり前でありますが、私も、TPPの枠組みというのが国内合意をまた取りつけていく際のベースになる、こう思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 TPPについては、二十一世紀の経済連携のモデルになる、経済連携のスタンダードになるものであるということは確信をしています。そうしたTPPの存在も念頭に置きながら、日米においては、先ほど申し上げた新しい経済対話の枠組みの中でこの議論をしていくことになります。それ以上、具体的なことについては、これから会議が始まる前の段階で何か申し上げるのは控えなければならないと思います。

足立委員 今ちょっと、私が岸田大臣に申し上げているのは実は本当はおかしくて、今、与党はと書いてあったので、さっきの話は、よく考えたら国会の話をしているわけですね。

 私どもは野党ですが、与党とともにこのTPPについては推進するという立場でやってきた立場でありますから、我が党も含めて恐らく、TPPを熱心に取り組んできた勢力は、勢力というのはいい勢力、悪い、いいということではありませんが、与党と日本維新の会を中心とするグループあるいは政党は、やはりTPPをあれだけ議論してきたわけですから、国会がTPPの枠組みを重視することは当然であると私は思いますが、そういう国会の見通し、国会がTPPの枠組みに一定程度こだわる可能性があるという私の見通しに、一定の御理解はいただけますか。

岸田国務大臣 政府としましては、TPPについて、経済的な意義のみならず、さまざまな戦略的な大きな意義もあるということを説明してまいりました。

 このTPPにつきましては、我が国の国会において御承認をいただいたということは、大変重たいものがあると思います。この重みを感じながら、今後の経済の議論を進めていかなければならない、このように思っています。

足立委員 ありがとうございました。

 先ほど出ました経済対話でありますが、十八日にも東京で開催されるということで承知しています。簡潔で結構ですが、そういう日米経済対話のどういう分野、枠組みについてある程度握れている部分があれば、例えば協力分野とかマクロとかいろいろあると思います、そういう分野の話と、それから、どういうスケジュールで立ち上がってくるか、事務方でも結構ですから、ちょっと御紹介ください。

山野内政府参考人 お答えさせていただきます。

 先般の日米首脳会談において、総理とトランプ大統領が、自由で公正な貿易のルールに基づいて日米両国間及び地域における経済関係を強化することに引き続き完全にコミットしているということを確認した上で、そのもとで、麻生副総理とペンス副大統領のもとで日米経済対話を立ち上げることといたしたわけでございます。

 現在調整中でございますけれども、この経済対話では三つの柱を考えておりまして、一つは経済政策、二つ目に、インフラ、エネルギー、サイバー、宇宙などの分野での協力、三つ目に、貿易・投資に関するルールということについて議論を深めてまいりたいと思っているところでございます。

 具体的な構成、内容、さらにスケジュールについては、現在日米間で調整中でございます。

足立委員 実は私、ちょうど役所に、通産省に入省したのが一九九〇年でありまして、二つ目のポストが、当時、通商政策局の米州課というところで、ちょうど包括協議が始まるとき、包括協議が始まる準備をしているころから始まってしばらく、担当課の末席みたいなところでかばん持ちをしたり、本当に。当時はまだ、外務省を通じていろいろなことをやっていますが、現地とのコミュニケーションも今からは想像できないようなプリミティブな時代だったと思いますが、マクロ経済も対象ですから、あらゆる国内の情報と通商関係の情報が米州課を通って、私の手元を通って流れていったときをちょっと思い起こすわけです。当時の分野が、思い起こせば、さっきあったそういうマクロ経済みたいなところと、それから個別分野ということで、自動車だ、鉄鋼だという個別分野と、それから協力ということで、三本柱だったように、ちょっと曖昧ですが、記憶しています。

 そういう意味では、今回の三分野というのは包括協議とほとんど一緒のようなイメージですが、これは事務方で結構ですけれども、当時の包括協議と今回の経済対話というのは似たようなものだと認識したらいいのか。ごめんなさい、突然ですけれども、抽象的な話で申しわけないんですけれども、ああいうことがもう一回あるんだと考えたらいいのか、根本的に違うんだということか、もし御知見がありましたらお願いします。

山野内政府参考人 突然の御質問でございますのであれですが、当時も今も、我が国にとって米国が経済さらには安全保障も含めた最も重要な同盟国であるということについては変わりはないと思いますが、当時と今と比べまして、大きく二つの点で違っていると思います、経済の分野では。

 当時は、米国の対日貿易赤字というのが五百億ドル程度ございましたが、それは米国の対外貿易赤字の約半分以上を日本が占めていたという意味で、そういう意味では非常に厳しい経済摩擦、貿易摩擦の時代でございました。

 当時は、日本の企業の対米直接投資もまだまだでございまして、むしろ不動産投資が多くて、ペブルビーチのゴルフコースであるとかロックフェラーセンターであるとか、そういうものを日本企業が買って、それがまた摩擦の種になるというような時代が当時でございました。

 今は、アメリカの対日貿易赤字は大体六百億ドルから七百億ドル、これは全体のアメリカの対外赤字に占める比率が一割を切っているという状況でございまして、そういう意味では、貿易摩擦的な状況はかなり違っている。

 もう一点は、日本企業の対米直接投資は相当進んでおりまして、今や投資残高で英国に次いで第二位でございまして、全米で八十万人を超える直接の雇用を生んでいるということで、日米経済関係の実態は当時と今とはかなり趣を異にしていると思いますが、そういう中で、日米経済関係を全体として前に進めていくということ、さらに、アジア太平洋ということでグローバルサプライチェーンも深化しているという点で、当時とは趣を異にしているかというふうに感じるところでございます。

足立委員 ありがとうございます。大変よくわかりました。

 私も、末席とはいえ、一定の経験を持たせていただいた経緯がありますので、日米経済対話がどういうふうに立ち上がっていくのか、本当に注視をして、微力ながら応援をさせていただきたい、こう思っています。

 最後に、この経済対話の話で最後もう一つだけ、御答弁が可能であれば。

 基本的に、経済と安全保障は線が引かれていると思ったら、それはもう明確なのか。どうでしたっけ。そこだけ、もしわかれば。

岸田国務大臣 少なくとも、二月十日の日米首脳会談の結果まとめられた文書においては、外交安全保障と経済と明らかに整理をし、別建ての文書のもとにまとめられているということであります。

 基本的な整理としては、こうした文書にあらわれている姿で議論が進んでいくものであると認識をしております。

足立委員 ありがとうございます。

 あと、通告させていただいている三つ目は、さらっと、一言だけ確認ですが、以前も同じ質問をしたことがあるかもしれませんが、要すれば、日本側の体制ですね。これはもう当然、経済対話は麻生副総理がこちら側のヘッドですから、体制といえばそれで決まっているわけでありますが、麻生副総理はやはり副総理ですから、麻生副総理をしっかりと支える体制を考えたときに、もちろん経済産業大臣もいれば農水大臣もおられるわけでありますが、TPP担当大臣を置いていたときから比べても、さらにこれは、強めることがあっても、体制が弱まることはあってはならないと私は懸念をしています。

 そういう意味で、TPP担当大臣というのは、もうTPPが当の議論の対象ではないわけですから、いわゆる広い意味での経済連携担当大臣とかそういうものを、あるいは事務方の体制も含めて整備をしていくことが必要だと思っていますが、既に整備がされているのかもしれませんが、もし御紹介いただけることがあれば、体制について御紹介ください。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 経済連携交渉の推進ということに関しては、非常に多岐にわたる分野でございますので、関係省庁も非常に多うございます。そういう観点から、官邸の指揮のもと、関係省庁が緊密に連携しながら、政府一丸となって取り組んでいるというところでございます。

 TPP協定の交渉におきましては、主要閣僚会議のもとで、内閣官房にTPP政府対策本部を立ち上げて交渉等に臨んできたところでございます。

 また、今現在交渉しておりますけれども、日本とEUの経済連携交渉につきましては、岸田外務大臣を総合調整担当大臣とするということにして、主要閣僚会議を立ち上げるなどして、交渉に応じて適切な体制を構築しているところでございまして、いずれにいたしましても、官邸の指揮のもと、複数のEPA交渉等を戦略的かつスピード感を持って推進していくというところでございます。

足立委員 ありがとうございました。

 以上、大体、きょうのこの場でいわゆる経済対話についての議論は一旦置かせていただきたいと思いますが、とにかく、TPPのときにあったようなある種の、多くの政治家というか同僚の議員の皆様が相当なエネルギーを割いてあのTPPの議論はやってきたわけでありまして、これから、もちろん安全保障も大事でありますが、経済対話、これは本当に、日本のこれから五十年、百年の経済成長、発展を左右しかねないアメリカとのバイ交渉でありますから、手抜かりのないように、心からお願いを申し上げておきたいと思います。

 時間がもうあと五分ほどでありますが、けさの北朝鮮の弾道ミサイル、これは北朝鮮の脅威ということで通告もさせていただいていますが、きょうも資料をお配りいただいています。ちょっと報道の写しが多いので、分厚い割に余り中身がないんですが。きょうの朝の六時四十二分に発射をされたということで報道があります。これは本当に脅威ですね。米中首脳会談を前に、相当大きな脅威であるということで、私も身構えて状況を注視しているところであります。

 先月も北朝鮮は、在日アメリカ軍基地というような言及もあったわけで、大臣、もう細かいことはいいんです、もう本当にここまで来ると、さっきの花火という言い方は適当ではないような気もしますが、大変な数のミサイルが撃ち上がっているわけでありますから、国民は本当に心配していると思います。

 今民主党政権だったらもう大変なことになっていると思いますが、みんな、安倍政権、岸田外務大臣そして安倍総理を信用、信頼度が高いですから、安倍政権ならちゃんとやってくれているだろうということで信頼をしていると思います。だから余り大騒ぎになりませんが。

 私のところには、例えば災害のときには緊急警報というのが鳴るじゃないですか、だから、ミサイルが飛んでくるときは警報は鳴らないのかとか、いろいろな問い合わせが……(発言する者あり)警報は鳴っていますか。(発言する者あり)あ、Jアラートでちゃんと鳴っていますね。私がちゃんと捉えていないだけですね。(発言する者あり)Lアラート。ありがとうございます。今、新藤筆頭から丁寧に教えていただきまして。今の新藤筆頭の声も議事録にちゃんと残していただければと思います。よろしくお願いします。それは冗談ですが。

 大臣、本当に国民は心配をしています。ぜひ、大丈夫だと、ちょっと国民に向けて一言いただければと思います。

岸田国務大臣 政府にとりまして国民の命や暮らしを守る、これは最も大切な役割であります。そのために、外務大臣の立場から、情報収集、分析にしっかりと取り組まなければならないと思いますし、政府全体としても、あらゆる事態に対応できるよう、万全の体制でこの事態に備えていかなければならないと考えています。

 これからも、あらゆる事態に対応するべく、しっかりとした対応を政府として整えてまいります。国民の皆様の安心につなげられるよう、最善の努力を行ってまいります。

足立委員 通告もちゃんとしていない中で、本当にありがとうございます。申しわけありません。

 最後に、敵基地攻撃能力の話です。

 きょうは、前半でずっと経済対話の話をしてきましたが、経済と安全保障に一線を引くと言っても、これは関係があります。特にアメリカとの経済対話をやり切っていくためには、やはり安全保障との関係も大変重要になってくるわけでありまして、敵基地攻撃能力について伺っても、大体御答弁はわかっていますので、もう何度も、今は持っていないが広い意味での検討は当然続けていくというような、ここにちょっと、ちゃんとしたのがありますから、それはいいんですが。

 検討を加速した方がいいと。自民党からもいろいろな議論があると思います。これは防衛省かな。大臣がもし可能であればお願いしたいと思いますが、敵基地攻撃能力の話は本当に検討を急いだ方がいい、これはお願いでありますが。今までと同じ御答弁はもういいんですが、何か、検討を急ぐという感じになりませんか、防衛省。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問にございましたとおり、自由民主党からも、我が国独自の敵基地反撃能力の保有の検討開始についての提言を含む弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言、この提出を受けているところでございます。

 いかなる事態にありましても、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは、政府の最も重要な責務であります。防衛省といたしましても、自民党からの提言をしっかりと受けとめたいと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなる中、日米間の適切な役割分担に基づき、日米同盟全体の抑止力を強化し、国民の生命と財産を守るためには我が国として何をすべきかという観点から、従来の発想にとらわれることなく、常にさまざまな検討を行っていくべきものと考えているところでございます。

足立委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので終わりますが、最後に、もう一つ通告申し上げていたのが長嶺大使の韓国帰任の話でありますが、本件については、私も御判断は尊重いたしますが、韓国に対して間違ったメッセージとならないように引き続き御努力いただくことをお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 きょう最後のバッターです。また御答弁をお願いさせていただきたいと思います。

 さて、今回は、条約第四号から十号までまとめて七本の条約審査ということで、非常に多岐にわたる条約です。WTO譲許表の修正及び訂正、北太平洋漁業委員会の特権・免除協定、違法漁業防止寄港国措置協定、名古屋議定書、名古屋・クアラルンプール補足議定書、万国郵便連合憲章の追加議定書並びに関連文書、そして、郵便送金業務約定の四号から十号まで、日本にとって、本邦にとって、いずれも非常に重要なそれぞれの条約になっているというふうに思いますが、私は、この中から、海洋国家として、今国会提出の条約第五号、六号については特段重要であるというふうに思っております。

 二〇一四年以降、日本近海における、特に中国漁船の宝石サンゴ類の密漁、乱獲が顕在化して、大きな問題ともなっています。そのほか、近年では、サバ、サンマ、イカなどの違法漁業も常態化していると認識しておりますので、今般、この北太平洋の漁業委員会の条約第五号、それから違法漁業防止、IUU漁業の措置に関するこの協定についても非常に重要な協定であるということで、この二つの条約に絞っての質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、北太平洋漁業委員会、NPFCの特権・免除協定、第五号についてお伺いいたします。

 この協定は、条約の作成段階から主導的な役割を果たし、また、条約海域における漁業資源の保存管理に関するルールづくりが行われる委員会において、本邦が引き続き積極的な役割を果たすため、委員会事務局の東京への誘致を目指してまいりました。二〇一三年の会合において、事務局の東京への設置が決定し、それ以降、事務局の設置国として、委員会の活動に必要な特権及び免除に係る協定の締結に向けた交渉を行ってまいりました。そして、今般、本協定が国会に提出されております。

 そこで、その経緯を踏まえながらお伺いしたいと思います。

 私は、条約の、ちょっと細かくなりますが、逐条の関係で質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、第二条関連ですが、委員会の法的位置に関して、法人格を有し、不動産及び動産を取得し、処分することを第二条の関連で認めています。その処分し取得することの権限は誰が決定するんでしょうか。それについてお伺いしたいと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 委員会の決定、さらには委員会で採択された予算、これに従いまして、委員会の設立を定めた北太平洋漁業資源保存条約の規定に基づいて作成された委員会の内規に当たる財政規則、これに基づきまして、事務局長が不動産及び動産の取得や処分を行うこととなっております。

玉城委員 ありがとうございます。

 次に、この委員会の財産及び資産は、所在地及び所有のいかんを問わず、事務局長の同意等によって、行政上、司法上及び立法上の捜索、押収、没収、差し押さえ、収用その他の形式の干渉を免除されるとあります。

 これらの免除をあえて規定する意図は何か、六条関連で質問をさせていただきたいと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の北太平洋漁業委員会を含めまして、一般的に、国際機関には、その国際機関が遂行する任務、それに必要な独立性や中立性を確保するという観点から、それぞれの国際機関が所在する国から、一定の特権さらには免除を与えられているということでございます。

 今回の北太平洋漁業委員会の財産及び資産に関する行政上、司法上及び立法上の干渉の免除についてもこうした考え方に基づいておりまして、国際機関としての独立性や中立性を確保する観点から与えられているということでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 資料によりますと、この北太平洋漁業委員会の概要の中で、構成国は、締約国であります日本、カナダ、ロシア、中国、韓国、米国のほか、台湾が漁業主体として参加をしております。

 職員は、事務局長のほか三名、うち日本人一名となっており、事務局長は、韓国のムン・デ・ヨン博士が事務局長を務めております。

 このように、委員会並びにその財産、資産及び収入が委員会の公的活動範囲において全ての直接税を免税されるという規定も置かれているわけですが、その直接税を免税されるのはなぜでしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど答弁申し上げましたとおり、国際機関としての独立性、中立性を確保するという観点から、国際機関に対して一定の課税の免除を認めるということは、これは広く国際機関に関して行われているところでございます。

 今回、この北太平洋漁業委員会は、ほかの国際機関と同じように、各構成国、漁業主体からの分担金によって運営されているところでございます。そこで、接受国である我が国が直接税の課税を行って、我が国が税収を得るということで、ほかの構成国、さらには漁業主体による分担金の負担割合が実質的に変更が加わるというようなことは公平性の観点から適当ではないということで、直接税を免除するということになっているところでございます。

玉城委員 済みません、では、経済局長に伺います。

 これは通告にないんですけれども、この予算の決定の枠組み、その予算、決算そのものの枠組みの決定等に関する議論はどのように行われているでしょうか。現状を御説明いただければと思います。

三ッ矢委員長 答弁できますか。

山野内政府参考人 申しわけありません。お答えさせていただきます。

 委員会の分担金については、同委員会の財政規則十二に従って算出しておりまして、我が国としては、事務局を誘致した際に提示した条件にのっとって、年間四千四百万円の分担金を拠出しているところでございます。

 そして、こういうものに基づいた各国の分担金をもとにこの委員会の予算というものがつくられているというところでございます。

玉城委員 済みません。慌てさせてしまいまして、済みませんでした。私の手元のメモに予算、決算の仕組みというのが書いてありまして、これが通告で漏れていたので、思わず、今、予算の答弁がありました関係からすぐお答えできるかと思いまして、質問させていただきました。大変失礼いたしました。

 では、通告に従いまして、また質問いたします。

 この委員会が、いかなる種類の資金、金、通貨または有価証券も自由に受領し、取得し、保持し、処分も可能とすることにより得られる受益とは何でしょうか。また、それらの可能な行為を決定するのはどのようになっておりますでしょうか。

山野内政府参考人 我が国におきましては、国際機関は、資金、金、通貨または有価証券の受領、取得、保持、処分を原則として自由に行うことができるところでございます。

 先生御指摘の協定の第八条の規定は、他の特権・免除に関する協定等においても広く見られる標準的な規定でございまして、本協定においても確認的な意味で入れられたものでございます。

 今後、仮に我が国においてこれらの活動を制限するような国内法令が制定される場合には、本協定の規定に従って、委員会に対してはかかる制限が免除されることとなるわけでございますが、資金等の取得、保持、処分が行われる場合の決定については、委員会で採択された予算案に従って、委員会の設立を定めた北太平洋漁業資源保存条約の規定に基づいて作成された委員会の内規である財政規則によって事務局長がその資金及びその他の財源の取得、保持、処分を行うことになっているところでございます。

玉城委員 先ほど、その事務局の構成員を御紹介いたしました。職員は、事務局長、韓国の方のほか三名で、うち日本人が一名ということになっております。

 これは第十条関連からの質問です。

 職員の特権及び免除について、1の(b)「委員会が支払った給料及び手当に対する課税の免除」を初め、この1の(g)までの規定が、日本国民である職員及び日本国に通常居住している職員について、適用しないと規定している理由は何でしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 協定第十条の1の、例えば、1の(c)の出入国制限、査証の免除、あるいは、(d)為替の便益、(e)国際的危機の場合の帰国の便益、(f)日本国で最初に職員としての地位につく際の関税の免除、こういった規定につきましては、日本国民である、あるいは通常日本に居住している職員ということに関しては適用する必要がないということで、それを除いているところでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 丁寧に確認をさせていただければ、そこで置かれている規定について、それぞれ理解できるというふうに受けとめております。

 さて、この条約第五号については最後の質問になります。

 本条約作成段階から、漁業資源保護管理に関するルールづくりでの積極的な取り組み、及び、委員会事務局を東京へ誘致する働きかけなどが、冒頭、私もその流れを紹介いたしましたが、このような働きかけなどが今後我が国にとってどのような成果を生み、海洋資源の保護管理に寄与するものと考えられるでしょうか。

岸田国務大臣 北太平洋漁業委員会は、北太平洋の公海における漁業資源の長期的な保存及び持続可能な利用の確保を目的として、我が国が主導して設立をされました。さらに、我が国は、事務局設置国として、第一回、第二回の委員会会合及び関連会合をホストしており、これら会合において、我が国の提案に基づいて、サンマ及びマサバの保存管理措置並びにIUU漁船リストの作成手続が採択されました。

 このような保存管理措置の採択及び実施を通じて、対象水域における漁業資源の適切な保存及び管理が確保されるとともに、我が国漁業を安定的に発展させることができると考えております。

 引き続き、リーダーシップを発揮して、効果的な保存管理措置の策定や実施、また、特に事務局を通じた委員会活動の円滑な運営に対する支援、こうしたものに積極的に取り組んでいきたいと考えます。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、続いて、第六号の違法漁業防止寄港国措置協定について質問させていただきます。

 かねてから、違法、無報告、無規制の漁業、いわゆるIUU漁業による無秩序な状態が指摘され、喫緊の課題ともされてまいりました。今般の条約提出について、違法なIUU漁業が厳しく規制されることは本邦の水産資源保護に対する内政的課題への取り組みもまた前進されることと期待いたします。

 さて、水産庁の、「水産業をめぐる国際情勢」という資料に少し目を通してみたいと思います。その中でも、隣国、中国や台湾との関係の項目を少し紹介して、質問に入りたいと思います。

 我が国と中国との間には、日中漁業協定が締結されておりまして、両国漁船の操業条件や漁業関係における協力事項等について日中漁業共同委員会が設置されています。互いの排他的経済水域での操業については、東シナ海等に設置された沿岸国による措置をとらない暫定措置水域や、いわゆる北緯二十七度以南水域等を除き、政府間協議においては、各年漁期における相互の操業条件を決定し、両国漁船が相手国から受けた漁獲割り当て及び許可隻数の範囲で相手国水域内で操業しているということですね。

 また、二〇一四年、沖縄や小笠原等の我が国周辺水域における、いわゆる宝石サンゴを目的とした中国船の密漁の問題、東シナ海においては、いわゆる虎まき漁船等、漁獲能力の高い新しいタイプの中国漁船が急増し、漁業資源や日本漁船の操業に大きな影響を与えていることも問題となっているということで、日中漁業共同委員会においては、そのような宝石サンゴの不法採捕の問題についての、両国が、継続して断固とした取り締まりを行い、違反者への厳しい処罰等、あらゆる措置を強化することとしております。

 ホットラインの構築、それから、密漁宝石サンゴの流通ルートの解明等について、両国で連携協力して取り組むことで一致しているということで、これも、国民に丁寧にこのやりとりについては説明をしていらっしゃるところでございます。

 それで、まず、水産庁に二点お伺いしたいと思います。我が国、本邦周辺海域における水産庁による外国船の取り締まりの推移及び状況などについての御説明をお願いいたします。

浅川政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の排他的経済水域には、ロシア、韓国及び中国との二国間協定に基づきまして、通常約千隻の外国漁船が我が国政府の許可のもと入漁し、操業を行っているところでございます。

 水産庁では、こうした漁船に対して、立入検査を行い、漁獲物、操業日誌、漁具等を確認することにより、許可条件の遵守を担保しております。また、多数の外国漁船が我が国の排他的経済水域の外側付近で操業しているため、我が国政府の許可なく我が国の排他的経済水域で操業を行うことのないよう、境界線付近で監視も行っております。

 このような取り締まりの結果、水産庁が拿捕した外国漁船の件数ですが、平成二十四年は十一件、平成二十五年は十九件、平成二十六年は十四件、平成二十七年は十二件、平成二十八年は六件で、違法設置漁具の押収件数ですが、平成二十四年は二十二件、平成二十五年は二十一件、平成二十六年は二十件、平成二十七年は二十一件、平成二十八年は十四件となっております。

玉城委員 具体的な事例を挙げていただき、ありがとうございました。

 次は、直接拿捕をして船検をすることによって、密漁であるということが確定するわけですが、では、違法漁業を行っていると類推されている船籍の国別や船隻数などはどのようになっておりますか。

浅川政府参考人 お答え申し上げます。

 水産庁では、外国漁船が、我が国政府の許可なく我が国の排他的経済水域で操業を行うことのないよう、また、国際的な資源管理を遵守しているか確認するために、境界線付近で監視を行っているところでございます。

 このような監視の結果、道東、三陸沖において、平成二十八年、中国漁船二百二十八隻を視認し、このうち六十七隻が違法操業を行っている疑いがあると認識しております。主な内訳ですが、灯光敷網漁船三十三隻、運搬船十五隻、イカ釣り漁船十二隻などとなっております。

玉城委員 しっかり監視の目を向けるということと、そして、できればその旗国が違法な漁業を取り締まるということを優先していくための協力も、本法からまた欠かせないものであると思います。

 さて、このIUU漁業の寄港国措置協定ですが、RFMOの保存管理措置を遵守しない等の違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業が、海洋生物資源の持続可能な利用に大きな脅威になっている。そこで、二〇〇九年、FAO、国際連合食糧農業機関の枠組みのもとで本協定が採択され、二〇一六年に発効し、二〇一七年の三月一日現在、締約国は四十一カ国、一機関。これは、寄港国措置の有効性の認識の高まりによってその協定が改定されてくる、そういう流れになっていますが、本協定をこれまで締結してこなかった障害あるいは理由というのは何でしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、このIUU漁業、違法な漁業、報告されていない漁業、規制されていない漁業、こういうものは、海洋生物資源の保存、さらには持続可能な利用に対する大きな脅威となっているところでございまして、責任ある漁業国として、このIUU漁業対策の重要性というのは非常に深く認識しているところでございまして、そのためにも、先ほど水産庁から答弁がございましたけれども、このIUU漁業対策のための国内措置を整備しているということでございます。

 さらには、地域漁業管理機関を初めとするさまざまな機関における保存管理措置の作成とか実施、こういうこともIUU漁業対策として取り組んできたところでございます。

 また、こういう流れの中で、海上安全保障に関するG7の外相声明、こういうものにおいても、IUU漁業の防止に向けた対策の重要性ということを主導してきたというのが我が国でございます。

 そういった取り組みに加えまして、今般お諮りしている寄港国措置に主眼を置いたIUU漁業の対策のための多数国間条約というものが、先生御指摘のとおり、二〇〇九年にFAOのもとで採択されたわけでございます。

 我が国といたしましては、こういった国際約束にかかわる義務を我が国の国内で過不足なく実施する、そのためには、ほかの国によるこの協定の解釈、ほかの国の国内実施措置というのをしっかり見きわめる必要があるということで、そこを見きわめておったわけでございます。

 実際、二〇〇九年に採択された後、締約国数の数というものは、例えば、二〇一〇年の場合は一カ国だけということで伸び悩んでいた時期があるわけでございますが、二〇一五年から二〇一六年にかけて締約国数が急増しました。二十五カ国でこれが発効するということでございまして、二〇一六年にかけてこれが非常にふえてということでございまして、日本としてこれらの国による協定の解釈や国内実施措置というのをしっかり精査した上で、我が国としては、この協定を締結するに際して既存の国内法さらには法令によって対応が可能であるということをしっかり確認した上で、今回、本協定を国会に提出するに至ったということでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 本協定の締約国、二〇一七年二月一日現在で四十一カ国及び欧州連合、EUとありますね。ここには、アジアで、インドネシア、韓国、スリランカ、ミャンマー、タイとありますが、中国が入っておりません。

 協定が、第三条関連で、全世界を適用範囲とし、全ての港に適用し、全ての主体に対して、協定規格に合致する措置を適用するよう奨励するとありますが、他方、締約国にならなくても、協定の規定に則して行動する約束を表明することができると置いてあります。このように置いている意義とは何でしょうか。御説明ください。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 本協定は、先生御指摘のとおり、国連の専門機関であるFAO、国連食糧農業機関の枠組みのもとで採択されたものでございます。

 例えば、台湾は、本協定の締約国になることはできないというふうに解されているところでございます。他方、本協定の趣旨からすれば、このIUU漁業対策の実効性を確保するということであれば、仮に締約国になれないものでもこの協定の枠組みに取り組むべきという観点から、締約国になることができないものは、この協定に即して行動する約束を表明することができるというふうに規定しているところでございます。

玉城委員 確かに、日本と台湾は日台漁業取り決めを策定しておりますので、その中では、このIUU協定に関してもその範疇に入るということで、この条約でも読み込めるかというふうに思います。

 さて、今度は第十条関連で質問いたします。

 船舶が不可抗力または遭難を理由として国際法に従って入港することに影響を及ぼすものではない、危険または遭難に陥った人、船舶または航空機に援助を与えるためにのみ船舶が入港することを寄港国が拒否することができないとしています。

 人道的に考えますと、このような規定も織り込んでおくということは十分認識できます、理解できますが、この場合、IUU漁業船舶に対する、つまり、間違いなく協定違反を犯しているという船舶に対する本協定上の措置はどのようなものが考えられるでしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 第十条に関してでございますけれども、先生御指摘のとおり、この協定は、船舶が不可抗力または遭難を理由として国際法に従って入港するということに影響を及ぼすものではないということでございます。したがって、仮にIUU漁業に従事した船舶であったとしても、こういった安全上の理由等で入港を求められた場合は、寄港国はこれを認めることができるわけでございます。

 他方、その上で、この協定は、自国にそういった事情で入港した船舶がIUU漁業などに従事したことがあると疑うに足る明白な根拠がある場合は、当該船舶を優先して検査することを義務づけておるわけでございます。寄港国は、不可抗力または遭難を理由としてIUU漁業に従事した船舶が入港した場合であっても、当該船舶の検査を行うことは可能であります。

 また、検査の結果は、当該船舶の旗国及び関係する沿岸国、地域的漁業管理機関等に速やかに通報することになります。

 こういうことに加えまして、本協定は、締約国が国際法に合致する措置をとることを妨げないというふうにしておりますので、寄港国が国内法令に従ってIUU漁業に従事した船舶の取り締まりや処罰を行うことも可能というふうになっておるところでございます。

玉城委員 先ほどお話をさせていただきました中国との間には、日中漁業協定が締結されていますし、日中漁業協定ラインは北緯二十七度線というふうになっております。

 北緯二十七度線がどこにあるかということ、私たち沖縄県民にとっては、この二十七度線という言葉は、相応の年齢の人たちであれば忘れられないラインなんですね。それは何かというと、鹿児島県与論島と沖縄本島の間に引かれている線なんです。

 一九七二年に沖縄県が日本に施政が復帰するまでは、この北緯二十七度線を境にして、鹿児島与論島から来た船舶と沖縄から行った船舶が、いつか祖国に返還しようということで、互いのかがり火を燃やしたりエールを送ったりしたラインなんです。

 台湾とは、実はこの二十七度線、ラインの中で日台漁業協定、漁業取り決めが決められました。しかし、当初ルールが全く決まっていなかったその協定の中で、双方が歩み寄って、何キロにも及ぶはえ縄の流し漁について、日本の船舶より台湾の船舶の方がはるかに大きいわけですから、どうしても日本の船舶の網が切られてしまうなどの、いわゆるルール無視の状況にあったものが、双方のこの取り決めができたことによって歩みが出てきたという、その経緯もあります。

 若干、沖縄県側からすると、暫定水域がこの協定の取り決めによって広げられてしまったということについては、やはり不満はあります。しかし、そこは、ルールを決めて、マグロの宝庫、漁場である黒潮の流れる海をお互いがちゃんと管理していこうという形に立つのは、非常に日本にとっても有益な方向性にあるということは間違いありません。

 さて、最後に質問させていただきます。

 漁獲量や漁獲枠の取り決めなどを遵守しない船舶などの旗国、母国である当該政府は、本来、違法漁業に対しては、国内法的な措置を含めた主体的な取り締まりを行うとともに、他の国際法等を遵守する上での違法操業に対する監視強化を図ることを旨とすべきではないかと思います。

 違法操業を放置する国等へのペナルティーについて、これまで我が国からどのような議論や提言がなされ、それが実行されているかについて、外務省に伺います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 このIUU漁業対策というものは非常に重層的に行わなければならないというふうに考えるところでございまして、今回お願いしている寄港国のみならず、旗国の義務の強化、これも非常に重要になってきているということでございまして、国際社会においてはさまざまな取り組みがこれまで行われてきております。

 例えば、一九九三年のFAOの総会において採択され、二〇〇三年に発効した、保存及び管理のための国際的な措置の公海上の漁船による遵守を促進するための協定というものもこういう努力のものでございます。

 また、北太平洋漁業委員会などの地域漁業管理機関の設立条約でも、締約国に対して、自国の船舶が、条約区域において条約の規定及びこれに基づいて採択される措置を遵守して操業すること並びに当該措置の実効性を損なう活動に従事しないことを確保する旨定めています。

 さらに、違法漁業防止寄港国措置協定においても、旗国である締約国に対して、自国の船舶について適用する措置が外国船舶に対する寄港国措置と少なくとも同等の有効性を有することを確保する、あるいは、寄港国である他国から自国の船舶がIUU漁業に従事したとの通知があった場合には直ちに調査を行い、十分な証拠があるときは自国の法令に従い遅滞なく取り締まりを行うことと定めておりまして、IUU漁業の防止のために、寄港国、さらには旗国が協力してやっていくことが肝要かと考えているところでございます。

玉城委員 誠実な御答弁、ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。ありがとうございます。ニフェーデービタン。

三ッ矢委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十二分散会


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