衆議院

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第5号 平成30年3月28日(水曜日)

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平成三十年三月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中山 泰秀君

   理事 小田原 潔君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 鈴木 貴子君

   理事 山口  壯君 理事 末松 義規君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      井上 貴博君    小渕 優子君

      黄川田仁志君    熊田 裕通君

      高村 正大君    佐々木 紀君

      杉田 水脈君    鈴木 隼人君

      辻  清人君    渡海紀三朗君

      中曽根康隆君    藤丸  敏君

      堀井  学君    務台 俊介君

      山田 賢司君    阿久津幸彦君

      篠原  豪君    山川百合子君

      関 健一郎君    緑川 貴士君

      岡本 三成君    岡田 克也君

      穀田 恵二君    丸山 穂高君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   外務副大臣        佐藤 正久君

   外務大臣政務官      岡本 三成君

   外務大臣政務官      堀井  学君

   外務大臣政務官      堀井  巌君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       鈴木 秀生君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 相木 俊宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松浦 博司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鯰  博行君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山野内勘二君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           神山  修君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           白間竜一郎君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 永山 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    宮嵜 雅則君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         宮武 宜史君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  熊田 裕通君     井上 貴博君

  辻  清人君     藤丸  敏君

  山田 賢司君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     熊田 裕通君

  藤丸  敏君     辻  清人君

  務台 俊介君     山田 賢司君

    ―――――――――――――

三月二十七日

 沖縄・高江の米軍ヘリパッドを撤去することに関する請願(志位和夫君紹介)(第六三四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第二号)


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結について承認を求めるの件及び二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官鈴木秀生君、大臣官房審議官相木俊宏君、大臣官房審議官松浦博司君、大臣官房参事官鯰博行君、経済局長山野内勘二君、文部科学省大臣官房審議官神山修君、大臣官房審議官白間竜一郎君、文化庁長官官房審議官永山裕二君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長宮嵜雅則君及び国土交通省大臣官房技術審議官宮武宜史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。杉田水脈君。

杉田委員 自由民主党の杉田水脈です。よろしくお願いいたします。

 まずはマラケシュ条約について質問をさせていただきたいんです。

 これは内容なんですけれども、視覚障害者の方々が著作物を利用する機会を促進するために、各国の著作権法において、視覚障害者の方々のために利用しやすい様式の複製物に関する著作権の制限であるとかまた例外を規定するというふうになっておるんですけれども、この利用しやすい様式の複製物というのは、どのようなものを指すんでしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 マラケシュ条約第二条(b)におけます利用しやすい様式の複製物というものにつきましては、具体的には、点字、大きな文字の書籍であります拡大図書、さらに録音図書などが想定されているところでございます。

杉田委員 これは、各国の間でいろいろ交換できるというような形で機会をたくさんつくっていくという意味での条約になると思うんですけれども、日本語のものは、例えば、点字に直しても、日本語は日本語の点字になるわけですよね。それが海外に行って読んでいただくということは、これは、海外の方々も、日本語を理解した人じゃないとなかなか難しいということになるんですね。

 逆のパターンで、例えば、英語を点字に直す、フランス語を点字に直すものが日本に入ってきた場合も、これは英語やフランス語とかが理解できる人じゃないとちょっと利用ができないというような形になるかと思うんですけれども、そもそも、視覚障害者の方々で外国語の点字を理解できるという方はどのくらいいらっしゃるんでしょうか。

山野内政府参考人 今の御質問の点につきましては、具体的な統計が我々の手元にございませんけれども、さまざまな方が外国語の習得に努力をされているというふうに理解しているところでございます。

杉田委員 視覚障害者の方々というのは、先天性で目が見えない方、生まれつきずっと目が見えない方という方がいらっしゃって、そういう方々は、学校に行くときも、特別支援学校というか盲学校というか、そういうところに行かれると思います。そこで点字を学ぶという形になると思うんですけれども、後天性の視覚障害者の方、普通にずっと目が見えていて、病気とか事故とかで目が見えなくなったというような方々というのは、なかなか日本語の点字自体もちゃんと習得できていないという方が多いと思うんですけれども、これは大体、日本語の点字が理解できる方の割合というのはどのくらいなんでしょうか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 少しデータが古くなってしまって恐縮なんですが、平成十八年に身体障害児・者実態調査を行いまして、視覚障害者の点字習得状況について調査した結果では、視覚に障害がある方のうち点字ができると答えた方は一二・七%となっております。

杉田委員 普通に日本語の点字であっても、視覚障害者の方の中で約一三%の方しか点字が読めないという現状があるというふうに思うんですね。

 ただ、今回のこのマラケシュ条約につきましては、私自身も日盲連の方なんかとも意見交換をいろいろしているところではあるんですけれども、この条約を推進していくことに非常に期待を寄せていらっしゃるというような現状があります。

 これをきっかけに、ぜひ視覚障害者の方々の外国語教育というものもしっかりと充実をさせていただきたいというふうに思っておるんですけれども、これは今の現状はどのような形になっているのか、視覚障害者の方々の外国語教育についてお尋ねしたいと思います。

白間政府参考人 お答え申し上げます。

 視覚障害者でいらっしゃる児童生徒に対する教育を行う特別支援学校におきましては、小学部、中学部、高等部、それぞれ、小学校、中学校、高等学校の教育課程と同一の教育課程で外国語教育を行っているという状況でございます。

 また、学習指導要領におきましても、視覚障害者である児童生徒に対して教科の指導を行う際には、児童生徒の視覚障害の状態などに応じまして、点字又は普通の文字の読み書きを系統的に指導し習熟させる、このように示されているところでございます。

 今先生御指摘の外国語教育についてでございますけれども、文部科学省で検定教科書を点字訳した点字教科書というのをつくっておりまして、これなどを用いながら、特別支援学校におきましてその児童生徒の障害の状態に合わせてそういった教科書なども活用しながら授業が行われている、こういった状況でございます。

杉田委員 せっかくこのような非常に有効な条約が推進されるということですので、できる限り受益者の方々を広げていくというような努力も必要であるというふうに思っております。

 きょうは点字のことについて質問をさせていただきましたけれども、先ほどの利用しやすい様式の複製物の中には、単に点字だけではなくて、オーディオブックであるとか拡大されたものであるとか、そういうふうなのもすごく入っております。

 特に後天性で事故や病気で目が見えなくなった方々というのは、お仕事をする上でもやはり拡大されたものがあると普通に仕事もできてというようなこともありますので、こういった方々が海外の文献が利用できるように、より有効的になるようにしっかりとやっていっていただきたいなというふうに思います。

 ありがとうございました。

 それでは二点目なんですけれども、この船舶再資源化、いわゆる香港条約についてなんですけれども、こちらも私どもレクを受けたときにその背景を説明していただきました。

 実は、この条約、二〇〇九年の五月に国際海事機関のもとで採択をされています。この採択に当たって我が国は条約の作成を主導したというふうに私は聞いたんですけれども、これは二〇〇九年の五月にこの条約が採択されているにもかかわらず、なぜ今まで日本は締結できなかったのか、その理由をお尋ねしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 船舶再資源化香港条約、通称シップリサイクル条約は、二〇〇九年五月に採択されましたが、その後も、国際海事機関、IMOにおいて本条約に規定される各種手続の詳細を定める指針の作成作業が行われてまいりまして、ここにおいても我が国は主導的な役割を果たしてまいりました。

 二〇一二年十月に全ての関連指針が採択され、本条約を実施するための手続の詳細が定まりましたことから、船舶解体業者等の国内の関係者を含めました検討会等を累次実施してまいりました。また、本条約は、環境、労働分野における規制を広く含むため、さまざまな側面から関係省庁間での検討及び調整に取り組むなど、適切な国内法制化に向けた準備を順々と進めてまいりました。

 その結果、今般、本条約の国内担保措置案につき関係者間で意見の一致を見るに至りましたので、今次国会において本条約の締結についてお諮りすることになった次第でございます。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

杉田委員 我が国は島国でありまして、船舶の技術もずっと昔から発達をしているわけです。やっとこの機会に締結ができるということで、私も、ぜひ推進をしていっていただきたいと。

 それから、この条約に当たっては、先ほどからも、私の方からも、そちらの説明の中にもありますように、ずっと我が国が主導的にやってきたんだということを、国際社会に対してもしっかりと存在感を示していっていただけるような形になっていくことを期待しております。

 ありがとうございました。

 それでは、ちょっとここからは違う外交問題の話について質問をしていきたいというふうに思うんですけれども、まず初めに質問をさせていただきたいと思います。

 いわゆる慰安婦の問題なんですけれども、慰安婦問題というのは外交問題なんでしょうか。お尋ねします。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 慰安婦問題を含む戦後処理の問題につきましては、国と国の外交ルートで解決すべき問題でございまして、実際、例えば韓国との間でも、両国間で一九六五年に締結いたしました日韓請求権協定により、完全かつ最終的に解決してございます。

 これまでに政府が慰安婦問題を政治問題化、外交問題化させるべきでないという答弁をすることがございますけれども、このような答弁をしてきておりますのは、このようにして一旦政府間で解決された戦後処理に係る問題を、その後、政治的、外交的な問題として蒸し返すべきではないという趣旨で言っている場合が多いというふうに認識しております。

杉田委員 なぜ唐突にこのような質問をしたかと申しますと、野党のときに、この問題を予算委員会であるとか内閣委員会であるとかいろいろなところで質問をさせていただいたときに、必ず、例えば官房長官の答弁であったり、それから外務大臣の答弁であったりする中では、この問題は、いわゆる慰安婦を含む歴史戦の問題は外交問題化しないという一言だけ返ってきていたんですね。

 きょうは、より踏み込んだ形で、これは外交問題なんだ、でも一旦こういう形で政府間であったものを蒸し返すべきではないという意味で、外交問題ではないという答弁を今までしていたということを明確にお答えいただきまして、どうもありがとうございました。この問題は、女性の人権問題というのではなくて、いわゆる外交問題であるということが確認できたというふうに思います。

 そこで、一点確認したいと思うんですけれども、きょうは皆さんに配付資料をお配りさせていただいております。これは、二〇一七年の二月二十二日に日本政府がアメリカの最高裁判所に出した意見書です。

 いわゆるグレンデールに設置された慰安婦像の撤去を目的とする訴訟というのが行われておりまして、一審、二審のときは日本政府は何も動かなかったんですけれども、最高裁にいよいよ持ち込まれたときに日本政府が最高裁判所に対して意見書を出したんですけれども、この意見書は今の政府の正式見解と考えてよろしいでしょうか。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおりでございまして、カリフォルニア州グレンデール市に設置されました慰安婦像に関する訴訟がアメリカの連邦最高裁判所に上告されたことを受けまして、二〇一七年二月二十二日、我が国政府は同裁判所に対し、この裁判についての日本政府としての考え方を記した意見書を提出したものでございます。

杉田委員 この中に、より明確に書かれているんですよね、慰安婦問題が日韓の両国間での外交問題である、女性の人権問題ではないということがしっかりと書かれております。この意見書が今の政府の正式見解であるということも確認ができました。ありがとうございます。

 そこで、これは皆さんにおつけしておるんですけれども、この意見書、実は英語で書かれております。というのは、日本政府がワシントンDCにある法律事務所に意見書の作成を依頼して、そして最高裁判所に提出したという経緯がありまして、実は、この英文は外務省のホームページに載っておるんですけれども、日本語訳がないんです。

 これが日本政府の正式見解であるというのであれば、広く日本国民にも知っていただく必要があると思うんですけれども、これは、なぜ日本語訳をしっかりやってホームページに載せるというようなことをしていらっしゃらないのか、そもそも日本語訳はあるんでしょうか、お尋ねします。

鯰政府参考人 委員御指摘の意見書は、この訴訟の争点を踏まえつつ、アメリカの裁判所に提出する目的で作成したものでございまして、直接英文で作成しており、政府として和文は作成してございません。ただし、この意見書を提出した際に、その旨は外務省のホームページで広く知らせております。

 また、慰安婦問題に関する我が国政府の立場一般につきましては、別途、外務省のホームページ等において日本語におきましても発信をしているつもりでございます。

杉田委員 外務省のホームページに載っているんですよ、英語のままで。ホームページに載っているということは、この文献をできるだけたくさんの方に見ていただきたいということなんです。これは日本政府が出した意見書なんですよ。英語しかないというのは、私はおかしなことだというふうに思っております。この意見書の存在自体を知らない方々も非常にたくさんいらっしゃいます。

 この意見書、なかなかいいことがたくさん書いてあるんですよ。例えば、日本政府は十分に歴史上の事実を調査してきたので、グレンデール市の碑文に記載されている歴史上の記述の正確さに強く異議を唱えるという形で、日本政府の姿勢を非常に強く打ち出しておる意見書になっておるんですね。

 ですので、しっかりとこれは日本語訳をつくっていただいて、英文のものと並べて外務省のホームページに載せていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでに日本語訳をつくっていない事情につきましては、先ほど答弁させていただいたとおりでございます。

 この裁判はアメリカの裁判でございまして、特にこの連邦最高裁で議論された論点は、連邦政府の権限と地方公共団体としての市の権限の関係に関するものでございましたので、特にその点についてのアメリカの判例とかアメリカの連邦政府がとってきた立場とか、そういったこともたくさん記述してございます。

 そういうことに鑑みまして、かつ、この意見書はアメリカの裁判所に提出したものでございますから、英文で直接作成し、日本文を、和文を作成していないという事情がございます。

 ただ、委員御指摘のような、幾つか慰安婦問題そのものに関して日本政府がとってきている点につきましては、これは別途の形でいろいろな場で表明もしておりますので、外務省ホームページにも載せておりますし、あるいは国会などでも御説明申し上げてきているとおりでございます。

杉田委員 日本の外務省で出した英文のものを和訳しないで、ホームページにも載せないという理由が私はちょっとよくわからないんですけれども。できればこれはしっかりと日本語に訳をして、できるだけたくさんの、私たち、まず、この慰安婦問題というのは、日本国民がしっかりと知らないといけない問題だというふうに思っておりますので、しっかりと日本語訳をしていただいて、ホームページにも載せていただきたいということを要望しておきたいというふうに思います。

 そして、この意見書の中にも例示されているものがございまして、女子差別撤廃委員会の第七回、第八回の政府報告なんですけれども、いわゆる、二〇一六年の二月十六日に、ジュネーブの方の国連で行われました女子差別撤廃委員会の対日審査、そこにおいて杉山外務審議官が発言した内容というのが引用をされております。

 この内容なんですけれども、これは私、実際にこの二月十六日の日にジュネーブで傍聴をしておりました。杉山審議官、非常にはっきりとしたことをおっしゃってくださって、あのときはもうびっくりして、すごくうれしかったのを覚えておるんですけれども。

 例えば、一九九〇年代初頭以降、慰安婦問題に関する本格的な事実調査を行ったが、軍や官憲によるいわゆる強制連行を確認できるものはなかったという形ではっきり言っておりますし、慰安婦が強制連行されたという見方が広く流布された原因は、吉田清治氏の「私の戦争犯罪」という本であって、これが朝日新聞により事実であるかのように大きく報道されたのが原因であるというようなこともしっかりその場でお話をされていらっしゃいました。それから、朝日新聞自身も、事実関係の誤りを認めて、正式にこの点につき読者に謝罪をしているということまで触れております。

 それから、二十万人という数字は、具体的な裏づけのない数字であるということ、女子挺身隊と混同をしてしまって誤ってこの二十万人という数字が広まってしまったというようなこともここで言っています。

 それから、なお性奴隷といった表現は事実に反するということも、ここではっきり杉山審議官は述べられました。

 それから、再質問があったんですね。まず最初はオーストリアの委員からの質問に答えて先ほどのようなことが答弁されたんですけれども、その後に中国の委員の方から再質問されたんですけれども、それに対して、当時の軍の関与についてもしっかり杉山審議官は言及されているんですよ。当時の軍の関与のもとにというのはどういう意味かというと、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送について、これについて日本軍の関与があったというだけであるということになっています。それから、ここでも、性奴隷という表現も事実に反するということをもう一度繰り返しておきたい、添付した書面の中にも性奴隷という言葉は一カ所も見つかっていないというようなこともはっきりと述べられているんですね。

 これも確認しておきたいと思うんですけれども、この女子差別撤廃委員会の対日審査において杉山審議官が二月十六日にジュネーブで発言したこの内容というのは、これは政府の正式見解と見てよろしいですか。

鯰政府参考人 委員御指摘の審査におけます杉山外務審議官、当時でございますけれども、の発言は、日本政府の見解を述べたものでございます。

杉田委員 これが日本政府の正式見解と見てもいいということで御答弁をいただいたと思います。

 そこで、更に質問を続けていきたいというふうに思うんです。

 では、これが正式見解であるのであれば、これもまた外務省のホームページなんですよ、皆さんの方にも配付資料をお渡ししておるんですけれども、「慰安婦問題に対して、日本政府はどのように考えていますか。」という、これはQアンドAなんですけれども、QアンドAのところに、これはもうずっとこの記述はそのままなんですね。

 先ほど言った、杉山審議官が発言した内容が日本政府の公式見解であるというのであれば、この内容をここの部分に載せるべきではないかというふうに私は考えるんですね。

 実は、この下の方に、女子差別撤廃条約第七回及び第八回政府報告審査、質疑の部分の発言概要と書いてあって、下線を引いてある一番下なんですけれども、ここをクリックすると今皆さんにお配りしました杉山審議官の日本語の部分が出てくるんですけれども、これは、よっぽどこの問題に関心があって、よっぽどマニアックに調べた人じゃないと、ここまでたどり着きません。ここをわざわざクリックして杉山審議官の発言を読むということは、なかなか普通の方はしないと思うんです。どうしても、一番最初に出てくる、この「慰安婦問題に対して、日本政府はどのように考えていますか。」という、ここの一番上の部分しかないと思っているんですね。ここは本当に、深く傷つけたので謝っています、おわびをしています、反省の気持ちを申し上げていますということがずっと書いてあるんですよ。

 これは矛盾しませんか。なぜ先ほどの杉山審議官の発言をここの部分に載せられないのか、質問したいと思います。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、外務省ホームページにおける「歴史問題Q&A」というところがございます。この問い五につきましては、慰安婦問題について政府がとってきております立場を記述しているものでございます。

 そして、御指摘のとおり、そこからリンクを張りまして、委員御指摘の杉山外務審議官当時の発言の方も見ることができるようになっております。

 これは後者の方がなかなか見つからないではないかという御指摘につきましては、私ども、広報、外務省のホームページのあり方については不断に検討していかなければいけないと思っておりますので、今後もよりわかりやすい発信を心がけていきたいというふうに思っております。

杉田委員 よりわかりやすい発信をということだったんですけれども、もう一度確認します。

 この杉山審議官の二〇一六年二月十六日女子差別撤廃委員会の対日審査における発言というのは、これは政府の正式見解なんですよね。正式見解で、これが今慰安婦問題に対する日本政府の立場なのであれば、これを、こういうリンクを張ってそこに飛んでもらって読んでもらうのではなくて、そのものずばりをここに書いた方がいいと思うんですけれども、書けない理由か何かあるんですか。

鯰政府参考人 御答弁申し上げましたとおり、杉山外務審議官当時の発言は日本政府の立場を述べたものでございますけれども、同時に、外務省のホームページの「歴史問題Q&A」というところに書いてございます立場も日本政府としてこれまでとってきておる立場でございまして、私どもとしては相互に矛盾するということは考えておりませんので、両方掲載しているということでございます。

杉田委員 先ほど、よりわかりやすく情報提供できるように改革をしていくという答弁があったので、その中でぜひこれは載せていっていただきたいというふうに思います。

 なかなか理解できないです、正式見解であるのにしっかり書けない。先ほども、なぜ書けないのかという理由をお尋ねしたんですけれども、その理由についてはお答えがなかったと思うんですけれども、ここのところをしっかりとやっていっていただきたいなというふうに思います。

 それからもう一点、外務省のホームページからアジア女性基金のホームページに飛びます。そこのところに行くと慰安婦の定義というのがあるんですね。これは英文の部分です、英文の部分に慰安婦の定義というのがあります、皆さんのところに配付資料でもおつけしているんですけれども。ここの英文の定義の中に、下線の部分です、フォースド・ツー・プロバイド・セックス・サービスという形で書いてあるんですけれども、この文言、要するに、強制連行がなかった、強制されていなかったということを、今、杉山審議官の文にも確認しましたし、先ほどの意見書の中にも確認できるんですけれども、ここの部分、この記述がおかしいじゃないかというふうに思うんですね。

 この記述につきましては、実は、二〇一四年の十月六日の衆議院の予算委員会で、当時次世代の党の幹事長であった山田宏代議士がこの件について追及しているんですよ、質問しているんですよ。でも、いまだに直っていないんです。もう強制連行はなかったという形で、これが政府の正式見解でよろしいんですよね、先ほどから何回も何回も言っておりますが。なのに、なぜこれは、ホームページの英語の部分ではこの記述が残ったままになっているのか。このあたりはどうですか。改定できますか。

鯰政府参考人 委員御指摘のアジア女性基金関係のページでございますけれども、アジア女性基金は、当時日本政府も関与する形で取り組んできている取組でございますので、外務省のホームページからリンクを張ってそちらのホームページに移行することができるようにしてございますけれども、そこに書いてあること全てが日本政府の公式見解ということではございません。

 先ほどの強制性に関する御指摘につきましては、政府は、従来から一貫して、政府が発見した資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったということを、答弁も申し上げておりますし、閣議決定した形で示すということもいたしております。

杉田委員 何のためにホームページがあるのか、何のために英語で発信しているのか。やはり広く日本の正しい情報というのを海外の方にわかっていただくためにホームページがあって、そして英語での発信というのがあると思うんですが、そこの慰安婦の定義というところに強制性を認めるような説明をしているということは非常にゆゆしき問題だというふうに思います。これはぜひ直していただけるように要望をしてまいりたいというふうに思っております。

 もう一点なんですけれども、これは大臣にお尋ねをしたいんです。

 この杉山審議官の発言というのが今の日本政府の正式見解という形になっておるんですけれども、これと河野談話、河野談話そのものはこれも強制性を実は認めたものではないんですけれども、河野談話を発表するときの官房長官が記者会見の中で記者に問われて、強制連行の事実があったという認識なのかというふうに問われて、それに対して、事実があった、結構ですと言ってしまったこの言葉がひとり歩きして、世界じゅうで日本が強制連行した、性奴隷にしたというふうに言われておるんですけれども、これはもう明確に国連の場で否定をしております。ただ、この発言がある限り、いつまでたっても、この間も堀井政務官が行かれて、韓国に対して、しっかりと、韓国が言っていることはおかしいということをしていただいたんですけれども、これは、幾らやっても、この表現がある限りイタチごっこになると思うんですね。

 このあたり、どのように撤回をして直していくのがこれからの日本の国益にかなうのか、大臣にお尋ねしたいと思います。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 慰安婦問題に対する立場、特に委員御指摘の強制性の有無に関する立場につきましては、先ほども答弁申し上げましたけれども、我が国政府として、これまで一貫して、これまでの調査における資料からは、直接これを示す、強制性を示すものは見当たらなかったということを言っておるわけでございます。

 御指摘の河野官房長官の記者会見のくだりにつきましては、これもたびたび国会で取り上げられてきておりますけれども、例えば、平成二十六年七月に安倍総理は、当時、河野官房長官がどういうお考えで記者会見で発言されたかは承知していないというふうに答弁しているとおりでございます。

杉田委員 私もう今野党ではなくて与党ですので、しっかりと日本の国益にかなうために皆さんと一緒に努力をしていきたいというふうに思っておりますし、きょうは、出席の委員の方々も、この意見、うなずきながら聞いてくださったことを大変うれしく思っております。

 時間が参りましたので終わりますけれども、これからもしっかりと日本の真実を発信していっていただきたいというふうに思っております。

 どうもありがとうございました。

中山委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 おはようございます。篠原豪でございます。よろしくお願いします。

 まず、きょうは条約の審議ということなので、条約の中身について伺っていきます。二本だけですので、なるべくしっかりと丁寧にお答えをしていただければと思っていますので、よろしくお願いします。

 まず、二〇一三年の六月に条約が採択をされ、今回このマラケシュ条約は、著作権法の一部を改正する法律案とともに条約承認案が国会に提出されるまで五年、実に五年かかっています。

 そもそも、我が国の著作権法は、第三十七条におきまして、視覚障害者のための複製等に係る権利制限規定が既に定められています。ですので、公共図書館等における実務の場では、著作権法第三十七条の第三項に基づくガイドラインがありまして、そのもとに、身体障害者の皆様方に、読字に支障のある者のためにも複製等が行われていて、条約が求めている、身体障害などにより書籍を読むことが困難な者にまで受益対象範囲を広げることに、国内的には何か問題があるというふうには思えないということなので、そうなると、なぜ、まずその国内法の準備のために五年間という時間を要したのか、この点についてお伺いをさせていただきます。

河野国務大臣 これまで本条約の締結を視野に入れ、本条約の担保法である著作権法を所管する文化庁において、障害者団体と権利者団体の間の意見調整や法改正に関する検討が鋭意進められてきたと承知をしております。

 その結果、今般、本条約の締結に必要な改正部分を含む著作権改正法案が通常国会に提出される見込みとなり、本条約の締結の条件が整ったことから、本条約の締結について御承認をお願いするものでございます。

篠原(豪)委員 実務上で、実際、どういうところに苦労されたとか課題があったとか、そういうのがあれば、少し教えていただければと思うんですけれども。

永山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のマラケシュ条約への著作権法の改正による対応でございますけれども、文化審議会での検討がスタートしたのは平成二十六年でございます。

 それで、二十六年の十月に文化審議会の小委員会の方で関係する障害者団体、権利者団体にヒアリングを行ったところ、障害者団体の方から、特にマラケシュ条約の締結に必要な手当てだけではなくて、それ以外の項目も含めて複数の要望事項が示されました。その点について権利者団体から反対若しくは慎重な立場が示されたということを受けて、その後、権利者団体また障害者団体との意見の調整を行ってきたということでございます。それに若干二年ほど時間がかかったということでございます。

 三つの事項、要望項目がございましたが、そのうち二つについては関係者間の意見が集約したという段階で、昨年の二月、そういう段階になりましたので、障害者団体の方から、調整がついた事項について速やかに制度改正をしてほしいという意向が示されたのを受けまして、四月に審議会としての最終報告、それを受けて、今回、今国会の方に著作権法の改正案を提出させていただいたという経緯になってございます。

篠原(豪)委員 もし差し支えなければ、その三事項のうち、二つは調整がついた、もう一つは調整がついていないということ、その点についてどういうようなことがあるのかということを教えてください。

永山政府参考人 障害者団体から、マラケシュ条約を超えて御要望があった三項目については、一つは、現在、著作権法三十七条三項に基づいて著作物の複製等が行える主体というのはボランティアグループも対象になっておりますけれども、ただ、文化庁の長官の個別指定が必要だということになっておりますので、それを見直してほしいという点。また、三十七条三項に基づき、メール送信、現在、ネットでの配信はできますけれどもメールでの送信ができないということでございますので、それをできるようにしてほしいということ。また、字幕とか解説音声つきの放送番組を公衆送信できるようにしてほしい。この三項目について御要望がございました。

 そのうち、二点目のメール送信については、今回、著作権法の改正案に盛り込ませていただいております。あと、また、個別指定を受けずにボランティア団体、ボランティアグループも法律に基づいて一定の利用ができるようにしてほしいということについても、一定の条件は付す予定にしておりますけれども、そういう方向での政令改正なども検討していきたいということで、この二項目については、障害者団体の御要望に沿う形での見直しということを考えておりますが、最後の三点目の字幕、放送中に字幕をつけて提供するようなことについては、関係者間、障害者団体と権利者団体との調整がまだついていないという段階でございまして、障害者団体の方からも、今後積極的に協議を進めていきたいので文化庁としても積極的にかかわってほしいという御要望をいただいておりますので、そういう形で取り組んでまいりたいというふうに考えております。

篠原(豪)委員 このような条約を結ぶので、できるところは更に改善していく、やっていく点というのは調整をしていただければと思います。

 この条約を締結する意義について少しお伺いしたいんですが、世界の中で、目が見えない方、視覚が何らかの障害をお持ちの方が二億八千五百万、約三億人ぐらいの方々がいらっしゃるという、非常に多い数だと私は思っていまして、そのうちの九〇%の方々が、これは開発途上国に住んでいらっしゃる。

 そのことを考えれば、この条約の大きな受益者は開発途上国の方々でもあるというふうに言えるんじゃないかと思っていまして、日本としては、こういう国際的な取組に参加するというだけじゃなくて、本条約を日本が締結をすることで我が国の開発途上国対策に何か裨益をするところがあるのかどうかというところをどのようにお考えかを教えていただければと思います。

河野国務大臣 この条約は、視覚障害者などの方々による著作物の利用機会を促進するためのものでありまして、我が国がこの条約を締結することにより、我が国の視覚障害者等の方々による国内外の著作物の利用の機会を更に促進するとともに、視覚障害者等の方々による著作物の利用の機会の促進に関する国際的な取組に貢献することにも資するものと考えております。

 この条約は、各国の点字図書館等が利用しやすい様式の複製物の国境を越える交換等について定めるものでありまして、視覚障害者等の方々による著作物の利用の機会の促進に関する国際的な協力を行う観点から重要なものであります。我が国として、この条約の締結を契機に、開発途上国を含むこの分野における国際的な協力を一層進展させていきたいと考えております。

 先ほどの質疑の中にもありましたように、点字というのは、日本語を日本語の点字に訳す、英語を英語の点字に訳すということでございますので、委員の御指摘がございましたような、途上国の視覚障害を持っていらっしゃる方々に対しては、その国のその方々の言葉でのものを提供しなければいけませんし、それ以外の利用しやすい形態についても、そうした方々が理解できる言葉で提供しなければならないという問題がございますので、我が国としては、そうしたことを含め、途上国の視覚障害を持っていらっしゃる方々がさまざまな著作物を利用しやすいような形でできるように、これからもしっかりと御支援申し上げてまいりたいと思います。

篠原(豪)委員 ありがとうございます。力強いお言葉ですので、ぜひよろしくお願いいたします。

 一方で、国内に対して何か裨益する問題というのはどのように考えているかということがあれば教えていただければと思うんですけれども。国内の方です。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 マラケシュ条約の効力発生後は、日本と条約締結国間において、利用しやすい様式の複製物を国境を越えて交換することが可能となるわけでございますが、厚労省で具体的な事業で申し上げますと、視覚障害者情報総合ネットワーク、いわゆるサピエを活用し、全国の視覚障害者がインターネットを通じて点字図書や録音図書のダウンロード等を行うことができる支援を実施しているところでございますが、条約の効力発生によりまして、日本国内に多数の外国の著作物が輸入されることによりサピエの充実が図られるというふうに考えておりまして、視覚障害者に対する国内外の著作物の利用機会が促進されるものと考えております。

篠原(豪)委員 わかりました。

 次は、そうすると、国内の中で、市場の問題ですかね。

 日本ではこれまで、印刷物の判読に障害のある方々が著作物を読めるようにするためには、ボランティアの方々が点字翻訳や読み上げサービスを実質的にはほとんど無償でやっていただいている方が多くて、提供するということですね、そういう方々が一般的だと思われます。公的な支援も、それを応援するというのが従来のあり方だったんだというふうに思っています。

 他方で、条約の趣旨を、自国の市場において受益者が特定の利用しやすい様式では妥当な条件によって商業的に入手することができない著作物に限定する旨を宣言することができるようになっていて、我が国も、オーストラリアやカナダ同様、そうした宣言をする予定だというふうに聞いています。そうですね。

 そのことは、障害者へのそうしたサービスが既に市場を介して提供できている場合にはそれを阻害しないという意味とともに、より広範なサービスが市場ベースで提供できればより好ましいと考えていることも含意しているのではないかと思っています。その方が、より広範なサービスの提供者の出現が期待はできるし、それに応じてサービスの多様性もふえていくんだろうというふうに思います。

 もちろん、現状では商業サービスの対象にはならないので、国等が補助金等の資金的支援を行って、新しい市場を形成していく必要があるんだろう。つまり、民間でも利益が見込まれる状態に持っていくということが必要だというふうに思っています。

 ですので、宣言をするということは、政府として、市場を介したサービスが好ましいのか、できればそうした市場を創設していきたいんだということを、今回のこの条約の批准、そしてこの宣言によって考えを持っているのかどうか。具体的な政策等があれば教えていただければと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 篠原委員の、市場を介してサービスを提供するというお考えでございました。御指摘のとおり、宣言につきましては、これをする予定でございます。

 我が国が本条約を締結することによりまして、点字図書、拡大図書あるいは録音図書といった、視覚障害者の方々にとって利用しやすい様式の複製物の国境を越える交換を促進するための協力が推進されると同時に、国内外において、視覚障害者の方々等による著作物の利用が促進されることを期待しているところでございます。

 御指摘の点につきましては、外務省として、文化庁、文科省、厚生労働省、国立国会図書館、経済産業省などと、各省の会議も開きまして、共有しながら、マラケシュ条約のもとでの国際的な協力を通じて、視覚障害者等の方々による著作物の利用の促進に貢献してまいりたいというふうに考えているところでございます。

篠原(豪)委員 この市場ということでいうと、私も以前、ちょっと雑誌の編集者をやっていたことがあって、そこに、ある外国の映像プロデューサーの方で、この方は映像プロデューサーなんですけれども目が見えないんですよね、その方に原稿をお願いして、どういうふうに思っているんだと。プロフェッショナリズムについて、仕事に対してということで、目が見えないということなんですが、お願いしたら、寄稿していただきまして、せっかくそれを寄稿していただいたので、私が携わっていた雑誌は別に視覚障害者の方々向けのものじゃなかったんですが、その部分だけは何とか点字にしようということで、結構予算がかかったんですけれども、そこの部分だけは点字にしたんです。

 点字印刷をお願いすると、まず、業者の方が非常に少ないし、結構苦労するんですよね。なので、我々、普通の感覚の編集者がそういうことにチャレンジすると結構ハードルが高くて、苦労した思いがあります。その業者の方々も、やはりすごく少ないので、単価もコストもそれほど安くはなくて、そのページだけで相当な印刷費がかかりました。百四十四ページの本なんですけれども、たった数ページのために何割かという印刷費がかかりましたけれども、それでもやろうということで、やったことがあって。

 ですので、これを機に、やはり、今までボランティアさんだけでもやってきたりいろいろあるので、これから流れを考えていけば、先ほど大臣もおっしゃったように、国内についても国外についても、それぞれ言語も違いますし、いろいろなことをやっていかなきゃいけないと思っていますので、ぜひしっかりと、そういったことも政策として考えていただきたいと思っていますし、今、省庁を横断してそういう取組をなさるということでしたので、私はぜひやっていただきたいと思います。

 次は、そうはいっても、受益者以外の人が不正に利用できないようにするということは、著作権を守る上でこれは欠かせない措置でもあるんだというふうに思います。

 公共図書館による貸出しサービスとか、貸出しの規制で対処できると考えるところはそれでいいんですけれども、サービスのインフラとして、インターネットを介したデジタル情報については、これは、インターネットを通じてお渡しした方が、コスト的にもパフォーマンス的には現実だというふうには思われるんですが、その場合には、健常者の利用と障害者の方々の利用を区別することが難しくなるということが実際に起きると思っていて、不正利用を防止することは格段に難しくなっていくんだろうと思っています。

 近い将来、デジタル技術によって、特別な施設を利用しなくても障害者が健常者と同じように日常生活を送るようになることが期待されている以上、最終的には不正利用という考え方が成り立ち続けるのかということが実態として起きていくんじゃないかと思っていて、そうすると、それだから、不正利用防止のためにこれから理想の実現が阻害されるということは好ましくない、そうであれば、著作権保護に関する発想の転換も必要になっていくんだろうと思います。

 それが、市場を介したサービスの提供である。つまり、補助金等による新たな市場を形成して、市場経由でサービスを提供できれば、著作権者も一定の利益が得られるので、そもそも、不正利用に対する取締りというかそういうもののコストも削減されて、好ましくなっていくんじゃないかというふうに思っていて、この辺についての、非常にバランスは難しいんですが、もし著作権との兼ね合いで何かお答えできることがあれば、ちょっと教えていただくことは可能でしょうか。

永山政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、市場を介して、例えば出版社などから視覚障害者向けの図書の販売など、サービスが提供されるということは、視覚障害者の著作物へのアクセスが改善する、そういう大きな効果があると思います。

 また、それを通じて権利者にも一定の対価が還元されるということにもなりますので、アクセスの改善また権利保護にもつながるということであり、そういう方向はあるべき姿だというふうに考えております。

 その上で、委員御指摘のインターネットでの利用がこれからどんどん進んでいくということになりますので、そういう際の不正利用の関係でございますが、著作権法三十七条三項の権利制限は、当然、障害者へのアクセス改善ということを目的とした権利制限ということでございますので、目的外にそれが流用されるといいますか、それはあってはならないことでございます。権利保護と利用の円滑、その両方のバランスをとっていく必要があるというふうに考えております。

 これから不正利用については、恐らく、利用者の登録とかそういう形で受益者をある程度特定していくとか、さまざまな形で両方のバランスをとっていくということは、今後、これまで以上に取組を進められるのではないかというふうに考えております。

篠原(豪)委員 これは難しい問題なので、しっかりとやはり考えていかないといけないのかなと思っています。これはちゃんとやらなきゃいけないということで、こういった質問にさせていただいているんですが。

 今登録というお話がありましたけれども、例えば今ボランティアさんでいろいろと仕事をされていて、公的な機関、団体と連携されてやっている方々もいますけれども、必ずしも組織にはとらわれず、自由に活動している方々も多いと思っているんです。その両者の割合がどのような状態かということはわかりますか。それは難しいですか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御質問のありましたボランティアの割合についてですが、私どもでは、ちょっとこれらの割合については把握していないところでございます。

篠原(豪)委員 こういう方々がボランティアでいろいろとやっていく中で、公的なお墨つきとかそういうものがあれば、公認手続というかわかりませんけれども、こういう人たち、善意の個人が従来できてきた個人としてのサービスの提供を何か認定すれば、先ほど登録とおっしゃっていましたけれども、そういうサービスの提供を安易に妨げられることも避けられるということになっていくんだと思いますし、そうした善意の個人のサービスの提供を守るために、今回の条約をやることと、実際どのようにこの対策を、個人サービスの提供ということでは守っていくということを考えていらっしゃるとか、わかれば教えてください。

永山政府参考人 委員御指摘のとおり、視覚障害者などの方にアクセシブルな書籍を作成するということについては、図書館とか障害者関係施設、そういう施設で行われるケースのほか、そういう組織に属さないボランティアの方において作成されることも多く、そういうボランティアの方の活動がより円滑に行われるような環境整備が要望もされているところでございます。

 文化庁としても、そういうボランティア団体の果たす役割というものは非常に大きいというふうに考えておりまして、その御要望につきまして、今はボランティアの方々が著作権法の権利制限規定に基づいて複製などを行う場合には文化庁長官の指定ということが必要になっておりますが、それについて今後見直しをし、現行制度よりも簡易な方法で、著作権法に基づいてさまざまな利用ができるようにしたいというふうに考えております。

 そのための政令改正等の所要の措置についても提言が行われており、今後、そういう改善に向けた具体的な制度設計を関係者の御意見も聞きながら進めていきたいと考えております。

篠原(豪)委員 しっかりと考えていただけるということで、よろしくお願いします。

 次は、DAISYの活用について少し伺いたいんですが、デジタル情報の提供に関してはデジタル録音図書の国際規格のDAISYがあって、既に英語圏、フランス語圏で相当な録音図書が作成されて、障害者の方々に無償で提供をされています。

 日本が条約に批准すればこうした技術やサービスを利用できることにはなると思うんですけれども、政府としてこのDAISYの活用をどういうふうに、DAISYを活用したサービスの促進策というんでしょうか、例えば出版社が出版と同時にDAISY図書を作成できるようなことがあればそれは本当にいいことだと思うんですね、そういうことに対して例えば支援策が何らかあるのであれば教えていただければと思います。

河野国務大臣 デジタル・アクセシブル・インフォメーション・システムというのは国際標準規格の一つだというふうに認識をしておりますが、日本の視覚障害者等の方々による国内外の著作物の利用の機会がこの条約の締結によって更に促進される中で、今御指摘をいただきましたDAISYを含めた、利用しやすい様式の複製物の活用が国内において更に進むことを期待していきたいというふうに思っております。

篠原(豪)委員 ぜひお願いします。

 こっちの条約では最後の質問になるんですけれども。

 教育の現場においても、私も市議会議員をやっていたこともあってそういう所属の委員会にいたことがあって、やはりお話があるのは、視覚障害者の方々が普通に当たり前にみんなと同じような教育を受けたいんだということを、小学校でそういう話がありまして、そのときに、何%かわかりませんけれども、例えばディスレクシアの方々みたいに、なかなか文字がきれいに読めない、例えばトム・クルーズさんとか、名前を出していいかわかりませんけれども、映画監督のスティーブン・スピルバーグさんとか、あの方々は文字を読んでも入ってこないので、全部聞いて、そしてそれをあれだけの演技に持っていくという、特殊な本当に天才的な才能をお持ちだと思うんです。

 学校教育の現場でも、音から何かうまくできればいいなというのもありますので、こういった録音図書みたいなのを進めていくのも大事だと思うので、それはやっていただきたいんですが、一方で、今度は点字。点字プリンターがあれば、これは一校に一台でもあればすごく助かるんだ、点字プリンターはそんな高くない、百万円ぐらいだったと思うんですけれども、そういうこともあれば、そういう方々がいるところではすごく助かるんだと。

 点字プリンターも、ボランティアさんでやってくださっているところというのは学校じゃなくて地域にあったりするんですけれども、なかなかいつもやってもらえるわけじゃないので大変だみたいな話があって、その辺も含めて、教育の現場でも、少しこの条約に関して、点字プリンターのようなものを少し余分に、学校教育の場ですから導入をしていくようなことを働きかけるぐらいのことができたらいいなと思うんですが、その辺について、もしお答えできる方がいらっしゃれば教えていただきたいと思います。

永山政府参考人 委員御指摘の趣旨は十分理解させていただくところでございますが、私、きょうは著作権法を所管している文化庁の審議官として政府参考人として御出席させていただいていますので、担当は文部科学省の初等中等教育局になりますので、先生の発言の趣旨は責任を持って伝えさせていただきたいと思います。

篠原(豪)委員 ありがとうございます。

 では、マラケシュ条約、しっかりと国内外を含めて進めていただきたいと私は思っております。よろしくお願いします。

 次は、もう時間がないので簡単に伺っていきますが、もう一本の方、香港条約についてお伺いします。

 先ほどの委員からもお話ありましたけれども、二〇〇九年の条約採択から、あれは二〇〇九年ですから、今はもう二〇一八年になりますので、大分時間がかかった。何でこんなにかかったのかなということは先ほどおっしゃっていたんですが、どのあたりが大変だったのかというところを簡単に教えていただければと思います。

河野国務大臣 この条約を通じて適切な形での船舶の解体を確保するということは、労働者の安全確保、環境の保護に加え、市場から古い船舶の退出を促す、そして新たな船舶の建造につなげるという意味において、日本の海事産業の持続可能な発展にも大いに貢献するものだというふうに思っております。

 反対に、この条約は、海事、環境、労働分野の規制を広く含むために、国内の法制化において、船舶解体業者等を含めた検討会を開くとともに、関係省庁において、既存法との適用調整につき、ほかの国の事故状況あるいは法制化の状況を踏まえた慎重な検討を行う必要がございました。

 今般、関係省庁間で意見の一致を得るに至り、今国会で本条約の締結についてお諮りをすることができるようになったというものでございます。

篠原(豪)委員 次は、インベントリーの作成について少し伺いたいんですけれども、船舶は、船内の有害物質の種別、概算量、所在位置などを記した一覧、これはインベントリーというんですけれども、これを最終処分までの期間を通じて維持しなければならないと定めていますね。

 新造船の場合にはそれほど難しいというふうには思わないんですけれども、既に就航中の船舶の場合には、船舶の所有者と管理者あるいは国が、それぞれ異なる状況下に金銭的な負担を伴う義務に、これはとても、一〇〇%すぐ対応できるのかといったら、本当にできるのかなということは思っていて、インベントリー作成を促進するためには国内的、国際的にどのような措置を考えているのか。促進策だけじゃなくて、やはり作成せざるを得ないような状況をつくり出すことが重要だというふうにも思うんですが、その方策について具体的にあれば教えていただきたいと思います。

河野国務大臣 おっしゃるように、現存船につきましては、有害物質のインベントリーへの記載方法を一部緩和するとともに、発効から五年間の猶予期間を設けることで、船舶所有者の負担を軽減することによって実効性を確保していきたいというふうに思っております。

 国内の法制化に当たっても、インベントリーの記載については、船舶所有者との調整に努め、御理解を得ておりますので、関係事業者においても必要な対応を進めていただいているものと承知をしております。

篠原(豪)委員 次は、リサイクル計画の作成について伺います。

 リサイクルを受け入れる側にも、船舶リサイクル施設計画、船舶リサイクル計画の作成義務が生じます。

 そもそも、コストの安さを武器にしてリサイクル事業を獲得してきたインドやバングラデシュ、パキスタンとか中国とか、そういった国があると思うんですけれども、どこまで対応能力を持っているか、これも疑問が出てくるんだろうと思います。

 インドなどのビーチング方式を禁止して、その負担がコストにはね返ると、必然的に他国の業者に仕事を奪われることになるのではないか。したがって、日本を含む先進国が何らかの財政支援を行う必要があるかというふうな議論が出てくるんだと思います。

 条約義務を果たしている場合には、コストが高くなっても、民間企業がそうした施設しか利用できないようにする措置も必要であると思うんですが、具体的にどのような措置を想定しているのかということについてお伺いします。

河野国務大臣 この条約及び関連指針では、解体施設やリサイクル計画の要件について詳細に規定をし、その遵守を締約国に義務づけておりますが、こうしたルールの作成の交渉には、途上国の中でも主要な船舶解体国が参加をしてくれて、その上での交渉が行われております。

 こうした国々が本条約に沿った適切な解体を行うための国内法の整備を進めていってくれることでこの条約の実効性が確保されるようになると思いますが、御指摘のように、途上国、そのコストという部分でもこのビジネスをやってきたということもございますので、この条約の中には、締約国による技術協力をいわば奨励するような規定が設けられております。

 日本も、インドによるこの条約の早期締結を促すために、ODA事業を通じて、インドの船舶解体関連施設の改善を支援し、この条約の実施体制の整備を後押ししているところでございます。

 日本も主要な海運・造船国でございますので、これまで培った船舶分野での技術的知見を活用して、必要な知見の共有を途上国としっかりと行ってまいりたいというふうに思います。

篠原(豪)委員 ぜひしっかりとやっていただければと思います。

 他方で、先進国のリサイクルについてちょっと考えたときに、今、日本はずっとそういった技術を持っているという話でしたけれども、現状では価格競争力が余りないので、これはなかなかそんなにすぐにという話ではないようには思うんですけれども、ただ、仮にリサイクルに関する環境規制が厳しくなった場合には、人件費ではなくて技術的なパフォーマンス、優位性がリサイクル価格の大きな割合を占めるようになってくるんじゃないか。そうした場合、環境などの規制が厳しくなればなるほど、先進国にもリサイクルの優位性が生まれていくんじゃないかと思っています。

 この条約を一層推し進めることで、我が国に船舶リサイクル事業を呼び込むか、あるいは我が国のリサイクル企業が他国でリサイクル施設を運営することも同時に考えられるんだろうというふうに思っています。

 政府には、やはりそういった形で構想をしっかり持っていただきたいと思うんですけれども、そういったものがあれば具体的に説明をお伺いしたいのと、あと、日本じゃなくて欧米の先進国においてそういった構想があるのであれば、我々もしっかり優位性を持ってやっていかなきゃいけないので、これはどういうふうに認識をしているのかというのも大事だと思いますので、お伺いさせていただきたいと思います。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 リサイクル事業の競争力には、人件費、船舶の買取り価格、スクラップ鉄の取引価格が大きく影響すると考えております。

 この点、船舶の解体作業が多数の労働者が携わるものであることは変わらないと考えられますので、人件費は無視できません。

 また、国内のスクラップ鉄の需要が少ない我が国におきましては、その取引価格の上昇は期待しにくく、これに伴い、船舶の買取り価格の上昇も期待しにくいことから、我が国及び……(篠原(豪)委員「もうちょっと大きく」と呼ぶ)わかりました。我が国及び我が国企業が船舶リサイクル企業を国際的に主導できるかは未知数と考えております。

 しかしながら、御指摘のように、人件費よりも技術力がリサイクル価格の決定要因となった場合には、先進国のリサイクル事業の競争力が相対的に上がると考えられます。

 我が国がシップリサイクル条約を締結することによりまして、世界的に環境に優しく、安全なリサイクルの推進に貢献いたしますので、条約発効後も我が国のリサイクル事業を周知してまいります。

 また、欧米主要国の中でリサイクル事業のシェアが大きいアメリカにおきましても、その世界シェアは〇・五%という低い状況にございます。したがいまして、我が国と同じような状況にあるのではないかと考えておるところでございます。

篠原(豪)委員 リサイクル施設は、やはり国内外でどういうふうにやっていけば我が国にとっても一番いいのかということをしっかりと考えていただきたいと思います。

 きょうは時間が来ましたのでここで終わらせていただきますけれども、こういった、日本が中心になってやってきた条約というのはそれなりに責任もあるんだと思います。そして、全地球的な規模で考えてどんどんいい方向に向かっていくものであると思っていますので、ぜひしっかりと進めていただきたいということを外務大臣にお願いをしまして、きょうの質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

中山委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 希望の党の小熊慎司です。

 まず、マラケシュ条約についてお聞きをいたします。

 これまでも同僚議員の質疑にもありましたとおり、この意義や目的というのは大いに賛成するところでありますが、実態としてこれをしっかり、障害のある方々に読書に触れやすい環境整備をしていくということはハードまたソフト面においても重要であるというのは皆様御承知のとおりであります。

 一説に言われていますけれども、世界の中で、いわゆる視覚障害のある方に向けた書籍物、これは点字とかオーディオブックも含めてですけれども、これは途上国においては出版物の一%しかない、先進国においても七、八%しかないという読書飢餓の状況が続いています。なおかつ、アジア太平洋地域で視覚障害の方々が非常に多いというデータもありますので、この日本が国内及びまた世界の各国と連携しながらこうした読書に触れる機会をふやしていくということは非常に重要なことであると思います。

 まず、国内の話ですけれども、個人的に手に入れるというのもありますが、公共的な機関においてこういうものを触れやすくするという意味においては、やはり市町村の規模や都道府県の取組によって差が出てしまうんですね。

 そういった場合に、障害のある方に読書のサービス、出版物に触れやすいことを一生懸命やっている自治体もあれば、なかなかそこに手が回らない自治体もある。国においては国会図書館でやっていますけれども、あと、民間団体と協力して、サピエ図書館と連携してやっていますが、これもまだまだソフトの部分が数が少ないという点もあります。

 まず、公共的な施設、いわゆる図書館などでこれをどう広めて体制整備をしていくのかという、国としてそうした自治体の支援策といったものについてはどういったものを考えておられるか、まずお聞きいたします。

神山政府参考人 お答えいたします。

 公立図書館におきます施設等の整備につきましては、設置者である地方公共団体が地域の実情に応じて適切に判断し取り組むものであると考えているところでございます。また、公立図書館の施設等の整備に係る国庫補助金につきましても、現在一般財源化されておりますので、地方公共団体の実情に応じてサービスの充実が図られているものと認識をしているところでございます。

 こうした中、文部科学省におきましては、図書館の健全な発展を図るために図書館法に基づきまして図書館の設置及び運営上の望ましい基準を定めており、その中で、障害者に対するサービスとして、点字資料、大活字本、録音資料、手話や字幕入り映像資料などの整備、提供等の充実について求めているところでございます。

 今後、マラケシュ条約が承認された場合には、条約の趣旨やこれに沿った望ましい対応などにつきまして各種会議等において周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

 なお、先生御指摘のございましたように、国立国会図書館あるいは関係団体等におきまして、読書障害者のためのサービスとして視覚障害者等に向けたデータ提供サービスが行われているところでございます。

 各図書館がこれらのサービスに参加しネットワークを形成することは、読書障害者の環境整備のためにも有効であると考えており、文部科学省におきましても、各図書館に対してネットワーク化に必要な情報提供を行ってまいりたいと考えております。

小熊委員 基本的にはその自治体の判断がありますけれども、自治体の財政規模によって、やれるところと手が回らないところの差が出てきますから、地域の格差が出ないような手当ては国として考えなきゃいけないと思います。

 自治体の判断ですよ。自治体の判断なんですけれども、何百万人という自治体と何千人という自治体が、こういうマラケシュ条約ができたからいろいろ自治体もそれぞれで考えてやってくださいねといったって、そんなのできるところとできないところがありますから、これはしっかり国としてどう支援していくかということが必要ですし。そもそも、MDGs、ミレニアム開発目標においては、誰も置き去りにしないと言っているんです。そういう哲学ですよ。誰も置き去りにしない。これは国内だけでなく国外のそういうところも含めての話ですけれども。

 そういう観点からいうと、単純に自治体の判断というだけではこれはいかないなと思いますし、先ほど同僚議員も言っていましたけれども、これは先天的な話じゃなくて、マラケシュ条約でちゃんと想定しているのは、いわゆる加齢によるという、お年を召してから、病気でもなく加齢によって視力が低下していく人、そういう人も読書にアクセスしやすいようにするというような意味も含まれているわけでありますから。

 これは人口の少ないところでもそういう人は多いわけでもありますので。我々だって病気じゃなくてもそういう側になる可能性があるし、ましてや糖尿病の多い日本であれば、糖尿病によって視力を失う方も多いわけでありますので、そういう意味では、自治体の規模によって差が出ないような配慮を国としてはしなきゃいけないということです。

 もう一回、その点について。

神山政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど自治体の主体というふうに申し上げましたけれども、まずやはり地方自治体がその実情に応じて図書館の整備をするということが原則というふうに考えてございますが、このようにマラケシュ協定が締結された場合、今回国会で御承認いただいた場合には、その趣旨を私どもきちんと伝えて、これに沿った望ましい対応ができるように、各自治体に各種会議等におきまして周知徹底を図ってまいりたいと考えてございます。

小熊委員 周知徹底はいいんですが、とどのつまりは財政支援がどうだかということですよ。

神山政府参考人 この点につきましては、これまでの地方活性化ですとか地方分権の流れの中で、平成九年以降は一般財源化をされているということでございますので、この一般財源化された中で各自治体が主体的に取り組むということが基本ではないかと考えてございます。

小熊委員 今、人口減少でいろいろな課題を抱えている中で、新たな課題解決の宿題が与えられるわけですよ、自治体においては。だから、これは新たに考えなきゃいけないという趣旨です。今までこうやっていますじゃなくて、これからどんどんどんどん、私の地元もそうですけれども、人口減少になっていって、本当にいろいろな課題が積み上がってきているんですよ。

 今までの解決されない問題もありながら、新たになってきている。でも、また新たにこういう目標ができて、きちっとよりよい社会に向かっていかなきゃいけないという、場合によっては、今までのじゃだめだからこういう質問をしているんですよ。わかりますか。

 どんどんどんどん課題が山積していくんですよ。これまでじゃ間に合わないから、新たに考えてということで質問していますから。今までのじゃ足りない。やっている。やっていないとは言っていません。今までのじゃ足りないから、新たにどうするのという話です。新たにやってくださいという提言ですから。

 何かありますか。

神山政府参考人 お答えをいたします。

 これまでの経緯等もございますし、財政全般にかかわることでございますので、この場で即答はできませんが、御指摘の趣旨を踏まえて、いろいろ考えてまいりたいと存じます。

小熊委員 まあ、そうです。だから、財政的なことがあるので、今後の目標として、しっかりそれを現状認識して取り組んでいただきたいという点と、ただ、確かに、限られた財源の中でやっていかなければいけないので、効果的な方策を考えなきゃいけないというふうに思っています。

 そういう意味では、民間との連携が必要で、このマラケシュ条約を想定して、出版業界においては、オーディオブック協会というのも立ち上がりました。点字の著作物をつくるというのは大変な労力も必要ですし、お金もかかる。ただ、今、いろんなICT化の中で、少ない投資で大きな効果が得られるような状況にもなっていますし、実際、このオーディオブックのシェアというのはかなり広がってきているわけであります。皆さん、それぞれの携帯端末においても、もう既に持っておられる方もいると思いますが、ダウンロードして持っているというものもあります。

 ある意味、ハードの整備は、各自治体においても大変なお金がかかりますし、国の支援策も、それは青天井ではないのもわかっています。そういう意味では、こうしたICT技術を進展させることによって、地域の偏在をなくしていくということが重要だというふうに思います。

 そういう意味では、民間においてこの協会が立ち上がっています。これに限らず、こうした電子書籍の普及を目指すという意味において、官民の連携というのを今後どうしていくのか、お聞きいたします。

中山委員長 官民の連携についてという質疑でございます。行政側、答弁しっかりお願いします。

神山政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、ICT技術、その他いろいろな技術を使っての対応でありますとか、オーディオブックその他、いろいろなこと、あるいは物の物流その他にかかわることでございますし、また図書館もかかわることでございます。

 そういったような観点から、いろいろ、各省関係する部分が多いかと存じますので、各省でいろいろ連携しながら、必要な体制について今後検討していく必要があるものと考えてございます。

小熊委員 この条約の肝というのは、そういう、障害のある方、また著作物に触れにくい方の垣根を低くしていくということの中で、いろんなハード、ソフトの整備、ソフトの部分でも、だから、先ほど言ったとおり、日本のデータではない、世界の全体のデータですけれども、先進国でも印刷物の七%しかなっていないわけでありますよ。

 だから、そのハード、ソフト両方の充実化をしていく上においては、限られた財源の中でやるという意味では、しっかり民間との連携が必要ですし、民間の側は、そういった、この条約を意識して出版業界でつくったんですよ、このオーディオブック協会というのを。それは、いろんなビジネスチャンスを狙ってもあるんですけれども、きっかけとなったのは、この条約が実現するということを踏まえて、出版業界では準備しているわけです。

 ですから、限られた財源の中で、そうした垣根を低くしていくという意味においては、しっかり有機的に連携をして、結果を生んでいかなければいけないというふうに思いますので。これは条約がスタートですから、これがゴールではないので、ぜひ、ここからどうやって普及させていくか。地域の偏在性がないように、地域によって格差が出ないようにやっていかなきゃいけないということにおいても、こうしたICT技術の活用という意味も、民間との連携をしっかり強化をして、結果がちゃんと出るようにしていただきたいと思います。

 先ほど言ったとおり、私も、この条約に触れて、先天的に障害のある方だけじゃなくて、我々もそっちの側に立つ瞬間が来るのも、これはあるということです。年をとった後、ともに。別に、健常者であっても、いろいろな眼鏡を使ってももう見えない、見られない、それで読書飢餓に陥っていくということは、少子高齢化社会の中では、これはもっともっとふえていくということが想定されていますから。

 そういう意味では、我が身の問題としてこれは考えていかなければいけないという点において、ぜひ、実際の社会での浸透していくということについて、さらなる努力、新たな発想で、今までこうやってきましたけれども、新たなスタートとしてやっていただきたいということを要望して、次に、その国際的支援ですね。

 先ほどお話ししたとおり、アジア太平洋地域は比較的多いと言われているんです。我々はこれは、日本は私は国際貢献は世界一だと思っていますから、効果的にやっている。MDGsの中でも、これは障害全般ですけれども、誰も置き去りにしない、みんなで一緒に発展していくんだ、こういう目標を掲げています。

 そういう意味において、国際支援という立場で、このマラケシュ条約の目的達成のためにはどうやってやっていくのか、お聞きいたします。

山野内政府参考人 委員御指摘のとおり、マラケシュ条約の第九条は、利用しやすい様式の複製物の国境を越える交換を促進するための協力について明確に規定しております。例えば、点字図書館の権限を与えられた機関の間での情報の共有、あるいはそのような機関の実務の方法などについての情報を利用可能にするということ、あるいは、そういったものを国として支援するということに加えて、世界知的所有権機関、WIPOにおける協力についても規定しているところでございます。

 我が国といたしましても、この条約の締結を契機にしまして、本条約の、総会における国際的な協力の議論などにも積極的に参加していく考えでございますし、途上国を含め、この分野における国際的な協力を一層進展させていきたいというふうに思っているところでございます。

 また、委員御指摘のとおり、アジア太平洋地域に非常にこういった潜在的な受益者が多いということでございますので、例えばAPECのような適切な外交的な場を通じまして、各国のこの条約への参加を促していくというようなこともやっていきたいというふうに思っているところでございます。

小熊委員 それで、あとは、先ほど同僚議員もいろいろな数字を出していましたけれども、世界的な割合があるんですが、ここにも実は格差があって、先進国と途上国では倍違うんですね。そういう意味においても、この途上国における支援というのは先進国以上にしっかりやっていかなきゃいけないという問題がありますし、国においてはICTも普及もしていませんから、ある意味ではいろいろな、ハード、ソフト両面の支援もしていかなければいけないというふうに思っています。

 大きな意味では、このMDGs達成のためにも、また日本がこれまで果たしてきた国際貢献を更に進展させていくというためにも、この条約の発効を踏まえて新たに支援策もしっかり考えていっていただきたいというふうに思いますし、その点については、大臣もODAについて深い造詣がおありでございますので、ぜひ意識をして体制を整えていただきたいというふうに思っています。

 委員長の許可があれば、文科省はもういいです。

中山委員長 文部科学省神山大臣官房審議官におかれましては、御退室いただいて結構でございます。

小熊委員 シップリサイクル条約に移ります。

 これは、先ほど来お話が出ているように、日本がリーダー的役割をしてきた。大臣からも、日本は造船立国としての立場もあるということで、日本がこれからまさに果たしていく役割というのは多いと思います。

 いろいろ私なりに調べさせてもらったら、このリサイクルのほとんどを担っているのが四カ国、中国、インド、パキスタン、バングラデシュ。日本は、外務省のホームページにも出ていますが、インドにこのシップリサイクルの支援をしているところであるんですけれども。日本はその四カ国の実態調査もして、どのぐらいのリサイクル能力があるのかというのも調査しているところではありますが、今後、この条約が発効されていろいろな基準が変わっていくときに、どう対応できていくのかという世界の状況も見ていかなければなりません。

 そうした意味でのデータベースづくりというか情報把握というのは、今どういうふうになっていますか。

宮武政府参考人 シップリサイクル条約では、締約国が許可したシップリサイクルヤードにつきまして国際海事機関に報告いたしまして、国際海事機関はその内容を周知を図ることとされています。

 シップリサイクル条約が発効することによりまして、御指摘のとおり、シップリサイクルヤードのデータベースが国際的に構築され、世界のシップリサイクルヤードの実態把握が行われるようになると考えております。

 そのためにも、シップリサイクル条約の早期発効及び我が国の締結が重要であると考えております。

小熊委員 これまでも日本は調査をしていて、その上でインドに支援をしているんですけれども、インドのシップリサイクルのやり方というのは非常に単純というか、満潮時に岸の方に持ってきて干潮時に作業するという、非常に素朴なやり方をしていますが、パキスタンとかも同じやり方でやっていますよね。

 インドだけの支援でいいのか。中国はそれはあれですけれども、パキスタンやバングラデシュに対してはどういうアプローチをしていますか、このシップリサイクルの支援については。インドだけに今やっているのは、外務省もホームページに出していますが、それだけでは足りないわけですよ、シェア的には。バングラデシュだってパキスタンだって相当数やっていますから。どうでしょう。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、インドだけではなく、パキスタン、バングラデシュでも非常に危険な形でそういう解体作業が行われているということはさまざまな形で指摘をされているところでございます。

 これから条約が締結されて、さまざまなデータベースが構築されていく中で、どういうようなニーズがあるのか、そういったことがより詳細にわかってくると思います。その中で、ほかの国々とも連携しながら、そういったことへの対応というのも考えていきたいというふうに考えております。

小熊委員 いろいろな船の仕組みというのは、皆さん御承知のとおり、日本籍船と造船数が違うわけですよね。日本は船はつくっているけれども、日本に所属している船が全てイコールではないというのは、これは船の世界の話ですけれども。日本は造船立国ですから、かなりの船をつくっているという責任においていえば、やはり一つの国だけじゃなくて全体を見てリサイクルが進展していくように体制をとっていかなきゃ、国際貢献していかなきゃいけないなというふうに思っていますので、インド以外の国においてもぜひ検討していただきたいなと思っています。

 片や一方で、税制が変わってトン数標準税制というのになって、また、このシップリサイクル条約発効後は、ある意味、日本籍船もふえていくんじゃないかということも一方で言われています。となると、日本国内でのリサイクル能力は今やどうなっているんだということを考えると、非常に脆弱な状況になっている。

 これは、先ほど大臣答弁もありましたとおり、このリサイクル主要国も条約に入ってくるという意味では、ハードルが上がってくるわけですよね。そうすると、なかなかリサイクル業者が追いつかない。ちょっとうちの方で受けられませんということになってくれば、日本は転売してほかの国でリサイクルしてもらっているのが多い現状ですが、国内でもちょっとやっていかないと条約どおりに処理できないというふうになってくるということも懸念をされていますので、国内のシップリサイクルの能力を高めていくということも一方で考えなければいけないと思いますが、この点についてはどう対策をとっていくのか、お伺いいたします。

宮武政府参考人 国内におけるリサイクルヤードの支援に関する御質問に対してお答えいたします。

 御指摘のとおり、現在、国内におきましては、海外での解体がなかなか難しい官公庁船を中心に小型船の解体が行われておるという現状にございます。大型船につきましては、解体のスクラップ鉄の価格に非常に影響される事業でございますので、国内における解体事業につきましてはなかなか成立しにくいという状況ではございますけれども、今後、日本籍船がふえていくということになれば、当然日本における解体の能力というのも期待されることでございますので、推移を見ながら注視してまいりたいと思っております。

小熊委員 ありがとうございます。

 それにあわせて、一つのデータによれば、いわゆる船の寿命、大体世界的には二、三十年と言われていますが、日本はそれより短いとも言われているんですね、十五年、二十年と。普通の国が二十年、三十年というところ、十五年、二十年ということになってくれば、今ほど言っていただいたように、日本におけるリサイクル能力の向上もやっていかなきゃいけない反面、いわゆるリデュース、リユースという部分も意識していかなければならないというふうに思っています。やはり、環境を考えたり、しっかりしていくということの意味では。

 そうしたこともあわせて、総合的にそういった問題についてはどうやってアプローチしていくのか、お聞きいたします。

宮武政府参考人 船舶は、重量ベースで九割以上がリサイクル可能な材質でできております。そういうリサイクルの優等生ということになっております。そういう意味で、リサイクルは進んでおるのかなと考えております。

 また、我が国が使用した船舶のほとんどは、御指摘のとおり、海外に売られまして、引き続き使用されるケースが多うございます。したがいまして、船舶そのもの、それに船舶に搭載される機器もリユースされているということでございます。

 また、船舶は、他の輸送機器と比べましても、比較的長く使用されるということがございます。そんな中で、結果的に、船舶で使用される材料のリデュースにつながっておるというふうにも考えております。

 そういう意味で、船舶は三Rに関しましてかなり進んでいるものだとは承知しております。

 加えまして、御指摘のとおり、国内外のリサイクル施設に関する安全性向上と環境保全レベルの引上げのためにも、今回のシップリサイクル条約の早期の締結及び発効が必要であるというふうに考えてございます。

小熊委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、これは、条約が、日本がリーダー的な役割を果たした、海洋国家日本、造船立国日本としても、発効後の日本の取組というのがまさに重要でありますし、この条約の目的達成のためには、国際的連携のもとに、こうした環境、また労働条件の改善といったものについても、日本がまさにそういった意味においてもリーダーシップ的役割を果たせるように取組をお願いを申し上げまして、次の質問に移ります。

中山委員長 委員から申出がございますので、国土交通省宮武大臣官房技術審議官におかれましては、御退室いただいて結構でございます。

小熊委員 きょう、条約の審議ではありますが、ちょっと重要な案件なので質問させていただきます。

 報道にありますとおり、北朝鮮の要人が北京入りをしたという報道がなされております。今、朝鮮半島をめぐる、緩和に向けた加速度的な動きの一環であろうかなとは思いますけれども、政府として、この点についてはどの程度情報を把握しているか、お伺いいたします。

河野国務大臣 お答えする前に、週末、香港へ参りまして、会津若松の市長と一緒に会津のプロモーションに参加をさせていただきました。

 香港側からは、現在の輸入規制について、香港の消費者の理解をしっかり得た上で対応していきたいという、前向きな関係者の御努力もありましたことを御報告させていただきたいと思います。

 さて、お尋ねの件でございますが、北朝鮮の金正恩委員長が、二十六日に北京入りし、習近平主席と会談をし、帰国したという話がございます。また、習近平主席は、金正恩委員長からの訪朝要請を受けたという情報もございます。

 さまざま発表されている情報、それから、情報としてはございますが確認をされていない情報もございますので、政府としてしっかり情報分析をすると同時に、関係諸国と情報を共有し、緊密な連携を維持してまいりたいというふうに思っております。

小熊委員 済みません、まず、質問の冒頭に大臣に御礼を申し上げなければいけません。本当にありがとうございました。また、訪米の際に、我が党の国対控室にお土産をいただきましたことを、まず御礼申し上げます。私からも地元のものを少し大臣の方に御提供させていただきますので、快くお引受けいただければなというふうに思います。本当にありがとうございました。週末、ちょっと会津若松市長とも懇談をする機会がありますので、大臣からこの点について御指摘あった点を御報告をしておきますので、本当にありがとうございました。

 北朝鮮については、情報把握をしっかりしていかなければいけない。米朝会談の発表からいろいろな加速度的な動きがある中で、常々日本政府が言っているとおり、対話のための対話はしないというこのラインというのをどう守っていくかということは重要だというふうに思いますし、いろいろな変化の状況に応じて、この北朝鮮情勢の安定化に向けて、また非核化に向けて、日本政府の果たす役割もしっかり行っていただきたい。

 こういう点においては、つくづく、これは何回か私も御提言させていただいたり、ほかの委員からもありますけれども、やはり、インテリジェンス機関が日本はないに等しいということが、こういった激しい国際情勢の変化において、日本の外交能力の向上に足を引っ張っている状況であると言わざるを得ないなというふうに思っています。

 そうした意味では、これからまだまだこのアジア情勢というのは変化が激しくなってこようかと思いますし、世界も、テロも含めいろいろな変化があるところでありますので、やはり、この際、これは通告していませんが、このインテリジェンス機関といったものの設置については真剣にもう検討する時期に来ているんじゃないかというふうに、この北朝鮮の北京訪問、要人が訪問した件について改めて強く思った次第でありますが、大臣、何かコメントがあればお願いをいたします。

河野国務大臣 インテリジェンスの話は非常に機微なものですから、余り今の時点でオープンな場でさまざま申し上げるのは適切ではないのかもしれません。インテリジェンスについて議論できる場がございますれば、外務省としても、そこでさまざま、できる範囲で御議論をさせていただきたいというふうに思います。

 また、きのう、カナダの外務大臣が来日されまして外相会談並びにワーキングディナーを行いましたが、カナダからも、この一連の動きについて、北朝鮮が明確に、完全かつ不可逆的、そして検証可能な非核化に向けての具体的な行動をとるまでは現在の制裁は緩めるべきでないという話がございました。国際社会において、今、そういう考え方が引き続き主流になっているというふうに認識をしております。

 これまで北朝鮮と国際社会は何度も対話をしてまいりましたが、この対話の結果、北朝鮮の核をとめることができず、国際社会からはそれなりの資金が北朝鮮に支払われているということもございますので、こうした間違いを繰り返さないように適切に対応していかなければならないというふうに思っております。

小熊委員 ぜひそのような方向でお願いをいたします。

 私自身は、やはり日本の果たすべき役割というのは、国際的な連携がしっかりなるための役割を果たしていかなければならないと思いますが、今現時点で、側面的には、アメリカ、中国、韓国を見たら北朝鮮との交渉事に主導権争いみたいなことになっているので、日本が主導権をとるとかそういう話ではなくて、逆に連携役に徹していくということが日本の最大の役割じゃないかなと思いますので、ぜひその点については、大臣始め日本政府の努力を求めるところであります。

 次に移りますが、またこれも最近のやつで、英国で起きたいわゆる元ロシアの情報機関員襲撃事件で、欧米各国がさまざまな反応をしています。日本政府においては、官房長官は今のところ、そういった外交官に対してのことはやらないという、言及がなかったということが報道でなっていますけれども、この件について日本政府はどんな対応をしていくのか、改めてお聞きいたします。

河野国務大臣 三月四日にイギリスで発生をいたしました元ロシア情報機関員の襲撃事件によりイギリスにおいて被害者だけでなく周りの市民にも被害が出たことは、極めて遺憾であり、憤りを感じるところでございます。被害を受けた方々に心からの同情を表したいと思います。

 化学兵器の使用を許容することはできず、我が国もこの使用を極めて強く非難をするものであり、化学兵器を使用した者は処罰されるべきであるというふうに考えております。

 今月十九日の日ロ首脳間での電話会談及び二十一日の日ロ外相会談でも、このような我が国の立場をロシア側に直接伝達をいたしました。我が国としては、本件に関するイギリス政府の立場を注視しており、現在行われているイギリス警察による捜査及びOPCW、化学兵器禁止機関の専門家による調査を通じ、早期に事実関係が解明されることを期待をし、関係国との間で連携をして物事に当たってまいりたいというふうに思っております。

小熊委員 イギリス以外の国でも、外交官の追放といった措置をとっていますが、日本政府としてはこれは選択肢には入っていませんか。

河野国務大臣 今申し上げましたとおり、現在イギリスで行われている調査を通じて事実関係が解明されることを期待をし、見守っている状況でございますので、そのような措置をとることは、今の時点では考えておりません。

小熊委員 仮定の話にはお答えにならないでしょうが、時と場合によっては、その選択肢も消えていないというふうな理解をしたいというふうに思います。

 時間がないので。次に、一方で、また、ロシア軍が択捉島を拠点に、これは初めてです、戦闘機の訓練、迎撃訓練をされましたが、これまでもいろいろなミサイル配備とかの訓練があった際に、政府としては厳重に抗議していますが、今回の迎撃訓練に関しては厳重抗議されましたか。

河野国務大臣 御指摘の訓練については承知をしております。北方領土におけるロシア軍の動向には注視しており、鋭意、情報収集を行っているところでございます。

 この件につきましても、この情報に接した後、直ちに、二十六日夜、外交ルートを通じて、本件は北方四島におけるロシア軍による軍備の強化につながるものであり、これらの島々に対する我が国の立場と相入れず遺憾であり抗議する旨を申入れをいたしました。

 こうした問題の根本的解決のためには、北方領土問題それ自体の解決が必要であると考え、引き続き、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、ロシアと粘り強く交渉に取り組んでまいりたいと思います。

小熊委員 大臣の言っている、もちろん北方四島を日本へ取り返さなきゃいけないというのが最大の目標ではありますが、ここ数年、そういうふうに言っている割には、逆に基地化が進んでいってしまっている。今回の戦闘機は、ハバロフスクから来てハバロフスクに帰っていきましたけれども、懸念されるのは、戦闘機そのものが択捉に、もう空港も整備されましたから、これは軍民共用ですから、されかねないという一つの方向性だったんじゃないかなというふうに懸念をされます。

 この軍事拠点化については、逆に、緩やかではありますけれども進展しているという事象しか見えてきていません。この軍事化が後退しているというニュースは一切、ここ数年聞きません。粘り強い交渉をしながらも、ロシアがどんどんどんどんやってきているというのが現状だというふうに思います。そういう厳しい認識、大臣、お持ちですか。

河野国務大臣 安倍総理とプーチン大統領の間で、既に二十回の会談が行われ、首脳同士お互い意思を通じて、この北方四島の問題の解決並びに平和条約の締結に向けて双方で努力しようという合意がございますので、その方針に従ってしっかり対応してまいりたいと思います。

小熊委員 アメリカともそうですけれども、首脳同士、これは、その是非については私の立場から言いませんが、安倍政権が長いことによって、各国の首脳との人間関係が深くなってきているのも一つの側面だとは思いますが、アメリカにせよロシアにせよ、仲がいいと言っていながら、トランプ大統領とゴルフまでしているのに、いや、ビジネスは別ですと肘鉄を食らったり、ロシアにおいても、仲よく人間関係ができていると言いながら、お金も出しながらこういうことをされているということにおいては、これはもっと日本もしたたかに厳しくやらなきゃいけないなというふうに思っています。

 そういう意味では、お金だけ、利益だけとられて日本に何の利益ももたらさないということがないように。一つ一つの事象を見ていても、ロシアとの関係においては、日本にとって明るいニュースはないですよ、北方四島に関しては特に。やられてばかり。厳重抗議したって、それは言葉だけですから。実態がつながっていかない。この点についてはもう一度、その人間関係が濃いのはいいんですけれども、それはそれとして、であるならば、しっかり国益の進展のために結果が出るようにしていただきたいというふうに思います。

 ある意味では、安倍総理と、プーチンさん、トランプさんを比べれば、安倍総理の方が人がよ過ぎるんじゃないかなというふうに思いますよ。向こうはもっとしたたかですから。そういう意味では、厳しく、冷静にこの日ロ外交については取り組んでいただくことをお願いを申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 岡田克也です。

 十五分しかありませんので、条約のことはともかくとして、きょうは、アメリカのNPRについて大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

 二月二日、少し時間もたちましたが、この米国のNPRが発表されたときの大臣談話が話題になりました。私も大変驚きました。高く評価するというふうに言われたわけですが、このことについて、大臣、反省はありますか。

河野国務大臣 昨年、北朝鮮は、広島に投下された原爆の十倍以上の威力を持つ核実験を強行したのは岡田委員も御存じだと思います。日本列島を核爆弾で海の中に沈めるといった極めて挑発的な声明を発出したわけでございます。

 この北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の進展は、日本の平和と安定に対する重大かつ差し迫った脅威であると考えております。政府には、何よりも国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任がございます。そのためには、この日米同盟のもとで、通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠でございます。

 日本は、専守防衛を旨としておりますから、そして非核三原則を堅持するという方針のもと、北朝鮮の核に対して、核の抑止力をみずから用いることはできません。北朝鮮の核の脅威から国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、米国の核の抑止力に頼らざるを得ないのが現実でございます。

 このような状況のもと、今回、米国が発表した「核態勢の見直し」は、米国のみならず同盟国の安全を確保するという核による拡大抑止に明確にコミットしておりまして、我が国はこれを高く評価するものでございます。

岡田委員 拡大抑止へのコミットメント、それを評価するということは私は否定するものではありません。しかし、あなたのこの談話は、全体について高く評価しているというふうにとられたのではないですか。

 では確認しますが、このNPRについて、全体を高く評価しているのか、コミットメントを高く評価しているのか、どちらなんでしょうか。

河野国務大臣 今申し上げましたように、この同盟国の安全を確保するという核による拡大抑止に明確にコミットしているところは高く評価いたします。

 また同時に、アメリカは、今回のNPRにおいても、核兵器の究極的廃絶に向けたみずからの取組に引き続きコミットし、NPT体制の強化、核兵器のさらなる削減を可能とする安全保障環境の追求にも言及をしているということをつけ加えさせていただきたいと思います。

 今回のNPRは、北朝鮮による核・ミサイル開発の進展、急速に悪化している安全保障環境に対処するために、これまでの核兵器の役割を確認し、米国の抑止力の実効性を確保するものと認識をしております。

岡田委員 今のお答えは明確ではないんですが、文書を見ると、全体を高く評価しているというふうにしか読めないんですね。しかし、私は、それは明らかにバランスを失しているというふうに思います。

 二〇一〇年のNPR、私が外務大臣のときの話ですけれども、このときに書かれているのは、核兵器の数の縮減と役割の減少です。しかし、今回のNPRは、核兵器の役割の拡大というのが一つの大きな流れですね。そこは明らかに百八十度考え方が変わっているわけです。この点についてはどう考えているんですか。

河野国務大臣 二〇一〇年のNPRにおいても、核兵器が非核攻撃を抑止する役割を担う可能性に言及をしておりまして、今回のNPRにより核の先制使用等の可能性が高まっているわけではないと思います。

 今回のNPRは、むしろ、これまでどおりの核兵器の役割を明確化することによって、相手国がアメリカの意図を誤認をするあるいは誤算をするといったリスクを減らし、抑止力を高める意図を明らかにしたものだというふうに考えております。

岡田委員 質問に答えてもらっていないので、もう一度聞きます。

 二〇一〇年のNPRは、核兵器の数と役割の低減ということが主張されました。今回、核兵器の役割を拡大、この点についてはどう考えているのかと聞いているわけです。

河野国務大臣 申し上げましたように、二〇一〇年のNPRでも、核兵器が非核攻撃を抑止する役割を担う可能性ということに言及をしているわけでございますから、核の役割を拡大するのではなく、むしろ、この核兵器の役割を明確にして、誤算、誤認によるリスクを減らすということを意図しているんだと考えております。

岡田委員 大臣、二回言われましたけれども、核の先制使用についてのNPRの二〇一〇年と今回との比較ですけれども、これは外務省も事務的にもいろいろ言うんですが、確かに、二〇一〇年のNPRでも核の先制使用は否定されておりません。そこは共通です。しかし、具体的な中身においてはかなり変えているということを申し上げておきたいと思います。

 このことは後で言いますが、もう一回聞きます。

 核の役割の低減と二〇一〇年のNPRでは主張しましたし、そういう内容になっています。今回のNPRでは、核の役割の低減ということは貫かれているんですか。

河野国務大臣 核攻撃及び非核攻撃を抑止するという核の役割というものについては、二〇一〇年のNPRあるいは今次のNPR、変化はございません。

 今回のNPRは、核兵器の役割を明確にすることによって、相手国の誤認、誤算のリスクを減らすということで抑止力を高めようとしているというふうに考えております。

岡田委員 それは詭弁ですね。

 明らかに、核の役割を低減しようとした二〇一〇年NPRに対して、今回は、役割を低減しよう、そういう考え方はない、むしろ拡大する。あなたは明確化と言われましたが、拡大する。そこは百八十度変わっているということを申し上げておきたいと思います。

 先制使用については、先ほど大臣、言及されました。大きな変更はないというふうに言われますが、大きな変更はあるんです。先制使用について、二〇一〇年のNPRでも否定はしていません。しかし、核兵器を使用する極限の状況について、より具体化して拡大しているのが今回のNPRじゃないですか。

 そして、その中には、核によらない重大な戦略攻撃、具体的には、民間人やインフラに対する攻撃、これに対しても核を使うことがあり得るということを言っていて、それは、全く前回のNPRには見られないことだという指摘に対して、どう考えられますか。どう答えますか。

河野国務大臣 今回のNPRについては先制使用を明確にしたとおっしゃいますけれども、今回のNPRも前回のNPRも先制使用を否定していないというのはこれまで申し上げてきたところでございます。

 今回のNPRは、核兵器の役割を明確にすることによって、相手国が、こうしたことについてはアメリカはやらないであろうという誤認、誤算を防ぐ、そういう意図があるんだろうというふうに思っております。これだけ安全保障環境が悪くなっているわけでございますから、相手国の誤認や誤算によって核あるいは生物化学兵器といったものが使われるリスクを下げる、抑止力を高める、そういう意図があるものというふうに考えております。

岡田委員 今大臣が言われた話は、戦術核についての議論ではそういう議論はあるのかもしれませんけれども、この先制使用の話というのは、相手が先制使用する可能性があると思えばそれより先に使うというインセンティブは出てくるわけですから、私は、今大臣が言われたことは、この先制使用の議論には当てはまらないというふうに思っています。

 では、もう一つ聞きますが、ソールパーパス、唯一の目的論について、確かに、二〇一〇年のNPRでも、それを直ちに採用する条件は整っていないとしながらも、目指すべき目標であるというふうに書いているわけですね。ところが、今回はソールパーパスは明確に否定されています。ここはどう考えるんですか。

河野国務大臣 前回も今回も、ソールパーパスということではないということでございますから、そこに特に変更はないというふうに思います。

岡田委員 前回は、ソールパーパスは、直ちに採用する条件は整っていないが目指すべき目標であると明確にしていたわけですね。今回は、ソールパーパスは目標ではないというふうに否定しているわけです。明らかにベクトルは違うんじゃないですか。

 それを、同じだ、全部同じだと、大臣、先ほどから答弁を聞いていますと言っておられますが、それは詭弁ですよ。

河野国務大臣 今回のNPRでも、米国は、核兵器等の究極的廃絶に向けた取組に引き続きコミットしNPT体制を強化する、あるいは核兵器のさらなる削減を可能とする安全保障環境の追求にも言及をしているわけで、将来的にアメリカがそうした方向に向かっているという姿勢は変わらないというふうに思っております。

岡田委員 旗は掲げているということですが、具体的にやっていることは全く逆方向で、二〇一〇年のNPRはその旗に向かって努力しているという姿勢が見えましたよ。しかし、今回は、やっていることはその逆だということです。

 それを同じだというふうに強弁したりということになると、日本だって、核兵器なき世界を目指すなどという旗はもう畳んだ方がいいですよ、大臣の言い方だと。どうですか。

河野国務大臣 二〇一〇年と今回のNPRを取り巻く安全保障環境は、北朝鮮危機を始めさまざまな状況が悪くなっている中でのNPRでございます。その中にあっても、アメリカは、究極的な核軍縮、核廃絶に向けての取組は引き続きコミットするんだということを言っております。

 環境がいいときにさまざまなプランニングをするのと明らかに環境が悪くなっているときのプランニングというのは、当然その書きぶりは違うんだろうと思いますが、同じ方向を究極的に向いているという点について、違いはないと思います。

岡田委員 拡大抑止を強く求める余り、このNPR策定作業の中で、核の役割を減ずるのではなくてふやしてもらいたいというふうに、具体的なことはいろいろこのNPRに書いてあるわけですが、そういったことをやってもらいたいというふうに日本の政府から働きかけたという事実はありますか。

河野国務大臣 岡田委員も外務大臣を経験されておりますのでおわかりだと思いますが、日米間では、日ごろから、日米安保、防衛協力に関連するさまざまな事項について緊密かつ幅広く意見交換を行ってきております。こうした機会を通じて、アメリカの核政策についても意見交換を行ってきております。

 ただし、事柄の性質に鑑み、具体的なやりとりについてお答えするのは差し控えているところでございます。

岡田委員 二〇〇九年のときにも、私が外務大臣に就任する前、中曽根外務大臣の時代ですけれども、日本に対するコミットメントをふやしてもらいたいという中で、日本の核なき世界を目指すという方向とは明らかに違う方向で日本政府が働きかけたのではないか、そういう疑念があるわけです。今回はそういったことはあるんですか、ないんですか。ここはもう基本的なところですから、具体的なことを私聞いているんじゃないんです、そのことについて大臣の答弁を求めたいと思います。

河野国務大臣 当時も岡田外務大臣の米国政府宛ての手紙でそうした疑念を否定されたというふうに理解をしておりますが、今回も前回も米国の核政策について意見交換を行ってきているということはございますが、その具体的なやりとりについて対外的にお答えをしたことはないというふうに認識をしておりますので、今回も差し控えたいと思います。

岡田委員 私のクリントン長官への手紙の中では、日本政府としては働きかけたことはないと考えているが、もしあったと受け取られたとしたら、それは誤解であるということを、公開した手紙の中で述べているわけです。

 これは日本政府の基本的スタンスにかかわるところですから、今回のこのNPR策定に当たって、日本政府として、核の役割を増大してもらいたい、そういったことを働きかけたという事実があるのかないのか、それだけでもやはり国民に対して説明する責任が大臣にはありますよ。いかがですか。

河野国務大臣 事柄の性質に鑑み、具体的なやりとりについて詳細を申し上げるのは差し控えます。

岡田委員 終わりますけれども、詳細を語ってくれと言っているんじゃないんです、基本的な考え方をきちんと国民に知らせてくれということを申し上げているわけです。

 続きはまたやります。

中山委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 きょうは、二つの条約について質問します。

 まず、マラケシュ条約について聞きたいと思います。

 本条約は、各国の著作権法に著作権の権利制限規定を設け、ある国で制作した障害者向けの図書の複製物を他国に輸出できるようにするものと理解しています。

 世界盲人連合の推計では、毎年世界じゅうで出版される百万冊の書籍のうち、視覚障害者などが利用できる点字や録音図書などが制作されている割合は、途上国で一%以下、先進国でも七%にすぎないとされています。こうした「本の飢餓」と呼ばれる状況が原因で、世界じゅうの何百万人もの出版物利用に障害がある人たちが社会的孤立や貧困などの状況に置かれている。河野大臣はこうした状況をどのように見ておられますか。

河野国務大臣 世界じゅうの視覚障害者の方々にとって利用可能な著作物が引き続き不足しているということは承知をしております。もちろん、国内でも状況はさほど変わらないというふうに承知をしております。

 そのような状況を踏まえて、この条約の交渉過程においても、視覚障害者の方々による著作物の利用機会促進の分野での国際協力のさらなる推進に貢献するため、我が国は、この条約の採択に向けて積極的に参画をしてまいりました。

 日本がこの条約を締結することにより、我が国の視覚障害者の方々による国内外の著作物の利用の機会を更に促進し、視覚障害者等の方々による著作物の利用の機会の促進に関する国際的な取組に貢献することに資するものというふうに考えております。

 ただ、きょう、さまざま御議論をいただきましたように、例えば、点字あるいはオーディオブックのようなもの、これは日本語の書物を日本語の点字、日本語のオーディオブックに直すわけでございまして、なかなか、もちろん海外に在住の日本語を理解される視覚障害の方にはいろいろと貢献をできるわけでございますが、英語ですとかスペイン語、アラビア語、フランス語といった国境を越えている言語とは若干状況が違います。

 そういう意味で、こうしたものを作成する過程において、日本としてどのような支援ができるのかというところについても取り組んでいかなければならない、支援をしていかなければならないというふうに考えております。

穀田委員 今、私もそのことを二番目に言いたかったんです。やはり、とりわけアジアの地域においてどういう役割を果たすのかということは極めて重要です。

 午前中の質疑でも、外国語、とりわけ英語、それから今お話があったようにスペイン語とかありましたけれども、報告書を見ますと、アジア太平洋地域でこの条約を締結した国は七カ国にすぎないとされています。

 アジア太平洋地域は、世界で最も視覚障害者が多く、全盲の方が二千百四十万人、中度から重度の視覚障害者全体で一億三千五百万人と推計されています。人口の急速な高齢化や糖尿病などの慢性疾患の拡大で、出版物の判読に障害がある方が今後増大されると予想されています。

 そういう意味で、作成過程ということもありましたけれども、アジア太平洋地域の実情に対して日本としてどのような働きかけを行うのかということが求められると思いますが、簡単に御答弁をお願いします。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、このアジア太平洋地域におけるマラケシュ条約の締結国はまだまだ少ない状況でございます。

 まず、マラケシュ条約は、第九条におきまして、各国の点字図書館等による、点字などの利用しやすい様式の複製物の国境を越える交換を促進するための協力を規定しておるところでございまして、視覚障害者等の方々による著作物の利用機会を促進するための国際的な協力を行う意味で非常に重要なベースになるものでございまして、我が国といたしましては、本条約の締結を契機に、この分野における国際社会の取組に更に貢献するということでございまして、アジア太平洋地域、特に開発途上国を含みますけれども、国際的な協力を一層進展させていきたいと考えております。

 また、さまざまな外交機会、APEC等の機会もございますので、そういった機会も捉まえて、いろいろな協力、あるいはアジア太平洋地域の各国のさらなるマラケシュ条約への参画を促していくといった取組を行っていきたいと思っておるところでございます。

穀田委員 今ありましたように、参加、締結といいますか、七カ国にすぎないという事態と、やはり日本が果たさなければならない役割、そういったものにしっかり自覚して取り組んでいただきたいと思います。

 そこで、国内に少し目を転じますと、社会福祉法人日本盲人会連合は、昨年二月、マラケシュ条約の批准に向けて、文化審議会著作権分科会の小委員会に対し、著作権法改正に関する意見書を提出しています。その中で、「著作権法第三十七条第三項における受益者の拡大」や「受益者への公衆送信の法定化」、「複製が認められている者に関する規制緩和」、「テレビ番組への音声解説付与に関する権利制限」に関する意見書を提出しています。

 文化庁にお聞きしますが、政府として、こうした国内の障害者団体からの要望にどうお応えになっていくのか、明らかにされたいと思います。

永山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、昨年の二月に、文化審議会の小委員会の方に日本盲人会連合から意見書が提出されております。意見書の内容は、今委員が御説明いただいた四点についてでございます。

 その要望事項のうち、一点目、二点目、一点目が著作権法第三十七条第三項における受益者の拡大、二点目が同項における対象行為の拡大ということでございますが、この二点については、ことしの二月に国会の方に提出させていただきました著作権法の一部を改正する法律案において、所要の規定の見直しを盛り込んでいるところでございます。

 また、三点目の、著作権法三十七条第三項の複製等を行うことができる主体の拡大につきましては、障害者団体と権利者団体との意見の調整を経まして、昨年の四月に取りまとめられた審議会の報告において、権利者の利益を不当に害さないための配慮を行いつつ、ボランティア団体などが現行制度よりも簡易な方法で同項の主体になり得るようにするため、所要の措置を講ずるべき旨の提言がなされております。

 文化庁としては、この提言を踏まえまして、関係者の御意見も聞きながら、具体的な制度設計の検討を進めて、速やかに制度の整備を行っていきたいというふうに考えております。

 四点目の、テレビ番組への音声解説付与に関する著作権処理の問題につきましては、現状では関係者間の意見調整がまだ整っていないという段階でございますけれども、今後、関係者の御意見を伺いながら、協議が円滑に進むよう文化庁としても支援を行っていきたいと考えております。

穀田委員 精神はわかりましたけれども、やはり、三点目に言われたボランティアの問題を含めて、それを支える人たちが本当に関与できるようなことについては当然必要なことだと思うんですね。そこはよく理解していただいて、実行に移していただきたいと思います。

 次に、シップリサイクル条約について聞きます。

 現在の日本の船舶も含め、老朽化した船舶の解体が行われているのは、世界第一位の船舶解体国であるインドを始め、中国、パキスタン、バングラデシュなどが主であります。中国を除いて、開発途上国での船舶リサイクル方式は、ビーチング方式と呼ばれ、自然のところで干満差を利用して船舶を自力で座礁させ、干潮時に船舶を解体する方法で行われています。

 しかし、このビーチング方式は、クレーン等の重機、搬送機器、救急設備などの重機を船の側に近づけることができず、全て人手の作業となって、極めて危険な解体方式であります。船舶リサイクル現場の労働者の死傷事故は後を絶たず、健康被害、さらに環境汚染も深刻となっています。

 この条約では、労働者の安全保護、環境保護を目的としているわけですが、シップリサイクルの処理能力が要件となっています。現状と条約の実効性をどう考えているのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、船舶の解体の多くは委員御指摘のとおり途上国で行われており、環境汚染や労働者の事故、疾病が発生しております。特にパキスタン及びバングラデシュにおいては、解体施設の未整備や不適切な労働環境を背景に、アスベストやPCB等の有害物質による海岸や海水の深刻な汚染、解体作業中の労働災害の多発が指摘されているところでございます。

 シップリサイクル条約は、まさにこうした問題を受けて、これに対応するために作成されたものでございまして、労働者の安全確保、環境保護の観点から、解体施設が遵守すべきルール等を詳細に規定しているところでございます。

 これらのルール作成の交渉には主要な船舶解体国である途上国自身も参加しており、今後これらの国が、先進国の協力も受けつつ、本条約に沿った適切な解体を行うための国内法整備を進めていくことで、本条約の実効性が確保されることになると考えております。

 また、本条約には、締約国の解体施設が本条約に違反しているという証拠がある場合には、他の締約国が所在国政府に対して立入調査を要請することができる、そういう規定が設けられておりまして、こうした制度も活用することによって本条約の実効性は確保されるものと考えております。

穀田委員 今鈴木審議官が前半の方で言われたように、随分事故が起きているわけですよね。二〇一六年十一月にパキスタンで起きた解体中の事故は、爆発が起き、二十八人が亡くなっています。パキスタンでは、労働者を保護する法律が整っておらず、基本的な安全対策や安全設備が不十分な職場も珍しくないため、労災事故が後を絶たないというのが現状です。

 こうした危険なビーチング方式は日本の海岸では認められていません。なぜ日本では認められていない危険な解体方式を行っている開発途上国で日本の船舶の解体を行うのか、外務省としての所見を伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 現状におきましては、委員御指摘のとおり、さまざまな、インド、パキスタン、バングラデシュといった国が専ら解体をやっているということでございまして、ビーチング方式による船舶解体、これは主に、施設の未整備あるいは人的コストの削減の観点からそのような方法をとっているというふうに承知をしております。

 こういった危険な状況を解消するために、まさにこのシップリサイクル条約といったものが議論され、今回採択されているわけでございまして、これを速やかに締結していくことが重要だというふうに考えております。

穀田委員 全然それは答えになってへん。それは、条約をこうします、こうなりまっせという話で。

 せやけれども、実際には日本の船舶を、いわば危険な解体方式を行っている開発途上国で行っているのは、どういうふうに思ってはるねんということを聞いているわけですやんか。条約だったらこうなりまっさなんて話を聞いているんじゃなくて、現実は、ええ格好しているけれども、実際には、今お話あったように、安いコストという話が、全てじゃないけれども、大きな柱となってやっているやないかという現実を見ないとあかんのちゃうか、そこを聞いているわけですやんか。

 時間もないからあれなんやけれども、じゃ、日本はどうかというと、日本における船舶解体業者は瀬戸内海を中心に六社が営業しているんですよね。そのほとんどが機械化されて、しかも、国内において、条約の要件を満たして大型商船の解体を行うことは、日本の技術をもってすれば可能なんですね。しかし、今お話あったように、収益を得るために、労働コストが安い劣悪な労働環境の発展途上国に危険な解体方式を押しつけているということにほかならぬわけですよね。

 日本が海運・造船国として条約づくりを主導してきたといつも声高に言うわけですが、だとすると、先進国型のシップリサイクルシステムの構築についても、世界的に日本の責任をどう果たしていくのかということが問われているんじゃないか、そこを明確にされたいと思うんですが、いかがですか。

鈴木政府参考人 委員御指摘のとおり、このような現状が引き続きあるということはあってはならないということだと思います。

 したがいまして、私ども日本といたしましても、例えば、インドに対してODAにより新しい船舶解体施設の整備について支援をしてきておるところでございます。

 また、ほかの、パキスタン、バングラデシュといった国々に対しても、委員御指摘のとおり、これまでの日本の蓄積しましたさまざまな技術、ノウハウ、知見といったものを利用して、その状況が改善されるように、積極的に協力をしていきたいというふうに考えております。

穀田委員 結局、日本の船舶をそういったところへやって、現実はそこでやっているやないか、そういう話をしているんですよ。

 そういう、本当に、相手に対して支援はしている、それは一つの例でしょう。それは、そのことも必要だということは論をまちませんよ。現実の問題について厳しい反省と理解がないと、それはあきまへんで。

 最後に、私、言っておきますけれども、国交省は、シップリサイクルシステムの構築に向けたビジョンの中で、先進国型リサイクルモデルの開発として、十分な解撤能力の確保のために外航大型船を我が国でリサイクルする方策及び政策的な支援を検討すべきであると言っているわけですよ、同じ政府の部内で。国内における船舶リサイクルの事業の再生は、国内での循環型社会の構築という理念への取組もさることながら、鉄資源の確保やCO2排出削減効果への貢献、雇用の創出、地方経済の活性化などさまざまな効果が期待できるとしている。

 そういう道を進むべきであるし、今やっている、そういう開発途上国で危険な作業をやらせるやり方について、そういうのを自主規制するぐらいのことを指導するのが当たり前だということを述べて、終わります。

中山委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも条約をお伺いしたいんですが、その前に、本当は条約の質疑をしっかりやりたいので、残りの部分は今後の一般のところでお聞きしていきたいと思いますが、きのう、ニュースが電撃的に走っていまして、北朝鮮の要人が中国の方へ行ったんじゃないかと。

 どうやら、けさのを見ていますと、金与正さんの方じゃなくて、金正恩さんですね、金委員長が北京を訪問された。中国の報道によると、朝鮮半島の非核化についてという部分は出ていますが、恐らくそれだけじゃなくていろいろなことを彼らは議論したんだと思いますが、こうした状況を日本としてどう捉えているのか。大臣、どのようにごらんになっていますか。お伺いできますでしょうか。

河野国務大臣 金正恩委員長が習近平主席と北京で会談をしたという情報が流れております。

 今、我々としては、さまざまな情報を収集、分析をし、関係国とそれを共有し、今後も引き続きしっかりと連携をしてまいりたいというふうに思っております。公表された情報、公表されておらず確認中の情報、さまざまございますが、しっかり情報の収集、分析に努めてまいりたいと思います。

丸山委員 ここのところの北朝鮮の動き、非常に素早い、なかなかしたたかな動きが多いなというふうに感じております。

 金正恩委員長、私は同い年でございまして、三十四歳で、誕生日がちょうど二日か三日違いだそうで、私は一月十日で、そういえば大臣も一月十日で、お誕生日でいらっしゃると聞いたんですが、同じで光栄でございます。彼は十三日ですか、三日ぐらいしか違わないということで、非常に彼の動き、同じ世代としても見ておりますが、ここのところの朝鮮半島の情勢を見ていますと、非常に外交の動きが速くて、日本としても、枠組みの中で、蚊帳の外という形にされないようにしっかり見ていく、日本の国益を追求していくという姿勢が非常に大事だと思います。

 時間が少のうございますので、一般で、残りは別の日に聞いていきたいというふうに思いますが、しっかり日本の国益を通していく外交をよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 まず、マラケシュ条約の方をお伺いしたいんですけれども、これはやはり権利を守っていく部分も非常に大事だというふうに思います。日本は、コンテンツを世界に売っていく中で日本の権利を守っていくとやっているわけですから、そうした中でしっかりコンテンツの権利を守っていかなきゃいけませんが、一方で、本当に、視覚障害者の方がこうしたものに触れられないという状況を変えたい、この利益の調整というのが非常に難しかったと思うんですね。

 この調整の部分でどのような調整をされてきたのか、そして問題は生じなかったでしょうか。お伺いできますでしょうか。

永山政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、マラケシュ条約を締結するために必要な事項につきまして、別途、著作権法の一部改正法案を国会の方に提出させていただいております。その過程におきまして、審議会の方で意見調整をいたしましたが、審議の過程におきましては、障害者団体からマラケシュ条約の内容にかかわらずさまざまな要望がありまして、それについて二年ほどかけて検討をして、その結果が今国会に提出させていただいております法律案の方に結実しているというふうに考えております。

 最終的な内容につきましては、文化審議会の著作権分科会において、障害者団体及び権利者団体の方から意見聴取を行いました。その際、基本的な内容につきましては御賛成いただいたというふうに承知しておりますが、権利者団体の一部からは、これは改正法が成立した暁でのことですけれども、健常者への流用防止などの法の適正運用、権利保護の実質化という観点から意見があったものというふうに承知しております。

丸山委員 しっかりそういった御意見も受けとめていただいて、権利の保護の部分もしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 これは、ただ、著作物を点字化していく、音声図書にしていくというのはなかなか手間のかかる作業、大変な作業なんですけれども、今、地元を回っていたりしても、お伺いしていますと、こうした作業はボランティアの方々が協力してやっているのが現状で、なかなかこうしたコンテンツが出てこない、物が出てこないというのが多分最大の課題だなというふうに私は思っているんです。

 これは、本条約を承認してやっていくのであれば、やはりしっかりと国としてバックアップ体制を整えていかなきゃ何の意味もない、ふえなきゃ意味がないですね、障害を持った方が触れられるこうした著作権物がふえなければ意味がありませんので、しっかりこの辺のバックアップ体制を整えていく必要があると考えておりますが、政府としても同じ考えでしょうか。どのようにお考えでしょうか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 著作物の点字化、音声化につきましては、その多くが点字図書館で行われておりまして、点字図書館の運営に係る費用につきましては、国がその二分の一を負担しているところでございます。

 また、現在、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業という事業がありますが、その事業におきまして、点訳奉仕員、朗読奉仕員を養成する地方自治体に対して、国として財政支援を行っているところでございます。

 引き続き、著作物の点字化、音声化に必要な支援を実施し、点字図書や録音図書の普及を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

丸山委員 引き続きやっていただくのはやっていただかなきゃいけないんですけれども、今申し上げたように、今の現状のバックアップで、この日本、数%だと言われていますが、少ない、全世界で百万冊発行されているそうですが、そのうち数%しか点字はない、日本も似たようなもので、なかなかふえていないという現状の中で、今と同じことをやっていたら結局一緒だと思います。この条約を承認していくわけですから、しっかりこの部分、より支援をしていくというのが非常に必要だと思いますので、時間がありませんので次に進みたいんですが、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 シップリサイクル条約の方、お伺いしたいと思います。

 これは、日本がリーダーシップをとってつくってきた条約、何としても外務省としてもやりたいんだと思うんですけれども、一方で、この条約発効に必要な条件を満たすことができるのかなというのが、はたで聞いていて非常に心配な部分があるんですけれども、これについてどのようにお考えでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 本条約は、第一に、締約国数に関し、十五カ国以上が締約すること、第二に、締約国の商船船腹量に関し、世界の商船船腹量の四〇%以上となること、第三に、締約国の船舶解体力に関し、締約国の商船船腹量の合計の三%以上となることという三つの発効要件を充足した後二十四カ月で効力を生ずるということになっております。

 このうち、第一の締約国数でございますが、現在六カ国が締約しております。しかし、二〇一八年内にも、EU域内法の施行後にEU加盟国による締結の動きが進むと考えられますので、今後数年以内には充足されるという見通しでございます。

 船腹量に関する第二の要件でございますが、世界トップのパナマを含む現在の締約国全体で約二一%でございます。今後、二%を占める我が国、未締約国全体で一九%を占めるEU加盟国及び一二%を占める中国が締結すれば充足されるという見通しでございます。

 また、最後の船舶解体力に関する第三の要件でございますけれども、これは、主要な解体国であるインド及び中国が締結すれば充足される見通しでございます。

 ちなみに、中国は既に関連国内法の整備を終えており、早期の締結が見込まれますほか、インドも早期締結の意思を示しており、今後数年以内の締結が期待されているところでございます。

丸山委員 最後にお伺いしたいのは、今回この条約が締結されると、造船所、船主、あとリサイクル施設、それぞれ負担が出てくると思うんですけれども、これはどの程度負担が出てくるのか、そうした方々に対するフォローみたいなものも含めてどういうことになっていくのか、お伺いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、船主側が負うこととなる主な負担でございますけれども、これは造船時の有害物質の目録の作成等の手続的なものでございまして、多大なコスト負担を強いるものではないと考えております。また、現存船については、目録に記載すべき有害物質の種類を減らすなど一定の配慮がなされており、建造、航行スケジュールに影響を与えることなく対応可能となる、そういう見込みでございます。

 また、船舶リサイクル施設につきましては、新たに許可制が導入されることになるわけでございますが、条約の対象となる大型船舶を解体する国内の施設というのは限られております。また、我が国の施設では既に基本的な安全、環境対策はとられていると認識しておりまして、許可の取得に当たり大きな負担は生じていないと考えております。

 なお、本条約は、発効要件充足から発効まで二年間の猶予が設けられており、各関係業界による準備期間というものも十分に確保されていると考えております。

丸山委員 これで質疑を終わります。ありがとうございました。

中山委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十五分散会


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